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【とある日の臨時ニュースより】
「番組を中断してニュースをお伝えします。13時45分現在、ライモンシティ東の16番道路にてゾロアの大量発生が確認されました。ゾロアは大変珍しいポケモンであり、これまでに野生での生息が観測されたことは極めて稀なことです。専門家はこの状況を何らかの異常気象の兆候であろうとコメントしており――」
【16番道路に居合わせた若者のコメント】
「いやあ、びっくりしましたよ。俺、ほぼ毎日ここでサイクリングしてるんですけど。ついさっきやって来たらゾロアが沢山いるんだもん、マジ驚きましたよ。テレビとか雑誌とか、図鑑とかなら見たことあるけど本物見るのは初めてです。一匹捕まえようかと思ったけど生憎ボールが無くて。いやー、もったいないことしたな」
【現場に飛んできたというトレーナーへのインタビューより】
「ニュース見て急いで来ましたよ!だってゾロアですよ、こんな機会逃したらもう手に入らないかもしれないじゃないですか。いつ捕まえるの?今でしょ、って奴です。はは、古いですかね。レベルはあまり高くないみたいですが、これから頑張って育てて強いゾロアークにします。頑張ろうな、ゾロア!!」
【ライモン警察16番道路派出所勤務警官のコメント】
「本当、何なんでしょうかね。気がついたらゾロアが沢山現れていまして……まあ、ゾロアとは言え野生のポケモンが大量発生するのはそこまで珍しいことでも無いから静観しようと思ったんですけど、見てみると何だか様子がおかしくてですね。どうも、生まれたばかりみたいなんですよ。みんな小さくて、危うい感じ。それならどこかに母親のゾロアークがいるはずなんですがね……世の中わかりませんよ。それよりも、駆けつけたトレーナーたちの整備に忙しくて……はあ……」
【ワンダーブリッジ ミネズミショー開催人のコメント】
「あら、また16番道路で大量発生が?最近多いですねえ。ええ、先月はフカマルとモノズ、その先々月はピンプクとロトム、さらにその前の月は……各地方でいわゆる「御三家」と呼ばれるポケモンでしたっけ?……まあ、やけに珍しいポケモンたちがたくさん出たって話じゃないですか。ええ、私も見に行きましたよ。ミズゴロウがいっぱいいて可愛かったです。私のミネズミには遠く及びませんが!…………失礼しました。それはともかく、一体どういうことなのでしょうかね?」
【3番道路育て屋夫婦の会話より】
「じいさん、今日もあの子は来たかい?」
「あの子……と言うと、メタモンの子かね?」
「そうそう。メタモンと、色々な珍しいポケモンを預けては自転車に乗って去っていき、と思ったらまたすぐにやってくるあの子じゃよ」
「勿論来たともさ。今はどこで手に入れたのか、ゾロアークを預けてるからの。今日も何十個というタマゴを次々に引き取っては自転車に飛び乗っておるよ」
「若いねえ……あの元気はどこから来るのか……」
「そうじゃの……しかしそれにしても、あんなにタマゴを持って行ってどうするつもりなんじゃろうか。全部孵化させてポケモン牧場でも作るつもりなのかの」
「確かに、じいさんの言うとおり。そう言われると不思議じゃ……色々な種類のタマゴを持っていくからゾロアが特別好きというわけでも無さそうじゃしの」
【ウルガモス新聞社会面・ホドモエ大学教授のコメント】
「近年大きな問題となっている、ポケモン育成に異常なまで執着するポケモントレーナー。巷では『廃トレーナー』『廃人』などと呼ばれているらしい。彼らはポケモンを育てることに熱中するあまり、ポケモンをポケモンと思わなくなっているという。薬物による能力増強は当たり前、傷ついてもすぐに回復させずに無理なバトルを行う、野生のポケモンを無闇矢鱈と攻撃する……などなど。
中でも問題なのが、弱いと見なしたポケモンを捨てることだ。そのポケモンが捕まえてすぐのもので、捕まえたその場所に返すというのならばまだ良い。しかし、中途半端に育ってしまったポケモンが弱い野生のポケモンが生息している土地に放たれたり、違う地方のポケモンが持ち込まれたりすると生態系に影響が出てしまう。また、生まれたばかりのポケモンを多く捨てていくトレーナーもいるという。まだ自分の力だけでは生活出来ない、幼い命を無責任に棄てていくだなんて何を考えているのだろうか。
とはいえ、ここ、イッシュではそのように捨てられたポケモンが多くいるという情報はまだほとんど聞かない。是非、これからもこの状態を保っていきたいものだ。」
【バトルサブウェイに通うエリートトレーナーの日記より】
「今日もあの子が来た。今月はどうやらゾロアらしい。一日に何十匹もゾロアを見せてくるのはそろそろ勘弁して欲しい。好きでやっているとは言え頭痛がしてくるし、ゾロアばかりを見ているとゲシュタルト崩壊を起こしそうになる。ゾロアゾロアゾロア……ポチエナの一匹でも混ぜてくればいいのに。
それは置いとくとして、あの子はあの大量のゾロアを一体どうしているのだろう?フカマルとかピンプクとかヒトカゲとかナエトルとか、今まで山ほど連れてきたポケモンもそうだけど、ボックスにはとてもじゃないけど収まりきらないんじゃないのか。前も一度気になって本人に聞いてみたんだけど、『東の方に』という謎の答えが返ってきてさっぱりわからなかった。カントーにはポケモンを売る組織とかもいたみたいだし、悪いことに使ってないといいんだけど……」
【16番道路にある自動販売機の補充に来た男性のコメント】
「え?大量発生?またなんか出たの?へー。ゾロア。ま、多少は熱心なポケモンマニアとかトレーナーとかが来ると思うけどすぐ収まるっしょ。ん?知らないの?ほら、半年くらい前からこの辺で珍しいポケモンの大量発生がちょいちょいあるじゃん。でもさ、あれ、一晩明けるとそのポケモンたちきれいさっぱりいなくなってるんだよね。少なくなるとかじゃなくて、跡形も無く。俺もこの前、チコリータがいっぱいいたの見たんだけどその次の日には何もいなくなっててさ、ユニランとかチラーミィとか、いつも通り。まあポケモンのすることだからよくわからないけど、大丈夫なんじゃね?今回も」
【某ポケモン愛護団体パンフレットより抜粋】
「(前略)……であるからして、我々は『廃人』と呼ばれるようなトレーナーからポケモンを守らなくてはいけません。彼らは、ポケモンをより深く傷つければ傷つけるほど多くの経験値が手に入るなどという、狂った論理に基づいて行動しています。一部のトレーナーは、ポケモンを殺すことで経験値を最大まで引き出そうとしています。これは決して許してはいけない行為です。こんな考えを持った人間がポケモントレーナーをしているだなんて、おかしいにも程が……(後略)」
【とある日のニュースより】
「さて、次のニュースです。今日の午後2時頃に16番道路にて観測されたゾロアの大量発生ですが、23時現在、その姿は一切見られなくなりました。夕方には未だ多くのゾロアがいたという情報ですが、既に一匹残らず消えてしまったということです。同所では近日同じような事象が続いているため、研究者たちが調査を進める方針で――」
【ライモンシティ在住のポケモントレーナーのブログより】
「昨日は大量発生目当てのトレーナーたちがいて鬱陶しかったけど、全部いなくなったってことで今日も16番道路でトレーニング。勿論タブンネ狙い。でも、普通なら草むらでのんきにふらふらしてるタブンネたちの様子がちょっと変だった。何て言うんだろう、何かに怯えてそうな感じ。最初は、いつも攻撃する俺のこと怖がってるのかなと思ったけど急過ぎるし、俺を気にしてるわけじゃないっぽい。むしろ俺に近づいてきて、あたりを伺うような動きしてた。夜の間に何かあったのかな?それとも、昨日たくさん人が来て疲れてるのだろうか。ちょっとかわいそうになったから、今日はトレーニングを早めに切り上げてきた。
追記・そう言えば、あの草むらに行ったとたんにハーデリアが吠えまくって大変だった。こんなのは、うっかりボールから出したまま肉屋の前を通った時以来だ。恥ずかしいからやめてほしい。野生のレパルダスが馬鹿にするような顔でこっちを見ていた。
【サブウェイマスターたちの会話より】
「そう言えばクダリ、先月のちょうど今頃、すぐ近くでゾロアが大量発生したみたいですね」
「ああ、そんなこともあったね!でもすぐにいなくなっちゃったんでしょ?」
「そうでございます。次の日がお休みだったので見に行きたいと思ったのですが残念でしたね」
「あそこ、色々珍しいポケモンの大量発生があるみたいなのに、ボクたちはいつまで経っても見れない!つまらない!」
「野生では普通姿を見られない、アチャモやツタージャもいたという話です。是非みたかったですし……それに、恥ずかしながら私はゾロアに生でお目にかかったことが無いもので。ニュースを聞いて、とても行きたかったのです」
「え?何言ってるのノボリ兄さん。ゾロアならこの前たくさん見れたじゃない」
「はい?あなたこそ何をおっしゃるのですか、そもそも最近私たちは野生のポケモンすら目にしていませんよ」
「うん。確かに野生じゃないけどさ。でも見てるじゃん。ゾロアも、フカマルも、モノズも、ピンプクも、ロトムも。あと、フシギダネとか、ワニノコとか、ポッチャマとかも。全部全部、あそこで大量発生したものは見れるよ?」
「……ちょっと意味がわからないのですが……すいませんクダリ、もう少し細かく説明してくださいまし」
「だーかーらー、ここで見れるんだって!兄さんだって一緒にいたじゃない!」
「ここ……と言うと、バトルサブウェイですか?」
「うん!最近、よくボクたちまでたどり着く強い子!あの子が全部連れてきてくれる!」
「強い子、というとトウヤ様ですね。確かに彼はガブリアスやラッキー、ゾロアークなどは連れてきますがそれは進化系ですし、一匹じゃないですか」
「違うよ、そっちじゃない。バトルするポケモンじゃなくって、トウヤくんの後ろの方」
「後ろ?車両には我々と、トウヤ様と、ポケモンしかいないはずですが」
「車両じゃなくって……もっと後ろ。窓から見えるでしょ?地下鉄が走る、真っ暗な闇の中。みんないたよ」
「……どういうことですか?」
「大量発生したっていうポケモンたちがね、みんな、暗闇にいて」
「トウヤくんのこと、じっと見てた」
タグ: | 【リレー小説】 【1月2日】 【描いてもいいのよ】 【参加して欲しいのよ】 【ここまで真面目だけどはっちゃけてもいいのよ】 |
1月2日 参加者(敬称略):(流月, 砂糖水, ラクダ, 殻, αkuro, クーウィ, 門森 ぬる)
※全員分写したつもりですが、お名前が抜けている方がおられましたらお知らせ下さい。その他にも何かお気付きになりましたら修正して下さって構いません。(筆記者・門森 ぬる)
皆様明けましておめでとうございます。この度チャットでリレー小説なる物を創作する事になりました。経緯をかいつまんでお話ししますと、
1. 2014年1月2日のチャットにてリレー小説の話題になる。
2. 判甲斐(http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?no=1329&mode=allread)の話題になりまたやってみたいねとなる。
3. 何故か怪盗モフリティーから西暦ホワイティ、履歴書ホワイティ、あるホワイティの履歴書、と連想していく。
4. あるホワイティの履歴書をテーマにやってみようとなる。
といった感じです。どうしてこうなった。
何はともあれ始まります。チャット参加者が入れ替わり立ち替り、数文ずつ執筆する「あるホワイティの履歴書」。執筆、読書、共にお楽しみ下さい。
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目の前には履歴書がある。
記入はまだない。当然、履歴書というものは何かを書き込まないといけないのだけれども、しかして何を書き込めばいいか皆目見当がつかない。
いや、名前とかあるけれど、それ以外が思いつかない。名前なんかよりも職歴とか学歴とかまったくないような人間になにを書けばいいのか。
トレーナーなんてのはヤクザな職業。
そんなわけあるかと反発した親の言葉がそのまま返ってきたような現状に思わずため息がでた。
トレーナーには自由がある。自分で自分の道を決めて何が悪い。
そう言って街を飛び出した一週間前の自分に言ってやりたい。
自由とは自分で決めること。そして、全ては自分でやらないといけないのだ。
自分でやるということは金勘定もすべて自分でやらないといけないということである。
そして、十歳の子供にできる仕事なんて、今のご時世そうそう転がっちゃいないのである。
ポケモントレーナーとしての実力があれば、歳に関係なく働き口があるというのだが、残念なことにまだひとつも手に入れていない。巡り合わせが悪かったのだと言い訳はさせてほしい。せっかく辿り着いた町のリーダーはよその街にコンテストに行ってしまっていて、しばらく帰ってこないと言われれば、別の街に行くしかない。そして、次の街に着けば今度は武者修行に行っていると言われてしまえば、やはり次の街に行くしかない。ただ、そうやって相手がいないからと言って旅の出費までなくならないということにはならない。
結果として、成果は上がらず、金はなくなり背に腹は変えられないということで、アルバイトをすることにした。ポケセントレーナーをこころざすならば、トレーナー業で稼ぎたいところだったが、実績のない人間にトレーナーとしての仕事などない。
となると、全く無関係の業種でも思い切って飛び込まねばなるまい。好き嫌いなど言っていられないのだ。手始めに、ポケセンの片隅にある雑誌棚を漁ってバイト情報誌を数冊抜き取った。清掃、土方の現場作業員、皿洗い、スナックの従業員……? どれを見てもピンとこない。できたら本来の目標のトレーナー業に関わるような仕事を選びたいが……。
そこで目についたのが、簡易宿所の従業員の求人だった。ポケセンやジムのある町には大概、旅をするトレーナーが一泊したり、日雇い労働者がアパート代わりにするような、宿泊料の安い旅館が立ち並ぶ、一種の宿場が成り立っているが多い。こういった職場ならば、先輩トレーナーがどのような暮らしをしているのか間近にみることもできるかも知れない。 そうしてある安宿の主人に連絡を取ったところ、今こうして履歴書を書かされることになったのだ。
ぱふ、と。頭の上で寝ていたペロッパフが机に降りてきた。いや、落ちてきた、と言うべきか。彼女はべちゃりと書きかけの履歴書に張り付き、痛そうな声を上げてじたばたしている。出鼻をくじかれた。
取りあえずポケットを弄る。「ポケットにファンタジー」とか歌ったのは何処のグループだったろうか。そんな事を考えつつ、目の前の障害をボールの中に回収する。左のポケットにゃモンスターボールが二つ。叩いても増えないし(震えて文句は言うが)、逆のポケットにも夢なんぞ在中しちゃいない。履歴書の代わりを引っ張りだすと、名前を記入して溜息一つ。世知辛い世の中である。
そんな世の中で生きていく為にはどうしてもお金は必要だ。気を取り直して履歴書に向かう。名前は書いた。学歴、職歴、賞罰……うん、とりあえず後回しにして書けそうな所から書いていこう。年齢、手持ちのポケモン、バッジの数……書ける所を埋め、再び履歴書と向き合う。うん、やっぱり白い。
―――――――――――――――――――――――――――
1巡して区切りが良く入室者も減少した為、ここで一旦終了とさせていただきます。参加された方々も、閲覧された方々も、どうもお疲れ様でした!
尚、次回は1月3日の21時頃開始を予定しているとの事です。飛び入り参加も歓迎しております。1文からでも参加出来ますので、興味のある方は是非是非奮ってご参加下さい。
道(砂糖水さん)
http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/01/018.html
人間いろいろなものに縛られてるよね。
主人公がいい男すぎる。
美しきもの(てこさん)
http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/01/009.html
足跡でこの着眼点は素晴らしいよ。
こちら側の半生(とさん)
http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/02/032.html
説明の必要はなかろう。最強です。
Ultra Golden Memories (レイニーさん)
http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/03/009.html
このおじさんをみんなが待っていた。
雨河童(586さん)
単行本収録の為URL無し
586さん、あなたって本当にひどい人ですね……。
ホタルノヒカリ(きとかげさん)
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18832
懐かしさと共にトラウマが蘇る。
洗濯日和(CoCoさん)
http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/kagebouzu/001.html
これを外すわけにはいかないのだよ…!
P(りえさん)
http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/03/023.html
こ れ は ひ ど い
眠りの夜(ひろみさん)
http://masapoke.sakura.ne.jp/novels/hiromi/nemurinoyoru.txt
本棚より。カゲボウズものの傑作。
お前らこれを読まないでカゲボウズを語るんじゃねぇ!
砂漠の精霊(タカマサさん)
http://masapoke.sakura.ne.jp/novels/takamasa/seirei.htm
私に最も影響を与えた小説である。
ポケモン小説ってこんなことをやってよかったんだ。
ショール越しのふにゃりとした感触。
本当は年末かなんかにやればよかったんだろうけど、
今思いついたので今スレ立てしている。
とりあえず俺様ルールで選んだポケモン小説十個を上げていこうという感じで。
短編に絞っても良いし、2011年発表に絞ってもいい
マサポケのみでも、外部のサイトからでも。
俺基準は好きに作ってください。(それも書いて貰えると嬉しい)
読むキッカケが生まれるかもしれないのでURLがはってあるといいです。
ではスタート。
プログラム出来る人きたこれ。
さあ、DLして解析する作業に(ry
期待してるのがばれてr(ry
>> 1感想を投稿すると管理側から操作しない限り編集・削除ができない。
>
> これが一番悩ましいですね。
> プログラムくわしい人がいじったらなんとかなるものだろうか……
ライセンスを確認したところ、とりあえずは改変はOKな様子。
実装できるかどうかは分かりませんが、一度ソースを確認してみたいです。
少し手を加えれば何とかなるかも?
ゼロの焦点っぽくスピード感のある解き方ですね。
>締め切りは守りましょうwww
あーあー聞こえない
>イサリさん
ホラーは実はどうしようか迷ったところで
どうせなら最初からホラーとして読むんじゃなくて地雷踏んだほうがいいかなと思わなく(ry
まーでも、あったほうがいいかな! 検討します。
ふと思ったんだけど愛憎劇とかはどうなんでしょうね(
いやふと思っただけだけど。
>わたぬけさん
どうも、なんか勝手に話題に挙げちゃってすみません。
まろやかの存在自体は実はポケノベさんの導入前から知ってたんですが、
どうしようかなー と迷いつつコンテストなんぞやってる間に、今に至りました(笑)
今日、オクレ青年投稿しに行きましたけど機能としてはかなり使いやすいですね。
問題にあがった3点のうち、
> 2「小説家になろう」にあるような、話と話の間に一話挟む所謂「割り込み投稿」の機能が無い。
に関しては、
今ある投稿分を上書きして別の話に書き換えることで、順序を入れ替えられるので
これはまぁ回避策があるんですよね。(マサポケの本棚もそうでした)
> 3投稿形式を「読切小説」にしてしまうと基本流れっぱなし。
これは短編集にするように勧めるしかなさそうです(笑)
> 1感想を投稿すると管理側から操作しない限り編集・削除ができない。
これが一番悩ましいですね。
プログラムくわしい人がいじったらなんとかなるものだろうか……
> もちろん猿まねするようなことはするつもりありませんが、ここでの意見を参考にしたタグが増えるかもしれません(笑)
ほほうw
何が増えるか楽しみにしておきます(笑
ひと通り議事録に目を通させて頂きました。
私どもが使ってるのをご覧になったのがきっかけになったというのなら、それは大変に幸いなことです。
自分も初めてまろやか投稿小説ぐれーとのことを知ったときはまさしく「これだっ!」と思って導入に至りましたからね。
ただ、ツイッターのほうでも少しばかりリプライさせて頂きましたが、機能的には大変優れているこのシステムですが、その分細かい所で小回りがきかない点がありますのでそのあたりをどうかお気をつけて。
特に気になるものを挙げますと以下の三つになります。
1感想を投稿すると管理側から操作しない限り編集・削除ができない。
2「小説家になろう」にあるような、話と話の間に一話挟む所謂「割り込み投稿」の機能が無い。
3投稿形式を「読切小説」にしてしまうと基本流れっぱなし。
3につきましては議事録にもありましたように、どの作品も最終的には流れてしまうので仕方のない話ではありますが。
今回の議事録を読ませて頂きまして、現行で使用させていただいている自分にとっても参考になるような意見がたくさんあって今一度考えさせられるきっかけにもなりました。
特にタグなどももっとバリエーションがあってもいいかもしれませんね。自分はただ事務的に分けるみたいな感覚でしか設置してなかったきらいがありますので。
もちろん猿まねするようなことはするつもりありませんが、ここでの意見を参考にしたタグが増えるかもしれません(笑)
※欝注意 特に受験前の人にはよろしくない仕様です。
「人を呪わば穴ふたつ」と口ずさみながら少女が登校した。古結晶子の携帯電話が鳴ったのは、それから一週間後のことだった。その時晶子はコーヒーを飲んでいた。
電話の相手は言った。
今、この町にのろいが蔓延している
のろいの根源を探し出し、のろいを断ち切ってくれないか
晶子はこう答えた。
自分はしがない私立探偵で、のろいもゴーストポケモンも専門ではない
しかし、行こう
相手はほっと息をついて電話を切った。晶子はコーヒーを飲み干し、トレンチコートを羽織っると、ボールを三つ取り付けたベルトを持って外に出た。手前からモンスターボール、スーパーボール、ハイパーボールと並んでいる。晶子は目的地の方角を見やった。曇天だった。
電車でひと駅。地図の上では隣にある町は、晶子には縁遠い、整然とした住宅街だった。ポケモンの姿が見えない、静かな町に晶子は降り立った。
折り返し電話をかける。後ろで公衆電話が鳴った。携帯電話を切る。同時に公衆電話もピタリと静まった。ノイズから離れた耳に、下校する子どもたちの声が蘇ってきた。
またらしいよ
六年一組だって
のろいなのかな
こわいなあ
晶子が振り向いた時には、子どもたちの一団はT字路の向こうへ消えていた。それとも幻だったのか。
「サン」
赤と白のボールからエーフィを呼び出す。薄紫の猫又を傍らに従えた晶子は、子どもたちがいた方とは逆向きに歩き出す。同じT字路があった。目まいがした。
売店で雑誌を買う。バイトだという年若い店員に話をふると、彼は嬉々として話してくれた。
「小学校って、すぐそこなんですけど、そこで女子生徒が自殺したって。いじめがあったらしくて。でもそれで終わりじゃなくて、その自殺した女の子が、ゴーストポケモンになって、自分をいじめた奴に仕返ししてるっていうんですよ」
「いじめられっ子がゴーストポケモンになるなんて、都市伝説によくあるけど」
晶子がそう、気のない風を装うと、若い店員は違うんですよと勢いづいた。
「その証拠に、のろいのノートが残ってるらしいんですよ」
だから、のろい。
のろいの蔓延。のろいの根源。電話の向こうの声がリフレインした。
のろいのノートについて、あるらしいという噂以上のことは分からなかった。お礼程度にコーヒーを買い求め、その場を去った。
エーフィのサンが眠たげに尻尾を揺らした。その先に公園があった。申し訳程度の緑で囲われている公園の、青く冷たいベンチでコーヒーのプルタブを起こす。苦い液体は、とうに温くなっていた。青いベンチの上に灰色の雑誌を広げた。エーフィは彼女の足元で欠伸する。
静かな時間が流れた。細い首のようなポールの上に、丸い時計が乗っかっている。長い針が控えめに動く。雑誌にはのろいに関係ありそうな話は載っていなかった。ただ、この前新聞に載っていた少女の自殺が、この町の小学校で起こったということだけ分かった。
晶子はその記事を新聞で見たはずだ。新聞で読んだ時、何を思っただろう。おそらく、特に何も思わなかったのだろう。そして、どこで起こったかなど、全く気にかけなかった。
強いて言えば、またか、と思った。
また自殺か。またいじめか。
それで、何かが解決するのか。いじめて、自殺して、何が。
胸に真っ黒の油みたいなものが溜まっていくのを感じながら、晶子は立ち上がった。目まいがする。緑で縁取られた公園を見回して、何故こんな閉塞感を感じているのだろうと思った。ここには自然があり、遊ぶ場所があるはずなのに。
晶子の不快感を察したかのように、エーフィが公園の入口に先立っていた。揺れる二又の尻尾を追いながら、晶子は公園の出口で違和感に気付く。
そうだ、子どもの声がしないんだ。
昔は、晶子が小さい頃は、学校が終われば適当なポケモンを連れ出して、近所の公園で遊んだものだった。今はポケモンの管理が厳しくなって、子どもらも実習の授業以外ではポケモンバトルをやらないのだ、と何かで読んだことがあった。それにしても静かすぎる、と思った。
まじないのように腰のハイパーボールに触れた。晶子が来るのをエーフィが待っていた。
猫又の行く先に晶子の目的地があった。雑誌の写真をかざし、下げる。
自殺した女子生徒の家。
隣の家も、向かいの家も、いや、ここに来るまでに見たどの家も白くて真四角だったのに、この家だけはくすんで歪んでいた。まるで、家という規格からここだけ落伍したかのように。エーフィが目を細めて、その落伍した家を熱心に見ていた。正確には、二階の家の窓辺りを。晶子もその窓を見た。カーテンが引かれて中が見えないガラス窓以外、何も、なかった。
インターホンに指を近付け、押した。どこかで誰かを呼ぶ電子音がした。
「はい」
少しくすんだ扉を開けて、女性が現れた。やつれてはいない、目の下に隈もない、どこにでもいそうな、痩せ型の、肌が疲れた女性。
「警察の方?」
私立探偵です、と名乗ろうとした矢先、
「警察です」
後ろから声がした。見知った無精髭の刑事がそこにいた。
「あ、青井さん」
「なんだ、あんたか。……ちょっと、よろしいですか」
そのまま、なし崩し的に晶子も家に上がることになった。表札には「守屋」とあった。
畳の間に通された晶子は、青井刑事の隣に座り、守屋という女性と向かい合った。晶子にとって何とも居心地の悪い数秒間が経過してから、青井が口を開いた。
「学校の方から連絡があったかもしれませんが、また」
そこで口を切り、晶子に目配せした。あんたは何用で来た、と問いかけているのか、それとも、あんたはどこまで調べた、と探りたいのか、警察を辞めて長い晶子にはもう判然としなかった。
エーフィは晶子にぴたりと寄り添い、気配を探るように耳と尾をピンと立てていた。
「ええ」
守屋が口を開いた。それは晶子には、唐突に感じられた。
「のろいだと」
続けて守屋が言った言葉は、晶子の予想通りで、しかし微妙にワンテンポ遅れて伝えられたように晶子には思われた。
青井が話し始めた。
「六年一組の子です」
そして、今度は守屋の方を探るように見た。しかし、守屋は反応ひとつ見せなかった。何の感情も見せようとせず、というより、見せる感情さえないのだといった様子で、ただ刑事の言葉を待っていた。
青井は咳払いをした。
「今度は感電死だそうです。何か、心当たりは」
「ありません」
守屋は、今度は素早く言った。
「そうですか」
守屋は立ち上がると、部屋を出ていった。軋む音が上っていく。階段を上ったらしい。晶子と青井はその間、畳の間で待ち続けていた。無為な時間。しかしそう思っても、晶子は今この家で口を開く気になれなかった。隣ではエーフィが耳と尾をピクピクと震わせていた。
階段を下りる音がして間もなく、守屋が姿を現した。
「これ」
座るとほぼ同時に、日焼けした畳の上に一冊のノートを乗せた。
「それから」
何の変哲もないモンスターボールを一個、ノートの隣に置いた。
青井がモンスターボールを、晶子がノートを手に取った。
「お返しした方がいいかと思って」
守屋が、晶子も、ノートも見ずに言った。彼女はどこを見ているのだろうと晶子は訝った。
「遺品ですが……こうも事件が続くようなら……返した方が」
晶子は守屋の訥々とした声を聞きながらノートの表紙を捲った。子どもっぽい、冒険物語の始まりが書いてあった。
「警察でひと通り調べましたが、もし我々が預かった方が望ましいのであれば」
はきはきとした青井の返事をいいことに、晶子はノートを一旦閉じると、自分の手元まで引き寄せた。エーフィが刹那顔をしかめて表紙を睨む。
「ええ……返した方が」
守屋は変わらず、宙に視線を彷徨わせたままそう言った。そして、風にでもなびいたように急に顔を動かすと、青井の手元を見て、言った。
「そういえば、いないんです」
「いない?」
青井がオウム返しに聞く。守屋は再び視線をどこかへやって、
「ええ、いなかったんです、スターが……」
と消されそうな声で呟いた。
守屋家を辞去して道に出た。途端、恐ろしく寒い外気に包まれて、晶子は身震いした。
青井は警察に連絡している。彼が電話を切るのを待って、晶子は話しかけた。
「どうも、お世話かけました」
要らなかったけどね、と付け足したのは晶子なりの矜持だ。かつての同僚の青井は、そんな晶子の態度には慣れっこで、「なんでいたんだ」と言った。
「依頼があったのよ」
そして簡単な説明をした。電話で、名乗りもせずに、何だか怪しかったのよと言うと、青井はいつもそれだと呆れて言った。
「それで、のろいはあるのかしら?」
「噂では、あることになってる」
青井は晶子の手からノートを取り、裏返して見てから、晶子の手に戻した。
「警察で調べた限りでは、ない。そのノートも、というかどのノートにものろいらしいもんはかかってない」
それまで大人しくしていたエーフィが急に二本足で立ち上がると、ノートに向かってきゅうとひと声鳴いた。何かある、と言いたげに。
「サンが調べたら、何か出てくるかもしれんな」
「警察のエスパーポケモンやゴーストポケモンが調べたんでしょ。なら何も出ないわよ」
それでも念の為にと、晶子はエーフィの鼻先にノートを近付けた。エーフィはそれでピタリと大人しくなった。
「そっちの捜査状況も聞いていい? 言える範囲でいいけど」
青井はやれやれと言って自分の頭を掻き、同じ手で嫌がられながらエーフィを撫で、近くの公園で話そう、と言って歩き出した。
青井が選んだのは、先程晶子がコーヒーを飲んでいた公園のベンチだった。
晶子はノートをベンチの上に置くと、青井の話を手帳に書き入れた。
「お前、まだそれを栞に使ってるのか」と、晶子が手帳に挟んだ物を見て青井が呆れた顔をした。晶子は意に介さず、メモを取った。
守屋めぐみ、という女児が自殺した。
いじめがあったらしいということで、痛ましいが、しかしありふれたこととして、警察にも処理されたらしい。
「その次の日だ。同じクラスの奴が死んだ」
殺されたんだ、と青井は痛ましそうに顔を歪めた。
それから、のろいのノートの噂がまことしやかに囁かれるようになった。
殺害現場を目撃したと思しきフーディンの様子が、異様だった所為もあるという。
「で、今日二件目だ」
やりきれない、と青井がこぼした。それに、スターがいないんなら大事になるぞ、とこれは苦々しげに付け足した。
「一件目は、叩きつけたか、アイアンテールあたりが使われたらしいからな」
「あの、聞きたかったんだけどスターって?」
「それは」
そのノート見た方が早い、と青井は晶子の隣にあるノートを指差した。
「のろいのノートって言われてるけど、のろいはなかったのよね?」
「だろうな」と青井は曖昧な返事をした。
「ポケモンが使うような、そういうのろいじゃない」とも言った。
一旦戻るよ、と告げた青井の背中に「待って」と呼びかけた。今、確かめたいことができたのだ。
「青井さん、ここ、静かすぎると思わない?」
言い終わって、晶子はほっと息をついた。淀んでいた空気が、少し軽くなった気がした。
「ああ、思う」
青井の返事に、晶子の気分はますます軽くなった。そう感じていたのは自分だけではないのだと知ると、ほっとした。
「最近はガキ相手でもポケモンの管理にうるさいし」
にも関わらずスターはいなくなっていたが。
「それに、あれだ、受験じゃないか?」
「受験?」
中学受験だよ、と青井が言った。高校にも行っていない晶子には、隔世の感がした。
「今頃は、みんな受験で忙しいんだろう」
小学校一年生まで受験しないだろうから、みんなってことはないと思うけど、という晶子の言葉は流して、今度こそ青井は去って行った。晶子は栞がわりの虹色の鳥の羽を、手帳に押し込んだ。パン、と音を立てて手帳を閉じると、エーフィを呼んで公園を出た。
相変わらず、町にポケモンの影はない。人は時折すれ違うが、それでもたくさんいるという印象はない。
みんな、あの箱の中にいるのだろうか。
白い住宅の列から目を離して、晶子はエーフィの後を追った。エーフィは青井が去ってから、気忙しげにノートを鼻先でつついては、あっちへ行きこっちへ行き、そしてまた晶子の所へ戻り、を繰り返していた。
もしかして、気になる匂いがあったのだろうか。晶子は腰のスーパーボールを外すと、中にいるポケモンに呼びかけて、誰もいない道の真ん中に開け放った。
「ヘル、このノートの匂いを追ってくれない?」
地獄の番犬とも称される細身の黒犬は、ノートに鼻を近付け、エーフィと何か言葉を交わすと、自信ありげな様子で晶子たちの先導にかかった。エーフィの方は荷を下ろしたように表情を緩ませていた。
エーフィにボールに戻るか、と尋ね、断られた晶子はそのままヘルガーの先導に従った。時折、小脇に挟んだノートを気にしながら。のろいのノートと呼ばれたこれには、何が書かれているのだろう。
ヘルガーが低い声で鳴いた。
小学校。
背の低い校門はピタリと閉じられていた。緑色の鉄格子のような校門の向こうには、広く寒そうなグラウンドがあった。誰もいない。事件があったから生徒を帰してしまったのだろう。晶子が校門の番をしている警備員に話しかけ、その警備員が晶子を入れる許可を取りにどこかへ行ってしまっている間、晶子はノートを読んでいた。
のろいのノート。
しかし、表紙にはのろいとは書かれていない。そこいらで売っている大学ノートの表紙には、名前が書いてあるだけだ。
守屋愛。
マジックで書かれた名前に黙祷を捧げ、晶子はノートを開く。晶子が昔考えたような、拙い夢物語がそこにあった。
ポケモンだけしかいない大陸
そこに、スターというピカチュウがいました
「やあ、スター」
今日は友達のルリリとウパーと、待ち合わせをしていました
「あずるとサラマン! 遅いよ!」
スターは二人に怒りました
ルリリはあずる、ウパーはサラマンといいます
「ごめんごめん、さあ行こうよ」
二人が謝ったので、スターは許しました
三人で、今日は森に行く予定です
不思議の森で、大人には行くのを禁止されていました
……
「入っていいですよ」
警備員の声で、現実に引き戻された。いつの間にか、校門が開いていた。
ありがとうございます、と礼を述べて小学校の中に踏み入った。ヘルガーは障害が無くなって清々した、と言わんばかりの様子で先先進み、エーフィはエーフィで、自分の仕事は終わったとでも言いたげに晶子の後ろからノロノロ付いて来ていた。
小学校の入り口は開いていた。校門は閉まっていたが、校舎は開いているものらしい。しかし、ヘルガーはその入り口には見向きもせず、校舎の裏手に回った。
開けたグラウンドとは反対に、校舎の裏側は雑木林になっていた。緑がこんな形で残っているのに驚きながら、晶子はヘルガーの後を追う。晶子には木々の名前は分からないが、ここで子どもたちが遊んだりするのだろうか、と思いながら。
ヘルガーがある木の根元に鼻先を付けると、そこにお座りをした。右前足をひょい、と上げ、何かを促すように晶子を見る。
「自分で掘って」
晶子がそう言うと、ヘルガーは渋々、木の周囲の土を掘り返し始めた。エーフィも晶子たちに追い付いたが、ヘルガーを手伝う気はさらさらないらしく、晶子の横に伏せた。当て付けのように鈍い動作を見て見ぬふりして、晶子は手元のノートに目を通した。
ノートの続きには、ピカチュウのスターと他二匹の冒険物が書いてあった。スター、というのは守屋愛の手持ちだったのだろう。そのピカチュウが活躍する物語を、彼女は書いていたのだ。晶子の予想通り、強そうな敵が出てきて、あっという間に倒し、宝物を手に入れる。同じような展開が続いていた。
これのどこがのろいのノートなのだろうか。のろい以前に、まず日本語をどうにかした方がいいレベルだ、と晶子は思った。青井が受験と言っていたのをふと思い出した。守屋愛の学力はどうだったのだろう。ノートを捲っていく。おや、と思った。
字が綺麗になっている。
……
帰ってくると、スターの部屋が荒らされていました
今までに手に入れた宝物がありません
スターは二匹の所へ行きました
広場に着きました
二匹はスターを見ると、クスクス笑いました
「今まで宝物を手に入れるために騙してたんだよ。スターのばーか」
二匹の後ろに宝物がありました
スターは十万ボルトであずるを倒し、アイアンテールでサラマンを倒しました
スターは裏切り者を倒しました
何これ、と晶子の口から声が漏れた。晶子が頁を捲ろうとする、それを止めるようにヘルガーが鳴いた。そして、ヘルガーの制止よりも大きく、
「何ですか、あなたは」
女性の叫び声が雑木林に響き渡った。
晶子は反射的に立ち上がった。
サンドパンを傍らに控えさせた若い女性が、恐怖と怒りに満ちた眼差しで晶子のノートを見、ヘルガーが掘り返していた足元を見た。ヘルガーがビクリと身を引いた。
「それは」
女性の口から三音が漏れ、凍りついたように閉ざされる。
晶子は黙って携帯電話を取り出し、青井の番号にかけた。ひと言「小学校の裏」とだけ告げて、電話を切る。同時に、体を支える腱も切れたかのように、女性がくずおれた。
「違うんです、襲われると思って。あっちが、あっちが先に襲ってきたんです」
晶子は土に抱かれて眠る、黄色い電気鼠を見て、すぐ目を離した。心の中で祈る。サンドパンを連れた女性は、まだ喚いていた。
「私が悪いんじゃない、正当防衛だもの。私は悪くない、私は悪くない」
サンドパンは自分のトレーナーの様子に慄いたのか、それとも別のものに怯えたのか、背中の棘を剥き出して丸くなって、ぎゃんぎゃんと鳴き始めた。ヘルガーが怒ったように吠え始めた。
その光景を、エーフィだけははじめから知っていたように、静かに眺めていた。
警察が到着しても、女性はまだ自分は悪くないと呟いていた。
「あれこそ、のろいじゃないか」
彼女を乗せて出発した警察車両の背を見送って、青井がぼやいた。彼女は守屋愛のクラスの担任だったらしい。いじめがあったとしたら、教師も後が大変だっただろうと青井はついでのように呟いた。
晶子はというと、のろいのノートを胸にしっかりと抱き締めて、彼女が言ったことを頭の中で反芻していた。
私は悪くない
あの日、私は花瓶を置こうとして
あの子の机に
そしたら、あのピカチュウと
ノートが
のろいのノートが
「調べてもらわなきゃ分からないが、十中八九スターだよなあ」
捜査のやり直しだ、と言ったが、青井はさして残念そうではなかった。
「他に目星があるの」
「それは言えない」
それより、と青井は言った。
「あんたはのろいを調べなきゃならないんだろう」
「それなんだけど」
ちょっと情報都合してよ、と晶子は言った。
守屋愛は中学受験に落ちていた。
その場合は、必然的に学区内の中学校に通うことになる。小学校の全員が受験するわけではないから、いじめっ子たちもほぼ繰り上がりで同じ中学にやって来る。
嫌、だったのだろうか。
気持ちいいはずは、ない。学区から遠く離れた中学校で、心機一転、互いが初対面のメンツで始めるのと、小学校の続きのような場所で、いじめっ子たちと再び一緒にいるというのと、どちらが良いか。でも、それでも、死ななければならないなんて。
そこまで思い詰める児童の気持ちを推し量るには、晶子は歳を取りすぎている気がした。中学受験も、実習でしかやらないポケモンバトルも、綺麗すぎるほど整えられた町並みも、晶子には既に別世界のことのように感じられるのに。
晶子は三度公園に戻っていた。緑の箱庭で、守屋愛のノートを広げる。晶子を気遣うように、公園に明かりが灯り始めた。空を見上げて、雲が夕焼けに染まっていることに、晶子は気付く。
ヘルガーは疲れたらしい、地べたに転がっていた。エーフィは薄紫の瞳で、黙って晶子とノートを見ている。
晶子はエーフィにも見えるようにノートを傾け、続きを読み始めた。
ノートは真っ黒になっていた。
なんで私がキモいとか死ねとか影口ばっかり
あいつらが死ねばいい死ねって言ってるあいつらが死ねばいい
佐野優子と松下陽菜と太田恵梨香と橋本直美と八木満 全員死ね
私が死んだら全員
晶子はいたたまれなくなってノートから目を離した。エーフィはまだ、ノートを見つめていた。
箱庭の空気を吸い、再びノートに目をやる。読もう、としても全ては読めなかった。ただ、どこを読んでも「死」というワードが視界に入り込んできた。それは、いじめっ子が死ぬことであったり、守屋愛が死ぬことであったり、途中からは、いじめを訴えても助けてくれない担任の教師が死ぬことであったり、した。死は、こんなに軽かったか。
ただ、と晶子は思う。このノートに名指しで書かれた誰も、死んでいない。殺された子どもたちの名前とは、どれも一致していなかった。
スターだけが死んだ。
晶子は頁を捲っていく。子どもががなり立てるような死の文字の羅列は身を潜めて、日記のような文章が現れた。比較的、落ち着いた文体で、遅いけれど中学受験をすることに決めたこと、受かるか分からないけれどやるだけやってみよう、と前向きな文章が綴られていた。
実習であずると当たるのが苦痛。前は仲良かったのに。
頑張ろう、と前向きな文章の中に、それだけ浮いて見えた。晶子はさらに先に進む。
前向きな日記が突如として途絶えた。一頁丸々空きがあって、次の見開きに、整然と文字が並べてある。
遺書、と題されていた。
私、守屋愛は今日死にます
私をいじめた人を絶対に許しません
私をいじめた人は、幸せにならないでください
充実した学校生活なんか送らないで、いい就職なんかしないで、幸せな結婚なんかしないで暮らしてください
私がなんで死んだか、永遠に考え続けて生きてください
これがのろいか、と晶子は思った。
小学生にしては恐ろしく整然と、遺書は綴られていた。口座に預金してある分はお母さんにあげます。それから、学習机の三段目のピンクの箱に、今まで貰ったお年玉が入ってます。そんなことも書かれていた。
晶子は次の頁に目をやる。
エーフィがひと声鳴いた。
「あ……」
いつの間にか晶子の目の前に立っていた女性が、一礼した。晶子も慌てて座ったまま礼をする。
「犯人、捕まったみたいですよ」
その女性は――守屋の母は、疲れた肌に似合うくたびれた笑みを浮かべた。
「夕方のニュースでやってました。めぐみのクラスの子、どちらも親が犯人だったと」
間に合ったのか、と思った。青井の顔を思い浮かべた。多分、最初からスターは犯人だとは思われていなかったのだろう。ちゃんと確かな線を追っていたのだ。
「最初の……めぐみの次に死んだ子なんか、親のポケモンに殺されたんですって。酷い話ね」
殺害現場を目撃したらしい、フーディンの様子がおかしかった。そう青井は言っていた。そして、フーディンはアイアンテールを使える。分かれば容易いことだ。
どうしてそんなことができるのかしら、自分の子どもに。
そう言う守屋の母は、けれど答えを知っているように、晶子には思われた。
どれも同じに造られた家の群れの中で、唯一はみ出した家に住む人。
「その次は保険金目当てで。のろいの噂に乗じてやればばれないと思った、って」
守屋は話しながら、しっかりと息を吐き出した。そして、晶子が持つノートに目を落とした。
「それ……」
「お返しします」
晶子は立ち上がって、守屋の手にノートを渡そうとした。皺が深く刻まれた母親の手だと感じた。
「あなたの、娘さんの物ですし」
「いえ」
守屋の母は、強い力でノートを晶子の手に戻した。その目には、はっきりと人間らしい意志が感じられた。
「燃やしてください。あなたが連れているヘルガーさんに、燃やすよう頼んでくれませんか。きっとこれは、燃やした方がいいと思うんです。このノートは」
急に名指しされたヘルガーが、驚いて体を起こした。晶子はヘルガーをボールに戻すと、守屋に言った。
「いえ、もっといいポケモンがいます」
守屋はスターのボールも持って来た。
少し歪んだ家の小さな庭に、晶子と守屋はいた。
「燃やして、いいんですね?」
晶子の問いに、守屋はしっかりと頷いた。晶子はそれを確認して、ベルトにセットされたハイパーボールを開く。
「燃やして」
僅かな言葉で意志は通じた。
ボールから夜の世界に舞い上がった虹色の鳥は、小さな家には大きすぎる翼を広げた。それだけで、ノート自体が意志を持つかのように、火を放ち始めた。金色の炎。
紙がその形を無くしていく。ノートに染み込んだ黒鉛が、束の間の安寧に身を委ねるように、炎の中に消えていく。
「スターは、何故死んだんでしょう」
ポツリと呟くように守屋は言った。炎に照らされた顔に、晶子は疲れきった母の顔を見た。
あの日、守屋愛がいなくなった日。
スターはノートを取りに学校に行ったのではないだろうか。
あのノートは、最初はスターの為に書かれたものだったから。スターのノートだったから。
多分、守屋愛はいつもノートを学校に持って行っていた。そして、持って帰っていた。けれど、あの日は守屋愛は帰って来なかった。当然、ノートも帰って来ない。
スターは自分のノートを取りに行こうと学校を訪れた。そして、花を供えようとした教師と行きあった。教師が見たのは、真っ黒なのろいの言葉で埋め尽くされたノートと、それを持つピカチュウ。
晶子は自分の考えを払うように頭を振った。
守屋は、虹色の鳥を振り仰いだ。そして「綺麗ね」と呟いた。
ノートが燃えていく。
お母さんとスターへ
先に死ぬけど、ごめんなさい
お母さんとスターは、幸せに生きてください
遺書の最後の文字列も、金色の炎の中に消えていった。スターのボールが、パチリと爆ぜて割れた。
「教えてもらえませんか」
守屋が、炎の向こう、夜闇と光の境界から晶子を見据えて言った。
「あなたは、“誰に”頼まれて調べごとをしていたんですか?」
晶子は、電話の声を思い出した。のろいの蔓延。のろいの根源。
のろいに蝕まれたこの町を厭い、悲しみ、自分ものろいの餌食になった人物。
晶子は空を見上げた。のろいの根源は、どこにあるのだろう。
答えのない空から、雨が落ちてきた。
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ポケノベさんの文合わせのテーマB「門・結晶・教えて」に間に合わそうとして間に合わなかったもの。
締め切りは守りましょうwww
あと、めっちゃ焦って書いてます。むべなるかな。
えーと、議事録読みました。
今までの流れだと、
ポケスト(短編)版→そのまま維持
ロング版→本棚に統合
という認識でよろしいでしょうか。
個人的には現在の掲示板に不都合は感じていませんし、今のままでも、本棚を設立してもどちらでも良いと思います。長編の投稿は最初から本棚に投稿と規定してしまうと、作者同士の交流が減ってしまう懸念もありますが。その反面、シリーズ物を探しやすくなる点では便利だと思います。
……あ、すごく個人的なお願いなのですが、「傾向・要素」の項目に「ホラー(or 怪談)」を追加希望です。
グロテスク項目に入らないホラー物もあるかもしれないと思いましたので。
むしろ是非そういうのを読んでみたいです(黒
全然参考にならなそうな意見でごめんなさい。
民俗の話題で名前を挙げてくださってありがとうございます……!w
個人的メモ
傾向・要素
シリアス、ほのぼの、ギャグ、民俗/伝承、バトル、コンテスト/ミュージカル、ポケスロン、コンテスト参加作、書いていいのよ/書いてみた、流血表現、性表現
舞台
カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ、イッシュ、オリジナル地方、コロシアム/バトレボ、ポケダン、レンジャー、ポケナガの野望、その他ゲームタイトル、カード、アニメ、ポケスペ、異世界、現代、その他
登場キャラクター
ポケモンのみ、オリトレ、ゲーム主人公、ライバル、モブトレーナー、ジムリーダー、四天王、チャンピオン、フロンティアブレーン、ロケット団、アクア団、マグマ団、ギンガ団、プラズマ団、悪の組織、カゲボウズ、きつねポケモン、その他
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