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  [No.3137] 屑塚の王 投稿者:白色野菜   投稿日:2013/11/30(Sat) 22:30:04   120clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:ネタバレ?】 【AZ】 【批評歓迎

【ポケモン新作(X・Y)のネタバレおよび殿堂入り前提でないと分からないかもです。
未プレイの方はご注意してください。】









あるところに愚かな一人の男がいた。
男は失った物を嘆きそれを探すため永遠とも思える時の中を放浪していた。

その日も、男は永遠に咲く花を求めて深い森の中をさ迷っていた。
深い深い森は何度も何度も同じ景色を男の目に写し、男はその度足が重くなり進む意志が挫けそうになるのを感じた。
足を止めてしまえば、もう動けなくなりそうで。
彼は、何かに追いたてられるように足を動かし続けた。

そんな彼の目に濃い緑ではない色が写る。
吸い寄せられるように足を向ければ森の一部が切り開かれ小さな建物が建っていた。

周りに溢れている木材ではなく遠くで使われる石材を使い建てられたそれは礼拝堂のようだった。

既に参拝する者が居なくなって長い時が過ぎたのだろう、壁や天井は崩れ木々や蔦に侵食され森の一部へと還りつつある。

柔らかく、腐りかけた木片を踏みつけて男は吸い込まれるように、建物へ入った。

祭壇は何を祭っていたのかも分からないほど荒れ果てていた。
顔が崩れ落ちた何かの偶像が此方を見下ろしている。
男はその光景に皮肉げに口許を歪ませた。

部屋の中央には崩れた岩の塊や折れた剣、朽ちた鎧、それに罅割れた石像。
それら雑多な物が、小山のように積み重なりうっすらと埃を被っていた。
人為的な物を感じるも、男はさして興味を持たず祭壇の前の小さな段差に腰を下ろした。

男は疲れていた。
自身の胸に宿っていた愛や恨みや哀しみや絶望が。
それすら、小さな小さな種火となって消えかけているのを感じていた。

屑の山を見据えながら、物言わぬ生きた人形としてそこに混じるのも一興かと。
男はゆっくりと、瞳を閉じながら思いを巡らせる。

「捨てた物を見つけに来たか。
それとも、捨て場を求めて来たか。」

暗闇の中響くその声は不思議な響きを持っていた。
音自体は声変わり前の少年の物であるにも関わらず、老衰し今にも死にそうな賢者の声にも似ている。

男は閉じていた目蓋を開く。
いつの間にか日は落ち、辺りは薄ぼんやりとした闇の衣を纏っていた。
天井の穴から月明かりが差し込み、それが声の主をてらしていた。
屑塚の上に、ぼろぼろの服を着た少年が一人座り男を見据えていたのだ。

屑の山の上。
まるでそこが玉座であるかのように、少年は年に似合わぬ威厳を持って男を見下ろす。

「捨てた物を拾いに来たか。
それとも、捨て場を求めて来たか。」

「…………すて、てはいない。だが、うしなった、ものをさがして、い、た。」
男の声はひび割れていた。
久方に出す声は、何処までも頼りなくその事が男から苦笑を引き出す。

「賢王よ、愚かな男よ。
ここには、お主が捨て去った他者がある栄光がある過去がある。
王よ、お主はそれを求めるか。」
少年は言いながら屑の山を指差す。
そこには、手入れを怠った事など無いようなキラキラとした王冠と宝杖が転がっていた。

「…………それに、かのじょ、がいないなら、そこになんの意味も、ない。」
男はそれを見て、首を横にふる。

「愚かな男よ。
此処にはお主が捨て去ったお主の命がある。お主の死がある。
男よ、お主はそれを求めるか。」
少年は言いながら、別の隅を指差す。
そこは、月明かりも届かぬ暗がりで闇そのものが踞り此方を見ているような。そんな錯覚すら呼び起こす。
「それは、かんび、な話、だな。」
男は、目蓋の重みに抗うのが億劫になる。
だけれども、瞳を閉じれば脳裏に浮かぶのは彼女の泣き顔。
最後に、見た、表情。
後悔が、四肢への熱へと転じる。

「いら、ない。私、は。
捨てた、ことを。後悔したことは、ない。」
「それでも、重い過去は因果となってその身を縛ろう。」
「構わない。それが、罰だと言うのなら甘んじて受けよう。そうでなければ、彼女を探し求めることが出来ないのだから。」
「男よ、永久を生きるものよ。ならば私はお主に一つの祝福を。因果の果てが幸福であるように。」
少年は屑の山の一部を指差す。
男が視線をそちらに向ければ、一体の石人形が屑山から這い出る所だった。
体の一部が欠けてはいるものの、四肢はきちんとついており危なげな足取りで屑山を滑り降りると石人形は男の足元に腰を下ろす。

それは、昔、彼の王国で良く見かけていた姿だった。

懐かしさに目を細めた男が視線を石人形から屑の山へとかえす。
同時に口を開き……喉は空気を震わすことなく無音の言霊だけが宙に浮く。


少年の姿はすでになかった。
同様に屑山も。

月明かりの中、埃が舞う。
男は何も言わず立ち上がる。
石人形も少しよろけながらも立ち上がった。


そうして、男はその場を去った。

これは、それだけの話。
二人の王が相対しただけの話。









【屑塚の王】
捨てられた老婆や九十九神の親玉みたいな妖怪らしいです。ポケモンだとジュペッタとかシャンデラとか………。
主人公な補足小説は未だ途中です。
【石人形】
ゴビットです。

【ボツネタ理由】
屑塚の王が、分かりにくいのでボツ行き


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