マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.185] 第四章 投稿者:紀成   投稿日:2011/02/07(Mon) 21:40:16   61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

深夜、皆が寝息をたてている部屋で、動く影が一つ。
(何を話そう…)
横に寝返りをうつカオリ。明日のことが気になって、なかなか寝付けない。
一応本は持ってきたが、あまり他人を起こしたくないのだ。
こんな夜は…
「デスカーン、まだ起きてる?」
『カオリ?』
月明かりで出来た影の中からむっくり起き上がる棺。一本の黒い手がカオリの髪に触れる。その手を取り、呟いた。
「連れ出してくれないかな」

二本の腕に支えられ、カオリは深夜の浜に降り立った。時刻は午前二時丁度。当然、誰もいない。
ザザン、ザザン、という波の音が静かな浜に響いている。空には月と星が瞬き、カメラマンにはもってこいの撮影場所だろう。
「ヨノワールの言葉が、ちょっと気になってさ」
『あの男についてか』
「うん」
どうしていいか分からない、と言った方がいいかもしれない。ヨノワールが自ら出てきて言うということは、胸騒ぎでもするのだろう。そしてそれは、きっと的中する。
でも、自分ではどうかと言われると、よく分からないのだ。いつもなら冷静に自分で判断を下せるはずなのに、今回は全く違う。ツキミヤのことを考えるだけで胸がドキドキして、痛くなり、上手に息ができなくなる。おまけに、顔も熱い。
「慣れない土地に来て、菌でも拾ってきたかな」
『…』
デスカーンは、カオリに何と言っていいのか分からなかった。彼女を傷つけたくはないが、そういう気持ちを知らないでいると、後で今以上に苦しむ気がする。
きっと、カオリの今の思いが幸せな結末に繋がることは無いのだから。
『人を信じてみようと思うのは初めてか』
うなずくカオリ。
『たとえどんな結末が待っていようとも、最終的に判断するのは自分自身だ』
裏切られても、放っておかれても、悲しいことがあっても,その先に待つ運命を変えることなどできないのだから。
「火宮の姓を持った親に産まれたことも、運命だったのかな」
『珍しいな。無神論者のお前がそんなことを言うなんて。
…後悔しているか?』
カオリの脳裏に、おぼろげな両親の顔が浮かんだ。引き離された時が幼すぎて、記憶が全く無い。
「別に。…ただ」
『ただ?』

「自分の人生を、決められない環境で育てられたことにはちょっと腹立たしいけどね」
砂浜に、赤い血がポタリと落ちた。

戻ってからもカオリは眠らなかった。ヒトモシを呼んで、ギリギリまで炎を小さくしてもらい、その灯りを使って本を読んだ。
そして朝になり、皆で下で朝食を摂っている最中にツキミヤから電話が来た。内容は、今日の午後四時くらいに雲雷城の駐車場まで来て欲しいとのことだった。
何故彼がそんな時間をチョイスしたのかが気になったが、その明確な理由が分かったのは、その時になってから。
終わりへのカウントダウンが刻まれ始めた時だった。

「嫌な予感しかしない」
「何が」
朝からのミスミの言葉に、ミコトはイラついていた。朝起きた時の第一声が『嫌な予感しかしない』なんて、どういう神経をしているのだろうか。
「さっきカミヤさんに電話が来たでしょ。多分相手は昨日話していた人よ。
…決めた」
「何を」
続く言葉に、ミコトは泣きたくなった。
「私、カミヤさんを尾行してみる!」


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