マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.176] 第一章 投稿者:紀成   投稿日:2011/01/14(Fri) 20:58:43   63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

宿舎に入り,諸注意の後に荷物を置きに行く。元々小学校だったらしく,教室の一つ一つに二段ベッドが六つ置いてあった。というわけで,誰が上か下かのジャンケン。
ただ,カミヤさんは,

「どうでもいい」

と言って,やらなかった。
結果,私が下,ミコトが上になった。ちなみにカミヤさんは一番端の下だけど,上に寝るはずの子が他の部屋の友達と並んで寝ると言ったらしい。つまり,カミヤさんは一人になる。
荷物を置いたら,早速ガイドを広げる。
「ほとんどは単独行動でいいらしいよ。うちの学校も太っ腹だよね」
「じゃ,お城の方行ってみない?あ,海にも近いんだ。
ねえ,カミヤさんも一緒に」
言いかけた私の言葉がとまった。既に姿はない。
「カミヤさん,もういなくなってる・・」
「ミスミ,まさか彼女も連れて行くつもりだったのかい?大体,僕達を待ってるわけないじゃないか」
「えー」
カミヤさん,何処行ったんだろう?


カオリの足元で,白波がくだけ,サーッと引いていく。遥か彼方に見える群青色の水面は光を受けて輝いている。
「強制参加だったけど,悪くないね」
『いいのか,あの城に行かなくて』
「あともう一日あるから,今日はこっち」
カオリの髪を,海風が撫でていく。灰色のような銀が空に映える。
『カオリーあめくれー』
「はい」
カゲボウズ達にねだられ,ウエストポーチから棒つきキャンディの袋を出し,一本取り出す。口に押し込めばそのまま向こうへ飛んでいく。
『平和だな』
「平和すぎるのも考え物だけどね」
その時,右目の横で黒い何かが飛んでくるのが見えた。ツノの生えたてるてるぼうず・・カゲボウズ。それは百も承知だ。
でも。
「このカゲボウズ,私と一緒にいる子じゃない」
ケケケとその子は笑った。こちらが驚いていることが面白くて仕方ないようだ。
「トレーナーは?野生じゃないよね」
『!』
一緒にいたデスカーンが私の前に出た。私も感じていた。近づいてくる人間の気配を。
そして,その周りに蠢く,カゲボウズの真っ黒な群れを。
「・・」
「こんにちは」
その人間は,男だった。年齢は二十歳前後。落ち着いた色合いの金髪,色白。世間で言うところの『美形』に分類されるような容姿だった。
「・・こんにちは」
警戒しながらも,カオリは何故かこの青年から目を離せないでいた。美形だからではない。彼の持つ独特の気配に,魅せられていたのだ。
「・・カゲボウズだらけ,ですね」
「!」
青年は少し驚いた後,カオリに笑顔を見せた。
「君のポケモン達,君のことが大好きみたいだ。警戒してるよ」
「デスカーン,皆,抑えて」
カオリが言うと,しぶしぶゴーストポケモン達は下がった。だがその目の鋭さは落ちていない。
「あの,貴方は」
「ちょっと不思議な雰囲気を感じたものだから」
「貴方も・・ちょっと変わってますね」

冷たい海風が,背たけの違う二人の間を駆け抜けていく。

「名前」
「?」
「貴方の名前は?私は,カミヤ・カオリ」
「カミヤさんか・・。ちょっと似てるね」
「え」

「僕はツキミヤ。ツキミヤ・コウスケ」
そう言って,青年・・ツキミヤは笑った。


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