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  [No.3901] 「冬を探して」戦闘シーン改稿案 投稿者:あきはばら博士   投稿日:2016/03/18(Fri) 00:26:13   32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

盛り上がっているうちに早めにあげます。
誤字を見つけたらちょこちょこ修正すると思います。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 一面に広がるは、白。
 空は飽きることがないようで、白い欠片が降り続いている。吐く息も白。太陽もないのにリョースケの目はちかちかした。
 どれだけ歩いたか、感覚も麻痺してわからなくなった頃。ぽっかりと開けたところに二人と一匹は出た。足は重く、持ち上げるのにも難儀するほど歩いたリョースケは、ほうと息をついた。
「まだかかりそうかな」
「はい、まだ先のはずです」
「そっか」
 ぽつりとこぼす。まだ先なのか、どこまで行けばいいのだろうと先を見る。雪に覆われた山肌が少しだけ遠くに見えた。なぜだか広場のようになっているそこには、木があまり生えていなかった。
「……もう、戻りましょう」
 リョースケは傍らの少女を見遣る。本当にいいのと尋ねればコハルは首を縦に振った。
「これ以上、リョースケさんに慣れない雪道を歩かせるわけにも行きませんし……。 それに、わかってたんです……どうせ私には見つけられないって。私の前に、冬の神様は現れてくれないって」
 それはまるで、先程のリョースケのようだった。だから、という訳ではないが、リョースケは何故と尋ねた。
「きっともう、冬の神様は人間なんて嫌いなんです。忘れてしまった人間の前なんかに、現れてくれるはずなんてなかったんです」
 だから、もう戻りましょうとコハルは繰り返す。もう、いいんですと。
「コハルちゃんがいいなら。わかった、戻ろう」
 コハルがそう言うなら仕方ない。そうして踵を返したときだった。
「ユキちゃん?」
 それまで大人しくコハルに付き従っていたユキカブリが、怯えるように彼女にしがみついたのだった。コハルが足を止めたので、リョースケも歩みを止める。一体なんだと疑問に思った時だった。ぴん、と空気が張り詰める。
 高く澄んだ音が聞こえた。まるで美しい歌声のような。雪が降り積もっているせいか、音はあまり響かない。びゅう、と強く風が吹いて、はっとして二人は振り向いた。
 氷の鳥がいた。冴え冴えとした美しい羽に覆われた鳥は、リョースケ達をじっと見ていた。
 時が止まったかのように、誰も動かない、動けない。
「あ、あ……」
 コハルがわずかに声を発するが、言葉にならない。
 動いたのはリョースケだった、反射的にかじかんだ手を動かして腰のボールを掴み、中にいるポケモンを繰り出した。
「サクラ、かえんほうしゃ!」
 炎を纏ったポケモンが現れたと同時、リョースケは叫んだ。途端、辺りの冷気とそのポケモンの放つ熱気がぶつかり合い、急激に暖められた空気の風でコハルは思わず目を閉じる。風がおさまり、コハルが前を見れば炎を纏った一角獣、ギャロップがいた。ギャロップは主人に視線をやるでもなく、その場を低空をホバリングする氷の鳥を真っ直ぐに見ていた。
 冬の神様と呼ばれる存在に、いきなり攻撃をすることに内心ためらいはあった。不意の攻撃から身を守るために、こちらもポケモンを出して牽制するだけで良かったかもしれない、だがトレーナーとしてのリョースケの体は反射的に戦闘を選択した。
 もしも―― 万が一。 この氷の鳥を捕獲することができたならば、リョースケはトレーナーを辞めることなく旅を続けることができるだろう、これが自分がトレーナーで居られるかどうかの最後のチャンスであることを、リョースケはうすうす気づいていた。
 対する氷の鳥は少しも慌てた様子もなく、ただ悠然とその場に留まっていた。これは神と言われるほどの力を持つことからくる余裕だろうかとリョースケは思った。しかしリョースケはこの考えを振り払う。今は考えているときではない。氷の鳥はどうやら逃げる気はないようだ、と判断する。逃げられたらそれはそれでこの場の危機を脱することになったが、これで捕獲のための場は整った。コハルのユキカブリはあてにならない。戦えるのは自分自身のポケモンだけだ。
「サクラ、ほのおのうずで捕らえろ」
 ギャロップもリョースケの覚悟が分かっているのだろう、相手がどのような存在であろうとなんら躊躇うことなく、大きく首を振って、炎のたてがみをなびかせて、その炎を縄のように伸ばし、相手の周りをぐるりと一周させる。氷の鳥は、大きく羽ばたいて風を起こし、出来かけた炎の渦を消し飛ばしてしまった。うまく決まらなかったようだったが、手ごたえはあった。炎タイプと氷タイプなのだ、タイプはこちらが優勢。このまま押せばいい。
「出力を上げろ。今度は、だいもんじだ」
 ギャロップは大きく息を吸い込み、大の字の炎を吐き出した。氷の鳥は一回だけ大きく羽ばたき、上へその攻撃をかわした。
「そこだっ!」
 上に避けることは分かっていた。リョースケはそのタイミングに合わせて、大きく腕を振りかぶり、手に持っていた空のハイパーボールを氷の鳥に目掛けて力強く投げつけた。だが、ハイパーボールは風に煽られて、氷の鳥にはかすりもせずに、柔らかい雪の上に着地してそのまま埋まって消えた。
 ちゃんと攻撃を当てて、もう少し近づく必要があるかもしれない、とリョースケは感じた。
「もう一度、かえん……」
 リョースケが再び指示を繰り出そうとした時だった。氷の鳥が軽く羽ばたくと同時に、凍て付く雪風が吹き付けて、ギャロップの吐き出した炎は、蝋燭の火を吹き消すように消えてしまい。ざく、とギャロップは雪の上に膝をついた。
「な……」
 リョースケは呆気に取られる。何が起きたのかわからなかった。急いで駆け寄ると、ギャロップの炎は消えていないがその勢いは明らかに弱まり、衰弱していることが分かる。まだ息はあるだろう、けれど、これ以上の戦いは無理なのは明らかだった。
 何故、炎は水に弱いのか? それは冷やされて燃えなくなるからだ、燃えるためにはある程度の温度が必要になる。ならば“熱をより奪う”氷タイプの技は、炎タイプの大きな弱点に成りうる。
 この場合はニトロチャージなどで熱を自らに溜め込み、体を冷やさないようにする工夫が必要だったのだろう、こうした判断がリョースケのポケモントレーナーとしての未熟さだった。結果として炎タイプにも関わらず、凍えさせてしまうことになった。
 このままではまずいとリョースケは思った、氷の鳥に自ら手をかけてしまったのだから、このままでは自分達はただで済むわけが無い。せめてコハルだけでも逃がさなくてはと、横に立つ彼女を見る。コハルは真っ直ぐ氷の鳥を見ていた。何を思っているか、リョースケにはわからない。
 やっと出会えた喜び? それとも恐怖? とにかく守らなくてはと、リョースケはコハルの前に立とうとした。
 けれど、それまでコハルにしがみついていたユキカブリが、何か声を発しながら前へ出た。説得でもしようとしているのだろうかとリョースケは思う。同時に無茶だ、とも。しかし意外にも氷の鳥はその場に降り立ち、静かにユキカブリの声に耳を傾けているようだった。ユキカブリはこの土地のポケモンだからだろうか、ギャロップのような異分子とは違うのだろうか?
 今のうちに逃げた方がいいのか、ともリョースケは思ったが、下手に動いて氷の鳥を刺激するのは良くないのではと考えると動けなかった。コハルも動く気がないようなので余計に逃げるのは難しかった。
 と、甲高い声が真正面から聞こえた。歌うような美しい声、というのは本当だったなどとリョースケは思う。氷の鳥は翻し大きく羽ばたいてその場から飛び去って行った。同時にその羽ばたきで雪混じりの強い風が吹いて、視界は白で覆いつくされた。そこで緊張の糸が切れてリョースケの意識は途絶えた。


「……さん、リョー……さん、リョースケさん」
 左頬にざらりと生暖かい感触を感じてリョースケは目覚めた。
「サクラ?」
 声に反応してか、ギャロップは舐めるのをやめ、鼻先をリョースケの顔にぐっと押し付ける。リョースケはその鼻先を優しく撫でた。ふと右を向けばやけに肌の白い少女の顔が見えた。
「リョースケさん、大丈夫ですか」
「コハルちゃん……」
 ギャロップを軽く押しやり、リョースケは上半身を起こす。まだぼんやりとする頭を軽く振る。
「あー……ここは……」
 辺りを見回しても、どこもかしこも雪で真っ白でどこなのかわからなかったが。どうやら氷の鳥と戦った場所のままであるようだった。近くには草木を燃やしたような残骸があり、まずコハルはユキカブリに草木を作らせて燃やし、ギャロップの体から温めたのだろう。コハルは見るからにほっとした様子だった。
「なんで……俺達は無事なんだ、あの氷の鳥に攻撃を仕掛けて、怒らせてしまったというのに」
 リョースケがつぶやくと、コハルは静かに答えた。
「あれはかぜおこしに、こごえるかぜ……」
「え?」
「たぶんですが、あの氷の鳥は怒ってなんか無かったと思います」
「?」
 どういうことだ、リョースケは無言で考える。いやまてよ、もしあの氷の鳥が怒っていたならば、普通に考えればふぶきやれいとうビームなどの技を使ってくるはず、だけどわざわざそんな弱い技を使ってきた。つまり……
「……ああ、そっか」
 自分など、取るに足らない弱い存在だと適当にあしらわれたのだ。それにも関わらず自分は手も足も出なかった。
 それに気がつくと、ショックよりも先になぜだか笑いが込み上げて来た。
「あー負けた負けた。完璧に負けた」
 せっかく起こした上体を、また雪の上に投げ出す。見上げても鈍色の雲があるだけの空。
 戸惑っている様子のコハルを置き去りにリョースケは言う。
「完膚なきまでに負けたなサクラ。ごめんな、俺弱くて」
 あーくそとリョースケは仰向けのまま、ひとりごちる。
「やっぱり圧倒的だなー、敵わないや」
 清々しい顔をしてリョースケは笑う。
「これですっぱり諦められるよ」
 あの、とコハルが遠慮がちに声をかける。
「ん? ああごめん。何?」
「大丈夫、ですか」
「けがはないよ。頭を打ったわけでもない。ただ、そうだな、やっと現実を受け入れただけ」
「そう、ですか」
 コハルは北の山の方角を向いて呟いた。
「まさか本当に、会えるとは思いませんでした。なんで私たちの前に現れてくれたのでしょうか?」
「さっき、ふと気づいたのだけど。もしかして、これじゃないかな」
 リョースケが指し示したのは黒い鈴だった。
「鈴?」
「ああ、ポケモンを近寄りにくくなる音色ってどういうものかは知らないけど、そんなものを鳴らしながら一日中歩いたのだから、野生のポケモン達は結構迷惑していたんじゃないかな? 部外者が来た、不審な者がこの山に踏み込んできた、という知らせは冬の神様の耳にも入って、ここのキッサキの地を守る者として、追い返そうとしたのかな」
「あっ…… そうか」
 たとえ人が忘れてしまっても、冬の神様はいつでもどんな時でも、このキッサキの地を守っている。キッサキの人間だけじゃない、このキッサキのポケモン達や、大地すべてを守っているのだ。
 おそらくは身近過ぎたからこそ、キッサキの人々は冬の神様を忘れてしまったのかもしれない、それが冬そのものだったので、キッサキ人にとっては当たり前にそこにあるものであって、特に話に挙げて語るようなものではなかった。
 リョースケが立ち上がると、ふと向こうの雪の上に一箇所だけ何か光るものを見つけた。違和感を覚えて歩いて近づいてみると。
「これって……」
 そこに落ちていたのは、まるで氷のように透き通った羽。コハルも驚いたのか目を見開いている。
 氷の鳥、否、冬の神が落とした羽。太陽でもあれば光に透かして見るのに、などとリョースケは考え、無造作にコハルへ差し出す。
「はい、コハルちゃん」
 目を白黒させ、コハルは差し出された羽を受け取る。
「いいんですか」
「何が?」
「だって……」
「いいんだよ、俺が持ってても仕方ないし。おばあちゃんに見せてあげなよ」
 そう言えば、コハルはやっと笑ってありがとうございますと礼を言う。
「リョースケさんのおかげで、冬の神様に会えました。本当に、ありがとうございました」
 深々と頭を下げるコハルに、リョースケは慌ててやめてほしいと告げる。
「お礼を言うのはこっちの方だよ。やっと、自分の弱さを認められた。ありがとう。これでようやく前に進める」
 さあ帰ろうとリョースケはコハルに手を差し出した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
簡単なあらすじ
氷の鳥「俺、キッサキ大好きっ子! 大好きなキッサキの山でなんか異音騒ぎがあったから様子を見に来た」
リョースケ「火炎放射だ!」
氷の鳥「な、なにするだー。だが心の目+絶対零度など使うまでも無い、お前など凍える風だけで十分だ!」
サクラ「うわ、寒っ」
コハル「舐プ乙」
ユキカブリ「やめてー! リョースケのライフはもうゼロよ!」
氷の鳥「おお、キッサキの者か。分かった、許そう、ではさらばだ」
リョースケ「トレーナー辞めたい」


冬の神が現れたのは、鈴の音で迷惑していたから。
冬の神が見逃して去って行ったのは、地元生まれのユキカブリが必死に事情を説明してくれたから。

リョースケのトレーナーとしての未熟さを表現するために。心の目→絶対零度 という上級者でも瞬殺コンボではなく、戦術的に負けたと変更。
心の目→絶対零度のコンボは作中の捨てられない要素であることは分かっているのですが、そのコンボは上級者でも破るのに難儀するもの(入れ替えないと瀕死、入れ替えると3割で瀕死 の選択を相手に強いる)なので、リョースケにトレーナーとしての未熟さを突きつけられないと思いました。バッジ8つならばありでしょうけど。
リョースケ君はこのバトルによって「心を折られ長年の夢を諦める」ことになるので、舐プされたショックがちょうどいいんじゃないのかなと思いましたが、心の目→絶対零度で瞬殺されてもそれはそれでショックでしょうから、どちらでも良さそうな気はしますね。
意見をお待ちしております。


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