マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.193] 第五章 投稿者:紀成   投稿日:2011/02/11(Fri) 16:07:57   57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

午後三時半。カオリは、少し早く駐車場に来ていた。今のお供はデスカーンだけだ。
そしてその五百メートルほど後方に双眼鏡を構えている人物。
ミスミ。
そしてさらにその双眼鏡のレンズの中からカオリを見ているポケモン。
ヨノワール。
こうして見るとかなりカオスな状態だが、ミスミは当然ヨノワールがいることに気付いていないし、またカオリも一人と一匹に見られていることに気付いていない。
「少し早く来たけど…いいよね」
『遅れるよりはマシだろう』
そう言いながらも、デスカーンはツキミヤのことを信用できなかった。何故カオリに話しかけたのか。何故浜ではなく、この場所を選んだのか。
…そして。

何故、カゲボウズを引き連れているのか。

カオリのような過去を持つということも考えられる。だが、それなら人と関わるようなことはあまりしないだろう。ましてや、同じような境遇を持つ者と。
過去を話したくないのなら、なおさらだ。
そして、カオリの引き連れているカゲボウズと何かが違う。こう、イキイキとしているというか、もっとこう…
『気』が強いと言ったほうがいいか。

ガサガサッ

「!」
数分後、駐車場の裏にある森から何かが出てくる音がした。
「誰」
『人じゃない。立てる音が小さい。…ポケモンか?』
それは、茂みから出てカオリの姿を見ると、そのまま飛び掛って来た。
「おっと」
かわしたカオリにもう一度立ち向かおうとしたが、痙攣を起こして倒れてしまった。
「ヨーテリーだ」
『首輪がついている。トレーナーのポケモンか』
カオリは森の方を見た。夕方とあって、明るい場所と暗い場所の差が激しい。
「…行ってみようか」
その時のカオリは、ツキミヤに会う前の、冷静な目をしていた。


「カミヤさんが森に入ってく」
遠い場所でそれを見ていたミスミも、少し間を置いてから森に入っていった。もちろん、レンズを通して見ているヨノワールも。

夕方の森は不気味だ。光があまり入らない上に、静かすぎて不気味だ。
「今のヨーテリー、すごく怖い目に遭ったんじゃないかな」
『何故だ』
「主人を置いて逃げるなんて、ヨーテリーは普通しない。相手がポケモンや人なら立ち向かっていくだろうね。そう、敵が認知できる物ならね。
…でも、得体の知れない物だったら」
ポケモンは何かを感じる能力が人より遥かに優れている。自然災害の前には危険を感じて安全な場所へ移動したという例もある。
「見えないゴーストタイプに反応して吠えたりする場合もあるけど…。もっと別の何かかもしれない」
『…』
「デスカーンも…感じる?私も何か嫌な感じがする。寒気っていうか、もっとこう…吐き気?」
『吐き気は分からないが、とにかく負のオーラが出ているな』
「どうする?」
『慎重に行くぞ』


だが、慎重に行く必要など無かった。次の木を通り過ぎた瞬間、彼らは見てしまった。
二人の人間と、そのうちの一人に侵食する黒い影を。
生気を失った人間の目を。おぞましい負の感情を。
そして。

その情景を笑って見つめている、ツキミヤという名の人間を。


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