ポケモンストーリーズ!投稿板
このフォームからは投稿できません。
name
e-mail
url
subject
comment

[もどる] [新規投稿] [新規順タイトル表示] [ツリー表示] [新着順記事] [留意事項] [ワード検索] [過去ログ] [管理用]
  • 以下は新規投稿順のリスト(投稿記事)表示です。
  • 48時間以内の記事は new! で表示されます。
  • 投稿者のメールアドレスがアドレス収集ロボットやウイルスに拾われないよう工夫して表示しています。
  • ソース内に投稿者のリモートホストアドレスが表示されます。

  •   [No.2744] Re: 画像の投稿テスト 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/11/04(Sun) 09:27:24     66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    以下の機能チェックが完了しました。

    ・画像の表示位置を変更して新規投稿
    ・画像の表示位置を変更して修正投稿
    ・新表示レイアウトに対応した画像の回り込み
    ・画像を投稿しない場合の動作確認


      [No.2743] 画像の投稿テスト 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/11/04(Sun) 08:59:10     89clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:テスト投稿
    画像の投稿テスト (画像サイズ: 199×199 2kB)

    画像の投稿テストを行います。
    画面上の正しい位置に表示されるか、及びログに位置情報が正しく書き込まれるかを確認します。

    画像位置の修正テストを行います。
    画面上の正しい位置に表示されるか、及びログに修正した位置情報が正しく書き込まれるかを確認します。

    画像位置の確認テストを行います。
    長文を表示した際に、左右の回り込みが正しく行われるかを確認します。

    以下はダミーのメッセージです。



    ---------------------------------------------------------------


    □□ポケスト!の説明

    小説を書くって難しそうだなぁ。そう考える方は多いんじゃないでしょうか? イラストのほうが得意だなぁ。そんな方もきっと多いはず。「ポケスト!」で100文字からのお話作りはじめてみませんか?


    ■投稿できる作品

    ・あなたの考えるポケモン世界を『文字数100文字以上』で表現してください。イラストや写真をつけても構いません(つけなくてもかまいません)。

    ・ただし、短歌(五七五七七)、俳句(五七五)の形式であれば100文字以下でもOKとします。

    ・文章をつけて欲しいイラスト/写真の投稿もできます。イラスト/写真のみの投稿は【書いてもいいのよ】タグ(後述)扱いとさせていただきます。イラストのみを複数投稿する際は、前の投稿から一週間経つか、【書いてみた】がついた時点でお願い致します。


    ---------------------------------------------------------------


      [No.2742] 【ポケ小説考】一緒にいるという事 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/11/04(Sun) 07:07:13     116clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ポケ小説考

     そういえば作者さんが好きで読んでるトレーナーもののカップリングマンガあるんだけど、女の子のほうがトレーナーとしてひ弱すぎて(そこがかわいくもあるんだけどね!)、遠くない将来、付き合っている男の人との釣り合いのとれなさに耐えられなくなってしまうんじゃないかと勝手に心配になっていたりする。
     これはいくら男側が頑張っても、愛してもどうにでもなる事ではなくて、たぶんひ弱な側がなんとか自らのレベルを上げる事で釣り合いをとっていかないと関係を維持できないんじゃないかしらって、私は思ってる。たぶん男側が彼女を守るために頑張れば頑張るほどに彼女は葛藤し、傷つくんじゃないかって。
     だから彼女は一回、彼から離れて旅立つ事になるんじゃないかなってそんな事を一人勝手に妄想していたりする。

     現実の世界でも、創作者同士が似たようなレベルで固まったり、同じような収入の人同士が結婚する事が多い事を考えると、誰かと誰かが一緒にいるためには、実は釣り合いをとる努力をしていかないといけない。あるいはさらに上に行く為に所属集団から抜けないといけないという事が発生しうる。
     多くの人にとってポケモン小説は人生の一時の過程だ。きっといろんな理由でポケモン小説やマサポケを離れる人がこれからも出るだろう。それは仕方のない事だ。だからその離脱が、そういう次のステージに行く為の離脱だったらいいなって思ってる。

     さて、ポケモン世界に話を戻そう。
     だからまあ、きっとどっちかが強いトレーナーすぎて、破綻するカップルというのはポケモン世界あるあるじゃないかしら。ただし、仮に一方が弱くても料理むっちゃうまかったり、ポケモンのメンテナンスがうまかったりして、強いほうを支えるようになるときっといい関係になる。強くなって釣り合いをとるのもいいし、相手に足りない何かを補うのもいい。
     「鬼火」の話ででツキミヤに食われた彼女はそんな風に釣り合いをとったり、相手の不足を補う事が出来なかった女の子でした。相手がそういう風になるチャンスを与えていただけに余計に悲しい。
     旅する仲間もカップルも「好き」と言う気持ちだけでは「一緒にいること」を維持できないのだ。

     こんな話を考えた。
     よう相棒、今度のリーグ第一回戦で当たるあいつはかつて一緒に旅してた奴でな。奴のメンバーはよく知ってるから対策を立てよう。なあんて話。
     あるいは その「奴」を倒す為にコーチをしてるトレーナーって話も楽しそうだ。自らはトレーナーとしてピークを過ぎてるけど、教えるのは抜群にうまい。彼が倒そうとしているのはかつて旅をした仲間で、ライバルだ。彼と違って今も現役のトレーナーだ。
     彼は探している。そいつを倒せるトレーナーを。そうしてコーチをする。けれど奴は新しいトレーナーをぶつけられるその度に弱点を克服して強くなる。主人公もコーチとしての名声を高めていくけれど、まだ目的を果たせない。そんな感じの話はどうだろう。
     いかにも粘着質で小説向きの話だ。
     こういう奴は物語的には嫌いじゃない。


      [No.2741] Re: マサポケノベラーさんへ77の質問(2012年版)ちょっと修正 投稿者:リング   投稿日:2012/11/03(Sat) 22:24:14     88clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


    > ■あばうと みー■ 
    >
    > ●1.My name is ○○○. まずは名前を教えてください。
    リング

    > ●2.↑とは言いましたが、実は×××とも名乗ってるんです…… HN複数持ってます?またそのHNは?
    特にないかな

    > ●3.年齢・性別・生息地などなど。あなたの正体プリーズ。勿論言える範囲だけでOK。
    23歳 男 千葉県

    > ●4.オールジャンルで(※全てにおいて)好きなもの。
    美食……というほどのものでもないけれど、週に一回は美味しいものを食べるようにしている

    > ●5.オールジャンルで嫌いなもの。
    理不尽な出来事ですね。犯罪者が軽い罪で裁かれると、犯人も反省しないから、いつか自分の身に犯罪が降りかかるんじゃないかと思っちゃう。

    > ●6.あなたの性格。自覚している長所や短所……
    長所はおおらかなところ。短所は大雑把なところ

    > ●7.あなたを一言で表すと? 日本語でも英語でもスワヒリ語でもおっけー。
    あっけらかん


    > ●8.あなたの職業は? 真面目に答えてもボケてもいいですよw
    サラリーマン

    > ●9.学校の教科で得意科目と苦手科目を一個づつ上げるとしたら?
    得意は国語かな
    苦手は……歴史かも

    > ●10.持ってる資格とか賞罰。何でもいいから書いてみると……
    一応、弓道弐段

    > ■インターネットライフ■

    > ●11.インターネット歴。いつからだったかなぁ……今何年になるかなぁ……
    もう7年位前かな
    > ●12.自分専用のパソコンって持ってます?
    持っている。ノートだけれど

    > ●13.ネットで便利だと思うこと。不便だと思うこと。
    情報の送受信が楽
    その分、会いたいけれど会えない人が増えていくジレンマががが
    > ●14.お気に入りのサイト、教えてくださいw
    ポケモン小説wiki。ただ、18歳未満は入っちゃダメなので、貼れない

    > ●15.自分のホームページ、pixivアカウント、twitterアカウント等ありますか? 良かったらここでCMタイム。無論ジャンル問わず。
    ツイッター; https://twitter.com/ring_chatot

    ピクシヴでは細々と小説や絵を描いている

    > ■ポケモンライフ■
    >
    > ●16.ポケモン歴は何年? また、ポケモンにはまった原因って何?
    検索してはいけない言葉こと、イーブイスタジオのせい。その後探検隊をプレイしたことで本格的にはまる。
    > ●17.あなたの持っているポケモンソフトを教えて!
    Pt HG 救助隊青 探検隊時・空 レンジャーバトナージ BW BW2


    > ●18.こいつが俺のパーティだ! ゲームでのベストメンバー、教えてください。私はこんなコダワリを持ってパーティを選んでいます。なんてのもあったら。
    特にこだわりも持たずにパーティーを組んでいるけれど、スイクンとリングマのコンビはよく使う。

    > ●19.アニメ見てるかー? ポケスペ読んでるかー? ポケモンカードやってるかー?
    テレビがないからアニメ見ていない……でも、映画は見ている
    カードと漫画もノータッチ
    > ●20.一番好きなポケモン! どうしても絞りきれなかったら複数回答も可。
    ダークライたん

    > ●21.一番好きなトレーナー! ゲームでもアニメでもポケスペでも……
    シンジ君かな。あの子がどう成長するのか楽しみ

    > ●22.一番好きな、技? アイテム? 属性? シリーズ? ……何かある?
    好きな技は恩返し。小説での使用率がナンバーワン

    > ●23.21、22、23で答えた中から好きなお題を1つ、全力をあげて語り倒してください。惚気OK。親馬鹿OK。妄想暴走勿論OK。

    恩返しの使用率が高い理由……それは、恩返しは型にとらわれない技だからである。自分を育ててくれた親、師匠、兄妹などへの恩に報いるため、倣った事をフルに発揮する……それすなわち恩返しなり!!
    そのため、関節技とか首締めとか、そういう技はすべて恩返し扱いなんです。ゴーストタイプにも当たっているが気にしちゃいけない。

    > ●24.ポケモンファンの聖地、ポケモンセンター。行ったことある?
    トウキョウ トウホク ヨコハマに行った事があります
    > ●25.主人公の名前=ゲーム中でのあなたの名前は?
    毎回変わる。
    Ptではリング
    BWではナナカトルとローラ
    BW2ではコハクヌシともういいよ

    > ●26.あなた自身をポケモンに例えると、何が一番近いですか?
    陽気コジョンド

    > ●27.突然ですが、あなたはポケモンワールドのトレーナーだとします。名前、出身、手持ち、職業etc……「あなた」の設定を、参加型キャラメイキングの要領で。

    名前:リング 出身:カントー 手持ち:ゾロアーク 職業:ビジネスマン 特徴:変態

    > ■ポケモン小説書きライフ■
    >
    > ●28.なぜポケモン小説を書こうと思った? きっかけになった作品とかあります?
     昔は地球防衛軍の二次創作だったけれど、ポケモンにはまったので

    > ●29.連載派? 短編派?
    連載派だけれど、短編も出来ないわけじゃないよ

    > ●30.公式のキャラクターは小説に出すほう? それともオリトレ派? ポケモンのみ?
    公式キャラクターはたまに出す。オリトレの実力によっては互角の戦いだったり、かませになったりもする。

    > ●31.あなたが今書いている小説。ズバリタイトルは!!
    BCローテーションバトル奮闘記

    > ●32.↑のあらすじ・特徴的なところ、ウリ等をどうぞ。
    小学5年生の男女二人が、ローテーションバトル大会での商品、ビリジオン捕獲権をえるために奮闘する物語。
    主人公が三人ほど殺したり、ヒロインの姉が異種恋愛をしだしたりと問題作
    > ●33.あなたの小説の中で、あなた自身が一番気に入ってるキャラは? どんな所が気に入ってる?
    ここには投稿していない作品『テオナナカトル』に登場した、セイス=シープソン→ナナ=シェパード→ナナ=ロースティアリさん

    普通の女性から魔女になる際に改名、結婚してまた改名したゾロアークの女性
    自身が信仰していた神を信じられなくなり、魔女となることで改宗。その後、主人公と出会って恋に落ち、結ばれ他のだけれど……色んな所で一途なところが好きなところ。


    > ●34.あなたが今まで書いた小説の中で一番気に入っている話はどの作品? どのエピソード?
    >  よかったらその部分、見せて欲しいなぁ……。
    ポケダン探検隊の二次創作、時渡りの英雄にてコリン=ジュプトルがアグニ=ヒコザルと語り合うシーンの全般。ここでは公開していないけれど、この二人中が良すぎていっそのことキス位させてあげたかった(男同士)。
    特に、幻の大地での語らいが好き。

    > ●35.オレの小説、何はなくともコレだけは頑張ってるぜ! ってのを最低でも一つ。
    戦闘描写、文化描写、矛盾を作らないこと

    > ●36.逆に、ここんとこ何とかしたいな……これからの課題だ、ってのも一つだけ。
    誤字

    > ●37.小説に出すキャラ(ポケモンも含)の名前、どんな感じでつけます? 例もあげて教えてくれたら嬉しいなぁw
    親やトレーナーのネーミングセンスや名付けの慣習が重要になる。
    上で例にあげたアグニ君はヒンドゥーの神なので、父親の名前は同じくヒンドゥーの神のヴィシュヌだったり。
    BCローテーションバトル奮闘記では、主人公のポケモンは名前のどこかに数字が入るとか。

    > ●38.ついでだから小説のタイトルの由来や、副題(あれば)のつけ方も教えてもらおう。
    直感でつけてる

    > ●39.インスピレーションキタ━━━━━(゜∀゜)━━━━━!! アイディアが湧いてくるのはどんな時?
    大抵、仕事中
    > ●40.あなたの小説主人公は、実はあなた自身の鏡? それともどっちかというと、憧れの姿??
    大体が、鏡のような部分もあるし憧れの部分もある。

    > ●41.小説中にバトル描写って出すほう?
    出す。そして全部が全部『これは酷い』
    > ●42.小説の中の性的描写、死ネタ、殺しネタ。あなたの意見を述べてください。
    全部自分が書いているので、それ自体に嫌悪感はない。ただし、節度は守るべきだし、エロのためのエロや、殺しのための殺しは物語が安っぽくなると思う

    あと、マサポケにはR-18を投稿する勇気がない……

    > ●43.小説の中のやおいネタ、百合ネタ。あなたの以下同文。(意味が分からない人はパスOK)
    百合には挑戦したことがないのでしたいのだが、出来ない……もっと頑張らなきゃ。

    > ●44.小説の中のオリジナル地方、オリジナル技、オリジナルポケ。あな以下同文。
    地方はまったく問題ない
    オリジナルポケモンは流石にダメだけれど……技もほどほどならいいんじゃないかな。ただ、馬鹿みたいに性能の高い技や、名前だけで描写の伴わない技を書く人は、半年ROMれといいたい
    > ●45.打ち切り……
    黒歴史です……今は黒歴史にならないように、完成が見えてから投稿しています

    > ●46.アイディアが全然湧かない!!? どうしよう……。スランプと、その脱出法について一通り。
    他の作品に手をつけて息抜き。絵師が落書きで息抜きをするのと同じです

    > ●47.後の展開に繋がる伏線を結構張る方だと思う。
    張る。あと、まだ投稿していなければ過去に逆上って貼ることがある
    > ●48.ぶっちゃけた話、やっぱり年齢が高いほど上手い文章が書ける?
    その傾向はあるけれど、ある程度で頭打ちにはなると思う。しかし、社会の描写とか、死生観に関しては年齢によっても色々変わるんじゃないだろうか

    > ●49.この人の本が出たら絶対読む! この人の影響を受けている! 好きなプロ作家さん・同人作家さんっています? 愛読書でも可。
    上橋菜穂子さん。守り人シリーズは私の原点です

    > ●50.同人とかサークルってやってますか? 自分の本って出したい?
    いつかは自分の本も出したいけれど……まだそのための作品がね

    > ●51.語彙(ゴイ、使える単語量)ってどうやって増やします?
    本を読むのが一番かな

    > ●52.ムラムラと執筆意欲が湧いてくる……のはこんな時!
    アイデアが出たとき
    > ●53.ポケモン以外の小説、書いたことありますか?
    モンハンと地球防衛軍ならば

    > ●54.小説を書く者として、一番大事だと思うもの。
    やる気

    > ●55.他のポケモン小説書きさんの小説で、好きな作品を好きなだけ上げてください。
    クーウィさんの『雪の降る夜』
    某所に生息する三月兎さんの『SOSIA』など
    > ●56.他のポケモン小説書きさんの小説登場人物で、好きなキャラっています? 誰ですか?

    上記。SOSIAのローレル君。ココの人になんのこっちゃですね
    > ●57.密かにライバルだと思っているポケモン小説書きさんはあの人だ! 最低一人は上げてくださいねw
    某所に生息する狸吉さん。言葉遊びの巧みさで彼の右にでるものはいないんじゃないかと。

    > ●58.そういや今更だけど、ポケモン小説書き歴は○○年です。○○歳からです。
    5年くらい、18歳からは書いていると思う。少しは成長したかな
    > ●59.ポケモン小説書きをやっていて嬉しかった事、辛かった事を一つずつ。
    いろんな人と触れ合えたこと。何度か企画や大会で1位になれたこと

    > ●60.何だかんだ言っても、自分の小説に誰よりハマッているのは自分自身だと思う……
    うん、自分がこういうのを読みたいと思って書いているからね
    > ●61.長く険しい人生。いつまでポケモン小説を書いていようかな……
    他にこれ以上に打ち込めるものが見つかるまでは

    > ●62.これからポケモン小説を書く方にアドバイスがあれば。
    図鑑設定くらいは読んでおけ

    > ■おぷしょん1〜マサポケについて〜■
    >
    > ●63.いつ頃この『マサラのポケモン図書館』に辿り着きましたか?
    一年ちょっと前に、チャット会に誘われて
    > ●64.『ほびぃすてぇしょん』『おきらく ごくらく』『旧・マサポケ』……何の事だか分かります?
    その頃のことは知らない

    > ●65.リアルタイムの親善空間・チャット。行きます? どれくらいの頻度で?
    たまに行きます。本拠地は毎日ですが

    > ●66. 小説コンテスト出た事あります? 出てみたい?
    でました。意外と私の作品も捨てたもんじゃないのが実感できる
    > ●67. ストーリーコンテスト・ベスト他、マサポケの本って持ってる? マサポケで本を出す事になったら参加したい?

    本は持ってます。参加……したいですね。

    > ●68.鴨志田さんや鈴木ミカルゲさんの事、どう思う?
    正義の味方である私には適わんな!! はっはっは!

    > ●69.我らがマサポケ管理人、No.017さんに一言贈ってください。
    ぴじょんぴょん!!(恋する女性になったら美しくなるかもしれないので、その日を待ってますよ)

    > ●70.これからマサポケではこれが流行る! これを流行らせたい!
    パンチラできるポケモンを……ダークライとかオーベムとか、サーナイトとか
    まぁ、パンツはいてないからチンチラ(ry

    > ■おぷしょん2〜どうでもいいこととか〜■
    >
    > ●71.学校好きですか?(学生でない方は、好きでしたか?)
    嫌いじゃなかった

    > ●72.ポケモン以外で好きなジャンル、アニメ・漫画・ゲーム。あります? 何ですか?
    好きなものといえば、戦国BASARAは結構……ゲームだけですがね

    > ●73.音楽って聴きます? 好きなアーティストとかジャンルをお一つ。
    Do As Infenity ですね。

    > ●74.ジブリの名作「となりのトトロ」の主人公って誰だと思います?
    サツキちゃんかな

    > ●75.ここでお約束、あなたの恋愛話v 言えるところまで言ってみよう!
    恋に恋する乙女です

    > ●76.♪なりたいな ならなくちゃ 絶対なってやる〜…… 将来の夢は? 恥ずかしがらなくていいですよw
    夢なんて……うわぁぁぁぁぁん!!
    > ●77.さぁ、最後です。……邪魔するものは何も無い。今の想いを込め、好きなことを叫べ!!

    ダークたん大好きだぁぁぁぁ!!


      [No.2740] Re: マサポケノベラーさんへ77の質問 投稿者:久方小風夜   《URL》   投稿日:2012/11/03(Sat) 19:46:26     184clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:真面目に】 【答える】 【気なんて】 【ないよ】 【!!!】 【少しだけ】 【内容】 【充実】 【させた】 【かも

    77の質問を統廃合したり、今にあったものに改めてみました。

    ■あばうと みー■ 

    >●1.My name is ○○○. まずは名前を教えてください。
    久方小風夜(So−ya・Hisakata)と申します
    「久方」でも「そーや」でも「ゴミ野郎」でもお好きなようにお呼びください

    >●2.↑とは言いましたが、実は×××とも名乗ってるんです…… HN複数持ってます?またそのHNは?
    旧HNはありますが、今は特には
    チャットに久兵衛と名乗って混ざっていたことも何回かはありましたが

    >●3.年齢・性別・生息地などなど。あなたの正体プリーズ。勿論言える範囲だけでOK。
    年齢なんて移ろうものです
    性別なんて飾りです
    生息地は日本の某所

    >●4.オールジャンルで(※全てにおいて)好きなもの。
    まあいろいろあるけど総合すると面白いもの

    >●5.オールジャンルで嫌いなもの。
    まあいろいろあるけど総合すると面白くないもの

    >●6.あなたの性格。自覚している長所や短所……
    クズです。ただのクズです。どクズです

    >●7.あなたを一言で表すと? 日本語でも英語でもスワヒリ語でもおっけー。
    |ω・)

    >●8.あなたの職業は? 真面目に答えてもボケてもいいですよw
    学生のような何かだったような気がする。気がするだけ

    >●9.学校の教科で得意科目と苦手科目を一個づつ上げるとしたら?
    得意:地理 苦手:数学
    エセ理系です。数学滅びろと中学以来ずっと思ってます
    あとついでに英語も爆発すればいい

    >●10.持ってる資格とか賞罰。何でもいいから書いてみると……
    漢数英検は持ってた気がするけど既に錆びきって使い物にならなくなっている



    ■インターネットライフ■

    >●11.インターネット歴。いつからだったかなぁ……今何年になるかなぁ……
    初めての出会いは小学校の4年くらいだったと思う
    小5からパソコン部に入った
    しかし小学校のパソコンではほぼやふーきっずでとべるところのみだったので、まともにネットらしいネットをしたのはパソコンが家にやってきた中1夏ごろから……だったような気がする

    >●12.自分専用のパソコンって持ってます?
    寿命2年と言われるノーパソ(購入時すでに旧型)を酷使し続けて5年になりました
    新しいのが欲しいです切実に

    >●13.ネットで便利だと思うこと。不便だと思うこと。
    便利なのは家の中で大体何でもできること
    困るのはマジで引きこもりになってしまうこと

    >●14.お気に入りのサイト、教えてくださいw
    お気に入りの個人サイトさんたちも、今となっては次々放置・閉鎖されていくなぁ……
    とは思いつつ、自分も個人サイト巡りをやる頻度が下がったので何とも言えない

    >●15.自分のホームページ、pixivアカウント、twitterアカウント等ありますか? 良かったらここでCMタイム。無論ジャンル問わず。
    HPは「サボテン帝国」。上のURLより。管理人が度々失踪する超不定期更新サイト
    ぴくしぶは「久方(356646)」で在籍中。めったに新しいのあげません
    ついったは「久方小風夜(S_Hisakata)」鍵つき垢です



    ■ポケモンライフ■

    >●16.ポケモン歴は何年? また、ポケモンにはまった原因って何?
    初代の頃はゲーム持ってなかったけど、友人と絵を描いたり何だりしてた。この期間も一応ポケモンと触れ合っていたと考えるとポケモン発売当初からである
    友人がやっているのを横目で見て悔しい思いをしていた期間が非常に長いので、この間に蓄積された間違った知識が結構後々まで尾を引きずるのであった
    (例:一部のポケモンのタイプ、岩に電気は効かない、エスパーはゴーストに効果抜群、等)
    初めて手にしたソフトは銀。ただし本体を手に入れたのは更にそのひと月以上後のこと

    >●17.あなたの持っているポケモンソフトを教えて!
    メインソフト全種+北米版Pt+UK版HG、初代ポケスタ、スナップ、ポケパーク、ポケダン赤青時闇空、レンジャーバトナージ光の軌跡、タイピング(白)、ポケナガ、立体図鑑、ARサーチャー
    数え忘れてるのあるかもしれない

    >●18.こいつが俺のパーティだ! ゲームでのベストメンバー、教えてください。私はこんなコダワリを持ってパーティを選んでいます。なんてのもあったら。
    最初の周回は見た目が気に言った奴を適当に
    2週目以降は好きな奴を適当に
    ベストメンバー、ってのはあんまり決まってないし過去のバージョンから連れてくることもないけど、
    カントーでピカチュウ
    ジョウトでメリープとトゲピー
    ホウエンでサーナイト
    辺りはかなりの高確率で入ってるかも。シンオウとイッシュはあんまり偏ってないけど、この辺はあんまり周回プレイをしなくなったからだと思う(データ書きかえるのが面倒になったし)

    >●19.アニメ見てるかー? ポケスペ読んでるかー? ポケモンカードやってるかー?
    アニメは今は年1の映画のみ。無印のタマムシのちょい前くらいからコガネ周辺くらいまでは見てた
    ポケスペは単行本で読んでる
    カードはコレクション目的で集めてたけど色違いのヨマちゃんを手に入れるので色々燃え尽きた

    >●20.一番好きなポケモン! どうしても絞りきれなかったら複数回答も可。
    おk、ヨノワールさんで

    >●21.一番好きなトレーナー! ゲームでもアニメでもポケスペでも……
    一言で自分の厨二心を揺さぶってくれたアカギさん

    >●22.一番好きな、技? アイテム? 属性? シリーズ? ……何かある?
    技はかげうち
    アイテムはモーモーミルク……と思ったけどやっぱり自転車。次点で霊界の布
    属性……タイプってことならゴースト
    シリーズはどれも好きだけど思いで補正込みで金銀水晶。本編以外なら探険隊

    >●23.21、22、23で答えた中から好きなお題を1つ、全力をあげて語り倒してください。惚気OK。親馬鹿OK。妄想暴走勿論OK。
    これ21・22・23じゃなくて20・21・22かな
    とりあえずポケモン世界の自転車は万能すぎるから欲しいマジで割とマジで
    特にホウエンのマッハとダートがどっちも欲しい

    >●24.ポケモンファンの聖地、ポケモンセンター。行ったことある?
    残りがサッポロ、トウホク、ヨコハマ、フクオカ
    普段住んでるところも実家もポケセン遠すぎて悔しい

    >●25.主人公の名前=ゲーム中でのあなたの名前は?
    毎回変えてるけど、とりあえず抜粋すると
    赤緑青はあだ名がレッド・グリーン・ブルーになるのを考えて「レツ」「リン」「フウ」
    ピカ版はポケスペのイエローのパーティー再現をしょっちゅうやってたから「イエロー」
    銀・SSは当時の学年誌(小6)で連載していた某漫画の主人公から取った「ユズキ」
    金・水晶は自キャラ名の「トブヒサ」と「シキミ」
    UK版と並行してやってるHGは「マリー(Mary)」
    藍・翠・LG、紅・FRは自分と一番長い付き合いである自キャラの名前の「シュリ」と「シュン」
    DPtはそれぞれ別作品の自キャラ名の「セツナ」「セレナ」「シドー」
    黒白黒2白2は全部鉱物から「シアン(オブシディアン)」「マイカ」「ハルツ(ハルツバージャイト)」「コマチ(コマチアイト)」

    >●26.あなた自身をポケモンに例えると、何が一番近いですか?
    カビゴン(逆6V)

    >●27.突然ですが、あなたはポケモンワールドのトレーナーだとします。名前、出身、手持ち、職業etc……「あなた」の設定を、参加型キャラメイキングの要領で。
    ひきこもりの ひさかたが しょうぶを しかけて きた と おもったが めんどうなので やめた ▼
    ポケモンは全部ヨマちゃん
    趣味はポケトレ



    ■ポケモン小説書きライフ■

    >●28.なぜポケモン小説を書こうと思った? きっかけになった作品とかあります?
    これがきっかけ! っていう作品は残念ながら思いつかない……
    自分は元々漫画が描きたかった、これは事実
    でもどんなに頑張っても描ききれなくて、でも頭の中で爆発する妄想は整理したくて、気がついたら小説書いてた。別ジャンルだけど
    で、その流れでポケモン熱再燃したからその流れで書いてた
    おかげで今でも物語の構成の大半は、頭の中で漫画のネームみたいなのが出来てそれを文章にしてる

    >●29.連載派? 短編派?
    同じ世界の短編派
    連載も書きたい。昔書いてたけど色々あって……うん

    >●30.公式のキャラクターは小説に出すほう? それともオリトレ派? ポケモンのみ?
    公式キャラは個人のイメージがあるから出しづらいなぁと思ってる。それでもたまに出すけど
    そして悉くイメージをぶっ壊したり過去を大幅に捏造したりして怒られるんだ
    ポケモンのみって実はかなり苦手かもしれない。ポケダン小説は書くけどやっぱりどっかで人間は出る

    >●31.あなたが今書いている小説。ズバリタイトルは!!
    申し訳ない。今ストックがない。残念

    >●32.↑のあらすじ・特徴的なところ、ウリ等をどうぞ。
    というわけで残念ながら。申し訳ない

    >●33.あなたの小説の中で、あなた自身が一番気に入ってるキャラは? どんな所が気に入ってる?
    うーん、どの子も全員気にいってるからなぁ、難しい
    マサポケに持ってきた小説の中でなら、地学マニアとその相棒のヤミラミはやっぱりお気に入り
    特にヤミラミの方がすごく自由に動いてくれるから、書いてて楽しい

    >●34.あなたが今まで書いた小説の中で一番気に入っている話はどの作品? どのエピソード?
    > よかったらその部分、見せて欲しいなぁ……。
    うーん、「闇世の嘆き 時の護役」のChapter−6と8かな。
    この話で一番書きたかったのがここだし、それなりに形になったので気に入ってる

    >●35.オレの小説、何はなくともコレだけは頑張ってるぜ! ってのを最低でも一つ。
    楽しんで書く

    >●36.逆に、ここんとこ何とかしたいな……これからの課題だ、ってのも一つだけ。
    楽しんでもらう

    >●37.小説に出すキャラ(ポケモンも含)の名前、どんな感じでつけます? 例もあげて教えてくれたら嬉しいなぁw
    うーん、何かモチーフがあったり(例:ジョウ→地名の「西條」)
    引用元があったり(例:ミーナ→桑.田佳.祐さんの楽曲「可愛.いミーナ」)
    完全に思いつきだったり(例:キョーイチ)
    キャラによってばらばらだなぁ
    手持ちのポケモンはそのキャラならどうつけるか考えて、あとはまぁ適当(笑)

    >●38.ついでだから小説のタイトルの由来や、副題(あれば)のつけ方も教えてもらおう。
    これは引用元があるもの以外、ほとんど全部思いつきだなぁ

    >●39.インスピレーションキタ━━━━━(゜∀゜)━━━━━!! アイディアが湧いてくるのはどんな時?
    布団の中でごろごろしている時。バス待ってる時。歩いてる時。退屈な授業の時。スケッチブックに落書きしてる時
    総じて何か降りてきたとき

    >●40.あなたの小説主人公は、実はあなた自身の鏡? それともどっちかというと、憧れの姿??
    ところどころ自分の投影がある憧れの姿

    >●41.小説中にバトル描写って出すほう?
    苦手
    そもそもゲームの方のバトルが苦手だから

    >●42.小説の中の性的描写、死ネタ、殺しネタ。あなたの意見を述べてください。
    >●43.小説の中のやおいネタ、百合ネタ。あなたの以下同文。(意味が分からない人はパスOK)
    >●44.小説の中のオリジナル地方、オリジナル技、オリジナルポケ。あな以下同文。
    全部同じ答えだからまとめるね
    書きたきゃ書けばいいよ。ただ公開するならそれなりに気を使うべき
    好き嫌いが激しくわかれるものはしっかりとした注意書きがあってしかるべきだし、年齢制限をかける必要があるならちゃんと鍵のかかった場所を選ばなきゃならん
    自分の部屋で全裸になっても誰も文句は言わないけど、ネットはそうじゃないんだよ

    >●45.打ち切り……
    自分もしたことあるから何も言えねぇorz

    >●46.アイディアが全然湧かない!!? どうしよう……。スランプと、その脱出法について一通り。
    特に何もしない。湧かない時には何やっても湧かない

    >●47.後の展開に繋がる伏線を結構張る方だと思う。
    張ろうとして失敗している方
    上手く張りたい

    >●48.ぶっちゃけた話、やっぱり年齢が高いほど上手い文章が書ける?
    年齢は直接的には関係ない
    でも長く書いてる人の方がいい文章書いてる割合が多い気はする
    自分はもちろんダメな方です

    >●49.この人の本が出たら絶対読む! この人の影響を受けている! 好きなプロ作家さん・同人作家さんっています? 愛読書でも可。
    すぐ影響受けるからなぁ……
    愛読書は前からしつこく言ってるけどリサ・ランドールの「ワープする宇宙――5次元時空の謎を解く」
    あとは「図解雑学シリーズ」のいくつかと絵本の「おおきなき(ほんだきんいちろう訳版)」
    プロ作家さんでも同人作家さんでも、気にいったら既刊とその後発刊する本を根こそぎ買おうとするのが非常に悪い癖

    >●50.同人とかサークルってやってますか? 自分の本って出したい?
    サイトなら
    本はいずれ出したい気がしないこともない

    >●51.語彙(ゴイ、使える単語量)ってどうやって増やします?
    増やそうと意識したことは特にないけど本でも読めばいいんじゃないの? 多分

    >●52.ムラムラと執筆意欲が湧いてくる……のはこんな時!
    いいものに出会った時はやっぱり何か書きたくなるなぁ
    あと現実から全力で逃避したい時

    >●53.ポケモン以外の小説、書いたことありますか?
    ある。公開はしたことないしする予定もない

    >●54.小説を書く者として、一番大事だと思うもの。
    テンション

    >●55.他のポケモン小説書きさんの小説で、好きな作品を好きなだけ上げてください。
    No.017さんの「砂時計」「遅れてきた青年」
    586さんの「壁は夢の(ry」「或る管理者の嘆き」
    きとかげさんの「狐の子」
    クーウィさんの「雪の降る夜」
    はる○さんの「怪獣大決戦」
    乃響じゅん。さんの「飽食のけもの」(コンテスト版も連載版も)

    とりあえず思いつくままずらずら並べたけど書ききれてない感が満載

    >●56.他のポケモン小説書きさんの小説登場人物で、好きなキャラっています? 誰ですか?
    レンリ姐さんに踏まれt……ごめん何でもない
    CoCoさんの毒男さんと仲良くなりたいです割と本気で

    >●57.密かにライバルだと思っているポケモン小説書きさんはあの人だ! 最低一人は上げてくださいねw
    MAXさんは永遠の好敵手と勝手に思っている

    >●58.そういや今更だけど、ポケモン小説書き歴は○○年です。○○歳からです。
    公開したのはサイト始めた頃なんで、2004年の12月30日です

    >●59.ポケモン小説書きをやっていて嬉しかった事、辛かった事を一つずつ。
    嬉しかったのは面白いって言ってもらえたこと
    辛かったのはどんな時も妄想が頭からずっと離れなくて困ったこと

    >●60.何だかんだ言っても、自分の小説に誰よりハマッているのは自分自身だと思う……
    はい(即答)

    >●61.長く険しい人生。いつまでポケモン小説を書いていようかな……
    アイデア出尽くすまでは書いてるんじゃないかなぁ多分

    >●62.これからポケモン小説を書く方にアドバイスがあれば。
    キャラがどうのとか文章がどうのとかあーだこーだ言うのは書いてからでいいよ。外野も本人も
    (要約:とりあえず書けよ)



    ■おぷしょん1〜マサポケについて〜■

    >●63.いつ頃この『マサラのポケモン図書館』に辿り着きましたか?
    覚えていない
    少なくとも「ピジョンエクスプレス」は完結してなかった
    ネット始めた時期を考えると2002〜2003年くらい? かもしれない

    >●64.『ほびぃすてぇしょん』『おきらく ごくらく』『旧・マサポケ』……何の事だか分かります?
    旧マサポケをちらりと見たことがある気がする……
    いや、今はもうないけどあのサイトデザインには確かに見覚えがあったんだ……

    >●65.リアルタイムの親善空間・チャット。行きます? どれくらいの頻度で?
    チャット会があれば出来る限り
    人がいれば手が空いていれば大体見てる<●><●>

    >●66. 小説コンテスト出た事あります? 出てみたい?
    その節は大変お世話になりました

    >●67. ストーリーコンテスト・ベスト他、マサポケの本って持ってる? マサポケで本を出す事になったら参加したい?
    多分大体全部持ってると思う
    参加は紛れ込ませていただけるならば是非とも(

    >●68.鴨志田さんや鈴木ミカルゲさんの事、どう思う?
    鴨鍋食べたい

    >●69.我らがマサポケ管理人、No.017さんに一言贈ってください。
    今度おすすめの喫茶店教えてください

    >●70.これからマサポケではこれが流行る! これを流行らせたい!
    自分はブームを作るより、それを見て無視しつつたまにちょっかいを出すのが好きです



    ■おぷしょん2〜どうでもいいこととか〜■

    >●71.学校好きですか?(学生でない方は、好きでしたか?)
    空間自体は嫌いじゃない
    空気は嫌い

    >●72.ポケモン以外で好きなジャンル、アニメ・漫画・ゲーム。あります? 何ですか?
    野球(広島東洋カープ)
    ゼルダ
    逆裁・戦国BASARA
    手塚治虫作品
    ジョジョ(今一番アツい)

    >●73.音楽って聴きます? 好きなアーティストとかジャンルをお一つ。
    パンクロックからクラシックまで雑多に聴きます
    好きなアーティストはサザン

    >●74.ジブリの名作「となりのトトロ」の主人公って誰だと思います?
    とうもころし

    >●75.ここでお約束、あなたの恋愛話v 言えるところまで言ってみよう!
    ぶっちゃけ特に興味がない。申し訳ない

    >●76.♪なりたいな ならなくちゃ 絶対なってやる〜…… 将来の夢は? 恥ずかしがらなくていいですよw
    それなりに幸せに暮らしたいです

    >●77.さぁ、最後です。……邪魔するものは何も無い。今の想いを込め、好きなことを叫べ!!
    そろそろおなかすいた。コーヒー飲みたい


      [No.2739] Re: マサポケノベラーさんへ77の質問(2012年版)ちょっと修正 投稿者:aotoki   投稿日:2012/11/01(Thu) 22:32:20     138clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:77の質問

    ■あばうと みー■ 

    > ●1.My name is ○○○. まずは名前を教えてください。
    初めましての方は初めまして。また読んで下さった方は、ありがとうございます。aotokiと申すものです
    > ●2.↑とは言いましたが、実は×××とも名乗ってるんです…… HN複数持ってます?またそのHNは?
    そんな度胸も余裕もありません。
    > ●3.年齢・性別・生息地などなど。あなたの正体プリーズ。勿論言える範囲だけでOK。
    トーホク地方に暮らす女子高生だよJKwww
    > ●4.オールジャンルで(※全てにおいて)好きなもの。
    ミステリ、SF、タクシューさんのゲーム、黒猫、猫、ポケモン、ポケモン、ポケモン!
    > ●5.オールジャンルで嫌いなもの。
    虫と浅いだけの中二設定。
    > ●6.あなたの性格。自覚している長所や短所……
    感化されやすい癖にスイッチが固くて激しい。飽きっぽい
    > ●7.あなたを一言で表すと? 日本語でも英語でもスワヒリ語でもおっけー。
    付和雷同
    > ●8.あなたの職業は? 真面目に答えてもボケてもいいですよw
    女子高生だよJKwww
    > ●9.学校の教科で得意科目と苦手科目を一個づつ上げるとしたら?
    得意→理科 苦手→数学
    > ●10.持ってる資格とか賞罰。何でもいいから書いてみると……
    そろばん1級(キリッ

    ■インターネットライフ■
    > ●11.インターネット歴。いつからだったかなぁ……今何年になるかなぁ……
    6年強。
    > ●12.自分専用のパソコンって持ってます?
    ぎりぎりxpのオフライン専用VAIOをパソコンというなら。
    > ●13.ネットで便利だと思うこと。不便だと思うこと。
    便利なのはクスリと笑えるものに出会えること。不便なのはそれが本物か見分けがつかなくなってくること。
    > ●14.お気に入りのサイト、教えてくださいw
    マサポケ・ピジョンエクスプレスは言わずもがな、ですが・・・・
    「枯れた知識の水平思考」さん→http://d.hatena.ne.jp/hamatsu/
    ゲーム論・文化論とか深い事を書かれていて非常に面白いです。ただし亀更新なのが・・・・残念です

    > ●15.自分のホームページ、pixivアカウント、twitterアカウント等ありますか? 良かったらここでCMタイム。無論ジャンル問わず。
    POKENOVELさんに同名で小説置き場を作らせていただきました。
    ほとんど同じものしかまだありませんが、長編を始めようかなと思っております。

    ■ポケモンライフ■
    >
    > ●16.ポケモン歴は何年? また、ポケモンにはまった原因って何?
    10年目。入院した父の同室のあんちゃんが「青」をくれたのがすべての始まりでした。

    > ●17.あなたの持っているポケモンソフトを教えて!
    本編は青、銀、パール、ハートゴールド、ホワイト、ホワイト2
    派生はポケモンレボリューション・ポケダン時

    > ●18.こいつが俺のパーティだ! ゲームでのベストメンバー、教えてください。私はこんなコダワリを持ってパーティを選んでいます。なんてのもあったら。

    ラグラージ、シンボラー、ロトム、ホエルオー、ロズレイド、ウィンディ
    タイプ相性、コレ大事のヘタレパーティですwあとみず・じめんはかかせない。

    > ●19.アニメ見てるかー? ポケスペ読んでるかー? ポケモンカードやってるかー?
    みれないよー!おいつかないよー!やってるよー!

    > ●20.一番好きなポケモン! どうしても絞りきれなかったら複数回答も可。
    ラ グ ラ ー ジ     あと最近ダゲキに目覚めました
    > ●21.一番好きなトレーナー! ゲームでもアニメでもポケスペでも……
    ダイゴさん RSEチャンピオン戦のBGMはこっちの方がしっくりきます

    > ●22.一番好きな、技? アイテム? 属性? シリーズ? ……何かある?
    みず・じめん

    > ●23.21、22、23で答えた中から好きなお題を1つ、全力をあげて語り倒してください。惚気OK。親馬鹿OK。妄想暴走勿論OK。
    ラグラージの背中に乗ってぺたぺたしたいです。半分水に浸かって「なみのり」したいです。
    まぁドット絵は確かに好みわかれますけどみんな可愛いと思います。
    可愛いと思います。
    あとそろそろRSEのポケモンのドット絵は変えてあげるべきだと思います。粗い。

    > ●24.ポケモンファンの聖地、ポケモンセンター。行ったことある?
    近所なので週1で行ってます。聖地台無し。

    > ●25.主人公の名前=ゲーム中でのあなたの名前は?
    ずっと「カナタ」です。男女ともに。

    > ●26.あなた自身をポケモンに例えると、何が一番近いですか?
    ロトム

    > ●27.突然ですが、あなたはポケモンワールドのトレーナーだとします。名前、出身、手持ち、職業etc……「あなた」の設定を、参加型キャラメイキングの要領で。
    名前:アオト 出身:カイナシティ 手持ち;ラグラージ・シンボラー・ダゲキ 職業:学生
    トレーナーカードの文
    おねがい ダゲキ! きしかいせい して!

    > ■ポケモン小説書きライフ■
    > ●28.なぜポケモン小説を書こうと思った? きっかけになった作品とかあります?
    No.17さんが絵師さんとして好きで、「ポケライフ」の告知を見て、つい。

    > ●29.連載派? 短編派?
    短編しか書けません。

    > ●30.公式のキャラクターは小説に出すほう? それともオリトレ派? ポケモンのみ?
    公式は公式で犯したくないです。でも一回やってみたいです。
    オリトレ・・・・出したいなぁ・・・・長編でなぁ・・・・

    > ●31.あなたが今書いている小説。ズバリタイトルは!!
    「となりのポケット(仮)」

    > ●32.↑のあらすじ・特徴的なところ、ウリ等をどうぞ。
    あなたの隣にいる誰かは、ポケモンかもしれない。

    番号が後ろの不登校の男の子、竜野湖守(コモル)。坊主にマスク、一見不良の彼の正体は、なんと「コモルー」・・・・ポケモンだった!
    湖守の弟・リュウヘイ、ヤ●ザっぽい父・満太郎、隣の高校の伏木くん・・・・みんなみんな、人間の恰好をしたポケモンたち。
    ポケモンの世界に触れたことで、高校生・理子(サトコ)の暮らしは少しずつ変わっていく・・・・?

    > ●33.あなたの小説の中で、あなた自身が一番気に入ってるキャラは? どんな所が気に入ってる?
    湖守君(仮) あと短編の「お父さん」かな?
    ちょっとすれた、ひねたキャラが好きなんです。

    > ●34.あなたが今まで書いた小説の中で一番気に入っている話はどの作品? どのエピソード?
    >  よかったらその部分、見せて欲しいなぁ……。
    初投稿、そして黒歴史(笑)の「日曜は息子と遊園地に。」
    それ以外なら「バルーンフライト」の序盤ですかね。
    詳しくは「aotoki」で検索!(

    > ●35.オレの小説、何はなくともコレだけは頑張ってるぜ! ってのを最低でも一つ。
    あんまり飛ばしすぎない。おいてかない。
    > ●36.逆に、ここんとこ何とかしたいな……これからの課題だ、ってのも一つだけ。
    なので説明臭くなる。アクションが書けない。
    > ●37.小説に出すキャラ(ポケモンも含)の名前、どんな感じでつけます? 例もあげて教えてくれたら嬉しいなぁw
    本家に習って草の名前から取っています。
    古語多めです。

    > ●38.ついでだから小説のタイトルの由来や、副題(あれば)のつけ方も教えてもらおう。
    タイトルはほとんどそのまんまです。
    副題は某NISIOさんの初期作品に習って英語でやってます。

    > ●39.インスピレーションキタ━━━━━(゜∀゜)━━━━━!! アイディアが湧いてくるのはどんな時?
    本を読んだ後。知識が増えた後。
    あとワンフレーズが思いついた直後。

    > ●40.あなたの小説主人公は、実はあなた自身の鏡? それともどっちかというと、憧れの姿??
    キャラはキャラなので自己投影・あこがれはほぼないです。
    強いて言うなら、こんな人生送りたいです。

    > ●41.小説中にバトル描写って出すほう?
    出したいけど書けません。書きたいです。
    あと書くようなシチュエーションが作れません。

    > ●42.小説の中の性的描写、死ネタ、殺しネタ。あなたの意見を述べてください。
    立場をわきまえて、それが本当に書きたいものならいいと思います。

    > ●43.小説の中のやおいネタ、百合ネタ。あなたの以下同文。(意味が分からない人はパスOK)
    同上。二次創作も特に「立場をわきまえて」すれば。
    > ●44.小説の中のオリジナル地方、オリジナル技、オリジナルポケ。あな以下同文。
    読者を置いてかなければいいと思います。
    > ●45.打ち切り……
    それ日本誤ですか?

    > ●46.アイディアが全然湧かない!!? どうしよう……。スランプと、その脱出法について一通り。
    とりあえず読んだことのないもの・見たことのないものを見てみます。
    あと原点回帰。

    > ●47.後の展開に繋がる伏線を結構張る方だと思う。
    張れるほどの長さが書けません。

    > ●48.ぶっちゃけた話、やっぱり年齢が高いほど上手い文章が書ける?
    知識量で言うならば。
    でも逆に言えばよく考えられれば年なんて関係ないと思います。

    > ●49.この人の本が出たら絶対読む! この人の影響を受けている! 好きなプロ作家さん・同人作家さんっています? 愛読書でも可。
    愛読書は「田尻智 ポケモンを作った男」
    初期のポケモンの方が好きなので、田尻さんの本は読みたいです。数がないので。
    あとプロ作家さんなら伊坂幸太郎さん、西尾維新さん(初期)
    作家とは言えないけど巧舟さん(逆転裁判の方です)の影響はおっきいと思います。

    > ●50.同人とかサークルってやってますか? 自分の本って出したい?
    やっていません

    > ●51.語彙(ゴイ、使える単語量)ってどうやって増やします?
    ”本”を読む。

    > ●52.ムラムラと執筆意欲が湧いてくる……のはこんな時!
    疑問がわいたとき。

    > ●53.ポケモン以外の小説、書いたことありますか?
    黒歴史内なら。
    > ●54.小説を書く者として、一番大事だと思うもの。
    傷つく人を最小限にする。自分の書きたいものを書く。
    > ●55.他のポケモン小説書きさんの小説で、好きな作品を好きなだけ上げてください。
    > ●56.他のポケモン小説書きさんの小説登場人物で、好きなキャラっています? 誰ですか?
    > ●57.密かにライバルだと思っているポケモン小説書きさんはあの人だ! 最低一人は上げてくださいねw
    マサポケ歴が浅いので、まだ本棚ガサガサ状態です・・・・

    > ●58.そういや今更だけど、ポケモン小説書き歴は○○年です。○○歳からです。
    6か月。

    > ●59.ポケモン小説書きをやっていて嬉しかった事、辛かった事を一つずつ。
    嬉しかったこと→コメントがもらえたこと
    辛かったこと→自分の甘さに絶望したこと

    > ●60.何だかんだ言っても、自分の小説に誰よりハマッているのは自分自身だと思う……
    そうじゃなきゃ文って書けない気がします。

    > ●61.長く険しい人生。いつまでポケモン小説を書いていようかな……
    そりゃ、ポケモンが終わるまでです!
     
    > ●62.これからポケモン小説を書く方にアドバイスがあれば
    むしろくださ(ry


    > ■おぷしょん1〜マサポケについて〜■

    > ●63.いつ頃この『マサラのポケモン図書館』に辿り着きましたか?
    「ポケライフ」の頃。ついつい最近です。

    > ●64.『ほびぃすてぇしょん』『おきらく ごくらく』『旧・マサポケ』……何の事だか分かります?
    すみません。わかりません。

    > ●65.リアルタイムの親善空間・チャット。行きます? どれくらいの頻度で?
    あんまり行きません。

    > ●66. 小説コンテスト出た事あります? 出てみたい?
    是非出たいですが・・・・(遠い目)

    > ●67. ストーリーコンテスト・ベスト他、マサポケの本って持ってる? マサポケで本を出す事になったら参加したい?
    「ベスト」は持っています。いつか参加してみたいです。片隅でいいので。

    > ●68.鴨志田さんや鈴木ミカルゲさんの事、どう思う?
    いい人だと思います。

    > ●69.我らがマサポケ管理人、No.017さんに一言贈ってください。
    ぴじょんぴょん!嘘ですごめんなさい!
    これからも素敵な作品をお願いします!

    > ●70.これからマサポケではこれが流行る! これを流行らせたい!
    日常もの。ポケライフの常駐化を是非!


    ■おぷしょん2〜どうでもいいこととか〜■

    > ●71.学校好きですか?(学生でない方は、好きでしたか?)
    今は好きです。
    > ●72.ポケモン以外で好きなジャンル、アニメ・漫画・ゲーム。あります? 何ですか?
    漫画は「すこし本流から外れたジャンプもの」
    ゲームはタクシューさん作品全般・レイトンシリーズ、あとMOTHERも大好きです。

    > ●73.音楽って聴きます? 好きなアーティストとかジャンルをお一つ。
    サカナクション テクノ系好きです。
    > ●74.ジブリの名作「となりのトトロ」の主人公って誰だと思います?
    サツキ。
    > ●75.ここでお約束、あなたの恋愛話v 言えるところまで言ってみよう!
    好きな人が軽くゲイでした
    > ●76.♪なりたいな ならなくちゃ 絶対なってやる〜…… 将来の夢は? 恥ずかしがらなくていいですよw
    ロマンはゲーム系の仕事。 現実は研究職。

    > ●77.さぁ、最後です。……邪魔するものは何も無い。今の想いを込め、好きなことを叫べ!!
    ラグラージ愛してるぅぅぅぅぅぉっぇぅぃぁ(ry
    あとだれかゴーストトリックの良さを分かってぇっぇぇっぇぇぇぇぇぇ(ry


      [No.2738] Re: マサポケノベラーさんへ77の質問 投稿者:渡邉健太   投稿日:2012/11/01(Thu) 21:45:39     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    > 昔流行った○○の質問。
    > ふと思い出して、引っ張り出してきた。
    > ちょっと今にあわせて改造しようと思う
    >
    >
    > マサポケノベラーさんへ77の質問
    >
    > ■あばうと みー■ 
    >
    > ●1.My name is ○○○. まずは名前を教えてください。
    渡邉健太

    > ●2.↑とは言いましたが、実は×××とも名乗ってるんです…… HN複数持ってます?またそのHNは?
    「HN」は「本当の名前」の略号です。

    > ●3.年齢・性別・生息地などなど。あなたの正体プリーズ。勿論言える範囲だけでOK。
    年齢:35、性別:男、生息地:川崎(住居)、代々木・立川(職場)、下北沢(休日)

    > ●4.オールジャンルで(※全てにおいて)好きなもの。
    芸術哲学

    > ●5.オールジャンルで嫌いなもの。
    無粋

    > ●6.あなたの性格。自覚している長所や短所……
    長所は運がいいこと。短所は純文学をやっていること。

    > ●7.あなたを一言で表すと? 日本語でも英語でもスワヒリ語でもおっけー。
    Je suis fou!

    > ●8.あなたの職業は? 真面目に答えてもボケてもいいですよw
    サラリーマン、舞台監督、パートタイムアーティスト

    > ●9.国語 数学 理科 社会 英語……学校の教科で得意科目と苦手科目を一個づつ上げるとしたら?
    得意な教科は理科(天気図)、苦手な教科は理科(化学)

    > ●10.持ってる資格とか賞罰。何でもいいから書いてみると……
    ペーパードライバー免許、学芸員資格課程修了

    > ■インターネットライフ■
    >
    > ●11.インターネット歴。いつからだったかなぁ……今何年になるかなぁ……
    2000年から、13年経つ。

    > ●12.自分専用のPC(パソコン)って持ってます?
    ある。

    > ●13.ネットで便利だと思うこと。不便だと思うこと。
    便利:情報量の多さ
    不便:情報の不確かさ

    > ●14.お気に入りのポケモンサイト、教えてくださいw
    ない。

    > ●15.自分のホームページありますか?良かったらここでCMタイム。無論ジャンル問わず。
    ある。

    http://www3.to/ttol

    > ■ポケモンライフ■
    >
    > ●16.ポケモン歴は何年? また、ポケモンにはまった原因って何?
    もともとアナログゲーマーだったから、カードから入った。17、8年くらい前のことだと思う。

    > ●17.『GB(GBA)ソフト ポケットモンスター』あなたの持っているカセットは何色?
    緑、赤、金

    > ●18.こいつが俺のパーティだ!ゲームでのベストメンバー、教えてください。
    ウツボット、スピアー、ニドキング……、あとは忘れた。

    > ●19.私はこんなコダワリを持ってパーティを選んでいます。なんてのがあったら。
    たまたまゲットして、たまたま長く付き合ったやつ。

    > ●20.アニメ見てるかー?ポケスペ読んでるかー?ポケモンカードやってるかー?
    アニメ見てた。ポケスペ読んでた。ポケカやってた。

    > ●21.一番好きなポケモン!どうしても絞りきれなかったら複数回答も可。
    スピアー

    > ●22.一番好きなトレーナー!ゲームでもアニメでもポケスペでも……
    やまおとこ

    > ●23.一番好きな、技? アイテム? 属性? ……何かある?
    はっぱカッター

    > ●24.21、22、23で答えた中から好きなお題を1つ、全力をあげて語り倒してください。
    たぶん、それは愛だろう。

    > ●   惚気OK。親馬鹿OK。妄想暴走勿論OK。
    いま、11人目(のべ13人目)の恋人と付き合っている。子どもはほしいけれど、相変わらず結婚とは縁がない。
    そういう話ではなくて?

    > ●25.17以外のポケモン関連ソフト持ってます?ポケモンミニとかは?
    ない。

    > ●26.ポケモンファンの聖地、ポケモンセンター。行ったことある?
    東京、名古屋、大阪、横浜なら行った。

    > ●27.主人公の名前=ゲーム中でのあなたの名前は?
    ケンタ

    > ●28.あなた自身をポケモンに例えると、何が一番近いですか?
    ヤドキング

    > ●29.ポケモン以外にはまっているモノありますか?何ですか?
    非生産的で美しいもの

    > ●30.突然ですが、あなたはポケモンワールドのトレーナーだとします。
    > ●   名前、出身、手持ち、職業etc……「あなた」の設定を、参加型キャラメイキングの要領で。
    名前:ケンタ
    出身:中部地方ってあるの?
    手持ち:コクーン
    職業:文学者

    > ■ノベラーライフ■
    >
    > ●31.あなたが今書いている小説。ズバリタイトルは!!
    「ノストロ」

    > ●32.↑のあらすじ・特徴的なところ、ウリ等をどうぞ。
    高校一年の夏休みに、自由課題で100枚書いた。そのテーマを何度も書いている。
    人の、命の、宇宙の始まる所以について。

    > ●33.あなたの小説の中で、あなた自身が一番気に入ってるキャラは?どんな所が気に入ってる?
    ノストロ。おでこが後退し始めているところ。

    > ●34.作者オススメw あなたが今まで書いた小説の中で一番気に入っている話は何話?どの辺のエピソード?
    ニドラン♂を連れて公園でひなたぼっこをしている話。

    > ●35.一番書きやすいのはこんな感じのキャラ。また、自分の小説の中のこのキャラ。
    預言者。何を知っていても不都合ないから楽チン。

    > ●36.オレの小説、何はなくともコレだけは頑張ってるぜ!ってのを最低でも一つ。
    セックスをして、誰かが死ぬ。

    > ●37.逆に、ここんとこ何とかしたいな……これからの課題だ、ってのも一つだけ。
    もっと取材せないかん。

    > ●38.小説に出すキャラ(ポケモンも含)の名前、どんな感じでつけます? 例もあげて教えてくれたら嬉しいなぁw
    あくまで純文学をやっているから、日常的にあって違和感のない名前。
    特に好きな名字はサイトウ。

    > ●39.ついでだから小説のタイトルの由来や、副題(あれば)のつけ方も教えてもらおう。
    象徴的な比喩で一言。
    副題は付けない。文学の役割は説明することではない。

    > ●40.インスピレーションキタ━━━━━(゜∀゜)━━━━━!! アイディアが湧いてくるのはどんな時?
    電車の中で可愛い女の子のふくらはぎを眺めているとき。

    > ●41.アイディアが全然湧かない!!?どうしよう……。
    どうもしない。放っておけばいい。

    > ●42.あなたの小説主人公は、実はあなた自身の鏡?それともどっちかというと、憧れの姿??
    鏡。

    > ●43.小説の中の性的描写。あなたの意見を述べてください。
    娯楽小説における性交のシーンは、オノマトペが豊かで参考になる。
    純文学におけるセックスは、何かの比喩として描かれることが多く、つまりそこが勝負所になる。

    少なくとも人はセックスに始まり、死に終わるのだから、始まりを書かなければ話にならない。

    > ●44.小説の中の死ネタ、殺しネタ。あなたの意見を以下同文。
    人はセックスに始まり、死に終わるのだから、終わりを書かなければ人間が成立しない。

    > ●45.小説の中のやおいネタ、百合ネタ。あなたの以下同文。(意味が分からない人はパスOKです)
    俺、やおい好きだよ。聖闘士星矢とかサムライトルーパーだろ。

    芸術ってのは非生産的であることが前提だから、生産的でない(つまり同性の)性的な交わりってのは、ある意味芸術の要件は満たしてるんよ。あとは美しく描けるかどうかの問題。

    > ●46.小説の中のオリジナル技、オリジナルポケ。あな以下同文。
    新しいワザやら、新しいポケモンが出てこなかったら、オーキドは廃業だよ。宇宙はそんなに狭かないんだから、何が起きたっていいじゃねえか。

    > ●47.打ち切り……
    「魁!!男塾」のことか?

    > ●48.スランプと、その脱出法について一通り。
    自分の中のアイデアなんてのは、高が知れてる。町へ出て、知らないものを見聞きすれば、新しい話はいくらでも書ける。

    > ●49.後の展開に繋がる伏線を結構張る方だと思う。
    必要なものは書く。

    > ●50.ぶっちゃけた話、やっぱり年齢が高いほど上手い文章が書ける?
    たくさん読んで、たくさん書いたやつが上手くなる。長年そうなら、もちろん年齢が高い方が上手いだろうけどね。

    > ●51.同人とかサークル……やってますか?
    短歌結社を探してる。仕事が落ち着いたら、先生の下で勉強したい。

    > ●52.語彙(※ゴイと読む。使える単語量のこと)ってどうやって増やします?
    本を読む。マクドで女子高生の会話を聞く。

    > ●53.ムラムラと執筆意欲が湧いてくる……のはこんな時!
    風呂に入ってるとき。

    > ●54.ポケモンジャンル以外の小説、書いたことありますか?
    いろいろ。

    > ●55.小説を書く者として、一番大事だと思うもの。
    命を懸けて書いてるか。言葉のために死ねるか。命と天秤にかけられるほど、小説に打ち込んでいるか。

    > ●56.そういや今更だけど、ノベラー歴は○○年です。○○歳からです。
    小説を書くようになってからは19年くらい。「水たまり越えた……」で書いてたのは12年くらい前かな。

    > ●57.長く険しい人生。いつまで小説を書いていようかな……
    書きたきゃ死ぬまでかいてりゃいい。別に書いても税金取られやしないし。

    > ●58.この人の本があったら絶対読む! 好きなプロ作家さんっています?愛読書でも可。
    いまは特にいない。

    > ●59.ノベラーをやっていて嬉しかった事、辛かった事を一つずつ。
    特にない。

    > ●60.何だかんだ言っても、自分の小説に誰よりハマッているのは自分自身だと思う……
    作家は自分の作品を忘れるが、読者は覚えている。

    > ■おぷしょん1〜マサラのポケモンノベラー〜■
    >
    > ●61.いつ頃この『マサラのポケモン図書館』に辿り着きましたか?
    ポケスコの審査員で誘われてから。一年くらいか?

    > ●62.『ほびぃすてぇしょん』『おきらく ごくらく』『旧・マサポケ』……何の事だか分かります?
    ぜんぜん分からん。

    > ●63.他のノベラーさんの小説で、好きな作品を好きなだけ上げてください。
    ベストに載らなかった作品には、いくつか気に入ってるのがある。めんどいから挙げない。

    > ●64.他のノベラーさんの小説の登場人物で、好きなキャラっています?誰ですか?
    特にいない。

    > ●65.他のノベラーさんの小説に、感想つけてますか?どんな内容を?
    つまらない文章には何も書かない。
    真意は書いた通りのこと。少なくとも、面白いと思ったからコメントをしている。

    > ●66.最近流行のオンライン通信。実は私も発行してます?
    してない。

    > ●67.リアルタイムの親善空間・チャット。行きます? どれくらいの頻度で?
    審査発表のときだけ。

    > ●68.マサポケ誇る最先端技術、本棚アップローダーシステム。思うところを一言。
    特にない。

    > ●69.密かにライバルだと思っているノベラーさんはあの人だ! 最低一人は上げてくださいねw
    よく知らんけど。
    No.017さんは、よく取材してるから偉いと思うよ。ただのダチってだけで作品を評価はしない。ちゃんといいものを書いてる。

    > ●70.我らがマサポケ管理人、タカマサ様に一言贈ってください。
    あのひょろっとした彼だっけ。おつかれさま。


    > ■おぷしょん2〜どうでもいいこととか〜■
    >
    > ●71.学校好きですか?(学生でない方は、好きでしたか?)
    大学は天国だった。ずっとゼミ室で議論してたかった。

    > ●72.ポケモン以外で好きなアニメ・漫画・ゲーム。あります?何ですか?
    ドラえもん

    > ●73.音楽って聴きます? 好きなアーティストとかジャンルをお一つ。
    ポップス、ロックが好き。最近はアジカンとかアシッドマン。昔はリンドバーグ。付合いのあるミュージシャンの中ではBlossomとかSoonersがいい。

    > ●74.ジブリの名作「となりのトトロ」の主人公って誰だと思います?
    サツキ(主演女優っていう意味で、正当な主人公)

    > ●75.ここでお約束、あなたの恋愛話v 言えるところまで言ってみよう!
    中学のとき、先生と付き合ってた。

    > ●76.♪なりたいな ならなくちゃ 絶対なってやる〜…… 将来の夢は?恥ずかしがらなくていいですよw
    ギャラリーのオーナー。

    > ●77.さぁ、最後です。……邪魔するものは何も無い。 今の想いを込め、好きなことを叫べ!!
    休みがほしい。


      [No.2737] Re: マサポケノベラーさんへ77の質問(2012年版)ちょっと修正 投稿者:イケズキ   投稿日:2012/11/01(Thu) 21:08:26     241clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:池月は】 【青いもふもふ】 【ゾロアーク】 【奥さん】 【大好き】 【いい男】 【明日の】 【天気は】 【晴れるかな?】 【2667

    > 77の質問を統廃合したり、今にあったものに改めてみました。
    >
    > ■あばうと みー■ 
    >
    > ●1.My name is ○○○. まずは名前を教えてください。
     イケズキです。池月(いけ“づ”き)ではありません。 えぇ、断じて!

    > ●2.↑とは言いましたが、実は×××とも名乗ってるんです…… HN複数持ってます?またそのHNは?
    生喰とか生唼とか。結局読みはすべてイケズキです。ただし、池月では断じt(ry

    > ●3.年齢・性別・生息地などなど。あなたの正体プリーズ。勿論言える範囲だけでOK。
     歳は二十歳の未成年です(精神的に) 性別は男です。つまりは、けだものです(精神的に) 生息地はあっちの世界です(精神的に)

    > ●4.オールジャンルで(※全てにおいて)好きなもの。
     好きなもの……食べるの大好きです。今は特に焼肉食べたーい!

    > ●5.オールジャンルで嫌いなもの。
     嫌いなものなんてありません。みんな大好きだよ! チュッ(殴

    > ●6.あなたの性格。自覚している長所や短所……
     性格はいじっぱり……かな? この間学校の授業でエゴグラムなんて心理テスト受けたら従順な子供とか言われた。とりあえず子供心のある性格ということで

    > ●7.あなたを一言で表すと? 日本語でも英語でもスワヒリ語でもおっけー。
     どがーん!

    > ●8.あなたの職業は? 真面目に答えてもボケてもいいですよw
     学生です。合法的にお触りできる勉強してます(真顔

    > ●9.学校の教科で得意科目と苦手科目を一個づつ上げるとしたら?
     得意……英語かな。アルファベットとか全部言えるしネ! 苦手なのは数学。まじで苦手……

    > ●10.持ってる資格とか賞罰。何でもいいから書いてみると……
     剣道初段 あと小学生のときの夏休みの自由研究が賞とったけな タイトル「葉っぱの研究」


    > ■インターネットライフ■
    >
    > ●11.インターネット歴。いつからだったかなぁ……今何年になるかなぁ……
     小学生のころからちょくちょくと

    > ●12.自分専用のパソコンって持ってます?
     ただいまマイPCで質問に答えてます

    > ●13.ネットで便利だと思うこと。不便だと思うこと。
     便利なのは気になったことをすぐに調べられること。不便なのは調べた内容が簡単に信用できないこと

    > ●14.お気に入りのサイト、教えてくださいw
    「マサラのポケモン図書館」っていう素晴らしいポケモン二次創作の交流サイトがありましてね(ry

    > ●15.自分のホームページ、pixivアカウント、twitterアカウント等ありますか? 良かったらここでCMタイム。無論ジャンル問わず。
    自サイトはないです。自分にはとてもとても管理できません
    ついったーは Tokio312  ぴくしぶは 2344068



    > ■ポケモンライフ■
    >
    > ●16.ポケモン歴は何年? また、ポケモンにはまった原因って何?
     15〜16年くらい。当時の友達がやっているのがうらやましくって緑バージョンを買ってもらったのがはじまり

    > ●17.あなたの持っているポケモンソフトを教えて!
     赤・青・緑・金・クリスタル・ルビー

    > ●18.こいつが俺のパーティだ! ゲームでのベストメンバー、教えてください。私はこんなコダワリを持ってパーティを選んでいます。なんてのもあったら。
     フシギバナ・スリーパー・サンダース・サイドン・サワムラー・ピジョット
    こいつらのいる緑バージョンのデータが消えて、任天堂にカセットの修理を頼んだのはいい思い出

    > ●19.アニメ見てるかー? ポケスペ読んでるかー? ポケモンカードやってるかー?
     アニメは今でも。ポケスペの途中までは読んだことがある。ポケカは勝負しないけどもイラスト欲しさにたまに買うことがある

    > ●20.一番好きなポケモン! どうしても絞りきれなかったら複数回答も可。
     ミュウツー ブーバーン ゾロアーク

    > ●21.一番好きなトレーナー! ゲームでもアニメでもポケスペでも……
     サカキさん……かな? 

    > ●22.一番好きな、技? アイテム? 属性? シリーズ? ……何かある?
     好きな技は「だいもんじ」 アイテムなら「じてんしゃ」 属性なら「ほのお」 シリーズなら「緑」

    > ●23.21、22、23で答えた中から好きなお題を1つ、全力をあげて語り倒してください。惚気OK。親馬鹿OK。妄想暴走勿論OK。
     ミュウツー強い! ブーバーンかっこいい! ゾロアークもふもふ!

    > ●24.ポケモンファンの聖地、ポケモンセンター。行ったことある?
     サッポロとオーサカとナゴヤに

    > ●25.主人公の名前=ゲーム中でのあなたの名前は?
     ある時からどのバージョンでも「トキオ」

    > ●26.あなた自身をポケモンに例えると、何が一番近いですか?
     ゾロアークかな(池月的な意味で)
     奥さん息子思いの良い奴ですよねぇ!

    > ●27.突然ですが、あなたはポケモンワールドのトレーナーだとします。名前、出身、手持ち、職業etc……「あなた」の設定を、参加型キャラメイキングの要領で。
     名前:トキオ 出身:コトブキシティ 手持ち:ゾロアーク 職業:フリーターのスキンヘッド
     夢半ばで断念し、冬のコトブキシティで相棒のゾロアークと身を寄せ合いもふもふと体を温める日々。「お腹へったな、ゾロアーク」と声をかければ、目の前に豪勢な食事が現れる。喜び駆け寄り手を触れれば、雪の冷たさが幻影から現実へ景色を正す。
     「ごめんな……」
     もふもふにつもった雪を振り払いまた眠る。
     
     つまり腹の減ったもふもふ好きのダメ野郎です
    (
    >
    >
    > ■ポケモン小説書きライフ■
    >
    > ●28.なぜポケモン小説を書こうと思った? きっかけになった作品とかあります?
     書こうと思った理由は、外食に出かけたレストランで待ち時間の暇つぶしに。きっかけになった作品はCoCoさんんの「風になった悪魔」 ポケモンを使った物書きでこんな作品が出来るんだと感動したのが、きっかけ。

    > ●29.連載派? 短編派?
     短編派……というよりも、長編なんて書ききる自信も一貫性を保つ自信もないので書けません

    > ●30.公式のキャラクターは小説に出すほう? それともオリトレ派? ポケモンのみ?
     出すときには出す。キャラクター中心の作品というよりも、ポケモンという世界観を構成する一部分として登場することはある。
     オリトレ・ポケモンのみの方が多い。自分にはその方がストーリー進めるのに自由がきいていいので。 

    > ●31.あなたが今書いている小説。ズバリタイトルは!!
     「Out of お堀」

    > ●32.↑のあらすじ・特徴的なところ、ウリ等をどうぞ。
     あらすじ「堀の外を目指す親友。僕はその姿を隣でいつも見ていた。そんなある日、見慣れないおじいさんが町にいるのに気が付いた……」
     特徴は「塀」じゃなくて「堀」なところです。ウリは、久方さんがきっと知っているw

    > ●33.あなたの小説の中で、あなた自身が一番気に入ってるキャラは? どんな所が気に入ってる?
     一番気に入っているのは去年書いた「創るということ」という話の中の主人公「私」 物書きとしての自分のなかの今の立場とか考えとか、目指していくスタンスとか戒めみたいのがすべて彼一人で表現されているから。

    > ●34.あなたが今まで書いた小説の中で一番気に入っている話はどの作品? どのエピソード?
    >  よかったらその部分、見せて欲しいなぁ……。
     どの話もそれなりに思い入れはあるけども、今は特に「てく 〜いやしん坊ラルトス〜」という話。
     だいぶふざけた書き方した作品だけども、内容は経験から書いたもので、結構自分の中ではシビアな話。
     最後の方にある「――あぁ、僕はてくに悪いことしちゃったんだなぁ」という一文は特別複雑な思いを込めた部分なので、もしもまた皆さんに読んでいただける機会があったらそこに注目していただけたらとっても嬉しいです。

    >
    > ●35.オレの小説、何はなくともコレだけは頑張ってるぜ! ってのを最低でも一つ。
     頑張っているという意味では描写かな。心情とか景色とか、一応がんばってはいますw

    > ●36.逆に、ここんとこ何とかしたいな……これからの課題だ、ってのも一つだけ。
     キャラの個性を生かした作品を作ること。ストーリーばかり先行してしまう

    > ●37.小説に出すキャラ(ポケモンも含)の名前、どんな感じでつけます? 例もあげて教えてくれたら嬉しいなぁw
     必要ない限りはキャラに名前をつけていないです……。余程理由がある時にはそのキャラの個性に即したものとか実在する人物から拝借したり
    ( 例をあげると「幸せな悪夢」という話に出てくるダークライの“クラウン”は、仕事上人間を泣かせてポケモン達を笑顔にする道化師という部分から。
     「創るということ」で登場はしませんが、話のなかで個展を開いている“ヤマシタユウゾウ”というのは、山下清と佐伯祐三の名前からとっています。

    > ●38.ついでだから小説のタイトルの由来や、副題(あれば)のつけ方も教えてもらおう。
     ふと思いつくときもありますが、自分はたいていの作品を言いたいことのテーマというのを決めて書いているので、それに合わせて。まんますぎるとアレな気がするのでそれなりに捻ったりもしますが「手に入れるということ」とか「創るということ」みたいなそのまんまな奴もw

    > ●39.インスピレーションキタ━━━━━(゜∀゜)━━━━━!! アイディアが湧いてくるのはどんな時?
     寝る直前にコーヒーを飲んでしまいうとうとしつつも眠れなくて布団のなかでもぞもぞしているとき

    > ●40.あなたの小説主人公は、実はあなた自身の鏡? それともどっちかというと、憧れの姿??
     どちらもあるし、全然関係ない人物のときもある

    > ●41.小説中にバトル描写って出すほう?
     書きたいとおもうけども、上手くかけないのでそんなには……ちょくちょくくらい

    > ●42.小説の中の性的描写、死ネタ、殺しネタ。あなたの意見を述べてください。
     ストーリー上必要なら入れて、必要なかったらいれないで。そういうネタに限った事ではないと思うけども、悪戯に要素を盛り込んだり逆に無くしすぎたりしすぎるのはちょっと……と思う。ディープな恋愛話に性的描写がなかったり、一生を書いた話に死がなかったり、命のやり取りする話に殺しがなかったりというのはむしろ物足りなくなってしまう気がする。もちろん、そういうのが読みたくない人へ向けて注意は必要ですが
     つまり、おもしろけりゃOK!
     
    > ●43.小説の中のやおいネタ、百合ネタ。あなたの以下同文。(意味が分からない人はパスOK)
     同上。必要ならば入れて、注意書きもして

    > ●44.小説の中のオリジナル地方、オリジナル技、オリジナルポケ。あな以下同文。
     おもしろけr
    (
    > ●45.打ち切り……
     悲しい

    > ●46.アイディアが全然湧かない!!? どうしよう……。スランプと、その脱出法について一通り。
     手を止めてコーヒーを一杯

    > ●47.後の展開に繋がる伏線を結構張る方だと思う。
     頑張れてないと思う
    (
    > ●48.ぶっちゃけた話、やっぱり年齢が高いほど上手い文章が書ける?
     マサポケでそれは答えるまでもない! 年齢なんて飾りってことがよくよく思い知らされますw

    > ●49.この人の本が出たら絶対読む! この人の影響を受けている! 好きなプロ作家さん・同人作家さんっています? 愛読書でも可。
     影響を受けている……今はいしいしんじさんという作家さんの本が好きです。

    > ●50.同人とかサークルってやってますか? 自分の本って出したい?
     同人もサークルもやってないです。自分の本があったら完成したのをみてみていとは思うけども出すなんてとてもとても
    (
    > ●51.語彙(ゴイ、使える単語量)ってどうやって増やします?
     本読む

    > ●52.ムラムラと執筆意欲が湧いてくる……のはこんな時!
     いやーなことがあった時

    > ●53.ポケモン以外の小説、書いたことありますか?
     一度だけ。

    > ●54.小説を書く者として、一番大事だと思うもの。
     プロじゃないのだから、自分が楽しいのが一番大事

    > ●55.他のポケモン小説書きさんの小説で、好きな作品を好きなだけ上げてください。
     CoCoさん「風になった悪魔」
     巳佑さん「数十年と千年過ぎ去りても――。」
     ふにさん「同じ“好き”と違う“好き”」
     風間深織さん「主人とたわし、タッチペン」

    > ●56.他のポケモン小説書きさんの小説登場人物で、好きなキャラっています? 誰ですか?
     らぃくん、かぃちゃん(from ふにさん)
     棒、マスカーン (from 風間さん)
     長老、灯夢ちゃん (from 巳佑さん)
      
     もふもふって……いいですよねぇ!

    > ●57.密かにライバルだと思っているポケモン小説書きさんはあの人だ! 最低一人は上げてくださいねw
     ライバル……あまり張り合って物書くことないので難しいっすね……
     強いて挙げさせていただくならクーウィさん。クーウィさんのような表現力とか展開の上手さとか、少しでも追いついていけたらという、ライバルっていうよりも目標にさせてもらっています。 

    > ●58.そういや今更だけど、ポケモン小説書き歴は○○年です。○○歳からです。
     二年目になりました。成長は……できてたらいいなぁ
    (
    > ●59.ポケモン小説書きをやっていて嬉しかった事、辛かった事を一つずつ。
     初めて出した作品でサトチさんに感想をいただいたこと。
     辛かったことは忘れました
    (
    > ●60.何だかんだ言っても、自分の小説に誰よりハマッているのは自分自身だと思う……
     自分以上にハマる人はいないでしょう!

    > ●61.長く険しい人生。いつまでポケモン小説を書いていようかな……
     これで満足ってのが書けるまで(=いつまでも

    > ●62.これからポケモン小説を書く方にアドバイスがあれば。
     羞恥心もややこしいルールも忘れて、とりあえず言葉並べてみてください。そのうち「物」になります



    > ■おぷしょん1〜マサポケについて〜■
    >
    > ●63.いつ頃この『マサラのポケモン図書館』に辿り着きましたか?
     一昨年の冬だったか春頃

    > ●64.『ほびぃすてぇしょん』『おきらく ごくらく』『旧・マサポケ』……何の事だか分かります?
     くー……知らないー

    > ●65.リアルタイムの親善空間・チャット。行きます? どれくらいの頻度で?
     行きますよー。この頃はあまり行けてないのですが、いましたときにはどうぞどうぞ絡んでやってください! あと、池月がいた時にも優しく
    (
    > ●66. 小説コンテスト出た事あります? 出てみたい?
     一度だけ。これからも……出てみたいなぁ

    > ●67. ストーリーコンテスト・ベスト他、マサポケの本って持ってる? マサポケで本を出す事になったら参加したい?
     ストコンベストは。

    > ●68.鴨志田さんや鈴木ミカルゲさんの事、どう思う?
     よっ! マサポケの二大看板!!

    > ●69.我らがマサポケ管理人、No.017さんに一言贈ってください。
     ストコンベストや普段の企画運営おつかれさまです!

    > ●70.これからマサポケではこれが流行る! これを流行らせたい!
     もふもふが流行る! いや、流行らせる!(by 池月)


    >
    >
    > ■おぷしょん2〜どうでもいいこととか〜■
    >
    > ●71.学校好きですか?(学生でない方は、好きでしたか?)
     いろいろ大変なことも多いっすけど、好きですよー

    > ●72.ポケモン以外で好きなジャンル、アニメ・漫画・ゲーム。あります? 何ですか?
     他かぁ……実のとこ自分は周りに話すとドン引きされるくらいポケモンばっかでやってきているので特にないです

    > ●73.音楽って聴きます? 好きなアーティストとかジャンルをお一つ。
     聞きますよ! いろいろなジャンル聞きますが、多いのはロックですね。アーティストはサカナクションとか相対性理論とかリンキンパークとか……
     とりあえずsiriはとっととサカナクションを流すべき!

    > ●74.ジブリの名作「となりのトトロ」の主人公って誰だと思います?
     ネコバス? ……いやいや冗談ですよw まっくろくろすけでしょ!
     えぇ、まっくろくろすけ
     まっくろくろすけです

    > ●75.ここでお約束、あなたの恋愛話v 言えるところまで言ってみよう!
     ふっふっふ!(赤面

    > ●76.♪なりたいな ならなくちゃ 絶対なってやる〜…… 将来の夢は? 恥ずかしがらなくていいですよw
     理学療法士です。この身一つで人の一生変えて見せます!(どがーん

    > ●77.さぁ、最後です。……邪魔するものは何も無い。今の想いを込め、好きなことを叫べ!!

     エリスー!! 遅くなったけど、今帰るからねー!!!
     あともうちょっと待っててねーー!


      [No.2736] トップページはこっち! 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/11/01(Thu) 20:52:24     84clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ツッコミ


    > > ●14.お気に入りのサイト、教えてくださいw
    >  マサポケは当然なのでさておき(w)、
    >  ポケモンの個人サイトであれば「E-log」さんが惚れ惚れします。
    >  http://pearlsaurus.fc2web.com/elog.html


    ミオ君、それE-logさんやない!PEARL MODEさんや!
    トップページはこっち! 
    ミオくんが見てるのはフレーム内の1ページだよー
    http://pearlsaurus.fc2web.com/


      [No.2735] Re: マサポケノベラーさんへ77の質問 投稿者:小樽ミオ   《URL》   投稿日:2012/10/31(Wed) 13:54:06     225clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:わーい、タグを初めて使うぞぉー!】 【77の質問】 【かがみの国のお姫さま】 【もも色の花の咲くころに】 【せつないせつない恋をした】 【いってしまった王子さま】 【ろくどの春が過ぎ去った】 【うたいつづけるお姫さま】 【めも眩むほどの恋をした】 【えいえんの日々を想いつつ

    > 77の質問を統廃合したり、今にあったものに改めてみました。
    よろしくお願いいたします。



    > ■あばうと みー■ 

    > ●1.My name is ○○○. まずは名前を教えてください。
     小樽ミオと申します。「おたる」です。本人は地名と違って一音目にアクセントを置いてます。

    > ●2.↑とは言いましたが、実は×××とも名乗ってるんです…… HN複数持ってます?またそのHNは?
     ジャンルごとに使い分けていたのを引きずってる。最近ごっちゃになりつつあるので注意したい。

    > ●3.年齢・性別・生息地などなど。あなたの正体プリーズ。勿論言える範囲だけでOK。
     学生/♂/ソウシュウ地方在住

    > ●4.オールジャンルで(※全てにおいて)好きなもの。
     ウサギが好きです!

    > ●5.オールジャンルで嫌いなもの。
     よくあるラブコメはちょっと苦手。修羅場を作りまくって主人公の女の子をいじめるのはやめたげてよお!

    > ●6.あなたの性格。自覚している長所や短所……
     良くも悪くもマイペース。慌てないクセがついてしまって困っています。

    > ●7.あなたを一言で表すと? 日本語でも英語でもスワヒリ語でもおっけー。
     自由気まま。

    > ●8.あなたの職業は? 真面目に答えてもボケてもいいですよw
     夜な夜などうしたらムウマの魅力をより引き出して描けるか妄想する研究員。

    > ●9.学校の教科で得意科目と苦手科目を一個づつ上げるとしたら?
     選びにくいですが 得意:英語(最近衰え始めてる)  苦手:物理  でしょうか。

    > ●10.持ってる資格とか賞罰。何でもいいから書いてみると……
     語学系の検定をちらほら。賞罰の罰は忘れもしないオフ会時のコスプレ。



    > ■インターネットライフ■

    > ●11.インターネット歴。いつからだったかなぁ……今何年になるかなぁ……
     中学生の途中から。それ以前はワープロで作品を打っていました。

    > ●12.自分専用のパソコンって持ってます?
     ノートパソコンを一台。したい放題、やり放題(意味深)

    > ●13.ネットで便利だと思うこと。不便だと思うこと。
     便利だと思うのは調べをつけるのが大変に容易な点。
     不便だと思うのは余計な調べものまで容易な点。

    > ●14.お気に入りのサイト、教えてくださいw
     マサポケは当然なのでさておき(w)、
     ポケモンの個人サイトであれば「E-log」さんが惚れ惚れします。
     http://pearlsaurus.fc2web.com/elog.html

    > ●15.自分のホームページ、pixivアカウント、twitterアカウント等ありますか? 良かったらここでCMタイム。無論ジャンル問わず。
     ひっそり売れない夜なきの屋台を引いています。
      「夜なき亭」http://yonakitei.yukishigure.com/



    > ■ポケモンライフ■

    > ●16.ポケモン歴は何年? また、ポケモンにはまった原因って何?
     ポケモンは私の義務教育でした。赤版以来なのでたぶん13年くらい。
     両親がゲームボーイといっしょに買ってくれた赤版とアニメがきっかけでした。

    > ●17.あなたの持っているポケモンソフトを教えて!
     赤→金→サファイア→ダイヤモンド→ブラック
     あとは「ポケモンスタジアム」と「ポケモンスタジアム金銀」を持っています。

    > ●18.こいつが俺のパーティだ! ゲームでのベストメンバー、教えてください。私はこんなコダワリを持ってパーティを選んでいます。なんてのもあったら。
     バトル勢ではないので好きなポケモンを好きなように。
     でも、好きなポケモンで極めに極めて対戦できたら、きっとどんな結果が出ても楽しいですよね!

    > ●19.アニメ見てるかー? ポケスペ読んでるかー? ポケモンカードやってるかー?
     アニメはよく見ていました(今はあまり見れていません)。
     ポケスペは読んだことがないけれど、実はポケモンカードは結構持ってる。ハネッコかわいい。キルリアのイラストが狙ったようにひy。

    > ●20.一番好きなポケモン! どうしても絞りきれなかったら複数回答も可。
     ムウマ!! 好きなポケモンはいっぱいいるけどいちばんはムウマ!!

    > ●21.一番好きなトレーナー! ゲームでもアニメでもポケスペでも……
     フヨウさん! 性格も話し方も、今までいなかったタイプのコスチュームも好きだー!

    > ●22.一番好きな、技? アイテム? 属性? シリーズ? ……何かある?
     それぞれにそれぞれの魅力があって一番はなかなか決めづらいです。
     「ゆめくい」みたいなちょっと怖い系、「はめつのねがい」みたいなぶっ壊れた系、「このゆびとまれ」みたいなかわいい系、などなど。

    > ●23.21、22、23で答えた中から好きなお題を1つ、
    >  全力をあげて語り倒してください。惚気OK。親馬鹿OK。妄想暴走勿論OK。
     あえて長くは語るまいこの魅力。
     下を向いた半月のようなぱっちりおめめ、色の分かれた瞳の奥。ジト目だってステキ。
     髪は紫、風と戯れたかのような、くしゃくしゃの。しゅるりしゅるりら、空を漂うさまが愛おしい。
     人を脅かすことで力を得る、そんなイタズラっ子なところがたまらない。逆にイタズラしたくなる。
     そして何より大きすぎず、小さすぎず。ふよふよ浮く体はちょうど両腕の中に抱きしめられそうな。
     ここに毎晩毎晩呆けたようにおいしそうな夢を見ている人間がいるんですが、どうして夢を喰らいに来てくれないんでしょうねぇ。ムウマちゃん。

     もしかして:心が不純だから(←New!!

    > ●24.ポケモンファンの聖地、ポケモンセンター。行ったことある?
     トーキョーは移転前に一度、移転後に数回。
     サッポロは正式開業の前にやっていた期間限定開業のころに一度。

    > ●25.主人公の名前=ゲーム中でのあなたの名前は?
     本名でやってみたり、友達の名前で突き進んでみたり、小学生時代はギャグで女の子を選んだり。
     最近は自分やその周囲とはまったく関係のない名前をつけてます。
    >
    > ●26.あなた自身をポケモンに例えると、何が一番近いですか?
     ヌオーでしょうか。のんびりマイペースそうなところとか。頭もよくぶつけるしね(笑)

    > ●27.突然ですが、あなたはポケモンワールドのトレーナーだとします。名前、出身、手持ち、職業etc……「あなた」の設定を、参加型キャラメイキングの要領で。
     名前:みずのお  出身:片田舎  手持ち:きっとムウマ  職業:モラトリアム系学生
     その他:一眼レフを提げて、肩元をただようムウマといっしょにポケモンのいる風景を写真に収めて旅をする男子。



    > ■ポケモン小説書きライフ■

    > ●28.なぜポケモン小説を書こうと思った? きっかけになった作品とかあります?
     ポケモンが好きなのがもちろん根底にあったと思います。
     「好きなものでおはなしを書いてみてもいいんだ!」と知ったきっかけは、たぶん『滅びと目覚め』というポケモン二次創作です。懐かしいな。

    > ●29.連載派? 短編派?
     ゆくゆくは連載もしてみたい短編派。昔は連載もしていたけどやっぱり頓挫した。
     もちろん諦めちゃいない。つっかえるのは表現に足る技術をまだ持っていないからこそと信じたい。

    > ●30.公式のキャラクターは小説に出すほう? それともオリトレ派? ポケモンのみ?
     オリトレ派 > ポケモンのみ >公式キャラ 。
     公式キャラは原作から見える設定を骨組みに、あれこれ想像をめぐらせて描くのが楽しいです。何より好きキャラを書ける幸せがあります。
     ポケモンの薄い本はほとんど公式キャラでびっくりしたんだぜ……(よく考えれば何も不思議ではない)

    > ●31.あなたが今書いている小説。ズバリタイトルは!!
     『りゅうせいぐん』。

    > ●32.↑のあらすじ・特徴的なところ、ウリ等をどうぞ。
     今夜は星が降るから。そう言って彼は彼女を連れだした。
     星座みたいなきらきらタッチ。久々にあったかいおはなしが書きたくなった。

    > ●33.あなたの小説の中で、あなた自身が一番気に入ってるキャラは? どんな所が気に入ってる?
     この質問はいろんな作品が「完成」した段階でまた答えたい質問ですな……!
     今完成している小説では『ふうりんのうたうとき』の「チリーン」。作品モチーフそのものの「ささやかな嫉妬心」。

    > ●34.あなたが今まで書いた小説の中で一番気に入っている話はどの作品? どのエピソード?
    >  よかったらその部分、見せて欲しいなぁ……。
     この質問も改めて答えたいですね……!
     今完成している作品だとまたもや『ふうりんのうたうとき』。次点はポケノベさん春企画の『リフレッシュ』。
     ちなみに小説以外であれば詩?の『夏の日の帰り道』。

    > ●35.オレの小説、何はなくともコレだけは頑張ってるぜ! ってのを最低でも一つ。
     きらきら、ふわふわしてるところ。

    > ●36.逆に、ここんとこ何とかしたいな……これからの課題だ、ってのも一つだけ。
     躍動感や疾走感にあふれる小説も書けるようになる。あとは遅筆をなんとかする。

    > ●37.小説に出すキャラ(ポケモンも含)の名前、どんな感じでつけます? 例もあげて教えてくれたら嬉しいなぁw
     パターンその1:そもそも名前がない
      例:『ふうりんのうたうとき』の「チリーン」、『雪に咲く若葉』の「リーフィア」など、大半。
     パターンその2:ストーリーのキーワードから引っ張ってくる
      例:「月」や「星」などの天体。
     パターンその3:ポケモンの種族の特徴をキーワードに引っ張ってくる
      例:「ちるり」(チルタリスの鳴き声)。他にも「光」や「翼」にちなんだ名前など。
     パターンその4:言葉遊びやアナグラム
      これが「名無し」の次に多いかも。これはあまり言ってしまうとおもしろくないのでおくちうさちゃん。・×・

    > ●38.ついでだから小説のタイトルの由来や、副題(あれば)のつけ方も教えてもらおう。
     ワザの名前をモチーフに作品を書いて、ワザの名前をそのままタイトルにする。
     リズム感や語感の意識。単なるひらめき。などなど。題するのが苦手なので感じたままにつけることが多いです(苦笑)

    > ●39.インスピレーションキタ━━━━━(゜∀゜)━━━━━!! アイディアが湧いてくるのはどんな時?
     出かけたとき、電車に乗っているとき、寝転がっているとき、トイレに座っているとき。
     「電車に乗っているとき」と「トイレに座っているとき」は私のイチオシ。ただし弟は「ねえわ(笑)」と一蹴。

    > ●40.あなたの小説主人公は、実はあなた自身の鏡? それともどっちかというと、憧れの姿??
     作品によってまちまちですが、どの作品がどうか言ってしまったら面白くないですよね(笑)
     昔は憧れを部分部分に分けて投射してキャラづくりをしていた作品がありました。今はストーリーの必然性から生まれてくることが多いですが、この手法はとってつけた感じがひどいのが悩み。

    > ●41.小説中にバトル描写って出すほう?
     今はあまりバトルしないですねぇ……でもバトルは醍醐味のひとつだと思っているので、存分に書きたい!

    > ●42.小説の中の性的描写、死ネタ、殺しネタ。あなたの意見を述べてください。
     死ネタは必然性があったらなおよいです。

    > ●43.小説の中のやおいネタ、百合ネタ。あなたの以下同文。(意味が分からない人はパスOK)
     ダイジョーブ! とはいえタッチ次第で好みの差は少なからずあると思います。

    > ●44.小説の中のオリジナル地方、オリジナル技、オリジナルポケ。あな以下同文。
     オリジナルの街を奪われたら私のものを含めいろんな作品が突然の死を迎えちゃいます。
     オリワザ・オリポケは、既存のワザ・ポケモンと違って作者と読者の間に共通認識がないので、書く以上想像にたやすい丹念な描写が必要になるのかなと思います。

    > ●45.打ち切り……
     気合さえ続けば打ち切られないのが物好きものかきのいいところ。
     プロの方は勿体ない気がするけれど、一番つらいのは作者ご本人なんだろうなぁ……

    > ●46.アイディアが全然湧かない!!? どうしよう……。スランプと、その脱出法について一通り。
     作業環境を変えてみる。飲み物を飲んだり音楽を聞いたりする。歌っちゃう。
     でもダメなときはとことんダメなので、その先をどうにかする技術を真剣に検討すべきなのだと反省。

    > ●47.後の展開に繋がる伏線を結構張る方だと思う。
     張れません。努力不足。

    > ●48.ぶっちゃけた話、やっぱり年齢が高いほど上手い文章が書ける?
     「技術の巧拙に年齢は関係ない。疑う者はマサポケを見よ」。ここに来て嫌と言うほど思い知らされました……

    > ●49.この人の本が出たら絶対読む! この人の影響を受けている! 好きなプロ作家さん・同人作家さんっています? 愛読書でも可。
     同人誌即売会初心者の私にも、「この方が本を出してたら絶対買いに行く!」というサークルさま/作者さまができました。
     私自身はひそやかに「この方が同人誌を出したら買いに行くのに……!」という方が多いので、実は照れくさがって言わないだけで、あなたの作品にも熱烈なファンがいるのかも……。
     ちなみに好きな本は「宮沢賢治全集」。

    > ●50.同人とかサークルってやってますか? 自分の本って出したい?
     ゲスト参加程度ならあります。もちろん自分の本は出してみたい!

    > ●51.語彙(ゴイ、使える単語量)ってどうやって増やします?
     たぶんとにかく読んでいる気がする。他の方の作品を拝読したり、戯れに辞書を眺めたり。

    > ●52.ムラムラと執筆意欲が湧いてくる……のはこんな時!
     布団の中(意味深)

    > ●53.ポケモン以外の小説、書いたことありますか?
     オリジナルとか、どうぶつの森とか。もともとオリジナル畑の人間です。

    > ●54.小説を書く者として、一番大事だと思うもの。
     好きなものを好きなように書くこと。そして好きであることを隠さないこと。

    > ●55.他のポケモン小説書きさんの小説で、好きな作品を好きなだけ上げてください。
     マサポケ文庫から出版されたコンテスト小説、それから個人誌は何度読んでも唸ってしまう。
     この手の質問は本当にキリがなくなってしまうので、上記以外から忘れえぬ作品を、両手で数えられるくらいに。
     せっかくなので、少し古めの作品から挙げさせていただきますね(もちろん、例外ありw)

     No.017さん『砂時計』(最初に読んだNo.017さんの作品)・『見上げる視線』
     YANさん『ウザいあいつら』(お前らホウエン行ったんじゃないのか!?)
     586さん『「・−− ・−・ −−− −・ −−・」 』(wrong)(最初に読んだ586さんの作品)
     クロトカゲさん『やさしいきいろとうつくしいくろ』『稲妻の道』(頭に強烈な一発を見舞われました。二度も)
     巳佑さん『もふパラから見た世界史』(嫁入りの日の長老の涙でグッと来ました)
     ヌオー使いさん『なつとも!』(幼いころの夏休み、毎日読みに通ったあの日。)
     レイカスさん『風にさらわれたスカーフ』(うわあああああ! うわあああああ!(ゴロンゴロン)) 

    > ●56.他のポケモン小説書きさんの小説登場人物で、好きなキャラっています? 誰ですか?
     まだ名前を出していない作品から。
     スズメさんちの「ステイ」ちゃん。イケズキさんちの「ゾロア」君と「ロコン」ちゃん。
     No.017さんちの「アカリちゃん」。586さんちの「ピンのダグトリオ」。
     あと、No.017さんの『野の火』に穴守家が出てきたときは「うおーっ!」ってなりました。

    > ●57.密かにライバルだと思っているポケモン小説書きさんはあの人だ! 最低一人は上げてくださいねw
     スズメさんとクロトカゲさん。私好みの作風をお持ちなので、憧れと同時に盗めるものを盗みたいとひそかに思っています。ライバルというよりかは、大先生。

    > ●58.そういや今更だけど、ポケモン小説書き歴は○○年です。○○歳からです。
     はじまりをよく思い出せずにいます。たぶん6年目くらいなのだと思います。

    > ●59.ポケモン小説書きをやっていて嬉しかった事、辛かった事を一つずつ。
     「好きな作品」の欄に私の作品の名前を並べていただけたあの日。
     辛かったことはいろいろあったようにも思いますが、長い目で見れば思い出せない程度の些細なものだったのだと思います。

    > ●60.何だかんだ言っても、自分の小説に誰よりハマッているのは自分自身だと思う……
     自分の好みを描いているので、小説がいちばん人の好みを射抜く対象は私なのだと思います(笑)
     ただ、そんなに好きになれない自作もあるので一概にはそうは言えないかも。
     いつかは私がする以上に好みにしてくださる人が現れてくださったら嬉しいですね!

    > ●61.長く険しい人生。いつまでポケモン小説を書いていようかな……
     きっと書きたいと思う限りはずっと書いてゆくのだと思います。これまでもそうしてきたし、きっとそれはこれからも。

    > ●62.これからポケモン小説を書く方にアドバイスがあれば。
     貴殿のポケモンラブを! 文字を散らばせて存分にぶつけるのですッ!!
     その結果として出血多量になったり登場人物にベタ惚れしたりする人間が出てくるわけです。たとえばこの文章を綴っているこいつとか。



    > ■おぷしょん1〜マサポケについて〜■

    > ●63.いつ頃この『マサラのポケモン図書館』に辿り着きましたか?
     年は分かりませんが、前代マサポケ時代、「練習掲示板」が存命のころ。
     本格的に住みつくようになったのは2009年か2010年秋のことでした。

    > ●64.『ほびぃすてぇしょん』『おきらく ごくらく』『旧・マサポケ』……何の事だか分かります?
     当代マサポケに連なるウェブサイトたちの系譜なのは知っています。
     「旧・マサポケ」も並んでいるのを見ると、管理人交代時期でしょうか?

    > ●65.リアルタイムの親善空間・チャット。行きます? どれくらいの頻度で?
     行きます。一時期はほぼ毎日、最近はひと月に一、二度。

    > ●66. 小説コンテスト出た事あります? 出てみたい?
     あります。本家「ポケモンストーリーコンテスト」や「平成ポケノベ文合わせ」にはお世話になりました。

    > ●67. ストーリーコンテスト・ベスト他、マサポケの本って持ってる? マサポケで本を出す事になったら参加したい?
     「COMPAS」や「MAP」の当時はインターネット通販の許可をもらえなくて諦めました。今こうして同人誌を持てることはささやかなしあわせです。
     合同誌! もちろん腕を上げて参加したいですね……!

    > ●68.鴨志田さんや鈴木ミカルゲさんの事、どう思う?
     鴨志田さん:おいしそうな方ですよね……
     ミカルゲさん:要石商事の内定をください。

    > ●69.我らがマサポケ管理人、No.017さんに一言贈ってください。
     ぴじょおおおおおお!

    > ●70.これからマサポケではこれが流行る! これを流行らせたい!
     ピジョンの独壇場は崩れ去った!
     ――時代は鳥ポケ戦国時代。敗者は串刺しに焼かれ、勝者がそれを喰らう争いの世。
     書物の城下町・真白(マサラ)が置かれた状況も、例外なくその渦中にあった――

     迫りくる新たな時代の波に乗り、イッシュの灰色の悪魔・マメパトが群をなして襲い来る!
     城主ピジョンが恐れる「もうひとつの鳩勢力」は、この地を手中に収めんと眼前にまで迫っていた!
     さらにそこに現れたのは、トゥートゥーと不可思議なまじない言葉を唱える、ネイティオ率いる謎の教団!
     ピジョンを頭領に戴くこの城下町に迫りくる数々の脅威。戦乱の城下が三つ巴の戦火に飲み込まれようとしていた、――その折のことである。

     「お前ら、この俺を忘れてもらっては困るな」

     光が差したようにも、この世のすべてが闇に包まれたように思われた。
     こいつの力はマメパトの比ではない。こいつの恐ろしさは世界にまたとないことを、私はよく知っている。
     ピジョンが恐れたのは、数多の軍勢でもなければ得体の知れぬ教団でもない。
     敵に回るかも味方に転ぶかさえも分からない、たったひとりの「鳥」であった。

     腰に帯ぶるは葱がたな、触るれば咲くは紅の花。
     いのち儚き戦の世、孤高の浪士、これにあり。

     「誰が三つ巴だと決めた。俺も交えて『四つ巴』、まとめて叩き伏せてやる」

     今はむかしのそのむかし、領主の恐れし男あり。
     白葱がたなの侍は、名を 鴨志田 と云ひてけり――

     ◆ 劇場版 「KAMOSHIDA」  ―― 2083年8月3日 孤高の剣が封を切る!◆

     後援:要石商事
     前売り券特典:抽選で83名様を、懐石料亭「鴨宮庵」の絶品鴨づくしコース「鴨宮御膳」にご招待

     <訳:鴨志田さんをみんなで前面に押し出そう(提案)>



     あとみんなムウマの髪地獄に溺れないかな(ぼそっ



    > ■おぷしょん2〜どうでもいいこととか〜■

    > ●71.学校好きですか?(学生でない方は、好きでしたか?)
     ひいひい言いつつもなんだかんだで楽しんでいるのだと思います!

    > ●72.ポケモン以外で好きなジャンル、アニメ・漫画・ゲーム。あります? 何ですか?
     長くファンなのはゲーム「Phantasy Star Online」。
     どうぶつの森なんかもかわいらしいゲームで好き。妄想がかき立てられるし。

    > ●73.音楽って聴きます? 好きなアーティストとかジャンルをお一つ。
     聴きます。アーティストはゴスペラーズ。ジャンルならハピコアが好きなのかも。

    > ●74.ジブリの名作「となりのトトロ」の主人公って誰だと思います?
     メイちゃあぁぁぁぁぁn……ハッ、これは罠か!!

    > ●75.ここでお約束、あなたの恋愛話v 言えるところまで言ってみよう!
     今でも地元の友人にネタにされる、忘れえぬ恋がひとつ。
     そんな時期が僕にもありました。

    > ●76.♪なりたいな ならなくちゃ 絶対なってやる〜…… 将来の夢は? 恥ずかしがらなくていいですよw
     嫌がられない程度に奥さん子どもと日本中を回りたい。温泉に入りったり、おいしいものを食べたりして回りたい!
     あと、創作は一生続けたいですよね。

    > ●77.さぁ、最後です。……邪魔するものは何も無い。今の想いを込め、好きなことを叫べ!!
     男はみんな ケダモノさ!



    ありがとうございました!


      [No.2733] Re: マサポケノベラーさんへ77の質問(3) 投稿者:akuro   投稿日:2012/10/31(Wed) 01:46:49     175clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:これで】 【ラスト】 【お疲れ私】 【どなたか】 【対戦】 【しませんか

    ■おぷしょん1〜マサポケについて〜■
    ●63.いつ頃この『マサラのポケモン図書館』に辿り着きましたか?
    去年の7月。久方様のサイトから飛んできました。

    ●64.『ほびぃすてぇしょん』『おきらく ごくらく』『旧・マサポケ』……何の事だか分かります?
    サッパリ。

    ●65.リアルタイムの親善空間・チャット。行きます? どれくらいの頻度で?
    マサポケは最近過疎ってますよね……めげずに良く見に行きます。

    ●66. 小説コンテスト出た事あります? 出てみたい?
    そんな恐れ多い。

    ●67. ストーリーコンテスト・ベスト他、マサポケの本って持ってる? マサポケで本を出す事になったら参加したい?
    そんな恐れ多い(2回目)。

    ●68.鴨志田さんや鈴木ミカルゲさんの事、どう思う?
    特に何m(だいもんじ)

    ●69.我らがマサポケ管理人、No.017さんに一言贈ってください。
    ぴじょんぴょん!

    ●70.これからマサポケではこれが流行る! これを流行らせたい!
    対戦!

    ■おぷしょん2〜どうでもいいこととか〜■

    ●71.学校好きですか?(学生でない方は、好きでしたか?)
    微妙です。

    ●72.ポケモン以外で好きなジャンル、アニメ・漫画・ゲーム。あります? 何ですか?
    ファイブレイン! ファイブレイン! Eテレ日曜17:30!

    ●73.音楽って聴きます? 好きなアーティストとかジャンルをお一つ。
    クレモンティーヌさんが気になってます。

    ●74.ジブリの名作「となりのトトロ」の主人公って誰だと思います?
    サツキ&メイ。

    ●75.ここでお約束、あなたの恋愛話v 言えるところまで言ってみよう!
    保育園児の頃ラブレターを貰ったことがあるらしく、それを小6位まで引っ張ってました。いや、渡した男子が同じ小学校だったんでからかい続けただけなんですがw
    以後、恋愛には全く興味ナシ。

    ●76.♪なりたいな ならなくちゃ 絶対なってやる〜…… 将来の夢は? 恥ずかしがらなくていいですよw
    未定。

    ●77.さぁ、最後です。……邪魔するものは何も無い。今の想いを込め、好きなことを叫べ!!

    どなたかガチで対戦しませんかーーーーー!!!


      [No.2732] Re: マサポケノベラーさんへ77の質問(2) 投稿者:akuro   投稿日:2012/10/31(Wed) 01:36:08     140clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:コピペ】 【できない】 【不便

    ■ポケモン小説書きライフ■
    ●28.ポケモン小説を書こう思ったきっかけは?
    特には。

    ●29.連載派? 短編派?
    連載書きたい短編派

    ●30.公式のキャラは小説に出すほう? それともオリトレ派?
    オリトレー。

    ●31.あなたが今書いている小説。ズバリタイトルは!!
    今は書いてません。ということで割愛。

    ●33.あなたの小説の中で、あなた自身が一番気に入ってるキャラは? どんな所が気に入ってる?
    カントー組はネタが良く浮かびます。やっぱりツッコミは必要ですよね。

    ●34.あなたが今まで書いた小説の中で一番気に入っている話はどの作品? どのエピソード?
    日常かな……掲示板テスト終わったら最新の書こう。

    ●35.オレの小説、何はなくともコレだけは頑張ってるぜ!
    文章作法は守りつつ2000文字以内でどうまとめるか。

    ●36.逆に、ここんとこ何とかしたい、これからの課題だ。
    やっぱり文字数。PCプリーズ。

    ●37.小説に出すキャラの名前、どんな感じでつけます?
    ゲームの名前やNNをそのまま使ってます。一応由来とかは考えますが大体後付け。最近は直感でつけてます。マリルリのはまちとかメガニウムのきゅうりとか。

    ●38.ついでだから小説のタイトルの由来や、副題のつけ方も。
    内容から上手いこと考えだします。

    ●39.インスピレーションキタ━━━━━(゜∀゜)━━━━━!! アイディアが湧いてくるのはどんな時?
    ゲームやってる時とか。

    ●40.あなたの小説主人公は、実はあなた自身の鏡? それともどっちかというと、憧れの姿?
    憧れの奴と自分っぽい奴が半々くらい。

    ●41.小説中にバトル描写って出すほう?
    出します。描写力向上のために。

    ●42.小説の中の性的描写、死、殺しネタ。あなたの意見を。
    注意書きはしておくべき。

    ●43.小説の中のやおい、百合ネタ。あなたの以下同文。
    公開する場所は選ぶべき。

    ●44.小説の中のオリジナル地方、オリジナル技、オリジナルポケ。以下同文。
    地方と技はアニメ、オリポケはポケスペでやってるやん。オレンジ諸島とかソラン&リークの合体技とかサファイザーとか。

    ●45.打ち切り。
    どう綺麗に纏めるかが腕の見せ所。

    ●46.アイディアが全然湧かない! スランプと、その脱出法について。
    しばらくすれば自然に治ります。

    ●47.後の展開に繋がる伏線を結構張る?
    書いてる内に閃いてニヤニヤしてます。

    ●48.ぶっちゃけた話、やっぱり年齢が高いほど上手い文章が書ける?
    そんなこたないですよ。誤字脱字に記号や台本形式。目も当てられないです。

    ●49.この人の本が出たら絶対読む! この人の影響を受けている! 好きなプロ作家さん・同人作家さんっています? 愛読書でも可。
    いない……です、ね。

    ●50.同人とかサークルってやってますか? 自分の本って出したい?
    どうなのかな。

    ●51.語彙(ゴイ、使える単語量)ってどうやって増やします?
    とにかく文章を読む! 読む! 読む! 分からない単語はヤフる!

    ●52.ムラムラと執筆意欲が湧いてくる……のはこんな時!
    妄想時。

    ●53.ポケモン以外の小説、書いたことありますか?
    今はむしろそっちの方に力を入れています。

    ●54.小説を書く者として、一番大事だと思うもの。
    ボキャブラリー!

    ●55.他のポケモン小説書きさんの小説で、好きな作品を好きなだけ上げてください。
    ……思いつかないです(オイ

    ●56.他のポケモン小説書きさんの小説登場人物で、好きなキャラっています? 誰ですか?
    みーさんの長老と灯夢ちゃん。

    ●57.密かにライバルだと思っているポケモン小説書きさんはあの人だ! 最低一人は上げてくださいねw
    オルカさん。親近感湧きまくりです。

    ●58.そういや今更だけど、ポケモン小説書き歴は○○年です。○○歳からです。
    2年目。

    ●59.ポケモン小説書きをやっていて嬉しかった事、辛かった事を一つずつ。
    感想を頂いたこと。つらかったことは特に無し。

    ●60.何だかんだ言っても、自分の小説に誰よりハマッているのは自分自身だと思う?
    yes。

    ●61.長く険しい人生。いつまでポケモン小説を書いていようかな。
    書けるだけ書いていたいです。

    ●62.これからポケモン小説を書く方にアドバイスがあれば。
    特に無s(電撃


      [No.2731] Re: マサポケノベラーさんへ77の質問(1) 投稿者:akuro   投稿日:2012/10/31(Wed) 01:10:27     147clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:DSiでの】 【書き込みは】 【最大2000文字】 【故に】 【分割

    ■あばうと みー■

    ●1.My name is ○○○. まずは名前を教えてください。
    akuroです。

    ●2.↑とは言いましたが、実は×××とも名乗ってるんです…… HN複数持ってます?またそのHNは?
    たまにokuraになります。

    ●3.年齢・性別・生息地などなど。あなたの正体プリーズ。勿論言える範囲だけでOK。
    ニーガタ地方住みの♀です。

    ●4.オールジャンルで(※全てにおいて)好きなもの。
    じゃがいも、柿の種、ポケモン、ふわふわ、萌え。

    ●5.オールジャンルで嫌いなもの。
    うめぼし、乳製品、マヨネーズ、一般常識が無い人、血液。

    ●6.あなたの性格。自覚している長所や短所……
    マイペースなちゃっかり者。眠いとぶっ壊れる。

    ●7.あなたを一言で表すと? 日本語でも英語でもスワヒリ語でもおっけー。
    何故スワヒリ。「変人」で。

    ●8.あなたの職業は? 真面目に答えてもボケてもいいですよw
    魔法少女。

    ●9.学校の教科で得意科目と苦手科目を一個づつ上げるとしたら?
    社会が苦手、音楽が得意。

    ●10.持ってる資格とか賞罰。何でもいいから書いてみると……
    特に無いですがこの間他ジャンルのチャット会で魔法少女認定されました。

    ■インターネットライフ■

    ●11.インターネット歴。いつからだったかなぁ……今何年になるかなぁ……
    2011年1月。お年玉で中古のDSiを購入した日から。

    ●12.自分専用のパソコンって持ってます?
    無いです。DSiだけだと不便なので欲しいです。

    ●13.ネットで便利だと思うこと。不便だと思うこと。
    簡単にコミュニケーションがとれる。
    相手の表情が見えない。

    ●14.お気に入りのサイト、教えてくださいw
    マサポケとか、pixivとか。

    ●15.自分のホームページ、pixivアカウント、twitterアカウント等ありますか? 良かったらここでCMタイム。無論ジャンル問わず。
    ファイブレインというアニメの二次小説サイトを運営しています。

    ■ポケモンライフ■

    ●16.ポケモン歴は何年? また、ポケモンにはまった原因って何?
    6、7年……かな。初めて手に入れたゲームがEmだったので。

    ●17.あなたの持っているポケモンソフトを教えて!
    LG、Em、D、SS、BW、W2、ポケダン空、ポケナガ。

    ●18.こいつが俺のパーティだ! ゲームでのベストメンバー、教えてください。私はこんなコダワリを持ってパーティを選んでいます。なんてのもあったら。
    では今のガチパを。チラチーノ、エルフーン、トゲキッス、ハピナス、マリルリ、メガニウム。ハピナス以外は♂です。
    可愛いポケモンだけ……というか、見た目が気にいったポケモンだけ使います。
    ガブとかバンギとかゴツいし……。

    ●19.アニメ見てるかー? ポケスペ読んでるかー? ポケモンカードやってるかー?
    アニメは一週遅れで。ポケスペは購入止まってます。カードは相手がいません。

    ●20.一番好きなポケモン! どうしても絞りきれなかったら複数回答も可。
    ハピナス! 可愛いし強い!

    ●21.一番好きなトレーナー! ゲームでもアニメでもポケスペでも……
    ソラン&リークはいい感じに中2でしたよね。

    ●22.一番好きな、技? アイテム? 属性? シリーズ? ……何かある?
    Emからの癖でついハートのうろこを集めてしまいます。

    ●23.21、22、23で答えた中から好きなお題を1つ、全力をあげて語り倒してください。惚気OK。親馬鹿OK。妄想暴走勿論OK。
    これ20、21、22ですよね。
    ということでハピナス。もふりたいです。
    うちのピンキー姉さんは凍らせるしガブ一撃で倒すし充分タフだしでかっこいいです。姉さんもふってだいもんじで焼かれたい。

    ●24.ポケモンファンの聖地、ポケモンセンター。行ったことある?
    地元に無いっ!(壁ドン)

    ●25.主人公の名前=ゲーム中でのあなたの名前は?
    小説に使うんでオリキャラの名前です。
    LG→モモコ Em→エンジュ D→シュカ SS→トモカ B→モモカ W→サクラ W2→コモモ

    ●26.あなた自身をポケモンに例えると、何が一番近いですか?
    エルフーン。悪知恵働くし時に素早い。しかし努力値振ってないんで脆いです。

    ●27.突然ですが、あなたはポケモンワールドのトレーナーだとします。名前、出身、手持ち、職業etc……「あなた」の設定を、参加型キャラメイキングの要領で。
    名前はあくろで。手持ちはさっきのガチパ。職業は……アルバイト(オイ


      [No.2730] とける 投稿者:門森 輝   投稿日:2012/10/31(Wed) 00:23:36     128clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:書いてもいいのよ】 【描いてもいいのよ】 【82%が台詞】 【抜群の読み辛さ】 【読みやすく直してくれてもいいのよ】 【捕食?】 【シャワーズ】 【ラプラス】 【シャワーズかわいいよシャワーズ】 【タグ欄余ると埋めたくなるよね

    「よし、場所はここらで良いか。ルールは1対1だったよな?」
    「あぁ。俺今1匹しか連れて来てないし」
    「1匹ってーとあいつか、シャワーズか。あいつ厄介なんだよなー」
    「当たり。ほれ」
     そう言いそのトレーナーはボールからシャワーズを出す。
    「あー、やっぱりか。強ぇんだよなーそいつ。はいそこでそんな強いシャワーズ君の為にこの子を育ててみましたー」
     そう言いそのトレーナーもボールからポケモンを出す。
    「おー、ラプラスか。やっぱデケェな」
    「まぁ乗り物ポケモンだからな」
    「それにしてもこいつ対策に態々新しく育てるたぁご苦労なこった」
    「それだけ厄介なんだよ。毎回毎回そいつに苦労させられるからな。それに育てんのは楽しいから苦労とかじゃないしな」
    「だよなー」
    「ただな……」
    「ん?」
    「いや、こいつを選んだのはまぁ貯水ってのと、氷に強い上凍らないってのと、10万ボルトや雷を使えるらしいってのが理由なんだけどさ、あと可愛いってのも」
    「聞いたかシャワーズ、あいつは貯水の方らしいぞ。急所当たるぞ」
    「まぁその辺が主な理由なんだけどさ、ただよく考えたら俺その技マシン持ってなかったんだよ。両方とも」
    「聞いたかシャワーズ、相手は電気技使えないらしいぞ」
    「という訳でだ、貸してくれ」
    「は?」
    「技マシン。10万ボルトか雷。お前色々持ってたろ? 今度何か奢るからさ」
    「あぁ、バトルの後でな」
    「それじゃあこのバトルで使えないじゃん」
    「イエス。だからバトルの後で」
    「ケチー」
    「ケチってお前……大体こっちの攻撃絞られてんのにそいつがそんなん使ってきたら厳し過ぎんだよ」
    「そりゃそのつもりで育ててるもん。でさ、攻撃絞れてるって事はラプラスに通る技使えなかったりする?」
    「さぁな。バトルで確かめてみろ」
    「毎回ドロポンと冷凍ビームは覚えてたはずだからそこは分かってるんだけどなー、あと2つがなー。お前よく技変えるしさ」
    「それだけ分かってりゃ十分じゃねぇか。ラプラスにゃまともに撃てねぇし」
    「まぁなー。だからさ、そっちも技マシン貸してくれれば技1つ分かって有利に」
    「ならねぇよ。ほら、さっさと始めっぞ。俺等が向こう行くからお前等がこっちな。あ、始めるタイミングはどうする?」
    「んー、まぁ前回と同じで」
    「あいよ、じゃあドロポン上げるわ。さ、行くぞシャワーズ」
    「準備出来たら教えろよー」


    「おーい、こっちは良いぞー」
    「良いかー? じゃあ始めっかー」
    「じゃあ上げるぞー。シャワーズ、上にハイドロポンプ。線じゃなく球で。落ちた瞬間に開始だからな、備えとけよ」
     指示通りシャワーズが水球を打ち上げる。その水球が地面で弾けると同時にラプラスがシャワーズにのしかからんと飛び上がる。
    「刺さらせて溶けて!」
    「斜めに! 氷ごと潰せ!」
     シャワーズが冷凍ビームを足下へ放ち、大きく歪な円錐状の氷を作り出す。ラプラスはそれに合わせ若干軌道を変え、氷の面へ突撃する。尚もラプラスの勢いは衰えず、氷を砕きながら液状と化したシャワーズへとのしかかる。地響きと共に土煙が舞い上がる。
    「破片拾って! 近けりゃ刺して遠けりゃ投げて!」
    「もっかいのしかかれ! 見つかんなきゃ一旦戻れ!」
     土煙の中からラプラスが飛び出す。
    「ラプラス離脱した! お前も一旦戻って!」
     シャワーズのトレーナーがそう指示するがシャワーズは出て来ない。
    「どうした!? 大丈夫か!? 動けなきゃ真上にドロポン撃って!」
     その指示にも反応はない。
    「ちょっ、ちょっと待って。土煙収まるまで攻撃待ってもらって良いか?」
    「あぁ」
    「ありがとな。ちょっと待ってな」 
     その数秒後、土煙は収まったものの依然としてシャワーズは確認出来ない。
    「おーい。シャワーズー。どこだー? せめて鳴けー」
    「見つからねぇか? じゃあ一旦バトルは中断すっか。俺も探すよ、ラプラスも」
    「おぅ頼むよ。ありがたい。まぁ多分氷に埋もれてんのかな」
    「そうだったらバトルは俺等の勝ちな」
    「まぁそうなるな。とにかく探そう」
    「とりあえず氷溶かすか。シャワーズの他は誰連れて来てる?」
    「いや、あいつしか連れて来てないって言ったよな?」
    「あぁ、そう言やそうだったな。じゃあこいつで溶かすか」
     そう言いそのトレーナーはヘルガーを出す。
    「俺に聞く前に出せよ」
    「いやさ、ヘルガーの炎って毒素混じってるとか言うじゃん。だから別のポケモンがいんならその方が良いだろ? 別にお前が良いなら良いんだけど」
    「あぁなるほど。ま、どうせポケセン行くから構わねぇよ。とりあえず溶かしてくれ」
    「ヘルガー、そこにある氷溶かしてくれ。ポケモンいるだろうから弱くな」
     ヘルガーが小さく炎を吐き氷を溶かして行く。暫くすると氷は全て溶け、少し大きな水溜まりが出来る。しかしシャワーズの姿はない。
    「おい、いねぇぞ」
    「あれー? んー、溶けっぱなしって事はないと思うんだがなー。でももう水溜まり位しかねぇよなー」
    「とりあえず戻せるか試してみたら?」
    「だな」
     シャワーズのトレーナーの持つモンスターボールから赤い光が水溜まりへと伸びる。
    「駄目っぽい。溶けて水と混ざってるからなのかそもそもいないのかは分からんが」
    「そっか。じゃあどうやって調べんだ? この中に溶けてるかどうかなんて」
    「まぁ待つしかねぇな。いるならシャワーズが気付いた時に戻んだろ。問題はいなかった時だな」
    「あー。でももうそこ位しかねぇんだろ? だったらいるんじゃねぇか?」
    「まぁどっかに吹っ飛んでもいないしな、こん中だろ。結局バトルは負けかぁ」
    「シャワーズ対策に育てといて負けたら立場ねぇよ。じゃ、俺は帰るわ。残ってても何も手伝えねぇし。技マシン今度貸せよ」
    「無くても勝てたんだからいらなくね?」
    「貸してくれるって言ったろ?」
    「はいはい貸すよ。約束通り今度何か奢れよ」
    「貸して貰ってからな。じゃあな。ラプラス、ヘルガー戻って」
     そのトレーナーは2匹をボールへ戻そうとする。しかし――
    「……あれ?」
    「ん?」
    「いや、ヘルガーは戻せたんだけどラプラスが戻らない」
    「何で?」
    「いや知らねぇよ。こっちが聞きたい」
    「壊れたんじゃね?」
    「いやだって壊れる様な事してないし、ヘルガーはちゃんと戻せたし。ラプラス何か分かるか?」
     ラプラスも分からない様子で首を傾げる。
    「うーん。何じゃろな」
    「ボール投げてみようか? 捕獲判定に入らなきゃボールは壊れてないのが分かんだろ?」
    「じゃあ頼む」
    「オッケー」
     シャワーズのトレーナーがラプラスへ空のモンスターボールを投げる。当たったものの反応はない。
    「どうやら壊れてはいないみたいだな」
    「壊れてないのは良いが余計原因が分からん」
    「そのボールから出したんだよな?」
    「あぁ、間違いない」
    「んー、分かんねぇな。ま、こっちはその戻すポケモンさえ見つからないんだけどな」
    「でも場所分かってんだろ」
    「確定はしてねぇよ」
    「でもそこ以外にねぇんだろ?」
    「まぁな。地中に染み込んでたりってのも考えにくいし」
    「そんな事あんの?」
    「知らね。少なくとも聞いた事はないな。まぁでも、水っつーか水擬きっつーか……まぁそんなんだからな。有り得ないとは言い切れねぇんじゃねぇかな」
    「そっか。……ん?」
    「ん? どうした?」
    「いや、えっと、溶けたシャワーズはもう水とほぼ同じと見ていいのか? だったら何だろ、仮説っつーか、もしかして今こうなってんじゃないかみたいな何と言うか」
    「まず落ち着け」
    「えっと、ちょっと待って。……えっとだから……このラプラス貯水な訳だよ」
    「……あー。あーあーあー。言いたい事は伝わった」
    「分かった?」
    「えーとだからつまり、ラプラスに吸収? 的な?」
    「的な」
    「いやでもそれどうなの? 有り得んの?」
    「知らん。少なくとも聞いた事はない。ただまぁ……辻褄は合うんだよ」
    「まぁ……うん。でもさ、仮にそうだとしてさ、シャワーズ無事なの?」
    「知らん。でももし有り得るとしたらさ、今までにこうしたケースがない事はないと思うんだよ。で、今までそれを聞いた事が無いのは無事だったからじゃねぇかな。無事じゃなかったら少し位は注意喚起とかされてると思うし。でもまぁ、まだそうなったと決まった訳じゃないから。水溜まりん中いるかもしれねぇよ?」
    「まぁ……そっか。そう言や大分前にポケモンと人間が合体したなんてニュースもあったよな。あれも無事だったんだっけ。で、どうやって戻すんだ?」
    「知らん。とりあえずポケセン行ってみようぜ。水溜まりの中だとしても待つ以外に出来る事ねぇし」
    「そうだな。誰が残る?」
    「あ、そっか。誰か残んなきゃなんねぇか。じゃあヘルガー残そう」
     そう言いそのトレーナーは再びヘルガーを出し、傍らにポケギアを置く。
    「これが鳴ったらポケモンセンターまで来てくれ。咥えて来りゃ野生と間違えられないだろ。で、もしそれまでに水溜まりからシャワーズ出て来た時はポケモンセンターまで連れて来てくれ。あ、ポケギア咥えた時溶かすなよ」
     ヘルガーは頷き一吠えする。
    「よし、頼んだぞ。じゃあ行こう」
    「おぅ。あ、ラプラスに乗せて行かせてもらって良いか? どうせボールに戻せないんだし。一度乗ってみたくてな」
    「ラプラスに聞いてくれ」
     そんな会話を続けつつ、二人と一匹はポケモンセンターへと向かう。ヘルガーはそれを見送ると踞る。


     数十分後、ポケギアが鳴り、ヘルガーはそれを咥えてポケモンセンターへと向かった。


    ――――――――――――――――――――――――

     台詞が多い。読み辛い。8割超えとかどう言う事ですかね。地の文が絶滅危惧種。三人称で文章書くとどうもこうなってしまいます。文章力プリーズ。
     という訳でシャワーズを水として扱う話その2。シャワーズが水に近いなら貯水で吸収されても良いじゃないか、と。捕食になるのかは微妙な所。ラプラスの意思次第ですかね。それならこの場合は捕食でない事になる訳ですけども。どうなんでしょう。うーむ。
     実際にラプラスがシャワーズに有効かどうかは知りません。貯水を前提に選んでも多分ランターンの方が有効。でも溶けたシャワーズに接触しないと発動させられないじゃないですか。10万ボルトぶっぱとかだとどうしようも無いじゃないですか。のしかかりとかこの展開で理想的な技じゃないですか。そんな訳でラプラス起用。多分このトレーナーサイコキネシスの技マシンも持ってません。ご都合主義で。
     あと特に締めが納得いってなかったり。多分終わらせるタイミングから間違ってます。どのタイミングでどう終わらせれば自然ですかね。台詞が8割以上占めてる時点で自然も何もありませんが。文章力プリーズ。
     とにかくシャワーズかわいいよシャワーズ。

     テストも兼ねてこっちにも投稿。

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【ご自由にどうぞなのよ】
    【シャワーズかわいいよシャワーズ】
    【シャワーズ飲みたい】


      [No.2729] Re: マサポケノベラーさんへ77の質問 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2012/10/30(Tue) 23:08:08     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    マサポケノベラーさんへ77の質問

    ■あばうと みー■ 

    ●1.My name is ○○○. まずは名前を教えてください。

    あつあつおでんです。普段はおでんで通りますが、無断で食べたら火傷しますよ。

    ●2.↑とは言いましたが、実は×××とも名乗ってるんです…… HN複数持ってます?またそのHNは?

    無いです、あっても教えませんよ。教えたら使い分けてる意味がないですから。

    ●3.年齢・性別・生息地などなど。あなたの正体プリーズ。勿論言える範囲だけでOK。

    男、アサギより西に在住。文系だけど数学が好き。地学物理も中々。最近は各地の食について興味があります。

    ●4.オールジャンルで(※全てにおいて)好きなもの。

    かわいい女の子、渋いオッサン、ポケモン。色々あるけど今は思いついたのがこれだけ。

    ●5.オールジャンルで嫌いなもの。

    なよなよした奴、口ばかりで動かない奴、ルールすら守れない奴、考えない奴。

    ●6.あなたの性格。自覚している長所や短所……

    臆病故に先手を打つことが多いです。しかし、しばしばそれで満足することがあります。

    ●7.あなたを一言で表すと? 日本語でも英語でもスワヒリ語でもおっけー。

    ターリブンです。アラビア語で学生の意味です。

    ●8.あなたの職業は? 真面目に答えてもボケてもいいですよw

    物書きです。

    ●9.国語 数学 理科 社会 英語……学校の教科で得意科目と苦手科目を一個づつ上げるとしたら?

    「学校」では苦手科目がありませんでした。「試験」でなら英語が苦手、国語が並、あとは得意です。

    ●10.持ってる資格とか賞罰。何でもいいから書いてみると……

    資格については公表しません。公表する価値がないので。

    ■インターネットライフ■

    ●11.インターネット歴。いつからだったかなぁ……今何年になるかなぁ……

    真面目に始めて5年くらいです。

    ●12.自分専用のPC(パソコン)って持ってます?

    無いです。来年の初めに買います。

    ●13.ネットで便利だと思うこと。不便だと思うこと。

    動画を見られる。しかし携帯でネットがメインなのできれいにサイトが表示されない。

    ●14.お気に入りのポケモンサイト、教えてくださいw

    ネタポケまとめwiki。自称廃人も単なるポケモン好きも必見。

    ●15.自分のホームページありますか?良かったらここでCMタイム。無論
    ジャンル問わず。

    ポケロク冒険隊。プレイ日記や育成論、小説を掲載。この記事に張ったURLからどうぞ。


    ■ポケモンライフ■

    ●16.ポケモン歴は何年? また、ポケモンにはまった原因って何?

    ポケモンクリスタルを初めてやって以降11年です。

    ●17.『GB(GBA)ソフト ポケットモンスター』あなたの持っているカセットは何色?

    緑ピカチュウ銀クリスタルサファイアリーフグリーンエメラルド。エメラルドは2本あります。

    ●18.こいつが俺のパーティだ!ゲームでのベストメンバー、教えてください。

    ドンファン、ラティアス、ゴウカザル、ジバコイル、ケンタロス、ルンパッパ。これが最高峰。

    ●19.私はこんなコダワリを持ってパーティを選んでいます。なんてのがあったら。

    カバルドン、ローブシン、バンギラス、ブルンゲル、ユキノオー、キュウコンの異常気象パがこだわり。強いです。

    ●20.アニメ見てるかー?ポケスペ読んでるかー?ポケモンカードやってるかー?

    カードはやってました。アニメは最近視聴を再開しました。しかしポケスペなんてどこの作品かすら知りませんよ。私はコロコロのギエピーを見て育ちました。

    ●21.一番好きなポケモン!どうしても絞りきれなかったら複数回答も可。

    ラッキー、おまえがナンバーワンだ。

    ●22.一番好きなトレーナー!ゲームでもアニメでもポケスペでも……

    ハチクさん。

    ●23.一番好きな、技? アイテム? 属性? ……何かある?

    ふんかが好きです。

    ●24.21、22、23で答えた中から好きなお題を1つ、全力をあげて語り倒してください。惚気OK。親馬鹿OK。妄想暴走勿論OK。

    想像してごらん、ラッキーがいる世界を。丸々して、なでたりかわいがることができると。短い手足もグッド。

    ●25.17以外のポケモン関連ソフト持ってます?ポケモンミニとかは?

    救助隊、探検隊、ピンボール、パネポン、ポケスタ金銀、ポケモンコロシアム。

    ●26.ポケモンファンの聖地、ポケモンセンター。行ったことある?

    地元にないから行けないです。

    ●27.主人公の名前=ゲーム中でのあなたの名前は?

    おでこ。おでんと女の子を合わせた名前であり、デコを意識したわけではないよ。

    ●28.あなた自身をポケモンに例えると、何が一番近いですか?

    フーディン、は冗談としてカビゴン。

    ●29.ポケモン以外にはまっているモノありますか?何ですか?

    実況にはまってます、というよりやってます。

    ●30.突然ですが、あなたはポケモンワールドのトレーナーだとします。名前、出身、手持ち、職業etc……「あなた」の設定を、参加型キャラメイキングの要領で。

    めんどくさいのでパス。


    ■ノベラーライフ■

    ●31.あなたが今書いている小説。ズバリタイトルは!!

    『大長編ポケットモンスター「逆境編」』だ!

    ●32.↑のあらすじ・特徴的なところ、ウリ等をどうぞ。

    バトルに力を入れています。再現できるバトルは私の作品くらいでしょう。他の作品は個体値や努力値を上辺だけ取り入れることもあるようですが、私は本気です。あらすじは読めば分かる。

    ●33.あなたの小説の中で、あなた自身が一番気に入ってるキャラは?どんな所が気に入ってる?

    主人公のテンサイと、一緒に住むナズナ。ナズナはBWの女主人公が帽子を外し、真っ赤なシャツと白のデニム(生地が薄めの綿パンツでも可、いずれも足首まである)というイメージが固まりました。あとはターリブンもお気に入り。

    ●34.作者オススメw あなたが今まで書いた小説の中で一番気に入っている話は何話?どの辺のエピソード?

    逆境編の前作、逆転編の69話。後悔先に立たず。

    ●35.一番書きやすいのはこんな感じのキャラ。また、自分の小説の中のこのキャラ。

    ターリブンは書きやすい。喜怒哀楽がはっきりして冗談も言えるから。

    ●36.オレの小説、何はなくともコレだけは頑張ってるぜ!ってのを最低でも一つ。

    さっきも言いましたがバトル。

    ●37.逆に、ここんとこ何とかしたいな……これからの課題だ、ってのも一つだけ。

    情景描写どうにかしたい。

    ●38.小説に出すキャラ(ポケモンも含)の名前、どんな感じでつけます? 例もあげて教えてくれたら嬉しいなぁw

    物語の核心にいるキャラは理由を考えますが、大概後付け。思いついた名前を気分でつけます。

    ●39.ついでだから小説のタイトルの由来や、副題(あれば)のつけ方も教えてもらおう。

    実は今のタイトルは仮題なんです。どうとでも取れるタイトルを目指した結果、現在は暫定的にアレなのです。

    ●40.インスピレーションキタ━━━━━(゜∀゜)━━━━━!! アイディアが湧いてくるのはどんな時?

    暇な時。これ以上は企業秘密。

    ●41.アイディアが全然湧かない!!?どうしよう……。

    そんなことを言うあまちゃんじゃありませんよ。

    ●42.あなたの小説主人公は、実はあなた自身の鏡?それともどっちかというと、憧れの姿??

    憧れ。

    ●43.小説の中の性的描写。あなたの意見を述べてください。

    勝手にどうぞ。やるなら先に知らせるのをわすれずに。

    ●44.小説の中の死ネタ、殺しネタ。あなたの意見を以下同文。

    勝手にどうぞ。やるなら適当な中身は許されない。

    ●45.小説の中のやおいネタ、百合ネタ。あなたの以下同文。(意味が分からない人はパスOKです)

    完全オリジナル作品なら勝手にどうぞ。二次創作では勘弁してほしい。

    ●46.小説の中のオリジナル技、オリジナルポケ。あな以下同文。

    勝手にどうぞ、私はその瞬間ブラウザをぶち消す。

    ●47.打ち切り……

    打ち切りになるくらいなら最初から表に出すな。てめえの作品の読者に失礼だ。

    ●48.スランプと、その脱出法について一通り。

    スランプがないからわかりませんが、ハードルを一時的に下げれば良さそう。

    ●49.後の展開に繋がる伏線を結構張る方だと思う。

    気分次第。

    ●50.ぶっちゃけた話、やっぱり年齢が高いほど上手い文章が書ける?

    練習次第。

    ●51.同人とかサークル……やってますか?

    ない。

    ●52.語彙(※ゴイと読む。使える単語量のこと)ってどうやって増やします?

    読書。

    ●53.ムラムラと執筆意欲が湧いてくる……のはこんな時!

    暇な時。

    ●54.ポケモンジャンル以外の小説、書いたことありますか?

    ある。

    ●55.小説を書く者として、一番大事だと思うもの。

    書ききる。

    ●56.そういや今更だけど、ノベラー歴は○○年です。○○歳からです。

    5年くらい。

    ●57.長く険しい人生。いつまで小説を書いていようかな……

    いつまでも。

    ●58.この人の本があったら絶対読む! 好きなプロ作家さんっています?愛読書でも可。

    ない。

    ●59.ノベラーをやっていて嬉しかった事、辛かった事を一つずつ。

    完結した時。

    ●60.何だかんだ言っても、自分の小説に誰よりハマッているのは自分自身だと思う……

    うん。

    ■おぷしょん1〜マサラのポケモンノベラー〜■

    ●61.いつ頃この『マサラのポケモン図書館』に辿り着きましたか?

    5年くらい前。

    ●62.『ほびぃすてぇしょん』『おきらく ごくらく』『旧・マサポケ』……何の事だか分かります?

    おきらくごくらくまではなんとか。

    ●63.他のノベラーさんの小説で、好きな作品を好きなだけ上げてください。

    昔いた@さんの『新生ポケモン外伝』、誰だったか忘れたけど旧マサポケ本棚にあった『ポケットモンスタースペシャル』。

    ●64.他のノベラーさんの小説の登場人物で、好きなキャラっています?誰ですか?

    ない。

    ●65.他のノベラーさんの小説に、感想つけてますか?どんな内容を?

    主に慰労、内容について。

    ●66.最近流行のオンライン通信。実は私も発行してます?

    ない。

    ●67.リアルタイムの親善空間・チャット。行きます? どれくらいの頻度で?

    時々。

    ●68.マサポケ誇る最先端技術、本棚アップローダーシステム。思うところを一言。

    昔の作品をまた読みたい。

    ●69.密かにライバルだと思っているノベラーさんはあの人だ! 最低一人は上げてくださいねw

    自分と連載板の作者全員。

    ●70.我らがマサポケ管理人、タカマサ様に一言贈ってください。

    まあ、頑張ってくださいな。

    ■おぷしょん2〜どうでもいいこととか〜■

    ●71.学校好きですか?(学生でない方は、好きでしたか?)

    はい。

    ●72.ポケモン以外で好きなアニメ・漫画・ゲーム。あります?何ですか?

    色々あるけど容量限界。

    ●73.音楽って聴きます? 好きなアーティストとかジャンルをお一つ。

    ゲームBGM。

    ●74.ジブリの名作「となりのトトロ」の主人公って誰だと思います?

    メイ。

    ●75.ここでお約束、あなたの恋愛話v 言えるところまで言ってみよう!

    んなものあったら小説なんざ書いちゃねえよ。

    ●76.♪なりたいな ならなくちゃ 絶対なってやる〜…… 将来の夢は?恥ずかしがらなくていいですよw

    先生。世界制服。

    ●77.さぁ、最後です。……邪魔するものは何も無い。 今の想いを込め、好きなことを叫べ!!

    容量限界!


      [No.2728] Re: マサポケノベラーさんへ77の質問 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/10/30(Tue) 22:43:23     145clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:77の質問】 【質問】 【後半から暴走してます】 【というか手遅れ

    > ■あばうと みー■ 


    > ●1.My name is ○○○. まずは名前を教えてください。

    HAY!最近好きになるキャラが皆ショタで共通していることに気付いて『私ってショタコンだったのか……』と軽く悩んでいる方の神風紀成です!

    > ●2.↑とは言いましたが、実は×××とも名乗ってるんです…… HN複数持ってます?またそのHNは?

    そろそろ変えようかと思ってる今日この頃。『カミカゼキナリ』さんには、別のところで活躍してもらいたい

    > ●3.年齢・性別・生息地などなど。あなたの正体プリーズ。勿論言える範囲だけでOK。

    もうじき専門学校生。腐女子。生息地はカントー。

    > ●4.オールジャンルで(※全てにおいて)好きなもの。

    ┌(┌^0^)┐ 察しろ

    > ●5.オールジャンルで嫌いなもの。

    ベタベタの善哉に生クリームかけて食べるようなクソ甘い恋愛とか吐く
    特に一部の少女漫画は見た途端『ダメだこいつ……早く何とかしないと……』ってなる

    > ●6.あなたの性格。自覚している長所や短所……

    江戸のスピードスターちゅー話やー!※超が付くせっかち ※ただし鈍足である
    ちなみに友人は某ペテン師に似ている、とツイッタでは言われているそうだ
    だが誕生日が同じなのは私である

    > ●7.あなたを一言で表すと? 日本語でも英語でもスワヒリ語でもおっけー。

    何でスワマリ?って突っ込んでいいのかねこれ 『ツッコミ担当』

    > ●8.あなたの職業は? 真面目に答えてもボケてもいいですよw

    高校生

    > ●9.学校の教科で得意科目と苦手科目を一個づつ上げるとしたら?

    得意:美術  苦手:英語

    > ●10.持ってる資格とか賞罰。何でもいいから書いてみると……

    賞だけなら某飲料水の俳句コンテストで佳作を貰ったことがある


    > ■インターネットライフ■

    > ●11.インターネット歴。いつからだったかなぁ……今何年になるかなぁ……

    小五から 七年前だね まともなブログをやってた

    > ●12.自分専用のパソコンって持ってます?

    もうすぐ買ってもらえる…… 多分

    > ●13.ネットで便利だと思うこと。不便だと思うこと。

    小説書く時にすぐに資料を漁れること 不便なのは相手の表情が深くは伺えないこと

    > ●14.お気に入りのサイト、教えてくださいw

    ウィキペディアはよく資料集めに使う あとはピクシブでイラスト漁ったり、好きな同人サイト様が更新してるかどうか見に行ったり?

    > ●15.自分のホームページ、pixivアカウント、twitterアカウント等ありますか? 良かったらここでCMタイム。無論ジャンル問わず。

    ピクシブ……2188371
    ツイッタ……kinari73
    最近は某テニス漫画にはまっててそれ系ばっか呟いてる、多分


    > ■ポケモンライフ■

    > ●16.ポケモン歴は何年? また、ポケモンにはまった原因って何?

    約十五年 原因は友人の兄ちゃんが遊んでいて、丁度その時期アニメが始まったのもあった
    ちなみにその友人は父親がデパートの宝石店のオーナーという超お金持ち

    > ●17.あなたの持っているポケモンソフトを教えて!

    サファイア、パール、時探、プラチナ、空探、ソウルシルバー、ブラック、ホワイト、ホワイト2

    > ●18.こいつが俺のパーティだ! ゲームでのベストメンバー、教えてください。私はこんなコダワリを持ってパーティを選んでいます。なんてのもあったら。

    サファイア時代からの付き合いの六体
    ラグラージ、ジュカイン、シャワーズ、サンダース、ブースター、カイリュー

    > ●19.アニメ見てるかー? ポケスペ読んでるかー? ポケモンカードやってるかー?

    アニメ:BWになってから観てない ポケスペ:新刊出たけど金欠で買ってない ポケモンカード:なにそれおいしいの

    > ●20.一番好きなポケモン! どうしても絞りきれなかったら複数回答も可。

    絞りきれるわけねえだろ!レントラー!ラグラージ!ツタージャ!ルギア!ラティアス!ジュプトル!ヨノワール!バクフーン!その他大勢!

    > ●21.一番好きなトレーナー! ゲームでもアニメでもポケスペでも……

    アカギさんはスペでは珍しく救いがあったボスだったね とりあえずオッサン好き
    Nは外せない あと忘れちゃいけないサブマス二人
    後輩にサブマス狂がいる

    > ●22.一番好きな、技? アイテム? 属性? シリーズ? ……何かある?

    技:ほうでん アイテム:石関係 属性:電気 シリーズ:ポケダン

    > ●23.21、22、23で答えた中から好きなお題を1つ、全力をあげて語り倒してください。惚気OK。親馬鹿OK。妄想暴走勿論OK。

    もうこの年ではそこまで語り倒せんよ…… 言うならレントラーかな。あのふさふさの鬣とか顔を埋めたい。『しょーがねーな……』みたいな呆れ顔でため息をつくのを可愛い可愛いと撫で回したい。疲れて帰ってきたらベッドで寝てるのを畜生とか言いながらおもっきり腹にダイブして『!?』みたいな表情をさせたい。野生の本能に逆らえず発情期で苦しそうにしてるのを『レントラさんマジ天使w』とか言いながら写真を撮ってツイッタに上げてレントラクラスタと一緒に叫びながら床をゴロンゴロンしたい。

    ……解答欄に20が入っていなかったことに今気付いた まあいいか!
    これ以上書くとレディに斬られるからやめとくよ!

    > ●24.ポケモンファンの聖地、ポケモンセンター。行ったことある?

    オーサカは昔住んでいた所の近くにあったから行ったことがある 2003年クリスマス限定ピンバッチまだ持ってるよ
    トウキョーは近くもないけど電車乗れるようになってからはよく行く ヨコハマもね

    > ●25.主人公の名前=ゲーム中でのあなたの名前は?

    大体『ナミ』だったけどBW2から『キナリ』になった だが男である

    > ●26.あなた自身をポケモンに例えると、何が一番近いですか?

    いやに素早いけど体力少ないポケモンを上げてください ……サンダースかなあ
    とりあえずバンギラスとかガブリアスとかメタグロスとかそっち系のポケモンじゃないことは確か
    いつだったかユキメノコで代理で描いてくれたな mossちゃんだっけ

    > ●27.突然ですが、あなたはポケモンワールドのトレーナーだとします。名前、出身、手持ち、職業etc……「あなた」の設定を、参加型キャラメイキングの要領で。

    名前:キナリ 出身:カントーの海沿い 手持ち:レントラー 職業:学生


    > ■ポケモン小説書きライフ■


    > ●28.なぜポケモン小説を書こうと思った? きっかけになった作品とかあります?

    無い 鳩さんの影響はあるけど お近づきになりたい……って思ってた矢先にポケスト掲示板オープンだったからね

    > ●29.連載派? 短編派?

    短編派

    > ●30.公式のキャラクターは小説に出すほう? それともオリトレ派? ポケモンのみ?

    オリトレ派 公式は昔は出してたが何か違和感があって自然にやらなくなった

    > ●31.あなたが今書いている小説。ズバリタイトルは!!

    オリジナルだけどね…… 『弱い犬ほどよく吠える(仮題)』シリーズ

    > ●32.↑のあらすじ・特徴的なところ、ウリ等をどうぞ。

    『募集人数無制限、途中参加歓迎。必要なのは絶対的忠誠心、偶像的戦闘能力、自己中心的精神。不必要なのは英雄願望的精神、そして放送局もダメ。それが守れるなら、ようこそ、『網の番犬』へ!』
    一ヵ月後か、一週間後か、それとも一日後か。世界中に張り巡らされた『網』は一分一秒という単位で進化を続けている。そしてその網を壊そうとする輩もそれらと同調するように進化を続けている。その輩を秘密裏に、しかし大胆に壊すこと―― それが彼らの仕事である。今宵も彼らが作り出す『網』に獲物がかかる――
    『ケータイ捜査官7』+『サマーウォーズ』+『ダンボール戦機』みたいな話になってる 今のところ

    > ●33.あなたの小説の中で、あなた自身が一番気に入ってるキャラは? どんな所が気に入ってる?

    皆良い子ですが…… オリジナル語らせてくれ
    水嶋凛。ここにも一度出したけど本当はオリジナル 凛は実は大輝の従姉妹にあたって本当のお兄さんはマンハッタンにいる。それに付いて行って今は彼もマンハッタンにいる。主にスラム街で仲間と一緒にいるみたいだけど
    口だけ覆うガスマスクを付けてて、前髪を伸ばしてるから素顔が分かりにくいんだけど、女と見紛う美少年だよ!ちなみにガスマスクを付けてるのは次に唇が触れるのは好きな人の唇でありたいっていう理由からなんだってさ。
    きっつい性格だけどそこらへんロマンチストだよね

    > ●34.あなたが今まで書いた小説の中で一番気に入っている話はどの作品? どのエピソード?
    >  よかったらその部分、見せて欲しいなぁ……。

    『弱い犬ほど〜』の『アストレア』より。長いので台詞のみ。

    「貴方が上に行こうが、下に行こうが、私には関係ありません。それが裁きだというのなら、それに委ねるしかありませんから。
    ですが、一つだけ理解できないことがあるんです。そして私には、多分一生理解できない……」

    > ●35.オレの小説、何はなくともコレだけは頑張ってるぜ! ってのを最低でも一つ。

    キャラへの愛 我が子みたいに接してる 時々『うちの子がー』ってパンピとの会話で言って『は?』って返されることがある

    > ●36.逆に、ここんとこ何とかしたいな……これからの課題だ、ってのも一つだけ。

    連載が止まること

    > ●37.小説に出すキャラ(ポケモンも含)の名前、どんな感じでつけます? 例もあげて教えてくれたら嬉しいなぁw

    イメージから すぐに付けばいいんだけど、なかなか合わないこともあるんだよね

    > ●38.ついでだから小説のタイトルの由来や、副題(あれば)のつけ方も教えてもらおう。

    主に好きな曲が元になることが多い 例を挙げれば『アルビノ』『月明かり』『BIG MACHINE』など

    > ●39.インスピレーションキタ━━━━━(゜∀゜)━━━━━!! アイディアが湧いてくるのはどんな時?

    いきなり浮かんでは消える 夢現の時に出てきたり、夢で見た物がそのまま……なんてことも

    > ●40.あなたの小説主人公は、実はあなた自身の鏡? それともどっちかというと、憧れの姿??

    『弱い犬ほど〜』はほとんどそのまんま ただし憧れも入ってるかな 骨太なところとか
    かっこいいお姉さんや女の子が大好きだ

    > ●41.小説中にバトル描写って出すほう?

    出したいが書けない 心理描写が多い

    > ●42.小説の中の性的描写、死ネタ、殺しネタ。あなたの意見を述べてください。

    いいんじゃないの?性的描写とか思わず腰に来る時とかあるよね 他人が自分の話を読んでそうなったらそれはすごいと思うよ
    死ネタは読む人選ぶかもねー…… 私は別に良いけど
    殺しネタも場合による 『何故』殺したのか理由を明確に書かないと

    > ●43.小説の中のやおいネタ、百合ネタ。あなたの以下同文。(意味が分からない人はパスOK)

    普通の小説で何も前触れもなく来ると流石に『おおっ!?』ってなる しばらく呆けて『なるほどなー』って思う

    > ●44.小説の中のオリジナル地方、オリジナル技、オリジナルポケ。あな以下同文。

    前者二つは小説の中でしか見たことないから何とも 後者は嫌とかそういうんじゃなく、考えられるのがすごいと純粋に思う
    ヤナップとかの別タイプとかデザインしている人いるもんね

    > ●45.打ち切り……

    辛いよね この苦しみは執筆する立場の人にしか分からないと思うよ

    > ●46.アイディアが全然湧かない!!? どうしよう……。スランプと、その脱出法について一通り。

    高一〜高二はスランプだと焦ってたけど、今は別に気にしてない 書きたい時に書けばいいかな、的な軽いノリ

    > ●47.後の展開に繋がる伏線を結構張る方だと思う。

    頑張って張ってる 今はまだ難しいけど楽しいって思える日が来るといいな

    > ●48.ぶっちゃけた話、やっぱり年齢が高いほど上手い文章が書ける?

    それはないと思うよ 同人とか夢を漁るとよく分かるけど、プロフィール見てどう見ても年上なのに文章とか酷い人いるもん
    誤字があるのはまだ許せるとして、問題は『////』とか記号入ってることだね 私は嫌だな

    > ●49.この人の本が出たら絶対読む! この人の影響を受けている! 好きなプロ作家さん・同人作家さんっています? 愛読書でも可。

    鳩さん、ゴーヤロックさんは言わずもがな というか持ってるよ本
    プロ作家さんは宮部みゆきさん、長野まゆみさん、石田衣良さんとか。同人作家さん?えー…… いるにはいるけどノーコメントで

    > ●50.同人とかサークルってやってますか? 自分の本って出したい?

    サークルはやってない 本はいつか出したいけどこの『いつか』って永遠に来ないな

    > ●51.語彙(ゴイ、使える単語量)ってどうやって増やします?

    とにかく色んな本を読む

    > ●52.ムラムラと執筆意欲が湧いてくる……のはこんな時!

    じわじわ湧いてこないんだよね、私の場合 パッと来てスッと去っていく

    > ●53.ポケモン以外の小説、書いたことありますか?

    あるよー ルーズリーフに書いて手直ししてないからズタボロだけど 『水晶急行事件』『幻影の館』
    『弱い犬ほど〜』は夏休み中に『WK』を書き負えたところ

    > ●54.小説を書く者として、一番大事だと思うもの。

    自分のキャラクターが一番輝く場所を書くこと

    > ●55.他のポケモン小説書きさんの小説で、好きな作品を好きなだけ上げてください。

    鳩さん『オウムがえし』 586さん『コラッタの頭』『七六〇の墓標』『tears』 久方さん『可愛いミーナ』 音色さん『カクライさんシリーズ』
    題名間違ってないよな…… 鳩さんは小説よりも絵の方がインパクトあります 初めて見た作品が絵だったので

    > ●56.他のポケモン小説書きさんの小説登場人物で、好きなキャラっています? 誰ですか?

    音色っちのカクライさん 大好き

    > ●57.密かにライバルだと思っているポケモン小説書きさんはあの人だ! 最低一人は上げてくださいねw

    音色さん いつからそう思うようになったのかは分からないけど、とにかく尊敬すると同時に対抗意識が……

    > ●58.そういや今更だけど、ポケモン小説書き歴は○○年です。○○歳からです。

    五年、十三歳から 懐かしい…… 正に黒歴史

    > ●59.ポケモン小説書きをやっていて嬉しかった事、辛かった事を一つずつ。

    嬉しかったことは鳩さんと交流出来たこと!約六年間思い続けていた願いが叶った瞬間でした
    辛かったこと?中学時代はさんざんからかわれたっけ…… まあ後に彼女らもポケモンやってたことを聞いて笑い合ったけど

    > ●60.何だかんだ言っても、自分の小説に誰よりハマッているのは自分自身だと思う……

    小説はどうか知らないけど、キャラクターにハマッてるかも いつの間にか私の知らないところで勝手に動いてるもんだから
    知らない一面を見れたりね

    > ●61.長く険しい人生。いつまでポケモン小説を書いていようかな……

    そりゃあもう、病める時も、健やかなる時も、死ぬまで……と言いたい

    > ●62.これからポケモン小説を書く方にアドバイスがあれば。

    書きたいなら書けば?評価されることが嫌なら自分で書き溜めておきなさい
    ただ他人に見てもらった方が確実に腕は上がる


    > ■おぷしょん1〜マサポケについて〜■

    > ●63.いつ頃この『マサラのポケモン図書館』に辿り着きましたか?

    二年前の六月

    > ●64.『ほびぃすてぇしょん』『おきらく ごくらく』『旧・マサポケ』……何の事だか分かります?

    サイトの名前な気がするが詳しいことは不明

    > ●65.リアルタイムの親善空間・チャット。行きます? どれくらいの頻度で?

    行くけど最近はないなあ 皆忙しい、ついでにポケモン育成の話はついていけない

    > ●66. 小説コンテスト出た事あります? 出てみたい?

    あるよ 一回目と二回目 順位全然変わらなかったけど

    > ●67. ストーリーコンテスト・ベスト他、マサポケの本って持ってる? マサポケで本を出す事になったら参加したい?

    持ってるよー 本を出すことになったら?参加したいね是非

    > ●68.鴨志田さんや鈴木ミカルゲさんの事、どう思う?

    鴨志田さんって美味しいの?鴨肉の鍋って食べたことないんだよね ミカルゲさんは嫁と子供を大事にしてください

    > ●69.我らがマサポケ管理人、No.017さんに一言贈ってください。

    ピジョン一匹の重さが未だに分からないんですが、どうすればいいでしょうか?

    > ●70.これからマサポケではこれが流行る! これを流行らせたい!

    図鑑からヒントを得て、百字くらいでそのポケモンについての文を書く 何のことを言っているのか当てるゲームとか


    > ■おぷしょん2〜どうでもいいこととか〜■

    > ●71.学校好きですか?(学生でない方は、好きでしたか?)

    まあ普通 個性的な面子が多すぎて毎日クタクタです 何で先生も個性的なんだよ……

    > ●72.ポケモン以外で好きなジャンル、アニメ・漫画・ゲーム。あります? 何ですか?

    沢山あるよ とりあえず名詞だけ書いとく どのジャンルかはググッてくれ
    イナズマイレブン・ダンボール戦機・レイトン教授・ソウルイーター・黒執事・クマとインテリ・アルとネーリとその周辺・カノジョは嘘を愛しすぎてる・HUNTER×HUNTER・テニスの王子様・Ib・ゆめにっき・ゼルダの伝説・ソニック・MОTHER
    まだありそうだけど思い出せない

    > ●73.音楽って聴きます? 好きなアーティストとかジャンルをお一つ。

    ボーカロイド大好きですがここはあえてBzで。 マイナーからメジャーまで大体分かるよ

    > ●74.ジブリの名作「となりのトトロ」の主人公って誰だと思います?

    ネコバス ただこの作品より紅の豚の方が好きです 台詞覚えてる

    > ●75.ここでお約束、あなたの恋愛話v 言えるところまで言ってみよう!

    ここで来るか まあいいや 初恋は幼稚園の時だね多分 それから小一で好きな人できたけどそいつは転校して、別に後ろ髪引かれることもなく三年生でこっちも転校して、五年でネットにはまったあたりから何か雲行き怪しくなったね
    今は『いいな』と思える男子はいても『じゃあ好きか』って問われれば答えに悩む感じ ちなみに嫁は沢山いる 皆年下なのが気になるけど……
    頭ナデナデしたい 

    > ●76.♪なりたいな ならなくちゃ 絶対なってやる〜…… 将来の夢は? 恥ずかしがらなくていいですよw

    今のところウェブデザイナー志望 どうなってるか分からないけどね

    > ●77.さぁ、最後です。……邪魔するものは何も無い。今の想いを込め、好きなことを叫べ!!

    普通の恋愛を書こうとしてもどうしても偏愛とかヤンデレとかホモとか近親相姦の類になってしまう私は本当にどうすればいいんでしょうね
    一体何処で私は道を間違えてしまったのか―― まあ今の自分以外の自分なんて想像できないけど
    もう嫁の名前でも書き並べてしまおうか 支部の『九割分かったら友達』的な
    ――うん、やめておこう


    長いな!まあ楽しかったけど


      [No.2727] Re: 構文エラーのようです(対処しました) 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/10/30(Tue) 20:20:03     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    > No.017さん
    > 小樽ミオさん

    現象を確認しました。
    リンク生成のバグだったため、対処しておきました(´ω`)


      [No.2726] Re: マサポケノベラーさんへ77の質問 投稿者:フミん   投稿日:2012/10/30(Tue) 00:28:01     168clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:77の質問 】 【質問

    なんだか懐かしい形式だったので書いてみました。大体ふさげてます。




    ■あばうと みー■ 

    ●1.My name is ○○○. まずは名前を教えてください。→フミん
       
    ●2.↑とは言いましたが、実は×××とも名乗ってるんです…… HN複数持ってます?またそのHNは?→今のところない

    ●3.年齢・性別・生息地などなど。あなたの正体プリーズ。勿論言える範囲だけでOK。→男だが、最近性別が分からなくなってる。

    ●4.オールジャンルで(※全てにおいて)好きなもの。→ポケモン あらしのよるに 

    ●5.オールジャンルで嫌いなもの。→雑食なのでない

    ●6.あなたの性格。自覚している長所や短所……→一旦集中すると物凄い集中力を発揮できるが飽きっぽい

    ●7.あなたを一言で表すと? 日本語でも英語でもスワヒリ語でもおっけー。→脳内お花畑

    ●8.あなたの職業は? 真面目に答えてもボケてもいいですよw→スターマン

    ●9.学校の教科で得意科目と苦手科目を一個づつ上げるとしたら?→得意:理科 苦手:現代文

    ●10.持ってる資格とか賞罰。何でもいいから書いてみると……→ふと思いつくのは珠算(段位取得)、他に販売士や簿記など。



    ■インターネットライフ■

    ●11.インターネット歴。いつからだったかなぁ……今何年になるかなぁ……→12年くらい。フラッシュ動画見て笑ってました。

    ●12.自分専用のパソコンって持ってます?→2台

    ●13.ネットで便利だと思うこと。不便だと思うこと。→自分の作品を気軽に公開できること

    ●14.お気に入りのサイト、教えてくださいw→Pixiv、マサポケのような個人(?)サイト。

    ●15.自分のホームページ、pixivアカウント、twitterアカウント等ありますか? 良かったらここでCMタイム。無論ジャンル問わず。→Pixivは同じ名前で活動しております。twitterも同じ名前。



    ■ポケモンライフ■

    ●16.ポケモン歴は何年? また、ポケモンにはまった原因って何?→初代GBからずっと。ただ、一度ルビサファで離れた。

    ●17.あなたの持っているポケモンソフトを教えて!→ポケダンでしょうか

    ●18.こいつが俺のパーティだ! ゲームでのベストメンバー、教えてください。私はこんなコダワリを持ってパーティを選んでいます。なんてのもあったら。→いつも適当なんです

    ●19.アニメ見てるかー? ポケスペ読んでるかー? ポケモンカードやってるかー?→アニメは観てる。他はノータッチです。

    ●20.一番好きなポケモン! どうしても絞りきれなかったら複数回答も可。→バシャーモ

    ●21.一番好きなトレーナー! ゲームでもアニメでもポケスペでも……→カスミ

    ●22.一番好きな、技? アイテム? 属性? シリーズ? ……何かある?→しおふき

    ●23.21、22、23で答えた中から好きなお題を1つ、全力をあげて語り倒してください。惚気OK。親馬鹿OK。妄想暴走勿論OK。→カスミはしおふきをくりd(文章はここで終わっている

    ●24.ポケモンファンの聖地、ポケモンセンター。行ったことある?→トーキョー オオサカ ヨコハマ ナゴヤ なら

    ●25.主人公の名前=ゲーム中でのあなたの名前は?→フフフミん

    ●26.あなた自身をポケモンに例えると、何が一番近いですか?→アチャモ(根拠はない

    ●27.突然ですが、あなたはポケモンワールドのトレーナーだとします。名前、出身、手持ち、職業etc……「あなた」の設定を、参加型キャラメイキングの要領で。→名前:フミん 出身:ワカバタウン 手持ち:ヒノアラシ 職業:ヒキコモリ 



    ■ポケモン小説書きライフ■

    ●28.なぜポケモン小説を書こうと思った? きっかけになった作品とかあります?→個人運営のHPでポケモンの学園パロを書いているサイトに通っていて、自分も面白おかしい話を書きたいと思ったから。しかし、自分には笑える小説を書く才能は皆無でした。
    小説自体を書くきっかけになった作品は、『撲殺天使ドクロちゃん』だと思います。リアルタイムで読んでいた商業誌です、はい。

    ●29.連載派? 短編派?→脳みそ空っぽなので短編の方が楽です

    ●30.公式のキャラクターは小説に出すほう? それともオリトレ派? ポケモンのみ?→基本人間は適当なことが多い。ポケモンは都合によって喋ることが多い。

    ●31.あなたが今書いている小説。ズバリタイトルは!!→いつかの世の中(一部成人向け)

    ●32.↑のあらすじ・特徴的なところ、ウリ等をどうぞ。→人間の人口が減ってしまい、捨てられた田舎でポケモン達が人間のような生活を始めるお話です。

    ●33.あなたの小説の中で、あなた自身が一番気に入ってるキャラは? どんな所が気に入ってる?→基本短編に出てくる男(青年・老人等)は、自分の性格に似ている気がする。気にっているかはよく分からない。

    ●34.あなたが今まで書いた小説の中で一番気に入っている話はどの作本? どのエピソード?
     よかったらその部分、見せて欲しいなぁ……。→作った話で気に入った話は殆どない。強いて言うなら、マサポケさんに投稿した『雨』という話でしょうか http://masapoke.sakura.ne.jp/script_test/wforum.cgi?no=2422&r ..... de=msgview

    ●35.オレの小説、何はなくともコレだけは頑張ってるぜ! ってのを最低でも一つ。→誤字をなるべく消滅させること

    ●36.逆に、ここんとこ何とかしたいな……これからの課題だ、ってのも一つだけ。→誤字をなるべく増やさないこと

    ●37.小説に出すキャラ(ポケモンも含)の名前、どんな感じでつけます? 例もあげて教えてくれたら嬉しいなぁw→短い話を書く時は名前をつけない。付ける場合は、口に出して言いやすい名前を付ける。

    ●38.ついでだから小説のタイトルの由来や、副題(あれば)のつけ方も教えてもらおう。→適当

    ●39.インスピレーションキタ━━━━━(゜∀゜)━━━━━!! アイディアが湧いてくるのはどんな時?→真っ白な紙に手書きにプロットを書いている時 あと、お風呂入ってるとき

    ●40.あなたの小説主人公は、実はあなた自身の鏡? それともどっちかというと、憧れの姿??→自分の鏡だと思う

    ●41.小説中にバトル描写って出すほう?→必要ならば

    ●42.小説の中の性的描写、死ネタ、殺しネタ。あなたの意見を述べてください。→何でもありだと思う。寧ろそういう描写があるからこそ作品は栄える場合も多い。

    ●43.小説の中のやおいネタ、百合ネタ。あなたの以下同文。(意味が分からない人はパスOK)→バッチコーイ

    ●44.小説の中のオリジナル地方、オリジナル技、オリジナルポケ。あな以下同文。→ポケモンを書く場合、あまりにオリジナル要素は多くしないようにしている。

    ●45.打ち切り……→基本しない・やらない

    ●46.アイディアが全然湧かない!!? どうしよう……。スランプと、その脱出法について一通り。→あんまりアイディアが浮かばないという経験をしたことがないです。書くのが疲れたら横になるようにしているくらい。

    ●47.後の展開に繋がる伏線を結構張る方だと思う。→いつの間にか伏線を貼っている場合が多い

    ●48.ぶっちゃけた話、やっぱり年齢が高いほど上手い文章が書ける?→人生経験が多いと文章が上手いことが多いのは事実だと思う。小説界はそういうところが良いと思う(歳を取っても挑戦できるという意味で)。

    ●49.この人の本が出たら絶対読む! この人の影響を受けている! 好きなプロ作家さん・同人作家さんっています? 愛読書でも可。→向水遙(4コマ漫画家)←作家じゃないね 時雨沢恵一(ライトノベル作家) 秋山瑞人(ライトノベル作家) 安部公房(小説家) 森博嗣(小説家) 村上春樹(小説家)
    ついでに言うと、星新一はあまり読んでいないです。 愛読書は『猫の地球儀』『ダンス・ダンス・ダンス』『村上春樹堂』『キノの旅』

    ●50.同人とかサークルってやってますか? 自分の本って出したい?→『ポケットドロップ』か『甘く香る杜若』で活動をしている。自分の個人誌は3冊くらい出してます。

    ●51.語彙(ゴイ、使える単語量)ってどうやって増やします?→他人との交流、本を読む、映画、漫画…とにかく色んな娯楽に触れる。

    ●52.ムラムラと執筆意欲が湧いてくる……のはこんな時!→外出してる時

    ●53.ポケモン以外の小説、書いたことありますか?→オリジナルのケモノ小説は書いたことあります。ポケモン小説より良いと言われて複雑な気持ちに。

    ●54.小説を書く者として、一番大事だと思うもの。→相手に伝わるよう、分かりやすく書くことでしょうか。

    ●55.他のポケモン小説書きさんの小説で、好きな作品を好きなだけ上げてください。→最近では 可愛いミーナ 投稿者:久方小風夜 でしょうか http://masapoke.sakura.ne.jp/script_test/wforum.cgi?no=2653&r ..... de=msgview

    ●56.他のポケモン小説書きさんの小説登場人物で、好きなキャラっています? 誰ですか?→いっぱいいて絞れない(逃

    ●57.密かにライバルだと思っているポケモン小説書きさんはあの人だ! 最低一人は上げてくださいねw→あえて言うなら、現在管理人のピジョンさん?

    ●58.そういや今更だけど、ポケモン小説書き歴は○○年です。○○歳からです。→ポケモン小説は書き始めて2年半くらい 年齢は秘密

    ●59.ポケモン小説書きをやっていて嬉しかった事、辛かった事を一つずつ。→先ずポケモンというだけで多くの人に見てもらえること。後、こうしてこのサイトで色んな人と交流できてること。
    辛いことは、小説を即売会を売る時、小説というだけで買って貰えなかったりすること。

    ●60.何だかんだ言っても、自分の小説に誰よりハマッているのは自分自身だと思う……→ねーよ

    ●61.長く険しい人生。いつまでポケモン小説を書いていようかな……→今、結構長い話を書いているので、それが完結したら止めるかもしれない。でも、居座るかもしれない。
     
    ●62.これからポケモン小説を書く方にアドバイスがあれば。→先ず書いてみて、お話をちゃんと終わらす(区切る)ことでしょうか。1つの話を途中で放棄したら成長しないと思います。どんなに糞と思っても、最後まで書いてみましょう。



    ■おぷしょん1〜マサポケについて〜■

    ●63.いつ頃この『マサラのポケモン図書館』に辿り着きましたか?→数ヶ月前

    ●64.『ほびぃすてぇしょん』『おきらく ごくらく』『旧・マサポケ』……何の事だか分かります?→全く分からないのです

    ●65.リアルタイムの親善空間・チャット。行きます? どれくらいの頻度で?→キチンなので、余程のことがないと行かない。基本はぐれメタル。

    ●66. 小説コンテスト出た事あります? 出てみたい?→ムウコン開催中ですが、プロット真っ白です。

    ●67. ストーリーコンテスト・ベスト他、マサポケの本って持ってる? マサポケで本を出す事になったら参加したい?→ピジョンさんと586さんの本はいくつか所持している。マサポケさんで書ける機会があればいつでも書きます。

    ●68.鴨志田さんや鈴木ミカルゲさんの事、どう思う?→鴨志田さんがミカルゲさんに食べられそうになっていることだけは分かります

    ●69.我らがマサポケ管理人、No.017さんに一言贈ってください。→初対面でいきなりコスプレ姿というとんでもないことをやらかした者ですが、これからも宜しくお願いします。はい。

    ●70.これからマサポケではこれが流行る! これを流行らせたい!→自分のお話の拍手が100いく日は…こねえよ



    ■おぷしょん2〜どうでもいいこととか〜■

    ●71.学校好きですか?(学生でない方は、好きでしたか?)→合法ニートは最高でした

    ●72.ポケモン以外で好きなジャンル、アニメ・漫画・ゲーム。あります? 何ですか?→漫画:幽遊白書 きのう何食べた? ドラゴンクエストモンスターズ+ 他 
    アニメ:少女革命ウテナ メダロット あらしのよるに 他
    ゲーム:MOTHERシリーズ ドラクエ ガイア幻想紀 他

    ●73.音楽って聴きます? 好きなアーティストとかジャンルをお一つ。→aiko 安井洋介(こちらはゲーム音楽を 作曲している)

    ●74.ジブリの名作「となりのトトロ」の主人公って誰だと思います?→カンタアアアアアア!!

    ●75.ここでお約束、あなたの恋愛話v 言えるところまで言ってみよう!→恋人ならディスプレイの中にいますよ

    ●76.♪なりたいな ならなくちゃ 絶対なってやる〜…… 将来の夢は? 恥ずかしがらなくていいですよw→赤い繭

    ●77.さぁ、最後です。……邪魔するものは何も無い。今の想いを込め、好きなことを叫べ!!→エイドリアーーーーーーーーーーン!!!


      [No.2725] マサポケノベラーさんへ77の質問(2012年版)ちょっと修正 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/10/29(Mon) 22:15:35     200clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:77の質問】 【答えてもいいのよ

    77の質問を統廃合したり、今にあったものに改めてみました。

    ■あばうと みー■ 

    ●1.My name is ○○○. まずは名前を教えてください。

    ●2.↑とは言いましたが、実は×××とも名乗ってるんです…… HN複数持ってます?またそのHNは?

    ●3.年齢・性別・生息地などなど。あなたの正体プリーズ。勿論言える範囲だけでOK。

    ●4.オールジャンルで(※全てにおいて)好きなもの。

    ●5.オールジャンルで嫌いなもの。

    ●6.あなたの性格。自覚している長所や短所……

    ●7.あなたを一言で表すと? 日本語でも英語でもスワヒリ語でもおっけー。

    ●8.あなたの職業は? 真面目に答えてもボケてもいいですよw

    ●9.学校の教科で得意科目と苦手科目を一個づつ上げるとしたら?

    ●10.持ってる資格とか賞罰。何でもいいから書いてみると……



    ■インターネットライフ■

    ●11.インターネット歴。いつからだったかなぁ……今何年になるかなぁ……

    ●12.自分専用のパソコンって持ってます?

    ●13.ネットで便利だと思うこと。不便だと思うこと。

    ●14.お気に入りのサイト、教えてくださいw

    ●15.自分のホームページ、pixivアカウント、twitterアカウント等ありますか? 良かったらここでCMタイム。無論ジャンル問わず。



    ■ポケモンライフ■

    ●16.ポケモン歴は何年? また、ポケモンにはまった原因って何?

    ●17.あなたの持っているポケモンソフトを教えて!

    ●18.こいつが俺のパーティだ! ゲームでのベストメンバー、教えてください。私はこんなコダワリを持ってパーティを選んでいます。なんてのもあったら。

    ●19.アニメ見てるかー? ポケスペ読んでるかー? ポケモンカードやってるかー?

    ●20.一番好きなポケモン! どうしても絞りきれなかったら複数回答も可。

    ●21.一番好きなトレーナー! ゲームでもアニメでもポケスペでも……

    ●22.一番好きな、技? アイテム? 属性? シリーズ? ……何かある?

    ●23.21、22、23で答えた中から好きなお題を1つ、全力をあげて語り倒してください。惚気OK。親馬鹿OK。妄想暴走勿論OK。

    ●24.ポケモンファンの聖地、ポケモンセンター。行ったことある?

    ●25.主人公の名前=ゲーム中でのあなたの名前は?

    ●26.あなた自身をポケモンに例えると、何が一番近いですか?

    ●27.突然ですが、あなたはポケモンワールドのトレーナーだとします。名前、出身、手持ち、職業etc……「あなた」の設定を、参加型キャラメイキングの要領で。



    ■ポケモン小説書きライフ■

    ●28.なぜポケモン小説を書こうと思った? きっかけになった作品とかあります?

    ●29.連載派? 短編派?

    ●30.公式のキャラクターは小説に出すほう? それともオリトレ派? ポケモンのみ?

    ●31.あなたが今書いている小説。ズバリタイトルは!!

    ●32.↑のあらすじ・特徴的なところ、ウリ等をどうぞ。

    ●33.あなたの小説の中で、あなた自身が一番気に入ってるキャラは? どんな所が気に入ってる?

    ●34.あなたが今まで書いた小説の中で一番気に入っている話はどの作品? どのエピソード?
     よかったらその部分、見せて欲しいなぁ……。

    ●35.オレの小説、何はなくともコレだけは頑張ってるぜ! ってのを最低でも一つ。

    ●36.逆に、ここんとこ何とかしたいな……これからの課題だ、ってのも一つだけ。

    ●37.小説に出すキャラ(ポケモンも含)の名前、どんな感じでつけます? 例もあげて教えてくれたら嬉しいなぁw

    ●38.ついでだから小説のタイトルの由来や、副題(あれば)のつけ方も教えてもらおう。

    ●39.インスピレーションキタ━━━━━(゜∀゜)━━━━━!! アイディアが湧いてくるのはどんな時?

    ●40.あなたの小説主人公は、実はあなた自身の鏡? それともどっちかというと、憧れの姿??

    ●41.小説中にバトル描写って出すほう?

    ●42.小説の中の性的描写、死ネタ、殺しネタ。あなたの意見を述べてください。

    ●43.小説の中のやおいネタ、百合ネタ。あなたの以下同文。(意味が分からない人はパスOK)

    ●44.小説の中のオリジナル地方、オリジナル技、オリジナルポケ。あな以下同文。

    ●45.打ち切り……

    ●46.アイディアが全然湧かない!!? どうしよう……。スランプと、その脱出法について一通り。

    ●47.後の展開に繋がる伏線を結構張る方だと思う。

    ●48.ぶっちゃけた話、やっぱり年齢が高いほど上手い文章が書ける?

    ●49.この人の本が出たら絶対読む! この人の影響を受けている! 好きなプロ作家さん・同人作家さんっています? 愛読書でも可。

    ●50.同人とかサークルってやってますか? 自分の本って出したい?

    ●51.語彙(ゴイ、使える単語量)ってどうやって増やします?

    ●52.ムラムラと執筆意欲が湧いてくる……のはこんな時!

    ●53.ポケモン以外の小説、書いたことありますか?

    ●54.小説を書く者として、一番大事だと思うもの。

    ●55.他のポケモン小説書きさんの小説で、好きな作品を好きなだけ上げてください。

    ●56.他のポケモン小説書きさんの小説登場人物で、好きなキャラっています? 誰ですか?

    ●57.密かにライバルだと思っているポケモン小説書きさんはあの人だ! 最低一人は上げてくださいねw

    ●58.そういや今更だけど、ポケモン小説書き歴は○○年です。○○歳からです。

    ●59.ポケモン小説書きをやっていて嬉しかった事、辛かった事を一つずつ。

    ●60.何だかんだ言っても、自分の小説に誰よりハマッているのは自分自身だと思う……

    ●61.長く険しい人生。いつまでポケモン小説を書いていようかな……
     
    ●62.これからポケモン小説を書く方にアドバイスがあれば。



    ■おぷしょん1〜マサポケについて〜■

    ●63.いつ頃この『マサラのポケモン図書館』に辿り着きましたか?

    ●64.『ほびぃすてぇしょん』『おきらく ごくらく』『旧・マサポケ』……何の事だか分かります?

    ●65.リアルタイムの親善空間・チャット。行きます? どれくらいの頻度で?

    ●66. 小説コンテスト出た事あります? 出てみたい?

    ●67. ストーリーコンテスト・ベスト他、マサポケの本って持ってる? マサポケで本を出す事になったら参加したい?

    ●68.鴨志田さんや鈴木ミカルゲさんの事、どう思う?

    ●69.我らがマサポケ管理人、No.017さんに一言贈ってください。

    ●70.これからマサポケではこれが流行る! これを流行らせたい!



    ■おぷしょん2〜どうでもいいこととか〜■

    ●71.学校好きですか?(学生でない方は、好きでしたか?)

    ●72.ポケモン以外で好きなジャンル、アニメ・漫画・ゲーム。あります? 何ですか?

    ●73.音楽って聴きます? 好きなアーティストとかジャンルをお一つ。

    ●74.ジブリの名作「となりのトトロ」の主人公って誰だと思います?

    ●75.ここでお約束、あなたの恋愛話v 言えるところまで言ってみよう!

    ●76.♪なりたいな ならなくちゃ 絶対なってやる〜…… 将来の夢は? 恥ずかしがらなくていいですよw

    ●77.さぁ、最後です。……邪魔するものは何も無い。今の想いを込め、好きなことを叫べ!!


      [No.2724] 構文エラーのようです 投稿者:小樽ミオ   投稿日:2012/10/29(Mon) 20:36:04     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    Firefox, Google Chrome, IE8 のいずれでもポップアップされないことを確認いたしました。
    IE8 が「エラー」と見なしているようで、次のようなエラー詳細が表示されました。


     Web ページ エラーの詳細

     メッセージ: 文字が正しくありません。
     ライン: 1
     文字: 151
     コード: 0
     URI: http://masapoke.sakura.ne.jp/script_test/wforum.cgi?no=2723&r ..... de=msgview


    いつもバグつぶしお疲れさまです。取り急ぎご報告までm(_ _)m


      [No.2723] エラー? 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/10/29(Mon) 20:15:56     90clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    記事一覧からtweetが出来るけれど
    記事そのものからのtweetが出来ない。窓が開かない。
    google chome です。


      [No.2722] マサポケノベラーさんへ77の質問 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/10/29(Mon) 20:12:03     202clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:77の質問】 【質問

    昔流行った○○の質問。
    ふと思い出して、引っ張り出してきた。
    ちょっと今にあわせて改造しようと思う


    マサポケノベラーさんへ77の質問

    ■あばうと みー■ 

    ●1.My name is ○○○. まずは名前を教えてください。

    ●2.↑とは言いましたが、実は×××とも名乗ってるんです…… HN複数持ってます?またそのHNは?

    ●3.年齢・性別・生息地などなど。あなたの正体プリーズ。勿論言える範囲だけでOK。

    ●4.オールジャンルで(※全てにおいて)好きなもの。

    ●5.オールジャンルで嫌いなもの。

    ●6.あなたの性格。自覚している長所や短所……

    ●7.あなたを一言で表すと? 日本語でも英語でもスワヒリ語でもおっけー。

    ●8.あなたの職業は? 真面目に答えてもボケてもいいですよw

    ●9.国語 数学 理科 社会 英語……学校の教科で得意科目と苦手科目を一個づつ上げるとしたら?

    ●10.持ってる資格とか賞罰。何でもいいから書いてみると……


     

    ■インターネットライフ■

    ●11.インターネット歴。いつからだったかなぁ……今何年になるかなぁ……

    ●12.自分専用のPC(パソコン)って持ってます?

    ●13.ネットで便利だと思うこと。不便だと思うこと。

    ●14.お気に入りのポケモンサイト、教えてくださいw

    ●15.自分のホームページありますか?良かったらここでCMタイム。無論ジャンル問わず。



     

    ■ポケモンライフ■

    ●16.ポケモン歴は何年? また、ポケモンにはまった原因って何?

    ●17.『GB(GBA)ソフト ポケットモンスター』あなたの持っているカセットは何色?

    ●18.こいつが俺のパーティだ!ゲームでのベストメンバー、教えてください。

    ●19.私はこんなコダワリを持ってパーティを選んでいます。なんてのがあったら。

    ●20.アニメ見てるかー?ポケスペ読んでるかー?ポケモンカードやってるかー?

    ●21.一番好きなポケモン!どうしても絞りきれなかったら複数回答も可。

    ●22.一番好きなトレーナー!ゲームでもアニメでもポケスペでも……

    ●23.一番好きな、技? アイテム? 属性? ……何かある?

    ●24.21、22、23で答えた中から好きなお題を1つ、全力をあげて語り倒してください。
    ●   惚気OK。親馬鹿OK。妄想暴走勿論OK。

    ●25.17以外のポケモン関連ソフト持ってます?ポケモンミニとかは?

    ●26.ポケモンファンの聖地、ポケモンセンター。行ったことある?

    ●27.主人公の名前=ゲーム中でのあなたの名前は?

    ●28.あなた自身をポケモンに例えると、何が一番近いですか?

    ●29.ポケモン以外にはまっているモノありますか?何ですか?

    ●30.突然ですが、あなたはポケモンワールドのトレーナーだとします。
    ●   名前、出身、手持ち、職業etc……「あなた」の設定を、参加型キャラメイキングの要領で。



     

    ■ノベラーライフ■

    ●31.あなたが今書いている小説。ズバリタイトルは!!

    ●32.↑のあらすじ・特徴的なところ、ウリ等をどうぞ。

    ●33.あなたの小説の中で、あなた自身が一番気に入ってるキャラは?どんな所が気に入ってる?

    ●34.作者オススメw あなたが今まで書いた小説の中で一番気に入っている話は何話?どの辺のエピソード?

    ●35.一番書きやすいのはこんな感じのキャラ。また、自分の小説の中のこのキャラ。

    ●36.オレの小説、何はなくともコレだけは頑張ってるぜ!ってのを最低でも一つ。

    ●37.逆に、ここんとこ何とかしたいな……これからの課題だ、ってのも一つだけ。

    ●38.小説に出すキャラ(ポケモンも含)の名前、どんな感じでつけます? 例もあげて教えてくれたら嬉しいなぁw

    ●39.ついでだから小説のタイトルの由来や、副題(あれば)のつけ方も教えてもらおう。

    ●40.インスピレーションキタ━━━━━(゜∀゜)━━━━━!! アイディアが湧いてくるのはどんな時?

    ●41.アイディアが全然湧かない!!?どうしよう……。

    ●42.あなたの小説主人公は、実はあなた自身の鏡?それともどっちかというと、憧れの姿??

    ●43.小説の中の性的描写。あなたの意見を述べてください。

    ●44.小説の中の死ネタ、殺しネタ。あなたの意見を以下同文。

    ●45.小説の中のやおいネタ、百合ネタ。あなたの以下同文。(意味が分からない人はパスOKです)

    ●46.小説の中のオリジナル技、オリジナルポケ。あな以下同文。

    ●47.打ち切り……

    ●48.スランプと、その脱出法について一通り。

    ●49.後の展開に繋がる伏線を結構張る方だと思う。

    ●50.ぶっちゃけた話、やっぱり年齢が高いほど上手い文章が書ける?

    ●51.同人とかサークル……やってますか?

    ●52.語彙(※ゴイと読む。使える単語量のこと)ってどうやって増やします?

    ●53.ムラムラと執筆意欲が湧いてくる……のはこんな時!

    ●54.ポケモンジャンル以外の小説、書いたことありますか?

    ●55.小説を書く者として、一番大事だと思うもの。

    ●56.そういや今更だけど、ノベラー歴は○○年です。○○歳からです。

    ●57.長く険しい人生。いつまで小説を書いていようかな……

    ●58.この人の本があったら絶対読む! 好きなプロ作家さんっています?愛読書でも可。

    ●59.ノベラーをやっていて嬉しかった事、辛かった事を一つずつ。

    ●60.何だかんだ言っても、自分の小説に誰よりハマッているのは自分自身だと思う……



     

    ■おぷしょん1〜マサラのポケモンノベラー〜■

    ●61.いつ頃この『マサラのポケモン図書館』に辿り着きましたか?

    ●62.『ほびぃすてぇしょん』『おきらく ごくらく』『旧・マサポケ』……何の事だか分かります?

    ●63.他のノベラーさんの小説で、好きな作品を好きなだけ上げてください。

    ●64.他のノベラーさんの小説の登場人物で、好きなキャラっています?誰ですか?

    ●65.他のノベラーさんの小説に、感想つけてますか?どんな内容を?

    ●66.最近流行のオンライン通信。実は私も発行してます?

    ●67.リアルタイムの親善空間・チャット。行きます? どれくらいの頻度で?

    ●68.マサポケ誇る最先端技術、本棚アップローダーシステム。思うところを一言。

    ●69.密かにライバルだと思っているノベラーさんはあの人だ! 最低一人は上げてくださいねw

    ●70.我らがマサポケ管理人、タカマサ様に一言贈ってください。


     

    ■おぷしょん2〜どうでもいいこととか〜■

    ●71.学校好きですか?(学生でない方は、好きでしたか?)

    ●72.ポケモン以外で好きなアニメ・漫画・ゲーム。あります?何ですか?

    ●73.音楽って聴きます? 好きなアーティストとかジャンルをお一つ。

    ●74.ジブリの名作「となりのトトロ」の主人公って誰だと思います?

    ●75.ここでお約束、あなたの恋愛話v 言えるところまで言ってみよう!

    ●76.♪なりたいな ならなくちゃ 絶対なってやる〜…… 将来の夢は?恥ずかしがらなくていいですよw

    ●77.さぁ、最後です。……邪魔するものは何も無い。 今の想いを込め、好きなことを叫べ!!


      [No.2721] 【ポケ小説考】うそ替え神事、玉せせり、飛梅ほか 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/10/28(Sun) 02:55:50     84clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ホウエン地方】 【ポケ小説考

    ポケ妄想:うそ替え神事、玉せせり、飛梅ほか

    リアルホウエン地方こと、九州の本を読んでいます。

    http://www.dazaifutenmangu.or.jp/sanpai/saiten/special/onisube

    太宰府にはうそ替え神事という行事があって、木で作ったウソという鳥を参拝客同士でどんどん取り替えていく行事があるそう。宮司さん達が混ざり込んで金のウソを流して最後にそれを持ってると幸福が訪れるという事だけれど、なんかきんのたまみたいだよねw

    「替えましょ、替えましょ」の掛け声のもと、暗闇の中で手にした「木うそ」をお互いに交換し取り替えます。これは、知らず知らずのうちについたすべての嘘を天神さまの誠心に替え、また、これまでの悪いことを嘘にして今年の吉に取り替えるという意味があります。(太宰府サイトより)

    ウソ(鷽)
    http://on2231.seesaa.net/article/102596493.html

    のデザイン的に近いのはスバメかな。スバメ替え神事なのかも。あるいは地域の方言で鷽と呼ばれてる可能性もあるよね。

    この行事をポケモン世界に置き換えるなら、モンスターボールをどんどん交換していく感じなのかしら。ポケモンが入っていたら「当たり」とか。
    あるいは、とある地域の子が最初にポケモンを貰う儀式として妄想するのも楽しいかも。いくつかの鳥ポケモンを入れたボールを用意して、集まった子供達の間で、とりかえて、とりかえて、神楽が止んだ時に持っていたボールのポケモンが最初のポケモンになる「鳥かえ神事」みたいな妄想。

    うそ替え神事、妄想を掻き立てますね。


    玉せせりというお祭りもあります。
    読み進めてみたらかなり「きんのたま」を思わせるお祭りであった。
    陰陽の二つの玉のうち陽の玉を青年達が取り合うらしい。

    http://4travel.jp/traveler/ruri1/album/10209676/

    写真にうつる玉、私にはもうでかいきんのたまにしか見えない。

    http://www.youtube.com/watch?v=SXMq3rTVttM

    動画もあった。玉に群がる男達が見れる。
    玉をとりあう際、漁民が勝つか、農民が勝つかで大漁・豊作を占うのだとか。



    九州は天神信仰が盛んだという。
    ようするに天満宮にいる菅原道真ね。
    学問の神様として有名な道真だけど、優秀ゆえに藤原氏から邪魔者扱いされてしまった彼は京から九州の太宰府に左遷されてきた男だ。
    彼にはいくつかの伝説があって、そのうちのひとつが「飛梅」伝説である。
    以下、ウィキペディアより引用。

    平安時代の貴族・菅原道真は、平安京朝廷内での藤原時平との政争に敗れて遠く大宰府へ左遷されることとなった延喜元年(901年)、屋敷内の庭木のうち日頃からとりわけ愛でてきた梅の木・桜の木・松の木との別れを惜しんだ。そのときに梅の木について詠んだのが次の歌である。

    東風(こち)吹かば にほひをこせよ 梅花(うめのはな) 主なしとて 春な忘るな
    現代語訳:主人(こと、私)がいなくなっても、春が来るたび忘れること無く、梅の木よ、芳しい花を咲かせておくれ。

    伝説の語るところによれば、道真を慕う庭木たちのうち、桜は、主人が遠い所へ去ってしまうことを知ってからというもの、悲しみに暮れて見る見るうちに葉を落とし、ついには枯れてしまったという。しかして梅と松は、道真の後を追いたい気持ちをいよいよ強くして、空を飛んだ。ところが松は途中で力尽きて、摂津国八部郡板宿(現・兵庫県神戸市須磨区板宿町)近くの後世「飛松岡」と呼びならわされる丘に降り立ち、この地に根を下ろした(これを飛松伝説と言う)[1]。一方、ひとり残った梅だけは見事その日一夜のうちに主人の暮らす大宰府まで飛んでゆき、その地に降り立ったという。

    引用ここまで。

    これ、植物がポケモンに変化したと考えたら面白いなぁなどと思った。
    ポケモンだったら飛んできても不思議はないなぁ。


    あと道真は怨霊としてもよく知られている。
    雷を落として、自らを左遷に追い込んだ藤原氏を殺したとされている。
    このへんを雷ポケモンと結びつけて妄想するのも楽しい。


      [No.2720] Re: 新ルール 草稿 投稿者:aotoki   投稿日:2012/10/27(Sat) 20:05:10     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    「図書館」なので
    ポケスト→1F・カフェテラス&ロビー
    ロンポケ→2F・ラウンジ

    管理人室→RF・屋上

    みたいなのを思いつきました。


      [No.2719] カクタス夜想曲 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/10/27(Sat) 13:39:00     109clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ノクタス


     ノクタス カカシぐさポケモン
     まよなか さばくを あるく たびびとの うしろを ぞろぞろと しゅうだんで くっついて あるく。つかれて うごけなく なるのを まっているのだ。

    「マジかあ……」
     私はポケモン図鑑を持った手をパタリと下ろした。ポケモン図鑑のいけない所は、ポケモンの弱点とか急所とか、そういう実用的な情報が入っていない所だと思う。今、倒すことばかり考えていた気がするが、普段のブリーディングの指針に好きな食べ物欄でも追加しておいて欲しい。いや、やっぱりダメだ。「ノクタスの好きな食べ物 人肉」とか出てきた日には失せる。生きる希望とか色々、失せる。
     既に失せてる気もするけれど。
     ポケモン図鑑を閉じ、ウエストバッグに放り込む。水筒の水をひと口飲み、ため息をつく。再び歩き出した私の後ろから、砂を踏む音がする。それもひとつではなく。
     私が立ち止まると、足音も止まる。振り返ると、相も変わらずノクタスの群れが、月明かりの下、爛々と光る目を並べて私を見つめている。
     現実を認識しようとしつつ、逃避へ向かうため息が、私の口から吐き出された。こんなことになるなら、安請け合いするんじゃなかったな。
    「ポケモン図鑑を君にあげるよ。その代わり、この荷物を砂漠の向こうの町まで届けてくれないかな」
     砂漠の手前の町で、旅立ったばかりの私に話しかけてきた、見た目は優しそうなおじさん。余りの旨すぎる話に、当然、私は警戒した。しかし相手もその程度では退かず、ポケモン図鑑は彼が旅をしていた頃に使っていた物だが、型落ちしているしもう使わないこと、ここの砂漠は広さもなく、野生のポケモンもレベルが低く修行にも良いこと、等々並べられて言いくるめられ、私は小さな包みとポケモン図鑑を持って、砂漠を縦断することにしてしまったのだ。
     途中までは調子が良かった。砂漠のポケモンは地面タイプばかりで、旅立ちの餞別に貰ったゼニガメの、いい修行になった。水鉄砲が出せなくなった時に、引き返すべきだったのだ。水鉄砲が駄目なら体当たりをすればいいや、くらいに軽く考えていた。違った。脱水症状だった。次にバトルに呼び出された時ゼニガメは、鳴き声を上げる間もなく昏倒し、見えない手で上下左右に振り回されているかのように震えだした。私は頭が真っ白になって、何をどう考えたのかゼニガメを抱えて逃げた。水・食料その他、旅に必要な諸々が入ったリュックサックをその場に置いて。
     そして、ゼニガメの入ったボールと貴重品の入ったウエストバッグをよすがに、町と覚しき方向へ歩き、気付いたらノクタスの集団に付け狙われている。
     ふーっ、と長く吐いた後悔のため息は、季節は春だというのに白く染まって消える。ゼニガメが倒れた時、リュックサックに入っていた大量の水を飲ませておけば良かった。逃げた後、そのまま進むんじゃなくて、戻ってリュックサックを拾えば良かった。後悔は尽きないけれど、何もかも、遅すぎた。こうなったら、もう、歩くより他になかった。ポケモン図鑑に書いている通りなら、ノクタスたちは私が「つかれて うごけなく なるのを まっているのだ」。歩き続ければ。町に着けば。私が脱水症状を起こすより先に。そうすれば、ノクタスの群れから逃れられる。
     ただ、砂を掻くように歩く。
     終わりは呆気なくやってきた。真っ赤に燃える太陽が顔を出した。あっという間に全身チリチリに焼かれるような感触を味わって、倒れた。待ち望んでいたように、ノクタスたちが砂を蹴って私の元へ駆け寄ってくる。真っ青な私の視界をノクタスの影が埋め尽くす。日陰で涼しくなって、そして、ノクタスの一匹が私に手を伸ばし――






     お姫様抱っこした。ちょっと何やってんの? と枯れた喉で叫んだ私の目の前で、ノクタスたちはどこ吹く風、ブルーシートを敷き布を敷き、その上に私を寝かせるのと同時進行で日除け布を貼っていた。与えられたスポーツドリンクをふた口ほど飲んでいる間にテント完成。それからドサリと音がして、見たら私が置いていったリュックサックが戻ってきていた。お次は皆で針金を持ったノクタスの所へ集まってシャベルで穴を掘り始めた。水を掘り当てた。万歳するノクタスたち。驚く私。周囲を掘って池を作り、きのみを植えて、オアシスの出来上がり。そこにいつの間にか私から強奪したゼニガメを投げ込んだ。ヒタヒタになって元気な顔を見せるゼニガメ。ゼニガメに回復効果のあるオレンやヒメリのきのみを与えるノクタスたち。唖然とする私。
     オアシスの水を満喫し、私の所へ戻ってきたゼニガメの顔に、倒れた時の干からびた感じはもうなかった。
    「ごめんね、ゼニガメ」
     それから、
    「……ありがとう、ノクタスたち」
     それからの道中は楽なものだった。ノクタスたちがいるから野生のポケモンは出てこないし、リュックサックに入れていた水と食料は既に漁られた後だったが、ノクタスたちが用意してくれるのでその心配もない。むしろ重たい食料が失くなった分荷物が軽くて楽なくらいだった。しかし、こうなったのはそもそも自分の行動のちゃらんぽらんさが原因な訳で、だから、ノクタスたちが頻りにきのみを勧めてくれたり、荷物を持とうとしたりするのが、何と言うか、肩身が狭い。ゼニガメは勧められた先からバクバク食べていた。
     町のゲートが見えてきた。ノクタスたちが立ち止まる。ここでお別れなのだと察し、私も手を振った。
    「さよなら」と言うと、向こうも手を振り返してきた。何故だか込み上げてきた涙を拭って、町のゲートまで数メートル、最後のスパートを掛けた。
     そして急ブレーキを掛けた。
    「やあ、また会ったね、君」
     町の入り口に、非常に見覚えのあるおじさんが立っていた。忘れもしない、砂漠の縦断をそそのかしたポケモン図鑑あげるよオヤジ。何平然と笑っているのだろう。怒りが込み上げてきた。
     そんな私の様子は気にも掛けず、詐欺オヤジはとうとうと喋り始める。
    「あの包みは持ってきてくれたかね? いや結構! それは君への餞別だよ。中身はなんと、最新の万能端末ポケフォンだ。使い方はおいおい慣れてくれたまえ」
    「ちょっと!」
     そのまま百万年でも喋り続けそうなオヤジの言葉の間隙を狙って、私は声を上げた。オヤジは不可思議そうに、目を丸くする。
    「なんだい?」
    「レベルの低いポケモンしかいない、なんて嘘だったじゃない! ノクタスが」
    「ああ、私のノクタスたちに会ったのかね。何を隠そう、あの子たちは私が訓練を施したその名も、ノクタスレンジャーさ。無計画に砂漠に突っ込んで死にかける馬鹿なトレーナーを救助する役割を」
    「馬鹿は余計だ!」
     オヤジの顎にスカイアッパーが決まった。オヤジは悶絶して、黙らなかった。
    「私、嵌められてたんじゃないか!」
    「甘い話には裏があるということでね」
     私の顔は今、真っ赤だろう。騙されたとはいえ命は助かったし、教訓話と思えばポケモン図鑑とポケフォン付きはお得なもので。しかし腹は立つ。
    「もう、今度何か運べっつっても運んでやんない! おじさんの言う事なんか信じてやんないから!」
     最早子どもの戯言みたいな支離滅裂な文句になりつつ、しかし何か言わずにはおれず。
     周囲の人々はというと、この町ではよくあることらしく、軽い笑いでもって私を見守っている。
    「もう知らない!」
     我ながら意味の通らない捨て台詞を吐いて、もう恥ずかしいったらありゃしない。兎にも角にも、逃げるように、私はその町のポケモンセンターへとダッシュした。

     ノクタス カカシぐさポケモン
     まよなか さばくを あるく たびびとの うしろを ぞろぞろと しゅうだんで くっついて あるく。つかれて うごけなく なったら きゅうじょ するのだ。


      [No.2718] Re: 新ルール 草稿 投稿者:リング   投稿日:2012/10/27(Sat) 10:20:49     122clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:もふ】 【もふもふ】 【もふもふもふ】 【もののふ



    > 【案2】ポケスト→『毛フェラウンジ』 ロンスト→何か(未定)
    もふられる……っ!


      [No.2717] 新ルール 草稿 投稿者:No.017@ホワイティ反対派   《URL》   投稿日:2012/10/25(Thu) 08:38:39     78clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    ●この掲示板で出来る事
    カフェラウンジ(仮)では「ポケモン小説」の投稿をはじめ、「ポケモン小説」に関する話題でしたら何でも話題にしていただけます。

    【小説の投稿】
    ポケモンの小説を投稿していただけます。
    100文字くらいの短い作品でも構いませんし、10000字くらいがっつり投稿していただくのもいいでしょう。
    ポケモンを使った俳句や短歌、詞なんかもいいですね。

    【イラストの投稿】
    ・ご自身が描いたポケモンや小説の登場人物のイラストを投稿していただけます。
    (※ただし、お絵かき機能はついていません)
    もしかしたら絵を見た文章書きさんが「書いてみた」をつけてくれるかも?
    逆に他の方が書いた小説に「描いてみた」をつけるのもいいかもしれませんね。

    【感想】
    小説やイラストにはぜひ一言でも感想を!
    いつも読んでいますだけでも、作者さんは喜ぶものですよ。

    【批評依頼】
    あなたの書いた小説の批評依頼を出すのもいいかもしれません。
    ただ、批評はボランティアなので貰えるとは限らないのと、思わぬ辛口コメントが飛んでくるかも。
    転んでも泣いてもいいけど、恨みっこなしで。

    【企画や告知】
    ・マサポケでのチャット会告知
    ・マサポケでのオフ会告知
    ・小説コンテストの告知
    ・小説同人誌の告知(ポケモン小説で夏コミ出ますなど)
    などなどマサポケのイベントやポケモン小説に関係のある話題もここでどうぞ。

    【その他】
    その他、ポケモン小説やマサポケに関する話題は何でもどうぞ。
    オススメの小説の紹介や、小説手法に関する議論など、思いつく事はどんどん投稿なさってください。


    ●タグについて
    投稿記事には10個までタグを指定する事が出来ます。
    登場ポケモンや、シリーズ名があれば入れるといいかもしれません。
    必須ではありませんが、推奨タグをご紹介します。

    【書いてもいいのよ】…… タグがついている作品には、別の参加者がその作品を題材にした文章を、 返信する形でつけていただいて構いません。
    イラスト/写真のみの投稿はたとえタグがなくとも、これがついたものと見なします。

    【描いてもいいのよ】…… タグがついている作品には、別の参加者がその作品を題材にしたイラスト/写真を返信する形でつけていただいて構いません。

    【批評していいのよ】…… 批評して欲しい時につけてください。ただし、思わぬ酷評が飛んでくる可能性もありますので、自己責任にて。

    これ以外にも面白いタグを思いついたらどんどん使ってもらって構いません。
    また、書いていいのよ・描いていいのよタグが無かったからといって、これらをやってはいけないという決まりも特にありません。
    思わぬ反応があったり、創作の連鎖が生まれる所がネットのおもしろい所ですので、タグをつけている人は強く推奨している程度に考えて、あまり遠慮はしないように。



    ●注意事項

    【メモ帳等を使いましょう】
    ・スパム対策を施した掲示板の為、投稿がはねられて消えることがあります!
    小説を書くときは、直接掲示板に書くのではなく、メモ帳(「スタート」→「プログラム」→「アクセサリ」→「メモ帳」)などに書いて、自分のパソコンに保存してから、それを貼り付けて投稿するようにしましょう。

    【掲示板は作品保管庫ではない】
    ・何らかの原因で掲示板ログが消えることがあります。消えてしまっても再投稿ができるように、ご自身の作品はご自身にて保管をお願いいたします。ミスによって消えてしまったとしても責任をとることが出来ません。
    ・掲示板は出来た作品を一時的にお披露目する為の場所です。記事はいずれ流れてしまいます。保管をしたい場合はHPを作ったり、保管場所のあるサイトさんに別途投稿しましょう。

    【遠慮しない。気にしない】
    気楽に投稿していただく為の掲示板ですのでクオリティを気にしてはいけません。
    とりあえずポチっとな。








    【案1】ポケスト→カフェテラス ロンスト→カフェラウンジ
    【案2】ポケスト→毛フェラウンジ ロンスト→何か(未定)

    ビアガーデンと名付けようとしてやめた。
    何かいい名前はないか。


      [No.2716] SSが戻って来た話 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/10/24(Wed) 13:03:15     81clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:【うちの学校】】 【【マジカオス】

    ソウルシルバーが戻って来た。
    どれだけ待ったことか。
    とりあえずこれだけは言える。貸した友人は鳥頭だった。というか、自分で言っていた。

    「なーR、いい加減ソウルシルバー返せよ」
    「えー…… 何処にやったっけ」
    「おいこら」
    「いや、あるはず!探しとく!探しとくから!」

    この会話をしたのが金曜日である。そして月曜日。

    「おいR、探したか」
    「え  ……あ、忘れてた」
    「……」
    「いや顔合わせる度に言ってくんないと。あたし鳥頭だからさ」
    「開き直んな!ってか鳥頭なら何でテストで八十とか平気で取れるんだよこのタコ!」

    その記憶容量少し分けて欲しい。真剣に思う。ちなみにこの前出した友人Kは一学期の倫理のテストで百点を取っていた。
    『どうやったらそんなに取れるんだよ。確か一夜漬けとか言ってなかったっけ』と言ったら、『脳みその出来が違うんじゃね?』と返してきた。ついでに側にいた別の子に『お前は勉強しなさすぎなんだよ』と言われた。
    否定できないのが辛い。私の高校に入ってからの最高点は高二最後の数学基礎の積分八十六点。
    このおかげで春コミと後のオフ会に行くことができた。

    話を戻そう。それは、何の前触れも無しにペンケースの中に入れられた。
    ティッシュにくるまれて。

    「ほらよ」
    「……(認識できていない)」

    しばらく経って、ソフトだと分かった。ってか何でティッシュなんだよ!せめて小さい袋とかにしろよ!あと何で『○○へ(本名)』ってペンで書いてあるんだよ!つかよく書けたな!

    突っ込み疲れてその日は一時限目からペンケースを枕にして寝ていた。


      [No.2715] Re: そんなに気になりはしないけど一応報告。(追記:対応しました) 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/10/20(Sat) 16:05:20     174clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:タグ1】 【タグ2】 【タグ3】 【タグ4】 【タグ5】 【タグ6】 【タグ7】 【タグ8】 【タグ9】 【タグ10

    > お疲れ様です!タグが10個になったのをいいことに早速遊びすぎました。
    >
    > さて、本題です。
    > とはいえ、放っておいてもあまり支障はないかもですが一応気がついたので。
    >
    > 記事編集→投稿で、「以下のように返信が完了しました」画面でタグが5個しか表示されないようです。
    > とはいえ編集された記事そのものではきちんとタグ10個出ているので問題はなさそうですが。
    >
    > と、一応報告でした。

    > レイニーさん
    ありがとうございます!(´ω`)
    どこが原因かはなんとなくわかったので、夜のうちに修正しておきます(`・ω・´)

    追記:
    修正しました! ご報告ありがとうございました。


      [No.2714] そんなに気になりはしないけど一応報告。 投稿者:レイニー   投稿日:2012/10/20(Sat) 14:57:57     152clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:不具合報告】 【不具合というほどでもない】 【カゲボウズ】 【洗濯させろ】 【ぴじょんぴょん】 【トゥートゥー

    お疲れ様です!タグが10個になったのをいいことに早速遊びすぎました。

    さて、本題です。
    とはいえ、放っておいてもあまり支障はないかもですが一応気がついたので。

    記事編集→投稿で、「以下のように返信が完了しました」画面でタグが5個しか表示されないようです。
    とはいえ編集された記事そのものではきちんとタグ10個出ているので問題はなさそうですが。

    と、一応報告でした。


      [No.2713] 木綿 投稿者:レイニー   投稿日:2012/10/20(Sat) 14:50:58     170clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ポケライフ】 【カゲボウズ】 【洗濯日和派生】 【作者は拝郷メイコフリーク】 【元ネタはアルバム「ミチカケ」収録の「木綿」】 【ていうか元ネタまんますぎる】 【気になったら聴いてみるといいのよ(ステマ)】 【最新アルバム「BROOCh」もオススメ(ステマ)】 【二次創作×二次創作=四次創作】 【これがやりたかっただけだろシリーズ

     気持ちのいい快晴の朝。絶好の洗濯日和だ。そんな日に私が起き抜けにすることは決まっている。もちろん洗濯だ。
     朝食も食べず洗濯機の前に向かう。籠の中に溜まっていた洗濯物を一つ一つ洗濯機に入れていく。あ、これはネット洗いだ。
     全部入れ終わったら洗濯機のボタンを押し、蛇口をひねる。徐々に洗濯機の中は水で満たされていく。満たされていく途中で洗剤を投入。だんだんと洗濯物は水と泡に埋められていく。
     そして、準備が完了すると、洗濯漕はぐるぐると回り出す。本当は蓋を閉めなければならないのだけど、ついつい中を眺めてしまう。この瞬間がたまらなく好きだ。渦の中に飲み込まれている洗濯物をじっと眺める。泡にまみれて綺麗になっていく洗濯物と一緒に、私の心まで綺麗になっていく気がするから。ぐるぐる回る洗濯物と一緒に、私の心も飲み込まれ、ぐるぐると回っていく。
     向こうで寝ている彼の白いシャツが、泡の中から顔を覗かせた。昨日のことを思い出し、ぐるぐる回る私の心がちくりと痛む。
     あんなところ、見たくなかった。知らない女性を連れた彼を偶然町中で見かけてしまうなんて。一緒に暮らしてるのに、あんな笑顔長らく見ていない。
     悔しい。私といてもあんなに笑顔になってくれないのに、どうして……。
     洗濯をしている満足感は、どんどん見ず知らずの女性への妬みと、そんな自分への嫌悪感に満たされ、存在感を消していく。ぐるぐると目が回りそうになりながら、頭の中も回っていく。綺麗になっていく洗濯物とは裏腹に、私の心は綺麗にならな――

     見られている。その感覚に気がついたのはまさにその時だった。
     彼が起きて来たと思った。こんな姿見られたくないと思った。だからどきっとして後ろを振り向いたら。
     そこにいたのはポケモンだった。いや、ただ「いた」のではない。ポケモンが浮いていた。
     漆黒の柔らかそうな体をはためかせ、三色の瞳で私をじっと見つめている。カゲボウズだ。

     どうして家にポケモンがいるんだろう。まず私の頭の中に浮かんだのは全うな疑問だった。私も彼もカゲボウズを、いやポケモンすら持っていない。鍵はかけてるから野生のポケモンが入ってくるはずは……とまで考えて、はたと気づいた。カゲボウズはゴーストタイプだ。つまり幽霊。幽霊には壁もドアも関係ない。……これじゃプライバシーも何もあったもんじゃない。そのことに気がついて、ため息が一つ飛びだした。
     ……で、どうしてカゲボウズが今ここにいるのだろうか。この不法侵入ポケモンについて、スマートフォンで検索してみる。結論はすぐに検索結果として現れた。カゲボウズは負の感情を食べるらしい。ああ、それで。私の負の感情を見つけて、餌があると思ってやってきたわけか。
     不法侵入者を見てみると、ふわりふわりと浮かびながらじっとこっちを見ているだけだ。こちらに危害を加える様子はなさそうだ。無視していれば帰るだろうかと思い、洗濯機の方に意識を戻す。ぐるりぐるりと回る洗濯槽。
     と、カゲボウズが突然、洗濯機の中に飛び込んだ。私の注目を浴びる洗濯機に嫉妬したのだろうか。ぐるりぐるりとあっという間に渦の中に飲み込まれるカゲボウズ。
     ……いくらなんでもこれはまずい! 慌てて泡にまみれてきらりと光るシャツの隙間から、カゲボウズを救出する。まずい、完全に目を回している。飲みこんだ水を吐き出させ、真水を与え。
     あとは医者だ! 私は洗濯機の蓋を閉め、心なしかさっきより綺麗になったカゲボウズを連れてポケモンセンターへと駆け込んだ。


     結果から言うと、カゲボウズは無事だった。すぐに洗濯槽から引っ張り出したため、大した量を飲み込んでいなかったため大丈夫だったらしい。
    「今回は災難でしたね。でもカゲボウズは布に近い体をしているんから、手洗いの要領で洗ってあげると綺麗になるし、なによりカゲボウズが喜ぶんですよ」
     ……私のポケモンじゃないんですけど、と脳内ではツッコミを入れつつ、私はジョーイさんにお礼を言いながら弱々しく笑った。

     家に帰ると、彼は私の動乱を何も知らずに眠り続けていた。そして洗濯機はその仕事を終え、すっかり沈黙していた。
     洗濯機の中身を回収し、外に出て洗濯物を一枚一枚干していく。遠くから漂う金木犀の香りが心地よい。暑くもなく寒くもない、この曖昧な季節が一番好きだ。
     元気になったというのにまだ私にくっついているカゲボウズは、やはりその様子をじっと窺っている。
    「……何、アンタも干されたいの?」
     こくりとうなずくカゲボウズを見て、私はタライと石鹸を取ってくることにした。
     面倒事が増えるだけだというのにちょっと心が晴れやかなのは、実はカゲボウズが私のネガティブな感情を食べてしまっているからなのか。それともうっとりするような金木犀の香りを運んでくる心地よい風のせいなのか。


     現れた時は真っ黒だったカゲボウズは、石鹸の泡の中、みるみるうちに濃紺に姿を変えた。結構綺麗になるものなんだとカゲボウズを洗った自分でもびっくりしている。
     洗濯バサミで止めるのは痛そうかなと思ってたら、自力で物干し竿にぶらさがった。傍から見たらどう見ても洗濯物だ。
     街路樹の黄色を背景に、濃紺のカゲボウズと真っ白いシャツ。なかなかのコントラストだ。時々黄色が風に揺られてざわめく。すると濃紺と白もゆらりゆらりと踊りだす。

     そういえば、彼と初めて会った時もこれくらいの時期だったっけ。眩しい黄色とちょっと眠りを誘いそうな香りによって、昔のことを思い出す。

     友達の友達に、一目惚れしたんだったっけ。なんでだったか、気がついたら魅入られてて。
     その赤い頬にどうしようもなく触れてみたくなって。気がついたらこの手を当ててその存在を確かめてた。
     初めて会う子にそんなことされて、ちょっとびっくりしながらも笑ってたっけ。
     頭の中で、彼の笑い声がリフレインする。そんな子どもじみた私を笑う声。

     ああ、もう潮時だったんだ。
     本当は自分でもずっと前からわかっていたんだ。いつまでたっても変われない私から彼の心が離れてることなんて。
     だからもう、終わりにしよう。

     洗濯物がひらりひらりと風に踊る。その影が私にかかったり、離れたり。
     それを見ていると、私の決心にもゆらりゆらりと影が踊る。ああ、弱い決心だ。

     だから、私の弱い決心が壊れる前に、早く「正解」に向かわなきゃ。
     そのために、あなたの力、借りてもいい?

    「ねえ、カゲボウズ」
     物干し竿にぶら下がったままこちらを向いたカゲボウズに、私は小さく頷いた。意思疎通はそれだけで十分だった。


     ひらりひらりと白いシャツとカゲボウズが風にゆられて乾いていく。
     彼らが完全に乾ききる頃には、私の淡い恋心はすっかり跡形もなく溶けてしまっていた。



    --------

    拝郷メイコさんの「木綿」という曲が好きすぎて、どうしてもこの世界観でカゲボウズをひらりひらりとさせたくなって書いた。
    ぶっちゃけ意図的にかなり元ネタまんまです。なのでこちらにのみ投稿。

    尚、作者があまりに拝郷ちゃん好きすぎるために布教したいというステマ的理由もあるとかないとか。



    テスト期間が終わったら 溶けてなくなる 跡形もないほどに


      [No.2712] マニキュア 投稿者:NOAH   投稿日:2012/10/20(Sat) 13:27:17     71clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:テストなのよん

    赤いボトルの液体が、さっと左手の爪を彩る。
    爪に優しいベースコートの上に塗られた赤いマニキュアは、まるで炎のように輝いている。
    とりあえず、爪からはみ出してしまった分は一度置いておき、右手の方に取り掛かる。
    私は左利きではないので、ここは慎重に塗っていく。
    マニキュア独特の、ツンとした匂いが部屋を満たす。
    この際、さっさとしろと言わんばかりのミルホッグは放っておくことにした。

    右手も塗終り、少しの間だけ乾かしておく。そうでもしないとシールが張りにくいのだ。
    頃合いを見て、指にはみ出したマニキュアを、ペン状のマニキュア落としで丁寧に落とし、白い薔薇のシールを取り出す。
    ピンセットで綺麗に一枚ずつ貼り、仕上げのトップコートをさっと塗る。
    これであとは乾くのを待つのみだ。

    「さあ、今日のデート、張り切って行くわよ!」
    「みぎゅッ!」



    テスト用に小話1つ。


      [No.2711] おぉー! 投稿者:巳佑   投稿日:2012/10/20(Sat) 12:49:51     93clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:586さん】 【作業】 【お疲れ様です

    私も便乗してやってみました。
    作品はマサポケにやってきてかなり初期の頃のものです(ドキドキ)

    最初にタグがつくことに感動し、削除キーも入れないとエラーになることを自分も確認しましたですー。
    キーを入れ忘れて、鳩さんにお世話になったときのことを思い出す今日この頃……。
    これで、もうキーの入れ忘れなんて怖くない(キラッ)

    それでは失礼しました。


      [No.2710] 翠緑空の理 投稿者:巳佑   投稿日:2012/10/20(Sat) 12:41:22     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:レックウザ】 【テストなのよ


     この世界の空は最初、翠緑色でした。
     それはそれは綺麗な緑色でした。
     ある日のこと、一匹の小さな青い龍がその空に恋をしました。
     やがて、一匹の青い龍が翠緑色の空に告白をしました。
     愛の告白をしました。
     翠緑色の空はその愛の告白を受け止めました。
     すると、
     一匹の小さな青い龍の体から徐々に青色が消え、
     その姿は大きくなっていき、
     やがて綺麗な翠緑色の巨大な龍となりました。
     そして、
     空は綺麗な青色になりました。

    「我等はお互いの色を結婚指輪にしたのだ」

     その名はレックウザ。
     空と番を結び、
     空の色を青色に変えたもの也。

     そして、
     この愛が
     この青い空を美しくさせているのだろう。


      [No.2709] 適切な表現を求めるポケモン小説書きの会〜ホワイティはステマです〜 投稿者:No.017@ホワイティ反対派   《URL》   投稿日:2012/10/20(Sat) 10:50:47     93clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:適切な表現を求めるポケモン小説書きの会】 【ホワイティはステマ】 【会員募集中

    最近、ツイッターで、自分こそは「ホワイティ」なポケモン小説書きと風潮して回る輩がいるそうです。
    中身を見ればひどいものです。
    人は死ぬし、首は飛ぶし、村はダムに沈むし、780の墓標を建てるし……トラウマを植え付けるし。
    我々は表現者としてあくまで「適切」な表現を求めていかなければならないのではないでしょうか!?
    賛同する方はテストも兼ねて、返信して下さい。

    ご入会お待ちしております!


      [No.2708] わーい タグが10個になったお! 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/10/20(Sat) 09:43:28     125clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ピジョン】 【とりポケモン】 【あしのつめが】 【はったつ】 【している】 【エサのタマタマを】 【つかんで】 【100キロさきの】 【すまで】 【はこぶ

    狐がなにやら騒いでるようだな
    今日はケンタさんのライブに行くんだよッ




    No.017(なんばーじゅうなな) / はとずきポケモン
    たかさ 1.5メートル  おもさ 70キログラム

    ピジョン に もえる ポケモンサイト の かんりにん。
    ネットぶん を ほきゅう できないと はっきょうする。
    じつは マメパト も かわいい と おもっている。
    すきなボカロ は 猫村いろは。

    とくせい: きんがん……メガネがてばなせない
    どうぐ: メガネ……はずすとめいちゅうりつがさがる
    わざ: えをかく / おはなしをかく / にわかさっきょく / なまける


      [No.2707] Re: タグ追加後のテスト 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/10/19(Fri) 23:15:11     140clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:「僕、お礼がしたいんです。ほんのちょっとでもいいから、お礼がしたいんです」】 【(どうしてだろう? あのヤンヤンマ、ヤドンの傍をちっとも離れようとしないや)】 【「……おーちゃん、行くよ! わたし、おーちゃんのこと、絶対助けてあげるから!」】 【「……君、これは『アンノーン』という歴としたポケモンなんだよ。よく見てみたまえ。ここに目があるだろう」】 【「……ねえみんな、ちょっといい? わたし、おはなしがあるの……」】 【「あたし、宇宙飛行士になりたいの!」】 【――教授が両手に持っているスプーンには、どのような意味が?】 【「でもね、僕、あの目の前にあるお日さまよりも、もっと素敵な『たいよう』を知ってるんだ」】 【(今日は、なんだかヘンなことが多いや。気味が悪いよ)】 【(これ以降、この日記に何かが書き付けられた形跡は無い)

    一つのタグが長い場合、どのようなレイアウトに見えるかの確認。


      [No.2706] Re: タグ追加後のテスト 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/10/19(Fri) 23:10:53     138clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:1番だから1番】 【3番だけど2番】 【4番だけど3番】 【5番だけど4番

    > 例によって挙動不審のため、動作テストを実施します。

    拍手OK。
    タグソートOK。
    プレビューOK。
    修正OK。


      [No.2705] タグ追加後のテスト 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/10/19(Fri) 23:09:50     124clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:タグ1】 【タグ2】 【タグ3】 【タグ4】 【タグ5

    例によって挙動不審のため、動作テストを実施します。


      [No.2704] 【業務連絡】23:00頃まで投稿を一時的に止めてください 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/10/19(Fri) 21:57:29     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    タグを5個から10個に拡張するに当たり、データファイルの移行やスクリプトのアップデートを断続的に実施します。
    つきましては、申し訳ありませんが23:00頃まで一時的に投稿を見合わせてください。

    皆様のご協力をお願いいたします(´ω`)


      [No.2703] タグソートアルゴリズムの変更テスト 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/10/19(Fri) 21:43:32     119clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:1番だから1番】 【3番だけど2番】 【4番だけど3番


    「……『Line:3316 未定義のシンボルです』……これ、もう何回目でしょう……」
    「まーたそのエラーか。ったく、可愛げがねーなぁ」

    名取――エラーメッセージを読み上げた男――と、北川――エラーメッセージに「可愛げがない」と悪態を付いた男――が一つのディスプレイに目をやりながら、それぞれにぼやく。二人は今、ディスプレイに垂れ流された長いプログラム・コードを読みながら、潰しても潰しても際限なく出続けるバグと格闘し続けていた。

    名取と北川は、共にとある情報処理技術を扱う企業に勤めているプログラマーだ。名取は二年目の新人、対する北川はこの道十五年のベテランである。彼らはこうしてコードと格闘する日々を続けながら、それでもこの仕事にやりがいを見出すことができていた。この手の仕事は離職率が高い。彼らのようにやりがいを見出すことができる人種は、幸せな人種であると言えた。

    「ちゃんとヘッダで宣言してるんですけどねぇ」
    「ああ。こりゃ、どっかでヘンな初期化を食らってるな」
    「デバッガにかけてみましょうか?」
    「いや。printfデバッグでいいだろう」

    この部屋の時計は、すでに十一時を指している。無論、本日二回目の十一時だ。だだっ広いオフィスの電気はほとんど落され、部屋にある光源は名取と北川の見ているディスプレイのみ。彼ら以外に、人影はまったく見当たらない。

    北川の指示を受け、名取がキーを叩く。

    「この辺ですかね」
    「おう。とりあえずその辺りの変数をコンソールに出してみてくれ」
    「はい」

    二人はごく最近チームを組んだばかりであるが、見ての通り、なかなかに息の合ったコンビだった。

    北川の指示と、それを受けた名取によるコードの修正という作業が数度繰り返された後、名取が何かをやり終えたような表情で、ゆっくりと息を吐きながら呟いた。

    「……とりあえず、エラーは出なくなりましたね」
    「とりあえずは、な。またいつ出るか分からんから、ここはコメントアウトして残しておけ」
    「ええ。そうするつもりです」

    名取はカーソルキーを数度、スラッシュキーを二度叩き、最後にコントロールキーとF5キーを押下した。

    「これでよし、と……」


      [No.2702] (一)老婆 投稿者:九十九   《URL》   投稿日:2012/10/19(Fri) 21:14:27     91clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:野の火

    今宵、役者は面を被りて、出で立ち進むは石舞台。
     舞いて祝詞を唱えれば、妖降り立ち甦る。

     口惜しや人間どもめ。
     恨めしや人間どもめ。

     我を忘れたか。我が炎を忘れたか。永き時が忘れさせたか。
     ならば、今こそ思い出させてくれようぞ。
     今こそ思い出させてくれようぞ。

     今宵こそはその機なり。



     野が燃える。
     地平を染める赤い炎。
     燃える燃える。踊る踊る。
     放たれた火が金色の野に燃える。


     人間共め、今こそ思い出させてくれようぞ。

     我が名は、私の名は――





    ●野の火






    (一)老婆


     ホウエン地方の蒸し暑い夏が終わり、山々の木々の葉は、緑色の衣から赤や黄に衣替えをはじめていた。
     それは地を彩る草々も例外ではなく、野も山も秋色に染まりつつあった。
     夕暮れともなれば、あちらこちらから鈴の音に似た音色が耳に届く。
     つい最近までこの音色を聞く度に、まだ夏だというのに気の早い虫もあったものだなどと思っていたのも束の間、今はこの音がしっくりと感じられた。
     夕闇に羽の音が混じる。
     オオスバメのような大きな鳥ポケモンが羽ばたく音ではなく、もっと小型のポケモンがせわしなく羽ばたく音だ。あまり長い距離を飛ぶのは得意ではないらしい。
     音の主である緑色のポケモンは、村の入り口を示している石柱にとまると、自身の主である青年の顔を覗き込んだ。
     青年は鳥ポケモンの頭を撫でてやる。それは目を細めて喜んでいるようだった。
     落ち葉で覆われた大地にしっかりと刺さったその石柱は相当に古いものらしく、もはや石に刻まれた文字を読むことはできない。
     青年は早々に解読を諦めて、緩やかな上り坂を進んでいった。
     夕暮れ時、またの名を遭魔ヶ時。
     日が西の空に去って、世界が夜色に染まり始める時間。
     ちょうど彼が村の境界に足を踏み入れたのはそういわれる時刻だった。

     緩やかな山道が一本に伸び、人々の集まる集落へと続いている。
     青年は緑色の鳥ポケモンを肩に乗せ、集落に向かってやや急ぎ足で歩みを進めた。
     早々に宿を確保したかった。いわゆるリーグを目指す本業ではないにしろ、トレーナーの免許を持っている青年はポケモンセンターならば無料で宿泊できる。だが、目的の施設が必ずしもこの先にあるとは限らなかった。あったにしても利用客が多かったりすれば相部屋になったり、場合によっては、他の有料宿泊施設を利用しなければならないこともある。何事も早めに越したことは無い。
     そんな勘定をしながら、山道を歩いていた青年だったが、ふと、何かに誘われるように、夕闇で染まりかけた木々の間を見た。
     通り過ぎていく風景の中に何かがあるのを垣間見たからだ。
     いわゆる普通の、リーグを目指すような旅のトレーナーならばおそらく一瞥しただけで、通り過ぎただろう。が、あいにく彼はそういう類のトレーナーではなかった。青年の目線の先、夕闇に染まりかけた木々の間からは何かの建物の影がおぼろげに見えた。静まり返った山の一角に寂しそうに佇んでいる。

    「…………」

     青年は足を止めると、しばしの間、そこに見える建物を眺める。
     そして進路を集落でないほうに変えたのだった。
     青年の勘が彼に告げていた。宿を探す前に一度、見ておいたほうがいい、あそこには何かがある、と。
     一瞬、沈んでゆく夕日に引き伸ばされた青年の影が踊ったように見えた。

     人一人がやっと通れるような細い細い道を伝って、青年は目的と定めた場所へと近づいた。
     近づいてみると、それは神社とおぼしき建造物だった。
     いや、神社につきものの鳥居は無いし、これまたつきものの賽銭箱もなかったが何かを祀っているには違いなかった。
     おそらくは雨を避けるためだろう。ご神体とおぼしきしめ縄を戴いた大きな岩。それを守るように屋根が備えられていた。
     ご神体の前に立つ。様々な種類の苔に覆われたその岩はそれ相応の年月を思わせた。
     しかしなぜだろうか、その岩を守るように建てられたこの屋根そのものは、青年の歳よりは長い年を経ているにしろ、比較的新しいもののように思われたのだった。
     そして特に青年の興味を惹いたのは、そこに供えられていたあるものだった。

    「これ、しゃもじ……だよね?」

     青年は傍らの鳥ポケモンに同意を求めるように言った。
     しめ縄を戴く岩の前には大量のしゃもじが供えられていた。奥にあるものはかなり古く色もくすんでいたが、前のほうにあるものは肌色に近く新しい。誰かが定期的に供えているらしいことは明らかだった。それが木製の台に立てかけるように整然と並んでいる。
    「一体何の神様なんだろう」
     青年はそんなことを呟いて、あたりをっ見回したが、これまた神社にありがちなありがたい神様に纏わる言い伝えを書いた立て札などは一切無く、その神の名も、ご利益も知る手段がないのだった。
     ふと、青年は自身の足元がざわつくのを感じた。彼の足元の、影に入っているもの達が何者かの来訪を伝えている。
     こんなところに来る物好きが自分以外にもいるとはね、そんなことを考えつつ、青年は後ろを振り向いた。
     見ると、猫背の老婆がこちらへ向かって歩いてきているところだった。
     小柄だが、皿のような丸い眼に、きゅっと閉じられた口元は古狸という例えがしっくり来そうだ。それでいて、よく言えば意思が強そうな、悪く言えば頑固そうな顔つきだと彼は思った。
     少なくとも、足元の影の中に飼っている"彼ら"のターゲットにはなり得ないタイプだな、などと考える。
     老婆は消して早くは無い、けれど確かな足取りで青年が立つ場所に近づいてくる。
     ご神体の前まで彼女がやってくると、青年は電車の席を譲るように立っていた場所を明け渡した。
     老婆は、当然とばかりにさっきまで青年が立っていた位置に陣取ると、ご神体に手を合わせて一礼をした。
     青年はなんとなく理解する。たぶんここを定期的に訪れているのはこの老婆で、おそらく供え物をしているのも彼女なんだろうと。そんなことを考えていたら手を合わせたままの老婆と目が合った。
     いや、老婆が手を合わせたまま、顔だけをこちらに向けてきたといったほうが正確か。

    「………………」

     彼女は目をぱっちりと開いて、青年の正体を確かめるかのように、凝視する。
     もしかしたら、この老婆も大学で出会った誰かさんみたいに人には見えないものが見えてしまうタイプなんだろうか、そんな想像が働いて青年は身構える。だとすればすこしばかり面倒だ。
     すると老婆が口を開いた。

    「……ツクモ様じゃ」

     しわがれた声でそう言った。

    「はい?」

     青年は少々間の抜けた声を上げる。

    「お主さっきから、ここにいる神様のことを考えておったな? ここにいる神様はな、ツクモ様という」

     そう老婆は言ったのだった。

    「ツクモ様……ですか」
    「そう、九十九と書いてツクモと読むのじゃ」

     にやりと老婆は笑った。自身の薀蓄を披露できたのが嬉しいのかもしれない。

    「ツクモ様は豊穣の神様じゃ。この土地でたくさんの米がとれるのも、ツクモ様が見守ってくださるお陰じゃ。今年もたくさんお米がとれました。お腹いっぱい食べさせてくれてありがとうございますという感謝の気持ちを表す為にこうしてしゃもじをお供えするんじゃよ」

     そう言って老婆は整然と並ぶしゃもじを指差した。

    「お主、若いのにツクモ様の参拝にくるとは感心じゃのう。今は村に一番人が集まる時期なんだが、観光客はおろか村の人間も来いやせん。それに比べてお主は、感心なことじゃ」
    「観光客? ここの村には何かあるのですか」

     意外な単語が飛び出して、青年は思わず聞き返した。何もなさそうなところだと思っていたのに、ここには観光ができて、人が集まるような何かがあるらしい。

    「何じゃお主、収穫祭を目当てに来たんではないのか」

     老婆も意外そうな表情を浮かべた。

    「収穫祭があるのですか。いや、恥ずかしながらまったく知りませんでした。この村にはたまたま今日通りがかっただけで」
    「じゃあ、ここに来たのは」
    「がっかりさせて悪いですが、たまたまです。ちょっと寄り道をしただけ」

     そう青年が答えると老婆は本当に残念そうな顔をした。

    「でもねおばあさん、僕、こういうところに来るのは嫌いじゃないんですよ」

     老婆の表情を見て、青年は付け加えるように言った。

    「だって、こういう場所は過ぎ去った遠い時代への入り口だから。その土地にいる神様のことを知れば、かつてここに生きた人たちが何を考えていたのか、何に喜び何に悲しんだか、何を想って生きてきたか。そういうことに少しだけだけど寄り添って、想像できるんです。だから、僕は嫌いじゃないですよ。こういうところに来るの」

     たまたま通りがかっただけなんて言った後じゃ、こんなこと言ってもフォローにはならないだろうなと思いながら青年はそう続けた。だが、それは老婆をフォローしたいから言ったというよりは、彼の本心から出た言葉だった。実際のところ、彼自身もこういう場所が好きなのだ。

    「まぁ、今の言葉は父の請け売りなんですけどね」

     少し恥ずかしそうに笑う。

    「そうかい、お主の父親はなかなか大事なことをわかっているようじゃの」

     たぶんフォローにはなるまいと思っていたのだが、老婆は青年の言葉で少し機嫌を直したらしく、うんうんと何度か納得したように頷いた。

    「ええ、立派な父です」

     青年はそう答えるとにっこりと微笑んだ。
     老婆とのやりとりがひと段落したところで、彼は彼の肩に乗った小さなポケモンがつんつんと首の付け根をつついていることに気がついた。
     どうやら早く行こうと言っているらしい。
     青年はわかったよ、といったようにポケモンの頭を撫でてやった。
     周囲を見わたせば空はほの暗く、太陽はその姿のほとんどを西の空に隠していた。
     いよいよ空は青と黒の混じった色に覆われて、すぐにも夜がやってくるだろう。

    「それじゃあ、僕はこれで」

     青年は老婆に会釈すると、歩き出す。
     が、何歩か進んだところで再び呼び止められた。

    「お主、名はなんと言うんじゃ?」

     別れ際に老婆はなぜか名を聞きたがった。

    「ツキミヤです。ツキミヤコウスケ」

     青年は振り返って、そう名乗る。

    「そうか、コースケというのか。ところでコースケ、お主なかなかすごいポケモンを連れておるの」

     ドキリとした。
     この人にはやはり見えているのか。

    「ほれ、その肩の鳥ポケモンじゃ。何も考えていなさそうで、実は悟りきっている深遠なその表情。わしの好みじゃ。そりゃなんちゅう名前のポケモンだ?」
    「……ネイティです」
    「そうかネイテーというのか、覚えておこう」

     老婆はネイテー、ネイテーと何回か反芻しながら満足げに頷いた。
     驚かすなよ、と青年は思う。よかった。どうやら見えているというのは早とちりだったらしい。

    「あの、さっきはツクモ様のお話をありがとうございました。では」

     そこまで言うと彼は再び老婆に背を向けて、足早にその場を去った。
     もと来た細い道に差し掛かり、老婆の姿も見えなくなったあたりで、いよいよ進むスピードを上げてゆく。
     話を聞けたのは悪くなかったけれど、宿を探す時間は随分ロスしてしまった気がする。
     山道で見かけたときはあの場所に何かを感じたけれど、結局は変な老婆に会っただけだった。気のせいだったのかなぁ、もうほとんど青黒く染まった空を見上げそう思った。

    「そういえばあのおばあさん、収穫祭があるとか言っていたよね。人もたくさん来ているっていうし早めに泊まるところを見つけないと」

     独り言に近い言葉を傍らのポケモンに吐いて青年――ツキミヤコウスケは村への道を急ぐ。


     村に向かう途中で一人の青年とすれ違った。
     年齢は彼より少し下くらいだろうか。人懐こそうな笑みを浮かべて、ツキミヤを一瞥すると軽く頭を下げる。そして、先ほど彼がいた方向へ小走りに駆けていった。
     もしかしたら、さっき出会った老婆を迎えに来たのかもしれないな。
     ツキミヤはそんなことを考えながら、足を進める。
     いつの間にか空はすっかりと暗くなっていて、彼の進む方向に集落の明かりが見えていた。
     それは人の気配。たくさんの人があの場所に居るという証明。
     にわかに太鼓の音、笛の音が聞こえてきた。


      [No.2701] 野の火(テスト投稿) 投稿者:九十九   《URL》   投稿日:2012/10/19(Fri) 21:13:03     179clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:シャワーズに邪魔され】 【博士に邪魔され】 【ゾロアークに邪魔された…】 【一体いつになったら】 【もう家出してやる!!!

    九十九です。
    No.017さんが更新してくれないので腹いせにテスト投稿しておきます。
    テスト投稿です…


      [No.2700] ピジョンエクスプレス 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/10/19(Fri) 21:08:38     71clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    1.カケルの悩み

     カケルは鳥ポケモンが大好きだ。 十歳になって取り扱い免許をとった彼が最初に捕まえたのは「ことりポケモン」のポッポだった。
     カケルはポッポにアルノーという名前をつけ、アルノーと旅に出た。 旅先でアルノーと一緒に、ホーホーやオニスズメを捕まえた。 次にドードーとネイティを捕まえた。 今度はヤミカラスやカモネギ、デリバード、エアームドも捕まえに行こう。 まだ見ぬ鳥ポケモンたちのことを考えてわくわくした。

     そして、カケルにはもうひとつ楽しみにしていることがあった。
     進化だ。

     ポッポが進化するとピジョンになる。 体が大きくなって力も強くなるし、何よりカッコよくなる。 特に頭の羽飾りの美しさはこたえられない。 それにアルノーはいつも一番に出して戦わせてるんだ。 進化のときも近いに違いない。 カケルはアルノーの進化後を頭の中に浮かべ、今日か明日かとその日を待っていたのだった。

     が、カケルの予想に反して最初に進化したのはオニスズメだった。 首とくちばしがぐんと長くなり、頭に立派なとさかがついた。 背中にはふさふさの羽毛、立派なオニドリルになった。
     次に進化したのはホーホーだった。 体つきは立派になり、貫禄のあるヨルノズクになった。 コイツに睨まれたゴーストポケモンはふるえあがるだろう。
     そして、二つあった頭が三つに増えてドードーがドードリオになった。 以前にも増してギャーギャーうるさくなったのが玉にキズだが、 攻撃力も数段アップしてポケモンバトルではたよれる存在だ。

     と、いうわけで、アルノーより後に捕まえた三羽が先に進化、という結果になった。

     なんだか予定外の順番になってしまったなぁと、カケルは思ったが、「まぁいい、きっと次に進化するのはアルノーさ」と気楽にかまえていた。

     が、次に進化したのはネイティだった。 ネイティオになった彼は、カケルより背が高くなって、ますます異彩を放つ存在になった。 目つきだけは前と変わらない。 進化前と同じようにいつも明後日の方向を見つめている。

     こうして進化を待つ手持ちはアルノーだけになった。

     カケルは待った。 アルノーはまだピジョンにならない。 カケルはその日を待ち続けた。 けれどその日は待っても待ってもやってこなかった。


     ――もしかしたら体のどこかが悪いのではないだろうか。

     ポケモンセンターで詳しく調べてもらったが、どこにも異常は見あたらなかった。 むしろ健康そのものだと言われた。

    「そうあせらないで。気長に待つしかないよ」

     先輩トレーナーのとりつかいはそう言ったが、カケルの心は晴れなかった。

    「何事にも適した時期というものがある。今はまだそのときじゃないんだよ」
    「じゃあいつそのときになるの」
    「うーんそうだなぁ、鳥ポケモンにでも聞いてみたら」

     先輩トレーナーのとりつかいは苦笑いしながらそう言った。

    「ねえ、アルノーはいつ進化するの」
     オニドリルに聞いたら長い首をひねって「さあ?」という顔をされた。

    「ねえ、アルノーはいつ進化するの」
     ヨルノズクに聞いたら首を傾げるだけだった。

    「ねえ、アルノーはいつ進化するの」
     ドードリオに聞いたら、三つの頭が互いに目配せして困った顔をした。

    「ねえ、アルノーはいつ進化するの」
     ネイティオにも聞いたが、明後日の方向を見つめるばかりで、聞いちゃいなかった。

    「ねぇ、お前はいつ進化するの」
     アルノー本人にも聞いてみたが一言、「クルックー」と言っただけだった。

    「……大真面目に聞いた僕がバカだったよ」
     カケルは自分の言動がばかばかしくなってきた。

     ――何事にも適した時期というものがある。今はまだそのときじゃないんだよ

     先輩トレーナーの言葉が頭の中にこだました。 焦ったってしょうがない、まだ時期ではないのだ。 少々ふっきれなかったがそう思うことにした。 どうしようもない。
     気がつけばもう夕方だった。 オレンジ色に染まった空をヤミカラスが「アーアー」と鳴きながら飛んでいく。 沈んでいく夕日を眺めながらカケルはつぶやいた。

    「…たまには家にでも帰ろうかな」

     …と。



    2.帰宅

     カケルの実家はジョウト地方の大都市、コガネシティにある。 ジムあり、デパートあり、ラジオ局あり、ゲームコーナーあり、ありとあらゆるものが揃って、現在も発達し続けている街だ。 近々、カントーヤマブキシティ行きのリニアも開通予定だった。
    コガネシティにはいくつもの高層マンションが熱帯雨林の高木のように建っている。 カケルはその高層マンションの一つに向かって歩いていった。
     入り口まで行くとサーッと自動扉が開く。 入った先、一階は自由に使えるフロアになっており草木が植えられ、置かれたテーブルを囲んでマンションの住人が話し込んでいる。 その先には久しぶりのエレベーター、カケルは中に入って「10」のボタンを押した。

     数ヶ月ぶりの息子の帰宅を母親は喜んで出迎えた。 夜は食べきれないほどのごちそうが並べられ、手持ちポケモンを総動員して平らげた。 おなかいっぱいになると、母親にみやげ話をせがまれた。 それもひと段落してカケルはソファにゆったりと腰を下ろすとリモコンからテレビをつけた。 ポケモンたちも画面を見つめる。 四角い箱の中で人々がおもしろおかしくやりとりをしているのが見える。
     そういえば、最近テレビなんか見ていなかったなぁ。 自分の膝の上で羽毛をふくらませるアルノーを撫で回しながら、カケルは懐かしさを覚えた。 なんだかんだで我が家とはいいものだ。

    「そうそう、あなた宛にいろいろ届いているわよ」

     カケルとアルノーが目を細めてウトウトしはじめ、 ドードリオとオニドリルがリモコンの操作方法を覚えて主導権を争い始めた頃、 母親が封筒の山をかかえて持って入ってきた。
     目の前のテーブルに母親はバサリと封筒の山を置くと 「もう寝るから、あなたも鳥さんたちも早く寝なさいね」 と言ってあくびをしながら去っていった。
     まさかこの封筒の山、僕が旅立った当時から貯めてるんじゃないだろうな…カケルは眠い目をこすりながら封筒の封をやぶり中身を見始めた。

     ほとんどはくだらないダイレクトメールだった。 カケルは内容を確認してはクシャッと中身を丸くしてゴミ箱へと投げた。 差出人を見ればだいたい検討はつくのだが、ついつい確認してしまうのは貧乏性だからかもしれない。
     丸めた紙は、たまにあさっての方向を見つめているネイティオに当たってしまったが、当のポケモンは気にしていない様子だった。見るとネイティオの横で、ヨルノズクがどこからかひっぱりだしてきた雑誌のページを器用に足とくちばしでめくって、中を覗いては首をかしげている。カケルは作業を続行する。
     そうしてダイレクトメールの山は次第に低くなり、丘になり平地になった。 最後に、茶色い封筒1つが残された。
     それは、ダイレクトメール…というよりはごく親しい友人に宛てた手紙のような封筒であった。 が、宛先は書いてあるのに差出人名がない。
     いったい誰からだろう? カケルは封をやぶいて中に入っていた明るいクリーム色の紙を開いた。 紙にはこう書かれていた。

    “アマノカケル様

     この度は当社のリニアの開通イベントにご応募くださいまして、誠にありがとうございました。”

     カケルはぼりぼりと頭をかいた。

     ――ああ、そういえばそんなイベント応募したっけなぁ。 すっかり忘れていた。 たしかリニアに往復でタダ乗り、さらに有名シェフの豪華なコース料理がふるまわれるんだっけ。 ついでにリニアのフリーパスをプレゼント、とかいう話じゃなかったろうか。
     と、カケルは記憶をたぐりよせた。そして、

     ん? ちょっと待て。もしかして当たったのか? と、カケルは少し期待した。

    “ですが、非常にご好評いただきまして多数の応募をいただいた結果、 残念ながら、あなた様をご招待することができません。”

     …なんだ、ハズレか。カケルは少しがっかりした。

    “そこで当社では抽選にもれた方の中からさらに厳正なる抽選を行い、 カケル様を特別イベントにご招待することに致しました。 下記の日時に同封した切符を持って、西コガネ駅へおいでください。”

     同封の切符? カケルは切符を確認しようと手紙を握る腕をおろした。
     いつのまにか封筒を落としていたらしく、アルノーが落ちた封筒に頭を突っ込んでゴソゴソと中を漁っていた。
     やがて、アルノーは封筒の中から濃いピンク色の切符を取り出した。

    「クルックー」

     アルノーはカケルのひざにピョンと飛び乗ると切符を渡してくれた。

    “5月16日朝6時、西コガネ駅南口集合(雨天決行)。 ただし諸事情により手持ちポケモンの持込は禁止しておりますのでご注意ください。”

    “それでは、カケル様にお会いできるのを楽しみにしております。”




    3.出発の朝

     鳥ポケモンの朝は早い。 昨日の夜あんなに騒いでいたのにもかかわらず、カケルは鳥ポケモンたちの騒ぐ声に起こされた。 目覚まし時計を見ると四時五十分。鳴りだす十分前だった。
     カケルは目覚ましのアラームを解除して、部屋を出るとトースターにパンをセットした。 その間にパジャマを着替える。 ちょうど上着に頭を通したところでトースターが「チン!」と鳴った。
     焼きあがったトーストにミルタンクの乳で作った特製のバターを塗り、朝食にした。 母親はまだ寝室でグーグー寝ている。 カケルはトーストを食べ終わると、リュックからポケモンフーズを取り出し、大きな器に山盛りにした。

    「お前たち」

     カケルが言うとネイティオ以外の六つの顔がこちらを向いた。

    「僕、今日は一人で出かけるから好きに過ごしていて。部屋の窓はあけておくから」

     そしてドードリオに向かってこう言った。

    「君たちは外に出たくなったら、自分らで扉をあけて下に下りること」

     三つの顔がうなずいた。 こいつらは”三匹”で連携してたいていの事はできてしまうのだ。
     そして、カケルは自分の足元を指さすとこう言った。

    「お腹がすいたら食べ物はここ。足りなかったら母さんに言うこと」

     準備は出来た。 すっかり身支度を整えたカケルは玄関で靴紐を結びはじめた。
    そうして、靴紐を結んでいるとアルノーの羽音が近付いてきた。

    「なんだい?」
    「クルー」

     アルノーのくちばしには濃いピンク色の切符が挟まれていた。

    「ああ、これこれ! 大事なものを忘れるところだったよ!」

     カケルはアルノーから切符を受け取ってズボンのポケットにつっこんだ。
     あぶないあぶないうっかり忘れるところだった、とカケルは思った。

    「ありがとうアルノー。それじゃあ行って来るね」

     カケルは扉を閉めた。
     扉の隙間からだんだん細くなっていく玄関の風景とアルノーが見えた。




    4.駅までの道

     早朝のコガネシティは人気も少なく、太陽は昇ったばかりで少々寒い。 ときどき車が行き来したがまだまだ交通量は少なく、お店もひらいているのはコンビニくらいのものだ。 駅までにはだいぶん余裕があったが、カケルは早足で歩いた。 きっと自分は貧乏性だからだろうと思った。
     大通りは静かだった。 新聞配達の自転車とすれ違ったが、他には誰とも会わなかった。
     カケルは道を急いだ。 この大通りは緩やかな登り坂になっており、登りきると三つの道が出現する。 右にまっすぐ進めば西コガネ駅である。
     もう少しで分かれ道だ、カケルがそう思ったとき、坂の上から誰かが言い争う声が聞こえてきた。

    「まっすぐに決まっているじゃないか!」
    「いいや右だね!」
    「…左だと、思う」

     坂を登りきって見てみれば、言い争っているのは三人の少年だった。 自分よりもニ、三歳くらい年下だろうか。
     そして三人の顔を見みてカケルはびっくりした。三人とも同じ顔をしていたからだ。 三つ子ってやつか。

    「ねえ、きみたちどうしたの」

     カケルは同じ顔の三人組に尋ねた。

    「駅に行きたいんだ」
    「どこの駅?」
    「西コガネ駅」
    「こいつは左だって言うんだけど」
    「あいつは右だって言うんだ」
    「…まっすぐではないと思うけど」
    「西コガネ駅には右に行けばいいんだよ」

     カケルは右の道を指差した。

    「ほら! やっぱり右じゃないか」
    「うるせえ! 今度は駅まで走って勝負だ」
    「いいとも! うけてたってやる!」

     二人は駅に向かって走り出した。

    「ま、待ってよう!」

     最後の一人も走り出した。そして、すぐに三人は見えなくなってしまった。なんて足の速いやつらだ。
     カケルは腕時計を見る。時間まであと三十分、ここからはゆっくり行こうと思った。




    5.西コガネ駅

     西コガネ駅に到着すると、そこにはたくさんの人々が集まっていた。
     しかし、まだ駅の門は開いておらず、入り口付近に人ごみが出来ている。 カケルは入り口近くに立っている時計台の下で門が開くのを待つことにした。

    「だから家を出るとき無理やりにでも引っ張ってくればよかったんだよ!」
    「そんなこと言ったって、無理強いしたところでテコでも動かないでしょう。あの人は」
    「これだから協調性のないやつは嫌いなんだ。だいたいいつもあいつは…」
    「それよりさ、来るのかな」
    「来ないかもしれませんね」
    「人が首を長くして待っているって言うのに…もし来なかったらぶん殴ってやる」
    「来なかったらぶん殴れないじゃないですか」
    「おいおい、暴力はよくないよ」

     カケルの前で三人の男達が話していた。どうやら待ち人があるらしい。
     一番背の高い男は待ち人が来ないことにイライラしている様子だ。 真ん中の眼鏡の男は本を読み進めながらそのときを待っている。 三人目の一番小さな男はきょろきょろとあたりを見回している。

    「おい、あと五分だぞ。本当に来るのかァ?」
    「まぁ、期待せずに待ちましょう」
    「あれ、むこうにいるの彼じゃないかな」
    「本当だ。やっと来やがった」
    「よかったじゃないですか。時間に間に合って」
    「おーい、こっちだ!  おーい!」

     一番背の高い男が道の向こうを歩いている男を呼んだ。 聞こえているのかいないのか呼ばれた男は速度を上げることなくゆっくりと歩みを進める。

    「あの野郎、何ちんたら歩いているんだよ!」
    「まぁまぁ、時間通りに来ただけよしとしましょう」
    「あ、僕、三つ子を呼んで来るね」

     小さな男が出て行った。 三つ子ってさっきの子たちだろうか。
     彼らの知り合いだったのか、とカケルは思った。
     そうしている間に三人を待たせていた男が到着した。 一番背の高い男が怒鳴り散らし、眼鏡の男がまぁまぁと怒りを静めた。 遅れてきた男は気にする様子もなく無表情で無反応だ。 なんだかぼーっとした人だなぁとカケルは思った。 そして、一番小さな男が三つ子をつれて合流した。
     するとちょうどよく時計台がボーンボーンと鳴って朝六時を告げた。 同時にギィーと音を立てて駅の門が開く。 どこからかアナウンスが聞こえてきた。

    「皆様、本日は朝早くからようこそお集まりくださいました! 列車はこれより十分後に出発いたします。お早目の乗車をお願いいたします」

     にわかに群集が動き出した。
     駅の構内を見るとそこには黒く光る列車らしきものが見える。 あれがイベントに使う車両なのだろうか。 カケルはもっとよく見ようと背伸びをした。

    「おい、アンタ」

     突然、七人組の一番背の高い男が声をかけてきた。あの怒鳴っていた男だ。
     僕? と言わんばかりに自分に指さすカケルに男は続けた。

    「早くしないといい席とれないぜ」

     そして、男は強引にカケルの腕をつかんだ。

    「な、何するんですか!」
    「お前を見ていてうっかり乗り遅れるんじゃないかと心配になってきた。オレ様がいい席にエスコートしてやるから付いて来い!」
    「ちょ、ちょっと!」

     戸惑うカケルを男は気にも留めない。
     男に引っ張られながら後ろを見ると一番小さな男が申し訳なさそうにこっちを見た。 眼鏡の男はやれやれという顔をした。 遅れてきた男は無表情のまま黙っていた。
     背の高い男が叫ぶ。

    「おい、三つ子! お前らひとっ走りして席とっておいてくれ。一番前八人分な」

     すると三つ子のうちの二人が目を輝かせた。

    「よーし! どっちが早くつくか競争な!」
    「今度は負けないぞ!」

     二人は群集をかきわけものすごい勢いで走り出した。

    「ま、待ってよう!」

     残された一人も走り出した。

    「よっしゃ、行くぞ」

     背の高い男はカケルの腕をつかんだままぐんぐんと群集をかきわけて進んだ。 カケルは抵抗できないままどんどん群集の中を進む。そして、とうとう列車の前に立ったのだった。
     さらに、列車を見てカケルは驚いた。 黒く光って見えていた列車は蒸気機関車だったと知ったからだ。 今どきこんな旧世代の乗り物がコガネシティにあろうとは。

    「最新のリニアに対して、こっちはレトロに蒸気機関車、おもしろい趣向じゃないですか」

     眼鏡の男が納得したように言った。
     蒸気機関車かぁ、写真では見たことがあったけれど…カケルが感心して眺めていると、背の高い男がまだ叫んだ。

    「さあ、乗った乗った! 三つ子が席とって待ってるぜ」

     結局、背の高い男に無理やり席に座らせられたカケルは、この七人組と同席することになってしまった。
     席は真ん中の通路を隔てて二人分ずつ並んでいる形式だ。 さらに、1列目と2列目、三列目と4列目…という風に席が向かい合っている。
     そして、一番前の右側の向かいあった席にカケル、背の高い男、眼鏡の男、そして小さな男、左の向かい合った席には遅れてきた男と三つ子が座った。
     なんだかおかしな展開になってしまったなぁとカケルは思った。 そんなカケルをよそに車内アナウンスが入る。

    「えー、全員ちゃんと乗りましたね?乗れてない人は手を挙げてください。はい、いませんねー。それではこれより出発いたします!」

     マイクの切れる音と同時にプシューっと列車の扉が閉まった。

     ポオォォォッーーーーーーーーーーーーーーーー! 

     威勢よく汽笛が鳴って蒸気が噴出す。

     シュシュシュシュシュシュシュ…

     カケルの席に振動が伝わってきて列車が動き出した。

    「皆様、本日はご乗車誠にありがとうございます」

     ガタンガタン、ガタンガタン。
     ゆれながらどんどん速度が増していく。
     そして、アナウンスが続けた。

    「”特急ピジョン”の旅、どうぞごゆうるりとお楽しみくださいませ」




    6.車掌

     窓は風景を切り取る額縁だ。 車窓はその風景がテレビアニメの動画のようにどんどんどんどん変化していく。
     やがて車窓の風景は市街地から牧場へと変わってきた。若い緑の風景が一面に広がる。 その中にピンクと茶色の点がまばらに散らばっている。 あれはミルタンクとケンタロスだ。

     ポオォォォッーーーーーーーーーーーーーーーー! 

     列車はますます煙をあげて速度を増していく。 一同はしばし、車窓の変化する風景に見入っていた。

    「すっげー!」
    「速いねぇ」
    「僕らとどっちが速いかな」

     席に座ってぼーっとしている遅れてきた男をよそに三つ子は身を乗り出して外の風景を眺めている。

    「こらこら、あんまり窓から頭出しちゃいけませんよ」

     本を読んでいた眼鏡の男がそれに気が付いて注意した。

    「もう、あなたもこの子達と同じ席ならちゃんと監督してくださいよ」
    「………」

     遅れてきた男は無言で無表情だ。聞いていないのかもしれない。

    「…あなたに期待した私がバカでした」

     眼鏡の男はあきらめて、また本を広げて読み始めた。

    「うおーすっげー! 速いなぁ!」
    「速いですねぇ」

     見ればこっちの席の背の高い男と小さな男も窓から身を乗り出している。

    「ちょ、ちょっと、あなたたちまでそんなことやってるんですか。特にそこ、窓から首を伸ばしすぎです。どうなっても知りませんよ」
    「うるせえなァ、だいたいお前はテンション低すぎなんだよ。もっと楽しめよ」
    「余計なお世話です。私は私なりに楽しんでいるのです」

     背の高い男に返されて、眼鏡の男はむっとした様子だったが、また本を開いて読み始めた。
     カケルはカケルで彼らの観察を楽しんでいた。 まったく騒がしい人たちだ。 それによく見てみれば格好もなかなか個性的だ。 眼鏡の男は5月だというのに厚手のセーターを着込んでいるし、背の高い男は髪を赤く染めていた。 来ているジャンパーの襟はふさふさの毛に包まれている。 なんだか旅先でバトルした暴走族みたいだ。 町の裏道でこんなのにからまれたら怖いだろうなぁ…。
     それに比べると小さな男はきわめてノーマルだ。 ニ人が個性的過ぎるのかもしれないが。
     カケルがそんなことを考えていたら、今度は目の前の運転席の扉が開いてこれまた派手な男が顔を出してカケルは驚いた。 耳がやけにとがっていて、濃いピンク色に染まったロングの髪は後ろで一つに結んでいる。 目から頬にかけて歌舞伎役者の隈取のような黒いペイントがしてあって顔のほうもなかなかの美形だ。 ビジュアル系とでも言えばいいのだろうか。
     男はこちらの目線に気が付ついたらしくにっこりと微笑んだ。

    「楽しんでおられますか」
    「…は、はい」

     カケルは緊張しながら返事をした。 同時に車内アナウンスはこの男の声であると理解した。 座席のメンバーも彼に気が付き、注目する。

    「誰だいアンタ」

     切り出したのは背の高い男だった。

    「この列車の車掌をしております」

     男はそう言うと鉄道員であることを示す帽子を頭にかぶった。

    「…ふうん」

     なぜか背の高い男は車掌に興味津々だ。しばし車掌を鋭い目つきで観察し言った。

    「アンタ、なかなかできるな?」
    「あなたのような方にはよく言われます」
    「どうだい、ひとつ勝負してみないかい?」
    「ちょっと! やめてくださいよこんなところで」

     眼鏡の男が慌てて口を挟んだ。

    「冗談だって。そうヒステリックになるなよ」
    「私はヒステリックになってなどいません」

     眼鏡の男はもういいとばかりに読書に舞い戻ってしまった。

    「でも…アンタとひと勝負してみたいのは本当だぜ」

     車掌をにらみつけ、背の高い男はニヤリと笑った。

    「そういう機会がございましたら」

     車掌もにっこりと笑った。営業スマイルであっさりと挑発かわしたようにも見えたが、なぜかカケルには 「いつでもどうぞ。けど、負けるつもりはありませんよ?」 と言ったように見えたのだった。

    「では仕事がございますので」

     車掌はそう言うと奥へと去っていった。
     本当に変なイベントだなぁとカケルは思った。 あんな格好した車掌なんて見たことがない。 そういう趣向のイベントなのだろうか。
     カケルは席の背もたれに隠れるようにしてしばし、車掌の様子を観察した。 車掌は奥の客と挨拶を交わしながら次第に奥へ奥へと進んでいった。 ふと横を見ると、隣に座っている小さな男も席の背もたれから半分顔を出すようにして車掌を熱心に観察しているではないか。 小さな男はカケルの視線に気がつくと一言、

    「…カッコイイ人でしたね」

     と、言った。
     人の価値観は見かけによらないものだと思った。




    7.食事のメニュー

     太陽はずいぶん上に昇って、車窓が切り取る風景は草原から森に変わった。 列車は森の中に立てられた高い鉄筋の線路の上を走っており、濃い緑の風景を一望することができる。 たまに列車の窓際を、ヤンヤンマがすっと横切ったり、遠くにバタフリーの群れが見えたりしてそのたびに三つ子が歓声をあげた。 さらに先に青く光るものが見える。 たぶんあれは海だ。
     カケルは少しばかりおなかがすいてきた。 そういえば朝食はトースト一枚だった。 そこにちょうどよく車内アナウンスが入る。

    「えー、ただいまより車掌が食事を配ってまわりますので、座席に座りましてお待ちください。なお、今回は無料でのサービスとなっております」

     すると車内から歓声が起こった。

    「車掌さん車掌さん、はやくはやく!」
    「こっちこっち!」

     後ろの座席からそんな会話が聞こえてきてやけに興奮しているようだった。そんなに空腹だったのだろうか。

    「くっそー、一番後ろからかよ。早くこっちに来ねぇかなぁ」
    「私たちは一番後になるでしょう。まぁ、ゆっくり待ちましょう」

     背の高い男がぼやくと、眼鏡の男が本のページをめくりながらそう言って落ち着かせた。

    「で、さっきから何を読んでいるんだ」
    「昔、カントーのもっと北に住んでいた作家の作品集です。彼はいい文章を書いた。残念ながら若くして病気で亡くなってしまいましたが」
    「へ、へぇ…」
    「今読んでいるのは銀河を走る列車のお話です。彼の作品ではこれが一番有名ですね。あなたも一度読んでみるといい」
    「……。…いや、オレはいいわ」

     そんな会話をしているうちに車掌がガラガラと料理を乗せたカートを引いてやってきた。 列車の進行方向一番前。 ここが最後のグループだ。 一人を除いて全員がカートに注目する。

    「やあ、みなさん。お待たせしてすみませんね」
    「おう、待ちくたびれたぜ。で、何を食わせてくれるんだい?」

     背の高い男が言うと、車掌はそう言ってくれるのを待っていましたとばかりににっこりと微笑んだ。 そして、

    「本日は世界の豆料理をご用意してございます」

     と、言った。

    「豆料理だぁ?」

     背の高い男なんだそりゃという顔をしたが、対照的に小さな男が目を輝かせた。

    「僕、豆は大好きなんです! 何があるんですか」
    「豆のスープにインドムング豆のカレー、ひよこ豆のギリシャ風煮込み、もちろん豆腐や納豆、他にもいろいろご用意してございます」
    「うわあ、何にしようかなぁ!」

     小さな男は興奮して声をあげるとますます目を輝かせる。 車掌は料理を覆っていたのドーム状の銀蓋をあけてみせた。

    「本当に豆ばかりですね…動物性タンパクはないのですか」

     すかさず中身を覗き込んで、眼鏡の男が尋ねる。

    「動物性タンパクはございませんが、おからでつくったハンバーグをご用意してございます。豆は畑の肉と言われますし、そちらにされてはいかがでしょうか」
    「……」

     こうして各人は思い思いの料理を受けとった。 遅れてきた男だけはうんともすんとも言わなかったので車掌は残った豆腐の皿を彼の横に置いて「それではごゆっくり〜」と言って去っていった。
     去っていく車掌の周囲で他の乗客たちが「うまいうまい」と言いながら食事を取っている。 その様子を通路に体を乗り出して観察するカケルの背後で背の高い男がぼやく。

    「なんでここで出されるのは豆料理ばかりなんだ?」
    「汽車が蒸気を出して走る音を表す語、もしくは汽車そのものを”ぽっぽ”と言います。 それでこの列車には早く走って欲しいとの願いからポッポの進化系である”ピジョン”の名が付けられたそうです」
    「つまりなんだ…ポッポだから豆、そういうことか」
    「…おそらくは」

     背の高い男と眼鏡の男は互いに顔をあわせて苦笑いするとため息をついた。 カケルが体勢を元に戻して隣を見ると、小さな男が他の乗客と同じようにうまそうにギリシャ風煮込みを口に運んでいた。
     カケルも料理に手をつけた。 そして、豆料理を味わいながら、節分の日に撒こうとしまっておいた福豆をアルノーが全部食べてしまったのを思い出したのだった。




    8.切符

     それにしてもおかしな小旅行になってしまったものだ。
     駅では得たいの知れない男に捕まって、これまたよくわからない七人組と同行することになり、乗ってみれば車掌はビジュアル系の変な人だし、食事に関しては世界の豆料理ときたもんだ。 まぁ、味は悪くなかったけれど…と、刻々と変わる窓の外の風景と、列車の走行音を聞きながらカケルは今までの出来事を振り返った。
     そしてカケルにはもうひとつ、気になることがあった。 動向している七人は何も言わないけれど気にならないのだろうか。

    「あ、あのう、」

     眼鏡の男は読書に夢中だし、背の高い男に聞くのは気が引けたので、隣の窓の外を見ている小さな男にカケルは遠慮がちに声をかけた。

    「ちょっと聞きたいことがあるんですけど…」

     カケルの呼びかけに応じて小さな男がこっちをふりかえった。
     が、カケルが話を切り出すよりわずかに早く車内アナウンスが入った。

    「ご乗車のみなさん、これより車掌がお客様の席を回り切符を拝見いたします。お手持ちの切符を準備してお待ちください。これより車掌が切符を拝見して回ります」

     切符……。 カケルはポケットに手をつっこんだ。 すると厚紙に触ったのがわかった。
     今朝、アルノーが渡してくれた切符だ。 あやうく忘れるところだった。

    「そういえば、乗るときはチェックしませんでしたよね」

     本を読みすすめながら眼鏡の男が言った。

    「してないな」
    「してませんねぇ」

     背の高い男と小さな男が相槌を打った。 そう言われてみればそうだ。 いい加減な鉄道会社だなぁ…と、カケルは思った。

    「いいんじゃないの。なくて途中下車でも乗ってる連中は困るまい」
    「それもそうですね」
    「いざとなったら窓から降りたっていいんだしな」
    「…それはちょっと危ないんじゃあ」

     ちょっとどころじゃないだろう…とカケルは思ったが、口には出さないことにした。

    「なぁに、この程度のスピードなら」

     背の高い男は車窓の外を仰ぎながら自分ならできるとばかりに言った。
     一方で眼鏡の男の関心は通路を挟んだ反対側の席に移された。

    「三つ子たち、切符はちゃんと持っていますね?」
    「持ってるよ」
    「持ってる」
    「持ってるに決まってるだろ!」

     三つ子がいっせいにこっちを向いて即答したので、眼鏡の男は遅れてきた男に声をかける。

    「あなたは大丈夫でしょうね?」
    「……」
    「…大丈夫でしょうね?」
    「………」
    「やっぱりいいです」

     眼鏡の男はあきらめて、また読書へと戻っていった。 そして、「ま、いざとなったら窓から下車してもらいますから」と、付け加えた。
     また窓から下車? きっとこの人達共通の冗談みたいなものだと思うが、この人も何を考えているのかわからない。
     遅れてきた男の様子も見てみたが聞いちゃいないという感じだった。

    「やあやあみなさん、お待たせしました」

     そうこうしているうちにまた車掌がやってきた。 アナウンスしたり、食事を運んだりこの列車の車掌は忙しいようだ。

    「それでは切符を拝見いたします」

     車掌がそう言うと、各々が切符を取り出した。車掌は順番に切符に目を通す。 三つ子がピンク色の切符を取り出して見せ、車掌は「確かに」と言った。
     車掌が遅れてきた男を見ると男の膝にいつのまにかピンク色の切符が置かれていた。 眼鏡の男が持っていた本の一番最後のページを開くとそこにはピンク色の切符が挟まっていた。 背の高い男も上着の内ポケットに手をつっこんで、「あいよ」とピンク色の切符を取り出した。

    「あなたは?」

     車掌がカケルを見て言った。 カケルもポケットからピンク色の切符を取り出して見せる。

    「確かに。さて最後はあなたです」

     カケルの切符を確認すると、車掌は小さな男に言った。 小さな男も切符を取り出し車掌に見せた。

    「確かに」

     見ると、小さな男の手には茶色い切符が握られていた。

    「…きみのだけ茶色い切符?」

     思わずカケルは口を開いた。

    「ピンク色と茶色では行ける距離が違うのです」

     と、車掌が答えた。 同乗している七人中六人はカケルと同じピンク色の切符だ。 小さな男の切符だけ特別なのか。

    「この茶色い切符は特別なのですか」
    「いいえ、むしろ特別なのはピンク色のほうです。この列車でピンク色の切符を持っているのはあなたたちだけです」

     そう言って車掌は列車の後方を仰いだ。 後方の席ではその他大勢の乗客たちがしゃべったり、ぼうっとしたり、昼寝したりして思い思いの時間を過ごしている。 そして、この乗客たちはみんな茶色い切符ということらしい。 いったいこれはどういうことだろう。
     カケルはもっていたピンクの切符をポケットにしまうと、仕切りなおした。

    「ねえ、どうしてきみのだけ切符が違うの?」

     カケルが小さな男に聞いたそのときだった。
     突然ガタっと車両が進行方向前のめりに傾いて、カケルはあやうく向かいの眼鏡の男にとっしんしそうになった。 直後、体がふわっと浮かんだような感覚にとらわれた。
     同時に車内からわあっと歓声が起こる。

    「すっげー!」
    「飛んだ!」
    「飛びやがった!」

     三つ子も歓声をあげた。彼らの視線は窓の外、しかも列車の後方に注がれている。 見ると、背の高い男、小さな男、眼鏡の男までが窓の外に注目している。
     みんな何をそんなに興奮しているんだろう。 カケルは体勢を立て直して「ふうっ」と座席に腰を下ろした。
     すると、背の高い男がこっちを向いて叫んだ。

    「おい、お前」
    「はい?」
    「はいじゃない! お前気がついてないだろ」
    「何がです?」
    「何がですって、飛んでるんだぞ」
    「それがどうかしたんですか」
    「どうかしたって、普通なんかこう反応ってもんがあるだろ」

     やっぱりわけのわからない人だ、とカケルは思った。
     切符が無い奴は窓から途中下車とか言ったあげく、ついには列車が飛んでいるとまで言い出すか。 やれやれ…カケルはため息をついた。
     が、次の瞬間、カケルはその考えが"おかしい"ことに気がついてしまった。 それに気がついたとき、カケルはもう窓の外に身を乗り出していた。

    「………、……」

     カケルは絶句した。
     びゅうびゅうと上向きの風が通り過ぎて、カケルの前髪をかきあげる。 列車後方に広がる風景は、キラキラと輝く青い海だった。 そして、その海上に列車の走る鉄橋があるのだが、その鉄橋は途中でぷっつりと切れているではないか。
     今乗っているこの列車はまるでその切れた鉄橋から空に向かって伸びる線路の続きがあるかのように宙を走っている。

    「えー、アナウンスが遅れましたことをお詫び申し上げます。当列車はただいま離陸いたしました」

     カケルのとなりでマイクを持った車掌は平然とアナウンスした。
     ああ、あのさっきの体の浮き上がるような感覚は離陸時のものか。 カケルはそこまで理解するとふらふらと自分の席に舞い戻った。 それに気がついた車掌はカケルと目を合わせるとにっこりと微笑んだ。

    「当列車の名物、離陸は楽しんでいただけたでしょうか」
    「…なんというか、びっくりしています。状況を受け入れるまでもう少し時間がかかりそうです」
    「あなたのような方はよくそう言われます」
    「は、はぁ…」

     あなたのような方ってどんな方だろう、とカケルは思ったが聞かないでおくことにした。

    「まぁ、何かありましたら遠慮なくおっしゃってください。私は常に巡回しておりますので」

     営業スマイルで車掌が続けた。

    「じゃあ一つ聞いてもよろしいですか」
    「何でしょう」
    「さっきから疑問に思っていたことがあるのです」
    「何でもどうぞ」
    「西コガネを出発してからずいぶん経ちますけど、次の駅へはいつ到着するのですか」

     カケルはさっきまで口にできなかった疑問をやっとすることができた。

    「はい、次の駅へは雲を抜けたころに到着いたします」

     車掌はそう言うと再びにっこりと微笑えんだ。




    9.飛ぶ力

     リニアは磁力を利用し推進力を得るという。 N極とS極が引き合う力と、N極とN極、S極とS極が反発する力により車両が前進するのだ。 ようするに磁石がひっついたり、ひっつくのを拒否する力、あれのでっかくしたバージョンだ。 ちょっと正確ではないかもしれないがカケルはそのように理解している。
     それにくらべるとこの空飛ぶ列車は非常に不可解である。 一体どうやって飛んでいるのか。 旧世代の乗り物だと思っていたのにとんだどんでん返しをくらったものだ。 カケルはふたたび窓に身を乗り出して、鳥ポケモンの視点を味わった。 海と陸、陸の上には森や山、草原、そして町が点々と見えた。

    「どういう仕組みで飛んでいるんでしょうか」

     カケルは思わず、となりと向かいの席の乗客たちに聞いてみた。

    「興味ないね」と背の高い男が言った。
    「僕にはよくわかんないや」と小さい男がいった。

    「”揚力(ヨウリョク)”という力はご存知ですか」

     そう切り出してきたのは眼鏡の男だった。

    「ヨウリョク?」

     と、カケルは聞き返した。

    「流れの中に置かれた物体に対して、流れに垂直方向に働く力のことを揚力と呼びます」
    「……は、はぁ」
    「簡単にいえば鳥が飛ぶための力ってとこでしょうか」

     カケルがわかっていないようなので、眼鏡の男は言い換えた。

    「そのヨウリョクで飛んでいるということですか」
    「揚力を使って飛ぶのは鳥、乗り物なら飛行機ですが、揚力を得るには翼が必要です。よって揚力で飛んでいるわけではない」
    「では、どういう力ですか」
    「まぁ、聞きなさい」

     眼鏡の男はそう言うと本のページをめくり、小説を読み進めながら話を続けた。 器用な人だなぁとカケルは思った。

    「鳥はより多くの揚力を得るため翼を大きくし、より羽ばたくために筋肉を発達させます。ですがそれに伴い体重は三乗で重くなり……」
    「………………」
    「……つまり、翼を大きくして飛ぶ力を大きくしようとしても、飛ぶ力以上に体重が重くなるんです。だから、おのずと飛べる体重には限界が出てくる……わかります?」
    「な、なんとか」
    「これで鳥が体重何キログラムまでなら飛べるか、ということを計算すると15キログラムまでだといわれています」
    「ええ!? それじゃあピジョンはどうやって空を飛んでいるんですか!」

     カケルは思わず叫んだ。
     彼の記憶によればピジョンの体重は30キログラム。 鳥が揚力で飛べる体重の2倍だ。 それどころか、ほとんどの鳥ポケモンはこの15キログラムボーダーにひっかかるではないか。 このあたりに生息する鳥ポケモンなら、ひっかからないのはポッポとオニスズメ、ネギなしのカモネギくらいである。

    「つまり、彼らには揚力以外にも飛ぶための力が備わっているということです。それと同じような力でもってこの列車も動いていると思われます」
    「なるほど、で、その力とは」
    「それが何か…と聞かれると私にもうまく説明できないのですが」
    「……はぁ」

     なんだ結局のところよくわからないんじゃないか、とカケルは思ったが口には出さないことにした。
     とりあえずその…ヨウリョクとやら以外の、鳥ポケモンたちが持っているらしいよくわからない力でもってこの列車は空を飛んでいるらしい。
     なんだか鳥ポケモンに化かされている気分になってきた……しかし、化かすのが鳥ポケモンっていうのはいかがなものだろうか…キュウコンならともかく…。
     カケルは自分の額の前あたりで煙とともにピジョンに化けるキュウコンを想像した。 そしてキュウコンは、ピジョンに化けるのにあきたらず、ピジョン姿のままマイクを持って

    「えー、そろそろ雲の中をつっきるので窓を開けているお客様は、窓をお閉めくださるようお願いいたします」

     と、アナウンスをはじめるのであった。もうめちゃくちゃである。 カケルは、そこでハッと想像の世界から抜け出した。 どうやら今アナウンスしたのは車掌らしいということに気が付いたからだった。
     窓のほうを見ると、小さな男が窓を閉めようと手をつまみにかけているところだった。




    10.雲をつきぬけて

     最前列の窓はなかなかの曲者だった。 窓は両サイドのつまみをつまんで上下させるタイプで、開けるときはすんなりと上に上がったくせに、 いざ閉めようとするとちっとも言うことを聞かないのだ。
     小さな男が閉めようとしたが、一センチくらいしか動かせず、 背の高い男と眼鏡の男がああでもないこうでもないと言い合いながら、残り四分の一まで閉めることに成功した。 最後にカケルがやってみたが一センチ上に上がっただけで逆効果だった。

    「仕方ありませんね。このまま行きましょう」
     四分の一と一センチ空きっぱなしの窓から目前に迫った雲を見て、眼鏡の男はそう言った。

    「まぁ、少し寒いかもしれんがガマンしようや」
     そう言ったのは背の高い男だった。

     ようするに二人とも飽きたのだ。
     なんだかんだ言ってこの二人の思考回路は似ているのではないかとカケルは思った。
     小さな男のほうを見たらなんとなく目があってニ人は互いに苦笑いした。

     列車は雲につっこんだ。
     光りが遮られ急に車内はほの暗くなった。 「ひゅごぉおおお」なんて音を立てながら、四分の一と一センチ空きっぱなしの窓から冷やされた湿っぽい風が入りこんでくる。 それは列車の進行方向の逆方向に流れ込んできて、もろにとばっちりを食ったのは小さい男だった。

    「だいじょうぶ? 寒くない?」
    「だいじょうぶだよ」

     カケルが聞くと、小さい男はあまりだいじょうぶでない顔で作り笑いした。

     列車はスピードを上げ、なおも雲の中を走り続けた。
     加速に伴って「ひゅごぉおおお」という音はますます強くなった。 そして、窓の外が光ったかと思うと「ゴロゴロゴロ」という雷鳴が聞こえて、四分の一と一センチ空きっぱなしの窓から、冷やされた湿っぽい風とともに、いよいよ雨粒が入り込んできた。
     カケルが小さな男のほうを見ると、いよいよ両腕をクロスさせて反対の腕を手で押さえ、ぶるぶると震え始めた。 「だいじょうぶ?」とカケルは言いかけたが、どうみても大丈夫じゃなかったのでやめておいた。
     向かい側のニ人もさすがにこのままでとか言うわけにもいかなくなり、再び曲者の窓と対峙することとなった。
     雷がピカッと光った。閉じない窓との戦いが再び始まったのである。



    「クソッ! なんなんだよこの窓は!」
    「ははは、もう私達までびっしょりですねー」
    「なんだか前よりもっとひどくなったような…」

     四分の一と一センチ空きっぱなしどころか、ほぼ全開になった窓を目の前にして、服と髪をぐっしょり濡らした背の高い男、眼鏡の男、カケルはもう笑うしかなかった。
     ちょっと上にしてから下げるのがポイントなんだよ…ああでもないこうでもない…とやっているうちに窓は閉まるどころかますます開いてしまい、ついにうんともすんとも言わなくなってしまったのだ。 小さい男が心配そうに三人を見つめる。
     カケルは窓の外を見た。 雨が吹く込んでくる窓の外は灰色、雲の中だから当然先は見えず、ときどき雷の光があちらこちらから走り去っていくのが見える。
     そういえば、こんな雲の中には伝説の鳥ポケモン、サンダーが住んでいるんだっけ、とカケルは以前読んだ本の内容を思い出した。 そうしてカケルは、また額の前あたりで想像をはじめた。

     ――流れる水蒸気の中にときどき大きな鳥ポケモンらしき影が見えている。 それこそは伝説の鳥ポケモンサンダーだった。 そして、その影は自ら光りだした。 放電したのだ。 サンダーのじゅうまんボルト。

    「あ、いいこと思いつきました」

     カケルはそこで我に返り声を出した。

    「なんです、いいことって」
    「となり側の席の人たちに手伝ってもらいましょう」
    「…あ」

     水滴が大量についてもはや使い物にならなくなった眼鏡をかけた顔で眼鏡の男、 びしょぬれの背の高い男、やっぱりびしょぬれの小さい男はマヌケな声をあげた。 窓の開け閉めの議論に夢中で通路を挟んだとなりの席の連中のことなんてすっかり忘れていたからだ。
     四人はいっせいに彼らの方向に顔を向けた。

    「……」
    「……寝てるな」
    「……寝てますね」
    「……こんなに風がゴウゴウなって雷まで光っているのにのんきな人たちだ」

     向かい側の席の窓はもちろんしっかり閉まっている。 そして三つ子が三人で同じイスに並んでぐーぐーといびきを掻いて、気持ちよさそうな顔をして眠りこけている。 こっちがあんなにギャーギャーさわいでいたのに。
     四人は三つ子の向かいの席に視線を移す。 また雷が光った。 そこに遅れてきた男のシルエットが映し出される。

    「…あ」
    「一人起きている人がいましたね」
    「たしかに起きてはいますけど」
    「あー、やめとけ。そいつには何を言ってもムダ」

     遅れてきた男は微動だにせずただ席に座っていた。 相変わらず明後日の方向を見つめていて何を考えているのかわからない。

    「…大丈夫かなぁ」
    「手伝ってもらいましょうよ」
    「まぁ無理だとは思いますけど」
    「まぁヒマつぶしにはなるか…よし、アンタが頼んでこい」
    「僕が?」
    「いつものパターンから考えて私達が言ってもムダでしょう」
    「そうですね、カケルさんならあるいは」
    「よし、やってみます!」
    「おう、まかせたぞ」

     カケルは遅れてきた男の前に進み出た。 二人が対峙する。 雷がまた光って二人のシルエットを映し出した。 見守る三人はごくっと唾を飲む。

    「あ、あのう…」

     カケルいかにも自信なさげに声をかけた。

    「おいおい、大丈夫なのか?」
    「大丈夫じゃないかもしれませんね」
    「大丈夫だよ。カケルさんならできるよ」

     また雷が光る。

    「ま、窓を…窓を閉めてもらえないでしょう…か」

     カケルは自信なさげに続けた。 遅れてきた男は微動だにしない。 やっぱだめかなぁ…っていうかこの人調子狂うなぁとカケルは思った。

    「やっぱりだめか」
    「まぁだめでもともとでしたし…」

     背の高い男と眼鏡の男はやっぱりという顔をしてがっくりとうなだれた。
     が、次の瞬間、小さな男が叫んだ。

    「あ!  立ちましたよ!!」
    「えっ!?」

     また雷が光った。 二人の男が顔を上げたとき、遅れてきた男がカケルと向かい合って立っているシルエットが映った。
     そして遅れてきた男はぐるんと顔を開いた窓の方向にむけると、身体を翻し、ずかずかと窓の前まで歩いてきて、つまみをぐっと押さえると、ススススーッと窓を降ろしてピシャっと閉めてみせたのだった。
     それはひさかたぶりにカケルたちに平穏がもどった瞬間であった。

    「え〜、みなさまぁ、大変お待たせいたしました。まもなく当列車は雲を抜けま〜す」

     車掌のアナウンスが入ったのはその直後だった。

    「ちっ、お気楽な野郎がここにもいたぜ」

     と、背の高い男は舌打ちした。
     ほどなくして列車は雲を抜け、車内には光が戻ってきたのであった。




    11.空に浮かぶホーム

     列車は雲の上を出て、その上を走り始めた。 さきほどの雷や雨風がうそのようになり、ただ暖かい太陽の光が窓ガラスをつきぬけてカケルたちの元へと届いた。
     カケルは窓の外を眺めた。 青い空の下には地面の代わりに白い雲がどこまでも続いている。
     事情を聞いたお気楽車掌は皆にバスタオルとドライヤーを貸してくれた。 皆はひととおり身体を拭くと、ドライヤーで髪の毛と衣服をかわかしはじめた。 車内にはさっき吹き込んできた冷たい湿った風に代わって暖かく乾いた風の音が響く。
     ドライヤーで髪を乾かしながらカケルはふと思った。 どうして列車にドライヤーやらバスタオルが都合よくあるのだろうと……そしてカケルはひとつの結論に達した。 おそらくここはそういう席なんだと。 だからそういう時にそなえてブツが用意してあるのだろう。 現に客がこんなに困っていたというのに車掌はちっとも運転席から出てこなかった。
     でも、口に出したら背の高い男が怒り出して、 車掌さんに「あなたのような方にはよく言われます」とか言って営業スマイルでごまかされて、 もっと背の高い男がヒートアップすると思ってカケルは言わないことにした。
     ドライヤーはなかなか高性能で、わりと短時間で髪も服もすっかり乾いてしまった。

    「服の乾き具合はいかがですか」

     ほどなくして巡回していた車掌が後ろの車両から戻ってきた。

    「は、はい。とてもいいです」

     と、カケルは答えた。 「それはよかった」と車掌は笑顔で言うと、マイクを取り出しアナウンスをはじめた。

    「え〜、まもなくポッポ〜、ポッポ〜、ポッポ駅に到着いたします。到着前に当列車は再びレール上に戻りますので少々揺れます。お気を付けください」

     ポッポ? ポッポ駅なんて変な名前だなぁとカケルは思った。
     ほどなくして、キキキキィーーッという音が列車の両サイドからして、かすかに火花の飛ぶのが窓ごしに見えた。 列車は少しガタガタと言ってやがて落ち着いた。
     カケルは窓を開けると身を乗り出して進行方向を見た。 すると雲の中にレールが見え隠れしているのが見え、その先に駅のホームらしきものが浮かんでいるのが見えたのだった。
     そのホームに近づくにつれて列車は減速し、ついにホームの横で止まった。 列車の右側の扉が一斉に開き、わらわらと乗客たちが降りだす。

    「みなさま、本日はご乗車くださって誠にありがとうございました」
     と車掌がアナウンスした。

    「ぼくも降りなきゃ」
     と、言ったのは小さな男だった。
     小さな男は座席からひょいっと降りると、出口のほうにむかって走り出した。

    「あ、僕も…」
     カケルもなんとなくつられて席を立ち走り出そうとしたが、ぐっと何者かに後ろをつかまれ止められた。
     振り向くとそれは車掌だった。車掌は、

    「貴方はピンク色の切符です。次の駅までご乗車いただけます」

     と、言った。
     座席を見ると、背の高い男、眼鏡の男、遅れてきた男、三つ子は座っていた。 再び出口の方向を見ると小さな男が、手を振って、

    「カケルさぁ〜ん、心配しないでください。すぐに追いつきますから!」

     と、ホームへ降りたった。  そして、しゅううーと言う音とともに列車の扉が一斉に閉まった。 ゴトゴトッゴトゴトッと列車が揺れだし走り出した。
     カケルは席に戻ると、窓から身を乗り出してホームを見た。 ホームにはたくさんの乗客たちが降りてこちらを見守っていた。 カケルは車掌の言葉を思い出した。

     ――この列車でピンク色の切符を持っているのはあなたたちだけです

     そう、もはや列車に乗っているのはカケルたちだけだった。
     次に小さな男の言葉が思い出された。

     ――カケルさぁ〜ん、心配しないでください。すぐに追いつきますから! 

     あれ? 僕は彼に自分の名前なんて教えただろうか…と、カケルは思った。 すぐに追いつくってどういうことだろう、と。
     そうしている間にも列車はどんどんホームから遠ざかっていった。




    12.風の吹く場所

     ポオォーーーーーーーーーーーーーーーーーーォ! 

     カケルたちだけになった列車は威勢良く煙を噴き、雲の上に敷かれたレールの上を勢いよく走る。 雲の成分が、なみのりをする水ポケモンが上げる水しぶきのように上がった。
     カケルはさっきからあのホームを見守っていた。 小さな男と他の乗客が降りたホームはもう豆粒のようになってしまっていた。
     客のいなくなった車内は静まり返っていた。 カケル以外のメンバーもしばらくホームのほうを見守って、しばらくは誰も話そうとしなかった。 (遅れてきた男はあいかわらずだったが)

    「とうとう私たちだけになってしまいましたね」

     沈黙を破ったのは眼鏡の男だった。
     それを合図に各々は一旦窓から首をひっこめて席に着いた。 それを見て車掌が待っていたとばかりに言った。

    「ポッポ駅以降は、みなさまの貸切となります。今回の旅も残り少なくなってまいりましたが、どうぞ最後までお楽しみください」
    「ふん、いよいよ大詰めか。めんどうなことに付き合わせやがって」

     と、背の高い男が言った。

    「まぁまぁ、この旅は最後が見ものなのです。ここまで来た以上は最後までつきあいましょう」

     と、言って背の高い男をなだめたのは眼鏡の男だった。 なんだかこの二人はこの旅の結末を知っているような口ぶりだった。
     カケルは隣の席を見た。 三つ子たちが窓際で何やら話しこんでいた。 カケルは聞き耳を立てた。 三つ子たちは

    「まだかな」
    「もうすぐだよ」
    「はやくしろよ」

     と、言っていた。三つ子たちもやはりこれから何が起こるかを知っているらしかった。
    そして視線をシフトさせ、遅れてきた男の様子も見る。 男はあいかわらずの様子だったが、おそらく彼も知っているんだろうな、と、カケルは思った。
     そして、カケルは車掌の顔を見上げた。 視線に気が付いて車掌はにっこりと微笑む。 カケルは車掌に問うた。

    「車掌さん、僕たちはどこへ向かっているのですか」
    「おのずとわかりますよ」

     と、車掌は言った。
     カケルはつづけて聞いた。

    「では、これから何が起こるんですか」
    「風が吹きます」

     と、車掌は言った。

    「風?」
    「そう、風です」

     車掌はそこまで言うと、濃いピンク色の長い髪をたなびかせて進行方向を向いた。 そして、

    「窓から進行方向を見てごらんなさい」

     と、続けた。
     カケルは席を立ち窓から顔を出すと、進行方向を見た。 なにやら進行方向に、あの雲に浮かぶ駅のように浮いているものがあることに気が付いた。

    「あれは鳥居です。赤い鳥居」

     車掌が説明する。

    「鳥居…? いったいなんのために」
    「別に深い意味はありません。我々にとっては目印のようなものです」
    「目印ですか」
    「ええ、あそこまで行くと、大きな風が吹く」
    「風が吹いてどうなるんですか」

     だんだん近づいて形があらわになる鳥居を見ながらカケルはさらに問い詰めた。

    「貴方の望みが叶います」

     車掌はにっこりと笑って答えた。

    「望みが叶う?」

     意外な返答にカケルは神妙な顔をして車掌を見つめた。

    「そうです。あなたはずっとこのときを待っていたじゃないですか」
    「待っていたって…何を」

     カケルがそこまで言うと、黙って聞いていた同乗者たちが一斉に口を開く。

    「そう、あなたはずっと待っていた」と、眼鏡の男が言った。
    「なかなかそのときがこないんで、何度も聞かれて困ったよなぁ」と、背の高い男。
    「先輩に、今はまだ時期じゃないって言われてたよね」
    「うん、言われてた」
    「言われてたねぇ」と、三つ子たち。
    「……」と、遅れてきた男。

     カケルはびっくりして皆を見つめた。なんでこの人たちがそんなことを知っているのかと。
     さらに、車掌が続ける。

    「手違いでね、今まで"彼"のもとに切符が届かなかったのです。 だから、今までお待たせすることになってしまった。 カケル様にも"彼"にもとんだご迷惑をおかけいたしました」

     車掌は帽子を取るとそれを胸にあててお辞儀した。

    「この列車には本来、私たちの種族しか乗れないことになっているのですが… せめてものお詫びにカケル様とお連れの方々をご招待いたしました」

     ポォオーーーーーーーーーーーーーーー! 

     列車が鳥居の横を通過したのはその直後だった。
     次の瞬間、カケルの背後、窓の外をぶわっと風が、大きな風が吹いたのがわかった。
     車掌が声を上げる。

    「さあ、風が吹きましたよ! 窓の外を、風が吹いてくる方向を御覧なさい!」

     カケルは再び窓の方向を向くと、窓の外に身を乗り出した。
    急激な、だけどどこか優しい風がカケルの髪をなぜる。風は列車の進行方向と同じ方向に吹いていた。 それは、さっき大勢の乗客を降ろしたポッポ駅のほうから吹いているようだった。

     カケルは風の生まれる方向に眼をこらした。
     すると無数の影が大きな群れをなしてこちらへ近づいてくるのが見えた。 影たちは風に乗って、すいすいとこちらに向かって飛んでくる。
     カケルはその影に見覚えがあった。

     それは、自分がはじめて捕まえたポケモンのシルエットだった。 ずっと一緒に旅をして、バトルにはいつも一番に出して、見慣れたシルエット。
     カケルは叫んだ。

    「ポッポだ! ポッポの群れが近づいてくる!」

     そして影が、ポッポたちがカケルの目の前を通過しはじめた。カケルはポッポ達を目で追いかける。

     そして、先頭のポッポが列車の頭を追い越したそのとき、その身体が光を纏ったかと思うとぐんぐん大きくなって――

    「ピジョーーーーーーーーーーーーーッ」

     と、雄たけびを上げ光を弾いた。
     光を弾いた時に見えたその姿は、もはやポッポではなくなっていた。

     そして、後に続くポッポたちが、次から次へと列車を追い越して、同じように光を纏ってゆく。 さらに、背後から聞き覚えのある声が近づいてきて、カケルははっと後ろを見た。

    「クルルゥッ!」

     声の主は風に乗ってカケルの横を通過したかと思うと、またたくまに列車の頭を追い抜いた。
     それはカケルが旅の苦楽を共にしたパートナーであった。

    「アルノー!」

     カケルが叫んだときアルノーもまた光を纏った。 両翼が左右にぐんぐんと伸び、扇を開くように尾羽が開く。短かった冠羽が笹の葉のように伸びてたなびいた。 そして、ぱっと光をはじいた時には、もうピジョンの姿になっていた。  大きな翼でより多くの風をとらえたアルノーは列車をさらに引き離した。

     そして、なだれ込むように後陣のポッポたちが後に続き、光を纏ってゆく。 光が飛散し、あちらこちらから進化の喜びを表現する雄たけびが上がる。

    「大変お待たせしました。次の駅はピジョン、ピジョンになります」

     列車内に車掌のアナウンスが響いた。
     ピジョンたちが飛び交う列車の進行方向に、雲に浮かぶ次の駅が小さく見えてきた。




    13.次の駅で

     すべてのポッポが列車を追い越したころ、列車は減速しはじめた。 それはまた次の駅に列車が止まると言うことであり、もうこの旅が終わるということを意味していた。
     列車の窓枠はもう駅を切り取っている。それがスローのアニメーションのように動いて、そして止まった。 窓が最後に切り取った風景、それは駅名が書いてある看板だった。

     真ん中に大きく「ピジョン」。
     そして右に「ポッポ」、左に「ピジョット」と、書かれていた。

    「この駅が当列車の終点となります。 本日はご乗車いただきまして誠にありがとうございました。 お帰りの際はお忘れ物などなさいませぬように…」

     列車内にアナウンスが響いた。 カケルが振り返ると車掌の姿はすでになかった。 運転席にでも戻ったのだろう。
     シャーッと音がして列車中の扉が一斉に開く。
     カケル、背の高い男、眼鏡の男、三つ子は席から立ち上がった。 ワンテンポ遅れて、遅れてきた男も立ち上がった。

     一番近い扉の前で、進化したアルノーがカケルの降車を待っていた。 一同がぞろぞろと降車する。 カケルがアルノーに飛びつくのと、列車の扉が閉まるのは同時だった。 カケルは顔をアルノーの羽毛の中にうずめながら、汽笛の音、列車が去っていく走行音を聞いていた。






    「おにいちゃん、おにいちゃん」

     どれだけの時間が経ったろうか。

     突然、そんな声がして、カケルは羽毛にうずもれていた顔をあげた。 顔を上げた先にはカケルより二、三歳下の、手にボールを持った男の子が立っていた。

    「おにいちゃん、なんでさっきからピジョンにだきついてるの?」

     と、男の子は聞いた。
     カケルはキョトンとした。 なぜここに男の子がいるのか理解できなかったからだ。
    男の子はさらに聞いた。

    「おにいちゃん、うしろにいるのも、おにいちゃんのぽけもん?」

     カケルは後ろをふり返った。
     同乗者たちが立っていたはずのそこには、カケルの手持ちであり家に置いてきたはずのオニドリル、ヨルノズク、ドードリオ、そしてネイティオが立っていた。
     男の子は目をかがやかせて、勝手にしゃべり続ける。

    「いいなぁ…おにいちゃんのぽけもん……。……よぅし、ボクもじゅっさいになったらポケモンゲットのたびにでるぞぉ!」

     男の子は一人で勝手に盛り上がり始めた。
     カケルは訳がわからず聞いた。

    「ねぇ君、どこからこの駅に入ったの? それともあの列車に乗ってたの」

     すると、男の子はすごく変なものを見るような目でカケルを見て言った。

    「なにいってんの、おにいちゃん。ここ、"こうえん"だよ」

     ……

     カケルは、あたりを見回した。 ところどころに木が植えられ、ブランコやシーソー、アスレチックなどの遊具が配置してある。 子どもたちのキャッキャッと走る回る光景も見て取れる……たしかに公園だった。
     と、突然ボーンボーンと公園の時計台が鳴って午後三時を知らせた。 なんだか見覚えのある時計台だった。

    「変なことをきくけど、このあたりに西コガネ駅ってないかい?」

     と、カケルは聞いた。
     すると、また男の子が変なものを見るような目で、

    「にしコガネえき? そんなものコガネシティにあったっけ」

     と、言った。

    「そんな、たしかにここは…」

     カケルはそこまで言いかけると、ハッと思い出してポケットを漁った。
     西コガネ駅発のあの濃いピンク色の切符を見せようと思って。

     そして何かが手にふれた。
     カケルはポケットからそれを取り出し確認する――

    「なぁに、それ」と、男の子が言った。

     ――カケルが取り出したそれは、切符ではなく濃いピンク色のピジョンの冠羽だった。



    「じゃあね! おにいちゃん!」

     男の子はしばらくカケルのポケモンたちを眺めて、ひととおりつついたり、ちょっかいを出すと走っていってしまった。
     カケルはふたたび公園を見回した。そこは、雲の上でもなく、ましてや駅でもなく、たしかに公園だった。
     特にやることもなく、疲れを感じてカケルは家に帰ることにした。 鳥たちをぞろぞろひきつれて、公園の出入り口に差し掛かったとき、看板が目に入った。 看板にはこう書いてあった。

     「西コガネ公園」、と。



    「おかえり」

     カケルが帰宅すると、母親が居間のソファに腰掛けて、昼ドラを見ながらぼりぼりとせんべいを食べていた。
     カケルは夕食までに小休止しようと、ひと眠りすることにした。 カケルが自室に戻ろうとしたその時、

    「あなた宛に何か届いているわよ」

     と、母親が言った。
     母親はせんべいをかじりながら、ひょいっと腕を後ろにやってカケルに郵便物を渡した。 受け取ったカケルはすぐさまはびりびりと封筒を破いた。 封筒の口を開いて中を見ると、そこには厚紙に収まった金色のカードが。 そして、お知らせが同封してあった。
     カケルはお知らせを開く。鳥ポケモンたちも注目する。


    “招待状 アマノ カケル様

     この度は、当社のリニアの開通イベントにご応募くださいまして誠にありがとうございました。 厳正なる抽選の結果、ここに当選のお知らせとリニアのフリーパスをお送りいたします。
     尚、イベント当日はお手持ちのポケモンも連れておいでくださればより楽しめるかと思います。 集合場所は以下を――”


     カケルはガッツポーズをした。

    「あら、何かいいことが書いてあったの?」

     カケルの様子を察したらしい母親が尋ねる。
     昼ドラはいつのまにかCMになっていた。

    「そういえばその郵便物、発送方法もなかなか凝ってたわねぇ。 ベランダにね、ピジョンがとまっててね、そのコが持ってたのよ。 新手の配送サービスかしら」

     …………。

     まさか…、な。
     と、カケルは思った。

     けれど、カケルと鳥ポケモンたちは思わず互いの顔を見合わせた。

     カケルは「はは」と、苦笑いをした。
     オニドリルが悔しそうに「ゲェーッ」と言った。
     ヨルノズクが、やれやれと言わんばかりに足でバリバリと頭を掻いた。
     もはやピジョンになったアルノーは間が悪そうに二羽の様子を伺った。

     その様子を見ていたドードリオの頭の一つがネイティオに目を向ける。
     ネイティオは郵便物には無関心だとばかりにベランダの方向をじっと見つめていた。

     ベランダの窓はあの車窓のようにその先にある風景を切り取っている。
     切り取られた空の破片の中にもくもくと広がる白い雲があった。
     ネイティオの瞳に、その雲に向かって上昇する、頭から煙を出す長い物体が映し出される。

     彼は聞いた。
     空に向かう列車の汽笛と走行音を。

     そして列車は、雲の中に突っ込むとすぐに見えなくなってしまったのだった――


      [No.2699] お見通し 投稿者:aotoki   投稿日:2012/10/19(Fri) 20:27:46     111clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ちょっと怖いのよ】 【キノコはパラセクト派なのよ】 【図鑑ネタ

    僕の友人は、突飛なことを言い出すのが多いやつだった。
    「なぁ…モロバレルって、怖くねぇか?」
    ランチのサンドサンドを片手に持ったまま、友人はぽつりと空を見上げて呟いた。
    「はぁ?」
    「いやさっきのポケモン進化史の時間さ、ちょっと考えたんだよ。あいつら、なんであんなカッコなのかなって」
    モロバレル…ウツギ式タマゴグループでは植物グループ、タイプは草・毒で第一進化体。イッシュ地方にのみ生息する、割とマイナーな草ポケモンを、生粋のカントー人の友人がわざわざ話に出してまで怖がることが、僕には理解できなかった。
    「なんでだよ?モンスターボールへの擬態はオーキド博士の時代から既に確認されてるだろ?そんな怖がる必要性ないだろ」
    僕はライチュウコッペにかぶりついた。カスタードがこぼれそうなのを、慌てて直す。
    「そうだけどさ…アレとは違う気がするんだよな。なんとなく」
    「アレって…ビリリダマだよな?」「そうそうそいつ」
    友人はびしりと指を伸ばした。
    「あいつらは都市部とか工場で暮らしてるだろ?だからモンボに化けて、人間…俺らに生息範囲広げてもらえるから、あぁなってんだろ、多分」
    でもモロバレルは違うと思うんだよ。そう言って友人はサンドイッチを一口かじった。
    「なんでだよ?」
    「モロバレルの住みかは森林……森でわざわざ赤色のモンボに擬態する必要あるか?」
    確かに緑ばかりの森では反対色の赤は目立ちすぎるけど、僕はお茶を一口すすって答えた。
    「そりゃ、トレーナーを騙して捕まえてもらうためだろ。実際あいつらの生息地はそんな密林じゃないし。実際、騙されたトレーナーの例も上がってるんだから、そんな気にするまでもないんじゃないか?」
    それでも友人は納得しなかった。
    「いや、違うね。もし捕まえてほしけりゃもっと小型化するはずだ。バチュルみたいに」
    「タマゲタケなら小さいだろ」
    「そりゃ当たり前だろ。進化前なんだから。俺が言いたいのはなんてかな……最終的な目的なんだよ。意図っていうか、生物としての目的というか」
    「生物としての目的、ねぇ……」
    僕はさっきの進化史の授業を思い出していた。

    様々な姿を持つポケモン、しかしその姿かたちには無駄は一切無くて、きちんとした理由がある。
    例えば、ピカチュウのとがった耳は微細電流の充放電のため。黄色い体は警戒色。バッフロンの頭は衝撃からの保護。エアームドのスキマのある翼は空気抵抗を減らすため。
    一見僕らには無意味に見えるものにも、きちんとした存在意義がある。その目的を、僕らにわかるよう"翻訳"するのが研究者の仕事だ。

    そして今、僕の目の前で友人はまさにモロバレルの姿を"翻訳"しようとしていた。
    「オレ…あいつらの擬態は、トレーナーがいたから生まれたと思う」友人は神妙な顔でうつむいた。
    「あいつら…笠を動かしてポケモンをおびき寄せるだろ?あれって、モンスターボールが人間の使う、安全な道具であることを利用してるんじゃねぇのか?」
    友人は腰から紅白のモンスターボールを外した。つるりとした表面に、歪んだ僕らが映る。
    「つまり…あいつらが僕らの"生態"を…」
    「そう、利用した」

    僕の背中に、何故か急に冷たいものが走った。

    「……おいおいおいおい」
    「…な?怖いだろ?俺らが利用してきた技術が、ポケモンに使われてんだからな。まだあいつらは騙しで終わってるけど…この先、モロバレルの次にどんな奴がでてくるんだろうって考えたら、急にな」
    友人は少しひきつった笑いを浮かべた。
    「…手がモンスターボールとかか?」
    無意識のうちに、僕は冗談を口にしていた。言うべきではないと分かってはいたけれど、口にしてしまった。
    「そうそう。体の中に味方になるポケモンが入ってるとか」
    友人は笑い方をいつものものに代えて言った。
    「そりゃ大変だな。ボールが二ついる」
    「中から別なほうが押し開けてくるとか?」
    冗談を言う僕と同時に、一枚の絵を思い浮かべる僕がいる。


    草むらを走るポケモン。技を受けて怯んだそこに、投げられる赤と白の人工物。揺れが収まったそれを、同じ姿のポケモンが拾う。

    「…そういやそう考えると、イッシュには人間を利用するポケモンが多い気がするな」
    僕は頭のなかの絵を振り払い、努めて冷静に言った。これはあくまでも話を元に戻しただけ。そう思い込みながら。
    「ヒトモシの生命力吸収だって…トレーナーの来訪前提だし、バチュルもさっきのお前の話じゃないけど、くっついて都市で繁殖する点じゃ、ある意味利用してるよな」
    「あぁ。それにイッシュには生物学的に新しいポケモンも多いって聞いたし…」
    斜め上を見上げながら、友人は続ける。
    「………」
    「………」

    しばらく、僕らは沈黙していた。

    「…ま、俺の考えすぎだろうな」
    長話悪かったな、と無理矢理のように言って、友人は残りのサンドを一口で飲み込んだ。さっき外したモンスターボールを腰に戻し、よいしょっと立ち上がる。
    「次の講義ってどこだ?」
    「あ、えっと……B棟ってヤバくね?時間ないぞ」
    僕は慌ててテーブルの荷物をカバンに突っ込んだ。
    「走って間に合うか?」
    「多分な。おい、一個モンボ忘れてるぞ」
    友人の指差すテーブルの足元に、未使用のボールが一つ落ちていた。
    「あ、悪い悪い」
    僕は一瞬ボールに手を伸ばしかけて、ふと、このままボールを置いておいたらどうなるのだろうと考えた。そして、ボールをつかんでカバンに押し込んだ。

    ニンゲンは、考えたくないことを後回しにしたがる。
    この生態も利用されてるのかと思いながら、僕は友人の後を追った。

    "Shallow belief" is the end....


      [No.2698] 語り部九尾―九尾の説明書― 投稿者:NOAH   投稿日:2012/10/19(Fri) 16:59:53     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


    九尾の説明書

    語り部九尾
    種族:キュウコン 性別:♀ 特性:日照り
    性格:生意気 個性:好奇心が強い
    出身:ホウエン地方・送り火山 年齢:(恐らく)千歳
    趣味:話すこと・旅をすること
    好きなもの:人間
    嫌いなもの:人間

    主人公に当たる、千を超えたと思われるキュウコン。
    夢特性、日照りの持ち主で、この特性と強い好奇心のおかげで
    長い間旅を続けて来られた。
    生まれはホウエンの送り火山だが、いつ生まれていつ死んだかは結局わからずじまい。
    歴史書にちょくちょく、光を呼び、炎を纏った一匹のキュウコンの姿が乗せられているらしいが
    それがこのキュウコンかどうかは不明。
    ただし、色々と説明がつく部分が多いため、否定はできない。
    人間が好きであると同時に、どこか嫌っている節がある。
    旅をすることが好きで、その際にあった出来事を、誰かに話すことが好き。


    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】


      [No.2697] 見上げる、空 投稿者:小春   投稿日:2012/10/18(Thu) 21:56:43     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     見上げた空に、あいつはいない。

     風が強い日には空を見る。いつもより早く雲が流れるのをぼんやり見上げ、視界の端に紫の物体が入ってこないかを期待する。いや、さして期待していないかもしれない。とか思いつつ、やっぱり心のどこかで期待しているのだと思う。自分でもよく、わからない。いつの間にか、染みついた癖だ。いつの間にかというのは適切ではない。空を見上げるようになったのは、確実にあの日から。いつも隣をぷわぷわ浮いていたあいつが飛んでいった日からだ。
     風の冷たい日だった。ぷわぷわ浮くあいつをお供に、近くのコンビニに醤油を買いに行った。ひじきを煮るから買ってこいと母親に300円だけ渡されてのおつかい。えぇい、こんな寒い日に外にほっぽり出すなんてなんてひどい、自分はストーブの前に陣取ってるくせ、どうせひじきだって私が煮るんだ云々。足を進めるたびに口から文句が飛び出す寒さ。隣を浮く紫の風船がぷわぷわ鳴いた。なにが楽しいのか知らんが、古い手袋を取り上げて遊んでくる。寒いんだから返せ返せと醤油が入った白いビニール袋を振り回し、紫風船を追いかける。追いかけるほどに、紫風船はぷわぷわ笑うように鳴いた。
     寒さで赤らんだ頬がいつの間にか熱くなる。さっきまでは冷たいばかりだった風が頬に気持ちいい温度になった。ふと見上げた空に浮かぶ薄い雲は、いつもより早く流れていく。ぷわぷわ鳴いて手袋をぶら下げる風船と、それを追いかける私の背中に冷たい風が吹いた。醤油の重みがあるビニール袋まで、すこし揺れる。切りに行くのが面倒でだいぶ伸びた前髪が目に入りそうだ。思わずきつく目を閉じた。
     ぷわっ、と驚いたような風船の声。すぐにぷわぷわ、さっきまでの楽しそうな声に変わる。ぷわぷわ、ぷわぷわ。風に乗ってだいぶ高い場所まであがっている。鳩とか烏とか、鳥とは違う浮遊の様子に、うらやましいとかちょっと思う。

    「夕ご飯までには、戻ってきなさいよねー」

     風に乗った紫風船に向かって声をかけた。一緒に出かけて、途中で離れて、お互い勝手に帰って、夕飯から先は一緒に過ごす。いつものことだ。どうせ、どこかで飽きてすぐに戻ってくるはず。ずんと重くなった気がするビニール袋を持ち直して、気づく。細くなった持ち手が手に食い込んで痛い。

    「あ、手袋もってかれたし…」

     まあ、いいか。あいつが帰ってきたら取り上げてやろうじゃないか。少しばかり熱を持っていた頬はすっかり元通り冷たくなっている。ジャケットの襟に顔を埋めるように、帰路を急いだ。なんてまあ、風の冷たい日なんだろう。


     結論から言ってしまえば、夕食までにあいつは帰ってこなかった。さらに詳しく言えば、いまこのときまで戻ってきていない。どうせ朝になれば帰ってくる、明日になれば帰ってくる、明後日になれば帰ってくる。期待は数え切れないほどしてきた。後悔も数え切れないほどしてきた。紫色をした風船とは、風の冷たい日に別れたきり。ぷわぷわ笑うような鳴き声と私の指先にしもやけを残して、あいつは飛び去ったまま。だから私は、風が強い日には空を見るのだ。


    ☆★☆★☆★
    テスト終了後データがリセットされると目についたので、本棚の奥からしょびつり出してきたものをボットンと失礼します。


      [No.2696] Re: 携帯閲覧時のバグに対応しました 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/10/18(Thu) 21:39:10     24clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    確認しました。消えませんでした。
    素早いご対応ありがとうございます!(・ω・)


      [No.2695] 携帯閲覧時のバグに対応しました 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/10/18(Thu) 21:03:36     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:携帯からでも】 【見えるといいな

    ご報告。携帯電話(フィーチャーフォン系)閲覧時のタグ関連のバグをいくつか修正しました。携帯閲覧時はタグは読み取り専用となり編集できませんが、修正しても消えなくなっているはずです。

    手元にiPhoneしかなく動作テストができないので、どなたか確認してくださると助かります(´・ω・`)


      [No.2694] Re: 花と嘘 投稿者:レイニー   投稿日:2012/10/18(Thu) 18:53:59     99clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:http://www.youtube.com/watch?v=oRENOn7vVd0】 【←やつれてきしんでいく〜の元ネタ】 【タグにURL入れたテストがしたかっただけです】 【もはや本編関係ない】 【全面的に作者の趣味だけ

    ちょっとテストがてらレスー。


      [No.2693] オムライスの作法 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/10/18(Thu) 17:59:30     153clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:※ポケモンほとんどでないよ!】 【隔月刊「Poke Life」】 【11月号】 【コーナー「街を歩こう」】 【第13回

    ――今日はオムライスがおいしいと評判の喫茶店に来ています。


    「どうも。オムライス担当、バイトの宇品鉄男です。店ではトレインって呼ばれてます」

    ――えっ、バイト? 評判のオムライスを作っていたのはバイトの方だったんですか?

    「はい。れっきとしたバイトです。大学生です。2回生です」

    ――はー、そうだったんですか。この店で働き始めてどの位になりますか?

    「俺が大学1年の秋ごろからだから……1年とちょっと、ってところですかね?」

    ――意外と短いですね。それでここまで評判になるとは。

    「オムライスだけは小さい頃から作っていたので、自信はありますよ」



    ――どうしてこの喫茶店で働くように?

    「元々、俺はこの喫茶店の常連だったんです。ちょっと、趣味で小説のようなものを書いていて」

    ――ほほう、小説ですか。

    「まあ、今はそれは置いといて(笑) で、よくこの店で執筆させてもらってて、店長とも顔なじみになって」
    「トレイン、ここに来たらいっつもコーヒーとケーキセット頼んでたからねー。嫌でも覚えるよー」

    ――あ、店長さん。

    「……で、ある日料理の話になりまして、俺がオムライスだけは自信あるって言ったら、店長がじゃあ作ってみろって」
    「それがあんまり美味かったからさー、お前ここでバイトしろ! とりあえず明日から来い! って」
    「無理やりでしたね(笑)」
    「無理やりだったなあ(笑)」

    ――そんなに簡単だったんですか(笑)

    「いやー、俺は最初、ちょっとばかり躊躇したんですけどね。俺そんなに生き物好きな方じゃなかったし、トレーナーの免許も取ってないし」

    ――そういえば、このお店は通称『冥土喫茶』と言われるほど、たくさんのポケモンが住み着いているんでしたね。主にゴーストタイプが。

    「住み着いてるって言うか、勝手に居付いてるって言うか」
    「そもそも副店長からしてヨノワールじゃないですか」
    「僕より働き者だしな」
    「(笑)」
    「トレインも大学卒業したら正式に雇うからな!」

    ――もう就職先も決定済みですか(笑)

    「まあ、このご時世、ありがたいことですけどね。でも店長がますます働かなくなりそうです(笑)」
    「ひでぇ! でも言い返せねぇ!(笑)」
    「あ、副店長がすごく冷めた目でこっちを見つめてる」
    「お前ら本当ひどいな!(笑)」



    ――そういえば、トレインさんは小さい頃からオムライスを作っていた、と。

    「そうですね。中学校に入るちょっと前にはもう作ってました。しかもほぼ毎日。だから……もう10年くらいになりますかね?」

    ――それはすごい! 親が料理人だったとか、そういう感じですか?

    「いいえ、両親は普通の会社員でした。共働きで、毎日遅くまで働いていて。それで毎日、自分で夕食を作っていたんです」

    ――なるほど。しかし、なぜオムライスを?

    「ハル……ああ、俺の幼馴染で近所に住んでた、鈴ヶ峯陽世って奴なんですけど、そいつがオムライスが大好きで。ハルの両親は海外出張が多かったから、自然と一緒に夕飯を食べるようになったんです。ハルが壊滅的に料理が下手だったから、いつも俺が作ってて。で、そいつがいっつも、オムライス食べたいしか言わなかったんです」

    ――毎日ですか。

    「ほぼ毎日です(笑)」

    ――そりゃ上手くなりますね(笑) そのハルさんは今どこに?

    「……。……5年前に、事故で……」

    ――あ……こ、これは申し訳ありませんでした。

    「いえいえ、気にしないでください」



    ――では、この喫茶店のオムライスは、トレインさんとハルさんの思い出の味と言うことですね。

    「まあそうとも言えますけど、俺としてはあまりその辺は意識しないでもらいたいかな」

    ――と、言いますと?

    「これは、俺がこうやってお客さんたちに料理を出していて思うようになったことなんですけど」


    「ただ単純に、おいしいものをおいしいって食べてもらえるのが、一番幸せなんですよ。ハルとの間も元々そうでした。おいしいって喜んでくれるから、もっと上手くなろう、おいしいものを作ろう、って思うんです」

    「だから、俺のオムライスを食べてもらう時は、難しいこと何も考えず、とにかく食べることを楽しんでもらいたいんです」


    「おいしいってことは、幸せじゃないですか」



    ――なるほど。「おいしいものをおいしく食べる」。それがトレインさんの示す、「オムライスの作法」なんですね。

    「作法って言うほど大それたものじゃないですけど(笑)」
    「おう。トレインのオムライスはすげー美味いから、とにかくまずは食べてもらいたいな」

    ――あ、店長さん。

    「言っておくけど、僕だってコーヒーには自信あるよ? ここ一応喫茶店だからな! メインはコーヒーだからな!」
    「確かに店長のコーヒーはおいしいです。悔しいですけど」
    「おい(笑)」

    ――なるほど、店長さんも自分の腕には大いに自信あり、ですか。

    「そう! 僕のコーヒー、副店長のケーキ、そしてトレインのオムライス! 3つそろえばうっかり天国に行けちゃうレベルだと自負しているね!」

    ――本当の意味で「冥土喫茶」になってしまいますね(笑)

    「面子は野郎ばっかりだけどな(笑)」
    「そのうち1匹はポケモンですしね(笑)」


    ――では、その自慢の3品、私も頂いてよろしいですか?

    「もちろんです!」
    「そうこなくちゃ! おーいみんなー! お客さんだぞ!」




    ++++++++++

    いずれリセットされるし、と心おきなく投げ込んでおく。


      [No.2692] タグのレイアウトテスト 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/10/17(Wed) 22:12:22     116clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:「……おーちゃん、行くよ! わたし、おーちゃんのこと、絶対助けてあげるから!」】 【「あたし、宇宙飛行士になりたいの!」】 【「でもね、僕、あの目の前にあるお日さまよりも、もっと素敵な『たいよう』を知ってるんだ」】 【「君はどうして、そのように髪を長々と伸ばしているんだい」】 【「……ねえみんな、ちょっといい? わたし、おはなしがあるの……」

    タグのレイアウトを変えたので、ちょっとテストしてみます。


      [No.2691] Re: もう一個気付いたこと(追記:対処しました) 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/10/17(Wed) 20:54:01     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    > 記事の横の★マークを押して記事を出したら、タグが出てこないようです。(mode=allreadの時)
    > とりあえず報告まで。

    >きとかげさん
    ありがとうございます! これから確認してみますので、しばしお待ちのほどを。

    追記:
    対処しました! ご指摘ありがとうございます(´ω`)


      [No.2690] もう一個気付いたこと 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/10/17(Wed) 14:17:26     156clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:新掲示板のタグがまた消え以下略】 【ククク……タグは以下略】 【★ごときで消えるとは以下略

    記事の横の★マークを押して記事を出したら、タグが出てこないようです。(mode=allreadの時)
    とりあえず報告まで。


      [No.2689] 語り部九尾―壱― 投稿者:NOAH   投稿日:2012/10/17(Wed) 06:50:11     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


    溢れる豊かさが、人とポケモンとを結ぶ南の地・ホウエン地方。
    その地に、死者の魂を送る、霧に覆われた聖なる霊山・おくりび山がそびえ立つ。

    しかし、彼女がいる場所は、どんな大雨であろうとたちどころに晴れ渡り、見事にきれいな景色を一望できる程、澄んだ青空に恵まれるのだ。

    「おや、これは珍しい。人なんて何時振りに見たか……その容姿では、まだ子どものようだが……何をしに来たんだい?」

    現れた一匹のキュウコンは、何故だか言葉を介しており、見事なまでのその黄金色の九つの尾を優雅に揺らす。少しして、私がなぜここにいるかピンときたのか、くつくつと喉の奥で嗤う。こばかにされているはずなのに、なぜだか憎めなかった。

    「なるほど、親と逸れたか。ふふ……迷い子、会ったのが私で良かったな。出会った獣によっては、その命、とうに失われておったぞ。まあ、あの濃霧では仕方あるまい……そうだな、久しぶりに人の子にあったのだ。私もある人の子の話をしよう。なに、退屈はさせぬ。私の旅話しだ。」

    人の了承を得ず、勝手に話を始めたキュウコンは、どこか遠くを見つめながら、昔話を語り始めた。


    「これは今から、五百年程前の話―…。」


    ×*×*×*×*×*×*×*×*×*


    カントーより北にある、花冷える寒冷地。雪深いシンオウに引けを取らない程寒く、厳しい冬が襲う地。

    時刻は恐らく、お昼頃。初夏の日差しが注ぐ、深緑の森を歩く、一匹のキュウコンがいた。そのキュウコンは、ただただ、宛てもなく、いたずらに右往左往と森の中を行き来してしていた。しかし、そのキュウコンは何かを捉えたのか、頻りに耳を動かすと、何かに近づいて行った。

    そこにいたのは、一人の子どもだった。大きな木の根に腰掛けて、ひっきりなしに泣いている。着ている物は、土でところどころ汚れていたが、中々に上質な袴を身につけ、右眼に眼帯をしている、十才くらいの少年だった。何かを感じ取ったのか、キュウコンは顔を顰めた。


    「……人の子よ、ここで何をしている。」
    「!!」
    「私の質問に答えろ……何をしている。なぜ泣いている。」

    キュウコンが感じ取ったもの。それは血の臭い。この頃は戦が絶えず、刹那の瞬間にも、様々な命が刈り取られている時代であった。しかし、この少年は、まだ戦場にでる年頃では無い。なのになぜ、この少年から血の臭いがするのか。キュウコンはそれが何故なのかわからなかった。


    「……眼、を。」
    「うん?」
    「右眼を、患った。……それから、母上が、まるで化け物を見るような目で、私を見始めた。」
    「…………。」
    「この眼を取ったら、優しかった頃の母上に戻ってくれると思った。だから、従者に頼んで、そして……。」
    「抉り取ったのか、右眼を。」


    少年は無言で肯定すると、膝に顔を埋めた。そのままの格好で、さらに話を続ける。

    「……でも、母上は元の優しい母上には戻らなかった。私をさらに化け物扱いし、罵り、ついには
    、私を、殺そうと……ッ!」
    「……皆まで言うな……辛かったであろう、泣きなさい。思う存分。」
    「ふっ……うわあああん!!」

    キュウコンは優しく子をあやすと同時に、その母親に、ひどく怒りを覚えていた。
    母親は、生まれ落ちた我が子を、何があっても常に愛し、時に諭し、そして何より、子の憧れでなければならないのだとキュウコンは思っている。しかし、泣きじゃくるこの少年の母親は、子が病で、その眼を失ったその日のうちに、汚れた者でも見るかのように辛くあたり、何よりも、殺そうとしている。しばらくして少年が落ち着いた頃、キュウコンはその口を開いた。

    「……何とも愚かな母親か、どれ、人の子。いっそ私が、お主の母を喰らってやろうか。」
    「それは……それはだめだ。」
    「何故?命を狙われているのだろう?」
    「確かに、哀しみの元凶は、母上だ…………でも、お腹を痛めて産んだのも、母上だ。母上がいなければ、私は……私は、今こうやって、哀しみを共有してくれた、貴女と出会っていない……私は……私は母上が大好きだ!たとえ蔑まれても、命を狙われても、それは、その気持ちは変わらない。」
    「…………人の子よ。」
    「…………?」
    「名を……お主の名を聞いても良いか?」
    「…………梵天丸。」
    「梵天丸……良い名だ。人の上に立つに相応しい名だ。お前には、数多の人や獣を導き、そして操り、慕われる才があると見た。気が変わった。私はお前の母親を喰らうのは止めよう。その変わり、お前が死すその日まで、私はお主の勇姿を見届けたい。」

    その言葉に、梵天丸は小さな左眼を丸々と見開いた。彼女の言葉に驚いたのか、口を僅かに開けて、呆けた表情をしていた。

    「……獣の貴女が、私の母になると?」
    「うむ、それも良いな。……梵天丸よ、お主は母が愛しいと言った。しかし、件の母はお前を殺そうと憚っている。……だが、1つだけ良い方法がある。荒治療になるが、構わんか?」
    「……母がまた、私を愛してくれるなら。」

    その答えに満足感を得たキュウコンは、にっこりと笑って、梵天丸の頬を舐めた。梵天丸は、くすぐったそうに、目を細めて笑う。

    「そうだな、お主が二十になったとき。まだ母を愛していたら、そして、母がまだお主を嫌っていたら。またここに来なさい……その時に教えよう。」
    「……わかりました。十年程、待てばよろしいのですね。」
    「うむ。……必ず、お主の力になろう、梵天丸……さあ、もう行きなさい。」

    梵天丸はキュウコンに促され、しかしまだ名残惜しそうに一度振り返った。キュウコンは穏やかに笑い、その炎で優しく彼を愛でると、森の奥へと引き返して行った。梵天丸は尚もそちらを見るが、自分を呼ぶ声を耳にすると、そちらの方へと走って行った。


    ×*×*×*×*×*×*×*×*


    10年後。キュウコンは再び、花冷える寒冷地に訪れていた。今度は、自らの影に、たくさんのカゲボウズ達を忍ばせて。
    約束の場所には、見事な鳶色の髪を持つ、思わず見惚れてしまう程の青年がいた。しかし、キュウコンはその青年こそが、10年前の小さな子だと気付いた。

    「見違えたな、梵天丸。」
    「!……お久しぶりでございます、゛母上゛。貴女にとっては僅かな歳月でも、私にとっては長い十年でした。」
    「そうであろう……私の種族は千を生きる獣。私はまだ五百といっていないが、十年は確かに短い……血の臭いが濃くなったな。戦に出始めたのか?」
    「ええ、二年程前から……名も新たに貰いましたが、貴女にはまだ、梵天丸と呼んでもらいたい……。」
    「構わん。……それでどうだ?この十年。お主も、お主の母も相変わらず変わっておらんな?」
    「はい。変わっておりませぬ……それで母上、如何なされるおつもりですか?荒治療と申しておりましたが……。」

    そこでキュウコンは、自らの影に潜ませ連れて来た、たくさんのカゲボウズ達を呼び出した。彼は初めて見るポケモンだったのだろう。彼らは何者かと問うてきた。彼女は丁寧に、彼らカゲボウズ達の特徴やら何やらを教えると、改めて、梵天丸を見やった。

    「……大きくなったな、我が子よ。」
    「ええ、色々ありましたが、無事、ここまでこれました。これも偏に、母上のおかげです。」
    「私は何もしていない。お主の頑張りに、想いに応えただけだ……良い結果を待っているぞ、梵天丸。」
    「はい。……母上。何時かまた、貴女を母上と呼ばせてください。」
    「……うむ。」

    キュウコンは、どこか侘しい気持ちを抱えながら、梵天丸と、その影に移ったカゲボウズ達を見送った。それから、彼とキュウコンは、一度も会う事は無かった。カゲボウズ達が戻って来た頃、キュウコンは彼らに話を聞くと、どうやら思い通りに事が進んだらしい。それからの梵天丸の活躍は目覚ましく、キュウコンが見込んだ通り、彼は一国の主にまで上り詰めたという。

    それから、およそ六十年後。梵天丸は、床に伏していた。

    「……死に水を取に来たぞ、梵天丸。」
    「母上……お久しぶりにございます。」
    「やはり、お主と私では寿命が違うな……我が子の最期を見届けるのは、心が痛む。」
    「こればかりは、いたし方ありますまい……私は最期に貴女にあえて、幸せです……母上、この先の五百年、どうか、私の変わりに……。」
    「うむ、見届け、伝えよう……お主の事。そして五百の時を経て、再び、黄泉の地にて会おう、梵天丸……その時ゆっくりと話そう。私が歩んだ千年の人生、その全てを。」
    「その時は、この梵天丸が、いち早くお迎えに上がります。」
    「……待っているぞ、我が子よ……黄泉への道中、気を付けてな。」
    「母上も……今より、五百年……どうか……お気を付けて……。」

    その言葉を最期に、彼は静かに息を引き取った。その日は奇しくも、梵天丸とキュウコンが初めて出会った日だった。世が平和を迎えて少し経った、柔らかな初夏の光が差し込む、とある城の一室での出来事であった。

    彼の激動の人生の背後には、度々、一匹のキュウコンの姿が噂されていたという。


    ×*×*×*×*×*×*×*×*


    「……すっかり長引いてしまったな。もう夕暮れ時だ。そろそろ帰りなさい。ああそうだ、またここにきたいのなら、ヨマワルかカゲボウズにこう言いなさい。『語り部九尾に会いに来た』と。……梵天丸の名か?ふふ……゛独眼竜゛と言えば、伝わるであろうな。」





    【書いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】 .


      [No.2688] 語り部九尾―零― 投稿者:NOAH   投稿日:2012/10/17(Wed) 06:47:24     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


    千 の 時 を 過ごした 一匹 の キュウコン が いた。

    彼女 は 獣 の 身 で ありながら 各地 を 旅してきた と いう

    今 は 亡き その キュウコン が 私 に 話して くれた

    幾つもの 旅 の 記憶 を 私は ここ に 記そう。


    ○日本史×ポケットモンスター・語り部九尾○
    もしもポケモンが、日本史に出てくる人物にあったり、戦等に参加していたら―…?

    旅好きで人好きだけど、どこか憎めない、生意気で好奇心旺盛な、変わり者キュウコンのお話し。


    【書いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】


      [No.2687] あげてみる 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/10/16(Tue) 23:44:11     139clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:クーウィさん】 【単行本は】 【早ければ】 【冬コミですね

    先生! 改行の幅をコントロールしたら
    クーウィさんの小説が超読みやすいです!


      [No.2686] 対応ありがとうございます 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/10/16(Tue) 23:20:21     141clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:もふもふ】 【もぎゅもぎゅ】 【ごきゅごきゅ】 【ぴじょんぴょん】 【ぴじょんぴょおおおおおん!


     迅速な修正……格好いい! 流石586さん。これで気兼ねなく自サイトを仕込めます(
     投稿の時に「禁止ワードじゃあ!」とどやされないのはかなり嬉しいですw


      [No.2685] Re: 愛される才能(テスト投稿) 投稿者:リング   投稿日:2012/10/16(Tue) 22:33:10     27clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    こんな女に引っかかったら面倒そうですね。

    とりあえず、テスト投稿と言うことで無駄にR-18タグがついていますが、実は健全なお話のなのでよい子でも気兼ねなくみられると思います。


      [No.2684] 愛される才能(テスト投稿) 投稿者:リング   投稿日:2012/10/16(Tue) 22:20:38     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:R-18】 【嘘です健全です】 【本当に健全です

    「貴方、私を愛していないの? 私とポケモンの、どっちが大切なのよ!?」
    「……同じくらい大切なつもりだったけれど、たった今お前の価値下がったわ」
     冷静に返されて、私の恋は終わった。

     *

    「というわけなのよ。ひどくない?」
     休憩の最中、憤懣やるかたない私は同じ職場の同僚に相談を持ちかけた。そうよ、あの男……西条祐次(サイジョウ ユウジ)!! ポケモンにテレパシーを仕込みたいだとかいって、私のことをおろそかにする酷いやつよ。
    「うーん……確かにその言い方はひどいけれど、そのセリフは女性が男性に言っちゃいけないセリフのトップクラスだし……」
     何よそれ、アイカ! たった一言で私を振る理由になるの!?
    「百年の恋も冷めるセリフっていうのはそういうことを言うんじゃないのかな……大体、貴方彼氏を束縛したりとかしてるんじゃないの? 『他の女の子と話しちゃいけない』とか、『メールはすぐ返せ』とか」
    「当然でしょ! アイカは心配じゃないって言うの?」
    「ユキミ……『当然」って答える時点で、貴女、人に愛される才能はないわよ」
     目の前の同僚、アイカは、ため息交じりにそう言った。
    「だーって、貴方って男の人に感謝していないんだもん。愛されたいなら、感謝しなきゃ」
    「してないわけないでしょ! いっつも一緒に居てくれたらありがとうって言うし、きちんとお弁当とかだって作ってあげてるし! それなのに、あの人は私の作るものに、『コショウを加えたほうが良いんじゃない?』とか、『出汁が入っていないね……塩味だけじゃ味気ないよ』とか文句言ってくるし」
    「お弁当作ることは彼氏に相談した? それとも彼氏にお弁当を作ってくれって言われたの? 押し付けたんじゃなくって? 彼氏はお弁当のメニューとか聞いてくる? 希望のメニューを貴方に伝えたりとかした? そもそも、貴方の彼氏さんってレストランの調理スタッフでしょ? 味について文句を言われたとかいっているけれど……それは文句じゃなくってアドバイスだと思うわよ、彼なりの」
    「えっと……」
    「そこで言葉に詰まるってことは、彼氏さん貴方のお弁当あんまり楽しみじゃなかったってことかしらね。何を作っても同じって思われてたから、お弁当のメニューなんて聞かなかったし、自分の好物を作ってくれとか頼まなかったんじゃないのかしらね?
      もしくは、食べられるだけでもありがたいけれど、もっと美味しいものを作れるはずだと信じたから優しくアドバイスしたのかもしれないし……貴方被害妄想激しいから、それを文句と勘違いしちゃったんじゃない?」
    「なによ、その言い方!?」
    「言葉通りよ……そもそも、男の人の愛情を試すのはいいけれど、それで愛情が覚めちゃったら本末転倒じゃない。その時彼氏が、『お前の方が大事だ』って言ったらどうするつもりだったのよ? 飼ってるポケモン捨てさせるの?」
    「そうよ、捨てさせるとまではいかないけれど、私以外に時間なんて使わせたくないし、里親に出してもらうつもりだったわ」
    「うわー」
    「なによ、何が言いたいのよ!?」
    「私だったら女のためにポケモン捨てる男なんてごめんだし、そんなの人間の屑だと思うし、彼氏に屑になって欲しいと願う貴方はもっと屑だと思うの。子供がアレルギーだから里親募集するとかならともかくさぁ……」
    「アイカ……なんであんたはそんなにひどいこと言うの!?」
    「いや、事実だし……酷いのは貴方じゃないかしらね?」
    「事実じゃない!」
    「そうかしら? そもそも、誰か一人しか愛せない男なんて男として価値ないと思うんだけれど。子供だって愛さなきゃいけないし、友達だって大事にしなきゃいけないし……ポケモンと暮らすことが貴方を愛していないことに繋がるのなら、世の中のポケモン持ちのパパさん、みんな妻も子供も愛していないことになるんですけれど?」
    「それとこれとは違うでしょ!」
    「どう違うのか、言ってみて……あー、そうだ。このまま口だけで話していても、貴方のような人は言っていることがすぐ矛盾して埒が明かないから、ちょっと紙に纏めるわ。まず、貴方が彼氏を束縛した内容だけれど……」
    「もういい、あんたに聞いたのが間違いだった! 理屈っぽくってイライラする。」
    「ありゃー……男は理屈で考える生き物よー? 男の気持ちも知らずに理屈を拒絶するとか、やっぱり貴方彼氏の事なんてなーんも理解してあげようとしないのねー。こりゃ男と恋愛なんて無理だ。せいぜい恋させるだけで精いっぱいね」
    「うるさい!」
     全く、なんだってのよあの女は! はったおしてやりたくなる!

     #

    「あーあ……あいつ、本当になんだったんだろうなぁ」
     惚れた男の弱みとはよく言ったものだが、もうなんであいつのことが好きだったのかわからなくなってきた。あいつに猛烈にアタックされてから、付き合うことを了承したが、それからと言うもの職場の皆で飲みに行くことを制限されたり、話しかけるのすら極力やめるように言われたりもした。
     それは無理だと説得するのにかなり時間をかけたが、その後もあいつの要求はとどまることを知らず。挙句の果てに、付き合っている途中に飼い始めたポケモンにまで嫉妬する始末だ。
    「お前は、俺のこと必要としてくれるもんなぁ……」
     俺とあいつとの痴話喧嘩の最中、傍らで眠っているこのゾロア――アイルが思いっきり唸り声をあげて殺気を放っていたのを俺は知っている。襲い掛かったりはしなかったであろうが、あの女にものすごい敵意を持っていたことは肌で感じた。
     あーでも……俺がなんであいつに惚れたのか、ちょっとだけわかる気がする。あの女は、そりゃもう病的なまでに俺を必要としてくれた。それが嬉しかったのだと思う。ただ、必要とした分、見返りも不釣り合いなくらいにハードルが高くって、意味もなくそのハードルを上げた結果があの質問だったのだろう。ポケモンと散歩に出かける間、メールを返信しないだけで怒られるのだから。
     あの女、ユキミは俺を愛しているんじゃなくって、俺に愛してもらいたいだけなのだとわかった時は、恋心も愛着も全部冷めてしまった。

    「お前は、無償の愛を持っているもんな。見返りなんて求めないで、ご主人ご主人って尻尾を振ってくれる。悪いところだって受け入れてくれるし、たとえ時間が短くっても、会えるだけで喜んでくれる……何より必要としてくれる。うん、お前が人間ならよかったのにな。雄だけれどさ……」
     相手の悪いところも受け入れてくれる。悪いところを見ないフリするのではなく、受け入れてくれる。それが愛なんじゃないかな。相手の事が好きで好きで仕方なくって、とにかく自分のものにしたいのが恋。
     あの女はきっと、俺の事なんて愛していなかったんだろう。だから俺の都合なんて無視してずけずけと勝手なことを言うことが出来るのだろう。恋は盲目……悪いところなんて掃いて捨てようってやつに引っかかっちゃだめだね。
    「いいもーんだ……俺にはアイルがいるし。もともと、進化したら着せ替え人形にするつもりだったけれど……もうお前が恋人でいいや。」
     眠っているゾロアの頬をそっと撫で、人差し指と中指で拾いあげた顎に軽くキスをする。
    「お休み、アイル。早く進化できると良いな」
     愛する彼の寝息を聞くと、驚くほどあっさりとした失恋の余韻が徐々に消えていくようだった。


      [No.2683] Re: 花と嘘(テストage) 投稿者:レイニー   投稿日:2012/10/16(Tue) 21:18:16     159clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:過去作テスト上げ】 【チュリネ】 【草花】 【モチーフは花の気持ち】 【本記事タグは勇敢な鳥

    テストがてら過去記事を編集してタグ付けてみました。
    今のところ問題はなさそうですが、どうでしょう。

    試しに削除キー入れなかったら無事エラー出ました。よかった。

    でも実のところエルフーンをもふもふしてみたいです。もふもふ。


    追記:拍手してもタグ消えませんでした。やったね!


      [No.2682] fc2救出記念に 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/10/16(Tue) 20:50:57     96clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ショール越しのふにゃりとした感触

    http://pijyon.blog4.fc2.com/ あんまり更新してない私のブログを貼るテスト

    以下稼ぎ

    諸君、私は砂漠の精霊が好きだ。
    ショール越しが好きだ。
    ふにゃりとした感触が好きだ。
    怪訝な顔をする弾き語りのオッサンが好きだ。
    あの作品が与えた影響ははかり知れない。
    あれはポケモン小説の可能性だ。ロマンなのだ。

    私の小説でしばしば怪訝て言葉が出てくるのはぶっちゃけ砂漠の精霊のオッサンのせいです。
    いやまじで。
    オッサンが怪訝な表情を浮かべたからなんです。

    イスラムの世界観とポケモンがマッチしたのも衝撃だった。
    ポケモンなんでもできるやん! というね。
    まずポケモンを精霊(ジン)と表現したこのアイディアがすごい。
    当時まだダイヤモンドパール出てませんから!
    ミオ図書館ないですから!

    だから六尾稲荷は砂漠の精霊で衝撃を受けて
    うっひょお!こんなことやっていいんだ!ってなった結果なんですよ。
    私が砂漠の精霊で学んだ事を私なりに表現しようとした結果があれです。
    砂漠の精霊がなかったら六尾稲荷を書くことなかったし、カゲボウズもかなり違った方向になったんじゃないだろうか。
    こじらせた結果がリメイクバージョンの影花と今のカケボウズシリーズ。
    最初の影花が同じ短編集に載ってたのは何かの因果であろうと今更ながらに思うのです。

    彼はオスマン帝国(現在のトルコ)が好きで、トルコにもよく行っているイスラムの文化に造詣が深い方です。
    (歴代の皇帝の名前が空で言えるらしい)
    そんな彼の書いたポケモン小説が「砂漠の精霊」でした。

    ポケモン小説の面白さの一つに組み合わせの妙があって、タカマサさんならイスラム文化だし、クーウィさんならアイヌ文化だし、ゴーヤ氏なら情報処理、私の場合だと大学で動物とのかかわりをやってた経験なんだけど、これがうまくドッキングすると威力が跳ね上がるように思います。

    だから私としては、小説を書く方にはぜひポケモン以外の「柱」を持っていただきたいと思っています。
    なんでもいいんですよ。
    高校生には高校生の書けるポケモン小説があるはずだし、
    主婦には主婦に書けるポケモン小説がある。
    料理が好きだったらここにポケモンが介入したらどうなるかって想像すると楽しいじゃないでしょうか。
    バイク乗りだったら、暴走族を主人公にしたらきっといい小説書けますよ。
    ぜひあなたの持ってる「専門知識」や「日常」をポケモン小説に反映してください。


      [No.2681] Re: FC2が出せない理由を調査(解決しました) 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/10/16(Tue) 20:44:33     118clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:fc2のアドレスが】 【URL欄に】 【入力できるよ!】 【やったね】 【たえちゃん!

    ■調査結果
    spandata.cgiで、なんと「web.fc2.com」が禁止ドメインリストに入っていた。理由は不明。
    これを削除してやることで、「URL」欄への入力が可能に。
    自動で登録されたのだろうか……


      [No.2680] FC2が出せない理由を調査 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/10/16(Tue) 20:41:17     74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    URLに入れてテストしてみる。

    以下は文字数稼ぎ用
    ■投稿できる作品

    ・あなたの考えるポケモン世界を『文字数100文字以上』で表現してください。
     イラストや写真をつけても構いません(つけなくてもかまいません)。

    ・ただし、短歌(五七五七七)、俳句(五七五)の形式であれば100文字以下でもOKとします。

    ・文章をつけて欲しいイラスト/写真の投稿もできます。
    イラスト/写真のみの投稿は【書いてもいいのよ】タグ(後述)扱いとさせていただきます。
    イラストのみを複数投稿する際は、前の投稿から一週間経つか、【書いてみた】がついた時点でお願い致します。


      [No.2679] Re: 気がついた事 投稿者:No.017   投稿日:2012/10/16(Tue) 20:30:01     147clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ツイート機能「新掲示板のタグが拍手で消えたようだな…」】 【必須削除キー「ククク…タグは我ら新掲示板機能四天王の中でも最弱…」】 【改行コントロール「拍手ごときで消えるとは我ら新機能四天王の面汚しよ…」

    > 入力レイアウトは今の5個1行をもう一行追加する感じか
    うん、そんな感じで。

    > 掲示板の文字コード的にちょっと厳しいかも(丸数字とかその辺り
    まあ、ここはしょうがないと思う。


     


      [No.2678] Re: 気がついた事 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/10/16(Tue) 20:26:08     182clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:確かに】 【タグは】 【多い方が】 【いいかも】 【ね!

    > ●削除キー に赤字で 必須を入れた方がいい
    > ●タグは意外と遊べるので10個くらいに増やすのも悪くないかも
    > ●お名前、タイトルあるいはメッセージに含まれている機種依存文字は文字化けするためご利用になれません。 →どこまで許容するか?
    > ●拍手するとタグが消える事をこちらでも確認

    > ●削除キー に赤字で 必須を入れた方がいい
    入れました!(´ω`)

    > ●タグは意外と遊べるので10個くらいに増やすのも悪くないかも
    これは要検討で(結構改修規模がでかいので)
    ただニコニコでもpixivでも10個なので個人的には前向きに考えたい
    入力レイアウトは今の5個1行をもう一行追加する感じか

    >●お名前、タイトルあるいはメッセージに含まれている機種依存文字は文字化けするためご利用になれません。 →どこまで許容するか?
    掲示板の文字コード的にちょっと厳しいかも(丸数字とかその辺り


      [No.2677] Re: テストに乗じて(追記:タグ消失バグ対応しました) 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/10/16(Tue) 20:14:09     103clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:拍手しても消えないタグ

    >  まずは運営の鳩さんと掲示板開発の586さん、おつかれさまです!
    >  削除キー入れなかったらちゃんと注意してくれるんで、まず感動しました。あと、一定幅で自動で折り返すレイアウトになったのですね。読みやすくなりそうです。
    >
    >  で、気付いたことですが、相変わらずfc2のホームページは投稿する時に入れられないっぽいです。禁止ワード扱いらしいですが。とりあえず報告まで。
    >  あと拍手したらタグが消えるっぽいです。
    >
    >
    >  では、フリーダム期間ということで、色々な投稿楽しみにしています。
    >  鳩さんと586さん、改めて、ありがとうございます。

    報告ありがとうございます!(´ω`)

    >  あと拍手したらタグが消えるっぽいです。
    あー、あーあー(把握)
    原因が判明したので、早めに直しておきます。どうもありがとうございます。



    追記:対応しました。こんな感じで潰していきたいところです。


      [No.2676] 最終話「はじまりの つづき」 投稿者:No.017   投稿日:2012/10/16(Tue) 20:12:54     75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:遅れてきた青年

    ふたつの ぶんしんが いのると もの というものが うまれた
     みっつの いのちが いのると こころ というものが うまれた
     せかいが つくりだされたので さいしょのものは ねむりについた

     ひろがった くうかんに ものが みち
     ものに こころが やどり じかんが めぐったとき――





    ●最終話「はじまりの つづき」





     静かに音を立てて、観覧車が回っていた。ゴンドラを支える鉄筋につけられたいくつものライトがついたり消えたりして、ときに青く、ときに赤く輝き、円の形をした観覧車のシルエットの中で波紋のように広がったり、花が咲くように点灯していた。
     乗り場の前に青年は立っていた。シロナに気がついたらしく、振り返る。
     しばらくお互いの顔を見たまま、何と言っていいか、悩んだ。
    「どうして来たんだ、シロナ。もう知っているんだろ、聞いたんだろ、全部」
     青年は苦笑いしながら切り出した。彼女は困ったような顔をする。よかった。いつものアオバだと思った。
    「いや、言ってみただけだよ。来てくれると思っていた。だからここで待っていたんだ」
     と、青年は続ける。
    「乗ろうか」という青年の言葉に彼女は黙ってうなずいた。


    「さて、どこから、話したらいいかな」
    「まずは質問させて」
     ゴンドラに乗り込んだ青年が本題を切り出すと、シロナが早口で言った。
     会話が始まる。
     手始めに「あなたは誰なの」と聞く彼女に「ミモリアオバだ」と、彼は答えた。
     じゃあ、湖の底で見つかったのは? ――あれもミモリアオバだ。
     矛盾しているわよ――そうだな。説明するのには少し時間がかかる。
     青年は淡々と答えていく。
    「今の俺はたぶん人間とは言い難い。あえていうならゴーストポケモンに近い。さっきノガミさんのポケモンとやりあってね。生まれて初めてポケモンバトルってものを経験したよ」
     ガブ達はいつもああいうことをしているんだな、とも言った。
    「その話なら聞いた。ノガミさん、怪我のひとつもしていなかったけど」
    「そう、鬼火といっても、コケ脅しの幻のやつだからね」
     青年は少し申し訳なさそうに言った。彼にはちょっと悪いことをした、と。
    「何があったの」
     と、彼女は問う。
     今までの会話からもう想像はついていたのだ。けれど、やはり本人の口から確かめなければ納得できなかった。
     受話器越しに聞かされた事実は、彼女にとってあまりにも残酷なものだ。
     それが本当ならば、二週間前に彼はもう……。
    「シロナ、俺は二週間前に、」
     いやだ、やっぱり聞きたくない。
    「いい! やっぱり言わなくていい」
     と、彼女は遮った。
     できることなら、聞きたくなかった。否定して欲しかった。
    「聞くんだシロナ、君は知らなくちゃいけない。俺はお前に、この事実を受け入れてもらわないといけない」
     青年はシロナの腕を掴む。強い調子で言った。
    「シロナ、俺は死んだ。二週間前に」
     観覧車が昇っていく。

     河で流されたんだ。季節はずれのひどい台風の日だった。
     あの日俺は、ポケモンセンターにガブ達をあずけて、やることもなくて、ずっと嵐の空ばかり見ていた。
     その時、俺は見たんだ。一匹の白い小さな鳥ポケモンが、さっきから同じところをぐるぐると旋回している。こんなにひどい嵐なのに……。次の瞬間、悟った。あの下にそのポケモンの主人がいるのだと。
     無謀だった。ポケモンも持たずに俺はそこへ向かってしまった。ポケモンのいないトレーナーなんて、一人じゃ何もできないただの弱い生き物なのに。

     あとは君の知っている通りだ、と青年は付け加える。
     淡々と彼は語っていた。それは自分の死を受け入れた者の口調だ。
    「気がつくと俺は、長い廊下を歩いていた。古代の遺跡のようなところで、音のない暗い場所だった。俺はその場所を下に、下に、下っていって。その一番奥底で会ったんだ」
    「会ったって……何に?」
     シロナが聞き返す。青年が答える。
    「竜だよ」

     六本足の竜だった。ぼろぼろの布のような不気味な翼を生やしていて、長い首を縁取る金色の輪は人の肋骨を思わせた。それが赤い眼を光らせて、暗闇の底に立っていたんだ。
     それを見たとき、「おそろしいしんわ」が頭をよぎったよ。
     そのポケモンの眼を見た者、一瞬にして記憶がなくなる。触れた者、三日にして感情がなくなる。傷つけた者、七日にして何もできなくなる……俺は神話に記されたポケモンの姿を知らなかったけれど、この神話をあてはめるのならば、この竜にこそ、それは相応しいと思った。
     けれど竜は、違うと否定した。それは私ではない。そう云ったんだ。

    『オマエはまず、ひとつ勘違いをしている。おそろしいしんわの者は一匹のポケモンにあらず』
    「一匹ではない……?」
    『記憶を失わせる者、感情を消す者、意志を奪う者。これらはそれぞれ別のポケモンなのだ。シンオウには三大湖がある。そこには普段人の目には見つけられぬ祠があって、そこに一体ずつが眠っている』
    「湖に、そんなものが……?」
    『オマエはよく知っているのではないか? やつらははじまりのはなしにも出てくるぞ』
    「……三つの、命か」
    『そうだ。知識、感情、意志をそれぞれ司る三つの命。そのうちのひとつ、「意志」がお前の魂をここに運んだ』

     青年は自分の髪を結わくものを解いた。
    「竜が言うには、俺は通行証を持っていたらしい」
     彼女に前に差し出して、見せる。
    「この紐はね、ゴースト使いの祖母からお守りに貰ったものなんだ。この紐を作る糸の一本一本に強力な霊力が宿っていて、これを織ったものは、霊界の布と呼ばれているそうだ」

    「では、あなたは? あなたはどこに記されたポケモンだ? 二つの分身か、それとも最初のものなのか」
    『ワタシは……――私はどの書物にも記されてはいない。神話に我が名は存在しない。いや、太古の昔にはあったと言うべきか。まだポケモンと人との間に垣根がなかったころの話だ』
     竜は云った。私は『はじまり』の続きに現われる者だと。
    『ハジメにあったのは混沌のうねりだけだった――』

     すべてが まざりあい ちゅうしん に タマゴが あらわれた
     こぼれおちた タマゴより さいしょの ものが うまれでた

    『最初のものは、二つの分身を生み出した。時間が廻りはじめた。空間が拡がりはじめた。さらに自分の身体から三つの命を生み出した。二つの分身が祈ると物というものが生まれた。三つの命が祈ると心というものが生まれた』

    「はじまりのはなし……」
    「そう。だがこのはなしには削除された続きが存在する」

    『はじまりのはなしには続きが在る。誰も知らない、忘れ去られた続きが』
     竜は語る。はじまりのつづきを。
    『最初のものが眠りについたのち、私は目を覚ました。拡がった空間には物が満ち、物には心が宿った。そこに時間が巡った時、私は生まれた。「死」が目を覚ましたのだ。心宿るものの時間の先にあるもの、それが死だ』
     神話から外れた者。忘れられたのか、忌み嫌われ、消されたのか。
     今では誰も知るものがない。
    『ワタシは死。死そのもの。たとえ、神話から名前が消してしまっても、死は掻き消せない。死はいつも隣に居る。私は今でも世界のすぐ裏側に存在している』
     同時に生の理に叛骨する者。この世には死にながらに生きる矛盾した者達がいる。ゴーストポケモン達がそれだ。竜はその主。死にながらに生き、生きながらに死んでいる。

    「俺は竜に願った。今一度、生の理に叛骨し、約束を果たす為の時間を与えて欲しいと。一年前にした約束、その舞台に立たせて欲しいと」

     神話にいない竜は、願いを聞き入れた。生の理に叛骨し、死にながらにして生きるゴーストポケモンの身体を貸し与えてやろう。昔、人とポケモンはおなじものだったのだから、ポケモンが人になることもできるだろう、と。
    『オマエは、ポケモンの皮を被った人間の話を知っているか?』
     六本足の竜が問う。
     その昔話を青年はよく知っていた。

    もりのなかで くらす ポケモンが いた
    もりのなかで ポケモンは かわをぬぎ ひとにもどっては ねむり
    また ポケモンの かわをまとい むらに やってくるのだった

    『今からお前は、その逆をやる』
    「逆を?」
    『オマエは今より一匹のゴーストポケモンだ』
     竜が云った。青い炎が灯る。
    『見るがいい』
     青年の目の前で、鬼火が変容し、ゴーストポケモンの形を成す。それには、魂を掴み取る太い腕があった。この姿は霊界の布が生んだものだ、と竜が付け加える。
     それは、霊界の布がサマヨールに与えた新たなる器だ。
    『この姿が恐ろしいか? だが、ゴーストは曖昧なものだ。夢とも現ともわからぬ幻を見せ、自らの存在も曖昧。しかしそれ故に何にでもなれる』
     見たことの無い種類だった。サマヨールのそれと同じ色をした一つ目。赤い色が揺らめく。
    『だからイメージするがいい』
     竜は云った。唱えるように言葉を紡ぐ。
    『オマエに問おう。お前は誰だ? 何者になりたい? どうありたい?』
    「俺は……アオバだ。ポケモントレーナーの、ミモリアオバだ」
     青年が心にその姿を描くと、ゆらりと影が揺らめいた。ポケモンはみるみるうちに姿を変容させ、青年のそれとなっていく。
    『さあ、行くがいい。第四の湖を出た所で、意志の神が待っている。約束の地に送り届けてくれるだろう。お前の意志を遂げよ』
     青年の望み、青年の意志、意志の神の導き。
    『……いや、遺志の、と云うべきか』
     青年の形を成したそれがゆっくりと眼を開き、こちらを見た。

     気がつくと、彼の意識は明るい場所に在った。ゆらゆらとのどかに揺れている。月の光が眩しかった。天井では月光がキラキラと反射し、ワルツを踊っていた。光が、揺れている。
     不意に、行かなければと思った。
     もういかなきゃ、と。
     この場所はまるで生まれる前にいたようで、居心地がいいけれど。
     自分には、行かなければいけない場所がある。
     俺には、成さなければならないことがある――――だから!
     光の射す場所に向かって、彼は上り始める。光が揺れるその外に向かって。
     隠された第四の湖。もどりの洞窟の入り口にあるその湖の名を、おくりの泉という。
     水面に顔を出す。世界に飛び出す音が聞こえた。
     飛沫が、上がる。

     月が揺れる水面の上で、金色の目をした青い頭巾のポケモンが待っていた。先端が楓の葉のような形の二本の尾が、風に揺れている。
     青年は、意志の神の手をとった。

     でも、これは賭けだったのだ、と青年は言う。
     なぜなら、記憶は実感として肉体に刻まれるものだから。生まれ持ったものでない器に宿った自分が、記憶の実感を伴わない身体が、約束を思い出して果たせるかどうか、竜にもわからなかった、と。
     案の定、約束の地に降り立った時、彼は記憶を失っていた。
    「でも、君は思い出させてくれた」
     青年が髪を束ね直す。そして今にも泣きそうなシロナの顔を見て、言った。
    「だから、ありがとう。シロナ」

     観覧車が回っていた。
     日が沈み、夜空にイルミネーションが輝く。ゴンドラが回る。上まで上がって、また下がる。まるで太陽が昇っては沈むように、物質が、生と死の循環を繰り返すように。うつむいたシロナの目からぽたぽたと涙が滴り落ちた。
    「泣くなよ、シロナ。今、俺は満足しているんだぜ? それにこんなの早いか遅いかじゃないか。誰だっていつかは観覧車から降りなくちゃいけないんだ」
     そう言うと、モンスターボールを六つ。両手に抱えてシロナに差し出した。
    「だから、昨日の続きだ。俺は先に降りなきゃいけないから、もう好みかどうかに関わらず受け取ってもらうぜ。俺を負かしたお前の言うことだったら、ガブ達だって聞くだろう」
     彼女にも今ならわかる。どうして昨晩、青年はあんなことを尋ねたのか。冷たい手が触れてボールを握らせたのがわかった。
     必死だったに違いない。後悔した。昨晩のことを。
    「ごめんアオバ。私、アオバの気持ちも考えずに昨日……」
    「いいよ、そのことはいい。もういいんだ」
     もうすっかり夜だった。花火が打ちあがる。夜空にいくつも咲いて、そして消えていく。
    「俺のガブリアスはトレーナーの嫉妬をかきたてるらしい。すなわちガブを持つということは敗れたトレーナーたちの怨念を背負うに等しい。けれど君なら、ガブリエルを倒した君なら、そんなもの全部跳ね除けると信じている。だから俺は……シロナ、君に俺のポケモンを託す」
     けれど本当は、昨日シロナの言葉を聞いたときから彼は決めていたのだ。勝ち負けにかかわらず、彼女にポケモンを託そうと。
     だが、彼女は勝ってみせた。彼女は青年の想像のはるか上をいってみせた。
     予定では、自分がしっかり勝って勝ち逃げするつもりだったんだけどな、と彼は思う。
     だって、最後の自分とのバトルくらいポケモン達に花を持たせてやりたいじゃないか。
     彼らは、自分の匂いが変わってしまっても、わかってくれた。主人を見極め、すべてを受け入れてついてきてくれた。……意志の神に、自分を渡すまいともした。
     怒っていないだろうか。自分達を置いて、手放して、先にいってしまうポケモン不孝なトレーナーを怒ってはいないだろうか。けれど、こんな自分をどうか許して欲しい。
    「押し付けておいてなんだが、決勝進出祝いだとでも思ってくれ。強いぜ? 俺のポケモンは」
    「……そんなのわかってる。戦った相手なのよ?」
     シロナが涙声で答えた。
    「ああ、そうだったな」
     花火が咲く夜空を仰いで青年は言った。それはどこか遠くを見るようで、
    「もう、行くの? 行かなきゃいけないの?」
     シロナは尋ねた。聞きたくはなかった。
    「……行かなくちゃ、いけないらしいな。ずっとなりゆきを影から見ていたけれど、もう時間だと言っている。俺をここに連れてきたものが、じきに俺を連れて行く」
     だって、もう約束は果たされたから。ロスタイムは終わったのだから。
    「でも、行かなきゃいけないのはお前も一緒じゃないか。出るんだろ、決勝戦」
    「……こんな場面でもバトルの話なの? あなたって本当に空気が読めないのね」
     シロナが悪態をつく。ふと、彼女の背後に映る夜景の一角に新たな明かりが灯った。
    「見ろよ、スタジアムに照明が入った。お前が来るのを待っているんだ」
     夜景に浮かぶスタジアムを仰いで、青年は言う。
     シロナは黙って、訴えるようにアオバの顔を見た。違う、私の言って欲しいのはそんな言葉じゃない、と。
     いやだめだ、待ってなんかいずに伝えなければ。今伝えなかったら彼は……。
    「アオバ、私は」と、シロナは言いかけた。が、「シロナ、」と青年が遮る。
    「君にとって俺は、ただの超えるべき対象。そうだろ?」
    「違う!」
     彼女は否定したが、青年は首を横に振る。
    「決勝に行くんだシロナ。お前のあるべき場所に。あの舞台はお前の夢だったはずだ。あの場所を夢見てたどり着けなかった者達が何人いるか、夢を追いかけて掴めずに去っていった者達がどれだけいたか、お前だってわかっていないわけじゃないだろう?」
     ぐっ、とシロナは言葉を飲み込んだ。ずるい。そんなことを言われたらタイミングを見失ってしまう。
    「俺もその中の一人になったんだ。だが君は進む。進まなくちゃいけないんだ」
     伝えたい事があるのに、うまく言葉にできない。
    「君は行け。君だったらたどり着ける。四天王にだってチャンピオンにだってなれる」
     夜景を背に青年は言った。確信を持って。
    「言っただろ。俺はもうタイムリミットなんだ。……見ろ」
     青年が自分の腕をかざした。指が、腕が、身体全体が透けはじめていた。
    「目的外のところで、力を使いすぎたんだな」
     先ほどの出来事を思い浮かべながら青年は言う。けれど後悔はしていなかった。
     身体を構成する色が薄くなっていくのがわかった。淡く発光した身体から、光の粒子が舞い散って、だんだんと輪郭が崩れていく。彼は少し寂しそうに笑った。そうしている間にもどんどん身体が消えていって。
    「待ってアオバ! 私まだ……」
     そうシロナが言いかけると、
    「最後くらいさ、俺にしゃべらせてくれよ」
     と、青年は遮った。
     そして、もう半透明になった腕で彼女の上半身を抱くと、
     耳元で何かを囁いた。

     するりと青年の髪を結んでいたものが落ちる。
    シロナは思わずそれを手にとるが、すぐに青白く燃え上がって、消えた。
     そうして、青年はいなくなった。


     それからのことはよく覚えていない。
     ただ彼女は、廻る観覧車のゴンドラの中で、話し相手のいないゴンドラの中で、六つのモンスターボールを両手に抱えたまま、声を上げて泣いていた。
     涙が落ちてモンスターボールを濡らす。遺されたボール達も泣いているように見えた。
     目の前には誰もいない。もう、いない。
     二本の尾を持った影が、暗い空に昇って、溶けて消える。
     こうして、乗客はひとりになった。





     ――なあシロナ、お前はどうしてチャンピオンになりたいんだ?
     あの時、青年はそう尋ねてきた。
     ――どんなに強いチャンピオンでも、いつかは負けるときが来る。その座を誰かに譲るときが来る。観覧車に乗って高いところに行ってみても、いつかは下り始める。いつか観覧車からは降りなくちゃいけないのに。
     ――………………イメージしたからよ。
     と、彼女は答える。
     ――いつか私も自分のポケモンを連れて、この舞台に立つんだって、表彰台に上がるんだって想像したわ。その後に、いつか自分がどうなるかなんて知らない。けれど、そのとき確信したの。私のあるべき場所はここだって。
     ――それだけ?
     ――それだけよ。
     頭の中に声が響いている。
     あの時、青年は安堵したように笑っていた。
     ――それじゃあ、その時のイメージは今でも変わっていないんだね?
     青年は問うた。
     そして、彼女は再び、こう答えていた。

    「…………あたり、まえじゃない……」



     花火が上がって、そして消えていく。
     それは、誰かの夢が消え行く様なのか、それとも誰かの行く先を祝福しているのか。
     観覧車だけが黙って回り続けていた。





    「シロナさん、どこに行っていたんですか」
     スタジアム控え室に戻ったシロナをノガミが待ち構えていて、開口一番にそう言った。
    「一体何をしていたんですか。心配いたんですよ……」
     そう続けるノガミに、彼女は黙って両手に抱えた六つのモンスターボールを見せる。
    「それって……」
     言葉を濁らせるノガミに彼女はただ頷いた。そして、今のボールの所有権の解除、新たな持ち主への登録を依頼した。こういうのは規則上どうなのかとシロナが尋ねると、審査には時間がかかるでしょうが、やりましょうとノガミは答えた。
     ふと、ノガミは彼女の頬をつたう一筋の涙を、見た。
     長い前髪に隠れて表情は見えない。何と声をかけるべきなのか悩んでいる彼に「ノガミさん、」とシロナが切り出す。

    「ノガミさん、私ね………………振られちゃったの……」


     スタジアムが熱気に沸いていた。祭が最も熱気に満ちるとき、その主役である二人のトレーナーを、聴衆は今か今かと待ち構えていた。
     ポケモンを回復に出すと、彼女は宿舎の自室へと赴く。取りにいきたいものがあった。スタジアムの照明に照らされたテーブルに、その紙袋は置いてあった。

    「見てください! スタジアムは超満員です。今宵、シンオウ最強のトレーナーが決まる瞬間をこの目で見ようと、大勢の人々がつめかけています」
     テレビ局のレポーターが、そんなお決まりの文句をカメラの前で叫んでいた。
     すっかりと身なりを整え、決勝用のモンスターボールを持って、シロナがスタジアムに続く廊下に立つ。その長い髪が伸びる頭にはポケモンの耳を模ったらしいかんざしのようなものが二つずつ、対になる形で飾られていた。
    「それ、ブラッキーですか」
     と、ノガミが尋ねると
    「ルカリオよ」
     と、シロナが答える。
    「でもラインが入っていますよ」
    「いいのよ。四つで二対にすればルカリオなのよ」

     戦いの舞台に進む道を、彼女は一人、歩き始める。
    『――よ、シロナ』
     青年が散る間際に残した言葉がリフレインして彼女は嗚咽を噛み殺した。
     ポケモントレーナーとはかくも非情なものだ、と彼女は思う。
     悲しくて、悲しくて、泣きたくて仕方のないはずなのに、もう頭の片隅ではバトルのことを考え始めている。心の準備を始めているのだ。
     勝とうとしている自分がいる。勝ちたい。勝って前に進みたい。
     これは性、戦う者の性。
     私は行く、前に進む。
     欲しかった言葉は、もう聞けない。


     初めにあったのは混沌のうねりだけだった。
     すべてが混ざり合い中心にタマゴが現れた。
     零れ落ちたタマゴより最初のものが生まれ出た。
     最初のものは二つの分身を創った。
     時間が廻りはじめた。空間が拡がりはじめた。
     さらに自分の身体から三つの命を生み出した。
     二つの分身が祈ると物というものが生まれた。
     三つの命が祈ると心というものが生まれた。
     世界が創り出されたので、最初のものは眠りについた。

     拡がった空間に物が満ち、物に心が宿り、時間が巡った時、死が目を覚ました。
     死が生まれたとき、別れが生まれた。
     去るものがいた、残されるものがいた。
     それでも、世界は廻り続けた――


     その足で立ちたい場所がある。
     そのために、越えていかなければならないものが、ある。


     君は行け。
     たとえ負けてしまう時がくるとしても、いつか終わりがやってくるとしても。
     ひと時でも長く夢を見ていられるように。
     一刻も早くその場所へ。
     だから――


    『勝てよ、シロナ』


     最後の言の葉、それは約束という名の呪文。
     そんな台詞を聞きたいんじゃなかった。
     けれどそれは違和感なく耳に響いて、彼女を突き動かすのだ。
     長い廊下を渡り、階段を一歩、また一歩、彼女は登っていく。


     ――それは続き。はじまりの続き。
     出会いと別れを繰り返して、世界は今も廻り続けている。


     扉を、開いた。
     まばゆい光が差し込んで、うねるような歓声が彼女を包み込んだ。
















    遅れてきた青年「了」


      [No.2675] 第九話「くらい ろうか」 投稿者:No.017   投稿日:2012/10/16(Tue) 20:11:46     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:遅れてきた青年】 【カワハラさん活躍回(たぶん)

    ぽけもんは しずかにこたえた
    おまえが つるぎをふるい なかまを きずつけるなら
    わたしたちは つめときばで おまえのなかまを きずつけよう
    ゆるせよ わたしのなかまたちを まもるために だいじなことだ

    「トバリの しんわ」より





    ●第九話「くらい ろうか」





     ――ガブリエルを使ってみませんか。
     あの時、青年はそう提案してきた。
     その提案には大きく二つの思惑があったようだ。ひとつめは来たるべきバトルへの準備のため、そしてもうひとつは彼のいらぬおせっかいのため。
     提案を受けたノガミにはいろいろ思うところがあったが、それが訓練のメニューならば、と承諾する。
     青年が目の前にいたこともあったろうが、自分の主人でもないのに「彼女」はよく言うことを聞いてくれた。
     それは、ガバイトの力を大きく超えたものだ。比較にならない。ああ、ガブリアスとはこういうものか、と彼は実感する。この強さに憧れて自分はフカマルを探し出し、捕らえて、育て始めたのだ。
     だが、同時に少し惨めにもなった。知るべきではなかったかもしれない、と思った。きっとこの先、自分がこの力を手にすることはないのだから。
     諦めろ。いつかなんて期待なんかしていても傷つくだけだ。


     暗い廊下で青い炎が燃え上がっている。
     見間違いでないのなら、この冷たく燃える炎は鬼火だ。
     ゴーストポケモンや、一部の炎ポケモンが得意とする炎の技。
     彼のギャロップ……か? 一瞬ノガミはそんなことを考えたが、すぐに否定された。青年のポケモンはシロナとのバトルで、皆戦闘不能のはずなのだ。
    「ノガミさん、ポケモンの皮を被った人間の話を知っていますか?」
     と、青年が問うた。

    『もりのなかで くらす ポケモンが いた』
     青年の頭の中で何者かの声が再生された。
     彼は回想する。暗い廊下の先での出来事を。今ならばはっきりと思い出せる。
    『もりのなかで ポケモンは かわをぬぎ ひとにもどっては ねむり また ポケモンの かわをまとい むらに やってくるのだった』
     廊下の先にいたものが語ったのは、シンオウの昔話の一節だった。

    「彼は、森の中で皮を脱いでは人間に戻り、村を訪れるときは、ポケモンの皮をまとってやってきた。一体どちらが本当の彼なのでしょう? 誰も人間である彼を知らない。もしかしたら、彼だって自分が本当にポケモンだと思っているのかもしれない」

    『今からお前は、その逆をやる』と、声の主は言った。

    「だから、俺はこう考えたのです。昔は人もポケモンも同じものだったのなら、ポケモンにも人間にもなれるのではないかと」
     鬼火が燃え上がる。青年の周りにいくつも灯って、数を増やしていく。

    『だからイメージするがいい。お前は誰だ? 何者になりたい? どうありたい?』
     深遠の者の問いに青年は答えた。

    「俺はアオバだ」
     鬼火が揺らめく。影が躍りだす。ノガミのボールにかける手が震えているのは恐怖からなのか。無知からなのか。うまく掴むことができない。
    「俺はポケモントレーナーの、ミモリアオバだ」
    「コクヨウッ!」
     ノガミの声が暗い廊下に響き渡った。腰のボールが赤い光を放って、ガバイトが現れる。
     彼は何が起こっているのかはわからなった。だが、ここは通さないと思った。規則に準じるのが自身の仕事だからだ。
    「けれど、必要ならばイメージしよう。俺はポケモンだ。技だって使える。あなたのガバイトと一戦交えて勝ってみせる。やらなくちゃならないことが残っているんだ」
     ガバイトが青年に向かって飛び掛った。
     もはや彼は青年を人間としては見ていなかった。目の前にいるのは一匹のポケモンだ。
    「ドラゴンクローッ!」
     硬質化させたヒレを、青年に向かって振り下ろす。
     青い炎が廊下に影を映し出す。竜の爪を太い腕のシルエットが受け止めていた。目の前でそれをやっているのは人間の姿をしているというのに。その影の名をノガミは知らなかったが、ゴーストポケモンの一種、サマヨールによく似ていたと思う。

     ぽけもんは しずかにこたえた
     おまえが つるぎをふるい なかまを きずつけるなら
     わたしたちは つめときばで おまえのなかまを きずつけよう

     ゆるせよ わたしのなかまたちを まもるために だいじなことだ

    「俺は負けない。ネガティブなイメージしか抱けないあなた達に、俺は決して負けない」
    「黙れ! お前に何がわかる! 私達の欲しいものすべて持っているお前なんかに!」
     ガバイトとノガミの叫びが闇に木霊した。
     次の瞬間、数を増やした鬼火が一気に膨れて、溢れ出した。
     青が迸る。輝く鬼火が廊下を侵食していく。眩しい。眩しくて、目が眩む。
     ノガミは思う。
     ああ、僕はどうして、操り人が竜を駆るのを遠目に見るだけで、満足できなかったのだろう、と。欲しがりさえしなければ、こんな思いをくすぶらせずに済んだのに。
     そうさ、いつかなんて期待なんかしているから傷つくんだ。僕はもう、夢は見ないと決めたんだ――
     影が躍る。青い炎がすべてを焼き尽くしていく。


    「シロナさん、決勝進出おめでとうございます!」
    「一言コメントをお願いできますか!?」
     報道陣がシロナの周りに詰め掛けた。だが、彼女は適当にそれをやりすごすと、押しかける人の波をなんとか押し分けて、ドダイトスを回収し、逃げるように去っていった。まったく、せっかく念願叶ってアオバに勝ったというのに、自分のポケモンをねぎらうヒマもありはしない、と彼女は思った。
     彼女は、スタジアムと廊下との間にある扉をしっかりと閉めると、廊下を渡って控え室へと向かう。
     昨日のことが気になっていた。思えば、つい頭に血が上ってずいぶんひどいことを言ってしまった気がする。早く控え室に戻ろう。そして彼に会おう。
     彼が自分をどう思っているかは知らない。けれどずっと心に決めていたことがある。
     伝えるんだ。彼に。
     彼女は階段を駆け下りて、廊下を走っていく。
     そんな彼女が、廊下に倒れたノガミとガバイトを見つけるのにそう時間はかからなかった。
    「ノガミさん!?」
     駆け寄ったって声をかける彼女に、ノガミが弱々しく目を開ける。
    「ちょっと、何があったのよ」と、問う彼女に、
    「ハハ、情けないな、トレーナーにも勝てないなんて」
     そうノガミは言った。
    「なに? 何を言っているのよ」
     彼女はわけがわからなさそうに尋ねる。ノガミは一瞬、言ってもいいものかどうか悩んだが、
    「アオバさんにやられたんですよ」
    と答えた。そして、こう続けた。
    「笑ってくれていいんですよ。僕達はこんなにも弱い。アオバさん本人にすら勝てなかった」

     それからノガミはシロナに語った。ことの顛末を。
     だが、荒唐無稽というかとても信じられるものではなかった。
     この人は彼が嫌いなあまり、とうとう気がおかしくなってしまって、変な作り話をはじめたのではないかと、そう彼女は思った。
    「あなたは、鬼火に焼かれたっていうけれど、あなたもガバイトも火傷ひとつ負っていないわ」
     そう、彼女は指摘する。
     すると、ノガミはそんなはずはないと自分の身体とポケモンを見る。火傷はおろか、衣服さえ焦げてはいない。それでは廊下は? 彼はあたりを見回す。だが焼け焦げた後などどこにもありはしなかった。
    「焦げていない……じゃあ、あれはなんだったんだ」
    「ノガミさん、いい加減にしてよ。アオバはどこ?」
     いらいらした様子でシロナが言う。
    「アオバさんの居場所……」
     ノガミははっと思い返した。そうだ、自分は知っているではないか。「本当の」ミモリアオバの居場所を……。
    「シロナさん、ついてきてください」
     と、ノガミは言った。
     今自分は、とても残酷なことをしようとしている。こんなに彼のことを思っている彼女に、重い事実を伝えねばならない。


     受話器を持つシロナの頭の中は、真っ白になった。
     電話の受話器を下ろして彼女は呆然とする。受話器を持つ手がカチャカチャと震えていた。
     この人達は何を言っているのだろう? そんなことを自分に信じろというのか。
     だが、ノガミから教えられた電話番号、彼の言うままに電話をかけて、知った真実はノガミと同じものだった。
    「まったく、ノガミさんも手の込んだいたずらするのね? これは何? 決勝進出のドッキリか何か?」
    「シロナさん……」
     ノガミは悲しそうに、首を振る。
    「だって、いたじゃない。アオバずっといたじゃない。じゃあ、私達と一緒に過ごしていたのは誰だったのよ」
    「僕だって、悪い冗談だと思いたいですよ。でもあれはアオバさんじゃないんだ」
    「だって、アオバずっと記憶喪失で、やっと記憶が戻って、それで」
    「それこそが、別人の証だったんじゃないですか? あなたからアオバさんの情報を聞き出すのが目的だとしたら?」
     ノガミがたたみかけるように言った。それを聞いているのか聞いていないのかシロナはしばらく黙っていたが、やがて呟くように
    「本当……今回の大会はおかしいわね。来てみれば倒すべき相手が記憶喪失、勝ってみれば彼は死んでいた? 本物じゃない? 本当にどうなっているのかしら」
     と、言った。それは呆れたようにも、涙声のようにも聞こえた。
    「シロナさん、残念ですが彼はもう…………」
    「もうよして! 冗談は、記憶喪失だけで十分なのよ」
    「シロナさん」
    「……私、行ってくる」
    「行く? どこに?」
    「アオバのところよ。きっとまだ遠くには行ってないわ」
    「シロナさん!」
    「だって、あれがアオバじゃないなら誰だって言うの!」
    「現実を見てください。アオバさんは二週間前に亡くなったんだ」
    「私は、まだ信じちゃいないわ」
    「シロナさん!」
    「私が信じなかったら誰が彼を信じるの!」
    「信じるだけじゃどうにもならないことがあります」
    「どうして! どうしてあなたはそう信じられないのよ! トレーナー業に挫折するはずだわ! そんなんだからバトルに勝てないのよ!」
    「……! 言っていいことと、悪いことがあります!」
     ノガミがカッとなって叫んだ。話したのか、あの人は!
    「そこにいるガバイトの進化だってそう。あなたが信じなくて誰が信じるっていうの?」
     シロナが指差す。彼の隣できょとんとしている黒色のガバイトを。
    「それとこれとは関係ない!」
    「関係あるわよ!」
    「ありませんよ! あなたはどうして、そうムチャクチャな論理を展開するんだ! 受付の時もそうだった」
    「ムチャクチャで悪かったわね。あいにくそういう性分なのよ!」
     シロナは叫んだ。止めるノガミに目もくれず、スタジアムの外へと飛び出した。
     探さなくては。彼を探さなくては。だって、まだ彼に言っていない。――伝えていない。

     スタジアムの外は相変わらずにぎやかだった。商売どきとばかりに屋台に照明が灯りはじめる。昨晩、青年と歩いたその道を彼女は彷徨っていた。
     何も考えずに飛び出してきてしまったが、どこを探したらいいのだろう?
     もうすぐ日が落ちる。焦りばかりが、募っていく。
     シロナの頭の中では、二つの意見が対立していた。
     ――あれはアオバさんじゃないだ。
     ノガミの言葉が、シロナの頭に響く。彼女はその言葉を必死で振り払った。
     だって、みんな青年の言うことを聞いていたではないか。ガブちゃんも、ラミエルもゼルエルだって、と思い直す。彼らが自分の主人以外の言うことを聞くとは思えなかった。
     けれど、大会初日のあのとき、手持ちの波導ポケモンは青年の気配を感じることができなかった。最初は人が多すぎるからだと思っていた。でも、それは青年が別人ならすべて説明がつく……。
     議論は終わらない。行ったり来たり同じ道筋を繰り返す。
     それでも彼女は走った。
     今を逃してしまったらもう二度と会えない――――そんな気がしたからだ。
     それにだ、本当に今までの青年が偽者だとすれば、彼から彼の持ち逃げしたポケモンを取り戻さなければならないではないか。結局、躊躇している暇などないのだ。
     彼は、ミモリアオバはどこに居る?


    「お前は行かないのか、ノガミ」
     カワハラの声が聞こえた。いつの間にか、ノガミの後ろに立っていた。
    「いらっしゃったんですか」
     ノガミが機嫌悪そうに言った。
    「お前さんと可愛い子ちゃんが連れ立って歩いていくのが見えて、な。こっそりついてって断片的にだが、話は聞かせてもらった。にわかには信じがたい内容だが」
    「私だって信じたくないですよ」
    「そうだな。唯一確かなのは、手続き上のこととはいえ、協会管轄下のポケモンが持ち去られたって事だけだ」
    「……痛いところをついてきますね」
    「だから、取り戻しにいかないのかと聞いている」
    「…………無理ですよ」
     シロナの出て行った方向を見つめながらノガミは言った。
    「僕は、シロナさんみたいにまっすぐじゃない。あんなに信じることはできないし、強くない。行ったところで返り討ちです」
    「問題発言だな。お前の一番嫌いな職務怠慢だぞ、それ」
    「僕は想像できないのです。僕達が勝つところも。コクヨウの進化も。結局のところ、あのアオバさんが何者なのか僕にはわかりません。けれど言っていることは的を得ていた。頭にくるくらいに。ネガティブなイメージしか抱けない僕達は、決して彼に勝つことはできない」
    「お前は、それでいいのか」
    「どうにもできないことが、あります」
    「ノガミ、」
    「なんです」
    「見るんだ、お前のポケモンを。そして想像しろ」
    「は?」
     カワハラの突然の提案に彼は驚いた。どうして僕の周りの人たちは、むちゃくちゃで、ぽんぽんと思いついたことを口にして、僕を振り回すのだろう。
    「いいから見ろ!」
    「わかりましたよ」
     ノガミは渋々と、自分のガバイトに、コクヨウに視線を投げる。コクヨウがきょとんとして首をかしげた。
    「そいつをよーく見て、想像する。こいつの未来を。まず全体的に図体がでかくなる。背が伸びて、ヒレが伸びて、ついでに顔つきがますます凶悪になる」
    「…………」
     カワハラの珍妙な言い回しに少々呆れながらも、ノガミはコクヨウを見た。変わらない。トレーナーを引退すると言ったときと同じ姿だ。が……

     青い炎が、灯った。
     眼前に映るその光景が信じられずに彼は瞬きをする。
     だが炎は消えるどころか、いくつにも増えて、ガバイトを照らしている。
    そうして、それがガバイトの身体に次々に吸収されていった。
     青が迸る。青い光がみるみる竜の身体を成長させていく。はじめに背が伸びる。ヒレが伸びる。最後に尾が伸びて――このシルエットを彼は知っていた。
     眩しい。眩しくて、目が眩む。
     これはあの時の続きなのだろうか。青色の炎に網膜を焼かれて自分の目はどうかしてしまったのだろうか。幻視の中で、青年の言葉が思い出される。

     ――ゴーストが使う技は精神的に来るものなんじゃないでしょうか。ダメージを受けた相手がダメージを受けたと思うから、ダメージを受ける。
     ――たとえば、幻覚。見えている本人には、たしかに見えているんです。
     ――もしかしたら、祖母の見たそれは彼女のゲンガーが見せた幻か何かだったのかもしれない。でも祖母はそれを本気にした。

     ポケモントレーナーを引退したあの日、もう夢は見ないと決めた。想像しないと決めた。
     それからほどなくしてポケモン協会に入った。安定した生活、悪くはなかった。旅をしていたころほどではないけれど、週末にだって仕事から戻った後だって、ポケモン達をかまってやることはできる。
     それなのに、どうして僕はこんな気持ちになるのだろう?
     なんだか胸の中がかゆいようで、けれどそれをどうにもできなくて。
     毎年開催されるリーグ、敗れていくもの、勝ち上がっていくもの。僕はそのどちらにもいない。ただ平静を装って静観しているだけ。
     消したつもりでいた。けれど、消えてはいなかった。

    「何か見えたのか?」と、カワハラが尋ねてくる。
    「炎が……」
    「え?」
     ここにいたんだ。ずっと、ずっとくすぶり続けていたんだ。
    「ノガミ、お前、なんで泣いているんだ」
    「なんでもありません。ただ、眩しくて」
     ずっと歩いていた暗い廊下、炎を灯したなら扉はすぐそこに見えたのに。
     今までごめんよ。
     もう見ないふりはしないから。


     夕闇の下、彼女はぜえぜえと息を切らしていた。
     足を止め、懸命に息を整えながらあたりを見回す。
     もうじき暗くなってしまう。シロナは顔を上げ、空を見る。夕日が西の空に沈みかけ、あたりが闇に浸かり始めていた。
     どこに、どこにいるのだろう。
     ふとそこで、あるものが彼女の目に留まる。
    「……あそこ、だ」
     夕日の逆光でシルエットになる風景の一角に、光が廻る場所を見つけ、彼女は確信した。
     鉄骨でくみ上げられた巨大な影がある。
     それは静かに音を立てながら、ゆっくりゆっくり回っていた。


      [No.2674] 第八話「きたるべき とき」 投稿者:No.017   投稿日:2012/10/16(Tue) 20:10:40     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:遅れてきた青年

    うみや かわで つかまえた ポケモンを たべたあとの
    ホネを きれいに きれいにして ていねいに みずのなかに おくる
    そうすると ポケモンは ふたたび にくたいを つけて
    この せかいに もどってくるのだ

    「シンオウの むかしばなし」より





    ●第八話「きたるべき とき」





     無機質なデザインの時計が朝を告げて、ノガミは目を覚ました。
     旅をしていた頃は、こんなものを使わなくてもひとりでに眼が覚めたものだった。それに、彼のポケモン達が早起きだから、その声がやかましくていやでも起されてしまうのだ。ポケモンがのしかかってきたり、べろんと顔をなめてきたりして、起されることもしばしばだったように思う。
     眠たい目をこすりながら、ベッドから身体を起すと、横にあるテーブルの上に置かれている六つのモンスターボールが目に入る。いけない、連日の疲れが出たらしいなと彼は思った。昨日の夕方に青年と分かれた後、ポケモンを預けないまま眠りこけてしまったのだ。
     ノガミはベッドから起き上がると、服を着替え、部屋を出る。ボールを持って転送装置の前に立った。ボールをひとつ、またひとつボックスへと送っていく。
     が、最後の、半球の青いボールを手にかけた時、ボールの振動が手に伝わってきた。
    「今日は忙しいんだから、相手なんかできないよ」
    「…………」
     ボールはしばらく沈黙していたが、それでも構わないからとでも言いたげに、揺れて自己主張してくる。
    「……わかったよ」
     珍しく自己主張をするスーパーボールを無理やりボックスに戻すのもなんだか気が引けて、彼はそれを腰のベルトに装着した。ボールはなんだか満足そうに見えた。
    「さて、今日のスケジュールは……」
     頭の中におぼろげにタイムテーブルを浮かべながら、ノガミは歩き出した。
     今日は、自分が連日付き合わされた青年の六回戦、準決勝だ。彼の出る試合は準決勝第二試合だから午後からとなる。さっきは忙しいから相手できないなんて言ってしまったが、それまでは割りと手隙であることがわかった。
     とりあえず腰にぶら下がっているのと朝食でも食べますか、と彼は考えた。


    「さあ、大変お待たせいたしました。準決勝も第二試合!」
     スタジアムが熱気に満ちていた。観客席を埋め尽くす彼らは、いずれ会場に姿を現すであろう二人のトレーナーを待ちわびている。その二人のトレーナーが投げる球体から現れるのは、携帯獣。獣達が繰り広げるバトルがはじまるのを、彼らは心待ちにしている。
     その熱気に沸く観客席とはまた別の場所、室内にあるスタッフ席で、ポップコーンを食しながら選手の入場を待つ男がいた。協会職員のカワハラである。遅れてノガミがやってきた。
    「おお、お見送りご苦労さん。どうだい? カード無しのにいちゃんの様子は」
     白いカスと塩を口の周りにくっつけながら尋ねる。
    「落ち着いていますよ」
     と、答えるノガミに「そうか」と、カワハラが言った。ポップコーンを一粒摘んで口に入れる。
    「さっき負けたトレーナーに会ったんですけど、その嫌味も軽くいなしていましたよ。変わりましたよね、彼。一回戦途中から目が覚めたみたいに」
     今度は一気にたくさん掴んで口に放りこむ。カワハラは口をもごもごとさせた。
    「あの後にね、ポケモンのトレーニングをしたいから立ち会って欲しいと言われまして、ずいぶんと夜遅くまでつき合わされたんですよ。それから連日そんな感じで。昨日は出かけるからと言って夕方には終わりましたけど」
     存外、ノガミが楽しそうに話すのでカワハラは意外に思った。こいつあのにいちゃんを嫌っていたんじゃなかったのか、と。なので、塩まみれの手で何かの書類を取り出すと、
    「じゃあ、これはもう必要ないか」
     と、尋ねてみた。それはトレーナーカードの拾得情報を書き出したリストだった。するとノガミが
    「それはできません。ちゃんと責任を持って調べます」
     と答えたので、律儀な奴だなぁ、と思いながらカワハラは手渡した。ノガミがぱらぱらそれをめくり、ざっと書き出された番号の数を確認している。彼が二、三日前に調べたばかりなのにまたずいぶんとカードがなくなったり、拾われたりしているようだった。
     書類に目を通しているノガミを横目で観察しながら、おや、とカワハラは思った。ノガミの腰に見慣れないものがついていたからだ。
     青と白の色の機械球がひとつ、彼の腰のベルトに装着されていた。自分の過去に触れたがらないノガミ。その過去の象徴とも言えるボールを持って現れるなんて、どういう心境の変化なんのだろうとカワハラは思案した。
     直後、彼の背後で、わあっと会場が歓声に沸く。どうやら主役の二人が登場したらしい。
    「出てきたか」
     カワハラとノガミはスタジアムのほうに視線を向けた。


     約束の時がきた。
     東側にシロナ、西側に青年、太陽が南に昇ってわずかに西に傾き始めた頃、彼らはスタジアムを挟んで対峙する。
     昨晩、あんな分かれ方をしたが、シロナといえば完全にバトルモードに入っており、ケロっとして落ち着いている。特に昨日あったことが試合に影響するとも思えなかった。青年の心も同じように静かだった。
    「どうしてお前はそう冷静でいられる?」
     試合前、たまたま出会った準決勝第一試合の敗者はそんなことを青年に聞いた。
    「ずっと震えが止まらなかったんだ。あんたは相当ずぶといんだね」
     と、残して去っていった。
     イメージしているからだ、と青年は思う。
     シロナには悪いが、この試合は勝たせてもらう。もちろん、彼女も甘くはない。おそらく後半中盤くらいまでは彼女のポケモンが押してくる。
     だが、負けはしない。どんなに残りの数に差をつけられようとも、最後にスタジアムに立っているのはガブリエルだ。青年にはそんな確信があった。彼は、スタジアムの中央で咆哮を上げる竜の姿を描いていた。
     試合の始まりを告げる旗が揚がる。繰り出されるポケモンの姿を、我先にその目に捉えようと聴衆が身を乗り出す。
     対峙した二人は静かにモンスターボールを手にとると、空に向かい投げた。

     赤い閃光が目にも留まらぬスピードで、相手に向った。ガキッという音が響く。そこで聴衆は、初めてポケモンの姿を捉える。赤い身体のハッサムの攻撃を、海蛇のような姿をしたミロカロスがその長い尾で受け止めているところであった。
    「ゼルエル!」
     青年がその名を叫ぶと赤色が素早く退避する。
     瞬間、ミロカロスの冷凍ビームが襲い、水晶の結晶のような氷の柱がいくつも立った。が、次の瞬間、結晶が砕け真正面からハッサムのシザークロスが海蛇を襲う。
    「アクアリング!」
     と、シロナが叫ぶ。
     ミロカロスの周りにいくつもの水輪が生まれ、シザークロスの威力を半減させた。ミロカロスが再び反撃に出ようとする。がその時にはもう、ハッサムは赤い光となってモンスターボールに吸い込まれていた。蜻蛉返り、攻撃と同時に味方に交代する技だ。次の瞬間、スタジアムにいくつもの電撃波が走り、ミロカロスの身体を痺れさせた。
    「雷」
     と冷徹に指示が下る。水輪で回復する余裕もなくミロカロスはその場に倒れた。シロナが次のポケモンを繰り出す。ハッサムに代わって出てきた青年のポケモンが、再び電気技で先制する。しかし、シロナのポケモンは微動だにせず、泥混じりの濁流が襲ってきた。間髪を入れず地震が続く。濁流が去った後には、力なく地面に横たわるサンダースと微動だにしないトリトドンが残された。

     カワハラが口に入れる前のポップコーンをぽろりと落とした。ノガミは呆然とそれを見ていた。
     これが……これが準決勝。かつて自分が至ることのできなかったバトルの高み。
     ただ淡々と試合が運んでいるようにも見えるが、高いレベルにあるポケモン達の力が拮抗しているからこそ、だ。そこらの道端で行われるダラダラとした試合運びのそれとは、まったく異なるものだ、これは。
     いつのまにか、彼はリストをぎゅっと握っていた。
     強者の戦いが、強者のポケモンが、トレーナーの嫉妬を掻き立てる。

    「行け、ルシファー」
     光と共にクロバットが現れる。高速で飛びながら、空気の刃を撒き散らす。あやしい光が無数に現れて会場を飛び舞った。
    「化かしあいならこっちも負けない」
     シロナがトリトドンを引っ込め、新たにボールを投げる。要石から紫と緑の光が漏れ、ミカルゲが顔を覗かせる。奇怪なポケモンだ。その正体はポケモンの魂の集合体だと言うものがいる。魂は全部で百と八、人間の煩悩の数を表しているのだという。

     気がつくと、ノガミはリストを見つめていた。こんなことをしたって意味はない。それなのに。だが、ノガミは見つけた。彼の目は偶然にもリストの中のある数字を捉えていた。
    「おい、どこに行くんだ!? ノガミ!」
     カワハラが叫ぶ声が響く。扉の閉まる音が響いていた。

     スタジアムを煙が覆う。ミカルゲが煙幕で身を隠し、騙し討ちを仕掛ける。生温い風が吹きクロバットの翼を捕らえた。妖しい風である。

     ノガミは急ぎ足で階段を下っていた。手にはリストを握っている。また確かめる。
     彼の目に留まった数字の羅列の中の一行、それは青年のトレーナーカードIDだった。横には「拾得」の文字が見える。
     彼は階段を駆け下り、スタジアムを出ると、別の棟の情報を管理するあの部屋へと入っていった。パソコンに数字を入力し、情報を引き出す。
     カードが届けられた場所、それは彼が二週間前、ポケモンを預けたセンターであった。トレーナーカードの記録が最後に残っていたあの場所である。
    「なんだこんな結末か、あっけないな」
     と、ノガミはこぼした。そうだ、最初からわかっていたことじゃないか。何を期待していたんだ自分は。彼は自嘲気味に笑った。
     しかしカードが見つかった以上は本人に返却しなくてはなるまい。彼は試合見物に戻る前にカードが届けられたというポケモンセンターに連絡を入れることにした。番号を調べると、部屋の隅にある受話器を取る。
    「お忙しいところ大変失礼いたします。私、ポケモン協会リーグ運営部のノガミと申します」
     と、挨拶した。
    「実は今ポケモンリーグ準決勝に出場しているIDナンバー××××‐××××‐××××のミモリアオバ様のトレーナーカードがそちらに届けられたという情報が入りまして、お電話させていただきました」

     審判が旗を揚げた。クロバットが戦闘不能になったのだ。
     青年は蝙蝠ポケモンを回収し、再び赤色の鋼ポケモン、ハッサムを繰り出した。

    「ええ、ですからミモリアオバ様です。至急、シンオウリーグに送っていただきたいのですが」
     と、ノガミは用件を伝える。
     だがどうも相手の反応が芳しくない。彼の名前を出した途端、担当の声は暗くなった。
     そして、相手から返ってきたのは意外な返答だった。
    「え!? もう本人は見つかった? 昨日ですか? ああ、もしかしてテレビの準々決勝をご覧になりましたか。でしたら……」
     すると、勘ぐるような声色が電話越しに伝わってきた。
     ――お前、何を言っているのだ、と。
    「だからそれは今試合に出ているアオバさんでしょう? は? ふざけてなんかいませんよ。こちらはずっと彼のカードを探して……、でしたらテレビをつけてください。今準決勝に」

     ハッサムが鋏を振り上げる。要石に直撃したそれはミカルゲにとって致命傷となる。ミカルゲが赤い光になってモンスターボールに退散していった。シロナが睨みつける。アオバがフッと笑う。表情がテレビ画面いっぱいに映る。

     電話の向こう側から明らかな動揺が伝わってきて、ノガミは驚いた。向こうで何が起こっているというのだ。しばしの沈黙の後に相手は震えた声でノガミに尋ねきた。
     ――ノガミさん、あそこで戦っているのは誰ですか、あそこに立っているのは誰ですか。
    「は……?」
     ノガミはわけがわからずに、ただ一言そう聞いた。
     すると相手がまだ動揺を隠せない声で続ける。
     二週間前、ポケモンをセンターに預けたまま行方不明になったトレーナーがいた。私達は彼を必死で捜索した、と。

     ――二日前、トレーナーカードが見つかった。昨日、やっと本人が見つかった。

     ――…………リッシ湖の底で見つかったんだ。

     シロナのロズレイドが天候を晴らし、炎のウェザーボールをいくつも放った。弱点の攻撃をまともに受けてハッサムが倒れる。強かった。
     次の青年が繰り出したのは、燃え上がる鬣と尾を持ったポケモン、ギャロップ。
     タイプ上では有利だが、地面から襲い掛かった棘の弦に足を絡めとられ、ヘドロ爆弾の洗礼を受ける。 
     負けじと障害物を焼ききってギャロップは反撃に出る。ロズレイドをメガホーンが襲って、花びらが戦いの舞台を舞った。
     だが、散ったのは青い花びらのみであった。角が貫いたのは右手のブーケのみだったのだ。にやりとロズレイドが笑う。残る左腕のブーケをギャロップに向けた。
     青年は空を見た。いつのまにか空が雨雲に覆われているではないか。なんという切り替えの早さだ。ギャロップが弦とヘドロから抜け出す時間を、ロズレイドは無駄にしていなかった。
     水属性のウェザーボールが至近距離で炸裂した。

     ――センターの近くに河があって、リッシ湖へと流れ込んでいる。あの日は季節外れの台風で河が増水していた。
     ――女の子が駆け込んできたよ。男の人が自分を助けて流されたと言って。

     電話ごしに聞こえた言葉が頭の中をぐらぐらと揺らす。
     ノガミはふらふらとスタジアムへと戻っていた。

     アクアジェット。フローゼルがロズレイドの距離を一気につめた。彼の機動力は雨で通常の倍になる。すぐさま日本晴れに切り替えたが、雨が止んだ時には、もう氷の牙が食らいついていた。ロズレイドの身体がみるみる凍りついていく。だが、最後の力を振り絞って、彼女はソーラービームを放つ。ロズレイドを道ずれに、青年の五匹目が倒れた。

     彼にはもう何がなんだかわからなかった。だが、この目で確かめなければならなかった。一体これはどういうことなのか。自分が調べていたことは、一体何だったのか。
     ぐっ、と拳を握り締めると、スタジアムに向かい駆け出した。

     ――ポケモンを持っていれば二人とも助かったかもしれないのに。たまたまセンターにポケモンを預けていた彼は運が悪かったんだ……。

     青年は最後のモンスターボールをすっと取り出し、投げる。
     ボールが地についたその一瞬、会場が静まり返ったように思えた。
     赤い光が迸る。
    「さあ、お前の力を示せ。ガブリエル」
     青年が、言った。

     なまった身体に鞭を打ち、息を切らせながらノガミは階段を駆け登る。
     いつ以来だろう、こんなに走ったのは。
     苦しい。だが、それでも走る。彼は階段を駆け上がる。
     バタンと扉を開け放つ音がした。


     スタジアムに竜の咆哮が響き渡った。凶竜が放たれたのだ。
     どんなに試合を有利に進めてもこのポケモンを倒すことができなければシロナの勝利はない。
     先方として彼女が繰り出したのは先ほど引っ込めたトリトドンだった。彼女は即座に地震を指示する。
     が、ガブリエルの動きは速かった。迫り来る攻撃を軽やかにかわし、ジャンプ。腕の翼を硬質化させドラゴンクローを叩きつけた。続いてアイアンテール。トリトドンは吹っ飛ばされ壁に叩きつけられ、力尽きた。
    「出番よ、リオ!」
     シロナが叫ぶとルカリオが走り出した。獣の形をした拳から、エネルギー球、波動弾をいくつも放つ。注意をとられるガブリエルに今度は貯めて大きい一撃。今度はガブリエルが地震を発生させる。が、上に横にすばやく跳ねリオは軽やかにそれをかわした。両腕のツノのように突き出た突起を擦り合わせる。するとそれが共振し、強烈な金属音となってガブリエルの耳に届いた。苦しむ竜との距離を一気に縮め、腹のあたりに一発。
    「竜の波動!」
     指示と共に二発目のパンチが入った。瞬間、波動が激しい衝撃となって襲う。効果は抜群。断末魔とも取れる竜の悲鳴が響く。が、一瞬獣人が見せた隙を竜は見逃さない。つかみかかり、アイアンヘッド。次にはもう竜の牙が彼を捕えていた。
    「炎の牙」
     竜の牙を発火点にして、紅蓮の炎が燃え上がる。劫火が、鋼を溶かしにかかる。
    「もどって!」
     ここまでと判断したシロナがルカリオを戻す。
     即座に最後のボールを投げる。落下するボールが空中で口を開き、赤い光が巨大な質量を形成する。スタジアムにポケモンが姿を現す。短かくもがっしりとした四肢が、巨大な甲羅とその上に根を下ろす大樹を支えていた。
    「私がはじめて貰ったポケモンよ。最後はこの子で勝負するわ!」
     中から現れたのは樹を背負うポケモン、ドダイトスだった。

    「何をしていたんだ」というカワハラの台詞は、ノガミの耳を素通りした。
     スタジアムが一望できるガラス張りの窓の前、手すりに倒れ込むように手をかけると、彼はただスタジアムに立つ青年を、見た。

    「いいだろう! 全力で来い、シロナ!」
     青年が好敵手を見る笑みを浮かべ、応える。
     カードの持ち主であるトレーナーは、湖の底で見つかった。
     それならば、あそこに立っているのは。


    「あそこに立っているのは誰なんだ…………!」


     スタジアムの中央で二匹のポケモンがぶつかり合った。
     激しい押し合い。互いに大地の力を持つポケモンは、双方地震を発生させ、スタジアムの地面が二匹を中心に崩壊していく。
     組み合った状態でドダイトスがリーフストームを放つ。対するガブリアスは炎の牙を持って噛み付く。お互いに小細工は通用しない。必要なのは純粋なる力だ。
     戦況を観察しながら青年は思う。
     シロナ、たしかに君のドダイトスは強力だ。だが、力の勝負ではけしてガブリエルに敵わない。たとえ、竜の波動を食らっていたとしても、だ。ここまでの試合運び、俺のイメージの通りだ。
    「ガブリエル、逆鱗だ!」
     竜の瞳が燃え上がる。逆鱗は危険な技だ。強大な威力を誇るが、使用すれば我を失う。だが、この一匹を倒せばすべては終わる。立ち上るオーラ、次第にドダイトスは押され後ろに下がり始める。
    「踏ん張って! もう少しよ!」
     と、シロナが叫ぶ。ドダイトスが歯を食いしばり、力を振り絞る。
     もう少し? いや、すぐに終わる。すぐに、ガブリエルがドダイトスを吹っ飛ばして、この試合は終わる。そうさ、イメージ通りだ。青年は冷徹に戦況を見守る。
     二匹の押し合いが続く。シロナが声を張り上げる。彼女にも彼女なりのビジョンがあるのだろう。だが、負けはしない。青年にはそういう確信があった。
     押し合いは続く。踏ん張りを見せたドダイトスだったが、再び後退が始まる。
     決まった。もう盛り返せはしない。そう、青年が確信した時、
     ぐらり。
     二匹のうちの一匹が足をふらつかせた。
    「ガブリエル!?」
     予想に反して、自分のポケモンを呼ぶことになったのは青年のほうだった。信じられなかった。だが、確かに足をふらつかせたのは、ドダイトスではなくガブリアスのほうだった。
     次の瞬間、ドダイトスのウッドハンマーがガブリアスを吹っ飛ばした。
     壁に叩きつけられたガブリアスは歯を食いしばり、ドダイトスを睨みつけ、立ち上がる……が、すぐに身体が傾いて――――倒れた。
    「ガブリアス、戦闘不能! よって勝者、赤コーナーシロナ選手!!」
     大きな歓声が上がる。
     審判が彼女の側に旗を揚げ、その勝利を高らかに宣言する。
    「勝っ、た……」
     少し現実感がない様子で言葉を口にするシロナ。一方、呆然とする青年の姿があった。
     が、すぐに彼は冷静に今の試合を分析しはじめていた。そしてすぐに、ハハハ、と笑う。
     そうか、あの時だ、と思った。
    「シロナのやつ、ガブに毒を仕込みやがった。竜の波動前の突き、あれは『毒突き』だったか」
     まいったな、と青年は言った。
     そして、彼はトレーナーの待機位置から、地震ですっかりめちゃくちゃになってしまったスタジアムに降り立って、ガブリエルのもとへと駆け寄った。
    「ありがとう。そしてお疲れ様、ガブ。それと………………ごめんな」
     彼女の頭を抱き上げて、青年は言った。うっすらとガブリエルが目を開けて、力なく鳴くと、すぐに閉じた。彼が竜の額にモンスターボールを軽く押し当てると、彼女は光となって吸い込まれていった。
     それからふと、シロナのほうを見上げる。報道陣に取り囲まれ、インタービュー攻めにあっていた。彼女だって自分のポケモンをねぎらいに行きたいだろうに、と思いつつ、青年はスタジアムを後にする。控え室に続く廊下へ向かい歩き始めた。
     想像以上だシロナ、俺の想像以上だよ。そんなことを思いながら。
     いや違う。お前は俺の想像を、イメージを超えたんだ――。
     もう一度だけスタジアムのほうを振り返って彼女のほうを見て、感慨深そうに笑った。
     階段を下る。歓声が遠ざかっていった。

     青年は廊下に入る。すると、そこではいつものように人影が待ち構えていた。ノガミだ。
    「アオバさん、お疲れ様です」
     と、彼は言った。
     それに対して、負けちゃいましたよ、と青年は言おうとしたが
    「準決勝は残念な結果でした」
     と、ノガミは続けざまに言ったのだった。
     そんなノガミの態度を見て、青年はいつもと様子が違うように感じた。この違和感はなんだろうと怪訝な表情を浮かべる青年にノガミが続ける。
    「見つかりましたよ。トレーナーカード」
     すると青年は、一瞬驚いたような顔をして固まった。だが、すぐにすべてを察したらしく、ゆっくりとした動作でガブリエルの入ったボールをベルトに装着して
    「そうですか……」
     と、言った。
    「それじゃあ一緒に見つかったのでしょうね。俺の死体も」
     青年は、安堵とも悲しみともとれる笑みを浮かべた。ノガミが表情を伺っている。
    「……アオバさん、あなたは誰ですか?」
     震えた声が聞こえてきた。
    「あなたは本物のアオバさんを…………」
    「違いますよ」
     青年は即答する。
    「俺はミモリアオバです。ですがこうなった以上、あなたに俺のポケモンを預ける訳にはいかない。ここを通して貰います」
    「僕が通すとでも……」
     ノガミが身構えた。青年のポケモンは皆、戦闘不能状態だ。そして偶然にも今日、自分には彼に対抗する手段がある。そっとボールに手をかけた。だが、青年は動じる様子もなかった。
    「通りますよ。力ずくでもね」
     そう青年が口にした瞬間、暗い廊下にぼうっと青い炎が、立った。
     ノガミは目を見張った。自身の見間違いでないのなら、この炎の名を人はこう呼んでいる――――鬼火、と。


     うみや かわで つかまえた ポケモンを たべたあとの
     ホネを きれいに きれいにして ていねいに みずのなかに おくる

     そうすると ポケモンは ふたたび にくたいを つけて
     この せかいに もどってくるのだ


      [No.2673] 第七話「とおい はなび」 投稿者:No.017   投稿日:2012/10/16(Tue) 20:01:22     104clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:遅れてきた青年】 【バカー!】 【アオバのバカー!】 【BWで観覧車が出る前の話なんだぜこれ…


    おこるな ?? が くるぞ
    かなしむな ?? が ちかづいてくるぞ
    よろこぶこと たのしむこと あたりまえの せいかつ
    それが しあわせ
    そうすれば ???サマ の しゅくふくがある

    「シンオウしんわ」より





    ●第七話「とおい はなび」





     思い出した。すべてを。
     この場所が何処であるのか。自分が何者であるのか。
     自分がポケモントレーナーであること。どんなポケモン達がいっしょにいて、どのように彼らと共に呼吸をし、どうやって戦ってきたのかを。傍らにいる女性トレーナーが誰なのかを。
     そして、自分が成さなくてはならないことを。

     青年が記憶の回復を伝えるとシロナは大いに喜んだ。
     最も、試合の流れが変わったあたりからそうではないかと思っていたらしいが。


    「いきますよ!」
     ノガミが六つのモンスターボールを一斉に投げる。次々と赤い光が立って、様々な形のポケモンの姿が形成されてゆく。そして、そのポケモン達はスタジアムの中央で構えているある一匹のポケモンに向かって突進していく。
    「リーフストームから、噛み砕く!」
     先鋒はハヤシガメ。背中を守る鎧の上から生えた樹木から無数の葉が刃となって舞い散り、ターゲットの方向に吸い込まれるように飛んでいく。その先にいるのは両腕にヒレの刃を持ったドラゴンポケモン。彼女はキッとハヤシガメを睨みつけた。
     嵐の日の豪雨のように葉が身体を叩く。走りこんできたハヤシガメが彼女の腕に噛み付いた。が、軽々と彼女はそれを払ってみせる。ハヤシガメの身体が吹っ飛んだ。
    「次!」
     とノガミが叫ぶ。スタジアムに複数映る影の一つが大きな影に向かって飛び掛る。だが、その影もすぐに吹っ飛んだ。チッ、とノガミが舌打ちする。


    「ノガミさん、ポケモンは持っていらっしゃらないんですか」
     立会いを依頼してきた青年が、次にノガミにぶつけてきた質問はそんな内容だった。
    「……持っていたら、なんなんですか」
     不機嫌そうに答えた後、ノガミはしまったと思った。わざわざ答える必要もなかっただろうに。気がつけば、すっかり青年のペースに乗せられていたのだ。答えを聞いた瞬間、青年がにんまりと笑ったのが見えた。
    「それなら決まりだ。立会いの時はノガミさんのポケモンみんな連れて」
    「アオバさん、」
     思わずノガミは青年の言葉を遮る。
    「なんです?」
    「それって、もはや立会いとは言いませんよね?」
    「似たようなものじゃないですか」
    「全然違いますよ! あなた、私のポケモン相手にバトルの予行をするつもりでしょ!」
    「……だめ、ですか?」
     と、青年はこの世の終わりのような残念そうな顔をして聞いてきた。
    「う……っ」
     と、ノガミは一瞬動揺するが、
    「そ、そんな顔に騙されませんよ! だいたいポケモンリーグで上位の人のポケモンの相手が、私のポケモンに務まるわけがないでしょ! シロナさんかカイトさんに頼めばいいじゃないですか」
    「シロナはだめです」
    「なんでです?」
    「これから当たる相手なんですよ。わざわざ今から手のうち明かすわけにはいかないでしょ」
    「カイトさんは?」
    「ああ、カイトもだめです」
    「なぜ」
    「去年負けた後、自分のポケモンと一緒に会場の屋台のメニュー全制覇だと言って、食べ歩きツアーを敢行していました。バトルを見る以外は閉幕までそうやっていました。たぶん今年もそうなるでしょう」
    「………………」
    「そういう訳だからノガミさん、俺にはあなたしか頼る人がいないのです……」
     ぽん、ノガミの両肩をつかんで青年は、デパートの屋上でトレーナーに飲み物をねだるポケモンのような眼差しを向けてきた。
    「自分のポケモン同士でやってもいいけど、パターンが知れていて。どうしてもそうじゃないポケモンとやっておきたいんですよ」
    「ですから、相手になりませんよ。僕のポケモンなんて……」
     気持ち悪い人だな、と思いながらノガミは目線を逸らし、そう答えた。
    「そりゃ、普通に勝負したらそうかもしれませんが」
     と、青年が言う。キラリとノガミの眼鏡が光った。この野郎、自分で言いやがった。
    「でも、たとえば、ノガミさんのポケモン六匹でガブリエルを袋叩きとかだったらどうです? 予行の方法は何も正規の対戦方法によらなくてもいいんだし」
     やはりこいつは人をバカにしている、とノガミは思う。
     しかしまぁ、モノは考えようだ。たしかに六匹でかかればいかにリーグ上位トレーナーのポケモンと言えど、一匹くらい戦闘不能にできるかもしれない。不本意な形式ではあるが実力者と一戦交えてみるのも一興ではないか。
    「…………、…………わかりました。では回復が終わったら連絡しますから」
     渋々とノガミは了承した。
     けれど内心、自分の心の動きに少し驚いていた。現役を退いてからほとんどバトルをしたがらなかった彼にとって、それは思わぬ心境の変化だった。もしかしたら、試合を見て元現役トレーナーの血が騒いだのかもしれなかった。
     ……最も、単純に青年の挑発に乗ってしまったとも言えるのだが。
    「それよりアオバさん、早く手を放してください」
    「どうしてです?」
    「後ろに立っているシロナさんが、さっきからずっと変な目で見ているからです」
    「…………」


     ガブリエルに、三匹の影が同時に飛び掛かった。一匹が技でガブリエルの動きを止め、残りの二匹が挟み撃ちにする。
     小賢しい! とばかりに彼女は咆哮を上げた。
    「砂嵐」
     と、青年が唱えると、彼女を中心にして砂を伴った竜巻が沸き起こり、ポケモン達を弾き飛ばす。残りは一匹。
     青年はノガミの方向を見る。ノガミの足元には六つのボールが落ちている。うち五つはすでに殻で、中身がなくなったパールルみたいにパカッと口をあけて転がっている。その中に一つ。まだ開いていないボールがあった。半球が青い色のボールだった。通常のモンスターボールの捕獲性能を一段階向上させたその機械球の名は、スーパーボール。
     突然そのボールのボタンが赤く点滅したかと思うと、形を形成しきる前に砂嵐にむかって一直線に飛び出した。ずっと息を殺して、この機を待っていたようだった。
     青年とそのポケモンが、最後のポケモンが飛び込んだ先に目を凝らすが姿が見えない。
    「コクヨウ、ドラゴンクロー」
     ノガミが指示を出す。
     突然、ガブリエルの背後からノガミのポケモンが現れ、彼女の背中を切り裂いた。
     すながくれ。砂嵐の中で姿を隠し、回避率を上げるポケモンの特性の一つ。ガブリエルと同じ特性を持つポケモンの一撃。
    「特性が同じなら小さいほうが捕捉するのは困難となる」
     ガブリエルが振り向いたとき、ポケモンの姿はすでになかった。すると今度は横から一撃が放たれる。
    「嵐を止めろ、ガブリエル!」
     青年がそう指示して、彼女は嵐を止める。
     が、砂が収まりきらないうちに別の所から竜巻が巻き起こった。
    「そちらが止めたならこちらで、起こせばいいだけのことです。コクヨウ!」
     また一撃が入る。
     一方的な相手の攻撃に、ガブリエルはイライラした様子を見せる。
    「熱くなるな、ガブ」
     青年が冷静に彼女をなだめる。
    「雨乞いだ」
     ガブリエルの表情がすっと軽くなる。落ち着きを取り戻したのが見てとれた。ガブリエルが空に向かって咆哮する。
    「くそ、そんな技まで!」
    「すながくれ同士になったら、体格のいいほうが不利。以前、これにしてやられたことがありましてね。もっとも相手が水ポケモンなんかを隠し持っていると墓穴を掘りますが」
     雲が現れる。空気中の水分を吸ってみるみるうちに成長していく。ほどなくして、雨粒がスタジアムを濡らしはじめた。さきほどまで舞っていた砂は、雨に吸収され、みるみる視界が開けていく。雨で濡らされた地面はもう砂を巻き上げない。ポケモンの姿があらわになる。
     それはガブリアスによく似た、デフォルメして縮めたようなポケモンだった。爪が一本しかなく、両腕に鎌のようなヒレのようなものを生やしている。頭に生えた妙な形の突起もそっくりだ。
    「ガバイトか」
     と、青年が呟いた。
     ガバイト。それはガブリアスの一段階前の姿だ。ノガミの持つそれは通常のガバイトよりは少し黒っぽい色をしている。おそらくコクヨウと言う名前はそこからきているのだろう。
     ガバイトはその姿があらわになっても戦意を失わなかった。低く唸り声を上げ、その目には確かな闘志が宿っていた。
     相手が自分の進化系だろうが構わない。むしろ、最後まで姿を見せなかったのは、邪魔者がいなくなった後、自分の同族とサシで勝負する気だったからのように思えた。
     たいしたヤツだ、と青年は感心した。すぐさまガブリエルに攻撃の指示を出す。経験上知っていた。こういうやつは力をもって戦闘不能にすることでしか止まらない。
    「逆鱗」
     青年がその単語を口にすると、ガブリエルの眼がカッと燃えた。そうかと思うと、瞬く間にガバイトまで距離を詰める。
     何かが発火するような音がスタジアムに響き渡って、勝負は決した。


    「バッジを集めて回っていた頃、たまたまテレビのリーグで見たガブリアスに憧れましてね、なんとか生息地を調べ出してフカマルを捕まえに行ったんです。けど、なかなか見つからなくて」
    「なかなか会えないんですよね」
    「もう諦めて帰ろうかなというときに、洞窟のもう一つの入り口を見つけまして」
    「フカマルのトレーナーなら誰でも通る道ですよね、それ」
    「そうなんですよね、誰も本当の生息地を教えてくれないんですよ」
    「この種を持つための通過儀式、なんですよね」
     自動販売機で買ったサイコソーダがやけにうまく感じる。こんな感覚はひさしぶりだとノガミは思った。彼が座っているベンチの隣には青年が腰掛け、うまそうにミックスオレをすすっていた。
    「ねぇ、ノガミさん、なんでトレーナーやめちゃったんです?」
     すっかりリラックスしきっていたところで、彼は青年の奇襲を食らった。
    「……なんで、そんなことを聞きたがるんです?」
     こいつ空気が読めないんじゃないか、と思いつつ、ノガミが問い返す。
    「どうしてって、聞いてみたかったからですよ」
     と、青年が答えた。
     やはり空気が読めないようだ、とノガミは思う。
    「……限界を、感じたからですよ。バッジを八つ集めたはいいけど毎年予選を通過できなくてね」
     けして気分のよい問いではなかった。彼はさも平静そうに、不機嫌さを隠すようにそう答えた。
    「それで、ポケモン協会の職員になった?」
    「そう、トレーナーには見切りをつけて、ね。それが何か?」
     表情を出さないようにしながら、彼は続けた。目の前の青年といい、上司といい、どうして皆そのことにばかり触れたがるのだ? もう、たくさんなのに。
    「うーん……なんていうかノガミさん、まだまだ行ける気がするんですよね。発展途上っていうか。特にコクヨウなんか」
     やっぱりこいつとはソリが合わないらしい、とノガミは思った。
    「たとえば、ノガミさんがポケモンを厳しくあしらって、他の手持ちに見放されたとしても、彼だけは文句言わないでついてきてくれますよ」
    「私、そんなにスパルタに見えますか」
    「例え、ですよ」
     と、青年は言った。悪気がないのはわかっていた。だが。
     ノガミはぐっと奥歯を噛んだ。お前みたいに、自分が欲しかったものをみんな持っているお前なんかに、何がわかるというのだ。
    「私達の成長は、バッジを八つとった時点で止まったんです。決して、次のリーグが巡ってくるまで遊んでいたわけじゃない。次こそは予選を通過するんだって賢明に努力した。けれど、何度やっても結果は同じ。成績が上がることは決してなかった。それどころか、一般に時期だろうと言われる段階に来ても、それを過ぎても、ついにコクヨウ達が進化することはなかったんです」
     そういえば、という表情を青年が浮かべた。ノガミの使ってくるポケモンの中で二段階の進化をするポケモン達、ハヤシガメもガバイトも最初の進化を経験しているだけなのだ。
    「それで見切りをつけたと?」
    「越えられない壁があるんです。ポケモン不孝なトレーナーだと思っているんでしょう? 僕はあなたのようにご立派なトレーナーにはなれなかった」
     投げ捨てるように彼は言った。それは青年へのあてつけを含んでいたが、けしてそれだけの言葉でもなかった。
    「そんなことありませんよ。世の中にはもっとポケモン不孝なトレーナーがたくさんいる。自分の手持ちのことを忘れちゃったり、手放したりするトレーナーがね。それはポケモンを強くしてやれれば理想なのかもしれない。でも一番重要なのは一緒にいてやることだと俺は思います。あなたは現役を退いた今だって、ずっと一緒にいるじゃないですか」
    「どうですかね。今日みたいな機会がなかったらボックスに預けっぱなしだったかもしれませんよ」
    「それは嘘ですね。ハヤシガメの葉のみずみずしさも、ガバイトの鱗の輝きも、ボックスに預けているだけじゃ維持できやしない」
     青年がすぐさま切り返してきて、ノガミはそれ以上悪態をつけなくなる。
    「喜ぶこと、楽しむこと、当たり前の生活。それが幸せ」
    「なんですか、それ?」
    「シンオウ神話の一節です。なかなか深いと思いませんか? 本当に大切なものはきっと身近なところにある。リーグの成績なんておまけみたいなものです」
     青年は言った。彼は膝に乗せたサンダースを撫でてやる。その足元や傍らに、彼のガブリアスや他のポケモン達が寝そべり、寝息を立てていた。
    「あなたに言われても説得力ありませんよ。御託はたくさんです」
     と、ノガミは答えた。
     ……嫌いだ、お前なんか。
     ああ、どうして。どうして自分のとなりにいるのが、ミモリアオバという青年ではなく僕自身でないのだろうか。
     不意に、青年の膝の上のサンダースが片耳をぴくっと上げた。そして、立ち上がると、ノガミに向かって吠え立て始めた。そのあまりの剣幕に怖気づいて、彼は後ずさりする。気持ちを読まれたのか。それにしたってそんなに怒らなくてもいいじゃないか。
     さらに、サンダースにつられて青年の他のポケモン達までもが騒ぎ始めた。あるものは同じように吠え立て、あるものはバサバサと落ち着きなく飛び回り、あるものは鼻息を荒くして地面を蹴る。ガブリアスの咆哮がスタジアムに響き渡り、ハッサムがものすごい形相で睨みつけてきて、ノガミは心底震え上がった。
    「落ち着いてください! ノガミさんにじゃないですよ」
     サンダースをなだめながら青年が言った。
    「その、野生のポケモンがこっちを見ていたみたいで……」
    「え、野生ポケモン!?」
    「おいラミエル、そんなに毛を逆立てると痛いじゃないか! お前たちもいい加減鎮まれ。これ以上吼えるならボールに戻すからな!」
     青年がそう言うと、キュウンとサンダースが鳴いて、耳を垂れると悲しそうな顔をした。彼らは不満そうだったが、渋々と騒ぐのをやめていき、そこでやっと落ち着きを取り戻したノガミはポケモン達の吠え立てた方向を見た。が、すでに野生ポケモンの姿は見当たらなかった。
    「これだけ訓練の入ったポケモンがあんなに吼えるなんて……。一体何がいたんですか」
     と、ノガミが尋ねたが、すぐに姿を隠してしまってよくわからなかったようなことを青年は言った。彼は、よしよしいい子だ、怒鳴ったりしてごめんよ、などとと言って、自分の周りに集まったポケモン達を撫でてやる。ガブリアスが青年にかぶりつくのが見えた。
    「ノガミさん、お騒がせしてすみませんでした」
     ガブリアスに噛み付かれながら、青年が謝罪する。
     きっと、これが信頼関係なのだと思う。
     だが、一方でノガミはこうも思った。こいつは自分の欲しいものをすべて手に入れているのだと。こんなにも持つ者は持たぬ者を惨めにする。強者のポケモンはそれを持たぬトレーナーの嫉妬を掻き立てる、と。
     そしてタイミング悪く、青年はさきほどまで話していたことについて話題を軌道修正してきた。
    「そうだ。さっきの続きなんですがね、ノガミさんにぜひ聞いて欲しい話があるんですよ。俺の祖母の昔話なんですけど」
     こいつは本当に空気が読めないらしい、とノガミは思う。
     一方、青年もノガミがあまりに不機嫌そうな顔をしているので、一瞬躊躇した様子を見せた。が、結局彼は構わずに話を始めてしまった。
    「初日にシロナが言ったと思うけれど、俺の祖母は四天王キクノの姉妹にあたるのです」
     と、前置きする。
    「俺はこういう髪型でしょう。よく男のくせにと言われるし、シロナにもキザだと言われるんですけどね、俺の髪を結んでいるこれ、祖母から貰ったものなんですよ。幸運をもたらすお守りだと言っていました」


    「ヒマそうだな、シロナ」
     屋台の並ぶ通りを彷徨うシロナに、声をかけたのはカイトだった。口のまわりをソースらしきもので汚して、手にはイカ焼きを持っていた。 傍らのエンペルトも同じようにイカを持って、嘴を汚している。皇帝ポケモンの威厳も何もあったものではない。
    「そういうあなたも相当ヒマそうだけど」
     と、シロナが言うと、一回戦でアオバに負けちまったからな、とカイトが答えた。
    「おまえさんは勝ったんだろう?」
    「ええ、お陰様で。というかアオバと当たるまでは負けられないのよ」
    「当たるまで、じゃなくてアオバに勝つまで、だろ?」
    「そうね、そうとも言うわ。あわよくば、そのまま優勝といきたいわね」
     ふふっ、とシロナが笑う。
    「ところで、アオバは? 一緒じゃないのか」
    「調整中よ。今までの遅れを取り戻すんだって。記憶が戻った途端、これよ」
    「記憶が戻った? 記憶喪失ってマジだったの?」
    「そうよ、大変だったんだから。だから、あなたにはお礼を言わなくちゃいけないわね。あなたとの試合中に戻ったのよ」
    「おいおい、俺ってそういう役回りなのか?」
     と、カイトは損したなぁといった感じをあらわにした。
    「そうだ、ちょうどよかったわ。ちょっと付き合って欲しいんだけど」
     突然、シロナが思いついたように言った。
    「付き合う? あんたが付き合っているのはアオバじゃなかったのか」
    「ちょっと! そういう意味の付き合うじゃないわよ! だいたいアオバとはそういう関係じゃないんだからね!」
     カイトがちょっとつっつくとシロナは簡単に予想通りの反応をしてくる。わかりやすいなぁと、彼は思った。
    「そうじゃなくて……もう少しで、リオ達の回復が済むのよ。あなたにはバトルの練習相手になって欲しいの。アオバが調整しているっていうのにこっちも負けてられないじゃない」
    「まぁな、でも俺でいいわけ?」
    「あなたアオバに負けて悔しくないの? ここで私の相手になって、それで私がアオバに勝ったなら間接的にしろ勝ったってことになるわ」
    「……なんかその理屈、無理やりじゃない?」
    「いいじゃない。食べ歩きもたいがいにして少しは運動したほうがいいわよ。そのほうが後の食事がおいしくなるわ」
    「…………ふーむ、それもそうかぁ」
     そう言うと、イカ焼きを一気に平らげる。一緒になってエンペルトもそれを平らげた。どうやらその気になったらしい。
    「わかった、その話乗るよ。イワトビもリベンジ決めたいってさ」
    「ありがと。さっそく、スタジアム使用の手続きしをないとね、一緒にきてくれる?」
    「ああ」
     そうして、おそらくは利害が一致した二人はスタジアムに向けて歩き出した。
    「でもさぁ、シロナ。お前、本当にアオバと付き合う気ないわけ?」
     道中、カイトはそんな質問をぶつけてくる。
    「ちょっと、なんでさっきからその話題ばっかりなのよ!」
    「だって、お前アオバのことさ、」
    「それ以上は言わないで」
    「素直じゃないな」
    「うるさいわね。私だって、その時がきたら、ちゃんと……」
    「その時?」
    「アオバに勝った時よ」
     顔を真っ赤にして彼女は答えた。そして、こう言った。
     ――私ね、決めているの。その時までは勝負に集中する。でも準決勝で勝ったら、準決勝で彼に勝てたら、気持ちを伝えるの。
     それを聞いたカイトは「そっか」と言って、それ以上は何も言わなかった。


    「彼女は、遅咲きのトレーナーだった」
     と、青年は語った。
    「若い頃の祖母は姉のキクノに比べると極端に出来が悪くてね、顔はそっくりなのに、バトルの成績はてんで正反対。とうとう比べられるのに耐えかねて、シンオウを出て行っちゃったんです」
    「……それはまた思い切りましたね。シンオウを出てどこに行かれたんですか」
     と、ノガミが冷めた調子で言った。そっけない反応ではあったが、まったく話を聞く気がないわけでもないらしかった。
    「カントーです」
     と、青年が答える。
    「自分を誰も知らない土地にいって、ようやく彼女は姉妹の呪縛から解放された。カントーの大学に通い、結婚して出産もした。その間も細々とトレーナーを続けながら、ね。そうして、子どもも大きくなって旅立っていって」
    「それで?」
    「それからです。手隙になって、彼女はさらに本格的なトレーナー修行をはじめた。そして、おおよそ若いとはいえない年齢から急に強くなったんです。彼女は勝ちに勝ちまくり、ついにカントーの四天王に上り詰めた」
    「……つまり、姉妹そろって四天王になっちゃった訳ですか。あなたのお婆様がそこまで変わった理由はなんだったのでしょう?」
     そうノガミが問うと、青年は待っていたとばかりに続ける。
    「祖母が言うには、ある日突然、自分が四天王になっているのをはっきりとイメージしたのだそうです」
    「イメージした……?」
     彼にとっては意外な回答だったらしく、ノガミは詳細を尋ねる。
    「そう、それはもうリアルに」
     と、青年は答えた。
    「彼女が好んで使用するのはゴーストタイプでね、もしかしたら、祖母の見た『それ』は彼女のゲンガーが見せた幻か何かだったのかもしれない。ほら、あいつらってそういうものを見せるのが得意でしょう」
    「ゴーストポケモンでその手の話をしたらきりがありませんね」
    「でも祖母は、それを本気にした」
     青年は言った。今までのどんな語りよりも強調して答えた。
    「……それで、四天王になったと?」
    「そうです」
     青年が肯定する。確信を持って。
    「全部とは言いませんが、ゴーストが使う技は精神的に来るものなんじゃないでしょうか。ダメージを受けた相手がダメージを受けたと思うから、ダメージを受けるのです」
    「受けたと思うから……ですか」
    「たとえば、幻覚。見えている本人には、たしかに見えているんです。脳がそう自覚しているんです。となると、ノーマル属性にゴースト技がほとんど効かないのはこのあたりに関係があるのかもしれない。ノーマルという属性が精神に作用しているとすれば……」
     すると、はぁ、とノガミがため息をつく。
    「それはまた大胆な仮説ですね。研究者の道に進まれたほうがよかったのでは?」
     と、嫌味を言った。
    「俺が思うに、あなたは早い段階で負けすぎたのです。だから勝つ自分を、自分のポケモン本来の強さをイメージできないでいる」
     と、青年も負けずに答える。が、
    「……その話が本当だとしても、私とあなたのお婆様は違いますよ」
     と、ノガミは言った。
    「想像するんですよ、ノガミさん。スタジアムに続く階段を。長い長い廊下を渡り終えて、そこを一歩、また一歩登っていく。扉を開くと、歓声が聞こえてくる――――俺はこう思うのです。表彰台に立つ自分を最後までイメージし続けることができた者、信じ続けられる者がチャンピオンになれるのだと」
    「…………」
     ノガミはしばらく青年を見つめて黙っていたが、最後に一言、ぼそりと言った。
     そんな人、いるんでしょうか、と。
    「これで俺の話は終わりです。長々と変な話をしてすみませんでした。別に忘れても構わないけれど、心の片隅にでも置いておいてくれるなら嬉しいです」
    「…………考えておきますよ」
     青年がしんみりした口調で言うので、ノガミは思わずそんな答えを返す。それに対して青年は、
    「ありがとう」
     と、礼を述べた。


     トーナメントは二回戦へと移行する。一人の勝者と一人の敗者を出して。上に一段上がるごとに半分のトレーナーが消えていく。その中で青年は、上へと上がっていく。
     彼の持つガブリエルを筆頭とした強靭なポケモン達、そこに冷静な青年の指示が加われば、鬼に金棒だった。そうそう勝てるものなどいはしない。
     二回戦を終えて三回戦進出。彼は確実に駒を進める。そこにはもう、かつての頼りない青年の姿はなくなっていた。

     試合が終わる。その日はすでに夜になっていた。勝者を祝福するかのように花火が夜空に咲き誇る。
    「アオバさん、僕は花火が嫌いです」
     夜の調整中、夜空に咲く花火を見ながら、ノガミはそんなことを言った。
    「どうして?」
     と青年が尋ねると、
    「儚いじゃないですか。まるで敗れ去っていくトレーナーの夢のようだ。僕はこの仕事についてチャンピオンになれないトレーナー達をたくさん見てきました。かつての僕がそうだったように。花火が一つ消えるたびに夢が一つ消える。僕にはそんな風に見えるんです」
     彼は損な性格だな、と青年は思う。けれど、そんなセリフを吐くノガミの気持ちを否定できずにいる自分に気がついた。いつからだろう、と回想する。
     だがすぐに、ああ、あの時だと青年は目星をつけた。初日の屋台で、予選落ちしたトレーナーの言葉を聞いたあの時。
     パン、と花火が上がる。花火の下にあの時屋台から見えた観覧車が見えた。
    「でも、どんなに強いチャンピオンだっていつかは誰かに負けるんですよ。観覧車が上に登ってもいつかは降りてくるみたいに。誰だっていつか観覧車から降りなくちゃいけない。それって、他のチャンピオンになれなかったトレーナーとどう違うのでしょうか」
     いつのまにか青年はそんな言葉を呟いていた。
    「だったら、なんでみんなチャンピオンなんかになりたがるんでしょうか。いつか誰かに負けるためだとしたら空しすぎやしませんか」
     と、ノガミが問う。
    「それには二通りの答え方ができます。夢っていうのはそういうものなんです、と答えることもできるし、いつか誰かに負けるためという風に答えることも出来る。どう考えるかは……」
    「アオバさん、それって、負けたいんですか。勝ちたいんですか?」
    「そりゃあ勝ちたいに決まってるじゃないですか」
     と青年は言った。
    「そういえば、」
     急に思いついたようにノガミが話題を振る。
    「勝つの負けるのって言ったら、シロナさんはどうなんです。最近見かけませんけど」
    「ああ、あいつはあいつでトレーニングしているんでしょう」
    「そんなもんなんですか」
    「そんなもんですよ。今頃ガブリエル対策でも立てているんじゃないですか」
     そう言って、青年はハハハ、と笑った。ノガミはその答えにあまり満足しなかったらしく、
    「シロナさんってアオバさんの何なんです? どう思っているのですか、彼女のこと」
     と、少々突っ込んだ質問をしてみる。
    「なに、って」
     青年が少々言葉を詰まらせる。そして、しばらく考え込んで、
    「あいつはライバルです。今大会で最もてこずる相手だと思っています」
     と、答えた。
    「……それだけ、ですか?」
    「それだけですよ。他に何があるって言うんです?」
    「……そんなこと言ってると、そのうちカイトさんあたりに取られちゃいますよ」
     と、ノガミが言うと、ああそれが聞きたかったのね、と察したらしく
    「大丈夫、それはない」
     と答えてみせた。
    「あなたのそういう自信過剰なところが嫌いだ」
     ノガミは呆れたように言った。

     三回戦、青年はさらに駒を進めた。シロナも負けてはいなかった。的確な指示で、対戦相手のポケモン達を次々に攻略していった。去年よりずいぶんキレが増したように思える。
     カワハラがトーナメント表に書き込んだ赤い線が、伸びて近づいていった。

    「ねぇ、ノガミさん、ガブリエル使ってみません?」
     そんな頃、青年が突然、そんな提案をしてきた。
    「なんなんですか、今度は」
    「僕が残りのメンバーで挑む。ノガミさんとガブリエルでそれを迎え撃つ。ガバイトを持っているあなたなら、勝手はわかるでしょ」
    「今度は何を企んでいるんですか」
    「いや、実際にガブリアスを使ったらその、いいイメージが沸くんじゃないかと……」
    「まさかあなた、私がガブリアスを使ったら、コクヨウが進化すると思っているんじゃ」
     あ、ばれた? という表情を青年が浮かべ、やっぱりという感じでノガミがため息をつく。
    「でも、やるだけならタダでしょう。僕としても相手がガブリエルをどう見るかというところを試す目的があるんです。対戦相手の目線で見てみたいんですよ。言うなればシロナの目線でね」
     と青年は切り返した。
    「そういえば、さっき結果が出たみたいです」
     ノガミは思い出したように告げた。
    「勝ちましたよ、彼女」

     四回戦が終わる。二人の線はさらに近づいた。
     ステージは五回戦へと移ってゆく。

     ポケモン達をボールに収め、シロナは控え室のソファーに座っていた。さすがに、試合数が少なくなってきているためか控え室のテレビは、リーグに関係でない番組も映し出すようになった。今やっているのはシンオウ旅紀行なる旅行番組だ。
     心は静かだった。そう、テレビ画面に映る湖の水面のように静かだ。
    『えー、私は今リッシ湖のほとりのホテルに来ております。ここに新しくできたレストランは、なんとポケモンバトルが楽しめるレストランで、湖の風景と食事を楽しみながら――』
     そこまでアナウンサーが言うと、突然テレビがぷっつりと切れた。
     彼女が何事かと思って振り返ると、そこにテレビのリモコンを持ったアオバが立っている。
    「よお、ひさしぶり」
     と、青年は言った。
     いきなりテレビの電源を切られて、シロナは少々むっとしたが、それはひさびさに見た青年の姿の前に掻き消えてしまった。
     一回戦が終わってからろくに会っていなかった。もちろんお互いがそのようにしていたのもあるのだが、たまに見かける青年はいつも何かを考え込んでいて、話しかけようとしたら、決まってノガミがやってきて、さっさと調整に向かってしまい、タイミングを逃しっぱなしだった。これが本来あるべき関係なのかもしれない、と彼女は思ったが、避けられているようにも感じて少し不安になっていた。だから、
     ――五回戦もとい準々決勝が終わったら、外でゆっくり話さないか。
     そんな誘いがその場で青年のほうからあって、シロナの胸は躍った。

     ポケモンリーグ、それは祭である。
     観客はずっとバトルばかりを観戦しているわけではない。食べ、飲み、歌い、買い物をし、祭を満喫する。それを満足させるため屋台はもちろんのこと様々な店が並び、花火が打ちあがり、アミューズメント施設が建造され、フル稼働する。
     五回戦に勝利し、待ち合わせの場所についたシロナを、少し前に勝ち上がった青年は待っていた。
    「勝ったな」
     と、開口一番に彼が言って
    「うん」
     と、シロナが返事をする。二人は歩き出した。
     屋台で適当に腹ごしらえをすると、今度は様々なグッズの並ぶ露店を見て回る。あるときはフカマルのぬいぐるみを見つけ、ガブちゃんだ、似てねぇよなどと言い合い、通行人が連れているリオルを見つけてはしゃいだりした。
     次に見つけたのはアクセサリーの店、ポケモンの耳や尻尾、模様をモチーフにした髪飾りなどが並んでいた。その中に黒いかんざしのようなものを青年が発見する。
    「なぁこれ、ルカリオの耳の下の突起に似てないか」
     と、青年が尋ねると、
    「でもラインが入っているじゃない、きっとブラッキーがモデルよ」
     と、シロナが答えた。
    「でもこれを二対にして使うと……」
    「………………」
     そう言って今度は、それを重ねてみせる。
     彼がずいぶんムキになって頑張るので、彼女は、ハイハイそうね、ルカリオね、と同意した。
     するとどういうわけか、青年はルカリオだと主張するそれをレジに持っていき、会計を済ませる。そんなものを買ってどうするのよ、と言うシロナに
    「はい」
     と、手渡した。
    「……いらないわよ」
    「いいじゃん、準決勝進出祝い」
     紙袋を押し付ける。
    「誰も頼んでない」
     ちょっと、頬を赤く染めながらシロナが言う。
    「どういう風の吹き回し? ……今日のあなた、ヘンよ」
    「そうか? だって、連日のバトルで賞金もずいぶん入ったし……とにかく、渡したからな」
     そういって、青年は方向転換すると早足ですたすたと歩いて行ってしまった。返品を受け付けるつもりはないようだ。
    「…………」
     押し付けられた紙袋をしばし見つめた後、シロナは青年の後を追う。いくつもの露店と灯りが作るトンネルを抜け、二人は歩いていく。夜空にはパン、パンと花火の上がる音が響いていた。突然、青年の足が止まる。
    「今度はなんなのよ」
     と、シロナが尋ねると、
    「ねぇシロナ、あれ乗らない?」
     と夜空を指差して青年が言った。 
     花火が上がる夜空を仰いで彼が提案したのは、初日の夜に屋台から見た観覧車だった。

    「しばらくぶりだな、こうしてゆっくり話すのは」
     彼らは窓に映るガラス張りの夜空を背景に、対になってゴンドラの椅子に腰掛けている。
    「予選ではずいぶん世話になったのに、何の礼もせず悪かった」
     改まって青年はそう言った。でもガブ達をちゃんとかまってやりたくてと、続ける。
     ああ、もしかしてさっきの謎のプレゼントはそういう意味だったのかしら、などとシロナは思案した。
    「仕方ないわよ。あんな状態だったんだもの。それに今はトーナメント中、調整は必要よ」
     と、答えた。
    「ああ、そうだな」
     と、青年が返す。
     そんな会話をする二人を乗せて、ゆっくりゆっくりとゴンドラが登っていく。
    「いよいよ準決勝だな。俺かシロナ、どちらか勝ったほうが夜の決勝に進む」
    「そ、そうだね」
     夜空に花が咲く。青年がいつになく真剣な表情で話すので、彼女は少し緊張した様子だった。
    「……言っとくが、手加減はしないからな」
    「あ、当たり前じゃない、そんなの!」
     顔を赤く染めてシロナが叫ぶ。
     夜空に花が咲いては消え、また打ちあがる。その後に続いて音が響いてくる。
    「ここまで来るのに長いようで短かったような気がするな。いずれにせよ、表彰台に足を掛けられるところまでは来たわけだ。あとはどの位置に立てるか、それが問題だ」
     冷たいガラスの壁に触れて、夜空を覗き込むように青年は言った。
    「ねえ、どうしたの、アオバ。やっぱり今日のあなたヘンよ」
     と、シロナは言う。
     すると青年はシロナのほうに向き直って、
    「なぁシロナ、お前はどうしてチャンピオンになりたいんだ?」
     と、問うた。
    「え、どうしてって…………」
    「どんなに強いチャンピオンでも、いつかは負けるときが来る。その座を誰かに譲るときが来る。観覧車に乗って高いところに行ってみても、いつかは下り始める。いつかは観覧車から降りなくちゃいけないのに」
    「たしかに、それは……そうだけど」
    「いつか誰かに負けるためにチャンピオンが存在するのだとしたら、空しすぎると思わないか? だったら、どうして皆チャンピオンなんかになりたがるんだろう?」
     突然、青年がそんなことを言い出すので、彼女は驚いた。おおよそ彼らしくない発言だと思った。いや、倒すべきライバルにそんなことを言って欲しくはなかったのかもしれない。
    「やっぱり今日のあなたヘンよ。記憶が戻って、知恵熱でも起こしたんじゃないの?」
    「……そうかもしれないな」
    「ちょっとは否定しなさいよ」
     シロナが突っ込む。
    「実は、これと同じことをある人が言ってきてね」
     と、青年が答えた。
    「それ、ノガミさんでしょ」
    「よくわかったな」
    「あなたこの数日、ノガミさんくらいにしか会ってないもの。あの人なら言いそうだわ」
    「おいおい、それはノガミさん傷つくんじゃないかな……」
     だが、完全否定もできず、青年は苦笑いする。それから彼は、ノガミのポケモンとバトルをしたこと、どんなことを話して、何を思ったのかそんなことのもろもろを彼女に語った。彼女はそれを黙って聞いていた。
     観覧車が上がっていく。もうすぐ頂上が近かった。
    「………………イメージしたからよ」
     突然、シロナは言った。
    「え?」
    「私がチャンピオンになりたい理由。幼いころ、おばあちゃんに連れていってもらってポケモンリーグを見たの。それで、いつか私も自分のポケモンを連れて、この舞台に立つんだって、表彰台に上がるんだって想像したわ。その後に、いつか自分がどうなるかなんて知らない。けれど、そのとき確信したの。私のあるべき場所はここだって」
    「…………それだけ?」
    「それだけよ」
    「……そうか」
     青年は夜空を仰ぐ。また一つ、花火が上がって消えた。
     花火が一つ消えるたびに、誰かの夢が消えていくと言った者がいた。誰もが望んだとおりに生きられるわけじゃない。望んだとおりになれるわけじゃない、勝ち残れるわけじゃない。
     けれど、もし――
    「それじゃあ、」と、青年は言いかけて、一度止める。
     次に自分が彼女に問うであろう、その問いの答え。青年にはもうわかっていたからだ。
     だが、だからこそ、はっきりと聞きたいと彼は思った。もう一度口に出す。
    「それじゃあ、その時のイメージは今でも変わっていないんだね?」
     青年は問うた。
     そして、彼女はただ一言、こう答えた。
    「当たり前じゃない」と。
     それを聞いた青年の口元がフッと笑う。
     観覧車は頂上に達し、瞬間、下りに入った。花火の音が耳に響いている。
    「なぁシロナ、大事な話があるんだ」
     突然、青年はそんなことを切り出した。
    「えっ……?」
    「シロナに聞きたいことがあるんだ。どう思っているか」
     真剣な顔で青年は尋ねる。
    「どう思っているって……?」
     どうって、どういうことだろう。突然の彼の言葉に彼女は激しく動揺した。
    「ちょ、ちょっと待って!」
     まだ心の準備ができてない、と言うようにシロナが青年を制止する。だが、青年はそれを受け入れる様子もなく
    「やはりこういうのは君の気持ちをちゃんと汲んで、その上で……だな」
     などと言うので、彼女はさらに動揺する。
    「ちょ、ちょっと待ってアオバ、そういうことは準決勝が終わってから……!」
    「その、どう思うよ? 俺の………………ポケモンのことなんだけどさ」
    「……………………は?」
    「いや、だからその、ガブとかラミエルとかさ、お前、ああいうポケモン好みか?」
    「………………、……」
     一瞬後、青年は選ぶ言葉を間違えたと後悔した。
     係員によると、廻る観覧車のゴンドラの一つが激しく揺れた気がしたという。
     問題のゴンドラが下に戻ってきた時、男女が何やら言い争っていたらしい。特に女のほうがおかんむりで「バカ! アオバのバカ! バカバカバカ!」などと喚いていた。そして
    「私はあんたなんかに絶対負けないんだからッ!!」
     というようなことを叫んで、止める男をふりほどいて走り去っていったのだという。

    「じゃあお前はさ、俺にどうしろって言うんだよ」
     一人残された青年が呟いた。記憶が戻ってからもうずっと考え続けていたことがあった。

     夜空に花が咲く。花火の音が耳に響いている。ばらばらと響いてやがて消える。花が咲いて、咲いては散っていく。


      [No.2672] 第六話「おそろしい しんわ」 投稿者:No.017   投稿日:2012/10/16(Tue) 19:59:45     92clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:遅れてきた青年】 【ノガミさん】 【まったく】 【人を】 【バカにしていますよね

    その ポケモンの めを みたもの
    いっしゅんにして きおくが なくなり かえることが できなくなる
    その ポケモンに ふれたもの
    みっかにして かんじょうが なくなる
    その ポケモンに きずをつけたもの
    なのかにして うごけなくなり なにも できなくなる

    「おそろしい しんわ」より




    ●第六話「おそろしい しんわ」





     今のあなたにおあつらえむきの神話を思い出した。それはね――
     予選が終わった夜、神話をもっと聞かせて欲しいと願う自分に、彼女はそう前置きし、その神話を語りだした。どうして今、自分はそんなことを思い返しているのだろう。
     水音が聞こえる。
     彼の目の前に、巨大な質量を伴った水流が迫っている。
     すべてを飲み込むために、水は集った。


    「もどれ、ラミエル」
     青年がラミエルと呼ばれたサンダースを戻す。シロナによればラミエルは青年が町を旅立つとき、最初に貰ったイーブイなのだと言う。試合中終始、ラミエルは青年の指示を欲しそうにしていたのに彼にはどうすることもできなかった。
    「おい、アオバ!!」
     たくさんの聴衆が試合に注目している。その視線が注がれるその場所で一回戦の相手、カイトは叫んだ。
    「さっきから見ていればなんだその戦い方は!」
     彼の憤慨も尤もだった。的確な指示を出されずに戦う青年のポケモン達、優勝候補と目されるトレーナーの所有だけあって個々の能力は高いのだが、いまひとつ動きが芳しくない。戦況を客観的に見極め、的確な指示で動くカイトのポケモンに比べるとその差は明らかだった。
     カイトの手持ちが残り四体なのに対し、青年の残りは一体のみ。
    「お前、俺をバカにしているのか?」
    「違う」
    「だったらなんでポケモンに指示を出さない?」
     カイトの言うことは正論だ。青年だって、やれるものならとっくにやっている。だが、技を指示するにしてもうまくタイミングがとれないし、何よりどういう状況でどんな技を指示したらいいのかも彼には皆目見当がつかないのだ。
    「言っとくが、そんなんじゃ俺は倒せないぜ!」
     カイトが挑発するように言う。
    「そんなことはわかっている!」
     青年はイライラした様子で叫んだ。
    「この野郎、わかっているんなら、本気を出しやがれ!」
    「黙れ! やれるものならとっくにやっているんだよ。僕だって好き好んで記憶喪失やっている訳じゃない!」
    「何を言っているんだお前! 言ってることが全然わからねぇぞ!」
    「ああ、そうだろうな!」
     売り言葉に買い言葉である。ポケモンバトルそっちのけで、トレーナー同士のバトルが勃発した。おいおい、あんたたち何やっているんだよ? という感じでカイトのジバコイルがその行方を見守っていた。
     もっともこんなことはポケモンリーグの試合でもよくあることらしく、審判は冷静である。タイミングを見計らって、
    「アオバさん、次のポケモンを出してください。それとも棄権なさいますか?」
     と、言った。
    「いや、それは」
     棄権……そんなことやったら、僕はシロナに殺されてしまうと青年は思った。
     最後のモンスターボールを手に取る。
    「頼むぞ、ガブリエル!」
     祈るような気持ちでボールを投げる。ボールから赤い光が放たれ、ガブリアスが姿を現した。タイプが不利だと見て、カイトはポケモンを引っこめて交代する。青年のパーティ中最強と知っているだけに、さすがに警戒しているらしい。
     青年は、ガブリエルには期待していた。予選の時も一番張り切ってバトルをしていたのは彼女であり、その強さは自身の手持ちの中でも飛びぬけている。記憶を失っているとはいえ、今までのバトルからも、またシロナや他のトレーナーの言動からもそれが容易に想像できた。
    「マキヒゲ、おまえに決めた」
     対ガブリエル用にカイトが繰り出してきたのは巨体を幾重にも絡まるツルで覆い隠したモジャンボだった。
    「畳み掛けるぞ、パワーウィップだ!」
     先端が赤く染まった両手のようなツルが伸び、しなる。叩きつけて、ふっ飛ばすつもりらしい。だが、ガブリエルのことだ、ひきつけて攻撃をかわし、反撃に出るだろう……青年はそう思っていたし、相手だってそれくらいの腹積もりでいた。
     だが、ガブリエルは動かなかった。むしろ甘んじて攻撃を受け入れた。ムチ打つように音が響く。
    「え?」というカイトの声が聞こえた。
    「ガブリエル?」
     意外な展開に、青年も訝しげな声を上げる。
    「どうして反撃しない……?」
    「よくわからないがチャンスだ、今のうちに少しでもダメージを与えておくんだ!」
     カイトが叫ぶだが、ガブリエルは突っ立ったままだ。微動だにしない。モジャンボが連続攻撃をしかけて、ビシィ、ビシィとツルの音だけが響いている。
    「反撃するんだ。ガブリエル!」
     だが、ガブリエルは動かない。それは自分の主人の指示ではない。本当のミモリアオバはそんなことは言わないとでも言うかのようだった。
    「ガブリエル!」
     青年は何度も呼びかけたが状況は変わらない。ガブリエルはモジャンボの執拗な攻撃に耐えながら、睨みつけて、少し低い唸り声を上げるだけだった。待つものさえくればすぐさまお前を引き裂いてやる、と言うように。
    「あまり不用意には近づくなよ。距離をとってダメージを与えるんだ」
     と、カイトが指示を出す。
    「ガブリエル、どうしたんだ。せめて、かわすか防御くらいしてくれ!」
     そう言ったが、彼女は聞き入れなかった。執拗に命令を無視するガブリエルに、青年はある種の意地のようなものを見た。
    「一体どういうことでしょうか!? アオバ選手のガブリアス、動きませーん」
     実況がそんなことを叫んでいる。観客達がどうしたどうしたとざわめいている。
     そんな中、ガブリエルは平然として、なんともなさそうな顔を装っている。だが、ダメージは確実に蓄積しているはずだ。
    「反撃するんだ。ガブリエル!」
     だが、彼女は動かない。
    「ガブリエル!」
     動かない。
    「もういい、あんたには失望したよ」
     痺れを切らしたようにカイトが言った。
    「こうしてりゃ少しは本気になると思ったが、無理だな。シロナにゃ悪いが俺がとどめを差してやる。お前を倒して俺は上に行く!」
    「うそつけ、はじめからそのつもりだったくせに!」
     思わず、青年は突っ込みを入れた。
    「フン、わかっているじゃねぇか。だったら遠慮はいらないな!」
     カイトがモンスターボールに手をかける。
    「交代だ、イワトビ!」
     彼はモジャンボを引っ込めて、ポケモンを交代してきた。
     繰り出したポケモンはエンペルト。くちばしから伸びた王冠のようなツノが光る。ロビーで出会ったとき傍らにいたあのポケモンだ。おそらく、このポケモンが彼の一番のパートナーなのだろう。一気に勝負を決めるつもりだ。
    「なみのりだ!」
     戦線で大砲を撃つ命令をするように彼は言った。
     エンペルトの頭上で水流が渦を巻きはじめた。瞬く間に大きくなってゆく。
    「理由は知らないが、ヤツは動く気がないらしい。いいか、焦らずに大きいのをぶっぱなせ。めいいっぱい水が溜まったら、一気に叩き込んでやるんだ」
     鉄化面の皇帝の頭上で水塊が大きくなっていき、膨れ上がる。今にも零れ落ちそうだ。あんな量が決壊すればスタジアムは洪水に飲まれるだろう。ガブリアスは地面タイプ、ドラゴン属性もあるから効果抜群にはならないが、まともに食らえば戦闘不能は免れないように思えた。
     だが、その様子を目の前にしてもガブリアスが動く様子はない。ただすべてを受け入れるがごとくスタジアムに立ち尽くす。
    「逃げてくれガブリエル! そんなもの食らったら……!」
    「逃げ場なんてあるものか!」
     カイトが言うのと同時に水泡が決壊する。水流がガブリエルを飲み込もうと襲い掛かった。
     うねる水流、迫る波。水、水、水。
     青年はその様子をスローモーションでも見るかのように眺めていた。
    (ごめんシロナ。もう約束、守れそうにないよ)
     そう青年は心の中でそう呟いた。
    (頼みのガブリエルも戦ってくれないんだ。どうやら僕はここまでみたいだ)
     だが、そのとき、
    『だめよ!!!』
     どこからかシロナの声が響いた。彼女が客席で見ていて叫んだのか、あなたを倒すのは私だと聞かされ続けたことによる幻聴だったのか、それは彼にはわからなかった。だが、それは確かに聞こえていた。
    『ガブちゃんは待っているのよ。今でも諦めていない。あなたを待っている』
     どこからか声が響いている。
     待っているのか。君は本来の「僕」を待っているのか。
     こんなときになっても、待っているのか。
     ならば、指示を出さなくては。
    (だが、何と声をかけたらいい?)
    (本来の僕ならガブリエルに何と言うんだ?)
     水が迫る。
     次の瞬間、水流がその爪をガブルエルの肩に掛けたと同時に、青年は声を張り上げていた。

     世界がブラックアウトした。声を張り上げるそのほんの一瞬前のことだ。
     「それ」は、後々青年が語ったところによると、長い回想のようで、雷が走るような一瞬の出来事だったらしい。

     まず最初に青年の脳裏を横切ったもの。
     それは初日の予選の晩、屋台の席でシロナが語った神話だった。

     ――そのポケモンの眼を見た者、一瞬にして記憶が無くなり、還ることができなくなる。
     ――そのポケモンに触れた者、三日にして感情がなくなる。
     ――そのポケモンを傷つけた者、七日にして動けなくなり、何も出来なくなる。

     その伝承の名を『おそろしいしんわ』と言った。
     ――ね、記憶喪失のあなたにはぴったりでしょう?
     と、シロナが言った。なるほど、それは恐いな、と答えた気がする。
     水の流れる轟音が耳元に響いていた。乾いた大地が水を吸うように、青年の中を何かが満たしてゆく。
     ああ、そうだ。ミオシティの図書館で僕はこのはなしに出会ったのだ、と彼は思い起こした。
     まだ幼かった旅立ち前の自分は、内容を見て恐れおののいた。
     だが、同時に想像していた。
     この恐ろしいポケモンは、いったいどんな姿をしているのだろうと。

    『チガウ、それは私ではない』

     不意に、青年が知っている誰でもない声が頭に響く。
     同時に彼は暗い廊下を幻視した。頭の中におぼろげに描いていたあの場所を。
     下って、奥底に下って、その先で青年は見た。そして知った。
    『ハジメにあったのは混沌のうねりだけだった――』
     聞きなれぬ声がまた響く。
    『……はじまりのはなしには続きが在る。誰も知らない、忘れ去られた続きが』
    『ワタシは……――』

     刹那、二本の触手を持った影が脳裏を横切った。いや違う。あれは尾だ。あれは、たなびく二本の尾だ――――そうだ、僕は、俺は、あの時――――
     轟く水音が眠っていた記憶を呼び起こしていく。
     瞬間、すべてが繋がって、弾けた。

     暗いあの場所から視界が開け、彼の意識は明るい場所に在った。ゆらゆらとのどかに揺れている。月の光が眩しかった。天井では月光がキラキラと反射し、ワルツを踊っていた。光が、揺れている。
     不意に、行かなければと思った。
     もういかなきゃ、と。
     この場所はまるで生まれる前にいたようで、居心地がいいけれど。
     自分には、行かなければいけない場所がある。
     俺には、成さなければならないことがある――――だから!
     光の射す場所に向かって、彼は上り始める。光が揺れるその外に顔を出す。
     世界に飛び出す音が聞こえた。
     飛沫が、上がる。

     ――ああ、そうか。君なんだね。彼女の声を届けてくれたのは。

    「飛べ、ガブリエル!」
     待っていた。ずっと待っていた。青年の口から突然飛び出したその指示を、ガブリエルは聞き逃さなかった。水流が自分のすべてを飲み込む前に、弾丸のように空へと飛び出した。
     腕から生えるヒレのような翼が長く伸びる。ちょうど何かを抱えるように腕を身体に密着させると、彼女はジェット機のような形になった。
     聴衆と対戦相手、エンペルトの視線が空に吸い込まれていく。
    「そうだ……! それでこそミモリアオバだ!」
     と、対戦相手は呟いた。
     目の前で起こっている出来事は自分の敗北を意味するかもしれないのに、その顔はやっと会いたかった者に出会えた喜びに満たされていた。
    「来いよアオバ。見せてみろ。本来のお前を」
     まるでその瞬間のために自分はあったとでも言うようにトレーナーは云った。
    「剣の舞からドラゴンダイブ!!」
     迷いのない、澄んだ声が響き渡る。
     ガブリエルは空中で身体を回転させ加速し、エンペルトに突っ込む。スタジアムに轟音が鳴り響いた。審判が青年の側に旗を揚げる事になるまで、さほどの時間はかからなかった。


    「ガブ!」
     びしょ濡れのスタジアムに降り立って、青年は竜の元にかけ寄る。
     ノモセのサファリゾーンみたいにぬかるんだ地面で靴が泥だらけになったけれど、構わなかった。
    「ごめん、君達のことをずっと忘れていてごめん。全部思い出したんだ。もう忘れない。もう忘れたりしないから……」
     そう言って、傷だらけのガブリエルを愛しげに抱きしめる。
     がぶり。
     ガブリエルが、青年の肩を掴むと頭にかぶりついた。
    「いでででででっ!」
     と青年は声を上げる。


     暗い廊下を一人の男が歩いていた。モンスターボールの搬送トレーをもって、そこに乗せるボールの回収へと向かう。
     やれやれ、とノガミは思った。第一戦、もう逆転不能だと思って、もうこの監視も終わりかとせいせいしていたら、一体どういうことか。 対戦相手の残りポケモン四体を蹴散らして、逆転勝利――あれだけの力があるのなら、なぜ初めから……。
    「まったく、人をバカにしていますね」
     と、彼は呟いた。
     ふと、向こうのほうから足音が聞こえてきた。本人のご登場のようだ。
    「第一回戦突破、おめでとうございます」
     あまりおめでたくない顔でノガミはそう言った。
    「ありがとうございます」
     と、青年が答える。おや、とノガミは思った。
     なんというか青年の受け答えにどこか余裕というか貫禄のようなものがあったのだ。
     それは予選後の彼の雰囲気とはずいぶん違っているように思えた。
    「ポケモンの回復、よろしくお願いします」
     と、青年が続ける。ノガミの持つトレーに丁寧にボールを置いていく。
    「え、ええ……」
     訝しげな視線を投げるノガミ。それに気がついて、
    「どうかなさったんですか」
     と青年が尋ねてきた。
    「…………、……第一回戦、どうして最初からあの調子でいかなかったのですか」
     少し慌ててしまったのを悟られまいと、彼はとっさに先ほど浮かんだ疑問を投げかける。
    「そうですよね。どうして最初からああしなかったんだろう」
     ホント、危ないところでした、と付け加えて青年は笑った。
     ラミエル達には悪いことをしてしまった。なんでガブだけって怒っているかもしれないとも言った。結局、一番の核心部分はうまくはぐらかされてしまった。
    (まったく、人をバカにしていますよね……)
     と、ノガミは思う。
    「ところで、ノガミさん」
     突然、声のトーンを変えて青年は言った。
    「…………? なんです?」
    「ガブ達の回復が済んだら俺の部屋に連絡して欲しいんです」
    「どうして?」
    「だって、今はリーグ中でしょ。いろいろポケモン達と調整したいことや確認しておきたいこともあるんです。……それにね、ガブ達をかまってやりたいんですよ」
     と、青年は答える。
    「アオバさん、試合の時以外あなたのポケモンはこちらの管轄になるのを忘れたんですか? あなたの正式な身分証明はまだとれていないんですよ」
     これだから、常識のないトレーナーっていうのは。ノガミは不機嫌そうに返事をした。
    「ああ、それなら問題ないです」
    「……問題ない?」
    「ええ、そうです。問題ない」
    「理由がわかりませんね。あなたのカードはまだ見つかっていない」
     ノガミがそこまで言うと、青年はわかっていないなぁという顔をした。
    「ノガミさんに付き合って貰います。スタッフ立会いの下でしたらいいんでしょう?」
    「………………」
     ノガミはしばらく何も言わずに突っ立っていたが、戦意を喪失したようで、たしかに規則ではそうなっています、と答えた。
    (まったく、人をバカにしていますよね……)
     と、ノガミは改めて思ったのだった。


      [No.2671] 第五話「せんぼうと しっと」 投稿者:No.017   投稿日:2012/10/16(Tue) 19:58:44     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:遅れてきた青年

    3びきの ポケモンが いた
    いきを とめたまま みずうみを ふかく ふかく もぐり
    くるしいのに ふかく ふかく もぐり
    みずうみの そこから だいじなものを とってくる
    それが だいちを つくるための ちからと なっている という

    「シンオウの しんわ」より





    ●第五話「せんぼうと しっと」






     ポケモン協会は様々なものをその手に担っている。
     地方ごとに支部が存在し、ジムリーダーや四天王などの任命を行う。ポケモンリーグの開催やトレーナー用施設の管理なども協会の仕事だ。
     そして最も重要な役割が、ポケモントレーナーの統括である。ポケモンを取り扱うものは、そのほとんどが協会の発行したトレーナーカードを持ち、その情報は協会で保存・管理されている。無論、その情報がみだりに覗き見られることはない。……特別な場合を除いては。
    「ミモリアオバ、IDナンバー××××‐××××‐××××、最後にポケモンセンターを利用したのは一週間前、リッシ湖の上流に位置するこの場所です。そして、ここに現れるまでポケモンセンターの利用等の痕跡は残していない」
     薄暗い部屋にパソコン画面の無機質な光が漏れている。パソコンの画面を二人の男が覗き込んでいた。一人が画面を指差す。それは、シロナとやりあった受付のノガミであった。隣にはその上司の姿がある。上司の名前はカワハラと言って、とりあえず受付するようにとアドバイスしたのがこの男である。
    「ノガミ、お前って結構しつこい性格だったんだな。いや、わかっちゃいたんだけど」
     パソコンを操作するノガミの傍らでカワハラは呆れたように言った。
    「本人に間違いないじゃないか。さっさと彼にカードを再発行して仕事終わり、だろ?」
     カワハラはどちらかと言えば大雑把な性格だ。仕事は適当に、さっさと終わらせたいタイプである。
    「それはできません。年間に何件、他人のカードの流用や本人のなりすまし行為が起こっていると思いますか? 対応を間違えれば責任問題です。事には慎重にあたらねばなりません」
     一方のノガミはどちらかといえば几帳面で神経質なきらいがあった。
    「……お前ってさ、変なとこ几帳面だよな。少なくとも彼は本物だろ? ポケモンだってちゃんと言うこと聞いていたじゃない」
    「あれは暴れていただけです。なにせ一週間も預けっぱなしだったのだし、溜まっていたのでしょう」
    「へえ、なんでそう思うの」
     カワハラの質問に「昔リーグ出場した経験からですよ」と、ノガミは不機嫌そうに答えた。
    「それに変じゃありませんか。リーグ挑戦前に一週間近くポケモンを預けっぱなしなんて。普通は実戦さながらバトルさせて調整するとか。身体を休ませるにしたって、一週間は長すぎる」
    「人それぞれ……なんじゃないのか? そういうのって」
     カワハラはそう言ったが、ノガミはいいや絶対におかしいと言い張った。
     ミモリアオバの監視、ノガミはそれを青年に上司からの命令だと説明していたが、実際のところその役を進んで買って出たのは彼自身だった。
     気に食わなかった。ポケモンを一週間預けっぱなしにした挙句に、トレーナーカードも持たずやってきた。おまけにあんな綺麗な女の子に出場交渉までさせて。なんであんな情けないヤツが去年のベスト4なのだろう。
    「とにかく、トレーナーカードの紛失や拾得の情報があったら僕に回してくださいよ」
     と、ノガミが言う。「はいはい」と、カワハラが返事をした。
     正直、あんなやつ予選で負けてしまえばよかったのに、とノガミは思っていた。
     いや、案外彼は強いトレーナー全般に対してもそういう類の考えを持っているのかもしれなかった。強いトレーナーを見ると無性にイライラするのだ。特にそいつがぼうっとしていたり、どこか抜けていたりすると、そのイライラが一層強いものになる。つまり、ミモリアオバみたいなポケモントレーナーがまさにそれであった。
     だが、今日まで彼がそれをあまり表に出すことはなかった。自分がそうなる原因はおそらく自分の過去に起因しているのはわかっている。何より、そういった態度を表に出すのは、お世辞にも大人な対応とは言えないだろう。ましてや、ポケモン協会の職員として、いかがなものかと思う。
     だがあの時、受付でシロナとやりあって反泣きにされたあたりから、彼は湧き上がってくるその気持ちに抑制が利かなくなってしまった気がした。「四天王」という一種の権力を振り回されたことで、自分は協会職員だからとか、大人な対応をとるべきだとか、急にどうでもよくなってしまったのかもしれない。
    「だがな、あまり深くは首を突っ込むなよ。以前、一目惚れしたトレーナーの行方これで調べて、追い掛け回して、クビになった職員がいただろう」
     カワハラがそんな忠告をした。
    「ああ、ありましたねぇ、そんなこと。気を付けます」
     ノガミは素っ気無く返事を返す。
     そうだ、こんなことを調べてどうする? 身分がはっきりしないことをネタに嫌味の一つや二つ言ってみたところで、彼を舞台から引きずり降ろすことなどできないだろうに。一週間の空白が何だ。今に何らかの形で本人確認がとれて、カードが再発行されて終わりなんじゃないのか。実際のところノガミはそう思っていた。
     思っていたが、彼は調べることをやめることができなかった。

     シンオウリーグ、そこで優勝するのはこの地方のトレーナーの夢である。
     シンオウ中から腕に覚えのあるトレーナー達が集まり、強さを競い合う。それに加えて、他の地方からの参戦者もある。それだけに参加者の数は膨大だ。その人数を捌くために二日目、三日目と予選が続く。
     そして、予選の後に続くのが決勝トーナメントだ。シロナや青年のように予選程度なら軽々と抜けてトーナメントに行く者がいる一方で、多くのトレーナー達が予選でふるい落とされるのもまた事実だった。
     表彰台を夢見ても届かない。決勝トーナメントの進出さえ叶わない。ポケモンリーグはそんなトレーナーたちを毎年のように吐き出しているのだ。勝ち残る者達がいる。それ以上に消え行く者達がいる。決勝トーナメントのメンバーはそうして出揃うのである。
     選別されたトレーナー達。彼らはランダムに振り分けられ、対戦相手が決定される。
     作成されたトーナメント表の頂点を目指し、選ばれた者達の戦いが始まる。


    「よお、アオバ。アオバじゃないか」
     トレーナー宿舎のロビーで青年は呼び止められる。
     見ると、傍らにエンペルトを連れたトレーナーが立っていた。男性のトレーナーだ。少しばかり小太りしていて、体型が彼の連れているエンペルトに似ていなくもなかった。
     きょとんとする青年に男性トレーナーが続ける。
    「俺だよ。決勝トーナメントで去年対戦した」
     と、言った。トレーナーは当然、青年が自分を覚えていると思っているらしかった。
     弱ったな、と青年は思った。きっと自分が特殊な状況下に置かれているのでなかったら、覚えていたのかもしれないが。
    「…………」
     青年は無言のまま申し訳なさそうに彼を見た。
     少ししてトレーナーは、事態を、少なくとも今、青年の頭の中に自分という存在がないらしきことを悟ったらしい。青年の目にトレーナーの表情が険しくなるのが見えた。
    「そうかい。少なくとも俺はアンタの眼中にはないってことかい」
     と、トレーナーが言う。
     違う、そうじゃない。だが、青年は反論ができなかった。いや、今事情を説明したって、相手はバカにされただけと思うだろう。
    「……ごめん」
     と、青年は答える。相手が固まったのが見えた。エンペルトが横目に主人の様子を伺う。鉄仮面の表情は動かないが、目の動きが気まずい雰囲気を察している。
    「……さすがは去年のベスト4、今年の優勝候補は違うよな?」
     ショックを隠すように、精一杯の皮肉を込めてトレーナーは言った。
     シンオウリーグに出るトレーナーならチェックはしてるさ――昨晩屋台で男が言った言葉が思い出された。
    「アオバー! トーナメント表できたって!」
     後ろから、いかにも興奮した感じのシロナの声が響いてきた。後ろからとことことルカリオがついて走ってくる。
     だが彼女も、貰ってきたわよ、と意気揚々と言う前に、目の前にいる二人のトレーナーの気まずい雰囲気に気がついて黙った。あららー、やっちゃったわねー、といった感じで気まずそうな表情を浮かべた。記憶が戻らない限りいつかはこうなると思っていたようだ。
     おいおいしっかりしろよ、といった感じで彼女のルカリオが青年を見つめる。
    「君、シロナだろ」
     と、トレーナーは言った。
     ええ、とシロナが肯定の返事をする。
    「彼ね、俺のこと覚えていないんだって。ショックだよなー。シロナ、君はどうだった?」
     彼はそんな質問を投げかけた。すると彼女は少し困った顔をして笑うと、
    「私もね、忘れられちゃったの」
     と、答えた。
     青年はドキリ、とする。
    「初日に声をかけたけど、ぜんぜん私のこと覚えていなくて」
    「そうか、君もか。俺より上のほうまで進んだ君まで忘れられているんじゃ、俺を覚えているわけないな」
    「まったくひどい男よね。だから私、初日に改めて覚えてもらったわ」
    「それはひどい、な」
     シロナの意見にトレーナーが同意する。
    「でもね、今度はきっと勝ってみせる。そうしたらきっと彼は忘れないわ」
     彼女はそう付け足した。
     胸のあたりが重い。大きな重りを心臓に乗せているようだと青年は思った。
    「そうそう、トーナメント表出たわよ。あなたも貰ってきたらどうかしら?」
     と、シロナが続ける。そうするよ、とトレーナーは答えた。
    「イワトビ、行くぞ」
     鉄仮面のエンペルトに声をかけると、自然に去る口実ができたとばかりにトレーナーは足早にその場を動き出す。ぺたぺたとエンペルトが後を追った。一人と一匹の後姿がだんだんと遠ざかっていく。
     ああ……、と青年は思った。なにか取り返しのつかないことをしてしまった。見限られたような気がした。このままではいけない、とも。
    「待ってくれ!」
     気がつくと、彼は叫んでいた。
     もう表情は見えなかったがトレーナーが立ち止まる。
    「忘れていてごめん! でも覚えるから! シロナがそうだったように君のことも覚えるから! 君の名前は!?」
     すると、トレーナーが振り返るのが見えた。
    「カイトだ!」
     トレーナーは答えた。
    「いいか、忘れたなら今覚えとけ! お前を倒すかもしれない男の名前だ! いいか、忘れるんじゃないぞ。お前を倒したいと思っているのはそこの女だけじゃないからな!」
     そう言うとトレーナーとポケモンは去って行った。
     彼らを見送って青年はほっと胸を撫で下ろした。唐突にあんなことを口走ってしまったが、今の自分としては最良の選択だったように思えたのだ。
     ふと視線に気がついて、そちらの方向を見ると、シロナがニヤニヤしながら腕組みをして立っていて
    「これぞ、青春よね」
     と、言った。
    「別にそういうわけじゃない」
     青年はぶっきらぼうに答える。
    「でも、いい心掛けだわ。記憶喪失なりにトレーナーの自覚が出てきた感じ」
     シロナは本当に感心した様子でそう言った。
    「でも、彼には負けちゃだめよ? 私と当たるまで負けちゃだめだからね」
     だが、しっかりと釘は刺すことは忘れない。
     青年を倒し、さらなる高みと進む。それこそが彼女の目的なのだから。
    「…………最大限、努力はしてみるよ」
     あまり自信がなさそうに青年は答えた。


    「見てみろよノガミ、あのかわいい子とカード無しの彼、準決勝で当たるぜ」
     トーナメント表を入手した見たカワハラは、後輩の元へそれを持ち込むと、興奮気味に語った。いつのまにか二人の事は彼らの話題の中心になっていた。
     ノガミはカワハラから表を受け取る。見ると、二人の名前に赤丸が付き、一回戦のところまで赤線が延びていた。それを見てノガミは、
    「準決勝で当たるって、それは勝ち上がればの話でしょう。それまでには五回勝たなくてはならない。女のほうはともかく、ポケモン任せの彼はどうでしょう? 決勝トーナメントは予選ほど甘くない」
     などと、冷めた意見を述べた。
    「それよりカワハラさん、頼んでおいたものいただけますか」
     と、彼は続けた。
    「はいはい、まったく仕事人間だねぇ、君は」
     カワハラは呆れたように、諦めたように頼まれていたものを差し出す。
    「職務に忠実だと言ってもらいましょうか」
     と、ノガミが答え、受け取る。受け取った書類を手にして、くるりと椅子を回し、デスクに向き直ると、ざらっと内容を確認する。数字がいくつも並んでいる書類だった。
    「決勝トーナメント……か」
     ひととおりの数字に目を通した後、彼はそんなことを呟く。
     決勝トーナメント。表彰台へと続く一本道。だが、その道に必ずしも出場したいものが立てるわけではない。選ばれた者のみが出場できる。それが決勝トーナメントなのだ。
     それはかつて、自分のたどり着くことのできなかった場所。それを青年は軽々と乗り越えて行った。それを可能にしたのは青年の主力、ガブリアスだ。
     ガブリアス。そもそもポケモンの種類からして因縁めいているのだ……と、ノガミは思う。眼球がせわしなく左右に動き、数字の羅列を追っている。
    「そうさ、決勝トーナメントは甘くない」
     と、彼は再び呟いた。
     あれから少しばかりの日数が過ぎたが、青年のカードは未だ行方不明のままだ。


     青年はシロナからトーナメント表を受け取る。
     頂点の下に大樹が根を張るように線が伸び、その下にいくつもの名前が書き込まれている。その中から彼らは自分達の名前を探す。
     ふとその横で、ルカリオが彼の主人をつっついた。こんな時になんなのよ、とシロナが言う。ルカリオが二人の背後のほうを指差したが、トーナメント表の根っこを目で追うのに夢中な彼女はそちらを見ることもせず、ほとんど相手にしなかった。
     一方、ルカリオの示す方向をちらりと見た青年は、何かの影がふっとロビーのガラス窓の角に消えるのを見た。
     それは、彼の目に二本の触手のように見えた。先端が平たく、その真ん中がきらりと光ったような気がした。
    (なんだ、あれ……)
     青年は怪訝な表情を浮かべる。
    「あ! あったわよ、アオバの名前」
     青年が影の正体について思案している間に、シロナは樹形図の中に青年の名前を発見したようだ。青年の関心がそっちに移ったのを見て、その場所を指差す。次に自分の名前と青年との距離を見て、さっそく何回戦で当たるかの見当をつけ始めた。
     影のことはいったん忘れて、青年もトーナメント表に目を通す。まずは自分の場所を確認する。次におのずと、目線はその隣に、彼の対戦相手の名前のほうに注がれることになった。
     青年の名前の隣に記された一回戦の対戦相手、そこにあった名前は、先ほど青年に名乗ったあのトレーナーの名前だった。
     ――いいか、忘れるんじゃないぞ。お前を倒したいと思っているのはそこの女だけじゃないからな!
     トレーナーの台詞がリフレインする。
     予選のようにあっさりとはいかない――そんな予感がした。
     そして、青年の予感、ひいてはノガミの予想は当たってしまった。
     ポケモンに指示を出すことのできない彼は、トーナメント一回戦から苦戦を強いられることになったのだ。


      [No.2670] 第四話「やくそく」 投稿者:No.017   投稿日:2012/10/16(Tue) 19:57:53     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:遅れてきた青年】 【ノガミさん登場

    ひとと けっこんした ポケモンがいた
    ポケモンと けっこんした ひとがいた
    むかしは ひとも ポケモンも おなじだったから ふつうのことだった

    「シンオウの むかしばなし」より





    ●第四話「やくそく」





     もはや勝利を確信していた。
     相手の手持ちは残り一体、彼女の手持ちは残り四体。スタジアムの聴衆のほとんどは彼女の勝利を疑わなかった。だが、対戦相手が最後の一匹を放って、その状況は一変した。
     スタジアムを縦横無尽に駆け回り暴れまわるそれは、彼女のポケモン達を蹂躙していった。
     「それ」につけられた名前を、ガブリエルと云った。

    「ねえ、あなた来年の予定は?」
     少々敵意を含んだ声が聞こえて、自分のポケモンをねぎらおうとスタジアムに下りてきていた青年は顔を上げる。声をかけたのは同じく、ポケモンに声をかけるべく下りてきた対戦相手のトレーナーだった。そして、対戦相手は短刀直入に言った。
    「来年もシンオウ大会に来て!」
     金髪の長い髪がたなびく。動くにはちょっと邪魔そうだった。
    「私はその時こそあんたを倒す。いいわね! 絶対よ! 逃げるんじゃないわよ!」
     ……逃げるなんて言いがかりもいいところである。いやそれ以前に、いきなりな上に、相手の都合も考えないむちゃくちゃな要求である。
     だいたい、青年に来年もシンオウ大会の出場予定があるかもわからない。別の地方にだってポケモンリーグはあるのだから。彼女が前置きで予定を聞くだけ聞いたのはそのためだ。もっとも予定が入っていたら変更させる腹づもりだったのだろうが。
     だが、青年は、彼女の要求をあっさりと受け入れた。
    「わかった」
    「……………………へ?」
     一瞬で要求が通り、鼻息を荒くしていた彼女は拍子抜けする。
    「いいよ。来年の予定とかないし」
    「え、いいの。そんな簡単に決めちゃって」
     思わず彼女はそんな言葉を返してしまった。
    「だって君がそう言ったんじゃないか」
     と、青年が言う。
    「そりゃそうだけど、なんで? あなたくらいのトレーナーなら他の地方の大会で実績作るって選択肢だって」
    「うーん、そうだなぁ。トレーナーやってると、来年こそは負かすとか、今度会う時は負けないとか、挨拶代わりによく言うけどさ、時と場所まで指定してくるのって珍しいじゃない? だから」
    「……それってよくわからない」
    「有言実行、思い立ったが吉日ってことだよ。これも何かの、」
     がぶり。
     縁だよ、と言う前に、青年の後ろにいたガブリアスが彼の頭にかぶりついた。
    「いででででで!」
     と青年が声を上げる。
    「ちょっと! 大丈夫なの!?」
     突然のことにシロナは慌ててしまう。
    「あ、大丈夫、大丈夫」
     彼女に言わせればあまり大丈夫そうに見えなかったが、青年はいつものことだと説明した。
    「ガブはいつもこうなんだ。これでも俺の頭が割れない程度には加減してくれているんだよ。彼女なりの愛情表現だと俺は理解している」
    「え、彼女………?」
     女性トレーナーは青年の頭に夢中のいかついガブリアスの顔を見る。どうみても乙女には見えなかった。何? あんた誰? とう感じで、お世辞にも人相がいいとは言えない顔が彼女を見下ろす。
    「よく誤解されるけれど、ガブリエルはメスなんだ。フカマルとその進化系の雌雄の見分け方は背中のヒレ。切れ込みがあるのがオスで、ないのがメス」
     ガブリエルのよだれまみれの頭で青年は説明した。
    「まぁ、対戦表で見ていると思うけど、俺はアオバ。君はたしかシロナさんだったよね?」
    「……シ、シロナでいいわ」
     どういうわけか、青年から目線を逸らして彼女は答えた。
     長髪のキザな格好したスカした奴、どうせなんだかんだで理由をつけて、クールに断るのかと思っていたけど……。なんだ、わりといい奴じゃない、などと彼女は考える。
    「……? そうかい、じゃあそう呼ぶよ。よろしくシロナ」
     と、青年が言った。


    「来るわよ、リオ!」
     シロナが叫ぶ。ポケモンが軽やかに攻撃をかわした。獣のそれの形をした掌を合わせると中から球体が現れる。エネルギーがその中で渦を巻いていた。それが宙を舞う相手に放たれ、炸裂する。ルカリオの波導弾が決まった。
    「ムクホーク戦闘不能! 勝者、赤コーナーシロナ選手!」
     歓声が上がった。リオと呼ばれたルカリオと
    そのトレーナーはパチンと互いの掌を合わせ、鳴らす。手にしたのは決勝トーナメントへの切符だ。
     もう少しだ。もう少しで彼に手が届く。もう
    去年のような負け方はしない、とシロナは心に誓う。
     その足で立ちたい場所があった。
     だから、超えなければならないものがある。
     青年を、ミモリアオバを超えなければ、前に進めない。彼は、彼女にとって超えるべき対象。
    彼女が青年と再会を約束したのはそのためだ。あの頃も、今もそれは変わっていない。
     けれど――その先にもうひとつ、彼女には決めていることがあった。


    「それでは私達の決勝トーナメント進出を祝って、カンパーイ!」
     夕刻、会場の周りに立ち並ぶ屋台の一角で彼らは祝杯を挙げた。
     祝杯と言っても別に酒を飲むわけではない。彼らは未成年なので、酒みたいなジュースで代用した。モモンなんとかとか、モーモーミルクなんとかいろいろ種類がある。出された飲み物
    をぐっと飲み干すと、
    「ぷはー! やっぱりバトルの後はこれに限るわね!」
     と、シロナが言った。青年はその様子を見て、仕事帰りの会社員に似ていると思った。
     ポケモンリーグ、それは祭である。
     観客は何もバトルだけを見に来ているわけではない。飲み、食べ、歌い、買い物をしてこの祭を満喫するのである。客を満足させるため、あらゆるアミューズメント施設が準備してある。
     その中でもさいたるものがイベント会場全体を見渡せる観覧車だ。今二人がいる屋台からもそれが見える。商売とはいえよくやるなぁ、と青年は思う。
    「へい! ポケモンリーグ盛り合わせ二人前お待ち!」
     店主がドンと二人の前に皿を置いた。「ポケモンリーグ盛り合わせ」なんて大層な名前がついているが別になんてことはない。串焼きだの、なんとかだの、飲み会に出るような盛り合わせである。とりあえず、二人ともお腹が空いていたので、青年の頭にかぶりつくガブリエルのように、串にかぶりついた。
    「おう、姉ちゃん、いい食べっぷりだねぇ。今日は彼氏とバトル観戦だったのかい?」
     と、ドータクンの顔に似た店主が尋ねる。
    「いいえー、今日はポケモンリーグの予選に出ていたんです。あ、別に横のは彼氏とかそんなんじゃないですよー。むしろライバルですよ、ライバル」
     口をもごもごさせながら、シロナが答えた。ちょっと顔が赤くなっていた。青年は、おかしいなぁ、ノンアルコールのはずなのに、などと考えながら、自身も口にせっせと食べ物を運ぶ。
    「ふーん、隣のにいちゃんもポケモントレーナーかい」
    「ええ、まぁ」
     と、青年は答える。つっこんだ質問をされたらいやだなぁという顔をした。
    「よし、俺が結果を当ててやろう!」
     と、店主が言う。
    「ずばり、二人とも予選通過だ。そうだろ!」
    「あたりー」
    「そうだろうとも、私はこれを外したことがないのが自慢なんだ」
    「でも、おじさん、私達の話聞いていただけでしょー?」
     と、シロナが言う。すると店主は、
    「話なんてきかなくてもな、顔を見ればだいたいわかるんだ。俺は毎年ここに屋台出しているんだけどな、いろんなのが来るよ。勝ったやつも負けた奴も、あとポケモンリーグの職員なんかもな。毎年出場トレーナーとか観客のマナーが悪いとこぼしているよ」
    「なるほどー、じゃあ、あの木箱みたいのを被って、飲んでいる人はー?」
     シロナはグラスの尻のほうで、左のほうに座っている酒を飲んでいるらしい人物を指した。
     ちょうど屋根になる一枚の板を二枚の板が壁になって支えていて、人が一人座ると周りからも顔が見えないし、中の人も周りの顔が見えなくなる。孤独を愛する人用の簡易版プライベートルームである。
    「おい、シロナ、」と、青年は制止したが、店主は「いいんだ、いいんだ」と言う。
    「でも……」
    「大丈夫だ。そろそろ人恋しくなる頃だから」
     すると、木箱みたいな簡易版プライベートルームを外し、中からどよーんとした顔の男が姿を現した。表情から察するには予選落ちだろう。
    「ひどいなぁ〜、そりゃあ、ぼかぁたしかに予選落ちですけどー」
     と、言った。しかし別に怒っている風ではなさそうだった。
     ほらな、という感じで店主が青年に目配せする。彼はほっと息を吐いた。
    「お前さんの場合、リーグの挑戦といってもほとんど道楽みたいなもんだろ」
    「あ、それを言っちゃーおしまいですよぉ。僕だって出るからには勝ちたいし、優勝したいに決まってる」
     男がそう言って、店主は「毎年こうなんだ」と付け加えた。
    「その顔だとおたくらは予選通過かな」
    「まーね。でもそれ、聞いてたんでしょ」
     と、シロナがツッコミを入れる。
    「あ、やっぱりばれたかぁ」
    「だってあなた、さっきからそれかぶっていたじゃない。私達の顔なんかみえないでしょー」
     と、シロナは言った。やっぱりシロナの顔は赤かった。おかしいなーノンアルコールのはずなのに、と青年はいぶかしげに自分の握るグラスを見る。
    「けど、いいなぁ」
     と、男は言った。
    「君達はまだ戦えるんだ。僕は来年までおあずけだよ」
     その言葉に青年は少しドキリとした。
     ……そうだ、自分が勝ったからには負けた者がいるのだ。シロナに言われるままに、ポケモン達に全部丸投げして、なんとなく参加してしまったが、本当にこれでよかったのだろうか。自分が思っていた以上に、予選突破とは重いものなのではないだろうか? そんなことを考える。
    「あれー、彼女の隣にいるの、もしかしてアオバ君?」
     突然、男は青年の名前を口にする。え? といった表情で青年は顔を上げた。
    「ガブリアス使いのアオバ、去年のベスト4、今年の優勝候補の一人だ」
    「……よく、ご存知なんですね」
     と、青年が言うと
    「シンオウリーグに出るトレーナーならチェックはしてるさ」
     と、男は答える。
    「シンオウリーグに出るトレーナーならチェックはしてる、かぁ。いいわね、私もそんな風に言われてみたい」
     続けてシロナが赤い顔で彼を見て言った。
    「君のポケモンはどれも強いけど、ガブリアスは別格だ。君のガブリアスのようなポケモンを持っていたら僕も、決勝トーナメントに行けるのかなぁ」
    「強いポケモンは手に入れるものじゃないわ。自分で育てるものよぉ」
     と、シロナが反論する。
    「私は自分で育てたポケモンでガブちゃんを倒してみせる」
     と、続けた。
    「ごめんごめん、言い方が悪かったよ。でもね、僕のような決勝トーナメントに届かないようなトレーナーにはさ、やっぱりアオバ君のガブリアスは憧れだよ、なんていうかさ……」
    「なんていうか、なんですか?」
     青年は思わず聞いてしまう。
    「嫉妬をかきたてるんだ。君のガブリアス、その強さがトレーナーの嫉妬をかきたてる」
    「………………」
    「そういうものなんだ」
     青年はそれ以上何も言わなかった。まだ思い出せない自分自身の存在、それがずいぶんと重い様に感じた。
     自分は何をやっているのだろう。何も思い出せないまま、流れに身を任せるだけじゃないか。手に握るグラスに顔がおぼろげに映りこんでいた。焦りの色が見える。
    「あーもう、辛気くさい話はやめにしましょうよー。そうだ、何かおもしろい話でもしましょ」
    「そうだよねー、そうしようか」
    「そうだ、ガブちゃんで思い出したんだけどねー、去年、屋台で飲んだ時にアオバが変なこと言ったのよ」
    「え、なんですか、なんですかー」
    「もし、ポケモンと結婚できるなら、俺はガブリエルと結婚したい」
     ぶっ。飲んで落ち着こうとコップに口をつけていた青年が吹き出す。
    「まてよ! シロナ、君は僕が記憶喪失だからってからかっているのか。いくらなんでも僕はそんなこと言わないと思うぞ!」
     口の周りを急いでぬぐうと、青年が主張する。ポケモンリーグの前で、自身というものを意識してから、はじめて声を荒げた気がした。
    「アオバ、怒ってるの?」
    「……いや、なんでもない。ごめん。気にしないで話進めていいから。それで?」
     取り乱しすぎた、と反省し、仕切りなす。
    「ほら、シンオウの昔話にあるじゃない。昔は人もポケモンも同じだったから、ポケモンと人が結婚していたって話、あなたそれを引き合いに出して、そんな冗談を言ったのよ」
    「そうかい。冗談ならよかった」
    「結婚して、毎朝、頭かじられて起されたんじゃたまらないものね」
     神話か、と青年は思い直した。彼女からはじまりのはなしを聞いて、反芻したとき、何かを思い出せたような気がした。最も、意識がもうろうとしていて、何を思い出したのかは忘れてしまったのだが……。
     でも、それならば。
    「その話なら僕も知っていますよ。友達はそれができるならミミロップと結婚したいって言ってた」
    「ミミロップ? ホント、男の人ってミミロップが好きよねー」
    「いやぁ、だってかわいいじゃないですか。ね、君もそう思うだろ、アオバ君」
    「いや、僕は別に……」
    「やだー、顔赤いわよー。アオバー」
    「ミミロップには興味がない、僕はサーナイト派だ。……それより、シロナ」
     と、青年は切り出す。もちろんサーナイト派というのは冗談である。
    「記憶を戻す手立てになるかもしれない。もっと神話や昔話の話をして欲しい」
    「……わかった、いいわよ」
     と、シロナが答えた。
    「今のあなたにおあつらえむきの神話を思い出した。それはね――」
     グラスを片手にシロナは語りだした。夜が更けていく。


     そんな感じでだらだらと三人はしゃべり続けて、すっかり酔いつぶれたシロナを抱えながら、青年は宿泊施設に戻ることになった。おかしいなーノンアルコールだったはずなのに、などと思いながら。
    「今日は楽しかった……。アオバがまだ思い出してくれないのは癪だけど……でも、今日は楽しかった」
     青年に寄りかかったシロナが言う。
    「……そうかい」
     と、彼は返事をした。
    「去年あなたに会って、短い間だったけど一緒にいるのは楽しかった。だから、私が来年も来るように言ったのは……最初は勝負するためだったけど、たぶんそれだけじゃなかったのよ」
    「そうかい」
    「ずっと、大会が開いていればいい。こんな時間がずっと続けばいいのに」
     シロナはそこまで呟くと、あとの言葉はしどろもどろになって、やがて眠ってしまった。
     青年がふと、後ろを振り返ると祭に賑わう夜の光景が見える。まだ明かりを消す屋台は少なく、夜はまだまだ続くようだった。その光景の少し外れに、あの観覧車も見えた。骨格につけられたイルミネーションが夜の空で点滅を繰り返している。

     ――シロナ、知ってるか? 昔、人はポケモンと結婚できたんだぜ。
     ――なにそれ?
     ――人と結婚したポケモンがいた。ポケモンと結婚した人がいた。昔は人もポケモンも同じだから普通のことだった。つまり、俺とガブも時代が時代なら結婚していたかもしれないわけだ。
     ――そうやって毎朝、頭にかぶりつかれて起される結婚生活を送るわけ?
     ――それはちょっといやだな、やっぱり今の関係がいいや。

     その足で立ちたい場所があった。
     だから、超えなければならないものがある。
     あの日、彼女は青年に約束を取り付けた。
     青年を超えなければ、次に進めない。彼女にとって、ミモリアオバは超えるべき対象。
     だから約束した。来年も必ず――と。あの頃も、今もそれは変わっていない。
     けれど、それは単純に青年を倒すための約束ではなくなっていたのだ。


    「やあ、いらっしゃい。今夜は残業かい?」
    「まぁ、そんなところです」
     シロナ達三人がいなくなった後の屋台、ドータクンに似た顔の屋台の店主に聞かれ、客はそう答える。
    「その顔は何かあったね」
    「……わかりますか。やっぱりあなたには敵わないな。実は今日、」
     受付に男女の二人組が乗り込んできて――、客はそんな話をはじめた。
     夜はまだまだ長い。愚痴をこぼす時間はいくらでもあった。リーグの観客のマナーが悪い、出場トレーナーのマナーが悪い。話のネタはいくらでもある。
    「そういえば、君と初めて会ったのもこんな夜だったなぁ。もうほとんどのトレーナーがお腹を満たして、宿舎に帰ったころ君がやってきて、もうトレーナーは引退すると言った」
    「その話はしないでくださいよ」
    「あの顔は、予選で負けた顔だったね」
     そう、店主は言って、グラスを差し出した。
     客はそれを掴むと、一思いにぐいっと飲み干した。


      [No.2669] 第三話「はじまりの はなし」 投稿者:No.017   投稿日:2012/10/16(Tue) 19:56:29     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:遅れてきた青年

    はじめに あったのは こんとんの うねり だけだった
    すべてが まざりあい ちゅうしん に タマゴが あらわれた
    こぼれおちた タマゴより さいしょの ものが うまれでた
    さいしょの ものは ふたつの ぶんしんを つくった
    じかんが まわりはじめた
    くうかんが ひろがりはじめた
    さらに じぶんの からだから みっつの いのちを うみだした――

    「はじまりの はなし」より





    ●第三話「はじまりの はなし」





     スタジアムに咆哮が響き渡る。迫力のバトルに聴衆の歓声が上がった。
     いざ始まってみれば心配などまるで不要だった。バトル場の地面を踏んだガブリアスは、まるで鬱憤を晴らすかのように、ここぞとばかりに暴れまくった。
     地震にはじまり、ドラゴンダイブ、仕上げにギガインパクト、数々の大技を繰り出し、並み居るポケモン達を次々とノックアウトしていく。
    「ハガネール戦闘不能! よって勝者、青コーナーアオバ選手!」
     不幸にも、そんな暴れ竜の餌食になってしまった鉄蛇を踏んづけて、アオバのガブリアス――ニックネーム、ガブリエル――は、ガッツポーズのような、バンザイのような姿勢をとって勝利の雄たけびを上げた。
    「なんとアオバ選手、指示も出さずにストレート勝ちです。さすがは前回のベスト4といったところでしょうか。今大会の優勝候補の一人と目されているだけはありますね」
     何の事情も知らない実況は、音符ポケモンのペラップみたいな声で、そんなことをペラペラとしゃべっていた。
     実際のところ、青年はただ立っていただけだったのだが。
    「もどれ。ガブリエル」
     そ知らぬ振りを決め込んで、彼はボールにガブリアスを戻し、やれやれといった感じで控え室に続く廊下に引っ込んでいった。
     ――試合に出て何も思い出さなかったら、最悪あなたは立っているだけでいい。
     ――大丈夫よ。あなたのポケモン、特にガブちゃんは大抵の相手には勝てるから。
     そう助言したのは他でもないシロナであったが、本当にその通りになってしまった。
     強いんだな、僕のポケモンは。
     そんなことを考えながら、青年はガブリエルの入ったモンスターボールを見つめる。もっとも、まだ何も思い出せなかったが。
     けれど、助言をしてくれた彼女のためにも、頑張っているコイツのためにも、少しでも早く思い出してやりたい。青年は自分の中にそんな気持ちが芽生え始めているのを感じていた。
     廊下に引っ込むと、すぐに階段があり、そこを下ると長い廊下が選手控え室に向かって続いていた。彼は階段を降りると、シロナが待つ控え室に向かって歩き出した。
     観客達が熱狂している外に比べると、ずいぶん静かだった。聞こえてくるものといえば自分の足音くらいで、外からの余計な音はシャットダウンされているようだ。ずいぶんと防音が行き届いていると見える。きっと、出場前のトレーナーが落ち着けるようにとの配慮なのだろう。
    「…………」
     ……そういえば。
     降って沸いたように彼の頭の中に何かが浮かんだ。
     ここに来る前、自分はこんな場所を歩いてはいなかったろうか? ふと、彼はそんなことを思った。そこは静かな、静かな場所で、ちょうどこんな所だった。そんな気がしたのだ。
    (あれは、どこだっただろうか……?)
     何かを考えるしぐさで、彼は下のほうに視線を注ぎながら、足を進める。何かが思い出せそうな気がした。
    「アオバさん、お疲れ様です。モンスターボールをここに」
     不意に声がかかった。青年は顔を上げると思考をストップさせる。
     見るとポケモンセンターで使うモンスターボールを搬送するトレーを持った眼鏡の係員が、青年の前に立っていた。
     彼は内心、何か思い出せそうだったのにタイミングが悪いな、などとも思ったものの
    「ああ、ありがとう。試合と関係者の目の届く時以外は……そういう約束でしたよね」
     と、返事をした。
    「て、あれ? あなたはさっきの受付の人じゃ」
     眼鏡の係員を見て青年は続ける。トレーを持っている係員、それは先程シロナとやりあったあの受付だったのだ。
    「ご紹介が遅れました。私、ノガミと申します」
     と、眼鏡は自己紹介した。少しシャレた感じの縁がきらりと光る。彼は青年を観察するような眼差しを向けて
    「あなたの出場を許可した先輩から、私の責任であなたの様子を確認するように言われまして」
     と、彼は続ける。先輩とはきっと、あのとき彼に助言した上司らしき人物のことを言っているのだろう。
    「言うなれば、貴方はまだ仮のアオバさんなのです。正式な確認がとれるまでは、ね。前回のベスト4だろうが、四天王の親戚だろうが規則ではそうなのです」
    「なるほど、監視付き……という訳ですか」
     さっき散々シロナにやられた腹いせなのかなんなのか、ノガミのやけに挑戦的な物言いに、青年は少々むっとしてそんな言葉を返した。
    「まぁ、そんな顔をしないでください。ポケモンを回収するのは、回復ももちろんのこと健康状態チェックなどの意味もあるのです。私が責任を持って行いますから」
     と、ノガミが返して、
    「……それに、リーグ運営サイドは貴方の活躍に期待しているんですよ。さっきのストレート勝ちは見事でした。基準点をとったことによる予選通過、おめでとうございます」
     青年の表情を読んだのか、そんな言葉を付け足した。
    「ご覧になっていたのですか」
     と、青年が尋ねる。彼は「ええ」と肯定し、
    「ですが、あまりらしくないバトルでした。去年は違った。常に戦況を把握して、冷静に指示を加えておられた。今のあなたはやはり仮のアオバさんだ」
     などと評価した。
    「……」
     この人、やけに詳しいじゃないかと青年は思った。もっとも今、自分は記憶喪失中であり、自分のバトルスタイルもへったくれもないわけなのだが……。そうか、本来の自分はそんな戦い方をしていたのか、などとも考えた。
    「……こっちもいろいろ事情がありましてね。まぁ、僕のポケモンをよろしくお願いします」
     僕の、という単語に若干の違和感を覚えながら、青年はそんな答えを返す。
     それにしてもこいつ、どうしてこんなに挑戦的なんだろう? そんな疑問を抱きつつも、彼はノガミが持つトレーにモンスターボールを丁寧に置いた。


    「やったわね、アオバ! ストレート勝ちじゃないの」
     控え室の扉を開けるとシロナが待っていて、開口一番にそう言った。
    「それにしてもガブちゃんずいぶん強くなっちゃって……。去年敗退してから、相当努力したんだね。私のポケモンだってこの一年ずいぶん修行したつもりだけど油断できないわ」
     そう彼女は続けたが、青年が少し難しそうな表情をしているのを見て、話を止めた。
    「そっか。まだ記憶が戻ってないのよね。修行の話なんかしたってわからないか……去年この大会に出ていたことも、私と対戦したことも全部忘れちゃっているんだものね」
    「対戦……したのですか。僕はここでシロナさんと」
     と、青年は尋ねる。
    「やだ、シロナでいいわよ。あなたずっとそう呼んでいたじゃない」
    「そうか、僕は君をそう呼んでいたのか…………じゃあ、シロナ」
     本当に実感がないらしく、青年はいいのかなといったおももちで彼女の名前を呼んで
    「やっぱりこういう場合、礼を言わなくちゃいけないよな。君のおかげでなんとか予選通過できたよ。ありがとうシロナ」
     と、礼を言った。
    「い、いいわよ。そんなの……」
     するとどういう訳か、少しばかり頬を赤らめて、彼女は短く返事をする。
    「いや、きっと記憶のある僕だったら君に礼を言うのだと思う。だから……」
     さっきまでとはずいぶん違う感じの彼女を目の当たりにして、青年は少し戸惑ってフォローするように付け加えた。
    「でも、僕が本当に優勝候補なら、ライバルを潰すいいチャンスだったわけだろ。シロナが僕の出場にこだわる理由は何?」
     そうして、さらに青年は続けた。ここの部分こそ彼の一番聞きたい部分だったからだ。
    「だ……だって、約束したじゃない」
     さっきと同じ調子でシロナは返事をする。
    「約束?」
     と、青年が尋ねると、はぁ、と彼女はため息をついた。
    「あなた本当に何も覚えていないのね。去年の決勝トーナメントで私、アオバに負けたのよ。あんまり悔しかったから私、来年も絶対シンオウ大会に来い、そのときこそあんたを倒してやるって言ったわ。そうしたらアオバ、わかった来年も絶対に行くからと言ってくれて」
     そこまで言うと、彼女は聞かなくても勝手に語りはじめる。
     その後の試合も一緒に見ていたこと、その間にいろいろな話をした事。自分のポケモンの話、旅の中で遭遇した出来事……そのほかにも沢山の話をして過ごした事。大会が終わって別れた後もときどき連絡取り合っていた事。
     それを語る彼女はどこか恥ずかしそうで、けれどとても嬉しそうで、先ほど出会ってから発破をかけられてきたばかりだった青年は、こんな一面もあるのだと意外に思った。
    「でもね、私が一番好きだったのは、あなたが話してくれたシンオウの神話や昔話」
    「昔話……?」
     意外な話題が出て、青年はそう聞き返す。
    「初めにあったのは混沌のうねりだけだった。すべてが混ざり合い中心にタマゴが現れた。零れ落ちたタマゴより最初のものが生まれ出た」
     シロナは唱えるように言った。
     それは「はじまりのはなし」と呼ばれるものだ。シンオウが、この世界がはじまるときの話だ。遠い、遠い日の昔話――――神の時代の話。
    「最初のものは二つの分身を創った。時間が廻りはじめた。空間が拡がりはじめた。さらに自分の身体から三つの命を生み出した」
     と、彼女は続きを唱える。
    「二つの分身と三つの命……?」
    「二つの分身は、それぞれ時間と空間を司るポケモンとされているわ。ハクタイシティにある銅像のポケモンはその姿を今に伝えている。三つの分身は心を。それぞれ感情、知識、意志を司っているのですって。それらしい壁画が私の故郷、カンナギタウンにあるの」
    「詳しいんだね」
    「……全部あなたが教えてくれたことよ。あなたの故郷ミオシティにはシンオウ一大きな図書館があって、旅立つ前はいつもそこに通っていたとあなたは言っていたわ。たくさんの神話と昔話に触れて、あなたは育った」
    「ミオシティ? ……そこが、僕の故郷なのか」
     ミオシティ、海辺の町である。町のシンボルとも言える跳ね橋の下をいくつもの船が行き来している。そして、もう一つのシンボルがシンオウ地方最大規模の大きさと蔵書数を誇るミオ市立図書館。特にシンオウの民俗学の蔵書収集には力を入れている。
     青年は頭の中で知識としてはそんな情報を探し当てた。だが……自分がそこで生活し、図書館に通って、本を読んでいたという実感。それが伴わなかった。
    「もしかして、何か思い出した?」
     少しばかり考え込む青年を見て、シロナが尋ねる。
    「いや」と、彼は答えた。
    「でもわかったことがある。どうやら僕の中にはシンオウの地理だとかポケモンの名前とか、そういうものはある程度知識としてあるらしい。現に対戦相手のポケモンやタイプが何かくらいは見ればわかるんだ。けれど、その後が続かない。知識と行動が結びつかない。実感が沸かないんだ。僕が僕たる実感が」
     そう言って青年はじっと手を見た。本当ならその手に握っていたであろうモンスターボール。今は手元にない。今の自分にはその資格がない。
     ――あなたは仮のアオバさんなのです。
     ふとノガミが放ったあの台詞が頭をよぎった。
     不安なものだ。自分がないというものは。せめてカードを持っていたなら少しは安心できたのだろうか。
    「大丈夫、あなたは思い出すわよ。だって記憶がなくなってこの場所に、約束の場所にやってきたじゃない。それは身体が覚えているからよ。少し思い出すのに手間取っているだけ」
     言い聞かせるようにシロナが言った。
    「ああ、そうだね」
     あまりそう思ってはいない顔で青年は答える。
     控え室のテレビ画面に予選Bのバトル中継がずっと流れていた。トレーナーが指示を出すとポケモンがそれに応える。勝利した者達は互いに喜びをわかちあい、敗れた者達は悔しさを噛み締めあっていた。
    「そろそろ予選Bが終わるわ。じきに予選Cが始まる。私、行くわ」
    と、シロナが言う。
    「さあ、勝つわよ。あんなバトル見せ付けられた後で、負けていられない」
     バトルがはじまるのを待ちきれないといった様子でシロナは言った。
     ああ、彼女は本当にポケモンバトルが好きなんだな。そういう風に青年は思った。
    「待っているよ。決勝トーナメントで君と当たるのをね」
     と、気まぐれに言ってみせた。それは記憶喪失以前の青年に似て、少し驚いたような顔をするシロナに
    「……と、記憶のある僕ならこういうのかな?」
     と、付け加える。
    「ふふ、そうね。言うかもしれないわね」
     彼女は少しはにかんで、でも少し残念そうに笑う。
    「それじゃあ決勝トーナメントでね!」
     と、身を翻し控え室を出て行った。自動扉が閉まる音だけが控え室に残る。ふう、と青年は肩の力を抜いた。近くにあったソファーに腰掛けると
    「さて、どうしたものか」
     と、言葉を漏らす。何気なしに、天井を見た。やっと一息つけるためか、その天井に今日の出来事が走馬灯のように巡っていた。そして、
    「ポケモンリーグ……予選……決勝トーナメント、」
     などと今日の出来事を時系列でブツブツ口に出し始めた。
     何かが思い出せそうな気がしたのだ。
    「ミオシティ……図書館…………そして、昔話と神話、か」
     いつのまにか彼は暗い廊下のことを頭に描いていた。控え室に戻るときふと浮かんだあのイメージを。下へ、下へと下っていた気がする。
     何も聞こえない。暗い、暗い場所。
     ……いや。何かが聞こえる。あれはなんだろう?
     あれは、……水の音?
    「初めにあったのは混沌のうねりだけだった」
     どれくらいの時間そうやって過ごしていただろうか。ふと、彼の口からそんなワンレーズが漏れる。シロナがついさきほど彼に聞かせた「はじまりのはなし」だった。
    「すべてが混ざり合い中心にタマゴが現れた。零れ落ちたタマゴより最初のものが生まれ出た」
     と、続ける。さきほど一回聞いただけにしてはずいぶんと流暢な語り口だった。
    「最初のものは二つの分身を創った。時間が廻りはじめた。空間が拡がりはじめた。さらに自分の身体から三つの命を生み出した……」
     宙を見つめ、虚ろな表情で青年は呟いた。
     そして、続けた。彼女が話さなかった神話のその続きを。
    「二つの分身が祈ると物というものが生まれた。三つの命が祈ると心というものが生まれた。世界が創り出されたので、最初のものは眠りについた……」
     彼の横で光が点滅していた。控え室のテレビがリーグの実況を淡々と映し出しているのだ。
     Cグループの予選が始まるらしかった。審判の旗があがって画面が動き出す。彼の眼にもそれは映ったが、いらぬ情報としてすり抜けていく。
     何を思ったのか、青年はリモコンを手にとって、次々にチャンネルを変えていく。トレーナー用品のCMが映ったり、時折、砂嵐が映ったりしてめまぐるしく変化する。
     チャンネルがニュース番組に切り替わる。最近、シンオウ地方を通過した季節外れ台風と、その爪痕について報じていた。幸いにも台風はポケモンリーグの開催場所に達する前に、東側に反れてじきに消滅してしまったらしい。そこでプツっと画面が消える。青年がテレビを切ったのだ。
    「……だが、このはなしには続きがある。はじまりのはなしには、続きがある。忘れ去られたのか、あるいは削除されたのか、今は誰も知るものがいない」
     どこで聞いたのか、青年は無意識にそんなことを呟いていた。


      [No.2668] 気がついた事 投稿者:No.017   投稿日:2012/10/16(Tue) 08:41:45     119clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:やあ】 【俺だよ】 【俺、おれ】 【鳩だよ】 【豆よこせ

    ●削除キー に赤字で 必須を入れた方がいい
    ●タグは意外と遊べるので10個くらいに増やすのも悪くないかも
    ●お名前、タイトルあるいはメッセージに含まれている機種依存文字は文字化けするためご利用になれません。 →どこまで許容するか?
    ●拍手するとタグが消える事をこちらでも確認


      [No.2667] テストに乗じて 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/10/16(Tue) 00:27:17     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     まずは運営の鳩さんと掲示板開発の586さん、おつかれさまです!
     削除キー入れなかったらちゃんと注意してくれるんで、まず感動しました。あと、一定幅で自動で折り返すレイアウトになったのですね。読みやすくなりそうです。

     で、気付いたことですが、相変わらずfc2のホームページは投稿する時に入れられないっぽいです。禁止ワード扱いらしいですが。とりあえず報告まで。
     あと拍手したらタグが消えるっぽいです。


     では、フリーダム期間ということで、色々な投稿楽しみにしています。
     鳩さんと586さん、改めて、ありがとうございます。


      [No.2666] 狐の子 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/10/16(Tue) 00:15:43     17clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:コマンドシリーズ

     逃げていた。
     何から? 何でもいい。とにかく、必死に逃げていた。

     どこかも分からない、真っ暗な中を、走り、走り――喉の奥からせり上がる嗚咽と、肺に流れ込む空気がぶつかり合って、酷く吐き気がした。脚を必死に動かした。止まったら追い付かれる。ぶかぶかの靴の中で、足の皮膚が削れた。それも、同じ所ばかり何度も何度も。親指の付け根がなくなってしまいそうだった。太ももの辺りが何だか硬くなって、動かしにくくなった。それでも太ももを無理矢理高く上げて、動いた。動かす度に、脇腹にナイフを差し込まれているような痛みが走った。
     冷たい。寒い。私が吐く息は酷く熱いのに、吸う方になると体をえぐるように冷たいのはどうしてだろう。そういえば頭が熱い。体も熱い。脚を動かしているけれど、本当に動いているかどうか、分からない。自分が這っているような気がしてきた。前に進んでいるだろうか。分からない。熱い。冷たい。頭を持って振り回されているみたいに、世界がぐるぐるぐるぐるぐるぐる……

     瞼の向こうが急に明るくなった。いつの間にか、どちらが空か分からないけれど、多分上の方を向いて、私は地面に倒れていた。
     冷たい空気が塊になっていて、その中に放り込まれた熱の塊が私。本当なら熱が冷たい方に移って、私は冷たくなるはずだけれど、私は熱いままだった。
     脚の感覚がなかった。ぜえぜえいう息の音だけ聞こえるのに、息をしている感覚がない。肋骨の辺りがバラバラに切れちゃってる。なんだか、そんな気がした。

     私の上に大きな黒い影が現れた。ああ、見つかった。不思議と恐怖は感じなかった。影は私の上に屈み込んだ。背中とお尻に毛だらけの腕が当たって、私の体は宙に浮いた。私の体はどこもスライスされていなかった。腕の上で私の体がころりと転がって、顔がその人の毛深い胸に当たって、埋もれた。こそばゆかった。
     その人が毛だらけの体でぎゅっと私を抱き締めた。毛布で包まれているみたいに暖かかった。そこから、記憶がない。眠ってしまったんだろう、と思う。





     ガスコンロの火を止めて、私はベッドの方を見た。

     六畳一間のアパートの二畳程を占拠して、窮屈そうに置かれた安物の折り畳みベッドは間違いなく私の物だ。しかし今夜は、思いがけないお客さんがベッドに入っていた。
     白い掛け布団が、ゆったりとしたペースで小さく上下している。お客さんはまだ夢の中らしい。鍋の蓋を取り、おかゆの具合を確認した。おたまにひと口取って、唇に当てる。まだ少し、熱い気がする。いや、ベッドの中の彼女を起こしてまで与えるには、どう考えても熱すぎる。彼女はまだ、小さな子どもなのだし。そう思ってベッドを見たら、件の彼女が半身を起こしてこちらを見ていた。私は彼女が怖がらないよう、出来る限りの笑顔を作って、
    「こんばんは。気分はどう?」
     手をひと通り動かし終わってから、気付いた。

     急に手話なんかして、どうするの。私は頭を振る。
     十中八九、分からないわよ。私、ぼけてるわね。
     案の定、私と目を合わせた子どもは、意味が分からない、という風に首を傾げた。その目の焦点はちっとも合っていなかった。彼女の頭にいらぬ負担を与えたかもしれない。私はおかゆを入れた鍋を持って、彼女に近付いた。
     食べられる? と問う代わりに、鍋の中身をおたまで持ち上げて彼女に示した。彼女は相変わらず、焦点の合わない目でこちらを見ている。心なしか顔が赤い。熱があるのかもしれない。私はちゃぶ台に鍋を置き、手の平を彼女のおでこに当てようとして……

     ああ、やっぱり私、ぼけてる。


     言い訳をすると、今夜は少しごたごたしていたのだ。

     用事があって久しぶりに故郷の森に帰ったら、仲間に「森の奥に人間の施設が出来た、気になるから見に行ってくれ」と頼まれた。私は森に住む仲間に比べれば多少人間のことに詳しい。ふたつ返事で了承して、行く道すがら、その施設の方向からもの凄い音がして、光が迸るのを見た。空気の急激な膨張が、遠く離れた私の所まで届いて、私の紅色の髪を揺らした。
     爆発なんて恐いな、と思ったが、それ以上に施設への好奇心が湧き上がってきて、私は足を前へと動かしていた。
     施設は何故爆発したのか? 施設は何故あの場所にあったのか?

     こういう時、普通のポケモンなら、逃げる。こちらに向かってくる草や虫のポケモンの群れをかき分けながら、時に逃げ惑うポケモンにぶつかったりしながら、私は自分の行きたい方に進んでいた。逆流する私に、何匹ものポケモンが怒鳴り声を浴びせかけた。変わっていると自覚はしている。でも、森の奥にある人間の施設なんて、しかもそれが急に爆発しただなんて、まるでドラマの世界みたいでワクワクするではないか。野生のポケモンたちは、そんなことを考える間もなくひた走る。街に住む私は、あの施設で危険な実験生物を飼っていて、それが脱走したから証拠隠滅の為に施設ごと爆破したんじゃないかとか、色々考えながらノロノロ歩く。

     ポケモンの群れが急に途切れて、喧騒が後ろに流れていった。それと同時に冷たい空気が顔を撫でた。私は嵐を御輿に担いでいるかのような群れを見送って、再び施設に歩を進めた。

     そして、彼女を見つけたのだ。


     小さな人間の子どもだった。
     黒い髪の、細っこい女の子だった。幸運にもさっきの群れの通り道から外れていたらしく、傷らしい傷は見当たらなかった。しかし、血の匂いがした。
     その子を見た私は、とりあえず地面から彼女を抱き上げ、施設へ行くのを中座して家に連れて帰った。
     抱っこすると、彼女は腕の中ですぐに重たくなって、眠ってしまったのだと分かった。けれど、家に行く途中ずっと、しゃくり上げる音が続いていた。私はどうすることも出来ず、彼女の背中をさすっている内に家に着いた。

     家に着くとまず、彼女の靴を脱がせた。ダボダボのブーツを彼女の足から外すと、こもっていた汗と血の匂いがわっと広がった。私はその匂いに顔をしかめつつ、彼女を自分のベッドに寝かせた。酷く血の匂いがしていた。匂いの元はすぐ分かった。彼女の足の親指の付け根が真っ赤に削れていて、見ているだけでも痛々しかった。

     まずは絆創膏を探そうとして、そんな物はこの家にない、ということを思い出した。
     では汗だらけの彼女の服を着替えさせようと思って、子ども用の服もこの家にないことを思い出した。
     私は再び人間の姿になって――そういえば、森から家までずっと元の姿だった。ぼけてる――近所の深夜営業の店に行って、絆創膏や子ども用の下着や、その他諸々人間の生活に必要そうな物を買いこんだ。おおよそ、人間が必要とする物は、服も食事も、私の家にはないのだ。両腕いっぱいにその店のビニール袋を引っかけながら、カモフラージュの為にも、もう少し買い溜めしとけばよかったな、と心の中でため息をついた。

     家に戻り、買った物を部屋に広げて、まずは彼女の着替えに取りかかった。
     汗の染み込んだダブダブのトレーナーを脱がせ、ズボンを留めていたサスペンダーを外し、サイズの合っていないズボンも脱がせた。買ったばかりのタオルを湿して体を拭く。傷がいくつも付いていたが、古いものなのでとりあえず放っておく。子ども服は売っていなかったので、昔買った寝間着を着せた。大きめに作られた寝間着の上で彼女の体はすっぽり覆われた。髪をブラシで梳いてやると、ヤマンバみたいになっていたのがサラサラと綺麗に流れた。もちろん、新しい下着も着せた。足に絆創膏も貼った。

     衣食住の衣の世話が終わると、次は食の支度に取りかかった。時間はまだ夜中の零時だが、この子がいつ起きるか分からない。きっとお腹もすかせているだろう、起きたらすぐ食べられるようにと、シンクの下から鍋を取り出して、水を入れて温めるだけで出来上がるという、便利なおかゆの素を入れた。後は火を付けて五分待つだけ。ジッと音がして青い炎が現れた。
     ゆらゆら揺れる青い炎を見つめながら、結局あの施設は何だったのだろうとぼんやり考えた。

     森の奥で、急に爆発した施設。彼女はやはり、あの場所にいたのだろうか。体に合わない服を着て、森の奥で。あんな小さな子が、何故? 何の為に?


     しかし、そんな疑問も、この状況では頭の中からふっ飛んでしまった。
     目の前には私を見ている少女、その瞳の中には黒い、尖った顔のポケモンが、鋭い爪の付いた腕を半端に振り上げた姿が映り込んでいる。

     私、相当ぼけてる。仲間からもうっかり屋だとよく言われる。

     少女が平時の状態なら、おかゆを入れた鍋を持ってきて爪を向けたゾロアークに度肝を抜かしたことだろう。幸い、疲れて頭がぼんやりしているのか、彼女は驚愕も焦燥も顔に浮かべなかった。よし、ばれていない。
     私は人間の姿に化けると、改めて彼女におかゆを差し出した。しかし、彼女はそっぽを向いて、ベッドに潜り込んでしまった。

     食欲がなかったのだろうか。私から顔を逸らす前、一瞬だけ怯えの表情を見せたような気がする。目の前で化けたのが不味かったのかもしれない。
     私は鍋の中身を見つめた。折角用意したのに、とも思ったが、また彼女が食べたいと言った時に温めればいいと思い直して、ひとまず鍋ごと冷蔵庫に入れることにした。鍋の淵をおたまで叩いて、おたまに付着した米粒を落とそうとしていると、ベッドの下から息子の黒狐が顔を覗かせた。
    「ごめんね、起こした?」
     いつものように、ポケモンの言葉で息子に話しかける。
     小さな息子は不機嫌そうに「起きるよそりゃあ」と言うと、ベッドの下から這い出てきた。そして、黒い鼻面をベッドの上に向けると、「あれ、誰?」と私に聞いた。

    「森に行った時に拾ったの」
     ふうん、と興味なさそうに鳴くと、息子は再びベッドの下に入り込んだ。数秒と経たぬ内にベッドの上と下から規則正しい寝息が聞こえてきた。おたまを鍋に突っ込んで蓋を被せ、そのまま丸ごと冷蔵庫に入れると、ちゃぶ台を壁の方に押しやって床に寝転んだ。

     今夜は忙しい夜だった。
     ああ、そういえば。
    「折角森に行ったのに、結局用事が出来なかったなあ」
     独りごちた言葉尻が欠伸に呑まれた。ベッドの下から、半人前の息子ゾロアの目が覗いていた。

     ごろん、と寝返りを打つ。私は目を閉じて、眠り始めた。


     次の日、目覚めると、腕の中に彼女がいた。

     一気に頭が冴えた。昨晩ベッドの中に入れた彼女がどうしてここにいるのかはさておき、彼女が潰れていないかどうか、うっかり爪で引っ掻いていないか、大急ぎで検める。

     彼女は無傷で、ちゃんと息をしていた。しかし、ちょっと熱があった。

     額に当てた私の獣の手に、彼女がうつらうつらしながら触れる。そして、小さな手できゅっと掴む。きっと、暖かな毛皮の感触が気に入ったのだろう。彼女を抱っこしてベッドの上に戻す。布団を掛けて離れようとしたが、彼女がなかなか手を離してくれない。
     爪で傷付けないよう、たっぷり十分はかけて、静かに彼女の手を剥がした。ふう、と大きく息をついて、今まで口元が緩んでいたことに気付く。

     何故だろう。彼女の手を剥がしただけなのに。
     首を傾げるのも束の間、彼女もそろそろ何か食べたかろうと、食事の用意に取りかかった。

     冷蔵庫から昨日のおかゆを取り出して火にかける。おかゆが温まるまでにミネラルウォーターをコップに注いで彼女に飲ませた。キッチンの上の棚から一本だけあったスプーンを出し、下の棚からプラスチックの深皿を出し、おかゆを入れ、彼女に渡した。その時、私はまた変化し忘れていることに気付いた。彼女は何も言わず、私の爪を避けて皿を手に取った。少しぐらい元の姿でも構わないだろう。どうせ、ちょっとの間住まわせるだけなのだから。

     彼女は昨日より意識がはっきりしているようで、私を真っ直ぐ見つめると、「きつねさん」と呟いた。
    「秘密よ」と言う様に私が爪を立てて口に当てると、彼女はこくりと頷いて、唇に指を当てた。それから「うん、秘密」と笑って付け足した。ゾロアークが家賃を銀行引き落としにしてアパートに住んでいるなんて、子どもが言ったところで誰も信用しないだろうけれど、念の為。
     彼女はふうふう言っておかゆを冷ましながら食べ終わると、再び眠りに落ちた。熱は下がっていないが、顔色は随分とよくなっていた。

     今朝は冷え込むな、と感じて、普段使わないエアコンのスイッチを入れた。機嫌の悪そうな機械はたっぷりとかび臭い風を吐き出してから、部屋を暖め始めた。部屋の隅で彼女が小さく咳き込んだ。

     大丈夫かな、と覗き込む。彼女は平和そうな顔をして眠っている。子どもの寝顔というのは、何となく可愛らしい。もうちょっと彼女の顔を眺めていたかったが、重い腰を上げて食べた後を片付け、今度はテレビの電源を入れた。
     テレビが動くとすぐ、音量を最小にする。黒い箱の中から、今日も仏頂面の男性が朝の挨拶をする。
    「今朝のニュースです」
     男性の言葉と同時に、今日も変わりのない、株の変動だのバトルサブウェイで誰かが連勝したのという、平和なニュースが流れる。しばらくすると天気予報が始まって、今日は寒の戻りだとのたまった。これから三日は続くと言う。
    「寒いの?」
     ベッドの下から声がした。黒い毛玉が首から先だけを出して、こちらを見上げている。
    「寒いらしいよ」
    「嫌だなあ」
     そう言ってベッドの下に引っ込もうとした息子を掴んで外に引きずり出した。
    「嫌だ、じゃないでしょ。森の中はもっと寒いんだから」
     私がそう言うと、息子は不貞腐れたようにそっぽを向いて体を丸めた。

     私は嘆息して立ち上がると、しばらく彼女の為の買い物や何かで動き回った。このアパートを借りた時にもらった説明書の束を探し当て、その中のひとつと睨めっこしながらエアコンのフィルターを磨いていると、息子が近寄って私に声を掛けてきた。

    「森に行く話、どうなったの」
     私は黙っていた。熱心にフィルターに雑巾がけしている振りをしながら。しかし、そんな真似はいつまでも続くものではない。
    「流れたよ。ゴタゴタで」
     私はため息を吐き出すように言った。息子はふうん、と呟くと、居心地悪そうに部屋の隅っこで丸くなった。

     私は息子を横目で見ながら、彼女の世話を続けていた。


     彼女の熱が下がったのは、彼女を保護してから三日目の朝だった。

     まだ少し疲れが溜まっている様子だったが、ベッドから起き出して、ちゃぶ台についておかゆを食べるようになっていた。彼女が私の膝の上に乗っかった。それまでもちょくちょく、体調がよい時は私に引っ付いてきたから、特に気にもしなかった。必ず変化していない時に引っ付くから、毛皮の感触が気に入っているのだろう。
     私はポケモン用の茶色い丸薬みたいな朝食を皿に開け、黒い箱の中でやっている朝のニュースを見つめる。時折、私の朝食に伸びる彼女の小さな手を払いながら。

     今日は寒いですが、明日は気温も上がって春の陽気になります。そう締めくくって天気予報が終わった。食べ終わった後の食器を取り上げ、流し台に向かう。「きつねさん、きつねさん」と言って彼女が足元にチョロチョロ付いて回った。食器を洗う為に人の姿に変化すると、つまらなさそうに離れていった。何だか可笑しくなって、私は食器を洗いながらくっくっと笑った。
     彼女をベッドに追い立て、ドレッサーにどんと鎮座しているパソコンの電源を入れる。四角い機械はブーンと唸り声を上げてノロノロと立ち上がる準備をした。

     そこでやっと息子のちび狐が起きてきたので、「朝食は机の上」と簡潔に告げた。「うん」とくぐもった声がして、ガサガサと袋を漁る音が聞こえた。私は背中でそれを聞きつつ、寝ぼけたパソコンを叩き起こすように、カチカチと忙しなくマウスのクリック音を鳴らした。

     まず、職場の上司宛てにメールを送る。それから、ウェブブラウザの検索窓に単語を入れて、少し調べ物をした。調べていることが分かるかどうか不安だったが、チンケなホームページ上にその情報は出てきてくれた。その情報を頭に入れて、パソコンの電源を切る。
     ちゃぶ台の方を向くと、息子がポケモンフーズの箱に頭から突っ込んで出られなくなっていた。私はあきれながら、彼の尻尾を掴んで箱から引きずり出した。息子はまた、不貞腐れたような顔をした。


     次の日の朝は、天気予報が言った通り気温が上がった。けれど、日が昇ったばかりのこの時間帯は、冬の名残か、少し肌寒かった。

     私は彼女を連れて、小さな施設の前に立っていた。頭の中で、前日に調べたホームページの情報と、目の前の「雷文こども園」と書かれた小さな標識を何度も照らし合わせた。
     私の隣で、彼女が眠たげに目を擦っている。人間の姿の私と、大人しく手をつないでいる。ゾロアークの姿でないと、前は近寄ってこなかった。その“前”が昨日のことだと思うと、何故だか息苦しさを感じた。

     彼女から意識して目を離すと、雷文こども園を囲む、淡い桃色を掲げた並木を眺めた。

     この日の為に、彼女にあの木の花と同じ桃色の服を買ったが、あまり似合っていない。彼女の黒い髪には、私の髪のような濃い紅色の方が合っていたかもしれない。苦笑は上手くいかず、すぐに消えた。

     私の手に包まれた彼女の小さな手。

     私はそっと、手を開く。

     私の腰ぐらいしかない彼女が、私を見上げている。

    「待ってて。ここで、待っててね」
     通じるはずのない言葉を彼女に掛けて、出来る限り優しく、彼女の肩に触れた。そして、彼女に背を向け、足早にその場を去った。

     淡桃色の花びらが肩に落ちた。それを払い落として、私は前に進む。振り返らない。少女が付いてくるのが分かる。でも止まらない。止まれない。

     少女を引き離そうと、足を速めていく。少女が離れていく。


     帰ったら、家にある子ども服を処分してしまおう。レトルトのおかゆの袋もいっぱいあるけれど、私は食べないから、いらない。それも捨ててしまおう。絆創膏も、ブラシも、全部全部、捨ててしまおう。
     そして、森に帰るんだ。スーを――息子のゾロアを連れて、私は森に帰る。街に住んだことのある変わり者のゾロアークとして、森の中で過ごす。もう二度と彼女に会うことはない。


    「……さ、ん! 母さん!」

     私は雷で打たれたようにその場に足を止めた。
     まるで悲鳴のように、その声は春空に響いた。

     たった三日なのに、どうして。私は心の中で叫び声を上げた。愛着なんて湧くはずがない。所詮は、人間の子どもとゾロアーク。仲良しになれても、家族にはなれない。
    「母さん」
     幻影で姿を偽るだけの私に、彼女の母親は出来ない。
    「母さん、行かないで、母さん」
     後ろで少女が転ぶ音がした。涙の匂いがした。

    「母さん、母さん……」

     私は振り返った。
     見てはいけなかったのに。
     地面に突っ伏して泣きじゃくる、あの子の姿なんて。

     ふらふらと、私は何かに取り憑かれたみたいに彼女の方へ歩いた。
     彼女が泣いている。あの子が。
    「母さん」と言って泣いている。

     私は母親がやるように、膝を付いて、彼女の脇をそっと抱きかかえて、膝の上に乗せた。私に母親なんて出来ないのに。彼女と目を合わせていた。
     彼女は蛇口でも捻ったみたいに、ぴたりと泣くのをやめていた。ホッとしたような柔らかな光と、不安気な光が瞳の中で喧嘩していた。ごめんね、と謝る代わりに、私は彼女を腕の中にしっかり抱えて、歩き出した。

     彼女は嬉しそうに、私の仮初の姿に頬を寄せる。
    「まずは、貴女に似合う紅色の服を買わないとね」
     家族になんてなれないはずなのに。

     私と彼女は、桃色の並木道をゆっくり帰っていった。





    「何、それ?」
     家に帰るなり、息子が不機嫌そうな声を上げた。
     私は片手に子ども、もう片方の手に大量の買い物袋を提げて、難儀しながら部屋のドアを閉めていた。
    「何、じゃないでしょ。昨日までうちにいた子どもじゃない」
    「捨ててきたんじゃないの?」
    「うちで育てることにしたの」
     全くもう、と私は鼻の穴を膨らませる。ゾロアとゾロアークの会話なんて、人間の彼女にはガウガウ鳴いているようにしか聞こえないからいいものの、いや、やっぱりよくない。

     買い物袋と彼女を下ろし、変化を解く。新しい服を取り出して、布地を傷付けないよう注意して爪でタグを切った。
    「スーがお兄ちゃんだからね。しっかりしなさい」
     言った後で、気付いた。彼はもうすぐここを出ていくのに。
    「じゃあ、いいよ。分かった」
     なのに、彼は気にしていない風に振る舞っている。

     酷なことを言ってしまった。
    「ごめんなさい」
     謝罪の言葉も、背を向けた彼には届かない。
     私はため息をついて、黙々とタグを切った。彼女の為に買った服が、うず高く積み上げられていく。こんなことで、この先大丈夫なのだろうか。自分の息子もろくに育てられない私が、人間の子どもの母親なんて出来るのだろうか?

     不意に、私の隣でタグ切りを見ていた少女がぽーんと飛び出した。狭い部屋の中をあっという間にこっちの端からあっちの端まで走っていって、背を向けてぼんやりしていた私の息子に手を伸ばした。

     そんなことは今までなかった、というか、息子と彼女が双方寝てばかりで顔を合わせていなかったので、私はあ然としていた。あ然としている私の目の前で、彼女は息子の耳を引っ掴み、暴れる息子を取り押さえようと四苦八苦している。息子は怒ったようにわめいている。

    「きつねさん、きつねさん、きつねさん!」
     息子が吠える声に負けじと、彼女が声をはり上げる。彼女の腕から逃れようと、息子が足をばたつかせる。そこでようやく、我に返った。事態を収拾しなければと、彼女に手を上げようとし

     人間を殴っちゃ、だめ。とにかく脆いんだから。

     振り下ろそうとした腕は、急激に失速して、彼女の頭に軽くぽん、と乗るだけに留まった。
    「……きつねさんつかまえた」
     撫でられたと勘違いしたのか、丸くしていた目を細めて、彼女は満面の笑みで私にゾロアを見せる。
     それは私の息子だ。見せられても困る。

    「それは貴女のお兄ちゃんよ。強く掴んじゃだめ。離してあげて」
     だめ元で手話を試みるが、失敗に終わる。彼女は面白そうに私の手の動きを真似るだけだった。

     私はちょっと考えると、人の姿に変化した。途端に彼女がつまらなさそうな顔をする。そのままの姿でドレッサーに向かい、引き出しを開ける。
    「きつねさん、母さんにそっくりだよ。きつねさん、母さんみたいに進化するの?」
    「だあーもう! 離せよちび! 僕のひげを掴むなあ!」
    「これが母さんみたいな長い髪になるの?」
    「頭のふさを掴むな! はげる! はげるから!」
     ひとりと一匹が大騒ぎしている。ごめんねスー、ちょっと待っててね。

     目当ての物はすぐ見つかった。私は紙とペンを手にちゃぶ台につき、サラサラと色付きのメモ用紙に文字を書いた。

     変わり者だ、と森に住むゾロアークたちにはよく言われる。人間に興味があるから、というその理由だけで街に住み、人間に交じって生活する為に手話と文字を学んだ私は、確かに変わっていると思う。けれど、人間たちと送る生活は、森の中よりもずっと刺激的で、楽しい。

     文字を書き終わると、息子を玩具にしている彼女の背中を軽く叩いて、黄色のメモ用紙をよく見えるよう掲げた。彼女はキョトンとした顔でメモ用紙の黄色を見、そしてまた何事もなかったかのように遊び始めた。

     メモ用紙を裏返すと、教科書のお手本にしたいぐらい綺麗な文字が並んでいる。
    「その子は貴女の兄です。玩具にしてはいけませんよ」
     書き直して、見せる。
    「そのこは あなたの あに です。 おもちゃに しては いけませんよ」
     しかし彼女はキョトンとして、何事もなかったかのように息子を抱き締めている。

     もしかして、と思い、私はメモ帳を数ページ破って、それぞれに文字を書き並べた。
    「なまえは?」
    「どこから きたの?」
    「いくつ?」
    「すきな たべものは?」
    「きらいな たべものは?」
     しかし、彼女はどの紙にも等しく興味を示さない。
     文字が読めないのだ。

     私はすっかり途方に暮れた。ポケモンの言葉は当然通じない。手話もだめ、筆談もだめでは、どうやって彼女とコミュニケーションを図ればよいのだろう?
     彼女を育てる自信が、急速に私の中から抜けてなくなってしまった。と同時に、今まで彼女を育てる自信があったことに、自分で吃驚する。

     やっぱりあの時、振り返らずに置いていくべきだったのだ、という思いが去来する。けれど、すぐさまうつ伏せで泣いている彼女の姿が脳裏に蘇ってきて、いや、連れて帰ってきて正解なのだ、と頭の中で声がする。
     どちらにしても、と私の中の冷静な部分が回転する。
     彼女に話しかける方法を考えないと。

     試しに、娘に向かって右手を出し、指文字をいくつか作ってみた。やはり分からない様子で、しかし面白いのか私の真似をする。そういえば、手話をやった時も私の真似をしていた。
     このまま、辛抱強く話しかけていけば、その内意味を理解するようになるかもしれない。その希望はある。

     ただ、手っ取り早く。
    「ねーねー、この子のなまえ、なんていうの?」
     ゾロアを膝に乗せてベッドの上ではしゃぐ彼女に向かって、「スー」と指文字を作る。
    「わかんないー」
     彼女はベッドの上をころころ転がって、床に落ちてしまった。
    「ぎゃう!」
     刹那、電気にでも触れたみたいに、彼女が身を反らした。黒い小さな獣が娘の腕の中からベッドの下に潜り込む。

     血の匂いがした。
    「何やってるの、スー!」
     思わず、大声を出した。子狐はベッドの下から、よく光る目で私を見つめていた。

     娘の手の甲から、血が流れていた。服の山を引っ繰り返し、救急箱を引きずり出しながら乱暴に転がして中身をぶち撒ける。そこから包帯を選び出して、娘の手にその白布を巻き付けた。

     白いガーゼ生地が、見る見る内に赤に染まっていく。私は娘の傷口を、包帯の上から手の平でそっと押さえた。
     息子を睨み付けると、彼は目を閉じて、ベッドの下の、奥の方に退いていった。彼を怒るのは筋違いなのに、分かっているのに。しかし、彼女を叱ることも出来ない。やり方が分からないから。娘は凍えて硬直した目で、傷口に視線を落としていた。


     次の日、私は職場に行った。職、というのがまた面白いもので、人間は畑を耕したり狩りに出たりしなくても、食事にありつけるのだ。その職が、一見食料にも、群れの存続に関係ないように見えても、回り回って関係あるのか、何らかの仕組みで金が手に入って生活を維持できる。非常に斬新な社会システムだと思う。
     ライモンシティの中心部にある建物に入り、「従業員用」のプレートを付けたドアを通る。二階にある、メタリックな青や銀で色付けられた、円形の部屋が私の職場だ。部屋に入ると、上司や同僚の皆が「よう」とか「休みはどうだった」とか言って挨拶してくれる。私は手話で挨拶を返しながら、部屋の入り口から一番遠い自分の椅子に向かおうとした。

    「どうしたの、カミサカさん、隠し子?」
     気のよい同僚のひとりが、驚いたような声を上げた。
     彼は手話を知らないので、適当に笑って誤魔化す。
    「どうしたの、その子。かわいい」
     私の脚に張り付いた少女に気付いて――よっぽど注意散漫な人でない限り目に入るだろうが――次々に付近の同僚たちが声を掛ける。どの人も第一声が「どうしたの?」もしくは「かわいい」であるのが、可笑しい。

    「拾ったの」
     手話で言ってみるが、誰も見ていない。皆子どもに夢中だ。机にあるメモ帳とペンを取りに行きたいが、人の壁に囲まれ、脚には彼女が取り付き、一歩も歩ける状況ではなかった。

    「かわいい。ねえ、カミサカさんの子ども?」
    「いつの間に生んだの?」
    「昨日までの休みの間?」
     どっと笑いが起こる。その中心にいる彼女は、ますます私に強くしがみついてきた。これ以上脚の血流を悪くされてもかなわないので、屈んで彼女を抱き上げ、前に進んだ。
    「かわいいなあ。お母さん似だね」
     肩越しに彼女の顔を覗き込んだ同僚がコメントする。すると彼女はスルスルと下がっていって、私の胸に顔を埋めた。
    「恥ずかしがり屋さんなんだねえ」「人見知りなんだねえ」と皆が異口同音に喋った。誰も彼も、口調がいつもより柔らかくなっている。

    「おおい、ここ、託児所じゃないぞ。カミサカ、どうした? なんで連れてきた?」
     上司が私に声を掛けた。やっとのことで自分の席に辿り着いた私は、使い慣れた紙とペンを出して、意思の疎通を図った。
    「先日、拾ったんです。文字が読めないので、名前や歳を聞けなくて困っているんです」
     少し考えて、「昨日は急に休みを頂いてすみません」と書き加えた。
     彼女はまだ私の胴体に張り付いている。上司のおじさんはメモを見て、ふむうと唸った。
    「や、休みはな。メールくれたからいいんだが」

    「あれ、カミサカさん、まだテレビ電話使ってないの?」
     隣席の同僚が横やりを入れる。私は新しい紙を破った。
    「テレビ電話だと、何だか落ち着かなくて」
     本当は、うっかりゾロアークの姿で電話に出そうだからだった。実際問題、うっかり狐の姿のままゴミ出しをやったことが何度かあるのだ。ミスを誘発しそうなものは、設置しないに限る。
    「連絡網とか、不便でしょ」と言いつつも、同僚はその実どうでもよさそうな口ぶりだった。彼の視線は私が連れてきた少女の方に行っていた。

     上司が同僚と私の会話を遮るように「ふむ!」と叫んだ。そして、紙をぐしゃ、と握り潰すと、中腰になって彼女の頭辺りに視線をやり、今から敵地に突撃するのかと見紛うような面構えで、寝起きで機嫌の悪い熊みたいな声で「嬢ちゃん、名前は?」と問うた。

     彼女がビクン、と動いて、さらに強く私に張り付いた。少女の動向を気にして集まってきた同僚たちが笑い声を上げる。
    「ちょっと恐すぎますよ」
    「その子でなくともビビりますよ」
     あけすけな物言いは、上司のおじさんがリングマみたいな厳つい面相の割に気の弱い、いい人だからだ。なめられている、と言い換えてもいい。同時に慕われてもいるが。

     上司リングマはうーむ、と唸ってから、野次馬になっていた女性職員のひとりに向けて手招きした。
    「よし、お前、この子の名前聞け。うん」
     呼ばれた女性職員は、歳若い、人懐こそうな大きめの目鼻立ちの子だ。ポケモンでいえばヒメグマ辺りに見える。
    「お嬢ちゃん、お名前は?」
     女性職員もまた中腰になって少女に問うた。少しゆっくりすぎるくらいの、甘い口調で言う。しかし、彼女は顔を上げない。

    「人見知りかなあ」
     ヒメグマの彼女は諦めたように去っていってしまった。
     それにつられたように他の同僚も三々五々散っていき、それぞれの職務に戻った。隣席の彼も椅子に座り直した。
    「おおい、カミサカ。子ども連れて仕事出来んだろう。ちょっと向こうの方で誰かに面倒見させて」
     熊上司がそう言って彼女に手を触れた。
     途端に、鼓膜が破れん程の大音声が職場に響いた。

     悲鳴。の後にすすり泣き。

    「あーあ、泣かした」「セクハラだ」という声がちらほら聞こえた。熊上司はそれを怒ることもせず、ただ首を捻って、
    「普通に触ったんだがなあ」
     そうぼやきながら自分のデスクに帰っていった。

     私は彼女をあやしながら、その日の仕事を終えた。職場の仕事よりも、人見知りの権化みたいな彼女を抱え、同僚が側を通る度に泣きそうになる彼女を宥めすかして過ごすことの方が、骨の折れる大仕事だった。
     家に着き、ドアを閉めた途端に変化が解けた。息を吐いて、ついでに三和土に腰を下ろしそうになる。どうやら、思ったよりも疲れていたらしい。普段はそんなことないのに、と思いながら、早速靴を脱いで部屋の中を走り回る彼女を見た。その顔に、先程までの悲愴な雰囲気はない。帰り道、彼女を注意深く観察してみたら、どうやら手をつないで平気そうに歩いているように見えて、すれ違う通行人にも多大なストレスを感じているようだった。この調子では、間に誰か立てて彼女の名前を聞くまで、長い期間を要するだろう。しかし、早く他人にも慣れてもらわなければ。彼女は何といっても、人間なのだから。

     部屋の中に入ると、違和感を感じた。その理由はすぐに分かった。
     息子が、普段はベッドの下にいる彼が、ベッドの上にいたからだ。
    「どうしたの?」
     息子は顎をベタッとシーツに付けて、どこか不貞腐れた目で私を見返した。
    「……化けるの練習してた」
     言い終わると頭を上げ、後ろ足と尻尾で体を支えるようにして、化けた。
     黒狐の位置に現れ出た少年の顔にはびっしりと黒い獣毛が生え、頭には三角耳、お尻には尻尾が付いていた。
     息子はその姿を十秒と維持できずに、元の黒狐に戻った。
     その姿がベッドの上に落ちる。彼の視線が下に落ちる。

    「前よりも上手になったわよ」
     私は彼から目を離し、そう言った。
    「なってないよ」
     息子がベッドから降り、いつもの場所に潜り込んだ。

     馬鹿みたいに息子がいる辺りを見つめていた。そんなことをしても、ベッドに遮られて視界に息子の姿は映らない。娘がそろそろとベッドに近付いたが、手を突っ込もうとはせず、しゃがんで覗き見るだけだった。

     私はドサリとドレッサーの四角い椅子に腰を下ろした。後ろ手でパソコンのスイッチを入れ、低い起動音を聞いていた。古びた内蔵のファンが回り出す。ジーと耳障りな音がした。

     ピンポン、とチャイムの音がした。ドアの方を見る。もう一度ピンポン、と音がしてから重い腰を上げた。

     ドアに近付くと、熊上司が来たのだと分かった。薄いドア一枚隔てた向こう側なら、匂いで大体のことが分かる。鍵を開け、ドアを開こうとした私の背に、重い何かが突進してきた。
     体が海老反りになり、ドアノブをひっ掴んで何とか姿勢を戻した。下方から高い、大きな音が連続的に発せられた。思わず耳を塞ぎ、すわハイパーボイスか、と下に手を伸ばす。娘の髪に触れた。

     私が触れてもなお、警報装置のブザーのような音を出していた娘が、徐々に分かる言葉を発してきた。
    「だめだめだめ、母さん、だめだめ、だめー!」
     ブザー音に混じって、「だめ」と「母さん」だけ判別できた。
     何がだめなのだろう。魚眼レンズを覗いてみる。熊が扉の前でつっ立っている。片方の手に濃い緑色のビニール袋を提げ、空いた手で頭を掻いている。私がドアを開こうとすると、やはり彼女はわんわん騒ぐ。

     彼女は他人が恐いのだ。
    「あのおじさんは恐くないよ」と一応手話で伝えてから、このままドアの前で騒がれても困るので、抱きかかえて部屋の奥に運んだ。彼女を置き、くるりと向きを変え、扉へ向かうと、磁石のN極とS極みたいにツーッと私の方に走り寄ってきた。

     埒が明かない。
     強引にドアの方へ行こうとすると、彼女が脚にしがみついた。まるで足枷をはめているようだ。仕方ない、このまま脚に張っ付けて行こうとして、そこでやっと何が「だめ」だったのか分かった。

     人に化けると、彼女は手を離してコロンと転がった。
     私は表向き、ポケモンを持っていないことになっている。モンスターボールをどうしても手元に置く気になれなかったし、息子や自分を「手持ちのポケモン」と称するのに抵抗があったので、そういうことにしている。
     一見さんの、宅配の兄ちゃんならまだしも、ゾロアークの姿で知り人の応対に出たら、不味い。「あの人はポケモンを持っていないはずなのに、家にゾロアークがいた。もしかして」なんて噂が立ったら、困る。人に紛れて人と同じように暮らす、この生活が気に入っているのである。

     私は屈んで、手刀を切った。
    「ありがとう」
     彼女も真似して手刀を切って、にっこり笑う。いい子だな、と素直に思うと同時に、狐の姿で人前に出てはならないことを、知らない内に、文字より先に、彼女に分からせていたことに罪悪感を覚えた。

     ドアを開ける。熊上司と目が合ったので、とりあえず曖昧に笑った。相手は勝手に解釈してくれたようで、
    「俺、嫌われてるなあ。あの、拾いっ子」
     顔は笑ってはいるが、とても寂しげだった。反抗期の娘がいると聞く。歳は違うが、だぶってしまうのだろう。

     彼は持っていた緑のビニール袋を重たそうに持ち直すと、
    「ほれ」
     私に寄こした。
    「何ですか、これ」
     見た目通りに重たい袋を腕で支え、中を覗く。八ミリのカセットテープがひとつと、銀色と青の丸みを帯びたナニモノカが入っている。重さからして金属。機械だろう。

    「今日来た人見知りの拾いっ子のことな、ワイフに話したら、声だけならいいんじゃないかって言うんだよ。そんで、な」
     熊上司は頭を掻き掻き、朴訥に今しがた渡した機械の説明をした。

     銀色の機械はカセットデッキ、カセットテープには彼の妻の声で録音した、日常に必要そうな言葉が入っているとのこと。
    「えーっと、何だったかなァ」を間に何回も挟んだ彼の話を要約すると、こういうことだった。
    「ありがとうございます。とても助かります」
     玄関に常備している紙とペンを取り上げ、上司に見せる。
    「いやあ、俺は何もやってないよ」
     そう言いながら手ぶらで帰る上司の背中は、しかし満更でもなさそうだった。

     部屋に戻ると早速カセットデッキのコンセントを電源につなげ、テープを手の中で回して、まずはA面をセットする。テープを入れるプラスチックケースに、親切にも上司の妻君からのメモが入っていた。
     何秒からは「おはよう」、何秒からは「おやすみなさい」、何秒からはまた別の言葉と、事細かに流水を思わせる綺麗な文字で書き記されていた。
     後半には「お名前は?」と「おいくつ?」が記されていた。では早速、それを再生してみようかとカセットデッキの三角マークの付いたボタンを押した。

    「おはよう」
     数秒間があって、
    「行ってらっしゃい」
    「おかえりなさい」
     と続く。再生しやすいように考えてくれたのだろうか。B面の後ろには、指文字の練習に使えるよう、一音ずつ区切ってあいうえおを入れてあるらしい。気が利いている。嬉しさを感じつつ、一旦、四角マークの停止ボタンを押した。さて、問題の言葉は何秒からだろう。

    「母さん、何それ?」
     興味を示したのか、息子がベッドの下から這い出てきた。少し元気そうな様子だ。よかった。
    「彼女に言葉を教えようと思って」と言いながら、娘を手招きする。彼女はドレッサーに張り付いていて、こちらに目をやろうともしない。

     何に気を取られているのだろうか。
     まつ毛同士がぶつかるぐらい近くに寄って、やっと娘が私に気付いた。
     娘は私のパソコンが気になっていたようだ。小さなブラウン管が煌々と光っている。そういえば、電源を入れたままだった。

     片目はブラウン管を捉えたまま、彼女が喋った。
    「母さん、これ、前に見たパソコンとちがうよ」

     ……今、何て言った?

     前に見た。彼女はそう言ったのだ。前に見た、パソコン。ひょっとしたら、彼女がいた場所――施設の手がかりが掴めるかもしれない。
     私はさっとメモを引っ繰り返した。しかし、妻君のメモに「前は、どこで、どんな状況下でパソコンを見たの、よければその時期の貴女の生育環境含めて詳しく聞かせて」なんていう便利な言葉は入っていなかった。
     それに近い例文を探し出す。まずは「どこで?」からいこう。早送りボタンを押し、停止ボタンを押してから、逸る気持ちを押さえるように三角マークの付いたボタンをゆっくり押し込んだ。

     ちょっと早送りしすぎたらしい。
    「どういう風に?」
     ちょっと待ってタンマ今のなし、という例文がこの次に入っていた、ということは全くなく、従って彼女もその問いに従って答えを発した。小首を傾げてから、

    「前のはねえ……」





     席についている私の元に、熊上司がやってきた。手には昨日と同じような濃い緑色のビニール袋を提げている。
    「あー、昨日の。あれ、どうだったかなあ」
     思い出したように、ワイフが気にしててなァ、と付け足す。
    「ありがとうございます。大変役に立っています」
     現在進行形で、書く。その時は本当だったのだ。
     上司はそれを読むと、「そうかあ、そうかあ、ならよかった」と笑い、「邪魔じゃなかったら、もらってくれ」と言って、ビニール袋を机の角に置いた。プラスチックの当たる軽い音がした。
     謝意を表す為に手刀を切る。熊上司は手を大きく振って、
    「ワイフが好きでやってんだから、気にするな」
     そう言って、大股で去っていった。
     袋の中身は三つのカセットテープだった。案外、この録音テープも彼の発案かもしれないな、と去っていく背中を見ながら何となしにそう思った。

     カメラ映像を見る。円形の部屋、職場の壁の上方をぐるりと囲んで、モニタがやや俯きがちに設置されている。
     モニタの向こうで、見るからにガタイのいいドリュウズが、相手のボスゴドラにドリル部分からぶつかっていった。重そうなボスゴドラが、実はソフビ人形でした、という調子で軽々と飛んだ。飛んだ先、天井の蛍光灯カバーが三つ続けて弾け飛び、座席の端の手すり棒に落下して、丈夫な合金で出来た棒がばっきり折れた。
     バトルサブウェイ。地下鉄で行われるバトルの監視員。それが私の仕事である。

     といってもその中身は要するに雑用係で、カメラで見える部分は拾っとけというざっくばらんな仕事である。おおらかな分、仕事は多岐に渡る。今みたいにバトルで地下鉄の内装が壊れたら報告する。バトルが長引くとダイヤが乱れるからそれも報告する。誰かが四十九連勝したらそれも報告する。すごいバトルがあったらとりあえず報告しとく。そしてビデオに録っておく。そうして貯まったバトルビデオは、一般人を惹き付ける広報材料にも、玄人の研究資料にもなる。
     仕事が多岐に渡る分、その内容は浅い。大体が報告どまり、後は専門の人に任せる感じの、気楽な仕事だ。それでも何故か給料は貰える。人間の街は不思議だ。

     手元のキーボードをパチパチと叩いて、車両破損を報告する。送ったデータは親コンピュータの所に送られて一括で管理される。
    「またサブウェイマスターの所かあ」
     近くにいる同僚が笑った。
    「あそこ、大分痛んでたもんね」
     別の同僚が笑い、私たちはまた作業に戻る。

     しかし、基本的に何事もなく過ぎる。地下鉄は頑丈に作ってあって、やわな攻撃では傷ひとつ付かない。壊れるのは余程強い奴が来た時か、経年劣化で寿命が来た時だ。
     だから、同僚たちは頻繁に席を立ったり、お茶を飲んだりする。私も背伸びをした。いいバトルがあったら、ビデオをダビングしてもらって、娘に見せようか。そんなことを考えた。

     バトルサブウェイを出ると、どっぷり日が暮れていた。
     勤務時間が終わり、がさりと下げたビニール袋が急に重く感じられた。
     昨日の。あれ、どうだったかなあ。上司の声が耳に蘇る。

     どうだったかなあ。

     どうもこうもありませんよ、と呟いた声は夜空に消える。
     あの子のこと、多少なりとも知れましたから。

    「どういう風に?」そう、こんな風に。

    「前のはねえ」

     可愛らしく小首を傾げる彼女。その言葉が、彼女と同じように幼くあどけなく、要領を得ないものであったなら、却ってどんなによかっただろう。

    「モニタとハードディスクが、別々に付いてたの」
     彼女は目を閉じて、思い出そうとするように。
    「ハードディスクもひとつじゃなくて、何個も並列してつなげてあったよ」
     脚をゆらゆら揺らす。その行動は子どものそれなのに。
    「それでねえ、入力端子の線が別の部屋に伸びてた」
     ぱっと、目を開く。鮮やかな紅色の瞳が見えた。
    「入力の方はね、カメラが何台もあって、マイクとか」
     手が髪を梳く。少し困った時の彼女の癖。
    「あと、体に付けるのも」

     あって、と言いかけた娘の体を、最後まで言わせないように、私はギュッと抱き締めた。彼女の記憶に、私の方が耐え切れなかった。
    「……母さん?」
     黙っていた。何も言えなかった。ジーと低い音がして、テープが回り続けていた。

     何か酷いことをされていたんじゃないかという、私の中の漠とした予感が恐い。その記憶に触れてしまうんじゃないかと思うと、その冷酷さに彼女が気付いて、その為に、この小さな体が壊れてしまいそうで、それが恐い。

     人として。

    「お名前は?」
     優しい、女性の声を出すカセットデッキ。

    「ひけんたい」
     驚いて、思わず私は体から彼女を引き離して、これ以上ない程真っ直ぐに目を見た。
     彼女は、不思議そうに私を見返して、言った。

    「名前、でしょ? 私、そう呼ばれてたよ」
     彼女は続けてこうも言った。
    「母さん、どうして泣いてるの?」
     私の頬に、彼女の小さな手が伸びる。

     あの日、彼女の体には古傷があった。その時は気にも留めなかったが、きっとそれは、彼女のそれまでを示すものだったのだろう。何故、こんな幼い子を。どうして、そんな仕打ちを。
     そんなことをしたのが、人間であるのが辛かった。彼女と同じ、私の好きな、人間であることが辛かった。
     彼女の小さな手が涙を拭う。それを見ながら、私はひとつのことを誓った。

     この子を幸せにしてやろう。人として、幸せに生きさせるんだ。





     花屋の店先にあった鉢植えから名前を貰った。
     最初は、雷文こども園にあった桜という花の名にしようかと思っていた。カントー地方の辺りでは、桜は門出の季節を象徴する花らしい。門出、という言葉の響きが希望に溢れていて私は好きなのだ。けれど、桜の白に近い桃色は彼女に合わないし、店先にあった蝶々のようなその花は綺麗な赤で、しかも花言葉が門出だというので、そちらの花を選んだ。
     その花から三文字、譲り受けた音を指文字で示すと、彼女は大喜びで私の真似をした。それが貴女の名前だと示すと、気に入ったのか、すぐに受け入れた。

     それから、小学校への入学手続きをした。公教育なので役所に行って資料を貰い、小難しい紙束に諸々の必要事項を記入した。誕生日? 分からないから適当に記入しておく。

    「母さん、見て見てー」
     はいはい、と適当に返事して彼女の方へ行く。最近、彼女はパソコンに夢中だ。ドレッサーに置いてあるパソコンは、すっかり彼女のものになっている。
    「これ、作ったの」
     パソコンの周囲はいつの間にか、得体の知れないコードが大量に発生して、にわかに金属製のジャングルに迷い込んだようになった。買った覚えのあるようなないような、記憶の曖昧なコードとか何とかが、つながれたりどこかから生えていたり、使われてないのは積まれていたりする。
    「これ、これー」
     そのジャングルの奥で、娘は楽しみでたまらないという風に、足をジタバタさせる。

     彼女が椅子から退いたので、コードをどかしながら、私が椅子に座る。正面のブラウン管には、音楽を再生した時に出てくるような、音の大きさを示すグジャグジャとした線が描かれていた。
    「再生ボタン、押して」
     彼女の顔にワクワクという文字が書かれているのがはっきり見えた。こちらは入学の手続きの他に、拾いっ子だから他にも色々書かなきゃいけないのだけれど。「ちょっとだけね」と伝えてから、画面の中の三角ボタンをクリックした。

    「か、あ、さ、ん、び、つ、く、り、し、た」

     スピーカーから飛び出してきたのは、聞き慣れたカセットテープの女性の声だった。
     一音ずつ区切るような音の羅列に、感情や抑揚はない。しかし、発された音の列は、確かに言葉のまとまりを成していて、なおかつ、それは今まさに娘が思っていることなのだ。
    「ねえ、すごい?」
     娘がコードの中から、笑顔で私を見上げる。その手の中に、パソコンとコードで繋がったマイクが握られている。画面上部の白い四角の中に、「ねえすごい」の文字が現れる。

    「ね、え、す、ご、い」
     ブラウン管の中の文字がそのまま、音になってスピーカーから現れた。

     言葉を作ろうと上げた両手が、そのまま膝に落ちた。
     どうやったのだろう。どういう原理だろう。前に見たパソコン、とやらで学んだ技術だろうか。辛くなかっただろうか。聞きたいことは山程あるはずなのに、上手く頭の中でまとまらなかった。

     ただひとつ。私はマウスカーソルを上にある白い四角の所まで動かし、そこに文字を入れる。そして、エンターキーを押した。
    「す、ご、い、よ」私の入力した文字も音になる。
     彼女を抱き上げて、高い高い、とやる。彼女が喜ぶように。褒めてるんだ、と分かるように。私の喜びが伝わるように。

     ぱっと彼女が笑った。花が咲いたみたいだった。


     それから、入学手続きを終えるまで、随分と慌ただしかった。過ぎてみてはじめて、それがひと月も経たぬ間のことと知る。もっと長い間のことのように感じていた。驚きだった。

     一番驚いたのは、娘の手話の上達の速さだった。彼女が作った音声プログラム――最初に貰ったカセットテープの後ろにあった、あいうえおの音声群を利用したらしい。それにしてもどうやったのやら――と私の手話、両方を合わせてやれば呑み込みやすかったらしく、ひと月の間に私との会話が支障ない程にまでなっていた。ただ、彼女は語彙不足か、かなりの語を指文字で表す癖があった。構わないが、たまに、速すぎて見えない。

     それから時々、娘と息子を連れて、職場に出るようになった。元々が緩やかな職場だし、子どもを連れていくと何かと皆喜ぶ。娘も息子が一緒なら、それ程周囲の人間が気にならないらしかった。息子は娘と仲のよいポケモン、ということにしておいた。「ゾロアなんて珍しいね」と言われたけれど。そうして放っておくと、勝手にモニタの向こうで繰り広げられるバトルに夢中になっているから、子守が楽だったのである。何度かバトルビデオを借りて帰ったりもした。

     そうして過ごしていると、九月の入学式が待ち遠しくなってきた。手続きは終えた。背負う型の鞄を買う。彼女の服を買い足す。背も伸びた。体に悪いからと、料理本を買ってきて、食材を買い揃え、慣れぬ料理などしてみる。鍋の中で水が煮えてゴトゴト言うのが面白い。今まで茶色のポケモンフーズしか入っていなかった冷蔵庫が、野菜の緑や赤で色鮮やかになった。一度など、ヒウンアイスを食べにヒウンシティまで出た。結局お目当てのヒウンアイスは買えなかったものの、画廊やらゲームの制作会社やらを見て回ってご満悦のようだった。
     月日の過ぎるのが、本当に目まぐるしい。前に住んでいた部屋が手狭になったので、もっと広い部屋に引っ越した。家具を入れる前の、本当にだだっ広い、何もない部屋で、紅色の髪飾りを付けた娘が嬉しそうに跳ね回った。
     部屋に家具や家電を運び込むと、一気に部屋の体積が減ったように感じられた。それでも、前より十倍ぐらい、広い。彼女の学習机を置いても、まだまだスペースがある。

     そのスペースで、娘と息子が鬼ごっこに興じていた。すばしっこい息子を捕まえるのに苦労しているらしい。なかなか息子を捕まえられない娘が、最終手段に出た。
    「ご飯だよ!」
     油断してのんびり歩いて出てきた息子を捕まえた。
     それ以来、ご飯が出来ても鬼ごっこが終わらず、ちょっと困っている。





     そうこうしている内に、九月がやってきた。
     門出の季節。
     私は娘の手を引いて、門を通る。
    「ライモン第一小学校入学式」と白地に黒で書かれた看板を見る。
     たった半年なのに、長い道のりを乗り越えてきたかのような、妙な充実感があった。そして、彼女はこれからここで、私の知らない時間を送るんだな、という寂しさも。

     矢印に従って、体育館に入る。前が新入生の席、真ん中が在校生、後ろが父兄の席だ。
     行ってらっしゃい。心の中で声を掛ける。それから、自分にも。
     私が寂しがっちゃだめ。この子はこれから、人の中で、人らしく生きなきゃならないんだから。

     最前列の、折り畳みのパイプ椅子のひとつに彼女を座らせ、「しばらくいい子で座ってるのよ」と手話で伝えた。それから、
    「後で迎えに来るからね」
     それも手話で伝える。前に孤児院で置き去りにした負い目があった。忘れているといい、と思うが、忘れてないだろうな、と思う。
    「約束だよ」
     娘の指文字に頷いて、私は父兄席の最前列に座った。娘は振り返ってはいるが、割りと平気そうな顔をしている。毎日のように職場へ連れていったのが効いたらしい。

    「かわいいお子さんですね。お名前は?」
     隣に座った婦人が尋ねる。しかし、私が話せないと分かると、さっと目を逸らして、彼女は別の人と話を始めてしまった。私は黙って、前に座る娘を見ていた。

     娘が時折、振り向いた。
     入学式が始まった。

     式の段取りは、こういうことに疎い私でも、「ああ、ありがちだな」と感じるものだった。校歌斉唱があって、在校生の挨拶があって、その後に校長や来賓の眠たい長話が延々続くというもの。式が進むにつれて、前に座るチビどもの落ち着きがなくなっていく。椅子の背に手をやったり、あからさまに横を向いたり後ろを向いたり。さっさと終わらせればよいものを。人間生活の好きな私にも、これはだるい。隣の婦人は船を漕いでいる。
    「では、――議員からの祝電です」
     長話が終わったかと思うと、これだ。入学おめでとう、学校生活がよいものでありますように云々、という文面を読み上げ、終わりかと思えばまた次の祝電を読み始める。その文面も最初のと同じ、所々の言葉を置き換えたものである。以下同文で、よくないか。娘が座面に膝立ちになり、真後ろを向いている。

     と思いきや、娘は椅子を降り、小さな歩幅でトントンと走ってきた。新入生の横を通り、在校生の横を通り、半泣きの顔で私の前に来ると、膝の上に座った。まるで私が椅子で、この椅子に座ります、というような自然さだ。隣の婦人が起きた。
    「では、次の祝電です」
     こんなことはよくあるのか、前に立っている人は平然と祝電を読み続けている。周囲の親たちがチラチラと私たちを見ている。さっきまでの泣き顔はどこへやら、娘は膝の上でケロリとしていた。


    「これにて入学式を終わります」
     その言葉が終わると同時に、式場となった体育館の空気がふっと緩んだ。
     新入生たちがポツポツと、それぞれの親の元に戻ってくる。しかし、親の方へ行かない子もいた。観察してみると、別に親が来ていないわけではなくて(そういう子もいたが)、もうひとりでも平気だよと背伸びできる子ららしい。
     膝の上の我が娘は、周囲のそんな様子はとんと気にならない風である。それどころか、他の連中より早く母親の近くにいられてラッキーぐらいに思っているのが察せられた。

     私は彼女を突ついた。
    「この後、教室でクラスの挨拶があるけど、大丈夫?」
     彼女は膝の上で、ゆらゆら上体を揺らしながら答えた。
    「大丈夫だよ」

     大丈夫ではなかった。
     四十分弱のクラス会の間中ずっと、娘はべそをかいていた。
     担任の先生の挨拶が終わるまでに一度立ち上がり、「さっきの入学式で校長先生が言った三つの大事なこと、覚えてるかな」という先生の問いに早熟な子どもが答え終わるまでにもう一回、クラスの子どもの自己紹介の番が回ってくるまでにさらに一回立ち上がって、後ろのロッカーにもたれている私の所までやってくる。流石に三度目ともなると、同じくロッカーに張り付くようにして並んでいる母親たちも苦笑の類を隠さなかった。

    「じゃあ、カミサカさん。そこでいいから、自己紹介してくれるかな」
     教師は流石に苦笑を漏らさなかったが、眼鏡の奥の目が、固い。娘は教師を一瞥して、再び私の服に顔を埋めた。視線が私たち二人に集まる。娘がますます萎縮する。
     仕方なく、私が代わりに、出来る限りの笑顔で、明るく元気よく、指文字で彼女の名前を示した。しかし、周囲は困った顔をするばかり。
    「先に、後の子の自己紹介しようか」
     先生が机の群れに目を移した。娘の後ろの席に座っていた子どもが指されて立ち上がる。ボソボソとした自己紹介からも、恬淡とした自己紹介からも締め出されて、私はひとり、娘の背中をさすり続けていた。


     枕元の時計が、両方の針をほとんど真上に上げていた。
     フローリングの床に直に敷いた布団に肘を付き、頭を支える格好で考え事をしていた。娘は勝手に私の髪にじゃれついて、勝手に眠っている。娘が懐いてくれるのは、素直に嬉しい。しかし、これが果たして正しき人間の母娘のあるべき姿かと考えてしまう。
     娘はあの日、私を「母さん」と呼んだ。それからも、私を「母さん」と呼んで慕っている。けれど、本当に母親だと思っているのだろうか。餌付けしたポケモンが懐くように私に懐き、他に呼び方がないから「母さん」と呼んでいるだけなのではないだろうか。

     背中に手を回し、娘に触れる。
     彼女は人間を恐がっている。施設で恐い目に遭ったのだろう。娘は人を恐がり、私を好いている。それも多分、人間ではないから、という理由で。
     娘を潰さないよう、娘から離れる方向に、寝返りを打った。それでもなお、私に寄り添おうとする娘の肩を抱き、髪に触れる。何故こんなに小さな肩なのだろうと、胸を締めるような感情と共に、答えの必要ない疑問が吹き上がる。

     半年だ。私の口からため息が漏れた。半年。今度は三日ではない。また孤児院に捨てに行けるのか、と自分の胸に問うた。

     無理だ。

     考える間もなく、自分の中から答えが返ってくる。彼女に、人間の中で育ってほしい。けれど、人間を恐がる彼女を傷付けたくない自分がいる。いや、それ以上に、半年間一緒に過ごしてきた彼女を手放したくない自分がいる。浅ましいことだと、分かっているけれど。
    「あったかい」
     隣で眠る娘が口にした。寝言のようだった。


     入学式から一ヶ月も経っていなかった。いや、もたなかった、と言う方が適切だろうか。
     息子を布団の中から引きずり出し、不服そうな顔をする彼に変化の特訓をしている時にチャイムが鳴った。
    「出れば」
     息子が言った。前からあまり変化の練習をしたがらない息子ではあったが、最近はとみに練習に不熱心な様子を見せていた。
     私の気遣わしげな視線を避けるように部屋の隅に行くと、もう一度息子は「早く出なよ」と言った。息子から視線を外し、ドアに向かった。誰だろう、知らない匂いだ。

     魚眼レンズを覗く。
    「すいません、娘さんの担任をしております、コウノと申します」
     冴えない眼鏡の男が、レンズの向こうから話しかけてきた。ドアを開いて、やっと記憶が蘇った。入学式の日、教壇に立っていたあの教師だ。
     どうぞ、と部屋の中に招く。すいません、と悪びれる様子もなく靴を脱いだ。造り付けのキッチンがある廊下を通り、居間兼寝室兼娘の勉強部屋となっている広めの部屋に入る。布団の一ヵ所が、仔狐でも入れてあるみたいに膨らんでいる。
     もう昼過ぎなのに上げていない布団を咎めるように見た後、教師が私に視線を移した。どうぞ、と言う代わりにちゃぶ台の横の座布団を指し示す。それから腕を上げようとした私を遮るように、教師が手の平を向けた。傍らの味気ない黒い四角の鞄から、メモ帳とペンを取り出す。
    「何かあれば、これに」
     ちゃぶ台の上を滑らせるようにして紙とペンを寄こすと、教師の男は座布団の上に正座した。私が居心地悪そうに向かいに横座りしたのを確認してから、彼は話を始めた。

    「娘さんのことですが」
     お茶を出さなかったのに、彼は長々と話した。曰く、
     学校生活に適応できていない。
     クラスメートに暴力を振るう。
     落ち着きがなく、授業中でも頻繁に教室を出ていく。
     叱ればしばらくの間よくなるが、すぐに問題行動を起こす。
     質問に答えない。
     宿題をやらない。
     筆談と通じない手話では、相槌もろくに打てない。男は一方的に話すだけ話して、「養護学級に入ることも考えたらどうでしょうか」止めを刺すようにそう言い置いて、席を立とうとした。
    「ああ、すいません、それ」
     男は私の手元にあったメモ帳とペンをひったくると、「では」と言って逃げるように部屋を出ていった。一応、部屋の出口に立って見送りをした。申し訳ないと思っているのか、男は俯いて、早足でマンションから去っていった。

     扉が閉まる音。と同時に、ため息が漏れた。
     部屋に戻り、落ちるように座布団に腰を下ろした。さっきの教師の匂いが、プンと匂った。座布団をお尻の下から引きずり出してはたく。布団の中から息子が顔を出した。
    「どうすんの?」
     どうもこうもないわよ、と私は答えた。

     外に出ていくらも経たない内に日が落ちた。つい最近まで夏で、日が長いと思っていたのに、季節の巡りというのは存外早いものだ。
     秋風の中に鼻を突っ込み、匂いを探した。あの子はどこだろう。寄り道は構わないけれど、それにしても遅い。背の高いマンションに両側を挟まれ、遠慮がちに街灯の光を受けている、狭い道を進む。いつもなら探さないかもしれない。教師が来たからかもしれない。住宅街を抜けて、食堂やレンタルビデオ屋が並ぶ大通りに出た。
     金木犀の独特な香りが鼻につく。いい香りではあるが、強く匂いすぎて欝陶しい。一様なあの香りの中に、娘が攫われて見えなくなってしまいそうな、そんな嫌な気持ちがした。
     月が掛かり、一番星、二番星と、空をペン先で突ついて付けたような光の点が見えるようになっても、娘の香りは感じられなかった。昼の火照りから冷めたような夜の中で、金木犀の香りは弱まるどころか、活き活きとして、より一層強まったように感じた。
     匂いの海の中を泳ぐように、私は娘の姿を探した。人の匂いはやたらするのに、その中に娘の香りが見当たらない。私の探索を邪魔するように、金木犀と他人の匂いばかり付きまとう。北の公園に行った。やはりするのは花の香りだけで、娘はいなかった。
     どこにいるの、もう! 心が刺々していく。学校でも上手くいかなくて、親にも心配かけて。明かりを落とした店のショーウィンドウに、紅色の髪の、しかめ面をした女性の姿が映る。鬼婆のような面相に、自分が驚いた。勤務時間を終えたマネキンに向けて口の端を伸ばし、無理矢理笑顔を作った。少しだけ心が落ち着いた。深呼吸して、また歩き出す。肺の中に金木犀の匂いが入った。大通りを進む。金木犀の香りが強くなっていく。

     あ、と小さな声が漏れた。微かな、愛おしい、柔らかな香り。通りがかった人に怪しまれないよう、速すぎない程度に、駆け足になる。今朝嗅いだはずなのに、懐かしい。進むにつれてはっきりとした輪郭を示し出すその香りが、強張った私の心を安堵の情で緩めていく。ふーっと長い息を吐いた。もう金木犀の匂いも気にならない。二階の自室の前まで跳び上がりたいのを押さえて、マンションの階段を一段ずつ、登っていく。
     ドアの前に娘がいた。膝を抱え、体育座りの姿勢でうずくまっている。ちょっと草の匂いがした。そっと肩に手を置く。反応がなくて、肩透かしを食った気分になったけれど、それでも我慢強く、娘が応えるのを待った。
     十秒ぐらい、待っただろうか。娘が膝にくっ付けるように俯けていた顔を、ノロノロと上げて。娘と目が合った私は、思わず小さな悲鳴に近いものを上げた。

     まるで骸骨みたいだ、と思った。娘の目は異常に翳り、頬は健康的なピンクで、目の下に隈もなく綺麗な肌で、目だけが穿ったみたいに暗くなっていた。どれだけ明るい光の下に出しても、目だけは電気を消し、カーテンを引いた部屋の中みたいな暗さを保っているだろう。目だけが絶対的に暗かった。

    「おかえりなさい」の手話を手早く済ますと、私は娘を抱えるようにして部屋の中に引きずり込んだ。そんなことをされても、娘は表情ひとつ変えなかった。暗い目で、自分の体の内側を覗いているようだった。
    「どこに行ってたの?」
     返事はない。意識の半分を娘に囚われて、片手間に食事の用意をした。冷蔵庫にあるものを食べさせ、とにかくひと息ついた。何かに意識を囚われながらご飯を食べる娘を、これまた意識を何かに囚われながら、私が見つめていた。

     ご飯が終わると、娘はきっちり正座して両手を膝の上で結んだ。不意に時計の秒針が大きな音を立てて動き、怒られるのを待っているのだと気付いた。私は何故か口を開き、言う言葉が見つからずに口を閉じた。娘と向かい合って、その場に張り付けになったように止まっていた。当然、手話の為に腕を上げることも出来なかった。
    「どこに、行ってたの?」
     やっとのことでそれだけ伝えた。娘が顔を上げ、私を見る。目は相変わらず暗く、生気がなかった。
    「……森」
     たっぷり時間を要して、娘はその単語だけ喋った。森? この近くに森はひとつしかない。
    「まさか、東の森に行ったの?」
     街の東にある森。私の故郷でもある。行くなと言ったことはないが、野生のポケモンがいて危なかったはずだ。
    「ポケモンが襲ってこなかった? 大丈夫だった?」
     娘はコクリと頷いた。あの辺りで危ないのは悪猫だ。会わなくてよかった、と胸を撫で下ろした。運がよかったらしい。
    「でも」
     娘が呟く。顔を床に向けていた。
    「なんでもない」
     娘が立ち上がった。

     お風呂に入ると人心地がついたようで、娘はまたいつものように私にじゃれ付いてきた。それでも元気がないのが分かったので、さっさと寝かせることにした。彼女の黒髪にドライヤーを当てて乾かしてやり、ブラシでさっと梳かす。娘に歯を磨かせている間に、私は自分の髪を乾かした。寝る前の儀式のようなものをひと通り終えると、彼女を布団の中に追い立て、私もその隣に寝転んだ。

     布団の中に入った娘が言う。
    「母さん。母さんはゾロアークだよね」
     そうよ、と私は答える。
    「母さん。私は母さんの子どもだよね」
     そうよ、とまた私は答えた。娘が笑みを浮かべた。やっと瞳に生気が戻ってきた。

     娘の言いたいことを、私はちっとも理解していなかった。





     椅子にもたれていると、肩を同僚に突つかれた。
    「ぼーっとしすぎ」
     いたずらっぽくウインクして、同僚は湯呑みを並べた盆を抱えて去っていく。
     その後ろ姿はどこか嬉しそうだった。例えば地面から踵が上がる速さ。例えば歩調に合わせて揺れる、湯呑みの中のお茶に注ぐ視線。私は楽しそうな同僚から目を離し、顔を上げて、モニタを視界に入れる。カナワタウン行きの車両の、二両目だった。

     座席の下に、茶色の缶が置いてある。テレビのコマーシャルで何度か見たことがある。有名なバッフロン印の缶コーヒーだ。

     誰かが捨てていったそれが、車体が揺れた拍子にカタンと倒れる。タタン、タタン。電車が揺れるリズムに合わせて、車両の端まで転がった。ドアの所でぶつかって止まる。そしてまた転がる。ドアの所まで行って、また止まる。

     モニタの中で延々と往復運動を繰り返す空き缶を見る。
    「森」
     昨日の娘の言葉が、虚ろな目が蘇った。
     東の森。私の故郷、迷いの森。
     どこか諦めたような、不貞腐れたような、見上げてくる息子の目。

     空き缶がまた転がって、座席の下に入り込んだ。車内カメラにマイクは付いていない。しかし、無音のままあちらからこちらへ行く茶色の缶が、アルミの円筒を共鳴させて、ゴロゴロと低い音を響かせている。幻のその音が、耳について離れなかった。

    「森に行く話、どうなったの」
     娘を拾った。だからそれどころではなくなった。その時は、それが真実だった。けれど今は、娘が息子と楽しく遊んでいるからと、娘を言い訳にして息子から逃げていた。

     いつまで経っても変化が上手くならない息子。早く森にやらねば……森で暮らす術を身に付けなければ、この先あの子は街でも森でも生きていけなくなる。
     なのに、なんで娘が先に森に行ってしまったのだろう。
     上手くいかない。あの子がさっさと森で暮らすことを承知しなかったから手遅れになったのだ、とも思う。半端に街暮らしなどしたものだから、息子は森に行きたがらなかった。私の所為? 私の所為ではない? じゃあ息子の所為? その息子を育てたのは誰?

     空き缶が勢いよく、車両の前から後ろへ転がっていった。カナワに着いてドアが開いたけれど、誰もその空き缶を拾わなかった。


     仕事を終えて部屋に戻ると、誰もいなかった。
     娘は学校に通っているから、当然いない。息子もいなかった。

     床に崩折れるように、座り込んでいた。
     森に行ったのだろうか、街に出たのだろうか。探す気も起きなかった。
     もうどうにでもなってしまえと投げ遣りな気持ちになった。森でも街でも暮らせない厄介者がいなくなって、清々したじゃないか?
     捨てられた缶が、心の端から端まで転がって、不愉快な音を立てた。
     昨日、コウノと名乗って部屋に上がってきた男性の顔がちゃぶ台の向こうにちらついた。娘さん、学校で上手くいってませんよ。娘の順番を飛ばした自己紹介。暗闇を溶かし込んだ目。息子の詰るような目が重なった。母さん、どうして、どうして。

     どうして上手くいかなくなったの?
     どうして森で生きてかなきゃいけないの?
     どうして街で暮らさなきゃいけないの?
     息子の目、娘の髪、車両に捨てられた空き缶の音……

     いつの間にか眠っていたらしい。肩を叩いた娘が、少し驚いたように目を丸くして私を見る。
    「母さん、疲れたの?」
     私を気遣いながらも、何かに気を取られ、上擦っている娘の声。その腕の中に息子がいた。

     起き上がる私の一挙一投足を見守る娘の目は、真ん丸に見開かれ、私の皮膚の下にある何かを注視しているかのようだ。その腕の中で、息子は居心地悪そうに横を向いていた。けれど、横目に私を見る息子は、逃げを打つような、そのチャンスを窺うような表情をしていなかった。挑むような、相手の隙を見つけ出そうとするような、そんな目だった。
    「あのね、母さん」
    「なあ、母さん」
     娘と息子が同時に喋り出した。
    「スーをね、学校に連れてったの」
     娘はそこまで言い終えると、「だめだった?」と言う代わりに上目遣いで私を見た。
     ポケモンを学校に連れていくことは禁止されていないはずだけれど。私が黙っていると、今度は息子の方が口を開いた。
    「兄ちゃんが見てれば、こいつもちゃんと授業受けるし、それに、他の子を叩きそうになった時も止められるからさ」
    「あのね」
    「だからさ」
     また娘と息子の声が重なった。

    「これからも、スーと学校行きたい……」
    「僕さ、こいつの手持ちになるよ。そしたらずっと一緒にいられるだろ?」
     第三の選択。

     すぐには答えを出さなかった。
     夜、いつものように娘と息子と隣り合って床に就き、目覚ましをセットして、それから眠気が来るまで悶々と考え続けた。

     誰かの手持ちポケモンになる。私はあまり好きではないが、それもポケモンとしてのひとつの在り方だし、選択肢である。けれど。

     いつものように、髪にじゃれついて眠る娘と息子。

     この子たちを兄妹のように育てた覚えはない。息子の方が兄だと言ったのは、あくまで比喩的なものだ。だが、その言葉が今になって足枷のように纏わり付いてくる。兄をモンスターボールに入れて、妹の所有物として振舞うのだ。それは兄妹と言えるのか?
     いや、この子たちは兄妹ではないのだ。レトリックとしての兄妹に過ぎない。偶然ひとつ屋根の下に居合わせた、仲のいい人間とポケモンの組み合わせ。だから、ポケモンの方がモンスターボールに入ったって、何の問題もない。仲のいい人間とポケモンの関係として、それは自然なことだから。兄妹のように仲良く育った人間とポケモンの関係として、当然あり得るものだから。

     でも。時計の針がカチリと鳴る。

     私にとっては、どちらも大事な子どもなのだ。





     日々はつつがなく過ぎた。
     娘は結局あの後問題を起こし、養護学級に入れられる羽目になった。
     しかし、養護学級は予想していた監獄みたいな学級ではなく、普通学級よりも却って開放的で緩やかな所だった。先生もおおらかで優しい人らしく、娘も養護の先生と言って懐いていた。
     冬休み前の三者面談の時、はじめて養護の先生に会った。彼女は太っているわけではないが、頬が丸みを帯びていて、おどけたような、それでいて和やかな雰囲気を醸し出す人だった。娘はいつものようにゾロアを膝に抱き、足を前後に揺らしている。養護の先生はいたずらっ子みたいに娘の方にウインクしてから、私に向けて話し出した。
    「校則には、親が所持しているポケモンなら連れてきていいって書いてあるらしいですよ。まあ、野生の子と仲良くなっちゃったんなら仕方ないですよね、子どもですし」
     そう言って、彼女は笑った。
     彼女は暗に、スーの所持を明確にしてモンスターボールに入れなくてもいいと言ってくれているのだ。
     仕方ないですよね。スケッチブックから取ってきたのであろうA4判の紙にそう書いて、私も笑った。
     養護の先生は、私がゾロアークだなんてことは知らないはずだ。けれど、子どもを見つめて物事を決める彼女の、顔と同じく平和的な印象を与える物言いは、言外に私たち家族がそのままでいいと言ってくれているようで、私は感謝の念に近いものを感じたのを覚えている。

     面談に使ったA4の白い紙は、彼女と私の間で色々な書き付けがなされて、面談の最後に私に手渡された。ふゆやすみに本をいっぱいよんでみよう、という先生の書き込みや、「はい」というそれだけでは何のことか分からない私の文字、娘の落書きなんかが、その紙の隅々まで広がっている。娘と私が下手くそなゾロアの絵を並べて書いていて、その上に先生の丸い文字で「ゾロアはめずらしいポケモンだから、わるい人にさらわれないように気をつけてね」と書いてある。そのさらに上に、鏡文字で「きをつける」と書いてある。家に帰って、その紙を広げて、家族皆で笑った。

     冬が終わり、春が来ると、再び学校が始まる。冬休み最後の日、家族皆で近所を散歩していた。
     去年の寒の戻りはきつかったけれど、今年はそうでもない。むしろ、暖冬だった。そこまで考えて、私の目は引き寄せられるように娘の方に動いた。少し、背が高くなった。私の腰までしかなかったのに。去年の今頃のことだったと思い返す。
     娘は私の手をしっかり握っている。つないでいない方の手を、娘は空にかざした。その先に、裸ん坊の木が並んでいる。チラホラと春の芽吹きを付け始めた、桜並木だった。
     並木に囲われるように作られた塀に「雷文こども園」の文字を見て、体が縮こまる思いをした。急に寒風に吹かれたように背を曲げた私の隣で、娘は何気ない調子で「桜が咲いたら見に行こうよ」と言った。娘に許された気がした。

     学校が始まった。冬休みの間、娘は養護の先生に言われた通り、本をたくさん読むようにしていた。その成果か、娘は前ほど国語の時間が苦痛でなくなったらしい。
    「前は全然読めなかったのに、今はすらすら読めるよ」
     そんなことを笑顔で報告してくれる。
     しかし、娘はやはり本よりパソコンの方が好きらしい。家にいる間はしょっちゅうパソコンの前に鎮座している。今ではパソコンの中はすっかり娘の領地と化して、娘が作ったらしい家計簿ソフトやら音声ソフトやら、とにかく私には分からないことになっている。
    「学校でもパソコンの授業があるよ。パソコンの時間はいっぱい褒められるよ」
     自慢気に報告する。
     娘はよく喋るようになった。家に帰って「ただいま」から始まって、手を洗いながら、宿題をやりながら、パソコンをいじりながら、引っ切りなしに喋っている。今日はこんなことを習った、虫の顔を虫眼鏡で見た、何故虹が出来るの、何故雨が降るの、ゾロアの話もした、ゾロアの仲間は幻影を使って人に捕まらないように暮らすんだって。話があっちからこっちへ飛ぶ。子持ちの同僚が言っていた「顔中口だらけ」の意味がようやく理解できた。食事中も喋る。食べながら、どうやって喋っているのやら、まるで口がふたつあるみたいだと感心してしまう。

    「ねえ、どうして雨が降るか、母さん知ってる?」
     それから娘は雨滴がどうの、と難しい話を始めた。分からないので、ポケモンが雨乞いしたら降るんだ、と答えた。
    「ポケモンの雨乞いで本当に雨が降るの? 嵐の雨も? 長く続く雨も? 本当?」
    「本当よ。風と雷の神様が雨を連れてくるのよ」
    「じゃあ、その神様やっつける」
     そしたら晴れるよね、と娘は名案を思い付いたという顔でスーの方を見た。神様を倒す役目を勝手に与えられたスーは、困り顔だ。
    「そういうことを考えてたら、神様がやってきて貴女の上に雨を降らせるよ。集中豪雨」
     集中豪雨だけ、紙に書いた。
    「えー、それはやだあ」
     心底嫌そうな顔をする娘に、
    「悪い子の所にも来るからね」
     わざと意地悪に、そう答えた。


     暖かな季節が過ぎ、じき夏となった。娘はどうしてもプールに入りたがらないらしい。養護の先生が言ってもだめだった。きっと、体の傷を見られたくないのだろう。今のところはそっとしてやってください、と連絡帳に書いておいた。それ以外は穏やかに過ぎて、後期の授業が終わり、夏休みがやってくるものと思っていた。

     修了式の日、私は学校にいた。学校に来ている保護者は私だけだった。高学年の男子が校庭でサッカーの真似事をしていた。校門を出ていく児童は大体が軽装で、背負い鞄を持ってきた子はほとんどおらず、手提げ鞄か、やんちゃそうな男子になると手に通知表だけ持って学校を出ていっていた。
     下駄箱で来客用のスリッパに履き替えて、階段を登った。四階まで行き、リノリウムの廊下の端にある「あすなろ学級」まで、スリッパの踵を引きずりながら歩いた。
     教室の扉は軽く、少し力を入れただけで軽々とレールの端まで動いた。ガン、とドアがレールの端にぶつかった。教室の中の人が顔を上げた。あすなろ学級には、養護の先生と娘、ふたりきりしかいなかった。

    「すいません、お忙しいのにいらしてもらって」
     四つ合わせた机の上には、いつかのようにA4判のスケッチブックの紙が置いてあった。
     私と娘が隣に並んで座る。先生は深々とお辞儀してから、私たち親子の向かい側に座った。まずは、と言った。その手にペンが握られていた。
    「一年間、ありがとうございました」
     先生が言葉を続ける。
    「転勤で、来年度からは別の小学校に行きます。カミサカさんとも、今日でお別れです」
     私は驚いて、娘の表情を見た。娘は前もって知らされていたらしく、驚いた表情はしていなかった。ただ、寂しさを隠しているようだった。

     娘より先に養護学級に入っていたもうひとりの子が今年で卒業することも関係あるらしかった。養護の先生は別の学校へ行き、ここのあすなろ学級も来年からはなくなってしまう。
    「カミサカさんならもう、普通学級でやっていけますよ」
     人に慣れていなかっただけの、普通の子なのだから。
     娘は先生に励ましの言葉を貰っても、ただ口をへの字に曲げて頷くだけで、何も答えられない様子だった。
    「大丈夫。自信を持って。今までカミサカさんのことを見てきた先生が言うんだから間違いない」
     丸顔の先生はそこまで言って、照れくさそうに、そしてやはり寂しそうに、顔を俯けた。

     ポツポツと、断続的な話をした後はロッカーの整理をした。もうこの教室を使うことはない。ふたりだけの生徒のロッカー箱が入っていた後ろの棚から、卒業で一抜け、学級がなくなって二抜ける。娘の飾り気のないロッカー箱から大量のプリントが出てきた。先生の苦笑いと私の呆れ混じりのため息がその周囲を包む。しみじみした気分も吹き飛んでしまった。
    「パソコンのディレクトリなら整理できるのに」
     娘はプリントを整理する私を、後ろでつっ立って見ている。拳を振りかざして殴る真似だけしてやった。

     授業参観のお知らせから、運動会や遠足のお知らせ、滞納した給食費の催促(私はちゃんと月はじめに娘に渡していた。さては、先生に渡すの忘れていたな)に教科の筆記テスト、珍しいポケモンの盗難が増えているという注意喚起の紙、何かのアンケート用紙に果てはノートの切れ端まで、ロッカー箱の中に月日の順で積み重なっていた。こんなことで普通学級に行けるのやら、と不安になってくる。
     プリントの間から小さな色紙が落ちた。床を爪で掻いて、紙を拾った。蝶々の形に切り抜かれた赤い紙に、読みにくい黒鉛筆で「ゾロアーク」とだけ書いてある。
    「ああ、それ」
     私の手の中の物を見とめて、先生が口を出した。
    「クラスの方で、将来の夢を色紙に書いて、皆で大きな紙に貼ったんです。カミサカさんも書いたんだけど」
     貼らなかったらしい。娘が赤い蝶々をヒョイと取り上げた。
    「チャンピオンとかジムリーダーとか。多かったですよ。オノノクスとか、サザンドラとか。女の子だとチラーミィやエモンガが多かったかな」
     将来、ポケモンになりたい子は存外多いらしい。
     蝶々をクシャクシャにして頬を膨らませた娘を微笑ましい気持ちで眺めていた。その時はまだ、微笑ましかった。





     新学期になって、学年がひとつ上がった。その頃から、娘は度々傷を作って帰ってくるようになった。
     喧嘩の理由を聞いても、なかなか答えない。絶対に怒らないから、と約束して渋々口を割らせても、答えた内容はあまり要領を得ていなかった。ただ、事実として娘の方が先に手を出すようなので、もう少し辛抱を覚えなさいと、それだけ何度か言っておいた。
     それで傷が減るはずもなかった。毎日一度は喧嘩して、最後は取っ組み合いになるらしい。今までは養護学級に先生と上級の子がひとりだったから、喧嘩する相手もいなかったのだ。これから擦れて成長するのだろうと思っても、毎日新しい傷を作って帰ってくる娘の姿には心が傷んだ。

     学期のはじめはプールのことで喧嘩することが多かった。連絡帳に「人前で着替えるのを嫌うので、しばらくプールはやめさせてください」と書いたのに、プールに入れようとするらしい。今度の先生は入学した時の眼鏡のように責任転嫁するような物言いはしなかったが、それが却って困ったことになった。
    「プールをやらないと、体育の単位が揃わないんです。卒業できませんよ、娘さん」
     連絡帳に脅しみたいな文句が書かれていた。しかも、全員揃わないと体育をやらないという信条でも掲げているのか、学校中を使って娘を追いかけ回すらしい。いつも先生の方が諦めて終わるが、その所為でプールの授業はいつも十分か十五分遅れるので、プールを楽しみにしているクラスメートに娘が詰られる。それで喧嘩になって、取っ組み合いになって帰ってくる。
     何とか出来ないかと思って、一度着衣水泳ではだめかと聞いてみたことがあったが、指導する教諭がいないと突っぱねられた。プール関係のゴタゴタは、プールの授業ももうそろそろ終わりという頃になって、担任の教師と娘の怒鳴り合いに隣のクラスの担任が割って入り、プールの端に腰掛けてバタ足だけやらせるという形で話をまとめるまで続いた。通知表の上ではそれでもいいらしいが、よく分からない。ただ、娘の体に生傷が絶えないのだけ気になった。

     他の教科の成績も下り調子になった。歯車がひとつ狂うと、他の歯車もどんどん狂い出すという、その例えを見ている気がした。国語で知らない言葉が出てくると分からなくなるらしい。大好きな養護の先生がいなくなって以来、本読みからも遠ざかっていた。好きだったパソコンの授業も嫌になったと言っていた。クラスの授業では既存のペイントソフトを使って絵を描いたりするそうだ。自分でプログラムを読み、パソコンを解体している娘にはつまらなかろう。
     そういうのを、娘は自分から話さなかった。最近お喋りが少ないなと思って、それとなく水を向けて喋らせてはじめて分かったことだった。

     喧嘩も多いの? と聞くと、娘は小さく頷いた。
    「皆馬鹿にするもん。髪を染めたいって言ったら……」
    「髪を、何?」
     下を向いたままの彼女の肩に触れてこちらを向かせた。手話を見た娘はしばらく考えてから話し出した。
    「母さんの髪、紅色で綺麗。ゾロアークみたいだし。私の髪、黒でつまんない。大きくなったら髪、染めたいって言ったら」
     また俯きそうになって、娘は溺れているみたいに顔を上に向けた。
    「……クラスの子が、前に書いたの、まだ本気にしてるの、ポケモンになりたいなんて馬鹿みたいって言って」
     娘の言葉は、そこで途切れた。
     私は娘に向き合うと、そっと頬を手の平で挟んで、笑顔を作った。それから両手を離し、
    「貴女の髪は綺麗だから、染めるのはもったいないよ」
     それだけ伝えた。
     ゾロアークになりたいなんて馬鹿らしいと一蹴すればいいのか、まだそんな夢を見てていいのよと仮初にも慰めればいいのか、迷って中途半端に答えてしまったなと思った。

     それでも、ひと月ふた月経つと、だいぶん落ち着いたように思われた。少なくとも、娘の傷は目に見えて少なくなっていた。その代わり、息子の傷が増えていた。吃驚して問い質すと、最近は喧嘩になると取っ組み合いではなくポケモンバトルになるのだという。娘の他にもポケモンを連れてくる子はいる。そうなるのもむべなるかな、というわけだ。
    「でも、どうなの? 嫌じゃない?」
     息子のスーにそれとなく聞くと、息子はケロリとして答えた。
    「だって僕たち、バトルビデオ見て研究してるもん。楽勝楽勝」
     確かに、私の職場からいいバトルの様子をダビングして家に貰って帰っていた。
     そのビデオを見たからと言って、百人が百人バトルの達人になるわけではなかろう。娘には幸か不幸か、バトルの才能があるのだ。
    「今んとこ、僕たちのコンビが最強だよ」
     それから、レベルの低いオタマロやチョロネコを如何にしてやっつけたかという武勇伝に移る。
     言葉のあやとはいえ、義理の妹の指示を聞くのはどんな気分かと聞きたかったのだが、それを聞くことは遂になかった。
     その時はポケモンバトルで強いらしいと聞いてひとまず安心だと思っていたのだが、つくづく、自分は何も分かっていなかったと思う。

     また、こんなこともあった。
     夕方、部屋で家族揃って夕食を食べていると、忙しなくチャイムの音がする。その日は豚の角煮だった。
     来客を早く追い返してしまおうとドアを開けると、娘の担任教師がダン、と右足を三和土に叩きつけるように踏み出したのである。目が三角だった。学期はじめの、プール騒動の只中にあった頃のことだ。
     娘がどうしても水着に着替えたがらないので、彼は身体的虐待を疑って家まで押しかけてきたのである。
     実際には虐待どころか、娘を傷付けることを恐れて手を上げたことすらなかった。しかし、私はもちろんのこと、娘の説明にも耳を貸してもらえず、ほとほと手を焼いた。夕食が冷めるから出ていってくれと伝えてもなかなか引き下がらない。娘の言葉を信用しないのは、子どもというのは親を庇うから、だからだそうだ。
     禅問答を繰り返して、やっとの思いでありついた夕食は芯まで冷え切っていた。虐待なんかがある人間が面倒くさいと、その時はじめて思った。
     その後も担任の彼は連日のように家まで来て、がなり立てた。私はすっかり参ってしまって、一度など、間違えてゾロアークの姿のまま応対に出た。娘の体には連日の肉弾戦で多量の生傷が付いている。それを取り沙汰され、一時は娘と引き離されそうなところまで行った。すんでのところでその事態を免れたのは、隣のクラスの担任が、娘のクラスで毎日暴力沙汰が起こっていることに関して、職員会議にかけたかららしかった。
    「隣の先生の方がいいなあ」と娘が呟いていた。その隣の先生は娘の担任について、情熱が空回りしているだけであって、決して悪い人ではないのだと言っていた、らしい。確かにそうだとは思えたけれど、娘が彼を嫌っていたので、私も彼を嫌っていた。


     秋から冬に移ろう頃、娘が風邪を引いた。
     いつかのようにおかゆを作って娘に食べさせた。外では木枯らしが高い笛の音を奏でている。この子を拾った日もこんな日だったか。しかし、鍋の中身はもう出来合いの、お湯を入れて五分というパック詰めの食品ではない。私が食材を選んで作った、野菜たっぷりのおかゆである。
     そのおかゆを見た娘は、不満そうな顔をした。しかし、文句を言わずに黙って食べているところを見ると、消化器の具合が悪いわけではないらしい。子どもっぽい、ただの野菜嫌いである。
     娘を布団に押し込んで、私はテレビの電源を入れた。それから音量を最小にし、天気予報を見る。画面の中の予報士が何か言う前に、息子が「寒いのやだなあ」と言った。
    「今年は厳冬となる見込みです」
     仏頂面の予報士がそう締め括って天気予報を終える。私はニヤリと笑う。息子は生意気そうな顔をして、布団の中に引っ込んだ。その尻尾をすかさず捕まえる。
    「どうする? 森はもっと寒いぞ」
    「もう森に行かないからいいよ」
    「でも、街だって寒いよ。どうする?」
     息子が名残惜しそうに布団を見た。
    「寒いのは分かってんだけどさ」
     そう言って、再び布団の中に潜り込む。その尻尾を掴もうとしたが、息子は尻尾を素早く引っ込めて、今度は掴ませなかった。
    「こらこら」と私は呆れた声で言う。
    「街も寒い、って言ったでしょ。布団の中でぬくぬくしてたら、体がなまるじゃない」
     息子がひょっこり、首を布団から出した。
    「でもさ。今は妹が風邪でしょ。体、冷やさないようにしなきゃ」
     舌をチョロリと出す。そしてまた布団の中に隠れた。
     やれやれ、と口に出して言った。それから立ち上がって、食器を流しに運び始めた。

     娘の目が私を見ていた。布団の中から小さな寝息が聞こえる。息子の方は眠ってしまったらしい。
    「どうしたの?」
     布団の横に座った。いつものように娘の髪に手を伸ばす。その手を、娘がそっと押し返した。
     今まで起こらなかったことに動揺を悟られないよう、ただ笑ってやりすごした。娘の目が私を見ている。美しい濃い紅色の目だ。ゾロアークの髪のような。
    「母さん」
     娘が口を開いた。
    「何?」
     そう問い返して、随分と時間が経ってから、娘が答えを返した。
    「私は、母さんの子どもだよね」
    「そうよ。……母さんはいつだって貴女の味方よ」
     前も、同じことを聞かれたことがあった。きっと、不安なのだ。昔も今も。

     何がどう不安なのか、昔も今も、履き違えていたけれど。

    「そう」
     娘はそう口にすると、天井の方を向いた。どこか、上の空だった。
     洗い物をする為、しばらく布団の傍を離れた。洗い物を終えて戻ってくると、娘がさっきと同じように、天井を向いているのが目に入った。
    「ちゃんと寝なきゃだめよ」
     手話でそう伝えた私に、娘が再び「母さん」と問いかける。私はまた布団の横に座った。
    「どうしたの」


    「……学校、行きたくない」
    「元気になったら、また行かなきゃだめよ」
     そう言って、私はまた腰を浮かしかけた。
    「母さん」
     その私を、娘が三度引き止める。
    「何? 今度は」
    「私、」
     悲しそうな目だと思った。

    「森に行きたい。森で暮らしたいよ」

    「どうして?」
     利便の為に手話を学んだ身が恨めしかった。私はまた、般若のような顔をしているのではないかと思った。口先で化かすことは出来ても、私は表情まで誤魔化すことは、出来ない。
    「だって」
     娘はまた悲しそうな目をしている。
    「母さんもスーも、きつねさんだから」
     季節外れの金木犀の匂いが鼻についた。悲しそうな目。
    「森で暮らしたい。もう学校なんかやだ」
     何故だろう。
     街でずっと暮らしてきた。人間のことを知りたいと思って、知っていると思っていた。

     なのに、娘の表情の意味が分からない。その目が悲しそうとしか、私には分からないのだ。

    「本当に、私が本当の」

     狐の子どもなら、よかったのに。

     それ以上は言ってはいけなかったのに、彼女は言ってしまった。

     私が彼女を見下ろしながら思っていたのは、決して彼女が嫌い、とか憎い、とかではなかった。彼女の言葉の向こう、顔の向こうにある思いの端も感じ取れない自分の不甲斐なさに腹を立てていた。けれどそれは、彼女を拾ったのは失敗だったと思っているのと、同義なのだ。

     彼女は狐の子なんかじゃない。立派な人の子どもだ。ただ、生い立ちが少し不幸だっただけで、それ以上の不幸を背負い込む由は欠片もなかった。

     頭に上った血が、ぐるぐる、回り続けていた。目頭が熱くなったけれど、とても彼女の前で泣く気にはなれなかった。彼女を不幸にしたのは自分だから。

     所詮、私は狐。人の子の情を感じる術も受け止める術も知らず、彼女を育てるなんて、無理だったのだ。
     人として、幸せに。昔の自分の誓いの言葉が、虚ろに胸の中に響いた。





     それから数週間を、無駄に過ごした。
     私はどうやって彼女の成長を正常に戻せばいいか、無為に考えていた。

     昔、根元が折れ曲がった松の木を見たことがある。
     地面から数センチの所で直角に折れ曲がり、そこから十数センチ南に伸びた所で、また直角に曲がって、そこから平気そうに天に向かって伸びているのだ。
     彼女のことを考える度、折れ曲がった松の木の根元が、鮮やかに瞼の裏に現れる。どこで見たかも思い出せない松の木が、私が考えても無駄だ無駄だと、無言なのに雄弁に物語る。

     何度か、息抜きに森へ行った。ひとりで、ゾロアークの姿に戻ってぼんやりと過ごした。最初は「いい身分だな」とからかいに来た仲間も、私の様子を察して遠巻きに見るだけになった。

     こうして私は、大事な数週間を森と職場の往復で過ごした。部屋で過ごす時間を意図的に少なくしていた。

     相応しい結果になるものだな、と思った。


     風こそ冷たかったが、空はよく晴れていた。けれど、少し空が低いような、そんな気がした。
     娘の手を引くのは、何日ぶりだっただろうか。私が娘と手をつなぎ、娘の横を息子がトコトコ歩く。知らない人が見たら、ありふれた家族だと思うだろう。是非そう思ってほしい。

     ライモンシティの西、朱で彩られた跳ね橋を渡れば、ホドモエシティに着く。大小様々な船の寄港地であり、東西南北の珍かな品が集う港町でもある。集まる品は青果が多いが、市場のあちこちでアクセサリーなども売っている。市場の上には白い布で屋根を作っていて、その下に入ると、僅かに外よりも空気が冷たい。けれど、集まる人の熱気で、その寒さはすぐに潰えてしまう。
     何故ここに来たのか。可愛い髪飾りでも買おうか、珍しい物を見たら、娘の気も紛れるかもしれないと思っていたような気がする。娘は私と手をつないだまま、頑なに前を見つめていた。
    「これ、買う?」
     娘の好きな紅色で色付いたお守りだ。ジョウト地方の古都に伝わる上等の織物だそうだ。
     娘が首を横に振ったので、私たちはそこを離れた。
     海の方で、色とりどりの巨大なコンテナが上がったり下がったりしていた。コンテナが上下するその方向から、巨大なトラックがコンテナを引いて山向こうへ走り去っていく。
     そこから少し行った所に、鉱物ばかり集めた一角があったけれど、見ただけで特に買いたい物はなかった。
     娘がひとつの鉱物を指して小さく声を上げた。真ん丸な水晶玉のような、独特な水色を湛えた玉。内海の青と冬空の青を混ぜたような、緑を含んだ色。どこか私たち一族の目の色に似ている。
     水晶玉から足早に離れ、今度は毛皮が広がっている一角に迷い込んでしまった。チラチーノの、襟巻きや尻尾の白い部分が平たく薄っぺらになって幾枚も重ねてあった。気分が悪くなったので、そこも足早に離れた。

     娘と息子と、はぐれてしまった。市場の人混みを見る。小さな子どもたちの姿は、容易には見つかりそうにない。
     困ったな、どうやって探そうか。冬空が機嫌悪そうに、ゴロゴロと低い音を立てた。山の方に雲が出ていた。鼻先に、雨の先触れの匂いを感じた。
     その時、肩を叩かれた。


     遠くに市場の白い幌が見える。
     街の外に停められた巨大なトラックの影。
     街からは決して見えない場所に、私はいた。
    「大変ですよね。ポケモンなのに人間を育てるなんて」
     私の肩を叩いた男は、嘲るように笑いながらそう言った。

     男はホドモエの港で働く人と同じ服を着ていたが、異様に臭かった。トラックの排気ガスも酷いが、この男は更に酷い。何の匂いだろうか。

    「でも、ポケモンに育てられた人間の方が、もっと大変ですよねえ」
     へらへら笑う男を睨み付けた。男は一瞬体を強ばらせた。が、すぐにまた元のへらへら笑いを始めた。

     私の変化はもう解けている。ゾロアークの私を、斜めに見ながら男は続ける。
    「人間に育てられたポケモンの権利は保障されていますが、ポケモンに育てられた人間はどうか、と……」
     私は男を睨み付ける。手話も通じない、筆談もなしだから、ただ睨み付けるしかない。

     冷たい風が頬を撫でて、それで我に返った。
     何をやっているんだ、私は。
     市場で「娘が向こうにいる」と話しかけられて、つい付いてきてしまった。トラックの影まで来て、彼に何故か正体がばれていると知って、つい留まってしまった。けれど、頭を冷やして考えてみれば、そんなことをする必要はないのだ。ポケモンに育てられた人間の権利? それはちゃんと法律で保障されている。仮に私がゾロアークだとばれたって、別の場所に引っ越せばよいだけの話じゃないか。

     馬鹿を見た。
    「馬鹿らしい、とでもお思いですか?」
     男が、不意にねっとりとした声を出した。
    「そういえば、こんな話がありましたねえ」
     男の目だけは、冷たく乾いていて、冬の風のようだった。そして相変わらず、異臭が鼻につく。
    「ポケモンに育てられた男が、自分もポケモンだと思ってぶつかってくるクリムガンを受け止めようとしたとか。男の体は」
     その男は言葉を切って、舐めるように私を見た。街暮らしで鈍っていた本能が起き上がる。そうだ、さっさと立ち去らねば。耳を貸すな。相手になるな。
    「行きたければ、行けばいいんですよ、ご自由に」
     男が恭しく礼をした。異臭。湿気た匂い。嵐が近付いている。
    「娘さんと、末永く暮らせばいいでしょう。ああ、さっきの話が途中でしたね。クリムガンにぶつかった男の体は」
     根元が曲がった松の木が脳裏に浮かんだ。その幻を振り払う。トラックの影から出る。
    「やれ」
     男が冷たい声を出した。
     一瞬の後には、私の体は地面に這いつくばって動けなくなっていた。

    「運べ」
     また、冷酷な声がした。
     何が起こったのか、何匹のどんな種類のポケモンに襲われたのか、全く見当もつかなかった。
     鼻につく、そうだ、異臭だ。

    「よくやった。メスのゾロアークは珍しいからな。逃がすなよ」
     暗くなる視界の中に、ゴミの塊みたいなのがいくつか見えた。鼻が曲がる。街暮らしと合わせて、恐ろしく判断が鈍くなっていた自分に嫌気が差した。

     手足に鉄の輪っかの感触があった。爪の先に格子が触れる。檻に入れられた私を、ダストダスたちがコンテナの中に運び上げた。コンテナの重い扉が、下りていく。
    「大変ですよねえ、娘さんも」
     娘。その言葉が私の体を動かした。しかし、鉄の輪が許容する範囲以上に、どうしても、動かない。
    「ポケモンに育てられた女が、人の群れに紛れ込もうとしたとか」
     光がどんどん細くなっていく。
    「人間とぶつかった」
     糸のように細くなった光の線から、男の言葉がスルリと入り込んだ。
    「女の心は」
     そこで、途切れた。


     鳴いた。喉よ裂けよとばかりに、大声で鳴いた。
     鳴きながら、喚きながら、滅茶苦茶に振り回した右手の金具が壊れる。そして、それで終わりだった。

     右手が千切れたような痛み。血の匂いがコンテナ中に広がった。本能を刺激するその匂いに、コンテナで眠っていた、他のポケモンたちが起きた。彼らの悲鳴が、慟哭が、冷たい金属の壁に木霊する。それにかき消されないよう、私は必死に声を張り上げた。あの子の元に帰らなければならない。間違いでも、取り返しが付かなくても、一度だけ、あの子の元に帰して。

     家に帰って、あの子を抱き締めるの。
     ごめんね、ごめんね、ごめんね。それから必死で謝るんだ。うるさいの、黙って! 私はあの子たちの所に帰らなきゃいけないのよ!

     神様がいるなら、この身が滅んでもいい、この願いを叶えてほしい。
     けれど、やってきたのは、意地悪で性悪で、最悪な神様だった。

     阿鼻叫喚の地獄絵図は、鉄輪と檻で、辛うじてその秩序を保っていた。限りなく混沌に近いこの空間の、天井が破れた。

     歓喜と狂気が、暗闇に落とされた獣たちの咆哮となる。
     雨だ。声も、すぐにやんだ。

     誰かが壁にぶつかった。誰かが鳴き声を上げた。誰かがトラックを倒そうと、身震いを始める。そしてそれはすぐに、大きなうねりへと変化する。

     やめて! 私は生きて帰りたいの。貴方たちの身震いに付き合ってられないのよ!

     うねりは更に大きなうねりとなる。大きなうねりは更にもう一段階大きなうねりに。
     流れ込んだ雨が、逆巻く。雨と競うように、声を張り上げる。

     雨が床から天井へと流れ出し、獣たちがウォーと叫び声を上げた。感じる方向が、逆さまになる。私の体は宙に浮いて、水がぐるりとコンテナの中を回って天井へ向かうのを見ていた。ポケモンの体も全て、反転して、ぐるりと回る。

     世界の音が止まった。

     はるか下方に、茶色の泥流の中を流れていくトラックとコンテナが見えた。それを見る、私の体は別の斜面に落ちる。
     鉄格子に歯をぶつけた。目と頭の中で星が散る。コンテナの僅かに開いた扉から、最後に入れられた私の檻が飛び出した。しかし、幸運もここまでらしい。

     泥が天から降ってきた。暗雲の所為で、茶色かどうかも分からない。鼎のような雲が山肌に重たい腰を下ろしていた。雲の裾から、土混じりの雨が、ぴちゃり、ぴちゃり。そして、ゆっくりとせり上がってくる茶色の悪魔が見えた。

     私は全身全霊を込めて、遠吠えをした。


    「私が本当の、狐の子どもならよかったのに」

     ……泣かないで、泣かないで。私の愛しい子ども。

    「苦しいよ。こんなことなら、母さんと会わなきゃよかった」

     そうだったかもしれない。ごめんね、ごめんね、ごめんね。

     でもお願いだから、会わなきゃよかったなんて、言わないで。だって、私は、





     母さんの姿が見えなかった。
     スーが心配していたけれど、すぐに探しに行く気になれなかった。
     あんな酷いことを言ったのに、どういう顔して会いに行けばいいんだろう。
     私はいつものようにスーを抱いて、市場を見て回っていた。
     鉱物コーナーの隅、スーや母さんの瞳によく似た水晶玉を見つめる。

     もしもこれから母さんと離れて暮らすことになったとしたら、そうしたら今まで暮らしてきた時間は離れた分だけ相殺されて、ゼロに戻るだろうか。会う前の時に戻って、やり直しできるだろうか。
     ありえない、と思った。

     スーが腕の中でモゴモゴ動いた。
    「そうだね。行くよ」
     でも、どうすればいいんだろう。
    「会わなきゃよかった」なんて言ってしまったのに。母さんに育ててもらったのに、そしてそれ以上に、

    「ぎゃう!」
     急にスーが声を上げた。
    「何?」
     目の前には、母さんの瞳の色と同じ水晶玉。
     嫌な予感がした。

     市場の西、街のすぐ外にピンと張られていた、キープアウトの黄色いテープの下を抜けた。
     周囲は野次馬と逃げる人と、混乱を収拾しようとする警官の声で、余計に混乱が深くなっていた。

     山へ続く道に、深い轍が残っていた。その先は、山と、雲。
     スーの幻影で、私ひとりの姿ぐらい、誤魔化せる。赤いパトランプに次々と追い越されながら、緩やかな山道を登っていく。轍が深くなっていく。

     不正なナンバープレートを付けたトラックが、やけに大きなコンテナを積んでホドモエを離れたらしい。野次馬か警官が喋っていた。
     母さんはそこにいないよね? この道は念の為に走ってるんだよね? 私の腕を離れ、数歩先を示す黒狐は答えない。

     突如、雨が降った。
     まるで今まで建物の中にいたかのように、そして突然屋根が切れたかのように、文字通り土砂のまじった土砂降りが私を襲った。雲という、怪獣の足に踏み潰されているかのようだ。近くの山肌に、恐ろしい程はっきりとした輪郭を持つ、鼎のような黒雲が立ち込めていた。悪い子の所に、風と雷の神様が、嵐を連れてくるよ。そんなことない!
     知らず、体が震えた。一歩先が見えない。慌てて手を伸ばし、スーの尻尾を掴んだ。
    「おい、君、何をやってる!」
     茶色の衝立の向こうにチラチラと一瞬だけ見える赤い光。その方向から、体躯のいい青年が近寄ってきた。

     まずい。尻尾を掴んだから幻影が解けちゃったんだ。

     五里泥中の状況下で、私は闇雲に前と思う方角に向けて走り出した。
     警官の声が豪雨に阻まれる。ザー、ではなく、ゴ―、という音がしている。パトランプも、パトカーのヘッドライトも届かない向こうへ走ってみる。空間を水で埋めるような雨。とうの昔に服は水を吸い、流水のような雨で皮膚が洗われていた。まるで水底にいるかのようだ。息が苦しい。腕の中で、スーが鳴いた。

     最初は探るように、次第に大きくなる吠え声は、スーの声というより、何かと共鳴して鳴いているような印象を受けた。

     雨で、心の芯まで冷えたのだろうか。
     その時が来るまで、私は母さんは関係ないと、心のどこかで思っていた。

     寒い、寒い。すっかり冷えちゃった。風邪ひくかも。ねえ母さん、帰ったら、また、おかゆ作って。
     それでまた一緒の布団で寝るんだ。ねえ、そうでしょ? そうだと言ってよ。


     スーが、鳴いた。

     続いて弾けて飛び出すような、高い、美しい声音が空間を渡った。

    「……さん」
     声が掠れて、出ない。

     雨が、非情にも弱まった。
     茶色一色だった視界が、糸が解けた布を見透かすように、楽々と遠くまで見通せるようになっていた。

     豪雨を受け止め切れず、刻々と形を変えていく山肌に、一番見たくて、一番見たくない人の姿があった。

     この雨の中、そんな場所にいたら、檻にいたら、逃げられない。逃げられないじゃないか。

    「母さーん!」
     必死に叫んだ。走った。冷え切った脚の動きが、驚く程に遅い。こんなんじゃ、間に合わない。
    「母さん、母さん!」
     喉が壊れてもいい。叫ぶしかない。一歩でも進まないと。届かない。

    「母さん、行かないで! 母さん!」

     山肌が蠢く。せり上がる。その動きは酷くノロノロとしていて、今なら私の足でも、パッと駆けていって母さんの所へ行けそうだ、と思う。なのに、脚が動かなかった。動け、動けと念じて、やっと一ミリ、二ミリ、鳥肌の部分が動く。だからって、手を伸ばしても全然伸びなくて、空気の壁が邪魔しているみたいにつっかえてしまう。

     これが報いなんだと思った。
     拾ってくれて、育ててくれて、大事にしてくれた母さんに、「会わなきゃよかった」なんて戯言を言った、これが報いなんだ。

     悪い子の所に、神様が来るよ。

     本当に来たよ。母さん、ごめんなさい。ごめんなさい。もう我侭言わないから。母さんの作ったものなら、野菜たっぷりのおかゆだって何だって食べるから。
     だから、帰ってきてよ。
     あの温かいおかゆを作ってよ。
     スーと、私と、母さんの三人で、ずっとずっとずっと仲良く暮らすんだ。帰ってきてよ、帰ってきてよ、母さん!

     愛してくれたのに。
    「行かないで……行かないで、母さん……」
     必死に叫んだはずの声は、搾り滓みたいな湿気た屑にしかならなかった。

     茶色いそれは、動きはゆっくりなのに、ちっとも動きを止めてくれなかった。

     怖いよ。
     茶色のそれが、半分液体みたいに、半分固体みたいに、形を変えて、つい、と檻の隅を突いた。
     黒い、見慣れた姿。とん、と茶色が檻を包むように横側を覆って、黒が見えなくなる。茶色は檻を押すようにさっと流れて、檻を手放したかのように、茶色の中で檻が傾いて。

     檻の上に、茶色が覆い被さった。景色は再び茶色一色の世界に戻る。雨の音も、戻ってきた。

     大事なものだけ、戻ってこなかった。





     あるべき所にあるはずだった部屋は、がらんどうで、そこにあった何もかも残っていなかった。
     あの日の記憶の一部、母親が土砂崩れに呑み込まれた一部始終は、畳み込まれ、心の奥底にしまわれた。それを思い出す時は、奇跡が重なってもう一度母親に会えた時か、有体に言って発狂した時だろう。
     少ない荷物をまとめて、部屋を引き払った。
     家具の消えた、だだっ広い部屋に、いたずらにはしゃぐ、かつての自分の幻が見えた。それを見つめる、母の目線だった。

     雷文こども園。昔読めなかった文字が、今は読める。
     あの日、母に連れられてきた場所が、ここだった。泣きじゃくる私を抱き上げた、優しい母の目が、今でも思い浮かぶ。今もどこかで見ていないかと、探してしまう。

     こども園と塀の外を分かつ門扉に、背を向けた。

     満開の時を迎えた、桜並木の中を歩き出す。
     私の左手を守るように、小さな黒狐が歩調を合わせて、歩む。
     風が吹き、桜色の花びらが風に踊る。薄桃色の蝶々の群れの中に自ら飛び込んで、自分で自分の門出を祝う。蝶々が飛び立った後には、微かな風しか残らなかった。





     ……いつしか。
     ブラウン管が流行らなくなって液晶に置き換わり、モニタとハードが一体化した箱型も流行らなくなって、私もモニタとハードディスクが別々の、スマートな型のを愛用するようになっていた。

     それでも、これを捨てずに置いていたのは何故だろうと思う。何年も前の型で、無骨な白い箱型のパソコン。電源を入れて動いたのが奇跡だと思う。
     パスワードも、ユーザー名もない。何もかも受け入れてくれるような安堵と、大事なものを忘れてしまったような空白を感じた。
    「……あ」
     見覚えのあるプログラムが開く。はじめて褒められた時の、あの華やかさが、舞台に踊り出るように、心に開く。
     そこから、次々と記憶が溢れ出す。懐かしい記憶、甘い記憶、あの毛皮の感触。雑多で無茶苦茶な記憶の奔流に釣られて、開けてはならない記憶まで飛び出そうとしていた。
     両腕で、しっかりと体を抱く。これから始まる墜落に備えるように。そんなことをしたって、何の意味もないのに。運命の扉が、もうそこまで迫っている。

     その扉を閉じたのは、懐かしい声だった。

    「あ、い、し、て、い、る、よ。へ、ん、じ、は、い、ら、な、い」

     記憶の飛翔は終わり、母鳥に抱かれる雛のように、私は目を閉じる。
     一時だけ、母の胸に抱かれる夢を見る。



    〜〜〜〜
    新掲示板テスト&投稿祭りということなので、過去作を投稿テスト。


      [No.2665] ■マサポケ新掲示板テストに伴う大宣伝祭り実施中! 動作テストをしながら作品を宣伝しよう! 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/10/15(Mon) 23:40:14     126clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:宣伝していいのよ】 【むしろ宣伝してください

    どうも鳩です。
    テスト協力ついでにご自身の作品を宣伝しませんか?

    普段はポケノベさんその他で投稿されてるみなさん、
    マサポケの掲示板テストに乗じて、自分の作品のURLとかぺたぺたはっていいのよ?
    ご自分の作品じゃんじゃん宣伝しちゃっていいのよ?

    どんどん投稿してくださいネ。
    何か気付いたら教えてくれるとすごく助かります!
    テスト期間終わったらリセットしますのでその間はフリーダムにどうぞ!



    (例)

    ●ピジョンエクスプレスポケノベ支店
    http://pokenovel.moo.jp/mtsm/mtsm.cgi?mode=novel_index&id=pij ..... amp;view=1
    ホウエン地方のお話を中心に載せています。
    よかったら読んでくださいネ。

    ●遅れてきた青年
    http://pokenovel.moo.jp/mtsm/mtsm.cgi?mode=novel_index&id=pij ..... amp;view=1
    ポケノベさんにも出張してます。

    ●本家:ピジョンエクスプレス
    http://pijyon.schoolbus.jp/
    ご存じ、本家です。絵とかもたくさん置いてます。
    同人誌通販やってます。


      [No.2664] ■掲示板テスト実施中 投稿者:No.017   投稿日:2012/10/15(Mon) 23:34:51     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    新掲示板動作テスト中です。
    過去作などをどんどん投稿してください。
    ご意見・ご指摘もありましたらどうぞ。

    ※テスト期間終了後にデータはリセットされます。


      [No.2663] 第二話「うけつけとっぱと ポケモンたち」 投稿者:No.017   投稿日:2012/10/15(Mon) 23:31:15     76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:遅れてきた青年

    むかし シンオウが できたとき
    ポケモンと ひとは おたがいに ものを おくり
    ものを おくられ ささえあっていた
    そこで ある ポケモンは いつも ひとを たすけてやるため
    ひとの まえに あらわれるよう ほかの ポケモンに はなした
    それからだ
    ひとが くさむらに はいると ポケモンが とびだすようになったのは

    「シンオウちほうの しんわ」より





    ●第二話「うけつけとっぱと ポケモンたち」





    「だーかーら!! 本人だって言っているでしょう!!」
     受付カウンターの前でシロナが吼えていた。
    「……こ、困ります」
     今日、彼女の次に困惑の表情を浮かべることになったのは、エントリーの最終確認をする受付をしていた眼鏡の男であった。
     いきなり男を引きずった女性トレーナーがずかずかと乗り込んできて、私の連れは身分証明ができないが、これは本人に間違いがないからとにかく出場させろ、などと訳の判らないことを強要してきたのだ。それに気のせいだろうか、出場する本人はあまり積極的という風には見えず、連れである女のほうが熱心なのである。
    「とにかくですね、ポケモン図鑑もない、トレーナーカードもない身分証明ができない方の参加を受け付けることは出来ません」
     と、眼鏡の男は答えた。
    「身分証明ができないですって! 馬鹿言わないでよ! アオバはね、去年だってシンオウ大会に出ているんだから!」
     シロナがまた吼える。無茶苦茶な要求だということくらい彼女にだってわかっていた。だが、ここで引っ込む訳にはいかない事情が彼女にはあった。押し切ってやる。必ず彼を出場させてやる。
    「ベスト4まで残ったのよ! あなたが覚えてないはずないでしょう!」
     そこまで言うと、シロナは青年を受付の前に突き出した。
    「男のくせに髪の伸ばして結わいてるわ、妙に気取った服装しているわ、こんなヤツなかなかいないでしょ。加えて去年のベスト4! 忘れたとは言わせないわよ」
     スーツのような衣服に身を包み、少し古ぼけた紐で長い髪を結わいたその姿に、受付は確かに見覚えがあった。
    「……それは」
     と、受付が濁った返事を返したその隙をシロナは見逃さない。
    「ほら、見なさい。覚えているじゃないのよ」
     と、押しの一言を放った。
    「いえ、しかし規則は規則でして……」
    「ちょっとアオバ! あんたも何か言ってやりなさいよ!」
    「いや、何かって言われても……」
     青年は困った顔をする。右を見れば困った顔の受付、左を見ればシロナが怖い顔をしていた。その空気に耐えられず、
    「もう、いいですよ。ほら、受付の方も困っていますよ。これ以上お二人に迷惑をかけたくないです」
     と、彼は答えた。すると、
    「だめよ!!!」
     とシロナは叫んだ。
     ぐっと腕を掴むと、きっと青年を睨みつける。彼は少し驚いた。彼女は
    「そんなこと絶対に許さないから」
    と、言った。
    「でも……」
    「あなたは出るんだから! ポケモンリーグに出場するの!」
     と、続ける。なんでそんなこと言うの、とでも言いたげに青年を見つめた。
     怒っていた。けれど、それ以上に悲しそうで、その眼には明らかな意志の光が宿っていた。それを見て、青年はそれ以上言うのをやめた。どうしてなのか理由はわからないけれど、彼女が本気なのだということだけはわかったからだ。
    「ほら、当の本人もそう言っていますし……」
     受付がすかさずそう言ったが
    「もういい。あなたじゃ話にならない。上の人を呼んできて」
     と、彼女は切り返した。
    「は?」
    「あなたじゃ話にならないって言っているのよ。去年の入賞者って言ったら今年の優勝候補じゃないのよ。それを出場させないっていうのはどういう了見なの。だから、あなたじゃダメ。もっと話がわかる人、呼んできて」
    「な……っ」
    「それとも何? あなたの身内が出場しているから、有望な芽は今のうちに摘み取っておこうっていう魂胆かしら? そうなったら問題よね。アオバが出場できなかったらそういう噂を流してやるから」
    「ちょっと! 妙な言いがかりはやめてくださいよ。私はあくまで規則に従って……」
     受付がお決まりの文句を返す。だが、彼女は
    「ハッ! 規則ですって!」
     と、切り捨てた。
    「……しょうがないわね、これだけはアオバから口止めされているから言うまいと思っていたのだけど……。あなた四天王のキクノさんは知っているわよね?」
     突然、シロナはそんな話題を持ち出した。
     四天王。リーグ優勝者を待ち構えるトレーナー集団。ポケモンバトルのエリート達である。優勝すれば彼らに挑戦することができる。その中の一人、キクノは老練のトレーナーで、地面タイプのエキスパートとして広くその名を知られている。
    「そ、そりゃあ」
    「アオバはね。キクノさんのご姉妹の孫にあたるのよ。つまり親戚よ。四天王の親戚!」
     受付はぴくっと眉を動かした。同時に驚いたのは青年自身である。思わず
    「え、そうなの?」
     などと、聞いてしまった。瞬間、
    「記憶喪失はすっこんでなさいッ!」
     と、シロナが渇を入れる。
    「……はい」
     青年はすぐに身を引いた。また余計な発言をして変に話をこじらせると、シロナがまた吼えそうだったからだ。それを確かめてシロナが続ける。
    「つまり、今あなたは四天王の親戚の出場を断ろうとしているわけ。私が一言キクノさんに告げ口すれば、どうなるかわかる? 規則を守るのと、こっちの要求を呑むのとどっちがお利口かしらねぇ?」
     あんたが規則を持ち出すのならこっちにはこれがあるのだ、どうだまいったか! とでも言いたげに、シロナはふふんと笑った。
     四天王、彼らがポケモンリーグに持つ影響力は大きい。つまるところ権力が彼らにはある。当然、一般の運営スタッフなど相手にならないだろう。
     チェックメイト、後はキングを取るだけ。ポケモンゲットで言うなら、影踏みか黒い眼差しで逃げられなくした上でマスターボールを投げるだけ、といったところだろうか。
     この一押しで受付にうんと言わせてやる。シロナはバン、とカウンターを叩いた。
    「いいこと! わかったなら、とにかくアオバを出場させなさい!」
     受付はさすがに「うん」とまでは言わなかったものの、彼女の気迫に押され、それ以上言い返せなくなってしまった。
     いや、半分くらい呆れも入っていたかもしれない。お前、そこまでしてコイツを出場させたいのか! お前は一体何なんだ! とひきつった彼の顔に書いてあって、それを横目に見ていた青年はちょっとばかり苦笑いをした。
     そして、いつのまにか大声を聞きつけてやってきた受付の上司らしき人物が、ここはとりあえず受付して事後確認したほうがいいようなことを彼に助言した。
     かくして青年の、ミモリアオバの出場手続きは整ったのだった。


    「次はポケモンよ」
     受付を済まし、パソコンの前に立ったシロナは続ける。
    「まさかあなた、手持ちのポケモンまで落としたとは言わないわよね。とりあえずボックスを確認しましょう。仮パスワードも発行してもらったわ。正式な確認がとれるまでは試合後にすぐに戻す条件付だけどね」
     そうしてシロナは青年のボックスを開いてみる。画面が切り替わり、彼の所持ポケモンが標示される。彼女はほうっと一息をついた。
    「居た……。カードみたいにどこかに落としたってことはなかったみたい。安心したわ」
     パソコン画面を覗き込みながら、マウスを左右に忙しく動かしていく。
    「予選で使用できるポケモンは三体よ。グループ中でとにかく試合をしまくって、勝ち点の多い者から抜けて行くトリプルビート方式。ポケモンは私が適当に見繕うわよ。いいわね?」
    「ええ、いいですけど……いや、お任せします」
     青年は戸惑い気味に答えた。しかし、何も思い出せない今、彼は自分のことを一番知っているらしい彼女にすべてを委ねるしか選択肢がなかった。パソコン画面を真剣な眼差しで見つめるシロナを、横目にちらちらと、やや不安げに観察する。
     やはり、彼女はどうあっても自分を出場させるつもりらしかった。彼女をそこまで駆り立てるものは一体なんなのか、青年はそんなことを考える。
     やがてパソコンの隣に併設された転送装置、そこに三つの機械球が転送されてきた。シロナはそれを取り出すと、青年に手渡す。
    「さあ、投げてみて。何かやったら思い出すかもしれないわ」
     青年は言われるがまま三つのボールを投げる。ボールは赤い光を放ち、光はポケモンのシルエットを形成する。光が消えると同時にポケモン達が姿を現した。
     出てきたのは四足の黄色い獣型ポケモン、そして赤色のメタリックな虫ポケモン、そして、紺色の怪獣のようなポケモンの三匹だった。その中でも一際大きい怪獣型は、頭の左右に妙な形の突起をつけており、腕と背中には飛行機の翼のようなヒレを生やしていた。
     すぐさま黄色と紺色が、青年に近づいてきて取り囲むと、身体全体を観察するようにフンフンと匂いを嗅いだ。赤色は出てきた場所に立ったまま、何やらするどい眼でことの成り行きを観察している。
     次の瞬間、青年の悲鳴が響き渡った。寄ってきた二匹のうち、紺色のほうが青年を押さえつけた。すぐさま彼の頭に大きな口をセットすると、カジカジと甘噛みしはじめたのだ。
    「…………いででででっ!!!」
     激しく動揺する青年。だが、一本しかない爪ががっしりと捕らえて離さない。
    「ちょ、なんなんだよ、このガブリアス!」
     青年のそんな台詞も紺色はお構いなしだ。青年と対面できたことがよほど嬉しいのか、頭にかぶりつきながらも、魚の尾ビレのような尻尾を激しく上下に振っている。
    「あ、ヤメ……いだい、いたいって……っ!」
     青年は懸命に自分の頭から牙を引き離そうともがく。が、ドラゴンポケモンに力で敵うはずもなく、それはむなしい抵抗に終わった。その様子を見ていたシロナは腹を抱えて爆笑する。
    「どう!? 何か思い出した?」
     などと聞いてくる始末だった。
    「何も思い出さないよ! それよりこいつをどうにかしてくれ!」
     と、青年は訴えたが、彼女は「愛情表現よ」と、まったく相手にしなかった。むしろ、その様子を見て楽しんでいるフシがあった。
     シロナは気が付いていなかったが、青年には、その様子を目にした赤色の虫ポケモン、ハッサムの眼がふっと優しくなったように見えた。さっきまでずいぶん警戒しているように見えたのに。そして、今の今まで探るように匂いを嗅いでいたサンダースも、急に安心したように足に顔を擦り寄らせてきた。
     こいつら、急に懐いてきたなぁ。さっきまでのは一体、なんだったのだろう? ガブリアスに頭をかじられながら、青年は疑問に思った。
    「ガブちゃんのその癖、去年から変わってないのね。それにしても久しぶりに会ったみたいに興奮しちゃって!」
     そう言ってシロナはまた笑う。頭にかぶりついたこのガブリアスは、ニックネームをガブリエルと言うのだと説明した。
     ガブリエルとは、さる宗教の教典の中に登場し、聖女に受胎告知をする天使らしいが、響きがそれっぽいからという安易な理由でアオバがそこから命名したのだと彼女は言う。実際、こんないかつい顔のポケモンが「あなたは神様の子を授かりましたよ」と、庭先に現れたら聖女が悲鳴を上げて飛び上がってしまうだろう。「おまえは魔王の子を孕んだんだぜ。グヒヒヒヒ」と説明したほうが納得していただけるに違いない。
     そして、魔王の使いガブリエルが行為に満足し始めた頃、シロナは一転、まじめな顔になって彼のポケモン達に
    「いいことあなた達、今、ご主人様は人生最大のピンチを迎えているわ」
     と、切り出した。
    「ご主人様はね、大事な試合の前だって言うのに自分が誰で、何しにきたのか忘れてしまったのですって。困ったことにあなた達のことも忘れちゃっているし、バトルのやりかたも忘れちゃってる。だから、ご主人様の指示がなくてもあなた達が判断して、戦って、勝たなくちゃいけないの」
     青年はガブリエルの爪に捕まったまま、参ったなという感じで、ぽりぽりと頭を掻いた。
     サンダースとハッサムが互いに目配せして、不安げな表情を浮かべる。青年の頭に夢中だったガブリエルは、あまり状況が飲み込めていないらしく、首を傾げた。
     そんな彼のポケモン達の表情を読み取ったシロナは、
    「大丈夫、いつもやっていたようにやればいいのよ。あなたたちならできるわ」
     などと助言した。そして、
    「必ずよ。必ずアオバを決勝トーナメントまで連れて行ってね」
     と、付け加えたのだった。
     予選Aが佳境に入ろうとしていた。ある者は基準の勝ち点を取って早くも決勝トーナメントへの切符を手にしていた。またある者は残り少なくなった時間と懸命に戦っている。
     そう、彼にはちゃんと勝ち進んでもらわなくては。こんなところでつまずかせるわけにはいかない。本来の彼はこんなものじゃない。記憶が戻るまでの辛抱よ、とシロナは思った。
     予選Bの開始時間が一刻一刻と迫っていた。


      [No.2662] 第一話「まつりの はじまり」 投稿者:No.017   投稿日:2012/10/15(Mon) 23:29:58     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:top

    「遅い!」
     周囲の視線が一斉に声の主に注がれる。視線の先には一人の女性トレーナーが立っていた。彼女は待ち合わせ相手がこないらしくイライラしている。傍らには、一匹の獣人型のポケモンが立っていた。青と黒の体毛。黒がまるで素顔を隠すマスクのような模様を描き、耳の下に二対の黒い突起があった。その突起が何かを探るアンテナように、地面と水平方向にピンと伸びている。
    「リオ、見つかった?」
     彼女が尋ねると、ルカリオが首を横に振った。彼女はいよいよ辛抱が利かなくなってきた様子で、さらなるイライラのオーラを周囲に放つ。波導ポケモンの力をもってしてもあいつの気配を察知できない。会場に人が密集しているせいだろうか。
    「リオ、探しに行くよ」
     彼女はとうとう痺れを切らし、ルカリオと共に探索に繰り出した。





    もりのなかで くらす ポケモンが いた
    もりのなかで ポケモンは かわをぬぎ ひとにもどっては ねむり
    また ポケモンの かわをまとい むらに やってくるのだった

    「シンオウの むかしばなし」より






    ●第一話「まつりの はじまり」





     「頭の中が真っ白」という状態は、こういう状況のことを言うのではないだろうか。
     いわゆる西洋にある中世の城を模った建造物を見上げて、青年はただ立ち尽くしていた。
     彼はにわかに握っていた拳を広げた。開いて握って、また開いて感触を確認する。
     不意に寒気を感じた。妙に身体が冷たく、自分のものではないようだった。思わず両手でその対となる反対側の腕をぎゅっと掴んだ。確かめるように。
     次に感じたのは視線。彼が立つ道にはあらゆる老若男女、多くの人々が行き来しており、時折ポケモンを連れた人もあった。ある人は青年にいぶかしげな視線を投げ、ある人は知らないふりをして素通りし、またある人は彼の存在を気に留めることなく歩いていった。
    (……ここは?)
     真っ白な頭の中にそんな疑念が生まれた。その疑念が浮かぶと同時に、彼は群集の行き先を見たのだった。群集のほとんどは目の前にそびえる西洋の城のような建物を目指しているようだった。青年はその流れに従ってフラフラと歩き出した。
    (ここは何処だ? この人たちはどこへ向かっている? それに……)
     彼は群集について、城内へと足を進める。人々はなんだか興奮したおももちで、ああでもないこうでもないと、とりとめのない話をしていた。やがて、城内に放送がかかる。それを聞いて、彼はようやくここがどこであるかがつかめてきた。
     どおりで人が多いわけだ。にぎやかなわけだ。人々が興奮しているわけだ、と。
    「ポケモンシンオウリーグ予選Aチケットをお買い求めのお客様は南窓口へ、すでにチケットをお持ちのお客様は、北2番ゲートにて整列してお待ちくださいませ」
     城内にはそんな放送がかかっていた。
     ここは祭が開かれる場。一年に一度の祭が。シンオウ中がこの祭に注目している。ある人は開催期間中ずっとテレビに釘付けになり、ある人は稼ぎ時だとこの場に乗り込み商売をする。ある人はこれを見に行くために仕事の有給のほとんどを注ぎ込むのだ。
     ポケモンシンオウリーグ――古の神話が息づく北の大地、シンオウ地方で最も強いポケモントレーナーを決する、ポケモンバトルの祭典だ。
     とりあえず彼は、自分が立っている場所を理解した。しかし、そのおかげで次の大きな問題に気がつくことになる。
    (ここがどこなのかはわかった。……けれど、そもそも僕は誰だ?)
     青年は再び自身に問いかけた。第一試合の時間が一刻一刻と迫っている。会場を取り巻く空気はいよいよ熱を帯びてきていた。
    「アオバ! あなたこんなところで何やっているのよ!!」
     不意にそんな声を聞こえてきたのは、青年が真っ白な頭の中に再び問いかけはじめたその直後だった。彼が驚いて声の方を見ると、目の前にトレーナーとおぼしき女性が立っていた。
    「待ち合わせの時間、何分すぎたと思っているの!」
     なぜ彼女をトレーナーであると判断したかと言えば、傍らに獣人型のポケモンがいたからだ。青と黒の体毛。胸と腕にツノのような突起物が生えていた。青年のおぼろげな頭の中にふとその名前が浮かんで、ぼそりとそれを口にする。
    「思い出した。ルカリオだ」
    「ちょっとアオバ! あなた私の話を聞いているの!」
     さっきよりも大きな声で女性トレーナーが吼えた。無理もない。やっとの思いで見つけた待ち合わせ相手は、こともあろうに観戦者の列に加わってぼうっとしていたのだ。彼女はぐっと青年の腕を掴む。
     すると青年がまるで他人でも見るかのように、彼女の顔を見た。そして、
    「……アオバ? アオバって言うのか僕の名前は」
     と、言った。
    「…………は?」
     女性トレーナーはなんとも複雑な表情を浮かべた。それは怒りを含んでいたが、それ以上に困惑の表情であり、勘ぐるようでもあった。こいつは私をからかっているのか、それともバカにしているのか。だが、それにしてはなんだか様子がおかしい。
     なんというか、青年はそれなりにきめた服装(人によってはキザと言うだろう)をしているというのに、言動が妙に子どもっぽいというか頼りないのだ。彼が放つ雰囲気が、彼女の知る青年本来のものとはずいぶん違うのである。
     ……本当に演技ではない?
    「君は誰? 僕を知っている人?」
     彼女がそんなことを考えているのをよそに、青年はさらなる質問を投げかける。さらには、
    「よかった。気がついたらここにいたんだけどさ、自分が誰で何しにきたのかもわからないし、正直困っていたところなんだ」
     と、のたまった。
     女性トレーナーは顔を引きつらせた。今目の前にいるこいつが、本気でこのセリフを吐いているならばこれは俗に言うあれだった。まさか自分がこの目で見る機会が巡ってこようとは。
     あれとはもちろんあれである――――記憶喪失である。


    「あなたはアオバ。ポケモントレーナーのミモリアオバ。今から三時間後シンオウリーグの予選にBグループで参加する選手よ」
     と、女性トレーナーは告げた。
     彼女は半信半疑で根掘り葉掘り質問を投げかけまくった結果、やはり青年の記憶が喪失しているとうのは本当らしいとの結論に至った。
     ポケモンとトレーナーに関する諸々の知識は一般人レベルかやや下くらいか。コミュニケーションはとれるものの、青年からは様々な記憶がごっそりと抜け落ちていた。
     アオバという自分の名前にはじまり、自分の出身地、自分の所持ポケモンとそのニックネーム、自分はどんな人間で、どんな家族がおり、いままでどんなことをして生きてきたのか……。  
     そして彼は、目の前にいる女性トレーナーについてまったく答えることが出来なかった。正直、重症である。
     その結果、彼女が導き出した結論は、自分が先導してやらねば、トレーナーとしては何も出来ないのが今の彼である、ということであった。記憶の戻し方はおいおい考えることにしよう。何かやっているうちに思い出すかもしれない、と彼女は考えた。
    「私はシロナよ。シンオウリーグ予選にCグループで参加する」
     まさか今日ここで「自己紹介」をしなくてはならなくなるとは、彼女も予想だにしなかっただろう。青年もといアオバの手をとり、人ごみを掻き分けながら、彼女は名乗った。金髪の長い髪がたなびく。この状況で動くにはちょっと邪魔そうだった。
    「私は今日、あなたと待ち合わせて、予選前にバトルの調整をする予定だったわ。それなのに約束の時間を過ぎてもあなたはやってこなかった。電話をかけても、メールを送っても何の反応も無い。会場にいるのかもわからない。リオにあなたの気配を探らせてみたけど、人が密集し過ぎているせいか、ちっとも見つからないんだもの。結局、目で探すしかなかった。やっと見つけてみれば、あなたはこんな状態。一体今日はどうなっているのかしら!」
     そこまで一気にしゃべると、ちらりと青年の様子を見る。アオバと呼ばれた青年の反応は手ごたえなし。シロナは「はぁ」と溜息をつく。
    「……その様子だと、まだ何も思い出さないみたいね。ということは、出場前の本人確認はまだよね。それならトレーナーカード出しておいて」
    「トレーナーカード?」
     青年がきょとんとした顔で聞き返す。
    「ポケモントレーナーの身分証明書よ。受付でそれを提示して最終確認ってことになるわ。いくら記憶喪失っていったって持ち物にそれくらいは……」
     彼女がそう言うので、青年はズボンのポケットと胸ポケットを漁ってみた。
     しかし、
    「…………………………」
    「え…………、もしかして……ないの?」
    「………………」
     こくん、と青年は頷いた。
    「え、それってさ、ヤバくない? ……ていうかヤバいよね?」
    「………………」
    「意味がわからないのはわかってる。わかってるけど、同意くらいしてよ」
     トレーナーカード、トレーナーの身分を保証する証明書である。なくしたなんてことになれば、トレーナー生活に大きな支障をきたすことになる。すぐに届けないといけない。それくらいの公的な効力をもつものである。
    「まずいことになったわ」
     と、シロナは言った。
    「このままだと、あなたはリーグに出場できない」
     すぐさま、あごに手を当てて考え込む。深刻そうな表情だった。再発行してもらうにしたって、とても時間には間に合わないだろう。
     それでは困る。目の前にいるこの青年が出場できないのなら、私は今まで何のために……。
     だが、しばらくして彼女は何か決心したかのように、手をあごから放すと、
    「……悩んでいてもしょうがないわ」
     と、決心したように言った。
     お、何か策でもあるのだろうか? という顔をする青年に、彼女はにっこりと微笑むと、
    「こうなったら強行突破よ」
     という作戦の内容を伝えた。


      [No.2661] 【テスト投稿】遅れてきた青年 投稿者:No.017   投稿日:2012/10/15(Mon) 23:23:43     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    【テスト投稿】遅れてきた青年 (画像サイズ: 750×558 142kB)

    第一話「まつりの はじまり」 自分は何者かと問う青年に「あなたはポケモントレーナーだ」と、シロナは告げるのだった。
    第二話「うけつけとっぱと ポケモンたち」 シロナの助力で受付を突破したアオバ。自分のポケモン達と対面するのだが……
    第三話「はじまりの はなし」 何も思い出せないというアオバに、シロナはある神話を語って聞かせる。
    第四話「やくそく」 リーグ会場周辺に並ぶ屋台には様々な者が訪れる。予選の勝者、敗者、そして――
    第五話「せんぼうと しっと」 アオバに執心する運営スタッフのノガミ。彼は青年によくない感情を抱いていた。
    第六話「おそろしい しんわ」 決勝トーナメント開始。だが、一回戦からアオバは苦戦を強いられる。
    第七話「とおい はなび」 すべてを思い出した。青年はノガミにバトル調整の立会いを依頼する。
    第八話「きたるべき とき」 準決勝で対峙するシロナとアオバ。勝負の行方は。果たして軍配はどちらにあがるのか。
    第九話「くらい ろうか」 暗い廊下。青年がその先で知った事とは、そこでノガミが見たものとは。
    最終話「はじまりの つづき」 ゆっくりと廻る観覧車の中、青年は「はじまりのつづき」を語り始める。


      [No.2654] 【愛を込めて】Promised morning【花束を】 投稿者:NOAH   《URL》   投稿日:2012/10/01(Mon) 13:48:15     71clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:top


    部屋着のまま、夜中にコンビニに出掛けたり
    初めて行ったデートのイタリアンの店に、もう一度行ってみたり
    話のオチを話す前に、思い出し笑いをすぬ彼女の口に
    キスを落として、そのまま彼女の抗議を無視して腕に抱き留めて眠ってしまったり

    俺のノクタスと彼女のキレイハナと共に、小さなアパートの窓際にある
    白い花を咲かせたばかりのクチナシの花に水をあげたり……。
    日々、何気ない日常を、恋人として暮らすうちに、俺はこう思ったわけだ。

    彼女と、ミサと結婚して、家族を作って、そして彼女や子どもや
    ポケモン達に囲まれて、幸せにこの命を終えたいと。



    まだ少し濡れている髪を纏めたまま、ミサはソファの上で胡坐をかき
    クルミル人形を抱いて、お笑い番組を見て笑っている。
    俺もその横で、サザンドラのシルエットが描かれているクッションを
    彼女と同じ体制で抱いて見ていた。
    そのソファの向かい側では、ノクタスが彼女のキレイハナを
    俺たちと同じ体制で抱いてテレビを見ていた。
    あの2匹も、同じ草タイプだからなのか、中睦まじく過ごしている。

    窓際のクチナシの花を見ていると、何時だか友人が教えてくれた
    この花の花言葉を思い出していて、何だか咄嗟に感じた想いを
    突然、彼女に伝えたくなった。

    「ミサ。」
    「なあに?リョウ君。」
    「こんな時に言うのも何だけどさ。」
    「うん。」
    「……結婚、しようか。」
    「…………。」
    「……ミサ?」

    あれ、固まっちゃった……?
    やっぱり突然過ぎたかな……。

    「ミサ、聞いて?突然過ぎたし、本当に、こんな時に言うのも何だし
    今更過ぎるけどさ……俺と、結婚して下さい。」
    「……私と?」
    「うん。俺はミサとがいい。」
    「……私で良ければ、喜んで。」
    「ありがとう……指輪、買いに行かなきゃね。」
    「えー、まだ買ってないのにプロポーズしちゃったの?」
    「だって、たった今決めたもん。」
    「……なら、仕方ないね。」

    幸せそうに笑う彼女を見て、改めて、明日から
    新しい一日が始まるのだと感じた。ノクタスとキレイハナが
    俺たちの側にきて、2匹もおめでとう、とでも言うように鳴いた。

    「あ、いつみんなに報告しようか?」
    「それも明日でいいと思うよ?」
    「そうだね……ねえ、そろそろ寝ようか。」
    「……そうだね。」

    テレビの電源を落として、部屋の明りを消すと
    俺とミサは、すぐ横の部屋で横になった。
    少しして寝息を立てる彼女をそっと抱いて
    暗闇に慣れた目で時計を見れば、2つの針は
    12の数字と重なっていた。

    「……お休み、ミサ。」

    明日は少し冷えるらしいから、温かいスープを作って
    俺よりちょっとだけ寝起きの悪い君を起こしに行くよ。



    目を覚ませばそこには 君がいると約束された
    そんな 幸せの朝を迎えに行こう


    「クチナシ・アカネ科常緑低木。原産地はジョウト〜ホウエン。
    季節は6〜7月。花の色は白。花言葉は『とても嬉しい』『幸運』『幸せを運ぶ』。」

    *あとがき*
    久しぶりに大好きなポルノグラフィティの曲を聞いたらビビッ!と来ました。
    そしてその曲をイメージソングとして起用して、この曲に合いそうな花言葉を探した結果
    クチナシの花になりました。花束を上げると言うより、幸せを与えるという形になりましたね。
    曲の歌詞から少しずつ、自分なりに解釈してアレンジしています

    プロポーズと言うと、サプライズとか色々考えるだろうけど
    私はこんな風に、飾りっ気もムードも何もない、当たり前の日常で
    言われたいと思ってる人間なので、そのイメージを最大限に膨らませて書かせて頂きました。
    結婚に関する話を書きたかったので、私としては満足の行く作品になりました。

    皆さんも、花言葉から何か書いて見て下さい。
    より、ポケモン愛が深まると思いますよ。

    イメージソング
    ポルノグラフィティ:約束の朝


    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】


      [No.2653] 可愛いミーナ 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/09/29(Sat) 00:14:07     137clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:】 【トレンディドラマ(大嘘)】 【エルフーン(腹黒)】 【作者は非喫煙者】 【広島弁→標準語フィルター搭載済


     煙草が切れた。
     ちゃぶ台の向かい側で、安いだけが売りの水みたいな発泡酒(自称「ビールより美味い」らしいけどただの詐欺広告)を飲んでいる友人のジョーに聞くと、煙管かメンソールしかないけどいいかと答えられた。いいわけあるか。
     引き出しの中に、税金が値上がりする前に買いだめしたストックがまだあったかもしれないと思って立ち上がる。そのタイミングで、携帯のバイブが鳴った。
     送り主とメールの中身を見るだけ見て、携帯を閉じてベッドの上に放り投げる。ジョーが勝手に秘蔵の日本酒の栓を開けて、勝手に人の冷凍庫からロックアイスを出して、勝手に飲みながら言った。

    「また女?」
    「先週海でひっかけた奴。別れようってさ」
    「嘘つけ。どうせまたお前、捨てられてもしょうがないくらい冷たくしてたんだろ」
    「まあな。そろそろ飽きてたし」
    「キョーイチ、お前はまたそうやって女を1人泣かせたわけか。全くひどい奴だな。鬼だわ鬼。外道。鬼畜。最低。男としてというより人として引くわ」

     俺はジョーが水のようにぐいぐいとあおる日本酒のグラスを取り上げた。勝手に飲むな。これは俺の地元の酒蔵の一番いい奴だぞ。もらいもんだけど。
     まぁ人としていい奴だし話してて面白い奴ではあるんだが、こいつがいると酒が当社比13倍速くらいで消費される気がする。
     こいつと出会ったのは去年の春先。仲間内で花見をしていたところに、旅の途中この辺りの町でしばらく居座ろうと考えていたこいつが混ざってきた。
     あれから1年ちょい。大事に隠しておいた特級のウィスキーもウォッカもラムもテキーラもワインもシャンパンも焼酎も泡盛も、全部こいつにやられた。去年の夏、仲間内でバーベキューするために夕方買ったビール瓶3ケースが、日が暮れる前にこいつに1滴残らず消費されていたのは今や伝説となっている。

    「何でそんなにとっかえひっかえするかねぇ。男なら惚れた女一筋で生きていけってもんだろ」
    「酒と手持ちのポケモンが嫁って豪語してたお前に言われても説得力ないわー」
    「うるせぇそれとこれとは話が別だ」
    「何でわざわざひとりに絞って自分から縛られるような真似しなきゃならねぇんだよ、めんどくせぇ」
    「おいお前、キョーイチ、ちょっとそこに直れ」

     ジョーがちゃぶ台をばんばんと叩いた。シカトしようと思ったけどしつこく叩いてくるからしぶしぶ座った。こいつが騒がしくしてアパートの下とか隣の住人ににらまれたら生活しづらい。

    「何だよ」
    「お前だってよ、昔は夢見てたんじゃねーのか? 美人でかわいくて優しくて気立てが良くて料理が美味くて家事が得意で子供とポケモンが好きで嫉妬しなくて懐が広くてでもちょっとだけ頑固で美人でかわいい女(ひと)と幸せな結婚してさぁ、毎日仕事して帰ったら嫁さんがキッスで迎えてくれて、あなた毎日毎日お仕事お疲れ様お風呂にするご飯にする今日はちょっと頑張ってみたのあなたの好きなハンバーグよお風呂入るなら背中も流してあげるわ、とか言ってくれてさぁ、それで時々は些細なことで喧嘩して3日間くらい口もきかないけどまた些細なことで仲直りしてさぁ、でもっていずれリタイアしてからは今度はこっちから、ようやく時間に余裕も出来たし子供もひとり立ちしたしこれからは2人で目いっぱい時間を使えるなとりあえず手始めに海外へ旅行でも行こうかお前前からイッシュに行きたいって言ってたもんなそうだな思い切って船で世界一周にでも行こうか大丈夫だよこれまで一生懸命働いてきたから蓄えはあるし、とか言ってさぁ、それで今際の淵では大泣きする嫁さんに向かって、こらこら泣くんじゃないよお前は笑ってる顔が一番きれいなんだから俺が今までの人生何のために頑張ってきたと思ってるんだただお前の笑顔のためだけだぜ最期くらい最高の笑顔で見送ってくれよそうすれば俺はあの世に行っても最高に幸せだからさ、とか言ってさ、それで2人笑顔で大往生、とか考えてただろ」
    「お前……よくそんな立て板に水を流すようにさらさらとこっぱずかしいセリフが出てくるな」
    「ともかく、お前だってそんなピュアでイノセントな時期があったろ」
    「何10年前の話だよ。ってか、そんなピュアでイノセントとか軽く超越した脳内お花畑な思考、今更小学生でも抱かんわ」
    「そうかなぁ」
    「そうだよ」
    「そうかなぁ……」

     ジョーは空になった発泡酒の缶をちゃぶ台の上で転がしつつ、しつこくぶつぶつと呟いていた。……いい奴なんだが、いやまあいい奴なんだが。ちょっと面倒くさい時はある。いやしょっちゅうある。

    「いいんだよ。俺も相手もどうせ遊びなんだし」

     煙草買ってくるわ、と俺はコンビニへ向かった。四合瓶で8000円の特撰純米大吟醸は奴への生贄に捧げるしかないようだ。


    +++


     まだ夏も始まったばかりだが、海岸はいつ行っても祭りのような様相を呈している。
     灼けた砂の上をぴょんぴょん飛び跳ねるように走っていく浮き輪の少女。1つの氷イチゴを2人でつつき合うカップル。大きなパラソルの下でポケモンバトルを始める少年たち。海の家に隣接する畳の休憩所で熟睡する父親と、その腕を引っ張る娘。
     俺は海の家で瓶入りのコーラを買い、適当な日陰に入る。じりじりと暑い陽射しに炭酸が滲みる。ビールも悪くないが、昼間っから酒を飲むのは好きじゃない。どこぞのアルコール処理機じゃあるまいし。

     さて、誰かいないものか。俺は浜辺の全体へ目を走らせる。
     この時期海辺に来ている女ってのは、結構な確率で男に拾われに来ている奴だと思って問題ないと俺は思っている。でなけりゃ、誰が好き好んで、日焼け止めを塗りたくった上で海にも入らないのに露出度の高い服を着て、そのお世辞にも豊かとはいえないボディラインをわざわざ男に見せつけるように浜辺に寝そべったりするもんか。
     大体、最近の女は痩せすぎなんだ。どいつもこいつも骨と皮ばっかりの骸骨みたいな身体しやがって。その状態で「やだ―太っちゃったー」とか言われてもこっちとしては「はぁ?」としか言いようがないわ。お前らもっと脂肪つけろ。痛いんだよ抱いたときに。

     ……まあ、俺の好みの話はどうでもいい。とりあえず今は、今日1日だけでも暇をつぶせる相手を探そう。
     明らかに射程圏外なガキやババアはどうでもいい。わざわざ人の彼女に手を出すような面倒な趣味も俺はない。
     上着のポケットから煙草を1本取り出し、火をつける。暇そうな女は……と。

     うぇ、何だこの味気持ち悪ぃ。パッケージを見返すと、ジョーがよく吸ってるウルトラメンソールだった。あんにゃろう、俺がメンソール嫌いなの知っててこっそり仕込みやがったな。今度会ったらぶっ殺す。
     さっさと火を消して、いつもの黒い箱に金色の文字がおどる箱に替える。あんにゃろう格好つけて煙管とか吸ってんだったらもうそっちだけ吸ってろ。くそが。

     ゆっくり煙を吸って、ささくれ立った心を落ち着かせる。落ち着け俺。
     舌の付け根にまだメンソールの味が残っている。気持ち悪い吐きそうだ。
     時代錯誤甚だしく煙管なんぞ吸っている割に、紙巻き煙草だとなぜかメンソールのきっつい奴しか吸わない親友の顔が思い出される。そういやまたあいつに高い酒やられたんだったな。この煙草買いにコンビニに行ってる間に案の定飲みつくしやがって。追加で買ってきたビールも飲みつくしやがって。どこに入っていってるんだその水分とアルコール。
     いやまぁ、うん、いい奴なんだけど、でも何だかなぁ、よくわからん。ロマンチストというか……夢見がち?
     何だっけ、理想の恋人? 馬鹿馬鹿しい。そんな幻想とっくの昔に捨てたわ。

     ちょうど1本目を吸い終わった頃、俺の目に1人の女が映った。
     ボブカットの髪の毛に、ふんわりとしたワンピース。白いサンダル。派手な格好ではないけれど、顔はとてもかわいい。ぱっちりとした黒目がちの目に、すっと伸びた鼻筋。ぷっくりとした唇。ほんのり小麦色の肌。その辺にいる他の病的な細さの女と比べるまでもない肉付き。完全に俺のタイプだ。
     その女は1人で、砂浜をあてどなく歩いていた。海風にスカートがはためく。連れがいる様子もないし、散歩でもしているのか。
     目が合った。こっちをじっと見つめてくる。俺はすたすたと歩み寄った。

    「今、暇?」

     俺が尋ねると、女はこくりとうなずいた。少し話でもしないか、と聞くと、またすぐにうなずいた。何だこいつ。他の女は大抵、断るか無駄に焦らすかしてきたのに。警戒心がないのか。詐欺とかキャッチセールスにすぐ引っかかるんじゃないのか? どうでもいい心配をしてしまう。
     陽射しが強いから、パラソル付きの休憩場所に移動しようか、と提案すると、女はやっぱりあっさりと賛成した。
     日陰で座ってひと息つくと、女は少し恥ずかしそうに笑って言った。

    「実は、初めて見た時からカッコいい人だな、って思ってたんです」

     ……詐欺にあってるのは俺の方なのか?
     わずかばかり警戒心を抱きつつ、何か飲むかと聞いた。女は少し迷って答えた。

    「コーラにしようかな」

     あ、趣味が合った。

     海の家で瓶入りのコーラを買って女に渡した。女は喜んで受け取る。笑顔がかわいい。
     そう言えば、名前。名前聞いてなかった。

    「俺はキョーイチ。君の名前は?」

     俺が尋ねると、女はとてもかわいらしい笑顔を俺に向けて言った。

    「ミーナ。ミーナよ」


     しばらく海岸でミーナと話をした。ミーナはとてもよくしゃべり、よく聞いて、よく笑った。
     好きなもの。嫌いなもの。ミーナとはびっくりするほどよく趣味が合った。


    「ミーナはどうして海に来たんだ?」
    「うーん、退屈だったからかな」
    「退屈?」
    「誰もいなかったから。寂しかったの」

     ミーナはそう言って海を見つめた。
     ふわりと潮風がミーナの髪を揺らす。ほんの少し、ミーナの眉尻が下がった。海を映したようにゆらゆら揺れる瞳の中に、確かな「寂しさ」が見て取れた。

    「じゃあ、俺と付き合わない?」

     俺がそう言うと、ミーナはびっくりしたような顔をして、こっちを見つめた。

    「どうして?」
    「俺も退屈だから」

     何それ、とミーナは呆れたように笑ったが、「いいよ」と答えた。

    「夏の間くらい、一緒にいられる人がいるっていうのも、確かにいいかもしれないわね」

     そう言って、ミーナはまた笑った。


    +++


     次の日も、海岸へ行くとミーナが待っていた。
     どこか行こうか、と言うと、街をぶらぶらしたいな、と返してきた。

     平日の昼間だからか、人通りもまばらな商店街。
     数人の女子集団が、店先に置かれている夏服を手にきゃっきゃと声を上げている。やめとけ、今お前が持ってる蛍光イエローの鞄にショッキングピンクのタンクトップは目が痛いぞ正直。

     ミーナを見ると、どうも落ち着きがない。傍らの店にちらちらと目線を送っている。
     やや小奇麗な山小屋といった外見。どうやら、シルバーアクセサリーをメインに取り扱っている店のようだ。ミーナは初めて会った時からあまり着飾っていなかったが、やはり女の子なのでアクセサリーの類は気になるらしい。
     何だ、見たいんなら遠慮せず言えばいいのに、と俺は言った。ミーナはぽっと頬を染めて、照れたように笑った。

     店に入ると、ミーナは一目散に店の奥の方へ駆けていった。楽しそうにしているので、俺はひとりで店内を物色した。髑髏のついたごつい指輪。天然石のぶら下がったピアス。皮で編まれたブレスレット。男物も女物もごちゃごちゃに置いてある。
     こちらなどお客様にお似合いですよ、と店員がごつい鎖で十字架にハブネークが絡みついたトップの、重そうなペンダントを薦めてきた。細工も細かいしデザインも嫌いじゃないが、値段を見てげんなりした。5桁はないわ。俺はいいんで、と言うと、店員はやや不満そうな顔でレジに戻った。

     ミーナは何を見ているんだろうか、と思ってそばに行くと、ガラスケースの中のピアスとにらめっこしていた。
     そういえば、ミーナはピアス穴開けてたっけ。いつも透明な樹脂のピアス止めをつけてるけど。

    「気にいった奴でもあったのか?」

     俺が尋ねると、ミーナは1700円と書かれた棚の中のひとつを指差した。
     フックの先に燻した銀の薔薇の花が2、3個ぶら下がっている。女がつけるにはちょっとごつい気がするが、男がつけるには少々派手だ。ユニセックスと言うより、中途半端なデザインと言った方がしっくりくる。
     しかしミーナはこれが気にいったようだ。買ってやろうか、というと、ミーナはぱあっと顔を輝かせて俺に抱きついてきた。
     レジの奥に引っ込んでいた店員を呼んだ。店員はガラスケースを開けながら言った。

    「こちらですか? そうですねぇ、こちら、男性でも気軽につけられるデザインですよね」
    「いや、俺のじゃないんだけど」
    「あっ、贈り物でしたか? 彼女さんですか? ラッピング、210円ですがいかがですか?」
    「いいよそのままで。つけて帰るから」

     俺がそういうと、店員は首をひねりながらレジへ向かった。


    「……ど、どうかな?」

     店の外で、ミーナが少しおどおどしながら聞いてきた。
     両耳にはさっき買った薔薇のピアスがさがっている。

    「うん、まあ、思ったよりごつくないな」
    「えへへ、そうかな?」
    「うんうん、似合ってる似合ってる」

     何か適当に答えてない? とミーナは少し頬を膨らませた。
     でも実際、思ったより似合っていた。ミーナの何となくふわふわした印象といぶし銀の薔薇は合わないんじゃないかと思ってたけど、意外とそうでもなかった。むしろ重たさがアクセントになっている。

    「次、どこ行く?」

     俺がそう尋ねると、ミーナはえっと、と言ったきり少し口をつぐんで、俯いて両手をもじもじとさせた。
     長い沈黙に、ポケットの中の煙草を取り出すか否か迷い始めた頃、ミーナが顔を真っ赤にして、小さな声で言った。

    「……キョーイチの家、行きたいな……って」

     俺はちょっと呆気にとられた。
     いや、まあ、別にあれだけど、会ったの昨日の今日だし、見た目どっちかというと清純系だし……。

    「思ったより積極的なんだな」
    「……〜っもー! いいよっ! 忘れてっ!」

     ミーナはそのまま口や耳からかえんほうしゃが出るんじゃないかってくらい顔を真っ赤にして、そっぽを向いた。
     俺はやれやれ、と笑って、ミーナの腕をひいた。

    「いいじゃん。来なよ」
    「…………」
    「来ないのか?」
    「……行く」

     ミーナはそう言うと、顔を隠すように俺の腕にしがみついてきた。二の腕に当たるミーナの頬が熱かった。


    +++


     夜中に目を覚ますと、ベッドの上に1人だった。
     鞄も脱ぎ散らかした服もない。俺が寝てる間に帰ったのか? と、寝ぼけた頭をぼりぼり掻く。

     黒字に金色の文字が書かれた箱から煙草を1本取り出して、火をつける。
     煙を灰に吸いこみながら、働かない頭をぼんやりと動かして、身体の相性よかったなあ、と心の中で呟いた。
     暗い部屋に白い煙が漂う。気だるさに水でも飲むか、とベッドから起き上がろうとした。

     ちくり、と右手の人差指に何かが刺さった。
     いぶし銀の薔薇のピアスのフックだった。じわりと赤い痕が白いシーツに広がる。

     あれ、ミーナの奴、忘れていったのか?
     しょうがないなあ、と言いつつ、俺はピアスをズボンのポケットに入れた。



     次の日海に行くと、ミーナが待っていた。

    「昨日勝手に帰っちゃってごめんね」
    「いや別に。……あ、そうだ」

     ピアスを渡そうとポケットに手を入れた。
     しかし、ポケットの中は空だった。

     どうしたの? とミーナが首をかしげながら聞いてきた。
     その両耳には、いぶし銀の薔薇のピアスがさがっていた。


    +++


     お盆の時期は海岸にメノクラゲとかその辺りが大量発生するから海には行きたくないよな、と俺は言った。
     そうだよね、とミーナは答えた。
     しかし暑い。今年は特に暑い。このままじゃ陸に打ち上げられたコイキングになりそうだな、と俺は言った。
     本当だよね、とミーナは答えた。

     プールでも行くか? と俺は聞いた。
     行く、とミーナはすぐに答えた。


     行ってみたけど、水の中は人でごった返していた。
     あれじゃあ水の中を泳ぐというより、人の間を水が流れていると言った方が近い。
     プールサイドにいくつか刺してあるパラソルの影の下に座って、売店で買ってきたかき氷を2人でつつく。

    「やっぱり人多いねえ」
    「休みだもんな」
    「なあ、そこの兄ちゃん、ポケモン持ってるだろ?」

     2人でのんびりとしていると、海パンをはいた小学生くらいのガキンチョが、いきなり声をかけてきた。

    「ん? ああ、まあな」
    「じゃあ勝負しようぜ! シングルの2対2でどうだ!」
    「……まあ、別にいいけど」

     やれやれ。このくらいの年頃のガキンチョってのは、こっちの都合もろくに聞かず、相手がどんな奴かもあまり考えずにバトルを仕掛けてくる。ポケモンバトルを始めて間もない奴らが多いから、しょうがないか。
     プールサイドに備え付けられているバトル用の広場へ向かう。俺はベルトからボールを2つ選んだ。頑張って、とミーナが笑顔で手を振ってきた。

    「よーし、行くぞっ! マグマッグ!」
    「行ってこい、チャコ」

     俺が最初に選んだのは、頭に大きな葉っぱを生やした小さな怪獣、もといチコリータのチャコ。
     相手は相手は溶岩のなめくじ。よりによって炎天下のプールサイドで。クソ暑い。ふざけんな。

    「マグマッグ、ひのこだ!」
    「チャコ、はっぱカッター」

     小さな炎が、チャコの放った葉っぱに引火して、本体に当たる前に灰になって地面に落ちる。
     はぁ? マジ? とガキンチョが驚愕の声を上げる。うん、相手が悪かったな。

    「坊主、いいこと教えてやるよ。兄ちゃんはこれでも結構強いぜ」
    「う、うるせぇ! おれは負けねぇんだっ! マグマッグ、ふんえん!」

     ぶわっと周囲に炎と熱い煙が散らばる。熱い。熱いというか暑い。めちゃくちゃ暑い。思わず咥えていた煙草のフィルターを噛みつぶした。やべぇマジイライラする。
     チャコの葉っぱに小さな炎がついていた。必死で振り払って消したが、少しやけどしたようだ。
     相手を睨みつけ、鋭い鳴き声を上げる。ああなるほど、チャコも相当イラついてるってわけか。上等上等。

    「チャコ、からげんき」

     その葉っぱのやけどの分も込みだ。遠慮せずやっちまえ。
     チャコは首から伸ばしたつるで思いっきり相手を打ちすえる。あまりの猛攻に、相手は恐れおののいて戦意を喪失したようだ。

    「ううっ……行けっ! クヌギダマ!」
    「戻れチャコ。行ってこい、エリー」

     俺は黄色いふわふわモコモコの体毛を持った羊、メリープを繰り出した。
     相手は硬い殻を纏った木の実みたいな虫。相性はそんなにいいわけでもない、か。

    「エリー、とっしん」
    「クヌギダマ! てっぺき!」

     走って勢いをつけてエリーの頭がクヌギダマの身体にぶつかる。ごつっ、と鈍い音がした。エリーが少し涙目になって数歩下がる。
     なるほど、なかなか防御力はあるみたいだな。よく育ってる。

    「クヌギダマ、こうそくスピン!」
    「エリー、わたほうし」

     クヌギダマが超高速で回転しながらエリーにぶつかってくる。細かい綿くずがバトルフィールド周辺に舞い散る。
     俺は咥えていた煙草を携帯灰皿に押し付けた。

    「エリー、もっとだ」

     エリーの体毛が電気を含んでふわりと膨らむ。クヌギダマがまたぶつかってきて綿くずが散らばる。
     視界が少し白くぼやけてくる程度の綿の量。ふむ、こんなもんか。

    「坊主、お前結構センスあるよ。このままエリーを覆う綿を削って、適当に防御削ったところでだいばくはつ……って流れだろ? いいと思うぜ。でもまだまだ足りねーな」
    「は?」
    「経験だよ経験。大人になって考えつくことってのもあるってこった。ま、今回は学校じゃ教えてくれない課外授業だと思っとけよ」

     学校じゃあ型にはまったバトルしか教えてくれねぇからな。
     だがまあ、世の中そう一筋縄ではいかないんだよな。ゲームか何かじゃあるまいし。

    「ま、たまには、爆発される側ってのも経験しとけってこった」

     えっ、とガキンチョが目を丸くする。

    「ほうでん」

     空気中を漂う無数の繊維。
     放電で発生した火花。

     結果、爆発。


    「……はい、ジュリア。おつかれさん」

     俺は傍らに控えていたキルリアの頭をなでた。ぱちん、と音を立てて、バトルフィールドを覆っていたリフレクターの壁が解除される。
     若干煤で黒くなったフィールドに転がっているのは、これまた若干黒くなって目をまわしているクヌギダマと、少し汚れたクリーム色の綿の塊。
     塊の中からエリーがぴょこんと顔と手足としっぽを出す。

    「に、兄ちゃんむちゃくちゃだよ……」
    「経験だと思っとけ。世の中そうそう良心的なトレーナーばっかじゃねぇぞ。……ま、大人げなかったとは思うからよ。回復が終わったらこれで手持ちの連中にアイスでも買ってやれ」

     俺はポケットから財布を取り出して、金色の硬貨を1枚ガキンチョに渡した。
     おれが負けたのに、とガキンチョは言ってきたが、ガキンチョから金をむしる気はさらさらねーしただの野良バトルに賞金も何もねーよ、と返して追い払った。

     ふう、と息をついてミーナの隣に座り、ポケットから煙草を1本取り出して火をつけた。
     ミーナはお疲れ様、と言ってタオルを渡してきた。

    「バトル強いんだね。ちょっと驚いちゃった。思ってたよりもすごく大胆な攻撃するし」
    「あー、まあ、知り合いにガサツだけど超強い奴がいてな……そいつの影響がな……」

     めちゃくちゃ強いけど、豪快すぎる上に博打うちのどうしようもないあいつ。バトル場でも煙管をふかしながら日本酒の一升瓶を小脇に抱えているあの馬鹿。飲酒バトルの違反で捕まるんじゃないかとずっと思っているけど、今のところ無事なようだ。
     エリーの粉塵爆発も、元はと言えばあいつのエルフーンが使ってた方法だ。散々わたほうしでフィールドに糸屑をばらまいたかと思うと、かえんだまを投げつけてくる。笑顔で。いたずらごころの特性もあるのかもしれないが相当腹黒い。しかもあいつは俺と違ってリフレクターとかその辺の技を使える奴がいないから、トレーナーが危ない。特に室内では。どうも警察の目は節穴のようだ。あらゆる方面で。
     ……まあいろいろ問題はあるけど、何だかんだでバトルは馬鹿みたいに強いから、俺もいろいろ教えてもらったりしたけど。

    「それに、何て言うか……意外と、可愛いポケモン使うんだね」
    「い、いいじゃねーか。趣味だよ。悪いか」
    「ごめんごめん、馬鹿にしたつもりはないの。ちょっと意外だなーって思っただけで。ね、他の子は?」

     そうだな、と言いながら、俺はベルトからボールを外した。

    「キルリアのジュリア。メリープのエリー。ポニータのジョニー。チコリータのチャコ。ヒヤッキーのヒロシ」
    「何かヒヤッキーだけ方向性が違わない?」
    「しょうがねぇだろ勝手につけられたんだよ名前。それから……」
    「ねえねえ、そこのお兄さんっ!」

     突然、妙にハイテンションな甲高い声が突き刺さってきた。
     顔を上げると、水着を着た女の子が3人、

    「お兄さん、バトル強いねーっ! ねえ、よかったら私たちと遊ばない?」
    「は?」

     何だこいつら。
     まあ確かに、俺1人だったら遊んでたと思う。でも今はどこからどう見ても明らかに連れがいる状況じゃねぇか。いくら夏のプールで頭のネジが外れてるって言ってもマナー違反だろ。

    「俺、連れいるし」
    「連れぇ〜?」

     俺は隣に座るミーナを指差した。女子どもは俺の指先を目で追いかけて、また俺の方を向いた。

    「……ねえ、私たちと遊んだ方が絶対楽しいよ〜? ねー、ほらぁ……」
    「いい加減にしてっ!!」

     ミーナが突然、立ち上がって大声で怒鳴った。

    「いくら何でもひどいじゃない! そりゃ、私はそんなに魅力もないかもしれないけど、キョーイチは今私と遊んでくれてるの! 今は私のものなの!!」
    「ミーナ、いいから! わかったって!」

     俺は慌ててミーナを止めた。
     女子連中は俺たちに軽蔑するような視線を送り、「何アイツ」「意味わかんない、気持ち悪い」などと口々に言いながら去っていった。

    「ミーナ……」
    「ご……ごめん、キョーイチ。私……」
    「……い、いや、いいんだ。何つーか……すっげー、嬉しいかも」

     いつもにこにこと穏やかなミーナが、感情をむき出しにして怒っている。しかも、俺のために。
     それが妙に恥ずかしくて、こそばゆくて、嬉しかった。

     ミーナが俺の手に手を重ねてきた。
     赤く染まった頬。上目遣いの視線。眉上で切りそろえられた髪の毛を払うと、くすぐったそうに眼を細めた。
     傾きかけた太陽が伸ばした2人の影が、そっと重なった。


    +++


    「アスベスト、なげつける!」
    「わー待てっ!! まだリフレクター貼ってねぇ!! ってかお前も対策なしにその技使うんじゃねぇよ馬鹿!!」

     綿毛を背負った羊が綿の中からかえんだまを取り出そうとするのを慌てて止めた。冗談じゃない。爆発に巻き込まれるのなんてまっぴらごめんだ。
     ジョーはアスベストというどことなく物騒な名前のエルフーンをボールに戻した。粉塵爆発は起こすわ、ぼうふうで柵やら街灯やらをなぎ倒すわ、部屋の中だろうがどこだろうが気がついたら人の背中に勝手に張り付いてるわ、服(特にニット)に絡みついてなかなか取れない繊維を残していくわ、いろいろと前科の多いポケモンだ。何よりそれら全てを笑顔でやってくるのが怖い。行動が大胆というか大雑把なのは飼い主のせいだろうが、こいつ自身の性格も相当悪い。多分。

    「ふー。久々に手合わせしたけど、お前ちょっと腕がなまってんじゃねえか? キョーイチ」
    「あー、夏入ってから、最近プール行った時に絡んできたガキンチョとしかバトルしてねぇからなぁ……」

     公園のベンチに座って、煙草に火をつける。ジョーは今日は煙管のようだ。
     せめてよく着てる作務衣とか着流しとか謎の派手な着物とかならまだ絵になっただろうに。何で今日に限ってお前はあずきジャージなんだ。深夜の公園でだるそうに座って時代錯誤な煙管をふかしている上下あずき色のジャージの男なんて、いろいろちぐはぐ過ぎて人が通りかかったら確実に二度見されると思う。ちなみに俺はもう慣れた。
     煙を吸い込み、大きく息をつく。

    「ジョー、お前さ、普通に強いんだからもうちょっと考えて技出せねぇの?」
    「えー、考えてるだろ。組み合わせとか、作戦とか」
    「そうじゃなくってさ。例えばぼうふうにしてももうちょっと照準を合わせて当てるとか、爆発するならトレーナーその他周囲に被害がないように配慮するとかさ、お前免許取る時に習うとこだろそこは」
    「悪かったなノーコンで」
    「お前マジでいつか捕まるぞ。安全対策不足か器物損壊か飲酒バトルで」

     へいへい、とジョーはやる気のなさそうな返事をした。
     煙管煙草独特のふわりとした芳醇なにおいがする。ジョーはふと俺のベルトにつけているボールに目を落とした。

    「おいキョーイチ、このボール、ヒビ入ってるじゃねーか」
    「え? うわ、マジだ。あれー? いつやっちまったかなぁ? 最近バトルしてねーから思い出せねぇ……」
    「早いとこポケセンかショップ行って直してもらった方がいいぜ。昔、知り合いがひび入ったボールそのままにしてたら、いきなりボールが割れてカビゴンが出てきて、危うく圧死するとこだったって言ってたし」
    「そりゃこえーな。気が向いたら直しとくわ」

     星空に向けて煙を吐き出す。ちかちかとした瞬きが少ない、澄んだ空だ。
     ジョーも空を見上げながら、もう秋の空だなぁ、とつぶやいた。

    「俺、秋になったらまた旅に出ようと思うんだ」

     唐突に、ジョーがそう言った。
     元々こいつは、ポケモンを育てながらあてもない旅をしていたらしい。去年の春この町に来て、1年とちょっと、この町を拠点に周辺をうろうろしていたようだ。町にいる間は、バイトか何かで金を稼いだり、酒を飲んだり、バトルを指導したり、酒を飲んだり、俺や友人と遊んだり、酒を飲んだり、酒を飲んだりしていたようだ。

    「へぇ、今度はどこに行くんだ?」
    「まだ決めてねぇけど、もっと北の方へ行こうかなと思ってる」
    「北ねぇ。これから冬に向かうってのにご苦労なこって」
    「ばーか、冬だから北に行くんだよ。わかってねぇなぁ」

     そう言ってジョーは煙管の上下を返し、ふっと吹いて灰を落とした。
     丸めた煙草葉を雁首に詰め、また一服ふかして、ジョーが言った。

    「そういやキョーイチ、お前、彼女とはどうなんだ?」
    「あれ……お前に話したっけ?」
    「いいや? でも最近飲みにも誘わねーし、彼女いるんじゃねえの?」
    「まあ、いるけど……」

     ミーナと出会って1カ月と少し。お互い遊びと割り切ってはいるはずだが、意外と長く続いているもんだ。
     ジョーはベンチの背もたれに肘をついて、俺の顔をじっと見ていた。

    「……何だよ気色悪いな」
    「いいや、何て言うか……。……いや、やっぱりいいや」
    「何だよ。気になるじゃねぇか」
    「いや。何か、お前幸せそうだなぁと思って」
    「……そうか?」

     幸せ、ねえ。
     まあ確かに、不幸せではないと思うけど。

     しかし何だろう。何かこう、のどの奥の方に何かがつっかえてるような、胸やけを起こしているような、魚の骨が引っ掛かってるような、何とも言えない違和感は。


    +++


    「もうすぐ、夏も終わるね」

     ミーナが窓を開けると、湿った外の空気と、真っ赤な夕日の影が部屋に入ってきた。吹き込んできた外気で、ミーナの短い髪がふわりと揺れる。

    「秋になったら、お月見でもしようか。夏の間はいっぱい海に行ったから、山もいいかもね。イチョウとかカエデとか、綺麗に染まってて……」

     楽しそうに笑いながら、ミーナが俺のそばにぴったりと寄り添う。
     頬と頬が触れる。ミーナの肌は冷たい。
     目をやると、窓から差し込んできた夕日を背負うミーナは、姿も表情も影色に塗りつぶされている。目だけが唯一、煌々と輝いて見えた。

    「ミーナ」
    「ん? どうしたの?」

     ミーナが小首をかしげる。
     俺は口を開いた。言葉が出ない。夕日がすっかり建物の影に隠れてしまうほど、長い沈黙が2人を包んだ。

     何とも表現しがたい不安。違和感。気持ち悪さ。
     不快な感情が胸を満たす。


    「別れよう」


     不意に、そんな言葉が口をついて出た。


     ミーナはぽかんとした顔で俺を見た。

    「……どうして?」

     ミーナは今にも泣きそうな声で、そう聞いてきた。
     俺は口を開いた。胸の中のわだかまりが、自然と言葉を作っていくようだった。

    「飽きた、から」

     再び長い沈黙が、俺とミーナを包んだ。
     押し寄せてきた大きな波が、波打ち際で砕けて消えるように、俺の心の中のありとあらゆる感情が押し流されて消えていく。


    「……そっ、か。わかった」

     沈黙を破ったのは、ミーナの明るい声だった。
     俺はびっくりして顔を上げた。ミーナは笑顔で、でも目元は涙で濡らして、俺を見ていた。

    「うん。そうだね。元々、お互い遊びだったもんね」
    「……」
    「わかった。夏ももう終わりだもん。ひと夏の想い出、充分だよ」
    「ミーナ」
    「でも、いつかキョーイチがまた恋をしたら、世界中の誰より幸せになってくれないと許さないからね」

     ミーナはそっと俺の手を握った。
     耳から下がった薔薇の花がきらりと光っていた。

    「楽しかったよ、キョーイチ。さよなら」



     部屋の中は真っ白だった。
     窓の外はモノクロだった。

     幸せだった。夏の間、俺は幸せだった。
     切なくて、不安で、不気味なくらい、俺は幸せだったんだ。

     そうだ。元から、どうせ遊びの関係だったんだ。
     お互い相手がいなくて、隣が開いているからとりあえずそれを埋めただけ。
     それ以上の関係になりうるわけがない。


     ああ、そういえば。
     自分から別れを告げるのって、これが初めてだ。


     開けっぱなしの窓から、音楽が聴こえてきた。
     初めてミーナとこの部屋で一晩過ごした時、つけていたラジオで流れていた曲。
     古い西部劇の主題歌。静かに響くアコースティックギター。哀愁漂う女性の歌声。

     温かい手のひら。
     花の香りがする髪の毛。
     くるくると表情を変える潤んだ瞳。
     薔薇の花弁のような唇が紡ぐ言葉を、唇で塞いで止めたあの夜。



    「ミーナ」


     ミーナ。
     ミーナ。
     ミーナ。ミーナ。ミーナ。

     ミーナ。ミーナ。ミーナ。ミーナ。ミーナ。
     ミーナミーナミーナミーナミーナミーナミーナミーナミーナミーナミーナミーナミーナミーナミーナミーナミーナミーナ……ミーナ!



    「ミーナ! ミーナ!!」



     錆ついた空。

     枯れて頭を垂れた向日葵。

     頬を濡らすのは雨粒。



    「やっぱりお前のことが好きなんだ!! ミーナ!!!」


     俺は馬鹿だ。
     ほんの一時の気まぐれで、別れよう、だなんて。
     確かに最初は遊びだった。

     でも、いつの間にか、本気で好きになっていた。


     モノクロの街を走る。

     雨が奏でる女性の歌声。

     頭に響く波の音。


     突然体が宙を舞い、俺は真っ黒な地面に叩きつけられた。



    +++



     俺は白い天井を見上げていた。
     柔らかい。これはベッドだ。俺の部屋じゃない。誰かいる。白い服。医者と看護師。

    「目が覚めたか! よかった! ここは病院だ。自分のことはわかるか?」
    「……ミーナは?」

     医者が何か言ってきたが、どうでもいいことだ。
     俺はミーナを探さなきゃならない。

     起き上がろうとすると、医者は慌てて俺を押さえつけた。

    「こ、こら! まだ起きちゃいかん!」
    「放せ! 放せよ! 俺はミーナを探さなきゃならないんだ!」

     腕に刺さっていた点滴の針を引き抜き、俺を押さえつける医者を力ずくで振りほどこうとした。
     押さえつけろ、人を呼べ、鎮静剤を、などと医者と看護師がわめく声が耳から耳に抜ける。

     その時だった。
     ドゴヅッ、という鈍い音とともに、丸くて硬いものが、ものすごい勢いで俺の額に叩きつけられた。
     激痛と混乱。俺は驚いて動きを止めた。

    「落ち着け、馬鹿野郎」

     いきなり頭突きをかましてきたそいつ……ジョーは、そう言ってため息をついた。

    「何があったんだ?」

     ジョーが静かな口調で聞いてくる。
     真っ白だった心が動き出す。体が震える。鼓動が速くなる。

    「……探さないと、間違えたんだ、俺は、ミーナを、ひどいこと」
    「おい、落ち着け」
    「ほんの気まぐれで、俺は、不安になって、だって、ミーナは、好きだったのに」
    「しっかりしろ、キョーイチ!」

     ジョーが俺の両肩をつかんで揺さぶった。


    「いないんだ! お前の言ってる『ミーナ』は! どこにも!!」

    「……え?」

    「夢だったんだ。全部、夢だったんだよ」


     何を言ってるんだ?
     だってミーナは、夏の間ずっと俺のそばで、一緒にいて……。

     とりあえず深呼吸しろ、とジョーが言ってきた。
     大きく息を吸ってゆっくり息を吐くと、モノクロだった世界に、ぼんやりと色がついたように感じた。

     ジョーはため息をついて、諭すような口調で言った。


    「『ミーナ』は……お前のムンナだろ?」


     世界が崩れる。
     目の前が一斉に、鮮やかに色づく。

     俺はおそるおそる、腰に手をやった。
     手に触れたのは、ひびの入ったモンスターボール。
     中に入っているのは、夏の初めに進化した……ムシャーナの、ミーナ。


     医者が静かに言った。


    「キョーイチさん。あなたの症状は……重度の『夢の煙中毒』です」


     『夢を現実にすること』が、そのポケモン、正確にはそのポケモンが出す「夢の煙」の持つ能力。ドリームワールドという施設で使われているように、夢の中の道具やポケモンを実体化することさえ出来ると言われている、摩訶不思議な物体だ。
     しかし、それは「正しく使えば」の話だ。力が強すぎるため、ドリームワールドでも、「夢の煙」の使用は1日につき1時間までと制限がかけられている。

     四六時中、「夢の煙」を浴び続けていたらどうなるか。

     ひと言で言えば、起きたまま夢を見る。
     密かに抱いていた夢。心の奥底の願望。それが幻覚や幻聴となって現れる。
     夢を見ている本人にだけは、リアルな実体を伴って。

     その状態が長く続くと、しだいに夢と現実の区別がつかなくなる。
     本当はないものが見え、あるものが見えなくなる。実際に鳴っている音とは違う音が耳に入り、存在しないものに体を触れられる。
     そして最終的には、精神が堪えきれなくなり、心が壊れてしまう。


    「俺が見つけた時、お前は遮断機を乗り越えて列車の前に飛びだそうとしてた。とっさに『ぼうふう』で吹き飛ばさなかったら死んでたぞ」

     ぼんやりと、この場所にいる前に感じた浮遊感を思い出す。
     でも、実感が伴わない。
     頭の中がぐるぐるして、何が何だかわからない。

     体の中から『夢の煙』の成分がすっかり抜けきって、心が落ち着くまでは入院しましょう、と医者が言ってきた。


    +++


     窓から外を見ると、庭に植えてある木々の葉が、ちらりほらりと赤みを帯びてきていた。
     あれは桜の木か。春になるとさぞやきれいなんだろうな。さすがにそんな頃まで入院するのはごめんだが。


     中庭に出た。入院している身だが、最近は出歩くのも比較的自由になった。時間までに病室に戻りさえすれば。
     灰皿が設置してあるベンチへ行くと、俺の見舞いに来たのであろうジョーが一服していた。

    「秋になったら、旅に出るんじゃなかったのか?」
    「俺の中では、モミジが赤くなるまでは秋じゃねーんだよ」

     何だそりゃ、と笑いながら、俺はジョーの隣に座った。右手に持っている箱から、シガレットを1本抜き取る。ジョーは呆れたように笑った。

    「入院患者が煙草なんか吸うんじゃないよ全く」

     そう言いつつ、ジョーはポケットからジッポライターを取り出す。

    「メンソールだぞ」
    「いいよ」

     煙を吸い込む。すうっとした刺激が呼吸器を抜ける。舌の根が苦くて眉をしかめた。
     ふう、と煙を吐き出し、手すりに肘をついて頭を抱えた。慣れない味の煙草にくらくらする。

     まぶたを閉じると、彼女が俺の前で、笑顔で手を振っているような気がした。
     ゆっくりと目を開ける。俺の目に映るのは、その身の色を変えて秋の到来を告げようとしている、桜の木ばかりだった。


     そっと目を閉じた。

     両目から、ぼろっと涙が零れおちて頬を伝った。


     大丈夫か、とジョーが声をかけてくる。

     煙草の煙が目に染みただけだ、と俺は答えた。


     左手をズボンのポケットに突っ込むと、指先にチクリと何かが刺さった。
     取り出してみると、燻し銀の薔薇のピアスだった。

     夢だった。そう、全部夢だったんだ。
     夏の間に見た、ひと時の夢。
     俺の夢の中の彼女と、夢の中で恋に落ちた。ただ、それだけのことだった。

     だけど、彼女は確かに俺のそばにいた。
     俺は彼女と夏の初めに出会って、夏に恋して、夏の終わりに別れた。
     それは確かなことなんだ。

     俺にとって、初めてのことだった。


     本気の恋だったんだ。



     ああ、駄目だ。やっぱりメンソールは嫌いだ。

     涙がちっとも止まりゃしない。



     時計の針は3時を示していた。
     どこからか、教会の鐘の音が風に乗って聞こえてきた。










    ++++++++++The end

    special thanks/桑田佳祐「可愛いミーナ」


    カラオケで久々に歌ったら降ってきた。
    年齢=恋人いない歴の自分には色々と無茶だった。
    ごめんなさい。

    それにしても、どうやら自分は相当ムンナが好きらしいと最近気付いた。


      [No.2652] 感想ありがとうございます!! 投稿者:くろすk   投稿日:2012/09/27(Thu) 18:28:50     261clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    感想いただけただと…!?ありがとうございます、喜びに舞い上がってます!!

    >  しかもザングースにタカアキさん。親子の血というか脈々と流れるなにものかの存在を感じざるを得ません。

    それはもう、親子ですからネーミングセンスとか似通いそうだなと(笑)
    また手持ちが増えても主人公さんはこんな感じで名前付けるんでしょうね

    >  あれ? それ結構重大事件では……

    自由奔放な母親のおかげで、ちょっとやそっとでは堪えない強かな子に成長した主人公さんです。
    彼女にとってこのくらいよくあることのようで

    お父さんと暮らしたらこんな感じかなぁと妄想しつつ書いてみました。
    座布団でゴロゴロするお父さんとか、一緒にテレビ見たりしてるとことかも書きたかったです。
    お庭にはきっとゴスの実が植えられているんだろうなぁ…。
    またネタが降臨したら、お父さんと主人公さんのドタバタが書けたらいいなぁと思っております。

    ちょっとでも笑っていただけたら幸いです!
    こちらこそ読んでいただきありがとうございました!!


      [No.2651] おとうさーん! 投稿者:きとかげ   投稿日:2012/09/27(Thu) 00:18:06     221clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     一行目と二行目で心を掴まれてしまいました。マッスグマのお父さん! 確かにポケモンのニックネーム五文字までいけるから「おとうさん」って入るけどなんで付けたのよ!? とつっこみたくてつっこみたくて。
     しかもザングースにタカアキさん。親子の血というか脈々と流れるなにものかの存在を感じざるを得ません。


    > それはもう涙なしには語れない深い事情が…。ということもない。
    >ただ、数年前に突如トレーナーだった母親が失踪し、家に帰ると卓上に「お父さんと仲良く暮らしなさい」というメモと、その傍らに一匹のマッスグマが鎮座していただけである。

     あれ? それ結構重大事件では……
     しかし、それを重大と思わないところに有り余る魅力を感じます。

     お父さんと仲良く暮らしている、その雰囲気が文章のそこかしこから漂ってきてたまりません。お父さんの仕草や様子を細かく描いているからでしょうか……ゴスの実好きなお父さん、口からゴスの実飛ばして吠えるお父さん、食器出してって言ったら不満そうなお父さん、どれも素敵です。素敵ったら素敵です。

     本当、にやにや、かつ、ほのぼのしました。ありがとうございました。


      [No.2650] タイトル思い付かないけど突撃してみた 投稿者:くろすk   投稿日:2012/09/26(Wed) 20:39:30     269clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「ねぇお父さん」

    その呼び掛けに当たり前のように一匹のマッスグマがこちらを振り向く。この現象は何ら不思議ではない、何故なら私は彼に向かって声を掛けたのだから。

    「今日晩ご飯何がいい?」

    お父さんはクルルと喉を鳴らすと座布団から立ち上がり、冷蔵庫からゴスの実をいくつか持ってきた。彼の好物である。

    「分かった、じゃあこれでサラダ作るね」

    そう言うと、満足気な顔で座布団に戻って行った。今日の夕飯の一品はゴスの実サラダに決定。あとは適当なお惣菜と白米でいいだろう。

    「あ、お皿とか茶碗準備しておいてね」

    私は居間で寝転ぶお父さんが何か反論するように低く唸るのを聞き流し、キッチンへ向かった。

     言っておくが私はれっきとした人間であり、ジグザグマやその他卵グループりくじょうの生き物ではない。由緒正しい人間には間違いない。私の知りうるところでは。では何故あのマッスグマを「お父さん」と呼んでいるのかと問われれば、それはもう涙なしには語れない深い事情が…。ということもない。ただ、数年前に突如トレーナーだった母親が失踪し、家に帰ると卓上に「お父さんと仲良く暮らしなさい」というメモと、その傍らに一匹のマッスグマが鎮座していただけである。その日から私は彼を「お父さん」と呼び、こんな感じで一応仲良く暮らしているわけだ。
     母は腕の良いトレーナーではあったが、短気というか飽き性で、元々ひとつの場所に留まっていられない人だった。私が大きくなる頃には地方を股に掛け、あちこちを旅していたので家を空けることはよくあった。ジムバッヂ3つで飽きたなどと言って中途半端に帰ってきたり、そのくせ数ヶ月後に何を思い立ったか続きがしたいと旅に出る。そんな人だった。父親はこんな母親に愛想をつかして、とうの昔に違う女に付いていった、とは母から聞いた話である。

     居間からお父さんのクルルルルという呼び声が聞こえハッとした。ボーッとして手を止めていたようだ。おい、遅いぞ飯はまだかと言われているような気がする。急いでゴスの実サラダと冷蔵庫のお惣菜を持っていくと、ちゃぶ台に二人分の茶碗と取り皿、私の分だけの箸が置かれていた。

    「ごめんごめん、ちょっと考え事してた。お待たせ」

    座布団を移動させご飯のときの定位置につき、準備万端で私とサラダとお惣菜を出迎えている。向かい側に座ろうとすると茶碗を鼻でつついて私を見つめる。

    「あ、お米」

    すっかり忘れていた。慌ててご飯をよそう。ごめんって、と言えば訝しげな顔でグルルルと小さく声をあげられた。しっかりしろよとでも言いたげな様子であった。
     毎回お父さんとの会話は当てずっぽうだ。ポケモンの言葉は人間の私には分からない。本当に言わんとしていることは違うかもしれないけれど、今までこの方法でやってこれているのだ。私の解釈は大きく逸れてはいないんだろう。多分、恐らくきっと。

    「ああそうだ、お父さん。聞いて欲しいことがあるんだ。ご飯食べながらでいいから」

    おっといけない、このまま切り出せずにいては何のために今日の夕飯リクエストを聞いたか分からない。ご機嫌とりもそこそこに、本題に入らなければ。サラダが気に入ったようで、食べるのを止めず目線だけが向けられる。然も重大そうに話しては、途中で逃げられるかもしれないので軽くいこうと関を切った。

    「あのね、紹介したいひとがいるんだけど」

    瞬間、ごふぅという音と共にお父さんがフリーズした。口からゴスの実出てますよお父さん。こちらを凝視する顔は、ノーマル技しか覚えていないときにうっかりゲンガーにでも出会ってしまったときさながらであった。細くクルル…と鳴る喉は、嘘だろ…とでも言っているのだろうか。

    「タカアキさんっていうの。今会ってもらおうと思えばすぐにでも出てきてもらえるから。それで少し話を…」

    続けた途端、机を前足で叩き大きな音で私の言葉を遮った。ギャウギャウと口から食べ物を飛ばしながら吠える。興奮しすぎていて、これが人間の言葉であってもなにがなんだか理解出来なさそうな勢いだ。今まで何で黙ってたとか、突然すぎるとか、とにかく怒りと惑いが伺える。私はまだギャウギャウ吠え続けるお父さんに負けず声を張り上げる。

    「もう、決めたの。私が腹を括ったんだからお父さんも覚悟決めてもらおうと思ってる」

    ぎっと睨み付けて言えば、吠えたままの口の形でぽかんとしていた。そのまま強く睨み続けると、目を泳がせてちゃぶ台から前足を下ろし大人しく座り直した。その表情は大変に不服そうではあったが、落ち着いて話を聞いてはもらえそうだ。

    「準備してくるから、ここで待ってて」

    私はそんなお父さんを居間に置いて、自分の部屋に入った。そこにはタカアキさんが心配そうな顔で座っている。さっきの騒ぎを聞かれてしまったようだ。私は無言でタカアキさんの手を握り、頷く。よし、行こう。彼と一緒に足早に自分の部屋を出て、居間に戻るとお父さんは背を向けていた。

    「お父さん」

    呼び掛けても背を向けたままだった。そんなことをしても私の気持ちは変わらない。

    「こっち向いて。ちゃんと聞いて」

    お父さんはゆっくりとこちらを向いた。床を見つめるその目が、これまたゆっくりと私たちを見上げる。と、同時に。すごく、ものすごく驚いた顔になった。口をパクパクして、酸欠のトサキントのようだ。

    「お父さん、彼がタカアキさん。私のパートナーになるの。よろしくね」

    私は隣に緊張の面持ちで構えるザングースのタカアキさんをもう一度しっかり紹介した。お父さんは未だ声を出せずにいるようだ。とりあえず、吠えつきはされなかったので本題を続けた。

    「私もね、旅に出ようと思うの。リーグ挑戦、本当はずっと夢でね。いつかは行こうって思ってたんだ。それでこの前タカアキさんを捕まえて…ずっとお父さんに黙ってたの。ごめんね」

    お父さんは、みるみるうちに安堵の表情になっていった。なんとも人間のようなため息をつき、長く弱々しい唸り声を出していた。突然の宣告にも関わらずタカアキさんにはウェルカムな雰囲気を全面に出すように挨拶をしている。さっきまでの態度は何だったのか。そして何故、お父さんは少し涙目なのか。でもお父さんとタカアキさんが仲良くなれそうでよかった。

     いや、安堵している場合ではない。一番聞いて欲しいことはここからだ。私は背筋を正し、グッと力を込めお父さんを見た。

    「それでね、あの、この旅に…お父さんも一緒に、来て欲しいの」

    渾身の力を振り絞って放ったはずの声は少し震えてしまった。お父さんが私を見据える。

    「だってお父さん、本当はお母さんのポケモンでしょ?だから、お母さんを待っていたかったらいいの。でも…お父さんさえ良ければ…一緒にリーグ制覇、したいなって」

    思って、まで言ったつもりだったけれどなんだか怖くなって口をつぐんでしまった。そうなのだ。お父さんは元々母の手持ちで、ID表示は母のものが登録されている。私が共に歩みたくても、拒否されてしまったらそこまで。所詮私はお父さんの本当の名前すら知らない、只の捕獲者の娘。パートナーの絆はそこにはない。
     しばらく私を黙って見ていたお父さんは居間を飛び出し、母の部屋に入っていってしまった。…これが彼の答えということ。こういうこともあるはずだと腹を括って覚悟を決めたはずの私は、しゃがみこんで涙をこらえるので精一杯だった。泣いてはいけない、ほらタカアキさんも困ってる。それでも流れる涙は止まらない。

    クルルルル

    近くでお父さんの声がした。恐る恐るその方向を見れば、モンスターボールをくわえたお父さんが座っている。それを私の手に押し付けて、早く受け取れと言わんばかりだ。

    「…いいの?一緒に来て、くれるの?」

    グゥ、と唸るお父さんはまるで当たり前だろうとでも言うような、ここ最近で一番の満足気な顔だった。ボールを受け取ると、その顔のまま何事もなかったようにちゃぶ台に戻りサラダにがっつきだした。私もタカアキさんに涙を拭われながら食事に戻る。少しばかりお父さんの態度変化の謎が残るが、まあ気にしないことにした。

     明日、誰かさんのように卓上メモを残して旅立とう。鞄とパートナーと、お父さんを連れて。

    『お父さんと仲良くリーグ制覇してきます』

    ____________________________________________________________

    描いてもいいのよ
    書いてもいいのよ
    題名考えてくれていいのよ←

    数年前にちらっとお邪魔したきりだったのですが、何かネタ降臨したのでまたしてもお邪魔させていただきました。
    これでもポケライフっていうんでしょうかね…


      [No.2649] 続?友人がポケモンに侵されている件について 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/09/26(Wed) 20:13:15     265clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    登場人物

    私:語り手。時折辛辣な突っ込みを放つ。周りからは酷いと良く言われるが、この場合は相手のボケが酷いのでそこまでこちらは悪くない。
    K:友人。別に自分の意思の弱さに絶望して自ら命を絶つような性格は全くしていない。そして好きな子もいない。今のところポケモンがいればそれでいいらしい。
    S:主に国語担当の先生。今回は古典講読の授業を受け持っている。パッと見カリスマデザイナーのような外見をしている。どんなだよ!好きな物は愚痴を言うこと、嫌いな物はうるさい子供。
    何で学校の先生してるん?


    美術室にて。

    ガガガガガガガガガ

    「ねえ紀成ー」
    「何」
    「欲しいポケモンやっと思い出した」

    ガガガガガガガガガ

    「あんまり珍しいやつは私でも持ってるか分かんないよ」
    「エネコ欲しいんだよね」
    「エネコォ?ブラック貸した時にボックスにいなかった?」
    「わかんない。でも欲しいんだよね。ほら、あたしのブラック2じゃん?なんだっけ、ウサギの」
    「ミミロル」
    「そうそれ。それしか出てこない」

    ガガガガガガガガガ

    「別にいいけど、進化はそっちでしてね。石無いんだから」
    「りょうかーい。後さ、電気タイプの」
    「電気タイプだけで分かると思ったら大間違いだ」
    「えー、なんだっけ。エレキブルの」
    「持ってない」
    「違う違う。一番最初の」

    ガガガガガガガガガべキッ

    「あ、折れた」
    「力入れすぎなんだっての」
    「変えてもらわなきゃ……。で?エレキッド?」
    「そうそう。お願い!こっちは炎のやつ捕まえたから、交換!」
    「ブビィね。分かった分かった。せんせー、糸ノコの歯が折れたー」

    歯を変えるのに時間がかかるということで、もう一台でやる。再び部屋に響き渡る、耳障りな音。

    「そういやさ、W(男子の名前)に言ったらミュウくれるって」
    「アイツが?もらう前にID見た方がいいよ」
    「……最初っから信じてないんだね。別にいいけど。てかさ、まだSS返してもらってないの?」
    「催促してるんだけどねー。どうしよ」
    「頼むよー、ルギア欲しいんだから。ついでに言えばグラードンとレックウザも欲しい。あとミュウツー」
    「グラードンはともかく、レックウザはHG無いと無理だよ。あとミュウツーは殿堂入り後だし」


    ↓ここから先はポケモン要素ないです


    古典講読。受験生にはいらない授業と仕分けされ、来年から無くなるらしい。だから私達は事実上、最後の生徒となる。
    ……シリアスな空気で始まったが、そんなことを思わせる暇などこの人は与えてくれない。
    何で授業開始から二十分経っても話してんだよ!授業しろよ!そして皆も止めろよ!受験生だろ!

    「だからさ、何で高三からいきなり中一の担任になったのか分からないワケよ」
    「校長先生に直接聞いたら?」
    「聞いたよ!『これはどういうことですか』って!でもさ、あの人いつもの飄々とした感じで『えー、いやー、それはですねー』しか言わないんだよ!」
    「何か思い当たること無いんですか」
    「……」

    あるらしい。私はため息をついた。あくまで私は冷静な生徒を演じる。時折辛辣な突っ込みも入れる。
    だってそうしないと、誰がこの先生と皆を止めるのよ!

    「そういや文化祭といえば」
    「何ですか」
    「いや、一番初めに受け持ったクラスでさ、文化祭にクレープ作ることになったんだよね」

    聞けばスペースがないため教室で、ホットプレートで焼くことになったという。生徒達にホットプレートを各自で持って来させ(ある人は)、教室内のコンセントをタコ足配線にし、『さあやるぞー』と、一斉に電源を入れた。
    そして。


    ブチン


    「……」
    「焦ってさー、慌てて電源消して、幾つか隠させて、来た人に『いやー、電源入れたらこうなっちゃったんですよー』ってごまかしてさ」
    「ブレーカー落ちるって予想しなかったんですか?」
    「白熱灯が沢山あるから、電気タンクみたいなのあるんじゃないかなー、って。いや、業者のおっちゃんがすごい怖い人でさ、何回頭下げたことか」
    「……」

    怖いのは業者さんじゃなくて、それを予想できなかった貴方の頭です、先生。そして白熱灯と電化製品を一緒にしないでください。何のためにワットとかアンペアがあるのか、分かってますか?


    ―――――――――――
    今日古典講読の授業で聞いた話。本当に大丈夫か、この学校!
    今なら笑い話で済むところだけど、実際に起こされたらたまったもんじゃないぞ!


      [No.2648] 【愛を込めて】Happiness 【花束を】 投稿者:NOAH   《URL》   投稿日:2012/09/26(Wed) 13:34:23     160clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2


    「なあ、聞いたか?」

    金髪の男が、フードを被り、顔を隠す男に話しかけていた。ここは、喧騒と欲望の渦に沈むブラックシティ。黒く染まった大都会である。

    「……何かあったのか。」
    「ほら、あの単独で動く女裏ハンター!!名前は確か……。」
    「キャシディ・マーニー?」
    「そう!そいつ!毒蛇キャシディ!!」
    「組んだのか?」
    「らしいぜ。」
    「……厄介なのが増えた。」
    「何か言ったか?」
    「何も……持ち場に戻ろうぜ。」

    フードを被った男は、金髪の男を急かすように先に進む。金髪の男は戸惑いながら付いていく。その中で、フードを被っていた男は焦っていた。 気付けば、金髪の男は居なくなっていたことに気付いた男は、被っていたフードを取って息を吐いた。そしてそのまま座り込む。

    (はあ……警察官も楽じゃねえな……これ終わったら、有給むしり取ってやる。)

    浅く息を吐いて空を見上げた。何時の間にか、エルフーンが頭に乗っていたが、男は気にせず腕に抱いた。この男は、裏取引の情報を嗅ぎ付け、潜入捜査を行っている、国際警察官の刑事、シュロである。腕の中に移動させたエルフーンの♀、フォンは、彼の手持ちの一匹である。

    「フォン、これ終わったら、必ずヒウンアイス食べような。」
    「える!」
    「……約束な。」

    彼女が差し出した右腕に、自身の右手小指を当てて、指切り拳万と呟くと、彼女をボールの中に戻し、フードを被り直した。

    「待って。」
    「…………。毒蛇?」
    「怪しいと思ったら……あなた、ヘリオライト?」
    「あんたにも、俺のコードネームが伝わってるとはね……光栄だよ、キャシディ・マーニー。」

    苦虫を潰したような、険しい顔付きで、現れた女を思いっきり睨み付けた。女、キャシディの隣には、こちらでは珍しいアーボックが威嚇している。キャシディは、アーボックを撫でて落ち着かせると、シュロの方へと向き直った。

    「探している子はこの子かしら?」
    「!あんた、知っててわざと……!!」
    「この子がほしくて取り入ってたけど……興が剃れて、あんたのターゲット、眠らせちゃった。この子はそのお詫びの品よ。」

    彼女がシュロに差し出したのは、一匹の、色違いのヒトモシ。恐らく♀である。福寿草の花が咲く、小さな鉢植えに寄り添って、ぐっすりと眠っていた。花が燃えないと言うことは、恐らく特性はもらいびだろう。お詫びの品と述べた彼女に不信感を募らせたシュロだが、大人しく色違いのヒトモシを受け取った。

    「……辺りが騒がしいわね。起きちゃったかしら?」
    「かもな……さて、暴れ時かな。」
    「逃げないの?」
    「残念ながら、ここの連中を全員しょっ引くつもりさ…………あんたの分の手錠は、残念ながら今回は持ち合わせていないけどね。」
    「そう、それは残念……ああ、そうそう。その福寿草、私からその子への贈り物よ。」

    それだけ告げて、毒蛇、キャシディ・マーニーは、フワライドに掴まり、アーボックをボールに戻すと、ブラックシティのビル群に囲われた空へと、ゆっくりと上昇して行った。シュロはそれをそのまま見つめると、自分が一番信頼する相棒・ワルビアル(♂)のヴィックと共に、黒の街へと舞い戻って行った。




    「痛ってえ!?」

    消毒液が突然、たっぷりと傷口に付けられて、シュロは思わず声を上げた。消毒液を付けた張本人は、彼の弟のようだった。

    「兄さんのばか野郎!なんであんな無茶するのさ!!」
    「ちょっ、リンドウ、うるさい!シンフーが起きる!!」
    「……え?誰のこと?」
    「ん。」

    指さす先には、未だぐっすりと眠る、色違いのヒトモシ。ケージから出されて、椅子に座り込む、彼の相棒のワルビアルの膝の上にいる。そのヒトモシの近くには、ケージの中に一緒に入っていた、福寿草の植木鉢。エルフーンが、ジョウロで水を上げていた。

    「シンフー?」
    「そう。幸福って書いてシンフーね。」
    「へえ……随分と深い意味合いで。」
    「まあなぁ、『色違いは全部私の物だ!!』とか何とか言って、虐待死させたりしてたヤツだったからなぁ。」
    「え……じゃあ、この子も?」
    「おそらくな……まあ、ちょっとずつ、彼女の傷を癒してやるつもりさ。」
    「だからって、父さんの二の舞にはならないでね?ヴィックも何とか言ってやってよ。」

    そう告げたリンドウに、それは無理だと言わんばかりに、彼のワルビアルは首を振って、ヒトモシの顔を優しく撫でた。

    「父親みたいだぞ、ヴィック。」
    「!?」
    「本当だね……兄さんを頼むよ、お父さん?」

    そこで俺のことを言うのは違うだろう、とか、じゃあ誰が兄さんのストッパーになるのさ、とか、いろいろと言い合いを始めた主とその弟を見つめて、ヴィックは福寿草の鉢植えの土に刺さっていた、小さな紙を手にとった。それを見つめて、ヴィックはふ、と笑うと、黄色い愛らしい花の近くにそれを置き、このあと正式に、6匹目の仲間となるであろう、小さな小さなロウソクの霊を愛で始めた。



    「福寿草:キンポウゲ科の多年草 アジア北部に分布。シンオウのテンガン山とジョウトのシロガネ山にも咲いている。季節は2〜5月。花の色は黄色。花言葉は、回想・思い出・幸福を招く・永久の幸福。」


    *あとがき*
    最後はヒウンアイス食べながら終わらせるつもりが違う形になった!
    ですが、結果的にほのぼのになったのでいいです。

    ずっと書きたかった話がようやく書けました。
    福寿草の花言葉を見た瞬間「これだああ!!」 と思いました。

    色違いのヒトモシって可愛いですよね。
    私の書くワルビアルが本当にお父さんみたいですよね。
    他にもツッコミどころ満載かもしれませんが触れません。

    感想、お待ちしております。


    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】


      [No.2647] 雨の中で 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/09/24(Mon) 20:55:10     170clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    雨は、あまり好きではない。あの日のことを思い出すから。
    灰色の石は降り注ぐ雫で黒へと変わり、あの人の面影を消していく。
    目を閉じれば、今でもそこにいるような気がする。
    何も言わない骨となった貴方は、石の底で永遠の安らぎを手に入れたのだろう。痛みも苦しみも感じない、ただの骨。意味ある物は貴方に降り注ぐ雨の雫のみ。
    それは、貴方を清めてくれるのだろうか。

    『ねえ、何で君は泣かないの』

    答えは簡単。失う物が無いからだ。

    ――――――――――――――――――――
    傘の先から溜まった雫が落ちた音で、カズオミは目を開けた。足元を支えるアスファルトは既に黒く濡れ、その天気独特の匂いを醸し出している。太陽の光を浴びて熱していた鉄が、冷やされて冷めていく匂い。
    そういえば昔嗅いだ物は別の臭いも混じっていたことを思い出す。土の匂いは幼い頃嗅いだ。まだ故郷が開発されていなかった時代。今となっては、はるか昔のことのように思える。実際そうなのだが。
    ブルーシートを被せられていても漂う、その臭い。不謹慎かもしれないが、特に雨の日はより濃くなる。その臭いが叫んでいるように思えたのは、気のせいだったのだろうか。
    雨に濡れた髪を揺らして、頭を下げる。目を瞑り、両手を合わせる。それは一種の条件反射に近かった。だが自分の心には、懺悔の気持ちがいつもあった。
    それが誰に対してなのかは―― 分からない。
    周りに人はいない。あのざわめきは、ここにはない。誰かの泣き声と、苦しげに顔を歪める後輩。彼はまだ刑事だった。両親共々美術系の仕事だったのに、何故か彼だけはこの職についた。

    『いや、何ででしょうね。俺にも分からないんすよ』

    一緒に飲んでいる時、決まってその話題になった。最後に見た時よりかなり痩せている体を反らして、彼はグラスを煽った。

    『死んだ親父が最期まで良く言ってたんす。何でお前はわざわざ死に行くような仕事についたのかって。酷くないっすか?全国の現場を走り回ってる人達に失礼っすよ』
    『その中には、お前も含まれているのか』
    『当たり前じゃないっすか!俺はこの仕事に誇りを持ってますから。そりゃ、理想と現実のギャップに悩むことはありますけど……』

    大分酔っているらしい。彼はカウンターに突っ伏した。

    『それでも……。俺はこの仕事について良かったと思ってます。生と死を一番近くで見ることができるって、この仕事くらいじゃないっすか。消防士や病院に勤めている人もそうだけど、仏さんの無念の声を聞いて、自分達に出来る事をする。
    この時代に、大切なポジションでいたいんすよ。刑事として』

    今でも彼は、そこに所属している。ただし、もう刑事ではない。警部だ。当時の私と同じように刑事である一人の部下を引っ張り、指導しているらしい。
    理想と現実のギャップに幻滅しても、なお自分のできることをしている彼を、私は羨ましいと思う。
    私は――

    「逃げた、のか……」

    雨音は途切れることなく、傘を打ち付ける。あの日を思い出す。何故か人生の転機を迎える時は決まって雨が降る。雨男なのだろうか。それにしたって、嫌な運の持ち主だ。
    例えば、彼女にカフェを預けたいということを告白した日。
    彼の面会に行く日も、必ず雨が降っている。
    警部という職業を辞めた日は、台風が近付いていて家に帰れないほどの大雨が降っていた。
    そして、

    「父さん」

    父が、死んだ日。そして、彼の葬式の日も。

    父は弁護士だった。母は私が幼い時に事故で亡くなり、以来男手一つで育てられた。
    私が異常な雨男なのに対し、父は異常な晴れ男だった。母が死んだ日は、秋なのに二十五度を超えるほどの暑さだったらしい。
    父は自分のその運を嫌っていた。よく酒に酔うと、私に話した。

    『お前は、母さんの運を受け継いだのかもなあ』

    母は雨女だったそうだ。幼い頃から特別な行事の度に雨が降り、クラスメイトから疎まれた。遠足、運動会、文化祭、修学旅行。
    母もその運を嫌い、あまり外に出なくなった。すごいのは、母がその場からいなくなれば、そこがどんなに激しく雨が降っていても、十分も経たないうちに雲が晴れ、青空が見えてくる。
    大学に進み、父と出会い、やっと晴れ間を見る日の方が多くなったという。

    母が死んでからは、自分が雨を降らす役になった。
    だが父もいなくなった今、この運はいらない物でしかない。

    ポテポテという足音がして、カズオミは我に返った。道路の色がいくらか薄くなったように見える。傘に打ち付ける雫の音が、合唱から独唱へと変わっていた。
    視界の隅に入る、緑色と朱色の影。背丈は腰くらい。自分の体が濡れるのも構わず、しきりに手を天に向かって伸ばしている。
    それと同調するように、光が差し込んでくる。

    「……!」

    思わず傘を閉じる。ぽつん、と頭に雫が落ちたが、それ以外の打ち付けるような感触は無かった。空を見上げて、その理由を知る。
    買ったばかりの青の絵の具を、思い切りぶちまけたような――
    葉に付いた雫が太陽の光を浴びて、宝石のように輝いている。水溜りに空が映し出されていた。風が吹いて、波紋が出来る。雲が移動していくのが見えた。
    隣を見て、その相手と、その原因を知る。

    「ドレディア……」

    緑のドレスを纏い、巨大な花飾りを頭に付けたような姿。普通に見れば場違いな女性だと眉を顰めるところだが、今はその理由は思い当たらない。何故なら、その姿が彼女の素の姿だからだ。
    ドレディア。その外観から、世間でセレブと呼ばれる人間達のポケモンになっていることが多い。頭の花は大きいほど育て方が良いとされているが、上手く育てるのはプロでも難しい。
    ドレディアが野生で出るという話は、カズオミの経験では聞いたことがなかった。おそらく誰かに飼われていた物が野生化したのだろう。その証拠に、今使った技は決して野生では使うことがない。

    「『にほんばれ』、か」

    少しの間、日差しを強くして炎タイプの技の威力を上げる。ソーラービームを放つまでの時間を短くする。バトルをする立場でなくとも、常識として学校で必ず習う知識だ。
    ドレディアがこちらを見た。どうやら、この雨で困っているように見えていたらしい。少しもじもじとした仕草で下を向く。
    傘を左手に持ち替え、そっと右手を差し出す。目がこちらを映す。

    「ありがとう」

    少し経ってから、ドレディアの手の部分である葉がそっと差し出された。雨に打たれたのだろう。濡れている。ポケットからハンカチを出し、渡す。

    「良かったら使ってくれ」

    ギンガムチェックの刺繍が施されたそのハンカチは、男が持つにはあまり相応しくない色をしていた。白地に赤と青と緑の三色。普通なら自ら選んで買うことはない。
    それを送ってくれた『彼女』の顔を思い出し、カズオミは目を閉じた。
    あの日、告げた瞬間彼女がどんな顔をしていたか思い出せない。覚えておくべきことのはずなのに、思い出そうとすると靄がかかったように、そこだけボウッとかすんでしまうのだ。
    忘れたいことにインプットされ、そのまま知らず知らずのうちに消去されてしまったのかもしれない。随分都合の良い海馬を持ってしまったものだと、自嘲の笑みを零す。
    その割りに、あの雨の記憶は忘れることがない。あれから四十年近くが経過しているというのに――

    (忘れるな、ということか)

    また意味合いは違えど、それと同様に強く焼きついてしまっているのかもしれない。もしくは、忘れてはならないということか。
    疑う、ということをその仕事についてから強いられてきた。相手の隠していることを見抜く。自殺か他殺か見抜く。事件関係者を心の底から信じてはならない。そうしないと、裏切られた時のダメージが深くなってしまうから――
    かつて尊敬していた父とは全く正反対のポリシーが、いつの間にか心の中に刷り込まれていた。

    『相手を信じる。何があっても。判決が下るまで、相手を信じぬく』

    差し出されたハンカチを仕舞い、カズオミは立ち上がった。傘はもう開くことは無い。そしてそこで何故こんな場所にいるのかを思い出す。散歩の途中だったのだ。雲行きが怪しくなってきたので傘を持参し、ここらまで来た所で急激に降り出した。それは風も伴う激しいもので、このまま進んでは傘が御猪口になってしまうと判断し、しばらくの間傘を差したまま立ち尽くす羽目になったのだ。
    雨は上がり、空気はカラリとはしていないものの、先ほどの湿り気は引いている。自宅であるアパルトマンがある街目指して、カズオミはゆっくりと歩き出した。

    それから三百メートルほど歩いたところで、後ろで何か鈍い音がし、振り向けば先ほどのドレディアが転んでいたのは、また別の話である。
    その縁でそのまま『彼女』を手持ちポケモンの一匹にすることになるとは―― 今の彼が予想することはなかった。

    ――――――――――――――――――――
    『クロダ カズオミ』

    誕生日:不明
    身長:179センチ
    体重:70キロ
    在住:不明
    主な使用ポケモン:ドレディア
    性格:しんちょう
    特記事項:『マスター』と呼ばれていることが多い。本名を出すのは多分これが初。個人情報が不明な欄が多い。

    カフェ 『diamante』の マスター。 いまは ユエに ゆずり かいがいに いる。
    もと けいぶで ある じけんで ユエと しりあう。
    ちちおやは べんごし だが 12さいの ときに しぼう している。
    ユエの がくせい じだいの ほごしゃ ポジション だった。

    ストイックな ふんいきと ときおり みせる やさしさに ほれる じょせいが おおい。
    いまだに みこん だが べつに そのけが あるわけでは ない。

    ―――――――――――――――
    リメイクその4。数少ない男性キャラ、マスター。
    双子の存在を知っている人はどのくらいいるのかしら……。


      [No.2646] 【涙の歴史】祝ポケダン新作【語ってみた。】 投稿者:NOAH   《URL》   投稿日:2012/09/24(Mon) 15:57:10     121clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    ポケダン新作おめでとうー!!

    これだけのために頑張って3DS買うよ!!


    *青の救助隊*
    逃避行イベントとエンディングに全俺が泣いた。
    何ということだろう。ただでさえ涙もろいのに…!!

    実はゲームで泣いたのは救助隊が初めて。
    その姿を妹2人に見られて驚かされました。
    「「姉ちゃんがついにゲームで泣いた……!!」」
    と、見事にはもってました。

    *空の探検隊*
    青の救助隊以上に泣いたゲーム。涙腺大崩壊しました。
    最後、ジュプトルがヨノワール共々未来世界に行ってしまったところと
    主人公が消えてしまったシーン。
    それから親方さまと未来編のエピソードは何度見ても激泣きです。
    もはや最終兵器と同等の価値でした。

    今回も涙腺大崩壊させてくれ。


    青の救助隊

    1回目
    チコリータ(♀):リサ ミズゴロウ(♂):ラグ
    チームLaugh(ラフと読みます。意味は笑い)

    2回目
    キモリ(♂):ジェイド ヒトカゲ(♂) :ルビー
    チームジュエル

    3回目
    ピカチュウ(♀):ユズ アチャモ(♀):カーマ
    チームColor


    リサとラグのコンビは結構スイスイ行けました。
    氷雪の霊峰に少し苦戦しましたが……。
    ジェイドとルビーのダンジョンも、同様に楽しく
    プレイできましたが、ユズとカーマのコンビは
    マグマの地底で大苦戦しました。

    電撃も炎も効かない中で、復活の種無しで
    グラードンに挑んでぼろ負けばっかり
    ひどいときはモンハウで地震使われて一撃……
    何度涙を飲んだことか……。


    *空の探検隊*
    1回目
    ロコン(♀) :ショコラ コリンク(♂):ライム
    チームキャンディ

    2回目
    ナエトル(♀):ナオ ワニノコ(♂):ショウ
    チームストロング


    未来組
    ジュプトル→キーラ
    ヨノワール→ヨミ
    セレビィ→モモカ

    ジュプ主♀に超嵌りました。
    だって主人公ちゃん可愛いんだもん!!
    ロコンが使えると知ったときは舞い上がりました。
    一回目も二回目も、おっとりしてそうなポケモンで
    パートナーは逆に元気そうな子になるようなセレクト。

    一回目のラストエピソードの闇の火口は
    ちょう大苦戦でした……。全然辿り着けなかった……。
    二回目は一回目の二匹が弱点になるように、と選びました

    ナオとショウの名前とチーム名は、とある芸人さんから頂きました(笑)
    ただ、そのチーム名の通りに強くなってくれたので嬉しかったです。
    ……ナオちゃんのモデル、女じゃなくて男ですが。

    他の方のエピソードも聞かせて下さい(^_^)

    【よければ皆さんも語って下さい!】


      [No.2645] 愛を込めて花束を 投稿者:NOAH   《URL》   投稿日:2012/09/24(Mon) 14:55:13     104clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:日本語タグ


    シオンタウン郊外に、自転車を漕いでどこかに向う1人の女性
    その自転車の籠にはカラカラがちょこんと居座り、その手には、赤と紫の花束

    女性は白衣を来て、荷台に鞄を括り付けている。
    栗色の髪をうまく纏めて、白い薔薇の嘴ピンで、前髪を止めていた。


    「久しぶりね。こっちに来たの。」

    「カラ……?」

    「だって、私が医大卒業してからはずっとアサギにいたじゃない。」


    女性の言葉に答えるように、籠に居座るカラカラのオスは、前を向いて、小さく鳴いた。
    だいぶボロボロの自転車ではあるが、女性は白衣を靡かせて、ひたすら、どこかに向かっていた


    「さあ、そろそろあの花畑よ。フジさんが先に着いてるはずだから
    失礼のないようにしなさいね?オーカー。」

    「カラ!」

    「よし、いい子!さあ、飛ばすわよ!!」






    僕のお母さんは、ちょっと前に天国へ行ってしまった。
    そのときに、偶然出会ったのが、人間のクルミさんだ。
    クルミさんは、寂しくないように、ずっと僕の側に居てくれた
    そして、そのまま僕のトレーナーになってくれた。

    そのときのクルミさんは、お医者さんになる勉強をしていたため
    クルミさんに着いてきたというチャコールさんに、色々教えてもらった。
    チャコールさんは、とっても強くてカッコいいマニューラの女の人で
    僕の憧れであり、目標としている人だ。

    もしお母さんがまだ生きてたら、チャコールさんみたいに
    戦い方を教えてくれたのかな……。


    「着いたわよ、オーカー……降りれる?」


    お花屋さんで買ってきた、ちょっと高い花束を
    いったんクルミさんに預けて、自転車の籠から飛び降りた。


    「……こんなに逞しくなったの、チャコールのお陰かしら。」


    花束をまた預かると、クルミさんは荷台の荷物を取ってから
    たくさんのお花に囲まれた、丘の上の大きな木へと向かった。
    その木の下に、僕のお母さんのお墓があるんだ。


    「フジさん。」
    「おお、クルミさん。お久しぶりです。」
    「お久しぶりです。腰の具合はどうですか?」
    「ええ、なんとか。しかし、最近のお医者さんはすごいですな!」
    「医学は常に、進歩していますから……それじゃあ、始めましょうか。」


    フジさんと言う人間のお爺さんとクルミさんは
    お母さんのお墓を綺麗にし始めた。

    僕も手伝えることをして、5分くらいで終わった。
    それから花束をお母さんのお墓に置いて
    蝋燭と御線香を立てて手を合わせた。


    「オーカー。私達は向うに行ってるから
    お母さんとたくさん話しておいで。」

    「カラ……?」
    (いいの……?)

    「ほら……行きましょう。」


    クルミさんとフジさんは、丘の下の花畑に行ってしまった。
    それをじっと見送ったあと、僕はお母さんのお墓に向き合った。


    「……お母さん。僕ね、前より強くなったんだよ。」

    「まだまだ未熟者だってチャコールさんは言うけど
    それでも、色んなポケモンと戦ってきたんだ。」

    「お母さん、この花、好きだったから持ってきたんだ
    花の名前は知らないけど、とてもいい匂いがするって言ってたもんね
    これね、赤い方がグラシデアで、紫の方が胡蝶蘭って言うんだ。」

    「お母さん……僕、ずっとずっと、お母さんのこと、忘れないから。」



    ありがとう、愛しているよ、お母さん。


    *あとがき*
    Superflyさんの愛を込めて花束を聞いたときから
    この曲はずっと、ガラガラとカラカラの二匹に会うなぁと思ってました

    カラカラがガラガラに花束を送ると言うイメージが
    焼き付いて離れませんでした。

    感想、お待ちしています。


    【描いてもいいのよ】
    【感想求む】


      [No.2644] お疲れさまでした 投稿者:小樽ミオ   投稿日:2012/09/23(Sun) 18:17:57     130clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    昨晩はみなさまお疲れさまでしたm(_ _)m
    チャットログ抜粋が見事にぴじょんぴょんで落ちているというw ……ハッ、これはもしや新手のステマでは!(違


      [No.2643] あるカフェの片隅で 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/09/23(Sun) 14:34:36     103clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ゼクロム。レシラム。キュレム。ついでにイーブイ。
    前者はトレーナーが死ぬまでに会いたいポケモンとして、アンケートで毎回上位にランクインする。
    後者は『もふりたいポケモン』として、どの世代にも人気である。中には宗教的な意味合いでの信者もいる。
    ちなみに、バトルで使えるかどうかというのは、また別の話らしい。

    このカフェでは、彼らはそういうポジションを貰っていない。
    商品の名前として、訪れる客をもてなすためだけに存在している。

    ――――――――――――――――
    キュレムはお冷を指す。運ぶことはできるが、自分はあまり好きではない。何故なら、自分はマグマラシというポケモンで、なおかつ炎タイプだからだ。
    天気は晴れ。風はやや強め。空を見上げれば誰の手持ちなのか、それとも野生なのか。モンメンが一列に並んでふわふわ漂っていた。下を歩く人間がくしゃみをする。中にはハンカチで目元を拭っている奴もいる。
    ……花粉症は辛い。
    春の次は秋に来る花粉。春は杉がその代表だが、秋はブタクサなどが挙げられる。だが草ポケモンが散らす胞子や綿もそれに入るらしい。特に車が多いライモンシティ、ヒウンシティは花粉症患者が多く、病院を訪れる患者が後を絶たないという。
    元々、花粉だけではアレルギー反応は起きない。そこに排気ガスが加わり、花粉症を引き起こす。一度天然の杉が沢山生えている林に行った花粉症患者は、友人に連れられて嫌々車から降りたところ、全くくしゃみも涙も出ずに驚いた、という話を聞いたことがある。
    さて、自分は未だに縁が無いが、花粉症にかかるのは人間だけではない。ポケモンだって、花粉症にかかることがある。
    ふわあ、と欠伸をしてマグマラシは店内に戻った。ライモンシティはギアステーション前にある、個人経営のカフェ『GEK1994』。このマグマラシの仕事は、主人であるユエに頼まれて看板になること。
    いわゆる『看板息子』である。
    子供連れはあまり来ないが、例えばOLなどがこちらを見つければ、後はこっちの物。見つけた!というような反応で一気に駆け寄り、相手の顔を見上げる。ここですぐさま足に擦り寄ってはいけない。相手の反応を見て、笑顔を見せれば最初に二本足で立つ。そこで頭を撫でてくれれば、後は足に擦り寄る。
    何事も出しゃばらないことが肝心なのだ。それに、中にはポケモンが苦手な人間もいる。まあそういう人間は目が合った瞬間に分かるが。
    こちらにあまり良い印象を抱かない相手は、目が合った瞬間の表情で判断できるのだ。
    そんなわけで、今日もマグマラシはカフェにお客を呼び込むのに一役買っている。


    それは、一日中降り続いた雨が、残暑をすっかり吹き飛ばしてくれた、ある日のこと。午後になってから一人の女性が風のように現れた。
    雑誌のモデルにいそうな、背の高い女性だった。年齢は二十代というところ。マグマラシから見れば、シルエットだけで判断すればユエの方がボディラインは良いと言える。ちなみにこれは♂ポケモンとしての価値観も微妙に入っている。
    ツンとすまし顔だが、ここに入るのが楽しみで仕方なかった、というのが雰囲気で分かる。どんなにごまかしても、分かる人には分かるんだろう。現にマスターであるユエは心からの笑顔で『いらっしゃいませ』と言った。ちなみに彼女は表情を作るのが上手だ。ただぎこちなさは、無い。
    メニューを開いた後、お客はモンスターボールからエンペルトを出した。毛並みがいい。頭にあるのは王者の風格を放つ金色の角。王冠に見えるのは気のせいではないだろう。
    睫が長いことから、♀だと思われる。
    ソファ席に座って、少し退屈そうに店内を見渡していた。

    「よう」

    自分の数倍上にある顔を見ながら話すのは、すごく疲れる。特にオレは普通体勢が四つん這いだから、仁王立ちに鳴れていない。進化すればこの悩みも解消されると思うけど、主人はバトルをあまりさせてくれない(というか機会が無い)からレベルアップすることもない。
    エンペルトがソファから降りた。主人である女性は何も言ってこない。

    「何用かしら」
    「お前は注文しないのか?」
    「お小遣いもらってないのよ」
    「んなもん、オレだって貰ってねえよ」

    お小遣いを貰うポケモンなんて聞いたことがない。俺が食べる物は、ここのアルバイトや店員に休憩時間にもらう賄い食の残りだ。
    はっきり言って食べ飽きてるけど、ユエは期間限定商品はなかなか食べさせてくれない。
    理由は『贅沢』だかららしい。

    「ゼクロム飲むか?」
    「ゼクロム?ポケモン飲むの?」
    「違う。ここではブレンドコーヒーのことを言うんだ。ちなみにミルクコーヒーはレシラムゼクロム、な」

    一先ずキュレムが運ばれてきた。喉が渇いていたのだろう。すぐに飲み干して――その表情が『!?』に変わるのをオレは見逃さなかった。
    ガラスコップの底に印刷された文字。
    『ひゅららら』

    「……どういうことなの」
    「いや、こういうデザインだから」

    付き合いたて、熱々カップルで来るのはお勧めしない。以前オレは、これを見てしまって水を噴出した男が彼女に振られたシーンをその場で目撃したことがある。
    熱しやすく、冷めやすい。この場合はキュレムがそれを冷やしてくれたということだろう。いささか冷やしすぎな気もしたが。
    ユエはその時は無表情でマスターとしての対応をしていたが、その日店を閉めた後、耐え切れなくなってカウンターをバンバンと叩いていた。『くそwww腹筋崩壊しかけたww』『リア充ざまあww』と言っていたことは、従業員には内緒だ。

    「名前長くない?」
    「オレも最初はそう思ったんだけど、ユエがどうしてもって言うから」
    「変な人ね」

    ゼクロムが運ばれてきた。カップにはこのカフェのマークがプリントされている。『1994』を真ん中に、トライアングル式に『GEK』の文字が並んでいる。色は緑かチョコレート色。この時は緑色だった。
    一口啜って、ほう……とため息をつく。
    そんな主人を羨ましそうに見つめるエンペルトに、オレは持ちかける。

    「お前も飲むか?」
    「だからお金持ってないのよ」
    「奢る」
    「……」

    考え込むエンペルト。ゼクロムを飲みたいという気持ちと、プライドが天秤にかけられている。一分、二分、三分経過した。カップ麺が作れる時間だ。もっとも、自分は一分立たずに開けてそのまま食べる派だが――
    話が逸れた。約五分経ったところで(生麺タイプが作れる時間だ)、エンペルトが目を開けた。

    「飲む」

    カウンター裏へ行って、コーヒー豆をブレンドする。キリマンジャロにモカ、ブルーマウンテン。うちのゼクロムはザラザラしてなくて少し甘みが強い。モカを多く使っているからだ。
    流石に企業秘密ということでそこは見せない。
    主人がいつもしているやり方で入れる。そこで忘れてはいけないのは、必ず手袋とマスクとゴーグルをすること。ユエはしていないけど、オレはしないといけない。毛が入ったら大変だ。
    せっかくなのでとっておきのカップに注ぐ。黒い陶器。取っ手が独特の形をしている。底の文字を見て、思わず笑う。
    小物に隠されたネタを、ゼクロムと一緒に堪能してもらおうか。

    「できたぞ」

    お盆に乗せたカップを見て、エンペルトは目を丸くした。実はこれ、ゼクロムをモチーフにしたカップ。レシラムもあるけど、そちらは主にミルクを使ったドリンクに使うことが多い。
    ジグザグの取っ手。ただし持ちやすいようにきちんと改良してある。

    「何これ」
    「ゼクロムカップ。レシラムカップもあるぞ。ちなみにお冷を入れるのはキュレムタンブラー」
    「すごいアイデア心ね」
    「アイツに直接言ってやってくれ。このカフェのメインはゼクロムとその小物なんだ」

    ふと店内を見渡せば、そこかしこにポケモンをモチーフにしたグッズがある。
    たとえばタンブラーを乗せているコースターはディアルガの胸部をデフォルメした物だし、カウンター隅の籠に置いてあるキャンディーは、色合いがクリムガンとアーケオスの二色だ。

    「美味しい……」
    「火傷には気をつけろよ」
    「分かってるわよ……  ?」

    カップの底が見えるまで飲んだところで、何かが薄っすら書いてあるのに気付く。もしやタンブラーと同じネタかと思い、一度口を離して深呼吸する。
    そして一気に飲み干し、底を見る。

    『ばりばりだー』と書かれていた。

    「……ナイス」

    「このカフェ、元々はユエのじゃなかったんだ。『diamate』って名前で、主人はそこで働いてた。看板娘みたいな感じで。お客の出入りはあんまりよくなかったけど、当時のマスターが元・警部だったことで部下がよく休憩しに来てて、それで成り立ってた。
    だけど三年位前に、そこのマスターがユエに店を預けるって言い出した。理由は分からないけど、とにかく店を受け渡した後フラリと何処かへ行っちまった。その後の消息は未だ掴めてない」
    「何故かしら」
    「ユエは多分知ってる。だからユエはマスターが戻って来る時まで、ここを守ろうと努力してるんだ。最初はなかなか大変だったけど、今ではリピーターも増えた。特に女子高生が多くてさ。あの年代のクチコミ効果は馬鹿に出来ないぜ」

    最初、二人だったのが次の日には三人か四人に増えている。ついでに『課題セット』(そのまんま。課題をして良い代わりに特定の飲み物と軽食を付けたセット)を学生限定で始めたところ、女子高生の使用率が三倍になった。
    若いがそこまで騒がしいタイプではないユエを慕い、大人しいタイプも集まってくる。中には相談事をしてくる人もいる。そんな彼女らの話を、ユエはゼクロムを淹れながら聞く。その間、従業員達は忙しくなる。
    ユエが話を聞くことに集中しているからだ。
    こんなのアリか、と思う人もいるかもしれないが、未だに苦情が来たことは一度もない。

    「皆、ユエに話を聞いてもらいたいんだ」
    「……」
    「話を聞いてもらうだけで大分スッキリした顔で帰っていくからな」

    女と男の違い。それを知ることが、付き合いを円滑に進める第一歩だという。
    女はただ話を聞いてもらいたい生き物。男は何か意見を言いたがる生き物。
    女が相談事、と言って話し始めた時は、男は黙って相槌を打っていればいい。そして、『どう思う?』と聞かれたら決して自分の意見を言ってはいけない。『君が正しいと思うよ』『大変だったね』と言わなくてはならない。
    たとえどんなにその女に非があったとしても――というかそんな女とは別れた方が身のためだが――相手を否定してはいけない。


    少し店を周りに任せ、一日一本のお楽しみに火を付ける。いつから吸い出したのかは分からないが、健康の害にならない程度に楽しむようにしている。
    左手で持ち、煙を吐き出す。先から白い線が揺らいで空に上がっていく。
    今のところ、順調に来ている。マスターが戻って来るのが何時になるかは分からないが、それでも何かあったら連絡をくれるはずだ。
    そう信じたい。

    「……」

    流石にもう、半袖で外に出れる季節ではなくなってきたなと、ユエは二の腕を押えて思った。


    ―――――――――――――――――
    『ミナゴシ ユエ』

    誕生日:9月16日 乙女座
    身長:165センチ
    体重:64キロ
    在住:イッシュ地方 ライモンシティ
    主な使用ポケモン:バクフーン
    性格:ずぶとい
    特記事項:体重が重いのは胸のため。子供が大の苦手。高校時代に剣道部を全国優勝に導いた経験あり。

    じつは このはなしでは なまえは まだ でていなかった。
    あとに なって やっと なまえが あかされた。
    べんきょうは あまり できないが ざつがくは たくさん しっている。
    とくぎは コーヒーを いれることと りょうり。

    ひょうじょうが よく かおに でるため つきあいやすい。
    タバコを すうという せっていは さいきんに なって つくられた もの。

    ――――――――――――――
    リメイクその3。面倒なのでユエも登場させた。


      [No.2642] 議事録およびチャットログ抜粋 投稿者:No.017   投稿日:2012/09/23(Sun) 09:44:32     117clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    ■■概要

    ・新管理人は立候補無し、No.017が続投
    ・システムの保守メンテに586さん
    ・システムは掲示板でいいとの意見が大半
    ・イベント係は勝手にやっていいよ。継続的に募集中


    ■掲示板新機能や時期について
    ・事務連絡、批評依頼、小説話題、企画告知はポケスト板に統合の方向
    ・掲示板は今のものをベースに新システムを構想
    ・開発は586さん
    ・仮公開は10月半ば
    ・投稿キー機能
    ・タグが付けられる機能
    ・ツイート機能
    ・スパム対策はもうちょい緩く
    ・スパム削除人は数名任命の方向?


    ■イベント関係
    ・コンテスト関係は未確定。やりたい方は相談で
    ・チャットでラジオとかやっていいのよ?
    ・批評会とかどうよ
    ・新アンソロなるか? 民俗系ポケモン小説アンソロ「鳥居の向こう(仮)」




    【チャットログ抜粋】
    ・かなり割愛しています
    ・順番を入れ替えたりしている所があります


    19:56:54 No.017 まあ 掲示板にはあんなこと書いていますが 別に閉鎖するわけじゃないのと 過去繰り返し行われてきた事なので あんまり重く考えないでね
    19:58:36 No.017 ただ 管理人やりたいという人が万が一いたら その選別は結構厳しくなるとは思いますが
    19:59:40 No.017 企画人No.017さんはサイト運営やイベント運営にだらしないですが厳しいです(矛盾
    20:00:52 No.017 私続投でもチャット会係さんがいるだけで違うかもね
    20:01:11 神風紀成 やりたい人は勝手にやってたけど(私とか)ここまで集まるなんてなかったもんなあ
    20:01:27 門森 輝 こんなに集まったのはオタコンの結果発表以来かな

    20:02:00 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?no=2638&reno= ..... de=msgview こちらはチェックされましたか
    20:03:02 No.017 さて これを読んだ上で みなさんの意見をお聞かせ願いたい
    20:03:22 No.017 まず お伺いします マサポケを運営する事に興味のある方は
    20:04:05 No.017 まーいきなりだし いなくて当たり前だと思ってるケド
    20:07:01 No.017 とりあえず ここで名乗りがなければ 新管理人の可能性はこの時点で消えますね。

    20:04:57 No.017 逆にチャット会の開催やコンテスト運営のみならやりたいという方は?
    20:06:14 586 システムの裏側的な部分、スパムの削除やログのバックアップならやらせてほしい>運営系
    20:06:59 586 自分で掲示板持ってた(過去形)のでその辺りはよく分かってる
    20:07:15 No.017 おお>586さん
    20:07:24 No.017 そういうのはぜひお願いしたい

    20:08:12 586 こういうところの負担を軽減して、他の方が創作/企画に集中できるようにしたい(言ってもそれほど負担でもないかも、とも思いつつ
    20:08:40 こま スパム回避の対策とバックアップの自動化すれば負荷軽減も可能ですね
    20:09:17 586 今のスクリプトも非常によくできてるので、後はそれをすり抜ける細かいごみを取り除く作業と言うべきでしょうか>こまさん
    20:09:43 No.017 今の掲示板は優秀なんですが スパムの規制が厳しすぎる所為で ときどき通常投稿がハネられる
    20:09:50 こま ちなみに自分のサイトのアドレスはスパム判定だったw
    20:10:08 586 あるあ……あるある(>スパム判定
    20:10:44 きとかげ fc2のホームページはスパム扱いですねw
    20:10:44 No.017 ツイート機能が欲しいですね
    20:11:01 砂糖水 fc2のサイトがはねられるのもその影響なんですね… >スパム判定
    20:11:13 小樽ミオ 今の規制を緩くする代わりに投稿時キーを必須にする、みたいなのは可能なんでしょうか
    20:11:19 No.017 なのでゴーヤロックさんにお願いできるなら新掲示板の開発をお願いしたいのです
    20:11:45 586 今のをベースに、デバッグと機能追加を行う方向で
    20:12:01 こま 0から作るのはさすがに大変ですからね…
    20:12:02 きとかげ それは欲しい! >投稿時キー必須  入れ忘れて修正できない、って不便ですもの
    20:12:21 No.017 そうですね イメージとしてはそんな感じ ログは持ち越せれば理想だけど それは最悪無くてもいい
    20:12:32 586 投稿キー必須はかなり良さげ!(´ω`)
    20:13:18 akuro キー必須は欲しいです ←前科あり
    20:13:39 イケズキ 投稿し始めはとくにやっちまいがち……
    20:13:46 砂糖水 キーの入力忘れはたしかに痛い
    20:14:14 こま 掲示板のログは置換等使えば別の形式の掲示板への移行も可能かと
    20:16:24 586 ログ周りは多分置換すれば大丈夫

    20:15:45 No.017 ただ そのなんですか これは大変申し訳ないんだけど やはり本棚は用意してあげられなさそうです
    20:16:08 砂糖水 なんというか、掲示板方式は維持していただけると嬉しいですね。私、掲示板方式のところから入ったので慣れてるし
    20:16:23 砂糖水 本棚はあってもなくても
    20:16:23 イケズキ 同じく>砂糖水さん
    20:16:40 No.017 いや がんばれば出来るんですが ポケノベさんが隣にいる中で同じものを導入して ユーザー取りあっても仕方ないと思う
    20:17:10 砂糖水 ピクシブとかあるし、本棚はなあ…
    20:17:17 No.017 なので 自分の小説をストックしておきたい 並べておきたいという方はポケノベさんにマルチしてください
    20:17:18 神風紀成 私は掲示板が好きですよ
    20:18:00 砂糖水 というか今の方式の掲示板じゃないと慣れなすぎて…未だにここに居座ってる主な理由がそれ
    20:18:10 No.017 ちなみにポケノベさんはマルチ歓迎です(わたぬけさん確認済) 私も投稿してます!
    20:19:25 フミん リアルタイムにお話を載せられるのは本当にありがたいです
    20:19:45 きとかげ 掲示板のお気楽な感じが好き。登録しなくていいし。
    20:19:36 No.017 あと 洗濯日和みたいなものは掲示板形式だから生まれたものだと思ってるので そこは独自色を出したほうがいいんじゃないかと思ってます
    20:20:32 イケズキ 間違いない>洗濯日和  あぁいうのがあるのがマサポケの面白みに感じる
    20:21:08 No.017 なので なんというか あくまでちょっと見せにきたよーって感じで持ち込むような感覚でやろうと思ってる
    20:21:32 No.017 まとめ登録は他のサイト(ポケノベさんやピクシブ)にお任せしようかと
    20:22:15 586 マサポケはあのゆるさを活かすべき
    20:24:06 砂糖水 このゆるくてかつお気軽なのが素敵

    20:18:44 こま スパム削除人は複数人いた方がいいですねー 明らかなスパムを削除するだけの簡単なお仕事です
    20:19:06 No.017 そうですね それに関しては 複数人にパス教えておけばいいと思う
    20:19:22 きとかげ パスうって削除するぐらいなら私でも出来ましょう。

    20:20:49 小樽ミオ ああ、確かにそうですね。本棚はこちらに昔あったタイプも登録手続きが必要でした
    20:21:38 砂糖水 登録手続きがネックなんですよね…本棚は
    20:21:59 No.017 今はかなり簡単になってます ポケノベさんのやつは相当簡単ですよ
    20:22:43 No.017 まあ ストーリーズはじめた頃からそうなんですけどね…(まとめ登録は他のサイト(ポケノベさんやピクシブ)にお任せ
    20:23:03 No.017 ただ まとめて見せられない という点には個人的に負い目がありましてね

    20:23:59 No.017 今考えているのは、ポケストをさらに緩くして
    20:24:57 No.017 ポケモン小説全般 オフ会募集、お題募集、同人誌宣伝、批評依頼 ポケモン小説に関する話題を全部そこでやる というような形式を考えています
    20:25:41 No.017 ポケモン小説を持ち寄って雑談するカフェみたいな場所にしたい
    20:25:50 砂糖水 今もちょっと自由になってますよね。自由になってるというか自由に使ってるというか
    20:25:59 No.017 まあ 管理人がね(
    20:26:12 586 システム的・事務的な部分(スパム削除等)だけ、今のよろず板に残す感じかな?
    20:26:14 きとかげ 図書館併設カフェ―
    20:26:20 フミん あの掲示板は、初めて文章を書く人には良い環境ではないでしょうか。
    20:26:23 砂糖水 カフェはいいですねー
    20:26:24 No.017 まあ そこをちゃんと明文化して 場合によっては少し名称変更を という感じでしょうか
    20:26:47 No.017 事務もまとめていいなと思ってる
    20:27:00 586 事務連絡もまとめる方向か
    20:27:16 No.017 うんだって よろず板見るのぶっちゃけめんどうだった(
    20:26:23 akuro 検索でカテゴリ別に見られるようにしたら……ゴニョゴニョ
    20:27:52 久方 今の形式で全部まとめるとちょっとごちゃっとしすぎるような気がしないこともないですが
    20:28:10 久方 今のペースなら大丈夫ですが、記事が増えると目当てのが探しづらくなりそうだなと
    20:28:39 No.017 じゃあ それは増えてきたら考えませんか  私は分けたら面倒だったので(
    20:29:01 No.017 今以上に増えるとは正直あまり思えないです
    20:28:55 akuro そこでカテゴリですよ

    20:29:25 No.017 カテゴリ機能まで入れられるかなー 現場のゴーヤロックさーん?
    20:29:38 586 タイトルに【企画】とかを自動で付与する機能くらいならいけるかも
    20:29:47 砂糖水 現場のゴーヤロックさんwwww
    20:29:50 586 ドロップダウンリストから選ぶ形にすれば
    20:29:51 SB もともとワード検索機能が入っている以上、特定のキーワードを本文中に入れるようにすればよいのではないでしょうか?
    20:29:51 No.017 ああ、それもいいですね
    20:29:57 神風紀成 『はい、こちらゴーヤロックです』
    20:30:08 586 ※代理応答
    20:30:31 586 個人的には板は一本にして、タイトルで見分けられる程度で十分かと
    20:30:48 きとかげ 今の【かいてもいいのよ】タグみたいに、【オフ会募集】入れるとか?
    20:31:21 No.017 そうですね タグ選択できて ある程度状況に合わせてこちらで減らしたり増やせたりするといいですね
    20:31:36 小樽ミオ 【作品】/【企画】/【募集】 みたいな感じですかね >自動付与
    20:31:58 586 で、システム的に「企画」「募集」「批評依頼」「議論」みたいにいくつかの中から選べるようにするとか(言うまでもなくデフォルトは選択無し
    20:31:58 きとかげ そういうシンプルなの好き >ミオくんのタグ
    20:32:34 No.017 イメージとしてはそんな感じ 作品投稿は特につけず、  【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】とかあるといいなぁ
    20:32:40 586 そうそう、ちょうど小樽さんのような感じ。多分そのレベルが今のゆるさに一番合致していると思う。
    20:32:48 フミん こんばんはです。タグ分けは賛成です。
    20:34:04 586 今の、本文に付けるタグはタグでそのまま残しておいて、「その投稿がどういう趣旨で行われたか」に焦点を絞るとよさげ
    20:34:57 586 ○○してもいいのよ系は本文に自分で一筆入れる形式の方がごちゃつかなくていいと思う
    20:36:06 No.017 むしろさ 選択した時に本文の最後に入るようにできないかなタグ
    20:36:13 小樽ミオ 二文字くらいで抑えられると一目で分かりやすいかなぁとは思うんです >自動付与
    20:36:35 No.017 というのも タグとして 置いてあったほうが ああ、これやっていいんだ というのが伝わると思うの
    20:37:46 586 多分、機能的な実装は容易>タグ系
    20:38:19 586 これは試作品を作りながら試行錯誤して、徐々に変えていく形にした方がいいな
    20:38:21 No.017 じゃあタイトル付与は各々にまかせて 本文末尾に入ってくる形式でいってみません?
    20:38:59 きとかげ まだ件の掲示板もできてませんし、試運転がないことにはやはり、どうにも。
    20:39:29 586 その場合なら、タイトルと違ってある程度の長さを許容できるので、選択形式よりもテキストボックスにして自分で5つくらいまで埋める形式にした方がいいな
    20:39:39 No.017 とりあえず どこかのタイミングで掲示板を出して貰いますか
    20:40:11 No.017 ちなみにどれくらいで出来そうです?
    20:41:17 586 やってみないことには分からんがある程度期限を切るべきなので、個人的な希望は10月中頃>掲示板のプロトタイプ
    20:41:30 こま 追加する機能はログデータの後ろに持ってきた方がカスタマイズしやすそうですね、要素が増減してズレると修正に手間ですし
    20:41:41 586 無論そのつもりです(´・ω・`)>こまさん
    20:41:57 小樽ミオ 新旧ログ統合時に支障が出るわけですね
    20:42:05 586 今までのは「タグのついてない」掲示板データとして流用できるようにする(というかその方が作る方も楽
    20:42:09 No.017 了解。結構早く出来るんですね
    20:42:37 586 途中でデザインとか認識合ってるか確認取ると思うのでそこはよろしく(´ω`)
    20:43:21 No.017 それはもちろん。スカイプとかでそうだんしませう
    20:43:56 586 了解(´ω`) その方向で
    20:44:13 No.017 ヤッター チャット会開いた甲斐があったー

    20:44:44 きとかげ じゃあ、議題にあったコンテスト担当、トラブル処理、感想普及委員等、イベント係 とかはどうします、か?
    20:45:00 No.017 コンテストとかチャット会とかイベント担当やりたい方、いらっしゃる?
    20:45:21 586 個人的にはむしろこちらに皆さん活躍してもらいたい>コンテストとか〜
    20:45:23 小樽ミオ 個人的にはまたコンテストが開かれたら嬉しいなと思ってます
    20:45:39 586 箱ができても活用されないのでは無用の長物なので
    20:45:47 フミん 掲示板にも書きましたが、文章のコンテストは是非参加したいですね。
    20:45:48 No.017 まあ これはすぐでなくていいのだけど

    20:46:10 No.017 ちなみに 投票システムはいいのがあるので 教えますよ
    20:46:38 小樽ミオ チャット会とかイベントを通して、「このコミュ盛り上がってるなー、楽しそう!」ってなれば最高ですね
    20:46:44 No.017 ポケスコと同じ質を目指すなら大変だと思います>コンテスト
    20:47:18 No.017 ただやる気があるなら指南はしますぜ
    20:48:40 No.017 コンテスト専属でもいいし チャット会専属でもいい
    20:48:47 小樽ミオ えーっと、コンテストが再開されたとしても、それは「マサポケで開かれてるコンテスト」にはしない、と言う方向で
    20:49:07 No.017 まあ実際オタコンがそうでしたね
    20:49:35 No.017 ただその宣伝に新掲示板はおおいに活用して貰いたいなと
    (※個人開催かマサポケ開催かはご相談を)

    20:50:09 No.017 あと こういうイベントやりたいという提案は大いにありですなたとえば批評会的な
    20:50:43 No.017 以前ポケノベさんのメンツの一部がスカイプで批評会をやっていて混ぜて貰ったんですが この人達おもしろいことしてるなーと
    20:51:53 No.017 その週に読む 作者が決まってて その会は○○さんの小説についてひたすら語るんですよ
    20:52:16 No.017 なかなか厳しい意見もでたりして こえーwwww とw
    20:52:57 No.017 だからなんというかこう フリーダムに活動して欲しいな
    20:53:33 No.017 あとラジオなんかもやっていいんですよ
    20:53:45 No.017 ポケノベのめめさんがときどきやってますが
    20:54:14 No.017 ラジオを流して 同時にチャットでみんなで入っておしゃべりするんです
    20:55:10 No.017 なので新掲示板で ラジオやりますと告知してやっていただいていいんですよ

    21:04:32 No.017 まあ ただその私 今までの作品をまとめて見せる場って必要だとは思ってるので ぜひみなさんにはポケノベさんにも進出して欲しいです!

    21:08:05 No.017 で イベント担当やりたい方いないの? チャット奉行とかw
    21:08:21 きとら コンテスト以外ならやりたい
    21:08:54 No.017 コンテスト以外でもいいのよ やりたい事でいいのよ
    21:09:19 No.017 というか勝手に立候補して勝手にやってくれていいのです 前から言ってるけど
    21:09:29 小樽ミオ コンテスト、応募作品をhtmlに起こすくらいならお手伝いできます(*'v'*)
    21:09:45 きとら じゃあ勝手にやってもいいっすね理解した
    21:10:07 No.017 なんか自発的に勝手にやれる雰囲気の掲示板にしたいというのもカフェ化の狙いですね


    【運営面のお話はここまで、以下新アンソロを唐突に思いつきネタ出し】


    21:32:06 No.017 ミロカロス食ってしねなくなる女の話書きたい 人魚の肉的な
    21:32:18 きとら そこはシャワーズじゃないのかと思った
    21:33:52 No.017 シャワーズが自身の身体の一部を飲ませて操るという設定なら考えた事があります
    21:32:29 こま ジュゴン…
    21:32:52 きとら ポケモンなしのトレーナーとトレーナーの話かきたいがこれが一番難しい
    21:33:13 586 バイオ6のトレーラーを見てて、部分的にポケモンに変異するウイルスとか良さそうだと思いました!(さわやか三組
    21:36:29 フミん 目を離した隙に話が発展してるだと
    21:36:38 No.017 ポケモンに内側から乗っ取られる話は半人で書きました
    21:36:52 No.017 まあ未遂ですけど
    21:36:59 小樽ミオ え、ごはさんは何か限りなくブラックに近いホワイティなものをお考えで?? >ウイルス
    21:37:03 きとら 山の神様に怒られてポケモンにされる話を かきたいです
    21:37:26 No.017 イイネ!>山の神様に怒られて
    21:38:01 きとら その山の神様が怒る理由も石を持ち出した(石にはその土地の神様がついてる)からっていうので予想の通りダイゴさんですけど
    21:37:29 586 自分が考えてたのは腕が変異してストライクの鎌になるだの、下半身が変異してベトベトンになるだの、肩が変異してディグダが出てくるだのとかそんなんしかない……
    21:37:46 586 ポケモンになる話なら書きましたよ!
    21:37:50 小樽ミオ 肩からディグダがすごく怖いです(がくがく
    21:37:51 No.017 ポケモン民俗学系アンソロというのを唐突に思いついた
    21:38:01 小樽ミオ イイネ!! >017さん

    21:38:59 門森 輝 メタモンの繁殖方法は他の生物をメタモンに変える事だ的な話は読んだ事が
    21:39:03 ラクダ 尻からキリンリキの尻尾が生えて……
    21:39:20 小樽ミオ 頭からクチートのアゴが……
    21:40:06 586 掌に一つ目が現れてアンノーンに
    21:41:14 きとかげ 下半身ベトベトンでキリンリキの尻尾とクチートの顎が生えてて目にアンノーン……
    21:41:31 フミん 最早エイリアン
    21:41:32 小樽ミオ 中国の聖獣みたいですww
    21:41:59 586 誰か抒情的な話を書いてください、うちはもうバイオハザードのジュアヴォしか思いつかなくなってしまった(
    21:42:01 穂風奏 すごいキメラが出来上がってるw
    21:42:10 きとかげ 「ちょっとGウイルスをこじらせちゃって……」
    21:42:14 ラクダ ポケモン界の成獣かw

    22:00:36 No.017 ああ、あとマサポケで今度は100Pくらいの薄い感じでセレクション出したいなぁとか
    22:00:58 No.017 で 砂漠の精霊突っこみたい
    22:01:09 No.017 あ、むしろ民俗学系アンソロにして それで特別収録でもいいな
    22:01:28 リング 民族学系なら私も書きたい これでも捏造伝説は結構作中に出てる
    22:03:16 No.017 民俗学系集めて審査して出すか ただしどんなに早くてもベストが売り切れてからな!
    22:04:04 No.017 そしたら再録だけど砂漠の精霊入れるんだ私の創作に尤も影響を与えた作品だから
    22:05:07 No.017 民俗学系はマサポケの十八番だしな
    22:07:58 No.017 ホウエン昔語が一応それに当てはまると思ってる あと海岸線
    22:08:37 No.017 アンソロ名は何がいいだろう
    22:09:06 小樽ミオ 鎮守の杜、鳩の社
    22:10:38 No.017 鎮守の杜 か 悪くない
    22:11:02 No.017 鳥居の向こう とかどうだろう  野の火のサブタイだけど(
    22:11:46 イサリ 鳥居の向こう、いいですね
    22:12:21 小樽ミオ ステキ! 鳥居は世界の境目ですから。 >鳥居の向こう
    22:12:24 巳佑 雰囲気出ていてどれもいいですね(ドキドキ) > 小樽さん NO.017さん
    22:13:05 久方 鳥居をくぐった向こう側の世界を描くと
    22:13:28 586 |ω`)<鳥居の向こうには底知れぬ闇が……
    22:14:20 No.017 鳥居の向こう 好評ですな
    22:16:48 No.017 ちょっと 落ち着いたら検討させてくれ>鳥居の向こう
    22:25:46 No.017 ・新アンソロなるか? 民族系ポケモン小説アンソロ「鳥居の向こう(仮)」

    22:36:42 No.017 よし じゃあ アンソロに載せる小説の選考方法を考えよう(早いよ
    22:37:58 586 例によってコンテスト形式にすればいいじゃない
    22:39:12 No.017 コンテスト形式にするか 選考委員会を組織して その中で決めたいな
    22:40:21 No.017 しかしそうなると選考委員をだれにするかw
    22:45:46 No.017 まあ 一番やりやすいのは 俺が印刷費全額出す 選考委員は私が任命する なんだがな(
    22:49:25 きとかげ では、コンテスト形式ではなく選考委員形式にするのです?
    22:49:48 No.017 どうしようかね 選考委員形式にすれば 楽と言えば楽だよね
    22:56:58 No.017 選考委員ぱっと思いつくのは 私(←)、586さん、ケンタさん、久方さん あたりどうでしょう こう実績的に?   ああ、あるいはとりあえずポケスコの審査員全員にお願いしてきた分だけ参考にするとか
    22:57:47 No.017 あとクーウィさんもたくさん書いてるな批評は
    22:59:34 No.017 私、586さん、ケンタさんの三人でもいいかもわからん 直接会えるので
    23:00:02 No.017 物理的に会えるを考えるとリングさんも浮上するか
    23:00:17 No.017 ミオ君とかもそうだね
    23:00:32 小樽ミオ 物理的なら私も近いですねー
    23:00:34 No.017 あえて物理的に会える組で組むのもいいかもしれないね
    23:01:34 586 その方がやりやすいっちゃやりやすい>物理的に〜
    23:01:48 No.017 それおもしろいな リアル選考会
    23:03:15 巳佑 とりあえずカントーです。
    23:03:18 イサリ うーん、でもマサポケの本なら選考基準はオンラインで見てみたい
    23:03:20 No.017 私 東京です!!! って割り込むなら今がチャンスだぞ!!!!(まて
    23:03:26 はる○ ジョウトからカントーに出て来ました。
    23:04:38 No.017 でもオンラインのほうがイベント性はあるよね
    23:04:41 No.017 わかった
    23:05:08 No.017 とりあえずオンライン投票は採用しよう  それをもとに選考自体は東京でオフで行う
    23:05:12 No.017 これでどうだ
    23:05:41 No.017 たぶん上位三つくらいは通るが 残りはバランスで落ちたり受かったり みたいな
    23:06:01 小樽ミオ イサリさんの仰るように、オフで選考するにしてもどんなやりとりがあったかは抜粋なりなんなりでウェブに上げないとですね
    23:06:22 No.017 それは録音するか 議事録をあげよう
    23:06:32 No.017 中継できたらすごく楽しいのだけどね
    23:06:43 こま ビデオ会議的な感じですか
    23:06:45 リング ニコ生ですか
    23:06:46 きとかげ ネトラジで……的な?
    23:06:54 巳佑 確かに、面白そうですね! 生放送★
    23:07:05 レイニー ゆーすととか?
    23:07:30 小樽ミオ それの問題は 生放送ができるような環境で会議ができるのかどうか 有線/無線LANなど環境が整えられるかどうか ですね
    23:07:32 No.017 中継いいな やってみたい
    23:08:01 No.017 いやあ もしかしたらだがアテがあるんだわ…

    23:17:05 No.017 アンソロ選考方法はとりあえずコンテスト形式でオンライン投票を行います
    23:17:54 No.017 で、順位を元に東京で集められる審査員が同じ部屋で顔をつきあわせて議論、もし可能なら中継
    23:18:38 No.017 おそらく上位3位くらいはすぐに通過しますが 後は議論次第と予想されます
    23:19:03 No.017 ページ数は質次第ですかね

    23:19:19 はる○ ところで気になってるのですが、民俗系か否かの基準ってどこに置くのでしょう。
    23:19:35 こま それっぽいか、それっぽくないか、みたいな?
    23:19:56 No.017 それ難しいんですよね 参考サイトとか事例をいくつかあげて審査員各々判断して貰えばいいんじゃないでしょうか
    23:20:01 照風めめ まず民俗系ってなに?
    23:20:03 門森 輝 投票者と審査員の主観ですかね?
    23:20:33 リング なんていうんだろうな。その土地の文化に触れるというかそういうのが民俗学の醍醐味って感じがする
    23:20:48 No.017 個人的には 豊縁昔語とかナナシマ数え歌みたいのがそれにあたります あと雪の降る夜とか
    23:22:07 No.017 あとキャモメが五羽飛んだ とか 海岸線もギリはいると思う 野の火もたぶん入る
    23:23:12 No.017 あと九十九草子も入るかな 公開してないけど
    23:21:19 きとかげ まず載せたいのが砂漠の精霊だから、それ基準に考えたら()
    23:21:48 小樽ミオ 風習とか そのくらい身近なレベルでもいいと思います >民俗学
    23:22:08 はる○ 何か統一する基準的な物が無いと投票も難しいかなあ、と思うので、参考になるものは欲しいなと思います。
    23:22:19 照風めめ わかるようなわからんような
    23:23:07 ラクダ 人によって線引き違うしなあ……
    23:22:53 リング 例えば、文化、お祭り、文化財などがあったとしてそれが今どんな風に行われているのか? どういう由来があったのか? そういうのが民俗学だと私は思う
    23:23:48 照風めめ なるほど!
    23:23:18 きとかげ ポケモンばりに曖昧 >基準
    23:23:35 小樽ミオ さっき誰かが仰った「主観」ってのが非常に納得が行く
    23:24:52 照風めめ 作品名より定義の方が聞いててわかりやすい
    23:25:18 照風めめ 作品名だけだと雰囲気でしかわからないから説明されるときは具体的な説明のほうがありがたかったかな
    23:25:24 No.017 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%91%E4%BF%97%E5%AD%A6
    23:25:37 リング 例えば、オルドラン城では毎年ポケモンバトルが行われますが、アレは波導使い使いアーロンの活躍を称えての事ですし、そこについて掘り下げていけば立派な民俗学じゃないかな
    23:26:18 小樽ミオ 「神としてまつられるポケモン」とか、ミオ図書館の神話あたりも立派な民俗学のイメージ
    23:26:27 クーウィ その路線で言えばオクレ青年もだなぁ
    23:26:31 イケズキ あのルカリオの話をそういう見方したことはなかったなぁ  民俗学面白い
    23:26:38 No.017 伝説や昔話が絡んでくるとかなりそれっぽくなりますね
    23:26:49 照風めめ ようやくわかってきた
    23:27:02 ラクダ 民間伝承かあ。なるほど
    23:27:15 はる○ そうですね…作品を例に出すだけだと「それで、これのどの辺が民俗学なの?」という疑問は解決しませんし。
    23:27:32 照風めめ ちょっと抽象的になるんだよねその説明は
    23:27:46 照風めめ 説明は、というか説明というより例だわな
    23:27:46 はる○ 最初にググってWikipedia読んでみましたが、私の貧弱な理解力では何言ってるのか分からず…。
    23:27:49 フミん 人とポケモンが結婚云々は使いやすそう
    23:28:09 照風めめ ウィキは学問的なアプローチからの紹介だから、求めてるのとはまた違うしね
    23:28:11 イサリ その土地の風土・伝統とポケモンの関わりとか
    23:28:11 No.017 定義の説明と 作品例両方必要でしょうなぁ
    23:28:33 照風めめ 今は民俗学を小説的視点からのアプローチをした際にどうなるかという観点が知りたかったからウィキは的外れになる
    23:30:27 こま 劇場版だと ルギア セレビィ ラティアス マナフィ ルカリオ 美和セウス レシラム・ゼクロム あたり?言い伝えがある、民族がいる、書物や遺跡がある
    23:31:16 小樽ミオ あーでもでも、あんまりガチガチに「民俗学アンソロ」って押し出しすぎない方がいいかもですよ!
    23:31:27 はる○ 基本的には「ガチ民俗学」じゃなくて「民俗風味」ぐらいで良いんですかね…書ける人はガチで書くのでしょうが…。 正直敷居が高いイメージorz
    23:31:44 きとかげ あんまり民俗学を考えると、そもそも最初に載せたいと言い出した精霊が落ちる気が(
    23:31:46 巳佑 入門編みたいな感じにですかね
    23:32:19 No.017 あるいは民族まで 範囲を広げるかだね
    23:32:19 ラクダ 専門にしてる方ならともかく、あまりなじみのない方には難問化も…>民俗学
    23:32:36 No.017 民俗民俗言ってるけどあくまで雰囲気だから 民俗「風味」でいいのよ
    23:33:09 No.017 あと砂漠の精霊は 伝説というか伝承絡んでるので範疇に入ると思ってる
    23:34:08 イサリ 民俗学だと思って作者がエントリーした作品は民俗でいいじゃん 、と極論言うと思います。
    23:34:29 No.017 うん最終的にはそれw>作者がそう思った
    23:34:43 クーウィ イサリさんに一票(
    23:47:57 はる○ 民俗系=伝説とか祭りとか民間信仰とか歴史とか題材にしたなんかそれっぽいアレ系 / 民族系の基準=基準はあるさ…作者《俺達》の心の中にな…!



    23:36:33 はる○ つまりこう、ポケモン世界の奥に歴史や文化の匂いを感じるような…
    23:36:46 No.017 神社とか 伝説とか伝承絡めておくとそれっぽくなってくよ!
    23:37:36 こま ポケモンだけで祭りとかやってたら、有りだ!
    23:38:08 akuro ……ポケダンはどうなのでしょう?
    23:38:10 リング なんか、ポケモン世界を観光している気分に慣れたら良いかな
    23:38:44 No.017 ポケダンは厳しそうだが それで納得させるのが作者の腕ですよね
    23:38:50 クーウィ なんか、由緒が近代じゃない限り伝承系は民俗的でごり押せるイメージ( ある程度までは
    23:38:59 リング ポケダンだったら私の場合はホウオウ感謝祭とか、雨呼び祭りなんかを書いたなぁ
    23:39:55 クーウィ 運命の塔とか使うと一気に楽になりそう 後、石船の遺跡とか……>ポケダン
    23:39:56 リング あとは手繋ぎ祭りもか
    23:40:38 リング 私は冒険小説は必ず観光要素を入れたいと思っていたし、こういう企画なら楽しめそうだ
    23:39:45 ラクダ 湖の水神(ギャラドス)に生贄として差し出される花嫁、っていうのははいるだろうか
    23:41:01 No.017 生贄ギャラドス いいじゃないか
    23:40:57 こま インドゾウを神と崇める謎の宗教集団
    23:44:55 レイニー ブーピッグはけがれたポケモンとされているので食べない……とか?
    23:47:12 風間深織 タテタロス……?
    23:47:28 イケズキ 強すぎる……! >タテタロス
    23:47:34 クーウィ マサポケ執筆陣が恐怖におののく>健太ロス
    23:52:49 No.017 人の世に歴史あり、ポケモンに伝承あり、ポケモン世界の深層に迫るちょっと不思議なポケモンストーリーズ

    23:54:14 No.017 個人的に既存作応募可でもいいなぁとか
    23:55:12 砂糖水 ほほう… >既存作可
    23:55:16 はる○ 普通にしてると目立たなさそうなのが目立って来そうで面白そうですね。<既存作応募可
    23:55:42 No.017 テーマ設定した途端に光るのはありそうだ
    23:56:13 No.017 既存と新作で1個ずつ応募可能とか




    00:05:43 No.017 ポケモンとやって孕んだ系は 何か欲しいよね
    00:08:56 小樽ミオ そこでミオの神話(むかしは ひとも ポケモンも おなじだった)ですよ! >人間がポケモンの一種
    00:15:02 No.017 あとキュウコン・ジュペッタは相変わらず人気そうだ
    00:15:25 小樽ミオ 現実に稲荷信仰がある分狐キャラは強い印象
    00:15:28 砂糖水 アブソルとか…はもう出尽くしたか…
    00:15:58 No.017 あえて まめだぬきで挑む人はいないのか
    00:16:11 No.017 マッスグマは狢って印象 でも狢も化けるからね
    00:16:31 スズメ シンボラーさん・・・
    00:16:43 No.017 シンボラーもええのう
    00:16:50 小樽ミオ キサラヅシティの狸ばやし >まめだぬき
    00:17:07 クーウィ シンボラーさんは公式設定がズル過ぎるで
    00:17:28 No.017 あとビーダルをたぬきに喩えるのもありかも あの顔に化かされるの
    00:17:35 ラクダ 三種の神器にかけて、ドーミラー(鏡)、エルレイド(刀)、……勾玉はなんだろう(
    00:17:43 クーウィ キュウコンは自分で歴史語れるから汚い
    00:17:53 小樽ミオ ヒスイ絡みですかねー
    00:18:04 クーウィ 勾玉はムシャーナで(
    00:18:07 レイニー あの顔のでかい置物がパッと浮かんだ >ビーダル
    00:18:08 スズメ アンノーン?
    00:18:16 No.017 勾玉が浮き出るヤミラミどうでしょう
    00:18:28 小樽ミオ アンノーンと伝承は確かに不可分なイメージですね
    00:19:57 スズメ フリージオとかも伝承とか出てきそうなのです。
    00:21:28 No.017 あとネイティ・ネイティオ系も使ってくる人がいそうだ
    00:21:44 レイニー ヤジロンも何かありそう
    00:21:53 No.017 あと すっげー古い壁画になぜかポリゴンが描かれてて エーってなるとかどうよ
    00:22:12 こま なにそのオーパーツw<壁画にポリゴン
    00:22:19 No.017 未来と交信したんだよきっと
    00:22:27 クーウィ それはポケダンで行けそうな路線>ポリゴン壁画
    00:22:32 レイニー Zだとさらにエーッ度が増す >ポリゴン
    00:25:50 イサリ 人類は繁栄と滅亡を延々繰り返しているという火の鳥的電波を受信しました >ポリゴン
    00:27:05 こま ポリゴン:私が作られたのはこれで3度目だ
    00:27:24 No.017 いいなそれw>三度目

    00:55:53 リング 農具供養のお寺では、かつて水車(ウォッシュ)、唐箕(スピン)、行灯(ヒート)、千歯扱き(カット)フォルムがあったそうな……フロスト? 知らん

    00:57:39 巳佑 灯夢「夏休みの自由研究、この祭のことでいいんやない?  治斗「え」

    00:59:07 No.017 ああ、夏休みの自由研究に絡めるのは燃える!!
    01:00:39 はる○ 夏休みの自由研究…なるほど、昆虫採集のつもりでポケモン集めてたら一匹不思議なポケモンを見つける、とかですね(違う)。
    01:01:19 巳佑 宿題もできて、文化も知れて、地元民とも触れ合えて、また一つ大人になったのです(  > 治斗

    01:22:18 リング ソーナンスを祭る忍耐をつかさどる神社の我慢大会とか、どこかにありそう
    01:25:41 リング 英知湖の周りでは受験勉強の子供のためにユクシー印のお守りとメロンパン入れが……
    01:26:52 クーウィ メロンパン止めたげて(苦笑) 糖分大事だけども
    01:27:33 リング ミルクジャムやホイコーローをお供えすると喜びます
    01:28:37 巳佑 自分は文合せの知恵比べの話を思い出してましたー。 自分は一問も解けなかったような( > ユクシー
    01:29:18 リング 事業を成功させたい時は立志湖、使えないなと思ったらシンジ湖に……

    00:23:11 きとかげ あえて誰も書かないうなポケモンで挑むという手も
    00:23:31 クーウィ 忘れられた選手権
    00:23:36 風間深織 ハリーセンとか?
    00:23:42 小樽ミオ サニーゴとか?
    00:23:47 巳佑 マッギョとか?
    00:23:56 砂糖水 ハリーセンなついwww
    00:23:59 クーウィ みんないるのがマサポケ(
    00:24:00 レイニー ネオラントとか?
    00:24:00 ラクダ オクタンとか?
    00:24:01 きとかげ マッギョは公式がプッシュしてるので却下(
    00:24:01 巳佑 フィオネとか(
    00:24:09 はる○ ベロリンガ?
    00:24:14 あつあつおでん ハンテール
    00:24:15 No.017 神隠しにあって 昔いなくなった相棒に出会い 異空間から脱出
    00:24:21 イケズキ 水が多いのはなぜ(
    00:24:22 小樽ミオ 突然のオドシシ
    00:24:31 ラクダ マグマッグも聞いたことないな
    00:24:33 きとかげ オドシシはあの角でいけそうw
    00:24:42 あつあつおでん ミノマダム
    00:24:58 イケズキ ネンドールで一つ書いてみたいな
    00:25:00 砂糖水 マルノーム
    00:25:07 巳佑 オドシシ「幻を見せるのは狐だけじゃねぇぜ」
    00:25:19 小樽ミオ オドシシさんはアニメでも幻術使ってましたしね!
    00:25:27 レイニー ヨルノズクとか
    00:25:40 レイニー キリンリキとか
    00:25:50 こま オタチ… オオタチではなくオタチ・・・
    00:25:50 クーウィ シビシラス
    00:26:01 門森 輝 トドグラー
    00:26:02 小樽ミオ ヨルノズクの長老の冒険譚に耳を傾ける森のポケモンたち……
    00:26:15 スズメ オニゴーリ?
    00:26:31 ラクダ ナットレイ?
    00:26:56 あつあつおでん カモネギ
    00:26:35 きとかげ ユキメノコさんに比べると() >オニゴーリ
    00:28:44 きとかげ ユキワラシとユキメノコはよくあるのに、オニゴーリ全然見ない気が。
    00:29:24 レイニー オニゴーリには昔は体があって……という電波を受信
    00:29:53 No.017 なんかオニゴーリって個人的になまはげっぽいポジション
    00:30:15 No.017 あんな暑い地方になぜかいるし 来訪神なんじゃないかな
    00:30:15 巳佑 わりぃこはいねぇがー
    00:31:08 No.017 深夜にチャットしてる 悪い子にはナマハゲ(ロトムかポリゴンZあたり)がくるんだよおお
    00:32:39 No.017 あと地縛霊的な感じで縛られてるポケモンがずっと主人を待ってるっていうのはありがちだけど書いてみたいですね 実は駆け落ちした花魁と男の伝説が残ってるけど相手がポケモンでした的な あるいは前世がポケモンでもいい
    00:35:22 No.017 でも実はそのポケモンベトベトンでした 子孫はベトミである(いいえ
    00:35:40 クーウィ なんて残酷な現実……!
    00:35:42 はる○ 来世では一緒になろうとか言っといて覚えてないみたいなの良いですね。とり殺されてほしいですね。
    00:36:12 こま 人間として普通に暮らしてたけど、ある時、自身がポケモンであることを知らされる、みたいなー
    00:37:45 No.017 ビーダルバカにした女子高生が ビーダルの逆襲に遭い化かされる話とか イケメンに豪邸に案内されるんだけど 目覚めると川の真ん中にあるビーダルの巣なんだよ
    00:39:10 きとかげ 目覚めるとビーダルの愛の巣に空目(
    00:40:44 No.017 あと オオスバメの羽で作った弓矢を使って 弓の大会に出るはずだった若者が事故死して、数百年後に主人公がそれで大会に出る話とか
    00:42:10 巳佑 子供に言い聞かせる為に創り上げた物語によって、 その場所に生まれ、囚われているポケモンとか
    00:43:11 No.017 ムチュールって座敷童っぽいよね
    00:43:25 きとかげ ユキワラシも忘れないでください >座敷わらし
    00:43:34 巳佑 個人的にはクルマユの方が(
    00:43:55 No.017 しかし一番座敷にいそうなのはムチュール
    00:44:02 砂糖水 じゃあネタもらってもいいですか? >ラクダさん
    00:44:23 巳佑 チューされると幸福がくるよ! 的な感じですか?
    00:44:31 No.017 イイネ
    00:44:49 巳佑 でもチューのしずぎで やがてオトナを覚えて ルージュラになっちゃって その家が没落するとか
    00:45:54 久方 かわらずのいしもそなえよう
    00:46:27 No.017 きっと 先祖に言われてたけれどサボったんだよ
    00:46:44 砂糖水 とりあえずポケモン何にしようかなー♪
    00:47:57 リング 私はもうランドロスの構想があったりする

    00:48:00 No.017 きんのたま 埋蔵金伝説
    00:48:07 No.017 ごめん なんでもない
    00:48:11 巳佑 おじさんの(
    00:48:18 ラクダ 埋蔵金のたま伝説ww
    00:48:26 あつあつおでん しょうねんの
    00:48:48 巳佑 なんたって おじさん の 伝説 だから ね !
    00:48:54 門森 輝 側には男性の遺骨が
    00:49:07 風間深織 黄金伝説だわ……
    00:49:38 リング なんてったって、神様のきんのたまだからね
    00:50:13 レイニー こうですか わかりません><
    00:50:21 No.017 あれだろ 神社にそそりたつ大樹 その両脇に埋まった大きなきんのたま
    00:52:19 No.017 その神社ではフンドシに2つきんのたまをぶら下げて 石段を駆け下りる儀式が
    00:52:30 No.017 集団で
    00:52:31 レイニー wwwwwwwwwwww
    00:52:38 リング なにそれこわい
    00:52:44 風間深織 こわい
    00:52:48 巳佑 わっしょい! わっしょい!
    00:52:52 久方 なにこのくうかんこわい
    00:53:04 クーウィ ゴールテープを両脇で支えるカイリキー  ……うん、止めよう(汗
    00:53:11 風間深織 久方さん、このチャットこわいよぉ
    00:53:12 あつあつおでん なんだ、ただのへんたいか
    00:53:12 砂糖水 こわい…ひわい…
    00:53:15 レイニー 女人禁制ですね わかります
    00:53:19 きとかげ 幸男みたいなもんか
    00:53:22 こま ひわい・・・ひわい・・・
    00:53:55 はる○ だんじり祭りみたいな…。
    00:54:43 No.017 ツッキー「やりません。絶対にやりません」  オリベ「研究の為だ。やれ」
    00:54:59 巳佑 こうして犠牲に(
    01:01:33 レイニー ????「ワタクシ だけが きんのたまを 自由に できれば いいのです!」
    01:01:42 久方 wwwwwwwww
    01:01:45 砂糖水 レイニーさんwwwwww
    01:01:50 ラクダ おじさん!おじさん!!www
    01:01:50 きとかげ wwwwwwww
    01:01:52 巳佑 ちょ(笑)
    01:02:01 No.017 ????→レイニー
    01:02:10 巳佑 (笑)
    01:02:13 ラクダ レイニーさんだったかwwww
    01:02:17 レイニー ちょwwwwwwwww
    01:02:18 風間深織 えっ   えっ
    01:02:40 No.017 だって四文字だし
    01:02:47 久方 (結論)レイニーさんは神
    01:03:18 ラクダ これからはきんの神様とお呼びします
    01:03:33 砂糖水 きんの神様www
    01:03:42 巳佑 \レイニーさん!/\金の神様!/\レイニーさん!/
    01:03:45 きとかげ きんの神様w
    01:04:05 砂糖水 マサポケなは神様がいらっしゃったのですね
    01:04:15 砂糖水 マサポケには
    01:04:25 風間深織 レイニーさん伝説
    01:04:36 レイニー マサポケには神が多すぎる
    01:05:01 No.017 マサポケ影の支配者がポケスコベストを読んで 「最後のに全部もってかれたwwww」って言ってたからレイニーさんは神
    01:05:21 No.017 レイニー黄金伝説
    01:05:26 きとかげ ww
    01:05:26 はる○ レイニーさん伝説 きんのたまの軌跡
    01:07:01 レイニー 私が神です(やめなよ
    01:07:28 巳佑 やめなくていいよ(  > レイニーさん
    01:07:33 No.017 キャーレイニー様−!
    01:07:40 風間深織 キャー
    01:07:41 きとかげ ⌒◎(賽銭
    01:07:50 ラクダ きんの神様ーー! キャー!
    01:08:02 巳佑 きんの神様ー! きんの神様ー!
    01:08:03 No.017 ⌒◎ チャリーン
    01:08:04 レイニー 賽銭は きんのたまですね わかります
    01:08:20 久方 ⌒○
    01:08:22 きとかげ なに……! ⌒○(きんのたま
    01:08:28 巳佑 一回のお賽銭が5000円(笑)
    01:08:42 砂糖水 レイニーさんェ…
    01:08:53 No.017 ここが種のない男にご利益のある きんたま神の社か…
    01:09:05 風間深織 ど……どうしようきんのたまショップに売ってないよぉ(オロオロ
    01:09:07 リング つ 黒い鉄球 ===●
    01:09:21 ラクダ なにかちがうwwww
    01:09:27 イサリ UGM!! UGM!!
    01:09:34 レイニー やめなよ >リングさん
    01:09:36 max 鬼は外
    01:09:51 巳佑 福は内
    01:10:01 風間深織 お賽銭の代わりに豆入れとく
    01:10:08 きとかげ お賽銭一万円……!
    01:10:20 ラクダ じゃあ私ビー玉で……
    01:10:37 レイニー うおー! 賽銭箱に鳩が、鳩がー!!
    01:10:50 No.017 ぴじょんぴょん!
    01:10:53 巳佑 なにがあったんですか(笑)
    01:11:20 砂糖水 賽銭箱に鳩w
    01:11:20 風間深織 あっあっ鳩がいっぱいΣ
    01:11:35 レイニー 賽銭箱に豆入れられたため、ぴじょんぴょん襲来
    01:12:17 風間深織 【速報】神社の主がぴじょんぴょんになりました
    01:13:03 レイニー 【速報】きんたま神の社、ぴじょんぴょんにより制圧
    01:13:24 No.017 ぴじょんぴょん!(嘴にきんのたまを掲げながら
    01:13:38 クーウィ また一つ、勢力がぴじょんぴょんに(ry


      [No.2641] とくぼうが…… 投稿者:閲覧C   投稿日:2012/09/23(Sun) 02:17:02     163clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    やぁ、久しぶりだね。
    覚えてる? 僕のこと。
    ……なに? 覚えてないの? 
    あ、そう……。う、うぅむ……。
    昔一緒によく遊んだんだけどな……本当に覚えてない?
    …………。
    ま、まぁいいや、また、会いに来るよ。
    それまでに何とか思い出してくれたらいいなーとか……い、いや、なんでもないよ!
    じゃ、じゃあね……。


    こんにちは。
    また会ったね。
    今度は覚えててくれた? 
    ……ん? 何も覚えてないの? 三日前にも来た、僕だよ、僕。
    え? 何のことだかさっぱりわからない?
    うーん……もしかしてキミ、僕のことからかってる?
    そんなつもりはない、知らないものは知らないって?
    ……ごめん、人違いだったかもしれない。
    間違えて話しかけちゃってごめんなさい!
    そ、そうだ……。
    き、キミによく似た人にあったら、こう伝えておいてほしいんだけど……。
    僕が会いたがってた、って伝えておいてほしいんだ……頼まれてくれるかな……?
    うん、ありがとう。じゃあ、よろしくね。


    あ、やっと見つけた。
    もう、探したんだよ〜?
    昨日はキミにそっくりな人にあってさー。
    ん? なんだって? 僕たちは初対面だって……?
    あ、あれ? また人違い……?
    こ、この辺はキミの種族が多いのかな……。
    い、いや、なんでもないよ。
    あ、そ、そうだ。キミに似てる誰かに会わなかったかい?
    ……会ってない? そう、うーん……。
    あ、なんでもないよ、勝手にしゃべっててごめんなさい。
    で、では、僕はこれで……。


    『ふーむ……このポケモンはとくこうが高いのか……よし、じゃあ、守りを固めよう!』
              
                     『今だ……ドわすれ!』



    ね、ねぇ、あのさ……僕とキミ、って……前に会ったこと、あるかなぁ……?
    あ、やっぱりない……?
    うーん……最近似たひとによく出会うなぁ……。



                  ”とくぼうが ぐーんと あがった!”



    ――――――――――――――――――――――
    深夜なテンションで3、40分ほどで速攻で作らせていただきました。
    誰が誰に話しかけているのかはご自分の好きな子を当てはめていただけるとよいかと思います。
    『』で囲まれたところは話しかけられている子のトレーナーさんです。
    話しかけている子は……野生の子でしょうか、それとも、別のトレーナーの子でしょうか。
    はたまた、ポケモンではないのかもしれませんね。
    ドわすれを使うと何を忘れるのでしょうか。
    もしかしたら、そんな大事なことも忘れてしまうかもしれませんね。

    [何をしてもいいですよ]


      [No.2640] ファントムガール 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/09/22(Sat) 21:59:28     131clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    ふと、何かを思い出した時は必ずそれに関する何かが近付いて来ているのだという。
    まだ幼さを残した顔と、他人に接する口調が脳裏に蘇る。
    彼女は―― まだレディではなく、ガールだった。


    ――――――――――――――――――――
    魂。正確には霊魂。辞書で引けば『肉体とは別に精神的実体として存在すると考えられているもの』とある。その存在は宗教的価値観からも違っており、古代ギリシャ、キリスト教、果ては日本の仏道に至るまで様々な見解が成されている。
    そのどれに当てはまるのかは分からないが、自分の知る限り、魂とは生きとし生ける者全てが持つ命の源である。何故なら、肉体が死んでも魂はそのままさ迷っていることがあるからだ。
    本体が成仏しなければ、その人間は輪廻転生のルートに乗ったことにはならない。――と、この仕事に就く時に言われた。

    『後乗せサクサクのような気がするのは気のせいだろうか……』

    睡眠不足と疲労で、死神である自分が死者になりそうな上司の顔を思い浮かべ、モルテはため息をついた。
    黄昏が終わった時間。生きる者は皆家の中に入り、愛する者達と共に過ごす。外は灯りで照らされているものの、光の届かない場所には異形の物が住まう。それらは時に、無垢な彼らに襲い掛かり、恐怖と混乱に陥れる。
    彼らは、その異形の物を悪霊と呼んだ。そして、モルテも彼らから見ればその一つに過ぎない。
    だが少しだけ違うこと。それは、彼が俗世間で言う所の『死神』であることだった。簡単に説明すると、モルテはサラリーマンでいう『営業部』所属で、その上司はオフィスで書類に追われている……そんな感じだ。
    ただし仕事内容はそこらのサラリーマンよりずっと厳しい。身の危険に晒されることもあるため、どちらかといえばヤの付く自由業に近いかもしれない。
    例えば――

    『グルルルルル……』
    『まずいな。死んでから相当時間が経っている。自分が何であったかすら分からない状態だ』

    薄暗い路地。時折ホームレスが新聞紙を敷いて眠っている。そこでモルテは一つの悪霊と遭遇していた。元々は魂だったのが、ある出来事により自分が何故死んだのか分からず、そのままこの世界をさ迷い、ついには悪霊と化してしまった。
    一番ありがちなパターンだが、一番危険なパターンでもある。

    『落ち着け。お前はここにいてはならない。私が連れて行ってやるから、送りの泉に……』
    『ダマレ、ダマレ!オレハコンナトコロデクタバルニンゲンジャナイ……』

    最後の方は獣のような唸り声に掻き消され、意味が分からなかった。どうやら何か恨みを持って死んだらしい。しかしそんな人間がこんな所でさ迷っているものおかしな話だが。
    いつもなら説得して同意の上で連れて行く所だが、この状態になるまで放っておかれてはまともな会話はまず不可能だ。
    すまない、と心の中で詫びて持っていた鎌を振り上げる。

    『ギャアアアアッ!』

    シュウウ……と音を立てて禍々しいオーラが消える。白に変わった魂をそっと小瓶の中に仕舞い込む。これで一先ずは安心だ。緊張感が少し解けて、フッと肩の力が抜ける。

    『……』

    この仕事を始めてから、どれくらいの月日が経ったのだろう。もう数え切れないくらいの時間が流れ、数え切れないくらいの魂を送ってきた。何匹ものポケモンと知り合い、何匹ものポケモンを看取ってきた。
    いつもそうだ。自分は死ぬことができない。相手が先に死んでいく――

    (疲れた……)

    路地の壁に背を預ける。一つの大きな目が、空を映す。星は見えない。
    ふと気配を感じて路地の出口を見れば、不思議な光景が映った。
    まず最初に目に映ったのは五匹のカゲボウズ。それぞれ違った表情をしているが、楽しそうだ。ケタケタと笑いながら誰かの後を付いて行く。
    続いて現れたのはムウマ。友達なのか、ジュペッタと楽しそうにおしゃべりをしている。一方のジュペッタも幸せそうな顔をしていた。
    その後にも数え切れないくらいのゴーストポケモンがぞろぞろと列を成していく。まるでパレードのようだ。

    『これは……』

    体に力が戻る。鎌を握り締めて体を起こす。胸が高鳴る。指先に血が巡り出す。
    その行列は住宅街や店が立ち並ぶ大通りには行かずに、ただひたすら広場の方へと進んでいく。昼間はベンチに腰掛けて談笑するカップルや夫婦で穏やかな雰囲気が保たれているが、今は夜。灯りに囲まれた丸い円状の広場は、どことなく不気味な印象を与えてくる。
    一緒にいるゴーストポケモンに邪魔されて、一番前の人物が見えない。ただ、柔らかい風に乗ってほんのり甘い香りが漂ってくることに気付いた。
    不意に、彼らが止まった。ぶつかりそうになって慌ててこちらも立ち止まる。
    何十もの目がこちらを見ていた。一瞬怯んだが、敵意を持っている様子はない。風に押し出され、一つの人影が前に出た。
    目を疑う。

    「……何の用?」

    セミロングの髪が夜風に揺れる。香りはあそこから漂っているらしい。少し物鬱げな表情は、とても少女と呼ばれる歳の子供とは思えない。とある花魁を思い出す。二百年近く前の話だが、ジョウト地方で知り合った花街一番の花魁。その美しさだけでなく、全身から漂う色香は多くの男性を魅了し、骨抜きにした。
    そして彼女は『視える者』であった。だから知り合うことができた。
    美しい着物と簪に身を包み、夜でもそこだけ光があるように見えた。モルテも、魅入られた一匹であった。

    『獣に見初められたのは初めてだよ』

    気だるそうに足を伸ばして煙管を吹かす姿は、情事の後を思わせた。当時から死神として仕事をしていたモルテは、時折仕事の合間に彼女に会いに行くようになった。お金の代わりに、自分の仕事の話を持って。
    その彼女も、とある男に付き纏われて精神を病み、最期は自ら命を絶った。
    ――あの時のことを、今でも忘れない。忘れるはずがない。
    彼女の魂を回収したのは、自分なのだから。
    手首を切って変わり果てた姿になった肉体の側に浮いていた、ちっぽけな魂。男の存在に震えながらも、まだ美しさは保っていた。
    自分が行くと、運命を分かっているかのように擦り寄ってきた。そのまま汚される前に回収し、転生させた。
    まさか……。
    少しの期待と、幾許かの不安が入り混じった声で、その名を呼ぶ。

    『コウ……?』
    「?」

    首を傾げて、そのまま立ち止まっている。秋の風が、一人と一匹の間を吹きぬけていく。口を開いたのは、彼女の側にいたカゲボウズだった。

    『おいカオリ、キャンディーくれ』
    「ほら」

    空気を読むどころか、読もうとも思わない相手にモルテは少しカチンと来た。だが彼女は別に気にしていないらしい。その振る舞いに、自分がその瞳に映されていないことを痛感する。
    何故こんなにも気になるのか。彼女に雰囲気が似ているから?それもあるけど、もっと別の明確な理由がある気がする。
    数個のキャンディーを口の中に押し込んだところで、再びその瞳が自分を映す。

    「見えてるんだろ」
    『ああ……』
    「驚かないんだね。まあ当たり前っちゃあそうだけど」

    ゴーストタイプがゴーストポケモンにビビるとか興ざめだよね、と独り言のように呟く。月明かりに照らされて、白い肌が輝いていた。まるで蛍石のようで思わず見とれる。
    コウではなかった。だがその名前の中に、しっかりとその文字は刻まれている。

    『カオリ』
    「そうだよ。私はカオリ。香るに織物の織で、カオリ」


    カオリも『視える者』だという。ただし少し違うのは、視えるだけでなく、その視える相手に懐かれるということだった。ボールには入れないし、ましてゲットするつもりもない。だが彼らは自ら彼女の後に付いて行く。月明かりに照らされた彼らの影は、奇妙な形をしていた。実体があるのは一つだけ。だがその影にくっついて、何か別の物達の影が揺らいでいる。
    よほど月明かりや街灯がきつくないと気付かないが、人間よりもそういうことに敏感なポケモン―― 特に獣系のポケモンにはよく吠えられるという。
    直感的に怯えているのだろう。そう。自分を見てはぐれ魂が喚くように。

    「中には襲ってくる奴もいるけど、そういうのは皆彼らが何とかしてくれるんだ」

    彼らにとってはよほど居心地のいい場所らしく、しきりに喋っている。時折彼女に話しかける者もいる。驚いたことに、彼女も彼らの言葉が理解できるらしい。
    テレパシーのような物だと、彼女は説明した。頭の中に声が直接響いてくるのだと言う。

    「学校では一人だよ。あ、これでも私高一。実年齢よりも上に見られることが多いけど」
    「カゲボウズが五匹もいるのには理由があってさ。彼らは負の感情を好んで食べるから、私の生活は絶好の餌場みたいだ」
    「別に最初から視えていたわけでも、ましてや話ができたわけでもない」

    左手親指の付け根。目を凝らして見ないと分からないが、確かに一本の線が入っている。

    「小学生の時に、彫刻刀でザクッとやっちゃったんだ。血がボタボタ落ちて、もう少しで手術するところだったよ。
    今思えば、あれがきっかけだったんだ」

    その『血』を流したことで、彼らが見えるようになった。嘘のような本当の話。家の頭領である祖父にそっと話を聞いたところ、他言無用を前提にこんな話をしてくれた。
    それは、火宮という家の血が出来た時の話。

    昔々、とある村に忌み子が生まれた。その子は同じ村で大火傷を負って蔑まされていた女と一緒に、村から出された。
    その女は子供を捨てることなく、むしろ同情を感じて大切に育てた。村から少し離れた川近くの水車小屋で。
    子供はすくすくと育ち、美しい少女へと成長した。
    ある時、少女は川の近くに大怪我を負った若い男が倒れているのを見つける。体には矢が刺さり、あちこちから出血していた。
    親である女を呼び、水車小屋に連れて行き、山から薬草を持って来て看病した。やがて男は意識を取り戻し、多少の会話が出来るくらいまで回復した。
    男はここから遠く離れた街の方から来たらしい。この怪我は戦争で出来たものだと説明した。この家と近くの川、そして山にしか行ったことのない二人は、男の話を面白いと思った。
    もっと話をしたいということで、男はしばらくそこで生活することとなった。
    ところがある日、川の方へ水浴びをしに行った少女が夜になっても帰ってこない。女と共に探しに行った男は、川原で裸で震えている少女を見つける。
    見れば彼女の肌には殴られた跡があった。それだけで全てを察した男は、震える彼女を小屋に送り届けた後、近くの村へと向かった。
    そして―― そこにいた男を皆殺しにした。
    その男は人間ではなかった。生まれながらにして霊獣の血を引く人間だった。普通の人間には無い能力を一国の王に利用され、兵器にされていたのだ。
    男は水車小屋から出て行こうとするが、少女がそれを止めた。その夜二人は交わり、月が満ちて一人の子供が生まれた。
    その子供が作ったのが、火宮家の原型となった一族。

    「私はその末裔なんだって。だから何って思うけど」

    そう言って冷たく笑う彼女の横顔は、香によく似ていた。
    もしかしたら、香もその一族の子孫だったのかもしれない。
    ということは、この少女も香の子孫に当たるのか。

    「寒いなあ」
    『家に帰らないのか』
    「帰ってもね」

    酷い面構えの叔母の顔が浮かぶ。今夜は何をしてくることやら。首を絞めるか、毒を盛るか、ならず者をけしかけてくるか……。
    それでも屈しない、あざ笑う顔を見て、ますます彼女は怒り狂うだろう。
    それでいいのだ。

    『このまま朝までいるつもりか』
    「うん」
    『風邪を引くぞ』
    「シャンデラがいるから」

    独特の炎が差し出される。それは不思議なくらい温かく、寒さを遮断していた。

    「……ねえ」
    『何だ』
    「ハグしていい?」

    驚いたのはモルテだけではなかった。カゲボウズが喚いている。不満げな顔でカオリはモルテを見た。

    「うん、大体予想はしてた」
    『いや…… 構わないが』

    両腕が体に回る。心臓の音が聞こえてくる。生きている人間の証拠だ。しばらく振りに感じるその温もりに、モルテはしばし硬直していた。


    ――――――――――――――――――
    『カミヤ カオリ』

    誕生日:12月24日 山羊座
    身長:157センチ(高一) 164センチ(レディ・ファントム時)
    体重:54キロ        60キロ
    在住:不明
    主な使用ポケモン:特になし(手持ちとしてはいない)
    性格:いじっぱり
    特記事項:上の名前で呼ばれると激高する。下の名前もあまり良い反応を返さない。ミドリは後輩。

    いつのまにか レギュラーに なっていた。
    18さいで レディ・ファントムと なる。 つうしょう レディ。
    ちなみに なづけおやは ねいろさん。 ファントム・レディと よぶあんも あったが ぜんしゃが きれいなので そうなった。
    しらなくて いいことを しっていたり する。

    ひにくやで あつかいづらい。 でも かのじょの はなしが いちばん かきやすい。
    ついでに マダムと くませると なんでも アリになる。 カクライさん とは けんえんの なか。

    ―――――――――――――――――
    リメイクその2。カオリのデビュー作。多分。


      [No.2639] チャット会は20:00予定です。フライング可。 投稿者:No.017   投稿日:2012/09/22(Sat) 12:30:09     155clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    表題の通りです。
    チャット会は20:00予定です。フライング可。
    http://masapoke.chatx.whocares.jp/


      [No.2638] マサポケの今後の運営方針に関するご相談 投稿者:No.017   投稿日:2012/09/22(Sat) 12:27:53     114clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    No.017でございます。
    いつも皆様マサポケに遊びにきていただいてありがとうございます。
    2010年8月に管理人を引き継いで、たくさんの方に遊びにきていただき、
    コンテスト開催、ベスト発行までにこぎ着けました事、大変ありがたく思っています。
    その節は本当にありがとうございました。

    さて、ここへ来てみなさんに相談したい事が出てきました。
    ぜひお知恵や意見をいただきたく思います。



    就任当初からいる方はお気づきの事と思いますが、最近、当初に比べるとマサポケに時間を割けなくなっております。
    主だった要因は「自分の創作」にほとんどの努力値を振っている為です。
    その成果に関しましては、ポケスト板でも宣伝をさせていただきましたが、
    自身の小説同人誌を作るためにほとんどの時間を持っていかれている状態です。
    私自身、今後とも発行を続けていきたいとの希望を持っております。
    ちゃんと完結させようと思ったらたぶん10年以上かかるのではないかと思っています。
    (テンションがもつかは置いておいて)

    結論を言いますと
    「もはやNo.017がマサポケの全権を握っている限りにおいて、拡大路線は有り得ません。」

    お隣のポケノベさんのような本棚システムが構築される事もありませんし、コンテストを開くこともないと思います。
    (気まぐれにやっても年1回とか、2年に1回とかがせいぜいでしょう)
    すでに感想もあまりつけられていない状態です。
    (これに関しては義務ではないですが…)

    私がもう一人いれば、もう一人にこれをやらせたのですが、
    残念ながらNo.017は一人しかおりません。
    実際にやってみてやはり、
    一人のNo.017さんでは自身の創作の面倒をみるのがやっとでした。


    さて、
    これに対する対処方法としては何通りかのパターンがありまして


    【No.017続投パターン】
    ・ポケストルールを改定し、掲示板投稿機能のみ維持、
     本棚設置は無し、コンテスト開催も(基本的には)無し
     ロンストに関しては検討

     ↑今のところこれが有力

    【管理人交代パターン】
    ・マサポケの運営をやりたいという方に全権を委任、以降その方の方針に従う。
    (過去にマサポケでは何度もあったことです)

    【運営委員会設置 or 一部権限委譲パターン】
    たとえばコンテスト担当、トラブル処理、スパム削除人、感想普及委員等、イベント係を任命、
    私はサイトデザインだけやるとか、よにかくそんな感じで何人かで分担するパターンです。
    (実は一世代前のタカマサさん時代がこれで、私はHPデザイン担当で、本棚の管理保守に別の方がいらっしゃいました)


    などが考えられます。


    これに対し、本日のチャット会で皆様の意見をお聞かせ願えればと思います。
    できるできないはあるかと思いますが、今後のマサポケに何を求めるか聞かせてください。

    ・管理人をやりたい
    ・○○なら出来る
    ・本棚システムが欲しい
    ・コンテストをやって欲しい
    ・もっと感想が欲しい
    ・掲示板さえ維持されてればおk

    等、なんでも結構です。
    ぜひよろしくお願い致します。

    チャット会は20:00予定です。フライング可。


      [No.2637] Re: ■チャット会テーマ募集 投稿者:No.017   投稿日:2012/09/22(Sat) 12:27:23     138clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    フミんさん、どうも。
    実はまさにそのあたりなんですよ。相談したいのは。
    詳しくは後述しますね


      [No.2636] Re: ■チャット会テーマ募集 投稿者:フミん   投稿日:2012/09/22(Sat) 09:36:47     124clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    フミんです。お世話になっております。

    まだこちらに通い始めて日が浅いですが、私個人が思うことは、また文章のコンテストをしてくれると皆のやる気が出てくるのではないかと感じました。

    短いですが失礼します。


      [No.2635] どうもどうも! 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/09/21(Fri) 21:53:41     120clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    感想コメントありがとうっす!

    高いところから落ちるアトラクションが嫌いで嫌いで嫌いなので、怖い人から見た落下の仕方というのが伝われば幸いです!

    好きな男より自分の夢優先はどうなんだってげしげしされると思ってたけどそんなことなくてよかったです!

    ダイゴさんはイケメンです。
    ダイゴさんください
    ダイゴさんください!
    ダイゴさんください!!

    私はダイゴさんをずっとかいていきますし相手はもう誰でもいいです
    男でも女でもポケモンでもいいからダイゴさんが欲しくてたまりません


    では

    【ダイゴさんください】


      [No.2634] 語ってみる。 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/09/21(Fri) 21:43:55     124clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    なるほど、黒歴史暴露じゃねーの……


    ・時の探検隊

    一回目

    主人公:ヒコザル(♀) パートナー:ピカチュウ(♂) チーム名:クリスタル

    二回目

    主人公:ヒコザル(♀) パートナー:ミズゴロウ(♂) チーム名:バレーノ

    三回目

    主人公:ワニノコ(♀) パートナー:アチャモ(♀) チーム名:notte


    備考。

    ・何と言う主人公の♀率
    ・未だに何故三回目の主人公、パートナー共に♀だったのか分からない
    ・ピカチュウのほうでんに何度助けられたことか
    ・最終的に一回目はラスボス戦をレベル46にするまで勝てなかった 理由はふっかつのタネが無かったから
    ・ついでに友人にアドバイスを求めた 眠らせてじゃあくなタネを使うことで何とか勝てた
    ・北の砂漠はトラウマ すなあらしとかマジ滅びろ
    ・ジュプトルマジイケメン
    ・ジュプトルマジイケメン
    ・ジュプトルマジ(ry


    空の探検隊

    一回目

    主人公:コリンク(♂) パートナー:イーブイ(♀) チーム名:トゥオーノ

    二回目

    主人公:コリンク(♂) パートナー:ミズゴロウ(♂) チーム名:ヨシツネ


    備考。

    ・やっとコリンクが使えるようになって泣いた
    ・しかしイーブイの使えなささに一番泣いた
    ・ラスボス戦はほとんど一匹だけで戦った
    ・滅びよ……(とくせい的な意味で)
    ・主人公コリンクに♀要素が欲しかったがそれはありえなかった
    ・進化したらめっちゃ使いやすくなった スイクンをほうでん一発で倒したのはいい思い出
    ・スケスケだぜ(透視眼的な意味で)
    ・スペシャルエピソードで一番泣いたのは実は『てんさいププリン』だったりする


    二次創作的要素。

    ラスク(ピカチュウ♂)

    ざんねんな イケメン。 つねに アコギを もっている。 えんそうは うまいが うたは ドへた。
    まさに ほろびのうた。
    しゅみは モンハウを あらすこと。 べつめい きいろいあくま。

    マーレ(ヒコザル♀)

    はくのは ほのおより ばりぞうごんが おおいという とんでもない ヒコザル。
    パートナーが ヘタレすぎて なげいている。
    パートナーを いせいと おもっていない。 むしろ どうぞくと おもっていない。 ただの ムシケラ。

    ピオッジャ(ミズゴロウ♂)

    おとこと いうより おとこのこ。 『こ』のじは むすめとかく。
    くちを ひらけば あいかたの なまえが でる。 ヘタレの なかの ヘタレ。
    ほんきを だせば つよいが ほんきを だす きかいが めぐってこない。

    フォーテ(ワニノコ♀)

    『ねえ おばあちゃん おばあちゃんのくち ずいぶん おおきいのね どうして?』
    『そりゃあ おまえを たべるためさ !』
    という かいわが ピッタリな おおぐらい。 つうしょう あくじき。

    ミスミ(アチャモ♀)

    かわいくない ヒヨコ。 あいかたの あくじきに てをやく。
    いちど ねこみを おそわれた ことがある。 きづけば どなべのなかに いれられていた。 
    しゃもなべに するつもり だったらしい。

    ナミ(コリンク♂)

    いちばん おもいいれが ふかい キャラ。 そのため よく ひどいめに あわされる。
    しんかしてから なぜか どうせいに モテるように なった。
    ちなみに データをけした りゆうは おとうとが かってに もっていって やりなおしを したため。

    リモーネ(イーブイ♀)

    もふもふは せいぎと ごうごする もふもふ。
    だが そうとわかっても ゆるせないくらい よわい。
    けっきょく いちども しんかすることなく おとうとに データを けされた。

    ミツキ(コリンク♂)

    かんさいべんで はなす ようきな コリンク。
    べつに ゴンタクレでは ない。
    いやに ながいなまえの わざも もっていない。

    シグレ(ミズゴロウ♂)

    かわいい。 とにかく かわいい。 パッとみると こちらが おんなに みえてしまう。
    いつも ミツキの うしろに かくれている。
    とくぎは おねだりと スリと ひろいぐい。

    ――――――
    長いな!
    ちなみに未来組も名前だけ。
    ジュプトル:ヴェトリ ヨノワール:モルテ セレビィ:ランポーネ
    中二の時に考えたので中二病臭が凄まじい

    【よろしければ皆様も】


      [No.2633] Dear My Best Partner 投稿者:穂風奏   投稿日:2012/09/21(Fri) 21:07:35     122clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    あなたがいたから 僕は外の世界を知ることができた
    あなたがいたから 毎日がとても楽しかった
    あなたがいたから 辛いことでも乗り越えていけた
    あなたがいたから あなたのために頑張ろうと思った

    あなたがいるなら どこへでも行ける気がした
    あなたといるなら なんだってできる気がした
    あなたといること それが僕の当たり前だった

    あなたといたから 時間はあっという間に過ぎて行った

    あなたといられて とても幸せだった

    あなたといたこと 一番大好きだったあなたへ

    ――ありがとう


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    大好きな人との時間は永遠に続いてほしいけど、なぜかすぐに時が過ぎてしまう

    こちらの第9回のバクフーンのイラストを見ながら書きました
    http://7iro.raindrop.jp/


      [No.2632] 海辺の崖の小さな家 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/09/21(Fri) 20:50:39     101clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    今でも時々夢に見る、あの光景。あれから一度も行ったことはないけど、それでもハッキリ覚えている。
    随分と引っ込み思案だった私を。他人に合わせることしか出来なかった私を。
    ガラリと変えたのは、紛れもない、あの出来事なのだ。

    ――――――――――――――――――
    生まれてから幾度目かの夏が巡って来て、そして終わった。まだ少し蒸し暑い日もあるけど、朝方と夜の冷え込みは秋が少しずつ夏との椅子取りゲームに勝って来ていることを教えてくれる。
    空は高い。雲は時々入道雲、鰯雲。雨は降る時にはしつこく、止むとまた少し涼しさを持ってくる。そんな昼夜の気温が安定しない日々で、私が考えていたことといえば、一匹のツタージャのことだった。
    ツンとした態度と、時折見せる寂しげな表情。ロンリーボーイ……ガールではないと思う。会って少し経ったが、その子の性別は未だはっきりしない。そもそも自分のポケモンとしてポケモンセンターや育て屋に連れて行っていいのか、それが分からなかった。
    生まれて十四年が経過したが、ポケモンを持たせてもらったことは一度もない。両親が海外へ行く前に免許は取ったが、どうしても持つ気になれなかった。持っていた方が何かと便利であることも、市民権をより強く得ることができるのも分かっている。
    だけど……。
    ピンポーン、という音で我に返った。慌ててパスを反対にして翳す。幸いにも後ろに待っている人はいなかった。
    最寄り駅であるライモンシティから少し離れた場所。住宅街に面した、どちらかといえば田舎寄りの土地。同じような家が並び、何処が誰の家なのか見分けがつかない。
    だが、迷うことは無い。何故なら、今から自分が行こうとしている家はそれらからかなり浮いているからだ。

    「趣味が伺えるなあ……」

    アースカラーが似合う家。壁にはめられたステンドグラス。今日はよく晴れていて、青い空がグラスに映っている。光を浴びている彫られたポケモンも、活き活きとしているように見える。
    家と家の間に申し訳無さそうに建っている。写真を撮ろうにも全て同じアングルからしか撮れないだろう、というくらい小さい。まるでシンオウ地方にあるという白い時計台のようだ。ビルとビルの間にあり、たとえタウンマップの表紙を飾っても現地に行けば驚かれてしまうような……
    いつも通りにノックして、ドアを開ける。そして――

    ひっくり返る。頭を打った場所が芝生の上だったことが不幸中の幸いで、ゴチン!という目を覆いたくなるような惨事にはならなかった。
    一応後頭部を撫でる。鈍い痛みはあるが、たんこぶになるような気配はない。一体全体どうしたもんだ、と前に視線をやった私が見た物は……。

    「あ」
    『キュウウ』

    お馴染みの目と目が合う。大きな瞳に、私の間抜けな顔が映りこんでいる。眼鏡がズレているのを直すと、私は立ち上がった。ついでにパンツの埃を払う。
    ツタージャは焦っているようだった。妙にわたわたしていて、いつもの冷静沈着な面は見えない。思わずクスリと笑うと、怒ったらしくつるのムチで頬をペシペシと叩いてきた。
    ごめん、ごめんと謝ると腰に手を当てたままムスッとしている。

    「珍しいね。自ら出てくるなんて」
    『……』
    「どういう風の吹き回し?」

    私のからかいを無視して、そのままてってっと道路の方へ走っていく。予想外の行動に暫し呆然としていたが、慌てて開けっ放しになっていたドアを閉めて、ツタージャの後を追う。
    相手の足の長さが幸いして、私は迷路のような住宅街でもその子を見失わずにすぐに追いつくことができた。
    鉄の焦げる匂いがする。聞きなれた、ノイズ混じりの男性の声。スピーカーから流れる、割れたチャイム。小型ポケモンは料金は無料だということを思い出し、私は再びパスを通して改札口を通った。

    「駅……」

    ついさっき私が通ってきた駅。可愛らしいカフェは付いていないが、海と山、両方に囲まれた土地にあるため比較的通っている路線の数は多い。四番線まである。
    その中の一つ―― 三番線ホームへの入り口である階段前に、ツタージャは立っていた。しきりに上の方を見つめている。見慣れた屋根の裏側。蛍光グリーンの文字盤が、時間を示す。電光掲示板はここからでは見えない。
    そっと足を動かしては、引っ込めるという動作を繰り返すその子に、私はもしや、と思い訪ねた。

    「……足、上がらない?」
    『……』
    「上に行きたいんだね?」

    頷いたのを確認してから、私はそっと彼の腕の下に手を滑らせた。そのまま胸元まで抱き上げ、階段を上がっていく。多少プライドを傷つけられたのか、しばらくそっぽを向いていた。
    変化があったのは五十段目を昇り終えた時。私が油断していたせいもあるけど、昇り終えて気が抜けていた私の手をひょいっと抜け出した。

    「こら!」

    そのままてててと停まっている電車に滑り込んでいく。右側に線路にドンと居座る、シルバーに緑色のラインが入った車体。ちなみに反対側はブルー。
    息を切らして乗り込むと、ツタージャは一番前の座席の端っこにちょこんと座っていた。周りにポケモンを連れた乗客は数人。一人はヨーテリー、一人はドレディア(しかも恋人繋ぎ)、そして最後はツタージャの進化系であるジャローダ。
    彼らの間で見えない火花が散った気がした。厄介ごとになる前に、相手のトレーナーがペシンと頭を叩いたから、大丈夫だったけど。
    いつの間にかアナウンスが流れ、ドアが閉まっていた。ガタン、ゴトンと列車が動き出す。このまま立っているのも危ないので、ミドリはツタージャの隣に腰を下ろした。
    上を見ると、広告と一緒に路線案内図が貼られている。何か書いてあるのは分かるが、両目とも視力0、1のミドリには読めない。
    たとえ、眼鏡をかけていても今は。

    (見えない物、か)

    以前読んだ本に書いてあったフレーズが、ふと頭を過った。
    『大切なものは、目に見えない――』
    周りに付き合うことに疲れていたミドリの心に、それは深く響いた。
    友達は、大切。その関係という物は目には見えない。だけど、人間は目には見える。目に見える物と見えない物が合わさり、この世界は成り立っている。
    それに気付けるかどうかは、彼ら次第なのだと…… 他人に教えてもらうより、自分で気付けるかどうかが大切なのだということに気付いた。

    窓ガラスが黒い画用紙を貼ったように黒くなっていた。そこに自分とツタージャの姿が映る。鏡のようだ。
    その中に映る自分はどんな顔をしているのか。ぼやけてよく見えない。
    いつの間にか周りに立つ人間が増えていた。その中の人集団に目を留める。彼らの格好はほぼ同じ。髪を短く切り、ピアスをしている。この季節には似合わない、よく焼けた肌の色。大荷物。左手首に不思議な形の日焼けの跡。
    それに当てはまる物を考えた瞬間、一気に車内が明るくなった。ツタージャが眩しそうに目を覆う。ミドリも振り返って窓の外を見て―― 答えが出た。
    キラキラ光る線。太陽が丁度世界の中心に上っている。青い波が押し寄せては崩れ、白波へと変わる。
    小さな人影。皆が皆、彼らと同じような格好をしている。波に乗り、風を掴み、どれだけ転んでも立ち上がる。
    周りに迷惑をかけることのないこの時期を選んだのだろう。

    海だ。
    山と崖に囲まれた場所に、海が広がっていた。

    降り立った駅はかなり寂れていた。そもそもこんな駅でもきちんと成立しているのか、と考えてしまうくらいボロボロの建物である。屋根のペンキは剥がれ落ち、かつては赤だったと思わせる色。今では色あせ、その赤色の面影もない。どちらかといえば限りなく白に近いピンクに見える。
    自動販売機があったが、ラベルが色あせていたためしばらく取り替えられていないことが分かる。つまりはドが付くほどの田舎だということだ。

    「ライモンシティとは大違い……」

    流石に呆然としたミドリの耳に、ツタージャの声が届いた。振り向くと改札口を通り過ぎ、そのまま道へ走って行こうとしている。
    またこのパターンか、と思いながらもミドリは好奇心が湧き出てくるのを感じていた。ツタージャが知っている世界を、自分も見てみたい。
    そんな思いを胸に足を動かす。
    車通りは少なく、ツタージャはその短い足を器用に動かして先導していく。途中で寂れた飲食店、未だ現役なコンビニ(駐車場付き)を幾つか通り過ぎた。いかにも、な看板が目に入り、ふと懐かしさを覚える。
    やがて、私の足は海の側にある小さな裏道の入り口で止まった。
    まだ青い木々が行く手を阻む、坂道。『止まれ』の白い文字はハゲかけている。

    「ここを登るの?」
    『キュウ!』

    それだけ言って上っていく。だがなかなか進まない。それでも確実に上がっていく。迷いは無い。
    ……慣れている。
    汗一つかいていないツタージャと反対に、登り始めてたったの五分で息が上がり始めたミドリ。帰ったら運動しよう、と決心する。
    それにしても、かなり長い坂だ。途中で右に曲がり、その後は一方通行。視界に『野生ポケモン出没注意』と書かれた看板があった気がしたが、気のせいだと思いたい。
    携帯電話は圏外だった。

    「あー……」

    登り始めておよそ二十四分と五十三秒。ようやく視界が開けた。緑一色だったのが、青と土色が混ざる。
    柔らかい風が髪を撫でていく。
    まず最初に目に映ったのは、木で作られた家。昔読んだ某医療漫画の主人公の家によく似ている。だがそのシチュレーションがぴったり合って、ミドリはほう……とため息をついた。
    ツタージャがつるのムチでドアノブを回そうとする。だが鍵がかかっているようで開かない。

    「鍵無いの?」

    頷いたのを見て、ミドリは少し下がった。そして――

    「はっ!」

    思いっきり体当たりした。錆び付いていたのだろう。バキッという音がしてドアが倒れる。はずみで地面に転がった。
    舞う埃に咳き込みながら辺りを見回す。内装、家具共にカントリー調だった。しばらく使われていないのだろう、埃が積もりに積もっている。
    ツタージャが遅れて入ってくる。小さな足跡が、床に付く。見れば自分が穿いているスニーカーの跡もくっきり付いていた。
    ……ついでに、転んだ跡も。

    「ここは……」
    『キュウウ!』

    再びつるのムチ。目の前のテーブル横にある引き出しの一つを、必死で開けようとしている。長いこと開けられてなかったせいだろうか。その天然の木で作られた引き出しは染み出る樹液で固まっており、ビクともしない。
    だがツタージャは気付かない。しまいにはタンス本体がガタガタと音を立て始めた。

    「ストップ!」

    不満げな顔をするツタージャを抱き上げ、テーブルの上に乗せる。自分で引っ張ってみたが、やはり動かない。
    仕方ないので持っていたペンケースからカッターナイフを出し、境目に刃を擦り付ける。ガキン、という嫌な音がした。何とか引っかからずに刃が通るようになってから取り出す。
    銀色に輝く刃は、見事にジグザグ状の割れ跡が入っていた。もう使えないだろう。
    幾許かの虚しさを感じ、ミドリは使い物にならなくなったカッターナイフを机の上に置いた。続いて引き出しの取っ手を引っ張る。
    刃を犠牲にしたおかげか、それは先ほどとは比べ物にならないくらいスムーズに開いた。

    「……何だこれ」

    古い、古いノートとスケッチブック。最近雑貨屋に増えてきたアンティーク風にデザインされたノートよりも、よっぽど年季が入っているように見える。色あせ、開いて見た中の文字はかなり薄くなっていた。
    スケッチブックを傍らに寄せ、ノートの文字を見る。ツタージャにも見せようかと思ったが、しきりにスケッチブックを漁っているので放っておく。

    「えー、なになに……って、英語!?」

    日本語ではなかった。授業で習っていない単語のオンパレード。それでも今までの経験値とこの家の雰囲気からヒントをもらい、頑張って分かる単語を組み合わせていく。
    一ページ読むのに五分。その日記は約二十ページあった。×五で百分。一時間と四十分。そういうわけで、ようやく納得できる翻訳を終えた時には既に西日が窓から差し込んでいた。
    立ちっぱなしで棒のようになった足を擦る。埃だらけの椅子を持っていたティッシュで拭い、座る。机に突っ伏して、内容を反芻する。

    「ツタージャのご主人様の、家なんだね」
    『キュウ』
    「ん?」

    ツタージャがスケッチブックから一枚の紙を取り出し、私に見せた。良く見ればそれは紙ではない。いや一応紙の分類に入るのかもしれないけど、色あせた画像のオプション付き。
    今とあまり変わらない服装の男女が立っている。撮影場所は多分この家の前。その真ん中にツタージャ。写真の状態から見て、二十年くらい前のようだ。
    日記の内容と照らし合わせて再び考える。
    その日記は、このツタージャのご主人が、自分が死ぬ前に書き記した物だった。

    時は三十年ほど前。その男は、デザイナーとして世界中を回っていた。カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ。同じ場所に一年留まることなく、まるで風のように居場所を変え続ける。――いや、居場所なんて求めていなかったのかもしれない。新しいデザインのネタとなりそうな噂を嗅ぎ付ければ、たとえどんなに遠い場所でもすぐに向かう。そんな生活をしていた。
    そしてそんな生活の中で、彼はふとしたことから伝説のポケモンに魅入られてしまった。神話や昔話だけに登場し、気まぐれに人間の前に姿を現す、希少な存在。それは何処の地方へ行っても伝わっており、その話をする人間の瞳は輝いていた。どんなに歳を取った者でも、それを口にする時その瞳は子供のように輝く。
    そして、その男もそうだった。
    彼は旅の途中で出会った女性と結婚し、彼女と共に各地の伝承や昔話が書いてある本を求めて回った。理由は一つ。想像図で描かれた伝説のポケモンを、何らかの形で残したいと思ったから。
    その形は、彼の職業によってすぐに成すこととなる。
    それが、ステンドグラスだった。
    想像だけで描かれた物も多く、細部などはなかなか納得のいく物ができず、作っては壊しの繰り返し。それでもやっと、ほとんどのポケモンをモチーフにしたそれを作り上げた。
    さて、少し落ち着いたかと思った彼の耳に飛び込んで来た、新しい情報。それは、イッシュ地方の英雄伝説だった。
    理想と現実。対立した二人。それぞれについた、黒と白のドラゴンポケモン。
    男はすぐさまイッシュに飛んだ。愛する妻と共に。ツタージャとはそこで出会ったようだ。育て屋の主人と知り合い、タマゴを分けてもらったのだという。
    特に戦わせることなく、だが一緒に本を読んだりしたおかげで思考回路だけは発達したようだ。その気になれば仕事を手伝ってくれたりもしたらしい。
    だが、イッシュに来てから三年目の冬に妻が倒れた。長い間連れまわしていたせいで彼女の体には病魔が巣食っていた。
    我慢強い性格ということに気付けなかった男は、仕事を放り出して妻の看病をした。だが妻はステンドグラスの完成を望むと言い残して息を引き取った。
    悲しみに暮れていた男だったが、妻の最期の言葉を思い出して再び英雄伝説を調べ始める。気付けばイッシュに来てから五年が経過していた。
    そして、やっと完成したというところで男は倒れる。彼の体にもまた、病魔が巣食っていた。
    死を予感した男は、一匹で残されてしまうツタージャを思い、死の床で手紙を書いた。それは遺言状だった。
    内容は――

    「『このツタージャが認めた者は、自分の今まで造り上げたステンドグラスの所有権を持つ。その人間が現れるまで、作品は全て何処かの場所に保存しておくこと』」

    昔からの知り合いに頼み、全ての遺産を使って保存しておく場所である小さな家を建てた。
    ツタージャを任せ、彼が素晴らしいパートナーにめぐり合えることを祈った。
    そして、息を引き取った。
    日記に書かれていた文は最後の方が震えていた。おそらく最後までペンを握っていたのだろう。

    「……」

    ツタージャの瞳は綺麗だ。だが、その目が主人の最期を見ていたのかと思うと、何とも言えない気持ちになる。
    明日が分からない世界に、自分は生きている。たとえば家に帰ったら両親の訃報がメールで来ていたり、今こうしている瞬間に巨大な地震が起きて死ぬ―― なんてことも考えられないことではないのだ。
    『ありえない』と言い切れない。
    それが、怖い。

    ――だけど。

    「『ありえない』そんな言葉通りの世界なら、きっと君は私をここに連れて来る事はなかったんだよね」
    『……』
    「ううん。きっと、会うこともなかった。私を垣根の上から見つけて、私が貴方を見つけて、目が合うことも―― そしてここまで発展することも」

    何が起きるか分からない。未来は、何が起きるか予測できない。
    ――だから、面白い。そう思いながら生きれば、きっとアクシデントも乗り越えられる。
    そう、信じたい。

    「……ご主人のこと、好きだった?」
    『キュウ』
    「私は、ご主人にはなれない?」
    『……キュウ』

    予想していた言葉。私だって、この子の『ご主人』になる気はない。だから。

    「じゃあ、私と『友達』になってくれる?」

    そっと右手を差し出す。『友達になってください』なんて言うことはないと思ってた。だって友達は自然に作るものだと思ってたから。
    でも今なら分かる。
    この仕草って、恥ずかしいけど……。

    『キュウウ!』

    なんだか、嬉しい。


    ツタージャの小さな手と、私の人差し指が繋がった。
    ガタガタという音と共に、窓が全開になった。
    驚く私達をよそに、カーテンが海風に煽られて広がる。
    一人と一匹の影が、夕方近くの太陽に照らされていた。

    「――浜辺を散歩してから、帰ろうか」

    私の言葉に、ツタージャは目を閉じて頷いた。


    ――――――――――――――――――――
    『ソラミネ ミドリ』  

    誕生日:12月4日 射手座
    身長:154センチ(中二) 156センチ(高三)
    体重:51キロ        53キロ
    在住:イッシュ地方 ライモンシティ
    主な使用ポケモン:ツタージャ(中二)   ジャローダ、フリージオ、あと何か水タイプ(高三)
    性格:れいせい
    特記事項:両目とも近視。祖父は官房長官。叔父は監査官。父は世界的に有名な科学者。母はフラワーアレンジメント。

    きなりの キャラで かなり しょきから いる。
    めがねをしたり はずしていたり デザインが おちつかない。
    あいぼうは ねいろさんの もちキャラである コクトウさん。
    まさに あいぼう。
    はくしきだが だんじょかんけいには うとい。
    レディ・ファントムが からむと あつくなる。

    めさきのじけんに とらわれて たいせつなものを みおとす タイプ。
    あるいみ しあわせなこである。

    ――――――――――――――――――――
    『紀成』から『神風紀成』になったのと、高校入学の年から卒業の年まで来たので、リメイクしてみた。
    ついでに途中から来た人は知らないであろううちのキャラのプロフィールを載せてみた。
    もう少し続ける予定。


      [No.2631] Re: 祝! ポケダン新作発表! 投稿者:サン   投稿日:2012/09/21(Fri) 20:24:57     116clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    うおおぉぉはじめまして!!紀成さんからコメントいただいちまったぜひゃっほう!

    > ふっかつのタネ売ってたとかバカだよね!そして空探イーブイはパートナーにしてはいけなかったよ!
    > HP少なすぎ+特性発動で全く使えやしねえ!

    にげあしがこんなにもイライラ特性とは思わなんだ……
    「わたし主人公を信じるよ!」とか言っておきながら逃げるとかどういうキャラを目指しているんだろうか。


    > > ゲンガー「ケケッ、とうとうオレたちイジワルズの活躍をドラマチックに描いた待望の新作が発売するってのか」
    > >
    > > ハスブレロ「んなわけねーだろ」
    >
    > 辛辣なコメントありがとう
    > あの時はまだゲンガーの可愛さに気付いていなかったのだよ 今更やる気起きないけど

    ならゲンガーさんは私がもらっていきますねww
    ゲンガー派とヨノワール派に分かれたのはポケダンが原因だと思うんだ……
    次回作はシャンデラあたりが参戦するのかな。


    > > ジュプトル「ヨノワール、やはりキサマが黒幕か」
    >
    > ちょっと違うぞジュプトル!空のスペシャルエピソードはガチ泣きした

    あの朝焼けのシーンでおいセレビィそこかわれとか思ってたアホな人間は私だけでいい。
    ぽけだんわよいこのためのげーむです


    > > モルフォン「新技ちょうのまいからのぎんいろのかぜで今まで以上に暴れてやんぜ」
    > >
    > > デンチュラ「ふっかつのたねなんぞ食わせるか」
    > >
    > > ゴローニャ「がんじょうで堪えてじしんで全体攻撃します」
    > >
    > > チラチーノ「夢特性次第で無双します」
    > >
    > > エルフーン「いたずらごころでおいかぜします」
    >
    > ごめんなさいお願いだからそれだけはやめて子供が泣いちゃう
    > どうせならエンディング後に出てくるチートダンジョンに出てきてくれ……

    意外なポケモンが意外な強さを発揮する、それがポケダンの醍醐味です。
    さあ…きゅうじょいらいを消化する日々が始まるぜ。

    コメントありがとうございました!



    【みんなもポケダンの思い出語るといいのよ】


      [No.2630] 時節の理 投稿者:巳佑   投稿日:2012/09/21(Fri) 05:40:13     115clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     ある日のこと。
     
     黄緑色の小さな妖精が円状に十二個の種を地面へと埋めました。
     毎日、水をいっぱい与え、育ちますようにと願いました。
     すると、最初の萌芽がやってきました。
     

     地面の中から、一葉をつけた芽が現れて、黄緑色の妖精が群青色の神様を呼びます。
     双葉の姿を見て、群青色の神様が黄緑色の妖精の小さな頭をなでます。
     それから群青色の神様が力を込めますと、辺りに結晶が現れてその一葉の芽を抱きしめたかと思うと、その双葉は結晶の中に取り込まれていきます。
     かちんと何かがはまったかのような音とともに、透き通った結晶の中には一葉がありました。
     その後、二個目の種も地面から芽を伸ばし、一本の木になったところで、黄緑色の妖精がまた群青色の神様を呼びました。
     すると、双葉のときと同様、群青色の神様はその木も結晶に抱かせました。
     またその後、三個目の種も地面から芽を生やし、それはたちまち大きくなって、それはそれはその身に淡い桃色の花をたくさんつけた大樹となりました。
     その桃色の花びらが宙に舞う姿に心を躍らせながら、黄緑色の妖精は群青色の神様を呼びました。
     綺麗だ綺麗だと目を輝かせながら語る黄緑色の妖精に、群青色の神様は微笑みながら一つ頷くと、その大樹を結晶の中に入れました。 
     

     美しい桃色の大樹が生まれた後、四個目の種から芽が息を上げました。
     一個目のときとは違い、双葉になったときに群青色の神様によって、結晶の中に入りました。 
     四個目に続いて五個目は緑色の太い茎が伸びたところで、結晶の中に入ります。
     それから六個目の種からは大きな黄色の花が咲きました。黄緑色の妖精は自分の顔と、たくましい茎の上で揺れているその花の大きさを見比べて、大きい大きいと楽しそうに騒ぎます。
     その様子を見ながら、群青色の神様はその大きな黄色の花を結晶の中へと取り込ませました。 
     
     
     大きな黄色の花に驚いた後に、七個目の種から芽が生まれます。
     今度は三葉の状態で、群青色の神様は結晶の中に入れます。
     そして八個目は二個目のときと同様に、一本の木のところで結晶の中に入りました。
     その後、九個目の種からは真っ赤な葉っぱを衣にした一本の大樹が生まれました。その真っ赤な色に黄緑色の妖精は心を奪われたかのように呆然としています。
     それから、群青色の神様はその大樹を結晶の中へと取り込ませました。
     
     
     真っ赤な大樹が生まれた後、十個目の種から目が生まれます。
     今度は四葉の状態で、群青色の神様は結晶の中に入れます。
     それから十一個目は緑色の茎が伸びてきたところで、結晶の中に入りました。
     ようやく最後の十二個目の種から出てきたのは、中央に小さな黄色の花を咲かせた白い花でした。高さは黄緑色の妖精より少し低く、右手を使って背丈を比べていた黄緑色の妖精は自分の方がお姉さんだねと笑いかけていました。
     それから、群青色の神様はその花を結晶の中へと取り込ませました。
     
     
     こうしてできあがった十二個、円状に並ぶ結晶の中にあるのは芽や木や花たち。
     それらを眺め、準備はできたとでもいうように群青色の神様は一つ鳴きますと、その円の内側を沿うように歩き始めます。
     どしんどしんとゆっくり、歩を刻んでいき、黄緑色の妖精はその姿を眺めながら歌い始めます。一つ一つの種からどんなものが生まれるのだろうか、それを楽しみにしていた心。また、種から生まれた奇跡に喜んだ心を音色に変えながら、歌いました。
     するとどうでしょう、一個、一個の結晶が淡い光を放ち始めるではないですか。
     最初はちかちかと小さな光でしたが、やがて、辺りをも染めるかの大きな光へとなっていきます。
     その色は緑だったり、黄色だったり、桃色だったり、真っ赤だったり、白だったりと様々で、その光と光が合わさるとまた別の色になって辺りに漂います。その光の動きはなんだか楽しそうなものでした。
     群青色の神様がゆっくりと一周すると、黄緑色の妖精が隣の結晶に移動し、また群青色の神様がゆっくりと一周歩き出します。

     やがて暖かい風が流れ。
     続いて暑い風が流れて。
     それから涼しい風が流れて。
     その後に冷たい風が流れて。
     
     ぐるぐると十二個の結晶の内側で刻まれていく軌跡が羽ばたいていって――。
      
     
     世界に時間が満ち、季節が巡り回り始めました。
     

     

     


     今も――。 

     群青色の神様が大きな針のように。
     
     黄緑色の妖精が小さい針のように。

     この世界の時を刻み、季節を彩っています。
      
      


    【書いてみました】

     お久しぶりの投稿となります、どうもです、巳佑です。
     今回は時と関係深そうな二匹を書いてみました。
     ある意味、この話の中では、お互い時間を司るパートナーみたいなものかなと思ってみたり。
     まぁ、群青色の神様のパートナー的存在は某ぱるぱるぅさんだと思われますが(苦笑)
     
     楽しんでいただけたら幸いです(ドキドキ)
     
     
     ありがとうございました。


    【気がつけば、理シリーズも4つ目と相成りました】
    【なにをしてもいいですよ♪】   


      [No.2629] 爽やかな 投稿者:イサリ   投稿日:2012/09/21(Fri) 00:21:40     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     夜遅くにこんばんは! イサリです。
     先日は過剰に反応してしまい申し訳ありませんでした。
     無礼をどうかお許しください。

    『空を飛んで』を読ませて頂きました。描写が自然と頭に浮かんできて、とても読みやすいです。タイトルの通り、吹き抜けるような爽やかな読了感のあるお話でした。
     愛する人のために共に苦難を乗り越える話は、やはり良いものだなあと思いました。

     ダイゴさんはイケメンでした!
     昔ルビーをプレイした時の彼の印象は「信念はあるのにつかみどころのない人」でしたが、こういう、いざというとき頼りになる姿はいいですよね。



    『星空を見上げる海の上』で危うい印象を持っていただけに、最後はハルカちゃんが強かで安心しました。

     お前が言うなの嵐でしょうが、やっぱりハッピーエンドが一番ですね!(


     それでは、失礼いたしました。


      [No.2628] remake.ver(百字?) 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/09/20(Thu) 16:49:18     254clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    一体、どれくらい書いたのだろう。
    二年間という、長くも短い年月。その間にその力は、どんどん強くなっていった。
    物語を書くことの楽しさを。それを評価してもらうことの楽しさを。
    ――私は、きっと忘れない。


      [No.2627] 主人公のレポート提出 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/09/19(Wed) 21:41:29     143clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     殿堂入りおめでとう!君と君のポケモンたちががんばったんだ。
     ポケモン図鑑もいい感じだ。お、そうだ旅を初めてからずっとレポートも書いてもらってたな。ぜひ見せてもらおう!

    ほぅぇん ポヶモソ
    きょぅ 



    ぁたし



    みしろたぅんに引っ越した


    ひっこすまえより、マジパナィぃなヵ



    となりに ュゥキ がぃた
    ュゥキは トレーナーだった
    それなりにィヶめん


    どっかぃった


    ぃなヵすぎてそとにぃった
    へんなおぢさんがいた


    キモリもらった


    ュゥキとしょぅぶした


    キモリがかっゃくしたょ


    ちょーヵヮィィゎら


    パパにぁぃに トゥかシティにいった


    そしたらみつるがいた


    みつるはびょぅじゃく  らしぃ

    で ぁたしに ポケモン とるの てつだってこぃってゅった
    ぁたしポケモン つかまぇるのも とくぃだからー
    みつるはちゃんとポケモンつかまぇた
    ぁたしも ょろこんだ


    もりにはぃったら まぐまだんゅってるおぢさんがおぢさんをぃじめてた
    ぃじめょくなぃょ!ってゅった


    まぐまだんはにげたヮラ


    おぢさんはでぼんってヵィしゃのひとらしい


    でぼんのしゃちょぅは、ぁたしに だぃごってひとにてがみとどけろってゅった


    ひとだすけってちょーきもちィィこと しってるヮラ


    だから とどけて ぁげるコトに した



    はぎせんちょたすけたから ふねだしてくれるゅぅてたゎら

    ぁたしちょーヵヮィィから みんな たすけてくれるゎラ



    だぃごは ュゥキくらいィヶめんだった


    ぁたしの ポケモン みて ちょーほめてた
    ぁたし もしかして てんさぃ?わら



    ゅぅきにあったからたたかった
    かった
    ゅぅきちょろぃわら



    まぐまだん マジぅざぃ
    とくに ほむらっていう おぢさんが キモぃわら



    みつるにあった
    つかまえた ぽけもんが それなりにつょくなってたヶドぁたしのてきじゃないワラ


    かざんばぃちょーぅざぃ


    まぐまだん マジぅざぃ


    ってぉもってたら、 あくあだんってぃぅのもでてきた

    だんちょーが だんでぃーでちょーィヶめん!

    ぁたし おとなにも モテるからワラ


    ぉんせんにいったら ゅぅきにぁった

    のぞきゅるさなぃからねってゅうたらのぞかねえってゅってた



    ぱぱと たたかった 
    ぁたし てんさぃだから ょゅぅワラ


    ぁたしの まぇに ィヶめんきた
    なまぇ わすれちゃってたヶドわら

    むこうからなのってた
    だぃごだった



    まぐまだんちょーぅざぃ


    ゅぅきにぁったからたたかった

    ぁたしてんさい



    まだだぃごにあった

    でぼんすこーぷくれた

    これでかくれおんさがしてねゅってたワラ


    まぐまだんちょーぅざぃ

    でもィヶめんぁくぁだんだんちょーに ぁったからゅるす


    せんすぃかん ぬすんで むかしの ぽけもん つかまぇるんだって

    なんだかゎからないけど まぐまだんちょーぅざぃからじゃまする


    グラードンはその力は絶大すぎて世界を干上がらせる力を持つ(ここだけ切り貼りしてある)


    かぃてぃに にげたヶド ぁたしのまりるり もぐれないしぃ


    だぃごに ぁった

    これでもぐれるねゅってだいびんぐくれた


    ぁたしヵヮィィし


    まぐまだんぉぃかけてみた



    まぐまだんちょーぅざぃ


    ぐらーどんみた




    すっごくおっきかった



    ぁたしちょーかんどぅした




    ぁくぁだんィヶめんだんちょーがきた


    そとにでたらめのくらげがひあがってたわら



    こっちってゅゎれてぐらーどんつかまえた



    これでぽけもんりーぐぃけるわら



    ちゃんぴおんろーどでみつるにぁった


    びょうじゃくィヶめんになってたワラ



    もひかんにかったワラ


    いろぐろにかったワラ


    つめたいひとにかったワラ


    うちゅうせんかんゃまとみたいなひとにかったワラ


    っぎがちゃんぴおんだからかくワラ



    ーーーーーーーーーーーーーーー


     ユウキになれていたので何も言わなかったが、私はまずレポートの書き方を教えなければならなかったのだろうか。



    ーーーーーーーーーーーーーーーーー
    スイーツ(笑)でもいいんじゃない、たまには
    【好きにしてください】【他地方主人公のレポート募集】


      [No.2626] 空を飛んで 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/09/19(Wed) 21:03:11     140clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     いきなり視界が揺れ、衝撃と共にハルカの体はフライゴンから投げ出された。
     白い雲と同じくらいの高さから落ちていくのを感じる。その感覚にハルカは悲鳴をあげた。フライゴンは自分の視界に入って来ない。
     下は海。けれど運悪くこのスピードではあの顔を出した岩に頭から落ちてしまう。
     散々いろんな人から注意を受けた。それに事故のニュースもたくさん見て来た。ポケモンの技で空を飛んでも、その途中で落ちてしまうことだってあるのだ。落下して死亡するニュースなどたくさん見て来た。
     けれど自分だけは大丈夫だとどこかで思っていた。フライゴンは振り落としたりしないと。
     そんな考えをぐるぐるまわしているうちに岩はどんどんハルカに近づいて来る。
     ああ、もう死ぬ。いやだ、いやだ! 死にたくないダイゴさんに会いたい 助けてダイゴさん いやだよう!



     トクサネシティにあるダイゴの自宅ではその主が紅茶を飲んでいた。今にも血管が浮き出そうなくらいに目が怒っている。落ち着こうと紅茶をいれても焼け石に水。
     約束の時間を過ぎても一向にハルカが来ない。もう2時間30分も遅刻している。新しい子をもらったから修行してくださいと頼み込んだのはハルカの方なのに。
     これはまず遅刻する時は一報することから叱らなければならない。さっきから一分刻みで記されているハルカへの発信履歴を見て、何をいってやろうか考えを巡らす。そしてまたポケナビに手を取るとハルカへと発信した。1秒、2秒……16秒と表示され、留守番電話サービスにつながる。
     機嫌の悪い主人の八つ当たりの対象にされたポケナビはたまったものじゃない。ダイゴの力で叩かれても抗議の声もあげずに、新たな発信履歴を刻み込んだ。
     紅茶が空になる。カップに注ぐ。少し濃くなった紅茶が満たされるが、ダイゴの心は怒りに満ちたまま。
     あと30分しても来ないなら明日以降にみっちりと説教をする。泣き出しても構わない。約束を2時間以上もすっぽかし、連絡にすら出ないなど人としてあり得ない。


     ふわふわとした感触にハルカは目をあけた。視界がぼんやりしている。見た事もない原っぱに、石碑がぽつんとあった。
     ここが死んだ後の世界? 花畑も川もないけれど、そんな気がした。
    「ダイゴさん……」
     会いたい。死ぬ前に会いたかった。あんな誰も通らないような場所で一人で死にたくなかった。
     けれどこれが現実だった。せめて一言だけでも言いたかった。
    「あまりに強い恋心は貴方の障害になりますよ」
    「誰!?」
     姿は見えない。けれどとても落ち着いた声だった。死後の世界の役人かなにかだろうか。
    「ダイゴサンはどこにいるの?」
     ハルカの問いには答えようとしない。さっきとは別の声がハルカに話しかける。
    「ダイゴさんは、トクサネシティの……」
    「あの家ですね」
     家の形を思い浮かべた瞬間だった。ハルカが何も説明していないのに声は答える。
    「ダイゴさんをどうするの!?」
    「貴方が会いたいと願ったのでしょう。ならばそれを叶えるまでです」
     そんな。まさか。ここに連れてきてしまっては、ダイゴが死んでしまう。それだけはやめて。ハルカが言い終わらないうちに視界が消えた。



     ダイゴのイライラは頂点を通り越していた。あれから30分。紅茶は5杯目、茶葉は3種類目。その他にチョコレートせんべいポテトチップスを並べてるが、ハルカが来る気配が全くない。
     ダイゴは窓に近寄ると、外で日光浴をしているユレイドルに話しかける。主人の声にユレイドルがひらひらを伸ばして来た。遊んで欲しい時にユレイドルはいつもこうする。
    「おせんべい食べる? 1枚だけだよ」
     ダイゴの手からしょうゆせんべいを受け取る。水中で獲物を捕まえたりする触手は器用にせんべいを口に運ぶ。そしてそのままぱっくんと飲み込んでしまった。期待するようにダイゴをみている。もう一枚くれ、といったところ。触手をダイゴの腕にからめて甘える。
    「ダメだよ。ポケモンにあげるには塩分高いんだから。はい」
     かわりにポフィンを出した。あますっぱポフィンはユレイドルの大好物。
    「シンオウ小麦とバターだって。ドライチェリー入りの高級品だよ。こんなことユレイドルにいっても解らないけどね」
     シンオウへ父親の代わりに出張した時のお土産だ。留守中のポケモンの世話を引き受けてくれたハルカには琥珀とソノオの花畑で取れるハチミツ。
     ああまた思い出してしまった。今日はハルカのことを思い出すだけで怒りがぶり返す。満足そうなユレイドルに背を向けてダイゴは紅茶を飲んだ。
     主人の怒りを察知して、ポケモンたちはみな部屋の隅っこの方にいる。ネンドールは気配すら消して部屋と同化している。エアームドはいつでも命令が聞けるよう、ダイゴの後ろにいた。一回も振り向くことはなかったが。
     約束の時間から3時間20分が経つ。
     今日の夕食の買い物に行かなければならない。家の鍵をしめてダイゴは出かける。

     一人分とはいえ野菜は重くてかさばる。そんなときにボスゴドラは荷物を持ってくれるのだ。キャベツにタマネギ、リンゴとカボチャ。牛肉が安かったから多めに買ってしまった。納豆もこれだけあればしばらく料理しなくてもいい。パンは質量の割に場所を取る。タマゴはいつも安いから行くたびに買ってしまう。
     ダイゴが玄関を引いてみた。鍵はかかったままだ。期待などするからこうなる。怒りのこもった手で鍵をあけ、中に入った。
     買ったものを冷蔵庫に入れた。残ったビニール袋をまとめると、後ろからメタグロスがダイゴのことを見ていた。
    「ああ、お腹減ったんだね。今日は何にしようかな」
     メタグロスの金属製のボディを撫でる。この感触がやめられない。固いポケモンの触り心地が大好きなのだ。
     そんな幸せに浸っていると、チャイムが鳴る。さあなんて叱責しようとダイゴはゆっくり玄関に向かう。
    「今何時だと思ってるの?」
     ドア越しに聞いた。その向こうにいるであろう人間に。
    「あ、すみません。夜は遅くないと思ったのですが」
     予想と反する声が返って来る。全く知らない声だ。間違えてしまった。
    「あ、いえ。こちらこそ知り合いかと思ったので。どちらさまでしょうか?」
     強盗でも困る。玄関をしめたまま向こうにいる人に訪ねた。
    「実は貴方に会いたいと言う方に会いました。家がここだと聞いたので来たのです」
    「どういうことでしょうか?」
    「ダイゴサンって人ですよね?」
     違う声がする。声の高さからいって男女二人。名乗らないことも妖しい。玄関の鍵をあけるか開けないか迷っていると、ダイゴの足元にメタグロスがいた。その隣にはエアームドも。何かあったら実力は任せろ、と言わんばかりだ。
    「はい、私はツワブキダイゴですが。その会いたいという人は誰ですか? そしてどちら様でしょうか?」
     チェーンをかけ、鍵をゆっくりと開ける。これで相手から開かれても一回くらいは防げる。
    「この子ですよ」
     隙間から見えた男女二人。頭のキレが良さそうな男と、大きな琥珀色の目が特徴の女。そしてその男の腕の中で眠っているハルカだった。
    「ハルカちゃん!?」
     思わずチェーンを外し、玄関を全開にした。強盗など気にも止めずに。
    「この子とどこで?いやなぜうちに?とにかくお二人とも上がってください」
    「いえ、私たちは帰ります」
    「私たちは長居できません」
     男はハルカをダイゴに差し出す。起きる気配のないハルカを受け取り、二人に上がるよう勧めるがうなずこうとしない。本当にハルカが世話になったのならお礼をしたいし、そうでないならば家の中の方がやりやすい。
     ハルカを腕に抱く。その体は冷たく、長いこと海風に当たっていたかのようだ。
    「本当に何もありませんが、夕食くらいごちそうさせてください。遠慮せずにどうぞ」
     ダイゴは食い下がると、二人はお互いの顔を見合わせて相談している。
    「どうしたらいい?」
    「人間はここで入るのが自然なようです」
     二人はそんな会話をした。ちぐはぐな会話。ダイゴは二人を逃がさないように見る。その目は睨んでるとも言える。
    「ではごちそうになります」
    「ではごちそうになるね」
     家の中に入る二人。ダイゴはハルカを抱いたまま鍵をしめ、チェーンをかけた。すぐには逃げられないだろう。
     ネンドールに二人の世話を頼む。お茶とお菓子を出して、と。ネンドールは解ったと台所にいった。その横にはメタグロスもついている。二人は任して大丈夫だろう。
    「ハルカちゃん、起きて」
     軽く揺すっても叩いてもハルカは起きない。ハルカを寝室につれていく。布団をかけて優しく頬を撫でる。
    「ダイゴ、さん?」
     ハルカが目をあける。
    「ハルカちゃん!? 大丈夫かい?」
    「ダイゴさん!? ダイゴさん!」
     目に涙をためて、ハルカはダイゴに抱きついた。ただごとではない様子だ。ダイゴはなるべく優しくハルカを抱いた。
    「ごめんなさい!私が、ダイゴさんに会いたいっていったから、ダイゴさんが!」
    「どうしたんだい? 何があったの? 嫌な事されたの?」
     泣いてばかりで、ハルカはまともに言うことができない。冷たい背中をなでる。怖いことがあったのだろう。落ち着くまで優しくさすった。
    「ハルカちゃんを送ってくれた人たちがね、今待ってるんだ」
    「ダメ!」
     ハルカは顔をあげる。ダイゴつかむ力が強くなった。
    「ダイゴさん、ダメ……死んじゃう!」
    「どういうこと?」
     かちゃ、と寝室のドアが開く。振り向くとあの二人が立っていた。無機質な表情だ。ダイゴはハルカを自分の後ろへと隠すように向く。
    「起きた」
    「起きましたね、よかったです」
     ハルカはダイゴにさらにしがみついた。二人を見ておびえている。
    「君たち……一体何者なの? 答え次第では実力公使も考える」
     ダイゴは睨む。ひるむとは思っていない。それに二人の背後にはネンドールとメタグロスがいる。合図をすればすぐに動いてくれる。ネンドールはつねにこちらを見ている。
    「それは答えられない。けど私がその子とぶつかっちゃったのだから、その子が行きたいところに送るのは当たり前」
    「小さな子をこんなに泣かすまで何をしたの?」
    「ぶつかったからじゃないでしょうか。相当なスピードでぶつかってしまいましたし、フライゴンもしばらく気絶してましたし。これに関してはこちらが前を見ていなかったからなのです。その子はおろかフライゴンの方に非はありません」
    「それだけ?おかしいだろう?」
    「気に触ったのなら私たちはもう帰ります。すみませんでした」
     あっさりと頭を下げる。二人は足並みをそろえて玄関へと向かう。
    「待ちたまえ!」
     ハルカをこんなに泣かせ、ただで帰れると思うな。ダイゴが男の方を掴む。首根っこを掴んだのだ。
    「……翼?」
     ダイゴの腹には青いものが当たっている。そして掴んでいるのは服の感触なんかではない。目の前にいたのは人間の男であったのに、なにか違う。
    「ラティ……オス?」
     絵本や絵画の中でしか見た事のないポケモン。ホウエンの海を飛び、祝福を与えるポケモンと言われている。ダイゴのつかんでいるのはどうみてもラティオス。赤い瞳が後ろのダイゴを見ている。
    「じゃあ、まさか君は」
     金色の瞳は人間の女と思われていた。正体がバレたと観念してラティアスは本当の姿を現す。ラティオスと対で描かれるポケモンだ。
    「姿消して飛んでたらぶつかった。だからその子とフライゴンは悪く無い。だから送り届けた」
    「人間にしては力が強い方ですね。申し訳ないのですが放していただけませんか」
     ラティオスは穏やかに、そして冷静に言った。ポケモンと話している。その事がダイゴは信じられない。
    「ああ、はい」
    「それでは、改めてすみませんでした。私たちは帰ります」
    「ああ、待って」
     2匹は振り向いた。
    「やっぱり夕食をごちそうしよう。それからでも遅く無いと思う」
     2匹はお互いを見てしばらくだまった。2匹にしか解らない会話をしているようだった。
    「……貴方、ポケモントレーナーでしょう」
    「ポケモントレーナーは私たちを捕まえる。だから一緒にいられない」
     ポケモンとトレーナーが対等というのはあり得ない。それはダイゴが一番よく知っている。
     どんなに仲がよくても所詮は人とポケモン。そしてそのポケモンを理解し、管理するのがトレーナーの役目。上下関係なんてないという青臭い意見をダイゴが持っていた時期もあった。
     違うのだ。あって当然。人はポケモンの状態を見て戦わせる。その逆は決してないのだ。だからこそ一緒にはいられない。どうしても一緒にいるには、ダイゴがラティオスとラティアスを従わせる他、方法はない。
    「待って!」
     ハルカが呼び止める。ラティオスは振り向いた。やや遅れてラティアスが振り向く。
    「あの、海に落ちて死んじゃうって思った時に助けてくれたの、ありがとう!」
    「いえいえ、こちらこそラティアスがすみませんでした」
    「だから、私もお礼がしたい!夕食だけでも!」
     ハルカはラティアスの翼を引っ張る。再び2匹はお互いを見ていた。

    「こんな時間にどうしたんだダイゴ」
     リビングではラティオスとラティアス、そしてハルカがにぎわっている。他のポケモンたちも一緒であるが、フライゴンだけは隅っこの方にいる。ハルカがどんなに呼んでもフライゴンはじっとしている。
     そして台所ではダイゴがポケモンたちのご飯を作っていた。自分のポケモンはまだいい。特にラティオスとラティアスは何を食べているのか不明だ。
    「うん、ドラゴンタイプのポケモンって何を食べてるのか解らなくて。ゲンジなら解るかなあって」
     解らないなら専門家に聞くべきだ。ホウエンリーグの四天王、ドラゴンタイプのゲンジに連絡する。
    「普通のポケモンと同じだ。ポケモンによって好きな味があったりなかったり。ああ、年齢にもよるが人間より味濃くても大丈夫だぞ」
    「じゃあポフィンとかポロックも?」
    「もちろんもちろん。ちなみにボーマンダはゴーヤーチャンプルーが好きだ」
     思わぬ好物に吹き出しそうになる。あの強面なボーマンダがゴーヤーチャンプルーをほおばっているところを想像すると、似合わないところがかわいく思えた。
    「なるほど。ゴーヤはないな。豆腐ならあったかな。ありがとう」
     冷蔵庫の中身と相談して、ラティオスとラティアスの食べるものを作る。そういえばあのまま人間だと思っていたら、今頃はグラタンを食べさせていた。
     ハルカの方は、作ったばかりというポロックをラティオスとラティアスにふるまっていた。おいしいだのまずいだの、三つの味がするとかこっちは五つだとか。


     ダイゴはラティオスとラティアスにすき焼きを振る舞う。甘辛い出し、牛肉、豆腐、ネギ、しらたきの奏でる鍋は誰もが楽しみにする食べ物。2匹はあっという間に平らげ、人間の食べるものはおいしいと感想を告げる。そしてすぐに帰ると言い出した。
     そのままハルカも帰るという。元々今日は夜までには帰る予定だったのだ。ダイゴは2匹と一人を玄関で見送る。
    「ツワブキダイゴ」
     ラティオスは帰り際に言う。
    「全ては縁。過去があったのも今があるのも未来に向かうのも。私たちがツワブキダイゴみたいなトレーナーを知ったのも縁。私たちは興味があります。貴方が今後どのような人生をいくのか」
     靴ひもを結び、ハルカが立ち上がる。そしてフライゴンのボールを開けた。
    「じゃダイゴさん、次に新しい子見せますね!じゃあ!」
     ハルカが一瞬ダイゴを見た時だった。フライゴンはおびえて2枚羽をしまい、ラティオスとラティアスから見えない影に隠れてしまう。
    「フライゴン!? 大丈夫だよ、フライゴン!?」
     ハルカが呼びにいっても、フライゴンは飛ぼうとしない。その羽が震えている。墜落したことがトラウマになってしまったのか、技を命令しても全く言うことを聞かない。
    「ちょっと、フライゴン飛んでよ!そうじゃないとミシロタウンに帰れないよ!」
     いやいやとフライゴンは飛ばない。2枚の羽はトクサネの風にただ吹かれていた。
    「帰る?ハルカの家はツワブキダイゴのところじゃないの?」
     現れたラティアスを見るとフライゴンは地面にうずくまり、起き上がろうとしない。いくら一回墜落したからって、この調子ではフライゴンと共にいることができないではないか。
     そしてラティアスは何を言っているんだ。フライゴンを起こしながら言われた言葉にかみつきたかったが、的確にかみつける材料がない。
    「……フライゴンがその調子なら、私が送って行きましょう。ミシロタウンの、あの家ですね」
     ハルカの考えを読み取ったようにラティオスは言う。そしてハルカが乗りやすいようにラティオスが地面に足をつけた。遠慮しながらもハルカはラティオスの背中に乗ろうとする。慣れないポケモンなのか、中々ハルカも乗ることができない。棒立ちしたままラティオスを見つめてる。
    「ハルカちゃん、早く帰らないと」
    「わかってます、解ってますけど……!」
     フライゴンだけじゃない。空中で衝突し、岩に激突する寸前まで光景を見ていた。そのことがハルカにとってトラウマとなってもおかしくはない。大人ですら二度と乗れなくなる人がいるというのに。
     ハルカの足は震えている。ラティオスの翼を掴むのもやっとだった。けれどすぐに手を放してしまう。
    「ラティオス、ラティアス。せっかくだけど夜も遅いから、明日の朝に方法を考えるよ。君たちはハルカちゃんの恩人だから、またいつでも遊びにきてくれ」
     2匹は顔を見合わせ、そしてダイゴとハルカに一礼すると闇夜に溶け込んで消えていく。
     地面に座り込むハルカに戻ろうと声をかけた。それに気付いてハルカが立ち上がる。
    「しかしどうしようかね。ラグラージはいるのかい?」
     トクサネシティは島にある街だ。ミシロタウンはかなり遠く、空を飛んでいつも行き来していた。空の足が使えないとなると、海なのだが。
    「今日はダイゴさんに新しい子を見せるために、フライゴンとその子しか持ってないんです」
    「その子は水タイプではないのかい?」
    「泳ぎますけど水タイプじゃないんです……」
    「そうか。どちらにしろ今日は帰れないか」
     そして明日の天気は悪い。空を飛べなくなるのがこんなにも不自由など思いもしなかった。
    「じゃあ、せっかくだしその新しい子、見せてくれない?」
     ダイゴがそういうと、ハルカはモンスターボールを取り出した。そして開いたボールから出て来たのは、頭に白い石灰化した兜がある青い竜、タツベイだ。ユウキにもらったタマゴが孵ったのだそうだ。
    「ねえハルカちゃん。タツベイは」
    「知ってます。空を飛びたいポケモンです」
     知ってるなら話は早い。空を飛びたいタツベイが、空を飛べなくなったフライゴンとその主人を、もしかしたら救ってくれるかもしれない。
     そんな勝手な期待をしてはいけないだろうか。タツベイはダイゴをじっと見ていた。

     元気のいい足音の後に鳴るチャイム。玄関を開ける前から訪問者の名前は解ってる。いつもは一人なのだけど、最近は二人で来るのだ。それも仕方ないことなのだけど。
    「いらっしゃいハルカちゃん。ユウキくんも入って入って」
     家の主であるダイゴは小さな友人を迎える。そのユウキは何度きても落ち着かない様子ではある。
    「なんか二人の仲を邪魔しちゃ悪いような……」
     二人の仲を知ってるだけに、なんだか気まずい。ダイゴの友達とかその他の人たちと一緒に遊びに来るのはまだいいのだけど、二人っきりの時間を奪っている。そんな気がするが、ダイゴは気にしないでと笑うだけだった。
     ユウキがそれでもハルカと来る理由。それはハルカの方にあった。
     フライゴンと共に空を飛んでいる時に墜落事故があった。そしてその原因のラティオスとラティアスに助けられた。命は助かった。けれど心に空は怖いという感情を深く刻み込んでしまった。フライゴンもハルカも空を飛ぶ事ができない。
     それをハルカの父親に連絡して迎えにきてもらおうと思ったらなぜかユウキが来たのだ。その理由は、彼の持ってるネイティオ。空を飛んで帰ろうとしたのかと思ったが違った。
    「テレポートで帰ろう。こいつ俺んち覚えてるからそこからなら歩いて帰れるし」
     その手があったのかとダイゴは感心した。有名なオダマキ博士の子供らしく、ポケモンの知識が豊富なのだ。子供ならではのひらめきも。ただその顔は父親に頼まれたから来てやったという顔だった。色々と感受性の高い時期に差し掛かったのだろう。
     そしてその日は二人で帰った。それからというもの二人でやって来るようになったのだ。
     カウンセラーにいってみただの、フライゴンもポケモンセンターに預けてオオスバメと一緒に遊ばせてみただの。そんな報告をしていくが、どれも効果がないことはダイゴにも理解ができる。
     ある有名カウンセラーには、これを機にポケモントレーナーをやめて違う道を選んだらどうかとも言われたと。さすがにそれはないと答えたという。
     
     今日もユウキとハルカはダイゴの家に遊びに来ている。ダイゴは二人のためにお茶をいれている。楽しそうにソファで並んで話しているのが、横目に入った。
     そして同時にわき上がる感情。即座にそれを否定する。僕は何を子供に嫉妬してるんだ、と。
     けれど否定すれば否定するほど、心に入り込んで来る。それはおかしいことだと否定しても。ユウキはハルカの友達であって、父親が知り合いなのだから仲良くても仕方ない。それはダイゴも解っている。それにハルカはジョウトから来た。ホウエンで初めての友達なのだから、特別に仲が良くても当たり前なのに。
     戸棚からスティックシュガーを出した。その瞬間に楽しそうな笑い声が上がる。ダイゴの視線がきつくなった。それに気付かず二人は楽しそうに話している。ハルカのことを言えた義理ではない。ハルカは自分のものではないのだから、仲がいい友達や男の子とか話すのだって彼女の自由だ。そこまで否定する相手とは付き合いたいと思わないだろう。
    「はい、どうぞ」
     紅茶と茶菓子を二人に出す。嬉しそうにハルカはカップに口をつける。俺はこんなもの飲まないけどもったいないから飲んでやるといった顔でユウキも口をつける。
    「ダイゴさん」
     ユウキがいじわるそうな目をしてダイゴを見る。もしや頭の中を読まれたのだろうか。ダイゴは冷静を装って返事をする。
    「バトルフロンティア難しいですよ!」
    「ああ、エニシダさんの」
    「知り合いの息子がチャンピオンだったから、難しさの調整をしてもらったって言ってたけど、皆が皆チャンピオンレベルじゃないんですから! 解ってます!?」
    「そんなこといったって、頼まれた以上はやるしかないさ。結果的にやたら強くなってしまったからね、そこは反省しているけど」
     窓の外からユレイドルが覗いていた。その後ろにはボスゴドラが。珍しい客でもないだろう。ダイゴがなだめようと窓を開ける。
    「ツワブキダイゴ」
    「ツワブキダイゴ」
     同じタイミングで聞いた事のある声がする。それは覚えてる。
    「お久しぶりです。今日は様子みにきました」
     少しずつ姿を現していく。青い翼のラティオスだ。ハルカが墜落した時に助けてくれたポケモンで、隣にはラティアスもいた。こんな昼間に訪ねてくるとは思わなかった。
    「あれ、どうしたの? 一週間前も来たけどお久しぶり?」
    「長いこと会わないと人間はお久しぶりと言うらしいのですが違うんですか? 用件があるのでハルカ呼んでください」
    「ハルカちゃんは今来てるけど、お友達も一緒で……大丈夫なの?」
    「……じゃあ姿かくして様子みますので入ってもいいですか?」
     窓からラティオスとラティアスは姿をまわりの景色に溶け込ませて入って来る。リビングに戻って来るダイゴを、ユウキとハルカは不思議そうに見た。ラティオスとラティアスには気付いていないみたいだ。本格的に溶け込むと、ダイゴですらもうどこにいるか解らない。
    「ああ、いやちょっとユレイドルとね遊んでたんだ」
     軽く言い訳をして逃れた。ユウキは呆れたような目で見ている。
    「ツワブキダイゴ、この子がハルカの友達?」
     ダイゴの後ろからラティアスが小声で話しかけてきた。2匹ともダイゴの後ろにいるようだ。


     ポケモンの話で盛り上がる。ダイゴはうんうんと頷いていた。はきはきと喋るユウキに主導権を奪われっぱなしだ。全てハルカではなくダイゴに話しかけてるような、そんな感じだ。俺はこんなにポケモンのことに関して知識があるんだと見せつけんばかりに。
     専門外となるとダイゴの知識も妖しい。自分のポケモンたちに関しての知識は負けないと思っているが、あまり意識のしなかったこととなると疎い。コンテストは観客でしかないし、ポケスロンとなればテレビで見るくらい。
     そういった弱点を見抜き、次々にあれはどうだ、これはどうだと話しかけて来る。きみの勝ちだよ、と遠回しに言ってもユウキは話す事をやめない。完全に認めるまでやめてくれそうにない。ユウキの隣ではハルカが笑っていた。
     時計は夕方を指していた。ユウキの攻撃も止んでいた。ダイゴに積極的に話しかけるのは変わらない。
    「そろそろ夕飯だね。何食べようか?」
     ダイゴがそういって席を立つ。
    「じゃあその前に挨拶しましょうか」
     今まで黙っていたから寝ていたのかと思ったがそうではない。ラティオスとラティアスは確実にダイゴの後ろで見ていたのだ。そしてユウキとハルカの前に姿を現す。
    「こんにちは、初めまして。ラティオスです」
    「ラティアスです。そしてハルカ久しぶり」
     ユウキは驚いて何も言えなかった。いきなりポケモンが現れれば驚かないはずがない。そしてそれが喋っている。絵本や物語の中でしか語られていないラティオスとラティアスなのだからなおさら。いくら詳しいといっても、実物を見た事がなかった。
    「な、なんで……ダイゴさんちに……」
    「ハルカとぶつかったのが私。そんな仲だけどやっぱり来ない方がよかったかな」
    「とりあえずハルカに用事だけ伝えて帰りましょう」
     ラティオスは光る石をハルカに見せた。真珠のようだけど、全く見た事がない。ダイゴも思わずその石を見た。
    「空を飛ぶのが怖いのは、多分人間じゃ治せません。人間で治るなら、ハルカが空を飛ぶのが怖いとツワブキダイゴに言ったところで解決されてます。これは心のしずくで、生き物の心を浄化することができます。記憶が抜けるというわけじゃないので、空を飛んで怖かったという記憶は残りますが、もう二度と飛びたく無いという傷は回復できます」
    「けどね、もしかしたらなんだけど、ハルカがその前後で思ってたことも普通になっちゃうというか……あっさり言うと、ツワブキダイゴが好きだったっていうことがなくなるかもしれない」
     その場の空気が重たくなった。誰もが声を出す事ができない。
    「どうしますか? この石をハルカの心の傷に当てる事はできます。今までハルカがツワブキダイゴと一緒にいた記憶も残ります。けれど気持ちだけは残るかどうか疑問です。人間のガンの治療で、正常な組織もごっそり取ると聞きました。それみたいなものだと思ってください。そして消えた気持ちは戻りません。これは確実に言えます。その賭けに出るならば、私たちは協力します」
     そのまま空を飛べなければトレーナーとして不自由なことが待っているのは事実だ。交通機関があるけれど、お金がかかる。ポケモンに全ての投資をするトレーナーとしては死活問題だ。
     けれどハルカにはそれ以上に告げられた事実は衝撃的だった。ポケモントレーナーを続ける代わりが、ダイゴと今まで築いた関係を全て捨てることになる。どちらも選べないし、どちらも選びたい。
    「それだけです。人間が人間を好きになってその人が大切なのは知っています。だからこそハルカにはよく考えてほしいです。ハルカにはユウキみたいな仲のいい友達もいますし、ツワブキダイゴのことを忘れるわけじゃありません。そして絶対に気持ちがなくなるわけじゃないです。半分くらいの確率だと思います。あくまでも、最悪の事態の話。そこは間違えないでください」
     ラティオスとラティアスはそれだけ告げると窓を開けた。
    「どうするかまた明日来ます。保留なら保留でいいので、答えを聞かせてください」
     景色に溶け込み、ラティオスとラティアスは消えた。夕方の冷えた風が家の中に入り込む。


     その後の夕食で三人はろくに話もしなかった。話してはいけない雰囲気がそこを支配していた。そのかわりに、つけっぱなしのバラエティ番組がずっと喋っていた。
    「まさかラティオスとラティアスと知り合いとは思わなかったな」
     ユウキが沈黙を破った。食べかけのじゃがいもが箸から落ちる。彼もが動揺していることは解る。
    「僕も最初はラティオスとラティアスだと解らなかったんだけど」
     その後は会話が続かなかった。ハルカはずっと黙ってテレビを見ていた。彼らの話が最初からないかのように。


     夕食の片付けを手伝い、一段落したところでユウキは帰ろうとハルカに声をかける。その言葉にハルカは立ち上がった。
    「あの、ユウキごめん。今日はダイゴさんちに泊まる。お父さんにもそう言っておくから。ごめんね、いつもわがままいって連れてきてもらってるのに」
     ユウキは何かに気付いたようだった。黙ってダイゴに一礼すると、玄関から出て行く。ダイゴはその姿を見送った。
    「ユウキくんの前じゃ言えなかったんだね」
     隣にいるハルカに声をかけた。ずっと何か言いたそうにしていたから。
    「ダイゴさん。私はジムリーダーになって、その街の人たちにポケモン教えたり戦ったりしたいです」
     とりあえず座ろう、とダイゴはハルカを座り心地のよいソファに座らせる。
    「だから、ポケモントレーナーで不自由するのは辛いです。私はラティオスの力を借りようと思います」
    「それがハルカちゃんの決意なら僕は止めないよ。そこまで覚悟しているのは凄いと思う」
    「でもダイゴさんが好きだってことを忘れちゃうのは辛いです。ホウエンに来て、ポケモンもらって石の洞窟で会ってからずっとダイゴさんが好きで……それなのに忘れたくないです」
    「大丈夫だよ。ラティオスの言っていたのはもしかしたら、じゃないか」
    「でもそのもしかしたらが来たらどうしますか? ダイゴさんのことを覚えていても、ダイゴさんが好きだったことはなくなるなんて私には耐えられません」
     ハルカはダイゴに抱きついた。そしてダイゴをソファにそのまま押し倒す。
    「抱いてください。ダイゴさんに抱かれたという記憶を、ダイゴさんが好きなうちに残しておきたいんです」
     逆光にハルカの表情がさらに艶かしく見えた。ダイゴは目の前にあるごちそうに手をのばさないわけにいかない。ハルカの腕をつかんで、自分の方に引き寄せた。そしてもう二度と離れないように強く抱きしめた。
    「ハルカちゃんが好き。それはハルカちゃんが僕のことを好きじゃなくても変わらないよ」
     唇に触れる。やわらかくて、ずっと触れていたい。このまま一緒になれたらいいのに。ちいさな舌を包み込んでも足りない。心がこんなに触れているのに、体は一度たりともつながった事がない。だからこそ忘れないうちに、愛しているうちに。
     ハルカの手がダイゴのズボンを緩めてるのを感じる。彼女の手がダイゴの下着越しに触れているのも感じる。
     熱を帯びていた。いつでもいいと言うかのように。それを解っているからこそ、ハルカはダイゴの下着の中に手を入れた。
    「よく考えて。ハルカちゃんが僕のことを好きじゃないのに、僕としたことだけが記憶残る。好きじゃない人間としたことを後悔してしまうよ」
     ハルカの手を取る。このままさせておきたかった。そして彼女によっていかせてほしかった。けれどそれは二人にはまだ禁じられていること。
    「ダイゴさんは、やっぱり私としたくないんですか?」
    「違うよ。したいからこそできないんだ。もしハルカちゃんと結婚して子供ができてね、その子がまだ14才なのに10も年上の男としているなんて聞いたら、僕はその男をぶちのめしに行くかな。それに僕はハルカちゃんが抱けないからって不満に思ったこともない」
     ハルカの体によって押し付けられている。それだけでまだかと急かされてるようだった。
    「でも、嫌です。ダイゴさんが好きじゃない私はやだ!」
    「大丈夫」
     ハルカの頭を撫でる。冷静を装って。でなければ本当にこのまま押し倒してしまいそうだ。
    「ハルカちゃんが僕を忘れることなんてない。もし僕のことを好きだということを忘れても、僕はきみをもう一度好きにさせる自信がある」
     ハルカは泣くのを必死にこらえていたようだ。目がいつも以上に潤んでる。
    「それにハルカちゃんが僕をこんなに大好きなのに、忘れるわけなんてない。僕はそう信じてる」
     ダイゴにしがみつくように抱きついた。ダイゴの名前を何度も呼んだ。子供が親を探すかのように、ハルカは離れない。
     そんな彼女を今すぐ脱がせ、一方的にでも犯したい。泣いても叫んでもかまうものか。自分のものとして一生閉じ込めておきたい。そうすればこんなに悩まなくて済むことだ。
     ダイゴが性欲につかった思考から我に返ったのは、名前を呼ばれたからだ。
    「一緒にお風呂はいりませんか?」
    「入りたいのはやまやまだけど、先に入っておいで。僕はやることがあるから」
     こんな時に裸を見せるなど、襲ってくれと言わんばかりではないか。ダイゴだからこんな関係を保てるが、他の男だったら骨の髄まで食べられてしまっている気がする。
     それにまだ急かしているものの処理もしなければならない。ここまで熱を持ってしまったら後にひけないのだ。
     ハルカが手袋を外す。モンスターボールを掴みやすいのだそうだ。なんとなく彼女を見ていたが、ダイゴは気付いた。彼女の左手薬指に、自分があげた指輪があることに。あれはそう、ハルカがダイゴのことを好きでいると約束した指輪。
     もしハルカが好きだということを忘れても、二人で過ごしたたくさんの時間までは忘れないと言った。何を恐れているのだろう。過ごした時間に、好きという記憶が残っていないはずがない。
     大丈夫だ。ラティオスの言った通りにはならない。ダイゴは確信した。


    「それでいいのですね?」
     次の日、ラティオスは二人の答えを聞いて心のしずくを取り出した。ハルカの隣にはフライゴンがいる。同じく心が傷ついてしまい、空を飛べなくなってしまったのだ。
    「では、いきましょう。ラティアス」
    「うん、ラティオス。ハルカ、心のしずくをじっと見ててね」
     心のしずくの輝きが増す。白く光ったり赤だったり黄色だったり。緑、青、紫と色を変えて行く。それは光の洪水となって、ハルカの心の中に入って行く。フライゴンはじっと見続けていた。
    「まだ目を閉じちゃダメ」
     耐えきれずに目を閉じたくなる。目をほそめて心のしずくを見続けた。
    「まぶしい……」
     金色の光になった時、ハルカは目を閉じる。同時に心のしずくは元の真珠のような石に戻っていた。
    「どう? ハルカ」
    「これで終わりですが、どうでしょうか? 目をあけてみてください」
     ハルカは目を開ける。隣ではフライゴンがぱたぱたと2枚の羽を動かした。部屋の窓から海風に乗って空へ飛んで行く。
    「飛んだ! フライゴンが飛んだ!」
     ハルカは外に出て、フライゴンを呼ぶ。そしてその背中に乗る。恐怖心はもうない。フライゴンの体が浮き上がっても何も怖くない。エアームドに手伝ってもらったのに、ちょっと浮いただけで吐いてしまったこともあった。タツベイと一緒に段差から降りてみたが、そんなに高くないのにしばらく歩けなくなってしまった。
     そんなことが嘘のように、空の風が気持ちいい。この新鮮な感じは、初めてフライゴンの背に乗った時以上だ。
     ハルカとフライゴンを見上げ、ダイゴは嬉しく感じた。久しぶりにポケモンに乗って空を飛んでる彼女は、本当に生粋のポケモントレーナーらしい。
    「ツワブキダイゴ」
     後ろからラティアスが話しかけた。
    「ハルカの心はどうなったか解らない。けど傷はもう痛まない」
    「そうか。ありがとう、ハルカちゃんのためにしてくれて」
    「元々は私がぶつかったから。ツワブキダイゴとも知り合いになれたし、ハルカは気のいい人間だ。ユウキもポケモンのことたくさん知ってた」
     最初は一緒にいられないと拒絶されたものだった。けれどハルカのこともあって、ダイゴの家に時々来るようになっていた。嫌々のようだったが、いつの間にか友人くらいの親しさにはなっていた。
    「またいつでも来てくれ。留守の時もあるけれどね」
    「意外に楽しかった。また来ると思う」
     ポケモンの友達がいるなど、おそらく誰に言っても信じてもらえないだろう。ダイゴもこんなに話せるポケモンがいるとは思っていなかったのだから。
    「それで、もしハルカがダイゴのこと好きじゃなくなってたら」
    「それはないと思っている。あの話は万が一、ってことだろう?」
    「そうだけど……その確率は半分だよ?」
    「じゃあ賭けようかラティアス。僕はハルカちゃんを信じる」
     ダイゴはフライゴンと共に空を飛んでるハルカに声をかける。戻っておいで、と。



     ミシロタウンのオダマキ博士の研究所で、ユウキとハルカはラティオスとラティアスの話をしていた。実際にいたこと、そして心のしずくと呼ばれる綺麗な石を持っていたこと。それは心の傷を癒す話もした。
    「なるほど、だからハルカちゃんは突然空を飛べるようになったんだね」
     オダマキ博士は何かが解ったように頷いた。
    「はい! すっごく気持ちよくて、怖かったのが嘘みたいです」
     目の前のジュースを飲みながら、ハルカは答える。ユウキと言えばラティオスとラティアスから聞いた話をまとめていた。時折、ハルカのタツベイがかまって欲しそうにユウキを見上げている。
     来客が研究所のドアを叩いている。オダマキ博士は迎えるためにその場を離れた。
    「そういえばハルカ……その……ダイゴさんは?」
     ユウキの問いに、ハルカはそっと左手の手袋を取った。そして薬指にある指輪を見せびらかす。
    「私がそう簡単にあんなイケメン、逃がすはずがないわ!」



    ーーーーーーーーー
    空を飛んでる最中にニアミスとか接触事故とか墜落事故とか絶対あると思う。
    かつてトレーナーだった人たちがやめていくのはそういう事故のトラウマかかえて夢を諦めなければいけないとかあってもおかしくない。
    ダイハルでかいたけれどダイハルじゃなくてもいいよねなんて声は聞かない聞こえない。
    【好きにしてください】


      [No.2625] ■チャット会テーマ募集 投稿者:No.017   投稿日:2012/09/19(Wed) 20:01:11     162clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    今週末(土曜日くらい)にチャット会をしようと思ってます。

    何かテーマあったらください。
    ポケモン小説に関することがいいです。

    あと、今後のマサポケの方針とかも相談できたらと思います。

    よろしくお願いいたします。


      [No.2624] 色違いにする為に 投稿者:門森 輝   投稿日:2012/09/18(Tue) 22:12:11     249clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ――次のニュースです。
     故意に自分のシャワーズに洗剤を混ぜ軽傷を負わせたとして、ポケモン愛護法違反の容疑でタマムシシティ在住、会社員のアクァリ容疑者(34)が逮捕されました。
     アクァリ容疑者は昨夜午後8時頃、自宅にて溶けさせたシャワーズに塩基性洗剤を混ぜ込み怪我をさせた模様です。その後シャワーズの異変に気付いた容疑者はポケモンセンターを訪れ、検査の結果ごく微量の水酸化カリウム等が検出された為ポケモンセンターの職員がアクァリ容疑者に話を聞いた所、事件が発覚致しました。
     容疑者は、「同僚が色違いのポケモンを持っているのが羨ましかった。シャワーズを塩基性にしてフェノールフタレインを混ぜれば色違いの様になるんじゃないかと思った。怪我をさせるつもりはなかった。ポケモン程の耐久力なら何ともないと思っていた。シャワーズに謝りたい」と反省しているとの事です。
     次のニュースです――

    ――――――――――――――――――――

     化学の力ってすげー! 今じゃ指示薬を使ってシャワーズを様々な色に変える事が出来るんだと! 
     という訳でこんなの出来てしまいました。細胞が水分子に近いならシャワーズを溶媒に出来るんじゃないかとか考えた結果がこれです。化学に詳しくないので色々間違ってそうですが。
     もしポケモンにとって何ともないとしたら、BTBやらメチルオレンジやらで黄色いシャワーズとか赤いシャワーズとかも出来ますかね。アシッドボムや胃液くらったら色が変わったりとか。それでもってシャワーズ変色キットなる物が市販してたりとか。夢が広がりんぐ。シャワーズかわいいよシャワーズ。
     因みに容疑者の名前はシャワーズのフランス名「Aquali」から。浮かばない時こういうの便利ですね。

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【溶かしてもいいのよ】
    【化学の力ってすげー!】
    【シャワーズかわいいよシャワーズ】

     9/19追記:本文と後書き微修正


      [No.2623] Re: 祝! ポケダン新作発表! 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/09/18(Tue) 19:15:50     137clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    HAY!闇のディアルガは最終的に主人公、パートナー共にレベル46まで育ててやっと倒した紀成です!はじめまして!
    ふっかつのタネ売ってたとかバカだよね!そして空探イーブイはパートナーにしてはいけなかったよ!
    HP少なすぎ+特性発動で全く使えやしねえ!



    > ゲンガー「ケケッ、とうとうオレたちイジワルズの活躍をドラマチックに描いた待望の新作が発売するってのか」
    >
    > ハスブレロ「んなわけねーだろ」

    辛辣なコメントありがとう
    あの時はまだゲンガーの可愛さに気付いていなかったのだよ 今更やる気起きないけど


    > グレッグル「グヘヘェ……よーしビッパ、発売決定を祝して今からうんめいのとうのてっぺんまで登ってこい」
    > ビッパ「ぎゃああぁぁぁぁでゲスうぅうぅぅぅぅ!!」

    初ポケダンは時の探検隊でした 後輩に貸して返って来てないけど……
    エレキ平原のレントラーが倒せないって言ってたなあ


    > ヨノワール「おいヤミラミ共! Wiiの宣伝はもういい! 至急3DS宣伝の準備を!」
    >
    > ヤミラミ「ウイィッ!!?」

    鬼畜かヘタレか、それが問題だヨノワさん ありがとう好きです結婚してくれー

    > ジュプトル「ヨノワール、やはりキサマが黒幕か」

    ちょっと違うぞジュプトル!空のスペシャルエピソードはガチ泣きした



    > モルフォン「新技ちょうのまいからのぎんいろのかぜで今まで以上に暴れてやんぜ」
    >
    > デンチュラ「ふっかつのたねなんぞ食わせるか」
    >
    > ゴローニャ「がんじょうで堪えてじしんで全体攻撃します」
    >
    > チラチーノ「夢特性次第で無双します」
    >
    > エルフーン「いたずらごころでおいかぜします」

    ごめんなさいお願いだからそれだけはやめて子供が泣いちゃう
    どうせならエンディング後に出てくるチートダンジョンに出てきてくれ……


    >
    > ポケダン新作発売決定おめでとう!

    おめっとさんです


      [No.2622] 【またも】 守るべき者 【二百字】 投稿者:ラクダ   投稿日:2012/09/17(Mon) 23:23:22     95clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     友達に貰った卵からリオルが孵った。
     食べるのが大好きな男の子。食事時の期待に満ちたつぶらな瞳が、ぶんぶん振られる短い尻尾が、ああもう可愛くてたまらない! 
     君の幸せはあたしの幸せ。絶対に、守ってあげるから!



     ボクが大好きなのは、美味しいご飯と優しいご主人様。
     沢山食べるとにこにこ笑ってくれる、それが嬉しくてボクも幸せな気持ちになる。
     早く大きくなって、あなたを守れるくらい強くならなきゃ。
     待っててね、ご主人様!



    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

     たまにはほのぼの系も書いてみたくなった。
     犬族の、信頼と愛情いっぱいの視線っていいですよね!


    【と言いつつ私は猫派だ】
    【読了いただきありがとうございました】
    【なにをしてもいいのよ】


      [No.2621] 祝! ポケダン新作発表! 投稿者:サン   投稿日:2012/09/17(Mon) 16:23:58     125clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ポケモン広場にて

    キャタピー「ねぇトランセルくん! ポケダンの新作が発売するみたいだよ!」

    トランセル「本当かいキャタピーちゃん! それはめでたいね。ずっと音沙汰なかったから心配してたんだよ」

    フーディン「ふむ……確か2009年に冒険団シリーズが出たのが最後であったな」

    ゲンガー「ケケッ、とうとうオレたちイジワルズの活躍をドラマチックに描いた待望の新作が発売するってのか」

    ハスブレロ「んなわけねーだろ」

    ガルーラ「おばちゃん、リストラの予感がするんだけれど、どうしてだろうねぇ」

    カクレオン(弟)「ちょちょちょちょ、何かワタシの姿も見当たらないのですが」

    カクレオン(兄)「まあまあ。心配いりませんよ。アナタの存在は、みなさんの心の中で生き続けるのですから」

    カクレオン(弟)「に、兄さん……ううっ、兄さん! って、納得できるかあぁぁ! 出番よこせやぁぁ!」



    プクリンのギルドにて

    ペラップ「いやーめでたい♪ 発売日が待ち遠しいなぁ♪」

    プクリン「ワクワク♪ ワクワク♪」

    チリーン「親方様はやっぱりレギュラーキャラとして登場するんでしょうか……」

    キマワリ「製作者側に愛されてそうですもんね……」

    ドゴーム「ううむ、それにしてもこのタイミングで発表とは。誰も予想できなかったな」

    ダグトリオ「いや。ワタシたちは赤緑が発売したころから予想していたが」

    ディグダ「やっぱりパパはすごいや!」

    ヘイガニ「ヘイヘイ……ほんとかよ……」

    グレッグル「グヘヘェ……よーしビッパ、発売決定を祝して今からうんめいのとうのてっぺんまで登ってこい」

    ビッパ「ぎゃああぁぁぁぁでゲスうぅうぅぅぅぅ!!」




    未来世界にて

    ヨノワール「何っ!? 3DS専用だと!?」

    ヤミラミ「ウイイイーーーーーー!!」

    セレビィ「まあいつかは新ハードに変わっていくものでしょうけど、持ってない人にはきついわよね」

    ヤミラミ「ウイイイーーーーーー!!」

    ヨノワール「おいヤミラミ共! Wiiの宣伝はもういい! 至急3DS宣伝の準備を!」

    ヤミラミ「ウイィッ!!?」

    ジュプトル「ヨノワール、やはりキサマが黒幕か」



    楽屋裏にて

    イーブイ「っと待ったあぁぁぁ! 全国1億5000万のイーブイファンの落胆する声が聞こえんのか! 7種類の分岐進化ができるこのキュートでセクシャルな魅惑のもふもふを差し置いて、幼女の髪に寄生したドラゴンなんぞが主人公候補に選ばれるとかどういうことだあぁぁ!!」

    ニャース「馬鹿な……あの電気鼠がいるのなら、ニャーが選ばれる道理では……」

    パラセクト「本家でボックスの肥やしにされていたオレたちの出番か」

    モルフォン「新技ちょうのまいからのぎんいろのかぜで今まで以上に暴れてやんぜ」

    デンチュラ「ふっかつのたねなんぞ食わせるか」

    ゴローニャ「がんじょうで堪えてじしんで全体攻撃します」

    チラチーノ「夢特性次第で無双します」

    エルフーン「いたずらごころでおいかぜします」



    ポケダン新作発売決定おめでとう!


      [No.2620] 【ポケライフ】Offshade 投稿者:NOAH   《URL》   投稿日:2012/09/17(Mon) 15:55:38     116clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    色違いを見つけた。ちなみに2匹。
    ズバットとメノクラゲの2匹で、よく見ると、2匹ともメスである。

    ここはホウエン地方の南東に位置する小さな島村・ムロタウン。
    その近くにある洞窟の前の砂浜に、瀕死手前の状態で倒れていた。
    ズバットはまだ、翼をバタバタとさせて、何とか飛ぼうとしている元気はまだあるが
    問題は、その横で力なく倒れているメノクラゲの方で、かなり酷かった。

    麻痺状態に加えて、体中大きな怪我だらけ。
    普段はゼリー状のツルツルとした体は乾燥気味だ。
    よく見ると血も出ている。息はしている。しかし、意識は無い。

    早く治療しないと、このままでは死んでしまう。
    重症のメノクラゲをそっと抱き上げると、ズバットが隣で
    キィーキィーと、先程より甲高く鳴き、威嚇してきた。
    どうやらこのズバット。メノクラゲを守ろうとして返り討ちにあったらしい。

    「大丈夫だ。落ち着けよズバット。俺はこいつをポケモンセンターに連れていくだけだ。」
    「キィー!キィー!」
    「大丈夫。女の子に手荒なマネはしない……信じてくれないかな?」
    「キィー……。」

    ズバットは悲しそうに、耳を垂れ、俯く。
    友達であるメノクラゲを守れなかったことを悔やんでいるようだ。

    「大丈夫。お前の友達は必ず助ける。俺はタケル。
    しがないトレーナーだが、お前やこの子を守ることはできる。
    だから、信じてくれ、ズバット。」

    ズバットは、悲しそうな表情のまま、俺に抱き着いてきた。
    相当悔しかったし、悲しかったし、何より辛かったのだろう。

    「よしよし。よく頑張ったな……大丈夫。大丈夫だから。な?
    さあ、早いとここの子を助けに行こうぜ?」

    ズバットは泣きじゃくりながら頷く。
    俺はもう一度、彼女の頭を撫でてからメノクラゲと一緒に
    腕にしっかり抱えると、ムロタウンのポケモンセンターへ、大急ぎで向かった。


    *あとがき*
    NOAHです。今回は色違いに関するお話し。
    タイトルの意味はそのまま色違いです。

    ズバットとメノクラゲにした理由は、初めてサファイアをプレイしたとき
    ムロジム攻略に意気込んでポケモンを育てようとムロタウンの北の洞窟で
    偶然色違いのズバットに遭遇。

    そのあとボロの釣竿を貰ってさっそく使い
    初めて釣り上げたのが、色違いのメノクラゲでした。
    同じ日に2匹の色違いに出会ったことに興奮したのはいい思い出です。

    サファイアではその後も大活躍してくれた
    愛着のある2匹です。そのため、この2匹を主幹に置いて書いてみました。
    私がどくタイプ好きになったのもこの子たちのおかげです。


    NAME:タケル
    モデルはRSE の男主人公。性格は勇敢
    パートナーはミズゴロウのアグリ。性格は慎重


    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】


      [No.2619] 前巻までのあらすじ 投稿者:No.017   投稿日:2012/09/14(Fri) 00:27:09     96clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    前巻までのあらすじ (画像サイズ: 600×841 94kB)

     舞台はホウエン地方、カイナシティ。
     カイナ市立大学の学生であるミシマはある日、たくさんのカゲボウズに憑かれた青年、ツキミヤコウスケに出会う。ゴーストポケモンを研究する彼女は研究目的でツキミヤに交際を申し込んだ。
     なぜ彼にはこんなにもたくさんのカゲボウズが憑いているのか――ツキミヤをより深く知る為に交際を続けるうち、彼女は同大学教授のオリベからその過去を聞かされる事になる。それはかつてこの大学の教授であったツキミヤの父親が失脚した事件と大きく関わっていた。
     専攻の変更を提案するオリベ。だが、ツキミヤは拒絶する。なんとかツキミヤに歩み寄ろうとするミシマであったが、自身の過去と孤独につけ込まれ、カゲボウズ達に取り込まれてしまう。ツキミヤの言葉に従うままにすべてを委ねようとしたミシマだったが、彼女が土壇場で出した結論は、絶望ではなく前に進む事であった。
     トレーナーとして旅立って行くミシマ、彼女を見送り大学に残るツキミヤ。
     一方でオリベも諦めていなかった。季節は初夏から冬へと移り変わる。



    ■収録作品
    霊鳥の左目………………7
    霊鳥の右目………………13
    半人………………………191
    (全338P)

    ■各話紹介

    ・霊鳥の左目
    豊縁昔語より。古代ホウエン、仏師の無念。

    ・霊鳥の右目
    季節は冬に移り変わる。
    院試の季節となり、考古学研究室の院試を受けるツキミヤであったが、彼の進学を望まぬ教授達とオリベの工作で、民俗学研究室の門を叩く事になってしまう。
    だが、彼の研究室入りを望んでいたはずのオリベは一転、ツキミヤに妙な課題を出したのだった。
    一方、カイナシティではトレーナーを狙った通り魔事件が続発していた。

    ・半人
    30年前、カイナシティ。
    カイナ市立大学に入学したオリベはツキミヤソウスケ(ツキミヤの父)と出会う。
    ツキミヤと親しくなったオリベであったが、彼自身には将来の目標もやりたい事も無くひたすらに無気力であった。
    ある日、考古学実習をサボっていたオリベは古墳に侵入し、何かを踏みつけてしまい……。



    霊鳥の左目以外、全部書き下ろし(320Pくらい)になります。
    前巻と合わせてぜひよろしくお願い致します!


      [No.2618] 半人(サンプル 途中まで) 投稿者:No.017   投稿日:2012/09/14(Fri) 00:20:58     73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ニンゲンになりたかった。
     その手に筆を持ち、ノミを持ち、何かを作り出せるニンゲンに。


     一浪で入ったカイナ大の入学式、その入場待ち列は騒がしかった。多岐にわたる学部・学科、それだけの人数を一気に収容できる施設は大学構内に無かったから、それは博物館近くのコンサートホールで行われた。入学式も、卒業式も、この大学は伝統的にそうらしい。
     何、つまらないイベントだ。学長の長い挨拶に始まって、学部長の挨拶、教授陣の紹介が始まる。これがえらく長いのだ。こんなものは学校側の為にあるものだ。あるいは二階席で式を見守る保護者達の為のものだ。つまりは社会的対面を満足させる為のものに過ぎない。
     吹奏楽部の演奏が入ったところで一度、休憩が入る。その時点でオリベは抜け出した。入学式を抜け出した。ここには自分を監督する両親は不在である。要するに自身がここにいる必要は無いと彼は悟った訳だ。それならば少なくとも在学中は暮らす事になるであろうこの街を見ておいたほうがよほど有益であろう。彼はそう考えて、入学式を抜け出したのだった。
     カイナシティにはつい数日前に越してきたばかりだ。新居は間取りしか見ていなかったが、ひどいボロアパートだった。送られてきた荷物も大した量は無く、開けるのに時間はかからなかった。ホウエンの入り口、カナズミまでは寝台列車に乗り、それからは本数の少ないローカル線の乗り継ぎを繰り返した。ずいぶんと遠くに来てしまった。だが、彼自身の望んだ事だった。
     そういえば市場にはまだ行った事がなかったな。そう思って彼は目標をそこに定める事にした。バスを使えば近いらしいが、何せ金が勿体無い。ホールの近くに立っていた看板地図と睨めっこをして、カタヒラ川の河川敷を通って向かう事にした。カタヒラ川は大きな川であった。海に流れ込む直前である川の向こう岸は遠い。向こう岸に開花の時期が終わって葉ばかりになった桜が見えた。カイナシティはホウエンでは大きいほうの都市だったが、こうして少し外に出ればやはり田舎である。橋をかける以外の目的では人の手が入っていないように見えた。広い土手には石が転がっているか、背の高い草、あるいは低木が無秩序に生えている。時折盛り上がり丘になっている場所がいくつもあった。そんな風景がずっと続いているのだ。海に近いここの空ではキャモメがたくさん飛んでいた。きっと草原にも様々なポケモン達が潜んでいるに違いない。
     見れば数メートル向こうで、高い草ががさがさと揺れている。なかなか揺れが大きく、大物のようだった。オリベは少し身構えた。揺れる草がだんだんと上に近づいてきたからだった。
     が、草を掻き分けて歩道に現れたのは予想に反して人間であった。出てきたのは色の白い男だった。スーツを来ていたが、草の葉があちこちについていて台無しになっていた。その後に続いて何やら小さめの黒いポケモンが現れた。黒棒に大きな目玉が一つ、それは宙に浮いていた。
    「…………、……」
     オリベがあっけにとられていると、そのトレーナーと目が合った。
    「やあ、こんにちは」
     トレーナーが言った。
     それがツキミヤソウスケとの出会いだった。
     淡い色の髪でくせ毛、歳は同じくらいか。後に話を聞くと、同じく入学式をサボっていたらしい。
     奇縁という言葉がある。不思議な縁という意味であるが、ツキミヤとの関係はまさに奇縁であろう。今でもオリベはそう思っている。

    *

     私の目はヒトより遠くを見つめる事が出来たし、ヒトが見る事の出来ないものを見る事も出来た。たとえば先の事だ。
     近いうちに雨が降るよ。
     そう伝えるとヒトは私に感謝を捧げた。
     私はヒトに無い能力(ちから)をたくさん持っていて、ヒトビトはそんな私を神様と呼んだ。この土地では私達の一族は特に大切にされていた。ヒトが持たぬ能力(ちから)。それをヒトは畏れ、敬った。
     けれどヒトのほうがずっと多くの事が出来るではないか、と私は思う。
     私はある時、一人の青年に出会い、一層強くそう考えるようになった。

    *

     ツキミヤは志ある学生であった。何せ動機がしっかりしているのだ。考古学をやりたい、と彼は語った。それで人文科学科に入ってきたらしい。何でもホウエン地方というのは、遺跡の宝庫であるらしく、もっと高いランクの大学に行けるにも関わらず、わざわざここを選んだらしかった。
     実家から離れたい、行ける大学、そういう理由でホウエン地方を選んだ自分とはえらい違いだとオリベは思った。
    「カタヒラ川の流域って古墳群なんだよ。ちょっと探検しててね」
     と、ツキミヤは語った。なるほど、入学式をサボっていたのはそういう事か。
     いわゆる「意識が高い」連中をオリベは毛嫌いしていたが、ツキミヤとはどういう訳か馬が合った。何というか彼は屈託が無かった。キャンパス内ですれ違えば挨拶をしたし、学食や講義で一緒になれば、隣に座って話しかけてきた。
     だがその一方で、オリベはだんだん講義に出なくなった。始まったばかりの講義にはたくさんの学生がいるが、そのうちのいくらかが抜けて、だんだんとメンバーが固定されてくる。学期が始まって一ヶ月も経つとそういう現象があちこちで起きる。オリベはどちらかと言えば抜ける側の学生であった。なぜなら学ぶ目的など無かったからだ。彼は下宿から大学へは行かず、行ってもすぐに抜け出して、海の近くの神社やカイナ市場で時間を潰す事が多くなっていた。
     大学から坂を下って海側に下りていくと神社があった。石段を登り青い鳥居を潜ると境内に入る。入ってすぐの所、松の木の下に海風がほどよく吹きつけるベンチがあった。オリベはそこに横になって、空を見上げる。無数のキャモメが輪を描きながら飛んでいた。目を閉じるとみゃあみゃあという声と波の音が響いた。彼はこれらの音が好きだった。こうして目を閉じて耳を澄ましている間は雑音が入らない。何者でもなく、捕らわれない自分でいられた。
    「やあ、こんな所にいたんだ」
     声がしてオリベは目を開ける。見ると、ツキミヤとそのポケモンの大きな目玉が上にあった。
    「……何しに来たんだ」
    「最近見かけないからさ、どうしてるかと思って」
    「講義は?」
    「先生が風邪ひいてさ、休講」
    「何でここが分かった?」
    「こいつだよ。こいつ」
     ツキミヤは親指を立てると自身の後ろに浮かぶ黒いポケモンをくいっと指差した。ポケモンは丸い皿みたいな大きな目玉を軸に、申し訳程度に付いた枝のような胴をぐるぐると回している。アンノーンであった。様々な形があって遺跡などにいるポケモンだ。
    「こいつね、探し物が得意なんだよ。目覚めるパワーって奴? 名前はクレフ」
    「形がQなのに?」
    「鍵って意味さ。形が鍵に似てるだろう?」
    「まあ……」
     クレフと名付けられたアンノーンを見る。するとクレフはふわりと寄ってきて、一つしか無い大きな目玉でじろじろとオリベを見ると、ぐるぐると周りを回った。
    「奇怪な奴だ」オリベが言うと、
    「君の事を気に入ってるんだよ。だから見つけられたのさ」と、ツキミヤは答えた。
     ツキミヤは神社の自販機でジュースを買うと、缶をオリベに投げてよこした。モモンジュース、なかなか暴力的な甘さだが、オリベの好物であった。学食で飲んでいたからツキミヤも知っていたのだろう。
    「いいのか、これ」
    「昼寝の邪魔をしてしまったようだからね」
    「じゃ、遠慮なく」
     かちりとスチールの蓋を開けて中に沈めるとぐびぐびとオリベは飲み始めた。隣でツキミヤも缶の蓋を開ける。彼の開けたのはサイコソーダであった。
    「なあオリベ、明日は出てこいよ」
     缶の中身が半分程度になったところでツキミヤは言った。
    「何かあるのか?」
     オリベが尋ねると
    「考古学概論の野外実習があるんだ。場所はカタヒラ川古墳群」
     ツキミヤは目を輝かせて言った。
    「へ、へえ」
    「面白そうだろ?」
    「どうかな」
    「オリベも来るよな?」
    「……分かったよ」
     大して興味など無かったのだが押し切られた。こんな事をわざわざ言う為にここまで来たのだろうか。変わった奴だと思った。気付けばクレフと名付けられたアンノーンがふらふらと境内を漂って行ったり来たりを繰り返していた。あのポケモンなりに楽しんでいるという事なのだろうか?
    「オリベ、見ろよ。あれ」
     そんなQのポケモンの動きを追っていると、ツキミヤが言った。振り返ると、青年は海に浮かぶ小島を指差していた。石垣で出来た人口小島で、その上は草木で覆われている。
    「あれがどうした?」
     オリベが尋ねると、
    「台場だよ」
     とツキミヤは答えた。
    「ダイバって何だ」
    「昔ここのあたりに外国の蒸気船が来た事があってね、その時に砲台を置いたのさ。もう砲台自体は無くなっちゃって、草ぼうぼうだけど。あれでも史跡なんだぜ」
    「へえ?」
     勉強熱心な男だと改めてオリベは思った。地中に埋まってるものしか興味が無いのかと思っていたのに。その後にも、ツキミヤはここの神社の言われなんかを語って聞かせた。何故そんな事を知ってるのかと尋ねたら、この間、ニシムラ教授の民俗学概論でやったと言われた。
    「お前授業出てないからな、少しは出て来いよ。なんなら今までのノート見せてやってもいいぜ?」
     そう言ってツキミヤは笑った。
    「じゃあ次の講義あるから戻るわ」
     そう告げるとツキミヤとアンノーンは石段を降りていった。忙しい奴だなぁ。そんな事を考えながら青年の背中を見送った。
     そうして彼は、後になって知った。その日、講師は風邪などひいておらず、講義も通常通り行っていたらしい事を。

     翌日にツキミヤの姿は大勢の学生と共にカタヒラ川にあった。オリベの姿には先にクレフが気が付いて、その動きから待ち人の到来を知ったツキミヤは軽く手を挙げて挨拶した。長袖長ズボンに軍手姿の発掘スタイルである。
     実習が始まった。何、つまらない授業だった。大雑把な部分をシャベルで掘って、細かい部分や遺構を移植ごてで掘り進めて行く。溜まった土は「ミ」という塵取りを大きくしたような道具に集め、溜まったら土捨て場に捨てに行く。早い話が土木作業だ。何か埋まっていればまだ面白いのだが、そういう物が出てきた場合、素人の手出しは許されない。即座に教授か専門スタッフが飛んできて、学生はお役御免だ。つまりは力仕事の要員に過ぎない。ふと脇を見るとツキミヤが汗を流しながら、移植ごてで溝を掘っていたが何が楽しいのかさっぱりだった。
     アホらしい。昼休憩を挟んで弁当を食べ終わった頃にオリベは現場を抜け出した。
     カタヒラ川の土手は広かった。現場を離れて歩いていてもあちらこちらに小さな丘のようなものがある。もしやこれがみんな古墳なのか、とオリベは思った。手付かずの古墳もたくさんあるに違いない。
    「ツキミヤの奴、ここの古墳を全部掘り返すつもりなのかな」
     オリベはそう呟くとふかふかした草の生えた緩やかな傾斜の丘を選んで寝転んだ。天気はいい。海に近いこの場所にも、キャモメが飛んでいる。十字架のような形が逆光の黒になって空を舞っていた。さわさわと鳴る草の音を聞きながら、いつしかオリベは眠りに落ちていった。

     ――ユウイチロウ、ユウイチロウ。ちょっと来なさい。
     そんな声が聞こえた。
     振り返るとそこには母がいて、上からオリベを見下ろしていた。その手には何かの紙がある。
     ――またこんな点を取って。あなたこんなんじゃ進学危ないわよ。
     母が言って、幼いオリベは顔をしかめた。ああ、この記憶は確か中学受験だったか、あるいは高校受験だったか、と。
    「そんなの、上を目指すからだろ。俺、行ける所でいいから」
     ――そんな向上心の無い事でどうするの。お祖父様だってそこに行って勉強したのよ。
    「じいちゃんと俺は違うだろ」
     ――ユウジロウだってそこに行かせるつもりなのよ。
     始まった、と彼は思った。母はまた弟を引き合いに出した。
    「勝手にすればいいだろ」彼は返す。
     ――だって、格好つかないじゃないの。あなたはお兄ちゃんなのに。
     オリベは静かに母を睨み付けた。それは違う。格好が付かないと思ってるのは貴女ではないのか、と。
     母にとっての成功モデルはオリベの祖父だった。彼は大学教授であった。そこはカントーでも随一の大学で。だから母は自分達兄弟に同じ道を歩かせようとしているのだ。同じ道、同じ学校に行き、同じ教育を受け、同じようなポジションに就かせる。それが母の教育の目的だった。それに対してオリベは反発を覚えたのだ。おそらくはポケモン関係の仕事をしている父の事も影響していたのだろう。彼はそのように理解している。一度ポケモントレーナーになりたいと言った事があったのだが、母の激しい反対に遭ったからだ。
     一方で素直だったのは弟のユウジロウであった。彼は驚く程素直に、母の教育方針に従った。利発な弟だった。頭が良かった。それ故に母が弟のユウジロウに傾倒するのはごく自然な流れであった。
     そのように母との確執が深まる中、ある夜に兄であるユウイチロウは聞いてしまった。ちょうど祖父が遊びに来ていて、母と二人で酒を飲んでいた。既に父や弟は眠っていた。その席で母が言ったのだ。思い通りにならぬ兄をこう評したのだ。
    「あの子は半分なのよ」
     母は兄の事をそう言った。
     話を聞くに半分しか出来ないという事らしかった。人の言う事を聞かないし、半分しか出来ないのだと。テストの点も望む半分しか取って来ない。あの子は弟の半分しか出来ないのだと。
    「せめてあの子が、ユウジロウの半分でも素直だったら」
     半分。その言葉が抉り込む様に突き刺さった。
     母との溝が決定的になった。母にとって理想の人間とは弟である。兄はその半分である。それはオリベにとって半分しか人間でないと言われたのと同義であった。
     半分。自分は半分。人として、半分。
     一浪をした時に、母はもはや自分を見放したのだろうと彼は思った。その視線は一年遅れで受験生となった弟にのみ向けられていた。浪人時代、人生の中でそこそこ必死に勉強をしたのは決して母の為などではない。ましてや見返したかったからでもなかった。ただ、遠くに行きたかった。考えられる限り遠くへ。ホウエン地方の大学を受けた事などあてつけでしか無かった。そこに目的は無い。大志は無い。やりたい事などオリベには無かった。

     汗を掻いてオリベは目を覚ました。
     ああ、また雑音だ。あの夢だ。ここは場所が悪いとオリベは思った。やはり海がいい、波音は雑音の入る隙を与えない。横たわっていた身体を起こす。場所を変えようと思った。神社に行こう。海に近いあの神社に。古墳らしき草ぼうぼうの丘の向こうに急な土手の上り坂を見、彼は歩き出した。
     だが、急な坂を登りきり、まさに河川の敷地の外側に出ようかと言う時になって、彼の動きは止まった。その視線の下に先ほど通り過ぎた古墳があった。そこに草陰で覆われた入り口のようなものが見えたからであった。
     それはまったくの好奇心であった。オリベは坂を降り、草を掻き分けて進んでいく。近づいてみて、その入り口が顕になった。周囲に粗末な石が転がって、地面にヒビを入れたみたいに三角形の口が開いている。膝を折ればなんとか入れそうな穴であった。暗い。懐中電灯も持っていないから、中は見えない。だが、好奇心がオリベを動かした。腰を屈めながら数メートル程進む。そこで急に天井が高くなったのが分かった。
     オリベはその空間で立ち上がった。手さぐりをしながら内部を把握する。あまり広くはない。畳にすると四枚程度であろうか。中心に何か、表面がざらざらとした、長方形の物が置かれている。
     これは何だろう? だが、暗闇では情報が分からない。明かりを取ってこないと。あるいはツキミヤを呼んできたなら……。そう思ってオリベが再び立ち上がった時、ばり、と何かが砕け散った音がした。靴から伝わってくる感触。どうやら何かを踏んだらしかった。

    *

     里の景色をよく見渡せる丘の上、そこに私は立っている。その下に瓦屋根の集落が見えて、私は焦点を絞る。
     それは大きな屋敷の外れだった。軒先で、若い男が書き物をしていた。白い紙に黒い筆の線が走って、何らかの意味を作っていく。私達の多くは言葉を操れたけれど、文字にまでは興味が無かったから、誰も文字を読めなかった。だから内容までは分からなかった。
     青年は毎日、毎日、ずっと書き物をしていた。そうでなければ書物を読んでいた。
     丘の上から焦点を絞る。そうするといつも彼はそこにいた。
     私は彼に興味を持った。同時に彼の記す言葉に興味を持った。

    *

    「オリベ! オリベ!」
     聞き覚えのある声がしてオリベは目を覚ました。目線の先にはツキミヤとQのポケモン。手に伝わる感触はふかふかとした河川敷の草原のそれであった。どうやらまた眠ってしまったらしいと彼は思った。
    「よう」
     と、オリベは挨拶をした。
    「よう、じゃない。またサボって。もうみんな引き上げたぜ」
     ツキミヤが呆れ気味に言った。同時にふと、アンノーンと目が合った。するとどういう訳か、身を翻して、主人の背中のほうに回り込み、覗き込むようにしたのだった。
    「……? 今、何時だ?」
     こいつこんなによそよそしかっただろうかと思いながら、尋ねた。
    「四時過ぎだよ」
    「ん、もうそんな時間か」
     ちょっとした昼寝のつもりだったのに、ずいぶんと長い間眠ってしまっていたらしい。一度は起きて、神社に向かったつもりでいたが、それもまた夢であったという事か。
    「…………」
     唐突にオリベは起き上がると、古墳の丘を走り登り、周囲の草を掻き分けた。だが、そこには何も無かった。ただ草が生え、石が転がっているだけであった。
    「どうしたんだよ?」
     ツキミヤとアンノーンが後から追いかけて来てオリベに問うた。
    「いや、何でもない」
     オリベは言った。あまりにつまらない発掘実習に乗じて見た夢だったのだ。やはり入り口などある訳が無い。渡る風が河川敷の草原をざわざわと揺らしていた。




    単行本へ続く


      [No.2617] 霊鳥の右目(サンプル 途中まで) 投稿者:No.017   投稿日:2012/09/14(Fri) 00:18:28     91clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     少年は手を見る。
     固まりきらない血がまだ光を反射して輝いている。地面にはいくつかの血痕があった。
     その目の前では、ごめんなさい、ごめんなさいと、緑色の獣を腕に抱いた少女が必死に頭を下げている。
    「本当よ。普段はすごくおとなしい子なの」
     彼女はそのように弁明する。たぶんそれは嘘ではないし、彼女は何も悪くないのだろう。
     だが、少女に抱かれたラクライは毛を逆立て、牙をむき、眉間に皺を寄せる。フーッフーッと息を荒くしていた。
    「……気にしないで」
     少年は言った。
     ちらりと緑の獣を見る。獣は再びウウッと唸って毛を逆立てた。やはり見なければよかったと思い、急ぎ目を逸らす。嫌われたものだ。
     獣の瞳に映ったのは恐怖だった。忌むべき者を見た恐怖だ。手を出してはいけなかった。望むと望まないに限らず嫌われる者はいる。世の中にははみ出し者や除け者というものが必ず存在し、忌まれる者がいる。
     自分はどうやらそっち側の存在であるらしいと、この日、少年は理解したのだ。


     海の見える学校の、広い敷地の狭い部屋の中で何人かの男達が会合を開いていた。
     右上に小さな写真を貼った書類、そして写真の人物が書いた論文、考査の結果。それらを照会しながら彼らは品定めを行ってゆく。
    「タニグチ君はいいね。卒業論文もしっかりしているし、うちの研究室で貰いたいのだがね」
    「サカシタはどうだね」
    「彼は考査の結果がねえ」
    「だが体力があるだろ?」
    「それは評価に含まれない」
    「だが、フィールドワークでは重要だろ。よく働くんじゃないのかね、彼は」
    「卒論はどうだった?」
    「及第点といったところですかな」
    「まぁいい。うちで面倒見よう」
     そんな風に彼らは学生達をふるいにかけていった。何人かを通らせ、何人かを落とした。
     しかし、ここまでの過程は彼らの予定の範囲内であり、予想の範疇であった。たった一人、最後の一人だけが彼らの本当の議題だった。
    「さて、最後だが」
    「彼か」
    「ああ」
     教授達は選考書類に目を通す。
    「考査の結果は?」
    「……トップですな」
    「卒業論文は?」
    「発表会、聞いていたでしょう?」
    「考古学専攻はみんな聞いていましたな」
    「私は誰一人、質問しないので焦りましたよ」
    「あの後、学生が一人質問しましたな。いい質問だったが、いかんせん彼の切り返しのほうが上だった」
     彼らはそこまで言ってしばらく黙った。誰も先に進めようとしなかった。
    「欲しいのはおらんのかね」
     一人が沈黙を破ったが、誰一人手を挙げない。
    「能力的には並みの院生以上と思いますがね」
    「取るか取らないかは別の問題だよ」
    「分野的には、フジサキ研だと思うが」
    「学士までと約束しました。皆さんもご存知のはずです」
     その中でも比較的若い男が言う。
    「しかし彼を落とすとなると、他の学生も落ちますよ」
    「だから困っている」
    「ようするに合理的な説明が出来るか否かという事だ」
    「学士は所詮アマチュアだ。だが修士はタマゴとはいえ研究者。この違いは重い」
     結論は出なかった。グダグダと議論が続く。
     否、とっく結論は出ているのだ。議題の人物の受け入れ先など、最初から存在しない。後は誰が面倒な役回りを引き受けるか。結果を通知し、合理的説明をするのか。それだけなのだ。だが誰も関わりたくない。触りたくない。それだけなのだ。
    「休憩にしますかな」
     一人の教授がそう言った時、キイと狭い部屋のドアが開いた。
    「お困りのようですな」
     入ってきたのは一人の男だった。コースでは見ない顔だった。だがまったくの知らない顔、部外者という訳でも無かった。
    「オリベ君、」
     一人が男の名前を口にした。
    「民俗学コースの教授が何の用事かね」
     また違う一人が言った。少し不快そうだった。
     彼らの視線の先にいる乱入者はラフな格好だ。ネクタイは緩いし、履物は漁師の履くギョサンだった。大学教授などそんなものかもしれないが、年配には印象がよくない。だが乱入者は気にする様子もなく、
    「例え話をしましょうか」と、言ったのだった。
    「考古学コースには誰もが認める優秀な学生がいる。どの研究室も欲しがっているが、その学生がコースの変更届けを出したなら、皆諦めるしかありません」
    「…………」
     しばらく皆が黙った。いや、食いついた。だが、腹の底で疑念が沸き起こる。
    「オリベ君、何を企んでいるのかね」
    「何も。私は優秀な学生が欲しいだけです。こっちでも院試がありましたがろくなのがいなくてねぇ。ただ……」
    「ただ?」
    「配慮いただけるのであれば、来月のあの件、譲歩いただきたい」
     目配せしてオリベは言った。
    「来月の……」
    「そう、来月です」
     オリベがにやりと笑う。その言葉の真意に部屋のメンバーも気付いた様子だった。
    「つまり取引をしようというのかね。しかし彼が届けなど出すと思うかね」
    「出させてみせます。万が一の場合、今日の事はお忘れくださって結構」
     あくまでひょうひょうとした態度でオリベは続ける。
    「そうですね。とりあえずは院試の選考を今からでも民俗学・考古学コースの合同だったという事にしましょうか。他のコースも巻き込めるなら尚いい。それで責任者を私にするんです。院試に関する質問は全て私を通す事にしましょう」
     なるほど、と教授陣が目配せし合う。例の件はともかく、面倒事をオリベに転化できるのは彼らにとって都合がいい事は確かだった。
    「……分かった」
     彼らの代表格が返事をした。
    「決まりですね」
     オリベが言った。ずり落ちた眼鏡の位置は直さず、レンズを通さずに、下から覗き込むように教授陣を見据えた。そうして彼は二、三彼らに質問やら手続き的な頼み事をすると、部屋を出ていった。
     冬であったが、この日は比較的暖かかった。日光が差し込む廊下をポケットに手を突っ込んで、すたすたとオリベは歩いていく。時折、学生とすれ違ったが知らない顔だ。互いにこれといった挨拶は交わさなかった。
     とりあえず文書作成からかからなければなるまい、彼はそう考えていた。だが、
    『一体何をしようっての』
     途端に声が聞こえて足を止めた。
    「ん?」
     オリベはとぼけた声を発する。
    『とぼけるな。あんな事言って。私は反対だと伝えたはずだよ』
     声が響く。
    「あのなぁ、俺はいつもお前の言う事ばっか聞く訳じゃないぞ」
     面倒くさそうにオリベは言った。いかにもうるさいといった風に。
    『どうして? いつもはあんなに素直なのに』
    「これはこれ。それはそれ。前にも言ったけどな、お前の意見を聞くも聞かないも選択権は俺にあるの。たまたま聞く割合が多いだけだろ。あくまで選ぶのは俺だからな」
    『私が言って、外れた事があった?』
    「お前が勘がいいのは知ってるよ。だが、これはだめだ」
    『だいたいあんなの無理だ。無理に決まってる。夏休み前に相当怒らせたくせに。あの時は本当に危なかった』
    「怒らせるのはいつもの事だ」
    『一緒にいた女の子を覚えてる? あれ以来学校で見かけない』
    「だから? 大方、別れたんだろ? 男女にはよくある事だ」
    『危険なんだよ。ユウイチロウ』
    「お前はいつもそれだ」
    『ユウイチロウは鈍いから分からないのかもしれないが、』
    「うるさいな。あんまり喋るなよ。ただでさえ独り言が多いって言われてるんだ。文句なら部屋に帰ってからでいいだろ?」
     そこまで言うと声が止んだ。やれやれとオリベはまた歩き出した。ポケットに手を突っ込んで、ぺたぺたとギョサンを鳴らしながら、民俗学教授は歩いていった。
     日差しの差し込む長い廊下、そこにはオリベを除いて人は歩いていなかった。




    単行本へ続く


      [No.2616] 本人の意思 投稿者:フミん   投稿日:2012/09/14(Fri) 00:16:17     129clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「ブースターだ!」

    「いや、シャワーズ!」
     

    家が敷き詰められた住宅街のある一戸建て。まだ幼く元気のある兄妹が、言い争いをしていた。
    喧嘩の理由は単純だった。二人の家に住むイーブイを、どの種類に進化させるかということである。
    二人はまだ年齢が若すぎるため、自分のポケモンを持っていない。両親に何度もお願いして、漸く家に来たのが一匹のイーブイだった。
     
    イーブイという種族は、様々な種類に進化することができる。住んでいる環境によって様々な個体へ姿を変えることができるため、他のポケモンよりも進化の数が圧倒的に多い。例えば、とても寒い地域に住んでいれば凍えて死なないためにグレイシアに進化する傾向があるし、森に囲まれて育ったイーブイはリーフィアに変化することもあると言われている。
    それ故に、人間が故意的に進化を操作することも多い。理由は、様々だが、大方は人間の都合である。そのため、人間が管理しているイーブイは、環境以外の要因で何に進化するか決まってしまうことが殆どだった。
     
    話は戻るが、兄弟は、イーブイを何に進化させるかで揉めているのだ。


    「ブースターは可愛いじゃないか。赤い体にふわふわした体毛、ずっとぎゅーってしていたくなるんだよ」こう

    言うのは、兄の方。

    「シャワーズにすれば、ひんやりして気持ち良いし、一緒にプールで遊べるもん。だからシャワーズが良いの!」

    そう述べるのは、妹の方。
     
    この二人は、いつも意見が食い違っていた。例えば、兄の方は冬が好きだし、妹は夏の方が好みだった。他にも兄は走るのが好きだし、妹は泳ぐのが好きだったりと、常にこの兄妹はぶつかりあっているのである。
    そのため、今回のことも珍しいことではなかった。


    「シャワーズに進化させたら冬はどうするのさ。冷たくて触っていられないぜ?」

    「ブースターなら冬に抱きしめられるもん。お兄ちゃんだって、真夏にブースターをずっとぎゅってしてるの?」

    「ああ、俺だったら真夏でも真冬でもブースターを抱きしめるもんね」

    「そんなことしたら暑さでお兄ちゃんが倒れちゃうよ。だから、シャワーズにしようよ」

    「そんなこと言ったら、冬に無理にシャワーズを抱きしめたら、お前が風邪引いちゃうじゃないか。だから、ブースターにしようぜ」

    「嫌だ! シャワーズ!」

    「俺だって嫌だ! ブースターが良い!」
     
    お互いに眉間にしわを寄せ、睨みあう兄妹。彼らはまだ、譲り合うということができなかった。両親がいると大人しくなるのだが、生憎、この子達の両親は、まだ仕事で帰って来ない。

    イーブイは、そんな兄妹を毎日見ているのに目もくれずソファーの上で昼寝をしていた。
    散々続いた言い争いが終わったと思うと、兄弟はイーブイの目の前に立ち見下ろしている。
    何事かと顔を上げると、先に兄が言う。


    「ブイルは(イーブイの名前である)、ブースターに進化したいよな?」
     
    妹。

    「ブイルはシャワーズに進化したいよね。私のこと大好きだもんね」

    「ブイルはお前のことなんか好きじゃないって。ブイルが好きなのは俺だよな」

    「そうやって、人のことをいじめるような最低な人間をブイルが好きになるわけないじゃない。ねーブイル」

    「あーあ、やだやだ。強引に姿を変えられるのは嫌だってさ。他人のことを思っているように見せかけて、実は自分の都合を突き通そうとしている人って、タチが悪いんだよな」

    「お兄ちゃん。そろそろ怒るよ」

    「やるか」

    「手加減しないよ」
     
    彼らは拳を握り、今にも喧嘩を始めそうになる。怪我をしたら流石に洒落にならないので、ブイルと呼ばれたイーブイは起き上がり、自分の気持ちを堂々と伝えた。


    「僕は、昔からサンダースになりたいと思っているんだ」
     
    胸を張り、しっかりと自己主張をするブイル。
    すると、二人の表情は一変する。

    「何言ってるんだ。サンダースになったら静電気が大変だろう。それに、ふわふわした体毛が少なくなっちゃうじゃないか」これは兄。

    「そうよ。サンダースだと一緒にプールで泳げないよ? だから考え直そうよ」これは妹。

    「だから勝手に決めるなって。ブースターが良いに決まってるだろ」

    「違うの! シャワーズが良いの!」

    「ブースター!」

    「シャワーズ!」
     
    ついには殴りあいの喧嘩を始めてしまう二人。さすがにここまでくると放っておけないので、ブイルはなんとか止めさせる。


    「これ以上喧嘩するなら、何に進化するかお母さんに決めて貰おうかなあ」
     
    さり気なく呟くブイル。
    お母さん、兄妹にとって大切な家族であり、恐れる対象である。
    兄妹は理解していた。お母さんが主導権を握れば、全ての物事は強引に決定してしまうのである。そのため、ブイルが何に進化するかを母親に頼むということは、自分達の意見が通らなくなることがほぼ確実だった。


    「ごめんブイル、俺達が悪かった」

    「お願いブイル、それだけは止めて」
     
    母に決定権が移ることだけは、何としても阻止しなければならない。兄妹の態度は一変した。

    「もう喧嘩しない?」

    「しないしない。絶対にしない」

    「うん。お兄ちゃんと私は仲良しだもん。喧嘩なんてしないよねー」

    「ああ、しないとも」
     
    ぎこちない笑顔で肩を組む兄妹。それならば、とブイルは言う。
    「僕が何に進化するのか、仲良く決めてね」
     
    兄妹は黙って頷いた。とりあえず、今日の兄妹戦争は回避できた訳だ。
    しかし、明日には同じことを繰り返すのだろう。そう思うと、このままイーブイの姿で一生を終えた方が良いのではないかと思うブイルだった。



    ――――――――――

    地味にお久しぶりです。
    夏コミ82に来てくれた方がもしいたら、ありがとうございました。またちょくちょくイベントには参加していると思います。
    9月のチャレンジャーは他のイベントで売り子を頼まれた為、参加を断念しました。鳩さんの新刊はまた今度になりそうです。

    現在、冬コミに向けてワープロ打っています。こういうネタは直ぐ思いつくのですが、遅筆なのが悩みです。


    フミん


    【批評していいのよ】
    【描いてもいいのよ】


      [No.2615] 【ポケライフ】お客さんの来ない日 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/09/13(Thu) 22:59:08     154clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ポケライフ】 【冥土喫茶】 【コーヒー1杯450円】 【本日のケーキ400円】 【セットにすると50円引き
    【ポケライフ】お客さんの来ない日 (画像サイズ: 887×682 200kB)

     僕の喫茶店は、通称「冥土喫茶」と呼ばれている。


     別に雰囲気がおどろおどろしいとか、入ったら呪われるとか、ましてや本当にあの世にあるとか、そういうことじゃない。もちろんメイドさんがいるわけでもない。
     赤レンガの壁にアルコールランプの明かりの内装はお客さんたちにも落ち着くって評判だし、庭では奥さんが手入れしている花壇を眺めながらお茶を楽しめる席も用意してある。メニューだって自信がある。コーヒーは自家焙煎だし、甘味も軽食も手作りだ。

     ただちょっと、集まるのだ。ゴーストポケモンが。


     それというのも、僕がこの喫茶店を開いたばっかりの頃だ。
     昔からのささやかな夢で、街の片隅で小さな喫茶店でもやりたいな、って思ってた。
     で、とある町で店舗を借りたものの、喫茶店としてやっていくにはちょっと狭すぎて、しょうがないからもうちょっと広い場所に移ることを夢見ながら数年間、自家焙煎のコーヒー豆を売っていた。
     その頃に後々僕の弟子となる子と会ったんだけど、その時その子が連れていたのがヨマワルだったんだよね。

     しばらくして資金もたまって、長年お付き合いしてた奥さんとも結婚して、晴れて郊外の一軒家に移り住んだわけだ。
     ちょうどその直後、例の弟子が「迷子のヨマワル拾ったんですが育てません?」とか言ってきて。
     まー僕もそれなりにポケモンを育てることには興味を持ってたし? 弟子の様子見てヨマワルかわいいなーとか思ってたし? じゃあせっかくだからってことでもらいうけたわけだ。

     最初は僕と奥さんの2人で喫茶店をやってたんだけど、しばらくして奥さんが妊娠したから、僕ひとりで店をやることになっちゃったんだよね。
     そんなに大きな店じゃないけど、ひとりで注文聞いてコーヒー淹れてお菓子用意して運んで掃除して片付けて、って結構大変なんだよね。自分がまだ慣れてなかったのもあるけど。時期的にもお店を開いてまだそんなに経ってない。常連さんが出来て、お客さんが入るようになって、これからが大事って時だから。

     で、僕は気がついたらヨマワルに「手伝ってくれない?」って聞いてた。ヨマワルの手も借りたいという慣用句はなかったと思うけど、そんな気持ち。
     そしたら意外とあっさり言うこと聞いてくれて、まずは店の掃除を手伝ってくれるようになった。
     教えたら食器を洗ったり、注文されたものを席まで届けたり、注文を取ったり、何かいろいろ出来るようになった。
     しばらくしたらサマヨールに進化して、細かい作業ができるようになって、ケーキをよそったり、ケーキを作ったり、クッキー焼いたり、紅茶を淹れたり、豆を量ったり、豆を挽いたり、コーヒー淹れたり、コーヒー飲んだり、僕のブレンドに文句を言ってきたりした。

     まあ良く働いてくれるもんだから、だんだんお店の評判が広がって、お客さんがたくさん来るようになった。
     で、相方はいつの間にかお客さんたちから「副店長」って呼ばれるようになってた。
     まー確かにそう呼ばれてもしょうがないよね。僕より働いてるような気がしないでもないしね。
     ヨノワールに進化してからというもの、来る人来る人に「店長より副店長の方が威厳ありますよね」とか言われるのが僕としてはちょっと不満だ。


     うん、まあ、ずっと僕と副店長の2人(1人と1匹)体制でお店をやってたんだけど。


     いつの間にか、増えてた。


     いや、僕が新しいポケモン捕まえたとかそういうわけじゃない。
     そもそものきっかけは、副店長が外出した先で、野生のカゲボウズを拾ってきたことだ。
     言葉は話せないし表情も基本ポーカーフェイスだから、身振り手振りで強引に解釈した結果、「何か知らないけどついてきた」……ということらしい。
     まあ別に困るわけじゃないし、暇だったし、せっかくだからとコーヒーを出した。

     そしたら懐かれた。

     いやまあ考えたら野生のポケモンに餌付けするようなものなのかもしれないけど、それを言うならまずは連れて帰ってきた副店長に文句を言ってください。
     ちなみにそのカゲボウズ、進化した今でも常連と化して、よくカウンターに寝転がって新聞読んでます。

     で、それをきっかけに、色んな野生のポケモンがうちに来るようになったんだよね。主にゴーストタイプが。多分副店長が副店長だから。
     勝手に人の店にたむろしてるわけだけど、たまにお店を手伝ってくれることもあるから何とも言えない。
     ゴーストやゲンガーは注文を取りに行ってくれるし、ヤミラミは注文のものを運んでくれる。
     ムウマとムウマージはよくお店の掃除をしてくれる。イトマルやバチュル辺りとは巣の存亡をめぐって仁義なき争いを繰り広げているようだ。
     ユキメノコとその子供のユキワラシは氷が切れた時に用意してくれる。この親子が来るようになってから、夏のメニューにかき氷が増えた。
     ヒトモシの集団は、たまにサイフォンの熱源の代わりになっている。燃料代を節約できるかと思ったら、コーヒーが何だか生気の抜けたような味になったからやめた。
     フワンテはよく、お店に飾る花を摘んでくる。でもこの前店に行ったら花瓶にキマワリが刺さってた。本人(本花?)がまんざらでもない顔だったからそのままにしておいたけど。でも次の日にはいなくなった……と思ったら代わりにチェリムが刺さってた。
     その辺にいっぱいいるカゲボウズやらヨマワルやらゴースやらは……うん、まあ、遊びに来てるんだろうな。気まぐれに手伝ってくれたりするけど、基本的にお客さんにちょっかい出したり、僕にちょっかい出したり、副店長にちょっかい出して追い払われたりしている。
     副店長は副店長で、マイペースかつ確実に仕事をやってくれる。僕はまあ、遊べとせがんでくるちびっこたちを適当にあしらいつつ、適当に仕事をしている。げに頼もしきは副店長だ。全く。


     まあおかげさまで、喫茶店はお客さんたちに「冥土喫茶」とあだ名をつけられ、その筋ではそこそこ有名になっているらしい。
     イーブイやエネコやミミロルみたいな、かわいくて癒されるポケモンと触れ合えるカフェなんかはよく聞くけど、うちはあだ名からして何だか禍々しい気がしてならない。
     話に聞くと、例の弟子の店も僕の店以上にゴーストのたまり場と化しているらしいので、師弟そろってろくでもない店を経営する運命だったようだ。


     さて、と。
     今日は珍しくお客さんが来ないし、ここのところの暑さでだるいし、眠いし、副店長は本読んでるし、相変わらずポケモンたちがいっぱいだし。


     ドアベルが鳴るまで、ちょっと寝かせてもらうとするかね。



    +++++

    「ますたーおきろー」
    「ますたーおきゃくさんきちゃうぞー」
    「どうしたますたー? たいちょうわるいのかー?」
    「どうせ夏バテでしょ。副店長、どうする?」
    「……放っとけ」


    こっそりイラコンに紛れ込ませていただいた1枚。
    塗ろうと思ったところで灰色の色鉛筆が消失していて、別色で無理やり塗った思い出。


      [No.2614] 俺のジュペッタがこんなに凶暴なわけが無い 投稿者:門森 輝   投稿日:2012/09/10(Mon) 23:34:48     114clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     むぎゅぅ。

     何か潰した。それに気付いた時には蹲らずにはいられなかった。痛い。目が冴えて来る。目の前では黒い人形が俺目掛けて拳を振るっている。あぁ、さっきこいつを潰したのか。それで俺は殴られていると。俺の寝相の悪さを呪いたい。
    「やめっ、ちょっ、痛っ、まっ、待てって待てって! うぐぉっ」
     鳩尾に黒い拳がめり込む。痛い。やばい。何か吐きそう。それでもまだ攻撃は続く。こいつ容赦ねぇ。少しは躊躇えよ。
    「やめっあぅっ……悪かった! 悪かったから一旦やめぐぁっ」
     今度は顎にクリーンヒット。やばい、一瞬意識が飛び掛けた。本当に容赦ねぇ。そんでどうしてこう言う所ばっか狙って来んだよ。と言うか少し潰しただけでどうしてここまでされなきゃならないんだ。こうなんなら抱いて寝なきゃ良かった。とにもかくにも説得しないとまずい。説得出来ないとまずい。
    「だからわざとじゃないんだって! ごめんごめんごめがっ……やめっ、とにかくやめうぉっ……」
     またも鳩尾。声が出て来ない。何だこいつ。本当に中に詰まってるの綿か? 特性がおみとおしとか嘘だろ。絶対てつのこぶしだろ、こいつ。とにかく痛い。やばい。こんな事考えてる間も攻撃続いてるし。とにかくやばい。早く何とかしないとやばい。マジでやばい。あっそうだ、ボール。ボールどこだボール……机の上だ……。この状況で取りに行くとか無理。不可能。インポッシブル。でも何とかして一旦やめてもらわないとやばい。どうしようマジでどうしよう……。

    ――――――――――――――――――――

     チャットでのとある方のジュペッタを抱いて寝たいという発言から浮かんだネタです。ボコボコにされる所までしか浮かばなかったので最初は書く気無かったんですが、そこまでで良いから書くんだと別の方から言われまして折角なので書いてみました。勢いだけで。更に投稿するんだとも言われまして今に到ります。勢いって大事ですね。という訳で中途半端だったり色々酷かったりしますがご容赦下さい。
     あとタイトルは閲覧の方が提案して下さいました。提案して下さった方、ありがとうございました! 

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【続かせてもいいのよ】
    【お好きにどうぞなのよ】


      [No.2613] 唯一王は正義! 投稿者:門森 輝   投稿日:2012/09/10(Mon) 22:15:23     71clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     やっふぅ! コメントありがとうございます! 
     ブースt……唯一王かわいいよ唯一王。もふもふもふもふ。
     可愛いは正義。もふもふは正義。ブースターは正義。異論は認めません。
     あーんしてる唯一王可愛いですよねうへへへへ。と言うか何をしても可愛いですよね。何もしてなくても可愛いですよね。ブーs……唯一王かわいいよ唯一王。
     多分炎はトレーナーに向かって吐くんじゃないですかね。唯一王に燃やされるなら本望でしょう。でもあの世界だとそれ位なら数分で全快しそうですけども。とりあえず唯一王の歯形が付いた歯ブラシはどこで買えますかね。
     何かb唯一王可愛いとしか言ってなくて返信になっているか怪しいですが唯一王が可愛いから仕方ないですよね。
     という訳でコメントありがとうございました! でも唯一王は行かせません。

    【唯一王かわいいよ唯一王】


      [No.2612] 9/17 ポケモンオンリー参加します。 投稿者:No.017   投稿日:2012/09/09(Sun) 23:14:15     103clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    9/17 ポケモンオンリー参加します。 (画像サイズ: 600×858 248kB)

    9/17 浅草で開催されるオンリーイベント「チャレンジャー!」に参加します。
    カゲボウズシリーズ新刊持っていきますのでよろしくお願い致します。

    URL(h抜き)
    tp://challenger.2-d.jp/

    ・サークル名「ピジョンエクスプレス」
    ・スペース O14


    【頒布内容】

    カゲボウズシリーズ
    ●赤い花と黒い影 500円
    ●霊鳥の左目、霊鳥の右目 700円 ←今回の新刊

    その他個人誌
    ●携帯獣九十九草子 700円
    ●クジラ博士のフィールドノート 500円

    アンソロジー
    ●A LOT OF ピジョン 〜ぴじょんがいっぱい〜500円
    ●マサラのポケモン図書館 ポケモンストーリーコンテスト・ベスト 500円

    委託
    ●灰色十物語(風見鶏)300円


    隣のスペースでゴーヤロックこと586さんが、個人初出展となります!
    「プレゼント」「歪んだ世界」の頒布がされると思いますのでこちらもぜひご覧下さい。


    以下レスにて作品の一部紹介させていただきます。


      [No.2611] もふもふは正義! 投稿者:砂糖水   投稿日:2012/09/08(Sat) 23:32:47     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ブースターたんかわいいよブースターたん。
    初代緑版で迷わずイーブイをブースターたんに進化させたくらい好きだよブースターたん。
    唯一王とか、ブイズ統一パにウインディ入れた方が勝率上がるとか言われても可愛いからいいんだ。
    お口あーんしてるブースターたんとかまじカワユス。
    嫌がって炎吐いて歯ブラシとか溶かしたりしてしまうんだろうか。
    それとも口閉じてしまうから歯ブラシに歯形がつきまくりなのか。
    どっちも可愛いから無問題。
    涼しくなったし、ブースターたんうちにおいで。





    私信
    もーりーすまぬ、すまぬ…。感想遅れて本当にごめんなさい。
    ちょっと修羅場ってた。


      [No.2610] うふふふふ 投稿者:moss   投稿日:2012/09/07(Fri) 21:51:15     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 怖い!怖すぎる!下手なホラーよりずっと怖いぞ!
    > でも多分この怖さが分かるのはポケモン好きだけなんだろうな……

    ありがとうございます。怖いの不気味なの書こうと思ってたんですよw
    ポケモン好きのみわかる恐怖……なんかいい響きですよね

    > そうだよね。よくよく考えたらタウリンとかブロムへキシンとか薬なんだよね。
    > 使いすぎたらヤバイよね。ジャンキーだよね。
    > 当たり前なんだけどゲームの中にサラリと出てくるものだから気付かない。変な盲点。

    さらっと出てくるからこそわからない。ましてやゲームの中ですからね、薬なんて意識ないですもんねw
    みなさんも使いすぎには注意しましょう。


    感想ありがとうございました!

    テンションがすごく上がりました。最近リアルが忙しくてなかなか長時間ネットできる日がないのですが、
    一応小説のところだけは毎日チェックしてるというね。

    本当に読んでくださってありがとうございます。


      [No.2609] うわあああああ 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/09/07(Fri) 17:31:05     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    怖い!怖すぎる!下手なホラーよりずっと怖いぞ!
    でも多分この怖さが分かるのはポケモン好きだけなんだろうな……

    そうだよね。よくよく考えたらタウリンとかブロムへキシンとか薬なんだよね。
    使いすぎたらヤバイよね。ジャンキーだよね。
    当たり前なんだけどゲームの中にサラリと出てくるものだから気付かない。変な盲点。


    >  ごめんね私の手持ち達。お願いだから死なないで。

    しぼうフラグが たった! ▽


      [No.2608] 【ポケライフ】鳴神様へ 投稿者:NOAH   《URL》   投稿日:2012/09/07(Fri) 17:00:00     98clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    その昔、おばあちゃんに聞いたことがある。
    木の実や野菜、お米等を収穫している途中で
    遠くで雷が落ちたところを見たあとに、お酒や花と一緒に
    収穫したものを鳴神様にお供えすると
    そのものの願いを叶えてくれるのだと言う。



    「おばあちゃん。」
    「びぃ!」
    「いらっしゃい、チナツ。可愛いあなたもね。」

    大きな昔ながらの家。その裏に、小さなビニールハウスがある
    そのハウスの中から、おばあちゃんは収穫したたくさんの野菜を持って
    私とエレキッドを出迎えてくれた。

    「可愛いでしょ!エレキッドって言うんだ!
    この前お父さんがくれた卵が孵ったの!!」
    「そう、良かったわね。大事に育てなさい。」
    「うん!!」

    おばあちゃんはニコニコ笑いながらエレキッドの頭を撫でた。
    私も!と、おねだりして撫でてもらったとき、遠くで雷が鳴った。

    「……あら?鳴神様かしら?」
    「なるかみさま?」
    「ちょっと呼んでみましょうか。」
    「!あの歌だね!!」
    「びぃ?」
    「エレキッドにも聞かせてあげる!」



    空に黒雲渦巻いて

    雨降り風吹き雷(かんだち) 落ちる

    嵐の過ぎた焼け野原

    鍬立て種撒き命成る

    鳴神様に捧げよう

    黄金に染まった我が宝




    目の前に、小さな祠が現れた。
    そこには、古びた和紙に、『鳴神様ノ祠』と書かれていた
    おばあちゃんの手には、なんだか高そうなお酒が握られている

    「さあ、チナツ。野菜をお供えして上げて?」
    「うん。」

    私は、色とりどりの木の実や夏野菜が入った籠を、小さな祠の前に置いた。
    その横では、おばあちゃんがお酒をお猪口に注いでいるのが見えた
    アルコールの匂いが鼻につくが、神様の前なので我慢した。

    エレキッドは、花瓶に花と水を入れて、そっと野菜達の横にそれを置いた。
    おばあちゃんも、注いだお酒を供えると、蝋燭に火をつけて、手を合わせた。

    「チナツとエレキッドが、何時までも仲良しでいられますように。」
    「……!!」
    「ふふ。チナツとエレキッドも、お願い事をしてみなさいな。」
    「じゃあ……おばあちゃんが元気でいられますように!!」
    「ありがとう、チナツ。さあ、帰ってお昼にしましょうか。」
    「うん!!行こう、エレキッド!!」

    おばあちゃんは蝋燭の火を仰いで消すとお酒を持ち、私の手を取った。
    私もおばあちゃんの手を取ると、反対側の手で、エレキッドの小さな手を握った。
    そのエレキッドの反対側の手には、いつの間にか拾ってきたであろう木の枝が握られていた

    「チナツ。何がいい?おばあちゃん。今日は何でも作るわよ。」
    「カレー!カレーがいい!!」
    「じゃあ、決まりね。」

    家路をのんびり歩きながら、色んな話をした。
    鳴神様が、私達を優しく見守っている気がした。


    *あとがき*
    雷を題材に、ほのぼのしたのを1つ。
    この小説における鳴神様はなんなのか
    皆様のご想像にお任せします。

    【好きにしていいのよ】


      [No.2607] Re: 【ポケライフ】捕獲屋Jack Pot の日常 *夕立* 投稿者:NOAH   《URL》   投稿日:2012/09/07(Fri) 00:23:21     86clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ※暴力表現注意。苦手な方は閲覧を控えて下さい

    スリムストリート。
    ヒウンのセントラルエリアへと続く狭く暗い道

    その道の一角に、うずくまるたくさんの人影。
    その中心には、男の胸ぐらを掴んで威圧する紫の少年がいて
    近くに、オレンジの髪に赤渕メガネだった物を持っている青年がいた

    「あーあ、どうしてくれちゃったのよ。……弁償してくれる?ねえ。」
    「あ、あく、ま、が……!」
    「はあ?そっちから喧嘩吹っかけといてそりゃないでしょう……弁償しろよッ!!」
    「ぐっ……ぅ、……。」
    「……ウィル。」
    「チッ……。」

    オレンジの髪の青年は、そのままタバコを取り出した。
    あとは少年に任せるらしい。

    「……おい、てめえがリーダーか?あ゛ぁ?」
    「っ、ちげーよ……俺ァ、あんたを潰せって頼まれただけだ……。」
    「そうかよ……なら、そいつにこう言っとけ。
    『いつかぶった切ってやる』ってよお!!」
    「ぐぅっ!?」

    鳩尾に思いっきり拳を叩き込むと、相手はそのまま気絶した
    それからまるでタイミングを計らったかのように、雨が降り出して来た。

    「……あ、結構ひどくね?そういや、さっき雷が鳴ったような……。」
    「……どうだっていいさ。戻るぞ、ウィル。」
    「はいはい……結局、尻尾は掴めずか……いい加減ムカついてきた……。」
    「それは俺もだが、まあなんとかなる。」
    「そのうち痺れ切らしてヤバイ連中けしかけてきたりして。」

    冗談にしては、かなり怖い事をさらりといいのけたウィルだが
    ヴィンデは寧ろ、笑って賛同していた。

    捕獲屋Jack Pot。たった6人の最強の捕獲屋。
    だからこそ、裏の人間に恐れられると同時に
    今回みたいに因縁吹っかけられて狙われる。

    「夕立。ひどくなったね。」
    「ああ……メガネ。どうすんの。」
    「同じタイプのを買うよ……金掛かるけど。」

    本格的に強くなった雨に打たれ、鳴り響く轟音にぜめぎられながら
    2人は帰るべき自分たちの居場所へと、ゆっくりと戻って行った。

    *あとがき*
    誰も書いてくれないって正直寂しいですね……。

    今回は喧嘩組の話し。案外短く終わった……。
    ヤバいよ。ネタが尽きそう……!!

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】


      [No.2606] ドーピング 投稿者:moss   投稿日:2012/09/06(Thu) 23:27:20     111clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     学校が怖い。最後に彼から連絡があったのは一ヶ月前のことだった。


     彼は頭がよかった。小学校を卒業して私はすぐに旅に出たのだが、彼は中高一貫の名門校へと入学した。なんでもバトルなどの実技、学力がほぼトップクラスでないと入れないところらしい。彼は合格したときすごく喜んでいて、二人で祝ったりもした。
     彼の学校が始まると同時に私は旅に出た。暫くの間は手持ちのポケモン達をゆるゆると育てつつ、時にはトレーナーにバトルを挑まれつつ金欠と戦う日々であった。そんなある日の夜に、珍しく彼からメールが届いた。あの学校は携帯の使用が禁止らしく、特に中等部では入学と一緒に回収されるらしい。これは彼が入学前に言っていたことだがあいつ回収をばっくれたのか。半ば呆れつつ中身を開く。
    【この学校はおかしい。】
     ほんの一行。これだけで鳥肌がたったのは初めてかもしれない。それに頭のいい彼の言うことだ。あの学校は全面的に、そしていろんな意味で閉鎖されている。情報も月に一度あるかないかの行事を知らせるものだけらしい。彼の母親が少し心配そうにそう言っていた気がする。
     でも、と思った。いくら彼の言うことでもすぐには信用できない。あの学校からは色々なジムリーダーなどが出ているのだ。学歴重視のその手の職業は変な学校出身の奴にはやらせてはもらえないだろう。信じるべきか否か。複雑になった頭でとりあえず彼に何を見たのかと返信をする。どうせすぐに返信はこない。くるとしても一週間は後になるだろう。隙を見てメールを打つ彼の姿が想像できなくて笑ってしまう。
     そのまま疲れきった体でベッドに倒れこみ携帯を無造作にバッグの中へ投げ入れる。今朝拾ったタウリンを片手に眺めながら、明日はどこへ行こうかと思考を馳せた。


     またしばらくして私も順調に旅を続け、以前よりも特に金欠に困ることもなく、手持ちも強くなってきた。ジムバッヂも頑張った甲斐ありようやく三つになった。
     あの日から返事はまだこないが、あの学校は相も変わらず外から見る分にはいろんな意味で閉鎖されたまま何も変わりはしなかった。そう、外からは何も。
     一体内側では何が起こっているのか。もしかしたら彼は携帯を所持しているのがバレて取り上げられてしまったかもしれない。まぁそれでも元気にやっていればいいのだが。
     ジムバッヂ八このエリートトレーナーに勝負を挑まれすっかり撃沈していたとき、不意に携帯が振動した。こんなときに、と不満ながらも発信源を見て首を捻る。非通知だ。
    「……どなたですか?」
    『○○か!?』
     懐かしい声で名前を呼ばれ驚いた。裏返って相当パニクっているようだったが紛れもなく彼の声だった。一体どうしたのか?
    「どうしたの?」
    『見ちまったんだ!!』
     間髪入れずにまるで長距離走でもやった後のような荒々しい声色。声自体の音量はさほど大きくないのが逆に緊迫感を煽らせ手が震えた。
    「……何を?」
     恐る恐る尋ねると、彼は一層声を小さくして、幼い頃した内緒話のように
    『今日こっそり学校の、立ち入り禁止になってる地下室に友達と行ったんだそしたらっ』
     彼は長く息を吐いた。
    『ポケモンが……数えきれないほどのポケモンが薬付けにされて檻の中に入ってた』
     ……。
    『目があり得ないほどぎらっぎらしてて、暗くてよくわかんなかったけどらりってたと思う。しきりに檻を壊そうと攻撃してた。その音が上の教室越しに授業の時聞こえてて気になって降りたんだ……』
     ……。
    『もう駄目だっ。ここの奴等のポケモンが馬鹿見てぇに強いのはこういうことだったんだよ! 嫌だ俺はこうはなりたくないこんなことを平気でするような奴にはなりたくない自分のポケモンをあんな風にさせたくないっ』
     電話越しに嗚咽が聞こえた。
    『……でももうオワリだ。おしまいだ。俺も平気でポケモン薬付けにしてひたすらに勝利ばかりもとめる腐った男になっていくしかないんだっ……ないんだよっ』
     泣き叫ぶように訴える彼を数年ぶりに聞いた気がした。
    『……学校が恐い。学校の人間が恐ろしい。あそこにある全てがもう怖くて怖くて仕方がない』
     彼はそれ以上はもう何も言わずにただ小さく泣いていた。私は慰めることもできずに、呆然と電話越しの彼の嗚咽が止むのをただ待った。


     あれ以来彼からの連絡は途絶えてしまった。私は後味の悪さと、どうして何も言ってあげられなかったのかと若干の後悔を噛み締め頭の外へ追い出すようにひたすらポケモンを鍛え、ジムへ行き、バッヂを手にして時には負けて、そしたらもう一度その日のうちにリベンジして……目まぐるしい一日一日を送った。
     私のジムバッヂがとうとう八こになったのは私が旅に出て六周年を迎えたときであった。六年もかけてようやくかと父には笑われ母には調子に乗るなと小突かれた。もっと誉めてくれてもいいんじゃないかと思ったが口には出さなかった。二人ともジムバッヂ八こよりもその先に期待してるのが丸分かりだったからだ。
     両親には全力を尽くせと背中を叩かれ、小学校からの幼馴染みには優勝したら奢れと頭をはたかれ、旅先で知り合った友人トレーナーには先越されたぜ畜生っと背中をどつかれた。何てバイオレンスな優しさをもつ人達だろうと苦笑した。


    「……やあ、奇遇だね」
     私が参加しているポケモンリーグ第二ブロック。ついに三回戦までのぼりつめ、ここで勝てば各ブロックごとの代表者と戦い最後には決勝が待ってる。これまでの対戦は心底ヒヤッとするものもなく、運がよかったのかもしれなかった。
    でもそれもここまでのようだった。
    「……久しぶり。無事に卒業出来たんだね、おめでとう」
     前に見たときより遥かに身長が伸びて体つきも男らしくなって。それでも面影は残っていた。
    「無事?」
     彼は笑う。
    「ははっ。そんなわけないだろ! ここまでくるのに俺がどれだけのものを犠牲にして捨ててきたか知らないだけだろっ」
     その通りだった。私はあの電話以降の彼の状況を全くもって知らない。だから彼の苦労も知らないし、彼の今の状態も知らないのだ。
    「そうだね」
     話さなかった期間が長すぎて、最早他人同然の繋がりにまで成り果てた今、特に彼と話すこともないので私は最初に繰り出す予定のボールを握った。

     勝敗など見えている。それでも彼と戦うことによってあのときから消えない後味の悪さと後悔を消そうとしていると同時に彼のことをもっと知りたいと望んでいる。
    「ここで会えて光栄だよ○○。悪いけど俺にはもうバトルしかないから」
     彼が傷ついたボールを放る。
     スタジアムを震わせる化け物の雄叫びと砂嵐。その中心に威圧するぎらついた目のバンギラスがこちらを睨む。
     彼は口元を歪ませ目線は早くポケモンを出せと訴えていた。
     ごめんね私の手持ち達。お願いだから死なないで。
     私は祈るようにボールを投げた。


      [No.2605] Re: Calvados 投稿者:きとら   投稿日:2012/09/06(Thu) 18:23:41     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    > 「男性同士の性行為を暗示する表現があります。
    >  15歳未満の方の閲覧はご遠慮ください」


    そう言われればそうですね!修正します!
    指摘ありがとうございました


      [No.2604] Re: Calvados 投稿者:イサリ   投稿日:2012/09/06(Thu) 13:06:01     86clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     こんにちは。イサリです。

     冒頭の注意書きが曖昧でわかりにくいです。
     マサポケは中高生も見ているサイトなので、

    「男性同士の性行為を暗示する表現があります。
     15歳未満の方の閲覧はご遠慮ください」

     くらいは書いた方が良いと思います。恥ずかしいのかもしれませんが。


     BL小説の評価についてはよくわからないため、感想は割愛させていただきます。
     失礼いたしました。


      [No.2603] Re: 【ポケライフ】捕獲屋Jack Pot の日常 *依頼* 投稿者:NOAH   《URL》   投稿日:2012/09/06(Thu) 09:29:20     71clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    まだまだ暑いヒウンシティに、少しずつ秋が近づいてきた
    どこか遠くで雷が鳴る音がするため、そのうち雨が降るかもしれない

    僕の名前は、その雷から名づけられたらしい。
    雷の綱と書いてイズナ。それが僕の名前だ。

    ルルーメイさんが帰ってすぐに、無理を頼んでお願いした
    特訓を終えて、お気に入りのフロストヨーグルトアイスを口に入れた

    ―Pi Pi Pi ♪

    「……はい。お電話ありがとうございます。
    捕獲屋Jack Pot です。……依頼ですか?」

    リラさんが受話器を取った。メモを取りながら、今出れそうな人を
    思案しつつ、相手からの情報を詳しく聞き取って行く

    「……迷子のポケモンの保護ですか……メノクラゲ?
    ……一回り小さく、うち一匹が色違いと……。」

    「……アズキ兄さん、メノクラゲって?」

    「アジア圏のクラゲポケモンだよ。水タイプと毒タイプね。
    この間の、ホウエンを直撃した台風の影響かもしれんな。」

    「荒波で仲間とはぐれたってこと?」

    「正確には、親のドククラゲとだな……色違いか
    早めに行った方がいいな……リラ!今回は俺が行くよ。」

    「……………。
    わかりました。すぐに向かわせます。怪我は
    ジョーイさんの指示に従って手当をして下さい。」

    電話で指示を出す一方で、アズキ兄さんは
    クルマユのぼたんをボールに戻して、ケンホロウ(♀)のひなぎくを出した。
    彼女を窓から外に出すと、応対を終えたリラさんが
    兄さんにメモを渡した。

    「急な仕事だからね。気をつけなよ。」

    「わかってるよ。じゃあ。」

    それだけ言って、兄さんはそのまま、窓から外に出ると
    セイガイハシティへと、ひなぎくと共に向かって行った。

    またどこか遠くで、雷が鳴った。

    *あとがき*
    お仕事受注編です。秋が近づいて来ましたね。
    最近は雷がひどかったり突然強い雨が降って来たりなため
    洗濯物がなかなか乾かないのがイラつきます。

    雷と聞いて、一番最初に思い浮かぶポケモンは
    やっぱりサンダーです。今度サンダーがメインの
    小説でも書こうかな……。

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】


      [No.2602] Calvados 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/09/05(Wed) 21:22:14     73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    前書き:BLです   ミクダイです。
        BLには入れないでください。
        男性同士の性行為を暗示する描写が含まれます。そういうシーンがあるので、嫌いな人や、嫌な予感したら早く読むのをやめましょう。


     振られたとミクリが聞いたのは、変な時間の電話だった。
     ダイゴに飲みに来ないかと誘われて、ミクリは休みの合間にトクサネシティに向かう。
     チャイムを鳴らしても誘った本人は出て来ない。声だけが「開いてるよ」と返ってきた。
     いくら付き合いの長い友達とはいえ、こんなことがあっただろうか。今回の失恋が相当こたえたのか。ミクリは玄関を開ける。
     酒臭い。ミクリが感じたのはそれだった。もとより酒は強く、ウイスキーのダブルを平気で飲み干すダイゴだった。だがここまで匂いをさせているのは彼らしくない。
    「やぁミクリ、飲もうよ!」
     テーブルは散乱している。ダイゴのまわりには口の開いたビンが転がっていた。そして本人はワイシャツの胸元をだらしなくあけ、ジャケットはその辺に脱ぎ散らかしていた。
    「飲もうよ、じゃあないでしょ。まず片付けるからね」
    「いいじゃない、片付けなんてどーだっていいんだよ、どーだって!」
     酔っ払いながらもグラスを引き出す。その間にミクリはビンを端に寄せた。足の踏み場もそろそろなくなりそうだ。
    「カルバドスだよ!凱旋門が見えないけどね、失恋にはぴったりだ!」
    「そんなに振られたのがこたえたの?」
     ダイゴは酔いながらも、いきなり態度が変わる。
    「当たり前じゃない!この僕が振られるって有り得ない!僕はあの人しかいないって言ったし結婚しようって約束もした!なのに僕の金しか見てなかった!僕はあの人が欲しいもの何でも買ってあげたのに!」
     水を飲むようにグラスの酒を飲み干す。
    「お酒に逃げても体を壊すだけだよ」
    「ミクリに何が解るのさ!」
    「私だって失恋の一つや二つはあるよ」
    「君はいいよね!イケメンイケメン騒がれて、トレーナーとしても成功して、ファンもたくさんでさ!毎日毎日君のことが好きな女の子に囲まれてれば楽しいよね!」
    「いい加減にしなさい。私に恨み言聞かせるために呼んだなら帰る」
     ミクリは立ち上がる。が、ズボンの裾をダイゴがしっかりと掴んでいた。
    「なに?」
    「ごめん、帰らないで」
     仕方なくミクリは再び腰を下ろす。注がれたカルバドスを一口つけた。
    「ミクリまでいなくなんないで」
     振ったことは数え切れなくても、振られたのは初めてだ。ミクリの知るかぎりは。だからか耐性が全くないのだろう。
    「もう女なんてやだ。僕なんか見てないんだ。僕のお金しか見てない」
    「正体隠して付き合ってみたら?」
    「今回だって結婚の話するまで言わなかったのに」
    「玉の輿狙いが自爆してくれて良かったじゃない。それこそ、結婚後だったら悲惨だよ、浮気なんて」
     ダイゴは黙った。空のグラスを握って、声を押し殺して泣いている。
    「ダイゴほどの男だったらまた次があるから」
    「もう次なんていい。僕だって誰かに抱かれたい」
     タコのようにダイゴが絡んでくる。酔っ払いだから仕方ない。ミクリは抱きついてくるダイゴのひたいを軽く叩いた。
    「いいじゃない。ミクリって自分でも綺麗だって思ってるでしょ。それ女の子だけが独り占めなんてあり得ないんだよね」
    「何をおっしゃい。女に振られたからって男に逃げないでよ」
    「それに興味あるんだよね。女の子とやるよりいいなら、もう女なんて要らない」
    「私がそっちの趣味だとしても、振られて腐ってる男なんて抱きたくないね」
     ミクリがはっきり断ってもダイゴはますますミクリにくっついて来る。
    「女々しいという言葉は、今のダイゴの為の言葉だね、全く」
     酒臭い息がミクリの首筋にかかる。酔っているだけなのか、本気なのか、ダイゴはミクリの開いた胸元に抱きつく。
     そこから見たダイゴの体は、クッキリとラインが見えた。男の均整の取れた姿は、同性から見ても憧れるくらいだ。
     ミクリから見たダイゴは、最高のステータスを兼ね備えた完璧な存在だ。もしミクリが女だったら、こんな男をわざわざ手放すわけがない。
     もしダイゴが女だったら…今の彼と同じように出来ることをやり尽くしても引き留めるだろう。そしてそれが叶わない時、こうして酒に逃げるしかない。
    「悪ふざけもそこまでにしよう。ダイゴが興味本位で私とやったことが、未来永劫響くんだよ。家業にも影響するだろうし」
    「んー、それってミクリは僕とやるのは、やぶさかではないってことだよね?」
    「どうしてそういう言葉のあやを見つけるの。そもそも誘うならその酒臭いのはどうなんだ」
    「だからさ」
     ダイゴは後ろのテーブルにある酒ビンを掴んだ。
    「飲もうって言ったんだよ。お酒はいいよ!何だってその気にさせてくれる。誰も見てやしない」
     これだけ酩酊してれば、普段とは違うのは当たり前。ダイゴはカルバドスを口に含む。そして口移しするかのようにミクリの唇に触れた。
     強い酒がミクリの口腔に流れ込んだ。蒸留酒の香りが鼻から抜けていく。
     けどそれより衝撃なのは、ダイゴと舌まで絡ませあっていることだった。今にも泣きそうな息づかいと共にミクリを求めて来る。
    「ミクリ、僕を抱いてよ、誰でもいいわけじゃないんだ。一番の親友に抱かれたいんだよ」
     子供のようにしがみつくダイゴは、今まで見たことがなかった。ミクリはダイゴの頭を軽くなでる。
    「酔いがさめたら後悔しますよ。今のことは忘れますから」
    「いやだ!ミクリまで僕を要らない人間にするの!?」
    「誰も要らないなんていってないでしょう。ダイゴは私の大切な友人だと思ってる。だからこそ酒によって間違いをおかすなど見てられない」
     黙ってダイゴはミクリを見る。納得いかない顔をして。今度はミクリの上にかぶさるように唇を求める。勢いよくミクリは後ろに倒れ込む。
     親友だと思っていた男……抱きつかれた時に、ほんの少し感じた色気。いつにないものがダイゴから漂っている。それはベッドに入る前の女のようだった。
     唇を離したダイゴは遊んで欲しい子供だ。困惑しているミクリを楽しそうに見てる。
    「ダイゴは本当にそれでいいんですか」
    「なんで?僕はミクリがいいよ。女なんかもういやだ」
    「私たちはそういう目で見られるんだよ。これからずっと」
    「ミクリは僕より誰も知らない他人の評価の方が気になるの?そんなのありえなくない?ねえ、あり得ないよね、ねえ!そんなに僕に魅力ないの?じゃあミクリは僕よりその辺の女の子のがいいっていうの!?」
    「とにかく落ち着いて。人肌恋しいのは解ったから。でも私にも選択権があること忘れないで」
     酔っぱらいはとにかく面倒だ。なるべく優しく言っても、ダイゴも感情の起伏がおかしく、泣いたと思えば怒りながらミクリを叩く。
    「ミクリまで僕を振るんだ」
    「こんなになよなよしてるダイゴは嫌い。それに君だけ気持ちよくなろうなんて図々しい」
     軽くダイゴの額に唇をつける。
    「今日だけだ」
     ミクリの返事にダイゴは物凄い嬉しそうだった。やっと受け止めてくれる人を見つけたような、そんな顔。

     酒の力もあった。
     ダイゴの着ているものをはぎ取る。ソファに横たわる彼は、温泉などでよく見るダイゴの体とは違った。錯覚のようにも感じる。これから抱く男の筋肉。
     この体に毎晩抱かれておきながら、他の男も求めたのか。随分と贅沢な女だったんだな。こんなに強く、男らしい体なのに。この上ない男だというのに。
     そんなに合わなかったのだろうか。ミクリはダイゴの体を抱きとめながら考えた。今の彼は確かに頼りないが、それがいつものダイゴではないはずだ。
    「ミクリぃ、どうしたの?」
     やたら色っぽい声と共にダイゴはミクリを見つめる。
    「なんでもない」
     ミクリ自身も服を脱いだ。ダイゴを力強く抱きしめる。そしていつもするようにダイゴの唇をそっと塞いだ。

     ミクリに抱かれた。初めてであるのに、ダイゴは少しずつ心が軽くなっていくのが解る。ミクリが自分を求めてくれている。そして肌に感じるミクリの暖かさ。
     もっと早く知っていればよかった。こんなに親友の肌が優しいなんて。その暖かさがダイゴの傷を癒していくようだった。
     ダイゴの中にミクリが入って来ても気持ち悪いとか不快だとか思わなかった。どんどんミクリが入ってくればいい。そして自分を埋め尽くすくらいになってしまえばいい。
     そこから感じる快感が、いつもより強いのは酒のせいではないだろう。
    「ミクリ……」
     ダイゴの体が絶頂を知らせる。ミクリに抱かれながら。それがとても幸せなことに感じた。


     その夜もダイゴはミクリに抱いてくれるように願った。仕方ないね、とやや困ったようにダイゴの唇に触れる。そして半分固くなったダイゴのものをそっと握った。ダイゴも応えるようにミクリの舌を絡ませた。


     朝になってミクリは目を覚ます。あんだけ強い酒をあおった後の行為を思い出すと物凄い罪悪感がある。その隣ではまだダイゴが寝ていた。全裸で何も知らないように寝ている。
    「ダイゴ、朝だよ」
    「ん……」
     それだけ言うとダイゴは寝返りをうって反対を向く。さては飲み過ぎか。酒に強いとはいっても、あんだけ飲んで抱いてと言う。相当苦しかったのだろう。それだけ相手の女が好きだった。それはミクリにも解る。
     もうこの先、二度と親友とこんなことをすることはないだろう。ならば最後にもう一度だけ……。ミクリはダイゴの頬に軽くキスをした。まだ起きて来なそうな親友をおいて、ミクリは昨日脱いだ服を羽織った。



    ーーーーーーーーー
    ダイゴさんください。
    ダイゴさんならもうなんでもいいよ。
    ダイゴさんくれよ。
    ダイゴさんください。
    ダイゴさんよこせ。


    【好きにしてください】


      [No.2601] 冷蔵庫に保管=ナマモノ 投稿者:ラクダ   投稿日:2012/09/04(Tue) 01:07:58     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     博士がケースの中身を弔う(処分する)場に謎の人物が襲撃、それを奪取し博士を口封じ。
     一年後、とある地方の片隅で不気味な噂が囁かれ始める。
     闇に蠢く謎のポケモン。それを作り出した者の意図とは――――。

     初めまして、ラクダと申します。
     どうしても、某ゾンビ映画のウイルス奪取、あるいは某恐竜映画の胚強奪の場面が浮かんでしまいこんなことに。
     例えば、ポケルスの悪性変異株(ただし博士が持ち出した物は不完全で無害)、または遺伝子操作した既存のポケモンの胚(これも未完成のまま)の情報を、部下の研究員の一人が襲撃者とその背後に流して奪わせ、自分はちゃっかり新部署に勤めつつ頓挫した計画の再構築を目論む、とか。
     襲撃者側はテロ目的か兵器用のポケモンを手に入れるため狙っていた、とか。
     要は狂暴化して手の付けられなくなったポケモンの話です。
     主人公はトレーナーか、はたまた危険に巻き込まれた一般住民か……。

     意味深な切り方に、ああでもないこうでもないと想像するのが面白かったです。
     続編を楽しみにお待ちしております。


      [No.2600] 捕獲屋Jack Potの日常 番外編1p 投稿者:NOAH   投稿日:2012/09/03(Mon) 00:26:08     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    「困りましたぁ……。」
    「ばにぃ……。」
    「しかし、客が集まらんことにはなぁ……。」

    ヒウンアイス。
    2年前、ヒウンシティで大人気だったアイス。
    私はそこの売り子で、この2年間、ここで働いて来ましたが
    最近はお客さんが減っちゃいまして……。

    今でも買ってくれる人と言えば、近所の捕獲屋さんと
    ワルビアルとエルフーンを連れた男性と子連れの家族。
    あとは各町のジムリーダーさんが時々買って
    それにあやかって誰かが買って行くくらい……。

    「やっぱりぃ、バニラ味だけじゃダメなんですよぉ
    チョコレートとかぁ木の実とかぁ、いろいろ使って
    味を増やして客受け良くしないとダメですよぉ!」
    「それは構わんが……アイデアがあるのか?」
    「…………。」
    「何も考えてないのね……。」

    うー…申し訳ない……。

    「すみませーん!」
    「!!」

    この声……まさか!!

    「シュロさああん!!」
    「うおおっ!!?」
    「シュロさん助けてえええ!ウチのアイス屋のピンチなんですぅぅ〜!!」
    「わかった!わかったから落ち着け!!首、くびが、しま、る……っ!!」


    **************


    「新商品?」
    「そうなんです……今、うちの店に来る人は
    シュロさんとスリムストリートにある捕獲屋の皆さんと
    子ども連れの方ぐらいで……。」
    「なるほど、客層を増やす為に
    味のバリエーションを増やしたいと。」

    それから、彼は腕を組んで考え込む
    その横では、ワルビアルの膝の上で、エルフーンが
    この上なく幸せそうな表情で、アイスを頬張っていた
    ヤバイ、可愛い。超和む。

    「……こういうのはどう?イメージング・シティアイス。」
    「はい?」
    「簡単に言えば、イッシュ各地の街のイメージを
    アイスにしてみてる……っていうの何だけど。」

    イッシュの街を……イメージしたアイス……!?

    「それです!さすがシュロさん!ありがとうございます警部どの!」
    「警部って……確かに俺刑事だけど……
    今それ関係ないよね?って、聞いてる?おーい。」

    こうしちゃいられない、急いで案を練らなきゃ!!
    あ、そうだ!!

    「シュロさん!ありがとうございます!今日はお代いらないんで!!」
    「あ……ちょっと!……行っちゃったよ……。」

    ―くいっ

    「んー?もういいのか?……なら、行こうか。」
    「ガウガ?」
    「お代?そりゃ置いてくよ、なんか悪いし……
    それにしても彼女、いつもながら行動が素早いね。」
    「わぅ……。」
    「確かに、呆れるな……まあでも、そこが
    看板娘である彼女のいいところなんだから
    ……新商品、楽しみにしようぜ。」

    それから二週間後。

    ヒウンアイス、新商品のおかげで、前よりも
    お客さんが増えました!!

    今日も大忙しですぅ♪

    *あとがき*
    今回は番外編です。
    番外編版の主人公登場です。
    私の運営してる小説サイトのメイン主人公ですが
    ここでは時々登場します。

    捕獲屋の皆さんとも絡ませる予定。
    彼のワルビアルとエルフーンは、父親と幼い娘みたいな関係です
    基本、番外編は彼とワルビアルとエルフーンとアイス屋の看板娘と
    彼女のバニプッチ+シュロの他手持ちで進んで行ったり。

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【寧ろ書いて(描いて)下さい】
    【批評してもいいのよ】


      [No.2599] 【ポケライフ】ポケウッド映画 予告編 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/09/01(Sat) 20:55:50     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ※何かちょっとマニアックなので苦手な方はバックプリーズ











    (お馴染みのポケウッドのマークが現れる。数秒後、画面に赤い文字で一つ一つ文字が打たれていく)

    ――全ての始まりは、二つの新聞記事からだった

    (何者かによって瀕死の重傷を負わされたサブウェイマスターと、ライモンシティの路地でボロボロの白衣を着て倒れていた科学者の記事が映し出される。センセーショナルな話題に騒ぎ立てるマスコミ。『逆恨みの犯行か』『腹いせか』と見出しが躍る)

    難航する捜査と、被害者から紡がれた『情報』

    (意識を取り戻したノボリに、会議室で警察官達が電話で話を聞いている。そこへミドリがマイクを奪い取る。イラッとするヒメヤと、やれやれと笑うサクライ。ミドリの質問に、ノボリがゆっくりと答える。
    『目が―― 真っ赤だったのです』)

    そして敵の毒手は、強いトレーナー達に伸びていく

    (ユエが路地裏で敵と対峙している。彼女を守るように立つのは、闘争心むき出しのバクフーン。
    ユエの右手に、鉄パイプが光る)
    (海中に作られた部屋の中で、レディ・ファントムがコートを脱ぎ捨てる。外ではブルンゲルと相手のポケモン達が戦っている。それを一瞥した後、日本刀を相手に向ける。
    相手の拳には、メリケンサックが光る)

    交わるはずのない、二つの事件。その『目撃者』が目覚める時、衝撃の事実が明らかに――

    (血煙に巻かれて沈んでいくレディ)
    (短髪になったユエが、片腹を押えながら何処かの病室の入り口に現れる)
    (事件現場で、何かを見つけるミドリ)
    (事件を報道するビジョンを見上げ、カクライが帽子の鍔を下げてクスリと笑う)

    ポケウッド最新作、劇場版WKコレクション、『G−愛する者へ−』 ○月○日公開!


    (先ほどの殺伐としたイメージとは裏腹に、柔らかい、切ないイメージを植えつけるようなピアノ曲が流れる。机の上に置かれた、一枚の手紙。誰かの手がそれを取る)


    ――純粋なる愛がもたらす結末を、貴方は目撃する――

    以下、監督や脚本家、主演者の名前が表示される

    ――――――――――――――――――――――

    紀成『……っていう話を来年の映画に所望するんだが、どうする?』
    全員『知るか』


    映画の予告を思い出しながら書いた。実は二年近く前から温めてるネタだったり。てか一度書いたんだけど、収集がつかなくなって途中で止まってる。
    ところでこの話に繋がる物を既にこの掲示板にアップしてるんだが、分かる方はいるかしら?
    分かったら教えt(ry

    【突っ込み受け付けます】
    【何をしてもいいのよ】


      [No.2598] Re: 【ポケライフ】捕獲屋Jack Pot の日常 *ヒウンアイス* 投稿者:NOAH   投稿日:2012/09/01(Sat) 16:10:11     74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    ヒウンシティ。
    イッシュ南部に位置する、世界と繋がるビジネス街。
    その街の中央にあるセントラルパークに繋がる大きな通りが4つある。

    その中の1つ、スリムストリート。人通りがまばらな狭い道。
    そこに、名のある捕獲屋(ハンター)や密猟者(裏ハンター)達が
    「風雲児」 とも、「最強」 とも呼び恐れ敬う、サザンドラのシルエットが目印の
    人気No.1の「捕獲屋Jack Pot」があるのだ。


    「ただいま戻りました。」
    「るまー♪♪」

    気温30度を越える中、アイスを買いに行った青年が戻って来た。
    出かけたときのまま、クルマユを腕に抱いていて、そのクルマユは
    行きとは違い、にこやかな表情でアイスの入った紙袋を持っていた。

    「おお、アズキ。お帰り。」
    「……あれ?リラ姐さんだけ?」
    「ああ、ヴィンデとウィルはうちに喧嘩吹っかけてきたバカ共の粛清。
    イズナは帰って来たルルーメイとポケモンバトルの特訓。
    特訓組はともかく、喧嘩組はすぐ帰ってくるよ……何もなければだけど。」
    「ああー…じゃあ、先に選びます?」
    「……ロイヤルブラックティー&モカ。」
    「わかってますって。」

    小さな机の上に乱雑してるカードを片付けて、アズキの腕の中のクルマユが
    アイスの入った紙袋を机の上に置いた。

    「ヒウンアイスか。久しぶりに食べるな。」
    「本当ですね……そういえば、期間限定のフレーバーもありましたよ。」
    「あー、あれだろう。新人ジムリーダーの3人をイメージした。」
    「ええ、それです。詳しいのはこれに書いてますよ?」
    「……それはあとでいいから。アイスが溶ける。」
    「はいはい。」

    紙袋から取出した、アイスの入ったバラエティーボックスを机に置き
    ふたを開けて、アズキはリラ姐さんがリクエストした、紅茶とカフェモカがミックスされた
    1つのカップアイスと、備え付けのスプーンを彼女に渡した。

    「やっぱりこれが一番でしょう。」
    「姐さん、紅茶好きですもんね……あ、だから手持ちも紅茶の品種なのか。」
    「そういうこと。ほら、他の連中が帰って来る前にさっさと選んで冷凍庫に入れとけ。」

    彼女に急かされて、アズキは1つ選んで残りを冷凍庫に入れると
    クルマユと半分ずつ食べながら、他のメンバーの帰りを待つことにした


    *あとがき*
    どうも、NOAH です。捕獲屋の話ですが基本的にほのぼのしてます。
    ヒウンアイスは彼らの好物なので、必ずどこかで入れるつもりですが
    フレーバーの名前があまり思いつかないので大変です。

    今回は2人+クルマユのみ。
    クルマユの鳴き声これであってたっけ?

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】


      [No.2597] ゲノセクトか?ゲノセクトなのか!? 投稿者:NOAH   投稿日:2012/09/01(Sat) 14:30:32     80clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    話の流れ的にゲノセクトだと思うのは私だけ?

    ゲノセクトをP2ラボに連れて来た時に出会った博士が
    この男の人だとしたら、プラズマ団に襲われ強制連行されて
    ゲノセクト復活。その後行方不明。

    で、見知らぬトレーナーが彼の元にゲノセクトを連れて来る
    そんな流れな気がします。
    ……あくまで私的展開ですが。

    でも、No .017さんのイメージも素敵だと思ってますので
    あくまでたくさんあるイメージの1つと捉えて下さい。
    ……それでも誰かが書いて下さったら光栄です。

    【書いてもいいのよ】


      [No.2596] これはどう見ても事故フラグ 投稿者:No.017   投稿日:2012/09/01(Sat) 12:29:52     74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    いやこれ絶対事故るでしょ。この後。
    夜道で野生のポケモンにあってハンドル回して事故るね。
    そして死体を養分にして研究成果が実体になって出てくるね。

    で場面は一転、
    どっかの街から主人公の旅が始まる。

    研究成果と主人公がどこで出会うかはまた後の話

    【誰か書いていいのよ】


      [No.2595] Re: 実質的な初小説、これを見てどんな続きを想像する? 投稿者:コマンドウルフ   投稿日:2012/08/30(Thu) 23:10:37     75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    初めての投稿になります、いつもはチャットの方で顔を出しているコマンドウルフといいます、よろしくお願いいたします。
    ちなみに、過去にマサポケにノリで1回投稿したことがありますが、あれはノーカウントということで。

    あまり長い文章や細かいところまで書く技量はないので余地のある構成にしてみました。
    自分の中である程度設定は決めた上で書いてみたのですが、これだけでどんな続きが想像できるものなのでしょうか。
    今のところまだ続きは頭の中を漂っていますが、参考にさせていただきたいと思います。


      [No.2594] 実質的な初小説、これを見てどんな続きを想像する? 投稿者:コマンドウルフ   投稿日:2012/08/30(Thu) 23:00:38     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    研究施設の一角で行われるこじんまりとした送別会
    私がリーダを勤めていた研究チームが今月末を持って解散することになったのだ。
    前々からその気配はあったが、それに気づいたころにはどうすることも出来なかった。
    解散が確定した時点で私は研究者から身を引くつもりでいた、部下からは惜しむ声もあったが
    肩の荷が下りたような気持ちになり、その流れで辞表を出し受理された。
    そして、今日が研究者として最後の日だ、そう、チーム解散と私の送別会である。

    夕方からソフトドリンクを飲みながら談笑、時間は夜20時を回ったところだろうか
    「さて、そろそろお開きにしようか」と、私は皆に声をかけ閉めの言葉を述べ始めた、
    「今まで世話になった、我々の研究は最終的に評価されることは無かったが、
    極めて価値のある研究であったと自身を持っている、これからもそのつもりだ。
    それぞれ違う部署と研究につく事になるだろう、特に健康には気をつけて生活してほしい…
    短いが以上だ、諸君らの健闘を祈る。」
    うっすらと目に涙を浮かべる研究員もいるなか、片付けが始まる。
    そう、価値のある研究だった、しかし何も残らなかった、成果も記憶も。
    唯一残っていた研究チームも今月末を持って解散となる。
    資料は電子化され保管されるが、引継ぎは無い、数少ない残った機材も破棄される、
    もう誰の目にも触れることはないだろう。
    研究員の一人が声をかけてくる「あの・・・博士、これも破棄ですか・・・」
    それは冷蔵庫のようなものといえば判り易いだろうか、中身は研究の成果物である。
    私は少し考え、この研究のケジメとして自分の手で弔うことにした。
    博士「これは私が処理しよう、研究者として最後の仕事にするよ。」

    成果物を冷蔵庫から輸送用ケースに移し変え、私は施設を後にした。
    本来持ち出しなどできないものだったが、セキュリティの人間とも長い付き合いだ、
    中身と理由を説明をしたら目を瞑ってもらえることになった。

    後ろのトランクにケースを入れ、車は走り出す、静まり返る夜の道へと吸い込まれるように。


      [No.2592] 【ポケライフ】捕獲屋Jack Pot の日常 投稿者:NOAH   投稿日:2012/08/30(Thu) 20:28:16     112clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    Jack Pot(ジャックポット)とは

    ギャンブルにおける大当たりのこと
    ただし、何を以ってジャックポットとするか
    という明確な基準は存在しない。

    語源には諸説あるが、ポーカーに
    由来するとする説が良く聞かれる
    転じて、日常生活においては
    大成功という意味としても使用される
    (出典・ウィキペディアより)


    小さなテーブルを囲む4つの影。
    1人は、黒い髪の少年。
    1人は、その少年の兄と思われる青年。
    1人は、紫の髪に、鋭い金色の目の少年
    1人は、オレンジの髪に赤渕の眼鏡をかけた青年

    そして、彼らの手にはトランプが握られ
    4人の側にはそれぞれ、エネコ・クルマユ・ブラッキー・コロモリの姿

    そのすぐ近くに、紫の髪の少年そっくりの
    桃色の目の少女とエーフィがいた。

    「……いいか、てめえら。」
    「うん。いつでもどうぞ!」
    「俺も大丈夫。」
    「ボクもOKだよ。」
    「……わかってんな?これに負けたヤツは
    ヒウンアイス全フレーバーを自費で買ってきやがれ。」
    「……ただパシリ決めんのに大げさだな、お前ら。」

    鋭い金色の目の少年が、荒々しい口調で
    顔色を全く変えずに罰ゲームの内容を告げた。
    少女の皮肉を無視して、紫の少年は目線を合わせると
    全員、異議無しと頷き、彼の合図でカードを出した。

    「フルハウス!」
    「ボクもフルハウス!!」
    「げ……2ペアだ。」
    「ヴィンデは?」
    「…………。」

    ヴィンデと呼ばれたのは、先ほどから仕切っていた紫の少年だ。
    にやりと笑うと、カードを降ろした。

    「ロイヤルストレートフラッシュ……俺の勝ちだ。」


    ******************


    「あっちぃ……。」

    カードで負けた黒髪の青年は
    クルマユを抱えて、人で溢れるヒウンの中心街である
    モードストリートを歩いていた。

    「ヴィンデのヤツ……あの場でロイヤルストレートフラッシュって……
    リラ姐さんといいヤツといい……さすが双子の悪魔。強運姉弟……。」

    ぐちぐちと人込みの合間をすり抜けて
    青年はアイスの販売ワゴンについた。
    最近、客足が減ったのか、前ほどの賑わいは
    あまりなかった。(買いやすくはなったが。)

    クルマユは早くしろと言わんばかりに
    青年の腕を無言でべしべしと叩いていた。

    「ぼたん、大人しくしろ、財布取辛いから。」
    「…………。」
    「よし……すみません。」
    「はぁーい!」
    「全フレーバーのヒウンアイスをセットで。」


    *あとがき*
    今回はわが子を出しました。
    リラとヴィンデは、だいぶ前から
    皆さんの前に出したかったキャラです。

    ポケライフつけて書いてみたけど
    これからは関係無しに書くかも
    もしかしたら続くかも。

    とりあえず、今回はこれにて。

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】


      [No.2591] father 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/08/29(Wed) 13:18:54     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    「……何があったの」

    午後十時十分前。もうじき今日の開店時刻は終わるというところ。店内もお客の姿はまばらで、隅っこでゼクロムを飲んで粘っているサラリーマンしかいない。
    従業員、バイトがユエと目の前のカウンター席に座っている少女を交互に見つめる。その目が周りの同じ立場の人間に向かって『おいどうなってるんだよ』『おいお前聞けよ』『やだよお前が行けよ』と会話している。
    バクフーンが『やってらんねー』と彼らを見て大あくびをした。

    「目元が腫れてる。右頬に部分的に赤い跡」
    「……」
    「どうせまた、お父さんと喧嘩でもしたんでしょ」
    「ユエさん!」

    少女が顔を上げた。男性陣がおお、と顔を歓喜の色に染める。彼女はとんでもない美少女だった。
    イッシュには珍しい黒い髪と瞳。肌はぬけるように白く、染み一つない。これで泣き顔でなければもっと美しく見えるだろう。
    男達の視線を一瞥して、彼女ははっきり言った。

    「格闘タイプ使いが、悪タイプ使うのって、いけないことでしょうか」
    「……は?」

    気の抜けた声を出したのは、男達だった。周りの女性達の射抜くような視線に、強制的に『ちいさくなる』を使うハメになったが。

    「別に私は良いと思うけど」
    「ですよね!格闘タイプだけじゃ勝てない相手もいますよね!」
    「エスパータイプとかね」

    たとえ相手に有利なタイプの技を持っていたとしても、得意不得意がある。それに相手のタイプが有利だということは変わらない。例外もあるが、それでも相手の苦手な技を出したが耐えられて逆に返り討ちにされました―― なんて話も少なくない。
    話を聞いていたバイトの一人が、少女に声を掛けた。

    「ねえねえ、貴方は悪タイプが好きなの?」
    「え…… あ、はい」
    「どうして?」
    「えっと…… 好きな物に理由なんていりますか」

    変な所でしっかりしている子だ。バイトがおののく。ユエは話しても大丈夫?と彼女に促した。
    頷いたのを見て、周りに説明する。

    「この子はミユ。お父さんが有名な格闘タイプ使いで、幼い頃から格闘タイプ使いになるように言われてきたの。でも最近悪タイプに興味を持ち始めて、それで時々お父さんと喧嘩してここに来るようになったのよ」
    「初めまして。マコト ミユと申します。マコトは真実の真です」

    腰まである長い髪が揺れる。男達の頬が緩んだのを女性陣は見逃さなかった。顔が般若のそれになる。
    バクフーンはポケッターをやっている。

    「悪タイプに興味を持ち始めたのは六年生の時で…… 偶然、テレビでジョウト四天王のカリンさんのバトルを見たんです。それがすごく素敵で、バトルの仕方だけでなく使うポケモンもかっこよくて……
    私もああなりたいって」
    「それは、カリンさんみたいな女性になりたいってこと?」
    「え?……いえ。私は悪タイプ使いになりたいな、と」
    「あ、そうなの」

    『ああ良かった』『ほんとに』『アンタ達何を想像してんのよ』という会話を無視し、ユエは続ける。

    「それで、こっそりモノズを捕まえて育てていたんだけど、お父さんにバレちゃったのよね」
    「モノズは餌代が結構かかって…… それで自分のお小遣いで買う薬やフーズだけでなく、家に置いてあるミカルゲ用の餌も少し拝借してたら、ある日見つかっちゃって」
    「何でミカルゲ?」
    「従姉妹がホウエン地方にいて、しばらく預かってるんです」

    ペナルティは三時間の正座と同時進行のお説教。ただひらすら嵐が過ぎるのを待っていたミユだったが『あのモノズは知り合いのブリーダーに引き取ってもらう』と言われた途端、反撃した。いきなり動いたため足が吊ったが、それでも口は動かしていた。
    結果、道場が半壊する惨事になった。

    「でもよくモノズなんて捕まえられたね」
    「リオルに手伝ってもらいました」
    「格闘タイプも持ってるんだ?」
    「この子だけですが」

    そう言って出したリオルは、普通のより少し小さかった。聞けば幼い時に脱走してしばらく病気だったことが原因だという。

    「塀がその日来た嵐で一部壊れてて……」
    「随分大きい家みたいだけど」
    「はい。母屋と離れ、そして庭園があります」

    サラリと言う辺り、自慢している様子はない。住む次元が違うと言うことが痛いほど分かる。
    リオルはバクフーンの気配に気付いたのか、裏からカウンター下へ回っていった。数秒後、『グエッ』というガマガルの断末魔のような声が聞こえた。

    「結局モノズだけは死守して、育てられることになったんですけど……」
    「良かったじゃない」
    「でも私は悪タイプ使いになりたいんです!出来ることなら悪タイプのパーティで旅もしたいし、……そう、チャンピオンにだってなりたい!」
    「……」

    沈黙の渦が店内を包む。それを破ったのは、ドアに取り付けられているベルの音だった。いらっしゃいませ、と言いかけたユエの口が止まる。ミユが立ち上がった。

    「父上」
    「え!?」

    今度こそ男性陣は驚いた。が、目の前の男に一睨みされてズササササと後ずさりする。
    男がユエに頭を下げた。

    「ご迷惑をおかけしました」
    「いえいえ。とんでもない」
    「ミユ、帰るぞ」

    だがミユはカウンターに突っ伏したまま動かない。痺れを切らした男がミユの腕を引っ張った。

    「迷惑だということが分からんのか!」
    「いやー!」
    「はいはい騒ぐなら外に行ってくださいね」

    流石カフェのマスター。そこらへんはキチンとしている。そして容赦ない。


    「……そこまで悪タイプを使わせたくない理由ってあるんですかね」

    親子が帰った後、バイトの一人がぽつりと呟いた。ユエが掃除しながら答える。

    「ミユのお母さんは、ミユがまだ小さい時に、捨てられて野生化したヘルガーに火傷を負わされて、それが原因で亡くなったの」
    「そんな重度の火傷だったんですか」
    「ヘルガーの吐く炎には微量だけど毒素が含まれていて、火傷するといつまでも疼く。……授業でやらなかった?」

    たとえ軽い事でも、場合によっては何を招くか分からない。ミユの母親は、その犠牲者になった。

    「それが元であの子のお父さんは悪タイプを嫌っている、と?」
    「嫌っているかどうかは分からないけどね。彼だって一応大人よ。全ての悪タイプがそういうことを招くわけじゃないってことは、理解していると思うわ」
    「じゃあどうして」
    「……」

    淀んだ空気が、夜のライモンシティを包み込む。
    夜明けはまだ遠い。


      [No.2590] Re: 作品完成! 投稿者:穂風奏   投稿日:2012/08/28(Tue) 21:14:05     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    作品完成おつかれさまです、そしてイラストを作成していただきありがとうございます
    グレイシアとトレーナーさんの暑さにやられた顔がいいですね(笑)
    イラコンの結果をドキドキしながら楽しみにしてます

    それでは失礼しました


      [No.2589] 【ポケライフ】ヘルガーの憂うつ 投稿者:NOAH   投稿日:2012/08/28(Tue) 10:29:16     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    「サボネアああああ!!!!」

    あーあ、また始まったよ……。
    うるさいんだけど、ねえ。

    「ねああああ!!!」
    「人の菓子勝手に食うとはいい度胸だなあええ!?
    しかも俺が楽しみに取っておいたコ〇ラのマーチを
    5箱も食い漁りやがって!!!」

    サボネアも悪いけど、コイツが取り易いとこに
    毎回置いてるアンタも悪いって。つーかマジうるさい。

    「てめえ、いい加減にしないと
    金輪際甘いもの食わせねーぞ!!」
    「ねあ!?」
    「いいのかー?食えなくなっても。」
    「ねー、ねあッ!!」
    「うお!?……おい!部屋の中ではっぱカッターはダメだろうが!!」
    「ねああああ!!!」

    サボネアのやつ、ぐれて暴れ出しやがった。
    はあ……俺の出番かな。

    「ヘルガー!!こいつ止めてくれー!!!」

    はいはい、今行きますよ。
    ……めんどくせーヤツらだよ本当に

    そのあとバークアウトとひのこで
    サボネアを止めた俺は、主人と一緒に
    他の部屋の人たちに謝りに行った


    *あとがき*
    ポケライフのタグをつけて初めて書きました

    主人と主人のお菓子を勝手に食べて暴れるサボネアと
    決まってサボネアを止める損な役回りのヘルガーの話し。

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【バークアウトとひのこの間違った使い方】


      [No.2588] Re: 作品完成! 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/08/25(Sat) 21:45:15     81clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    (大方の予想通り)背景のオオタチに心を奪われました!(´ω`)


      [No.2587] 作品完成! 投稿者:風間深織   投稿日:2012/08/25(Sat) 20:31:39     101clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    作品完成! (画像サイズ: 1198×885 408kB)

    作品完成!
    しぬかと思った……指が……

    今までで一番頑張った気がする……


      [No.2586] Re: 俺とポケモンのへーわな生活。 投稿者:ねここ   投稿日:2012/08/25(Sat) 17:57:36     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    はじめまして。ねここと申します。

    「俺とポケモンのへーわな生活。」読ませていただきました。
    投稿されてから結構経っているようで感想なんか今更ながらというか、感想を書くのが初めてというかでプチパニックですがお許し下さい。

    このお話は完全にわたしの理想です。
    羨ましいですわたしはメタモンがいいです。←

    レンジのところのくだりがとても良い表現だなあと思いました。
    全体的にさくさく読み進められて、面白かったです。

    主人公君が魅力的過ぎt(ry

    こんな感想でいいのかまじでええええという感じですが、とにかく素晴らしいお話でした。素敵です。
    感想もっと早くに書きたかった……(´・_・`)

    では失礼しました。


      [No.2585] 【閲覧注意】じこあんじ 投稿者:門森 輝   投稿日:2012/08/23(Thu) 22:42:30     78clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ※ポケモン等を殺したりといった要素を含みます。含むどころかメインになってます。あと嘔吐や見方次第では拘束・監禁・調教といった要素も含みます。という訳で閲覧注意です。








































     僕は悪くない。仕方ないんだ。悪いのは僕を使う人間なんだ。
     確かに僕は今まで沢山の人間やポケモンを殺して来た。でも、それは全部あいつらの指示だ。僕の意志じゃない。仕方ない事なんだ。だから――僕は悪くない。

     そう考える様にしてから、随分と楽になった。

     僕の意志じゃない。それは間違いないんだ。でも、でも、それならどうしてあの時、つまらないなんて思ったんだろう――。




     初めて殺したのはいつだっただろう。僕が生まれ育てられたこの大きな建物の一室で、訓練と称されたそれは行われた。形式自体はそれまでの訓練と同じで、あいつらに用意されたポケモンと戦うというものだった。ただ、指示が違った。それまでとは違い、はっきりと告げられた。殺せ、と。
     どうすれば良いのか分からなかった。動けなかった。その時、あいつらが一言おい、と言った。分かっているな、とでも言うかの様に。
     命令に従わなければどんな目に遭うか、思い出し、吐いてしまった。今でも思い出す度に体が震えてしまう。殺したくなかった。でも、あんな目に遭うのはそれ以上に嫌だった。今度はもっと酷いかもしれない、殺されてしまうかもしれない。恐怖が僕を突き動かした。そして、僕はそのポケモンに襲い掛かった。多分、泣いていたと思う。あのポケモンも、僕も。
     自分がしてしまった事を改めて自覚した時、またしても吐いてしまった。殺した時の感触が、悲鳴が、表情が、次々と甦ってきた。自分が、殺した。その事実を認めたくなかった。でも、どうしようもなかった。殺さなければまたあんな目に遭っていた、仕方なかった、と必死に自分を説得した。でも、逆らっても殺される訳じゃない。それにもし殺されるとしても、こんな自分の為に他のポケモンを殺す様なポケモンより、あのポケモンの方が生きるべきだったんじゃないか、そんな思いは拭えなかった。
     それからは通常の訓練に加えて、殺せと指示が出る事があった。僕はその度に葛藤し、恐怖し、殺し、後悔してきた。自殺だって何度も考えた。でも、出来なかった。自分が助かる為に殺して来たのだから、当然と言えば当然だ。でも、自分1匹が助かる為に何匹も犠牲になっている事がおかしいのは分かっていた。もし僕が死んだらそれまで殺したポケモンが生き返るのなら、あの時はまだ自殺に踏み切っていたかもしれない。
     初めて殺した時、いや、殺させられた時から数週間が経った頃だっただろうか。僕の主人が決まり、それまで訓練と呼ばれていた事は仕事と呼ばれる様になった。それを境に変わった事と言えば、まず場所だろう。初めて仕事として指示が出た時、僕は初めてこの建物から出た。その時見た景色は、僕が生活してきた部屋よりも、訓練の時に連れてかれた部屋よりも、それまで見たどんな場所よりも直線が少なく、沢山の色があった。前にも横にも壁は見えず、駆け出したかった。勿論出来るはずもなかったが、戦っている時は、あんな場所で動ける事に喜びや楽しさを感じていた気がする。殺せと指示が出ていたにも関わらず、笑っていた様な気もする。それ位新鮮だった。
     他に変わった事は、仕事の対象がポケモンに限らなくなった事や、首に枷の様な物を付けられる様になった事、他のポケモンと協力して戦う事があった事もだろう。初めて協力して戦った時、僕は同じ様な境遇のポケモンがいる事を知った。協力したポケモンは首には同じ枷を付け、傍らにはあいつと似た様な服装の人間がいた。その人間とあいつが何やら話している間に彼と少しだけ話した所、彼が僕と同じ様な境遇である事、そして彼が他にもそんなポケモンを数匹知っている事を話してくれた。多分まだまだいるだろうという事も。
     その仕事を無事に終え、部屋に戻された僕は考え事に耽っていた。僕みたいなポケモンが沢山いるという事がどういう事か。


     まず、僕は殺すのが嫌だ。慣れてしまって来ていても、外で動ける事が楽しくても、それは変わっていないはずだ。いや、絶対に変わっていない。でも、指示に従わなければあんな目に遭わされる。だから、仕方ない。そう考えて来てはいたけど、割り切れてはいなかった。でも、でも、僕と同じ境遇のポケモンがいるのなら、無理に殺させられてるポケモンがいるのなら、僕が殺していなくてもあのポケモン達は助からなかったんじゃないか? 僕が殺さなくても他のポケモンが殺したんじゃないか? 訓練のは別のポケモンの訓練に回され、仕事のは別のポケモンが仕事で殺すんじゃないか? 今まで僕は自分が殺したからそのポケモンが死んだ、自分が殺さなければそのポケモンは死ななかったと思っていた。でも、あいつらに選ばれた時点でもう助からなかったんじゃないか? それなら、それなら――

     指示に逆らう理由はないんじゃないか?

     そうだ、逆らう理由なんてない。僕は殺すのは嫌だ。殺すのは悪い事だ。でも、相手はもう死んでいるも同然なんだ。あいつらに選ばれた時点で助かる事は出来ないんだ。殺すのは僕だ。でも、死ぬのは僕の所為じゃない。あいつらの所為だ。悪いのはあいつらなんだ。だから、僕は悪くないんだ。それにもし僕が逆らったら、あいつらは代わりのポケモンを使うかもしれない。そうしたら、また僕みたいに扱われるのだろう。それは間違いなく辛い事だ。なら、僕が指示に従う事は良い事なんじゃないか? 僕が指示に従う事で、ポケモンを1匹助けている事になるんじゃないか? そうだ、僕は殺す事で誰かを苦しめているんじゃない、誰かを助けているんだ。だから、僕は悪くない。殺す事自体は悪い事でも、指示に従う事は良い事なんだ。それに殺すのは僕の意志じゃないんだ。あいつらの指示だから仕方ないんだ。悪いのはあいつらで、僕は悪くないんだ。そうだ、僕は悪くない――。


     そう考えた時、何だか楽になった気がした。仕事だって楽しみに思えて来ていた。仕事はない方が良いんだとは思いつつも、この建物の外に出られる事は魅力的だった。
     実際、罪悪感さえなければ仕事は楽しかった。罪悪感が込み上げて来る時もあったけど、その度に自分自身に言い聞かせて来た。僕は悪くない、自分の意志じゃないんだ、仕方ない事なんだ、と。そうだ、殺すのは僕の意志じゃない。絶対に、絶対に違う。でも、僕は確かにあの時つまらないと思ってしまったんだ。どうして、どうして僕はそんな風に思ったんだろう――。
     今日の仕事の事だ。最近は殺す指示が多くなっていた気がする。前回まででも何回連続でその指示が出ていただろうか。だから、今回もそうだと思っていた。でも、出された指示は殺すな、生け捕りにしろというものだった。その時だ。つまらないと思ってしまったのは。何で、どうして僕はそう思ってしまったんだろう? 今までを思い返してみても分からない。何がつまらないんだろう? 楽しかったのは外で動ける事のはずだ。でも、殺しても殺さなくても動ける事には変わりない。それで変わる事と言ったら――。いや違う。絶対に違う。そうだ、仕事は無事に殺さずに終える事が出来たんだ。殺さずに済むならそれが一番良いんだ。僕は殺したくないんだから。僕は殺したくないんだ。殺すのは僕の意志じゃないんだ。だから、だから、殺す事が面白いと思うはずはないんだ。絶対にそんなはずはないんだ。でも、それならどうして――。僕は、本当は――。違う。違う! 違う! きっと他に理由があるんだ。つまらないと思った理由が。でも、分からない。いや、分からなくて良いのかもしれない。とにかく違うんだ。殺す事が楽しいはずがない。殺すのは僕の意志じゃないんだ。仕方なくそうしているだけなんだ。それさえ分かっていれば良いんだ。僕の意志じゃないのは間違いないんだから。絶対に、絶対に。僕は殺したくなくて、殺さずに済んだんだ。殺さずに済んだんだから良いんだ。僕は殺したくないんだから。そうだ、今まで殺して来たのは全部あいつらが悪いんだ。僕の意志じゃないんだ。だから、だから――

     僕は悪くないんだ。


    ―――――――――――――――――――――

     えーと、はい、ごめんなさいごめんなさい。でもこれでも結構自重しました。多分全年齢ですよね、多分。リョナとかイマサラタウンな箇所は省きましたし。
     と言う訳で悪の組織的な何かに使われるポケモンの話。続くかもしれませんし続かないかもしれません。続くけど投稿出来ない可能性も結構あったり。
     でも1匹ずつ管理してる理由とか首輪付ける理由とかどうでもいい事は考えてあるのに組織の大きさとか目的とかを決めてないという。そっちの方が大事だというのに。決まってても書く訳じゃないのであまり影響は無いのですけれども。それにしてもこいつら殺しすぎですね。ロケット団でさえ殺したと明確に分かるのはあのガラガラ位だった様な気がするというのに。こいつらどんだけ悪い奴らなんだっていう。イッツ無計画。
     食料とかもどういった設定にしましょうかね。木の実を用意されてるとかが無難ですかね。でもイマサラタウンな案の方が自然に思えてしまうという。殺す理由にも繋げられますし。
     さて、何のポケモンかはご自由に想像して下さい。首があって自己暗示が使えれば大体当てはめられると思いますので。キュウコンとかグラエナとかゾロアークとか。アブソルなんかも夢特性が正義の心ですからその場合葛藤が激しそうで可愛いですね。結論も自分のやっている事は正義だと思い込んだり。あと個人的にはブラッキーの妄想が捗ったり。自己暗示使えますし悪タイプなのも似合いますしなにより懐き進化で分岐進化という所が。懐いた理由とか妄想がイマサラタウン。分岐進化はここまでだとあまり関係して来ないんですけどね。
     あと読点とか「でも」とかが多すぎますね。読み辛くてすみません。でも読み辛い方が雰囲気出る場面もありますよね。それが意図的だったら良いんですけどね。全体的に読み辛いですからどうしようもないですね、すみません。
     何はともあれ書いてて楽しかったです。書いててと言うよりは妄想しててと言った方が正しいかもしれませんけど。

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【虐めてもいいのよ】
    【ややイマサラタウン】


      [No.2584] 宿題終わった? 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/08/23(Thu) 09:15:44     74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    弟の宿題を手伝うことになった。
    バスケ部、塾、学校の宿題。彼の夏休みは夏休みじゃない。こんなことを言うと世の大学生や社会人の皆さんに怒られるかもしれないが、彼もまともな休みはお盆のみだった。
    でもまあ、川に遊びに行ったりプールに行ったり遊びの面でも充実はしていたようだが。

    さて、宿題の話である。塾の課題は親と一緒にやるため、どうしても時間が押してしまう。
    この十三年間、一度も誰かに宿題を手伝ってもらうことがなかった弟が、下でポケモンをしていた私に『姉ちゃん宿題手伝って』と頼んできた。
    『何でだよ』『だって暇そうじゃん』『暇そうなら誰にでも宿題頼むんかいお前は』『大丈夫だよ、数学じゃないから』『じゃあ何』『短歌作って』『……は?』

    話を聞けば、去年の夏休みの宿題の進化版で、今年は短歌を作ることになったらしい。

    「俳句はなんとかなったんだけど、短歌って難しいんだよね。ラストの十四文字」
    「普通の俳句の後に『そしてかがやく ウルトラソウル』って付ければ何でも短歌になるよ」
    「えwww ちょwww ブフォッww」

    ツボッたらしい。一分間近く笑い転げていた。放っておこう。
    自慢じゃないがこういう物は得意である。中三の冬休みの宿題で俳句を作り、某飲料水の俳句コンクールに出したら佳作をもらったこともある。あれは私の数少ない栄光の一つだ。『言われている人は舞台へ上がってください』と言われてスッと立ち上がった時の周りの視線が忘れられない。
    まあ最も……その日は一がついた通知表が返ってくる日でもあったのだけど――

    「できた」


    人工の 青に映るは 水の色 瞳の裏に 焼きつく光

    「ボツ」
    「何で!?」
    「アンタさあ、弟がこんなの作ると思う?」
    「思いません」
    「もっとこう……中二男子が作りそうな物をだな……」

    母親と談義している横で、当の本人は漫画を読んで笑っている。カチンとくる。

    「『兄弟に 宿題任せる 馬鹿一人 お前もやれよ この野郎』」
    「ナイス」
    「えー……」
    「つべこべ言わないでお前も作れ!もう二度と漫画貸さんぞ!」

    何度目かの『私何でこんなことしてるんだろう……』という気持ちが胸を包む。疲れた。もう怒る気力もない。
    仕方ないので『中二男子』らしい物を作ってみる。

    「『歯にしみる アイスキャンディー もう一本 今年は何本 いけるかな』」


    ―――――――――――――――――
    余談。
    実際にこういうことが我が家で起きているので書いてみた。ポケモン出てこないけど気にしない。
    俳句・短歌は得意です。作者名言えないけど。

    【宿題終わった?】


      [No.2583] 優しい君たちへ 投稿者:ねここ   投稿日:2012/08/22(Wed) 17:42:02     73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     小さい頃、私はよく迷子になる子供だった。道に迷っても「迷ったということ」を認めたくなくて、ずっと一人で歩き回っていた――そんなような記憶がたくさん残っている。幼い私はとても頑固だった。今でもきっとそうなのだろうけど。

     私はある時、近所の小さな山で迷子になったことがある。普段見たことのないようなたくさんのポケモンが木々の上で生活している様子を、目を輝かせて観察していた。

     そうしたら、いつの間にか一人ぼっち。だが、私はいつものことだと軽く考え、自分からその山に迷い込んでいった。

     甘蜜をなめるヒメグマ、木から木へ飛び移るグライガー、遠くへ飛んでいくヌケニン、相撲をとるヘラクロス、瞑想をしているアサナン――。

     野生のポケモンも、その景色も、何もかもが私には魅力的に見えた。孤独の静寂さえ、楽しいものだった。

     だがそれは、最初だけ。山にはじきに夕暮れがおとずれた。いつもだったらもう家に帰っている時間。でも私は、出口の分からない天然の迷路から出ることができないままでいた。静寂の中、あてもなく彷徨い歩くしかないそんな状況。次第にゴーストポケモンが増えてきたところで、私はようやく心細くなり、ついに、どうすればいいのと泣き始めた。

     しばらくしゃがみこんで泣いていると、葉を踏む音が泣きじゃくる私の元へ近付いてきた。さくさく、さく、さくり。嗚咽に溶け込む足音。

    「ココ」

     かけられた声に顔を上げると、小さな体に鎧を着込んだココドラが、同じ目線で私をじっと見つめていた。水色の瞳が、心配そうにゆらゆら揺れている。よく見ると、ココドラの後ろにはコドラが、コドラの後ろにはボスゴドラが――。ちいさな私は驚きのあまり腰が抜けてしまい、ひたすらそのココドラたちを見上げることしかできなかった。

     しかし、ボスゴドラは私が迷子だというのを察したのか、ひょいと小さな私を肩に乗せてくれた。どこもかしこもごつごつしていたが、体温がよく伝わってきたのを覚えている。当時の私はまだボスゴドラの気性の荒さは知らなかった為、素直に「助けてくれたんだ」という思いしかなかった。

     それから、ボスゴドラは丁寧にも私を家まで送り届けてくれた。人目につかない森から森へ。誰にも見付かることはなく、私は見知った住宅街に帰って来れた。何で彼らが私の家を知っていたのかは、今でもよく分からない。けれど、それから家に帰った私は――お母さんには物凄く怒られたけど――優しいボスゴドラたちと友達になることに決めた。

     そして、今。私はあの時のボスゴドラたちと暮らしている。大学生になり、大きくなった今でも私の大切な家族だ。ココドラもコドラもボスゴドラも、あの頃から変わらない姿で、私の傍にいてくれる。迷子になった私を救ってくれた英雄たちは、今日も変わらずポケモンフーズを頬張っていた。






    怖そうなポケモンがやさしいとかわいいと思います。

    そうなん?みたいなツッコミは多々あると思いますが気にしない方向で。

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】


      [No.2582] 誰も来ないけど続き書いてみる 投稿者:NOAH   投稿日:2012/08/22(Wed) 14:28:57     77clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    かえちゃんの「引っ越し」 と言うものが終わって
    お昼ご飯も食べて、窓側になぜかあったあたしの特等席に立つと
    かえちゃんは急に「何か」 をし出した。

    ロゼッタ(ロズレイド♀)が言うには
    『かえちゃんの本を片付ける』 らしい。
    うー、みんな手伝うのかな……。

    「メイプルー、ちょっと手伝ってー。」

    『なに、かえちゃん!メイプル何でもやるよ!』

    かえちゃんの頭に乗っかって、覗き込んだ。
    かえちゃんの髪、綺麗な赤色でいい匂いー。

    「これ、カーテン。付けれる?」

    『お安い御用だ!』

    よかった。あたしもかえちゃんの手伝いができて。
    カーテンレールの上狭いから乗れないけど、何とかなるかな。

    『メイプル、無理しないでよ?』

    『もう、ロゼッタてば心配症なんだから!
    このくらい平気だよ!と、言うか、これくらいできないと
    かえちゃんの相棒失格になるよ、あたし。』

    『大丈夫よ、そのときは私がカエデの相棒になるから。』

    『え………。』

    『うふふ♪冗談よ♪』

    ごめん、ロゼッタ……冗談に聞こえない。
    まあ、相棒の座を渡す気はないから、いいけどさ!!
    とりあえず、カーテン付けちゃおっと。


    ――――――――――――――――――――――――――


    「きゃああっ!!」

    どさどさ!!

    『な、なに!?かえちゃんどうしたの!?』

    『たいへん だ ! あるじ が ほん の なか に うもれている !!』

    『いけない、助けるぞ!!』

    アコニ(ゲンガー♂)とツァオメイ(コジョンド♂)によって
    かえちゃんは本の中から助け出されました。(気絶してるっぽいけど。)

    あちゃー、部屋の中が本まみれだ。
    大丈夫かな、これ……。

    ―ドンドンドンドン!!

    「秋風さん!どうしましたー!?秋風さん!!」

    『あるじ の おとなりさん だね。でようか?』

    『俺が行く。アコニはここにいろ。
    ロゼッタとメイプルは片付け頼む。』

    あーあ、先が思いやられるよ……。


    *あとがき*
    今回はメイプル視点で書いて見ました。
    全体的にどたっとしてますね、ごめんなさい。

    引っ越し初日でトラブル発生。
    どうしてこうなった……。

    *タグ*
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【水東荘新規居住者、及び住人募集】


      [No.2581] Re: 【書いてみた】201号室:ミズシマ 投稿者:NOAH   投稿日:2012/08/21(Tue) 20:12:58     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    おお。神風さま!ホウエン居住レポートに
    小説を投稿して頂きありがとうございます!!

    201号室、水嶋兄弟、登録しました(^_^)
    レパルダス可愛い……米粒つけてすり寄ってくるなんて……!!

    これからよろしくお願いしますね(^_^)

    では、続きをば

    ――――――――――――――――――――――――――――

    挨拶周りを終えて、部屋に戻った。
    時計の針は12時を大きく過ぎていた。

    『ヤミィ♪』

    「ふふ……お隣さんのレパルダスとすっかり仲良くなったのね」

    201号室の水嶋大輝さんと、その弟の凛さん。
    大輝さんは礼儀正しい、真面目そうな青年で
    凛さんはどこか、つん、とした、何だかチョロネコや
    ニューラを彷彿とさせる少年だった。

    そして、今はご愛用の止まり木で羽を休ませながら
    日向に当たり、気持ち良さそうに目を瞑るメイプルは
    挨拶周りで出会った、凛さんの足下にすり寄ってきた
    一匹のレパルダスと、楽しそうに、何かを話していた様子だった。
    悪タイプ同士、どこか話が合ったのだろう。
    あの場に姉さんのマニューラがいたら、更に盛り上がっていたに違いない。

    そんなことを思いながら、メイプルを始めとした、私の手持ち達の
    お昼を用意して、私自身も、ここに来る途中で寄ってきた、コンビニで買った
    お握りとお茶をちゃぶ台の上に置くと、残りの五匹をボールから出して
    大量の本や調理器をどうしようか、近くにスーパーでもないだろうかと考えつつ
    エビマヨの入ったお握りを口に入れた。


    *あとがき*
    セリフ少ない;;!!
    書きたいこと纏まらなかった上にお昼ご飯のようすしか書けなかった……。
    でも、これで一旦落ち着きましたので、ゆっくり書けます(^_^)

    カエデちゃんはヤミカラス♀のメイプル含め、6匹の手持ちがいます。
    他の5匹も追々、紹介する予定です。
    あと、彼女のお姉さんもいつか出します。

    *タグ*
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【水東荘新規居住者、及び住人募集】


      [No.2580] 【ポケライフ】歯磨き【百字】 投稿者:門森 輝   投稿日:2012/08/21(Tue) 17:11:20     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     おーい、ブースター。こっち来いこっち。歯磨き。こら逃げんな。
     ほら口開けて。あーんしてあーん、あーん……何? 鼻にねじ込んで欲しいって? はいそうそうあーん。良い子良い子。
     そのままじっとしてろよ?

    ――――――――――――――――――

     久々に100字。
     ザングースやアブソルの歯磨き絵見てたらポケモンの歯磨きってポケライフになるんじゃないかなーとか思いましてですね、こうなりました。
     ブースターにしたのはほのおのキバ(笑)をネタにしたかったからなんですけどポケライフなら理由付けしなくても良いかなーとか思いましてですね、省いたら100字に近くなったのでいっそ100字にしてしまおうと。
     まぁ何が言いたいかって言うと歯磨き絵もっと増えろって事ですね。イラコン関係無しに見たいですね。グラエナとかウインディとかブラッキーとかレントラーとかライボルトとk(強制終了
     四足の子とか自分じゃ出来ないでしょうし、二足の子にわざわざやってあげるのも素晴らしいですね。いや、自分で磨いてるのもそれはそれで素晴らしいですけど。
     とにかく歯磨き絵増えろって事です。歯磨き絵増えろ。
     
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【寧ろ描いて下さい】
    【ブースターかわいいよブースター】
    【歯磨き絵増えろ】


      [No.2579] 【書いてみた】201号室:ミズシマ 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/08/21(Tue) 16:13:42     75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    チョロネコの額ほどの空間に、ちゃぶ台と座布団二枚。
    ちゃぶ台の上に、湯のみが二つ。
    湯のみの側に、野菜炒めの皿と御握りと味噌汁のお椀が二つずつ。

    座布団の上に、子供一人。
    座布団の上に、大人一人。

    子供の側に、レパルダス一匹。
    大人の側に、ルカリオ一匹。

    『いただきます』の声が二つ。それを見計らったかのようなノックの音が、二回。
    何でもない兄弟の日常が、この音で崩される。

    「はい」

    レパルダスを撫でていた凛は、兄である大輝が立ち上がったのを確認して御握りに手を伸ばした。熱いので注意して中身を割る。梅干入り。白米がピンク色に染まっている。
    熱い味噌汁を見て、少し顔を顰める。

    「もう少しぬるめにしてって言ったのに……」

    凛は猫舌である。どんなに大好きな物でも、熱々は食べられない。おまけにこの部屋には冷房がついていない。あるのはいつ壊れてもおかしくない扇風機のみである。
    それでも日当たりの関係か、ここに越してきてからは一度も熱中症にはなったことがない。兄の健康管理のおかげかもしれないが。

    「凛!来て挨拶しなさい」

    氷水を飲んでいたところへ、兄の声が響く。ため息をついて、レパルダスを飛び越えた。
    玄関先に立つ二つの人影。一つは兄。もう一つは…… 女性だ。
    髪は赤毛。以前読んだ『赤毛のアン』に出てくる赤よりも少しだけ濃い。あちらが『にんじん』なら、こちらは『トマト』とギルバートに言われることだろう。
    背丈は小柄。いや、兄の側に立っているから小さく見えるだけかもしれない。兄は百八十近い。ちなみにオレは百五十ちょっとしかない。
    彼女の頭に停まっているのは、図鑑でしか見たことのない、ヤミカラス。重くないのだろうか。

    「今日からこの水東荘に住むことになりました、秋風カエデです。……よろしくお願いします」
    「こちらこそ。私は水嶋 大輝です。こちらは弟の凛」
    「……はじめまして」

    困ったことがあれば何でも言ってください、という兄の言葉に彼女は『ありがとうございます』と言い、『これ、うちの実家の名物です』といかり饅頭を渡してきた。
    こちらで言うヒウンアイスみたいなポジションだろうか。
    ふと足元に柔らかい感触。レパルダスが玄関先までやってきていた。口元に米粒が付いてる。

    「こら、レパルダス、ダメだってば」
    『ミャオン』

    レパルダスとヤミカラスはお喋りを始めてしまった。悪タイプ同士、何か通じ合うものがあるのかもしれない。
    『これからよろしくお願いします』という挨拶で、一先ず彼女は部屋に戻って行った。

    「美人さんだったね」
    「……」
    「どうしたの?……もしかして、気になった?」
    「馬鹿を言うな。早く食べろ」
    「はいはい」

    華ができた、気がする。
    なんだか楽しくなりそうだ。


    ――――――――――――――
    えっと、初めまして。神風紀成と申します。
    面白そうだったので書いちゃったんですけど…… いいんですかね、こんな感じで?
    他の部屋の住人さんがどんな感じなのか気になってます。
    とりあえず、彼らもよろしくお願いします(?)

    では。


      [No.2578] ホウエン居住レポート 投稿者:NOAH   投稿日:2012/08/21(Tue) 09:57:38     77clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    引っ越し。

    それは住み慣れた土地を離れ、新しい土地で、新しい人達に出会うことができる、素敵なイベント。

    ジョウト生まれのカントー育ちでありながら、シンオウやイッシュにも行ったことがある私なのだが、ホウエンには初めて来るどころか、これから目の前の、水東荘(みあずまそう)という二階建の古いアパートに、住むというから驚きだ。

    まずいな私。生きていけるだろうか。

    「貴女が秋風カエデさん?ヘェ、これまた
    えーらしい子が来たなぁ。その紅い髪もえぇなぁ。」

    「はあ……ありがとうございます……。」

    「ああ、えーらしい別嬪さんやから見惚れてたわぁ。
    私は一応、ここの大家やっとるんよぉ。
    何かあったら声掛けてな?」

    ああ、大家さんだったのか。
    しかし、「えーらしい」 とは一体……。
    方言かな。あとで調べよう。

    とりあえず、大家さんに鍵を貰うと
    突然、腰のボールホルダーのモンスターボールから
    一匹飛び出してきた。

    間違いない。我が相棒、メイプルだ。(因みにヤミカラスの♀である)
    空中で翼を羽ばたきながら現れ、そのまま私の頭に乗っかった。
    この子は、人の頭に乗るのが好き乗っかり魔である。

    「まあ、ヤミカラス!初めて見るわぁ。
    ホウエンにはいないから、なかなか見れないんよ。
    それにしても、主人に似てえーらしい子やねぇ。」

    あ、メイプルが照れた。「えーらしい」 の意味は
    流石にわかってないな。だって私も知らないし。

    とりあえず、大家さんに礼を言ってその場を離れると、私はこれから住む、203号室に向かった。
    メイプルは相変わらず、頭に乗っかったままだ。

    カンカン、と、子気味よく階建を登ってすぐが203号室。
    貰った鍵を差し込んで扉を開けると、大きな本棚と、メイプルご愛用の止まり木(実は結構、高かったり)を含んだ
    大きな荷物以外、段ボールの中で眠っている。

    しかし、まず先に何をしよう。
    片付けか、差し入れを渡すか、調べものか……。
    メイプルは早速、ご愛用の止まり木に止まって部屋をぐるり、と見渡していた。

    時刻はちょうどお昼頃。
    しかも、今日は休日だ。

    なら、差し入れを渡して、ご飯を食べて
    それから片付けと行こうか。

    そうと決まると、私はメイプルを呼んで頭に乗せると
    ジョウト名物のいかり饅頭を持って、お隣さんへと挨拶しに向かった。


    *あとがき*
    覚えている人がいるかはわかりませんがお久しぶりです。
    NOAHと言います。語り部九尾の作者と言えばわかるでしょうか……。

    いろいろあって、現在は九州に引っ越して暮らしてます
    場所は大分県です。なのでそこで覚えた方言を入れました
    「えーらしい」とは、大分弁で「可愛らしい」 と言う意味です。

    また暫くお世話になります。よろしくお願いします。

    *タグ*
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【水東荘新規居住者、及び住人募集】


      [No.2577] 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/08/20(Mon) 22:26:27     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     たまに、自分の今の日々に意味があるのか疑問に思うことがある。
     過去を振り返るのも飽きてしまった。
     最早退屈など感じてはいないが。

     自分がここに存在する事は周りから快くは思われていないようだ。
     しかし、いくら迫害されようが自分自身ではろくに動けない。
     最早、夢も希望もない。

     私の身体は常に膜で覆われている。
     外からどう見えているかなど私の知った事ではないが、中から見てみると意外と半透明で不確かな物だ。
     既に慣れてしまっただけかも知れないが。

     ある日、自分の目に小さな光が入ってきた。
     暗闇に慣れていた私にとって、その小さな光は視界が霞んでしまう程眩しかった。
     「光」から拒絶され、何時の間にか暗闇を負の走行性を身に付けていた自分だが、今回はなんとなくその「光」に近づきたくなった。

     自分の運命はなんとなく理解していた。
     この半透明で不確かな膜が無くなり周りから煙たがられる「蛾」になるのだ。
     その「運命」とやらを、「理解」はしたが、「受け入れた」憶えなど何処にもない。
     ―――自分は、「蛾」ではなく「蝶」になりたい。周りから煙たがられる、汚らしい「蛾」では無く、周りから求められる、美しい「蝶」になりたい。
     強くそう思ったことが何度かある。
     まあ、そう思うと同時に「理性」とやらにへし折られてしまうのだが。その「夢」や「希望」は。

     例の「光」は日に日に強くなった。
     「光」が強くなる度に、「痛み」も強くなった。
     この身体になり、ろくに動けなくなってから受けた「痛み」だ。
     私に「痛み」を与えた者の姿は克明に覚えているが、別に復讐しようだとかは全く考えなかった。
     ―――どうせ消えかけていた「痛み」だ。別にどうって事はない。
     ただ、憶えていたいと思った。絶対に、永遠に憶えていようと誓った。

     久しぶりに過去を振り返ってみた。
     この半透明で不確かな膜が、私を包み込んだ直後の事を思い出した。
     今ではすっかり荒んでしまったが、あの頃はまだまともな心を持っていた。
     あの頃はまだ「夢」や「希望」を持っていた。
     忘れないでいて欲しかった。
     何かと繋がっていたかった。
     恐らく、この願望は過去形で正しいと思う。

     ある日の真夜中、光が強くなるのを止めた。
     その代わりに、私自身が強く発光しているのがわかった。
     それと同時に、私は自分に進化の時が訪れた事を悟った。
     ―――やはり私は蛾になるのだろうか。
     ―――やはり私に蝶になる権利はないのだろうか。
     そんな事を思って、ようやく自分が解った。
     自分は自分で思っている程諦めの良い生物ではなかったのだ。
     そう悟りきった時、私の発光は止まった。
     もしかしたら、私は蝶になっているのかも知れない。
     そんな淡い希望を抱き、辺りを見回すが、生憎水溜りの様なものは見当たらない。
     水溜りを探してうろついていると、遠くの方に光が見えた。
     私は何かに導かれるようにその光へと飛んで行った。

          −end−


      [No.2576] おらっ はやく ねろ!【ポケライフ】 投稿者:ことら   《URL》   投稿日:2012/08/15(Wed) 22:37:25     120clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     おらっ はやく ねろ!
     てめえら はやく ねろ!
     うるせーよ はやく ねろ!
     いいから はやく ねろってんだよ!!

    「みんめえええええ!!!!」

    「キャー!」
    「きいいいいええええええ!!!」
    「タブンネが鳴いたー!」
    「タブンネー!」
    「タブンネー!」
    「みみひっぱるぞー!」

     うぜえ。うぜえ、うぜえうぜえうぜえうぜえええええ!!!
     人間どももうざいが、そのちいせえガキはもっとうぜえ!
     タブンネの見た目じゃ「反撃しなそうだしもっとやっちゃえ☆」ってか!?
     
    「こら!もう寝なさい!」

     人間の女が同じことを言う。そーするとなぜか渋々布団に入るガキども。うぜえ。見た目で言うこと聞く人間を決めてんじゃねえぞこら。
     つーか耳ひっぱるな! しっぽ触るな! 腹もむな!
     布団に入って寝かしつけようとしたらまだかまってほしいのか!ふざけんな!

     ガキどもが布団に入って数時間。やっとこさ寝やがった。
     こちとらやっと休憩だ。ほっとついて人間がくれるコーヒーを一杯。匂いはいいのに苦い。

    「また増えたね」
    「仕方ないわよ。こちらが打てる手は全部打ったから」

     人間たちはまじめな話をしている。ここがそんなところだから仕方ねえ。

     ここは人間たちが捨てた子供たちを育てる施設らしい。意味わかんねー。
     自分の子供捨てるかふつー!? かわいくねーだのなんだのかんだのすきじゃないだのあいしてないだのうんぬんかんぬん。人間たちはいつも訳の分からん理屈をこねて自分が一番可愛そうだと力説すんの。なんでそんなかわいそうなドラマ仕立てのストーリーを話していくんだ。子供捨てることに罪悪感あるなら引き取れっつーの。かわいそうじゃないなら黙って捨てろっつーの。
     まー、人間なんて勝手な生き物だわな。あいつも勝手に変なボール投げつけてきて、弱いからいらねーだのなんだの散々いってくれた挙げ句、知らねー土地に置いて行きやがった。木の実のなってるところも解らんし、野生のポケモンたちはやたらつえーし、死ぬかと思った。
     腹も減って喉も乾いて、タブンネの見た目からして血眼で探すトレーナーから逃げて本気で死ぬかと思った。草むらが途切れてるところに逃げてやばいと思ったね。そしたらここの園庭だったわけだ。
     それからはなんでかここで働いてる。24時間親に捨てられたガキどもの相手だ。我ながらこんなに適性のない仕事につくとは思わなかったがな。
     あ?幸せだとは思ってねーよ!ガキはうぜえし人間どもはコーヒーとか苦いものばかり渡して来るからな!

    「タブンネー!」

     もう起きたのかよクソガキ。見に行ってやるか。
     なんだよ触覚引っ張るなうぜえ……お前の体調なんて知りたくもねーわ!うるさい、うるせーよガキ。

    「もう寝る時間よ寝なさい」

     人間たちが寝かしつけてくれた。あーでももう少し起きててよかったんじゃね?
     人間が我が子を捨てる理由のもう一つが、生まれ持った障害。ぎゃーすか騒ぐガキどもはまだいい。あいつみたいに自分じゃ動けねえ、呼吸も危ないっつーのばっかりだ。唯一動く手で触覚触るのは助かりたい本能なのか?
     見に行ってやるか。お前のその心臓の音じゃあな……お前の親みたことねーから知らんけど、人間の親の真似くらいはしてやるよ。だから寝ろ。起きてる間のが苦しいらしいぞ。

     そいつは触覚を握ったまま朝を迎えやがった。痛いっつーの。いくらお前の親の真似とはいえ触覚握っていいなんて言った覚えはないぞ。体くらい拭いてやるからよ。だから離せ。そーっとな、そーっと。いっててててて!
     やっと触覚が抜けた手を熱いタオルで拭いてやる。背後に影を感じた。振り返ったら知らねえ人間が立ってた。人間って何かしら表情あるんだが、こいつら無表情だった。初めて見たが、こいつの両親だった。あー、弱い子供は自分の子でも要らねえのか。あーそうか。
     何も言わずにそいつを引き渡した。これが正しいのかは知らん。が、これが今の仕事だ。その代わりに生きる権利を手に入れた。やっていくしかねえよ。弱いポケモンは生きられねえんだ。タブンネだからここに拾ってもらえて、やっていくしかねえ。

    「タブンネ」
    「めんめ?」
    「今日、また一人来るって」

     ああ、またか。そうだあいつ一人いなくなったところで世界は何も変わらない。自分の仕事は何も変わらない。生きていかなきゃならん。今さら野生に戻れるほど戦えるとは思ってない。
     せめて捨てられたガキどもくらいは、野生の社会を戦えるだけの力を持って成長しろ。つーかしろ。しなかったらげしげしするからな。解ってんのか。だから触覚触るなクソガキ!

    ーーーーーーーーーーーーー
    おらっ はやく ねろ げしげし
    タブンネの鳴き声は「みっみー」に聞こえるでございます。
    ポケライフって間に合うのかな。捨てられたタブンネが孤児院で働いていく話でした。
    【好きにしてください】


      [No.2575] Re: このお話、いただき! 投稿者:穂風奏   投稿日:2012/08/15(Wed) 13:50:20     79clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    はじめまして、穂風奏です
    私の作品からイラコンに参加してくださるとは、本当にありがとうございます
    オオタチは見事に気持ちよさそうに扇風機独占してますね
    写真の左のグレイシアと主人公のだるそうな様子はどうなるのでしょうか
    完成を楽しみに待っております!
    それでは失礼しました


      [No.2574] Re: 【ポケライフ】大図書館の司書 投稿者:穂風奏   投稿日:2012/08/15(Wed) 13:32:15     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    はじめまして、穂風奏です
    素敵なイラストをありがとうございます
    構図も背景も、そして記者さんもエーフィも素晴らしいです!
    もちろん、イラコンへの投稿はOKです
    イラコンに自分の携わった作品が投稿されると思うとドキドキします
    それでは失礼しました


      [No.2573] Re: 【ポケライフ】大図書館の司書 投稿者:keckle   投稿日:2012/08/14(Tue) 19:23:32     93clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    Re: 【ポケライフ】大図書館の司書 (画像サイズ: 600×525 395kB)

    はじめまして、keckleと申します。
    ポケライフ絵のネタを探しているときにこのお話に出会い、読ませていただきました。
    エーフィの特性と性格がすごく話にあっていて、ぜひともこのワンシーンを描いてみたいと思い、まことに勝手ながら描かせていただきました。描きたいシーンがたくさんありすぎて、そのすべてのシーンをひとつにまとめるのが大変でしたが、完成しましたので報告をさせていただきます。もしよろしければ、このまま鳩急行のイラコンへ投稿させていただきます。
    それでは失礼します。


      [No.2572] コミケハイライト 投稿者:No.017   投稿日:2012/08/13(Mon) 18:00:47     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    コミケハイライト (画像サイズ: 500×735 229kB)

    カンツァーさんのレポートです。
    実話です。


      [No.2571] ありがとうございました 投稿者:No.017   投稿日:2012/08/13(Mon) 00:19:15     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    お越し頂いた皆様、ありがとうございましたー

    次回は9/17のポケモンオンリー「チャレンジャー」にて出展予定でございます。
    どうぞよしなに。


      [No.2570] このお話、いただき! 投稿者:風間深織   投稿日:2012/08/12(Sun) 20:28:47     84clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    このお話、いただき! (画像サイズ: 480×640 63kB)

     はじめまして、マサポケでたまーに絵を描いたりお話書いたりしている影の薄ーい風間といいます。
     鳩急行のイラコンに、どうしてもここの【ポケライフ】のついたお話を使いたいなぁと思っていたところ、とってもかわいいお話が投稿されていたので、このお話で絵を描かせていただきたいと思います。
     あと、どうしてもグレイシアと主人公を並ばせたかったがために主人公が床に寝そべっていますが、なんだか本当にすいません……

     ちなみに個人的に気に入ってるのはオオタチの顔とグレイシアの肉球です。一応今できている下書きから写真で撮って載せてみました。
     頑張って貼らせていただきますのでよろしくお願いします!


      [No.2569] かげろうの坂、星のしるべ 投稿者:孤狐   投稿日:2012/08/11(Sat) 22:47:24     74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    暑い、暑すぎる
    現在時刻は9時30分ちょっと前。確かに早起きだと胸を張るには遅すぎるが、まだ朝のはずなのに。
    びしょ濡れのシーツをケムッソのように這い出て鳴り続けるゴニョニョ時計の頭を叩く。
    ホウエンの夏の朝は遅くて暑い。



    ※オリジナル設定、登場人物有り
    ※ごくごく少量の流血有り



    日に照らされて焦げ付きそうなサドルに跨り、夏の道を緩やかに下ってゆく。トレーナー修行の旅ではなく、家から一番「近い」学校に進級したのだが流石はホウエンの離島。来るかも分からないバスを除けば文字通り野を越え山を超えて行くしかない。
    ぼうぼうに茂った草むらの脇を抜け道に砂利が混じり始めるとほぼ無意識にギアを変える。入学当初は戸惑ったが今ではこの坂道も何ともない。タイヤが砂を踏みしめるジャリジャリとした振動を物ともせずぐいぐいと漕いでゆく。
    こんなに必死で登っても目的地は壊れかけの扇風機位しかないボロ校舎だ。暑さで鈍った頭にふとそんな事がよぎり益々憂鬱になる。視界が開け崖の向こうに海が広がると、見慣れぬものが現れた。
    ―――あ、かげろう
    突然の事に思考が明晰になるより先にゆらり、と宙に舞った虫のようなものは姿を消していた。さっきから頭痛がするような気がする。
    暑さにやられたかな。早いところ着いたら何か飲もう。生ぬるい水道水しか無いけれど。
    何となくしかめっ面をしてみながら慣れすぎた道を急いだ。



    「遅いぞユウコ。」
    仏頂面の先生は校門前の木陰で南京錠をくるくると回しながらあぐらをかいていた。チョークの粉が染み付き茶色く煤けて所々穴の開いた白衣に、かかとを潰したスニーカー。数人居た同級生たちと共に過ごした日々と先生の制服姿は一切変わらない。変わったことと言えば、ポケモンに限らない一般教養の勉学と部活動に精を出す学年になるまでには、ユウコを残して全ての生徒が旅へ出てしまったくらいだ。
    先生のあとに着いて校舎脇の小道へはいる。伸び放題の草むらを掻き分けて、ポトポトと木から落ちてくるタネボーたちを刺激しないように奥を目指す。突き当たりで右を向けばボロ校舎に擬態したような倉庫が置いてある。
    「言っとくけどなぁ、本当に使い物になるか分からないからな。」
    酷暑の中ベッドに未練を残してはるばる来たのに今更それはないだろう、とユウコはいくらかむっとしながらブラウスのボタンを二つ開けてパタパタしていると錆びた鍵が回った。
    ひんやりとした倉庫の中は天然もののタイムカプセルのようにあらゆる物が無造作に積まれていた。郷土資料館にでも提供したら良さそうな古びた農作業具に、一チームすら作れないのに真新しいバスケットボールの得点板まである。何に使われていたかも分からない劣化したプラスチックのかけらをぼんやりと拾っていると、先生がダンボールの山から手だけを出してこっちだと招いた。
    「随分と早く見つかりましたね。」
    先生の喜々とした顔に少し面食らう。
    「そりゃそうだ。これは私のだからな。ささ、暑くなりきる前に校庭に持って行くぞ。」
    「私物って、先生の趣味には思えないのですが。」
    「人を見た目で判断するのは良くないぞ。」
    「それじゃあ余程ひどい目にでもあって人格が変わってしまったとか。」
    「人には触れられたくない過去があるものさ。」
    「都合の良いときだけ善良な教育者になるのは止めて下さいよ。」
    「いいじゃない、教師だもの。」
    いつの間にか仏頂面に戻った先生は眉一つ動かさず台詞だけでおちゃらけてみせた。それ以上言い返す気力も失せ、擦り切れた細長いダンボールを担ぎ倉庫を後にした。



    校庭、もとい元校庭があった場所を眺めユウコは唖然とした。砂が風を纏いとぐろを描いて荒れ狂う、例えるならば今まさに、地を離れ空へと飛び立たんとする蟻地獄。そんな物が校庭を占拠していたからだ。
    「なにこれ……。」
    そう呟いた瞬間、風が変化した。砂と共に明らかな敵意が向けられる。
    コンッカチッ
    軽金属の衝突音と共にあらわれた無数の星屑が猛進する砂の渦を迎え撃つ。一つの渦が掻き消された先には、既にいくつもの渦が形成され始めていた。
    「ぐままもう一度、スピードスター。」
    くおっと短く応えたマッスグマは吹き付ける砂をするするとかいくぐると星型の閃光を吐き出した。幾つかは砕け、あるものは突き抜け、真っ直ぐに標的を仕留める。しかし切り裂かれたそばから砂は無尽蔵に湧く。中心は一向に見えない。
    「あーあ……うわっ!」
    外股を掠めていった衝撃波にユウコは飛び退く。スカートを見ると裾がバッサリと裂けていた。
    「ボサッとすんなって。そこら辺にでも隠れてな。しっかし埒が開かないねぇ。かぎわけるだよ!」
    ぐままは迎撃を止め目を閉じ耳を倒して全神経を鼻腔に集中させる。祈りを捧げるように悠々と天を仰ぎ、渦が迫る一歩手前で身体を翻す。してやったり、とでも言いたげに青い瞳がギラギラと輝く。先生の口がにやりと歪んだ。
    「はかいこうせん!」
    「えっ、ちょっとっ!」
    着地と同時に放たれた熱光線は砂嵐を破り、グラウンドをも抉り。地獄の主を撃ち抜いた。
    「面倒なやつは嫌いだよ。」
    校庭に一直線の焼き焦げを付けておきながら実に良い笑顔である。これがカナズミの学校だったなら間違いなくクビがとぶだろう。最も採用すらされない気もするが。
    すなじごくが晴れ、横たわるポケモンにユウコは見覚えがあった。
    「驚いたね、ビブラーバじゃないか。」
    流石のユウコにも聞き覚えがある。暑さと乾燥の厳しい砂地に生息する蟻地獄ポケモンの成長した姿。呆気にとられているうちにビブラーバは慌てて起きあがるとふわふわと頼りなく飛び去ってしまった。
    「わざわざ余所のトレーナーが島に来るとは思えないし、こんな所でここまで成長できるのですか?」
    「こんな湿っぽい所へ来ておきながらホームシックとは、随分な物好きもいたもんだ。ま、とにかく校庭も取り返せたし始めるぞ。」
    ユウコの質問に面倒くさそうに答えると、先生は反動でへたり込むマッスグマを抱えた。太陽がギラギラと照りつけた校庭は確かに砂漠にも見える気がした。



    ダンボール箱をあけるとユウコが生まれるよりずっと前の日付の新聞の塊が入っていた。ひときわ大きな塊を解くと中からは細長いアルミの三脚に傷だらけの黒い筒が一本。先生はぽってりとした凸レンズを慎重に拾いながら唐突に切り出した。
    「ところでお前、ポケモン関連の仕事には興味無かったんだっけ。」
    またか。ユウコは密かにため息を付くと新聞紙の隙間から茶色くすすけたメモを見つけ、引っ張り出した。折り畳まれた紙の表には「天体望遠きょう組立図」とたどたどしい字で書いてある。
    「まあ、ここに残ったくらいですから。」
    メモの内容に目を走らせると何かから書き写したのであろう望遠鏡の原理や作り方、そして行間には改良点やアイディアがびっしりと埋められていた。その横にはやせ細ったバンギラスのような、恐らく望遠鏡の絵が添えられている。
    ひらがなと誤字のやや多い幼い子供の字。鉛筆を握りしめ夢中に文字を刻み込むあどけない少年の姿が浮かび、先生をそっと盗み見る。
    「こいつを買ったころはな、宇宙飛行士になりたかったんだ。でもやめた。」
    「はあ、どうしてですか。」
    どうでもいい、とは素直に答え無かった。話題が自身から逸れることを願いながら聞き返した。
    「歯磨き粉みたいなメシを毎日食わされると知ったからさ。」
    むすっとした顔は何の感情も帯びていない。
    三脚のネジがひとつ足りない。箱へ手を伸ばすと目の前にネジと鼻先が差し出された。得意げに尻尾を振り回すぐままの顎を掻いてやる。先生が二つ目のレンズをはめ込みネジを締めた。
    「ほれ、見てみな。」
    望遠鏡と呼ぶにはやや質素な黒い筒を覗いてみた。拡大された校舎が逆さ吊りになり、空は地平にへばりついている。二枚の凸レンズに絶妙なバランスによって観察対象は倒像となり、拡大されて瞳へ届く。頭では理解していてもむず痒い違和感がある。
    「本当に逆さまですね。」
    「良いよな宇宙は。逆さまに見えたって誰も怒りゃしない。」
    「先生だって誰にも怒られないんでしょう。」
    「居るんだよ。それなりにちゃんとしないと五月蠅いのが。」
    ぐままは素知らぬ顔で背中を毛繕っていた。先生はユウコの手から望遠鏡を奪うと三脚に取り付け、満足そうに頷き、ニマニマと笑った。
    「せっかくここまでして二人だけで観察するのも勿体ないな。」
    呆れたようにユウコが答える。
    「それじゃあ下の学年でも呼びますか。」
    「分かってるじゃないか。チビ達を招待しての野外天体ショー、天文部と参加者は今夜校庭に再集合だ。」
    そう言った先生の顔は降り注ぐ太陽の光によく似ていた。
    この人も少年みたいに笑うことあるんだ。そうだ、私が最後にあんな気持ち良さそうに笑ったのは何時だったかな。
    ユウコは真夏の空に望遠鏡を高々と向けた。明日も明後日も永遠に来なくてもいいから、ずっと吸い込まれていたい。そう思わせる青くて深い空だった。



    「サイユウシティでは西北西の風、風力3、晴れ、22ヘクトパスカル、気温は31度…」
    地図の下の端、サイユウに記された丸印の左斜め上に羽を書き入れ、丸の中に晴れを表す縦線を伸ばす。さざ波のようなラジオの雑音をBGMに、天気を読み上げるアナウンサーの声がユウコの部屋に流れる。
    心地よい秩序を持った音声の海に乗り、北へ北へ。海を越え天気図が埋められる。未だ訪れた事のない、これからも訪れるか分からない、遥か遠くの風が吹く。
    海を飛び立ち空を滑る。いつの間にか薄緑の羽根を羽ばたかせ、波に揺られるようにふわり、ふわり。キッサキの分厚い雪雲を抜けると更に遠くイッシュの地へ。静かな恍惚の中で天気図は埋まってゆく。
    夢から醒めるように自分の部屋へと着陸すると、放送終了にぴったり合わせてラジオを止めた。新聞の切り抜きから月齢を写しパンチで穴を開けバインダーに閉じる。
    そういえば。あのポケモンはどうしてこの島へ来てしまったのだろう。住み慣れた砂漠を離れてふわふわと海を渡って。
    馬鹿な奴、とユウコは思った。透けるような緑の羽根は、海を渡るにはかなり、頼りない。ふわりとカーテンが風に膨らむ。かげろうが離れない自分の思考に苛立つ。
    再び開いたバインダーに目を落とす。天候は良好、月の光量も控え目で、絶好の鑑賞日和となりそうだ。
    サイコソーダに浮かべた氷が溶けてからりと音をたてる。橙が染み始めた部屋でナップザックを拾い上げた。
    こんな日には。
    星でも見るに限る。



    湿っぽい海風と下がりきらない気温に汗がにじむ。巣に帰れと言うかのように鳴き交わすキャモメの声が響いている。
    砂利道にさしかかり、ギアを変える。ほの赤く暮れかかる海が崖越しに見えてくる。坂を登りきりユウコがギアを戻して速度を緩めた、その時だった。
    視界の外れから、薄緑の塊がはらりと降ってきた。あの、ビブラーバだ。慌ててブレーキをかけ、自転車を降り捨てるとそろそろと忍び寄る。こちらに気付く様子もなく倒れ込んでいる。
    「死にかけかしら。」
    呼吸にあわせて微かに動いてはいるものの確かな反応はない。過度な湿気に当てられたためか素人目にも緑の皮膚が赤くかぶれているのが分かる。
    胸の辺り、羽の付け根まで照らした時ユウコは息を飲んだ。羽の付け根辺りに、自分の背まで疼くような亀裂が走り血が滲んでいる。恐らくは他のポケモンに裂かれたばかりの傷だろう。それも、空を飛べるビブラーバを更に高くから狙える凶暴な何かから逃げ際に付けられた。
    全身を隈無く照らすと赤黒いものが点々とこびりついている。ポケモンバトルなどという生易しい物ではない。激しい闘争を物語る不規則な赤い斑点。
    どうしようか。野生のポケモンに無闇に干渉する必要などない。放っておけば自然の中で処理されるだけの話だ。
    ユウコには手持ちも居なければポケモンの知識も浅い。島のポケモンは見知っているとは言え、丸腰で自分の身を危険に晒すことになりかねない。
    でも―――
    暴れるなよ、と念じながら恐る恐る手を伸ばす。しかしどこを掴んで良いのやら。逡巡し、意を決して尾に触れた。
    その途端、羽根が激しく振動し、ユウコは弾き飛ばされた。ビブラーバは威嚇するように羽根を震わせると、ユウコではなく空中を睨み付けた。
    ユウコはようやく気付いた。頭上でキャモメの声が、五月蝿い。
    先程までまばらに飛んでいたキャモメが次々と集まり円を描いていた。中心は、此処。
    「逃げるよ!」
    未だに臨戦態勢をとるビブラーバに声を掛けた。この状況は嫌な予感がする。このままこの場所に留まるのは危険だ。
    頑として動こうとしないビブラーバを抱き上げようとするが、羽根を震わせ触ることすら出来ない。何度目か手を伸ばしてようやく尻尾を掴むと、バダバタと羽ばたき出し、ユウコは数メートル引き摺られて投げ出された。敵意に満ちた目でユウコを一瞥すると、ゆらりと飛び立った。
    バランスを大きく崩しながら飛ぶビブラーバと後を追うキャモメ。ユウコは駆け出していた。



    「崖に住んでいるキャモメには手出ししてはならないよ。」
    島に住む者ならば人もポケモンも誰もが教わる事だった。
    「彼等一羽一羽はかよわいものさ。でもね、もしもその一羽に手を出そうものならば……」
    上空を飛び回るキャモメは少なくみても数十は集まっているようだ。彼等が追う先には今にも堕ちそうな一匹のポケモン。
    不安定に飛ぶビブラーバより上空を保ち、キャモメの群れは風の強い海沿いへと追い込むように飛び回る。ビブラーバも時折衝撃波や砂の渦でささやかな抵抗を見せるが、そのたびに高度を上げるキャモメにはさっぱり当たらない。
    十分に追い付いたことを確認したのか、鋭い鳴き声と共に風の刃が降り注ぐ。小さな体から放たれる狙いの甘い高威力の絨毯爆撃は、敢えて射撃方向をずらして散らす事で命中率をカバーしている。
    呆れるほどに練られた連携に、圧倒的な数の暴力。これではもはや闘いではない。狩りだ。
    遂に一発のエアスラッシュがビブラーバを撃墜した。待ちわびて居たかのように一斉にキャモメたちが飛びかかる。
    「うわあああああああぁぁぁっっ!!!」
    ユウコは叫んだ。ありったけの声で叫びながらナップザックを振り回し、群がるキャモメに突進していった。
    突然の人間の登場に豆鉄砲を喰ったかのようなキャモメ達を振り払い、ビブラーバを抱え上げる。なるべく、陸へ。ナップザックをもう一周振り回すと、近くのサトウキビ畑へと飛び込んだ。



    ユウコの背丈を優に越す高い茎の間を慎重に進んで行く。しゅるりと細長い葉の陰に切れ切れに見える空は夕日で赤く染まり、しつこくキャモメが飛び回っている。もう直ぐ日も沈むだろうに実に執念深い。
    ビブラーバが弱々しく訴えるように羽根を震わせていることに気付きそっと降ろした。
    「ねぇ、……」
    ダメで元々、話し掛けたユウコにビブラーバはさも煩そうに首を傾ける。
    「あなた、キャモメ、襲ったの…?」
    しゃがんで問い掛けるユウコについと顔を背けるとぶぶっと羽根を鳴らす。
    「えーっと、…どの位?」
    先程とは反対へ首を回すとぶぶぶっと鳴らした。何を言いたいのかはさっぱり分からない。しかしキャモメの様子を見ればある程度の想像はつく。
    「それで、思いもかけずにこっぴどくやられたのね。」
    ユウコを見据えると二本の短い触覚をツンと立てて羽根をはたはたと振った。今度のは拒否のつもりらしいと分かった。一方的に反撃されているようにしか見えないのだが。
    葉の隙間からちらちらと白い鳥が見え隠れしている。おおよその見当は付いているのだろう、かなりの数が集中してきていた。
    足元からぶぶぶぶぶっと音がする。ユウコを通り越し天高く向けられた眼はキャモメを鋭く捉えていた。
    「どうしても諦めないのね。」
    ユウコの事など気にも留めない様子で羽根も触覚もピンと立て構えている。
    「あのさ、私このあたりは詳しいの。だからその…協力、しようか?」
    ビブラーバは今度こそユウコを真っ直ぐ見つめると、目を瞬かせて首をぐいぐいと回した。



    ユウコにとってこのあたりは道も畑も我が家のような物だった。極力茎を揺らさぬように、こごみながらジグザグに進んでキャモメをまいてゆく。ビブラーバは大人しく腕の中に収まってくれている。
    ついにサトウキビの林から出ると、地面に開いた洞窟のなかへ身を滑り込ませた。島のそこかしこに開いている、石灰質が雨水に溶かされた窪地。地理の時間に先生がそう説明していた、気がする。
    洞窟の中程で降ろしたビブラーバに目配せをすると、四枚の羽を二枚の尾を扇子のように広げて応じる。ユウコは親指をぐっと立てると洞窟から出て、ナップザックから懐中電灯を取り出した。暮れなずんだ空の元、自分へ向けてスイッチを滑らせた。
    小さなスポットライトに照らされたユウコに気付きみゃあみゃあと敵の発見を伝えるキャモメに向かって、下瞼を引っ張り舌をペロリと出す。色めき立つキャモメを確認すると、更に挑発するように石を群れに投げ込み洞窟に逃げ込む。怒りに我を忘れたキャモメたちは一斉に洞窟へとなだれ込んできた。ユウコはビブラーバから距離を取り後ろに控えた。
    「今だよ!」
    掛け声と共に地表が蠢く。異常を察したキャモメ達は、引き返そうとするが後から後から流れ込む仲間に押し戻される。
    遂にとぐろを巻いた砂が宙へ飛び立った。避けようと飛び上がり壁にぶつかり堕ちるもの。仲間と衝突しいがみ合うもの。焦りの余り自ら呑み込まれにゆくもの。空中の蟻地獄は錯乱状態のキャモメを次々と引きずり込む。
    キャモメの声が徐々に収まり、ビブラーバはすなじごくを収めた。砂煙ごしに息を荒げたビブラーバと気絶して転がるキャモメが現れる。
    ついさっきまでの怒号と悲鳴の喧騒など初めから無かったかのように風の音だけ微かにが聞こえる。白い羽毛の混じった砂を踏み、洞窟の外を目指した。



    甘かった。どうりで静かな訳だった。洞窟の入り口には、キャモメの大群が音もなく待ち伏せていたのだ。
    みゃーあ!!
    キャモメの一声で猛攻が開始された。天から降り注ぐエラスラッシュ。体の大きい数羽は螺旋を描きつばめがえしを繰り出す。ビブラーバはとっさに砂を張り防御態勢を取った。
    「ひゃあっ!」
    ユウコは左腕を押さえて転げた。鋭い痛みが二の腕を刺す。恐る恐る手を離すと真っ白なブラウスが裂けじわりと赤い染みが広がっている。
    戦闘へ顔を上げるとビブラーバが凄まじい殺気でユウコを見ている。
    「大丈夫だよ!大丈夫だから!」
    きゅーーーううぅぅぅ!!!
    ビブラーバは憤怒していた。ユウコは訳も分からず身を竦ませた。
    来るんじゃなかった。やっぱりこんな事するんじゃなかった。
     馬鹿なのは私だったんだ。こんなことをして、何かが変わるなんて勘違いして。
    後悔しているユウコをよそにビブラーバはゆったりと向き直った。キャモメの群れも気圧されて静まり返った。
    羽根が大きく、大きく振られている。次第に速く、激しく、小刻みに、速く速く速く速く!
    耳をつんざくような羽音が次第に、次第に、柔らかなメロディーを奏で始める。
    まるで歌っているみたい。女声の、暖かくって物悲しい声。ユウコは場違いにもそう思わずにいられなかった。
    歌声がフォルティシモに達すると、ビブラーバは地を蹴った。四枚の羽根の一対が大きく伸び、昆虫のような体躯は骨が張り出し肉が盛り上がる。
    竜と呼ぶには繊細過ぎるが、精霊と呼ぶにも逞し過ぎる。変貌を遂げたビブラーバ、いや、フライゴンはキャモメの群れを突き破り天高く抜けていった。
    高く、高く。上り詰めたフライゴンは翼を翻して地上を見下ろし、腹にエネルギーを溜め始める。呆気にとられていたキャモメ達も陣を組み迎撃態勢を取り出している。
    最後の力を振り絞り、熱く激しく濃縮された、ドラゴンのエネルギー砲がついに放たれた。
    幾筋にも分かれたエネルギーの塊は空を駆ける。慌てて放たれたキャモメ達の射撃も打ち砕き、煌めき、尾を引く。キャモメ達は雪のように堕とされ、散り散りに逃げて行く。
      一つの銀河が丸ごと現れたかのような星の雨。あまりに神々しく、厳かな星々の怒りの進軍。
     夏の宵空に地に近すぎる流星群が、ちっぽけな島を覆った。



     ユウコはふらふらと舞い戻ってきたフライゴンが地に足を着けるや否や抱き着いた。
    「やったっ!やったぁ……!」
    キャモメの大群は一羽残らず撤退していた。今頃はがっかりしながらねぐらの崖を目指しているだろう。
    フライゴンの少し照れくさそうな困ったような顔に気づきユウコは腕を解いた。
    穏やかな風に吹かれて空を見る。夜の闇がさらさらと夕暮れの赤をすすぎ、気の早い星がうっすらと見え始めていた。
    「私、もういかなくっちゃ。」
    フライゴンはくぅー?と鳴いて首を傾げる。その様子がビブラーバの時のサトウキビ畑での傾げ方にそっくり過ぎて可笑しくなる。
    「あなたが昼間暴れてたとこ。学校っていうとこでね、星を見るの。だからもういかなくっちゃ。」
    ユウコがそっと肩を撫でると、フライゴンは数歩下がり腰を低くすると首を深々と下げた。
    「えっ?」
    戸惑うユウコにフライゴンは悪戯っぽく笑った。



    滑らかなひんやりとした鱗が覆う長い首を跨いで、腕を回す。喉に触れた手には呼吸が伝わってくる。翼を大きく振り上げると、地面をそっと蹴った。
    くるりくるりと旋回しながら高度を上げ、地面が遠くなってゆく。空気がひんやりと冷めてゆく。ユウコの生きてきた全てが詰まった島が遠くなってゆく。
    空から見下ろす島はびっくりするくらいに小さかった。まばらに漏れる民間や灯台の灯りは、まるでミニチュアのおもちゃを見ているよう。自分の家も、学校も、じっちゃんの畑も町の役場も、今なら全部一歩で行けてしまいそうだった。
    フライゴンに促され海を見渡す。水平線の向こうに、光が広がっていた。遥かに遠いのに、島よりも鮮烈な光。ユウコの知らない沢山の命が発している光。
    緩やかに緩やかに地面が近付いてくる。風が熱を帯びる。人生の大半通い詰めた学校が近付いてくる。
    ユウコを校舎の裏で降ろしたフライゴンは、海の方を向いた。
    「もう出るの?」
    フライゴンはユウコの問い掛けにゆっくりと頷いた。
    「もう無茶したら駄目だからね?」
    フライゴンはむくれるように離陸態勢を取る。
    「じゃあね。旅、楽しんでね!」
    既に小さくなったフライゴンは、一回転宙返りを決めると海の彼方へと消えていった。
    波の音だけが残されたユウコを包んでいた。視界の外れで星が一つ流れた気がした。



    「あーゆっこばばあがちこくしたぁ!」
    「ヒロトくん!ばばあとかゆったらいけないんだー!せんせーにゆっちゃうよ!」
    「うっせ!やーい、おばあさん!」
    校庭は集まったちびっこたちのせいでてんやわんやの大騒ぎになっていた。
    ヒロトくんはユウコがぽかりと殴る格好だけすると、大はしゃぎで逃げていった。
    「ユウコ遅いぞ」
    仏頂面の先生は何も変わらずにむすりと言った。
    「色々と忙しかったんですよ。」
    ユウコは先生の寝転がっているブルーシートの隣に横になった。
    「望遠鏡とられちゃったよ。」
    先生は少し悲しそうな声を作った。昼間組み立てた望遠鏡はちびっこたちが奪い合いながら覗いている。
    「実はあれがなくても流星群の観察自体は出来るんだけどねぇ。」
    自分を慰めるように呟く先生の声を聞きながら、空を見ていた。痩せた月のまだ登らない空につい、つい、と星が走る。
    「先生。」
    「ん、どした?」
    「本当のところ、どうして宇宙飛行士を目指さなかったんですか?」
    「そうだねぇ……」
    子供たちのはしゃぎ声、風にざわめく木々。沢山の流れ星。時が止まったかのような熱帯夜。
    「こっちのが、気楽だろ?」
    「そんなことだろうと思いました。」
    先生は先生だから良いな、と付け加えるのは何だか恥ずかしいから止めにした。
    もしやりたいことが有るとするならば。とりあえず、次にあいつに会った時にはお礼くらい言いたいな。
    ユウコは目を閉じると流れ星の洪水みんなにいっぺんに願ってみた。




    終わり






    小説を、それも大好きなポケモンで書き上げてみたい。
    そんな願いを抱き幾星霜。
    何作か途中で放り投げ、やっと完結まで書き切れたので恥を晒しに来ました。
    はじめまして、孤狐です。
    物語を書くのがこんなにも大変で、楽しいとは。
    結構疲れたので、もうしばらく書けそうにありませんが;
    そうそう、今日明日はペルセウス流星群が見られるそうで。
    今日は曇ってしまいましたが明日は晴れますように!

    日にちを間に合わせるため特に最後のほうは急ピッチで仕上げたので、誤字脱字等かなりありそうなので見つけ次第どしどし報告してください。
    いつ直せるか定かではありませんが;


      [No.2568] いつも一緒  【第1話】 投稿者:ヴェロキア   投稿日:2012/08/11(Sat) 11:43:25     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    【第1話】

    ズダダダダダ!!!!ズダダダダダ!!

    街中に銃声が響き渡る。戦争だ。レインが住むマルス地方は、まだ発展途上で、銃や戦車や爆弾などは無い。住居も木の中に作り、狩をして暮らしている。戦争ではポケモンと弓と槍で戦う。なので、相当不利だ。

    ドガガガーーーーン!!

    爆弾が落ちた。

    人々「キャーーー!!助けてーー!!」

    ??「フライゴン、ハクリュー、人々を避難させろ。プテラ、いけーー!!」

    ある人はプテラに乗り、弓を構え、堂々と敵に突っ込んでいった。

    ??「いけープテラ!ヤーー!!」

    ある人は矢を射った。その矢は、敵に命中した。

    ??「プテラ、破壊光線だ!!」

    プテラの破壊光線により、敵のガンシップは次々と破壊されていった。

    敵大佐「何だあいつは?撃破しろ!!」

    ズダダダダ!!ズダダダダダ!!

    敵のガンシップから銃声が聞こえた。

    ??「うわっ!!」

    ある人は銃に撃たれ、死んでいった。

    その人の死から、マルス軍は次々と死に、残ったのは僅かだった。


    ・・・・・・・あの悲惨な出来事から15年。


    レイン「で、そのある人ってのは?」

    レイン母「あなたの、お父さんよ。」

    レイン「え・・・・・」

    レインが住む村の入り口には、レインのお父さんの石碑が建っている。村の勇者だ。

    レイン母「レイン。私たちの一族は、代々続くドラゴン使いなのよ。あなたももう10歳。だから、ドラゴンを授けます。」

    レインはモンスターボールをもらった。

    レイン「なんだろ・・・えっ、レックウザ?何で伝説のポケモンが?」

    レイン母「あなたのお父さんにレックウザが心を開いたのよ。天空の城で。」

    レイン「えーすごい。」

    レイン母「10歳になるともう1人で自立です。家を作り、これからもレックウザと共に過ごしなさい。ずっと一緒に。」


    第2話へ続く


      [No.2567] いつも一緒 投稿者:ヴェロキア   投稿日:2012/08/11(Sat) 11:09:44     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どうも、ヴェロキアです。
    お題の『ポケモンのいる生活』を書きたいと思います。
    よろしくお願いしまーす。


    では次の回からスターートッ!!


      [No.2566] DON☆引きですね 投稿者:MAX   投稿日:2012/08/10(Fri) 03:39:32     66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    コメントいただけた! ホントどうもありがとうございます。

    しかし、案の定と言いましょうか、みなさまドン引き。
    こんな虫ネタ、死体ネタ、さらに汚物ネタと、出してから言っても遅いですが人を選びますよね。AとCの話に実際に遭遇したら自分なら絶望してます。
    「背筋が寒くなるもの」「身の毛もよだつもの」には、おぞましいと感じたり目を背けたくなるものも含まれると思います。
    そういう点では、今回は正解を得られたような気が。自分の評価の株が底値を割った気もしますが。

    >もしかしたら寄ってきたよくないものを消してくれるのだろうか?
    飛んで火にいる夏の虫。このあと腐臭につられて寄ってきたよからぬ虫をランプラーが退治してくれることでしょう。その命でランプラーも少しは満たされるはず……。

    >「男3人(学生)集まると、必ずバカなこと引き起こすよな」
    自分にはそんな友人はいませんでしたがやはりお約束ですよね。ちょっとCの悪ノリが過ぎたおかげであの始末ですが、それが男子の日常、と。
    ナマ物が腐りやすい夏、死肉はともかくとして食べ物にはご注意ください。

    >炊飯器
    あの手のモノで一番恐ろしいのは中途半端に水気が残っていてドロドロになっているものでしょう。
    今回のアレは、駅雑炊のようになっていた、というのが自分の予想です。
    あくまで予想です。実際に試したこともやらかしたこともありませんからね。スパゲティの茹で汁を「再利用できるかも」と鍋に入れたまま数日放置し、液面にカビを生えさせたことはありますけども。あの時のやっちまった感は悲しかったなぁ。

    笑いが取れたのならもはやそれでオッケー。読み手が混乱するようなノンジャンルの作品を、ご一読いただきありがとうございました。
    以上、MAXでした。

    余談ながら、「猫は祟る」でグーグル検索したら先頭に猫の幽霊に関するお話(コピペ?)が出てきました。不思議なお話で結構面白かったです。


      [No.2565] 星空を見上げる海の上 投稿者:ことら   《URL》   投稿日:2012/08/09(Thu) 22:12:04     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     風も穏やかですね。空も晴れてますし、ホエルオーの上だと物凄く星が一つずつくっきりと見えますね。
     あー、そうですね、ダイゴさん寝てますから別に返事しなくていいですよ。
     
     こんな明るい星空を満天って言うんでしょうか。私は初めて見ましたよ。隣にダイゴさんがいるからですかね。いつもより綺麗に見えます。学校で習った星座も解りません。ダイゴさんなら解りますかねえ。起きてたら教えてくれたかもしれませんが、今は出来ませんね。
     相当疲れてたんですね。ホエルオーが大きいからいいですけど、落ちないでくださいね。

     やっと会えたんです。とても探したんです。嬉しく無いわけないですよ。私の好きな人。これが恋することだと教えてくれたのはダイゴさんです。そしてこれが愛だと気付かせてくれたのはダイゴさんです。
     あんな手紙一つでいなくなって……心配したんですよ。本当に心配して、いてもたってもいられなかったんです。

     でもこうして、この手で触れられる距離にいる。ダイゴさんの髪がさらさらしてて気持ちいいです。よく見えませんが、きっと寝顔も美しいですよ。だってあんなに笑顔が素敵で、優しい人が美しくないわけないです。
     頬を撫でたら、少し苦しそうな寝息が聞こえました。起こしてしまったかと思いましたが、そうでもないみたいですね。いいんですよダイゴさんそのまま寝てて。ホエルオーもゆっくりと泳いでますから。
     
     ダイゴさんに貰ったダンバルも、今では立派なメタグロスです。今は連れてきてませんよ、安心してくださいね。
     そうですよ。今いるのはホエルオーだけです。二人きりなんですから、ポケモンたちは置いて来ました。ポケモンたちも好きですけれど、私はダイゴさんと過ごす時間がもっと大切なんです。
     
     やっぱりダイゴさんに触れていたいと思います。抱きしめたダイゴさんはいい匂いがします。
     好き。大好きダイゴさん。
     もう絶対どこにも行かないでください。私と一緒にいてください。
     そんなこと言ったら、ダイゴさんはとても困った顔をしましたね。

     大好き。誰よりも大好き。そんなダイゴさんを独り占めしたいと思うのは間違ってませんよね。みんな言ってましたもの、それが恋することだって。
     でも、ダイゴさんが困るなら仕方ないと思います。

     ダメなんですよね、私だと。
     ダイゴさんの気持ちは私に向いてないんです。
     だからこうして最初で最後のデートにワガママいって来てもらいました。ほら、遠くに小さな明かりが見えるのが、ルネシティですよ。こんなところにまで来たんですよ。


     もう二度と離しません。
     もう二度と何処へも行かせません。
     これが最初で最後だとしても、ダイゴさんがどうしても欲しい。ダイゴさんの気持ちを捕まえることの出来るボールを持っていない私には、この方法しかないのです。
     私とダイゴさんを縛って。もっと離れないように私の手とダイゴさんの手を縛って。

     さあホエルオー、私たちが海面についたら好きなところへ行って。いままでありがとう。
     ここはカイオーガが眠ってた場所。紅色の珠で目覚めて、藍色の珠で眠っていった場所。
     私たちもここに眠るの。
     深い深い海底に。
     誰も起こしに来ることのない、暗い海底に。
     苦しく無いよう、眠ってもらってますから。

     さあ、行きましょう

    ーーーーーーーー
    背筋凍る話で盛上がってる中、空気読まずにカップリングだぜ!ダイハルだぜ!
    hahahahahahaha!
    【好きにしていいのよ】


      [No.2564] 明日本番です〜 投稿者:No.017   投稿日:2012/08/09(Thu) 21:44:37     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    明日は少しメンバーが替わりまして

    No.017
    カンツァーさん
    小樽ミオさん

    での店番となりますー
    皆さんよろしゅう〜


      [No.2563] いたずらマイナン2012 投稿者:akuro   投稿日:2012/08/08(Wed) 16:57:19     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     やっほ〜☆初めましての人は初めまして♪そうでない人は久しぶり!
     シンオウのトレーナーのシュカのポケモン、マイナンのらいむだよ☆
     きょーはね、みんなにらいむの「いたずらごころ」を披露しちゃいま〜す!
     それでは早速、いってみよ〜!


    〜シュカの場合〜

     まず最初のターゲットは、木の実に水やり中のシュカ! 頭にピョーンと飛び乗っちゃうよ☆

     テトテト、ピョーン、ポテッ☆

    「うわっ!?」
    「シュカ、水やりごくろうさま〜♪」
    「なんだらいむかー、驚かせないでよー」
    「えっへへ〜。ごめんごめ〜ん☆」
    「……あーもうらいむ可愛いー!」

     むぎゅー

    「きゃははは♪シュカ、くすぐったいよ〜☆」

     やっぱりシュカは優しいな〜♪



    〜ひばなの場合〜

     次のターゲットは木陰でお昼寝中のキュウコンのひばな!
     どうしよっかな……あ、尻尾に軽い電流流してみよ〜。
     ふわふわの尻尾に触れて……。

     パチッ☆

    「ふにゃ!?」
    「あはは♪ひばなニャルマーみたい〜☆」
    「らいむー起こさないでよー。せっかくいい夢見てたのにー」
    「ごめんごめ〜ん♪そだ! これシュカから預かって来たよ〜♪実りたてのもぎたてだって〜」
    「あ、ナナシのみ! ありがとらいむー!」

     もぎゅもぎゅ……

     へへっ☆ひばな、チョロいね♪
     それでは次いってみよ〜!


    〜こくあの場合〜

     お次は木の上でボーッとしてるヘタレドンカラスのこくあ〜!
     こくあには……でんじは当てよっかな〜?

     え〜い! バチバチッ!

    「うぎゃあああああ!!」

     ボテッ。

    「……あれ?」
    「ちょっと……らいむ何するのさ……」
    「あっ、ごめん♪でんじは当てるつもりが間違えて10万ボルト使っちゃった☆」
    「言い訳になってないよ!」

     とりあえず、こくあにはシュカからもらったオボンのみをあげて……次行ってみよ〜!

    「ちょっとー!!」


    〜うみなの場合〜

     草むらからエンペルトのうみなを見てたら、いきなり冷凍ビームが飛んできた〜!!

    「きゃあ♪」
    「ちっ……外したか……今日という今日は、絶対に仕留めてやるー!!」

     あれ? なんかヤバイ雰囲気? ……こんな時は☆


    「に〜げる〜が勝ち〜☆」
    「あっ、こら、待てらいむーー!!」



    〜のばらの場合〜

     ……ふう。何とか逃げ切ったかな?
     あ、前方に最後のターゲット、ロズレイドののばら発見! 今日も技の特訓中か……よくやるね〜。

     のばらへのいたずらはもう決めてあるよ♪シュカが育てた辛さ1.5倍のノワキのみをのばらの口目掛けて……発射〜☆

     ヒューン、ポイッ。ゴクン……。

    「……!? キャーー!!」

     ゴオオオオオオ……。

     作戦だいせいこ〜♪のばらの口から火柱が上がりました〜☆


     ……ふう♪なんか疲れたな〜☆
     もうシュカの所に戻るから、みんなバイバ〜イ☆
     これからも、らいむ達をよろしくね☆




    〜〜〜〜〜キリトリセン〜〜〜〜〜

     私が処女作『いたずらマイナン』を書いてから今日でちょうど1年です。
     この1年、色んなことがありました。
     対戦へ目覚めた事、新たな活動ジャンル、そしてBW2発売……。
     節目の年ということで、処女作品のキャラでもう一度書いてみました。
     まだまだ未熟者ですが、これからもよろしくお願いします!


    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】


      [No.2562] 涼を納められてホッとしました 投稿者:ラクダ   投稿日:2012/08/08(Wed) 02:10:44     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    【納涼】と書いておかなければホラーだと思ってもらえないような気がして……w
     自分で書くと、読み返すたびにどこが怖いのか分からなくなってくるところが怖いです。

    > 最初遺跡をズイの遺跡だと思ってて、お姉さんのことをしばらくアルファベット型のあいつらだと思い込んでいた残念な奴はこちらです(

    「私、O姉さん。今、あなたの後ろの壁に張り付いているの」 (某電話人形のノリで)

     振り返ると、AからZ、!、?までの仲間たちと一緒にみっちりと壁にくっついているんですね、分かります。……うわあ(
     ちなみに、遺跡は勝手に捏造してましたw というか、ズイに遺跡があることもアルファベットの彼らがいることもすっかり失念していました……。なんてこったい。
     本来のミカルゲの居場所だと人通りが多すぎる気がしたので、人混みを嫌って無名の遺跡群へ→良くないモノに遭遇・魅入られる、の流れがやりたかったのです。

    > 「トリック」は「とり憑く」とかけてるのかと思ったら技の方でしたか!

     とり憑く! 素晴らしい、その手があったか!
     ……単に良いタイトルが浮かばなかったのと、トリックの技描写が入れられず「ええいタイトルでヒント(ごまかしとも言う)だ!」という暴挙に出ただけだったのです。
     発想を見習って精進せねば……。

     まさか感想をいただけるとは露とも思わず、驚くやら嬉しいやらで小躍り小躍り。
     こちらこそ、読んでいただいてありがとうございましたうへへ。
     
     連なってゆくツリー表示を崩すのがもったいなくて、ついつい感想を控えておりますが、久方さんの納涼短編集もじっくり拝見しております。
     ここで言うべきではないかもしれませんが言わせてください、【こせいてき】に悶えた! あの流れはイイ! 何が一番怖いって、最後の一文が……。あのまま、野放し……?

     あらためまして、ありがとうございました!


      [No.2561] うっわー…… 投稿者:マコ   投稿日:2012/08/07(Tue) 20:31:48     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    こんばんは。マコです。この話、色々な意味で怖いですね。
    それと同時に、Cの話でだいぶ笑いましたが。
    ご飯を腐らせたら確かにまずい、というか悲劇ですよね。
    昔、某番組で8ヶ月放置していた炊飯ジャー(もちろん、中身込みで)が出されていましたが、それと同じくらいの衝撃でしょうか。
    今回の話ではっきり言えること、それは、

    「男3人(学生)集まると、必ずバカなこと引き起こすよな」
    ということです。


      [No.2560] 移り行く(百文字?) 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/08/07(Tue) 09:09:11     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    緑の体が橙になる。
    青々と茂った角が、赤く燃える。
    驚く人間と、平然と餌を食べる彼ら。
    自然界の道理。
    気がつけば風は少しだけ優しくなり、空も高くなる。
    太陽は駆け足になり、月が煌々と闇夜を照らす。

    ――――――――――――
    今日で立秋とか言ってたので。
    人はあまり感じないけど、ポケモンは風とか光の加減とかに敏感で、そういうのを感じ取ってシキジカ、メブキジカは姿を変えるんじゃないかなー……と。
    しかし便利だな百字シリーズ。これ九十字くらいだけど。
    ネタはあるのに長文が思いつかない時に丁度いい。


      [No.2559] これはひどいw 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/08/06(Mon) 23:39:20     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    先生! 怖がればいいのか笑えばいいのかわかりません!

    > 部屋の灯りを消し、代わりにランプラーをちゃぶ台の上に浮かべる。その青紫の弱い灯りは独身向けの狭い部屋でさえ隅々まで照らすには至らず、しかし「こわい話」をするにはふさわしい雰囲気を作り出した。
    怖い話をしながら生気を吸い取られる気がしてならない!
    ん? もしかしたら寄ってきたよくないものを消してくれるのだろうか?

    いや、今回の話の内容だと霊も寄って来ずに逃げるかwww

    とりあえずA、Cの話とBの話の間の温度差が半端ないですね。
    いやどれも怖いんですが。怖いんですがw
    なぜか笑いが止まらないwww

    とりあえず、腐海の森と化していたであろうCの炊飯器に幸あれ。


      [No.2558] これは良い納涼。 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/08/06(Mon) 23:21:11     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    少し間をおいてマサポケに来てみたら【納涼】の文字が見えてアイスティー吹いた。


    これは素晴らしい納涼小説。
    最初遺跡をズイの遺跡だと思ってて、お姉さんのことをしばらくアルファベット型のあいつらだと思い込んでいた残念な奴はこちらです(


    >――ポケモン、好き? ポケモンになってみたいって、思う?
    ここで「ん?」となって

    >「いいの、あのぬいぐるみはリカちゃんにあげる。だって私はもう、大切なものを取り換えて貰ったんだもの。今あるものだけで十分幸せよ」
    ここでぞわっときて

    > 私は今、すごく幸せよ。あなたは、どう?
    >
    > 小さく呟いて、少女は薄い笑みを浮かべるのでした。
    ここでぞぞぞぞーっ。
    ひぃー、こわい! とても素晴らしい! 素晴らしく涼しい!


    「トリック」は「とり憑く」とかけてるのかと思ったら技の方でしたか!
    魂入れ替えとはなるほどです。怖いです。大好物です(


    > まだまだ長い夏の夜、もっとたくさんの「ぞわっと話」が読めますようにと願いを込めて。
    堪能させていただきましたフヒヒ。
    本当にありがとうございますー!


      [No.2557] こせいてき 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/08/06(Mon) 22:51:21     115clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:2012夏・納涼短編】 【デスマス】 【エジプトっぽい何か】 【プリンちゃんもふもふ

     あなた、好きなポケモンっている?

     私はそうね、やっぱりパートナーでもあるし、プリンかな? まあるくてふんわりして、抱きしめるとふかふかなの。
     もしたくさんのプリンに囲まれたりしたら、ふわふわ柔らかできっとすごく気持ちいい! 想像するだけで幸せ!


     彼が好きなのはゴーストポケモン。その中でも、特にデスマスが好きだった。
     最初はちょっと不気味だな、って思ってたけど、見てみると案外かわいい顔してて、ゴーストタイプも思ったほど怖くないんだな、と思った。


    「当時の人たちは、死後の復活の準備としてミイラを作っていたんだ」

     彼はよくそんな話をした。彼は古代文明とかそんな感じのものが好きだった。
     私たちが出会ったのも、たまたま行った博物館でやっていた、古代文明展みたいな会場だった。

    「えー、でも、生き返ったとしても、あんなかっさかさの身体じゃ嫌じゃないかな?」
    「あはは。こっちの世界で、ってわけじゃないんだよ。ここで言う「復活」っていうのは、「死後の世界の楽園に復活する」っていう意味なんだ」
    「死後の世界に復活???」
    「その文明に出てくるとある神様は、先代の太陽神から地上の統治を任されたんだけど、その弟が権力を手に入れるために、兄であり新しい王であるその神様を殺してばらばらにしてしまうんだ」
    「ふんふん」
    「神様の妻はその死体を集めて復活の儀式を行った。神様は生き返ったけれども、集めたパーツが足りなくて、また死んでしまう。そしてその神様は、死後の世界を統治するようになった」
    「ほうほう」
    「この宗教の基本となる考え方は、死と再生だ。例えば、この宗教は基本的には太陽信仰なんだけど。太陽は日の出とともに産まれて人々の住む地上の世界を船に乗って旅し、日の入りと共に死んで死後の世界である地下を船に乗って旅し、翌朝また産まれる、というサイクルをたどっていると考えていたんだ。死と再生を永遠に繰り返すわけだね」
    「はー」
    「人間は死んだら審判にかけられる。生前に正しい行いをした人は神様と融合して、死後の世界にある永遠の楽園で、第二の人生を歩めるんだ」

     それはいいんだけど、と私は彼の周りをふよふよと飛び回るデスマスを目で追った。

    「それとミイラとどういう関係があるの?」
    「死後の楽園に行ったあとも、魂はこちらの世界へ定期的に戻ってこなければならない。そのために、肉体が残っていなければならないんだ。肉体が失われると、魂はあの世から戻ってこられなくなる」
    「お盆に迎え火たくようなもの?」
    「……う、うーん、どうなんだろ……似たようなものなのかな……? うん、まあ、そういう感覚でいいんじゃないかな? 多分」

     どうかな? と彼は傍らのデスマスに尋ねた。さあ? と言うようにデスマスは首をひねった。


     彼の家には、何十匹ものデスマスがいた。
     みんな金色の仮面を持っているんだけど、よくよく見てみると、その子たちはそれぞれ顔が違った。

    「個性があって面白いだろ」

     彼は言った。
     大人。子供。男。女。黄金の仮面には、色々な顔が映って見えた。

    「最近は没個性な顔の子が多いけど、やっぱりこういう子たちの方が僕は好きだな」

     磨き布で仮面を拭いてあげながら、彼はそう言って笑った。



     彼の家は大きなお屋敷だった。
     地下室は危ないから入ってはいけないよと言われていたけど、そもそも広すぎて地下室の階段がどこにあるのかもわからなかった。

     その日。
     彼の家に行ったけど、彼はいなくて、デスマスもいなかった。

     屋敷をうろついていると、床のタイルが不自然にずれているところがあった。
     外してみると、地下へと続く階段が現れた。

     私は鼻をつまんだ。何とも言えない異臭。
     地下はひんやりとしていて、空気がとても乾燥していた。
     顔がパリパリになりそう、と思いながら奥に進むと、少し広い部屋に出た。


     床に散らばった白い粉と乾燥した草。
     壁に飛び散る赤茶色の染み。
     麻布にくるまれた「何か」の山。

     何、これ。
     胃の辺りからすっぱいものがこみ上げてきて、私は慌てて口を押さえた。


    「――その昔、ミイラは薬として使われていたんだ」


     背中の方から声がした。
     私はびっくりしてとびのいた。

     数え切れない金色の仮面と、手にナイフを持った男の人が立っていた。


    「埋葬されているミイラの周りには、死後の世界で生活するための副葬品が山ほどあってね。それを狙って、ほとんど全ての墓に墓荒らしが入ったんだ」

    「ミイラ本体もほとんどが持ち去られ、粉々にされて、薬としてかなりの数が消費されてしまった」

    「それじゃあ、死者の魂はどうなるんだろう」

    「この世に戻ってくるためには、身体が残っていなければならない。でも、その身体は失われてしまった」

    「戻ってきた魂が、行き場を失ってしまったんだ」


    「デスマスというポケモンが発見されたのは、その頃のことなんだ」


    「知ってる? デスマスが持ってる仮面はね、生前の自分の顔なんだ」

    「だけどデスマスもポケモンだからね。デスマス同士の間で卵が出来て、そこから増えることの方が今は圧倒的に多いんだよ」

    「そういう子たちは、何とも言えない無個性な顔をしてるんだ。「生前」がないから当然だね」

    「でも、やっぱりさ。個性がある顔の方が楽しいだろ?」

    「だけどなかなかいないんだよ。ミイラなんてもう作ってないから、当然かもね」


    「だから、考えたんだ」


    「いないなら、自分で作ってしまえばいいや、って」


    「何、怖いことなんか何もないよ。むしろラッキーだと思えばいい」

    「だって君は、これから永遠の楽園に行くんだから」

    「こっちに戻ってきたらもう身体はないと思うけど、心配しなくてもいいよ」

    「ボールに入れちゃえば、衣食住、何の問題もなくなるんだから」


    「大丈夫。僕がずっと、大事に育ててあげるからね」



     白い刃がきらりと光る。
     私は慌てて逃げる。私が立っていた場所に、ナイフが振り下ろされる。

     パニックになりながら、私は腰からボールを取った。

    「プリンちゃんっ!」

     ぽん、とボールが割れて、ピンク色の風船が飛び出す。プリンは大きく息を吸い込んだ。
     私は両耳をしっかりと塞いだ。


    「『ハイパーボイス』っ!!」


     耳を塞いでいても鼓膜が破れそうになる、高周波の爆音。
     彼も思わず耳を塞いだ。彼の周りを漂うデスマスも一瞬たじろく。
     ゴーストタイプにダメージがないことは百も承知。だけど、ほんの一瞬だけでもひるめばいい。

     私はすぐに踵を返して、全速力で地上へ走った。

     そして二度と、彼の屋敷には近づかなかった。



     彼と出会って、何回目かの夏が過ぎた。
     通りがかった博物館では、古代文明の特別展をやっているようだった。
     でも私は、もう一生入ることはできないと思う。






     この町では、今年に入ってもう5人、行方不明者が出たらしい。








    (2012.8.6)
    小学校の図書館にあった、たかしよいちの考古学漫画が読みたい今日この頃


      [No.2556] 不眠 投稿者:フミん   投稿日:2012/08/05(Sun) 21:39:10     78clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ある森の中に、一匹のスリープが住んでいた。
     
    彼は今までの人生の中で眠ったことがなかった。それは、スリープのとくせいである“ふみん”のせいである。
    生物は眠るというのは基本的な欲求の一つであり、必要不可欠である。どんなに強くて大きなポケモンも、潰してしまいそうな程小さなポケモンも、そして人間も、生き物は皆、眠らなければ体を休めることができずに死んでしまうのである。
     
    だが、このスリープは違った。生まれてから一度も、眠いという感情を経験したことがないのだった。
    彼は、昔は別に寝ないでも良いと思っていた。それは、同じふみんのとくせいを持つ家族とずっと雑談を楽しむことができたからだ。
    しかし、歳を取り家族と離れると、周囲と違うことがいかに辛いか身を持って知ることになった。
    皆が寝ている間に、何もすることがないのだ。夜は暗く危険がどこに潜んでいるか分からないのであまり遠出はできない。けれど周りに住んでいるポケモン達はじっくり疲れを癒している。家族といた時には、一晩中話ができて暇なんてなかった。しかし、今は独りきりで日の出が上がるのを待ち続ける毎日。試しに横になっても全く眠くない。目を閉じて一生懸命寝ようと努力するのだが、どんなに頑張っても、種族のとくせいに打ち勝つことはできなかった。
     
    世の中を知るまでは、夜が大好きだった。しかし今は、夜がとても嫌いになっていた。
     
    次第にスリープは不安と心の乱れのせいで疲れを感じやすくなっていく。
    友人に無理せず休むように言われ渋々寝床にいても、結局眠ることはできなかった。本能に阻まれてしまうのだ。
     
    スリープの心はどんどん麻痺していった。体の疲労から性格も歪み始め、彼は自然と友人達と疎遠になっていった。何故自分はスリープとして生まれたのだとも考えてしまうまでになった。
    今日も彼は木に寄りかかり、ぼんやりと一つのことを思う。
     
    一度で良いから眠ってみたい。

    しかし、いくら彼がエスパーポケモンでも無理なことはある。
    どんなに努力しても叶わない夢を思い浮かべながら、スリープはため息をついた。

    ぼんやりと夜空を見上げていると、何かが浮んでいる。彼は自然とそれに目線を移す。風船のようなその物体は、空中をゆっくりと漂いながら、スリープの目の前まで降りてくる。
    紫色の球体だった。頭に白い雲のようなものを乗せ、生き物の口辺りには黄色いバツ印がついている。球体の下からは、紐の様なものがぶら下がっていた。
    その球体はフワンテというポケモンだった。スリープはそのポケモンを初めてみたので、目の前の生き物がポケモンだと認識するまで時間がかかった。


    「初めまして、君はこんなところで何をしているの?」

     甲高い声でフワンテは言う。

    「君は一体誰?」

    「僕はフワンテ。あなたは、ポケモンかな?」

    「うん。僕はスリープって言うんだ。宜しく」

    「スリープ君ね。宜しく」
     
    スリープが挨拶をすると、フワンテは愛想よく笑い返す。彼は、まだよく分からない目の前のポケモンは悪い奴ではないかと疑ったが、疲れ切った彼は直ぐに考えるのを止めてしまった。

    「疲れているのかい?」
     
    突然の質問に間を開けながらも、スリープはああ と返す。

    「僕は、スリープはというポケモンは眠ることが出来ないんだ。ふみんというとくせいを持っていてね、さいみんじゅつにかからなくなるバトルを優位に進められる便利な能力なんだけど、僕はバトルなんかしないから困っているんだ。周りのポケモンみたいに、ゆっくり休もうと思っても体が拒否しちゃうんだ。昔は当たり前のことだと思っていた、でも普通なのは周りの友達で僕は普通じゃなかったんだよ」
     
    その後も淡々と吐かれるスリープの愚痴を、フワンテは黙々と聞いている。彼の友人はスリープの悩みを真剣に聞いてくれる者はいなかった。寧ろ仕方ないことだと言い聞かせるものばかりで、口だけ言って自分はぐっすりと寝てしまうのだ。それが悪いこととは思わなかった。彼はただ聞いて欲しいだけだったのだ。
    目の前で浮んでいるフワンテは、長々とこぼす不平不満を全て聞いてくれる。迷惑なのは分かっていたが、こんなに有難いことはない。
     
    全て言いきってしまうと、幾分か疲れが取れた気がした。


    「今まで辛かったんだろうね」
     
    そして言われたこの一言。何か解決する訳じゃない。でも同情してくれることがとても嬉しかった。

    「聞いてくれてありがとう。とても気持ちが楽になったよ」

    「それは良かった。じゃあついでなんだだけど、君を眠らせてあげようか?」
     
    スリープは顔をしかめる。当然だった、突然訳が分からないことを言い出したのだから。
    フワンテは言う。

    「僕はね、スキルスワップという技を覚えているんだ」

    「スキルスワップ?」

    「簡単に言うとね、僕のとくせいとある対象のとくせいを入れ替えることができるんだよ」
     
    スリープは、自分の体に生気が戻っていくのを感じた。

    「それって、僕のとくせいと、君のとくせいを入れ替えることもできるんだよね?」

    「そうさ。だから、君を眠らせて上げると言ったんだ。僕のとくせいはかるわざと言って、道具を持っていない時に早く動けるようになる能力だから、君には悪影響はない筈さ」
     
    スリープには、たまたま出会ったフワンテに感謝した。自分のとくせいを取り替えることができる技があるなんて今まで知らなかったし、それを好意的にしてくれるポケモンと出会えるなんて幸運なことなのは彼にも分かっていた。


    「ただし、ずっとふみんのままでいると僕も困ってしまうから、ほんの一日だけだよ。それでも良いかな?」

    「うん。僕は一日だけでも、眠ってみたいんだ」

    「分かった。じゃあ、暫くじっとしていてね」
     
    彼は言われた通りにする。フワンテはぶつぶつと呟きだす。何をされるのか期待に胸を膨らませながら待っていると、フワンテの体からは、丸くて光る球体が浮き出てくる。見とれていて直前まで気付かなかったが、彼の胸からも同じ球体が浮かび上がってきた。白く光る互いの球体がそれぞれ違う方へ向かい、フワンテはスリープの球体を、スリープはフワンテの球体を受け入れた。胸に違和感があったが、直ぐに治まる。

    「これで、今日はぐっすりと眠れる筈だよ」
     
    フワンテが嬉しそうに言う。スリープは直ぐに自分の異変に気付いた。
     
    瞼が重い。体が鉛のように重たくて、どこでも良いから寝転がりたいという気持ちが湧きあがってくる。頭の中は眠りたいという感情だけでいっぱいになり、座っているだけでも辛い。自分の意識を保っているだけで精一杯だった。
    これが眠いという感情なのか。

    「凄く眠たそうだね」
     
    フワンテが言う。相変わらず、笑顔のままだった。

    「ああ、これが眠たいって気持ちなんだね。なんだか、頭くらくらしてきたよ」

    「逆に僕は目が冴えちゃった。ふみんってとくせいは凄いね。実はさっきまで少し眠たかったんだけど、今はずっと起きていたいよ」

    「気に入ってくれたみたいで良かったよ。今日は、もう寝ようかな」
     
    スリープは、まさか寝ようという言葉を使う日が来るとは思ってもいなかった。嬉しいのだが、今はこの襲い来る睡魔を消してしまいたい。もう話すだけでも億劫だった。

    「分かった。じゃあ明日、またここに来てね。その時はとくせいを返して貰うからね」

    「うん、分かった。絶対返すから、もう…」

    「おやすみ」
     
    フワンテはこれ以上会話が出来ないと判断し、再び空高く昇っていく。
    スリープは少々危険だと分かっていても、歩いて寝床まで戻る体力が残っていなかった。それほどまでに、彼の体は疲労を蓄積していたのだ。
    木の根元でスリープは仰向けになった。直ぐに意識が遠退いていく。



    次の日、スリープは半日程熟睡したところで目を覚ました。
     
    起き上がるとまず気付くのは、体が軽いということ。そして、とても気分が晴れやかだった。もう既に太陽は高い位置にある。日光を浴びながらこれまで感じたことがない解放感に浸る。
    これが眠るということか。
    なんて素晴らしいのだろう。
    思わずスキップしてしまう。フワンテと交換したかるわざというとくせいのお陰で早く動くことができるのも、体が軽い要因の一つだった。
     
    ああ、自分のとくせいはなんて不便なものだったのか。今までの自分は、確実に損していたのだとスリープは感じる。約束の時間までこの気持ちをじっくり味わうために、彼は寝床に戻ると昼間にも関わらずベッドに倒れた。殆ど必要がなかった寝床が漸く日の目を浴びた瞬間だった。
     確かに疲れはとれたけれど、いくらでも眠れそうだった。今の彼は、新しい玩具を手にした子どもの様に、眠ることを楽しみたいのだった。



    しかし、約束は果たさないといけない。
     
    フワンテに自分の元の特性を押し付けて一生過ごそうと考えない訳ではなかったが、彼の良心が踏み止めた。スリープは本当に良い両親に育てられたのだ。
    その日の夜、彼はきちんとフワンテにとくせいを返した。ふみんのとくせいが自分の体に帰ってくると、自分の中から眠気が消えるのをしっかりと感じ取ることができた。

    「ふーやっぱり生まれ持ったとくせいが一番落ち着くね。僕の方も、貴重な体験ができたよ。ありがとう」
     
    邪気はないのは分かっていたが、スリープにはフワンテが何故か憎らしく思えた。しかし、ぐっとこらえる。フワンテは何も悪くないのだ。

    「ねえ、お願いがあるんだ」
     
    スリープが言う。

    「どうしたの?」

    「毎日とは言わないから、一週間に一度だけで良い、今日みたいにとくせいを入れ替えさせてくれないかな」
     
    心からの願望だった。彼は、普通に生活していたら味わうことのない果実を味わってしまったのだ。一度美味しいと感じたものはもう一度かじりたいと思うのが当然だった。
    フワンテは、眉間にしわを寄せて考えている。スリープは、緊張したまま返答を待つ。

    「分かった。週に一度だけだからね?」
     
    やがてフワンテから放たれた一言は、スリープが望んでいるものだった。

    「ありがとう。お礼に、毎週木の実を持ってくるよ」

    「ありがたいね。でもそんなに沢山食べられないから、少しだけで良いからね」

    「うん。本当に感謝している。僕はなんて良いポケモンに巡り合えたんだ」

    「そこまで褒めてくれるのは君が初めてだよ」
     
    二人は、夜の森の中で笑い合った。


     
    こうして、二匹の奇妙な取引は始まった。
    毎週同じ時間にスリープとフワンテは出会う。スリープの手には、その日のうちにもいだ新鮮な木の実。フワンテに会ったらそれを渡す。木の実を渡されたフワンテはその場で直ぐに食べてしまう。そして、お礼としてスキルスワップでとくせいを交換し、スリープは心地よい眠りに誘われる。翌日の夕方に再び彼らは出会い、互いのとくせいを元に戻す。そんな生活が何週間、何ヶ月と、長い間続いた。この取引のお陰で、内向的だったスリープは徐々に元気を取り戻しつつあった。友人との仲も元に戻り、以前よりも性格が明るくなった。週に一度、必ず寝ることができるのだ。睡眠の快楽を知った彼にとって、それだけでもありがたかった。

    しかし、欲は膨らんでしまう。
    週に一度だけの睡眠だけでは、足りなくなってきてしまったのだ。

    眠ることが出来ない彼の体が休むことを覚えてしまったため、本来不必要だった寝る行為が必須になってくる。何かの用事でフワンテが会えない時は大変だった。いつも寝られる時間に眠れないのだから、体が寝ようとしているのにとくせいのせいで目が冴えてしまう。これは、眠ることを覚える前よりずっと苦痛だった。とても喉が渇いている時、目の前に冷たい水があるのに飲めない、例えるならばそんな状況だった。
    寝床から離れ、声を上げてもがく日もあった。全身をかきむしり、悶えることでなんとか疼きを押さえるのだ。しかし、ふつふつとわきあがってくる苦しみを消しさることはできなかった。ふみんというとくせいがある限り、彼にはどうしようもないことだった。

    必死にお願いして、二日間とくせいを交換して貰うこともあった。その時は、素晴らしい解放感に浸ることができるのだが、元に戻ると再び猛烈な倦怠感に襲わることになった。
    何度もとくせいを交換したままフワンテから逃げ出そうと思った。そのたびに、彼の良心がそれを踏み留めた。
    だがそれも限界が近づいていた。最早、彼の体は睡眠なしでは生きられないのだった。




    フワンテと会う予定の日。彼はフワンテに、自分の悩みを全て打ち明けた。二匹は頻繁に会っているのは、取引だけが要因ではない。スリープは、無茶を聞いてくれるフワンテのことを特に信用していた。彼の中では、五本の指に入る程の友人になっていた。
    フワンテは、いつものように親身になって話を聞いてくれる。その素振りが、スリープにとってはとても嬉しいことだった。
    話が終わると、フワンテは言う。


    「困っているのはよく分かったよ。でも僕のとくせいをずっと渡しておく訳にもいかないものね。何か良い解決方法はないかなあ。かなり衰弱している君をずっと見ているのも辛い」
     
    フワンテは、他人のことなのに本気で解決案がないか考えてくれているみたいだった。その振る舞いが、スリープの高感度を更に上げる。
     
    そうだ と不意にフワンテは言う。


    「良い方法がある」

    「良い方法?」

    「うん。僕についておいでよ」
     
    フワンテは、千鳥足のスリープの腕に自分の紐を巻きつけ、ゆっくりと深い森の中に誘導していく。彼は、フワンテのことを信頼していたので、どこに行くかはあえて尋ねなかった。というよりも、尋ねる気力すらなかったと言った方が正しいかもしれない。
     
    普段は、他のポケモンが決して入らない森の深い部分。そこは昼間でも薄暗く、食糧があまり取れないので生き物が住むには適していない場所だった。特別何かある訳でもないので、ポケモンも、ましてや人間も入ろうとはしない。
    そんな中を歩かされるスリープ。足取りは重かったが、これを乗り越えればまた安らぎが待っている。そう自分に言い聞かせ、弱り切った自分の体に鞭を打つ。

    辺りは暗闇に包まれていた。空気が綺麗だったので星がよく見えるが、今日は月が輝いていないので、辺りはよく見えない。自分の手を目元に近付けても認識するのに時間がかかってしまう程の暗闇を歩き続ける。正常なポケモンならば、例え誰かと一緒にいても恐怖に襲われるだろうが、彼は寧ろ安心していた。フワンテが行き先を導いてくれるからだ。一度も木にぶつからず、根っこや段差にもつまずかずに歩けるのはフワンテのお陰だった。
     
    そういえば、彼はゴーストタイプだったことをスリープは思い出す。夜に慣れているのだろう。こうして正確な誘導ができているのが何よりの証拠だった。
     

    ゆっくりと、奥へ奥へと入り込んでいく。
    進めば進む程、夜の闇は濃さを増していく。
    何分、何十分、どのくらい歩いたかは分からない。急に森がなくなり、闇が薄くなった。
     
    そこは森全体を上から見渡せる崖だった。スリープは、知らぬ間に山を登らされたらしい。それにも関わらず息が切れていないことを不思議に思ったが、彼はあまり気にしていなかった。
    普段自分が暮らしている森を上から見下ろすというのは、なかなか不思議な体験だった。そして闇と同化している森は静かで、尚且つ不気味だった。昼間の穏やかな様子とは違う、ひたすら朝を待ち静寂に包まれている。なぜだか分からないが、スリープは身ぶるいした。もしフワンテが連れてきてくれなければ、こんな場所は自分から来ないだろう。
    風も吹かない夜。夜空で光る星だけがスリープ達を見ていた。


    「ここなの?」

    スリープが言う。

    「ここだよ。もう少しこっちにおいで」
     
    正直もう歩きたくなかったが、スリープはフワンテの後についていく。自分が地面を踏みしめる音だけが辺りに響く。
    フワンテが空中で止まる。彼も慌てて足を止めた。
    その時、一瞬だけ風吹いた。それはスリープに対する警告のように思えたが、もちろん本人はそれには気付かない。ただほんの少し驚いた程度だったし、直ぐにまた風は吹かなくなった。

    スリープは、フワンテが言っていた良い方法が何なのか、ここに来て漸く察することとなった。けれどあまり嫌だとも思わなかった。


    「こっちにおいでよ」

    フワンテに促されて言う。彼はいつものように無邪気な笑みを見せた。
     
    確かに、これでふみんの悪夢から逃れることができる。嬉しさと悲しさが混じった複雑な心境になったが、スリープは深く考えないようにした。
     
    スリープは、崖の端から空中へと一歩踏み出した。






    ――――――――――


    いつかつけたかったタイトルです。フミんだけに。

    ついでに、プチ宣伝をさせて下さい。
    近日東京で開催されるコミックマーケット82 1日目 東ス-23b(8月10日) にてお手伝いしていたりします。私が作った本も置いてあるので行く予定がある方はどうぞ。


    フミん


    【批評していいのよ】
    【描いてもいいのよ】


      [No.2555] 【グロ注意】[パニック映画の切欠のように]【ギャグ?】 投稿者:MAX   投稿日:2012/08/05(Sun) 06:35:44     119clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5




    ※グロ注意


     ある夏の暑い日のこと。Aという男が友人達にこう言った。

    「夏の暑い盛り、背筋の冷えるようなこわい話はいかがですか」

     連日の熱帯夜に辟易している友人達にささやかなイベントを。その考えは2人の友人……BとCを寮の部屋に集めることとなった。


     3人でちゃぶ台を囲み、夕食も終えて冷えた麦茶を並べた頃に「さて」とAは動き出す。
     部屋の灯りを消し、代わりにランプラーをちゃぶ台の上に浮かべる。その青紫の弱い灯りは独身向けの狭い部屋でさえ隅々まで照らすには至らず、しかし「こわい話」をするにはふさわしい雰囲気を作り出した。

    「今更ながら、ようこそ俺の部屋へ。その麦茶はサービスだから、まず飲んで落ち着いてほしい」

     あぐらをかいて不遜に笑うA。その「前置き」にBもCもニヤリと笑い、麦茶をすする。

    「じゃあ、こわい話を聞いてもらおうか。やはりここは言い出しっぺの俺から」
    「固くなったご飯の話じゃないだろうな」
    「おー、こわい。そんな“お約束”は誰も期待してねぇだろ」

     Bに茶化され、Aは鼻で笑った。見え透いたギャグほどあほらしいものはない。
     咳払いをひとつ。気を取り直してAは口を開く。

    「鳥肌モノの話があるんだ。俺のジュペッタに起きたことなんだがな……」


    * * *


     盆の休みで田舎に帰った時のことだ。
     両親の住む田舎は山の方だが、それでもウンザリするぐらいに暑かった。俺は親に家事を任せて上げ膳据え膳とだらけていたよ。

     せっかくの休みと、自然にあふれた田舎だ。これはもったいないと思って、ポケモンたちも好きに遊んでこいって全員ボールから出してたんだ。
     しかしジュペッタがな。暑いの、眩しいのはてんでダメ。なもんで、扇風機のそばで俺と一緒にゴロ寝と決め込んでいたんだよ。
     ……甘かったんだ、俺が。

     隙間が多けりゃ虫も多い。俺が手足を蚊に食われてかゆい目にあってる時だ。
     寝ぼけてるのか、ジュペッタが寝ながら脇をボリボリ掻いてて、どこのオッサンだよ、と笑ったもんだが、そこにな。

     ジュペッタの脇の下にシラミがびっしりいたんだ。

     血の気が引いたね。すぐにジュペッタを叩き起こして、風呂で洗ったよ。嫌がってたが、あんまりだったんだ。
     思えば俺のジュペッタは、出不精な上に風呂にも入ってなかった。ぬいぐるみを虫干しもせず、洗いもしなければどうなるか……思い知らされた日だったよ。


    * * *


    「世話になったな」
    「じゃ、俺らはこの辺で」
    「待てぇ。まだ俺しか話してないぞ」

     話が終わるや腰を上げる友人たち。その薄情ぶりにAはズボンの裾をつかんだ。

    「放せぇ! こんなシラミだらけの部屋にいられるか!」
    「俺らは自分の部屋に戻る! シャワーと洗濯、今すぐだ!」
    「友情の浅さに涙が出らぁね! 洗ったって言ったろうが!」
    「殺虫剤は!?」
    「撒いたよ、煙の出るヤツ!」
    「ここでカ!?」
    「ここでダ!!」

     引きつ引かれつの問答をここまで言い合って、ようやくBとCは足を止めた。

    「……とりあえずは、信じてやる」

     そう言って腰を下ろし、しかし2人とも落ち着き無く首筋や背中を掻いている。
     なかなか信用しきれないところだが、この場にジュペッタがいないことがせめてもの救いだった。もしボールから出ていたならば問答無用で逃げ出していたことだろう。
     そんな友人達を前に、話は以上、とAは苦い顔で麦茶をすすった。こわい話にはパニックがつきものだが、ここまでとは思ってなかった。

    「あたま冷やせよ。わめくのは結構だが、それで熱くなってちゃ元も子もねぇから」
    「近所迷惑だしな」
    「冷えたのは友情だけか」
    「背筋はむしろかゆくなったしな」
    「言ってろ。次はB、お前の番だぞ」

     帰りたかったら早く済ませろ、との意味を込めてAは促す。それがうまく伝わったかは知れないが、Bはお茶で唇を湿らせ、待ってましたと語り始めた。

    「よぅし。んじゃ、俺なりに背筋の寒くなるお話って奴を聞かせてやりましょうかね。
     これは、つい先日の話だ……」


    * * *


     昼前ぐらいのことだ。どっかで飯を食おうと外を歩いてたら、道ばたでニャルマーが横たわってたんだ。
     見た目小さかったし、まだ子供だったな。まぁ、ニャルマーぐらいは珍しいと思わなかったさ。近所でも野良猫をしばしば見かけるし。

     最初は寝てるのかと思った。だがこんな暑い中、昼間から猫が表で寝てるかな。こりゃ不自然じゃないか。
     なんだこいつ、って気になったんだよ。
     俺、あんまり視力良い方じゃないから、パッと見じゃよくわかんない。ちょっと顔を近づけて、尻尾から頭まで見てみたんだ。
     するとどうだ。顔の方が、なんかおかしいんだ。口開けてるし、目を閉じてるようにも見えなかった。なんだろー、ってよく見たら。

     目ん玉、飛び出してんだ。

     死んでるんだよ。
     閉じた目蓋の隙間から神経が伸びてて、その先に濁ったビー玉みたいなものが付いてる。これが眼球な。少なくとも、生きてるってツラじゃなかったよ。
     改めて見直したら、泡吹いた後なのか口元はなんか湿ってて、眼球もまだツヤが残ってた。特に腐臭もしなかったから、わりと新しい死体だったんだろうな。
     目立った外傷は、お腹に小さな傷が見えた程度。内蔵がはみ出てるとか血みどろとか、そんなことはなくて、こりゃぁ毒の餌でも食ったか、あるいは腹を蹴られたか。素人判断だが毒殺か撲殺とみたね。

     聞いたことあるか? 人間でも胴体にデカい衝撃受けると目ん玉飛び出すらしいぜ。交通事故とかでな。
     まぁ、ニャルマーとかの小さい生き物なら車の下を通り抜けるだろうし、ぶつかるならタイヤだろう。そうだったら粗挽きのミンチになってたんじゃないかな。

     あれは、顔以外はまぁまぁキレイだったよ。それこそ、目の悪いヤツには子猫が寝てるように見えるぐらいに。
     野良猫駆除の毒餌なら、まー仕方ないとは思うが、誰かに撲殺されたってんなら、悪いヤツがいたもんだと思うね。
     可哀想にとは思ったが、寮住まいの俺には庭に埋めて供養することもできない。ただ両手をあわせて、南無阿弥陀物。それが精一杯だったよ。


    * * *


    「……グロいな」
    「そんなじっくり観察して、細かく伝えなくてもいいじゃないか……」

     話を終えて麦茶で喉を潤すが、しかしBの話は友人達に不評だった。

    「背筋は寒くならなかったか?」
    「胃の奥が熱くなったよ」
    「飯の後には聞きたくない話題だったな」

     AもCもげんなりした様子で胃の辺りをさすっている。状況を想像してしまったらしい。
     そして何故か、Bも同じように腹を押さえていた。

    「で、なんでお前まで腹押さえてんだ? 気分悪くなるなら話さなきゃいいじゃねぇかよ」
    「ん、やー、これは吐きそうってわけじゃないんだ。なんかね、ここ最近、夜になって冷えてくると変に腹が痛くなって。出すモノもないのにジワジワ痛いんだ」
    「……病気か? 悪いもんでも食ったとか」
    「時期が時期だからなぁ。心当たり結構ある」

     苦笑しつつ言うB。油断したとしか言いようが無いが、夏という季節はそれだけ早く食べ物を腐らせる。
     だが、それとは別の心当たりをBは口にする。

    「ところで聞いたことないかな。猫は祟る、って。たとえ殺した相手でなくても、死に際に居合わせた人間に祟りをまき散らす、って」
    「…………」

     友人たちの返事はない。

    「ちょうど、あの死体を見た頃からなんだよね、腹痛」
    「お前……ここ最近、身の回りで超常現象が起きてないか?」
    「そんなことないよ? ただ、相棒のゴチミルが急に俺を避けるようになったぐらいかな、おかしなことは」

     AとCが顔を見合わせた。お互いに真顔。まさか、でもひょっとしたら。それはBと同じ思いだった。

    「……まぁ、万が一の時は、な」
    「えーと、俺たちからは、お払いしてもらえ、と」
    「いや、ね。俺は大丈夫よ? 今更ペットが増えたようなもんだし、夢があるし、ね」

     気楽に、というかどこか楽しそうに言うB。友人にしてみれば、むしろヤバいように見えるのだが、本人がこうなら乾いた笑いしか出てこなかった。
     この話題を続けてはいけない。それがAとCの共通見解だった。

    「じゃぁ、そろそろCに。シメぐらいせめてまともな話で頼む」
    「あー、期待には答えられそうもないな。
     まぁ、軽い話だから、さ……」


    * * *


     先週末のことだな。
     リオルと一緒に夕食の用意してるときだ。急に電話がかかってきたんだよ。お前たちとは別の友人から。

     なんでも合コンで男が1人ドタキャンしたそうでな。数合わせに来てくれ、と。あとポケモン同士のお見合い会も兼ねてるって話だった。
     まぁ、うまいものが食えるチャンスだし、リオルにも異性と会話する機会を与えられるみたいだから、参加したんだよ。飯の用意は途中だったけど、明日にでも作り直せるかな、ってのん気にな。

     合コン自体は特に問題なく終わった。正直俺はいるだけの、本当に数合わせというか、美形連中の引き立て役って立場だったけどさ。その分、話に夢中になってるヤツらを後目に飯を食えたんで満足だったよ。
     ポケモンのお見合いも……リオルは、ほどほどだった。緊張して頭が真っ白になったのか、すっかり黙っちゃって。良い経験にはなったんじゃないかな。家に帰ってからもずっと無言だったし。
     それで神経すり減らしちゃってな。俺たちは大事なことを忘れてしまったんだ。
     もちろん夕食の食材は忘れなかったさ。次の朝にはスパゲッティに使って、まぁ、大丈夫だと落ち着いたよ。

     で、今日のことだ。
     寮に戻って片づけも済んで、さてAの部屋に行くかって時に、ふと、変な臭いを感じたんだ。
     なんというか、ゴミを出しそびれているとするような臭いだった。といっても、最近のゴミ出しは忘れてなかったし、臭いの心当たりはない。
     だが臭いは確かにあった。この辺りかな、って何気なく台所を調べたとき、俺は、思い出したんだ。

     炊飯器にセットした米、今日まで放置していた。

     合コンで疲れてたとか、あの日から外食や麺類ですませてたから、炊飯器を使うことが無くって。全然気にかけてなかったんだよ。
     炊飯器からは、酸っぱい臭いがしていた。


    * * *


    「……こわいっちゃ、こわいな」
    「むしろ恐ろしいか」

     AB共に、沈痛な面持ちでそう評した。こわいことはこわいが方向性が違う。反応に困る話だった。

    「その、炊飯器は後で処理するんだよな?」
    「そのつもりだ。で、これがその現物」
    「なにっ!?」
    「持ってきて……!!」

     突然、Cが炊飯器を取り出した。
     蒸気の噴き出し口にセロハンテープが貼ってあり、臭いが出ないように今まで隠していたのだろう。それをいきなりちゃぶ台の上に置かれ、友人たち……特にAは自室に持ち込まれた事に戦慄した。

    「現物が目の前にあった方がより恐ろしいと思って」
    「だからって人の部屋に持ち込むな、そんなおっかないモノ!」
    「度胸試しじゃないんだからさー!」
    「まぁ、試しにお一つ」
    「あ、待て……!」

     テープが取り去られた。

    「……ぁあああああああ!!」
    「ぐっ、こりゃ危ない……!」
    「臭いが染み着いたら、お前恨むぞぉ」

     窓際の扇風機の風に煽られ、すえた臭いが部屋に広がる。その恐ろしさに3人は唸り、天井のランプラーも耐えかねて扇風機の後ろに避難した。

    「消臭スプレーは、あとでおごるから」
    「当然だッ!」
    「まぁ、1番の山場はこれのフタを開けることなんだがね」
    「てめぇ、やる気か?」

     Aが拳を作った。殴り合いの喧嘩などするような年齢ではないが、もしそうなったときは殴らずにはいられないだろう。

    「……やりません」

     言って、Cはテープを貼り直して穴をふさいだ。悪ふざけが過ぎたのだ。これ以上やっては友情が壊れる。最悪の場合、寮から追い出されることも有り得る。

    「とりあえず、ここにあっても迷惑だし、今は外に出しておくよ」
    「どこにあっても迷惑だと思うけどな」
    「玄関先にそんなもんがあったらなんの嫌がらせかと思うわな。知らずに開けちゃったらとんだ悲劇だ」
    「今だけだよ。終わったら回収するから。じゃ、ちょっと行ってくる」

     友人たちからの恨めしげな言葉を受け止めながら、炊飯器を手にCは腰を上げた。
     しかし歩くには部屋が暗い。電灯を消している上に天井にいたランプラーは窓際まで移動している。

    「あー、ちょっと電気つけるわ」
    「足下気をつけろ?」

     ガッ。

    「あっ!」
    「あ?」


    『……ぁぁあああああああ!!』



     翌日、友人の集まりでAたちはその夜のことを聞かれても、

    「筆舌に尽くしがたい」
    「ひどい有様だった」
    「俺の口からは何とも」

     と明確な内容を伝えることはせず、ただ二言目には「もう二度とやらない」と口をそろえるのみ。
     後に残ったのは、夜中の騒音に対する厳重注意と、秘密裏に処理された異臭騒動。その顛末を予想する噂だけであった。





     * * * * *
     「背筋の寒くなるお話を」
     それを聞いて自分の頭に浮かんだのは、上記の内容でした。ここでやる意味があるのか、という疑問を抱えたままでしたが、浮かんだ以上は形にして放出する次第となりました。
     すでにツイッタでちょっと流した通り、ホラーというよりもグロしか出ない自分が情けないです。
     ちなみに、猫の死体を見ちゃったのは自分の体験談。腹痛もマジですが、原因はたぶん冷房ですよ、タブンネ。

     しかしコメディのノリで軽くしているとはいえ、少年少女もいるマサポケでこんなネタ流しても良かったんだろうか。今も不安に思う次第であり、ヤバいようなら消します。
     以上、MAXでした。

    【批評、感想、再利用 何でもよろしくてよ】【でも申し訳ないのよ】


      [No.2554] Re: 覚えがありすぎる 投稿者:小春   投稿日:2012/08/04(Sat) 18:13:09     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     宇治金時のかき氷が食べたくなってきました。こんにちは、小春です。

    > 以前テレビで見たポケモンバトルで、ポケモンの名前を顔文字で設定していた子がいてびっくりした覚えがあります。
     顔文字……、なんて発音してボールを投げるのか気になります。「ゆけ! (・p・)」とかかしら……あ、そもそも顔文字じみた記号が用意してありましたね。フワンテには「(・×・)」とつけられるので万々歳です。
     漢字不使用でも脳内NNはキラキラしています。コスモと名付けたシンボラーの漢字NNは宇宙(


    > 今ではあまり考えませんが、中二の時にイタリア語にやたらとハマりまして。
    > ツンベアーに『ギアッチョ』と付けたのはやりすぎだったかな……と今更ながら思います。ちなみに『氷』です。
     そんなとき、お役に立つのが漢字辞典&ネーミング辞典&各語辞典! 冒険のお供に数冊いかが!? 気づかぬうちにアナタもマッチョになれるかも!

     感想&お読みいただきありがとうございました!


      [No.2553] 見えないナニかを見つめています 投稿者:小春   投稿日:2012/08/04(Sat) 17:59:50     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     8月13日、快晴。本日も真夏日の予感。
     朝からわんわん響く蝉しぐれで目を覚ました。近頃は目覚まし時計が仕事をしなくて済んでしまっている。もごもご起き出して歯を磨いて、洗濯機を回して、朝食用に目玉焼きを作る。そこでふと気づいた。ヤツはどうした。普段ならぼけらーっとした表情で電気鼠やら灰色の鳩やらに化けて部屋中を転がりまくっているへんしんポケモンが目につかない。片付かないワンルームを見回して、紫色の姿を探した。変身していなければの色だが。
     紫のめにょんとした生き物はローテーブルに載っかっていた。ノートパソコンやらティッシュボックスやらを押しのけて自分のスペースを作っている。めにょんメタモンは木目調の壁を見つめていた。

    「めにょん? 朝ご飯だよ、どうしたー? おーい?」

     メタモンは黒ごまの目で私をちらりと見て、また壁に目線を戻す。ハンズで買った壁紙を自分で貼り付けた。素人仕事でしわが目立つが、それ以外はいたって普通の壁。そこをじっと見つめるのは、こちらの精神衛生上良くないのでやめて欲しい。メタモンを持ち上げようとするが、敵も然る者。下だけオクタンに変身して吸盤で机に吸い付いてくる。メタモンの視線の先を見つめてみるが、私に見えるのは壁紙のしわだけ。みつめているとしわが人の顔のように思えてきたので、やめた。
     固焼きにした目玉焼きと白米をもって冷蔵庫の前に陣取る。メタモンが見つめている先を見ながら食事はしたくない。ご飯はおいしく食べるべきものだ。蜂蜜梅干しでご飯を食べていると目玉焼きが消えた。みるとメタモンの口が目玉焼きを飲み込むところだった。

     その日、一日、メタモンは動くことなく壁を見つめ続けた。

    ☆★☆★☆★

     8月14日、快晴。本日は夏日だとか。
     8月に入ってから、とんと目覚まし時計の仕事がなくなっている。かわいそうに。すべては蝉しぐれのせいだ。火炎放射器で焼き払ってやりたい。もごもご起き出して歯を磨き、洗濯機を回し、冷凍庫の食パンをオーブントースターで焼く。そしてやっぱり、メタモンは転がり回っていない。昨日の夜は布団に入ってきてひんやり冷たい思いをできたが、私が起き出す前にローテーブルに載っかって昨日と同じく壁を見つめている。なにがいるって言うんだ、本当に。

    「めにょん、朝ご飯。今日はパンだよ、パン。耳をくれてやろう」

     メタモンは昨日と同じく黒ごまの目でちらりと私を見て、すぐに壁に目線を戻す。――と思ったが、今日はもごもご動いて私と壁を交互に見る。メタモンが見つめる壁を見てみたが、昨日と同じにしか見えない。ごめんよ、めにょん。私には壁紙のしわしか見えない。チン、とトースターがパンの焼き上がりを告げた。
     本日はマーガリンを塗ったパンをキッチンで立ち食いすることにした。今日はメタモンが見つめる先を見ながら。背中はしっかり壁に押し付けている。なんとなく、だ。なんとなく。見つめ続けてもしわ以外のものが見えてこない。アイスコーヒーのカップに手を伸ばしていると、食べかけのパンが消えた。みるとメタモンの口に半分のパンが飲み込まれるところだった。

     試しにローテーブルを動かしてみたが、メタモンは器用に顔とおぼしき部分だけを動かして壁を見つめ続けた。ヨルノズク並に回る首だ。

    ☆★☆★☆★

     8月15日、快晴。暑い。本日は猛暑日になりそうだ。
     息苦しさで目を覚ます。扇風機のオフタイマーをセットした自分が恨めしい。目覚まし時計をセットし忘れたが、なんの支障もなかった。もごもご起き出そうとして、胸のうえに紫色の物体をみとめた。そりゃまあ、重いはずだ。メタモンにしては小さめの2.5キロをよいせとどけて、もごもご起き出す。歯を磨く。洗濯機を回す。朝食用に作り貯めの
    冷凍ホットケーキを解凍する。朝のあれやこれやをこなす私の後を、メタモンがめにょめにょついてきた。

    「めにょん、今日は壁みつめなくていいの? ああ、今日はポケフーズだから」

     2日ぶりのローテーブルだ。マグカップ入りの緑茶、ぷちホットケーキ二枚、ついでに昨日の残りのポテトサラダ。やっぱりテーブルはいい。食べながら壁をみつめてみたが、なんの変わりもない。当然、8月12日以前のままだ。となりのメタモンをみるとポケフーズの皿を持ち上げてざらざらと一気食いしていた。

     暑くて蝉の声も聞こえない。苦労してつけたすだれも意味がない暑さだ。もう空気が熱い。メタモンもとろけている。面積が広がった分、ポケモン用冷却マットに張り付いて多少は涼しそうだ。私も人間用冷却マットを敷いて腹ばいで本を読む。こうしていても、視線なんて感じやしない。一昨日、昨日のメタモンはなにかぼうっとしたい日だったに違いない。そういえば、昨日の夜はメタモンがくっついてこなくて暑かった。叫ばれる節電の夏、一人暮らしでクーラーをつけるのはどこか申し訳ない。寝付きにくい夜で、寝不足だ。
     いつの間にか寝落ちてたらしい。目の前にちらつくすだれ越しの陽は夕方の色で、風も幾分かは熱が落ちている。頬に本の跡をつけ、しばらく寝起きの「あと5分だけ」にしがみつく。ふと、影がおちた。小さな影じゃない。ひとの形だ。
     あれか。いつもメタモンに雑誌やらバラエティ番組やらを見せて好きな俳優に変身しておくれ、それでにっこり笑って座ってるだけで良いから、それをみて私はニヨニヨするごっこをしているからか。やめてくれ、メタモン。余所から見れば私は立派な変態だ。第一、いつもはあんなに拒むくせに……、

    「めにょ……んー」

     変身したメタモンが私の髪をなでつける。やたらしわくちゃで、いつも変身して欲しいとせがむ俳優の手には似ても似つかない。むしろこれは、おじいちゃんの手のような、なんというか安心できるような……。がばりと起き上がってメタモンを見る。
     老いてなおお洒落で、髪型はいつだって気にしていた。白というより銀の髪を懐かしいにおいのするワックスで撫でつけて、いつも優しげに笑っていて、会えば楽しく勉強しているか訊いてきた。祖母曰く典型的な亭主関白で、若い頃は女好きで、いつも問題つくりまくって、とにかくめちゃくちゃだったらしい祖父がいる。
     祖父の口が動く。声はない。「げんきでいるか たのしいか いっしょうけんめいか」あたりだろうか。
     呆気にとられたのは一瞬で、その次には祖父の姿がめにょんっと崩れ、紫のメタモンが現れた。黒ごまの目で私を見上げ、にぃっと笑う。めにょめにょ、私の膝に上がって、もう一度にぃっと笑う。メタモンを抱き上げて、めにょめにょした紫の身体に顔を埋めて、なんて答えよう。とりあえず、

    「元気だよ。楽しいよ。一生懸命だよ」



    ++++++

     最後の締まりがないなと思いつつ、出してしまえとお邪魔します。それ以前にこれでお題に合っているのだろうかから疑問に思いますが…。
     投稿フォーム一発書きは危険ですね、うっかりどこかクリックして画面が飛んであわててブラウザバックしたら文章のこっててホント泣きたくなりました。


      [No.2552] Julia 投稿者:メビウス   投稿日:2012/08/04(Sat) 13:35:43     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     Julia(ユリア)

     ある夏の日のことだった。森の近くの道を歩いていると、視界の端に黄色いポケモンの姿が映った。ピカチュウだった。群れからはぐれたのか、他に仲間はおらず、ただ一匹だけで佇んでいた。
     ピカチュウはこちらを見つめていた。その大きな黒い瞳に、おれは思わず惹き込まれた。やがてピカチュウはおれから視線を外し、森の方へと歩き始めてしまった。しばらく行ったところで、途中で後ろを盗み見るように振り返った。おれが同じ場所にいることを確認すると、戸惑うように視線をさまよわせ、また背を向けて歩き始めた。後方からの視線が気になるようで、振り返ろうとしては止める動作を何度か繰り返していた。おれは、後を追っていいものか迷った。そうしているうちに、ピカチュウの姿は森の中へと消えていってしまった。
     それから数キロ歩き、辺りが暗くなり始めた頃、おれは目指していた街に到着した。さほど大きくはない。都市と都市との中継地になるような街だった。だが、どんな小さな街にも、食堂と墓地とポケモンセンターはある。おれはさっそくセンターへ赴くと、ポケモンたちの回復を頼み、今晩の宿をとった。それほど腹は減っていなかったので、紅茶を一杯だけもらうことにした。ポケモンセンターの主であるジョーイさんと談笑しながら、紅茶の香りを楽しんだ。飲み終えると、借りた部屋に向かい、机の上に荷物を置いて、ベッドに横になった。天井を見つめながら、昼に出会ったピカチュウのことを考えていた。

     翌朝は5時に起床した。着替えを済ませ、食堂へ行って、朝食のトーストをかじりながら新聞に目を通した。天気欄の他に興味深い記事はなかった。部屋に戻り、身支度をし、受付のジョーイさんに挨拶をして、チェックアウトした。次の目的地へ向かう前に、ふと思い立って、昨日ピカチュウと出会った場所に行ってみることにした。まだ日も高くなく、涼しい時間帯だった。しばらく歩いて、昨日の森が見えてきた。
     ピカチュウは昨日と同じ場所にいた。いち早く人が近づく気配を察知していたらしく、こちらが発見したときには、おれの方を見つめていた。片手を上げて挨拶すると、ピカチュウは目をそらしてしまった。だが、今日は森の奥へ行こうとはしなかった。時々こちらを気にする素振りをしながら、所在なさげに空を見上げていた。おれは思い切ってピカチュウの側に近づき、話しかけてみた。
    「おはよう。昨日も会ったね」
     ピカチュウは、まるで初めて俺の存在に気付いたかのように、驚いた表情を作って見せた。
    「君は、この森に住んでるのかい?」
     どっちつかずの返事だった。
    「ここで何をしてたの? 辺りには、特に何もなさそうだけど」
     ピカチュウは言葉を濁した。おれはポケモンの言葉がわからない。なんとなくニュアンスを感じているだけだ。しゃがみこみ、ピカチュウと視線の高さを合わせた。
    「突然こんなこと言ったら困るかもしれないけど、君のことが気に入ったんだ。よかったら、おれと一緒に来ないか?」
     ピカチュウは、うつむいて黙り込んでしまった。明確に拒否されたというわけではないようだった。大きな黒い瞳には、迷いの色が浮かんでいた。近づいてみて気付いたが、このピカチュウはメスだった。女性に返事を強いてはいけない。おれは立ち上がった。
    「明日、また来るよ。返事を考えておいてくれたら嬉しい」
     別れ際、おれはまた片手を上げて挨拶をした。ピカチュウはうつむいたままだった。
     それから、今朝出発したばかりのポケモンセンターに舞い戻り、二泊目の手続きをした。ジョーイさんは「この街を気に入っていただけたんですね」と嬉しそうだった。事情を正直に話すことは恥ずかしいように思われたので、「ええ。いい場所ですね」と曖昧に微笑んでおいた。


     おれは、ポケモントレーナーの修業をしながら旅をしている。将来はジムリーダーになることが目標だ。どうせならトレーナーの最高峰であるポケモンリーグの四天王やチャンピオンを目指せ、と激励する人もいるが、現実的に考えて無理だ。努力すればジムリーダーにはなれるかもしれないが、それもギリギリできるかどうかだと思っている。大会で実績を残せば、まずはジムトレーナーとして雇ってもらえる。そのジムの中で実力を高め、先代のリーダーの指名を受けて、ようやくジムリーダーになれる。だからその道筋は、各地のジムを回って修業を積み、実力を上げ、リーダー公認の証であるバッヂを集め、地方リーグに出て勝ち進み、あわよくば全国大会へ進出することだった。
     今滞在している街にもジムはある。ポケモンリーグ公認ではないのでバッヂはもらえないが、一時の修業の場としては十分だろう。おれは旅の途中で仲間にしたポケモンたちを連れ、ジムに出かけた。

     ジムにはおれ以外の利用者はおらず、のびのびと施設を使うことができた。それどころか、リーダーから直々に指導を受けることもできた。午前中の約4時間、みっちりと修業を積み、ポケモンたちもおれも疲労困憊だった。小規模ながら、ジムの質は高いように思えた。じきに公認を受けることになるだろう。おれがそのように言ったら、リーダーは「それはどうかな」と笑った。
     昼食もリーダーと一緒にとった。滅多にない機会なので、ジムリーダーの内情についていろいろと質問をした。公認ジムになるとポケモンリーグから支給金が出る代わりに、雑務が大幅に増え、訪問者が激増する。トレーナーを雇うことになるので、彼らの管理もしなければならない。リーグ公認と言えば聞こえはいいが、負担はかなり大きくなるようだった。リーダーは「今の気楽なジム商売が性に合っている」と言った。「しかし公認リーダーは名誉ではないですか」とおれが尋ねると、「名誉がすべてではないよ」との返事だった。

     午後は街を観光した。それほど見る場所はなかった。まずは、街外れでひっそりと営業している博物館に行って「街の歴史展」を一通り眺めた。帰り際、併設されていたみやげ物屋で立ち話をし、街が見どころとして推している古い建築物を三か所ほど教えてもらった。すべて徒歩で回ってみたが、旅をしている者にとっては、どれも特に真新しいものではなかった。
     歩き回って腹が空いたので、夕食をとるためにポケモンセンターへ帰ることにした。その途中、店仕舞いを終えたジムリーダーと出くわした。飲みに誘われたので、ご相伴に預かることにした。ポケモンセンターに電話を掛け、今晩の食事は要らないとの旨を伝えた。ジョーイさんが「今日の料理は特別に力を入れましたのに」と残念そうに言ったので、おれは申し訳ない気持ちになった。
     リーダー行きつけの飲み屋では、今のおれにとって一番関心のある話題になった。森の近くで出会った、あのピカチュウのことだった。
    「あの子はねえ、人を待ってるんだよ」
    「待っている? 捨てられたのですか?」
    「ん……詳しい事情は知らないんだが、もう一週間はあそこにいる。食べ物はなんとか調達しているみたいだ。しかし、森にも馴染めず、行くあてもなく、待ち人は来ない。引き取り手もいない。哀れな子だ」
     おれはその話を聞きながら、ある決心を固めていた。
     それからしばらく飲んだ。勘定を済ませ、店を出た。よろめきながら、どうにかポケモンセンターにたどりつくことができた。ジョーイさんはまだ起きていた。おれが酔っ払っているのを見つけると、「しょうがない人ですね」と言って、水を用意し、おれの部屋まで付き添ってくれた。田舎の人は優しいのだなと、半分眠りに落ちながら思った。

     翌朝起きたのは9時過ぎだった。おれは朝食の時間に大幅に遅刻して食堂に向かった。食事はまだ片づけられていなかった。昨晩の「特別に力を入れた料理」を取っておいてくれたらしく、朝から宮廷料理のフルコース並みの豪勢なメニューだった。二日酔いで頭が痛かったが食欲はあったので、よく味わって残さず食べた。
     食堂を出ると、その足でセンターの受付に向かい、ジョーイさんに朝食の礼と昨晩の詫びを言った。それから、長期滞在の手続きを頼んだ。驚くジョーイさんには「もっとあなたの料理を食べたくなったので」と説明したが、滞在を伸ばすことを決めた本当の理由は、この街のジムに通うためだった。公認でないとは言え、リーダーが直接指導してくれるジムは貴重だからだ。指導内容も悪くない。吸収できるだけのことを学んでから出発したかった。もちろん、例のピカチュウのことも理由の一つではあった。だが彼女の件は、今日中に結果を出すつもりだった。

     滞在手続きを終えると、おれは三度目の正直と意気込んで、あのピカチュウがいた場所へと向かった。そうして、おれたちはまたしても対面を果たした。片手を上げて挨拶をすると、ピカチュウも遠慮がちに同じ挨拶を返してくれた。おれは嬉しくなった。昨日のようにピカチュウと視線の高さを合わせ、単刀直入に切り込んだ。
    「誰かを待ってるんだね。もう、一週間も」
     ピカチュウは目を伏せてしまった。
    「その人のこと、好きだったのかい?」
     首を横に振った。否定ではなく、わからない、という意味のように思えた。
    「帰ってくるかもわからない人を待つのは、辛いと思う。おれなら、君にそんな寂しい思いはさせない。いつだって側にいる。だから、一緒に来て欲しい」
     目をまっすぐ見据え、精一杯の求愛の言葉を告げた。ピカチュウは黙っていた。おれは返事を待ち続けた。実際にどれくらい経ったかわからないが、何時間も待ち続けているような気がした。
    しばらくして、ピカチュウが、かすかに頷いたのがわかった。了承の返事だった。歓喜を抑えながら、おれはピカチュウの手を取った。彼女は、大きな黒い瞳で見つめ返してきた。至近距離でその瞳に見つめられると、ぞくりとした。
    「ありがとう。君のこと、大切にする」
     おれはピカチュウに名前を捧げた。昨晩すでに考えてあった名前だ。
    ユリア。それが彼女の新しい名になった。


     ポケモントレーナーが一番苦労するのは、ポケモンたちのメンタル管理だという。トレーナーが特定のポケモンだけに愛着を持つと、他のポケモンたちが嫉妬する。そうなるとバトルどころではない。言うことは聞いてくれないし、ポケモン同士の連携など望むべくもないからだ。そのことを思い知ったのは、ユリアがパーティに入ってからだった。
     おれは最初からユリアにぞっこんだったが、彼女の方はそうでもなかった。ユリアを食事に連れて行き、おれの真向かいに座らせ、積極的に話しかけてみるが、いつも曖昧な返事しか寄越さなかった。ポケモン用のアクセサリーなどを買い与えてみても、つれない反応を示すだけだ。ユリアとの付き合いのことで悩み、寝付けない夜もあった。ポケモンの感情に関する本を読み漁ってもみた。とにかくおれの頭の中はユリアのことでいっぱいだった。
     そんな体たらくだから、次第に、以前から一緒にいるポケモンたちへの配慮が手薄になっていった。感情面での付き合いが減り、義務的なやり取りに終始するようになった。気付いたときには、おれはポケモンたちからの信頼を失ってしまっていた。そのような状態に陥って初めて、彼らの気持ちを理解した。トレーナーとポケモンは一蓮托生。ポケモンからすれば、トレーナーに見向きされなくなったら終わりなのだ。おれはユリアを除くポケモンたちと話し合い、謝罪し、これからは改善していくと誓った。彼らの反応は、納得半分、疑い半分、と言ったところだった。これからの行動で示していくしかなかった。
     ところが、他のポケモンたちとの時間を増やすと、今度はユリアが機嫌を損ねてしまった。これまで、おれのことなど何とも思っていない風に振る舞っていながら、自分への関心が薄れると途端に不満を持ち始めた。厄介なことになった、とおれは感じた。ユリアに構うと他のポケモンたちが不満を持つ。逆もまた然り。そのような構図では、両者が仲違いするのは時間の問題だった。パーティの空気が悪くなり始めていた。問題の根本にユリアがいるのは明らかだった。
    おれは宿泊中の部屋で、ユリアだけをボールから出した。不機嫌そうな表情だった。
    「やあ。とりあえず座ってよ」
     ベッドの上に座るよう勧めると、ユリアはその通りにした。おれは椅子に座った。
    「何を話したいかは、わかるよね」
     そっぽを向いたまま何も答えない。
    「ユリア、もっとみんなとも仲良くできないかな?」
     無反応。
    「おれも、君だけに構ってやることはできないんだ。それはわかってくれるだろ?」
     するとユリアは、なじるような視線を向けてきた。耐えかねて、思わず目をそらしてしまった。気付いてはいた。彼女は捨てられたポケモンだ。普通のポケモン以上に愛情に飢えているはずだ。ユリアがずっとつれない態度をとっていたのは、おれが本当に愛情を注いでくれるか試していたのだろう。おれは再び彼女の瞳を見つめ、言った。
    「おれは君が好きだ。初めて会ったときから好きだった。本当のことを言うと、他のポケモンたちより、ずっと好きだと思う」
     ユリアの視線が落ちた。
    「でも、おれはポケモントレーナーだ。少なくともみんなの前では平等に接しなきゃならない。好きな気持ちを抑えなきゃならない。だから、もしそれを許してくれないのなら、おれは君を――」
     突然、ユリアがベッドから飛び降り、おれの足にすがりついてきた。あの黒くて大きな目にうっすらと涙を浮かべ、見上げてくる。その眼差しに、おれは吸い込まれそうになった。どうしようもなくユリアが愛おしくなった。おれは彼女の小さな体を抱き上げ、そのまま抱き締めた。抵抗はなかった。
    「ごめん。寂しい思いをさせてしまったね。二人きりの時は、思い切り甘えていいから」
     腕の中ですすり泣く声が聞こえてきた。おれはユリアの体温を感じていた。
    その晩、おれたちは一緒のベッドで眠った。

     しばらくユリアは上機嫌だった。他のポケモンたちとも表面上はうまくやれるようになった。しかし、火種がいまだくすぶっているのをおれは感じていた。早いうちに、何とかしなければならない。
    ジムでの修業後、自販機で買ったコーヒーを飲みながらパーティのメンタルケアについて考えていると、リーダーに話しかけられた。
    「今日もお疲れ様。ところで、君のピカチュウのことなんだが」
     リーダーには、おれがユリアを引き取ったことを伝えてあった。そのときは喜んでくれたが、どこか複雑な表情が混じっていたのを、おれは見逃していなかった。
    「ユリアが、どうかしましたか?」
    「本当にあの子を育てる気か? 君のパーティの和を乱すことになっているように見えるのだが」
    「それは……その通りだと思います」
    「弱い者に救いの手を差し伸べる。立派なことだ。しかし君には夢があるだろう。こんなことを言いたくはないが、あのピカチュウ一匹のために、君は夢を掴み損ねるかもしれない。そうなったとき、君はあの子を恨まずにいられるか?」
     ユリアを恨む? あり得ない。そんなことは考えられなかった。
    「おれはユリアのことが大事ですし、それはこれからもずっと変わりません」
    「そのために夢を失ってもいいと?」
    「いえ、夢というほどのものでは……。何にせよ、今はよくわかりません」
    「まあ君はまだ若い。チャンスはいくらでもある。失敗して学ぶのもいいかもしれないな」
     そう言うと、リーダーはジムへと帰っていった。おれが何を失敗しているというのだろうか。


     それから数ヶ月が過ぎた。おれは毎日ジムに通い、午前中は修業に打ち込んだ。リーダーと一緒に昼食をとり、時には午後も稽古を付けてもらい、それから夕食まではポケモンたちやジョーイさん、ポケモンセンターを訪れるトレーナーと話したり、街の付近を散歩したり、本を読んだりしていた。夜は、リーダーに飲みに誘われた日以外は、人目を忍んでユリアと過ごした。二人でいると、時の経つのを忘れた。おれもユリアも、お互いの存在がなくてはならないものになっていった。
     街には、新しいトレーナーが訪れては去っていった。おれは、いろんな人たちと出会った。旅を始めたばかりの新米から、全国大会への出場経験を持つベテラントレーナーまで。彼らとの試合を経験し、対話を重ねていくうちに、おれの中で、トレーナーとしての将来像が明確になっていくのがわかった。漠然と考えていたトレーナー人生だったが、今やおれは、全生涯をかけてその目標に打ち込みたいと思うようになっていた。一度きりの人生なのだから、たとえ上手く行かなくとも、やりたいことをやりきってから死にたい。おれは最後までポケモントレーナーとして生きて行きたいと思ったし、そのために人生を捧げようと決めた。おれが毎晩のようにその夢を語るようになると、ユリアはいつも嬉しそうに聞いてくれた。「大変な生活になるけど、ずっとついてきてくれる?」と尋ねると、彼女はためらいなく頷いてくれた。二人なら、辛い道のりでも乗り越えていけるような気がしていた。

     ある日、この街にまた新しい訪問者がやってきた。有名な女性だった。24歳の若さでポケモンリーグ四天王の一人に就任しながら、わずか三ヶ月で辞職し、行方をくらましていた人物だ。写真やテレビで見た通りの美人だった。彼女は「リサ」と名乗ったが、偽名だった。
    「それはペンネームですか?」
    「どうして?」
    「だってあなたの名前は――」
     おれは彼女の本名を言った。それを聞いて、彼女は明るく笑った。
    「その名前は捨てたの。今の私はリサ」
     おれたちはポケモンセンターのロビーで話していた。ジョーイさんがいつものように紅茶を運んでくれたが、少し虫の居所が悪そうに見えた。
    「私のことを知ってるなんて、キミは勉強熱心なポケモントレーナーなのね」
    「あなたは有名ですよ」
    「そう? ありがと」
     そう言ってリサは微笑んだ。胸の奥がはねるのを感じた。
     リサはいろいろなことを尋ねてきた。だが、トレーナーにとって定番となる質問は来なかった。いつから旅をしているのか、この街へはいつ来たか、バッヂはいくつ持っているか。そういったことはまったく聞かれなかった。代わりにリサが聞いてきたのは、第一におれの名前、それから年齢、出身、生年月日、家族構成、両親の仕事、学校での成績、趣味、特技、好きな食べ物、好きなスポーツ、そして好きな異性のタイプ。一通り聞き終えると、リサは総括するようにこう言った。
    「キミは平凡な人間だね。でも磨けば光るタイプ。いい指導者にめぐりあえるかどうかが肝かな」
     おれは呆気にとられた。元リーグ四天王は、三流占い師にでもなったのだろうか。彼女はおれが戸惑うのを見て笑った。
    「あのね、キミ。人間の素質って、ちょっと話せばわかっちゃうものなの。話の内容は大して重要じゃない。態度とか、話しぶりとか、他にも……いろいろ見ていると、素質の有無くらいは読めてくる」
    「それで、おれは平凡だって言うんですか?」
    「世の中の九割九分九厘の人は平凡なのよ。私もそう。でも、偶然いい先生にめぐりあえた。運がよかっただけ」
     次の台詞は、まったく予想していなかった。
    「キミも運がいいわ。私の弟子にならない?」

     そして翌日、おれは街を発つことになった。お世話になったジムリーダーと連絡先を交換し、再会を約束した。ジョーイさんに出発の旨を伝えたら泣かれてしまって、チェックアウトの手続きを済ませるまで少し手間取った。その様子を見ていたリサが言った。
    「キミは悪い男だね。無自覚なところがサイアク」
    「なんのことですか?」
    「いつか痛い目見るから」
     幸先がよいとは言えなかったが、急遽始まることになったこの二人旅に、おれは興奮していた。相方が「元リーグ四天王だから」ということも当然あるが、「年上の美人だから」という理由の方が大きかった。男なら何かを期待せずにはいられないだろう。気がかりなのはユリアのことだった。他のポケモンたちはリサとの二人旅を歓迎するだろうが、ユリアが快く思わないだろうことは容易に想像できた。
    「だがこれは、トレーナーにとってこの上ない僥倖だ。ユリアがなんと言おうと、みすみす機会を逃すなんてありえない」
     そう自分に言い聞かせ、おれはリサの隣に並んで歩き続けた。
     道中、リサは身の上話を聞かせてくれた。ジムバッヂを集める過程から、地方リーグ、全国リーグを勝ちあがり、実力を認められて四天王になるまでの話。四天王の仕事の内情。そして、四天王を辞めてから何をしていたのか。
    「旅をしながら、出会うトレーナーにアドバイスをしてた。そうすると、何も言わなくても謝礼を払ってくれるの。そういうつもりはなかったんだけど、私としても生活資金は必要だったから、ありがたく受け取ってたわ」
    「前にも弟子はいたんですか?」
    「キミみたいな?」
    「ええ」
    「一人ね。嫉妬した?」
    「まさか」
    「私はね、人を育てる方が向いてるんだなぁって思ったのよ」
    「ポケモンを育てるよりも?」
    「結局、あの子たちは別の生き物なのよね。こっちがどれだけ尽くしてみても、本当の意味でわかりあうことはない。それに気付いたとき、なんだか虚しくなっちゃったの」
    「人間同士ならわかりあえるんですか?」
    「ポケモンよりはね。こんなこと、これからトレーナーとして大成しようってキミに言うのはよくないのかもしれないけど。それでも、知っておいて。相手のこと、わかったつもりになるのが、一番よくないのよ」
     話を聞きながら、ユリアのことを考えていた。おれは、彼女の何をわかっているだろう。

     二日かけて次の街にたどりついた。ポケモンセンターに宿をとると、自室でユリアのボールを開けた。二人きりになるのは、リサに同行するようになってからは初めてだった。いつもならすぐに飛びついて甘えてくるのに、今日はおれのことを睨みつけているだけだった。あまりにも予想通りで、口を開くのも気が重かった。おれは分かりきった質問をした。
    「リサさんとの旅、反対だった?」
     当然、と言わんばかりにユリアは頷いた。
    「あの人は、トレーナーの最高峰にいるんだ。おれは何としてもトレーナー稼業で食べて行きたいと思ってる。だから、このチャンスを逃すわけにはいかない」
     ユリアは首を横に振る。そんなことを聞きたいのではない。そう言っていた。心の中を全部見透かされているみたいで、冷や汗が出そうだった。
    「大丈夫だよ。あの人は尊敬できる師匠だけど、それ以上の感情は一切ない。そういう目で見たこともない。ユリアが心配しているようなことは、一つもないから」
     突然、ユリアは電気袋から放電した。感情が高ぶったようだ。目からは涙があふれていた。嘘つき、と言っているように見えた。おれは電気に注意しながらユリアに近づき、その体を抱きしめた。
    「嘘じゃない、本当だよ。おれが好きなのはユリアだけだ。だから、そんなに不安にならないで」
     ユリアは放電をやめ、大人しくなった。ひとまずは落ち着いたようだった。その頭を撫でながら、おれは自分の心の中に、今までにない考えが生まれてくるのを感じ取っていた。

     リサはリサで、ユリアについて思うところがあるらしかった。ユリアのバトルの様子を見ているときは、決まって難しい顔をしていた。あるとき、リサはおれに言った。
    「あのピカチュウ、バトル向きじゃないわよ」
    「どういうことですか?」
    「目の前の敵が見えてない。いつも何か別のことを考えてる。ねえ、あの子に肩入れしすぎてない?」
     おれは何も言えなかった。
    「バトルで勝てるトレーナーになるためには、あの子をパーティに入れていてはダメ。足を引っ張ることしかしないわ」
    「ユリアは前に一度捨てられたポケモンなんです。だから、無下に扱うようなことは……」
    「捨てポケモンを救いたいなら、強くなって賞金を稼いで、そのお金で孤児院でも作りなさい。やりたいことすべてを今すぐやろうとしていたら、結局は何にも出来ない。順序を間違えないで。あなたは何よりもまず、バトルに勝たなければいけない」
     そんなこと、言われずともわかっていた。
    「ユリアを戦闘に出さなければいいんですね?」
    「それで足りるかしら」
    「……つまり、捨てろと」
    「野生に返すだけよ。あの子、普段からキミの重荷になってる気がするの。違う?」
     おれは答えなかったが、リサの慧眼には驚いていた。ユリアを手放すという考えには、魅力を感じずにはいられなかった。
     実際のところ、おれは、ユリアに構っている時間を無駄だと感じるようになっていた。そんな暇があるのなら、戦術書を読んだり、ポケモンバトルの映像を見たりして勉強した方が、よっぽど自分のためになることはわかっていた。それでもユリアとの時間を作り続けていたのは、ひとえに、彼女の持つ心の傷に配慮してのことだった。捨てられたことによるトラウマは、きっとおれが及びつかないくらいに辛いのだろう。せめておれだけは、彼女の味方になってやらなければならないと思っていた。
     もう一つ、かつて言ってしまった「いつだって側にいる」という言葉が、自分を縛る鎖になっていた。そのような台詞を軽々しく使ってはいけなかった。永遠の関係を誓うということは、何よりも重い契約だった。

     それからしばらく経ったが、結局のところ、おれはユリアを捨てられなかった。捨てて楽になりたいと考えているおれの内心など知らず、無邪気に笑っているユリアを見ていると、この笑顔を壊すなんてとんでもないことに思えた。頭をなでてやると、くすぐったそうにはしゃぐ。抱きしめてやると、安心しきったような声を出して甘えてくる。ユリアにだけこっそりお菓子を買ってやると、たったそれだけのことなのに、本当に喜んでくれた。その仕草の一つひとつを見るにつけ、おれはユリアを一層離れがたく感じるようになった。
    だが、愛おしく思う気持ちと同じくらい、ユリアの存在を負担に感じるようにもなっていた。彼女のことで頭を悩ます頻度は著しく増えてきていた。おれがリサと戦術の話をしているだけで、ユリアは不機嫌になった。そうなると、機嫌を取るためにまた時間が無駄になる。そのたび、おれはユリアに対する苛立ちと不満が募っていった。
     リサに詳しい事情を話すことはなかったが、おれとユリアが抱えている問題には勘づいていたようで、彼女なりに気を遣ってくれた。
    「キミ、最近疲れてるんじゃない? 温泉でも行こっか」
    「いいですね。でも、おれは大丈夫ですよ」
    「行くって言ったら行くの。師匠の言うことは絶対なんだから」
     おれは、リサと過ごす時間に安らぎを感じるようになっていた。師匠としてのリサを相手にしているときは緊張するが、普段の彼女と話しているのは楽しかった。ユリアとの時間も一応楽しくはあったが、いつどんなことが引き金となって機嫌を損ねるか分からず、常に気を張っていなければならなかった。それほどまでに配慮してもなお、ユリアは理不尽に怒ったし、おれは彼女をなだめなければならなかった。そのたびに、おれは疲れ果ててしまっていた。この気疲れはいつまで続くのか、と考えて億劫になった。
    だが、何のことはない。他ならぬおれ自身が、今の状況を続けることを選んでいただけなのだった。

     あるとき、決定的な事件が起きた。その晩は珍しくホテルに宿泊していた。地上八階の部屋だった。おれはへまをやらかして、ユリアを激昂させてしまっていた。彼女は窓を開けると、枠の上に立って、大声でわめいた。今にも飛び降りかねない様子だった。いくら人より運動能力に優れるポケモンでも、この高さから落ちたら死んでしまう。おれは焦った。なんとか落ち着かせようとしたが、近づこうとすると威嚇されて、身動きがとれなかった。
     隣の部屋にいたリサが騒ぎを聞きつけ、ポケモンと一緒におれの部屋に入ってきた。ユリアがもの凄い形相でリサを睨んだ。その様子を見るとリサは一笑し、「私だけ見てくれないなら死んでやる、ってわけ? 迷惑な子」と言い放った。ユリアは一瞬で顔色を変え、牙をむいてリサに飛びかかった。リサの後ろに控えていたポケモンが、即座にユリアの体を押さえ込んだ。リサは動じることもなく、ホテルのフロントに電話を掛けて、鎮静剤を持ってこさせた。その間もユリアはわめき声を上げ続けていた。鎮静剤を打って大人しくなったユリアをモンスターボールに戻すと、おれはリサに謝罪した。
    「この子、病気だわ。入院が必要なタイプのね。これからも連れて旅をするなんてムリよ。キミも、随分と我慢してたんでしょ?」
     おれはついに弱音を吐いた。もうユリアと一緒にいるのが辛い、彼女のことは大切だが、これ以上振り回されるのはごめんだ、もう無理だと。それまで溜めこんでいた気持ちを、余すところなく吐き出した。リサは、そのすべてを受け止めてくれた。おれがユリアにそうしていたように、リサはおれを抱きしめた。救われた気がした。

     翌日、おれはユリアをある施設へと連れて行った。人間と暮らしていたポケモンを野生に返すための更生施設だ。ここで治療を受け、心の傷を癒してから、ユリアは野生に帰ることになる。彼女もどこに連れて行かれるのか薄々と感じていたのだろう。もはや騒ぐこともなく、無表情のまま押し黙っていた。おれは考えてあった台詞を言った。
    「ユリア。初めて会ったとき、ずっと一緒にいると言ったよね。約束を守れなくて、本当にごめん」
     無反応。
    「おれは君のことが大好きだった。でも、君は変わってしまった。これ以上、君と居続けることはできない」
     無反応。
    「だからここでお別れだ。今までありがとう。楽しかった」
     無反応。
     ユリアは一貫して無反応だった。ぼんやりしたまま、何も言わない。それがかえって不気味に思えた。施設の職員に引き渡されてからも、ユリアは黙ったままだった。目はうつろで、どこを見つめるでもなく視線をさまよわせていた。そんな彼女の姿を見ていられなくて、おれは背を向けてしまった。それがおれたちの別れとなった。あっけないものだった。



     数年後、おれはポケモンリーグ全国大会の開催地にいた。観客としてではなく、選手として。傍らには共に厳しい修行を耐え抜いてきたポケモンたち、そしてリサがいた。
    「ついにここまで来たわね」
    「リサのおかげだよ」
    「そういうことは、優勝してから言ってちょうだい。がんばってね、ダーリン」
     おれたちの関係は、単なる師匠と弟子以上のものになっていた。今やおれにとってのリサは、師匠であり、愛する人であり、一生をかけて守るべき女性だった。
    「ねえ、リサ。もしおれがこの大会で優勝したら」
    「ストップ。それも優勝してから言って。私、待ってるから……」
     おれたちは第一試合の会場へ向かった。開催地はとても広く、移動には地下鉄を使う。巨大な円形スタジアムの周りを囲うように、線路が敷設されていた。
    最寄りの駅に移動し、薄暗い階段を下りた。早い時間帯だったのでホームは空いていた。時刻表を見ると、間もなく列車が来るようだった。おれたちは、まだ誰も並んでいない場所を選び、列車の到着を待った。
     不意に、誰かに呼ばれた気がして、おれは振り返った。見覚えのある黄色いポケモンが、そこにいた。あんなに美しかった目の輝きは、どす黒く濁ってしまっていた。
    おれが彼女の名を呼ぼうとしたとき、腹部に強い衝撃を受けた。体当たりをされたのだと気付いた。おれの体は吹っ飛ばされ、ホームを越えて、線路の上にあおむけに叩きつけられた。背中を強打して息ができなくなった。喉が声を振り絞った。遅れて痛みがやってくる。
     右の方に刺すような光を感じた。続いて聴覚が、列車の近づいてくる音を認識し始めた。痛みをこらえて目を開けると、視界の端に列車の姿が映った。まるで死者を迎えに来た棺のように、ゆっくりと迫ってくる。その間、彼女との出会いから別れまでの思い出が、浮かんでは消えていった。
     ――そういえば、変わってしまったのはおれの方だったか。
     轟音に包まれるホームの中に、リサの絶叫と、ユリアの甲高い笑い声がこだましていた。






    後記

    もうほとんどの方は初めましてですね。メビウスと申します。
    久しぶりに小説書いたので、せっかくだから投稿してみました。
    また書きたくなったら来ます。


      [No.2551] 8/10 夏コミに出展します。 投稿者:No.017   投稿日:2012/08/04(Sat) 08:37:25     96clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    8/10 夏コミに出展します。 (画像サイズ: 1000×1205 377kB)

    8月10日コミックマーケット82(C82)出展します。
    ポケモン小説本メイン。
    売り子はNo.017、カンツァーさん、なみのりライチュウ氏を予定。
    (586氏は残念ながらお仕事で行けません)

    No.017「赤い花と黒い影」
    586「歪んだ世界」

    が今回のイベントで初売りとなります。
    何卒よろしくお願い致します。



    ■■日時・配置

    8月10日(金)
    東地区“セ”ブロック−26b「ピジョンエクスプレス」



    ■■お品書き一覧


    【小説】

    赤い花と黒い影(No.017)500円
    携帯獣九十九草子(No.017)700円
    クジラ博士のフィールドノート(No.017)500円

    歪んだ世界(586)500円
    プレゼント(586)500円

    マサラのポケモン図書館 ポケモンストーリーコンテスト・ベスト(アンソロジー)500円

    灰色十物語(風見鶏)300円
    ※スペースの関係で展示無しかも。残部極僅少、欲しい方はお声がけ下さい。

    【コミック】
    ShortShort (アンソロジー)500円

    【イラスト集】
    A LOT OF ピジョン 〜ぴじょんがいっぱい〜(アンソロジー)500円


    【お楽しみ】
    ベストの赤い月口絵を描いたカンツァーさんがシールかしおりを作ってくるかも?
    何が飛び出すかは当日のお楽しみ!



    ■■各作品の詳しい紹介


    ●赤い花と黒い影(No.017)500円

    B6/文庫本/232P
    カゲボウズシリーズの第一巻。
    ウェブ上に公開していた「赤い花と黒い影」の大幅リメイク版(28P→100P)他、合計5作品を収録。
    続刊を予定しています。

    ストーリー:
    人には見えないものが見える大学生、ミシマ。
    大通りでたくさんの影が群がっている青年を見つけてしまった彼女がとった行動とは?

    収録作品:
    鬼火 / 聖地巡礼 / 赤い花と黒い影 / ぼんぐりの割れる時 / 喉が渇く

    タグ:
    カゲボウズ、ツッキー、ホウエン地方、カイナシティ


    ●携帯獣九十九草子(No.017)700円

    B5/オールカラー/48P
    ポケモンと日本の伝統文化をテーマとしたイラスト集型短編オムニバス。
    各話ごとにカラーイラストのついた8話を収録。

    収録作品
    隈取 / 詠い人 / 羽衣 / 恨人形心中語
    昇龍ノ祭 / 招き猫 / 達磨 / 替わらずの社

    タグ
    和風、歌舞伎、和歌、能、人形浄瑠璃、
    ゾロアーク、ジュペッタ、コイキング、ギャラドス、ニャース、ヒヒダルマ


    ●クジラ博士のフィールドノート(No.017)500円

    B6/文庫本
    ホウエン地方南南東の海に位置する孤島、フゲイ島。
    その島の海域は、世界最大のポケモン・ホエルオーの一大生息地となっている
    ――うきくじら、そしてうきくじらに魅せられた人々が織りなす、
    ちょっと不思議なポケモンストーリー。

    収録作品
    幻島 / 浮鯨島観光案内 / うきくじら
    メロンパンの恨み / 森と海と / 海上の丘にて / 朝霧

    タグ
    ホエルオー、ホエルコ、ポッポ、ピジョット、
    ホウエン地方、ミナモィティ、キナギタウン、フゲイ島


    ●歪んだ世界(586)500円

    B6/文庫本/210P
    平穏な日常、呆れるほど退屈な日々の風景。
    けれどそこからほんの一歩踏み出すと、終わりのない、とこしえの闇が広がっていた――。
    著者のゆがんだ心象風景をつぶさに描き出した、八つのゆがんだ短編を収録。

    収録作品:
    七八〇の墓標
    オブジェクト指向的携帯獣論
    私の世界
    壁はゆめの五階で、どこにもゆけないいっぱいのぼくを知っていた
    石竹市廃棄物処理場問題<書き下ろし>
    はがねのつばさ<書き下ろし>
    コラッタの頭<書き下ろし>
    変身<書き下ろし>

    タグ
    アンノーン、ポケダン、バグ技、エアームド、コラッタ、ユンゲラー、
    表紙は三人の共犯、トラウマ、最後に読むな、これはひどい


    ●プレゼント(586)500円

    B6/文庫本/420P
    出会いと別れをテーマにした586氏初単行本。
    涙なしには読めない切ない4編を収録。

    収録作品:
    弾けたホウエンカ
    ・−− ・−・ −−− −・ −−・
    プレゼント
    雨河童<書き下ろし>

    タグ
    萌えるマルマイン、ポリゴン、セレビィ、
    切ない系、最後に読むな、指切り、これはひどい


    ●マサラのポケモン図書館
     ポケモンストーリーコンテスト・ベスト (アンソロジー)500円

    B6/文庫本/312P
    10000字で競うポケモン短編小説コンテスト「ポケモンストーリーコンテスト」。
    3回を開催、合計92作品から選ばれた14作が改稿の上、文庫化。
    巻頭では各回大賞作品をイラスト化し掲載。
    巻末に毒舌な審査員、渡邉健太氏の解説付き。
    字数も12000字まで拡大し、さらにパワーアップしたポケモンストーリーをお楽しみください。

    収録作品:
    塀の外 / 久方小風夜
    blindness / 586
    フレアドライブ/ CoCo
    雨街レポート / リナ
    あいつに置いていかれたから / MAX
    ヨーヨー、顔文字、オムライス / 久方小風夜
    レックウザのタマゴ / 鶏
    こちら側の半生 / と
    生まれゆく君へ / hokuto
    記念日 / きとかげ
    居候、空を飛ぶ / No.017
    ベトミちゃん / レイコ
    赤い月 / クーウィ
    Ultra Golden Memories / レイニー
    解説 / 渡邉健太

    タグ:
    ピカチュウ、ドーブル、ゴウカザル、ミニリュウ、テッカニン
    レックウザ、ピッピ、プロトーガ、ゾロアーク、バチュル、
    ザングース、ハブネーク、萌えるベトベター、オムライス食いたい
    衝撃のラスト


    ●灰色十物語(風見鶏)300円

    A4サイズ
    ポケスコ2位の実力者、イケメンこと鶏氏単行本。
    白とも黒ともつかない灰色なポケモンストーリー10編を収録。

    収録作品
    千年彗星 愛情心理 幻影都市 純粋陽炎 倉庫喫茶
    記録迷宮 思考増幅 排他幸福 霊界探検 虚構現実

    タグ:
    ジラーチ、ガーディ、ゾロアーク、イトマル、コーヒー
    ピカチュウ、ユニラン、メタモン、ヨノワール、八割黒物語

    注意:
    スペースの関係で展示無しかも。残部極僅少、欲しい方はお声がけ下さい。


    【コミック】
    ShortShort (アンソロジー)500円

    A5サイズ
    イッシュ地方のモブ職業トレーナーをテーマにしたコミック短編集。
    今回登場するのはブリーダー、看護婦さん、ビジネスマン、ベーカリー、ウェイターさん
    彼らの日常と喜悲劇とは?

    タグ:
    イッシュ地方、モブトレーナー
    チュリネ、タブンネ、ランクルス、ゴルーグ、マメパト、ゾロア


    【イラスト集】
    A LOT OF ピジョン 〜ぴじょんがいっぱい〜(アンソロジー)500円

    A5サイズ/オールカラー/24P
    どのページを見ても、ピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョン
    ピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョン
    ピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョン
    ピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョン
    ピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンな、一冊。
    これを読んで頭をピジョンにしましょう。1413匹のピジョン。

    タグ:
    ピジョン、少しポッポ、少しピジョット、
    さりげなくマメパト、安定のやきとり
    テンションがおかしい、つっこんだら負け、彼女が出来ました(実話)



    それでは夏コミ会場でお待ちしております。


      [No.2550] ポケッターとその周辺 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/08/03(Fri) 14:07:34     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    『ポケッター……140字以内でメッセージを投稿することが出来る情報サービスのこと。主な発信地はイッシュだが、ここ数年で別地方にも浸透してきている。
    利用者は人間だが、時々キーボードの打ち方を覚えたポケモンが自分のアカウントを持って発言していることもある』



    pika_se  バンダナピカチュウ

    今日も暑いな うち今電気止められてどうしよう

    2分前


    flmetal 鋼のペンギン術師

    @pika_se うち来る?

    1分前


    caffe_kanban バクフーン@進化したぜ

    @pika_se てかお前電気タイプなんだからお前がなんとかしろよ

    30秒前



    『……』

    冷房が効いた店内。カウンター下で、バクフーンはノートパソコンとにらめっこしていた。頭上でユエがレジ打ちをしている。
    夏休みになってから、こうしてポケッターで呟くことが増えた。元はと言えばユエに『カフェのアカウント作ったから、ついでにアンタも呟いてみたら?看板も知性がないと』とやや無茶振りを言われ、仕方なしにローマ字と入力方法を覚えてみた次第だ。
    だが、やってみるとなかなか面白い。色んな情報が飛び交っているし、こうして直接会わなくても友人と話すことができる。
    最も、不特定多数の人間が見るものだから砕けた話はあまりできないが。

    「マスターのバクフーン、すごいですね。キーボードの打ち方を知ってるなんて」
    「ああ。カフェのアカウントの更新頼もうと思ったんだけど、まさかハマるとは」
    「いいなー。私もポケモンに覚えさせてみようかな」
    「あれ、貴方のポケモンって……」
    「カイリキーです」
    「残りの二本の腕どうすんのよ」



    caffe_kanban バクフーン@進化したぜ

    俺の主人の知り合いが俺を見て自分のポケモンに打ち方覚えさせようとか言ってる




    すぐさま返事があった。



    kusahebi_ms M・S@ジャローダ

    @caffe_kanban ちなみにそのポケモンは?


    caffe_kanban バクフーン@進化したぜ

    カイリキー


    kusahebi_ms M・S@ジャローダ

    @caffe_kanban パソコン代が心配だ


    あまり知られていないだけで、キーボードを打てるポケモンは意外に多い。
    きちんと指や腕があるなしでなく、あのフルメタルが出来るのだから、指が無い……たとえば、ゴースなんて腕どころか肉体という物がなくても、なんとか出来る気がする。
    たとえばあのガスを使うとか。パソコンが壊れるかもしれないけど。
    どうやったのか聞いてみると、俺のような奴だけでなく、『主人がやっているのを見ていたら覚えてしまった』という話も少なくない。
    ちなみにその中には、主人が自分がキーボードを打てることを知らない奴もいる。

    ポケモンと人の境界線は、確実に消えてきている。
    もしかしたら何処かの昔話みたいに、恋人同士になって、しかも結婚までする―― なんてことも、ありえるかもしれない。


    ―――――――――――――
    2ちゃんねるやDQNネームはあるのにツイッターがないなあ……ふと思いついた結果がこれだよ!
    皆さんのポケモンも、もしかしたら知らないところでこんなことしてるかもしれませんね。
    お互い知らずにフォローしてたりして……
    あれ?何か近い話を昔読んだような。

    【何をしてもいいのよ】
    【皆さんのポケモンのアカウントは?】


      [No.2549] Re: 頑張れ 超頑張れ 投稿者:くろまめ   投稿日:2012/08/02(Thu) 23:45:42     26clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    コメントありがとうございます、ぺこり。

    クリムガンはやっぱりびびっときますよね、ビビットカラーだけに。
    最近はステルスロックも習得して使いやすさはましましたが、しかし世間の風は冷たいものですね。
    案外耐久がありますので、ゴツメとセットでご使用していただけるとなかなかの働きですよ。

    改めてコメントありがとうございました、お互いクリム頑張りましょう!


      [No.2548] 【勝手に】電子携獣奇譚草子【企画】 投稿者:aotoki   投稿日:2012/08/02(Thu) 21:54:16     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    みなさん、夏ですね。いや、冬でしょうか?

    冬でも夏でも、あなたのそばにはポケモンがいます。
    ポケモンがいれば楽しい話もある。楽しい話があれば悲しい話もある。
    悲しい話には・・・・怖さが”憑き物”ですよね?

    悲しくなくてもいい。怖くなくてもいい。
    電子の世界に広がる未知領域。それが「電子携獣奇譚草子」です。
    さぁ、あなたが垣間見た未知の世界・・・・どんなものでしたか?

    期間は8/15まで。皆さんのお話は一冊にまとめ、おくりびやまに奉納する予定です。
    皆様のご参加、お待ちしております・・・・


    **********
    要するに創作ポケモン怖い話を集めようってことです。はい。

    ですが、ただ怖いだけじゃ味がないのでルールを一つ決めさせて頂きます。

    ズバリ、「ポケモンがした、人間の知り得ない現象」を書くこと。
    ポケモンなんてまだまだ分からないことだらけ。私たちの知らないチカラで、知らないトコロで何をしていてもおかしくないですよね?
    純粋ホラーもよし。じんわりくる温かい話でもよし。ちょっと気持ち悪くてもよし。
    ただし過度のグロ表現はご遠慮ください。あくまで「ポケットモンスター」の範疇でお願いします。


      [No.2547] 覚えがありすぎる 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/08/02(Thu) 19:15:37     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    こんにちは。神風紀成と申します。
    巷で噂の『DQNネーム』まさかポケモンに持ってくるとは考えなかったなあ……

    なんででしょうね。違和感があまり感じられないんですよね。
    多分カタカナか平仮名じゃないと付けられないからなんだろうな(ゲームに限るけど)
    以前テレビで見たポケモンバトルで、ポケモンの名前を顔文字で設定していた子がいてびっくりした覚えがあります。

    さてさて、リアルの方ですね。
    友人は以前イーブイ進化系でパーティを組んでいた時に、グレイシアに『ツンデーレ』サンダースに『カーネル』と付けていました。
    「なんでツンデーレ?」と聞いたら「だってグレさんツンデレじゃん」という訳の分からない答えが返ってきて頭を抱えました。
    ちなみに私は彼らの水・炎・電気に『サイダー』『レモン』『オレンジ』と付けました。今でも健在です。

    今ではあまり考えませんが、中二の時にイタリア語にやたらとハマりまして。
    捕まえるポケモンをほとんどそれに関した単語で付けていました。いや、ブラックのパーティもそうだったんですけど。
    ツンベアーに『ギアッチョ』と付けたのはやりすぎだったかな……と今更ながら思います。ちなみに『氷』です。


    >>  個体登録の際に、そのポケモンの将来を考えてみてはどうだろうか。

    彼らを使う人間の名前もそうなる時代が来るんでしょうね、きっと……


    >  暑いですね、暑いとカキゴーリとでも名付けたオニゴーリを触りまくりたくなります。「ねぇ、カキゴーリ。かき氷食べる?」とか言ってカキゴーリ(オニゴーリ)をあたふたさせてやりたくなります。

    ユキカブリに『キントキ』とか?『ウジキン』だと何か卑語に思えてならない。

    長文失礼いたしました。では!


      [No.2546] DQNネーム 投稿者:小春   投稿日:2012/08/02(Thu) 15:57:57     94clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「おとうとの かたきを とるのです!」
    「いやだね やったね たぶんね へんだね」

     上記の文章はすべて、実際につけられたポケモンのニックネームである。
     近年、ポケモンに珍名をつけることが流行っている。俗に言うキラキラネームである。ユニーク過ぎる名付けに一部ではDQN(ドキュン)ネームとも揶揄されている。

     全国トレーナー協会の定めでは公式戦に他種族名をつけたポケモン、同一ニックネームのついたポケモンを使用することが認められていない。また、卑猥な単語、他人を貶める単語をニックネームとしてつけられたポケモンがグローバルトレードシステム上に預けられるということが多発したため、トレーナー協会は2010年より新規個体登録の際に禁止単語をもうけることにした。
     イッシュ地方から広まったバトル形式、トリプルバトルも珍名を助長しているのではという愛護団体もいる。いままでのシングルバトル、ダブルバトル形式ではみられなかった文章を表現する珍名だ。ネット上では、そういった文章ネームとでも呼ぶものを投稿するサイトまでできている。
     
     ニックネームはポケモンとのきずなを深めるものだ。おや登録されたトレーナー以外は変えることができず、リリースされたあとに別のトレーナーに捕獲されてもニックネームを変えることはできない。 捕獲したポケモンがおや登録がされているリリース個体であり、ニックネームが不愉快だったためリリースではなく、ボールに入れられたまま数年間放置されてしまったという事件も起きている。

     個体登録の際に、そのポケモンの将来を考えてみてはどうだろうか。


     ☆★☆★☆★

     暑いですね、暑いとカキゴーリとでも名付けたオニゴーリを触りまくりたくなります。「ねぇ、カキゴーリ。かき氷食べる?」とか言ってカキゴーリ(オニゴーリ)をあたふたさせてやりたくなります。


      [No.2545] 頑張れ 超頑張れ 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/08/02(Thu) 08:57:29     27clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    初めまして……ですね。神風紀成と申します。

    まず一言。
    可愛い!可愛すぎるぞマロンくん!

    もうバトルうんぬんとか使えないとか使えるとかの問題じゃない!
    これがギャップ萌えというやつなのか……(

    ちなみにクリムガンは私も好きです。ビビットカラーが眩しい。
    最初見た時『!?』と思ったものです。
    カラーだけならお菓子やジャージに使えると思います。汚れが目立たなくていい。
    お菓子は以前書いた話にキャンディーとして出したことがあります。アメリカンっぽくて。

    とりあえず頑張ってマロンくん!

    では。


      [No.2544] 【納涼】ト リ ッ ク  投稿者:ラクダ   投稿日:2012/08/02(Thu) 02:28:02     82clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ――あら? お客様なんて珍しいわね。こんにちはお嬢ちゃん。どこから来たの?

    「あっち。あっちの隙間から入ってきたの」

    ――まあ、あんなに狭いところを潜ってきたの。中は真っ暗なのに、勇敢な子ね。

    「大丈夫、全然怖くなかったよ。クーちゃんが一緒だもん」

    ――可愛いぬいぐるみね。ミミロル……だったかしら?

    「うん、そうだよ。お姉さんすごいねえ、こんなに暗いのにちゃんと見えるんだ!」

    ――長い間ここにいるから、目が慣れちゃったのよ。元々、夜目は利く方だけれどね。

    「ふぅん、そうなんだ。長い間って、どれくらい?」

    ――うーん、どれくらいかしらねえ。長すぎて忘れちゃったわ。

    「ずっと一人でここにいたの? ……寂しくなかった? 怖くなかった?」

    ――いいえ、他にもたくさんいるから、寂しくも怖くもなかったわ。今は私以外、みんな眠っているけれどね。心配してくれるの? 優しい子ね。

    「……ううん、優しくないもん。今日またお母さんに怒られちゃったし」

    ――あら、どうして?

    「あたしがリカを叩いたから。だってリカがあたしのクーちゃん勝手に持ってっちゃうんだもん、ケンカになって叩いちゃった。
     そしたらお母さんが『乱暴にしちゃダメ! リカはまだ赤ちゃんなのよ、ケガしたらどうするの!』って。あと、『ミカはお姉ちゃんなんだから、おもちゃくらい貸してあげなさい』って。リカの事ばっかり味方するんだよ、ひどいよ!」

    ――あらあら。色々大変そうね。

    「あっ、笑ってるでしょ! 見えなくても分かるよ、声が震えてるもん!」

    ――ごめんなさいね。楽しそうで、つい。

    「えー、全然楽しくないよ! お母さんもお父さんも、おじいちゃんもおばあちゃんも、みんなみーんなリカの事ばっかり可愛がってあたしはほったらかしなんだもん。せっかくシンオウに遊びに来てるのに、つまんないよこんなの!」

    ――あなたシンオウの子じゃないのね。家族で旅行に来たのかしら?

    「うん。でも夏休みだから、どこへ行っても人がいっぱいで凄いの。だから人の少なそうな、このナントカイセキにみんなで来たんだ。……でもね、ケンカしちゃったからここに逃げてきたの」

    ――そうなの。確かに、ここにいたら見つかることはないでしょうね。いつまでだって隠れていられるわ。

    「あーあ、あ母さん怒ってるだろうなあ……。帰ったらまた、お説教されるのかな。……イヤだなあ、しばらく隠れておこうかな」

    ――それがいいわ、私が話し相手になってあげる。きっと退屈しないわよ。

    「ホント? ありがとう! えーっとね、何からお話しする?」

    ――ふふ、焦らなくていいのよ。時間はたくさんあるんだから。
      そうね、私は色々な話を聞きたいわ。外の世界についてや、あなたや家族の事とか、色々、ね……。






    … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … 







    「……でね、その時には……ふわぁ」

    ――あら、大丈夫? 眠くなってきたの?

    「ん、ちょっぴりだけ。ずうっとお話してたから、疲れてきちゃった」

    ――無理しないでね。ちょっと休憩しましょうか。床が硬いかもしれないけど、横になるといいわ。

    「わあ、ひんやりして気持ちいいね。なんだか寝ちゃいそう」

    ――眠ってもいいのよ。眠って嫌なことを忘れてしまえば、きっと楽になるわ。

    「イヤな事、かぁ。怒られることとか、夏休みの宿題とか、リカの事とか……? あと、野菜食べなさいって言われること!」

    ――私には、少し羨ましいくらいだけれどね。

    「えー、こんなのがー? 面倒くさいだけじゃない。あーあ、なんでこんなにイヤな事って多いんだろう……。あたし、人間じゃなくてポケモンなら良かったのになー……」

    ――ポケモン、好き? ポケモンになってみたいって、思う?

    「うん、だーいすき! ポケモンになったら、もう宿題とか色々しなくていいよね! 毎日好きな事たくさんできて楽しそう!」

    ――ふふふ。そうね、大抵のポケモンは自由だものね。

    「いいなぁ……。なってみたいなぁ……」

    ――……夢なら見られるんじゃないかしら。夢の中でなら、どんなポケモンにだってなれるわよ? あなたの望みのままに、好きなだけ。
      さあ、目を閉じてごらんなさい。頭の中で、なりたいポケモンを思い浮かべてみて……?

    「うーん……そんなに簡単に見られるかなあ……。確かに眠くなってきた、けど……」

    ――大丈夫、大丈夫。私を信じて……。

    「…………う……ん……。…………夢の中で、おともだちいっぱい……できるかな……?」

    ――ええ、きっと。たくさんのお友達が出来るわ。私が保証してあげる。
      


    ――いい子ね……ゆっくりお休みなさい。目が覚めた時には、きっと……あなたの望みが叶っているから。







    … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … … 








     
     行方不明の少女が見つかったのは、彼女が迷子になった遺跡群から遠く離れた場所でした。
     茫洋とした瞳で彷徨う少女を保護した警察は、要領を得ない話の中からなんとか名前を聞き出して、家族の元へと送り届けることができました。
     黙ったまま涙ぐむ父親と人目もはばからずに号泣する母親の姿、彼らにしっかりと抱きしめられる少女の姿は、職務上見慣れたものであっても警官たちの心を揺さぶりました。
     今後はご両親から離れて独り歩きしないように。運よく出会わなかったけれども、本来野生のポケモンは怖い生き物なんだよ。一人の時に出会うと命に関わるからね。
     警官がそう言い聞かせると、少女は真面目な顔で頷きました。
     お巡りさん、連れて帰ってくれてありがとう。
     愛らしい少女のお礼の言葉を胸に、警官たちは暖かな気持ちで帰路につきました。



     シンオウを出る前日の事です。
     出立の準備やお土産の確認などに大わらわの母親がふと気づくと、娘二人の姿が見えません。慌てて探せば、彼女たちはホテルの庭で仲良く寄り添っていました。
     うっとりと青い空を見つめる姉の隣で、幼い妹がミミロルのぬいぐるみを振り回して歓声を上げています。
     あれはお気に入りのクーちゃんのはず。大切なぬいぐるみをあっさり手放した娘に驚いて、母親は理由を尋ねました。
     彼女の答えはこうでした。

    「いいの、あのぬいぐるみはリカちゃんにあげる。だって私はもう、大切なものを取り換えて貰ったんだもの。今あるものだけで十分幸せよ」

     迷子になった一件以来、どことなく大人びた娘を不思議に思いつつ……きっと、妹を持ったことで姉としての自覚がようやく出てきたのだろうと考えて、母親は嬉しくなりました。
     いい子ね、と褒めると、娘は無邪気に笑います。

     母親が機嫌よく立ち去ると、少女は再び空を見上げて物思いに耽ります。
     青い空のむこう、朽ち果てた遺跡群――その地下に封じられた、要石を想って。
     彼女の望みはすべて叶いました。
     自由に動かせる体を、どこまでも広がる世界を、迎え入れてくれる家族を、新しい人生を、すべて手に入れました。
     “彼女”の望みも叶ったはずです。
     もう怒られることも宿題の心配をすることもなく、うるさい妹に邪魔されることも、野菜を食べるよう強制されることもありません。望み通りポケモンとなり、友達と仲良く暮らすことができるでしょう。“彼女”はきっと歓迎されたはずです。
     忘却の地に封じられたミカルゲの、百八番目の魂として。

     私は今、すごく幸せよ。あなたは、どう?

     小さく呟いて、少女は薄い笑みを浮かべるのでした。







    ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―



     眠れぬ夜に一気書き。背筋をぞわっとさせるお話が増えるといいな、に諸手を挙げて賛成中。しかし、自分の話では涼をとれないという言葉にも残念ながら賛成中。読んで下さった方の背筋をぞわぞわさせることに成功したのかどうか不安です。もしならなかった場合、誰かに頼んで背中を人差し指でつつつっと縦になぞってもらってください。ほーら、ぞわっとしてきた筈…………え、違う?

     個人的に、入れ替わりネタは怖いものの一つです。ちなみに自分で書いておいて何ですが、彼女たちの口調が赤チェリム姉さんと女の子に諸被りな気がしますが、書き分けができていないだけで別人です。あちらは(一応)人間です。
     タイトル【トリック】は技名より。本来は「相手のどうぐと自分のどうぐを入れ替える。相手も自分もどうぐを持っていない場合は失敗する」ものですが、今回は道具の代わりに魂を取り換える、として使っています。【すりかえ】も候補だったのですが、こちらだといきなり内容がバレそうだったので却下。

     まだまだ長い夏の夜、もっとたくさんの「ぞわっと話」が読めますようにと願いを込めて。
     読了いただき、ありがとうございました!

    【ホラーいいよねホラー】
    【なにをしてもいいのよ】


      [No.2543] 顔面クリムガンなんて言わないで 投稿者:くろまめ   投稿日:2012/08/02(Thu) 00:13:32     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「顔面クリムガンなんて言わないで」

     よわよわしい声で訴えかけるのは、全身クリムガンなマロンくん。
     マロンという可愛らしい名前はギャップ萌えという言葉ですらフォローしきれないほどに不釣り合い。

     しかし内面は温厚、それどころか母性愛をくすぐるような愛おしいものなのに、そのワイルドな頭を撫でたいという人はいません。
     抱きつくなんてもってのほか、全身ゴツゴツメットなマロンくんにはスキンシップすらままなりません。

    「どうしてこんな身体なんだろう」

     しょんぼりと頭を項垂れて歩きだします。重い足取りは、地面に無数の傷をつけました。

    「ようマロンwwww元気そうだなwww」
    「あ、オノノクスくん……」

     通りに差し掛かると、とても嫌なポケモンに出会ってしまいました。

     マロンくんは龍単体という優秀なタイプ、それに加えてそれなりに高い攻撃力からの逆鱗が打てます。不意打ちだって覚えるんです。
     にも関わらず対戦でお見かけできないのはこのポケモンがいるからなのです。
     マロンくんはオノノクスくんの劣化とすら蔑まれています。
     マロンくんが苦手に思うのも無理はないでしょう。

    「おい聞けよマロンww俺この前対戦で龍の舞積みまくって3タテ決めてやったんだぜww
     いや〜スカっとするぜ?wwお前も今度使ってみろよww
     って、お前龍の舞出来ねえんだったかwwwwwテラワロスwww」

    「うう……」
     
     何も言い返せないマロンくん。
     蛇睨みというオノノクスくんの習得しない技を覚えていますが、それすら放つ気にはなれません。

    「それじゃ、ご主人が待ってくるからなwww
     じゃーな顔面クリムガンwwww」

     型破りならぬ常識破りなまでの高らかな笑い声をあげて、オノノクスくんがいなくなりました。
     散々好き勝手言われて、マロンくんの目には涙がたまっています。

    「ボクのことを必要としてくれる人なんていないんだ……」

     そんな言葉と涙がこぼれます。
     目をぬぐいますが、その肌は自分すら傷つけていきます。
     
     心も体も、傷だらけ。
     全身クリムガンな、マロンくん。

     
     そんなマロンくんの所に、数少ない友達がやってきました。

    「あ、マロンじゃないか。どうしたんだよ、泣いてるのか?」
    「フライゴンくん……」

     フライゴンくんはランダム対戦で猛威をふるっているガブリアスの完全劣化という評価を受けている、マロンくんと同じ境遇の龍ポケモン。やはりどこか通じ合う所があります。

    「また対戦で使ってもらえなくて落ち込んでるのか〜?
     もう諦めようぜ〜どうせ俺達は、あいつらの劣化なんだからよ〜」

     そんな風にフライゴンくんは、必死に作った笑みを浮かべて言います。
     でもマロンくんは。

    「対戦で使ってもらえなくてもいいんだ……。
     対戦で使ってもらえなくても、ボクのことを好きって言ってくれる人がいるなら……。
     でもね、みんなボクのことを見て顔面クリムガンだって言うんだ……」 
     
     マロンくんは対戦で使ってもらえなくても、誰かに好きになってもらえたらそれで良いと言います。
     
    「顔面クリムガンなんて、言わないで……」

     どんどん、涙が流れていきます。
     そんなマロンくんをみてフライゴンくんは考えます。 
     そして閃きました。

    「そうだ、ならもっとインパクトのある言葉をつくればいいんじゃないか?」
    「ど、どういうこと……?」
    「だから、顔面クリムガンなんて言葉よりももっと流行るような言葉をつくればいいんだよ。
     
     そうだ、『クリム頑張る』なんていうのはどうかな?
     傷だらけになっても、あきらめず頑張るって意味だ!良い意味だろ?」

    「クリム……頑張る……。
     うん、良いねそれ。ボク、クリム頑張るよ!」

     俯いていた顔をあげ、マロンくんは笑います。もう誰にも顔面クリムガンなんて言わせません。
     新たに習得できるようになったステルスロックをもって、走り出します。
     クリム頑張れ、マロンくん!
     




    書いてみていいのよ
    描いてみていいのよ
    使ってみていいのよ


    ────


     
     最近ランダム対戦に潜るようになって色々と戦術を練っているのですが、クリムガンというポケモンの不遇っぷり、そして活躍の予感を感じまして育ててみたのですが、なかなかの立ち回りをしてくれます。
     皆さんも一度育成してみてはどうでしょうか。
     マロンくんと対戦したいかたはコメントしてください(対戦したいだけです笑) 


      [No.2542] 俺とポケモンのへーわな生活。 投稿者:欠点   投稿日:2012/08/01(Wed) 17:28:11     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どっかの県の、とある施設が大爆発して、ある物質が空気に乗って世界中に拡散してからはや数ヶ月。

    あの名作ゲーム、『ポケットモンスター』シリーズに出てくるポケモンが世界各地に出現していた。

    どこかのエライ学者(研究者?よく分からん)が『ばらまかれた物質が既存の生物に進化を促して云々』と声高に主張し、クラスでは「俺ボーマンダ欲しい!」だの「いやジュカインだろ!」だの「私ピカチュウ!」だの「ホエルオーほしー」だのと言っていた。ところでホエルオーほしーとか言ってたやつに問うがどこで飼うつもりなんだ。どうでもいいけど。

    そんな感じで世界中で空前のポケモンブームが巻きおこっていた。
    そりゃあ俺だってポケモンは好きだが、野生のポケモンが人間に簡単に懐くとは想像し難い。そもそもモンスターボールも開発されてないからどうやっても捕まえられない気がするし。

    よって俺の人生目標である『平和に過ごす』は、ポケモンに阻害されることもなく無事達成し続けられた……のだが。



    福岡県在住の高校生の俺は朝七時半から午後一時まであった前期夏課外(うちの県では夏休みが始まってから約十日程課外授業があるのさコンチクショウ!)を何とか終え、自宅で昼はまったりと過ごし夕方はゲームで暇を潰していた。
    夜。
    コンビニでテキトーに選んだ弁当をマイクロ波を照射し、極性をもつ水分子を繋ぐ振動子がマイクロ波を吸収して振動・回転し、温度を上げて食品などを加熱調理する装置、すなわち電子レンジであっためていた俺は欠伸しつつボケーっとそれを眺め

    バウンッ
    !
    !? 窓からなんか謎でミステリーで奇妙で摩訶不思議サウンドが聞こえてきた。…別にビックリしたりなんかしてませんけど。

    バウンッ

    ?再び変な音。今度はパニクらずにどんな音かを思案できた。
    えーと…布が強めにぶち当たるような音?

    バウンッ

    一体誰がこんなイタズラをしているのかを調べるため、そーっと窓に近づきカーテンをゆっくりと開けてみた。

    「…………」

    …えーっと…何だろうこれは。
    音を出していたそいつは、黒いてるてる坊主に小さな角が一本生えたような体をした、ポケモンだった。

    「…………」

    …確か……
    カゲボウズ…だっけ?いや、最後にポケモンしたの五年くらい前だからあってんのか分からんが。
    そいつは俺を数秒間みつめたと思うと、目を閉じてその体のヒラヒラをはためかせながらゆっくりと落ちていく。

    「うおっ!?」

    おれ の てだすけ !
    カゲボウズ(仮) は おちずにすんだ !
    俺は咄嗟に窓を開けて手で助けた。フッ、まさに『てだすけ』。……バッカジャネーノ。

    「…どうしよ」

    手の平で倒れてるカゲボウズ(仮)は目をつぶっている。つーか寝てんのかこいつ。
    この俺様の手の平で寝るつもりならば一時間につき五千円を徴収するぞ!

    「冗談だけど」

    うーん、ひとまずこいつは寝かしておこう。

    電子レンジからも、バウンッ とかゆー爆発音聞こえてきたしな。




    どこか乾いている弁当を霧吹きで湿らせてから電子レンジで温め(これで結構もとに戻る)、飯を食っている間に調べたのだがやはりこいつはカゲボウズのようだ。良かったな、お前。これで(仮)なんて付けられずに済むぞ。そう呼んでいたのは主に俺だが。
    件のカゲボウズはいま俺がタオルで作ったミニ布団で寝ている。
    …そもそもこいつ、何で俺の家に来たんだろう。不思議で仕方が無い。

    俺が負の感情を出してたとか?まあ確かに腹減ったなーとか思ってたけど。

    ……あ、起きた。
    カゲボウズは状況が分かっていないのか、辺りをキョロキョロしている。
    そして最後に俺を数秒みつめて唐突に目を細め、

    「危ねええぇぇえぇっ!!」

    コイツいきなりシャドーボール撃ってきやがった!!超危ないんですケド!

    「ま、待て、落ち着け…な?な?」

    俺、かつてない程ビビってます。腰を抜かして小便ちびりそうなレベルで。
    …おい、誰だ今笑ったやつ。シャドーボールのかすった脇腹んとこ服が消滅してるからね?ちなみに俺の脇腹を掠めていったシャドーボールは昼過ぎに食った後そのままだった食器にぶち当たり食器を粉々にした。今度替えの食器買わなきゃ。
    そして食器を粉々にした張本人もとい張本ポケのカゲボウズは、しばし俺を睨んだと思うと力を使い果たしたかのように落下を

    「おぉっと」

    …する寸前に俺が支えた。てゆーかなんだコイツ、大丈夫か?
    そう思った俺は、試しに手の平でクタッとなっているカゲボウズを弁当に近づけてみた。
    するとカゲボウズは手の平でコロリと転がり、『いいのか?』的な視線を投げかけてきた。

    「いいぞ」

    そう俺が言うや否や、カゲボウズはすぐさま弁当へと飛びついた。

    「腹減ってたのかよ」

    という俺の呟き等耳に入らないかのようにすごい勢いで食っている。耳の有無はさておき。

    「………」

    でも、まあ。
    これが平和かどうかはともかく。
    空腹のポケモンを助けるのも悪くないかな、なんて思う俺であった。














    初投稿です。間違ってるとことかおかしなとこを遠慮容赦なく指摘していただけたら幸いです。


    【ガンガン批評していいのよ】
    【書いてもいいのよ】


      [No.2540] 宿命 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/08/01(Wed) 09:40:45     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    目の前には鋼の残骸。
    五分前まで空っぽだった腹は、今は膨れ。
    自分を見ていた二つの赤は空洞となり。
    押さえ切れなかった自分の本能を恨むばかり。

    悔やんでもこれが宿命というならば――

    ―――――――――――――――
    跳ね続けろ。
    跳ね続けなければ、死んでしまう。
    それが、この種族に生まれた者としての宿命。
    誰がこんな体に作ったのか。
    気まぐれというならば、殺してしまおうか。
    頭に大きな球体を乗せて、
    彼らは今日も跳ね続ける。

    ―――――――――――――――
    憎まれ役になってでも、伝え続ける。
    彼らがそう考え始めたのは何時の頃だろうか。
    死神とも言われる容姿に、悪魔とも言われる赤い瞳。
    決して利益になどならないはずなのに――
    宿命だから、だというのか。そこまでして伝える必要があるのだろうか。

    ―――――――――――――――
    表と裏をそれぞれ司る、三匹。
    一つは時、一つは空間、そしてもう一つは支えとなれ。
    干渉せずに、その世界だけを守れ。
    それが神として生まれた者の宿命。この世界の中心となった者の――
    運命なのだから。

    ―――――――――――――――
    途中まで百字シリーズにしようかと思ってたけど、めんどくさくなってやめた(
    どれがどのポケモンを表してるか、分かるかな?

    【何をしてもいいのよ】
    【何かクイズみたいだね】


      [No.2539] ひとりごと(読み解き方、というか。) 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/07/31(Tue) 03:04:17     155clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:納涼】 【あはは、そうよね!】 【あなたの右肩に】 【白い手が置かれてるなんて……】 【あたしの見間違いよね

    「お腹空いたな」

     くぅ、と小さな音を鳴らすお腹を押さえた。
     財布の中身を思い出す。それなりにお小遣いはあったはずだけど、食費は出来るだけ抑えるべきか。

    「ハンバーガーでも食べようかな。……確かクーポンがあったはずだし」

     財布の中身をちらりと見る。半額になるクーポンが1枚だけ残っていた。昼飯は決定だ。
     鞄の中からタウンマップを取り出す。

    「次の町はシオンタウンか。ちょっと遠いなあ。薬を多めに買っていくか」

     地図によると、トンネルを抜けなければならないらしい。いろんなところにポケモンが潜んでいる分、普通の道より厄介だ。

    「わざマシンがあるから……資金も十分だ」

     鞄の中を漁る。いらないわざマシンがいくつかある。売ってしまえばそれなりのお金にはなるはずだ。

    「とりあえず、ショップで売ったり買ったりしてくるか」

     昼飯はそれからだな。僕はタウンマップを畳んで鞄に入れた。


    +++


    「それにしても高いタワーだなあ」

     シオンタウンの人たちに、色々な話を聞いた。
     おつきみ山でも出会ったロケット団とかいう連中のこと。殺されたカラカラのお母さんのこと。そして、タワーに出る幽霊の話。

    「町の人は幽霊が出るって言ってたけど……」

     幽霊、ねえ。
     僕は町の人の言葉を思い出して、少し苦笑いした。

    「ねえねえ、あなた」

     何となく青白い顔をした女の子が、僕に話しかけてきた。

    「あなた、幽霊はいると思う?」

     ああ、この子もか。
     僕は笑って言った。

    「いないよ。いるわけないじゃんそんなの」

     そもそも、お化けとか幽霊とか、そういう置かるティックなものは信じてないんだ、僕は。
     そうしたら、その子は苦笑いを浮かべて言った。

    「あはは、そうよね! あなたの右肩に白い手が置かれてるなんて……あたしの見間違いよね」

     当たり前だろ、と僕は笑った。
     もしいるとしたら、一体いつから僕のそばにいるっていうんだ。


    +++


     タワーに入ると、幼馴染がいた。とある墓石の前に座っていた。

    「おう、久しぶりだな」
    「やあ。……それって、もしかして」
    「……ああ。旅に出て最初に捕まえた相棒」
    「そっか……じゃあ僕からも」

     僕はリュックの中からミックスオレを取り出して、墓前に供え、手を合わせた。

    「呆気ないもんなんだな。命が終わるのなんて。もう少し早くポケセンについてりゃ……」
    「ポケモンはずっと、僕らの代わりに戦ってるんだもん。気をつけないといけないね……本当に」
    「気を抜きすぎてたな。強くなったから、多少は平気だろうって……」
    「ポケモンは本当に見かけによらないからね」

     幼馴染がため息をついた。いつも元気でお調子者なこいつも、今はすっかりふさぎこんでいる。

    「……悪かったな。小さい頃、嫌がるお前を無理やり町の外に連れて行こうとしたことがあっただろ」
    「ああ、懐かしいなあ。そんなこともあったね」
    「ポケモンの強さとか、危なさとか、理解してりゃあんなことしなかったのによ。しかも断ったお前に散々悪口言ってさ……」
    「いいよもう。昔のことだ」
    「あのあとじいちゃんに、昔ポケモンを持たずに町を出て、死んだ奴がいたって聞いてさ……俺、本当に……」
    「いいってばもう。おかげさまで僕は元気だよ。一番の親友のおかげで、楽しい旅に出る決心もついたし」
    「……そうかい」

     幼馴染のこいつとは、些細な言い争いすらほとんどしたことがなかった。でも、たった1回だけ、こいつとけんかをしたことがある。


    +++


     僕たちの生まれた町から外に出るためには、どう頑張っても、草むらを通る必要がある。草むらに入れば野生のポケモンが出てくるのは当然で、町の大人たちはいつも、町の外に勝手に出てはいけないと僕たちに言ってきた。
     だけど、こいつは小さい頃から好奇心旺盛な上に無鉄砲で、大人たちの言いつけも守らないことがよくあった。
     そしてある日こいつは僕に、一緒に町の外に出てみようと言ってきた。なるべく草むらに近づかないようにこっそり行けば大丈夫だろ、と。
     だけど、僕はそれを拒んだ。町の大人たちから何度も、ポケモンも連れずに外に出るのがどれだけ危ないことか聞かされていた。だから、外に出るなんて怖くてとても出来なかった。
     そうしたら、そいつは僕に言った。

    「何だよ、この意気地なし!」

     僕もそいつも、半べそをかいて、その場から駆けていった。
     けんかをするのが始めてて、僕もそいつも、どうしていいかわからなかったんだと思う。


     僕たちの生まれ故郷、小さな田舎町の小さな公園。ベンチと砂場とブランコしかないちょっとした広場。
     ふらふらと僕はそこへ行った。西の空が気味悪いほど真っ赤に染まっていた。

    「誰もいないのかな?」

     いないでほしい。今は人に会いたくない。
     あたりを見回した。誰もいない。よかった。僕はベンチに座った。

     じっと座っていると、あいつのことを思い出した。
     悲しいとか、悔しいとか、何かもう分からない。ぼろぼろと涙がこぼれ落ちた。

    「やっぱり、僕は意気地無しなのかな?」

     あいつの言葉が頭をよぎる。あいつは怖いもの知らずだ。きっと、僕なんか比べ物にならないほどの勇気がある。

    「でも、町の外に出るなんてやっぱり怖いよ。この辺りにはポッポとかコラッタとか弱いのしかいないから大丈夫って言ってたけど……やっぱり危ないよ」

     ポケモンに襲われた人たちの話。時々テレビで見る。
     弱いポケモンなんて言っても、丸腰の僕たちに抵抗なんてできないだろう。
     小さい頃から何度も、ポケモンは友達になれるけど、怖い存在だと母さんに言われてきた。それはきっと、ただ僕を怖がらせるために言ったわけじゃないんだろうと思う。

     町の外に出てみたいんだ、と言ったことがある。
     幼馴染のおじいさんであるポケモン博士は、お前たちが大きくなったらポケモンをやろう、と言った。
     ポケモンと一緒なら、危ない草むらでも入っていける。
     強くなれば、どんな場所でも自由に行ける。
     けがの心配をしなくて済むなら、危険なことにならずに済むなら、その方がずっといい。

    「もう少し大きくなったら、博士にポケモンをもらえるんだ。だからそれまで待とう、って言おう」

     あいつだって、きっとそれが一番いいってわかってくれるはずだ。僕は少し気が楽になった。

     だけど、ポケモンをもらって、町の外に出られるようになって。その後はどうするんだろう?

    「あいつ、やっぱり旅に出るかな?」

     僕としては、今とほとんど変わらなくっても構わない。この町に留まって、用事がある時は町に出て。
     でも、あいつは僕と違って勇気があるし、好奇心も旺盛だから。

    「僕が行かなくても、やっぱり行くんだろうなあ……」

     ポケモンがいなくても町の外へ出ようとする奴だ。どこへでも自由に行けるようになれば、どこへでも自由に行くだろう。それでいいと思う。あいつの好きにすれば、それでいい。
     だけど、そうしたら僕は?
     あいつが旅に出て、僕はこの町に留まる。

    「それじゃあ、独りぼっちだ。……寂しい。独りぼっちは嫌だな」

     僕は元々、人見知りが激しくて内向的でインドア派だ。僕に絡んでくる奇特な奴はあいつくらいだ。僕にとって、友達と呼べるのはあいつくらいだ。
     あいつは僕と違って外交的で人付き合いも上手いから、きっとどこに行っても上手くやれるだろう。
     僕はどうだ? この町に残って、他の人とまともに話すこともなく、家に閉じこもってただ時が流れるのを待つだけか。
     違う。旅に出るのが必要なのは、僕の方だ。

    「……やっぱり、僕も町を出る。一緒に旅に出よう」

     あいつが旅に出るなら、同じ時に旅に出て、世界を回ってみよう。
     旅先であいつと出会うこともあるかもしれない。勝負を挑まれたりして。きっとあいつのことだから、出会うたびにバトルを仕掛けてくるんだろうな。

    「いいよ、って言ってくれるかな?」

     あいつは負けず嫌いだから、僕と一緒の時に旅に出るなんて、って思うかもしれない。例えば博士に何か用事を言いつけられて、僕に対して「お前の出番は全くねーぜ!」なんて言うかも。ああ、目に浮かぶようだ。
     でもまあ、何だかんだ言っても、心配することはないだろう。

    「きっと大丈夫だよ。あいつは僕の、一番の親友なんだから」

     そう。あいつのいいところは、僕が一番知ってる。


    +++


    「でもさ、お前、昔っから言ってるけどさ、ひとりごとを延々とぶつぶつ言う癖は直した方がいいと思うぞ。気持ち悪いし」
    「いやー僕も直そうとは思ってるんだけどねぇ。なかなか直らないんだよなぁこれが」
    「あんまりぶつぶつ言ってると、戦術がばれるぞ」
    「そりゃ困るな。やっぱり直そう」

     僕と幼馴染は、顔を見合せて笑った。

    「そう言えば、このタワーに幽霊が出るって話だけど、お前どう思う?」
    「どう思う、って言われてもなぁ。僕、幽霊とか信じてないし」
    「俺はいると思うけどな、カラカラのお母さんの幽霊」
    「ふうん。ま、どう考えてもお前の自由だけどさ」

     幽霊ってのが本当にいるなら、見てみたいもんだけどね。


     誰かが僕の肩を叩いたような気がしたけど、振り返っても誰もいなかった。





    (2012.7.31)


      [No.2537] 家にキノコが生えました 投稿者:あるた   投稿日:2012/07/31(Tue) 01:13:09     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    明日からどうしようだなんて頭を悩ませても始まらないのだ。と、無理矢理気持ちをポジティブに持っていっても、気持ちは斜め35度の鋭角下方向で突き刺さる。頭の上でカゲボウズたちが嬉しそうにくるくる回っている。そりゃあ、大好きな恨み妬みマイナスエネルギー満載になったご主人様がこれから毎日君たちといられるんだものね。嬉しいよねーうんうん。バシッと手をおもむろに頭上のカゲボウズに伸ばし鷲掴み。一匹が慌てたようにオタオタしだす。

    「カゲボウズ、頼むから私のマイナスエネルギー全部残らずなんとか処理してくれ」

    目を丸くしたカゲボウズが嬉しそうに鳴いた。そして、私は就職内定していた会社の倒産通知を前に気を失ったのである。遠くなる前にクルマユの心配そうな泣き声となんだかよくわからないぴゅーいという高い鳴き声が聞こえた気がする。


    次に目を醒ますと嫌な気持ちは全部吹き飛んでいた。身体を起こすと、クルマユにカゲボウズたちが怒られていた。二匹のカゲボウズはしゅん、としている。よしよし、面倒見がいいクルマユが可愛くてしょうがない。うるうるしてきてるカゲボウズをクルマユが呆れたように撫でている。ああ、本当にわが子かわいい。と、視線を横にずらせばなんだかキノコがいた。ん、……あれ、なんかキノコがいる。点な目で、赤と白のモンスターボールカラーリングのかさを被ってるキノコがいる。タマゲタケじゃない?あれ。
    私の視線にん?と振り向いたタマゲタケはぴょこたんぴょこたん私の方へよってきた。

    「君はタマゲタケ?」

    こくんと頷く。

    「何でいるの?」

    片手で家の柱を指して、両手を会わせてぱぁと咲かせる。ん?と首をかしげた。

    「そこの柱に生えてきたの?」

    こくんと頷く。

    「まじで?」

    こくん。
    不味いな。家にキノコが生えるとは。完全に湿気っているということだ。私のマイナスエネルギーが溜まるのももしや湿気っているせいではないか?空気清浄器が必要か。しばらく考えて思い付いた。
    「クルマユ、カゲボウズたちポケモンを捕まえにいくぞ」

    クルマユはげぇ、と呆れた顔をした。カゲボウズたちは心なしかワクワクしている。タマゲタケもついていくと手をあげた。君が毒タイプでなければ、万事なんでもうまくいったんだがな。ねらうは草タイプ。
    草タイプっているだけで空気が綺麗になるって言うし。……本音を言うなら、外に出るきっかけがほしかったと言うわけだ。気分転換になればいい。よし、と決意して扉を開けた。風が強くて紫の風船が私の顔面を直撃した。やせいのフワンテがぶつかってきた。
    瞬間、心が折れた音がした。頑張ろうという気持ちがメルトした。紫の風船もといフワンテを顔面にくっつけたまま、私は扉を閉めた。どうしたの?と首をかしげた面々に私は言った。

    「ごめん、やっぱり家からでない」


    またかよといわん目でクルマユが私を見た。フワンテとカゲボウズたちが私のマイナスエネルギーに飛んで喜んでる。タマゲタケがじめじめな空気に跳び跳ねて喜んだ。私は、折れた心を抱えながら、部屋に帰った。気づいたら、勝手にタマゲタケもフワンテも居座っていた。クルマユが呆れたように倒産のお知らせを食べてくれた。これで5通目だ。
    タマゲタケがぴゅーいと頭を撫でてくれた。早く何とかしなければいけないなと思った。
    タマゲタケの小さな手がなんだかつらかった。

    ------
    初めての投稿です。
    よろしくお願いします。
    ぴゅーい


      [No.2536] 流れ星に願いを 投稿者:門森 輝   投稿日:2012/07/30(Mon) 21:48:22     33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     星が輝く空の下。とある小高い丘へと続く森の小道を、一匹のボーマンダが下っていました。
     丘から少し下った所で、彼は一匹のイーブイがその道を登って来ている事に気付きました。
    「ん? どうしたんだ坊主。こんな時間に」
     ボーマンダの突然の問いに、イーブイが驚きながらも答えます。
    「ふあ!? え、えっと、えっと、流れ星にお願いすれば叶うって聞いて、えっと、お兄ちゃんが今日の夜位に見れるかもって言ってて、一つお願いしたい事があって、で、でも森からじゃ木が邪魔で見えないから、だから、えと、こっちにあるあそこなら綺麗に見えるかなって思って、だから……えっと、うん……じゃない、はい、です」
     それを聞いたボーマンダは少し考えた後、こう言いました。
    「あー、突然済まなかったな。とりあえず落ち着いてくれ。そうだな、坊主。一つ頼まれてくれねぇか?」
    「え? で、でも知らないポケモンに付いて行っちゃいけないって言われてて……」
    「あぁ、そう言うんじゃないから安心しろ。俺もここの丘に流れ星見に来たんだけどよ、そこの森に用があったの忘れててな。で、俺が行くまで坊主に場所取っといて欲しいんだ。頼まれてくれるか?」
    「うん! それならいいよ! あっ、いいですよ!」
    「そんな無理して畏まんなくてもいいんだが」
    「かしこまんなくてって? 違う、えっと……かしこまんなくてって何ですか?」
    「いや、だからあれだよ、その……そんな風にですとかますとか付けなくてもいいって事だよ」
    「ほんと!? いいの!? 分かった!」
    「じゃあ、頼んだぞ」
     そう言ってボーマンダは森へ向かって行きました。イーブイは暫しボーマンダを見送った後、丘へ向かって駆け出しました。

     イーブイが丘に着いてから暫くした時の事。辺りには誰もいない中、イーブイがボーマンダさんはまだか、流れ星はまだか、と考えながら星空を見上げていると、突然森から光が天へと昇っていきました。天へと一直線に向かった光は森の遥か上空で弾け飛び、幾多もの輝きが星空を駆けて行きます。
    「うわぁ……きれー……あっ、そうだ! 願い事っ!」
     イーブイはその光景に見とれつつも、願い事を唱えます。
    「お父さんとお母さんが仲直りします様に。……それから――」

     星が輝く空の下。イーブイは丘の上でボーマンダを待ち続けます。そしてボーマンダが小道を登って来るのを見るやいなや、イーブイはボーマンダに駆け寄りました。
    「おぅ、思ったより遅くなった。待たせて済まなかったな。で、どうだ? 流れ星はもう流れちまったか?」
     ボーマンダがこう言うと、イーブイは少し考えてから答えました。
    「すっごかった! すっごい綺麗で、もうきらきらが凄くて、えっと、とにかくすっごいの!」
    「あー、そうか。やっぱ終わっちまってたかぁ。ま、見れて良かったな、坊主。願い事は出来たのか?」
    「うん! お父さんとお母さんが仲直りします様にって! それとね」
    「ん? あれ、さっき会った時は願い事は一つって言ってなかったか?」
    「あっ、えっと……そう! 一つ! うん! 昨日お父さん達喧嘩しちゃって……今日になってもまだあのままみたいで……だから流れ星にお願いしたの!」
    「そうか……んー、きっと叶うんじゃねぇかな、坊主」
    「えへへ……んと、それじゃあボクはもう帰るね! ありがと!」
    「おぅ、気を付けて帰れよ!」
    「うん! バイバイ!」
     そうしてイーブイは森へ向かって駆けて行きます。イーブイがふと星空を見上げると、一筋の流れ星が駆けて行きました。それを見たイーブイは立ち止まり、再び願い事を唱えます。
     お父さんとお母さんが仲直りします様に。それから――

     いつかあのボーマンダさんみたいになれます様に――


    ――――――――――――――――――――――――

     Q.りゅうせいぐんは教え技なのにどうしてこのボーマンダは使えるんですか?
     A.ご都合主義です☆

     と言う訳でベタですけども竜星群に願い事。私が三人称で書くと台詞が多くなる様ですね。間投詞も多すぎますね。読み難いったらありゃしない。
     更に書いてない情報も少なくないので内容も分かり難い事態に。ボーマンダがどうしてそうしたのかとか、何故その日に流星群が見れるのが分かるのかとか、他にも幾つか。ボーマンダが竜星群使った事すら明記してませんね。これで理解しろってかなりの無茶振りな気がして来ました。考えてはいるんですけどどこにどう入れれば自然か分からず断念。
     この後イーブイに礼を言われていた事に気付いて、ばれてたのか……? 的な感じでボーマンダが少し照れたり。しかも直前に「叶うんじゃねぇかな」って言ってるからそれに対しての礼なのか判断が付かず、もどかしい思いをしたり。ボーマンダかわいいよボーマンダ。これも本文にはどう入れれば自然か分からず断念しましたけど。
     それにしてもこの子達頭の回転が速いのか遅いのか。少し考えただけでどうするか決めてるのに応答がしどろもどろですし。どうすれば良いんだろう。
     あとタイトルが七夕スレへのレスに似ているのははい、使い回しです。浮かばないんですもの、仕方ないですね。
     とりあえずショタイーブイ可愛いから満足です。イーブイかわいいよイーブイ。
     以上後書きという名のスーパー言い訳タイムでした。

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【お好きにどうぞなのよ】
    【イーブイかわいいよイーブイ】


      [No.2535] 無邪気に願おう 投稿者:   投稿日:2012/07/29(Sun) 09:57:49     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     この世界には、ジラーチというポケモンがいる。
     ジラーチというポケモンは、本来ならば千年の内、七日しか活動できないという。とはいっても、個体数自体はそれほど少なくはないため、一年に一度はどこかでジラーチが活動しているというのだが、発見された際はポケモンレンジャーなどにより丁重に保護され、公募で願いを決めるため、運に恵まれない一般人がお目に掛れる機会は少ない。
     だが、そんな俺達でも願いにあやかれるチャンスもなくはないようだ。何でも常に活動し続けるジラーチが、とある場所にいるのだという。
     その場所というのは、ごく普通の観光地の付近。観光地としてのそこは、美しい滝と美味しい空気が味わえる竹藪や、その付近にある戦死者供養のための寺院とそこから見下ろせる俯瞰ふかんが美しい、風光明媚*1な場所である。腕が六本と顔が三つあるゴウカザルの像がここの一つの目玉だが、お目当てはもう一つの目玉。戦死者供養のため、戦死者の魂が宿るというヒトガタが大量に展示された寺の構内は壮観である。
     粘土で作られた物や、兵士たちの防具で作られた物。古くなった鍋や食器で作られた物。木の破片で作られたものもあるし、布で作られたものもある。素材も大きさも無秩序に作られたそれらが、朽ち果てながら戦争が終わった国の行く末を見守っているのだ。

     記録の上では、ここは数百年前にジラーチが目覚めた場所らしく、その当時この地域は豊作に沸き立ったらしい。
     そして、そのジラーチはこの寺院の僧に見守られながら、静かに眠りについたとされているのだが。出所の知れない都市伝説のような噂によれば、ここ。正確にはここの付近にはまだ別のジラーチの個体がいるのだと言われている。
     それが、件の常に活動し続けるジラーチだそうだ。寺院のある山を越え、霧の深い山奥、俯瞰から臨む立ち込めた雲海。ここから先に行くと、リオルの足で一日ほどの距離、人の住む場所はない自然の要塞が立ちはだかっている、広大な土地がある。
     噂の域を出ないこの場所は前々から気になっていたのだが、先日夢の中で『僕はここだよ、誰か僕を迎えに来てよ』と呼ばれた気がしたことが決心したきっかけだ。退屈を打ち壊すには丁度いい。
     ジラーチの願いの力を求めて踏み入る者がいるこの場所は毎年遭難者も出ているという噂で、観光がてらの冒険をするには、素人には少々危険かもしれない。一応、それなりに旅の経験を積んでいる自分なら大丈夫だろう、なんて考えで私は歩みを進めていた。


     ここらへんは地磁気が乱れて方角が分からなくなるとかそんなこともないし、天気が変わりやすい山の中とは言え、嵐や洪水などの天候の変化は起こる季節ではない。食料は予定の滞在日数の倍以上持ってきたし、いざという時のために空を移動できるポケモンだって連れてきている。
     準備を万端にして、自分はジラーチを探し求めた。眉唾物の噂だけれど、こんなところだからこそ冒険心をくすぐられる。リングマ避けの鈴を鳴らしながら、履きなれたブーツで腐葉土を踏みしめ、道なき道を行く。降ってくる蛭ヒルや、蚊との格闘を経て、傷のついた幹のあるマニューラ達の縄張りを迂回しながら、私はあてもなく目的の場所を探す。

     連れてきたエアームドにも協力してもらい、上空から探してもらったりもしたが、生憎それらしき場所は無し。昼や霧が出ていない時は発煙筒、夜は多少空けた場所で指示灯*2を使い、私の元に帰って来る時には、相棒のエアームドは毎回申し訳なさそうな顔をしていた。
    「そんなにしょげるな。私もそう簡単に見つかるとは思っていないさ」
     霧を浴びてしとどに濡れた鋼鉄の体を指で拭い、私はエアームドを労う。目を覆う透明な膜があるから、目にゴミが入ることの無いエアームドだが、流石に膜に水滴がつくとうっとおしいらしい。顔を撫でて水滴を拭ってやると。光沢のある体から伝っていく水滴が腐葉土の地面に落ちて、目を覆う膜も視界がクリアになる。
     視界がクリアになったエアームドは、私に労ってもらえて嬉しいのか、甘い声で鳴いては頬ずりをしてくる。尖った場所で私を傷付けたりなんてしないように、滑らかな曲線を描く部分で優しく、花を愛でるように。
     水で滑る冷たい金属の感触を味わいながら太陽の位置を見る。曇っていて定かではないが、時計を見る限りではもう夜は近い。そろそろ野営の準備を始める時間帯だ。
     なあに、予定の時間はまだまだあるさ。たとえジラーチが見つからなくとも、こうしてポケモンと一緒に過ごす時間が楽しいのだ。旅と冒険の面白さってものは、これだからやめられない。


     そうして、あと二日して何も見つからなければ帰ろうと思っていた日であった。どこかで捕まえたコラッタを咥えて戻ってきたエアームドが、またどこかへ飛んで行ったかと思えば、またすぐに戻ってくる。何事かと思って問いかけてみても、エアームドは喋られるわけがないから答えないが、答える代わりに彼女は私へ背中に乗れと促してきた。背中に乗せるとバランスが崩れやすいので、いつもは嫌うはずなのだが、短距離ならば私としては乗ったほうが楽……つまり、エアームド曰く、近くに何かあるということらしい。
     何を見つけたというのだろうか。まさかと思って、そのまさかであった。
     小さな洞窟。十数メートルも奥に行けば行き止まりにたどり着いてしまった場所ではあるが、不思議と明るいその洞窟の奥には、黄色い衣に包まれた赤子のようなポケモンがふわふわと中空に浮いている。黄金色、星型の頭部から垂れ下がる、青緑色の短冊。雪のようなに真っ白な肌に映える涙模様。ちんちくりんな手足を生やした胴は、今は衣ころもに包まれて見えない。
     それは紛れもなくジラーチであった。そのかわいらしさだけでも見に来た価値はある……けれど、やっぱりこの子を見たからには、願い事をしないと損じゃないかと私は思う。

     私は淡く光るその子(恐らく自分よりもはるかに年上だが)の元に近寄ってみる。洞窟の砂利を踏み締める音、霧によって発生した水滴が滴る音、心臓の音が痛いほどに聞こえてくる。ジラーチに触れてみると、鋼タイプだという事が信じられないほどに柔らかな頬。赤ん坊と同じ、まるで大福をつついているような指ざわりで、餅肌という言葉の意味がよくわかるというものだ。
     その指をたどって金色の頭部に触れてみると、そこは流石に柔らかくないらしい。きちんと金属質であることを感じさせる硬さと質量。ちょっと指で強く抓ってみたが、簡単には変形しそうにない硬さであった。
    「うーん……」
     そんなことをしていたせいなのか、流石にねぼすけのジラーチも起きてしまったようだ。黄色い衣に包まれていた体は露わになり、小さな手足が顔を出す。纏っていた衣はマフラーのように垂れ下がり、そうして腹にある真実の目と呼ばれる第三の目も確認できた。
    「だれ?」
     寝ぼけた口調、寝ぼけまなこでジラーチが問いかける。
    「マルク。私の名前はマルクって言うんだ。よろしくな」
    「マルク……ふぅん、よろしくね。僕の名前は、シャル・ノーテ。シャルって呼んでね」
    「あぁ、よろしく、シャル……驚いた、昔話の通りの名前じゃないか」
     シャルは浮き上がったままこちらに向き直り、まだ眠そうに目を擦って私の存在を認める。名前も覚えてもらったところで、さてどうしよう。

    「ところで君、何の用?」
     そんなことを思っている間に、シャルは私に質問してきた。
    「な、何の用……かぁ。なんというか、ここにずっと活動し続けるジラーチがいると風の噂で聞いたから……ダメ元で探しに来てみたんだけれど……意外といるものだね。幻のポケモン」
    「あぁ、まぁ……僕も、ここにいることはみんなに秘密にしてもらっているからねー。だから、噂が噂の域を出ていないってことは、みんな僕との約束をきちんと守っているっていう証拠なのかなぁ……」
    「そんな約束を?」
    「うん、誰かに喋ってしまえば、願いは叶わなくなるってね……それに、願い事を独占しようとしちゃダメ。僕をゲットしたりしようものなら酷い目に合うよ」
     最後に言い終えると、シャルは目を擦り終え、大きくあくびをして空中で伸びをする。
    「その代わり、誰にも喋らなければ、願いは叶うって。そういう風に約束したんだ」
     あくびを終えたジラーチは、口調もはっきりとして、可愛らしく微笑んだ。
    「だから、君も同じ……」
     そう言って、シャルは空中で宙返り。
    「君には願い事はあるかい? 僕が何でも叶えてあげる」

     そして、シャルは甘えるかのように私に抱き付いてきて、上目遣いをする。幼児性愛の趣向はないが、これは純粋にかわいいと思わざるを得ない、天使のような愛らしい表情だ。こんな目で見ていると、相棒のエアームドが嫉妬しないといいんだけれど。
    「なんでも、いいのか?」
     なんでも、と言われると困る。やりたいことは色々だ……恋人が欲しいとか、長生きしたいとか……あー、でも、やっぱり私はこうやって冒険をするのが性に合っている。そうなると、冒険をするには先立つものが必要なわけで、今の会社の安月給では有給休暇の都合もあるし、あまり回数を期待できないのだ。
     そうなると、そうだな。お金が欲しい……お金が目的になってしまうのはいけないが、お金はあくまで手段である。そうだ、大金を手に入れた暁には、エアームド以外の他のポケモンとも一緒に冒険したいものだ。仕事なんてやめて、自由気ままに諸国を回る……うん、これは夢のような生活だ。
    「そうそう、僕の願い事で出来ないことはね、願いの数を増やすこと。まぁ、これは基本だよねー」
    「確かに、それは基本だよな。大丈夫、私もそんなことを頼むほど強欲じゃないから」
     ベタな話だが、よくある話だと私は笑う。
    「そして、規模が大きすぎる者は無理なんだよね」
    「例えば?」
    「地震を起こせとか、隕石を落とせとか。その現象を起こすのに、多大な力がいる願いも、僕は出来ないんだ……でも、風が吹けば桶屋が儲かるようなことを利用すれば出来ないこともないと思うけれどね。
     でも君が願えば、ポケモンしかいない異世界に旅立つことだって、ポケモンに変身することだって出来る。どんな突拍子もない願いでも言ってみなよ、言うだけならタダだから」
     風が吹けば桶屋が儲かる。他にも、アゲハントが飛ぶと地球の裏側では竜巻が起こるというようなことわざもあるが……ふむ。きっかけを与えれば、大きなことが出来るというような方法ならば不可能ではないのだろうか。よくわからないが、そういう事なのだろう。
    「じゃあ、私が抱えきれないほどの大金を手にしたいって言う願い事を頼む場合は?」
     それだけあれば、体が動くうちは旅道楽にも事欠かないはずだ。ポケモンとずっと一緒に居られるのも楽しみだ。

    「あぁ、その程度の願いなら簡単。でも、その程度でいいの? もっともっと億万長者にだってなれるよ? 自分がポケモンなるとか、そんな夢だってかなえられるさ」
     シャルは私に抱かれながら。上目づかいで問いかける。傍らで佇むエアームドも私の方をじっと見ており、人生を決めるかもしれないこの選択に私は息をのむ。
     億万長者というのは確かに夢のようだ。そういった夢が叶うのならば、その選択肢の方が良い願いなのかもしれないけれど……やっぱり、私はポケモンと一緒に道楽に浸っていたい。
     あんまり多くを望みすぎると罰が当たるし……うん。抱えきれないとかはちょっと贅沢かもしれないな……まぁ、一生冒険するのに困らない程度のお金が手に入ればいいさ。
    「構わないよ。やってくれ。一生冒険するのに困らないくらいでいいから」
    「うん、分かった」
     シャルはそろりと私の胸から離れ、真実の目を開く。その小さな体には不釣り合いなほど大きな目が開かれると、少々グロテスクな容姿に見える。マフラーのような部分や、頭から垂れ下がる短冊は縮れて先端が震えていた。
     シャルが構えた両手の間にある空間にはほのかに光が灯っている。その光は最初こそぼんやりとしたものでしかなかったが、徐々に洞窟を照らすほどの煌めきを得たかと思うと、その光は洞窟の天井をも無視して天空に打ち上げられて消えてしまった。
    「うん、これで大丈夫」
     嫌にあっさりと終ってしまったような気がするが……これで、大丈夫なのだろうか?
    「それじゃあ、僕は寝るよ……」
    「え、ちょ……」
     まだ話したいことがあったのだが、そんなこと知るかとばかりにシャルはそう言って眠ってしまった。私が発見した時と同じように、黄色い衣に包まれた赤ん坊のような姿で眠りこけて……起こそうと思えば起きたのかもしれないが、それは止めた。
    「誰かにこの場所を教えると、願いは叶わなくなるのだっけか……」
     そんなことを呟きながら、私は後ろ髪をひかれる思いで街へ向かって歩き出した。


     数週間たって、私は宝くじを購入して夢を見ながら、日常生活に戻っていた。いまだジラーチにした願い事が叶う気配はなく、日々は穏やかに過ぎてゆく。
    「しかし、なにも起こらないなー……アレは夢だったのだろうか」
     会社の昼休みの最中。弁当箱をごみ箱に捨てながら私は呟く。そんな時、私の元に突然ニュースが流れ込んできた。
     この国が核を含むミサイルの標的となったこと。そして、そのミサイルの行方を見守っていると、対応しきれないほど多くのミサイルによる飽和攻撃で撃墜に失敗して、この国が炎に包まれたと。

     意味が分からなかった。だが、全てのテレビ局がそのニュースを報じ、実質的な被害を受けたと思われるテレビ局のみが砂嵐となって黙している。被害にあった地域の惨状は想像だにしたくない。
     ミサイルを放った国は、当然のように国際社会から厳しく糾弾されたうえ、自国内で大規模なクーデターが発生するなどして、その国は権力のトップに立つものが悉く処刑される。瞬く間に、周りの状況が一変していった。
     結局、相手国の国際的な責任問題や賠償などの問題もうやむやになって(というよりも、払えるわけがなかった)私の住む国と共に、仲良く経済が崩壊してしまうのにも、そう時間はかからなかった。なんせ、こちらは主要都市や港、空港が壊滅し、汚染され、復興は不可能と断ぜられたのだ。あらゆる経済が死に絶えたことで、街は失業者が溢れ、通貨は紙切れになっていた。
     そう、核ミサイルを放つというのは大事おおごとかもしれないが、国のトップの人間の思考をちょちょいと操作するだけでも簡単に出来るのだ。催眠術の才能は必要なのかもしれないが、ジラーチにはそういうことは難しい事ではないのかもしれない。
     数年のうちに、私たちの国は先進国の枠組みから外れ、治安も悪くなった。かつてはポケモンが出現するから危険だと言われた草むらなんて可愛いもので、今や街こそポケモン無しに歩けば、食料か、金品か、貞操か、命か、何かを奪われる危険な時代だ。そして、たびたび起こる過剰なインフレの影響で通貨の信用がなくなった我が国では、電子マネーも機能せず。
     手渡しの給料は、とても抱えきれるものではなかった。


     私はあまりに浅墓だった自分を呪いながら、こんな危険なジラーチを駆除してしまわなければと、私は再びあの場所へ向かう。
     近所の人やポケモンレンジャーに話してみたが、誰も信じてくれなかった。こうなりゃ私達だけでやるしかない。
     だがおかしい、同じ季節のはずなのに、霧が前よりも極端に深いし、一瞬たりと晴れてくれない。
     ここらへんは核の影響を受けていないはずなのに、こうまで気候が変わるはずがない。
     それだけじゃない、コンパスが狂っている。前はそんなことなかったのに。もちろん携帯電話も通じない。
     エアームドが帰ってこない。位置を知らせるための発煙筒も使い果たした。
     食料が半分ほどになった頃には時計が二周しても夜が明けなくなった。
     食料が残り少なくなった頃には、星と月が消えた。
     懐中電灯の明かりで気分だけでも明るくしたが、指示灯の電池を流用しても、電池が尽きた。
     自分の手さえ見えない、目を閉じているのか開けているのかすらわからない無間の闇の中で、私は毎年遭難者が出る意味がわかった気がする。
    「君のお願い通り、一生冒険をするのに困らなかったみたいだね。満足したかい?」
    「誰か……食べ物……」
     そして私が最後に願ったのは、食料が欲しいという願いであった。
    「はい。骨も体表も鋼鉄だから、硬くて鉄臭くて食べ難いかもしれないけれどね」





     ジラーチは、願いをかなえる時に、大量の呪いを必要とする。恨み、嫉妬、嘆き、悲しみ、それらが生み出す呪いの力がジラーチの原動力。それを知った人間は、呪いを集めるまでもなく、最初から持ったポケモンをジラーチに変身させてと、そう願った。
     戦死者の魂を供養するための憑代として、集められたヒトガタに宿った僕を、ジラーチに変身させてと願ってしまった。でも、呪いというのは、大半はジラーチの力だけでも浄化して願いの力に変えることが出来るが、ジラーチだけでは決して浄化できない呪いもある。そういった呪いは、ジラーチが千年眠っている間に魂だけを宇宙に飛ばして強烈な太陽の光に当てて浄化する。そういうものだったんだ。
     僕は、元がジュペッタだったおかげで眠ることも出来ずに、微睡むことしか出来ず、そのおかげでいつでも人の願いを叶え続けることが出来た。
     そして、願いを叶えるごとに体内の綿に染みこんだ憎しみや恨みによって生じる呪いも減らし続け、やがてジュペッタを作ることも出来ないくらいに呪いは枯渇した。しかし、ジュペッタから生まれた僕は、ヒトガタに込められた呪いを受け取ればまた願いを叶えられるようになる。
     そこまでならば、良かった。少なくとも人間にとっては、そこまでは完ぺきだったのだと思う。

     今では、寺院に届けられるヒトガタを盗み、それから呪いを受け取ることでいつでも願いを叶えられる。それと引き換えに、僕の中にある浄化されることの無い大量の穢れが悪さをするのだ。千年待つとか、厳しい試練だとか、そんなものも無しに願いがかなうなんて甘い話は元から無いのだ。
     綿に染みこんだ呪いが全て消えた時、自分は姿を消してしまったほうがいいのかとも思った。けれど、眠ることが出来ず、魂を宇宙に送ることも出来ない僕は、浄化できない穢れを抱えて地上に留まるしかない。自殺するのも怖くて出来なかった。そうこうしているうちに、僕はパラセクトのように、自分以外の何かに突き動かされるようになった。
     僕の中で混沌と渦巻いている呪いという名の穢れは、日の当たらない霧の中で、いつまでたっても宇宙に流せず、太陽の光で浄化出来ず、僕を突き動かすのだ。

     『敵国の人間はみんな死んでしまえ』とか、『私達を地獄に落とした奴らを許しちゃいけない』とか、『どうせ死ぬならお前らも道連れだ』とか。人間も、戦争に巻き込まれた人間以外の者たちも願ったそれは、永遠に消えることなく今も僕の内にある。
     自分でやっておいて言うのもなんだけれど、だんだんと願い後に訪れる災害も悪化している。


     これでまた、どこかで人間に対する憎しみが生まれる。ヒトガタが送り込まれる。そのヒトガタから得た呪いは、浄化出来るものも浄化出来ないものも僕の内に溜まるだろう。もう、人を根絶やしにしなければ収まらないくらいの呪いが、急速に加速し、僕の中で牙を研いでいるのだ。
     その穢れに、呪いに、僕が突き動かされる事を邪魔する者がいるならば、僕を危険視したアブソルだろうと、僕を疎んだ人間だろうと、神だろうと、あらゆる手段を用いて殺してやる。
     脅威が去った後は、また人間をここに誘ってやればいいさ。
    『僕はここにいるよ。だれか、僕を迎えに来てよ』
     誰かの夢に向かって、そうささやきながら。






    ----
    あとがき


    もともとは、例のwikiで『甘い話なんてない』というテーマで書いた作品なのですが、なんと言うか、そのお話の前日談も浮かんできてしまったために、同時期に行われていたオタマロコンテストにも応募してみたという感じです。
    どちらもひとつの物語として成立するように作っているため、『無邪気に願おう』では『霧の中のジラーチ』の内容を復習するような感じになってます。
    主催者様を始めとして、ハッピーエンドだと思った人たちに衝撃を与えることが出来て、私はとても満足です。猿の手、消えたアブソル、眠らないと魂飛ばせないのに眠れないジラーチと、伏線をちりばめておいたけれど、バッドエンドにならないのが不思議に思った人はあんまりいなかったですねw

    参考にした作品は、もちろん猿の手。腕がいっぱいあるゴウカザルの像とか、ジラーチの名前で、オマージュさせてもらいました。


    【何をしてもいいのよ】


      [No.2534] 霧の中のジラーチ 投稿者:   投稿日:2012/07/29(Sun) 09:51:19     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     霧の深い山奥にあるここは、空気がとても美味しかった。
     少々高いところにあるために空気は薄いが、深呼吸するだけで肺の中が洗われるような気分だ。崖を見下ろす線路に揺られ、ところどころ塗装の剥げたプラットホームに降り立つ。蚊との死闘を経ながら舗装されていない道を踏み締める。腐葉土の香りが鼻をくすぐった。
     途中、遠くに見える橋をショートカットするべく谷を相棒のエアームドに乗って飛び越え、臓物が縮こまりそうな谷底の深さに息をのむ。
     歩いて行ける場所にある、滝のしぶきがもろに降り注ぐ場所で水の香りを楽しんだ。そこで見た目も眩むような絶景は、滝が水の塊でなく飛沫を通り越し霧雨になるほどの高さである。
     そこからさらに歩いて登ったところにある竹藪。そこには最後の休憩所があり、ロープウェイを使わずに来た物好きな観光客の疲れを癒すための甘いお菓子とお茶が購入できる。そこで得られる甘味に舌鼓を打って、眼前の石階段を眺める。歩く気力を削がれるような石階段の先に、目的の場所はあった。

     表面に苔、石の隙間から雑草が生え放題の石畳の階段は、大抵霧が立ち込め表面も湿っている。登って行くうちに、霧の水滴なのか汗なのかわからなくなるほど体が熱くなり、頂上にたどり着くころには服がびしょ濡れだ。
     重い荷物を背に乗せた私は、息も切れ切れ。思わず、ベンチでもない苔むした岩に座り込んでしまった。美しい緑色の苔を指で撫で、イーブイがリーフィアにでも進化できそうだなと考えながら、火照った体から熱を逃がす。汗は乾いてくれそうにないが、空気が冷たいので休んでいれば熱は逃げる。
     呼吸も整い、熱も冷めてきた私は、時計についた水滴を拭って、時間を見たところで立ち上がる。
     徐々に首の角度を上げながら歩き、出てくる客と正面衝突しないように見上げながら朱色に塗られた城壁のような分厚い門をくぐった。いや、ここは実際に城壁だったというべきか。分厚く高い壁、そして極端な角度の坂。空を飛べるポケモンでもなければ、正面の石段からしか攻められないここは、戦乱に巻き込まれた民間人たちが避難に来るような場所であった。
     寺には、チャーレムやサーナイトと共に瞑想を続け、修験に励む修験僧たちが多数在籍しており、地形の助けもあって軍隊とてそうやすやすとは攻め入れない。今でこそ、景色の美しさと建物の荘厳さを仰ぎ見るための観光名所だが、かつてはここが生命線となった者も多いとか。

     拝観料を払って門をくぐったその先には、今でもチャーレムがいる。と、いっても観光客の訪れる公衆の面前で瞑想や断食をしているようなこともなく、ポケモンには不釣り合いな大きさである人間用の竹ぼうきを、サイコパワーで操りながら落ち葉の掃除をしているだけである。
     その子に会釈をして、石畳の上を歩く。漆喰の塗られた壁の高さと瓦の連なりを見ながら、内部へ。寺院の真ん中にある、腕が六本と顔が三つあるゴウカザルの像を拝顔し、かつて僧たちが断食の苦楽を共にしたという一室や、外部のならず者を探すための見張り台などを見て回る。

     そうして一通り回ってみて、最後に残したのがここの目玉となる場所である。屋根のある石畳を土足で突き進むと、下り階段が顔を覗かせた。
     天井は固めた粘土がむき出しで、そこから電気のランプが灯る。電線を引っ張って灯された橙色の頼りない光に照らされた、足元が闇にまぎれる手すり付きの階段を下り終えると、土臭く湿っぽく、僅かにかび臭い空気の中に、不気味に浮き上がるヒトガタ達。粘土で作られた物や、兵士たちの防具で作られた物。鍋や食器で作られた物。
     木の破片で作られたものもあるし、布で作られたものもある。素材も大きさも無秩序に、そして無造作に置かれたこれらは、戦死者供養のためのヒトガタである。ここにたどり着く前に死んでしまった家族や友人を供養したいと申し出た者たちが思い思いの素材で作ったものだ。
     それが行われた当時に作られたものは、一部の素材の物を除いて朽ち果てているが、今でも持ち込まれたヒトガタを、随時受け入れこうして安置しているのだ。

     この国ではデモ行進や暴動が度々起き、その度に死者が出る。そういった機会に、当事者の家族がわざわざ来ることもあれば(デモを起こすのは大抵が貧民なので、わざわざこんなところに訪れる暇や路銀の関係で、当事者の来客は残念ながら非常に少ないが)それらの事件で心を痛めた人が勝手に供養を申し出ることがある。
     戦場カメラマンなどがここを訪れることもあり、ここには新しいヒトガタが絶えることはない。風景の美しさも相まって、戦死者供養寺としても観光名所としてもそれなりに賑わっている場所だ。
     私は、時計を見る。この寺院の開放日は、定期的にここのお話を聞かせてくれるイベントがあり、もうそろそろその時間である。
     寺院の職員がベルを鳴らす。袈裟を着た坊主頭の僧が、揺れるロウソクを燭台に乗せて、しずしずと現れた。
    「今日は、我らが寺院にお越しいただき、ありがとうございます。ただいま十二時を回りましたので、こちらに飾られたヒトガタと、それに関する逸話の紹介を行いたいと思います。お越しいただいた皆様は、携帯電話の電源を切り、また録音器具や撮影器具なども電源を入れることなく、御清聴をお願いします」
     当然、この場所は撮影禁止で録音も禁止だ。メモや絵を残すことまでは禁じていないが、当然の決まりである。建前としては、『戦死者たちの霊がそういうのを嫌うので』だが、大部分の理由は商売への影響が出るという事もあるのだろう。
    「さて、皆さん。準備はよろしいでしょうか? それでは、始めましょう」
     ある程度は聞き及んでいるこの場所に伝わるお話。地下室に響く生の語り部の声に、私は改めて耳を傾ける。



     時は、まだポケモンが超獣と呼ばれていた戦乱の世。農民たちは、若い者が戦に駆り出され、税として収穫を横取りされ、時には飢饉などが襲ってきて、その度に飢えに苦しんできた。戦争に巻き込まれると、田畑を踏み荒らされたりはまだいい方。酷い時には、冬の季節に敵に補給や休息を取らせないための焦土作戦で、家や田畑、森の木などを丸ごと焼き払われたこともある。
     そうして、何もかも失って農民たちは多くが死に至る時代。この寺院が注目されたのも、そんな時代だった。
     この寺院は当時、攻めにくい地形のこの場所で農作物を育て、自給自足の生活をしながら日々研鑽を積んでいた。俗世から離れた場所にあったここは、存在こそ知られていても訪れる者はほとんどなく。住処を失い故郷を離れた者たちでここにたどり着いたのは僅かであった。
     このご時世だ。あまり多くは無理だが、寺の者は部外者を受け入れるのは慣れている。断食の経験も少なくないため、突然の来客で食事が少なくなろうとも、何ら不満は漏らさずに温かい食事を提供した。だが、それにも流石に限界があって、受け入れたはいいものの食事がなくなって結局、避難民が飢えの果てに死んだり、僧が真っ先に死ぬまで断食を敢行した事もある。
     そうしたことは一度や二度ではなく、ある時死んでいった子供を供養するために親がミミロルのぬいぐるみを作った事がきっかけで、戦死者供養が始まった。避難しに来た者や、それに関連する死人が出た際、放っておけば死んでしまうような怪我人や病人、子供や老人を故郷か道端かに置いて来た際には、誰ともなくヒトガタを作って供養するようになっていった。
     ヒトガタと言いつつも、前述のとおりミミロルの様な可愛らしいぬいぐるみが置かれたこともあるが、供養するという目的に変わりはない。せめて、戦乱に巻き込まれ、無念のうちに死んでいった者たちが安らかに天道へ導かれるように。それを願って、どんどんとヒトガタは増えてゆくようになったのである。

     だが、戦死者の供養というものはそこに魂がなければ意味がなく、そのためなのか、このヒトガタにも魂が吸い寄せられる。それらはもちろんこのヒトガタ達の目的である戦死者やそれに準ずる者たちのそればかりで、魂は皆一様に穢れていた。
     戦争が終わって欲しい、平和な世の中が欲しいと前向きな思いを残して死んだ者はまだいい。そういった者は、悲しみを癒してやれば、穢れも浄化してやがて風に溶けてゆく。だが、誰かを殺してやりたいとか、復讐してやりたい。そして、生き残った同胞に嫉妬し、道連れにしたいと思って死んだ魂は、程度によっては性質が悪くなる。
     憎悪の念を抱えて死ぬことで穢れた魂は、簡単なもので病を呼んだり、事故を呼び込んだりといった疫病神に成り下がる。それですら怒りが治まらなかったり、似たような境遇、想いを抱えた魂と集合した場合は、非常に強い怨念となってヒトガタに宿ることがある。非常に凶暴なジュペッタとなって、この世に出るのだ。

     本来は、大切にされたぬいぐるみに宿った魂が、捨てられたことで悲しみや憎しみを抱き、それが憎しみの感情に惹かれたカゲボウズと触れ合うことでジュペッタとなるものだ。そのジュペッタはぬいぐるみの思い出と憎しみを受け取って本能的に元の持ち主を探し回るが、そういった本来のジュペッタが憑依するぬいぐるみには根底に愛がある。
     愛を受けたからこそ、それを捨てられた憎しみや悲しみが生まれるのだ。
     けれど、ここで生まれたジュペッタたちには、憑代となったヒトガタに愛なんてものは欠片も存在せず、あるのは憎しみに塗れた魂のみ。死ぬときに誰かを強烈に呪った魂は、その想いだけに偏重し、生前人間だったころに受けた愛も、友情も絆も全て忘れてしまっている。
     結果、新しいヒトガタを安置しに来た僧を無残に殺してしまい、寺院に在籍していた僧兵やチャーレムなどで鎮圧するだけでも、手酷い怪我を負ってしまったものだ。鎮圧するだけしたはいいが、殺してしまっても、結局呪いはここに燻ってしまう。それどころか、他のヒトガタに乗り移ってしまえばさらに呪いが凝縮されて厄介なことになりかねない。
     結局、そのジュペッタはポケモンたちの力で急造で掘り進めた地下室の中へ厳重に封印された。丈夫な縄に経文を刻み、呪符を用いて幾重にも結界を張り封じ込めた厳重な警戒の元で、ジュペッタは動くことも出来ずに縛り付けられる。その状態では憎しみは癒えるどころか増すばかり。根本的な解決にはならなかった。


     その騒動で傷を負った僧たちも怪我が癒えた、ある日のことである。この地に凶星(まがつぼし)が落ちた。この地域では、流れ星は凶兆とされており、それがこの地に落ちたという事で、住人達は大きな不幸の到来を予想していたのだが。不思議と、邪気のようなものを感じることはなく、超獣たちは怯えるどころか、むしろ星が落ちた場所へと興味深げに視線を向ける始末である。
     この辺にも生息しているはずのアブソルは、ジュペッタの時こそ寺院の周りにワラワラと集まって激しく威嚇してきたが、凶星が落ちても騒ぎ立てることがないという事は、凶兆というのはもしかしたら全くの杞憂なのかもしれない。
     何があったのかといぶかしげな寺院の者たちは、超獣を二匹と人間を二人派遣して、問題の場所を探ることとなった。寺院の入り口となる巨大な階段の反対側には、リオルの足で一日かかる距離、向こうに何もない山脈が広がっている。

     その広大な山脈の樹海を踏み入った先に見たのは、黄金色に光る星型の頭部を持った超獣であった。
     首から下が布に包まれているような見た目で、星型の頭部には青い短冊のような器官。目の下にある涙模様や、陶器のように白い肌が特徴的な見た目のその超獣。子供に化けた妖魔のたぐいだと疑わなかったわけではないが、どうにも連れてきたチャーレム達の様子を見る限りでは、全く敵意もないようだ。普段は警戒して他の超獣に接するはずのチャーレムが、ほとんど無警戒に近寄ってゆくさまは、僧たちも困惑した。
     二匹のチャーレムは、すやすやと眠るその超獣に近寄り、つんと頬を触る。何の抵抗もなく沈み込んだ指を離すと、頬がぷるんと揺れて元の形に戻る。無警戒に眠っている超獣は不快そうに顔をゆがめ、うんうんと唸る。僧たちも警戒する必要がないと感じて近寄ってみると、その超獣はゆっくりと目を開き、布に包まれた首から下を外気にさらす。
     四肢は申し訳程度についているだけのような短いもので、腹には一本の横筋。人間の赤子よりも赤子らしい頭でっかちの姿があらわになり、体を包んでいたぬ布のようなものは、襟巻きに近い形状になって首から背中に垂れ下がる。
     目を擦った後にぱっちりと開いた目は、真ん丸な瞳が、霧の中で光を照り返して見える、それは綺麗な瞳であった。
    「こんにちは」
     霧のようにふわふわとした、頼りない声が頭の中に鳴り響く。どうやら、念話のようだ。
    「こ、こんにちは」
     僧の一人が、戸惑いがちに答える。
    「おや、元気がないね。君も寝起き?」
    「いや、そういうわけではないが……」
     挨拶を返した僧が、返答する。
    「すまぬ、こんにちは」
     もう一人の僧が、頭を下げる。
    「うん、こんにちは。君達はだあれ? 僕はジラーチ。昔はそう呼ばれていたんだ」
     目の前の超獣は、ジラーチを自称する。きりもみ回転をしながらふわりと上に舞い上がったかと思うと、今度は滑空して二人の頭上に。
    「私は、ツァグン……後ろの山を登ったところにある寺院に住んでいる」
     後に挨拶した僧が、頭上を回るジラーチを眺めながら自己紹介する。
    「俺はタークです、同じ場所に住んでおります……よろしくお願いします……」
     続けて、先に挨拶したほうが自己紹介をする。
    「ふぅん、二人とも……よろしく」
     言いながら、ジラーチはツァグンと名乗った僧の胸元に飛び込み、数ヶ月は洗濯していないのであろう汗臭い袈裟に顔を埋めてから上目づかいでツァグンを見つめる。
    「僕はジラーチ。望みを叶える者……君達二人は、何か望むことはあるかい?」
     ツァグンが自分を抱きしめるのを感じながら、ジラーチが問う。
    「望む、事……と、言われても、なぁ?」
    「私に振られましても……」
     上目づかいをしたまま唐突なジラーチの質問に、タークがツァグンに話を振るが、ツァグンも唐突なこの質問には答えを用意していない。
    「ふぅん……」
     がっかりしたような含みを持たせて、ジラーチはツァグンの腕からすり抜けた。
    「望めば、どんな願いだってかなえられる。それとも、君達は欲がないのかな?」
    「欲……は、無くなるようには努力しているが……」
     タークは口にしてみたはいいものの、様々な願いがここで浮かんでくる。断食がしんどいのでたくさん食べたいとか、避難してきた女性に触れてみたいだとか、実に生物的な欲求が。しかし、そんな願いよりも、大事なのは平和やら、飢えをしのぐための豊作祈願といった、民のための願いではなかろうか。
     願わくば自分たちの飢えもなんとかしたいものだが、仏道に属する身としては、私利私欲のために願いを使うわけにはいかないし、何でもと言うほど凄いのであれば、なおさら相談なしに、勝手な願いを叶えることは出来ない。
    「皆に、相談したほうがよろしいでしょうかね?」
    「そうだな、俺達が勝手にどうにかできる話題でもなさそうだ」
     ツァグンの提案に、タークが賛成する。
    「すみません、ジラーチさん。ちょっと、私たちの住処まで来てもらってよろしいでしょうか?」
    「うん、いいよ。よろしくね、お二人さん」
     結局、その場で願いを叶えることはせず、ジラーチは寺院の中まで連れてゆかれることになる。正体不明の超獣を連れてきたことで、凶星の言い伝えを信じる者たちは気味悪がって近寄るのを恐れたが、一番最初の願いで、その恐れも羨望のまなざしに代わる。
     と、いうのも。避難してきた農民の女性が一人、肺の病を患っていたのだが、ためしにと願いを投げかけたところ、咳がぴたりと止まってしまったのだ。死んでしまったのではないかと思うほどの早業に、最初は誰もがいぶかしげであったが、咳が再発するような様子もない。
     ジラーチの愛らしい見た目の良さも相まって、夜になるころには皆がちやほやするようになってしまった。だが、同時に問題も出てきた。

    「あんな願いを、何個もかなえられるのか?」
     さっきまで病人だった女性の夫が尋ねる。
    「んーん」
     ジラーチは首を横に振った。
    「僕がかなえられる願いは三つだけ……僕の頭についている短冊の数と同じ。だから、叶える願いは慎重に決めようねー」
    「そ、そうなのか……」
    「僕らジラーチは、皆の恨みや憎しみ、悲しみや恐怖といった、嫌な気持ちを幸福に変えるんだ……でも、そういう気持ちを、僕の中に取り込むにはとても時間がかかるの……だから、そのための制限。あんまり大きなことを願いすぎると、僕の中の憎しみの力が足りなくなって、思い通りに願いをかなえられないからね。
     それに、どうしても浄化しきれない嫌な気持ちもあるんだ……そういうものは、願いをかなえ終えた後に眠って、魂を空に飛ばして宇宙に流すんだ……太陽の光ならば、どんな嫌な気分も浄化する力があるからね。だから、僕たちは願いを叶えた後に千年も眠るの」
    「憎しみの力……か」
     話を聞いていた者たちが、意気消沈したように声を挙げた。
    「そんな物、彼らは無尽蔵に取り込んでゆくというのに……なんというか、世の中適材適所とはいかないものだな」
     僧である彼が思い浮かべるのは、地下室に隔離、封印したジュペッタ達。ジュペッタになりかけのヒトガタも一緒に、軒並みあちらに封印しているので、もはや地下室は魔窟と化している。迂闊に入り込めば拘束されていても、張りつめた殺気で死んでしまいそうなほど、異様な雰囲気に包まれているのだ。
    「まてよ……」
     と、傍で聞いていた僧はひらめく。残る二つの願いは、一つは豊作を祈願するとして、もう一つの願いをどうするかを決めかねていたのだ。戦乱の世を終わらせるというのも考えたし、それが最も良い願いだと思っていたが。
     大量の憎しみを抱いたジュペッタ達の憎しみを抱えている。もしもその憎しみを願いの力に変えることが出来るのであれば、それはとてもすごい事なのではなかろうか?
    「出来るよ」
     尋ねてみると、ジラーチは可能だと答える。
    「その気になれば異世界や未来に誰かを送ることも出来るし、人間をゲンガーみたいな超獣に変えることだって出来る。だから、僕の力でそのジュペッタをジラーチに変えることだって不可能じゃないよ」
     何とも魅力的な事をジラーチは教えてくれた。そのことをこの寺にいる者たちに話すと、ジュペッタの封印に従事していた者たちは、ようやく結界の様子に神経を張り巡らす生活から解放されるかもしれないと、非常に喜ばしい表情を浮かべている。
     結局、残る二つの願いは豊作祈願と、ジュペッタをジラーチに変えることで、憎しみの力を消費するというものであった。皆の見ている前で豊作の願いをしてみたが、特に様子は変わらず。もちろん、いきなり草木や作物がニョキニョキと生えてきたら気味が悪いわけだが、目立った変化はすぐには訪れなかった。

     そして、最後の願い。ジュペッタをジラーチにするという願いだ。封印されたジュペッタ達は、原種とは比べ物にならないほど凶暴なため、腕に自信がある僧と超獣のみを連れて、封印された地下室の前へ。
     ジラーチに願いを告げてからその中に入ると、中ではジュペッタ達が山吹色の淡い光に包まれながら、次々と元のヒトガタへと戻ってゆくではないか。そして、淡い光は一ヶ所。ひときわ強力な封印が掛けられたジュペッタの元へと集まり、まばゆい光となって収束する。
     地下室の中に太陽が出来たと見まがうほど強力な光が収まると、そこにはジラーチとは似ても似つかない、長さの違う直方体の結晶を束ねたような紫色の宝石がふわりふわりと浮かんでいた。これを見届ける役にも参加していたツァグンとタークは首を傾げていた。
    「君の願いは叶えたよ……さて、僕はもう三つの願いを叶えたことだし……もう、眠るね」
    「ちょっと待ってくれ……ジュペッタのあの姿は?」
    「繭のようなものだよ」
    「繭?」
     ジラーチの返答にオウム返しに僧が尋ねる。
    「うん、僕も、今でこそこんな姿だけれど、ずっと眠っている普段はずっとこの姿なんだ。大丈夫、あの子はもうすぐ目覚めて、僕と似た姿になると思うから。それと、僕ももうすぐあの姿になる……お休み」
    「お、あぁ……もう眠るのか? ずいぶんと急ぎ足だな……」
    「うん、ごめんね。また千年後……」
     ジラーチがゆっくりと目を閉じる。彼を包んでいた淡い光は徐々に激しい光となって、紫色の結晶に代わってゆく姿を覆い隠した。そして、紫色の結晶に代わった体は、抱いていた手を煙のようにすり抜け、天井も同様に水面に飛び込むかのようにすり抜け、天へと昇って行った。元となったジラーチが天球へと還って行くのを見守り、この場に集まった僧たちは、まだ繭の状態のジラーチに注目する。孵化の時を待つ卵を見守るような面持ちであった。

     やがて、繭の状態のジラーチは、白い光を放ってジラーチとなる。体を黄色い襟巻きで包むことなく、最初から覚醒した状態でのお披露目である。
     顔も体型も色も、先程天へと還って行ったジラーチとほとんど相違なく、言われなければ違いには気付かないだろう。
    「……僕を憎しみから救ってくれたんだね」
     第一声がそれであった。
    「ずっと、辛かったけれど……君たちのおかげで救われたよ。ありがとう……」
     そのジラーチには、人間を見かけたら問答無用で襲い掛かり、そして犠牲者の一人を原型が分からなくなるほどに切り刻んだような、恐ろしいジュペッタの面影はまるでない。穏やかな、本当に穏やかな、赤子のような笑みをたたえるジラーチであった。
    「今度は、僕が君たちの願いを叶える番だ……さぁ、願いを言ってよ」
    「願いか……」



    「そうして、僧たちが願ったのは、戦乱の世を終わらせること。ここのヒトガタ達が、もうジュペッタにならないようにすること。そして、ここに避難してきた人たちの下山の無事……その三つでした。
     その三つの願いを叶え終えたジラーチですが、元がジュペッタなおかげなのか、そのジラーチは眠ることはなく、願いを叶えた見返りにと自分に名前を付けてもらうことを望みました。僧たちよりシャル=ノーテと名付けられたジラーチは、名前を付けて貰えたことにお礼を述べた後、山奥のどこかへと消えてしまったそうです」
     長い話を一区切りつけて、語り部はため息をつく。
    「このジラーチのおかげで、今でもこの寺院にジュペッタが発生することもなく、戦死者供養に相応しい聖域を保っております。憎しみのような、後ろ向きで暗い感情から生まれた呪いを、ジラーチは前向きな想いを叶える願いに変える……まさしく、慈愛に満ちたポケモンと言えましょう。
     この寺院には、常に戦死者たちの怨念が渦巻いておりますが、それらを救えるのは神の愛以外にありえません。我らも欲を捨て、見返りを求めずに人に親切できるようにと頑張っておりますが、ジラーチはそれを生まれながらにして出来る、素晴らしいポケモンです。
     我らも、生まれながらになどという贅沢なことは言えませんが、出来る事ならば、争いが起こらない世を作るべく、こんな寺院が必要なくなるような世界にするべく、愛を心に持って生きてゆきたいものですね。これで、私の話は終わりです」
     最後に深くこうべを垂れ、語り部が話を終える。
    「なにか、質問はございますか?」
     私は手を挙げ、真っ先に指名される。
    「そのジラーチ、今もまだどこかに生きているという噂ですが……どう思いますか?」
     私が尋ねると、語り部はつばを飲み込んで質問に答える。
    「今でも、この寺院ではヒトガタが突然行方不明になることがあります。それはきっと、どこかへと消えた元ジラーチの仕業じゃないかと考えられています。たまに、そのジラーチを求めて冒険者がここに訪れますが……貴方のその大荷物は……」
    「あぁ、退屈を打ち壊しに来たんだ。いや、夢の中でジラーチに誘われちゃいましてね。旅行する場所も特に決まっていなかったので、ここにしたんです」
     階段を上る時は捨てていきたかったくらいの大荷物。これは、山の中に踏み入るためのもの。
    「そうですか……たまに遭難者も出ているので、お気を付けてください」
     語り部が私を気遣って言う。大丈夫、私は旅慣れているつもりだから。
    「ありがとうございます」
     そうして、質問タイムは続く。私はそれを聞き流すように右から左へ受け流し、これからの旅路を想う。ジラーチが本当にいるのかどうかはわからないが、私の相棒であるエアームドと旅が出来るなら、結果なんておまけのようなものだ。


     語り部との質問タイムも終わり、私は寺院を後にしてこれから踏み入る山脈を見下ろす。
    「神の愛、か……」
     見返りを求めない愛。憎しみを、喜びに変える力を持つというのはなんと素晴らしい事であろうか。
    「でも、私はお前を愛するだけで精いっぱいだがなぁ……それが本当なら、すごいポケモンだよ」
     なんて、隣を歩くエアームドの首に右手を回し、顎を撫でながら言う。彼女は気分がよさそうに首を傾け、私の顔に頬擦りをした。霧が出初めているせいか、すでに濡れている彼女の体は頬を湿らせる。
    「でも、こういう風に平和に暮らせるのがそのジラーチってポケモンのおかげならば、良いもんだよな」
     そのジラーチのおかげなのかは知らないが、この土地は自然災害も減り、それに応じてアブソルも姿を消したそうである。
     この平和がジラーチのおかげならば、それを壊さないような無邪気な願いでも願ってみるとするかな。
    「さ、いくぞー」
     まずは山を下なければならない。空気の薄いこの場所で上りを飛ばせるのは負担がすさまじいのでやらないが、滑空するくらいならば彼女への負担も少ないので、湿った風を切りながら彼女の温もりを感じよう。
     足爪で獲物を掴むフリーフォールの要領でトレーナーを運べる縄梯子のバーをエアームドに握らせ、私は珍しく霧の晴れている山肌を翔け抜けた。


      [No.2533] シャル・ノーテ物語 投稿者:   投稿日:2012/07/29(Sun) 09:49:56     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    とあるオタコンと、とある小説wiki第二回短編小説大会に出馬したお話。
    オタコンには前編だけ投稿。短編小説大会には後編だけ投稿していました。


      [No.2532] Re: これはひどい(※褒め言葉です) 投稿者:フミん   投稿日:2012/07/27(Fri) 21:57:33     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    砂糖水さん


    これはひどいお話になりました。
    褒めて頂きありがとうございます。フミん節って…w 

    実は、最初は役割という短編と全く関係ない独立した話だったのですが、マスターボールのことを書いてからオチが思いつかず放置していました。ふと思いついて続編モノにした結果がこれである。
    何故社長がわざわざあの男を探し出したのか、という部分を補う機会があって良かったです。


    こちらこそ、いつも読んで頂いてありがとうございます。機会があったらまたお願いします。


    フミん


      [No.2531] ふたりごと 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/07/27(Fri) 17:03:43     133clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:納涼】 【シオンタウン】 【読み解き方は次記事

    「お腹空いたな」
    「もう昼飯時だもんなあ」
    「ハンバーガーでも食べようかな」
    「えー、もうちょっといいもん食おうぜー」
    「……確かクーポンがあったはずだし」
    「あーそっかー、それじゃあしょうがないなー」

     相棒は、鞄から畳んだ地図を取り出した。

    「次の町はシオンタウンか」
    「イワヤマ抜けなきゃいけないんだな」
    「ちょっと遠いなあ」
    「大丈夫だって。お前のポケモン強いんだからさ。ま、あんまり無理させるのはよくないけどな」
    「薬を多めに買っていくか」
    「それがいいな。一応、あなぬけのヒモも買っておいたほうがいいんじゃないか?」
    「わざマシンあるから……」
    「ああ、そういえばこの間もらってたな」
    「資金も十分だ」
    「準備万端だな」
    「とりあえず、ショップで売ったり買ったりしてくるか」
    「おう」



     相棒と俺の出会いは数年前。
     場所は俺たちが生まれた町の小さな公園。ベンチと砂場とブランコしかない。
     俺はいつもそこにいたんだけど、その日こいつがひとりでやってきた。半べそかいたような情けない顔ぶら下げて。

     辺りを見回して、そいつはつぶやくように言った。

    「誰もいないのかな?」
    「ここにいるぞ」

     俺はそいつを呼んだ。そいつは俺の近くにあったベンチに座った。俺も隣に座った。

    「お前、いつも他の奴と一緒だよな? 髪の毛立ててる奴。今日はひとりか?」
    「…………」

     そうしたら、そいつが涙をぼろぼろこぼし始めた。

    「ああぁぁごめん、悪かったって。泣くなよ。……ケンカでもしたのか?」

     こいつとその友人の仲の良さは、何回か見かけたことがあるからよく知ってる。
     まあ、言っても子供同士だ。ケンカくらいするだろう。

    「やっぱり、僕は意気地無しなのかな?」
    「そんなこと言われたのか?」
    「でも、町の外に出るなんてやっぱり怖いよ」
    「オイオイ、そりゃ危ないだろ」
    「この辺りにはポッポとかコラッタとか弱いのしかいないから大丈夫って言ってたけど」
    「あのなあ、ポケモンってのはどんなに小さくて弱そうに見えても、危ないもんなんだよ。お前、コラッタの集団にあの前歯で一斉に襲いかかられるの、想像してみ?」
    「……やっぱり危ないよ」
    「そうだよ。な? だからさ、どうしても出たいんならあの博士だか何だかに頼んでみろ」
    「もう少し大きくなったら、博士にポケモンをもらえるんだ」
    「おぉ! 最高じゃないか!」
    「だからそれまで待とう、って言おう」
    「そうそう。お前はいい子だな」

     少し明るい表情になったそいつを見て、俺はため息をついた。

    「あぁ、俺もやっぱり、ポケモン持つべきだったんだよなぁ……」
    「あいつ、やっぱり旅に出るかな?」
    「そりゃ出るだろ絶対」
    「僕が行かなくても、やっぱり行くんだろうなあ……」
    「俺も、友達みんな旅に出ちまったよ。ポケモン持って」
    「それじゃあ、独りぼっちだ」
    「ああ。あれからずっとな」
    「……寂しい」
    「わかってくれるか」
    「独りぼっちは嫌だな」
    「本当にな。でも、俺の方こそ意気地無しだったんだ。『ポケモンをください』っていう、たったそれだけが言えなかった」

     深いため息をつく。そいつもため息をつく。
     しばらく何か考えている様子を見せて、そいつはつぶやいた。

    「……やっぱり、僕も町を出る」
    「……そうか。お前も行っちゃうのか」

     そうしたら、そいつが言った。

    「一緒に旅に出よう」
    「……えっ?」
    「いいよ、って言ってくれるかな?」
    「当たり前だろ!」

     ずっと独りぼっちだった俺は、そいつの言葉が本当に嬉しかった。
     その日から、俺と相棒はずっと一緒だ。




    「それにしても高いタワーだなあ」
    「これが全部お墓なんだよな」
    「町の人は幽霊が出るって言ってたけど……」
    「やっぱりあのカラカラのお母さんだろうな」
    「ねえねえ、あなた」

     青白い顔をした女の子が、声をかけてきた。

    「あなた、幽霊はいると思う?」
    「そりゃーいるに決まってるだろ! な?」

     俺は相棒の右肩に手を置いた。
     すると、相棒は笑って言った。

    「いないよ」
    「えっ」
    「いるわけないじゃんそんなの」

     青白い顔の女の子は、苦笑いを浮かべた。


    「あはは、そうよね! あなたの右肩に白い手が置かれてるなんて……あたしの見間違いよね」


     当たり前だろ、と相棒は笑った。
     俺はそっと、相棒の右肩から手をどけた。





     少年がタワーの中へ入ると、幼馴染がとある墓石の前に座っていた。

    「おう、久しぶりだな」
    「やあ。……それって、もしかして」
    「……ああ。旅に出て最初に捕まえた相棒」
    「そっか……じゃあ僕からも」

     少年はリュックの中からミックスオレの缶を取り出し、墓前に置き、手を合わせた。

    「呆気ないもんなんだな。命が終わるのなんて。もう少し早くポケセンについてりゃ……」
    「ポケモンはずっと、僕らの代わりに戦ってるんだもん。気をつけないといけないね……本当に」
    「気を抜きすぎてたな。強くなったから、多少は平気だろうって……」
    「ポケモンは本当に見かけによらないからね」

     幼馴染は深いため息をついた。

    「……悪かったな。小さい頃、嫌がるお前を無理やり町の外に連れていこうとしたことがあっただろ」
    「ああ、懐かしいなあ。そんなこともあったね」
    「ポケモンの強さとか、危なさとか、理解してりゃあんなことしなかったのによ。しかも断ったお前に散々悪口言ってさ……」
    「いいよもう。昔のことだ」
    「あのあとじいちゃんに、昔ポケモンを持たずに町を出て、死んだ奴がいたって聞いてさ……俺、本当に……」
    「いいってばもう。おかげさまで僕は元気だよ。一番の親友のおかげで、楽しい旅に出る決心もついたし」
    「……そうかい」

     幼馴染と少年は、顔を見合わせて笑った。





       「……やっぱり、僕も町を出る」
                                             (……そうか。お前も行っちゃうのか)
       「一緒に旅に出よう」
                                             (……えっ?)
       「いいよ、って言ってくれるかな?」
                                             (当たり前だろ!)





    「でもさ、お前、昔っから言ってるけどさ、ひとりごとを延々とぶつぶつ言う癖は直した方がいいと思うぞ。気持ち悪いし」

    「いやー僕も直そうとは思ってるんだけどねぇ。なかなか直らないんだよなぁこれが」





       「きっと大丈夫だよ。あいつは僕の、一番の親友なんだから」


                                             (これからはずっと一緒だな、相棒!)







    (2012.7.27)


      [No.2530] これはひどい(※褒め言葉です) 投稿者:砂糖水   投稿日:2012/07/27(Fri) 01:39:36     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    読み終わった瞬間思ったのはこれはひどい、です。
    もちろん褒め言葉ですw
    なんというか、フミんさん節が効いてるなあと思いました。
    途中までは、おおマスターボールの話か、たしかに普通に販売しようと思えばできそうなのにしていないよねえ、やっぱりこういう理由だよねと思って読んでいたらまさかの…。
    これはひどい(

    素晴らしい小説をありがとうございました。


      [No.2529] 提案 投稿者:フミん   投稿日:2012/07/27(Fri) 00:42:26     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?no=2374&reno= ..... de=msgview

    こちらの話を事前に読んでおくとより楽しめると思います。


    ――――――――――――――



    「社長、お話があります」
     
    ここはシフルカンパニーの社長室。そこには中年をとっくに過ぎた社長と、側近のルカリオ。そして立派な机を挟んだ向こう側には、四十代中程の役員の男。彼は多忙な社長に言いたいことがあると、社長室に押しかけてきたところだった。

    「話は聞いたよ。何か、私に言いたいことがあるらしいな」

    「はい。早速本題に入らせて頂きます」

    こほんと一息ついて、男は続けた。


    「社長。なぜマスターボールを普及させないのですか?」

    男は言う。

    「我が社の売り上げは安定しています。沢山の種類があるボールをきちんと店に並べ、在庫を切らすことなく供給し、消費者からの評価も高いです。しかしこれだけは理解できないのです。マスターボールは、もう多数の量を販売できる程安定して製造できると聞いています。しかし、世間に僅かに出回っているだけで、今まできちんと販売することはありませんでした。あのボールを大量生産すれば、更に我が社は大きくなるでしょう。是非、社長もご検討ください」
     
    言い切った顔をする男。彼の表情は満足感に浸っていた。
    気を抜く青年の様子に、社長は怒りを見せることなく反論する。

    「君が言うことはもっともだ。確かにマスターボールはもう販売しても問題ないくらいまで品質は上げた。しかし、これからも全国に売る予定はないよ。時々、消費者へサービスとしてプレゼントする程度にしようと思っている」

    「それはどうしてですか?」

    「簡単じゃないか。他のボールが売れなくなってしまうだろう」
     
    社長は、机を軽く叩きながら言う。

    「市場に大量に普及するということは、値段をそれなりに安くしないといけない。例えばモンスターボールは200円だが、マスターボールは、そうだな、3000円で売ったとしよう。君ならどっちを買う?」

    「悩みますが、確実に一つでポケモンが捕まりますし、3000円のマスターボールを買います。200円のモンスターボールを複数無駄にする可能性があるくらいなら多少高くても我慢するかと」

    「仮に皆がそうだとしよう。皆マスターボールを買う。消費者は満足する。なんて良い買い物をしたのか、とね。しかし次第にこんな不満が産まれ始めるだろう。『もっと安くならないか』という不満だ。どんな分野の商品にも言えることだ。その商品が側にあるのが当たり前になり、改良を重ねた結果企業がすることと言えば、後は値段を下げるしかないんだ。するとどうなる、3000円で売っていたものが2500円でないと売れなくなる。2500円で売っていたものが2000円になり――――そのうち、モンスターボールと同じ値段で売らなければならなくなるかもしれない。それに、あまりに普及し過ぎると他の企業がマスターボールを真似て作るかもしれない。品質が多少落ちていてもきちんと機能していれば、皆そちらを買うようになるかもしれない。するとどうだ、他のボールが売れなくなる。そうなっては一大事だ」

    「しかし、技術を抱えて売り出さないというのは…」

    「現に少数だが、世の中に出しているのは間違いない。君は他のボールが売れなくなったとき、代替案を提案できるのかな?」


    「――――いえ、ありません」
     
    男は、明らかに落ち込んでいた。

    「私は君の意見に怒っている訳ではない。しかし我が社は大きくなり過ぎた。新しいモノを売るのは企業の義務だ。だが、半永久的に企業を続けようとするのもまた義務だ。だから主力であるボールの価値をみすみす下げたくないのだよ」

    「そう、ですね。むやみに売り出しすぎて、シルフカンパニーの経営が傾くことになったら…」

    「ああ、私だけでは責任を負うことができない。分かってくれ」

    「はい。私は愚かでした。先程までの無礼をお許しください。失礼します」
     
    男は深くお辞儀をして出て行くのを確認すると、社長はため息をついて椅子に深く腰かけた。
    直ぐに側近のルカリオは近寄り、用意していた冷たい麦茶を社長に差し出した。


    「社長、お疲れ様です」
     
    ルカリオは、自然に人間の言葉で話しかけてきた。

    「ああ、ありがとう」
     
    社長も、驚くことなくルカリオにお礼を言う。

    「猪突猛進というか、恐れを知らないと言うべきか。まあ私が彼の立場だったら、同じことを言っていたかもしれないな」

    「商品の寿命というのは本来短いものですからね、いつかはモノの価値は下がる時は来る。それを何十年と維持できていることが素晴らしいと思いますよ」

    「はは、言うようになったな、ルカリオ」

    「でしゃばりました、申し訳ありません」

    「良いんだ、お前は私の恋人だからな。少しくらい言い過ぎてくれるくらいが丁度良い」
     
    飲み干したコップを机に置き、隣に立つルカリオの手を握る。彼女は皺が多い自分より大きな人間の手を握り返した。


    「社長、本日の仕事はあと午後の会議だけですが、それまでいかがいたしましょうか」

    「そうだな、私の膝に座りなさい」

    「―――仕事場ですが、宜しいのですか?」

    「構わないさ、どうせここには私達だけしかいないのだから」
    そう言われると、ルカリオは躊躇しながらも言われた通りにする。社長はルカリオの重みを感じつつ頭を撫でた。彼女はゆっくりと、社長に背中を密着させる。

    「重くありませんか?」

    「大丈夫だ。いつもお疲れ様」

    「気を遣ってくれてありがとうございます」
     
    ルカリオは、先程までの強張った表情を緩めて笑顔を見せた。


    「本当、あの新しく雇った研究者は良い仕事をしてくれる。まさかポケモンと話せるように戻すボールまで開発してくれるなんて思わなかったな。今まで一度も、元に戻せたことはなかったのに、彼はそれを成功させてしまった。良い宝石を拾ったものだ」

    「私も、あなたとこうして話せる日が来るとは思いませんでした。あの方は本当に優秀ですね」

    「彼にはたっぷりと謝礼を送らないといけないな、会議中に彼の口座に一部を振り込んでおいてくれ」
     
    はい と膝の上のルカリオは返事を返す。

    「でもこの技術は、世に広まることはないのでしょうね」

    「ああ、関連する資料も全て破棄させたし、彼がデータのバックアップを取っていないかは確認済みだし言い逃れもできない筈だ。それに、彼には巨額の報酬をきちんと支払うんだ。不満は出ないだろう」

    「彼は私達の仲を更に深めてくれました。やはり言葉というのは重要ですね」

    「そうだな。やはり、これからもボールは役目を果たして貰わないといけないな」



    「私達だけの、特権ですね」

    「ああ、モンスターボールが普及した今、他の人はどんなに頑張っても真似できないよ。お前とだけは、ずっと仲良くしたいからな」
     





    ――――――――――


    ふと思いついたので投稿させて貰います。
    無意識に楽しんでくれれば幸いです。

    フミん


    【批評していいのよ】
    【描いてもいいのよ】


      [No.2528] たからもの 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/07/26(Thu) 00:07:26     116clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:納涼】 【ユキメノコ】 【多分ポケダン】 【ヤンデレ風味

     小さな頃、宝物を失くしたことがあったの。


     子供の時って、大人から見れば全然大したものじゃないものを、ものすごく大切にしたりするでしょう?
     河原で拾ったきれいな石とか、他より少しだけ大きなタネとか、贈り物を包んでいたリボンとか、使えなくなった機械のネジとか。
     そういうちょっとしたものを集めては、小さな箱に入れていく。そうやって、大事に大事にとってたの。


     ある日私は野原に行ったの。
     そうしたらそこには、きれいな花が一面に咲いてたわ。
     私は嬉しくなって、その中の1輪を摘んで帰って、いつもの箱に入れておいたの。

     でも、次の日箱を開けると、きれいだったお花はすっかり枯れていたわ。

     私はまた野原に行ったの。だけどどのお花も、昨日持って帰ったお花とは違った。同じ花だけど、やっぱり違う。
     枯れてしまったお花は、もう二度と戻らない。
     私はすごく悲しくって、いっぱいいっぱい泣いたわ。


     私も大きくなったから、あのお花がもう一度ほしい、なんて事はもうないわ。
     幼いころの「宝箱」を開けて、何でこんなのが大事だったんだろう、って苦笑いすることもある。

     でも、大好きなものが、とっても大事なものが変わってしまうのは、とても悲しいこと。
     それは今でも同じ。ずっと変わらない。


     だけど、咲いた花はいつか散るし、生きているものは老いて死ぬ。


     一目見て好きになったの。つやつやした赤いハサミも、琥珀のような金色の目も、とっても素敵。
     あなたに綺麗だよって言われて、私はとても嬉しかったわ。


     だけど、永遠には続かない。
     いずれは死がふたりを別つことになるでしょう。
     今少しだけ近づいた心も、あっという間に離れていくかもしれない。


     時が止められればいいのに、と誰でも思うでしょう?
     この幸せな時間が永遠なら、と思うのは当然のことでしょう?


     私は伝説のポケモンじゃないから、時間を止めるのはとても無理。


     でももし、その瞬間を留めておける力があるとしたら?


     体も、心も、全部私のもの。
     この先ずっと一緒。私とあなたは、永遠に一緒。


     あなたはずっと変わらず、私のそばにいてくれればそれでいいじゃない。



     ほら、見て。

     氷に包まれたあなた、とても綺麗よ。






    +++
    きとらさんに無茶ぶりされたメノコ×ハッサム(多分ポケダン)
    (2012.7.26)


      [No.2527] おままごと 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/07/26(Thu) 00:06:37     121clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:納涼】 【ジュペッタ】 【人形萌え

    「ただいま」
    「おかえりなさ……きゃあっ!」

     どたどた、と床に物が落ちる音がした。
     ジュペッタが玄関を閉めて部屋を見ると、横転した車いすの車輪がきりきりと金属音を立てて空回りしていた。すぐそばには、部屋の主である少女が転がっている。
     やれやれ、とジュペッタは呆れたように息をついた。

    「もう、無理して動こうとしなくてもいいってば」
    「あうう……ごめん」

     しょうがないなあ、と言いながらジュペッタは車いすを立て直し、少女を抱え上げて座らせた。
     ごめんね、と何度も言う少女に、ジュペッタはご飯作るから待っててね、と言って笑った。



     小さなテーブルに1人分の食事が並べられる。
     ジュペッタは車いすをテーブルにつけ、その向かいのいすに座った。

    「いただきます」
    「いただきます」

     手を合わせて言うと、ジュペッタは箸を手にテーブルへ乗り、おかずをつまんで少女の口へ運んだ。
     もぐもぐと咀嚼して飲みこみ、少女はジュペッタに聞いた。

    「この辺りには、もう私以外の人間はいないのかしら?」

     ジュペッタは皿の上のおかずを箸で適当な大きさに切った。

    「……きっと、みんなもっと楽しいところでも見つけたんじゃないかしら」
    「楽しいところかあ……どんなところだろう?」
    「さあ……どっちにしても、あたしたちは見に行けないわね」
    「何で? あなたは外に出られるのに」
    「あたしが行っちゃうと、あなたのお世話をする人がいなくなっちゃうでしょ?」

     ジュペッタがそう言うと、少女は顔を曇らせ、ため息をついた。

    「ごめんね、手も足も動かなくて……。事故になんてあわなかったら、あなたにこうやって迷惑かけないのに……」
    「もう、それはいいって。……事故はあたしのせいでもあるんだし。あたしがあなたを追いかけまわしたから、あなたが車に轢かれて……」
    「でも、元はと言えばあなたを捨てた私が悪いの……。小さい頃は毎日遊んでた人形だったのに……」
    「いいじゃない、もう、それは。あなたとおままごとをしてたから、あたしが今こうやってあなたの面倒を見てあげられるんだし」

     そうか、そうだね、と言って少女は笑った。
     ジュペッタが箸を差し出した。しかし、少女はまた顔を曇らせて首を横に振った。

    「もう食べないの?」
    「うん……」
    「……口に合わなかった?」
    「……ごめん」

     いいよいいよ、と言って、ジュペッタは皿をさげた。
     ごめんね、とうなだれる少女に、ジュペッタはもう寝ましょう、と笑って言い、車いすを押した。



     規則正しい寝息が聞こえる。ジュペッタはベッドの隅に座り、少女の寝顔をじっと見つめていた。

    『この辺りには、もう私以外の人間はいないのかしら?』

     ジュペッタは少女の言葉を思い出した。
     いずれは全てを打ち明けねばならないのだろう。自分たちがどうしてここにいるのか。少女に何があったのか。
     それでも、とジュペッタは小さくため息をついた。
     この「おままごと」を終わらせたくはない。折角またこうやって、一緒に遊ぶことが出来るのだから。

     せめて少女が自分で気付くまでは。
     その体に再び手がつき、足がつく頃までは。

     手足など動くはずがない。そもそも存在しないのだから。
     食事が口にあうわけがない。必要なものが違うのだから。
     人間なんているわけがない。ここはそういう場所なのだから。

     少女がころんと寝がえりを打った。
     ジュペッタは少女の頭を撫で、そっと囁いた。



    「根の国に、人間なんていないのよ」



     白いシーツの上で、カゲボウズが1匹、すやすやと寝息を立てていた。







    (2012.7.26)


      [No.2526] 2012夏・納涼短編集 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/07/26(Thu) 00:05:34     75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:納涼】 【背筋がぞわわっとする話】 【全力で募集

    【2012夏・納涼短編集】


    毎日毎日洒落にならない暑さなので、背筋がぞわわっとする話が読みたい。


    そういうコンセプト、と見せかけて普段のノリで書いた短い話ばかりです。

    怖い話とも限らない(はず)

    要するにただの短い話の集まり。

    夏の間に短い話を思いついたら増えるかもしれません。



    というか自分で怖い話書いてもちっとも涼しくならないので、背筋がぞわわっとする話誰か書こうぜ! 書いてくださいお願いします。




    【何してもいいのよ】
    【背筋がぞわわっとする話、全力で募集中】


      [No.2525] 【ポケライフ】休めないかもしれない夏 投稿者:ねここ   投稿日:2012/07/25(Wed) 15:08:48     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    「暑……」

     ちょっとそこの自販機まで、と外出したはいいが、私はあまりの暑さに倒れそうになっていた。久しぶりの外だ。毎日扇風機とクーラーを傍らに置いている私にとっては、この日射しは天敵。自販機で買ったサイコソーダから伝わる冷気を頼りに、むっとする熱気から逃れる為に帰路を急ぐことにした。共にくっついてきたメタモンも、心なしかいつも以上にどろどろになっている気がする。直接灼熱のアスファルトにべたりと張り付いているのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが。

    「大丈夫?」

     下方に視線を向ける。また先程よりも弱っているような気がする。蒸発しているようだ。何だか見ていられなくなり、どうしようかと思考を巡らせていると、向こうから一匹のヌオーが現れた。どうやら、野生らしい。ここから少し行ったところにある大きな池――きっとそこから来たのだろう。ヌオーはぺたぺたと歩きながら、道端でしおれている草に適量の冷たそうな水を分け与えている。あの水を貰えれば、メタモンも少しくらいは回復するかもしれない。縋るようにじっとヌオーを見ていると、少しだけ足を早めて此方に来てくれた。そして、正面に立つと、何?と言わんばかりに可愛らしく首を傾げる。

    「あ、あのー」

     一応話し掛けてみるだけ話し掛けると、ヌオーはメタモンを一瞥し、分かったというように頷いた。呆気にとられる私。そして、メタモンと少し離れたところに、氷の粒か何かよく分からないが氷らしきものを吐いて、きらきらときれいな氷の塊を作り上げた。太陽光線にも負けない、がっしりとした氷だ。メタモンは冷気につられたのか、ずるずると近寄ってその小さな氷の山に体をくっつけた。とても気持ちよさそうだ。そして、ヌオーは私に向き直り、君は大丈夫なの、とでも言いたげにもう一度首を傾げた。

    「え、」

     だが、ヌオーは私が答える前に、空へ向かってそれはそれは楽しそうに水を吹いた。それらは空中で飛沫となり、びしょびしょにならない程度に私に落ちてくる。加減まで完璧だ。目を丸くしてヌオーを見つめていると、誇らしげに胸を張るような動きをした。なんとなく、幼い頃にした噴水遊びを思い出す。それにしても、頭の良い子だ。ヌオーはもっとお馬鹿さんなイメージがあったが、こんなにも頭脳派のポケモンだったとは。

    「あ、いた!」

     私はその声に背後を振り返ると、そこには息を切らした一人の、私と同じくらいの歳の、けれど身長はとても高い青年が立っていた。その顔には疲労と安堵の色が浮かんでおり、目尻には涙が滲んでいる。恐らく、このヌオーの主なのだろう。だが彼は何故か一歩、一歩と、じりじり近付いてくる。よく見れば、着ているシャツやズボンは泥で汚れているし、髪からは雫が落ちて、まるで池に落ちたかのような……。だが、ヌオーはそんなことはお構いなしで、相変わらず私の為に水を打ち上げてくれている。

    「そのヌオー、俺のポケモンなんだ、けど、さ」
    「今そこで会ったばかりなんで、別に捕まえようとかバトルしようとかは」
    「何でそんなに懐いてるんだ……!?」

     てっきり、俺のポケモンを盗もうとしたな!などと言われるかと肩を竦めていたのに、彼から発せられた言葉は予想とは違うものだった。彼は心底ショックを受けているようで、今にも崩れ落ちそうだ。思わずヌオーに視線をやると、ヌオーはこれまた嬉しそうに笑ってぺたりと私の頬に手を当てた。冷たくて、気持ちがいい。これまでを見る限りは、人懐っこいヌオーに思えるが……違うのだろうか。

    「人懐っこい、ですよね」
    「俺には攻撃してくるんだ……。この暑いのに、夏休みに入ってからは毎日追いかけ回さなきゃならなくて……」
    「え、じゃあそんな汚れてるのも」
    「そう。攻撃された」

     心の中で、お疲れ様ですと呟いた。ヌオーは主を視界の片隅にも入れようとせず、ただ私に甘えてくる。この短時間で随分と気に入られたものだ。嫌な気はそれこそ毛ほどもしないが……この状態は、何だか恋愛の縺れみたいだ。だが、涼を満喫し、元気になったらしいメタモンが足元に来たので、そろそろ私は帰ることにした。このまま去るのも悪い気もしたので、先程買ったサイコソーダを彼に差し出す。

    「これ、もしよかったら」
    「……あー、サンキュ。ちょうど喉乾いてたとこなんだよ」
    「じゃあ、私はこれで」
    「何か悪いな。遊んでもらってたみたいで」
    「こちらこそ」

     小さく微笑んで手を振る彼に手を振り返し、ヌオーにもありがとうね、と言い彼らに背を向けて歩き出すと、背後からぺたぺたりと足音がした。そして、焦ったように走り出す靴音。まさか、と思い振り少しだけ首を後ろに向けると、そこにはヌオーと青年がしっかりと着いて来ていた。彼は大きくため息をついて……やはり若干泣きそうだ。この夏休み、彼も暇人なわけではないだろうに。ここは知らぬ振りをしてやり過ごした方がいいだろう。メタモンもそれは心得てくれたらしく、少し速めに移動してくれる。何とか接触されることもなく家まで辿り着くと、数秒後、あろうことかインターホンが鳴った。

    「ヌオー! お前、何してんだ!」

     そして、外で聞こえる叫び声。

    「……」

     思わず笑うと、メタモンは玄関に置いてあったモンスターボールに身を変え、廊下をころころと転がっていった。まったく、先に逃げようだなんて……本当に私に似てしまったのだな。外ではまだわーわーぎゃーぎゃーと声がする。でも、今回限りは、何だか分からないけど、見逃せない気がする。ジムに挑戦する時のような高揚感が私を包む。玄関の扉を開くと、先程よりも確実にぼろぼろになった青年と、水色に輝くヌオーが立っていた。

    「……寄っていきますか?」
    「え、いいのか? お、おい、ヌオー、ちゃんと挨拶しろ!」

     早速のそのそと上がり込んできたヌオーは、彼の言葉を聞いたのか、私に向かって礼儀正しくおじぎをした。疲れ果てた顔の青年と視線を合わせると、彼もまた嬉しそうにだが複雑そうに笑い、軽く私に会釈。家に誰かを招くなんて久しぶりのことで、少しだけ緊張する。ヌオーは一足先に、リビングのドアを開けているようだった。愛らしい自由さ、とでも言うのかもしれない。

    「あー、じゃ、俺もお邪魔します」
    「うん、どうぞ」

     今年の夏も、暑くなりそうだ。








    二度目まして。ねここです。
    始まったばかりの夏休みと、毎日家を訪れるようになったお客様(一人と一匹)。
    あったらいいなと思いながら書きました。
    大好きなメタモンとヌオーが出せたので本望です!つぶらな目ズ!

    ……反抗期ってありますよね。きっと。

    私はこの夏もひきこもります。はい。だめだ。
    たまには飲み物を買いに行く予定です(笑

    ここまでお読みくださり、ありがとうございました!

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】


      [No.2524] 短編 お題『夏』 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/07/24(Tue) 13:32:41     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「――ねえ、なにやってるの?」

    イッシュにも田舎はある。ライモンシティから電車で三十分も下れば、そこはカナワタウン。役目を終えた列車が眠る場所として知られている。
    ここにも一般の人間は住んでいて、俺もその人間の一人に飼われているポケモンだ。
    俺の主人はここで仕事をしながら趣味で木の実を育てている。植物だけは自給自足にしようと頑張っているらしい。ちなみに牛乳はミルタンクがいないため週に一度、ホドモエに買いに行く。
    今日がその買出しの日で、俺は朝から主人に頼まれて玉蜀黍の皮と髭を取っていた。
    開始から早一時間半。ここに住む者だけでなく、列車マニアも使う電車の音が聞こえてきた。

    「今年も綺麗にできたな」

    市販の玉蜀黍……そりゃ、パックされているのとそのまま売られているのはものすごい差がある。今ではもう、前者は食べられない。そして後者も、今食べている物の味を知ってしまったら、誰も食べなくなるろう。
    とにかく獲れたて……髭が茶色くなるまでついていた物は、甘い。砂糖入ってるんじゃないかってくらい、甘い。ちなみに玉葱も生で食べると甘いらしいが、うちは育てていない。
    こんな物を食べられるのも、主人が育ててくれているおかげなわけで。

    「――ねえ、なにやってるの?」

    汗を流しながら最後の茎を折り終わった俺の前に現れた、涼しげな色の影。ポケモンの癖に白い帽子を被っている。マリンブルーのリボンが鮮やかだ。
    触れれば何でも切れそうな、鋼の羽。足はその種類独特の形。頭に生えた、王者の風格。目が鋭いのにどこか愛嬌があるように見えるのは、睫が長いからだろう。
    そいつ――エンペルトは、帽子の縁を器用に持って振って見せた。

    「玉蜀黍の皮と髭取ってんだよ」
    「育ててるの?」
    「俺の主人が」

    カナワタウンにある小さなログハウス。そこが、俺と俺の主人の家だ。エンペルトとの距離は、俺が今テラスにいるということで五メートルくらい。階段を探すソイツに、俺は顎でしゃくってみせた。
    二分後、距離が十センチにまで縮まる。

    「観光客か」
    「そうね、そんな感じね」
    「ご主人は」
    「あそこで写真撮ってる」

    あそこ、とはおそらく車庫のことだろう。列車をぐるりと一周するように作られた高台。橋の上は絶好の撮影場所になる。
    新聞紙の上に乗せられた玉蜀黍と、皮と髭。ギッシリと実が詰まったそれを見て、エンペルトは目を輝かせた。

    「形は悪いけど……おいしそうね」
    「そりゃ、採られる寸前までついてた物の方が美味いに決まってる」
    「そうよね。売られている物は悪くならないように早い時期から採られるものね」

    太陽が雲から出てきて、周りの気温が一気に上昇する。遠くから聞こえるのは、蝉だろうか。

    「ねえ」
    「何だ」
    「一本もらってもいい?」

    俺は玉蜀黍を見つめた。今日収穫したのは全部で十本。これを近所に少しずつ分けながら、自分達も食べる。全ては食べきれない。だけど、大地の恵みに敬意を払って、捨てることは絶対にしない。
    分けるか、食べるか。その二択。
    ――だけど。

    「ギブアンドテイク」
    「!」
    「何もしていない奴が、何かしたやつから貰うには、それ相当の何かを預けなくてはならない」

    エンペルトはなるほど、という顔をした。そしてそうだ、という顔をして帽子から何かを取り出す。

    「はい」
    「……これは?」
    「ライモン遊園地、プール無料チケット」

    ライモンシティに巨大な遊園地があることも、そこに多数のアトラクションがあるプールが出来たことも自分は知っている。ただ、行こうと思えばサザナミタウンへ行けるため、ピンと来ない。
    そもそも川の匂いに慣れているため、カルキ臭い、人が多いプールに自ら行く気にならないのだ。

    「ダメ?」
    「……」
    「ダメなら他にもあるけど」

    そう言って帽子の中から色々取り出す。どこぞの四次元ポケットのようだ。だがそれはほとんどチケットや引換券の類だった。たとえば、『マウンテンバイク引換券』『ライモンミュージカル無料観覧券』『リトルコート招待券』『ライモンジム主催・ファッションショーチケット』など、何処から手に入れたんだと突っ込みを入れたくなる物の他に、『ロイヤルイッシュ号年間フリーパス』など、このエンペルトの主人がどんな人物なのか何となく分かるような物まであった。

    「……住む次元が違うな」
    「これとかそうそう手に入らないわよ」
    「使う機会も無いだろうな」

    ため息をついてふと、帽子の影に隠れている一枚に目が留まった。白だったため、持っている本人も気がつかなかったらしい。

    「それは」
    「あ、忘れてた。えっと……『モーモーミルク一ダース無料券』」
    「それがいい」

    即答したことに驚いたのか、一瞬ぎょっとした目を向けられた。だが今俺がしていたことを踏まえて納得したのだろう。コクリと頷いて券を差し出した。
    ついでにこちらも玉蜀黍を差し出す。

    「はい。等価交換、ね」

    微笑むエンペルトを見て、少しだけ自分が見ている世界が広がったような気がした。

    ―――――――――――――――――――

    青の世界。
    肌を撫でる感触は真水とはまた違った物。それは太陽の下に出れば小さな針のように肌を突き刺す。
    目を開ければ、それは時に光を失わせる。

    「……」

    向こうから水色とピンクの群れが泳いできたのを見つけ、ミドリはさっと身を翻した。なるべく波を立てないように静かに泳ぐ。
    足に絡みつくような感触がないことをないことを祈りながら、少しずつ浜辺の方へ戻っていく。二十メートルほど進んだところでそっと振り返れば、二色の影はどこにも見当たらなかった。
    少し安堵の息を漏らし、再び進む。
    やがて、足がつく場所まで来ると、ぷはっと水面に顔を出した。

    「ふう……」

    シュノーケルを外す。空が青い。雲が白い。水は体を押し、時折飛沫を上げる。目を少し凝らせば、ポケモンセンターの赤い屋根が見えた。
    ここはサザナミタウン――のビーチから少し離れた場所。丁度サザナミ湾に面した、下に海底遺跡が沈む、いわゆる『穴場』の浜辺だ。
    ブイはないため、その気になれば何処まででも泳いで行けるが、先ほどのように海難事故につながらないとも限らない。そのため、『自己責任』という言葉がつく。
    ジャローダを連れて来ても良かったのだが、高貴という言葉が相応しい彼にとって、海水は自分の体を蝕む天敵。
    かと言ってフリージオを連れて来ても、水蒸気になるだけで役に立たない。
    そこで、多少の危険を覚悟でボールを預けて一人で来ていたのだ。

    「ユエさん誘ってもよかったんですけどね」

    浜辺に上がり、持参していたサイコソーダを口に含む。脳裏に浮かぶのは、コンクリートで囲まれた街の一角で珈琲を入れる一人の女性の姿だ。
    あのバクフーンもさぞかしへばっているだろう。だが彼女には仕事がある。ミドリは既に手に職をつけているため、卒業してそのままデザイナーの道を進むことにしていた。
    高校三年の夏。思えば、あれから五年ちょっとが経っていた。

    「……暑いなあ」

    パラソルの下は比較的涼しい。風も弱く、波は穏やか。髪から滴り落ちる雫が、砂に跡を作る。

    「水タイプ、か」

    鞄から空のネットボールとダイブボールを取り出し、ミドリは立ち上がった。


    ―――――――――――――――――――――――
    目の前には実が全てこそぎ採られた玉蜀黍。×二本。そして今、三本目に手が伸びた。一心不乱に齧り続ける姿は、さながらネズミのようである。

    「……紀成」
    「ん?」
    「食べれるの?それ」
    「うん」

    紀成の好物。季節によってそれは変わるが、夏は玉蜀黍に限る。祖父が育てているのもあって、夏休みは毎日のように食卓に並ぶ。今日も十本近く収穫し、三本は紀成の腹に綺麗に収まる。
    しばらくして、もう一本茎が皿の上にごろりと転がった。

    「ごっそさん」
    「……はい」

    受験が書類を残すだけとなった夏休み。宿題はゼロに近い。かと言って一人旅もできない。もっぱらペンとキーボードと携帯を相手にする毎日だ。
    音楽選択者なら文化祭のミュージカルの練習があるが、美術選択者はそんな物は無い。
    ……少々退屈である。

    「ポケモンの数匹も描けるようになっとくかー」
    「ダイエットもするんでしょ」
    「してるよ。毎日走ってる」

    家族旅行の予定もある。八月上旬に友人との予定も入っている。
    さて、最後の夏はどうなるのか。


      [No.2523] 【ポケライフ】とある夏の日 投稿者:穂風奏   投稿日:2012/07/21(Sat) 21:27:14     112clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「あっつ……」
     パソコンからくる熱に耐えきれず、机から離れてソファの上に倒れこむ。
     ポニータ型の温度計を見ると33℃を指していた。どうりで汗が止まらないわけだ。
    「グレーイ……」
     下では、グレイシアが腹をフローリングの床につけてぐったりしていた。
     私ですらこんな有様なのだから、氷タイプのグレイシアにとっては地獄のような暑さなのだろう。
    「扇風機の方が涼しいわよ。風が来るし」
     言いかけたのを遮って、グレイシアは顔だけで扇風機の方を指した。
    「あー、なるほど」
     扇風機の前ではオオタチが陣取っていた。後ろ足だけで立ち、常に風を浴びようと扇風機が首を振るのに合わせて、細長い身体を左右に揺らしている。
     風が来ないと思ったらそういうわけか。器用な奴め。
    「グ……レイ……」
     ついにグレイシアが顔まで床に突っ伏した。なんとかしてあげたいけど、あいにくエアコンは故障中。修理の人は来週にならないと来れないらしい。で扇風機はあれだし――。
    「仕方ないわね――」
     冷凍庫からとっておきのヒウンアイスを取り出して二つに割り、半分をグレイシアの前に置く。
     本当は夜中にひとりで食べようと思ったけど。
    「融けないうちに早く食べちゃいなよ。じゃないと――ほら来た」
     さっきまで思う存分涼んでいたはずのオオタチが、「私も私も!」と膝をぽんぽん叩いてきた。
     バレずに食べようとしたのに、見つかっちゃったか。
    「はい、どうぞ。私はいいからさ」
     口に持って行っきかけた残りの半分を、オオタチにあげる。これで私の分はなくなってしまった。また買うのにだいぶ並ばなきゃいけないんだけどなあ。
    「〜〜〜!」
     目の前ではオオタチが気持ちよさそうに目を瞑っている。
     ――この子たちの嬉しそうな顔見れたから、良しとしますか。
     一昨日はグレイシアに氷りつくってもらった恩もあるし。
    「さてと、もうひと頑張りっと」
     さっさと仕事片づけて、コンビニへアイスを補充しに行こう。
     そんなことをふと考えながら、夏の一日は過ぎていくのだった。




    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    暑い日が続いていたので短いのを一つ
    キンキンに冷えたヒウンアイスを食べたらおいしいんだろうな、とか暑さにやられてだらーんとしたグレイシアもかわいんだろうなとか思いながら書いてました
    そういえば、ヒウンアイスってどんな味がするんでしょうか
    ソーダ味かはたまたシーソルト味か。一回食べてみたいです

    【何してもいいのよ】


      [No.2522] 夏コミに行った 投稿者:No.017   投稿日:2012/07/19(Thu) 22:54:43     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    イラスト投稿系SNSで、人気の絵師がいるんだ。
    女の子を描かせたら超かわいいし、サイレントマンガもユーモアがあってうまい。
    ポケモンを描かせても一級品なんだ。
    いっつも更新楽しみにしてた。
    そしたらお知らせが上がったんだ。
    普段は全然コメント描かないのに珍しいなって思ったら、夏コミに出展するそうだ。
    これはもう行かなくちゃって思ったね。

    いやあ、熱いしすごい列だった。
    みんなこの人の本が目当てらしい。
    差し入れを持って僕は並んだ。
    じりじりと前に進んでいく。
    どんな人なんだろう。どんな人なんだろう。
    そうして、前の人がいなくなって自分の番が来た時にご本尊が姿を現した!


    ……ドーブルだった。

    夏コミのお知らせはトレーナーさんが書いたんだそうだ。
    ポケモンも出展とはさすがコミケだなって思った夏だったね。


      [No.2521] レッツゴーエンジュ観光 投稿者:No.017   投稿日:2012/07/19(Thu) 22:39:54     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    旅行に行きたい街ランキングで毎年上位となるエンジュシティでは最近あるものが人気を集めている。
    その名も「ポケモン人力車」。
    人力車は以前から観光客の足となっていたが、ポケモンに引かせるようになってから人気に火が付いた。
    コースの中に人力車があるかどうかがツアーを選ぶ分かれ目になっているとう事もあり
    旅行会社各社は、よりよい車引きのポケモンと訓練トレーナーを引き抜こうと躍起になっている。
    中でも現在予約がいっぱいなのが「マッスル観光」のゴーリキーが引く人力車である。
    なんとこのゴーリキー達、エンジュシティの人気スポットから穴場まで知り尽くしており、お客の要望にあわせた場所に連れて行っくれるのだそうだ。
    そして何よりイケメン揃いだと話題で、女性からの人気は絶大であるらしい。
    やはりいつの世でもイケメンという要素が重要ということか――。


      [No.2520] ミナモシティの美大事情 投稿者:No.017   投稿日:2012/07/19(Thu) 22:20:59     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ミナモ美術大学(MAU)の講師、J氏は語る。
    「毎週、ヌードモデルを招いてデッサンするという実習をしているんですが、学生がサボってばかりでしてね。
    どうしたものかと悩んでいたら、姪っ子がポケモンを貸してくれたんです。
    背の高いウサギのポケモンで……そうそう、ミミなんとかいうグラマラスなポケモンでしてね。
    まぁとにかく今度はそのポケモンでスケッチ会をするよと告知したらびっくりですよ。
    教室が満員になるほど学生が集まりました。いやあポケモンっていうのはすごいですね。
    でもそれでも出席してこないAという学生がおりまして。
    で、姪っ子に相談して、また一匹ポケモンを借りてきました。
    今度は全然グラマラスじゃない小さいポケモンで、ミミなんとかを縮めた感じの、茶色い……イーなんとかっていう尻尾の大きいポケモンだったんですけどね、そしたら釣れたんですよAが。
    ミミなんとかでも、サーなんとかでもダメだったのに人の好みってむずかしいですよねぇ。」


      [No.2519] 人が集まらない 投稿者:No.017   投稿日:2012/07/19(Thu) 22:05:36     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どうも、ギタリストです。
    週末に西コガネ駅出た所で路上ライブやってるんだけどちっとも人が集まらないんだ。
    もちろん、毎日練習は欠かさないし、一生懸命歌ってるんだけどまったく人が集まらない。

    だったんだが、ある日、野良っぽいブラッキーが一匹聴きにきて、
    それからだんだんとポケモンが増えていった。
    毎週やるごとに増えていきやがる。
    これは一体どういうことなんだ?
    今週はゲンガーにベトベター、それにドガースが増えてたかな。
    なんか妙にガラの悪い奴らが多い気がするんだがそれはこの際気にしない事にする。
    ちなみに相変わらず人間は聴きに来ない。

    だから、ギターの箱を開いておいといても誰もお金なんて落としてくれないんだが
    ある時、変わった木の実が投げ入れられたんだ。
    変な形の見たことない木の実だったな。
    そうしたら、いかにもエリート風のいかにも強そうなトレーナーがやってきて、目玉飛び出すような高値で買い取りたいと言ってきたよ。
    その日はひさびさにいいもの食べたね。

    今でも毎週ライブをやってるけど、相変わらず人は聴きに来ないよ。
    まぁ、リスナーはたくさんいるからこれはこれでいいと思っているけれどね。


      [No.2518] タマムシシティの下着泥棒 投稿者:No.017   投稿日:2012/07/19(Thu) 21:42:59     78clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    タマムシシティのマンションの敷地へ侵入し、女性用下着を盗もうとしたとして、タマムシ市警は6日、
    コンビニアルバイトのサルタサルノスケ容疑者(30)(ヤマブキシティ在住)を
    住居侵入と窃盗未遂の疑いで逮捕した。

    発表によると、サルタ容疑者は6日午前2時30分頃、
    タマムシシティ内のマンションの雨どいからマンキーを登らせ
    ベランダに干してあった洗濯物を盗もうとした疑い。
    マンキーが下着を物色中、屋内で飼われていたニャースに見つかり、
    その声を不審に思った住人女性が110番し、逮捕に到った。
    サルタ容疑者は調べに
    「下着欲しさに初めてポケモンをゲットした。ポケモンゲットの動機は人それぞれだと思う」
    と容疑を認めているという。




    【ごめんなさい】


      [No.2517] 【ポケライフ】スケッチ 投稿者:No.017   投稿日:2012/07/19(Thu) 21:39:17     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ポケライフのネタを投下していきます。
    くだらないのが多いと思いますが、気に入っていただけたならご自由にお使い下さい。


      [No.2516] コイループ【ポケライフ】 投稿者:   投稿日:2012/07/17(Tue) 21:31:13     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     コイループ。それは商売繁盛祈願の一つである。
     発端は、ポケモンでない方のコイルが針金などひも状のものを、螺旋状や渦巻状に巻いたもののことを指すことから、『お客様が来る』→『お客様を満足させる』→『お客様がまた来たいと思う』→『お客様が来る』というスパイラルと見做したことによる。
     店舗とお客で、お客とお客で、商店街の入り口でレンタルできる数匹のコイルを交換し合い、お客様と交流を図るこの運動は、『(客よ)来いループ』として始められ、最近で言えばジョウトはコガネの地下商店街を見事発展させたという逸話が残っている。その際は、アサギシティより鋼タイプのジムリーダーのミカンを呼び込んで、大々的に交換イベントが開かれたそうだ。
     指紋のようにコイルによって一匹一匹違う磁紋を認証し、十匹以上のコイルを交換できたものは景品がもらえる。ありふれたイベントかもしれないし、それ以降にも頻繁に行われた各種イベントが功を奏したおかげの発展で、コイループは関係がないかも知れない。
     しかし、ゲン担ぎというのは何事においても肝心な物というのは変わりなく、最近ライモンシティの南端に出来たジョインアベニューでも、コイループによる興行の準備は着々と進んでいる。

     ライモンジムの一室にて。
    「ねぇ、ホミカちゃん」
     そのコイループに広告塔となるのは、ライモンにジムを構える、トップモデル兼電気タイプのジムリーダーカミツレと、タチワキシティにジムを構える毒タイプのジムリーダーホミカだ。
    「ん、なんだよ?」
    「えっとね、貴方の作詞作曲してくれた子の曲なんだけれどね……」
     バンドを兼業しているホミカは、今回ジョインアベニューの公式応援ソングの歌手として、カミツレとのコラボを依頼されており、現在は曲や歌詞の調整の真っ最中だ。
    「とってもノリのいい曲で好きなんだけれど、この歌詞……」

    『Join us! Let'hava ball! How wonderful pay follow!
    なんて、素敵な 想いの連鎖!
    コイルを抱いて、交換のループで
    伝わる気持ち

    想いを胸に抱いたら
    浮足立つ心を押さえて、電磁浮遊は使用禁止さ きちんと受け止めて
    自信があるなら、型を破って当たって砕けろ 頑丈も無視して!
    真実の想いを伝えて、心をクロスフレイムだ!
    C! O! I! L! 恋ループ!! HEY!!』
    「って……これじゃコイルを本気で殺しにかかっているじゃない! 電磁浮遊禁止とか型破り地震とか!」
     歌詞カードを指差しつつ、カミツレは悲痛な訴えをする。
    「え、なんか浮き足立っちゃダメかなと思って……電磁浮遊とかそんな感じのイメージがあるからさー」
    「型破りで自信とか、地震と掛けちゃだめよ……オノノクスにやられたら死にかねないもの……クロスフレイムも、レシラムの特性がターボブレイズだから死んじゃうわよ……流石にここまでの虐待ソングは……」
    「まぁまぁまぁ、いいじゃないか。ここではコイルをハートに例えているんだ。自信をもって告白すれば、相手の心もキュンと来るってなぁ。今の時代、商売繁盛祈願ももちろん大事だけれど、現代の奥手な紳士淑女には恋愛も大事だろ? 当たって砕けろって気持ちを電磁浮遊なんかに頼らない心意気で表すのさ」
    「うーん……なるほど。私としてはコイルが苛められるところ見たくないんだけれどなぁ……ホミカちゃんはなんかコイルに恨みでもあったりしてね」
     冗談めかして、カミツレは微笑み、再び歌詞をじっくりと読もうと思ったが。
    「ギクッ」
     ホミカがわざわざ声に出して動揺した。
    「いや、ホミカちゃん。声に出す必要はないのよ」
    「いやまぁ、あるんだよ。毒タイプ対策には鋼タイプというのが定石だけれどさタチワキから旅立ったり、ヒオウギとかからの相手は大概コイルを連れてきやがるし……そのせいで、こっち為すすべなくやられたりさー。初心者相手に地震を使うわけにもいかないし……悩みの種なんだよ。
     全力でやって負けるならともかく、本気出せずに負けるのはな……」
    「あー……なるほど。私も初心者相手に目覚めるパワーとか、カットロトムとかを使うわけにはいかないから、そこらへん悩みの種よねー。なるほど、そんな風にコイルに恨みがあったのね」
    「まぁ、な。個人的な恨みを歌に込めるのもどうかとは思うけれど、スッキリまとまったからいいかなって、思ったんだ」
    「じゃ、そういうことにしましょうかね。くれぐれもリアルでコイルを苛めちゃだめよ」
    「わーってるつうの。ホミカもそこまで子供じゃねーし」
     こんな様子で、ちょっとした作詞に関する意見を取り入れ、調整しながら二人は歌を完成させてゆく。ジョインアベニューのお披露目の日には、その新曲が披露されることで湧き上がる熱気は、アベニューに人が入りきらないほどの大盛況。アベニューには入場制限をかけた上での開通式となった。
     そして、公式応援ソングが流れるアベニューの中で行われたコイルの交換会も大成功。客同士だったり、お店とお客で交換し合ったり。そうすることでそれらの間に交流が生まれ、談笑する機会やナンパする機会が出来る。
     ノルマをクリアすれば、恋愛成就のハートの鱗が貰えるので、片思い中の女性や恋に恋する乙女の間でもジョインアベニューは大人気、ホミカのもくろみ通りの『恋ループ』という言葉に、新たな可能性が生まれたようだ。


     ジョインアベニューが十分に発展した今でも、観光客でにぎわうバカンスの時期にはコイループによる粗品贈呈が行われている。時折やってくるカミツレやサブウェイマスターを始めとした有名人ともコイループが出来る事があり、それもまた一つの魅力となっている。
     そういうタイミングに居合わせることを祈って、貴方もコイループをしにジョインアベニューを訪ねてみては如何であろうか?


      [No.2515] 【ポケライフ】少女イクノと観察日記 投稿者:夏夜   投稿日:2012/07/13(Fri) 00:01:57     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     ※ この作品には【何してもいいのよ】というタグが付きます。




       1 オープニング

    「火は草に強いです。水は火に強いです。草は水に強いです……」

     ホウエン地方、カイナシティ。
     サイクリングロード近くの道路とも、水道とも繋がった、大きな港町。屋外での商業も盛んなこの街は、晴天という天候の為か今日も忙しない。
     灰色の石で舗装された広い町の道を、木の実の入った大きな籠を抱えた商人や、買い物かごを小脇に抱えた主婦、虫取り網を持って、虫かごの中にケムッソやカラサリスを入れた少年たちが忙しなく移動している。上空には、ホウエンの港町特有の水鳥ポケモン、キャモメやペリッパーなどの群れが海の方へ飛び立ったり、旗の上で羽を休めていたりする。
     そんな喧騒の中で、小さな声で、ポケモンのタイプ相性について書かれた本の冒頭文を小さな声で反復しながら1人の少女が歩いていた。
     齢は10歳前後であろうか。小柄な体は、健康的に日に焼けて、鼻の上に散らばったそばかすが可愛らしい。黒いキャミソールの上から丈の短い薄手でノースリーブの水色のワンピースを着ている。桃色の小さな爪がついた足は、向日葵の花がついたビーチサンダルを履いていた。
     手に提げた鞄にはノートや筆記用具などの勉強道具一式が入っており、両手で分厚い本を開き、歩きながら小さな声で音読していた。
     呪文のように唱えながら、自宅のある住宅街の方へ帰っていく。
     カイナの住宅街は、港町だからか、緑が少し少ない。灰色の石で塗装された道と、薄い色が基調のレンガできた家々が続いている。
     しかし、まったくないとも言えない。
     住宅街の中でも、陸地に近いほう、ちょっとした林にも繋がる、そこには子供たちやトレーナー、ポケモン達に向けて作られた、大きな公園がある。
     少女は家には帰らずに、その公園へ入った。

    「あっ、イクノ」
     公園にいた少年が少女の姿を見て声をあげた。
     短パンを穿いて、ポチエナを連れたイクノと同い年くらいの少年だ。
    「トシヤ」
     イクノは下がってきた眼鏡を片手で上げながら、少年の名前を呼ぶ。
    「もう塾は終わったのか?」
    「うん」
     トシヤの言葉にイクノは頷く。
     イクノは毎日、昼から夕方にかけて、塾に通う。そこでトレーナーとはなんたるか、ポケモンとはどういう存在なのかを、机の上で学び、授業が終わると、この公園へやってきて、『学びの木』と呼ばれている木の下で、公園の広場でバトルに勤しむトシヤ達、近所の子供たちを眺めるのが、日課だった。
    「今日は誰と誰がバトルをするの?」
    「いや、今日はな……」
     トシヤは言葉を濁らせた。
    「どうしたの?」
     イクノが訊くと、トシヤは『学びの木』の方を見やって、
    「変な奴がいるんだ」
     そう言って、「皆はもう帰っちまった」と面白くなさそうに口を尖らせる。
    「変な人? 不審者?」
    「いや、そういうんじゃなくてさ」
    「?」
    「見たことのないポケモンつれた、変な格好の男だよ」
    「……ふーん」
     イクノはしどろもどろに答える、トシヤを眺めながら、「皆人見知りして帰っちゃったのか」とつぶやくように言う。
    「俺は違うからな!! 断じて人見知りなんかしてないからな!! な? ポチエナ」
     トシヤは顔を赤くしてそう言い、傍らにいるポチエナに同意を求めるが、ポチエナは主人の言葉に困ったような、微妙な表情をした。
    「ポッチーが困ってるじゃないの」
    「困ってねえよ! ……って誰がポッチーだ!! 人のポケモンに勝手にあだ名つけんな!!」
    「……まあいいや」
     イクノは持っていた本を鞄にしまうと、トシヤの脇をすり抜けて、『学びの木』に向かってゆく。
    「イクノ!」
    「僕は人見知りじゃないし、見たことのないポケモンなら是非見てみたいね」
     「じゃあね、ポッチー」とイクノが手を振ると、ポチエナが答えるように小さく吠えた。
     早足で『学びの木』へ向かう。トシヤが何かを叫んでいるが、イクノはいつものように無視をした。
     聞いた事のない鳴き声がした。
    「!?」
     そこにいる誰かの存在を認知するとともに、イクノはその誰かがだらりと伸ばしていた足につまづいて盛大に転んだ。
    「きゃあ!」
     柄にもなく、可愛らしい悲鳴を上げてしまい、頬に血が集まっていくのを感じつつ、自分がスカートを穿いている事を思い出して、慌てて体を起こす。
     不機嫌そうに眉間に皺を寄せて、誰かが座っているはずのところへ、振り返った。
     ふわり、とキンモクセイの花の匂いがする。
     そこにいたのは、1人の男と、大勢のポケモン達だった。
     白いシャツの上から袴と羽織を着るという、社会の教科書なんかによく載っている、文明開化後の学生が着ているような服を着た、若い男だ。
     茶色い髪の毛を、襟足のみ長く伸ばしたその男は、八重歯の特徴的な口をポカンとまぬけにもあけて、よだれをたらして眠っていた。
     そのまわりに控えているのが、大勢のポケモン達。
     ホウエンにも生息している、キャモメや、ジグザグマ、それからユレイドル。キャモメは男の肩にとまって羽を休め、ジグザクマは驚いたような顔で、こちらを見つめ、ユレイドルは学びの木の横に生えて、男の顔に日差しが当たらないように、日陰を作っていた。他にも、後ろでは3匹のゴニョニョがなにやらこそこそと話しをしているし、男の懐にはロゼリアがいた。
     それから、両脇に控える、この地方にはいないはずの、見たことのないポケモン。
     白い顔と赤い目の、緑の服を着たような赤い髪飾りをつけた、優雅なポケモンと、褐色の肌に赤い目の、もこもこしたメリープのような毛を持つポケモン。
     イクノは『イッシュ地方のポケモン』という本を読んだことがあって、この2匹のポケモンが、ドレディアとエルフーンだという事を知っていた。無論、見るのは初めてだったが。
    「あの……」
    「んー?」
     イクノが話しかけると、男は眠たそうに目をこすった。
     薄く目を見開いて、イクノの姿を見やる。
    「だれ?」
    「貴方こそ誰?」
    「ぼく? ぼくはツバキ、ツバキ ユエ。好きによんでよ」
     ユエは大きく欠伸を漏らした。
    「そこ、私の席なの」
    「ここ?」
     ユエは自分の座っているところを指さし、イクノは頷いた。
     ユエは寝ぼけているのか、口元のよだれを拭くのさえ忘れて、「えへへ〜、でも今はぼくの席だから〜」と、(おそらく)自分の齢の半分にも満たない少女に、あまりにも子供っぽい事をいう。
    「いきなり、現れて……。貴方のせいで僕の予定が狂っちゃったじゃない」
    「そんな事いわれてもなあ」
     ユエは困ったように首をかしげ、それから何かを思いついたように「そうだ」と言い、イクノに手招きした。
    「暇なら君もここで一緒にお昼寝をすればいいんじゃないかな?」
    「え?」
    「……」
    「………」
    「………ぐう」
    「寝てる……」
     話の途中で寝てしまった男を見て、イクノは蹴り飛ばしてやろうかとも思ったが、ドレディアが口元(?)に手を添えて、「しーっ」と言うかのようにイクノを諭す。
     見れば、またポケモンが増えており、灰色の毛並のふさふさの尻尾を持つポケモン(本ではチラーミイと書かれていた)が、その綺麗な尻尾で、ユエの口から垂れるよだれを拭いてやっていた。ドレディアが近くにあるオレンの木から、白い花をとってきて、ユエのこめかみに花飾りのようにそっとつける。
     オレンの花からは、甘い、いいにおいがした。
     鼻腔を麻痺させるような匂いに、頭がぼうっとしてくると、エルフーンが、イクノの服をひっぱった。
     イクノはエルフーンに促されるまま、ユエの隣にすわって、『学びの木』を見上げた。
     タネボーが枝にぶらさがって楽しそうに揺れている。
     コノハナが枝に挟まってしまったハネッコをどうにかはずしてやろうと、頭を悩ませている。1番太い枝の上には、ダーテングが腰を落ち着かせ、風に白いたてがみを揺らしながら、ふっと目を閉じている。
    (そういえば、この木の下で、上を見ることなんてなかったなあ)
     目の前で繰り広げられるバトルや、本に書かれている事は、それはそれは魅力的だったけれども。
     イクノは今更ながらに、自分が目の前のものにか目を向けていなかったことを思った。
     ロゼリアがくさぶえを吹いている。
     ドレディアがおどる。あまいかおりをする。
     ユレイドルがゆれている。夕暮れ時の赤い木漏れ日がキラキラする。
     エルフーンが膝に乗ってきた。あったかい。
     イクノは自分の周りをとりまく環境が、あまりに心地よくて、目を瞑った。
     すとん、と意識が暗闇に落ちていった。




     ふ、と目を覚ますと、そこは見覚えのある、自室の天井だった。
     身をよじればそこは自分のベッドの上で、白いシーツの上にお気に入りのルリリドールが置いてある。どこをどう見ても『学びの木』の下などではない。枕元に置いた、ピカチュウのイラストがプリントされた、赤い目覚まし時計は朝の7時をさしている。
    「……ゆめ」
     少しがっかりしたように、イクノは体を起こした。
     服を着替えて、朝ごはんを食べるために1階へ降りる。
    「あら、イクノ」
    「おはよう、おかあさん」
    「はい、おはよう」
     白いエプロンを付けた母親が、ちょうど出来たらしい朝食をテーブルに並べていた。足元ではマッスグマが朝ごはんをおねだりしている。
     テーブルではいつも以上に仏頂面な父が、新聞を読みながら、毎朝ペリッパー便ジョウトより届く、モーモーミルクを飲んでおり、昨日も母に衣類と間違えられて洗濯されてしまったのか、洗濯ばさみを3つほどつけたカゲボウズが、父の頭上をふゆうしていた。
     テーブルの上には、目玉焼きと、モモンの実のジャムクリームが挟まれたサンドウィッチが4食分、並んでいる。
    「……4食?」
     イクノは首を捻る。
    「さあ早く。外にいる方を呼んできてくださいな」
    「え?」
    「……」
     母は顔をほころばせながら言い、父は母の言葉に眉間の皺を深くした。
     イクノは怪訝そうな顔をしながら、外に出る。
     ふわり、と嗅いだ事のあるキンモクセイの香りがした。

       2 観察対象

    「なにしてるの?」
     朝早くから人の家の庭に寝転がった、ほとんど初対面の男に、イクノはそう投げかけた。
     男、ツバキ ユエは、「んー?」と庭の芝生に寝転びながら、眠たそうな声を出す。格好は昨日と同じ、ドレディアも傍らに控えてはいるが、昨日はそばにいたほかのポケモン達はそばにはいなかった。
     ユエは懐から細長いキセルを取り出してくわえる。
     すると家の影からバシャーモが音もなく現れ、ユエのキセルに火をつけるだけをして、またどこかへ去っていった。
     ぷかりぷかりと白い煙が輪になって浮かぶ。
     甘い煙の匂いに、イクノが顔をしかめるのをみて、ユエはいたずらっこのように微笑んだ。片手で煙をあげるキセルを持ち、反対の手で頬杖をついて、イクノの顔を見上げる。
    「あの後君が眠っておきないからさ、町の人とかに聞いて、ここまで運んできたんだよ?」
    「……」
     イクノはユエの言葉に顔をより険しくする。
     町の人間にきいたという事は、昨日自分がこの見知らぬ男と一緒にいたという事を知られてしまったということで、何かあらぬ誤解を招くかもしれないし、外で居眠りをしてしまう人間だと思われたかもしれない。
    「最初、誘拐犯に間違えられて、大変だったよ」
    「そう、それは残念だ」
    「う〜ん……それはどっちの意味なのかな?」
     笑顔のままそう言うユエを一瞥して、イクノは自宅のドアを指差し、「お母さんが呼んで来いって」と小さな声で言う。
    「わかったー」
     子供のような雰囲気でそう言って、立ち上がると、ドレディアにキセルを預けて、ポンポンと服に付いた芝生の草を払う。その後ろでドレディアがキセルの灰を片付けた。そしてドレディアにキセルを預けたまま、家の中へと入ってしまう。
    「ちょ、ちょっと! あの子はいいの?」
    「んー?」
     ドアを開けながら、ユエはゆっくり振り返る。
    「そのこはぼくのポケモンじゃあないからね。人の家にお邪魔するときは外に待っててもらってるんだ」
    「え?」
     イクノは振り返ってドレディアを見る。
     ドレディアは気分を害したような様子も泣く、甘い香りを漂わせながら、かわらずに左右に揺れていた。
    「さっきのバシャーモも?」
    「うん」
     ユエの言葉は率直でためらいがない。
    「リリーラもエルフーンもロゼリアも?」
    「うん」
     ユエの返事は変わらない。
    (どういうことだろうか)
     イクノは首を捻る。ポケモンとかかわる人間はすべて、ブリーダーであれ、研究者であれ、医者であれ、コーディネーターであれ、皆、トレーナーから始まり、そのトレーナーはモンスターボールでポケモンをつかまれるところからはじまる。
     この男は、イクノが今まで見た、どんなトレーナー、どんな大人よりも、たくさんのポケモンと一緒にいる。その関係はきわめて良好で、ポケモン達の様子はとても彼の事を信頼しているようだった。
     しかし、それらは皆、彼のポケモンではないのだという。
     それは、どういうことなんだろうか。
     モンスターボールなどなくとも人とポケモンはつながれるという事を体現した、トレーナーの上を行く存在なのか。
     イクノはユエを訝しげに見る。
    「どーかした?」
    (……とてもそうは思えない)
     イクノはふにゃりと笑うユエに首を振って見せた。

    「ユエさんは職業、何なされているんですか?」
    「自由な職業ですよー。各地を渡り歩いてるんですー」
    「あらー、素敵ですねー」
    (ニートだろ)
     いつもならこれほどまでに騒がしくない食卓。
     今日は母に合わせて突如現れた客人もしゃべるから、1人分音が多い。
     父とイクノはいつもどおり、寡黙にも黙り込んで食をすすめ、イクノは呑気にゆったりゆったりと食事をしながら会話を弾ませている自分の母とユエの話を訊きながら、口の中でつぶやいた。
    「ユエって昨日、ウチにとまったの?」
    「んーん」
     イクノが訊けば、ユエはゆるゆると首を振る。
    「ぼくはね、あんまり天井と壁のあるところ好きじゃないのよ」
    「そうなの?」
    「好きじゃないというか、落ち着かない」
    「ふーん、どうして?」
    「ん? えらく食い下がるね? まあ、いいけど。……う〜ん、いままでも、いまもなんだけど、あの子達と一緒にいるからね、野宿になれちゃったというか……だから昨日も外で寝たよ。ウィンディとバシャーモとヒノアラシとドレディアと一緒に、庭先をお借りしました」
    「ふうん」
     イクノは頷く。
    「ああ、そういえば」
     母がいきなり話題を変えた。
    「塾の宿題、たしか自由研究があったわね。もうやったの?」
    「……まだ」
     答えながら、イクノはうんざりする。
     母は話好きでマイペースだからか、話の内容のシフトチェンジが早い。しかも、唐突にはじまる。こんな話、客人の前でする話でもないだろうに。
    「……じゆーけんきゅー?」
     きょとんとした顔で訊いてくる。
    (やっぱり、気にするほどの人物でもない気がする)
    「……塾の宿題。1週間使って、ポケモンやトレーナーに関する好きな議題について観察したり、調べたりするの」
    「イクノはまだ議題が決まってないのか」
     今まで黙っていた父が口を開いた。
     厳格な父の視線がイクノを突き刺すように見る。
    「……」
     イクノは、この父の目があまり好きではない。
     昔はイッシュやジョウトなどで活躍した、科学者だか技術者だった父は、自身の功績故か、ひどく厳格だ。
     バトルやコンテストよりも、研究に執心で、子供であるイクノにもそうであってほしいと思っている節がある。そこまでポケモンの研究が好きだというのに、そう年老いているわけでもないこの男が現役を退いた事に、違和感を感じると言えば、感じるが、本人に尋ねるわけにはいけない上に、母に尋ねれば、「家族一緒で嬉しいじゃない」とあまり参考にはならない返答が返ってくる。
     かといって、家族と過ごしていても楽しそうではない、仕事もせずに、家のカゲボウズを頭上で揺らしながら46時中本を読んでばかりいる父を尊敬する気にはなれない。
    「ううん」
     イクノは父の言葉に首を振った。
    「観察対象、今決めた」
     まっすぐ、目の前に座った、1人の男を見据えてそういった。
    「ええ?」
     んぐっとユエがサンドウィッチを飲み込む。
     甘いクリームと、香ばしい小麦のパンが混ざり合って胃の中に吸い込まれていく。それをミルタンクのモーモーミルクで流してから言った。
    「ぼくを観察してどうするの?」
    「僕が観察したいから観察する、それだけさ」
     ユエの困惑したような言葉に、イクノはしれっとした様子で答える。
     その様子と、再び黙り込んだ彼女の父、「あらあら仲良しさんね」と朗らかに笑う彼女の母を見て、諦めたようにため息をついた。
    「トレーナーであるどころか、ポケモンを1匹捕まえた事のないぼくを観察したって、なんの勉強にもならないと思うけど……まあ、いいよ。うん、それで? ぼくは何か君に教えた方がいいのかな? 生年月日とか、出身地とか」
    「いや」
     イクノは首を振る。
    「そんなうわべの情報には興味ないよ」
     言ってからイクノは「君は普通にしてくれればいい」と続けて、くすりと笑った。

       3 観察日記

     ○月×日晴れ。
     今日からツバキ ユエという男を観察する。
     別に、父の言葉に頷くのが嫌で、その場しのぎに彼の名前を出したわけではない。むしろ、トレーナーでもない、研究者でもない、1匹もポケモンを捕まえた事のない男が、あれだけのポケモンを従えているという事に興味を持つなという方が無理な話だ。
     今日も彼は朝から快調だ。
     僕の観察対象として、カイナシティでの滞在時間を少し延ばしてくれたり、なかなか話のわかる男だけれど、どうにも、この男に常識は通用しない。
     まず、基本的にこの男は動かない。
     いつも通りに過ごしてくれと言えば、いつもそんなに動いていないから、と外へ出て人の家の芝生の上にうつ伏せで横たわる。
     あとは動かない。
     じっと、じぃっと。
     光合成をしているラフレシアのように、キノウエのナマケモノのように、「ねをはる」を使ったユレイドルのように、太陽光の下で微動だにしない。
     2時間に1回、キセルを吸うのだが、そのキセルを吸う時でさえも、まずドレディアが彼の口元にキセルを持っていって咥えさせ、どこからともなくバシャーモが現れて指先で火をつけて去っていく。
     本当に、この男と彼はどういう関係なのだろうか。
    「そのキセルって、何すってるの?」
    「んー、体に悪いものよん」
     妙な口調でそう言って、ユエはぷかりぷかりと口から白い煙を吐く。
    「体に悪いものをなんでわざわざ吸うの?」
    「そりゃあ、体に悪いからよ」
     やはり、この男はよくわからない。

     ○月△日晴れ。
     今日は近所の公園にバトルを見に行った。
     ユエにバトルをしたことはあるかと聞けば、「うわべの情報には興味ないんでしょ?」と返され何もいえなくなってしまった。
     怒っている風でもなかったから、単に答えたくなかっただけだとは思うが、正直ぎくりとしてしまった。見かけどおり、この男は性格が悪い。
     しかし、そんな事も知らない、公園の無邪気な子供たちは、めずらしいポケモン、というか、めずらしくもたくさんのポケモンを引き連れたこの男が、僕と一緒に現れた事ですっかり警戒を解き、数分のうちに、ユエは子供達に囲まれてしまった。
     トシヤだけは何故だか微妙な表情をしており、ポッチーはその足元で困ったような顔をしていたのだが。
     少しユエの連れてきたポケモン達、もとい、ユエについてきたポケモン達と遊んだ後、いつも通りに、彼らはポケモンバトルを始めた。
     今回のバトルは、トシヤのポッチー(ポチエナ)対ユウトのジグザクマ。
     先攻はユウトで始まった。
     しかし、ユエは興味を示さない。
     僕とであったあの木陰で、くうくうと静かな寝息を立てている。その傍ではピジョットが羽を休めて丸くなっているし、膝の上にはロズレイドとキルリアが、ドレディアは彼の近くの花畑で、なにかを作っているようであった。
     トシヤとユウトのバトルがトシヤの勝利で終わる頃、ドレディアはそれを完成させ、そっとユエの髪の毛につける。
     それは、ユエの頭の半分ほどの大きさのあるブーケで、決して頭につけるような大きさじゃあなかったが、色とりどりの花が均整の取れた形にまとめられたそれを見て、ドレディアはとても満足そうだった。
     このドレディアは、本当にユエの事が好きらしい。
     僕がユエの方ばかり見ていると、何故だかトシヤは不機嫌そうな顔をして、ポッチーは困ったようにうろうろした。

     ○月☆日天気晴れ。
     今日もユエと愉快(?)な仲間達は、1日をごろごろして過ごした。
     朝芝生で見かけたユエとユレイドルが、夕方塾から帰ってきた私が見た時、まったく位置が変わっていなかったのだが、あれは、1日中そこで光合成していたと捕らえるべきなのだろうか。

     今日は、夜、彼らがどうやって過ごしているのかを知るために、一緒に寝ようと思う。
     両親の反対もあったが、自宅の庭での夜営ということで、ユエが妥協案をだすと、2人共納得した。
     まず、普通は凍えないように火を起こすらしいのだが、街中でやると、火消しの方々にとても怒られるらしいので、今回は火をつけないとの事。
     それでは大丈夫なのか。
     私が訪ねれば、「夏だし、今日はあったかいから問題ないよー」とゆるい返事がして、やはり家の影や木の上や、道の端の方から、ポケモン達が出てくる。
     今日はバシャーモと、ウィンディとヒノアラシ、そしてドレディア。
     ……冬だろうと火なんていらないんじゃないだろうか。
     ユエがたくさんポケモンをつれているといっても、やはり限りはあるようで、また、すごくなついていて、ほとんどずっと一緒にいる子と、逆に気が向いたら遊びにくるような子と、2つに別れていた。
     だからか、見知った顔の子と、そうでない子と、2極に別れる。
     ドレディアやバシャーモは、いつもユエのそばにいて、何かとユエの世話を焼くが、逆にヒノアラシやウィンディは話には聞いていたけれど、初めて見る顔だ。
     ユエはウィンディの毛皮に埋もれるようにして背中を預け、僕も同じように彼(彼女?)の毛皮を借りた。僕の隣にバシャーモが、ユエの隣にドレディアが来て、ヒノアラシはユエの膝の上に乗った。
     ぽかぽか、ぬくぬく。
     炎タイプが火を体に蓄えているために、他のポケモンよりも体温が高いのは知っているが、これは、すごい。
     あたたかさに瞼が落ちそうになる。
    「イクノ、星が綺麗よ」
     呑気な声でユエが言う。
     頭上には星空、視力が悪いのに、寝る前だからと眼鏡を外してきた僕が、裸眼で空を見上げたからと言って、ユエに見えている通りの星空が見えるわけもないのだが、ユエの声につられて、僕は上を見る。
     うん、やはり、空はとおいな。光があるのも分からないくらいにぼやけている。
    「あれは何ていう星かな。ぼくは勉強もできないからわからないや」
     眠い、すぐにでも意識を手放してしまいそうだ。
    「イクノちゃんはわかる?」
     そうだ、1つユエに訊いておかなければならない事がある。
     何故僕がこんな事を気にするのか、そんな事を説明する気にはなれないが、気になってしまったものを、訊かずにいられるほど、僕はつつましくはない。
    「イクノちゃん?」
     「ねむい?」と首を傾げてくるユエに、「また、ユエは『うわべの情報には興味ないんじゃないの? 』って言うかもしれないけど……」とゆっくり告げる。
    「どうしたの?」
     半分寝ぼけたような僕の声に、星座談義を諦めたユエが訊きかえす。
    「あのね、ユエは昔は何をしてた?」
    「……?」
    「子供のころは、何をしてた?」
    「子供……」
     ユエの目から笑みが消える。
     怒っている風ではなく、ただ、虚を突かれたように目を見開いて、それから少し泣きそうな顔で「子供の頃か」と、考え込んだ。
     ユエの奥で、ドレディアが少しおろおろと体をゆらしている。
    「ユエ?」
    「んん?」
    「大丈夫?」
    「んー」
     寝ぼけた僕の言葉に、ユエはいつも通りの腑抜けた顔に戻る。
    「子供の頃かあ、あんまり覚えてないけど、1日中お日様の下にいたよ。ドレディアもバシャーモもその頃からずっと傍にいてくれてねえ。キセルをふかして、木陰で寝て、他人の家でご飯食べて……」
    「今と変わらないじゃない」
    「そうだねえ」
     ユエはケタケタと笑う。
    「今も昔も、僕はポケモンがすきだったよ」
     そう言ってユエは「人はそう簡単には変われないものなんだよう」と、口を尖らせていい、それから優雅に微笑んで見せた。
     キンモクセイの香りがふわんと浮かぶ。
     僕は更にウィンディのおなかに沈み、「ユエはそれでもいいと思うよ」と小さくつぶやけば、ユエはその表情をまた少し寂しそうなものにゆがめる。
    「じゃあ、ぼくはまた流れるだけだね」
     そう言って、ドレディアを抱きよせて、眠り始めるユエに、ぼくは何も言い返すことは出来なかった。
     瞼の重くなっていくまま、静かに眠りに落ちた。

     ○月□日曇り。
    「そういえば、ユエって僕に会うまでは何処にいたの?」
    「んー?」
     僕の家の庭の芝生。いつもどおりユエはキセルを咥えて寝転んでいる。
     最近ではもはや名物にもなりつつある、この一風変わった男の存在は、子供達の間では大人気だ。いや、正確にはユエが人気なのではなく、ユエに着いてくるポケモンが人気なのだが。
    「初めて会った公園があるでしょ? あそこの奥にある林の中にテントを張ってたのよ」
    「それ、大丈夫なの?」
     『うわべの情報には興味ないんじゃなかったの?』とは言わなかったユエの、(おそらく)張りっぱなしになっているであろうテントと、(おそらく)そのままになっているであろう彼の荷物の行方を案じて言えば、
    「あの子達がいてくれるから大丈夫よーう」
     と笑いながら言う。
     なるほど、この場にいないポケモンの大半はそちらで荷物番をしているわけか。
     そちらも少し、気になるが、僕が聞きたかったのはそういうことじゃない。
    「この町に来る前は?」
    「色々」
    「いろいろ?」
    「そう、色々」
     またしても『うわべの情報には興味ないんじゃなかったの?』とは言わなかった。しかし、答えた内容は、ひどく抽象的で、具体性がない。
    「色々なのよ」
     もう1度ユエは言ってキセルを咥えた。
     すかさずバシャーモが火をつける。
     ぷかりと、いつもどおり白い輪が空に浮かんだ。

     ○月※日晴れ。
     今日はユエと買い物に出かける。
     どうして僕が、塾のない貴重な休日に、ユエと買い物に行くのか、どうして1日中光合成(?)をしているような男が、最近知り合った少女と買い物へ出かけるのか、それにはシロガネ山よりも高く、海底トンネルよりも深い理由があるのだが、ここでは語らない事とする。
     断じてユエとドレディアとバシャーモとバレーボールをして遊んでいたら、大人気なく本気になった2匹が本気でバトルをはじめたために、母の大切にしていた花瓶を割ってしまったからというわけでは、決してない。
     今現在、僕とユエはカイナシティの浜辺付近で行われるフリーマーケットに向かっているわけだけれども、断じて、そういうわけではない。

     カイナの浜辺は、人で賑わっていた。
     大道芸人、商人から、他の町のトレーナーまで多くの人が、行き交い、物の売り買いをしている。
    「ふぇりーまーけっと……はじめてみた」
    「フリーマーケットね。フェリー専門って、参加人種特殊すぎるよ」
     僕とユエの後ろからは、ドレディアがひょこひょことつま先でステップを踏むようにして歩いて付いてくる。
     行く人来る人、ホウエンにはいない彼女の容貌と、ユエの特徴的な外見に、振り向かないものはいない。それだけではなく、(子供達の間では)すっかり有名人のユエは、子供と遭遇するたびに、飛びつかれたり、肩車を要求されたり、他のポケモンの行方を聞かれたりしている。
     足を止められるので、僕としてはあまり面白くない。
     右の通路では鉢に植えられた花が売られており、その横に陶器を並べている店があった。花屋にはキレイハナがいて、(オスなのか)ドレディアを見てもじもじしていた。ドレディアは花屋の店頭に並べられた、多種多様の花々に夢中で、ユエはドレディアに「ほしいのー?」と訊ねている。
     僕はというと、ベレー帽を被ったおじいさんと、2匹のドーブルが店番をしている、陶器の並べられたブースの前で、母に頼まれた花瓶の形状と近しいものを探していた。
     よく見ると、この陶器の模様はドーブル達が描いたものらしく、ブースの奥には、まだ模様の描かれていない白い陶器がいくつも置かれていた。
    「好きな柄、かいてあげるよ」
     ベレー帽を被ったおじいさんがゆったりとした口調で言う。
    「じゃあ、赤い花の描かれた大きめの花瓶……」
     家にあった花瓶を思い出しながら、僕は老人に注文し、母から預かったお金で足りるかどうか確認した後、各陶器の値段と、自分のおこづかいの残金を確かめてから、続けて言う。
    「ドレディアと……」
    「どれでぃあ?」
     老人が復唱した。
    「ああ、ええと、隣の男の近くにいる、あの、そう、そのポケモンです」
     ドレディアはユエに白い花のブーケを買ってもらっていた。これも、前彼女が作っていたのと同じような、ユエの顔の半分を覆ってしまうほどの、大きなブーケ。
     買ってもらったばかりのブーケをユエの襟足に結ばれた髪の毛の上につけようとしている。彼女は好きなものを好きな人につけていてほしいのかもしれない。
    「それから、白い花の、ブーケ」
     ポツリと言ってから、ハッとなる。
    「い、今のはなし! 赤い花の大きな花瓶と、適当に2つ、小さい花瓶をお願いします」
    「あいよ」
     老人と、ドーブルが手をあげて答える。
     僕は隣でその辺のおばちゃんやおじちゃんがにこやかに見守る中、ドレディアときゃっきゃうふふしているユエを引っぱって、海岸に出る。
     海岸にはトシヤとポチエナがいた。
    「あ」
    「おや、ポッチー」
    「……」
    「こんにちはー」
     トシヤは僕らをみつけると、声を上げたが、僕がポチエナの名前しか呼ばないと、少し不機嫌そうに口を尖らせる。しかし、ユエはそんな事には気がつかずに朗らかな挨拶をするし、ドレディアもそれにあわせてお辞儀をする。
     浜に近い場所で、ホエルオーが潮を吹いた。
    「おっ」
     ユエはものめずらしいのか、それとも知っているポケモンなのか、そのホエルオーへと近づいていく。
    「お前、あの人とどういう関係なの?」
    「む?」
    「親戚?」
    「いや」
     僕は首を振る。
    「観察者と観察対象」
    「どんな関係だよ!?」
    「……だった」
    「だった?」
     トシヤが首をかしげた。
    「今は……少し違う気がする」
    「……ふうん」
     海風がするりと足元を抜けていった。

     ×月○日曇り。
     別れは唐突に来るものだと思う。
     この観察日誌は、まだ6日目なのだが、この観察日誌は完成の日の目をみることはないかもしれない。
     ユエがいなくなった。
     ユエどころか、彼がこの町にいる間は、町に溢れるようにしていたポケモン達もいない。
     ポケモン密度の減少した町は、いつもどおりながら、すこし物足りなくて寂しい。
     僕は庭先から、屋根の上、公園、『学びの木』、その奥にある林、彼の行きそうなところのすべてを探し回った。
     どこにもいない。
     彼がいなくなったからといって、具体的に何が変わるというわけでもなかった。研究日誌だって、提出までにはだいぶ日がある。また別の議題をみつけて、書き直せばいい。
     けれど、僕はそれがいやだった。
     ユエじゃなきゃいやだった。
     いや、少し違うような気がする。課題とか、研究日誌とかじゃあなくて、ユエがこの町からいなくなるのが嫌だった。彼のつれているポケモン達が、ユエと一緒にこの町から消えてしまう事を寂しいと思った。
    「イクノ」
    「トシヤ」
     久方ぶりに、幼なじみの名前を呼ぶ。
    「どうした?」
    「ユエを、しらない?」
    「……しってる」
     少し迷ってからトシヤは答えた。
    「どこ?」
    「埠頭、灯台の前にいたけど」
    「わかった」
     僕はお礼を言うのも忘れて、埠頭へといそいだ。
     無我夢中で走ると、結構あっという間の距離で、すぐに、あの男の姿を確認することが出来た。
     文明開化後の学生のような格好。襟足だけを伸ばして縛った、変わった髪形に、昨日買った大きなブーケをつけて、薄く微笑んだ口に咥えた細いキセル。隣には優雅なドレディア、反対隣に1人の男、後ろに大群を為すかのような、ポケモン達を従えて、その男は立っていた。
     手に持ったのはモンスターボール、ドレディア以外のポケモン達を、海に浮かぶホエルオーを残してすべてボールにしまい、傍らの、7:3分けの男にそれらを渡す。
    「ユエ!」
     びくり、と、ユエの肩が上下する。
    「イクノちゃん」
    「うそつき」
     僕は叫んだ。
    「トレーナーじゃないって言った」
    「うん」
    「『僕のポケモンじゃない』って言った」
    「…うん」
    「1週間、一緒にいるって言ったっ」
    「……うん」
     僕は泣きながら叫んだ。
     傍らにいた男と、ドレディアが困ったようにこちらを見ているが、知った事か。
     連れて行くな、連れて行くな。
     心の中で復唱する。
     ユエも
     ドレディアも
     バシャーモも
     みんなみんな
     連れて行くな、連れて行くな。
     どこにも行くな、どこにも行くな。
     ふわり、とキンモクセイの香りがした。
    「ごめんよう」
     ユエが言う。
    「向こうで話をつけたら、絶対に戻ってくるよ。なあに、大丈夫。寄り道なんてしないから」
     ふにゃりとユエは笑う。
    「ぼく、あそこ以外にいれるところ、此処しかないんだあ」
     そう言って、ユエは先にホエルオーに乗った男に促されて、ホエルオーの背中に乗り込んだ。
     ドレディアがユエの頭についていたブーケを半分にわけて、僕の頭につけた。
    「花瓶、ありがとう」
    「……うん」
    「……さよなら、ぼくの友達」
     ユエの笑みが、少し悲しそうなものになる。
     僕は埠頭の先まで走っていって、叫んだ。
    「またねぇっ」



     後で訊いた話だが、ユエはイッシュ地方では有名な俳優らしい。それも、2歳の頃から多種多様な役を務める、超技量派俳優。どうやら、俳優のやめるやめないで、もめて、ろくな書置きも連絡もせずに、故郷イッシュを飛び出してきてしまったらしい。今思えば、あの妙な格好は舞台衣装か何かで、ドレディア達は、舞台で共演していたポケモン達だったのかもしれない。だとしたら、あの男は、ユエを迎えに来たマネージャーか何かだろう。
     机の上には、あの日買った花瓶が置いてある。
     いけるのは、もらった白いブーケ。
     そこに描かれている、2つの見知った影に、僕はきっと、毎日なつかしさと寂しさの入り混じった複雑な思いをはせる。
     それは少しつらいことかもしれないけれど、僕はかまわずにその小さな表面に描かれた絵をみつめる。
     生き物を写しと多様に描かれたようなそれからは、なつかしいあの香りがただよってくるような気がするのだ。



       4 エンディング

     『学びの木』の下。
     1組の男女が、その幹の元に腰掛けていた。
     少女の方は、黒いキャミソールの上から、丈の長い水色のワンピースを着て、肩にはアゲハントが止まっていた。肩のあたりまで髪を伸ばし、こめかみのあたりに白い花のコサージュをつけている。歳は14歳ほど。
     男のほうは、文明開化後の学生のような、時代にそぐわない上に、季節にもそぐわない格好をして、片手には細長いキセルを持ち、襟足だけ伸ばした髪の毛を結ぶ髪留めには、白いオレンの花が刺さっており、傍らではドレディアがせっせと花冠をつくっていた。
     少女の手には「観察日記」と題にふられた、古びた1冊の大学ノート。
     少女は黒いペンを持ち、最後のページに書き込んだ。






     ○月×日本日快晴。







     -END-


      [No.2514] ぷおおおおおおおおおお! 投稿者:小春   投稿日:2012/07/12(Thu) 06:00:59     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ぷおおおおおおおおおお!

    とりあえず少年、そこ変わってもらおうか…ッ!フワンテで空飛びたい! なんてスバラシイ肝試しなんだ、ソノオに行きたい、そうだソノオ行こう。

    始終少年そこ変われと念じつつ(違った、ほほえましいとニヤニヤしつつ、拝読させていただきました。
    なんと可愛らしい肝試しなんでしょうか。フワンテ、フワライドのかわいさに何度悶えたか……

    しかし、デートにフワライドで颯爽と登場が軽く挑戦なことがわかりました、たしかに彼?は風に流されますよね。

    あんな妄想質問から発展していただき、ありがとうございました!


      [No.2513] ありがとうございます 投稿者:aotoki   投稿日:2012/07/10(Tue) 20:38:27     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ご批評ありがとうございます。まさか渡邉さんにコメントをいただけるとは・・・・

    文体やテンポのお話、非常に参考になりました。後半は書いていて自分でもまずいなと思っていたのですが、やはり言われてしまったと赤面しております。
    普段はケータイのメール機能でメモしたものをPCに落として修正してたのですが、これだけはケータイでの確認で終ってしまったので・・・・とこう言い訳するのが一番いけないのですよね。

    重い口調は自分の悪い癖だなと思っていたので、しっかり治していきたいと思います。


    > 面白い話だったから、ねちねちと文章にケチつけてみました。
    > ホントね、小さいころのフライトの話、これいいと思ったんだけどね。

    この二行に完璧なお褒めの言葉を頂けるよう、書き直してみたいと思います。

    本当にありがとうございました。


      [No.2512] Re: バルーンフライト 投稿者:渡邉健太   投稿日:2012/07/09(Mon) 23:43:11     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    前半、文章のテンポがよかったから、後半のもったりした感じが残念だね。
    経緯やらなんやらを語り口調でやられると、説明臭い上に台詞とのメリハリがなくなる。
    そういう描写をさらっと書いて、小さいころのパートと文体で差別化できたら格好いい文章になる。
    (まあ、十二年経っても精神年齢の低そうな主人公だから、これでいいのかもしれないけど。)

    さておき、小さなころのエピソードの最後の一文。

    > あの後僕はもう一度一人で発電所に行ったけど、フワンテはいなかった。

    これは話を終わらせるためのテキストだよね。
    伏線にもなってなくて、たいへんよろしくない。

    面白い話だったから、ねちねちと文章にケチつけてみました。
    ホントね、小さいころのフライトの話、これいいと思ったんだけどね。


      [No.2511] Re: 【便乗】 [快晴の七夕] 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2012/07/08(Sun) 19:25:23     24clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    あのネタ話からこのような真面目な話ができるとは。思わず唸りました。ありがとうございます。

    私もキュウコンと色々やってみたいです。


      [No.2510] きつねびさらさら 投稿者:巳佑   投稿日:2012/07/08(Sun) 05:55:23     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     そこはとある稲荷神社。
     周りには一人もいない静かな境内、まるでそこだけ別世界のような不思議な静寂が漂う中、一匹の獣がそこにただずんでいました。
     神社の外側はぐるっと木々で覆いつくされており、内側に招き入れたかのように差し込む月光がその狐を照らしています。
     白銀に身を包んだ滑らかな肢体。
     ふんわりと揺れている九つの尻尾。
     そして、その尻尾にはたくさんの短冊が貼られていました。
     
     くわぁああん。
     くわぁあああん。

     凛と天に向かって鳴く獣の声はまるで鈴の音のように。
     そして、笛の音を奏でるように獣の口元から青白い焔が伸びていきます。
     
     くわぁあああん。
     くわぁああああああん。

     何度も月に木霊していく自分の歌に合わせて、獣は踊り始めます。
     青白い焔がその踊りに導かれるように、宵の宙を舞い、いくつかの輪を作っていきます。
     月光に照らされた青白い焔はらんらんと妖しく、まるでおいでおいでと誰かを招くかのように揺れています。

     くわぁあああん。
     くわぁああああああん。

     やがて、獣の吐いた青白い焔は尻尾の方にゆらりと向かい、そしてそこに張られている紙に取りつきます。
     すると、青白い焔に抱かれた紙は燃えていき、やがて、真白な灰となって、高く高く宵の空に昇っては消えていきます。
     また一枚。
     もう一枚。
     青白い焔で灰となって、宵の空に飛んでいっていきます。

    『もっとポケモンバトルが強くなりますように』
    『タマムシ大学に受かりますように』
    『タマゴから元気なポケモンが生まれますように』
     
     様々な願いが星へと届いていきます。
     
     くわぁあああん。
     くわぁああああああん。

     短冊に込められた願いを感じながら獣は踊り続けます。
     星に人やポケモンの願いを聞かせるように青白い歌を紡ぎながら。

     くわぁあああん。
     
     くわぁああああああん。
     
     
     くわぁあああん。
     
     
     
     くわぁああああああああああん。


      [No.2509] おほしさまぎらぎら 投稿者:巳佑   投稿日:2012/07/08(Sun) 05:53:34     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     夜空にきらきらと流れるは天の川。
     そこに一匹の黒い翼を持っており、金色の飾りを携えたポケモンが泳いでいました。
     ゆっくりゆっくりと泳いでいる、そのポケモンの上には一匹のポケモンと一人の人間が隣同士で座っています。
     一匹は白い二本の角の生やし、悪魔のような尻尾を生やしたポケモン――ヘルガーで、その隣にいる人間は白い髪を肩まで垂らした少女でした。
     少女は眼前に広がる星々を指で示しながらきゃっきゃっと楽しそうに笑い、ヘルガーはその姿に微笑みながら頷きます。
    「ねぇねぇ、ヘルガーいっぱいお星さまがあってきれいだよね! なんか海みたいだなぁ、泳げないのかなぁ」
     そんなことを言いながら飛び込もうとする少女の脚に、ヘルガーが前足を置いて一つ鳴きました。その顔は悲しそうなもので、天の川を泳ぐポケモンも少女の方へと顔を向け、その目つきを鋭く当てていました。少女は残念そうに肩を落とし、再びヘルガーの横に座ると、そのまましばらく無言が一人と一匹の間に流れます。先ほどの楽しげな雰囲気はどこへやらで、水を打ったかのように沈黙の時間は流れていきます。
     その時間がいくぶん流れた後、少女が口を開きました。
    「ねぇ、ヘルガー。わたしね、おねがいしたんだ。ヘルガーとずっといっしょにいられるようにって。もっといっしょにあそべるようにって。ねぇ、ヘルガー。わたしたちずっといっしょなんだよね? そうなんだよね? ねぇ、ねぇってば!!」
     気がつけば、少女の喉からはおえつが漏れ出ており、やがて我慢が切れた少女はヘルガーを抱きしめ、わんわんと泣き始めます。少女のほっぺたにつたう感情がヘルガーの首元へと溶けていき、ヘルガーはただ、目をつぶることしかできませんでした。少女の気持ちが痛いほど、ヘルガーの心の中に入り込んできて、その痛みでまぶたが重くなって――。

     ぱぁんぱぁん。

     何かが弾ける音がしました。
     その音に目を覚まされたかのようにヘルガーの瞳がぱっと開きます。続けて、同様にその音に呼ばれたかのように少女もなんだろうと、音がした方に泣きじゃくりながらも向きます。

     ぱぁんぱぁん。

     天の川を泳ぐポケモンの下で、広がっては消える赤い花、青い花の光、黄色い花。
     少女とヘルガーの瞳の中に何度も咲いては散ってを繰り返していきます。
    「わぁ……! あれって花火かなっ!?」
     そうだと言わんばかりにヘルガーがばうと鳴きます。少女の瞳からはもう涙は止まっており、ヘルガーも楽しそうに尻尾を揺らしており、そのまま、少女とヘルガーはしばらく花火を眺め続けていました。
     
     耳の中を揺らす花が咲く音。
     瞳の中に飛び込む花が咲く姿。

     少女がゆっくりと口を開きました。
    「もう、わたし、ヘルガーとバイバイ、しなきゃ、いけないのかな」
     少女の問いかけにヘルガーが静かにうなずきました。   
     その応えに少女はまた泣きそうにながらも、ヘルガーをぎゅっと抱きしめ、また口を開きます。
    「もっと、もっと、いたかったよぉ、もっと、もっと、あそびたかったよぉ」
     我慢し切れなかった涙の粒がぽろぽろと少女の瞳からこぼれ落ちていきます。

     昼間が暑いから、夜に散歩した夏の日々。
     川辺で蛍火を追いかけ回った日々。
     その追いかけっこの中で見つけた夜空に咲く綺麗な花。
     また一緒に見ようねとあの夏に植えた約束の種。
     秋風の中を一緒に通り過ぎ、冬の雪をくぐって、それから春の桜をかぶって――。
      
     やがて、ヘルガーが少女から離れると、天の川を泳ぎ続けるポケモンの背中の端まで歩み寄り、少女の方に向きます。
     
     ばう、と涙をこぼしながらも微笑みながら鳴いて、天の川の中に落ちました。
      
     星の川に落としたその体はやがて光の粒になって消えていってしまいました。

    「バイバイ……ヘルガー」
     天の川を泳ぐポケモンの背中に涙をこぼしながら、少女はヘルガーが消えていってしまった方をずっと見続けますと、やがて、少女は自分がいつのまにか一個の黒いタマゴらしいものを抱いているのに気がつきました。
     もしかしてヘルガーがくれたのかなと思ったのと同時に、急に眠くなってきた少女はやがてばたりと倒れ、そのまま重くなったまぶたを閉じました。


    ―――――――――――――――――――――――――――

    「白穂(しらほ)、白穂」
    「……うーん、お、おかあさん?」
    「おはよう、どう? 今日は学校に行けそう? まだ無理だったら休んでもいいのよ?」
    「あ、う、うん。ちょっとまって……あれ?」
    「あら、そのタマゴどうしたの?」
    「…………」
    「白穂?」
    「……ううん、なんでもない、ねぇ、おかあさん。このタマゴ育ててもいい?」
    「ちゃんと、育てるならいいけど……大丈夫なの?」
    「うん、大丈夫!」

     その少女――白穂はまんべんな笑みを見せて答えました。

    「だって、このタマゴにはヘルガーとの思い出がいっぱいつまってるんだもん!」


      [No.2508] 【便乗】 [快晴の七夕] 投稿者:MAX   投稿日:2012/07/08(Sun) 05:53:12     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     七夕の夜のこと。
     都会を遠く離れた田舎にひとつの神社がある。そこは小高い丘の上にあり、鳥居に続く石段からは町並みを見下ろすことができた。
     街灯が点々と夜道を照らす中、しかしその神社では軒下の電灯がひとつ、境内で虫を集めるのみ。管理が行き届いてないのか、主立った明かりは幽霊か狐の作る鬼火だった。
     まさに肝試しの場にしかならないような場所だが、そこに人影がふたつ。石段に腰掛けて夜景を眺める男女の姿があった。

    「やってるなぁ」
    「まぁ、よう燃えとろうなぁ」

     毎年の行事を男は微笑ましく思いながら、方や女は片膝に頬杖をついて眠そうに、目を細める。
     両名の視線の先には、町の一角を橙に照らす大きな明かりがあった。もうもうと煙を立てるそれは七夕の笹を燃やす火だ。町中の短冊と笹を集め、まとめて火にくべられていた。
     短冊にこめられた願い事は煙となって空の神様のもとに届けられ、やがて叶えられるだろう。そんな人々の神頼みを、あざ笑うように女が言う。

    「ああも大量に送られては、お空の神様とやらも手一杯であろうに」

     煙の中にどれだけの願いが詰まっているのか。無邪気な風習だと呆れつつ、男から手土産にともらったいなり寿司を頬張った。
     そうぼやく女に、男が串団子片手に言い返す。

    「確かに多いが、急ぎのお願いなんてのは短冊には書かないだろ。神様には、少しずつゆっくり叶えてもらえばいいんだよ」
    「あの量を少しずつか。は、ずいぶんと気の長い」
    「そういうもんさ。いつか自分の番が来る。そう信じるんだよ、人は。良い話じゃないか、夢があってさ」
    「夢のぉ。そんな程度……」

     偏見混じりの男の言葉に女は思う。その程度の願いなら、叶う頃には願ったことさえ忘れているんじゃないか。神に頼るほどのこともないのではないか、と。

    「ん?」
    「いや、そんな程度なら、神様に頼らんでもそのうち叶えられるのではないか、とな」
    「あー、その時はその時だろ。神様が、自分で願いを叶えられるように導いてくれた、ってな」

     なんとも前向きな思考だ。いよいよ女も呆れ果て、鼻で笑った。

    「盲信ここに極まれり、じゃの」
    「そう言うなよ。どうせ、将来の目標みたいな感じで短冊に書くんだからさ」
    「将来の目標、のぅ」

     我が事のように言う男に、女の興味が向いた。男の顔をのぞき込みながら、口の端は上がり、目がいっそう細くなる。

    「かく言うお主は、なんと書いたのかや?」
    「黙秘します」

     いたって自然に断られた。しかしそれではおもしろくないと女は口を尖らせる。

    「かーっ、なんじゃい、生意気な口をききおって。
     目標と言うからわしが生き証人となってお主の行く末を見届けてやろうとちょいと世話を焼いてみれば、これか。
     そんな人に言えんような目標なぞ墓まで持ってくが良い。どうせ達成できたところで自己満足にしかならんからな。
     わしは知らんぞ。目標達成の暁には労いの言葉のひとつぐらいくれてやろうかと思うたが、もう知らん。勝手に一喜一憂するが良いわ」
    「拗ねるなよ、面倒くせぇな。おまえ、こういう願掛けの類は他人に言ったら効果がなくなるって、よくいうだろう?」
    「そんな迷信、気休めにもならんわ。だったら何ゆえ人目に付くような笹の枝に短冊を吊す」
    「個人を特定されなきゃ大丈夫だろ」
    「大雑把にもほどがあるのぉ〜……」

     細かいのかいい加減なのか。苦々しく顔を歪ませる女に、男はため息をついた。

    「そうは言うがな。忘れた頃に叶ってラッキー、そんな程度なんだ。ことさら、達成を労ってもらうようなもんじゃない。それに……なぁ」
    「それに?」
    「失敗したら、おまえ、笑うだろ?」
    「…………」

     女は目をそらした。

    「……そんなわけだ」
    「あ……いや、返事に窮したのは、笑うからではないぞ? 目標の種類によると思って、どう返そうか迷っただけじゃ」
    「いーんだよ。どうせもう俺の短冊は煙になってる頃だ。神様、織姫様、彦星様、何卒よろしくお願いします、ってな」

     言って、男は団子をかじった。
     幸いにして今夜は晴天。明かりの少ない土地柄、見上げれば天の川がはっきりと見えた。しかし風に乗って夜の闇に消えていく願い事たちが、はたして空まで届いてくれるのやら。
     だが男の投げやりな態度に、女は納得しない。

    「これ、弁明も聞かずに不貞腐れるな。わしばっかり悪いようにされて納得できるか」
    「あぁ、そりゃこっちも悪かった。いいからこれでも食って少し黙ってな」
    「な……んむ」

     女の前に串団子が一本、突き出された。それに女はかじりつき、男の手からもぎ取る。
     食わせれば黙るという算段か。少々癪に障ったが、団子一本に免じて女は黙ることにした。

    「…………」

     その団子がなくなるまでの少しの間、男は夜の音に耳を澄ませる。
     ひと気のない神社で聞こえるのは、虫の声と幽霊のすすり泣きくらいだ。泣き声は不気味と思うが、その正体が知れていれば怖くもない。複数のムウマによるすすり泣きの練習風景を見てしまって以来、むしろ微笑ましかった。
     そんな折に、男の耳に遠くから拍子木の音が届いた。「火の用心」と声が聞こえ、もうそんな時間かと腕時計を眺める。

    「……里の夜景は楽しいか?」
    「いや、あんまり」

     団子を食い終わったか、女が話しかけてきた。しかしその内容には、いささか同意しかねる。
     田舎の夜は控えめに言っても退屈だ。黙って見ていると眠くなってくるし、眠れば幽霊からのいたずらが待っているのだから。

    「その割には、向こうの明かりをじっと見ておったがなぁ」
    「……そうだったか?」

     言われて自覚がないことに気づいた。そろそろ眠気がひどいようだ。調子が悪いか、そろそろ帰って寝るか。思いながらまぶたを揉む。

    「眠いか」
    「それも、ある。ただ向こうの焚き火、雨降らなくて良かったな、って」

     言って、男はふと思い出した。

    「……そういや、天気予報じゃ雨じゃなかったか? 今日って」
    「予報なぞ知らんな。しかし、昼ぐらいまでは確かに曇り空じゃったのう」

     両名が見上げる空は、満天の星空。雲はひとつとして見当たらない。

    「はてさて、どこぞのキュウコンあたりが“ひでり”で雲を消し飛ばしたのやもな」
    「キュウコンなぁ…………おまえ……」
    「さーて、わしには心当たりなんぞありゃせんなー」

     白々しいというか胡散臭いというか。なんとも人を馬鹿にしたような女の態度だが、しかし女は続ける。

    「言っておくが、わしはむしろ七夕は曇り空であるべきと思うとるからの」
    「そりゃまた、ずいぶんひねくれたことで」
    「ふん。七夕とは、愛し合いながらも離ればなれの男女が、一年の中で唯一会うことが許される日という」
    「今更なことを言うなぁ」
    「その今更じゃがな? 考えてもみよ。一年もご無沙汰の男女が再会したならば、ナニをするか……」
    「……ぁ゛あ゛?」

     何かを企むようにニヤニヤと語る女に、なんとなく理解した男は何を言い出すこの女、と信じられないモノを見る目を向けた。

    「快晴にして見通しも良く、衆人環視の真っ直中で……というのは恥ずかしかろーなぁー」
    「おまえ、それって……ぁあ、下品なっ!!」
    「か、か、か! 下品で結構。そういう見方もあって、わしに“ひでり”の心当たりは無い。それさえわかってもらえれば充分じゃ」

     それだけ言って、女は満足げに鼻で笑った。そう堂々とされては男は黙るしかない。これ以上口出ししても、自分ばかりが騒いでいるようで馬鹿馬鹿しいではないか、と。

    「ったく……」
    「何にせよ、今夜は快晴じゃ。こうして天の川を見れた。短冊を燃やすのもできた。それを幸いと思うが良い」

     まったくもってそのとおりだが、男はうつむいて唸るばかり。騒ぎの原因にそう言われて素直に従うのは、ただただ癪だった。
     しかしそうやって下を向いていたから近づく影が見えず、女に背を叩かれることとなった。

    「……んむ、少々声が大きかったか。ほれ、お迎えじゃ」

     拍子木の音と「火の用心」という声。顔を上げれば、石段の下で錫杖を持った男性と拍子木を手にしたヨマワルが鬼火に照らされていた。
     男性とヨマワルの目がこちらを見上げて、

    「ひのよぉーじん」

     ヨマワルが拍子木をちょんちょん、と鳴らす。もうそろそろ夜も遅いぞ、と。そういう意味である。

    「あー……じゃぁ、今日はこれまでだな。もう帰る、おやすみ!」
    「おぉ、気をつけて帰るんじゃな」
    「あぁ、またな」

     団子の串などのゴミを抱えて男は石段を下りていく。やがて夜回りの男性達と共に夜の町に姿を消した。
     そして夜の神社に女だけが残る。

    「……どれ、わしもひとつやってみるかの」

     つぶやき、女が取り出したのは町で配られていた短冊の一枚。本来ならば町の笹と一緒に燃やすものであったが、女はそれを今の今まで持ち続けていた。
     願いを書かずに持っていたのだが、そうこうしているうちに焚き火は終わってしまった。だが女は構わない。
     白紙の短冊を左手に持つと、右手の親指に歯で傷をつけ、出た血を人差し指につけて文字を書いてゆく。そうして願い事を書き込み、掲げる。

    「この場に笹は無いが、ま、燃えれば同じであろう」

     そして「いざ」と息を吹きかければ、短冊はたちまち火に包まれ、細い煙を残して灰となって消えた。

    「さて、期待せずに待つとするかの」

     その言葉を残して女は夜に溶けるように消え去り、後には、

    ――――コォーーーーン…………。

     狐のような声だけが夜の境内に響きわたった。






     * * * * *



     まず、あつあつおでん様、ネタ拝借と言う形になりましたが、樹液に集まる虫のようにありがたく思いながら使わせていただきました。。

     お付き合いいただきありがとうございました。MAXです。
     あつあつおでん様のネタから「夜のひでり状態」を見て、「雲が晴れるだけなんじゃないか」と考えた7日の朝。
     キュウコンとおしゃべりをするなら古びた神社でこんな具合でしょう、と地元を想起しながら作り上げたこれ。
     ジジイ口調の女性と言うステレオタイプなキャラができましたけども……。
     書いてて思いました。久方様のある作品と舞台が似てる、と。
     だ、大丈夫でしょうか! ちとツイッタで聞いた限りでは概ね寛容でございましたが、自分の説明を誤解されてしまっていたやも……。
     不安の残したまま動いたことを謝ります。難があれば即時退去いたします。と、これ以上はネガティブなんで、以上MAXでした。

    【批評していいのよ】【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】【申し訳ないのよ】


      [No.2507] 【短編2つ】七夕過ぎし暁に照らして 投稿者:巳佑   投稿日:2012/07/08(Sun) 05:50:35     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     夜が明けるまでは七夕だぜ! 
     そう言い聞かせながら、短いながらも仕上げてみた二つの作品を上げておきます。

     ……やっぱり、日付的にはアウトな気がしますが、よろしくお願いします。(苦笑)


      [No.2506] 『願いを叫ぶでアルぜ!』 投稿者:巳佑   投稿日:2012/07/08(Sun) 05:47:29     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    『まずは灯夢という狐からの願いでアル! みたらし団子をもっといっぱい食べられるようにでアルぜー!! 腹壊すなよでアルヨー!! 』
     コジョンドの波動弾が思いっきり、夜明け前の空に消えていく。

    『次は日暮山治斗という奴からの願いでアルぜ! みぞ打ちが週に一度だけに減りますようにでアル! っていうかあきらめんなでアルぜー!!』
     コジョンドの気合の入った波動弾がまた夜明け前の空に消えていく。

    『今度はわらわっちメタモンからでアル! 商売繁盛アルぜー!! にっくいでアルねー!!』
     コジョンドの叫びと共に波動弾が夜明け前の空に消えていく。

    『次はミュウツーっていうやつからでアル! 借金返せますようにでアルぜー!! というかさっさと返せでアルぜー!!』
     コジョンドのおたけびと共に波動弾が夜明け前の空に消えていく。

    『続いて長老っていう狐からの願いでアルぜ! 池月とエリスがいつまでも中むつまじくラブラブでありますようにでアルヨー!! 池月ー! また今度、ワタシの新技を受けてくれでアルぜー!』
     コジョンドの力を込めた波動弾が夜明け前の空へと消えていく。

    『気合だ! 気合だ! 気合だ! で、アルぜー!!!』
     コジョンドの全身から爆発音を立てながら波動が溢れる。

    『ワタシからのお願いでアル! ワタシより強いやつに出会えますようにでアルぜぇぇぇえええ!!!!』
     コジョンドの――。

    「あああああ!! もううるさい! だまれぇぇえ!! ワンパターンすぎなんだよぉ! この野郎がぁああ!!」
    『おぉ、なんか夜空から現れたと思ったら。ワタシはあんにんどうふでアルね、よろしくでアル』
    「あぁ、それは丁寧にどうも、ボクはジラーチ、よろしくね☆ ……って、アホかっ!! もう朝だ、朝!」
    『およ? なんか、おでこにタンコブができているでアルが大丈夫でアルか?』
    「てめぇにやられたんだよぉおおおお!!」
    『おぉ! さすが、ワタシの波動弾でアルね! まさにビックバンでアル! 照れるでアルぜ、礼ならいらないでアルぜ?』

    「あほかぁああああ! もういい! 話が進まん! ちょっと狐好きの蛇野朗こいやぁあああああ!!」

     ※この後、責任持って、(半黒こげの)巳佑が短冊を笹竹にくくりつけました。

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
     
     というわけで、かなり遅刻してしまいましたが、私も短冊をつけさせてもらいました。
    『いっぱい絵や物語がかけますように、また出会えますように』
    『単位がもらえますように』
    『学生の間に一回は水樹奈々さんのライブに行けますように』

     よし、後もう一つ。 

    『某ロコンにみぞおちでやられませんように』

     ありがとうございました。

    【七夕限定のコアラのマーチもぎゅもぎゅ】
    【みんなの願い、星に届けー!】


      [No.2505] 星に願いを 投稿者:門森 輝   投稿日:2012/07/08(Sun) 00:34:33     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     滑り込みセーフ! ε=\_○ノズザー  ……え? アウト? 気のせいじゃないですかね。きっとまだ7月7日です。そうに違いない。
     と言う訳で数キャラに短冊書いて貰ったんですけどね、ライチュウの奴の以外名前が無いという事態。ポケモンは種族名で表記出来るから良いもののこういう時に困りますね。
     とりあえずれっつらごー。

    「ライチュウを使うトレーナーが増えます様に  コッペ」

    「早く良いイーブイが生まれる様に  とあるトレーナー」

    「イーブイ飽きた。他のが食べたい  カイリュー」

    「尻尾を枕にさせてくれるキュウコンが手に入ります様に  回答者5」

    「いつかまた虹が見られます様に  キュウコン」

    「ヤミラミにじゃんけんで勝てます様に  エビワラー」

    「ルカリオのポケモン図鑑の説明文で波導と書かれます様に  門森 輝」

     少し遅刻してしまいましたが願いが叶う事を祈ります。30分位なら許容範囲ですよね! 駄目ですかそうですか。
     何はともあれ皆様の願いが叶います様に!

    【滑り込みアウト】
    【皆様の願いが叶います様に】


      [No.2504] 【ポケライフ】七夕祭 投稿者:ピッチ   投稿日:2012/07/08(Sun) 00:11:26     87clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     毎年こうだが、目の前は人、人、人。浴衣を着た少女が数人のグループで歩いていたり、家族らしき数人が固まって歩いていたり。年齢層は若い顔が多い。そりゃあ、老人がこんなところに来れば人混みで大層疲れるのは目に見えているけれど。
     両脇に並ぶ屋台も、たこ焼きや綿飴、かき氷といった定番のものから、ハクリューポテトなる謎の食べ物まで多種多様だ。そしてその店の脇には、必ず一本の笹が立ててある。
     今日はタマムシシティ大七夕祭り。老若男女ポケモンを問わず、誰彼もが星に願いをかける日だ。

    『ただいま会場が大変混み合っております。モンスターボールの誤開や盗難を防ぐため、ポケモントレーナーの皆様はボールの管理に十分お気をつけください……』

     そうアナウンスが聞こえる合間にも、きゃ、と短い女の叫び声がして、モンスターボールの開閉光が夜店の明かりに負けじとばかりに輝く。そちらの方を見れば、出てきたヒメグマが他の客に体当たりしそうになっている。
     これが進化後でなくてよかったな、と心中で独りごちる。流石にこの混雑の中に大型ポケモンを持ち込むような非常識なトレーナーがいるのは困る。
     隣を行くルージュラくらいが、常識的に受け入れられる最大サイズだろう。これでも道行く人の中には、たまに怪訝そうな視線を投げてくる人もいるけれど。

    「とりあえず、一通り店回ってみようか。どっかの店でペン貸して貰って、それも書こう」

     そう問いかけると、僕のシャツの裾を掴んでいるルージュラはこくこくと嬉しそうに頷いた。その手には、スターミーとピィの形をした紙が一枚ずつ。
     入り口で配っていたもので、もう形からして短冊と言えるのかはよくわからない。配っていたのを見た限りでは、ヒトデマンやスターミーにピィとピッピ、それに三つの願い事を書けるジラーチのものなんかもあった。
     三つも願うと欲張りすぎて逆に叶えてもらえないような気がする、と思って、僕らは一枚ずつ、一つの願いを書く短冊をもらった。
     出店横に笹がありますので、と言われたが、もうどの笹も短冊でいっぱいだ。今まさに短冊を笹にかけていく人の姿も見える。
     それを見ながら人波に流されるように歩いて行って、まずは気になった「ハクリューポテト」と大書された屋台の前で立ち止まる。ご丁寧に直筆らしいハクリューの絵もセットだ。

    「いらっしゃい! どうだいお兄さん、そっちのルージュラと一緒に食べてかないかい? うちはポケモン向けの味付けもやってるよ!」

     言いながら店主が示したのは、ジャガイモを厚くスライスして、原型を残したまま串に刺して揚げたような食べ物だった。フライドポテトの一種だろうか。
     しかし何故これがハクリューなのか、僕にはちょっとよくわからなかった。ジャガイモがそれらしいというわけでもないし、フレーバーにそんなイメージのものがあるわけでもない。

    「これ、なんでハクリューって言うんです?」
    「ああ、これな。ちょっと切り方に工夫がしてあって……」

     店主は刺してあった一本を手に取ると、僕とルージュラの前でくるくると回して見せた。輪切りだと思っていたそれはよく見れば螺旋状で、相当心を広く持って見ればなるほど、長いハクリューの体に見えなくもない、気がする。

    「こうやって全部一繋がりにしてあってな、ほら、ハクリューが使うだろ?『たつまき』。形が似てると思ってな!」
    「……そっちなんですか? てっきり、ハクリューの体が長いのに似てるからかと」
    「いやー、最初はそのまま『たつまき揚げ』とかにしようと思ったんだが恰好がつかなくて」

     がはは、と豪快に口を開けて笑う店主に、僕もつられて笑いを返す。ルージュラはじっと興味深そうにポテトを見ている。

    「おじさーん、ケチャップ味とポケモン用の苦いのに渋いの、一本ずつちょうだい!」
    「人間用一本とポケモン用二本で千円だよ!」

     Tシャツ姿の少年が、隣から千円札を突き出している。僕はスペースを作るために、少し脇へ寄った。少年はお金と引き替えにポテトを三本受け取ると、手に持ったジラーチ型の短冊を店横の笹にかけて、後ろの人混みの中に消えていく。
     少し内容が気になって、その中身をこっそり横目で覗いてみた。

    『チャンピオンになる! トモキ』

     真ん中の短冊に力強く大きな、でもお世辞にも読みやすいとは言えなさそうな字が書いてある。両脇の短冊には、「ガウ」「ポポー」の名前と一緒に、ポケモンの足跡。前者の方は短冊からはみ出して、ジラーチの顔に被っている。
     なるほどこういう使い方もあったか、と感心した。一人が三つ願い事を書くのは欲張りかもしれないが、三人で一つの大きな願い事を書くなら、叶う確率はもしかしたら上がるかもしれない。
     そう思っていたら、シャツの裾がぐいぐい引っ張られた。そちらを見れば、種族に特有の不思議な言葉を発しながら、ルージュラがポテトを指差し何事か訴えている。見ているうちに食べたくなってきたのだろう。

    「わかったわかった。……おじさん、ガーリック味とポケモン用の辛いの一本ずつ下さい」
    「はいよ! ……ん? 辛いのでいいのかい? ルージュラっちゃあ氷ポケモンだろ? 苦手なんじゃないのかい?」
    「あ、いいんです。こいつ、氷ポケモンなのに辛い味が大好きで」
    「ほー、見かけによらないモンだねぇ……人間用とポケモン用一本ずつで六五〇円だよ!」

     小銭入れから七〇〇円出して、釣りの五〇円とポテトを受け取る。一本はすぐルージュラに渡しておいた。代わりに手の空いた僕が、ルージュラの持つ短冊を受け取った。
     トゲトゲしたスターミーと、それよりは丸みを帯びて文字を書くスペースの取り易そうなピィの形をした短冊には、まだ何も書かれていない。
     どこか空いたところを探さないとな、と思った。列を作っていた人が後ろから来ているのでは、願い事を書くために店の前を占領してはいられない。



    『迷子ポケモンのお呼び出しをいたします。トレーナーID61963、タカノコウキ様。運営本部にてルリリをお預かりしております、至急運営本部までお越し下さい……』

     そんなアナウンスが聞こえた頃に、僕らは通りの交差点へと差し掛かった。角に、ひときわ大きな人だかりができている。子どもたちとその手持ちの小さなポケモンが多い。
     店の垂れ幕に大書されているのは、「あめ」の二文字のみ。店の隣に座って悠々としているのは、一匹のポニータだ。店主の男は棒の先につけた飴の塊をその体の炎で熱し、へらで細工してひとつの形に仕上げていく。
     飴の塊は、既に頭の部分が大きく、尾にかけて細くなる流線型を描いていた。別の、本体に比べれば小さな塊をつけたへらによって、その尾に尾びれがつけられる。男が、集まった子どもたちに向かって問いかけた。

    「おじさんは今、何のポケモンを作ってるかなー?」

     子どもたちはまだ答えが出せないようで、隣の子どもと相談し合ったり、首を傾げている。その間に飴細工には胸びれがつけられ、頭に小さなツノがついていく。
     その様子を見ながら、ピンときたらしい一人の子どもが叫んだ。

    「ジュゴンだ!」
    「正解! それじゃあここから顔を描くところを見せてあげよう」

     外形の完成し終わったジュゴンは、食紅のついた筆で顔を書き加えられてますます本物に近づいていく。目と鼻、それに口を書き加えた飴細工は、最後に袋に収められて他の飴細工と一緒に並んだ。
     子どもたちがわあわあと歓声を上げ、そこを見計らって店主が声をかける。

    「すごーい!」
    「そっくりー!」
    「本物みたい!」
    「飴ってメタモンみたいだな!」
    「この飴細工一個九〇〇円! だ・け・ど、飴風船チャレンジに成功したら、この飴細工をタダであげちゃうぞー!」

     目を輝かせて、やるやる、と殺到する子どもたちが受け取っているのは、何の細工もされていないただの飴の塊だ。子どもたちはまるで風船を膨らませるように、ぷうぷうと懸命にその塊を吹いている。
     なるほど、これを大きく膨らませることができればOKというしくみらしい。しかし大半の飴は吹いている途中で薄くなって固まり、破れてしまう。
     そうした子どもたちが悔しがって再挑戦をし出す間に、男は加工用の飴をまた熱し始めた。

    「今度は何のポケモンを作ってみようかなー?」
    「ヒトカゲ!」
    「バタフリーがいい!」
    「カイリュー作ってー!」

     そのうちの一つを聞き届けたのか、それともそのどれでもないポケモンを題材としているのか。ひのうまポケモンの熱で暖められた飴は、ただの丸い塊から一つの目的へ向けて姿を変えていく。さながら、ポケモンが進化するように。
     それを熱っぽく眺める子どもたちの、その大半の手にはもう短冊はない。もうどこかの笹にかけてきてしまったのだろう。
     まだ願うべき夢を持っている年代だからだろうか、などと言うと、まだ若いのにと言われるのだろうか。見飽きてきたらしいルージュラが急かすのに合わせて、僕はその人だかりの前から歩き出した。



    「現在、タマムシシティ大七夕祭り会場から生中継しております! 見て下さいこの人出、今年の夏も大賑わいです!」

     浴衣姿のレポーターがカメラへ向けてそんな台詞を言っているのを後目に、その人だかりのそばを通り過ぎる。ピチューを頭に載せたあのレポーターは、名前は覚えていないがお天気コーナーか何かの顔だったはずだ。
     そんなことを考えていると、不意に前に進もうとしていた体がぐっと後ろへ引っ張られる。裾を引きながら後ろを歩いていたルージュラが、急に立ち止まったのだ。
     何だよ、とぼやきながら振り返ると、ルージュラの視線はこちらを見ていなかった。
     その視線の先にあったのは、「氷」の垂れ幕と、店のテントの内側に貼られた「罰ゲーム用!? 激辛マトマシロップ」の張り紙。僕はそれへ向けて指を指して、ルージュラに聞いてみた。出てきた声は、自然と、なんとなく諦めたような声だった。

    「……欲しいんだな?」

     ルージュラはこの日一番じゃないかと思うくらいの笑顔で、大きく頷いた。

     人混みをかき分けて屋台へ向かうと、丁度それらしき真っ赤なかき氷が、一人の青年の手に渡されていくところだった。連れらしいもう一人の青年にそれを突き出して、何やら揉めている。

    「バトルで負けたら食うって言っただろーが! 俺覚えてんぞ!」
    「やっぱ食えねえよこんなモン! どう見ても辛いの好きなポケモン用じゃねえか!」

     本来の罰ゲーム用途に使うとああなるらしい、という図から目を背け、改めてかき氷を注文し直す。人間の食べられそうな味も売っているから、そのメニューにも一通り目を通して。

    「あの激辛を一つと、メロン味一つ」
    「はいよ。七〇〇円ね」

     ルージュラが隣ですぐにでも小躍りを始めそうな様子で、氷が削られていくのを見ている。こいつにしてみれば好きな温度である冷たいものと、好きな味である辛いものが合わさった食べ物が食える機会なんてそうそうないから、楽しみにするのも分からない話ではない。
     紙コップに山盛りの氷が盛りつけられ、その上に見るからに辛そうな真っ赤なシロップがかけられていく。この赤さはイチゴ味と間違わないためなのか、いや違うな。
     最後にストローで作ったスプーンが刺さって、差し出された紙コップをルージュラが受け取る。続いて削られ始めた氷は僕の分だ。
     その音を聞きながら、僕は店先のペンを取る。書くことがはっきり決まったというわけではないけれど、なんとなく、今のルージュラの様子を見ていたら書きたくなったのだ。他よりも少しだけ、待ち時間が長いというのもある。
     スターミー型の短冊の上を、ペンの頭がこつこつと叩く。もやもやとした願い事は、うまく固まってくれない。

    「はいよお兄さん、メロン味置いとくよ」
    「ああ、ありがとうございます」

     ことんと音がして、側に出来上がったかき氷が置かれる。短冊は真っ白なままだ。んー、と唸りながら悩んでいたら、ルージュラが置いてあった短冊のもう片方、ピィ型のものを取っていった。スプーンに頼らず飲んだんじゃないかと思うくらいの速さだ。氷ポケモンだしできてしまうのかも知れない。
     何を書くのだろう、とその様子をしばらく見ていたら、ルージュラがペンで書き始めたのは、その口から出るのと同じ、人間にはよくわからない言葉だった。テレビの字幕で見たアラビア語を見ているような感じがする。
     ルージュラはそのまま迷いなくさらさらと謎の文字を書き終えて、ペンを元あった場所に戻すと、満足そうに短冊を顔の前に掲げてみせた。何を書いたのかは分からないが、おそらくは心からの願いなんだろう。
     そんな表情を見ていると、自然にこちらの筆も動いた。スターミー型の中心、本物ならコアのある部分に、小さな文字で詰め込むように。

    『ルージュラの嬉しそうな顔が、もっと見られますように』

     書き上げて隣を見てみると、頬を抱えたルージュラが真っ赤になっていた。そりゃあ、僕がルージュラのを見たんだから見られるだろうとは思っていたんだけど。
     その様子を見咎めた屋台のおばちゃんが、にんまりとした顔でこちらを見ている。

    「あらお兄さん、こんなに女の子真っ赤にしちゃって。まったく色男なんだから」
    「は、はあ……えっと、ちょっと失礼します」

     周囲からの注目もなんとなく集まっている。僕はかき氷の入った紙コップを取ると、さっと店の脇にある笹に、二人分の短冊をかけた。
     トゲのある形の真ん中だけが黒いスターミーと、落書きされたみたいにぐちゃぐちゃの文字が並ぶピィが、他の短冊に混じって揺れる。
     それを見届けると、視線から逃れるように、そそくさと僕らはかき氷屋台の前を後にした。

    「……にしてもお前、何書いたんだ? まさか、あのかき氷がもっといっぱい食べられますように、とかじゃないよなあ」

     道すがら聞いてみると、ルージュラは相当に驚いた顔でこちらを見返してきた。どうして分かった、とでも言いたげに。
     図星か、と問えば、黙って頷いていた。

    「わかったわかった、今度作るよ。タバスコとかだから、ああいう店で見たのみたいじゃないかもしれないけどさ」

     言うが早いか、僕の頬を強烈な吸い付き攻撃……いや、ルージュラのキスが襲った。愛情表現は嬉しいけれど、正直毎回痛いと思っている。
     ついでに今日は祭り会場の人の視線もプラスだ。ルージュラを引き剥がして、ふう、と少し溜息をついてみせる。

    「そーいうのは家でやって、家で!」

     ……ただ正直、ここまで愛されるの、まんざらでもない。



    ――――
    七夕と(私の)ノスタルジアとバカップル。

    飴細工の屋台を全く見ないんですよ。地元限定だったのだろうか。
    他にも屋台にしたら面白そうなのあったんですが、時間と息切れの関係上書けませんでした。

    【お題:ポケモンのいる生活(ポケライフ)】
    【スペシャルサンクス:#ポケライフ(Twitter)】
    【描いてもいいのよ】
    【書いてもいいのよ】
    【10分弱オーバー】


      [No.2503] パリパリ 投稿者:ことら   《URL》   投稿日:2012/07/07(Sat) 22:45:31     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     先客がいたようだ。ついでだからみんなが何を願っているか見ていくか。

    「ジムリーダーになりたい ガーネット」
     トレーナーなのか。それにしてもハンドルネームではないのだから、本名かいていけばいいのに。織り姫と彦星だって本当の名前が解らなければ叶えようもないだろう。

    「微生物研究にいきたい ザフィール」
     理系の人間のようだ。字からして男子……だろうか。それにしても最近は短冊にすらハンドルネームを書くのが流行っているのだろうか。私が本名ばりばりで短冊かいてあるのがなんだか怖いではないか。

    「商売繁盛。ついでに黒蜜がうるさいので早く諦めさせてください 金柑」
     綺麗な字で書いてある。印刷物かこれ。こんな綺麗な字を書く人間がいるとは思わなかった。商人のようだが、きっと学校の成績もよかったのではないか。うーん、なんだか負けた気分だ。

    「早くあの子が振り向いてくれますように☆ 黒蜜」
     その札の隣にあったのがこれなので、おそらく友達なのだろう。面白いハンドルネームを考えるものだ。

    「ゾロアークにお嫁さんが来ますように ツグミ」
     ポケモン想いのトレーナーだな。けどゾロアークのお嫁さんなら、トレーナーが探すのがいいのではないだろうか。結構ポケモンセンターでもお見合い希望の紙はってあるし。
    「ツグミに彼氏ができますように ネラ」
     そこから離れたところに釣り下げられてるのがこれ。ツグミという子は友達に恵まれたのだな。友達に彼氏ができて欲しいというところをみると、ネラという子はもう彼氏持っているのだろう。

     あ、この辺なら空いてるな。さて、吊るしてかえろう。
    「人間の青いイケメンください。石マニアでもいいです くろみ」
     今年こそ、かなうといいなー!


      [No.2502] 曇天のさらに上空は晴天だと信じてる 投稿者:ラクダ   投稿日:2012/07/07(Sat) 22:33:19     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     しゃらしゃらと涼しげな音を立てながら、大きな笹が夜風に揺れています。
     その枝葉には、色とりどりの短冊がいくつも結び付けられていました。柔らかな風に踊るそれらには、人とポケモンの祈りや願いが書き込まれています。
     
     道の向こうからくたびれた様子の駱駝が一頭、とぼとぼと歩いて来ました。
     足を引きながら笹竹の前にやってきた駱駝は、大きな溜息を吐いて背中の荷を下ろしました。小さな袋に詰め込まれた短冊の束です。
     あれからもう一年が経ったんだなあ、と呟きつつ、さらさらと手元の用紙に何かを書き付けています。
     肉厚の蹄で器用に――どうやってという疑問は胸にしまっておきましょう――結び付けられたそれには、『藁一本で背骨が折れそうなこの現状を、なんとか打破できますように』とありました。なんとまあ、辛気臭いことです。
     ……それはさておき、自分の分を書き終えた駱駝は、預かってきたらしい短冊たちを次々と結び付け始めました。

    『ブラック3・ホワイト3で主役級に抜擢されますように  風神・雷神』

    『またポケンテンの新作料理を食べられますように  学生A・B』

    『監督の尻をひっぱたいてとっととロケを終わらせて、年内には上映できますように  飛雲組』

    『世界中での百鬼夜行を望む  闇の女王』

    『第三部及び完結編まで続きますように!  甲斐メンバーの一人』

    『今年の夏休みも、あいぼうといっぱい遊べますように  夏休み少年』

    『いつまでも“彼”と一緒にいられますように  名も無き村娘』

    『もう大爆発を命じられませんように  ドガース』

    『今年も美味しい食事にありつけますように。  桜乙女』

    『僕たちが無事に「割れ」られますように  タマタマ』

    『彼らの旅立ちを祝福できますように……  マサラの研究員』

    『この世界に生まれ出ることができますように  未完の物語一同』

     さらさら、しゃらしゃらと笹が揺れています。
     一年分の願いを括り終えて、駱駝はふうと息をつきました。
     しばらくぼんやりと色紙の踊るさまを眺めていましたが、やがて意を決したように首を振ると、元来た道をのろのろと引き返して行きました。

     おや? 駱駝の立っていた場所に、二枚の短冊が落ちています。どうやら、付け忘れてしまったようです。
     仕方がないので、私が結んで締めくくりましょう。


    『受験・就職・体調・原稿その他もろもろの、皆様の願いが良い方向へ向かいますように』

    『自分の思い描くものを、思い描いた形に出来ますように。今後も地道に書き続けられますように』

     七夕の夜に、願いを込めて。


      [No.2501] 鵲橋は雲の上 投稿者:小樽ミオ   投稿日:2012/07/07(Sat) 19:22:21     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ご無沙汰しています。

     しとしと雨の降る七夕を迎えました。
     それでも街中では浴衣を着た人たちに出会ったりちいさな七夕飾りを見つけたりと、すっかり七夕ムードですね。

    「黄金色を追い求める最高のトーストマイスターになる   ちるり」
    「リーフィアといっぱいあそべますように   ミノリ」
    「今年もご主人さまのいちばんでありたい   チリーン」
    「さらに出番をよこせ   ムウマ丼推進委員会」
    「めざせコンスタントに短編投下   小樽ミオ
    「池月くんがエリス嬢のもとに帰れる日が早く来ますように」

     今年は夏コミにスペースを出される方もいらっしゃるので、素晴らしい祭典になるようにお祈りします。
     個人的には、有明夏の陣2012で私自身が討ち死にしないようにと願うばかりです(笑)

     短冊の願いごと、届くといいな!

    ※追記:読み返したら語弊ありげな箇所があったので直しておきました、すみませんm(_ _)m


      [No.2500] 相も変わらずの曇り空orz 投稿者:クーウィ   投稿日:2012/07/07(Sat) 15:54:48     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    梅雨の宿命だわな……
    止まれ、不景気な事言っててもしゃあないので……!


    『今年こそ日の目を…… 書きかけ山脈関係者一同』
    『武運長久・凶運回避 ボックス対戦組』
    『求むルカリオ 目指せ獣人パ結成! アジル(コジョンド)・シュテル(コジョフー)・グリレ(ゾロア)・ギブリ(ゾロアーク)・ケム(リオル)』
    『神は言っている……仲間を救えと イ―ノック(コイキング move担当)』

    『原こ(赤黒いものが飛び散っていて読めない……) **ウィ』


    うーん、不景気だわ(
    皆さんはもっと明るく楽しい七夕祭りをお過ごしくださるよう……!(笑)

    では。ゲームも創作の方も、もっともっとギアを上げて行きたいですね〜。

    『これからもこの場所により多くの作品が集まって、創作者の方々の良き憩いの場であり続けますように』。


      [No.2499] 今年も 立てたよ 笹竹を 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2012/07/06(Fri) 21:45:14     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     サイコソーダ大好きダイケンキ、シェノンがてくてくと道を歩いていると、目の前に笹が立っていました。
     その笹には短冊がたったの一枚だけ、ひらりひらりと揺れていました。水色の短冊には、太く黒々とした、おそらく筆ペンで書いたのであろうでっかい『合格祈願』の四文字。

    「何かすっげぇ切なくなる光景だな」

     ありのままを口にした後、そのシェノンは何も言わずに代表として持ってきた短冊をかけていきます。去年よりも数枚、増えている気がします。シェノンはまず彼の仲間たちの短冊をかけ終えると、見覚えの無い字形で書かれた残りの三枚を見つめました。

     一枚目は、ひらがなとカタカナだけで書かれた、まるで小学生が書いたような文字。

    『これからも おじさんと たくさん ほんが よめますように!  ルキ』


     二枚目は、綺麗な、大人が書いたような文字。名前はありません。

    『平和な日々が続き、彼を置いていったりするようなことが起こらない事を祈る』


     三枚目は、少し丸みがかった、女の子っぽい字。黄色い短冊です。

    『今年も向日葵が沢山咲きますように。 再会できますように  夏希』

     その三枚も掛け終えると、シェノンは「サイコソーダの季節だなぁ」などと呟きながら去っていきました。
     夜空に、星々を湛えた天の川が輝いておりましたとさ。


    【短冊 どうか増やしてほしいのよ】 【なんか今年もやっちゃったのよ】


      [No.2498] ポケモンニュース七夕編【ポケライフ】 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2012/07/06(Fri) 21:07:43     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     こんばんは、6時のニュースです。

     さて、今日は七夕。各地で笹が飾られる中、ある事件が起こりました。では現場から中継です。

    「本日午後3時頃、このトクサネシティで大量のキュウコンを連れて辺りを干上がらせた疑いで男が逮捕されました。男は非理亜住(ひりあ じゅう)容疑者で、調べに対し容疑を認めているとのことです。非理亜容疑者は特性が『ひでり』のキュウコンを使って夜を明るくしようとしましたが、駆け付けた警察に『明るくても七夕じゃなくても、カップルはいちゃいちゃするんだぞ!』と説得され、その場に崩れ落ちました。非理亜容疑者は動機を『夜を明るくすれば七夕をできなくなると思った』と語っています。以上、現場からでした」

     ありがとうございました。1年前にも似たような事件がありましたが、どこにでもこうした人はいるものですね。では、次のニュースはこちら。






    1年前はサーナイトのブラックホール設定を使い、今年はキュウコン。来年はどうなることやら。


      [No.2497] Re: 好評の未刊 掲載許可願い 投稿者:レイニー   投稿日:2012/07/04(Wed) 20:05:05     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    自分の過去記事がいきなり上がってるとビビりますね。こんばんは。
    掲載の方OKです!


      [No.2496] 好評の未刊 掲載許可願い 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/07/04(Wed) 12:40:34     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    殴りにいけるアイドルのネタ、TBN48のひみつって題で夏コミ新刊の好評の未刊部に載せたいのですが、いいでしょうか?


    TBN48のひみつ レイニー

     キャッチコピーは殴りに行けるアイドル。
    戦場と化す握手会に直撃取材を敢行、タブンネ。

    という感じにしたいのですが。


      [No.2495] スカイアローブリッジにて 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2012/07/04(Wed) 00:45:13     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    スカイアローブリッジにて (画像サイズ: 768×615 68kB)

     私、銀波オルカがここに来て、一年経っちゃいました。というか書いてたら日付変わっちゃいました(笑)
     さきほど自分の処女作を読み返して、顔からブラストバーンが出そうな勢いです…。筆力あんまり成長してませんけどね! 最近都合によりほとんど投稿できてませんが、駄文&スローペースでのろのろ運転し続けてます。遅すぎ。

     流石に一年経って何もしないのも、というか我が家の某ダイケンキが「なんかやれよー」とうるさいので、とりあえずサイコソーダでも買ってきました。スカイアローブリッジの上って風があって気持ちよさそう、と個人的に思ってます。
     オルカはこの一年、BW2はお預けです。というわけで当分彼らも休憩ですね。自分の夢に向けて少しずつ、一歩一歩進んでいきたいと思います。
     えっと、シェノン。そういうわけであんまり遊んであげられなくなるかも。まあ、たまには会いに来るから……え、分かったからサイコソーダ買って来い? はいはい。


     勇気を振り絞ってチャットに初参加したのが始まりだったと思います。以来リレー小説に飛び入りしたり、処女作書いてみたり、鳩さんの小説コンテストで評価に参加させていただいたり……。思い起こせばけっこういろいろありました。

     どうぞ皆さん、これからもよろしくお願いします!!


      [No.2494] 好奇心 投稿者:フミん   投稿日:2012/06/30(Sat) 20:06:44     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    「いらっしゃい、よく来たね」

    「こんにちは、おじさん」
     
    都心から少し離れた高級住宅街、少年は親戚のおじさんの家に遊びに来ていた。
    少年にとって、おじさんは父親の兄にあたる。住んでいる家も近所のため、少年はよくおじさんの家に訪れていた。
     
    その理由はただ一つ。おじさんが集めている物に興味があるからである。
    おじさんは、いわゆるコレクターの一人だった。何を集めているかというと、ポケモンに関連する道具である。
    例えば、ポケモンを捕まえるモンスターボールの初期型。他にも、ポケモンを進化させる石や、特別な進化を手助けする特殊な道具等、種類は様々である。特に、今の時代出回っていない物を収集するのが趣味だった。
    少年は、どこにでもいるポケモン好きである。だからこそ、普通に生活していたらお目にかかれない道具が沢山見られるおじさんの家は魅力的だった。
    彼の腕の中には、コラッタが抱きかかえられている。


    「お父さんから聞いたよ。珍しい物を手に入れたんだって?」

    「おお、そうなんだよ。お前は私の話を熱心に聞いてくれるからな、どうしても見せておきたかったんだ」
     
    少年が案内されたのは、立派な家の奥にある倉庫。そこは特に丈夫に作られており、万が一泥棒が入らないようにするためにセキュリティも高い。指紋認識はもちろん、目や声帯を認証しなければ中には入れない。今のところ、その中に入れるのはおじさんと少年、それに少年の父親だけだった。
    次に軽い霧のようなものをふりかけられる。それは、中に入る人につく細菌を除去するものだった。おじさんの方は平然としているが、少年は顔をしかめて目を瞑っている。少年のポケモンのコラッタも、小さなくしゃみをした。

    漸く入り口を通ると、涼しい空気が肌を撫でる。収集している貴重品が極力傷まないように、中の湿度と温度も保たれているのだった。
    この場所は、二人にとって天国と言っても過言ではない。ここに来ると何時間も外に出ないのは当たり前のことだった。
    おじさんは、迷わず倉庫の奥へと歩いていく。少年は大人の歩調に必死に着いていく。
     
    二人が足を止めた場所は、わざマシンを並べている棚だった。

    わざマシンと言えば、ポケモンに技を覚えさせる道具のことである。本来ポケモンはバトルをしたり鍛えたりと、経験を積まなければ新しいわざを覚えることはない。しかしこの道具を使えば、あっという間にわざを習得することができる。それがポケモンにとって役立つかはともかく、昔から活用されてきた道具の一つだった。
    少年は、ここにはよくお世話になっていた。なぜなら、わざマシンはとても高価だからである。
    モンスターボールはとても安い。この世界では必需品なので子どものお小遣いでも充分購入可能なのだが、わざマシンに関してはそう簡単にはいかない。物によっては値段や生産される数等の障害によって、大の大人でも入手困難な物もある。
     
    おじさんは、古い物もそうだが最近の道具も集めている。そのため、少年はここに来ればポケモンを強化することができた。周囲の友人からも差をつけられる。まだまだ世間が狭い彼にとって、これ程嬉しいことはない。


    「そういえば、おじさんこの前はありがとう。また僕、ポケモンバトルで友達に勝てたよ」

    「おお、そうかそうか。ギガインパクトはとても強力な技だからな」
     
    おじさんは皺を寄せて嬉しそうに笑い、少年の頭を撫でる。

    「ここに、見せてくれる物があるの?」

    「そうだ。これだな」
     
    おじさんは、わざわざ手袋をはめて棚に手を伸ばす。その様子から少年は、いかに貴重な物なのかを察することができた。
    紙でできた長方形の箱。その中の円盤は倉庫の照明を反射し、少年の目を軽く刺激する。箱も随分と黄ばんでおり、外には手書きで描かれたような文字で『わざマシン』と書かれていた。

    「これがわざマシンなの? 大きな箱だね」
     
    少年の頭をすっぽり覆うことができる大きさである。

    「そうだよ。これは発明家がわざマシンというものを開発した時、つまり、本当に一番最初の頃作られたわざマシンの一つだ」

    「そうなんだ、どうりで古いと思った」

    「今でもわざマシンはそれなりに高価だろう? 当時はもっと高かったんだよ」

    「もっと高かったって、どれくらい?」

    「そうだなあ、今お店で発売されているわざマシンを、五個はいっぺんに買えるだろうね」

    「そんなに高かったんだね。でもそんなに高かったら、誰も買わないんじゃない?」

    「そうでもないよ。買う人が本当に必要ならば、高い金を出しても手に入れたいと思うものさ。お前だって、欲しいゲームがあったらお小遣いを使うのを我慢するし、誕生日やクリスマスにお父さんやお母さんにおねだりするだろう。大人だって同じさ」

    「大人もおねだりするの?」

    「ああ、そういうことじゃなくてね。要するに、大人も子どもも、欲しい物に向かって努力するってこと」
     
    少年は首を傾げたが、何となく分かるかもと呟いた。

    「おじさん、これを買うのに幾ら使ったの?」
     
    彼は、少年の耳で購入した値段を教える。


    「もしおじさんが結婚していたら、お嫁さんに怒られちゃうね」

    「本当だな」
     
    手が届かない訳ではないが、一人の労働者が何ヶ月も働いてやっと受け取れる程のお金を使ったことに少年は驚きつつも、いつものことだなと思っていた。それだけこのおじさんが裕福なのは知っているからだ。

    「ねえおじさん、これって何のわざマシンなの?」

    少年が尋ねる。わざマシンが何故価値あるものなのか、それはわざマシンがわざのデータを収録してあるからだ。使う人が必要なわざが記録されていなければ、そのわざマシンを所持していても意味がない。
    時代によって変化はするものの、どんなわざが収録されているかは、番号によって区別されている。おじさんが大事に持つ大きな箱には、その番号が書かれていなかった。

    「これか。高い値段で買っておいてなんだが、実はこのわざマシンはポケモンに使うものとしてはそんなに価値がないんだ。当時としては、どうしてこんなわざマシンがあったのかよく分からないと言うコレクターもいるからね。このわざマシンは何十年も前の物だがちゃんと役目を果たすことができる。だからこそ、価値が跳ね上がっているんだ」

    「だからおじさん。中身はどんな技が入っているの?」
     
    焦らすおじさんに、少年は答えを促す。

    「これはね、当時カントー地方で発売されたわざマシンじゅう・・・」
     
    ここまで言った瞬間、倉庫に大きな音が響く。音はおじさんのズボンから聞こえてくる。わざマシンを元の場所に戻し、少年から少し離れた場所で携帯電話の着信に出た。


    「もしもし。はい、ええ―――――分かりました。直ぐに確認します」
     
    そう言い残すと、おじさんは電話を止め少年の頭を撫でながら言う。

    「悪い。ちょっと仕事の資料を確認してくる。直ぐに戻ってくるから、倉庫で好きな物を見ていてくれ。手に取る時は、ビニール手袋をして触ってくれな」
     
    いそいそと倉庫を出て行くおじさん。どうやら本当に急いでいるらしい。こういうことは今までにも何度か経験しているので、少年はタイミングが悪かった程度しか感じていなかった。

    広い倉庫の中、少年とコラッタが取り残される。話す相手がいなければ、この場所はとても静かな所だった。ここだけ時間が止まっていると言っても誰も疑わないだろう。
    自由に見ていてくれても良い。そう言われても、少年の心は先程のわざマシンに釘付けだった。

    このわざマシンには、どんな技が記録されているのだろう。

    おじさんはそんなに価値がないものと言っていた。けれど、あんなに大事に扱っていたのだから、物としての価値は高いことは少年にも理解できる。ポケモンのわざとして価値がないと言っていたが、それはバトルをする上での意味だろうか。それとも、日常生活をする上? いずれにしても興味がある。
    少年はコラッタを下ろし言われた通り使い捨てのビニール手袋をはめる。慎重に、壊さないようにそのわざマシンを手にとった。
     
    近くで見ると、いかに古い物なのかを再認識する。少し力を入れてしまえば箱が歪んでしまいそうだし、古い本のような匂いがした。

    箱を開けると、ディスクと共にボタンがあった。ゆっくりと赤いボタンを押す。
    ピピッ と大きな音が鳴り箱を落としそうになるが、きちんと箱に力を入れた。


    『わざマシン起動――――――が収録されています。ポケモンにわざを覚えさせる場合、ディスクを取り外しポケモンに当ててください』


    百貨店でアナウンスされるような、女性の聴き取りやすい声が備え付けのスピーカーから流れてくる。おじさんの言っていた通り、まだちゃんと使えるらしい。しかし、何の技がインプットされているか分からない。
    でもどうせ、ポケモンが覚えるわざなんて直ぐ忘れさせることができる。おじさんが言っていた通り本当に使えない技なら、直ぐに別のわざを覚えさせれば良い。少年は好奇心に負けてディスクを取り外し、コラッタの額に当てた。


    『確認しています――――コラッタ、ねずみポケモン。わざを覚えられます。わざのインプットを開始します』

     
    コラッタはわざマシンを使われることに慣れているからか、少年がわざマシンを当ててきてもじっとしている。少年の手の中にある箱は、カリカリと擦れるような音を立てながらコラッタに情報を送っていく。
    自分は、同級生は誰も手にすることができない貴重なわざマシンを使っているのだ。そう思うだけで優越感に浸ることができる。これでまた仲間に差をつけることができるかもしれない。考えるだけで、少年の胸は高鳴った。
    やがて倉庫に響いていた音が鳴り止んだ。終わったらしい。コラッタからディスクを外し、静かになったわざマシンを丁寧に棚へ戻したと同時におじさんが戻ってきた。


    「いやあ、ごめんね。ちょっと仕事でトラブルが起きたみたいで」
     
    穏やかな笑顔を少年に向ける。少年は思わず目を逸らす。おじさんの方は、少年のそのほんの少しの変化を見逃さなかった。
    おじさんは先程自分で戻したわざマシンを見つめ、その後少年に視線を当てる。

    「使ったのかい?」

    クリスマスプレゼントもお年玉も、そして誕生日プレゼントも欲しい物をくれる。いつも優しいおじさん。そんな彼が怒っている。そのことに気づいた少年は、俯いたまま動けなくなった。

    「本当のことを言いなさい」

    更なる圧力。ついに観念して、顔を下げたまま謝る。

    「ごめんなさい。勝手に使っちゃったんだ、あのわざマシン」

    おじさんがため息をつく。


    「良かったね、君が本当の息子なら怒鳴り散らしているよ」

    おじさんは屈み、少年と目線を合わせた。

    「なんでおじさんが怒っているか分かるかい? 人の断りなしにその人の物を使ったからだ。そういうのは卑怯っていうんだよ」

    「ごめんなさい」

    「今度そういうことしたら、二度とここには来ちゃいけないよ」
     
    少年は涙目になるが、男が簡単に泣くなと更に喝を入れる。彼は素直に頷いた。
    おじさんは頭をかく。


    「参ったなあ。まあ壊されるよりはマシだったか・・・」

    少年は、彼が言っている意味が分からなかった。

    「実はね、昔のわざマシンというのは使い捨てだったんだ。一度ポケモンにわざを教えたら、そのわざマシンは二度と使えないんだよ」
     
    もうこのわざマシンは使えない。その事実を知った瞬間少年は自分がとんでもない過ちを犯したことに気がついた。

    「それは本当に初期型だからね、メーカーも復刻していないしリサイクルもできないんだ」

    「ごめん、なさい」

    「済んでしまったことは仕方ない。次に同じことをしなければ良いんだ」
     
    コラッタは事態が飲み込めず少年の足に寄り添っている。

    「ほら、コラッタもいつまでもくよくよするなってさ」

    「うん、おじさん本当にごめんなさい」

    「反省しているなら良い。同じことはしないことだ」
     
    はい と返事を返して、少年はコラッタを抱き上げて頭を撫でる。コラッタは嬉しそうに喉を鳴らしている。



    「でも本当にそのわざマシンを使ってしまったのか。きっと、直ぐにわざを忘れさせたくなるよ」

    「とっても貴重なわざマシンを使ったもの。忘れさせないよ」

    「そう言ってくれるのは嬉しいんだがなあ、いつまでその志が持つことやら」

    「どうして? そんなにそのわざマシンは使えないの?」

    「ああ、そのわざマシンの番号は12。当時は、みずでっぽうというわざが記録されていたんだ」





    ――――――――――

    何故わざマシンにみずでっぽうがあったのか。初代ポケモンを知っているなら同じ疑問を持った人がいると思います。
    因みに私は、みずでっぽうはいつもコラッタに覚えさせていました。
     
    フミん


    【批評していいのよ】
    【描いてもいいのよ】


      [No.2493] バルーンフライト 投稿者:aotoki   投稿日:2012/06/30(Sat) 20:06:40     88clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    はじめてフワンテで飛ぶことを知ったのは、まだソノオにいた11歳の頃。


    「なぁ…ホントに大丈夫なのか?」
    「大丈夫だって。向こうから手つかまれても逆に俺らが振り回せるって、兄貴の図鑑に書いてあった」
    「それに俺らも生きてるし、な」

    たまに川沿いの発電所にやってくるフワンテの手を捕まえて、5秒キープする。そんな、田舎町のガキの精一杯
    の度胸だめしがきっかけだった。たしかあの時は仲のいい奴らに誘われて、すこしドキドキしながら川まで歩い
    ていったんだっけ。

    かすれた看板の近くで、紫色のポケモンがふよふよと漂っている。
    「…ほら。今後ろ向いてるからチャンスだぞ」
    「えっ、でも・・・・」
    「ニツキが成功すれば5レンチャンで、タツキたちの記録抜けるんだよ〜。だから、ほら行っちゃえって」
    「う。・・・・うん。じゃあ…行くよ」
    友達の一人に背中を押されて、僕はゆっくりフワンテへの一歩を踏み出した。

    僕の家は何故か妙なところで厳しい家で、その時一緒に行った友達含め、周りの奴らはみんなはじめてのポケモ
    ンを貰っていたんだけれど、その頃の僕はまだポケモンを貰えていなかった。だから友達よりもずっと、フワン
    テとの距離感がやけに大きくて、度胸だめし以前のところで緊張したのを今でも覚えている。
    まだまだ幼かった僕の手が、フワンテの小さな手と視界の上でようやく重なったとき、突然フワンテがくるりと
    こちらを向いた。
    「ぷを?」


    フワンテと目があった瞬間の衝撃は、今でも軽くトラウマだったりする。


    「うっ、うわぁぁぁあ!?」「ぷををを?!」
    悲鳴を上げながら慌てて後ずさる僕に、フワンテも軽く飛び退く。というか明らかに逃げようと浮き上がる。
    「ヤバい!逃げられるよコレ!」「馬鹿!はやく手掴め!!」

    ビビりながらそれでもフワンテに手を伸ばしたのは、僕なりのプライドってやつだったのかもしれない。
    必死に伸ばした僕の手はふたまわりは小さいフワンテの手をがっしりと捕まえて、なんとかフワンテの逃亡は阻
    止出来た。
    「ぷををを〜!!」
    ぐるぐると回りながらフワンテは必死に逃げようとする。でも5秒キープのためには、この手を離すわけにはい
    かなかった。


    「1!」友達のカウントが始まる。


    「2!」体を膨らませて、フワンテがさらに逃げようとする。


    「3!」「ぐうぅぅぅ…」僕は必死に足を踏ん張る。内心、魂を持っていかれるんじゃと思いながら。


    「4!」ずりずりと足が地面を滑りはじめる。なんだよ振り回せるなんて嘘じゃないか!そんな図鑑と友達への
    文句を考えられたのもそこまでだった。


    「5!」

    僕の足が、地面から離れた。


    「・・・・え?」
    上を見上げると、眩しい位の青空。

    下を見下ろすと、一面に広がる花畑。

    「うそ・・・・だろ?」
    信じられないことに、僕はフワンテに掴まって、空を飛んでいた。

    今さらになって考えてみると、飛び降りて怪我しないくらいの高さだったんだからそんな風景見えるはずはない
    んだけど、とにかく11歳の僕には、見慣れたソノオのあれとは違う、もっと別な感じで綺麗な花畑が見えた。
    風もないのに、何故かフワンテは滑るように進んでいって、花畑は僕の足元を過ぎていく。鳥ポケモンで飛んだ
    とき―初めて飛んだのは父親のムクホークだったっけ―とは違う、あくまでも穏やかな、なめらかなフライト。
    「すっげぇ・・・・」

    どれくらい、僕はフワンテに掴まっていたんだろう。

    「ニツキ!いいから手離せ!」「まだそんな高くないから今なら降りれるぞ!」
    その声に反射的に手を離した僕は、無様に花畑…ではなく草の生えた地面に転げ落ちた。

    少し遠くから、友達が走ってくる。
    「おい大丈夫か!?」
    「な・・・・なんとか」
    くらくらする頭で見上げた空には、天高く舞い上がるフワンテ。
    「すっげーよニツキ!お前空飛んでたんだぞ!」
    「うん…ほんと・・・・すごかった」
    友達からの心配と称賛に、僕は上の空で答えていた。


    『3秒間のフライト』。
    この僕の記録はしばらく抜かされることはなくて、タツキがフワンテを追いかけるあまり発電所の機械にぶつか
    って壊してしまい、大人にこの遊びがバレて度胸だめし自体が無くなることで、めでたく殿堂入りとなった。

    あの後僕はもう一度一人で発電所に行ったけど、フワンテはいなかった。


    ****
    あれから12年。

    「よーし、いくぞフワライド!」「ぷをを〜〜!」

    僕はわざわざフワライドで空を飛ぶ、風変わりなトレーナーとなっていた。
    あの時のように手に捕まる訳じゃなくてフワライドに乗っかる形でのフライトだけど、それでもあのふよふよと
    浮かぶ感じ、楽しさは変わらない。今はソノオからノモセに引っ越して、すっかりあの頃を思い返すこともなく
    なったけど、このフワライドと子どものフワンテだけが子どものころの僕を忘れさせないでくれていた。
    トレーナーとしての仕事も上々で、今話題のフリーターになることもなく安定した暮らしを送れている。もちろ
    んパートナーたちも増えて、うるさいながらも楽しい暮らしだ。
    ただひとつ問題なのは――


    『何?またアンタ彼女にフられたの?』

    電話の向こうで、コハルが呆れたような口調で言った。
    「うん……」『もうこれで何回目よ?』
    「3回目…」『嘘。4回目よ。もー、アンタが失恋した月は電話代が上がるから迷惑なのよ』
    「でもさ…こういう愚痴聞いてくれるのも言えるのもお前だけなんだよ」

    コハルはバイト中に知り合った数少ない…というか唯一の女友達で、こんな僕と長々と電話で話してくれる良い
    友達だった。

    『…まぁいいけど。で何?また原因はアレ?』
    「そう…アレ。」僕はフローゼルとじゃれあうフワライドに目をやった。
    『アンタさぁ…そうやって妙に見栄張るからダメなのよ』
    「だってデートに空から颯爽と登場するのは男のロマンだろ?」
    『それでデートに2時間遅れるんだったらロマンもムードも皆無よ』
    それに僕は枕をバンと叩いて応じた。
    「しょうがないじゃないか!フワライドで飛ぶんだから!それくらい大目に…」
    『でもフラれたのは事実でしょ?女からすればデートに遅れる男はサイテーなのよ。分かる?』
    「う゛っ」
    何回も言われてきたフラれ文句を突きつけられ、僕は布団に撃墜される。
    「……でも」『でもじゃない』

    そう、僕のフワライド――というかフワライドのそらをとぶは遅すぎるのだ。それも洒落にならないレベルで。
    飛んだのに遅刻は当たり前。下手すれば風に流されあらぬ方角へ飛んでいき、家に帰るのもままならななくなる

    もう何回『コトブキで待ち合わせね!』と言われて絶望に落ちたことか。
    もし僕がトバリかナギサみたいな都会あたりに住んでいたら、遠出の心配をする回数もぐっと減ってたと思うん
    だけど、残念ながら僕の住まいはノモセ。おまけにここシンオウ沿岸部はわりに風が強い場所で、フワライド乗
    りにはかなりつらい場所なのだと、ノモセに住まいを見つけてから知った。

    デートはおろか、普段の外出もままならない。

    この大問題に、僕は決着をつけられていなかった。

    『いいかげん諦めたら?アンタ、ペリッパー持ってるでしょ?』
    「……ねぇコハル。僕の体質分かって言ってるの?」
    『分かってるわ』
    コハルはしれっと言った。
    『でもそこはもう割りきっちゃうしかないんじゃない?』
    「…確かにデートに遅れる男はサイテーかもしれない。それは認める。でも、デートにベロンベロンに酔ってく
    る男も僕からしたらサイテーだ」
    たしか父親のムクホークに乗せられた時も、酔っちゃって大変だったっけ・・・・僕はぼんやり昔のことを思い
    返す。
    『・・・・まぁね。それもそうね』
    そういえば、とコハルは言葉を次ぐ。
    『アタシの知り合いの医者、そういう体質に詳しいらしいんだけど・・どうする?』
    何回も言われてきた事実を突きつけられ、僕は沈黙する。

    助けを求めるように見た部屋の床には、ふわふわと飛び回るフワライドの影が踊る。その影に一瞬あの青空と紫
    色の輝点が写った。それと花畑も。

    「・・・ゴメン、コハル。」
    僕はあの夢のような、夢だったかもしれない、あのフライトが忘れられないんだ。
    「やっぱ…僕はフワライドで飛びたいんだ」
    『・・・・アンタさぁ』
    「分かってるよ」僕は苦笑いしながら答えた。そうやって意地張るからダメなんだって。
    『・・・・分かった。とにかく愚痴だけは聞いてあげるから、あとは自分でなんとかしなさいよ。いいわね?』
    あと電話代はレストラン払いでね、と言い残し、コハルはブツッと電話を切った。

    「・・・・どうしよう…」
    布団に寝転がった僕を、ぷを?と上からフワライドが覗きこんできた。心なしか心配そうな目をしていて、僕は
    申し訳なさで一杯になる。
    「ん?コハルがななつぼし奢れってさ。電話代の代わりに」
    あくまでも明るくそう言うと、あのレストランの高さを知っているフワライドは、ぷるぷると頭・・・・という
    か顔・・・・というか体を振った。
    「だよなぁ・・・・ちょっとアンフェアだよね」
    ぷぅ、と同意するかのように少し膨らんだフワライドは、開けてた窓から入ってきた夜風に煽られ、部屋の向こ
    うまで飛んでいった。
    「・・・・ホント、どうしよう」
    昔読んだ本にも、こんなシーンがあった気がする。たしか、泥棒になるか否かを延々と悩んで、試しに入った家
    で結論が出る話。
    「・・・・あ、そうだ」
    あることを思い付いた僕は、布団から勢いよく起き上がった。その風に煽られたのか、またフワライドが少し飛
    んでいく。

    ****
    「ん〜・・・・ないなぁ・・・・・・・・」
    かれこれ2時間、僕はパソコンとにらみあっていた。

    要するに決断にはきっかけが必要。そんな訳で僕の背中を押してくれる情報を得るため、僕は検索結果を上から
    順にクリックしていた。

    Goluugに入れたキーワードは、『フワライド』『飛行』『悩み』。

    でも引っ掛かってくるのはそういうフワライド乗りのコミュニティやサイトばかりで、そういうコアなファンは
    僕の悩みを「それがロマン」と割りきってしまっていたのだった。でも残念ながら僕はフワライドのロマンより
    、男としてのロマンや人間としての効率の方をまだ求めたい。

    何十回、薄紫色のサイトを見ただろう。白とグレーを基調にしたそのサイトは、唐突に現れた。
    「・・・・なんだここ」


    『小鳩印のお悩み相談室』。


    見たことのないポケモンの隣に、そのサイトの名前が控え目に記されていた。
    見知らぬ鳥ポケモンはこういう。

    『ようこそ。このサイトはフリー形式のお悩み相談サイトです。僭越ながらこのピジョンが、アナタの悩みの平
    和的解決のため、メッセージを運ばせていただいております。もし、なにかお悩みのある方は、この下の「マメ
    パトの木」に。お悩み解決のお手伝いをしてくださる方は、「ムックルの木」をクリックしてください。
    私の飛行が、アナタの悩みを少しでも軽く出来ますよう・・・・』

    どうやらこのサイトは、何回もでてきた「お悩み」と最後の一行の「飛行」に引っ掛かったらしかった。
    「お悩み相談室・・・・か」
    最近はこういう体裁を装って個人情報を盗むサイトがあるらしいけど、緊張しながらクリックして現れたフォー
    ムには、ニックネームと悩みを書く欄しかなくて、どうも犯罪の匂いはしなかった。
    「……やってみる?」
    僕は画面の明かりに照らされるフワライドの寝顔を見る。ただのイビキかもしれないけど、ぷふぅとフワライド
    は答えてくれた。
    「・・・・よし」
    僕はキーボードに指を当てた。
    ニックネームは少し迷ったけど、『小春』にした。


    ****

    そらをとぶが遅すぎます

    フワライドのそらをとぶは遅すぎてまともな移動手段になりません。
    デートで颯爽と空から登場、のようなことをしたかったのですが、フワライドに乗っていったところ約束時間を
    かなり過ぎてしまいました。彼女に振られました。気分が沈んだのでそらをとぶで帰ったのですが、夕暮れ時に
    ぷかぷか浮いているのが心にしみました。
    リーグ戦でも空から颯爽と登場がしたかったのですが、あまりにもゆっくりすぎるそらをとぶで遅刻しました。
    不戦敗で夕日が心にしみました。

    フワライドに乗り続けたいです。でも遅すぎます。フワライドをそらをとぶ要員にしている方は、どんな対策を
    とっているのでしょうか?
    お答え、よろしくお願いします。

    補足
    鳥ポケモンに乗ってそらをとぶと酔います。

    ****


    「・・・・お?」
    意外なことに、返事はすぐ帰ってきていた。


    『もしあなたが鳥ポケモンをお持ちなら、「おいかぜ」と「そらをとぶ」を覚えさせることをお勧めします。
    おいかぜをしてもらいながら併走(併飛行?)してもらえば、かなり早くなるかと思います。
    あなたを乗せて飛べなかったポケモンも、きっと満足してくれるはずです。
    ・・・・ただし飛ばしすぎにはご注意を。』


    「そうか・・・・おいかぜ、かぁ」たしか効果は『味方のすばやさをしばらく上げる』、だったなと僕はおぼろ
    気な記憶を思い出した。
    というかリーグに再挑戦しようとしている身なのにこんな技の記憶がテキトーでいいのだろうかと一人思う。
    そういえばフワンテ時代に「覚えますか?」と聞かれて、どうせダブルバトルはしないからとキャンセルした覚
    えがある。

    そこでもうひとつ、僕は思い出したことがあった。

    この間引っ越してきたオタク風の男。たしか技マニアとか言っていた気がする。なんか技を思い出させるとか、
    させないとか言っていて・・・・
    「……よし」
    僕は一つこの作戦にかけてみることにした。
    Goluugのワード欄を白紙に戻す。新しく入れたのは、さっきみたフワライド乗りのコミュニティサイトの
    名前だった。

    ****
    「よし・・・・行きますか」

    僕はバックパックのバックルを締め、天高くボールを放り投げた。
    「フワライド!フワンテ!飛ぶよ!」「ぷををを!!」「ぷぉっ!」

    僕はフワライドの頭に飛び乗り、空へ舞い上がった。
    冬だというのに暖かいシンオウの空。けどテンガン下ろしの風は冬のままで、僕らに吹き付けてくる。案の定フ
    ワライドの進路がやや東に逸れた。
    僕はあの小鳩の言葉を慎重に思い出す。
    「フワンテ!右舷に回れ!」「ぷお!」
    フワライドより小さい体のフワンテは機動力が高い。テンガン下ろしに煽られながらも、なんとか僕らの右斜め
    前、指示通りの位置についてくれた。
    「よし!そこで『おいかぜ』!」
    内心上手くいくかと思いつつ、僕はフワンテにやや鋭めに命令する。
    すると―

    「ぷおわ!」

    ごうとフワンテから信じられないくらいの強風が吹き出してきた。
    「うおっ?!」僕は一瞬風に浮いた体を掴み戻し、なんとかフワライドに掴まり直す。おいかぜってこんなすご
    い技だったっけ?そう思ったのもつかの間、視界がぐんと上に煽られた。

    「お?」
    下を見ると、僕は空を飛んでいた。
    今までにないくらい、高く。今までにないくらい、速く。
    遠い街並みの中にも一瞬、花畑が見えた気がした。

    「お・・・・おおおぉ!!」

    おいかぜに乗って、フワライドはテンガン山にぐんぐん迫っていく。風に流されるのではなく、あくまでも乗っ
    て。フワライド乗りのサイトで知ったんだけど、フワライドの持つあの黄色い四枚のひらひらは風の流れを捕ら
    えるためのもの、つまり翼に近いものらしい。僕にとっては風と恋への敗北旗でしかなかった翼は、今飛ぶため
    に意思をもってはためいていた。

    「ほんとに・・・・ほんとに空飛んでるぞフワライド!」
    僕はフワライドの紫の体を思わず叩いた。
    「ぷを〜!」
    少し不機嫌そうな、でも楽しそうな声をあげてフワライドはさらに速度を上げる。昔感じたムクホーク羽ばたき
    とは違う、水面を滑るようなフライト。
    「ぷぉ〜♪」
    僕らの脇を、フワンテが楽しそうに回りながら追い越していく。
    あの日の僕が掴まっている気がして、僕はしばらくフワンテの手を目で追いかけていた。

    ****
    「よし・・・・見えてきた」「ぷぉっ!」「ぷををー!」
    遠くのテレビ塔を見つめながら、僕は嬉しさを噛み殺していた。ここまで2時間。今までの最高記録、いやもう
    別次元の速さだ。
    途中一回PP補給でヒメリの実を使ったけど、これくらいなら二人にも負担を掛けないだろう。


    フワライドと一緒に、飛び続けることが出来る。


    それだけでもう、涙が出そうだった。いやもう出てたのかもしれない。けどこれからのことを考えると、泣き顔
    をつくる訳にかいかなかった。
    「・・・・じゃあ後少しだし、おいかぜ使い切っちゃうか!」
    「ぷぉぉっ!」
    勢いよく吹き出す風に乗って、僕らは塔の立つ街を目指す。
    幸せの名前がつけられた、僕にとっては不幸の街。でも今日からは幸せを受け入れられるかもしれない。

    街の広場が見えてくる。その時、僕の頭に一抹の不安がよぎった。



    (――止まるの、どうしよう)



    「危ない!」
    その声に反射的に振り向いた僕は、無様に花畑・・・・ではなくタイルの地面に転がり落ちた。僕が落ちたおか
    げでフワライドは地面に激突しなくてすんだけど、僕は盛大に顔を擦りむくことになった。
    少し遠くから誰かが駆け寄ってくる。

    「ちょっと何・・・・・・アンタ何してんのよ!」
    顔を上げると、コハルが呆れたような顔で僕を見下ろしていた。

    腕時計を見ると、10時を少し過ぎた位置を指している。

    「・・・・ゴメン、遅れちゃった」地べたに転がりながら、僕は曖昧に笑う。
    「遅れすぎよ、バカ」
    フワライドがコトブキのビル風に揺れる。少しお洒落をした君は、やれやれと笑ってくれた。


    "following others without much thought" THE END!


    【あとがきと謝辞】
    初めましての方は初めまして。
    また読んでくださった方はありがとうございます。aotokiと申す者です。
    ねぇこの話って長編?短編?どっちなの!!この中途な長さをどうにかしてぇぇ(ry

    ・・・・まず、この話の原案となる素敵な悩みを下さった小春さん、そしてお悩み相談企画を立ち上げて下さっ
    たマサポケ管理人のNo.017さんに感謝の意を述べたいと思います。
    お二人がいなかったらこの物語は出来ませんでした。本当にありがとうございます。
    果たして私の愚答が小春さんの悩みを解決出来たかは分かりませんが・・・・


      [No.2492] 絵画『悲しい少年』 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/06/30(Sat) 14:18:35     71clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ※アテンション!
    ・BW2に登場する『ストレンジャーハウス』のネタバレを多少含みます
    ・捏造バリバリ入ってます
    ・毎度のことながらアブノーマルな表現があります
    ・苦手な方はバックプリーズ










    ――――――――――――――――――――

    火山に近い田舎町。植物は特定の種類しか育たず、赤い岩石や土、独特の暑さが訪れる人間を拒む。雨が降る日より火山灰が降る日の方が多い、とはこの土地に昔から住む人間の談である。そこは活火山に面した場所であり、訪れる人間を選ぶ場所であった。
    だがそういう土地なわけで、学者やバックパッカーはひっきりなしに訪れる。彼らが落としていくお金でその交通も何もかも不便なその町は成り立っていた。

    「暑いし、熱い」

    不機嫌そうな声で郊外を歩く一つの美しい人影。夜になると白い仮面で片面が隠れるその顔は、今は深く帽子を被ることで顔を隠している。腰まである長い髪は、頭の高いところで一つにまとめている。こうでもしないと辿り着く前に倒れてしまいそうだったからだ。
    彼女――レディ・ファントムは地図を取り出した。フキヨセシティからの小さな旅客機にのって四十分と少し。同乗していた客はこぞって火山に向かったが、彼女はこんな暑い日にそんな熱い場所に行くほど酔狂な人間ではなかった。
    行く理由があったのは、とある廃屋だった。

    『たぶん霊の一種だろう』

    体の両サイドを大量の書物に囲まれながら、マダムは煙管をふかした。執事兼パシリであるゾロアークが、淹れた紅茶にブランデーを数滴垂らし、レディの前のミニテーブルに置く。一口飲む。本場イギリスのアフタヌーンティーでも通用する美味しさだが、イライラはおさまらない。
    今日はゆっくりホテルの一室で過ごそうと思ったのに、突然現れた男(ゾロアークが化けた姿)に無理やりここ……黄昏堂に連れて来られたのだ。
    モルテが側にいないことも入れておいたのだろう。ポケモン、しかもマダムの我侭を全て聞くことの出来る者の力は凄まじかった。
    あれよあれよと椅子に座らされ、苦い顔で無言の抗議をしたが全く効かない。ふと横を見れば、ゾロアークが疲れた顔をしていた。相当こき使われているのだろう。なんだか哀れに思える。

    『ここ最近、ある廃屋となった屋敷で怪奇現象が起きているという噂がある。入った者の話では、昼間だというのに家具がひとりでに動いたり、別の部屋から入ってまた出た時では家具の位置が違ったりしていると』
    『で?』
    『そんな事が起きているということは、何らかの力は働いているんだろう。まだ幽霊の類の目撃情報はないが』

    ほら、と渡された地図に示された場所は見たことの無い町の近くだった。ドが付く田舎すぎて、認識していなかったのだろう。説明文を読めば、活火山のふもとにあり、その熱で作る伝統的な焼き物が有名だという。
    そしてその屋敷は、悲しい事件があったとされ、誰も寄せ付けないと言われている。異邦の家―― 通称、『ストレンジャーハウス』。
    紅茶をもう一口啜る。地図を机の上に投げ出す。

    『行ってやるよ』
    『よろしい。原因解明とその源を持って来てくれ』
    『幽霊捕まえんの』
    『ゾロアーク、お前も行ってこい』

    そんなやりとりがあったのが数時間前。今レディは土壁で造られた、ここらの土地独特の家の前に立っている。他の家は皆町にあるというのに、ここだけ離れた場所に建てられていた。
    ふとゾロアークを見ると、不思議な顔をしていた。苦い顔、とでも言うべきだろうか。こんな顔を見るのは初めてだ。

    「どうしたの」
    『いや…… どうも気分が優れなくてな』
    「ああ、確かにこの家からは変なオーラが漂ってくる。何かいることは間違いないだろ」

    さび付いたドアノブを捻る。耳を塞ぎたくなるような音が響く。数センチあけて中を確認。よく見えない。
    そのままドアを半分ほど開け、持参した懐中電灯のスイッチを入れた。灯に照らされ、埃が漂っているのが見えた。
    どうやらしばらく誰も入っていないらしい。床に降り積もった埃には、足跡は無かった。

    「よくこんな所取り壊さずに放っておいたな」
    『取り壊せないらしい。何度か試みた会社もあったようだが、そうする度におかしな事故が起きる』
    「ありがち」

    今レディ達が立っている場所が、リビング兼玄関。家具はソファ、テーブル、ランプ、観賞用の植物。どれもこれもひっくり返ったり倒れていたりして乱雑なイメージを与えてくる。
    向かって両サイドが二階へと繋がる階段になっていた。ソファが倒れていたが、これくらいなら飛び越えていける。
    地下へと続く階段は、図書室へと繋がっているらしい。本好きなレディが目を輝かせた。

    「ここっていつから建っているんだろうね」
    『はっきりしないが、二十年は経っているだろう。建物の痛み方から大体の時間が推測できる』
    「ふーん。……とりあえず二階に行こうか」

    ソファを飛び越え、階段を上ろうとした時何かの視線を感じた。振り向くと、どうやって飾ったのか一枚の人物ががこちらを見ている。いや、『見ているように』見えるだけだ。ゾロアークも気付いたらしい。技を繰り出そうとする彼を、レディはとめた。流石にこんな辺鄙な場所に近づく物好きはそうそういないだろうが、万が一気付いて近づく一般人が出てきては困る。
    絵の中にいたのは男だった。自画像だろうか。年齢は二十代前半。そう描いたのか本当にそうなのかは分からないが、女とも取れるくらい美形だ。
    ふと、気付いたことがあってレディはゾロアークに話を持ちかけた。

    「ここに住んでいた人間って?」
    『さあ……。マダムは知っているかもしれないが、俺は知らん。ただ、空き家になってからの時間の方が長いことは確かだ』

    絵からの視線は消えない。どうやら本当にここには何かいるらしい。それも相当に高い力を持った物。自分だけでなく『あの』マダムに仕えるゾロアークも見えていないのだから、そこらの未練がましく街をさ迷っている普通の霊とは違う。
    モルテの顔が浮かんだ。彼は今日も、このクソ暑い中で魂の回収を行なっているのだろうか。そういえばこの時期は海難事故や熱中症で特定の年代の魂が多くなるって言ってたな。特に彼らは自分が死んだことを気付いてない場合が多いから、説得にも苦労すると――

    『レディ』

    ゾロアークの声で我に返った。三つある入り口のうちの一つ。真ん中。そこで彼が手招きしている。

    『ここから気配を感じる』
    「確かにね。……でも」
    『ああ。さっきの絵画とはまた違う気配だ』
    「やだな。まさか別々の霊が同じ家に住み着いてんの」

    ありえない話ではない。だがそうなると厄介なことになる。同じ屋根の下にいても、同じ考えを持つ霊などいないのだから。そこらは生前と同じである。
    そっとドアノブに手をかける。特に拒絶うんぬんは感じない。そのまま開ける。

    「!」

    流石に驚いた。ドアを開いてまず目に入ったのは、キャンバスに描かれた少年の絵だったからだ。台に立てかけられ、その台の前には椅子がある。床には木製のパレットと絵筆。ただし埃が降り積もっていて、絵の具も乾いていた。
    美術室のような匂いがする。長い間開けられていなかったのだろう。様々な匂いが混じった空気が、一人と一匹の鼻をついた。
    ハンカチで口と鼻を押さえ、ドアを全開にして中に入る。キャンバスの中の少年は美しかった。美少年、という言葉が正に相応しい。イッシュ地方では珍しい、黒い髪と瞳の持ち主。少し寂しげな、悲しげな瞳がレディを見つめている。

    『……美しいな』
    「やっぱ君でもそう思うか。マダムが見たら絶対欲しがるだろうね」

    いささかもったいない気もするけど、という言葉をレディは飲み込んだ。マダムが美しい物や人に並々ならぬ関心があるのは、以前の『DOLL HOUSE』の件で分かっている。というか、分かってしまった。あまり知りたくなかったが、知ってしまったものは仕方がない。
    ぐるりと部屋内を見渡す。描きかけのキャンバスが積まれていた。今まで使っていたであろう油絵の具のセットもある。その中の一つのキャンバスを手に取り――声が詰まった。

    『どうした』
    「……なるほどね、そういうこと」

    こほんと咳払いをする。彼女の常識人の一面が現れた瞬間だった。裏返しにして、ゾロアークに渡す。少々訝しげな視線を送っていた彼の顔色が変わった。
    その少年の絵であることに変わりはない。だがそこに描かれた少年の下書は、裸だった。別室だろう。ベッドの上でシーツにくるまり、妖艶な笑みを向けている。そこまで細かく描けるこの作者にも驚いたが、少年がそんな顔を出来ることが驚きだった。
    何故――

    「天性の物か、調教されたか。いずれにせよ、この絵の作者は相当その少年に御執心だったみたいだな」
    『……』
    「どうする?マダムにお土産に持って帰る?」
    『冗談だろ』

    レディが笑った。それに合わせて、もう一つの笑い声が聞こえてきた。部屋の窓際。その少年が笑っていた。同じ黒髪に黒い瞳。身長はレディの胸にかかるくらい。一五〇といったところか。
    白いシャツにジーパンをはいている。視線に気付いたのか、こちらを見た。

    「こんにちは」
    『こんちは』

    少年が歩み寄ってきた。美しい。絵では表現しきれないほどのオーラを纏っている。どんな人間でも跪きそうな、カリスマ性。プチ・ヒトラーとでも呼ぼうか。
    少年が横にあった絵を見た。ああ、という顔をしてため息をつく。

    『この絵、欲しい?』
    「くれるならもらいたいかな。私の趣味じゃないけど、知り合いにこういうの好きな奴がいるんだ」
    『ふーん。ねえ、アンタ視える人なんだね』
    「だからこうして話してるんだろ」
    『それもそうだね』

    飄々としている。ゾロアークは二人の会話を見つめることしかできなかった。比較的常識を持ち合わせている彼は、彼女のように『視える者』として話をすることが出来ない。おかしな話だが、この少年が持ち合わせているオーラに圧倒されていた。

    「名前は?私はレディ・ファントム。そう呼ばれてる」
    『綺麗な名前だね。俺は特定の名前はないよ』
    「どうして?」
    『分からない?その絵を見たなら分かると思ったんだけど』

    ゾロアークの持っている絵。それを聞いて彼は確信した。おそらく、この少年は――

    『娼婦、のような立場だったのか』
    『そーだよ。地下街で色んな人間を相手にしてた』
    「両方?」
    『うん。物心ついた頃にはそこにいた。昼も夜も分からない空間でさ。唯一時間が分かることがあったら、お客が途切れる時だよ。今思えばあれが朝から昼間だったんだろうね。皆地上で仕事してくるんだから』

    昼と夜で別の顔を持つ。街だけでなく、人も同じらしい。聞けば、彼はある一人の男に見初められてここに来たらしい。その男は画家で、また本人も大変な美貌の持ち主だったという。
    そこでレディはあの肖像画を思い出した。この家は、あの男の家だったようだ。

    「で、何で君は幽霊になったの」
    『ストレートだね……まあいいや。あの人は一、二年は俺に手を出さなかった。毎日のように絵のモデルにはなってたけど、それもそういう耽美的な絵じゃない。色々な場所に連れて行ってもらったよ。向日葵が咲き誇る高原とか、巨大な橋に造られた街とかさ。そこでいつもキャンバスを持って絵を描いてた』
    「その絵は?」
    『そこに積み重なってるキャンバスの、一番下の方』

    ゾロアークが引っ張り出した。向日葵の黄色と茎の緑、空と雲のコントラストが美しい。その向日葵の中で、彼は微笑んでいた。
    絵によって服装も違った。春夏秋冬、季節に分けて変えている。相当稼ぎはあったようだ。

    『二年半くらい経った頃かな。あの人が親友をこの家に連れてきたんだ。同い年らしいんだけど、全然そんな雰囲気がなかった。むしろ二十くらい年上なんじゃないの、っていう感じ』
    「老け顔だったの?」
    『うん。でもとってもいい人だった。頭撫でられてドキドキしたのはその人が初めてだったよ』

    色白の頬に少しだけ赤みが差した。年相当の可愛らしさに頬が緩みそうになるのを押える。一方、ゾロアークは嫌な空気を感じていた。何と言ったらいいのだろう。嫌悪感、憎悪、歪んだ何か。そんな負の感情を持った空気が、何処からか流れ込んでくる。
    レディも気付いていた。だが彼を不安にさせないため、話を聞きながらも神経はその空気の方へ集中させている。

    『それで、時々その人に外に連れて行ってもらうことが多くなった。その人が笑ってくれる度に嬉しくなった。――今思えば分かる。俺、その人が好きだったんだ』
    「……」
    『気持ち悪い?』
    「ううん。誰かを好きになるのは素敵なことだと思う。だけど」
    『分かった?その通りだよ。その時期からあの人の様子がおかしくなった。今までとは違う絵を描くようになった。当然、モデルとなる俺にも――』

    思い出したのか、肩を少し震わせる。裸でシーツを纏い、妖艶に微笑む絵。だがその心の中は何を思っていたのだろう。想像できない。

    『痛かった。熱くて、辛かった。でもあの人の顔がとんでもなく辛そうで、泣きたいのはこっちなのに拒めなかった。そのうち外に出してもらえなくなって、ただひたすらあの人の望むままになった』
    「……」
    『この絵』

    悲しげな光を湛える瞳。その瞳は、今レディが話している少年がしている目と同じだった。

    『この絵は、俺が死ぬ直前まで描かれていた。あの日、俺はものすごい久しぶりに服を着せられてそこに立っていた。あの人の目はいつになく真剣で、何も喋らずに絵筆を動かしてた。
    俺はどんな顔していいか分からなくて、ずっとこの絵の表情をしてた。
    そして何時間か経った後――」

    彼は立ち上がった。そのまま自分の方へ近づいてくる。ビクリと肩を震わせる自分を彼はそっと抱きしめた。予想していなかったことに硬直し、自分はそのままになっていた。
    首にパレットナイフが押し付けられていたことに気付いたのは、その数分後だった。悲鳴を上げる前に彼が耳元で呟いた。

    『――愛してるよ、ボウヤ』


    「……歪んだ愛情の、成れの果て」
    『その後は覚えてない。ただ、俺が死んだ後にあの人も死んだ。それは確かだ。ただ何処にいるのかは分からない』
    「……」
    『レディ』

    ゾロアークの声が緊張感を纏っていることに気付く。と同時に、空気が重くなった。ずしりと体にかかる重圧。少年も気付いたようだ。
    火影を取り出す。そのまま部屋の入り口に向ける。彼は自分の後ろに庇う。
    入り口から吹き込む風。その感覚に、レディは覚えがあった。

    「……『あやしいかぜ』」

    突風が吹いた。不意をつかれ、そのまま後ろにひっくり返る。一回転。体勢を立て直して前を見据えれば、何か黒い影がこちらを見ているのが分かった。さっき肖像画から感じた物と同じだ。ということはやはり――

    「しつこい男は嫌われるよ」

    ゾロアークが『つじぎり』を繰り出した。相手はポケモンではない。だが攻撃しなければまずいことを本能が察知していた。効いているのかいないのか、相手は怯まない。
    念の塊。そう感じた。死んで尚、この少年への執着を捨てきれない、哀れな男の――

    「こいつの本体って何処」
    『肖像画じゃないのか』
    「……」

    分かってるならやれよ、とは言えなかった。この塊が邪魔なのだ。レディはカゲボウズを連れてこなかったことを後悔した。彼らにとってはさぞ甘美な食事になっただろう。彼らの餌は、負の念。恨み、憎悪、悪意。挙げればキリがない。人の思いというのは、奥が深い。深すぎて自分でも分からなくなることがある。
    おそらくこの男も――
    レディが駆け出した。塊が一瞬怯んだ隙をついて斬りかかる。真っ二つに割れ、また元通りになる。本体を倒さなくてはならないようだ。
    そのまま二階の踊り場へ。肖像画の顔が醜く歪んでいるように見えるのは気のせいではないだろう。

    「ゾロアーク、その子頼んだよ!」
    『ああ!』

    肖像画との距離は約五メートルというところ。躊躇いはない。手すりに飛び乗り、右足を軸にして左足を前に出す。そのまま斬りかかって――
    ガシャン、という音と共に一階の床に落ちた。痛む腰を抑えて一緒に落ちてきた肖像画を見つめる。裏返しになっているのを見てそっと表へ返す。そして寒気がした。
    思わずその目に一の文字を入れる。

    「……」
    『レディ!』

    塊が消えたのだろう。ゾロアークと少年が降りてきた。もう澱んだ空気は消え去っている。少年の顔も幽霊にしては血の気があった。目を切られた肖像画を見て、なんとも言えない顔をしている。
    この絵どうしよう、という言葉に答えたのはゾロアークだった。

    『こんな出来事を引き起こすほどの絵だ。まだ怨念が残っているかもしれない。これこそ持って帰ってマダムに預けた方がいいだろう』
    「受け取るかな」
    『修正は不可能だろうな。これだけザックリやられていては……美貌も台無しだ』
    「言うねえ」

    その時の感情で動いてしまう。それが本人も自覚している、レディの悪い癖だった。直さなくてはならないと分かっている。現にカクライと遭遇するとそのせいで余計なトラブルを招いてしまうことも多い。今回もそれが発動してしまい、思わず火影を手に取ってしまった。
    あの時、最後の視線が自分を貫いた。哀しみに良く似た、憎悪。可愛さ余って憎さ百倍とはよく言ったものである。彼に触るな、彼と話すな。そんな言葉が聞こえたような気がして、レディは口を押えた。
    ふと彼を見れば、思案気な顔つきになっている。どうした、と聞く前に向こうから話を切り出した。

    『あのさ……』

    マダムは上機嫌だった。ゾロアークの声も聞こえないくらいに。そしてレディの蔑みの視線も全く気付かないくらいに。黄昏堂の女主人の威厳も形無しである。
    その少年が提案したこととは、二階にある自分をモデルに描かれた絵を全て渡す代わりに、あの最後の絵を修正してくれないか、ということだった。何故とゾロアークに彼は頬をかきながら言った。
    その絵を、見てもらいたい人がいる―― と。
    そんなわけで恨みの肖像画を回収ついでにそのキャンバスを黄昏堂に持ち帰って来たのである。ちなみに少年本人は『行かなくちゃいけない場所がある』と言ってそのまま屋敷を出て行った。聞けば肖像画が自分がいる部屋の目の前に壁にあったせいで、その怨念が邪魔して外に出られなかったのだという。
    絵を見たマダムはなるほど、と頷いた。

    「相当長い間念を込めて描いていたらしいな。ほら、この赤黒い部分。自分の血を使ってる」
    「ゲッ」
    「それで、この絵は私が貰っていいんだな?」
    『おそらくは』
    「新しく飾る部屋を用意しないとな。名前は……」

    浮かれたマダムなんて滅多に見られるものではないが、別に目に焼き付けておこうとは思わない。ため息をついて再び最後の絵を見つめる。悲しげな顔。おそらく二つの意味で悲しんでいたのだろう。一つは、主人の痛みを知った悲しみ。もう一つは―― いや、やめておこう。他人のことに干渉するのは愚か者のすることだ。
    自分が出来ることをするだけ。それだけだ。

    そしてこれは、後日談。
    ある街の小さな美術館に、一枚の絵が寄贈された。添付されていた手紙には『よろしければ飾ってください』と書かれていたという。
    一応専門家を呼んで鑑定してみると、それは若くして亡くなった有名な画家の物であることが分かり、すぐさまスペースを取って飾られることとなった。
    だが一つだけ分からないことがある。
    それは、一度描かれてから十年以上経った後にもう一度修正されていたのだ。てっきり他人が直したのかと思ったが、タッチや色使いは全て本人の物であり、首を傾げざるをえない。それでも本物には違いないということで、その絵は今日も美術館で人の目に触れている。
    その絵のタイトルは――

    『幸せな少年』

    ―――――――――――――――――――
    神風です。久々のレディです。モルテじゃなくてゾロアークと組ませるのは初めてですね。
    やっぱこのシリーズが一番書いてて楽しい。
    私の趣味が分かります。


      [No.2491] 【ポケライフ】改造の血 後編 投稿者:akuro   投稿日:2012/06/30(Sat) 02:32:18     76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ひばなは水面に映る自分を見つめていた。コモモの言葉を思い出す度に、涙が流れて頬を伝った。

    「改、造」

     言葉にするにも忌まわしい。どうしてそんな人間がいるんだろう。コモモは悪くない、そう思うのに。誰かを憎みたくて、でも自分は人見知りで、知ってる人間なんてコモモしかいない。コモモは悪くないのに……!

     そんなことをグルグルと考えていたら、足音が聞こえた。振り返るとそこには今しがた自分が考えていた人間がいて。

    「コモモさん……?」

    「ひばな……ゴメン!」

     コモモは地面に膝と手を付いた。土下座の格好になられて、ひばなはうろたえる。

    「そんなことしないでください……!」

    「いや、私はしなきゃいけないの!」

     コモモは目をぎゅっと閉じ、喋りだした。

    「あの時の私はどうにかしてた! どうしても覚えさせたい技があるからって、改造ポケモンに手を出すなんて! トレーナー失格よ!」

    「コモモさん……」

    「GTSであの子が送られて来た時、私はあの子のトレーナーを呪いたいと思った! 人間の勝手な都合で、ポケモンの運命を弄ぶなんて信じられなかった! でも私も同罪よ……! あの時、落ち着いて考えていれば、あの子にもあなたにもつらい思いをさせずに済んだのに……!」

     いつの間にか流していた涙を拭うこともせず、コモモはただ喋り続けた。

    「ひばな……本当に、ゴメン……!」

    「コモモ、さん……」

     コモモもひばなも泣いていた。そのまま暫く沈黙が続く。辺りには、啜り泣く声だけが響く。上空には、言葉を失ったトゲキッスが佇んでいた。


     その時、ガサリと物音がした。思わず振り向けば、そこには6匹目の仲間がいて。

    「ピンキー!?」
    「ピンキー……さん」

     ピンキーと呼ばれたのは、桃色の体にふわふわの体毛を持ち、腹に「たつじんのおび」を締めたハピナスだった。

    「……まったく、あんた達は。さっきから聞いてりゃウジウジウジウジと……!」

    「ピンキー……?」

     すっかり怒り心頭の様子のハピナスは、小さな手を腰に当て、声を張り上げた。

    「確かに改造は問題よ。それに、トレーナーとして誤った選択をしたコモモにも責任があるわ。……だからもう2度と謝らなくていいように、トレーナーとして出来ることをしなさい!」

     びしっと、コモモに指を指すピンキー。
     呆然としているコモモとひばな。
     ピンキーの横に、遠慮がちに足を付くハピリル。

    「ピンキー、決まったとこ悪いんだけど……それ、ボクのセリフじゃ」
    「うるさい! ♂は黙ってなさい!」
    「ひいい……はい」

     まるで夫婦漫才のようなやりとりを見ていたコモモは、クスッと吹き出す。

    「コモモ! 笑ってんじゃないわよ!」

    「ゴメンゴメン。……うん、ありがとうピンキー」

    「は?」

     コモモは立ち上がると、ハピリル、ピンキー、そしてひばなの順に目をやり、口を開いた。

    「私、みんなの笑顔を守りたい。もう2度とこんなことが起きないように、私なりに頑張ってみる!」

    「コモモ……」
    「コモモさん……!」
    「うん、よく言った。それでこそコモモよ!」

    「……じゃあ、みんなも手伝ってね! 1人1人に出来ることは少ないけど……みんなの力を合わせれば、なんだって出来るよ!」



    END









    ーーーーあとがきーーーー

     どうしましょう、ラストが意味不明なことに(汗)ちょっとクサかったかな……?
     えーと、これはほぼ私の実話です。今ガチパにいるキュウコンの親の親の親のそのまた親……くらいの位置に、GTSで手に入れてしまった改造産ガーディがいます。
     Lv58の時にライモンシティで出会ったって改造ですよね……。
     作中でも書かれているように、私はそのガーディを親にしてタマゴを作ってしまいました。タマゴから熱風を覚えたガーディ♂が生まれたら改造の子は逃がし、生まれた子を親にして熱風を覚えたロコン♂が生まれたら逃がし……そんなことを何回かやって生まれたのがひばなです。
     今は後悔しています。2度とこんなことが起きないように、私も頑張るつもりです。



    【書いても描いても批評してもいいのよ】
    【改造、ダメ、絶対】


      [No.2490] 【ポケライフ】改造の血 前編 投稿者:akuro   投稿日:2012/06/30(Sat) 01:19:02     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「ひばな、あなたにはね……改造の血が流れているの」

     言いにくそうに顔を逸らしながら少女が告げた言葉に、キュウコンは目を丸くした。
     月明かりが美しい夜のことだった。

    「改、造……?」
    「ひばな、「ねっぷう」って技覚えてるでしょ? その技を遺伝させてくれたあなたの親の親の親の、そのまた親が……人の手によって作られた、改造ポケモンなの。……その子達は、逃がしちゃったけど……」

     ひばなは、信じられなかった。でも、自分が熱い風を出す技を覚えているのは本当だし、自分の親に会った記憶が無い。
     それでも、信じたくなかった。知りたくなかった。何故自分のトレーナー、コモモはそんな事を告げたのだろうか。

    「ひばな!?」

     ひばなは、気付くと走り出していた。野宿をしていた森の中を、9つの尻尾を縮めてがむしゃらに走った。

    ◇◇◇

     ああ、言ってしまった。コモモは頭を抱える。
     ずっと、隠し通そうと思っていたのに。あの子がバトルで「ねっぷう」を出す度、胸が締め付けられた。言わなければと思った。
     でも、あの子を傷つけると知っていた。
     言わなければという思いと、傷つけたくないという思い。2つが複雑に混じり合うなかで、ついに言ってしまった。

     追いかけて、謝らなければ。コモモは座っていた切り株から立ち上がると腰についていた小さなボールを手に取り、軽くほうった。

     ポンと控えめな音と共に中から姿を現したのは、白い体に同じ色の翼を持ったトゲキッスだった。

    「ハピリル、話は聞いてたわよね……」
    「勿論。でも、本当に言って良かったの……?」

     ハピリルは、コモモが1番最初に育てたポケモンだ。最初のメンバーが次々と引退しても、ハピリルだけは残っていた。今やコモモのバトルパーティーのリーダーとなったこのトゲキッスは、ひばなの体に流れる血のことも知っていた。

    「今は後悔してる。でも、ずっと言わない訳にはいかなかったの。追いかけて、謝らなきゃ……ハピリル、ひばながどこに行ったのか探してくれる?」
    「うん、分かった」

     ハピリルは、白い翼を軽くはためかせて空に浮かび上がると、キョロキョロと辺りを見回し始めた。

    「あっ……! 川の方に居るみたいだよ!」
    「分かった、案内して!」
    「オッケー!」

     コモモは、空からハピリルの案内を受けながら川の方へ走って行った。


    ◇◇◇

     静寂が戻った森の中。ガサガサと茂みが鳴って、3つの頭が顔を出した。

    「ね、聞いた……?」

     ひそひそと小声で話し始めたのは、純白のスカーフが自慢のチラチーノ、レオナルド。コモモからは、レオくんと呼ばれている。

    「本当、びっくりだね……」

     レオナルドの話に綿を揺らしながら頷いたのは、エルフーンのコットン。

    「改造の血が流れているなんて……ショックだろうな、ひばなちゃん。あたし、明日会ったらなんて言おう……」

     思い詰めたような顔で呟くのは、ひばなと仲が良いリーフィアのひすい。バトルではほとんどひばなとペアで出されている。

    「自分達に何か出来ないかな……?」

     レオナルドがそう呟くと、3匹共腕を組んで考え始めた。

    「とりあえず、いつもと同じようにしてようよ。僕達に知られたって分かったら、更にショックだろうし……」

    「そうね……」




     それっきり、森にはまた静寂が戻った。



    続く


      [No.2489] ノストロ 投稿者:Tom Walk   投稿日:2012/06/28(Thu) 22:20:08     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    第一部、町

    「町だ」と彼は言った。
     乾燥した荒野を風が吹き抜ける度に砂埃が舞う。地表には背の低い雑草が這って稀少な緑を添えたが、それさえもが僅かな潤いを奪って旅路を困難にするようで憎々しく映った。そしてその道なき道を踏破した先に、果たして、町があった。
     それは幾らか風の穏やかな午前。まだ日は南天に達していなかったが、しかし目に映る全方位が陽炎に揺れていた。件の太陽は後方からじりじりと背中を焼いた。ぽたりと汗が落ちれば、瞬く間に地に吸い込まれ、何の足しにもならないと雑草さえもが無関心であるようだった。そんな孤独な命の現場に、不釣合いな黒い影が見えたのだ。そこから最も暑い時刻を迎えるころまでに、僕らは巨大な城門の前に立っていた。
    「町ね。」彼女はオウムがえしのように呟いた。
     僕は言葉もなく、ただ圧倒する巨大な城壁と、そして開かれたままの城門を見上げた。
     どうすると訊ねることもせず、彼は歩みを進めた。僕と彼女も、一呼吸と遅れず彼に続いた。何よりもこの日差しを避けられる場所に潜り込みたいという本能が、論理的な判断過程を超越して足を動かした。
     門をくぐって振り返れば、城壁は一メートルを超える厚さを持ち、高さは周辺の小屋から比して十メートルはあるだろうと推し量れた。あまりにも強固に過ぎる。いったい何から町を守ろうとしているのだろうか。少なくとも僕らが旅してきたこの数日、あの惨めな雑草以外の命を目にしなかったというのに。
     門から先は何の手も加えられていない土が剥き出しの道で、二列の轍がくっきりと跡を残していた。画家志望という彼はイーゼルや画材をキャリーカートに縛って引きずっており、それが轍や自然の凹凸に引っかかる度に立ち止まった。僕と彼女はやはり同じように立ち止まって彼を待ち、また歩いた。
     通りの左側の建物に寄り、なるべく日陰を選ぶ。先ほどまで背後から照らしていた太陽は、正午を過ぎて左前方へと傾いていた。僕らがくぶったのは東門で、そしてこちら側は貧しい階層の地域なのだろう。僅かな日陰を提供する平屋は土を塗り固めた粗末なものだった。中には窓もなく、戸の代わりに編んだ藁をかけただけの小屋もある。そしてどの家からも、何の気配も感じられなかった。
    「誰もいないわね」と彼女は言った。
    「町が荒らされた様子はないから戦争や暴動じゃないな」と僕は続けた。「変な病気が流行ってなきゃいいけど。」
     彼は露骨に嫌そうな視線を僕にぶつけ、荷物から適当な布を引っぱり出すと口に当てた。彼女は溜め息を付き、開き直ったように胸を張って歩いた。
     五分もすると風景に変化が起こった。家は石造りのものが建ち、道もまた粗雑ながら石を敷いて整えられ、幾らか歩きやすくなった。間もなく二階層以上の立派な屋敷とその向こうに広場が見えてきた。
     僕らは通りの角で立ち止まり、用心深く広場を観察した。これまで歩いてきた道とは比べものにならないほど滑らかな石畳が敷かれ、取り巻く建物はどれも綺麗な白壁で、中には商店のように広い間口を持ったものもある。そうした建物には看板が下がり、例えば果物屋なのだろう真っ赤に塗られたリンゴの形をしたものや、開いた書籍のような形のものがあった。そして広場の中央には噴水が見て取れた。建物よりもいっそう鮮やかに白い女神の像が肩に抱えた壺から水が流れ落ち、日差しを眩しく弾いていた。
    「水だ!」
     言うが早いか、僕らは噴水へと駆け出した。先刻までの警戒を、再び本能が凌駕していった。彼は両手で掬っては飲み、また先ほどまで口に当てていた布を濡らしてベレー帽の下の汗を拭いた。彼女は気丈に貼った胸の勢いそのままに、頭から噴水に飛び込んだ。僕もまた掬うのが面倒で、石造りの縁から身を乗り出して水面に口付けた。
     あまりにも勢いよく飲んだために幾らか気持ち悪くなったりはしたが、それは毒や病の類ではなさそうだった。少し冷静になってその不安が蘇ってきたが、変わらず男勝りに振舞う彼女に倣って僕らも開き直った。
     再び周辺を見渡すと、広場の反対側、西の通りの入り口で何かが動く気配がした。目を凝らせば、薄い青の庇を持った商店の前にあるベンチの陰で、鳩が何かをついばんでいる。それは僕らを除く、動く生命との久しぶりの邂逅だった。
     なるべく驚かさないようにと静かに歩いたつもりだったが、幾らも近づかないうちに鳩は飛び立ってしまった。羽音を立てて広場の上を旋回すると、鳩は北の方角へと去っていった。それを追うように視線を送ると、町の北部は丘陵になっていて、そこには緑の木々が豊かに茂り、ときどきその隙間から巨大な屋敷の屋根が頭を出していた。
     視線をおろしてベンチに目をやると、地面にはポップコーンが落ちていた。彼は一粒つまむと、まだ新しいね、と言った。
    「僕は人間以外にポップコーンを炒る生物を知らないよ。」
     この町は廃墟にしては荒れていない。そしてまだ新しい生活の痕跡。
    「どうして彼らは姿を消したんだろう。」
     彼は言って、つまんだポップコーンを放り捨てた。
    「別にかくれんぼをしている訳じゃないんだ。探さなくても、そのうち向こうから出てくるさ」と僕は答えた。
     彼女はどうでもよさそうに欠伸をしながら体を伸ばし、ベンチに上って今度は丸くなった。
    「私、ちょっと休むわ。」
     彼はベンチの背に荷物を凭せかけ、自身もベンチに腰かけた。僕は彼に目配せをして、ひとりで広場を見て歩いた。

    __

    はじめまして。(嘘)
    ぜんぜん続きを書かないまま放置していたので、何かきっかけになればと投稿します。
    「第二部、図書館」のクライマックスのアイデアを思い付いたので、まあ、暇になったら書くんじゃないかな。


      [No.2488] 今日も明日も 投稿者:名無しでありたい   投稿日:2012/06/28(Thu) 20:14:13     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
    >  まさか、自分の誕生日にこのような作品と出会えるとは……!(ドキドキ)
    >  タグを見た瞬間、目が丸くなりましたです、嬉しいです、ありがとうございます。
    よく言えばもう一歩大人に。
     悪く言えばいっこ人生の終わりに向けt
    ( ま、まぁ、その、お誕生日おめでとうございます
     
    >  出会えたあの日が
    >
    >  君と僕との
    >
    >  もう一つの誕生日

    >  このフレーズ大好きです。
    >  その人やポケモンにとって特別な日。
    >  色々な出会いがあるんだろうなぁと想像が膨らんでいきます(ドキドキ)
     人それぞれ、いろいろな出会いがあると思います
     それは生まれて死ぬまでずっとです、たぶん……
     
    >  自分の場合は、小1の頃におじいちゃんとおばあちゃんが送ってくれたゲームボーイポケットと同梱されていたソフト……それがポケモンとの出会いでした。
     私も、DS買う前にDSソフトのポケダン青かったりしてわくわくしてました、7年前( 
     出会い……は良く覚えていませんが、ずっと昔にアニメをテレビで見たときでしょうかね

    >  その出会いをくれたおじいちゃんとおばあちゃんにもありがとう。
     みんなにいっぱいありがとうって言ってくださいね
     それだけ、あなたもほかの人からありがとうって思われているはずです 

    >  それでは失礼しました。
    >  本当にありがとうございました!
     またどこかでお話ししましょう
     こちらこそ、よんでいただき、ありがとうございました

    > 【めでたく23歳になりました。ピカチュウの番号まで後(以下略)】
     また来年も時期が来たらですね……何かするかもしれません


      [No.2487] 出会えたあの日にありがとう。 投稿者:巳佑   投稿日:2012/06/28(Thu) 19:13:23     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     まさか、自分の誕生日にこのような作品と出会えるとは……!(ドキドキ)
     タグを見た瞬間、目が丸くなりましたです、嬉しいです、ありがとうございます。


    >  出会えたあの日が
    >
    >  君と僕との
    >
    >  もう一つの誕生日

     このフレーズ大好きです。
     その人やポケモンにとって特別な日。
     色々な出会いがあるんだろうなぁと想像が膨らんでいきます(ドキドキ)

     自分の場合は、小1の頃におじいちゃんとおばあちゃんが送ってくれたゲームボーイポケットと同梱されていたソフト……それがポケモンとの出会いでした。

     その出会いをくれたおじいちゃんとおばあちゃんにもありがとう。

     それでは失礼しました。
     本当にありがとうございました!


    > [みーさんがお誕生日と聞いて]
    【めでたく23歳になりました。ピカチュウの番号まで後(以下略)】


      [No.2486] Re: 黄色いアイドル>>>>>美和 投稿者:巳佑   投稿日:2012/06/28(Thu) 17:41:32     21clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    反応遅くてすいません(汗)
    コメントありがとうございます!
    ラストの展開に鳥肌が立ったとか……とても嬉しいでございます。(ドキドキ)

    > そうか!ピカチュウがあんなに強いのは先に出来たからなのか!!
    >
    > ・・・・と妙な納得をしました(笑)

    いかに美和さんでも黄色いアイドルを超えることができないというタイトルに、こちらも思わず笑ってしまいました。>の数がそれを物語っている(笑)


    > ドーブルの「スケッチ」は確かに謎いですね。レベルが上がると描写能力が上がるから?と考えてみたのですが・・・。どうなんだろう。

     本当はレベルに応じての技しかスケッチできないとかというのも面白そうですよね。描写能力が低いからこの技までとか、描写能力が高ければ高い分、会得できる技の範囲が増えるといった感じで。  


    それでは失礼しました。

    【ドーブルはイケメンですね!】


      [No.2485] 出会えたあの日 投稿者:名無しでありたい   投稿日:2012/06/28(Thu) 16:05:52     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     目を覚まして
     一番最初に受ける言葉
     おはよう
     
     ご飯を食べて
     歯を磨いて
     出かける前の
     いってきます

     何事もない一日
     いつも通りの朝
     
     いつも通りの毎日の中に
     一年に一度の 
     特別な日

     きみの
     ぼくの

     この世界に生まれた
     大切な日

     君とこうして出会えたのも
     
     ぼくが
     きみが
     
     何年も前の
     この日に
     あの日に

     生まれたから

     きみの誕生日はわからないけれども    
     こうして一緒にここにいる

     出会えたあの日が

     きみとぼくとの

     もう一つの誕生日
      

     ―――


    タマゴから孵したポケモンはしっかりお誕生日解りますが
    野生ポケモンはどうなのでしょう?
    若々しい全盛期なのか、生まれたてなのか、はたまたよぼよぼのお年寄りなのか
    全くわからない……わからないからこそ、出会った日
    出会った日もまた、誕生日
    かもしれませんね
    どこぞの誰かさんがお誕生日と聞いてかきかきしてみましたです。
    心から、おめでとうございます



    [みーさんがお誕生日と聞いて]


      [No.2484] Re: なにこれかわいい 投稿者:ねここ   投稿日:2012/06/28(Thu) 14:26:14     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    はじめまして。ねここです。

    コメントありがとうございました!
    こんなんでいいのかなあ、と思っていたのでとても嬉しいです。(初投稿だったので)

    メタモンはかわいいんだぞ!ということが少しでも伝わったのなら、本望です。
    あの反応に鈍そうな感じが何とも癒やしですね。
    ずっと手持ちに入れておきたいです。

    メタモン好きがもっと増えてくれたらいいなー。


      [No.2483] なにこれかわいい 投稿者:砂糖水   投稿日:2012/06/27(Wed) 22:50:06     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ねここさんはじめまして。

    うーんやはりメタモンのつぶらな瞳はかわいいですねえ。
    メタモンの優しさ、というか

    >  怖がっているということは、他のポケモンに伝わるんだと思う。だからこれまで、ポケモンたちは「怖くないよ」と伝えるために、後ろをついてきたりしていたんだ。

    というようなこの話全体に漂う優しさがなんだかとっても好きです。

    それにしてもメタモンってかわいいですね。


      [No.2482] Ditto 投稿者:ねここ   投稿日:2012/06/27(Wed) 08:41:28     76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     今日、お兄ちゃんが帰って来るらしい。

     お兄ちゃんは、私が住んでいるタマムシシティよりももっともっと遥か遠くの、キンセツシティなるところに住んでいる。昔っからポケモンが大好きで、よくお母さんの言い付けを無視して、ポケモンを連れ帰って来ていた。そんなお兄ちゃんも、今や名の知れたポケモントレーナー。聞くところによれば、ポケモンとシンクロするかのような魅せるバトルをするらしい。私自身、お兄ちゃんのバトルを見たことはないのだけれど。

     でも、妹である私は、彼とは正反対だった。ポケモンに対する苦手意識が心の中で、ぐるぐるとめぐっている。もちろん、私はポケモンを一匹も持っていない。でも、ピカチュウは可愛いと思うし、バンギラスだって格好良いと思う。触ってみたいとも思う。けれど、苦手だった。それなのに、外をのんびりと散歩するポケモンは、そんな私を癒そうとでもするように、わらわらと群がってくる。この前なんて、学校帰りに出会った野生のベロリンガが家まで着いてきた。薄ピンク色の可愛い子だったけれど、私はこれまでにないくらい緊張した。お兄ちゃんは、そんなにポケモンが集まってくるなんて羨ましいと言ってくれるけれど、私はちっとも嬉しくない。

     だって、怖いから。

     たとえば、家の周りによくいるガーディなんかをゲットするとしよう。でも、そのガーディはひのこを吐く。家のキッチンのガスコンロから出る火と同じ火が出るのだ。そんなの、怖すぎる。学校の友達は皆、ほのおポケモンがかっこいいだのみずポケモンがかっこいいだのとわいわい話をしているが、私に言わせてもらえればノーマルポケモンが一番ましだと思う。ゴーストポケモンは幽霊みたいだし、かくとうポケモンは威圧感がすごいし、こおりは寒そうだし、ひこうポケモンは勝手にどこかに飛んでいっちゃいそうで、心配になる。

     結局、そんな考えがある限り、私にポケモンは合わないと思う。

     でも、お兄ちゃんのポケモンは別だ。お兄ちゃんによくなついているし、礼儀正しいし、とても可愛い。野生のポケモンに対してよりも、ずっと心の壁が薄い気がする。お兄ちゃんのポケモンだったら、私でも仲良くできるかもしれない。けれど、やっぱり心のどこかで恐怖を感じているのだろう。と、何故こんな話をしているかと言えば、お兄ちゃんはどうやら、私にポケモンをプレゼントしたいらしいのだ。お母さんは、お兄ちゃんがくれるポケモンなら大丈夫よと笑っていたけれど、私の頭はどうしようを繰り返している。

    「行ってきまーす」
    「お兄ちゃん、お昼くらいに帰ってくるって」
    「……うん」

     でも、その前に学校だ。玄関の扉を開けると、晴れ晴れとした青空とぴかぴかの太陽が私を照らす。見上げると、そこでは登校中やお出かけ中の人たちが、自分のポケモンに乗って空を走っている。本当は、ちょっとだけだけど、私も空を飛んでみたい。でも、もしもらえるのが飛べるくらい大きなポケモンだとしたら、きっと外に出る時以外はモンスターボールの中に入れておかなければならない。でも、そんな窮屈な思いはさせたくない。ボールの中がどうなっているのかは、分からないけど。

     とにかく、私も遅刻しないように行かなきゃ。

    「え、ナツナ、ポケモンもらうの!?」
    「うん……」
    「何? 何もらうの?」
    「分かんない」
    「えー。じゃあ、もらったら明日学校連れてきてよ」
    「……怖くなかったら」
    「あのナツバさんが、妹の怖がりそうなポケモンをプレゼントしてくるわけないじゃない」

     お昼時。授業のほとんどはもう終わり。私も、ご飯を食べ終わったらもう帰る。今頃、お兄ちゃんは帰ってきているのだろう。私の心は、ドキドキでいっぱいだ。お兄ちゃんが帰ってくるよりも、どんなポケモンを選んでくれたのかが気になる。もし、あんなポケモンだったら、こんなポケモンだったら、と、空想は家の前に帰ってくるまで止まらなかった。結局、何だかんだ言いながらも、楽しみにしている私だった。

    「ただいま」
    「ん、おかえり。ナツバ」

     久しぶりに見たお兄ちゃんは、少しだけ日焼けをしていた。そろそろ夏真っ盛りだし、空を飛ぶ人なら当たり前なんだけど。でも、優しい笑顔は変わらなかった。ふんわりとした雰囲気からしても、強いポケモントレーナーには思えない。だから、強いのかな。なんて考えていると、お兄ちゃんはポケットから一つの青いボールを取り出して、私に差し出した。

    「青が好きだったよね。ほら、プレゼントだよ」
    「あ、あ……うん。ありがと……」

     あっさりと渡されたそれを、恐る恐る受け取る。その瞬間、この小さなボールの中にポケモン一匹が入っていることの重さを感じた。どういう構造なのだろう。変なことに感動している最中も、お兄ちゃんは嬉しそうに、楽しそうにこちらを見つめていた。出してみてもいいかな、と視線を合わせると、彼は鷹揚に頷いた。ここで出せるのなら、きっとそんな大きくないポケモンなのだろう。もし怖かったら、お兄ちゃんがなんとかしてくれるだろうし、そんなに心配することもない、と自分に暗示をかけ、もう一度ボールに目を向けた。でも、どうやってポケモンを出すのだろうか。ボールを手に持ちながら、考える。くすくす、と笑い声が聞こえた。

    「投げてみて」
    「え、投げるの?」
    「うん」

     そんなことしたら、中にいるポケモンが酔っちゃうんじゃ。そんなことを思った。でも、これじゃますます投げられない。どうしよう。どうしよう。おろおろする私。笑う声が大きくなる。そんなに笑わないでよ、ボールから出すの初めてなんだから。すると突然、怖いのと緊張とで手にかいていた汗がするん、とボールを滑らせた。床に、落ちる。そう思った瞬間、世界は、スローモーションになったみたいにゆっくり動いた。

     気付いた時には、ポケモンがそこにいた。

    「……このポケモンは?」

     ピンク色の体で、うにょうにょとスライムみたいに床をのびのび移動している。これが本当にポケモンなんだろうか。他のポケモンは動物みたいにしっかり体があるのに、このポケモンはそれがない。液体のようだ。思わず、恐怖を忘れてまじまじ見つめていると、黒々としたつぶらな、つぶらすぎる瞳と目が合った。にー、と口らしきものが笑みを見せて、ぺたりと手のようなところが、私の足に触れた。冷たくもあたたかくもない、のんびりとした温度と、何とも形容しがたい微妙な感覚が伝わる。でも、なぜか全く怖くなかった。むしろ、優しい感じがする。しゃがんで、その体にゆっくりゆっくり手を伸ばすと、そのポケモンはにこにこと笑いながら、体のほとんどを手の形にして、握手をしてくれた。ぐにょん。

    「そのポケモンは、メタモンっていうんだよ」
    「メタモン……」
    「ちょっと見てて」

     お兄ちゃんは、まだ握手をしたままの私たちのすぐ横に、金色に輝くサンダースを出した。いきなりで少しびっくりしたけれど、今はメタモンが傍にいるから、なんとなく大丈夫だと思えた。そう言われているような気がしたから。すると、メタモンはいきなり白っぽい光に包まれて、次の瞬間にはサンダースになっていた。手はまだ繋がれたまま。

    「……サンダースに、なった?」

     大きさも色もおんなじ。でも、一つだけ違うのは、その目だった。サンダースになったメタモンの目は、可愛らしくもそのままのメタモンの目。サンダースの大きな目と比べると、その差は歴然だ。それにしても、凄いものを見た。メタモンはきっと「へんしん」という技が使えるのだろう。前に聞いたことがある。ポケモンの中には、相手のポケモンに「へんしん」してしまうポケモンがいると。でも、そのポケモンは「へんしん」しか使えない。きっと、メタモンはそのポケモンなのだ。

    「ね、気に入ってくれた?」
    「うん。なんか……怖くない、ね」
    「よかった。あ、なら名前つけてあげなよ」
    「……この子、男の子?」
    「ううん、性別はないんだ」

     出会った瞬間から、止まった時計が動き出した気がしていた。これから、この子は私の家族になるんだ。そう思うと、何だか嬉しくなった。この前の私からは考えられないような、進歩。
     怖がっているということは、他のポケモンに伝わるんだと思う。だからこれまで、ポケモンたちは「怖くないよ」と伝えるために、後ろをついてきたりしていたんだ。でも、もう平気。私は、もうポケモンを怖がったりはしないはず。そんなことを考えている私を笑わせようとでも思っているのか、メタモンはふにふにと楽しそうに踊りながら、時々リアクションを伺うかのように、ちらっとこちらを見た。思わずその動きに笑うと、どこまでも伸びるような口を横に細く伸ばし広げた。

    「……じゃあ、」

     私は、これから始まる新しい世界に期待を込めて、可愛い相棒に名前を付けた。





    メタモンってかわいいですよね。さいきんのポケモンわからないのでなんかアレかも……。

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】


      [No.2480] エリートトレーナーテスト 投稿者:ことら   《URL》   投稿日:2012/06/22(Fri) 22:01:41     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     僕の恋人はポケモントレーナーだ。その実力は僕をも凌ぐ。はっきりいって嫉妬している。年齢の割に開花した才能。長いこと頂点にいたとはいえ、僕の才能が開いたのは時間をかけてのことだ。
     その嫉妬に気付いたのは、彼女に負けた時だった。
     チャンピオンとしてトレーナーの頂点に長いこといた僕は、トレーナーのやる気や見た目である程度の強さは解る。会った時になんとなくいつか追い越されるかなと感じていたけど、まさか本当に負けるとは思ってはなかった。彼女は僕と真っ正面から挑んできて正面突破していったんだ。
     勝負がついた時はなんだかチャンピオンとしての重荷が終わって嬉しいような清々したような気分だった。彼女はすっごい複雑そうな顔してたけど、これでやっと自由だと家に帰ったんだ。
     でもだんだんと悔しさが出て来た。だって、何となく解ってたとはいえ、あんな年下の女の子に負けるなんてさ……そう思ったらなんか一矢報いるためイタズラを仕掛けてもいいかなと思った。
     初めて会った時、彼女の尊敬する肩書き「ジムリーダー」を一蹴した。だから、それより強いチャンピオンになったのだから、絶対に僕に何か言いに来るに決まってる。だったら僕の家で何か仕掛けてその反応を見て、大人に反抗するなんて早いと言おうと、仕掛けるまでは楽しかった。何を言うのか、どんな反応をするのか想像しただけで楽しいじゃない?
     そしてもうその時の顔といったら……大泣きされてしまった。
     僕に会いたいと涙を流して叫ぶ彼女は予想外だった。素直になりきれないクセに僕にあの手この手でかまってもらおうと画策して大抵失敗している。そのことは解っていたけど、僕の見ていないところではあんな素直になるなんて。
     やっぱり、と思った。会った時に負けるとも思っていたけど、なんとなく僕を見る目が言ってた。僕のことを好きだと。でもその後はずっと反抗的な態度しか取ってないんだから、気のせいだとは思っていた。僕は確信した。
     僕はこの子に嫉妬していたのではない。好きだけど素直になってくれないことにイラついていたんだ。隠れてる僕が見てることも気付かずダンバルを抱きしめて泣き続ける彼女を後ろから唖然と見ていた。もうイタズラだと言い出すタイミングを見失いすぎた。
     だから敢えて明るく、冗談めいた声で話しかけた。多分今までだったら容赦なく叩いたり蹴ったりしてきてもおかしくない。それなのに泣いたままの顔で僕をじっと見て、目をこすって何度も見てた。僕の存在を確認してたね、あれは。
     僕が幻ではないと解ったら、元の彼女に戻ってかわいくない態度をとっていた。さっきまでの大泣きが嘘みたいだね。もう一回からかってみた。今度は引っかからないかなと思った。
     そこは子供だったね、僕が買いかぶってたかも。また引っかかって。僕に張り付いてじっと見ている。言いたいことが言えないんだろうね。さてどうやって僕を止めるのかな。
     そうかと思えば、僕にポケモンを教えてくれと大胆な行動に出てきた。まさかこんなことを言われるとは思わなかった。強さは彼女のが上なのに、何を教えることがあるのだろう。そう言ってわざと突き放してみた。予想通り食い下がってきた。
     いいだろう。僕もこの才能がどこまで通じるものか見届けたい。こんなかわいらしい女の子から繰り出されるポケモンたちの共演をずっと見守り続けるよ。


     ダイゴは仁王立ち。ハルカは腕を組んでそっぽを向く。その間にはメタグロスが申し訳なさそうに立っている。
    「絶対に炎技を耐える調整がいい」そう主張するのはダイゴ。
    「炎受けはラグラージがいる。ならコメットパンチの威力を少しでもあげるから攻撃に全振りする」そう主張するのはハルカ。
     ハルカがダイゴにポケモンを教えてほしいと頼んだ。その関係はもう長いこと経った。
     そして二人が今、目標にしているのはエリートトレーナー試験。そう呼ばれているが、正式名称はポケモン訓練士1級である。これに受かるとポケモントレーナーとして施設で働くことも出来るし、ジムリーダーを勤めることができる。なお、これはリーグとは別なので例えチャンピオンとなっても資格がなければ働くことができない。プロスポーツと同じように登録してもらえない。登録のための資格である。
     将来、ハルカはジムリーダーになりたいと言う。才能もあるし、夢を現実にするには申し分ない。だが、資格が必要だよ、とダイゴが案内したのがきっかけである。
     筆記試験の勉強はいいとして、問題は実技だ。これは受験者同士の戦いである。勝てばいいというものではない。どのように勝つかが問題となっているので、勝ったところで落ちる可能性もある。
     どのように勝つのかと言えば、全く普通である。ポケモンをいたわって命令しているか、命令に無茶はないか。上に立つポケモントレーナーほど、倫理が強く求められる。そのことはダイゴが何度も話しているし、筆記試験でもマナーやポケモン勝負禁止の範囲などが出される。賠償や保険、責任の所在など子供には難しい話ばかりだ。けれどこれを理解しなければ次に進むことができない。
     今、両者真っ向から対立しているのは、明日の実技試験で使うメタグロスのことだ。瀕死にさせられる前に技を出さなければならない。メタグロスはそんなに素早いポケモンではない。下手したら何もできないのにノックアウトしてしまう可能性だって高い。そうダイゴは主張し、少しは耐えるようにと話した。
     対するハルカは、メタグロスの高すぎる攻撃力と技でがんがん押すと主張する。確かにコメットパンチの破壊力は素晴らしいものだ。そうして乗り切ると話す。
     二人とも主張は一向に曲げない。そうするとお互いにイライラしてくる。そしてついに。
    「わかったよ。好きにしたらいい! 君が落ちる姿をちゃんと見といてあげるから!」
    「ええ好きにします! それでダイゴさんに言われるまでもなく受かりますから!」
     決裂。その後はずっと無言。お互いに一言も声をかけない。
     ただの試験とはいえ、エリートトレーナー試験の試合は全国ネットで中継されている。地域ごとに試験日が違う。本気の人は、その試験日の違いを利用して全て受けるほどだ。
     そしてその試合の解説に呼ばれたのがダイゴ。試合をリアルタイムで見守る中継席にいるのだ。だからこそ教え子に無様な負け方をして欲しくない。目の前で大好きな子の負け方を解説するほど惨めなものはない。
     しかし受けるハルカは全く違う意見を持っていた。負けても仕方ない。そして落ちたらまた来年があると。
     無言でハルカは出て行く。家に帰るのだ。攻撃系統に最終調整したメタグロスと共に。
    「自分が教えてくれって言ったんじゃないか」
     誰も聞いてない空間にダイゴは言った。

     実技試験の日。筆記試験を通った強そうなトレーナーたちがわんさか集まっている。受験票をなくさないようにハルカは会場に入っていく。
     プレッシャーと、昨日のダイゴとの意見の相違が尾を引いている。ハルカの心は怒りでざわついていた。
    「ダイゴさんは私が意見もったポケモントレーナーだって思ってくれてない」
     つい心の声が音声になってしまった。だけど他のトレーナーたちはそんなこと微塵も気にしていない。もし耳に入ったとしても、自分の試験のことで頭がいっぱいで、すぐに忘れてしまう。
     ハルカは試験に集中する。ダイゴが思考を中断しにくる。何度も昨日の「落ちる姿を見ておく」という言葉が刺さる。それは同時に絶対に落ちないとハルカを決意させた。
    「それでは、番号1002番の方から1021番までの方から始めます」
     係員の声が届く。10人ほどのトレーナーが立ち上がった。

     試験開始から何試合目。大きなスタジアムの中継席から双眼鏡を覗き込み、マイクに向かって解説を続ける。これが意外にハードなのだ。なぜその技か、なぜそのポケモンなのか。特性から技からタイプから、全国のポケモンに全く触らない人にも解るように話さなければならない。つい使ってしまいそうになる略語や専門用語を避け、誰でも知ってる言葉を瞬時に選ぶ。
     試合のインターバルにダイゴはため息をつく。喉を休ませる貴重な時間だ。
     昨日はあんな喧嘩をしてしまったが、ハルカのことは気になる。順番はまだ来ていない。
     今日は快晴だ。炎タイプの威力が上がる。それを利用したトレーナーたちは多い。天候を変えようとしても、それは一時的なものだから、すぐに干上がってしまう。
     炎技が上がる。それはすなわち使う予定のメタグロスの弱味を増やすことだ。そして炎を受けるといったラグラージは水タイプ。こんな天気では水タイプの技は威力が下がってしまう。
    「では、次の試合です。大物ですよ。なんと解説のチャンピオン、ツワブキダイゴさんに勝ちながら年齢や資格がないのでなれなかったという経歴の」
     アナウンサーの話を聞いて、ダルい体が一気に起き上がる。ハルカだ。
    「ではツワブキさん、彼女と戦ったのですよね?」
    「え、ええ。彼女は強かったですね。初めて見る相手にも、ラグラージの特性を巧みに使う。トレーナーは軍師のようでなければなりませんが、彼女は策士といったところでしょうか」
     何をやっている。ラグラージを出して、相手がロゼリアなら逃げるしかないだろう。何を聞いていたんだ。
    「ツワブキさん? では解説を……」
    「え、ええ。そうですね、ラグラージとロゼリアは基本的に相性が悪い。そしてこの天候からして、ソーラービームをためなくても使えます。それにギガドレインがある可能性だってありますね。大抵はこの状況なら交換を……」
    「なるほど。おや、ロゼリアはソーラービームのようですね。対するラグラージは、交換しない!」
     何をやっている!!! ダイゴは実況席から身を乗り出した。ガラスに頭を打ったが本人はそれどころではない。
    「ツワブキさん、これはどういうことでしょうか」
    「いやー、私もこういう展開はあまり見た事がないので」
    「おや、ラグラージの様子がおかしいですね。耐えましたラグラージ。ロゼリアのソーラービームを耐えて……ミラーコート!?」
     全てを反射するような光にロゼリアは耐えきれなかった。助かった、とダイゴは大人しく着席する。
    「ミラーコートは特殊技を2倍にして返す技ですね。ラグラージはタマゴから生まれる場合のみ覚えることができます」
    「なるほど。知識の量も実力もチャンピオンを破ったトレーナーということですね」
     それもダイゴが全部教えたことである。しかしこのソーラービームを耐えるとは思わなかった。
     いや、それはダイゴが見落としていたこと。違うラグラージとはいえ、メタグロスの攻撃を何度か耐えた種族だ。あっさりさようならということはないのだろう。
    「次のポケモンは、キュウコンですね」
    「とても素早いでしょうから、ラグラージの減った体力では……」
     ダイゴの解説を待たず、ラグラージはキュウコンの電光石火で倒される。
     次をどうするかが不安だ。今の天候のメタグロスは危険だ。そしてもう一匹は攻撃を受けるということを考えていない。なぜならそれは翼を欲しがる青い竜。ボーマンダだ。
    「おや、ボーマンダですね! これを持っているとはやはりレベルが」
    「ドラゴンは炎タイプに相性がいいですからね」
    「キュウコンがこれは炎の渦! ボーマンダを閉じ込めるつもりですね。対するボーマンダは、踊ってる?」
    「あれは竜の舞ですね。攻撃力と素早さを上げます。遅めであるボーマンダの技としては最良ですね」
     しかし火傷しないとは限らない。火傷をすると攻撃力が下がってしまう。攻撃を上げるボーマンダとは相性が悪い。
    「おや、ここで、ボーマンダが」
     ボーマンダはキュウコンを見据え、飛び上がった。空を飛ぶという技にも思えたが違う。着地の瞬間、大きくフィールドを揺らした。
    「さすがボーマンダの地震となると、ここまで揺れますな」
    「そうですね。キュウコンはもっと食らってると思いますが」
     スタジアム全体が揺れた。後ろで指示しているハルカ自身も揺れに耐えられず手をつく。キュウコンがそこに倒れていた。
    「さあ、最後のポケモンは、チャーレムだ!」
    「相性は悪いですね。ボーマンダの攻撃力と素早さが上がっていますし、ボーマンダは……」
    「おっとボーマンダを引っ込めたぞ。そして出て来たのはメタグロス!」
     ダイゴの心は許す限り叫んだ。けれど音声が全てマイクに拾われる今、そのまま素直に出すわけにはいかない。
     なぜそのままいかない。そのまま押せば勝てたし、無理をさせた試合ではない。トレーナー倫理に引っかかる試合でもない。なのになぜそこでメタグロスを敢えて出した。格闘技を半減するボーマンダと違って、メタグロスはそのままダメージが通ってしまう。
    「チャーレムの飛び膝蹴りがメタグロスに入りましたね。急所に入ったようで痛そうです」
    「メタグロスは防御力が高いポケモンですからね」
     そこまで言いかけて、自分のメタグロスと違うことを思い出した。ダイゴのメタグロスならばもう一度チャンスがあったかもしれない。けれどハルカのメタグロスは……
    「チャーレムの飛び膝蹴りがまたもや入る! メタグロスの足元がふらついてますね。もうダウンでしょうか」
     ポケモンもポケモンでトレーナーに似るんだから! もしそこでメタグロスが倒れなければ試合は続行し、ハルカは瀕死の状態のメタグロスを戦わせたということで、落ちる可能性だってある。倒れろメタグロス、倒れろ!
    「おっと、メタグロスの足が光りました。これはコメットパンチ!」
     試合は盛り上がる。チャーレムの急所をメタグロスのコメットパンチがとらえた。チャーレムは倒れた。多いかぶさるようにメタグロスも倒れる。
    「コメットパンチは反動がないはずですが」
     余計なことを実況が言ってしまった。瀕死状態をかばってメタグロスは攻撃したのだ。これでは審判も見逃せない。
     試合は終了となり、審判が難しい顔をして話し合っている。
    「ツワブキさん、どうなるでしょうね」
    「解りませんね。メタグロスがコメットパンチをするだけの元気がないサインをトレーナーに見せていたかも判断になりますが」
     この頃にはすっかりダイゴはイスにだらけていた。落ちた。落ちてしまった。あそこでなぜメタグロスにした。なぜだ。メタグロス!

     夕方になり、全ての試験が終わった。結果はその場で受験番号で公表される。スタジアムの電光掲示板が光った。
    「合格者の番号がつきます」
     アナウンスが入った。そして番号が順番に光っていく。ハルカは受験票を握りしめた。

    「1019、1023、1024、1026」
     ああ、まだだ。まだまだ。まだ順番にならない。
     受験票は原型を留めてない。ハルカの手汗で文字はにじみ、もとの番号がかろうじて読める。

    「1045、1056、1058、1060」
     緊張で心臓の音が聞こえる。こんなに緊張しているのは初めてだ。

    「1081、1083……」
     次だ。次のランプが点灯しなければハルカは落ちたことになる。








    「1084……合格だ……」






     
     ポケモン訓練士一級。通称エリートトレーナーに合格した。あまりに嬉しくて、思わず叫ぶ。
    「やった、やったよ!!!」
     正しかった。メタグロスの攻撃力があったから、チャーレムは一撃で倒すことできた。これでよかったのだ。ハルカの試合は、ハルカの読みが当たったのだから。
     
     発行されたばかりの一級免許を持って、会場の外に行く。
     すっかりお祭り騒ぎで、屋台も出ていた。その中で報告のためにポケナビを鳴らす。まずは家に。母親が出て、合格したことを伝えるとおめでとうと帰って来た。その場で父親が取り次ぐ。
    「ハルカおめでとう。ジムリーダーはこれからが大変だが、まずは一歩だ」
    「うん、お父さんありがとう! これから帰るから遅くなるね!」
     ポケナビを切る。そして次にかけたのはダイゴだった。もう仕事終わっていて、今はどこにいるのだろう。
    「もしもし」
     ほら私の言う通りだった。あそこでメタグロスがチャーレムを倒せたのは私の意見が正しかった。さてそのことをどう言ってやろうか。その時どんな返事をするのか楽しみで仕方ない。
    「ハルカちゃん、君は何をしたか解ってる?」
     ポケナビの相手を確認するまでもなく、ダイゴの第一声はこれだった。
    「あのままボーマンダで押し切れば、メタグロスは不要に傷つかずに済んだ。トレーナー倫理審査も行なわれることなく、君は勝てた。相手も合格しただろう。それなのに君はあえてメタグロスに交換した。そして急所に当たり、瀕死なのを庇ったメタグロスのおかげで勝てた。それ解ってる?」
     早口でまくしたてられ、ハルカは状況が解らない。解るのは、ダイゴがひどく怒っているということ。
    「ダイゴさん? なんで怒ってるんですか?」
    「君はあと少しで倫理審査で落ちるところだったんだ。それを解っているのかと聞いている」
    「なんでですか? そもそも瀕死になったらポケモン動けないじゃないですか」
    「だからメタグロスは君に遠慮してコメットパンチをしたんだろう。チャーレムに攻撃した後にすぐ倒れたのが何より証拠だ」
     通話が切れる。その必要がなくなったから。目の前に声と同じく表情が怒ってるダイゴがいる。
    「おいで。君のしたことを教えてあげる」
     手を引かれ、スタジアムから遠ざかる。楽しげな声が彼方まで来た。
     するとダイゴは突然ハルカを突き飛ばす。今までこんなことをされたことがなかったので、ハルカは驚くばかりだ。地面に手をついたままダイゴを見上げる。
    「ジムリーダーって何だろうね。チャンピオンってなんだろうね。君は結局、中身を伴わない肩書きだけのエリートトレーナーだよ」
     ダイゴの隣にはエアームドがいる。そしてダイゴは命じた。ハルカに向けて鋼の翼と。なぜそんな仕打ちを受けなければならないのか解らない。とっさにハルカは手で顔を庇った。
     何があったのだろう。なぜこんなダイゴは怒っている。そして今まで怒ったことはあっても、こんなことされたことがなかった。それなのにどうして。
     怖い。こんな言葉が通じないダイゴはダイゴじゃない。
    「ハルカちゃん。顔をあげて」
     穏やかなダイゴの声に、ハルカは顔をあげる。エアームドはボールに戻っていた。
    「怖かったかい?」
    「……はい」
    「無駄に攻撃を受けたメタグロスはこうだった。痛かったと思うよ、急所だったし。もしボーマンダがそのままいけば、怖い思いをしなくて済んだだろう。君は無駄にメタグロスを痛めつけただけだ」
     ダイゴはハルカを抱き起こす。彼女はようやく彼が怒ってる理由が解って来たようだ。試験合格の高揚感が抜けて、冷静になってきた。
    「調整なんかは後でいくらでも何とかなる。でもジムリーダーやチャンピオンに求められているのは、違うことじゃないかな」
    「ごめんなさい。私、昨日ダイゴさんに言われたのが悔しくて、絶対メタグロスで勝ってやろうって。だからボーマンダに戻ってもらったんです」
    「その負けず嫌いがハルカちゃんのいいところだけど、ポケモンを傷付けるのだけは気をつけて。それと謝るのは僕じゃない。メタグロスに謝りなさい」
     ハルカはボールを開いた。回復してすっかり元気になったメタグロスが出て来る。夜のライトに反射して眩しい。
    「ごめんねメタグロス。無駄な攻撃されないようがんばるから、もう少しいてくれる?」
     メタグロスは答えない。そのかわり、ハルカの足元にしっかりと寄り添った。主人と認めたトレーナーにする行動だ。いつでも命令が聞けるように待機するのだ。
    「メタグロスの調整、確かに攻撃もありかな」
     ダイゴは言う。今までメタグロスは防御力で防いできたから、ほとんどそれしか知らないのだ。
    「僕も完全に固定観念にとらわれてたよ。そういう戦い方もある。僕も勉強になった」
    「もし防御にしてたら、急所うけても瀕死にならなかったかもしれないし、防御もありですね」
     ダイゴと目が合う。そして彼の胸に飛び込んだ。苦しいほど抱き返してくれる。
     師匠といっても解らないことだってあるんだ。そしてそれについていくだけが弟子じゃないんだ。解らないことがあれば試していけばいいんだ。それで二人で進んでいけばいいんだ。
    「エリートトレーナーおめでとう」
    「ありがとう、ございます」
     ジムリーダーなんて名前だけ。私の夢をけなした彼に訳の分からないまま惹かれて、反抗して。
     世界が干上がるかもしれない時に、私を信じて最後まで応援してくれた。待っててくれたからがんばることができた。
     チャンピオンとして戦った時、なんで名前だけなんて言うのか解らなかった。何手も先を読んでるような目だった。お金やコネで何とかなる実力じゃないのに、不思議だった。 こういうことなんだ。実力のある人ほど、自分がそれに相応しいか不安なんだ。
     ダイゴさん大丈夫だよ。実力は私よりかなり上の、そして私の師匠は、チャンピオンなのだから。




    ーーーーーーーーー
    ポケモン世界の資格ってどーなってんのか気になる。
    なんだかポケモンもったらポケモントレーナーみたいな感じではあるけど、その前に講習とかないのかね。普通ありそうな気がする。一日でも出ないと、ポケモンきっちり管理できないと思うし
    しつけ教室なんてのもあると思う
    エリートトレーナーは上級資格の一種、ベテラントレーナーは要経験という解釈でダイハルぎみに書いてみた。
    バトル廃人みたいなところがあるので攻撃に調整するとか防御に調整するとか言ってる。解らない場合は雰囲気で読み取ってください。

    【好きにしていいのよ】【他にもポケモン関係の資格試験あったりするのかしら】


      [No.2479] ファースト・コンタクト 投稿者:aotoki   投稿日:2012/06/22(Fri) 15:52:36     94clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    正直言ってこの仕事は辛い。と俺は一人、埃っぽい部屋で思う。

    絶え間ない権力争い、終わりの見えない研究作業、次から次へと舞い込む不確実なデータ、おべっか買い、妙な誤解、それを巡る果てしない論争…
    よほどのバカか物好きでない限り、この職業は勧められないと俺はいつも思う。

    じゃあもし、俺が俺に仕事を勧める機会があったとして、俺は自分にこの仕事を勧められたか、と聞かれると、答えは『ノー』になる。正直言って、何故今もここにいるのか俺自身が一番良くわかってない。
    …惰性?それを言っちゃ何もかもおしまいだろう。



    実の所、その「答え」は出ているのかもしれない。
    ドアの向こうから誰かが走ってくる音がする。
    その音はだんだんこちらに近づいてきて、バン、と部屋の扉が乱暴に開かれて止まった。
    「カイドウ室長!こちらにいらっしゃったんですか!」
    「あーなんだようるせいな…もうちょっと静かにこれないのかよ」
    両手一杯に資料を抱え込んだ部下は、俺の机にカッカッと歩み寄ってきた。明らかに機嫌が悪いが、おおかた俺を捜して小一時間歩き回ってたんだろう。俺が部屋に居るなんて普段なら考えにくいことだろうから。
    「静かに、ってこの状況でどう静かに開けろっていうんですか」
    「言葉のアヤだ」
    「アヤ過ぎます」堅物に定評のある部下は、器用に眼鏡を直した。それくらい器用ならドアだって開けられただろうにと思うが、心内にとどめておく。
    「あーもうそこはどうでもいいよ…それより何だ本題は。お前だってヒマじゃないだろ?」
    不機嫌そうに俺を見下ろしていた部下の顔が、ワンテンポおいてにやりと笑った。そして、抱えた紙の束からガサガサと一枚の紙を俺の前に差し出した。「今日はどうしても室長に見せたいものがありまして」
    紙にはずらずらとした外国語の文章と、一枚の写真が載っていた。
    「・・・・なんだこれは?」俺は答えを知りながらそれを聞く。


    「今日付けで出された新個体の情報です。今度のはかなり面白そうですよ」


    俺の口が、にやりと曲がったのが分かった。
    「場所は?」
    「ten.イッシュです」
    ten.― tentative、つまり仮称。
    「…要するに新しいポケモンって訳か」
    「まだ学内では確定的な意見は出されていませんが、研究者間での非公式見解では十中八九そうだろうと」
    「…よしわかった」
    俺は勢いよく机から立ち上がった。
    「カシワギ!」「はい!」「今ある資料はこれだけか?」俺は部下から資料を全てひったくる。ざっと目を通していくが、まだしっかりとした根拠は出揃っていないらしい。
    「はい。資料科から取れるだけもってきました」
    「もっかい行って探してこい。まだρ-DNA関連のデータがあるはずだ」
    「それは僕も探しましたが、まだ出てないようで…」部下の視線が少し泳ぐ。そこに俺は紙の束を叩きつけた。
    「そんならうちで出すしかないだろ?遺伝子解析室の割り当て見てこい。あとこの公開試料」さらに資料を部下に押し付ける。
    「こいつの個体データも。この辺りだと…イカリ辺りが専門か?」俺は普段おぼろ気な研究員のリストを脳内で引っ張りだす。
    「じゃあρ-DNAについては僕とイカリでまとめておきます」
    そう言って部下は机から離れた。
    「おう、そうしてくれ」俺は資料を漁りながら片手を上げた。部下のいう通り『取れるだけもってきた』らしく、信憑性の高いデータから関係ないジャンクまでよりどりみどり。これをより分けて裏付けするのだけでも一週はかかりそうだ、と何となく見当をつけてみる。
    まぁ学内のレジギガスとまで揶揄される俺のカンだから、果たして当たっているのかどうかはわからないが。
    「…あとカイドウさん」扉の方から、部下の声が聞こえた。
    「なんだ?」俺は手を休めず答えた。
    「…こちらのサポート人員も集めてきます。データの裏付けだけなら外の人間でも平気ですよね?信頼できるツテがあるので辿ってみます」
    俺は首だけなんとか扉に向けた。
    「…悪いな、カシワギ。いつもいつも」
    部屋から出ようとしていた部下も、首だけでこちらを振り返った。
    「だって室長が本気で動くのを見られるのは、こんなとき位ですから。こちらだって数少ないチャンスを無駄にはできませんよ」
    では、失礼します。そう笑いながら、部下は扉の向こうに小走りで消えた。


    「…ったく、よく出来た奴だよ」
    また一人になった部屋で、俺は紙の山から一枚をつまみ上げた。
    蛍光灯の安い光に透けて映るのは、見たこともないポケモンの姿。これから俺達が出会う、まだ見ぬ誰かの"仲間"の一匹だ。
    「…へへっ」
    俺はその輪郭を指でなぞる。
    果たしてこいつは本当に新しいポケモンなのか、それを調べるのが俺達研究者の一番の仕事だと、この世界の片隅に居る俺は少なくともそう思っている。
    こいつを、こいつの仲間たちを、生涯一緒に過ごせるパートナーに出会わせるための仕事。
    星の数ほどの出会いのいくつかが俺の手から、汗から、涙から、生まれる。それだけで、その喜びだけでこの世界にいるだけの価値があるってもんだ。
    …誇大妄想?それを言っちゃ何もかもおしまいだろう。


    「………さて、と」
    俺は紙を山の上に戻す。
    これからこの部屋も忙しくなってくる。多分この手柄を狙って、全ての研究室が動きだすだろう。こういう競争主義な所が俺は一番嫌いだが、まぁこの世界に身を置く以上仕方ない。

    案ずるより生むが易し。

    「…さぁ旅立つとしますかね」
    俺は紙の山をかき分けた。



    ****
    「・・・・ん」
    珍しく新聞を読んでいたら、珍しく友人の名前を見つけた。
    『カント―学会カイドウ博士・新個体を発見か』『「ファーストコンタクター」またもや快挙』
    地方紙にも関わらず四分の一の紙面を割かれたその記事には、友人が見つけたらしいポケモンの詳細と、友人の研究がすこし誇張された文体で書かれていた。
    「ファーストコンタクター、か」
    まぁ確かにポケモン図鑑はポケモンとの出会いのきっかけにはなるけれど、それにしても凄いあだ名だと少し笑ったとき、後ろからヨノワールが覗き込んできた。
    「?」
    「あぁ、これか?俺の昔の友達だよ。大学で一緒だったんだ」

    窓の向こうには広い空。
    今日もどこかで、あいつの作ったファーストコンタクトが生まれてるんだろう。



    "Contacter" THE END!


    [あとがきのようなもの]
    初めましての方は初めまして。
    また読んで下さった方、ありがとうございます。aotokiと申すものです。

    何が相棒との出会い?こっちゃ先に会ってるんだよ!!というポケモン学者のお話。
    作中の単語は全て創作です。スイマセン。
    現代のポケモン図鑑はきっとたくさんの研究者さんが関わってできていくのかな〜とか思っています。
    安全なポケモン・危険なポケモン・生態・能力・習性・・・・それが分かって初めて素敵な出会いが成り立つ。
    縁の下は大事。そんな作者の妄想なのでした。

    ちなみに最後の「俺」は、「日曜は(ry」のお父さん・・・・のつもりです。


      [No.2478] ありがとうございます 投稿者:aotoki   投稿日:2012/06/22(Fri) 15:04:12     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    コメントありがとうございます!
    銀は初見の印象でチコリ―タを選んだクチなので後々苦労しました・・・・
    あぁ、バクフーンえらんどきゃよかったなぁ・・・・(遠い目)


      [No.2477] 【ポケライフ】雨降りレストラン 投稿者:サン   投稿日:2012/06/21(Thu) 17:45:16     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ここは花香る街、タマムシシティの一角に建つレストラン“すばくらめ”。所々を燻したような赤レンガの趣ある外観で、ちょうど梅雨入り時という事もあってか、辺りを囲う生垣のアジサイは黄緑色から紫へ、うっすらと変わりつつあるところであった。ぴかぴかに磨かれたショーウィンドウに並ぶのは、いかにもおいしそうなオムライスやスパゲティ。きっちりと整った店内は、洒落た絵柄の大皿や異国の絵画、ジョウロ型の花瓶に生けられた薄桃色の花々等、実にさまざまなものが落ち着いた雰囲気を醸し出している。
     一見普通に見えるこの店だが、実は今、街でちょっとした話題を呼んでいるのである――



     アヤメは皿を拭く手を休め、外を眺めた。
     窓越しに降る雨は、無数の斜線がいくつも重なっているように見える。それは依然として止む気配はなく、店に客が来る気配もない。

    「暇だね、ジョン」

     足元で寝そべっていたグラエナは、同意するようにあくびをした。
     休日の昼下がり、せっかくのかき入れ時だというのに肝心の客足はさっぱりだった。一応、来店する客もいたことにはいたのだが、それもせいぜい三、四組で、さっさと昼食を済ませると満足して帰っていった。
     店内はすっかりがらんと静まり返り、一人厨房を任されている口数少ないコックのサエジマは、時間潰しでもするかのようなのんびりとした手つきで壁にこびりついた油だの、水周りだのの掃除をやり出した。店長にいたっては「ちょっと寝てくる、何かあったら起こしてくれ」と、頭をかきかきあくびを残して店の奥へと引っ込んでしまった。
     かくしてまるっきり活気のないホールには、アルバイトのアヤメと、店長のポケモンで接客もこなせる利口なグラエナ、ジョンだけが取り残された。
     いつお客が来てもすぐに迎えられるよう、入り口をちらちら見ながらの作業はすっかり身に染み込んではいるが、ちっとも開かない扉を見つめていると何とももどかしいような歯痒さに苛まれる。腕時計に目をやると、最後に時間を確認してからまだ五分と経っていない。
     アヤメはため息をついた。
     まるで拷問である。果たしてこのひどく退屈な時間に、自分はどこまで耐えられるだろうか。それもこれも、朝からずっと降り続くうっとうしい雨のせいだ。

    「せめてもう少し小降りになってくれればいいのにね」

     ジョンは黒毛の豊かな尻尾をぱたりと一振り、それから尖った顔を先までしっかり床につけて目を伏せた。
     アヤメはつい苦笑した。
     ポケモンはトレーナーに似るとは、全くうまいこと言ったものだ。もっとも絵的に違うのは、店の奥で同じように寝ているであろう彼の主人は、きっとまたお子様用の椅子に体育座りで眠りこけている、というところか。
     初めてその図を見た時は、幅の足りない小さな椅子の上に、サンドみたいに丸くなって仮眠をとる姿があまりにも滑稽で吹き出しそうになったものだが、後に狭い店内で休憩をとるにはそれしかないことを知った。店長という多忙な肩書きは、どこでも寝れるという特性を自然と身につけさせるのだろうか。
     それにしても、と再び窓の外へと視線を移す。
     変わらぬ様子で降り続ける雨は、アヤメの記憶が確かなら、昼頃には止むという予報だったはずだ。それなら少しぐらい雨足が落ち着いてもいいだろうに、一向に収まる様子は見られない。
     アヤメはすっかり憂鬱になって、窓から目をそらそうとした。が、ふいに思い止まって、もう一度店の外に視線を戻す。
     やはり、何かおかしい。店から十数メートル離れたところを歩く人は、誰一人傘をさしていない。店の前はざあざあ降りのままなのに、だ。

    「まさか……」

     アヤメは拭きかけの皿を置いて、店の外へと飛び出した。ぽたぽたと水の滴る屋根の下で、かすかな予感が確信に変わる。アヤメは急ぎ店内へ踵を返すと、何事か、といった風に顔を上げたジョンを通り越し、そのまま奥へと駆け込んだ。

    「店長っ! 大変です、この雨、うちの店の周りにしか降ってませんよ!」

    「んぁっ……? ……あ? 何だってぇ?」

     案の定、店長は小さな椅子の上で不恰好に丸まって眠っていたが、アヤメに揺すられると間抜けな呻き声をもらしながら目を覚ました。目元をごしごし擦りつつ、上擦った声で急かし立てるアヤメに腕を引かれるままに表へくりだすと、店長はあんぐりと口を開けた。
     店の周りはけたたましく降り続く激しい雨天、道路を一つ挟んだ向こう側は、雲の隙間から澄み切った青空が顔を覗かせ、陽射しきらめく見事な晴天である。よくファンタジー映画なんかで、悪の帝王が待ち構える城だか屋敷だかが厳かにそびえていて、その周りにだけ不気味に雨が降っている、という演出があるが、まさにこの店がそんな状況だったのだ。
     そりゃ、客も寄りつかねぇわな、と店長が呟いた。
     もっとも、待ち構えているのは掴みどころのないひょうひょうとした独身男性と、冴えない女子大生アルバイターだけれども、とアヤメは思った。

    「でも、どうしてここだけ……まるでこの道路が雨の境界線になってるみたいじゃないですか」

    「まるでじゃなくって、まさに境界線なんだよ。んー……そうだな、多分アレかな。おーい、ジョン!」

     主人に名を呼ばれたグラエナは、心得たと言わんばかりにガウと吠えると、雨もいとわず屋根から飛び出し地面に鼻面を押しつけた。

    「この天気じゃあ、匂いも薄れて嗅ぎ分けにくいだろうが、絶対近くにいるはずだ。頼むぞ」

     ジョンは掃除機みたいに首だけを動かしながら、ふんふんと盛んに濡れた地面の匂いを嗅いでいる。すると、何かを感じとったのだろう。突然火のついたように走り出し、店の生垣に生えたアジサイの群に向かって激しく吠え立てた。
     ぎざぎざ縁の艶やかな葉っぱや、薄い色した小さな花の丸い束が、驚いたように大きく揺れた。
     アヤメが事の成り行きを呆然と見つめていると、店長にちょいちょいと肩をつつかれ傘を持ってくるよう仕草で指示された。慌ててレジ横にかけてあった従業員用のビニール傘を手渡すと、店長は何も言わずに手早く広げ、真っ黒なたてがみを炎のように逆立てているグラエナの後ろについた。アヤメももう一本を手に取って、それに続いた。
     ジョンは鼻にしわを寄せて牙を唸らせ、今にも飛びかかりそうな勢いだ。
     その威嚇の対象に目を向けて、アヤメはあっと声をもらした。
     まだ咲きかけの、薄紫色をしたアジサイの花の固まりのすぐ下に、青いしずくのようなものがまん丸の小さな目でじっとこちらを見つめている。

    「ポワルンか。やっぱりな」

     店長が苦々しげにため息をついた。

    「最近、ゲームコーナーの景品に追加されたって噂を聞いたんだ」

     ポワルンというポケモンはアヤメも知っていた。確か、天気によって姿やタイプが変わるという不思議なポケモンだ。
     天候を操る技を使えるポケモンは数多くいるものの、それを自力で習得できる種類はさほど多くない。ポワルンはそのうちの一種で、日本晴れや霰など、数々の天気技を覚えることができると、昔本で読んだことがある。だが、その明確な生息地は分かっておらず、なかなか珍しい種類であるらしい。
     アヤメは店長が意外に博識だったことに驚きつつも、それを顔に出したら失礼だろうなとか思いながら、もう一度アジサイの中で息をひそめる青いしずくをじっと見つめた。

    「じゃあ、この子がずっとここで雨乞いしてたってことですか。何でだろう」

    「知るかよ。やれやれ、とんだ迷子のお知らせだ」

     店長が言うと、その迷子はびくりと身動ぎした。青く透き通る体が、ぷるぷるのゼリーみたいな動きで小刻みに震えている。
     その様子を見つめながら、アヤメは頭の中でじっと考え込んでいた。
     食べ物目当てで店にちょっかいを出してくる野性ポケモンはちょくちょく見かける。その大半は力づくで店に入り込もうとするため、いつも少々荒っぽいやり方でお引取り願っているものだ。
     だが、このポワルンは明らかに様子が違う。食料につられてやって来たのかは分からないが、これだけ敵意をむき出しにされてもいっかな攻撃してくる素振りは見られない。
     一体なぜだろう。

    「全く、立派な営業妨害だ。ジョン」

     ジョンはぐっと姿勢を低くした。次に主人が何か言えば、すぐにでもポワルンに飛びかかるだろう。
     その声を聞いたアヤメの脳裏に、不意にさっき店長が呟いた言葉がよみがえった。
     そうか。この子はゲームコーナーの景品として連れて来られたところを、逃げ出してきたんだ。
     胸にちくりとするものを感じて、アヤメは店長の腕にすがりついた。

    「ちょっと待ってください! ジョンも、威嚇を止めて!」

     店長は驚いたようにアヤメを見た。突然の制止の声に、ジョンも戸惑った様子で主人とアヤメとを見比べている。

    「なんだよ、いつも通りに追っ払うだけだろ……」

    「この子はおびえているだけですよ。知らないところに迷い込んでパニックになってる。このまま追い払ったとしても、きっとまたどこかで同じことが起こります!」

    「だからって、このままにしておくわけにも……あ、おい! アヤメ!」

     アヤメはずいと進み出て、対峙しているグラエナとポワルンの間に割って入った。
     危ないぞ。後ろで店長が叫んだが、アヤメは聞こえないふりをした。
     アジサイの中のしずくが潤んだ瞳でこちらを見上げた。

    「大丈夫。怖くないよ」

     アヤメは驚かさないよう気をつけながらゆっくりとしゃがみこみ、ポワルンと同じ目線になった。それから目だけはポワルンを捉えたまま、指先でポケットの中のつるつるした感覚を探す。手にしたそれを取り出すと、しずくが恐れたようにたじろいだ。アヤメはしずくに笑いかけ、大丈夫、と言い聞かせながら、ボールのスイッチを押した。

    「セリア、アロマセラピー」

     赤白二色の球から光が放たれ、勢いよく飛び出したベイリーフはすぐさま首巻く葉っぱを振るわせた。とたんに華やかなよい香りが辺りに広がり、緊張した空気が薄れていく。
     アジサイの中のしずくは、始め、呆然としたようにベイリーフを見つめていた。が、やがて見る見るうちに表情が和らぐと、ゆっくりと身をひそめていた葉っぱから滑り出た。その時にはもう、しずくの形はしていなかった。
     アヤメはにっこり微笑んで、傘を閉じた。
     いつの間にか顔を出した太陽が、軒先から滴り落ち、アジサイの葉を弾いた水をきらきらと輝かせた。



    「じゃあ、つまりこいつは、自分の身を隠そうとして雨乞いをしてたってことか?」

    「ええ。多分そうだと思います。前に、そういう話を聞いたことがあるんで」

     アヤメはすっかり懐いた様子で手のひらに収まったポワルンを撫でながら、店長にうなずき返した。
     通常のポワルンはまん丸の体が雲のように真っ白で、つぶらな瞳に、ねぐせがついた前髪みたいなものがついている。
     アヤメはその前髪もどきをくすぐりながら、かつて読んだ本から得た知識を店長に披露した。
     ポワルンは戦いを好まない温厚な性格のために、その時々の天気によってさまざまな姿に変化することで敵の目を欺いているらしい。また、自ら天候を変えることでよりその場に適した姿になって隠れたり、更にはそれで仲間に感情を伝えることもあると言われている。

    「だから、あれはこの子なりのSOSでもあったんです。怖いよ、助けて、って」

    「ほぉぉ、なるほどな。さすがよく知ってるな」

     店長が腕を組んで感心したように言うと、アヤメはつい苦笑した。

    「小さい頃から、ずっと、ポケモンが好きでしたから」

    「まあお前の場合、それだけが取り柄みたいなもんだしな」

    「ちょっとそれ、ひどいじゃないですか」

     アヤメはむっとして言い返したが、店長はただ笑って流しただけだった。
     とことんデリカシーのない人だ、アヤメは心の中でこっそり毒づいた。

    「で。どうするんだ? こいつ」

     店長は腕組みをしたまま、アヤメの手の中のポワルンを顎でしゃくった。

    「どうするって……?」

    「ゲームコーナーの景品だったんなら、お返しにあがるのが筋ってもん……」

    「えーっ! 店長のオニ! 悪魔! それ本気で言ってるんですか!」

     店長の言葉を遮って、アヤメは盛大に声を張り上げて抗議した。
     ゲームコーナーにはいろいろと黒い噂がある。そもそもポケモンを景品にしていること自体気に食わない上に、やたら珍しい種類ばかり並んでいるのも不気味である。経営者の裏にマフィアがついているという噂も聞くし、店に入り浸っているのも強面の人間ばかり。
     この手の中に大人しく収まるポケモンが、アジサイの葉に隠れて潤んだ瞳でじっとこちらを見つめていた様を思い出せば、よほど怖い目に遭ったとしか考えられない。
     アヤメは両手にポワルンを包んだまま店長から遠ざけるように背中へ回し、早口でまくし立てた。

    「せっかく逃げ出してきたのに、また檻の中に戻すような真似しろってことですか。そんなの絶対あり得ないですって! フリーザーもびっくりの冷徹人間ですよ!」

    「だああぁぁぁ! いいから最後まで聞けよ面倒な奴だなー! それが筋だけど、そうするわけにはいかないだろって話をしたかったのに。俺だけ悪者かよ」

    「えっ」

    「えっ、じゃねえよ。いい加減傷つくぜ、全く。デリカシーのない奴だな」

     店長が訳知り顔でにやつくのを見て、アヤメは凍りついた。
     まさかこの人は読心術でも使えるのだろうか。

    「んで、デリカシーのないお姉さん」

    「放っといてくださいよ」

     店長はからから笑い、アヤメの手の中から窮屈そうに顔を覗かせたポワルンを見つめた。

    「ちょっと相談なんだが……こいつは臆病みたいだけど、人懐っこくて聞き分けも良さそうだ。……なあ、お前さ」

     店長はしゃがみ込み、ポワルンの顎の辺りをくすぐった。

    「うちの店で働かないか?」

     ポワルンは目をぱちぱちさせた。
     アヤメも驚いて店長の顔を見た。先程までの冗談めかした様子はなく、どうやら本気の申し出らしい。

    「いいんですか? だって、さっきまでは追い払おうとしてたのに」

    「いつもいらっしゃる食料泥棒どもとは違うみたいだしな。ちょうど人手不足だし。なかなか平日の昼間に入れる奴がいなくてさ、ニャースの手も借りたいってな。もちろん。どこまで仕事を任せられるかはこいつ次第だけど」

     長年店を手伝ってきたジョンですら、できる事とできない事ははっきりしている。お客を席まで案内したり、メニューや伝票を運ぶことなら訳はないが、どんなに仕込んでもオーダーテイクは覚えられなかったらしい。毛が入るとまずいので、料理提供もタブーである。
     店長は、まだきょとんとした顔で自分を見上げているポワルンの頭をぽんぽん叩いた。

    「週六日勤務で、給与は……そうだな、ポフィン食べ放題ってのはどうだ? お前の好きな味の木の実で作ってやるよ」

     店長がポフィン食べ放題、と言った辺りから、ポワルンはいかにも嬉しそうにきらきらと目を輝かせた。それから途端にアヤメの手のひらから飛び出して、こくこくとうなずいて見せたのだった。
     その様子があまりにかわいくて、アヤメはつい笑ってしまった。

    「本当にそれでいいの? だって、週六日勤務だよ? 割に合わないよ」

     それでもよほど給与が魅力的に思えたらしい。ポワルンはぷるぷると首を振り、考え直すつもりはないと訴えている。

    「よし。じゃあ決まりだな! ジョン、後輩にしっかり仕事教えてやるんだぞ」

     ジョンはガウと一吠えすると、先程までの態度とは打って変わって親しげに尻尾を振り振りポワルンの顔をぺろんと舐めた。

    「良かったね、ライちゃん」

    「ライちゃん?」

    「この子の名前です。ライチの皮をむいたみたいな色だから」

    「ふぅん。それでライチ、ライちゃんか。え? てか、こいつメスなの?」

    「店長、気づかなかったんですか?」

     呆れたように言うアヤメの隣で、ポワルン改めライチが不満げにぷくっと頬っぺたを膨らませた。店長はその両頬を手で挟み、きゅっとしぼませた。

    「悪い悪い。ま、今日からよろしくな。ライチ」



     店長の見込んだ通り、ライチは物覚えが良くて徐々にその才能を露にした。ちょっと教えただけで簡単な接客の他、単純なオーダーも承ることができるようになったのだ。
     何品もあるような複雑なオーダーはさすがにお手上げのようだが、一、二品程度ならば何とかこなせるらしい。もちろん人間の言葉を話せる訳ではないので、まず他のホールスタッフにメニュー表を指し示して注文を伝え、それからそのスタッフがキッチンに通すという方式になるため手間はかかるが、それでも珍しさからかお客の評判も上々で、彼女目当てに来店するファンもちらほら現れ始めた。
     かくしてライチは、ジョンと並んで早くも店の看板ポケモンとしての地位を獲得したのである。

    「それにしても店長。あの時、よく一目見ただけでポワルンだって分かりましたね」

     今日も立派に繁盛して、そろそろ客足落ち着くお昼過ぎ。
     桃色のポフィンをおいしそうにもぐもぐやっているライチの頭を撫でながら、アヤメは店長にずっと気になっていたことを聞いてみた。

    「私、ポワルンってノーマルタイプの姿しか見たことなかったから全然分かりませんでしたよ」

    「あぁ……そうだな。お前、ホウエン地方って知ってる?」

    「えっと、カントーの南西にあるところですよね? 緑豊かな野生の王国だっていう……」

    「そうそう。そこに天気研究所ってのがあってさ。ガキの頃社会科見学で行ったんだ。そこにめちゃたくさんいた。やっぱ、進化でもないのに姿が変わるってのが子供心に印象的だったからな」

    「……って、店長。ホウエン出身なんですか?」

    「なんだよ、その意外そうな顔は」

    「いや……何ていうか、ホウエンの人って、ばいとか、ごわすとか言うものだと思ってたから……」

    「イメージ古風だな」

     からんからんと入り口のベルが鳴り、ジョンとライチが競うように迎えに行く。

     ここはレストラン“すばくらめ”。寡黙なコックが作り出す数々の料理と、人当たりのいい店長、そして度々訪れる珍客、珍事がちょっとした評判を呼んでいる、今話題の店である。



    ―――――――――――――――
    6/22追記
    【ポケライフ】つけるの完全に忘れてました……
    あと誤字一箇所修正。ちゃんと推敲してないのがモロバレル。
    とりあえずBW2発売までに書き上げられてよかったです。
    そしてせっかくタマムシ舞台なお話のはずなのに、カントー勢が一匹も出ないというパターン。
    どうしよう、店にカビゴンが来襲する話でも書いてみようかな(←


      [No.2476] バクフーン萌え 投稿者:砂糖水   投稿日:2012/06/21(Thu) 00:36:56     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    はじめましてaotokiさん。

    寄り添ってくれるバクフーンが愛おしいです。
    それでいて、やっぱり悲しい。なんというか、ぎゅうっと抱きしめてあげたい。
    両親の仲が悪いのは子供にとって本当に嫌なものですよね…。
    それでもバクフーンが傍にいてくれるなら、少しはそんな気持ちが和らぐような…。

    とりあえず何が言いたかったのかというと、バクフーン萌えです。


      [No.2475] 黄色いアイドル>>>>>美和 投稿者:aotoki   投稿日:2012/06/20(Wed) 09:22:15     20clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    そうか!ピカチュウがあんなに強いのは先に出来たからなのか!!

    ・・・・と妙な納得をしました(笑)

    ドーブルの「スケッチ」は確かに謎いですね。レベルが上がると描写能力が上がるから?と考えてみたのですが・・・。どうなんだろう。

    ともかくラスト展開には鳥肌が立ちました。
    創造神より手前で世界を作るドーブル・・・かっこよかったです。


    【ドーブルはイケメンなのよ】


      [No.2474] さっそく挑戦してみます 投稿者:小春   投稿日:2012/06/19(Tue) 22:21:17     33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    おいかぜ、その手段があるのをすっかり忘れていました。
    フワンテがちょうどおいかぜ覚えているので一緒に飛んでもらおうと思います。そういえばフワライドの特性が軽業だったので、それも発動させて飛んでみたいと思います。きっと鳥ポケモン真っ青のそらをとぶをみせてくれるはずだと信じています。さっそく、バイト先に空から颯爽と舞い降りようと思います。
    ご回答、ありがとうございました!


    ☆★☆★☆★


    意気揚々とおいかぜかるわざのフワライドそらをとぶで空から颯爽と登場しようとしてあまりの速さに目を回して落下していく姿が思い浮かんだのです。注意書きには注目しなきゃだめですね。
    回答、ありがとうございます!


      [No.2473] 【ポケライフ】ちいさくなる 投稿者:aotoki   投稿日:2012/06/19(Tue) 17:35:29     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ぼくが部屋のすみっこに座っていると、バクフーンはいつもぼくのとなりにいてくれる。
    背中の炎をけして、そーっと、ぼくの近くにやってきて、あったかい体でぼくのとなりにくっついてくれる。
    パパとママの言い付けどおり、リビングのテーブルの上でボールの中にいるはずなのに、バクフーンはいつもぼくの部屋まで出てくる。
    そんなときは大抵、パパとママがケンカしてるときだ。
    パパとママはなかよしだって、どんな本にも書いてあるけど、それはウソだってぼくは知っている。だって、なかよしならケンカのあとの『ごめんね』があるでしょ?ぼくだって、友達とケンカしたら、ぼくが悪くても悪くなくてもあやまりに行く。でもパパとママにはそれがない。だから、いつまでもケンカをしてるんだ。

    いつまでも。いつまでも。ぼくが寝たはずの時間から、いつまでも。

    そんなパパとママを聞いているのが、ぼくはイヤだ。
    だから、こうして部屋のすみでちいさくなることにしてる。まるで、図鑑でみたヒノアラシみたいに。


    もうひとつ、ぼくは知っていることがある。
    それはぼくがバクフーンに命令すれば、パパとママのケンカは片付けられるってこと。
    ぼくが一言、友達とのバトルのときみたいになにかをいえば、パパも、ママも、二度とケンカをしなくなる。
    バクフーンも、ぼくが言わないからそうしないだけで、本当はケンカを止めさせたいはずなんだ。

    ぼくは知っている。
    パパとママがケンカしているとき、バクフーンもぼくと一緒に悲しいかおになる。けれどすこしだけ、一回だけ、かならずドアの向こうを睨むんだ。それも、バトルの前のときみたいな、怖い目で。まるで、敵が向こうにいるような怖い目で。


    …でも、ぼくはそれをするのがイヤだ。
    だって、そんなことしても、本当に二人はなかよしにならないから。
    だれも、ぼくのとなりにいてくれなくなるから。

    だから、ぼくはこうして部屋のすみでちいさくなることにしている。
    そうすれば、バクフーンがとなりに来てくれて、ぼくと一緒にいてくれるから。



    ***
    初めましての方は初めまして。
    また読んで下さった方は、ありがとうございます。aotokiです。
    ポケモンは家族。じゃあこういうちょっと物悲しいのもありかな、と勢いで書きました。
    第二世代はチコリ―タでしたがバクフーンもなかなか好きです。・・・べっ、べつにオーダイルが嫌いだとかそういうのじゃないからね!!

    反省はしている。だが後悔は(カイリューの はかいこうせん!


    【なにしてもいいのよ】


      [No.2472] ありがとうございます 投稿者:aotoki   投稿日:2012/06/19(Tue) 17:31:05     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    皆さんの話を踏まえて息子と話したところ、「一週間考える」と留まってくれました。
    でもいっしょに遊んだりしているところを見る限りだと、大丈夫なようです。

    ラグラージの姿は見せていないので、また同じようなことを言われるかもしれませんが、
    そのときもまた皆さんの話をしようと思います。

    ありがとうございました。


    【ありがとうございましたなのよ】
    【ラグラージはかわいいのよ】


      [No.2471] おおおうう! 投稿者:ことら   《URL》   投稿日:2012/06/19(Tue) 17:24:14     21clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    まさかの同士がいました!いやその前に初めまして!
    Nがかわいそう、N悪くない!となった時にちげーだろって思ったのが発端です!
    そーじゃなきゃ、途中途中でもっとNを利用してます的な発言が端々に感じられてもいいと思うのですよ!


    あとゲーチスがそのままなのはその通りでございま!
    高橋容疑者の件でも解った通り、名前を知られているのと知られていないのではやっぱり違いますし!
    Nじゃなくてゲーチスが演説していたのは、年齢かさねた貫禄もありましょーが、あそこまで顔だしてると首謀者はゲーチスと聴衆は言うだろうし!
    サザンドラは流星群なんか使わないで竜のはどうでいいです


    それにしてもそういう表現があるのだな、と描いてみたをみながら思いました。
    ゲーチスとNをありがとうございます! うすいほんだとそっち系しかn


      [No.2470] 朽ちて果てゆくIII 投稿者:teko   投稿日:2012/06/19(Tue) 12:32:21     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    人の身体と云うものは真に便利に出来ており、植物の養分と成ることは勿論、放っておけば実を削ぎ、白く小さな欠片となってくれるのです。あの形のまま、残り続けるのは勘弁ですが、少し散らしておけば芸術のちょっとしたアクセントになるもので

    貴方もそう思うでしょう。

    この建物の最奥の、小さな小さな寝室に、彼女は眠っています。優しく儚げな木漏れ日に照らされて揺れるーーそれはまるで秋千の様に、

    ゆらゆらと揺れる彼女、ひらひらと揺れる私。

    私は彼女のことを何一つ知らないのです。何故此処に居るのか、何故彼女を目の前にして私が生まれたのかーー理由は分からないけれど彼女は私と何か深い関係があったのではと。私はそう思いました。故に私は彼女を守り、此処を守り、彼女は私が喜べば喜び、悲しめば悲しみーー

    赤い瞳の彼女、赤い瞳の私、
    白い姿の彼女、黒い姿の私、
    吊り下がる彼女、浮遊する私、
    とうに死んでいる彼女、とうに死んでいた私、
    黙す彼女、嘆く私、
    詛う彼女、呪う私、

    私は彼女、彼女は私ーー。


    光の届かない影の闇が、静かに嗤った。


      [No.2469] 朽ちて果てゆく II 投稿者:teko   投稿日:2012/06/19(Tue) 12:19:05     30clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    草に埋もれかけた畦道を行けば、嘗ての醸造所、赤い塗装の剥がれかけた三角屋根、煉瓦で造られた玄関、白い壁、人の去ったそれには蜘蛛の糸を貼り付けた様に蔦が絡み付いています。腐りかけた木の扉を開けば、ぽたぽたと水滴が零れ落ちてきます。屋根に空いた穴からは幾筋もの光が差し込み、薄暗い室内を照らします。食卓、椅子、暖炉、本、それら全ては二度と現れることのないであろう使用者をただ静かに待っています。

    目を瞑れば人々の笑い声が聞こえてきそうなほど、此処は過去の声に溢れています。一つ一つの物体に長い長い物語が刻み込まれている様で、嗚呼、なんて美しいんでしょう。

    人の消えた世界はありとあらゆるものを植物が飲み込んでゆく世界。鉄格子も鉄錠も全てを飲み込み、緑に染める。風に吹かれ、雨にうたれ、柱だけに成りながら、朽ちて果ててゆきながら、唯々人を待ち続けるそれは、どんな芸術よりも美しくーー


    手を加えるものに、私は容赦しない。


      [No.2468] 朽ちて果てゆく 投稿者:teko   投稿日:2012/06/19(Tue) 12:06:38     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    昔昔、此の場所一帯は葡萄の産地として名の知れた場所でありました。所々に建てられた醸造所では可憐な乙女が実を踏む光景を見ることが出来ました。穏やかな陽射しが降り注ぎ、恵みの雨が降り注ぐ、豊かな土地でありました。

    何故過去の話しとして語るのか。今や此の場所は寂れた寂れた土地。作られた道が僅かに残る程度で畑の跡など見当たりもしません。土地を使いすぎて荒れ地となってしまったわけでも、小川が枯れてしまった訳でもありません。今日も今日とて緑に繁る草ゝが温かな陽を浴び、風にゆらゆらと揺れています。

    原因は不明ですが、あるときからぱったりと葡萄が育たなくなってしまったと云います。いえ、葡萄だけではありません。人の植えた物、人の連れてきた物、全てが突然弱り死に、育たなくなってしまった、と多くの智者が原因を解明してみせようと此の地を訪れましたが、誰一人としてその目的を果たせぬまま去って行きました。そして、また一人一人と去って行き、残されたのは壊されることなく放置された家々達……。

    私が此処にいる理由は何でしょう。それは驚いたことに私にもわからないのです。私が意思を持ち、記憶があるのはそう、此の場所からなのです。気づけば此処にいて、何も持たぬまま佇んでいたのです。


      [No.2467] neu 投稿者:巳佑   投稿日:2012/06/19(Tue) 02:59:55     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     真っ白で塗りたくられた場所に僕はいた。
     自慢の尻尾で大好きな色を使って絵を描き続けている。
     だけどね、いつも僕が描いているのはただの絵だけじゃないんだ……おや、ウワサをすればなんとやら。お客さんが来たよ。
     
     僕の目の前に現れたのは一つのまーるい光。
     ぽわぽわと淡い光を漂わせながら、ふよふよと浮いている。
     
     やぁ、いらっしゃい。どのようなご要望で?
     ふむふむ、まずは体を黄色にして欲しいと。
     耳は長い方がいい? それとも短い方がいい? 聞こえやすさはまたオプションでつけておくよ。
     それと、赤いほっぺたね、分かった。
     あぁ、尻尾はつけるかい? 今のところ、キミの話を聞いていると、尻尾はつけておいた方が似合うと思うなぁ……オッケー、つけておくよ。
     さてと、後はオプションとかだけど……能力はどうする? ほう、電気を出せる能力ね。中々かっこいいのを選ぶじゃないか……え、そんなの可能だって? 任させておいてよ。今のところ、僕に不可能なことはないからさ、多分ね。
     この後も色々と僕は丸い光のお客さんに質問を投げかけていく。
     涙とか汗とか出せた方がいい?
     丸い光のお客さんはお願いした――涙を流したときとか、汗をかくときとか、その一瞬で生きているという感じが好きだと答えた。
     言葉はどうする?
     丸い光のお客さんは返事した――言葉は欲しいけど、ニンゲンの言葉以外がいい。自分がこれから産まれる姿にきっとその言葉は似合わないだろうからと答えた。
     確かにそうだねと僕は相づちを打った。
     それに見世物にされたら大変だしねと僕が言うと、丸い光は苦笑いしながらそれだけは勘弁と返事をした。
     
     こんな感じで全部の質問が終わると、僕はいよいよ絵を描く作業に移し出す。
     
     ひたすら、丸い光のお客さんの望む姿を造り出していくのさ。
     まずは丸い光のお客さんが望んでいる姿を線描きで、だいたいの形を造る。これが土台になる作業なんだ……って言わなくても分かるか。
     線描きが終盤にさしかかるところで、丸い光にこれでいいかどうかを答えてもらう。オッケーならこのまま本線を描き、駄目なら気になったところを指摘してもらってそこを直していくっていう感じ。
     こんな感じでいいかな? 僕は丸い光に尋ねた
     丸い光のお客さんは感心したような声を上げた――うん、これでいいよと。
     一発オッケーをもらった僕は本線を描き始める。要らない線は消して、必要な線をしっかりと残しての繰り返し。ここで一つでもずれると、ほら、耳が大きくなっちゃったぁ……なんてことはないと思うけど。まぁ、ずれないようには意識して描いていく。
     無事、本線を描き終えると、ここから色塗りである。
     自慢の尻尾を使って、お客さんの希望通りに色を線だけの姿に乗せていく。
     僕の尻尾は便利でね、多種多様な色を使えるんだ。
     色って不思議だよね、一色一色が相手に違う世界を見せていくんだから。
     簡単な例えだけど、赤だったら……熱血とか、こうやる気が湧いてきそうな感じがしない? あぁ、逆に怖いというイメージとかもありそうだよね。
     後は青はなんとなく落ち着く感じかな……暗そうなイメージもあるけど。
     黄色は明るくなれる感じ?
     ほらね、適当に挙げていくだけでも、こんなに相手を分岐させていくでしょ?
     だから、色はいわば入り口なんだ。

     そして、僕はここで命の入り口を作っているんだ。

     おまたせしました、できあがりましたよ。
     ようやく僕が完成させた姿に丸い光のお客さんは満足したようだった――とても可愛くて自分好みと。
     ほめられた僕は尻尾を左右に揺らしながら、丸い光にその姿に向かうように促した。さぁ、どうぞと左手を完成させた姿に向けて。
     それから、丸い光はふよふよと相変わらずゆっくりと漂いながらその姿に入っていき、やがて、その姿は動き出した。

     黄色の体に、先端が真っ黒な長い耳、そして顔に浮かぶ赤いほっぺた、そしてイナズマ形の尻尾。

     目の前にいるその子は両手を胸に寄せ付けて力を込めてみる。すると、赤いほぺったから青い光の線がピリピリという音をたてながらほとばしった。
     どうやら希望通り、電気は使えていそうでなによりなにより。
     その子も電気が使えることを認識すると、また満足そうな笑顔を浮かべ、ぴかと鳴き声を上げる。
     僕はその鳴き声に応えるようにベレー帽の形をした頭に右手を置いて、告げた。 
     
     いってらっしゃい、お気をつけて。

     その言葉に背中を押されたかのように、その子は鳴き声をもう一つあげると、まっすぐ歩いていった。
     何歩か歩いたところでその子が振り返ると、手を振っている。
     僕が応えて、手を振ると、その子はもう一度前を向き、そのまま今度は振り返ることもしないで、そして、その小さな背中は徐々にぼんやりとなっていき、やがて僕の視界から消えていった。
     
     これでまた、僕に一匹だけの時間が訪れる。
     とりあえず僕は尻尾を再び握って、適当におもむくままに絵を描き始める。
     まぁ、絵を描ければそれでいいし、この一匹だけの時間なんてあんまり気にしてない……と言ったら嘘になるかな。
     いや、もちろん最初はそうだったよ? 気がついたらここにいて、絵を描いてて、ときどきさっきの丸い光のお客さんから依頼を受けたり、なんとなく過ごしていたんだよ。
     でもね、ここで過ごしている内に僕は思うようになったんだ。

     僕はどこから来たのだろう。
     それから僕はどこへも行くことはできないのかなって。

     だってさ、あの丸い光のお客さんだって、どこから来たのかが分かっていて、そして、どこかへと向かっていくんだよ?
     僕にもそれは可能なんじゃないかなと思ったりするわけなんだよ。
     ……なんだろうね、丸い光のお客さんと接している度に、僕の中で何かを求める気持ちが強くなっていくんだ。あの丸い光のお客さんが話していたことはとても面白そうなことばかりでね、そりゃあ話したらキリがないくらいさ。それは旅路の思い出話だったり、それは不器用で素直になれない恋話だったり、それはおなかが痛くなるほどの笑い話だったり。
     その話とともに僕の心の中に浮かんでくるのは様々な色。
     初々しい感じは桃色、涙を流した気分は水色、手に汗を握る赤色。
     僕には新鮮だったんだよ。
     色を作ることはあっても、そんな風に色と出逢うことなんて、少なくともここにはなかった。
     だからさ、会いに行きたくなったんだよ。
     
     ここから旅立ってみたくなったんだよ。
     
     それがどういう意味を示しているのかは今の僕には分かる。
     伊達にここで絵を描き続けていないしね。 

     そんなことを考えていたら、また丸い光のお客さんがやってきた。
     ちなみに丸い光のお客さんは毎回、別の方でね。それだけに絵の依頼も色々と分かれていくわけなんだけど。
     僕は右手を上げてこんにちはと告げると、丸い光のお客さんは早速お願いしたいことがあると答えた。
     さて、なんでしょう?
     丸い光のお客さんが声をあげた――自分を神様にして欲しい、神様になって、世界を色々と覗きたいと。
     これはまたすごいお願いが来たもんだと、僕は驚いた。なんかの冗談かなと一瞬思ったりしたけど、丸い光のお客さんから漂う真剣な空気にそれはないかと苦笑を漏らした。
     なんで笑ったかって? そりゃあ、あんなことを考えていた矢先にこんな依頼が来たからさ。なんてタイミングがいいんだろう。もしかして、これが旅立ちの合図なのかなって思いながら、僕は今度は微笑みを浮かべて、丸い光のお客さんに告げた――おやすいごようと。
     姿形はご自由にと任されたので、とにかく描いてみることから始めてみる。
     大きな四肢の体、そしてその背中に浮かぶのは宝石をはめ込んだ神秘的な金具か何か――なんか威厳がありそうな顔つきにして、一回、丸い光のお客さんに見せた。結果はこれまた運よく一発オッケー。後は色を塗るだけ。
     大きな四肢の体は殆ど白に染まり、顔の部分は黒、例の金具には金色を塗り、宝石には深緑を溶けさせて、瞳には赤を込めた。
     こうして出来上がった、姿に丸い光のお客さんはうんうんと満足そうな声をあげた。
     後は丸い光のお客さんがその絵に飛び込むだけになったとき、僕はちょっと待つようにと声をかけた。
     神様になろうというキミに僕から贈り物。

     そう言って、僕は自分の尻尾の先を引きちぎった。

     不思議と痛みはなく、尻尾の切れ間からは血が流れることもなかった。
     丸い光のお客さんが驚いた様子を見せるなか、僕はこの尻尾にはなんでもできる力を持っていることを告げた。
     姿を作るだけではなく、その姿に色々なもの――力といったようなものをつけてあげられることも教えてあげた。神様になるキミにはピッタリの品物だよと僕が言うと、僕の尻尾を受け取った丸い光のお客さんが心配そうに尋ねてきた――そんなことをしてお前は大丈夫なのかと。
     もちろん、力を失くした僕にもうここに留まることは許されないのか、僕の体は足から少しずつ消えていく。
     一か八か賭けみたいなものだったけど、通用して良かった。
     この先、僕は丸い光のお客さんみたいにどこかへと向かうんだろうなと思いながら、僕は右手をベレー帽の頭に乗せて笑顔で言う。

     生まれ変わるんだ、僕もキミも。

     新しい色になって、たくさんの色と出逢って、この先の世界を描いていくんだ。

     それぞれの場所で。

     それぞれの体で。
     
     それぞれの命で。



    【書いてみました】

     とある曲を聴いていたら書いてみたくなった今回の物語……ようやく書けました。
     多分、お分かりだと思いますが、語り部はドーブル君です。
     ハハゴモリさんで命を編むとかも素敵かなと思ったのですが、やはり、ドーブル君の持つスケッチの力とかも考えると、ドーブル君の方がいいかと思いまして、このようになりました。
     
     ドーブル君のスケッチって本当に不思議だよなぁ、一体どういう原理で技を会得する流れになるんだろう……と思ったり(

     ありがとうございました。

    【何をしてもいいですよ】


      [No.2466] Re: 【緊急】教えてください 投稿者:茶色   投稿日:2012/06/18(Mon) 21:00:11     33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    もしご子息が旅に出られる年齢でしたら、1ヶ月くらいでも良いので旅に出させてはいかがでしょう。

    持ちポケはもちろんヌマクローです。
    旅に出たはじめの内は1体でも多くのポケモンが必要です。他のポケモンを捕まえてもヌマクローを逃がすということは難しいです。

    そうしている内に、ヌマクローの良さも分かるでしょうし、そうでなくともラグラージに進化するでしょう。

    それでもなおヌマクローやラグラージはいやだ、とおっしゃるようでしたら仕方ありません。
    ポケモンにとってもトレーナーの間には好き嫌いも含めて相性があります。
    親御さんのお気持ちも分かりますが、親の気持ちを押しつけることだけが教育であるとは思えません。
    逃がすのはあまりおすすめしませんが、ご子息が望むポケモンとの交換に出すという手もあります。


    P.S.
    交換するとき、相場にあわないポケモンを望むようでしたらそれはないものねだりの類だと思います。
    老婆心ながら、その場合は親御さんがぴしりと言うべき場面であると付言致します。


      [No.2465] 【描いてみた】見事にホイホイされました 投稿者:メルボウヤ   《URL》   投稿日:2012/06/18(Mon) 19:53:17     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    【描いてみた】見事にホイホイされました (画像サイズ: 618×890 154kB)


    ことらさん初めまして! 初コメントで緊張のメルボウヤと申します。

    いきなりですが、私、ゲーチスが大好きなんです。Nなんて目じゃねえ!んです。(Nごめん
    以前から、ゲーチスがあそこでNに対して手の平を返したのは、Nを被害者に成り立たせて主人公達からの非難の矛先を自分へ向けるため、つまりNを守るためだったんじゃなかろうか…いんや、そうに違いない! と独り楽しく妄想していたので(…)、今回ことらさんのお話を見て、私が求めてたのはこれだッ! と甚く感激しました。
    一人称、しかも丁寧語なところがツボです。たまらん。
    ゲーチスが偽名を使わなかったのはもしもの時、Nを深追いさせず、自分が身代わりになろうと考えたから、ということなんでしょうか。だとするととても居た堪れない(´へ`。) …って、深読みが的外れでしたらごめんなさい;
    サザンドラとの信頼関係を感じさせるやり取りも燃え…! ゲーチスのサザンドラはりゅうせいぐんが使えればいいと思います。でもゲームでそんなの使われた日にゃ、いよいよDSをぶん投げたくなるかも知れませんね!

    好みど真ん中の彼が見れてあんまりにも嬉しかったので、漫画擬きを描いちゃいました*^q^*
    ポケモンが一切登場しない形となってしまいましたが; サザンドラとのツーショットも描きたかったなぁ〜。

    はああ〜(感嘆の溜息)。素敵なお話を読ませて頂いて、ありがとうございましたvv


    【何しても構いませんですv】
    【色んなゲーチスをもっと見たいのよ】 ←他力本願


      [No.2464] 足下注意 投稿者:門森 輝   投稿日:2012/06/17(Sun) 19:19:02     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     まだか? まだなのか? いや、きっともう少しだ。
     ネジ山の奥、氷に覆われた岩の側。俺は戦い終えたイーブイを一旦ボールへと戻し、再び野生のポケモンを探してうろつく。
     今まで何匹倒しただろうか。後何匹倒せば良いのだろうか。確かに今のイーブイにとってここら辺のポケモンなら楽勝だ。だがこれだけ倒したんだ。そろそろ、そろそろ進化しても良いはずだ。
     うろつく内にクマシュンを見つけた。俺はボールからイーブイを出し、今まで通り突進を指示する。イーブイがクマシュンに向かって走り出す。今回もこれだけで倒せるはずだった。
     ――が、こけた。イーブイが。躓いたのだろう。突進の勢いのまま転がって行く。
     驚きと心配から、咄嗟にイーブイに駆け寄ろうとする。しかしそれより早くイーブイの体が輝き始めた。
     その輝きは今までに何度も見た事のあるものだった。進化だ。イーブイが進化するのだ。しかし何故だ? 通常は相手を倒した後に進化するものだ。バトル中に進化したという話も聞いた事が無い訳ではないが、何れも何かしらきっかけがあったという様な話だ。それらに対し今はまだ何もしていない。イーブイがこけただけだ。実力差も大分あるからこけた位じゃピンチにもなりやしないし、きっかけになるとも思えない。進化する理由が無いのだ。クマシュンの方も突然の事に戸惑っている様子だった。
     まぁ良い。理由なんてどうでも良い。イーブイがグレイシアに進化するんだ。これをどれだけ待ち望んだ事か。これまでの苦労が報われるというものだ。
     イーブイの輝きが収まり、新たな姿を現した。だがそこに、期待していた姿は無かった。赤い体に素晴らしいまでのもふもふ。可愛い。凄く可愛い。だがグレイシアじゃない。どう見てもブースターだ。
     何故だ? 何故だ? どうしてだ? 炎の石は使ってないはずだ。ここはネジ山の奥だし、側にはちゃんと氷に覆われた岩が存在している。本来ならグレイシアに進化するはずだ。ブースター自身もグレイシアに進化するものと思っていただろう。自身の前足を見つめては首を傾げている。何故ブースターに――。
     ふとバトルの最中であった事を思い出し、慌てて先程と同じ指示を出す。今度はこけずにクマシュンへと突っ込む。クマシュンが吹っ飛ばされ壁に叩き付けられる。動かない所を見ると気を失っている様だ。今まで通り気が付き次第逃げて行くだろう。
     ブースターがこちらへ戻って来る。ボールへ戻す前にまじまじと観察する。可愛い。素晴らしく可愛い。だが進化した理由は分からなかった。ブースターをボールへ戻し思考を続ける。
     何故だ? グレイシアに進化するはずなのに。そもそも何故あのタイミングで進化したんだ? いや、結果としてブースターになったんだ。という事は炎の石で進化したという事だ。それなら相手を倒したかどうかなんて関係無いからその点に関しては説明が付く。しかし炎の石なんて使った覚えが無い。
     念のためバッグの中身を確認する。やはり炎の石の数は減っていない。まぁ色々な洞窟を探し回って見つけた貴重な石だ。使った覚えも無いのに勝手に減っていても困――

     そうか、そういう事か。


     それから数週間経ち、俺は再びイーブイを育てている。今度こそグレイシアに進化させる為に。そして今日、これからネジ山へと向かう。このイーブイもあの辺りのポケモンは楽勝だろう。注意すべきはただ一つ。グレイシア以外への進化だ。

     俺はイーブイに靴下を履かせ、ネジ山へと向かった。

    ――――――――――――――――――――――――

     と言う訳で進化の石のお話その2。触れると即進化なのは同じです。というかそこが要点です。洞窟で石踏んで進化って案自体は投げ付けるよりも先に出てはいたんですけれども。
     一応数戦した後はちゃんと回復させてます。主に突進の反動分。ガントルには別の技使ってますが。
     締め方がどうもしっくり来なかったり。書けば良いんですかね。分からなかったので妥協してます。思い浮かび次第修正したいですが多分思い浮かばないでしょう。あと靴履かせてないので靴下という表現にも違和感があったり。靴下と言いますか足袋と言いますか、何と言ったら良いんですかね。まぁ何にしても多分ホームセンターで買ってきたんでしょうけど。
     主人公がどれだけグレイシアが好きか書けなかったのも心残り。グレイシアかわいいよグレイシア。ブースターもかわいいよブースター。ブイズかわいいよブイズ。

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【好きにしてもいいのよ】
    【ブイズかわいいよブイズ】


      [No.2463] キモクナーイ 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/06/16(Sat) 19:28:28     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > ちなみにポケモンはヌマクローです。

    進化させましょう。二段階進化のポケモン、とりわけ最初の三匹の中盤は見た目的にも能力的にも微妙な物が多いです。
    ただしジュプトルは別ですが。
    進化させてラグラージにしてしまえば、見た目がキモイとかキモクナイとか以前にバトルで使えるようになります。ただし草タイプ対策はきちんとしておきましょう。

    息子さんに言ってあげてください。キモかろうがなかろうが、所詮ポケモンは強さなんだと……
    あれ、違うか?
    もしどうしても、というなら貴方が育てればいいと思います。荷物持ってくれるし、波乗りはしてくれるし、日常生活の中でも役に立ちますよ?

    【そんなキモイかねえ】
    【サファイアが初プレイ・ミズゴロウが相棒の私涙目】


      [No.2462] Re: そらをとぶが遅すぎます 投稿者:aotoki   投稿日:2012/06/16(Sat) 17:57:53     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    もしあなたが鳥ポケモンをお持ちなら、「おいかぜ」と「そらをとぶ」を覚えさせることをお勧めします。
    おいかぜをしてもらいながら併走(併飛行?)してもらえば、かなり早くなるかと思います。
    あなたを乗せて飛べなかったポケモンも、きっと満足してくれるはずです。


    ・・・・ただし飛ばしすぎにはご注意を。


    【併飛行してもいいのよ】
    【おいかぜのPPはたしか5だったのよ】


      [No.2461] 【緊急】教えてください 投稿者:aotoki   投稿日:2012/06/16(Sat) 17:50:01     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    息子がポケモンを進化させたのですが、かっこよくないので逃がしたいといっています。
    親の私としては初めてプレゼントしたポケモンなので根気よく育ててほしいのですが・・・
    どういったら考えを変えてくれるでしょうか?

    ちなみにポケモンはヌマクローです。


      [No.2460] 【ポケライフ】発想のヒント 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/06/16(Sat) 10:06:57     29clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    イラコン参加予定の皆様! 何かいいネタは見つかりましたか!
    「なかなかいいアイディアが浮かばなくて…」という声も聞きますので、今回は017流、ポケライフネタ出しの仕方をご紹介いたします。

    ●職業からの発想
    ●場所からの発想
    ●日常生活からの発想
    ●世代による発想
    ●時代を変えての発想

    視点の置き方として5つほどご紹介したいと思います。



    ●職業からの発想
    人間の仕事をアシストするポケモンがいるのではないかという発想。
    人間が主体でアシストしている場合もあるし、ポケモンの能力に多くを依存している場合もあるだろう。
    ポケセンにラッキー、高所作業にウツボットのつるのむちとかいうそういう発想だ。
    職業名を挙げてみて、どんなポケモンの組み合わせると面白いか考えるとよい。

    【具体例】
    八百屋、魚屋、肉屋、ベーカリー、本屋さん、花屋、家具屋、お寿司屋、家電屋、床屋、消防士
    居酒屋店員、ウェイター、バス運転手、タクシー運転手、車の整備士、パイロット、船乗り、船長
    ビジネスマン・OL(新人、課長、部長、社長、秘書)
    工事現場の職人、家政婦、掃除夫、神父、住職、葬儀屋
    漫画家、小説家、ライター、イラストレーター、芸能人、役者、司会、
    道化師、手品師、奇術師、演奏家、ギタリスト、ボーカル、指揮者、舞踊家(ダンサー)、DJ、
    映画監督、カメラマン(写真家)、スタイリスト、デザイナー、バスガイド、人力車を引く人
    薬剤師、医師、看護婦、学芸員、図書館司書、先生、大学教授、研究員、塾講師、
    税理士、議員、SE、ハッカー、お水のおねえちゃん、ママ、サンタクロース
    (暴走族、ヤクザ、マフィア、泥棒、空き巣、下着泥棒、窃盗団)etc

    【使用例】
    陶芸家の叔父、焼き物を焼くのは飼ってるブーバーンの役目です
    下着泥棒が捕まりました。犯人はマンキーに盗らせていたと供述しており……
    鉄くず屋ですが、ココドラが毎晩食いにくるので困っています
    私、凄腕宝石鑑定士! どんなイミテーションも見破るよ! ……うちのヤミラミが


    ●場所からの発想
    発想方法としては職業人に近いが、1人というよりはその場にいる何人か、人々とポケモン達、商人とお客さんという「複数」の発想が沸きやすい。
    会社とう単位ならばそこで飼われてるポケモンや、その場にたまたま紛れ込んでるポケモンもいるかもしれない。

    【具体例】
    保育園、幼稚園、学校、小学校(教室、校庭、校舎裏、保健室)、中学校(部活)、高校(受験)、塾、予備校、大学(理系、文系、情報系、美術系、農業系、工業系)
    会社(オフィス、屋上、応接室、商談室)
    農場、田んぼ、畑、果樹園、ビニールハウス、牧場
    工事現場(墨出し、高所、夜間工事、水道工事、神社の遷宮)
    水場(海、川、ダム、ドブ川、埋め立て地)
    市場(野菜、果物、木の実、魚、肉)
    店(パン屋、コンビニ、八百屋、豆腐屋、魚屋、肉屋、惣菜屋、花屋、衣料品店、文房具店、画材屋、骨董品店、本屋、雑貨屋、ドラッグストア、ホームセンター、デパート、商店街、宝石屋、銀行、CDショップ、楽器店、カーショールーム、不動産屋、モデルルーム、マッサージ屋、ホームセンター)
    飲食系(食堂、レストラン、カフェ、バー、居酒屋、蕎麦屋、うどん屋、うなぎ屋、ラーメン屋、ラーメン屋台、アイス屋台、ヤキイモ屋)
    工房(油絵、彫刻、ガラス工芸、陶芸、裁縫、編み物)
    博物館、画廊、美術館、劇場(コンサートホール、コンテスト、芝居小屋、映画館)
    公園(ベンチ、噴水、水飲み場、砂場、すべり台)、植物園、水族館、動物園
    ホテル、旅館、プール、温泉、銭湯、病院、接骨院、介護施設、
    交通機関(タクシー乗り場、バス停、鉄道、港、船(ボード、フェリー、水上バス、豪華客船))
    キャンプ場、ゴルフ場、ボーリング場、カラオケ、スケートリンク
    遊園地(コースター、回転木馬、コーヒーカップ、観覧車)
    神社、寺、遺跡、史跡、城跡、墓所
    郵便局、市役所、裁判所、議会、マンション、ボロアパート、一軒家、テナントビル 
    etc

    【使用例】
    近所の花屋の看板娘(リーフィアとかドレディア)がかわいいものだからつい買いにいってしまう
    今日はデッサンのモデルがミミロップなので、普段サボってる美大生もしっかり授業に参加しています


    ●日常生活による発想
    第三に日常生活における発想である。
    我々が日常生活でしてる動作や使用アイテムとポケモンを関連付ける方法。
    一番わかりやすいのはポケモンと食う、寝るを共にするパターンだ。

    【動作】
    朝ごはん、昼ごはん、おやつ、夕ごはん、夜食、つまみ食い、料理、お菓子作り
    起床、洗顔、入浴、睡眠、昼寝、洗濯、洗濯物たたみ、布団干し
    新聞を読む、雑誌を読む、メールする、インターネットする、ツイッターをする
    花に水をやる、ゴミを出す、皿を洗う、ラジオ体操、ジョギング、買い物
    傘を差す、掃除機をかける、埃をはたく、ゴミを出す、粗大ゴミを出す、引越しする
    庭いじり、家庭菜園

    【アイテム】
    キッチン、ダイニング、食器、グラス、コップ、マグカップ、鍋、泡立て器、ボール、しゃもじ、フォーク、
    スプーン、はし、まな板、包丁、冷蔵庫、電子レンジ、炊飯器、ちゃぶ台、コンロ、
    トイレ、トイレットペーパー、洗面台、歯磨き、バスタオル、お風呂、メガネ、コンタクトレンズ
    掃除機、ホウキ、洗濯機、物干し竿、布団、布団たたき、ベッド、絨毯
    自転車、バイク、車、机、こたつ、ソファ、テレビ、ラジオ、パソコン、インターネット、
    窓辺、ベランダ、玄関、靴、傘置き、新聞
    CDプレーヤー、レコード、トランプ、カードゲーム、ボードゲーム
    アロマ、葉書、手紙、ポストカード、写真立て、仏壇

    【使用例】
    毎朝ポケモンとジョギングしてます
    ベッドに一緒になって寝ます
    風呂場でカラナクシを飼ってるんです
    てんぷらを揚げたそばからポケモンがつまみぐいするので困っています


    ●世代による発想
    第四に世代による発想である。
    人生のライフステージによってポケモンとの関わりか方は変わるはずである。
    赤ちゃん、幼稚園児、小学生、中学生、高校生、浪人生、大学生、社会人、新婚、妊婦、主婦、中年、引退後(老人)
    では違いますね?

    【使用例】
    ゴーストのベビーシッター、サーナイトの老人介護


    ●時代を変えての発想
    最後に時代を変えての発想を紹介。もしかしたらこっちのほうが得意な人もいるかも知れない。
    早い話が、職業の昔バージョンである。ファンジックかつ、エキゾチックな雰囲気に仕上げられるかも。なかなかポテンシャルが高いと思う。

    【職業】
    武士、お殿様、お姫様、騎士、衛兵、貴族、王様、行商人、旅一座、楽団、歌舞伎役者、能楽者、雅楽、歌人、巫女(シャーマン)、神官

    【場所】
    日本の民家、城(東洋、西洋)、農村、都市、戦場

    【使用例】
    どっかの国の王様はエネコを大変にかわいがっており、宮廷のお抱え絵師に愛猫の姿を描かせているのだ


    いかがでしたでしょうか。
    何かいいネタが思いついたり、何かヒントになりましたなら幸いです。


      [No.2459] 【改稿版】廻り道は雨 投稿者:朱烏   投稿日:2012/06/15(Fri) 19:30:56     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5




     人間、時には落ち込むことだってあるさ。以前、父さんが電話口で言っていた言葉だ。たぶん、会社の部下あたりにでも電話していたんだろう。父さんの座右の銘もどきであるその言葉は、僕に対しても頻繁に使われた。
     例えば、友達と喧嘩したときに。例えば、学校のテストで失敗したときに。
     入試で結果が出ず落ち込んでいた際に言われた時は、その無神経さにティッシュ箱を投げつけて反抗したが。
     父さんの言葉は特別に僕を救ってくれたわけではないが、一人暮らしを始めて半年経った今でも、しっかりと耳にこびりついている。
    『人間、時には落ち込むことだってあるさ』
     カーテンを閉め切った部屋の中、朝起きたあとに片付け忘れた布団の上で、仰向けになりながらその言葉を思い出す。
    「落ち込む……ねぇ」
     友達と喧嘩しても、テストでいい点数が取れなくても、それはそれで、落ち込みながらも前に進むことができる。仲直りしたり、勉強に励んだりすれば解決できるものだからだ。
     今現在、学校生活は順調で、友達もそれなりに作れ――いわゆる「普通」の生活を送れている。にも拘わらず、休みの日の真っ昼間からカーテンを閉じて部屋を暗くしている理由は、解決とはほど遠い場所にあった。
     ちゃぶ台に乗っていたノートパソコンを布団に引き込んで、電源をつける。僕はうつ伏せになり、枕を退けてノートパソコンをセットした。
     控えめに設定された音量の起動音とともに、デスクトップの明かりが僕の顔を照らす。
    「はぁ……」
     そこに映った父さんと母さん、そしてもう一匹の家族であるニューラのチヅル(雌である)を見て、僕は嘆息する。
     僕の家族は、茶色の革のソファに仲良く並んで座っていた。数日前に電子メールで送られてきた写真だが、それをデスクトップに配置するほどに、僕の心は沈んでいた。
     俗にいうホームシックだが、気がついたのはつい最近だった。
     ここに引っ越してくる前、チヅルを連れていかないかと父さんに言われた。父さんは、僕が家族と離れて寂しがっている姿が見えていたようだった。僕もチヅルを連れていくことを考えたが、彼女の世話をしていたのは僕よりも父さんや母さんの方だったから、チヅルの気持ちを考えて連れていかなかった。断りを入れておくが、僕とチヅルは仲が悪いというわけではない。
     今の僕の気持ちを考えれば、チヅルを連れて来なかったのは失敗だったのかもしれない。でも父さんの腕に抱かれながら、ご自慢の白く磨かれた鉤爪でピースサインを作っている彼女を見ると、やっぱり連れて来なくて正解だったと思う。いや、思いたい。
     僕は静かにノートパソコンを閉じて、外出用の服に着替える。暗い気分を一新するために、公園にでも行こうと思い立ったのだ。


     ◆◇◆◇◆


     公園までは歩いていった。自転車を使った方がもちろん早いのだが、この長い道のりも含めて気分を一新する旅だ。時間なんて有り余っているのだから、何も急ぐ必要はない。
     空は曇っていた。といっても、薄曇りが空全体を覆っている程度だ。ラジオで聞いた天気予報通りの雨が降るのは、もう少し先のことらしい。
     町中から離れていくほど、歩くスピードは遅くなった。元来、変わりゆく景色を眺めて楽しむなんて粋なことはしない性分だ。
     だが、灰色の機械的な人工色がどんどん消えて、記憶の隅へと追いやられていた自然色豊かな地元の景色――に似た緑が顔を出してくることに、不思議と心が躍る。
     今住んでいる場所は、地方都市としてそれなりに発展している場所だ。駅の近くにはビルが立ち並んでいるし、人もポケモンも沢山行き交っている。僕の生まれ育った辺鄙な村とは大違いだ。
     ある程度、此処の暮らしにも慣れてきたつもりだ。しかし、十数年間暮らしてきた村にはなかった息苦しさがこの町にはあって、それが僕の生活に影を落としていた。
     郊外に延びる道路を進む。僕の両側は、ごちゃごちゃした住宅街から、黄金色の猫じゃらしの生える草叢に変化していた。電信柱と街灯だけはいつまで経ってもなくならない。白い自動車がすれ違って、僕は草叢へ体を寄せた。
     そうしてしばらく歩いていると、右手に草叢を拓いたような小道を見つける。一見すると小さなポケモンが行き来を繰り返しているうちにできた獣道のようだが、一応は人が作った通路である。ただ、小道の両脇に生える秋草は伸び放題で、管理は行き届いていないようだった。とてもじゃないが公園の入り口とは思えない。
     例えるなら、まるで秘密基地。僕の背丈の倍ほどもあるすすきが公園全体を囲っているから、『一見さん』にはまず見つけられない。故郷で友達と作った秘密基地も大人たちにはなかなか見つけにくい場所に作ったが、目立ちにくさに於いては此処もそれに匹敵する。
     手で邪魔な草を掻き分けながら小道を進む。すすきの縁で腕や手を切らないように注意した。その途中、何かのポケモンの尻尾が、右手の深いすすきの群生からひょっこりと出ているのを見つけたが、すぐに引っ込んでしまった。クリーム色と茶色の縞模様が印象的だった。
     公園に辿り着くと、以前見た時と変わり映えのしない景色に、心なしか安堵を覚えた。広さはそこそこの円形の公園。公園の真ん中には直径三十メートルほどの丸い池がある。つまり、この公園はドーナツ型なのだ。
     池の水底からは綿毛を飛ばさんとする蒲が自生していた。池の周りには何本か灌木が植わっており、また小さなベンチが三つほど適当な位置に設置されている。
     ベンチはそれぞれ、小さな東屋の下にあった。長い年月を経たせいなのか、東屋の柱は削れ、色は剥げ落ち、屋根はぼろぼろで見る影もない。ただの木の塊にしか見えないが、雨を防ぐには事足りるようだった。
     人はいなかった。子供を集めるような遊具もなければ、池があるせいでボール遊びもできないのだから仕方ない。時期が時期なら、ヘイガニ釣りに勤しむ子供も見られるのだが、季節が秋ではどうしようもない。此処は公園とは名ばかりの、広い休憩所のようなものだった。
     一つのベンチにゆっくり腰掛ける。ぎし、と腐った木が軋む音がしたが、壊れるようなことはなかった。改めて公園全体を見渡す。すすきなどの背丈の高い秋草に囲まれて、公園の周りには何も見えない。そして、ふと、水面に沢山の蓮の葉が浮いているのに目が留まった。まだ晩秋には差し掛かっていないが、いくつかはもう萎れかけていて、全てが敗蓮(やれはす)となってしまうのは時間の問題だった。
     あの中に、もしかするとハスボーが紛れ込んでいるのかもしれないと思った。そのうち、一枚の蓮の葉がすっと水面を滑って移動すると、蒲の群生に入り込んだ。
     僕は、ベンチに仰向けになった。東屋の腐りかけた屋根は、所々穴が開いていた。木目に沿って細く割れている隙間からは、ペールブルーの空が見えた。白い雲が流れてきて、青色が隠れたり、現れたりした。天気予報は外れるのかもしれない。
     目を瞑る。思い出すのは家族のこと。デスクトップに飾った写真の中で笑う、父さんと母さん、そしてチヅルの顔が、真っ黒なスクリーンに焼きつく。なんだか、涙が出てくる。
     しばらくぼんやりとして、目を開け、屋根の隙間の空を眺めた。それから目を閉じて、深呼吸して落ち着くと、そのまま眠りに落ちてしまった。


     ◆◇◆◇◆


     額に冷たさを感じて、僕は目を覚ました。屋根に開いた穴から、水滴が落ちてきたようだった。――水滴?
     僕は飛び起きた。土砂降りだった。天気予報が雨だということを忘れて眠ってしまった。あの青い空は何だったのだろう。
     とりあえず、屋根の穴の下から避難した。が、依然東屋の下からは出られない。
    「参ったな……」
     どうしたものかとしばし思案する。空の色は見事なまでに濃い灰色に染まっている。雨が止むのを待っていたら、帰るのはかなり遅くなってしまいそうだった。
     池の水面は大粒の雨に打たれて激しく揺れていた。蒲の穂先の綿毛は濡れて、その白さは萎れていた。
     気紛れで傘も持たずに遠出するのも考えものだ。そう思った矢先のことである。
     きゅう、と、僕の後ろで何かが鳴いた。振り向くと、実家の周りでも何度か見たことのあるポケモンが、後ろ足で器用に立っていた。
    「……オオタチ?」
     また、きゅう、と鳴く。短い手足に、長い胴、茶色とクリーム色の縞模様が体から太い尻尾の先に掛かっている。そして特徴的な二本線の頬にある模様と、円らな瞳がとても印象的だった。雨に濡れて、艶のありそうな毛は寝てしまっていた。
     多分、さっき公園に入ってくるときに見えた尻尾は、このポケモンのものだろうと思った。
     オオタチは一度ベンチに飛び乗ると、そのまま池の方へ駆けていった。その動きはせわしく、泥を撥ねて体を汚すことも厭わないようだった。
    「……何する気なんだろう」
     池のほとりに立ち止まったオオタチを、注意深く観察する。オオタチの目の前にあるのは、水辺に生えている蕗。大きな葉が特徴の植物だが、オオタチはそれを根元からもいでしまった。それも二本である。
     突飛なことをするもんだなあと、僕はその様子を面白可笑しく眺めていた。しかしそれよりも驚いたのは、オオタチがその蕗の葉を携えて僕の元にやって来たことである。
     オオタチは、きゅう、と鳴くと、蕗の葉の一つを僕に渡してきた。茎も長く、葉もかなり大きい。立派な蕗だった。
    「くれるの?」
     オオタチは無言だったが、僕はそれを受け取った。しかし、これを何に使えと言うのだろうか。
     オオタチは僕から離れ、東屋の外に出た。そして、持っていた蕗の茎の部分を持って頭の上にかざした。
    「ああ、成程」
     つまり、傘として使えということだろう。オオタチは雨宿りしている僕を見かねて、傘をプレゼントしてくれたのだ。土砂降りにはちょっと頼りないかもしれないが。
     僕も同じように蕗の葉を頭の上にかざして、東屋から出た。オオタチの作った傘は、もちろん人工のそれよりも防雨機能はない。でも、雨にされながら寂しく帰るよりは幾分かましな気がした。
    「ありがとな、じゃ」
     僕はオオタチにお礼の言葉を述べて、その場を立ち去ろうとした。しかし、オオタチは僕のあとをついてくる。僕は立ち止まって、後ろにぴったりとついているオオタチに話しかけた。
    「どうした?」
     オオタチはただ、きゅう、と鳴くだけだった。物言わぬ野生のポケモンに、僕は一体何をしているのだろう。
     ものは試しと、冗談半分で訊いてみた。
    「見送ってくれるのか?」
     今度は、嬉しそうに鳴いた。変わったポケモンもいるものだ。
    「そっか……。じゃあ、一緒に行こうか」
     そう言うと、オオタチは僕の横にぴったりとくっついた。僕はオオタチに泥を撥ね飛ばさないように、ゆっくりと歩いた。
     小道を塞ぐ草を、傘を持っていない右手で掻き分ける。道は細いので、この時のオオタチは僕の後ろを歩いていた。
     道路に出る。辺りは暗くなり、街灯が点き始める時間だった。自動車は通らず、雨がアスファルトを打ち付ける音だけが響く。僕とオオタチは、水溜りに足を入れないように並んで歩いた。
     傘が受け止めきれなかった雨水が、僕の肩にかかる。オオタチの、傘に収まりきらない尻尾は、すっかり濡れてしまっていた。
    「君は本当に野生のポケモンなの?」
     野生のポケモンにしては随分と人に慣れている様子のオオタチを、僕は不思議に思った。人間の元で暮らしたことのあるポケモンなのかもしれないと、何となしに感じた。オオタチは僕の顔をじっと見つめていたが、問いの意味が理解できなかったのか、再び前に向き直った。
     しばらく、無言のまま歩いた。街灯に照らされながら、蕗の葉を叩く雨の音を聴く。心地よかった。
     オオタチは、傘の柄を回して遊んでいた。葉の上に溜まった水が弾き出され、僕の足にかかる。オオタチはとても楽しそうな顔をしていた。僕と一緒に歩くのがそんなに楽しいことなのだろうか。
     ふと、後ろから何かが迫ってくる気配に気づく。自動車が僕たちのそばを通りかかろうとしてした。そのとき、僕たちのそばに大きな水溜りがあることに気づいた。
     咄嗟にオオタチを抱き上げる。意外な重さに戸惑っているうちに、自動車の車輪が水溜りを撥ね上げた。僕のズボンはびしょびしょに濡れてしまった。じっとりとした冷たさが両足に滲みる。オオタチの方はと言えばは尻尾が少し濡れただけだった。
     あまりに突然のことだったから、傘は落としてしまった。おかげで、頭からシャワーを浴びるような格好になる。僕の両腕に挟まれているオオタチが、僕の頭の上に、持っていた傘を被せる。
    「……ありがとう」
     僕は屈んで、落とした傘を拾う、その傘の汚れを軽く払うと、それをオオタチに被せた。僕はオオタチを抱きかかえながら歩いた。でも、その重さに耐えきれなくなって、大した距離も歩かないうちにオオタチを降ろしてしまった。もう少し体力をつけなければ、と身に染みた出来事だった。


     ◆◇◆◇◆


     随分と長い距離を歩いた。街の灯りが見えてくる。民家も疎らに現れて、オオタチの棲む自然溢れる世界は遠くなってゆく。
    「そろそろ僕の家に着いちゃうけど……来るの?」
     オオタチがまた、きゅう、と鳴いた。一応家までは見送ってくれるらしい。変に律儀な所があって、ちょっと可笑しかった。
     幸いにも、雨の勢いは弱まってきていた。東の空に、雲から透けた、朧な月明かりが見えた。
    「家に着いたら、体拭いてやるよ」
     僕を見送ってくれたのだから、それくらいの恩返しはしなければ。オオタチがそれを望んでいるかどうかはわからないけど。
     泥水だらけの僕たちは、ようやく町の中に入る。さっきまで雨が強かったこともあり、出歩いている人もポケモンも殆どいなかった。
     細く曲がりくねった道を突き進み、見えてきたのは僕の棲むボロアパート。客を招待するのはかなり抵抗があるが、多分このオオタチはそんなことは気にしないだろう。
     ポケットから鍵を取り出し、一○二号室のドアの鍵穴を回す。オオタチはその所作を興味津々に見つめていた。雨はすっかり止んでいた。
     濡れた靴と靴下を脱ぎ捨て、部屋の中に入る。照明からぶら下がっている紐を引っ張って、灯りを点けた。オオタチは玄関先に留まって、家の中に入ってこなかった。僕が何かを言ったわけではないが、躊躇いがあるようだった。
     箪笥の中を乱暴に探ると、バスタオルが一枚出てきた。オオタチの大きく長い体を拭ききるのはこれが最適だろう。
     オオタチの元に向かうと、オオタチは鳴きながらぴょんぴょんと飛び跳ねていた。体を拭いて貰えるのがそんなに嬉しいのだろうかと思って、笑みが零れる。
     頭から順番に優しく拭いてやる。体毛が吸収した水分を吸い取り返すように、ゆっくりと拭いてゆく。拭き終わった部分はまだ若干水分が残り、一瞬ビロードのような艶やかな光沢が見えた。
     足の裏の肉球まで拭き終わると、気持ち良さそうに太い尻尾を振りながら、きゅう、と鳴いた。この鳴き声は、いつしか僕にとって心地よいものとなっていた。オオタチが嬉しいことは、僕も嬉しいのだ。
     何だか、このまま別れてしまうのが名残惜しい。けれども、もう夜の闇はすぐそこまで来ている。オオタチは棲み処に帰らなければいけない。オオタチもそれをわかっているようで、僕に抱きついて甘えてきた。
    「ははっ、重いよ……」
     何もない、平凡な一日の至福の時は、静かに幕を下ろそうとしていた。


     ◆◇◆◇◆


     オオタチの棲み処まで見送ることはできない。だから、オオタチの姿が見えなくなるまで、僕はずっと手を振っていた。途中、オオタチは何度か僕の方へ振り返って、その度に鳴いた。また遊びに来てね、絶対だよ。そう言っているような気がした。
    「また遊びに行くよ」
     近所迷惑も省みずに、僕は大きな声でオオタチに向かって言った。
     見送りが終わって、玄関のドアを開ける。そこには散らかった靴と共に、土で汚れた大きな蕗の葉と、それよりも一回り小さい蕗の葉が、逆さまに置かれていた。



    ------------------------------------------------------------

    以前書いたやつをところどころ修正して投稿しました。
    オオタチかわいいよオオタチ


    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【オオタチぃいぃぃぁああぁああ!!】


      [No.2458] そらをとぶが遅すぎます 投稿者:小春   投稿日:2012/06/15(Fri) 18:55:24     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    そらをとぶが遅すぎます

    フワライドのそらをとぶは遅すぎてまともな移動手段になりません。
    デートで颯爽と空から登場、のようなことをしたかったのですが、フワライドに乗っていったところ約束時間をかなり過ぎてしまいました。彼女に振られました。気分が沈んだのでそらをとぶで帰ったのですが、夕暮れ時にぷかぷか浮いているのが心にしみました。
    リーグ戦でも空から颯爽と登場がしたかったのですが、あまりにもゆっくりすぎるそらをとぶで遅刻しました。不戦敗で夕日が心にしみました。

    フワライドに乗り続けたいです。でも遅すぎます。フワライドをそらをとぶ要員にしている方は、どんな対策をとっているのでしょうか?
    お答え、よろしくお願いします。

    補足
    鳥ポケモンに乗ってそらをとぶと酔います。


      [No.2457] G-Cis 投稿者:ことら   《URL》   投稿日:2012/06/13(Wed) 21:46:55     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ああやはりワタクシの不安は的中してしまいました。
     伝説の再現がしたいとNが言い出した時からそんな不安はありましたが、レシラムが負けるなど微塵も思っていませんでした。それにしてもあの子供の仲間たちがこの奥までやってくるとは。
     事前の小細工もあって、なんとかNのイメージは保たれているようですが、時間の問題です。

    「それでもワタクシと同じハルモニアの名前をもつ人間なのか? ふがいない息子め」

     Nの後ろにはレシラムがいます。子供の後ろにはゼクロムがいます。もうプラズマ団の敗北は濃厚なのです。それならば最後のあがきです。
     Nの顔が驚きに満ちていました。そうですね、アナタにはこんなことを言ったことすらありません。むしろ言うわけがありません。けれどもう背に腹は変えられないのです。

    「もともとワタクシがNに真実を追い求めさせ伝説のポケモンを現代によみがえらせたのは『ワタクシの』プラズマ団に権威をつけるため! 恐れおののいた民衆を操るため!」

     その場はシーンとしています。Nはもう反論できないでしょう。負けたショックとワタクシの言葉のショックで。それでいいのです。ワタクシに喋らせなさい。

    「その点はよくやってくれました……だが伝説のポケモンを従えたもの同士が信念を懸けて闘い自分が本物の英雄なのか
    確かめたい……と、のたまったあげくただのトレーナーに敗れるとは愚かにもほどがある! 詰まるところポケモンと育った歪な不完全な人間か……まさかアナタのようなトレーナーが伝説のポケモンに選ばれるとは完全に計算外でしたよ!」

     ゆっくりとその場にいる全員に聞こえるように言います。いいのです、Nに届いてください。Nの心に届いてください。

    「ですがワタクシの目的はなにも変わらない! 揺るがない! ワタクシが世界を完全に支配するため! なにも知らない人間の心を操るため! Nにはプラズマ団の王様でいてもらいます」

     隠れた右目は見えません。けれど左目で見た光景は曇ります。
     子供の敵意はNから完全にワタクシに移っています。ゼクロムと共に睨んできます。ゼクロムほどのポケモンに攻撃されたらさすがのワタクシも蒸発してしまうでしょうか。ああそれでもいいですね。

    「だがそのために事実を知るアナタ……ジャマなものは排除しましょう」

     一歩踏み出します。ゼクロムが庇うように子供の前に出ました。そしてその子供の友達……チェレンとか言う強さを求める子供が鋭い目つきでワタクシを見ます。ひるんだら負けです。終わりです。

    「……支配だって? プラズマ団の目的はポケモンを解放することじゃ……」

     その通りですよ。プラズマ団はその為に集めた組織。プラズマは高音の炎と高い電圧の電気で発生する綺麗な現象です。ああ話がずれましたね。

    「あれはプラズマ団をつくりあげるための方便。ポケモンなんて便利なモノを解き放ってどうするというのです?」

     そうです、ワタクシのポケモンたちを解き放ってどうするのですか。そんなことをしたら、ワタクシに頼って生きて来たこの子たちを見殺しにするというのですか。全くおかしな子供です。

    「確かにポケモンを操ることで人間の可能性はひろがる。それは認めましょうだからこそ! ワタクシだけがポケモンを使えればいいんです」
    「……きさま! そんなくだらぬ考えで!」

     チャンピオンが激昂します。殴り掛かる勢いですね。しかし、今ワタクシが殴られて気絶するわけには行きません。

    「なんとでも」

     マントの中でワタクシはボールを取りました。

    「さて神と呼ばれようと所詮はポケモン。そいつが認めたところでアナタなど恐るるに足らん。さあ、かかってきなさい! ワタクシはアナタの絶望する瞬間の顔がみたいのだ!」

     誰が何をしようと! ワタクシをとめることはできない! ここで止まることなどできない!
     さあ行きなさいデスカーン。あの子供の足止めをするのです。
     N、何をやっているのです。
     ぼーっとワタクシをみていないで
     ぼーっと子供の方をみていないで
     そのレシラムと共に逃げなさい。ワタクシがこんなアナタを道具扱いした親になりきっているのです。
     アナタがプラズマ団の首謀者として裁かれても、ワタクシに洗脳された子供として罪がかなり軽くなるのですよ!
     逃げてください。逃げなさい。そしてワタクシをとんでもない親だと訴えなさい。アナタだけでも逃げるのです!
     なにを、しているのですか! どうしてワタクシが戦っているのか解らないのですか!

    「それぐらい計算済みですとも!」

     この子供は強いです。バッフロンもガマゲロゲもキリキザンもシビルドンもあっという間に倒されてしまいます。残るはサザンドラのみです。ワタクシの持つ一番強いポケモンです。
     サザンドラが倒れる前に逃げなさい。なぜそこで見ているのです!? 早く逃げなさい。アナタはプラズマ団の王様なのですよ!

    「ワタクシの目論みが!」

     倒れるサザンドラは、ワタクシにごめんなさいと言いました。ああすみません、アナタ方にまで悟られて。いえ解っていたのですね、最初から捨て駒になること。全てNのために、プラズマ団の王様のために。

    「……どういうことだ? このワタクシはプラズマ団をつくりあげた完全な男なんだぞ! 世界を変える完全な支配者だぞッ!?」

     サザンドラはもういいよと言いました。よくありませんサザンドラ。確かにアナタから見ればワタクシが悪者になるのは面白くないでしょうが、そうじゃないとならないのです。誰かが首謀者としての責任をとらなければならないのです。
     そしてそれはNではなくワタクシの役目なのですよ。昔からいるでしょう、影武者というのが。本当に上に立つべき人間を守るためには、そうするしか方法がないのです。

    「さてNよ……今もポケモンと人は別れるべきだと考えるか?」

     チャンピオンはNに話しかけます。Nは話しかけられてやっと気付いたようです。
     ああもう遅いのです……今からでも逃げられるところに逃げてください。

    「……ふはは!」

     ボールにサザンドラを戻しました。サザンドラはゲーチスが嫌われるのを見たく無いと言ってくれました。ありがとうございます。ワタクシもサザンドラたちに嫌われたくありません。サザンドラたちに真実を知っていてもらえればワタクシは満足です。

    「英雄になれぬワタクシが伝説のポケモンを手にする……そのためだけに用意したのがそのN!! 言ってみれば人の心を持たぬバケモノです」

     その場にいる人間全てがワタクシをバケモノとしてみる目に変わりました。

    「そんな、いびつで不完全な人間に話が通じると思うのですか」
    「アデクさん。こいつの話を聞いてもメンドーなだけです。こいつにこそ心がないよ!」

     チェレンという子供はワタクシを指差して言います。犯罪者を見るような哀れみの目をしています。

    「そうだな……本当に哀れなものよ」

     ワタクシの手に手錠がかかります。チャンピオンはワタクシを連れて行こうとします。
     最後にワタクシは振り返りました。
     ああ、最後までアナタは逃げなかったのですね。ワタクシが連行される姿を見たかったのですか? アナタを虐待した酷い親の無様な最後を見たい気持ちはよくわかります。
     けれどアナタにはやる事があるのですよ。何をぼーっとしているのですか。
     N、逃げてください。遠くに逃げてください。本当の名前を知られないうちに。
     しかるのち、ワタクシは警察から逃げましょう。しかしアナタがいなければ意味がないのですよ!
     N、逃げないならワタクシを精神的虐待をした親と訴えなさい。その親に異常に育てられたと訴えなさい。

    「Nというのは、ナチュラルのイニシャルです。プラズマ団の王様なので、本当の名前を知られることは不利益となります。今日からアナタはNと名乗りなさい」
    「解ったよ。でもゲーチスはゲーチスのままなの?」
    「ワタクシは王様の摂政ですので、このままでいいのです。影から支えるものは、本当の名前があろうとなかろうと変わりはありません」

    ーーーーーーーーーーーーーーーーー
    ゲーチスがあそこで本性をつらつら語り始めた意味はこうでもあってると思う。
    間違ってはいないと思う。
    たくさんある説の一つとして。

    【好きにしてください】
    【異論、反論大歓迎なのよ】


      [No.2456] とある執筆家のラブレター 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/06/13(Wed) 18:39:42     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    今、貴方達に一番言いたいことがあるんだ。
    ……何か、分かる?

    ユエ。
    貴方は一番最初の人で、私にとっては初めて完成させた長編の主人公。懐かしいね。高一の今頃だっけ。
    相棒にハマってたせいか、色々ぶっ飛んだ話だったし資料も皆無だったから、今読むとすごく恥ずかしいけど、私にとっては貴方が一番初めの主人公です。
    ここに出してからはいつの間にか成人してて、外見だけでなく中身も素敵に成長していました。マグマラシをバクフーンに進化させたのも、貴方の背丈とバイクにピッタリだったからです。
    今のところ恋人を作る予定はありませんが、それっぽい設定の人はいます。そうなるにはまた幾つか話を経なければいけないようですが……
    マスターといつ再会させられるか分からないけど、いつまでも頼もしい、素敵なGEK1994のマスターでいてください。

    ミドリ。
    『小さな家と大きなステンドグラス』『海辺の崖の小さな家』でデビューを飾りました。その時はまだ名前も出していなかったし、レギュラーにする気もありませんでした。
    引っ込み思案で、周りに合わせないと仲間はずれにされるという、中学生女子にありがちな性格だった貴方がこんなに成長するなんて、私も思ってもみませんでした。ある意味一番成長が激しい子だと思います。
    色々辛い思いをさせてしまいましたね。でもそれら全て、貴方の今までとこれからの成長にプラスされていくことなので、たとえこの先どんなことがあっても、受け止められる覚悟を持った大人になって欲しいと思います。
    そして、本当に愛し、愛される男性にめぐり合えますように。

    ミスミ。
    知らない人が多いことを嘆いているようですね。ごめんなさい。作家という設定のため、普段はほとんど家にいることになっているのです。
    横でまとめた長いポニーテール、汚れが目立たないくらいビビットカラーのジャージ、そして蓮の髪ゴム。絵で描くことが多い(描きやすい)ためこれは決まっています。
    外に出さないことが多いため、全然異性との遭遇が少ないようですが、まだ貴方に恋をさせるわけにはいかないのです。貴方は友人のために、仕事をしてもらいたいのです。
    作家という仕事をする貴方にしか出来ない、大仕事です。どうかそのまま、物語を紡ぐ人でいてください。

    ミコト。
    名前のモデルは『壬琴』です。彼の場合は特異と言うほどではありませんが、そのせいでずっと孤独でした。トキメキを求め、戦いを続ける。それは体を蝕み、最後は――
    女である貴方にこんな設定を付けてしまったのにもきちんと理由があります。貴方は異常がつく怪力です。両親にも恐れられ、ずっと自分を見てくれる何かを探していましたね。
    もうすぐ、貴方に人生の転機と言って良いほど大きな事件が訪れます。自分に愛を向けてくれた者を守るため、仲間以外全ての人間を敵に回すのです。
    どんな判断をするのか、私にも分かりません。ですが、後悔はしないでください。たとえどんな結末が待っていようとも、自分に向けられた愛を裏切るような真似だけは―― 決して、しないでください。

    カオリ。
    こう呼ばれると貴方は複雑な顔をするでしょう。姓で呼んだわけではないので、怒ることはないでしょう。でも捨てた名前で呼ばれるのは、誰だって気分の良い物ではないでしょう。
    貴方は誰よりも大きな運命を背負っています。生きるか死ぬか…… ギラティナに焦がれているのは今も変わりません。彼に会う時は、死ぬ時です。
    ストイックで冷めた貴方のことですから、心配する顔も声も一瞥してただ前に進むのでしょう。それでいいのです。貴方は、今はそのままでいてください。
    ただ、貴方を影から見守り、愛してくれている者の存在を、心の片隅でいいので入れておいてください。


    このへんで筆を置きます。
    自分が作り出した者に手紙を書くのは、いささか不思議な気分です。でも、書いておきたかった。
    貴方達の背中を押し出す代わりに、貴方達も私の背中を押してください。
    二回目の人生の転機となる鍵が、あと少しでやってきます。今回は一人です。一人で目的地へ向かわなければなりません。
    心臓が破裂しそうな時、不安で仕方ない時、側にいてください。

    そして、こんな拙い文章しか書けない私と、二年間一緒に歩いて来てくれて、
    ――ありがとう。


    紀成 改め 神風紀成


    ――――――――
    早いもので二年です。
    今まで私が踏んで作ってきた道を振り返りながら、新しい道を作って行きたいと思います。


      [No.2455] Re: 【ポケライフ】ダゲキの衣服作り 投稿者:   投稿日:2012/06/09(Sat) 21:56:38     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    確かにかかとのあたりは白くなっていますが、足袋のようなものだと思うことにします……w
    あと、服を脱いでいる絵が支部に投稿されていることなどから、服をどこかで作っているという設定に落ち着きました。
    そして、素材はモンメン系統もしくはハハコモリ系統くらいしかおらず、それでいて草食系のポケモンは格闘タイプが天敵という事から考えると、共生関係にあってもおかしくないのではないかと思ったのがこのお話を作る上でのきっかけでした。

    ポケモンでは共生関係にあるポケモンは少ないですが、図鑑に書かれていないことでもこういったつながりがあってほしいものだと思います。


      [No.2454] Re: 誰もダゲキとヤグルマメンツをからませてくれない 投稿者:   投稿日:2012/06/09(Sat) 21:52:34     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ヤグルマの森では、実はクルミル系統が好きな私です。

    確かに、ヤグルマの森のポケモンは人気があるのに、あまり絡みがないのですよね。良くも悪くも外見が異質なことと、ダゲキナゲキの二人だけで絡みが完結してしまっていることに原因があるのだと思います。

    応援ありがとうございます、これからもがんばりますね!


      [No.2453] Re: 【ポケライフ】ダゲキの衣服作り 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2012/06/09(Sat) 20:15:45     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ダゲキとナゲキの胴着ってどこで手に入れているんですかね? と今まで思ってたんです。立体ポケモン図鑑によれば、ダゲキとナゲキの足の裏はつまさきより後ろが白いそうですが、もしかしたら体色なのかもとも考えました。こういう関係があっても面白そうですね。


      [No.2452] つがい 投稿者:紀成   投稿日:2012/06/09(Sat) 13:57:56     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ねえ、きみはどこにいるの?

    じめじめした空気。狭くて暗い空間。足元は水と何か細くて糸のような物が纏わり付き、歩くことも難しい。
    そんないるのも嫌になるこの場所を、一匹のペンドラーがゆっくりゆっくり這い上がっていた。
    彼には、時間の経過という物があまり感じられない。
    いつからここにいるのか、どうやってここに来たのか、それすらも覚えていない。
    それでも、ただ一つだけ理解していることがあった。というよりそのためにここにいるのだということを忘れてはいなかった。

    (こっちから匂いがする)

    毒タイプ独特の匂い、と人間は言うだろう。特に湿っているこの空間では、それは普段以上に効力を増す。
    そのペンドラーは、相棒を探していた。生まれた時から一緒で、いつも隣にいた。フシデ、ホイーガと進化して最終進化のペンドラーになっても、常に一緒にいた。
    性別うんぬんではなく、相手と一緒にいれば幸せだったのだ。
    だが、数日前――既に彼は記憶していないが――彼の相棒は、珍しく一匹で散歩に出ていた。いつもは森しか散歩しない彼だったが好奇心に負け、森から出てしまった。
    そしてそのまま行方不明となり、何処へ行ったのかも分からないまま数日が過ぎた。だがある日――雨が降った日だった――湿り気のおかげで相手の匂いを突き止めることができ、残された彼は相棒である彼を探しに出たのだ。

    だんだん薄暗くなってきた。自分の目線数センチ先まで見えるようになった。ふと上を見ると、光がいくつか隙間から差し込んでいるのが見えた。
    ――もうすこしだ。きっとあの隙間を通り抜ければ、彼に会える。
    ペンドラーは糸のような物がついた足を振り払うと、そこへと向かう。

    やがて、視界が開けた。と同時に、ガチャという音がした。
    空気が、凍りついた。


    「おかーさん、またペンドラーが風呂場にいるんだけどー」
    「やっぱり?」

    若い娘がうんざりした声を出した。高校生くらいだろうか。悲鳴も上げなければ、恐がりもしない。慣れているのだろう。
    風呂掃除をしようとそっとドアを開けた瞬間、めざわりな姿が目に入る。流石に一人では対処できないため、母親を呼ぶ。
    ほどなくして彼女は来た。ティッシュを大量に持って。

    「やっぱり、ってことは前に出たの?」
    「うん。一週間前くらいにね。ほら、ペンドラーってつがいで行動するから、近いうちにもう一匹出るんじゃないかなって踏んでたのよ」
    「ふーん」

    しばらくして、トイレの方から水音が聞こえてきた。

    「ところで母さん、ご飯まだ?」
    「今作るからもう少し待ってなさい。それよりも、志望理由書今週の金曜締め切りよー」
    「うわっやばっ」

    娘の方がそそくさと階段を上がっていった。その頭には、無残に死んだペンドラーの影などこれっぽっちも無い。


    ――――――――
    久々に書いた物がこれか!ちなみにこういうことがよく家で起きています。
    でかいペンドラーやマダツボミがいるなら、ちまっこいペンドラーがいてもいい気がしたのですよ。

    【何をしてもいいのよ】


      [No.2451] 誰もダゲキとヤグルマメンツをからませてくれない 投稿者:aotoki   投稿日:2012/06/08(Fri) 23:28:57     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    と思ったらやって下さっていた神がいた・・・・!

    作品読ませていただきました。まさに「その発想はなかった」でした。
    おもえばダゲキナゲキさんって、オタマロとかエルフーンとかドレディアとか(なんだかんだで)人気のあるポケモンと同居してるのに・・・・どうしてそこをネタにする人が少ないんでしょうね。
    私もBWではヤグルマ周辺の人々(ポケポケ)が好きなので、面白かったです。私もこうすっきりとまとめた短編をかけるようになりたいものです。


    これからも創作がんばってください^^



    P.S 私はダゲキ派です


      [No.2450] 【ポケライフ】ダゲキの衣服作り 投稿者:   投稿日:2012/06/07(Thu) 23:26:12     95clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     あまり知られていないが、ダゲキナゲキとエルフーンは共生関係にある。と、いうのもエルフーンのモコモコしたあの綿は、上質なセルロースで出来ており、人間には理解できないが、メブキジカやバッフロンにとっては甘いらしいのだ(一応、ビリジオンなど三獣士達にとっても甘いらしい)。
     何言っているのかよくわからねーと思うが、ありのままに説明するとそれらのポケモンにとってはエルフーンのモコモコはおやつ代わり。綿あめのようなものなのだという。
     けれど、エルフーンにとってあのモコモコはファッションだとかクッションだとかそんなチャチなものでは断じてない。外敵が襲ってきたら、それを後ろに向けて身を守るという、有用な使い方があるのだ。

     実際、モコモコに噛みつかせて、相手が絡まった綿を取ろうともがいている最中に、綿を千切って逃げたりする姿もよく確認されている。すり抜けの特性も、そうして生き残った個体が積み上げてきた遺伝子の賜物なのである。
     戦っても敵わない相手にはそうしてやり過ごし、痺れ粉などをばらまいてエルフーンだが、草食の特性を持つバッフロンやメブキジカにはヤドリギの種も痺れ粉も効かない。だから、普通に考えればエルフーンはモコモコを根こそぎ喰われるしかないのである。
     そこで登場するのがダゲキとナゲキだ。彼らは、真っ白な胴着を見に纏い、草で作った帯を締めて気を引き締めることで知られるポケモンだ。彼らは格闘タイプのノーマルタイプに対する優位性を活かしてエルフーンを草食の特性のポケモンから守る代わりに、体毛の薄い身体を傷から守るために綿の衣服を纏うのだ。

     そんなエルフーンのセナがやってきて、もう4か月。夏の頃には薄かった背中のモコモコも、だんだんボリュームを増してきているようだ。
     その薄かったモコモコというのは、ムーランドやチョロネコのように自然に抜けていくことで薄くなるだけではなく、原因はうちで飼っているポケモンのもう一人、ダゲキのタイショウのおかげだ。
     もともとは、お祝いのためにセナをゲットしたのだが、捕まえ方が原因だったのか、最初は俺に心を開いてくれなかった。そんな時でも、本能的に味方だと認識できるのか対象に対してだけは落ち着いて接しており、タイショウの服の修理のために綿を分け与えていた
     タイショウは綿を少量つまんで、それをより合わせて糸にする。その糸を、ほつれた胴着と同化させ、繕って穴を塞ぐ。セナを家に迎えるまでは、わざわざ専用の綿を購入していたが、いつでも新鮮な綿が手に入る今の状況を、タイショウは気に入ってくれたようである。
     日中の鍛錬を終えると、その過程で傷ついた部分を、夜な夜な修繕する。セナと暮らすうちにそんな習慣が出来てゆき、それが高じた今となっては、暇な時間に他のポケモンの胴着も作ってしまう始末。ダゲキやナゲキは、上手く胴着を作られない子供に対して胴着を作ってあげる習性があるが、その習性の賜物なのだろう。
     今日は、数日前に進化したコジョンドのアサヒに対して、一週間かけての進化祝いのお披露目だ。人間と暮らしているうちに、記念やお祝いという概念も覚えたポケモンたちは、アサヒを中心にお祝いのムードを楽しんでいる。
     着せてもらった胴着を、鬱陶しいと思いながらもまんざらではないのか、開いた胸元を気にしながらアサヒは照れた顔をしていた。それを作るために体を張ったセナと、腕を振るったタイショウは満足げに微笑んでいる。

    「ほら、アサヒ。これが今のお前の姿だぞ?」
     みんなが幸せそうな表情になる中、鏡を持ってきてアサヒ自身にもわかりやすく披露目を。人間の俺にとってみれば妙に似合っているその立ち姿。それがポケモンにはどう映るのかわからないけれど、タイショウのためにも喜んでくれるといいな。


    ――――
    ダゲキナゲキとエルフーンの関係は、私の脳内ではすでに鉄板になっている……ドレディアよりも好きなんです。
    野生の本能や習性と人間の文化の融合。そんなものがポケモンにあるのならば、こんな光景もあるんじゃないかと思います。


      [No.2449] Re: コンビニアルバイターから見た感想 投稿者:フミん   投稿日:2012/06/07(Thu) 21:36:44     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    マコさんはじめまして、返事が送れて申し訳ありません。感想ありがとうございます。
    このお話はポケモンと人間が対等な存在という前提で書き上げました。
    現実でも、夢があっても体格や障害で諦めざる終えないこともあると思います。

    例えばルカリオ等は、今回の話の中では雇える対象になるでしょう。けれど、そのポケモンがコンビニで働きたいと思うかは分かりませんよね。

    コンビニで働いていらっしゃるのですね。どんな仕事も最初は慣れないと怒られてばかりですよね。
    最後の電話の部分は、自分で書いていてイラっとしてしまいました。もっとイライラするように書けば良かったなとも思います(苦笑)

    今回の感想は励みになりました。今後も創作を楽しんでいこうと思います。


      [No.2448] 静かな終花 投稿者:小春   投稿日:2012/06/07(Thu) 01:42:43     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    古い桜がありました。老いた天狗がおりました。
     天狗がまだころころと木の実のように転げ回っていた頃から、桜は変わらずあり続けました。天狗が妻をめとった春の盛りには、桜はうんと美しく咲きました。天狗に初めての子が生まれた春も、桜はうんと美しく咲き誇りました。天狗のそばにはいつも、家族と古い桜がありました。
     数え切れないほどの春が去りました。数え切れないほどの春がきました。若かった天狗も老い、妻も子も天狗のそばからいなくなりました。しかし、古い桜だけは老いた天狗のそばに有り続けました。


     ある冬の晩のことです。月を隠すように雪雲は広がり、白い雪がちらほら降っていました。桜のようだと天狗は雪色の空を見上げて思いました。細く枯れたようにもみえる古桜の枝にも雪は降り積もり、さながら花のようです。天狗にも雪は積もっていきます。天狗は身震いをして雪を振り落とすと、すこし考えて桜のもとに向かいました。雪の上の細い足跡だけが、老いた天狗を追ってきます。雪を踏みしめ、足跡だけを引き連れて天狗は古い桜のもとまでやってきました。

    「まるで、春の盛りのようですな」

     老いた天狗の言葉に、古い桜は身を震わせたようでした。天狗が伸ばした手が桜の枯れかけた幹とつながりました。

    「いつも貴方がいてくれましたな」

     妻をめとって泣いた春も、子が生まれて泣いた春も、妻を喪って泣いた春も、巣立つ子を見送って泣いた春も、いつも天狗のそばには古い桜が有り続けました。天狗のいろいろな春を、古い桜はいつだって受け止めてくれました。

    「せめて一度だけ、この老いた天狗の願いを聞いていただけますか」

     老いた天狗の手は、年月を経ていつしか枯れた枝のようになってしまいました。いま手をつく桜の幹とそっくりです。古い桜の幹や枝もまた、年月を経てすっかり枯れたようになっていました。幹に置かれた天狗の手をそっくりです。

    「貴方の花盛りをもう一度、見たいのです。私の一緒はいつも貴方の花がありました」

     天狗の手と桜の幹はもはやひとつの色に変わっていきます。天狗は目を閉じ、息を吸うと言いました。

    「私の小さな命をさしあげます。どうか、今一度貴方の花を見てみたい」

     天狗の指先から、天狗の熱が古い桜へと移っていきます。老いた天狗の熱は古い桜の幹を登り、枝の隅々まで行き渡りました。天狗は目を開き、祈るように桜を仰ぎ見ました。
     天狗の見つめる先で、古い桜の枝に小さなつぼみがつきました。濃紅色のつぼみは、老いた天狗の見上げるさきでゆるゆると膨らんでいきます。濃く小さなつぼみはゆるゆる膨らみ、降りしきる雪の色を吸うように色を薄くしていきました。終いには、あたりの雪と同じ色になりました。雪とよく似ている、しかし雪とはやはり違う白が天狗の目の前に広がりました。

    「最期に貴方の花を見られて、よかった。」

     老いた天狗は、その目に雪のような桜を抱いて旅立ちました。熱の抜けた天狗の体に、あとからあとから雪が積もっていきます。
     桜は散りました。老いた天狗の死を悼むように散りました。天狗の体に雪などつもらせまいと、薄雪色の花を降らせました。古い桜の木からすべての花が散ってしまうと、けっして再び、古い桜は花を付けなくなりました。


    ☆★☆★☆★

    いくつかまえのお題、桜でとんでも遅刻でお邪魔します。
    せいちょう使ったら枯れかけの桜にも花咲かせられるのかとか、細胞分裂を無理矢理進めるんだから体に悪いだろうとか、桜に死って物を書いてる人間にとっちゃあこがれだよねとか。
    書いてるうちに半分以上文字数減るのが不思議でなりません。

    お好きにどうぞ。


      [No.2447] コンビニアルバイターから見た感想 投稿者:マコ   投稿日:2012/06/06(Wed) 09:19:27     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    フミんさん、初めまして。マコです。
    ポケモンにも働ける場所があるなんて、いいことじゃないですか。
    でも、体の大きさとか種族としての特徴で働けるかが制限されるということは、何だかやりきれない思いでいっぱいになります。
    雌のカイリューであるアイコさんや、雄のヌオーであるリキさんみたいに、やる気は十分なのに、障害となる部分が大きいゆえに結局は排除されるということが、いくらしょうがないといっても悲しくなります。
    まあ、コンビニで仕事が遅い人に対して、「これで時給が同じなの!?」とかぼやいてしまう気持ちは分からなくもないです。

    自分が今、大手コンビニチェーン店のアルバイトとして働いているので、話の内容に親近感が持てました。
    自分も入ったころは仕事が遅くて文句もさんざん言われましたが、もう既に2年続けています。今では文句も言われることはない、と思います。

    もし自分がポケモンを雇うなら、と考えると、やっぱり人の形に近いポケモンになるのかな、なんて思います。あまり小さすぎても、レジに届かない可能性がありますから。最低1メートルの身長は欲しいところです。(浮遊できるポケモンなら問題はないでしょうけど)
    それにしても最後に出てきた女の人(及びその息子)は……、どうしようもないですね。働きたい人が電話をかけるのが普通ですよね。何で親使うんですか。
    かくいう私も店に直接行き、飛び込みでこの仕事を掴んだ身なので大声で文句は言えませんが。


      [No.2446] コッペパンが無いならライチュウの手を食べればいいじゃない 投稿者:門森 輝   投稿日:2012/06/05(Tue) 22:06:01     27clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     らい!? らいらい!? ら〜〜〜〜い! 可愛い絵が貼られてるぅ! らいら〜い! 
     ありがとうございます! ありがとうございます! こんな可愛い絵を貼って下さりありがとうございます! らいらーい! 
     コッペパンが無い様なので代わりにライチュウのおてて貰います。ライチュウの手はむはむしたいです。コッペパンチをくらってでも。むしろくらいたいです。ライチュウらぶです。らーい。
     最後にもう一度、貼って下さりありがとうございました!  らいらーい!

    【保存させて頂きました】
    【ライチュウかわいいよライチュウ】


      [No.2445] 【ポケライフ】採用面接 投稿者:フミん   投稿日:2012/06/04(Mon) 23:27:32     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    今日も一日が始まる。元気を出していこうと、中年の男性は意気込んだ。


    彼の名前はマナブと言った。マナブは、駅から少し遠い住宅地に紛れたコンビニエンスストアの店長だった。雇われ店長ではない、彼は業界でトップクラスのコンビニチェーン店から看板を借りて、自分で店を切り盛りする有能な男だった。妻と子どもが一人ずついて、仕事は順調、肉体労働としては大変だが人並みより少し多く給料を稼ぎ、アルバイトの若者からも信頼されていて人望もある。いつも明るく客に接し、時々現れる泥棒には持ち合わせの正義感と体力で、正面から立ち向かうような熱い気持ちを持ち合わせている(と言っても、刃物や銃を持つ犯人に突っ込んでいくような、無鉄砲さはない)。平凡といえばそれまでだが、当たり前の生活を営むことができる、幸せな男だった。

    そんな彼は、いつもと違いあまり落ち着かない。そわそわしながら商品を棚に並べ、店の周りの掃除をする時も周辺に視線を走らせている。その姿は、悪いことをして犯罪から逃れている指名手配犯と言われても仕方がない程だった。

    どうしてそんな様子なのか。何故なら、今日はアルバイトの面接に来るポケモンがいるからだ。

    彼の店では、半分以上の従業員をアルバイトに任せている。その従業員達は学生だったり、仕事をリストラされたマナブと同じくらいの歳の中年だったり、子育てが一段落した主婦だったり、様々な人がいる。しかし、彼の店ではポケモンを雇ったことはなかった。
    ポケモンは、人間と同じ理性を持ち、感情を言葉で伝えることができる生き物である。容姿は人間と違いポケモンによって大きく異なるが、中身は全く人間と変わりがない。一時期人とポケモンを公平に扱うべきかと審議されることもあったが、それは昔の話だった。今では、人もポケモンも手を取り合って生きている。

    こうなると、綺麗事だけでは世の中は進んでいかない。人が働いて当たり前ならば、ポケモンも同じである。
    近年、ポケモンが働くというのは不思議ではなくなった。昔からポケモンが人の補助をするのはよくあったことだが、人間と同等の待遇で働けるようになったのは、最近になってからだった。働けば給料を支払われ、怪我をすれば保険も下りる。有給休暇も利用できるし、休日も確保されている。この体制が安定してきたのも、ここ数年の出来事だった。今では不当な理由でポケモンを雇わないと、その職場は厳重に注意されてしまうまで法律が整備されている。

    もちろんマナブは、ポケモンを雇うことを避けてきた訳ではなかった。場所も都心部からは少し離れているせいか、働きたいと言ってくる人があまり多くないだけだった。


    しかし、今日は初めてポケモンの求職者が来る。マナブは、そのポケモン達を待っているのだ。
    偶然にも、同じ時期に働きたいと申し出たポケモンは二人いた。どちらも電話で申込んできて、容姿は分からない。一体どんなポケモンが来るのだろう。マナブは自分が指定した時間まで、不安定な気持ちのまま仕事をすることになった。
    しかし、仕事で手は抜けない。ここは自分の店であり、売上が落ちれば生活に直結する。彼は客が押し寄せる時間帯になると今日来るポケモン達のことはすっかり忘れてしまい、自分のすべきことに打ち込んだ。この店は周辺の住民だけでなく近くに高速道路があり、そこから来る客が立ち寄ることも多い。だからこそ、駅から離れた場所でも店が赤字にならずに済んでいるのだった。

    やがて客足も緩まり、マナブが指定した時間五分前になった。そろそろ来る筈だなと彼が思っていると、店の入り口に大きなポケモンが現れた。

    黄色に近い肌に目立つ大きな腹部、そのポケモンが歩くごとに地面が揺れ、店の中にいた客は誰もが視線を当てた。本人は慣れているのかあまり気にしていないようだった。
    見た目とは裏腹の可愛らしい顔。店の中に入り、マナブを見下ろして言う。


    「すいません、先日アルバイトの件で電話をした者ですが」

    マナブは、悠々と立つこのポケモンが今日の訪問者だと理解するのに数秒を費やした。よく見ればそのポケモン――――カイリューの手には、今日面接に来る際に準備しておいてと指定した履歴書らしき紙を握り締めている。側にいた学生のアルバイトも口を開けてカイリューを見上げている。

    「あ、はい、お待ちしていました。早速面接を行いたいのですが―――申し訳ありませんが、一度外に出て待っていて下さい。直ぐに向かいます」

    「分かりました」

    穏やかな表情でカイリューは返し、また大きな足跡を立てて店を出て行った。
    マナブはまだ口をあんぐりと開けているアルバイトに、暫く店を頼むと言い外へ出た。マナブの存在に気づいたカイリューが頭を下げる。その素振りから、礼儀正しくてモラルがあるのは明白だった。
    店の裏に行こうと話しかけ、カイリューは彼に従った。その際に履歴書を預かり、マナブは軽く目を通す。名前はアイコと言い、雌であることが分かった。必要事項に記入漏れはないし、志望動機も隙間なく埋めてある。字も読みやすく、写真も真っ直ぐに貼ってある。内容はともかく、完璧な履歴書だった。

    マナブは椅子が用意出来ないことをカイリューにお詫びして、本題に入る。


    「今日は、わざわざ来てくれてありがとうございます」

    「こちらこそ、驚かせてしまい申し訳ありません」

    「気にしていませんよ。だから、あなたも気にしないでください」

    再びカイリューは頭を下げてくる。履歴書を更に詳しく読んでみる。住居はここからそう離れてはいない、学歴はないが(ポケモンが学校に通い学ぶことは、まだまだ珍しい)犯罪歴もない。おかしな部分は見当たらない。第一条件は良し。

    「家からここまで、どれくらいかかりますか?」

    「は、はい。飛んで20分くらいです」

    緊張しているのがこちらにも伝わってくる。何かあれば、代理で仕事を頼める距離ではある。

    「失礼ですが、あなたの身長はいくつでしょうか」

    「はい、2メートル50センチです、私他のカイリューより少し大きくて」

    声が小さくなり彼女の自身が萎んでいくのが分かる。確か、コンビニは床から天井まで大体3メートルあるかないかの高さだった筈だ。

    「もし店で働くことになった場合、何曜日なら入れますか?」

    「夜は不可能ですが、朝から夕方ならいつでも働きます」

    雇う側としては都合が良い。少し会話を重ねた感じ、性格も温厚そうだ。仕事を一から教えていけば優秀な店員になるだろう。長年様々な人を雇い直接見てきたマナブは、彼女が自分の店で働いても問題ないと判断することができた。根拠は、店を運営してきた勘だった。経験者の勘は恐ろしい程よく当たる。
    しかし、彼は残念な結果を伝えなくてはならなかった。


    「申し訳ありませんが、あなたを雇うことはできません」

    当然、アイコさんは悲しがっていた。昔マナブもアルバイトの面接で落ちたことがあるので、彼女の苦しみは自分のことのようによく分かる。

    「雇いたい気持ちは山々なのですが、何せうちの店はそんなに広くないんです。アイコさんがしっかりしたポケモンなのは履歴書と態度で理解できます。しかし店で働くとなると、狭い店内を動き回らないといけないし、細かい作業も多い。間違って商品にぶつかってしまうと大変だし、働く人が休む休憩所にも入れないと思います。ですので、今回は―――」

    「分かり、ました。わざわざ、時間を割いて頂いてありがとうございます」

    「こちらこそ、求人を見て足を運んでくれてありがとうございました。履歴書はお返しします」

    寂しそうに去っていく後ろ姿は、悲壮感に満ち溢れている。ナマブは彼女の姿が見えなくなるまで見送ったが、途中であんなに丁寧に書いた履歴書をくしゃくしゃに握り潰しているのを、彼は見逃すことはなかった。
    こちらとしても彼女を雇いたかった。しかしあんなに大きな体では仕事が限られてくる。それで一番苦しむのは本人だろう。今回は仕方なかったとしか言えない。マナブは彼女が仕事を見つけられるように、ささやかに祈っていた。

    今度から、電話越しにポケモンの種族を聞くのも検討しようと考えながら仕事を再開する。次に来るポケモンがどんなポケモンなのか心配になってくる。
    店に戻りいつも通りに動いていると、再びポケモンが入ってくる。この店はポケモンも利用するので何も不思議なことではないのだが、先程のカイリューの様に履歴書らしき紙を持ち、紙とマナブへ交互に視線を当てているので、何となくあのポケモンかなと思ったら、向こうの方から話しかけてきた。


    「あの、今日面接を頼んでいたポケモンですけど」

    マナブは、そのポケモンの声に聞き覚えがあった。電話で聞いた声、今日来る予定の二人目のポケモンで間違いないようだった。
    水色の肌、短い手足に小さな目と大きな口を持ち、頬を上げ笑う顔はどこか穏やかだ。種族はヌオー。身長はマナブより小さく小学生を思わせる。
    もちろん彼は冷静に対応する。少なくとも、先程のカイリューみたいな体格の問題は少ないだろう。少し安心する。

    「では奥に行きましょうか」

    「はい」

    ヌオーから履歴書を受け取り店の奥へと案内する。リキというらしい。名前からして、雄のポケモンということが分かる。
    マナブはリキを椅子へ座るように案内する。リキは指定された場所へゆっくりと座る。

    「今日は面接に来て頂いてありがとうございます」

    「いえ、こちらこそお手数かけます」

    頭を下げる仕草も丁寧だ。腰が低そうだ。
    先程のカイリューにした質問と同じ内容を尋ねていく。住んでいる場所は本当に近い、ここから歩いて5分もかからない場所に住んでいるらしい。働ける時間帯はカイリューと同じ、夜だけは勘弁して欲しいとのこと。夜には既に他の従業員が働いてくれることになっているので問題ない。適度に世間話を持ちかけてみる。多少会話に間があるものの、ちゃんと目を見て会話をしてくるし、人間とは違う笑顔も印象が良い。マナブは、このポケモンを雇うことにした。彼の店で、初めてのポケモンの従業員になる。
    その旨を伝えるとリキは喜んでいた。マナブも先程みたいに、心苦しいまま断ることをしないで済んだので安心していた。

    マナブは彼にどのくらいの頻度で働くのか、働く上でのルールや最低限のマナー等、雇う上で必要なことをその場で説明していく。リキは真剣に話を聞いてくれるし、はっきりと返事を返してくれる。良い従業員になりそうだと、ナマブは彼に期待していた。

    しかし、その期待は空回りをしてしまった。
    彼は確かによく働き、物覚えが良くて仕事の内容も直ぐに覚えてくれる。同じ従業員仲間とも打ち解けていて、客に対しても粗末な態度を取らない。いわゆる当たりだった。
    しかし彼には弱点があった。何においても動作が遅いのだ。
    元々ヌオーというのは、川底等で口を開け、餌が来るのをただひらすら待つというポケモンで、活発的に動くことはない。そのためか、リキは何の作業をしても遅い。レジで会計を済ませている時も、ゆっくりとお釣りを返すので慌てている客に怒られることも珍しくはなかった。商品を棚に並べる行為も、他の人間の従業員よりも終えるのが遅い。正確に仕事をこなしてくれるのは有難いのだが、人間の従業員よりも仕事量が圧倒的に少ない。最初は寛大にリキを迎え入れていたマナブも、人間よりも遥かに効率が悪い彼に、次第に不信感を積もらせていった。他の従業員も同じだったようで、何故彼と同じ給料なのかとぼやく者まで現れてしまった。

    リキがいくらのんびりしているからと言っても、職場の険悪な雰囲気に気づかない程鈍感ではなかった。次第に彼は周囲から孤立していき、笑顔を見せることは減っていった。そして一ヶ月もしないうちに、マナブへ働くことを辞めたいと告げてきた。頭でヌオーという種族のハンデだと分かっていても、仕事量の少なさを許容することは、マナブにはできなかった。
     





    リキが辞めた翌日、マナブは休憩所でため息をついていた。普段活発な彼が考えていることは、ポケモンを雇うというのはとても難しいということだった。
    せっかくやる気や素質があっても体格のせいで働かせることができない。種族柄のハンデで、こちらが求めている能力を引き出して貰えない。人間以外を雇うのに、こんな問題があるなんて最初は思いもしなかった。ポケモンが働くのが一般化しつつある今、まだまだ人間を優先して雇う理由が、マナブには何となく分かる気がした。人間だって、それぞれに合った職種を選ぶ。ポケモンは働きたいという願望があっても、体や種族が職種に合わなければそれだけで門前払いだ。なんて大変な種族なのだろう。

    コンビニで働けるポケモンだって多い。それなのに、明らかに無理なポケモンばかり集まってしまうのが歯痒い。
    そんなことを考えていると、近くにおいてある受話器が鳴る。マナブは気持ちを切り替えて電話に出る。


    「もしもし、○○コンビニエンスストアです」

    「お忙しい中すいません。そちらで、アルバイトを募集していると聞いて電話をしたのですが」

    女の声。声に張りがあり、耳を受話器から離しても透明感があるその声はよく響く。狙っているのか意識しているのか、無駄に大きな声量からして、中年の女ではないかとナマブは思った。

    「はい、募集しております」

    「私の息子なのですが、今雇うことはできますか? 平日は大体入れるのですが」

    息子?

    「平日は、早朝から夕方の間で募集しております。大体と言いましたが、何曜日なら入れますか?」

    「そちらの都合に合わせます。何曜日に入れば宜しいですか?」

    「――――少々お待ちください」

    細かいことは置いておいて、シフト表を確認する。今確実に必要なのは火曜日から金曜日。そう伝えると、電話越しの中年の女は言う。

    「もう少しシフトを多くできませんか?」

    「そう言われましても、現時点では火曜日から金曜日に入って欲しいんですよ。その後仕事量を増やせるかどうかは、他の従業員もいるので、これから先にならないと正確には分かりませんね」

    「お願いします。どうしても、もっと働きたいそうなんです。後一日でも増やせませんか?」

    マナブは電話の相手に聞こえないように小さくため息をついた。働きたい本人が電話で話さないだけでもおかしいのに(恐らく電話の相手はその息子の母親だろう)、こちらが雇う前提で話を進めていることが図々しいとは思わないのだろうか。それとも向こうは、これが当たり前だと思っているのだろうか。

    「申し訳ありませんが、平日は火曜日から金曜日の朝から夕方、それ以外は募集していません。店の入り口にもそのように書いてあるので」

    「じゃあ良いです」

    女性ははっきり言い残すと、電話が音を立てて切れてしまった。半ば呆れつつも、受話器を戻して体をほぐす。こう言った意味不明な要求には頭を悩まされたものだが、慣れてしまえばどうってことはない。


    全く、うちの店で人間は働きやすいのに、中身がどうしようもないと雇いようがない。いっそ、止む終えない理由で雇えなかったポケモン達と中身を取り替えてしまえば良いのに。





    ――――――――――

    お久しぶりです。企画を開催していると知ったのでお話を置かせて貰います。
    ポケモンも人間と同じで、働く場所を探すのには苦労しているんじゃないかなあと悶々と考えていました。
    因みに有給云々の話を作中で書きましたが、アルバイトでも法律上有給休暇は取れるんですよ。知っていましたか?

    フミん


    【批評していいのよ】
    【描いてもいいのよ】


      [No.2444] コッペパーンチ! 投稿者:サトチ   投稿日:2012/06/04(Mon) 20:33:47     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    コッペパーンチ! (画像サイズ: 328×279 14kB)

    なんかひさびさのぞいてみたらライチュウらぶな方がいらしたので、昔描いたイラストを投稿〜。
    食パンにカレーパンでコッペパンがないけど、ライチュのおててで1つよろしくです!


      [No.2443] 蛇足 投稿者:白色野菜   投稿日:2012/06/01(Fri) 21:08:44     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    数年前に有名なゲーム会社が数十年前のゲームのシリーズの最新作を最新技術を結束して出した。

    ゲームのシリーズの名前は「ポケットモンスター」

    使われた技術の名前は「AR」と「VR」

    ARは拡張現実。

    VRは仮想空間。

    ARでポケモンは何時でも何処でも人の側にいられるようになった。
    勿論マナーの問題はあるが、食事を共にすることも一緒に授業に出席することすら可能になった。


    VRによって、人はポケモンの世界へと行けるようになった。
    さすがに五感は完全には再現されていないが処理落ちもなくかなり快適だ。
    トレーナーとして、旅をしながらバトルを磨くもよし、ブリーダーとして美しさを磨くもよし脇道をそれて育て屋さえ持てる自由度は高くそれなりに評価されているらしい。


    ここはそんなゲームが流行っている世界。
    ここは少し遠い未来の世界。









    という話を、書きたかったけれど文章能力が足りなかったです。
    【書いてもいいのよ】【焼いてもいいのよ】
    【批評歓迎】


      [No.2442] 休日 投稿者:白色野菜   投稿日:2012/06/01(Fri) 20:56:55     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「………ぴーかちゅぅ?」
    目蓋を抉じ開けると黄色いネズミが、私の顔を覗きこんでいた。
    寝不足の頭をフル回転させて、昨日の夜の事を思い出す…。


    「そうか、交換して………そのまま寝落ちしたのか。」
    てしてしと人のでこを叩いてくる黄色いネズミを無視しつつ、見覚えのある天井を見上げる。
    茶色い人の形にも見えなくもない染みがそっぽをむいていた。

    何も変わらない
    何時も通りの朝だ。

    「よし!」
    気合いをいれて上半身を跳ねあげる。
    黄色い毛玉がころりと転がったが気にしない。

    時計は気にしない、今日の予定は無くなった。
    外が明るいので朝か昼だ。
    とりあえず、ご飯だ。

    「ぴーかーー!」
    「……黄色もお腹減ったか?」
    「ぴか!」
    「仕方ないなぁ………てか、お前の名前も決めなきゃな。」
    名前を決めるにしても、種族すらわからない。
    いや、見たことはある。
    たしか、赤い悪魔が使ってた……思い出せない。

    寝起き特有の空回りする思考を楽しみながら、フライパンを火にかける。
    加熱している間に棚から瓶詰めのポロックを一粒取り出す。

    「ほら、ご飯。」
    「…………ちゃぁ。」
    「ん?辛いのは嫌いか…………あとは酸っぱいのだね。」
    「ぴか!」
    「えー、酸っぱいのか。ストックほとんどないから後で作りにいかな駄目かな。」
    瓶の底の方に辛うじてあったポロックを黄色に投げ渡す。

    投げた結果は見ずに自分の朝食に取りかかる。
    若干、加熱しすぎたフライパンに油をしき卵を割り入れ蓋をする。
    火力を弱火にして、待ってる間にトーストにベーコンを乗せて一枚焼いておく。

    布団をたたんで折り畳み式のテーブルを出せばいい案配に朝食ができた。

    「いただきます。」
    「ぴーかーぴっ!」
    重ねられた声に黄色を見るとポロックを両手に持ってぺこりと頭を下げていた。
    それから、美味しそうにポロックをかじりだす。
    挨拶なんて妙な物を仕込んでるんだなぁ等と思いつつ、目玉焼きに醤油を垂らす。

    空間モニターには今日の天気が写し出されていた。
    生憎の雨らしいが彼方には関係ないだろう。
    たまにはポロックを作る以外にぶらついてみるのもいいかもしれない。
    卵の黄身を潰し私はぼんやりと考える。

    あぁ、そうだ。
    姓名判断師も探さないとな…。












    私が交換したポケモンの名前が変えられないと言うシステムを思い出すのは大分先の話である。


      [No.2441] うおおお 投稿者:teko   投稿日:2012/05/28(Mon) 23:55:33     17clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     ふをおおおおおおおおおおお
     うおおおおおおおおおおおおおおお!!

     ということ、実はかなり取り乱したtekoです。そしてお久しぶりなのですw
     くいさん、あんなアホのためにこんなすんばらしい小説書いてくださって……うれしいです。僕としても!
     そして、このとき寝落ちしてすんませんした マジすんません

     自分でもすっかり忘れかけていたよーな話が、ここまでいいものになるとは感激です!
     あのアホ、こんなにかっこよかったですっけ?もっとアホじゃなかったですっけ?

     描写もいつものことながら、今回は動きいきいきですね!臨場感ぱないです
     格闘タイプのバトルって感じで本当に好きです!それも、本当にバトル技をベースとしてやるとなると・・・…ゲームに疎い自分には相当できない芸当ですが、だからこそポケモンらしくてスキです。アニメも見習ってよまったく

     姉さんの美しさが欲しいです。きっとしなやかでもふもふの毛ざわりなんでしょううう
     チビ君がどんな風に成長していくのか、先見たいんで宜しくお願いします
     でも、あんなのは見習わないほうがいいぞ!

     酒乱暴走というところにとても、なぜかわからないけど親近感を感じる!
     本当、あんなのをこんなにかっこよく書いてくれて本当うれしいです。こいつで何か小説書きたくなったじゃないですかどーしてくれんですかくいさんw

     また、ちゃっとでお会いしたさいに感想を吐かせていただこうと思います。
     筆舌に尽くしがたい!

     では、続きを期待しますw
     乱文失礼いたしやした!


      [No.2440] コメントありがとうございます 投稿者:穂風奏   投稿日:2012/05/28(Mon) 21:22:26     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 私も「ポケライフ」用に図書館ネタを考えてたのですが・・・・穂風さんの方が数百枚上手です。参りましたm(_ _)m
    > ポケモンの特性をこうからめようとは一切考えたことがなかったので、これからの参考にさせていただきます。

     数百枚上手だなんて・・・!
     私もaotokiさんの「ポケモンとのほんわかした日常」の書き方を見習いたいです。
     それでも、何かの参考になったのなら嬉しいです。


    > 確かにエーフィは、本読んでても違和感が全くない気がします。
    > 現実でもポケモンでも、犬系は主人の読んでる本を眺めてそうですが、猫系は自分で読んでそうですし。やっぱり図書館には猫ですね。

     ガーディとかポチエナの犬系なら「遊ぼ遊ぼ!」って邪魔しそうですが、エーフィとかチョロネコの猫系なら「あたしはあたしで好きにやってるから構わないで」って言いつつも一緒にすぐ横で本を読んでそうです
     確かに図書館にいるなら猫ですね
     それと本目当てじゃなくて、エーフィ目当てで来てしまう人もいたりしそうです。穂風もそのうちの一人になりそうです(笑)

     それでは、コメントありがとうございました!


      [No.2439] 本には犬より猫が似合う 投稿者:aotoki   投稿日:2012/05/27(Sun) 15:49:51     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    読ませていただきました。この図書館、すごい行きたいです。リアルに。
    私も「ポケライフ」用に図書館ネタを考えてたのですが・・・・穂風さんの方が数百枚上手です。参りましたm(_ _)m
    ポケモンの特性をこうからめようとは一切考えたことがなかったので、これからの参考にさせていただきます。

    確かにエーフィは、本読んでても違和感が全くない気がします。
    現実でもポケモンでも、犬系は主人の読んでる本を眺めてそうですが、猫系は自分で読んでそうですし。やっぱり図書館には猫ですね。
    あと個人的には記者さんが可愛いな、と思いました。


      [No.2438] 【ポケライフ】大図書館の司書 投稿者:穂風奏   投稿日:2012/05/26(Sat) 21:51:44     103clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     とある休日。私は巷で噂の大図書館を訪れていた。
     なんでも、今まで来館者がほとんどいなかったのが、近頃急に多くの人が来るようになったらしい。
     そのわけを知るべく、雑誌記者として館長に話を伺うことにした。

    「どうぞ、おかけになってください」
     通された部屋は、二階にある小会議室だった。ソファが八つとテーブルが一台だけというシンプルな場所だ。
     ゆったりとしたスーツに身を包んだ女性――館長は私を中に入れると、ドアを半開きにしたままで私の向かいに座った。館長の隣ではエーフィが大人しく座っている。
    「さて、単刀直入に訊きますが、なぜ多くの人が訪れるようになったんですか?」
    「やはりその質問ですね。では逆にお聞きしますが、記者さん。この図書館を訪れた感想はどうですか?」
    「えっと、とても広くて多くの蔵書があり、さすが地方一の図書館だと思いました。ですが、ここから目当ての本を探すのは一苦労しそうですね」
    「そうでしょう。一生費やしても読めないほどの本の量がここの自慢ですから。そのおかげで、『探すのが面倒だ』なんて言われて、全然人が来てくれなかったんです」
    「それは今でも変わらないんじゃないですか?」
    「いえ、違うんです。――その秘密がこの子でして」
     そう言うと、館長はあくびをしていたエーフィを抱え、テーブルの上――私の正面に乗せた。
    「話すより実際に体験した方が早いでしょう。何か悩み事はないですか? 早起きできるようになりたいとか、手軽な運動法を知りたいとか」
    「悩み事ですか。そういえば、何か楽器ができたら、と最近思ってるんです」
    「わかりました。それじゃフィフィ、いつものお願いね」
     フィフィと呼ばれたエーフィは面倒そうにもう一度あくびをすると、一歩私の方へ近づいた。
     薄紫の瞳が淡く光り、じっと私を見つめる。「ねんりき」だろうか。
    「何が始まるんですか?」
    「もうすぐわかりますよ」
    「はあ……」
     よくわからないまま見つめられるのは落ち着かないが、こらえてエーフィの両目を見つめ返す。
     そうして、不思議なにらめっこがしばらく続いた後、エーフィは扉の方へ体の向きを変えた。まだ瞳は光っている。
    「そろそろですね」
     館長がそういったのとほぼ同時に、半開きにされていたドアから二冊の本が現れた。正確に言うと宙に浮いてやってきた。
    「この本はフィフィが今、本棚から『ねんりき』で持ってきたものです。どうぞ手に取ってみてください」
     館長に言われた通り、二冊のうち少女とオカリナの写真が表紙の本を手に取ってみる。
     タイトルには『フルーラの簡単オカリナ入門講座』とあった。
     数ページめくってみると、オカリナの持ち方から音の出し方、簡単な練習法などがイラスト付きでわかりやすく書かれていた。
    「どうですか? 今のあなたにピッタリな本でしょう」
    「これは……驚きました。ちょうどオカリナに興味があったんです。しかし、私はオカリナとは一言も口にしてませんよ」
    「それがこの図書館が人気の理由なんです」
    「というと?」
    「エーフィの特性はご存知ですか?」
    「はい。『シンクロ』――それと最近『マジックミラー』のエーフィも確認された、ですよね」
    「その中でこの子は前者の特性を持ってるの。『シンクロ』を使って相手の気持ちになり、その人の目線からぴったりな本を選ぶ。これがフィフィの図書館でやってることなんですよ」
    「『シンクロ』にそんな使い方もあるんですか。――けどそれは、エーフィが図書館のどこに何の本があるか把握していないとできないのでは?」
    「フィフィは本が大好きで、毎日本を読んでるんですよ。繰り返し読むうちに本の位置を覚えてしまったんでしょうね」
    「人間の文字で書いた本をですか?」
    「ええ。最初は絵本を楽しそうに読んでいたんですけど、そこから字を覚えていったのか、今では『多角的視点創世論』なんていう難しい本まで読んでいて」
    「聞いただけで頭が痛くなりそうな題名ですね」
    「ええ、前までは読み聞かせをしてあげられたんですけど」
    「さすがに、そんな本は読み聞かせできませんね」
    「フィフィがシンクロを使うと体力を消耗するので、一日1〜2時間ぐらいしか仕事はさせてないんですが、睡眠・食事以外はずっと本を開いているんです」
    「本当に本が好きなんですね。私も帰ったらこの本を読んでみることにします。返却期限はいつですか?」
    「二週間です。きちんと返しに来てくださいね。本に触れる人が多くなったのは嬉しいことなのですが、延滞や返しに来ない人も増えているので」
    「わかりました。記事でも借りた本は返すように伝えておきたいと思います。それでは、本日は取材に協力いただきありがとうございました。フィフィもありがとうな」
     フィフィの顎の下をなでると、彼女は気持ちよさそうに喉を鳴らした。
    「では、受付で貸し出し手続きをしましょう。私についてきてください」
    「お願いします」
    「そういえば、こっちのもう一冊は?」
    「あら、フィフィったら。記者さんが独身だと知って気を利かせてくれたみたいですよ」
    「はは……。そっちの方も頑張らないと、ですね」
    「応援してますよ。そうそう、オカリナの本の作者さん知ってますか? オレンジ諸島では結構有名なオカリナ奏者で――」

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    こんばんは、穂風です
    「特性「シンクロ」をうまく使って、図書館のお手伝いをしてるエーフィ」を書いてみました
    エーフィがおすすめの本を選んでくれたらどんな本でも読んでしまいそうです
    毎日エーフィに会いに行って、おやつあげようとしたり、なでなでしたりしようとして館長さんに怒られる人がたくさん出そうですね


      [No.2437] どうも、数年ぶりのマサポケです 投稿者:天城のるあ   《URL》   投稿日:2012/05/26(Sat) 18:08:53     23clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    数年ぶりにマサポケに投稿しました、天城のるあです。
    はじめましての方は初めまして、久しぶりの方は久しぶりです。

    しばらく二次創作から離れてましたが、今年からレジギガスさんのスピードでスロースタートしました。


    久々に書いた結果がこの作品だよ!
    それにイシツブテを投げられる覚悟は出来てます。

    ちなみに作中の「僕」と名乗るポケモンは、伝説系や幻系以外で各々の想像にお任せしたいと思い、あえてはっきりさせないことにしました。

    今回はポケストのお題とは異なるが、重圧と責任、すれ違いと迷走とか混ぜたものになりました。
    ということで次はギャグでも書こうかと思ってます。


    天城のるあ


      [No.2436] ウィナーホーリクの狂宴 投稿者:天城のるあ   《URL》   投稿日:2012/05/26(Sat) 17:59:49     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    僕の主人の名前はルセア、ポケモンリーグのチャンピオンだ。
    全てのポケモントレーナーの高みに上り詰め、僕も共にその栄光と祝福を受けた。
    殿堂入りしたあの日から2年の時間が過ぎた今でも、主人はスタジアムに立ち続けた。

    「チャンピオンのルセア。これで68連勝です!」
    今日もスタジアムの実況が、僕の主人の勝利を伝えている。
    しかし、今は僕達がスタジアムで戦うことは無くなっていた。
    今の彼女がスタメンに使うポケモンは、殿堂入りした日とは全く違うからだ。

    海の神と呼ばれるルギア、超古代ポケモンのカイオーガ、夢幻のラティオス、
    天空の神と言われるレックウザ、北風の化身スイクン、時渡りポケモンのセレビィ、

    そう、全て伝説のポケモンとか幻のポケモンが、今の主人の戦力だ。
    今の僕達は控え席に座る、単なる傍観者でしかなかった。

    「連勝記録を重ね続けるルセアさんが、今や観客に向けて手を振っています」
    多くの観客の前で手を振る主人は、表向きでは喜びの表情を見せるが、
    僕は心の中ではそのような気持ちがあるように見えなかった。





    試合が終わった後、僕はチャンピオンに与えられる豪華な控え室で、同じくベンチに座って観戦していた仲間達に、今の主人に対する不満を告げる。

    「今の主人は楽しそうに見えない。それに奴らも調子に乗っているよ」
    「でも俺達がここまで来られたのは、ルセアのお陰だぜ」
    「野生ポケモンでしかなかった私達を、ここまで強くしてくれたのはルセアさんだもん」
    僕の不満を聞いた、最初の一匹であるリザードン先輩と、後輩のサーナイトは主人に対する不満は無かった。
    主人が勝ち続けるのなら、傍観者でもいいという立場に甘んじている。

    「僕も主人に感謝しているのだが、今の主人には昔の主人にあったものが見えない」
    「それはお前の気のせいだろう」
    「ひょっとして、奴らに対する嫉妬?それもとスタメンの椅子取られて悔しいのか?」
    初めて殿堂入りした仲間、ドサイドンやアブソルも、僕の不満を違う意味で取っている。
    もちろん、僕は今のスタメンの奴らばかり出るという不満もあるが、それが本当にいいのか、今の主人が道を間違えていないのかというのが僕の不満だ。

    「もういい。お前達より奴らに話をした方が早い」
    「ちょっと待ってよ」
    僕はベンチ入りした仲間達に話しても無駄だと思って、この場を立ち去る。
    そんな僕の姿を見たピカチュウが、後ろを追ってくる。





    「お前達が来てから主人が変わったんだ!」
    「お、落ち着いて!」
    僕は感情をむき出しにして、主人が変わった原因が奴らにあるとして強い口調で迫る。
    ピカチュウは冷静さを失った僕を必死に止めるが、怒りに任せて静止を振り切る。

    「俺達はルセア様に忠誠を誓っている」
    「ルセア様を思う気持ちは我々も同じ。我々が信じることが出来た唯一の人間だ」
    「だったら、お前達が本当に主人のことを思って戦っているのか?」
    僕は主人に忠誠心を示すカイオーガとスイクンに、その言葉の意味に対して苛立つ。
    奴らの忠誠心は伝説のポケモンである故の傲慢さが見えてくる。
    彼らの言葉が信頼の意味があるとしても、今の僕には聴く耳は一切持たない。

    「我々が居なければ、今でも勝ち残ることは無かった」
    「ひょっとして、スタメンを外されたことでの不満ですか?
    僕達より実力が無いポケモンの嫉妬が一番見苦しいことですよ」
    レックウサの言うことも事実だし、悪意の無い子供のように振舞うルギアの言葉も一理ある。僕は奴らと比べても実力も能力も差がある。
    僕の感情や不満は嫉妬だけではないことは、奴らには全く伝わっていない。

    「お前達に僕の何が分かる!?お前達新参者が本当に主人を理解しているか!?」
    「新参も古参も関係ない!それにお前が主人の心境を理解していないだけだろう!」
    「仲間同士、ケンカはやめようよ。落ち着いて」
    もう奴らの話を冷静に聴く耳を持たない僕は、ラティオスを強く睨みつける。
    仲間割れの危機を避けるため、ピカチュウはお互いに宥めるのだが、この状況をとめることは出来ない。







    「仲間同士でやめなさい!」
    一触即発の危機に陥ったその時、主人が大声で僕達を一斉に制止させる。
    彼女の声で、ハイパーボールにトレーナー登録されているポケモンの条件反射に従い、
    人知を超える伝説のポケモンであっても一気に大人しくなる。

    「一体何が原因でこうなったの?」
    控え室にいるポケモンの誰もが、僕に原因があるとして一斉に指を刺す。
    この騒ぎの原因が僕なのは確かだが、こんな事態にするつもりは無かった。

    「あなたが何に不満があってこういうことをしたの?」
    僕は主人に対する不満を声のトーンを変えつつ、身振り手振りで必死に伝える。
    主人に言葉が通じるなら、僕もジェスチャーという回りくどい遣り方はしない。
    人間とポケモンの間で言葉が通じないのは不便だ。
    それに、気持ちというものは伝わりそうで、すれ違う厄介なものだから、共通言語があるというのは偉大なことだと思う。



    僕は昔のように旅をしていた頃が一番楽しかった。
    常に主人と共に苦楽を共にして、競争とか勝利数とか関係なく、ゆっくり高みを目指す。
    ポケモンリーグも世界一のポケモントレーナーになるという通過点の一つで、
    主人が世界一のポケモントレーナーになれるなら、僕達は全力に走ることが出来た。

    でも、今の主人はポケモンリーグチャンピオンとして、戦っているだけだ。
    旅の中で仲間になった伝説のポケモン達も、最初は同じ志を持つ仲間だったが、
    今はチャンピオンとして勝ち続けるために必要不可欠な力となった。

    強いポケモンと弱いポケモンがいるのは、弱肉強食の世界である限りは必然的。
    旅をしていた頃の主人は、そんな道理は一切関係なく僕達と接してきた。
    今の主人を見ていると、ポケモンリーグチャンピオンであり続けることが目標となり、
    強いポケモンと弱いポケモンの関係でしか、僕達を見ていないのかと疑うようになった。

    僕は表現できるあらゆる手段で、今の主人に対する不満や疑問を投げ続ける。
    これで通じるのなら、僕の気持ちを分かってくれるはず。
    僕は主人を信じてメッセージを放ち続ける。



    「あなたが言いたいことは分かった。私は目的のために今を頑張っているの。
    でも、私はみんなのことを平等に愛しているつもりよ。
    私は旅していた頃と同じ気持ちを持って、チャンピオンであり続けたい。
    私は・・・目標のために強いポケモンの強いトレーナーとして強くならなきゃいけない」
    僕は主人の放つ言葉に強い絶望感を抱いた。
    主人は表面上では楽しくポケモンバトルというスポーツをしても、内面ではチャンピオンとして勝ち続ける義務と重圧が、戦うことを強いられている。

    「私は勝ち続けなければいけないの!
    勝たなければみんなに認められない。負けたら何もかも失うのよ!
    だから私はチャンピオンとして、戦い続けるの!それが分からないの!?」
    そんなこと僕は分かりたくも無いし、理解したくも無い。
    それでも主人は負けること、戦いをやめることが怖いことだけは分かった。
    勝利の美酒という快楽と、それを享受できなくなる日を恐れるジレンマ、敗北が喪失と同じ意味になって、ウィナーホーリクともいう依存に完全に陥っている。
    主人にとっての勝利は、薬物やギャンブルと同じ嗜癖を齎してしまった。

    僕のウィナーホーリクに苦しむ主人を見たくないという想いが、伝わっていない。
    伝わったとしてもチャンピオンとしての責務から拒絶する姿を見せる。
    主人に対する苛立ちが募ったことで、僕の中の何かがキレた。

    僕は主人に対して反抗の意志を示すように、技を放った。



    「何するの!あなたは私の気持ちが分からないの!」
    僕の気持ちが分からない癖に、自分の気持ちを分かれというのはおかしい。
    今まで溜めてきた不満が、主人への力づくの反抗という形として表に出た。
    もうこれ以上は、僕は主人の言葉を聞きたくなかった。

    些細な考え方の僅かなすれ違いが、大きな想いのすれ違いとして変質する。
    主人も僕もお互いの言葉や意志に、耳も心も傾ける気は無くなっていた。

    手持ちのポケモンとしてやってはいけないこと、主人に対する反抗を行った僕は、
    制御できない危険なポケモンとして、処分されることになったが、主人の最後の温情からか、野生のポケモンとして野に放たれた。







    手持ちの仲間が反抗したことで、野生に帰してから半月も経たない中、私はポケモンリーグチャンピオンとして再びスタジアムに立っていた。

    「四天王を破って、ポケモンリーグチャンピオンを目指すチャレンジャーの前に、
    ポケモンリーグチャンピオンのルセアが姿を見せる!
    彼女は王座を守りきることが出来るか!?」
    会場全体に響くアナウンスと観客の声に、私は落ち着いた素振りを見せて、チャレンジャーの目の前に立つ。

    《ルセア様、我々の力で愚かな挑戦者を退けましょう》
    《この程度の相手、ルセア様と私の敵ではない》
    《僕が最初に戦いたいな。ルセアさん、早く出してよ》
    伝説のポケモンと呼ばれる手持ちポケモン達は、中で控えているハイパーボールを振動させる。これは自分達が戦いたいという合図だ。

    「私の最初の相手はこれよ」
    私は強い意思表示を示す一匹が納められたハイパーボールを選び、宙で円弧を描くようにスタジアムの中央に放った。
    私は戦う意志を強く示したものを戦わせ、私は今日も勝ち続けなければならない。
    負けたら全てを失い、彼らも弱いトレーナーと見なして離れていくだろう。
    だから私はチャンピオンであり続けなければならない。







    「ねえお父さん。ルセアさんカッコいいよね」
    「ああ、カッコいいな」
    子供と一緒にポケモンリーグを観戦して、運良くチャンピオン戦を見ることが出来た。
    子供はルセアと手持ちポケモンに、目を輝かせて強者に対する憧れを見せたが、
    私は彼女が伝説のポケモンによって、戦わされているようにしか見えなかった。
    私のように周囲の熱気に呑み込まれず、彼女を冷静に見つめるものは少ないだろう。

    「僕もルセアさんのようなトレーナーになれるかな?」
    「お前も本気でポケモントレーナーを目指す日が来れば、その時に分かるよ」
    今の私の子供にはルセアがヒーローに見えるのだが、彼がポケモントレーナーになったとき、彼女がどのような想いで戦っていたのか分かる日が来るだろう。







    あの事件から主人と袂を分かち、野生に還った僕はさ迷い続ける。
    ポケモンリーグチャンピオンのポケモンだったから、大抵の野性ポケモンには負けない。

    僕は野生ポケモンという不安定な道を歩み、主人もまた勝ち続けるという綱渡りの日々を送っているだろう。
    僕もまた負けたら死という生存競争という綱渡りを通して、あのときの主人の気持ちが少しは分かってきた。






    ---------------------------------------
    Copyright © 2012 Re'Nopefu All Rights Reserved.  
    No reproduction or republication without written permission.


      [No.2435] ありがとうございます。 投稿者:aotoki   投稿日:2012/05/23(Wed) 20:57:35     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    コメントありがとうございます。感謝感激アメモースです。
    そして拍手をしてくださった皆さんも、ありがとうございます。感謝感激(ry

    >あんな状態であっても活気にあふれている「息子」の行動が良い意味で子供じみていて、微笑ましいです。
    今思ったのですが、デスマスの特性って・・・あれ、おかしいなおとうさん大丈夫だったのか・・・
    ・・・愛と可愛さがあれば特性は乗り越えられる、はずです。

    >あと、観覧車と時間の例えが上手だなあ、と思いました。どうしても止めようがないですものね。そのことを自覚したお父さんが今後どうなっていくかが気がかりです。
    おとうさんは書いているこちらとしても「この後どうするんだろうこの人」となっていました(笑)
    観覧車は本編でも(いろんな意味で)印象強かったので、もうすこし掘り下げたかったのですが・・・あくまで「ポケモンのいる日常」なので割愛してしまいました。
    今度きっちり書いてあげたいです。


    >それでは、また次の作品にも期待しております。
    あ り が と う ご ざ い ま す

    ・・・おやカイオーガがやってきたようだ


      [No.2434] With Tranquill and Voice 投稿者:ことら   《URL》   投稿日:2012/05/23(Wed) 19:33:00     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     最近ポケモンが減って来た。原因など解っている。戦争が始まったからだ。
     優秀なポケモンはもちろんのこと、その辺にいる適当なポケモンだって戦力になると捕獲された。

     そんな戦争の初期、優秀なトレーナーはみんな徴兵された。この男もそろそろ自分の番とおびえている。
     殺し合い、奪い合い。なぜお上の決めたことに命をかけなければならない。いや原因は向こうの国が無茶難題を押し付けるからだ。そうでないと、今の裕福な生活はまもれない。そんなことは解っている。それでも殺される恐怖や徴兵される恐怖におびえていた。

     いつもならポケモンの鳴き声が朝からけたたましい。けれど最近はめっきり静かだ。静寂の朝を迎えて男は郵便受けを確認する。
     良かった、今日も来ていない。徴兵を知らせる紙が。
     
    「ぽぽくるぽー」

     男は上を見上げた。聞こえるはずのない声がする。
     この声は誰だ。確か、そうだハトーボーだ。ポケモンがまだいる。まだ鳴いている。野生のポケモンはまだ生きてる!
     しかし屋根を見ても空を見ても、ハトーボーの姿はなかった。鳴き声だけがそこにある。姿は見えなかった。

    「くるぽぽぽぽぽ」

     男はハトーボーに呼びかける。降りてきてくれ、と。
     野生のポケモンはいなくなった。朝も昼も夜も静寂。ひとたびその姿を見せればすぐに捕獲される。だからこそ男はハトーボーの野生に生きる姿を見たかった。

    「ぽぽぽぽ」

     ずっと右から聞こえる。どっちを向いても右から聞こえる。相当姿を消すのが上手いハトーボーだ。だからこそこんな時代でも野生で生きていられるのだろう。
     通りすがりの人が不思議そうな目で見ている。男は答えた。ハトーボーが鳴いている、さっきからずっと鳴いている、と。その人は何も聞こえないよ、と言った。
     
    「くるぽっぽー」

     姿は相変わらず見えない。けれどそこに確かにハトーボーが存在している。
     
     昼になってもハトーボーは鳴いている。増えてきたようで、さらに鳴き声はざわざわしている。
     ああそうだ、ハトーボーが集まるところには平和の国があると聞いたことがある。
     戦争しているこの時代に、ハトーボーが集まるのであれば平和に導かれているのかもしれない。そうだとしたらハトーボーたちを保護して住みやすいところにしてやりたい。
     平和の国のハトーボー。ああそうして戦争が終わって、平和な国になって。またポケモンたちが朝に鳴いて一日が始まるのに。

    「くるぽぽぽぽっぽー」
     
     なんだって、よく聞こえない。男はそう言った。
     男のまわりには常にハトーボーの鳴き声がしていた。心配になった家族が病院に連れて行く。
     
    「ぽぽぽくるるっっぽぽぽー」
     
     突発性難聴。そう診断された。
     ハトーボーの鳴き声もその症状だと。
     男は認めなかった。このハトーボーの声は確かに存在している。存在しているのに否定するのか、と。
     平和はそこまで来ているんだ。そんな病気ではない。
     邪魔するな。ハトーボーは確かにいる。姿は見えないけど確かにいるんだ!

    「ぽっぽー」

     戦争はやがて酷くなり、侵攻されるようになっていった。
     それでもハトーボーの鳴き声は止まらなかった。
     いつかこのハトーボーたちが戦争をとめて平和に導くと信じている。
     
     男の家も戦地となり、凶悪なドラゴンポケモンに焼かれるまで、ずっと。


    ーーーーーーーーーーー
    覚えてますか、エイプリルフールという名のマメパト襲来を。
    乗っ取られたタイトルを一つずつ見ていって爆笑したのが「ポッポ嫌い」と「よわむしピジョット」だったのはよく覚えてます。
    そして漏れず乗っ取られたのがマメパト。
    Tranquillは英語でハトーボーです。そろえた方がいいかと思ってこっちにしました。
    意外に冗談通じないかもしれません。
    外語ポケモン楽しいですね。
    ハトーボーの平和の国はいつか使いたいと思っていました。

    【なにしてもいいですよ】


      [No.2433] 観覧車は止まらない 投稿者:稲羽   《URL》   投稿日:2012/05/22(Tue) 22:05:35     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    はじめまして、稲羽(いなば)と申します。
    初投稿お疲れ様です。作品読ませていただきました。

    あんな状態であっても活気にあふれている「息子」の行動が良い意味で子供じみていて、微笑ましいです。
    あと、観覧車と時間の例えが上手だなあ、と思いました。どうしても止めようがないですものね。そのことを自覚したお父さんが今後どうなっていくかが気がかりです。

    父親も「息子」も、そしてゴーストポケモン達も同じ世界で暮らしている生き物、これからも一緒に楽しく生きて行ければ良いですね。

    それでは、また次の作品にも期待しております。


      [No.2432] 【ポケライフ】日曜は息子と遊園地に。(6/16修正) 投稿者:aotoki   投稿日:2012/05/22(Tue) 20:17:30     96clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    寝起きの体を、誰かに揺さぶられている、気がする。

    「・・・・うさん。おとうさん。ねぇ起きてってば。もう8時半だよ。」うすぼんやりとしたままの聴覚に、鋭い光のような声が刺さる。
    閉じているはずの瞼越しに、なぜか真っ青な空が見えた。どこまでも澄み渡った、真昼の青空が。
    「・・・・・んん」
    俺は黙って寝返りを打った。青空の代わりに、眠りの世界の入り口が見える。・・・もちろん入るつもりは無いけれど。
    「もー。起きてよー!遊園地しまっちゃうよ?ねぇだから早く早くー!」すぐ近くに”誰か”の気配。もちろん、俺の背中はわざと”誰か”に向けられている。
    「ぁー・・・大丈夫だから・・・あと30分・・・」「だーめ!」
    ドスッ、と背中に”誰か”が乗る。暖かみのある、幸せな重さ。予想通りの反応と予想外の重さに、自然と顔がほころぶ。
    「おとーさん起きて!いっつもそれでお昼まで寝ちゃうでしょ!」
    「だいじょーぶだって「だいじょーぶじゃない!!」
    そして手が俺の肩にかけられて・・・
    「うをうぉうぉ?!」肩ごとダイレクトに頭を揺さぶられた。「おーーきーーてーーよーー!おーーきーーてーー!!」おまけに耳にもダイレクトに大絶叫。容赦なく寝起きの頭は前へ後ろへ右へ左へ「わかったわかったわかったわかったから1回手ぇ離せ!!一旦降りろ!!」
    「あ、うん」
    ひょいと重みが無くなると同時に、俺の頭は枕に叩きつけられる。長年愛用の煎餅枕は、残念ながら衝撃を吸収してはくれなかった。
    「いっ・・・てぇ・・・」
    俺は背中を振り返る。
    さんさんと窓から降り注ぐ日差しに映る、小さな、真っ黒い影。

    「おはようおとうさん!!」
    「あぁ・・・おはよう・・・・また力強くなったな」
    俺は背中に乗った息子に、苦笑いで挨拶を返した。
    窓の向こうからは誰かの笑い声。


    今日は日曜日。どんな人も、ポケモンも、大切な人と思い出を作る、特別な日だ。


    ***

    想像以上だった息子からのモーニングコールのおかげで、しばらくまともに歩けなかった。
    おまけに当の本人は「じゃあ先朝ごはん食べてるね!」と無常にもリビングへ。
    なので、おれはまだ布団の上で怠惰にゴロゴロとしている。少しだけ開いたドアの隙間から、パンの焼ける匂いがしてくる。
    もちろん作っているのは俺ではないし、息子でもない。
    「朝飯作ってくれてたのはありがたいんだけど・・・な」
    俺は煎餅枕の枕元、オムスターの目覚まし時計を手に取る。7時にセットした目覚まし時計は、ジャスト6時59分59秒で針が止まっていた。
    「・・・あいかわらず手の込んだイタズラを」苦々しい気持ちを噛み締めて、俺は布団から体を跳ね上げた。

    少しだけふらつく足で、洗面所へ向かう。もちろんオムスター時計も一緒に。右手からカチカチという振動は伝わってくるものの、針が進んでいる気配は無かった。
    真っ暗な洗面所では、洗濯機が回されている。ガタ、ガタ、と一定のペースで振動が伝わってくる。
    もちろん、セットしたのは俺ではないし、息子でもない。
    「親切なんだか不親切なんだか、な!」
    俺は右手のオムスターを洗濯機に投げつけた。オレンジ色のボディに当たって跳ね返り、タオルの山にぼすりと埋まる音。衝撃で針がずれたのか、ジリリリリリリリリとオムスターが鳴き出した。
    「おいロトム!何回目覚ましにイタズラすんなって言ったら分かるんだよお前は!」
    キシシシシ!と洗濯機が洗濯機にあるまじき音で回った。喜ぶかのごとくガタンガタンと揺れも大きくなる。
    「せっかくカントー土産で貰ったのによ・・・お前のイタズラで壊れたらどうすんだよ」
    未だにオムスターは洗面所の奥で鳴き続けていた。タオルの山に埋もれているはずなのに、かなりの音量を保っている。そしてその山の中から、蓄光仕様の目玉がこちらを見つめている。
    カントーの友人から貰ったこの時計は、寝起きの悪い俺にはそのうるささと不気味さが絶妙に丁度よかった。夜中、たまにこれとふっと目が合って、飛び起きることもある。
    ちなみにカブトのデジタル時計もあるのだが、こちらはそれほどベルがうるさくなかったので普通の時計として俺の机に乗っていた。こいつも夜中、つい机でうたた寝をしてしまったとき、ふっと目が合って飛び起きる事がある。
    一つため息をついて、俺は嬉しそうにガタガタと揺れ続ける洗濯機に言った。
    「ベル止めて、時間も戻しとけよ。・・・今度やったら芝刈り機買ってくるからな」
    慌てたように、背後でベルと洗濯機の音が止まる。一瞬の間の後、洗濯機は何事も無かったかのように静かに回り始めた。
    「・・・さすがに庭のない家の芝刈り機は嫌か」
    ロトムの慌てぶりが可笑しくて、思わず笑ってしまった。

    そういえば着替えるのを忘れていたな、と昨日履いたジーパンを探していたが、洗面所に置きっぱなしだったことに気付いた。
    さすがにまた洗面所にいくのは癪なので、仕方なくもう一本のジーパンを引っ張り出す。あれはまだ一日しか履いてなかったよな、と一瞬思ったが、ふと今朝の息子の笑顔を思い出し、洗い立てのジーパンに足を通した。
    あんなに楽しみにしてくれていたんだ。こっちもそれなりの格好で行かないと父親として失礼だろう。
    それじゃあもう少しよそいきでも着るか、と俺はこの間買ったシャツを探し出す。シンオウだかどこだかのデザイナーがデザインした、グレーと赤と金のチェックのシャツ。
    向こうの伝説のポケモンをイメージしたらしいが、残念ながら俺はそっちのほうに明るくないのでどんなポケモンなのかは分からない。けれど金のラインのあしらい方と濃さの違うグレーの使い方がやけに格好よかったので、服に無頓着な俺にはしては珍しく、それだけを買いに店まで行った。

    しかし、それが見当たらない。

    「あっれ・・・おかしいな・・・」とりあえずクローゼットやらタンスやらの引き出しを、片っ端から開けていくが、どこにも無い。
    「1回は着たから、袋のまんまってことは無いはずなんだけどな・・・・・・ん?」目の端に何かが映り、俺はふと机の上に目をやった。
    そこには探していたシャツが、きれいに畳まれて置いてあった。その隣には昨日履いたばかりのジーパンも。俺は部屋のドアを振り返るが、もちろんきっちり閉まっている。
    もちろん、持ってきたのは俺である訳がないし、息子でもない。
    いや、この場合は息子でも出来るけれど、そんな事にわざわざ気付いてくれるほど繊細な心はまだ持っていない。
    「あぁ・・・洗面所に置いてたのか、どっちも」シャツに袖を通しながら、俺は心当たりを探った。「・・・なるほどね」バッ、と襟を整える。
    持って来てくれた奴には申し訳ないが、昨日のジーパンはタンスに戻した。

    ***

    リビングのドアを開けると、朝のあわただしい匂いが飛び込んできた。
    「デラッ!!」キッチンからはシャンデラの声。
    「あ、やっとおとうさん来た」息子は既に朝飯を食べ始めていた。口の端にパンくずが付いているのが目立つ。
    「シャンデラもおはよう・・・朝飯ありがとな」「デラ〜♪」フライパンを持ったまま、シャンデラがターンした。
    もともと料理には興味があったらしいが、最近俺が寝坊がちになり朝飯を作れない日が増えたのを期に、どんどん腕を上げてきた。
    もしかしたら今朝のアレはコイツが朝飯を作りたいあまり、ロトムと共謀したのかもしれない。そう一瞬思ったが、心のうちにとどめておいた。
    俺は息子の向かい側に座る。カウンター越しにシャンデラがコーヒーを出してくれる。「おい、流石に今朝のはやりすぎじゃなかったか?しばらく立てなかったぞ」
    「ごめーん。あんまりにも楽しみで、つい調子乗っちゃった」
    謝る気の一切無い顔で、息子はパンをほおばる。「だって久しぶりのお出かけだよ?」
    「あぁ・・・そうだな。でもお前もおっきくなってきたんだから、力の加減には気をつけるようにしろよ」俺はコーヒーを一口すする。「はーい」息子はもう一口パンをほおばる。

    シャンデラが用意してくれた朝ごはんは、なかなかに豪勢だった。
    焼きたてのパンに、赤色のミックスジャム。ホットサンドにも出来るようフルーツまで切ってある。おれならジャムかフルーツかの二択だから、こうはいかないだろう。
    一口大のクッキーはポケモン用だろうか。上に少しずつブリーのジャムが乗せられているあたりに、俺は普段の適当ぶりを反省する。
    真ん中には多めのサラダ。焦げがないから、こっちはヨノワールが作ってくれたのだろう。
    サラダボウルを置いてから、隣に座ったヨノワールが視線だけこちらに寄こす。俺の格好を一瞥すると、何も無かったかのようにパンに手を伸ばした。
    「ヤッミ〜♪」
    ヤミラミが焼きたてのハムエッグを運んできてくれる。もちろん、焼き加減は黄身が流れないくらいの半熟。息子はパンの上に固焼きのハムエッグを乗せようとしていた。
    「・・・サイズ的に無理じゃないか?」「いいの!」バターロールになんとか卵は乗ったが、案の定ズルリと滑り落ちた。「ああー!」ヨノワールが少しだけ笑った。
    「今笑わなかった!?ねぇ!」プイとヨノワールは明後日の方を向いた。おどけたようなその素振りに、ますます息子は怒り出す。「なんなんだよー!」
    「今のは無理したお前が悪い。な?」「ヤミ。」「デラ。」席に着いたヤミラミとシャンデラも頷いた。
    「おとうさんたちまでそういうこというの!?もー・・・」ぶすくれた顔で、息子はひしゃげたハムエッグを口に入れた。
    「・・・おいしい」
    シャンデラが満足げな顔を浮かべたのが分かった。

    さすがに全部皆に任せて出かけてしまうのは忍びなかったので、俺は後片付けをしていた。息子は部屋で遊園地に持っていく荷物でも考えているのだろう。
    そんなわざわざ支度するほど特別な場所ではないはずだけれど、息子に言わせれば「久しぶりのお出かけだから」らしい。
    俺の脇を皿を抱えたヤミラミが通り過ぎようとする。
    「あーあーいいいい。そこは俺がやっとくから」「ヤミ?」「お前たちに任せてばっかじゃ、俺の気が済まないんだよ。ただでさえ今日は留守番頼んだし、寝坊しちまったんだからさ」
    俺はベランダに目を向ける。
    「・・・まぁ寝坊したのは俺のせいじゃないけどな」ベランダには洗い立ての洗濯物が翻っている。
    もちろん、干したのは俺ではないし、息子でもない。
    「だからいいよ。休んでな」「ヤミィ・・・」それでもヤミラミは、皿をしまってから向こうへ行ってくれた。リビングでは、言ってもいないのにヨノワールがテーブルを拭いてくれていた。
    「あ」「・・・・・・・ヨノ」こちらと目が合った瞬間、すうっと姿を消す。既にテーブルはきれいに拭かれていた。
    「・・・やれやれ」そういいながらも、俺の頬は自然に緩んでいる。

    周りの奴らには、お前の手持ちはゴーストばっかりで怖いだとか不気味だとか言われるが、そんなに恐ろしい事をされたこともないし、毎晩うなされる訳でもない。
    他の奴らは幽霊は夜しか動かないと勘違いしているらしいが、幽霊だって早起きするし、朝ごはんまで作ってくれる。
    魂や命のために一緒にいるのかもしれないが、あちこちさりげなく手伝ってくれているあたり、本気で魂を奪おうとはしていないらしい。
    たまに妙なイタズラも仕掛けてくるが、それもまた一興だ。
    ゴーストとの暮らしが一番いいとは言わないが、こういうすこし奇妙な奴らとの生活のほうが俺には合っている気がする。
    もしこいつらのせいで早死にしても、俺は文句を言わないだろう。あれだけ手伝ってくれているんだ。”お小遣い”くらいケチるつもりはない。
    「・・・よし。終わりっと」
    最後の皿を戸棚にしまってから、俺は息子の部屋に向かって声をかけた。
    「おーい。片付け終わったからそろそろ出るぞー」
    「あ。待って!」部屋から息子が飛び出してくる。
    時計を見れば、もう9時半過ぎ。窓の外には抜けるような晴天。

    遊園地に出かけるには、最高の時だろう。


    ***

    「わぁーーーーーー!!」ゲートをくぐって第一に、息子は大声で叫んだ。

    ジェットコースターに、大観覧車。
    メリーゴウランドにコーヒーカップ。
    カラフルなテントの前にはピエロと相棒のキルリアが一匹。
    おんなじように笑い、駆け回る子供とポケモン達。
    誰かの飛ばした風船を、ハトーボーが捕まえて戻っていく。
    一緒にアイスを食べる親子のポケモン。
    手を繋いで歩く人のカップル。
    空にあふれるさまざまな鳴き声と喚声と笑い声。

    「おとうさん!一緒に観覧車乗ろうよ!あ、でもジェットコースターにも乗りたい!!」握った手を離さないまま、息子は走り出そうとする。
    「そんなに焦るなって。丸一日あるんだぞ?ゆっくり楽しめばいいじゃないか」
    「えー?でも、こんなにいっぱい遊ぶとこあるんだもん。回りきれないよ!!ねぇだから!」
    「わかったわかった。じゃあ初めは観覧車な。その次は・・・そうだな。コーヒーカップでも行くか」
    「うん!」
    息子の手を離さないよう、俺は大きな円に向かって歩き出した。


    たくさんのものがせわしなく動く中で、ゆっくりと回リ続ける観覧車。
    何者にもとらわれず、淡々と一定の法則にしたがって回るその円に、どうしても俺はある姿を重ねてしまう。


    そのとき、誰かが手を引っ張った。
    「・・・おとうさん?」
    「あ・・・あぁ。なんだ?」俺は息子に顔を寄せる。
    「あのね。さっき向こうに黄色いのが見えたんだけど・・・」息子は観覧車の脇―ポケモンを模したテントの方を指差した。「すぐ隠れちゃった」
    「ん?・・・あぁ、ピカチュウか」テントの前の人だかりの隙間から、確かに黄色い耳が見え隠れしていた。
    「うそ!?ねぇ、おとうさん、握手してもらいに行ってもいいかな?」息子は大きな目で見上げてくる。
    「いいぞ。お父さんはここで待ってるから、すぐ戻ってこいよ」
    「うん!」
    そう言って、小さい三本指の手が俺から離れる。
    「じゃあおとうさんはここで待っててね!迷子になっちゃだめだよ!」
    黄色いぬいぐるみへ、走り出した息子の真っ黒な後ろ姿は、たちまち人とポケモンの波の中に消えていった。


    一人になった俺は、近くのベンチに腰を下ろした。ここから見上げる観覧車は、想像以上に大きい。
    たくさんの部屋が、誰かを降ろし、また乗せて回っていく。
    ゆらゆら揺れながら回る窓の人影に、また俺は息子の姿を重ねていた。
    小さな女の子が二人だけで、観覧車に入っていく。

    じゃあおとうさん、いってくるね。

    そう、俺に手を振らないまま、息子は観覧車に乗ってしまった。
    一度動き出した観覧車の中は、1周して戻ってくるか、鳥にでもなって覗き込むかしないと見ることは永遠に出来ない。
    だから観覧車が一回りしてくるまでの10年間、俺はただ観覧車を見上げる事と、その部屋の中の風景を想像することしか出来なかった。
    「・・・いや、それすらもしていなかったかもしれねーな・・・」
    とべない翼を求めて、存在しないチケットを求めて、当ても無く無駄な方向に歩いていき、いつの間にかだれにも探されることもない迷子になっていたのだろう。
    もしかしたら観覧車の1周は、俺が思っていたより短かったのかもしれない。
    そして小さな部屋の中で回り続けた息子は――。
    観覧車から、男の子とポケモンが降りてくる。

    生前と同じ顔のマスクを持つという、小さな幽霊。かつては人間だったものがなる、ゴーストポケモン。

    俺はいつのまにか自分の影を見つめていた。空に反比例するように黒さを増す影から目を離し、観覧車を見上げる。
    相変わらず、円は同じ速さで回り続けている。抱いた部屋に誰が入ろうとも、出口で誰が待っていようとも、その速さが変わる事は無い。
    「・・・それはこっちも同じ、か」
    こちらがどんなに頑張ろうとも、足掻こうとも、努力しようとも、世界の巡る速さは変わらない。
    この瞬間を、この風景を、ずっと留めておきたい。そう思っても、部屋の中から観覧車は止められない。
    だから、人は、ポケモンは、思い出を作るのだろう。永遠には続けられないその日常の中に。


    息子が俺のいる方へ走ってくる。
    「おとーさーん!!ピカチュウに会えたー!!」「おぉ!そりゃよかったな」俺は息子の手に自分の手を重ねた。
    「・・・じゃあ、乗るか。観覧車」「うん!」



    今日は日曜日。どんな人も、ポケモンも、大切な人と思い出を作る、特別な日だ。



    "Sunday with theme park & my son" THE END.



    [あとがき]
    初めまして。aotokiと申します。
    初の企画&BBS&小説サイトで恐れ慄きオノノクスです。
    こんな拙い文ですが宜しくお願い致します。

    「朝ごはんを作るゴーストポケモン」「ポケモンと一緒に遊園地」
    ここまではよかったのですが、あのポケモンを思い出した瞬間何故かこんな展開になっていました。ナンテコッタイ
    でもこの親子とゴーストポケモン達は個人的に気に入っているので、またどこかで出したいと思っていますΦ(・ω・ )

    [追記 6/16]
    はじめましての方ははじめまして。
    また読んでくださった方は、ありがとうございます。aotokiと申すものです。
    誤字脱字が酷かったのと、すこし書き換えたい箇所があったので修正させていただきました。

    ていうかまずきちんと確認しとこうぜaotoki!
    初投稿でマジオノノクスとか言うなら確認しとこうぜaotoki!

    話の大筋は変わっていませんので、この修正はまぁ作者の自己満だと思ってください。


    【なにしてもいいのよ】


      [No.2431] 花と嘘 投稿者:レイニー   投稿日:2012/05/22(Tue) 10:30:44     130clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:テスト上げ】 【ポケライフ】 【向日葵「……」】 【やつれてきしんでくのも気付かずに】 【もはや花ではない

     始まりは、一輪の向日葵だった。出かけた先で親切な人から偶然一輪もらったのだ。
     家に帰って一輪ざしに挿してみたら、彼女が反応した。草タイプであるチュリネにとって、やはり花に対して何か思うところがあるのだろうか。
     日課の水やりは、気がついたら彼女がするようになっていた。時折一方的に花に話しかけたりしていた。その姿は花を愛でるというより、共に日々を過ごしているようだった。

     そんな向日葵はあっけなく最期の日を迎えた。
     しょげている彼女を片目に見ながら、枯れた向日葵をゴミ箱に捨ててしまうのは忍びなかった。

     向日葵が去ってから、彼女はすっかり元気をなくしてしまった。
     彼女がふさぎ込んだ姿を見るのがあまりにも辛かったので、僕は嘘をついた。
     彼女のために新たに買ってきたのは、作り物の花。
     紙で出来た偽物だということを知らない彼女は元気を取り戻した。

     この枯れない花のように、彼女の笑顔が枯れなければいい。そう思っていた。
     しかし、僕は彼女に優しい嘘をついたことを後悔することとなる。

     彼女は花に水をやりつづけたのだ。かつて本物の向日葵にそうし続けたように。
     僕がこっそり水を捨てても彼女は水がないことにすぐに気づき、水をやっていた。
     紙で出来た花は水を吸い、枯れないはずの花はどんどんやつれていった。

     彼女は造花が弱っているという不自然な状況には何も気づかず、かつて生きた向日葵に与えたそれと同じように、ちょっと悲しそうな瞳をしながら、それでも水をやり続けた。

     ふと、昔テレビで観た物語を思い出した。
     親がこの世を去ってしまったことを言いだせず、優しい嘘をついた兄。親が戻ってこないことを知らず、帰らぬ親を思い続けた妹。

     ああ、優しい嘘は、何も事態を解決しやしないんだ。

     僕はもう限界が来ていた美しかった紙を捨て、新たな命を購入し、花瓶に挿した。
     今度は命の終わりをきちんと彼女に語ろうと心に決めて。


     時が過ぎ、そんな彼女も今はドレディアになった。自らもいずれ枯れるのだということを理解しながら、そしてその時が近づきながらも、今でも花に水をやり続ける日々だ。
     そして僕も、いずれ枯れる日が来るまで、彼女が花と共に生きるように、彼女と共に生き続けよう。


    ----------------

    最近文章書きから遠ざかってしまっていたので、リハビリのための習作。

    ----------------

    追記:投稿久しぶりすぎてタグ付けるの忘れてました(汗)
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】


      [No.2430] ライチュウを広める為に 投稿者:門森 輝   投稿日:2012/05/20(Sun) 21:30:06     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ――次のニュースです。
     本日正午頃、他人のポケモンを無断で進化させる事件が起き、ポケモン保護法違反の容疑でニビシティ在住、自営業のコッペ容疑者(26)が逮捕されました。
     コッペ容疑者は本日正午頃、トキワのもり付近にてピカチュウを連れた少年にバトルを持ち掛け、そのバトル中に容疑者のライチュウのなげつけるを用いてかみなりのいしを投げつけ、少年のピカチュウをライチュウに進化させた疑いが持たれております。容疑者は、「故意にライチュウに進化させずにピカチュウのまま冒険するトレーナーが多いと聞いていた。もっと皆にライチュウの魅力を分かって貰いたかった。ライチュウを使って貰えれば魅力が伝わると思った」等と供述しており、容疑を認めています。
     続いて明日のお天気です――

    ―――――――――――――――――――――

     らーい。らいらーい。ライチュウかわいいよライチュウ。らーい。因みに被害者の少年がすっかりライチュウにはまった為結局不起訴になったとか。らーい。
     当初はイーブイに炎の石を投げつける王 唯一(おう ただかず)容疑者(36)とか考えてましたが、ブースターが大好きでブースターを広める事が目的なのにブースターを使わないのは少し違和感があったのでなげつけるを使えるポケモンに変更したり。
     進化の石って触れただけで進化するんですかね。アニメだとクチバジムの回でピカチュウが尻尾ではたいてましたから瞬間的なら大丈夫なんですかね。よく分からないのでとりあえず触れただけで進化する旨で書きましたが。
     あとこの行為を違法とするならばどういった法律が適用されるんでしょう。器物破損が適用される関係でもなさそうですし。良く分からない時はポケモン保護法とか愛護法にしておけば大体誤魔化せる気はしますが。
     とにかくライチュウかわいいよライチュウ。インドぞうを気絶させたり手の感触がコッペパンみたいだったり。らいらーい。

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【お任せするのよ】
    【ライチュウかわいいよライチュウ】
    【コッペパンチ】


      [No.2429] とおいちほう 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/05/20(Sun) 05:21:31     81clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     サザナミタウン。
     夏のリゾートとして有名なこの場所に、防寒具を着込み、双眼鏡を構えて立つ私は、場違いに見えるだろう。それ以前に、今は冬なのだから季節外れだ。
     幸いシーズンオフでもあるから、奇妙な格好をして双眼鏡を海に向ける私に気を止める者は、誰もいない。私は安心して双眼鏡を構え、海を見る。変わらない、鈍色の塊を見つめている。

     不意に潮が吹き上がった。はい、と手を挙げるみたいに。


    「ねえ、このホエルコ、遠い場所から来たんだよ。ホウエン地方だって」
     幼い手の中の赤白のモンスターボールを、少女は高々と上げる。少女の遊び相手に選ばれた少年は、柔和な笑みを浮かべてそれを見る。その笑みと、彼のパートナーのツタージャは、似合っていた。どちらも草の雰囲気がした。

     昔々、といっても十年少し前のことだが、まだ少女だった私は、親がもたらす恩恵を自分のものとして、当たり前のように享受していた。そして、それを当たり前のように周りに見せびらかしていた。私の遊び相手、というより生贄に選ばれた少年は、いつも穏やかに笑って、私の自慢にもならない自慢を聞いていた。
     全く、私は馬鹿だったと思う。もしも過去に行けるのならば、過去の私を殴ってホエルコのボールを取り上げたいものだ。そんな私だったけれど、彼はいつも相手をしてくれていた。この時も、近くの川にホエルコを放って観察するという私の提案に付き合ってくれた。草の匂いのしそうな、あの柔和な笑みを浮かべて。

     河原を歩き、ちょうど良い滝壺を偶然見つけて、そこにホエルコを放つことにした。思えばそれだって、無茶な行軍をしたものだ。河原のすぐ上の道は気まぐれに切れていて、私と彼は何度も河原に降りて進まねばならなかった。道がすっかり低木で覆われていて、小枝を体で折るようにして進むことも度々あった。これでは満足に進めないと、私たちは河原を行くことにした。足に優しくない石ころにふうふう言いながら、川沿いをずっと進んだ。道中で現れた野生のミネズミやクルミルは、彼のツタージャに追い払ってもらっていた。そこまでされていて、滝壺に着いた私はお礼のひと言もなかった。彼がそうして従者みたいに付いて来るのを、当たり前に思っていたのだ。今なら分かる。過去の私は調子に乗ったクソガキで、彼は得難い友であった。そういうことは、いつも失ってから気付くのだ。昔々の人々が、何度も繰り返し言ってきたように。

     私たちは滝壺でホエルコと触れ合った。私はすぐ飽きてしまって、河原に転がっている、一見綺麗そうな石を見繕い始めた。その時の石ころも、持って帰ったのにいつの間にか失くしてしまっていた。
     彼はというと、ずっとホエルコに向きあって、肩にツタージャを乗せたまま、そのゴムみたいな肌をいつまでも触っていた。「お前はどんなところから来たの。ホウエンって暑いところらしいね。こっちは寒かないかい。あっちの海もこっちと同じくしょっぱいのかい」……そんなことを言っていたように思う。
     ツタージャの冷たく赤い大きな目と、彼の草を思わせる目が、ずっとホエルコに注がれていた。人間である彼はともかく、ポケモンであるツタージャがずっとホエルコを見ていたことが、印象に残っている。


     それから年が少し巡ったが、私と彼の関係は変わらなかった。私は相変わらず親の力でポケモンを手に入れては、彼に見せびらかしていた。彼は黙って、ツタージャ一匹を連れて、いつも微笑んでいた。ツタージャしか連れていない彼に、私のポケモンをあげようかと言ったこともある。彼はもちろん穏やかに断った。全くもって愚かな人間の子どもの言うことだが、最後にそれだけは果たしたことになる。
     少し変わったのは、あの夏のこと。

     中等学校の一年目を終えた私は、その日、女友達数人と意味のないことではしゃいでいた。町の中心部に出てカラオケかウィンドウショッピングか、その他その年頃の女の子が考えつきそうなことを計画していた。その行く先の、道の真ん中に彼が立っていた。
    「あ」私は嫌な顔をしたはずだ。中等へ上がって以来、彼と人前で話すのは極力避けていたのだから。クラスメイトに彼と付き合っていると思われるのが嫌だという、子供っぽい理由だった。私は彼を避けた。そして、その内彼と話すこと自体なくなっていた。
    「こんにちは」と彼が言った。その声は低く穏やかで、柔な草が若木になったような、そんな印象を抱かせた。ただ、それは後で感じたことで、その時は……彼が私の知らない間に声変わりしているのが、悲しいような、悲しくないような、そんな衝撃を受けた。
    「少し、いいかい」声変わりした声で、彼が言った。女友達が何かを暗示するように私を見る。「大事な話なんだ」彼の言葉が彼女たちの妄信に拍車をかけた。意味のない音を漏らしつつ、彼女たちは私の肩や腕を叩き、やたらとにやにやしながら彼を避けて道の先へ消えていった。

     後には彼と私だけが残された。
    「何の用なの」つっけんどんに私は言った。彼はいつかと同じ、柔和な草を思わせる笑みを浮かべて言った。
    「旅に出ようかと思ってさ。ほら、夏休みだし」
     旅? と私はオウム返しに聞いた。そう、旅、と彼は返した。
     旅には、本格的なものには中等を出てから行く人が多いのだけれど、その時の彼みたいに、長期休暇を利用して行く人も、結構いる。長期休暇が始まると旅立って、終わる頃戻ってくる、そんな期間限定の旅。
    「いいんじゃない」
     私は何故か安堵して、そう言った。男子はよく行くし、夏休みが終われば帰ってくるし、いいんじゃない。私はそんな風に安心したのだ。
    「そっか」彼はまた柔和な笑みを浮かべて言った。「じゃあ行こうか、ツタージャ」
     不意に草蛇が、彼の背中から生えてくるようににょっきりと顔を出した。涼やかな赤い目が彼を見つめ、ぴうい、と小さな声で鳴いた。
    「皆、行っちゃったね。ごめんね」
     彼は女の子たちが去って行った道の先を眺めていた。そして、私を振り返ると、「君には言っておきたかったんだ」と言った。
    「別にいいよ」言ってから、ぞんざいな返事だと気付いた。
    「別に、今生の別れってわけじゃないんだしさ」
     彼は戸惑ったように目を迷わせて、「それじゃ」と言った。私は「またね」と言った。彼の服の背に手足を引っ掛けたツタージャが、赤い大きな目で私を見た。悠々、といった風格を漂わせるツタージャに、私は何故か、負かされた気がした。

     彼がいない夏休みは、別段寂しくはなかった。友達とは遊びに出るし、宿題もするし、ポケモンの世話もする。ただ、強いて言えば乳歯が抜けた時のような、座りの悪い思いをしていた。
     私は夏休みの大方を、ポケモンを強くすることに費やした。親に貰ったホエルコを中心に、やはり親に貰ったアブソルやマイナンやスバメなど、ポケモンバトルの訓練をした。私は、親に貰ったポケモンもその内飽きて、結局親が世話をしているということが多かったのだけれど、彼に見せたのと同じあのホエルコだけは、自分で面倒を見ていた。
     そうして夏が過ぎた。私は夏休み中にホエルコを進化させようと頑張っていたのだが、それは叶わなかった。学校が始まり、私は教室で彼の席をちらりと見る。始業式には彼は来ていなかった。彼が戻ってきたのは、新学期が始まって二日目になってからだった。少し、日焼けしていた。けれど、ツタージャは変わらずツタージャのままで、私は少しだけホッとした。

    「ごめんごめん、少し遅くなって」
     放課後、私は彼と話をした。学生がよく行くファーストフード店で、私はジュースだけ頼んで席に座った。彼はハンバーガーセットをひとつ頼んでいた。そんなによく食べる方ではなかったのにな、と私はふと思った。
     旅に出て、なんとなく、彼が変わったように感じていた。話し方や行動が、ほんの少しだけ、きびきびしている。多分それは若木が樹皮を固め始めたような、確固たる芯を手に入れたような、そんなものなのだ。
     彼のツタージャはまだ、ツタージャのままだけれど。

     ちょっと道に迷って、と付け足したのは、新学期に遅れた言い訳なのだろう。私に言っても仕方ないのだけれど、と思いながら相槌を打った。
    「旅先では色々あったよ。道に迷って、海に落ちて、ランセ地方まで行っちゃって」
    「ちょっと待って、それ、どこ?」
     彼は頭を振って、よく知らない、と答えた。とにかく、彼はツタージャと共に海に落ちて、ランセ地方まで流れてしまったのだそうだ。
    「右も左も分からないし、本格的に道に迷ってしまって、困ってるところをアオバの国の」
     そこで彼は言葉を切った。私は別なところに引っかかった。
    「国? 地方の中に国があるの? 普通逆じゃない?」
    「ランセ地方ではそうなってるんだよ」
     だとすれば、彼は見当もつかない、よっぽど遠い場所まで行ったのだ。
    「国って呼ばれてるけど、規模は僕らの言うタウンぐらいだよ。そこのブショー……ジムリーダーみたいな人に助けられてね」
     彼が漏らした言葉を気にしつつも、跳ね上がった彼の語尾に注意を取られる。私はストローを口に咥えなながら、「それで?」と先を促した。彼は話した。若木みたいな声で、本当に楽しそうに話した。

     ジムリーダーみたいな人、モトナリさんに助けられ、ずいぶん世話になったこと。そのモトナリさんもツタージャを連れているそうで、モトナリさんと彼はそれで息が合ったらしい。きっとモトナリさんも、彼みたいな草っぽい人だろうな、と私は密かに思った。

     ランセ地方では変わったファッションが流行っているようで、全体的にゆったりしたものが好まれているらしいこと。例えばモトナリさんは、二段構えの不思議な帽子を被っていたらしい。これは説明を聞いてもよく分からなかった。

     ランセ地方でポケモンを育てられるのは、才能ある限られた人だけ。皆がモンスターボールを持ってポケモンを持てる地方じゃないんだね、と私が言うと、そもそもモンスターボール自体ないんだと彼が言った。私は声に出して驚いた。
    「モトナリさんも驚いてたよ」彼は笑った。
     モトナリさんはモンスターボールにいたく興味を示し、出来ればじっくり研究したいとまで言ったそうだ。しかし、彼はツタージャのボールしか持っていなかったので、その件は保留にしたと言った。
    「今度行く時に、ボールをいっぱい持って行くんだ」
     モンスターボールだけじゃなくて、他の種類のもねと彼は嬉しそうに言った。
     その今度がいつなのか、どうやって行くつもりなのか、私は尋ねなかった。

     その夜、私はベッドに寝転んで、電気も消さないまま、ぼうっと天井を眺めていた。家に帰ってから、私はまず地図を調べた。けれどランセ地方という文字は、私の持っている地図のどこにもなかった。探し方が悪かったのかもしれない。地図に載らないような、遠い、遠い場所なのかもしれない。私はホエルコの入ったボールを高く上げた。赤と白の球体の向こうは、どうしても見透かせなかった。そして、思い描いた。
     誰もポケモンをモンスターボールに入れない世界。一部の人だけがポケモンを連れて歩いている。人は皆ゆったりした服を着て、畑を耕したり、山菜を取ったりしている。二段構えの帽子を被ったモトナリさんはそんな国の人の様子を眺めて、傍らのツタージャに話しかける。
     うまく想像できなかった。
    「お前もそんな遠くから来たのかい」
     ボールの中のホエルコに話しかける。返事はない。生まれ育ったところと余りにも勝手の違うところへ来たら、寂しかろうなと私は思う。それとも、余りに遠すぎて、故郷を思うことさえ辞めてしまうだろうか。
     お前は帰りたいかい、ホエルコ。それとも……
     いっそのこと、もっと遠くへ行きたいかい。
     私は心の中でだけ、ホエルコに問いかけた。

     彼の二度目の旅立ちは、中等卒業の時にやってきた。ホエルコはホエルオーに進化して、ツタージャはツタージャのまま、私たちはその日を迎えた。
     彼は、色んなモンスターボールが入った袋を背負っていた。
    「じゃあ、行ってくるよ」
    「うん」
     夏のサザナミ湾から少し南に外れた、ひと気のないビーチで、彼は言った。それから、ホエルオーをしばらく貸してほしいと言った。ランセ地方へは海を渡らねばならない。ランセ地方から帰る時は野生のホエルオーに頼んだが、こちらで同じことは出来ないと言う。きっと、モトナリさんがホエルオーに頼んだのだろう。
    「いいよ」
     快諾して、私はホエルオーのボールを彼の手の中に落とした。
    「でも、ちゃんと返してよ」
    「分かってるよ」彼は枝葉を広げ始めた木の趣きの笑みを浮かべて、言った。
    「まずは一年ほどで戻ってくるつもり。少なくとも、再来年の年明けまでには帰るから、待っててね」
     そう言って、彼はホエルオーに乗って大海を行った。私は彼の姿が見えなくなっても、しばらく水平線に向かって手を振り続けていた。

     後はお察しの通り。年が明け、一年経ち、二年経っても、彼は戻らなかった。

     鈍色の海の中から、不意に玉を撒くような、潮の柱が立ち上がる。何度目だよ、と思いながら私は見ている。もう、今年はこれくらいにしておくか。
     私は荷物をまとめ、冬のサザナミタウンから引き上げることにする。来年はもう、来ないかもしれない。いや、やっぱり来てしまうだろう。
     だって、彼は帰って来なければならないのだから。貸しっぱなしのホエルオーを、返してもらわなければならない。モトナリさんがどれだけモンスターボールを喜んだか、アオバの国の外はどうなっていたのか、話してもらわなければならない。それとも、お前はランセ地方に根を張ってしまったか? あるいは、ランセ地方からさらに、遠い場所まで行ってしまったか?
    「帰って、来おい」
     私のささやかな願いは潮騒に消える。鈍色の海は変わらず、陽の光を物憂げに弾いている。





     ランセ地方ってどこにあるのでしょうか。地方というからには地球上にありそうな、でも遠そうな、簡単には行けなさそうな、そんなふいんき(何故か変換できた)

    【何してもいいのよ】


      [No.2428] 過去作品ですがポケライフ登録します。 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/05/19(Sat) 19:31:26     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    このように過去作品に【ポケライフ】タグをつけても構いません。
    イラストにしたら面白いものあればぜひ。


      [No.2427] 【ポケライフ】鳩急行のイラコン連動企画のお知らせ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/05/19(Sat) 16:10:55     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    えー、この度、きまぐれから、私が過去に運営していたイラストコンテストを期間限定で復活させる運びとなりました。

    ■鳩急行のイラコンSP
    http://pijyon.schoolbus.jp/irakon/

    ●お題
    「ポケモンのいる生活」

    ●お題について
    もしもポケモンがいたら……一緒に何をしたいでしょうか?
    一緒にご飯を食べたり、お昼寝したり、ちょっと街へ出かけるのもいいかもしれませんね。
    街へ行くといろんなお店があります。
    お花屋さんやカフェ、パン屋さん、アイスクリームの屋台……そこではどんなポケモンが手伝っているでしょうか。
    お父さん、お母さんもポケモンを持ってるかもしれません。
    家事を手伝って貰ってるかも。通勤の時、背中に乗せて貰ってるかも。
    ビジネスマン、OLさん、看護婦さん……ゲーム中のトレーナーを見回してもこの世界にはいろんな人がいます。
    彼らはポケモン達とどのように暮らしているのでしょうか?
    あなたの考えるポケモンライフをイラストにしてください。

    ●募集期間
    5月19日(土)〜7月28日(土)


    せっかく、イラストジャンル、小説ジャンル双方にお友達がいるので、
    まことに勝手ながら管理者権限で、小説クラスタも巻き込みたいと思います。
    以下のことをやろうと思います。

    ★イラコン開催期間中、お題をイラコンと同様の「ポケモンのいる生活」とします

    ★参加作品は題名の頭に【ポケライフ】をつけてください

    ★このタグがついた作品には「イラコンでこの絵を描いてもいいのよ」と意志表示したものとみなします





    小説クラスタのみなさんの参加、お待ちしております。


      [No.2426] 夢を集める人 投稿者:紀成   投稿日:2012/05/17(Thu) 19:37:31     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ごくたまに、カフェに野生のポケモンがやってくることがある。
    それは雨の日だったり、よく晴れた暑い日だったり、とても寒い日だったりする。つまり、来る時期や時間帯は定まっていないのだ。
    一体何処から来るのか、ライモンでは見ないポケモンも来たりする。以前冬にバニプッチがやって来た時には、それはもう驚いたものだ。
    バニプッチは主にホドモエ・ネジ山にしか生息していない。餌が少なくなっているのだろうか。だがそんなことを抜きにしても、野生ポケモンを餌付けするわけにはいかなかった。

    「かわいそうだけどね……」

    街中にカフェを構えている以上、生態系はきちんと把握しているつもりだ。遠い地方で人間の食事の味を覚えてしまったポケモンが人里に下りてきて、多大な被害を齎しているという話も後を絶たない。自分がしたことが後に巨大な問題にならないとも限らない。
    だが。

    「何でそんな目で見るのよ!まるでこっちが加害者みたいじゃない!」

    ゴミ(生ではない)を捨てようと裏口のドアを開けた途端、幾つもの目がこちらを見る。なんというか……純粋な子供の目だ。相手を疑うことを知らない、純粋無垢、穢れなき色。ポケモンによって色は様々だが濁っていないことは間違いなかった。
    ユエはうっと言葉を詰まらせる。が、ブンブンと首を横に振る。そして叫ぶ。

    「私はね、貴方達にとっては敵なの!餌が欲しいならどっかの年中餌ばら撒いてる阿呆共の場所にでも行きなさいよ!」
    「ユエさんどうしたんですか」

    ハッとして後ろを向くと従業員の一人が焦った顔でこちらを見ていた。見ればバイトと従業員も怯えている。しまった、と思ったがもう遅い。変なところで剣道部女部長兼主将のスキルを発揮してしまったようだ。

    「ごめんね。野生のポケモン達が餌を集りにくるもんだから……」
    「あー、アレですか。私も何度か見ましたよ。あげてませんけど」
    「本当に?」
    「本当に」

    そんなやり取りが二日ほど続いた、ある夜のこと。既に店は閉め、後片付けをしているところだった。
    裏のドアを叩く音がする。

    「?」

    不審に思ってスタッフルームにある箒を一本取り出す。利き手は左。右手でドアノブをまわして――

    『こんばんわ。夜分遅くにすみません。珈琲一杯いただけませんか』

    子男が立っていた。身長はユエの胸の辺り。刑事コロンボのようなダボダボのコートを着ている。帽子で顔が隠れていてよく見えない。だが怪しい匂いがした。

    「ごめんなさい。もう今日は……」
    『待ってください。ここのカフェを探していたらこんな時間になってしまったのです。お願いです。カントー地方からやって来たのです。一杯だけ』
    「カントー地方!?」

    カントー地方はイッシュから一番遠い地方にあたる。船で四日、飛行機を使っても乗り継ぎの時間を入れて三日はかかる。今まで来たお客で一番遠かったのはシンオウだった。(ちなみに従姉妹はお客には入らない。ホウエンだけど)
    ユエは改めて相手を見た。この季節には会わない厚手のコート。右手には革製の鞄。ステッカーを貼れば旅行鞄として使えるだろう。だがそういう使い方はしていようだ。かなり年季は入っているようだが……

    「分かりました。どうぞお入りください」
    『ありがとうございます!』

    男はカウンター席に座った。視線を感じながらユエはゼクロムをいれる。ブルーマウンテン、キリマンジャロ、モカなどの豆を取り出す。きちんと計らないとこの独特の味は出ない。当たり前だが。
    しばらくして、いい香りがしてきた。特製コーヒー、ゼクロムです、とユエは呟く。男は目を閉じて香りを嗅いだ後、一口含んだ。

    『素晴らしい。今まで飲んだ中で一番のコーヒーです』
    「ありがとうございます」

    ふと、ユエは彼の横に置いてある鞄が気になった。視線に気付いたのか、男が切り出す。

    『気になりますか』
    「……ええ」
    『それでは、閉店時間過ぎに見知らぬ客人をもてなしてくださった貴方に敬意を表して』

    男が鞄を開けた。ユエは息を呑む。中には色とりどりの硝子瓶が入っていた。赤、オレンジ、黄色、緑、青、藍色、紫、白、黒、ピンク、グレー、黄緑、水色、金、銀……まるで何十色ものクレヨンや色鉛筆のようだ。
    呆然とするユエに、男はニヤリと笑って言った。

    『これらが何か、お分かりになりますか?』
    「いえ…… 何かしら」
    『夢ですよ』
    「夢!?」

    夢。『眠っている間に見る物、何か強い望みなどのこと』という辞書のような説明が頭の中で渦巻く。だが夢は実体がない。瓶に入れられるなんて聞いたこともない。
    訝しげなユエに男は構わず説明を続ける。

    『人は夢を見る生き物です。私の仕事は眠っている人間の寝床にお邪魔して、彼らが見ている夢を少しだけ取らせていただくことです』
    「お邪魔って……」
    『流石にセキュリティがきついマンションなどには入れませんが。私には協力してくれる仲間が沢山いるんですよ』

    そこで、男はフウとため息をついた。今までとは違う雰囲気に、ユエは引っかかりを覚えた。

    『しかし、最近は少々仕事が成り立たなくなっておりまして』
    「セキュリティうんぬんってことですか」
    『いえ、それよりもっと悪いことです。私どもが取るのは子供達の夢です。彼らが見る夢はエネルギーが強く、時折素晴らしい質の物が取れることがあるのです。
    しかし最近は…… 彼らが夢自体を見なくなっているのです』

    夢を見ない子供。それはつまり……

    「現実的ってことですか」
    『おっしゃる通りです。将来こんな仕事をしたい、こんなことをやりたい。そういう空想とも言えるべき夢を彼らは見なくなっています。原因はこの世間です。不景気のせいか皆様方ギスギスしていましてねえ。そんな両親を見て育った子供も当然、そういう性格になる方が多い。
    現実を見ろ、もう子供じゃないんだから。……そんな夢を見ている子供に、私は最近よく遭遇するのです』

    男は悲しそうな顔をしていた。ふと思い立って、ユエは聞いた。

    「あの、私の夢ってどんな色なんでしょうか」
    『……マスターさんの夢ですか』
    「何か気になったんです。最近見た気がしても覚えてなくて。
    もしよかったら、引っ張り出してくれませんか」

    男はしばらく驚いた顔をしていたが、なるほどと頷いた。

    『貴方の瞳の色は輝いています。夢を見る子供と同じです。……取らせていただきましょう』


    ユエは眠っていた。意識だけが暗闇の中でふわふわ浮いている。
    男が言うには、ソファ席に横になって自分の手の動きを見ていて欲しい。そうすればすぐに瞼が重くなるということだった。
    本当かしら、と思った途端、瞼が重くなった。そのままスッと意識が落ちていく。落ちていく。落ちていく……

    ザブン、と体が水に包まれる感じがした。瞼の裏に明るい青が広がる。驚いて目を開けると、そこには空と海が広がっていた。
    何と言えばいいのだろうか。下に雲の平原、上には真っ青な空。水は透明、しかし呼吸はできる。
    遥か上空には星達が煌いていた。
    どうにか腕を動かすが、カナヅチでユエは浮かぶことができない。そのままゆっくりと雲の平原の方へ降りていく。雲の切れ間からは、美しいコバルトブルーの海と小さな島が見えた。どうやら向こうが普通の……陸地の島らしい。
    じゃあここは、空の海?
    ユエは以前読んだ漫画を思い出した。


    『はい、いいですよ』

    男の声でハッと目が覚めた。横を見ると男が笑って小瓶を振っている。色はコバルトブルーとエメラルドグリーンが混ざることなく二つになった色。
    マーブル模様のようだ。

    「これが、私の夢?」
    『久々に美しい夢を頂きました』
    「それ何に使うんですか」

    男はユエの夢をそっと鞄に閉まった。入れ替わりに別の小瓶を取り出す。透明な色の夢が入っている瓶だ。

    『世界には、夢を見たくても見られない子供達がいるんです。私は彼らに夢を届ける仕事をしているんですよ』
    「夢を見たい子供達……」
    『この国は本当に裕福なのでしょうか。夢を見れるのに見ない子供達。現実を見ろと諭す大人達。その連鎖が続けば世界は……』

    柱時計が午後十時半を告げた。男が透明の小瓶と小銭をユエに渡す。

    『コーヒー、とても美味しかったです。この小瓶は私からのプレゼントです』
    「……」
    『いつも枕元に置いていてください。それでは、また』

    また男は裏口から出て行った。初夏なのにつめたい風が吹く。その中で、ユエは人ではない者の後姿を見たような気がした。

    「これは、夢かしら……」

    ユエの手の中で、小瓶が輝いていた。

    ――――――――――
    ユエって不思議な話がないなーと思って書いてみた。
    イメージ的にはつるばら村シリーズです。動物達がお客さんの短編集。

    【何をしてもいいのよ】


      [No.2425] 私と『彼女』の22時 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/05/16(Wed) 23:28:22     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:タイムパラドックスなんて】 【起こさせませんから】 【何が何でも

     大きな森。
     目の前には古ぼけた小さな祠。

     その上に、『彼女』は座っていた。

    『なるほど……それで過去に戻りたい、と』
    「はい」

     祠の上の『彼女』は、左右の足を組みかえた。
     昼間でも薄暗い森。ましてや今は夜。月明かりもまともに差し込まず、数時間この場所にいて暗闇に慣れた目でも、一寸先はほぼ闇だ。
     そんな中でも、『彼女』の姿ははっきりと見えた。若草のように鮮やかな薄緑の身体から、淡い光を放っている。

     『彼女』(この『彼女』に性別があるのかは不明だが、便宜上そう呼ばせていただく)を見つけるために、どれだけの苦労をしてきただろう。
     書籍を片っ端から漁った。当然インターネットも使い古した。どんな些細な情報も逃さなかった。会えると噂になった方法は片っ端から試した。
     そして今、ようやく『彼女』と出会えた。

    「どうしても、あの時の……若い頃の自分を、止めたいんです」
    『……』
    「私の人生はあの瞬間からめちゃくちゃになってしまった……私が、あの時……」
    『……人を殺してしまったから』

     私は黙ってうなずいた。

     今から15年ほど前のことだ。
     きっかけは……ほんの些細なことだったような気がする。
     ちょっとしたことで友人と口論になり、ついカッとなって刃物を持ち出した。
     そこに見知らぬ中年の男が現れた。けんかを止めに入ったのか、いきなり私たちの間に割り込んできた。
     頭に血がのぼって判断の遅れた私は、うっかりその男を刺してしまった。

     顔も名前も知らない、どこの誰かもわからない人間を、私は殺してしまったのだ。

     その瞬間から、ごくごく一般的だった私の生活はまるっきり変わってしまった。
     住処を変え、名を変え、顔を変え、ありとあらゆるものから逃げ回る日々。
     後悔しない日はなかった。あの時の自分を止めてやりたい、止められれば、と何度思ったことだろう。

     そんな生活の中、『彼女』の噂を聞いた。

     「時」を自由に渡ることができるポケモンがいるらしい。
     出会うことができれば、未来でも過去でも好きな「時」に行けるらしい。
     そしてそのポケモンは、大きな森の守護者でもあるらしい――

     噂を聞いてすぐ、私は『彼女』を探し始めた。
     『彼女』に会えば、過去を変えられる。若かった自分を、止めることができる。
     平々凡々な人生に、戻ることができる。

    「私は過去の自分を止めたい。真っ当な人生を歩みたいんです」
    『…………』
    「お願いします、私を過去に戻してください!」

     私がそういうと、『彼女』は再び足を組みかえ、腕を組んだ。
     そして大きなため息をつくと、言った。





    『ば―――――――――――――――――…………っかじゃないの?』





     それまで静かで落ち着いた雰囲気を醸し出していた彼女の『言葉』に、私は呆気にとられた。
     『彼女』はふっと蔑むように鼻で笑うと、私の背よりも高い祠の上から、水色の瞳で見下ろしてきた。

    『アンタ、本気で過去が変えられると思ってるわけ?』
    「え……」

     あのねぇ、と『彼女』は腕を組みかえて言った。

    『アンタみたいにたかだか数十年しか生きてない、何の力もない単なる一般的な人間には分かんないでしょうけどねぇ、「時の流れ」ってのはこの世界が生まれたその瞬間に、最初から最後までぜーんぶ決まってんのよ。今どこかで小石が蹴られたことも、昔どこかで戦争が起こったことも、今こうやって私とアンタがしゃべってることも、ぜーんぶ「時の流れ」で決められてたことなの。この世界にあるもの全てはそこから抜け出すことはできないし、変えることなんてできやしないのよ。アタシもアンタもね。アンタが過去に人を殺したことも、そいつがアンタに殺されたことも、どう足掻いたって消えやしないのよ「時の流れ」から無くなったりしないの。アタシは確かに時を渡れるけど、それだって全部「時の流れ」の中では決められてることなのよ。過去を変える? 歴史を変える? そんなの出来るわけないじゃないばっかじゃないの? アタシごときにそんな力あるわけないじゃない。どうしても歴史を変えたいなら、世界を最初っからぜーんぶ作りかえることね』

     『彼女』はそう言って、私を見下ろしてまた鼻で笑った。

     まるで出力マックスの放水車で水を浴びせられるような、怒涛のごとき『彼女』の言葉に、私は言葉を返すことが出来なかった。
     『彼女』は氷のような冷たい目線でこちらを見下ろしてくる。
     風が吹いた。木々がざわめきのような音を鳴らす。

    「……わかりました。帰ります」

     『彼女』は森の守護者。
     ざわめくような森の声は、きっと『彼女』の「帰れ」という言葉の代弁。

     そう判断した私は、『彼女』の座る祠に背を向け、歩き出そうとした。


    『――ちょっと待ちなさいよ。誰が「帰っていい」なんて言ったの?』

     『彼女』が声をかけてきた。私は足を止めた。
     ふわり、と『彼女』は空を飛び、私の前で静止した。

    『まだやることが残ってるでしょ。アタシはアンタを過去に送らなきゃ』
    「え、しかし……私の過去は消えないとさっき……」
    『当たり前じゃない。だから、よ』

     『彼女』はそういうと、にっこりと笑った。
     その笑顔を見た瞬間、背筋が一瞬にして凍りついた。

    『アタシはアンタを過去へ送らなきゃならない。だって、「時の流れ」でそう決まっているもの』

     逃げたい。逃げなければ。
     でも、足が動かない。
     つたが絡まって、足が動かない。

    『そうね。一応教えておいてあげるわ。アンタがやらなきゃならないこと』

     『彼女』の目が妖しく光る。
     小さくて短い両腕に、エネルギーがたまっていく。

    『けんかをね、止めてきてほしいのよ』
    「……!?」
    『どうすればいいか、わかるでしょ? だって……』

     『彼女』が手を私の額の前にかざした。
     視界がだんだん、白く染まっていく。


     ああ、そんな、馬鹿な。
     そんなこと、あるわけない。

     顔も知らない中年男性。
     風の噂で、身元が全く分からなかったと聞いた。

     過去の罪から逃げるために、全てを変えてきた私。
     逃げてきた過去が、とうとう私に牙をむいた。


     『今』と『昔』の景色が混ざる。
     暗い森は薄汚い路地に。
     『彼女』の笑顔は、煌く刃に。
     



    『それじゃあ、「世界」のために、死んできてちょうだい』





     私が最期に見た『彼女』の笑顔は、とびきり優しく、美しく、冷たかった。








    ++++++++++

    激しいイライラ+現実逃避=コレ
    良い子ちゃんな『彼女』ばっかりだったからちょっとアレなの書きたくなった、ただそれだけ。
    あとタイトルは適当。



    【好きにするがいいさ】


      [No.2424] 酔って候 投稿者:クーウィ   投稿日:2012/05/15(Tue) 14:32:28     93clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ねぐらから這い出た時、最初に感じたのは肌寒さだった。
     反射的に片眼を上げて空を拝むも、そこにあったのは予想に反し、何時もと寸分変わりの無い、澄み切った青があるばかり。
     天高く馬肥ゆるとかいう言葉そのまんまの、能天気なまでの秋の空。……けれども一方、毛皮を通して肌に染みて来る空気には、一年分の余所余所しさと嫌厭感が、ウンザリするほど滲み込んでいた。
    「そろそろまた冬か……」
     思った事が口を衝いて出る、その事自体にも動かし難い既視感を覚えつつ。俺はかったるい思いを溜息に籠めると、ゆっくりと住処を後にして歩きだした。
     

     物心付いた時から、俺には家族がいなかった。
     何故いないのかは考えた事が無い。事実いなかったし、深く考えるのも馬鹿らしかったから。
     ぬくぬくと森に住んでいるポケモンや、自由にフラフラ飛び回れる羽根の生えた連中なら、「それはおかしい」とか何とか言ってくるかもしれない。だが、『街』に住んでいる俺達の様なポケモンから言えば、そんな甘ったるい感傷に浸っている暇や余裕なぞ、ある訳が無いのである。

     記憶に残っている最古の風景は、ビルとビルの隙間から覗く、目抜き通りの雑踏の様子。どうしてそれが記憶に残っているのかと言うと、痩せ細って小さくなっていた当時の俺が、直後に飛び込んできた食い残しの目立つフライドチキンの残骸で、何とか露命を繋いだからだ。
     人間の臭いがこびり付いた汚らしい鳥の骨に、夢中で武者ぶり付いたガリガリのコジョフー。俺と言うポケモンの、記念すべき出発点である。
     今では街の野生ポケモン達の中でも最も腕が立ち、身軽ではしっこい存在として知られている俺にも、そう言う時代があったってわけだ。

     そんな俺が現在どうやって食ってるかってぇと、これがなかなか洒落たものなのである。
     昔はゴミ漁りなんかで辛うじて凌いでいたが、それもとっくに過去の話。徐々に経験も積んで体が出来てからは、人間相手にかっぱらいもやったが、これはこれで目立ち過ぎて、トレーナー連中に追い回される危険が常に付きまとう。散々に逃げ走り駆けずり回った挙句、追い立てられてドブネズミの如く排水溝に潜り込むのは、如何にも泥臭くて頂けない。
     そこで無事進化も終え、コジョンドとなった俺が選んだのが、力ずくで目当てのものを奪い取るかっぱらいではなく、スマートに獲物を掠め取る、いわゆる掏摸(すり)と言う奴だった。
     実力的には尚の事力ずくが通りやすくなったが、それに頼っていたのではいい加減目立つ格好になったのもあり、本格的に駆除される恐れも無いとは言えない。野良ポケの間でも知られた存在になっていた事だし、何時までも汚い下水道に走り込むよりは、小奇麗にしていた方が格好も付く。
     何より、漸く実力に見合うだけのプライドを保ち、気持ちに余裕を持って生きる事が出来るようになったと言うのが、非常に大きかった。直接食いものを狙うよりもやり甲斐はあったし、『金』と言うものも持って行きどころさえ覚えれば、軽くて嵩張らない分取り回しが良い。
     身なりを整えて出すものを出せば露店の店主ぐらいは動かせたし、路上で憂鬱そうな顔をしている連中に少し多めに持っていけば、それなりの見返りは期待出来た。

     そして、起き出した俺がねぐらにしている排水管の残骸から離れ、今日最初のターゲットとして選んだ相手と言うのが、目下前方で浮付いている、一組の主従と言う訳である。



    「うわぁ、凄い……!」
     両脇に控える彼女らの中央で、引率役である少年は、無邪気な歓声を上げた。目の前にそびえる巨大な駅舎に目を輝かしつつ、年相応にはしゃぐそんな主人に釣られてか、反対側に位置する彼女の息子も、浮付いた気持ちを隠す事無く表に出して、周囲に広がるあらゆるものに、好奇の視線を彷徨わせ続けている。
     そんな両者の有り様に、事実上の最年長者でもある彼女は、溜息半分苛立ち半分と言った思いで、そっと軸足を入れ替えつつ肩を回す。物見遊山に来たような雰囲気の両者と違い、常に素早く、それでいて鋭く視線を移動させている彼女には、何処にも『隙』と言うものが無い。
     道行く人間とポケモンの波に向けられるその視線にも、無意識の内に相手の技量を推し量る武芸者としての本能が滲み出ており、淡く険を交えたその目付きは、即座に動き出せるように配慮された立ち姿と相まって、佇んでいる一匹の雌コジョンドに、自然と周囲を俯伏させる、侵し難い威圧感を与えていた。
     それは同行している両者には日常の一部分に過ぎなかったが、多少の心得を持って此方を窺っている招かれざる客人には、この上なく面倒な代物であった。

     しかし、無論彼女は、そんな事など知る由もない。目下の彼女の一番の関心事は、明らかに早きに過ぎた街への到着時刻と、好奇心にうずうずしつつ落ち着きの無い、二人の若者の動向についてであった。
     案の定、傍らに立っている少年は、駅舎の正面に掲げられている大時計と、自らの腕に装着されたCギアのデジタル表示を見比べつつ、首を傾げ始める。
    「う〜ん…… ちょっと、早く着き過ぎちゃったな。まだ約束の時間まで、3時間近くもあるよ」
     困(こう)じ果てたようにそう口にした少年の表情が、再び明るくなるのに大した時間はかからない。「まぁ」に続いて吐き出されたその意思表示を、彼女自身は渋い顔で、一方反対側に控える彼女の息子の方は、目を輝かせて受け止める。
    「まぁ、じゃあ折角だし、時間が来るまでにどこかへ行ってみよう! スイもサイも、ライモンの街は初めてでしょ? 姉さんからお小遣いも貰ってるし、偶にはゆっくりしようよ」
    「何時も頑張って貰ってばかりだからね」と付け加えられると、流石の彼女も何時までも仏頂面でいるわけにもいかず。時を移さずして一行は、ライモンの象徴である中央駅舎を離れ、主流となっている雑踏の波に乗って、東に向かって歩き始めた。



     駅前広場できょろきょろしていた連中が動き出したのは、間もなくの事だった。
     主人だと思われるガキンチョが腕時計を確認した後、俺と同族に当たる二匹の手持ち達に向け、何やらごにょごにょと話しかける。でかい方が不承不承、チビの方が嬉々として、と言った感じで頷くと、彼らの主人は先に立って、商店街が並んでいる東の方角に向けて進み始めた。
     その際、集団の中で最も長身である雌のコジョンドが、発ち際に鋭い一瞥を周囲に投げ掛け、駅舎の傍の植え込みに蹲っている俺の心臓を、薄気味悪く一撫でする。……無論見つかりはしなかったものの、余り良い気分ではない。正直止めて頂きたい。
     一応俺はこの街の野良の中では最強であると自負しているし、それ相応の実力もあると信じている。が、流石にああ言う手合いにちょっかいを出して、まともに立ち合えるとまでは思っていなかった。
     この街は、人間達によるポケモンバトルが盛んなせいだろう。偶に居るのである。逆立ちしても勝てそうにない様な、キチガイじみた戦闘マシーンみたいなのが。今視線の先にいる同族も、多分そう言った連中の一種であろう事は想像に難くない。
     目付きと言い立ち姿と言い、「私強いかんね、手ぇ出したらボコボコの半殺し確定だかんね」っつー感じの主張が、色濃く滲み出ている。恐らく生まれてからずっと、武辺一筋に生きてきたコチコチのバトル屋で間違いないだろう。そこそこ良い顔してるのに、勿体無い話だ。

     普段なら、ああ言う物騒な奴が関わっている的には、手を出さないのが賢明である。無理にリスクを冒さなくとも、ここは天下の大都会。標的になりそうなとっぽい野郎は、ちょっと探せばそこら中にゴロゴロしている。
     けれども今回、俺は敢えて、目の前の連中の後をつけて行く事に決めた。かなりリスキーな相手であるのは間違いなかったが、それに見合っただけの価値はあると踏んだからだ。
     恐らく、懐具合は温かい筈である。……と言うのも、主人に当たるガキの態度はどう見ても御上りさんのそれであったし、浮付いていて微塵も影の無いその様子から見ても、手持ちに不足があるとは思われない。此処の所余り良い収穫に恵まれていなかった俺としては、そろそろ一発当てて、好物をたらふく味わいたいと思っていた矢先だったのだ。
     俺もこう見えて、結構グルメなのである。昔苦労した分、貫禄が付いてからは反って世の中の楽しみや道楽と言うものに敏感になっちまったらしく、今では揚げ物の油がどれぐらい使い回したものかや、素材の鮮度がどんなものかぐらいは察しが付くようになってしまった。『野良ポケモンと言えば残り物』、と言った程度の認識しか持っていない屋台のオヤジ共から上物を召し上げるには、多少は割高の金額が必要になってくるのは説明するまでも無いだろう。

     そして、更にもう一つ。実は俺、大の酒好きなのである。ビールや焼酎、ウォッカにウィスキーまで、『アルコール』と付くものなら何だって構わないほどに、酒の類に目が無いのだ。
     昔、今の俺のねぐらに一緒に住んでたホームレスの泥鰌髭が、しこたま買い込んで来た酒とつまみで良い具合に出来上がっちまってた時、無理矢理缶ビールを押し付けられたのが、そもそもの切っ掛け。それ以来、俺はぐでぐでに酔っ払った時に来る、あの幸せな酩酊感の虜になってしまっていた。
     一杯引っ掛けて酔眼で周囲を見渡すと、自分の心の中がスッキリ晴れて、世の中の全ての事柄が、笑って許せるような気がして来るのである。舌も普段以上に良く回るようになるし、平素なら恐ろしくて出ていけないような場所にも、積極的に踏み出したくなってゆく。別に飲まなくてもやって行けるが、実に愉快な気分にしてくれるあの飲み物は、ある意味俺の生き甲斐の一つとも言えるものであった。
     ところがここ数年の内、人間達の間で何があったのかは知らないが、街角に立っている自動販売機から酒の類が尽く消え失せて、以前のように気軽に手に入れる事が出来なくなってしまっていた。前はコインを何枚か用意すれば造作も無く買えたと言うのに、今ではそれとは別途の手間賃も伴って、顔見知りのルンペン連中を通してでないと、缶ビール一本傾ける事が出来ないのである。起き立ちに感じたあの憂鬱を吹き飛ばす為にも、俺は是非とも久しぶりに、一杯やりたかった。
     俺は主に酒手を稼ぐ事を目当てに、此処で一勝負仕掛けてみる事にしたのである。



     駅前から出発した三者の内、最も小柄なコジョフーのサイは、今や前方を歩いている主人以上に、浮き立つ気持ちを抑えかねていた。
     歩けば歩いただけ珍しいものが目に入るこの街は、修業に明け暮れている普段の生活からは想像も付かないほどに刺激に満ち溢れており、文字通り退屈する暇がない。街に入った当初こそ、謹厳な母親の存在が頭の片隅にこびり付いていたものの、そんな事がどうでも良くなるのに、然したる時間はかからなかった。
     まだ日も昇り切らぬ未明の空の下、シッポウシティの外れにある小さな道場を出発した時には、こんな楽しい余暇が取れようとは、夢にも思ってはいなかった。それだけに、喜びも一入である。
    「へぇ……! 最新型の加湿空気清浄機だって。『臭いセンサー及びプラズマクラスター搭載、イオンの力で快適な日々を!』かぁ。なんだか良く分からないけど、すごいね」 
     箱形の機械が沢山並んでいるお店のショーウィンドウの前で、少年が感嘆の声を上げる。無論主人にも良く分からない様な代物が、ポケモンである彼に理解出来よう筈もなかったが、例えアイアントの爪先ほどの知識さえ持ち合わせていなかったにせよ、彼の気分が下向きになる様な事はなかった。『ぷらずまくらすたぁ』でも『いおん』でも、何だって良いじゃないか。別に噛みついてくる訳でもないだろうし。

     そうやってワイワイ騒ぎながら、尚も目抜き通りを進んでいく内。不意に先頭を歩いていた少年が立ち止まると、何やら目を輝かせつつ、前方の空を指差した。
     見上げた先にあったのは、鉄製の籠状の物をぶら下げた、巨大な輪っかの様なもの。機を移さず軌道修正した彼らは、遠くに見えるその奇妙な物体に向け、足取りを速めて進み続ける。
    『あそこに見えるのは、何だろう?』 ――期待を込めて弾む足取りで道行く彼には、背後に続いている母親の、不興気な眼差しに気が付くだけの余裕はなかった。



     好き勝手ふらふらしている連中の後をつけ狙いつつ、俺はなかなか手出しが出来ない事に、若干の苛立ちを覚えていた。
     大まかな流れは、当初の想定通り。ガキンチョ二匹はどうにもならない位に隙だらけで、唯一あのコジョンドだけが、当面の障害として立ちはだかっている格好である。
     傍から見る限り、チビのコジョフーの方も足運びや反射神経自体は悪くは無く、年の端の割にはそこそこ出来そうな雰囲気ではあったが、やはりそこはガキの哀しさ。見るもの全てに心を奪われ、主人共々きゃいきゃい騒いでいるばかりで、例え真後ろから髭を引っ張りに行ったとしても、絶対に仕損じる事は無いだろう。
     それに比べると、両者の後ろに影のように付き従っている同族の方は、兎に角薄気味悪いほどに死角が無かった。常に黙りこくって歩を進めているばかりで、必要以上に周りに気を取られる事も無く。時折周囲を鋭い目付きで睥睨しては、その度に物陰に避難している、俺の寿命を削り取っていく。止めろ。
     一度なんかは、ここぞとばかりに忍び寄って行った刹那、まさにジャストタイミングで振り向かれて、もう少しで叩き殺されるとこだった。咄嗟に近くにいたオッサンの傍に寄り添い、手持ちのふりをして事なきを得たが、正直生きた心地はしなかった。……何となく胡散臭そうな目で見られた様な気はしたが、思い過ごしだと信じたい。
     取りあえずその時は難を逃れた訳だが、もうこれで同じ手は使えなくなった。腹いせにケータイに向けてがなり立てているその中年サラリーマンの尻ポケットから紙入れを抜いて、中身を確認した後でゴミ箱にinしてやったのは余談である。スリの俺が言うのもなんだが、耳障りだから余所でやれっての。財布の中も如何わしげな写真入り名刺ぐらいしか入ってねぇし。
     そうやって俺が脂ぎった親父と戯れている間、連中は電機屋の店先で屯しつつ、機械の箱の群れにうつつを抜かしている。店先を通り過ぎる際、ついでにウィンドウの中を覗いてみると、箱の列線の傍にはズラリ並んだゼロと共に、『空気清浄機・加湿器』の文字。カシツキぐらい俺の住処にもあるっつーの。野晒しになってたのを昔の同居人が拾って来ただけだから、別に動く訳じゃないけれども。

     やがてそうこうしている内、不意に進路を変えたターゲットは、そのまま街の外れにある、遊園地の方へと向かい始めた。
     派手なアーチと街路樹の並木を抜け、躊躇いもなく中へと入って行く連中に続いて、俺も偶々同じ方角に向かっていた二組みの家族連れに紛れ、何食わぬ顔で敷地内に踏み込む。互いが互いのポケモンだと思ってちらちらと視線を向けて来る彼らを尻目に、ちょっと気取って大型の花壇を一つ飛び越えてやると、興味深げに見つめて来ていたガキ共が、揃ってはしゃぎつつ歓声を上げた。
     普段ならチラリと振り返って、格好付けて見せてやるのも悪かねぇ所だが、生憎今の俺は忙しい。案の定前方に視線を戻すと、追いかけていた連中は屋台に寄って、呑気にたこ焼きなんぞ頼んでやがる。
     チビ助コジョフーが受け取っているのは、立ち昇る白い湯気も眩しい、アツアツのチーズが乗っかった一品。物珍しげに楊枝をつまみ、嬉しげに頬張っているその様子に、未だ朝飯すら食ってない俺の腹が、虚ろな音色を響かせる。
     隣にいる主人の方は、受け取った自分の食いブチを少しでも冷まして置こうと口を尖らせており、その吹き掛けられた息によって煽られた削り鰹が、忸怩たる思いで見つめる此方の鼻の頭に、得も言えぬ様な香ばしい匂いを運んで来る。
     降って湧いたこの狼藉に、俺はますます逆上しつついきり立ち、戦意を燃え立たせる訳なのであるが――この期に及んでも例によって、空気の読めない同族野郎が行く手を阻む。主人に勧められるも首を横に振った雌コジョンドは、相も変わらず険を交えた表情で、ジロリと周囲を一亘り見回した後、己の前でたこ焼きを食べている、小さな同族に視線を戻す。
     ……何か当初よりも更に目付きが厳しく、ご機嫌斜めになっているように見えるのは、僕の気のせいで御座いましょうか?



     たっぷりの花鰹と揚げ玉が乗った、大粒のたこ焼きを頬張りつつ。少年は次の予定を定める為に、つまんだ楊枝を次の一個に突き立てて置いて、腕に装着したCギアを覗き見た。
     デジタル表示の文字盤は、現在午後1時を回った所。約束されている時刻まで、まだ1時間以上あった。
     ホッと一息吐いた彼の面上に浮かんだのは、勿論零れる様な笑み。傍らに控えている二匹のポケモンに対し、まだまだ時間が余っている事を告げた後、彼はもう一度爪楊枝を手に取ると、食べ良い具合に冷めて来たたこ焼きの更に奥に向け、その切っ先を潜り込ませる。
     手にした白樺の木片が、起点となる堅い蛸の身をしっかりと捉えたのを確認すると、鰹節が上面を覆い隠しているそれをゆっくりと持ちあげ、一口に平らげる。最初の一個で火傷した箇所が少し痛んだが、揚げ玉の歯触りと甘辛く濃厚なたれの味わい、そして主役とも言うべき蛸の切り身の噛み応えが織り成すそれは、そう簡単に飽きが来るようなものではない。
     満足げな表情でトレイの上蓋を閉じた少年は、続いて同じ様に食べるのに夢中になっているパートナーと、此方は中々打ち解けてくれず、何時も通りの雰囲気のままで付いて来ている武術ポケモンに、次なる目的地を指し示した。
     再び動き出した彼らの行く手には、ここに来る際目印となった、あの巨大な観覧車が鎮座している。

    「特定のポケモンについてはお断りさせて頂いておりますが、それ以外のポケモンでしたら、重量制限内なら問題ないですよ」
     一緒に乗れるのかと言う少年の質問に対し、係員の男性は笑顔で答える。念の為、特定のポケモンについて尋ねてみたところ、ダストダスやベトベトン、スカタンクの様な、色々な意味で密閉空間にはそぐわない種族が該当するのだと言う。それなら、格別問題は無いだろう。
    「原則的に二人乗りですが、小柄なポケモンやお子様連れであらば、多少の超過は大丈夫です。ごゆっくりお楽しみください」
    「ありがとうございます! ……だって、サイ、スイ! 大丈夫みたいだし、折角だから乗って行こうよ」
     振り返って声をかけると、二匹のポケモンはそれぞれの反応で、彼に対して意思を示す。……やはり、母親であるコジョンドのスイは、嬉しそうに踊り上がる息子と違って、あまり気乗りがしない様子だった。
     元々彼らがこの街に来たのは、彼女と言うポケモンの情報を、バトルサブウェイの対戦用システムデータに加えたいと言う申し出が、サブウェイの運営側からなされた為であった。言ってみれば、彼女にとっては今日の行程もその内容も、ある意味修行の一環に他ならないのである。
     どうやら謹厳な性格のスイには、今の様な物見遊山に等しい時間の潰し方は、それほど好ましいものではないらしい。少なくとも、そこまでは経験未熟な少年からも、窺い知る事が出来た。……そう、そこまでなら。

     けれども生憎彼には、本来は姉のポケモンであるコジョンドの気性を、完全に見抜く事は出来ていなかった。その為、コジョンドに向けられていた彼の注意は、直ぐに目の前に現れた別の存在へとシフトしてしまう。
     再び前方に視線を移した彼の目に留まったのは、ただ一つだけ他のものとは形状の異なる、妙に装飾の行き届いた籠であった。他の籠の2.5倍はある大きさのそれは、モンスターボールではなくゴージャスボールを模した塗装がなされており、内部には大きなテーブルが置かれていて、数人の大人達が食事を楽しんでいた。
    「あの、あれは?」
     先ほど言葉を交わしたばかりの係員に向け、少年は自分が見た物への疑念を、率直にぶつけていく。それに対し、親切な壮年男性職員は、今度も懇切な言葉と態度で、目を丸くしている子供に向け、笑いながら言葉を返してくれた。
    「ああ、あれはディナーワゴンだよ。あの20番ワゴンだけは特別製でね。予め予約を入れてチャーターすると、あそこで食事をしながら風景を楽しむ事が出来るんだ。君も大きくなったら、一度乗りに来てくれると嬉しいね」
    「へえぇ…… あんな高い所でご飯かー。良いなぁ」
    「まぁ、興味があるのなら、一度親御さんとも相談してみて。取りあえず今日は、ポケモン達と普通のワゴンに乗ってみて、観覧車がどんなものかを体験してみると良いよ」
    「さぁどうぞ」、と乗り場に続く扉を指して、一歩引いてくれた係員に対し、少年は元気良く返事をすると、そのまま次にやって来た籠の中に、二匹と共に乗り込んで行った。



     ガキ共が観覧車に潜り込んだのを見ると、遂に俺は待ちに待ったチャンスが訪れたものと意気込んだ。
     既に、隙をついて目的を達成出来る見込みは無いだろうと、諦めかけていた所である。こうなったら多少強引にでもと思った矢先に、この展開。まだまだ捨てたものではない。
     あんな所に缶詰めになってくれるのであらば、攻める側としては願ったり叶ったりの状況である。狭いあの密室の中では、例え何かが起こったとしても、迅速な対応は望めまい。不意を突いて死角から行けば、あの厄介な同族が暴れ出す前に、取る物盗ってずらかる事も、そう難しくは無いだろう。
     一度勢い付くと、物事と言う奴は考えれば考えるほどに、成算に満ち溢れているが如く感じるものである。雀躍した俺は、今度こそあの連中に目に物見せてやらんと、機を移さずに行動に移った。
     乗り場の手前でおずおずと佇んでいるミニスカートを横目に、同じくゲートに詰めている係員のオッサンの目をすり抜けて柵を乗り越え、回転している巨大な鉄枠の向こう側で身を伏せる。
     連中が乗り込んだ籠が目の前に差し掛かった所で、俺は素早く立ち上がるとそいつに手をかけ、他の人間の目に触れないよう反対側にぴったりと身を押し付けた状態で、遥か上空へと昇って行った。



     狭いワゴンの中は、異様な空気に満ちていた。
     より正確には、単に元々立ち込めていた雰囲気が、密室状態と言うその環境によって、露わとなったに過ぎないのだが……それでも、今までずっとそれに気付かなかった彼にとっては、それは文字通り唐突に訪れた災難以外の、何物でもなかった。
    「あの……母上?」
     無言のプレッシャーに負けて、コジョフーが恐る恐るといった調子で声を上げる。乗り込んだ当初こそ嬉々として目を輝かせ、持っていたチーズたこ焼きの残りをぱく付いていた小柄な武術ポケモンは、今や明らかに危険な雲行きを示している現状況に、完全に委縮してしまっていた。
     果たして目の前の彼の生みの親は、今日この街に着いてから初めて口を開いたと見るや、思わず全身の毛孔が縮み上がる様な低い声音で、目尻を痙攣させつつ声を絞り出す。……この間、彼らの主人は全くこの状況に気が付いておらず、更に外にへばり付いている招かれざる客は、密かにワゴンの扉を固定しているストッパーを緩めて突入の機会を窺っていたのだが、既に我慢の限界に達していた彼女には、そんな事に対して配慮を見せるような気配は一切なかった。
    「一つ、聞きたい。……一体私は、遠く外地に赴く際の心得と言うものを、普段お前にどう教えていた?」
     どう見ても穏やかならぬと言った風情の表情が、爆発寸前の憤怒で彩られるのに然したる時間は掛らなかった。思わず総身の毛を逆立てて竦み上がる息子に向け、あからさまに怒気――もとい、青光りするほどの殺気を放射しつつ、ゆっくりと無意識の内に腰を浮かし始めたコジョンドは、更にその数秒を以て、自らの中に立ち上ってくる憤怒を、言葉の形に捏ね上げて吐き出して行く。
    「卑しくも武芸家ともあろう者が、見知らぬ地にて何処までも腑抜けに気を緩め、一時として夢見心地から戻って来やぬとはどう言う……? あまつさえずっと付け狙われているのにも気付かず、主人の身を案じもしないで享楽にふけるとは……!」
    「……え゛?」
    「いや、あの……その」
    「……? どうしたの、スイ?」
     事ここに至って、流石に彼らの主人も異変に気付き、場違いなほどに無邪気な声で、激高しつつあるコジョンドに向けて尋ねかける。また紡ぎだされたその言葉は、外から中の様子を窺っていた招かれざる客の耳にも、しっかりと届いていた。……しかし、それら全てが既に遅く、また余計な刺激であった事は、誰の目にも明らかであった。
     次の瞬間、凄まじい勢いと剣幕で立ち上がり、「恥を知れ!!!」と怒号したコジョンドの一撃によって、息子のコジョフーは一瞬でワゴンの扉を突き破って外に飛び出し、外部にへばり付いていた客人はその煽りをもろに喰って、木っ端の様に宙を舞っていた――



     籠の中での会話に驚愕するあまり、思わず全身が固まっちまったその刹那――突然ものすごい吠え声と共に何かが炸裂し、鉄板にへばり付いていた俺は呆気無くそこから引っぺがされて、何が何だか分からないまま、中空に向けて放り投げられた。
     胸板を思いっきり打ん殴られた様に感じた次の瞬間には、頭から真っ逆様の状態でフライ・アウェイ。正直その時は、自分の置かれている状態が寸分も理解出来ずに、半ば茫然とした思いで、真っ青な空を見上げていた。
     多分そのまま何も起こらずに落下していれば、俺は正気に戻る前に頭から地面に叩き付けられ、実に詰まらん死に様を晒していたのは間違いなかっただろう。実際余りに唐突だったのと、全身に受けた衝撃がかなりのものだった為、直後何者かに右足を掴まれるまで、俺の意識は完全に上の空のままだった。
     しかし、そうはならなかった。逆さまにぶら下げられた状態で、俺は地上に向けて落下して行く鉄の扉を息を押し殺して見送った後、下界で上がる悲鳴を余所に、顎を引き下げ上を見る。そこには、片手で吊り籠の底部に掴まりつつ、もう一方の手で俺の右足を捉まえて歯を喰い縛る、あのチビ助コジョフーの姿があった。
    「うわぁあああ!? スイ、一体どうしたのさ!?」
     そんな主人の間の抜けた声が響き渡る中、小さな武術ポケモンは咄嗟に掴んだのであろう俺の片足を離そうともせず、表情を歪めて荒い息を吐いている。と同時に、どうやら地上でも事態に慌てふためいたのか、今まで回転していた観覧車の動きがガタンという音と共に停止してしまい、俺達は完全に、この広い空に取り残されてしまった。
    「……離せよ。お前じゃ無理だ」
     顔を真っ赤にして耐えている相手に向け、俺は思わずそう口走った。……正直この高さから落っこちて無事に済むとは思えなかったが、そこは俺も男である。
     義理も面識も無い相手に対し、ここまでに必死になれる様な根性の持ち主を、おいそれと道連れにはしたくない。我が身が可愛いのは山々だったが、薄汚い野良犬にも最低限度の意地はあるのだ。
    「このままじゃどうにもならん。一緒に落ちたかねぇだろう」
     だが、尚もそう呼び掛ける俺の男気にも、頑固なチビは一向に耳を傾ける気配が無い。それどころか、もう一度口を開こうとした次の瞬間、そいつは思ってもみなかった方法で、目下の情勢を是正しようと試みる。
     何とそいつは、大きく息を吸って指先に力を込めたと思いきや、鋭い気合いと共に俺の体を振り被って、一気に吊り籠の上部へと放り投げたのだ。
     流石に微塵も予想していなかった展開に、思わず俺は「ンきゃあああ!?」等と言った感じの意味不明な悲鳴を上げながら、無様な格好で投げ上げられた天井に落っこちる。辛うじて足から接地し、何とか武術ポケモンとしてのメンツは保たれたが、直後視界の内に入って来たのは、一番居て欲しくない相手であった。
    「……ウス」
    「う゛、母上……」
     間を置かず飛び上がって来たコジョフーも、俺と同じく息を呑み。吊り籠の屋根で俺達を迎えたのは、燃えるような瞳で此方を睨みつけている、あの恐ろしい雌コジョンドであった。隣に立っているチビが掠れた声を発すると、そいつはゆっくり足を開いて半身に構え、必死に愛と平和(ラブ・アンド・ピース)を希う俺の気持ちも弁えずに、自らの意思を明確に示す。
     更にそれに応じる形で、傍らに立っているコジョフーの方も雰囲気を一変させ、決意も新たに身構えるに及び、堪らず俺は首を巡らせると、隣のチビに抗議する。
    「おい、ちょっと待て。俺はまだやるとは言ってねぇぞ……!? 大体勇ましいのは結構だが、どう考えても勝てやしねぇだろ!?」
    「どうせ逃げても逃げ切れっこありません……! それなら寧ろ堂々と受けて立った方が、怪我も軽くて済みます。今ならまだ、二、三日呻るぐらいで勘弁してくれる筈……!」
    「ちっとも嬉しくねぇよ!!」
     救いの欠片もない相手の見通しに、全力で突っ込みを入れつつも。結局は俺の方も、前方の同族に向けて相対すると、何が起こっても即座に対応できるよう、重心を下げて軸足を直す。
     逃げようにも逃走ルートは一つだけで、そのたった一つの脱出口は、鬼婆コジョンドに塞がれている。何だかんだ言った所で、所詮は袋の鼠。目の前の相手を何とかする以外、手など無い。
     そして、そう俺が覚悟を決めたその刹那――まるで此方が決意するを待っていたかのように、殆ど微動だにしていなかった前方の相手が突如として動き出し、此処に戦いの幕が切って落とされた。

     俺が片足を引いて半身を下げ、嫌々ながらも戦う意思を示したその直後。いきなり前方で身構えるコジョンドの右腕が翻ったかと思うと、隣に立っているチビ助が、小さく詰まった呻き声を上げた。
     反射的にそちらを振り返って見ると、小柄な武術ポケモンは天を仰いでたたらを踏んでおり、驚愕に目を見張ったその額には、何か細い棒状のものが突き刺さっている。
     眉間の辺りに突き立っていたのは、先ほどまでコジョフー自身が使っていた、あのたこ焼き用の爪楊枝。俺は慌ててコジョフーの右腕を引っ掴むと、そのまま場外に向けて引っ繰り返りそうになっているチビ助を、際どい所で自分の側へと引き戻した。

     ところがしかし、危うい所を救ってやった相手の口から漏れ出たのは、礼では無くて警告の叫び。「気を付けて……!」と絶叫するチビ助の言葉にハッと顔を上げると、そこには既に何かの影が、目の前一杯にまで迫って来ていた。
     既に、回避も何も出来たもんじゃない。次の瞬間、俺はそれによって強かに顔面を打たれ、寸刻気が遠くなると共に、完全に視力を失った。
    「ンがあッ!? 目が、目がぁーーーっ!!」
     顔を押さえてそんな事を喚いている俺の体を、更に何者かが突き飛ばす。無様に金属板の上に転がる過程で何かが勢い良く風を切って頬を掠め、続いて鋭い気合いと共に何かがぶつかりあう衝突音が、「ん目眼めメMEぇ!」と全力で騒いでいる俺の背後から聞こえてくる。

     やがて何とか目をしばたかせつつ顔を上げ、涙ボロボロの状態で視界を取り戻して振り向くと、件の親子は目下盛んに技を繰り出し合って、狭い足場の上で暴れ回っている。顔面に『猫騙し』を喰らった俺がどうにか無事に済んでいるのは、どうやらコジョフーが俺の体を突き飛ばした後、身を持って時間を稼いでくれている御蔭であるらしい。
     しかし、それも長くは持ちそうになかった。
     腕先の毛を鞭の様に振るって攻め立てるコジョンドによって、コジョフーの体はあちこち腫れ上がって痛々しい有り様になっており、このままでは何時均衡が破れてもおかしくは無いだろう。……俺が顔面に一発喰らっただけで転げ回ったほどのダメージだ。あれだけボコボコにされて、平気で居られる訳がない。
     とは言ったものの、ここで俺が奮起して加勢に馳せ参じたとしても、事態が好転するとはバチュルの毛先程も思えない。同じコジョンドとは言え、向こうはもう何年も正統な修業を積んで来た化け物である。闇雲にぶつかった所で、勝ち目なぞあろう筈がない。
     と、その時。思わず絶望の呻きと共に天を仰いだ俺の目に、遥か頭上で泰然と鎮座している、一台の吊り籠が飛び込んできた。
     途端、俺はまるで電気仕掛けの人形の様にガバリと跳ね起きると、頭上に伸びる鎖を掴んで、鋼鉄の籠を吊り上げている、太い支柱によじ登り始めた。まるで何かに憑かれた様な面持ちで懸命に腕を動かす傍ら、未だ争っている二匹の同族の方をチラリと見やって、もう少しだけ耐えてくれよと、祈る様に念を送る。

     ――もうこうなったら、あれの力に頼るしかない。



     倒れていた野良コジョンドが、勢い良く立ち上がった時。コジョフーのサイはまさに藁にも縋る思いで、自分よりずっと長身の、その細身の獣に目を向けていた。
     既に体力は粗方消耗し尽くしており、これ以上孤立無援で戦うのは、事実上不可能に近い状態だった。完全に守りに徹しているにもかかわらず、母親の攻め手は何時も通りに峻烈で、僅かな呼吸の乱れや逡巡が伴う度に、彼の体に鋭い打撃を加え続けて来る。致命的な大技こそまだ貰っていなかったものの、このままの展開が続けば遠からず体が思う様に動かなくなって、『飛び膝蹴り』や『はっけい』辺りで止めを刺されてしまうのは目に見えていた。
     ところが、そんな彼の願いも虚しく――上を向いて起き上ったそのコジョンドは、パッと足元を蹴って飛び上がったと見るや観覧車の鉄枠に掴まって、必死に戦っている彼を尻目に、さっさと戦線を離脱し始めてしまう。
     直後に繰り出された『はっけい』をかわす為、咄嗟に横っ跳びに鋼鉄の板の上を転がるも、彼は見捨てられたと言う事実を前に、空漠たる思いが募って来るのを、如何ともする事が出来なかった。

     やがて万策尽き、体力も残り僅かとなった所で、彼は眉間を狙った一撃を避け損ね、楊枝が刺さって出来た傷を打たれて、「うっ!」と呻いてバランスを崩す。
     すかさず放たれた追撃の『はっけい』が強かに脇腹を捉えると、痛みと麻痺で息を詰まらせたサイは、横様に突き転がされたまま起き上がる事が出来なくなった。
     咳を交えた荒い息を吐きつつも、何とか持ち直そうともがいていたまさにその時――不意に自分の直ぐ隣でけたたましい落下音が轟き渡り、同時に身を横たえている鋼鉄の床面が、ぐらぐらと揺れた。
     痛手を負った体に多いに障ったその衝撃に、思わず顔を顰めている彼に対し、降って来たばかりのその人物は、実に能天気な声音で話しかけて来る。
    「ぃよお! 待たせたなぁ!!」
     声に応じて顔を上げたサイに対し、明らかに目が据わっていないその同族は、見て分かるほどに赤らんだ相貌を綻ばせ、実に愉しげな様子で笑い掛けて来た。



     突然戻って来た同族の様子に対し、今まさに一戦終えたばかりのスイは、今日と言う日が始まって以来最も強い、凄まじいまでの怒りの発作に見舞われていた。
     今目の前に立っているコジョンド――どうやら良からぬ企ての下、ずっと後を付けて来たと見えるその相手の状態は、明らかに普通ではない。視線は全く定まって無いし、上半身は固定されず、ふらふらとだらしな気に揺れている。顔色は傍から見てもあからさまに赤く染まっており、時折ダラリと垂らされる舌が、これ見よがしにペロリペロリと口元を舐める。
     臆面も無しに逃げ出した揚句、事が終ってからノコノコと帰って来たそいつは、どこからどう見ても完全に、『出来上がって』いた。

     普段から謹厳・糞真面目で通っている彼女にとって、それがどれだけ腹立たしい事なのか? ……残念ながらその事実を知っている者は、身に受けたダメージも忘れてポカンと同族の顔を見上げている、彼女の息子以外には誰もいなかった。



     吹きっ晒しの心地良い風に抱かれ、素晴らしい眺めが堪能出来るその場所に戻って来た俺は、最高にハイだった。
     先ほどまで一体何に怯え、何を恐れる必要があったのか? ホンの十数分前の出来事だったと言うのに、もう何も思い出せない。一体この場に、この世界に、何の不都合があると言うのか!

     あの後、俺は『何故か』必死になってこの大きく美しい観覧車の鉄枠をよじ登り、丁度俺達が今居る籠の斜め上に止まっている、一等馬鹿デカイ籠の中へと入り込んだ。
     そこで何が行われているかを知っていた俺は、突然扉が開いて驚き慌てる正装した男女を尻目に、真っ白いテーブルクロスの敷かれた中央にある食事台から、お目当てのものを取り上げてラッパ飲みにする。その瓶はワインであった。
     一本終えるとまた一本、更に選んだ最後の一本は大当たり。料理の仕上げにも使われる香り付け用のブランデーを飲み干したところで、俺はいよいよ今までの義理を果たすべく、勇躍その場を後にして、下方に見えるこの籠に向け、一っ跳びに帰還して来たという訳である。
    『行きは良い良い帰りは恐い』とは人間達の言うところであるが、よじ登るより飛び降りた方がずっと早いのだ。全く世の中、悲観的な考えが多くて困る。

     ところがこれほどまでに幸せな気持ちで一杯で、いっそ殴り合うよりも肩を抱き合って歌でも歌いたいぐらいの俺に対し、目の前に立っている同族は、到底そんな気分にはなれないらしい。
     どう見ても表情が引き攣ってるし、目元はピクピクして今にも耳から湯気が出そうな按配である。……よせよせ、そんな面。まだ若ぇだろうに皺になっちまうぞ。
     そんな心配を密かにしてやっていたのであるが、困った事にどうやらそれが、口を衝いて出てしまったらしい。いきなり相手の顔色が変わったとみると、瞬時に恐ろしい形相で地を蹴って、喚き叫んで突っ込んで来た。
     思いもかけない展開で、しかも動きがヤバいぐらいに速い。呆気にとられて目を見張る内、相手は一瞬で距離を詰めて来ると、低い軌道で地を蹴って、『飛び膝蹴り』をかまして来た。
     無論そんな物喰らえば、幾らなんでも平気では居られない。腹に入ればゲロッぱするだろうし、顎に当たれば宙を飛んで、ケンタロス座辺りまでぶっ飛んでしまう。流石にそれは頂けない。
     なので当然俺の方は、全力を傾けてそれをかわした。……いや、かわそうとしたと言うべきか。
     後ろに素早く足を送って、体を開いて避けようとした。ところがここでアクシデントが勃発し、後ろに足を送った所で、上半身が後ろにのめって流れてしまう。
     慌ててバランスを取ろうと手足を総動員してバタつかせたところ、あろう事か持ち上げた左膝が、突っ込んで来た相手の胃の辺りに、まともに突き刺さってしまった。相手の膝の方は俺がのけぞったので此方まで届かず、丁度カウンターが決まった形だ。
    「げッ……ほ!」と苦しげに呻き、ぐらりとよろける相手に対し、俺は何とか渾身の力で体勢を持ち直して、ふら付きながらも衝撃を受け止め、倒れないように踏み止まる。一方相手の方は、息を乱しながらも素早く立ち直り、俺が支えてやろうと手を伸ばす前に、サッと飛び退って再び距離を取った。
     尚も敵意を込めて烈しい視線を向けて来る雌コジョンドを呆れた思いで見詰めている内、俺はその強情さに辟易しながらも、今までは全く気が付かなかった、彼女の容姿に目を奪われる。多少怒りとダメージに青ざめながらも、顔の道具の配置や作りは俺好みであったし、厳しい修行に耐えて来たのであろう痩身は、力強く引き締まっていて誠に美しい。
    「良く見たら、あんた美人だなぁ……! こりゃ驚いた!」
     ――思った事がついつい口を衝いて出てしまうのが、飲んでる時の俺の悩み。特に今回は久しぶりだった事もあり、ちょっとハメを外し気味だった事は認めよう。

     だが、しかし……。気分良く褒めた心算だったのに、何故この台詞で怒るのであろうか?

     一瞬目を丸くしたように見えた相手は、直後今度こそ完全にぶち切れて、憤怒の塊みたいになった。
     顔は『赫怒』と言うのはこう言う状態を指すのだなと思えるばかりに紅潮し、最早赤いを通り越してドス黒く見え、口元は歯を食い縛っているのだろう、口辺が上がって尖った犬歯が覗いている。その余りの剣幕に、此処までずっと大人しくしていた、足元のコジョフーまでが悲鳴を上げ出した。
    「う……うわぁ!?」
    「何でここまで怒る必要があんだ……?」
    「そりゃ怒りますよ! どうする気なんですか!? もう此処まで来たら、一体どうすれば良いのか……」
     実の息子ですらこれである。となれば、赤の他人である俺なんぞに、有効な手立てが思いつく訳もない。
     流石にこの期に及んでは、続けてラブコールなぞ送れるもんではない。この状態で生まれて初めて、おぼろげながらも恐怖を感じた。これは本格的にヤバい。
     最早こうなってしまったからには、何とかして『良いところ』を見せ、少しでも怒りを解いて貰うより仕方ない。そう思った俺は、ここで普段でも滅多に見せない取って置きの大技を、彼女に対して披露する事に決めた。

     思わず竦み上がる様な形相で殺到して来た相手に対し、俺は平手で一発自分の顔を叩くと、真正面から一歩踏み出し、迎え撃った。
     初撃の『猫騙し』はしっかり引き付けて『見切り』でかわし、咆える様な気合いと共に打ち込まれた『はっけい』は、『はたき落とす』で軌道をずらす。
     一歩踏み込まれれば迅速に退き、振り上げられた鋭い蹴りを、体を反らして寸前で外す。更に止まらず三歩引き退く俺に向け、彼女が青白い波導を弾丸状に練り始めたところで、初めて俺は構えを改め、自分の方から攻勢に出た。
     両足に全身の力を込め、姿勢を沈み込むように下げた俺に向け、彼女は裂帛の気合いと共に、『波導弾』を解き放つ。高度な技量と豊富な修行量をして初めて可能となる必中の妙技は、青白く渦を巻きつつ凄まじい勢いで、俺を目掛けて突っ込んで来る。
     それに対する俺の方は、眦を決して覚悟を決めると、「はっ!」と短い気合いを上げて、思いっ切り後ろに向けて地面を蹴った。空中に浮かび飛び行く先に存在しているのは、このバトルフィールドとなっている吊り籠を支える太い鋼鉄の鎖と、それを固定している鉄骨の支柱。地を蹴りながら捻りを加えていた俺の体は、支柱に激突する頃にはほぼそれと相対する形となっており、接触した俺はそこに叩き付けられる代わりに、更にそこから手と足を使って壁を突き放し、三角跳びの要領で空へと駆け上る。
     流石の『波導弾』も、この急激な運動には対応し切れなかった。尚もしつこく俺の体を捉えようと追尾して来たものの、更に上を飛び違えるその軌道には付いて来れずに、何処までも高く澄み切った、遥か蒼空へと消えて行く。一方流麗な弧を描いて宙を舞う俺の方は、下方で茫然と目を見張り、今己が見た物を信じかねている雌コジョンドに向け、一直線に降下して行く。
     俺の奥の手・『アクロバット』。身軽で敏捷な特質を持った性格で、尚且つ高い身体能力を持った者だけが体得できる、飛行タイプの大技である。

     ……ここまでは上手く行っていた。そう、『ここまで』は。
     予定では俺は彼女の隣に着地して、とびきり爽やかな笑みを浮かべてこの技の感想を仰ぎつつ、あわよくば良いムードにでも持ち込む腹ですらあったのである。
     しかし、俺は酔っていた。……どの道酔いでもしてないと殆ど出さない大技ではあったが、それでもやはり素面の時に比べれば、多少は精度が怪しくなるのは致し方ない事である。

     軌道を僅かにずれていた俺の体は、そのまま彼女の手前ではなく、直接相手の頭の上までオーバーランして、盛大な浴びせ蹴りを、その美しい顔に叩きつけたのである。

    『こうかは ばつぐんだ !』



     満天の星空の下、俺はすっかり良い気分になって、自分の住処に帰って来た。
     片手に握った紙袋の中には、更に追加の缶ビールが何本か。つまみの類もしっかり買い込んで来て、抜かりや不足は更にない。

     あの後、俺は目を回している雌コジョンドや丸くしているコジョフーと共に、乗客の救助に当たっている係員等の飛行ポケモン達によって、他の乗客らと同様地上へと下ろされた。
     白昼堂々施設をぶっ壊した事もあり、かなり面倒な事態になりかかっていたものの、偶々例の大きな吊り籠(ディナーワゴンと言うらしい)に乗っていた客達が、俺と雌コジョンドの試合を大層気に入って取り成しや尻拭いをやってくれた御蔭で、大事には至らなかった。
     全部終わって釈放されると、ガキの奴はあんな目にあったと言うのに馬鹿なのか能天気なのか、事態が丸く収まったのは俺の御蔭だと言う結論に至ったらしく、一日連れ回される破目になった代わりに、実に良い思いをさせてくれた。
     彼らは俺の案内で街のあちこちを回り、礼と称して俺が目を付けたものは全てその場で買って分けてくれた。……ただあの雌コジョンドだけは、回復してからも塞ぎ込んじまって、自分のボールに閉じ籠っちまったきり、出て来ようとはしなかったのだが。

     別れ際、小僧は最後まで俺について来ないかと誘いをかけ、断り切るのに骨が折れたが、それは何とか振り切る事が出来た。
     そしてその時だけ、何故かあの雌コジョンドは自らボールを揺らして外に出る意思を示すと、巣に向けて戻って行く俺の背中を、刺すような視線で最後まで見送って来た。……御蔭で、折角の締めが幾分心臓に悪かったと言う事を、付け加えておかねばなるまい。ああ言うシチュエーションは二日酔い以上に性質が悪い。


     そして、今俺は独りねぐらに座り込んで、静かに星を見上げつつ酒を飲んでいた。……既に十分に酔い、この上もなく良い気分になっていたと言うのに、何時の間にかあの高揚感は消え去って、飲めども飲めどもちっとも盛り上がらなかった。
     昼間にかけられたある言葉が、ずっと頭の中にこびり付いて離れないのだ。

    「僕も大きくなったら、あなたや母の様な、強いコジョンドになりたい」
     二人きりになっても畏まった言葉ばかり使うチビ助に茶々を入れ、『ワタクシ』だの『母上』だのはねぇだろ、と突っ込んでやった時。はにかむ様に笑って言葉を改めたチビコジョは、からかう様にニヤ付く俺の顔を真っ直ぐに見返して、澄んだ瞳でそう告げたのだ。
     あの時の、嘘偽りの一切ない、真っ正直な告白。それが何か奇妙なうねりを、俺の心の底に植え付けてしまっていた。
    「あなたの様に」。『貴方の様に――』。これは果たして、適当な言葉なのだろうか……? こうして飲んだっくれている、しがない都会暮らしのスリを相手に。

     奴はまた、こうも言っていた。
    「僕も頑張って修業を積んで、何時か母に負けない位強くなります。何時かまた、出会えた時……その時は、僕もあなたに挑ませてください」、と。


     更に一頻り喉を鳴らすと、持っていた缶は空になった。
     次を出そうと袋の方へ手を伸ばすも思い直し、空き缶をヒョイと背後に投げ捨てた俺は、ふと思い出した事柄につられ、ぶっ壊れてただの粗大ゴミ以外の何物でもない、錆びついた加湿器に目を向ける。
     ――それを拾ってきた奴を、記憶の底から思い起こす為に。

     俺に酒の味を教えた相手。ガラクタを拾って来ては弄り倒し、暇にかまけて俺に人間の文字を教えたその男は、ある時奇妙な道具を自作して、このねぐらから出て行った。
    「もう、此処には帰らねぇ」
     そう言い捨てたその時は、『まーた始まりやがったか』としか思わなかった。……しかし、結局奴が戻って来る事は無かったのだ。
     数年後、その男が作ったガラクタが、『締め付けバンド』と言う名前でヒット商品になっているのを破れた古新聞で確認したのは、ある秋の終り頃の事だった。
    「そろそろまた冬か……」。そう呟く俺に合わせる様に、「そろそろまた冬が来るなぁ」と毎年の様にぼやいていた、物臭な同居人。寝場所を取り合い身を寄せ合い、酔っ払っては絡んで来たあの鬱陶しい居候が、心の底に空虚な穴を穿って行ったのに気が付いたのは、果たして何時頃の事だったろう――?

     そこまでの回想が終ると、俺はつと立ち上がり、紙袋を手に歩き出した。
     先程放り出した空き缶を蹴っ転がし、月を見上げて間延びしたおくびを一つ洩らした所で、漸く鬱々とした思いが吹っ切れ、何時もの調子が戻って来る。
     めっきり少なくなって来た虫達の声を掻き分けながら、俺は紙袋から干し烏賊の切れ端を摘まみ出し、端っこを一口齧り取ってから、口先に咥えてニタリと笑った。
     鼻先のスルメをピコピコさせて調子を取りつつ、鼻歌と共に上機嫌で進む俺の後ろには、縦に長細く引き延ばされた二重の影が、躍りさざめき付いて従う。

     やさぐれイタチ酔って候。
     気儘な夜風に背中を押され、過ぎ行く我が家にウインク一つ。小洒落たネオンに背中を向けて、足の向くまま気の向くまま。
     ……この酔いが醒めた時、果たして自分はどこにいるのか――? 今は全く分からないが、恐らくもう二度と、此処に戻って来る事は無いのだろう。

     それだけは、何処かではっきりと理解している気がしていた。





    ――――――――――――――――――――

    またもやお久しぶりになってしまいました(汗)
    何かとゲーム方面が忙しくて書き物が進まなんだとです。対戦脳もほどほどにってね……
    ジャパンカップは70戦以上やりましたが、レートは1500以上を維持するのが精一杯で残念、伸びませんですたorz まだまだ修行が足りませんね。 まぁ、リオルとカイリューが活躍できたから良しとして(ry

    言い訳はほどほどにして…… 此方は、ポケノベさんの所で開催された『文合わせ 冬の陣』にエントリーさせて頂いたものです。
    残念ながら、期間ぎりぎりだった上にテーマ不備で採点対象から外れる事となってしまいましたが、個人的に書きたかったものが書きあげられたのもあって手直ししてみました。あちらで評価して頂いた方々にも精一杯のお礼を込めて――

    尚、このお話の原案はtekoさんから頂きました。チャットで「最近ろくに書けなくて……」と愚痴ってたら、気分転換にとショートストーリーを提供して下さって、それが骨格となりました次第。
    故に、個人的にはこの作品は、tekoさんに捧げたいと思います。 有難う御座いました……!


      [No.2423] Re: 海の上ゆらゆら 投稿者:朱烏   投稿日:2012/05/15(Tue) 10:56:30     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    はじめまして。読んでいただきありがとうございます。
    『遥か東方の海は、水平線を描かず』は、空なのか海なのか分からないくらいに景色が真っ青だというのをどうやったら短く表現できるかなと思っていたときに、ふと浮かんだ表現です。短い分、いろんな解釈ができますね。
    アメタマは少し子供っぽくて、それをキマワリが遠目で笑っているような感じです。

    コメントありがとうございました!


      [No.2422] 雨 [お題:晴] 投稿者:フミん   投稿日:2012/05/15(Tue) 01:23:54     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ここのところ、ずっと天気が悪い。男は、窓から外を見ながらため息をついた。

    梅雨でもないというのに、空には灰色の雲がかかり地面や人、建物を濡らしている。一度止んだと思えばまた雨が振り、太陽が顔を出すことはない。そんな日がもう何日も続いていた。当然、そんな毎日ばかりだと自然と気分が沈み、気持ちが憂鬱になってくる。
    一体いつになったら晴れるのだろう。テレビで天気予報を確認してみても、明日も雨、その次の日も雨。晴れになるのは、最低でも一週間は先だと告げている。思わず男は、ため息をついてしまった。同時に困っていた。

    男は明日外出する予定なのだ。彼には、遠く離れた土地に恋人がいた。その大事な恋人が明日、自分が住む家に遊びに来てくれるのだ。実に一ヶ月ぶりになる。その恋人と、近くの遊園地に出かける約束をしていた。無情にも、雨は止む気配どころか勢いが増している気がした。もし明日もこんな調子だとしたら遊園地どころか、どこにも出かけることができないだろう。全く、特別な日になんと運が悪い。
    なんとかならないだろうか。頭を抱え家の外を眺めていると、あるポケモンが通りかかった。

    てるてる坊主のような外見、くりっとした大きな瞳、雨水を模した頭に、雲のような胴体。存在そのものが雨を表しているみたいだった。
    あれはポワルン。てんきポケモンという二つ名があり、確か天気に応じて体が変化する一風変わったポケモンだ。しかも、ポワルンは天候を変える技を覚えることができる。

    天気を変える。こうしてはいられない。男は直ぐに家から出てそのポワルンの元へ急いだ。
    いきなり現れた人間にポワルンは驚き逃げようとするが、男はそれを制止した。


    「待ってくれ、話を聞いてくれ」

    男の必死な様子にポワルンは逃げるのを止める。濡れるのも構わず、男はポワルンに志願した。

    「実は君にお願いがあるんだ。明日、ここの地域の天気を晴れにしてくれないか」

    「明日の天気ですか?」

    ポワルンは首を傾げる。

    「明日、僕は大切な人と出かける約束をしているんだ。でも明日が雨だと、家から出られなくなってしまう。お願いだ、明日だけで良いから、天気を晴れにしてくれないか?」

    「どうしましょう。私、天気をある程度自由に変えることができるでしょう。だからそういう話をよく持ちかけられるんですよ。明日は運動会が嫌だから雨にしてくれだとか、片や明日は大事な試合があるから快晴にしてくれだとか、そんなことを言われるこっちの身にもなってくださいよ。ポケモンが技を使うのだって、結構疲れるんですよ」

    「そんな、お願いだよ。僕にできるお礼なら、なんでもするからさ」

    「本当でしょうか。実際に私が天気を変えると、もうお前は用済みだとお払い箱にされることがよくあるんです。お礼をするとか言っておいて卑怯です。あなたも同じことを考えているかもしれない」

    「そんなことはない。私はしっかり働き、恋人と真剣に交際する真面目な人間だよ。恩を仇で返すなんてできる人間に育てられていない。誓えるよ」

    男は必死なようで、ついにはポワルンに土下座をし始めた。今までそんなことをされたことがないポワルンは、流石にためらってしまう。男の方もここまで来たら引くことはできない。今我慢をすれば、素晴らしい明日が待っている。こう思えば、こんな行為安いものだ。
    雨に濡れ、恥を捨てて頼み込んでくる人間を見捨てることは、ポワルンにはできなかった。
    暫くした後、ポワルンは頷いた。

    「分かりました。あなたの頼みを引き受けましょう」

    「本当か、ありがとう。で、君は何が望みだ?」

    「あなたの家でしっかりとした夕食をご馳走してください。それと、一晩泊まらせてください。それで結構です」

    「そんなことなら、お安い御用だ」

    男はポワルンを抱きかかえ、自分の家の中へ戻っていく。
    その日の夜は、ポワルンにとって幸せな一晩になった。男が殆ど手作りした手料理をお腹いっぱいに食べ、汚れていた体を風呂で洗うことができ、そして布団で寝ることができた。与えられた布団はここ最近の天気が悪いので干したてではないが、外で寝ることと比べたらずっと快適だった。ポワルンにとって、満足いく時間を過ごすことができたのは確かだった。
     




    次の日。天気は、予報通り雨だった。相変わらず雲は空を隠し、冷たい雨を地面に叩きつけている。外出するのも億劫な程、雨量は多い。
    すっかり満足したポワルンは、男の家の玄関先にいた。


    「昨晩はありがとうございました。いくらあなたの望みのためとはいえ、あんなに良くして貰えるなんて思いませんでした。お陰でとてもぐっすり眠ることができましたし、腹も満たされて満足です」

    「それは良かった。で、約束なんだが」

    「はい。もちろん私は約束を守ります。本日の天気を晴れにしてあげましょう」

    男は心から喜んだ。これで、彼女と堂々と出かけることができる。

    「ああ本当にありがとう」

    「お礼を言うのはこちらの方です。では早速」

    ポワルンは曇る空を睨みつけ、全神経を集中させていく。その様子を、男は後ろから黙って見守った。

    ポワルンの横顔は真剣そのものだった。技を使うのが疲れるというのはあながち間違いではないようだった。小さく唸りつつ、祈り続けている。男も、思わず生唾を飲み込んだ。
    すると、天気に変化が訪れる。先程まで勢いよく降り注いでいた雨が止んでしまう。どう見ても裂けることがないと思われた厚い雲に亀裂が入り、太陽の光が漏れてくる。邪魔な雲が自分から退いているみたいだ。しかし、これは目の前の小さなポケモンの力なのだ。
    やがて灰色の雲が全て消え、辺りは快晴になった。同時にポワルンの形も太陽のように変わり、顔全体が赤く染まった。


    「ふう、終わりましたよ。これで借りは返しましたからね」

    「凄い、まるで魔法使いだな。改めてありがとう」

    「魔法使いだなんてそんな大層なものではありませんよ。私にできることをしただけですから」

    「いや、人間にはどう頑張ってもできないことだからな。尊敬するよ。じゃあ今から外出する準備をするよ」

    「そうですか。では私も当てもなくうろつくことにしましょう」

    「毎日は無理だが、時々なら家に来ても良いよ。またご馳走しよう」

    「それはありがたい。食事に困ったらまた訪問します」
     
    男とポワルンは仲を深め、そしてそれぞれの生活に戻っていった。今日は素晴らしい一日になることを互いに信じて。






    同時刻、男が住んでいた地域から少し離れた近隣の町。
    この地方では、今日雨が降ることはないと予報されていたが、突然空に雲がかかり雨が降ってきてしまった。予想もしていなかった出来事に住民達は慌て、雨がしのげる場所へと駆けていく。
    とある老人も、天気予報を信じて傘を持ち歩いていなかったので、服や髪の毛は濡れ、酷い格好になっていた。


    「やれやれ天気予報が外れるなんて。今日はついていない」

    老人は誰に話しかける訳でもなくそう呟いた。その老人の横にはポワルンがいる。このポワルンは男と仲良くなったポワルンではなく、老人と長年一緒に暮らしている家族、全く別のポケモンだった。突然の雨のせいで、ポワルンの体は青色へと変化している。

    「困ったな、これでは家に帰れない。ポワルン、ちょっとにほんばれをしてくれないか?」

    「もちろん、お安い御用です」


    老人のポワルンは空に向かって念じだす。するとまた雲が動き始め・・・






    ――――――――――


    今回初めてお題に挑戦してみました。
    ちゃんと、お題を生かせていると信じています。

    フミん



    【批評していいのよ】
    【描いてもいいのよ】


      [No.2421] 海の上ゆらゆら 投稿者:小樽ミオ   投稿日:2012/05/14(Mon) 22:21:15     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     はじめまして、読ませていただきました。

    > 遥か東方の海は、水平線を描かず。

     ここ、大好きです。快晴を表現するのに空の雲ではなくて、一見空とは遠そうな水の上の景色が使われていて、なんだか魅力的でした。蜃気楼でしょうか。水面きらきら、景色ゆらゆら。

     キマワリいわく「汚い言葉」で空を罵るアメタマが、最後は子どものおまじないのように口にするのがかわいらしい(あれれ 笑)ですね!
     対照的なキマワリは、お決まりのニコニコ顔で空を見つめていそう。まぶしいなあ。

     では、これにて失礼いたします。どうもごちそうさまでしたm(_ _)m


      [No.2420] 晴れ晴れ爽快。 投稿者:朱烏   投稿日:2012/05/14(Mon) 12:06:07     28clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    晴れた。
    快晴。
    三日三晩降り続いた忌々しい雨の痕跡も、ほとんど無くなっている。
    昨日、やけに機嫌のいいアメタマが、悪いことが続いた後には絶対にいいことが起こるさとかなんとか言っていたが、その通りになった。
    ただ彼は、落ち込んでいる私の考えている『悪いこと』が雨天のことだとは思わなかったようだ。

    そして今。
    木の下でうずくまるように佇んでいるアメタマは、明日雨になりやがれ太陽の莫迦野郎、と酷く汚い言葉を吐いている。
    三日も雨を浴び続けたくせに随分と欲張りなものだ。

    向日葵に似た花びらを、太陽に向けて開くと、心地よい熱が全身を駆け巡る。
    嗚呼、気持ちいい。
    何だか君の暖かさを嫌う者もいるようだけど、私は君が大好きだよ。


    キマワリ


      [No.2419] 晴れの座談会 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2012/05/14(Mon) 07:45:45     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    キュウコン「さあ、今日は私の先輩との座談会です。お、来ましたね。グラードンさん!」

    グラードン「おお、久しぶりだねキュウコン君。しかし先輩はいいよ。自分の初登場は君より遅いんだから」

    キュウコン「そんなことはありませんよ。私は特性『ひでり』を後からもらいましたから、れっきとした先輩です」

    グラードン「そ、そうか。ではさっさと始めようか」

    キュウコン「はい。まずはグラードンさん、2010年の世界大会はお疲れさまでした」

    グラードン「いきなり古い話題だな、おい」

    キュウコン「確かに。でも優勝者の手持ちにいたそうじゃないですか」

    グラードン「その通り。決勝は確かルギア君が相手だったね。お互いその大会では中々人気がなかったから、なんとも言えない気分だったよ。まあ、自分は後半から増えたけど」

    キュウコン「バンギラスやメタグロスをはじめとして、一般ポケモンにはかなり強かったですからね。ホウオウさんも似た境遇だったはずです。グラードンさん自身はルンパッパと組むことが多かったようで」

    グラードン「本当は、ワタッコと組みたかったんだけどね。かわいいし。ルンパッパには雨対策兼サポートとして戦ってもらったが、非常に助けられた。カイオーガが腰巾着にするのもうなずけるな」

    キュウコン「そう言えば……2004年の全国大会でもグラードンさんは優勝しましたよね」

    グラードン「カイオーガと一緒にな。あやつは敵に回せば恐ろしいが、味方にすれば頼もしい限りだった」

    キュウコン「カイオーガさんとの仲はどうなんですか?」

    グラードン「悪くはない。ついこないだも、うっかり現れたレックウザを一緒に撃退したしな」

    キュウコン「へえ、それは意外ですね。てっきり犬猿の仲なのかとばかり」

    グラードン「それは使う側の偏見だ。そういう周りの声が我々の仲を険悪にするのだよ。他にもこういう奴がいるな、晴れは弱いから嫌い、雨は強いから好き。コンセプトがまるで違うせいでよく嫌われるが、使わないポケモンを勝手に毛嫌いするなと。迷惑極まりない」

    キュウコン「その話、実によく分かります。私は最近ニョロトノ、バンギラスとユキノオー、カバルドンと仲良くなったんですが、きっかけが主人同士の言い争いなんですよ。お互い全く譲らないので、こちらは愚痴ばかりでした。私の友人のキュウコン、は同じパーティに天候変化役が何匹もいるので恵まれていると言えますね」

    グラードン「なんと、そのようなパーティがあるのか。自分もかつてカイオーガに背中を預けた経験があるせいか、とても懐かしい」

    キュウコン「異常気象パと言われるパーティですね。ほとんど全員が天候を変えられるので、他のポケモンの邪魔にならないのが魅力とのこと。私もあのようなパーティで戦いたいです」

    グラードン「自分も、今一度カイオーガと肩を並べたいものだよ」

    キュウコン「……おっと、そろそろお時間ですね。ここからは一杯やりながらということで、一旦お開きにしましょうか」

    グラードン「そうだな。今日はありがとう、久々にゆっくりできたよ」

    キュウコン「こちらこそ、ありがとうございました。では行きましょうか」









    お題が晴と聞いて即座に思いついた。本当はキマワリとかチェリムとかワタッコもおあつらえ向きだろうけど、それはまた別のお話。


      [No.2418] 晴れ晴れ不快。 投稿者:朱烏   投稿日:2012/05/14(Mon) 07:38:17     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    晴れた。
    快晴。
    遥か西方の山に、雲はかからず。
    遥か東方の海は、水平線を描かず。

    史上最悪の天気だ。頭のアンテナが萎れた。
    三日降り続いた雨の代償は、これか。
    土砂降りの中で小躍りしている場合じゃなかったんだ。
    たっぷりと溜まっていた水たまりも、悉く消失してゆく。俺の居場所が消えてゆく。
    なんなんだ、もう。太陽、お前のことだ。さっさと西の山の向こうに隠れてしまえ。

    でも、憎たらしいほど時間の流れは遅くて、南中の時刻すらまだまだ来そうにない。
    しようがないから、木陰に隠れて、空を呪った。
    あーした、あーめに、なーあれ。


    アメタマ



    10分ででっちあげました


      [No.2417] にほんばれ 投稿者:紀成   投稿日:2012/05/13(Sun) 14:29:10     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    あめが ふりつづいている

    あめが ふりつづいている

    あめが ふりつづいている

    あめが ふりつづいている

    ハスブレロの あまごい!
     
    あめが ふりつづいている

    あめが ふりつづいている

    あめが ふりつづいている

    あめが ふりつづいている

    オタマロの あまごい!

    あめが ふりつづいている

    あめが ふりつづいている

    あめが ふりつづいている

    あめが ふりつづいている

    あめが ふりやんだ!

    キレイハナの にほんばれ!

    ひざしが つよくなった!

    ひざしが つよい

    ひざしが つよい

    ひざしが………


      [No.2416] 晴れ狐 投稿者:穂風奏   投稿日:2012/05/12(Sat) 23:58:28     27clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     心までどんよりしそうな雨雲をどこかへ飛ばしたくて
     誰よりも早く飛び出してみる

     吹雪で凍えそうなときも、砂嵐で目が開けられないときも
     私がいればすぐに太陽が顔を出す

     天気がいいと気分も晴れて
     いつもより元気に駆け回りたくなって
     いつもより強くなれたような気がして

     お日さまのあたたかい光が気持ちいいから
     みんなの笑顔を見られることが嬉しいから
     私は「晴」が大好きだ

     雨の方が好きだなんて言わないで
     砂に紛れて隠れたいと逃げないで
     せっかくの「晴」なんだから

     誰もが笑って過ごせる
     そんな「晴」が、いつまでも続きますように


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

     「晴」と言ったらキュウコンさん! ということで書いてみました
     晴れパを使う自分としては、ほぼ毎回出てくるバンギやニョロトノのおかげで、キュウコンを活躍させてあげられないのが残念です。私の力量不足もありますけど

     さて、今回のような形は初めてでした。詩っぽい形式もまた小説とは変わった良さがあって、難しさもありますね。またいつか挑戦してみたいと思います
     それでは失礼いたしました


      [No.2415] 晴空の理 投稿者:巳佑   投稿日:2012/05/11(Fri) 14:17:58     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     むかしむかし、その世界の空はまっくらでした。
     まるで黒い紙がべったりと貼られているようなもので、消える気配は一つもありませんでした。

     それより以前は、その世界の空は綺麗な青で澄んでいました。
     しかし、この世界の人やポケモンが何かに悲しんだり、誰かに憎しんだりすると、その気持ちが風に乗って空にたまっていくことがありました。
     それがつもりにつもって、最初はにごったような灰色に、だんだんと黒いまだら模様が広がり、最後はまっくらになってしまいました。

     もう、このまま笑うこともなく、その世界は終わってしまうのかと思われたときのこと。
     もふもふとした白い毛を乗せた龍が一匹、この世界にやってきました。
     人々やポケモンたちはその龍がこの世界にトドメをさしにきたのかと恐れていました。

     誰も手を出せないままでいると、白い龍は青い焔を吐きながら踊り始めました。
     大きな翼をはためかして、右にくるりと回ったり、左にくるりと回ったり、または空をおおきく泳いでいました。
     
     枯れ堕ちた空に青を咲かせましょう
     凍え堕ちた空に青を咲かせましょう
     人の子や
     獣の子や
     笑えや笑え
     喜べや喜べ
     枯れ堕ちた空に青を咲かせましょう
     凍え堕ちた空に青を咲かせましょう

     白い龍の青い焔が空に登っていくと、なんと不思議なことに黒い空が燃えていきます。
     そこから一筋の光が現れたかと思えば、その焼けた隙間からは青い空が顔を覗かせていました。
     人々やポケモンたちは手を取り合って喜びあい、手をたたきあって笑いあいます。
     その感情が幾重(いくえ)にも青い焔に乗って、どんどんと青い空が広がっていきました。

     やがて全ての黒い空が焼き払われ、空は一面、綺麗な青が澄んでいました。
     
     その青には人々とポケモンたち、そして白い龍の笑顔が咲いていました。
     
      

    【書いてみました】
     お久しぶりです、巳佑です。
     テーマが晴れということで、何を書いてみようかなぁと思って、『晴』という字をよく見たら……日と青という文字が出てきて、想像を膨らませたのが今回の物語です。レシラムが花咲じいさん的なことになっておりますが、『あおいほのお』と『晴れ』がうまく組み合わさっていたら幸いです。

     ありがとうございました。

    【何をしてもいいですよ♪】
    【一ヶ月ぶりに投稿させてもらいました】 


      [No.2414] ゴーヤロック神からアドバイスを頂いただと…… 投稿者:moss   投稿日:2012/05/07(Mon) 17:10:49     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    > ヒロイン(と呼んでいいのか……)の窪田さんは、一見勇敢で生き物への思いやりを持つ少女のような印象を受けますが、
    > その実態はとんでもない性質を持つ、狂人と呼ぶに相応しい存在だった、という展開が面白かったです。


    ありがとうございます! 実はヤバイ人という展開をやってみたかっただけでもありますがw

    > 欲を言うなら、
    >
    > >植物に向かって謝らせたり。それだけでも十分変人なのに、彼女は死んだ生き物ーーつまり死骸までもを大切にした。あの事故の多い電信柱の前を通ったとき、車に轢かれた可哀想なポケモンの死骸を見つけると、彼女は駆け出して僕に埋めてあげようと言いだす始末である。
    >
    > 上の文のある段落で初めて窪塚さんの名前が出てくるわけですが、結構早い段階で「変人」というネガティヴな印象を与えるワードが出てきています。
    > これは読者に「窪塚さんは普通じゃ無さそうだ」と警戒心を与える結果になっているので、後半の狂気的なシーンのインパクトが若干薄れているように思います。

    確かに展開がある程度予想できてしまいますね。ありがとうございます。


    >
    > 上二つで言いたかったのは、後半の窪塚さんの狂気染みたシーンをさらに活かすために、直前まで窪塚さんをまっとうな人間に"偽装"しておいた方が面白いんじゃないか、ということです。
    >
    > 参考になれば幸いです(´ω`)


    参考になりすぎてヤバイですありがとうございます!!
    面白さを私ももっと追求しなきゃ駄目ですね。

    ありがとうございましたっ!!


      [No.2413] 血桜舞う季節 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/05/06(Sun) 22:47:47     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    すっかり桜は散ってしまいましたが感想を。

    ヒロイン(と呼んでいいのか……)の窪田さんは、一見勇敢で生き物への思いやりを持つ少女のような印象を受けますが、
    その実態はとんでもない性質を持つ、狂人と呼ぶに相応しい存在だった、という展開が面白かったです。

    欲を言うなら、

    >植物に向かって謝らせたり。それだけでも十分変人なのに、彼女は死んだ生き物ーーつまり死骸までもを大切にした。あの事故の多い電信柱の前を通ったとき、車に轢かれた可哀想なポケモンの死骸を見つけると、彼女は駆け出して僕に埋めてあげようと言いだす始末である。

    上の文のある段落で初めて窪塚さんの名前が出てくるわけですが、結構早い段階で「変人」というネガティヴな印象を与えるワードが出てきています。
    これは読者に「窪塚さんは普通じゃ無さそうだ」と警戒心を与える結果になっているので、後半の狂気的なシーンのインパクトが若干薄れているように思います。

    また、

    >だが窪田結衣はとある事件を引き起こし、小学五年生のときに転校してしまった。それ以来彼女に会ったことは無いし、何の噂も聞かなかった。

    同じ段落にこの文も入っていますが、これは別の段落へ移動させて、かつ引っ越した理由をぼかしてみると、より面白い展開になると思います。

    上二つで言いたかったのは、後半の窪塚さんの狂気染みたシーンをさらに活かすために、直前まで窪塚さんをまっとうな人間に"偽装"しておいた方が面白いんじゃないか、ということです。

    参考になれば幸いです(´ω`)


      [No.2412] 走馬灯 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/05/06(Sun) 22:22:29     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    短めですが感想を。

    私は「ゼルダの伝説」シリーズの中でも、64の「ムジュラの仮面」が一番好きです。
    三日後に滅びてしまう世界の中で、人々はそれぞれの形で死と滅亡に向き合おうとします。
    人によってその姿勢は多種多様ですが、どれもとても人間らしく、記憶に残るシーンばかりでした。

    このお話も、回避できない滅びを前にした二人の心情をつぶさに描いたものになっています。
    二人の安らかな語りと、行を追うごとに壊れていく世界の対比が、悲しくも美しい模様を描いています。

    二人の死という結末は変えることができず、読者はかなり早い段階でその事実を知ることになります。
    ずっと前にどこかで書いた記憶があるのですが、結末の読める物語というのは通例、つまらないものになりがちです。
    しかし、このお話のように「結末(=滅び)を前提とした」形を取る場合は、結末が明確に、かつ動かしようが無いと分かっているほど、かえって強い印象をもたらします。

    以前、同じように「滅亡を前にした人々」をモチーフにして一本書いて、今一つ綺麗に決まらなかった経験があるので、
    いずれどこかでリベンジを決めてやりたい、そう思わせてくれるお話でした。

    今後の更なるご活躍を期待しております(´ω`)


      [No.2411] 世界で一番の貴方へ 投稿者:ことら   《URL》   投稿日:2012/05/05(Sat) 23:03:12     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     爆発音が聞こえる。

    ダイゴさん。
    どうしたの?久しぶりにそう呼ばれたな、ハルカちゃん。
    ダイゴさんに会ったのは、ちょうど今の私くらいの時で、石の洞窟でしたね!
    ああ、そうだね。真っ暗なところに手紙届けに来たのがハルカちゃんだったね。女の子一人ですごいなぁと僕は思ったよ。

     続くコンクリートが崩れ落ちる音。

    私、その時なんてかっこいいんだろうって思いました。一目惚れっていうんですかね、とにかく好きです。
    ふふっ、知ってるよ。僕もハルカちゃんが大好き。
    でもそれ以降、全く会えなくて寂しかったんです。だから川の向こうで会えた時は凄い嬉しかったんですよ!
    ハルカちゃんが僕を好きでいてくれたから、とても嬉しいよ。
    その頃からではないですよね?
    知ってたのか。もう少し後だったけどね。でもとにかくハルカちゃんは僕のことを一人の男として好きになってくれたことは嬉しかったよ。
    前にも言いましたけど、ダイゴさんを好きって言って、ダイゴさん以外のどこを見ればいいんですか。
    ハルカちゃんは本当に人を見るんだね。世の中には人ではなくて、お金とか地位しか見ない人間が多いんだ。

     異変に気付いた人々が次々に通報する。

    それからカクレオンにぶつかった時は、道具くれましたよね。デボンスコープ、もう動かないけど。
    ものはいつか壊れてしまうものさ。あれから長いこと動いたし、長持ちした方だよ。
    でも私がダイゴさんからもらった初めてのプレゼントはあれなんですよ。だから大事にしてたんです。
    そうだったの。もう少し気の利いたものをあげれば良かったね。

     集まってきた人は、モンスターボールからポケモンを繰り出した。

    次にもらったのも、トクサネのダイゴさんの家に行った時の秘伝マシンです。
    あれ、そうだっけ?ハルカちゃんにはたくさんプレゼントしたから覚えてないな。
    もう、ダイゴさんはどうして私の気持ちを考えてくれないんですか。女の子が好きな人から貰ったものは、全部覚えてるものです。
    そうなんだ。やっぱり僕は幸せだな。こんなに好きな人に愛されてるなんて。
    …愛してますよ。ずっと。初恋は実らないとか言いますが、私が好きになって愛した人は生涯でダイゴさんだけです。

     それぞれ状況にあった技を指示する。

    それから、グラードンと戦った時もカイオーガと戦った時も、ずっと側にいてくれた。私はダイゴさんが側にいてくれるだけで頑張れました。
    僕は本当に何も出来なかった。空をみて現状を嘆くくらいしかできないのに、ハルカちゃんは惨事に立ち向かっていったね。なんて強い子だろうって思った。同時に勝てない、いつか負けるって思ってたよ。でもその頃から好きだったのかもしれない。ずっと気になってた。
    だから私が帰って来るまで待っててくれたんですよね。凄い嬉しかった。

     人だかりになっていた。

    でもチャンピオンって黙ってたのは今でも思い出すとムカムカします。
    前も言ったけど、怖かったんだよ。ハルカちゃんが僕自身を好きになってくれても、チャンピオンっていう地位に目移りしちゃうんじゃないかって。
    だから私はダイゴさんの元カノじゃないんですから!ダイゴさんの役職を知ったところで、目移りするわけないじゃないですか!それに…

     上空にはヘリコプターが飛んでいた。

    何も言わずダンバルおいて行っちゃうし!
    だからちゃんとエントリーコール出たじゃない。
    出ればいいってもんじゃありません。おいてかれた私の気持ちはどうなんですか!
    だからシンオウの珍しい石をお土産に…冗談だよ。知ってたから怖くて逃げ出した。僕は臆病だからハルカちゃんより弱い男なんて受け入れてもらえないんじゃないかって思ってたんだよ。
    ずっと思ってましたが、ダイゴさんは考えすぎです。考えたことを話してくれないから不安になるんです。
    そうだね。付き合うようになってから会話の数は増やしたつもりだったけど、やっぱり不足だったかい?
    私は欲張りだから、ダイゴさんともっと話したかったです。ダイゴさんと恋人になれて嬉しくて、たくさんダイゴさんのこと知りたいと思いました。初めての夜は、最後までできなかったこと覚えてますか?
    そんなこともあったね。あの時は僕も緊張しててね、隠すのが大変だったよ。

     それでもこの状況は変わらなかった。

    ダイゴさんがプロポーズしてくれた時は凄い緊張してたのを覚えてます。ダイゴさんは緊張すると物凄い早口になりますから。私の聞き違いかと思いましたもん。
    そりゃあ緊張するよ。ハルカちゃんは解らないかもしれないけど、受け入れてもらえなかったら僕はただのロリコンじゃない。それに結婚した当時でさえ出来たから結婚したって散々陰口いわれてさ。3年後に一人目が出来た時は僕の容疑も晴れて嬉しかったな。
    妊娠したって一番喜んでくれましたよね。不安で仕方ない時もずっと励ましてくれた。そのことを友達に言ったら、有り得ないって言われたんですよ。
    えっ、なんで?
    旦那がそんな優しいのは有り得ないんだそうです。
    そうなの?だって僕がハルカちゃんの青春を全部持って行っちゃったようなものなのに、優しくしないのがおかしいと思うんだよなぁ。
    ダイゴさん。だから私はダイゴさんが好きです。初めて会った時からずっと好き。
    ありがとう。僕も大好きだ。ハルカちゃんが僕の妻で、とても嬉しい。

     さらに人は集まるが、事態は一向に収まらない。

    子供が大きくなって、ポケモンが欲しいって言われた時、ユウキに頼みましたよね。ユウキは自分の子供の面倒も忙しいのに、大変そうでしたよ。
    ああ、ユウキ君には悪いことしたね。いきなりポケモンが欲しいって言って、困らせた。けどお世話になってるからって最優先で用意してもらえて。僕はとてもいい人たちと知り合っているんだね。
    あの子たちも大きくなって、世界大会まで行きましたね。やっぱりダイゴさんの子なんだなぁって思いました。
    ハルカちゃん、自分の功績も忘れないでね。ハルカちゃんも強いよ。僕たちの子だもの、強いに決まってるさ。

    「父と母がいるんです!」

    私たちを必要としない年齢になった。ポケモンたちも支えてくれる。
    もう行こうか。僕たちはここに留まってはいられない。
    ねぇダイゴさん。世の中にはどんなに愛し合っていても、最期は一人だって言うじゃないですか。私は違う。最期の瞬間までダイゴさんの隣で、ダイゴさんの顔を見て。
    僕も同じだよ。最期の瞬間に愛してる人を見ながら死ぬことが出来る。残された方はこんな事故で悲しいかもしれないけどね。
    あなた。
    ハルカ?
    ううん、やっぱり何年経っても、ダイゴさんはダイゴさん。呼び方が変わっても、ダイゴさん。
    そうだね。ハルカちゃん。僕たちはずっと一緒だ。…もう行こう。ここではないどこか遠くへ。幸せな人生だった。だからこそ次の人たちも幸せであるように。
    はい。ダイゴさんと一緒で、私は幸せでした。


     リニアが爆発した。ほとんど原型を留めずに散っていた。
     テロと思われたが、原因は整備不良によるもの。
     乗客乗員全員が死亡。大惨事に連日新聞のトップを飾る。
     その中に大企業デボンコーポレーションのトップとその夫人がいたことは、マスコミがいち早く嗅ぎ付けたが、その子供たちは毅然と彼らを避けたという。

    ーーーーーーーーーーーーー
    スパコミで手に入れたダイハル小説があまりに感動しすぎて、その勢いで書いたもの。
    【好きにしてください】


      [No.2410] 川原の石 投稿者:ことら   《URL》   投稿日:2012/05/03(Thu) 01:23:53     103clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    やぶ蛇とはこのことだろうか。ゴーヤロック神に「ダイゴさんくださいいい!!!」と頼み込んだら、同じようで神の方が深く読み込んだダイゴさん像ができていた。しかしこのままでは引き下がれない。一度消えたこの話、もう一度書くべし。評価なんぞ知らん。書きたいからかく。

    前書き:ロンスト「流星をおいかけて」の前の話。読んでなくても解る。


     平日の穏やかな晴れの日は、道行く人もまばらだった。春の風がダイゴのスプリングコートを撫でる。首筋から入る風に、思わず身を縮めた。春とはいえジョウトはまだ肌寒い。薄い手袋では指先が冷たい。
     それでもこの大きな川沿いの道が一番好きだ。人でごった返していないし、野生のポケモンをたまに見ることができる。都会の鬱蒼とした人の中にいると、息が詰まりそうになる。対岸では暇なおじさんが釣りやゴルフをしていた。ガーディの散歩をしている人もいる。
     ダイゴは足を止めた。まだ平日というのに真新しい制服を着た女の子が川を見つめて座っている。
    「こんな時間からサボりかい?」
     なぜ声をかけたのか解らなかった。ただ何となくかけなくてはいけないと思った。ダイゴの声に、女の子は顔をあげる。横から見たときは気付かなかったが、左頬に大きなガーゼがあって、涙で濡れていた。
    「学校はどうしたの?」
    「行かない」
     手に握られていたくしゃくしゃになった紙を見せて来た。その要約はーー二度と来るな。
    「またどうして?」
     ただ黙って女の子は座ったまま左側にあった石を掴む。ダイゴは信じられなかった。その体格からは想像できないくらいに強い力で石は飛んだ。そしてそれは普通の人間ではとても届かないような川幅を越えて対岸にめり込む。
    「普通の人は対岸に石なんて届かない。届く私は異常なんだ。異常だから必要ないんだ」
     たまにポケモンと同じような力や特性を持つ人間がいるとは聞いたことがあった。集団行動を好む学校からすれば、こんな強い力を持つ人間は不穏分子でしかないのだろう。
     ダイゴは黙って足元の石を拾う。手首をひねってそれを投げた。水面に落ちるとぱしゃんと跳ねて、生き物のように水上を進む。そして対岸の草むらに消えて行く。
    「向こうに石が届くのが異常なら、僕も異常だね」
     驚いたように女の子がダイゴを見上げていた。
    「こんな真っ昼間から君を見てる先生は授業中だ。つまり君がどこ行こうが関係ない。それにもうすぐお昼だ」
     ダイゴの差し出す手を掴んだ。その時、初めて彼女が笑った。

     昼間から制服を着た中学生の女の子を連れてる男は、不審者とうつっているようだ。コガネシティですれ違う人の視線が言っていた。けれどダイゴは気にもせず、たわいのない話をしながら歩く。そして都会の中の静かなレストランへと入った。
    「そういえば君の名前聞いてなかったね。僕はダイゴだよ」
    「ダイゴさんですか」
     彼女の視線はやや下を向いた。そして消え入るような声で話しだす。
    「私は……その、ガーネットです」
    「へぇ」
     宝石や鉱物の話になると聞く名前だ。それが人の名前になると、ガーネットの反応を見る限り苦労してきたのだろう。
    「変な名前なのは解ってるんですけど、生まれた時からこの名前ですし」
    「いや、いい名前だよ。努力、友愛、勝利を意味する石だ。赤く燃える美しい色をしている。気高い宝石だね」
    「あっ……そう、ですか?」
     少しだけガーネットの顔色が明るくなった。
    「うん。僕はそう思うな。僕の友達がね、宝石の名前を持つ子はとても大切な役割があって、どんな困難にも立ち向かうんだと言ってた。古いホウエンの昔話なんだけどね」
    「ホウエン?」
    「僕はホウエン地方に住んでるんだ。普段はポケモントレーナーをやっているんだけど、たまにこうしていろんなところに出向くんだよ。ガーネットちゃんはホウエンに来たことあるかい?」
    「ないです。私のお父さんもトレーナーなんですけど、あちこちの大会にいっててほとんどいませんし、お母さんは仕事に行ってるので」
    「なるほど。ホウエン地方はね、とにかく海が綺麗なんだ。家の近くの海も、ポケモンが多くてね。緑も豊かでね、とにかくおいしい木の実が多いんだ。一度来てみなよ。本当にいいところだから」
    「私のお父さんもホウエン地方の出身らしくて、昔はそっちに住んでたらしいんですけどあんまり覚えてなくて」
     料理が運ばれてくる。デミグラスソースの乗ったおいしそうなオムライスが二人分。スプーンを左手で取るガーネットを見て、ダイゴもスプーンを持った。彼女はちゃんと食べるか気になったが、心配は無用のよう。
    「ガーネットちゃんの名前は、その昔話にあやかってつけたのかもね」
    「へ? 昔話ですか? 宝石の名前ってやつですか?」
    「お父さんがホウエンの人なら知っててもおかしくないだろうしさ。紅玉と青玉という名前を持った人たちがいてね、その人たちは陸と海とつながっているっていう話だよ。今で言えばルビーとサファイアって名前かもしれないし、違う国の言葉での名前かもしれない」
    「ルビー、ですか」
    「そうだよ」
    「私が生まれた時、お父さんはルビーにしたいって言って来たらしいんです。でも突然、絶対だめだ、っていきなり言い出したらしくて」
    「ああ、やっぱりその話を知ってるのかもね」
    「だからって、こんな名前ないと思ってたんですけど、ダイゴさんが初めていいって言ってくれたし、少し自信もてました」
     普通に笑うんだな、とダイゴは思った。中学生にしては淀みきった顔だったのに、今では年相応の女の子にしか見えない。
     それにしてもただ力が人より強いというだけで、学校が来るなと言うのだろうか。それと頬のガーゼのことも。出会ったばかりで深くは聞けない。話したくなるまでは聞かない方がいいとダイゴは思った。

     食後のコーヒーを飲む頃には、すっかり打ち解けてしまっていた。初対面であるはずなのに、そんな事を思わせないくらいに。ガーネットはフルーツの乗ったおいしそうなケーキを食べている。それを正面からダイゴは見ていた。じろじろ見ていたら失礼かなと目をそらすけど、自然と彼女も見ている気がする。そして目が合うとガーネットの方からそらした。
    「もうこんな時間なんだね」
     ダイゴは左腕にしている時計を見た。すでに午後2時になってしまっている。
    「ガーネットちゃんは家に帰るんだよね」
     帰りづらいのだろう。ガーネットは今までのテンションから一段落ちたトーンで話す。
    「あんまり帰りたくないです」
    「けどちゃんと今のことは話さないとね。一緒に説明しよう。きっと解ってくれるよ」
     店を出る。小さな子供と歩くように、ガーネットの手を握って。すれ違う人々は相変わらず怪訝な視線を向けるけれど、二人は気にしていなかった。

     不審者を見るような目で見られる。それはそうだ。娘が知らない男を連れて来て、親が警戒しないわけがない。特に父親が見る目は、敵を近づけまいとする目だった。その警戒を解くには、まずダイゴは自分から情報を出す。
    「ホウエンでポケモントレーナーをしているダイゴと言います」
    「これはどうも。私はトレーナーのセンリです。それで、ホウエンのトレーナーがうちの娘に何のようですか」
    「川原で会いました。さっきのことですよ。僕はそれを伝えにきました」
     センリに伝えるのは、ガーネットのこと。学校のこともそう、特性のこともそう。トレーナーがポケモンを語るのと同じくらいにダイゴは話す。事件のことは知っていたが、ガーネットに来た紙は知らなかったようだ。
     話して行くうちに、センリはかなりガーネットの特性のことは注意していて、絶対に人を叩いたり掴んだりしてはいけないと言っていたことが解る。それが例え嫌なことを言われても、絶対にダメだと。それなのに……
    「集団で金銭を?」
    「カツアゲっていうのかな。新入生だからやりやすいのだろうって学校の先生も言っていたね」
     生徒を正しく指導できない学校ではよくあること。集団で自分より大きな人間に囲まれ、銀色の刃で斬りつけられて、どんなに禁止されていてもそうするしか自分の身を守れなかった。見た目からは全く想像できない力で、一人一人を殴り、骨を折って戦闘不能にさせる。
     その時のガーネットは必死だったのだろう。左の頬から血が流れてることも気付かなかったと言った。自分の血か相手の血か解らないけど、床は赤く鉄の匂いがしていた。物音に気付いた先生が来た時には、ガーネットはそこに立ち尽くしていた。
    「とにかく娘がお世話になったようで。どうもありがとうございます」
     これ以上は出会ったばかりの人間が関わることではない。ダイゴは一礼すると玄関に向かう。ノブに手をかけると、それは勢いよく外に開いた。
    「ただいま!」
     ダイゴは目を疑う。ガーネットを一回り小さくしたような女の子が入って来たのだ。
    「あれ、おきゃくさん!? こんにちは!」
     使い込まれたランドセルを背負って、にこにことダイゴを見ている。ガーネットの妹で、くれないという名前らしい。すっと家の中に入って行く。
    「くれないちゃんとそっくりなんだね」
    「違いは身長と性格だけってよく言われます」
     さっき家に入ったばかりのくれないは、ダイゴを見送るようにガーネットの隣にいた。見送るというのは口実だろう、どちらかといえば姉の側にいたいといった感じだ。
    「じゃ、僕は帰る。今日は楽しかったよ、ありがとうねガーネットちゃん」
    「いえ、こちらこそ、ありがとうございました」
     ガーネットが一礼する。それに倣ってくれないもお辞儀をした。
    「あの、また会えますか?」
    「そうだね」
     ダイゴは鞄から予定の書かれた手帳を取り出す。
    「もう少しジョウトにはいるから、また会えるかもね。よかったらこれが連絡先だから、渡しておくよ」
     この日はそうして別れた。くれないが最後まで嬉しそうな顔でダイゴとガーネットを見ていた。

     ジョウトでの用事は忙しく、コガネシティからエンジュシティを往復する毎日だった。空いた時間をみつけては、観光のためにスズの塔や焼けた塔の近くまで行く。スリバチ山を歩いて気に入った石を集める。
     石はその土地の神様が宿っているという。だからこそ持ち帰ってはいけないと言われていた。それを信じるわけではないが、どうしても気に入ったものは手に入れたくなってしまう。
     ダイゴは半分あの時のことを忘れかけていた。石をながめ、ジョウトに来た時のことを思い出していた。突如、突き上げるようにガーネットの顔が浮かぶ。予定は空いている。帰るまでにもう一度会っておきたい。ダイゴはモンスターボールを取り出した。鋼の翼エアームドがあらわれる。
     コガネシティに降りると、わずかな記憶を頼りにダイゴは歩き出した。一度行っただけだが、何となく道は覚えてる。この川を上流に沿って歩いて、そしてウバメの森が遠くに見える橋を……
    「なにするのよ!」
     激しく言い争う声が聞こえる。
    「俺たちにこんなケガさせといて、なんでお前が平気で歩いてんだよ! 金くらいだせ」
     白い包帯を巻いた集団が、女の子の髪を引っ張っている。
    「こいつ校長にもう二度と人を殴らないって誓約書かかされたんだぜ」
     抵抗しない相手を殴りつける。それが上級生のすることなのか。
    「エアームド」
     鋼の翼から風の刃が飛んだ。数人の髪の毛を切り落とし、空へ消える。
    「うわっ!」
    「なんだ!?」
    「んだよおっさん」
     振り向いた不良たちがダイゴに気付く。
    「ダイゴさん!?」
     驚いたようなガーネットの声がした。
    「知り合いかよ」
    「うぜえよおっさん、ナンパに」
     再びダイゴは命令する。エアームドは固い翼を振り切った。エアームドの抜けた固い羽が地面をえぐりとって落ちる。
    「ナンパって言うのね、誘う側を不快にさせないことを言うんだよ」
     ポケモントレーナーがポケモンを使って人間に攻撃することなんてまずない。不良たちもそうくくっていたから、ダイゴの行動には誰もが黙った。
    「と、トレーナーのくせに」
    「そうだそうだトレーナーが人間攻撃したら」
     ポケモントレーナーが意図的に人間を傷付ければ、その資格は簡単に剥奪される。そんなことは常識だからこそ、不良たちはダイゴを挑発したのだ。
    「……想像以上に頭の悪い人間っているんだね」
     もう一つボールが開く。そこから出て来たのは土偶ネンドール。目のようなものがたくさんあり、その場が静かになる。
    「ポケモンは攻撃するだけじゃないんだよ。お家に帰って、パパやママから常識を学んでおいで」
     ネンドールはダイゴの意図を汲み取った。まばたきしている間に不良と共に姿は消え、数秒後にネンドールだけダイゴの元へと戻ってくる。
    「大丈夫かい?」
     ガーネットは何が起きたか解ってないようだった。誰もいないことを確認して、ダイゴの顔をみた。
    「いや、あの、ダイゴさんまさか・・・」
    「ああ、彼らはそれぞれの家に帰しておいたよ。大丈夫だ、あれなら傷付けたわけじゃないから責任は問われない」
     ネンドールとエアームドがボールに戻っていく。そしてガーネットを抱き起こした。
    「一緒に帰ろう」
     ガーネットは何も言わず下を向いてダイゴの少し後ろを歩く。ダイゴが声をかけても、生返事しか返ってこない。
    「さっきのやつ」
     ガーネットが消え入りそうな声で言った。
    「昨日家にも来ました。親つれて、こうなったのは私のせいだから治療費はらえって、なんで私はこんなにまでされても何にもできないんですか?」
     ダイゴは何も言わずポケットからハンカチを取り出して、ガーネットの涙をぬぐう。彼女がハンカチをつかむと、肩を優しく叩いた。
    「ガーネットちゃんは何も悪くない。あんなことされても我慢していたのは本当に偉いと思う。僕だったらできない。何があっても絶対に手を出してはいけないなんてことは、僕はあり得ないと思う」
    「ダイゴ……さんっ!ダイゴさん!」
     今まで押さえていたものを一気に爆発させたかのように、ガーネットが声をあげていた。小さな子をあやすかように、ダイゴはガーネットを抱きしめる。

     対岸では暇なおじさんが釣りやゴルフをしていた。ガーディの散歩をしている人もいる。野生のペルシアンが川の魚を狙っていた。その後ろではニャースが見ている。どうやら子供に狩りを教えているようだ。
     その様子を見ながら、ダイゴはガーネットと一緒に川原で話していた。いつの間にか世間話になっていて、あのことなどなかったかのようだ。
    「ダイゴさんってポケモントレーナーなんですよね」
    「うん、そうだよ」
    「ポケモンってかわいいですか?」
    「かわいいよ。愛情をこめた分、期待に応えてくれる。言葉は話せないけど、僕にとっては人生のパートナーだ」
     自分のポケモンを持っていないとその辺りはいまいちピンと来ないのだろう。ガーネットは目の前のポッポを見て、不思議そうな顔をしている。
    「そうだ、ガーネットちゃんもポケモンもってみたらどうかな?」
    「えっ、私育てたことないですし」
    「大丈夫、ポケモンだって色々いて、懐いてくれる……そうだ実家にエネコっていうかわいいピンク色の猫がいるんだけど、どうかな?」
    「そんな、もらっちゃ悪いような……」
    「大丈夫だよ。会社の近くにはよくいるんだ。大人しいポケモンだからすぐ慣れてくれるよ」
     そうと決まったら。ダイゴは立ち上がる。

     ポケモンセンターでエネコの入ったボールを受け取った。そして外に出ると早速ボールから出してみる。
    「これがエネコなんですね。笑ってるみたいでかわいい」
     喉をごろごろ鳴らし、エネコはガーネットに甘えた。エネコをおそるおそる抱き上げて、頭をなでている。ふんわりとした猫の毛がガーネットの腕に収まる。
    「でも、もし力いれすぎてつぶしちゃったりしたら……」
    「考え過ぎだよ。技もそんな強いの覚えないから扱いきれなくなることはないよ。大切にしてね」
    「はい。ありがとうございます」
     ガーネットはとても嬉しそうだった。ダイゴからの贈り物、それを今までで一番大切というように。
     完全には打ち解けきれてないコンビではあった。帰り道、エネコはずっとガーネットの後ろをついていく。主人だと認めているかは解らない。途中、目につくもの全てに飛び掛かろうとしたり、ガーネットの髪にじゃれつこうとしたり、それはもうイタズラの大好きなエネコだった。
    「おかえり!」
     家につくと、元気よく向かえたのはガーネットの妹のくれないだ。身長差がなかったら、見分けはつかないだろう。
    「あ、おねえちゃんのせんせい!」
     ダイゴに向かってそう言った。くれないからはそう見えるようだった。けれど興味はダイゴからすぐに違う方に行く。そう、エネコだ。
    「かわいいーーー!!おねえちゃんどしたのそのこ!」
    「エネコだよ。ダイゴさんからもらったの」
     エネコも大きな声にひるんだが、くれないに捕獲され、なで回されては逃げ場はない。
    「ねえねえおねえちゃん、エネコかうの!?かわいい!」
     頭をなで回され、細い目で一生懸命助けてくれと訴えてるようだった。
    「くれないちゃん、エネコはぎゅっと抱くんじゃなくて優しく抱いてあげて。それから喉を撫でてあげると喜ぶよ」
    「え?そうなの?」
     ダイゴに言われた通りに抱くと、先ほどの苦しそうなエネコの顔から、普通のエネコの顔に戻る。
    「わあ、ほんとうだ。きもちよさそう!」
     エネコはくれないの腕の中でゴロゴロと喉をならしていた。
    「エネコまで区別ついてないのかな」
     ガーネットが小さく言ったのを、ダイゴは聞き逃さなかった。

     明日にはホウエンへ戻る。長い休暇が終わり、また現実へと戻るのだ。帰ってしまう前に、一言つたえた方がいいだろうとダイゴは道を歩く。
     家の近くまで来ると、ガーネットがギャロップを連れた同い年くらいの女の子ととても楽しそうに話している。最初はダイゴのことを気付いていなかったが、視界に入ると大きく手を振った。
    「ダイゴさん!こんにちは!」
    「やあ!こんにちは。ガーネットちゃんのお友達かな?凄い立派なギャロップを連れてるね」
     角は太く、蹄は固そうだ。そしてなにより燃え上がるようなたてがみ一つ一つが美しい。撫でようとしたら、ギャロップに睨まれてしまった。
    「はいそうです。ネネが言ってたトレーナーさんですよね!私はキヌコです。ネネと小さい時からの友達!」
     とても嬉しそうにキヌコは今度から一緒の学校に通えると話していた。ダイゴはそれを聞いて安心する。この短期間ではあったけど、妹のように思っていたガーネットと仲良しな子が同じ学校へ通う。誰にも助けを求められない性格だからこそ、キヌコの存在は救いに思えた。
    「あ、ディザイエの散歩の途中だから、じゃね」
     キヌコはギャロップを連れてそのまま去っていく。最後までギャロップはダイゴを睨んでいた。
    「ダイゴさん、キヌに先越されましたが、私は転校できることになったんです!」
    「うん、みたいだね。仲良さそうなお友達だね」
    「はい。中学が別で不安だったけど、一緒になってよかった!」
     ガーネットはとても嬉しそうに話している。何も進まず、完全につまったかのように思えた現状は、とてもよい方向に向かっているようだ。
    「良かった。僕も心置きなくホウエンに戻れるね」
    「あ、そうか……」
     少し曇りかけた表情を隠し、笑顔でガーネットは続ける。
    「ダイゴさん、ホウエンのトレーナーなんですよね。あの、連絡してもいいですか?」
    「いいよ。次は夏にジョウトに来る予定なんだけど、その時また連絡するよ。その時また元気な顔みせてね」
    「……はい!」
     ガーネットはダイゴに手を振る。ダイゴはまたね、と言って笑顔で去っていく。まだ春の寒い日だった。


    ーーーーーーーーーーーーー
    そして流星プロローグへ続く
    初恋は実りません。
    ゴーヤロック神に勝負を挑んだ事自体が間違ってると言われても気にしない。かきたいものをかくんだ!
    【好きにしてください】


      [No.2409] ダストシュート 投稿者:紀成   投稿日:2012/05/02(Wed) 20:41:13     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    今日も、 皆が、 誰も見ていないところで、

    静かに、でも確実に

    それを吐くのです



    『最悪』
    『消えて』
    『死ねばいいのに』

    思わず耳を塞ぎたくなるような言葉の数々。だがあえて塞がないのは、それらを戒めることが出来ないからだろう。自分は吐いたことがないと、どうして証明できようか。
    こういう時、毒タイプを嫌えない。街中に生息し、ゴミを漁ったり汚い跡を残していくことで人間からは度々非難の的になる。

    だけど。

    掃除をすれば消えるそれと違って、人間が吐く毒はナイフのようだ。
    一度飛んでいけば何かに突き刺さるまで速さは落ちない。
    突き刺さって止まっても、傷はジクジクと痛む。すぐには治らない。

    「……『めんえき』が、必要かな」

    だが、人間の『ダストシュート』を防ぐ方法を、私は知らない。
    誰も、知らない。


      [No.2408] 経験軽減ボランティア 投稿者:フミん   投稿日:2012/04/28(Sat) 17:40:21     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    都心部から離れた築数十年経つアパートのある一室。男は、もう何日も干していない古い布団に、着替えもせずに倒れ込んだ。服装は、仕事に行くときのまま、スーツのままで全身の力を抜く。

    「もう、限界だ」

    誰に話しかける訳でもなく、男はそう呟いた。
    時刻は夜の十一時。平日の真只中。朝七時に出勤したにも関わらず、帰ってきたのは真夜中。当然のように、明日も同じ時間にアパートを出なければならない。休日は週に一度。まだ二十代の若者は、とても厳しい環境で働いていた。
    給料も少なく。ボーナスも余り出ない。そして自分の時間を確保することが叶わなかった。貯金も出来ない、趣味に金を浪費する余裕がない。良い女と仲を深める時間もないし、たまの休みはひたすら体を休め続け、また働く。そんな虚しい毎日の繰り返し。
     
    このままでは、いずれ潰れてしまう。
    仕事を変えようか。しかし、先ずは転職先を決めなければいけない。
    頭の中で葛藤する男。そんな彼に、話しかけてくるポケモンが居た。


    「夜遅くに失礼します。お困りのようですね」

    外見は灰色。人間に似た大きな手、目は一つで大きな体。胸には閉じてはいるが大きな口があるポケモン、ヨノワールだ。噂では、その姿を人前に見せた時、あの世に導くポケモンと言われている。
    窓を開けもせずに、男に断ることなく部屋に侵入する。

    「勝手に、僕の部屋に入らないでくれるかな」

    「失礼しました。でも、あなたの手助けが出来るかと」

    男は、起き上がりもせずに頭だけを動かしヨノワールを睨みつける。彼には全く恐怖心がない。動くのも辛い程の疲労が、恐怖をかき消しているのだ。

    「手助け。お迎えかい? 僕はもう直ぐ死ぬから、こうして迎えに来てくれたのかな?」

    「まさか。あなたはまだまだ長生きしますよ。ゴーストタイプである私が保障します」

    「じゃあ、手助けってどういうことだ?」

    「簡単です。あなたの辛い思い出を食べてあげるのです」

    男は眉を寄せる。

    「よく分からないよ。君が言っているのはゆめくいをするということだろう? なのに、何故辛い思い出を食べようとするんだ。普通、良い思い出を欲しがるんじゃないか?」
    「確かに素敵な思い出は美味です。私にとっては極上のご馳走です。しかし、人間だっておいしい食べ物ばかり食べていては飽きてしまうでしょう。ポケモンだって同じです。美味しい物も良いのですが、たまには苦いものも口にしたいのです」

    ヨノワールは、見た目よりもずっと紳士な態度で言う。

    「失礼ながら、あなたの行動はここ数日ずっと拝見させて頂きました。日の出と共に起きて直ぐ仕事着に着替えて家を出る。自分の身を削り、何時間も働く。昼食はお金がないから、おにぎりとペットボトルのお茶のみ。お昼休みはたった四十分。昼を過ぎてからも働き続け、気づけば辺りは真っ暗。同僚や上司はさっさと帰宅してしまうのに、あなたは仕事を残してはいけないとサービス残業。そして誰もが家に帰り就寝する準備を終えた頃に帰宅。あなたの上司は責任感がない方です。普通部下はさっさと帰らすのが普通でしょう。それなのに、仕事を上手く割り振らず、自分は有能な上司だと信じて疑わない無能です。潜在能力で言えば、あなたの方がよっぽど努力家で人の上に立てる人間――いや、これは関係ない話ですね」

    こほんと間をあけて

    「ともかく、あなたはもう少し救われるべきです。ポケモンという立場でありながら、私は同情しました。最近裕福な夢ばかりを味わっているので、たまにはと思っていたのです。是非、あなたの今までの辛い夢、食べさせてくれませんか?」

    男は考える。人というものは、楽しいことはあっさり忘れてしまうというのに、辛いことは時々脳裏に浮かんでくる生き物だ。幼い頃につい出来心でしてしまった悪さ、思い出すのも恥ずかしい黒歴史、そして現在のような苦痛。それらを忘れることができるとしたら、どんなに素敵なことだろう。体の疲れは寝れば取れる。しかし、心の疲れは簡単には取れることはない。

    けれど、見返りなしということはないだろう。


    「悪くない話だ。でも、僕は君に何をあげればいい。当然、ただでできるなんて甘いことはないだろう」

    ヨノワールは心配なく、と呟く。

    「いいえ、対価は取りません。私はあなたを気に入ったのです。いつもなら寿命より早めに霊界へ――と言うところですが、今回は何も求めることは致しません。あなたの失敗した時にできた辛い記憶、今まで蓄積した苦い思い出を綺麗さっぱり食べてあげましょう」

    「本当に? 僕を騙そうとしていないよな?」

    もし事実なら、魅力的な話だと男は思った。嫌なことを忘れることができる。どんなに楽しいことがあってもふと頭に浮かんでくる苦痛な記憶。それらを、綺麗さっぱりと消してくれるというのだから。

    「ポケモンは、人間よりずっと正直者ですよ。あなたの辛い思い出を私が食す。それで私が満足する。それで対等です。その後何も求めることはありません。あなたも私も得をする。良い取引だと思うのですが」

    「いや、僕としては是非お願いしたい話だ。直ぐにやろう」

    「ありがとうございます。こうして了承を得てからゆめくいをするのは気分がいいものです。無理に食事をしても後味が悪いですからね」

    ヨノワールはそう言うと、手を使わずに寝そべっている男を起こす。サイコキネシスで浮かされた男は、最初は慌てたものの大丈夫ですと、ヨノワールに宥められて大人しくなる。声からしてヨノワールは雄だったが、体を弄られるのは悪くない気がした。男は、つい先程まで全く他人だったポケモンに親切にされ、自分の祖父を思い出した。両親言いつけを破り、家から追い出された時、誕生日に欲しいゲームソフトを買ってくれた時、男はいつも近くに住んでいた祖父に甘えていた。自分の親よりも、祖父との思い出の方が濃いかもしれない。あれは間違いなく良い思い出だ。他人からの愛情を受けていない男は、ヨノワールの些細な一言で歓喜余ってしまう程に疲れ果てていたのだった。

    祖父との思い出のような綺麗な思い出だけが心に残ったら、どんなに幸せだろう。寧ろ、そうして悪いことがあるのだろうか。
    ヨノワールは、腹にある大きな口を開く。桃色の舌が男に少しずつ近づいていく。


    「では、あなたの苦痛な記憶、思い出を頂きます。ゆっくり目を閉じてください」

    最早、男に抵抗する気はない。彼は、言われたままに目を閉じる。独特な舌が男の頬に触れる。一瞬寒気が走ったが、直ぐに気にならなくなる。途端に、段々と男の意識が遠退いていく。

    「またいつか会いましょう」

    それが、ヨノワールの最後の言葉だった。





    翌朝、日が昇る前に男は目を覚ました。
    服装はそのままだが、きちんと布団に入り熟睡していた。気を失った後、ヨノワールがベッドまで運んでくれたようだ。時刻を確認してみるとまだ五時半だった。しかし、やけに目覚めがいい。

    昨日は、まるで夢を見ていたみたいだった。本当に、辛いことをさっぱり忘れてしまったのだろうか。
    あまり実感が湧かない男だったが、直ぐに自分の変化に気がついた。
    体が軽い他に、心境が変化している。胸の中に詰まっていたものが綺麗さっぱりと消えてしまったようだ。昨日だって、些細なミスの責任者としてたっぷりと怒られた。そのことは覚えている。しかし、あの瞬間に感じた苦痛というものがまるでない。そもそも何故自分は怒られたのか、まるで覚えていない。

    昔のことを思い出してみる。小さな頃は外でも家でも沢山遊んだものだ。家の隣に住んでいた可愛い女の子。道ばたで怪我をしたときにおんぶをしてくれた近所のお兄さん。どれも大切な思い出だ。じっくり記憶を辿る。すると、ところどころにぽっかりと穴が開いている気がする。まるで意図的に、その部分だけごっそりと抜き取ったような、そんな感じ。

    間違いない。昨夜ここにはあのヨノワールがいたのだ。そして本当に辛い思い出・記憶を食べてくれた。
    辛い記憶が胸に詰まっていないことがどんなに楽か、男は身を持って知ることができた。山登りをする際に背負っていた重たい荷物を捨ててしまったみたいに、心が身軽になっている。辛いこと忘れてしまうということは、とても気分がいい。
    男は、晴れやかな気持ちで着替え始めた。こんな爽快な朝は久しぶりだ。久しぶり喫茶店でも行き朝食でも食べようと思った。





    「おはようございます」

    「おはようございます、男さん」

    男は、近所の喫茶店でモーニングを済ませ、少し早めに会社に出勤した。同僚に挨拶をしながら自分の席へと座る。同時に、同じ歳の女性社員に話しかけられた。

    「昨日は大丈夫でしたか? 男さん、随分落ち込んでいましたけど」

    「昨日?」

    男は首を傾げた。

    「そうですよ。昨日凄く上司に怒られていたじゃないですか。しかも理不尽に。私達も悪いのに狙ったように男さんだけを叱るなんて。男さん半泣きのまま帰ってしまうので、皆で心配していたんですよ」

    ああ、と男生返事を返す。その記憶は、つい先日抜かれてしまったので何も覚えていない。だから気を遣われても逆に困ってしまう。同僚の女性社員は平然としている男を本気で気遣っているようだった。
    男は言う。


    「ああ、もうあのことは良いんです。いつまでもくじけていてはいけませんから」

    「強いんですね。でも良かった、あんなの気にすることはありませんよ。今日は食事に行きませんか? 私、奢りますよ」

    女性社員は、声を小さくして男の耳元で呟く。

    「それは、二人きりで?」

    「ええ」

    男は冷静に対応するつもりだったが、思わず笑みがこぼれてしまう。普段からこの女性社員とは仲良くしているが、こんなことは初めてだった。久々に良いことが男に訪れる。男の中には苦い思い出がない分、嬉しさが直に心に来る。

    「じゃあ、仕事が終わったら駅で飲みましょうか」

    「そうしましょう」

    さり気なく約束を交わした二人は、それぞれの持ち場で仕事を始めた。今日すべきことを早めに終わらせて早めに帰るためだった。
    黙々とやるべきことを終わらせていく。男の効率はとても良くなっていた。心に引っかかることが何もないからだ。仕事は確かに楽ではないが、やり慣れた内容なので問題なくこなすことが出来る。
    気分は爽やかだった。彼は改めてヨノワールに感謝した。
    その時、男はある中年の男に話しかけられた。


    「男君。ちょっと今外せるかな」

    それは、昨日男を叱った上司だった。

    「はい。問題ありませんが」

    男は座ったまま上司の方へ振り向いた。上司は少し苦い顔をしている。着いてきてくれと言い残して上司はオフィスの奥へ歩いていく。男は急いで立ち上がり、後を追いかけていく。
    上司が入った部屋は、使用していない会議室だった。上司は男に空いている椅子へ座るように促し、男はそれに従う。

    「昨日はすまなかったね。私もつい大人気なく怒鳴りすぎてしまった。ここのところ寝不足が続いていて、つい言い過ぎてしまったよ」

    上司は申し訳なさそうに軽く頭を下げた。もちろん男は、そのことを覚えていない。

    「大丈夫です。もう気にしていません」

    上司は驚いた。男は、本心で言っていることが分かったからだ。

    「そうか。許してくれて良かった。しかし、今日はやけに明るいな」

    「ええ、元気を出して仕事をしないと楽しくありませんから」

    男の上司は、明らかに戸惑っていた。いつもあんなに気の小さい部下が、まるで手本のようにハツラツとした様子だったからだ。昨日とはまるで別人。中身が入れ替わってしまったようだった。
    上司は、戸惑いながら何かを言い出そうとしていた。そんな様子を見た男も、自分の上司の異変に気づく。

    「どうかしましたか?」

    男の返事に上司は更にうろたえる。言うことがあるならどうぞ遠慮しないでくださいと、男は笑顔で返す。ますます上司は踏ん切りがつかなくなる。
    数分ためらった後、上司ははっきりと述べた。


    「男君、冷静に聞いてくれ」

    上司は辛そうに言う。

    「君は、今月でクビだそうだ」

    男は、言葉を失った。

    「君はあのプロジェクトの責任者だっただろう。あれが失敗し多大な損失が出てしまったんだ。それで、ついに社長が怒ってね。私は今朝きちんと反対したんだ。だが、なんとしても君を解雇すると」

    上司の言葉は耳に入らない。

    「君からきちんと辞めると言ってくれれば、退職金等はちゃんと出すということだ。私にはどうすることもできなかった。すまない」

    今度は更に深く頭を下げるが、男は何も見てもいなかった。それよりも、またもや自分の体の異変に気が付いた。

    辛い。会社から去れと言われて辛くない訳がないのは分かっている。しかし、心に残る傷の深さが尋常ではないことに、男は気が付いた。

    彼から辛い記憶は確かに消えた。しかしそれは、未経験になるのと変わらない。誰でも初めての経験は良い事でも悪い事でも、本人には未知の刺激。つまり心構えができないのだ。男は、実は一度解雇された経験があった。しかしその体験もなかったことにされている。昨晩、あのヨノワールによって。

    今の男は負の経験に対しては、一度も叱られたことがない子どもと変わりない。クビにされるというとても辛い出来事は、直接彼の心に突き刺さった。何も耐性がない男にとって、この痛みは計り知れない。
    精神的な痛みは、とうとう男の体にまで異変を起こす。頭痛、吐き気、めまい、そして動悸が激しくなる。彼は胸を押さえて椅子から落ちた。側にいた上司が駆け寄り、大丈夫かと呼びかけるが返事を返すことができない。慌てた上司は、直ぐに会議室から飛び出して助けを求めた。

    朦朧とする意識の中で、男はヨノワールにして貰ったことを後悔した。





    同時刻、別の場所にヨノワールはいた。
    大理石の床に磨かれた壁、天井からはシャンデリアが釣られている豪勢な部屋。大きな窓の側には、柔らかくて立派な部屋に座る中年の男性がいる。歳は四十を過ぎているにも関わらず体は引き締まっていて、腹に多少脂肪があるが全身に筋肉がついている。髪はワックスで固められ髭も剃られている。歳相応の、格好良い中年のおじさん。
    その直ぐ側に、あのヨノワールはいた。


    「どうだ。あれは持ってきたか?」

    「はい。今回は、とても極上の夢を持って参りました」

    「では早速夢を頂こうかな。金は、そこの机のテーブルに置いてある分で足りる筈だ」

    「いつもありがとうございます」

    ヨノワールは金が積まれた机に向かい、中年男の前で札束を数え始めた。時間をかけてじっくりと。そして確認を終えると、ヨノワールは頷く。


    「確かに、指定した金額が置いてあります」

    「なら良いだろう。今日はどんな夢だね」

    「環境が悪い企業で、働き疲れ果てた青年の思い出です。これは、私が口にした夢の中ではかなりきつい
    ものだと思います」

    「それは楽しみだ。さあ早くその夢をくれ」

    急かす男性に従って、ヨノワールはかしこまりましたと返事を返して行動を起こす。腹の口を開け自分の手を口に入れ、何かを取り出した。それは、不可思議な物体だった。手でつかめる程の球体で色は紫色、ヨノワールの手の中にあるその瞬間も、球体の中心ではドロドロと渦を巻いている。球体は、音も出さずに存在感を醸し出していた。

    「数十年分の、辛い思い出です」

    男性は身動きせずじっと座っている。ヨノワールは男性に近づき、球体の一部を米粒程の大きさに引きちぎる。それを慎重に男性の口の中へ入れた。
    暫くの沈黙、すると男性が痙攣を始める。目を見開き口を大きく開けて全身を震わせる。喉からは嗚咽が漏れ、空中に手を差し出し何かを掴む動作をした後、直ぐに頭を抱えて悶えだす。数十秒その症状は続き、やがて男性は正常な状態に戻る。
    肩で息をして激しい運動をしたように呼吸が荒いが、その表情には至福の気持ちが混じっていた。

    「素晴らしい」

    男性は、それだけ呟くと水を口に含んだ。そしてもう一度だとヨノワールに促す。ヨノワールは先程と同じ量をまた男性の口に含ませる。そして悶える。ただその繰り返し。
    夢の球体が三分の一に減るまでそれは続けられた。もう今日は止めましょうというヨノワールの制止に男性は素直に従った。全身汗だらけで、ヨノワールに差し出されたおしぼりで顔を拭く。

    「最高の時間だったよ。お前の主人は良い仕事をする」

    「ありがとうございます」

    ヨノワールは、深くお辞儀をした。

    「これでまた記憶が入っていくのか。少しずつしか入れることができないのが残念だが」

    「仕方ありません。これには何年分もの辛い思い出が詰まっています。一瞬でそれ程の負を取り込んだら、あなたはショック死してしまいますよ」

    「分かっている。しかし人間というのは不便なものだな」

    男性は、葉巻をふかす。


    「私は産まれながらにして金はあった。将来は約束されていたし、同じ地位の友人も裕福でない友人もいる。しかし、辛い目に遭って来たことはなかった。高度な勉強も嫌いではなかったし、親戚と立場争いをしている訳でもない。友人にも恋人にも恵まれていたし、両親もまだ元気だ。だから辛い経験を少しでもしておかなければならない。世界有数の社長になったのだから、もっと失敗や苦悩を学んでおきたいんだ」

    「分かっております。だから私の主人は、こうして私に苦い思い出を集めさせているのです。普段我々は、幸せな夢を売るのが商売です。しかしあなたは特別なお客様ですから、こうして少々危険なことをしているのですよ」

    「分かっている。もう私も歳だし、忙しくて自分の時間があまりないからな。座ったままさま様な体験ができるなら、これくらいどうってことない金だ。寧ろ安いくらいだ」

    「この続きは明日の同じ時刻で宜しいでしょうか?」

    「ああそうしよう。今日はありがとう。いつも済まないね」

    「いえ、これが私の仕事ですから」


    そう言い残し、ヨノワールはケースに入れられた札束を持ち、いつも通りに姿を消した。




    ――――――――――

    いつも見てくれてありがとうございます。再び作品を置かせて貰います。
    自分の人生思い返してみれば、辛い思い出の方が圧倒的に多く感じてしまいます。

    フミん


    【批評していいのよ】
    【描いてもいいのよ】


      [No.2407] 回想 (一応修正しました)[お題・桜] 投稿者:moss   投稿日:2012/04/26(Thu) 22:56:19     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     今年もこの町で一番大きく古い桜の花が咲く。
     僕はそれを見上げながら何故か物足りなさを感じた。毎年この時期には見ているはずなのに、僕はどうしてだかそんなことを思った。けれど今日はそうもしていられない。いくら慣れないからといって高校初日に遅刻するのは良くない。大事な大事な第一印象が台無しになってしまう。
     僕は何時の間にか地面に置いてしまっていた真新しいスクールバッグを肩に掛け直すと、足早に学校へと向かい始める。
     物足りなさは消えなかった。



     通学路の途中でふと目に付いた、一本の電信柱に手向けられた小さな花束で思い出したことがある。この辺りは昔から自動車と歩行者の接触事故がとても多く、僕は小学一年生のときから親やPTAのおじさんやおばさんに注意され続けていた。花束が置いてあるということはまた事故があったのだろう。もしかしたら事故にあったのは人間じゃなくニャースやニャルマーなどの小さなポケモンかもしれない。
    ――この辺りは事故が多いでしょ。その死体はあの一番大っきい桜の下に埋められてるんだ。だからあんなに大っきくなったんだよ。
     昔、といっても僕がまだ幼い頃だがそんなことを言ってる奴がいた気がする。人の話をそのまま鵜呑みにしてしまうあの頃の僕は、その話を親や友達に一生懸命話していた。そして思い出すたび体を震わせ夜トイレにも行けなくなった。今思えば全く可愛らしいことこの上ない。
     物思いにふけっていたら足が電信柱の前で止まっていた。慌てて腕時計を確認し走る。
     まだ、足りない。



     初日の学校ほどめんどくさく嫌になる。けれどここで悪い印象をもたれてしまうと、後々さらにめんどうだ。誰かに話しかけるのも億劫だと思った僕は、人見知りキャラを演じて前の席の奴が話しかけてくるのを待った。これでそいつも人見知りだったら残念だが、運良く「お前どこ中? ポケモン何?」と勢いよくきたので無難に会話ができた。
     LHRの時間は早口の担任がマシンガンの如くずっと喋っていたので、窓側の席なのをいいことに、ずっと外を向いて思考していた。そうして思い出したことがある。窪田結衣という同級生だ。彼女は僕の幼馴染で、幼稚園からずっと互いの家を行ったり来たりして遊んだ仲だった。彼女は凄く生き物想いで、勉強がよくできた、まるで優等生の一例の様な少女だったが、彼女の生き物想いは尋常ではなかった。本当生き物想いなのだ、人間を除く、ほぼ全ての生き物の。弱いポケモンを虐める輩がいれば、それが年上であろうが一人で立ち向かい、植物を抜いたり折ったりした奴には植物に向かって謝らせたり。それだけでも十分変人なのに、彼女は死んだ生き物ーーつまり死骸までもを大切にした。あの事故の多い電信柱の前を通ったとき、車に轢かれた可哀想なポケモンの死骸を見つけると、彼女は駆け出して僕に埋めてあげようと言いだす始末である。ともかく、彼女ーー窪田結衣はそんな少女であったわけだ。だが窪田結衣はとある事件を引き起こし、小学五年生のときに転校してしまった。それ以来彼女に会ったことは無いし、何の噂も聞かなかった。
    ――ゆう君。生き物はね、生きてる間は目一杯輝いているんだよ。
     そんなことを彼女はいつも言っていた気がする。




     学校が終わった。さよならの挨拶の後にクラスの何人かにメアドを教えてとせがまれたが、携帯を忘れたと言ってまた後日にしてもらった。なんとなく今朝からもやもやしていたし、あの桜の元へと行きたかったからである。それに窪田結衣。彼女との思い出の場所でもあった。
     一人で下校しながら僕はまた回想する。彼女は何故転校したのか。今まで恐怖で思い返せなかったあの日のことを。マメパトがぱたぱたと飛び去った。
     あの日は夏休みの真っ最中で、太陽が地面を焦がすんじゃないかなんて彼女と話したりしていて。ごく普通の、毎日の直線上にあったはずで。僕ら二人で、あの桜の近くで喋っていた。彼女は親のポケモンだったかデスカーンを連れていた。当時自分のポケモンを持っていなかった僕としては、とても羨ましいものだったので、デスカーンの何本かある黒い長い手を、握ったり握手したりして触っていた。あの不思議な感触は今でもしっかりと手の内に残っている。
     この頃、あの桜の木が寿命だか病気だかで枯れそうになっていると近所でニュースになっていた。彼女はあの桜が大好きだった。しかしその大好きとは、小さい子がピカチュウ大好きと言って抱きつくような純粋さではなかった。逸脱した彼女の生き物想いがそうさせていたのか、もしくはあの桜に魅せられたのかはわからないが、ともかく大好きだった。だからニュースを聞いたとき、彼女は言ったのだ。
    ――あの桜の木を元気にさせよう!
    と。
     その時点ではまだ彼女の思惑は読めなかったので、僕は快く受け入れた。そのときの彼女の表情は今までに見たことが無いくらい恍惚としていたのは忘れられない。ただ、表情に見とれていたせいか、その次に言った彼女の言葉を聞き逃してしまった。ごめん、もう一回言って。けれど彼女は繰り返すことなく、笑顔で無言のまま僕を見つめていた。わけがわからずつっ立っていたその瞬間、後頭部に強い衝撃が走った。衝撃は激痛へと変わり、あまりの痛さに叫ぼうとしたが、いつか触れた不思議な感触に口を塞がれ呼吸を妨害する。何が起こってるのかわからない僕はパニック状態に陥り、口を塞ぐデスカーンの手を剥がそうと藻掻く。が、所詮小学五年生の力ではポケモンに敵うはずなく押さえつけられそのまま
    ――ゆう君のお陰で桜が元気になるよ! ゆう君ありがとう! 大好きだよ。
     何時の間に掘ったのか。桜の木の根元に人がちょうど一人入るくらいのサイズの穴があり、デスカーンはそこへ僕を放った。背中に落ちた衝撃が走り、肺から息が多量に出た。そこへ土が降ってくる。今思えばそこまで深い穴ではなかったから出ようと思えば出れたはずだが、このときばかりはそんな冷静に考える暇もなく、ただ出来たことは一つ。彼女の笑顔を見守ることだけだった。
     あの後気を失った僕は病院で目を覚ます。ここから先は聞いた話だが、たまたま近くを通りがかった知らないおばさんが僕が埋められる瞬間を見ていたらしく、彼女の行動を途中でやめさせた上、110番してくれたようだった。僕が一応、少しの間入院することになった間に彼女の一家は何処かへ引っ越してしまったらしい。入院中僕が尋ねても誰もが話題をそらしてしまい教えてくれなかった。



     今年もあの桜は元気に咲いている。あの事件(果たして事件と言うのだろうか?)の後、自治体の皆さんが頑張って桜を元気にさせたらしく、その翌年にはけろっとした調子で花を咲かせていた。
     けれど人ががんばっただけで植物が簡単に元気になるものだろか? そこで窪田結衣のことを思い出し、ずっと感じていた物足りなさが何か気付いた。
    「……あった。これだ」
     僕は桜の根元に近づき、幹を削って書かれた下向きの矢印を見つけた。僕が入院中に看護婦さんから一度だけ、彼女から渡して欲しいと言われたらしいメモを受け取ったことがある。そのときの内容が、桜の幹に下向きの矢印を書いたから、桜が満開になったらその下を掘ってと書かれていた。今まで忘れていたが、僕は指示通りに矢印の下の地面を手で掘り始める。制服や手が汚れるなんて気にしなかった。ただなんとなく埋まっているものの想像がついたので、尚更掘り起こしてやらないといけないなという使命感が手を動かしていた。
     やがて指先が何かにあたる。僕はその辺りを丁寧に掘り始めると、埋まっていたそれの一部をよく確認し、冷静に警察へ電話する。
    「あの、警察ですか? すみません。桜の木の下に――」
     通話を終え携帯をしまう。僕は改めて埋まっていたそれ――窪田結衣の手の骨を見て言う。
    「今年も桜はきれいだよ」






    ――――――――――――――――――――――――
    スポーツテストで持久走とシャトルランがないと聞いて嬉しすぎた勢いで書いた。
    久々に書いたからなんか不思議な気分です。
    受験終わったときから溜めてるネタはまだ書き終えていないのですが。
    あと機会音痴で、iPhoneから投稿したもので、段落の一マスが空いてない……。そのうちパソコンで直しますごめんなさい。
    あと、久方さんネタ被らせてすみません私も死体埋まってるネタ好きなんです

            【何してもいいのよ】


      [No.2406] 初期図鑑の非日常さはピカイチ 投稿者:小春   投稿日:2012/04/25(Wed) 23:10:14     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > レアコイルと桜の組み合わせとは、意外でした。
     思わぬ組み合わせがうまれるのがポケモン小説の楽しいところです。そんな言い訳をひとつ(

    > 周りの温度が二度上がるの、知りませんでした。そこで桜前線とか、素敵だなあ。
     初めてプレイしたピカチュウ版の図鑑、いろいろ記憶に残っています。コンパンの目からビームやら重さ20キロを放り投げるイシツブテ合戦やら…。ネタが尽きませんなぁ。

    > それでは、短い感想ですが失礼します。
     感想ありがとうございました!


      [No.2405] れっつ掘り返し。 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/04/24(Tue) 23:25:28     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 色々埋まりすぎてて怖い。
    桜って成長が早いのでエネルギーをより必要とするとか何とか昔聞いたことがあります。
    毎年一体どれだけ犠牲が出ているというのだろうか……フヒヒ

    > 即興……だと……。
    着想→投稿まで大体1時間くらいでした。

    > 【その位置からダグトリオの下半身が見えるはずだ! さあどうなっている!?】
    明かりがないから見えなかったようだ! 残念!

    感想ありがとうございました!


      [No.2404] ポケスコ・ベスト 通販開始しました。 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/04/24(Tue) 00:26:00     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    お待たせしました。
     「マサラのポケモン図書館、ポケモンストーリーコンテスト・ベスト」通販受付始めました。
    GW明け一斉発送となる予定です。

    通販サイト
    http://www.chalema.com/book/pijyon/

    ベストついでにNo.017個人誌も購入出来ます。
    よろしくお願い致します〜


      [No.2403] BIG MACHINE 投稿者:紀成   投稿日:2012/04/23(Mon) 21:04:13     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ドッ
    ドッ
    ドッ
    ドッ


    冷たいコンクリの床に寝そべっていると、耳を貫くような底から湧き上がってくる音で目が覚めた。俺は体に合わない小さな耳をピクリと動かす。エンジンの調子はいいようだ。そして、主人の機嫌もいいようだ。

    「……よっし!異常なし!あとは着替えてヘルメットとゴーグルつけて」

    主人は女だ。だが性格は男だ。普通、女が相棒と一緒に乗れるくらいのサイズのバイクを購入したりしないだろう。横に俺専用のカーをつけて。ちなみに色は青と黒。寒色系のコラボレーション。
    暖色系の体を持つ俺が乗ると、何処へ行っても目立つ。

    「はい、アンタもこれつけて!ヘルメットとゴーグル!まだこの季節は風が冷たいし、変な物目に入ったら困るから」

    主人は既にレザージャケットに着替えていた。元々豊かな胸が、黒い服のせいでウエストが縮まってるように見えて更に強調されている。これで髪ゴムを外してそのままにすれば、どこぞのモデルのようになるだろう。
    もちろん言わないが。

    俺は言われた通りヘルメットを被りゴーグルをつけた。暗い赤の世界が無限に広がる。そのまま専用のカーに乗り込む。主人も隣のバイク本体に跨り、再びキーをまわした。

    心臓の鼓動。
    エンジン音。
    全てが混ざり合い、耳に入っては通り抜けていく。


    「さあ、目指すはサザナミタウンよ!Lets go!」



    (果てしなく遠い ゴールを探しながら 高速で転がる 直上型のBIG MACHINE)


    ――――――――――
    この一人と一匹はユエとバクフーンです。似合うかなーと思って。
    【何をしてもいいのよ】


      [No.2402] 桜の木の下には 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/04/22(Sun) 19:32:41     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    色々埋まりすぎてて怖い。

    > 俺の目と鼻の先で、ダグトリオが地盤を掘り返している。

    > そういえば彼女も、ダグトリオじゃないけどモグラのポケモンを持っていたっけ。
    > それを知ったのは、彼女と別れた直前のことだったけど。
    最後二行でここらへんの意味が分かるのがすごい。すげー怖い。

    雑多な感想ですが、失礼します。


    即興……だと……。

    【その位置からダグトリオの下半身が見えるはずだ! さあどうなっている!?】


      [No.2401] まさか 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/04/22(Sun) 18:51:07     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    レアコイルと桜の組み合わせとは、意外でした。
    周りの温度が二度上がるの、知りませんでした。そこで桜前線とか、素敵だなあ。
    ピッカピカに磨かれたボディに映る桜も、いいなあ……。

    あと「期間限定のトレーナー」という言葉も好きです。毎年同じような時期にやってきて、その人が去ってふと気付くと桜が咲いている、みたいな。そんな風流めいた言葉に似合わず、道中のトレーナーを銀行がわりにしているのはポケモンらしいといいますか。

    それでは、短い感想ですが失礼します。


      [No.2400] その手をにぎって 投稿者:ことら   《URL》   投稿日:2012/04/21(Sat) 20:09:19     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    前書き:カップリングです。http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?no=2393&reno= ..... de=msgviewのその後です。




     ダイゴがソファに座った。ハルカも何も言わず隣に座る。その距離は今まででは考えられないくらいに近い。拒否されるかもしれない。恐る恐るハルカはダイゴの手に触れる。
    「もっとこっちにきなよ」
     体をまるごと抱き上げられ、ダイゴの膝の上に座る。後ろから抱きしめるダイゴにハルカは身を任せる。
    「君を拒否なんてしないよ。だからもっとおいで」
     ダイゴの甘い声がハルカの耳元で響く。彼女の体を痺れさせるには十分だった。
    「ダイゴさん」
    「ん?」
    「好きでいたいです」
    「僕もハルカちゃんを好きでいたいな」
     惜しげもない愛の言葉がハルカに降りかかる。なぜこの人はこんなに怖がることなく愛を告げることが出来るのか。ハルカはいつもそれが不思議だった。
     ハルカはいつも怖い。大好きなダイゴから嫌われることが。否定されることも 、拒否されることも。だから怖くて好意を表に出せなかった。ダイゴはそれすらも見抜き、ハルカを待っていた。
     大人になれば解るのかな。ハルカは振り向き、ダイゴの目を見る。キスしてしまおうか。ハルカにふとそんな考えが浮かぶ。けど、もし拒否されたら。その考えがハルカを止めた。
    「ねぇハルカちゃん」
    「なんですか?」
    「僕は今すぐ君を押し倒して犯したいと思っている」
    「な、なにをっ」
    「それくらい、ハルカちゃんが好き。これくらい言わないと」
     ダイゴに引き寄せられ、ハルカは彼の胸に押し付けられる。
    「臆病な君は僕に抱きついてくれないし、キスしてくれないだろう?」
     何でも見通しているような目。ハルカは顔をあげてダイゴを見る。
    「ダイゴさん、なんで何でも知ってるみたいに言うんですか!?」
    「単純さ」
     ダイゴが少しだけ笑う。
    「君が大切にしてるポケモンを見る目と、僕を見る目、同じようで違うよ。ポケモンたちは思いやりがあるのに、僕を見る時は好きでたまらないと言いたげだ」
     ダイゴに唇を塞がれ、抱きしめられては逃げ場ばない。どこにも逃げられない。
     怖がってダイゴからのサインを見ないフリをしていた。それは違う、本当は私など見てないと。もっと早くダイゴに伝えていれば、こんな時間がたくさんあったのか。唇を重ねながら、ハルカは思う。
    「とろけそう」
     唇を離し、ダイゴに抱きついた。
    「そうだねハルカちゃん」
     ダイゴの声が少し震えている。
    「もっと君が大きくなって、僕と同じくらいの立場になったら、たくさん教えてあげる。キスより気持ちいいこと、いっぱい」
     ダイゴに抱かれるだけで胸がいっぱいになってしまうのに。ハルカはその先なんて想像つかなかった。
    「だから今はポケモンのことを教えてあげるよ。大きくなってから知らないことがないように」
     


     仕事だから会えないという旨のメールをもらったのはついさっき。こんなのはいつものこと。
    「ハルカ!今日は暇?遊ぼうよ」
     友達からの誘いにハルカは乗る。いつもの仲良しグループは、近くのファミレスに入る。


    「えっ……」
     ハルカは友達の話を聞いて、言葉が出なかった。
    「何いってんの?付き合ったらセックスなんて当たり前じゃん」
     友達には付き合って3ヶ月の彼氏がいる。けれど赤裸々にそんな話をされるとは思わなかった。
    「むしろハルカの彼氏ってさぁ、もう2ヶ月じゃん?セックスないとか有り得ないよねぇ」
     全くないわけではない。忘れるわけがない。付き合ったあの日、ダイゴに脱がされ、寸前の行為までしたこと。
     あれ以来、そういうことは全くないし、ダイゴの方からもアプローチはない。
    「え、ないわけじゃないんだけど…」
    「てかハルカはもっとアピールしなきゃ!やったもん勝ちだよ」
     そういうものかな。ハルカはそう思っていた。


     ダイゴの家でポケモンの訓練をした後に、夕食をごちそうになる。
    「今日はポトフとビーフストロガノフだよ」
    「なんですかそれ?」
    「まぁ食べてみなよ。ハルカちゃんに食べてもらいたくて覚えたんだ」
     嘘か本当かは解らない。ダイゴは台所からテーブルに料理を運ぶ。それを手伝うハルカ。ダイゴの姿を見て友達の言葉が浮かぶ。
     確かにダイゴは大きくなったら教えてあげると言った。けどそれはハルカとしたくない口実なのではないか。ダイゴから聞いた話ではないのに、ハルカは一人で悩んでしまっていた。
    「どうしたんだい?」
     ハルカの変化に気づいたのか、ダイゴが心配そうに尋ねる。
    「いえ……あの…ダイゴさん…」
    「どうしたの?何でも聞くよ」
    「私と…セックス…したくないんですか?」
    「一体どこからそんな発言でて来るの?」
    「だって友達が…付き合ったらセックスするんだって…したもの勝ちだって言うから…」
    「ハルカちゃん。そういうのは貞操観念って言うんだけどそんなの人それぞれ。その友達がどう思っても、ハルカちゃんとは違うんだよ」
    「でも…それにダイゴさん答えてください」
    「何度言わせたら気が済むのかな君は」
     少しイラついたような言葉。ダイゴは怒ってるように見えた。
    「ハルカちゃんは僕のこと信じられないの?僕は君の先生で彼氏だよ」
    「だってよく考えたら、ダイゴさんは年上で、こんなにかっこいいのに、私なんかを相手にするなんて…」
     どんどん出てくるハルカ自身の欠点。ダイゴはため息をつくと、泣いてる彼女を抱き上げる。お姫様抱っこされて、ハルカも思わずダイゴを見た。
    「ハルカちゃんはまず、自分に自信を持って。君みたいに真っ直ぐでかわいい子はあんまりいないよ。それに美人だからって僕が付き合うわけじゃない。ハルカちゃんだから付き合うんだ」
     食卓につかせる。そしてハルカの頭をなでた。
    「泣いてたらおいしくないよ」
     こんなに優しくしてくれるダイゴに対し、自分はなぜこんなにダイゴを困らせるようなことしか言えないのか。
     ハルカは泣きながらもスプーンを握る。そして一口、また一口。ダイゴが作ってくれた料理だ。残すわけにはいかない。


     それから数日後のこと。午後からダイゴとミナモデパートに買い物しにいく約束だ。
    「ハルカ…」
     家の前で友達に会う。とても暗い顔をして。
    「どうしたの?」
    「ハルカ、どうしよう!私、私…」
    「解らないよ、落ち着いて。ね」
    「あ、あのね。私、妊娠しちゃったの…」
     突然のことにハルカはかける言葉が見つからない。
    「妊娠…?どういうこと?親にはいったの?彼には?」
    「突然、連絡とれなくなって…親には言えない…どうしたらいいか解らないの…」
     泣き出した友達を放置するわけには行かず、ハルカはダイゴに詫びのメールを入れて、とりあえず自宅から離れた公園へ行く。
    「もう3ヶ月なの」
    「それって確か…」
    「会ってからずっとやってた。お金ないし、外に出すから大丈夫だって…」
     ハルカはめまいがした。友達だって一緒の授業で教わったはずなのに。
    「どうしよう。親にいったら怒られる…」
    「でも言わないとどうしたらいいか私も解らないよ」
     ダイゴからのメールが来る。友達とカナズミシティにおいで、と。会社の方に誘うなんて珍しい。ハルカは言われるまま、カナズミシティに行く。


     ポケモンセンター前でダイゴに会う。ハルカに安心感が生まれ、友達の前というのに駆け寄る。
    「ダイゴさん!」
    「どうしたんだい?僕でよければ話を聞こう」
     友達はダイゴに必死で状況を話す。それを端からみていたハルカは一つの感情を覚える。
     嫉妬だ。ダイゴは自分だけのものだと思っていた。それなのに…
    「解った。僕の知り合いの医者を紹介しよう。そこで解決した方が良さそうだ」
     ダイゴは友達の肩に軽く手をまわし、ハルカには声をかけただけ。
    「やっぱり、私なんかじゃ…」
     ハルカは二人についていく。ただ黙って。
     ダイゴは病院まで送り届け、医者に状態を説明すると、すぐにハルカの手を引いて出ていく。
    「ダイゴさん、いたっ!」
    「ああ、ごめんね」
     ダイゴが力を緩める。歩き方も何だか怒っていたようだし、何かがおかしい。
    「ハルカちゃん。君の友達のことを悪く言うのは申し訳ないけど、あれはないよ」
    「え、何がですか?」
    「あんな子にセックスする権利なんてない。セックスって確かに気持ちいいけど、それは子供を作る行為だってこと忘れて、しかも彼氏も嘘ついてそこまでしたいかな」
    「え…」
    「まぁ産むにしても下ろすにしても、あの子は一生消せない事実を作ってしまった。普通の結婚や普通の生活は望めないだろうな」
     ハルカの胸に、ダイゴの言葉が突き刺さる。
     ハルカがダイゴにねだった行為の結果が、今日の友達だ。もし、あそこでねだっていたら、今日泣いていたのは…
    「ハルカちゃんは、セックスが怖い?」
     いきなりダイゴに振られて、まとまらない考えは口に出ることはなかった。
    「セックスしたら、あんな未来が待ってるかもしれない。大人ならまだいい。けど君は責任とれる年齢でもない」
    「確かに、怖くなりました…」
    「そうか」
     ダイゴは立ち止まる。
    「けど僕は君を押し倒して犯したい」
    「えっ…あ、あの…ダイゴさん?」
    「僕はどちらも望んでる」
    「どういう、ことですか?」
    「もう少しハルカちゃんが大きくなったら、ちゃんと解説してあげる」
     なんだか掴みどころのないダイゴが、今日はとても真面目に見えた。いままでよりもずっと頼もしく。
    「ダイゴさん」
    「どうしたの?」
    「本当のこと言うと、さっきまで友達と仲良く話すダイゴさんが嫌でした。ダイゴさんは私だけのものだって思い上がってました」
    「それで?」
    「ダイゴさんは私のものじゃないのに…」
    「ハルカちゃんは僕のことが好きだからそう思ったんだろう?僕は素直に嬉しいよ。けどね、他人は誰のものでもない。そこも気づいたのは、ハルカちゃんの心が大人になっていってる証拠だね」
     ダイゴが歩みを止める。
    「もうお昼かなり過ぎたね。何食べようか?」
    「え、あ…オムライス!」
    「じゃあそうしよう。」
     カナズミシティのビジネス街のレストラン。時間もずれて、サラリーマンはほとんどいない。
    「ねぇハルカちゃん」
    「なんですか?」
    「ちょっと伏せて」
     言われるままにハルカは頭を下げる。そして振り向くと、ガラス越しに、見つかったと逃げていく人間。
    「ハイエナみたいなやつだ」
    「また、ですか?」
     有名企業のトップから出たチャンピオン。その私生活を面白おかしく暴こうとする人間に、ダイゴは目で威嚇する。
    「ああ。やつらにとって、君と付き合ってることも恰好のネタだからね」
     水に口をつけ、ダイゴは一息はく。
    「大丈夫。何があっても君のことは守る。僕はさらし者になっても、君のプライベートは関係ないからね」
     ハルカにとって、怖いのはプライベートを全国に売られることではない。目の前のダイゴから拒絶されることが一番怖いのだ。
     解って欲しい。ハルカはそう思ってメニューを渡した。


    ーーーーーーーーーーーー
    お前が言うなと思った人は正しいよ(

    ポケモントレーナーとして生命倫理は必ず持つべきものだと思うんだ。
    特に頂点に立つ人の倫理観が書きたかった。
    だって自分の他に生き物の責任を追う職業だから、必要だとは思うんだよね。
    【好きにしてください】


      [No.2399] 先駆け 投稿者:小春   投稿日:2012/04/20(Fri) 22:09:43     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     北へ向かう。歩きで、電車で、船で、ときには鳥ポケモンの背に乗って。ホウエンからジョウト、カントーを経てシンオウへ至る。出発は風もすこし冷たい3月の末、シンオウにたどりつく頃には5月の始めになっている。
     私が北へ向かう理由はないが、どうも私の連れには理由があるらしい。浮遊する生命体は焦ることなく、しかし北へ向かいたがる。道中、銀行代わりに……もとい経験のためにトレーナーとのバトルにいそしみ、宿屋代わりにポケセンに押しかけ宿泊する。期間限定のトレーナーとでもいうのだろうか。
     私と彼が通りすぎた頃、あたりの寒さが緩む。濃紅色の桜のつぼみが色を薄め、ほろんほろんと咲いていく。桜前線の先駆をしているような気分になってくるのだ。
     まるで桜の先駆けのようだ。ただ、彼に似合わないのが非常に惜しい。
     お世話になるカーネル氏の言葉は、いつぞやそう言って賞金をはずんでくれた。チェリムやワタッコのような草タイプが先駆けならいざ知らず、彼はでんき・はがねタイプですよ。そう私は返し、灯台から降りる。
     灯台に守られるようにある若い桜の枝に最初の一輪が花開き、淡い紅色を鋼のボディに写す彼を見て、私はカーネル氏の言を否定したくなる。
     
     彼は確かに桜の先駆けだ。
     レアコイルであることが、なんの失点になろうか。


    ☆★☆★☆★
     
     レアコイルの半径1キロで気温が2度あがるそうではありませんか。
     なら、レアコイルが北上すれば桜前線北上するんじゃないのかと思った結果が行き倒れ満載なこれでした。


      [No.2398] 禁断の 投稿者:フミん   投稿日:2012/04/19(Thu) 23:22:46     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「エビワラーよ。お前のことが好きだ」

    「俺もアブソルの事は好きだよ」

    「――――少し曲がって伝わったようだな。私は、お前を一人の雄として好きだ」

    「そ、そうか」

    一昔前。とある地方の、夜の帳が下りた人間がいない深い森の中で、二匹のポケモンが会話をしていた。仏頂面で生傷だらけのエビワラーと、にこにこと満面の笑みを浮かべるアブソル。夜が開けるまでは危険だからと互いに身を寄せ合っている時、ふとなんの余兆もなく雌のアブソルが雄のエビワラーに愛の告白をした。当然、心構えも何にもしていなかったエビワラーは、ただ戸惑うことしかできなかった。

    「私とお前の出会いは偶然だったな。お前が森で体を鍛えているとき、殴っていて倒れた木に下敷きにされたのが始まりだった。よく覚えているよ。数日看病を受けている間に、私はすっかりお前に惚れてしまったんだ」

    「あの時はびっくりしたけど、細い木で本当によかったよ。大木だったら大怪我だからな」

    「いや、私も間抜けだったよ。お前が特訓をしてあんなに騒いでいるのにも関わらず、寝ていて気づかなかったのだからな」

    アブソルはエビワラーの膝に顔を置いた。そのまま仰向けになり、下からエビワラーの顔を見つめる。

    「だが、あの時に怪我をして良かったと思っている。ああいう劇的な出会いがあってこそ、私とお前は親密になれたのだよ」

    「それは正しいな。あの頃の俺はろくに仲間も作らず、独りきりで修行に励んでいたからな。それに比べてアブソルは、誰とでも親しく関わるから、外から来たポケモンなのにすっかりここに馴染んでしまったな」

    「お前は初対面の奴には人見知りするからな。やたらむやみにとは言わないが、信頼できる相手がいて損はないぞ。せいぜい、友人と呼べるポケモンは数人だろう?」

    「数人いれば充分だ。交友関係は狭く深く、だ。それに、お前がいつも側にいるだろう。だから寂しくないよ」

    「―――そうか。それは告白の返事だな。嬉しいぞ」

    「いや、これは返事ではないんだけどな」

    エビワラーの冷たい態度に、アブソルは落ち込んでしまう。

    「なんだ、まだ私を雌として見てくれないのか。先は長いな」

    小さなため息を吐く。アブソルは頭を回転させ、そっぽを向いてしまった。


    「寝る。おやすみ」

    「拗ねるなよ。ちょっと待て」

    「女心をここまで表に出しているのに、結果がどうであれ答えを出さないポケモンは嫌いだ。雄らしくないぞ」

    「あのな、俺の気持ちも考えてくれ。告白って、する方も凄く勇気が要るんだぞ?」

    段々と、蝋燭の火が消えるように声が小さくなっていく。ふてくされていたアブソルは、もう一度エビワラーを見ようと振り返る。

    「俺は、アブソルのこと好きだよ」

    エビワラーは、震える口で声を絞りだし言った。告白を受けた本人は、最初は呆気にとられていたが、直ぐに笑顔になり体を起こす。

    「本当か?」

    「嘘ついてどうする」

    「夢じゃないよな?」

    「頬叩こうか?」

    「止めてくれ。格闘技は、私には少々効き過ぎる」


    そう言うとアブソルは、前足で自分の片方の頬を叩く。ぱちんと気持ちいい音がなるが、笑みは崩れない。

    「ああ、ようやくこの日が来たのか。確かに私は毛むくじゃらで四足歩行、エビワラーは二足歩行で、まるで人間のような容姿。同じポケモンとはいえ大きな壁があるのは分かっていた。それでも、私は自分の心を殺すことはできなかった。望みが叶って嬉しいよ」

    「俺だって、最初はアブソルのこと、正直鬱陶しいと思っていたよ。でも、一緒に生活していくうちに、気持ちが変わっていったんだ。確かに、俺とアブソルは種族が違いすぎるけど、それでもいい。今まで受け流していて悪かったよ。もう素直になる」

    「そうか。これで両想いか。なら、これから遠慮しなくていいな」

    エビワラーは、彼女が何を言いたいのか理解し、緊張で体が硬直する。それを理解しながらも、アブソルはエビワラーをゆっくりと押し倒した。白い体毛でエビワラーを包み込む。

    「あの。俺な、そういう深い経験はしたことないんだよ。だから、気をつけるけど、嫌だったちゃんと言ってくれよな」

    「私も経験はない。心配するな、嫌なものは嫌と言う。だから、安心して愛をぶつけてくればいい」

    アブソルは、のしかかりながら軽くエビワラーに口づけをした。長く唇を重ねない、軽いキスだった。
    その日の夜。二匹のポケモンの体が重なった。





    数日後。エビワラーが、木の実を抱えて森の中を歩いていた。時刻は正午を過ぎる前で、昼食を食べるには丁度良い時間だった。
    森の中をゆっくりと歩いて目指している先は、小さな丘にある横穴だった。意気揚々とエビワラーは中に入っていく。横穴の奥で枯葉の上に寝そべっているのは、毛並みが美しいアブソルだった。入ってきたのがエビワラーだと分かると、穏やかな表情で出迎えた。落ち着いた態度で、大事な番におかえりと言う。彼もまた、ただいまと言い返した。

    アブソルは、一つのタマゴを抱えていた。真っ白で、ひび一つ入っていない。

    「どうだ、タマゴの様子は?」

     
    エビワラーは、アブソルの側に座りながら尋ねた。

    「動く頻度が多くなってきているぞ。もう少しで産まれそうだ」

    「そうか。ほら、木の実を持ってきたぞ。お前が好きなモモンの実もある」

    「ありがとう。有難く頂こう」

    アブソルはタマゴを傷つけないようにゆっくりと起き上がる。なるべく体毛に埋もれるように調整して、手渡された木の実を口に含んだ。

    「しかし、まさか子どもができるなんて。俺達は余りにも違いすぎるから、半分諦めていていただけに嬉しいよ」

    「そうだな。腹部に違和感があったときは驚いたよ。エビワラーに抱かれてから直ぐに、いきなりタマゴが出てくるんだからな。お前が小躍りしているところなんて、初めて見たぞ」

    「仕方ないだろう。嬉しかったんだから」

    あの告白の後、エビワラーとアブソルは、互いを激しく求め合った。今まで塞き止めていた感情が爆発し、それは全て性欲として発散された。彼らは睡眠も食事も忘れ、体力が続く限り体を弄り合い、深く愛を確かめ合った。
    二匹は一日中交尾を続け、そして力尽きた。数時間後、エビワラーが目を覚まして最初に見た物は、腹を抱えて苦しむアブソルだった。彼は慌ててアブソルの腹を擦るが、痛みが引く様子がない。そして大きな悲鳴を上げて出てきたのは、一つの大きなタマゴだった。

    正真正銘、二匹の子どもだった。

    「焦ったよ。このままアブソルが死んでしまうのかと、泣きそうになった」

    「とても痛かったし、恐かったぞ。体が裂けてしまうかと思った。でもその代わりに、大切な宝を授かったな」

    「そうだな。それに、もう直ぐ俺達の子どもと会える」

    エビワラーは、優しくアブソルの頭に触れる。お返しにと、アブソルはエビワラーの頬にキスをした。
    すると、突然タマゴが激しく揺れる。二匹は驚いたが、直ぐにこの現状に気づいた。

    「産まれるみたいだな」

    「ああ。いよいよだぞ」
     
    ついに待ち望んでいた時がやってきた。数日の間大切に守られてきた白い殻に初めて亀裂が入る。徐々に音を立てて広がり、中から出てこようともがいているようにも見える。エビワラーとアブソルは、この瞬間を見逃すまいと食い入るようにタマゴを凝視する。
    そして次の瞬間、タマゴは光り二匹の視界を奪う。彼らは反射的に目を瞑った。
    数秒間、横穴には沈黙が流れた。二匹は一息おいて、ゆっくり瞳を開ける。

    そこにいたのは見たことがないポケモンだった。まん丸とした頭に、大きな丸い目。細い体に、人間が服を着るみたいにズボンを履いているように見える。何より特徴的なのは、全身が黄色いということ。その姿には、両親の特徴が全く受け継がれていない。
    産まれたばかりのポケモンは、地面を這いアブソルの元へ近寄る。必死にもがき、自分の母親の乳房に近づいていく。呆然としていたアブソルも我に返り、産まれた我が子を胸に抱き寄せた。
    そのポケモンは、乳房から母乳を吸い始める。


    「ああ・・・俺の・・・子」

    父親になったエビワラーは、夢中で食事をする自分の子どもを撫でようか止めようか、何度も手を出し引っ込めて、ようやく小さな頭を当てた。

    「可愛いなあ。天使みたいだ」

    「当たり前だ。私達の子なのだからな。容姿は多少違うが、表情はお前そっくりだ。この母乳を吸っているときの顔、私の乳に口付けするときと似ているな」

    「――こんな顔していたのか俺は」

    「ああ、そっくりだ。顔は父親似だな」

    「直ぐそういう意地悪言うんだから、アブソルは」

    「でも、まんざらでもないだろう?」

    「ああ、お前みたいに、優しくて純粋な子に育つと良いな」

    二匹は、親になった喜びを噛み締めていた。



    時が経つと、後にこの子どもの種族は、人間達からズルッグと呼ばれるようになる。


    ――――――――――――――――

    フミんと言います。また短編を置かせて貰います。

    【批評していいのよ】
    【描いてもいいのよ】

    皆さんが楽しんでくれれば幸いです。


      [No.2397] いたみわけ 投稿者:紀成   投稿日:2012/04/19(Thu) 20:08:26     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    たとえば、

    とても大切な人が大怪我をして、

    苦しんでいたとして


    どうしてその痛みを分かち合うことが出来るのだろうか。


    「……酷くやられたね」

    レディはモルテの腕に包帯を巻いていた。切り傷、打撲痕、噛み跡。回収の際に姿を見て怯えたハーデリアから付けられた物だ。『かみつく』『かみくだく』
    こうかは、ばつぐん。

    『油断した。次は大丈夫だ』
    「次が無かったら、どうするつもりだったの」

    長い髪が春の風に揺れる。毛先が大分傷んできたようだ。そろそろ切りたいな、と思う。

    『伸びたな』
    「そうだね」
    『最後に切ったのは……』
    「半年前かな」

    他愛も無い会話。包帯を巻き終え、鋏で切る。もう動いていいよ、と言うとモルテはそっと浮き上がった。
    レディは鋏をジッと見つめている。

    『どうした』
    「あのさ、」

    「『いたみわけ』ってあるだろ?」

    カシャン、と音がして手から鋏が飛んだ。そのまま近くのゴミ箱に突き刺さる。続いてモルテの左手からぽたりと赤い血が流れた。

    「……何を考えてこうしたかは知らないけど、手当てするのはこっちなんだからね。
    そこらへん考えてね」
    『いたみわけ。相手の体力と自分の体力を同じにする技…… あだっ』
    「よかった。そんなに深くなくて」

    お互いの傷を舐めあうのか。下らない。どんなに相手に同情したって、その痛みが分かるのは本人だけだ。かわいそうなんて言葉、軽々しく口にするもんじゃない。

    「モルテ」
    『なんだ』
    「たとえ私が死に掛けたとしても、変に助けようとしないでよ」

    返事が遅れた。だが確かに彼は、

    『ああ』

    と言った。


      [No.2396] 地理のテストの大問五は犠牲になったのだ 投稿者:音色   投稿日:2012/04/18(Wed) 23:45:33     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     おもに俺の空想(妄想)に

     へーいマグロ丼いっちょおおぉぉっ!

    > うおおおおおキターーーーー!!!!!
    > あんな後ろ向きのクイタランからこんなお話ができあがるとは...!!有難く頂戴致します。ありがとうございます!

     休み明け地理のテストの最中、大問4の後半で詰まる
     ふと外を見ると桜だがだいぶ散っている
     その中に山合いに一本だけまだ初々しい枝垂れ桜
     見上げるクイタラン
     ダージリン
     桜フレーバー
     こ れ だ
     そして時間が切れる。
     とか言いながら元々のネタは絵を見た3秒後位に出来ていたのに形にするのに時間がかかりまくりましたすいませぬ。

    > クイタランは元からあんな目してるせいで、ひねくれてるというかこういう屋台の親父さんとかによく合うキャラですね。いいですねえ、俺もこんな桜散る屋台で一杯やってみたいものです。あ、お酒はすぐ赤くなるんでダージリンでネ

     アールグレイは少しきつめらしいですね。
     クイタランと紅茶は何処かに書いた奴と同個体ですタブンネ。

    > 自分の絵からこのように物語を連想し形にしてくれるなんて今まで無かったのでとても嬉しいです。
    > ワンチャンあったらこりゃもうメッチャ画力上げて音色さんの文章に似合うのを描かんとあかんな...

     な ん だ と
     となれば俺はさらにタクティスさんの画力に見合う文章に昇華せねばならんっ!

    > 今後も影ながら応援させていただきます

     ありがとうございまするっ!
     それではっ


      [No.2395] Re: 読みました。 投稿者:フミん   投稿日:2012/04/18(Wed) 23:01:47     20clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ことらさん 

    返事が遅れて申し訳ありません。
    やはり短編は読みやすい方がいいなと考えていたらこういう文体になってしまいました。

    今回は、褒めて頂いてありがとうございます。これからの創作の励みになります。またこういう機会がありましたらよろしくお願いします。
    それでは。


      [No.2394] FUOOOOOOOOOO 投稿者:アメリカ-タクティー-ザリガニ   投稿日:2012/04/18(Wed) 17:17:53     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    うおおおおおキターーーーー!!!!!
    あんな後ろ向きのクイタランからこんなお話ができあがるとは...!!有難く頂戴致します。ありがとうございます!

    クイタランは元からあんな目してるせいで、ひねくれてるというかこういう屋台の親父さんとかによく合うキャラですね。いいですねえ、俺もこんな桜散る屋台で一杯やってみたいものです。あ、お酒はすぐ赤くなるんでダージリンでネ

    自分の絵からこのように物語を連想し形にしてくれるなんて今まで無かったのでとても嬉しいです。
    ワンチャンあったらこりゃもうメッチャ画力上げて音色さんの文章に似合うのを描かんとあかんな...
    今後も影ながら応援させていただきます


      [No.2393] 師匠と弟子 投稿者:ことら   《URL》   投稿日:2012/04/17(Tue) 22:20:12     85clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    前書き:エロいです。カップリングです。http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?no=2335&reno= ..... de=msgviewの続編です。








    「あ、そう。まぁジムリーダーなんて名前だけだし」


     初対面で、まだトレーナーになりかけ、しかもジムリーダーとして父親のことを尊敬していたのに、それを一言で一蹴したヤツがいた。

     その名はダイゴ。



    「まだまだ甘いね。本当に言ったこと解ってる?」
     メタグロスの目の前には倒れたライボルトがいる。顔色を変えず、ライボルトをボールに戻した。
    「解ってます」
     ダークトーンのむくれた声はハルカ。瀕死になったライボルトに元気のかけらを与えている。目の前にいる人間を視界に入れないようにして。
     彼女の目の前に立っているのが、ハルカのポケモンの師匠ともいうダイゴ。 トクサネシティにあるダイゴの自宅の地下にある、ポケモンの修行のための場所で。
    「いや解ってないね。ラグラージの使い方からなってないね。一体いつになったら覚えるのかな?」
     爽やか笑顔のイケメン! そうトレーナーたちでは持て囃されているけど、ハルカにとっては嫌味のトサカ頭にしか思えない。 弱点を即座に見抜き、痛いところを毒針で刺すような言い方をする。
    「いつか覚えると思いますが」
    「全く。なんで素直じゃないかな。素直になりなよ」
     ダイゴはハルカのトーンにつられることなく、静かに言った。子供なハルカに対して、大人のダイゴは笑顔だった。ただし目は笑ってない。
     素直に、というのも、これだけ反抗、反発、逆らっておきながらダイゴに教えてもらっている状況を見ての通り、ハルカはダイゴの方が好きだ。 きっかけは本人が覚えていないくらいに、気付いたらダイゴが好きだった。
     けれど、ダイゴはムカつく。会った時に人をけちょんけちょんにけなし、認めようとしない。その矛盾にハルカは結局、反抗という態度しか取れなくなっていた。
    「じゃあ今日はここまでで良いから。早く帰った方が良いよ。何か雨っぽいし」
    「わかってますー」
     むくれたままポケモンをしまった。帰る支度を始める。ハルカの本音としてはもっとダイゴと一緒にいたい。けれどあんな態度を常日頃とっているのだ。きっと嫌われてる。その事実がハルカの手を自然と早くする。その彼女とは対象的に、ダイゴは窓から外を眺めている。うなる風に激しい雨。窓ガラスが叩き付けられ、今にも割れそうだ。
    「じゃあ今日はありがとうございましたー」
     ぶっきらぼうな挨拶をして、玄関の戸を開ける。その瞬間、暴風と暴雨が室内に舞い込んだ。ハルカが慌てて閉めると、風がうなりをあげてぶつかってきていた。
    「すごい風!」
    「天気予報つけて」
     ハルカがテレビをつける。よせば良いのに、ミナモシティの海岸で台風さながらの実況中継をしている。しかもどのチャンネルも。画面の端には各地の情報が流れている。
    「トクサネは?」
     雨戸を全てしめながらダイゴがたずねた。ハルカはテレビの前のソファに座ってトクサネの情報を待つ。
    「暴風警報と波浪警報と洪水ですね」
    「え、そんなに酷いの?」
     ハルカの後ろからダイゴが聞いて来た。遠くにいたものだと思っていたから、思わず振り向いた。
    「なお、ポケモントレーナーには、勝負やなみのり、そらをとぶなどの技を控えるよう、注意がされています!」
     まず飛ばされそうなリポーターをしまった方がいい。近くを看板が暴風にのって飛んで行く。
    「ねえ」
     ダイゴはまっすぐハルカの目を見る。
    「帰れるの?」
     帰れるわけがない。ハルカの家はここから空を飛んで半時間のミシロタウン。空を飛べないならば、海に囲まれたトクサネシティから出られるわけがない。それを説明すると、ダイゴはハルカにとって意外な返事をする。
    「それは無理だね。今はポケモンセンターもトレーナーでたくさんだろうから、しばらく家にいなよ」
     ハルカは心の中でガッツポーズをした。喜ばないわけがない。まだダイゴと一緒にいられる。それだけなのだが、ハルカにとって非常に嬉しかった。


     先ほどまであれだけ言ってたのに、お茶を入れてくれたり、お菓子を出してくれるダイゴ。これにはハルカもあの時の不機嫌はどこへやら、ダイゴを相手にニコニコ。
    「それでですね、ユウキはキノココの方がかわいいって、進化させないんです〜」
    「あの子もまるっこいポケモン好きだねぇ」
    「そうなんですよ!それで」
     自分でも解らないくらい、話したいことが次々に出て来る。いつもこう、話せたら良いのに。話すのを一度やめて、ため息をつく。
    「君もそうやっていつもニコニコしてればかわいいのにね」
     風で外の何かが倒れる音がする。ダイゴは見に行く為にレインコートを羽織った。
    「素直になりなよ」
     まさか同じことを二回も言われるとは思わず、返事をしようとした時には遅かった。ダイゴはすでに外。
     テレビは変わらず警報を鳴らしている。予報によれば、今日の夜遅くには晴れるという。居られるのも夜中までか、とため息をついた。同時にダイゴが入って来るなり、ハルカに言った 。
    「思ったより酷い。こんな暴風じゃ帰れないでしょ。家でよければ泊まっていくかい?」
     返事を待たず、ダイゴはびしょぬれのレインコートを脱いだ。短時間であったのに、髪はかなり濡れていた。そんなダイゴをずっとみながら、ハルカは嬉しさが隠しきれなかったらどうしようと、そればかり考えていた。

     一方、天気は夜になっても回復どころか悪化の勢いだ。窓の外を見ればライボルトの集会のように雷が鳴っている。雨は大粒、風は暴風。風がぶつかる度に家が揺れる。
     ダイゴは天気など気にせず、残りの仕事と言って、パソコンに向かっている。その横顔をじっと見ていたらいきなり振り向かれる。
    「何?」
     まさか見とれていたとも言えない。上手い返しも解らず、ハルカは黙っていた。
    「ああ、雷鳴ってるから停電するかもしれないし、早めにお風呂はいっておいで。着替えも、そうだね……客用のパジャマがあったかな」
     イスから立ち上がり、ダイゴはクローゼットの中からほとんど使われてない寝間着をハルカに渡す。
    「たまに友達が来た時に使うんだけど、こういうのしかなくて。嫌?」
     ハルカはそれを広げる。明らかにかなり身長が高い男性のもの。これを着ればかなり引きずることは目に見えている。
    「え、あの……ちょっと大きいですし……」
     ダイゴは困ったような顔をした。サイズが合わなすぎるのを渡したのもいけないが。しばらくダイゴは黙った後、ハルカから寝間着を受け取る。
    「じゃあ、僕のお古になっちゃうけどそれでもいい?」
     その言葉はハルカの心に波打った。ダイゴの着ていたものを着れる。首を縦に振り、ハルカはダイゴから少し大きい前開きの半袖と短パンを受け取る。
    「それ、旅行先で買ったんだけど、サイズ間違えたんだよ。ほとんど着てないから」
     そして上の棚から大きめのバスタオルを取り出した。ハルカをそれを受け取る。肌触りがいつも使っているものと全く違う。バスタオルに残ったいい匂い。それにぼーっとしていたのを不思議そうにダイゴが見ている。その事に気付き、ハルカはさっと方向転換してバスルームに向かう。
    「全く……」
     ダイゴはため息をついた。黙って返されたパジャマを折り畳む。

     ハルカがシャワーから上がっても変わらず、ダイゴは書類の作製中。足音に気付いたのか、ちらっとハルカの方を見たが、すぐにパソコンの画面に目を戻した。
    「ああ、先に寝てなよ。寝室でよければ使って」
    「ダイゴさんはぁ?」
    「これが終わったら今日は終わるから。子どもはもう寝た」
     ダイゴに言われるままにドアを開ける。いつも師匠が使っている部屋。整頓され、ベッドにはシワ一つない。緊張と嬉しさが混じり、ベッドにもぐりこんでいた。眠れる訳がない。
     あの師の、好きな人のいつも使っている空間。そこにいるのだから、たまらなくなる。少しベッドに残ったダイゴの匂いがハルカの心を締め上げる。掛け布団を抱きしめ寝返りをうつ。と思ったらすぐさま反対を向いて。
    「ダイゴさんに素直になれたらなー。きっと嫌われてんなぁ」
     ため息が出る。もっと素直に可愛げのある弟子になれないものか。そうしたらもっとかわいがってもらえないだろうか。
     あーだこーだ画策していると、その思考を止めるように雷が光と同時に鳴った。爆音にも等しく、側にあったタオルケットを掴む。

     ドアが開いた音に、ダイゴは目をやった。懐中電灯の漏れた光に映るのはタオルケットを抱えているハルカ。ダイゴは書類を片付けていた手を止める。
    「あ、あの、パソコン大丈夫ですかっ?」
     ハルカの声にダイゴはイスから立ち上がる。そしてディスプレイに触れた。
    「間一髪、電源抜き。さっきのは大きかったね。落ちたかな」
    「そうですか。まだ仕事、あるんですか?」
     いつもと何か違う教え子の態度。ダイゴはふと昔を思い出して笑ってしまう。おかしくて仕方ないのだ。
    「どうして?」
     ハルカと目を合わそうとするが、たどたどしく視線が合わない。こういう態度に出る時は決まっているのだ。何か言いたくて言えないことを抱えてる時。
    「雷が怖い?」
     タオルケットを力強く握ってる。子供ならこんな大きな雷が怖くても仕方ないだろう。ダイゴはなるべく優しく聞いた。


    『素直になりたい
    素直になっちゃえ
    っていうか言ってしまえ私!』


    「あ、あのっ、邪魔しないから、一緒にいても良いですかっ!?」
     ハルカからしたら、告白に近かった。勇気を出して振り絞った言葉。初めて素直に自分の気持ちを口に出した言葉。それなのにダイゴは腹筋がよじれそうなくらいに笑っている。 なぜ笑われたのか解らないまま、ハルカは立ち尽くした。
    「そんなこと聞くまでも無いよ。おいで。まぁ座りなよ」
     手招きに誘われ、ソファーに座る。もちろん、ダイゴにピッタリくっついて。ハルカは熱くなっているのを隠すのに必死。タオルケットを顔までかぶり、その隙間からじっとダイゴの方を見る。
    「ねえ」
     ダイゴはハルカのかぶってるタオルケットを取る。いきなりのことに、ハルカは思わず叫んだ。
    「返してー!」
     ダイゴは遠くにタオルケットを投げる。もうハルカの顔を隠せるものはない。そして気付けば、ハルカはダイゴの膝に片手をついていた。思いっきり顔をそむける。
     何をしてしまった。何がどうしてそんな近づいてしまった。ハルカの頭の中に後悔がぐるぐると回る。それはダイゴが優しく肩を抱いてくれたのも気付かないくらいに。
    「そんなに雷が怖いの?」
     ハルカはダイゴの顔を見た。本当に心配してる顔だ。けれどすぐに目をそらした。するとダイゴはハルカを自分の方にさらに引き寄せる。
    「大丈夫だよ。落ちないから」
     雷なんて聞こえてない。ダイゴの声しかハルカには届いてない。肩におかれたダイゴの手が暖かく、ハルカは思わずダイゴの着てるものを掴む。
    「そう、じゃないです」
     こんなに近いのにダイゴに言うべき言葉が出て来ない。あの時もそうだった。言いたいのに言えない。ダイゴの胸に顔をうずめ、思いっきり抱きしめたいのにそれができない。せめてダイゴのパジャマの袖をぎゅっと握ることが、ハルカなりの好意の示し方だった。それすらも拒否されているのではないか。そう思うと、ダイゴの顔など見えない。
     暖かい手がハルカの顔に触れる。導かれるように顔をあげた。ダイゴと目があう。
    「何遠慮してるの?さっきから隠そうっても無駄だよ。こっち見て」
     ハルカはもう何も言えない。緊張しているのもあるし、「余裕」の表情でこちらをみているダイゴには勝てない。口が乾き、心拍数が上がる。電気が消えて小さな灯り一つだというのに、目の前のダイゴはいつも以上にはっきりと見える。
    「前に言ったよね。出す順番を間違えることが命取りになるって。君はポケモンもそうだけど、恋の勝負も知らなすぎる。僕の勝ちだ」
     優しくダイゴがハルカの頬をなでる。けれどハルカには全く意味が解ってなかった。今、なぜダイゴがこんなことをしているのか、恋は惚れた方の負けということ、そしてその勝負を仕掛けてられていたこと。
    「何を言ってるんですか!そもそもまだ解らないじゃないですかっ!」
    「君は降参を認めてることを言ってるのに解らないの?勝負はいつも、二手先を見るんだよ」
     もう、そんなことはどうでも良かった。ダイゴに抱き締められ、ダイゴにされるまま唇を塞がれる。柔らかく、そして熱い味が体に広がった。頭から足の先まで痺れる。すぐ側にダイゴの息を感じ、ハルカの体温をあげていく。何をされているのか、どうなっているのかなんてハルカには解らない。けれどダイゴが自分に対して何をしているのか、どうなっているのかは理解できた。それを感じ、ダイゴの膝の上にいながらも涙が出る。
    「…僕何か泣かせるようなことした?」
     唇を離し、困ったような顔でダイゴはハルカを見つめる。
    「いえっ…してないですけど、私、ダイゴさんに、嫌われてると…」
     頭を撫で、強く抱き締める。涙をぬぐうハルカを慰めるように囁く。
    「それが恋の勝負だよ。君より多く生きてる分、君に勝ち目は無いんだよ」
     雨音が少し弱まる。そんなことに構うことなく、ダイゴは再びハルカの唇を塞ぐ。しびれ薬のように、ハルカの体を麻痺させた。それに気付いたのか、ダイゴは一度ハルカを解放する。そして目があった。
    「ダイゴさん、好きです。ずっと好きでした」
    「知ってるよ。ずっと待ってた。だからこうして君が欲しい」
     待たされた時間を埋めるかのごとく、何度も口づけを繰り返す。ダイゴは優しく、そして自分のものにしていくかのようにハルカを抱きしめ、唇に触れる。それだけでなく、舌をからませた。ハルカは抵抗の仕方も解らず、ダイゴにされるがまま。その身をダイゴに預け、目を閉じた。
     そのうち、ハルカはダイゴの手が、パジャマに触れていることに気付く。そして前開きのボタンを一つ一つ、上から外し始める。
    「なぁに?元は僕のだからいいじゃない。それに、君くらいの年齢なら僕が望んでること、解るよね」
    「わ、かりますけど、でも……」
    「怖い?」
     ハルカは頷く。ダイゴはハルカの頭を撫でた。
    「本当に嫌なら、君が決めれば良い。時期が早いのは良くないし。それに君の年齢だと、下手したら僕が捕まるからね」
     出会った時から「通り魔に会ったら、このボスゴドラで攻撃するから大丈夫だよ」とか犯罪すれすれのことをさらっと言う人だった。今もハルカの返事を待たずにやわらかい乳房を包み込むようにして触っている。
     まだ発達段階であるけれど、それなりの大きさがある。 試しにダイゴは乳房の先、乳頭に触れた。その瞬間にハルカの表情が変わる。
    「痛いっ」
    「ごめんごめん。まだ若過ぎるからねぇ。もう少し大きくなれば、また違う感じがするよ」
     そう言いつつも、ダイゴはハルカの胸を離さない。初めての感触にハルカは目を閉じて耐えるしかなかった。
    「この先も僕に見せてよ」
     ハルカの下着とズボンを素早く下ろす。そしていつもは触れられない場所に手を伸ばした。
    「大丈夫?痛くない?」
    「はい」
    「若くてもちゃんと反応はするんだね。」
     たまごの白身のようにヌルッとしていた。指で撫で、場所を確認する。 ハルカの体の下の方に違和感が生じた。そしてそれは体内の中心へ向かっている。思わず息を飲んだ。そして痛みが来て悲鳴に近い声を上げる。
    「そう。困ったなぁ。これが痛いならなぁ」
     痛がるハルカをよそに、指は動く。奥に行ったり来たり、入り口を広げるようにしたり。ハルカは目を瞑り、ダイゴにしがみつく。そうして痛みに耐えていた。好きな人にされてるからと言い聞かせる。
    「いれたら気持ち良さそうだね」
     ダイゴは独り言のようにつぶやいた。
    「入れるよハルカちゃん」
     ハルカが答える前に、何か硬いものが体の下に押して来ていた。最初は触れていただけ。次第にそれが奥に来ようとしてる。 そしてそれが入って来た瞬間、電撃が走ったかと思われるほどの痛みがハルカの体を支配する。
    「いたぁっ!」
     ハルカはダイゴの膝の上というのも忘れて暴れる。一番の痛みから逃げるように。
    「大丈夫?」
     黙って首を横に振る。入ろうとしたダイゴの男性器はただ呆然とそこにある。
    「痛かった?」
    「はい」
    「そうか」
     入っていたのはほんの少し。最初から予感はしていた。あまりに小さいこと、そして未発達な部分があること。そんな状態で決行できるわけがない。
    「ごめんね。いろんなことがまだ早過ぎたみたい。君に痛みを与えたいんじゃなくて、気持ち良くなって欲しかったから」
     ハルカのおでこにキスをする。それに応えるようにハルカはダイゴに抱きついた。
    「ハルカちゃんがもっと大きくなったら、この続きをしよう。時間はたっぷりあるから、焦らなくていい」
     ダイゴは耳元で囁き、今まで高ぶった感情を落ち着かせようとした。けれど少しでも味わってしまった感触は中々消えない。ずっと待っていたのだからなおさら。唇、指先、性器の先に残った感覚は、収まってくれそうになかった。
    「ダイゴさん」
    「どうしたんだい?」
    「できなくてごめんなさい。だからせめて一緒に寝てください。ダイゴさんと一緒に寝たいです」
    「……君は素直になったと思ったら残酷なことを言うんだね」
     言われた意味も解らない。ダイゴに抱きかかえられて一緒に寝室に入り、ベッドに降ろされる。そしてハルカの隣にダイゴが入ってくる。
    「ダイゴさん」
     痛くてできなくてもまだハルカだって足りない。ダイゴに抱きつき、唇に触れた。
    「ハルカちゃん、もう寝なさい。君はまだ身体的には子供なんだから。大きくなれないよ」
     ダイゴに撫でられて、ハルカはもう一度口づけをした。
    「おやすみなさい」
    「うん、おやすみ」
     ダイゴに抱きつき、ハルカは眠気に身を任せた。




     けたたましいキャモメの声に目が覚めた。ハルカが起きると、ベッドにいて、着衣もちゃんとしている。
    「あれ……?昨日のは……」
     空は突き抜けるように晴れ上がっている。あんなにダイゴが優しかったのも夢だったからか、と一人納得してベッドから出た。
    「おそよう。人のうちで良く寝れるよね」
     いつもの鬼師匠だ。朝ごはんに呼ばれる。ガッカリして食卓に着く。
    「そういえば…」
    「なんですか?」
    「やっと素直になってくれたんだし、今日は修業抜きでどこかデートでも行こうか?」
    「……ダイゴさんっ!!!」
     あまりに嬉しくて、ハルカはダイゴに飛び付いた。いきなりのことだった為、ダイゴも受け止められず後ろに飛ばされ、手はテーブルに触れて一部食器がジャンプする。
    「あの、あのっ!!!行きたいです!!!大好きです!!!」
    「ふふっ、もう全部知ってるよ。でも今まで通り、教える時は容赦しないからね」
    「はい!ついてきます!」
     夢じゃなかった。目の前に抱き締めているのは紛れもなく、一番好きな師匠、ダイゴ。年の差はあれども、誰よりも大切な人。確認するように、もう一度抱き締めた。



    ーーーーーーーーーーーーー
    好きすぎてトチ狂ったわけではない。
    ポケモンのエロパロスレのために書いたもの。それを修正して仕上げた。

    好きな人に嫌われる前に、その態度を改めて好きだと伝えて来ないと、後悔するのは貴方ですよ。ツンデレなど二次元の産物でしかありません。


    【好きにしてください】


      [No.2392] 枝垂れ桜とダージリン 投稿者:音色   投稿日:2012/04/17(Tue) 21:39:56     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     桜が散る時期になった。
     風に吹かれて飛んでいく淡い花びらをぼんやりと眺める。
     踏みつぶされたアスファルトにばらばらと張り付いた花弁を見ると、どうも美しいという感情よりも汚らしいと思ってしまう。
     朝日に透ける姿や夜の月明かりを帯びる花明り、何より風の気まぐれで飛ばされること事態は綺麗に見える。しかし、散り終ったそのあとは人にポケモンに踏みにじられる。
     これを風流と見るべきか、自然の摂理だと割り切るべきか。
     まぁ、どっちでも良いんだけど。


     ぶらりと遅い花見に出かけた。
     一人だともの寂しいのだが、春も麗といった陽気な時間帯にゴーストタイプなこいつを起こすのは少し酷かとも思い、ボールだけ連れて足の向く方へ歩く。
     流石にシーズンを少し過ぎたからか、シートを広げて場所取りするような輩もいなければ、酒臭い宴会独特の空気もどこにもない。
     ただ残りの花を振るい落とし夏に向かって芽を出しかけている桜ばかり。春の飾り付けはもういらないのか、すこし揺れただけでも桜の雨が起こるだろう。
     ありきたり。
     桜の名所でもなんでも無いが、少しばかり固まっている公園をぐるりと一周した。


     不意にざっと雨が降る。時雨か何かだろうと思うが、天気予報を確認しなかったことを別段悔やむ必要はなかった。
     数十分の雨をしのごうと入りこんだ木の下は思いのほか広くて、脇道に誘うかのように枝を突き出していた。
     何故かそこだけ淡く濡れておらず、先へどうぞと促すようであったので別段逆らわずに進んでいった。
     そしてほんのわずかな傾斜を踏みしめた先にあったのは、少し古ぼけた屋台だった。
     

     花見がピークの時に立ち食い客のためにアメリカンドッグやらポテトやらでるのはまぁ、分かる。
     祭り騒ぎだから。
     しかしこんな人が訪れるかどうかわからないような場所にぽつんと寂れた店に誰か来るのか。穴場限定とかそういうのか。
     時雨はわずかに降り続いている。気にはならないほどに頬を濡らす。すこし肌寒いかなと思った。
     近づいてみるとかすれた看板にはどうにか『紅茶』と書かれているのだけ読みとれた。また妙なもん売ってんだなと眺める。
     簡単なコンロの様なうえに茶色い鉄瓶が乗っかっている。その横で乳白色のポットがぽつんとほったらかされていた。
     店主がいないってことは打ち捨てられているのか、その割には埃も何もかぶっていない商売道具。
     ひょいとその先を見ると、でかい枝垂れ桜が目に入った。


     残花ばかりを目にしてきたせいか、そいつはわずかな雨に降られていていても少しだって散ろうともせずただゆらゆらと桜色をしていた。
     その下にはただ佇んでいるだけの蟻喰いがいた。
     花守のよう、とまではいかないがただずっとその枝垂れ桜を見上げていた。
     不意にそいつと視線があった。クイタランは振り返りもせずじろりとただこちらを見た。どこかふてぶてしそうな表情にも見える。
     そしてぐるりとこちらに向き直った。首からは木のプレートをぶら下げている。のしのしとこちらに歩いてやってくれば、そこに書いてある文字が読めた。

    『本日のお勧め  ダージリン 桜フレーバー』

     こんこん、と白いポットをつついて、不満足なのかそいつはかぱりとふたを開ける。
     爪の先に張り付いた桜を一枚ふわりと投げ込み、ぶっちょうずらのままふたを閉めた。
     そのまましばらく蒸らすのだろうか、また枝垂れ桜を見上げに離れる。
     確かにこいつは結構見事だ。雨は静かに止んでいたので、ふとボールからあいつを出してみた。
     丸くなっていたゴビットはしばらく外の寒さに震え、気がついたようにぐぐっと手と足をのばし俺を見る。
    「見ろよ」
     垂れ下がる花に興味があるのか、思いのほか小走りでアリクイの横へと走る。
     クイタランは特に眺めるだけなのか、恐る恐るといった様子で手を伸ばすゴーレムに一瞥くれたのみでなにもしない。
     そうしてどれほどたっだだろうか、特に長い時間というわけではないだろうに。
     気がつけば見上げるのは俺とゴビットばかりで、クイタランはいつの間にやら屋台に戻って作業に没頭していた。
     きろりと視線がこちらに刺さった。
     爪で屋台を叩く。早くこちらに来いと急かすように。
     横柄な態度にいらつく前に、その仕草があまりにも浮かべている空気と似合っていてそちらに足を向ける。
     そこには白いポットから丁寧に注がれた、淡い琥珀色した紅茶が注がれていた。
     紙コップに。


     これは一杯いくらなんだろうかと飲みながらようやく頭が思考する。
     胸に広がる温もりは確かで、ほのかに香るこれは桜なんだろうか。
     風に乗って散るばかりのあれにも香りらしいものがあったのか。
     飲みほしてから息をつく。小銭入れがあったかどうかポケットを探った。
     相変わらずゴビットはずっと枝垂れ桜を見上げている。
     ちらりとアリクイをみると、俺が並べた小銭を勘定しているらしかった。
     数枚の10円玉が押し返される。余分だったらしい。
    「ごちそうさま」
     一声かけてゴビットをボールに収める。
     不思議な穴場を見つけたものだと思った。


     後日、その場所にもう一度足を向けてみたのだが、探し方が悪いのか横道は上手く見つからなかった。
     いわゆる春限定であろうあの紅茶を、もう一度堪能したいものだ。


    ――――――――――――――――――――――――――――
    余談  御題『桜』ということで。
    あるお方からいただいた絵からヒートアップ。捧げます。

    【好きにしていいのよ」


      [No.2391] それぞれの持論 投稿者:akuro   投稿日:2012/04/17(Tue) 01:34:25     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ※会話文のみ



     あなたにとって、ポケモンとはなんですか?





     〜カントーの場合〜

     「愛すべき存在! どんなポケモンにだって、いい所はある! はず!」

     「はずって! じゃあシオンタウンで戦線離脱したぐれんはどうなんだよ。 アイツのいい所は?」

     「うっ……! え、えと……め、目が覚める色!」

     「それなんか違うだろ!」



     〜ジョウトの場合〜

     「うーん、仲間……かな? 一緒に冒険して、一緒に強くなる仲間!」

     「さすがヒバナさん! すばらしい答えですね!」

     「そうかなー? じゃあトモカは?」

     「友達……ですかね、一緒にいると楽しいですし」

     「あはは♪ 友達友達〜♪」

     「ヒバナさん!?」



     〜ホウエンの場合〜

     「……ポケモンはポケモンでしょ」

     「……」

     「……」

     「……え、終わりか?」

     「……はづき、まだキャラも決まってないのに出ていいの?」

     「そういうことは言っちゃダメだろ」



     〜シンオウの場合〜

     「家族かな。 一緒にいると、リラックスできるんだよねー ね、らいむ!」

     「うん! らいむもシュカと一緒にいると楽しい!」

     「らいむー! あたしのロメのみ食べたでしょー!」

     「あ、うみなだ〜♪ に〜げろ〜♪」

     「あ、コラ、待ちなさーい!」

     「あっはは。 今日も平和だね……」



     〜イッシュの場合〜

     「未知の生き物かしら。 知れば知るほど、もっと知りたいと思えるのよね……」

     「イケメンと一緒にいると、イケメンのイケてる度120%アップする存在!」

     「……」

     「特にカイリューとかと息ピッタリでバトルしてたらもう……キャーキャーキャーキャー!」

     「……今日もモモカは通常運転ね……」





    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


     風呂の中で思いついて深夜テンションで書き上げた。 

     新キャラをちょっとだけ説明。

     はづき ジュカイン♂

     エンジュの手持ち。 性格未定。



     トモカ

     ジョウトのトレーナー。 新SS(データ削除後のSS)主人公。 ヒバナを尊敬している。

     てか、キャラ多いな……でも、全地方の主人公+手持ちポケだし仕方ないか。

     [書いていいのよ]


      [No.2390] 読みました。 投稿者:ことら   《URL》   投稿日:2012/04/16(Mon) 21:12:06     23clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    初めまして、ことらと申します。

    この話とても好きです。初めて見た時、星新一のショートショートのような文体に、淡々と進むストーリーだなと思いました。
    そんな一見だけでも良かったのですが、読み直すと淡々と進むからこそ見えてくる人物の裏やしぐさが、書いてないのに想像できます。これは凄いなと思いました。

    では失礼します


      [No.2389] 募集終わりました 投稿者:西条流月   投稿日:2012/04/15(Sun) 23:41:42     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5




    キャッチコピーの募集終わりました 協力ありがとうございました

    まだまだ拙いながらもたくさんの助けを借りながら頑張っていかせていただきます。


      [No.2388] この作品について 投稿者:フミん   投稿日:2012/04/15(Sun) 00:54:11     20clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    度々失礼します。タグをつけ忘れましたので報告します。

    【批評していいのよ】

    作品の感想を頂く機会があまりありませんので、宜しければお願いします。
    それでは、失礼しました。


      [No.2387] 桜染【お題:桜】 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/04/15(Sun) 00:41:29     75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:桜の】 【木の下には】 【死体が】 【埋まってるん】 【ですってね

    「桜の木の下には、死体が埋まってるんですってね」

     俺のすぐ近くにいる男女の、女の方が言った。
     男は笑って、いつのネタだよ、と言った。

    「でも、本当に埋まってたらどうする?」
    「うーん、俺のダグトリオが掘り返しちまったりしてな」

     俺の目と鼻の先で、ダグトリオが地盤を掘り返している。
     何か気になることでもあるのか、俺の前を何度も何度も行き来している。

     ダグトリオ、か。
     そういえば彼女も、ダグトリオじゃないけどモグラのポケモンを持っていたっけ。
     それを知ったのは、彼女と別れた直前のことだったけど。




    「何をしているの?」

     傍らにハハコモリを従えた彼女にそう尋ねられたのは、雪もちらつきはじめた晩秋のことだった。
     桜を見ているんだ、と俺は答えた。

     川沿いの遊歩道にずらりと並ぶのはソメイヨシノ。そのシーズンになれば、等間隔にぼんぼりが並べられ、酒盛りをする人たちであふれかえる。
     しかし俺と彼女の前にあるのは、枯れかけた赤褐色の葉をいくつか枝に残した、侘しい1本の木。

    「春にお花見に誘っても来なかったのに、何でわざわざこんな時期に?」

     紅葉した桜も乙なものだぞ、と俺は言った。
     彼女は、紅葉どころかもう枯れ葉になっているじゃない、と言った。

     ただ単に、俺は人ごみに行くのが嫌いなだけだった。
     花見って言ったって、ほとんどの人は花なんか見ずに、酒を飲んで馬鹿騒ぎしている。
     それなら俺は、花がなくても、静かに風流を感じられる冬の桜の方が好きだった。

    「寒いから、どこかのお店に入りましょうよ」

     彼女が言った。
     今日は新しい端切れを買ってきたの。彼女は手にしていた紙袋を振った。


    「桜の木の下には、死体が埋まっているんですってね」

     彼女は俺に向かって言った。使い尽くされたネタだな、と俺は言った。

     桜の花は、血の色と言うには濃すぎるじゃないか。もみじの木の下に埋まっているって言われた方が、よっぽど納得する。
     俺がそういうと、彼女は笑った。
     しかしその反応は予想していたのか、彼女はさらに続けた。 

    「仮に桜の木の下に死体が埋まっているとして、それは一体いつ頃埋められたんだと思う?」

     そう尋ねる彼女に、俺は自分の見解を告げた。

     俺は秋だと思う。
     桜は紅葉する。その色はやや褐色に近い赤色で、もみじよりもよっぽど血の色に似ていると思う。

     なるほど、と彼女は頷いた。

    「でも、私は違うと思うな」

     じゃあ、君はいつだと思う?
     俺がそう尋ねると、彼女は紙袋の中から、ほんのりとベージュがかった、淡いピンクの布を取り出した。
     彼女は裁縫が趣味で、よくお気に入りの草木染めの店で端切れを買っては、小物や飾りを作っている。
     まだ幼い頃、パートナーのひとりであるハハコモリがクルミルだった頃、その母親であったハハコモリが草木を編んでクルミルに服を拵えているのを見て以来、彼女は裁縫の虜なのだという。

     彼女が手にしている柔らかい色合いの布地は、まさしく春に河原を彩る花びらと同じものに違いなかった。

    「この桜染の布は、桜の木の枝から煮出されるの」

     てっきり花びらを集めて煮出すのかと思っていたから、俺は少し驚いた。
     彼女は続けた。

    「桜ならいつでもいいってわけじゃないの。普段の桜を使っても、灰色に近い色になってしまう。こういうピンク色に染めるには、花が咲く直前の桜を使わなくちゃいけないのよ」

     花が咲く直前。
     その時期の、花そのものではなく、木の枝や樹皮が白い布を淡いピンクに染める。

    「桜はね、花を咲かせる直前、木全体がピンク色に染まっているの。下に死体が埋まっていても、木全体を染めるんじゃ、薄くなってしまってもしょうがないでしょう?」

     そう言って、彼女は手の上の端切れを撫でた。


     彼女は桜の花が好きだった。
     人であふれかえるその木の下へ、彼女は毎年必ず行った。
     俺は誘われても行かなかった。人ごみが嫌いだったのもあるし、彼女の相手をするのに疲れ始めていたのもあった。

     彼女は全ての植物に対する愛を、3日で散ってしまうその花へ残らず向けた。
     それはきっと、人間に対しても同じだったのだろう。
     彼女の愛は一途だった。そして、彼女の愛は重かった。

     別れを告げたことはきっと、間違っていなかったはずだ。
     そうでなければ、俺はその先永遠に、彼女の重さに耐えながら生きなければならなかっただろう。


     木の全体に回って、薄くなった赤い色。
     彼女が愛おしそうに撫でていたその色は、一体何が染めていたのだろう。




    「ねえ、さっきからあなたのダグトリオ、同じところをずっと掘ってない?」
    「うん? 何かあったのかな?」


     ああ、そのままこっちに来てくれよ。
     俺もそろそろ、誰かに見つけてもらいたいんだ。





    +++++

    現実逃避に出かけたら桜が満開だった。
    夜だし明かりもなかったからほとんど見えなかったけど。
    とりあえず定番のネタで即興で書いてみた。


      [No.2386] 解説的な 投稿者:紀成   投稿日:2012/04/14(Sat) 17:30:31     18clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    今まで読んできた漫画や小説の知識と、自分の中にある文才的な何かを組み合わせて書きました。
    書く上で決めたことは、

    『露骨な描写は入れない』
    『それとなく何か入れる』

    巷に出回っている描写が書けない(出せない)ので雰囲気だけでそれっぽくしてみようと思いました。
    ポケモンテラ空気。

    イメージ的にはbassoさんのイタリア政治家シリーズに近いです。


      [No.2385] ピグマリオン 投稿者:紀成   投稿日:2012/04/14(Sat) 17:24:48     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    ※題名と内容が合ってない
    ※趣味全開
    ※苦手な方はバックプリーズ
















    昔々、とある国に彫刻家の男がいた。
    その男はいい年になっても恋人も作らずただひたすらに彫刻を作り続けていた。
    その男の名は――

    ゼクロムの苦い味が、今はひたすらに恋しかった。吐き気を催すような感覚に囚われ、必死で口を拭う。
    何が起きた?何がどうなった?その二つの言葉を頭の中でループさせることで平静を保っていた。
    既に着ているブレザーの右袖は唾で濡れている。ハンカチを取り出す暇も無かった。吐きたいと思ったが、そんなことは許されないようだ。
    目の前の男を睨みつけ、ミドリは一つ一つ噛み締めるように言葉を紡ぐ。

    「……何するんですか」

    相手の男はミドリより頭一つ分高かった。その頬は紅葉が張り付き、一日二日では剥がれることはないだろう。それくらい真っ赤だった。付けられた時に口でも切ったのか、ひっきりなしに唇を舐めている。
    その姿が恐くて恐くてたまらなかった。

    「先輩がわざわざ会いに来てやったのにその態度か」

    ショウシの声はイラついている。一歩一歩距離を縮めれば、面白いように肩を震わせる彼女が面白くて、それでいて愛しくてならない。
    あの邂逅から数年経った今も、ミドリは年に合わない仕事と勉学を掛け持ちしていた。探偵。警察の救世主と世間は騒ぎ立てる。並大抵のトリックなら、簡単に見破られてしまう。
    だがそんな彼女も苦手な相手の前では、普通の少女となる。

    「来ないで……ください。なんならこの場でバトルしましょうか?」

    左手が腰のホルダーに付けたモンスターボールを外した。数メートル離れているこちらからでも見える。鋭い目。剥き出しの悪意。そして怒り。

    (そんなにこのご主人が大事か)

    ショウシの気持ちは冷めていた。様々な感情が胸の内でせめぎ合っている。怒り、嫉妬、嘲り、焦り。
    全ての名を持つ感情を並べていっても足りないかもしれない。
    ミドリが動きの無いショウシに訝しげな視線を向ける。まだ力は抜いていないようだ。その焦り具合についついからかいを入れたくなる。

    「お前まだあいつ探してんのか」

    先輩、という単語を出した途端ミドリの様子が変わった。先ほどの怯えから一転、目に冷静な光が宿る。
    唇から零れる声には微塵の震えもない。

    「探してはいけませんか」
    「……」
    「あの人は生きてます。絶対に」

    今度は向こうがこちらを嘲る番だった。部外者。無関係。そして野次馬。三文字の三つの単語がショウシの頭の中に響いた。

    「証拠は」
    「ありませんよ」

    あの人のことは私が一番よく知っていますから、というミドリの言葉に何かが切れた気がした。一気に距離を縮めて首を掴む。かはっ、と咳き込む音がしたが気にしない。そのままキスする直前まで顔を近づける。ボールがカタカタと揺れていた。

    「苦しいか?」
    「……そう見えますか」

    細い喉は少しでも力を加えれば簡単にねじ切れてしまいそうだ。えづいているが涙を流す様子はない。目を閉じ、次に開けた時にそこに光はなかった。ショウシの姿を映すことはなく、見てすらいない。

    「余計なことに首を突っ込む人は好きじゃないです」

    言う前に噛み付いた。自分にしては荒々しい。その気になればドロドロに溶かすことは出来たはずだし、そのまま持っていくことも出来たはずだ。
    酸素が抜けていく感覚を久々に感じながら、ゆっくりと離す。銀色の糸が細くなり、そして消えた。

    「同じ先輩でもこうも違うんですね……」

    ボールはいつの間にか静かになっていた。目の光はもう戻っている。だが決してミドリはその光がある時に彼を映すことはなかった。

    「――俺が嫌いか」

    咄嗟に出た言葉がそれだった。幾度無くこの手に抱いては手放し、唇で巧みに操ってきた。好きだとか嫌いだとか極端な愛憎の言葉なんてここ数年出していない。
    相手が人間であってもポケモンであってもそれは変わらなかった。ただし―― ポケモンの場合はまた別の理由があるからだが。

    「好きと言えば離れ、嫌いと言えば近付く。私の人生における人間関係はそうなっているようです。
    だから好きになって欲しい人はこちらから嫌いになればいいんだと思います」

    「でも、」

    「私はあの人を嫌いになんてなれない」

    光の無くなった目がショウシを映した。目尻から光が一筋伝い落ちる。目の前にいるのに、奇跡でも起きない限り本物は手に入れることができない。今までの代償がこれだというのか。

    「……ハンデが少しデカすぎないか」

    そう言ってショウシは再び噛み付いた。――悲しいくらい、優しく。


      [No.2384] 感想ありがとうございます! 投稿者:akuro   投稿日:2012/04/14(Sat) 15:02:53     26clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     感想ありがとうございます! 騙されちゃいましたか(笑) タイトルはもう、フィーリングで決めたんです。 ネタと一緒に降りて来ました(笑)

     ワイファイで受け取ったレックウザの親が「ノブナガ」だった→ランセ地方からか?→ランセはイケメンいっぱい→キャーキャーキ(ry てな流れでできました^^(殴

     [イケメンは何やってもイケメンなのよ(蹴]


      [No.2383] ありがとうございます! 投稿者:メルボウヤ   《URL》   投稿日:2012/04/13(Fri) 19:11:08     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    No.017さんこんばんは! お返事が遅れてしまい申し訳無いです…OTL
    いえっこちらこそ、突然だったにも関わらず、快く受け取って下さって有り難う御座いました!

    もしやイースターネタ一番乗りでしょうか? やった!笑
    クリスマスやハロウィンに比べると、イースターは話を広げにくそうですよね。そこがイースターが浸透していない理由の一つかもしれませんね。
    個人的にはとても好きな行事なので、もう少し知名度が上がったらばグッズが出来そうだよなーと、密かに期待している昨今です。卵の雑貨は可愛いと思いますv

    ジグザグマは、実はそこまで深く考えずにチョイスしたのですが(えー)、そう言って頂けて一安心…と申しますか(笑)
    面白い特性は他にも沢山ありますし、スポットを当ててみると色々とお話が作れそうですよね!

    文章での描写が疎かになってしまっているのは実感があったので、余計に、時間が足らなかったことが悔やまれます。今後はもっと早くから取り掛かるようにしなければっ。
    「解ってるのにやらない」のが一番ダメですよね;; 頂いたアドバイスを参考に、じっくり手直しします! 贅沢を言って頂けてむしろ有り難いッ(笑)

    また見かけましたら何卒優しく見守ってやって下さいませ*・∀・*
    コメントとアドバイス、有り難う御座いましたvv


      [No.2382] こんな返信で大丈夫か? 投稿者:門森 輝   投稿日:2012/04/12(Thu) 22:04:56     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     コメントありがとうございます! 書かせて頂いちゃいました。何と言いますかすみません。エイプリルフールのテンションは怖いですね。FOOOOOOOOOO! 
     とりあえず走れメロス以外の主なパロディの元ネタを挙げておきます。

     かたきうち / エルシャダイ http://dic.pixiv.net/a/%E3%82%A8%E3%82%BC%E3%82%AD%E3%82%A8%E3%83%AB
     フリーフォール / チャージマン研 http://dic.pixiv.net/a/%E3%83%9C%E3%83%AB%E3%82%AC%E5%8D%9A%E5%A3%AB
     ダストシュート / バトルドーム http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%83%90%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%BC%E3%83%A0

     コメントありがとうございました! 

    【FOOOOOOOOOOOO!】


      [No.2381] コミュニケーション・後編 投稿者:リング   投稿日:2012/04/12(Thu) 21:06:30     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ブームというものは案外早く過ぎ去ってしまうもの。我が家から手話が絶えることはなかったが、2年もすれば注目もすっかり治まり周囲では日常が戻っていった。
     季節は、桜も散り行き暖かさは徐々に暑さに変わる初夏の頃。
    「ねーちゃん、早くしろよー」
    「ごめんごめん……っていうか、あんた準備が早過ぎるのよー。女はもっと準備に時間かけるもんでしょー?」
     同じ女なのに、キズナは小5になってもオシャレに無頓着。我が妹ながら、隣を歩いて恥ずかしいレベルだ。
    「アキツに乗れば速いからって油断しすぎなんじゃないの? そんなんじゃ、音速でも間に合わなくなるよ?」
     ぐ、あいも変わらず痛いところを突く妹だ。
    「うっさいわねー。そんなこと言ってないで、私の準備を応援しなさいなー」
    「髪整えたって見る人なんていないから……彼氏とデートに行くわけでもないのに、髪がどうのこうの、服の色合いがどうのこうの、バッグに付けるぬいぐるみがどうのこうの、本当に厄介ねー」
    「うっさい!! 今からそんなんだと、中学になっても彼氏出来ないわよ?」
    「まるで中学で彼氏が出来たみたいないい方ねー? 彼氏の一人もいない人に言われたくないなぁ」
     家族との仲の良さはアキツに手話を教える前からと同じく、円満なものである。アキツに対して漏らしていた愚痴を、今は別の誰かにしなければならなくなったと母さんも父さんも嘆いているが、そんなことも小さな問題だ。今ではむしろ家族の仲は以前よりよくなったんじゃないかと思う。
     けれど、キズナとのやり取りは相変わらずこんな感じ。ほぼ確実に会話の主導権はキズナが握ってしまうのだ。
    「中学生で付き合ってたら早すぎるわよ」
    「アオイねーちゃん。さっきの自分の発言に責任持ってよ? それなら中学生で付き合えなくってもいいじゃないのさ?」
     ぐ……確かに。
    「練習よ練習。彼氏が出来た時にいい女に見せるための!! 中学生から身に着けとかんと、高校生になったらどうするのよ」
    「もーわかったから。良いから早く準備しなさいな。俺もう待ちくたびれているんだけれど……」
    「大体、自分の事を『俺』って言っている時点で何か女として間違っているでしょうが。」
    「いいんだよ。俺はこのままで。『私』とか言ってなよなよしていたら道場で舐められちまう」
     全く、キズナは道場に青春を費やす気か? 我が妹ながら情けない。
    「あんたもうちょっと女として生きなさいよー」
     つややかな黒髪を肩まで伸ばして、お似合い(母親曰く)の髪留めで飾り、上下の服との兼ね合いもばっちりな私。今は見えないが履いているサンダルもオシャレなものだと自負している。

     対してキズナは、まだ季節は初夏だというのに、半袖短パンに無骨なサンダルという見た目。信じられないことに石鹸で髪を洗う始末だから、髪の毛は痛み放題のボッサボサ。よく外で遊んだりトレーニングをしているから、すでにして日焼けた肌は小麦色。
     街へ行かない日ならば、足を鍛えるためにと言って裸足で過ごす日だってあるくらいにはオシャレを排している。『田舎なんだから靴以外は大体こんなものなんだけれど』、なんて言って、キズナは『せめて靴をきちんと履いてくれ』と私が言っても納得してくれない。
     わが妹ながら、本当にどうにかならないものか。素材だけはいいから、珠のパーティーでオシャレをすれば私よりも一回りは美人というのが腹立たしい。
    「いーじゃん。子供のうちに出来ることをやっておかないと。大人になったらこんな格好も出来ないしね」
     そこまで分かっているんなら、今から大人の格好に慣れとかんかい!
    「若いうちにオシャレするのも大事なのに」
    「まるで年取ったみたいないい方だなぁ。姉ちゃん、おばさんなんだ」
    「ぐっ……」
     髪を整えながら、キズナに痛いところを突かれて私は閉口する。本当に口の達者な妹め……
    「大体、髪を整えてもムースかなんかで整えなきゃ結局はアキツの飛行で乱れちゃうでしょうに。髪を整えるための整髪料なんてウチにはないというのに、ご苦労なことだねぇ、ねーちゃんは」
    「うっさいわねー。じゃあもういいわよぉ」
     叩きつけるように乱暴な仕草で櫛を棚のポケットに叩きこみ、私は鏡の前から踵を返す。
    「図星だったんだねー、ねーちゃん。ねーちゃんは喋るたびにボロが出るからなぁ」
    「うっさぁい!!」
    「声を荒げちゃってまぁ。オシャレ気取るんなら、口調もオシャレかおしとやかにした方がいいのに……と、思わずにはいられない私なのでした」
    「殴るよ」
    「そんなことしたらたぶん、姉ちゃんの方が痛い目にあうと思うけれど? 俺が防御しているだけでも姉ちゃんが先に倒れる自身があるぜ」
     最近は姉としての最終手段まで使えなくなっちゃったし……あーあ、良く出来た妹を持つと気がめいる……。

     ◇

     とにもかくにも、私達はブラックモールへと向かう。ホワイトフォレストの町役場付近。町自体はドがつくほどの田舎だというのに、一つだけ不釣り合いなほどに威容を誇るは白の中の黒、ブラックモール。街をアブソルの顔に例えた時、そこはアブソルの額の黒にあたる場所らしく、逆にブラックシティにもホワイトブッシュというアブソルの牙にあたる場所がある。
     ブラックシティほど遠くない場所にあるこのショッピングモールは手に入るものは多かれど、ブラックシティよろしく盗品も少なくない危ない場所。そんな場所でも、ホワイトフォレストでまともな買い物ができる唯一の場所なので、この町の住人は欲しいものがあればこぞってここで買い物をする。
     私達姉妹も、父さんの休日であるこの日曜日にアキツを借りてお買いものや映画を見に出かけることがある。ブラックモールは意外と広い場所だから、買い物をせずに商品を見ているだけでもあっという間に時間が潰せる素敵な場所なのだ。

     難点は、ショッピングモールの周囲に隣接するノーブランドの店舗が立ち並ぶ商店街の治安の悪さだろうか。入り組んだ店舗と店舗の境目の路地裏などで野性のポケモンなどが縄張りを持っていたりすること。客の食べ物をねだったりするうちは可愛いのだが、たまにどこぞのマダムが逃がしてしまって野性化したボーマンダが飛んでくることさえあるから始末に負えない。
     そんな場所でも、刺激的だからとついついやってきちゃう人は多くて、私達もその口。少ないお小遣いを握りしめて、私達はまず最初に映画を見て、そのあと店を回る。ほとんどはこれが可愛い、あれが可愛いと連呼するだけで何を買うでもないが、雑貨屋でオシャレな家具や置物を見回ったり、服を持って鏡の前に立ったり、UFOキャッチャーの景品を眺めたり。
     フレンドリィショップに連れてこられたポケモンを見て、あのゾロア可愛いなどと褒めてみたり。そんなこんなで時間を潰しているとあっという間に時間は過ぎていく。
     締めは夕方の商店街めぐり。アウトローな物品が多く、ゲームの中古ソフトから盗んだバイク。裏通りまでもぐりこめば、広大な自然の中で育てられたイケナイ葉っぱや薬までいろいろ売っている。こっちは、ショッピングモールで可愛いと連呼したのとは対照的に、『これマジでヤバイよ』とはしゃぐための場所で、同じ穴のムンナな女子や頭の悪そうな男子学生。
     ナンパ待ちの女性と品定め中の男性などがちらほら見受けられた。
     私達も適当に見回りながら、中古と銘打って売り出されている格安バイクを見て、どんな人から買い取ったのか? どんな人が買っていくのかを想像しては、キズナと一緒に面白おかしく茶化して回る。

    「あ、見て。ドレディアだぁ」
     肝試し紛いの買い物からの帰り際、沈んでゆく夕日をに照らされたドレディアがちょこんとしたたたずまいで、私達の前に現れる。私がキズナに呼びかけるようにドレディアを指差し腰をかがめて声をかけると、彼女はみずみずしい葉っぱの腕を持ち上げて手招きする。
     かわいらしい所作で手招きした後は、笑顔のままに振り返って路地裏へと消えていった。
    「あのドレデイアついて来いってさ、キズナ。行って来る!!」
     なんて可愛らしいドレディアだろう。頭のお花も綺麗だし、白い素肌も陶器のようで、まるで野性じゃないみたい。もし仲良くなれたら、アキツに通訳でもしてもらっていろいろお話したいな。
    「馬鹿言っていないで行くよ、ねーちゃん? 野性のポケモンに餌を上げるのはナンセンスだよ。ポケモンがますます調子に乗るし、糞や死体や窃盗で害を受けるのはこの商店街に店出している人達だぞ?」
    「いーじゃん。私達が上げる餌を狩ってくるお店は潤うんだし」
     そんなこと気にし手られますかーっと。可愛いは正義でしょうに。
    「その分ポケモンが増長して商品盗まれてりゃ、損だっつーに……あーもー……ポケモンに誘われちゃって、ねーちゃん何やっているんだか」
     呆れ気味にため息をついて、キズナは路地裏の前で待つことにしたようだ。私はドレディアに誘われるがままに路地裏について行くと、突然目の前に星が散り、体の自由が利かなくなる。
     な、何? 目を白黒させながら痛みが襲いかかって来た方向を見ると、そこにはデンチュラが。デンチュラの電気糸に絡め取られた私は、叫ぶことも出来ずに麻痺させられる。

     ◇

    「遅いな」
     なんだかトイレの前で同級生を待っている気分で、すごく煩わしい。姉ちゃんの帰りを30秒ほど待ってみたが中々帰ってこない。ここのポケモンは、街の見えない力の影響なのか。性格が悪く凶暴な奴が多く、そんなポケモンに襲われでもしていたら困るので、俺はダゲキのタイショウをあらかじめ出して路地裏に行く。
     人間と似た背格好のこいつだが、真っ青な体のこいつは夕暮れに時間となると非常に暗く見えにくい。羽織った真っ白な胴着だけが、くりぬかれるように夕日に映えてオレンジ色に染まる。
    「もしかしたら先頭になるかもしれないから、その時は頼むぜ、タイショウ?」
     俺がそう問いかけると、タイショウは『まかせろ』と、右肩に置いた右手の指を前に差し出すようにして意思表示。片方の眉がない顔で頼もしげに笑んでいた。

     タイショウを連れて行った先で見たのは、デンチュラの糸に巻かれて痺れさせられている姉ちゃんの姿。ガラの悪そうなスキンヘッドの男がアオイ姉ちゃんを壁に押し付け、ポケットやらバッグやら何やらを漁っている。先程のドレディアも一緒だという事は、あのドレディアもこの男とグルなのか。
     アキツをボールから出して男をぶっ殺してやろうかと思ったが、この狭い路地じゃ出すことも出来ない。とにもかくにも、尻を向けて糸を吐いているデンチュラに先手必勝とダゲキに襲わせ、踏みつぶさせる。
     後ろからの不意打ちも完璧に食らって、デンチュラは一撃で粉砕。追い打ちとばかりに俺が踏みつぶすことでとどめを刺してやった。
    「俺の姉ちゃんになにやってんだてめぇ!! 舐めてんじゃねえぞ、表でろやコラァッ!!」
     俺が大声で凄むと、相手はドレディアを盾にして慌てた様子を見せる。慌てているのは、ダゲキや俺が怖いというよりはどちらかというと大声を出されたことらしい。
    「な、なんだてめえは……それ以上来るんじゃねえ。大声も出すな……この女がどうなってもいいのか?」
    「……じゃあ、早いところ姉ちゃんを返せよ。そうすりゃ穏便に終わらせてやる」
    「ったく、俺は金が欲しいだけだってのによぉ……そんな取って喰うような怖い表情見せなくたっていいじゃねえかよ……」
    「うるせぇ……その細い腕、捻り壊されてえのか?」
     周囲を伺いながら逃げる準備をしているゴロツキに脅しをかけるように、俺はコジョフーのアサヒを出す。タイショウもアサヒも、家族になってから日は浅いが、手話の物覚えもいいし、なんだかんだで懐いてくれている可愛い奴らだ。出しておいて足手纏いになることはないはずだ。
     アサヒはボールの中から状況を伺っていたのか、すでに戦闘態勢に入っており、構えた彼女の隙を突くのは難しかろう。
    「とっととねーちゃんを放せよ。御託はいいからさぁ」
     さらに凄むと、相手は舌打ちをする。
    「あぁ、わかったよっ!!」
     そう言って男は姉ちゃんを蹴り飛ばして逃げた。麻痺しているのに、縛られているのに。受け身も取れない状態でそんなことをされたら……怪我は避けられないじゃないか。そう思うが早いか、姉ちゃんは鈍い音と、衝撃音を立てて無防備に倒れ伏す。
    「姉ちゃん!!」
     駆け寄ってみると、当然だが姉ちゃんはぐったりしてる。
    「くっそ、タイショウ、アサヒ!! さっきの男をボコボコのボロ雑巾にしてもってこい!!」
     俺はタイショウとアサヒにそう命令して、とにもかくにも姉ちゃんを路地から引きずり出そうとしたが――まずい、倒れた時に背骨をビール瓶の上に叩きつけたらしい。背中と、頭も打って血を流している。
     大切な部分である頭や腰を打っている以上、下手に動かないほうがよさそうだ。そんなことよりも、一刻も早く救急車を呼ぶため、姉の携帯電話を借りる。あとは、気が動転していたよく覚えていないものの、犯人が結局路地の道を塞ぎながら逃げたために、上手い事まかれてしまったこと。警察が回収されていないデンチュラから身元を割り出すから心配しないでとか、そんなことを言っていたのをなんとなく覚えている。

     ◇

     目が覚めると、病室だった。
     起き上がろうとして手をついてみるが、腕が重くてなかなか動かなかった。まるで金縛りにあったような感覚で、しばらく声も出なかった。腕をもじもじと動かし、血行を良くしている、のだろうか。そうしているうちにやっと腕が動くようになった私は、ようやく目も開いて、言葉にならない言葉を呟けるようになる。
     母さんがそれに気づいて私の腕を握る。暖かくて、揉まれる感触が少し気持ちよかった。しばらく私の体調を気遣ってくれた母さんは、最後に足の様子を尋ねてみる。足に何か感じるかと聞かれ、考えてみると足が何だか重い。
     そう答えると、母さんは医者を呼んで、私の状態についての説明をしてくれた。

    「下半身不随……なに、それ?」
    「その……神経自体の傷はなかったらしく……場合によって回復することもあり得るのですが……悪くすると、そのまま一生足が動かないという事に……」
    「なによ、それ……」
     私は拳を握りしめる。
     母さんが治るかもしれないと説得する。父さんも、希望はあると説得する。なんで、なんで、そんな目に合わないといけないの、私が何したの。
     私これからどうなるの? 私はこれからどうすればいいの? 気休めよりも、治るって言ってよお医者さん。

     リハビリの予定とか、術後の経過とか、頭に入ってこなくて、気づけば私は消灯時間に一人で病室にいた。眠ろうと思っても、寝すぎたせいと、足が重くて、鈍い痛みが走って、不安で、イラついて、とにかく眠れない。昔、歯を抜くために麻酔をかけたことがあったけれど……あれが下半身全体に広がっている。
     存在は認識できるのに、鉛にでも浸かっているように重くって、動かせなくって、枕を抱きながら寝返りをうとうにも下半身が動かないおかげで一苦労。自分の身体が今どうなっているのかすらわからなくて、すごく怖い。不安で不安で眠れなくて、そうこうしているうちに時間が過ぎていく。
     時計の音がうるさくて眠れない。こうなって来るともう、何もかも敵に見えてくる。暗闇の中、星明りやわずかに届く街灯の光と音を頼りに、壁に掛けられた時計に向かって枕を投げる。だいぶ力の戻った腕は勢いよく枕を飛ばしてくれたが、それが終わると私は投げるものがなくなった。たまらず、私はベッドを叩いたりシーツを引き裂いたり、とにかく暴れて発散した。
     疲れて動きたくもなくなると、足の鈍痛に苛まれながら私は眠りについた。目を閉じていても、涙ばっかり流れていた。

     翌日から色んなことを試してみるが、足は指がピクリと動かせる程度。叩いても抓っても、私の足は痛みも何も感じない。傷の経過を見守りながら、徐々に出来る事を増やそうと医者は言うのだが、『出来る事』というのに『足を動かすこと』は含まれていない。動く可能性があるというのは、頑張れば動くとかそういう類のものでもないらしく、言ってしまえば今この時点で歩けるのかどうかはほぼ決まっているらしい。
     事故によって機能を失ってしまった神経が今後復活するか否かは、私の骨の中にある神経を圧迫する血塊が、どれほど『まし』な状態であるか否かにかかっているのだと。今はもう移動も、物を取ることも、排泄もままならない。

     私はただでさえ、最近出来のいい妹と比べられ続けているというのに……これじゃ、私は本当に要らない子になっちゃうじゃない。
     そんな生活に嫌気がさして、私は苛立ちばかり募って、家族に当たり散らして、その自己嫌悪でまたいらだちが募る。特に妹に対しては、あんたのせいだと罵倒して、手につかんだ花瓶の中身をぶちまけたり。微動だにせずそれをかぶったキズナは、水と花に塗れながらも表情を変えずに見下ろしていた。
     気づけば私は、もう誰とも顔を合わせたくなくて、病院のスタッフにも家族にも、無視を続けるようになった。排泄が面倒な上にとても汚く感じられて、出される食事にもほとんど手は付けられないし、話しかけられたくないからリハビリにも乗り気ではない。
     鉄は熱いうちに打つべきだって家族も医者もい言っている。それはわかっているんだけれど、自分はまだ踏み出せない。
    「なんで、かな……」
     暇だし、だからと言って勉強もゲームもやれるような気分ではない。リハビリは疲れると言ったって、もう動けなくなるとかそんなに辛い疲れでもないのに、どうして踏み出せないのか。


    「なー……ねーちゃん、たまには外に出ようぜ? 下半身以外はどこも悪くないんだしさー。車椅子なら俺が乗せてやるからさー」
     キズナは、あんなにひどいことをしたっていうのに、いまだに私に優しい言葉をかける。私は合わせる顔もなくて、ただただ壁の方を向いて黙っていた。
    「勉強もしてねーんだろ? 出来ることからやらないと……悪い頭がさらに悪くなっちまうぞー?」
     わかってるけれどさ。勉強しないでもいい点とれるアンタとの差が、今まで以上に急速に離れていっていることくらい。でも、今は放っておいて欲しいよ。

     こっちが徹底的に無言を貫いていると、キズナも黙って私を見ている。この体制がそろそろ辛くなってきたのに、妹はずっと立ち竦んだまま私を見ている。
     結局、キズナは数分間、パジャマを着た私の後ろ姿を見ていって、これ以上は無駄なのだと判断したのだろう。
    「ねーちゃん……これ、置いて行くから」
     そう言ってそのままキズナは去って行った。すぐに振り返ったら負けだと思いつつ、1分か2分か、しばらく待って私は寝返りを打ち、手の届く位置にあった妹の置き土産を見る。一つは封筒、もう一つはモンスターボール。
     封筒の中には、アサヒを病室に入れることに関する許可証が入っていた。思えばもう背中の傷は塞がっているし、この病室もそれほど衛生に気遣うべき場所ではないからと、簡単な検疫と消毒を済ませればポケモンを出すことを許可されているらしい。看護師やジョーイさんからの判を押されたこの紙は、許可証のようだ。
     そして、もう一つの置き土産はアサヒの入ったボールと、櫛。そういえばいつもアサヒの毛づくろいをしてあげていたっけか。私は、すでに遠い昔のように感じる日常を思い起こして、ため息をついた。

    「アサヒ……」
     何を思ってこの子を寄越したのか知らないが、そういえば入院してから一度もポケモンとは顔を合わせていなかった。家族とは結局ほとんど話が出来ていないけれど、この子達となら、どうなんだろうか?
     アサヒを繰り出す。彼女は、まだミルクを飲んでいるころから私も良く世話をしているコジョフーだ。この子は四肢の朱色も、体幹のクリーム色も鮮やかで、艶やかで、バトルに使うのはもったいないくらいに毛並みが綺麗なんだけれど、見た目だけじゃなく性格まで妹に似て活発な子で、バトルが好きな問題児だ。
     それでも、この子は毛づくろいされるのが好きで、よく私に甘えてくる。すっかり生気を失った私だけれど、甘えてくれるだろうか?
    「『こんにちは』、アサヒ」
     アサヒはこっちを見て、ベッドに飛び乗ってきた。私はベッドの下のレバーをまわし、リクライミングシートを上げて起き上がる。
    「『こんにちは』」
     私の挨拶を認めてアサヒも挨拶を返す。いつもならこの調子で顔を舐めてくるのがアサヒの反応だけれど、今日は匂いを嗅ぐところから始めている。私の事が分からないわけではないようだけれど、こんな生活で匂いでも変わって少し警戒しているのだろうか?
    「どうしたの、アサヒ?」
     私は力なく笑って語りかける。
    「『怪我』『匂う』」
     すると、アサヒは身振り手振りで怪我が匂うと言って来る。よく意味は分からないが、傷がふさがっていてもポケモンの嗅覚ならば捉えられる何かがあるのだろう。
    「『匂う』? 『どこ』が?」
     そう尋ねると、アサヒは私の体に黒い鼻を押し付け、きちんとベッドに挟まれて届かない背中の傷を指示した。
    「『怪我』『痛い』?」
    「うぅん、『痛く』ないわ」
     問いかけるアサヒに、私は首を振る。だが、アサヒも対抗して首を振る。
    「『しかし』『元気』『ない』『なぜ』?」
    「『脚』がね……『動か』ないの」
    「『それ』『悲しい』?」
     無邪気なアサヒは、なんの悪気もなくそう聞いてくる。そういえば、『悲しい』なんて言葉この子達に教えたっけか……? 最近、アキツも一緒になって言葉を教えているからたまにわからなくなるし、私がいない間に家族の誰かが教えていたのかもしれない。
    「うん、『悲しい』」
     ともかく、私は自分の気持ちを素直に吐露した。家族にはすごく甘えづらかったけれど、この子ぐらいには本音で話しても構わないと思った。
    「『治す』」
     私の言葉に、アサヒは手を交差させて治すと言う。
    「『どうやって』?」
     と、聞いてみたが、アサヒは手を構えたまま動かそうとしない。手話で表すべき単語が分からないらしく、彼女は自分の手の平を舐めて、意志を伝える。そして、無言のまま寝返りを打ってとばかりに私の体を軽く持ち上げる動作をする。
    「『舐める』のね」
     舐めても、治るわけがないのに……
    「『無理』だよ……」
     私は言ってみるが、アサヒは否定する。
    「『大丈夫』『治す』」
     と言って、聞かなかった。舐めてもらうにはうつぶせにならなきゃいけないし、リクライミングシートも倒さなければならない。それはひどく面倒くさいはずなのに、私はなぜか突き動かされるように、アサヒの言葉や行動に従っていた。
     アサヒはパジャマをずらして露わになった私の背中に舌を這わせる。私は何も感じなかったけれど、微かな音が舐めていることを感じさせてくれる。そんなもので治るはずもないのに、献身的なその態度が身に沁みる。気付けば私は、仰向けになったまま、手話も見せずに懺悔を垂れ流していた。

    「私ね……妹のキズナが優秀すぎて、最近よく比べられてさ……自分が、要らない子なんじゃないかって、少しだけれど思っていた。怪我してからは……本気でいらない子になっちゃったなんて思いこんで……面倒だけれど世間体のために私の世話を焼いているだけとか、ほんとは疎んでいるんでしょとか、酷いことも言っちゃった」
     嗚咽が漏れて、私は言葉を詰まらせる。
    「けれど、私達家族だもんね」
     正直なところ、こんな言葉を使ってもアサヒに通じるとは思っていなかった。けれど、どうしても吐き出したい言葉を口に出して、私はただ楽になりたかったのだ。
    「世間体とか、そんなものを気にしないでも済むポケモンのアンタがこんな風に気を使ってくれているんだもの……きっと、母さんも、父さんも、キズナも……多分、純粋に治って欲しいんだよね。いつかは、謝らなくっちゃ……ね」
     アサヒはチラリと私を見たのか、舌の動きを止めたが、すぐに舐める作業に戻る。そのまま舌の疲れに甘えることもなく、いつまでもいつまでも、延々とアサヒは傷を舐め続けた。ポケモンが野性で生きていくうえで培った、傷を舐めた者達が生き残るという遺伝子に刻まれた本能の告げるままに、淡々と。
     どんな言葉で謝ればいいのかを考えているうちに、気が付けば眠くなってしまっている自分がいて、突如それを切り裂く声が響く。

    「ねーちゃん、ノックくらい答えろよ……」
     どうやら私はノックにすら反応していなかったらしい。そんなことを言いながら、汗だくの状態のまま不躾に入って来るキズナに、私は思わず声を上げた。
    「ちょ、ちょ、ちょっと待って……」
    「どした、アオイ姉ちゃん? いつもは無言なのに珍しいなー。おしっこ漏らしたんなら俺がオムツ変えてやっても構わんぜー?」
     そんなわけないでしょ、と大声で否定したかったが、無情にもキズナはぺたぺたと歩いてこちらにやってくる(裸足なのかよ)。私は早いところずりあげたパジャマを下して、アサヒをどけないと何と言っていいのやらわからない醜態をさらすことになる。寝返りは打てなくてもいいからせめて、と思ったのだが。
    「あー……何やってるの? マッサージ?」
     見られた。顔から、火が出そうなほど恥ずかしい。
    「こ、これは……違うのよ」
     私は目を逸らしながら、何の言い訳にもなっていない言い訳をする。
    「いや、何も言っていないのに、何が違うのかもわからないし……」
     そんな苦し紛れの私の言葉は、キズナの言葉通りでしかなかった。
    「あ、そ、その……アサヒが舐めたいって言うから舐めさせているだけで……」
    「ははぁ……そっかぁ。ポケモンは、舐めることで傷を治すんだな……アサヒは、アオイ姉ちゃんの『怪我』を『治そ』うとしてくれたんだな。『ありがとう』」
     手刀を切り、手話を交えながらキズナはアサヒに言う。
    「ほら、ねーちゃんは『ありがとう』って言ったか? こういう時のための手話だろうに?」
    「えっと……」
     そういえば、私はちゃんとしたお礼を言っていなかった。キズナの言うとおり、こういう時のために伝える手段があるのに、情けない。
    「『ありがとう』、アサヒ」
     キズナがアサヒを抱っこしてくれたので、私は寝返りを打って、手話を交えてお礼を言う。出来うる限り、私の感情を込めたつもりだ。
    「『どういたしまして』」
     アサヒはキズナに抱かれたまま、立てた右手の小指を2回顎に当てて、口の前で手を振る。得意げなアサヒの顔から伺えるのは、褒められてうれしいという感情と、喜んでくれて嬉しいという、どちらにしても嬉しいという感情であった。

    「さて、俺がここに来たのは面会時間が終わる前にポケモンを回収しないと怒られるから……なんだけれど。大丈夫?」
     キズナはアサヒを抱きながら、困り顔で言う。
    「か、構わない……わよ」
     私は何を話して良いものかわからず(おそらくキズナも同じだろう)、キズナが抱いているアサヒに目をやりながら私は言う。
    「わかった、俺はアサヒは連れて帰るよ」
     そう言って、キズナはアサヒをベッドの上に置く。
    「その『前に』、ねーちゃんに『あいさつ』『しろ』よな」
     キズナがアサヒに命令すると、まだ私と一緒に居たいらしいアサヒは一瞬キズナを振り返って様子を伺ったが、ずっとボールを構え続けるキズナを見て諦めたようだ。
    「『さようなら』」
     と、アサヒは身振りで言った。ボールに彼女をしまう際の絆の顔は得意げで誇らしげ。
    「姉ちゃん、明日も放課後に見舞いに来るね」
     今まではこうまではっきり言うことをしなかった『また今度』の言葉を、今日のキズナはハッキリと言ってきた。きっと、言ってもよさそうな雰囲気だと悟ったのだろう。その雰囲気を作ったのはアサヒのおかげだから、恥ずかしい思いはしちゃったけれど……私もアサヒには感謝しなきゃ。
    「あ、うん……」
     そして、このいい雰囲気に促されるまま、私はキズナに返答した。いつもは無視しか出来なかったのに、今日は答えられるのか。本当に、アサヒには感謝しないと。
    「それじゃ、また明日」
     アサヒが傷を舐めてくれただけで、私も少しは吹っ切れたのだろうかと思いながら、私は病室を去るキズナを見守る。私の心臓は知らず知らずのうちにドキドキしていたようで、心地よい鼓動を抱きながら、私はいつまでもアサヒの余韻を確かめる。
     ふんわりと暖かくて、手の中で滑るような毛皮の感触。思えば久しぶりに感じた命の感触だった。

     ◇

    「熱い熱い熱い熱い!! うっひー!!」
    「裸足で来るからいけないんでしょーが」
    「大丈夫、火傷なんてしないから。火傷する前に足を上げれば火傷しない……これは常識」
    「炎天下のアスファルトの上をはだしで歩かないのも常識でしょうが……」
     キズナが炎天下の中で熱されたアスファルトの上を車椅子を押して走る。走っているから熱いと感じる前に足が離せば熱くないというのが本人の弁だが、私には馬鹿なことをやっているようにしか思えない。そんなわけで、早足になるしかない妹は、車椅子を押しながら走っている。車椅子が小石に躓かないかは心配だが、意外にも綺麗に舗装されたこの道路ではそんな心配もなさそうだ。








     アサヒとタイショウを隣に付けて走っていると、キズナのトレーニングついでの退院だというのに気分が弾む。そして、今日のトレーニングにはゲストが一人。
    「にしても、隣を走られると……転ばれたら怖いわねぇ」
     デカ過ぎて病室に入れないからという理由で、徹底的な面会謝絶を喰らっていたアキツも一緒である。面会謝絶とはいっても、外出許可が出てからは、何度か病院の外で顔を合わせていたため、久しぶりの顔合わせというわけではないのだが。他の利用者の迷惑を考える必要もないこの広々とした道路を走れるのは嬉しいらしい。走りに付き合っていると言いつつも歩幅が大きいために歩いているようにしか見えないが、アキツの足取りはどこかはずんで見えた。
     ポケモン達総出で私を迎えに来て、家に帰る道のり。退院祝いとはいえ、体の機能は戻っていないから、退院祝いというのも特に行うことはせず、家で待っているのは普通の食事なのだという。
     それでも、久しぶりの温かいご飯である。母さんがお見舞いに持ってきてくれた、冷めた料理も味は悪くはなかったが、出来たての料理はそれだけでずっとずっとありがたみがあるというものだ。アサヒのおかげで少しずつ心を開けていた私は素直に嬉しい。

     それもこれも、全部じゃないけれどポケモンのおかげであることがありがたい。舐めるというポケモンならではの行為で心を開くきっかけを与えてくれたこと。治って欲しいという思いを混じり気なく、率直に伝えてくれたこと。これはアサヒのみならず、タイショウやアキツも申し合わせたように『早く』『元気に』と慰めていてくれたし、本当に全員に感謝だ。
     どこまでその俗説が本当かは知らないが、ポケモンは嘘をつかないというし、だからこそ私も彼らの言葉は受け入れられたし、私が自分が置かれた状況ときちんと向き合えるようになったのもそのおかげ。
     なんにせよ、気持ちを伝える手段があるっていいことだよね。人間が使う言葉でも、私達がポケモンに教えた手話でも、言葉じゃどうにもならないアサヒの気遣いのような方法でも。気持ちを伝える手段があるからこそ、俺のポケモンやアキツは人間と積極的に交流を図っているような気もするし、そんな積極性がまた、あの時私の傷跡を舐める行為につながったのだろう。
     そんなことを病室で一人になった時に考えて、私は一つの考えを導き出した。

    「ねぇ、キズナ」
    「ん、何だい姉ちゃん?」
     車椅子を押しながら、キズナは視線を下げて私を見る。
    「タイショウね、とっても力持ちで……車椅子に乗る時に近くにいてくれると、とっても助かるの」
    「そりゃ、格闘タイプだもんな。俺と一緒に毎日足腰鍛えているから力は強いさ」
     俺の自慢のポケモンだからなと付け加えて、キズナは得意げに語る。
    「うん……それに、手話でコミュニケーションも取れるしね……でさ、思ったの。まだこの子達は介助ポケモンの認可を取っていないから、場所によってはポケモンをボールに出すことを制限される……けれど、もしもこの子達が介助ポケモンになってくれたら、こんなに頼もしいことってないと思うの」
    「だな。介助ポケモンはそう少なくはないけれど……手話ができるんなら、そこいらの介助ポケモンなんかにゃあ負けないな……何の勝負かはわからないけれど」
    「そうね、何の勝負かはわからないけれど、負けないわね……他にも、耳が聞こえない人のための聴導ポケモンなんてのもいるそうだけれど……手話ができるって、いろんな面で普通のポケモンよりもずっと役に立つと思うの。
     でさ……私ね、ポケモンブリーダーになりたいの。将来の夢が……おぼろげだけれど決まってさ」
    「そ、そりゃあ……なんとコメントしてよいのやら、反応に困るなぁ。思いつきで言うんじゃなく、ちゃんと調べてものを言っているのか?」
    「当たり前でしょ……確かに、車椅子でポケモンブリーダーってのは聞いたことないし……私自身リハビリを続けても治るかどうかも知れないこんな体だけれど……こんな私だからこそ、どんな時にどんなポケモンがいてくれると助かるかってのがわかると思うし……その……手話も、教えられるし……。そう、これをセールスポイントにしたいのよ」
    「ふぅん……きちんと調べてそう思ったなら、それでいいんじゃないの? でも、俺は、その……まだ子供だからよくわかんないや。素敵な夢だとは思うけれどさ……」
    「わかってる。アサヒをけしかけてくれた貴方に一番に話しておきたかっただけで……ちゃんと、父さんにも母さんにも話すわよ、キズナ」
    「楽な道じゃなさそうだけれど、本当に大丈夫か?」
    「さあ、どうでしょうね? やってみないことにはわからないし……でも、さ」
     言いながら、私はアキツに目配せをする。
    「アキツ。『私』『立ち』たいの。『協力』して」
     胸に手を当て『私』。人差し指と中指を使って足を表わし、『立つ』動作をさせ、パーの左手でグーの右手を軽くたたくことで『協力』。そう指示すると、アキツは尋ねる。
    「『肩』『持つ』『いい』?」
     肩を叩いて指示し、それを持つ。つまり肩をもちげることで支え、そうして立たせるという解釈で大丈夫かとアキツは尋ねた。
    「そう、『それ』で『いい』わ。『お願い』」
     言い終えると、私は腕を広げて体を十の字にし、アキツは大きく腰をかがめて腋の下から私を支え、車椅子から拾い上げた。そうして私はいわゆる羽交い絞めのような体勢となり、まだ指が少し動くだけでなんの力もこもらない脚を地面に付けて立ち上がる。
     立ちあがっていると言えるのかどうかはわからないが、何はともあれ久しぶりにキズナを見下ろした私の表情は、自然と笑っていた。
     それにしても、アオイ姉ちゃんが苦しそうにしていないという事は、アキツの力加減は絶妙なんだな。
    「みんなの協力があったとはいえ、アキツがこうして私と会話できるようになったんだもの。タイショウもアサヒも、今は不完全だけれど……いつか絶対に会話できるようになる。そして、させてみせる。そしてそれを、職業にする……むずかしいことだけれど、不可能じゃないって……私は思うんだ」
    「まぁ、隣町には何でも売り物にしてしまう世界があるくらいだし……育てたポケモンに買い手がつけば……生活は出来るんじゃないかな? なんて、夢のないこと言っちゃったな。とにかくそんときゃ、俺も応援するよ、姉ちゃん」
    「『ありがとう』、キズナ」
     キズナに向けて手話を交えつつ、私は言う。
    「『みんな』も、『応援』してね」
     タイショウとアサヒに向かい、私は声をかける。どこまで分かっているかは定かではないが、二人とも頷いていい顔で返して拳を振り上げてくれた。
    「『ありがとう』、アキツ。もういいわ」
     そう言って、車椅子に座りなおされた私を、キズナが再び押して運ぶ。
    「みんな姉ちゃんを慕っていていいことだけれどさー……でも、こいつら俺のポケモンなんだけれどなぁ……」
    「そうね……私も自分のポケモン持とうかしら?」
    「それがいいよ。自分のポケモンってのは愛着湧くぜ?」
     二人がそんなとりとめのない話をしながら歩く炎天下の道のりの途中。遠くにある我が家を目指して、私はタイショウに介助ポケモンとしての第一歩が始めさせてみた。タイショウは足の裏が丈夫なのか、ペタペタと紳士的な速さで歩き、車椅子を安定させて運んでくれる。
     ゆっくり走らなければいけないという矛盾を強要され、手持無沙汰なキズナが足の裏を火傷させないようにしょっちゅう足踏みをしている。その横でアサヒが、タイショウの真似をしたがっているのが嬉しかった。
    「アサヒはコジョンドに進化したらね」
     私は腕を伸ばしてアサヒの頭を撫でる。アサヒは積極的に頭を寄せて、気持ちよさそうに一声鳴いた。
     よし、せっかく妹と比べられないような夢を見つけたんだ。リハビリも勉強も、これから頑張ろう。








    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】


      [No.2380] コミュニケーション・前編 投稿者:リング   投稿日:2012/04/12(Thu) 21:05:00     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    「あーあ……読書感想文とか面倒くさい……」
     夏休み前のうだるような暑さの中、図書室の中で俺はため息をつく。ここは自然に囲まれた町だからか夏でもわりと涼しいと評判だが、涼しいとは言ってもそれはあくまで『比較的』というレベル。なので、汗が鬱陶しいほど暑いことには変わりない。
     周りにはテッカニンの鳴き声がやかましく響き渡り、容赦のない日差しが上空から降り注ぐ。鮮やかな青い空は真っ白な雲を浮かべて晴れ渡り、木陰に隠れなければ肌を焼かれてしまいそうだ。日中、日常に生きる人間達は心なしかみんな元気がないか、空元気。祭りのときや水遊びの時だけ本気ではしゃぐといった様子である。
     そんな風に、人間は暑さに参っているというのに、外を飛び回るポケモン達は元気なものである。ハハコモリは体を一杯に広げて光合成し、ヘラクロスは木の幹を傷つけて樹液を吸う。
     ストライクは草原で忍んで獲物をせっせと狩っており、アゲハントは美しい模様を見せびらかして飛び回る。

     こんな暑さの中ではしゃぎ回っている虫ポケ達の元気さをうらやましく思いながら、俺は夏休みの課題である読書感想文で読む本を探す。この宿題に課題図書なんてものはなく、活字が主体であればどんな本を読んでもいいという緩いものではあったが、それはそれで逆に何を借りればいいのか悩みが増える。
     とりあえず、適当に図書室を回っているうちに見つけた本が、俺の目を引いた。
    「『手話をポケモンに教える方法』。へぇ、こんなものがあったのか」
     興味を持って適当に目次からパラパラとめくる。目次では前書きから始まり、そこから先はポケモンに対して手話を教える方法が事細かに乗っている。ポケモンは三本指の種が多いので、それに対応したアレンジされた動作や指の形がそれぞれ乗っているあたりも、ポケモンに教えると銘打った本ならではといった所か。
     どんな本でも感想さえかければいいという課題だけに、こういう本でも構わないのだろう。ポケモンに手話を教えるというこのコンセプトならば同時に自由研究の宿題も消化出来そうだし、一石二鳥じゃないか。
     それに、こういう内容ならば姉ちゃんも好きそうだし、家族の協力を得ればそれらしい研究結果だって出るだろう。
     こいつを借りようと、軽い気持ちで俺は手に取った本を借りる。


    「ただいまー」
     我が家のドアを開け、廊下を抜けて居間に行く。母さんはファッション雑誌を読んでソファに座っていた。
    「お帰りー、キズナ。ちゃんと夏休みの計画立てたー?」
    「ちょっと、母さん。帰って来るなりそれはよしてよー……」
     母さんはいつもこんな調子である。口を開けば宿題だ勉強だと。やっていない自分も悪いけれど、これではやる気も無くなるってば。
    「一応、夏休みの宿題二つ分はテーマも決めたよ。自由研究と読書感想文」
    「あら、珍しい。……と言っても前例が二回しかないから、めずらしいというのは早計かもだけれど」
    「そうだよ、前例が二回しかないんだから……珍しいとか言わないでよね」
     母さんはこれだから一言多くって、思わず漏れるため息。
    「で、何をやるのかしら?」
    「えーと……これだ。これ見てよ」
     俺がランドセルを漁り、中にあるハードカバーの本を取り出す。
    「なになに……『ポケモンに手話を教える方法 堀川一樹著』? なにこれ、これで読書感想文と自由研究やるの?」
    「そのまさかさ」
     と、俺は母さんに答える。
    「いや、『まさか』って言っていないけれど……」
    「だから母さんは一言多いってば……」
     全く、これだから母さんは。呆れながら頭を掻いて、俺は言う。
    「とにかく、ポケモンが挨拶だけでも出来るようにすれば、それなりに先生への言い訳にもなるでしょ」
    「先生への言い訳って……楽する気満々じゃないの。宿題なんだからまじめにやりなさいなー」
     母さんは本をぱらぱらとめくりながら困った顔を作って、ため息交じりにそう言った。
    「いいじゃん。夏休みはやりたいことをやらなきゃ損だよ。自由研究も読書感想文もぱっぱと終わらせられるに越したことないでしょ?」
    「まぁ、やらないよりはましね。わかったわよ。がんばりなさいな。で、その宿題いつから始めるの?」
    「うーん……ぼちぼち」
     答えをわかって聞いているんじゃないかと思うような質問をするもんだね、母さん。
    「夏休み前に始めたほうがいいわよー。アンタの事だからどうせ、終わり近くになって焦るんだから」
    「えー……時間のある時にやりたいよ」
    「そう言って2回ほど宿題をギリギリまでやらなかった貴方がよく言うわね。ま、それでもきちんと仕上げるのが貴方のすごいところだけれど」
     痛いところを……もう、これだから母さんは。
    「ほ、褒めるか貶すかどっちかにしてよ……」
    「どっちもよ。貶されたくないのなら今日からやりなさい。まずはそうねぇ……夕食までに、手話で『いただきます』と『ごちそう様』を覚えておかないと夕食出さないわよ? 指南書には、『まずは日常の挨拶から覚えましょう』って書いてあるし……『家族がいる場合は家族みんなで同じ動作を取ることで、比較的早めに言葉を覚えてくれます』らしいから、私も覚えておくわ。だから、貴方も頑張ってね」
    「ふあい……じゃ、じゃあ……道場に行って来る」
    「行ってらっしゃい。みんなが勉強できるようにコピーをたくさん取っておくわ」
     母さん、無茶苦茶やる気になっているし……もしかして俺は、間違った選択をしてしまったのだろうか。

     ◇

    「と、いうわけなのよ。キズナったら、面白いものを宿題に選んだわねー」
     本を見せられながら、私はそんなことを言われた。妹の宿題に付き合えとか、なんでそんな……冗談じゃない。いや、一応私にも自由研究の宿題はあるから、共同で研究すれば宿題の手間を掛けなくてもいいと考えられるかもしれないが。
    「それにしても懐かしいわね、アオイ」
    「な、何が懐かしいの?」
     夏休みを邪魔されたくないという物思いにふけっていると、母さんが私に言う。
    「ほら、貴方は昔、プラズマ団のNに憧れていたじゃない?」
    「あー……無名だったのにあっという間にチャンピオンになって、格好良くってしかも強かったからね」
    「あら、アオイったら憧れた理由も忘れちゃったの?」
     母さんは笑って痛いところを突いてくる。
    「あと、ポケモンと話が出来るところ……」
    「でしょう? あんた、幼稚園のころから何度も何度もアキツに話しかけて、アキツ困っていたじゃない。果ては野性のポケモンにまで手を出して……出来の悪い娘だとは思ったけれど……あそこまで馬鹿だと、今でも話が止まった時の笑い話に困らなくって助かるわねぇ」
    「あーもう、言わないでよぉ。それに、Nに憧れていた時期はもう、ポケモンと話すことなんて諦めていたでしょ?」
    「はいはい。でも、諦めていたけれど、憧れは捨ててなかったじゃない? 他の女の子が格好いいから会いたいと言うNに向かって、貴方はうちのポケモンと会話をしたいからNと逢いたいだなんて言っちゃって……テレビの前で」
     図星、図星。顔から火が出そうに恥ずかしい。私の考えていることなんてみんなわかっていて、嫌になる。親はこうなのかなぁ?
    「どーせそうですよ。夢見がちな乙女ですよ。いいじゃない、女は夢見がちな方が素敵よ」
    「お、アオイちゃんはロマンチックなのね」
    「もういいから!! もう!」
     私は母さんからそっぽを向ける。だが、なんだかんだで私はキズナが持ってきた本が気になって、それを手に取る。キズナの前には誰も借りていなかったその本には、ブルーレイディスクが閉じこんであり、紙面だけでは伝えきれない色んな物を丁寧に教えてくれる代物のようである。
    「アオイちゃん、今はテレビ空いているわよ?」
     じっとそのディスクを覗いていると、何がしたいのかさとったらしい母さんがそう語りかける。
    「見ておく」
     このディスクに出てくるポケモンは成功例だろう。その成功例が、どんなふうに会話ができるのか。期待しながら私は見ることにした。

     そのディスクの中にある『実際に会話してみた様子』を撮ったプロモーションムービーに出てきたイツキという男は圧巻であった。滑舌の良い発言と一緒に身振り手振りでポケモンと話し、ポケモンの動作に合わせてポケモンが言わんとしていることを口ずさむ。
     このムービーの中では、口頭による指示を出せないバトル施設、バトルパレスに於いてこの方法で指示を下した思い出を語る。彼はその反則ギリギリな方法によってバトルパレスで優秀な成績を残し、そしてパレスガーディアンの称号を勝ち取ったという。
     その際に活躍し、なおかつ今も傍にいるサーナイトとの会話は本当に取り留めもない苦労話や自慢話ばかりであるが、まるで人間と語るようにスムーズに会話を交わす様子には、思わず目が釘付けになる。
    「そうそう、『この子』は『自分』が『覚え』た『手話』を『他の子』にも『教えて』くれたんだ。そしたら『いつの間にか』、『みんな』が『挨拶』『出来る』ようになってね」
     スムーズに手を動かしてイツキが語ると、次はサーナイトが手を動かし、それをイツキが訳す番だ。
    「『みんな』、『貴方』と『話し』たかったんです……だって。いやぁ、『嬉しい』ですね」
     サーナイトの手話を観察しながら、イツキは照れた様子で語る。このサーナイトの特性はシンクロであるらしく、手話では伝わりにくい微妙なニュアンスまで彼は把握しているとのこと。カメラの前だからというのもあるだろうが、本当に楽しそうに会話している。
    「この人本当に……完璧に話している……のね」
     私は母親に言われたことを思い起こす。このホワイトフォレストは自然が多い分、多種のポケモンが生息している。思えば、幼いころの私はポケモンも持たずに草むらに入り込んで、どこかで自分と話が出来るポケモンがいないかと探し回ったものだ。
     その時は幸いにも野性のポケモンに襲われるようなことはなかったけれど、山で迷子になったところをアキツに助けてもらったんだっけ。アキツはあまり感情を表に出さないから、何を考えているのかよくわからなかったけれど、あの時お礼を言った私の言葉は、きちんと届いていたのだろうか?
     この動画を見ている限りでは、ポケモンに対して言葉が通じているようにも思えるが、相手の感情を読み取れるサーナイトが相手だから、他のポケモンにもこの認識が通じるのかがいまいちわからない。けれど、もしアキツが言葉を話せるようになるのならば……
    「アキツに、私の思いが伝わるかもしれないわね」
     画面越しでもポケモンと話すことの面白さは十分すぎるほど伝わってくる。そのおかげではやる気持ちが抑えられない私は早々にプロモーションムービーを終え、初歩の初歩のプログラムである挨拶の章を選択し、流した。


    「ただいまー」
     キズナが道場の講習を終え、まだ夕日がさす帰路を走って帰って来た。いつもよりも早い午後6時の時間帯で、こんな時間に帰ってくるのは珍しい。いつもはあと30分遅い。
    「お帰りー」
     すでにして、キッチンと一つの部屋にまとまっているリビング・ダイニングキッチンからは良い匂いが漂っている。香ばしい香りに加えてじゅうじゅうと油のはじける音が食欲をそそる。いつもより早めとはいえ、疲れて帰って来たキズナにとっては食欲を誘う匂いだろう。
    「母さん、本はどこにやったの?」
    「あらぁ、今日は宿題をやる気なのね。お母さん感心」
    「飯抜きにされちゃあたまんないからね……」
     キズナはため息をついていた。なるほど、母さんそんな縛りを設けていたのか。
    「で、なんでそれに私までつき合わされなきゃならないのかねー」
     本を持って手を動かしてぶつぶつと挨拶を唱えながら私は言う。自分で言うのもなんだけれど、言葉とは裏腹に私のやる気は満々である。
    「姉ちゃん、別に手伝ってくれなんて言っていないだろ? というか、本返せよ」
    「母さんが手伝えって言うのよ」
    「ていうか、どーせねーちゃんノリノリなんだろ? 俺が3歳の時に迷子になって、家で一人お留守番させられたこと、今も忘れてないんだからな? あんときゃ不安で怖くて泣いちゃったからなぁ……わたくし可哀想な妹ですわオホホ」
    「ぐっ……痛いところを……」
     この生意気なガキめ。でも、何も反論できない自分があまりに悔しい。
    「本の内容なら母さんがたーくさんコピーしてホッチキスで止めているから、それでも見れば?」
     悔しさ混じりに顔をゆがめないよう注意して、私は印刷された紙のある方向を指差す。というか、母さん家族の人数分コピーする必要までは流石になかったんじゃ?
    「ところで、父さんは?」
    「今日は特に連絡がないから7時には帰って来るんじゃないのかしら?」
     キズナが母さんに尋ねると、母さんはフライパンを振るいつつ軽い口調で答えた。
    「そっかぁ……じゃあ、アキツに言葉を教えるのもその時だね」
    「そうよ、キズナ。だから挨拶くらいはきちんと覚えておくのよ?」
     アキツは父親が毎日の出勤に使っているポケモンだから、父さんが帰ってくるまでは教えることは出来ない。それまでに、キズナにも挨拶だけでも覚えてもらわないとね。
    「本当にねーちゃんノリノリだし……」
    「いいじゃない、キズナ。私も、夏休みの自由研究の議題にさせてもらうわ」
    「え……なんか、アイデアの流用とかズルい」
    「いいからいいから」
    「よくねーよ」
     なんとでも言え、優秀な妹よ。図々しさなら私のが上だ。
    「いいから、さっさと挨拶を覚えましょ? まずは、帰ってきてすぐにご飯を食べるわけだから、『いただきます』と『ごちそうさま』を覚えなさいよー? それ覚えないと食事抜きなんでしょう?」
     私が命令すると、うんざりしたのかキズナはため息をつく。
    「勘弁してよ……楽しようと思ったのにこれじゃあ、束縛が厳しいじゃないか……」
    「夏休みの宿題に対してそういう心掛けだから、神様が罰を当てたんじゃない」
    「それだとねーちゃんが神になってしまっているんだけれど」
     あら、キズナってば上手いことを言う妹ね。
    「いいから」
     私はぴしゃりと言って、無言の圧力をかける。
    「わかったよ……」
     先ほどまで文句を垂れていたキズナも、ようやく私が本気であることを悟ったのか、しぶしぶながらに服従した。
    「私も協力するから。真面目にやらないと許さないんだからね? まずは……『いただきます』から覚えなさい」
    「へいへい」
     『いただきます』を表す時は、両手を合わせてお辞儀をする。一応、似たような動作を日常生活でもやっているので、これは簡単に覚えられたし、キズナも簡単に覚えてくれた。
     声に出しながら何度か繰り返し、次は『ごちそうさま』を。『ごちそうさま』は右手のひらでほほを軽く2回か3回叩き、両手のひらを上に向け、少し曲げる。その体勢から両手をすぼめつつ、下におろして、『ごちそうさまでした』。
     テレビ画面を見ながら何度か巻き戻しと再生を繰り返すことで、ようやく体に染みついてきたそれを終えて、私はついでとばかりに『おやすみなさい』や『お帰りなさい』や『ただいま』を覚えるようにキズナへ強要する。
     なんだかんだで、やり始めてみるとキズナ自身嫌々やるというようなことも無くなり、手話を覚えることにまじめに取り組んでいる。母さんも料理にひと段落つくと一緒に参加したのだが、私と母さんが好きな男性タレントが主演の番組が始まることでようやく作業は中断された。
     バラエティ番組なので、あまり興味のないキズナはとりあえず画面を見るが、手元には手話の本を持って片手間に暗記している。私も同じことをしていたので、母さんには二人揃ってご苦労さんねと笑われたのが、ちょっとだけ照れ臭かった。

    「ただいまー」
     しばらくして、父さんが帰ってくる。母さんはすでにキズナ(と私)の宿題の事を父さんに連絡していたらしく、いつもは家に着くと同時にボールの中にしまうウチのポケモン、アキツを外に出したままの帰宅である。
     父さんはアキツに付けたおんぶ紐を取り外し、取り外したゴーグルとヘルメットを片手に扉の前に立っている。
    「『おかえり』、なさい」
     右手を上から下に振りつつ、その手で左手首を叩く。いつもよりも大きな声で、そして動作に合わせてゆっくりと。私は手話を交えてそういった。
    「ただい……ま?」
     そして、父さんは二回目のただいまである。大事なことでもないし、二回言う必要はないと思うが、こうして戸惑うのも仕方のないことなのかもしれない。
    「本当に、手話をやるつもりなのか」
     後ろを見れば、キズナも私の隣まで駆けてきた。
    「まあね。アキツ、よく見ておけ。『おかえり』、なさい」
     父さんがいつも通勤のお供にしているポケモン、アキツを見上げて俺は手話を教え込む。玄関の外、アキツはきょとんとして二人を見下ろしていた。
    「本当はもっと近くでやりたいんだけれどなー……」
     でも、出来るわけがない。首を傾げるだけで、地響きのような重厚な音が響くこのポケモンは、ゴルーグというポケモンで、その大きさたるや平均身長で2.8mもあるのだから、ボールでも使わなければ玄関から家に入るのは難しい。
     通勤用のバイクが欲しいという父さんの願いと、ポケモンが欲しいという私の願いが超融合した挙句にこのポケモンなのだから、通勤用のポケモンを飼えばいいという結論に至った母さんのセンスは流石であると思う。いつもゼブライカとかの方がよかったんじゃと思っていたが、庭仕事なども手伝ってくれるし、今回の事もあるので案外これが正解なのかもしれない。

    「アキツ……見てた?」
     と、私が語りかけてみるが、アキツは黙して語らない。無表情で、自分の感情を表に出したがるようなポケモンではないことは知っているが、そもそも挨拶自体を理解しているのかどうか気になってくる。
     しかし、もう遠い記憶ではあるが、アキツが小さいころ。ゴビットのころは、私達の真似をして浜辺でカイス割りなんかをして遊んでいたこともあったし、遊びといった非生産的な活動に興味がないわけじゃない。だから、挨拶の意味を理解する希望がないわけではないはずだ……と、思う。これ、一応自由研究の考察に書いておこう。

     問題は、人間の真似を、意味が分かってやっているかどうかなんだけれど。そんなことを考えているうちに、母さんも玄関までやってきた。
    「アキツ、おかえり、なさい」
     なんだかんだで母さんまでもが乗り気で、私と同じように大きな声でゆっくりとやってくれる。アキツはと言えば、巨大な手の平を頭に当てて、どうすればいいのかわからず混乱している。
    「はい、お父さん」
     そう言って、私は父さんにコピーした紙を渡して、『ただいま』の動きを強要する。ゴーグルとおんぶ紐を玄関のフックにひっかけた父さんは、紙の前で一時停止して、数秒後に動き出す。
    「『ただいま』……二人とも」
     肋骨の境目あたりの高さで両手は物を押さえるように動かし、次いで右手を右目の前に置き、指の先をくっ付けつつ体の外側へ向けて斜め下に手を動かす。
     本日3回目の『ただいま』である。ゴルーグが空を飛ぶ際に発する熱気のせいか、ゴーグルが曇るほどの汗だくで帰ってきた父さんは、いきなりこんなことに付き合わされてげんなりしているのか、ため息をついていた。
     私は色々と済まない気持ちになった。キズナや母さんも済まない気持ちになっただろうか?



     ◇

     自分が物心ついたころに読ませてもらった本は、人間とポケモンが普通に話している本だった。
     ポケモンが貧しい人間のお願いを聞いて回るお話で、そのポケモンが病気になった時に今度は村の皆がポケモンを助けるという、王道過ぎるストーリーだ。他にも色んな物を見せてもらったが、シキジカが森の仲間と一緒に成長する物語や、コリンクが親の敵を討ちとる話など、ごく普通にポケモン同士が会話をするものばかり。
     そんなお話を見ていたせいか、自分はポケモンと人間が話せるもんだと思って、アキツがゴビットである内はアキツに向かって何度も何度も話しかけた。母親や友人に諭され、馬鹿にされて、うすうす無理だとわかっていてもやめなかったけれど、人間に近い形であるポケモンならば大丈夫だと信じて居たかった。

     アキツが進化した時は、その巨体ゆえに私は彼を恐れ、避けるようになってしまい、そして5歳の私はものすごい無茶もしたものだ。世の中には人間とテレパシーで通じ合える伝説のポケモンがいると聞いて、野山に繰り出し伝説のポケモンを探しに行ったのだ。案の定迷子になり、両親はキズナを一人留守番させて、近所の大人総出で探しに出るような大騒ぎとなった。

     私が一人泣いていたその時、色んな人が探しに来てくれた中で真っ先に駆けつけてくれたのはアキツであった。当時ゴルーグに進化したばかりの彼は、自転車に変わって父さんの通勤手段になっており、空を飛ぶ能力で上空から私を探していたのを今でも覚えている。
     彼を避けるようになってからは嫌われていると思っていたのに、アキツは助けを求めて叫ぶ私を見つけると、優しく手の平に乗せ肩車で野山を下ってくれた。その時アキツが何を思っていたのかは知らない。けれど、それを知りたい。

     思えば、その一件で私は余計にポケモンと会話することに対して憧れを強めたのだと思う。会話したいがためにテレパシーが使えるポケモンを探して大目玉をくらったというのに、懲りない奴だと自分でも思う。
     アキツの事が怖くなくなった私が、再びアキツに話しかけたのもそのころだ。その際は無表情なアキツでさえは困っていたことがわかるくらいに話しかけていたと思う。
     さすがに小学校に入るころにはポケモンと会話することも諦めたけれど、それでも憧れだけは強く残った。ポケモンと話すことが出来たらどんなに素敵なことだろうとか、そんなことが出来ればきっと楽しいだろうとか。
     二年前、元チャンピオンのNが登場した時も同じことを考えて、冗談交じりにアキツに話しかけたりもした。しかし私はポケモンと話すことはついぞ叶わなかった。けれど、手話という方法なら……あのサーナイトのように、話せるのかもしれない。ある意味、最後の希望であるこの方法。キズナが偶然持ってきたこの方法に、私はまじめに取り組まざるを得なかった。

     なにより、これが出来れば妹にはない、私だけの取り柄にもなるしね。




    --------------------------------------------------------------------------------


    『ゴルーグは蚊に刺されることもないので、アキツは外で眠らせても特に問題はないという。実際、彼はモンスターボールから出して庭で眠らせても(しゃがんだ体勢で眠っているので周囲の人に驚かれるが)嫌がる様子はなかった。流石に雨が降ったときはモンスターボールに入りたがるのだが、基本的にモンスターボールの外に居られるほうが嬉しいらしい。
     手話を始めるにあたって、アキツに挨拶しやすいようモンスターボールの外に出して生活させるのは正解のようだ。おはようからお休みまで、とにかく手話漬けの生活を送ると、一週間もしないうちにアキツは手話であいさつを返すようになった。
     『空を飛ぶ』、『下す』、『おんぶする』、『物を持ち上げる』、といったような単語も覚えてくれて、手話のルールもきちんと理解できたらしい。

     さて、困ったことが二つある。まずは一つ。人間の手話には、5本の指で文字を表す指文字というものがあるが、これを覚えることは難しいと書いてあった。
     音を文字であらわすという事が理解させるには相当苦労し、幼いころからきちんと教えていないと覚えるには時間がかかるんだとか。一番記憶力のいいフーディンは人間の五本指に対応していないので、特別な指文字を人間が覚えなきゃいけないのだと。その『特殊な指文字』というのは、参考にした本の著者が勝手に考え作ったものを参考程度に乗っけられているだけだから何とも言えないんだけれど……。
     と、とにかくそれならそれで、指文字なんて後まわしだ。もう一つの困ったことというのは感情の教え方だ。感情について教える方法があればいいんだけれど……どうすればいいんだろう?

      借りてきた本には、ポケモンと気持ちを通じ合わせるために、感情を教える方法というものが書かれている。基本的な喜怒哀楽から、羨ましいとか、怖いとか。
     楽しいという感情を教えるのは難しくない。楽しい時に『楽しい』という単語を教えれば済むことで、すでにその単語の意味は覚えている。夏休みも始まり、父さんが休みで通勤にアキツを使わない日、彼を連れだし河原で遊んでいる時に、簡単に覚えてくれた。
     ただ、手話では『嬉しい』と『楽しい』は一緒くたにされているから、『楽しい』という単語は『面白い』という単語で代用している。具体的には両手をグーにして、両手の小指側でお腹を2回程、叩く動作で表させている。
     どれもそれぞれ意味やニュアンスが違うけれど、嬉しいと楽しいはやっぱり違うと思う。テストで百点とっても、嬉しいけれど楽しくはないし……

     『怒る』という単語も、教え込んだ。これは、私が妹のおやつを勝手に食ってしまったというシチュエーションで喧嘩の演技をしているところをアキツに見せただけだが、どうやら演技はバレることなく伝わったらしい。流石に一回では覚えてくれなかったけれど、以降も自然に発生した『怒り』の光景に合わせてその言葉を教えてやれば、自然に何らかの反応をするようになった。『怒る』という単語は、鬼の角を意識して指を立てる動作をするのだが、それをするゴルーグは何というか……新鮮だった。

     さて、上記にある通り、嬉しいという単語は『楽しい』という単語を使って表現した。具体的には両手のひらを左右の胸にあて、左右の手が上下対称になるように上下に動かすという動作である。『嬉しい』という単語を教えると、まず最初にアキツは『自分、嬉しい、ありがとう』と伝えてくれた。アキツ自身、表情の変わらないゴルーグという種族柄、自分の感情を伝えることも出来ずにもどかしさを感じていたのだろう。不十分ではあっても、こうして感情を伝えられることを嬉しく思い、そして感謝してくれるのならば、私もやってよかったと思う。
     問題は『悲しい』という気持ちを教える機会がないという事だ。怒ることのめったにない仲良し家族な俺達でも演技さえ駆使すれば、『怒る』という言葉の意味を理解させるくらいは出来た。出来たのだけれど、『悲しい』演技なんてものは、さすがにシチュエーション作りも難しいから、実際にその言葉を教える際に作者である一樹さんも悩んだそうだ。
     とりあえず、この本によればポケモンもテレビの内容はきちんと理解できる(らしい)という研究結果をもとに、映画を見せながら言葉を教えたらしい。上手くすれば、登場人物が泣いているシーンにポケモンが同情することもあるそうだと……でも、近所にはビデオ屋なんてないんだけれどな……』



    --------------------------------------------------------------------------------


     私はそこまで書き終えて、自由研究のノートを閉じる。
    「まだ、会話を自由自在にできるようになるには程遠いわね」
     私はため息をつくが、それでもアキツの賢さは目を見張るものがある。この一ヶ月であいさつするだけならば全く困らないし、彼が表せる言葉はもう200を超えているんじゃないかと思う。
    「はー……これで1ヶ月分は何とかなったわけだけれどなぁ……というか、楽に終わらせようと思った自由研究で夏休み終わっちゃう……全然楽じゃねえ」
     後ろすぐ隣で私のレポート用紙を見ながら作業しているキズナは、そう言って鉛筆を置き、ため息をついた。

     ともかく、沢山の言葉を覚えたわけだが、細かい言葉を教えることももちろん大事だけれど、やっぱり基本的な言葉を覚えるのはとっても大事だと俺は思う。
     『嬉しい』、『楽しい』、『憎たらしい』、『悲しい』。無表情なアキツが、感情を伝えたがっていたことは、先日の会話ですでに分かっているんだ。きっと、悲しいなんて感情でも、いつかは表現したいと思う時が来るし、私はそれを教えたい。
     そう思って、本を捲って読んでみて出会った、『映画を見せればいい』という記述には希望が見いだせた。しかし、今度は新たな問題が浮上する。それは適当な映画や映像作品が無いということだ。ここ、ホワイトフォレストはドがつくほどの田舎である。しかも、そのホワイトフォレストの中でも僻地のここは、道路状況も悪いおかげで、街まで自転車で1時間かかるし、バスは2時間に1回あればいい方だ。
     結局、いつも街へ仕事に行っている父さんにDVDを借りてきてもらうことになった。

     私は、キズナと一緒に事前に一度映画を見る。それで映画の内容を把握してみると、なるほど悲しい話だと思う。キズナは普通に見ているというのに、私は涙ぐんでいて、無様に鼻水まで流しているのが姉として、見た目の面で悔しい。これを見て、アキツはどういう風に解釈するのだろうか? 悲しいという事を、テレビ越しに感じ取ってくれるのだろうか?
     いや、むしろ……今までの事も理解して『くれていた』のだろうか?
     こうして手話を覚えたことで、色々な感情を表せるようになったことで分かったけれど、ポケモンも人間と同じように考え、想う心はあるんだ。それがどこまで同じなのか、もっともっと知ってみたい。5歳の時のあの夜、私が怖かったこと。アキツに見つけてもらって嬉しかったこと。そしてアキツが大好きなこと。
     全部伝わっているといいし、相手も同じように思ってくれればいいのだけれど。『ありがとう』は教えたけれど、どこまで意味を分かっているのかなぁ? プロモーションビデオで見た、まるで本当に人間であるかのように喋っていたサーナイトの姿を思い浮かべて、私は思う。
     きっともっと、心を通じ合わせることが出来るよね、アキツ。

     ◇

     私達は二度目の映画を見る。二回目だというのに不覚にも涙ぐみそうになるのを必死でこらえ、私とキズナはアキツに手話を教え込む。
    「アキツ。これが、『悲しい』って『気持ち』なのよ」
     アニメーションの中で、母親を失った少年が泣いている。評判のいい作品だけに、父さんのセンスは悪くないと思うが、実写でも通じるかどうか不安なことを、アニメでわかってくれるのかどうかが不安だった。
     窓の外から固唾をのんで液晶画面を見守るアキツに身振り手振りで単語を教えてみるが、どれほど理解してくれているだろうか。
    「そう、これが悲しいって気分なの」
     キズナも、一緒になって教える。しかし、むずかしいことに、ここにも手話の問題点が立ちふさがる。『悲しい』という言葉を表現するための動作は、『泣く』という動作と似ている。『泣く』という単語は、アキツと一緒に近所の森で遊んでいる最中、盛大に転んでひざを擦りむいて泣いている子供を見ながら教えて、すぐに覚えてくれた。
     目の下に、涙をつまむように手を当てるのが『泣く』。そのまま下に手を動かすことで、涙が滴り落ちる様子が『悲しい』。一応、動作に違いは存在するけれど、勘違いするんじゃないだろうかと思うと心配だ。
     『悲しい』という言葉を二人掛かりで教えると、アキツは一瞬考える。
    『悲しい、泣く、同じ?』
     予想通りだった。アキツは、泣くことと悲しいという言葉を一緒くたにしている。一応、『泣く』と『悲しい』の動作に変化は付けているものの、その違いについては理解が及ばないらしい。
    「『違う』よ。『泣く』から、『悲しい』、わけじゃない」
     手話を交えて、私はアキツにそう教える。
    「『泣く』のは『悲しい』『とき』だけじゃない。『痛い』や、『嬉しい』でも、『泣く』ことは『ある』さ」
     ポケモンはめったに涙を流さないというし、ましてやゴルーグが涙を流した話なんてもちろん聞いたこともない。むしろ、このアキツに対して何をどうすれば涙を流すのかがまずわからない。
     涙を流したことがないアキツには、人間が涙を流すという事がどういう事かを理解していない節があったが。やはり生態の違いによる感情表現の違いが何とも難儀しそうである。

     まずは『死んだ』ら『悲しい』という事を教えようか? 何度も何度も死ぬシーンを見せて、繰り返し教えてみれば意味は理解するだろう。他の映画でも同じようなシーンを見せて、死を理解して、そこでやっと死ぬと悲しいことを理解するのだろうか。
     『胸』が『痛い』と、説明したいところだが、物理的な痛みならばともかく、心の痛みなんてもの、アキツは簡単に理解してくれるだろうか? これは説明も難しそうだ。
     そうやって考えていると、アキツは私達に何かを訴えてくるではないか。
    『ずっと、眠る、悲しい?』
     死ぬ、という言葉を、彼は『ずっと眠る』と表現して訪ねてきた。無表情な彼の顔からはどんな感情も読み取れはしないが、彼は首を傾げているので、疑問を表現していることがわかる。
     ポケモンはカートゥーンなんかでよく見かけるな、喋るポケモンのような賢いポケモンはいないと思っていたけれど……なかなかどうして、ポケモンは思った以上に賢いようだ。
     そう。『死ぬ』って良く考えれば『ずっと眠る』ことだもの。アキツの表現は非常に的を射た表現である。
    「『ずっと』『眠る』は……」
     そう言えば、自分はまだ『死ぬ』という単語を手話で表す方法を知らなかった。私は慌てて『死ぬ』という単語を本から捜し、それを教える。
    「『ずっと』『眠る』って言うのは……『死ぬ』って言うのよ」
     顎の前で合わせた両手を右に倒すことで『死ぬ』と表現をする。
    『死ぬ、悲しい?』
     すると、アキツは早速『死ぬ』の動作を真似て尋ねる。ゴルーグは古代では労働力として重宝されたというが、この記憶力の良さも労働力としての売りの一つなのかもしれない。
    「そう。『死ぬ』のは『悲しい』ことなのよ」
     そんな風に私が教えると、再びアキツは考える。
    『わかった、ありがとう』
     『悲しい』という単語を理解したのか、アキツは嬉しそうに手刀てがたなを切り、ありがとうと言う。
    「『どういたしまして』」
     そう言って返すと、アキツは嬉しそうにギュイーンと鳴いた。
    「おー、ねーちゃんスゲーな。ブリーダーに向いているんじゃね?」
    「なに言っているのよ。私はただ……ポケモンと話してみたいだけで……」
    「別に、ポケモン育てるのが好きで、それなりに実力があるならブリーダーなんてそれでいいんじゃねーの? ポケモンと話すってのも、夢物語でもなさそうだし」
    「あー……っていうか、そんなことより……続きを見ようか、アキツ?」
     すっかり映画の雰囲気をぶち壊してしまい、うるんだ涙も引っ込んでしまい、微妙な気分だ。会話がうまく成立したことによる満足のせいで悲しい気分もどこかへ行ってしまったが、アキツは律儀に庭の外から映画の内容を見守っていてくれた。
     どれくらい映画の内容を理解してくれているのかよくわからないが、なんとなく雰囲気を理解して楽しんでいるから良しとしよう。終わった後に、アキツは『楽しい』と言ってくれた。それが何よりも嬉しかった。

     ◇

     結局、夏休みの自由研究は途中結果のみの発表となったが、それでもかなりの評価を受けて全校集会で発表させられる羽目になる。夏休みが終わってからも手話を教え続けていると、ポケモンは予想だにしないほど多くの感情や言葉を理解していることにも段々と気づいてきた。
     意味を理解させるのに苦労させたことや、言葉の動作を忘れてしまって上手く言葉が出てこないこともある。しかし、基本的に物覚えも理解力も高いアキツが相手ならばイライラすることはなく、なんで言葉を覚えてくれないのかと躍起になることはなかった。
     もちろん、私が一番頑張ったとはいえ、その陰では家族全員が予想外なほどに協力してくれたことが成功の主因である。特に母さんに至ってはもう一人子供が出来たみたいで嬉しいと、嬉々として言葉を教えている。
     キズナも最初は楽するつもりだったというのに、いつのまにか自主的かつ真面目に手話を学び、そして会話に手話を混ぜてアキツに教え込んでいた。父さんこそまだたどたどしいものの、この自由研究のおかげで家族全員が手話を使えるようになってしまい、アキツとの会話もスムーズだ。
     まぁ、私が一番上手くアキツと話せるんだけれど。

     他の家でも真似する人はいたんだけれど、家族の協力を得られなかったり根気が続かなかったりで全員挫折。
     そう言った報告を聞く限りじゃ、うちの家族の団結力も高いと思うし、つくづくアキツは賢いポケモンだと思う。それこそ人間とほとんど相違ないんじゃないかと思うほど、アキツは賢くふるまってくれた。
     今では流暢に手を動かし、生意気なくらいに喋って来るから鬱陶しいくらいだ。父さんの職場でも、ゴルーグに興味がなかった女性にまで人気が出てきたとかで、アキツはそれに対して鬱陶しいと思いつつもまんざらではないと、手話でコメントしていた。


     月日は過ぎ、暑かった夏の面影も消え去り、今はもう町には冷たい風が吹きすさんでいた。ただでさえど田舎であるこの町は空気も澄んでおり、冬という事もあって宝石を散りばめたように満天の星空が煌めいている。町は目前まで迫ったクリスマスのムードに包まれており、私の家がある所はそうでもないけれど、繁華街に行けば煌びやかなイルミネーションがあたりを光で包んでいる。
     アキツは驚くほどの勢いで手話を覚え、あのブルーレイのサーナイトほどではないものの流暢に話す姿は目覚ましい。今なら聞きたいことも聞けるだろうかと思って、私はアキツを外に連れだし、散歩する。
    「ねぇ、アキツ?」
     顔を上げて、私はアキツに語りかける。
    「『昔』ね、『私』が……『家』に『帰られ』『なかった』の、『覚えて』るかしら?」
     まっ白い息を吐きながら私は尋ねる。迷子という言葉を知らなかったので回りくどく言ってしまったが、きっと伝わることだろう。アキツは、少し考える。
    「『飛んだ』『探す』。『夜』『お前』『泣く』」
     そう言ったアキツは数年前の夜にあった出来事をきちんと覚えているようである。
    「そう、『貴方』が『空』を『飛ん』で『探して』くれたわね。『あの時』ね……『何度』も『ありがとう』って『言った』けれど……『それ』が『貴方に』『伝わった』のか……『わからない』から『心配』だった。でも、『貴方』には……『ありがとう』の『気持ち』『伝わって』いるのかな?」
     手をひとしきり動かし終えて、私は真っ直ぐにアキツを見つめる。
    「『ありがとう』『聞いた』『嬉しい』」
    「ありがとうって言われて……嬉しかったのね?」
     私は問い返す。
    「『当然』『理由』『お前』『家族』」
    「そう……」
     どうやらアキツには何もかも伝わっていたようだ。それだけじゃない……小さいころから何をやってもダメで、迷惑ばかりかけてきた自分だけれど……こういう風に、ポケモンだって私を必要としてくれるんだ。
    「『嬉しい』」
     それを言葉にしてみると、全身に暖かいものが駆け巡るような、そんな感覚が私を包んだ。
    「『貴方』に、『手話』を『教え』て……『今日』『一番』『嬉し』かった……」
    「『私も』『嬉しい』『手話』『楽しい』」
     そして、アキツも答えは一緒。こんなに嬉しいことはない。きちんと伝わっているのかどうか怪しかったあの時のお礼はきちんと伝わっていたんだね……それがわかっただけでも嬉しいけれど、アキツもそういうことを伝える手段が出来て、喜んでくれている。
     無表情で、何を考えているのかもわからないようなゴルーグだけれど、彼だって人間のように何かを考えているし、それを伝える手段を探している。むしろ、無表情だからこそ、伝える手段を探していたのだろう。恐らくは今まで自分の想いを伝えられなくってもどかしい思いをしたこともあったのだろう。
     でも、今なら伝え合えるのよね。Nのように、目を見るだけで伝わるようなことはないけれど、でも十分。嬉しい。そう、嬉しいんだ。
     家族だって伝えられて、ありがとうって伝えられて、そして分かり合える。
    「ねぇ、アキツ。『手』を『繋い』で」
     私が頼むと、『了解』と言ってアキツは優しく私の手を握る。歩幅を合わせるのがとても大変そうだけれど、きちんとアキツは私に付き合ってくれる。こんな時でも無表情なアキツだけれど、その表情の下に渦巻く感情があるのを私はしっかりと知っている。それがわかるだけで、私は誰よりも幸せになれた自信があった。

     家に帰って私は、放置されっぱなしで埃の被ったレポート用紙に書き加える。

    『この研究のおかげで、私は家族と今まで以上に親密になれました。これを持ちかけてくれた妹も、付き合ってくれた家族も、何より一緒に喜んでくれたアキツにも。皆、ありがとう。』


      [No.2379] 御2人も書いて下さったですと…… 投稿者:門森 輝   投稿日:2012/04/12(Thu) 21:04:04     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     うひゃっほぅ! わっほぅ!  書いて下さった方が御2人も! きゃっほぅ! 
     ピッチさん、音色さん、書いて頂きありがとうございます! ありがとうございます!

    >逃がすだなんて酷い話だ
     『つよいポケモン よわいポケモン そんなの ひとのかって ほんとうに つよい トレーナーなら すきなポケモンで かてるように がんばるべき』 カリン様もこう仰られておりますし好きなポケモンで勝つのが一番嬉しいものですよね。厳選は勝てる様に頑張った結果ですからねぇ。
     エネコロロが擦り寄るクリーム色と薄桃色のストール……グラエナが食いつきエネコロロが敬遠する生肉タイプのポケモンフーズ……安くなったエネコのしっぽ……なるほどです。こう言う様に直接書かずに仄めかす手法大好きです。憧れます。
     厳選余りは1人の廃人から大量に生まれますが、1人の客が欲するのは同じポケモンでしたら通常は1匹、多くとも数匹でしょうし、まず売れ残りは出てくるでしょうからね。それをどう処分するかとなるとこうなるんですかね。それとも最初からこう捌くつもりで貰い受けたんですかね。どちらにしてもこういった内容大好きです。
     つまり何が言いたいかと言いますと、この作品大好きです! 厳選の理由もそのトレーナーの考えとして納得出来ますし、ポスターのイラスト例等も凄く好みです。書いて下さり本当にありがとうございます!

    >生態系が乱れるとか(笑)
     ひゃっはぁぁ! 
     逃がす事が禁止になるとポケモン狩ってる人にも影響が及ぶのですね。獲物が減るのは困りますものね。
     確かにプラズマ団の格好は宇宙人ですね。ただあのフードが頬っ被りに見えて仕方ないのは私だけですか。
     こういったノリも好きです。書いて下さりありがとうございます!

     最後にもう一度、書いて下さりありがとうございました!

    【大事な大事なビジネスチャ〜ンス】
    【ひゃっはぁぁ!】


      [No.2378] ハートのうろこ 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2012/04/11(Wed) 20:51:42     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     これは、今となっては昔のことだが、ある男がいた。ポケモンの忘れていた技を思い出させることに長け、いつも皆のポケモンに技を教えていた。

     ある日、帰路についていた男は垣根の隙間より女を目にした。たいそう優美で面やつれしており、男はすぐに帰って歌を送った。

    きみとわれ 話してみれば いたずらに ラブカスあまた 寄りて来るなり

     さて、歌を送って数日が経ったが、女からは一向に返歌は来ず。気になった男は夜、家に訪れた。すると、そこには他の男と話をしている女の姿が。屋敷の隣を流れる川には、海からラブカスがやって来ている。これに悲しんだ男は、ふと足元にハートのうろこを見つけた。男は怒りのあまりうろこを握り潰したのであった。

     これより、男はポケモンに技を教える代わりにハートのうろこをもらうようになった。また握り潰すために。これは、男と同じ能力を持つ者に受け継がれ、今に至ると言う。

     物事の始めとは、かくなることから起こるものである。



    「技マニアが鱗をもらう理由が、ラブカスが見つけたリア充を爆破するわけにもいかないので鱗を潰して憂さ晴らしするため」という電波を受信したんですよ。お題が「愛」っぽいのでコンテストに出そうと思いましたが、こっちに出しときます。


      [No.2377] Re: タブンネの体力が回復した! 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/04/09(Mon) 23:44:39     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    |ω`)<どうもです!

    お読みいただきありがとうございます。感想嬉しいです!
    上手くリクエストに応えられるかハラハラしてました(実話
    気に入っていただけたようで何よりです。

    >2も、あるんですよね?
    最初は一編の話にしようと思っていたのですが、ある程度話を組み立てていくうちに広がりを見せてきて、
    いくつかの話に分けようという判断に至りました。
    同じような路線で、近々直系の続編である【2】も投稿しようと思います。

    またお読みいただければ幸いです(`・ω・´)


      [No.2376] タブンネの体力が回復した! 投稿者:963@亜種   《URL》   投稿日:2012/04/09(Mon) 22:51:49     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    まずはありがとうございます。
    あんな酔ってるのか酔ってないのか解らない状況で受けていただき、ありがとうございました。私はあの時酔ってません。
    っていうかですね。



    これこそダイゴさん!!!ダイゴさんですよダイゴさん!!
    一つの石にこめられた思いを話し相手に畳み掛けるダイゴさん
    話し相手に対して解りやすいよう、くだいて話を聞かせるようにしていて、自分の言いたいことを相手に邪魔させない、さすがのダイゴさん。
    ↑の文章の意味が解ったら凄い


    そして、それはポケモンのある人物を思い浮かべる。
    ギンガ団のボス、アカギである。
    人の上に立つ人間は、やはり人生においての何か固く他人が見えていなかったものが見えてるのかもしれない。


    神のダイゴさんが見れて、私とタブンネは幸せです。
    本当にありがとうございました。

    【触り放題の神きた】【マサポケにいる神はおさわり自由で嬉しい】



    あのですね
    1ということはですね



    2も、あるんですよね?


      [No.2375] 夜回る 投稿者:リング   投稿日:2012/04/09(Mon) 22:04:55     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「ばあちゃん、そっちで元気にしてるかなぁ……教えてくれよ、おチビちゃん」
     私はフラフラと宙を漂っていたヨマワルに、余ったお供えのおはぎを差し出し、尋ねてみる。
     甘い匂いに誘われたヨマワルは、真っ白な骨の仮面をおはぎに口付け、その裏にあるのだろう口を動かしせかせかと放り込んでいる。
     観光客というわけではないが、多くの人間が訪れる場所である。人に慣れてすっかり甘えることを覚えたヨマワルは、他のヨマワルが寄ってこないうちに全てを食べてしまおうという算段のようだ。

    「答えない、か」
     当然だよな、と私は笑う。
     声を掛けられたヨマワルは、仮面の下にある一つ目でこちらを一瞥したが、それっきりおはぎを食べるのに夢中である。死者へのお供え物のつもりだったがやはり生きている者に与えたほうが、こういった可愛い反応を見られて楽しいものだ。
     そう思う反面、もう少しばあちゃんに孝行をしてやれれば良かったなとも思う。
     私は早くして両親を亡くし、母方の祖母夫婦に引き取られた。しかし、高校の頃に祖父は他界。祖母も社会人になって一年目、大した恩返しも出来ないままに急死してしまった。祖母は、善人の塊みたいな人であった。私の世話を嫌な顔一つせずに行い、反抗期もめげずに世話を焼いてくれたが、そんなのは序の口だ。
     若いころ、勇敢だった祖母は箒を持ってゴロツキ相手に啖呵を切るなど、無謀なこともしたようで。その威勢の良さでご近所のトラブルを解決したこともあり、諍いの解決という一点においてはその武勇伝の数は二桁の半ばまで聞かされたものだ。
     敬虔な仏教徒というわけでもなく、普通に肉や魚を食べている人ではあったが、今思えば善人を絵にかいたような人だと思うし、近所の人たちもそう言っている。

     そんな祖母は天国へ行っただろうか。
     私はこの彼岸の日にふと思う。
     遥か西の彼方にあるという極楽浄土に、祖母はたどり着けたであろうか。せめて弔いだけはきちんとやったつもりであるから、私は祖母がたどりつけたと信じたい。
     死者を迎え、手招きするというこのヨマワルという種族ならば、死後の世界にも行けるんじゃないかとは思ったが、狩りに行けたとして祖母にあったという保証はないし、祖母と私のつながりが分かる望みも薄かろう。
     たとえ、ヨマワルが人の言葉を流暢に操ったとして、無駄なことだとは分かっていた。
     やがておはぎを満腹になるまで食べ、喰いかけのおはぎを後にしたヨマワルを見送り、私は昔どこかで教えてもらった歌を思い出す。


    『ひがしずみ にしの方へと 夜回る 日が沈む様 夜のお迎え』
     日が沈む時間帯に、彼岸の日を済ませた祖先の霊たちは、再び西のかなたにある浄土に帰り、死の方へと夜と共に向かう。その案内をするのはヨマワル、サマヨールであるという事を歌った内容だ。
     掛け言葉の多さが評価の一つとなっていることが一つの評価につながっているが、当然それだけではない。実際に彼岸の前後の夜ではこのヨマワルやサマヨールの目撃例は多く、当時の人間はこの短歌の内容を本当に信じ込んでいたのだという。
     実際は彼岸の後に海でドククラゲやメノクラゲが多くなるのとそう変わらない、ただの季節の風物詩なのだろうが、この骸骨のような見た目の仮面や、基本的に夜に現れると言った習性がそんな言い伝えを生んだのであろう。
     そして、この短歌には続きのような歌がある。
    『彼岸すぎ こちら側より 東風が吹く わかれと告げて ししゃは旅立つ』
     春分を告げる彼岸の日を過ぎ、春の訪れとともに東風(こち)が吹く。こちら側の世界とは、もちろん生者の世界である。そこから別れを告げるように吹く東風。わかれというのも、別れの辛さを分かれと言う、二つの意味を持った掛け言葉で構成されている。死者の魂は運ばれていくのだろうか。そして使者たるヨマワル達も西へと消えてゆくのだろうかと。
     この歌は同じ作者の作品で、これまた掛け言葉の多さが特徴だ。
    「……分かれ、か」
     頭ではわかっている。だが、もっと親孝行してあげたかったという思いは消えない。
     再びヨマワルが現れる。今度は二匹で、仲良くおはぎを食べに来たようだ。
     さっとそれを差し出してやると、二匹のヨマワルはかぶりつくようにそれを食べた。
     今はそう。どこかでばあちゃんが私を見ていてくれるなら、立派に生きて幸せになることこそが親孝行だ。うじうじしていても仕方がないのだ。

     すぐに割り切ることは出来ないだろうが、いつかは立ち直らなければならない。私はおはぎを地面に置くと、ゆっくりと夕日に願掛けをしてからその場を去る。
     もしもまだばあちゃんが安心して天国へ行けず、まだ成仏していないのであれば、安心して逝けるように生きてみよう。その時はばあちゃんの道案内をよろしくと餌を与えたヨマワルに言って、墓地を場所を後にする。


    ――――
    短歌作ったはいけれど、なんかもう内容がまとまらなかった。


      [No.2374] 役割 投稿者:フミん   投稿日:2012/04/09(Mon) 22:03:29     86clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「よし、できた。これでもっと使いやすい物になるぞ」

    青年は、一つのモンスターボールを握り締めながら言った。

    ここは青年の家。彼は若くして有能な研究者だった。彼は世間で話題になる流行や、友人が結婚したとか、そういう話には一切興味を示さなかった。ただ一つ、彼を夢中にさせたのは研究だった。特に、新しい物を開発するなど、既に存在するものを改良して、更に良い物にすることに情熱を注いで生きてきた。当然恋人もいないし女遊びもしない。
    そして今、まさに彼の研究が一区切りついたところだった。

    「これは一番安く買えるモンスターボール。従来よりも、ずっと捕まえやすいように改良することに成功したぞ。これを

    シルフカンパニーに売り込めば、きっと僕の実績を認めてくれるに違いない」
    青年は、とても嬉しそうに呟いた。

    彼は研究だけが取り柄だったので、他に何もできない。運動なんて苦手だし、対人関係もあまり得意ではない。家事もできないし働かない。ただ自分のしたいことをする。そんな生活を続けていた彼は、先日とうとう実家から追い出されてしまったのだった。

    こうなってしまっては、お金がないので生活できない。研究が好きと言っても、子どもが遊ぶ玩具の構造がどうなっているのかなど、自分が興味を持つことしかやってこなかったので、具体的にお金を生む成果を出してこなかった。儲ける権利を独占できるような結果を生んでも、それをわざわざ発表しようとは思わなかった。ただ自分が興味を持つことについて調べてみたい、それだけなのだ。

    数少ない友人の紹介で、研究に集中できる機関に入れて貰ったこともあった。しかし、途中で同じ仲間からあの資料を取ってなど、そろそろ成果をだせだの、横やりを何度も入れられ、彼はその機関から離れてしまった。自分の研究に余計な口出しをして欲しくないし、やりたくないことを無理に強要されるのはまっぴらごめんだった。
    だが甘いことも言っていられない。資本主義の世の中、金がなければ飢え死にして死んでしまう。

    だったら、自分が興味を持ったことをお金に変えればいい。そうして研究したのがこのモンスターボールだった。
    モンスターボールは、シルフカンパニーが販売する商品の一つだ。シルフカンパニーと言えば、ポケモンを便利に持ち運べ、彼らと仲間になれる便利な道具であるモンスターボールを開発した会社である。文句なし一流の大企業。普通なら難関な筆記試験を受かり、何度も面接をするか、コネを使うかしないと入社できない。だがそれは、一般人の話だ。彼には、研究知識と探究心だけは持っている。

    そしてありがたいことに、モンスターボールの研究については、ここ数年で飽きることがなかった。ボールの構造、素材、耐久度、性能、ありとあらゆることを調べ尽くした。まだ秘密があるなら、もっと知りたい。この情熱が冷めないうちにお金に繋げておきたい。もし駄目なら、そのときなったら考えよう。
    ぼざぼざの頭を整え、体も洗い、何日も着ていた服を脱ぎ、髭も剃る。一番立派な正装で身を包んだ。時刻は丁度お昼。一時間もあれば本社に着けるだろう。


    扉のドアノブをつかんだとき、突然呼び鈴がなった。
    そのまま玄関ドアを開ける。扉の近くには、グレーのスーツに身を包んだ一人の老人と、黒いスーツを着た複数の男が立っていた。老人の隣には毛並みが美しいルカリオが立っている。仏頂面の老人は、黙って青年を見つめてくる。



    「突然の訪問を失礼するよ。私はこういうものだ」

    老人に付きそうルカリオが黙って青年に名刺を渡す。そこにはシルフカンパニー代表取締役の文字。つまり…

    「あなたは、あの有名なシルフカンパニーの社長ですか?」

    「いかにも」

    青年は、もちろん驚いていた。まさか、これから行こうとしていた会社の、しかも社長が家に来るなんて。でもなぜだろう。確かにモンスターボールを弄り回していたが、改造したボールを売って儲けたりはしていないし、ボールの研究内容を公表していないので、犯罪行為にはならないと思うのだが。

    「もしよかったら、君の家に上がらせて貰えないだろうか。内密の話をしたいのだが、見たところ、君はこれから出かけるようだね」

    「はい。これからシフルカンパニーに行こうと思っていたのです。私を雇ってくれないかと、相談に行こうと思いまして」

    「なるほど。なら手間が省けた。君は、我が社のモンスターボールについて随分研究しているようだね。その件で今日はここに来たのだ」

    そう言うと老人は目を細めて穏やかに笑った。

    青年は、これはチャンスだと思った。会社の偉い人と直に話せる機会なんて滅多にないだろう。言われたことを黙々とこなし、責任も中途半端な社員と直談判するよりずっとやりやすい。自分の熱意も直接伝えることができる。

    「分かりました。汚い家ですが、ボディーガードの方もどうぞ」

    「いや、私と彼女がいれば充分だ。彼らは外で待たせる」

    そう言うと、老人とルカリオは青年の家に入っていった。青年は数人の側近に見つめられながら、ゆっくりと玄関の扉を閉じた。
    青年が中に入ったのを確認すると同時に、ボディーガード達は高級そうな黒い車の中に入り、複雑な機械を作動させた。それらは、外からの盗聴しようとしている人の電波を阻害するものだった。

    これで、青年と老人と一匹のルカリオしか中の話は聞けなくなった。




    「粗末な部屋ですが」

    「構わんよ」

    紙が散乱したリビング。そこに置いてある安いソファーの上に老人が腰かけた。青年がなんとか綺麗なコップを見つけお茶を注ぐ。それを差し出すとルカリオが受け取り口をつけた。     
    青年は驚いたが、ちょっと飲んだだけで直ぐに老人に渡した。どうやら毒味らしい。
    老人は、青年の入れたお茶を一気に飲み干した。

    「うん、美味しいお茶だ」

    無意識に青年は黙って頭を下げた。

    「さて、早速本題に入ろう。話したいことは、先程言ったように君の研究内容についてだ」

    「そのことですが、私は何か悪いことをしたでしょうか」

    「どうしてそんなことを言うんだね」

    青年は、老人の前に座りながら申し訳なさそうに言う。

    「私は随分モンスターボールについて分析してきました。正直に言いますと、材料と技術があれば自分で組み立てることができるくらい、モンスターボールについて把握しています。ですが、不法にボールを製作し販売したこともありませんし、研究内容を誰かに話した覚えもありません。でもこうして社長がわざわざ来たということは、私を野放しにできないということかと思いまして。私は何か、重要な秘密を知ってしまったのでしょうか」

    「君は実に物分かりが良い。だが勘違いしないで欲しい。今日は、私の仲間になって欲しくてここに来たのだ」

    「というと?」

    「君を我が社に入社させたい。どうかね?」

    青年は冷静にはあ と返事をしたが、内心は小躍りしたい程舞い上がっていた。まさに棚からぼた餅。こちらから向かおうとしたら、向こうから誘ってくれるなんて。社長から頭を下げてくれるということは、給料や待遇を、こちらから強気になって交渉できるということだ。多少の我儘を言っても妥協してくれるだろう。

    「しかし分かりません。私は交友関係が少ないのに、どうやって私がボールの研究をしていることを突き止めたのですか?」

    「君の友人に、我が社に勤めている友人はいないかい?」

    そういえば、そんな友人もいた気がする。余計なことを話した覚えはないが、ボールに興味があることだけは伝えたと思う。そいつとはもう数年の付き合いになるので、興味があると言っただけで、どこまで追究しているのかを察することができたのだろう。

    「どうやら検討がついたようだね。一応私は社長だからね。どんな些細な情報も耳に入れるようにしているのだよ。まあ、君の近所にも話を聞いたがね。調べようと思えばいくらでも調べることはできる」

    「素晴らしいと思います。社長というのは、ただえばって支持しているだけの存在かと思いました」

    「大抵の社長は忙しいと思うぞ。少なくとも、私は名ばかり社長ではないと自負しているがね」

    そう言って老人は笑った。青年も釣られて笑う。ルカリオは、相変わらず無表情のまま二人を見つめていた。

    「話を戻そう。君はとても研究熱心なようだ。そこで、我が社でモンスターボールをより良いものに改良するための研究をして欲しい。報酬と待遇についてはきちんと交渉しよう。しっかり話し合った上で契約してくれればいい」

    ここまでは男の思惑通りだった。やはりこの老人は、自分の力を認めてくれているのだ。きちんと話し合う段階で妥協しなければ、好きな研究ができる。そして金も入る。文句ない最高の話だった。


    「もちろん前向きに考えさせて頂きます」

    「そうか、それを聞いて嬉しいよ。早速だが、報酬や仕事内容の前に大事な話をしておきたいと思う」

    「大事な、話ですか?」

    「そうだ。モンスターボールができた経緯だ」

    老人が持ちかけてきた話は、予想もしていないことだった。
    経緯、つまりボールができる歴史のことだろう。モンスターボールはシフルカンパニーの看板製品だ。そこまで詳しくは知らなないが、会社の売上を左右する商品であることは間違いない。そんな商品について真っ先に語ろうというのだから、余程重要なことなのだろう。青年は真剣に耳を傾ける。

    「そして、この件については誰にも告知しないことを約束して欲しい。将来結婚してできた妻にも、息子にも、世界で一
    番大切な友人にもね。ここまで聞いて言いふらさない自信があるなら、話させて貰おう」
     
    老人は、とくに念を押して青年に語りかける。彼は、数分考えるふりをした。そうでもしないと、この先の秘密を老人が話してくれそうもないからだ。ここまで来たら全てを知りたい。青年は好奇心に負けていた。


    「分かりました。秘密は誰にも話しません。誓います」

    「では話そう。ルカリオ、いつまでも立っていないで座りなさい」

    老人がそう言うと、これまで仮面のように表情がなかったルカリオは老人の隣に腰かけた。こころなしか、ルカリオは老人に寄り添っているように見える。


    「実はね、モンスターボールは、ポケモンの言葉を奪う道具なのだよ」

    「言葉を奪う道具? それはつまり、どういうことですか?」

    「そのままの意味だ。モンスターボールは重くて巨大なポケモンも簡単に持ち運べるし、凶暴なポケモンも、捕獲してしまえば性格がある程度温厚になり、人間に懐きやすくなる。我が社の初代社長が必死に完成させた、今でも売れ続ける大事な商品だ。現在は世界中で使われていて、人間とポケモンが歩み寄るきっかけになっている。大胆に言えば、世界を変えた商品と言っていいだろう。ここ数十年、我が社は一度も赤字を出していない。私も取締役を任され、誇りを持って仕事をしている。しかし綺麗な話は表向きの話だ。ボールを研究していた君なら分かるのではないか? ある部分に、無駄なスペースがあるのを」

    「それには心当たりがあります。ボールの機能と全く関係ない部分がありました」

    「そうなのだよ。その関係ない部分に、捕まえたポケモンの言語学習能力を奪う装置が埋め込まれているのだ。奪うと言っても人間の言葉を喋る機能だけだがね」

    「どういう仕組みなのですか?」

    「簡単なことだ。捕まえたと同時に、ポケモンの脳の一部分に軽い電流を流す。それでおしまいだ。ポケモンの体を傷つけることはない」

    「つまり、ポケモンが人間の言葉を話さないのは、あのボールのせいだと言うのですか」

    「その通りだ。不思議に思ったことはないかね、ポケモンは人間と同じような生活ができるし学習能力も人間とさほど変わりない。それにも関わらず、なぜ同じ人間の言葉を話さないのかとね」

    「確かに考えたことはあります。でも、それがまさかあのボールが原因だったなんて」

    「一度ポケモンを捕まえて逃がすことがあるだろう? 言語学習能力を奪うと、それはそのポケモンの子孫にも効果が持続する。長年の間、ポケモンはモンスターボールで捕獲されたり逃がされたりを繰り返してきた。世界中にいるポケモンは、殆どボールの影響を受けているはずだ。最も、伝説のポケモンのようにボールと無縁のポケモンもいるが、それは仕方ない。彼らの中には、神と崇められている者もいるからな。まあ、ボールの効果は完全ではないがね。時々成功しない例もあるが、それは限りなくゼロに近い確率だ」

    「どうしてそんな機能を加えたのですか。ポケモンと人間が直接話すことができれば、社長が言った、人間とポケモンが歩み寄るきっかけにもっと近くなると思うのですが」

    「そう思うのも当然だ。我々人類だって言葉が通じないために、交流が難しくなることもしばしばあるからな。だが、これは重要なことなのだ」

    「そうなのですか。あ、ポケモンが人間程に知識を高めることを恐れたのですか。人間よりも有能で、高学歴なポケモンが生まれたら困るからですか?」

    「なるほど。そういう考え方もできる。人間がこの世を支配している以上、人間の言葉を使えなければ、同じ人間に物事を伝えることは難しい。本が読めても言葉にならなければ、直に考えを伝えられないからな。しかし先代の社長達は、そうは考えなかったようだ」

    「だとすると、どういう理由なのでしょうか」

    「実に単純な理由だよ。ポケモンと人間の恋を実らせにくくするためだ」

    「ポケモンと人間の、恋ですか」

    「そうだ。信じられないだろう、下らないと思うだろう。だがこれは重要なことだと思っている」

    「いや、否定するつもりはありません。ただ、全く予想していなかったことなので」

    「驚くのも無理はない。ポケモンと人間の恋愛を防ごうだなんて、一般の人から見たらカルトだとか、宗教だとか言われそうだからな。だがな、別に私はそれ自体を反対している訳ではないのだよ。時代が進んだ今、差別なんてものは過去の話だ。白人と黒人が愛し合うのに、なんの違和感もないだろう。ポケモンと人が互いを好きになってもなんらおかしくはない。だがね、それを余りにも公に許してしまい、将来人類が滅びてしまうのを危惧しているのだ」

    「それが人類の滅びる理由になるのですか?」

    「なるとも。人間を繁栄させるのは人間だ。逆に言えば、ポケモンを繁栄できるのはポケモンだけだ。人間とポケモンが交じり合うとどうなる。子どもが生まれない。そうなると、未来の子孫の数が減る。そして子孫も同じことを繰り返し、またあまり子どもが生まれない。最悪の悪循環だ」

    「でも中には、子どもが要らない夫婦もいるでしょう。無理に子どもを産ませて育てさせることもないでしょう」

    「子どもを作るのは個々人の自由だ。だが、世の中を子どもが産める環境に整えておくのも大事なことなのだ。歴史を振り返ってみれば、金がないからと子ども作らない時期もあったらしい。綺麗ごとを並べても、子どもをきちんと育て教育するのにはお金がかかるからな。今は国家が保証してくれるから問題ない。だがポケモンと人間だと、どう頑張っても子どもが生まれないのだ」

    「そこで、言葉ですか」

    「そうだ。言葉は重要なコミュニケーション手段だ。自分の口から出た単語からは、なによりも気持ちを込めることができる。それを奪うだけで、人とポケモンが恋に落ちる確率は低くなる。大事なのはゼロにすることじゃない、低くすることだ。そんな障害を乗り越えてでも恋に落ちるなら止めはしない。寧ろそこまでいけば本物の恋だろう」

    「―――それが、このボールの秘密ですか」

    「ああ、そうだ。影から人類の繁栄を支えている商品だ」

    ほんの数秒の静寂。老人の目は、真剣そのものだった。


    「約束通り、このことは公言しません。研究さえできれば僕は満足です」

    「ありがとう。研究はそう簡単に結果がでるものではないからな。ゆっくりと成果を出してくれればいい。一応報酬と待遇について、君の希望を聞いておこう」

    青年は、一般のサラリーマンの数倍の報酬と、余計な口出しされない環境を請求した。老人はゆっくりと頷き、二つ返事でこの条件を了承した。
    老人は、隣に寄り添うポケモンの頭を撫でる。ルカリオは嬉しそうに好意に甘えている。

    「社長は、随分そのルカリオと仲がよいのですね」

    「ああ。私の恋人だ」

    「恋人―――ですか」

    「恋人だ。キスもするし夜は一緒に寝る。セックスもする。最高のパートナーだよ」

    「ポケモンと人間の恋を邪魔する商品を作っている企業のトップが、ポケモンと恋に落ちているのですね」

    「ああ。だからそこ、私はあのボールを作り続けようと思っている。人類が滅びるのを、少しでも遅らせるためにね」


    青年は静かに言葉なしで心が通じ合っている一人と一匹を見つめる。そのあまりにも自然な様子に、僅かに羨ましいと思ってしまったが、彼は口に出すことはなかった。


    ――――――――――

    初めまして。フミんと申します。日頃からマサラのポケモン図書館にはお世話になっております。
    粗末ながら、作品を置かせていただきます。万が一、管理人さんが内容に問題があると判断された場合、削除してくれて構いません。
    時々、作品を投稿しようと思います。宜しくお願い致します。

    【描いてもいいのよ】


      [No.2373] キター 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/04/09(Mon) 20:43:02     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    メルボウヤさんこんにちは!
    いつも(メールで)感想ありがとうございます!
    この間は大変結構なものをいただきまして……
    とまあ挨拶はこれくらいにして(笑)。

    イースターっていままでありそうでなかった気がします。
    ハロウィンはわりとメジャーになってきましたが、実はよく知らない人多いですよね。
    おはずかしながらこれを読むまでよくしらなかった人がここに一人……(苦笑

    ジグザグマという配役が大変によろしいと思います。
    ものひろいは他にも応用が利きそうなおもしろい特性ですよね。
    贅沢を言うなら、鳴き声による表現が多かったので、もう少し動作とか表情とかの描写で表現すると「絵」が伝わりやすいかなーと思いました。

    初投稿ありがとうございましたー!
    第一回・第三回も考えられてるとこいうことで期待しておりますよ フフフッ
    では!


      [No.2372] 【描いてみました】 突き落とされ感が半端ない。 投稿者:巳佑   投稿日:2012/04/09(Mon) 17:43:20     93clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    【描いてみました】 突き落とされ感が半端ない。 (画像サイズ: 1500×1899 471kB)

     
     この作品を読んだのが去年の夏頃で、終盤でのテネちゃんに突き落とされた感がやばくて、これはいつか描こうと思っていたのですが……いざ描いてみたら五枚も描いていました。これはあれかテネちゃんの魔力というやつ(以下略)
     おそばせながらでアレですが、この作品へのラブコールということで送らせてもらいました。

     不幸論に関しての感想は殆どイラストの横で色々と言っていますが、最後にもう一つだけ。
     語り部の最後の問いかけですが、ポケモンと一緒にいることにとってがテネちゃんにとっての幸せだと考えると、最後の語り部の質問の答えって一体どうなるんでしょうかね?
     確かに人を殺した人間が、その先幸せに生きられるとは思えないですけど……彼女にとっての幸せのより所を考えると……うーん、難しい(汗) 

     改めて、【描いてもいいのよ】おいしくいただきました!

     ありがとうございました!


    >  【書いても・描いてもいいのよ(いや、かかないだろw)】

    【ここにいますよ、描いちゃった奴が(笑)】


      [No.2371] よみがえるきずな 投稿者:メルボウヤ   《URL》   投稿日:2012/04/08(Sun) 23:06:39     97clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     日に日に暖かさを増す麗らかな四月の、とある日曜日。
     タチバナ家では朝早くから『イースター』のための飾り付けや、ご馳走の準備が着々と進んでいます。

     イースターとは、簡単に言えば“春の到来を祝うお祭り”です。
     クリスマスやハロウィンに比べると知名度は低く、これをお祝いしている家庭を見たことのあるひとは、そんなにはいないのではないでしょうか。事実、ここカナワタウンでイースターをお祝いしているのは、この家一軒きりでした。

     そんなタチバナ家には、ナズナと言う名前の、九歳の女の子が住んでいます。
     ポケモンブリーダーのお父さんと、元ポケモントレーナーのお母さん。そして二人の仲間ポケモンたちと一緒に、毎日仲良く暮らしています。

     ……元気に幸せに、暮らしているはずでした。






    「よおし。そんじゃ、そろそろ始めるぞ!」
    「ぐぐぅん!」

     ナズナのお父さん、コウジが、明るく大きな声を上げました。彼の足下では、イッシュ地方では珍しい豆狸ポケモン、ジグザグマが、ぴょこんぴょこんと跳ねています。

     色とりどりのチューリップが咲き誇るタチバナ家のお庭にて、今年も『エッグハント』が開催されようとしています。

     エッグハントは、お庭の色々な所に隠されたイースター・エッグ――色付けや飾り付けを施した茹で卵のことで、とても大切な意味を持つイースターのシンボルです――を、子供たちが競って探し出すゲームです。
     ご馳走を食べるお昼までの時間にこのゲームをするのが、タチバナ家で祝われるイースターの、毎年の恒例行事なのでした。


    「……うん」

     コウジとジグザグマ(皆はジグちゃんと呼んでいます。ジグちゃんは幼い女の子です)に遅れて、ナズナも同意します。しかしその声は消え入りそうなほどか細く、元気がありません。
     そのことに気づかない振りをして、コウジはふたりの前に小さなバスケットを置きました。ナズナの方はピンク色、ジグちゃんの方は水色で縁取りがされた白地のハンカチが、中に敷かれています。

    「制限時間は二十分。より多くの卵を見つけた方が勝利! 豪華賞品をゲット出来るぞ!」

     例年と殆ど同じ言い回しですが、これを聞くと、今年も始まるのだなと気が引き締まります。
     まだ幼くて知らないこと、解らないことだらけのジグちゃんですが、豪華賞品という言葉が素敵なものを意味することは理解しているのか、箒の先端に似た尻尾を、やる気充分といった風に振り回します。
     対するナズナはと言うと、足下のバスケットを持ち上げようともせず、視線を明後日の方向に投げています。
     そんな上の空な娘を、コウジはやはり気にかけていない様子。

    「よーい、スタートッ!!」

     賞品の内容を一頻り述べ終わると高らかに声を上げ、手をパァンと一つ、打ち鳴らしました。

     さぁ、卵狩り競争の開幕です!

    「ぐぐーーっ!!」

     電光石火のごとく飛び出したジグちゃん。そのまま庭を囲む生垣に激突しそうな勢いですが、すぐに直角に左へ折れて、直後、今度は右へと素早く折れ曲がります。

    「そら、おまえも行って来い!」

     競争相手に抜け駆けされたというのに、ぼんやりと突っ立ったままのナズナに、ようやくコウジが声をかけました。バスケットを両手持ちにさせて、その両肩を掴んで後ろへと、彼女を振り向かせます。

    「……うん」

     またもや元気のげの字も無い返事でしたが、父親は満足げに笑うだけ。
     気が進まないとはいえ、いつまでもここでこうしていても仕方がないので、ナズナもジグちゃんの後を追って春の陽光の下、卵狩りへと出掛けることにします。

    「ぐーん♪」

     そうしてナズナが玄関を離れるため一歩踏み出した時、ジグちゃんがジグザグと方向転換をしながら戻って来ました。
     口には卵が一つ。早速イースター・エッグを探し当てたようでした。
     ジグちゃんは、落とさないように大切に卵を咥えて来ると、玄関先に置いてある自分のバスケットに入れました。薄紫色のお花が描かれた卵。ムンナ柄の卵です。

    「ジグちゃんもう見つけたのっ」

     開始から一分も経たない内に卵を発見する偉業を成し遂げたのは、これまでの、数々のエッグハンターの中でもジグちゃんが初めてです。

    「さすがジグザグマ、早いな!」

     ジグザグマというポケモンは、独特のジグザグ歩行で、物陰に隠れている宝物を見つけるのが得意なのだと、コウジは説明しました。昨夏に生まれたばかりのジグちゃんでも、それは生まれ以ての能力、ジグザグマの本能です。
     ジグちゃんは歴代の競争相手の中で一番幼く、実は一番手強いポケモンなのです。

     こうなってくると、本気を絞りに絞らなければ、ナズナが今年の豪華賞品を手にするのは難しそうです。
     今年こそは……いえ、今年だけは絶対に勝たなければならないのです。強く望んでいた物が、春一番で手に入る大チャンスなのですから。

     そうだ、とナズナは心の中でひっそりと自分を奮い立たせます。
     待ち焦がれていた春と、イースター。
     こんな無気力な状態では、去年の自分に、何やってるのと怒られてしまうでしょう。

     それにきっとあの子だって、ナズナに頑張って欲しいと、思っているはず。


    「…………」

     ふとそうした考えが浮かんで、折角勇み始めていたナズナの気持ちが悄々と、元に戻ってしまいました。前進していた両足も、ぴたりと止まってしまいました。
     彼女はまた、あのことを思い出してしまったのです。


     再び心が沈むナズナの傍らを、春風とジグちゃんが通り過ぎます。

    「…………」

     何気なく玄関を振り返ると、コウジが家の中へ入って行くところでした。他に用事があるのでしょう。彼に何か言いたげな顔をしたナズナでしたが、呼び止めはしません。ガチャンと扉が閉まるのを見届けるだけでした。

     ついと視線をずらして、ナズナはベランダから見えるリビングと、その奥にあるキッチンに目を凝らします。そうするとナズナのお母さんと、彼女のお手伝いをしている二匹のポケモンの姿を見ることが出来ました。
     お母さんがトレーナー修行の旅をしていた頃からの仲間ポケモン、ハピナスとドーブル。イースター・エッグとして彩色した茹で卵は、二匹が『タマゴうみ』と『スケッチ』で用意してくれたものです。
     彼女たちはナズナとジグちゃんが卵狩りをしている間に、お祝いのご馳走を作ってくれています。そう考えればなんとなく、いい香りが漂って来る気がします。皆、にこにこ頬笑んでコンロに向かっていました。

     ナズナは続いて玄関近くの水道と、隣にあるベンチを見ます。

     お父さんのマラカッチが、ゼニガメじょうろにお水を注いでいました。自らも二つのお花を頭に咲かせている彼は、花壇の世話がお気に入りです。飛沫を立てて水を満たしていくじょうろを手に、頻りに楽しそうに体を揺らしシャカシャカ、シャンシャンと軽やかな音色を奏でています。
     水道の隣のベンチにはお母さんのミミロップが座り、優雅に毛繕いをしていました。他の皆と同じく目元と口元を和らげて、優しい風に長い耳をそよがせています。ちなみにこのミミロップは“彼女”ではありません。喧嘩上等な男の子です。

     一通り皆の様子を眺めて。
     ナズナは密かに溜息を漏らし、呟きました。


    「……みんな、楽しそう」


     温かな陽射しと、柔らかなそよ風。
     咲き誇る花々に、皆の明るい笑顔。

     ナズナは歓喜が、色々な場所から溢れ出るような、この華やかな季節が大好きです。
     小さな幸せを沢山運んで来てくれる、春。その訪れを祝うイースターも大好きです。

     だけど。


    「まだ悲しいのは私だけ、かな」


     歓喜の溢れる春なのに。
     笑顔の満ちる春なのに。


    「私、だけ……」


     ナズナだけが、深い悲しみの底に沈んでいました。
     一人だけ、心から、春の到来を歓べずにいました。






     ナズナの父親タチバナコウジは、優れたポケモンブリーダーです。
     今も現役ですが、若い頃――ナズナのお母さんと結婚する以前は、様々な地方で幾多の大会に出場しては高得点を叩き出し、上位入賞を逃すことの方が稀だと言われたエリートブリーダーでした。
     彼の手にかかればどんなポケモンでも、内面から放たれる生命の輝きで、その身を華々しく煌めかすことが出来ました。
     中でも、彼の一番のパートナーだった花飾りポケモン・ドレディアは、かつて、他の追随を許さないとブリーダー界で騒がれたほど、それはそれは美しい花のティアラを挿頭していました。

     紅色の花飾りと萌黄色のドレス。御伽話に登場するお姫様のようなドレディアが、その姿に相応しく心優しいドレディアが、ナズナは今よりもっと幼い頃から大好きで、とても慕っていました。
     一緒にお母さんのお手伝いをしたり、遠い街までふたりきりでお出かけしたり、言葉が解らないながらも沢山たくさん、楽しくおしゃべりしたり。
     ナズナにとってドレディアは、優しい優しいお姉さんでした。
     ドレディアもナズナを、可愛い可愛い妹だと想っていました。


     ナズナは、今年のエッグハントの賞品には『自分のポケモン』が欲しい、とリクエストしていました。
     ドレディアに限らず、他のポケモンたちとも家族同然に打ち解けている彼女ですが、やはり彼らは両親のポケモン。自分と特別仲良くなってくれる自分のポケモンが欲しいと、近頃はそればかり考えていました。

     彼女が自分のポケモンを欲しがる理由は、もう一つあります。

     少しでも世話を怠れば萎んだり枯れたりと、すぐに傷んでしまう、気難しいドレディアの花飾り。それをいとも容易く常に鮮やかに、瑞々しく保っていた父親の腕前。
     ナズナはお父さんと同じポケモンブリーダーになり、ゆくゆくは彼のドレディアに負けないくらい魅力的なポケモンを育てたいと思い、自分のポケモンを欲しているという訳なのです。
     ですから、この勝負には負けられません。このチャンスを逃す手なんてないのです。

     けれど……けれど。

     どうしても今のナズナには、去年のような元気が沸いて来ないのです。



     


     白いお皿の上には緑色のポロックが四つ、黄緑色のポフィンが二つ乗っていました。どちらも苦くて美味しい、ポケモン用のお菓子です。
     木製のローテーブルにそれを置いたコウジは次に、お花のお香を焚きました。春の温もりを思わせるふくよかな香りが、ふわりと周囲に広がります。

     お皿とお香の他に、薄汚れたモンスターボールと、金色のトロフィーが幾つか並ぶ机上を、陽射しが照らしています。
     コウジはそこへ更に一輪挿しを据えました。
     煌びやかに輝くトロフィー群より眩く目を引くそれは、見事に花開いた、紅色のチューリップ。

     モンスターボールへ、そしてチューリップへ向けて彼が何か言おうと口を開いた途端。
     庭から一層賑やかな声が聞こえて来たので、コウジはつられて、窓の外へ視線を移しました。






     あれからナズナはお庭をぶらぶらとしながら、ジグちゃんには発見出来なさそうな場所にあった卵を四つ、左腕にかけたバスケットへしまいました。

     ペリッパーポストの中から、ハート柄の卵。
     自転車の籠の中から、青空を描いた卵。
     窓辺のプランターの中から、トゲピー柄の卵。
     生垣の間から……何をイメージしたのかよく解らない、芸術的なタッチの卵。 

     他にはどこにあるだろうかと辺りを見渡したナズナはお庭の隅で、なんだか不思議な動きをしているジグちゃんを見つけて、歩み寄りました。


    「ぐぐぅーん!」

     ズルッどしゃっ。

    「みみ、みみみ」

    「ぐぐっ! ぐぐうぅーっ!!」

     ズルズルどしゃっ。
     ズルズルズルズルどしゃっっ。

    「みみみみみっ!!」

    「ジグちゃん…それは取るのむずかしいと思うよ?」

     ナズナが歩いて行った先には、つやつやした葉っぱをどっさりと茂らせた一本の木がありました。タチバナ家の一階の屋根より、ちょっとだけ背の高い木です。
     その根本で蹲るジクちゃん。幹をよじ上ろうと何度かチャレンジしたのですが、途中で勢いが続かなくなってずり落ちてしまい、身体中を満遍なく土で汚していました。
     何故そんなことをしているのかと言うと、一番地面に近い枝――とは言っても、ナズナが背伸びして目一杯腕を伸ばしてもぎりぎり届かない距離――の付け根に、ピンク色の卵を見つけたからなのです。ジグちゃんはこれを取るために奮闘しているのでした。
     愛らしい見た目に反して好戦的な性格のジグちゃんは、これしきでは諦めません。暫し休んで力を取り戻すと、再び幹を駆け上り……ズルどしゃっと音を立てて、またまた地面にお尻を打ちつけました。

    「みみみみみっ!!」

     一所懸命頑張っているジグちゃんを、ナズナも心の中で応援します。しかし、その後ろで水を差すかのように笑っているポケモンが一匹。
     ナズナはジグちゃんの代わりにそちらへ冷たい眼差しを寄越しましたが、それくらいなんのそので“ジグちゃん頑張れムード”をぶち壊しているポケモン……ミミロップは、笑い声を僅かすらも緩めません。彼がちょっぴり意地悪なのはタチバナ家の誰もが知る事実ですので、ナズナは、あとは呆れたように息を吐くだけでした。

     敵とは言えあまりに健気なジグちゃんを前に、ナズナは手を貸そうかと考えつきます。が、彼女が動き出すより早く、その場に新しく現われた者がありました。

    「ラッチ!」
    「ぐぐ?」

     シャカシャンシャンと体を鳴らしながら、マラカッチがジグちゃんの傍にやって来ました。
     彼が何やらちょいちょいと腕を振って指示をしますと、ジグちゃんが木から遠ざかって行きます。

    「カチッチ!」

     幹に対峙したマラカッチの合図で、ジグちゃんがジグザグ走行でそちらへ走り出します。マラカッチの背中から頭を踏み台にして、目的の枝へ一気に駆け上り……そしてついに、ピンク色の卵を口に咥えました。

    「みみっ…」

     いいのかソレ? とでも言いたげに二匹を見つめるミミロップに、ナズナは「あなたがあんな所にかくすからしょうがないでしょ」と、ジグちゃんのいる枝を指しながら言いました。
     そう、あそこに卵を隠したのは他でもないミミロップなのです。
     毎年最低でも三個は、ナズナたち子供が見つけられない、取れないような場所に卵を隠してしまうのが彼の癖。結局誰にも取れず後片づけが面倒なので、再三コウジが注意して来たのですが、ちっとも懲りていないのでした。


    「ぐぐぐっ!!」

     するすると幹を伝って地面に降りたジグちゃんは、すぐさま玄関先のバスケットに新しい卵を置きに行きました。
     目つきの悪いピンク色。タマタマの顔を描いた卵です。
     無理難題に果敢に挑んだジグちゃんは、しかし休む間も無く、次なる標的を求めて再度お庭へ駆け出します。物を探す競争というのが、彼女には楽しくて堪らないのでしょう。

     役目を終えたマラカッチは、ミミロップの耳を棘の手で掴んで家の中へと回収します。二つの意味で痛い痛い、と言う風にミミロップが大声で抗議していましたが、扉が閉まったことで音量は小さくなり、やがて聞こえなくなりました。

     タチバナ家のお庭に流れる音は、ジグちゃんの足音と、ゆるやかな春風に揺れる草花の音だけになりました。


    「…………」

     ナズナは先程のことを思い出します。

     一心に卵狩りに精を出すジグちゃん。
     彼女の真摯な姿に、ナズナは申し訳が無いような気持ちになりました。
     ジグちゃんはあんなに頑張って、自分との競争を純粋に楽しんでいる。それに比べて自分は他の事に気を取られて、真剣に勝負をしようとしていない。
     ナズナは自分が、冗談みたいに無気力な自分が、情けなくなって来たのでした。


     元気を出さなきゃいけないのは解っています。
     いつまでも悲しんでいたって、何も変わらないことだって解っています。

     でも、頭で解っていても、心がそれを受け付けないのです。


     どうして、あの子はここにいないのでしょう?






    「…………えっ」

     さわさわと草木を揺らして吹き抜ける風。その中に、自分の名を呼ぶ声が聞こえた気がして、ナズナはぱっと振り返りました。
     一本木とは正反対の場所。生垣の前に赤茶色の煉瓦で、半月を画くように造られた花壇がありました。赤、白、黄色、ピンクに紫と、色とりどりに咲き匂うチューリップで溢れています。

     とても綺麗です。
     とてもとても綺麗なのです。
     それはもう、悲しくなってしまうほどに。


    「…………」


     この花壇は昨秋、妻から注文を受けてコウジが造りました。
     チューリップの球根はナズナとドレディアがふたりきりで、快速列車に乗って三十分ほどの、ホドモエシティのマーケットで買って来ました。
     来春、そしてイースターの日曜日に満開になってくれるように願いながら、ふたりで植えたのでした。

     そして今日。
     チューリップたちは狙い澄ましたかのように一斉に花開き、花壇を輝かせています。
     まるで彼女が、ここにいるよと伝えているかのように。


     ナズナは吸い寄せられるようにチューリップの方へと足を運びます。
     本当は見たくない。思い出してしまうから見たくないけれど、それ以上に美しく可愛らしいので、一度視界に入れてしまうと、見入らずにはいられませんでした。
     ゆっくりゆっくり、近づきます。

     と、その時。

    「わっ」

     ナズナは驚いて、思わず足を止めました。花壇の中央、緑色の茎と茎との隙間に――何やら大きくて丸い物が置いてあるのを、見つけたのです。
     見間違いかと思い、手の甲で両目を擦ってみましたが、やはりそれは消えたりせず、そこにありました。
     おっかなびっくり、歩み寄るのを再開します。
     あっと言う間に到着した花壇。果たしてそこにあったのは……赤いリボンでラッピングされた、大きな大きな卵でした。
     ナズナは驚愕に目を瞬かせつつ、それに手を伸ばします。恐怖心よりも好奇心が勝りました。

     卵はナズナの頭と同じくらいの大きさで、全体的に薄い緑色、下部が僅かに白くなっていました。堅い殻の内側から、じんわりとした温もりと微かな鼓動が伝わって来ます。

     初めて見た、初めて触れたけれど、ナズナにはこれが一体なんの卵なのか、瞬時に理解出来たようでした。
     そして、これがどうしてここにあるのか、どうすべきかを両親に相談するため、家へ取って返そうと思いました。

     が。


    「タイムアーーップ!!」

     大きな卵を抱えて玄関を振り返ってみれば、いつの間にかコウジが家から出て来ていて、しかも出し抜けに大音声を張り上げたので、ナズナは卵を取り落としそうになりました。

    「そこまで!! ふたりとも戻って来ぉい!」
    「ぐぐーーっん!」

     家の影になっているお庭の隅っこから、ジグちゃんが帰還。ナズナも、とりあえず大きな卵を持ったまま父親の元へ向かいます。
     ジグちゃんはぱたぱた尻尾を振ってご満悦です。コウジはジグちゃんを宥めるように背中をわしゃわしゃ撫でながら、双方のバスケットに入っている卵を数えます。

    「ナズナは四つ。で、ジグは九つか。ということは……今年のエッグハント、勝者はジグだっ! おめでとう、ジグ!!」

     コウジが喜色満面で拍手して、娘もそれに従います。
     分かり切っていた結果なので、ナズナは悔しがったりしません。今はそれよりも、この大きな卵が気になって仕方がありませんでした。

    「ぐぐぐーっ!」

     ジグちゃんは自分が勝ったと理解すると、待ち切れないとばかりに父娘の足下をぐるぐる周ります。

    「賞品は家ん中だ!」

     玄関の扉が開かれると、ジグちゃんはコウジに足を拭ってもらうことも忘れて、家の中へ飛び込んで行きました。





    「お父さん。これ、野生のポケモンが落としたのかな?」

     ジグちゃんへの豪華賞品を渡して一息ついた父に、ナズナは大きな卵を差し出しました。コウジは娘のとぼけた台詞に、少し笑ってしまいます。

    「落とし物じゃない。それはドレディアから預かった、ドレディアとマラカッチと俺からの、おまえへのプレゼントだ」
    「え?」

     意味が解らず、頭上に疑問符を幾つも浮かべるナズナ。
     しょうがないなと呟き、コウジは娘を、一階の南側の部屋へ招きました。あの日から、ナズナが一度も入りたがらなかった空間です。でも今は父の発言の意味を知りたい気持ちの方が強く、中に入るのに今までのような躊躇いはありませんでした。





     お花のお香と陽光が満ちた部屋。
     彼女が、最期の時を迎えた場所。

     コウジの最初のポケモン、ナズナの掛け替えの無いお姉さんは、今年の始め、タチバナ家から居なくなりました。

     寿命だと、町のポケモンドクターは言いました。
     怪我や病気が原因なら治療は出来るけれど、寿命ならば、周りに出来るのは「ありがとう」と笑って見送ることだけなんだと、コウジは言いました。

     人もポケモンも、いつかは「さよなら」を言わなければならない時が来ることは、ナズナも知っていました。解っていました。

     けれどこんなにも早くその時が来るなんて、思っていなかったのです。





     部屋の窓際にあるローテーブルの前へ、父と娘は座りました。

    「おまえ、自分のポケモンが欲しかったんだろ? 本当はおまえとジグと、どっちかにしか賞品はやれないルールだけどな。今年は特別だ」
    「……?」

     まだピンと来ていない様子の娘に、父はこう問います。

    「ナズナ。イースター・エッグに込められた意味、覚えてるか?」

     イースターをお祝いすることに決めた年に、ナズナはコウジにそれを教わりました。
     けれども当時のナズナはたったの四歳。聞いたことは薄らと覚えていますが、内容までは覚えていません。
     素直にそのことを伝えると、父はもう一度教えてやると言って、ゆっくりと語り始めました。

     昔々ある国に、神の御子と崇められていた救世主がいました。
     彼は磔にされて亡くなった三日後に、奇跡の復活を果たしました。
     彼の信者たちは救世主の復活を祝うため、あるお祭りを始めました。
     それがイースター、すなわち『復活祭』なのです。
     イースター・エッグは、救世主が死という殻を破って蘇ったこと。そして、冬が終わり草木に再び生命が蘇る春の喜びを表わしているのだと、コウジは言います。


    「だけど神の御子と違って、人もポケモンも、一度死んでしまったら絶対に蘇らない」

     その言葉にナズナは悲しげな顔を伏せました。
     理解していても人から改めて言われると、やはりつらいものなのです。

    「でもな。命は蘇らなくても、残された者が生きてる限り、いつだっていくらだって、蘇るものがあるんだ」

     続いた台詞に今度は不思議な顔をして、ナズナは父を仰ぎます。

    「思い出とか、絆とかな」

     娘を安心させるように、コウジはにっと笑顔を作ってみせました。そして、ナズナの腕の中にある卵に視線をやります。

    「今度はおまえがそいつの姉ちゃんになってやれ。ドレディアの時と同じ強さで、そいつと仲良くなるんだ」

     そうすればドレディアとの絆も繋がり続けるだろうから。
     そのようにコウジは続けました。

    「…………」

     ナズナはドレディアの遺した卵を見つめます。
     大きくて温かな卵です。


     そこでふと、ナズナは閃きました。


     ナズナはここ数日、ずっと憂鬱でした。
     それはドレディアを亡くした悲しみから立ち直れずにいたからだけではなく、自分以外の皆がとても楽しそうに笑っていたから。
     数日前までは自分と同じように悲しみ、寂しさを露わにしていた皆が、今日はもうすっかり笑顔になっていることが、ナズナの悲哀を助長させていたのです。

     ドレディアを悼む心を無くし、彼女の命が失われたことに対する嘆きから解放される代わりに、愛し慕った彼女自身のことすらも忘れてしまうのではないかと……そんな風に考えていたのです。

     しかし、きっと、そうではなかった。

     皆が嬉しそうなのは悲しみを忘れたからではなく、ナズナが、卵から生まれるポケモンと出会って笑顔になる瞬間を、楽しみにしてくれているからではないかと、ナズナは思い至りました。


    「ドレディアを亡くす前にも、俺は何回もポケモンを亡くしてきた。事故、病気、寿命…死因は色々だ。その都度もうポケモンなんて育てない、と思った。別れはつらいもんな」

     コウジがしみじみと、部屋中に飾ってあるトロフィーや表彰状を見て言います。

    「でもやっぱりまた育てちゃうんだよ。別れのつらさより、一緒に過ごしてる時の楽しさの方が何百倍も強い所為で、さ」

     亡くなった者を想う限り、思い出はいつでも蘇る。
     亡くなった者と同じ強さで新しく生まれた者を想えば、絆は何度でも蘇る。

     コウジはそうして、沢山のポケモンを育て続けました。
     その意思を絶やさないためにと、イースターを祝うようになったのでした。


    「おまえもそういう風に考えてみろ。そうすりゃきっと、ドレディアも喜ぶぞ」

     最後にそう言い残し、コウジは頬笑みを掲げたまま部屋を出て行きました。



     一人残されたナズナは、じいっと卵を見つめます。


     この中に宿る命が、あの子との絆を蘇らせてくれる。

     心の中で唱えてみると、不思議と元気が沸き起こって来るように感じられました。


    「今度は私が……」

     静かな、決意の声。



     ――コトッ。

     応えるように卵が、微かに揺れました。






    「ナズナーそろそろご飯よー」

     暫くしてリビングから、お母さんの声が聞こえて来ました。
     弾かれたように壁掛け時計を見ると、もうお昼に近い時刻を指しています。

    「はあーい」

     返事したナズナの表情と声色は、もう悲しみも寂しさも帯びていませんでした。
     優しく強く、卵を抱え直して起き上がり、部屋を出ます。



    「ぐぐ〜ぅ」

     廊下に出るとジグちゃんが、エッグハントの賞品なのでしょう、赤いポロックやポフィンが沢山入った袋を咥えて待っていました。
     すっきりとした面持ちのナズナを見て、尻尾をぶんぶん振って喜びます。

    「行こう、ジグちゃん!」

     豆狸に微笑みかけ歩き始めるナズナ。その隣を、ジグちゃんは弾んだ足取りでついて行きます。



     リビングには既に皆が集まっていて、ご馳走を取り囲み、今日一番の満面の笑みでナズナたちを迎えてくれました。
     ナズナも負けじと、破顔一笑。
     もうすっかり、元気なナズナに復活です。





     今日はイースターの日曜日。
     そしてカナワタウンに、ポケモンブリーダーの卵が生まれた日です。








     春の陽射しが皓々と降り注ぐ、チューリップの花壇で。
     私はその日、歓喜に満ち溢れたタチバナ一家の団欒を、いつまでもいつまでも、眺めていました。





    -------------------------------------------------------------------

    初投稿です。メルボウヤと申します、以後お見知り置きを!

    マサポケへは一昨年の夏頃(BW発売前ですね)から度々訪問、閲覧させて頂いておりました。普段は専ら絵を描いているのですが、皆さんのお話を読んで、自分ももう少し文章が上達したらいいなぁと思い、まずはポケストに投稿するべくヤドンの歩みでぽつぽつ書いておりました(^v^)ゞ

    今回投下させて頂いた話は、コンテスト第二回のお題【タマゴ】をお借りして書きました。案自体は作品募集時に既に出来ていたにも関わらず、なんやかやで完成はその約一年後という; 今月に入ってもまだ絶賛グダグダ状態だったのですが…今年のイースターである本日(西方教会と東方教会で日にちが違う年もあるようですが)に、なんとか間に合わせることが出来ました。今年を逃したらもう書けない気が致しましたので…!
    ポケスコ第二回の締め切り延長前の投票開始予定日(だったかと…うろ覚えです;)が去年のイースターだったというのは、ここだけの秘密です(?

    一万字以内に収める予定でしたが微妙にオーバーしました。もう少し削れる所がありそうなものの、私のレベルでは今日中に間に合いそうにないので、とりあえずこのまま投稿させて頂きました。
    文字数以前におかしな点も大分あると思いますし、追々修正したいです^^;

    文章を書くのって物凄く難しい。でも絵や漫画では表現出来ないこともあって、上手い具合に組み立てられるととても楽しいです*´▽`*
    第一回・第三回のお題でも考えた話があるので、そちらもBW2発売前には投稿したいなと思っております。またお会い出来ましたら、その時もどうぞよろしくお願い致します^^

    ここまで読んで下さり、ありがとうございました!

    -------------------------------------------------------------------

    2012.4.8  投稿
         4.30 修正

    よく考えずに削ったら益々おかしくなっていたので、投下直前に削った部分も元に戻しました。もう文字数なんて気にしない。(どうなの


      [No.2370] Re: 【宣伝&募集】コンテストを開くので 投稿者:西条流月   投稿日:2012/04/08(Sun) 22:06:08     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     すいません、肝心の企画ページのURLを入れてませんでした、というわけでいろいろやったんですが直接飛ぶのは難しいみたいなんで
    下記の記事にあるURLから飛んでください

    http://rutarutamaro.blog.fc2.com/blog-entry-2.html


    お手数をおかけしてすいません


      [No.2367] レベル50 投稿者:くろまめ   投稿日:2012/04/08(Sun) 21:38:24     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「すみません。バトルタワーにエントリーしたいんですが……」
     
    「ああ、新規の方ですね。本日はまことにご利用いただきありがとうございます。ご不明な点がございましたら、お気軽にお尋ねください」

    「はい……実は僕のポケモン、50レベルを過ぎてしまっているんですが……」

     どうにも落ち着かないのか、まだ若いトレーナーは腰につけてあるモンスターボールを左手でいじっていた。

    「大丈夫ですよ。バトルタワーではポケモンのレベルを調整できるように整備されていますので」

     トレーナーの緊張を和らげるためなのか、営業スマイルなのかは分からないが、社員が作る笑顔を見て、彼は安心したように息をついた。

    「そうなんですか。レベルを調整できるだなんて、驚きです」

    「正確にはレベルを調整するわけではなく、能力値を調整するんですよ」

     彼のふとした疑問にも、社員は笑顔を崩すことなく答える。

    「それはどのように?」

    「例えば、タウリンやインドメタシンなど、ポケモンの能力値を上げる薬品がありますよね? そのベクトルを逆に応用し変化させ、体内のたんぱく質を分解し筋肉量や技のキレ具合を下げるんです」

    「それはすごいですね。どうしてそのような薬品が、一般店で販売されていないんでしょう?」

     初めから変わらぬ笑顔で、社員はにこやかに答えた。



    「ポケモンのホルモンや新陳代謝を乱す有害な薬品が多量に含まれているので、一般販売はされておりません」


     トレーナーはバトルタワーを後にした。


      [No.2366] Re: 神の祈り 【前編】 投稿者:くろまめ   投稿日:2012/04/08(Sun) 21:36:11     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    こちらこそ初めまして、くろまめです。

    ギャグはほとんど勢いで書いてるんですけどね(笑)
    案外考えない方が良いアイディアが浮かんだりしますよ。

    最近の悩みは、会話文と地の文の比率が悪いことです。
    いっそのこと地の文だけにしたいくらいです(笑)

    ご感想ありがとうございました。


      [No.2365] 【宣伝&募集】コンテストを開くので 投稿者:西条流月   投稿日:2012/04/08(Sun) 21:34:49     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5






    タイトルのまんまですが、自分主導でコンテストをやることになったのでその宣伝です


    とりあえず、このサイトに概要は置いてあるのですが主催者が編集をミスって見れなくなることがよくあるので、ここにも書いておきます


    お題「あい」(自由に変換可能)を使って、ポケモン二次創作小説コンテストをやります

    締め切りは6月いっぱい  下限文字数は100文字で上限文字数はなし

    それでお題として、キャッチコピーも使おうと思います

    キャッチコピーというのは本の帯なんかに

    「期待の新鋭、現る」とか
    「まさか、こんな遅くにやってくるやつがいるとはな」とか
    「あの勝負だけが心残りなのよ」
    と言ったような中身が気になるような販促用のフレーズです

    お題のキャッチコピーが似合うような小説を創作してください

    「あい」を主題とするなら、このキャッチコピーは副題といったところでしょうか


    それでこのキャッチコピーなんですが、複数あるうちの一つを採用してくださいというべきところなんでしょうが主催者の頭ではかっこいいフレーズが思い浮かばないので、公募しようかと思います


    数は七つ前後  二桁はいかないように数の調整をいたします

    【分からないことがあったら遠慮せずに聞いてください】


      [No.2364] ハナビラの舞 投稿者:穂風奏   投稿日:2012/04/08(Sun) 14:10:53     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    『講評
            タカヤ様
     技の完成度・ポケモンの手入れは、よくできています。ですが、技のオリジナリティーが欠けているために、今回の予選通過はなりませんでした。
     次回からはその点に気をつけてみてください。
                   ポケモンコンテスト運営委員会トキワ支部部長 ミヤ』

    「――だってさ、キレイハナ」
     トキワシティコンテスト会場前公園、そのベンチに腰掛けて今回の講評を読み上げてみる。
     横では共にステージに上がったキレイハナが、しょんぼり落ち込んでいた。
     だいぶ練習し自信をつけて参加したのに、予選すら突破できなかったとなれば当然かもしれない。俺も顔には出してないが内心けっこう凹んでいる。
    「ただ、技を磨くだけじゃダメなんだな」
     美しく魅せるためには、オリジナリティーが必要だとは考えたことがなかった。確かに言われてみれば、グランドチャンピオンを決める大会に出場するようなポケモンたちは、他のひととは一味違う――それでいて綺麗な技を多く使っていた気がする。
     けれど、自分のこととなるといい案が思いつかない。他の人がしないような技、か。
    「でもなー、どうすりゃいいんだろ」
     ごろん、と寝転がって空を見上げる。キレイハナに当たらないように腕を組んで枕にする。
     視界に入るのは、真青な空――と満開の桜の木。花びらが風に煽られてひらひらと空を舞っていた。
    「ん……?」
     一瞬何かが頭をよぎった。
    「花びら……桜……舞う…………。これはいけるか?」
     たった今思いついたことを、隣でいまだに落ち込んでいるキレイハナに提案してみる。
    「なあ、桜の花びらを使って「はなびらのまい」ってできるか?」
     俺の提案にキレイハナはしばらく黙って考え、そして――首をかしげた。
    「まあ、やってみなきゃわかんないか。とりあえず、ほら元気出せよ」
     キレイハナの背中をぽんと叩いて、ベンチから下りるように促す。
     しぶしぶといった感じでキレイハナは地面に下り立ち、「どうすればいいの?」と視線を向けてきた。
    「んー……」
     そういえばキレイハナの「はなびらのまい」は、自身から出すものと周りにあるものを操って技とする――と聞いたことがある。
     ならばとキレイハナを桜の花びらが多く落ちている木の下へ連れて行き、とりあえず試してみる。
    「よし、キレイハナ。はなびらのまい!」
     俺の指示に応えてキレイハナが踊りだす。
     小さい手足を器用に使って舞う。段々と桜の花びらが宙に浮かび始め、キレイハナを中心として回りだす。
    「おお……!」
     いつもの赤い花びらも悪くはないけれど、これは格別だ。
     キレイハナの緑、黄、赤の三色に花の桜色が映え、よりいっそう美しく見える。
     先ほどのコンテストで使ったものと同じ技なのに、全く別もののようだ。
    「春限定ってのもなかなかいいよな」
     桜吹雪の中で舞うキレイハナを見ながらそんなことを思った。

    「よくやったぞ。これなら本番でも使えそうだよな」
     技が終わると、すぐに駆け寄ってキレイハナを抱きかかえた。
     キレイハナもさっきまでとは打って変わって上機嫌だ。
     この調子なら次の大会はいいところまで行けるはず!
    「さてと、あとは桜をどうやって会場まで持ってくかだな。そのまま持ってくってのも芸がないし」
     残るはこの問題だ。俺が桜の花びらを大量に抱えてステージに上がるのは、なんだかつまらない。上手く持ち込む方法はないだろうか。
     と考えていると、キレイハナが広場の方を指した。
     そこでは母親と姉妹が芝生に座り込んで何かをしていた。

    「ねーねー、次は私の!」
    「はいはいユキは何を作ってほしいの?」
    「ミキと同じ髪飾り!」
    「それじゃ、今度自分でも作れるようによく見ててね」
    「はーい!」

     どうやら、落ちている桜を使ってアクセサリーを色々作っているようだった。
    「お前もあれが欲しいのか?」
     うーんと少し考えて、キレイハナはあの家族の方を指してから、次に自分の頭を指した。そして、さっき見せた「はなびらのまい」の動きをして見せる。
     えっと……要するに、
    「花びらを衣装の一部にして、技の時にそれをバラして使う――ってことか?」
     当たりというようにキレイハナが一言鳴くと、足元にあった花びらの山から一すくい持ってきた。
    「そうと決まったらさっそくろう――って言いたいところだが。髪飾りの作り方、俺わかんないんだよな。向こうで一緒に聞いてこようぜ」
     キレイハナを誘って俺は親子の方へ走り出した。

     その後、桜のはなびらのまいを使うキレイハナとタカヤは徐々に注目を浴びて行き、何度か優勝することもできた。
     ただ、キレイハナが技のたびに分解する髪飾りは、毎回タカヤが直しているとか。



    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    こちらでは初めて投稿しました、穂風です
    ポケモンのお話を書くのはポケコン以来なので――半年ぶりでした
    ポケモンだからできるようなほのぼのしたものを、のんびり書いていこうと思います
    【描いてもいいのよ】
    【好きにしていいのよ】


      [No.2363] Re: 神の祈り 【前編】 投稿者:akuro   投稿日:2012/04/08(Sun) 12:01:33     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     初めまして、akuroと言う者です。 


     くろまめさんギャグ上手いですねー! 私もギャグ物を書いてるんですが、到底及ばない……尊敬する域に達してます!

     後編も楽しみにしてますね!


      [No.2362] 路傍の石【1】 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/04/08(Sun) 01:48:54     213clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    この小説は、きとらさんより寄せられた「586さんの描く『ダイゴさん』像を見てみたい」というリクエストを受けての、586なりのレスポンスです。

    拙い点ばかりですが、少しでもお気に召していただければ幸いです。

    ----------------------------------------------------------------------------------------






    第一印象は、彼はなぜこんなものを集めているのか、という至極単純な疑問だった。

     「これは……石、ですよね?」
     「そう。石だよ。どこにでも落ちていそうな、"路傍の石"さ」

    ありきたりな石ころですよね、と私が二の句を継ごうとしたところに、先手を打って言われてしまった。過去に何度も同じことをされているとはいえ、この鋭さにはいつもヒヤリとする。

    硝子戸を引いて、石を一つ取り出す。ケースから出てみれば印象が変わるかと一瞬期待したが、胸元まで寄せられた石は紛れも無く、これといった特徴の無いただの石だった。

     「その、何か変わったところがあるとか……ですか?」
     「この石がかい? いや、変わったところなんて一つも無いよ」
     「一つも、ですか」
     「ああ。硬さも形も色も重さも、どれを取っても特徴の無い、普通の石だね」

    本人曰く「特徴の無い、普通の石」を、手袋を嵌めた手でもって繁々と眺め回す。その表情がまた童心に返った子供のように楽しげなものだから、首を傾げる回数ばかりが増えてしまう。私を軽くからかっているのか、と思ったが、彼の面持ちを見る限り、私のことは意識の埒外にあるようだった。

    ひとしきり石を眺めて、満足感ある表情のまま一端目を離す。すっ、と流れる水のように、彼の視線が私に向けられた。

     「そうだね。君が今何を考えているか、当ててあげようか?」
     「……」
     「どうして僕がこんな石を持っているんだい、そんなところじゃないかな?」
     「……そうですね。概ね、それで合ってます」

    こくり、こくり。二度に渡って深く頷く。右手に石を載せたまま、彼は話を続ける。

     「僕がこの石を拾った理由、僕がこの石を残した理由、僕がこの石を飾った理由。それは……」
     「それは……?」

    一歩前に出て、彼の言葉に耳を傾けた。

     「この石が、十枚の絵を生み出したからだよ」

    十枚の絵を生み出したから、彼はこの石を今も大切に保管している。投げ掛けられた言葉の順序を整理すると、以上のような形になる。確実に言えるのは、何のことだか訳が分からないということだけだ。

    私が困惑するのを見事に見透かして、彼はようやく本題に入った。

     「いつだったか、少し遠出をしたときに、絵を描いている女の子がいたんだ」
     「スケッチブックを抱えて、ですか?」
     「うーん、そうとも言えるし、そうとも言い切れないね」
     「それって、どういうことなんです?」
     「持っていたのが、スケッチブック……が映し出された、タブレットだったんだ」
     「ああ、今流行の……」
     「そうだね。タブレットにペンをカツカツ走らせて、外で絵を描いてた。あれは、今風でいいと思ったよ」

    彼が出会ったのは、スケッチブック・アプリをインストールしたタブレットを持って外で絵を描いていたという少女、だと言う。紙のスケッチブックを持ち歩く時代はもう終わったのかなどと、要らないことに思考を巡らす。

     「絵を描いていたのは分かりましたが、どうして石が関係するんです?」
     「気になるだろう? 僕も気になったんだ」
     「そ、それは、どういう意味で……?」
     「タブレットに描かれていたのが、今ここにある石だったからね」

    再び、私の前に石が差し出される。彼のエピソードを踏まえて、もう一度石を眺める。何かのきっかけがつかめれば、何か目に留まるものがあれば、そんな期待を込めて送る視線。

    そして二十秒ほど石を眼に映し出して、込めた期待は見事に空振りに終わったことを気付かされた。眼前の石はやはり何も変わらない、ただの石でしかなかった。

     「この石を、タブレットに描いていたんですか」
     「そう。一心不乱にね。すごく楽しそうだったよ」
     「楽しそうに、ですか……」
     「それはそれは、ね。繰り返しペンを走らせて、タブレットの中のキャンバスを作り変えていったんだ」

    彼が遭遇した少女は、この何の変哲も無い石を題材に、楽しそうに絵を描いていたという。俄かには信じられないというか、流れの読めない話だ。一体何が、タブレットの少女をそこまで惹きつけたのか。

     「気になったから、僕は思い切って声を掛けてみたんだ。『どうして石を描いているんだい』ってね」
     「声を掛けたんですか」

    他人にいきなり声を掛けるというのが、いかにも彼らしいと思った。以前にもトレーナーに声を掛けて、その後も何度か合っている内に親しい仲になったとか、そういう話を聞いている。

     「そう。一度気になったら、調べずにはいられない性質だしね」
     「そのことは、私もよく知ってます」
     「ラボを空ける一番の理由は、間違いなくそれだからね」

    石ころを掌の上でコロコロと転がしながら、彼は穏やかに答える。少女に声を掛けたときの情景を思い返しながら、その様を適切に形容できる言葉を探している。過去の出来事を話すときの彼の姿勢は、いつも同じだ。

     「彼女はあなたに、どう答えたんですか?」

    話すべき内容を取りまとめたのか、彼がおもむろに口を開いた。

     「『どうしてって、石を描きたいから』」
     「それが、答えだったんですか?」
     「ああ、はっきり言われたよ。それ以外に理由なんか無い、って顔でね」

    石をタブレットに描いていた少女が、何故石を題材に採ったのか。答えは、石を描きたいから。石を描きたいから、タブレットの上で繰り返しスタイラスペンを走らせている。

    これ以上無い、最大の理由。描きたいから描くという、もっとも容易く理解できる理由だった。

     「楽しそうだったよ。ペンをしきりに走らせて、どんどん石を描いていってさ」
     「そんなに熱中していたんですか」
     「僕も驚くくらいね。一向に止まらないんだよ。ディスプレイの中に、じわじわ石が浮かび上がっていくようだったね」

    彼はそんな少女に興味を持って、もっといろいろな事を知りたくなったんだ、と言った。

    最初の疑問である「何故石を描くのか」は分かった。けれどそれだけでは満足せず、「何故石を描きたくなったのか」、それも聞き出したくなったらしい。

     「石を描きたい理由、それを知りたくなって、僕は続けて質問したんだ」
     「どうして石を描きたくなったのか……そういう質問ですね」
     「うん。そうしたら、彼女は詳しいことを教えてくれたんだ」

    タブレットを操作する真似をして見せながら、彼は少女が教えてくれたという内容を復唱し始めた。

     「彼女はインターネットのイラストコミュニティに、よく絵を投稿しているらしいんだ」
     「ああ、あの……」
     「たぶん、君の考えているところだろうね。そこは絵を投稿できるだけじゃなくて、絵にコメントを付けたりもできるんだ。すごい時代になったね」
     「コミュニケーションの手段として絵がある、ということですね」
     「その通り。彼女はそこで、好きなように絵を描いていた……けれど」

    ふう、と小さく息を吐いて、彼が声のトーンをわずかばかり落とす。

     「世の中には狭量な人がいる。それは、君もよく感じているだろう?」
     「……そうですね。残念ですが、頷かざるを得ません」
     「ああ。彼女もそこで、面倒な人に絡まれたんだ。コメント欄で、一体何を言われたと思う?」

    彼は手にした石を掲げながら、ぽつりと一言呟いた。

     「『あなたのような"路傍の石"が、知った風に絵を描かないでください』」

    ぽつりと、一言呟いた。

     「コメントを寄せたのは、彼女もよく知らない人だった」
     「見ず知らずの人、ですか」
     「そう。調べてみたら、少し前に同じコンテストに絵を投稿していた人だって分かったらしい」

    そのコンテストで、少女は審査員特別賞を貰い、コメントした人は選外に終わったという。その構図が明らかになった時点で、彼女はコメントした人の意図が分かったようだった。

     「有り体に言えば、彼女に嫉妬したらしいんだ」
     「やはり、そうだったんですね」
     「ああ。自分の絵が評価されなくて、彼女の絵が特別な評価をもらったことに、嫉妬したみたいなんだ」

    評価されなかったのは、自らの努力不足に尽きる──すぐにそう帰結できる人間は、それほど多くはない。大抵はそれを認められなくて、外的要因を探してしまう。

    コメント者にとっての外的要因は、少女だった。つまりは、そういうことだ。

     「それで、あんなコメントを寄せた」
     「……」
     「あれっきり一度も顔を見せないから、邪推や推測が山ほど混じってるけどねって、彼女は付け加えたけどね」

    そう話す彼の表情は、なぜかまた、楽しげなものに戻っていた。

     「けど、ここからが面白くてね。彼女はそのコメントを見て、ふっとイマジネーションが浮かんだらしいんだ」
     「イマジネーション?」
     「そう。"路傍の石"という部分に、何か来るものを感じたって言ってたね」
     「よりにもよって、その部分に刺激を受けたんですか」
     「そうだね。いてもたってもいられなくなって、タブレットを持って外へ出た──そうして、僕に出会った」

    掌の石を握り締めて、彼が再び話し始める。

     「僕に出会うまでに、彼女は九枚も絵を描き上げたって言うんだ」
     「まさか、全部石をモチーフにしてですか?」
     「その通り。落ちている石を見つけて、何枚も何枚も、絵を描きつづけたんだって。石にばかり目が行って、"周りが見えなくなる"くらい、熱中してね」
     「……」
     「僕の前で十枚目を描き終えたあと、彼女は、自分が感じたことを僕に教えてくれたんだ」






     「同じ形の石は存在しない」
     「同じ色の石は存在しない」
     「同じ大きさの石は存在しない」
     「同じ重さの石は存在しない」
     「すべての石は違っていて、"ありきたり"な石なんて存在しない」
     「"路傍の石"は、すべてがあふれる個性の塊だ……ってね」






     「絵を描いているうちに、彼女は同じ石が一つとして存在しないことに気づいた」
     「同じ石は、存在しない……」
     「似ているように見えて、手に取ってみるとまったく違う。それが面白くて、どんどん絵にしていった」
     「そうして導き出されたのが、さっきの言葉なんですね」
     「ああ。晴れ晴れとした表情だったよ。新しいものを見た、って感じのね」

    口元に笑みを浮かべて、彼が私に目を向ける。

     「そういえば」
     「どうしました?」
     「君は、僕が石を集める理由を知ってたっけ?」

    不意に話を振られて、思わず答えに窮する。石を集めているということは知っていても、「なぜ」石を集めているのかということは、どうも聞いた記憶が無い。

    詰まったまま時間が流れるに任せていると、割と早々に彼が助け船を出した。

     「僕が石を集める理由は、石が好きだから。けれど、それだけじゃない」
     「それだけではない、と……」
     「そう。もう一つ、理由があるんだ」

    一呼吸置いて、彼が私に"理由"を教えてくれた。

     「石に関わる人、それが好きだからさ」
     「人との関係、ですか」
     「そう。石があって、人がいて、石を軸にして人が関わりあう。それが好きなんだ」

    石を掲げて、彼が言う。

     「人と石は、よく似ている」
     「まったく同じ石が存在しないように、まったく同じ人も存在しない」
     「在る場所で、丸くもなるし鋭利にもなる」
     「他者とのぶつかり合いで、いかようにも形を変えていく」
     「本当に、よく似ていると思うんだ」

    人と石の類似性。生まれ持った個性、環境に左右される姿、他者との接触で変貌していく形。なるほど、言われてみれば似ている気がしてきた。

    彼が何を言いたいのか。その輪郭が、朧げではあるが見えてくる。

     「僕は、珍しい石も好きだ。すごく好きだよ」
     「珍しい石"も"?」
     「そう。珍しい石"も"だよ。だから──」
     「珍しくない石も、また?」
     「その通り。外を歩けば道端に転がっているような"路傍の石"、それも大好きなんだ」

    さっきも言ったけれど、と前置きした上で。

     「この石は、道端に落ちていた石だ」
     「タブレットの少女が絵のモチーフに採った、ですよね?」
     「その通り。彼女が絵に描いた、"路傍の石"だ」

    掌に載せられた小さな石。

     「道端に落ちていたところで、誰も気づくことのないような、ありふれた石」
     「けれどその石は、一人の女の子に、人としての生き方にさえつながるような、大きな示唆を与えた」

    何度見たところで、石がただの石であることに変わりはない。何の変哲もない、ただの路傍の石。

    石がただの石に過ぎなかったからこそ、大きな影響をもたらすことができたのかも知れない。

     「人は皆、路傍の石だ」
     「気付かれなければ意識されることもなく、そして誰かに影響をもたらすこともない」
     「僕も君も、あの少女も同じ。すべては、路傍の石に過ぎない」

    すべての人は、道端に転がる石に過ぎない。

     「それは、実に素晴らしいことだと思うんだ」
     「二つと無い存在が邂逅して、融和して、衝突し合う。そうして、また新しい存在になる」
     「石も人も、ぶつかりあって変わっていく。それが、すごく面白いんだ」

    気にも留めなかったはずの存在が、進む道を変えるほどの存在になり得る。彼は、そこに面白さを見出していた。

     「この石を手元に置いておこうと思ったのは、それを思い返すためさ」
     「人は皆路傍の石、そして、路傍の石は代わりのいない存在。この石は、それを思い出させてくれる」
     「ありふれたものほど、かけがえの無い存在だということをね」

    ようやく、彼が何を言いたいのかがはっきりした。そして、あの石ころを手元に置いていた理由も。

     「その石には、思い出というか、印象的な光景が詰まっているんですね」
     「ああ。あの少女が見出した新しい世界、それがここに詰まっているんだ」
     「分かりました。単なる路傍の石に過ぎないそれを、あなたが大切に持っている理由を」

    タブレットの少女と彼は、ありふれた路傍の石から、実に多くのものを感じ取ったようだった。

    ひとしきり話して満足したのか、彼は石を戸棚に片付けると、椅子からすっと立ち上がった。

     「さて、僕はちょっと出かけてくるよ。明日までには帰るつもりだからね」
     「明日まで出掛けるつもりですか?」
     「何、いつものことじゃないか。面白い石を見つけたら、また土産話を聞かせてあげるよ」

    そう言い残して、彼は颯爽と部屋から立ち去って行った。

    彼はいつもそうだ。石が好きだというのに、去るときは風のように去って行ってしまう。

     「やれやれ……」

    ため息混じりに、時間を確認しようとポケナビに目を向ける。

    すると……

     「……すれ違い?」

    ポケナビの機能の一つである「すれちがい通信」。ポケモンのキャラクター商品に関わるすべての権利を持つ大手ゲーム会社が発売した携帯ゲーム機に搭載され、その後後を追うようにポケナビにも実装された。所有者同士ですれ違うだけで、簡単な自己紹介を送り合うことができる通信機能だ。

    通信に成功すると、右上部に取り付けられた小さなランプが緑色に光る。この部屋に来るまでは消灯していたから、新しいメッセージが届いたようだ。

     「これは……」

    して、そのメッセージの送り主と内容は──






     「けっきょく ぼくが いちばん つよくて すごいんだよね」






    送り主の名前は……今更、言うまでもない。

    すべては路傍の石。悟ったように口にしながらも、心の奥底では、燃え上がる炎のような闘志を滾らせている。

     「星の数ほどある石の中でも、一番でなきゃ気が済まない、か」

    石集めに熱中する子供のようで、その実石から人世訓を見出す大人で、しかし底の底は無垢で幼い子供。

    それがたぶん、"ツワブキダイゴ"という人物の姿なのだろう。

     「……本当に、風変わりな人だ」

    苦笑いとともに、そんな言葉が思わず漏れた。






    ----------------------------------------------------------------------------------------

    ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。

    ※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。

    Thanks for reading.

    Written by 586


      [No.2361] 神の祈り 【前編】 投稿者:くろまめ   投稿日:2012/04/07(Sat) 20:55:01     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     タンバシティのとある海辺で、セツカは空を仰いでいた。傍らには一匹のアブソル。

    「この天気なら、無事うずまき島に行けそうだね〜」
    「まさか晴れるとは……やっぱり、やめといた方がいいんじゃないか?」
    「何言ってんの。ご飯は熱いうちに頂かないと!」
    「命がけの旅が、お前にとっては飯と同じなのか?」
    「まさに、朝飯前ってことだね」

     一人はしゃぐ主人を尻目に、シルクは項垂れた。確かにこの天気ならば、うずまき島を取り巻く渦も小さくなっているだろう。絶好の機会と言えなくもない。一年のほとんどが曇天に見舞われるうずまき島の周りには、その名の通り、タンバの漁船をも飲み込んでしまう大きく激しい渦が点々と混在し、うまい具合に島の入り口を閉じてしまっているのだ。
     
     本来ならば島に入ることすら出来ないはずだったのだが、運が良いのか悪いのか、その一行を晴天が向かえていた。暖かな光を止めどなく届ける太陽が、シルクには冷ややかに映る。シルクの三日月を描く漆黒の鎌が、黒く光っている。
     ──今回の目的はうずまき島に行き、海の神にあることを伝えることだった。


     不満をおしみなく口にするシルクと地図を広げるセツカを乗せて、一匹のラプラスが海を泳いでいた。
    「へぇ。ポジティブって泳げたんだな」
     まるで初めて知ったかのように、わざとらしく感心した様子を見せるシルク。
    「泳ぐため以外に、このヒレを何に使うんだい?」
    「フカヒレとか?」
    「それはサメだろ」
    「馬鹿か。フカマルだろ」 
    「そうだった」
    「メタ発言はほどほどにな」
    「その発言がメタなんだよ」
     
     
    「てか、ポジティブって名前、由来は何なんだよ?」
     不意にセツカに問いかけたシルク。うん? と、地図から顔をあげてセツカは聞き直す。
    「だから、ポジティブの名前の由来だって」
    「え〜分かんないの? 少しは自分で考えないと、脳細胞増えないよ?」
    「やる気の起きない理由だな」
    「ふふふ。降参かね? それでは正解はっぴょー」
     仰々しく両手を広げたかと思うと、強くパァンと合掌するように打ちならした。
    「まず、ラプラスをラとプラスの二つに分解します」
    「ふむ?」
    「ここで着目するべきは『プラス』です。お二人方もお気づきになりましたか? そう! なんと私はこの『プラス』をプラス思考というキーワードへと発展させ、なおかつ! それを応用し、ポジティブへと変換させたのです! イッツミラクル!」
     あきれ果てて首を振る気も起きず、シルクもポジティブも、ため息をついた。
    「下らねえ……。『ラ』も仲間に入れてやれよ」 
     ん〜、と頭を傾げるセツカ。
    「ポジティ・ラブ?」
    「なんでポジティが好きってことを主張すんだよ。意味分かんねえよ」
    「名前は五文字までだったっけ」
    「そんなことは言ってない」
    「空が青い!」
    「論点をずらすな」

     突っ込むのにも疲れたと、ポジティブの甲羅の棘のようなものにシルクは寄りかかる。あたしの頭はボケてないと、セツカ。
     
    「そういえば」
    「なんだ? また下らない話か?」
    「上がる話だよ。空の話」
    「へえ。そういえばセツカは風景を見るのが好きなんだっけ?」
    「うん。どこで知ったかは忘れたけどね。こういう空の色のことを、天藍っていうんだって」

     青く透き通った、けれどどこか黒ずんだ色もしているような空を、シルクとポジティブが見上げる。
     

    「確かに、それっぽい感じはするな」
    「漢字的にもね」
    「それは誤字なのか!? どうなんだ!?」

     
     シルクの声が、海に響きわたった。


      [No.2360] Re: 黒竜 投稿者:紀成   投稿日:2012/04/07(Sat) 12:44:01     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    題名に騙された。題名詐欺とでも名付けようか。
    シリアスな感じかと思ってたらこれだよ!

    そうかーイケメンにしか興味ないのかー 中身もきちんと見た方がいいぞー
    イケメンで性格いいなんて男はリアルにはそうそういないからな!多分!

    レックウザさんいいよね 私も欲しい ミミズくらいの大きさでいいから欲しい


      [No.2359] 黒竜 投稿者:akuro   投稿日:2012/04/06(Fri) 20:55:43     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     「おはようこざいます! サクラさんですね? お届け物が届いております! こちらをどうぞ!」

     朝早く、ライモンシティのポケモンセンターにやってきた私を出迎えたのは、1人の配達員だった。 配達員は私に1つのボールを手渡すと、どこかへ行ってしまった。

     「なにかしら、これ……」

     ボールの中を見ると、ただならぬ雰囲気を放つ黒い竜がいた。 図鑑で見てみると、「レックウザ」というポケモンらしい。

     「なにはともあれ、図鑑が埋まったからいいけど……こんな珍しいポケモン、いったい誰が……」

     私は全国図鑑を完成させるという、大きな目標を持っている。 今日もポケモンを登録しようと、人が多いライモンシティへ来たのだ。

     私はレックウザの親を知ろうと、図鑑を操作してポケモン情報のページを開いた。
     と、その時ポケモンセンターのドアが開いたかと思うと、聞き慣れた声が飛び込んできた。

     「サクラ! 聞いて聞いて聞いて聞いてー!」
     「モモカ!?」

     飛び込んで来たのは私の双子の妹、モモカ。 双子なのに似てないってよく言われる。

     「さっきそこで、超絶スーパースペシャルテライケメンに道を聞かれちゃったー!」

     ……こんなミーハーな妹に似たくないんだけどなあ……

     私はモモカを無視して、ポケモン情報のページに目を通した。 その間もモモカはべらべら喋っている。

     「マジでイケメンだったなあ……青い長髪を黒いゴムでまとめてて、超イケメンボイスで「素敵なお嬢さん、迷いの森への道を教えてください」なんて! 別れ際に手の甲にキスまで……キャーキャーキャーキャー!!」

     暴走しまくってるな……フレンドリィショップのお兄さんやジョーイさんが睨んでるよ……気付かないのがモモカなんだけどさ。

     「モモカ……少ないとはいえ人いるんだから、もうちょっと落ち着いてよ」
     「これが落ち着いていられますかお姉さま!」
     「誰がお姉さまよ……ところでモモカ、「ノブナガ」って人、知ってる?」

     私はレックウザの情報が記してあるページをモモカに見せた。

     「ノブナガ!? ランセ地方の!?」
     「ランセ地方?」
     「こことは文化が違うくらい遠い地方で、イケメンがいっぱいいるんだって!」
     「モモカ……モモカの頭にはイケメンのことしか無いの?」
     「無い!!」

     ……断言されても、困るんだけど。


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    オチなし。 新キャラが暴走しまくった。

    [好きにしていいのよ]


      [No.2358] Re: 【他力本願】うちのボス【送信してみた】 投稿者:小春   投稿日:2012/04/05(Thu) 19:50:23     22clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    電波はけっして妙なものではなく、妙な受信の仕方をしてしまったのです。


    >  想像以上の奇人変人っぷりでした(注意;褒め言葉です)。
    変人奇人は褒め言葉(キリッ
    マントのひととか、石のひととか、考古学のひととか以下略
    タテカン立てたのは出奔に困ったリーグ関係者、「この顔にピンと来たらリーグへご連絡ください」みたいな文言が添えられているに違いありません。リーグ挑戦者ならつかまえてくれるだろうと(笑

    お読みいただき、ありがとうございました。


      [No.2357] 【書いてみた】ユエとミドリと三ツ星と 投稿者:紀成   投稿日:2012/04/04(Wed) 20:33:10     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ※ポケモンを食べる描写みたいなのがあります









    GEK1994のカウンター席で、ミドリは雑誌を読んでいた。いつもなら文庫本片手にゼクロムを飲んでいる姿が目立つのだが、今日は違った。派手ではないが、文庫本とは違う表紙とサイズが目立つ。
    「ミドリちゃん、それは?」
    気になったユエが聞いてみた。バクフーンが足元でのっそりと起き上がったが、睡魔に耐え切れず再び床に体を預けて眠ってしまった。鼾の音がする。
    「昨日発売されたグルメ雑誌です。全ての地方の有名レストランのおススメメニューを取材してるんです。写真もありますよ」
    そう言ってミドリが見せてくれた一面は、今月のトップを飾る店が載っていた。ホウエン地方、ミナモシティにあるレストラン。新鮮な海鮮を使ったソテーやグリルが有名だという。
    中でも一際目を引いたのが、店の場所だった。その店はミナモでも、その近くの浅瀬にある巨大な岩の中に造られているのだという。行く際には長靴が必要らしく移動は多少不便だが、そのマイナス面が気にならなくなるくらい、そこの食事は美味しいのだという。
    「へー。なかなか素敵ね」
    「お値段もリーズナブルですし」
    「ディナーで十万ちょっと…… まあ、ね」
    流石に庶民のユエには頭を捻る値段だったが、ミドリは楽しそうにメニューの写真を見ていた。そこでふと思いついたように呟く。
    「伝説のポケモンって、食べられるんでしょうか」
    一瞬の沈黙の後、ユエが『んー……』と考える。
    「そうね。伝説の鳥ポケモン、ファイアーやホウオウの生き血を飲むと不老不死になるっていう話なら各地方に伝わってるけど、流石に肉はねえ」
    「チュリネの頭の葉は薬向きですね。苦すぎてサラダには使えませんよ」
    「グルメ向きかしら」
    「カントーでは、カメックスは固すぎてよく煮込まないと食べられないそうですよ。ゼニガメなら柔らかくてそのまま食い千切っていけるそうですが。あと、カメールの尻尾は大きいほどコラーゲンが詰まってるそうです」
    足元のバクフーンがいつの間にか起きていた。ガタガタと震えている。大丈夫よ、とユエは頭を撫でた。
    「戦争中はアーボとか毒抜きして食べたそうです。アーボックになると毒が強すぎて、抜く前に飢え死にするからアーボじゃないといけなかったそうで」
    「ドンファンも一応食べられるんだって。足とかゴムみたいな食感らしいけど」



    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    オチなし。この前夕食の時に弟と話したことがそのままネタになってる。
    ポカブとかまんま焼き豚だよね。


      [No.2356] オレとアイツと焼き鳥と 投稿者:akuro   投稿日:2012/04/04(Wed) 20:09:16     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「あかね、かえんほうしゃ!」

     オレの横を、あかねが放った真っ赤な炎が通り過ぎて行く。 その炎はバトルをしていた野生のオニドリルに見事にヒットし、焼き鳥が出来上がった。 ……って、オイ。

     「あかね、もうちょい手加減できねーのか?」

     オレは一仕事終えたあかねに問いかけた。

     「バトルに手を抜くなんて、有り得ない」

     ……同情するぜ、焼き鳥、もといオニドリル。

     「そうだよらいち! バトルはいつでも真剣にやらなくちゃ!」

     あかねの後ろにいたモモコがうんうんと頷きながら言った。 まあ、その気持ちは分かるが……。


     オレたちは今、まだまだ弱いワタッコのあおばにバトルを見せて、経験値を稼がせている所だ。 当のあおばは空中に浮かび、炎が当たらないギリギリの所でバトルを見物している。 ……器用だな、アイツ。

     そんなことをしていると、焼き鳥の匂いにつられたのか、草むらからゴマゾウが出てきた。 ああ、ご愁傷様です……。

     「あ、ゴマゾウ発見! あかね!」
     「了解」

     モモコがあかねに指示を出し、あかねは炎を吐き出す為に息を吸い込んだ。

     ゴマゾウは臨戦体制をとっていたが、怖いのかその瞳は潤んでいる。

     「……」
     「モモコ? 準備オッケーなんだけど」

     あかねのそんな声が聞こえてモモコの方を見ると……固まってんのか? あれ。


     「……」
     「オーイ、モモコー? どうしたんだー?」
     「……か、」
     「か?」





     「か、可愛いいいーー!!」

     いきなり叫んだかと思ったら、モモコはゴマゾウに飛びついてぎゅうーっと抱きしめた。 その速さといったら、カイリューもびっくりだ。

     「……モモコ? どうしたのよ」
     「可愛すぎるー! この子とは戦えないー!」
     「……」

     ……オイモモコ、お前さっき「バトルは真剣に」とか言ってなかったか?

     「あ、あそこにヤドン発見! あかね、最大パワーのかえんほうしゃー!」
     「了解」


     ……ヤドンはいいのかよ!



    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

     ほぼ実話。 ゴマゾウ可愛いよね

    [なにしてもいいのよ]


      [No.2355] 【他力本願】うちのボス【送信してみた】 投稿者:ラクダ   投稿日:2012/04/04(Wed) 00:21:43     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     みんな、ホントに大変そうねえ。でもあたしだってかなり苦労したのよ、あの“ボス”には。
     史上最年少チャンピオンだか何だか知らないけど、あたしからすればただの小生意気なガキんちょだったわ。やたらデカい態度とか、年上にも敬語を使わないとことか、勝手気ままに振る舞うとことか。あたし相手ならまだしも、誰に対してもそんな調子。注意したって聞きやしない、こっちも敬語使ってやるのなんて三日で終了よ。
     どんなに実力があっても、有名なポケモン博士の孫だって言っても、これは無いんじゃないのって思ったわ。……まあ、後で人から聞いた話じゃ、本人もその事でいろいろ葛藤があったみたいだけどね。悩んだ挙句にあんな態度取ってたんなら……ホント、まだ子供よね。
     
     まあとにかく、あたし達は相当やりあったわ。口喧嘩なんて日常茶飯事、一度なんて殴り合い寸前までいった事もあったし。それに関してはあたしもガキっぽかったって事は認める。年上として手を上げちゃいけないわよね、流石に。あたしのポケモンが止めてくれなかったら、今頃ここで悠長に話してられなかったでしょうね。
     え? ううん、それが原因で担当辞めたんじゃないの。相手の都合でね。
     ライバルの男の子に負けちゃったのよ。かつてないくらいの本気で挑んで、その結果の負け。あの時は流石に落ち込んでたわ、いつもの減らず口も叩けないくらい。ちょっとだけ、ちょっぴりだけ心配したわ。
     でもまあ、結局立ち直って今じゃトキワでジムリーダーやってるんだけどね。噂じゃ、しょっちゅうジムを抜け出して色んなところをほっつき歩いてるんだって。カントーで一番捕まりにくいリーダーとして有名らしいわ。全く、どこぞの伝説ポケモンじゃあるまいし何やってんだか。
     この間たまたまジム戦の中継見たんだけど、相変わらずの生意気っぷりだった。ま、あの頃よりはちょっと大人になってるみたいだけど。なんにせよ、元気でやってるみたいでほっとしたわ……ちょっぴりだけね!

     そうそう「リーグ付近に変質者が出没します、ご注意ください」って看板立ってるの、知らなかったわ。あたしが担当退いてからできたんじゃない?
     


     
     みなさん、苦労されてるんですね……。僕はまだまだ、修業が足りないな。
     いえ、うちのボスに関しては、実はそれほど語る事は無いんです。誤解しないでくださいね、どうでもいいんじゃなくて愚痴る内容が無いって意味ですからね!
     情が厚くて朗らかで、豪快な方らしいんですよ、うちのボス。この間協会がトレーナーさん相手にアンケート取ったら、バトルの強さと人柄の良さでは部門ぶっちぎり優勝。老若男女関係なくですからね、本当にイッシュ中で支持されてる方なんだなあって、感心しちゃいました。
     噂では結構なお年らしいんですが、年齢を感じさせないくらい若々しいんだとか。この間お会いしたトレーナーさんが、『かなりの高所から飛び降りるのを見たけど、その後も全然普通に会話を続けてたんだ。きっと足腰の強い人なんだね』って言ってましたから。ちなみにその方、プラズマ団相手にボスと共闘なさってるんです。羨ましいなあ。
     ……どうして「らしい」とか「噂では」なんて言い方をするのかって? 実はですね……。
     
     お会いしたことないんです、ボスに。
     えっ、そんなに驚かなくても。だってあの方、随分昔にリーグ協会から出て行ったきり、未だに戻らず放浪なさってるんですから。待ちきれなくなった前任者も、とうとう会わずに辞めてしまいましたしね。たまーに協会に連絡があるから、お元気らしいことは分かるんですけど……挑戦者の為にもそろそろ戻ってきていただきたいですねえ。といってもこればっかりは……。お弟子さんや四天王の皆さんも、あの方だから仕方ないって苦笑いしてました。何か理由があるらしいんですが、僕は聞かされていませんので。
     まあ、いつか戻っていらっしゃると信じて待つのみです。付くべき人のいない付き人というのも肩身が狭いですが、これも精神修行だと思って頑張ります!
     恐ろしく前向きだ、って? はあ、そうでしょうか。

     そうそう「リーグ付近でこの人を捜しています、ご連絡ください」って看板が立っているの、知ってましたか? その顔にピンときたなら、ぜひ協会まで電話してくださいね!




    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

    > ☆★☆★☆★
    >  他力本願スレから受信した電波が妙な電波だったらしいです。

     他力本願スレから怪電波を飛ばした張本人です。書いてくださってありがとうございます!
     
     もう、読んでてにやにやが止まりませんでした。想像以上の奇人変人っぷりでした(注意;褒め言葉です)。これは付き人のみなさん大変だわww
     ただ、ぶつくさ言ってる割に誰も辞めたいとは言ってないのが、自分のボスへの愛着(愛情?)なんだろうなあと思うとほっこりしました。みなさん実にいい人。
     「リーグ付近に変質者が出没します、ご注意ください」の看板を立てたのがリーグ側なら、物凄くシュールな話ですね。全員身内の仕業(?)じゃないか、と思わず突っ込んでしまいましたw

     奇行と愛情に魅せられて、つい調子に乗って前カントーチャンピオンとイッシュチャンピオンを捏造してしまいました。最初期の赤版、一周しかやっていない白版からのうろ覚えにつき、妙なところがあったらごめんなさい。
     改めまして、書いてくださり誠にありがとうございました!

    【書いてみたに書いてみたのよ】
    【何をしてもいいのよ】

     


      [No.2354] どひゃー 投稿者:ラクダ   投稿日:2012/04/03(Tue) 19:58:39     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > ああ! そのネタ使いたかったのにwww
    > 先超されたかwwww

    まさかのネタ被りwww ごめんなさい、でも似たようなこと考える方がいてちょっと嬉しいですwww
    先越し云々はお気になさらず、ぜひとも書いてください。お願いいたします orz(土下座)

    > やっぱこの一節は魅力ありますよねー。

    ありますねー。むしろこのインパクトが強すぎて、桜と聞けばこれしか思い浮かびませんでした。
    正当な美も妖艶な美も兼ね備える桜、好きです。
    読了いただき、ありがとうございました!


      [No.2353] DOLL 投稿者:紀成   投稿日:2012/04/02(Mon) 11:15:47     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ※マサポケは良い子も楽しめる小説サイトです。これはそれを壊す可能性があります。
    苦手な方はバックプリーズ



















    「マダム!」
    黄昏時の静けさをぶち壊すような音が響いた。バン、とドアを勢いよく開けて一人の女が入ってくる。白い仮面に、長く美しい髪。神が特別に造ったような美形。
    巷を騒がせている、怪人ファントム……レディ。彼女の後ろからカゲボウズが五匹続く。いつもより引き連れている数も種類も少ない。デスカーン達は外で待たせている。
    黄昏堂の中は入り口から向かって両サイドに商品のサンプルが並べられている。表に出してはならないもの、愚か者が使うと命に関わる物、使い方を誤れば死ぬよりひどい目に遭う物、様々だ。下手に手を出せば、サンプルに化けてズラリと並んだゾロア達のエサとなるだろう。
    天井からはどこぞの映画に出てきそうな豪華なシャンデリアがぶら下がり、その下には小さな大理石のテーブル。その後ろに美しく彩色、細工を施されたビロウドのソファがある。黄昏堂の女主人――通称マダム・トワイライトはここでお客を出迎えるのだが……。
    「……いないな」
    マダムはいなかった。主を失った椅子が寂しい雰囲気を植えつける。レディは肩をすくめると、店内を見渡した。右の方でカゲボウズ達がゾロアと化かし合いをしている。
    舌を出すカゲボウズと、彼らの進化系であるジュペッタに化けるゾロア。外野から見れば写真を一枚撮りたくなる光景だが、生憎今はそんな気分にはなれなかった。
    ・マダム不在の黄昏堂
    ・執事(兼雑用係)であるゾロアークも不在
    この二つを頭の中に入れ、どういう状況なのかを腕を組んで部屋を歩き回りながら考える。推理小説やドラマでよく見る探偵の推理シーンだ。分かっていることを一つ一つ並べていく。
    『黄昏堂がきちんと表に出る条件が揃っていること』一般人は巨大な悩みを抱えていない限り見つけることはできないが、常連客は鍵を持たされており、それを持っていれば何処にいても店を見つけることができるのだ。ただし季節によって開いている時間は異なる。冬は早い時間帯に開き、早く閉まってしまう。反対に夏は遅い時間帯に開き、しばらく閉まることはない。
    「ゾロア、お前達の横暴極まりないご主人様とその尻に敷かれている執事は何処にいるんだ?マダムが黄昏堂の外に出ていれば、私は店に入るどころか見つけることすらできない。この中にはいるんだろ」
    そこでふと、レディは今までのことを思い出した。ここにある商品は全てゾロアが化けたサンプル。本物は盗まれない……素人が扱うことのないように奥の部屋に厳重に保管されているという。彼女が出すパズルを解き、彼女のお眼鏡に適った者に対してだけ、本物を自らの手で持って来る。
    (……奥の部屋)
    何度も彼女に会っているレディでさえ、奥の部屋への入り口は知らない。いつも黄昏堂に入れば、その椅子で煙管をふかしている彼女が出迎えるからだ。そもそも自ら何かを欲したこともない。いつも欲求してくるのは向こうからだ。それを持って来て見合った商品と交換する――それがレディとマダムの黄昏堂での取引の仕組みだった。
    まあそのもらった(押し付けられた)商品で幾度か危機を回避しているのも事実であり。
    レディは椅子の後ろの壁の前に立った。何かあるとしたらここだと考えたのだ。右手でノックしようとして――
    ふわふわした物体が足に擦り寄ってきたのを感じた。ゾロアだ。何、と聞く前に彼がボムッという音と共に何かに化けた。鏡だ。何の装飾もない、この店に合わない鏡。
    「何で鏡に……」
    言いかけた彼女の目が、中心に注がれた。金色の文字が浮かび上がっている。

    『セント・アイヴスに向かう途中、家族に出会った
    一人の旦那の後ろに 妻が五人 その妻一人ひとりの後ろに 子供が十人
    子供達の持つ紐に 犬が三匹 犬達の背中に 蚤五匹
    さてさて、セント・アイヴスに行くのは何人?』

    読み終えた途端、再びボムッという音と共に鏡がゾロアに戻った。呆気に取られるレディを見てケケケケと笑う。馬鹿にされているような気がしたが、もう何も突っ込まない。疲れるからだ。
    「この壁に答えを書けばいいのか」
    目の前にそびえ立つ、巨大な壁。どれだけの厚みがあるのか。この先に何があるのか。
    ――そんなことはどうでも良かった。
    「さて」
    レディが腰に差していた業物・火影を手に取った。鞘から刀を取り出し、壁に向ける。
    「刃こぼれしないかね」
    一呼吸置いて――

    数秒後、壁には縦に一本の裂け目がつけられていた。刀を戻し、呟く。
    「遊びにもならない。引っ掛け問題程度のレベルだよ。答えは一人。だって行く途中に会ったんだから。
    ……次はもっとレベルの高いのを用意しておいてよ、マダム」
    壁が消えた。幻術だったらしい。
    「さっきゾロアが私を止めなかったら、私はどうなっていたんだろうね」
    カゲボウズ達が集まってきた。術が解けた壁に現れたのは、小さなドア。飴色の、木で造られたアンティークを思わせる物だ。
    「この先にマダムがいるの?」
    ゾロアは何も言わない。黙って器用に首を足で掻いている。まるでチョロネコのようだ、とレディは思わず頬が緩むのを感じた。
    「仕方無い。わざわざ呼びつけておいて客を待たせている店主を呼びに行くか」
    カゲボウズがケタケタと笑った。

    ドアの先は、暗い道が続いていた。何処が道で、何処が壁なのか。その境目すら分からない。だが出口と思われる光が、遥か先に小さくあった。
    得体の知れない闇が、髪に身体に纏わり付くあのおしゃべりなカゲボウズ達が何も言わずに後ろにくっついている。
    (マダムはこんな場所を通って商品を持って来てるのか……)
    今更だが、レディはマダムのことを詳しく知っているわけではない。しばらく前にモルテに紹介されたのだ。彼自身死神とあって、時々危険な目に遭うらしい。それを回避するためにマダムの作る薬が必要不可欠なんだそうだ。
    モルテがレディの話をした時、マダムはパズル合戦ができる相手を探していたらしい。それくらいなら、とレディはモルテに連れられて黄昏堂に来ることになった。
    そして分かったことは、彼女がズル賢く、マダムという人間の長所と短所を全て持っているということ、そして悪趣味だということだ。

    光が大きくなってきた。あと十メートル。九、八、七、六、五、四、三、二、一……
    柔らかい感触が足から伝わった。光が頬を照らす。店に入った時と同じ、黄昏時の光だった。手を伸ばし、壁に触れる。
    「ここは……」
    薄いベージュをメインカラーにした壁だった。一定の間隔で小花模様が刺繍されている。左壁には窓があった。光はそこから入ってきているらしい。本で見たような、中世ヨーロッパの貴族の館のようだった。
    あそこのドアがこんな場所に繋がっているのも驚いたが、マダムのこんな場所を造ることが出来る力にも驚く。だが力と言っても様々だ。金か、それとも……
    「カゲボウズ?」
    五匹のうちの一匹が、とろりと甘い表情になった。そのままフラフラと廊下を移動していく。続いてレディも気付いた。何か甘ったるい匂いがする。遠い昔嗅いだことのある香のような……
    吐き気を覚え、口を押える。それぞれ五味を好むカゲボウズの中で反応したのはその一匹だけだった。甘味を好む者。以前虫歯になったことがある。
    何かに導かれているような彼を追い、一人と四匹は走り出した。途中で角を何度も曲がる。長い廊下と数え切れないほどの部屋のドアが続く。『PLANET』『STREET』『DANCEHALL』『FOREST』などの名前が、金のプレートに黒の文字でプリントされてそれぞれのドアに張り付いていた。気になったが、開けて調べている暇はなかった。カゲボウズが速いのと、思った以上に構造が複雑で一度見失えば二度とカゲボウズを見つけることも、この空間を出ることも適わない気がした。
    不意に、カゲボウズが止まった。慌てて足を止める。残りの四匹が背中にぶつかった。
    そこは今まで見てきた部屋のドアとは違うようだった。薄いサーモンピンクに、バラやユリの絵が彫られている。プレートにプリントされた名前は、『DOLL HOUSE』
    カゲボウズが涎を垂らさんばかりにドアを見つめている。少々奇妙な感じを覚えながらもレディはドアノブに手をかけようとした。
    だが。

    バチンッ!

    後ろへ下がった。右手がズキズキと痛む。見ればドアに焦げ跡がついている。文字だ。どうやらマダム以外が触れると自動的に仕掛けが出るようになっていたらしい。
    「またパズルの類か」
    文字は文章になっていた。『入りたかったら、次の問に答えること』と少々馬鹿にしたような言葉で始まっていた。

    『子供の前に男が一人、女の後ろに男が二人、男の後ろに男が一人と女が一人、子供の後ろに女が一人。
    さて、ここには最低何人の人がいることになるだろう』

    なるほど、とレディは痛む手を押さえ、ドアを見つめた。いつだったかこういう問題をパズルの本でやったことがある。少々頭を使う必要がある問題だ。何せ『最小』で答えなくてはならないからだ。頭を整理し、何度か問題文を読んで考える。こういうのは図にすればいくらか分かりやすいだろう。
    「子供の前に男が一人。子供の後ろに女が一人。子供の性別も考えれば、すぐに解ける」
    わずか五分でレディは答えを出していた。つまり、男二人は同じ方向を向いているが、そのうちの一人は子供。そして子供と背中合わせで女が立っている。そうすれば、『子供』の前に男、女の後ろに『男』と『子供』の『男』、男の後ろに『子供』の『男』、そして子供の後ろに『女』がいることになる。つまり、答えは三人。
    また火影を使ってドアに彫ってやろうかと思ったが、さっきと同じ電流が刃に流れたら今度こそ質が悪くなるのではないかと思い、ドアの前で答えを言った。
    少しして、カチッという音がした。そっとドアノブに手をかける。もう電流が来ることはなかった。少し開けて、その空気に思わず顔をしかめる。鼻が曲がりそうなくらい、甘い。どうやらこの部屋全体に撒かれているらしい。
    「窓が無い」
    入って第一声がそれだった。広い部屋だ。壁紙は薄いピンク、床は大理石。ミスマッチな気がしたがマダムの趣味なら世間一般の感性とは違うのかもしれない。個人的には絨毯の方が合う気がしたが……それは置いておこう。
    「甘い匂いの正体はこれか」
    部屋の真ん中に置いてあるテーブルの上に、紫色の香水瓶が置いてあった。飲もうとするカゲボウズを止め、部屋を見渡す。ソファ、今いる白いテーブルは白木で造られているようだった。香水瓶の他にチョコレートの箱。個別包装と箱の美しさから高級品だということが分かる。
    レディは左を見た。天蓋付きのベッド。幼い頃テレビや絵本で見たことがあったが、実物を目の当たりにしたのは初めてだった。白いシーツが皺になっている。
    ドアのパズルの元になっていた男女は、壁の絵になっていた。油彩がどっしりとした重みを感じさせる。
    カゲボウズのギャッという声で、レディは振り向いた。五匹が何か騒いでいる。天蓋ベッドの上。
    「どうした。何かいるの」
    彼らは主人であるレディの言葉も聞こえないくらい、パニック状態になっていた。バトルでいえば『こんらん』か。
    何を見つけたのか気になって、ベッドに近づいてみる。そして思わず目を丸くした。シーツの影になっていたのと、まさかという思いが二重になっていて見逃していた。

    子供だ。何も着ていない少年が、シーツにくるまって眠っている。

    「……」
    言葉が出てこない。自分がどんな表情をしているのかすら分からない。そこで気付いた。気付きたくなかったことを気付いてしまった。この部屋に付けられた名前。『DOLL HOUSE』……
    中世ヨーロッパの貴族の間で流行していたという話を聞いたことがある。今でも法律の影でそういうことが行われていることがあるのも知っている。だが娼婦よりよほどタチが悪い。
    「マダム」
    その三文字にどんな思いが込められていたのか。言った本人も分からない。とにかくその時一番に考えていたことは、知ってしまった以上、無かったことには出来ないという諦めに近い思いだった。

    ベシッ

    カゲボウズの後頭部が顔に当たった。地味に痛い。鼻を押えて彼らを見ると、一つに纏まってこちらを見ていた。いつもは何かを嘲るような、一物ありそうな目の色をしているのにその時は違った,驚きと怯えの色が見て取れる。
    理由はすぐに分かった。柔らかい何かが背中に当たったからだ。振り向いて、濁ったような茶色と目が合った。
    座高……というか視線の高さはこちらの方が上。女かと思うくらいの美形だった。肌は白く、一度も太陽の下へ出たことがないのではないかと思うくらい。髪の毛はこげ茶で、主人の趣味なのか長くされていた。生まれつきの質なのか、柔らかい雰囲気がある。
    何とも言えない、微妙な空気になりレディは必死で脳みそを回転させた。とにかく間違って入ってしまったこと、そういう趣味ではないことをどうやって騒ぎを起こさずに相手に分かってもらえるかを考えていた。
    とりあえず顔を逸らそうとした彼女の頬を、柔らかい何かが包んだ。甘い香り……この部屋に充満している香水じゃない。自然に近い匂い。だが人間の匂いではなかった。時々泊まるホテルのバスルームにある、石鹸に近い。
    顔をこちらに向かされ、再び目が合う。茶色のビー玉がこちらを見る。力が抜けて何も出来ない。相手が子供だからなのと、もっと別の何か……催眠術にでもかかってしまったかのように、身体が脳の命令を聞かなくなっていた。
    まさかこんな場所に来てまで、こんな状況に遭遇するとは考えてもいなかった。そのまま首に両腕を回された。それだけ。それ以上、何もしてこない。
    五分の二を占める♀のカゲボウズがボーーッとこちらを見ているので思わず額にデコピンをした。
    耳に規則正しい感覚で寝息の音が聞こえてくる。起こすわけにもいかず、引き剥がすわけにもいかず、この全体重をかけられた身体をどうすればいいのかを考えて気分が重くなった。


    「随分とお楽しみだったようだな」
    探し人が見つかった……というか、見つけられたのは三十分後だった。いつものようにフードを被り、長針を黒いドレスに包んでいる。フードからはレディの髪と同じ色の髪が零れている。
    「全部見てたのかい」
    「よくここまで迷わずに来れたものだ…… そのカゲボウズのおかげか」
    マダムがドレスの裾からカラフルな棒付きキャンディーを出した。大きな口を開けてかぶりつくカゲボウズ。
    「いくつか聞きたいことがあるんだけど」
    「その前に、彼を返してくれ」
    「返すもなにも、こいつがひっついて来ただけだ」
    何も着ていない体に触れるのは抵抗があったが、カゲボウズに頼むわけにもいかない。腕を外し、ベッドに寝かせてシーツをかけてやる。よく見れば彼のくび元には黒い痣があった。
    「引き剥がさなかったあたり、お前もそこまで冷たい性格ではないようだな」
    「黙れ。質問に答えて。まず、ここは何処?」
    マダムがため息をついた。煙草の苦い匂いが、部屋の甘い香りを消していく。
    「おそらくお前は黄昏堂の壁から入ったのだろう。入り口は様々だが、この部屋に一番近いのはそこだ。鍵となるパズルは入ろうとする度に変わる。この部屋の鍵も、だ。
    そしてここは黄昏の館。私の家のような物だ」
    常に黄昏時を保っているらしい。時間間隔が狂いそうだ。
    「もう一つ。彼のことだろう?彼は裏の人身売買オークションで目玉商品になっていたところを、私が買い取った。幼い頃に親に売られたせいか、年上に甘えたがる傾向がある」
    「だから初対面の私にあんなことを……」
    「いや。ここに来た頃は全く心を開かなかった。来てもう半年以上になるが、話が出来るようになったのは一ヶ月ほど前だ。ゾロア達には懐いているんだが……」
    マダムが苦笑した。寒気が背中を走る。
    「私に懐かないで、お前に懐くとは。妬けるな」
    「ふざけんな。――アンタがズル賢くてでもそれを表に出さなくて悪趣味なのはしばらく前から知ってて、客の立場である以上きちんと把握しているつもりだったんだけどね……まさかここまでとは」
    「もっぺん言ってみろこの小娘」

    黄昏堂へ戻る際、廊下の窓の景色を見た。川縁に家や施設が並んでいる。水上都市だろうか。
    それを見つめるマダムの目が不思議な光を湛えていることに、レディは気付かなかった。


      [No.2352] 図書館は取り返しました。 投稿者:No.017   投稿日:2012/04/02(Mon) 01:04:07     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    図書館は取り返しました!
    けど看板が上書きされちゃったのでこれからちょっと直してきます!!!!


      [No.2351] マメパトのポケモン図書館に突入★ 投稿者:巳佑   投稿日:2012/04/01(Sun) 23:58:57     81clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    マメパトのポケモン図書館に突入★ (画像サイズ: 1500×1899 378kB)

     
     4月1日、あのマサラのポケモン図書館がマメパトのポケモン図書館に変わったことを受け、早速、私はインタビューすることにした。
     しかし、マメパトのポケモン図書館にたどり着くとそこにいるはずの鈴木ミカルゲ氏の姿が見当たらない。おまけに辺りを見回っていると、あっちにもマメパト、こっちにもマメパト、そこらじゅうマメパトだらけである。楽しそうな顔を浮かべながら小説を読んでいるマメパト、眉間にシワを寄せながら実用書を読んでいるマメパト、英単語帳に赤いシートかぶせながらブツブツ呟いているマメパト。
     ほとんどマメパトしかいないのは気のせいだろうか。
     というか、ここマサラタウンなのではと、私が疑問に思いながら歩いていると後ろ頭でつつかれたような痛みが起きた。

    「ここはマメパトのポケモン図書館だから、マメパトがいっぱいいるだけっぽ。他にも客はいるっぽ」
     
     声の主の方に私が振り返ると、そこには一匹のマメパトが羽ばたいていた。なんかネギの破片っぽいものをキセルよろしくくわえている。
     鳩胸には『マメパトのポケモン図書館 管理鳩 ぴかちゅう』と書かれている名札が貼ってあった。
     まさかこのマメパトがこの図書館を管理しているのだというのか。

    「当たり前っぽ。マメパトのなんだから、少しは頭を使えっぽ」

     ちょ、分かりましたから頭をつつかないで下さい。
     余計にバカになったらどうしてくれるんですかというと、ぴかちゅう氏はつつくのをやめてくれた。
     とりあえず話の分かる鳥らしい。

    「ふん、どうせ記者のものっぽ。お前に話すことはないっぽ。今、お前が見ているもの全てが真実っぽ。さ、帰った帰ったっぽ」

     これが動物の勘というものだろうか。
     自己紹介をするまでもなく、ぴかちゅう氏に追い返されそうになる私。
     なんか急いでいるような、慌てているような感じが否めない。
     もしや私のような類にばれたら何かマズイことでもあるのではないかと頭によぎる。

     ここが開設したのは今日、4月1日。
     4月1日といえばエイプリールフール。
     あぁ、そうかそういうことか。

     ここは四月バカという名の一日限定――。

    「ばるすっぽー!!!」



    【オマケ】

     質問:どうしてぴかちゅう氏は『ぴかちゅう』という名前なのですか?

     答え:「ピカチュウはNo.025のポケモンっぽ。そしてマメパトも(イッシュ図鑑では)No.025のポケモンっぽ。ピカチュウのポジションを奪うことがこの名前には込められているっぽ。時代はまさにマメパトっぽー!!」

     
    【書いてみました】
     ギリギリ間に合いましたが……めちゃくちゃになってしまいました。(苦笑)
     え、まさか今日で終わ(以下略) 

     ありがとうございました。


    【マメパトの活躍はまだまだ続く?】
      


      [No.2350] マメパトクエスト 〜戦慄の図書館〜 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2012/04/01(Sun) 23:39:00     73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     いつものように、サイコソーダの栓を開ける、春の日の午後。
     彼が瓶に口をつけようとしたまさにその刹那、それは起こった。


     パキ  ン。


     一瞬の音と同時に、シェノンはアシガタナを顔の前で構えていた。
     足元に、サイコソーダの瓶が転がる。彼がそれを見、小さく舌を打ったのが聞こえた。

     並みの者が見ていたら、ただこうにしか見えなかっただろう。
     しかし彼の赤い目は、目の前を一瞬にして通り過ぎた気配を見逃さなかったのだ。


     足元の瓶は、割れていた――否、“切り裂かれていた”。すっぱりと斜めに、真っ二つに切られていた。




    「うおりゃああぁぁぁっ!!」

     レッセが放出した気合いで、無数の灰色い群れに多少の穴が開く。
     が、液体であるかのように蠢き、鳴き声を上げ続けるそれらを退けるにはあまりにも小さな攻撃だった。

    「囲まれちゃったわね」

     隣のもう一匹のコジョンド――ティラが変身した姿である――が、灰色の群れから目を離さず言う。

    「下手すると死ぬよ? 私達」
    「皆も、もう死んでたりして。この数じゃね…」

     お互いに背中を合わせた彼女らは、言葉と反して楽しむかのような不敵な笑みを浮かべた。

    「片っ端から蹴散らすわよ」


     二人を中心にして、激しい閃光と爆風が巨大な轟音を伴って発生した。




    「……逃げて……」

     抱きかかえているサワンの発した、小さな力の無い声をナイトは聞き取った。
     草タイプであるにもかかわらず、勇ましく戦った彼女の身体には所々に痛々しい傷が付いている。翼で打たれたり、嘴でつつかれたりした傷だ。ぐったりしていて、とても一人で立てる状態ではない。

    「馬鹿だな、お前を置いてくわけないだろ」

     ナイトの発した声さえも、灰色の羽音に掻き消されてしまいそうだ。
     その羽音の中で、虫の騎士は静寂を求めた。左腕にサワンを抱えた今、右腕にだけ精神を集中させ、そして深く息を吸い込む。
     今はとりあえず、安全な場所へ避難する事だけを考えなければならない。そもそも安全な場所というのが存在するのかさえも分からないが。灰色の軍団――“マメパト”にこの空間が支配されてから一体どれ位の時間が経っただろう。

     片腕のランスで迫ってくる灰色の生物を振り払いながら、できた道を突進していく。




     アポロン、と太陽神の名前を持つ幼いメラルバは、恐怖に怯え震えていた。

     彼の母親ナスカが周囲に熱を発生させている為、焼き鳥になるのを恐れてマメパトは近寄れなかったが、辺りを飛び交う灰色の渦は見ているだけで十分恐ろしい物だった。さらに、彼の父親のペンドラー、ファルの居場所も分からない。いつも遊んでくれるアギルダー、カゲマル兄ちゃんの安否も分からなかった。

    「おかあ…さん」
    「大丈夫よ、心配しないで。みんなきっと無事で居るはずよ」

     彼女も本音を言えば、夫のファルと仲間がとても心配だった。ナスカのように、炎で敵を遠ざけられるならまだいい。飛行タイプに対して弱点を持つ彼らは、大丈夫なのだろうか。サワンはあの腕のいい騎士と一緒に居れば、おそらくは大丈夫だろうが……。

     どこまでも灰色をした空間は、彼女がずっと居たあの遺跡の古い広間を思い起こさせた。




     せっかく本を読みに来たのに、これは一体どういうことなのだろう?

     中に入ると、マメパトが図書館を占拠しているではないか。辺り一面灰色で何がなにやら分からない。料理をしているような匂いも漂ってくる。しきりに『マメポケ万歳!!』などと叫んでいるのが聞こえるが……。

    「おじさぁん…これ……」

     隣のコリンクが、不安げな表情で聞いてくる。大分物分りの良くなってきた彼に、今日も物語を読んでやろうと思ったのだが。




     すぐそこに、初めて見るポケモンがいるのに気が付いた。青色の魚のような尾がある。首と顔に白い髭が生えていて、手には薄黄色く長い刀のような物を持っていた。灰色の渦を見つめていた彼は私達に気が付くと急に振り向き、赤い目でこちらを見た。

    「おまえ、ちょっと手伝ってくれないか?」

     開口一番、そんなことを口にする。

    「何をだ」
    「この図書館の開放。俺はダイケンキのシェノンっていうんだが、図書館に仲間が閉じ込められちまってな……。おまけにさっき俺が飲もうとしてたサイコソーダの瓶を切り裂いて、“マメパト参上!”とか書かれた紙落としていきやがって」

     なんというか、明らかに後者の方にこもった恨みが強かった気がするのは置いておく。
     目的が同じなら、一緒に行動して損はないだろう。多分。




    「よし、マメパト鳴かしに行くぞ」

    「シェノンさぁん、鳴いてるのは元からだと思うー」

    「四月馬鹿だぜ、エイプリルフール」

    「…………」




     彼らの冒険は、今、始まった!!

     物語の枠を超えた出会い、ダークライ&ルキにシェノンが繰り広げるマメパトだらけの図書館ファンタジー、連載予定☆




    ――――

    お久しぶりです銀波オルカです
    一応こんくらいの駄作が書ける程度には生きてます

    もうなんかシリアスにしようとしたのかギャグっぽくしようとしたのか自分でも分からなくなってしまった
    あと私はドラゴンクエストを人生一度もプレイしたことはございません

    【好きにしてね】
    【半日クオリティ】


      [No.2349] 【他力本願】うちのボス【受信してみた】 投稿者:小春   投稿日:2012/04/01(Sun) 22:26:37     73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     うちのボスって、ほんとどうにかならないかと思うよ。
     素行に問題があるとか言われて、トレーナー法違反の疑いがあるとか言われてるのに、まだあちこち出歩いて、やめてくださいって言ってるのに。ちょっと出かけてくるよ、すぐ戻るねの一言で一ヶ月ふらふらしやがって……。おかげさまで、ボスのスケジュール帳は予定が組めませんよ。
     格好も奇抜だと思います。ハデでしょ、あれ。「ボクの付き人なら、このマントをつけなさい」だったんですよ、初対面の一言が。これからよろしくお願いしますってときに、これを着ろですよ。しかも僕の服のサイズ調べてあってぴったりなんです。担当者がころころ変わる理由が一瞬で理解できましたね。え、マントつけないのかって? 僕は堅実にスーツお仕事しますよ。
     そうそう「リーグ付近に変質者が出没します、ご注意ください」って看板立ってるの、知ってましたか?


     いまのボスは、とっても良い方よ。問題があったのは、前のボス。
     石と語り合うのが趣味ってひとでね、日がな一日洞窟にこもって石見つめることが多かったんですよ。あなたのボスと同じように、やっぱりよく出歩いてたわ。洞窟にこもっててポケナビも通じないから、連絡とるのが大変だったのよね。大事な予定が入ってるときは、流星の滝あたりから石拾って渡しておくべしって、前担当者からの申し送りがなかったら、私三日で自信喪失したと思う。
     ボスは世間じゃナルシストって言われてるけど、それはないわね。あのひとはただ単に、自分が好きなだけ。自分に陶酔してないわ。石には陶酔してるけどもね。いつだったか、チャレンジャーの女の子が持っていた闇の石ストラップに目をつけて、追いかけ回していたことがあったわ。
     そうそう「リーグ付近に変質者が出没します、ご注意ください」って看板が立っているの、知ってましたか?

     皆さん、大変ですねぇ。いえね、うちのボスは品行方正、文武両道、才色兼備。文句なんてつけるところ……多少はありますが目をつむれば問題ない方なんですよ。
     僕には分からない文字みつめてうっとりなさることありますけど、そんなときのボスの横顔はホントにお美しいんです。僕が整理した書類をあっという間に乱雑にしてしまうこともありますけど、そんなときのボスのあわてようは愛らしいんです。訳の分からない世界に立ち入たりしたらしいんですが、そんなときボスは楽しそうにあったことを話してくれるんです。
     ジョウトに行くときだって、前日に書き置きしておいてくれましたし、イッシュへ旅行のときだって三日前には教えてくれました。もっと早く教えろって? なに言ってるんですか、ボスは僕の管理能力を鍛え上げようとしてくれているんですよ。あなたごときに僕のボスのなにが分かるって言うんですか。ボスのために黒コートを買いに行きますよ、ボスのためにヒウンアイスだって買いに行きますよ。
     そうそう「リーグ付近に変質者が出没します、ご注意ください」って看板が立ってて危ない感じがするので、ボスが帰宅するときは物陰に隠れてちゃんと自宅まで送っていくんですよ、知ってましたか?


    ☆★☆★☆★
     他力本願スレから受信した電波が妙な電波だったらしいです。

    【書いてみた】
    【書いて良いのよ】
    【なんでもしてちょーだい】


      [No.2348] 2つしか解らなかったぜ 投稿者:ことら   《URL》   投稿日:2012/04/01(Sun) 22:12:40     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    他力本願すぎることらです!ありがとうございます!エイプリルFOOOOOOOOOOOOOL!!!!!
    身代わりの走れメロスと
    ものまねの一発芸しか解らなかったYO!
    まじめな講座はことらが書けないFOOOOOOOOOOOO!!!
    他力本願すぎて誰かが書いてくれれば読めるのに的な酷い有様ふぉおおおおおおおおおおおお
    ーーーーーーーーーーー
    ありがとうございました。


      [No.2347] しゃっきんかえせ! 投稿者:ことら   《URL》   投稿日:2012/04/01(Sun) 21:48:12     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「黒蜜、お使い頼まれないか?」
     だるそうに仰向けになっているゾロアに、長いしっぽの金柑というライチュウが聞いた。
     ここは和菓子屋。今日は定休日である。いつも休みの日はどこかへと消えて、商売しているという噂がある金柑だ。
    「えー、俺だる……」
    「いってくれれば技マシン45メロメロをやるぞ」
    「いくいくいく!」
     ころっと態度を変えた。金柑は黒蜜に分厚い書類を渡す。
    「なんだこれ」
     キャバクラ 借金 借金 借金 池月 督促状 キャバクラ もふもふ 池月 キャバクラ 借金 金融
    「取り立てて来い。いいか、お前は小さいから、なめられないように怖い顔のおっさんに化けていくんだぞ」
     落とさないように背中に書類をくくりつけたら、黒蜜はさっそく言われた住所に出かけていった。

     道中出会った最も顔の怖そうなおじさんにイリュージョンしたら、準備は完璧。黒蜜は家の前に立つ。
    「じゃあお母さんいってきます!」
     飛び出して来たロコンに引かれ、黒蜜のイリュージョンはとけた。そして背中の書類の重さによりひっくり返る。
    「大丈夫?」
    「だ、大丈夫」
    「お客さん?お母さんは家だよ」
     そういってロコンはそのまま出かけていってしまった。残された黒蜜はなんとかひっくり返った亀からいつものゾロアの体勢に戻る。
    「はあ……ロコンのくせに」
     もう一度イリュージョンしようとしても遅い。すでに目的のポケモンはそこにいる。
    「あら、かわいいゾロアねえ。どうしたの?」
     キュウコンに話しかけられては化ける暇もなかった。金柑のお使いで来たと言うと、なぜかお邪魔することになってしまったのである。
    「え、ええーっと」
    「ぼたもち食べるかしら? おだんごもあるわよ」
     緑茶とぼたもちを出され、さらに食べ慣れてる団子も出され。借金取りに来たとは言いにくい。
    「あの、その、俺はその、借金を返して欲しくて」
    「借金?あら、うちの夫が迷惑をおかけしています」
    「借用書の住所がここで」
    「でも夫はいないのよ。ごめんなさいね」
    「あの、それで奥さんに返して欲しいって」
    「こんなに大きなお金を借りるなんて、夫を後でしからなきゃダメね」
    「いや、その」
    「でもいつ帰ってくるか解らないのよ」
     黒蜜の言葉を自然とのらりくらりかわすキュウコン。これには何て言ったらいいかわからずタジタジ。
    「また夫が帰ってきたらその人に連絡するわね」
     そうして、黒蜜は借用書と共に帰ることになっていた。


    「な、何をいってるのか」
     黒蜜は帰って金柑に全ての事を話す。
    「……つまりお前は奥さんのイリュージョンにやられたんだな。うんお前が。イリュージョンのお前がイリュージョンにやられたんだよ」
    「ど、どういうことだってば!」
    「修行が足りん! そんなんじゃ技マシン45はダメだな」
    「え、やだ、俺ほしい、いったんだからくれくれくれよー!」
    「だめだ。おとといきやがれ!」
     金柑の長いしっぽが黒蜜を吹っ飛ばした。

     その頃。
    「ふふ、イリュージョン使いの中でもやつは最弱……ちょろいわあ!」
     幻想黒狐と書かれた包みとみたらし団子を横に、青いゾロアークがにこにこしていたとかなんとか。


    ーーーーーーーーーーーーーー
    もふぱらだし、借金取りもゆるゆるだよきっと。
    【書いてみた】
    【好きにしてください】


      [No.2346] ポケモンニュース 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2012/04/01(Sun) 21:17:47     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     こんばんは、ニュースの時間です。今日は4月1日、エイプリルフール。各地で様々な冗談が飛びかいました。そのうちの一部をご紹介します。

    「カイナシティのがんばりやさんが本気を出して、薬を1つ490円で売ると聞いてきたんですよ。ところが今日は何の日か忘れてたんだ。うっかりしてたねえ」とは、キンセツシティ在住のAさん。

    「『けっきょく ボクが いちばん つよくて すごいんだよね』なんて言ってくる人がいたんですよ。私、今日が何の日か知ってたからこう答えたの。『ほんとうに なると いいね!』って」とは、ミシロタウン出身のHさん。

    「チャンピオンロードの中腹で休憩していたら、いきなり辺りが揺れたのよ。何かと思って後ろを見たら、ポケモンリーグの背後にお城が現われてるじゃない! さすがの私もびっくりしちゃったわ」とは、カンナギタウンにお住まいのSさん。

     どれもこれも思わず笑っちゃいそうですね。ですが、明日からは控えておきましょう。それでは、ニュースに入ります。





    10分で書いた。適当なのは許して。


      [No.2345] 生態系が乱れるとか(笑) 投稿者:音色   投稿日:2012/04/01(Sun) 16:56:21     82clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ポケモン死んだりします。ワンクッション。



     大量発生の原因究明はしなくても、ポケモンを逃がすトレーナーは諸悪の根源とか(笑)
     ポケモン解放を謳う宗教団体に対しては特に何もしないのに、バトルの強いトレーナーには反発するとか(笑)
     あー、後者はあれか。多少の規制っぽいのはしていたけど?廃人に対する風評よりはマシっていうか?
     それにしてもメディア素晴らしすぎるワロスwww。
     見事に元々はただの過激な少数意見を煽ってあおって膨らまさせていかにも『世論は廃人撲滅運動を推進している』だwwとwwかww。
     なんかさ、全体的に馬鹿ばっか。
     ニュースのいうこと真実だとさ。新聞に書いてあること正しいってさ。ゴシップ記事こそ疑うっていうのにそこそこまともそうな雑誌に書いてあったからきっとそうなんだとかさ。
     そうやって俺達追い詰めて何が楽しいの。世間が無難なことばっかりだから何か憎むべき悪っていう対象を常に祭り上げておかないと気が済まないわけでしょう?
     ひゃっはぁぁ!
     そしてあっさりそれに流されちゃう国会もどうかしてるよ―。流石、立法行政司法に次ぐ第4の権力マスコミwww。
     小さなポケモンを野に放つのはかわいそうとか(笑)
     生態系が乱れるとか(笑)
     世間様の目を気にしてそれなりにおざなりの事を言う学者とwwかww。
     専門家とかいう肩書って便利ですよねー、はいはいワロスワロス。
     

     え?俺?
     ごめん廃人とかじゃない。あと別に廃人目指してるとかでもない。
     俺はそうだな、特に何を仕事としてるわけじゃないし。強いて言うなら狩人か、適当に食ってやっている。
     いやでもさー、ここまで派手に情報がピックアップされてると笑えちゃうわけよ。俺はシンオウの山出身でさ、ポケモン食うのとか皮剥いだりするのが普通だったしさ。
     大体、都会の人間とか自分が食ったり使ったりしてる原材料知ろうともしてないんだもんww。
     原材料表記規制法?地味な法律の名前でポケモンの名前を極力漢字とかに書き変えてるんだもんねwww。そりゃ知らないかww。
     出稼ぎでイッシュとやらに来たんだけども、ここも派手だねww。プラズマ団とか俺吹いたもんww。故郷に宇宙人いたけどこっちにも宇宙人とかww。
     とりあえずポケモンはその辺にいた角材運びを蹴ったおしてボールに入れたのでこいつと一緒に森で狩りしてます。
     ドッコラ―って得物を持ってるだけあって手際が良いしね。昨日も森に適当に放たれた茶色いウサギを仕留めてくれたし。
     適当に皮剥いで肉は美味しく頂きました。皮はしばらくほしておいて良い感じにたまってきたら適当に売りさばいてます。
     この間までは廃人がガンガン逃がしてくれてたから食うのに困らなかったのにな―。最近はムカデの毒抜きとかそんなのばっかりなんだよね。
     政府の人も早い所撤回してくれねぇかな。っと、そろそろ日が暮れるから帰るわ。じゃ。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談 全力でふざけ倒してみた。後半は若干クーウィさん所のパロディです(設定が)

    【なにが書きたかったのかもカオス】
    【好きにさせていただきました】
     
     


      [No.2344] 鋼の王者と灯火蜥蜴 投稿者:音色   投稿日:2012/04/01(Sun) 16:04:27     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     灰色の路地を走り抜ける小さな火があった。
     様々な音が起こり傾れぶつかり壊れ爆ぜていき幼いヒトカゲの耳は都会の騒音に対応など出来るはずもなかった。
     必然的に彼はネオンの明るい場所から暗がりへと逃げ込む。全ては投げかけられた言葉の悪意から逃げるため。
     生まれおちたポケモンに何故自分がここにいるか何のためにここにいるかをすぐさま理解するほど彼は聡明でなかったにせよ、本能は敏感にこぼれおちた言葉から己が求められていないものであると感じ取った。
     次に来たのは『ここにいては危ない』・・・全く根拠がない思想だと言えばそうであるが、小さな蜥蜴はその感覚を信じて疑わず戻される前にそろりと駆けだした。
     もっとも、彼の“親”に当たるトレーナーに言わせれば、数ある卵から作った失敗作が一匹、目を離したすきに逃げだしただけであり、気にも留めなることもなければ、ただ都合が良いと感じたのだろうが。
     所詮は逃がす運命である。その手間が省けただけの事。
     それでも親から逃げだすだけで持っている勇気も度胸も振り絞ってしまったそいつは、駆け込んだ先から翻る光にわずかにしか反応できなかった。
     突っ込んで来たのは発光体ではなく、路地に入る光を反射した鋭利な爪が振り下ろされる。咄嗟にトカゲがとった行動は、全く同じ技をぶつけ返すことだった。
     弱い力とはいえ踏み込んだ反動を利用した大振りの攻撃はともかくふってきた攻撃を払いのけた。思いがけず反撃にあったらしく少しばかり派手に飛んでいったそいつに影が群がる。
     すぐさま立ち上がったそいつは、そいつ等はぱっとヒトカゲを取り囲む。
     光にてらされてきらりと光る全身刃物、ただじっと見つめるコマタナ達に進むも引くもたたれた蜥蜴は、諦めることすらも忘れてただ両手の爪を鋼色に変えかけた。
     その場を制止する声が届く。びくりとコマタナ達の動きが止まった。
     おもしろいな、私達と同じ技を使う輩か。暗がりから音もなく出てきたそいつは低い声でそう言った。気に入った。そいつを持って帰るぞ。
     言葉が終らないうちに蜥蜴の腹に一発ぶち込まれた。軽く意識が吹っ飛んだそれを何処か不満げなコマタナどもが担ぎあげる。
     かくして、都会に潜むキリキザンの群れの中に見慣れないポケモンが混ざるように噂される数時間前の事。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  エイプリルフールです。本当はこの後立派に成長したリザ―ドとコマタナ3兄弟の掛け合いやらキザン隊長達もマメパト大反乱に加わるはずだったのですが死力を振り絞ったポッポ部隊にぼこされて消えました。
    べ、べつにイケズキさんと朱雀さんのお誕生日おめでとう御座います話をこの日に流用しようとか思ったわけじゃないですからね。

    【好きにすればいいのよ】
    【いまさらですがお誕生日おめでとうございまする】


      [No.2343] ピジョンの空を飛ぶ! 第一話【試験投稿】 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/04/01(Sun) 13:37:30     120clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ※連載の第一話をこちらに投稿させて頂きます。マルチポストばんざい。






     夜明けを告げる鐘がなる。
     ピジョンのソラマメは銀の鐘楼が朝焼けに染まるのを見ながら、今日も憂鬱な一日が始まったと思った――



     ここはポケモンしかいない世界……の中でも珍しい、鳩しかいない国・ハトオブハトキングダム。
     国民はポッポ・ピジョン・ピジョット・マメパト・ハトーボー・ケンホロウ。雉がいる気がするが国民はこの二系統に限定され、獣・魚・草本・樹木・家電はもちろんノーマル・飛行タイプであっても鳩でなければ国籍を得ることまかりならんという変な国である。

     いや、“だった”。

    「行ってきます」
     ソラマメは誰もいない狭い部屋――通称“巣箱”の中に声を掛け、外に出た。行き先は決まっている。この王国きっての大通りが伸びる先、王城である。
     行きたくなんてないけど、という言葉は飲み込んで、ソラマメは王城へトコトコと歩いて行く。途中、何羽か知った顔の鳩を見かけたが、挨拶はしなかった。向こうだってソラマメに挨拶されたら迷惑だろう、と思いながら。
     馴染みの豆屋で、そこのピジョットのおばさんにはお世話になってるから、流石に挨拶していこうかな、と思う。
     けれど、店先を一瞥して、やめにした。豆屋に来ている客を見た瞬間、話しかけたくなくなったのだ。ソラマメは店番をしているおばさんと目を合わさないように顔を伏せて、早足で通りを歩いていった。

    (なんであいつらがいるんだよ。畜生)

     鳩胸の中に沸き上がってきたモヤモヤは独りよがりで、それが余計にモヤモヤの不快感を増長させていく。その独りよがりをぶつけるように、ソラマメは道に積もった細かな砂粒のひとつひとつを睨みつけて歩いた。

     あいつらがいるのだって、別に悪くはない。心の中の、もう一羽の自分が勝手にしゃべりだす。
     あいつらは法を侵してるわけじゃないし。
     あいつらはそういう権利を持ってここにいるわけだし。
     あいつらは――

     ああ、もう、うるさい。
     ぐるぐる回る考えを振り払うように、ソラマメは頭を振った。前後ではなく左右に頭を振ったので、通りすがりの鳩たちがちょっとばかり驚いている気がする。そうこう考えている内に、もう城門に着いた。国民が鳩だから、高い壁は用をなさないから、門は嫌味なほど低い。
    「これはこれは、ソラマメ三曹。城門を開けなきゃなりませんね?」
     門番の鳩が薄笑いを浮かべてソラマメに話しかける。
     憂鬱な一日は、まだ始まったばかりだ。

     城の天辺では、ばかでかい鳩が誇らしげに翼を広げている。



    「よう、ソラマメ三曹! 今日は歩きか?」
    「足腰のトレーニングかい? 精が出るねえ」
     うるさい! と叫びたいのをグッと堪えて、ソラマメは同僚の鳩たちを睨みつけた。
     それだって、やらなければよかったとすぐに後悔した。同僚たちはソラマメを嘲るように、さっさと自分の持ち場へ飛び立っていく。
    「今日も訓練がんばれよ、銀豆の御曹司!」
     プププ、と騒々しい羽ばたきの音とともに、嘲りが遠のいていく。ソラマメは思いっきり嘴を食いしばってから、自分の持ち場へと向かった。

     城壁を見上げると、首が痛くなった。城を囲む壁とは逆に、守られるその本体は嫌味なほど高かった。天まで届くと謳われる城の先っぽでは、あのばかでかい鳩が誇らしげに翼を広げているのだろう。幸いにも、城の中庭からでは城が近すぎて、頂上にある鳩は却って見えない。
     ソラマメはため息を押し殺して位置につく。
    「本日も晴天なり! 諸君、天と地とその御子・鳩王に敬礼!」
     曹長が三つある首全部を使って怒鳴った。ソラマメは曹長の指示通り、翼を胸の前で軽く組んでかしずく、鳩族の敬礼をした。けれど、この中庭でその敬礼をしたのはソラマメただ一羽だった。

     曹長は三つある長い嘴を交差させる。それが彼らドードリオたちの敬礼なのだ。他の連中は大体、獣型の種族がやる前足を折った半端な伏せみたいなのをやっている。この部隊にいる奴は、大体そう。

     ソラマメを除いては。

     父さんが今のソラマメを見たらどう思うだろう。自分の息子が王立軍に入るとは常々思っていなかった父だが、こうなるとは予想していなかったに違いない。スッ、と鋭い何かがソラマメの胸に入り込んだような気がした。もちろんそれは気のせいで、いつもの被害妄想なのだけれど。父さんのことなんか思い出して、ソラマメは一層腹ただしくなった。
     その苛立ちを紛らわせるために、ソラマメは強いて部隊の連中を見回した。どうせ敬礼の次は曹長のつまらない説教なのだから。

     小柄なポニータが真面目くさって説教を聞いている。その隣ではレントラーとヘルガーが、つまらなさそうに曹長の説教を聞いている。今朝、ソラマメ行きつけの豆屋にいた連中だ。あいつら豆なんて食わないだろ、何しに行ったんだよ、とソラマメはまた胸くそ悪くなった。
     その隣にはガーディ、タテトプス、メタングといつもの面々が並んでいる。軍隊のメンツは本来コロコロ入れ替わるものではないが、今の王国ではそうとも言えない。現に、隊列の端っこには新顔のイーブイがいる。

     なんだあいつ。ちぇ、一丁前に空色のスカーフなんかしやがって。
     ソラマメは小さく嘴を尖らせた。八つ当たりだと分かっていても、難癖を付けずにはいられない。悪い思考だと分かっている。が、いつもそうなのだ。部隊に、自分より足の速そうな奴が来た時は、いつもそう。

     我ながら嫌になる。

    「おいっ、ソラマメ三曹。話を聞いていたか?」
     唐突にドードリオ曹長がソラマメを名指しした。いや、ぼーっとしていたのだから当然かもしれない。
    「聞いてました」
    「じゃあ、何の話をしていたか答えてみろ」
     返す刀でしっかり黙らされたソラマメの姿に、小さくて、でも遠慮のない笑い声が上がる。追い討ちをかけるように、曹長の怒声が三重奏でソラマメの耳に突き刺さった。
    「全く、お前には三曹としての自覚があるのか! そんなだから先の戦争もこの国は大敗を喫したのだ!」

     あんたはその時、この国にいなかっただろ。
     ソラマメの鳩胸の中がかぁっと熱くなった。
     目を合わせれば生意気だと詰られる、目を逸らせば真面目に話を聞いてないと吊るされる。ソラマメは、顔を上げてけれど目は合わさず、必死に説教に耐えた。

     ドードリオである曹長が、あの戦争より前にこの国にいたはずがない。今たくさんの種族がいるのは、この国が戦争で負けたせいなのだから。なのに、自分もその時から王立軍で貢献してたみたいに言ってほしくない。この国のことを、鳩でもない新参者に語ってもらいたくなんてない。
    「全く、銀の豆勲章を授与されたかの英雄は――」
     あんたにその英雄のことを語ってほしくない。

    「あのさあ」
     場にそぐわない間の抜けた声が、突如曹長の説教に割って入った。隊の全員が声の主を見た。
     あのイーブイだ。空色のスカーフをした、新入りの。
     軍で階級が上の奴の説教を中断するなんて何者だと、他のポケモンがそういう目で見ているのに気付いているのか、気付かない振りをしているのか、イーブイは黒豆のような目をクリクリさせて言った。
    「オレの自己紹介、まだなんだけど」
    「あー……そうだな」
     思わぬ横槍に気勢をそがれた曹長は、言うことも思いつかないらしくあっさりと引き下がった。

     隊の全員が沈黙する中、当のイーブイは脳天気にちょこちょこと前に進み出て、くるりと振り向いた。
    「どーも、今日からここでお世話になります。アルっていいます。種族は見ての通り、イーブイです」
     空色スカーフのイーブイはそこまでひと息に行って、ペコリとお辞儀をした。そして、行きとは少し違う沈黙の中を、またもや平然と元の場所へ戻っていく。

     エヘン、と曹長の首が三つ同時に咳をした。
     ヘンテコな沈黙が破られて、二曹のポニータが訓練の内容を告げる。
     いつものように、持久走から始まって嫌な訓練をする時間だ。

     ただ、いつもと少し違うのは。
     ソラマメは隊列の端っこをちらりと見た。

     空色のスカーフを巻いた、イーブイがいること。

     持久走開始の合図に怒号のような返事をして、王立陸軍第一小隊が一斉に走り出す。
     ソラマメも慌てて駆け出した。案の定、アルはソラマメよりも足が速かった。
     のみならず、ドードリオ曹長とポニータ二曹を除く他の連中よりも足が速かった。このイーブイ、大物か、それとも大馬鹿か。

     それにしても、お世話になりますって同好会じゃないんだから。
     ソラマメはビリッケツで息を切らしながら思った。
    「ソラマメ三曹、またビリか。少しは新入りを見習ったらどうだ?」
     曹長が三つの首で順番こに繰り出す嫌味に耐える。今度は遠慮のない嘲笑が上がった。
     イーブイのアルをちらりと見る。彼は笑っていなかった。
     黒豆みたいな目は、ソラマメを見つめていたけれど。

     ソラマメはちょっとの間だけアルを見つめ返した。そして、すぐに目を逸らした。なんだか恥ずかしかったのだ。
    「む。ちょっと失礼」
     連絡係のポッポに耳打ちされて、ドードリオ曹長が中庭から出ていった。いかにも曰くありげな退場に隊の連中がざわめいたけれど、ポニータ二曹が諌めてすぐに静まった。だが、心はすぐには静まりそうになかった。隊の奴らはまだなんとなく落ち着かないでいる。若い二曹がはっと気付いて、訓練の続きを始めたけれど、二曹含め皆が皆上の空で、訓練に身が入っていなかった。まあ、運動音痴のソラマメにはありがたい。ただ一匹、イーブイのアルだけはさっきと同じ調子のようだった。

     炭酸の抜けたサイダーみたいな訓練のメニューをふたつまでこなしたところで、曹長が戻ってきた。
    「訓練は中止だ」
     真ん中の首が言った。なんで? と小さな疑念を漏らしたりする者もいたが、その問いは無視された。
    「各自、兵舎に戻れ。今後のことは追って連絡する。以上!」
     有無を言わさず、という調子で曹長のいつも怒っている首が言ったが、それだっていつもの怒声に比べれば元気がなかった。何があったのだろう――と皆が訝っているのは明らかだったが、曹長に答える気がないのも明らかだった。

     嫌な風が吹いてるなあ、とソラマメは思った。

    「解散」
     ドードリオは三つの首を全部合わせて、いつもの首一本分くらいの号令を発した。それに対する号令も、いつもの三分の一ぐらいに減っていた。
     皆はいよいよ炭酸どころか水まで抜けたサイダーみたいになって、三々五々散っていく。門、また開けてもらわなきゃなんないなあと思いながら、同じく気が抜けたソラマメは中庭から出る扉を探す。

     その尾羽を誰かに踏まれた。
     怒って振り返る。アルだった。
    「なあ、兵舎に案内してもらっていい?」
     無邪気な黒豆がクリッと動いて、ソラマメは怒るに怒れなかった。踏まれた尾羽が、さして痛くなかったのもある。
    「いいよ」
     アルのスカーフを見ながら、返事をする。ソラマメの視線に気付いたアルは、へへっと笑った。
    「これ、大事な物なんだ」
     少し自慢気なアルに、「あ、そう」と気のない返事をして、会話が終わった。

     トコトコ歩いて王城を抜けた。イーブイのアルがいる為、門を開けてもらうのに引け目を感じずに済んで、ソラマメは得をした気分になった。けれどすぐさま自分の問題が解決したわけじゃないと気付いて、また不機嫌になった。
     二人黙りこくったまま、メインストリートを下っていく。
     しかし、こういう時でもイーブイのアルは機嫌が良いというか、連れの機嫌が悪くても気にならないらしく、道沿いの店を興味深げに眺めながら足取り軽く歩いている。

    「あ!」とアルが嬉しそうな声を上げる。
    「ピジョットのおばさん、こんにちは!」
     そちらを向いたソラマメは、驚きで目ん玉が落っこちるかと思った。
     アルが挨拶したのは、紛れも無い、ソラマメ行きつけの豆屋のピジョットおばさんだったから。

     いいや、アルが悪いってわけじゃない。とソラマメは今朝の問答をまた繰り返した。
     アルは別に法律を侵してるわけじゃないし。
     れっきとした王立陸軍の兵士だし。
    そういう権利を持ってここにいるわけだし。

     それでも、ソラマメの胸の中はモヤモヤするのをやめられないのだ。

     アルは笑顔でソラマメを振り向いた。
    「ピジョットのおばさん、親切だよね。オレは豆は食べないけど……」
    「おやおやまあまあ、ソラマメじゃないの」
     ピジョットのおばさんは羽を大きく広げながらソラマメに駆け寄ってきた。「こんにちは、ピジョットのおばさん」抱擁を避けながら、ソラマメは挨拶をする。しかし、ソラマメの態度には構わず、おばさんは話し続ける。
    「最近ねえ、顔を見ないから。元気にしてた? 一人暮らしは栄養が偏るっていうから、おばさん心配でねえ。もう大きい大人なのに心配するっていうのもおかしいけど。兵隊さんの生活にはもう慣れた?」
     ええ、とソラマメは小さな声で答えた。おばさんは「それは良かった」と大袈裟に三回繰り返した。そして、「ちょっと待っててね」と言うと店の奥に姿を消した。

    「いい人だよね。オレは豆は食べないけど……」
     アルがもう一度言った。その言葉が全部終わらない内に、ピジョットのおばさんが大量の豆を持って出てきた。器用に、羽で豆の入った巨大なタッパーを支えて。
    「はい、ソラマメ」
     その容器がソラマメに渡される。おばさんが羽を離すから、ソラマメは慌てて羽を伸ばして支えたけれど、その途端羽に有り得ない重みが掛かって、容器を地面にぶつけそうになった。
     アルが素早く容器の下に滑り込んで支えてくれたから良いものの。
    「お友達と二人分、これはサービスだからね」
    「は、はい。ありがとうございます」
     しどろもどろになりながらお礼を言う。これ、どうやって持ち帰ろう。イーブイのアルを覗き込む。

     結局、アルが背負ってソラマメが支えながら兵舎に戻ることになった。
    「時々でいいから、顔、見せてね」
     後ろからおばさんの声が追いかけてくる。ソラマメは首を回して会釈するので精一杯だった。

    「オレは豆は食べないけど」
     豆屋が見えなくなったところでアルが話の続きを始めた。
    「豆を見るのは好きだよ」
     そう、とソラマメは頷いた。

     そう。そうなのだ。ピジョットのおばさんは誰にだって親切なのだ。



     角を曲がって少し行った先に兵舎がある。通称“巣箱”。昔は鳩の寝泊まり以外、何の利便性も考えずに兵舎が作られていたことから、そう皮肉られているらしい。
    「今はそうでもないんだろ?」
     黒い目をくりっとさせて尋ねたアルに、相変わらず豆の山を支えながら歩くソラマメが答える。
    「今も狭いよ。豆を置くスペースはあるけどさ」
     アルが豆の山の下でクスリと笑う。

     昔に比べれば、これでも広くなったらしい、と聞いた。父親に聞けばもっと色々分かっただろう。
     父親のことを思い出しても、いつもの憂鬱は来なくて、ソラマメはホッとした。
     巣箱が見えてきた。ばかでかい木の箱にしか見えない。



     巣箱でまたひと悶着あるとは、ソラマメもアルも思っていなかった。

     折良く巣箱の近くにいたハトーボーの寮母さんを呼び止めた。普段ちゃんと挨拶していかないソラマメを見て、このさばけた寮母さんは「生きてたんだぁ」と遠慮なく言ってくれた。
    「で、どうしたの? 珍しく。あら、友達? 珍しい」
     素直に感嘆する寮母さんに苦笑しつつ、ソラマメは隣の友人を紹介した。
    「イーブイのアル。陸軍の。兵舎まで案内してほしいってさ」
    「はじめまして」
     重い豆を背負ったままではろくに動けない。アルは豆を地面に置くと、ペコリと頭を下げた。

    「へえ、可愛い兵士さんねえ。お部屋はどこ?」
    「あの、それは着いたら教えてくれるって言われたんですけど」
     ソラマメは寮母さんの目の中にあやしい光がよぎるのを、見た。アルも何だか合点できなさそうにハトーボーさんを見ている。なんだか雲行きが怪しい、ぞ。

    「オレ、新人で今日軍に入ったばっかなんですけど、部屋、ありません?」
    「聞いてないわねー。本当にこっちで部屋割りはこっちだって言われたの?」
     ハトーボーさんはそう言うと、不審者でも見るような目でアルを睨んだ。それでソラマメは思い出したが、そういえば、ここは鳩の国だったのだ。大概の鳩は、他の種族に寛容じゃない。ピジョットおばさんは例外なんだ。
    「言われましたよ。オレ、ちゃんと確かめたし」
     そこまで言っても、ハトーボーさんの目の中の不審がる光が消えない。アルは半ば諦めたように後ろ足で長い耳を掻き始めた。「じゃあ野宿にしようかな」と呟きながら。

     どうしよう、とソラマメは思った。兵士が兵舎にいないんでは外聞が悪い。他所の国に知れたらまた馬鹿にされること必至だし、その責任が何故かソラマメに降り掛かって最悪辞職なんてことも、あったら困る。
     けれど、いい案がそうそう浮かぶわけでもない。藁にもすがる気持ちでハトーボーさんを見ると、彼女はソラマメの横の方を見て、意味ありげにウインクした。
    「部屋も空けられないことはないと思うんだけど」
    「本当ですか」とアルが食いつく。ハトーボーさんは中空を見ながら答えた。
    「あの人は兵隊さんじゃないし。でも老兵だし、邪険にするのも可哀想よねえ。あのフーディンさん」

     あのジジイ、まだ兵舎にいたのかよ! 早く追い出せよ! と叫びそうになるのをソラマメは堪えた。
    「フーディンさん、ってどんな人?」
     アルは首を傾げた。ハトーボーさんは何故か満面の笑みで答えた。
    「百戦錬磨の作戦参謀で、かの戦争で共和国の指揮を執ったのが天下ってこっちに来たんですって」
    「絶対嘘だよそれ」
     ハトーボーさんは信じているのだろうか。そう疑いそうになるほど幸福そうな表情で、ハトーボーさんは続けた。
    「でも今は退役軍人だとかで、兵舎にいなくてもいいんですって。だから」
    「じゃあオレがその人に頼みます」
     というアルの台詞を、綺麗な羽を振って遮った。
    「私から頼んだ方が良いのよ、こういうことは。でも、あの人、何と言ってもご老人でしょう」
     ハトーボーさんは小首を傾げて、意味ありげにアルの横を見た。つまり、
    「ショックは与えないように頼みますね?」
    「じゃなくてさ、アル」
     ソラマメは手羽先で軽くアルを叩くと、同じ羽根でアルの横を指した。それを見て、アルはやっと納得したように頷いた。

     ソラマメは咳をひとつして話し出した。
    「ところで、ハトーボーさん豆要ります?」
     出来るだけ棒読みで、投げやりになるように言ったが、そんなこと心掛けなくても自然と棒読みで投げやりになった。対するハトーボーさんは大袈裟に喜び、
    「まあ!? こんなにたくさん? 嬉しくて舞い上がっちゃいそう!」
     本当に空に舞い上がった。

     そういうリアクションはソラマメに対する嫌味とも思えるのだが、ハトーボーさんは全く考えが至らない様子で、「じゃあフーディンさんに話しておくわね」と豆入りタッパーに両羽を置いた。ソラマメはさっさとその場を立ち去りたかったのだが、アルが律儀に「ありがとうございました。よろしくお願いします。さようなら」まで言うのでずっと待っていた。

    「じゃあね。ちゃんと話しておくわ」
     アルがひとっ飛びでソラマメの横に並んで、また足並み揃えて歩き出す。立ち去るソラマメの背に、ハトーボーさんの上機嫌な声が追い付いたが、ソラマメは振り返らなかった。アルは振り返って会釈していた。

    「とりあえず」
     巣箱の影に入ってから、ソラマメは言った。
    「今日は僕の所に泊まるといいよ」
    「でも、狭いんだろ」
     アルの黒豆みたいな目がいたずらっぽく光る。
    「君が寝るスペースくらいあるよ」
     そう言うと、アルは笑った。何故だかソラマメも嬉しくなった。

     部屋の入り口を羽で示すと、アルは「本当に巣箱だ」と歓心したように言った。木製の壁に規則正しく並べられた丸い穴。巣箱を並べたような建物、というか事実、そんな風に作っているらしい。
     ソラマメは二階の端の部屋――というか穴に掛かっている縄梯子の所へアルを連れて行った。
    「ここが僕の部屋」
     そう言いながら爪と嘴を使って登りだした。登ってから、あがってってよとか、何か気の利いたことを言えば良かったと、ちょっぴり後悔した。

     狭い巣箱の中に戻る。すぐにアルが軽快に登ってきて入り込んだ。部屋の中は相変わらず殺伐としていて、寝床の藁以外ろくな家具も置いていない。けれどアルはそんなこと気にならないのか、「すっきりした部屋だなあ」としきりに感心していた。
     そして、すっきりした部屋にポツンと立っている銀の盾にも、アルは興味を示す。
    「銀の豆勲章だよ」
     アルが何か言う前に、ソラマメはボソッと呟いた。

     銀で出来た土台から浮かび上がるように、種々様々な豆が象られている。豆として外せない大豆に小豆が中央。そこから輪を広げるようにレンズ豆ヒヨコ豆エンドウにインゲンなんかが配される。下には地中で実を結ぶ落花生が、上には天に向かってさやを付ける空豆があり、他の豆を囲うように豆独特のちょうちょみたいな花で結ばれている。

     らしいのだが、なにぶん銀一色なのでどれがどのマメかあんまり分からない。



    「すごい勲章なの?」
     アルの目が銀の盾を離れ、ソラマメを見る。ソラマメはまた黒豆みたいな目だと思った。
     勲章のことを説明しようとすると、父親のことが頭を過ぎった。
     これを授与された時、確か父は大喜びで帰ってきたはずなのに、どうもその辺りの記憶が曖昧だ。何かを喜んで説明していたけれど、その頃の小さな頭には難しかったのだろうか。その時はまだポッポで、父親はソラマメを両羽で抱き締めた。普段から父はソラマメを抱き締める鳩だった。父親の背に乗って空を飛ぶと、決まってソラマメが寒い寒いと泣くからだった。寒い、お父もう降りて、抱っこがいい――

     ソラマメは無理に笑った。乾いた笑い声にアルの目付きが一瞬変わったけれど、すぐ何事も無かったかのように元の黒豆に戻った。あまり、父さんのことは思い出さないようにしよう、とソラマメは思った。友達の前で、あまり憂鬱に浸っていたくはなかった。
    「最高の勲章だよ。今のところ」
     気分を切り替えて明るい声を出す。アルはすぐ目をキラキラさせて、「すごいや!」と本当に嬉しそうに言った。そこに嘘が見当たらなくて、ソラマメは却ってドギマギした。

    「すごくないよ。貰ったのは父さんだから」
     誰も貰ってないけど、銀の上に金の豆勲章ってのがあるんだから。
     そう言おうとしたはずなのに、ソラマメの嘴は勝手に別の言葉を紡ぎ出していた。そこに畳みかけるように、アルの言葉が続く。
    「じゃあ、ソラマメは金の豆勲章を目指さなきゃな」
     ソラマメは流れのままに、頷いた。そして顔を上げて……まるで天井に頭をぶつけたみたいに、重い衝撃を感じた。

    「無理だよ!」
     気付いたら、ソラマメの口から大声が出ていた。夢から覚めたみたいに、妙に頭が冴えていた。ぶつけた頭は何もなくて、でも脳みそだけブルブル震えている気がした。さっき多分、僕の脳みそが現実の壁にぶつかったんだ。でも、自分の大音声で震えている気も、した。

     巣箱の壁は、薄い。後で隣近所から絶対怒られると思いながら、ソラマメは叫び続けた。さっきの白昼夢を打ち壊して、なかったことにしたかった。
    「無理だ。父さんでさえ銀だったのが、僕に金なんて。英雄だなんて呼ばれてるけど、それでも銀だったんだ。
     僕には無理だよ。僕は、出来損ないの、飛べもしないピジョンなのに!」
     喉に絡まった最後の言葉を必死で吐き出すと、ソラマメはぐっと空気を飲み込んだ。ビィン、と何か響いているような、響き合ったのが互いに打ち消しているような、まがい物の静寂が巣箱に訪れた。

     アルと目が合う。何にも動じなかったはずのアルの目に、静かな怒りが宿っていた。その後ろには銀の豆勲章があった。まるで、守られるように。
    「……何だよ、それ」
     声こそ落ち着いていたが、目は真っ直ぐにソラマメを射抜いた。怒ってるのに泣きそうだった。変な奴だとソラマメは思った。

    「どうして諦めてんだよ! お前には立派な羽があるじゃん! オレよりずっと空に近いのに、なんで自分には無理だって思うのさ」
     アルの嘆願のような台詞を、ソラマメは聞き流した。そして、わざと笑う。自分は本当に嫌な奴だと思った。
    「アルこそ、空を飛びたいの」
     アルは黙って頷いた。泣きそうに見えるのに、中々涙を流しはしなかった。ソラマメは当たり前のように、言う。
    「無理だよ。イーブイに空なんて飛べるもんか」
    「飛べるよ! ドードリオだって空を飛べるじゃんか」
    「イーブイには無理だよ」
    「無理じゃない!」
     返された定型句に、ソラマメはまた「無理だ」と返して泥沼になるんだと思った。でも、それより先にアルが叫んだのだ。

    「願わなきゃ、願いは叶わないんだよ!」



     ― 父 ん、  で帰っ

       願わなきゃ、願ってなきゃ、もしも

    「願ったって叶うもんか!」
     奇妙な間が空いて、誰かが叫んだ。それが自分の叫びだということに、ソラマメが気付くのに随分時間がかかった。

     気付いた時はもう遅かった。
     はあ、とため息をついた。アルの言葉はソラマメの触れてほしくない場所に触れた。けれど、アルはソラマメを傷付けようと思って喋ったわけではないのだ。それが分かるのに、ソラマメはアルを許したくなかった。許した方がいいのに、簡単に許すと言えるほど、アルの言葉は軽くなかった。

    「明日も早いし、日も沈んじゃうから、寝るね」
     おやすみ、とソラマメは機械のように返事をした。アルは寝床の藁を避けて、部屋の隅で縮こまっている。思い出して巣穴から外を見ると確かに暗くて、すぐにも目が効かなくなると、頭のどこかで理解した。

     カツカツ、とソラマメの爪が木の床に当たって音を立てた。体が前かがみになり、嘴が藁を取る。はみ出た藁を寝床に戻す作業に、ソラマメはいっとき集中した。
     その内作業出来ないほど暗くなったので、ソラマメは足先で探って寝床に潜った。藁の中は暖かいが、父さんの羽毛には敵わない。そんなことを思いながら、ソラマメは無意味な夢を見ようと瞼を下ろした。



    「おはよ、ソラマメ」
    「……おはよう」
     次の朝、ソラマメとアルはギクシャクしたまま城に向かった。途中、メインストリートに出る一歩手前の所で、アルが立ち止まった。
    「ソラマメ」
    「ん?」
     ソラマメも立ち止まる。アルを振り返ろうとは思わなかった。
    「ごめんな」
     昨日のことか、と思った。アルは謝っている。ここで快く許すのが、大人の対応で、アルは大人なんだろうとソラマメは思った。許せばいい、と分かっているけれど、そう出来るほど、あの言葉は軽くない。そこだけは、ソラマメは子どもでいたかった。だから、
    「どうでもいいよ」
     投げた。
     歩き出す。アルの足音が後ろでしていた。

     問題ごと投げて、なかったことにする。どうして自分はこう、卑怯なんだろうと思ったけれど、怒っているから当然の権利だとも思えて、余計に自分が嫌になった。

     それからいつも通り、門を開けてもらい、訓練をして、ドードリオ曹長から叱責を浴びた。いつもの訓練が終わって、いつものように帰ろうとした矢先、曹長に呼び止められた。用向きを尋ねると、黙って付いて来いと言う。
     なんだろう。二等兵にでも転落するのだろうか。長い足で歩いて行く曹長に置いていかれないよう、足を出来るだけ素早く動かした。アルに「用事あるから、帰るよ」と言われたのだが、それも上の空で頷いてしまった。なんだろう。ソラマメがあまりにも役立たずなので、除隊とか。三曹には新人だけど見所があるのでアルがなるとか。なんだろう、悪い可能性しか浮かんでこない。

     急に曹長が立ち止まった。ソラマメはうっかり曹長の長い足にぶつかるところだった。慌てて三歩下がったところで、曹長が振り向く。真ん中の顔が、怒っているような泣いているような変な顔になっていた。
    「聞いたか、ソラマメ」
    「何をですか?」
     ソラマメの返事に、ドードリオは困った風に「それは」と言い淀んだ。

     と、泣いている首が真ん中の嘴をコツコツ叩き、何か囁いた。真ん中は何事か考え込んでいたが、怒っている首に頭を啄かれて「じゃあ話そう」と口火を切った。

    「最近、盗賊が国に入り込んだらしい、という話は聞いたか?」
    「いいえ……」
     正確には、聞いていない、というより、泥棒が国に入り込むのは日常茶飯事なので、取り立てて話題になるような話は聞いていない、だった。
     ソラマメの意図は正しく伝わっていないと思うが、それでも問題なく意思疎通が出来ることもある。
    「なんでも質の悪い奴らに“王冠”を盗まれたらしいのだ」
     王冠ってあの王冠ですか、と質問しそうになるのを、ソラマメは慌てて取り止めた。王冠、と言われれば、この国ではひとつしか示さない。国王が代々受け継いできた、“聖なる豆”が埋め込まれた純金の冠。
    “聖なる豆”の価値はともかく、冠が純金製なので今までも泥棒に狙われてきたらしい。その為、特別な儀式の時以外、厳重なセキュリティーの下で保管されているのだ、と何度も聞いたことがあった。
    「それが、盗まれて、それで?」
    「我々の中にその盗賊がいると思われているのだ」
     そこまで言うとドードリオ曹長の真ん中が眉間に皺を寄せた。この陸軍は他所から来た者たちの吹き溜まり、他の国にいられなくなった奴らが流れ着く場所みたいなところがあるから、それも仕方ないんじゃないかとソラマメは思う。でも、ドードリオ曹長はそんな当たり前のことで頭を痛めている。けれど、鳩でもないドードリオ曹長が陸軍にそんな思い入れを持っているのは、どこかチグハグなことに思えた。

    「ソラマメ三曹。君は我が隊で唯一の鳩だ」
     改めて、三つの首を合わせて放たれた言葉に、ソラマメは「はあ」と気の抜けた返事をする。
    「君にミッションを頼みたい」
     ぐい、と全部の頭で一度に迫られて、ソラマメはつい「はい」と答えてしまった。



    (って言われてもなあ)
     ドードリオ曹長から解放された後、ソラマメは当てもなく城下をさまよっていた。
     ミッションの内容は、本物の盗賊を捕まえて陸軍の無実を晴らすこと。
     でもどうしろってんだ、とソラマメは心の中で毒づいた。ただの盗賊ならそこら辺にいるだろうし、当たりの盗賊を捕まえてもしらばっくれられて終わりだろう。大体、ソラマメに盗賊を捕まえる技量があるかどうか微妙なところだし、第一本当に陸軍の誰かが盗賊だったらどうすんだよ。

     毒を吐くだけ吐くとソラマメの心は落ち着いた。とりあえず情報収集にかかろうと決めて、その辺りで一番大きい豆屋に向かうことにした。ピジョットおばさんの人脈に頼る手も考えたが、鳩の良いおばさんを、こういうきな臭いことに巻き込みたくなかった。それに、頼りたくなかった。
     砂粒を数えながら、豆屋に向かう道筋を取る。歩くにつれて、鳩の姿が目に見えて多くなる。ポケモンの数は多いというのに、鳩以外の種族は中々見つからなかった。
    (陸軍唯一の鳩、か)
     ソラマメは曹長の言葉を反芻した。ソラマメは鳩だから、この国での信頼はある。他の連中は、鳩じゃないというだけで疑われる。曹長も、アルも。

     ソラマメは頭を振ると、豆屋に入っていった。前後ではなく左右に頭を振ったので周りの鳩が驚いたが、もう慣れっこだった。



     結局。
     ソラマメは、ため息を吐き出しながら家路につくこととなった。
     収穫は見事に無し。強いて言えば、大きな豆屋で豆十種詰め合わせを買ったことぐらい。
     素人がちょこっと動いたぐらいじゃ、どうにもならないんだとソラマメは思った。捜査とか治安維持とかも、この国では軍がやる。けれど、そこからソラマメの属する部隊はしっかり弾かれている。そういう任務を与えられるのは、鳩だけだ。

     鳩、鳩、鳩。鳩ばっかだな、この国は。
     鳩の何が偉いのだろう。昔は何となく優れていると思っていた。でも、いざ改まって理由を問われると、弱い。
     それは、ソラマメが弱いからだ。

     思い当たった理由に目を塞いで、ソラマメは巣箱に掛けた縄梯子を一段、一段とゆっくり登っていった。ふとすると嘴が滑って、爪先は段に引っ掛けたまま宙ぶらりんになりそうだった。でも、それに耐えてソラマメは登っていく。それしかやりようがないからだ。

     最後の段に足を掛けて、巣箱の中に転がり込んだ時。ソラマメは目を閉じて、このまま眠ってしまおうと思った。難しい思考なんかなしにして、今は眠ってしまいたかった。



     夜中に目が覚めた。
     どうして目が覚めたのだろう、と寝ぼけた頭で思う。
     辺りは真っ暗で、ソラマメの目では何も見えそうになかった。一応、入り口から月の光が入って来てるみたいだ、とそれに気付くと、目が少しずつ光を感じ始めて、さっきまで真っ暗だったのが嘘のように部屋が明るく見えた。
     部屋の中で、見覚えのある小さい獣が動いていた。
    「アル?」
     呼びかけてから、まだ寝ぼけた声だと思った。ソラマメは、まだ半分夢の中にいた。

     アルが耳をピンと伸ばした。月明かりの中で、襟巻きの白は何故か光って見えた。何か探し物でもしてるみたいに、アルはゆっくり首を回した。たっぷりとした襟巻きが、少しずつ捻れて動く。何故光っているのか見ようと、ソラマメは瞬きをする。しかし、瞬きすると目は冴えるよりも眠くなる方になるみたいで、ソラマメはすぐ本格的に目を閉じることにした。
    「おやすみ」
    「おやすみなさい」
     その言葉が妙に艶かしく聞こえたけれど、夢の中で聞いた所為かもしれなかった。ソラマメは眠りに落ちる直前、襟巻きの白が眩しかったのは、量が多いからだと思った――



     夜明けを告げる鐘がなる。それを聞いて、ソラマメは今日もまた一日が始まったと思った。
    「ない!」
     起きるのとほぼ同時にソラマメは叫んだ。部屋の隅で眠っていたアルが飛び起きた。ソラマメはそのままの勢いで、叫び続けてしまった。
    「どうしたの?」
    「ないんだよ、銀の豆勲章が!」
    「えっ?」
     ソラマメは大慌てで部屋を探し回った。しかし、四隅と寝床を探して、もうそれが部屋のどこにもないことが分かってしまった。必死に寝床の藁を掻きむしった。しかし、願っても願っても、銀の豆勲章は藁の中から出てこない。もうこれ以上探す場所なんてないのに。

    「どうしよう」
     どうすればいいか分からず、ソラマメはただ呆然とした。あれは父の功績を讃える物で、ソラマメが同じように功績を上げたらというものじゃなくて、国王様に言ったらもうひとつ貰えないかなとかそういうんじゃなくて。
     胸に風穴が空いた感じがした。
    「どうしよう」とまたソラマメは呟いた。ある時は邪魔だと思っていた。でもなくなったら、というか、盗まれるなんて思っていなかった。巣箱はセキュリティーどころかプライバシーもない丸い出入り穴ひとつで、それでも家の物を盗まれたりなんてしなかった。泥棒が出没しだしたのは、この国が戦争に負けて、鳩以外を受け入れ始めてから。

     気付くと、藁はボロボロになっていた。床の木材にも爪痕が幾筋も走って、その切り傷の淵を埋めるように木屑と藁の欠片が沈んでいた。あ、銀の豆勲章がない、と思った。昨日の夜のことを思い出した。そして、恐る恐る顔を上げた。
     アルと目が合った。茶色の毛の向こうからでも、彼が青ざめたのが分かった。
     その時、ソラマメがどんな顔をしていたのか分からないけれど。



     銀の豆勲章が盗まれた話は、瞬く間に小隊の皆に知れ渡った。というか、皆同じ巣箱にいるのだから仕方ない。
     同じ隊の連中が怪しい、ということになって、第一小隊の全員が聴取された。取り調べに来た連中も例によって鳩、鳩、鳩だった。
     他の奴らのことは知らないけれど、大体が不愉快な思いをしたようだった。ヘルガーはいつまでもブツクサ言っていたし、ポニータ二曹はぐったりと廊下に座り込んでいた。タテトプスはかなりややこしい事情があって陸軍に流れ着いたらしいが、そのことで無茶苦茶言われたらしい。無論、鳩であるはずのソラマメも無傷では済まず、「質に入れたのを誤魔化してるんだろう」とまで言われた。

     タテトプスの隣で、ガーディだけは何故か元気で、余っているらしい正義感を振りかざしてバウバウ吠えていた。
    「っていうか有り得ないっすよね、鳩の奴ら! こんな可愛い女の子を苛めといて、ごめんなさいのひとつも言えないんすよ。おれが電気タイプならさくっとやっつけるのに」
    「うるさいぞ」
     そのガーディをたしなめたのは、一昨日豆屋にいたレントラーだった。最年長らしい彼も、多分嫌がらせを受けたのだろうが、それを感じさせない落ち着きぶりだった。ポニータ二曹が申し訳なさそうにレントラーを見る。曹長が呼び出しを食らっていない今、自分がたしなめるべきなのを済まなく思っているのだろう。と、レントラーの顔がソラマメの方に向いた。

     なんだろう、とソラマメは身構えたが、レントラーは何も喋らなかった。ちょうどその時、聴取を終えたアルが部屋から出てきたからだ。
     アル、と呼びかけることは出来なかった。アルもソラマメに話しかけようとはしなかった。
     アルの姿が廊下の角を曲がって消えた。
     それからソラマメの帰宅許可が下り、ソラマメはひとりでトボトボと巣箱に帰った。もう、砂粒を数える気にもならなかった。



     ピジョットのおばさんには会わなかった。ソラマメが彼女の挨拶に気付かなかったのかもしれないけれど、もうそれで良いと思った。
     相変わらず四角で、洒落っ気のない巣箱を眺めて、自分は帰ってきたんだな、と思った。隊の誰ひとり、曹長でさえ帰宅を許されなかったのに。アルなんて身柄を拘束されたのに。ソラマメだけがここに帰ってきた。鳩か、鳩じゃないか、それだけの違いで。

    (でも、アルのことは僕の所為だ)
     縄梯子の一段目に足を掛けたまま、ソラマメは思った。もしも、自分が相手の中傷に平気でいられたら。もしも、自分が「イーブイを見たような気がする」なんて言わなければ。あんなの、夢かどうかさえはっきりしなかったのに。

     ああもう、とソラマメは頭を左右に振った。それで驚く人は近くにいなかった。それでふと思い付いて、そういえばフーディンの爺さんどうしたんだろうと思った。豆を賄賂にして追い出してくれるよう頼んだはずだった。もう追い出して住む人もいないけれど、一応様子を見るだけと称して、ソラマメは自称参謀フーディンの家の中を覗き込んだ。本当は何かやって気を紛らわしたいだけだと、自分で分かっていたけれど。



     中にはポケモンが三匹いた。
    「そうじゃなくて、あのイーブイが何故捕まったか分からない以上、品物はここに置いていくべきだと」
    「全部持ってっちまえふはははは」
    「そうよ。もうこの国はおさらばするんだから固いこと」
     会話は実に変なところで止まった。丸い穴から中を覗いたソラマメに、三匹は時間差で気付いた。同時に気付かれたらとりあえず逃げるところを、順番こだったので逃げるタイミングを失ってしまった。

    「食らえ、エアスラッシュ!」
    「ばかっ」
     三匹の内の、見慣れたハトーボー――明らかに寮母さんが最初に動いた。見境なしに放たれた風の刃が、遠慮なくソラマメに当たって弾き飛ばした。

     ソラマメの体がありがたくないことに宙を飛んで、地面にぶつかる。仰向けに転がって何とか羽をばたつかせて起き上がる。巣箱から、自称参謀フーディンが出てきた。
     ぐにゃ、とフーディンの手のスプーンが、蝋みたいに変形した。
    (来るか?)
     ソラマメは両羽で顔を覆った。こういうのがエスパー技相手にどのくらい意味があるのかは分からないが、何故かソラマメの後方で爆発音がした。

    「間違えた。シャドーボールやっちまったわい」
    「何やってんのよボケジジイ!」
     その後ろからハトーボーが、目を血走らせながら出てきた。理由は分からないが、火を吹きそうな勢いで怒っている。
    「だからっ! さっさと逃げようって言ったのに! 『品物ちょっと置いてあの新参イーブイに罪着せよう』、なんてややこしいこと言うから!」
    「わしじゃないよー」
     フーディンは変形したスプーンの先を指先でしきりにつついた。まるで駄々をこねる子どもみたいに、ソラマメには見えた。フーディンの癖に知性が感じられないし。特に目付き。

     フーディンとは逆に、今にも生物を射殺せそうな目付きでハトーボーが言った。
    「もー、銀の豆勲章盗った時点で逃げたらいいじゃないの! 何よ安全弁って! そんなことするから逃げるのが遅くなったんじゃない!」
     便利な犯人だとソラマメは思った。黙っているだけなのにどんどん自白してくれる。
    「もう、いっそのことこいつを犯人代わりにして」
    「それは良くない」
     艶かしい、よく通る声がした、と思ったら、ソラマメの体が地面を擦りながら南に移動していた。かなり痛い。

     また仰向けに倒れたソラマメの上に、幼い、女の子の顔が出現した。茶色の体、長い耳、白いたっぷりとした襟巻き。今ではソラマメにも見慣れた種族、イーブイだ。
     けれど、アルじゃない。
    「今はこの国も周囲と国交を結んでいる。国外に逃げても手配されるわ。適当なハズレを掴ませる方が効率が良い」
     ハトーボーの方を見て、言う。そしてフフ、と笑った。
    「私はふたりに脅されて協力していただけ。あなたに技をぶつけたけど、それは不本意。ね」
     顔に似合わない成熟した声に、もっと聞きたいと思ってしまうようなイントネーションが組み合わさっていた。
     顔と声が合致しないイーブイは、なおも喋る。少しソラマメに顔を近付けて、小さな声で。
    「私はこの場を去るわ。逃亡の好機を手にした、という理由で。しばらくはこの国にいるけど、もちろん探したって無駄。あのドードリオでも、イーブイでもね」
     そこまで言うと、イーブイは口元に暗い塊を溜め始めた。げ、シャドーボール、と思ったが別にダメージはないから大丈夫じゃん、とそこまでは考えが至ったのだが、あと一歩足りなかった。

     うぎゃー、と可愛くも何ともない悲鳴が上がる。フーディンジジイのだろう。確かにソラマメにダメージはなかったが、シャドーボールが地面に当たって砂を巻き上げ、辺りは砂の霧で覆われたかのようになった。ソラマメは両手で顔を覆って砂で出来たスコールに耐えた。翼に当たる感覚がなくなって、ソラマメは目を開く。少しの砂埃は無視して起き上がる。
    「くそっ」
     ソラマメは舌打ちした。予想通り、さっきの顔声不一致イーブイは姿を消していた。盗賊のひとりをまんまと逃がしてしまったのは、腹が立つ。

     でも、まだいる。

    「きいーっ! もうこうなったら逃げるわよ! ジジイ、ほら、テレポート!」
    「初期位置をここに設定したので使えませーん」
    「もーっ、役立たず!」
     単なるヒステリーババアと化したハトーボーは、フーディンの両肩のがっしりした部分を掴むと、羽を強烈に羽ばたかせて空に舞い上がった。
    「ふ、ふーんだ。空を飛んで逃げたらアンタ、追ってこれないでしょ。それに」
     フーディンがどこに持っていたのか、手妻のように銀の豆勲章を取り出した。
    「こんなの、あんたが持ってたって宝の持ち腐れなんだから!」
     じゃあね! と吐き捨ててハトーボーは向きを変えた。
     離れていくふたりに、ソラマメは「待て」という陳腐な台詞しか吐けない。ソラマメは飛べない。追いつけやしない。
     父さんが唯一残したものが、遠ざかってしまう。ソラマメが飛べない所為で。ソラマメが銀豆の御曹司に相応しくないピジョンだから、遠くなってしまう。

     ソラマメは諦めるしかなかった。

    「何やってんだよ! 行くよ!」

     聞き慣れた声がした。ここにはいないはずなのに、何故か彼がすぐそばにいた。
    「立てよ、ソラマメ! 早くしないとあいつら逃げちゃうぞ」
    「でも、なんで?」
    「ごめん、それ後で。はい、乗った乗った!」
     アルはいつもと変わらない様子で、ちゃっちゃとソラマメをアルの下側の棒に括りつけた。アル自身は既に上側にある棒にそれなりの柔軟さを保持して固定されている。
    「これは、もしかして」
     ソラマメは首を回してアルのそのまた上側を見た。こういう時、鳥は首が回るので便利だ。
     便利に見られただけで、理解は追いついていないが。
    「もしかしなくてもグライダーだろ」
     細い、蜘蛛の糸のような骨に真っ赤な布が貼り付けられている。形も何だが鳥っぽいが、飛ぶのかこれ?
    「飛ぶよ!」
     アルの合図はそれだけで、間髪入れず彼は後ろに向かって何かの技を飛ばした。爆発音を置土産に、グライダーは斜め三十度の高さに発射された。風が顔を激しく叩いた。気付いたらソラマメは棒を両羽でしっかり抱き締めていた。

    「これ、知人に手伝ってもらって作ったやつ。イーブイでも飛べるだろちょっとセコイけど!」
     アルはまた「加速する!」とだけ合図して、何かの技を後方に放った。ソラマメは首を回して見る。光る弾が高速で後ろへ流れて行くのが見えた。スピードスターだ。

     真っ赤なグライダーはグングン加速して、盗賊コンビに並んだ。そこでもアルは優しいのか、
    「観念してよ! とにかく勲章を返して欲しいんだ」と犯人に呼びかける。
     それが徒になった。

     フーディンがスプーンの一方をこちらに向ける。と思う間もなく、グライダーは大きく傾いた。どうにか体勢を戻せないかと考える隙も与えられず、第二撃を受けてグライダーは虚しく落下した。
     グライダーの赤い羽がぐるりと回り、その先が狙い打ったように木の枝に刺さった。反対側の羽も良く繁った木の枝に受け止められ、木が折れそうだが何とか、というところでアルとソラマメの体を受け止めきった。グライダーとソラマメの間に挟まれたアルはかなり痛そうではあった。
     うまいことグライダーがクッションになってくれたから良いものの、そうでなかったらふたりとも大怪我するところだった。グライダーが大怪我だが。
    「これじゃ、飛べない」
     ほとんど落ちるように着地してから、ソラマメはグライダーを見上げて言った。赤い翼には大穴が開き、そこを支点にして木の枝にぶら下がっているようだった。

    「でも、行かなきゃ」
     ソラマメの隣にストンと着地したアルは、素早く周囲を確認した。ハトーボーとフーディンを見つけると、そちらを見たまま木を伝って手近な二階建ての上に飛んだ。
     そして、銀色を帯びた光の帯を盗賊に撃ち出す。帯は蛇のようにうねりながら盗賊に近付いて、パッと散開した。銀の五芒星。

     アルが撃ち出した星はそれぞれが銀砂を撒きながら、ハトーボーたちを包囲するように動いて連続で敵にぶつかっていった。しかし、良く見ると半分以上が壁のようなもので打ち消されていた。
    「こっからじゃ遠すぎる」
     アルは二階建ての上からソラマメ目がけて、ジャンプした。
    「やっぱりもっと近付かないと。ソラマメ」
     彼の目が黒豆みたいだ、と思ったのはいつのことだろう。アルの目はソラマメを確と見据えて、決意していた。それはもう黒豆みたいな可愛らしい目ではなくて、落ち着いていて、けれど猛々しい目だった。
     アルが何を望んでいるかは分かっている。

    「でも、無理だよ」
     ソラマメは答えた。アルが求める答えじゃない。なのにアルは、にっこり笑って、ウインクまでしてみせた。
    「無理かもしんないけど、少なくともオレよりは空に近い。だろ?」
     言い終えるとすぐ、アルはちらりとグライダーに目を走らせた。一瞬、名残惜しそうに見えた。しかし、再度盗賊の位置を確認すると、アルは四本の足をバネにして飛び上がった。木に乗り、枝をしならせて隣の建物に飛んだ。そこから隣接する建物へと飛んでいく。アルはあっという間に見えなくなった。

     アルがいなくなると、ソラマメはひとりになった。
     空を飛べという者もいない。空を飛びたいという者もいない。極めて静かだった。そしてこのまま、ソラマメは父の遺品を失う。アルは落ち込み、しかしそれでも巣箱での日常は変わらない。思い出がちょっと失くなるだけだ。

    「ああもう、くそっ」
     ソラマメは格好悪くバタバタと走り出した。アルが辿った建物を確認しながら進む。
     後ろでグライダーが木から落ちたような音がしたが、ソラマメは振り返らなかった。

     羽を動かす。出来るだけ、速く、強く。地面を蹴って飛び出す。まだ駄目だ。また走る。

     どうしようもなく懐かしい感覚が、ソラマメの中に蘇ってきた。羽を動かす。もっと速く。これは明日大胸筋が筋肉痛だと思いながらも、羽ばたく。

     風が吹いた。思わず、ソラマメは風に乗っていた。

     ひゅう、と歓声が口から漏れた。羽の向きを変えると面白いように進んだ。下を見る。高度が足りないな、と感じて、手頃な上昇気流に乗る。カメラで倍率を変えた時のように、町がくいっと小さくなった。
     そして、少し寒いな、と思った。けれど、震えるほどじゃない。昔々、寒いからと父親に抱っこをねだっていたちびポッポは、もういないのだ。

     もう自分の羽で飛べる。自分の身も守れる。

     ソラマメは体の向きを変え、勢いを付けて滑空する。目指すは、空色のスカーフをしたイーブイ。
     敵は背の低い建物が多いエリアに逃げ込んだようだった。アルの攻撃は全く届いていない。しかし、相手の攻撃は届くのだから、アルの側が絶対的に不利だ。このままでは。
    「アル!」
     ソラマメの呼びかけに、アルが振り向く。ぱあっと顔が明るくなった。
    「飛べたじゃん! やったな!」
    「早く乗りなよ」
     さっきまで勲章を取り戻すのに躍起になっていたのはどこへやら、アルはもう既に大喜びしている。
    「いいの? いいの、やったあ!」
    「あれ、取り返すから」
     そう言って、アルを背に乗せて飛び立つ直前に、アルの嬉しそうな顔がまた見えた気がする。さっきのように羽ばたく。けれど、有人飛行は勝手が違う。いくら羽ばたいてもスピードが出ないし、上にも行けない。

     合流して却って失速した彼らに、上から容赦なしのエアスラッシュが降り注いだ。
    「もうこんぐらいでいっかあ」
     ハトーボーの、すっかり枯れた声がする。ずっと叫んでいたのか。対するフーディンは「肩が痛いよー」と繰り返している。
     ハトーボーは枯れた声で怒鳴った。
    「もう、いいでしょ肩ぐらい! それより銀よ! 換金するのよ!」

     ソラマメの堪忍袋の緒が切れる音がした。
     音と同時に、鍛えた足で屋根を蹴りつけて、ソラマメは一気に上昇した。あっという間に距離を詰められて間抜け面を晒している二人組に、ソラマメは引導を渡す。
    「僕の思い出、勝手に売り飛ばすなよ! 食らえ、暴風!」
    「じゃ、オレもとっておきの技出すよ」
     ソラマメの羽ばたきひとつで生まれた荒れ狂う竜巻に、ハトーボーはあっさり飲み込まれた。サイコパワーを駆使して暴風の渦から逃げたフーディンに、アルが痛恨の一撃を食らわして銀の盾もあっさり奪還する。そのままだと落下するアルの下に上手く滑り込んで、ソラマメはアルを受け止めた。
    「ありがと!」
     アルの言葉に、思わずソラマメは「こちらこそ」と答えた。

     別地点に墜落したハトーボーとフーディンを集め、軍に連絡して散々待たされた後、盗賊たちは御用となった。
     逮捕の手続きに付き合っている間にどっぷりと日が暮れるだけならまだしも、その日中に手続きが終わらず、次の日に持ち越しとなってしまった。でも、大事な物は戻って来たからいいか、とアルとふたりで笑いあった。陸軍第一小隊の容疑もとりあえず晴れたので全員無罪放免、明日から訓練なのは大変だけど、でも、前ほど憂鬱には感じなかった。

     その日は駐在所に泊まった。いつもの巣箱から夜明けを告げる鐘とは逆向きに進んだ所だったが、そこでも鐘の音はよく聞こえた。
     こんなにいい音だったんだな、とソラマメは思った。前は、暗い重低音だと思っていたのに。アルにそう言うと、「そりゃ、いいことがあったからさ」と黒豆みたいな目で言った。

    「そういえばさ」
    「ん?」
     ふたり、駐在所を出て太陽を仰いだ。いつもと違う角度から見る朝日が、城を照らし始めていた。
    「どうして銀の豆勲章を取り戻すのにこだわったんだい? 言っちゃなんだけど、君とは関係ない、よね?」
     失礼とも取れるソラマメの問いに、アルは鷹揚に笑って答えた。そう、こいつはそういう奴なんだ。
    「だって、友達だろ」

     夜明けを告げる鐘が鳴る。ソラマメの隣には、誇らしげに空色のスカーフを巻いたアルがいる。
     朝焼けの中で、ばかでかい鳩が翼を広げる。ソラマメも翼を広げる。今日もまた、新しい一日が始まる。





    【何してもいいのよ】

    思うところあって、サイト名を「イーブイの空を飛ぶ!」から「ピジョンの空を飛ぶ!」に変更することにしました。それにともないメインストーリーも変更。それの第一話です。
    イーブイ好きの方には申し訳ありませんが、変わらぬ愛顧をお願いいたしますw

    という四月馬鹿でした。お付き合いいただき、ありがとうございました。


      [No.2342] ごちそうさま 投稿者:マメパト   投稿日:2012/04/01(Sun) 12:01:50     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    グラエナさん、いつもお掃除ありがとう。
    鴨鍋はおいしかったですよ。


      [No.2341] 【エイプリルフール】技と暮らす 春の1時間スペシャル【他力本願スレ】 投稿者:門森 輝   投稿日:2012/04/01(Sun) 11:58:18     96clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ※色々とカオスです。他作品のパロディ等も含んでおります。

    アナウンサー『テレビをご覧の皆様お元気ですか……? 技と暮らすのお時間がやって参りました。本日は1時間スペシャルとなっております。まずは「ぜったいれいど」を皆様と勉強いたします。それでは早速本日も、ヒウン大学教授のワザマ シン先生をお招きしたいと思います』

    ワザマ『ワザマでございます……。さて、ぜったいれいどですがこれは強力な冷気で相手を一撃で瀕死に追い込む実に冷たい技です。日常での効果的な使い方といたしましてはね、化学の試験で気体の状態方程式の問題が出た様な場合ですね、すかさずこの技を使いますと、理想気体の体積を0にするという効果を発揮しますね』

    アナウンサー『なるほど……。勉強になりましたね。続いては「このゆびとまれ」を勉強いたします』

    ワザマ『ワザマでございます……。さて、このゆびとまれですがこれは相手の攻撃を自分に引き付けるという、実に目立ちたがりな技です。日常での効果的な使い方といたしましてはね、例えばかくれんぼでもしようかと思ったけど人が集まらないって事、ございますでしょう? そういった場合ですね、すかさずこの技を使いますと、仲間はずれにされている場合を除いて高い効果を発揮しますね』

    アナウンサー『なるほど……。勉強になりましたね。続いては「こうそくスピン」を勉強いたします』

    ワザマ『ワザマでございます……。さて、こうそくスピンですがこれは自らが回転して攻撃するという大変目の回る技です。日常での効果的な使い方といたしましてはね、例えばフィギュアスケートなどで高い評価を得たい場合ですね、すかさずこの技を使いますと 大変高い効果を発揮しますね』

    アナウンサー『なるほど……。勉強になりましたね。続いては「とおせんぼう」を勉強いたします』

    ワザマ『ワザマでございます……。さて、とおせんぼうですがこれは相手の逃げ道を封じて逃げられなくする、大変に迷惑な技です。日常での効果的な使い方といたしましてはね、自分の店に入ってくれたけどなかなか買ってもらえない、そういった場合ですね、すかさずこの技を使いますと、合法かはともかく、非常に高い効果を発揮しますね』

    アナウンサー『なるほど……。勉強になりましたね。続いては「みがわり」を勉強いたします』

    ワザマ『ワザマでございます……。さて、みがわりですがこれは自分の分身を作って代わりに攻撃を受けてもらうという実に無責任な技です。日常での効果的な使い方といたしましてはね、例えば死刑になったがどうしても行きたい用事がある、そういった場合ですね、すかさずこの技を使いますと、友人が身代わりになってくれるという効果を発揮いたしますね』

    アナウンサー『なるほど……。勉強になりましたね。続いては「ものまね」を勉強いたします』

    ワザマ『ワザマでございます……。さて、ものまねですがこれは相手が最後に使った技が使える様になるという実にオリジナリティのない技ですね。日常での効果的な使い方といたしましてはね、急に一発芸を振られる事って、ございますでしょう? そういった場合ですね すかさずこの技を使いますと、あなた次第で大変な効果を発揮しますね』

    アナウンサー『なるほど……。勉強になりましたね。続いては「やきつくす」を勉強いたします』

    ワザマ『ワザマでございます……。さて、やきつくすですがこれは相手の木の実ごと燃やしてしまう大変残虐な技です。日常での効果的な使い方といたしましてはね、探し物がなかなか見つからないって事、ありますでしょう? そういった場合ですね、すかさずこの技を使いますと、探し物が燃えない物の場合のみ大きな犠牲を伴って大変優れた効果を発揮いたしますね』

    アナウンサー『なるほど……。勉強になりましたね。続いては「あやしいかぜ」を勉強いたします』

    ワザマ『ワザマでございます……。さて、あやしいかぜですがこれは自分の能力が全て上昇する事がある、実に奇怪な技です。日常での効果的な使い方といたしましてはね、会社を休みたいのに今までに親戚が不幸に遭いすぎているって事、ございますでしょう? そういった場合ですね、すかさずこの技を使いますと、失敗した時のリスクは大きいですが会社を休める上に心配してもらえるという、一石二鳥の効果を発揮しますね』

    アナウンサー『なるほど……。勉強になりましたね。続いては「はきだす」を勉強いたします』

    ワザマ『ワザマでございます……。さて、はきだすですがこれは蓄えた物を吐き出して攻撃するという大変によろしくない技です。日常での効果的な使い方といたしましてはね、飲み会などで飲み過ぎて具合が優れない様な場合ですね、すかさず……ではなく場所を選んでこの技を使いますと、体調が少し回復するという効果を発揮しますね』

    アナウンサー『なるほど……。勉強になりましたね。続いては「ふくろだたき」を勉強いたします』

    ワザマ『ワザマでございます……。さて、ふくろだたきですがこれは相手1体を味方と共に攻撃するという、実に卑怯な技です。日常での効果的な使い方といたしましてはね、夢の煙が必要だがなかなか手に入らない、そういった場合ですね、「おら! 夢の煙を出せ!」と言いながらこの技を使いますと、引くに引けない結果が訪れますわねホホホ……』

    アナウンサー『なるほど……。勉強になりましたね。続いては「かたきうち」を勉強いたします』

    ワザマ『ワザマでございます……。さて、かたきうちですがこれは前のポケモンが倒された時に使うと威力の上がる大変正義感の強い技です。日常での効果的な使い方といたしましてはね、「オトートノカタキヲトルノデス!」と決意する事って、ございますでしょう? そういった場合ですね、すかさずこの技を使いますと、一番良い効果を発揮いたしますね』

    アナウンサー『なるほど……。勉強になりましたね。続いては「みねうち」を勉強いたします』

    ワザマ『ワザマでございます……。さて、みねうちですがこれは相手の体力が必ず1以上残るという、大変心優しい技ですね。日常での効果的な使い方といたしましてはね、例えば殺したい程憎い相手がいるって事、ございますでしょう? そういった場合ですね、すかさずこの技を使いますと、気絶させる事なく苦痛を与え続ける事が出来るという効果を発揮しますね。さらにこの技でなくとも攻撃後に「やったか!?」と発言する事によっても、同じ様な効果を発揮いたしますね』

    アナウンサー『なるほど……。勉強になりましたね。続いては「フリーフォール」を勉強いたします』

    ワザマ『ワザマでございます……。さて、フリーフォールですがこれは相手を空まで連れ去ってから地上に叩き落してしまうという、ドラマティックな技です。日常での効果的な使い方といたしましてはね、とある博士の頭の中に爆弾が! って事、ございますでしょう? そういった場合ですね、許しを請いながらこの技を使いますと、大変に高い効果を発揮しますね』

    アナウンサー『なるほど……。勉強になりましたね。続いては「ダストシュート」を勉強いたします』

    ワザマ『ワザマでございます……。さて、ダストシュートですがこれはゴミを相手に当てて攻撃するという実に汚らしい技です。日常での効果的な使い方といたしましてはね、例えば道端にゴミが落ちている様な場合ですね、すかさずこの技を使いましてダストを手頃なゴミ箱にシュゥゥゥゥゥゥゥゥ! 超! エキサイティンな効果を発揮しますね』

    アナウンサー『なるほど……。勉強になりましたね。さて、本日の「技と暮らす 春の1時間スペシャル」終了のお時間がやって参りました。それでは皆様、また次回お会いしましょう。さようなら』


    ――――――――――――――――――――――――――

     エイプリルFOOOOOOOOOOOOOOOOOOOL! ごめんなさいごめんなさい。色々とすみません。カオスなのは仕様です。最後の方とかワザマ教授のキャラ崩壊してますね。嘘講座書こうとしてたんですけどね、こういう方向に落ち着きました。でも嘘っちゃ嘘ですよね。心残りとしてはもう少し長く書きたかったんですけど、エイプリルフールに間に合わせる為に断念した事ですかね。3時間スペシャルにでもしようかと思ったけど1時間に。あれ1つの技の解説どれ位の時間なんでしょうね。またネタが貯まり次第書いてみたいです。
     と言う訳で他力本願スレよりきとらさんの技講座を書かせて頂きました。ごめんなさい。真面目な講座はきっと別の方が(ry
     当初はエイプリルフールはポケナガの嘘ネタ投稿する予定だったんですけどね、発売前に書いたものですからコレジャナイ感が凄まじくてですね、没となりました。
     とにかくですね、いずれまた書いてみたいですね。真面目に書く気はありませんが。
     
    【書いてもいいのよ】
    【描けるはずがないのよ】
    【お好きにどうぞなのよ】
    【こんな番組で大丈夫か?】
    【ワザマ教授、お許し下さい!】
    【超! エキサイティン!!】


      [No.2340] 逃がすだなんて酷い話だ 投稿者:ピッチ   投稿日:2012/04/01(Sun) 10:55:22     85clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     育て屋の扉に、やたらとカラフルで扇情的なイラストのポスターが貼られるようになったのは、半年ほど前のことだ。
     ディフォルメされたタツベイが崖から飛び降り、下で溢れかえっている仲間に頭をぶつけているもの。過剰とも思えるほどにやせぎすに描かれたキモリが、少ない餌を奪い合って無数の仲間と喧嘩をしているもの。ふんぞり返って餌を独占するたくさんのラクライに追われ、ラルトスやエネコが住処から出て行くもの。
     多くのバリエーションがあるが、そのイラストの上部に真っ赤なインクで印刷された文字はすべて同じだ。
    『ポケモン生態系保護法改正』
     その下に細かく、何月何日からはポケモンを何匹以上逃がすことは罰金や懲役の対象になりますだの、つらつらと規制が書いてある。同じことは腐るほどテレビでもラジオでも聞いてきた。この法律の施行は、もはや来週に迫っている。
     ああ、糞喰らえ。思わず足元に転がっていたミックスオレの缶を蹴り飛ばす。缶はそこらを自転車でひたすらに走り回っていたトレーナーのうち一人の前に落ちて跳ね返った。そいつはイラついた顔でこちらを睨むと、再びペダルをこぎ始める。その自転車の籠に、五つのポケモンのタマゴを載せて。
     この法律の目的は、俺達「廃人」と呼ばれる強さを至上とするトレーナー達の行為……つまりは、育て屋で同じポケモンのタマゴを大量に産ませてから、生まれた中で素質のない大半のポケモンを逃がすという廃人行為それそのものへの抑制だ。
     昔からこの行為は批判されてきた。生まれたばかりのポケモンを野に放つこと自体が残酷だとか、いいや人の手で生まれたポケモンは野生のポケモンよりも強いから生態系を壊してしまうだとか、その主張にはさっぱり一貫性がなかったが、批判されているという点でだけは同じだった。
     そして、世間の大多数は批判する側だった。当たり前だ。廃人行為は誰にでもできることではないし、そもそもする必要がある人間は限られている。そこまでして強さを求めなくてはいけない世界の住人は、この世にほんの一握りしかいない。
     しかしその世界にいる限り、廃人行為を行わなければ勝つことなどほとんどできない。特に、俺のようなトレーナーであるならば。俺は腰につけたモンスターボールの一つを手に取り、顔の高さまで掲げる。中には生まれたばかりの小さなエネコが一匹、丸くなっていた。
     エネコはコンテスト向きのポケモンだと言われる。進化してエネコロロになってもバトルでの能力はかなり低い方で、全く戦わない女トレーナーのペットになっているような場合も少なくない。
     だが俺はエネコが好きだ。だから、バトルフィールドでもずっとエネコを、エネコロロを使い続けた。その度相手は侮りを込めた目つきで俺のエネコロロを見て、適当にあしらえ、とばかりにやる気無く自分のポケモンに指示を出すのだ。
     その適当なあしらい方ですら負けてしまうことが悔しくて悔しくて、俺は意地でもこいつで勝ってやると決めた。
     エネコロロはどちらかと言えば補助技に長けたポケモンで、攻撃は他のポケモンが担当した方が効率がいい。ダブルバトルと交代制シングルバトルに焦点を絞り、エネコロロの相方となるアタッカーを求めていった。
     そのうち他の日の当たらないポケモンにも興味が出てきて、もしかしたら面白い戦い方ができるんじゃないかと考えて、そんなポケモン達も育てるようになった。
     そんなポケモン達を使いこなすためには、廃人行為による個体の厳選がどうしても必要になる。種族からして戦闘向きのポケモンならば多少厳選作業がなくとも、例えば攻撃能力だけ秀でていて、なおかつ戦闘の好きそうな個体を選べば戦える。しかし元々種族からして弱いのでは、そんなことではやっていられない。
     攻撃も防御も素早さも体力も、すべてにおいて最高レベル。そして戦闘が大好きだといったような天才がいないと太刀打ちなどできない。そして天才は、そうそう現れてくれるものじゃない。
     そのためにも厳選作業が必要なのだ。しかしこの法律は、そんなことを全く理解しないトレーナーや、もしくはトレーナーですらない連中の支持で通ってしまった。そういう奴から見れば、野に放たれる選ばれなかったポケモン達はそりゃあ可哀想だろう。
     だが俺は、バトル場において、種族だけで馬鹿にされているようなポケモン達はもっと可哀想だと思う。
     俺はエネコの入ったボールをベルトに戻した。こいつも、戦えるだけの天才ではなかった。こんなポケモン達が溢れかえって、俺のパソコンのボックスは何度もパンク寸前とほとんど空っぽの状態を行き来した。逃がしても逃がしても、天才を求める限り凡才は増え続けていく。そしてこれからは、天才を求めていくことももっと厳しくなるのだ。
     どうするか、と途方に暮れていると、こちらへ近づく人影が目に入った。ここは育て屋の前のはずなのに、俺にはそいつがどうも育て屋を利用するような人間には見えなかった。どちらかというと、例の法案に諸手を挙げて賛成しそうな感じの、家でぬくぬくと自分のポケモンと過ごすのが好きそうな中年のおっさんだった。
     手に持った大判の封筒。どうせ廃人批判のビラでも貼りに来たんだろ、と少しドアから離れて、何とはなしに様子を見ていた。おっさんは案の定封筒からビラを取り出して、ぺたぺたと手際よく育て屋の扉へ貼っていった。貼り終えるとおっさんはすぐに扉から離れて歩いて行く。途中のフェンスなんかにも同じようにビラを貼り付けながら。
     ビラの方に視線を戻して、そこから一度おっさんの後ろ姿を目で追おうとして、思わずビラを二度見した。そこに書いてあった文句は、俺の予想とは正反対の代物だったから。

    「ポケモン引取・飼い主マッチング代行業」

     その文字が目に入るや否や、俺はすぐさまあのおっさんの後を追っていた。







     おっさんは慌てて追いかけてきた俺にも慌てることなく、むしろこっちまで落ち着かされてしまうような温厚な態度で応対してくれた。ちょっと小太りなゴンベ似の見てくれから想像する通りの人物だった。
     俺はおっさんに連れられて、ポケモンセンターのカフェテリアまで来ていた。自販機で紙コップのコーヒーを買ったら、たまたまかおっさんも同じものを頼んでいた。
     話を聞いてみると何だかんだで俺みたいなトレーナーが結構いるらしく、そのせいで相手をするのにも慣れているとのことだった。
     周知期間が長かった分ぎりぎりまで対処を決められない方が多かったようでして、なんて聞くと案外ぐさっとくる。俺も似たようなものだ。半年なんて期間は、対処を決めかねているうちに案外あっさり過ぎ去ってしまう。だからといってどれくらいの期間があればよかったのかは、俺にははっきりとは分からないが。
     おっさんはそんな廃人達の間からポケモンを引き取って、ポケモン販売店や初心者用ポケモン配布所にポケモンを卸したり、はたまた個人でこのポケモンが欲しい、といったような要望に応えて、それで金を取っているんだそうだ。
     廃人達の好むポケモンはたいてい珍しいポケモンで、アチャモやキモリなんかの初心者用ポケモンも大量に産ませることが多い。初心者向けのポケモンでなくても、例えば中級者程度のトレーナーがタツベイなどを欲しがる時は、住処に行って捕まえてくるよりは廃人の知り合いから貰ってくる方を選ぶことが多い。
     そういう縁故のないトレーナーには確かに需要があるのだろう、と納得した。しかし同時に疑問も湧いた。
     俺の産ませているポケモンは、エネコだとかポチエナだとかジグザグマだとか、一部を除けばその辺で捕まえてこられるようなポケモンばかりだ。
     そんなポケモンでも引き取ってもらえるのか、と聞くと、おっさんは恰幅の良い体を揺らして笑った。
     曰く、そういうところにもちゃんと需要はあるのだという。タマゴから生まれたポケモンは野生のものより人慣れしているし、たいていが標準のサイズよりも小さくて危険が少ないから、まだトレーナーになれない年齢の子どもとのふれあいコーナーなんかに大層喜ばれるとか。ポチエナは、トレーナーでない人が番犬を欲しがるような時にいいのだとか。
     そして最後に、おっさんは言った。

    「私は、ポケモン達を逃がさなくてもいい道を探したいのです。逃がされて問題視されるポケモンがいる一方で、そうしたポケモンが欲しいと言っている人々がいる。逃がす方も欲しがる方もほとんどが個人ですから、その二人が結びつかないのが問題なのです。だから私は、そうしたマッチングができれば今回のような法律などいらなかったのではないかと考えています。
     私はそうした人々の架け橋になりたいのです」

     その言葉で、俺は決めた。この人にポケモンを預けてみようと。









     それから数ヶ月して、ようやく天才は俺の所にやってきてくれた。夢にまで見た、という表現がぴったりくるほどの、理想の個体だ。今そいつは、仔ポケモンのフリーランコーナーで、将来同じパーティメンバーとして戦う予定の、同じような天才達と一緒に無邪気に遊んでいる。
     その光景を見守っているのは、そのポケモン達の親だ。俺の周りにいるエネコロロやグラエナ、それにドーブルが、遊ぶ子どもたちを愛おしげに見つめている。
     まだこの子どもたちは、バトルすることを知らない。だがその動きを見ているだけでも、そこらの野生で見かけるような普通のポケモンとは違うのだと分かる。生まれて数日で、親にも勝るような足の速さを見せ、瞬発力でもきょうだい達に勝り、いつまで遊んでいてもばてることがない。
     思わず顔がにんまりと歪んだ。バトルフィールドの相手の顔が一瞬の驚愕と、遅れてやってくる激しい怒りと悔しさに、くしゃくしゃにひしゃげる幻が見えた。そしてもうすぐ、その顔が幻でなくなる日は迫っている。そう確信できた。

    「……何なのこの子、ちょっと、トレーナーはあなたなんでしょ?聞いてるの?」

     そこで、すぐそばから聞こえた棘のある高い声にふっと意識が現実に戻る。
     俺のエネコロロが、隣に座った女が膝に置くクリーム色と薄桃色のストールに擦り寄っていた。こら、と一声叱り飛ばして、俺はエネコロロを引き剥がす。
     これ高かったんだから傷ませないでよ、と女がこちらを睨み付ける。知ったことか。そんな大事なものなら、こんな場所に持ち込まなければいい。
     名残惜しげなエネコロロがストールをじっと見て、気を抜けばすぐにでもまた飛びかかりそうな様子だったので、俺は早々に移動を決めた。そういえばそろそろ、ポケモン達の食事の時間だ。
     ポケモン用の食事コーナーまで移動してくると、俺は持ち込みの生タイプポケモンフーズの缶を開けた。このうち肉食ポケモン用の生肉タイプのものは、あのポケモン引取業者のおっさんが、いつもの礼にとくれたものだ。
     何故だかこれは、特にグラエナの食いつきがいい。単に肉だから興奮しているだけかもしれないが。逆に肉分が多すぎるのか、エネコロロは見向きもしないどころかちょっと敬遠している感じすらする。いつものフーズと味が違うからだろうか。
     仔ポケモンたちにはまた別の、特別栄養食の缶を開ける。タウリン配合、インドメタシン配合、と様々な種類の強化食品である。ポケモングッズ売り場でも上位に入る高価格商品だ。そういや買い出しに出た時にエネコのしっぽが安くなっていたから、買って自分で遊んでやるのもいいかな、などと考えながら。
     いっぱい食べて大きくなれよ、と俺は小さなエネコの頭を撫でた。


    ――――
    仮題「とあるマイナー厨と法改正」
    私が廃人だったのなんてダイパ発売前でしたから、自然とその頃の思い出で書いたようです。
    (今の基準からすれば、その頃の私は廃人ではないそうですが)

    昨晩「逃がすだなんて勿体無い」を読んだ時、初めに浮かんだのは「ああ、これはビジネスチャンスだ」って感想でして。我ながら変な発想だなあと思います。
    でも需要があれば、何か動きは出るんじゃないかと思います。
    注意書きは書いておりませんが物騒ぶりが表面に出てきませんでしたし大丈夫ですよね。たぶん。

    お題【自由題】(【書いてもいいのよ】)
    【書いてみた】
    【すみません】


      [No.2339] [旅の終わりに] 投稿者:MAX   投稿日:2012/04/01(Sun) 03:23:38     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     そこは人里のはずれ。山林との境目にある1つの小屋。
     人の目なら傍らの休耕地から農家の物置であることが、そして壊れ具合から長らく使われていないことが予想できたろう。
     持ち主は農業から離れて長いのか。もはや立ち入る人もいないだろうその小屋に、1匹のエルフーンが立ち入ろうとしていた。
     畑を耕し、作物を実らせ、収穫する。そのために使われていた道具の数々を納めた物置は、エルフーンにとっての恰好のおもちゃ箱であった。

     鍵のかかっている扉を無視し、1つだけある窓をエルフーンは目指す。本来あるべきガラスはとうに砕け、用をなさなくなっていた。
     壁際に積み上げられた肥料の袋をよじ登り、汚れたガラス片の残る窓枠にエルフーンが足をかける。

    「……ぃっくし!」

     くしゃみが出た。埃とカビの臭いにムズムズする鼻をこすりながら、エルフーンは顔をしかめる。毎度のことだが空気が不味い。取る物取ったらオサラバしよう。

    「……んぁ?」

     はたと疑問を抱く。ひどいひどいと思っている小屋の中の空気だが、今日はいつにも増してひどい。うすら黒いガスが漂い、背筋が寒くなるのに腹の中が熱くなるような、気色の悪い感触があった。

    「ぉお? なんだい、坊主。ここはお前さんの縄張りだったか?」

     見れば、1匹のジュペッタが小屋の隅に腰を据え、窓際のエルフーンを見上げていた。

    「……おっちゃん、なにさ?」
    「俺は見ての通りさ」
    「見てもわかんないんだけど」
    「そうかぃ? そいつぁ悪いなぁ、ヘッヘッ……ジュペッタがひとり、ちょっと息抜きしてるところさ」

     そう言うジュペッタが呼吸をする度、黒い煙が吐き出される。このガスの原因はお前か。不埒な不審者にエルフーンは刺々しい視線を向けるが、しかし当のジュペッタは気にするでもなく、ブハァと黒い息を吐いた。

    「息が臭い」
    「おー、そりゃまた悪い。よく言われるよ。
     そーだな、もう数日で消えるつもりだから、それまで辛抱してくれねぇかな」
    「数日ぅ?」
    「長旅で疲れちまってなぁ。勝手で悪いが、ここで休ませてくれや。ぬいぐるみの俺にゃぁ、雨風しのげる場所ってなぁありがてぇんだ」
    「……好きにしなよ」

     どうせ僕の家じゃないし、とエルフーンは不機嫌に言いつつ小屋に立ち入った。
     棚に並ぶ農具の数々には目移りするというものだが、悩んでいる暇はない。その暇を奪った汚染の原因は「あぁ、好きにするぜ」と悪びれもせず、笑うと共に黒い息を吐いた。

    「また……」
    「ハッハァ、ほんとすまねぇな。俺も止められるならそうしてるとこなんだが、な。お前さんの綿に染みねぇ内に、さっさと出てった方が良いぜ」
    「言われなくても……!」

     しばらくの辛抱だ。それがどれだけ続くかわからないのが腹立たしいが、こんなジュペッタの近くにいるぐらいなら、とエルフーンは小屋を飛び出した。その際に肥やしを一抱え持ち去り、その日のいたずらの事に頭を切り替える。
     そうだ、今日はキュウリのプランターにこれをまいてやろう。もう少しで食べごろのキュウリが、予想以上に早く育ちすぎるんだ。浅漬けやサラダに使おうと思っていたのが、瓜の味噌汁や炒め物にしか使えなくなるんだ。
     それが良い、それが良いとエルフーンは自分に言い聞かせた。


     *


     次の日、農具の小屋はいつになく賑やかだった。何かがザワザワと音を立ててるようだ。何事かとエルフーンが近づけば、軒先にずらりと並ぶカゲボウズが一斉に振り返った。

    「え、ぇ…………え?」

     招くでなく、追い返すでもなく、カゲボウズたちはエルフーンを凝視する。まるで見せ物を前にしたかのような態度で。
     一斉に浴びせられた好奇の視線はエルフーンを慄かせ、しかしそれ以上に不快感を覚えさせた。

    「な……なんだいなんだい、カゲボウズが驚かせやがって、気色の悪い! そのトンガリ頭、つるっと丸めてハゲボウズにしてやろうか、えぇ!? いきなりジロジロと! なんの用だってんだ!」

     “しびれごな”をまき散らしながら、エルフーンが怒りにまかせて吠える。その様はまるで子供のようだったが、効果ばかりは一丁前の“しびれごな”にカゲボウズたちはボトボトと落ちていった。

    「いい気味!」

     フンと鼻を鳴らし、改めてエルフーンは小屋に立ち入る。しかし近づいたところで足が止まった。

    「……なに?」

     見れば、窓から漏れ出る黒い煙が軒下に漂っていた。
     火事か? エルフーンは考える。火の気のない場所だが、ひと気もない。悪ガキがタバコにチャレンジして、消火の不完全な吸い殻を投げ込めばこうもなるだろう。普段からイタズラのことを考えている身として、充分に有り得ると思っていた。
     ここはもうダメか。逃げるか。しかし火事と言うには、煙の割に火の臭いも音も無い。カゲボウズたちが何故か集まっていたこともあり、なにやら不自然に思えた。
     見てみるか。好奇心に駆られてエルフーンは窓に近づき、黒煙の中を覗き込んだ。

    「うわ……なにぃ?」

     小屋中に火事かと見紛うほどに黒い煙が立ちこめている。そこに火の熱や臭いがないから火事ではないとわかったが、しかし天井が見えなくなるほどに煙は濃く、いったい何事かと思わせた。

    「よぉ、坊主。今日は虫の居所が悪いみたいだな」

     煙の向こうにて、その出所は壁に背を預けたまま何食わぬ顔をしていた。窓から覗くエルフーンに、昨日と同じように「ヘヘヘ」と笑う。

    「昨日のおっちゃん? なに? これ、おっちゃんの仕業?」
    「おー? みてぇだなぁ。だいぶん息抜きも進んだってとこだが、そんなにひどかったか?」
    「……火事かと思ったよ」
    「そりゃ驚かせたな」

     草ポケモンだけあって火事が怖いか、とぬいぐるみが笑った。
     他人事みたいに言ってからに、と呆れつつ、エルフーンは小屋に飛び込んだ。こんなところ入りたくもないが、しかしこのままじゃあんまりだろう。
     ひとまずは換気だ。そう思い、エルフーンは本来の出入り口を開錠すると開け放ち、窓から扉までの風の通り道を作る。そして身体を震わせると「ちょあーっ!!」と“ぼうふう”を巻き起こした。それはたいして得意ではない攻撃技だが、煙を流すには充分な威力だった。
     同時に、煙とともに外へ飛び出した風は、哀れにも“しびれごな”をあびて動けないカゲボウズたちを襲った。風にあおられキャーキャー悲鳴を上げるカゲボウズたち。しかし風の音が鳴り響く小屋の中までその声が届くことはなかった。
     やがて部屋の空気は改められ、慣れない技を使ったエルフーンばかりがぜいぜいと肩で息をする。それを微笑ましく思いながら眺めるジュペッタに、軽い風が吹き付けられた。

    「ぅっぷぁ……!」
    「なんだよ、ニヤニヤと」
    「……ホンっトに機嫌悪ぃな。表でも騒ぐし。なんかあったのか?」
    「おもて? なに、聞いてたの?」

     盗み聞きまでするか、と咎める視線を向けるが、「坊主の声がデケェだけさ」とジュペッタは何食わぬ顔で受け止める。

    「つっても、わかるのは坊主がなんか騒いでたってだけだがな。あんまチビども、いじめんなよ?」
    「いじめてなんかないやぃ。あっちがガン飛ばしてきたんだよ」
    「そうかぃ。いや、そいつは災難だったな、どっちも」
    「どっちもぉ? なにさ、それ」
    「ハッハァ、わかんねぇか。だったら わからんままにしといてくれ。ヘッヘ、ェ゛ホッ! ゲホッ!」

     ごまかすように笑い、むせる。その咳に乗ってまた、ひと際大量に煙が吐き出された。せっかく改めた空気が汚れ、エルフーンが顔をしかめる。

    「きったないなぁ、おっちゃん」
    「ぁー……ほんと悪いな。どうもノドが落ち着かねぇってか……はー、恨み辛みで動いてきたが、腹黒い真似はしたことないんだがねぇ」
    「こんな黒いの、垂れ流しといてよく言うよ。……げほっ! 僕も気分悪いや」
    「いやぁ、こんな俺でもやってることは大人しいもんだったぜ? せいぜい元の持ち主を探して西へ東へ。ブラブラしてるだけだったよ」
    「その黒いのをまき散らしながら?」
    「いんや、こいつは最近になってからさ」

     そう言ってジュペッタは天を仰いだ。その「最近」を思いだし、ハァ、と息を吐く。

    「……この辺に来たあたりからだ。なんだか腹の中が窮屈になってな。ちぃと一息吐いてみたら、スッと軽くなったんだよ。今まで腹ん中に押し込んでたものが、この黒いのになって吐き出された。そんな感じだったな」

     言葉にあわせて黒い煙が口から漏れる。エルフーンにしてみれば空気が汚れるからやめてほしいのだが、こうまで言ってなお聞かないのなら、いっそ諦めてしまおうかと考えていた。
     エルフーンの様子も気にかけず、独り言のようにジュペッタは続ける。

    「それからだな。急にいろいろ、気が長くなったっつうか、やる気が失せたっつうか。
     ……そうだ、坊主。お前さんもエルフーンなら、やっぱりイタズラは好きか?」
    「好きか、って……なんだよ、いきなり」
    「なに、ちょっとしたオッサンのお節介さ」

     いきなりの問いかけにエルフーンは戸惑う。なんのつもりかと怪しむが、ジュペッタは相変わらず笑うだけだ。

    「……そりゃ、僕もエルフーンだし? イタズラは好きだよ。楽しいよ? それがなにさ」
    「そうだよなぁ。エルフーンっていやぁ、イタズラが生き甲斐みたいなもんだ。ま、お前さんならエルフーンでなくてもイタズラ好きだったろうがな」
    「どういう意味さ」
    「いやいや、なんつぅか、な……今を楽しめよ、と。イタズラがつまらないと思うようになったら、お前さんも……アレだ。おしまいだ」

     それはオッサンの、若者へのアドバイスのような物言いだった。しかし「おしまい」と言われてエルフーンは眉間にシワを寄せた。

    「おしまい? なにさ、えっらそうに。
     確かにエルフーンはイタズラ好きだよ。けどそれだけで生きてるわけないじゃんか。
     イタズラがつまんなくなったら、そん時ゃきっと、別の事を始めるさ。
     おっちゃんは、あれだ」

     エルフーンが苛立たしげにジュペッタを睨む。その口から出るのは、心からの拒絶。

    「大きなお世話なんだよ」
    「…………ハッ」

     しかしジュペッタは笑った。

    「アッハッハー、そっかー!」

     前向きなエルフーンだ……いや、自分が後ろ向きなだけか。そう嘲って。

    「……そーだなー」

     そして訝しがるエルフーンに「悪かった」と詫びる。

    「んー?」
    「や、ゴーストが偉そうな事言っちまったからさ。年齢と経験だきゃ若いのにも負けてね、ってつもりだったんだが……恨み辛みだけで生きてちゃーダメだな。頭が固くなって仕方ねぇ」

     言いながらジュペッタは頭をワシワシと掻いた。綿が詰まっているであろうそれは柔らかそうに見えたが、そうじゃないだろう、とエルフーンは黙っていた。

    「まー、なんだ。老いぼれの戯言と思って、忘れとくれや。こっちは身の程ってやつがよくわかったし、もう余計な事は言わねぇからさ」
    「よけーな事ねぇ」
    「そーさぁ、いらんこと言って若者を惑わすわけにゃいかねぇ。老いぼれは静かに隠居して、己の死期を待つってな」
    「…………思ったんだけど」

     老いのせいか、はたまた。やけに多弁なジュペッタが、何か思うところがあるのかと若者の目には映った。

    「偉そうに生き方を語るヤツってさ、たいていそいつ自身が生き方に悩んでるんだよね。いわゆる自己紹介ってヤツ?」
    「おーっとぉ……」

     返答に窮する。図星をつかれてジュペッタが黙り、エルフーンもまた察した。

    「おっちゃんはさ。元の持ち主を探して旅してたんだよね」
    「……あぁ、そうさ。つっても、持ち主の顔も声も、思い出せやしないがね」
    「は?」

     肝心なところが抜けてないか、とエルフーンは自分の耳を疑った。しかしジュペッタはいたって平然とした態度で続ける。

    「いやー、もう何十年も前だからなぁ。
     いつの間にか自力で歩いてたし、思い出せるのは……カエセ、カエセって喚いてた事ぐらいかな」
    「いや、それってゴーストポケモンとしてどうなの? なんか、すんごい危うい気がするんだけどさ」
    「そう言われてもな。サッパリなんだな、これが」
    「自分のことじゃんよ……」

     その呑気ぶりにエルフーンは呆れ果てるが、当のジュペッタは「なんか取られたんだと思うね、俺は」と笑うばかりだ。記憶喪失のような状態だというのに、幽霊が未練を忘れかけているというのに。

    「ったく、ホントよく続けられたもんだね、何十年も」
    「ハハ、言ったろ。恨み辛みだけで歩いてたんだって。
     どうして俺がこうも汚れてまで歩かなきゃならないんだ。俺を捨てた持ち主め。夢枕に立って恨み晴らしてくれるわー……ってな」

     ジュペッタはおどけて言った。だが直後に軽いため息をつき、目を伏せる。まるで「もう終わったことだ」と懐かしむように。

    「……って言うけど、ねぇ、おっちゃん」
    「おぉ。もう無理だ。疲れた」

     エルフーンに話したことと同じ。全てをかけた生き甲斐を失い、在り方を忘れた幽霊の姿がそこにあった。若いエルフーンにはそれがとても痛ましく見え、いたたまれなく思えた。

    「……後ろ向きなこと言って、しんみりさせちまったかな」
    「まぁ、仕方ないさ。おっちゃん、ゴーストポケモンだもん。
     ……あーでも、ダメだ。今日はイタズラもする気も失せた! こんな日はひなたぼっこと昼寝に限るや!」
    「おぉ、ひなたぼっこかー。いいなぁ。俺も虫干しするかな、たまには」
    「ヘヘ、日焼けしない程度にね。お天道様は平等だからさ。
     そんじゃーね、おっちゃん」

     陰気臭い空気を払うようにことさらにエルフーンは声を上げ、小屋を出て行く。
     その背中へ軽く手を振り、ジュペッタもまた声を投げる。

    「おう、そんじゃあな、坊主」

     開きっぱなしのチャックの口は、呼吸の度に黒い煙を吐き出していた。


     *


     虫の音ばかりが遠くに響く深夜のこと。眠らぬジュペッタは、長い夜をエルフーンの言葉と共に過ごしていた。

     自分はどうして、ジュペッタになったのだろうか。
     思い出せる最も古い記憶は、何かが無性に恨めしかったことと、そして何かを強く求め焦がれていたことだけ。
     何かがなんだったか、何故だったか。それは思い出せない。
     久しく思い出してなかったからか。それなら、そう重要な事ではなかったのだろうと思い、無性に悲しくなった。
     ひどく、ひどく悲しく感じた。

     わずかな明るさを感じ、ジュペッタは窓を見た。
     ガラスのない窓から明かりが差し込んでいた。月明かりか。思ったが、しかし小屋の窓から月が見えないことは最初の夜から知っている。
     不思議に思い、明かりの下に歩み出る。
     その目に映る窓の外は、やはり星空しかなかった。


     星空が、あった。


    「そこにいるのか?」

     星空にジュペッタは声を漏らす。

    「そうか! そこだったのか!」

     歓喜に目を見開き、叫ぶ。

    「やっと見つけた! 今、行くから! 俺もすぐに行くから!」

     その口からは、声だけが。

    「俺、帰ってこれたんだな!」

     そして、だから、気づいた。
     カエセは、帰せ、だったんだ、と。


     *


     翌日、人里にエルフーンの姿があった。もちろん、イタズラ目的である。
     手ごろな家に目をつけると、その軒先に立ち、綿毛の中から汚れ切ったぬいぐるみを取り出した。

     それは今朝のこと、いつもの小屋には今日もカゲボウズが群がっていた。
     エルフーンはうんざりする。また気色悪い視線を向けられるのか。がしかし、エルフーンに気づくやカゲボウズたちはクモの子を散らすように飛び去っていった。
     なんのつもりか。事情は分からないが、とりあえずやることは変わらない。釈然としないながらもエルフーンは小屋の窓までのぼり、そこで黒い煙がなくなっていることに気づいた。
     窓から中を覗き見れば、ボロボロのぬいぐるみが仰向けに、まるで窓から空を見上げるように倒れていた。
     全身黒く汚れているが、もとは桃色のウサギか。長い耳は右が無く、残る左耳も半ばからちぎれていた。手足は付け根の糸がほつれ、先端は擦り切れて綿がはみ出している。そして口は左右に裂け、泥の染み付いた綿があふれ出ていた。
     不気味なぬいぐるみだ。そう思うと同時にひらめく。こいつを人間の家の前に置いておけば、きっと驚かすことができるだろう。ならばイタズラの道具にと、ぬいぐるみを綿毛の中に仕舞い込んだ。

     そのぬいぐるみを、エルフーンはある民家の軒先に置き去りにする。何故そこなのか、そうするのか、特に理由は無かった。ただ、そうしたほうが良い、となんとなく感じただけだった。
     だから、同じようにただ感じただけの行動をする。

    「……どーいたしまして」

     ぬいぐるみから「世話になったな、坊主」と聞こえた気がしたから。




     * * * * *
     長らく考え続けていたお話、ようやく形になりました。
     考えていた当初は、ジュペッタの綿にあった呪いがエルフーンの綿に移り、エルフーンが「わるいポケモン」になる、というオチを考えていました。
     ところが先日、「盗まれた曰くつきのシロモノが、盗まれた先で呪いをバラ撒いて戻ってくる」というオカルト系の話をネットで見かけまして、心惹かれて方針転換と相成りました。
     もし興味がおありでしたら 「どろまま ちょっと分けてみた」 でグーグル検索をどうぞ。オカルトパワーって、すげぇ。
     以上、MAXでした。
    【批評、感想、再利用 何でもよろしくてよ】


      [No.2338] 掃除屋の鍋パーティ 投稿者:リング   投稿日:2012/04/01(Sun) 03:18:59     76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    掃除屋の鍋パーティ (画像サイズ: 520×347 54kB)

    テーマ:『マメパト』


    おととしの九月から結成されたというマメパトの革命集団『覇闘暴』が、マサラポケモン自治区の豪雪地帯にある『招雪西都(しょうせつさいと)』をクーデターで落とし、その際に図書館の中庭を利用して乗っ取り記念鴨鍋パーティーなるものを始めたそうだ。
    何を煮込んでいるのか……それは、つい最近までここを収めていたというポケモンたちだろう。見覚えのあるその亡骸が肉となり、骨となり、出汁としてスープにされていたのだ。

    この鴨鍋パーティーに俺たち掃除屋(スカベンジャー)が呼ばれたのは、何の間違いかと思ったものさ。なぜって、俺たち最下層のポケモンは一生を労働に費やし生きる『掃除屋』なのだから、政治には無関係の存在だ。政権なんて誰が執り行おうとも変わらないから、政治にはほとんど無関心で生きてきたし、むしろ鳩のくせにタカ派のあいつにゃ、無関心ながらも風のうわさを耳にしては不信感を抱いたりもしたもんだ。
    そんな掃除屋を鴨鍋パーティに呼んだのは、俺たち掃除屋に一つの仕事を頼むためであったようだ。

    それは、屈辱と恐怖を与えることだ。前の政権を牛耳っていたやつらの家族や、腹心などに恐怖や屈辱を与えるには、俺ら最下層の住民に喰われることが効果的だと。
    掃除屋……それは、文字通り掃除する事ではなく、雪の季節はいつまでも残る凍死体を骨まで余さずに処分するバルジーナとグラエナの事を指す。
    鍋によって出汁を吸い尽くされた骨を、雑炊と一緒に振る舞われる。正直、マメパト共のこともあまり好きではなかったが、久しぶりの暖かい飯に俺は飛びついたってわけさ。
    俺はグラエナ。丈夫な顎と丈夫な胃袋で、骨まで食ってしまう掃除屋だから、恐怖を与える役にはもってこい。
    バルジーナの野郎どもは、頭骨をオムツにしてやるだとかで、わが子に対して王冠のようにカモネギの頭骨を差し出してやっている。屈辱を与えるには追って来いってこったね。
    そのおどけた様子を、マメパト共は酒に酔いしれたようなテンションで、楽しそうに見守っていた。

    さて、このマメパト共の権力もいつまで続くことだろうか。俺の生活はきっと、だれが政権を握ろうと変わらないだろうがね。



    (スラム街に生きる掃除屋グラエナHさんの証言より抜粋)


      [No.2337] 図書館は乗っ取りました。 投稿者:マメパト   投稿日:2012/04/01(Sun) 02:24:27     128clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    図書館は乗っ取りました。 (画像サイズ: 800×582 63kB)

    こんばんは、マメパトです。
    突然ですがここの図書館を乗っ取らせて貰いました。

    今日からここのHPの名前は「マメパトのポケモン図書館」通称「マメポケ」!
    苦情は受け付けないよ☆

    No.017さん?
    なんのことかなぁ。

    もちろん、カモネギなんて知らないよ。

    ミカルゲならその辺に倒れてたんじゃないかな?


      [No.2336] Re: サクライロノヒミツ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/04/01(Sun) 00:19:11     23clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ああ! そのネタ使いたかったのにwww
    先超されたかwwww

    やっぱこの一節は魅力ありますよねー。


      [No.2335] Just You Wait! 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/04/01(Sun) 00:00:47     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    前書き:非常にカップリング色の濃い話です。



    あのロクデナシ、いつか潰す


    【Just You Wait!〜今に見てろ!】

     ポケモンのフラッシュが明るく洞窟を照らしてる。ムロタウンの人によれば、一方通行だから迷うことはないよって言ってた。でも歩いても歩いてもそれらしい人とはすれ違わない。そもそも名前だけで解るものなのか心配になってきた。
     中は広くて私もポケモンも疲れて来てた。どこか休める安全なところを探そう。岩が重なっただけの階段を登ると、その先に光が見えた。太陽の光か、私はとりあえずそこを目指した。
     そこには人がいた。後ろ姿だけだったのに、私は声をかけられなかった。凄くきれいで、優しい雰囲気のお兄さん。生まれて初めてこんなに美しい人がいることを知った。
    「君は…?」
     みとれていたら、向こうが気付いた。ふんわりとした大人の声だった。こちらを見てる。私はしばらく話しかけられたことも忘れていた。
    「あ、私、デボンの社長さんから石の洞窟にいるダイゴさんに手紙を渡すよう言われていて…」
     緊張で声が出にくい。だめだ、第一印象を良くしたいのに。
    「ああ、僕がダイゴだよ。わざわざこんな洞窟の奥までありがとうね」
     にっこりと笑った顔はもう素敵とかかっこいいとか、そんな言葉じゃ表せない。けど初対面の相手にこんなことを思っているなんてバレたらなんか嫌。バレないように封筒をダイゴさんに渡した。
     受け取るとダイゴさんは封筒を一通り見た。何かおかしいのかな。何も落としてはないはずだけど。
    「ふうん…」
     ダイゴさんはそれだけ言うと手紙を懐にしまった。内容解ったのかな。もしかしてエスパーとか? だとしたら私の心の中とかも、もう読まれちゃってる!? やだー!
    「ああそうだ君にお礼しなきゃね」
     え、そんな…ダイゴさんが私にくれる? ちょっと待って、それってあの俗に言う…でも私の年じゃまだ早いっていうかっ!
    「君はトレーナーみたいだし、僕の好きな技マシンをあげよう」
     なんだ技マシンか。それでもダイゴさんの直接手渡しでもらっちゃったよ! なんて人なんだろう、ダイゴさんって凄く他の人と違う!
    「あ、それポケナビじゃないか!」
     舞い上がってた私は見事に無視され、ダイゴさんは腰についてたポケナビに興味を示した。まぁ男の人って機械好きって言うし!
    「僕もトレーナーなんだけど、ここで会ったのも何かの縁だし、登録していいかな?」
     ま じ っ す か !
     落ち着け、落ち着け私。ここでバレたら二度と会えないかもしれないぞ。ここは慎重にコトを進めなければ!
    「は、は、はいっ!」
     ダイゴさんとナビ友! ダメだ電話しすぎてうざがられたら終わりだ、電話は週に多くて2回だ。メールも長文じゃなくて短文を心がけて、絵文字も…
    「ハルカちゃんね…さっきから顔が赤いけど、暑いの?」
    「そんなことないです! です!」
    「君おもしろいね。ハルカちゃんはどこから来たの?」
     私のこと聞いて来る! もしかしてもしかして、脈あるかも! こんなに出来すぎた人が私を見てるなんて!
    「私はジョウトからミシロタウンに引っ越して来ました!」
    「ふーん、なんで?」
    「お父さんがこの度ジムリーダーに昇進したので、あ、お父さんはトウカシティのジムリーダーなんです! 私、お父さんみたいに強いジムリーダーになりたくて、ポケモンと一緒に旅に出ましたっ!」
     私のお父さんの話をして感心しない人はいなかった。ダイゴさんだってきっと感心してくれて、そこから始まる
    「あ、そう。ま、ジムリーダーなんて名前だけでしょ」
     は?
     もう一回いってみろタコ
    「ジムリーダーやエリートトレーナー、チャンピオンなんて名前だけに、君はなりたいの? まぁ君はまだ子供だから目指すのは悪くないけどね。全く、子供は形から入りたがるから嫌なんだ」
     仕事あるから、とタコは出ていった。私は上手く言い返せず、やつの背中を見送った。

    「くやしー!!」
     ムロタウンに戻って、さらに怒りがこみ上げる。ダイゴに言われたことの意味、そして少しでも感じてしまったときめき。
    「ダイゴめ…いつか見てろ。チャンピオンになって、お前をボコボコにしてやる!」
     私の目標は変わった。強くなってダイゴをボコす。それ以外の何ものでもない。


    【向き合い方】
    「ハルカどうした」
     ハルカの友達のユウキは言った。110番道路で会って勝負したはいいが、ハルカのポケモンから溢れるボコすオーラにユウキのポケモンはすっかりおされてしまった。
    「前はお父さんみたいになりたいって言ってたのに」
     別人のように変わってしまったハルカに、ユウキはおそるおそる聞いてみた。
    「目標が変わった。打倒ダイゴ! イヤミなトサカ頭をボコボコにする」
    「ダイゴ? え、ダイゴって」
    「だからイヤミなトサカ頭! 初対面の人間にも余裕のイヤミっぷり! もう信じられない!」
     初めて会った時は温厚で控えめな子だとユウキは思った。ここまで怒らせるにはどんなにイヤミ言ったらなるのだろう。ユウキの疑問は解けない。それに彼女の怒りの矛先は、どこかで聞いたことがあった。
     けどユウキが疑問を挟む余地はない。ハルカの怒号のトサカ頭コールに、ユウキはひたすら押し流されていた。激流に飲まれたかのごとく、黙るしかない。
    「ハルカ」
    「何?」
    「おごるから何か食べて落ち着こうよ」
     激流を連れて、カイナシティのレストランに行く。その間、ハルカは黙っていたが、怒りのオーラだけは隠しきれていない。ユウキはなるべく彼女の方を見ないように、おいしそうなレストランを探す。
     ユウキの心配をよそに、海の幸を前にしてハルカもさっきまでの怒りが嘘のよう。ユウキはホッと胸をなで下ろす。
    「でさぁ、そいつマジで」
    「ハルカ、あのさ」
    「うん」
    「さっきからその人のことしか話してないけど、本当は好きなの?」
     ユウキは地雷に飛び込んだことを後悔した。いくら後悔しても後の祭り。立ち上がったハルカを、ユウキはじっと見る。
    「そんなことあるわけないでしょ! 私はあいつ嫌いなの!」
     にっこりと言う。それがユウキにとって怖かった。



     ユウキと別れてからかなり経つ。ハルカはフエンタウンの温泉の一室で思いっきり寝転がった。
     ポケナビをいじる。目に止まったのは登録してから一度も使われてないダイゴの連絡先。ハルカは舌打ちする。
    「チャンピオンになって、それからあいつのポケモンを手持ち全員ボコボコにして、土下座して謝らせて、それから…」
     ハルカの空想は止まらない。頭の中でダイゴを虐げても虐げても足りない。


     それは天気の悪い日だった。海の波は高く、せっかく覚えたなみのりも生かせない。ハルカはブラブラと118番道路を歩いていた。
    「やぁ!」
     ハルカは身構えた。段差から人影が飛び降りて来る。その人影を確認するが早いが回れ右。
    「ちょっと待ちなって」
     ダイゴの身のこなしも早く、まわりこんでハルカの進路を塞ぐ。それと同時にハルカはダイゴから目を思いっきりそらす。体の向きまで反対を向きそうだ。
    「いやいいですこんなところで会うなんて悪運の間違いですさようなら」
    「ふーん、そう。残念だなあ。じゃ」
     ダイゴの手にはモンスターボールが握られていて、中から金属がこすれ合う羽音を出すポケモンが現れる。エアームドという固い鳥ポケモン。ハルカは目をそらしてても、ポケモントレーナーとしてエアームドに目がいってしまう。そのエアームドとハルカの間に怖い顔したダイゴが立つ。
    「なに人のポケモンをじろじろ見てるの。悪運が乗り移ったら大変だからね」
    「なんですかその言い方! 人のことを疫病神みたいに!」
    「君が言ったんだろう? 全く、自分の発言をすぐに忘れて他人ばかり攻撃するから」
     ダイゴは言うのをやめる。ハルカが今にも泣きそうな顔をしてダイゴを睨んでいたからだ。攻撃するには少し年下すぎたかな、と心の中で反省する。しばらく無言の時間が流れる。その間もハルカはじっとダイゴを睨んでる。
    「ぜったい、ぜええっったいボコボコにしてやる!!」
     エアームドがハルカの大声に一瞬ひるんだ。
    「チャンピオンになって、あんたなんかぼこぼこにして後悔させてやる!!!!!」
     突然の宣戦布告にエアームドは思わず金属の翼を広げてハルカを威嚇する。ダイゴは何の動揺もなく、エアームドを制止する。
    「あ、そう。がんばっ」
    「なんでそういう態度なんですか! 少しは怖がったらどうなんですか!」
    「はぁ?」
    「だから、ダイゴさんなんてフルボッコにしてやるって宣言してるんだから、少しは」
    「とりあえず落ち着きなよ。泣きながら宣戦布告したって意味がないだろう」
    「泣いてなんかないです! 私が子供だからってバカにして!」
    「バカにしてなんかないだろう。君が勝手に言ってるんじゃないか」
     ハルカが何か叫んでいるがダイゴの耳には聞き取れない。ダイゴにはなぜこうなったのか理解などできず、目の前の女の子が泣いてるのをただ眺めるしかない。そして通り過ぎるトレーナーたちの怪訝な視線に気付いた。まわりからみたら、どう考えてもダイゴが意図的に泣かしたとしか見えない。こんな年の差があって、しかもこの状況だったら犯罪者にだって間違われかねない。
     つまり、ダイゴは今とても焦っている。それを表情にこそ出さないが、通り過ぎるトレーナーがダイゴを白い眼差しで見ていることには気付いている。目の前のハルカは睨んでいる。エアームドはどうしたらいいという顔をしてダイゴをみていた。


    「いきません! いやです! いきませんったら!!」
     ここまで引っ張ってくるのにだってダイゴは相当な労力を要した。何か食べに行こうと誘ってもそれなのだから。ようやく、一番近いキンセツシティまで連れてくることが出来たのだ。
     冷たいものが食べたいからとダイゴはアイスをハルカに渡した。無難なバニラ味のアイスクリーム。ダイゴの方を見ようとせず、口も聞いてくれないのだから渡すのにだって苦労した。ダイゴだって犯罪者を見るような目つきで他のトレーナーから見られてなかったらとっくに放置している。
     そんなダイゴの心も知らず、彼の隣でハルカはバニラのアイスを口に含んでいる。心の中でため息をつきながら、ダイゴはハルカを見た。
     その顔はさっきとうってかわって笑顔。嬉しそうに食べる彼女を見て、温厚なダイゴも怒りをぶちまける寸前だ。なぜこんなねじ曲がった性格の子に会ってしまったんだろうと。ダイゴの手の中のチョコレートアイスが溶けかけだ。
     ため息まじりにダイゴがチョコレートアイスを食べる。その視線が下に向いた。
    「ついてくんなよ!」
     甘い味覚を吹き飛ばす怒鳴り声がしてる。その方向に周囲の人たちの視線が集まっていた。フライゴンをつれたトレーナーが、足元にいる小さなナックラーを怒鳴りつけている。
     ダイゴはすぐに視線を戻す。ありふれた光景だったから。あれは要らないあまりもの。そして天のいたずらか、捨てられたナックラーがトレーナーに再会したのだろう。そして怒鳴り散らしているのだ。
     強さを求めるあまり、ポケモンの命などないがしろにするトレーナーは後を絶たない。けれどある意味それは正論だ。努力で越えられない才能を持つ個体を求めることは間違いではないはずだ。なにせ人間がそうなのであるのだから。
    「ナックラーがかわいそう」
     ハルカがつぶやくように言った。それがダイゴにとって今までの常識から考えられない答えだった。
    「なぜ?なぜそう思うの?能力を持たないものは、自然では生きていけないのに?」
    「えっ、えっ?だってナックラーはあの人のポケモンじゃないですか。それなのに弱いからって勝手すぎます!」
     ハルカの頬を、砂のつぶてが通過する。それどころか目の前のアイスは全て砂まみれ。ポケモンの技だった。怒鳴ってる男のフライゴンが砂掛けで威嚇していたのだ。もちろん、命令で。
     目に砂が入ったのか、ハルカは下を向く。そんな周囲の様子もかまわず、男は怒鳴り続けている。
    「ちょっと、君!」
     思わずダイゴは立ち上がる。そして怒鳴り散らしてる男の肩に手をかけた。
    「喧嘩するのは構わないが、何の関係もない女の子に砂かけて、それで謝らないってどういうこと?」
    「あ? うるせえよてめえ」
     男の拳がダイゴの顔を狙う。頭に血がのぼってなければ、気付いていただろう。その行為が無駄なこと。ダイゴの近くにいるのは鉄壁を誇るエアームドがいた。主人であるダイゴを守るために、エアームドは威嚇ではなくその鋭い嘴を男に突き出す。
    「うがああああ!!!」
    「君のフライゴンじゃエアームドは倒せないだろう。今もっているのは他に孵化してないタマゴってところか。それでもやるかい?」
     ダイゴの言葉など入っていないようだ。ただエアームドの嘴にささった手をかばっている。警察に訴えようにも、自分からエアームドの嘴に突っ込んだのだから出来るわけがない。
    「最初から謝ればいいんだよ。そうしなきゃ僕の」
     まわりは騒然となっている。手が血まみれの男と、その男を見下してるダイゴと。
    「あ、あの」
     周囲の誰かが声をかける。ダイゴが振り返ると、トレーナーらしき人が申し訳無さそうに立っていた。
    「もしかして、あの、貴方は……」
    「多分違う人じゃないかな」
     言葉を遮って、砂まみれのハルカの前に立つ。彼女は小さなナックラーを抱いていた。フライゴンにやられた傷を治すために。
    「静かなところ行こう」
     ハルカの手を掴んで、引っぱるように歩く。その歩みが速すぎて、ハルカは引きずられてるように感じた。


     しばらくダイゴは無言だった。そして思い出したように振り返る。
    「ハルカちゃん」
    「なんですか」
    「この広い世界には様々なポケモンがいる。それぞれ様々なタイプを持っている。いろんなタイプのポケモンを育てるか、それとも好きなタイプのポケモンばかり育てるか……君はポケモントレーナーとしてどう考えてる?」
    「え、なんですかいきなり」
    「僕が気にすることないけどね。それよりかなり砂まみれだ。はい」
     胸のポケットから、柔らかそうなタオルを差し出す。まさかのことに、ハルカは何をしていいか解らない。タオルとダイゴを交互に見て、おそるおそる右手をのばした。いつも使ってるタオルとは全然違う。触った瞬間に解る手触りの違い。高級な毛皮を触ってるようなふんわりとした感触が、ハルカの手の中に握られている。
    「じゃあまた会えるといいね」
     ダイゴはエアームドと共に空へと舞い上がる。風の中に消えていく姿を、いつまでも見つめていた。



    【ユウキの仕事とハルカの戦い方】
     ハルカは絶対認めない。何の事って、俺がそいつのこと好きなんだろって指摘したこと。
     ハルカの話によると、嫌味を言うトサカ頭の年上の男がいるらしい。そいつ嫌い! なんてハルカはいつも言ってるけどさ。気付いてないだけかもしれないけど、俺との話題の9割はそいつの話なんだけど。
     名前もこの前雑誌で出てた人と同じで、もしかしたら有名人かもしれないのになあ。まあ、今のハルカはそんなのゴミ以下の価値だろうけど。
     俺も会ってみたいなーってこの前言ってみたんだ。そしたら、物凄い剣幕でもう会いたくない! っていうんだよ。うーん、ハルカの話からは、どう聞いてもいつも会っちゃうみたいなニュアンスなんだけどなあ。

    「えー、あたし会いたくない」
     ヒワマキシティのポケモンセンターで、ビブラーバの背をなでながらハルカは言った。ビブラーバは気持ち良さそうに二枚の羽を動かしていた。今、かわいがってるこのビブラーバ、実は最初はハルカに懐いてなかった。ナックラーだったときはその顎で手をいつも噛み付いてた。それなのに今はメロメロに近いほど懐いてる。
    「会いたくないとかいってて、この前も会ったんじゃないの?」
    「知らない! 会いたく無い時に向こうからくるんだもん」
     そういうハルカの顔は嬉しそうだ。ビブラーバを撫でてるからじゃない。その人の話をする時はいつもこう。俺には好きだって言ってるようにしか見えない。
    「だってそのハンカチ返さなくていいの?」
     最もハルカが嬉しそうに話してきたのはそのこと。喧嘩ふっかけてそれで拭いて返してねっていったらしい。返して欲しいってことは、また会うんじゃないかなー。
    「でしょー。全く、人に返せっていっておきながら取りに来ないのはどうなんだろうね!」
     一貫性がないこと、気付いてるかなハルカ。それに気付いてないからこんなこと言ってるんだろうなあ。ダイゴさんに会えること、待ち遠しくて仕方ない感じしかしない。

     そうしてヒワマキシティで別れた。俺は120番道路に用があったから。バクーダが何やらふんふんと地面の匂いを嗅いでいる。いいポケモンでもいるのかな、と顔をあげるとなぜかハルカがいた。
    「あれ、どうしたの? ジム挑戦するんじゃないの?」
    「それがさあ、なんか見えない壁で通れないから、ユウキの仕事を観察しにきた!」
    「見えない? それって」
    「やあハルカちゃん! 久しぶりだね」
     バクーダが一瞬おびえた。目の前の人間に。その影を確認したハルカの表情が一瞬にして明るくなる。こいつか!
    「げ、ダイゴさん」
     ねえハルカ。表情と言動が一致してないよ。気付いてるかな。
    「と、ハルカちゃんのお友達かな?」
    「あ、はい。ユウキです」
    「ユウキ君ね」
     あー、うん、ハルカが好きになるのも解るなあ。爽やかなオーラでイケメンだし優しそうだし。ただ、その髪型は申し訳ないけどハルカの表現が的確すぎる。そしてやはり雑誌で見た事がある人だ。
    「ハルカから聞いてます。ダイゴさんですよね?」
    「あれ、どうして解ったのかな」
     ハルカの態度の変わり方なんて言えない。ダイゴさん気付かないのかな。
     そういえば、ハルカはダイゴさんに会えてすっごく嬉しそうだけど、ダイゴさんの方は表情が変わらないし、嬉しそうでもない。つまり、ハルカがものすごく勝てない勝負を仕掛けてる気がする。
    「ところで、二人とも何してるの?」
    「別に。ユウキの仕事みにきただけで」
     ハルカ、なにその態度の変わりかた、すんげえ。なんでそんな突き放したように言うんだよ。好きなのにそんなこと言っちゃダメだろ!
    「あ、俺はどんなポケモンが生息してるか調べにきたんです。あと生態系も」
    「へえ。なるほど。ユウキ君は普通のトレーナーとはまた違って面白いね」
     なんでほめられてるのか解らないけど。そしてダイゴさんの視線が俺じゃなくてハルカに行ってるような気がする。あれ、もしかして?
    「どうせ私はただのトレーナーです」
    「そんなこと誰も言ってないだろう」
     俺ここにいていいのかなあ。ハルカ怖いし、ダイゴさんはハルカに呆れてるし。
    「まあまあ。見えないポケモンがいるんだから仕方ないよ」
     俺まで噛み付きそうなハルカの機嫌をとりあえず取らないと。
    「見えないポケモン?」
     それに食いついたのはダイゴさんの方。ハルカの方は何で言うのと言わんばかりに俺に実力行使だ。遠慮なくなぐってくるから痛い!
    「ちょっとおいで、二人とも」
     ダイゴさんが背を向ける。ハルカは俺のことなんてさっさとおいて行った。ハルカは俺より強いからもう手の施しようがない!
    「ここに見えない何かがいるよね?」
     橋の上で止まってる。直前でそういってたのに気付かず、俺はそのまま突進してしまった。そして見事にぶつかって弾き跳ばされる。ハルカが大丈夫?と心配してくれた。こういう時は優しいんだよなハルカは。
    「見えない何かに向かってこの道具を使うと……違うな。説明するよりも実際に使った方が楽しそうだ。ハルカちゃん、君のポケモン戦う準備は出来ているのかい?」
    「えっ?」
    「君のトレーナーとしての実力見せてもらうよ!」
     映し出される透明な壁。紫のギザギザ模様、緑色のウロコ。カクレオンというポケモンだ。普通は木の枝や石の側で隠れてることが多い。こんな道の真ん中で見えるとは思わなかった。
     見えてることを知ったカクレオンが襲いかかる。俺よりも早く、ハルカはボールを投げた。出てくるのはラグラージだ。ってかまた進化したのかよ。早いなあ、おい。
    「なげおとせ」
     えっ?
     えっ?
     ハルカ、それ技の指示じゃないじゃん。ラグラージも向かってくるカクレオンをしっかりと持ち上げて、池に突き落とすなよ! あーあ……仕方ないから、俺のホエルコで助けてやると、カクレオンは必死になって這い上がって来た。
    「なるほど 君の戦い方面白いね」
     ダイゴさん、そこ感心するところじゃないってば! 
    「初めてムロで出会った時よりもポケモンも育っているし……そうだね。このデボンスコープは君にあげよう 他にも姿を隠しているポケモンはいるかもしれないから」
    「え、別にいいです」
    「見えないポケモンに困ってるんじゃないの?」
     ダイゴさんがにっこり笑ったら、ハルカも受け取らずにはいられなかったみたいで。びしょびしょのカクレオンをボールに入れている側で、二人はなんだかどちらともつかないオーラで話してる。
    「ハルカちゃん。僕は頑張っているトレーナーとポケモンが好きだから君のこと、いいと思うよ。じゃあまたどこかで会おう!」
     普通のトレーナーはそんなことしないからね、と付け足した。エアームドで空を飛ぶダイゴさんに向かって、ハルカは犬みたいに吠えていた。

    【いつか追い越される】
     人間関係というのはとても面倒だ。だから、人間と関わらなくていい職業を選んだ。それがポケモントレーナーだ。ポケモンたちは僕を信じてくれるし、期待に応えてくれる。裏切ることもないからね。
     家には僕が見つけた宝物が飾ってある。珍しい石だ。昔、博物館で展示されていた石を見て、いつか石をたくさん並べておきたいと思ったものだ。今、それはかないつつある。
     今日もそのコレクションを眺めながら新しい学会の発表を読む。一日はかかりそうだから、休みをとった。
     そのはずだった。今日は誰も尋ねてくる予定なんてなかったのにそれは来た。
    「なんでダイゴさんがいるんですか」
    「人の家にずけずけと入り込んで言う言葉かなハルカちゃん」
     僕の座ってるソファの背後から、どうしてこうも高圧的な態度に出られるんだろう。それにコロコロかわりすぎて、判断がつきにくすぎる。
    「ちっ、ダイゴさんちだったか。お邪魔しました」
     舌打ちが聞こえたのは僕の気のせいにしておこう。元々かわいくないのが、さらにかわいくなくなるからね。
    「まあ待ちなよ。せっかく来たんだ、お茶でもどう?」
     少し罠をかけてみる。これで少しは解るんじゃないか。別に僕としてはどちらでもいいけどね。
    「え、そんな暇はないんですけど」
    「あ、そう。残念だね」
     なんかとても焦ってる感じがするのは気のせいかな。ま、僕には関係ないけどね。
    「人が困ってるのに聞いてくれないんですか!?」
     突き放すと途端によってくる。一体君は何がしたいんだ。全く。
    「じゃあ最初から素直に困ってるって言えばいいじゃない。何で困ってるの?」
     僕はハルカちゃんの先生ではない。トレーナーとしては先輩かもしれないけど、なんで僕がここまで面倒みなきゃいけないんだろう。懐かないポケモンなんて、一緒にいても楽しくないのと同じ。
    「実は、潜水艦を奪ったやつらが海底洞窟に行くって、それで古代のポケモンを目覚めさせるって」
    「で?」
    「で、って?」
    「君はどうしたい?」
    「私、それを止めたい」
     強い意志だ。最初に会った時に一瞬見えたその目。気のせいかと思っていたけど、そうじゃないみたいだ。
     そしてこういう目をする人間は決まってる。僕と同じくらいの力を持つ。僕を苦しめる。
     彼女はまだ子供だ。今のうちにそんな危険因子をつぶしてしまおうか。ここで叩きつぶせば僕の地位は守られる。
     何を考えてるんだ。違う。
    「君はポケモントレーナーだ。ポケモンと力を合わせてどんなところへも行ける。君のラグラージはこの技を使えるはずだ」
     もう使わない古い秘伝マシンを取り出す。深い海に潜る技、ダイビングが収録されている秘伝マシン。
    「ありがとうございます!」
     初めて見るハルカちゃんの深いお辞儀。困り果てていたんだろう。受け取るが早い、玄関のドアを壊す勢いで出ていった。
     素直に言えばいいのに。
     カップの中の紅茶はすでになかった。


     暗雲が立ちこめ、雷が聞こえる。天気予報では晴れるって言ってたはずだ。かと思えばいきなり焼けるような太陽が顔をのぞかせる。天気がおかしい。
    「エアームド、南だ」
     なぜさっき気付かなかった。ニュースで見たばかりだというのに、なぜつながらなかった。ルネシティの近くの海で見つかった海底遺跡と、ハルカちゃんが言っていた古代のポケモン。つながりがあってもなんらおかしく無い。
     彼女の強い意志に押されたか。いや彼女のせいじゃないな。僕が忘れていただけだ。
     エアームドは金属の翼で風を切り、ただ南へと飛ぶ。落雷が怖いけれど、そんなこと言ってられない。
     暗黒の海の中に目立つ赤色。エアームドに降下の指示を出す。
    「ハルカちゃん!」
     海の中の浅瀬で空をぼーっと見ていた彼女を見つける。会ってから間もないというのに、その顔はひどく疲れていた。
    「ダイゴさん? ダイゴさん!!」
     降りるなり彼女は僕に抱きついて泣き出した。大雨に涙が攫われて見えないけど、何かがあったことだけは解る。
    「どうしよう、空が、2匹が、どっか行っちゃって」
    「大丈夫だったかい?」
     波に濡れた体に太陽が熱線を浴びせてくる。彼女の体には、どこでつけたか解らないけど小さな傷が何カ所かあった。
     空が光る。その数秒後に轟音。その方向は、ルネシティの方だった。黒い雲に覆われて、ルネシティは見えてない。
    「この雨を降らせている雲はルネの上空を中心に広がっているのか……一体あそこで何が起きている!?ここであれこれ考えるよりルネに行けば分かるか……」
     エアームドが鳴く。太陽が顔を出してる今が安全に空を飛べるチャンスだ。
    「ハルカちゃん……無理だけはするなよ……じゃあ僕はルネに行くから」
    「ダイゴさん!」
     君がそんなに取り乱してるのは初めて見たよ。それほど緊急事態なんだろう。


    「ミクリ、無事か?」
     黒い雲を抜け、ルネシティへと降り立つ。僕は古くからの友人を訪ねる。おそらく今いるのは目覚めのほこらだろう。僕はミクリからよく話を聞いていた。何かあったらここにくるように、言われていたと。
    「ダイゴか、よく来た。危ないというのに」
    「この天気は何があった? 海底洞窟と何か」
    「私にも正直解らない。けど、一つだけ言える。目覚めのほこらの奥で古代のポケモンが力を蓄えている。今はこれで済んでるが」
     ほこらの奥からは大きな体格のポケモンの鳴き声が聞こえる。それも2体。もしかしてハルカちゃんはこんなのを相手していたのか。
    「この中に入って止められないのか?」
    「入ってみるかい? 入れないけどね」
     僕がめざめのほこらに一歩でも入ろうとすれば、電流が走ったような痛みがくる。
    「邪魔をするな、というメッセージさ。止められるのは藍色の珠、そして紅色の珠。それらが合わさり、力を中和するんだ」
    「見てろというのか? 原因が解っているのに」
    「今のルネシティに、二つの珠を持って来れる人間がいると思うかい? 並以上のトレーナーじゃなければ不可能だ。そしてルネシティからは出られない」
     ルネシティの空は蓋をされたかのようだった。入ってこれるけど出ていけない。どうしようもできないのだ。
    「ダイゴさん!」
     轟音の中から呼ばれた。振り向く。僕は正直驚いた。ほとんど僕と変わらない時間で今のルネに到着したのだ。
    「ハルカちゃん?」
     びしょぬれた彼女は肩で息をしながら走ってくる。
    「ハルカちゃん、君も来たのか。こんなひどい天気なのに……」
    「ダイゴの知りあいか?」
     ミクリは驚いたように見ている。外の人間が二人も今のルネシティに入ってきたこと。僕はともかく、ハルカちゃんの方をとても不思議そうに。
     ミクリの顔をみて、僕は思い浮かぶ。海底遺跡のこと、そして海の真ん中でハルカちゃんが泣いてたこと。
    「そうだ!ハルカちゃん。彼の話を聞いてくれ。君なら理解できるはずだ」
    「えっ?」
     ミクリは少し悩んでいたようだ。雷鳴の合間をぬってミクリは話しだす。
    「私はミクリ。この町のジムリーダーそして目覚めの祠を守る者。この大雨は目覚めの祠からの力によって起こされています。貴方は何があったかもうご存知ですね?」
    「は、はい。それで、これを」
     彼女が差し出したのは二つの珠だった。こんな偶然ってあるものなのかな。いや、奇跡に近いんじゃないか。
    「怖くなったといって、私に渡してどこかへと消えました」
    「それは藍色の珠と紅色の珠ですね。分かりました。貴方に託します。この先が目覚めの祠。私達ルネの人間はこの目覚めの祠の中に入ることを許されていません。ですが、君は行かなければならない。その藍色の玉と共に。祠の中で何があろうとも 何が待っていようとも」
     こんな小さな子に任せていいのだろうか。そんな僕の心を見たかのように、ハルカちゃんと目が合った。
     ああ、大丈夫だ。この子はそういう目を持ってる子。僕よりも強くなる素質のある子。
    「ハルカちゃん 君が藍色の玉を持っていたとはね。大丈夫!君と君のポケモンなら何が起きても上手くやれる。僕はそう信じている」
     ハルカちゃんの頭を撫でる。不安の入り交じった笑顔を見せた。そして背を向けて目覚めのほこらへと走っていく。

     人が……ポケモンが……生きていくのに必要な水や光なのに
     どうして僕達を不安な気持ちにさせるんだ……
     ルネの真上に集まった雨雲はさらに大きく広がり ホウエン全てを覆うだろう……このままでは……


    【名前だけのチャンピオン】
     ルネシティの空は、綺麗に晴れていた。空の向こうに虹が見えて、あんだけ酷かった天気が嘘のようだった。
     ああ、私はやったんだ。できたんだ。グラードン、そしてカイオーガをボコボコにすることが出来たんだ。
    「ハルカちゃん」
     そして、ダイゴさんにまた会うことが出来たんだ。ダイゴさんに。手を差し伸べてくれるダイゴさんを掴んで、そのまま体にしがみついた。突き放されるかと思ったけど、受け止めてくれてた。
    「君のおかげなんだね。ルネの空が元通りになった。ミクリも感謝していたよ」
     他の誰の言葉なんて関係ない。ダイゴさんがほめてくれればそれでいい。
     ずっと考えてた。2匹を見てからずっと。
     ダイゴさんのことしか考えてなかった。生きてダイゴさんに会いたい。それだけでがんばることが出来た。
     私、ダイゴさんが好きなんだ。悪口いわれても嫌味言われても、ダイゴさんが好きで仕方ないんだ。
    「びしょぬれのままだと風邪ひくよ。帰って乾かさないとね」
     うなずく。ダイゴさんが触れたところが熱い。
    「ハルカちゃん? 大丈夫?」
     頭はぼーっとする。ダイゴさんが話しかけてるけど、はっきりと喋るには力がない。なんだか


     風邪だと言われた。熱はあるし、鼻水が止まらない。薬を貰って、しばらく寝てることにした。ダイゴさんにミシロタウンの家まで送ってもらった。ひたすら寝てる。旅に出てからこんな長い休息があったのは初めてだった。
     今頃ダイゴさん何してるんだろ。家にいるのかな、それともあのエアームドで飛んでるのかな。熱さがったらまた行っちゃおうかな
     いや迷惑に決まってる。あんなにダイゴさんに悪態ついといて、私のこと好きになってなんてムシが良すぎる話だ。
     なんであんな態度とってしまったんだろう。布団の中でじたばたしても、過去は変えられない。今さら態度を改めたところで、ダイゴさんが振り向くわけないじゃないか。
     大人だし、かっこいいし、トサカ頭のくせにやたらと髪型がきまってるし。私以外にもいくらだって目を輝かせてた人はいた。たくさんいた。そのとき、そんなダイゴさんを困らせて、気をひこうとしてた。
     でもそもそもむかついたのは、ダイゴさんがジムリーダーとかチャンピオンなんて名前だけとかバカにしてきたからだよね。うん、そこはダイゴさんが悪い。そしたら私はやっぱりチャンピオンになってやる。
     そして、ダイゴさんに今まで思ってたこと全部いってやる!


     熱も下がって来た。もう行こう。私はチャンピオンになる。
     チャンピオンロードを抜けて、私ははポケモンリーグ前にいた。目の前の建物に息をのむ。ここまでやっときた。自分の足で、サイユウシティのリーグに来た。
     最近はダイゴさんに全く会わないけど、連絡先は握ってあるし、家だって知ってる。チャンピオンになったら、その証明と共に絶対に乗り込んでみせる。

     何人戦っただろう。カゲツさん、フヨウさん、プリムさん。そして今目の前にいるのはゲンジさん。最後の一匹、ボーマンダがフーディンの放ったサイコキネシスに悲鳴をあげた。ボールに戻っていくボーマンダを見て、私は勝ったのだと確信した。
    「これは、いいところまで行くかな、久しぶりに」
     ゲンジさんはそう言っていた。チャンピオンは手強いからとも言ってもらった。そんなのゲンジさんたちと戦ってれば解る。普通のトレーナーとは違う。そんな風格があるからこそ、四天王って呼ばれてるんだと思った。
     ダイゴさんは名前だけだと言うけど、実力があるからこそ名前があるんだと思う。

     まだ浮かれちゃいけない。チャンピオンを倒すまではダイゴさんのこと考えたら危ない。ダイゴさんのこと思い出すだけで考えがどっか行っちゃうから。
     一歩一歩、踏み出すたびに作戦を練る。先発は中間の速さのライボルト。それから倒れたらつなぐのはラグラージかフーディン。タイプによってはチルタリスもありだよね。いやプクリンから出して、眠らせてからフーディンで瞑想して力をためる? あ、みんなの状態は万全にしないと。万が一でもあったらきっと取り返しなんて
    「ようこそハルカちゃん」
     チャンピオンの待つ部屋に入る。聞き覚えのある声だった。私は目をこする。
    「いつ君がここまでくるのか楽しみにしていたよ」
    「え、なんで、ダイゴさん? なんでダイゴさんがいるんですか!?」
    「こういうことさ。前にも言ったじゃない、チャンピオンなど名前だけだと。その時、どう思ったんだい?君は……ポケモンと旅をして何を見てきた?たくさんのトレーナーと出会って何を感じた?君の中に芽生えた何か、その全てを僕にぶつけてほしい!さぁ 始めよう!!」
     私の疑問に答える様子はなかった。ダイゴさんがモンスターボールを投げる。それが始まりの合図。
    「なんで、言ってくれなかったんですか!?」
    「遠慮することはないエアームド。目の前にいるのは敵だよ」
     ダイゴさんは私を見ていない。見ているのはこの戦いの流れ。こんなに真剣で深い読みをするような視線は見た事が無い。
     チャンピオンなんて名前だけ。やっぱり嘘だよダイゴさん。
     チャンピオンだって黙ってたのは許せないし、悔しいし、信じたくないけれど、普通のトレーナーと、覚悟が全然違うじゃない。
     それなのに名前だけなんて。やっぱり私の方が正しい。
     ダイゴさん、悪いけどこの勝負は私がもらう。そして私の方が正しいって言わせてもらうから!
    「いけ、ライボルトでんじは!」
     ライボルトはエアームドより速い。麻痺させてしまえばさらに有利になる。それからフーディンに交代して……
    「足元にまきびしだ」
     エアームドの翼の間から、松ぼっくりのようなものが飛んだ。交代を封じてきた。ライボルトの足元には踏んだら痛そうなまきびしがまかれている。高速スピンでもあれば吹き飛ばせるけど、私のポケモンは誰も覚えてない。ならば空を飛ぶポケモンか、交代を極力さける戦い方にしなくてはならない。作戦が全部練り直し。
     でもそれが勝負だ。一刻一刻事態は変わる。それに対応できるように、私はライボルトに命令する。
    「吠えろ!」
     出来るだけ電磁波をばらまく方向にチェンジ。エアームドはその間際、毒々しい液体を吐いていった。ライボルトに降り掛かり、具合が悪そうな顔をしている。
    「ネンドール、きみか」
     かわりに引きずり出されたのがネンドールというポケモン。私は見た事無い。戦ったこともない。つまり、ネンドールがどんなタイプを持っているのか解らないし、どんな技がくるかも予想がつかない。
     目がたくさんついているように見える。閉じてるのもあるし、ひらいているのも。なんだか気味の悪いポケモンだなと思った。
    「作戦はかわらない。でんじは!」
    「サイコキネシス」
     電磁波は弾き跳ばされた。あの飛ばされ方は地面タイプが入ってる。そのことに気付いた時には、ライボルトは吹き飛ばされていた。
    「次のポケモンは何でくるんだい?」
     ダイゴさんは余裕だ。タイプなんて解らずに突っ込んでくるからか。それがまたすっごくむかつく。怒っても仕方ないんだ。むしろ怒ることで冷静さを欠く。そこがダイゴさんの狙いだとしたら、焦るだけ損。
    「ラグラージ! 濁流!」
     まきびしを踏んづけていたそうな顔をしてる。ネンドールが全ての目を見開き、サイコキネシスを打ってくる。ラグラージに精神攻撃をすると同時に、目が一部だけ閉じた。ラグラージは優秀だ。開いてる目を狙い、濁った大量の水をぶつける。
    「ふうん、やるね」
    「ダイゴさん、余裕ぶっこいてると後悔しますよ」
     勝負は始まったばかりだ。ネンドールが倒れ、ボールへと戻っていく。そして出て来たのはさっきのエアームドだった。

     始まる時は思わなかったけど、勝負が進むに連れて楽しくなってきた。
     大好きなダイゴさんと、真剣勝負。他人が誰も入れない二人だけの時間なのだ。邪魔するものがいたとしたら、それは強制的に排除されるだけ。
     こっちも残りは少ない。フライゴンもフーディンもよくやった。いつも以上の力で攻撃しているのが解る。ボスゴドラの攻撃にプクリンが倒れ、ラグラージの波乗りがボスゴドラにトドメを刺す。
    「ここまで追い詰められたのは、初めてだね」
    「そりゃ光栄です。じゃあ、最後の勝負にしましょうよ」
     ダイゴさんが投げたボールから出て来たのは、やはり見た事が無いポケモンだった。メタグロスとダイゴさんは呼んでいた。その重そうな体は金属だろうか。鋼タイプなのかもしれないが、それにしては関節の動きがスムーズで、それだけではないかもしれない。
    「始めよう、最後の勝負だ」
    「負けるか。ラグラージ、地震!」
     ラグラージが速かった。メタグロスに食らわせることができた。けれど目視では半分も減ってないみたいだけどね。こりゃ相当固いポケモンだ。
    「コメットパンチ」
     聞いたことのない技が飛ぶ。メタグロスの腕が彗星のように残像を残して軌道を描いた。ラグラージの体に思いっきり食い込むそれは、やはり体感したこともないダメージだ。痛いとラグラージが鳴くくらいだ。何発も食らえない。
    「じしん!」
     濁流で命中率を下げるのもありだと思ったが、そこまでは時間がない。威力のある技で攻める。
     メタグロスとラグラージの力の一騎打ち。素早い分だけ、ラグラージが勝てる。急所なんかに当たらなければ。それだけは願い下げ。頭のヒレとか、手の先とか。
     ラグラージも解ってるようで、どこかいつもより姿勢が引き気味だ。そのおかげなのか、地震のダメージが普通より少ないと感じるのは。でも今はそれでいい。ラグラージが倒れたら、私はダイゴさんに負ける。
    「あと一発、ってところだね」
     ラグラージの息が上がってる。特性の激流が発動しているんだ。そしたらおそらく、コメットパンチを食らったら終わり。けど向こうのメタグロスも出たばかりの時よりは動きが遅くなってる。もしかしたら。
    「ラグラージ、いけるよ。落ち着いて」
     声をかける。一瞬だけ、ラグラージがこっちを見た。任せろと言わんばかりに、力を込める。
    「いっけえ!!」
     ラグラージが特大の水流を放った。命中は不安定だけど、これしかない。もうメタグロスに一度だって攻撃のチャンスを渡したく無い。水タイプ最強の技ハイドロポンプがメタグロスを襲う。重そうなメタグロスの体が1、2メートル後ろへと飛んだ。そしてそのままメタグロスは反撃する気配がなかった。
     しばらく沈黙が流れた。
     無言でダイゴさんがメタグロスをボールに戻している。今までの勝負がなかったかのように、いつものダイゴさんに戻っていた。
    「チャンピオンである僕が負けるとはね……さすがだハルカちゃん!君は本当に素晴らしいポケモントレーナーだよ!」
    「ダイゴさんこそ……名前だけのチャンピオンなんかじゃなかった」
    「そういってもらえて光栄」
    「それよりも私に謝ってください! チャンピオンだったこと隠してそうやって名前だけとか……」
    「それは君がもっと大人になってからかな」
    「そうやってはぐらかすのやめてください!」
     ダイゴさんは背を向けた。そしてそのまま手を振った。私を見ずに。
    「今日はハルカちゃんがチャンピオンになれたおめでたい日なんだ。ゆっくり家に帰って、ジムリーダーであるおとうさんに話してあげなよ。それから話を聞こう」
     むかつく! そうやって自分の話は高度だから理解できないみたいな言い方して。そうやって自分はさっさと帰ってさ! 
     追いかけようとしたら、取材陣に囲まれてしまった。チャンピオンを打ち破ったトレーナーが現れたなんて、格好のネタなんだ。
     囲まれていたら、すっかりダイゴさんを見失ってしまった。



    【どこにも行かないで】
     私はホウエンのチャンピオンになった。名前だけだってバカにしてたダイゴさんに文句と全て話すために、ダイゴさんの家に行く。
     トクサネシティの目立たない民家。そこがダイゴさんの家。
     最初、迷ったフリして入っていった。知らないフリをしていた。ダイゴさんがいるかどうかだけは解らなかったけど、そうすれば会ってしまっても偶然を装えるから。
    「ダイゴさん!」
     玄関をあけてダイゴさんを呼ぶ。まだ何から言っていいか決心がつかないけど、絶対に今こそ言うんだ。だからこそ。
    「ダイゴさん?」
     留守なのかな。返事がない。入って行くと、テーブルにモンスターボールが一個乗っている。そしてその傍らには白い封筒があった。凄い嫌な予感がする。緊張で上手く封筒が開けられない。封筒の端がやぶれて、そして中の便せんを取り出した。

    ハルカちゃんへ
    僕は思うことがあって、しばらく修業を続ける
    当分家に帰らない。
    そこでお願いだ
    机の上にあるモンスターボールを受け取ってほしい
    中にいるのはダンバルといって僕のお気に入りのポケモンだからよろしく頼むよ
    では、またいつか会おう!
    ツワブキダイゴより


     なん、で? しばらくってどのくらい? いつまで?
     なんで何も言わずにダイゴさんそんなこといつ決めたの?
     なんで、なんで、どうして!?

     もっと早く、素直になっていればよかった。
     もっと早く、好きだと言っていればよかった。
     もっと素直にダイゴさんに甘えていれば、こんなことには……


     モンスターボールの中にいるダンバルは私の気持ちなんて解るわけがない。楽しそうにこちらを見て、よろしくねといってるようだった。
     そんなの何のなぐさめにもならない。ダイゴさんがいなくなった。もう反抗することも甘えることも、好きだと伝えることもできない。
     涙がとまらない。止めようにも止まることなんてない。
    「ダイゴ、さん……」
     ダイゴさん、ダイゴさん。大好き、大好きで誰よりも大好き。
     早く、帰って来てよ。
     ダイゴさん……















    「なーんちゃって」
     背後からふざけた声がする。。振り返らなくても解る。だってその声は間違えるわけがない。
    「見事に引っかかったね! 説教しようと思ってる子供や、素直にならない子供にはお仕置きだ。大人を甘くみないでね」
     イタズラ大成功、とばかりに笑ってるダイゴさんがいる。あれ、ダイゴさんがいる。目の前のはダイゴさんだよね。
     え、つまり、その、私は、えーっと

     騙された!?


    「そんなに泣いちゃって、よっぽど悲しかったのかい?」
    「ち、違います! ダンバルくれたのが嬉しくて泣いてるんです!」
     悔しい。くやしー!!! あんなばっちり小細工しておいて、イタズラだなんて酷すぎる!
    「ふーん、そう。じゃあ、予定通りちゃんと出かけようかな」
    「どこにでもでかければいいじゃないですかっ!!」
     騙された。すっごいむかつく。もうダイゴさんなんて嫌い!!!
    「チャンピオンの任も降りたし、自由に旅するからその間よろしく。じゃ」
     そっぽ向いてる私に構わず、ダイゴさんは玄関から出て行こうとする。思わず先回りして、ダイゴさんの進路を塞ぐ。
    「ちょっと待ってくださいよ!!」
    「え、なに?」
    「なんでどっか行っちゃうんですか! これから私はどうしたらいいんですか!」
    「そんなの自分で考えてよ。そこまで僕が言うことじゃない」
    「……じゃあ、私の話きいてくれますか?」
    「何?」
     あれ、なんかすっごく言えない。
     好きだとか好きだとか、言いたいのに言えない。でも、言わなければダイゴさんこのままどっか行っちゃう。
     どうしたら、引き止める言葉が好き以外で言える? そうだ!
    「ダイゴさん、もっとポケモン教えてください!」
    「え、なんで僕より強い人に教えなきゃいけないの?」
    「だってダイゴさん知らないポケモン多いし、なんかいっぱい……」
    「なんだ、やっぱりね……いいよ。暇だから、いつでもおいで」
     ありがとうダイゴさん。
     私はいじっぱりだから好きだって言えない。だから、もっと一緒にいたい。

     大好き、ダイゴさん


    ーーーーーーーーーーーーー
    カップリング、ダイゴさんとハルカちゃん。
    ウィズハートでも書いたように、この二人は別れる方が多くてたまには違う方向にしてみようということで、嘘をテーマに書きました。
    恋の始まりはイラっとすること。出典不明ですが、体験的に最も説得力がありました。
    タイトルは「今に見てろ!」マイフェアレディというミュージカルで、主人公がスパルタ教育に不満をぶちまけるシーンで出てくる。
    王様に認められた時に、お前を銃殺にしてやるうううって空想をするんですよ。
    まあ、それでも午前3時まで練習に付き合ってるヒギンズ教授は物凄くいい人だと思います。

    最後、ダイゴさんは負けた時にやっぱりって思いつつ後からじわじわ悔しくなってきて、何かしらハルカに仕返ししたかったのですよきっと。

    チャンピオンなんて名前だけ、ってよくダイゴさんを書く時に使うけど本当にそう思ってると思ってる。
    王者の印をくれるNPCは、ダイゴさんからもらったと言うのよ。ダイゴさんには印とか形は無意味だと思ってるんだと思うよ。それがあのシンプルな家だよ!
    王者の印のくだりは入らなかった。

    ダイゴさんは完全にハルカの方に気付いているけど、こんな素直に自分の気持ちを出せない子のままだったらつけあがるから言わないで手のひらで転がしてる。
    ハルカはバレてないと思ってるけどね!バレバレだけどね!特にダンバルのところは!
    【何してもいいのよ】
    【恋の始まりはイラっとすること】【異論は認める】
    【同じ話を二回も書くほど暇じゃないのよ】


      [No.2334] サクライロノヒミツ 投稿者:ラクダ   投稿日:2012/03/31(Sat) 23:06:51     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     ねえ知ってる? 桜の花ってね、元々は全部白だったんだよ。大昔に桜の名所で大きな戦いがあってね、そこで流された血を吸って赤く染まってしまったんだって。その木の子供たちが色んな所に散らばったから、今の桜は全部うすーい赤なんだよ。
     それでね、時々、濃い赤の花が咲く木があるらしいんだけど……それはね、新しい血を吸っているからなんだって。根元を掘り返すと、死体がたくさん出てくるんだよ……。

     満開の桜の木の下で、私に囁きかけた女の子は小さく笑った。特別な秘密を教えてあげる、彼女のきらきら光る瞳がそう語っている。有名な“桜の下には死体が埋まっている”という都市伝説、正しくは小説の一文そのままの話だけれど、あんまり楽しそうに話すものだからこちらも素直に乗ってあげる事にした。
    「そうなんだ、そんな怖い話知らなかったなあ。それ、どこで聞いたの?」
     問えば、お兄ちゃんがこっそり教えてくれたのだと胸を張る。絶対に秘密だからなって言ってた、だからお姉さんも他の人に言っちゃ駄目だよ。大真面目に語る彼女が可笑しくて可愛らしくて、私は笑いを堪えるのに必死だった。
    「分かった、誰にも言わないって約束するよ。でもいいの? そんな大事な秘密、私に話しちゃって。お兄ちゃん怒らないかな?」
     途端に女の子は表情を変えた。頬をハリーセンのように膨らませた彼女の話を要約すると、些細な喧嘩の挙句に自分を公園に置き去りにしたお兄ちゃんの事なんて知らない、とのこと。なるほど、それで一人寂しくベンチに座り込んでいたのか。哀愁漂う姿が不憫で声を掛けてみたらすっかり懐かれてしまった。まあこちらとしても、話し相手が出来ていい退屈しのぎになったけれど。
     しかし、お兄ちゃんは知ってるのかな。今この辺りにはとても危険なものが……うん?
    「ひょっとして、あれがお兄ちゃんかな? ほら、あのフェンスの向こうの」
     私が指した方を振り向いて、女の子は小さく声を上げた。公園を囲むフェンスの陰に隠れるようにして(目の粗い網だからほぼ丸見えなんだけど)、少年が一人こちらの様子を窺っている。バツの悪そうな顔でもじもじしている彼に、女の子はなんともいえない視線を向けた。許してやろうか、まだ怒っておこうか。彼女の迷いが手に取るように分かる。
    「ね、もうそろそろ日も暮れるし、お兄ちゃんと仲直りしておうちに帰りなよ。暗くなったら野生のポケモンも出てくるかもしれないし」
     実際、夜になって人通りが少なくなると、ポケモン達も大胆に草むらから出てくるようになる。夜行性で闇に目の効くポケモンを相手取るには彼も彼女もまだ幼すぎるし、二人ともトレーナー免許を得ていないなら尚更だ。それに万が一、夜道でアレに出くわしでもしたら大事になる。少しでも明るいうちに帰ってもらいたい。
     野生という言葉に怯んだのか、ううーんと唸った女の子はちらちらと少年を盗み見る。迷いに迷ってから、意を決してベンチから飛び降り少年に向かって歩き始める……前に、彼女はこちらを振り返ってお姉さんはどうするのと尋ねてきた。
    「私? うん、ちょっとここで待ち合わせしててね。ちゃんとポケモンは連れてきてるから大丈夫よ。気にかけてくれてありがと」
     ひらひらと手を振ると、女の子は安心したように笑って一直線に少年の元へ駆けて行く。ここからじゃ声は聞こえないけれど、身振り手振りのやりとりで何を話しているかは大体想像できる。おっ、お兄ちゃんが謝った。申し訳なさそうに両手を合わせて頭を下げる少年を前に、女の子がやたら満足気な顔をしているのが可笑しくて、私は今度こそ声をあげて笑った。  
     夕暮れ時を柔らかに吹きゆく春の風。ほんのり赤みを帯びた花弁が、仲良く手を繋いで歩き去る二人を追うように飛んで行った。

     
     
     
     彼女が帰ってきたのは、もうとっぷりと日が暮れた後だった。
     ベンチ後方の草薮から、かさこそと密やかな音が聞こえてくる。続いて、鈴を振るような軽やかな声。
    「おかえり。首尾はどうだった? ちょっと顔を見せて」
     振り向いて声を掛けると、彼女は了承の印に体を震わせた。くるりと回転しながらの“日本晴れ”、辺りが一瞬にして明るい日差しで満たされる。と同時に顔を覆っていた蕾を跳ねのけて、彼女は美しい五つの花弁を露わにした。ああ、何度繰り返してもこの変化の瞬間を見飽きることはないだろう。桜色よりもっと濃い、どちらかといえば赤に近い大きな花弁。額の二つの玉飾りと同じ、綺麗な深紅のつぶらな瞳。華やかな姿へと変わった彼女は、つやつやした黄色い丸顔に笑顔を浮かべて囀りかけてくる。
    「ふうん、見つけたけど物足りなかった、と。確かにいつもより赤みが少ないね。まだお腹すいてる? そう。じゃあ場所変えようか」
     嬉しそうに体を揺らして同意する。彼女の踊るような足取りに合わせて、私も立ち上がって歩き始める。
     静まり返った公園を出て、人気の無い路地へと入り込む。先ほどの“日本晴れ”の効果はまだ続いている、もうしばらく話をする間は持つはずだ。
    「今日、あなたを待っている間に新しい友達が出来てね。小学生くらいかなあ、小さな女の子。懐かしい話を聞かせてくれたよ、ほら『桜の下には』っていう……駄目よ、その子は絶対駄目。子供には手を出さない約束でしょ」
     不満そうに花弁を震わせて口を尖らせる。全く、本当に食欲優先なんだから。ため息を堪えて、上目づかいにじっとりした視線を送る彼女に妥協案を提示する。
    「ね、知ってる? この辺りに最近、通り魔が出るんだって。夜道を急ぐ若い女性や塾帰りの女の子を狙って、覆面男が刃物を持って追い回すらしいよ。もう何人も大怪我しててね、皆怖がって夜出歩かなくなってるみたい」
     深紅の瞳が怪しく輝き始める。私の意図をすっかり理解しているらしい。興奮して体を揺らし、きゃあきゃあと笑い声を立てて跳ね回る。ひどく嬉しそうなその様子に、見ているこちらの頬も自然と緩んできた。
     そう、それでいい。なるべく無邪気に、愛らしく、か弱く振舞えばきっとそいつは引っかかる。傷付けられる獲物が減って飢えているはず、そこへ私たちが無防備に通りかかれば――――。
     これで決定ね、と問えば、彼女は大きく頷いた。期待に満ちた表情に、私もとびっきりの笑みを返した。

    「それじゃ、食事に行きましょう! 沢山食べて、もっと綺麗にならなきゃね」





     
     ふっ、と眩い光が消えた。真昼から真夜中への転落に、しかし女とポケモンは動じなかった。広がる闇に怖じもせず、僅かな月明かりだけを頼りに動き始める。
     新鮮な「食料」を求めて、若い女と血色のチェリムは夜を往く。公園の桜の古木だけが、妖美な一組を静かに見送っていた。






    ----------------------------------------------------------------------------------
     

     
     お題、「桜」。見た瞬間に『桜の木の下には死体が埋まっている』『血吸いの桜』という件の話を思い出し、思いつくままに書いた結果が「人食いチェリム」。……なぜこうなった。
     とりあえず、チェリム好きの皆様に全力で土下座。ごめんなさい、しかし後悔はしていない!!
     
    【読了いただきありがとうございました】
    【何をしてもいいのよ】


      [No.2333] 【捕食注意】逃がすだなんて勿体無い 投稿者:門森 輝   投稿日:2012/03/31(Sat) 18:41:04     87clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ※描写は避けましたが一応捕食要素を含みますので閲覧注意かもです。












































     一ヶ月間に逃がすポケモンの数に上限を設ける法律が可決された。先週の事だ。
     生まれたばかりの子を野に放つのは可哀相、生態系の破壊に繋がる等と、予てより廃人と呼ばれる人々は批判されていた。政府がそれに対応した形だ。
     それを受け、施行される前に大量に逃がしボックスの空きを確保する者、デモを計画する者、予め引き取り手を募集する者、ばれずに逃がす方法を考える者、廃人達の反応は様々だ。
     斯く言う俺も廃人と呼ばれる人間である。だがこの法律による影響は全く無い。ポケモンを逃がす事など元よりしていないからだ。手間を掛けて孵化させたポケモンを態々逃がすだなんて勿体無いではないか。更に言えば法律も元から守っているとは言えないが、俺の取っている方法なら何とか言い逃れは出来るだろう。この方法なら金銭面で助かる上に生態系を崩す事も無い。売ったり逃がしたりするのと違い、他に影響を与えない為ばれる可能性も低い。少しばかし条件がある位だ。


     今日も俺は小屋へと向かう。自転車の音で分かったのか、小屋からカイリューが現れる。俺はボールから2匹のイーブイを出した。
    「とりあえず今はこれで足りるか? まぁ足りないだろうけどまた後で数匹追加しに来るから、それまでなら大丈夫だよな?」
     カイリューは頷く。
    「ん。じゃあまた来るから」
     そう言い残し俺は小屋を後にする。

     イーブイの悲鳴が聞こえた。俺は気にせず自転車を漕ぎ続けた。

    ――――――――――――――――――――

     Twitterでとある方々の呟きを見て膨らんだ妄想を年齢制限が掛からない様に調整したものがこちらになります。リョナ描写や捕食描写は避けたしセーフなはず。注意書き必要かって位省きましたし。避けまくったら食べるという言葉すら出てこない事態に。結果としてもぎゅもぎゅしてるので必要だとは思いますが。でもピジョンがタマタマを餌にしてたりしますしポケモン-ポケモン間の捕食関係は成り立ちますよね。え、カイリューとイーブイは駄目ですか。そうですか。すみません。あと最初はvore注意にする予定でしたけど描写避けたらvoreとは限らなくなったので捕食注意になったり。
     とりあえず前半と後半を上手く繋げられませんでした。どうにか上手く繋げられませんかね。私には無理でした。そもそも前半いらなかったかも。
     ちなみにカイリューが小屋にいるのは手持ちにいるとタマゴのスペースが少なくなるからだとか。どうして小屋持ってるんでしょうね。人目に付かない場所だとしか決めてません。人目に付かないなら小屋とか無くても良いんですけどね。要は殆ど考えてません。適当です。そもそも人目に付かない場所にあるって事本文に書いてないんですよね。どこに入れればいいのか分かりませんでした。あと金銭的に助かるのは餌代的な意味ですが小屋の建築費だとか維持費の方が高い気もしてきたり。本末転倒。どれ位で元とれるのだろうか。計画性の無さが浮き彫りになってますね。でもそこが成り立たなくても生態系を崩さない事が理由になるのでいいですかね。生態系の破壊が廃人にとって不都合かどうかは分かりませんが、少なくともメリットはないですよね。
     これってポケモンの法律的にはどうなるんでしょうね。ポケモン愛護法とかだと完全にアウトですよね。でもばれても「目を離した隙にこうなっていた」って言えば言い逃れ出来るんですかね。それでも管理上の過失等に問われそうですが。でもポケモンバトルで相手を死なせた場合ってどうなるんでしょう。死なせては駄目だと手加減せざるを得なくなりますし、可だったらそれはそれでまずいでしょうし。「バトルの練習中の事故」って言い訳も出来ますかね。あとはカイリューを自分のポケモンではなく野生だと主張したり。懐いていれば逃がしても言う事聞いてくれますよね。カイリューが処分されそうですが。それ以前に元から生まれてない事に出来たりするんですかね。どうやって生まれた事を証明するんでしょうか。とにかくどんな法律があるかによりますね。ジュンサーさんがいるので法律自体はあるんでしょうけど。立法機関はどこなんでしょうね。何か話逸れて来た。まぁつまり、よく分からないので作中では曖昧な表現にしたって事です。
     あと今までの文読んだら分かるかと思いますが、法律が可決だとか政府が対応だとかも適当です。自分の中で設定とか全然定まってません。イーブイをもぎゅもぎゅしたかっただけです。食べてしまいたい位可愛いという事で。イーブイかわいいよイーブイ。どうしてこんなに後書き長くなったんだろう。
     
     

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【食べてもいいのよ】
    【イーブイかわいいよイーブイ】
    【本文の倍以上ある後書き】


      [No.2332] 少し語り 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/03/31(Sat) 08:14:02     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ちょっと語りをすると「ある裏山の話」は能のジャンルで言う「夢幻能」を意識しています。
    その土地の精霊やら、そこで死んだ人が登場人物の前に現れて歴史や出来事を語り、そしてまた去っていくという形式ですね。
    能はこういうのが多い。

    くはしくは
    http://www2.ntj.jac.go.jp/unesco/noh/jp/noh_play.html 夢幻能と現在能について

    (引用)
    夢幻能では、神、鬼、亡霊など現実世界を超えた存在がシテとなっています。通常は前後2場構成で、歴史や文学にゆかりのある土地を訪れた旅人(ワキ)の前に主人公(シテ)が化身の姿で現れる前場と、本来の姿(本体)で登場して思い出を語り、舞を舞う後場で構成されています。本体がワキの夢に現れるという設定が基本であることから夢幻能と呼ばれています。


      [No.2331] サクラサク 投稿者:ヴェロキア   投稿日:2012/03/30(Fri) 09:57:02     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ちょっとだけ挨拶します。こんにちは。
    もう桜の季節ですね。このお題にナットク!
    でわ、スタートッ!!




    ここはイッシュ地方のカノコタウン。もうすぐ桜の季節だ。

    川沿いを歩いていたツタージャは、ぷかぷかと浮いているコアルヒーを眺めていた。

    「ようゼスト!何かあったのか?」

    このツタージャの名前はゼスト。オスのレベル11らしい。

    「ううん。別に。」

    ゼストは体育座りでため息をついた。

    「絶対なんかあっただろ。え?!」

    コアルヒーがゼストのほうへ飛んできた。ツタージャの頭をなでている。

    そこへ、凄く小さな黄色い物体がのそのそとやって来た。

    「バチュバチュ、カル、何してるの?そしてこのツタージャ誰?」

    その物体はバチュルだった。コアルヒーを呼んだようだが、ツタージャには聞こえなかった。

    「おいおい、お前、カルって言うの?」

    「うん。そしてコイツは友達のミオ。」

    全く知らなかったので、ツタージャは握手を求めた。

    「僕はゼスト。よろしく。」

    しかしミオは聞いていない。

    「もしもし?」

    「あぁ。えーと、ゼストって言うんだったな。よろしく。」

    握手をすると凄く手がしびれた。

    「うわわわわ・・・・なんだこれ。」

    「ごめん。女の髪がモサモサ(アララギ博士)の家から電器吸ってきちゃった。」

    そう言うので、皆はアララギ博士の研究所を覗いてみた。

    <なんでパソコンが使えないのよッ!エイッ!あぁーーー!!」

    「何か騒動になってるな。」

    【クスクスクス】

    笑い声が聞こえた。

    「僕もアララギの馬鹿な行動見てたんだけどさ、あんた達もおもろくってさぁ!アハハハハハ!!」

    「バル!!」

    またコアルヒーが名前を呼んだ。バルジーナのバルというようだ。

    「カル、お前知り合い多いな。」

    「それより、アララギの研究所見てみろよ。おもろいぜ。」

    アララギ博士が感電していた。

    「アハハハハハハ!!!」

    一人だけバルが爆笑していた。周りはシーンだ。

    「もう解散しよ。明日の午前10時ね。ここ集合。」

    続く?!


      [No.2330] (二)ある裏山の話 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/03/30(Fri) 03:00:07     94clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     私の学校の裏山は春になるとそりゃあ見事なものです。
     というのも昔、この土地を治めていた殿様が桜を植えさせたらしく、毎年三月にもなると山が薄いピンク色に染まるのです。
     だからこの時期になると学生も先生達もみんなお弁当を持って、競うように裏山に行きます。
     桜の咲き具合が綺麗な場所をみんなして争うのです。
     この為に四時限目の授業を五分早く切り上げる先生がいるくらいです。
     けど、今日の先生はハズレでした。数学の先生は時間きっちりに授業を終わらせるから、今日はいい場所がとれませんでした。おまけに私のいる二年五組ときたら、学校の玄関からは学年で一番遠いのです。
     案の定、山を歩いても歩いても、いいところはすでに他学年や他クラス、先生達に占拠されていました。
     私は落ち着く場所を求めて、裏山を上へ上へと登っていきました。
     けれども上に登っても登っても、良い場所はもう陣取られているのでした。
     あまり高くはない山でしたから、結局私は一番上まで行ってしまいました。
    「ここは咲きが遅いんだよなぁ」
     私はぼやきました。
     山の一番てっぺんのあたりは、麓とは種類が違う桜であるらしく、満開の花が咲くのがしばらく後なのです。今はようやく蕾が膨らんできた程度でした。幹が立派な桜が多いのですが当然あまり人気がなく、人の姿は疎らでした。
     しかし贅沢も言っていられません。私はそこにあるうちの一本の下に座り込むと、弁当の包みを解き、蓋を開けました。
     今日のお昼ご飯は稲荷寿司です。それは母にリクエストして詰めてもらったものでした。
    「今日はいい天気だなぁ」
     私はそう呟いて、稲荷を一つ、口に入れました。
     そうして、頭上で何かが揺れたのに気がついたのは、その時でした。
     稲荷を頬張りながら上を見上げると、黄色い大きな目が印象的な緑色のポケモンが桜の枝の上からこちらを見下ろしています。
     それはキモリでした。初心者用ポケモンとして指定されているだけあって、我々ホウエン民にはなじみのあるポケモンです。
     弁当狙いだな、と私は思いました。学校近くに住む野良ポケモン達はみんな学生の弁当を狙っているのです。スバメやオオスバメに空中から、おかずやおにぎりをとられたなんて話はよく聞きますし、私もやられたことがあります。ましてや学生達が自ら進んで裏山に入るこの時期は彼らにとっては絶好のチャンスなのです。
    「悪いが食べ盛りなんでね」
     私はそう言うと弁当の蓋で残り五つほど並んでいた稲荷をガードしました。
     キモリは不満そうな視線を私に投げましたが、それ以上はしませんでした。てっきり技のひとつも打ってくるかと思って少々身構えたのですが、そこまでする気はないようでした。技を使って強奪するまでは飢えていないということでしょうか。
     それならば場所を変える理由もあるまいと、私は蓋を少し上げて、二個目を取り出し、口に入れました。
     その時、
    「ふーむ、今年も駄目だのう」
     不意に後ろから声が聞こえて、私は声のほうに振り向きました。
     見ると、古風な衣装を纏った男が一人、一本の桜を見上げながら呟いているところでした。
     変な人だなぁ、と私は怪しみました。
     男の衣装ときたら、なんとか式部やなんとか小町が生きている時代の絵巻の中に描かれた貴族みたいな格好なのです。その一人称がいかにも麻呂そうな男が、地味な衣を纏った男を一人伴って、葉も花も蕾もついていない桜の木を見上げているのでした。
    「もう何年になるか」と、麻呂が尋ねると「十年になります」と従者は答えました。
    「仕方ない。これは切って、新たに若木を植えることにしようぞ。新しい苗木が届き次第に切るといたそう」
     しばらく考えた後、麻呂は言いました。従者と思しき男も同調して頷きます。
    「では、さっそく若木を手配いたそう」
    「できれば新緑の国のものがよいのう。あそこの桜は咲きがいいと聞く」
     そのような相談をして、彼らはその場を去っていったのでした。
     後には裸の桜の木が残されました。
     私はなんだかその桜の木がかわいそうになりましたが、咲かないのでは仕方ないかなとも思いました。
     改めてその木を見上げましたが、葉もついていませんし、花はおろか蕾もついていません。周りの桜は満開なのに、ここの木だけ季節が冬のようなのです。この木が春を迎えることはもうないように思われました。
     立派な幹なのになぁ、と私は思いました。きっと最盛期には周りにの木にまけないくらい枝にたくさんの花をつけたに違いありません。私の視線は幹と枝の間を何度も何度も往復もしました。
     そして、何度目かの上下運動を終えた頃に幹の後ろで蠢く影に気がついたのでした。
    「おや」
     と、私は呟きました。幹の後ろから姿を現したのはジュプトルでした。
     ジュプトルはキモリの進化した姿です。その両腕には長くしなやかな葉が揺れていました。
    「ケー」
     ジュプトルは沈黙を守る桜の木に向かって一度だけ高い声で鳴くと、ひょいひょいと跳ねながら颯爽と山を下りていきました。
     森蜥蜴の姿が消えた時、いつの間にかここは夜になっていました。あれから何日かが経ったようで、月に照らされた山の中で周りの桜が散り始めていました。まるで何かを囁くように花びらが風に舞い散っていきます。穏やかな風が山全体に吹いていました。けれど老いた桜は裸の黒い幹を月夜に晒したまま、沈黙を守っているのでした。
     山の麓のほうから何者かがこちらに登ってきたのが分かったのは、月が雲に隠れ、にわかに風が止んだ時でした。それは、先ほどこの場を去っていたジュプトルの駆け足とは対照的な、落ち着いた足取りでした。そうして、月が再び天上に姿を現した時、その姿が顕わになりました。
     花の咲かぬ桜の木の前に現れたのは、背中に六つの果実を実らせた大きなポケモンでした。その尾はまるで化石の時代を思わせるシダのようでありました。
     それはジュカインでした。キモリがジュプトルを経て、やがて到る成竜の姿でした。
    「ケー」
     ジュカインは低い声で桜に呼びかけました。
     そうして、自らの背中に背負った種を引きはがしにかかりました。まるで瑞々しい枝を折るような、枝から果実をもぐような音がしました。密林竜は一つ、また一つ、全部で六個の果実を自らの手でもいだのでした。
     もがれた果実は桜の木を囲うようにその根元に埋められました。ジュカイン自らが穴を掘り、丁寧に埋められました。
    「ケー」
     ジュカインは再び低い声で鳴きました。
     その時急に、止んでいた風がびゅうっと強く吹きました。
     嵐のように、桜の花びらが一斉に飛び散ります。花びらが顔面にいくつも吹きつけて私は思わず手で顔を覆い目をつむりました。
     そして再び風が止んだ月夜の下、再び目を開いた私は、不思議な光景をまのあたりにしたのでした。
     先程まで蕾のひとつもついていなかったあの裸の桜の木が、満開の花を咲かせていました。
     月夜の下で、まるで花束を何本も持ったみたいに枝にたっぷりの花が咲き乱れているのです。
     ついさっきまで、見えていた月が桜の花に覆い隠されているのです。
     あまりに劇的な変貌を遂げたその光景が信じられず、私は目何度も瞬きをしました。
    「ケー」
     ジュカインが満開の桜を見上げ、鳴きました。
     風が吹きます。まるで答えるように桜の枝がざわざわと鳴りました。
     桜の花びらがひらりと舞って、密林竜の足下に落ちました。

     それからはまるで早送りのようでした。
     みるみる花が散っていき、葉桜となることなく、再び木は裸になったのでした。そうして沈黙を保ったまま、今度はもう二度と答えることがありませんでした。
     瞬きをする度に時が移って、いつのかにか木は切り株となっていました。いつのまにかその隣に新たな苗木が植えられたことに私は気がつきました。
     桜はいつか散るが定め。
     最後に大輪の花を咲かせた後、老いたる桜はこの山を去ったのでした。



     昼休みの終わりを告げるベルが聞こえて、私は薄く目を開けました。
    「……あれ?」
     いつの間にか木の下でうたた寝していたことに気がついて、私は間抜けな声を上げます。
     キンコンとベルが鳴っています。
    「やべ、戻らないと」
     すぐに五時限目が始まってしまいます。
     私は、すっかり空になった弁当箱に蓋を乗せると元のように包みで来るんで、校舎に向かって駆け出しました。






    【描いてもいいのよ】
    【書いてもいいのよ】


      [No.2329] (一)二度桜 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/03/30(Fri) 02:59:23     84clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ホウエンで、桜は二度見られる。

     一度目は山の桜。
     三月下旬に見られる木に咲いた桜だ。
     古来より豊縁人は山の桜を楽しんだという記録が地の民の記録に遺されている。
     土地の支配者達は、しばしば山に桜を植えさせた。
     大きなポケモン達に桜の苗を運ばせて、木を司るポケモン達に育ませたということだ。
     それは自身が愉しむ為であり、民に力の大きさを示す為でもあった。
     彼らは言う。
    「我々は一番先に桜を楽しめるのだ」と。
     薄い紅に染まった山を背景にして彼らは語る。
     
     そして、二度目は海の桜。
     山の桜が散ってしまった頃、海に桜が舞うのだ。
     海の民はそれを花弁魚と記している。
     花弁魚は今で言うラブカスである。この時期、繁殖期を迎えたラブカス達は群れをなして、浅瀬に集まってくる。この時期の彼らは婚姻色と呼ばれるいっそう鮮やかな色に染まっており、一年の中で最も美しい。そんな彼らが集まると海が鮮やかに染まるのだ。
     そんな時だけ、彼らは漁と渡り以外で船を出す。
    「二度目の桜は、山の桜より鮮やかで美しいのだ」
     花弁に染まった海を背景にして、そう彼らは語る。


     陸と海には共通の言い伝えがある。
     山から流れてきた桜の花びらが花弁魚になるのだ、と。
     そう彼らは長い間信じてきた。
     実際、陸地から流れ込んだ栄養が、海の生き物を育てていることを考えれば、あながち間違いではないだろう。

     そして今、ホウエンの人々は年に二度の桜を楽しんでいる。





    【描いてもいいのよ】
    【書いてもいいのよ】


      [No.2327] 桜のはなし 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/03/29(Thu) 23:46:04     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    たまにはお題に沿って書こうと思いまして、とりあえず二編。
    続くかどうかはわからない。


      [No.2326] アイデンティティ 投稿者:紀成   投稿日:2012/03/29(Thu) 20:25:18     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ふう……。
    僕は、額に張り付いた汗を拭った。周りの騒がしさは、今日も変わらない。濃い緑色の同じ型をした服を着た人達が、忙しそうに僕の目の前を行ったり来たりしている。ただ流石に身長と髪形は違った。誰だったか『皆同じに見える』って言っていたけど、毎日毎日終電までここにいて、彼らを観察していれば嫌でも見分けが付くようになるだろう。
    たとえば、いくら双子でも性格は違ったり、大きくなればそれぞれ違う趣味を持ったりするわけで。現に僕の上司がそうだ。姿かたちは食玩のダブってしまったフィギュアを並べたくらい似ているのに、使うポケモンと性格は全く違う。あと服装も違うけど、手持ちポケモン関係なしで制服を取り替えれば、きっと誰も気付かないだろう。
    「ねーねー、ジャッジさん」
    小さな女の子の声で、我に返った。ショートカットの女の子。小学生くらいかな。丁度ポケモン取り扱い免許を持てる年だ。
    「なにかな」
    「あなたにポケモンを見せれば、どれだけ強いか言ってくれるっておねーちゃんから聞いたんだけど」
    僕は心の中でため息をついた。だが表情は変えない。笑顔のままで、彼女の視線に合わせるようにしゃがむ。
    「そうだよ」
    「じゃあ、このモノズを見て」
    そう言って彼女が取り出したモノズを見て、僕はもう一度ため息をついた。もちろん気付かれないように、心の中で。毛艶はいい。ミュージカルや他地方にあるという『コンテスト』に使えば、確実に良い評価をもらえるだろう。
    だが僕の仕事は、見せられたポケモンがどのくらいバトルをする能力に長けているかをジャッジすること。いつからこんなことが出来るようになったかは分からない。ただ、幼い時からやけに僕が選ぶポケモンは強かった。野生をゲットしても、他人から貰っても。
    僕はそういう『当たりクジ』を引きやすい強運の持ち主だったのかもしれない。中学に入る頃には、人目見ただけでそのポケモンの能力値が手に取るように分かるようになっていった。
    そのおかげでこうして仕事をもらえている。僕にしかできない仕事だ。ギアステーションに一日立って、見せられるポケモンの能力値を言うだけで暮らしていける。このご時勢に良い待遇を受けていると言っていいだろう。
    「うん、綺麗なモノズだね」
    「おねえちゃんのお使いなの。今日ジャッジさんに見せに行こうと思ってたんだけど、怪我しちゃって」
    「怪我?」
    「学校帰りに変な人に襲われた……って」

    最近ライモンシティだけではなく、イッシュ地方全体で問題になっていることがある。社会現象、と言った方がいいだろうか。
    『廃人』と呼ばれるポケモントレーナーの増加だ。
    彼らはポケモンを扱うトレーナー。それは皆共通していることだ。だが違うのは、より良いポケモン―― 能力値が高いポケモンを得るために様々なことをする。タマゴをひたすらそのポケモンに産ませ、孵ったポケモンの能力値を調べる。望みに合わなかったポケモンは逃がす。
    そんなことを続けるうちに、ある一部の種が増加したりして街のゴミが食い荒らされたり、それで住処が無くなったポケモン同士の争いが起こったり、食べ物が無くなったポケモンがその付近の住人を襲ったりするという事件が相次いでいた。
    このままではいけないということで、保健所がその街に溢れかえったポケモン達を捕まえているが元々はぐれた能力の持ち主ばかりなので、引き取り手も少なく、引き取られなかった者は……
    そして、そんな『廃人』を狩る者達も現れた。数年前に『プラズマ団』と名乗る集団が説いた『ポケモンは自由であるべきである』『ポケモンは人間から解放されるべきである』という信念に基づき、廃人はポケモンを虐待する者と見なし、様々な所で襲うようになった。
    いわゆる『廃人狩り』である。中にはタマゴを産ませていたポケモンを助けるため、と称して育て屋を襲い、そこに預けられていた珍しいポケモンを奪っていった盗人もいたらしいが、そこらへんは僕の知るところではない。
    そんなわけで、廃人も廃人狩りもポケモンがいなくならない限りおそらく消滅しないだろうという結果が出ている。

    「そうだな…… まずまずっていったところかな」
    「分かった。ありがとう、ジャッジさん」
    「ちょっと待って」
    モノズをボールに戻し、去って行こうとする彼女に僕は声をかけた。
    「そのモノズ、お姉ちゃんはどうするのか分かるかな」
    「……多分逃がしちゃうと思う。私は一匹もらったのがいるし、その他にキバゴもいるから」
    「もし逃がしちゃうなら、僕にくれないかな」

    モノズを育てるのは難しい。目が見えないため、あらゆる物を体当たり状態で確かめていく。おまけに歯が鋭く、慣れてない人は生傷が絶えない。
    だけど僕は、自分がジャッジしたポケモンが『必要ない』と言われて捨てられていくのは耐えられなかった。確かに救えるのは数えるほどしかいないけど――

    それでも、僕は彼らに居場所を作ってあげたいのだ。

    数日後、僕の隣にモノズが増えた。上司の許可を取り、何か噛んでて飽きない物を持参して噛ませることで連れて来る許可を得た。
    今日も彼は、僕の隣で古くて固いタオルを噛んでいる。そのタオルがボロボロになるころには、もしかしたら新しい仲間が増えているかもしれない。
    「ジャッジさん、このコはどんな感じ?」

    そう言ってイーブイを抱えた少女の目には、微塵の曇りもない。


      [No.2325] 千匹夜桜 投稿者:紀成   投稿日:2012/03/27(Tue) 10:49:05     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    以前、シンオウ地方に遊びに行った時の話です。
    といっても、仕事のついでに少しソノオタウン方面を見て回ろうかなと思っただけで、時間が無ければ行くこともありませんでした。そして、それを見ることも無かったでしょう。


    私は当時、ホウエン地方のカナズミシティにある企業で働いていました。主に研究員として、今で言うイッシュに生息するムシャーナというポケモンが出す、『夢の煙』を使って起動させる、夢を映し出す機械の研究をしていたのです。
    ですが思ったようには上手くいかず、時間だけが悪戯に過ぎていきました。
    そんな時、ホウエンから遠く離れた地方にそれを可能に出来るかもしれないという鉱物があると聞いたのです。余談ですがそれを調べてくれたのは、社長でした。石集めが趣味の社長らしいといえます。
    その場所こそが、シンオウ地方だったのです。私は研究員の中でも一番下っ端、そして女性だったのでそこに行くことになりました。
    ハクタイシティに向かい、通称『地下おじさん』と呼ばれている人の元へ行き、『探検セット』という物を貸していただきました。いぶかしげな顔をする私に、彼は茶目っ気たっぷりの顔で、

    『これを使えば、珍しい物が普通の物になる。一先ずこの街で使ってみなさい』

    最初はその言葉の意味が分かりませんでしたが、使ってみてなるほど、と思いました。
    とにかく珍しい石や化石が沢山出るのです。そしてその壁の側には必ず『玉』の存在がありました。白、赤、青、緑。それらが埋まっている壁のすぐ近くで、それらがよく取れました。
    そして私は、持って帰るようにと言われている鉱物を掘り当てたのです。

    さて、私はそこに二週間近く滞在していたのですが、気温の低さに参っていました。
    ホウエン地方は、周りを海に囲まれているせいか比較的桜が咲くのも早いのです。ですがシンオウ地方は北にあり、毎年冬になれば必ず雪が降り積もるような場所です。私が行ったのは四月下旬ですが、まだ雪が残っている場所がありました。いわゆる『根雪』です。
    ある夜私は滞在しているホテルに帰る途中、ふと地図で見たソノオタウンのことを思い出しました。植物園こそないものの、暖かくなればその土地全体に花が咲き乱れる、とガイドには書いてあったのです。
    まだ早いけど、明日には帰らないといけないし、行ってみようかな。
    そう思い、かなり遅い時間でしたがソノオタウンに行ってみることにしました。

    ポケモンセンターは開いていましたが、フレンドリィショップは閉まっていました。既に霜が降り、花畑は蕾が付いている状態で固まっていました。その中心に一際大きな木がありました。桜のようです。
    これもまだ蕾が付いているだけでした。背景に月と星があり、何処かの絵本の中にいるような気がしました。
    かなり冷えていたので戻ろうか……と思い、背を向けました。

    その時です。

    地面がいやに揺れているように感じました。地震かなと思いましたが、違います。周りを見て、あっと叫びました。
    チェリンボが何千匹も、桜の木の周りに集まっていたのです。呆気に取られて動けない私の前で、彼らは次々と木の枝に上って行きました。その中の千匹くらい枝に上がったところで、一斉に光りだしたのです。
    それは、紛れもなく進化でした。
    木が光に包まれ、辺りを昼間のように照らします。気付いた時、彼らはチェリンボからチェリムへと姿を変えていました。しかも蕾の姿ではなく、花開いた姿で。
    千本桜、という言葉があります。彼らのまだ花開くことのない桜の木で進化したその姿は、正にそれでした。
    数分すると、彼らは蕾の姿に戻ってしまいましたが私は今までその光景を忘れたことはありません。

    あれから何度かシンオウ地方へ行きましたが、二度とその光景を見ることはありませんでした。
    カメラを持っていけば良かったな、とも思います。
    でも、あの夜桜の美しさは今でも色あせることなく、頭の中に焼きついています。


      [No.2324] うさぎ と おだんご と おつきさま と 投稿者:巳佑   投稿日:2012/03/27(Tue) 06:30:17     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     この世では、夜のとばりが下りて真っ暗になりますと、ルナトーンという月のポケモンが宵の町を照らしていました。
     夜道では暗闇に紛れて、野生のポケモンが人間を襲おうかと意図をくるくるとめぐらしますが、全ての悪事はルナトーンの光で明るみになり、人間たちはその光のおかげで宵の世界を生きることができていました。

     しかし、ある日のこと。
     町でたくさんの酒を胃に流し込み、見事な千鳥足を舞う二人の男が肩組みしながら夜空を見上げました。
     二人とも黒ヒゲを蓄えた顔に、鼻は真っ赤に染まっています。
    「たしかに、夜はあかるいけどよぉー! 昼間に比べたらぁ、おなごの姿がよく見えねぇことべよー!」
    「そうだ、そうだ、ほろ酔いの娘をよく見せろー! 見せろー!」
    「おう、相棒、これはあれじゃねぇかべぇ?」
    「なんだい兄弟」
    「月の野郎は抜けがけしてんじゃねぇのかって思うんだべぇ!」
    「なんでい、ひっでぇ話だなぁ。夜を照らしているついでに娘を覗き見かよっ」
    「ちっげぇべ相棒。月の野郎はおなごを覗き見しているついでに夜を照らしているんだべぇ」
    「そいつはもっとひでぇなっ!」
     二人の男はガハハと下品に笑いますと、夜空に向かって、こう叫びました。

     やーい!
     やーい!
     べぇーすけ! 
     べぇーすけ!
     宵の町より
     酔いの小町がお好みかぁー!?
     おなごや夜道は用心して歩を進め
     月の明かりは
     鼻の下が長い送り狼の閨(ねや)ぞ
     もしも抱かれてしまったら
     二度と朝日を拝めないぞ

     まずいことに、この男達の歌は大きく響いていき、やがてはルナトーンの耳にまで届く始末に。
     もちろん、滑稽にされたことに怒ったルナトーンは二度とこの世の宵を照らすことなどするもんかと断言してしまいました。
     さぁさ、大変なことになりました。
     このままルナトーンがどこかへと去っていってしまえば、再び、この世の夜は外が真っ暗に染まってしまいます。
     これでは夜遊びどころか、おちおち外に出歩くことさえもままなりません。
     暗闇に紛れた野生のポケモンがいつ襲いかかってくるか分かったものではなかったからです。
     
     町の人々や、流石に二人の男もどうしよう、いかがしようと困っていたときのことでした。
     どこからともなく、たくさんのうさぎが現れました。
     茶色の体に、綿あめのようなもこもことした毛を身につけたうさぎポケモン――ミミロルとミミロップです。
     そのうさぎ達は木製の杵(きね)や臼(うす)を持っており、臼を地面に置きますと、杵を臼に向かって振り落とし始めました。
     臼の中には何かが入っているようで、うさぎ達が杵を振り上げるときに白く伸びるものが現れます。
     それは真っ白なお餅でした。

     はいやお月さま
     ほいやお月さま
     そんなに顔を真っ赤にさせたら
     爆ぜ(はぜ)てしまいんす
     宵を照らすあなたの光は
     酒をこぼす盃(さかずき)のよう
     うさぎも酔って
     ニンゲンも酔って
     あなたも酔って
     みんなみんな
     好い(よい)仲間ではないか  

     うさぎ達が歌いながら、または踊りながら餅をついていきますと、まずは二人の男が歌いながら踊りだします。
     それからこの祭のような賑わいに、町に住まう人間達が引き寄せられ、同じく歌いながら踊りだします。
     そして、最後にルナトーンもうさぎ達と人間達の真上で踊りだします。
     先程まで、鬼のような顔を見せていたのに、あら不思議。
     ルナトーンは笑顔を浮かべていました。

     怒りたい気持ちをぺったんこ
     みんなの仲をぴったんこ
     好い仲間のしるしとして
     お団子食べれば
     みんな良い笑顔
     
     歌い踊り終われば、ちょうどいい塩梅(あんばい)にお団子ができあがりました。
     その味に人間達はほっぺたが落っこちそうになり、うさぎ達は耳が伸びそうになります。
     もちろんルナトーンにもお団子が手渡されました。
     どうぞとお団子を差し出したうさぎはなんとも美しいミミロップで、顔を真っ赤にさせたルナトーンは爆発しました。
     あれま大変と、急いで人間とうさぎ達はお団子を使って、ぴったんぺったんとルナトーンを直します。

    「なんだ、やっぱりお月さんもオイラたちと一緒だべな!」

     その男の言葉に人間達もうさぎ達も、そしてルナトーンも楽しげに笑いました。
     
     


    【書いてみました】
     
    (一応)前置き:このルナトーンはスケベクチバシ先生ではありません。

    『おつきみだんごっ!』内で出てきたお伽話を作ろうと思って、今回の物語を考えました。
     月見団子って、地球と月の縁をくっつける為に供えるものでもあるのかなぁと考えながら書いていき……。
     結局、星と月がケンカではなく、悪口を言われた月がグレそうになるといった感じになってしまいましたが、一応、『おつきみだんごっ!』から生まれたということで、こちらの記事に付けさせてもらった所存でございます。
     
     それにしてもお団子って不思議ですよね。
     本当に縁をくっつける力がありますよね、きっと。
     だって、人間と鳩尾キラーのロコンとかも(以下略)
     そうですねぇ、そのロコンにはみたらし団子をあげれば……おや、誰か来たようd(ドカバキャグシャ!)


     ありがとうございました。

    【何をしてもいいですよ♪】
         


      [No.2322] 春コミ無料配布本でした 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/03/26(Mon) 01:05:12     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    春コミ無料配布本でした (画像サイズ: 600×648 33kB)

    出張で北海道に行く機会がありまして、小樽でガラスの浮き玉を見ながら妄想した話です。
    春コミ無料配布本にしておりました。

    冬コミで出した単行本「携帯獣 九十九草子」
    http://pijyon.schoolbus.jp/off/index.html
    の増補的な位置付けになっております。

    気に入っていただけた方がいたなら幸いです。


      [No.2321] 【ポケライフ】硝子の浮き玉 -携帯獣九十九草子 増補- 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/03/26(Mon) 01:00:24     114clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    【ポケライフ】硝子の浮き玉 -携帯獣九十九草子 増補- (画像サイズ: 580×756 75kB)

    ●硝子の浮き玉


     浮き玉はガラスを吹いて作った玉です。
     ガラスを吹いて丸い形を作り、冷めないうちにガラスの封をして工房の印を押します。空気を密封したそのガラスの玉は水に浮きます。だからそれは浮き玉と呼ばれるのです。
     私は小さい頃、浮き玉が大好きでした。祖父の工房にも家にもたくさんの浮き玉がぶら下がっておりました。小さいもの大きいもの。色の変わったものや、模様をつけたもの。様々ありました。
     私はそれを眺めるのが好きでした。編んだ紐で玉を包み、それをいくつもぶら下げた様が好きでした。

     私の育った町はガラスの町でした。いくつも、いくつものガラス工房がありました。
     祖父はガラス工芸の名人でした。形の良いきれいなグラスも作りましたし、透明な器も作りました。熱を帯びた飴のように伸びるガラスを自由自在に引き伸ばして、様々なポケモンを作りました。翼を広げた鳥ポケモン、嘶く火の馬ポケモン、うねる海蛇ポケモン、まるで魔法のように火と風を操って、祖父は様々な形を練り上げるのでした。そんな祖父の隣にはいつも何匹かの炎ポケモン達が寄り添っていました。ひょっとこのような口から火を吹くブーバー、燃え盛る炎の尻尾を持つリザード、木炭を食う茶釜のようなコータス、ふかふかとしたマフラーをしたブースター。それぞれに得意な炎があって作るガラス工芸によってパートナーが違うのだと祖父は語っていました。
     祖父はいろいろな作品を作りましたが、私は浮き玉が好きでした。丸いだけの最もシンプルなガラス工芸ですが、その球体がわずかに閉じ込める空気、空間が好きだったのだと思います。祖父はいくつもガラスを吹いては浮き玉を作って私にくれました。通常は種類ごとに手伝わせるポケモンを変えるのですが、浮き玉だけは別でした。今日はブーバーの炎で、今日はコータスの炎でという具合に順番に手伝わせては作っていました。祖父は浮き玉の蓋にポケモンごとに違う印を押しました。
    「名人がな、硝子の玉を膨らますとその中には硝子の精が宿るんだ」
     祖父はよく、こんな話を致しました。
    「よく命を吹き込むって言うだろう? 職人の息吹、その相棒の炎(いぶき)が交じりあってな、硝子の精になるんだよ。浮き玉が美しいのは中に硝子の精がいるからだ。だからそいつが逃げていかないうちにこうして蓋をするんだよ」
     だから私は浮き玉が好きだったのだと思います。たとえその中に何も見えなくても、ここには何かが居るのだ。何かが宿っているだと考えるだけでワクワクしたのです。
     そんな祖父の話を聞いて育った私は、いつか自分もガラス職人になるのだ。そう思っていました。現に工房の子の多くはガラス職人になっていましたから。
     
     けれども、町はいつまでも同じ姿をとどめませんでした。
     他の地方や外国が安い製品を次々に作り始めて、ガラスの町は次第に傾いていったのです。一つ、また一つ。工房は数を減らしていきました。
     そんな中、私が初めの学校を卒業する頃、祖母が亡くなって、あとを追うように祖父が他界してしまったのです。その頃にはこの町からずいぶんな数が無くなっていたと思います。目の前の工房から人がいなくなり、隣の工房は看板を変えました。そうして祖父がいなくなった時に、後を継ぐ気の無かった父は工房を畳んでしまい、私達家族は他の町に移ったのでした。
     遺っていた祖父の作品は多くが人手に渡って、あるいは処分されました。祖父の仕事を手伝っていたポケモン達もまた、トレーナーや職人に引き取られたりしたのでした。私達家族の下に残ったのはブースターの一匹だけでした。残されたブースターは仕事が無くなってからすっかり老け込んでしまいました。私と散歩に行ったり、ご飯を食べたりする以外はリビングの陽のあたる場所でずっと眠っております。
     そうして他の町に渡り、学生生活を送っているうちに、私は次第にガラスのことなど忘れていったのでした。

     それからの話は暫くの月日が経ってからになります。
     進学か就職か、そんなことを考えなくてはいけない時期に差し掛かっていた年の暮れでした。そのような岐路に立たされた逃避の結果だったのでしょうか。今年は徹底的にやろうなどと意気込んだ私の姿は、普段の年の大掃除では手をつけない倉庫にありました。この際、いらないものは徹底的に整理しようと思ったのです。
     埃を被って灰色に汚れたダンボールをいくつもいくつも出しては開きました。昔取った授業のノート、教科書、色の褪せたおもちゃ。思いがけず懐かしいものを発見しては手を止めました。けれど多くは捨てることにいたしました。とてもとても懐かしかったけれど、私にはもう必要の無いものでしたから。住むところも、持ち物もいつまでもそのままではいられないのです。私は書類を縛り、そうでないものは袋に詰めて口を縛ると家の外へと運び出しました。今の時期の日暮れは早いもので、その時には随分と暗くなっていました。
     そうして何往復かを繰り返し、倉庫に戻った時、なにやら倉庫の中で動く影があることに気がつきました。父か母が入ってきたのだろうかと、倉庫の入り口に足をかけた私が見たのはくすんだ赤い毛皮のブースターでした。私は少々驚きました。時が経ち、ますます年老いたほのおポケモンは、最近散歩にも行かず眠ってばかりでしたから。ブースターはかつての鮮やかさと膨らみを失った尻尾を揺らしながら、一つの箱をしきりに引っ掻いています。この年老いたポケモンが惹かれるようなものがこの中にあるのだろうか? 私はテープ止めされたままのその箱にカッターを入れ、扉を開くように開けました。中にはくしゃくしゃに丸めた黄ばんだ紙が何かを守るように詰められております。私は手を突っ込んで中のものを取り出しました。紙に包まれて出てきたそれは、丸い丸い、ガラスの浮き玉でした。大きさはぼんぐりやモンスターボールほどです。にわかにほのおポケモンの瞳が小さな明りを灯したような光を宿しました。
     丁寧に編まれた紐で包まれたそれは持ってぶら下げることが出来ます。見上げるようにして封を確かめると甲羅の紋章が見えました。コータスだ、と私は思いました。まるで、水底に沈んでいたものが浮かんでくるように、祖父がコータスと作った時に使う印であると思い起こされたのです。
    「もしかしたら、お前のも」
     私は箱に詰められた浮き玉をひとつひとつ取り出しては、確かめ、一つ目の玉に掛けていきました。二番目に取り出したのは二つ並んだ火の玉の目立つブーバーの印の玉、次に見つけたのが伸びた尻尾の先に炎が灯ったリザードの印を押した玉でした。そして最後に、ブースターの横顔とえりまきを象った印の玉を取り出したのでした。
    「わうっ」
     私が四つの浮き玉を吊り下げたその時、ブースターが小さく鳴きました。
     透き通る球体にふんふんと鼻を近づけ、また小さく、今度は二、三度鳴きました。その様子はまるで彼が四つの浮き玉に話かけているようにも見えました。
     年老いたブースターは何度も、何度も、ガラスの浮き玉に呼びかけ続けました。
    「そうだよな。久しぶりだもんな……」
     その様子はなんだか私の胸を締め付けました。
     私は今の今までガラスのことなどすっかり忘れていたのに、彼はずっとこの時を待っていたのではないかと、そう思ったのです。それなのに私は、今の今まで開きもしないでずっと暗いところに仕舞いこんでいたのですから。
    「わうっ! うわう!」
     ブースターが一際大きく声を上げました。
     すると、気のせいでしょうか。一瞬、浮き玉の中の一つがまるでランプに火をつけたように炎を宿したように見えて、私は目をぱちぱちとさせました。炎が生まれ、玉の中で宙返りするとフッと消えたように見えたのです。それは私が、最後に取り出した浮き玉でした。
     すると、まるで呼びかけに答えたかのうように残り三つの玉にも炎が宿りました。最後に取り出した最初の一つが再び燃え上がって、残りの三つが応えます。そうして四つの炎は会話をするように玉の中でそれぞれが躍り、揺れました。
     宿った炎はそれぞれがそれぞれに違っていました。ガラスの壁にぶつかっては弾ける、落ち着きの無い炎、ゆっくりとけれどこうこうと燃える炎、まるでグラスの中で揺れる果実酒のように玉の中を滑る炎――今はもういないブーバー、コータス、リザード。その炎の揺らめきはとうの昔に別れてしまった祖父の相棒達を思い起こさせました。

    『名人がな、硝子の玉を膨らますとその中には硝子の精が宿るんだ』

    『命を吹き込むって言うだろう? 職人の息吹、その相棒の炎(いぶき)が交じりあってな、硝子の精になるんだよ』

     躍る炎が私達、一人と一匹の影を伸ばして揺らめかせます。
     陽が落ちて暗くなっていた倉庫はにわかに明るくなりました。暖かな光が作り出す陰影が、音の無い賑わいを生み出しました。
     ああ、名人であったのだ、炎の眩しさに目を細めながら私は思いました。
     祖父は――いや、おじいさんとそのポケモン達は本当に名人であったのだ、と。
     炎が踊って、影が躍り続けています。
     私はその光景に、いつまでもいつまでも見入っておりました。

     年老いたブースターが静かに息を引き取ったのは、それから数週間後のことでした。



     硝子の浮き玉。
     その中に躍る炎を見たのは、今のところその時が最後です。
     四つの浮き玉は未だ私の手元にありますれど、あれから炎は二度と現れませんでした。まだこの中にいるのか、見えていないだけなのか、あるいは、祖父の相棒と共に旅立ってしまったのか、それは私にはわかりません。

     ただひとつはっきりとしているのは、私がその光景を忘れることが出来なかったということです。
     水に浮かんだ硝子の玉は、もう沈むことがありませんでした。


     今、私には相棒がいます。
     まだ小さな炎しか吐けませんけれど、今の私には十分です。
     いつかおじいさんとその相棒達のようになれたら――そう私は思っています。









    2012年3月18日 配布


      [No.2320] 斧歯相撲 投稿者:リング   投稿日:2012/03/26(Mon) 00:45:53     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ここに来るまでに糞の跡、尿の跡、そして真新しい踏み跡を探り回っていた二人は、傍目には変人奇人の類に映ることであろう。
    「見ろ、オノノクスだ。11時の方向、あの岩場の方だ」
     そんな行動の末に、迷彩服に身を包んだ男はお目当てのポケモンを見つけた。彼は、隣の草むらに興奮した様子で話しかける。もちろん隣の草むらにいる者も同じく迷彩服に身を隠し、擬態した人間であり、動かずにじっとしていれば発見するのは難しい。
     視覚で彼らを捉えるならば、ハブネークの持つピット器官を使うか、カメラのレンズの反射を視認するしか手は無いだろう。オノノクスの嗅覚は、退化こそしていないがそれほど敏感と言うわけでもないから、まず嗅覚からは見つからないし、聴覚だってここは山。吹き寄せる風に紛れて、足音なんてかき消されてしまう。まず見つかるはずもない。

    「おー、本当だ。いるいる」
     双眼鏡を覗いて、もう一方は感嘆の声を漏らす。視線の先には、オノノクスが互いの手を掴みながら抱き合っている光景。愛を語らっているわけではない。ましてやオノノクスに社交ダンスの生態は無い。

     あれは、メブキジカやオドシシの角と同じ。外敵に対する攻撃手段としても使われるが、メインは相撲を取るためだ。メブキジカならば、角を絡め合わせて押しあいを始める。角の付け根の痛みに負けて押し返される若い雄は、格上の雄に凄まれればすごすごと引き返しては視界から消える。
     そうして、ほとぼりが冷めた頃に大きさが同じくらいの雄に挑んでは、勝った負けたを繰り返して、そうして切磋琢磨ともライバル落としとも付かない期間を終えて、繁殖期に至るまでその行為は続けられるのだ。
     繁殖期の頃にはもう雌が雄を選んでいる。強い雄は複数の雌を囲み、数日の間はほとんど飲まず食わずで子孫を残す行為に専念するのである。


     その斧葉相撲を撮影するには、さすがに最初の位置からでは遠すぎるため、ある程度近づいてから二人は撮影を始める。その際、周囲の景色に紛れる迷彩服は非常に役に立ち、二人とオノノクスの距離は30メートルほどまで縮まった。そのまま追いかけることも考えたのだが、運がいいことに忍び足で近寄って行くうちに、オノノクスはもう一頭の雄と鉢合わせしていた。
    「見てください……二頭のオノノクスです」
     小さな声だ、ここまで離れていれば、普通に会話をしてもオノノクスの耳に届く前に風にかき消されるであろうが、万が一のことを考えると慎重にならざるを得ない。マイクは顔に固定するイヤホンマイク型。安物ではないが、いかんせん小型であるため機能性は芳しくなく、周囲の雑音も容赦なく拾われていくため、さわさわと木の葉を撫でる程度の優しいそよ風が相手でも、音量を絞った声では太刀打ちできない
    「おい、マモル。声小さい……全然聞こえないぞ。大丈夫だって、この時期のオノノクスはまだ温厚だから多少の声なら安全だ」
    「あいあい、アマノ。それではー……えー、見てください。アレがオノノクスです」
    「……うーん、これはどうなのかなぁ」 
     言わせておいてなんだが、と言う風にアマノと呼ばれた青年は呟いた。
    「やっぱりあれだ、基本的に自然の音だけを録音して、後からナレーションを入れた方がいいかもなぁ……口パクでナレーションを入れる間だけ作って……」
     アマノが提案する。
    「そうだな……周りの音も邪魔せず入れておきたいし」
     そしてその提案にはマモルも納得した。
    「じゃ、黙るぞ……」
     ポケモン達を刺激しないよう、マモルは黙りこくって撮影を始める。しばらくフィルムをまわしていると、闘争心の強い二頭の雄のオノノクスが雌の争奪戦に向けての斧歯相撲を始めてくれた。
     手と手を握り合ったまま、顎の斧歯をガツンガツンと打ち合わせる斧歯相撲。歯の付け根が痛くなるか、ヒビ割れるかでどちらかが降参すれば勝敗のつくこの試合。同族の仲間を殺さないように、かつ必要以上に傷つけないようにどちらが強いかを競い合うにはもってこいである。

     繁殖期の前は、斧歯同士を打ち鳴らす音が時折山で響きあうため、オノノクスを恐れるポケモンはその音を聞くとすぐに逃げ出してしまうのだ。
     フキヨセの街では、そんなポケモンたちの性質を利用して、オノノクスの斧歯相撲に似た音を出す楽器を打ち鳴らすことで農作物の被害を減らしたという。
     そんな、斧歯相撲の力強い音色を間近で聞いていると、その迫力にはナレーションを入れる余裕もないくらいに息をのんでしまう。
     双方ともに斧歯の付け根が痛いのか、時折休みを挟みながらもつなぎ合った手は離れない。
     痛みで膠着状態に陥っていた時、痺れを切らした僅かに体が大きい方のオノノクスが牙を振り上げる。
     待ちの体勢に入っていた小さい方はこれを待っていたのだ。わずかに小さい方は斧歯の中心で、相手の斧歯の中心から外れた部分へ打ち付けた。
     斧歯の芯で斧歯の比較的弱い部分を叩いたことで、痺れを切らした大きいオノノクスの斧歯は僅かながらに欠けてしまう。
     これには、大きい方も負けを認めざるを得ず、体の大きなオノノクスは自分から手を離して頭を下げた。
     鮮やかな勝負の幕引きに思わず撮影者も感嘆の声を上げる一方で、小さなオノノクスの勝利の雄たけびが撮影者の声をかき消す勢いで周囲に響き渡る。
     あの雄はいずれ大物になる、そんな気がした。


     思ったよりも迫力のある映像を撮れての凱旋帰還の最中の事。
    「そういえば、ソウリュウシティのジムリーダーのシャガさん……オノノクスとレスリングをやっているって言うけれど……あの髭の中に金属仕込んで斧歯相撲でもやっているのかなぁ?」
    「いやいやいや、アマノ。それはないだろ」
     あの圧倒的な力強さの相撲に、人間が太刀打ちできるわけがない。いかにあの逞しいシャガさんでも、それは例外ではないだろう。それでも、ありえそうに思えてしまうあのカリスマが、彼が市長たる所以なのだろうか。


      [No.2319] 作者・スタッフ分発送しました 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/03/26(Mon) 00:18:17     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    メールでもお知らせしましたが、作者スタッフ分を発送いたしました。
    1週間経っても届かない場合はご一報くださいませ。


      [No.2318] ドッペルゲンガー 投稿者:くろまめ   投稿日:2012/03/25(Sun) 21:29:56     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     ドッペルゲンガーという言葉の意味を、ある程度のことは誰もが知っているだろう。
     まあしかし、念のために話の流れをスムーズにするためにも、俺が簡単に説明しておくとしよう。ようは自分にそっくりな存在がこの世界のどこかにいて、それを見てしまうと死んでしまうというものだ。
     そりゃあ自分にそっくりな奴なんて、この広い世の中だ。どこかに一人くらいはいてもおかしくはないだろう。いや、むしろいない方が変かもしれない。俺と同じイケてる面子を持ってる幸運な輩がいるわけだ。


     とはいっても、やはり自分とそっくりな存在がどこかにいるというのは稀なことなのかもしれない。
     例えばそこら辺でチョロチョロと駆け回っているコラッタ達だって、僕からすれば全くもってそっくりだ。けれども本人からすれば、どこかしらの違いがあり、やはりそっくりではないのだろう。細かな違いというのは当事者たちにしか分からないものだ。


     だから、よくよく探せばどこかしらの違いがあるはずだ。毛並みだとか肌の色だとか、きっとどこかに違いがある。考えてることまで一緒ということはあるまい。双子や三つ子にだって何かしらの違いがあるように。いつかきっとわかるはずだ。おいらたちの違いというものが。ドッペルゲンガーなんてものは存在しないし、それで死ぬなんていうこともない。あるわけがないのだ。


     俺は僕はおいらは、隣のドードリオの顔を、じっと見た。




    ・描いてもいいのよ
    ・書いてもいいのよ
    ・批評してもいいのよ


      [No.2317] フェザーダンス 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/03/22(Thu) 00:13:57     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ふぅっと一息ついて、ゾロアークは空を見上げた。
     突き抜けるような青い空と、そこだけミルクをこぼしたような雲のコントラストが目に眩しい。
     長いこと旅に出ていた。そんなときに浮かぶのは家に残した美しい妻と可愛い子供。そろそろ帰ろう。お土産は何がいいだろう。長いこと開けてしまったから、怒ってるだろうか。子供はどのくらい大きくなったのか楽しみで仕方ない。
     ふとゾロアークの鼻に綿雲がはらりと落ちる。払いのけようと鼻先の雲を掴んだ。
    「羽?」
     誘導されるように空を再び見上げると、青い空に目立つ白い風。数羽の鳥が飛んでる。しかも円を描いたり、宙返りしたり。その都度、羽毛が美しく鳥を飾っていた。
     ゾロアークはその鳥を追いかけて走り出していた。もっと見ていたい。その思いだけで走る。鳥たちが着地するあたりに。
    「誰!?」
     ゾロアークの姿を見つけた鳥たちは一斉に睨んだ。ピジョンが数羽、そしてトゲキッスが一羽。
    「えっと、空のダンスを見て、もっと見たいなって思って……」
     ピジョンたちは顔を見合わせる。知らないゾロアークがいきなりやってきての申し出に、困惑しないはずがない。けれどトゲキッスがにこりと言った。
    「ありがとう、よろこんでくれて」
     その言葉はゾロアークに向けられていた。
    「ピジョンたちは知り合いの結婚式だと、お祝いに集まってフェザーダンスを踊るんだ」
    「つまり、誰かの結婚式……?」
     ゾロアークが聞き返すと、トゲキッスが恥ずかしそうに言う。
    「ボクたちだよ」
     隣にいるのが新婦のピジョンのようだった。
    「本当はピジョットになるまで結婚しないつもりなんだけどトゲキッスがいいって言うし」
     これにはゾロアークも祝福しなければならない。荷物の中から結婚のお祝いに相応しいものを取り出す。それらを受け取ると、新郎新婦は深く頭を下げた。
    「見知らぬゾロアークに祝ってもらえたし、私もちょっくら踊る!」
     新婦はその翼を羽ばたかせようとしたが、仲間のピジョンたちに止められる。
    「新婦が踊ったら意味ないじゃん!」
    「お祝いの踊りじゃないか!」
     主役二人に見せる為らしい。しかし新婦のピジョンは止められてつまらなそうだ。よほど好きなのだろう、フェザーダンス。
    「一番上手いからってお祝い見せる相手が踊ってたら意味ないから!」
    「トゲキッスに見せるからいいのだ!」
     それだけ言うと、新婦のピジョンは空へと飛び立つ。仕方ないなという顔をして、ピジョンたちは空を飛んだ。
     そして始まる、白い羽と青い空の共演。ふわりふわりと散った羽がゾロアークの頭にそっと乗った。
    「ピジョンはね」
     空を見上げながらトゲキッスは言った。
    「ここに迷い込んだ僕を仲間として扱ってくれてね。何から何まで教えてくれたよ。僕が歌うととても嬉しそうに聞いてくれた」
     ぽつりぽつりと昔のことを断片的に思い出すように語る。
    「だからね、僕はピジョンがポッポだろうがピジョットだろうが関係ないんだ。型破りのお祝いフェザーダンスだろうが、僕はピジョンが一番だよ」
     トゲキッスの言葉に、ゾロアークも妻と出会った頃のことを思い出す。何かが解らないけど、何か特別で一緒にいたいと思った。きっとこのトゲキッスもピジョンに対してそう思うのだろう。
    「実は、故郷に妻と子供がいるんだ」
     ゾロアークは舞い降りる白い羽を荷物の中に入れた。
    「トゲキッスやピジョンを見てると、帰るところっていいなって思う」
     年頃の女の子のようにはしゃぎながらフェザーダンスを踊るピジョン。きっと明日からずっとトゲキッスと一緒。ずっとずっと。だから最後にみんなで踊りたいのだ。妻の友達が最後にダンスをやたらと誘って来たように。
    「だから、もう帰ろうと思うんだ」
     ピジョンのフェザーダンスはまだまだ続く。羽ばたきがリズムを生み、周りのピジョンが風に乗ってさらに高く舞う。白い羽に包まれたピジョンが上昇気流に乗って楽しそうに鳴く。息など切れない。そのまま歌い出しそうな動きで、トゲキッスの目を楽しませる。
    「ゾロアークの家はどこなの?」
    「んーと、ずっと遠くだよ」
    「途中まで送っていくよ。大丈夫、僕はピジョンと違って踊らないから」
    「わあ、凄い嬉しい!」
     羽音一つさせず、ピジョンがトゲキッスのもとへと戻る。渾身のダンスの後の顔は、とても輝いていた。
    「でも、遠慮しておくよ。新妻がいるのに、邪魔するわけにもいかないから」
     トゲキッスの羽に黙って嘴をうずめるピジョン。ほめて、と言わんばかりの行為に、トゲキッスはアンコールを送る。
    「じゃ、元気で、縁があればまたー」
     結婚式の祝福にフェザーダンスを踊るピジョンたち。こんなことも話してやろうと、ゾロアークは家路を急いだ。

    ーーーーーーーーーーーー
    ごめん池月君のつもりで書いたのに池月って名前出すの忘れたごめん
    踊るポケモンたちをテーマに短編かいていきたいなと思って、先発はフェザーダンス。
    どこかで見た設定?いやいや気のせいです旦那。
    【好きにしてください】


      [No.2316] 血を求める少女 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/03/21(Wed) 22:31:58     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    グロいです。


     ユウキが久しぶりにホウエンのミシロタウンに帰ったのは、チャンピオンとなり、さまざまなところへと行った後だった。もうすでに年も14となり、成長期を迎えて体格もそれなりに男らしくなってきた。
     懐かしさのあまりユウキはミシロタウンの入り口から走って家にたどり着く。久しぶりに見る両親の顔や、自宅に置いて来たポケモンたちと再会する。オーレ地方では危険だからと精鋭しか連れていけなかったし、イッシュ地方では新しいポケモンを捕獲するのが忙しかった。だからこそホウエンでチャンピオンとなった時のメンバーとはだいぶ違ってしまったが、ユウキにとっては大切なポケモンたちだ。
     しばらくゆっくりするつもりで帰って来た。そういえば友達たちは元気だろうか。あれから手紙を1年に一回送るか送らないかの仲ではある。新しいポケモンはいるのかな。病気は完全に治ったのかな。
     自宅にいるとは限らないけれど、ユウキはまず同じ町内に住むハルカを訪ねる。オダマキ博士への挨拶という名目だったが、やっぱり友達に会いたいというのが強かった。あの時と変わらない。呼び鈴を押す。
    「あら、ユウキ君じゃない。ごめんねえ、ハルカいないのよ」
     用件を言う前にいきなり追い返される。昔からちょっとつっけんどんなお母さんだなと思っていたけど、こんなに冷たい覚えはなかった。
     仕方ない。オダマキ博士への挨拶だけは済まそう。ユウキはオダマキ博士の研究所へと足を運ぶ。
    「おやユウキ君。久しぶりだな。元気そうで何よりだ」
    「はい。お久しぶりです。博士にいただいたポケモンもかなり強くなりました」
     たわいもない世間話だ。昔話からチャンピオンになった後にどこにいったのか、そしてその間に捕まえたポケモンの話。
     さらにユウキは気になったことを聞いた。
    「家にいったんですけど、ハルカいなかったんですよね。やっぱりフィールドワークの手伝いを……」
    「ああ、ハルカならどこかいるんじゃないか」
     ユウキの言葉を遮ってオダマキ博士は答える。その雰囲気に疑問を持っても、もしかしたらいなかった数年に何かあったのかもしれないし、あまり詮索することではない。土産として持って来た向こうの珍しいモンスターボールをオダマキ博士に渡すと、ユウキは研究所を後にした。
     やたらと知識だけはあったハルカのことだ。もしかしたらすれ違いで旅に出てしまっているのかもしれない。それで帰りが遅くて心配してるのかもしれないし。
     ユウキは部屋でゴロゴロとしていた。オーレで買ったポケモンデジタルアシスタントを見ていると、お腹の上にプクリンが乗ってくる。気持ちよい手触りの毛並み。この毛並みを整えるためにシンオウのデパートではポフィンを探した。そのおかげでコンテストでも勝てた。けれど戦うことに関しては、毛並みが崩れるのを防ぐために自宅へ預けていた。
     するとポケナビにメールが入る。久しぶりから始まるメール。ハルカだった。
    「おかえり私のいない間に帰ってたんだねユウキ君血がほしいよどうしたらいい私に血がないの」
     何のこったい。意味の解らないメールにユウキは返信に手がのびない。こんな気味の悪い文章を送ってくるような子ではなかったと記憶している。ズバットを育ててた時もそんなこと言わずにオレンの実をあげてたのに。
    「どうした?クロバットがそんなにたくさんいるの?」
     当たり障りない返事を打つ。数分もしないうちに帰ってくる。
    「違う血が欲しい血があればよかったのに」
     なんだかおかしいと思った。ユウキは上半身だけ起こして急いでメールをうつ。
    「今から行く。どこにいる?」
     ポケナビを置いた瞬間だった。再び受信のメールが来たのは。
    「家」
     ユウキは自分のモンスターボールから一つ選ぶ。あのお母さんに会わずにハルカに会える一つの方法はテレポートしかない。スプーンを二つ持ったフーディンがあらわれる。
     いきなり部屋にテレポートするにはためらった。せめて部屋の前、二階の廊下にするべきだろう。そこまでフーディンが考えていたのかは知らないが、ユウキがテレポートした先はちょうど部屋の前だった。ノックして、返事のないドアをあける。
    「なんだ、ここ」
     前はエネコのぬいぐるみが飾ってあったのに、いまは殺伐とした風景だ。旅先で会った同い年くらいの女の子たちだってもっとかわいいものを身につけていた。それなのになんだここは。廃墟のような部屋にユウキは何も言えない。そして人の気配などなかった。
    「まったく、あの子はどこいったのかしら。ハルカ!」
     ハルカの母親の怒声が聞こえる。ここにいるのがバレたらヤバい。ユウキはクローゼットの中に隠れる。その直後、ドアが勢いよく開いた。
    「抜け駆けだけは早いんだから。掃除さぼって何をしてるのかと思えば。全く。今日のご飯は無しね」
     ユウキが聞いてるのも知らず、不機嫌な足音をたてて去って行く。遠くなったのを見計らい、ユウキはそっとクローゼットから出る。
    「なんだなんだ、何が」
     ハルカはいない。そして荒れた部屋。ハルカの母親の態度。そしてオダマキ博士の態度。それらを総合すると、ユウキはとてつもないことに関わってしまったような気がした。帰った方がいい。ユウキがフーディンのボールを出した時に気付く。
     机の上にある古い日記。他人のものを見てはいけないと思いつつ、ユウキは手を伸ばした。何か解るかもしれない。
    「今日はご飯なかった」「おとうさんになんで帰って来たって言われた。」「鍵をかけられた」
     ユウキは読む手を止める。あの温厚そうな博士がそんなことを言うとは思いもよらない。ユウキはページをめくる。
    「血が欲しい」
     それだけ見開き1ページにでかでかと書かれていた。
    「出て行きたい血が欲しい血があればやさしくしてもらえる」
     また血だ。ユウキはさらにページをめくる。
    「ミツル君は血がないのにどうして優しいの。どうして私にはない。消えてしまいたい血だって消えていくよ」
     ミツルにあって、ハルカにない?ユウキはますます混乱する。最後のページを見るまで。それを見てユウキは固まる。そして。
    「フーディン行くぞ」
     フーディンに命令し、その場から去る。ハルカの行きそうな場所。そこは


    「ハルカ」
     ユウキは彼女の名前を呼ぶ。同じくらいの高さだったのが、今では頭一個分ユウキの方が高い。
    「迎えにきた。帰ろう」
     振り向いた彼女の顔は暗く、久しぶりに会うというのに笑顔一つみせない。
    「血がないと帰れない」
    「だから俺と帰ろう。ハルカの居場所はあそこじゃないよ」
    「どこに帰るの」
    「ホウエンは広いし、他の地方だってある。俺が行ったところはほとんどみんな優しかったよ。大丈夫、俺も一緒に行く。ハルカが博士の本当の子じゃないなら、ここに居続ける必要だってないだろ?」
     血はクロバットの餌のことじゃなかった。血縁関係のことだった。最後のページには戸籍謄本が折り畳まれていた。そこに書いてあった事実はユウキにも衝撃を与える。
     友達が困ってる原因がこれだ。これしかない。ならば少しでも助けたい。ユウキはそんな思いで来た。すでに旅立つ準備もして。
    「それにハルカだってホウエンを一周したんだから旅慣れてるだろ。行くぞ」
     ユウキはハルカの手を引っ張る。帰るところはミシロタウンではない方向に。

    ーーーーーーーーーー
    Q何が書きたかったの
    A解らん

    オダマキ博士って主人公には色々してるけど、実子の方には多少つめたいのを大きくしてみた。
    【お好きにどうぞ】


      [No.2315] たぶんね、 投稿者:小春   投稿日:2012/03/21(Wed) 00:36:39     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ある日、二匹のしあわせが出会いました。

     僕はしあわせって言われてます。あなたはしあわせを知っていますか。
     
     もちろん知っているわ。
     しあわせはね、わたしのタマゴにつまっているのものよ。

     私はしあわせって言われているの。あなたはしあわせって知っているかしら。

     もちろん知っています。
     しあわせは、ぼくの翼にこもっているのものですよ。

     いいえ、いいえ。
     僕の、私の、タマゴにこそ、翼にこそ、しあわせがあるのです。
     二匹のしあわせは、言い合いをはじめてしまいました。タマゴにこそ、翼にこそしあわせがあるのだと言い張りました。
     翼のしあわせは、タマゴなんて狭くて苦しいものにしあわせがあるはずがないと言いました。
     タマゴのしあわせは、翼なんて軽くてふわふわしたものにしあわせがあるはずがないと言いました。
     言い合いははげしくなるばかりでした。お互いにしあわせはそこにないと言い張りました。だんだん、二匹のしあわせはしあわせがなんなのかわからなくなってきました。
     しあわせが分からなくなってきた頃、くさむらからこんな声が聞こえてきました。

     しあわせなんてね、どこにだってあるものなのよ。たぶんね。
     しあわせにね、形なんてないのよ。たぶんね。
     そうやって探してるとしあわせを見失うと思うの。たぶんね。
     出会えたことがしあわせなのよ。たぶんね。
     出会ったばかりでいきなり殴られたって、わたしはしあわせよ。たぶんね。

     二匹のしあわせは、お互いに顔を見合わせました。タマゴをみました。翼をみました。
     たぶんね、しあわせはどこにだってあるんだなと笑いました。くさむらからも、そうかもね、ですよね、ほらね、やっぱりね、だろうね、たぶんねと笑い声がきこえました。


    ☆★☆★☆★

    おかしいな、もそっとちゃんとするつもりだったんです。
    タブンネさんがすべてを颯爽とかっ攫っていった気がするんです。一番最後はタブンネ隊から。


      [No.2314] 初版、完売。 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/03/20(Tue) 23:29:26     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    No.017です。
    本日のふぁーすと3で作者・スタッフ配布分を除きまして、
    「ポケモンストーリーコンテスト・ベスト」完売致しました。
    ありがとうございました。

    即売会中、再版問い合わせや通販問い合わせが10件くらい入ってます。
    冊数は印刷代と相談ですが、サンクリ55(4月15日)再版の方向で動きます。


      [No.2313] 嘘吐きウソッキー 投稿者:音色   投稿日:2012/03/20(Tue) 17:54:12     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    あるところにウソをつくのが好きなウソッキーがいました。
    ウソッキーは誰もが笑顔になるウソが好きでした。
    ウソッキーは小さなポケモン達も好きでした。
    子供たちはウソッキーのウソが大好きだったからです。
    ウソッキーは色々なところを旅することも好きでした。
    あちらこちらの風景に溶け込むことが好きだったからです。
    ウソッキーは他のポケモンを驚かすことも好きでした。
    みんなのびっくりした顔が好きだったからです。
    怒りだすポケモンもいました。泣きだすポケモンもいました。
    ウソッキーはその時、お詫び代わりにウソをつきます。
    それは聞いていてとても楽しいウソです。
    怒りだしたポケモンも、泣きだしたポケモンも、みんな笑いだしてしまいます。
    ウソッキーはそんな笑顔が好きでした。

    ウソッキーは気に入った場所にしばらくとどまります。
    すると子供達はいつもウソッキーと遊びたがります。
    みんなウソッキーのウソを聞きたくて仕方がないのです。
    ウソッキーはねだられるままにウソをつきます。
    小さなポケモン達は一つのウソが終ると、次のウソを、次のウソをとねだります。
    笑顔が見たくて、ウソッキーも丁寧に一つ一つウソをついていきます。
    あっというまにウソッキーはみんなの人気者になりました。

    ある朝、ウソッキーは自分が空っぽになっているような気がしました。
    どうも気持ちが良くありません。
    いつものように小さなポケモン達がウソをねだりにやってきました。
    ウソッキーは何かウソをつこうとするのですが、開いた口からは何にも出てきません。
    まだかまだかとポケモン達は急かします。
    ウソッキーは正直に、何も出て来ないと言おうとしましたが、その言葉すらも上手く出てきません。
    みんなはだんだん機嫌が悪くなってきました。期待の眼差しが途端に鋭いものに変わります。
    ごめんね、今日はウソはないんだよ。どうにか絞り出した言葉を聞いて、小さなポケモン達は文句をいっぱいぶつけました。
    ひとつひとつがウソッキーの空っぽの心に刺さります。
    お話のできないウソッキーなんていらない。ウソの付けないウソッキーはいらない。そういって小さなポケモン達は飽きたおもちゃを捨てて、ばらばらに帰って行きました。
    ウソッキーはしょんぼりしながらその場所から去りました。
    確かに小さなポケモン達の言う通りなのです。ウソッキーのウソを聞きたいから集まってくるのだから、ウソが付けなくなればウソッキーはただのウソッキーなのです。
    ウソッキーはまた小さなポケモン達の笑顔が見たいなあと思いました。

    ウソッキーは砂漠にやってきました。ここはいつも砂嵐が吹き荒れています。
    普通のポケモンならとても居心地は悪い場所ですが、ウソッキーにとっては何ともありません。
    しばらくここにいようかな、と空っぽのままウソッキーは思いました。
    ところが、一つ問題がありました。
    砂漠は何にもありません。これではウソッキーは風景に溶け込むことができません。
    これは困ったなぁ、と思いながら、ウソッキーはとぼとぼ歩いていました。
    ぽつんと砂漠のまんなかに何かが立っていました。
    ウソッキーが近づいていくと、それが何か分かりました。砂嵐のなかで背の高いサボテンが立っているのです。
    ノクタスがぼんやりとしていました。
    砂漠にサボテンがいることは何にも不思議ではありません。
    しかし、そのノクタスは好んで風景に溶け込もうとはしていないようでした。
    ウソッキーがそばにやってきても、ノクタスは特に反応しません。
    ずっと黙っています。
    砂嵐の音だけが響きます。
    何時しかウソッキーも隣に立ってずっと黙っていました。

    夜になると砂嵐が止みました。
    あたりがぐっと寒くなりました。
    ふとノクタスが上を見上げました。
    つられてウソッキーも空を見上げます。
    そこには満天の星空がありました。
    ウソッキーはその光景にただただ息をのみました。自分の持っている言葉をすべて使っても表せないであろうそれに、どうすればいいのか分かりませんでした。
    ノクタスは黙っていました。
    何も言いませんでした。
    その沈黙に全てが表されているように思えて、ウソッキーもずっと黙っていました。

    次の日、ウソッキーは自分が空っぽではないことに気がつきました。
    とても清々しい気持ちです。
    ノクタスを見ると昨日と同じ様にぼんやりとしていました。
    ウソッキーはノクタスにお礼を言いたくてはじめて声をかけてみましたが、こちらを向くだけで特に何も言いません。
    元来無口なのかもしれません。
    お礼を言われる理由が分からないかもしれません。
    それでも、よかったのです。
    言葉を紡がない時間をくれたことにお礼が言いたかったのです。
    心が満たされたウソッキーは、砂漠を後にしました。

    ウソをつくのが好きなウソッキーがいました。
    あちらこちらをまわるのが好きなウソッキーがいました。
    景色に溶け込むのが好きなウソッキーがいました。
    自分のウソでみんなの笑顔を見るのが好きなウソッキーがいました。
    そして自分が空っぽになった時、砂漠で何も言わないノクタスと一緒に空を見上げるウソッキーがいました。


    ――――――――――――――――――――――――――――――
    余談 ドーブルが絵描きならウソッキーは語り部だと思う
    あらゆるものを吐き出しつくして空になったなら、言葉を紡ぐのをやめてしまえば良い。
    疲れたら休みましょう。

    ・・・的な何か。
    【好きにしてもいいのよ】


      [No.2312] ありがとうございます 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/03/19(Mon) 22:04:00     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    昨日の春コミ、ありがとうございます。
    お陰様で印刷屋さんから届いた分は、
    3分の2が作者スタッフ配布と一般参加頒布で無くなりました。

    スペースに立ち寄ってくれた方、
    手伝ってくれた方、 打ち上げ参加の皆様、
    そしてポケスコベストメンバーのみなさん、
    改めてありがとうございます。

    明日はふぁーすとなので在庫にとどめを刺してきます。(予定)
    通販およびサンクリ分が無くなると予想される為、再販に関しては後日検討させてください。


      [No.2311] 春コミ、いよいよ明日です 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/03/17(Sat) 15:53:23     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    春コミ、いよいよ明日です (画像サイズ: 482×622 44kB)

    いよいよ明日です。
    ベストは印刷屋さんからスペースに直接届けられることになっております。
    サンプルは確認していますが今からどきどきです。

    上のはネイティおとしです。
    こちらがスペースのディスプレイになってます。
    西4ホールや34ab「マサラのポケモン図書館」で僕とトゥートゥー。


      [No.2310] リセット 中編 投稿者:紀成   投稿日:2012/03/17(Sat) 15:26:07     77clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    財閥会長の孫娘が失踪した。至急探すように。
    俺たちに託された事件の内容は、簡単に言えばこんな物だった。財閥会長の孫娘・失踪。この二つの単語を組み合わせれば、いくら素人でも理由を予測することくらい可能だろう。シックス・ナインズに近い確率で、

    『悪い遊びをしていて、巻き込まれた』

    こういう台詞ではなくとも、自業自得に近い出来事に巻き込まれたのではないか、という答えが返ってくるだろう。警察組織に身を置いているのであまりこんな言い方はしたくないが、ふと考えてしまうくらい今の子供達は危険を知らない。たとえ補導しても未成年であれば逮捕することすら出来ない。軽く説教して返さなくてはならない。
    そんな事件を扱う日が続いていた時、それは起きた。

    未成年とはいえない、幼い子供が失踪する事件。

    初めは誘拐の線から当たっていた。だが親、友人、教師。そしてその子供が住む家の近郊にある交番全てを当たっても不審者は全く見受けられない。そして更に遠く離れた場所で再び失踪事件が起きた。ただしその被害者は中学一年生だったので、てっきり事件にでも巻き込まれたのではないか、と皆が思った。
    だが話を聞いて、再び的外れな考えだったと分かった。その子供は通っている学校ではトップクラスの成績を誇り、しかも家が遠いため毎日のように母親か父親が送り迎えをしていた。これでは、事件に巻き込まれる理由も時間の隙間もない。そして何より重要なことは、失踪したのは家で部屋は完全なる密室状態だったということだ。
    『娯楽にあまり興味を示さない子でした』と、見るからに教育してますという母親はハンカチで目を押えながら言った。これでは振り出しどころか二つの事件を未解決という名の谷に落とすことになってしまう。共に取り調べをしていた上司と頭を抱えていると、そういえばと母親が立ち上がった。

    『それでも、これだけは面白いと言って息抜きにやっていたようです』

    現場保存せずに証拠を移動させ、しかも隠していたこと事態捜査の妨げとなるのだが、その時はそれがどれだけ重要な意味を持つか分かっていなかった。一応確認してみましょうと言い、それを受け取って署に戻った。
    そしてそこで、もう一つの失踪事件との共通点を見つけることとなる。

    『あの子、よく友達とこれをやっていたんです。交換したり、バトルしたり。勝った時にはよく嬉しそうに話していました。私はそういうのに詳しくないんで、ただ相槌を打つだけだったんですが……』

    シルバーのボディにはめられた、メモリチップのような小さなソフト。何のプログラムが入っているか分かるようにシールが貼られている。ロゴは宝石を思わせるデザイン。サブタイトルまで宝石の名前だった。
    ゲーム。DSでプレイできると誰かが言っていた。俺はゲームをしないから分からないが、認識だけはしていた。テレビで大々的に宣伝していたからだ。
    今やこの国が誇る、巨大なタイトル。

    『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』

    失踪した子供達はこれに夢中になっていたらしい。彼らのDSに差し込んでデータを見てみると、見たことの無い名前の生き物……ポケモンが六匹動いていた。手持ちというらしい。プレイヤーはポケモンを捕まえ、育て、戦わせる。そしてシナリオには各地の『ジム』の主将『ジムリーダー』との対戦、ポケモンを使って悪事を働く謎の集団を壊滅させること、そしてポケモンバトルの最高峰、『ポケモンリーグ』にいる『四天王』『チャンピオン』を倒すことで成し遂げられる『殿堂入り』など、挙げればキリがないほどの要素が盛られていた。
    「最初に登場したのが十五年かた前ですから、大分ゲーム機が進化してプログラムも綺麗になっているんですよね」
    詳しい後輩がそう言って器用にゲーム機をいじる。十五年前……俺はまだ小学生だ。だがゲームを遊んだことすらなかった。せいぜい頭の体操としてチェスやモノポリー、将棋をやっていたくらいだ。
    「だが今回の失踪事件とそのゲーム、何か関係あるのか」
    「ただの偶然ということも考えられます。中学一年生とはいえ、世間的にはまだ子供です。とにかくこのゲームのことも頭の片隅に入れつつ、地道に聞き込みをしていくのが重要かと思われます」
    「よし、頼んだぞ」


    そんな会話をしてから早一ヶ月が経過していた。その間にも失踪者は増え続け、必ず被害者がハマっていた物として『ポケモン』があった。もう間違いない。彼らはそれに関する何かに巻き込まれ、失踪したのだ。
    だがそれが分かったところで何も手がかりは掴めなかった。発売元の会社にも行ってみたが、開発チームの人間にそれらしき人間はいない。
    そんな時、その事件は起きた。先ほど前述した事件。

    『財閥会長の孫娘が失踪した』

    今度こそ普通の誘拐事件かと思い、早速友人である少女の家に向かい事情聴取をした。だが彼女の話を聞くうちに、最悪の予想が当たった。その孫娘はゲーマーで、ポケモンをプレイしていたという。
    そしてその友人の言葉。何か事件の手がかりになるようなことを知っているかのようだった。詳しく聞こうとしたところで、連絡が入った。捜査会議をするから戻れと言う。
    意味がない、と思った。いくら会議をしても情報が無ければ警察は動くことすらできない。歯がゆい思いで会議室に向かい、会議を始めかけたところで―― 新しい失踪事件が出た。
    まさか、と思い通報先に行けばそこは、


    「刑事さん達が帰った後、思いつめたような顔で二階に上がっていったんです。朝ごはんまだだったから、早く来なさいよ、って叫んだんです。でも返事がなくて…… おかしいなと思って部屋に行ったら、この有様で」
    彼女の部屋は散らかっていた。だが母親に聞けば昨日帰って来て見た時には綺麗に片付いていたという。一晩でここまで散らかすことは、まずない。だがまた被害者を出してしまったことは紛れもない事実だ。
    あの時、捜査会議の電話が入らなければ。
    「で、やっぱりこの子もポケモンをやってたんだな」
    警部が厚いシルバーカラーのDSを取り上げた。電源は落ちている。入っているソフトは、パール。ふと目の隅に引っかかる物があり、ベッドの上の掛け布団をどけた。
    携帯電話だった。どうやら彼女は消える直前、これを見ていたらしい。母親に許可を取り、メールボックスを開く。
    一番最近のメールは、昨日の夕方だった。差出人の名前にも驚いたが、その内容にはもっと驚いた。

    『ごめーん。何かあの裏技、私の勘違いだったみたい。帰ってからもう一度見たら、下手すればゲームそのもののデータが消去されちゃうって書いてあったから。
    だから忘れてね』

    裏技。時々テレビでやっている裏技とは全く別物だ。慌ててそれより前のデータを見たが、裏技に関することは何も書いていない。だがこれは大きな進歩だ。ゲームに関することを知ったことが進歩なのか、と言われるかもしれないが、そもそも被害者の共通点が同じゲームにハマっていたことだけなのだ。
    これには必ず、何かある。俺は携帯電話を取り出すと、先ほどポケモンについて教えてくれた後輩に連絡を取った。自分達が戻るまでに出来るだけ、ネットのポケモンに関する裏技のサイトを探ってくれ。その中に興味深い内容の裏技があったら、コピーしておいてくれ。
    後輩は何も言わずに『分かりました』と言ってくれた。どんな形であれ事件の捜査が進むのは嬉しいのだろう。ましてや、それに自分が関わったとしたら。
    「俺にはゲームの類は分からんが……本当に関係あるのか」
    戻る途中、助手席で警部が訳が分からない、という顔をして聞いてきた。ゲームなんて俺にも分かりません、ただ、と続けた。
    「せっかく掴んだ被害者のメールなんです。調べないわけにはいかないでしょう」
    「まあな」
    「それにその裏技の内容が気になります。下手すればゲームのプログラム自体が駄目になる……それほどのリスクを持つような裏技って、何なんでしょうね」
    覆面パトカーは、ビルに囲まれた道路を静かに走っていく。


    「事件が表沙汰になっているせいもあり、すぐに見つかりました。彼らの情報網には驚かされます」
    そう言って後輩が見せてくれたのは、ある掲示板のログを印刷した物だった。記号を使った顔文字など一般人には分からない世界が広がっている。よく考えれば、ゲームもそうなのかもしれない。誰にも邪魔されず、時には気の合う仲間と共にいられる正に理想の空間。
    「ここ、見ていただけませんか」
    赤ペンで印を付けられた場所に、こんなことが書いてあった。

    『251:何かポケモンが事件の中心らしいぜ

     252:まじか

     253:裏技で、ポケモンの世界に行けるーなんてヤツがあるらしい ほんとかどうかは知らんどな
     で、そいつらは試していなくなった、という噂

     254:そして だれも いなくなった!

     255:ウソだろww 誰が信じるんだよそんなんww
     
     256:中二乙

     257:でも実際にサイトあるらしい 俺みたことある

     258:うp希望  』


    読みにくい。ひたすら読みにくいが、大体の内容は分かった。そして、と後輩が続ける。
    「ひらすらログを追っていったら、一度だけこのサイトのURLが出てたんです。これが裏技の内容です」
    背景は黒。そして文字は白。別の意味で読みにくい。そこにはこうあった。

    『タイトル画面で特定のボタンを押し、マイクに向かって『全てのプレイヤーのリセットをわが身に委ねます』と言う』

    「リセット?」
    「本当はどうか怪しいですけどね。一応これが妥当かなと思って印刷したんです」
    「リセット……」
    黙ってしまった私に、後輩が慌てて付け加えた。
    「結構普通なんですよ。特に初心者は一匹だけメインに育てちゃって、その一番強いやつがやられたら後は袋叩き状態ですから。それでレベル上げする気力もなくて、もう一度初めからやり直しとか。あとは能力値が高いポケモンを欲しがるとか、弱くてもいいから色違いが欲しいとか」
    「ほー。そのポケモンとやらには能力の違いもあるのか」
    「ええ。高ければ高いほど、育てていくうちに差がはっきり分かれてきます。そういえばエメラルドのファクトリーは辛かったなあ。自分のポケモン使えないんだから」
    自分の後ろで通な話をしている二人に、私は叫んだ。
    「彼女のソフトがどうなっているか、リセットしたとしたらどうやってそのようにしたのか調べることは出来るか」
    「え……それは難しい、というか無理です。前作のデータはリセットしていたら完全に消去されてますから」
    そう言われながらも私はDSの電源を入れ、パールを起動させた。手持ちはなし。後輩があれ、と疑問の声を上げた。
    「おかしいな。発売されてから既に半年以上経ってるはずなのにほとんど序盤の話だ。まだ最初のポケモンすら貰ってない」
    「この後ろに差さっているのは何だ?これもソフトか」
    「お、懐かしいな。サファイアだ。そうか。パルパークで連れてこようとしてたんだな。もしくは連れてきた後、リセットしたか」
    「おいおいどういうことだ。ちゃんと分かるように説明してくれよ」
    「分かりました。えっと……」

    後輩の言葉をまとめると、こういうことだった。
    ・ダイヤモンド、パールの前にもポケモンはソフトをだしていて、それはルビー、サファイア、エメラルドの三種類だということ。
    ・ダイヤモンド、パールはある特定の条件を満たすと、その三つのソフトからポケモンを連れて来ることが出来るということ。
    ・ただし連れてくるには少なくとも殿堂入りしなくてはならないため、おそらく今のデータは殿堂入りした後何らかの理由で消去した後の物だろう、ということ。
    「そうそうリセットすることなんて無いんですけどね。何か変な裏技でも使っ……あ、もしかしたら」
    「裏技!?この掲示板に書いてある以外にもあるのか」
    「ええ。あんまり言うとマネする馬鹿がいると思うので詳しくは言いませんけど、『壁の中から出られなくなる』っていうのがあるんです。黒いドットの無い世界で何をしても動けなくなるんですよ。普通ならセンターに連絡して直してもらうのが一番ですけど、時間もかかるし。この子はやらないままリセットしたのかも」
    「……」
    理解出来ない。手塩にかけて育てた仲間を、何の思いもなしに消去するなんて。それがゲームだとしても、あまりにも軽すぎる気がした。
    変な胸の取っ掛かりを覚えた時、彼女の携帯履歴を調べていた方から連絡が来た。一つだけ非通知があったという。しかもそれは彼女が消える直前に掛けていた内容らしいのだ。慌ててパソコンの前に行くと、スピーカーから声が流れ始めた。クリアにしているため聞き取れることは出来るが、それにしても酷く聞き辛い。
    「フィルターかけてるな。何処からかは分からないのか」
    「それが……コンピュータからなんです」
    「コンピュータ!?プログラミングされてるってことか!?」
    会話の内容は十秒ほどだった。俺はその中にある言葉の一つが気になった。

    『二つの世界は繋がった』

    二つの世界。ここまで調べたら、分かる。分からなくてはならない。不要な物を排除していき、最後に残った物。それがどんなに信じられない事でも、それが真実――
    「警部」
    「何だ」
    「彼女達の居場所が、分かった気がします」
    警部は驚かなかった。俺より低い位置にある頭をこちらに向けて、いつもの通りの口調で喋る。
    「言ってみろ。お前なりの意見を。もしかしたら俺と同じ意見かもしれないし、違うかもしれない。だがどちらにしろ、これは俺たち警察組織の手に負えるような事件じゃなくなってる。俺たちは技術者じゃないからな」
    俺は一気にまくし立てた。

    「彼女達は、プログラムの……『ポケットモンスター』というゲームの一部にされています」

     
    「つまり、その『リンネ』っていうキャラこそが、失踪したお嬢ちゃんそのものなわけだ」
    一度捜査本部を出た俺と警部は、喫煙室の中と外に分かれて話をしていた。警部は愛煙家だが、俺は煙草を吸わない。何とも奇妙な光景だが、両方が満足することが出来るのはこれだけなのだ。
    「フィクションとかSFを苦手だって言ってたお前がそんな突拍子もない発想が出来るとは、成長したな」
    「俺をからかっている暇なんてありませんよ。早く何とかしてプログラム化された子供達を助けなくては」
    「馬鹿言うなよ。ここはリアルの世界なんだ。ゲームでもアニメでも、ましてや映画でもない。リアルに生まれた俺達は、リアルが『限界だ』っていう場所までしか捜査は出来ないんだ。第一、憶測だけで上が動くと思うか?」
    「ですが……」
    「俺はな、ヒメヤ。『どうやって』プログラム化したのかっていう理由より、『どうして』そんな事件を起こしたのか……それが一番引っかかってるんだ」
    久々に苗字を呼ばれた。いつも『お前』としか呼ばれないからだ。『どうやって』より『どうして』忘れがちだが、取調べの際には大切なことだと聞いた。『何故』も後者に入る。『何故こんなことをしたのか』『何故誰も止めることが出来なかったのか』『何故助けてやれなかったのか』『何故……』
    この仕事を始めてから、数え切れないほどの『何故』『どうして』を繰り返してきた。時勢が時勢なのか、繰り返しても繰り返しても足りないくらい、同じような事件が起きていた。それと同時に、リアルな『リセット』も数え切れないほどあった。
    「人生リセットか。ゲームに慣れすぎてるんだろうな。失敗作が生まれても、ボタンを押せばリセットできる。……分からないが、プログラム化された子供達はどれくらいゲームをリセットしてきたんだろうな」
    「少なくとも彼女は、一度はリセットしています。今までの思い出が積み重なった、前のデータも一緒に」
    「だよなあ。――俺はあの子らの気持ちが分からないのさ」
    微妙な空気が、二人の間を流れていく。だが、と警部が付け加えた。
    「もしかしたら、プログラム化された子供達もはっきり真実に辿りついてはいないかもしれない」
    「は?」
    「何故自分達が取り込まれたのか。自分達ではないといけなかったのか。無自覚は恐ろしいな」
    カランと缶コーヒーの空き缶がゴミ箱に落ちていった。

    「マスコミには何も言うなよ。まあ言ってもあちらさんも何も出来ないだろうが…… プログラムにされて連れて行かれたなんて夢物語みたいな話、報道できると思うか?
    警察共々、世間の笑いものになるだけだ」
    子供達のソフトは今も保存されている。DSの電源を入れた、プレイできる状態で。ゲームの中に取り込まれた『彼ら』は、自ら動くことは出来ない。プレイヤーが動かしてやらないと、何もできない。バトルも、買い物も……動くことすらできない。
    「何とかできませんかね」
    「あくまで希望的観測ですが」
    後輩が言った。


    「このゲームのシナリオは、主に二つに分かれます。チャンピオンを倒して殿堂入りする前に、悪の組織を壊滅させるのです。
    だから、もし僕達がそれを倒す手助けをしてやれば……戻って来られるかもしれない」

    ………………………………………

    気が付けば、真っ暗な世界にいた。右も左も上も下も分からないくらい、真っ暗闇。自分の姿は見えるから、光が皆無というわけではなさそうだ。
    だけど、私の格好は普通ではなかった。普通とは言えなかった。頭に白いニット帽。トップスは黒いタンクトップ。スカートは今にも下着が見えそうな超ミニのピンク。そして同じ色のブーツに、マフラーと黄色いボストンバッグ。
    それはどう見ても、昨日までやっていたポケモン『パール』の女主人公と同じ服装だった。それと同時にここがどこか理解した。記憶が蘇ってくる。ノイズだらけの電話と、白い光。
    ここは、ゲームの中だ。

    『ようやく気付いたか』

    何処からか声がした。いつの間にか、横に私と同じ服を着た少女が立っている。……いや、多分彼女が本当の主人公なんだろう。だけど声と話し方に違和感があった。なんというか、私だけじゃない、全てを恨んでいるような声。
    「貴方は」
    『自分が今何処にいるか分かれば、分かるんじゃない?』
    歳相当の声になった。何処からコピーしてきたのか、女の子の声。真っ暗闇の空間。何処が何処かすら分からない、不気味な空間。ずっといたら発狂してしまいそうな――

    『私達、ずっと一緒だったじゃない』
    その子が言った。

    『どうして、リセットしたの』


      [No.2309] 【連絡】待ち合わせ場所について 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/03/17(Sat) 12:44:06     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    【連絡】待ち合わせ場所について (画像サイズ: 400×240 20kB)

    お世話になっております。586です。

    いよいよイベントが明日に迫ってまいりました! わくわくどきどき(´ω`)
    イベント後の打ち上げに参加される皆様に、待ち合わせ場所の連絡です。

    イベントから引き続いて打ち上げに参加される方は、私が案内するのでそのまま付いてきてください。
    打ち上げから参加される方は、


    JR新橋駅の烏森口改札付近


    にてお待ちください。17:10〜17:20頃に向かう予定です。
    広い&分かりやすい場所なので、待ち合わせにしくじることはないと思います。
    合流しましたら、そのまま私が打ち上げ会場までご案内いたします。

    以上、よろしくお願いいたします。


    追伸:
    念のため、待ち合わせ場所になる改札近辺の写真を添付しておきました。


      [No.2308] 同志よ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/03/17(Sat) 11:33:39     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 作者は3DSの立体ポケモン図鑑でキュレムのおしりがかわいいと評判をききつけ、犯行に及んだと供述している。後悔しているが、反省はしている様子はない。
    >
    > 一応、ドラゴンタイプだったはずですよね

    あえて言おう!
    キュレムのケツはすばらしい!!!!!!!!


      [No.2307] きょうのキュレム 投稿者:小春   投稿日:2012/03/16(Fri) 21:48:49     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     おおきな穴がぽっかり空いたジャイアントホール。その奥の奥に住んでいるのが、キュレムです。図鑑完成に必要なしと言われ、なかなかキュレムに会いに来てくれるトレーナーさんもいないので寂しかったキュレムですが、最近嬉しいことがありました。
     キュレムを主役に迎えた映画が発表されたのです。それだけでも嬉しいキュレムに、またまた嬉しい知らせが届きました。キュレムを主役に迎えてゲーム本編が発売されるというのです。おまけに、パッケージにまでキュレムが飾られています。
     嬉しくて歌っていたら、いつのまにか自分の冷気で体を凍らせちゃった、ちょっとおっちょこちょいなキュレムなのでした。

    ☆★☆★☆★

    作者は3DSの立体ポケモン図鑑でキュレムのおしりがかわいいと評判をききつけ、犯行に及んだと供述している。後悔しているが、反省はしている様子はない。

    一応、ドラゴンタイプだったはずですよね


      [No.2306] りゅうのまい 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/03/15(Thu) 22:57:08     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    この話には、グロい表現があります。



     昔々、流星の滝にタツベイの子とチルットの子がいました。どんな竜の子も必ず踊るような動きをするので、それをりゅうのまいと呼びました。チルットはそれがとても美しく踊れるのに、タツベイは酔っぱらいが千鳥足で歩いてるようでした。
     さらにチルットは空を飛べます。タツベイは飛べませんでした。空高く舞い上がるチルットをいつも岩の上から見上げてます。
     けれどもタツベイはチルットが大好きでした。いつか自分のおとうさんおかあさんと同じようにボーマンダとなって、チルットと一緒に空を飛ぶことを夢みていました。
     ドラゴンタイプの中ではりゅうのまいが最も美しく踊れるポケモンがモテますので、チルットはいつでも雌に囲まれていました。そんな雌の外にタツベイはいました。それでもチルットは将来お嫁さんにするならタツベイがいいと言って他の雌を寄せ付けません。他の雌は一番りゅうのまいがヘタクソなタツベイが選ばれることが不思議で仕方ないようです。
     はやくチルットと空を飛びたいタツベイは、毎日流星の滝から飛び降りては空を飛ぶ練習をしていました。石頭なので落ちても平気です。何度も練習して、チルットと空を飛びたいのです。
     たくさん飛び降りました。タツベイの体はやがて白い鎧で覆われ、体重も重くなりました。コモルーに進化したのです。あまりに嬉しくてチルットのところへと遊びにいけば、すでにチルタリスになっていました。チルタリスは進化してからりゅうのまいが一層美しくなっていました。コモルーはりゅうのまいが一層踊れなくなっていました。丸いからだでは動きにくいのです。
     美しいチルタリスとほとんど動けないコモルー。育った時期も年も同じくらいなのに、手の届かないチルタリスの美しさ。それに引き換え足で移動するよりも転がった方が早いと思われてコモルーの醜さ。チルタリスと自分はつり合わないと、コモルーは次第に遠のいていきました。
     それからというもの、コモルーは飛び降りることもなく、ただひたすら流星の滝から空を見上げては先に進化した仲間たちの後ろ姿を目でおってました。そして思い出したように動くと、流星の滝から転げ落ち、再び登ります。コモルーの固い殻は傷だらけでした。
     チルタリスに会わなくなってからかなり経ちました。どんなに会わなくてもコモルーは忘れたことはありません。けれどこんな醜い姿で会うことが耐えられなかったのです。
     長い年月が経ち、いくつもの季節が通りました。背中にむずがゆさを感じ、コモルーは地面にこすりつけました。丸いからだですので、そのまま転がってしまいます。止まることなく、コモルーの体が重力に引かれました。背中は一層かゆくなり、一生懸命はばたきました。しっぽは長くなり、顔は凛々しくなりました。ボーマンダとなることができたのです。
     水面にうつるボーマンダとなった自分をじっと見つめ、鋭い爪がはえ揃った前足で地面を蹴ります。今までにないくらいにわき上がる力に、ボーマンダは翼を羽ばたかせて空を飛びました。そして空を飛びながら、チルタリスが見せてくれたりゅうのまいを思い出しながら踊ってみます。それはもう空を無敵の竜が昇っていくかの美しさでした。これならばチルタリスと一緒にいられると自信に溢れます。
     さっそくボーマンダはチルタリスのところへと向かいました。久しぶりに会う姿は進化していますし、もしかしたら解らないかもしれません。ボーマンダがいなくて寂しかったかもしれません。
     翼がはえたばかりで調節は難しいですが、なんとかチルタリスのところへとやってきました。するともう一匹チルタリスがいるのです。ボーマンダが姿を見せなくなったので、死んでしまったか嫌われたのだと思い、他のチルタリスと番になったのだと言われました。
     ボーマンダの心は激しく燃え上がります。黙って消えて悪かったなどとみじんにも思えません。約束を破ったチルタリスへ全ての怒りをぶつけます。ボーマンダの力はチルタリスのそれよりかなり強いのです。チルタリスも、番も巣も全て鋭い爪で切り裂き、嫉妬の炎で燃やし尽くします。巣の中には割れたタマゴの殻が散乱していました。
     完全に赤い固まりになったチルタリスをボーマンダは何も思わず鋭い牙で噛み付きます。初めて食べるチルタリスの味が良かったのか、夢中でむさぼります。残ったのは血に濡れたふわふわの羽と骨だけでした。2匹目は途中で飽きたのか爪で切り裂いて遊んでいました。
     それからというもの、ボーマンダはチルタリスを襲ってはその肉を食べて暮らしていました。かならず前足で切り裂き、青い羽毛が見えなくなってから。まだ心臓が動いて命乞いをしているチルタリスもいました。容赦なくその首にかみつき、苦しみに悶えるチルタリスの絶叫を楽しんでいました。
     流星の滝はボーマンダのえさ場となりました。チルタリスたちはボーマンダを恐れましたが、空から一気に襲いかかるボーマンダから逃げることは不可能でした。そこで、チルタリスはりゅうのまいを最も力強く美しく踊る神様、レックウザの元へと行きました。レックウザはチルタリスたちから話を聞くと、自分の住処であるそらの柱に身を隠すことを許可し、流星の滝に向かいます。
     なにも知らずボーマンダが餌のチルタリスを探していると、急に空が暗くなりました。天気が悪いのかと見上げると、いきなりわしづかみにされました。「ドラゴンなのにドラゴンを食べるボーマンダはお前だな。これからドラゴンタイプと認められないよう、お前からりゅうのまいを取り上げよう」とレックウザは言いました。みるみるうちにボーマンダはりゅうのまいの記憶がなくなっていきます。もう力強く空を昇る竜を表現することはできなくなりました。
     空を飛べるのにりゅうのまいができない。そんなボーマンダは仲間のボーマンダからも無視されるようになりました。毎日を流星の滝で泣いて過ごします。チルタリスに最初から言っておけばよかったこと、なぜ殺してしまったのだろうということ。ふと頭を持ち上げ、翼を動かしました。羽ばたくとレックウザを探しに空へ高く高く上がります。
     レックウザを探すために何日も飛び回り、ボーマンダは空腹です。けれど一向にレックウザは見つかりません。最後の力を振り絞り、一際高い塔へと飛びました。
     待っていたかのようにレックウザはボーマンダを見ています。ボーマンダは言いました。「ごめんなさいごめんなさい。私からりゅうのまいを取り上げないでください。チルタリスは悪くないのにやつあたりしてしまいました」レックウザは言いました。「今までお前がどんなことをしてきたか解ったようだね。お前にりゅうのまいは返そう。ただしチルタリスのことを忘れないように、自分では覚えないようにしておくよ」レックウザはボーマンダにりゅうのまいを返しました。ボーマンダは喜んでレックウザの前で踊ります。けれど本当に見て欲しいチルタリスはもういないのです。
     その後、改心したボーマンダはさらにりゅうのまいを美しく踊るようになり、それを見た人間たちは芸能の神様として祭り上げました。さらにチルタリスへの思いから、恋愛成就の神様としても有名になっています。

    ーーーーーーーー
     そんな説明書きを見たカップルがボーマンダへ参拝する。けれども良く見た方がいい。ボーマンダは嫉妬によって狂ったドラゴンだ。それなのに番で来るなんて、いかにも「食ってくれ」と言わんばかりじゃないか?

    ーーーーーーーーーーーーーー
    お題、ドラゴンタイプ。やはりボーマンダとチルタリスはいいのです。本当に。流星の滝でチルットかわいいし歌えるし飛べるしいいなと思いながらタツベイが空への憧れを持ってたらなお。


      [No.2305] タブンネは激怒した 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/03/15(Thu) 20:53:16     33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     タブンネは激怒した。かの嘘吐き西条流月を取り除かねばならぬと思った。タブンネには情報が解らぬ。小説サイトでげしげしして暮らして来た。しかしデマに関しては人一倍敏感であった。

    ーーーーーーーー
    発売前のあのデマ飛び交うの何とかならないかなというメッセージを

    つまり
    【ごめんなさい】


      [No.2304] 【お願い】参加者の皆様へ、メールアドレス連絡のお願い 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/03/15(Thu) 19:58:44     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どうも、586です(´ω`)

    3/18(日)の打ち上げに参加いただける方に、お願いがあります。
    当日連絡が取れるよう、お手数ですが下記のメールアドレスに対して、本文に「名前」(HN)を記載して
    メールを送信してください。

    shell_586★yahoo.co.jp
    (※★を@に変更してください)

    受信できた方から随時、こちらの携帯電話のメールアドレスを送付します。
    いざと言うときに備えて連絡を取れるようにしておきましょう(`・ω・´)

    以上、よろしくお願いいたします。


      [No.2303] 春の足音 投稿者:紀成   投稿日:2012/03/15(Thu) 11:55:38     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    日増しに暖かくなり、外に洗濯物を干すことも苦ではなくなった。石畳の小道に面した私の部屋。ベランダの手すりにシーツ、タオルを並べていく。端っこにはシェイミをモチーフにしたプランター。
    金属製のハンガーには下着とYシャツ。あの双子のは、少し離れて別のハンガーに干す。男性、しかも五十を超えた男に若い女性の私物は干せないので、ドレディアに頼む。
    部屋の中にあるロトム型のラジオから、ハスキーな女性の声が聞こえてくる。全国的に晴れ渡り、花粉が非常に多い日になるでしょう。
    下の通りを歩く人達の中に、花粉マスクをつけた人が沢山いた。私は花粉症ではないが、洗濯物に花粉が付くのは好きではない。バイクに黄色く汚れが付くのもいただけない。
    「……晴れたことだし、水仕事をしようか」
    ドレディアが頷いた。

    アパルトマンの裏。ガレージがあり、住人の自転車やバイクが置いてある。ここに子供連れで住んでいる人間はいない。若い女性や男性はいるが、それでも結婚はしていない。
    ホースを使うと周りに飛び散るので、バケツに大量の水を入れて持って来た。ゴム手袋に雑巾、洗剤も忘れない。
    黒がメインカラーなので、白ほどではないが汚れが目立つ。案の定、花粉と砂埃が猛威を奮って表面に模様を作っていた。少しずつ洗剤と水を使って落としていく。
    ふとガレージの屋根の隙間を見れば、梅の花が咲いているのが見えた。濃いピンク色。今年は芯まで冷える日が多かったせいか、桜の蕾はまだ固い。やっと梅が咲いてきた頃だ。例年より五日ほど遅いという。
    腕まくりをした腕に日光が差し込む。ドレディアが横で久々の日光浴を楽しんでいた。
    終わった時には、時計が十時半を指していた。

    あの二人はまだ帰ってこない。確か今日は答案返却と大掃除だと言っていた。双子とはいえ、高二になればほとんど変わってくる。文系、理系の差ではなかった。勉強が苦手なのは二人とも変わらなかった。
    昼食と夕食の買出しをするため、ドレディアと一緒に部屋を出た。もうコートはいらない。薄いセーターだけで平気だ。
    パン屋に行ってフランスパン、スーパーに行って野菜と果物を買い込む。ついでに珈琲店に行って豆を買う。帰る時に、学生達とすれ違った。いい顔をしている者もいれば、その反対もいる。後者はしきりに鞄を気にしている。試験の結果の問題だろう。あの二人は、どんな顔をして帰ってくるのか。
    石とレンガが多く、近代的な印象をあまり受けない街。私が移り住んで五年以上が経つ。沢山の人との出会いに支えられて生きてきた。私がポケモンを手に入れるなんて、全く考えていなかった。
    ここに留まることも……

    帰った私がまず一番初めにしたことは、手を洗うことだった。その後にキッチンへ向かい、鍋に水を入れて沸かす。ほうれん草を洗って切り、バターでいためる。途中でベーコンと卵を入れてとじる。
    水がお湯になったらそこに玉ねぎ、人参、キャベツを刻んでいれて茹でる。火が通ったらコンソメを入れ、溶けたらチーズを入れる。
    「ただいまー」
    二人が帰ってきた。どことなく声に張りがない。おかえり、と言った私の目に飛び込んできた物はテスト用紙だった。妹の方はため息をついた。
    「今回はいけると思ったんだけどなあ」
    「でも赤点は免れましたし。私も現代文が」
    「いいよねヒメは。あたしなんてとりえは体育だけ……」
    珍しくネガティブな発言が目立つ。買ってきたフランスパンを切り、皿に盛った。
    「さあ、先に食べなさい。ヒナさんは部活があるんだろう」
    「そういえばマスター、春休みどうすんの?あたし達はこの一年で溜めたバイト代でどっか行こうかと思ってるんだけど」
    パンにチーズを塗り、かじる。粉がテーブルに落ちる。
    「どうせなら遠い所に行こうかと思って、色々パンフ持って来た」
    彼女の鞄から、色とりどりのパンフレットが出てきた。カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ。そしてイッシュ。ヒウンの港が表紙だ。
    「ジョウト行こうかな。食べ物が美味しいらしいし」
    「各地の名産品を味わいながらっていうのもいいですね」
    「ポケモンも見てみたい」
    「二人とも、読むか食べるかどちらかにしなさい」

    友人と約束がある、ということでヒメは出て行った。皿を洗い、一息ついたところでパンフレットが目に入る。春休み。自分の場合休みと平日の違いはあまりない。
    「……」
    二人が行く場所とは別の場所だろう、と思っていた。ただ行くかどうかは分からない。行くとしたら――


    まだ梅しか咲いていない。だが確実に桜の蕾は膨らみ、開花を待ち続けている。
    春が近づいていた。


      [No.2302] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/03/14(Wed) 20:26:52     33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 期末終わりました。それで、新橋行ったことなくて……地図見てもいまいち分からない。
    > 親父なら分かると思うんですけどね。『おっさんの町』って言うくらいですから。
    >
    > んで、誰か駅から一緒に行ってくれないかなー……と。集合場所が駅ならなおいいですが。
    > そこらへんどうお考えなのでしょうか。
    > よろしくお願いします。

    今の計画だと、イベント終了→移動→新橋へ と考えているので、
    必然的に駅で一端全員集合することになると思います。
    計画に変更があった場合は、速やかに別途連絡します。


      [No.2301] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:紀成   投稿日:2012/03/14(Wed) 10:47:08     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    期末終わりました。それで、新橋行ったことなくて……地図見てもいまいち分からない。
    親父なら分かると思うんですけどね。『おっさんの町』って言うくらいですから。

    んで、誰か駅から一緒に行ってくれないかなー……と。集合場所が駅ならなおいいですが。
    そこらへんどうお考えなのでしょうか。
    よろしくお願いします。


      [No.2300] 【お知らせ】参加メンバー確定の連絡 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/03/14(Wed) 06:11:41     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    おはようございます。586です。
    締め切りの時間と相成りましたので、3/18(日)の参加メンバー一覧を掲載します(すべて敬称略)。

    586(幹事)
    No.017
    紀成
    西条流月
    レイニー
    リング
    渡邉健太
    久方小風夜
    きとら
    CoCo
    風間深織
    小樽ミオ
    なみのりライチュウ
    りえ
    風見鶏
    巳佑

    なんと気がつけば16人の大所帯に!(素
    楽しい打ち上げにするよう、幹事として努力させていただきます!

    以上、よろしくお願いいたします(´ω`)


      [No.2299] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:巳佑   投稿日:2012/03/13(Tue) 23:51:36     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     こんばんは、巳佑です。

     ちょっと週末の予定が分からなかったので、見送ろうかと思っていたのですが、なんとか今日、予定が分かり、18日に空きができましたので、参加したいと思います。(ドキドキ)

     ギリギリでの参加表明となって、すいませんでした。

     当日、楽しみにしております。
     バチュルみたいに緊張していると思いますが、よろしくお願いします。(ドキドキ)

     それでは失礼しました。


      [No.2298] や ら れ た  投稿者:ラクダ   投稿日:2012/03/13(Tue) 22:15:37     23clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > いやぁ、マジで中身が予想できないので完全に妄想爆発状態ですが、

    タイトルに加えてこの一文。つい先日、黒白2の情報を目にしたばかりなのですっかり騙されました。ええ、『人生五十年』にふと違和感を覚えつつも、おおー渋いNだなぁと完全に信じ切っておりましたとも!! (脇差・寺に泊まる、でようやく何か違うと気付きました)

    王は王でも覇王の方、まさかのNOBUNAGA☆ 見事に騙されました。

    騙されたことに悔しがればいいのか、爆笑すればいいのか、登場人物達の格好よさに惚れ惚れすべきなのか。全てがないまぜになってもう……w
    楽しませていただきました!


    【お見事でした】
    【どっちの陣営に付くべきか迷う】
    【続編希望】


      [No.2297] 即売的なことをいうと… 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/03/12(Mon) 23:21:51     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    午前中のほうが売れるよ。
    午後から圧倒的に人が少なくなる。


      [No.2296] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:風見鶏   投稿日:2012/03/12(Mon) 23:16:33     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    こんにちは。マサポケでは鶏でたまに顔を出しています。
    散々参加するだのしないだのと言っていたので、お知らせがそろそろ決めんかい、と言っているような気がしました。

    今書いているものが完成したら、スペースをお借りしてコピー本を売らせていただくことになっています。
    その時は昼間から参戦致します。

    お初の方々、マサポケとは縁の薄い浮浪人ですけれども、よろしくお願いします。


      [No.2295] 【お知らせ】参加表明は明日3/13(火) 23:59までにお願いします 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/03/12(Mon) 21:55:59     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どうも、586です。

    大方面子が出揃ってきたようですので、そろそろ参加希望を〆たいと思います。
    まだ参加表明をされておらず、かつ参加を希望される方は、明日3/13(火)の日付が変わるまでに
    返信をお願いいたします。

    |ω`)<皆さんで楽しい打ち上げにしましょう!(まず壁から出て言えよ


      [No.2294] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:りえ   投稿日:2012/03/12(Mon) 21:18:27     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    おまけすぎるwwwwwwwww

    よろしくおねがいします。


      [No.2293] おつかれさまでした 投稿者:小樽   投稿日:2012/03/12(Mon) 02:30:35     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     今日はひときわお忙しかったと思います。作業お疲れさまでしたm(_ _)m

     実は「ディスプレイボード2」の時点で入っている文章が差し替えられるのだと思っていました。「この文章とか、チェックシートも好きだから残ったらいいのになぁ」と思っていたのでホッとしています(笑)

     あと、すかいぷの方で書かせていただいたことの再掲になるのですが、「ディスプレイボード1」はサッと目を通すだけでストコンの概要が分かるのがいいなあと思いました。なるたけ速く分かりやすく伝えるという点で、視覚に訴えられるイラストにはアドバンテージがありますね。

     ……すでにこのボードだけで圧倒されている私がいるのですが、完成したベスト本はもっととてつもないのでしょうね……ドキドキしてきました(笑)

     それでは改めまして、お疲れさまでした。


      [No.2292] ありがとうございました! 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/03/12(Mon) 00:53:07     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    ありがとうございました! (画像サイズ: 1399×1000 292kB)

    ありがとうございました。
    以上のように採用させていただきました!


      [No.2291] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:No.017(なみライ、りえ代理)   《URL》   投稿日:2012/03/11(Sun) 20:25:20     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    なみのりライチュウ氏が出たいそうです〜
    我らの強い味方、なみライ氏もメンバーにお願いしますー

    あ、あとりえさんも入れておいてね。


      [No.2290] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:小樽   投稿日:2012/03/11(Sun) 18:14:16     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     遅くなりまして恐縮です、小樽です。

     春コミからの流れでそのまま参加させていただきたいと思います。
     当日もどうぞよろしくお願いします。m(_ _)m

     初売り子で緊張気味ですが、やれることをやってきます(`・ω・´)


      [No.2289] ディスプレイボード2 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/03/11(Sun) 17:31:29     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    ディスプレイボード2 (画像サイズ: 1200×858 341kB)

    良い感じの感想・キャッチコピーがあったらこちらで採用したいと思います!


      [No.2288] ディスプレイボード1 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/03/11(Sun) 17:29:47     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    ディスプレイボード1 (画像サイズ: 1200×850 283kB)

    掲載作品決定の流れとかです。


      [No.2287] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:風間深織   投稿日:2012/03/11(Sun) 16:07:12     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    予算の見直しをしていただいたそうで、どうやら私も打ち上げに行けそうです。
    今月のマステは我慢します……
    春コミではお手伝いをさせていただきますので、よろしくお願いします!
    めいみちゃんの遺影持っていきますね!


      [No.2286] 【お知らせ】場所/予算の再掲 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/03/11(Sun) 15:51:04     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    記事を掲載して一週間+αが経過しました。
    イベントの開催当日まで一週間となりましたので、少々気が早いですが


    3/13(火) 21:00


    上記の時間までに参加表明をなされた方でメンバーを確定したいと思います。
    まだ参加表明をされていない方は、お早目の返信をお願いいたします。


    -----------------------------ここまで前回のお知らせ-----------------------------


    鳩さんからアドバイスをもらい、予算関連の見直しを行いました(鳩さん、ありがとうございます)。
    以下のような形で行こうと思います。


    1.中学生・高校生・浪人生・今年まで高校生だった(=4月から大学生になる)人
      → \2,000
    2.大学生
      → \3,000
    3.社会人
      → \4,000


    前回は参加のハードルが高すぎたので、構成を考え直してみました。
    少しでも気軽にご参加いただければ、と思います。

    場所は以下の通りです。こちらは変更ナシです。


    お祭り御殿 新橋店
    http://r.tabelog.com/tokyo/A1301/A130103/13131629/


    大体17:30〜18:00頃に開始したいと考えています。ご意見などありましたら、お気軽にお寄せください。

    以上、よろしくお願いいたします(´ω`)


      [No.2285] ベスト大賞作品 感想・キャッチコピー募集【3/11いっぱいまで】 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/03/11(Sun) 03:13:25     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ポケスコ大賞作品の感想を募集します。

    ・140文字以内でまとめてください。
    ・いい感じのものは即売会展示の作品紹介に採用します。
    ・ポケスコ参加者かどうかは問いません。


    対象作品:

    フレアドライブ
    こちら側の半生
    赤い月


    よろしくお願い致します。


      [No.2284] 追記 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/03/11(Sun) 01:53:16     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    予算は見直します。
    しばし待たれよ。


      [No.2283] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:CoCo   《URL》   投稿日:2012/03/11(Sun) 01:43:08     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     スカイプで参加表明するように言われたので。

     いきます。
     しばらく東京ともお別れです
     めいっぱい都会の空気を吸い込みながら
     吐き出し
     ゆっくりと天を仰ぎ
     フランス語でアンノーンを説得します

     うそです

     行くのはうそじゃないのでよろしくお願いします


      [No.2282] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:西条流月(代理タブンネ)   投稿日:2012/03/10(Sat) 22:54:33     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    きとらさんが諸事情あってPCが使えないようなので、代理として書き込みました
    きとらさんもさんかするらしいので、名簿に加えておいてください。


      [No.2281] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/03/10(Sat) 21:13:36     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    記事を掲載して一週間+αが経過しました。
    イベントの開催当日まで一週間となりましたので、少々気が早いですが


    3/13(火) 21:00


    上記の時間までに参加表明をなされた方でメンバーを確定したいと思います。
    まだ参加表明をされていない方は、お早目の返信をお願いいたします。


    ※場所は検討中です


      [No.2280] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/03/10(Sat) 21:12:44     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ホテル取れました。
    何とか行きたいと思います。


      [No.2279] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:渡邉健太   投稿日:2012/03/10(Sat) 20:43:14     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    じゃ、フランス留学経験のある俺が勉強を見てあげるという名目で。

    たぶん、行けると思う。


      [No.2278] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:   投稿日:2012/03/09(Fri) 22:53:42     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    参加したいです。
    鳩さんとは少ししかお話できていないので


      [No.2277] ふらふら効果につき――。 投稿者:巳佑   投稿日:2012/03/08(Thu) 13:27:45     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    ふらふら効果につき――。 (画像サイズ: 383×550 81kB)




    > >  ぷち模様に渦巻き一つ乗せたそれはパッチールの耳カチューシャ。
    >
    >  言い値で買おう

     遅くなってすいません。
     音色さん、お買い上げありがとうございます!(ドキドキ)

     ただし、ふらふら効果プラスにつき、自動車や自転車などの乗り物を運転するのは危険ですので、着用の際には運転禁止でお願いしま(以下略)

     それでは失礼しました。


      [No.2276] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:レイニー   投稿日:2012/03/08(Thu) 01:07:36     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    まだちょっと予定が未定なところありますが、きっと行きます。 ノ
    こっそりリストに名前加えておいてください。


      [No.2275] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:西条流月   投稿日:2012/03/07(Wed) 21:53:11     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5




    おそらく当日春コミ参加してから行くと思います。
    そんなわけで人間男子一名も名簿にプラスでよろしくお願いいたします。


      [No.2274] シナモン 投稿者:音色   投稿日:2012/03/06(Tue) 23:06:16     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     寒い。
     吐き出した息は白く凍りついて天に昇っていった。手袋もマフラーも、本来の意味をなしてない。
     学校の暖房ですらどこか恨めしい。少しだって温まらない体に、友人どもはゾンビなんじゃないかとからかっている。
     いつもの事だ。その程度の悪ふざけができる仲なのだから。それでも、手を触って懐炉を押しつける奴もいるくらいなので、洒落にならない冷たさなのだろう。
     手を擦り合わせても少しだって温かくならない。悴んできた体そのものが、感覚そのものを奪っていく。
    (あったかいものが欲しい・・・)
     自販機でもいい。コンビニでもいい。何か、あったかいもの。するりと喉を通って、腹からぬくめてくれるもの。
     背中の鞄はずしりと重いが、背中に触れるのは鉛のような冷たさばかり。
     ただひたすら、極寒の道を歩いていく。


     ぽつんと、温かい色が見えた。


     道の端にポツンとたたずむ暖色色の煉瓦。開いているのかいないのか、いまいちわからない暗い店内。
     あるよね、ああいう店。気にはなるけど、寄るほどの勇気がない。
     ただどうしてかその日に限って、やたらと暖かそうに見えた。
     ふらりと近づいて、店の名前を見上げると、古びれている筆記体の英語は何が書いてあるのかさっぱりわからない。
     その横に申し訳程度に『紅茶専門店』と書いてあるのは分かった。
     入口のドアの横にはお勧めメニューらしきものが小さな黒板に書いてあったけれど、流れる様な達筆はかすれて消えかかっていた。
     鈴の音を響かせて、寒さから逃れる様に中に避難した。


     がらんどう、そんな印象が飛び込んで来た。外から見るよりも、仲はもっと暗かった。
     土塊のキャンパスに鼠色で影を付けたような戸棚に、腐葉土が更に腐ったようなカウンターはしんみりとした世界をひろげていた。紅茶の入った瓶が素人にはただ乱雑に並べてあるように見える。
     吊るされている明りは時々、思い出したように点滅した。何も無いが、たくさんある。そんな空間だった。
     カウンターの中には、誰もいない、わけではなかった。置き物だと思っていた塊りがむくりと動いた。のそりと、けだるそうに動いたそれはゆっくりにもかかわらず随分はやくこちらに来た。
     適当に目に着いた椅子に座る。丁度正面にやってきたのは、首に小さな木札を下げたクイタランだった。木札は丁寧な縁取りをされたコルクボードのようにも見える。

    『本日のお勧めはシナモンティーです』

     そんな文句が書いてあった。
     こん、とカウンターをアリクイが爪で叩いた。妙な我にかえって、ふと目を落とすと、目の前には小さなリボンでとめられた薄っぺらいメニューカードがあった。
     それを手に取り開くと18世紀の香りがした。古臭くて埃っぽくて、そして紅茶がぶわりと名を連ねる。
     知っているような、やはり知らないような名前の羅列にくらくらする。また寒さがぶり返してきたのか、それとも端からこの店には暖房なんか存在しないのか。
    「あの、それで、お願いします」
     結局、クイタランの木札を指差した。
     最初からそうしておけばよかったんだ、とばかりに何処か不機嫌そうな態度でうなづいたアリクイは、くるりと背を向けた。
     尻尾からふわふわと湯気が上がっている。
     慣れているのか、主人のかわりか、瓶と瓶の触れ合う音がほんのわずかだけ空気を滑る。
     後は魔法のようだった。
     変色したラベルの貼られた瓶がシナモンが入っているのだろう。そこから温めてあったのだろう年季の入った乳白色のポッドへ落ちていく様子はどこか別世界の絵の具に見えた。
     器用な動作でコンロの上に置かれた鉄瓶は静かに湯気とともに音を吐き出して沸騰を告げる。
     爪の先でするりとそれを引っ掛けると、温まっている白へ丁寧に注ぎこむ。じっくりとむらしていくその手順は、まるで千年も前から決まっているかのように厳粛で鮮やかだった。
     赤と青の模様が施されたカップは何処かで見たような気分にさせて、記憶の引き出しを漁る暇を与えずにこつんと数分間の魔法は終り、透き通った色の紅茶が目の前に差し出された。
     かちりと爪が引いていき、少し下がってのしりと壁に身を預けると、鋭い目つきをさらに細くして、何も言わないアリクイ。
     カップに触れるとりりと熱かった。反射で引っ込みそうになるのを抑えて、弦の様な取ってに手を回す。
     おそるおそる口をつけると、温かい固まりが溢れてきた。全てを飲み干すのを覚悟するにはわずかに躊躇う量だけれども、構わず持ち上げようとする手を堪えるに必死だった。
     結局半分ほどをまず口にして、ふぅぅと大きく息をついた。全力疾走した後の胸の苦しさを程よく薄め、ふわりと湯気のようにじわじわと温まっていく感覚を信じた。
     寒くない。
     一度に飲み干さなくてよかった、ゆっくりと残りに口を付けた。アリクイは何時の間にか最初に見た置物のように動かなくなっていた。



     全てを飲み干して、カップを置く。防寒着を付けなおす。今度はきちんと仕事してくれそうだ。
     鞄を背負って立ちあがる。ごとんと椅子がそこそこの音を立てると、アリクイが起きた。
     俺が入り口近くに行くと同時に、ちんと壊れたベルがなった。タイプライターみたいなレジに、金額が表示されている。
     あわててポケットから小銭入れを引きづり出し、なんとかひっくり返した小銭で足りることに安堵した。爪から挟まれたレシートを受け取って、外に出た。
     クイタランの湯気が一つ、お供の様についてきた。



     極寒なんて幻だった。内側からわいてくる熱に酔いしれる。
     今日限り、今日だけの、かもしれないけれども。
     今はそれがとても、しあわせに見えて、家に帰ろうと足を進めた。



    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  数学のテスト中に『紅茶を出すアリクイ』という怪電波を受信。そこから解けなくなった。
    別に分かんなかったわけじゃ、いやわかんなかったですが。
    シナモンティーはスパイスティーだそうです。ストレートじゃあんまり飲まないらしい。体を温める作用らしいです。後は頭痛を和らげたりとか。飲んだことないけど。

    【リハビリなのよ】
    【好きにしてくれてもいいのよ】


      [No.2273] 【嘘予告】ジャンルは終わった後から始まるRPG 投稿者:西条流月   投稿日:2012/03/04(Sun) 16:14:23     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5







     理想を実現しよう。
     一人の人間がそう言った。
     酷い現実に見て見ぬふりをすることこそが悪なのだと。虐げられる者を救うことの何が悪いと熱弁を奮う人間がいた。
     開放を。自由を。
     その理想に自分も惹かれた。傍らの相棒を虐げたことなんてなかったけれど、自分は虐げられる側だったから。傍らの相棒に救われたことがあったから、救われるのことの大切さを知っていたから。自分にできるなら、力になりたかった。
     その理想が押し付けであることも、それをすることで今度は別の誰かを虐げていると分かっていた。それでも、虐げている誰かは悪だと思っていた。
     理想の前では犠牲はつきもの。悪の犠牲で済むならば、安いものだとそう思っていた。
     そう思って久しかったが、一人のトレーナーが自分の前に現れた時、間違いだったのだなと気付いた。
     傷つきながら不敵に笑い、挑んでくるトレーナー。その期待に応えながら、戦うポケモン。その姿は虐げられる側でも虐げられた側でもなかった。
     冷水をぶっかけるようなその真実を目にしてしまえば、すべての人間からポケモンを奪えば、理想を達成できるという思いはあっさりと消えてしまった。
     だから、理想を求めた物語はここで終わる。


     次は正しく理想を実現するためにどうすればいいか考えよう。


     だから、これから始まるのは終わった後の物語。
     理想を抱いて、真実に敗れた後から始まる物語。


    ――ポケットモンスターブラックホワイト2――








    最近はRPGの前になにか入れるのがシャレおつだそうなのでってことで嘘予告第三弾

    【なにしてもいいのよ】


      [No.2272] ふらふら効果も付いてきます 投稿者:音色   投稿日:2012/03/03(Sat) 09:04:30     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >  ぷち模様に渦巻き一つ乗せたそれはパッチールの耳カチューシャ。

     言い値で買おう


      [No.2271] みみ 投稿者:巳佑   投稿日:2012/03/03(Sat) 03:33:37     82clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    みみ (画像サイズ: 374×549 86kB)


     三月二日の夜、彼女が布団に潜った先にあったのはカチューシャ屋さんでした。

     都会のデパートなどでよく見かけるような、オシャレな雰囲気を漂わせているお店で、様々なカチューシャが置かれてあります。ただ、そこのカチューシャ屋はノーマルタイプのカチューシャは売られておりませんでした。
     そこにあったのは獣の耳がついたカチューシャだけでした。
     
     黄色で細長く、先端が黒く染まったそれはピカチュウの耳カチューシャ。
     水色と青色に染まった細長いひし形(サイド付き)のそれはグレイシアの耳カチューシャ。
     茶色の毛にクリーム色のもこもこがついた、長い垂れ耳のそれはミミロップの耳カチューシャ。 
     ぷち模様に渦巻き一つ乗せたそれはパッチールの耳カチューシャ。
     
     他にもキュウコンの耳カチューシャや、タブンネの耳カチューシャ。
     それからオタチに、プラスルに、マイナン。
     更にルカリオや、チョロネコと……このように実に多種多様な耳カチューシャがそろっていました。

    「お客様、どれかお探しのカチューシャはありますか?」

     店員さんらしき人に問われた彼女はグレイシアの耳カチューシャを手にとって、これが欲しいと伝えますと店員さんは彼女に、もう一度つけてみてはいかがでしょうかと促します。
     その言葉に彼女が再びグレイシアの耳カチューシャをつけますと、店員さんがにこっと笑いました。

    「お買い上げありがとうございました」

     彼女がカチューシャ屋さんを出ると、そこは自分の布団の上でした。  
     不思議な夢を見たものだと彼女が起き上がり、鏡を見ると、あら不思議。

     グレイシアの耳(サイド付き)が彼女の頭の上に乗っていました。
     右にぴこぴこ。
     左にぴこぴこ。
     どうやら本物らしいです。
     カチューシャではなく、本物のグレイシアの耳(サイド付き)でした。
     
     彼女は目を丸くし、頬をつねりましたがなんともなく、このまま外へ出ても大丈夫なのだろうかと心配しながら窓の先に映る風景を見やると、そこにはポケモンの耳をつけた人達が歩いていました。

     今日は三月三日、耳の日。
     
     魔法のカチューシャで、それぞれお好みのポケモンの耳に世界は彩られていました。
     


    【書いてみました】
     今日は三月三日、桃の節句もそうですが、耳の日でもありますよね!(ドキドキ)
     ポケモンの耳に限らず、エルフ耳や、もちろん人間の耳など、とにかく皆も好きな耳を愛でればいいと思うよ(

     ありがとうございました!

    【何をしてもいいですよ♪】


      [No.2270] ストッパーブレイク 投稿者:紀成   投稿日:2012/03/01(Thu) 18:41:26     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    人間関係とは厄介なものである。特に思春期における女子同士の友情というものはいささかややこしいもので、特定の誰かと話しているだけで交換ノートに凄まじい嫉妬の文を書いて送られてきたりする。いらないプレゼントと言っていいだろう。
    それもまあ思春期を終えて高校生になればいくらか収まるところだ。それでも生きている間はそういう感情と良くも悪くも付き合っていかなければならないのだ。
    『嫉妬』『恨み』『妬み』…… 『愛する』ことより簡単であるが故に、それにズブズブと嵌っていく人間も数多い。それでも抜け出そうとしないでいれば、その先にあるのは――

    破滅、だろう。

    『えー、このxは横線を表しているわけだから、6を代入してそれと同じようにyも――』
    先生の声が左耳から右耳へと綺麗に抜けていく。空腹感を覚える時間帯。時刻は午前零時を回ったところ。四時間目でしかも数学というのは、退屈で退屈で仕方無いカリキュラムだろう。現に周りを見れば、ほとんどの生徒が目に光を映していなかった。進学校と名高い晴明学園も、昼前の授業の反応は周りと変わらないのだな、と思わずため息が漏れる。
    ミドリは一番後ろの席に座っていた。窓際の一列目。外ではグラウンドで他の学年が体育をやっていた。男子だ。格闘タイプを使っての柔道。一人の男子がナゲキに掴みかかっていった。だがナゲキの方が上だった。猪突猛進の男子の襟首を掴み、背負い投げる。
    「ソラミネ、聞いてるのか」
    はっとした。金縁眼鏡をかけた教師がこちらを見ている。その目にはやれやれ、という色が見て取れた。
    「すみません」
    「……後で職員室に来なさい」
    何のお咎めもないことに周りは驚いたようだ。別の意味で静まっていた教室が、少しざわつく。ミドリは彼らの好奇の視線に気にせず、ただひたすらに窓の外を眺めていた。授業終了のチャイムが鳴ったのは、それから二十分後だった。

    「ソラミネ、さっきの態度はなんだ」
    所変わって職員室。ミドリは先ほどの数学教師の前に立っていた。部屋は暖房が効きすぎていて、暑い。その場にいた彼らは意外な様子でこの光景を見ているようだった。晴明学園の中でも学年を超えてトップクラスの成績を誇るミドリが職員室に呼ばれること事態、珍しい。ましてやプリント運びではなくお説教とくれば驚くのは無理もないだろう。
    「お前の優秀さは皆認めてる。先生だってそうだ。高校生でアドルフ・ヒットラーの『我が闘争』を原書で読める奴なんてそうそういないぞ」
    「彼の独裁的思考と今の平和ボケした世界と一体何が違うのかを比較してみようと思ったんです」
    「それはいい。日常の授業で叱られるなんて、お前にあってはならないんじゃないのか」
    教師が一息ついた。そして哀れんだような目をミドリに向ける。気持ち悪い、と思った。
    「まだ先輩のことが忘れられないのか。……無理もないが」
    ミドリは頭を抱えながら『失礼します』と職員室のドアを開けた。

    屋上―― 普段は立ち入り禁止だが、実はほとんどの生徒が昼休みに使用していたりする。ミドリもその一人だった。一ヶ月前からずっとここで食べていたのだ。教室に戻る気がしなかった。
    一ヶ月前。冬休みが始まるギリギリ前。寒いのに晴れ渡っていて、雪も降らない冷たい夜だった。そして、何もかも焼き尽くした赤い夜だった。
    先輩が、突然姿を消した夜。町外れの屋敷を黒こげにして、死んだように消失した夜。誰も何も見ていない。何も出てこない。死んではいないと断言できた。それに関する物が、何も出てこなかったから。
    だけど、自分にとっては死と同じだった。
    「先輩……」
    腰のホルダーでジャノビーが不安そうにこちらを見ている。ここ数ヶ月で幾度かバトルさせる機会があり、彼をバトルさせていたら進化した。ツタージャから、ジャノビーへ。
    食欲が出ない。ミドリはボールを出すと、持って来ていた弁当を広げた。首を傾げる彼に、薄く笑う。
    「食べなさい。お腹空いてるでしょ」
    言葉の通りだったらしい。少し躊躇った後、ジャノビーは短い手を器用に使っておかずを食べ始めた。その光景を微笑ましく思い、ミドリは今日初めての笑顔を浮かべた。
    昼休み終了のチャイムが鳴り響く。だがミドリは動こうとしなかった。膝を抱えて、青い硝子を張ったような空を見上げている。ジャノビーが食べ終えても、全く視線を上から逸らそうとしなかった。

    『――私はさ、誰にも邪魔されない世界を生きていたいんだ』
    夏の緑と空が眩しい。一枚の写真のような風景をバックに、彼女は言った。その足はしっかりと地面を踏みしめ微塵の震えもない。
    『邪魔されない世界?』
    『何をするにも自分で決める。自分で決めた道を行く。当たり前だけど自分で選ぶんだから、危険な道だってある。もしかしたらその先に死があるかもしれない』
    『えっ!?』
    『驚き方がオーバーだね、ミドリは。……まあ仕方ないか』
    『でも未練を残して死にたくはないな』
    『この姿で生きていられるのは、これ一度きりだから』
    突然空が暗くなった。闇が、影が全てを飲み込んでいく。違う。自分の場所だけ明るいまま。向こうだけ切り離されたように染まっていく。
    『先輩!?』
    何者かが足の下をすり抜けていく。誰かが闇の中で深々と膝をついた。忠誠を誓うかのように。
    『バイバイ、』
    手を伸ばしても届かない。影が溢れ、溢れて―― 全てが飲み込まれた。

    「あ、起きた」
    意識を取り戻して最初に耳に入って来たのは、自分が今一番聞きたい人の声じゃなかった。低い声。あの人よりも低い。あの人も女性の割りに低かったけど、少なくとも男よりは高かった。
    虚無感を覚えてミドリは目を開けた。コンクリートに預けていた腰と背中が痛い。目の前には見慣れない姿の人間がいた。いや、人であることは間違いないが、ミドリは何処の誰だと認識したことはなかった。
    第一印象は―― ポーカーフェイス。その目の色は状況によって立場を変え、どんな奴を敵に回しても冷静でいられるような感じだ。そして全く面識がない自分でも確信するくらい、彼の顔は整っていた。ああ、なんか入学したての頃に女子が騒いでいた気がするなあ……くらいの認識度であるが。
    ジャノビーがスカートの上で丸くなって眠っていた。重い。
    「優等生で、ギアステーション兼バトルサブウェイの主からも一目置かれてて、美術部の部長で、警察署長の孫で、世界的に有名な研究者の娘で―― って、
    ソラミネミドリ。神様はお前に幾つ肩書きと七光りを持たせれば気がすむんだろうな?」
    「自ら望んでこの人生を歩むことになったわけではありませんから」
    何故か答えていた。皮肉にも、からかいにも取れる言葉を彼は遠慮無しにサラサラと紡ぎだした。ぶっつけ本番で言えるような長さではない。少々戸惑いを感じながらも、ミドリは冷静さを保とうとした。
    そもそも男性と話すことに慣れていないのだ。あの人がいた頃は、授業中と短い休み時間以外ずっと隣をキープしていたから。あの人としか話さない日も、多かった。
    だからなのか、一ヶ月経っても未だに彼女以外と話すことに慣れない。男なんて、もっての他だった。
    空はだんだん赤みを増し、雲に金色の縁取りがされている。薄い青とピンクとオレンジが混ざった、独特の色が一枚写真のように目に焼きつく。
    「というか、貴方誰ですか」
    無礼な気もしたが、名前の分からない相手と長く話せるほど、ミドリは社交的ではない。頼りになるジャノビーはまだ起きそうもなかった。
    「……認識されてなかったのか。参ったな」
    男がミドリの両肩に手を置いた。いきなりのことに何も反応できず、ビクッと肩を震わせる。喰われる―― そう感じた。

    「俺はショウシ。硝子って書いて、ショウシだ。覚えとけ」

    気がついたら彼……ショウシが額を押えて倒れこんでいた。左腕で身体を押さえ、驚いた顔でジャノビーを見ている。
    ジャノビーは起きていた。いつもは何事にも動じない冷静な目を、ナイフのように鋭くさせて威嚇している。ミドリは腰が抜けて立てなかったが、状況を確認してそっと立ち上がった。
    「ジャノビー……私を助けてくれたんですね」
    ガクガクと頷く。頭をそっと撫でると、ミドリはショウシを見た。怒っている様子はない。ハンカチを取り出し、額に当てる。遠目からでも血が滲んでいるのが分かった。
    「ごめんなさい」
    「迂闊だったな。まさかポケモンに隙を取られるとは思わなかった」
    やっぱ女絡みのことはどんな男にでも隙を作らせるんだな、と一人で納得している。ミドリはとりあえずこの男を敵だと認識した。そして名前と顔と性格と自分にしたことをきっちり頭の中にインプットした。


    (先輩、私変な人に懐かれたようです)
    帰り道。ミドリは一人で歩いていた。下校時刻はとっくに過ぎていたし、一緒に帰るような友達を彼女は持っていない。
    (今までは先輩が一緒だったから、何も恐い物なんてなかったけど……いなくなっちゃったから、自分で何とかしないといけないんですね)
    (一体いつ帰ってくるんですか、先輩)
    (私を置いて死ぬなんて許しませんよ)
    ミドリは立ち止まった。空はもう、群青色に白い点が瞬いている。

    (どんな形であっても、私は貴方を見つけ出します)
    (必ず)
    (必ず)

    彼女の持っている感情は、『嫉妬』でも、『恨み』でも、『妬み』でもなかった。そこにあるのはただひたすらに純粋な『愛』。それが純粋すぎるが故に、狂気へと変貌していくことに彼女はまだ気付かない。
    どうやらカオリは崖から落ちただけではなく、落としてしまったようだ。

    ミドリの、『制御』という名の何かを。


      [No.2269] Re: 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:紀成   投稿日:2012/03/01(Thu) 17:51:39     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ポケストを覗いたらこんなスレがあってフランス語の試験勉強がちっとも捗らない、紀成です!
    母に許可は取りました。父は分かりませんが、多分大丈夫だと思います。この前の夏は一週間皿洗いで夕食の許可取ったんだよな……

    行けます。タブンネ。リストに名前の記入をお願いします。では。


      [No.2268] 「まことに申し訳ありません、お客さん」 投稿者:巳佑   投稿日:2012/03/01(Thu) 17:38:53     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    「まことに申し訳ありません、お客さん」 (画像サイズ: 380×550 109kB)

     当店のトゥートゥートゥーアイスは2月22日限定発売ですので、現在販売されておりません。
     しかし、アイス屋『ice shop 22(トゥートゥー)』は毎日営業しております!
     チョコチップをまぶしたミントアイスや、イチゴ味のアイス。
     濃くて口どけがよい抹茶味もそろえております。

     面倒見がよいアイスの職人。
     不思議な売り子。
     そして店長は(自称)イケメンのネイティオ、イケティオ!

     この一匹と二人で『ice shop 22』はお客さんのご来店をお待ちしております!

     黄緑色のワゴン車が目印です。

    ―――――

    「何を書いているかと思えば、お店の宣伝ではあるまいか。感心感心」
     どこぞにあるアパートの一室で、イケティオが机に向かって何やら作業していた黒髪の少女に声をかけた。
     黒髪の少女は振り返って、『何か用?』という看板をイケティオに示した。
    「いやぁ、我がアイス屋の為にこうやって貢献してくれるとはと思ってなぁ」
     天井に顔を向け、無駄にキラキラと顔を輝かせているイケティオを無視し、黒髪の少女は作業の続きを開始する。
     スルーされたことには触れず、イケティオが再び黒髪の少女が書いている宣伝に目を通した。
    「ん? なになに、姐御肌で素敵でいつかは襲って眷属(けんぞく)にしたいアイス職人に、不思議な売り子、そして無駄にかっこつけているけど、かっこよくないし、馬鹿だし、使えないしといった、名ばかりの店長」
     そこまで読んでイケティオはくわぁーとくちばしを勢いよく開けた。
    「ちょっと待つがよい! そんなこと書いたら駄目ではあるまいか!」
    『だって、本当のことなんだもん』
    「本当のことだからとはいえ、そんないかがわしいこと、それとマイナスなこと、特に私に関してそんなマイナスなことを書いたら集客も何もないぞ!? って、ぶっちゃけすぎではあるまいか、これ!? というかこれ、ぶっちゃけったのか……」
     ショックを受けたようで顔を下に向けるイケティオだったが、すぐに顔を上げて、くわぁーっと鳴きながら翼を大きく広げた。
    「そんなことをする子にはトゥートゥーなお仕置きを――」

     刹那、甲高い金属音のような音が鳴り響いた。

    「ゆくろー。新作のアイスできたんだけど、食べるかー?」
     台所の方から声が聞こえると、黒髪の少女――ゆくろは笑顔になり、そのまま部屋を出ていこうとしたが、何やら思い出して、再び机の方へと向かった。
     それから何か紙に書いて、そこに置くと、部屋を出ていった。

    『小樽さんへ。トゥートゥートゥーアイスはないけど、氷付けにした(自称)イケメンの残念なネイティオならここにあるから好きにしちゃっていいよ。雪女のゆくろより』

     その手紙の傍には……もちろん、返事がない、ただの氷付けにされたイケティオがいるだけだった。


    【小樽さんへ】
     コメントありがとうございます!
     返信、遅くなってすいません(汗)

    >  2月22日、2が三つ、トゥートゥートゥー……。
    >  ゾロ目だとは思っていたのですが、ネイティオさんにお目にかかることになるとは思っていませんでした。

     実はとある方のツイッターで『2月22日は――』というのを見て、思わず浮かんだのが、このアイスネタでした(笑)
     自分でもまさかネイティオをトリプルに重ねる日がくるなんて思いもしませんでしたよ。
     ネタの引き金を引いてくれた、とある方には感謝感謝です。(ドキドキ)


    >  くちばしに瞳、端正な仕上がりでいろんな味のフレーバーが楽しめそうですね!
     
     えぇ、色々な味が楽しめますよ。
     抹茶味のアイスに、黒ゴマ味のアイス、後はチョコレートのトッピングなどなど。
     不思議な味がすると思います、タブンネ(ドキドキ)


    >  好きな人の過去や未来が覗けるかも!? ということでこれまた若い女の子の間で特に人気が出そうなイメージです(笑)

     実はここだけの話、色違いのゾロアークを夫に持った美しいキュウコンさんも買ったとか買わなかったとか……おや、誰か来たようで(以下略)


    >  ところで、ネイティオさんのお顔の抹茶アイス、これって丸ごと抹茶アイスなんでしょうか。
    >  実はアイスの中でも抹茶はお気に入りのひとつなので、すごく食べてみたくて仕方がないんですよね(笑)

      はい、その通り、丸ごと抹茶アイスですよー。
     某ハーゲンなアイスにも負けない抹茶アイスだそうで、それを含めて222円は本当に安い……。(汗)
     あ、自分も抹茶アイス大好きですー。
     某スーパーなアイスは抹茶派。しかし、実はチョコも捨てがたくて(コラ


    >  「2」の図案化もオシャレでした、お疲れさまです(*^-^*)
     
     ありがとうございます!
     最初は「これ2を元にしているって伝わるかなぁ」と心配していただけに嬉しいです。
     今回も2にこだわった図案となっております。(ドキドキ) 

     それでは失礼しました!


      [No.2267] 【嘘予告】黒ベルと契約してポケモンを開放してよ 投稿者:西条流月   投稿日:2012/03/01(Thu) 11:29:49     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     始まった時から終わっていた。きっと私のやっていることはそうだったんだろう。未来なんてない袋小路。勝ったところで失うしかない負け街道。それでもいくしかなかった。止まるわけには行かなかった。
     戻ることのできない道で止まってしまえば先には進めないから。考えなくてよかったことを考えてしまえば、次の一歩が遅れる。遅れた分だけ余計に考えて、その分だけ救いが遅くなる。それを知っていた。
     だから、だからね。
    「ベル。もうやめて」
     トウコには来てほしくなかった。あなたにだけは止めてほしくなかった。親友に呼び止められれば、足を止めざるを得ないから。
    「トウコ。まだ――」
     止める気なのか、あるいは止められると思っているのか、どっちを聞くつもりだったのか自分でも分からない。遮るようにして放たれた言葉に思考が停止してしまったから。
    「ポケモンが好きだって言ってたじゃない」
    「えぇ、そうよ。”ポケモン”は好きよ」
    「なら!」
     親友の声が聞こえる。今にも泣きだしそうな声。駆け寄って頭を撫でたくなる胸に刺さる声。
     その声を聴くのは辛い。でもその声に耳を塞ぐことはできない。許されない。
     自分は同じような声を聴き続けるからだ。友達を取らないでよ、と叫ぶ人から容赦なくポケモンを奪うと知っているから、その声に駆け寄ることは許されない。
     なによりも、
    「トウコ、ポケモンが好きだからこうしているのよ」
     これが正しいのだと思って行動してきた。ポケモンのためになると思ったから。大好きなポケモンのためにやってきた。そのためだけにこんなことをやり続けてきたのだ。
    「それでもこんなの……こんなの絶対間違ってる」
     駄々をこねるように否定する友人を見るのは辛い。私とて気になることで彼女が心を痛めることは分かっていたのにそれでも辛い。
    「そうね。私のやってきたことは正しくないわ」
    「ベル。そこまで分かっているならやめましょう。まだやり直せるわ」
     この親友はやっぱり優しい。あんなに酷いことをしたのに、まだこんな言葉をかけてくれるのか。それでも、そうだからこそ、
    「私に止まることは許されないのよ」
     こうすることもやめられない。親友と戦いたくない。そんな私はきっとひどく我儘なのだろう。けれど、やめることはできない。私は欲張りだから。
    「お願い、トウコ。私と一緒に来て」
     泣かせたくない。戦いたくない。けれど、止められない。だから、だから。
    「私の手を取って。ポケモンが笑っていられるように。ポケモンが辛い思いをしないように一緒に戦いましょう」
     私は手を差し伸べた。

    ――ポケットモンスターブラックホワイト2――




     せっかくなら、きとかげさんの黒ベルに返信投稿しようと思ったけど見つからなかったorz
     てなわけで嘘予告第二弾。今回は敵勢について書いてみた。悪とは言えない悪。果たして主人公の取る道は――
    ってところで切れるCM雰囲気 

    【今度はまともな嘘予告なのよ】
    【思ったより黒くないのよ】
    【好きにしていいのよ】


      [No.2266] 場所は浜松町or新橋付近? 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/03/01(Thu) 07:04:01     73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    記事立て乙です〜
    場所は浜松町か新橋付近ですかね。

    HARUコミの場所自体は東京ビッグサイトです。
    http://www.akaboo.jp/event/0318haru17.html
    入場に1300円かかりますので、他の同人誌(ポケも出てますし、他ジャンルもあります)を見て回りたい人以外は
    打ち上げだけ あるいは しめしあわせてどっかで遊んでいるといいかも。


      [No.2265] 【告知】3/18(日) HARUコミックシティ打ち上げ会 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/02/29(Wed) 23:51:26     165clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ご無沙汰しております。586です。

    No.017さん主催の「ポケモンストーリーコンテスト・ベスト」の頒布を行うイベント・HARUコミックシティの開催が近づいてまいりました。
    ポケスコの力作群を集めた、まさに珠玉の一冊になる予定です。
    ちなみに、当方も昨年のコミックマーケット82にて頒布した「プレゼント」の再販を行う予定です(しれっと宣伝

    さて、3/18(日)のイベント終了後に打ち上げを行いたいと思います。
    時間帯はイベント終了後、少々余裕を持って17:00前後開始を考えています。終了は状況にもよりますが、概ね20:00頃の見込みです。

    つきましては、参加を希望される方を当スレッドにて募らせていただきます。
    なお、既に参加を表明されている方に付きましても、今一度メンバーの確認を行うため、当スレッドにて記名いただけると幸いです。
    イベントに参加されてそのまま雪崩れ込む予定の方も、打ち上げだけ参加されるという方も、どちらも大歓迎です! 奮ってご参加ください(´ω`)

    以上、よろしくお願いいたします。


      [No.2264] 【嘘予告?】操作キャラはきっとN 投稿者:西条流月   投稿日:2012/02/26(Sun) 16:54:29     73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    世の中には言い出しっぺの法則とやらがあるそうなので、書いてみた。
    この量書くのに三時間もかかってしまった。精進精進
    いやぁ、マジで中身が予想できないので完全に妄想爆発状態ですが、















    ――――――――――――――――





     人生五十年。言葉にすればこれほど短いが実際には様々な出来事があった。酒に女に戦いに、と。そして、出来事が起こるたびに様々なものを失っていく。それは者であり、物だった。そこまで思い返して、
    「いろいろあったの七音で済む程度の人生だのう」
     と自嘲した。そうだ。短い中には様々なものがあったけれど、結局はそう短くできてしまう程度でしかない。死んでいった者たちの言葉を覚えていても、どんな声音であったか分からなくなっていくように、多くの出来事は色あせていった。
     気にも留めてない出来事も含めれば、その数は無数にあるだろう。数えられるはずなのに、混ざり合い数えられぬのは歳を取ったせいか。
     城に置いてきた妻がこの場にいれば、こんなことを考える自分を笑うのだろうな。髭をしごきながらそう思う。人間だから当たり前だと慰めるようにそう言うのだろうとも。
    「フン。年寄りの冷や水か。隠居でも考えたらどうだ?」
     思考に割り込むように聞こえたのは遠雷を思わせる低い言葉だった。誰かは問うまでもない。この自分に無礼なことを言うのは、一人しか否一匹しかいなかった。背後にちらと視線をやる。血を思わせる朱い瞳と雷雲のように黒き体を持った龍がそこにいた。
    「いつも通り、礼儀を知らぬな。その翼、切り落としても構わぬのだぞ」
    「昔ならいざ知らず、今の貴様では我の動きを捉えることすらできんだろう」
     脇差に手を添えながらの剣呑な言葉にそう切り返された。
     これが他の者ならすぐに平身低頭し、許しを請うのだろう――それ以前に無礼な振る舞いをする者はいない――がこの龍は怯えもせず、むしろ更なる言葉を返してくる。
     こいつとも長い付き合いだ。妻よりも長い年月を共にした。だから、というべきかはわからないが、相棒とも言うべき存在はこの尊大な龍以外にはいなかった。周りに人はいても、家来か敵かだ。軽口や愚痴を聞かせられる他の存在はもう死んでいる。
     良いやつは早死にしてしまうというから、一番口汚いこいつが生き残るのもある意味至極当然、当然ではあるがやはりどこか釈然としない。神や仏がいるのなら、良き裁定をしてほしいものである。
    「寺に泊まった程度でそんなに感傷的になるとはな」
     思わずと言った形で漏れた呟きに対しての返答に確かにらしくなかったなと思い、口の端を歪ませる。
     それも致し方なし。血も涙も信ずる神がいなかろうと、
    「人が死ぬときは命の行く末について、考えてしまうのさ」
     言い終わると同時、目の前の襖が開く。
     入ってきたのは一人の男。
    「第六天魔王であっても死ぬときはやはり恐れるものなのですね」
     怜悧な瞳をこちらに向け、そう言った。会った時から変わらない。氷鳥を従え、冷めた瞳をしているせいで冷めていると思われがちだが内に秘めた情熱は人一倍。そういうやつだ。いつかこういう日が来ると思っていた。
    「殿。あなたはもう十分生きたでしょう。現世のことは私に任せ、地獄の天下でも取りに行ってください」
    「天運がなかったと諦めて、我が主に打ち取られてください」
     肩に留まった氷鳥と共に、好き勝手に言ってきてはいるが、まだ死ぬ時ではない。まだ見ぬ世界を残している。生きることに飽くには長生きはしていない。
    「ふん。貴様に止めることは叶わん。我が覇道はこれからだ」


    ―――――――




    【騙す気しかなかったのよ】
    【NはノブナガのN】
    【何してもいいのよ】


      [No.2263] 我が輩はポッチャマである 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/02/26(Sun) 16:23:15     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     我が輩はポッチャマである。名をマゼランという。
     偉大なる航海士マゼランより名を送られた由緒ある血統の末裔である。その昔、世界一周を目指し、地動説を証明し、その海に散っていった冒険家であるぞ。知らぬとは言わせぬ。我が一族は冒険家を助け、10隻あるうちの1隻を故郷の港まで見送ったのである。故にそこの人間、頭が高い。我が輩には常に従うのだ。

    「なにすんだってば!」
     我が輩の主人というジュンという愚かな人間に罰を与えた。偉そうに我が輩の背後で次はどの技、あの技とやかましいのである。我が輩のするどい嘴の攻撃に人間など従わせるに容易いものである。
    「お主こそ何をする。我が輩はマゼランであるぞ。我が輩に命令するなど100年以上早いわ。そもそもお主は我が輩に命令してばかりで何も疑問に思わないのか。聞けばお主も我が輩と同じポケモンの末裔であると聞く。ならばお主が戦うのが筋というものであろう」
    「なにおー!俺はトレーナーなんだ、お前はポッチャマだろ!」
    「だからなんなのだ。トレーナーが戦ってはいけない理由などない。我が輩はお主を見ておる故、戦ってくるがいい」
    「この、小さいからって生意気な!ポケモンは戦うのが常だろ!」
     この愚かな下僕はとてもやかましい。我が輩は静かなものを好む。それにしても我が輩のまわりはやかましいものばかりである。やんちゃで落ち着きのないヒコザルのエンゴと努力家なナエトルのモエギである。正反対と思われる2匹であるが、我が輩には何の遠慮もなく馴れ馴れしい。我が輩は偉いのである。
     そう考えればあのヒカリという女子はとても性格が良い。さぞかし男どもが寄ってくるであろう。現に我が輩の下僕ジュンは少しではあるが好意を寄せているようなのである。しかしそのヒカリは下僕ジュンの親友のコウキに好意を寄せているようなのである。奇妙なる人間たちよ。
     さらに奇妙なるのは、その人間たちがポケモンの末裔たちであることだという。その昔、シンオウの大地で起きた戦争の後、人の身にその力を封じた祝福のポケモンたちの子孫だという。人の縁とは奇妙なものである。

    「いくのだ下僕ジュンよ。ブイゼルなどすぐに倒せるであろう」
     その辺の一ポケモンが我が輩の相手になるわけがなかろう。我が輩は下僕ジュンの草技ソーラービームを後ろで眺める。ほほう、さすがの力である。一発で仕留めるとは天晴。下僕が主人を喜ばせたのであるから、ここはほめなければならぬ。主人とは飴と鞭で下僕を懐けるのだ。
    「よくやった下僕ジュンよ。主人として喜ばしく思うぞ」
    「なんでだよ!」
     何かやかましく騒ぎ立てていたが、下僕が主人に逆らうことなどあってはならないのだ。我が輩は下僕ジュンの足を鋭い嘴で突っついたのである。反抗するものは容赦なく制圧するのだ。そう下僕を扱えないのならば主人となることなどできぬ。


     しかしこの下僕ジュンは我が輩に関して何の知識もない。それは下僕ジュンが親友たちと一晩森で明かした時の話である。
    「エンゴ」
     コウキが奴を呼ぶ。ふむ、エンゴはコウキに対して恐怖を感じているのか尻の火が一瞬縮み上がる。
    「あ、あっしに」
     近づいた瞬間はまさに獲物を捕らえる肉食獣である。コウキがその拳でエンゴの腹をわしづかみしたのだ。
    「ぐへっ」
     情けない声が上がったものよ。あのやんちゃ坊主がここまで制圧されているとは、コウキという人間は中々のやり手である。
     エンゴの方はさっきよりも尻の火を大にして起き上がったのだ。
    「な、なにする……」
    「火が出やすくなっただろ。もう一度ひのこやってみろ」
     ヒコザルの特徴を良く知っている人間である。腹を刺激して火を強くするのだ。なるほど、エンゴがコウキに逆らえない一因がそこであろう。
     それにしても下僕ジュンは我が輩のことなど何も知らぬ。何が好物であり、何が楽しいことであるか。嫌いなものは何かなど何も知らぬし知ろうともしない。いやそれは我が輩が間違ってあろう。下僕に全てを求めてはいけないのだ。下僕は下僕らしく、我が輩に従っていればよい。
    「い、いいなあマゼラン」
    「完全逆転よねマゼランのところ」
     エンゴは羨ましそうな目で、モエギは呆れたように見ている。我が輩をじろじろ見るなど無礼にもほどがある!
    「ポッチャマに使われてるんじゃ、今度も俺の勝ちだな」
     コウキが我が輩の好物をちらつかせて言う。おお、この人間は中々解っておる。下僕は一切そういうのを渡さないのである。これではこの下僕の主人をやっている意味がないであろう。それに加えて苦いポフィンまでついてるとは、我が輩はコウキと共についていけばよかったのである。なぜこんな下僕ジュンに出会ってしまったのであろう。
    「絶対次も負けねーからな!」
    「次も、って俺に勝ったことないだろ」
     そうなのである。コウキのポケモンは皆強いのである。我が輩も後一歩のところであのクロバットに敗れてしまった。エンゴにもモエギにも負けたことないのに、コウキとは面白いやつである。
    「マゼランの技もロクにえらべなくて、俺に勝てるわけがない」
    「もっと言うがいいコウキよ。下僕ジュンは我が輩のことなどなにも知らぬ」
     ポケモントレーナーというものにレベルがあるというならば、下僕ジュンは全くもって下であろう。もっと精進するがよい。
    「マゼランって、ジュン君の主人なのですか?」
     その通りだヒカリよ。下僕ジュンは否定を始めたので、我が輩の嘴でつついてやった。
    「よくぞ理解できた。我が輩は偉大なるエンペルトの父と母より生まれた高貴なる血統より生まれたエリートである」
    「エンペルトなのですか。私、エンペルトっていう映画みましたよ! タマゴを二つ産んで、そのうちの優れた方だけ育てるのですよね。見た時は捨てられた方がかわいそうだと思ったのですが、過酷な環境で生きられないことが多いというのを聞いて。マゼランはその中でも優秀なのですね」
     ヒカリよ良く知っておる。エンペルトとはドキュメンタリー映画という映画らしいのだが、そういうのすら見てない下僕ジュンは全く。
    「生きられないのを知って悲しむエンペルトもいて、私は凄くエンペルトって辛いんだなって思います」
     もう言うなヒカリよ。それは事実だとしても、映画という娯楽であろう。


     下僕ジュンはせっかちである。コウキとヒカリがのんびり歩いていてもさっさと先にいってしまう。最初は二人が仲良くしているのを見たくないのだと思っていたが、そうではない。本当にただせっかちなのだ。おかげでナナカマドという人間に頼まれたギンガ団対決も、下僕ジュンが通り過ぎた頃に終わっているのだ。
     そのおかげで我が輩はギンガ団を見たのはその時が初めてであった。

     その頃、我が輩はポッチャマではなく、父上と母上と同じエンペルトであった。前を塞ぐポケモンは全てなぎ倒しここまで来たのである。前にエンゴはコウキの指示がなければ戦えないと負抜けたことを言ったが、我が輩は違う。我が輩の独断で戦うことができるし、それで良かったのである。
     そのおかげであろう。ミオシティでナナカマドと会った時に言われたのである。「強そうになった」と。我が輩のおかげである。感謝するがいい下僕ジュンよ。鋼の翼で背中を叩いた。
    「そこで、湖の調査をして欲しいのだ。ヒカリはシンジ湖、ジュンはエイチ湖、コウキはリッシ湖だ。特にジュン、お前が一番遠いが、できるな?」
    「もちろん!俺が一番だって!」
     言うが早いのだ。おいかける我が輩の身にもなって欲しい。こういうとき、ゴンベのごんたろうは追いかけない。我が輩もそれが良いと思われたが、我が輩のいないところで下僕ジュンが困っても我が輩が困る。最近ではギャロップの一角の辻(いっかくのつじ)が走って連れ戻すことがある。
     吹雪くテンガン山を抜けて雪道を走る。普通の人間であればこんなところ走れないであろう。我が輩に乗り、傾斜から速度をあげて飛び出すという、どこかのゲームのペンギンのようである。吹雪と雪の冷たさが我が輩の体に容赦なく突きつける。なんぞこの寒さ。我が輩の故郷に比べれば寒いとか凍えるとか笑止!
     我が輩の嘴には氷がついていた。翼にもついていた。よくみれば下僕ジュンの頭にも雪がつもっていた。それなのに目の前の湖は凍ることもなく、ただ静かにさざ波をうっていた。
    「エイチ湖についたのだぞ。どこから調査を頼まれているのだ?」
    「え、あれ、えーっと」
    「やっと一人ずつになったわね」
     我が輩は初めてギンガ団を見た。ピンク色の派手な髪と寒さをものともしない奇妙な格好。なるほど、普通の人間とは違う。
    「えっと、お前ギンガ団だな!」
    「そうよ。この際改めて自己紹介するまでもないわね」
     ブニャットが現れたのである。一角の辻が角を向ける。ひるむことなく向かってくるブニャット。一角の辻が少し出遅れた。そんなに素早いポケモンであったか?我が輩は目を疑った。
    「なんだってんだよ!」
    「純粋なポケモン勝負。貴方なら知ってるでしょう、大昔の戦いで負けた方がどうなったか。勝利した方に全てを奪われ、逃げ回る日々。貴方は敗者になるの。それだけよ」
    「そんなの、やってみなけりゃ解んないだろ!」
    「解るのよ」
     下僕よ何を慌てている。なぜいつもと違うのだ。このままでは勝てるものも勝てなくなる。
    「下僕を下がっているがいい。訳の分からぬギンガ団とやらに邪魔されてはナナカマドにも頭が上がらないであろう」
     ブニャットなど何度も戦っている。勝てないはずなどない。下僕ジュンは何よりナナカマドのにらみが怖いらしい。ならばナナカマドに怒られない方法を主人である我が輩がとってやる。感謝するがいい。
    「エンペルト、ね」
    「そうだ、エンペルトだぜ。俺のエンペルトは……」
    「人の手に渡るエンペルトは両親から見放された生きる力のないポッチャマ」
     下僕ジュンが一瞬息を止める。
    「知らないの?エンペルトの夫婦は一度に二つのタマゴを産む。そして強い方だけを育てる。育てられない、育児放棄されたポッチャマを保護したのが……」
    「黙れ宇宙人」
     我が輩は強いのである。エリートである。偉大なる航海士の名をもらった。優秀な兄もいる。我が輩は優秀なのだ。優秀だからこそ人間の手に渡り、下僕を使って強くなったのである。
    「そこまで我が輩を挑発するのなら来るがいい。全てを破壊するのみ!」
     我が輩は強い。エンゴやモエギに負けたことなどない。野生のポケモンにも負けたことがない。優秀なエンペルトであるぞ!


    「コウキ君!」
    「ヒカリ、無事だったか!」
     ヒカリは我が輩を無言で見た。コウキの表情が変わった。
    「エンペルト?マゼランか?ジュンはどうした?どこにいった?なんでボロボロなんだ?ジュンはどうしたんだよ」
     こんな早口でまくしたてた時のコウキは怒っている。いつものことだから知っていた。下僕ジュンの親友にあわす顔などない。
    「すまない!」
     我が輩は地面に頭をつける。
    「我が輩の力が足りなかったのだ。そうでなければジュンは……」
     なりふりなど構わぬ。我が輩が惨めでも構わぬ。弱くても構わぬ。
    「ギンガ団は将を落とすなら馬からだとあざ笑っていた。ジュンは我が輩にコウキのところまで伝えよと」
     我が輩の力が足りなかった。ギンガ団にかどわされるのをただ聞くしかなかった。吹雪の中、アクアジェットで逃げるしかなかった。
    「他のポケモンもジュンと一緒にかどわされた。頼む、ジュンと仲間を助けてくれ!」
     何も言わず、コウキが我が輩の目の前に回復の薬を置く。
    「将だと?ふざけんな。俺たちは誰もが馬なんかじゃねえ」
     顔をあげればゴウカザルより燃えてるコウキが見える。
    「ヒカリ、ナナカマドのじいさんに調査遅れるって伝えてくれ」
    「あ、私も行きます!」
    「我が輩も!」
    「ダメだ。ジュンに続いてヒカリまで取られたら俺が手も足もでねえ。マゼランをさらに傷付けたら俺はジュンに顔向けできねえよ。エンゴ、行くぞ!」
     隣にいるエンゴの炎よりも激しく見えた。空を飛ぶコウキを見送ると、我が輩の目の前に火花が散った。


    ーーーーーーーーーーーーーーーーー
    友達からポッチャマもらったら生意気だった。
    マゼランはマゼランペンギンより。世界一周した本人からつけられた
    エンペルトという映画は皇帝ペンギンというドキュメンタリー映画。
    ペンギンは足の間にタマゴいれてあたためますが、一度落とすと二度と暖めない。
    アニメなどでヒカリにはポッチャマといいますが、ナエトルの方が似合ってるのは色合いかもしれない。
    むしろポッチャマの図鑑をみて、やっていけるのがジュンしかいなそう。

    【好きにしていいのよ】【げしげししていいのよ】


      [No.2262] ふふふ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/02/26(Sun) 00:47:55     19clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ぜひ皆さんに読んで欲しかったので、
    タカマサさんにお願いしちゃいました。
    投稿して貰った甲斐があったわ〜。


      [No.2261] Re: マサラタウンまで何マイル? 投稿者:SB   投稿日:2012/02/25(Sat) 21:05:27     21clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    たまにやってくるとこんな掘り出し物がいつも見つかるなんて、やっぱりここはいいサイトですね。

    ゲームの世界を否定したように見えて、途中『 誰が葵に手を差し伸べてやれた? 例え親に、教師に、級友に、自分自身に裏切られたとしても――虚構(フィクション)だけは、いつも俺たちの味方だったんだ。』と書いてるあたり、さりげなく「勇気のきっかけ」的な感じで虚構を評価してるんだなと感じました。
    そして虚構を捨てて新たに現実で生きていこうと決意した上での、最後のくだり(「めざせポケモンマスター」の歌詞からとったのか?)も素敵です。

    とても面白かったです。


      [No.2260] 寒かろうが関係ないッ 投稿者:小樽   《URL》   投稿日:2012/02/23(Thu) 23:19:06     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     2月22日、2が三つ、トゥートゥートゥー……。
     ゾロ目だとは思っていたのですが、ネイティオさんにお目にかかることになるとは思っていませんでした。

     くちばしに瞳、端正な仕上がりでいろんな味のフレーバーが楽しめそうですね!
     好きな人の過去や未来が覗けるかも!? ということでこれまた若い女の子の間で特に人気が出そうなイメージです(笑)
     これだけのものだったら222円はお得だなぁ。それじゃ私も……え、もう売ってない??

     ところで、ネイティオさんのお顔の抹茶アイス、これって丸ごと抹茶アイスなんでしょうか。
     実はアイスの中でも抹茶はお気に入りのひとつなので、すごく食べてみたくて仕方がないんですよね(笑)

     「2」の図案化もオシャレでした、お疲れさまです(*^-^*)


      [No.2258] うたわれる伝承 投稿者:MAX   《URL》   投稿日:2012/02/22(Wed) 20:02:33     105clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

      おどれ おどれ 二匹のドラゴン 
      朝も夜も混ざり すべてが許される
      ぐるぐるわかれて ぐるぐるまざって
      まわるまわる まわってねじれて
      踊れ 踊れ 二匹のドラゴン 

          〜雪花の町のわらべ歌より〜


     旅人ひとり訪れる、そこはカゴメタウン。
     街角の公園、子供たちは遊び、歌う。
     二人の童女が手を打ち合い、身振り手振りを持って、歌う。

      旅のアナタや どこ行く人ぞ
      今に日暮れじゃ こちらにおいで
      暗闇夜闇は人には怖い
      怖けりゃ休め 隠れて休め
      お日様眠れば まっくろくろの
      寒いが出てきてなお怖い、なお怖い

     この町の童歌か。ここもまた、歌われる民話があるのだろう。
    「旅の人かいね?」
     不意に老人の声。傍ら、椅子に腰掛けた老婆が。
    「こん町は初めてかい?」
     えぇ、まぁ。と答えれば、「そうかいね」と言う。
    「こん町は夜になっと、怖いのが来て出歩いとるもんを取って食うっつうんよ。早いとこ出てくっつんならともかく、泊まってくんなら、日ぃ落ちる前に宿とるこったな」
     なるほど。それは、あの子たちが歌うのと、関係が?
    「おぉ。全部じゃないがな、昔っから夜中に外出たもんがおらんようになることが、ちょくちょくあってなぁ。後で見つかったもんは寒いーさむいーってガタガタ震えるんよ」
     それは怖い。それで、子供たちが真似をしないようにと、あんな風に歌われているんですか。
    「あぁ。やめろっつうとやりたがる聞かん坊もおったが、そいつもおらんようなってな……。こん町で、ただの迷信って馬鹿にするもんはもうおらんよ」
     …………。

      まっくら寒いのどこからくるか
      だぁれも知らんと言うとこじゃ
      おうたら食われるさらわれる、と
      だぁれも知らんと言うものじゃ
      暗いの怖い おうたら食うぞ
      寒いの怖い さろうてやるぞ
      怖けりゃ帰ろ おうちへ帰ろ
      あったか明るいおうちにおらば
      暗いも寒いもようおらん、ようおらん

     恐ろしい伝説は、事実をもとに語られる。知りたがりの犠牲の上に歌われる。
     なるほど。だから、この町の人間は夜には外を出歩かないのか。
     ところでおばあさん、と訪ねる。
    「なんかね?」
     さらわれたけど見つかったって人、どこで見つかったんですか?
    「おぉ? 北の山ん中さぁ。あの辺は、そんな高いとこでもないんに雪のひどいとこでぇな。きっと悪いもんがおるんじゃーって、とっちめに行くもんがようおったよ」
     ……そりゃそうでしょうね。それで?
    「なーんも。見つからなんだ、ならまだしも、遭難して世話焼かせるもんまでおったさぁ」
     そうですか。近づいたら、それだけで危ないのか……。
    「あんたもそうならんようにな」
     おっと。
     こちらの意図を見抜いていたか。まぁ、あんな質問をする旅人は、よっぽどの知りたがりぐらいなものと思ったんだろう。まさにその通りだ。
     ……ありがとう、おばあさん。お礼といってはなんですが、私も余所の土地の“伝承”ってヤツをお教えしましょう。



      白の竜と黒の竜 二匹は螺旋にそって踊り狂う

      竜は何時から踊っているのか それはもう分からない ぐるぐるまわって混ざりあい ぐるぐるまわって離れて行く
      螺旋がいつかねじりに変わり 二つの竜は一つのまどろみに戻ろうとする
      ねじりはまざりを拒絶する 螺旋は昼と夜とを分離して 白と黒はまた黒と白に戻る

      いつか螺旋の軌跡は塔になる
      白の黒とは踊り続ける
      いつだか踊りの疲れはて 白と黒とは休息を望む
      次に混ざり合った時 黒と白は白と黒に分離して ぱたりと踊るのをやめた

      後に残るは白の珠 後に残るは黒の珠
      踊れ 踊れ 踊りつかれた二匹のドラゴン
      朝と夜はすっかり別れ 混ざりも捻りもなくなって
      螺旋の軌跡ばかりが残る



     旅人ひとり、町を離れる。
     求めるは三匹目の存在。いるかさえ知られぬ存在。
     しかし歌われる。怖い、寒いそれが。
     ならば、知りたい。そして伝えたい。
     求めよう。故に。

     北へ。



    * * * * *
     お久しゅうございます、MAXです。
     今回は、音色さんからネタの提供を受けての作品でございます。
     ある時「即興でなんか作ってみましょうよ。だからテーマ出して」と三題噺のお客側みたいなこと言われまして、「じゃぁ、わらべうた、でなんか考えてみましょうよ」と。そして音色さんから黒と白のドラゴンのお話を、自分はカゴメタウンの伝承でネタを出したのでした。
     以上のネタをまとめて今回の作品にしたのですが、その話があったのは1月26日のこと。おおよそ1ヶ月前です。
     ……ここまで形にするのが遅うなりました。申し訳ない!
     以上、MAXでした。
    【批評、感想、再利用 何でもよろしくてよ】


      [No.2257] 「本日だけの限定販売ですよ、お客さん」 投稿者:巳佑   投稿日:2012/02/22(Wed) 11:49:14     77clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    「本日だけの限定販売ですよ、お客さん」 (画像サイズ: 384×550 48kB)


     ネイティオの顔アイスが三つ乗ったトゥートゥートゥーアイス!
     
     口どけがよくてさわやかな抹茶味のアイス。
     濃くて甘い黒ゴマ味のアイス。
     はたまたチョコレートなどなどが使われております。

     そして、このアイスには一つオマケがありまして。
     なんと当たれば、誰か好きな人の過去か未来をちょっとだけ覗けるかも?
     タブンネ。

     価格は赤字覚悟の税込222円!

     食べる時は落下に気をつけながら食べましょう。

    (本日だけの限定販売ですので、お早めのご購入を!)




    【描いてみました】
     本日、2が三つ並んでいるということで、やってみました。(笑)
     トゥートゥートゥー。  

     ありがとうございました。

    【何をしてもいいですよ♪】
    【ぜひ食べてやってください】
    【トゥートゥートゥー】


      [No.2256] 感想書くまで何マイル? 投稿者:音色   投稿日:2012/02/21(Tue) 22:28:48     18clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     またとんでもない爆弾がおっこちてるんだが。
     タカマサさんってあれだよね、鳩さんが全力でネタにしているショールの。
     ・・・。
     なんか、俺なんかが書いててすいませんって感じになってきたよ。リアルすぎるよ。怖いよ。
     感想楽しみとか鳩さん気楽に言ってるけど気楽に感想書けないよ。
     レベルおかしいよ。タカマサさんすげぇ。
     考える前にぞくっときた。どうしよう。常に虚構の世界に逃げてる俺はそこすらも封じられたらどこに行けばいいですか。
     あぐぐぅぅ、読んだら唸ってしまう。笑えない。他人事じゃないっす。刺さる。


    【好きだけど怖い、けどすごい。語彙力がないって悲しい】


      [No.2255] ど う し て く れ る 投稿者:音色   投稿日:2012/02/21(Tue) 21:25:04     13clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     なんか刺さった。えぐられた。

    >  だが目の前に倒れ伏し、泣いているのは、両腕を失った自分の死体だった。


     この一文の破壊力。
     どうしてくれるんですかタカマサさん


      [No.2254] 空を望む人影 投稿者:夏菜   《URL》   投稿日:2012/02/20(Mon) 03:57:13     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     僕が生まれて初めて見たものは高い高い空をかけて行く大きな生き物だった。

     気がつくと荒野に一人たたずんで空を見上げていた。守ってくれる親や仲間などいるはずもなく、
    身を守るすべや生きるすべを知ることもなかった。
     のこのこと歩いていたら怖い目にあう。これだけは理解するのに難しくなかった。
    ひ弱な体をふらふらさせ、一匹で歩く姿は恰好の的なのだろう。
     こそこそと物陰で寝泊まりし、細々と食いつなぐ生活……
     頭の中にはただ一つ。 あの空を自由に駆け回るんだ!
     どうすればあの空を走れるようになるのか、全く分からないけど前へ進むことしか頭になかった。
    あの生き物が進んでいったほうへ……それがきっと空に繋がっているはずだから……
     ただただ前に進んだ。前へ前へ。空へ空へ。


     そうしてどれほど進んだのかわからなくなっても、さらに歩き続けてたどり着いた森の入り口。
     木に片足をかけた鳥が不思議そうに首を曲げ、ただただ空を見上げ前へ進む僕を見ていた。
    「お前はどうして空を望んでいるのかな?羽がないものは地に足跡を付けながら生きるしか術がないだろうに。」
     そう何気なく言った鳥は、木にかけた片足を外し僕が願ってやまない空へと軽々と、飛んで行った。

     しばらく鳥が去った方を呆然と見ていた。
     なぜ気付かなかったのだろうか……確かに空を駆ける者はすべて羽を持っていた。
     そしてそれは僕にはついていないものだった。
     ふと冷たいしずくがほほを伝った。悲しくて悲しくて。ただただ空を夢見て前へ歩いてきた心に、ぽっかりと大きな穴が開いたようだった。
     涙の足跡を作りながら、とぼとぼと森を進む。
     もう少しで広い広い空を遮る鬱蒼とした木々もなくなりそうな気配がしてきても、僕は一向にうつむいていることしかできなかった。

     高くて手の届かない空の元に出ていくのが悲しくて、ゆっくりゆっくり森の中を進んでいたとある晩。
    目の端にかすかにきらきら光るものが見えた気がして、そっと光のほうへ近づいてみた。
     木の陰から光を覗くと、どうやら森でよく見かけた木や地面にひっついて動かなかった者たちが光っているようだった。
     その光がだんだん強くなっているみたいで、あたりは月の光が地面を照らすよりももっと明るくなってきていた。
     綺麗な光景に声をなくししばらく眺めていると、木に張り付いていた者たちから羽が生え、木から、地面からふわりと、足が離れたのだった。

     飛んだ……。

     彼らは最初こそ頼りなくふわふわしていたものの、次第に羽をひらりひらりと躍らせて一匹、そして一匹……と夜空へと舞って行った。
     初めて目にした進化に僕の興奮は止まらなかった。
     今はひ弱で羽のない小さな体でしかないけど、僕たちには進化がある!!いつかきっと力強くなってあの空だって駆けまわれるようになるに違いない!!!

     そうだ。まだあきらめるには早い! まだまだ。前へ!前へ!
     森を抜け、地を駆け、もっともっと先へ!
     そしてあの空へ! あの果てしなく広がる広大な空へ!!



     ……そうして歩き続けてるうちに僕は大きくなっていた。
     手足が大きくなり、体は逞しくなって、しっぽだって見違えるくらい太くなった。そうして……羽は……。

     僕はいまだに空から遠く、あの者たちのようには舞うことができず、地面にへばりついて足跡をつける毎日。
     結局僕はあそこに行くことができなかったのだ。
     それでも……と僕は歩きだす。

     僕は大きくなった。逞しくなった。
     ひ弱な体で歩き回り恰好の的になっていた僕は、今や返り討ちができるほどに強くなった。
     空には手が届かなかったけれど、それなら僕は僕のやり方で空に挑戦してやろうじゃないか。
     この地面にたくさんの足跡を残して、あの大きな空からでも駆けまわる僕が分かるように。

     僕は僕のやり方であの空を目指そう。


    **********

    コンテスト参加した小説を修正しました。
    多少はましなものになった!!はず!!ですwww
    けど、厳しい評価大募集ですwww

    タグは 素敵にしてくれてもいいのよ っていう感じで。


      [No.2253] 大好きな作品です。 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/02/20(Mon) 02:00:28     20clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    一番は砂漠の精霊(http://masapoke.sakura.ne.jp/novels/takamasa/seirei.htm)ですが、
    この作品も大好きです。
    ぜひマサポケの皆さんに読んでいただきたいと思って、ご本人にアタックしてお願いしてみました。
    みんなの感想が聞きたいナー。


      [No.2252] 「マサラタウンまで〜」「セロ弾きの〜」の2作品に関して 投稿者:タカマサ   《URL》   投稿日:2012/02/20(Mon) 01:32:27     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どうも、はじめまして。もしくはお久しぶりです。
    「マサラのポケモン図書館」先代管理人のタカマサです。

    今回投稿させていただいた「マサラタウンまで何マイル?」「セロ弾きのエレキブル」の2作品は、それぞれマサポケ発行の同人誌「LAMP」「Report」に掲載したものです。
    自分としてはもうポケモンジャンルからはすっぱり手を引いた気持ちでいたのですが、今回、No.017さんから投稿してみないかとのお誘いを受け、自分としてもこの2作品を死蔵させておくのは惜しいという気持ちもあったので、投稿してみることにしました。

    内容的には同人誌に掲載したものに手を加えていません。
    初めて読むという方にも、少しでも楽しんで読んでいただければ嬉しいです。


      [No.2251] セロ弾きのエレキブル 投稿者:タカマサ   《URL》   投稿日:2012/02/20(Mon) 01:25:52     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     町はようやく戦災から立ち直ろうとしていた。
     空爆の焼け跡にはバラックが立ち並び、かつての繁華街には闇市が立ち、活気に溢れていた。道行く人々にも笑顔が戻りつつあった。

     正午を告げる、時計台の鐘の音が風に溶ける。
     闇市の立つ裏通りの場末では、ふと流れ出した音楽が人々の耳を捉えた。チェロの音色である。雑音交じりの、不器用な演奏であった。しかしそれでも人々は「おっ、始まったか」と賑わいだし、演奏者の周りにはすぐに人だかりができた。
     目を丸くしているのは、人だかりに引き寄せられて初めてそれを目にした新参の者だろう。人垣の中、どっしりとした巨体を地に下ろし、古ぼけた大きなチェロを抱えて演奏しているのは人間ではない――雷電ポケモン、エレキブルである。
     エレキブルの座している辺りでは、コードや電線が絡み合って、あちこち錆び塗装の剥げた変電器を取り巻いていている。時おりパチ、パチッと火花が飛ぶ。周囲のスラムに暮らす人々がめいめい勝手に電気を引くため、常にどこかしらショートしているのだ。電気ポケモンのエレキブルにとっては格好の「指定席」だ。
     彼の演奏会は既にこの町の名物となっており、町の人々は彼を童話の主人公になぞらえ、『セロ弾きのエレキブル』と呼んでいた。

     やがて彼は、勇壮で格調高いクラシックの演奏をたどたどしくも終える。
     割れんばかりの拍手。演奏を終えた彼は聴衆に向けて丁重に礼をする。その顔つきと図体に似合わない上品なお辞儀に、聴衆の一人が吹き出したが、隣にいた常連客にたしなめられる。
     セロ弾きのエレキブルは誇り高い音楽家なのだ。

     さて、その日の夕方のことだ。
     エレキブルは再び「指定席」に現れ、チェロの演奏を披露していた。第一楽章の展開部に入ったとき、急に、近くから、エレキブルの演奏とは全く違った調子の、美しい歌声が聞こえてきた。見ると、すぐ近くの街頭で、一匹のプリンが歌っていた。
     エレキブルの周りに集まっていた人々の耳目が、プリンの歌へと集まる。音楽としては、その歌の方が自分の不器用なチェロ演奏よりも遥かに美しいことは、エレキブルも認めざるを得なかった。しかも、プリンの明朗で楽しげな歌声と、エレキブルのチェロの重く落ち着いたメロディーとが重なった結果生じるのは、ひどい不協和音であった。
    「一緒に聴くと聞き苦しいわねぇ」
     聴衆の一人の老婆がこぼす。
     仕方なくエレキブルは、それまで演奏していた曲を止め、プリンの歌に合わせた伴奏を弾き始める。
     ところが、その途端、プリンの歌はまた全く調子の異なった、哀愁漂う静かな曲へと変わる。
     エレキブルがどうにか合わせようと自分の演奏を切り替えても、プリンは逃げるようにまた別の曲へと切り替えてしまう。まるで追いかけっこだ。不協和音は続く。
     どういうつもりだ、とエレキブルがプリンの方を睨むと、プリンはエレキブルに向かってふふっとほくそ笑んだ。はっきりとした悪意を感じる笑みだった。
     わけもわからぬ、唐突に向けられた悪意。エレキブルは混乱しつつも憤りを覚えた。しかしプリンの歌に聞き入っている人々の笑顔を見ると、そこに割り込んで怒鳴りつける気にもなれない。
     仕方なくエレキブルは店じまいをし、ちょうど鳴り始めた晩鐘に追われるよう、その場を立ち去った。

     それで終わりではなかった。
     その後もそのプリンは、なぜかエレキブルの近くにばかり陣取って、自分の歌声を披露した。エレキブルがいくら場所や時刻を変えようと、すぐにプリンが近くにやってきて、エレキブルは追い出される、ということが繰り返された。
     なぜだかはわからないが、プリンははっきりと嫌がらせのつもりで、エレキブルの邪魔をしていた。
     とうとう耐えかねたエレキブルはその日、歌い終えたプリンを呼び止めて、その件について問いただした。
    「なんだ、いつもボクの近くで下手糞なチェロを弾いているエレキブルじゃないか。何のつもりだ、とはどういうことだい?」
     開口一番これである。危うく頭に血が上りかけたが、どうにか抑える。
    「分かりきっているだろう。何故いつも俺の演奏の邪魔をするんだ? 俺に恨みでもあるのか?」
    「邪魔だなんて、ひどい言いがかりだなぁ。ボクは自分の歌いたい場所で歌っているだけだよ?」
    「ふざけるな!」
    「アハハ、ふざけてなんかないさ」
     エレキブルは声を荒げて怒鳴りつけるが、プリンはのらりくらりとかわし、取り合わない。愚直な性格ゆえ、真正面から言い合おうとするエレキブルは疲労感を蓄積させるばかりだ。
    「わかった。そんなにお前が俺の近くで歌いたいというのなら、それはよしとしよう」
     エレキブルは努めて冷静になろうとしながら、話題の矛先を変える。
    「それならば、何故いつも俺の演奏と正反対の曲ばかり歌っているんだ? もしお前が望むのならば、お前の歌に俺の伴奏で協演してもいい」
    「やなこったね。アンタの下手糞な伴奏なんか。ボクの歌の品位が下がってしまう」
     エレキブルの内心でカッと怒りが燃え上がったが、言い返す言葉は出てこなかった。『下手糞』――そう言われても仕方ないほど、自分の演奏技術がプリンの歌の美しさに及んでいないことは事実だったからだ。
     ぐっと言葉を詰まらせるエレキブルの様子を窺って、プリンはニヤリと笑う。
    「聴衆はボクの歌を支持している」プリンは言った。「ボクの歌とアンタの演奏が衝突して、いつもアンタの方が追い出されるっていうのはそういうことだろう? アンタが自分の自由に演奏したければ、逆にアンタの演奏でボクの歌を打ち負かせばいい。それとも、そんな自信は無いかい?」
    「貴様……!」
     何か言い返したかったが、エレキブルは口をつぐむしかなかった。何を言っても負け惜しみにしかならない。
     体格の差で言えば、自分より遥かに小さなこのプリン。だがこの場では、圧倒的な実力差の上に胡坐をかいて自分を見下ろすプリンを、エレキブルは見上げる立場にあった。
     悔しさに歯軋りするエレキブルを見て、プリンはけらけらと笑って言う。
    「まあ、身の程を知っているだけまだアンタは利口かもしれないね。で、話はそれだけかい? では、ボクはそろそろ失礼させてもらうよ」
     風船がはねるような、ふらふらと地に足のつかない独特の動きで去っていくプリンの背中。
     夕刻の街。エレキブルは地面の瓦礫を思いっきり蹴飛ばしたが、その音は、山へと帰っていくカラスの大群のけたたましい鳴き声にかき消された。

     その夜。町外れにある、戦火に焼かれたかつての豪邸の跡。
     ここをねぐらと定めているエレキブルは、今宵も独り、チェロの練習に励んでいた。
     夕方、プリンとの言い合いで大いに気を悪くしたばかり。エレキブルは自分の気を落ち着けるため、最も得意とする、お気に入りの曲を弾いていた。自分が初めて覚えたヴァイオリン曲の、チェロ独奏のためのアレンジだ。
     爆撃で空いた天井の大穴から、上弦の月が覗き見える。
     月光が、弓を操る自らの右腕を照らす。おおよそ楽器を操るに相応しくない、大きくて太く、ごつい腕。
     エレキブルはこの腕が今よりもまだ細く、器用に動いていて、弓を上手く操ることができた時のことを思い出さざるを得なかった。

     かつてこの邸宅には、名の知られた音楽家の一家が住んでいた。
     その家に生まれた彼は、しばらくの間自分もまた人間であり、成長したら音楽家になるものだと信じていた。
     エレキッドから成長し、エレブーに進化した彼はすぐさまヴァイオリンの練習を始め、瞬く間に人間の音楽家たちさえ目を丸くするほどに上達した。
     しかし、戦争が彼の運命を狂わせる。
    「ごめんよ。お前はこんな姿になりたくはなかっただろうけど……」
     今の姿に進化させられたエレキブルを前に、彼が母と仰いでいた人間が最初に告げた言葉は、今もはっきりと脳裏に焼きついている。
    「どうかそのたくましい二の腕と、雷の力で、私たち一家を守っておくれ」
     戦局が不利に傾き、敵軍の本土進攻の可能性が囁かれる中、音楽家の一家は身を守るためのより強力なポケモンを欲し、エレブーをエレキブルに進化させた。
     それと引き換えに、エレキブルはヴァイオリンの演奏技術を失った。
     進化してから初めて、ヴァイオリンを持とうとした時の絶望感は今も忘れられない。エレキブルのごつく、力強い二の腕は、エレブーのそれに比べて遥かに不器用であり、ヴァイオリンの繊細な演奏にはいかにも不向きであった。
     だが、彼は音楽家の夢を諦めなかった。ヴァイオリンをより大型のチェロに持ち替え、死に物狂いで練習を重ねた。そうして彼は、エレブーだった頃には遥かに及ばないものの、どうにか聴くに堪えるほどのチェロの演奏技術を取り戻すことができたのだ。
     やがて、彼の進化の甲斐もなく、音楽家の一家はあっさりと皆死んだ。軍需工場を狙った大型爆弾の直撃を前に、彼の力など何の意味もなさなかった。
     幸か不幸かただ独り生き残ったエレキブルは、今更野生に戻ることも出来ず、路上でチェロを演奏し、通行人から食料を請う生活を始めた。

     エレキブルは演奏を止め、自分の二の腕を月光にかざす。
     何度、この不器用な二本の腕を切り捨ててやろうと思ったか分からない。それでもなお、この両腕を本当に失くしてしまったら、自分はもう死ぬしかないことも知っている。
     潰した豆の跡。手のひらに刻まれた痕跡が物語る今までの努力が、確実に自分の演奏技術を上達させていることも、彼は知っている。
     落ち込んだとき、彼は演奏を終えた跡に、自分に拍手をくれ、パンを投げてくれる聴衆の笑顔を思い出す。こんな自分の演奏でも、楽しみにし、応援してくれる人間はいる。そのことだけが彼の誇りであり、その誇りゆえ、彼は今まで努力を続けることができた。
     あのプリンの歌は確かに美しい。
     彼は美しく、かつ多彩な声の持ち主だ。低温から高音まで、どんな声でも自在に出せる。楽しげな曲から哀しげな曲、落ち着いた曲から激しい曲まで、どんな曲でもお手の物だ。
     それは、チェロという音域の限られた楽器を扱い、しかも体格から演奏技術にも限界を抱える自分には望めない能力だ。
     だがしかし、あのプリンには、決して自分のように、挫折や、努力の苦しみを知りはしまい。プリンという種族に生まれついたという幸運の上に胡坐をかいて、ひとを小馬鹿にするあんな奴には。
     音楽が自己の表現であるならば、この苦しみを知っている自分の音楽には、決してあのプリンの歌には持ち得ない深みを持たせることができるはずだ。
     エレキブルは曲目を変え、より難度の高い練習曲の演奏を始めた。その夜が果てるまで、彼はチェロを弾き続けた。

     それから数日後のことだ。
     エレキブルが指定席で演奏していると、またしてもプリンが邪魔をしに来た。プリンが歌いだすと、エレキブルの聴衆の何人かがそちらへ流れた。それどころか、プリンの周りにはすぐにエレキブルよりも多い人だかりが出来た。
     だが、今度ばかりはエレキブルも負けられなかった。プリンが歌いだした後も、意地になって演奏を続けた。聞き苦しい不協和音が辺りを包み込み、聴衆があからさまに顔をしかめる。それでも構わず演奏を続けた。
    「いい加減にしろ!」
     聴衆の一人が怒号を発し、エレキブルに石を投げつける。
    「オレはプリンの歌を聴きに来てるんだ! お前のヘタクソなチェロなんて聴きたくもねェんだよ!」
    「ちょっとあんた! あたしたちのエレキブルになんてこと言うんだい!」
     聴衆にはエレキブルを擁護する者もいたが、石を投げた男に同調する者もおり、真っ二つに分かれて大喧嘩を始めた。もはや演奏会どころではなかった。エレキブルはがっくりと肩を落とし、すごすごとその場を立ち去った。

    「惨めだねぇ」
     夕日に染まる、町外れの焼け跡。
     チェロを背負い、瓦礫を踏み越えてねぐらに戻るエレキブルに、背後から声をかけたのはプリンだ。エレキブルはギロリと睨み返す。
    「アハハ、ボクのことが憎いかい?」
     もちろん憎くて仕方がなかった。だが、自らの誇りにかけて、そんなことは口に出せない。
    「憎くなどはない。俺の演奏が至らなかったことが原因だ」
    「アハハハハハハ!」
     エレキブルの返答に、プリンが大笑いをする。エレキブルはひどく不愉快に思った。
     不愉快には思ったものの、さすがのエレキブルも今回は、プリンとまともにやり合うことなくさっさと立ち去ろうと心に決めていた。だが、やがて、ひとしきり笑った後にプリンが愉快そうに切り出した台詞は、エレキブルにとって聞き逃すことができないものだった。
    「なるほど、いつかはボクの歌を演奏で打ち負かしてやろうと、アンタは本気で思っているわけだ。滑稽だね! 自分のことをいっぱしの『音楽家』だなんて思っちゃってるんだからさ!」
     ピクンと、エレキブルの眉間が引きつる。
    「……なんだと?」
     プリンはエレキブルが挑発に乗ってきたのを見ると、ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、続ける。
    「自分が下手糞であることは自覚しているけれど、一部の人間たちにきゃあきゃあと騒いでもらって、『こんな自分の演奏でも評価してくれる人間はいる』なんて、幸せな勘違いをしているのかな? つくづく、惨めなことだねぇ」
     エレキブルは自分の手が震えていることに気づく。彼はその震えを握りつぶす。
     プリンが何を言わんとしているのかは予測が出来た。それは、エレキブル自身が薄々気づきつつも、決して認めまいとしていたことだった。
    「なぁ、本当は自分でも気づいてるんじゃないかい? アンタの曲を聴きに来ている人間が、ホントにアンタの『音楽』を評価していると思っているの?」
    「……黙れ」
     握り拳に力が入る。意識せざるとも、その拳は電気を帯び、パチパチと火花が飛び始めていた。
     それ以上言うな、とエレキブルは念じる。
     これ以上は、自分を抑えられそうに無い。
     だが、プリンは言った。
    「人間たちはアンタの演奏する音楽を聴きたくて来てるわけじゃない。チェロを弾けるだなんて芸のできるポケモンが物珍しいから見に来ているだけだ。アンタは『音楽家』なんかじゃない。言うなれば――そうだね、『猿回しの猿』さ!」
    「黙れえええええええええ!」
     逆上したエレキブルは、思いっきり腕を振り上げ、プリンめがけて振り下ろした。
     プリンはすんでの所でかわす。エレキブルのパンチは空を切って、地面をえぐる。
    「あは、あはは! そうだよ、アンタはチェロなんかより、そのぶっとい腕で暴力を振るってる方がお似合いさ! なぁ、やめちまえよ。音楽家の猿真似なんてさ!」
     なおも挑発を続けるプリン。
     エレキブルはがむしゃらに腕を振り回し、大振りのパンチを間断なくプリンめがけて打ち出すが、ふらふらと不規則な動きで跳ね回るプリンにはなかなか当たらない。
    「目障りなんだよ、アンタみたいな奴は!」
     プリンが叫ぶように言う。
    「図体ばかりでかいオランウータンが、わざわざ自分から猿芸を演じやがって! そんなに人間を喜ばせたいなら、波止場で貨物の運搬でもしてた方がよっぽど有意義だろう。才能の無い猿は身の程を知って、身の丈にあった檻の中に納まってりゃいい!」
     その罵倒がどこか悲鳴にも似た悲痛さを帯び始めていることに、頭に血の上ったエレキブルは気がつかない。
     そして、ついにエレキブルの拳がプリンの身体を捉えた。
     クッションのような感触。体中から湧き上がる激情に任せて、何度も何度も、エレキブルはプリンを殴り続けた。この感情が怒りなのか悲しみなのか、彼自身もうわからない。拳が割れ、二本の腕が壊れるまで、殴りつけてやろうと思った。
     貴様に俺の気持ちがわかるか。種族に恵まれた貴様などに、人間の勝手な都合で永遠に夢を断たれた俺の気持ちが。

     どれほど殴られても、不敵な表情を変えないプリン。
     だがその様子が、突然に変化する。体を震わせ、ぐすんぐすんと少女のように泣き始めたのだ。
     その様子に怒りをそがれ、我に帰ったエレキブルが腕を止める。
     そのまま、しばらく泣き続けていたプリンだったが、突然、かすれた声で喋り始めた。
    「……くだらない、身の上話でもしてやろうか」
     怒りのやり場を失い、ばつが悪そうにプリンを見下ろすエレキブルを前に、プリンは話し出す。
    「ボクのご主人様は、兵士だった。遠い外国の、ずっと北の方にある寒い町で、敵兵のポケモンにズダズダに体を切り裂かれて死んだんだ」
     ひやりとした北風が、エレキブルの鼻先を撫でた。プリンは続ける。
    「ボクらプリンは非力な種族だ。進化してプクリンになったり、高価なマシンで強い技を覚えたりしたところで、大して強くなんてなれっこない。美しい歌声なんて要らなかった――ボクは、ご主人様を守りたかった。守るための力が欲しかった」
    ――どこか身に覚えのある境遇。エレキブルはぐっと言葉を詰まらせる。酷使した両腕が、今になって突然痛み出したように感じられた。
    「なぁ、なんでアンタは、音楽家になりたいだなんて思っちゃったんだ? アンタのたくましい体格と、雷の力さえあれば、物凄く強いポケモンになって、誰かを守ることのできるポケモンに――ボクがなりたくてもなれなかったものになれたはずだろう?」
     それまで泣いていたプリンが、自嘲気味に笑い出す。雲が落とす影が周囲を包み込む中、彼は言った。

    「身の丈に合わない夢なんて持ったって、不幸になるだけじゃないか」

     既に日はとっぷりと暮れていた。
     嗚咽を上げて泣き出すプリン。エレキブルは言葉を失い、がっくりと膝を落として、その場にうつむいた。
     
     自分とは違う、恵まれた境遇に居る者だとばかり思っていたプリン。
     だが目の前に倒れ伏し、泣いているのは、両腕を失った自分の死体だった。


    ――お前は刺々しくて、素直じゃない性格だから、もし僕がいなくなったとしたらその後が心配だよ。

     プリンは主人の腕に抱かれ、その優しい声を聞いた。
     主人の体温の温かさを感じ、ただその中で安らいでいた。

     だが、やがて目の前の風景が暗転し、気づけばプリンは寒々しい廃墟の中にいた。
     一時の混乱を経て、彼は自分が夢から覚めたのだと気づく。一筋の涙が、プリンの瞳から流れた。ゆりかごから放り出された衝撃は、この朝にもまた反復された。

     あれから一ヶ月ほどが経っていた。
     例の一件の後、二匹は和解し、翌日には和解のしるしとして一緒に演奏を行った。二匹の共演は、その後も何度か繰り返され、彼らは商売仲間となった。
    「イテテ……。あの野郎、本気で殴りやがって」
     皮肉屋のプリンと、プライドが高い上にすぐに手が出るエレキブルとは、その後も喧嘩が絶えなかった。昨日もちょっと調子に乗ってからかいすぎたばっかりに、エレキブルの拳骨を食らうはめになり、殴られた頬が今になっても痛む。
     だがまあ、正反対な性格の二匹は、正反対であるがゆえ、まずまず気の合った凸凹コンビになっているのではないかと、プリンは頬をさすりながら思った。
     ともわれ、今日もエレキブルとの演奏会の約束がある。
     昨日の喧嘩のことならば問題ない。あいつがその程度の事を翌日にまで引きずらない性格であることは、プリンにももうわかっている。
     プリンはねぐらを出た。

     その日の演奏会も盛況のうちに終わった。
     日も傾き始めてきた折、彼らは人通りの無い裏路地へ引きこもり、売上金として聴衆から得た小銭や食料を分け合った。
     戦利品のコッペパンをかじりながら、ふとプリンは、エレキブルの荷物がいつもより大きいことに気がついた。いつも背負っているチェロとその他の演奏器具ばかりではなく、大きな風呂敷に缶詰やら酒瓶やらを詰め込んでいて、まるでこれから旅にでも出る、という具合だ。
     プリンがそのことについて触れると、エレキブルは聞かれるのを待っていた、と言わんばかりに、自らの決意を語った。

    「町を出るって?」
     プリンは呆気に取られつつ尋ね返す。何の冗談だ、と思ったが、エレキブルの目は真剣そのものだった。
    「ああ、いつかお前が言ったように、このままこの町にいると俺は『猿回しの猿』に甘んじてしまう。いつかはこの町を離れて、他の地を旅しながらチェロの修行をし直すべきだとかねてから思っていた」
    「アンタ、まだそんな事を言ってるのかよ」
     プリンが呆れ顔でたしなめる。
    「何度でも言うけどね、身の丈に合わない夢なんて持ったって、不幸になるだけだよ。プリンが強くなりたくてもなれないように、エレキブルが一人前のチェリストになろうったって土台無理な話さ。野垂れ死にするだけだ」
    「夢を追い続ける中で野垂れ死にできるなら本望だ!」
     エレキブルが怒鳴るように断言する。
     プリンの背筋が緊張した。エレキブルの決然とした瞳は、プリンの苦しい記憶を呼び覚ました――周囲の制止を振り切って、軍への入隊を決断した、彼の主人の姿だ。
     二の句を継げられずにいるプリンに、エレキブルはにこりと笑って、言った。
    「お前には感謝している。互いに野垂れ死にしていなければ、また会おう」

     それが別れだった。
     随分とあっさりとしたものだ。
     夕暮れの町。古ぼけた大きなチェロを担ぎ、去っていくエレキブルの背中を、プリンはいつまでも見送っていた。
    ――いつかはこんな日が来ると思っていた。
     エレキブルの姿が見えなくなった後、プリンは溜息を付き、独り言をつぶやいた。
    「それにしても、たった一ヶ月、か」
     さすが、考えなしの馬鹿は行動が早い。

     馬鹿だ、とプリンは思う。あのエレキブルも、天国にいる彼の主人も。
     彼らのような種族は、何故信じられるのだろうか? 目指した夢の先に何かがあると。その夢を叶えられずとも、例えその途上で死んでしまおうとも、夢を追うこと自体が幸福であると。
     夢を断たれたところで死にはしないことを、プリンは知っている。かつて主人を亡くしてしまったら決して生きていけないだろうと信じていた自分ですら、こうして今も生きているのだから。夢なんて持っていなくても彼は生きてこらられたし、むしろ持っていないからこそ要領よく立ち回って、今後も生きていけるだろう。生きがいなんてものは、手ごろなものがいくらでも近くに転がっているものなのだ。手の届かない葡萄を取ろうと、わざわざ木に登る必要なんてない。

     けれど。
     あのエレキブルのように、一途に一つの夢を追う生き方に憧れる気持ちもまた、決してやむことはないのは、何故なのだろうか。

    「……ふんだ、ばーか。ホントに野垂れ死んじまえ」
     町の中心部へ向かう、路面電車の警笛が響く。
     プリンの悪態が、エレキブルに届くことは永遠に無い。

     また独りぼっちだ。

     『セロ弾きのエレキブル』が町から消えた。
     そのことはしばらく町の人々の注目を集めるニュースとなり、様々な憶測を呼んだが、時が経つにつれ皆忘れていった。とどのつまり、彼の存在感などそれくらいのものだった。
     それでもなお、ほんの一握りの者だけは、いつまでも彼のことを覚えていて、その演奏が町から途絶えたことを寂しがった。


      [No.2250] マサラタウンまで何マイル? 投稿者:タカマサ   《URL》   投稿日:2012/02/20(Mon) 01:24:51     101clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     つまるところ、俺たちは“選ばれし者”らしい。
     あのミュウがそう言ったのだから間違いない。

     初夏のある日のことだ。”樹海”とも言えるほどのうっそうと茂る森の中に俺たちはいた。
     額を流れる汗をぬぐって、木々の向こうの空を見上げる。梅雨の真っ只中にのぞいた晴れ間の空は雲量も多く、くすんだ水色をしていて――アイツが俺たちを置いて旅立っていったあの日の、鮮やかな瑠璃色の空と比べると、無残なほどに無感動だった。
    「こらっ、遅いぞ。リョースケ! 何度も言うが、今、世界は危機に瀕していて、それを救えるのはボクたちだけなんだ。その使命感が君には無いのか?」
     怒号を飛ばしてきたのは、前方十メートルほど先を歩いているアオイだ。 
    「わかってるよ! すぐ追いつくから、待ってろ」
     悲鳴を上げ始めた身体にムチ打って歩調を速める。この森に入ってからもう数時間。起伏を乗り越え、茂みをかき分け、道なき道をずっと歩いてきた。いい加減もうクタクタだ。
     じれったそうに俺を睨んでいたアオイのもとにようやく辿りつくと、彼女の表情はクルッと変わって、ハンティング帽のツバの下からニッと屈託の無い笑顔を俺に向けた。
    「ミュウ……」
     子猫の声をデジタル処理したみたいな、独特の響きの声で鳴いて、ミュウが俺たち二人の間をふっと風のように通り抜ける。
     クスクスと笑って俺たちの回りをクルクルと飛び回るミュウ。木々の隙間から漏れる初夏の日差しの中、踊るように宙を泳ぎまわるミュウは、なんだかまるで空中に投影されたホログラム映像のようにも見え、奇妙に現実感を欠いていた。
    「そっちでいいの?」
    「ミュウ!」
     ミュウはアオイの問いに無邪気な笑顔で頷いて、森の奥深くへ風のように飛び去っていった。
     ミュウが飛び去っていった方向こそが、俺たちが進むべき道を示している。
    「行こう、リョースケ!」
     アオイが俺の手をとる。彼女は心からこの状況にワクワクしているらしく、まるで元気いっぱいの少年のようだ――事実、ボーイッシュな容姿の彼女は、まだ声変わり前の、それこそちょうど冒険への旅立ちどきである十一歳の少年のようにも見える。
     こんなに楽しそうな彼女の姿を見るのは、いつ以来だろう。
    「ああ……、行こう!」
     俺たちは駆け出した。
     そうだな、アオイ。俺たちはずっとこんな冒険に憧れていたんだ。ワクワクしてるのは俺だって同じさ。
    ――これから死ぬかもしれない、っていうのにな。

     俺たちの幼馴染にはポケモンマスターがいる。
     十一歳になろうという年、俺たちは小学五年生になり、アイツは修行のため旅に出た。
     今やこの世界で知らないものはいないその少年の名はラピス。十二で犯罪組織ロケット団を壊滅に追い込み、十三でポケモンリーグを制覇し、そして今年、十四の誕生日を迎えた直後に世界一のポケモンマスターの座に登りつめた。
     あの日の朝も、テレビはラピスの勝利を報じていた。チベットの奥地で秘伝の技を守り継いで来たという伝説的な一族の古老は、ラピス自慢のリザードンの前にあっさりとひれ伏した。もはやアイツに敵うものはいなかった。
     テレビ画面の中。ジバコイルの十万ボルトが、メタグロスのコメットパンチが、リザードンのブラストバーンが飛び交うバトルフィールドの中心にアイツはいた。走り、跳び、ひっきりなしに動き回り、指示を叫ぶその姿はまるでダンサーのようだ。三色それぞれのスポットライトが照らす光の円がフィールドを駆け巡り、それを取り巻く観客席は何万という観客に埋め尽くされ、ラピスのポケモンたちがここぞと技を決めた瞬間、津波のような歓声が、カメラのフラッシュの奔流が一斉に噴き上がる。
     一方のテレビ画面のこちら側。眠い目をこすり、ヨレヨレの制服を着て、朝食のアジの開きの骨をちまちまと取っては身をつついてる自分の姿がひどくちっぽけに思える。
     俺たちとアイツとはもはや別の世界の住人だった。

     森の奥深くへ、さらに一時間ほど歩いたところで、ようやく俺たちは一休みした。
     休憩場所に選んだのは、樹齢千年はありそうな杉の大樹の根元だ。アオイのパートナーであるフシギバナがモンスターボールから出され、その巨体をどっしりと横たえる。フシギバナの発する、人の心を安らがせるという心地よい香りが漂う中、俺は腰を下ろした。
     アオイはといえば、フシギバナの脇腹に身をうずめたかと思うと、すぐにすうすうと寝息を立て始めた。ああ見えて、彼女も結構疲れていたのかもしれない。
     ジリジリと鳴くセミの声を聞きながら、ペットボトル入りのスポーツドリンクを何口か飲んで、ふっと一息をつく。
     心地よい非日常感だった。空を流れていく雲を眺めながら、こうしている間にも、学校ではいつものように授業が行なわれているのだろうか、とぼんやりと思った。
    「……ボクに、もっと才能があれば、」
    アオイがフシギバナへ語りかける声が聞こえた。起きていたらしい。
    「お前もラピスのリザードンみたいに、羽ばたかせてやることができたのかな」
     それだけ言って、アオイはまた目を閉じた。
     俺は自分のパートナーのカメックスが入ったモンスターボールを見つめた。
    ――ずっと考えていた。十一歳になろうとしていたあの年に、不安や恐れから逃げることなく、ラピスと一緒にポケモンマスターを目指す旅に出ていたら、と。今ごろ俺たちも、アイツと同じように、夢と冒険に満ちた輝かしい世界の中にいただろうか?
     それは無いだろうな、と俺は首を振る。部活のレギュラーさえ勝ち取れない程度の実力。アイツとは最初からモノが違ったのだろう。
     問題は、才能だけじゃない。
     最近は学校も忙しくなり、他の趣味も増えて、ポケモンばかりにかまけている余裕がなくなってきた。試験期間には、一週間カメックスをモンスターボールにしまいっぱなしにして一度も構ってやらなかったことさえある。
     そんなのはトレーナーとして失格だ。ポケモンは道具じゃない。トレーナーのことを“親”とも呼ぶように、トレーナーは自分のポケモンに対し、まさに我が子に対する親のような責任を負わなければならない。――わかっては、いる。
     才能なんて無くたってめげずに、可能な限りの情熱と努力を全て一つのことに捧げることができるのなら、それはそれでカッコいいだろう。だが、俺にはそれさえできない。こんなザマなら、もうトレーナーなんて、すっぱりとやめてしまった方がいいのではないか、とも思う。
    「ごめんな……、不甲斐ない所有者(おや)で」
     その言葉を発したのはアオイだ。まるで俺の心を見透かされたようなタイミングにドキッとしつつ、そちらを向くと、彼女はどこか悲しそうな目をして、フシギバナの喉元を撫でていた。
    「ミュウ」
     ミュウが再び姿を現す。休憩時間は終わりだ、早く行こう、と。
     俺は自分のモンスターボールを握り締めた。
    ――けれど、こんな俺でも、世界を救うヒーローになれるのなら……
     今度こそは、決して逃げずに全力を尽くそう、と、俺は誓った。

     いつも通りの一日は、あの日にもまた繰り返されていた。
     授業の間の休み時間、五、六人の女子がアオイの席の回りに集まって、絡んでいた。彼女らはアオイの読んでいた本――図書室の奥から引っ張り出してきたらしい、開いただけで埃の立ちそうな分厚い文学全集の一冊――を取り上げて、口々にアオイのことをからかい、罵っていた。周りの男子もそれに乗って、女子どもに合わせて大笑いしたり、アオイへの悪口を飛ばしたりしていた。
     アオイは終始無言で、表情一つ変えなかった。
     やがてそんなアオイの態度に腹を立てた女子の一人が、アオイの本を教室のゴミ箱に放り込んだ。笑い声が響く。
     その時、授業時間開始のチャイムが鳴った。女子どもがアオイの席から離れ、自分の席に戻っていく。自分の席の回りから人波が引いていくのを待って、アオイはすっくと立ち上がってゴミ箱の所まで行き、自分の本を拾い上げた。アオイは本の埃を払い、大事そうに抱えて、自分の席に戻った。
     中学に入った辺りから、アオイは急にエキセントリックな言動が目立ち始めた。自分のことを「ボク」なんて呼び始め、女の子らしい服装を嫌い、理屈っぽい話し方をするようになった。俺にはタイトルの意味すらわからない難しそうな哲学書を読み始めたかと思えば、アフリカのどこかの小国の政治情勢だとか、鉱物の組成だとか身近な小さな虫の生態だとか、そういう奇妙なものに対し唐突に興味を示し出したりした。
     アオイはまた、クラスメート同士の馴れ合い、特に自分を曲げたり抑えたりしてまで相手に合わせたりするような、そうした欺瞞的な社交関係を毛嫌いしているようだった。周囲はそんなアオイを理解しなかったし、またアオイの方も周囲の低レベルな連中を見下している節があった。
     必然的に、彼女はクラスの中で孤立していった。

     ミュウに導かれ、樹海の中をひたすら歩いていた俺たちは、やがて森の切れ目に差し掛かった。
     その先にある風景を見て、アオイが叫んだ。
    「見ろ、リョースケ!」
     目を疑った。そこにあったのは、ピラミッド風の巨大建造物を中心とした、エキゾチックな遺跡群だったのだ。古代マヤ文明のものを思わせるピラミッドを中心に、神殿や祭壇らしい石造りの建物や、奇妙な様式にデフォルメされた人間やポケモンの像が森の中に開けた広場を取り囲んでいる。
     唖然とする俺をよそに、アオイは遺跡を抱え込む大きな広場の中へ向かって駆け出していく。夏の陽射しの下、瓦礫に混じってレリーフや神像らしきものが散乱する広場を、アオイはフシギバナと一緒に「すごい、すごい」と大はしゃぎしながら駆け回った。
     散乱するレリーフにはアンノーン文字が刻まれ、またそれぞれポケモンが描かれているらしかった。あれはネイティオ、あれはプテラ、あれは……ボスゴドラだろうか?
    「ミュウ!」
     周囲の景色に気を取られる俺たちを咎めるように、ミュウが再び姿を現す。
     俺たちの周りをつむじ風のように飛びまわった後、ピラミッド風の建造物の方に向けて飛び去っていった。
     俺たちはまたミュウを追いかけ、その方角へ向かう。
    「こんな巨大な宗教施設、いったいどんな人々が建造したんだろ?」
     アオイが漏らす。 
     宗教施設、か……。宗教といえば、アオイの奇怪な宗教観を聞いたのは、ミュウが現れる直前のことだった。

    「この国の国民の大多数は無宗教だなんて言うけれど、実際にはみんな何かしらの宗教を信仰しているよね」
     あの日、帰宅途中の道で、アオイは唐突にそんな話を切り出した。
     俺の部活が終わった後、近くのコンビニで時間をつぶしながら待つアオイと落ち合い、一緒に帰るのが俺たちの習慣だ。他のクラスメートには秘密の関係である。
     友人ぶっておきながら、学校ではアオイに対するいじめを見て見ぬふりをする。そんな俺の卑劣な態度をアオイは咎めなかった。むしろ、学校では自分に構うなと、重ねて釘を刺してきていた。
     そんなアオイの言葉に寄りかかって、俺は自分の勇気の無さから目を背けていたのだ。
    「まあ、そうかもな。シュンの家は神社だし、シンイチの家はカトリックだ。ウチは……浄土真宗だったかな?」
    「そんな話をしてるんじゃない」
     アオイは笑った。
    「ボクの定義するところによれば、自分の人生に何らかの価値を与える価値観は全て一種の『宗教』なんだ。『夢』や『信念』と呼ばれるもの……、それに各種の自己認識(アイデンティティ)。無神論者を気取っていたって、実際にはどんな人間もそうした自分自身の『宗教』に縛られている――そうでなければ、生きることも、死ぬこともできないのだから」
     くすくすと、おかしそうに笑いながらアオイは話した。俺には何が面白いのかわからない。
    「純粋に論理的に考えれば、人生に何ら価値の無いことは自明だからね」
     アオイはそう言い切って自論を結んだ。
    ――じゃあ、君は?
     そういう君自身は、君のいう所の『宗教』を何か信仰しているのか?
     そう問おうとした時、

     俺たちの前にミュウが現れた。

     ピラミッド風の建物には、地下へと続く階段の入り口が設けられていた。その先に伸びる地下道を俺たちは進んでいった。
     通路は複雑に折れ曲がっていたが、おおむね螺旋状に地下深くへと下りて行っているようだった。
     先を行くのがドータクン、くるくるとコマのように回りながらそれについていくのがネンドール。この二匹はミュウの手下のようなものらしい。そのミュウはドータクンの頭の上にちょこんと坐っている。俺も自分のカメックスを出した。アオイのフシギバナも合わせて、二人と五匹から成るこのメンバー構成で、俺たちは時々現れるアンノーンを追い払いながら進んでいった。
     ミュウの体が蛍光灯のように光り、その周囲だけを照らしている。
     行く手の先にはただ真っ暗な闇が広がっていた。
     それでも、アオイといえば不安よりも好奇心からくる高揚感の方が勝っているらしく、意気揚々と前に進んでいく。
     それはそれでいい。俺だって少しはワクワクしている。
     だけど……
    「なんだろう、この違和感……」
    「ん? どうした、リョースケ?」
    「……いや、なんでもない」
     そう答えておいたものの、俺は全身にまとわりつくような、なんともいいがたい違和感を拭い去れずにいた。
     俺は自分のカメックスを見た。かつて、アオイとラピスと一緒にオーキド博士から貰った長年の相棒は、俺の視線に気づくと、任せとけ、とでもいうかのように胸を張った。

     つまるところ、俺たちは“選ばれしもの”なのだと、ミュウは言った。
     あんな日常にはもう嫌気が差していた。いつもどこかへ旅立ちたいと願っていた。自分の限界なんてまるで無いかのように、パートナーのポケモンと一緒にどこまでも羽ばたいていくラピスのことが羨ましくて、また言いようの無いコンプレックスに常に蝕まれてもいた。
     旅先でのいくつもの出会い、いくつもの別れを経て、自分のポケモンとの絆を深めていく……。ラピスが旅立っていった先にあるはずの、夢と冒険の世界への憧れは募るばかりだった。
     新しい世界への扉の鍵は、ミュウによって唐突に与えられた。
     聞いて驚け。俺たちには世界を救う責務が課せられたのだ。
     ミュウが語ったところによると、かつてこの世界では『光』と『闇』の激しい闘争が行なわれていたという。百五十一億年に及んだ熾烈な争いは、二千年前にある一人の人間の戦士が『闇』側の最強の将であった冥界の王ギラティナを封じることによって一旦終結した。
     しかし、長い年月を経て封印は徐々に解けていき、今ギラティナは復活を遂げようとしている。もしそうなれば、沈黙していた『闇』の勢力は息を吹き返し、『光』との戦いが再び始まることだろう。二千年間の『光』の支配の中で安定して発展を続けてきた人類の文明の存続は危うくなるだろうし、長い平和の中で『光』の勢力が力を弱めている中、今ギラティナが復活すれば両勢力の力関係は一気に逆転しかねない。『闇』が支配する世界への転換――それは今ある世界の滅亡を意味する。
     事実、近年多発する異常気象や社会の混乱は、『闇』の勢力が息を吹き返しつつあることを示す兆候なのだそうだ。
     なんとしてでも、再び封印をかけなおし、ギラティナの復活を阻止しなければならない。そのためには俺たち二人の力が必要になるらしい。
     なぜ俺たちなのか? その理屈はいまいちよくわからなかったが、俺が理解できた限りのことをかいつまんでいえば、どうやら古代人が当時の誰かのDNAにギラティナを封印するために必要なプログラムのようなものを仕込んでおり、それが現代になって俺たち二人の中で発現したというようなことらしい。
     シャッターの閉まった印鑑屋の前、タバコの自販機の光を浴びて、ミュウはそんな突拍子もない話をテレパシーのような何かで語ったのだった。
     にわかには信じがたい話だったが、目の前にいるのは確かにあの幻のポケモンといわれるミュウである。ただ事じゃない事態が起こっていることは確かだ。
    「行こう、リョースケ」俺が戸惑いを隠せないでいる横で、アオイは目を輝かせ、力強くそう言った。「世界を救うために!」
     かくして、夕暮れの通学路上にて、俺たちは冒険への出発を決意したのだった。

     地下道を歩き始めてどれほどの時間が経っただろうか。進んでいくにつれて、道はどんどん狭まっていった。
    「この地下道は全体として、子宮へ至る産道をイメージして作られているんじゃないかな? 冥界の王が封印されているということは、おそらくこの遺跡群は『死者の世界』をイメージして作られたのだろうけれど……。古代人の宗教が『死』を『生前の状態への回帰』と捉えていたとしたら、『母胎への回帰』をメタファーとしてこの施設が建造されたというのもあり得る話だろう」
     横を歩くアオイがそんなことを話す。
     果たして俺たちは、程なくして、アオイの仮説が当たっているとしたら『子宮』にあたるのであろう、広々とした一室へと行き着いた。
     部屋の中央には、奇妙な風貌の巨大な石像――いや、氷像? ――が置かれていた。
    「これが、ギラティナか……」
     その高さは俺たちの背丈の三倍近くはある。鎧を纏っているかのように、無機質な突起物や板状のものに覆われた六本足の竜の姿。
     何か不安をかきたてるオーラのようなものが感じられるそのギラティナ像に俺たちが圧倒されていると、ミュウがドータクンの上からふんわりと飛び上がり、ギラティナ像の側まで行く。
    「ミュウ」
     ミュウはギラティナ像の手前に設けられた台のようなものを指差した。ミュウの身体が発する光に照らされ、台の上に二つの手形が描かれているのが見えた。
     俺はアオイと目を見合わせ、台の近くへ進み出ていって、その手形に自分たちの手のひらを合わせた。
     やはり、というべきか、二つの手形は俺たちの手のひらの形とぴったり一致していた。
     台が青白く光りだす。青白い光はやがてギラティナ像の全身をも覆い、水面が波打つように明滅を繰り返す。台に置いた手を通じて、自分の身体がこの遺跡と繋がり、何かエネルギーのようなものが吸い出され、あるいは送り込まれているような感覚がした。
     このまま順調に行けば、これでギラティナの再封印は完了するという。
    ――世界を救う冒険への出発だなんて意気込んできたけれど、これで終わってしまうとしたらずいぶんとあっけないな。
     そんな想いが頭をよぎる。
     あっさりとすむならそれに超したことはないはずだが、心のどこかに、これ以上の何かドラマティックな展開を期待する気持ちがあることは否定できなかった。
     そのせいだろうか?
     果たして、その願いは叶えられてしまった。
     突然、エネルギーが逆流してきたかのように、雷に打たれたような衝撃が俺の身体を襲った。
    「ぐっ……!」
    「うわっ!」
     バチン、と何かが弾けるような音と共に、俺たちの身体が台から弾き飛ばされる。
    「ミュウ!」
     ミュウが叫び声を上げ、ギラティナ像を指差す。
     パリン、パリンと、ギラティナ像の表面を覆う氷のようなものに亀裂が入っていき、剥がれ落ちていく。やがて、その中から現れた不気味な風貌の竜が身を震わせ、咆哮を上げた。
    「ビシャアアアァァァアアアン!」
     時は既に遅かったのだ。
     冥界の王ギラティナは復活を遂げた。

     俺たちは抵抗を試みたが、かつての『闇』の猛将は到底俺たちの敵うような相手ではなかった。カメックスもフシギバナも攻撃する暇さえなく、相手のギラティナの先制の一撃で吹っ飛ばされた。
    「フシギ……っ」
     吹き飛ばされたフシギバナに気を取られアオイが背を向ける。
    そのアオイに向かってギラティナが再び攻撃のモーションに入る。
    「ミュウ、“トリックルーム”だ!」
     咄嗟の判断だった。すかさずミュウは“トリックルーム”を発動。その場にいる者全員の素早さが逆転し、それまで俺たちを圧倒していたギラティナの動きが極端に鈍る。その隙に俺はアオイをかばって押し倒す。
     逆にこの場で最高の素早さを得たドータクンがギラティナに対し“催眠術”を試みる。眠らない。レベル差がありすぎる。しかし、ギラティナの動きをさらに鈍らせる程度には効いている様だ。
     一方のミュウとネンドールのエスパーポケモン二体も、実態の無いゴースト属性であるギラティナの身体を全力の念力で押さえつける。
     一時的にギラティナの動きは封じられた。
     だが、この状態が持つのはせいぜい“トリックルーム”の効果が持続している間だけだろう。
    ――その間に俺たちは、決断しなくてはならない。
    「リョースケ」壁に打ち付けられたフシギバナの様子を気遣いつつ、アオイが言う。「もう迷ってる時間はない」
    「ああ……」
     俺たちは互いの手を握り、向かい合った。 
     ミュウは語った。仮に復活を遂げてしまった後でも、俺たちにはギラティナを封じるための最終手段が残されているのだと。
    ――自分の命を代償にすること。
     俺たち二人が命を捨てることで、ギラティナに確実に封印をかける。
     そんな方法を古代人は残していた。
    「ビシャアアアアアァァァァアアアアン!」
     念力の呪縛を押し破って、咆哮と共にギラティナが口から撃ち出した“波動弾”が爆音を上げて天井をえぐる。崩落する天井――危うく巻き込まれそうに俺たちを突き飛ばし救ったのはカメックスとフシギバナだった。
     俺は身を起こし、自分のカメックスの様子を確かめた。もう力を使い果たしてしまったようで、苦しそうに身を横たえている。自分のポケモンの危機に、俺は激しく動揺した――幸いにも、反射的に、激しいショックを受けることができたのだ。駆け寄ってその身を抱き起こしてやり、その顔を覗くと、カメックスは優しい微笑を俺に返した。
    ――どうしてこいつは、こんな俺のことをこんなに慕ってくれるんだろう? 俺自身は自分の価値なんてまるで見出せないのに、こいつにとってはそれでも俺は価値ある人間なのか?
     ありがとう、と俺はカメックスに礼を言い、最後にその身を抱きしめてから、モンスターボールに戻した。
     リョースケ、と背後から声がかかる。俺と同じようにフシギバナをモンスターボールに戻し、意を決したような顔を向けてくる。俺たちは互いの意思を確認する。
    「……決めたよ、ミュウ。頼む!」
     アオイがそう声をかけると、ミュウはギラティナへの攻撃の手を緩め、こちらを向いて頷く。
     直後、ミュウの身体がフラッシュのように光り輝く。
     グラリと地面が大きく揺れる。部屋の壁が突如としてバチバチと鳴りはじめ、何条もの稲妻が表面を走る。
     巨大な轟音。何かが崩れる音。ガラガラと音を立て、この部屋に続く道が崩壊し、埋まる――これで、どちらにせよ俺たちが戻る道は断たれた。
    「グオオオオォォォォォォオオオオオン!」
     唸り声を上げ、ギラティナがへたり込む。
     青白い稲妻が網目のようにギラティナの身体を覆い、網に捕らえられた獣のようにその中でギラティナは呻き苦しむ。遺跡が持つ全てのエネルギーを、ギラティナの封印に費やしているのだ。その効果もまた一時的なものに過ぎない。
     ミュウが俺たちの側にやって来て、儀式の準備を始める。俺たちを取り囲むように、蛍光色に輝く魔方陣が床面に出現する。
     魔方陣の中で、俺はアオイの肩を抱いた。アオイの身体は少し震えていた。
    「大丈夫か?」
    「うん……。やっぱり、少し怖い、かな」
     儀式の方法はこうだ。
    ――魔方陣の中、俺たち二人が口付けを交わすこと。
     アオイの顔を見つめる。
     それは幻想的な光景の中だった。魔方陣の放つ神秘的な光の輝きは、まるでここが透明度の高い南国の海の中であるかのような光の加減を演出していた。柔らく、ゆらゆらと揺れる光に包まれたアオイの姿は、いつもの凛とした印象とは違ってずいぶんと儚げだった。
     俺は今までずっと、アオイを異性として意識することを避けてきた。自分が彼女に抱いている感情のことを「恋愛」なんて言葉に簡単にカテゴライズしてしまいたくはなかったし、何よりもアオイを自らの穢れた欲望の対象として見ることは決してすまいと心に誓っていた。けれど、今目の前にいるアオイは、男みたいな振る舞いの中に隠していた女の子らしさを無防備に露にしてしまっているようで……
     透明な二つの瞳は少し潤み、その中に不安を宿している。彼女のその顔の――唇にキスをすれば、全ては終わる。
    「リョースケ」
     アオイの両腕が、俺の肩に回る。
    「大好き」
     その瞬間のアオイの笑顔は、今までに一度も見たことがないほどに輝いていた。
    ――終わり方としては、最高なんじゃないか、という気がした。好きな女の子と一緒に、世界の危機を救って消えていく。
     だが……

     俺は考えなければならなかった。
     ずっと付きまとっていた“違和感”の正体を。

    「やめよう、夏沢」

     彼女が、きょとんとした顔で俺を見る。そうだ。なぜ忘れていたんだろう――中学に上がって以来、俺は普段、彼女――夏沢葵のことを下の名前では呼んでいなかった。
     “違和感”の正体なんて、はじめから明らかだった。
     『光』と『闇』の闘争だなんて陳腐な世界観。古代人がDNAにどうこうしたとかいう無理のある設定。
     こんな荒唐無稽でご都合主義な物語が、現実であるはずがないのだ。
    「こんな無茶苦茶な話、君だって本気で信じているわけじゃないだろ?」
    「何を、いってるんだ……?」
    「いい加減、目を覚まそう、夏沢。ただの中学生が二人死んだごときで、世界は救われも滅びもしない。それが現実だ」
     耳をふさごうとするかのように上がる夏沢の腕を、俺は掴み止めた。

    「思い出せ、夏沢――この世界に、ポケモンなんていないんだ」

     空気が、シンと静まったように感じられた。
    「ハハ……、何をいってるんだ、リョースケ」
     俺の手を振り払って離れていった夏沢は、信じられないといった表情をしていた。
    「ポケモンがいないだなんて、正気でいってるのか? ボクたちの目の前にいる彼らが、君には見えていないとでも?」
    「これは夢だ――夢なんだよ、夏沢。ポケモンがいるのはゲームの中の世界だけだ。任天堂が出したゲームソフトの――」
    「うるさいッ!」
     俺の声をさえぎって、夏沢は叫ぶ。
     うつむいて、身体を震わせ、ほとんど泣き叫ぶかのように、彼女は続けた。
    「ボクは……信じないぞッ! この世界には……いるんだ! たくさんのポケモンたちが――ボクらに夢と冒険をくれる、素敵な生き物たちが……ッ!」
    「お、おい……」
    「来るなッ!」
     俺が伸ばした手を叩き落し、夏沢は面を上げて俺を睨みつける。俺は慄然とした。怒りか、悲しみか、絶望か――烈しい感情に彼女の顔は歪み、その目に宿る光は炎のように熱くも、氷のように冷たくも見えた。
     凍り付く俺に夏沢は背を向け、走り去っていく。俺は夏沢を追おうとした。だが、そこに突然ミュウが割り込む。目の前でミュウの身体がみるみるうちに変化していく。巨大化し、手足が骨ばっていき、筋肉が隆起し――ミュウツーの姿へと変身を遂げる。
     ミュウツーの鋭い眼光が俺を射抜く。刹那、俺の身体は後ろに吹き飛ばされ、石壁に激突。全身を激痛を襲う。
    「あが……ッ!」
     凄まじい力で壁に押さえつけられ、声を出すこともできない。特攻種族値百五十四タイプ一致のサイコキネシス――それは夏沢が俺を拒絶する意志のメタファーだ。

    ――俺たちはいつから夢を見ていたのだろう?
     俺は徐々に思い出してきていた。
     家に帰らず、二人で夜明けを待ち、“樹海”の最寄り駅までの切符を買って、始発の電車に乗り込んだ。電車の中。いつもの無駄話。旅の目的は、お互いに一度も口に出さなかったけれど、はっきりと認識していた――彼女はそこで自殺するつもりで、俺はついていくつもりだった。
     ミュウなんてどこにもいなかった。
     宗教の持つ大きな意義は、『生』に価値を与え、『死』への恐怖を和らげることだ。急ごしらえで不出来な『宗教』――それでも彼女は信じる必要があった。大好きなポケットモンスターの世界の中で、最も幸福な形で自らの人生にピリオドを打つために……。

     彼女は、ずっと戦い続けてきたんだ。人生に意味があるなんて本当は信じちゃいないのに、それでも何かになろうとする、何かを変えようとする戦いを決して止めなかった――戦う前から諦めて、ずっと逃げ続けてきた俺と違って。
     そんな彼女がここまで追い詰められてしまう前に、なぜ俺は助けの手を差し伸べてやれなかった? できたはずなのに、彼女の苦しみに気づいていたはずなのに、そこからさえ逃げ続けてきた。
     サイコキネシスの重圧は彼女の拒絶じゃない。俺自身の自責の念だ。
     だけど、だけど俺は……
    「君に……っ……生きていて欲しいんだっ! 葵!」
     声を絞り出した。
     その瞬間――光景が、フリーズした。
     ビーッという不快な電子音と共に、白黒の画像の乱れが眼前を覆う。鳴り響く雑音、押し寄せる嘔吐感。ミュウツーの圧力が消え去った代わりに、五感すべてが混沌の渦に呑み込まれる。
     強烈な眩暈。ぐるぐると世界が振り回されるような感覚。俺がようやくそこから立ち直ろうとした時、目の前の光景に変化が起こる。音と映像のノイズの中から、馴染みのあるあの穏やかなBGMと共に、最初に現れたのは――マサラタウン。
     光景はめまぐるしく移り変わっていく。オーキド研究所。セキエイ高原。ウバメの森。シロガネ山。地下通路――
    「葵! どこにいるんだ!」
     ポケモン世界の各地を駆け巡り、俺は葵の姿を探した。

     時間だけが空しく過ぎていく中、後悔と自己嫌悪の念が胸を去来する。
     葵を見つけたところで、俺は彼女にどんな言葉をかけたらいい?
     『死ぬ勇気があるくらいならなんだってできる』? 『生きていればいいこともある』?
     そんな言葉、俺自身だって信じちゃいない。
     ずっと戦い続けてきた彼女に、ずっと逃げ続けてきた俺がいまさらどの口で「生きていて欲しい」だなんて言える? だからせめて――と、俺は決めたんじゃないか。一緒に殉教してやろうと。彼女を独りで寂しく死なせてはやるまいと。世界の誰が認めなくても、彼女にとっては意味のある死を選ばせてやろうと。なぜ土壇場で壊した? 結局のところ、自分の命が惜しくなったというだけなんじゃないのか?
     違う。それは――違う!
     俺は、それでも俺は……
    ――俺は?

     プチッ、と電源が切れるように、周囲が真っ暗な闇と化す。
     暗闇の中、俺はやっと葵の姿を見つけた。
     闇の果てで、彼女は独りうずくまっていた。すぐ近くにいるのに、歩いても歩いても手が届かない、そんな場所に。
    ――さあ、帰ろう。葵。ゲームの時間は終わりだ。
     ……泣くなよ? 仕方ないだろ?
     いや……

    ――泣いているのは、俺か……


     ………………。
     ……………。
     …………。
     ………。
     ……。
     …。


     俺たちは夢から覚めた。

     生々しい現実の感触が、急に襲い掛かってきた。
     全身の痛みに疲労、空腹。肌を打ち、滴り落ちていく雨水の冷たさ。

     誰かの声が聞こえる……。

     行方不明になってから三日目。俺たちは衰弱しきった状態で、捜索隊に救出された。

     森の中で一冊のノートを失くした。
     物語が綴られたノートだ。

     ラピス・ラズリという名の、ポケモントレーナーの少年を主人公とした物語。
     十一歳になろうとしていたあの年から、俺と葵はずっとその物語を二人で作り続けてきた。ラピスは超強くてカッコよく、冷酷さと心優しさの両面を合わせ持った少年だ。彼はポケモンマスターを目指す旅をしながら、様々な事件を解決し、人々を救っていった。ある時は犯罪組織の陰謀を阻止し、ある時は悪徳政治家の不正を暴き、またある時には市井の人々のささいな争い事を仲裁した。
     彼は俺たちにとって、社会や周囲の大人たち、クラスでの人間関係など、様々な人や物事に対する不満の代弁者だった。

     救出された後の俺たちは、すぐさま病院に運ばれた、らしい――その辺りのことを、意識が混濁していた俺はよく覚えていない。
     ただ一つ覚えているのは、俺を搬送した救急隊員に、葵の義父を彼女への面会に来させるなと必死に訴えたことだけだ。

    「家に帰りたくない」
     あの日、学校からの帰り道、葵は俺の制服の裾を掴み、そう訴えた。その声は震えていた。
     今夜葵の母親は用事で出かけていて、葵とその義父だけが家に二人きりになるのだという。
     片親だった葵の母親は、去年再婚した。葵が新しく義父となった男のことをひどく恐れているらしいことは知っていた。

     葵は詳しいことを話さなかった。俺も聞かなかった。
     だけど、俺は彼女の悲鳴を聞いていたはずだった。
     ある日、葵の綴った物語の中で、ラピスのリザードンはローティーンの少女をレイプしたロリコン男を焼き殺していた。

     一緒に逃げてほしい、と葵は頼んだ。どこへ、と俺は尋ね返さなかった。おおよそのことは感じ取れたからだ。
     一旦帰宅した俺は、例のノートを持ち出し、親の金をくすねて、家を抜け出した。葵と落ち合い、一緒に夜明けを待って“樹海”行きの切符を買った。

    ――現実は、辛いね。
     いつだって無慈悲で、理不尽で、矛盾だらけで、キレイ事だけじゃ生きていけなくて。

     だからこそ、俺たちはポケットモンスターの世界に憧れるのだろう。
     生々しい暴力やセックスに汚されていないネバーランドに。
     一人では何の力もない十一歳の少年でも、ポケモンという素敵な仲間さえいれば、どこまでも自由に旅していくことができる世界に――こどもでも、世界の闇を打ち破る術を持つことができる世界に……。
    ――どこかの評論家なら、こんな俺たちの姿を見て、『最近の子供はゲームと現実の区別もつかなくなって……』などと一論をぶつのかもしれない。ああ、言いたければ言うがいいさ。だけどな――そんなことを偉そうに言う奴らの、誰が葵を助けてやれた? 誰が葵に手を差し伸べてやれた?
     例え親に、教師に、級友に、自分自身に裏切られたとしても――虚構(フィクション)だけは、いつも俺たちの味方だったんだ。

     それから一週間が過ぎて、ようやく俺は葵と面会する機会を得た。
     初夏の陽射しが窓から差し込む、病室のベッドに、葵は力なく横たわっていた。
     葵の身体はやせ細り、頬はこけていた。腕から伸びる点滴の管が痛々しい。仰向けのままじっと動かずに、天井を向くその目は何物も捉えていない様だった。すぐ近くに行くまで、俺のことに気づきもしないようだった。
    「笹本か」
     虚ろな目でやっとこちらを向いた葵が、俺を苗字で呼ぶ。
     俺は最初、努めて明るく振舞いながら、持参した見舞い品を差し出した。樹海で失くしたノートの代わりの、新しいまっさらなノート――けれど葵はついと目をそらして、見向きもしなかった。
     そして俺は、葵にかける言葉を失った。何も言えぬまま、葵の傍で、ただ時間だけが過ぎていくのを待つ他なかった。
     病室に射し込む陽射しが暗くなる。雲の影が通り過ぎたのだ。
     開いた窓から、涼しい風が流れ込み、風鈴をチリンと鳴らす。
     
     ジリジリと大声で鳴いていたセミの声が、唐突に途絶えた。

    「……カッコ悪いね、私たち」
     突然、葵がそんなことを呟いた。
     くすくすと、自嘲気味に笑い出す葵の姿が、ただひたすら哀しい――頼むから、そんな何もかもを諦めたように笑わないでくれよ。
    「……葵」
     俺は葵の身体を抱き締めた。
     葵はビクリと身体を震わせ、それから身をもがき始めた。
    「……離せよ、笹本――離せ……っ!」
     抵抗する葵を、しかし俺は離さなかった。
     いつの間にか、俺の目からは涙が溢れ出していた。両目からこぼれ落ちていく涙が、葵の肩に落ちる。

    ――脳裏に蘇るのは、あの日の鮮やかな瑠璃色の空。
     実際には見たはずのない、けれど記憶の中ではこれまでに見たどんな青空よりも鮮やかなそれは、葵の綴った物語の中に存在した空。小学五年生の葵が綴った、ラピス・ラズリの物語のプロローグ。
    『そうか。今日からは俺が、お前の“親”なんだな』
     瑠璃色の空の下、ラピスがその言葉とともに、滅多に見せることの無い笑顔を自らのパートナーと認めたヒトカゲに向けたとき、彼の旅は始まった。親の愛情に恵まれずに育ち、他人に心を許すことの出来ない少年に育った彼は、一匹の純真無垢なヒトカゲとの出会いによって変わっていく。
     それは、葵が既に乗り越えてきた思考――今となっては、既に彼女の中で否定し去られた思想の痕跡。
     けれど、語り得る全ての言葉が空虚なものになろうとも、その物語に感動した俺の存在は――物語の向こうにいた彼女に魅了され続けてきた俺の気持ちは、嘘じゃないんだ。
     俺は――そう俺は……
    ――“君”という物語を、これからも読み続けていきたいんだ。
     俺は、もう逃げやしない。これからは、君と一緒に戦っていくんだ。俺はもう二度と君のことを裏切らない。カッコ悪くたって、他の誰に笑われたって構うものか。

    「……亮助……ぇ…………」
     嗚咽を上げて泣き始めた葵を、俺は強く抱き締めた。
     真っ暗な森の中を彷徨い歩く中見つけた灯火(ランプ)のような、この温もりを――もう二度と、手離すもんか!



    ――まっさらなノートから、また新たな物語を始めよう。
     ポケモンマスターを目指す少年にだって負けやしない。
     俺たちは、俺たちの旅路を続けていこう。


     大丈夫。
     俺たちには強いポケモンも、
     ポケモンずかんをくれるオーキドはかせもいないけれど……






    ――いつもいつでも本気で生きている、
      “仲間”だけは、いる。


      [No.2249] ニヤニヤがとまらない 投稿者:レイニー   《URL》   投稿日:2012/02/18(Sat) 01:29:49     22clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    しばらくリアルの方にかまけてて、ストコンベストのUGM改稿くらいしかできていなかった間に、こんな作品が!
    ……ええ、大変遅くなりましたすみません。

    グッドでアルティメットでウルトラなおじさんが、おじいさんになった姿、ニヤニヤしながら読ませていただきましたよ!
    まさかこんな未来が待ちうけていようとは!

    アルティメットでグッドな未来が彼に、そして世界に訪れるのか、新天地で彼がその糸口を見つけられるのか、続きが気になって仕方ありません。ニヤニヤ。

    また、UGM作者としては、三人称文になると、また全然違った趣になるなぁというのが印象的でした。

    > 【書いていいのよ】
    > 【好きにしていいのよ】
    【むしろ続き書いてほしいのよ】

    > 【レイニーさん、アルティメットグッドマンお借りしました】
    ちなみに超今さらですが、アルティメットグッドマン自体パク…パロディなので、(出典:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A9%E3%81%8D%E3%81%A9%E3%81%8D ..... A.E3.83.BC
    私が「お借りしました」と言われるのもアレかもです。
    しかし、マサポケ的にはおじさんはコピーレフトです。
    スケベクチバシさんみたいに広まればいいのよ!

    最後になりましたが、素敵な作品、ありがとうございました!


      [No.2248] アンハッピーバレンタイン 投稿者:紀成   投稿日:2012/02/16(Thu) 18:02:14     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    バレンタイン…… 正月気分がすっかり抜け、更に一月が過ぎた頃にやってくる。ちなみに一部の人間には『忘れた頃に』が付くという。関係ないが作者もそうである。だって男子にあげないし。
    女子がチョコレートに義理や本気を込めて意中の男子に渡す。と、ここまでは皆さんご存知であろう。だがこんなカップル同士の甘いイベントとしているのは日本だけである。そりゃあ、海外でもカップルが関係することは間違いないが、その中に『お世話になっている人』や『家族』も入るのはおそらく向こうだけであろう。ちなみにイタリアでは男性が女性にバラの花束を贈る日ともされている。
    まあどちらにしろ、信頼し合っている人の絆を深めるイベントと見ていいだろう。一部を除けば。

    ――そう、一部を覗けば。


    鼻が溶けそうだ、とバクフーンは思った。ここ数日、街に出ると必ず鼻を押えなくてはいけなくなる。それだけ街に充満する匂いが一致していた。どこの店からも、甘ったるい香りが漂ってくる。それに付け加え、柑橘系の匂い、ベリー系の匂い。そしてブランデー、シャンパン、ワインのアルコール臭。
    右の店からはバラの匂いが漂ってくる。花屋だ。凍えてしまわないように中で展示してあるのだろう。こちらから白やオレンジ、赤色が見えた。まだそこまで蕾が開いていないが、この状態のままあげれば家に飾る期間が長くなるだろう。
    反対側の店はケーキ屋だった。アップルパイが美味しいことで有名な店だ。目印はフランスはパリにあるエッフェル塔の砂糖細工。だが今日はアップルパイの香りだけでなく、別の甘い匂いが漂ってくる。
    チョコレートだ。
    チョコレートをたっぷり使ったパイが、カウンターに所狭しと並べられていた。
    バクフーンは甘味が嫌いではない。むしろ好きな方だ。だが、こうもギュウギュウ詰めに匂いを嗅がされてはたまったものではない。早いところ散歩から戻って、無糖のゼクロムを……
    ライモンシティ、ギアステーション前。お馴染みとなったカフェ『GEK1994』は、世間のバレンタインイベントなど何処吹く風で、いつも通りの営業をしていた。ただ多少メニューに変わりはあるが。
    寒さと匂いでへとへとになったバクフーンを、ユエが迎えた。
    「お帰り。散歩はどうだった?気分転換に…… 
    ならなかったようね」
    様子を見てすぐに気がついたらしい。もぞもぞとカウンター下に潜り込むバクフーンに苦笑した後、カウンターに座っていた彼女らにカップを出した。
    「はい。バレンタイン限定、ホットチョコレート」
    まだほかほかと温かいそれは、寒空の中を歩いて来た学生達にひと時の安堵をもたらした。店内に笑顔という名の花が咲く。
    「おいしい!そんなに甘くないし」
    「皆はバレンタイン、どうだったの?友チョコとか本命チョコとかあげたの?」
    ユエの言葉に、カウンターの花だけが萎れていく。あら、とユエは焦った。聞いてはいけないことを聞いてしまった……気がする。
    「んー、友チョコ交換はしたんだけど」
    一人の子が、持っていた小さな紙袋の中身をカウンターに出した。可愛くラッピングされたクッキー、ミにチョコレート、キャンディ、ビスケットの数々。流石女の子同士。それぞれのセンスが光っている。
    「可愛いじゃない」
    「でも、本命渡せなくて……」
    「どうして?」
    一人がユエをキッと睨んだ。察せ、という意味だろうか。ユエは恋愛に疎い。これ以上ないというくらい疎い。だが場の空気は読める女だった。肩をすくめて、話題を別に持っていく。
    「まあ、ね。熱いカップルを見たらチョコレートも溶けるわよ。というわけでチョコが溶けるどころか固くなるくらい冷たい話でもしましょうか?」
    「えっ」

    「こんちはー」

    グレーのスーツを着た女が入って来た。首にマフラーを巻いているだけの姿を見て、学生達が震える。一方ユエは特に気にせずに女に気さくに声をかけた。
    「カズミ。久しぶりね」
    「取材で近くまで来たから寄ってみたんだ。ほれ、お土産。あとゼクロム頂戴。熱いの」
    カズミのお土産は、ココアパウダーがたっぷりかかったティラミスだった。タッパー一つ分あり、ユエ一人じゃとても食べきれない。そこでスプーンを渡して学生達にも手伝ってもらうことになった。
    「グッドタイミングのお菓子ね。これ食べて来年は頑張りなさい」
    「どういうことですか」
    「ティラミスは、元々名前が『Tirami su!』……『私を引っ張りあげて』『私を元気付けて』って意味なの」
    ああ、と皆が納得したところでカズミが言った。
    「ユエ。さっきこの子らに言おうとしてた話を聞かせてよ。コラムに使えるかもしれない」
    「あら、何処から聞いてたの?」
    「ちょっと趣味で読唇術勉強してんだ。それで」
    一般人がそんなの勉強すんなよ!と思うかもしれないが、カズミはフリーのジャーナリストである。なので表に出せない話を得るためにこれを勉強した、らしいが……
    「アンタいつか殺されるわよ。モランの部下みたいに」
    「1929年2月14日。よく考えたらまだ一世紀も経ってないんだねえ」
    「なんでバレンタインってこう血塗られた歴史が多いんだか」
    「ヴァレンティヌスが処刑されたのもその日なんだよね」
    二人の会話についていけない学生達が固まっていた。ホットチョコレートは冷めてしまったようだ。



    ※補足
    ・1929年2月14日……アメリカ・シカゴで起きたギャング同士の抗争事件。アル・カポネが敵対するバックズ・モランの部下六人とたまたまそこにいた眼鏡屋をガレージの前に立たせて銃殺した。血のバレンタインとも呼ばれている。
    ・ヴァレンティヌス……ローマ時代、クラウディウス二世によって結婚できないようにされた法律を破り、恋人達を結婚させていた司祭。掴まり、2月14日に処刑された。


    ――――――――――
    世間が甘い雰囲気に包まれてるのでここらで冷ましてあげようかなー……と。
    ちなみに私は皆と交換して沢山もらいました(笑


      [No.2247] 【おまけ】父親が帰ってきません 投稿者:門森 輝   投稿日:2012/02/15(Wed) 18:59:20     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     知恵袋に寄せられた相談:
     父が仕事で出張したっきり中々帰ってきません。手紙は週1で来ますが帰ってくる気配すらありません。ですので色違いのゾロアークを見かけましたら、父かもしれませんので書き込んで頂けたら嬉しいです。よろしくお願いします。

     ベストアンサーに選ばれた回答:
     こちらの質問 http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?&no=2241& ..... de=msgview に色違いのゾロアークを見かけたとの証言が多々あるので見に行ってみてはいかがでしょうか?

     質問者からのコメント:
     情報ありがとうございます。ちょっと燃やしてきます。

    ――――――――――――――――――――――――

     細やかなおまけ。質問者はロコンなんでしょうかねぇ? どうなんでしょうねぇ? ウェヒヒ

     きとらさん回答ありがとうございます!
     ついに知恵袋にまで当局が進出してきたか……。早い内に当局をスナイp(この発言は当局にスナイプされました)
     そして回答8はスルーされているのに回答12は指摘されるという。回答12涙目。この質問にも「父親がゾロアークとかwww」みたいな回答とか有りそうです。
     回答ありがとうございました!

    【燃やしてもいいのよ】
    【回答してもいいのよ】
    【このタグは当局にスナイプされました】


      [No.2246] ポフィッキー! 投稿者:巳佑   投稿日:2012/02/15(Wed) 14:35:44     87clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    【1】
     それはとある街の近くにあります、ちょっとした森の中。
     本格的な森と比べると、一本一本の木の間はそんなに密着しておらず、空からは太陽の光がさんさんと差し込んで地面まで届いています。
     そんな平和そうな森の中で、一つ、違う空気がありました。
     バチバチと火花が跳ねるような音が聞こえてきそうな雰囲気が漂っています。
    「今日は、わちが勝たせてもらうわ」
    「寝言は寝てから言いやがれ、この野郎。勝つのはこの俺様に決まってるだろ?」
     一匹は白い毛皮に、お腹と目の辺りには赤い星模様、そして赤い爪を持ったポケモン――ザングース。
     もう一匹は漆黒の縦長い体に、剣を連想させる鋭利な尻尾、そして毒々しい赤い牙を持ったポケモン――ハブネーク。
     ザングースとハブネークは産まれながらにしてお互いの種族に敵対本能を持っているポケモンで、この二匹も例外ではありませんでした。今日も今日とて勝負を仕掛けあっています。
     さてさて、殴りあいに、引っかきあってからの噛みあい、その場に響き渡る怒号と痛みによる悲鳴のバトルがこの後に想像されそうですが……ザングースが何やら一本の棒状のモノを出したところから何か違う勝負をするようです。ハブネークは何を出したのかと訝しげにザングースの顔を見やります。
    「これはポフィッキーや。知らんかったん? 流行遅れやな」
    「そ、そんなこと俺様が知らないわけねぇじゃねぇか! 俺様はただ、それで何の勝負をしようかって訊きてぇんだよ!」
     
     説明しましょう。 
     ポフィッキーとはポフィンを棒状に伸ばしたポケモン版の某Pッキーのことであります。
     なんでも一説によりますと、ルナトーンとソルロックが某Pッキーゲームなんてやったら萌えるよね〜、という謎の意見を元にオボン製菓会社が作り上げた商品でございます。
     味はクセになる甘さのモモン味、爽やかな甘酸っぱさがウリのオレン味、口から火が出るほど辛いけど、そこにしびれるぅ! あこがれるぅ! というマトマ味、他諸々。 
     大きさもそれぞれのポケモンの大きさに合わせて作られており、小型ポケモン用のSサイズ(市販の某Pッキーぐらい)から大型ポケモン用のXLサイズ(市販の某Pッキーの十倍)まで取り揃えてあります。

    「これでな、ポフィッキーチキンゲームをやろうと思うねん」
    「ポフィッキーチキンゲーム、だと?」
     なんなんだ、何をやろうとしているんだとハブネークがザングースを見やると、ザングースは勝つ自信が大いにあるのか、得意げな顔を浮べながら更に説明を続けます。
    「一つの端をわちの口に、もう一つの端をあんさんの口につける。先にポフィッキーから口を離した方が負けや、どや? シンプルなゲームやろ?」
    「面白そうなことを考えるじゃねぇか。いいぜ、その勝負買ってやるよ」
     ビビッた方が負けという分かりやすい勝負に乗ったハブネークは勢いよくポフィッキーの一つの端を口に入れました。ザングースももう一つの端に口を入れ、これでお互い準備万端、目線と目線がぶつかりあって火花が飛び散るかのような雰囲気がそこにありました。空から「すばぁ」と鳴くスバメの鳴き声を合図に二匹の勝負が始まりました。
     約四十五センチメートルの間、まずはザングースがプレッシャーをかけようとしてじりじりと一、二歩、前に進みます。どうだと言わんばかりの挑発的なザングースの目付きに反応したハブネークも負けじと身をよじらせ前へと進みます。両者譲らない勝負の下、少しずつお互いの距離が縮まっていきます。まだ行けると踏んだザングースが先に仕掛け、ハブネークにプレッシャーをかけますが、なんのこれしきとハブネークも更に前へ行きます。行き過ぎれば嫌な奴との口づけが、しかし仕掛けなければプレッシャーを与えることはできない、シンプルだけど心理面では奥深いゲームにザングースとハブネークの胸の鼓動は速くなっていきます。 
     気がつけばお互いの距離は残り五センチメートル、一歩間違えれば、キスが待っています。それだけは嫌だが、しかし、その状況の中ですから、うまく仕掛ければ大きなプレッシャーを与えられる距離でもありました。
     さて、どのタイミングで仕掛けようかと、ザングースとハブネークは機会を伺っていました。
     どくん、どくんとお互いの脈が早くなっていき、ハブネークの額から汗が一筋垂れ、ザングースの尻尾は緊張で逆立っています。
     風が一つ吹き抜けます。
     先に仕掛けたのはザングースでした。
     大きく足を振り上げて、一歩前へと動きます。
     実際には前へと言っても、一、二センチ程の小さな動きですが、大きく足を振り上げたのはハブネークに大きなプレッシャーを与える為でした……これで驚いたハブネークが口を離して勝利を得る、というのがザングースの狙いでした。
     しかし、ハブネークは動じませんでした。
     ザングースの目論見は外れた――わけでもなく、この彼女の仕掛けにはハブネークは心臓が飛び出てしまうのではないかと思うほど驚いていました。しかし耐えたのです。ザングースとの勝負にかける本能がなんとかハブネークをポフィッキーから離さなかったのです。
     ギリギリなところで踏み止まったハブネークに対して、ザングースの目が丸くなったのは言うまでもありません。
     これでお互いの距離は残りたったの二、三センチメートルとなり、ここからは我慢の勝負となりそうです。お互いの顔が間近となった今、一歩間違えればキスが待っています。なんとしてでもポフィッキーから相手の口を離さなければとザングース、ハブネークの両者は頭をひねらせます。嫌いな相手の顔が目の前にある中、なんとか勝てる方法を編み出そうというのは中々疲れるものです。どうすればいいのだろうかと考えていく旅にお互いの額から薄っすらと汗が浮かび上がってきます。そのままお互いに何も仕掛けないままただ時ばかりが過ぎていった後――。
     先に動き出したのはハブネークでした。
     そのぎょろっとした大きな赤い瞳をあちこち動かしています。寄り目にしたり、離し目にしてみたり、面白おかしくその芸を見せていきます。どうやらハブネークはザングースを笑わせて彼女の口をポフィッキーから離そうと試みたようですが……残念ながらザングースには効果はイマイチのようでした。やがてハブネークのターンが終わりますと、ザングースはお返しだと言わんばかりに両目に力を込めますと目玉をちょっとばかり飛び出させました。いわゆる目玉が飛び出ちゃったというよくありそうなネタなのですが、ハブネークには効果抜群のようでした。まさか彼女がそんなことできるだなんて想像にもしていなかったと一瞬、どきんと胸が驚きで高らかに鳴りましたが――なんとか耐えました。これもザングースに対するプライドが成せる業なのでしょう。
     その後、二匹は身振り手振りで相手にプレッシャーをかけていきます。
     ハブネークの尾がうねうねと変に動きますと、今度はザングースが左腕を頭の上に、右腕を横腹近くに持って行き、シェーとやってみせます。
     まさに勝負の行方はこの芸対決に委ねられたと言っても過言ではないでしょう。
     しかし、残り二、三センチメートルというのに、顔を動かさないようにしているとはいえ、そこまで動きを入れても大丈夫なのかと思っている方々もいるかもしれません

     これが、不思議なことに残り二、三センチメートルから距離が変わらないのです。
     まさになんとしてでも勝つという意地がそこにある証拠です。

     さて、芸対決はお互い一歩も退かないまま、このまま続いていくのかと思われたおり――。

    「おっと、ごっめんよぉー!!」

     突如、ザングースの後ろからマッスグマが現れ、そのまま激突!
     マッスグマは急には止まれないのです。
     ド派手な衝突音が森の中を駆け抜けていくのと同時に、マッスグマもその場を駆け抜けていき、そしてマッスグマに後ろを押された形となったザングースはその勢いのままに一気にハブネークを押し倒してしまって――。
     
     気がつけば、二匹の距離はゼロでした。

     ザングースもハブネークもお互いの唇を重ねたまま、動きません。その目はこの世の信じられない物を見ているかのような形になっており、とてもじゃないですが、イチャコラといったような雰囲気ではありませんでした。お互いに嫌いな奴の唇に自分の唇を乗せたなんて、そんなこと認めない、認めたくない、信じたくない。そういった気持ちが限界まで膨らんだとき、ようやく二匹の唇が離れました。
     それから体の距離も離して、お互いに改めて相手を見ると、なんだか顔の紅潮(こうちょう)が止まりません。このままだと混乱して目がパッチールみたいにぐるぐるんになってもおかしくありませんでした。
    「あんさんのどあほおおおお!!」
     先に叫んで気まずい沈黙の間を破ったのはザングースでした。顔を真っ赤にさせているだけではなく、全身の毛まで逆立っています。
    「おい、ちょっと待てよ!」
     ハブネークがそう声を上げましたが、ザングースはわき目も振らずにその場から走り去ってしまい、ただ一匹だけ、そこにぽつんと取り残される形になってしまいました。
    「……なんだよ、最初にこの勝負にしたのはてめぇじゃねぇか、この野郎」
     そんな愚痴を吐きながらハブネークに一つの風が吹き抜けます。
     しかし、全身ほてりまくった彼の体には全然足りないものでした。

     一方、ハブネークの前から去ったザングースは森を抜けたところにある川まで行きますと、その足を止めました。
     はぁはぁと肩で荒く息をしながら、ザングースはやがて地面に尻もちをつけました。静かな場所だからか、なんだか自分の心臓の高鳴りがよく聞こえています。
     これは全力疾走での疲れからくるドキドキなのか、それともハブネークとキスをしてしまったことからくるドキドキなのかはザングースには分かりませんでした。それほど彼女は混乱していたのです。
     そのまま少し時が経ちますと、ちょっと落ち着いたのか、ザングースはこういうときは水を飲んでもっと落ち着くのが一番だと思いつき、目の前にある川へと顔を近づけさせました。
     そこに映っているのは自分の顔。
     
     それとハブネークとキスしてしまった唇。

     その自分の唇を見た瞬間、ザングースの顔に再び火が上がりました。
     そして、必死で忘れようと、水を飲むのではなく、ひたすら顔を洗い始めました。
     相当、焦っていたのか、ばしゃばしゃ、とにかく水を自分の顔にザングースはぶつけ続けます。
     自分が勝つつもりだった。
     あんなことになるなんて思いもしなかった。
     こうして、何度も水を自分の顔にぶつけていたザングースでしたが、やがてバランスを崩して川の中に落ちてしまいました。
     幸い、川の深さはザングースの胸元辺りで、なおかつ流れも緩やかだったので、なんともありませんでしたが――。

    「……顔が熱い」
     
     冬の川は冷たいのに、顔だけはその熱さを保ったままで。
     ザングースは困ったようにそう呟いていました。



    【2】
     さて、あのポフィッキー事件から三日後のこと。
     とある街にある一軒の赤い屋根の家。
     その家の一室にあるリビングルームに一人の小柄で亜麻色の髪を持つ女性と、一人の小太りで眼鏡をかけた男性がいました。
     そしてその女性の傍らにはザングースが、そして小太りの男性の傍らにはハブネークがいます。
     実は、このザングースとハブネークはそれぞれのパートナーだったりします。
    「さてと、今日は麻呂也(まろや)とちょっと大事な用があるから、二匹はここで留守番して欲しいのよ」
    「えっとね、とりあえずポケフーズは机の上に置いておくから、お腹がすいたらそれを食べてな。あんまり食べ過ぎてお腹を壊さないように」
    「……麻呂也も太りすぎには注意してね」
    「うぐ、気をつけるよ。さてとそろそろ行かないと。まずは会社の方に行かなきゃ。行こう? 亜美」
    「お土産ちゃんと買ってくるから、いい子でね?」
     それだけ言い残すと女性――亜美と、男性――麻呂也は一緒に玄関の方へと姿を消していってしまった。やがて留守番を任されたザングースとハブネークの耳には扉の開閉の音、それから鍵が閉まる音が届きます。こうしてテレビやソファー、本棚が置かれてある広々としたリビングルームにはザングースとハブネークの二匹っきりとなりました。
    「ちぇ、なんだよ麻呂也のヤツ。俺様をあんなヤツと留守番させるなんてよ、おかしいぜ」
     ソファーの上でとぐろを巻いていたハブネークは、窓際でカーテンの間から庭を見つめているザングースを見ながら愚痴を吐いていました。しかし、ザングースの耳には届いていないのでしょうか、彼女は庭を眺めているばかりで黙ったままです。いつもならここで怒って文句の一つや二つ言ってくるはずのザングースに対してハブネークは調子がちょっとばかし狂いそうになります。こんな変な空気が嫌でハブネークが思わず舌打ちをしたときでした。
     
     ザングースが倒れたのです。

    「おい? 何やってんだよ、日向ぼっこか、おい」
     嫌みったらしくそう言いながらハブネークがソファーから降りて、窓際で倒れているザングースに近づき、顔を覗きこむと、彼の顔は困惑の色に変わりました。
     ザングースの顔がなんだか赤く、それに苦しそうな顔で、息もなんだか辛そうにヒューヒューと鳴っていました。流石にこれは日向ぼっこではなくて、風邪だと気がついたハブネークはどうすればいいのだろうかと考えました。今、ここにいるのは自分一匹だけ。一体全体どうすればいいのだろうか。
     そういえばと、ハブネーク主人の麻呂也のことを思い出します。
     麻呂也が風邪を引いたときに何をやっていたことが、もしかしたらここで活用できるかと思ったからです。
    『風邪のときはよく寝て、安静にしとかないとなぁ。というわけで、ちょっと早いけどお休みハブネーク』
     そうだ、風邪には睡眠とかといった休養がいい、そしたらここはザングースを起こすわけにはいかない。
     しかし、このままにしておくわけにもいかない、何か他に風邪に効きそうなことはないかとハブネークは思案します。
    『寝るときにはやっぱり抱き枕だよね、これで疲れを取るのがやっぱ一番だよ』 
     抱き枕という単語にハブネークは妙案を思いつきます。
     ザングースの横に寝そべり、背中の方をぐいっとザングースに寄せます。
     うまくいくかどうか分かりません。嫌な相手を抱き枕にするなんてこと、ザングースだったら絶対にしたくないはずですし。
     しかし、なんということかザングースはハブネークの体をぐいと抱きしめたのです。
     もふっという感覚がハブネークの中で広がります。
    「はぁ……なんで俺様ったらこんなことしてんだよな、本当」
     本来なら嫌いな相手なのだから、風邪を引いていたって放っておいて、ざまぁ見やがれの一つでも言えてもおかしくなかったのに。いいや、これはあれだ。ザングースとの決着が着いていないのだから、ここで彼女ともう争うことができないなんてことになったら自分のプライドが許さないとハブネークは考え直して、こう呟きました。
    「別に……てめぇの為じゃねぇんだからな、勘違いするんじゃねぇぞ」
     その顔は若干、赤くになっていたのはハブネーク自身も気がついていませんでした。
     
     そういえば、ザングースと会ってもう何年経っただろう?
     ふとハブネークは昔を思い出します。
     それは今から約三年前のこと。 
     麻呂也のパトーナーになったと同時にハブネークはザングースに出会いました。
     気の強いメスで、変なしゃべり方してんじゃねぇぞとハブネークは最初からザングースに対して敵対心を持っていました。ハブネークの思い切りにらみ付けに、ザングースもお返しとばかりににらみ返してきたことも覚えています。それから毎日、因縁をつけてはザングースと色々なバトルを繰り広げていきました。ちなみに麻呂也も亜美も働き先の会社がポケモン禁制の為、家で放し飼いすることが多く、ハブネークもザングースも様子を見計らって、家からよく抜け出し、そしてあのちょっとした森の中で白黒つける為にバトルを繰り広げていたというわけです。
     かけっこを始めとして、にらめっこに、どちらがかっこいいポーズを決められるかなどなど。
     ハブネークが勝った日もあれば、もちろんザングースが負けた日もあります。
     他人から見たら、よく飽きないなと言われるぐらいですが、二匹にとってはいつでも本気でした。
     だから負けないで欲しかったのです。
     ザングースに勝つのは自分だから。
     風邪なんかに負けるなよとハブネークは自分を抱きしめながら眠っているザングースのに向けて、そう呟きました。

    「ほわぁ……わちのだいしゅきなポフィッキー……」
     まさかさっきの呟きで起こしたかと思えば、なんだ寝言かとハブネークがやれやれと思ったときのことでした。
     なんだか背中に刺激が来ます。
    「むひゃ、みゅふ、みゃふ……」
     ポフィッキーを食べている夢でも見ているのでしょうか、ザングースがハブネークの背中を噛み始めました。しかし、本気の噛みつきと比べるとソレは弱く、どちらかというと俗に言う甘噛みでした。ザングースの白い鋭い八重歯がハブネークの背中に優しくチクチクと口づけをしていきます。
     満足そうな寝顔でハブネークを甘噛みしていくザングースに対し、ハブネークはあまりのくすぐったさに戸惑っていました。このまま起こさない方がいいのか、しかし、このままだとなんか変な気持ちになりそうだとハブネークは必死に耐えていました。
     意識をずらそう、そうだ、別のことを考えようとハブネークは麻呂也と亜美のことを考えることにしました。そういえばあの二人、仲がいいけど、どういった関係なんだろうかといった感じになんとか背中の刺激を振り払おうとしますが――。
     甘い吐息が温かくてなんだか心地良い、白いもふもふとした毛も心地良い、白い牙がいい感じに背中をチクチクさせてくる、そしてときどき当たる赤い舌は熱くて――。
     
     なんだよ、これ! 無理だろ、これ!
     
     ハブネークはそう叫びたい気持ちでしたが我慢、我慢。
     なんでこんな奴相手に惑わされなきゃいけないんだ、おかしいだろう、一体全体どうしてこうなったんだとハブネークは自身の心に尋ねてみますが、返事はもちろんありませんでした。   
     ハブネークの顔から沸騰でもするのではないかというぐらい赤くなり、心なしか湯気も立っているかようにも見えました。
    「みゅふ、むひゅむひゅ、これ、食べて……早く、元気になってぇ、ハブネークと早くバトりたいでぇ、わち……むひゃ、むひゅ、みゅふ」
     ザングースから出たその奇跡的な寝言に、ハブネークはなんとか鼻を鳴らして、こう言いました。
    「……早く治しやがれ、この野郎」
     顔は依然と真っ赤のままで。


    【3】
     買い物袋を提げた麻呂也と亜美が家に戻ってくると、そこにはリビングルームでハブネークを抱きしめているザングースの姿がありました。もちろんお互い眠っております。
    「なんか心配したけど、そうでもなかったみたいかな?」
    「だから言ったでしょ? 大丈夫だって」
     二匹の様子を見ながらなおも不安そうな顔を浮べる麻呂也に亜美が家の中の様子を示しました。確かに、なんかしら暴れた形跡があるのなら、テレビが壊れたり、本棚が倒れて本が散乱したり、ソファーが破れて中からエルフーンの綿が飛び出ていたりしてもおかしくありません。しかも二匹隣同士で眠っていますし、どう考えても暴れたような形跡はありません。
    「まぁ、要は麻呂也の杞憂に終わっただけって言うやつよね」
    「ぐ、なんかカッコがつかないなぁ」
     麻呂也が困った顔を浮べながら頭をポリポリとかきます。
    「だってさぁ、本能的に敵対心を持っている二匹だろ? そりゃあ心配の一つや二つするよ。それにしてもなんで、こんなに仲がいいんだろうなぁ」
    「さぁね。もしかしたら、私達が見ないところでバトルしてるかもしれないわよ?」
    「え、そんな。傷なんてそうそうなかったけどなぁ……」
    「馬鹿ね、バトルって言っても殴り合いだけじゃないでしょ」
    「うーん、言われてみればそうだけど」
    「それにさ、よく言うじゃん」
     買ってきたものの整理が終わり、亜美も眠っているザングースとハブネークのところに行くと微笑みながら言いました。
    「ケンカすればするほど仲がいいって。今日の敵は明日の友、明日の友はいつかの恋人ってね♪」
    「え、そんな言葉ってあったけ」

     ザングースとハブネークの寝顔はなんだかとても満足そうな顔を浮べていました。




    【書いてみました】

     え、2月14日って、2人で1本のチョコ味のポッキーを食べて幸せになろうというバレンタイン オブ ラブポッキーの日では(勝手につくんな) 
     
     ……というわけで、バレンタインの日にチョコ代わりにと今回の甘い物語を投下しようと思ったのですが、間に合わず、一日遅れになってしまいました、無念。(汗)
     ケンカには本気だけど、こういうことにはきっと不器用だよねこの二匹、と思いながらザングースとハブネークを書かせてもらいました。甘い味がしたのなら嬉しい限りです。(ドキドキ)

     ありがとうございました。


    【何をしてもいいですよ♪】
    【今年は一個(母上から)だけだったぜ。後は自分に買ってあげ(以下略)】


      [No.2245] 二人のバレンタイン 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/02/15(Wed) 04:10:18     91clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     某月某日。
     女性が男性に愛でとろけたショコラを送り、愛の言葉を囁き合う、そんな日。
     女性は恋の行方に一喜一憂、男性は貰ったチョコレートの数に一喜一憂、いや、チョコレートを貰えるかどうかに一喜一憂している。
     お菓子屋ならずとも、店という店にチョコレートが並び、町は数日前から独特の甘い匂いに包まれる。
     数年前までそんな日だったはずなのだが、いつの間にやら友チョコとか逆チョコとか自チョコとかが出てきてなんかよく分からなくなった。しかし、町が嗅覚的な意味で甘い匂いに包まれているのは変わらない。

     目の前の彼女も、非常に甘い匂いをさせていた。確か、事務の仕事をやっている子だったか。
    「はい、どうぞ。エルフーンちゃん」
     そう言って、腕に抱えた甘い包みのひとつを、足元のフワモコで可愛いと巷で人気の草羊に渡した。
    「ココロモリくんにも」
     彼女は机の上で丸くなっていたハート鼻の蝙蝠にもチョコレートを渡すと、今は持ち主が留守の机の上にも包みを置いて、部屋を出て行った。
    「……僕の分は?」
     ひとりチョコレートを貰えなかったキランは、彼女が去っていった方向を見つめて僻みたっぷりに呟いた。

     エルフーンはそんな彼の様子は気にせず、貰ったばかりの包み紙を短い手でビリビリと引き裂いている。ココロモリはチョコレートの包みを足で押さえながら、キランの方を気にしていた。
    「食べていいよ」
     その言葉に安心したようで、ココロモリは風技と念力で器用に包み紙を切ると、箱を開けた。

     キランは上司の机に目をやった。そして、見なければ良かったと後悔した。彼女の机の周囲は甘い有様になっている。

     机にはまるでチョコレートしかないように見えた。もしかしたら、机もチョコレートかもしれない。隣り合った机や足元の床にまで、彼女の机に乗らなかったり、崩れたり落とされたりしたチョコレートが積み上がって、甘ったるい山を形成していた。今にも蟻が集ってきそうだ。
     朝、キランが出勤していない時間帯からチョコ責めに遭い続けて、昼休みでこれだ。夜には家の一軒ぐらい建つだろう。今はチョコ攻勢から逃亡を図っているが、彼女、帰ってきたら胸焼けで倒れるんじゃなかろうか。

     視線を感じてそちらを見ると、トリュフチョコを咥えたココロモリと目が合った。
     くい、と顎をしゃくるようにしたココロモリに、キランは手を差し出す。噛み跡の付いたチョコが手の中に転がった。
    「……ありがと、ノクティス」
     心優しいココロモリは気弱そうに笑うと、エルフーンと貰ったチョコレートを交換する作業に入った。
     つきそうになったため息を堪えた。自チョコならぬ自ポケチョコって何だよ。いや、いいんだ。自分を気遣ってチョコレートをくれるポケモンなんて最高じゃないか。うん、そう思うことにしよう。きっとそうなんだ。そうに違いない。

    「……はあ」
     堪えていたため息が出た。
     ハート型チョコはそんなに美味しいのか。せめて向こう向いて食べてくれよ。
     という指示をポケモンたちに出すのは空しかったので、キランの方が部屋を出ることにした。廊下に出ると空気が清浄に感じられた。あの部屋はよっぽど甘かったのだ。三回深呼吸して肺の中の空気を入れ替えると、気分がずいぶん良くなった。別に大量のチョコを貰うことが幸せではないと気付いたからではなく
    。そして、息抜きついでにご不浄に行って用を足していると、真上の換気扇からエルフーンが出現した。

    「そんな所から出るなよ」
     換気扇から頭上に落下してアフロみたいになったエルフーンを離しながら文句を言う。しかし、エルフーンはキランの言葉も耳に入らない様子で、短い手足を振り回して酷く慌てている。顔はいつもと同じだが。
    「分かった。分かったからズボンの裾引っ張らないで」
     キランがそう言うと、エルフーンはひとまず安心したようで、握っていたズボンを離した。そして、キランたちの居室の方向へ走り出す。
     しかし、エルフーンは背負った綿に風を受けて、少し走っては舞い上がり、少し進んではまたフワフワ……。
     真面目に移動して欲しいが、こいつが本気で移動すると、白い綿だけ残って本人が行方不明になるので、それはそれで面倒である。

     仕方ないので、エルフーンを両手に抱えてダッシュした。


     見たままを言うと、蟻が集っていた。アイアントが。

     部屋の壁を破壊して、鉄蟻の行列がチョコレートの山から外まで続いている。色とりどりの包みを鋼鉄の顎でガキッと挟み、回れ右して壁の穴から外へ這っていく。行列の先頭に出た次の鉄蟻がまたガキッとチョコレートを咥えて回れ右、そのスペースにまた次の鉄蟻が進み出て。
     ココロモリが困ったように天井付近を旋回していた。キランも困った。

     チョコレートが無くなれば彼らはお帰りしてくださるだろうが、それまで壁は半壊、吹き曝しのままというわけにもいくまい。
     それ以前にライモンシティにアイアントはいないのだから、飼い主を見つけてポケモン管理義務違反で注意しに行かなければならない。仕事が増えた。それと、いつの間にか白い綿を残して姿を消したエルフーンも後で探さなければ。
    「ああもう」とぼやきながらボールを手に取ったキランを押し退けて、ひとりの女の子が現れた。

     先程やって来た事務職の女の子だ。
     オコリザルも吃驚なぐらい目を血走らせ、ドン! と部屋の床を踏みしめて仁王立ちになると、ボールを取り出して手の血管が浮き出る程強く握り締めた。触れたら火傷しそうな程、怒っている。

    「アンタたち……私がレンリ先輩に渡したチョコレートに汚い顎で触るなあ! 始末なさい、クイタラン!」
     ひび割れた声でそう叫んだ彼女が繰り出したのは、縞模様のアリクイ、クイタラン。アイアントの天敵とされるポケモンで、
    「ああっ、クイタラン!」
     アイアントのストーンエッジで倒されるのはご愛敬である。

     アイアントは人に教えられないとストーンエッジを覚えないから、彼らは人飼いであることが確定したわけだが、嬉しくも何ともない。厄介だと再認識させられただけだ。ついでみたいにココロモリも撃ち落とされてしまったし。
     そう、後、厄介と言えば、この子も。

    「何よ! 他のはいいけど、私のだけでも返しなさい!」

     彼女は倒れたクイタランを戻すと、懲りもせずに鉄蟻の群れに向かって行く。無謀だ。
     食料の運搬を邪魔されたアイアントたちが、彼女に不気味な鉄顎を振りかざした。
     一斉に鋼色の蟻たちが下顎を傾ける様は、見ていて恐ろしい。事務職の女の子もそれは感じたようで、アイアントたちのはるか手前で足を止めた。

     シャン、とアイアントたちの顎が同時に鳴る。そして、同時に顎を開いた。次には攻撃が来る。が、その時キランはこいつら息ぴったりだなと全くバトルに関係ないことを考えていた。それから、つい癖でペンドラーのボールを選んでいて、室内でどでかいムカデは出せないと気付き、ならばとドリュウズのボールを探して非常時に限って必要な物は見つからない、つまり詰みだ。


     と思ったその時、
    「ウィリデ、コットンガード」
     いつの間にか戻って来た草羊が、綿の大玉となってアイアントたちの前に立ちはだかった。
     先陣を切っていった鉄蟻の顎の脅威をモコモコの綿が吸収する。アイアントの攻撃に思わず立ち竦んだ彼女がホッとした様子でキランを見た。しかし、指示したのはキランではない。

     黒髪に紅色のメッシュを入れた女性がキランを押し退けて現れた。キランの上司であり、チョコレートを売る程貰っていた当人、レンリである。
    「ウィリデに引っ張られたんで慌てて来たんだが、こりゃ酷いな」
     そう述べながら左手で事務の子の肩を掴んで部屋の外に出し、右手でモンスターボールを掴むと、彼女のポケモンを呼び出した。大きな紅色の花を頭に乗せたドレディア。

    「ウィリデ、身代わり」
     彼女は当たり前のようにキランのポケモンに指示を出すと、続けてパンツスーツをパン、と払った。
     それを合図に、ドレディアがわざとリズムの狂ったダンスを披露する。それを見たアイアントたちは、次々と何かに感染したかのようにおかしな行動に移った。アイアント同士で頭をぶつけあったり、チョコレートの包みを粉々に砕いたり。
     混乱したアイアントたちを花びらの舞で部屋の外に追い出すと、レンリはいつも肩に乗せているバチュルを使って大穴を蜘蛛の糸で覆わせた。
     網の隙間から鉄蟻の恨めしそうな顔。しかし、バチュルの巣は電気が通っているから、いくらアイアントと言えども簡単には突破できないだろう。レベルも違うし。

     ほっとするのも束の間、
    「これ、修理するの大変そうだな」
     上司のひと言で、キランは現実に引き戻された。
     穴から吹き込む風が、冷たい。


     通りすがりのローブシンに頼んで壁の穴を塞いでもらった。アイアントの持ち主も探してしょっぴいた。それが終わった時には日付が変わっていた。
    「疲れた」という間も惜しく、上司は貰ったチョコレートの分類作業に入っていた。ただ単に部屋の隅にチョコを投げてるだけに見えるが。ホワイトデーにお返しをする気はなさそうだ。そう思って見ているキランの目の前で、上司が「あった」と声を上げた。嬉しそうだが、歓声と言うには大人しい声で。

    「アイアントに持って行かれたかと思った」
     そう言って、彼女は小さな箱を持ち上げた。飾り気のない白い箱が、彼女の白い手の中に包まれていた。そういう風に扱うのは、一体誰からの贈り物だろう。投げ打つ程にチョコを貰う彼女に選ばれるのは――それは、幸運に思えた。
     彼女から選ばれる可能性があるのなら、じゃあ何か渡せば良かったと思って、その直後にその考えが嫌になった。上司の姿を視界に入れないよう、キランはそっぽを向いた。その肩が叩かれた。

     キランの手に、白い箱が押し付けられた。白い手から。

     引っ込められた白い手を追って、キランは肩越しに彼女を見上げた。目が合うと、彼女は髪をかき上げながらも目を伏せて、
    「ほら、こういう日だから」
     静かに言った。

     戻ってきたエルフーンと顔を見合わせて、キランは箱を開ける。紙を一枚敷いた上に、ちょこんと丸いチョコレートが乗っていた。もう一度上司の方を窺うが、彼女はもうキランに背を向けて自分のチョコの山に取り掛かっている。

     キランも彼女に背を向けた。慎重に箱の中から甘い塊をつまみ出す。手の平に転がすと、ココアパウダーがチョコを中心に散らばった。小さなトリュフチョコは体温で溶けて消えてしまいそうで、そうなる前にとキランはチョコレートを飲み込んだ。
     甘さだけで出来た塊が舌の上で溶け



     舌に激痛が走った。
     反射的に口を手で覆い、出すのはまずいと思い切って飲み込んだ。すると喉が痛い。辛さが喉の中を上って鼻に回って涙腺も刺激して涙が出てきた。
     口を開けて息をした。新鮮な風が当たると、少しだけマシになる。でもまだヒリヒリと、痛い。涙を堪えて上司の顔を見たら、いつもの悪ぎつねみたいな笑みを浮かべている。彼女はそういう人だということを忘れていた。
    「ひっかかったな」
     そう言って、風のように去って行く。

     大量のチョコレートと一緒に部屋に取り残されたキランは、口の中のヒリヒリが収まるのを待つことにした。手持ち無沙汰なので、貰った箱を捨てる前に畳もうかと指先を動かす。底に敷いた紙を引っ張り出す。と、その下にまだもう一枚紙が入っていることに気が付いた。二つ折りになっていたそれを開いたキランは、やれやれとため息をつく。
    『いつもありがとう』
     そして、唐辛子爆弾を仕掛けた彼女と、これを書いた彼女と、どっちが本当なのかと思い悩む羽目になるのだ。


      [No.2244] わたしたちが見たもの【超今さら書いてみた】 投稿者:砂糖水   投稿日:2012/02/15(Wed) 01:03:48     92clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     あそこをくぐり抜ければNがいる。ゲーチスが何か言っていたけれど、関係ない。わたしはただ、Nに言いたいことがあるだけ。
     心臓が暴れまわり呼吸が乱れる。パートナーの入っているモンスターボールを握りしめて、わたしは覚悟を決めた。

     行こう、Nのもとへ。


     Nが、ゼクロムを呼んだ。呼びかけにこたえて、玉座の向こうから黒い竜が現れる。黒い竜は力を誇示するように吠え、電気のエネルギーを撒き散らす。圧倒的な力。あれが、伝説の竜。
     体が震える。勝てるだろうか。違う、何をしてでも止めるって決めたんだ。
     大きく息を吸う。若草色の目を見据えて、わたしは告げる。





     N。わたしはきっと英雄なんかじゃない。だってそうでしょう? ゼクロムが現れても、ライトストーンは反応しなかった。
     わたしは、あなたに言いたいことがあって来たの。わたしには求めるべき真実なんて分からないよ。この世界のことをほとんど知らないもの。
     あなたは多分戸惑っているよね。わたしがこんなに喋るところを見たことがないだろうし。ベルもチェレンも、今のわたしを見たら驚くだろうね。でも、わたしにだって言いたいことがたくさんあるんだ。

     聞いて、N。
     
     わたしには分からなかった。なんでわたしが英雄なのか。どうしてNはわたしにこだわるのか。これは、今でも分からないよ。
     あなたは何度も接触してきては、一方的に喋り、勝負を仕掛けてきた。電気石の洞穴では、勝手にわたしをニュートラルだと決めつけた。たしかに理想も、真実も知らなかったけど。それに、わたしの意思なんかお構いなしにわたしを選んだなんて言う。竜螺旋の塔でもそう! わたしにライトストーンを探せと言った。
     なんで! どうしてわたしなの!
     あなただけじゃない。みんな、みんなそう。わたしにやれと言う。わたしの気持ちなんて知ろうともせずに、英雄になることを強制した。流されるままのわたしも悪かったよ。でもさ、だんだん、言えなくなった。言える雰囲気じゃなかった。
     みんなわたしに期待して……押しつけて。わたしは、まだこどもなのに。大人たちも、アデクさんくらいしかあなたに挑もうとはしなかった。そのアデクさんだって、わたしにライトストーンを持てと言った。正直怖かった。なのに、受け取れって。押し付ける形になってすまない? だったらやめてほしかった。でも、受け取る以外の選択肢なんてなかった。
     あはは、こどもだよねえ。わたしもみんなに負けず劣らず自分勝手だよねえ。でも、もうやめるわけにはいかなかった。わたしだって、ポケモンのいない世界は嫌だったから。わたしがやるしかないって、言い聞かせてた。
     ねえ、N。わたしね、あなたの考えには少し共感しているの。傷つくポケモンがいるのはやっぱりいい気はしないよ。たとえば、ずっと一緒にいるこの子たちが誰かに傷つけられるのは、嫌。でもさ、方法が間違っていると思う。たしかに、ポケモンと人間を引き離せば、人間に傷つけられるポケモンはいなくなるよ。でもその代わり、新しい悲しみが生まれると思う。
     N。あなたは言ったよね? わたしたちみたいな人ばかりだったら、ポケモンの解放なんてしなくていいって。あなたは迷っているんじゃない?

     あなたの部屋を見せてもらったよ。ずっとあの部屋の中で過ごしていたんだってね。
     あの部屋を見て、ずっと迷っていたけど分かったんだ。言ったでしょう? 自分がどうして英雄なのか分からないって。ここに来るまであなたと戦うことに踏ん切りがつかなかった。英雄であるだけの、理由なんてなかった。でもこの城に入って、あなたの部屋を見て、あなたの過去を聞いて、自分がどうしたいか分かった。

     あのね、N。あなたの見ていた世界はすごく狭くて小さいよ。
     わたしも似たようなものだけど。わたしだってカノコタウンから外に出たことがなかったから。

     ねえ、あなたは「外」で何を見た?

     わたしはポケモンをもらって、外に出ていろんな経験をした。トレーナーとはポケモンバトルをしたし、ポケモンを交換することもあった。ミュージカルに参加したこともあった。人の仕事を手伝っているポケモン、ううん一緒に働いてた。みんな、楽しそうに笑ってた。ポケモンの言葉は分からないけど、見ていてそう感じた。
     たくさんの人たちと、ポケモンたち。お互いがお互いを思いやっていた。

     N、あなただって見たでしょう?

     うん、そう。あなたがあの部屋で見てきたことも本当のことだよ。実際、人間に苦しめられているポケモンもいる。でも、ね。わたしが見たのはたいていプラズマ団のせいだったよ。ムンナの煙が必要だからって、蹴ったりして煙を出させようとしていたことがあったんだ。あの時はすごくびっくりした。この人たちはポケモンを大切に思ってないんだって、口先だけだったんだなって思った。あなたとはずいぶん違っていた。思えば、あれがあったからわたしはここにいるのかもしれない。
     それから、ポケモンを解放するんだと言って、ポケモンと人を引き離していたよね。でもポケモンたちは、大切な人と引き離されてつらそうだった。ベルがムンナをプラズマ団に奪われたとき、ベルもムンナも、両方とも悲しんでた。やっぱりそういうのを見ると、こんなのは違うって思ったんだ。

     ポケモンと人が出会って、たしかに悲しみが生まれたと思う。でも、それ以上に喜びが生まれたんじゃないかな。あなたは今ある喜びを、幸せを、すべて悲しみに変えるの?
     それがあなたの『理想』なの? 目指すべきなのは、今ある幸せを壊すことなんかじゃなくて、悲しみを減らすことなんじゃないの?
     わたしはこの子たちと出会えてすごく嬉しかった。喧嘩することもあったけど、一緒にいられて幸せだったよ。
     ねえ、N。あなたはポケモンと一緒にいて幸せじゃなかったの? 幸せだったはずだよね?
     それはあなたもわたしも、そして他の大勢の人も一緒なんじゃないの? あなたはきっとそれを見てきたはず。

     なのに、あなたは自分が見てきたものを否定するの? 
     あなたがしようとしていることは、今まで見てきたことを否定してまでやるべきことなの?

     わたしたちが見たのは、『真実』じゃないの?





     そこまで言ったとき、バッグがもぞもぞと動いた。はっとして、バッグを開ける。


     ライトストーン、が――――。








    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――


    超今さらですが書いてみました。
    書く書く言ってから大分たったのでわたしが言ったこと自体、皆様忘れてると思いますw
    ぶっちゃけプレー中は、電気石の洞穴あたりから完全に置いてきぼりされてたので、こんなことは考えてないですw
    これを書くためにプレー動画見てみたんですが、ゼクロム登場からレシラム登場までほとんど間がなく、思わずずっこけました。
    もうね、明らかにゼクロム現れたから出てきただけだろ状態。
    実際にプレーしてたときはあんまり気にならなかったんですけど。
    というわけで、こんな感じのことがあったんじゃないかなあという妄想でした。
    今更過ぎてごめんなさい!




    【書いてみたのよ】【今さらでごめんなさい】


      [No.2243] 塔と鐘 投稿者:櫻野弥生   投稿日:2012/02/14(Tue) 00:59:47     79clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ガサ、ガサ。

    子供はおろか、背の低い大人ならすっぽりと隠れてしまうような草むら.
    その湿った中を掻き分けて進む一人の男がいた。
    彼が背負っている革色のリュックはリズムよく踊る。
    空にはどんよりとした雲が浮かび、今にでも大きな雨粒を落としてやろうと言っているかのようである。
    男は、煙たい匂いが鼻の奥を刺激するのを感じた。

    お香か。
    男は、思う。
    匂いの風上を頼り、草むらを抜けると、その元はあった。
    高く聳える塔。


    タワーオブヘブン。


    イッシュ地方最大の、ポケモン用の墓地だ。
    各地のポケモンの御霊がこの塔で供養されている。
    塔の頂上には大きな鐘があり、それを鳴らすことでポケモンたちが安らかに眠ることが出来るといわれている。
    内部の各フロアごとに墓石があり、お参りへ来る人が毎日いる。
    しかし、天気があまりよくないからか、あたりに人の気配はなさそうだ。
    男はキョロキョロとあたりを見回すが、薄暗い影の中の草木しか視界には入らない。


    男は、この塔に鐘を鳴らしにきた。
    ただ、鳴らしたいと思っただけだ。
    それ以外に理由なんてない。


    漠然とした理由で来た男は塔を眺めた。
    見上げ、霞の向こうにある頂上が透けて見えるかのようにじっと見つめる。
    その先の、なんとも形容しがたい魅力を感じる。
    男は、すっかり心を奪われていた。


    「あの」


    という透き通った声が聞こえるまでは。
    その刹那、男は体を震わした。
    何者なんだろう?
    声の主に意識を向けた。
    「はい?」
    男は振り向いて、その姿を瞳に焼き付ける。


    少女が、いた。


    ぴゅう、と吹いた風に栗色の髪はさらりとなびく。
    栗色のワンピースを着た少女は男をじっと見つめていた。


    「おにいさん、塔にのぼるの?」


    透き通って、消えてしまいそうなその声は、どこか悲しげだと男は思った。


    「そうだね、今から塔の頂上に行くんだ」
    ふぅん、と少女は言った。


    「あのさ、あたしも、ついて行っていいかな?」
    「君もかい?」
    「うん」
    少女はうなずいた。
    「一人で行くの、こわいから」




    塔の中は昼間だというのに薄暗い。
    壁にかけられた蝋燭の灯はぼんやりと光、墓石を、床を橙に染めている。
    中には人はいないようだ。


    だが、何かが見つめている。
    そんな感覚に襲われた。


    「おにいさん、きをつけて。このあたりはヒトモシがすんでいるの」
    「そういえば、そんなことを聞いたことがあるよ」
    この塔にはヒトモシが生息している。
    彼らは人の魂を好んでいるため、下手な行動をすると命取りになりかねない。
    そんな話を昔聞いた覚えがあった。
    「あの蝋燭もヒトモシよ」
    「えっ?」
    男は壁の蝋燭を見つめた。
    ゆらゆらと炎が燃えている。


    蝋がにやりと笑った。


    「!?」
    男は正体の顔を見たと同時に、腕を引っ張られる感覚に襲われた。


    右腕をつかんでいたのは、少女だった。
    「はやく行きましょう。こわいでしょ」
    少女は足早に歩き始めた。
    男は崩しかけた体勢を整え、付いていく。
    「危なかった……。しかし、よく知ってるね。ここ何回か来たことあるのかい?」
    男の質問に症状はビクッと体を震わした。
    もしかして、聴いちゃいけなかったかな。と男が考えていると、
    「……うん、何回か」
    消え入るような声が答えた。
    「一人で来たら危ないから、だれかいないかさがしていたの。そしたら、あなたが来たからたすかった」


    少女の手はひんやりとしていた。
    塔の薄暗さがそのまま体に出ているかのように。
    少女に引きつられて、螺旋階段までたどり着いた。
    一段踏み出すごとに、こつん、こつん、と音を響かた。
    ヒトモシの灯に映し出されたひとつの影は、鐘へと近づいていく。




    長い長い階段の先を超えると鐘があると期待した男は墓が並ぶフロアが続いたことに肩を落とした。
    「まだまだ先よ」
    少女の発した言葉に重なって、
    「……ぼう……」
    という声が聞こえた気がした。
    「なんだ?」
    と男は振り返ったが、人がいる様子は無い。


    「ヒトモシのしわざよ。はやくしなきゃせいめいりょくをすい取られるわ」
    少女は声の方向に目もくれず、次の階段に向かっていた。
    「おにいさん、いそぐわよ」
    少女は、駆け出した。
    おおっと、と男は声を漏らした。
    駆ける少女に引っ張られながら、次の階段へと向かっていく。
    彼女の冷え切った手につかまれながら。




    幾段もの階段を上り、規則的に並ぶ墓石を目にし、進んだ。
    そして、最後の階段にたどり着いた。
    「もうすこしで頂上よ」
    「ああ、そうかい」


    最後の階段の先から光が屋内に差し込んでいる。
    一歩、一歩階段を踏みしめる。
    外気は少女の手のようにひんやりとしてきていた。
    間違いなく、頂上が近いんだ。
    男は思った。
    「君のおかげでヒトモシに襲われることもなかった」
    「そうね……ありがとう」
    少女はぽつりとつぶやいた。


    階段を踏みしめるごとに、体の重みが男を苦しめた。
    ずっと歩き続けたからだろう、男は痛みを堪える。
    視界は次第に明るくなっていく。
    そして、最後の一段を踏んだ。




    頂上は、ぼんやりと霞がかっていた。
    その中にうっすらと大きな鐘が見えた。
    「これが、頂上か…」
    男は鐘へと歩み始めた。
    一歩足を踏み出すたびに重くのしかかる感覚を堪える。
    そして、鐘の前に立った。
    鐘から垂れた紐を手に取り、引っ張った。


    ごおおん、ごおおん。


    鈍い音がん響き渡った。
    遠く、深くまで。
    男の心の奥底にまで染み込む。
    重い体から何かが離れていくような、そんな感覚に包み込まれた。


    目的を達成してすっきりした男が鐘に背を向けると、少女が立っていた。
    「もう、かえるの?」
    「ああ、やりたいことは終わったしね」
    少女は拳を握った。


    「……つまんない」


    少女は、拳を振り上げた。
    「つまんないつまんないつまんないつまんない! もっとあそぼうよ!」
    「お、おい……落ち着け!」
    少女は体を震わせて睨み付けた。
    「あそびたいんだよ? この子たちもあそびたいんだよ?」


    刹那、男の肩に重みを感じた。
    視線を右肩に向けると、いた。


    白い体に、赤いともし火。
    ヒトモシだ。


    「なっ……」
    男は、意気揚々としたヒトモシの姿を見て、頭にぐるぐると何かがめぐり始めた。
    「なっ、なんで……ヒトモシがいるんだ……?」
    渦の中から拾い上げた言葉を発した。
    「あそびたいんだよ? ミ……ンナ、アソビタ……インダ……ヨ?」
    少女の顔は、ゆがみ始めていた。
    口は左頬の位置まで伸び、鼻は斜めに、目は右頬に傾いている。
    口から、目から、鼻から、緑色の液体が流れ始めた。
    男は、息を呑んだ。
    瞬きをすると、歪んだ少女は消えた。
    そこに、一匹のポケモンがふわふわと浮かんでいた。


    灰色の体に大きな頭。お腹の4つのボタン。
    オーベムである。


    「あ、あぁ……」
    そこに、少女などいなかったんだ。
    最初から幻影だったんだ。


    男は、体中の力が抜けきってしまった。
    ぺたり、とつめたい地面に尻をついた。
    肩のヒトモシはぴょこん、と降りた。


    ……遊びたいんだよ?


    「……やめてくれ……頼む……」
    男の体はすっかり冷え切っていた。
    次第に近づいてくるオーベムが大きく、そして恐怖に感じられた。


    ……なんで、遊んでくれないの……?
    「やめろ……やめるんだ……この化物……!」


    ぴたっと、オーベムの動きが止まった。
    ……化、物……?
    体をぶるっと震わせた。


    ……ボクって、化物なの……?
    悲しそうな瞳で男を見つめた。
    潤んだ瞳の奥には何か、淋しげな感覚があるように見えた。


    ……そうだよね、怖いよね。
    オーベムはがっくりとうな垂れた様子だった。
    さっきの一言が重くのしかかったらしい。


    ……ボク、ただ遊びたいだけだったんだ……
    「オーベム……」
    男は膝をついた。
    「酷いこと言っちまってごめんな」
    男はオーベムの頭をなでた。
    オーベムは驚いた様子で男を見つめる。
    潤んだ瞳に男の顔が映りこんだ。


    ……許してくれるの?
    「こっちこそ酷いこと言ったしな。お前はただ遊びたかっただけなんだろう」
    オーベムはコクリと頷いた。
    「そうだな、ちょっとだけ遊んでもいいぞ?」
    ……え? 本当に?
    オーベムは目を丸くした。
    男はああ、と言った。
    オーベムは踊るように喜んだ。
    ……やった、ありがとう!
    その姿を見ながら、男はにっこりと笑った。
    後ろから、ヒトモシがぴょこんと肩に乗った。
    そして、にやりと笑った。


    「次のニュースです。フキヨセシティ郊外のタワーオブヘブンそばで男性の遺体が発見されました。
    遺体は死後数週間が経過したものと思われ、警察が身元の確認を行っています。
    近辺には革色のバッグがあり――」



     ――――――――――――――――――

    お久しぶりです。名前のとおりのものです。
    最近ご無沙汰だったので、リハビリがてら。
    ところで、書いていくうちにオーベムが可愛く見えてきたんです。
    あのくりっくりとしたおめめ。なにこれ可愛い。
    もっと怖いってイメージだったんですが、気づいたら抱きしめたくなってました。
    そんなノリで無理やり乗り切りました。


    【好きにしていいのよ】【オーベム抱きしめてもいいのよ】


      [No.2242] 次のページを見る→ 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/02/13(Mon) 20:39:17     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    回答8:
    色違いのゾロアークなら、この前借金を返しにきた。
    子供手当が出たからやっと返せるー!ルーピー・ポッポ大統領万歳とかいいながら団子も食ってたな。

    回答9:
    私の友達が青いブラッキーを持ってました。
    普通のブラッキーとは違って、夜に見ると青く光って綺麗でしたが、迫力はやっぱり黄色い方がよかったと思います。

    回答10:
    (この発言は当局によりスナイプされました)

    回答11:
    この前、ラブカスを釣ろうとしたら、変な色のホエルコつり上げちゃったよ。一瞬目がおかしくなったのかとおもった。

    回答12:
    色違いのゾロアークがこの前お店にきました。
    先輩と親しいようだから、試作品を食べてもらったら全部まずいって言われた;;
    それから口直しに賞味期限が近いやつを食われたけど、小さい子がいるっていうから包んであげたら喜んで宣伝してくれた。いいやつだったよ

    回答13:
    >12
    貴方なにをいってるんですか?ゾロアークが喋るわけないじゃないですか。半年ロムってろ

    回答14:
    >12
    お前ポケモンかよwwwwwwwwwwうぇwwwwwwwwwいいやつwwwwwまじwwwwwwwwステマwww

    次のページを見る→


      [No.2241] 【知恵袋】色違い目撃情報募集! 投稿者:門森 輝   投稿日:2012/02/10(Fri) 22:55:15     177clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     知恵袋に寄せられた相談:
     5日程前、エンジュシティの南の方で良い雰囲気なゾロアークのカップルを見かけたんですが、何と片方が色違いだったんです!
     色違いなんて初めて見たので物凄く印象に残っています。そこでふと気になったのでお聞きします。皆さんが見た色違いのポケモンを教えて下さい!
     
     回答1:
     私も4ヶ月程前にヤドンの井戸の辺りで色違いのゾロアークを見掛けました。ロコンと一緒に歩いてました。
     ロコンが鬣を触りたそうに見てました。実際少し触ったりしてました。微笑ましかったです。

     回答2:
     先月の下旬にキキョウシティの西の方で同じく色違いのゾロアークを見ましたね。
     確かコジョンドと手を繋いで歩いていたと思います。紫色の鬣が綺麗でした。

     回答3:
     クチバシティに色違いのゾロアークと通常色のキュウコンの夫婦がいました。可愛いロコンの子供もいてとても幸せそうでした。
     ゾロアークがキュウコンに一途なのが凄く伝わって来たっす。あれこそ夫の鑑っすね。
     あと、質問者さんのゾロアーク達は絶対カップルじゃないです。決して良い雰囲気でもないです。

     回答4:
     うちのイーブイが色違いです! 銀色でもっふもふで超かわいいです! 
     この子タマゴから生まれたんですが最初見た時汚れてるのかと思って洗いそうになりました(笑)
     進化させるか悩んでますがそれは別の話ですね。

     回答5:
     いつだったかは忘れましたがウバメの森で色違いのゾロアークを見た事があります。
     キュウコンの尻尾を枕にして気持ち良さそうに寝てました。羨ましかったです。……羨ましかったです。
     あの時からいつかキュウコンを手に入れて同じ事をするのが私の夢になりました。羨ましかったです。

     回答6:
     ゾロアーク大杉ワロタwwwwwwまあ俺が見たのもゾロアークなんだがwww
     確か2ヶ月位前にヨシノシティの北辺りで普通のゾロアークと一緒に鬣を梳かし合ってたな。ゾロアークたんカワユス。
     まぁ何が言いたいかって言うと、リア獣末永く爆発しろ。

     回答7: 
     僕もこの間ラジオ塔の入り口付近でゾロアを抱いてる色違いのゾロアークを見掛けました。
     ゾロアは普通の色でしたが非常に可愛かったです。
     それにしてもゾロアークの目撃情報多いですね。同じ個体だったりして(笑)

    ――――――――――――――――

     どっかの誰かに似てますねぇ、フヒュヒ。本人じゃないと良いですねぇ、ニヤニヤ。
     という訳で某ゾロアークをお借りしたかも知れませんしお借りしてないかも知れません。どっちでしょうねぇ、ニタニタ。
     知恵袋のスレは既にありますが、これは毛色が違うので別で立てました。
     とりあえずキュウコンの尻尾を枕にしたいです。

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【回答してもいいのよ】
    【浮気してもい……浮気はだめなのよ】
    【回答3はベストアンサーにはならないのよ】
    【尻尾を枕にしたいのよ】


      [No.2240] 携帯をいじっていたらわらわっちが飛び出してきた。 投稿者:巳佑   投稿日:2012/02/10(Fri) 02:36:09     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     携帯をいじっていたらテキストフォルダからプロットらしきものが飛び出てきましたので、折角だからこっそりあげることにしました。後書きのページにも色々書きましたが、こちらも良かったぜひ(ドキドキ)


    【以下、携帯のメモ帳からそのまま抜粋】

     ポケモンストーリーコンテスト案を出していこうページ1

    ★タイトルは?
     
     こちら鏡屋メタモンでありんす。


    ★主人公は?

     メタモン。
     殆どのポケモンを知っており、その知識を活かして、その者が知りたい姿を見せる鏡屋というモノを始める。昔、お礼にもらったというキセルをいつも身につけている。一人称はわらわっち。その辺の説明も入れておく。


    ★どんな話?

     イーブイの進化の悩みから可能性の広さを説く【未来編】
     ルージュラの恋の悩みから、今というものと向き合う【現在編】
     トレーナーが捨てた卵から変えられない過去を説く【過去編】


    ★流れは?

     最初はメタモンの紹介で1000文字以内。
     後は未来編、現在編、過去編の順番で各3000文字以内。


    ★それぞれの性格

    ・メタモン
     古風な喋り方が特徴的。甘いモノに目がない。冷静にモノを見る。

    ・イーブイ
     好奇心旺盛なイーブイで、メタモンに将来のことを相談しに来る。

    ・ルージュラ
     恋に生きているポケモンで、もっと美しくなりたいと思っている。
     進化することはできないかとメタモンに相談しに来る。

    ・トレーナー
     卵を孵して、個体値が低いと見るや、そのポケモンを捨てる人。
     間違えて高個体値のポケモンを捨ててしまう。

    ――――
     
     ポケモンストーリーコンテストの案を出していこう。ページ2

    ★一人称は?
     
    ・メタモン…わらわっち
    ・イーブイ…ボク
    ・ルージュラ…わたくし
    ・トレーナー…俺様


    ★実は。

     イーブイは実はトレーナーに捨てられていたポケモン。
     後にエーフィに拾われ、育っていく。
     
     話の終わりはイーブイがエーフィに進化して、メタモンが「願わくば、この子のように強く生きて欲しいでありんす」と呟いて終わり。


    ★セリフ。

    ・わらわっちはあくまでお主の見たい姿を写したにすぎん。

    ・未来を決めるのは最終的にお主なんじゃ。
     決めて、その先を進んだら、戻ることはできん。
     だから自分に責任を持つのじゃ。
     それが今というやつでありんす。

    ・鏡はあくまで表面を映しているだけでありんす。
     中身までは映せん。
     どんなに姿を変えようともわらわっちはわらわっち。
     お主はお主なんじゃ。
     中身を変えること……それも進化の一つじゃないかのう?

    ・知っておるか?
     捨てられたポケモンはな、成長すると、やがて捨てられた意味をというものを知って、捨てた人間に復讐するのだそうじゃ。


    【このプロットらしきものに関する補足説明】

    ・現在編にて初期案はルージュラでありましたが、進化しないポケモンにするはずだったのに、ルージュラはムチュールから進化していたことを忘れていました。
     ポケスコに提出後、それに気がつき、急いで他の進化しないポケモンを検索。
     唇が気に入ったのでマッギョに決定。

    ・このプロットらしきものを打ち出したのは第二回ポケスコの募集が始まったときで、このプロット(?)を打ち出す前にこの案は薄らと浮かんでいました。
     要するに温めていたのであります。
     ちなみに、そのときに浮かんだタイトルは『メタモンが語る!』

    ・ページが二つに分かれているのはメモ帳が500文字までしか入らなかったからです(汗)

     
     このような感じでわらわっちストーリーが生まれたわけですが、実際に物語を書いてみると、オムニバス形式で四つのお話を書かなければいけなかった上に、それぞれの字数目標を破ったりしてしまいましたから、全体で軽く10000字オーバーが起こって調整が大変でした。(汗)

     それでは失礼しました。


      [No.2239] 地下鉄に揺られて 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/02/07(Tue) 23:47:58     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「ライモンシティ行き、間もなく発車します。駆け込み乗車はおやめください」


     帰りのバトルサブウェイが動き出す。ここから帰る人たちはいろんな事情を抱え込んでいた。途中で負けたもの、区切りをつけて帰るだけのもの。ただこの時間は人が少ないのか、広い車両に一人だ。
     途中の駅で買い込んだキャンディを一口。そして真っ暗な窓の外を見る。
     夜のように真っ暗だ。ここは地下鉄、景色なんて見えない。時々、反対方面に向かうサブウェイが見えた。それ以外は何の変わりもない、ただの暗闇である。

    「パスを拝見します」
     車掌の言葉に顔をあげる。首からぶら下げていたスーパーシングルトレインの許可証を見せた。
    「あれ、さっきのサブウェイマスターの……サガリさん!」
    「僕はクダリ!」
     名前を間違えられて一気にフォーマルな表情から、プライベートな子供っぽい表情へと変わる。
    「クダリさんですか、すいません」
     シングルトレインにいたノボリと良く似た人だ。親戚なのかもしれないが、性格がだいぶ違う。
    「クダリさんもバトルサブウェイ好きでこの仕事してるんですか?」
    「ノボリと一緒にしないでよ!僕はバトルが好きなの!」
     同じじゃないか。そう思っても言葉には出せなかった。苦笑いでやり過ごし、荷物から残ったキャンディをクダリに渡す。
    「お疲れ様です。青リンゴ味ですよ。よければどうぞ」
     サブウェイの窓は相変わらずの暗闇だ。ダイヤが違うのか、他のサブウェイともすれ違わない。
    「お仕事は?」
    「君で終わり。……さっきから外ばかり見て、何が面白いの?」
     クダリがつまらなそうに言う。確かにそうかもしれない。彼にとって見慣れた暗闇。
    「クダリさん。誰かが私に言ったんですよ。電車って人生に似てるって」
    「なにそのいきなり哲学。僕に解るよう説明してよ」
    「受け売りなんで上手く解釈できないんですが、電車は乗り遅れたら二度と乗れない。人生も、チャンスの電車に乗り遅れたら二度と乗れない」
     クダリはとてもつまらなそうだった。相づちの声からしてもう話を聞いてる態度ではない。
    「クダリさん、私、過去に一人、すれ違ったままの人がいます」
    「その人は、ポケモンを人間から解放するといった信念で突き進みました。私は違うといって対決したままいなくなりました。その他にも私には友達がいます。二人とも、途中迷ったりしてましたが今では自分の道をいってます」
    「その時、私は何をしていたんでしょうか。みんなより人生の特急に乗った気分で、二人に勝った気でいたんです。二人とも、普通列車に乗って、乗り換えで迷っても自分の行き先を見つけたのに私は乗り換え駅でどの電車にのっていいか解らないんです」
    「で?」
     今まで黙ってたクダリが口を開く。
    「で、って、私が今思ってることですよ」
    「何を迷ってるか知らないけど、乗り換え駅なら来た電車に乗ればいいじゃん」
     クダリが飴を嚼んだ。
    「これだから子供は嫌いだ。迷ってる自分がかっこいいとか思ってるんだもん。乗り換え駅にいて迷ってるっていう自覚あるなら最初に来た電車に乗ればいいだけじゃん。君つかれる」
     クダリが立ち上がる。座ってる時とは違って、その背丈は大きい。クダリを目で追うと、窓の外に灯りが見える。
    「もうライモンシティに着くよ。それじゃ」
    「あ、クダリさん!」
    「何?」
    「また勝負してくださいね」
    「君が勝ち抜ければね。……直接申し込むんだから腕には自身あるんだろ」
     クダリは車両のドアに手をかけた。そしてもう一度振り返る。
    「君、名前は?」
    「私ですか?私はトウコです」
    「ふーん、そう。じゃ」
     そのままクダリは白いコートと共に消えて行く。トウコはその方向に頭を下げた。

    ーーーーーーーーーー
    バトルサブウェイの帰り。今まで辿ってきた道は何だったのか。見えない窓を見て主人公は何を思うのか。
    幼なじみはそれぞれ目標をみつけたのに、主人公だけぽーんと放り投げられたようで、エンディング後はもしかしたら

    クダリにはまだ会ったことないけど下りだからクダリさんにした。

    【好きにしていいのよ】【最近サブマスが気になるのよ】


      [No.2238] わー 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/02/07(Tue) 23:32:16     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    メッセージありがとうございます!
    ポケモン嫌いは結構好きな題材でした。

    「私」側からの一方的な視点の話であったのに、タブンネの気持ちを汲んでもらえてとても嬉しいです。
    他者と暮らすにはある程度の知識が必要ということですね。
    親は自分が世話するんだから「私」は知らなくていいと思ったのか、両親もあまり知識がないか。
    どちらにせよ些細なズレでこんなになってしまったのです。
    それは現実の人間関係でもそうなんじゃないかなあと思います。

    切ないっていう感想もらえて嬉しいっす!
    ありがとうございました!
    【タブンネの半分は優しさでできています】


      [No.2237] うおおおお…… 投稿者:ラクダ   投稿日:2012/02/06(Mon) 23:10:20     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    久しぶりにマサポケを覗いたら、なんとまあ「ポケモン嫌い」を書いてくださっていた……! ありがとうございます!

    なんだかもう……切ないなあ。
    タブンネに対する誤解で嫌悪を募らせる“私”と、嫌われながらも“私”と家族を気遣うタブンネの姿が……うわああああ orz
    愛玩用として可愛がられていたが為に、父親の変調に気付いてもどうしようもなくて。母親までもが同じ変調を抱えてしまって……それもどうしようもなくて。見守り続けることしか出来なかった上に、“私”からは殺されそうになるほど憎まれて……うおおおおお orz

    でも、“私”が悪いのかといえばそうじゃないんだろうなあ、と。情操教育の為に子供に生き物を与える、というのは割と聞く話ですが、子供が全て生き物に興味を持つかと言えばそんなことは無いわけで。当然興味を持てない子だっているし、そんな子からしたら突然現れた「家族の一員」なんて煩わしいだけなんでしょうね。
    ただ、もし両親が“私”とタブンネを引き合わせる時にきちんとした説明をしていたら。もし“私”が自分でタブンネの事を調べようとしていたら。
    誰が悪い、という訳でなく、無知故に起こった思い込みによる悲劇だと思うと……悲しいなあこれ……。

    > 「タブンネってポケモン知ってる? 倒すとたくさん経験値をくれる、優しいポケモンよね!」

    相手を瀕死に追い込まないと経験地が貰えないという事を考えると、この一言はなかなかキッツイですね……。願わくば、いつか彼女に真実を知る日が訪れますように……。

    面白かった、という表現はそぐわないかもしれませんが、この作品を読めて良かったと心より思います。読了後も残る切なさが半端ないです。
    書いてくださったことにお礼を申し上げます。本当にありがとうございました!

    【げしげししていいのよ……だと……? とんでもねえ!!】


      [No.2236] 【書いてみた】優しいポケモン 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/02/04(Sat) 23:42:16     127clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     私が物心ついたときから、そいつはいた。ピンク色のタブンネというポケモンだった。

     私の情操教育に、と大人しいポケモンを知り合いからもらってきたという。そのタブンネは両親の願いにそぐわず、私に触覚のような耳を押し当ててはどっかへ行くようなやつで、私も特にタブンネを好きじゃなかった。気に入らない時には叩いたりした。その度に両親はタブンネをいじめるんじゃないと怒っていた。私はますますそれが面白くないので、タブンネの耳を引っ張って遊んでいた。小さなタブンネは私のおもちゃだったと思う。
     そのタブンネが最も懐いているのが父親だった。毎日触覚を背中に押し当てては父親のまわりで何かやっている。父親を取られた感覚もあって、私は本当にタブンネが好きじゃなかった。父親と遊んでる時に、ちらっとこっちを見てくるのも不快だった。
     私の誕生日、こたつでケーキを食べていると、いつも一番に父親のところへ行くのに、触覚を押し当てただけで私の隣に来た。お祝いしてるよと両親は言ったが、私はタブンネにケーキを取られると思った。だから耳の触覚を引っ張った。タブンネはいつものような高い声で鳴いた。母親が私を叩く。タブンネがかわいそうだと。私はかわいそうじゃないのか。タブンネは母親のところに行った。何度も父親を振り返った。
     次の日もタブンネは父親に近づこうとしなかった。肩が凝り過ぎて痛いと言えばタブンネはいつもならさする。けれどお気に入りのソファーに座ってても、父親が来るとこたつの下に潜る。ついに嫌われたんじゃないと母親は笑っていたが、正直タブンネがいなくてすっきりした。
     
     数日後、父親は死んだ。心筋梗塞。心臓の血管が詰まる病気だといった。
     原因なんて解り切っている。タブンネがやったんだ。ポケモンだから、人を病気にすることなんてできる。あんなに懐いていたタブンネがぱたっと懐かなくなった。そのあたりから具合が悪くなったんだ。
     母親に訴えてもタブンネはそんなポケモンじゃないとしか言わない。絶対に嘘だ。タブンネはそんなことをするポケモンだ。誰も信じない。
     タブンネは父親がいなくなると、私によってきて耳の触覚で触って来た。あれに触られたら殺される。いつも以上にタブンネを叩いた。しばらくタブンネは遠巻きに私を見て、それからまた近寄ってくる。叩かれることが解っててそれでもタブンネは近づいて来た。気持ちが悪かった。
     私に近づかなくなったタブンネは、母に近づいた。けど私の姿を見るとそこで止まる。私が怖いらしい。
     そうして母と私とタブンネは一緒に暮らしていた。タブンネの姿を見るだけでもむかついてくるが、母親はかわいがっている。私の背が大きくなり、タブンネを見下ろす形になって、ますますタブンネは私に近づいて来なくなった。

     私は遠くの大学に進学することになり、実家に母と悪魔のタブンネを一緒にしておくわけにはいかないといった。けど母親は相変わらずタブンネはそんなポケモンではないとしか言わない。タブンネはじっとこちらを見ている。その青い目が小さな頃の思い出と重なってむかついた。あいつさえいなければ父親は死なずに済んだのに。
     タブンネのことで母親とモメたのもあって、その日は早く寝た。
     朝早く起きると、タブンネは耳の触覚で母親の背中を触っている。またあいつやっている。またあの時と同じことをやっている。今度は両手を添えて、背中をさするように触ってる。けがらわしい。
     タブンネの耳を引っ張ると、いつもと違って散々抵抗する。短い手を振り回して私をつかみにかかる。突然の反抗に戸惑った。母親もタブンネを怒らすんじゃないとしか言わない。タブンネは母親の方しか見てない。

     数日後、母親が倒れた。父親と同じ心筋梗塞だった。
     もう間違いない。タブンネは二人も殺した。葬儀の間、ずっと私の隣から離れなかった演技も全てお見通しだ。お前のせいだ。お前がうちにいるから二人とも死んだ。私の両親を返せ。
     私の後にくっついて、何のつもりだタブンネ。もうお前を庇う人間はいない。私は台所から包丁を取り出した。タブンネの目がおびえる。
     一歩前に出た。タブンネが一歩下がる。命乞いのつもりか、涙を浮かべてる。ポケモンって泣けるんだ。人の親を殺しておいて、自分は命乞いするんだ。
     包丁を振りかざした。タブンネは一目散に逃げ出した。閉まっていた玄関を開けて、後ろを振り返らずに去っていった。
     悪魔はいなくなった。しかしあのタブンネを逃がしたのは私の気がおさまらない。


    「タブンネってポケモン知ってる? 倒すとたくさん経験値をくれる、優しいポケモンよね!」

    ーーーーーーーーーーーーーーーーー

    他力本願スレより、ラクダさんの「ポケモン嫌い」から頂きました。
    ブラックの図鑑を初めて見て、タブンネって脈で体調を知るんだーって思って、そういえば漢方も脈から診断するはず、そして癒しの波動ってかなりレベル高くないと覚えないんだなー。
    そんなタブンネの妄想から始まり、「無知は虐待へつながる」という言葉をもらい、げしげしにいたりました。
    ずっと前にDV的なものを書きたいと言ってたのがついに投稿できるよ!

    私はゲーム中に出てくるNPCをいじるのが好きみたいです。
    【好きにしていいのよ】【げしげししていいのよ】【げしりかえすから】


      [No.2235] 火鉢 投稿者:音色   投稿日:2012/02/04(Sat) 21:50:35     89clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ばあちゃんちに遊びに来たらコ―タスが火鉢の周りでぼんやりしていた。
     丁度あったかくなっていたのでそのまま火鉢にあたる。
     ぺけぺけと呑気な足音をさせてぶちまるが餅の袋を持ってきた。
    「ぷやぁ」
     焼いてくれ、とでも言いたげに差し出してくる。
     しょうがねぇなぁと3個ばかりだして金網の上に乗せる。まだ膨らむまでは時間がかかる。小皿と調味料を取りに行った。
     海苔と醤油と、後はチーズなんかも良いかも。落とすとまずいのでぶちまるにはマヨネーズを持たせた。
     戻ってくるとコ―タスが欠伸をかまして餅を睨んでいる。ふくらみはまだまだといったところか。
     早く焼けろとばかりにぶちまるは耳を揺らしながら餅を眺めている。焦ったって焼けねぇっての。
     餅を見るのに飽きたのか、コ―タスの背中をぱしぱし叩いて反応を見たりしている。遊べ―とばかりにコ―タスまとわりついているが、湯気亀は全くの無反応。
     そうこうしているうちにぷっくら来た。醤油とマヨネーズをあえてソースを作っている間にひとつ、ぽんと弾けてぶちまるが飛びあがった。
     チーズをかけて海苔に挟む。ほら、火傷するなよ。
     猫の手は使えるくせに猫舌じゃないらしいぶちパンダははふはふ言いながらびよよよんと伸びる餅を頬張る。
     コ―タスの分も焼くべきかなぁ、とぼんやり思いながら頬張った。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談 前田くんちのおばあちゃんちには火鉢があります。決してコ―タスの名前ではない。
     マヨ醤油チーズ餅は至高。コレステロール値は保証しません


    【好きにしちまえばいいのよ】


      [No.2234] ラララライ♪ 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/02/03(Fri) 23:41:24     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ん〜、カッキーン☆

    まさかの書いてみた降臨にどきどきです。
    今度は一体何が入ったんだ主人公の家の壁w
    しかし自分の家の壁がこんなのだったら自分も確実にキレると思いますwww

    >【もしもし、あたしキトラ!いま貴方の後ろにいるわ】
    壁の中、だと……ごくり
    (以下無限ループ


    ありがとうございました!


      [No.2233] 【書いてみた】vs壁 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/02/02(Thu) 23:15:34     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「おい、そのピカ何とかの鳴き声はいいから、普通に喋れよこの不法侵入者」


    「らーい」



     おいおい今度はもっと言葉が通じないやつが来たぞ。ピカなんとかの鳴き声はもういいっていったらライなんとかの鳴き声にしやがった。
     代わり映えのない芸しかもたねえ、つまらないやつだ。しかもずっと壁の中かららーいらーいと言っている。答えて欲しいのかこいつは。
    「らーい」
     義務的に俺が声を発すると、明らかに壁の中の空気が変わった。

    「らーい!」

     さらにテンションが上がる。こんなのテレビの中でしか見た事無いぞ

    「らーい!」

     俺に言えというのか。俺の答えを待っているのか。そんな恥ずかしいことできるか!!!!

    「らーい!!」

    「……らーい……」

    「らい!?らい、らいらいらい!!」

     おいおい一人でやり始めたぞ。俺はなんで壁に向かってこんな茫然と立ち尽くしてんだ。人の入らなそうな薄い壁の中から、足音がドタバタとする不思議。一人目の時もそうだったが、どうやって動いてるんだ。
    「おい、いい加減にしろ!」
     思いっきり壁を殴った。壁は黙った。気配も消えた。こんなことなら最初から叩いておけばよかったかもしれない。

    「セイセイセイセイ!」

     やたら落ち目の芸人の真似するやつだ。感心してる場合じゃない。
    「いい加減にしろ不法侵入者!」

    「イーヨー!」

     ちなみにテレビは反対側だ。どうやって壁の中でこんなのができるんだ。疑問だらけだ。壁からギターの音色が聞こえる。

    「マサラタウンはポケモンがいないって言うじゃなぁい!?」

    「オチは解ったから黙れ」
     俺の言葉はやっと通じたか、壁は黙った。いやむしろそれが正解だ。壁がペラペラこうも喋っては気味が悪い。
     明日業者を呼ぼう。それがいい。そしてこの壁を解体して調べてもらおう。
     そう決意した後ろで、壁が再び「らーい」と言った。

    ーーーーーーーーーー
    「ピカー」に対抗できるのは「ライー」しかないと思った。
    こんなんで書いてみたと名乗っていいのか物凄い疑問
    本当に疑問。
    しかし壁の中の言い出しっぺとして書かずにはいられなかった
    【げしげししていいのよ】【もしもし、あたしキトラ!いま貴方の後ろにいるわ】


      [No.2232] リセット 前編 投稿者:紀成   投稿日:2012/02/01(Wed) 19:50:50     114clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「げ」
    私はディスプレイを眺めていた。中には真っ黒い空間に一人取り残された少女。ドット絵だが、白いニット帽と黒いタンクトップ、巨大な黄色いボストンバッグが目立つ。おまけとして膝上十五センチのギリギリミニスカートは、ちょっとやりすぎなんじゃないかと付け加える。
    十字キーを押しても、ABボタンを押してもウンともスンとも言わない。一応動くことは動くんだけど、それでもそこから出ることは敵わない。彼女の目の前にはひたすら闇が広がり、決して終わることのない空間が続く。まあ、ドット絵である彼女にそれが映っているかどうかは分からないんだけど。
    数日前にネットで見かけた、表にはまだ出ていないポケモンの遭遇、捕獲方法を試してみたところだった。私は製作者側じゃないからアレだけど、よくこんな複雑なプログラム作る気になるよね。
    見た時の私の気持ちは、『ダメだ』という気持ちと『好奇心』という気持ちが半々になっていた。でも何も面白いことがない退屈な日常。たまには、そういう『危ないこと』をしてみたい。
    そう思っているうちに、DSにソフトを入れて電源を点けていた。サイトで見た通りのことをして、一体どうなるのかをちょっとドキドキしながら見ていた。
    だけど、間違えた。
    緊張だかなんだか分からないけど、手が震えて十字キーを押し間違えた。おかげでバグが発生して、この有様。
    彼女は永久にこの部屋から出られないらしい。
    「参ったなー」
    私は頭を掻いた。せっかく図鑑完成して、他地方からの受け入れも出来てたところだったんだけど。手持ちもほとんどレベル100に達してたのにねえ。
    「仕方ないか」
    前からのソフトから経由していなかっただけでも、有り難いと思おう。そう自分に言い聞かせて、私はレポートを書いた。これ書いたら一生……本当に一生彼女はこの空間の中に閉じ込められる。でもまあ、プログラムだし。それに。
    「リセットすれば、また会えるし」
    私は電源を切ると、再び最初の画面になったのを確認してボタンを押した。黒い画面と白い枠が出現する。白い画面の文字が踊る。私は迷わず『はい』を選択した。
    データを消去していると、ケータイが鳴り響いた。開いて確認する。ゲーム仲間からだった。
    「なんだなんだ」
    こんな内容だった。

    『図鑑完成したよ!ニコッ (゜▽゜)v(゜▽゜)v o(゜▽゜)o イェーイ!!』

    その下に添付ファイル。見れば、カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ四つの地方のポケモンを集めたという図鑑のデータの写真があった。記念すべき最初のポケモン、フシギダネが永久に続く笑顔で飛び跳ねている。
    「いいなあ。私もがんばろ」
    私は返信した後再びDSのディスプレイに目を向ける。とっくにデータは消去されていた。はじめからを選んで博士を迎える。
    「また会ったね博士」
    博士はプログラムの通りに私に話しかけてくる。ナナカマド博士。歴代博士の名前はほとんど全員が植物らしい。じゃあ彼の名前も植物なのか。意外。
    そう考えているうちに主人公の性別を決める画面になった。迷わず女の子をチョイス。名前。名前は……

    リ ン ネ

    巡る、ってイメージでつけた。博士の激励と共に彼女の体が縮み、さっきのドット絵までになる。そこから先は、前にもやっているからスラスラいけた。
    主人公のライバルの少年に急かされ、湖へ。
    忘れていったカバンを調べて、ムックルとの戦闘へ。
    緊急事態ということで中に入っていたボールを一つ選ぶ。前はヒコザルだったけど、今度はポッチャマ。
    戦闘終了後、博士とその助手の少年に会うところまでで本日は終了。目が痛くなった。丁度夕食に呼ばれたところだったし、いいだろう。


    「裏技?」
    次の日、私は学校で昨日のメールを送ってきた友達と話していた。彼女も相当のゲーマーで、新作ゲームを彼女に与えれば必ず二十四時間以内にクリアしてくる。
    そんな彼女を私はすごいと思うだけでもなく、ちょっと嫉妬していた。どうやったらそんなに早くクリアできるんだか。一つのゲームをじっくりかけて遊ぶのも醍醐味だと思うのだけど。第一そんな簡単にクリアしてたら次のゲームを買うお金がすぐ無くなってしまう。
    しばらく前まではそう思っていたけど、彼女が何処かの財閥会長の孫娘だという話を聞いてからは、もうどうでもよくなった。彼女の脳と財力にかかれば、どんなゲームもすぐにクリアされてしまうのだ。
    「そう!この前掲示板で見たんだけどね」
    彼女はその愛くるしい顔をグッとこちらに近づけてきた。初対面の男は大体これに引っかかる。こんな可愛くてスタイルもいい、おまけに性格もいい彼女がゲーマーなんて、誰も思わないだろう。
    「サイトを回ってたら、何か掲示板……というか、チャットをみつけたの。そこに色んなゲームのバグがあって。面白いなーって思って見てたら、最後の方にポケモン関係のバグがあったの」
    「また変なのじゃないの?下手したらデータ消し飛ぶとか」
    私は昨日のことを思い出した。電源切ってどうにかなるならいいけど、プログラム自体が変になるバグがあるような裏技は辞退したい。
    「ううん。むしろすごく楽しそうな感じだった。耳貸して」
    こういう昔の少女漫画のようなことを平気でやってのけるのが彼女だ。続く言葉に、私の目は点になった。
    「……は?」

    『ゲームの中に、入れるらしいの』

    「ただいまー」
    帰宅途中でコンビニで買ったキャンディーを舐めながら私はドアを開けた。両親は共働きで深夜まで帰ってこない。最近二人と顔を合わせたのは、いつだっけ……
    テレビを点ける。午後五時のニュース番組だった。最近幼い子供が急に失踪する事件が相次いでいるという。何処かの誘拐魔の仕業だろうか。評論家の『最近は子供をきちんと見ない親が増えていますからね』という言葉で私はテレビゲームに切り替えた。PBR。ポケモン・バトル・レボリューション。
    リモコンを持ってコロシアムをチョイスする。さて、今日は何処のマスターを倒そうか。
    (……)
    BGMが右耳から左耳を突き抜けていく。口の中のキャンディーは舌の上で甘味を出していた。飲み込むと喉が痛くなる。
    彼女の言葉。その裏技を使うと、ゲームの中に入れるらしい。嘘だろふざけんな、と言いかけたところで始業のチャイムが鳴ってしまった。去り際に彼女が呟いた。
    『後でメールでやり方教えるわ。暇ならやってみて』
    そのメールはまだ来ていない。忘れているのか、習い事で遅くなっているのか。お嬢様というのは色々苦労が絶えないのだといつだったか言っていた。何不自由ない暮らしで何を言っているんだ、と周りに突かれていた。
    昨日消したデータのエンペルトが、相手にハイドロカノンを出した。元データは消えても、こちらに移したデータはこちらをリセットしない限り消えない。一つに何かあっても複数あれば、支障はない。
    もしかしたらこの世界も同じなのかもしれない、と思い始めた時。ケータイが鳴った。慌てて手に取る。差出人は彼女だった。

    title:裏技の件

    少しドキドキしながら本文を見て…… あれ?

    『ごめーん。何かあの裏技、私の勘違いだったみたい。帰ってからもう一度見たら、下手すればゲームそのもののデータが消去されちゃうって書いてあったから。
    だから忘れてね』

    なんだ。彼女の早とちりか。まあいいや。しかしゲームそのもののデータが消し飛ぶくらいの裏技って、どういう弄りかたしたらそうなるんだろう。ちょっと気になったけど、そのことはそれっきり忘れてしまった。

    (でももし…… もしもゲームの中に入れたら、どんなことになるんだろう。この世界とは全く違った世界。普通では不可能なことも簡単にできてしまう。空を飛んだり、戦ったり、巨大な陰謀に立ち向かったり――
    そうだ。ポケモンゲームの中に入れたら、ポケモンと旅をすることだってできる。彼らの背中に乗って空を飛ぶって、どんな感じなんだろう。伝説のポケモンって実際に目の前にしたらどうなるのかな。ルビサファのグラードン、カイオーガ、レックウザ。レジ三体。
    彼らが本当にバトルしたら、世界が終わるどころじゃない。この世が終わる気がする……)


    次の日は休日だった。朝九時くらいに起きようと思って布団の中で丸まっていたら、いきなり下からドンドン音がした。慌てて飛び起きると、部屋のドアが勢いよく開いて、母さんが入って来た。流石の母さんも、休日は仕事が休みだ。
    「大変!大変よ!」
    母さんは慌てると、文に主語が無くなってしまう。何が大変なのか。眠い目を擦り、私は布団からのそのそと起き上がった。
    「何。休日くらい遅起きさせて……」
    「大変なのよ!アンタの友達がいなくなっちゃったのよ!」
    「は」
    「今テレビでやってるから、早く来て!」

    スリッパを履く余裕もなく、私は一階のリビングへ転がるように降りてきた。テレビは朝のワイドショーだった。普通なら芸能人の結婚や離婚を面白可笑しく報道するんだけど、今日は様子がおかしい。左上の画面に文字が並んでいる。

    “財閥会長の孫、突如消息不明”

    額を冷や汗が伝った。さっきから同じニュースが流れているらしく、アナウンサーが事件の概要を話し出した。頭が真っ白であんまり読み取れなかったが、こういうことらしい。
    昨日、彼女は帰った後に両親に挨拶した後自分の部屋に閉じこもったらしい。夕食もそこで摂るということで、メイドは彼女の部屋の前に夕食を置いた。二時間後に食器を回収しに来た時はドアの前に空の皿があったことから、その時はまだ部屋の中にいたらしい。
    だが、朝になってメイドが起こしにドアを叩いても返事がない。鍵がかかっていて手動では開けることができない。心配になって両親を呼びに行き、二人が呼んだが変わらず。最終手段ということで壁を斧で割って入った。
    だがそこには誰もいない。彼女がいつも使っているパジャマが脱ぎ捨てられた状態で散乱していたが、当の本人の姿はなかった――
    財閥会長の孫娘と言えば、誘拐の線も考えられる。だが抵抗した跡はなく、警察は知人の犯行から捜査を進めるという。
    「……」
    「大変なことになっちゃったわねえ」
    「お母さん」
    「何よ。どうしたの?顔色悪くして」
    「いや、」
    私がそう言いかけた時、玄関のチャイムが鳴った。はいはい、と母親がボタンを押す。話していくうちに状況が変わったことが分かった。私に向かって目配せをする。ついでに自分の服を引っ張る。
    すぐに分かった。上へ行き、玄関の方を見る。見慣れない車が一台。見慣れないスーツの男が二人。片方はスラリ、もう片方はずんぐり。
    私は一先ず簡単に着替えた。

    「――さて」
    スラリとした人の方が手帳を取り出す。横にしてメモする。彼らはメモする時、手帳を横にするという話を昔聞いたことがあった。
    「君は、失踪したお嬢さんとは友達だったんだよね」
    「はい」
    「最近、何か変わったことなかったかな。どんな些細なことでもいい。例えば、変な男が彼女の近くにいたとか」
    彼らは思った通り、刑事だった。知り合いから当たっていくというマスコミの話は本当だったらしい。
    「いえ……。あの子は送り迎えは自家用車だったし、言い寄る男なんて沢山いました。でもあの子は男遊びとかするタイプじゃありません。自分の趣味の方が大事みたいな子で」
    「趣味?」
    「はい」
    ずんぐりした方が身を乗り出してきた。思わず顔が引きつる。
    「どんな趣味かな」
    「ゲームです」
    「ゲーム?そのお嬢さんはゲーム好きだったのかい?」
    驚いた声。無理もないだろう。彼らの中の彼女の像が、ガラガラと崩れ落ちた瞬間だった。
    「私もよく一緒にやってたんですけど、彼女はどんなゲームも簡単にクリアしてしまうんです。それに関しては、無敵でした」
    「ほー……」
    理解できない、という顔をしている。この世代の刑事さんを寄越したこと自体が間違いだったんじゃないのかな。
    「ちなみに、最近ハマっていたゲームは?」
    「ポケモンです」
    「ポケモン!」
    二人が顔を見合わせた。その色にはっきりと確信の色が浮かぶ。焦りも入っているような気がした。その顔色を見て、私はある一つの可能性を思い出していた。昨日、帰ってきた時に見たニュース。その後の彼女のメール。話。
    まさか…… 
    「刑事さん、あの子の部屋にDSはありませんでしたか。ピンク色の、シールが沢山ついているやつ」
    「悪いけど、一般の人に捜査内容を話すわけにはいかないんだ」
    「あったはずです。せめて、その中に入っていたソフトだけ確認させてください。

    ……ポケモン、なんですよね?」


    刑事さんは苦い顔をして帰っていった。私はケータイにメールや着信が入っていることを確かめるために二階へ行った。床にDSが置いてある。一番古いタイプ。厚くて今の型に慣れている人は使いにくいだろう。だが私にとってはこれが一番使いやすい。ポケモンやるときはいつもこれだった。
    ケータイのメール履歴を見る。あの子の最後のメールが頭の中に浮かんだ。裏技の件が大きなバグを引き起こすことになりそうなこと。だから私に教えることはしない、そう言われた。

    ――本当に、そうだったの?

    ケータイが鳴っている。私は無意識に通話ボタンを押し、耳に当てた。ディスプレイに表示された文字が『非通知』であることも知らずに。
    「……はい」
    ザー、ザーというノイズの音が聞こえた。電波状態が悪いらしい。私は窓際に行った。だけどまだノイズが晴れない。というか、一体誰がかけてきてるの?
    「もしもし?誰ですか」

    『二つの世界は繋がった』

    ゾクリ、と寒気がした。甲高い声。よく事件の証言とかに使われる、フィルターが掛けられた声に似ている。
    「え?」
    『賽は投げられた。お前達の過ちだ!』
    ケータイのディスプレイが光りだした。白い光が私の視界に広がって……


    何も、聞こえない。


      [No.2231] 壁の中 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/02/01(Wed) 15:59:35     138clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ついった悪ノリ】 【存在自体がギャグ】 【\ぴかー/

     近所の何とかっていうガキとその友人が、少し前に町を出ていったらしい。
     町を出る奴の話は久々だ。前は俺がまだガキの頃だったなあ。
     そんなことより、あいつの母親はかわいそうだ。夫が町を出て行き、子供もその後を追うように旅立った。この田舎町にたったひとりだ。

     ま、何にしろ俺にとってはどうでもいいことか。この町の外がどうなってんのか俺はよく知らないけど、だからと言って特に不都合があるわけでもないし。
     俺が平和で幸せなら、別にそれでいいじゃん。

     この町は、人間だけの世界だ。
     窓から外を見ると、2つの世界を隔てている、大人でも見上げるような高い塀が町の外の景色を覆い隠している。
     野生のポケモンが溢れかえる草むらの中につくられた、長閑で平穏で、まっさらな町。
     田舎町だけど、大抵のものはそろっている。この町の中での生活に満足できれば、これ以上住みやすい町はない。と思う。

     ごくたまに、町を出ていく奴もいる。だが俺は別に興味ない。
     この町の中で適当に生きて、適当に死ぬ。それでいいや、と思っている。


     今日は冷えるなあ、と思った。
     町の中にたった1軒の、雑貨屋も兼ねたコンビニで弁当を買った。
     いや、コンビニを兼ねた雑貨屋か? そもそもコンビニなのか? 朝の9時ごろに開いて夜の8時ごろにはすでに閉まっているんだが。一般的にコンビニって奴は24時間営業の店のことを言うのか? よくわからん。
     「青のりっぽいもの」がかかった「ご飯っぽいもの」に、「ケチャップっぽいもの」がからめられた「ショートパスタっぽいもの」。「チーズっぽいもの」が乗せられている「ハンバーグっぽいもの」。何となく「それそのもの」と言い辛いのは、ひとり暮らしなのに自炊していないことに対する負い目かもしれない。いや別に料理嫌いじゃないんだけどなぁ。面倒なんだよなぁ。
     野菜って何だっけ。まあどうでもいいや。どうせいつもこんなもんだ。食えりゃそれでいいや。

     玄関入って一応鍵をかけて、階段を上がって自分の部屋の電気をつける。うう寒い。今日はまじ寒い。
     暖房つけようにもフィルター掃除は半年やってないし、今からやる気力もない。激しい気分屋と評判だったコタツは、おととい辺りからクールに徹することを決めたようだ。しかしまじで寒い。明日こそはフィルター掃除しよう。うん、そうしよう。
     定位置の壁に背中をもたれて、ただの布団付ちゃぶ台と化したコタツの上に冷え切った弁当を広げる。
     温めるのがベターだろうが、我が家のレンジはもう3年は職務放棄している。スイッチを入れたところでうんともすんとも言わない。どうしてこの家の家電製品はどいつもこいつも冷ややかなんだ。
     コンビニ(?)で温めてもらうって手もあるが、あの店番のばあちゃんに任せるのはもう怖くてできない。何でもチンしてくれやがるんだから。前科は覚えてるだけでも袋入りのしょうゆ、ソース、紙カップのアイスクリーム、炭酸飲料、カップめん、漫画雑誌、蛍光灯。蛍光灯輝いてたよ。きれいだった。
     レンジに入れても平気なものだけ渡しても、3回に1回は標準加熱時間を大幅にオーバーしてくれる。弁当のふたが溶けてた時は何事かと思った。
     博打を打つくらいなら、冷え切った飯を食う方がましだ。命にかかわる。

     いただきます、と手を合わせて、いらないと何度言ってもついてくる割り箸を割った。
     冷たいご飯を口に運ぶ。お世辞にもすごく美味いとは言えない、薬品系の単調な味がする飯。
     もう慣れ切ってはいるけど、やっぱり、寒い部屋の中でひとり食べるコンビニ弁当は、ちょっとさみしい。
     たまには自炊するかなぁ、とかぼんやり考えて、俺は頭を壁につけてため息をついた。


    「ぴかー」


     俺の後ろから、声がした。

     いや、おれのすぐ後ろは壁だ。ついでにその向こうは物置だ。というかこの家に今いるのは俺ひとりだ。
     聞き間違いか? と思いながら、俺はまた箸を手に取った。

    「ぴかー」

     おい何だよ聞き間違いじゃねぇじゃねぇか。
     声は確かに俺のすぐ後ろから聞こえる。でも後ろは壁なわけで。つまり。

     壁の中に、何かいる。

     何だっけこの鳴き声。えっと、よくテレビやら何やらで見るよな。何かポケモンの。「ぴかー」とか鳴いてるから多分ピカ何とかだ。いやフェイントで何とかピカかもしれない。ポケモンの名前って見た目が2割で鳴き声3割で、残りはノリでつけられてるんだろ? ってこの前ネットで誰かが言ってた気がする。とにかくあれだろ、何かあの電気ねずみ。
     まぁそんなことどうでもいいんだ。何で壁の中から声がするんだ。
     あくまでも一般家庭の、部屋と部屋の仕切りを務めている、そんなに分厚くもない壁だ。穴も開いていないし、そもそも中身は詰まっている。
     おいおいやめてくれよ。冬だぜ、冬。そんな壁を掘ったら誰ともわからない骨が出てきた、なんて展開には半年早いぜ。いや半年経っても嫌だけど。

    「ちゃー」

     鳴き声3度目。うん、わかった。薄々気づいてたけど、わかった。
     俺は壁を1回拳で殴り、言った。

    「おい、そのピカ何とかの鳴き声はいいから、普通に喋れよこの不法侵入者」

     うん、どう聞いてもピカ何とかいう電気ねずみ(思い出したピカチュウだ)の声じゃなくて、人間なんだよね。だって何となく野太いもん。頑張って裏声出してる感があるもん。
     いやだからといってそれでいいわけじゃないけど。何で人がこの壁の中にいるのかは何にも解決してないんだけど。むしろ余計気持ち悪いんだけど。
     そうしたら、また壁の中から声がした。

    「す、す、すいませぇん。とりあえずピカチュウの鳴き真似でもしておいた方が警戒されないかと……いきなり普通に話しかけたらびっくりして逃げられるかなぁと思いまして……」
    「いや逃げたいよ? 俺今すぐにでも逃げたいよ?」
    「と、とりあえず、ここ、どこですか? 僕、何でこんなところにいるんですか?」
    「それは俺が聞きたい」

     男か。俺と同年代くらいか?
     いやそれにしても、壁の中に誰かいるとか、ただのホラーだろ。いやマジで。
     ひとまず俺は、そいつがいるのが塀の中の町の俺の家の壁の中であることを伝えた。そうしたら男はびっくりした様子で言った。

    「ええっ! か、壁の中ですか!? た、確かにここ、真っ暗だし、全然身動きとれないし、狭いし寒いし帰りたいけど……」
    「何? お前何なの? 幽霊なの? 人柱なの? 誰かの恨みを買って壁に埋められたの?」
    「違うよ! 僕はただ、相棒のケーちゃんと一緒にテレポートしてただけだって。そうしたらいきなり真っ暗で身動きとれなくなって、ケーちゃんはどっかいっちゃって、わけがわからないんだよ本当に」

     ふむ、なるほど、と俺は腕を組んだ。

    「『いしのなかにいる』というわけだな」
    「それただのみんなのトラウマじゃないか! ゲームじゃないよ現実を見てよ!」
    「テレポーターもテレポートも似たようなもんだろ。お前は壁の中だけど」

     座標間違えたのか? それとも何かよくわからない未知の力でもかかったのか?
     いずれにせよ確かなのは、この男はテレポートに失敗して俺の家の壁の中に入ってしまったということらしい。
     俺はポケモンはからっきしなのでよくわからないが、そういうことのあるんだろうか。……迷惑この上ない。


     冷たい飯をかきこみつつ、そいつの話を聞いた。
     そいつは、ここから遠く離れた町出身の、いわゆる駆けだしのポケモントレーナーらしい。
     ある日、遠くの知らない場所に行こうと思って、相棒のケーちゃん(ケー……何とかっていうポケモン)と一緒にテレポートしたら、いつの間にかこの壁の中にいたらしい。
     何でも、テレポートって技は、他の空を飛んだり穴を掘ったりするのと違い、エスパーというはっきりいってわけのわからない力を使うので、知っている特定の場所に移動するときにしか使ってはいけないという決まりがあるらしい。でもこいつは、ちょっと冒険したいとかそんな軽い気持ちで、適当な場所にテレポートして見たらしい。
     で、その結果がこれだよ。
     どうやらケーちゃんとやらは別のところへ行ってしまい、この男だけが壁に取り残されたようだ。
     まぁ平たい話こいつの過失だ。俺には何の罪もないし如何ともしがたい。

    「はぁ……何でよりによって塀の中の町なんだろう……。他の町だったら、絶対ポケモン持ってる人がいるのに……」
    「決まりを守らなかったお前のせいだろ」
    「うっ、そ、そりゃそうだけどさ……」
    「ところでお前、腹とか減らねぇの?」
    「減ったよ! すごく減ったよ! でも動けないからどうしようもないよ!」
    「ふーん、そうか」

     ごっそさん、と言って俺は空になった弁当の容器を燃えないゴミの箱に放り込んだ。


     俺のおふくろはこの町の生まれだ。親父はどっか違う町出身だ。
     親父は若い頃旅をしていて、たまたま来たこの町でおふくろと出会って、大恋愛の末結婚したらしい。
     俺が生まれてからは、親父もさっぱり町から出ることはなくなった。
     だけど、去年あたりから親父のおふくろの調子が悪くなって、夫婦そろってその世話に行った。それから俺はずっとこの家で留守番だ。結局俺は町の外に出たことはない。

     壁の中の男は、外に出たくはないのかと俺に聞いてきた。別に興味ないし、と俺は答えた。

    「ポケモントレーナーとか、外では子供の憧れの職業ナンバー1だよ?」
    「へーそーなんだー」
    「外ではポケモンと関わらない生活の方が難しいってのに、この町は本当に変わってるね」
    「この町でも、ポケモンと関わってる奴はいるぜ? 向こうの研究所のじじいとか」
    「おいコラ! 博士はポケモン研究の第一人者だぞ!? すっげぇ有名人だぞ!? みんなの憧れだぞ!?」
    「へーそーなんだー。そんなことよりあのじじいの孫が近年稀に見る悪ガキだったからそっちの印象の方がよっぽど強いな」

     例のコンビニっぽいもの(今日は珍しくバイトの女の子がレジだった)で買った肉まんを咀嚼しつつ、俺は適当に返事を返した。

    「はぁ、冷えた部屋の中で俺に温かいのはお前だけだぜ肉まんさんよ……ごっそさん」
    「うう、おなかすいたなぁ……」
    「と見せかけて……今日はフライドチキンもあるのだ! バーン!」
    「ああぁぁぁぁぁこの鬼畜! 腹黒! ドS! 食わせろ!!」
    「そっから出てきたら考えてやらんこともない」
    「出られるもんならとっくに出てるよ!」

     ぎりぎりと歯ぎしりの音が聞こえる。
     壁を壊したらこの男は飛び出してくるんだろうか。あいにく俺は壊す気なんてないけど。
     いや、というか、改めて考えなくても、この壁の厚さ、人間の厚みより薄いんだよね。一体どういう体勢で入っているんだろうか。謎すぎる。そもそも壁って中身詰まってるじゃん。何で人間が入ってるんだろう。
     いくら考えても謎は謎だ。そして俺にはどうしようもない。

     とはいえ、ただ放っておくのもあれなので、この町でほぼ唯一と言ってもいい、ポケモンと関わりある人間である例の博士とやらに相談はしてみた。いや間違えた。博士本人はとっっっっっても忙しいとかで、その研究所にいた暇そうな奴に相談してみた。
     家にも来てもらったし、壁の中の奴とも話してもらった。
     そのメガネ白衣の七三は、とりあえず数日待ってくださいと言ってきた。数日すれば何とかなるのか。よくわからん。


     壁の中に男が入って3日。
     とりあえず、壁の中の男にはずっと話しかけている。が、声が弱ってきている。さすがに3日飲まず食わずはきついよな。
     しかしどうしよう。このままだと、壁を壊したら中から人骨が、なんて事件がリアルに起こりかねない。それはまずい。非常にまずい。俺の部屋でそんな猟奇的な事件が起こるとか勘弁してほしい。断固阻止せねば。しかし俺には如何ともしがたい。

     玄関のチャイムが鳴った。
     ドアを開けると、少し前に町を出たはずの、近年稀に見る悪ガキが立っていた。
     何だこいつ、と思っていると、そいつは例の暇人研究者から連絡をもらってうちに来たらしい。

     男が埋まっている壁に案内すると、そいつは実力不足のくせに変なことするからとか、ちゃんと調べてから行動しろとか、壁の中の男に向かって説教し始めた。町にいた頃のこいつの悪童ぶりを知っている俺からしたら「お前が言うな」なのだが、口に出すと面倒なことになりそうなのでやめた。
     そしてその元悪童は、子供より少し小さい高さの黄色い生物を赤白の球から出した。

     壁の中から声がした。

    「お前、ありがとな。いつかお礼に来るから!」
    「今度はちゃんと玄関から入って来いよ」

     黄色い生物が壁に向かって何やらエネルギーを発射する。
     壁を軽く叩いた。返事はなかった。



     今日は冷えるなあ、と思った。
     おにぎり2つとサンドイッチを布団付ちゃぶ台と化したコタツに置いて、暖房のスイッチを入れる。
     何でこんな時に限って、リモコンの電池が切れているんだ。冗談じゃない。俺はため息をついて、背中を壁に預けた。

     ポストに入っていた手紙を開いた。
     あの男と出会った、いやあの時は顔を合わせてないから出会ったとは言わないか? まあともかく知り合ったのは去年のこんな時期だったっけか。たまに手紙を寄越してくる。
     相変わらず奴は元気にポケモンを育てているらしい。でも、もう二度とテレポートはしない、とか。

     手紙を畳んで封筒に戻して、おにぎりにかけられた封印を解く作業に入った。。


    「ぴかー」


     俺の後ろから、声がした。

     封を開ける手が止まった。
     いや、おれのすぐ後ろは壁だ。ついでにその向こうは物置だ。というかこの家に今いるのは俺ひとりだ。
     聞き間違いか? と思いながら、俺はまたビニールを引っ張った。

    「ぴかー」

     おい何だよ聞き間違いじゃねぇじゃねぇか。
     声は確かに俺のすぐ後ろから聞こえる。でも後ろは壁なわけで。つまり。

     以前より少し高いその声。今度は何だ。女か。俺の家の壁は呪われてるのか。
     頭を抱えて、俺は言った。


    「おい、そのピカ何とかの鳴き声はいいから、普通に喋れよこの不法侵入者」






    ++++++++++The end?


    1月31日夜のついった。


    (久方)えるしっているか さむいへやのなかで ひとりたべるこんびにべんとうは ちょっとさみしい
    (キトラさん)もしもし、あたしくろみ!いまあなたの後ろにいるの!
    (久方)壁の中だと……ごくり
    (キトラさん)新たな物語「壁の中」
    (砂糖水さん)こうして新作「壁の中」は生まれた
    (久方)塀の中の町に生まれた俺は、全く町の外に出る事のない、この町の中ではごくありふれた生活を送っていた。
        ある日、いつも通り空き部屋と面した壁を背もたれに、冷えた飯をかきこんでいると、俺の後ろから。
        「ピカー」
        ……壁の中に、何かいる。
    (砂糖水さん)ピカーwwwwwwww
    (キトラさん)ピカーwwwwwまさかのPにつなが(当局はスナイプしました


    そんな勢いとノリの産物です。


    【好きにするがいいさ】
    【もちろん120%ギャグです】


      [No.2230] <<Id>> <<Tr>> 投稿者:巳佑   投稿日:2012/02/01(Wed) 05:26:28     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     前置き1:流血シーンといったような怖いシーンがあります。
           苦手な方はご注意ください。

     前置き2:作者の妄想がある意味、大爆発を起こしています。
           ご注意くださいませ。(汗)
     
     

    【<<Id>>】 
     この世の全てが欲しい。
     
     契機はそんなささいな想いからであった。
     この世界はポケモンという不思議な生き物が我々の生きる道に溢れている。
     時にポケモンは人を欲し、人はポケモンを欲する。
     ならば、そのポケモンを我々の手に入れることができて、我々の許しなしでポケモンを扱うことを禁ずるようにしてしまえば、この世界の人も、ポケモンも全て自分のものになる。世界を思い通りに動かすことができるのではないか。
     その為には何をすべきかと考えてみる。
     まずは自分についてきてもらう人材を探すか。もちろん自分には逆らえないような人材が必要だ。裏切りなどを起こす気を完全に摘み取り、そして自分に従順になるように教育も怠ってはいけない。一人でも自分にとって不安要素となりうるものは完全に排除しなければ……そこから一気に全てが崩れ落ちるかもしれないからである。排除の方法はなんでもいい。監禁でもいいし、最悪、殺してしまうのも悪くない。
     人材がそこそこ集まってきたら今度は組織を作るか。組織には何かしらの目的が必要だ。世界を征服という言葉を直に使っては表の世界で歩きにくい。そこで考えてみたのが、ポケモンと人の関係である。人間はポケモンをバトルなどで傷つけたり、モンスターボールという道具で拘束していたりするのだがそれはどうなのだろうか? 最近はタマゴを孵化させたものの能力が低いという理由だけで、産まれて間もないポケモンを捨てているというではないか。実に都合のいい道具だ。これらをベースに人々にポケモンの自由と権利を訴える形にしていけば、我々がやっていることは決して悪いものではないということが分かるだろう。もしかしたら、それを機に新しく人材が増えるかもしれない。人材が更に増えていくとなると、それをまとめるのは一人だけでは困難になる。特に監視の意味では、一人で追い切れない可能性が高い。そこで考えたのが幹部の存在だ。なるべくなら統率力のある者が好ましい。
     ここまで考えついたときに一つの問題にたどりついた。大きくなった組織の表舞台を歩くのは自分の本来の計画を進めるのに支障をきたす可能性があるのではないかということについてである。そこで考えたのが自分よりも更に上の地位――つまりリーダー的な者を作り、組織全体を導いてもらうことだ。その存在がエスケープゴートのような役割を果たすと同時に、自分は組織の後ろ側に回り、自分の為の計画を進めることが可能になる。
     さて、そこでリーダー的な存在にふさわしい人物とはどのような器のことを指して言うのだろうか、カリスマ性……確かにそれも求められる。他にはやはりポケモンは味方、ポケモンといる人間は敵ということを教え込んだ方が望ましいだろう。何故なら自分が作ろうとしている組織はポケモンから人間を解放するという目的に立っているのだから。ここまで来たら思いつく方法は実に簡単だ。小さな子供に人間の手によって捨てられたポケモンと共に過ごしてもらい、ポケモンは味方、人間は敵だという刷り込みをするのだ。ちなみに何故、小さな子供なのかというと、子供の吸収力や周りの環境から受ける影響力が強いからである。この強い吸収力や影響力を持って人格が育っていくといっても過言ではない。

     組織にふさわしい人格を製造する為の調教。

     この調教は長期間に渡り行い、その子供が大きくなったときに組織のリーダーとして世界を動いてもらうことにしよう。求める気持ちは分かるが焦っては駄目だと自分に言い聞かせる。育った環境の中で培った意志というものは決して簡単に曲げることはできない。その子供にはそれを武器に戦い、自分はそれを駒として動かすだけのこと。こうなれば、誰も自分の邪魔はできない。
     全ては自分の手中に。
     人間も。
     ポケモンも。
     そして世界も。
     全ては自分の手中に――。
     
     


     そのはずだった。
     唐突に現れた二人の少年少女に全てを変えられてしまった。
     小さな子供も育ち、大人になり、組織のリーダーが完全に生まれて組織が活発に動き出したときにその少年少女は現れた。
     組織の行く先々に彼らは現れ、何度も邪魔をされた。
     最初は些細な被害であったが、彼らが強くなっていく度にその被害は徐々に拡大していく。
     何度、彼らをどうやって弄ぼうかと思い、その身に絶望を刻みこんでやりたいと願い、殺してやりたいと叫んだことだろうか。
     しかし、自分の思いとは裏腹に少年少女は組織に傷を与える。 
     自分の世界にも傷が入っていく。
     最初はかすり傷のように、それから転びに転びまくってヒビが入っていき、最後は高いところから突き落とされたビー玉のように地面にたたきつけられ――。

     世界が壊れた。

     レッドアウト。 
     
       


    【<<Tr>>】
    「ぐわぁああああああああああぁぁあああぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」 
     
     そこは一つの病室。
     真っ白なベッドの上には横たわっている黄緑に染めた髪を持つ男が一人いた。
     その男から見て右側の目は白い包帯で巻かれていたのだが、その白さは今ではもう跡形もなく真紅に染まっていた。

    「ワタクシの、ワタクシの世界がああぁぁぁぁぁあぁあぁぁああああああああああああ!!!!」
     その男は発狂したかのように声をあげ、その悲痛な叫びから救いを求めるように左手を天井に上げていた。
     しかし、その左手は空を切るばかりで何も掴めていない。
     ただひたすら、右目から絶望を包帯に滲ませながら叫び、左手を挙げている男の様子を、二足歩行でたて髪を部分的に赤く染めた黒い狐が三匹見つめていた。
     悲しげな顔を浮べながら、しばらく見つめる三匹の黒い狐の耳に不協和音が流れ続ける。
     やがて、何かを諦めたかのような顔を浮べた三匹の黒い狐は男に向かって一つ鳴くと、近くにあった窓からその身を消していった。   
     その三匹の黒い狐のことなどは全く見えておらず、男は叫び続けるが――。

     やがて男の左目に映っていた白い天井が黒く塗りつぶされた。 

    『次のニュースです――という事件で、ゾロアーク三匹を助けた男は病院に搬送され――』





    【書いてみました】

     ある日のこと。
     ことの始まりはふとした疑問からでした。
    「ゲーチスの右目にある仮面みたいなのって何かな? スカウ○ーみたいなもの?」
    「それともゲーチスの右目には傷があって、それを隠す為のものなのかな」
     皆さんも気になりますよね、あのゲーチスの右目の仮面(?)の存在。
     
     さて、この妄想がどう展開したかといいますと。
     ポケモンBWの世界はもしかしたら右目に幻想を埋め込められたゲーチスさんが、見た世界なのかもしれなくて。
     そして、そのゲーチスさんの右目に幻想を埋め込んだ三匹のゾロアークこそが、ダークトリテニティで、きっと彼らは恩返しをしたかったんだけど失敗しちゃったかもしれない、といったように滅茶苦茶な妄想が大爆発しております。
     
     ちなみに、これを忘れてはいけませんということで、タイトルの<<Id>><<Tr>>の意味について。
    『<< >>』は右目、左目を表しており、(本人から見て)右目にはId=Ideal=理想、左目にはTr=True=真実と、ポケモンBWのテーマでもあるものが埋め込められています。

     そういえば、三色目が出るとしたら、ゲーチスの過去を覗けますかね……? それがすごい気になるのですが(ドキドキ)
     彼がどのような過程で世界征服しようと決めたのが、今回の物語の執筆を通して、更に興味を持った今日この頃です。


     
     ありがとうございました。


    【何をしてもいいですよ】
    【三色目はいつに( 】


      [No.2229] 愛される者 投稿者:紀成   投稿日:2012/01/29(Sun) 17:52:48     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    三年前、ポケモンリーグ、決勝戦。スポットライトとフィールドをぐるりと囲む客席に、満タンになった観客の声が大きく響く。どこまでも轟く、雄叫びのように。
    ライトは暗い空を昼間のように明るく照らしている。星は見えない。月が隅っこで遠慮がちにペカリと光っているだけだ。太陽に照らされた月が霞んでしまうくらい、そこは輝きに満ちていた。
    土で覆われたフィールド。
    白い四角いライン。
    ハイドロポンプとオーバーヒートの、メビウスの輪。空を飛ぶ者と地を制する者の、直接対決。
    人々はその光景に我を忘れ、叫び、見入っていた。中心で勝敗を決めるジャッジでさえも、見惚れていた。
    カメラに映されたその光景を、世界中の全ての人間が見守っていた。

    彼らが見つめるフィールドに立っているのは、有名ベテラントレーナーでも、四天王でも、はたまたチャンピオンでもない。
    「カメックス、ハイドロカノン!」
    「リザードン、ブラストバーン!」
    水と炎に包まれながらも決して目を逸らさず、ただ相手と相手のポケモンを見据える少女と少年。
    それがこの大会のメインだった。

    彼らは幼馴染だった。同じ日にポケモンを貰い、同じ日に最初のジムを勝ち抜き、同じ日に最初のポケモンを進化させた。捕まえるポケモンは違ったが、それでも何故だか同じ日にポケモンを捕まえていくのだ。
    同じ日にジムを勝ち抜くのだから、どちらが先にジムに入り、出てくるかが勝負になる。せっかちな少年と、しっかりした少女。何故かいつも、せっかちよりしっかりの方が勝ち抜くのが速かった。それでも必ず同じ日に彼らはバッジを貰っていく。
    その話がジムリーダーからジムリーダー、街から街へと移り、最後の街に来た時はちょっとした話題になっていた。もちろんそこでも、最初に来たのは少女の方だった。勝ったものもちろん、少女だった。
    『一体どうして彼女の方が早くて強いのだろう』
    二人に注目する人間の誰もが、そう思った。遅い彼を『気の毒だ』と思う人も出てきた。
    だが、彼らに対する見方がガラリと変わる事件が起きた。カントー地方を活動の拠点にしていた集団、ロケット団との抗争、そして壊滅。
    二人は力を合わせて壊滅させた。どちらが先にボスの首を取るか、なんて関係ない。ポケモンを攫って改造するなんて、許せない。壊滅させた後のインタビューで、二人は口を揃えてこう語った。
    そこでやっと気付いた。せっかちだろうがしっかりだろうが、遅かろうが早かろうが、最後に大切なのは『正義の心』なのだと。現に一歩遅い少年だったが、自分の手持ちポケモンに当り散らしたりしている姿を見た者は誰もいない。むしろ、一度のバトル毎に頭を撫で、礼を言う。
    自分のために戦ってくれて、ありがとう―― と。
    そしてそれは、少女も同じだった。いつしか二人は、『神に愛されているトレーナー』と呼ばれるようになった。

    試合から二時間近くが経過していた。いつもなら観客が飽きてくる頃だが、今回はわけが違った。たとえ少女の方が早くとも、両者の力は互角。少しの気の緩めが、敗者となる原因を作り出すことになる。
    ビリビリとした空気の中。
    声が出ないほどの重圧。
    スタジアムの観客席は、異様なほどの沈黙で満たされていた。響くのは、フィールドの土を散らす音と彼らの鳴き声、呻き声だけである。既に技のPPは両者とも尽きており、肉弾戦となる長期戦へと突入していた。
    二人とも何も口に出さない。ただ、目の前を見据え、今戦っている自分の相棒を信じることだけに身を捧げている。
    リザードンがカメックスの頭を掴んだ。細いが凄まじい力で相手を地面に叩きつけようとしている。だがカメックスも負けていない。その短いが太い腕で相手の細い首を掴んだ。そのまま力が入る。頭が、首がメキメキと音を立てる。人間ならとっくに死んでいるほどの威力だ。
    リザードンが足を掛けた。と同時にカメックスも相手の腹を蹴り上げた。二匹ともバランスを崩し、仰向けに倒れる。観客席からわずかに声が漏れた。
    だが二匹はまだ起き上がる。額の傷口から赤い血が流れ、殴られ、蹴られて打撲痕と切り傷が痛々しい。それでも彼らは戦うことをやめない。自分を育ててくれたトレーナーのためにも、勝とうと思うからだ。
    リザードンが腕を振り上げた。カメックスも拳を振り上げた。
    そして――


    その目は白く、何も見ていない。ぐらり、と拳が小さく弧を描き、空中で止まった。殴ろうとした体勢のまま、倒れることもせず直立不動で瀕死になっていた。
    リザードンが少し後ろに下がった。カメックスが攻撃してくることは、ない。ひたすら静かなフィールドの周りを見渡し、いつの間にか自分が何も聞くことなく戦っていたことを知った。
    倒れることなく瀕死になったカメックスの後ろに、一人のトレーナーが目を見開いて立っている。その瞳に映るのは、歓喜か、絶望か。
    リザードンは空を見た。やっと星が少しずつ見えてきた気がする。月もライトを押しのけて目立ち始めたようだ。静寂が、彼らの味方をしたようだ。
    グッと顔を上にし、拳を握り締め、

    リザードンは、雄叫びを上げた。空が落ちてくるような声で。

    リザードンの方のトレーナーが口を開けっ放しにしている。信じることができない。これは夢なんじゃないか。そう表情が言っているようだった。カメックスのトレーナーが目元を抑え、審判を見た。ハッとしたように我に返り、審判が赤の旗を揚げた。

    『――カメックス、戦闘不能。リザードンの勝ち。よってこの勝負、赤側が優勝となります!』


    それに続いて、観客席から爆発するような叫び声が聞こえてきた。それは力尽きてもなお倒れることのないカメックスと、それを破ったリザードン、
    彼らを最後まで信じて指示を出した二人のトレーナー達への賞賛の声だった。
    ふと見ると、リザードンの方のトレーナーが口を開けっ放しにしている。信じることができない。これは夢なんじゃないか。そう表情が言っているようだった。カメックスのトレーナーが目元を抑え、カメックスの元へと向かった。彼はまだ立ったままだ。手を甲羅に当ててもビクともしない。
    『……ありがとう。本当にありがとう』
    涙が後から後から溢れて、止められない。最後まで戦ってくれた彼のためにも、泣くまいと思っていたのに。
    それでも、ものすごく悔しい。カメックスをボールに戻し、リザードンの腹に抱きついている相手の元へと歩みを進める。相手がこちらに気付いて、向かってくる。
    そのまま二人は数秒間、見詰め合っていた。不意に少女の方が口を開く。
    『こんな結末になるなんて、誰も考えなかったと思うの』
    『僕も考えていなかった。ただ、目の前の巨大な壁を越えること…… それだけを考えていた』
    『そしてその壁は、お互いだった』
    『うん』
    『うん』


    『……おめでとう』
    二人の頭上で、花火が散った。


    神に愛されているトレーナー。その後も、二人はそう呼ばれた。たとえ勝者と敗者という残酷な位置決定をされても、二人は他のトレーナーを寄せ付けないくらい強かった。
    だが奇妙なことに、二人は二度とお互いとバトルすることはなかった。他地方へ行き、そこのジムに挑戦してもやはり少女の方が早く、少年は後だった。
    思えば、この時期が一番彼らが輝いていた時間だったかもしれない。だが時は流れる。
    残酷なほど、早く。

    黒い服の集団が、丘を上っていく。空は雲ひとつない青空。丘に青々と茂る草と時折散りばめられたような花が、彼らに全く似合っていなかった。
    目立つのは十字架と、女性は顔を隠すレースがついた帽子。先頭の男が持っている書物。
    そして、大きな棺桶。
    『――この眠れる者が迷うことなく、我らが主の下へ行けますように。この者に永遠の安らぎを与えたまえ』
    棺桶が大きな穴に飲み込まれるように入っていく。すすり泣く声と、その間に人間のものではない声が混じる。あのリザードンが、泣き叫びたくなる衝動を必死で堪えるようにして、口をかみ締めていた。カメックスも、ライバルの主人の最期に目を伏せている。
    柔らかい風が、喪服の集団を優しく撫でていく。少女の長い髪が空に仰ぐ。黒いワンピースを着た少女が、ポツリと言った。
    『……向こうはどんな所なんだろうね』
    最期の別れを、と棺桶の蓋が開けられた。花に囲まれた少年は普通に眠っているように見える。
    『元々、君はせっかちだった。考えるより先に体が動いて、それで失敗することがよくあった。でも、その行動の早さに周りが助けられてたりしていたのもまた事実。
    妙な出来事があればすぐに誰かに知らせに行くし、何か綺麗な物や珍しい物を見つけたらそれも独り占めしないで、皆に見せに行く。
    君は優しかった。
    でも、大きくなるにつれてそれは長所だけでなく短所として見られるようになった。後先考えないで行動する。早とちりをする。そしてそれが他人に迷惑をかけることに繋がる。君はいつしか、なるべく周りの後ろを歩いて行動するようになった。視線を気にするようになった。
    君が私よりいつも遅くジムに来ていたのは、私が勝てるかレベルのジムかどうか確かめるためだった。時々バトルしていたし、使用ポケモンのレベルはほぼ同じだったから、私が勝てれば、自分は勝てると考えたんだ……』

    『私は、君の昔の無鉄砲なところも好きだったんだけどね』


    供えられた花が、南風に吹かれて舞う。
    舞う花は、悲しいくらい青い空に吸い込まれていく。
    神に愛されているトレーナーは離れ離れになり、

    『神様が本当に愛したのは、君だったんだね』

    『愛された』トレーナーになった。


      [No.2228] テキトーに選んだらえらいことに 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2012/01/26(Thu) 21:44:46     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    ポケモンカードゲームシリーズ/でりでりさん
    http://masapoke.sakura.ne.jp/rensai/wforum.cgi?mode=kmsgview&no=282

    鏡の彼/風間深織さん
    http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/02/011.html

    レックウザのタマゴ/鶏さん
    http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/02/018.html

    No.102/monotaneさん
    http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/02/019.html

    ヨーヨー、顔文字、オムライス/久方小風夜さん
    http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/02/029.html

    流星を追い掛けて/きとらさん
    http://masapoke.sakura.ne.jp/rensai/wforum.cgi?mode=kmsgview&no=463

    スクリーンを飛び出して/そらさん
    http://www.google.co.jp/gwt/x?client=twitter&guid=on&u=ht ..... amp;whp=30

    ポケットモンスターReBURST--ラジオ体操の唄--/久方小風夜さん
    http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?mode=kmsgview&no=1699

    【百字】日記の宿題【小説?】/久方小風夜さん
    http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?mode=kmsgview&no=1400

    大長編ポケットモンスター「逆転編」/あつあつおでん
    http://masapoke.sakura.ne.jp/rensai/wforum.cgi?mode=kmsgview&no=15

    これが現在良いと思う作品です。久方さんの作品が多いことに気付いた。

    選んだ基準は、短編では「面白さ」です。あっと言わせる結末、シュールな展開、始めからクライマックス……私はこのような作品を好みます。その結果がこれです。

    連載の方は「長期間、かつ継続的に更新されている。または完結に近い」です。書いてみたらわかると思いますが、連載は恐ろしく完結させにくいものなんですよ。長期間書くうちに内容に自信を持てなくなったり、1度執筆から離れると中々復帰できない。そのような中でクオリティの高い作品を作るのだから、もっと注目されるべき。こういうわけで選びました。もちろん内容はレベルが高いですよ。

    最後に、自作を選んだのは単純に「どうしても10作品目が見つからなかったから」です。愛着があるのは否定しませんが。


      [No.2227] ポケスコ中心ですが選んでみますた 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/01/26(Thu) 20:16:18     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    道(砂糖水さん)
    http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/01/018.html
    人間いろいろなものに縛られてるよね。
    主人公がいい男すぎる。

    美しきもの(てこさん)
    http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/01/009.html
    足跡でこの着眼点は素晴らしいよ。

    こちら側の半生(とさん)
    http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/02/032.html
    説明の必要はなかろう。最強です。

    Ultra Golden Memories (レイニーさん)
    http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/03/009.html
    このおじさんをみんなが待っていた。

    雨河童(586さん)
    単行本収録の為URL無し
    586さん、あなたって本当にひどい人ですね……。

    ホタルノヒカリ(きとかげさん)
    http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18832
    懐かしさと共にトラウマが蘇る。

    洗濯日和(CoCoさん)
    http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/kagebouzu/001.html
    これを外すわけにはいかないのだよ…!

    P(りえさん)
    http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/03/023.html
    こ れ は ひ ど い

    眠りの夜(ひろみさん)
    http://masapoke.sakura.ne.jp/novels/hiromi/nemurinoyoru.txt
    本棚より。カゲボウズものの傑作。
    お前らこれを読まないでカゲボウズを語るんじゃねぇ!

    砂漠の精霊(タカマサさん)
    http://masapoke.sakura.ne.jp/novels/takamasa/seirei.htm
    私に最も影響を与えた小説である。
    ポケモン小説ってこんなことをやってよかったんだ。
    ショール越しのふにゃりとした感触。


      [No.2226] 【突発企画】俺の選ぶポケモン小説十選 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/01/26(Thu) 19:55:33     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    本当は年末かなんかにやればよかったんだろうけど、
    今思いついたので今スレ立てしている。

    とりあえず俺様ルールで選んだポケモン小説十個を上げていこうという感じで。
    短編に絞っても良いし、2011年発表に絞ってもいい
    マサポケのみでも、外部のサイトからでも。
    俺基準は好きに作ってください。(それも書いて貰えると嬉しい)
    読むキッカケが生まれるかもしれないのでURLがはってあるといいです。

    ではスタート。


      [No.2225] >586さん 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/01/25(Wed) 19:05:20     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    プログラム出来る人きたこれ。
    さあ、DLして解析する作業に(ry










    期待してるのがばれてr(ry


      [No.2224] Re: >イサリさん >わたぬけさん 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/01/24(Tue) 21:18:25     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >> 1感想を投稿すると管理側から操作しない限り編集・削除ができない。
    >
    > これが一番悩ましいですね。
    > プログラムくわしい人がいじったらなんとかなるものだろうか……

    ライセンスを確認したところ、とりあえずは改変はOKな様子。
    実装できるかどうかは分かりませんが、一度ソースを確認してみたいです。
    少し手を加えれば何とかなるかも?


      [No.2223] 解き方 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/01/24(Tue) 12:39:28     26clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ゼロの焦点っぽくスピード感のある解き方ですね。

    >締め切りは守りましょうwww
    あーあー聞こえない


      [No.2222] >イサリさん >わたぬけさん 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/01/24(Tue) 03:35:47     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >イサリさん

    ホラーは実はどうしようか迷ったところで
    どうせなら最初からホラーとして読むんじゃなくて地雷踏んだほうがいいかなと思わなく(ry
    まーでも、あったほうがいいかな! 検討します。

    ふと思ったんだけど愛憎劇とかはどうなんでしょうね(
    いやふと思っただけだけど。


    >わたぬけさん

    どうも、なんか勝手に話題に挙げちゃってすみません。
    まろやかの存在自体は実はポケノベさんの導入前から知ってたんですが、
    どうしようかなー と迷いつつコンテストなんぞやってる間に、今に至りました(笑)
    今日、オクレ青年投稿しに行きましたけど機能としてはかなり使いやすいですね。

    問題にあがった3点のうち、
    > 2「小説家になろう」にあるような、話と話の間に一話挟む所謂「割り込み投稿」の機能が無い。

    に関しては、
    今ある投稿分を上書きして別の話に書き換えることで、順序を入れ替えられるので
    これはまぁ回避策があるんですよね。(マサポケの本棚もそうでした)


    > 3投稿形式を「読切小説」にしてしまうと基本流れっぱなし。

    これは短編集にするように勧めるしかなさそうです(笑)


    > 1感想を投稿すると管理側から操作しない限り編集・削除ができない。

    これが一番悩ましいですね。
    プログラムくわしい人がいじったらなんとかなるものだろうか……



    > もちろん猿まねするようなことはするつもりありませんが、ここでの意見を参考にしたタグが増えるかもしれません(笑)

    ほほうw
    何が増えるか楽しみにしておきます(笑


      [No.2221] Re: 【意見募集】本棚設置に関して 投稿者:わたぬけ   投稿日:2012/01/24(Tue) 01:54:25     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ひと通り議事録に目を通させて頂きました。
    私どもが使ってるのをご覧になったのがきっかけになったというのなら、それは大変に幸いなことです。
    自分も初めてまろやか投稿小説ぐれーとのことを知ったときはまさしく「これだっ!」と思って導入に至りましたからね。
    ただ、ツイッターのほうでも少しばかりリプライさせて頂きましたが、機能的には大変優れているこのシステムですが、その分細かい所で小回りがきかない点がありますのでそのあたりをどうかお気をつけて。
    特に気になるものを挙げますと以下の三つになります。

    1感想を投稿すると管理側から操作しない限り編集・削除ができない。
    2「小説家になろう」にあるような、話と話の間に一話挟む所謂「割り込み投稿」の機能が無い。
    3投稿形式を「読切小説」にしてしまうと基本流れっぱなし。

    3につきましては議事録にもありましたように、どの作品も最終的には流れてしまうので仕方のない話ではありますが。


    今回の議事録を読ませて頂きまして、現行で使用させていただいている自分にとっても参考になるような意見がたくさんあって今一度考えさせられるきっかけにもなりました。
    特にタグなどももっとバリエーションがあってもいいかもしれませんね。自分はただ事務的に分けるみたいな感覚でしか設置してなかったきらいがありますので。
    もちろん猿まねするようなことはするつもりありませんが、ここでの意見を参考にしたタグが増えるかもしれません(笑)


      [No.2220] 呪い 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/01/24(Tue) 00:22:31     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    ※欝注意 特に受験前の人にはよろしくない仕様です。





















    「人を呪わば穴ふたつ」と口ずさみながら少女が登校した。古結晶子の携帯電話が鳴ったのは、それから一週間後のことだった。その時晶子はコーヒーを飲んでいた。
     電話の相手は言った。
     今、この町にのろいが蔓延している
     のろいの根源を探し出し、のろいを断ち切ってくれないか
     晶子はこう答えた。
     自分はしがない私立探偵で、のろいもゴーストポケモンも専門ではない
     しかし、行こう
     相手はほっと息をついて電話を切った。晶子はコーヒーを飲み干し、トレンチコートを羽織っると、ボールを三つ取り付けたベルトを持って外に出た。手前からモンスターボール、スーパーボール、ハイパーボールと並んでいる。晶子は目的地の方角を見やった。曇天だった。

     電車でひと駅。地図の上では隣にある町は、晶子には縁遠い、整然とした住宅街だった。ポケモンの姿が見えない、静かな町に晶子は降り立った。
     折り返し電話をかける。後ろで公衆電話が鳴った。携帯電話を切る。同時に公衆電話もピタリと静まった。ノイズから離れた耳に、下校する子どもたちの声が蘇ってきた。
     またらしいよ
     六年一組だって
     のろいなのかな
     こわいなあ
     晶子が振り向いた時には、子どもたちの一団はT字路の向こうへ消えていた。それとも幻だったのか。
    「サン」
     赤と白のボールからエーフィを呼び出す。薄紫の猫又を傍らに従えた晶子は、子どもたちがいた方とは逆向きに歩き出す。同じT字路があった。目まいがした。

     売店で雑誌を買う。バイトだという年若い店員に話をふると、彼は嬉々として話してくれた。
    「小学校って、すぐそこなんですけど、そこで女子生徒が自殺したって。いじめがあったらしくて。でもそれで終わりじゃなくて、その自殺した女の子が、ゴーストポケモンになって、自分をいじめた奴に仕返ししてるっていうんですよ」
    「いじめられっ子がゴーストポケモンになるなんて、都市伝説によくあるけど」
     晶子がそう、気のない風を装うと、若い店員は違うんですよと勢いづいた。
    「その証拠に、のろいのノートが残ってるらしいんですよ」
     だから、のろい。
     のろいの蔓延。のろいの根源。電話の向こうの声がリフレインした。
     のろいのノートについて、あるらしいという噂以上のことは分からなかった。お礼程度にコーヒーを買い求め、その場を去った。

     エーフィのサンが眠たげに尻尾を揺らした。その先に公園があった。申し訳程度の緑で囲われている公園の、青く冷たいベンチでコーヒーのプルタブを起こす。苦い液体は、とうに温くなっていた。青いベンチの上に灰色の雑誌を広げた。エーフィは彼女の足元で欠伸する。
     静かな時間が流れた。細い首のようなポールの上に、丸い時計が乗っかっている。長い針が控えめに動く。雑誌にはのろいに関係ありそうな話は載っていなかった。ただ、この前新聞に載っていた少女の自殺が、この町の小学校で起こったということだけ分かった。
     晶子はその記事を新聞で見たはずだ。新聞で読んだ時、何を思っただろう。おそらく、特に何も思わなかったのだろう。そして、どこで起こったかなど、全く気にかけなかった。
     強いて言えば、またか、と思った。
     また自殺か。またいじめか。
     それで、何かが解決するのか。いじめて、自殺して、何が。
     胸に真っ黒の油みたいなものが溜まっていくのを感じながら、晶子は立ち上がった。目まいがする。緑で縁取られた公園を見回して、何故こんな閉塞感を感じているのだろうと思った。ここには自然があり、遊ぶ場所があるはずなのに。
     晶子の不快感を察したかのように、エーフィが公園の入口に先立っていた。揺れる二又の尻尾を追いながら、晶子は公園の出口で違和感に気付く。
     そうだ、子どもの声がしないんだ。
     昔は、晶子が小さい頃は、学校が終われば適当なポケモンを連れ出して、近所の公園で遊んだものだった。今はポケモンの管理が厳しくなって、子どもらも実習の授業以外ではポケモンバトルをやらないのだ、と何かで読んだことがあった。それにしても静かすぎる、と思った。
     まじないのように腰のハイパーボールに触れた。晶子が来るのをエーフィが待っていた。

     猫又の行く先に晶子の目的地があった。雑誌の写真をかざし、下げる。
     自殺した女子生徒の家。
     隣の家も、向かいの家も、いや、ここに来るまでに見たどの家も白くて真四角だったのに、この家だけはくすんで歪んでいた。まるで、家という規格からここだけ落伍したかのように。エーフィが目を細めて、その落伍した家を熱心に見ていた。正確には、二階の家の窓辺りを。晶子もその窓を見た。カーテンが引かれて中が見えないガラス窓以外、何も、なかった。
     インターホンに指を近付け、押した。どこかで誰かを呼ぶ電子音がした。
    「はい」
     少しくすんだ扉を開けて、女性が現れた。やつれてはいない、目の下に隈もない、どこにでもいそうな、痩せ型の、肌が疲れた女性。
    「警察の方?」
     私立探偵です、と名乗ろうとした矢先、
    「警察です」
     後ろから声がした。見知った無精髭の刑事がそこにいた。
    「あ、青井さん」
    「なんだ、あんたか。……ちょっと、よろしいですか」
     そのまま、なし崩し的に晶子も家に上がることになった。表札には「守屋」とあった。

     畳の間に通された晶子は、青井刑事の隣に座り、守屋という女性と向かい合った。晶子にとって何とも居心地の悪い数秒間が経過してから、青井が口を開いた。
    「学校の方から連絡があったかもしれませんが、また」
     そこで口を切り、晶子に目配せした。あんたは何用で来た、と問いかけているのか、それとも、あんたはどこまで調べた、と探りたいのか、警察を辞めて長い晶子にはもう判然としなかった。
     エーフィは晶子にぴたりと寄り添い、気配を探るように耳と尾をピンと立てていた。

    「ええ」
     守屋が口を開いた。それは晶子には、唐突に感じられた。
    「のろいだと」
     続けて守屋が言った言葉は、晶子の予想通りで、しかし微妙にワンテンポ遅れて伝えられたように晶子には思われた。
     青井が話し始めた。
    「六年一組の子です」
     そして、今度は守屋の方を探るように見た。しかし、守屋は反応ひとつ見せなかった。何の感情も見せようとせず、というより、見せる感情さえないのだといった様子で、ただ刑事の言葉を待っていた。
     青井は咳払いをした。
    「今度は感電死だそうです。何か、心当たりは」
    「ありません」
     守屋は、今度は素早く言った。
    「そうですか」
     守屋は立ち上がると、部屋を出ていった。軋む音が上っていく。階段を上ったらしい。晶子と青井はその間、畳の間で待ち続けていた。無為な時間。しかしそう思っても、晶子は今この家で口を開く気になれなかった。隣ではエーフィが耳と尾をピクピクと震わせていた。

     階段を下りる音がして間もなく、守屋が姿を現した。
    「これ」
     座るとほぼ同時に、日焼けした畳の上に一冊のノートを乗せた。
    「それから」
     何の変哲もないモンスターボールを一個、ノートの隣に置いた。
     青井がモンスターボールを、晶子がノートを手に取った。
    「お返しした方がいいかと思って」
     守屋が、晶子も、ノートも見ずに言った。彼女はどこを見ているのだろうと晶子は訝った。
    「遺品ですが……こうも事件が続くようなら……返した方が」
     晶子は守屋の訥々とした声を聞きながらノートの表紙を捲った。子どもっぽい、冒険物語の始まりが書いてあった。
    「警察でひと通り調べましたが、もし我々が預かった方が望ましいのであれば」
     はきはきとした青井の返事をいいことに、晶子はノートを一旦閉じると、自分の手元まで引き寄せた。エーフィが刹那顔をしかめて表紙を睨む。
    「ええ……返した方が」
     守屋は変わらず、宙に視線を彷徨わせたままそう言った。そして、風にでもなびいたように急に顔を動かすと、青井の手元を見て、言った。
    「そういえば、いないんです」
    「いない?」
     青井がオウム返しに聞く。守屋は再び視線をどこかへやって、
    「ええ、いなかったんです、スターが……」
     と消されそうな声で呟いた。

     守屋家を辞去して道に出た。途端、恐ろしく寒い外気に包まれて、晶子は身震いした。
     青井は警察に連絡している。彼が電話を切るのを待って、晶子は話しかけた。
    「どうも、お世話かけました」
     要らなかったけどね、と付け足したのは晶子なりの矜持だ。かつての同僚の青井は、そんな晶子の態度には慣れっこで、「なんでいたんだ」と言った。
    「依頼があったのよ」
     そして簡単な説明をした。電話で、名乗りもせずに、何だか怪しかったのよと言うと、青井はいつもそれだと呆れて言った。
    「それで、のろいはあるのかしら?」
    「噂では、あることになってる」
     青井は晶子の手からノートを取り、裏返して見てから、晶子の手に戻した。
    「警察で調べた限りでは、ない。そのノートも、というかどのノートにものろいらしいもんはかかってない」
     それまで大人しくしていたエーフィが急に二本足で立ち上がると、ノートに向かってきゅうとひと声鳴いた。何かある、と言いたげに。
    「サンが調べたら、何か出てくるかもしれんな」
    「警察のエスパーポケモンやゴーストポケモンが調べたんでしょ。なら何も出ないわよ」
     それでも念の為にと、晶子はエーフィの鼻先にノートを近付けた。エーフィはそれでピタリと大人しくなった。
    「そっちの捜査状況も聞いていい? 言える範囲でいいけど」
     青井はやれやれと言って自分の頭を掻き、同じ手で嫌がられながらエーフィを撫で、近くの公園で話そう、と言って歩き出した。

     青井が選んだのは、先程晶子がコーヒーを飲んでいた公園のベンチだった。
     晶子はノートをベンチの上に置くと、青井の話を手帳に書き入れた。
    「お前、まだそれを栞に使ってるのか」と、晶子が手帳に挟んだ物を見て青井が呆れた顔をした。晶子は意に介さず、メモを取った。

     守屋めぐみ、という女児が自殺した。
     いじめがあったらしいということで、痛ましいが、しかしありふれたこととして、警察にも処理されたらしい。
    「その次の日だ。同じクラスの奴が死んだ」
     殺されたんだ、と青井は痛ましそうに顔を歪めた。
     それから、のろいのノートの噂がまことしやかに囁かれるようになった。
     殺害現場を目撃したと思しきフーディンの様子が、異様だった所為もあるという。
    「で、今日二件目だ」
     やりきれない、と青井がこぼした。それに、スターがいないんなら大事になるぞ、とこれは苦々しげに付け足した。
    「一件目は、叩きつけたか、アイアンテールあたりが使われたらしいからな」
    「あの、聞きたかったんだけどスターって?」
    「それは」
     そのノート見た方が早い、と青井は晶子の隣にあるノートを指差した。
    「のろいのノートって言われてるけど、のろいはなかったのよね?」
    「だろうな」と青井は曖昧な返事をした。
    「ポケモンが使うような、そういうのろいじゃない」とも言った。

     一旦戻るよ、と告げた青井の背中に「待って」と呼びかけた。今、確かめたいことができたのだ。
    「青井さん、ここ、静かすぎると思わない?」
     言い終わって、晶子はほっと息をついた。淀んでいた空気が、少し軽くなった気がした。
    「ああ、思う」
     青井の返事に、晶子の気分はますます軽くなった。そう感じていたのは自分だけではないのだと知ると、ほっとした。
    「最近はガキ相手でもポケモンの管理にうるさいし」
     にも関わらずスターはいなくなっていたが。
    「それに、あれだ、受験じゃないか?」
    「受験?」
     中学受験だよ、と青井が言った。高校にも行っていない晶子には、隔世の感がした。
    「今頃は、みんな受験で忙しいんだろう」
     小学校一年生まで受験しないだろうから、みんなってことはないと思うけど、という晶子の言葉は流して、今度こそ青井は去って行った。晶子は栞がわりの虹色の鳥の羽を、手帳に押し込んだ。パン、と音を立てて手帳を閉じると、エーフィを呼んで公園を出た。

     相変わらず、町にポケモンの影はない。人は時折すれ違うが、それでもたくさんいるという印象はない。
     みんな、あの箱の中にいるのだろうか。
     白い住宅の列から目を離して、晶子はエーフィの後を追った。エーフィは青井が去ってから、気忙しげにノートを鼻先でつついては、あっちへ行きこっちへ行き、そしてまた晶子の所へ戻り、を繰り返していた。
     もしかして、気になる匂いがあったのだろうか。晶子は腰のスーパーボールを外すと、中にいるポケモンに呼びかけて、誰もいない道の真ん中に開け放った。
    「ヘル、このノートの匂いを追ってくれない?」
     地獄の番犬とも称される細身の黒犬は、ノートに鼻を近付け、エーフィと何か言葉を交わすと、自信ありげな様子で晶子たちの先導にかかった。エーフィの方は荷を下ろしたように表情を緩ませていた。
     エーフィにボールに戻るか、と尋ね、断られた晶子はそのままヘルガーの先導に従った。時折、小脇に挟んだノートを気にしながら。のろいのノートと呼ばれたこれには、何が書かれているのだろう。

     ヘルガーが低い声で鳴いた。
     小学校。
     背の低い校門はピタリと閉じられていた。緑色の鉄格子のような校門の向こうには、広く寒そうなグラウンドがあった。誰もいない。事件があったから生徒を帰してしまったのだろう。晶子が校門の番をしている警備員に話しかけ、その警備員が晶子を入れる許可を取りにどこかへ行ってしまっている間、晶子はノートを読んでいた。
     のろいのノート。
     しかし、表紙にはのろいとは書かれていない。そこいらで売っている大学ノートの表紙には、名前が書いてあるだけだ。
     守屋愛。
     マジックで書かれた名前に黙祷を捧げ、晶子はノートを開く。晶子が昔考えたような、拙い夢物語がそこにあった。

     ポケモンだけしかいない大陸
     そこに、スターというピカチュウがいました
    「やあ、スター」
     今日は友達のルリリとウパーと、待ち合わせをしていました
    「あずるとサラマン! 遅いよ!」
     スターは二人に怒りました
     ルリリはあずる、ウパーはサラマンといいます
    「ごめんごめん、さあ行こうよ」
     二人が謝ったので、スターは許しました
     三人で、今日は森に行く予定です
     不思議の森で、大人には行くのを禁止されていました
     ……

    「入っていいですよ」
     警備員の声で、現実に引き戻された。いつの間にか、校門が開いていた。
     ありがとうございます、と礼を述べて小学校の中に踏み入った。ヘルガーは障害が無くなって清々した、と言わんばかりの様子で先先進み、エーフィはエーフィで、自分の仕事は終わったとでも言いたげに晶子の後ろからノロノロ付いて来ていた。

     小学校の入り口は開いていた。校門は閉まっていたが、校舎は開いているものらしい。しかし、ヘルガーはその入り口には見向きもせず、校舎の裏手に回った。
     開けたグラウンドとは反対に、校舎の裏側は雑木林になっていた。緑がこんな形で残っているのに驚きながら、晶子はヘルガーの後を追う。晶子には木々の名前は分からないが、ここで子どもたちが遊んだりするのだろうか、と思いながら。
     ヘルガーがある木の根元に鼻先を付けると、そこにお座りをした。右前足をひょい、と上げ、何かを促すように晶子を見る。
    「自分で掘って」
     晶子がそう言うと、ヘルガーは渋々、木の周囲の土を掘り返し始めた。エーフィも晶子たちに追い付いたが、ヘルガーを手伝う気はさらさらないらしく、晶子の横に伏せた。当て付けのように鈍い動作を見て見ぬふりして、晶子は手元のノートに目を通した。

     ノートの続きには、ピカチュウのスターと他二匹の冒険物が書いてあった。スター、というのは守屋愛の手持ちだったのだろう。そのピカチュウが活躍する物語を、彼女は書いていたのだ。晶子の予想通り、強そうな敵が出てきて、あっという間に倒し、宝物を手に入れる。同じような展開が続いていた。
     これのどこがのろいのノートなのだろうか。のろい以前に、まず日本語をどうにかした方がいいレベルだ、と晶子は思った。青井が受験と言っていたのをふと思い出した。守屋愛の学力はどうだったのだろう。ノートを捲っていく。おや、と思った。
     字が綺麗になっている。

     ……
     帰ってくると、スターの部屋が荒らされていました
     今までに手に入れた宝物がありません
     スターは二匹の所へ行きました
     広場に着きました
     二匹はスターを見ると、クスクス笑いました
    「今まで宝物を手に入れるために騙してたんだよ。スターのばーか」
     二匹の後ろに宝物がありました
     スターは十万ボルトであずるを倒し、アイアンテールでサラマンを倒しました
     スターは裏切り者を倒しました

     何これ、と晶子の口から声が漏れた。晶子が頁を捲ろうとする、それを止めるようにヘルガーが鳴いた。そして、ヘルガーの制止よりも大きく、
    「何ですか、あなたは」
     女性の叫び声が雑木林に響き渡った。
     晶子は反射的に立ち上がった。
     サンドパンを傍らに控えさせた若い女性が、恐怖と怒りに満ちた眼差しで晶子のノートを見、ヘルガーが掘り返していた足元を見た。ヘルガーがビクリと身を引いた。
    「それは」
     女性の口から三音が漏れ、凍りついたように閉ざされる。
     晶子は黙って携帯電話を取り出し、青井の番号にかけた。ひと言「小学校の裏」とだけ告げて、電話を切る。同時に、体を支える腱も切れたかのように、女性がくずおれた。
    「違うんです、襲われると思って。あっちが、あっちが先に襲ってきたんです」
     晶子は土に抱かれて眠る、黄色い電気鼠を見て、すぐ目を離した。心の中で祈る。サンドパンを連れた女性は、まだ喚いていた。
    「私が悪いんじゃない、正当防衛だもの。私は悪くない、私は悪くない」
     サンドパンは自分のトレーナーの様子に慄いたのか、それとも別のものに怯えたのか、背中の棘を剥き出して丸くなって、ぎゃんぎゃんと鳴き始めた。ヘルガーが怒ったように吠え始めた。
     その光景を、エーフィだけははじめから知っていたように、静かに眺めていた。

     警察が到着しても、女性はまだ自分は悪くないと呟いていた。
    「あれこそ、のろいじゃないか」
     彼女を乗せて出発した警察車両の背を見送って、青井がぼやいた。彼女は守屋愛のクラスの担任だったらしい。いじめがあったとしたら、教師も後が大変だっただろうと青井はついでのように呟いた。
     晶子はというと、のろいのノートを胸にしっかりと抱き締めて、彼女が言ったことを頭の中で反芻していた。

     私は悪くない
     あの日、私は花瓶を置こうとして
     あの子の机に
     そしたら、あのピカチュウと
     ノートが
     のろいのノートが

    「調べてもらわなきゃ分からないが、十中八九スターだよなあ」
     捜査のやり直しだ、と言ったが、青井はさして残念そうではなかった。
    「他に目星があるの」
    「それは言えない」
     それより、と青井は言った。
    「あんたはのろいを調べなきゃならないんだろう」
    「それなんだけど」
     ちょっと情報都合してよ、と晶子は言った。

     守屋愛は中学受験に落ちていた。
     その場合は、必然的に学区内の中学校に通うことになる。小学校の全員が受験するわけではないから、いじめっ子たちもほぼ繰り上がりで同じ中学にやって来る。
     嫌、だったのだろうか。
     気持ちいいはずは、ない。学区から遠く離れた中学校で、心機一転、互いが初対面のメンツで始めるのと、小学校の続きのような場所で、いじめっ子たちと再び一緒にいるというのと、どちらが良いか。でも、それでも、死ななければならないなんて。
     そこまで思い詰める児童の気持ちを推し量るには、晶子は歳を取りすぎている気がした。中学受験も、実習でしかやらないポケモンバトルも、綺麗すぎるほど整えられた町並みも、晶子には既に別世界のことのように感じられるのに。

     晶子は三度公園に戻っていた。緑の箱庭で、守屋愛のノートを広げる。晶子を気遣うように、公園に明かりが灯り始めた。空を見上げて、雲が夕焼けに染まっていることに、晶子は気付く。
     ヘルガーは疲れたらしい、地べたに転がっていた。エーフィは薄紫の瞳で、黙って晶子とノートを見ている。
     晶子はエーフィにも見えるようにノートを傾け、続きを読み始めた。
     ノートは真っ黒になっていた。

     なんで私がキモいとか死ねとか影口ばっかり
     あいつらが死ねばいい死ねって言ってるあいつらが死ねばいい
     佐野優子と松下陽菜と太田恵梨香と橋本直美と八木満 全員死ね
     私が死んだら全員

     晶子はいたたまれなくなってノートから目を離した。エーフィはまだ、ノートを見つめていた。
     箱庭の空気を吸い、再びノートに目をやる。読もう、としても全ては読めなかった。ただ、どこを読んでも「死」というワードが視界に入り込んできた。それは、いじめっ子が死ぬことであったり、守屋愛が死ぬことであったり、途中からは、いじめを訴えても助けてくれない担任の教師が死ぬことであったり、した。死は、こんなに軽かったか。
     ただ、と晶子は思う。このノートに名指しで書かれた誰も、死んでいない。殺された子どもたちの名前とは、どれも一致していなかった。
     スターだけが死んだ。
     晶子は頁を捲っていく。子どもががなり立てるような死の文字の羅列は身を潜めて、日記のような文章が現れた。比較的、落ち着いた文体で、遅いけれど中学受験をすることに決めたこと、受かるか分からないけれどやるだけやってみよう、と前向きな文章が綴られていた。
     実習であずると当たるのが苦痛。前は仲良かったのに。
     頑張ろう、と前向きな文章の中に、それだけ浮いて見えた。晶子はさらに先に進む。

     前向きな日記が突如として途絶えた。一頁丸々空きがあって、次の見開きに、整然と文字が並べてある。
     遺書、と題されていた。

     私、守屋愛は今日死にます
     私をいじめた人を絶対に許しません
     私をいじめた人は、幸せにならないでください
     充実した学校生活なんか送らないで、いい就職なんかしないで、幸せな結婚なんかしないで暮らしてください
     私がなんで死んだか、永遠に考え続けて生きてください

     これがのろいか、と晶子は思った。
     小学生にしては恐ろしく整然と、遺書は綴られていた。口座に預金してある分はお母さんにあげます。それから、学習机の三段目のピンクの箱に、今まで貰ったお年玉が入ってます。そんなことも書かれていた。
     晶子は次の頁に目をやる。
     エーフィがひと声鳴いた。

    「あ……」
     いつの間にか晶子の目の前に立っていた女性が、一礼した。晶子も慌てて座ったまま礼をする。
    「犯人、捕まったみたいですよ」
     その女性は――守屋の母は、疲れた肌に似合うくたびれた笑みを浮かべた。
    「夕方のニュースでやってました。めぐみのクラスの子、どちらも親が犯人だったと」
     間に合ったのか、と思った。青井の顔を思い浮かべた。多分、最初からスターは犯人だとは思われていなかったのだろう。ちゃんと確かな線を追っていたのだ。
    「最初の……めぐみの次に死んだ子なんか、親のポケモンに殺されたんですって。酷い話ね」
     殺害現場を目撃したらしい、フーディンの様子がおかしかった。そう青井は言っていた。そして、フーディンはアイアンテールを使える。分かれば容易いことだ。
     どうしてそんなことができるのかしら、自分の子どもに。
     そう言う守屋の母は、けれど答えを知っているように、晶子には思われた。
     どれも同じに造られた家の群れの中で、唯一はみ出した家に住む人。
    「その次は保険金目当てで。のろいの噂に乗じてやればばれないと思った、って」
     守屋は話しながら、しっかりと息を吐き出した。そして、晶子が持つノートに目を落とした。
    「それ……」
    「お返しします」
     晶子は立ち上がって、守屋の手にノートを渡そうとした。皺が深く刻まれた母親の手だと感じた。
    「あなたの、娘さんの物ですし」
    「いえ」
     守屋の母は、強い力でノートを晶子の手に戻した。その目には、はっきりと人間らしい意志が感じられた。
    「燃やしてください。あなたが連れているヘルガーさんに、燃やすよう頼んでくれませんか。きっとこれは、燃やした方がいいと思うんです。このノートは」
     急に名指しされたヘルガーが、驚いて体を起こした。晶子はヘルガーをボールに戻すと、守屋に言った。
    「いえ、もっといいポケモンがいます」

     守屋はスターのボールも持って来た。
     少し歪んだ家の小さな庭に、晶子と守屋はいた。
    「燃やして、いいんですね?」
     晶子の問いに、守屋はしっかりと頷いた。晶子はそれを確認して、ベルトにセットされたハイパーボールを開く。
    「燃やして」
     僅かな言葉で意志は通じた。

     ボールから夜の世界に舞い上がった虹色の鳥は、小さな家には大きすぎる翼を広げた。それだけで、ノート自体が意志を持つかのように、火を放ち始めた。金色の炎。
     紙がその形を無くしていく。ノートに染み込んだ黒鉛が、束の間の安寧に身を委ねるように、炎の中に消えていく。
    「スターは、何故死んだんでしょう」
     ポツリと呟くように守屋は言った。炎に照らされた顔に、晶子は疲れきった母の顔を見た。
     あの日、守屋愛がいなくなった日。
     スターはノートを取りに学校に行ったのではないだろうか。
     あのノートは、最初はスターの為に書かれたものだったから。スターのノートだったから。
     多分、守屋愛はいつもノートを学校に持って行っていた。そして、持って帰っていた。けれど、あの日は守屋愛は帰って来なかった。当然、ノートも帰って来ない。
     スターは自分のノートを取りに行こうと学校を訪れた。そして、花を供えようとした教師と行きあった。教師が見たのは、真っ黒なのろいの言葉で埋め尽くされたノートと、それを持つピカチュウ。

     晶子は自分の考えを払うように頭を振った。
     守屋は、虹色の鳥を振り仰いだ。そして「綺麗ね」と呟いた。
     ノートが燃えていく。

     お母さんとスターへ
     先に死ぬけど、ごめんなさい
     お母さんとスターは、幸せに生きてください

     遺書の最後の文字列も、金色の炎の中に消えていった。スターのボールが、パチリと爆ぜて割れた。
    「教えてもらえませんか」
     守屋が、炎の向こう、夜闇と光の境界から晶子を見据えて言った。
    「あなたは、“誰に”頼まれて調べごとをしていたんですか?」
     晶子は、電話の声を思い出した。のろいの蔓延。のろいの根源。
     のろいに蝕まれたこの町を厭い、悲しみ、自分ものろいの餌食になった人物。

     晶子は空を見上げた。のろいの根源は、どこにあるのだろう。
     答えのない空から、雨が落ちてきた。








    ###
    ポケノベさんの文合わせのテーマB「門・結晶・教えて」に間に合わそうとして間に合わなかったもの。
    締め切りは守りましょうwww
    あと、めっちゃ焦って書いてます。むべなるかな。


      [No.2219] Re: 【意見募集】本棚設置に関して 投稿者:イサリ   投稿日:2012/01/23(Mon) 22:55:56     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    えーと、議事録読みました。
    今までの流れだと、

    ポケスト(短編)版→そのまま維持
    ロング版→本棚に統合

    という認識でよろしいでしょうか。


    個人的には現在の掲示板に不都合は感じていませんし、今のままでも、本棚を設立してもどちらでも良いと思います。長編の投稿は最初から本棚に投稿と規定してしまうと、作者同士の交流が減ってしまう懸念もありますが。その反面、シリーズ物を探しやすくなる点では便利だと思います。


    ……あ、すごく個人的なお願いなのですが、「傾向・要素」の項目に「ホラー(or 怪談)」を追加希望です。
    グロテスク項目に入らないホラー物もあるかもしれないと思いましたので。
    むしろ是非そういうのを読んでみたいです(黒

    全然参考にならなそうな意見でごめんなさい。
    民俗の話題で名前を挙げてくださってありがとうございます……!w


      [No.2218] 個人的メモ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/01/23(Mon) 19:54:25     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    個人的メモ

    傾向・要素
    シリアス、ほのぼの、ギャグ、民俗/伝承、バトル、コンテスト/ミュージカル、ポケスロン、コンテスト参加作、書いていいのよ/書いてみた、流血表現、性表現

    舞台
    カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ、イッシュ、オリジナル地方、コロシアム/バトレボ、ポケダン、レンジャー、ポケナガの野望、その他ゲームタイトル、カード、アニメ、ポケスペ、異世界、現代、その他

    登場キャラクター
    ポケモンのみ、オリトレ、ゲーム主人公、ライバル、モブトレーナー、ジムリーダー、四天王、チャンピオン、フロンティアブレーン、ロケット団、アクア団、マグマ団、ギンガ団、プラズマ団、悪の組織、カゲボウズ、きつねポケモン、その他


      [No.2217] >おでんさん 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/01/23(Mon) 18:40:32     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > あ、これは全然違う話ですが、ポケストの掲示板を現行のものからまろやかのものに差し替えるのは良いと思います。ポケノベで投稿していて使いやすかったので。

    まさにその方向です!
    ようするにあれ、本棚機能のついた掲示板みたいなもんですからね。
    投稿兼登録的な。
    デザインもきれいだしいいなと思っていたので。

    ただ、簡易な登録が必要なのと、ちょこっと試しに投稿したい人の為に、ポケスト掲示板も残すようなイメージですね。
    両方に同じもの投稿してもらっても構いませんし。
    掲示板は各話単発、まろやかはどんどん繋げていく。そんなイメージでしょうか。

    ただ、同じ物導入していただけでは芸がないので、
    カテゴリの工夫なんかはしたいですね。
    掲示板を残すのも、そういうところを差別化したいからです。


      [No.2216] Re: 【意見募集】本棚設置に関して 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2012/01/23(Mon) 15:45:20     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    本棚設置について議論されたそうなので、私からも少しだけ意見を。

    ログにもありましたが、現在は投稿作品を保存する場所は数多く存在します。必要とあれば、投稿作品にURL貼り付けて誘導すれば良いだけなので、本棚はなくても問題ないと思います。ただ、完結した連載作品やレスが付きまくった作品、コンテスト作品の保存をする分には良いと考えています。ご褒美みたいな感じで。……どこかアーカイブとかぶっている気もしますが、こんな感じです。参考になれば幸いです。

    あ、これは全然違う話ですが、ポケストの掲示板を現行のものからまろやかのものに差し替えるのは良いと思います。ポケノベで投稿していて使いやすかったので。


      [No.2215] 【意見募集】本棚設置に関して 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/01/23(Mon) 12:32:43     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    昨日、本棚設置に関する議論になったのでチャットログはっときます。
    意見あればどうぞ。

    使うとすればまろやか小説投稿ぐれーと(http://www.s-ht.com/~jackal/index.php?mode=dl&cgi=mtsg)にする予定です。


    21:38:06 No.017 ところで話は変わるのですが やっぱ本棚みたいの作ったほうがええの?
    21:39:35 No.017 図書館を冠しているからには あったほうがいいのかなーとは思うんですけどね…
    21:40:03 櫻野弥生 どういうサイトかによるかなーと。
    21:40:05 No.017 ただ 私もいつまでやってるかわからないのと(私がポケ小説やってる限りは続くと思いますが
    21:40:32 No.017 正直 なろうとかpixivあるじゃないですか
    21:40:54 No.017 ここで補完する意味がどれだけあるのだろうと考えてしまうのです
    21:41:48 No.017 安定性という意味では なろうやpixivのほうがずっと置いておける
    21:42:02 No.017 ここは私がアボンした時点でだめになる
    21:42:22 No.017 やろうと思えばポケノベさんが使ってる アレ(まろやか)使えば出来るんですけどね
    21:43:37 No.017 よーするにここで投稿してる人達がどう考えているかなんですがそこが今一つ見えないのね
    21:44:44 No.017 前に意見募集したけど 1人しか答えないし, あれかな…みんなあんまりそういうのには関心ないのかな?
    21:45:35 櫻野弥生 どうなんでしょうねえ…
    21:45:45 きとかげ 本棚かあ。私は別に必要ないんだけど、理由が自前のHP持ってるから、だから、私の意見参考になるかどうか。
    21:46:00 No.017 一応私がこのサイトを引き継いだ時のスタンスとしては
    21:47:03 No.017 ここを「きっかけ」を提供するサイトにする ということではじめたのですよ
    21:47:26 No.017 ポケモンストーリーズがそれなんですけども
    21:47:36 お知らせ レイコ(Win/IE9)さんが入室しました。
    21:47:40 きとかげ こんばんはですー
    21:48:03 レイコ こんばんはー
    21:48:32 櫻野弥生 こんばんはー
    21:49:00 No.017 というのも 人を集める自信が無かったから
    21:49:05 No.017 なんですけども
    21:49:19 No.017 そしたら思いの外 集まっちゃって
    21:49:32 No.017 コンテストまでやっちゃったんですけども
    21:49:48 レイコ 私はマサポケさんの本棚スタイル気に入っていたので、人が多くても少なくても作品を残せるサイトさんがいいなと思います
    21:50:03 レイコ ほとんど来ないのに偉そうに行ってしまうのもあれですが・・・
    21:50:50 No.017 ただ 作品を残せるのはメリットもあることなんでね
    21:51:25 櫻野弥生 最近投稿なんてしてないのが言うのもあれですが、残すだけならpixivもあったりしますし、それならそれでも問題は無いと思うんですよね。
    21:52:25 櫻野弥生 ただ、やはり最初にここに来たのは本棚というスタイルが気に入ったということもあったので、本棚いらなくてもいいよ、という気持ちにまではならないんですよねえ…
    21:53:30 No.017 ただあの本棚は 10年前は画期的だったけど
    21:53:43 No.017 今となっては手続きが煩雑すぎるので
    21:53:49 きとかげ 残すだけならpixivでいいけど、読む側としたら本棚は有難い。
    21:54:05 No.017 作るならポケノベさんと同じヤツですね
    21:55:01 レイコ 長編をツリー型以外で読めるというのもいいなと思いました<本棚
    21:55:33 No.017 しかしポケノベさんと同じのつくって マルチポストしていいよーってのもねw じゃあみんなポケノベさんに持ってけばいいじゃんってならないこともないw
    21:56:16 No.017 ただ もしかしたら マサポケの本棚だから投稿したい って言う人はいるかもしれない
    21:56:23 No.017 かも
    21:57:54 No.017 ただ pixivに自サイトに マサポケに投稿の手間増えるだけじゃないの? って気もするw
    21:58:30 No.017 需要が読めないんだよねー
    21:58:56 レイコ 再び落ちますね
    21:58:57 お知らせ レイコ(Win/IE9)さんが退室しました。
    21:59:00 No.017 はーい
    21:59:19 No.017 そういう風にぐるぐるしながら
    21:59:43 No.017 現在は本棚作成には至ってません 旧本棚は休止中です
    22:01:55 きとかげ おつかれさまです
    22:02:33 きとかげ 本棚の手続き煩雑というのがネックかな。それがなきゃマルチポストも楽にできるわけだし。
    22:16:50 きとかげ ・読む側としてはあると嬉しい ・投稿しにくさはネック ・あと作品がどう並んでるか分かりづらい ・私個人はHPとpixivがあるのでどちらでもいい。
    22:17:08 きとかげ 今思ってるのはこのくらい
    22:17:35 きとかげ ・投稿された作品もレイアウトが読みにくいものが多い。テンプレ必要では?
    22:17:38 きとかげ このくらいかな
    22:18:03 No.017 ふむふむ
    22:19:00 櫻野弥生 自分としては投稿側としてはどちらでもいいんですよねえ。ただ、読む側だとばらばらのサイトではないですから探しやすいし読みやすいってのはありますね。
    22:19:05 No.017 導入の問題としては 掲示板→掲載 だと二度手間だから 投稿場兼補完場になるのかなって思ってるのよね
    22:19:28 No.017 ポケノベさんのシステムはそうだし pixivのシステムもそうなってるで
    22:19:56 No.017 ただ掲示板のあの企画性というのですか? あれは何か捨てがたいものはありますよね
    22:20:00 きとかげ なるほど >システム
    22:20:50 きとかげ 掲示板に類似したものを本棚としても使う、だと流れていっちゃうってのが嫌だなあ。
    22:20:54 No.017 まぁ私も10年前に入った人間だから  掲示板投稿→本棚に投稿  という習性が染みついているだけかもしれませんが
    22:20:59 きとかげ 私は本棚の保存性というのが好きだから。
    22:21:16 No.017 ポケノベさんの本棚は見たことありますか?
    22:21:25 きとかげ ポケノベさんとこも見たことあります
    22:21:37 No.017 仕組みとしてはpixivと同じですよ
    22:21:47 No.017 投稿 兼 補完なのです あと 連載の場合、更新すると上にあがってくる
    22:22:49 No.017 あれは システムを作った人がいて DLすれば誰でも使えるのね
    22:23:37 No.017 ポケノベさんhttp://pokenovel.moo.jp/
    22:24:03 No.017 ポケモンカードゲームシリーズ は連載物で あがってきてますね
    22:24:20 No.017 短編の場合も ●●短編集という形にすれば
    22:24:24 No.017 あがってきますね
    22:25:01 No.017 やるならまず 投稿場として連載板と統合する
    22:25:30 きとかげ fmfm
    22:25:33 No.017 ただ企画性の維持、練習用としてストーリーズは残しておくといったところかな
    22:25:59 No.017 たとえば 英雄の条件っていったようなものはこういう投稿場だと生まれにくいよね
    22:26:22 きとかげ 英雄の条件も楽しいことなったですねえ
    22:26:28 お知らせ 書いてみたとかのタグは楽しい(Win/Chrome)さんが入室しました。
    22:26:30 お知らせ 書いてみたとかのタグは楽しい(Win/Chrome)さんが退室しました。
    22:26:40 きとかげ 入ってきていいのよ
    22:26:57 No.017 まぁ投稿場でも タグつけていいよって話にすればいいような気もするけど
    22:27:13 No.017 洗濯日和なんかも掲示板ならではの流れだった気がする
    22:27:31 No.017 たぶんpixivじゃあ無理
    22:27:35 お知らせ 流月(Win/Chrome)さんが入室しました。
    22:27:57 流月 言われたので入ってみるノ こんばんはー&はじめまして
    22:27:59 No.017 あれは掲示板と身内の悪ノリがなせる技だと思うのね
    22:28:12 櫻野弥生 こんばんは−
    22:28:23 流月 短編とか書いてみたに関しては今の形式の方がいいと思う
    22:28:30 No.017 ですよねー
    22:28:53 流月 ただ、長編だとポケノベさん方式の方が見やすいし、検索楽そうというのはある
    22:29:06 櫻野弥生 短編集でやりたい、なら別でしょうけど単発ぐらいならやはり掲示板の方がやりやすいですね。
    22:29:17 No.017 本棚導入にするにしても やはり実験の場というか気軽に投稿できる場としてのストーリーズは欲しいかなとは
    22:29:18 櫻野弥生 短編集というか、連作短編?
    22:29:56 No.017 短編はストーリーズに投稿した後、あとで本棚にまとめるイメージっていうのかな
    22:30:03 流月 短編集とかにするとその人の作品の全てが好きではないという人は開けづらい
    22:30:10 きとかげ まろやかのシステム(ノベさんが使ってるやつ)みたいに、新しいやつが上がる形式っていうのは、「頻繁に更新されている小説群を読みやすい」とか、そういう観点からいえば便利なんだろうけど、でもやっぱ“流れちゃう”のよね。自分としては“作品を保存する”=“流れない”というスタンスなので、まろやかシステムやpixivみたのはやっぱ受付ん向きがあります
    22:30:52 No.017 ただやるなら まろやか しか選択肢はないよ 今の所ね あと旧本棚が見やすいとは決して思わない
    22:31:16 No.017 あと掲示板はいずれ流れるからね
    22:31:35 きとかげ 気軽に投稿できるストーリーズは欲しいな。100字以上とか企画あったりとか、楽しいし。
    22:31:37 No.017 しかし 今の話を総合すると
    22:31:46 きとかげ だから自前でHP作ってんじゃないっすかw >流れる
    22:31:55 No.017 やはり本棚と平行して掲示板は必要だね
    22:31:58 流月 掲示板が流れるのはいいとして、読み返したい時に検索かけられるといいなとは思う
    22:32:18 No.017 今の掲示板かけられますよ? 検索
    22:33:15 きとかげ 旧本棚が見やすくないのは同意。作者ごとにも作品名ごとにも中途半端に割り振られてるのがまずマズい
    22:33:53 櫻野弥生 旧本棚は投稿の作業が面倒だった節もあるんで、やるなら簡単に投稿できるってのがいいかなーと
    22:34:08 No.017 旧本棚に比べれば まろやかはレイアウトもきれいだし かなりまとまってると思うな
    22:34:23 流月 まじか  気づかんかった>検索
    22:34:59 No.017 ただ あれだね 単発組の為にやはり掲示板は必要だね
    22:35:02 きとかげ 確かに、ノベさん行った時「いいシステムだな!」って思いましたもん
    22:35:31 お知らせ 音色(Win/Firefox3.x)さんが入室しました。
    22:35:35 きとかげ こんばんはですー
    22:35:36 流月 こんばんはー
    22:35:44 No.017 投稿はしたい でも 登録してID貰ってやるほどじゃあ…  っていう人は確実にいると想うの
    22:36:04 音色 風呂からあがったら何かとても真剣なお話し
    22:36:23 きとかげ マサポケの本棚をどうしようって話ですー
    22:36:32 No.017 とりあえず まとめると 導入するならまろやかただし掲示板は残せ
    22:37:06 No.017 どうしてもきにくわなきゃHPつくりな!
    22:37:11 お知らせ 音色さんの作品まとめて読みたいなー チラッチラッ(Win/IE8)さんが入室しました。
    22:37:12 きとかげ wwww
    22:37:14 お知らせ 音色さんの作品まとめて読みたいなー チラッチラッ(Win/IE8)さんが退室しました。
    22:37:20 No.017 wwwwww
    22:37:23 音色 え
    22:37:27 音色 俺?
    22:37:43 音色 俺の作品まとめるほど数はないでしょう
    22:37:45 流月 作品多いですからねぇw
    22:37:51 お知らせ いえす あいどぅ(Win/IE8)さんが入室しました。
    22:37:52 お知らせ いえす あいどぅ(Win/IE8)さんが退室しました。
    22:37:53 櫻野弥生 wwwww
    22:38:03 No.017 きなりさんも いい加減まとめるべきw
    22:38:11 きとかげ 作品多いように思うのですが……いかんせんあれが。
    22:38:24 音色 レディ・ファントムシリーズが見たいです
    22:38:30 音色 まとまった奴
    22:38:37 No.017 結構:いい加減まとめろよ人口は多い、と
    22:38:49 音色 ていうか、俺は気が付いたらシリーズ化しちまってるのが行けないんだ!
    22:38:50 流月 きなりさん、音色さんはまとめるべき
    22:38:59 No.017 だよねー>レディ・ファントムシリーズ
    22:39:14 音色 ゴ―スやペンドラーや中華鍋は気が付いたらあぁなっていたんだ!
    22:39:16 No.017 あとクーウィさんもまとめるべきだし
    22:39:29 音色 師匠の奴なら俺が勝手にまとめてますが何か
    22:39:38 No.017 そういう意味で需要はあるか…
    22:39:40 No.017 なんだと
    22:39:53 No.017 ファイルをよこせ
    22:39:47 櫻野弥生 短編じゃなくて自称中篇をまとめないといけない人が(
    22:40:03 お知らせ うp(Win/IE8)さんが入室しました。
    22:40:04 音色 ダメっすよ鳩さん
    22:40:04 お知らせ うp(Win/IE8)さんが退室しました。
    22:40:10 音色 まだ完全じゃないのです
    22:40:24 流月 クーウィさんはそのうち全部文庫化するんでないかと予想
    22:40:25 音色 別板連載も含みでちょっとごちゃごちゃなんす
    22:40:33 No.017 なるほど  なんか需要がありそうなのはわかった
    22:41:02 音色 宴なんか途中どまりだし>師匠の奴
    22:41:02 きとかげ 仮にまろやかを導入するなら、タグ考えないとなー、と思います。pixivでもだけど、タグが良く機能してるとは思えない。
    22:41:15 No.017 あ、ちなみにログとかまとめていいすかね
    22:41:28 きとかげ このチャットの? かまいませぬよー
    22:41:33 No.017 他の人にも読ませてみたいな
    22:41:37 音色 宜しいのでは?
    22:41:38 No.017 そうこのチャットの
    22:41:48 櫻野弥生 まろやか導入なら加筆修正して投稿したはいいけど放置した奴を掘り返す( ログいいすよー
    22:42:26 No.017 よしよし
    22:42:38 音色 これを見ながら新しくシリーズ化してしまいそうなお話があるんです、なんて言えない
    22:42:42 No.017 あ、でも今の時間はログとれないんだよな…おのれ
    22:42:45 きとかげ wktkwktk
    22:43:01 お知らせ wktk(Win/IE8)さんが入室しました。
    22:43:07 音色 どの辺からあればいいの>ログ
    22:43:07 wktk wktk
    22:43:10 お知らせ wktk(Win/IE8)さんが退室しました。
    22:43:13 きとかげ 閲覧の中にログとってた人いないかなw
    22:43:41 No.017 いや あとでまとめでばっさりとるよ
    22:43:50 音色 あ、そうですか
    22:44:03 音色 期待されても面白くはないよ
    22:44:07 きとかげ そうですかー。
    22:44:10 きとかげ だが期待する
    22:44:15 音色 やめてー
    22:44:23 きとかげ <●><●>
    22:44:36 お知らせ <●><●>(Win/IE8)さんが入室しました。
    22:44:40 <●><●> <●><●>
    22:44:40 流月 期待しないで正座待機しておけというメッセージか
    22:44:40 きとかげ <●><●>
    22:44:40 櫻野弥生 なんか新作考えて包囲されればいいんですかね?
    22:44:41 お知らせ <●><●>(Win/IE8)さんが退室しました。
    22:44:43 No.017 忘れないようにストーリーズに投稿するよ
    22:44:50 音色 螺旋な日記だって真面目にやろうか悩んでるんだから
    22:44:58 きとかげ いいと思います! >新作考えて包囲
    22:45:16 流月 その発言だけで包囲します
    22:45:25 No.017 あとあれだな システム改編したときは よろず板とストーリーズは統合で良いな?
    22:45:27 お知らせ 包囲!(Win/IE8)さんが入室しました。
    22:45:28 お知らせ 包囲!(Win/IE8)さんが退室しました。
    22:45:38 音色 ですな
    22:45:45 No.017 連載板は廃止で
    22:45:50 櫻野弥生 それでいいかと。
    22:46:00 きとかげ 統合でいいかと
    22:46:01 流月 本棚に長編が投稿できるのならいいかと
    22:46:14 No.017 廃止っていうか実質統合か
    22:46:33 No.017 長くならないように 十レスくらいで区切って貰おう
    22:47:03 No.017 第○話を掲示板に落としつつ
    22:47:14 No.017 本棚更新みたいな感じでやって貰うか 本棚だけ更新してもらっても構わないし
    22:47:58 きとかげ 何を十レスぐらいで区切るのです?
    22:48:24 No.017 投稿が長引くと スレッド長くなって 他を圧迫するでしょ?
    22:48:51 きとかげ ああ、スクロール大変になりますね
    22:50:22 No.017 うむ だいたい方向性見えてきた ありがとう
    22:51:27 音色 今更考えると、単発らしい単発が「鞄」「嵐の暴君」「執行人」「触れる」「主人公の条件」くらいしかない
    22:51:45 音色 後は大体シリーズ化してないか
    22:51:57 流月 ですね
    22:52:10 きとかげ いえいえこちらこそ
    22:52:38 音色 何故だ!?
    22:52:50 音色 るっき―教えて
    22:52:51 No.017 タグはあれだな ストーリーコンテストは必須だろうな 【書いてみた・書いていいのよ】 あたりも
    22:54:14 きとかげ 書いたとこから世界が広がってくんじゃね
    22:54:44 きとかげ 多すぎず、少なすぎず、客観的に判断できるもの、かなあ。>タグ
    22:54:56 きとかげ あんまきっちり詰めて考えてないですが
    22:55:32 流月 書いた世界のその後が気になって書いてるからじゃないですかね>シリーズ化
    22:56:02 流月 あんまり使われてないけど【描いてみた】とかもあっていいのか
    22:56:23 音色 描けないから書いている人
    22:56:31 きとかげ いいと思うのです >【描いてみた】
    22:56:32 No.017 【描いてみた】は悩ましいなw
    22:56:40 きとかげ よく知らないけど、まろやかは挿絵機能あるみたいだし
    22:56:55 音色 うぅ、単発が上手くなりたい
    22:57:01 No.017 ただ 描いてみたの為に登録か(
    22:57:19 お知らせ シリーズ化したっていいじゃない(Win/IE8)さんが入室しました。
    22:57:20 お知らせ シリーズ化したっていいじゃない(Win/IE8)さんが退室しました。
    22:58:00 No.017 http://pokenovel.moo.jp/mtsg/mtsg.cgi 参考までに再び貼る
    22:58:07 音色 単発を書く→なんか設定追加→気がつけばシリーズ→自分で〆切設定(じゃないと終わらない)→〆切に追われ自分で首を絞める
    22:58:30 流月 書けてるならいんでないかな
    22:58:38 No.017 カントー ジョウト ホウエン シンオウ イッシュ オリジナル地方 ポケダン みたなカテゴライズはいいな
    22:58:52 きとかげ どうだろう
    22:59:11 No.017 登場人物 はオリトレ項目欲しいね
    22:59:24 きとかげ カントーやジョウト飛び回る人もいるだろうし、ポケダンでなくともポケモンオンリーの世界観で何かやる人はいるだろし
    22:59:46 音色 ゲームの主人公だけどそれはオリトレになるんだろうか
    23:00:01 No.017 あとポケモンサーチのカテゴライズも参考になりそうだ
    23:00:05 きとかげ というか、そのカテゴライズで自分は検索しないからなあ……
    23:00:17 流月 ここじゃオリポケはあんま見ないなぁ そういえば
    23:00:49 No.017 まぁ私も好きな作家で見ちゃうけどなw
    23:00:52 流月 作者ぐらいかなぁ 検索するとしたら
    23:00:57 きとかげ 同感w >作者
    23:01:13 No.017 でもこう マサポケ独自のタグがあってもいいよな
    23:01:16 流月 ジャンルとして、バトルもの、とかで検索できるならするかもしれない
    23:01:19 No.017 民俗 とかな
    23:01:25 音色 民俗www
    23:01:31 きとかげ 民俗w
    23:01:37 No.017 俺とクーウィさんのためのタグだな
    23:01:48 音色 専用タグ
    23:01:49 No.017 あとイサリさんあたりwww
    23:01:57 きとかげ 専用タグw
    23:02:04 流月 専用タグww
    23:02:27 お知らせ さすがwww(Win/IE8)さんが入室しました。
    23:02:28 お知らせ さすがwww(Win/IE8)さんが退室しました。
    23:03:25 流月 鳥タグもあっていい気はするんだけどなぁ
    23:03:29 No.017 ポケノベではマサポケを神社というというウワサ
    23:03:48 No.017 あとタイプ別検索
    23:04:03 きとかげ 自分だと、原作キャラ多めか、オリトレ多めとか、STREETの傾向があるとかが分かると嬉しい
    23:04:04 No.017 ゴースト ひこう…
    23:04:05 流月 九十九さんせいか>神社
    23:04:12 きとかげ 思うけど、多くても意味ないと思うんだ >タグ
    23:04:32 きとかげ マサラのポケモン神社w
    23:04:35 流月 タイプ別は使うかなぁ ジャンルはまだ使いそう
    23:05:00 No.017 わかったよ! カゲボウズタグ用意すればいいんだろ!!!!!
    23:05:10 音色 自作品のカテゴライズがまずわからないから使いもしないと思う
    23:05:13 きとかげ ピンポイントwww
    23:05:15 流月 浮気者タグも用意してくれるとありがたい
    23:05:16 No.017 仕方ないね
    23:05:17 お知らせ マサポケイズム(Win/IE8)さんが入室しました。
    23:05:18 お知らせ マサポケイズム(Win/IE8)さんが退室しました。
    23:05:23 音色 ピンポイントすぎるwww
    23:05:30 No.017 マサポケタグの特徴
    23:05:36 No.017 民俗 カゲボウズ
    23:05:39 流月 ピンポイント
    23:05:54 きとかげ あるいはもう、検索に使う方向性やめて完全ギャグ路線でいくか >タグ
    23:06:08 No.017 それはそれでおいしいな…
    23:06:27 音色 何のためにあるタグなのかそれすらも分からないw
    23:07:00 きとかげ だってどうせ検索するのは作者別だものw
    23:07:08 No.017 っっっっっっw
    23:07:15 流月 きとかげさん、マジ黒い
    23:07:51 No.017 同じまろやか使うなら マサポケの特徴出したいね
    23:08:06 きとかげ 真面目な話、他所で見ていてタグ機能してるかというと疑問なのですよ。
    23:08:21 流月 それは言える>タグ機能してない
    23:08:28 音色 正直、タグなんて見てない
    23:08:45 No.017 とりあえず ストーリーコンテスト、【書いていいのよ・書いてみた】、民俗、カゲボウズは必須だろう
    23:09:17 No.017 つっこめよ
    23:09:30 音色 え、マジかとおもって
    23:09:34 きとかげ wwwwwwww
    23:09:36 音色 >民族 カゲボウズ
    23:09:37 流月 ごめん、おれ観客だから
    23:09:39 お知らせ つっこみどころが多すぎんですよ!(Win/IE8)さんが入室しました。
    23:09:40 お知らせ つっこみどころが多すぎんですよ!(Win/IE8)さんが退室しました。
    23:09:56 No.017 まぁ わりとマジだけど
    23:10:17 No.017 突っ込むなら今のうちだよ!!!!!
    23:10:33 音色 民族はともかく、カゲボウズはピンポイントすぎるかな、やっぱw
    23:10:33 きとかげ いいタグだと思うYO!!!
    23:10:40 音色 否定はしないけど
    23:10:54 きとかげ じゃあ、「カゲボウズ・ジュペッタ」で
    23:11:03 お知らせ 別に必須と言ってるだけだし、他にも増えるだろうし(Win/IE8)さんが入室しました。
    23:11:15 別に必須と言ってるだけだし、他にも増えるだろうし 別によくね? と
    23:11:17 お知らせ 別に必須と言ってるだけだし、他にも増えるだろうし(Win/IE8)さんが退室しました。
    23:11:34 櫻野弥生 ところでタグって固定?(今更
    23:12:03 No.017 どうなんだろう たぶん後で増やせるんじゃないかしら
    23:12:33 きとかげ 増やせるのは管理人ですかね?
    23:12:43 No.017 おそらく
    23:12:57 きとかげ じゃあ鳩さんに適宜申告w
    23:13:18 音色 つけるべきタグが思いつかない人はどうすりゃいいんだろう
    23:13:29 きとかげ ストーリーズに「タグを妄想するスレ」とか立てれば、うん。
    23:13:30 No.017 登録しなきゃいいんじゃね
    23:13:41 音色 そっか
    23:13:45 No.017 タグをね
    23:13:50 流月 作者名のタグだけ、打っとけばいい気はする
    23:14:46 No.017 あとあれだな
    23:14:49 No.017 狐
    23:14:57 No.017 タグは必要じゃyないか?
    23:15:01 音色 それはいる>狐
    23:15:27 No.017 ストーリーコンテスト、【書いていいのよ・書いてみた】、民俗、カゲボウズ、狐
    23:15:34 流月 狐タグか チャットに出没する方が多いキツネもいますが
    23:15:39 No.017 なんだこれwwwww
    23:16:03 きとかげ 真面目なのは前3つ(2つ)だけ! これがマサポケ仕様!
    23:16:06 音色 知らない人が見たらまさにカオス
    23:16:20 No.017 おかしい 全体にもあてはまるのに 私の小説にピンポイントするこのタグ群は
    23:16:43 流月 鳩さんが管理人だからしょうがない
    23:16:44 きとかげ タグなんてピジョンの冠羽です()
    23:16:51 お知らせ 鳩さん=マサポケの縮図(Win/IE8)さんが入室しました。
    23:16:52 お知らせ 鳩さん=マサポケの縮図(Win/IE8)さんが退室しました。
    23:16:57 No.017 ちょw
    23:17:02 きとかげ つまり鳩さんの影響力はすごいw
    23:17:44 音色 タグのうちほとんどがあてはまらない・・だと・・
    23:18:28 No.017 いや ちゃんと オリトレとか地方とか入れますから…
    23:18:37 流月 音色さん、それ言ったら俺なんてまじめなのしかあてはまらないですからw
    23:18:59 音色 るっきー、狐の話書いてなかったっけ
    23:19:10 No.017 まじめなのでいいんですよ 何言ってんすかw
    23:19:22 音色 オリトレってゲームの俺主人公も含まれるの?
    23:19:37 櫻野弥生 当てはまらないなら当てはまれるようなタグがつく作品を作ればいいんだ!
    23:19:50 きとかげ タグを作ればいい!
    23:19:55 No.017 ゲームの俺主人公は含まないでしょ? ただ小説中にオリトレ出るならありかと
    23:20:13 お知らせ タブンネMark.2(ez/T004)さんが入室しました。
    23:20:19 タブンネMark.2 こんばんは
    23:20:22 きとかげ こんばんは
    23:20:23 No.017 ちょw
    23:20:28 No.017 あとあれだな
    23:20:32 流月 書いたのあるけど、こっちにあげてないはず こんばんはー
    23:20:36 櫻野弥生 こんばんはー
    23:20:40 No.017 流血表現あり
    23:20:47 No.017 みたいなタグはあったほうがいいのか8
    23:20:52 櫻野弥生 っパンチラ
    23:21:12 きとかげ なるほど、そういうタグは欲しいかも >流血表現
    23:21:22 流月 流血表現か そのタグならなんとかなるはず
    23:21:23 No.017 ストーリーコンテスト、【書いていいのよ・書いてみた】、民俗、カゲボウズ、狐、流血表現あり、パンチラ  …と
    23:21:41 タブンネMark.2 うっかり見てしまわないように
    23:21:46 櫻野弥生 これじゃパンチラ小説になってしまう!(
    23:21:50 お知らせ パンチラwww(Win/IE8)さんが入室しました。
    23:21:51 お知らせ パンチラwww(Win/IE8)さんが退室しました。
    23:21:54 No.017 40秒以内につっこみな!
    23:22:10 きとかげ はい時間切れー
    23:22:16 流月 パンチラのロマンが分からない 最近安売りされてるからか そういえば、エロタグはなくて…いいですね、はい
    23:22:30 タブンネMark.2 ツッコミにも時間制限w
    23:22:51 きとかげ エロタグも自分は欲しい。アヤマチとかこなゆとか
    23:23:01 お知らせ ラクダ(Win/IE8)さんが入室しました。
    23:23:05 タブンネMark.2 パンチラは、隠されたものが一瞬みえる、お宝映像なのだ
    23:23:06 きとかげ こんばんは
    23:23:10 No.017 性表現あり
    23:23:12 No.017 と
    23:23:16 タブンネMark.2 こんばんは
    23:23:17 音色 なる
    23:23:22 音色 こんばんわ
    23:23:27 No.017 ストーリーコンテスト、【書いていいのよ・書いてみた】、民俗、カゲボウズ、狐、流血表現あり、性表現あり
    23:23:30 流月 みーさん、ストコンだけステルス仕様なので、最近ポケストに投稿してる話書いてる人と別人じゃないかと思う
    23:23:32 流月 こんばんはー
    23:23:37 櫻野弥生 こんはんはー
    23:23:40 きとかげ ステルスw
    23:23:41 No.017 どんどんカオスになっていく(
    23:23:45 ラクダ こんばんはです。途中からなので把握していないのですが、タグは自分でつけるんじゃなくてシステムとしてですか?
    23:23:55 タブンネMark.2 きっと長老に操られて書いたんだと思う
    23:24:14 No.017 http://pokenovel.moo.jp/mtsg/mtsg.cgi? ポケノベさんのシステム参照
    23:24:41 流月 みーさんより格段に(身長的な意味合いで)見えない自分
    23:24:41 きとかげ 隠されているのが重要なのに、最近はモロが目について価値の下落を感じる >パンチラ
    23:24:50 ラクダ あー、なるほど。ありがとうございます
    23:24:56 きとかげ 身長ならいいじゃないすかw
    23:25:12 ラクダ 流血のほかに、暴力表現も欲しいです
    23:25:26 タブンネMark.2 こんな寒い中みせながら歩く人がいるとは思えな…
    23:25:49 タブンネMark.2 流血、暴力まとめてグロじゃだめ?
    23:25:50 流月 身長的に見えないとうかつにはぐれられないのと満員電車が苦行になるのです
    23:26:05 きとかげ グロlv1、lv2とかだろうか
    23:26:10 流月 グロでいいと思うけど、どのあたりからつけるか迷うなぁ
    23:26:12 タブンネMark.2 頭をリーゼントにすれば問題ないって
    23:26:14 No.017 ポケモンはバトルするのに暴力表現と言われてもなw
    23:26:25 No.017 せいぜいやるならグロだな
    23:26:27 音色 釘が目に刺さるのは?
    23:26:29 きとかげ そうそれがなあ >どのあたりから
    23:26:47 タブンネMark.2 暴力って、やっぱりぐっさり来る暴力ってあると思うっす
    23:26:59 No.017 どのあたりの境目として ある意味流血表現だと思うんだけどな
    23:27:03 ラクダ んー、グロ、っていうほどのものじゃないというか。 バトルとはまた違う方の
    23:27:35 タブンネMark.2 カイジの地下労働は暴力で、パチンコがバトルかな
    23:27:40 音色 流血か・・、アニメとかだと基本は打撃系のダメージ描写しかされないからな
    23:27:44 流月 まぁ、ポケモン虐待まで行くと暴力だとは思う ただ、バトルの結果として、流血するのに流血が境界だと若干迷う
    23:28:02 音色 切られようが血が出てなきゃセーフなのか。
    23:28:03 No.017 ストーリーコンテスト、【書いていいのよ・書いてみた】、民俗、カゲボウズ、狐、流血表現あり、性表現あり、りえさん  …と
    23:28:11 音色 ん?!
    23:28:16 流月 大統領でしょうそこは
    23:28:17 タブンネMark.2 りえさんタグが気になる
    23:28:17 櫻野弥生 !?
    23:28:21 音色 りえさんてw
    23:28:23 ラクダ 最後のタグが…w
    23:28:27 No.017 40秒以内につっこみな!
    23:28:39 タブンネMark.2 ツッコんだじゃないか
    23:28:41 音色 それはもはや作者タグじゃないか!
    23:28:51 タブンネMark.2 ほもタグでいいのか
    23:28:58 流月 ちなみにりえさんタグとデりえバードタグもある
    23:29:02 No.017 りえさんは間違いなく一つのジャンル
    23:29:14 タブンネMark.2 ジャンルw
    23:29:25 音色 ジャンルになった
    23:29:36 流月 ジャンルであることは間違いない
    23:29:49 タブンネMark.2 どんなジャンルだ
    23:30:37 No.017 家に帰るとピカチュウが出てくるジャンル
    23:30:46 No.017 わかったよ
    23:30:53 タブンネMark.2 どんな…
    23:31:02 No.017 ストーリーコンテスト、【書いていいのよ・書いてみた】、民俗、カゲボウズ、狐、流血表現あり、性表現あり、りえさん、ゴーヤロック
    23:31:03 流月 カオス
    23:31:05 お知らせ えっ(Win/IE8)さんが入室しました。
    23:31:06 お知らせ えっ(Win/IE8)さんが退室しました。
    23:31:10 No.017 これでいいんだろ?
    23:31:18 流月 ごはさんは必要だね
    23:31:19 タブンネMark.2 うん
    23:31:26 No.017 納得したwwwwwww
    23:31:33 タブンネMark.2 あと
    23:31:40 タブンネMark.2 ふーん、普通 も
    23:31:42 流月 ゴーヤロックタグ意訳:あげて落とす
    23:31:42 お知らせ りえさんは指定時間発言が無かったため、自動退室になりました。
    23:31:51 No.017 りえさんwwww
    23:32:02 音色 586さんは確かに必須
    23:32:03 流月 それもう、感想じゃないかww>ふーん、普通
    23:32:06 タブンネMark.2 ゴーヤロックタグ‥最後まで読めない
    23:32:24 タブンネMark.2 必要じゃないのか
    23:32:44 No.017 ストーリーコンテスト、【書いていいのよ・書いてみた】、民俗、カゲボウズ、狐、流血表現あり、性表現あり、りえさん、ゴーヤロック、 ふーん、普通 、おじさんのきんのたま
    23:32:56 ラクダ 箱ティッシュ必須の意味か>ゴーヤロックタグ
    23:32:56 タブンネMark.2 増えた
    23:33:00 流月 レイニーさんタグか
    23:33:22 No.017 でもおじさんのきんのたま ネタで入れておいてもいいよな
    23:33:24 きとかげ 話戻るけど、作者が自分で付ける以上、作者の良心で判断するしかないと思う >流血表現とか  むずいとこ
    23:33:34 No.017 まそうなるわね
    23:33:38 タブンネMark.2 そうだね
    23:34:04 流月 性表現も作者の良心になるのかぁ(遠い目
    23:34:19 ラクダ 正直、どこまでが許される範囲かが分からなくて困る。注意を促すべきなのかどうか……迷う
    23:34:24 No.017 あんまりひどかったら入れろよwww って言うよ
    23:35:43 流月 まぁ、おもしろければいいや グロと性表現は許容範囲があるから、ある程度の基準は欲しいところ
    23:36:59 No.017 ストーリーコンテスト、【書いていいのよ・書いてみた】、民俗、カゲボウズ、狐、流血表現あり、性表現あり、おじさんのきんのたま、もぎゅもぎゅ  と
    23:37:23 お知らせ ぎゃー(Win/IE8)さんが入室しました。
    23:37:24 お知らせ ぎゃー(Win/IE8)さんが退室しました。
    23:37:40 ラクダ あれ、りえさんとゴーヤロックさんが……もぎゅられた?
    23:37:43 音色 もうなにがなんだかw
    23:37:43 流月 久方さんタグか
    23:37:49 No.017 さすがにネタがつきてきたよ!!!!
    23:38:21 流月 鳩さん、あなたならいける                       と信じてます
    23:38:29 きとかげ 作品について一々議論できるわけではないから、基準を決めるなら機械的なものになるなあ。血が流れたらだめ、打撃はおk、というのも疑問だけど、どっかで線引くしかないか。それ+目についた時の注意喚起
    23:38:32 音色 レディ・ファントム
    23:38:42 きとかげ というのを今考えた
    23:39:17 流月 なんか基準になる話をあげておけば、良い線引きになりそう
    23:39:29 流月 性表現はこなゆとかがすでにあるし
    23:39:47 No.017 既存作品参考にしてください 目についたら注意喚起でいいっしょ
    23:39:54 音色 なるほど
    23:40:12 きとかげ そうしますか
    23:40:13 No.017 ところで ツッキーの捕食シーンはどうなるんですか
    23:40:18 櫻野弥生 うちの昔の作品を見て基準を考えてみるか
    23:40:25 きとかげ エロ注意?
    23:40:32 流月 あれは正常の範囲内
    23:40:37 流月 な気がする
    23:40:41 ラクダ ○血が流れる ×傷口の詳細描写 て感じですかね>流血注意基準 ふうむ、目に付いたら…
    23:41:25 きとかげ セロ指定にしろ映倫にしろ、ABCZPG12R15R18と色々分かれているのだから、エログロで一括りにする必要もないかも。エロい、超エロい、グロい、超グロい、な感じで。
    23:41:36 お知らせ 音色(Win/Firefox3.x)さんは行方不明になりました。
    23:42:46 お知らせ こま(Mac/Safari)さんが入室しました。
    23:42:51 ラクダ ツッキー氏のは、エロタグというか色気タグ?
    23:42:55 ラクダ こんばんはです
    23:42:58 流月 こんばんはー
    23:43:05 こま 流血が駄目なら鼻血もNGか・・・
    23:43:11 櫻野弥生 こんばんはー
    23:43:14 こま ノ
    23:43:19 流月 こなゆはエロいの範囲ですか?
    23:43:21 きとかげ こんばんはです
    23:43:46 No.017 こなゆはSEXしてるのでエロです!
    23:43:48 きとかげ 超の範囲かなあ?
    23:44:05 ラクダ 超絶エロタグ推奨
    23:44:39 きとかげ エロ<超エロ<超絶エロ<絶倫 ですか分かりません
    23:44:53 ラクダ 絶倫タグwww
    23:45:17 櫻野弥生 絶倫とかほめ言葉になる(
    23:45:20 No.017 個人的には ツッキーとミシマさんがベッドでぎしぎsしてて ミシマさんが喘でたらエロで ベッドの中で話してるだけなら まぁいいんじゃねぇの? って感じ
    23:45:33 お知らせ 音色(Win/Firefox3.x)さんが入室しました。
    23:45:47 きとかげ 前半は超絶エロで、後半はノーマークだと思ったんだw
    23:45:49 きとかげ おかです
    23:46:34 音色 あとちょっとで消えるべ
    23:47:14 流月 一周回って褒め言葉か>絶倫タグ こなゆは超エロか
    23:47:57 No.017 キスまではいいけど 脱がして乳もみ始めたらエロかなと
    23:48:22 No.017 肉棒が見えたりなあと自慰はエロかなと
    23:48:36 音色 まだ12時は過ぎてないぜ鳩さん
    23:48:47 流月 そこまでやったら、マサポケ裏版を作ったほうがいい気がしてきた
    23:48:57 きとかげ 今は多分マサポケ倫理基準の審議中なんだ! 多分!
    23:49:02 No.017 あと12分だ 大目に見ろ…
    23:49:07 音色 www
    23:49:18 ラクダ フライングw
    23:49:21 きとかげ イマサラ版
    23:49:23 音色 まぁ、俺は12時からは絶対に参加できないから良いんだけどさ
    23:51:07 流月 十二時はもっとやばいです、Rがつくなんて一時期はざらでした
    23:51:19 お知らせ タブンネMark.2(ez/T004)さんは行方不明になりました。
    23:51:36 音色 大人の時間なんだね
    23:51:40 流月 そんな法螺吹く23:52
    23:51:45 No.017 わかったよ
    23:51:46 音色 そうそうこまさん
    23:51:56 音色 誘惑に負けてきたよ
    23:52:08 No.017 ストーリーコンテスト、【書いていいのよ・書いてみた】、民俗、カゲボウズ、狐、流血表現あり、性表現あり、おじさんのきんのたま、イマサラタウン これでいいんだろ?
    23:52:21 音色 イマサラタウンww
    23:52:30 こま おめでとうございます
    23:52:33 流月 イマサラタウンが万能すぎるので却下
    23:52:57 流月 したくなってしまう
    23:52:58 音色 明日からちょっとポケモンの世界に浸ってくる
    23:53:16 きとかげ お?
    23:54:04 流月 流血表現があるぐらいでなんだ→イマサラタウン 性表現があるぐらいでなんだ→イマサラタウン 鳩さんが12時前から暴れてる→イマサラタウン
    23:54:08 音色 イマサラタウンタグを付ければ ♀主×ダゲキとか ♀主×ドリュウズとかやって良いってことですよね
    23:54:13 流月 となんにでも使える
    23:54:20 音色 (無論やらないが
    23:54:32 ラクダ なんという万能タグw
    23:54:50 きとかげ 意見として、流血表現と性表現のところにレベル1,レベル2というか、R15、R18的なタグ分けがあるとよいと思います。一義に決めるってやっぱ無理あるし、私が大丈夫でもラクダさんにはきつそうとかあるし。
    23:54:58 きとかげ と、ラクダさんの名前をお借りしました。
    23:55:06 No.017 そこまでわかるのはめんどいからやらない というかへたな区分けはかえって混乱の元かと
    23:55:26 櫻野弥生 ところで鴨鍋にする場合どのタグに引っかかるんですか?
    23:55:36 流月 イマサラタウンですかね
    23:55:37 ラクダ どぞ!  というか、私は大抵の表現平気です>流血
    23:55:38 きとかげ もぎゅもぎゅ >鴨鍋
    23:56:03 No.017 心配ならいれとけ! って話し
    23:56:25 ラクダ 了解です
    23:56:38 音色 やっぱり作者次第かな>流血・性表現タグ
    保険みたいな感じで ※目に釘が刺さるという表現が苦手な方は閲覧注意 とか
    23:57:01 きとかげ 結局は自己申告だしねw
    23:57:32 流月 その上でついてないのにつけた方がいいやつに関しては注意喚起、でいいのかな
    23:57:40 音色 おそらくは
    23:58:01 No.017 まだ本棚も出来てないのにw
    23:58:07 きとかげ そういやそうだw
    23:58:20 櫻野弥生 そういえば
    23:58:23 音色 いいんだよ!ログ保存するんでしょ!
    23:58:28 お知らせ とらぬ狐の皮算用(Win/IE8)さんが入室しました。
    23:58:29 お知らせ とらぬ狐の皮算用(Win/IE8)さんが退室しました。


    ※民俗タグは 民俗/伝承 にでもしようかと思う
    ※あとやるにしてもポケスコ・ベストが終わってからね


      [No.2214] 【書いてみた】掴みにいく者 投稿者:巳佑   投稿日:2012/01/21(Sat) 23:50:57     84clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     イッシュ地方にあるはライモンシティ。
     ヒウンシティやソウリュウシティに負けないほどの都会を築いており、更には街の一角に遊園地があったりする。そこで有名なアトラクションの観覧車。ゴンドラから見える景色は中々のもんだ。今は夕日が水平線の向こうに落ちようとしていて、紫から群青色への美しいグラデーションが空に描かれていた。間もなく夜がやってくるからか、眼前に広がる地上ではビルの明かりなどがつき始めてきた。
     この観覧車に乗ると思い出す。
     

    「ボクは観覧車が好きなんだ」
     あれは半年以上前ぐらいかな。
     いきなり緑色の髪の毛をした男――Nと名乗る男に観覧車を誘われた。
     実はこの男、それ以前にも会ったことが会って……確か、カラクサタウンだったかな? プラズマ団っていう謎の組織野郎の演説が終わったときに、向こうから話しかけてきたよな。第一印象が根暗でなんか電波っぽい感じ。それと、早口で何を言っているのかギリギリでなんとか聞き取れるけど、なんというか若干、自分の世界に入っているのではないかと思う。うん、なんか勝手にこっちが聞きもしてないことしゃべり出していたりするし、うん。私ね、いういうタイプがめっちゃ苦手だ。
     観覧車はどうやら二人乗りじゃないといけないらしく、一人でゆっくり乗させやがれこの野郎と、スタッフの首ねっこを掴んでやりたいところだったが仕方ない。ここで断って変な因縁つけられてもウザいし。私はその誘いに乗ることにした。
     二人でゴンドラに乗るとき、スタッフの顔が赤くなったのを見えた。勘違いしてんじゃねぇぞ、この野郎。
     私とNを乗せたゴンドラが上へと昇っていく。
     
    「……最初に言っておくよ。ボクがプラズマ団の王様だ」
     エイプリルフールはまだだぞ。
     そんな感じでシラネっていう顔したけど、Nは勝手に話を進める。
     プラズマ団の王様としてどうとかこうとか、自分はこうしたいとか。
     なんというか、ねぇ、本当にウザかった。なんだ、コイツは。何を勝手に語ってやがるんだ。
     私だって女の子だぜ?
     胸のトキメキなんか鼻から期待してなかったけど、ここまでムードフラグをぶっ壊してくるとなると、呆れを通り越してイライラを覚える。
     そして長かったような観覧車がようやく終わり、私とNがゴンドラから出ると、入り口にプラズマ団の二人が「N様」と言ったときに私の目は丸くなった、と思う。本当だったのか、それ。
     そして、Nは自分の理想を語り、こう言った。
    「ボクはチャンピオンを超える」
     うん、この辺で私のイライラ度は臨界点を突破したわ。
     Nの胸ぐらを掴んで、顔をグイとこちらに近づけさせ、こう言い放ったのを覚えてる。

    「てめぇだけがチャンピオンを目指してるわけじゃねぇぞ、この野郎」

     最初はNの言葉なんてよく分からなかった。
     いきなりポケモンの解放とか、なんちゃらかんちゃら。
     おまけに自分の正体を明かしてくるときた、もう訳ワカメである。
     他人のことを理解してやれという言葉もあるかもしれないが、こんな奴のことを考えているだけでイラつく。
     最初は本当にNに対しては見下していたというか、そんな風に見ていた。


    「…………」
    「お前さ、本当は怖いんだろ? な、怖いんだろ?」
    「こ、怖いわけけけななないぞ、ここここのエリートトレーナーで、ああああろうもの、全っ然、こわくなど」
    「めっちゃ、足震えてんですけどー」
     そして今、時刻は間もなく夜のライモンシティ遊園地。
     私は一人のエリートトレーナーであるナツキという男と一緒に観覧車に乗っていた。 
     こいつ、本当は高いところが苦手なくせに、無理に隠そうとしている。
     バレバレなんだよ。
     まぁ、そこはあえて言わずに、ナツキのテンパり具合を見て楽しむのが私の最近起こったプチマイブーム。
     ほんと、コイツおもしれぇな。

     その後、観覧車から降りたときのナツキの顔色悪さがどこまでひどかったかは言うまでもない。 

    「ま、サンキューな。おかげでめっちゃ楽しめたわ」
    「ききき、きみは絶対、色々な意味で楽しんでいただろうっ!?」
    「ん? なんだよ、アンタはつまんなかったのか? あぁ、そうか、そうだよな観覧車はやっぱり怖――」
    「断じてちがーーーう!!!」
     ナツキとそんなやり取りを交わしてから、私は「本当にサンキューな」と一言残しながら、ナツキにサイコソーダを一本投げると、遊園地を後にした。
     もあんとした夏独特の気だるくなりそうな空気を感じながら、私は夜空を仰ぐ。都会の夜空は高層ビルとかがチカチカと騒いでるもんだから、星が黙ってしまって、全く見えない。ちぇ、流れ星がこの間に流れてきたりとかしたらどうしてくれんだ、という割とどうでもいい悪態をつきながら歩き続ける。

     あれからまた旅を続けていく中で、何度も何度もNに会った。
     もうコイツ、ストーカー罪ということでジュンサーさんに通報しようかなって思ったときもあった。だって、こんなに偶然なのっておかしすぎるでしょ、流石に。これがストーンをもらったもの同士の運命なんて言ったら……まぁ、ちょっと響きは悪くないかもだけど。
     しかし、なんだろうな、Nと会っていくとな、これだけは分かったんだよ。
     
     アイツも何かと戦っているんだろうなぁって。
     自分のやりたいことを見つけたいっていうベルや、バトルマニアの域を越したいらしいチェレンや、もちろん強くなりたいっていう私と同じでさ。
     アイツも何かと戦っているんだよな、きっと。
     ポケモンに対して、自分には何ができるとか。
     ポケモンにとって一番の幸せってなんだろうかって模索してんだよな。
     お前も私達と一緒ってやつだよ。きっと、そう。
     なぁ、N。
     アンタも幼馴染みだったら、また違っていたのかな。

     強めの風が一つ、私に吹き付けてくる。

     まぁ、変えられないもんに今更、小言を言っても仕方ねぇよな。
     とりあえず、身も心も準備万端になったし、そろそろ暴れますか。
     なんかゲーチスっていうおっさんに手の平で踊れ的なことを言われたけど、まぁ、いいや。
     自分でも言うのはなんだけど、私、暴れたら、他の奴らには手がつけられないほど、ヒドイらしいから。
     
     あのおっさんの言う通りになるのがシャクだが、今から私が目指すべき相手はNだ。
     本当に胸倉を掴んだのにふさわしい相手だって、今、思える。
     待ってろよ、N。
     今度はアンタからチャンピオンを掴んでいってやるからな。

     そして決着をつけようぜ。

     どちらかが英雄にふさわしいのか、じゃなくて――。

     どっちがチャンピオンになれるかをさ。
     
     ぶっちゃけ、英雄の称号やら世界平和とやらはその副賞でいいや。  




    【ギャグ的なおまけ】

    「ぼ、僕はプラズマ団の王さ――」
    「カット。噛んでるし」
    「く、僕としたことが」
    「早くしないと、アナタが言っていた女の子、来ちゃうんじゃない?」
    「な、なんとかしてみせるよ」

     観覧車内、ライモンシテイのジムリーダーであるカミツレ相手に練習するN。
     カミツレ曰く、面白そうだったから手伝ってあげたとか、それからこのことは黙秘にしといたとか、しなかったとか。




    【書いてみました】

     前置き:こんなゴーイングゴーマイウェイな女主人公でもいいですか(

     皆さんの物語を読んだ後、私も書いてみようと思い、観覧車のシーンを思い浮かべたら、このような物語になっていきま(以下略)
     なんというか主人公は徐々にNのことを認めていったというのもアリかなと思いまして、あのような展開になっていきま(以下略)
     それと、ライバル(?)と認めたお前と真正面からバトれて嬉しいぜ! みたいなものもあるかなぁとも思いまして、最後はあのような感じになりました。(汗)

    【書いてみた】に続いてみましたが、ずれていたらスイマセン(汗)

     追伸:物語では半年とか書いていましたが、実際、10月31日に始めたBWはNの「サヨナラ」を聞くまで実に四ヶ月以上、3月16日までかかりました。半年はかからなかったけど、時間(多分、インターバルが多いのと、回り道をしたかったから)をかけすぎた……? と振り返ってみる今日この頃です。


     ありがとうございました。

    【何をしてもいいですよ】


      [No.2212] Re: なんとまあ 投稿者:夏夜   投稿日:2012/01/21(Sat) 17:16:21     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    はじめまして砂糖水さん。
    夏夜と申します。
    この掲示板ではじめてコメントをいただいたので、とてもうれしいです。

    書いていて、少し寂しくなってしまったこのあいのうた。
    ご拝聴ありがとうございました。


      [No.2211] Re: x線 投稿者:巳佑   投稿日:2012/01/21(Sat) 14:43:59     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    きとらさん、コメントありがとうございます!


    > レントゲンとかで使うx線の語源は「なんだか解らないから物体をxとする」っていう意味らしい。
    > 謎の物体、っていう意味でもxって使いますからね。

     そうだったんですか!
     初めて知りましたです。
     そうか、学校の数学の方程式とかでxが使われていたのもそこからなのかなと、今更すぎること思ってみたり……あぁ、げしげししないで、何今更とげしげししないでくだ(以下略)


     追伸:改めてxを(姉のお古の)電字辞書で調べてみたところ……未知数ってありました。すいません、お馬鹿なところをお見せしてしまい……あぁ、げしげししないでくだ(以下略)


     それでは、失礼しました。


      [No.2210] なんとまあ 投稿者:砂糖水   投稿日:2012/01/21(Sat) 00:55:54     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    なんとまあ、かなしいかなしい、あいのうたなんでしょう。


    ただ、あなたに気づいて欲しかった。
    そして押し殺した、たったワンフレーズのあいのうた。

    淡々と語られているのに、その想いの深さに心打たれました。


    哀しい愛しい、あいのうた。
    しかと拝聴させていただきました。


      [No.2209] プロットの皮を被ったプロット 投稿者:音色   投稿日:2012/01/20(Fri) 23:45:39     79clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     鏡嫌いがプロットといってもちょこちょこ手直しちゃあるので完全にプロットとはいえないかもしれないので。
     実は投稿した奴以外含めると5パターンあった。


     もりのなかで くらす ポケモンが いた
     もりのなかで ポケモンは かわをぬぎ ひとにもどっては ねむり
     また ポケモンの かわをまとい むらに やってくるのだった

     そんな時代から長い年月経過

     ひとの中で暮らすポケモン
     ポケモンは、ひとのかわをかぶり ぬぎかたを忘れたまま、ひととして暮らす
     こいつ視点が基本。人間としてまぁそこそこ。
     
     ポケモンの中で暮らすひと
     ポケモンのかわをかぶり ぬぎかたを忘れたまま ポケモンとして暮らしていた
     俺様フィーバーな奴がいい。ポケモンライフエンジョイ。

     ポケモンがゴーストライターで人間の名前で持ち込み→そこそこ売れてりゃいいけど
     二匹が出会う適当な場所。草原とか。

     人間駄目だし。ポケモン唸る。ポケモンが書いた話の一節を場面ごとに挟む。鞄とおんなじ感じ。
     ポケモン作家の信念語る。あらすじ話したらその話書いたってお前、初めてのわくわく感がなくなるだろーが。
     
     人間過去。ジュカイン。実験のあれ。
     ポケモン過去。天才。実験のあれ。

     一人称無理。面倒なのでゲームっぽくやたらと改行する、一文字開けの奴に変更。
     やりたいことを箇条書き。
    ・街に眼鏡買いに行かせる。
    ・ゲームの宣伝
    ・文房具
    ・お話の話
    ・過去の奴とか
    ・最高の傑作だよね
    ・ぶっ壊す
    ・鏡殴らせる、割る、嫌い、鏡嫌い
    ・一人と一匹どこかに行く
    ・ナイフ


     没パターン1

    『鏡はいつだって虚実を映しだす。 しかしそれは紛れもなく現実で、しばしば真実を突き付けるものである』

      
     俺の目の前に俺がいた。何のことはない、ただの鏡だろうと思った。
     俺はうつ伏せに倒れていた。だから真下にある俺の像は仰向けに映っていた。
     俺は手をついて立ち上がろうとした。しかしそこで奇妙なことに気がついた。
     ぐにゃりとした感触が手を伝わる。俺の虚像はどうも鏡の向こう側にあるものではないらしかった。
     そして俺はとんでもないことに気がついた。
     目の前の俺は、死んでいた。


     確かにそれは俺だった。頬の傷も、右腕の欠けた得物も、紛れもなく鏡に映った俺だった。
     しかしそれは、俺が鏡に映った俺を見たときに見える俺だった。その俺が、現実で、冷たくなっていた。
     何がどうなっている。そう考えて、俺は俺の記憶が混乱していることに気がついた。
     ここはどこだ?俺はどうしてこんなところにいる?そして、目の前の俺は何故死んでいる?
     溢れ出る疑問に対して、俺は嫌に冷静だった。落ち着け、まずは一つ一つ思い出してみるべきだ。
     ここがどこなのか、俺は知っているのか。俺は俺に問いかける。
     答えは出てこない。目の前にあるのは俺の死体―――だけではなかった。
     俺は俺の上に立っていた。しかし、死んでいる俺も、誰かの、いや何かの上に折り重なっているのは確かだった。
     それは無数の死体だった。知っているポケモン、見たことがない奴、元が何だったかも分からないもの。そして、青白い肌の……人間。
     ニンゲン、という言葉に引っ掛かりを覚える。
     そうだ、俺は人間に捕まったんだ。


     そいつらは森にやってくるなり、手当たりしだいにポケモンを捕まえ始めた。
     普通の人間が使う赤と白の丸い奴ではなく、なんだかよく分からん機械を使って、網やら籠やらにポケモン達を押しこんでいく。
     俺は自慢の両腕の獲物で数回、それらをぶち壊そうと試してみたが、全く歯が立たなかった。
     躍起になって逃げようとしているうちに、白い煙みたいなものが流れ込んで来て……意識を、失った。


     鮮明に思い出せたのはそこまでで、俺はそれからあとどうなったのかがよく思い出せない。
     

     絶対入れるセリフ
     
    「“人間がポケモンの皮を被ること”を目的とした研究で、“人の皮を被ったポケモン”ができてしまうとはな!こいつは傑作だ!」
     そうだ、人がポケモンの皮を被ることができるなら何故その逆が起こり得ないと言いきれる?


     没パターン2

    『いつかあの空を飛べる日が来ることを信じていた。
     そのための翼がひらく日がいつか来ることを知っていた。
     透明な翅、紅い複眼、憧れと期待は幾度の夏の夜と共に過ぎ去っていった。
     そして、待ちに待った日がやってきた。太陽が昇る前のほんのわずかな時間に、僕は地面から這い出した。
     背中がむずむずする。そう、窮屈な皮を脱ぎ棄てるんじゃない、ついに翅をひろげるんだ。
     そうして僕は、日の出と共に、進化した。』


    「……」
     二百字詰め原稿用紙の一枚目を読んで、俺はとりあえず書いた本人を眺めた。
    「どーよどーよ、今回は出だしから格好良いだろ」
     そいつは自慢げな顔をして俺を見上げてくる。
    「いや、割とフツーだけど?」
    「んなことぁないだろ!? なんかこー、ぐいぐいっと引き込まれるものがあるだろ!?」
     ねーよ、と切り捨てる。
     それに、感想は最後まで読んでもらってから聞くのが主義じゃなかったのか?俺の言葉に、作者様は押し黙った。



    『私が持っている記憶は以上だった。
     ―――気がつけば私は温かな木漏れ日を体いっぱいに浴びていた。……浴びて、いるはずだ。
     それなのにこの寒さはなんだ。今は初夏ではなかったのだろうか。
     体内時計は狂っていない。では一体何が起こったのだろうか。
     ……そうだ、進化したのだ、私は。きっと進化したてで、感覚が少し鈍くなっているのかもしれない。
     だとすれば時間ともに回復するかもしれない。私は少し安心した。初めての進化は、どうも慣れないことが多いようだ。
     
     
     
     没パターン3

     もりのなかで くらす ポケモンが いた
     もりのなかで ポケモンは かわをぬぎ ひとにもどっては ねむり
     また ポケモンの かわをまとい むらに やってくるのだった

    「シンオウの むかしばなし」より

     
    「結局さぁ、こいつの本当はどっちだったんだろうな」
     図書館で(無断)拝借してきた本を眺めながらそいつはメガネをずりあげた。
    「本当?」
     それは、姿という意味なのか。皮をかぶりポケモンになり、皮を脱いで人に戻る、はたしてどちらが本当の姿か。
     いやさ――、これって逆もアリかも知れないわけじゃん?ポケモンが人になって人がポケモンになって。
     ポケモンが人になると言う記述はどこにもないぞ、と突っ込む前にこいつの口が開いた。
    「ん?となれば、本当は人なんだけどポケモンの皮かぶってポケモンのふりした奴が話していた相手が実は人の皮をかぶったポケモンだったとかってアリなわけだよな?」
    「……あり、だろうな。お前の理屈でいくと」
     このネタもう誰か書いちまったかな――とそいつは天を仰ぐ。書く前に、ここに実物がいるだろうと言うべきか。
     
     

     皮をかぶった人は、鏡をのぞきこんだ時、そこに映るのは、人か、皮か。
     はたしてどちらが本当か。
     俺もお前も、どっちが本当か。


     元人間、のそいつは超絶人気モノの皮をかぶっている。ネコではなくネズミだが。
     どっかの初代チャンピオンの相棒として全国的に有名になってから電気ネズミフィーバーは訪れ、今でも不動の人気を誇っている。
     もっとも、こいつは注目されることを嫌う。他人に撫でられるのも抱き締められるのも、何より多数の視線を浴びることを嫌う。
     そんなこいつの野望が『ポケモン初のベストセラー作家』なのだから、矛盾しか生じない。
    「作者じゃなくて本が注目されるのなら良いんだ!」とは本人の主張だが、本が注目されれば自動的に作者も注目されると思うんだが。
     まぁ、こいつの書いた話は全て、俺の名前を使って持ち込んでるんだけどな。



     元ポケモン、の俺。人間歴約四年。だいぶ慣れた。体も習慣も言葉も。
     この姿に馴染んだか、と言われたら、馴染まない。どうやっても馴染まない。鏡を覗き込むたびに目の前の虚像をたたき割りたくなる衝動にかられる。
     これは俺じゃない。俺の本当、じゃない。何回現実を否定してきたか分からない。その度に鏡は砕け皮は傷ついた。
     鏡は本当を映さない。映すのは、皮だ。


     まぁ、結果的に投げ込んだ奴が一番書きたかった事を書けたから、良いんだけどね

    【続きかない】


      [No.2208] x線 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/01/20(Fri) 00:32:44     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    レントゲンとかで使うx線の語源は「なんだか解らないから物体をxとする」っていう意味らしい。
    謎の物体、っていう意味でもxって使いますからね。
    xから始まる単語って少ないです。


      [No.2207] あいのうた 投稿者:夏夜   投稿日:2012/01/18(Wed) 23:53:58     129clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     私は生まれる前から旅をしている身なのですが。ええ、はい。
     たまごの時に、彼(私の主人)の元に渡り、生まれた時も、生まれた後も、彼のリュックの中で生活していました。
     主人の方は私にあまり興味がないようでしたが、私はそれを当たり前だと思いました。
     主人は私を戦わせたりしないのですが、それは彼の愛故だと思いました。
     主人は私にご飯を与えないのですが、それで私が困ることはありませんでした。
     主人は私を撫でたりしないのですが、私はそれで満足していました・・・・・・。
     ああ、いけない。長々と身の上話を省みるなどと。後ろ向きな考えは、後ろ向きな方向にしか進む事はできません。一般論ではないので、あまり参考にはなりませんが、私はそう思うようにしています。
     まあ、そんなわけで、主人の愛情を一身に受けた私が、ピチューからピカチュウに進化するのに、そう時間はかかりませんでした。
     進化してからも、私は主人のリュックの中で生活します。
     モンスターボールの中は、きっと好きになれません。
     先ほども言ったように主人は私にご飯を与えません。なので、それらは自分で調達しに出かけます。幸い、主人の旅路はゼニガメのようにゆっくりなので、おいていかれるような心配はありません。
     その日も、私は果物を取りに、偶然通りかかった森で、主人のリュックからもそもそと這い出て、食べれる果物のなる木を探しました。私はあまり好き嫌いはない性質で、自分としてはえり好みすることがないので、(自分のことなので少し言い回しは変ですが)とても助かっています。1番最初に見つけた、赤くて丸い甘酸っぱい果物の実を4つ程抱えて主人の元へ急ぎます。
     途中、小さな声がいくつも聞こえました。
     何処か悲劇的に響くその声は、1人のものではありません。
     私は何事かと思って声の方へ行って見ました。
     緑色の藪を抜けると、ぐずぐずの土の色が目に入りました。崖だったらしい土の断面がギザギザに割れて、そこにあったのだと思しき量の土が、そのまま崩れて、流れて、下の層まで粗雑過ぎるスロープのようになっていました。
     その土の山の周りに、何匹もの山のポケモンが集まっていました。
     土の下に埋もれてしまった子や、親や、友人や、恋人を、助けようとする姿が見えました。むしろ、それ以外の姿勢を見せるポケモンはいませんでした。強いて言うなら、私以外は。
     私は何もすることがないので、その場に立ち尽くしたまま、彼らの姿を見ながら、彼らの発する言葉に耳を傾けました。
    『おとうさん』『おかあさん』『おにいちゃん』『おねえちゃん』『××××』『●●●●』・・・・・・・。
     どれも、知らない言葉でした。
     どれも、私の傍にはないものでした。
     しかし、彼らの言葉を聞いていると悲しくなって、彼らの作業を手伝ってあげなくては、という出所のよくわからない使命感が湧いてきます。
     ここで主人が藪の中からあらわれなければ、私は主人のことなど忘れて、土を掘る作業に加わってしまうところでした。
     主人は、私の存在には気が付かず、土を掘る彼らの姿を見て、
    「ラブソングだ」
     重く沈んだ声でそう言いました。
     家族や友人、恋人の名前を叫ぶ、悲痛な声・・・・・・。
     これが、ラブソング?
     私は首をかしげながらも、4つの果物を抱えて、主人のリュックにそっと忍び込みました。
     ラブソング。
     直訳すると、あいのうた。
     愛、恋、思慕・・・・・・。誰かに向けられた、俗に言う愛情という感情を曲にのせて歌ったもの。
     しかし、あそこで歌われているあれは、お世辞にも曲や歌と呼ばれるような心地のものではないような気がするけれど、主人があれを「ラブソングだ」といったのだから、きっとそうなのでしょう。
     家族の無事を祈る音。
     友人の行方を憂う音。
     恋人の死を嘆く音。
     自らの未来を絶望する音。
     それでも愛する人との再会を渇望してやまない音。
     暗い音が混ざり合って、私のいる、このリュックの中まで響いてきました。
     主人が反対方向に動いていくのが振動で分かりましたが、そのうたはまだ止みませんでした。
     私はその音が聞きたくなくて、聞くのがつらくて、聞いているのが恐ろしくて、耳を塞ぎました。


     私は生まれる前から旅をしている身なのですが。ええ、はい。
     たまごの時に、彼(私の主人)の元に渡り、生まれた時も、生まれた後も、彼のリュックの中で生活していました。
     主人の方は私にあまり興味がないようでしたが、私はそれを当たり前だと思いました。
     主人は私を戦わせたりしないのですが、それは彼の愛故だと思いました。
     主人は私にご飯を与えないのですが、それで私が困ることはありませんでした。
     主人は私を撫でたりしないのですが、私はそれで満足していました・・・・・・。
     何度も言いますが、私は旅に出ている年数と、自身の生きた年数が全くと言って同じなもので、もちろん、町に行くことだってあるわけで。
     その日も、私と主人は、いつものように町に入りました。大きな工場が近くにある排気ガス臭いくすんだレンガでできた町です。
     主人は町に入ると、どこかの旅館で必ず3日は休みます。その間、私は外に出て、いつ声がかかってもいいように、バトルのトレーニング(こればかりはかかせません)や、町の探索をします。
     この町にはあまり草タイプのポケモンはいないようで、ニャースや、コラッタ、ベトベターなど、悪環境への順応性の高い種のポケモンが多く生息しているようでした。工場やゴミ捨て場の多い掃溜めのような路地の中で、彼らは生活しています。
    「随分、綺麗なナリだな」
     双子らしいコラッタの片割れが話しかけてきました。
    「トレーナーがいるのか?」
     もう片方のコラッタも聞いてきます。どうやら、この2人は物怖じしない性格のようです。私は、表情を変えずに「そうだ」と答えました。
    「なんでこんな所に1人でいるんだ?」
    「捨てられたのか?」
     私は首を振って「いいえ、主人が休んでおられるので、散歩をしているのです」と丁寧に答えました。双子は「そうか、そりゃ良かったな」とそっけなく言い、「よく考えたら、お前みたいに人気のあるポケモンが、捨てられるなんて事、ありえないよな」と笑いました。
     その言葉が、いやに鋭く私の胸を捕らえたのを覚えています。
     そんな私の様子には気づかずに、コラッタは世間話でもするかのように話し続けます。
    「この前、1人のトレーナーがポケモンを捨てて行ったんだよ。そこの・・・・・・ゴミ捨て場に?」
    「ゴミ捨て場?」
     この言葉を聞いたとき、私は「なんて酷いことをするんだろう」と、思わず、顔も知らないそのトレーナーに憤慨してしまいました。
    「いや、元々、ごみ捨て場周辺に住んでいるポケモンらしくてさ、まあ、多分外国のポケモンだから、詳しい事はよくわかんないんだけどよ。トレーナーに捨てられたんだって教えてやってるのに、迎えに来るのを待つのをやめないんだよな。・・・・・・たまにいるんだよ、ああいうのが」
     呆れたように言う彼に、私は「はあ」と、曖昧に頷いて見せた。
    「まあ、あんたにはわかんないかもしれないんだけどな」
     コラッタはそんな皮肉をいいながら笑った。
    「人間っていうのは、とても薄情な生き物なんだよ」
     私は肯定も否定も、する事はできませんでした。
     そのポケモンはヤブクロンというポケモンだそうで、とても嫌なにおいを放つのだそうです。まあ、それくらいなら、ここには似たような性質のベトベターや、ベトベトンが生息していますから、きっと疎まれるような事はないでしょう。
     ただ、彼(彼女?)は、そのゴミ捨て場を離れる事はないのだそうです。
     未だ来ない。そして恐らく、どんなに待っても来るはずのないそのトレーナーを待ち続けているのだそうです。
     特にすることのなかった私は、双子に場所を聞いて、そのヤブクロンというポケモンに会いに行きました。
     そのポケモンは、青いポリバケツの上に座っていました。
     少し、沈んだような表情で、少し赤らんだ空を見ています。
    「・・・・・・・・・」
     私は黙ってポリバケツの横に座りました。
     ヤブクロンは私の存在に気が付きます。
     しかし、何を言うわけではなく、だんまりを決め込んで何も居ない道を眺めています。
    「・・・・・・・・・」
    「・・・・・・・・・」
    「・・・・・・・・・・・・」
    「・・・・・・・・・・・・」
    「・・・・・・・・・・・・・・・・」
    「・・・・・・・・・・・・・・・・」
    「・・・・・・・・・・・・・・・あの」
     ヤブクロンのほうが根負けしたようで、怪訝そうな顔つきで話しかけてきた。
    「なんでしょう?」
     私は視線を合わせずに聞き返す。
    「なんで・・・僕の隣にいるの?」
    「暇つぶしですので、お気になさらず」
     無論、本当のことでした。
    「貴方は、まだ主人の事を信じておいでですか?」
    「あたりまえでしょ、僕のご主人はとても優しい人なんだ」
    「・・・・・・そうですか」
     「それはそれで構わないのですが」と、私は肩をすくめた。
    「君は誰かのポケモン? それとも野生?」
     ヤブクロンが聞き、私は素直に前者だと答えました。それから、主人は今休憩中で少し散歩に出ているのだということも伝えました。単に聞かれるのが面倒だっただけで、他意はありません。
    「そう、いいね。主人が近くに居るっていうのは」
    「・・・・・・・・・そうでもありませんよ」
     私はくすりと笑った。
    「貴方は主人を信じているといいましたね。本来ならそんなことは馬鹿らしいと、人間を信じるなんてどうかしていると、あざけるべきなのでしょうが、私はそれでもいいと思うのですよ」
    「・・・・・・・・・」
    「私は信じたいものを信じ続けるのも1つの生きる方法だと思っていますし、私自身、主人が×××××××××××××に気づいてくれると信じています」
    「え?」
    「まあ、つまりはそういうことなのですよ」
     私は立ち上がって、ぽんぽんとお尻を叩いた。
     そろそろ主人の元に帰らなければ。
    「貴方がそんな不確かなものを信じているのならば、それはきっと私と同じということで、私はそれだけで励みになるのです。ですから、これからも頑張って信じていてあげてくださいね」
     そう言って私は彼(彼女かもしれない)に背を向けた。
    「それって、つらくない?」
     ヤブクロンの声がした。
     私は振り返らない。
    「そんなの、寂しいよ。僕は、そんなに寂しくないよ。僕は、君ほど寂しくないよ? でも・・・・・・でももう、前の主人のことを信じるなんてできないよ」
     小さな嗚咽が聞こえてきました。
    「そうですか」
     私はそっけなく返事を返します。
    「それなら、それでもいいんじゃないですか?」
     けれどそれも少し寂しいような気がしました。
    「×××」
     それは彼(彼女)の前のトレーナーの名前のようでした。
    「×××」
     彼女(彼かもしれない)は、絶えずその名前を呼んでいました。
     彼女の愛するトレーナー。
     どうして彼女を捨てたかなんてわからないのですけど、人間の考えることなんてそもそも良く知ろうとしたことなんてありません。
     しかし、裏切られてもなお、彼女(彼?)はそのトレーナーの声を、顔を、姿を、優しさを渇望する彼女のその声は、まぎれもなくトレーナーへの愛情から来るものなのではないでしょうか。
     それなら、彼(彼女?)のこの声は。
     人間を信じようと懸命だったこの声は。
     紛れもないラブソングなのでしょうか?
     ゴミ捨て場で彼女が歌う、掃溜めからのラブソングなのでしょうか?
     私は背を向け、ゴミ捨て場から去りました。
     とてもとても、寂しい気分になりました。


     私は生まれる前から旅をしている身なのですが。ええ、はい。
     たまごの時に、彼(私の主人)の元に渡り、生まれた時も、生まれた後も、彼のリュックの中で生活していました。
     主人の方は私にあまり興味がないようでしたが、私はそれを当たり前だと思いました。
     主人は私を戦わせたりしないのですが、それは彼の愛故だと思いました。
     主人は私にご飯を与えないのですが、それで私が困ることはありませんでした。
     主人は私を撫でたりしないのですが、私はそれで満足していました・・・・・・。
    「もし、そこのお方」
     ある時、とある山道で食料集めをしていた私は、少し低めの声に呼び止められました。
     振り返ると、オレンジっぽい黄色の体に、茶色の縞模様がある黄色い頬のポケモン、ライチュウが立っておりました。
    「なんでしょうか?」
    「私の・・・・・・たまごは知りませんか?」
    「はあ?」
     私は思わずいぶかしげな表情をし、そのライチュウは恥ずかしそうに俯きました。
    「私、この先の山に住んでいるものなのですが・・・・・・」
     ライチュウはそう前置きをし、話し始めました。
     彼女は、山に住んでいる普通のライチュウで、同じ種の恋人がいたのだといいます。しばらく一緒に暮らすうちに、いつのまにか2人の間には、大きなたまごが生まれたそうです。そして、彼女はかいがいしくたまごの世話を焼き、生まれるのを楽しみにしていたといいます。
     しかし、ある時、彼女は山道で走り回っていたサイホーンとぶつかり、大事なたまごを落としてしまいます。たまごは芝生の上に落ちたので割れる事はなかったのですが、坂道をコロコロと転がって、小さな丘の上から落ちてしまったそうです。
     本当ならそこで割れてしまったと諦めるべきなのですが、彼女は見たのだそうです。
     丘の下、口の開いたリュックの中に、そのたまごがすいこまれていくのを。
    「貴方、あのトレーナーのリュックから出てきましたよね? あのリュック、私のたまごが入ったものとそっくりなのです」
     彼女はそう言って
    「何か知りませんか?」
     そう訊ねました。
     彼女がここまで言うなら気づいていたはずです。そして、同時に私も気づいてしまいました。
     ああ、もう、ここには居れぬ。
    「ご婦人、そのような事、私に聞かれても困ります」
    「しかし・・・・・・」
    「ご婦人」
     私はライチュウの言葉を遮りました。
    「そこから先は何も口にしてはなりません。初対面の貴方にこんな事を言うのはとても忍びないのですが、もしそこから先を口に出すようなことがあれば、私はその言葉を聞き終わる前に、ここから立ち去らねばなりません」
    「・・・・・・・・・」
     ライチュウは黙り込んだ。
    「人の手に渡ったのなら、その子も死ぬ事はないでしょう。きっと懸命に生きているに違いありません。・・・・・・何の関係のない私がそんなことを言っても、説得力はないでしょうが、私はそう思います。それでは、私はこれで失礼します」
    「あ・・・・・・」
     ライチュウは何かをいいかけましたが、私はそれを待たずに駆け出しました。
     もうここには居れぬ。
     もう何も聞けぬ。
     もう、何も言えぬ。
    『おかあさん』
     私は口から毀れそうになったラブソングを、喉の奥で押し殺した。


     私は生まれる前から旅をしている身なのですが。ええ、はい。
     たまごの時に、彼(私の主人)の元に渡り、生まれた時も、生まれた後も、彼のリュックの中で生活していました。
     主人の方は私にあまり興味がないようでしたが、私はそれを当たり前だと思いました。
     主人は私を戦わせたりしないのですが、それは彼の愛故だと思いました。
     主人は私にご飯を与えないのですが、それで私が困ることはありませんでした。
     主人は私を撫でたりしないのですが、私はそれで満足していました・・・・・・。
     昨日、主人が死にました。
     滑って転んで病院に運ばれて、そのままでした。本当に一瞬の出来事でした。
     土気色の顔には、幾つもの皺が刻まれており、とてつもなく年配の方だという事が見てわかります。
     これで、私と主人の旅は終わり。
     こう思うと旅の間なんてものは短いものですね。
     本当に・・・・・・短い。
     私は自分が泣いているのに気が付きました。
     悲しい、ああ悲しい。
     主人が死んでしまったことを、こうも悲しく思えるとは、私は自分の心が意外で驚きました。
     私は生まれる前から旅をしている身なのですが。ええ、はい。
     たまごの時に、彼(私の主人)の元に渡り、生まれた時も、生まれた後も、彼のリュックの中で生活していました。
     主人の方は私にあまり興味がないようでしたが、私はそれを当たり前だと思うようにしていました。
     主人は私を戦わせたりしないのですが、それは彼が私に気づいていないからだと知っていました。
     主人は私にご飯を与えないのですが、それは当たり前で、自分でなんとかしないといけないと思っていました。
     主人は私を撫でたりしないのですが、私はそれで満足しているのだと、思うようにしていました。
     私の目から涙が溢れます。
     ここは誰もいない病室。ないたって恥ずかしくなんてありません。誰も、わたしのことになんて気づきません。ここで深く眠った私の主人になるはずだった彼も、その機会を永遠に失ってしまいました。
     生まれる前に丘から落ちて、主人のリュックに吸い込まれた私はそのまま主人のリュックの中から孵りましたが、主人はそれに気が付きませんでした。私はずっと主人の背中で世界を見ながら、生きるすべを身につけましたが、主人はそれに気づきませんでした。私は主人の背中で進化しましたが、主人はそれに気が付きませんでした。
     今考えると、それもしょうがなかったのかもしれません。すべての生物は、齢をとると、運動神経も反射神経も衰えるようで、主人の年齢を考えると気づけなくても仕方なかったのかもしれません。
     でも、それでも私は気づいて欲しかったのです。
     こんな事今更言っても仕方ないのはわかっています。しかし、私はどうして彼の前に堂々と姿を現す事ができなかったのかと、後悔しています。
     気づいて欲しかったのに。
     気づいて欲しかったのに。
     私は声を上げて泣き続けました。
     気づいてください。
     どうか私に気づいてください。
     これはラブソングです。
     貴方に気づかれなくとも貴方と共に旅をした、寂しがりで愚かで無様な、私からのあいのうたです。
     ですから、どうか聞き苦しいなどといわないで下さい。




    #################

    こんにちは、夏夜です。
    短編なので、これで完結です。
    息抜きにちょっと書いてみましたが、なんか内容が暗いですね。
    短編にもタグとかってあるんですかね?


      [No.2206] x.e.f 投稿者:巳佑   投稿日:2012/01/18(Wed) 04:53:26     158clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     左目がカタカタと音を立てる
     
     
     僕を拾ってくれた あの日
     色違いで仲間外れにされて 
     身も心も傷ついた僕を
     二人は優しい手の平で乗せてくれた
     初めてもらった温かさが心地よかった

     
     左目がカタカタと音を立てる

     
     二人は幼なじみの少年少女
     少年はわんぱくで行動力はあるけど ときどき周りが見えないのが玉にキズ
     少女は恥ずかしがり屋だけど 自分の意志をしっかり持っている
     僕はどちらかのものというわけじゃない
     僕は少年少女の友達だ

     
     左目がカタカタと音を立てる

     
     少年少女も大きくなって 
     旅に出る日がやってきた
     少年少女の肩に乗って 
     僕も旅に出る
     
     少年の無鉄砲な行動でスピアーの大群に追いかけられた日
     少女の緊張でポケモンバトルに負けてしまった日
     少年の根性で言うことを聞かなかったポケモンの心が開いた日
     少女の勇気が小さなポケモンを悪者の手から守った日

     失敗も成功も一緒に噛みあう日々
     こうして少年少女は大人になっていくところを
     僕は近くで見ることができて
     誇りに思う

     
     左目がカタカタと音を立てる

     
     少年少女が少し大きくなって
     僕も進化して大きくなった
     肩に乗ることができないのは寂しいけど
     代わりに力を手に入れたんだ
     二人を支える力を手に入れたんだ

     旅をしている間に少年少女はマルチバトルで活躍して
     性格はズレているのに息はピッタリだ
     二人はいい関係だねと言われたとき
     少女は顔を赤くさせて
     少年は少女の様子に首を傾げて
     僕はとりあえず少年の頭をつついといた
     
     ときどきケンカすることもあった
     お気に入りのモーモーミルクを勝手に飲まれたとか
     バトルであーだこーだともめたりとか
     少年は最初納得できなくて
     少女は泣いてばっかりで
     だけど最後は謝って
     また笑顔になれた
     
     
     左目がカタカタと音を立てる 

     
     それからもマルチバトルで活躍し続けて
     世界でも有名な二人組になった少年少女は
     いつのまにか大人になっていた
     だけど心は少年少女のままで
     
     色々なところを旅しては
     今までと同じようにポケモンと出逢った
     ミルタンクの乳しぼりを体験したり
     ゾロアの悪戯イリュージョンで化かされたり
     我流な技を出してくるコジョンドに出逢ったり
     オーロラとともにレックウザを発見したり 

     色々なところを旅しては
     今までと同じように人と出逢った
     自信のないトレーナーにポケモンを教えたり
     森で同じ迷子になった人と夜を語り明かしたり
     一度バトルした人に再会してまたバトルで熱くなったり
     まだまだ現役だという老人の旅人に出逢ったり 
     
     一つ一つの出逢いには違う物語があって
     これの他にも色々あって
     語りつくせないほどの
     想い出が溢れてくる
     
     旅でもマルチバトルでも二人三脚で走り続けた少年少女は
     左手の薬指に指輪をはめて
     手を繋いで一つのゴールを果たした

     
     左目がカタカタと音を立てる


     ひとまず旅を終えることにした少年少女は
     赤い屋根の家で一緒に暮らし始めて
     やがて子供を授かって
     その子も旅を始めて

     やがてその子に妻ができる頃になると
     少年少女は老人になっていた
     
     もう一度だけ旅をしてみようかと
     笑顔輝く少年に
     あの日に再会しに行くのも楽しみだと
     頬を赤らめる少女がいた 
     もちろんお前も一緒に行くぞと
     僕の右羽に少年の手が繋がって
     僕の左羽に少女の手が繋がって
     再び世界へと羽ばたいた
     
     
     左目がカタカタと音を立てる
     

     懐かしい想い出に胸が温かくなる
     一コマ一コマに映る命 
     この左目に刻んできた少年少女の一生は
     僕の誇りだ
     
      
     やがて左目から音がなくなった


     スクリーンの前に少年少女
     しわだらけの手を繋いで微笑みながら眠っていた
     生まれ変わっても
     また二人と一緒に旅がしたい
     我がままかな?
     叶わないのかな?
     
     でも大好きだから
     そう願ってもいいでしょう?
     
     二人に想いを馳せながら
     左目を閉じて

     右目を静かに開けて
     願いを埋め込んだ



    【書いてみました】

     ネイティオの左目は過去を見ることができて、右目は未来を見ることができる。ネイティオのその特性と、エスパーによる念写を使って、映画を見せるかのように、相手にあんな風に過去を見せることができたらいいなぁと思いながら、今回の物語を書いてみました。 
     
     ちなみに『x.e.f』の『x』は『xatu』でネイティオの英語名です。
     また、『e』は『eyes』で目という意味で。
     そして、『f』は『films』で映画という意味です。(一応、両方とも複数形表記にしときました)

     最初は『f』で『future』= 未来、『x』= 何かの英単語 = 過去、という意味もありますよー、にしてみたかったのですが、『x』から始まるもので過去という意味の英単語が自分では見つからず……もし見つけたよという方がいらっしゃいましたら、ぜひ(以下略) 
     
     
     追伸:大人になったり、老人になったりなのに『少年少女』という表記をしていたのは、二人の心と、姿が変わっても、その人はその人なんだということを表したかったからです。分かりづらかったら、すいません。一応、説明しときました。(汗)

     
     ありがとうございました。


    【何をしてもいいですよ♪】


      [No.2205] Re: ルカリオの抱きしめ方 投稿者:きとかげ   投稿日:2012/01/18(Wed) 00:47:56     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    質問者さん、筋力に自信はありますでしょうか?
    だったら、お姫様抱っこがおすすめです!
    うちのルカリオはオスなので最初照れていましたが、今は慣れて向こうから抱っこをせがんできます☆(腰が痛いのでそんなに抱っこできないんですが…(笑

    あと、ルカリオ用のプロテクターみたいなのもありました。商品名は失念しましたが、大胸筋矯正サポーターみたいな感じでした。ルカリオは人気のポケモンなので、ブリーダー用品店を探せばあると思いますよ〜

    【このくらいしか思い付かなかったのよ】
    【ルカリオは54kgなのよ】


      [No.2203] ルカリオの抱きしめ方 投稿者:門森 輝   投稿日:2012/01/16(Mon) 19:21:25     66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     知恵袋に寄せられた相談:
     先日、私のリオルがルカリオに進化しました。その時、嬉しくて嬉しくて強く抱きしめてしまったんです。
     その際にルカリオの胸の棘が私に刺さりました。傷は数針縫う程度で済みましたが、責任を感じているのか、それ以来ルカリオがあまり近寄って来なくなってしまいました。
     この怪我は私の責任ですし、私自身気にしていません。寧ろルカリオを抱きしめて死ねるなら本望です。
     しかし、気にしていない事を伝えても、怖がって近寄って来ません。ルカリオにこんな思いをさせてしまった事をとても反省しています。
     どうすればルカリオと今までの様に普通に過ごせるでしょうか? 
     そして、今後もつい抱きしめてしまうかも知れないので、棘に刺さらない抱き方がありましたら教えて下さい。私では後ろから抱きしめる方法しか思い浮かびません。
     皆様宜しくお願い致します。

    【答えが出なかったから丸投げするのよ】
    【ルカリオを抱きしめたいのよ】


      [No.2202] イッシュ昔話 悪食病 投稿者:紀成   投稿日:2012/01/16(Mon) 18:15:56     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ※『羊たちの沈黙』『ハンニバル』的要素があります。


















    それに侵されし者、目は窪み、四六時中透明な液を垂れ流し、異形の物と化す
    ほとんどの者は助かることなく、そのまま暗い部屋に閉じ込められ一生を終える
    やたらに何かを口にしたがり、部屋の扉を歯で噛み千切り脱走したという話も残っている

    その名前は――



    むかしむかし。
    イッシュ地方がまだ、そこまで国際的に発展していなかった頃。年で言えば二百年くらい前のこととなります。大きな戦争や地震が訪れ、世の中が混乱していた……そんな時代。
    ある街に、別地方からの貴族が移り住みました。当時では考えられないくらい豪華な家に次々と調度品や美しい服が運び込まれ、まるでどこぞの王族が引っ越してきたかのように一時街はお祭り騒ぎとなりました。
    引っ越してきてから数日後、その貴族が街中に知らせを貼り付けました。内容は、前に住んでいた場所で使っていた召使達は全て向こうで解雇してしまった。なので、この地方で働いてくれる召使を募集する、というものでした。
    その下に書かれていた額に、その街の人々は喜んで飛びつきました。当時はまだ観光事業もなく、人々は近くの海でとれる海獣を少しずつ売って暮らしていたのです。とはいえ、雷馬などに乗れば一週間もかからずに一周できてしまうくらい狭い地方でしたからそれらはどこに行っても出回っており、売れてもたいしたお金にはならなかったのです。今と違って、大きな港も、コンクリートで包まれた巨大な街もなかったのでいささか小さい地方と見られていた、と当時の文には書かれてあります。
    さて、屋敷に嬉々として集まった者達にその家の頭首は言いました。

    『面接も何もいらない。ここに来た者達は明日から来てくれて構わない。給料は月に金貨二枚』

    相当な給料です。彼らが常日頃から使っていたのは銅貨でしたから、その倍以上にもなります。
    沸き立つ彼らに、頭首はもう一つ付け加えました。

    『最後に一つ。この屋敷には地下室があるが、そこには決して行かないように。もし行く者がいたら、連帯責任としてお前達を全員解雇する』

    地下室。決して行ってはならない場所。それに引っかかりを感じる者もいましたが、もし行ったら解雇されてしまうという言葉を耳にして何も言わなくなりました。
    ――一人を除いては。

    その少年は両親がいませんでした。幼い頃自分を一人残して漁に出たきり、帰ってこないのです。周りの人の話では嵐に遭って船が飲み込まれてしまったのだろうということを聞きました。なので、様々な仕事をしながら一人で頑張って暮らしていました。
    時には、他人の手を借りることがありました。ですがどうしても育ち盛りの体には十分な食事を摂ることができません。
    そこへ現れたのが、その貴族の知らせだったのです。少年は喜んで大人達に混ざって屋敷へ行きました。そして頭首の話を聞きました。
    彼はとても優しくいい子でしたが、一つだけ欠点がありました。子供だから仕方ないと思うかもしれませんが、余計なことに首を突っ込みたがる癖があったことです。すぐに頭首の言葉に興味を示しました。
    ですが周りの人達の反応を見て、やめておこうかとも思いました。自分が解雇されるのは別に構わない。だって自分一人が進んでやったことだから。でも、そのせいで周りの人達が解雇されてしまったら……
    そう思うと、興味は自然と薄れていくのでした。周りの大人達と一緒に窓を拭いたり、埃を掃いたり、食器を磨いたりして仕事をこなしていきました。

    一ヶ月経ち、最初の給料が渡されました。小さな布袋に、金貨二枚。合わせてみると綺麗な音がしました。本物の金貨です。周りの大人達も同じようなことをしているのを見て、面白おかしく思いました。
    そこでふと、なんだか人の数が少ないように感じました。一ヶ月前までは大広間に集まって息が苦しくなるほどだったのに、今はきちんと深く息が吸い込めるのです。変だなと思いましたが、回りの人達は皆金貨に夢中で全く異変に気付いていないようでしたので、少年も気のせいかと思い、金貨を服のポケットにしまいました。
    それから一週間経ち、三週間経ち、また一ヶ月が経ちました。少年は今度こそ確信しました。どうみても、大広間が前より広いように思えるのです。それに今まで一緒に仕事していた人の姿が見当たりません。どうやら他の人は全く気にしていないようですが……
    頭首は変わらず金貨を見つめる大人達を細い目で見ています。その目がなんだか刃物のように見えて、少年はゾクリと寒気がしました。そして、姿を消した大人達が一体何をしたのかが分かったような気がしました。


    深夜。屋敷の暗い廊下を小さな影が走っていきます。あの少年です。大広間の端にある扉をそっと開け、中に入ります。当時懐中電灯なんて便利な物はありませんから、小さな松明を持っていました。
    足元には元々積もっていた埃を踏んだのであろう夥しい数の足跡がついていました。壁には何もついていません。汚れていない、まっさらな白です。
    少年はゴクリと唾を飲むと、下へ続く階段をひたすら降りていきました。暗い、どこまでも続くような空間に飲み込まれてしまいそうな気分になり、ギュっと肩を抱きます。
    カツン、カツンと金属の響く音が耳にこびり付いていました。

    どのくらい経ったのでしょう。段差がなくなりました。どうやら階段はこれで終わりのようです。
    少年は冷や汗を拭うと、まだ続く廊下をひたすら歩いていきました。姿を消した大人達もここまでは同じように来たようです。足跡が残っています。
    もう少し歩いて…… 何かを踏みました。足の裏で包めるくらいの細長い、何か。まさか、と思い少年は松明をそれに向けて……口を押えました。

    それは、人骨だったのです。肉も皮もついていない、ただただ骨のまま。よく見ればその後の廊下にも落ちていました。小さな物は指でしょうか。頭蓋骨は目の部分が二つとも空洞になっていて、肉はおろか髪の毛すらもついていませんでした。
    その時、少年の前から何かをしゃぶるような音が聞こえてきました。それは固く閉ざされた鉄の扉の奥から響いてきます。しかしそのドアも何度か壊されたような形跡があり、しかも妙な痕がありました。
    そう、それはまるで、食いちぎられたような――

    ぴたり、としゃぶるような音が止みました。そのままザッザッとこちらに向かってくるような音がします。
    少年は震える足を叩くと、一目散に元来た道を走り出しました。走って、走って、階段を駆け上って……
    やっと大広間にある扉を開けた時には、夜が明けていました。少年はそのまま気を失ってしまいました。

    目が覚めた時、少年は大人達に囲まれていました。皆が皆、不思議そうな顔をしています。少年は何か言おうと思いましたが、恐怖のあまりうまく喋ることができません。大人達が顔を見合わせていると、頭首がやってきました。てっきり解雇されると思いましたが、彼は少年に優しく言いました。

    『君は、悪夢を見ていたんだ。もう大丈夫だよ』

    それから数年が経ちました。少年はすっかり青年に近い歳になり、外見も当時の面影は全くなくなっていました。その時彼は別の街で働いていました。別地方からの物資の受け入れが始まり、街を観光向けにしようと工事をするのに、人手が足りなかったのです。
    前よりずっといい給料で雇われていた彼は、もうあの屋敷のことを忘れかけていました。
    その屋敷は、あの件があってから数ヶ月後に突然、火事で全焼したのです。噂ではその貴族に踏み潰された別の貴族が復讐として放火したのではないか……と言われていますが、本当のことは定かではありません。
    ですが、焼け跡から二人の遺体が発見されたことは間違いありませんでした。一つは頭首の部屋から。そしてもう一つは……

    地下室から。

    それと同時に大量の骨も見つかり、やはりあのことは夢ではなかったのだと青年は今になって思います。地下室から見つかった遺体は顎が発達し、どんなに固い物でもその気になれば齧ることができるくらいの力があったのではないか、と推測されたということです。
    そしてそれから何十年も経った後に、他地方の奇病の中に、それと全く同じ症状がある物が見つかりました。


    『悪食病』
    その書物には、こう書かれています。

    『原因不明の奇病。ポケモンが感染し、そのポケモンが人間を咬むことで感染するという説が一番有効だが、詳細は不明。数百年前、遠く離れた水と緑豊かな地方を襲った戦争に人間兵器として使われたという話もある。目は窪み、口から四六時中涎を垂れ流し、目に映った物は全て喰らい尽くすという。
    中には、目が赤く染まったという話もあるが定かではない』

    今では知る人もほとんどいませんが、もしかしたらこの世界のどこかで今でもそれは生き続けているのかもしれません。


    『イッシュ地方昔話総集編 3』 より

    ――――――――――
    明日から修学旅行ということで一つ書いて行こうと思った。
    【何をしてもいいのよ】


      [No.2200] マイ・ドリーム 投稿者:くらっかー   投稿日:2012/01/15(Sun) 17:46:57     151clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    時は20XX年。荒れた大地にて、1匹のドラゴンポケモンがいた。その名は、ホウエン地方の、「タツベイ」。

    「オイラ・・・いつになったら空飛べるんだろなぁ・・・・。」

    そうつぶやいたタツベイの首には、ひし形のアクセサリー。都会で拾った拾い物。

    「おい」

    タツベイの目の前に、ゲンガーとマルマインが現れた。

    「なんでぃ!お前ら!」

    「首についてるアクセサリー、もらいにきた。」

    「これはオイラの宝物でぃ!」

    タツベイがアクセサリーを強く掴んだ。

    「意地でも渡さない気なら…力ずくさ。来い。テメェら」

    そうゲンガーが言うと、悪ポケモン勢ぞろい。そのままタツベイに向かった。

    「これはオイラに勇気をくれた石なんでぃ!!渡さねぇぇ!!」

    拳を握ってタツベイが叫ぶと、石が光り始めた。その光はタツベイを包み、タツベイは違う姿に。そう。タツベイはコモルーに進化したのだ。

    「とっしん!」

    「ぐほっ!!」 「ぐっ!」 「どわあっ!」 「くっそー!」

    次々に倒して行き、ついに残るはゲンガーのみ。

    「シャドーブレイク!!」

    凄まじい闇がコモルーにヒット。

    「負・・・けな・・い・・ぞ・・」

    「まだ立ち上がるか。」

    「うおおおお!」

    コモルーの体を光が包んだ。

    「な・・・!嘘だろ…。」

    ついにボーマンダまで進化。

    「破壊光線!!!」

    「ぐ・・・ぬああああああああ!!!」

    「勝った!」

    ボーマンダは静かにほほ笑んだ。

    「あれ?翼生えてる…     え!!??進化!?やった!空を飛べる!!!」

    そういうと、ボーマンダは未来へ飛び立った。


      [No.2198] 面倒なこと 投稿者:西条流月   投稿日:2012/01/14(Sat) 01:45:45     85clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     どうにも面倒くさい。

     お前がもう一人の英雄だとか戦わなければポケモンを開放するぞとか言われた時に思ったのはそれだけだった。
     こちとらこの間野生のポケモンに全滅させられそうになったんだぞ。そんな人間に世界の命運を任せる神経が理解できない。四天王とかチャンピオンとか強いトレーナーは掃いて捨てるほどいるだろう。

     きっとこの石に宿ってるもう一方のポケモンだってそう思っているに違いない。そこいらの草むらでタブンネ狩ってるような人間が実は英雄だとかいうことだってあるに違いない。
     いちいち英雄なんて旗を担がなくても、伝説のポケモンなんていなくても、あいつらのやってることが正しくないと思うなら、止めちゃえばいい。数に任せて強引に抑え込めばいい。

     言いたいことはたくさんあった。
     それでも言わなかった。

     結局は戦いに行くんだ。うだうだ言ってもしょうがない。
     ただ、一つだけ明確にしておきたいことはある。
     単に自分の仲間と別れさせられるなんて選択肢を選べるはずがない。それだけは嫌だから、面倒くさくてもできることがあるならやろうと思っただけだ。
     世界を背負うなんてことに憧れたわけでも、いろいろな人に頼りにされたわけでもない。
     ただそれだけのことだ。
     そう言おうと思ったけれど、恥ずかしくて言えはしなかった。



    ―――――――――――


    いろいろ思ってるからこそ、言えない感じのうちの主人公
    【書いてみたのよ】
    【好きにしていいのよ】


      [No.2197] 激しく同意! 投稿者:砂糖水   投稿日:2012/01/13(Fri) 23:49:49     24clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    私の場合、BWはなんていうか、敵から選ばれていることに違和感ありました。
    いつもは、行く先々で敵をなぎ倒し、またお前かよ、って思われているのに…。
    勝手に祭り上げられて…あれいつものこと?

    > 主人公おきざりにしてまわりが盛り上がってるようにしか見えなかったですよ奥さん。

    私もそんな感じでしたよー、いやほんと。

    洞窟のとことか、いやお前勝手に決めんなや!って。




    そして音色さんマジパネェ。
    かっこよすぎワロタ。
    本家ともども拍手テロらせていただきました。


    【みんなも書けばいいのよ】


      [No.2196] 俺のブラック螺旋な日記 ※英雄の条件 投稿者:音色   投稿日:2012/01/13(Fri) 23:31:10     93clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     英雄、レシラム、王、ゼクロム、プラズマ団、N、解放、ポケモン、理想、真実。
     自分と同じ名前を冠した塔で、街の広場で、博物館で、観覧車で、電気石の洞穴で、緑の髪をした青年は、黒い竜と飛び去った。
     ラセン、という名前を知った時、ひどくあの青年は目を見開いて、閉じた。螺旋の塔の存在は、雪花の町に着くまでは知らなかった。
     母親にライブキャスターで尋ねた。この名前には、あの塔と何か関係があるのだろうかと。
     画面の向こうで母は一瞬顔を曇らせて、一息ついて話してくれた。
     生まれた時に、双子の兄がいたこと。父親は雪花の出身で、塔について調べていたこと。二人の名前を塔にちなんでつけようとしたこと。
     そして、兄は産声を上げることなく死んだこと。
     難産だったらしい。片方が助かっただけでも奇跡だと、当時は医者が言っていたと、母は苦笑した。
     やっぱり感づいた?その顔は、娘の表情を見て気付いたらしい。無口な娘を持つと、何も言わなくても分かるものね、と呟いて、通信を切った。

     双竜の町へ向かう途中の橋で、ゲーチスは言った。
     王に選ばれた、止めたくば王の言葉の通りに対となる伝説の竜を従えろ。そして戦え。
     その気がないなら、私達は王の号令のもとに人とポケモンを切り離す。
     抑揚を付けた口調で、どこかわざとらしくそう告げて。何も言わない私に対して、黒いトリニティを従え去っていった。

     主張しないから、誰も何も言わないのかもしれないけれど。
     鞄の中のライトストーンを手渡された時、チャンピオンはとても真剣な顔をしていたけれど。
     仮に、私が皆が言う選ばれた英雄であるとすれば。


     それは何かの間違いだろうと、断言してしまおう。
     

     レシラムが目の前に現れたとしても、私は静かに竜の意思を拒むだろう。
     対となる竜がそろうことで、Nと戦うという事が決めつけられるのであれば、私はあえてそれに逆らってしまえば良い。
     

     英雄なんかじゃない。ただの、トレーナー。それが私なのだから。


     チェレンと勝負した。ベルが精いっぱいの励ましをくれた。彼も彼女も旅で何かを掴んだらしい。
     私はどうかと言われれば、まだ何も分からない。
     季節がぐるりと一周めぐっても、まだ見たことのない世界があると知ってるから。
     ボールの中で呑気なジャローダが欠伸をした。何も変わらないこの子たちと別れるなんて、考えたこともないけれど。
     
     ただ、英雄という称号にすべてを預けて、なにもかもをかけて戦えるほど、私は大きくなっていないから。
     四天王の部屋へ続く道。退路は断たれた

    「さぁ、行こうか」

     独り言を漏らして、足を向けた。


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談   N戦でレシラム抜きでバトルしたのはガチ。あくまで英雄なんかじゃないよ、という主張の元でバトルしてくれていたらうれしいなぁ。

    【うちの主人公はこう思ってた】


      [No.2195] ともだち 投稿者:紀成   投稿日:2012/01/13(Fri) 20:33:40     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    そいつは、突然僕の影に現れた。一人ぼっちで泣いている僕の影で、あの独特の赤い目を浮かび上がらせて口を裂けんばかりに横に広げ、ニヤリと笑った。
    周りには誰もいない。理由は分からないけど、数日前から誰も僕と遊んでくれなくなったのだ。それどころか何かにつけ暴言を吐かれ、殴られ、蹴られる。おかげで僕の体は痣だらけになった。
    でも何も言えなかった。僕には両親はいなくて、孤児院で育ったからだ。でもそれを理由にしたって皆今までは何の偏見もなしに遊んでくれていたのだ。
    どうして。どうして。
    そんな単語を何百回も繰り返し吐き続けていたら、そいつが現れたのだ。そいつは僕の表情を見てまた笑うと、よっこらせとでも言うように影から出てきた。一頭身。顔と体の境目が分からない。目は黄昏時の太陽よりも赤かった。
    僕は必死で頭の中を穿り返し、四文字の答えを出した。いつだったか教科書で『危険なポケモン』として学習した覚えがあった。こんな説明文だったと思う。

    『やまで そうなんしたとき いのちをうばいに くらやみから あらわれることが あるという』

    最初に言っておくけど、そこは山ではない。遭難もしていないし、夕方であって真っ暗でもない。それでもそいつは僕の前に現れた。短い手を差し出され、訳も分からないまま僕は涙で濡れた手でそいつの手を握った。


    それからそいつと僕はつるむようになった。どうやら他人には見えないらしく、やりたい放題、し放題。花と水が入っている花瓶を持ち上げるわ、給食のクリームシチューを一匹で全部食べ尽くすわ、全く掃除していない黒板消しをブン投げるわ。
    数え切れないほどの悪事をやらかした。先生もクラスメイトも何もできずに、ただおろおろするばかりだった。僕はそれが可笑しかった。いつも威張っているばかりの先生が、僕を苛めるクラスメイトが何もできない。
    ざまあみろ。
    そんな言葉が『どうして』の替わりに何重にも折り重なっていった。

    成長するにつれ、僕は周りのことをあまり気にしなくなっていった。どんな事を言われても、自分は自分だと思えるようになったからだ。そしてその気持ちはそいつにも向くようになった。元はと言えばそいつが勝手に自分の影にひっついていただけで、手持ちと言うべきポケモンではなかったのだ。
    そう考えるようになった時は既に、僕は親切なお金持ちから孤児院に送られてきたイーブイやその進化系に夢中になっており、そいつのことをほとんど忘れかけていた。

    ある日、久々にそいつのことを思い出して名前を呼んでみた。だが返事はなかった。おかしいなと思ってもう一度呼んでみたが、やはり返事もないし現れることもなかった。
    孤児院の周り、学校、更には町内を一周してみたけどそいつの姿はどこにもなくなっていた。初めて出会った時と同じ、黄昏時の光が全てを赤く照らしていた。

    その後、僕は孤児院を出て高校に入り就職した。未だにそいつには会えていない。消えたのか、また別の影を求めてどこかにいるのか。
    残業中、ふと一人の影を見つめるとあの笑いが頭に響いてくるような気がするのだ。


      [No.2194] 日常にひそむ貰い火 投稿者:逆行   投稿日:2012/01/13(Fri) 17:57:47     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    そのイスは薄青色で塗られていた。細長いそれの下からは、暖かい空気が流れていた。

     イスに座ったマスターは、本を取り出して読んでいた。その本は、封筒みたいな色の紙で覆われていた。何の本を読んでいるのか、周りに隠しているらしい。けれど下から見上げたぼくには、うっすらと中身がすけて見えていた。字は見えないけれど、何か十字架みたいな絵がかいてある事は分かった。

     電車の中は揺れていた。ちゃんと線路の上を走れているのか、心配なくらい揺れていた。けれど誰もよろけてはいなかった。立っている人は、天井にぶら下がっている輪っかの中に、しっかりと手を入れていた。ぼくは床まで伸びている銀の棒を、前足でつかんで、転ばないように気をつけた。
     電車の中は、そんなに混んでいるわけじゃなかった。けれど立っている人が多かった。みんな遠慮して座らないので、細長いイスの上には、まだたくさんの薄青色があまっていた。
     ぼくの見える範囲には、学生さんがけっこういた。学生さんは大きいかばんを床において、股に挟みながら立っていた。どうして股に挟むのか、前から疑問に思っていた。盗まれないようにするためだろうか。
     ぼく以外にポケモンはいなかった。少しさみしく感じた。

     窓の外に視界をずらした。無限の静止画が右から左へと、通過していった。中途半端ないなかの風景がそこにあった。田んぼと畑が少しずつあって、家と工場がほとんどだった。ときどき大型のスーパーが、ドヤ顔でその地にそびえ立っていた。
     外の景色を眺めていると、いつの間にか変な妄想をしていた。家の屋根から屋根、建物から建物へやたらと跳躍力のある人間が次々と飛び越えていき、電車と同じスピードで並走して走っている、という妄想。電車に乗っている時、これは必ずやっていた。(ような気がする。よく覚えていない。)こんなおかしい事をやっているのは、ぼくだけだろうきっと。妄想に出てくるのは、電車と同じスピードで走れそうな、素早いポケモンである事が多かった。今日はサンダースだった。マルマインは無理。どうやって飛び越えるのか、分からないから。

     背中に当たる暖かい風が、だんだんうっとうしく感じてきた。ぼくは、炎タイプのロコンなので、十分暖かい。これ以上あぶられても困る。座席の下にたくさんの穴があって、そこから暖かい空気が流れてくる。電車の中の暖房は、こうなっている事が多いけれど、これがどういう仕組みなのか分からない。

     もしかしたら、ぼくみたいな炎タイプのポケモンが中に閉じ込められていて、その子がかえんほうしゃやひのこを使っているのかもしれない!
     ……さすがにそれはないか。

     中はどうなっているのだろう。どうやって暖かくしているのだろう。それを確かめようと思った。たくさんの穴からひとつを選び、そこに片目を近づけた。
     するとどうだろう。

     アチッ。

     額がものすごく熱かった。いや、炎タイプだからやけどはしないんだけど。それにしても熱かった。このなんていうか鉄? ステンレス? 穴のあいた銀のかべ。ここに額が当たって、ものすごく熱い。
     炎タイプでも熱いという事は、人間だったらとんでもなく熱いんだろう。足もやけどする人がいそう。
     結局、中がどうなっているのか分からなかった。一瞬だけのぞく事ができたけれど、暗くてよく見えなかった。

     なぜだろう。体が熱い。炎タイプだからもともと熱いのだけれど、それにしても自分で少し異常だと思う。額の熱がじわっと全身に広がって、体が燃え上がりそうな感じ。もしかしたら風邪をひいたのかもしれない。

     後でぼくの特殊攻撃力が、1.5倍上がっていた事が発覚した。



    【何をしてもいいのよ】


      [No.2193] 英雄の条件 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/01/10(Tue) 22:14:38     82clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「ボクたちを止めるならキミも英雄になるんだ! そう! レシラムと対をなすポケモン、ゼクロムに認められてこそようやく対等になれる! ボクたちを阻止できる! さて、どうする?」

     冬のセッカシティの空気は冷たい。走っても走っても体は暖まらず、肺まで入ってくる冷たい空気に体温は下がって行く。凍った池の上をすべり、目指すのはソウリュウシティだ。
     息が切れて足も重い。それでも走ることは止められない。止めてはいけない。リュウラセンの塔で見たレシラムから感じた威圧感。それを手に入れたN。勝てる気がしない。


    「おめでとう! アナタはわれらが王に選ばれました。アナタがこのままポケモンと共存する世界を望むのなら、伝説に記されたもう1匹のドラゴンポケモンを従えわれらの王と戦いなさい。でないならプラズマ団がすべてのポケモンを人から奪い、逃がし、解き放ちましょう!」


     鞄の中には沈黙を守ったままのダークストーンが入っている。重くて体力を余計に消耗する。


    「そのダークストーンを手にするということは、わしになにかあったときにNと戦うということだぞ。それでいいのか?」
    「Nの望む世界……ポケモンとトレーナーとが切り離される世界を待つというのか?」
    「……そうか。いまのがおまえの覚悟なんだな。わかった。こころして受け取れい」

     凍った池に足を取られ、バランスを崩して派手に転ぶ。モンスターボールが転がり、そのうちの一つが開いた。カノコタウンから一緒のダイケンキが見ている。ごめんね、と言ってダイケンキを戻した。
     まわりをみれば、鞄からダークストーンが転がってしまっている。氷にまみれたそれはとても冷たかった。そのまま持ち上げて見つめる。
     鞄の中にダークストーンを入れた。やることが違うから。
    「デボラ!」
     懐かしい声に振り向く。緑の帽子とロングスカートの女の子。幼なじみのベルだ。
    「ベル!ベルぅー!!!!」
     デボラがベルに抱きつく。小さな子供のように。声をあげて感情を爆発させて。
    「わ、わわ? どうしたの?」
    「できない、私には出来ない!なんでみんな私に押し付けるの!?Nが私だと言ったから?世界を背負うなんて私には出来ない!出来るわけないのに、どうして!」
    「デボラ……」
    「私はチェレンみたいに強くない!なりたいものなんてない!あんなレシラムみたいのと戦えないよ!どうしてみんな私に、私に押し付けるの!?」
     ベルは思いっきりデボラを突き放す。そして涙に濡れる頬を叩き付けた。
    「甘えないでよ!」
     二人の間に沈黙が流れる。ベルに叩かれた頬を押さえ、デボラはただ彼女を見上げるだけだった。
    「……あたし、ヒウンシティでだいじなポケモンをプラズマ団に奪われたことがあるでしょ……その時、デボラはこういったよね。『ベルはポケモンに優しいけど、優しいだけじゃダメ。ムンナをこれ以上怖い目に会わせないためにも強くなろう』って。あの時、デボラがすっごくかっこ良く見えた。だからあたしもデボラに追いつくために強くなった……それなのに何? あたしの友達は、そんな弱い子じゃなかった!」
     ベルの声が曇ってる。手で流れる涙を拭きながらベルは話を続ける。
    「プラズマ団のNが、デボラを呼んでる。他に誰も勝てない。勝手なのは解ってるよ!でもプラズマ団がムリヤリポケモンを解放したら悲しむ人ばっかりだよ! だからデボラ!」
     ベルの暖かい手がデボラの冷たい手を握る。
    「プラズマ団をとめて!!ポケモンが大好きな人から、ポケモンを奪われないようにして!それがデボラが求める真実とか理想だとおもう……」
    「ベル……」
    「ごめんね……大変なのにわざわざこんなこといいにきて。本当はデボラのこと、リラックスさせるつもりだったのに……でもデボラなら大丈夫だよ。うん!絶対に大丈夫! あたしが保証してあげる!だから、うん……うまく、いえないけど応援してるよ」
    「ベル、ベル……!」
    「デボラ、信じてるから。あたし、デボラもチェレンも大好きだよ」
    「うん、うん……ありがとう、ベル」
     デボラは立ち上がる。そして体についた雪を払う。
    「出来るところまで行く。私に出来るか解らないけど、Nに会ってくる」
    「デボラ、がんばれ!」
    「うん!」
     デボラは再び走り出す。もう迷いは消えた。心にあった重苦しい思いもいつの間にか消えていた。ベルに手を振って、ただひたすら前に進む。


    ーーーーーーーーーーーー
    ポケモンホワイトをプレイしていて、ここらあたりで私がおいてけぼりになってしまった。
    主人公おきざりにしてまわりが盛り上がってるようにしか見えなかったですよ奥さん。
    だからきっと主人公はこう思いながらシリンダーブリッジ前のベル戦を戦ってたんじゃないかって思った。

    【なにしてもいいのよ】【みんなの主人公はどう思ってた?】


      [No.2192] その商法を人は 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/01/10(Tue) 20:48:49     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > メジャーデビューキタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ !!!!!
    > 何千万という底抜けに桁外れな金額もキタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ !!!!!
    きっと、ゴーヤロック商法という商法に引っかかってるファンがたくさんいるんです。1枚程度じゃ当たらないというさすがのすさまじさです。
    会いに行くのも一苦労です。

    > こういう風にちょい役で出してもらえると、なかなか嬉しいものです(´ω`)
    私のアイドル枠に入ってしまいまs
    今後も時々出て来てしまいます

    ありがとうございました!!!!!


      [No.2191] 感想タブンネがBURSTした……ですと? 投稿者:巳佑   投稿日:2012/01/10(Tue) 19:18:10     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     きとらさん、感想ありがとうございます!

     ……感想タブンネがバーストしたって、私、なんかとんでもないことをやらかした……!?(ドキドキ)
     そして、口調がところどころ、ラティアスさんに影響されてますし。(笑)
     お気に召してくれたようでなによりです、こちらこそ、ありがとうございました。(ドキドキ)


    >  書き出しからラティオス。まってラティオス。妹を心配する家族思いなラティオス。もうここから感想タブンネが壊れた。

     いきなりの感想タブンネ壊れた発言に私も驚きました。(ドキドキ)
     出だしをどうしようかと思いましたが、今回は話の区切りを兄からの手紙にしようということで、そうなりました。
     それが功を奏したようで良かったです。


    > ちょ、カイリューの郵便屋さんって、ミュウツーに出て来t(

     懐かしいですよねー、あの映画。(ドキドキ)
     カイリューの郵便を届けるシーンは確かにとても可愛かったです。
     ちなみに、いつか、ミュウツーが誰かと文通するという話も書いてみたいなぁと思ったのはここだけの話です(
     

    > ラティアスねながら空を飛ぶ
    > 特性が浮遊だから出来る離れ技です。

     浮遊のことをすっかり忘れていた私がここに(


    > 実はここまでフライゴンの性別が中性的すぎて解らん状態なのだが、女子会の辺りで確定。女子だったのかー!

     えぇ、ライゴちゃんは女の子ですよー。
     ちなみにライゴちゃんは酒豪というのが裏設定にあります。
     だからこそ、ガンガン飛ばしまくるラティアスのいい相手でございます。


    > サクラの花びらは押し花よりも、紙にすいた方が鮮やかですー!   タブンネ。

     それは初めて知りましたですー!(ドキドキ)
     今後の参考にさせていただきます。

    > ドラゴンタイプに寒いところ厳禁ですー!
    > と思いきや、ラティアスが一番影響受けないのね。局長もフライゴンも4倍っていう
    > そしてラティアスが一番の特防なのね。だからラティアスなのですー!

     その発想は思いつかなかったです。(笑)



    > 水路が行き交う、でベネチアを連想しまくりました。

     そうですね、ここはなんとなくアルトマーレを想像しながら書いていきましたです。
     ベネチアにも一度は行ってみたい、今日この頃です。


    > で、局長。
    > 貴方の翼は時空の裂け目を飛べるんですk
    > それとも、死後は風になって駆け抜けるのですか

    これに関しましては一応、どうやって届けたかは頭に入れてあるのですが、この場面で書くことじゃないかなという(勝手な)直感から、そのシーンはカットしときました。なので、ご想像にお任せします。(ドキドキ)


    > おいこらラティアス。
    > 聞き分けのない子供、目を離すとすぐどっかいく子供はハーネスつけてつなげとくぞげしげし

     バーストしても安定したげしげし感は流石の一言です。(ドキドキ)


    > もうラティアスかわいいのですー!

    「ありがとうございますなのですー!」


    > 自分の使うキャラたちを不幸のずんどこに落としたいから試しに見えないみーさんを突き落としてみようだけどもうすこしいてほしいそしたらみーさんが暗闇を進むというから、すすんでいたらきみはポケモンになっちゃったみーさんはナックラーになった

     暗闇を進んで正解でしたね!(ドキドキ)
     しかし、突き落とされたときの衝撃はもう(以下略)


    > ありがとうございます!!

     こちらこそ、ありがとうございました!
     繰り返しになりますが、お気に召してくれたようでなによりなのですー! 
     嬉しいのですー!


     それでは失礼しました。


      [No.2190] 黒蜜君、それはね。 投稿者:巳佑   投稿日:2012/01/10(Tue) 18:57:44     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     感想ありがとうございます!

     まずは黒蜜君へ。
     それは決して気のせいなんかじゃない。
     私も書き終わったときに「あ、一匹だけ(以下略)」と思わず呟いたほどで(以下略)


    > しかし「私の狐も!」の発言でこの2匹を拾ってくるあたりさすがみーさんといわざるをえない

     ゾロアは黒蜜君というのは当初から決まっていたのですが、ゾロアークはどこからだそうかなと考えていたときにピコーンと来たのがキャンピングカーのゾロアークさんでした。作品を読み返してみて、これは池月君と何か今後ありえるかもしれないとドキドキしながら書いたのがあのシーンでした。


    > そして黒蜜が中々上手く店をやれてるようでよかったです
    > まさかの赤字と借金で、金柑金融にトイチで借りてるんじゃないかと・・・・

     そりゃあ、黒蜜君には愛しの灯夢ちゃんに捧げる為のみたらし団子作りで精進してますから。(ドキドキ)

     金柑さんの方も金融業は順調ですかね?(ドキドキ)
     主な稼ぎどころは池月君からですか(コラ)
     まぁ、池月君よりは器用そうだし、世渡りも上手そうだし、これからもうまくやっていけそうなライチュウさんだと思っています。
     おぉ、マチスのライチュウがライバル視して(何故、マチスのライチュウを引っ張り出した私)


    > 明かされる灯夢ちゃんのみたらし好き!しかしみたらしもいいがあんこもいいぞ
    > だんご三兄弟でも今度はあん団子がいいといってるではないか。

    「まぁ、あんこも上手いのはもちろん認めるで。みたらしの永遠のライバルや! あ、ちなみにウチはつぶあん派な」


    > 最後に、お年賀を持ってくる池月君でシメるあたり、さすがみーさんとしか思えない。

    「まぁ、池月は優しい奴じゃからなぁ、本当に」


    > 【うちの狐をありがとう!】

     こちらこそ、ありがとうございました!


     それでは、失礼しました。


      [No.2189] Re: はい、こちらお悩み相談室です 投稿者:   《URL》   投稿日:2012/01/09(Mon) 23:21:33     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    メジャーデビューキタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ !!!!!
    何千万という底抜けに桁外れな金額もキタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ !!!!!
    そして遅れに遅れて済みませんでした(´・ω・`)(感想が

    こういう風にちょい役で出してもらえると、なかなか嬉しいものです(´ω`)


      [No.2188] 龍狩り 投稿者:佐野由宇   投稿日:2012/01/09(Mon) 22:24:02     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     それはたった一言で時雨の運命ががらりと変わった。
    「龍狩りだぞ! 皆逃げろ!」
     高台から、見張りがそう言うと、馬に乗った龍狩りがすぐに現れた。
     人々の叫び、地鳴りのようにとどろく、馬の蹄と龍狩りが放った燃え盛る炎。
     時雨(しぐれ)の両親は、時雨をひっぱって走っていた。すると、父が
    「時雨、今すぐ自分の龍を呼んで逃げるんだ」
     時雨は戸惑った。
    「早く! 私たちのことはいいから」
     時雨は、一瞬、戸惑った。自分だけで逃げてもいいのかと。でも、崩れゆく、家々を見ると、頭が真っ白だった。
    「いたぞ!」
     はっとすると、龍狩りの青年たちが目の前にいた。時雨は、両親を見た。両親は、必死に、抵抗をし、時雨を守っていた。時雨は、自分が何を考えたのか、何のためらいもなく、指笛を吹いてしまった。すると、蜻蛉が、やってきた。時雨は、蜻蛉に乗ろうかどうしようかと思ったら、蜻蛉がいきなり、時雨をつかみ、飛んだ。
     龍狩りの矢が飛んできたが、蜻蛉は時雨をつかみながらも、必死に守ってくれた。

     どのくらいまで飛んだのだろう。蜻蛉は、時雨をとある丘に降ろしてくれた。
     時雨は、その丘から焼け野原となった自分の故郷を見つめた。蜻蛉は、哀歌のような歌を歌っているかのように吠えていた。
     時雨は、両親を見捨てたことが悔しくてたまらなかった。龍狩りが憎らしかった。でも、憎んでも仕方がない。
    「行こう、蜻蛉。身を隠してどこか遠くへ行こう」
     蜻蛉は、哀歌のような歌を歌うのを止め、こちらを振り返ると、時雨が乗りやすいように、背を下ろした。
     時雨は、蜻蛉に乗って村が見えなくなるまで、飛び続けた。


     そして時が経ち、時雨は立派な少年へと成長をした。
     村はずれの一角で、時雨は、蜻蛉と共に過ごしていた。
     収入はわずかだが、時雨と蜻蛉は一生懸命に共に助け合いながら、働き続けてきた。あいかわらず、村ののけ者だったが、時雨は、常に、村の人々を助けてきた。
     村の人も、助かっているのか、だんだんと、時雨と打ち解けていたが、あまり、打ち解けてくれない人もまばらにいた。

     ある、桜の季節のことだった。畑仕事をし始めようとしたら、地鳴りのような馬の蹄の音が遠くから聞こえてきた。
     ゼブライカとギャロップという、馬に乗った青年たちが時雨の前へと現れた。
    「おい、おめぇ、龍山のふもとの村の者か?」
     時雨はどきりとした。その村は、かつて時雨が住んでいた村だったからだ。時雨は、ここで嘘をつこうかどうしようか、迷った。
     だが、嘘をつかなければ、自分の命が危ないと感じた時雨は、首を横に振った。
    「そうか。だったら、そのフライゴンはどうしたんだ? ここでは珍しいではないか」
    「あの、この時雨、龍山のふもとの村の者です」
     はっとすると、ラクライが相棒の一人の子どもがいきなり行って来た。
    「こら、嘘つくでねぇ」
     今度は、子どものお母さんなのか、子どもを叩いて現れた。傍らには、ミミロップがいた。
    「だって……」
    「だっても何もない! すみませんね。うちの子、嘘をつくのが好きでね。
     それにしても、あんたら、見かけない顔ね。この何もない村に何の用かね?」
     子どものお母さんが問い詰めると、青年たちは、何だか、絡まれると、めんどうくさそうに思ったのか、それぞれの馬を逆方向に操って去って行ってしまった。
    「あの、ありがとうございます」
     時雨は、そう言うと、子どもを見ると、子どもはむすっとしていた。
    「いいのよ。あなたには助けられてばかりだからね」
     子どものお母さんがそう言うと、ミミロップがキューと鳴いた。
    「さ、帰るわよ」
     子どもの母さんが言うと、子どもは僕をちらと見ると、そっぽを向いて去ってしまった。
    「クー?」
     フライゴンが心配そうにこちらを見ていた。
    「大丈夫だよ」
     時雨は、フライゴンの頭をなでると、フライゴンは嬉しそうに鳴きながら、すり寄って来た。


     とある酒屋、『海鼬(うみいたち)亭』。そこに、一人の青年が酒を少しずつ飲みながら、ドンチャン騒ぎをしている、あほな連中を見ていた。
    「よぉ、あんちゃん。あんたもつきあわねぇか?」
     酒臭いおじさんがそう言うと、青年は、黙って『海鼬亭』を出た。
    「何だよ、つれねぇな」
     遠くでおじさんの声が聞こえたが、青年はそれでも、かまわなかった。

     青年は、遊楽街を出て、龍山を見た。
     この国は、龍狩りという、龍山のふもとの村に住んでいた者を片端から見、殺すというのがあった。
     だから、一匹のドラゴンタイプのポケモンがいれば、疑われ、殺される。嫌な世の中になったものだ。何を考えてそんなことをやるのだろう。
    (……)
     青年は、誰もいないところで一匹のチルタリスを呼ぶと、そのチルタリスに乗り、どこかへと飛び去って行った。
     青年は、ある時雨を探していた。フライゴンの少年を。



     まだ朝靄が立ち込める中、時雨は、お気に入りの林へと向かって行った。
     すると、一匹のチリタリスがいた。そして、その傍らには、見知らぬ青年がいた。蓑傘をかぶり、浅葱色の着物を着ていた。旅人なのか、青年のかっこうはぼろぼろだった。
    「お前は、時雨か?」
     時雨は自分の名前を知っている、この青年に驚くしかなかった。
    「お前は覚えていないだろうが、僕は、お前の従兄弟、秋雨(あきさめ)だ。
     今は、放浪の旅をしているが、この国の昔話を聞かせてなんとか稼いでいる。
     それより、時雨、なぜ龍狩りが始まったのか、知りたくはないか?」
     確かに、それは知りたい。でも、なぜ、秋雨は知っているのだろうか。
    「なぜ知っているような顔をしているな。僕は酒屋を回って情報を得ているんだ。だから、少しだが、知っている。
     さて本題だ。なぜ、龍狩りが始まったのか。それは、二年ほど前だ」


     この国の領主、狭霧には、とてもかわいがっていた息子がいた。その名は川霧(かわぎり)だった。
     川霧は戦いが強く、何よりも大切にしていたのが、龍山のふもとの村から賜ったオノノクスを大切に育て続けていた。
     だが、ある日のことだった。
     突然、オノノクスが苦しみだし、逆鱗を発動してしまった。海霧は、逆鱗に巻き込まれ、死んでしまった。
     疲れ切ったオノノクスの隙を見計らって、捕えた。オノノクスの体を見ると、一本の毒針があった。
     おそらく、刺客がオノノクスに毒針を刺したのだろう。オノノクスは、そのまま放置され、毒に侵されて死んでしまった。
     狭霧は、刺客を捕らえる以前に、こんな危険なポケモンを送った龍山のふもとの村の住民を恨むようになり、龍狩りを執行した。
     そう、龍山のふもとの村の住民を皆殺しにせよと。


     時雨はそれを聞いただけで恐ろしかった。
    「時雨よ、お願いがある。耳を貸してくれ」
     時雨は秋雨に耳を近づけた。そして、驚いた。密かに反乱を起こしている、秋雨の仲間たちと組んでくれという内容だったからだった。


     一方、狭霧がいる、城では、一人の時雨と同じ年頃の少年が、何か反論をしていた。
    「父上、龍狩りを止めてください。みすみす、自滅したいのでしょうか?」
    「雨霧(あまぎり)。何度行っても、むだだ。私は決して龍狩りを止めない」
    「ですが、父上」
    「帰れ」
     雨霧は、その場から去るしか無く、渋々去って行った。


     時雨は、蜻蛉に乗り、秋雨のチルタリスについて行った。ついて行った所は、遊楽街の外れの一角だった。暗い場所で、いかにも怪しく感じた。
     すると、秋雨が隠し扉を開いた。
    「秋雨さん、ここは?」
    「秋雨で良い。ここは、『海鼬亭』という、酒屋の裏手だ」
     扉の向こうには、たくさんの人々がいた。
    「帰ったぞ」
    「秋雨、そいつは?」
    「僕の従兄弟の時雨だ。相棒はフライゴン」
    「じゃあ、目的の奴を探してくれたのか」
     秋雨はうなずいた。時雨は何の事すら良く分からなかった。
    「悪いな、時雨。僕は嘘をついたんだ。僕は実は龍狩りの一員で本当の名は瀬戸。お前の従兄弟は当にいないのに、まんまと罠にはまったの」
     時雨はびくっとした。そうだ。なぜ、自分は、従兄弟がもういないのに、なぜ、罠にはったのだろう。
    (じゃあ、ここは龍狩りの本拠地なのか?)
     時雨は逃げ場がない場所でどうすればいいのか分からなかった。
     周りは、にやにやと笑いながら、こちらを見ていた。
     一か八か。時雨は意味が無いと思っていたが、指笛を吹いた。すると、蜻蛉が天井を突き破って現れた。
     蜻蛉は、尾を思いっきり振り、龍狩りと秋雨と秋雨のチルタリスもろとも吹っ飛ばせ、時雨を必死に守ってくれた。時雨は、その間に、蜻蛉に乗った。蜻蛉は、床を蹴り、力強く、はばたいた。

     突き破られた天井、ほこりが立ち込める中、龍狩りたちは咳払いをしていた。
    「ちっ、逃げられたか。どうしてくれるんだ、秋雨」
    「……」
     秋雨は、黙って『海鼬亭』の裏手を出た。


     日が暮れかける頃、蜻蛉は、どこかへ飛んでいた。
    「蜻蛉、降ろして。寒い」
     蜻蛉は分かってくれたのか、とある、森に降ろしてくれた。
    「誰かいるの?」
     びくっとして後ろを振り返ると、若武者がいた。時雨は、とっさに、蜻蛉をどこかへと追いやった。
    「今のフライゴン?」
    「はい……あの、ここはどこなのでしょうか?」
    「僕の父、狭霧領主の城の森の一角だよ」
     時雨は頭の中が真っ白になった。この若武者の言った言葉が嘘であって欲しかったが、目の前にあるのは、立派な城があった。
     龍狩りたちに自分の顔を見られては、もうここに来たら、命は無いと思った。
    「おい、雨霧。誰かいるのか?」
     野太い声が聞こえた。狭霧だと思うと、心臓が破裂しそうだった。
    「大丈夫、私がなんとか言うから」
     若武者はそうささやくと、森から出た。
    「何をしていたんだ?」
    「私の友が、この僕に仕えたいと言ったけれど、城の表門では入れなかったから、森から入ったと言いました。私の友は今この森にいます」
     若武者はそう、嘘をまくしたてて言うと、
    「……連れて来い」
     と言う、狭霧の答えが帰って来た。

     若武者は、時雨に手を招いてきた。時雨は、頭を下げたまま、森を出た。
    「……面を上げろ」
     ゆっくりと頭を上げると、そこには、狭霧が仁王立ちのまま、こちらを睨みつけていた。傍らには、強そうなリザードンがこちらを見ていた。
    「そなたの名は?」
     時雨は名前に困った。時雨と名乗れば、自分の身分がばれてしまう。
    「父上、ここにいる、私の友の名は久遠です」
     時雨は、突然、若武者が嘘を言ってきたので時雨は驚くしかなかった。
    「そうか。む、そなた、時雨と言う人物に似ておるの」
     狭霧はそう言うと、時雨はどきっとした。
    「そうでしょうか? 人間誰しも似ているからね」
     若武者はそう否定をすると、狭霧は、眉を上げたが、黙って去って行った。
    「君、本当の名は何? 時雨でしょう?」
    「……はい、そうでございます。でも、なぜ僕を助けるのでしょうか?」
    「私は殺生が嫌いでの。だから、そなたを助けた。時雨、私の名を教える。私の名は雨霧。よろしく頼むぞ」
     空は月明かりが照らしていた。そして、その影に、時雨の相棒の蜻蛉がいた。


     次の日。時雨は朝早く起き、仕事にとりかかった。城の廊下の掃除、馬の手入れ。なんでもこなし続けた。
     一通り、仕事を終えると、雨霧がいきなり、見たことの無いものを渡してきた。
    「大福、食べるか? おいしいよ。大丈夫、誰も見ていないから」
     大福と言う、見たことの無い、丸い餅のようなものを見た。雨霧は自分の大福を食べていた。
     時雨は、大福を手にとり、食べ始めた。時雨は大福のおいしさに驚くしかなかった。
    「おいしい」
    「だろ」
     雨霧はにこにこと笑いながら、時雨を見た。
    「ねぇ、友達にならない? 私、友達がこれといっていないから」
    「……身分が違うけれど、良いのでしょうか?」
     雨霧はうなずいた。


     ある、夏の暑い盛り。龍狩りが城に訪れてしまった。
     すると、龍狩りが、時雨に気づいてしまった。
    「おい、こんな所に時雨がいるぞ」
     時雨は自分の名を狭霧の目の前で言われ、冷や汗が止まらなかった。
    「……久遠よ。そなたは本当に久遠と言う名か?」
     時雨はどうしようか迷った。だが、もう嘘はばれてしまった。
    「はい……そうでございます」
     正直に話すと、狭霧は拳をわなわなとふるわせ握りしめた。
    「こやつを今すぐ殺せ!」
    「お止めください、父上!」
     雨霧は、時雨の前に立ちふさがると同時に、龍狩りの刀に斬られてしまった。
    「雨霧!」
     時雨はそう叫びながら、雨霧の元へと行った。
    「父上……兄上を……殺したのは……この男です」
     雨霧はとぎれとぎれにそう言いながら、狭霧の近くにいた側近を指差した。
    「父上……龍狩りを……した……自分の過ちを……お考えください」
     雨霧はそう言い残すと、気を失った。
     狭霧は、時雨を見つめていた。龍狩りは刀を落とし、その場から逃げてしまった。そして、狭霧の側近はがくがくと足を震わせ、その場から動かなかった。
    「はよ、医者を呼べ! そなたの罪は追々、分かるだろう」
     側近ははっとして、尻もちをしてから、床を這うように逃げ去って行った。
     狭霧は、時雨を見、
    「……時雨、私が悪うことをした。許しておくれ」
     狭霧は、突然、時雨の目の前で頭を深々と下げた。
    「そ、そんな領主様。嘘をついた私が悪かったのです」
     時雨も頭を深々と下げた。


     あれから一カ月後。山が紅葉に色づく頃。時雨は、城の表門を出た。
    「本当に旅をするんだな」
     狭霧はそう言うと、時雨はうなずいた。すると、ぞうりをすりながら、雨霧が走って来た。
    「時雨、短かったけれど、そなたと友となれて嬉しかったよ。またここに来てくれないか?」
     雨霧はそう言うと、時雨はうなずくと、雨霧が手を出した。
    「約束の握手だ」
     時雨はまたうなずくと、雨霧の手を握った。
     そして、蜻蛉に乗ると、空高く飛んで行った。


     蜻蛉をいったん止め、紅葉に囲まれた城を見上げた。
    (また、会える日まで)
     時雨はそう思いながら、蜻蛉をまた進めた。
     また同じ過ちが起きないよう、旅をしながら、自分の物語を語り継ぎたい。時雨はそう誓った。

    お題【ドラゴンタイプ】

     ここの掲示板では初めましての方が多いかと思います。初めまして。佐野由宇と言います。

     そして、ここまで読んで下さった皆様、ありがとうございます。

     今回は、お題に挑戦をしてみようかと、龍狩りと言うのを投稿をしました。

    【描いてもいいのよ】


      [No.2187] 黒蜜「俺だけ雄なのは気のせいだよな」 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/01/09(Mon) 20:00:05     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    池月君のエリス一筋というか、過程一筋なのがよくわかる。
    しかし一筋すぎてからまわりしているのが池月君の不器用さ。もう少し上手く立ち回ろうぜw
    だから7又なんていう疑惑が湧いてくるんですよ。
    メロスもグレますって


    しかも気付いたら池月ファンクラブなるものが!
    キャンピングカーのお姉さんがライバルにされますg
    きっとライバルでs

    しかし「私の狐も!」の発言でこの2匹を拾ってくるあたりさすがみーさんといわざるをえない

    そして黒蜜が中々上手く店をやれてるようでよかったです
    まさかの赤字と借金で、金柑金融にトイチで借りてるんじゃないかと・・・・

    明かされる灯夢ちゃんのみたらし好き!しかしみたらしもいいがあんこもいいぞ
    だんご三兄弟でも今度はあん団子がいいといってるではないか。


    最後に、お年賀を持ってくる池月君でシメるあたり、さすがみーさんとしか思えない。


    【うちの狐をありがとう!】


      [No.2186] ※感想タブンネがBURSTしました 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/01/09(Mon) 19:45:58     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     書き出しからラティオス。まってラティオス。妹を心配する家族思いなラティオス。もうここから感想タブンネが壊れた。
    ラティオスからの手紙を読んでるのか読んでないのか解らないあたりも、ミーハーで落ち着きの無いむじゃきなラティアスの性格を暗に示しているようで非常に良すぎる。あえて書かないの成功例ですよ本当に。そこから読む方はこのラティアスとラティオスの性格を推し量って、ラティアスが何をしているのかを想像していくのです。
     そもそも誰がどうでこうでという細かい描写を読むのも書くのも好きではないタブンネは、こういった推理しながら読むというものが大好きなのですー!ここからwktkとまらないですー!

    ちょ、カイリューの郵便屋さんって、ミュウツーに出て来t(
    ちょー懐かしいですー!! カイリューがちょー可愛かったの覚えてますー!しかも局長とか!
    上司だったんd
    ドラゴンタイプでまとまってると思いきや、フライゴン! フライゴンってドラゴンタイプではあるけれど、タマゴグループが虫……そこから考えられる3匹の関係は……起業したばかりの小さな会社で初期メンバーとして奮闘する社員のよう。互いにニックネームつけあうあたり、セリフの形からつっけんどんな感じではあるけれど、仲いいんだなと思うですー!普通、体の特徴でニックネームつけるなんて失礼な真似、相当仲良くないと出来ませんので!

    そしてラティオスが救助隊ということがわかってきて、もう頭の中のミュージックが「サンダーバード」に確定。
    どれだといわれると解らん、1号か2号じゃないか?

    ラティアスねながら空を飛ぶ
    特性が浮遊だから出来る離れ技です。きっと、飛行タイプだったら出来ないと思うz
    いや、レックウザなら出来る。レックウザに弟子入りするんだラティアス。
    そして眠いながらもちゃんと行き倒れているポケモンを発見できるラティアス。マジ優しい。こんな妹がいて、ラティオスは幸せだろ
    ってかユキワラシって飴なめてるイメージがあったよ、きっと鬼太郎の見過ぎだね。


    実はここまでフライゴンの性別が中性的すぎて解らん状態なのだが、女子会の辺りで確定。女子だったのかー!
    じゃあラム酒は実際にあるラムとは違って、やっぱりフルーティーの甘いサワー割りだったりするのかしらん
    実際のラムのカクテルも甘いのが多かったようなそうじゃなかったような。
    ラティアスめっちゃうわばみっぽいです!!ラム酒の度数なんて気にせずに、がんがんいけるタイプ。
    きっと、フライゴンはそんなラティアスを何度か介抱したんじゃないだろうか。だからこそのあのセリフが出てくる。
    そしてミーハーどころか移り気すぎるラティアス。それでも飛行タイプ路線は外さない。ラティアスは飛行タイプ萌え。
    フライゴンが冷静すぎてラティアスがきゃぴきゃぴの10代女子高生だよもう。嵐のメンバーにキャーキャーいってる女子高生だよ
    その後、ユキワラシの話をきいて泣き出すあたりも完全に酔っぱらってます、飲み過ぎ注意。というか翌日マーするコース。
    本当、酔っぱらいの相手は嫌ですよねー、最後は何だか解ってないのに飲み続けるくせに。ラティオスに完全同意ですお。
    サクラの花びらは押し花よりも、紙にすいた方が鮮やかですー!   タブンネ。


    ドラゴンタイプに寒いところ厳禁ですー!
    と思いきや、ラティアスが一番影響受けないのね。局長もフライゴンも4倍っていう
    そしてラティアスが一番の特防なのね。だからラティアスなのですー!

    水路が行き交う、でベネチアを連想しまくりました。
    いいですねベネチア。ちなみにベネチアではゴンドラが有名ですが、実は結構陸路や橋があるんです。
    ラティの両親はそんな街で陸上にしか住めないポケモンたちの船をやっていたんではないかという勝手な妄想が始まりました。
    勝手に妄想しながらここから読み進めます。とおいところって、なんとなくダイパのバグの真っ暗世界を思い浮かべました。なんででしょ。
    ラティオスの登場により、ああそういうことかとラティアスより先に解る。子供に本当のことを話すことの難しさがよく現れます。

    で、局長。
    貴方の翼は時空の裂け目を飛べるんですk
    それとも、死後は風になって駆け抜けるのですか
    後者のがいいなあと思います。多分そうだと思います。そうじゃないと多分あえない。

    おいこらラティアス。
    聞き分けのない子供、目を離すとすぐどっかいく子供はハーネスつけてつなげとくぞげしげし


    どうして吹雪の中つっこんでいくの。
    それはラティアスがラティオスの妹で、腕をたためばジェット機なんて目じゃないスピードだからだよ!
    あれ、そうしたらカイリュー局長のが速いね。
    あれ・・・・?

    吊り橋効果による心理的変化は結構持続するというよ!
    がんばるんだラティアス!
    カイリュー局長のくれた形ない手紙と共に!



    もうラティアスかわいいのですー!
    みたときははぁはぁいいながら読んでました。すいません、本当にはあはあはしてません。にやにやしてました。



    リクエストまでの流れ
    自分の使うキャラたちを不幸のずんどこに落としたいから試しに見えないみーさんを突き落としてみようだけどもうすこしいてほしいそしたらみーさんが暗闇を進むというから、すすんでいたらきみはポケモンになっちゃったみーさんはナックラーになった
    いぜんナックラーになっちゃった話をかいたそのときのメンバーがフライゴンアゲハントエネコマリルリラティアスだったっていう話をして、ラティアスは兄萌え設定で兄の仇をうつためにきたんだけどエネコのメロメロで一緒になるっていう流れがあるといったらミーハーラティアスを書いて欲しいとおもったからみーさんにリクエストしたんだ。

    ありがとうございます!!


      [No.2185] 感想をいただきまして…… 投稿者:スウ   投稿日:2012/01/09(Mon) 19:08:11     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    イケズキさん、初めまして。ありがとうございます。ボケとツッコミの神髄などほとんど理解せず書き散らしている有様ですが、楽しんでもらえたならよかったです。
    うちの親なんかでいうと、ボケの方が相当強いと思われるので、そういった教訓はしつけられませんでしたねぇ(汗
    ちょっと羨ましいかな。
    これからも少しずつこういったものを書き溜めていこうかと。と、いったところでさっそくミスっぽいのを発見してうなっています。ヒメグマってSSでしか出現しないから、ゴールドくんじゃ不自然ですね。
    でも金銀の主人公ってゴールドっていう名前の方が馴染みあるし、
    ポケスペみたいにバージョンに関係なくポケモンが出現する世界観、ととらえてくだされば、
    この問題は難なく解決できるでありませう。
    ……お見苦しいところ、すみませんでした。
    どうかこれからもよろしくお願いします(多謝


      [No.2184] Re: 相棒 投稿者:イケズキ   投稿日:2012/01/09(Mon) 10:19:57     66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    なんともツボにはまってしまった、イケズキです。


    すっきりとしたストーリーで、しかもおもしろい! 本物の“オチ”がある!
    幼いころから親に「ボケに対するツッコミは最低限のマナーだ」と、厳しくしつけられてきた自分には、ちょっとした懐かしさを感じる程、完成された噺(あえてこの字を使わせていただきましょう!)に思われましたw


    「笑いとは緊張と緩和」という、某師匠のお言葉を思いだします。
    こんな基本を大切にした漫才を最近見てない気がする……とかちょっと寂しくもなったりw



    本当におもしろかったです。こういう作品大好きです。
    今後もこういう噺書いていただけたら幸いです。
    ありがとうございました。
    ではでは……。


      [No.2183] 週刊狐 投稿者:巳佑   投稿日:2012/01/09(Mon) 04:50:09     102clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     そこはとある森の奥にある一軒の小屋。
     その中の囲炉裏がある部屋に、金色の九尾狐が一匹いた。
     炭火で暖を取りながら、その狐はあくびを一つあげると尻尾の中から何やら取り出した。
     何個かの真っ赤に染まったトゲトゲ形であるマトマの実と、『週刊狐』と載っている一冊の雑誌。
     白銀色のかんざしを髪に挿している一匹のロコンが表紙を飾っており、『特集! みたらしフォックスガール!!』と隣に書かれてある。雑誌の表紙には目玉となるようなネタは大きめに書かれてあるようなものだが、もう一つ、大きめに書かれてあるネタがあった。

    『イケメンアナザーカラーゾロアーク、池月氏! まさかの七又の疑惑!?』

     やれやれといった顔でその九尾狐はマトマの実をかじりながら、その雑誌を開いた。




    【特集! みたらしフォックスガール!!】

    「んーまいっ! やっぱり団子はみたらしにかぎるでー!」 
     みたらし団子を頬張りながら、笑顔でそう語ってくれるのはタマムシシティに住んでいる、白銀のかんざしをその髪に挿したロコンの灯夢(ひむ)氏である。今回の取材前後にもみたらし団子を頬張り続けているほどの大のみたらし団子好きの狐だ。
     なんでも、千歳生きてキュウコンになる為の試練として人間の学校に通っているという事情を持っているらしい。人間の学校ということは、人間の姿に化けて通っていることなのだろうか? だとしたら、折角だから人間の姿も見せてもらうことにした。
    「どうや? とっても可愛いやろ?」
     背は150後半で、赤茶の髪の毛を腰まで垂らしていて、三本のクセッ毛が先端を丸めながら頭から立っており、白銀のかんざしももちろん装備されている。そういえばその白銀のかんざしはどこで手に入れたものなだろうかと、尋ねてみる。
    「これは……って、なんや! ウチのこの姿には感想はないんかい!」
     いや可愛かったが、その白銀のかんざしの方が気になると正直に言った結果、鳩尾(みぞおち)にいいのを一発もらった。狐パンチなんてそんな可愛い名前なんてものじゃない、あれは確かに鉄拳だった。うん、エビワラーも真っ青になるぐらいの威力だった気がする。それにしても、見事なパンチだ。趣味は格闘技なのだろうか。
    「人間の姿で襲われたときの防衛手段として、覚えたんや。これ一発で大抵の奴を落とせるからなー。格闘技? まぁ、興味はあるけど」
     読狐の諸君の中で、Mな方がいたら、彼女のパンチでもオススメしておく。
     さて、どんどんとみたらし団子の串が重なってきて、軽く山ができそうなのだが、灯夢氏がそこまでみたらしに溺愛しているというそこまでの過程をぜひ訊いてみたくなった。
    「昔から和菓子系が好きだったんや。ほんで、故郷で昔、母さんに連れていってもらった茶屋があってな? そこで食わせてもらったみたらし団子がめっちゃうまかったねん。そこからやったからな〜、ウチとみたらし団子の恋は」
     なるほど、みたらしは灯夢氏にとっては思い出の味でもあるということか。
     ちなみに故郷という単語が気になったので、それも尋ねてみた。
    「みたらしお代わりっ!!」
     あまりのみたらしジャンキーぶりに、折角の質問のタイミングが一気になくなった気がする。灯夢氏が何か言ったかと聞き返してきたけど、いえなんでもないです(棒読み)と返しておいた。
     このまま灯夢氏がみたらし団子を食べるのを眺めて終わりかな、後は表紙やその他諸々に使う為に写真撮影をさせていただいて、終わりかなと思っていたが、そういえばまだ訊いてなかったことがあった。
     学校に通っている(変わった試練だと思ったがそこは突っ込まない方がいいだろう)ということなので、学生生活などを伺うことにした。
    「あー。九百九十七歳生きて初めての経験やからな、何もかもが新鮮やで。この前とか体育祭っちゅうもんがあってな、中々楽しかったで? 『にほんばれ』したかいがあったっちゅうもんや。面倒くさいから『あまごい』使わせて体育祭を中止しようとした輩がおったかもしれへんけど、ウチには勝てへんようやったな」
     意気揚々と自慢話を語る灯夢氏。
     とりあえず会話に花が舞い戻った。良かった、まだページの尺が残っていて困っていた……というのは内緒にしておこう。
     このままの勢いで得意な科目とか苦手な科目とかも尋ねてみる。
    「うーん、ウチ意外と英語できるで? 後は国語の漢文とか古文、あ、後は歴史系も得意やで! それと体育もな」
     そりゃあ、九百九十七歳も生きてきたのだから、現場に居合わせたというのもおかしくなさそうだ。
     それにしても英語が得意とは意外だと思った。横文字とか苦手そうなイメージがあったのに。
     まぁ、反対に体育はイメージ通りというか、今、ここで見せてる活発そうなところから連想できる。
    「苦手な科目は数学や。あの数式に、変な絵みたいなもん? あれ苦手やねん」 
     試しに『1+1』を出してみた。
    「それ数学やなくて、算数やろ!」
     見事なツッコミ。
    「っちゅうか、おんどれはウチのことを馬鹿にしてるんかぁー!!??」
     鳩尾(みぞおち)のおまけはいらなかった。
     さて、色々と訊いてきたが、後は普段はどういうところに住んでいて、暮らしているかという、少しプライベートに踏み入った質問もしてみた。
     最初は不機嫌で答えなかった灯夢氏だったが、みたらし団子を上げたら、機嫌を直して答える灯夢氏。
     うん、この狐、ちょろい。
     将来がちょっとだけ心配だ。
    「実はなー。一人暮らしする予定やったんやけど、その部屋が偶然ダブルブッキングしてあってな。今、同じ学校に通ってる人間の野郎と暮らしてるねん」
     ほう、それは気になる情報。
     男と女が一つ屋根の下でやることがすごい気になる。
     人間とポケモンで種族が違う? 
     そう思った人にはシンオウ地方にあるミオ図書館に行って、民族系や昔話の本を漁ることをオススメする。
    「あの野郎は本当にたわけっちゅうか、なんっちゅうか……うん、ともかく嫌いや」
     このロコンにはツンデレというものがあるんだと勝手に期待しておく。
     なおも灯夢氏のグチは続いていく。
    「この前もウチのみたらし団子を勝手に食べるわ、尻尾を踏むわ、水浴びしとるところを覗いたりとか、みたらし団子を勝手に食べられたりとか、食べられたりとか!」
     どうやら灯夢氏の恋人はみたらしで確定のようだ。
     とりあえず、なんとなくだけど、その人間の男にはドンマイと言っておこう。 

     さて、ここまでみたらし団子を頬張りながら取材に答えてくれた灯夢氏。
     なんとかページの尺が足りてきたので、ここいらで最後のセリフを決めてもらうことにした。
     そこで、今後の抱負とか訊いてみる。 
    「今年もみたらし団子を食べ続けるで! それとそろそろアイツに鳩尾決めておきたいで」

     みたらし団子が本当に好きな灯夢氏の、これからの活躍を期待している。
     ……色々な意味で。

    (取材狐:ロコモーション☆田中)




    【イケメンアナザーカラーゾロアーク、池月氏! まさかの七又の疑惑!?】

     我ら狐界きってのアイドル、イケメンアナザーカラーゾロアークの池月さん。
     そのルックスと、皆から慕われているという頼りになる性格に、今もなお人気上昇中の方ですが……最近、妻子がいるのにも関わらず、他にも七又をかけているのではないかというスクープを手に入れました。
     モテる影には浮気ありなのか、そうなのでしょうか。私は池月ファンクラブ幹部の名にかけまして、このスクープを追いかけることにしました。


     
     一匹目:我ら狐界のもふ神である長老(キュウコン)

    「うーむ。そういえば、最近、なんか楽しげにどこかに行こうとしているのを見かけたような気がするのう」
     池月氏といえば長老のお弟子さんでもあります。
     まさか師弟愛とかあったりするのかが気になり、思いきって尋ねてみます。 
    「う〜ん? 何を想像しておるんじゃ、娘よ。やましいことでも想像しているのではないじゃろうなぁ?」
     流石は長老、こちらの考えはお見通しということですか。
     確かにお約束の言葉から借りますと、夜の修行とか修行とか修行とか……いけない、これ完全に長老ペースですよね。
     とりあえず、恥ずかしながらも本当のことを言っておきました。
     長老に隠しごとは通用しませんし。
    「まぁ、ノーコメントで。よろしくのう」
     長老のニヤニヤとした顔がとても印象的で意味深な感じがします。
     とにかく真実は謎の奥に消えてしまったわけですが、もしかしたらという線は消さないでおきます。


     
     二匹目:トレーナーシュカさんの相棒狐、ひばなさん(キュウコン)

    「いけづきさん? あぁ、色違いのゾロアークになら声をかけられたけど……」
     なるほど、声をかけられたのですか。
     もしかしてナンパというものなのですかね、どんな風に声をかけられたのかとても気になります。
    「え、ただ道を訊かれただけだよ? その後はあなたにも、もふ神様のご加護がありますようにって言ってたね」
     どうやらナンパをしていない模様なのですが。
     これは七又なんてデマだったということなのでしょうか。
    「それにしても、あのいけづきさんっていうゾロアーク。すごい目をキラキラさせていたような気がするなー。それと別れるとき、わたしの右手に口をつけてきたよ」
     挨拶代わりのキスはキスとしてカウントしません。
     べ、別に、う、うらやましいなんて思ってませんからね、えぇ、思ってませんとも。悔しいとか妬ましいとか憎いとか……ちょっとそこのカゲボウズ、いきなり出てきて、私になつかないでください。困ります。
     それにしても、それでその池月さんに対して、ひばなさんはなんとも思わなかったですか? 
     こう、胸がドキドキしたとか、苦しくなったとか、チクチクするとか、熱くなったとかありませんでしたか?
    「え、別になかったけど?」
     私だったら鼻血の大量放出で死にそうなのですが。
     

     
     三匹目:トレーナーモモコさんの相棒狐、あかねさん(ロコン)

    「……あのゾロアーク? 道を尋ねられたけど」
     また道を尋ねるパターンですか。 
     なるほど、道を尋ねるところから何気なく入っていって、それから一気に相手をおとすというナンパの高等術(?)をしたのかもしれませんね。
    「……いきなり手を握られた。正直、嫌だった」
     手を握られたなんて、そんな幸せなこと……私だったら狂喜乱舞しているところです。
     他にも池月さんに何かされたりのかとかが気になりますね。
    「……顔が近かった。邪魔だった……道を尋ねられたこと以外は全部忘れた……あ、でも、これは覚えている」
     なんかイライラしているような感じがあかねさんから伝わってくるのは気のせいですか。
     無表情なんですけど、なんか殺気を漂わせているのが、こう本能的に察したといいますか。
    「……別れぎわに右手にキスをしようとしてきたから……『かえんほうしゃ』を放っておいてやった」
     挨拶代わりのキスぐらいはもらってもバチは当たらないと思いますが。
     ……だから、そこのカゲボウズ! 
     私は別にうらやましいとか、憎いとか思ってませんから!
     舌なめずりをするのを止めてください!



     四匹目:キャンピングカーに住んでいるゾロアークさん

    「え? 青いゾロアークですか? あぁ、はい。ここにやってきたことありますよ」
     また道をお尋ねするパターンなのでしょうか。
     私にもそういうシュチエーションが来ればいいのにと思ったのはここだけの話ですよ?
    「いえ、いきなり勧誘されたというか、あ、これどうぞ」
     おぉ、美味しそうなオレン漬けですね。お言葉に甘えていただきます。
     中々、甘酸っぱくてさわやかな味です、もぎゅもぎゅ。
     それにしても勧誘という単語も気になるところですが、何の勧誘をされたのかと尋ねてみます。
    「えぇっと。もふもふパラダイスに連れていきたいとか言われましたね……まぁ、私にはここで待っている人がいたりとかで離れることはできませんが……その、まぁ、機会があればぜひ行ってみたいなぁって思ったりしました」
     なるほど、世界をもふパラにする為に、池月さんは日頃努力していることがうかがえますね。
     私も言われてみたいですね……『今宵、あなたをもふりにきました』なんて言われた日にはもう私、昇天しそうです。
     さて、そんな夢見ごごち(実際に起きてくれないですかね、本当に)はさておき、今回は色々と訊けそうな感じだったので、他にも何か池月さんに何かされなかったのかを尋ねてみます。
    「えっと、とても色男だったんですが……その楽しかったというか、なんというか。」
     なんかオレン漬けがやけに甘酸っぱさを増してきた気がするのですが。
     なるほど、あなたも私たちの同志ということですか、そうですか。
     今日からライバルということで一つよろしくお願いします。



     五匹目:神出鬼没の美イタチ、あんにんどうふさん(コジョンド)

    「ん? 青いゾロアークでアルか? 確かに会ったでアルぜ」
     狐ポケモン以外の方にも手を出すという噂の池月さん。
     確かに、異姓が声をかけたくなるほど美しいコジョンドさんですが、なんかやけにテンションが高そうなお方ですね。
    「いやぁ、あのゾロアーク、新技を編み出したときにちょうどいいところにきたでアルよ」
     新技という単語から思いっきり危険な香りがします。
     けれど、ここは思いきって、どんな技なのかを教えてもらうことにしました。
     なんか胸が高鳴ってきました。
    「よっしゃ、いくでアルぜ、ワタシの波動、うおおおおおお!」
     あれ、なんか想像していたのと違うのですが。
     あんにんどうふさんは右手を胸に当てて、何やら力を溜めています。
     徐々に波動と思われし青いオーラが、キーンという甲高い音と共にあんにんどうふさんの右手に集まっていきます。
    「目指すでアルぜ、いすかんだる! 『はどうだん』からの『はどうほう』発射でアル!!』
     そう叫んだ後、あんにんどうふさんが思いっきり右手を思いっきり前へと振りますと――。

     遠くから地響きを伴う大爆発音が響きました。

    「うむ、戦艦に比べたらまだまだ威力が足らないでアルぜ。もっと精進にしなければでアルよ」
     技って、そっちの技でしたか。
     てっきり異姓を落とす為のテクニックかと思っていた私の胸のトキメキを返してください。
     むしろ寿命が縮んだのですが、どうしてくれるんですか。
     後、数十センチずれていたら、私に直撃してましたよ、これ。
     というか、これ、池月さんにもやったんですよね? すっごい心配なのですが。
    「あぁ、あのゾロアーク、もろ受けだったアルよ」
     本当ですか、それ。
     あの技を受けたらただじゃ済まないような気がするのですが。
    「いやぁ、あのゾロアークやるでアルよ。その後、立ち上がってスマイルしたでアル。ここで死ぬわけにはいかないと言っていたでアルね」
     流石、池月さん、素敵です、かっこいいです、最高です!
     改めて、狐界のトップアイドルの底力を感じさせてもらいました。
    「この技はもっと磨いておくでアルぜ。また受けに来て欲しいでアルよ」
     だが断っときます、はい。

     
     
     六匹目:鳩尾キラーの異名を誇る関西狐、灯夢さん(ロコン) 

    「ん? あぁ、そのゾロアークやったら、声をかけられたときがあるで」
     ふむふむ、ここでもまたナンパですか。
     何かされたことはないかと尋ねてみます。
     そこの隠れているカゲボウズ、変に準備とかしなくていいですから、黙っていてください。
    「まぁ、いつもどおりその尻尾をもふらせてください言うてきたから、鳩尾一発殴っておいたわ☆」
     ニッコリとした笑顔でそう語る灯夢さんがなんか怖いです。
     それにしても、またダメージを負うようなことを。
     池月さんは結構、体を張っているのですね。私たちも見習わなければいけないところかもしれません。
    「あぁ、そういえば、団子屋に行ってくるから、失礼します! とか言うてたな〜」
     ふむふむ、団子屋さんですか。
     また気になるフレーズが飛び出てきましたね。
     そういえば、七又情報の出所の後一つは団子屋なんですが、一応、尋ねておきます。
    「和菓子屋本舗幻想黒狐やで」
     なるほど、ありがとうございます。
     早速行ってみることにします。 
     あぁ、それと今回の特集ページへの出演、ありがとうございました。
     後輩のロコモーション☆田中が迷惑をかけていたら、すいません。



     七匹目:『和菓子屋本舗幻想黒狐』初代店長の狐、クロミツさん(ゾロア)

    「んあ? 青いゾロアーク? ナンパ好きな男? あー、それなら、そんな奴もいたかもしれねぇなぁ」
     確かに、人に化けていたかもしれませんからね、なんせ街の中ですし。
     しかし、我が社の情報網を甘く見てもらっては困ります。
    「団子買うまでの順番待ちのときとかに、やけに女に声をかけていた奴がいたっていう話を店員から聞いたぜ」
     ふむふむ、もしかしたらここをナンパスポットとしていたかもしれませんね。
     なんとか、その店員から聞いたという話の内容をもっと教えてもらうよう頼んでみます。
    「えっと、確か、いつでももふもふできる世界に興味はありませんかー、だった気がするなー。まぁ、灯夢ちゃん一筋な俺には関係ねぇ話だけどな!」
     ここでもしっかりとお仕事をなさる池月さんがかっこよすぎて、私、失神しそうです。
     それで、その後、池月さんはその女性に何かやったりとかしていないとか尋ねてみます。
    「ん? 団子買ったら、もう帰っていったぜ?」
     あれ、進展なし? 
     あ、いや、もしかしたら団子をごちそうさせてから落とすという方法かもしれませんね。
     きっとそうに違いない。流石にこれ以上の情報はここから出そうにないですが、ここからが本番になりそうですね。
     これから、この後の池月さんの足取りをしっかり調べなければ。
     しかし、まずは腹ごしらえをしておかなければ。腹が減っては戦はできませんし!
     とりあえず、注文しておきます。
    「ん? 何にするんだ?」
     みたらし十セットよろしくお願いします。



    【今回の池月氏の七又疑惑に関する結果発表】

     とりあえず、今回の池月さんの七又疑惑に関する結果発表をしますと。以下の通りになります。

    ・長老とは深い深い深い師弟愛があるかもしれない。

    ・ひばなさんにその気はないらしい、ただし池月さんはどうだか不明。
     しかし、アリかナシかと言われたら、ナシの可能性が高い。

    ・あかねさんは全くその気はないらしい、ただしこれも池月さんはどうだか不明のまま。
     しかし、アリかナシかと言われたら、ナシの可能性が圧倒的に高い。

    ・キャンピングカーのゾロアークさんはなんかトキメいている感じ。
     このままうまくいけば池月さんと進展があるかもしれない可能性アリ。

    ・あんにんどうふさんは問題外、強いて言えば、あの技は色々な意味で危険。

    ・灯夢さんは全くその気はないらしい、ただしこれも池月さんはどうだか不明のまま。
     もしかしたら、クロミツさんとのガチバトルは免れない可能性アリ
     
    ・『和菓子屋本舗幻想黒狐団子』で団子を買った後、誰と交際したのかは不明。
     ただいまその件に関しては情報収集中。
     
     以上のようになります。
     ということでますます謎ばかりが深まっていくという今回の結果となりました。
     池月ファンクラブ幹部として、この雑誌の池月さんに関するページは私が担当となっているのですが、ファンとしては池月さんの名前が広がって喜んだり、モテモテな感じが取材を通して分かってちょっとジェラシーを感じたりで、複雑な心境です。
     まぁ、この心境に関しては私に限った話じゃないですけどね。
     奥さんとか特に複雑な心境を持ちそうですし。
     
     さて、今回はここで筆を置かせてもらうことにします。
     また池月さんの特集のときを楽しみにお待ち下さいね。
     池月さんファンクラブ幹部の名にかけて、全身全霊、スクープさせてもらいますから!

     あー、みたらし団子うめぇーです。
     あ、ちょっと、そこのカゲボウズ! 残りの一本を横取りしないでください! 
     というか、まだいたのですか、この子っ。

    (取材狐:佐山雅 きゅう(さざんが きゅう)) 


     
     
     やれやれ、もてるのも大変なものだと思いながら九尾狐がマトマを片手にのんびりと『週刊狐』を読んでいると、玄関の方から声が聞こえた。
     九尾狐がその雑誌を再び尻尾に入れて、玄関の方に向かうと、色違いのゾロアークが何やら包みを持ってそこに立っていた。隣にはそのゾロアークの妻であるキュウコンと息子のロコンがいる。
     なんでもその色違いのゾロアークが言うには、おいしい団子屋さんでみたらし団子を買ったから一緒にお茶をしましょうということで、九尾狐は尻尾を振りながらその親子を招き入れた。
     囲炉裏がある部屋で、山吹色に染まった和風な小皿にみたらし団子を置いて、和菓子に合いそうなせん茶も用意すると、九尾狐達は食べ始める。
     中々いい焼き具合で、タレも申し分ないと、九尾狐の喉がご満悦だと鳴いたときだった。
     
     色違いゾロアークが、隣に座っていた妻の口元についた団子粒をペロっと舐めて取ってあげた。

     色違いのゾロアークは優しく微笑んで、妻は頬を赤くさせながら困ったような笑顔を浮かべる。
     
    「妻一筋なのは分かるが、いやぁ、モテるというのも考えものかもしれんのう。大変じゃよな、池月」
     
     それは心の中で呟きながら、その九尾狐は温かくその夫婦を見守っていた。
     
     この夫婦がずっと幸せでありますようにと。

     そう願いながら。

     
     

    【おまけ】


     タマムシシティの街外れの方にある楓荘というアパートの一室にて。
    「なぁ、お前。どうしたんだ、その団子の山」
    「取材させてやったら、ほうびにもらったんや、やらんで?」
     同居人が驚いている様を楽しむかのように、そのロコンはニカっと笑っていた。  
     


    【書いてみました】
     
    『週刊狐という雑誌で、灯夢ちゃんの特集や、池月さんの七又疑惑特集を書いて欲しい!』という、akuroさんのリクエストを受けまして、今回、書かせてもらいました。灯夢さんの特集もそうですが、まさか池月君の浮気疑惑話を自分が、ここで書くときがやってくるとは想像にもしなかったです。(ドキドキ) 
     えっと、チャットとかで危ないフラグを建てて(今回の物語も少し、怪しい部分がありますが)しまっている自分ですが、やっぱり『もふパラ』の作者として、そして個人として、池月君とエリス夫妻には幸せになってもらいたいなぁと思って、あのような話の結びとなりました。池月君はエリスが一番なんです! と私からも(説得力は保証できませんが)言っておきますね。ただし、フラグ建築士という名前をいただいた以上、またチャットとかで私も危ないフラグを建ててしまうかもしれませんが、そのときはよろしくお願いしますね。(苦笑) まぁ、池月君を強くさせる為のものだと思っていただければ(以下略)
     
     それと、灯夢さんに関してはネタばれにならない程度にああいった感じとなりましたが、いかがだったでしょうか?
     楽しんでいただけたら、幸いです。
     ちなみにロコンが千歳超えるとキュウコンになれるという勝手な設定は、千年の時を経た狐は九つの尾を持った天狐になるという、昔に読んだどこかの書物からきています。 

     改めて、リクエストをくれて、ひばなさんとあかねさんを貸してくれました、akuroさん。
     和菓子屋本舗幻想黒狐、クロミツさん、キャンピングカーのゾロアークさんをお借りしました、きとらさん。
     自分を信じて、池月君を預けてくれた、イケズキさん。
     そして、ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました!

     この場でありますが、これからも『もふパラ』をよろしくお願いします。

     それでは失礼しました。

    (追伸:作業中、『池月』君という文字を『流月』さんと空目しまし(以下略))

    【何をしてもいいですよ♪】
    【池月君はエリス一筋なんです♪】    


      [No.2182] 相棒 投稿者:スウ   投稿日:2012/01/09(Mon) 04:21:02     92clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ※タイトルですが、テレビドラマシリーズとは何の関係もありません。
     またそれらのものを何ら想起させるものでもありません。
     他に良いものを思いつけなかっただけです。
     ただの短編二つです。



     ■ノー進化?

     ゴールドがコガネシティの歩道を歩いていると、ジムリーダーのアカネちゃんとぱったり出くわした。
    「おおー、ゴールドやないか。久しぶりやなー」
    「あれ、アカネちゃん。奇遇ですね」
    「ほんまや。うち、今日は暇なんやけど、ゴールドも暇そうやね」
    「まあね」
    「うち今からコガネデパートに行くとこやねん。今日のくじびきの一等、『からげんき』の技マシンやったやろ? 今日こそ絶対当てたるねん」
    「そっか。今日は金曜だから」
    「ゴールドは今からどっか行くとこなん?」
    「別に行くあてとかはないんですけどね」
     ゴールドは言いながら後ろを振り返る。そこには一匹のヒメグマがいる。
    「ちょっと、こいつのレベルアップのためにあちこち草むらを回ってるところなんです」
    「あー! 『ちょーだい』やないか! こっちも久しぶりやなー」
     アカネは嬉しそうに手を差し出した。ヒメグマは甘えてくる。この前見た時より顔付きが若干たくましくなっているように見うけられた。
     ゴールドは自分のヒメグマに『ちょーだい』というニックネームをつけている。というのも、初めてほしがるの技を使ってみた時「ちょーだいちょーだい、それちょーだい」とせがんでいるように見えたからだ。
    「ちょーだいを本格的に育てることにしたんやな。殊勝なことや」
    「でも野生ポケモンとのバトルじゃ、経験値がたまりにくいですね」
    「そやな。トレーナーとのバトルに比べたら、やっぱり得られる経験は少ないなぁ」
    「まあ、コツコツやっていきますよ。まだトレーナーのポケモンとまともに戦えるような状態でもないので」
    「うん、ええ心掛けや。もうちょっと強うなってきたら、うちもどんどん協力したるで」
    「ありがとうございます」
    「ほなレベルアップ頑張りやー」
     ゴールドは帽子を傾けて、アカネちゃんに軽く頭を下げた。
    「頑張ります。……さて、と。進化まではまだまだかかるぞ」
     そう、ぽつりと呟いて、アカネの前を通り過ぎようとしたゴールドだったが、いきなり後ろから首根っこを掴まれた。
    「ちょっと待てや」
     アカネちゃんの雰囲気が突如としてアウトローなものに変わっていた。
    「アカネちゃん……? どうしたんですか? めっさ怖い顔して……」
    「今、何て言うた?」
    「はぁ?」
    「ちょーだい、進化させるつもりなんやな?」
    「えぇ? ああ、そりゃまあ」
    「何で進化なんかさせるんや?」
    「何でって、強くするためには必要なことだし、こっちにも事情ってもんがあります」
    「事情って、何や?」
    「いや、そんな事」
     アカネちゃんには関係ない、と言おうとして、ゴールドはやめた。アカネちゃんの重圧がそれを許さなかった。
    「どういうことか、話、聞こか」
     アカネちゃんは親分気質がそなわったように、たくましい声で言った。

       ***

    「何でちょーだい進化させなあかんのや?」
     アカネちゃんはもう一度ゴールドに詰め寄った。
    「そりゃあ、強くするためには能力値伸ばさないといけませんからね」
    「それだけのためにか?」
    「もう一つ、あります」
    「それは何や」
    「ポケモン図鑑のページ、うめたいんですよ」
     アカネちゃんは険しく眉をひそめた。
    「ポケモン図鑑のページか。そらけっこうなことや」
    「でしょう? というわけで、この話はおしまい――」
    「やめとき!」
     アカネが突然叫んだので、ゴールドは飛び上がった。
    「そんな、やめとき、って……」
    「なあゴールド、後ろのちょーだい見てみ? こんな可愛いちょーだいには、進化なんて似つかわしくない、やろ……?」
    「いやそうでもないと思いますけどね」
     ゴールドはあっさり答える。
    「こいつ性格がゆうかんなんで、むしろ進化させた方が本来の姿に似合ってるんじゃないですかね」
     ゴールドの声に同調するように、ちょーだいがぶんぶんと腕を振り回し、自らの腕力をアピールする。
    「あかんあかん! そんな事言うて早まったことしたら!」
    「でもそれじゃ図鑑の方は――」
    「それやったら改めて野生のリングマ捕まえ! あんたチャンピオンロードにもシロガネ山にも入れるんやろ?」
    「……そりゃそうですけどね」
    「何か問題でもあるんか?」
    「パソコンのボックスがね、もういっぱいになってきてるんですよ。新しい進化ポケモン捕まえるよりも、なるべく小さいのを進化させてかないとすぐ満杯になってしまいます」
     アカネは少しだけ言葉に詰まった。
    「そら……その気持ちはうちかてわかる。うちのボックスももうすぐいっぱいや。新しいポケモン捕まえられんようになる。でもな――」
     アカネはすうっと息を吸って、一息に吐き出した。
    「一度ごっついリングマさんになったら、もう二度と元に戻されへんねんで!」
    「わかってますって。しかたないです」
    「しかたないですませたらあかん!」
    「無茶言わないでくださいよ」
    「なあゴールド、思い直し。あんた何でそのヒメグマに『ちょーだい』ってニックネームつけたんや?」
     アカネに指摘されて、ゴールドはハッとなった。
     ちょーだいちょーだい、それちょーだい。
     昔、ゴールドはそんなふうに口ずさみながら、ヒメグマのちょーだいとともにジョウトのあちこちを駆け巡ったのだ。
     彼のヒメグマはどんどん彼に懐いていった。他の屈強なポケモンと協力して、ほしがるの技が成功した時には嬉しくて喜びの声をあげたものだ。
     進化とは、進化という行為は、そういった全ての思い出を無かったものにする行為ではないか。進化してしまったら、ちょーだいが、ちょーだいでなくなるのではないか。人によって捉え方はまちまちだ。だから、進化をさせた方が良い、させない方が良い、という選択肢に決定的な解などないのかもしれない。けれど今のゴールドには、アカネちゃんの言わんとしていることの方が、より正しいような気がした。
    「……わかりました。アカネちゃん」
     ゴールドは顔を上げて、ちょーだいの方を見た。ちょーだいもつぶらな瞳でゴールドを見返す。
    「このちょーだいは進化させないで、新しいリングマを捕まえることにします」
    「ええ答えや」
     アカネちゃんは満面の笑みでうなずいた。
     ゴールドもうなずき返した。
    「しかたないですね。じゃあ進化させるのはパソコンに預けてあるブルーの方にします」
    「それもあかん!」


                       おしまい



     ■グレン島にて

     夜明け近くのグレン島は、薄い冷気のヴェールに包まれていた。
     昨夜の放射冷却によって奪われた熱は、今では遥か上空、静まり返った世界のどこかをさまよっている。雲一つない暗影の真下では生まれたばかりの潮風がそよいで、寂しげな地表にまで、その音を伝えてくる。
    「シロナ、もうすぐみたいよ」
     がさごそとテントから這い出してきた影が一つ。
    「ふえぇ? もう……?」
     這い出してきた影はもう一つあった。
     二人は肌寒い薄闇をかいくぐり、海岸線の前に立った。海岸線より向こうには何も見えない。けれども、その裂け目から、朝は昇りつつある。
     旅の途上にあったシロナとナナミはグレン島に立ち寄ることにした。
     過去に火山の噴火で、そのほぼ全てが灰と化してしまったグレン島。シロナとナナミは言葉もなく、ただただそんなグレン島の哀切な声に耳を傾けた。
     日の出の訪れは、思い描いていたよりもずっと早いものだった。いつの間にか、二人の頬は温かく照らされていた。
    「この島は、まだ完全には死んでおりませんよ」
     二人の隣に立つ者があった。
    「あなたは……」
     ナナミの方が先に気付いた。シロナもゆっくりとそちらを向く。
    「どうも、ナナミさん。お久しぶりです。おじい様は元気でいらっしゃいますか」
    「ナナミ、この方は?」
     シロナが聞く。
    「グレンジムのジムリーダー、カツラさんよ。何度か話したことがあるでしょう?」
     ナナミはカツラの方に向き直る。
    「カツラさん、こちらこそお久しぶりです。おじい様はまだまだ元気です」
    「それは何よりです。私もドクターオーキドも、もうそんなに長く生きられる年ではないですからな」
    「そんな事はありません。おじい様も、そしてあなたも元気そうではありませんか」
    「ありがとう。ワシもまたこの島と同じ、死の間際にあるように見えて、その実まだまだ持ちこたえているのかもしれませんね」
    「この場所へはよく来るんですか?」
     シロナが尋ねた。
    「ええ、毎週火曜日と木曜日はいつもここへ足を向けます」
    「私、故郷がシンオウですからカントーの事情はあまりよく知りませんが……当時は大変だったとうかがっています」
    「大変でした」
     カツラは首肯した。
    「この有様を見てみればわかります。全員避難できたのが不思議なくらいでした。これも全て救助を手伝ってくれたポケモン達のおかげでしょう」
    「シロナ、カツラさんは今、グレンジムを復興するために、双子島の洞窟を借りて活動を続けているのよ」
    「洞窟を?」
    「そう、洞窟の内部をジムにしているの」
     シロナは驚く。そんな事は世界で初の試みかもしれない。
    「当時のワシはあまりのショックで倒れそうでした」
    「死者が出なかったとはいえ、グレンの町は無くなってしまいましたからね……」
     ナナミは目を伏せた。
    「その通りです。その頃でさえ、ワシはけっこうな年でした」
     カツラは昔の自分を、慎重にすくい取るように口にする。
    「だんだんよくないことばかりを考えるようになりました。日に日に追いつめられていく自分を遠くから見つめているような、そんな不思議な感覚でした。ワシはこう考えました。どうせ、もう長くはないのだ、と。それならいっそのこと、早々と、この命を終わらせた方がいいのではないか」
     シロナがこくん、と息を飲んだ。
    「でもね、最後の無茶をやらかす前に、もう一度このグレン島を目に焼き付けておこうと思った」
    「カツラさん……」
    「グレン島からの眺めはご覧になられたでしょう? ここから見る夜明けは、何ものにも代えがたい美しさがあった。そして力強かった。ワシは今までの事など忘れて、ただただ朝の日差しに見入っていました。自分は何と狭小で愚かだったのだろうと思い知らされもしました。もう一度、一からやり直すことを決めました。それが、今の活動につながっています」
    「普通、なかなかできる事ではないと思います」
     シロナが感心して言った。
    「そんな事はありません。グレン島にいた他の連中も同じ気持ちだったようです。以前、グレンジムにいた者達も一人ずつ帰ってきてくれています。少しずつ、少しずつですが、再生に向かっているのです。あの頃と同じように、何もかもが――」
     カツラは空を見上げた。風が微小な砂埃を舞い上げていた。その中心で彼はたった一人だったけれども、シロナとナナミは不安を覚えることはなかった。なぜなら、そっと吹き抜けるその一瞬の中で、彼は穏やかに微笑んでいたから。そのサングラスの向こうに光るのは、かすかな希求をひそませた、ひとしずくの朝露なのかもしれなかった。
    「もう、完全に日が昇っちゃったわね」
     ナナミが言った。
    「本当にね」
     シロナが朗らかに調子を合わせた。
     木曜日の朝日は、ますます高度を上げていく。これから再び生まれてくるものたちを、優しく迎え入れるかのように。
    「ところでお二人さん」
     カツラが呼びかける。
    「ワシはね、毎週木曜、この島を訪れるトレーナー達と記念写真を撮ることにしているのだよ」
     シロナとナナミは顔を見合わせた。
    「どうだね? 旅の記念に一枚、ワシと撮っていかんかね?」
     シロナとナナミはにっこりとうなずき合って、その微笑みをカツラに向けた。
    「「いえ、それはお断りいたします」」
    「うおおおーーい!」


                       おしまい



     補足説明すると、
     1、ちょーだいはゲーム中、実際にヒメグマに与えたニックネームです。
     こっちはリングマに進化させましたが(やっぱりボックスの空きとかが、ね)。

     2、カツラの最後の叫びについては(確かこんなだった)
     ゲーム中、実際に聞くことができるので
     試してみると面白いですよ(電話番号交換の後、木曜日のグレン島→写真撮影)。



    【何でもありですよ】


      [No.2181] 日常 〜彼女達の場合〜 投稿者:akuro   投稿日:2012/01/08(Sun) 03:30:18     26clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     「ああもうハクリューマジ美しすぅぅぅ!!」

     カントー地方、マサラタウンの北に広がる草むらで、桃色の帽子を被った少女が突然叫んだ。 周囲に人は見当たらなかったが、近くにいた彼女の手持ちポケモン達は大いに驚いた。

     「ぐおお……だからいちいち叫ぶなよモモコ! 耳が痛いわ!」

     最初に言葉を発したのは耳を押さえて抗議したライチュウ。 これは彼らにとって日常茶飯事とはいえ、さすがに突然叫ばれたら驚かない方がおかしい。

     「だってりゅーがめちゃめちゃ美しいんだもん! らいちもそう思わない!? この美しく青いボディーに輝く綺麗な水晶……」

     モモコと呼ばれた少女は瞳をキラキラと輝かせながら、らいちと言うライチュウにハクリューの良さを熱弁し初めた。

     「また始まった……別になんとも思わねえよ。 こんなナルシスト野郎のどこがいいんだか……」

     その言葉を聞き、モモコの傍らにいたハクリューが、ライチュウの前に進みでた。

     「我はナルシストなどではない、単純に美しいだけだ」
     「それをナルシストって言うんだよ!」
     「なにを言う。 もしやこの美しき我のことが羨ましいのか?」
     「はあ!? おまえ、バカなのか? その思考なんとかしろよ!」
     「我のどこがバカだというのだ。 理解できん!」
     「俺も理解できねーよ!」

     ギャーギャー騒いでいる2匹を、モモコはニコニコと見つめている。 その腕の中にはいつのまにかふわふわなワタッコが居た。

     「モモコ〜止めないの〜?」
     「大丈夫大丈夫! あの2匹はケンカするほど仲がいいってやつだから」
     「そなの? じゃ〜あおば寝る〜」

     モモコの腕の中で、ワタッコのあおばはいつものようにスヤスヤと寝息を立て始めた。

     「おやすみあおば♪ ……うふふ、あおばも可愛いなあ♪」

     眠っているあおばを抱きしめながら、モモコはらいちとりゅーの喧嘩に目を戻した。








     既にバトルに突入している2匹のポケモンを、少し離れた木陰から見守っているポケモンがいた。

     「もう、♂ってどうしてあんなに子供なのかしら……」

     呆れたようにため息をつくシャワーズに、隣に居たロコンが無表情で呟く。

     「……そーいう生き物なんでしょ。 それより相談ってなに」

     彼女……ロコンのあかねは、隣のシャワーズのみずりに「相談がある」と言われ、ここに連れてこられたのだ。

     「そ、そうだった……あのね」
     「前置きはいいから」

     「……実は最近、らいちやりゅーと話すと、緊張してつい思ってることと反対のこと言っちゃうの」
     「で?」
     「……いや、これはなんでなのかなって」
     「ただのツンデレ。 以上」

     そう言うとあかねは木に登り、昼寝する体制に入った。

     「え……あかね、それだけ?」
     「うん」

     みずりは呆然としている。

     「……ツンデレってなに?」
     「自分で調べて」

     「調べるって、どう……」
     「モモコに聞けば? あたしは寝る。 邪魔したら燃やす」

     あかねはキッパリと言い、それっきりみずりが話しかけても返事しなくなった。

     残されたみずりは1人呟く。

     「……いつものこととはいえ、やっぱあかね怖いなあ」



     ーーこれが、彼女達の日常である。


     [なにしてもいいのよ]


      [No.2180] あけまして、ドラゴン! 投稿者:海星   投稿日:2012/01/07(Sat) 12:48:21     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     眩しい朝日を浴びて、目が覚めた。
     
     冬の空気は冷たくて嫌いだ。
     
     起き上がる時に改めてそう思う。
     
     「ママ、パパ、おはよう! あけましておめでとう!」
     
     年賀状を並べていたママが振り向いてにっこりした。

     「あらおはよう、チルティーヌちゃん。あけましておめでとう」

     「あれ、パパは?」

     「お爺ちゃんに貰ったお餅を庭で焼いてるわよ」

     ママが説明したらすぐに、パパがお皿に膨れ上がったお餅を乗せて飛んできた。
     
     「おう、おはようチルティーヌ。あけましておめでとう」

     「うん、あけましておめでとうパパ」

     パパは大きな手の平で私を撫でた。

     いつも、パパは砂っぽいにおいがする。

     「今年は辰年だね! パパもママも主役だ!」

     そう言うと、二匹とも嬉しそうにした。

     その時、コンコンとドアが叩かれて、下の方からタツキチの声がする。

     「おーい、チルティーヌ!」

     急いで窓から飛び出てタツキチの前まで飛んでいくと、やっぱり羨ましそうにした。

     「あけましておめでとう、タツキチ」

     「おうよ、チルティーヌ。ところで、お前、年越しの瞬間起きてたか?」

     「ううん、九時までに寝ないとママに叱られちゃうから……」

     すると、タツキチが勝ち誇ったように笑った。

     「俺、父ちゃん一緒に起きてたんだ。それで、年越しの瞬間地球にいなかったんだぜ!」

     「ええっなにそれ! 宇宙旅行にでも行ってたの!? 確かにタツキチのパパは一七時間で地球を一周できるんだよね……」

     「十六時間だ! 父ちゃんは凄げぇんだかんな! っじゃなくて、ジャンプしたんだ」

     誇らしげに胸を反らして見せるタツキチを思い切り冷たい目で見る。

     「なぁんだ……それだけ?」

     タツキチは焦ったように地団駄を踏み、私を指さした。

     「まあこの話はいい! 今年は辰年じゃねぇか、俺の時代が来た!」

     「それを言うなら私もだよ、タツキチ!」

     「ふん、お前ドラゴンじゃないじゃねえか」

     「進化したらママみたいなふわふわのチルタリスになるんだもん! タツキチこそ、ドラゴンなら空くらい飛べなきゃ。タツキチのパパみたいにね」

     にやにやして言ってやると、タツキチは真っ赤になった。

     「う、うるさい! それに、俺は進化しても父ちゃんじゃなくて、母ちゃんみたいなボーマンダになるんだ!」

     「ふうん、そう」

     「なんだよその反応! 母ちゃんだって格好良いんだぜ、超イケてる。お前こそ、お前んとこの父ちゃんみたいには進化しないだろ、それと同じだ!」

     はっとして、私は家を見上げた。

     大きな二又の木の上に我が家はある。

     「そっか……」

     「だろ? お前の父ちゃんも中々格好良い(まあ俺の父ちゃん程じゃないけど)が、チルティーヌがああなったらちょっと気持ち悪いって言うか……」

     「聞き捨てならないかも! うちのパパはめちゃめちゃ凄いんだから! ママと恋に落ちたは良いけど住むところが全然違くて、パパは我慢して砂嵐を諦めたんだから! それに、ママとパパのデュエットは最高で、(まあパパは歌うっていうか羽ばたいてるんだけど)すぐに眠くなっちゃうんだから!」

     呆れたようにタツキチが溜息をついた。

     「眠くなっちゃ駄目じゃねえか……」

     そのとき、家の窓からママが顔を出して私を呼んだ。

     「チルティーヌ、朝ご飯よ! タツキチ君も食べてく? うちは実家がシンオウにあるから、タツキチ君ところのお雑煮とはちょっと違うかも……」

     歌うような軽やかな口調で楽しそうに言うと、ママはタツキチを見つめた。

     だけどタツキチはああっと大きな声を出して驚くと、慌てて走り出す。

     「俺んちも朝飯の時間だ! 今日は正月だし、豪勢なんだ! じゃな!」

     そうしてタツキチは去って行った。
     
     ふんわり飛んで窓から家に入ると、お餅の香ばしい匂いが私を包む。

     「わあ、美味しそう!」

     パパが新聞を畳んで隅に置く。

     ママもお茶を淹れて運んでくると、それぞれの席に置いて、微笑んだ。

     「じゃ、食べようか」

     三匹が席に着き、パパがいただきますを言う。

     うーん、お正月って感じ。

     


     今年の抱負:辰年のうちにチルタリスになりたい!




    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

     改めまして、あけましておめでとうございます。

     なんかふにゃふにゃしてしまいました;

     調べてみたら、流石ドラゴン、数が少ないんですね!

     結局色々出してしまいましたがww

     個人的にはフライゴンが好きです^^

     アニポケのAG時代……憧れのシュウさんが手持ちにしていたからでしょうか……ポッ

     あと、ジラーチの映画にも出ていました! サトシさんを背中に乗せたり……ポッ

     失礼致しましたーっ^^;

     【書いてもいいのよ】
     【描いてもいいのよ】
     【ていうか何をしてもいいのよ】
     【お雑煮もぎゅもぎゅ】


      [No.2179] ゆうびんドラゴン 投稿者:巳佑   投稿日:2012/01/06(Fri) 23:31:06     179clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    『お元気にしてますか。アナタがいきなり働き始めたいと言ってからもう早くも一年が経とうとしています。お仕事はしっかりこなしていますか? 職場の方には迷惑をかけていませんか? お仕事の方が落ち着いてからでいいので久しぶりに会える日を楽しみにしてます。兄より』

     手の平に乗っている一枚の手紙を読み終えると、白と赤色を身に染めた一匹のポケモン――ラティアスはワラが敷き詰められているベッドから身を起こします。近くにある木製の小窓を開けると、太陽の光がさんさんと部屋の中に入り込んできます。そこで一つ伸びをすると眠気たっぷりな顔からとびっきりの笑顔に変わりました。
    「よっしー! 今日も頑張るですよー!」

     ここはポケモンだけが住んでいる、一つの村。
     そして、その村の近くにある、海がよく見える岬には一つの建物が建っていました。入り口には『カイリューの郵便屋さん』と書かれてある立て札があります。
    「おっはようございますー! カイリュー局長♪」
    「あぁ、おはよう、ラティアスさん。今日も一日よろしくね」
    「はーい、じゃんじゃんバリバリ働きまーす! あ、今日のポケ新聞ってありますー?」
    「あぁ、あるよ。はい、これ。僕はもう読んだから」
    「ありがとうございますー! お、救助隊チーム『テラーズ』が大活躍。きゃー! プテラ様かっこいいですー! 流し目なんて最高すぎますー!」
     建物の中に歓喜が響き渡ります。その様子を見たカイリューと呼ばれた山吹色の龍はやれやれといった顔で仕事の準備を始めました。
     ここはカイリューの郵便屋さん。お手紙などを色々な所に運ぶのが主な仕事です。この郵便屋さんがある村は旅をしているポケモンが多く出入りすることもあり、故郷やお得意先に手紙を送ることも珍しくありませんでした。
    「……おはよ」
    「あぁ、おはよう、フライゴンさん」
     カイリューの郵便屋さんの出入り口から一匹の黄緑色に染まった赤いレンズをはめた龍――フライゴンが眠たそうな目をしながら入ってきました。すると、ラティアスはポケ新聞のプテラが載っているページをフライゴンの顔につけます。
    「あ、ライゴちゃーん! 見てくださいですー! このプテラ様すごいかっこよすぎますー! 素敵過ぎますー!」
    「……うるさい……耳元で騒ぐな……それより青三角……アンタこの前、色違いゾロアーク様とか言ってなかった?」
    「今、時代はプテラ様なのですよー! きゃー! プテラ様素敵なのですー!」
    「……局長、カゴティー一杯作るけど、どうする?」
    「え、あ、じゃあ、僕にも一杯お願いしようかな」
    「プテラ様最っ高ですー!」
     プテラに惚れているラティアス、無口っぽいフライゴン、そして局長のカイリュー。
     少ないながらも、この三匹が『カイリューの郵便屋さん』を切り盛りしてました。



    『最近、ちょっとずつ暖かくなってきましたよね。そちらも春が近づいている頃でしょうか? あまりの春うららに、兄のブームは日向ぼっこになってます。あまりにも気持ちよすぎて寝てしまうことも……いけないけない、寝てばっかりいては。最近、救助隊の仲間にもボーっとしすぎていると怒られたので気をつけなければ。ラティアスも勤務中には寝ないように気をつけてくださいね。兄より』

    「ふわぁ……なんか最近お日様が気持ちいいですー。は、居眠り運転しないようにしなければですー」 
     カイリューの郵便屋さんがある村から少し離れた空の上、ラティアスが眠たそうに目をゴシゴシとかいています。ちなみに首からは手紙をたくさん入れた黒色のカバンをかけており、頭にはツバ付きの黒い帽子をかぶっています。
     さて、口では寝ないように寝ないようにと唱え続け、ひたすら眠気と戦っていたラティアスでしたが、その努力むなしく、徐々に地面へと体は向かってしまいます。
     そのときでした。
    「はっ、誰かそこに倒れてますー!?」 
     ラティアスの目に飛び込んできたのは、一匹のワラをかぶった小さなポケモンでした。倒れたまま動く気配もないので心配になったラティアスは眠気を吹っ飛ばして、そのポケモンに近づきます。もう少しばかりお仕事が残っていたのですが、このまま放っておくわけにもいけません。 
    「あのー。ここで寝てると風邪引きますよー?」
     ラティアスが揺さぶってみるものの、その小さなポケモンは起きることはありませんでした。ラティアスは辺りを見回していますが、ポケモン一匹もいません。近くに置いてあるのは一本の棒と、その先端にくくりつけられている風呂敷一枚だけでした。どうやら旅をしているポケモンのようです。
     しかし、それが分かったところで問題が解決されたわけではありません。さて、どうしようかとラティアスが悩み続けること数分。妙案を思いついたのでしょうか、ラティアスの顔がパッと明るくなって――。

    「……それで、ここに連れてきたと」
     カイリューの郵便屋さんにある休憩室、そこではフライゴンが困ったような顔を浮べていました。件の小さなポケモンはワラのベッドの上に横たわっています。
    「ちゃんとお仕事を終わらせてから来ましたですー! うぅ、ライゴちゃーん、そんな顔しないでくださいですよー!」
    「もういい……青三角、とりあえずこの子だけど……ただ単に……お腹が減って倒れたって感じ」
    「へ、そうなんですか!? はぁ、良かったですー! 大事かと思いましたですよー!」
    「……とりあえず……何か、食べさせるか……しょうがないな、もう…………その間に受付とかは青三角がやって」
    「了解ですー!」
     その後、ラティアスが受付の仕事をやっていると、やがてフライゴンから呼びかけがありました。あの小さなポケモンが目を覚ましたとのことで、事情を話したらラティアスとお話をしたいというのです。ラティアスはそれを聞くと、すぐに休憩室に向かいました。すると、そこには元気そうな小さなポケモンが待っていました。
    「あ、ラ、ラティアスさんですねっ!? じ、自分、ユキワラシって言いまするっ。こ、この度は腹がへっているところをお、お助けいただき、あ、ありがとうございまっす」 
    「いえいえー。ご無事のようでなによりですー! 大事に至らなくて良かったですよー」
     ラティアスがニコニコと笑顔を浮べながら話しているのに対し、小さなポケモン――ユキワラシは両手をもじもじとさせていました。ラティアスが可愛いかったというのもありましたが、他にも恥ずかしいところを見られたという気持ちもあったのでしょう。ユキワラシの背中からは冷や汗がたらたらと垂れていました。
    「あ、良かったら、お茶のお代わりなんていかがでしょうかー?」
    「え、そ、そんな、だ、大丈夫でする。じ、自分のことはき、気にしないでいいですからっ」
    「まぁまぁ、そう言わずに、そう言わずにですよー」
    「い、いや。本当にだ、大丈夫、でするー!」
     顔を真っ赤にさせながら、ユキワラシが休憩室から飛び出ていきました。あまりの速さに驚いたラティアスがユキワラシを見失ったのは言うまでもない話です。ぽかーんと口を開けながらラティアスはただただユキワラシが去った方を見やるばかりでした。



    『春の香りがますます鼻につくようになりました。もうそろそろあの花も咲く頃ではないでしょうか? ラティアスが住んでいる村にもありますかね? ちなみに兄さんは救助隊仲間と一緒に花見をする予定です。ラティアスの方も職場仲間と花見をするのでしょうか。くれぐれもラム酒とかを飲みすぎないようにして下さいね。兄より』 

     カイリューの郵便屋さんがある村での夜のこと。
     その村の広場には『大樽(おおだる)』と呼ばれる一軒のお店がありまして、大ワニポケモンのオーダイルとワルビアル夫妻が経営している居酒屋です。夜には旅の途中であるポケモンやら、村で一日働き終えたポケモンやらがやってきては一杯くみ交わしていたりしてました。もちろん、この二匹も漏れなく常連客です。
    「ぷっはぁー! お仕事の後のラム酒はおいしいですよねー! ライゴちゃん!」
    「……青三角、飲み過ぎないように」
    「そういう、ライゴちゃんこそ飲みすぎないようにですよー!」
    「……言われなくても分かってる」
     居酒屋『大樽』にある一席ではラティアスとフライゴンがいました。木製のコップを片手に意気揚々と飲んでいます。二匹はこのように、仕事が終わった後、女子会みたいな感じで飲むことがあったのです。
    「いやぁ、やっぱり今はマメパト様ですよねー! あの知的な感じ♪ もうたまらないですー!」
    「……朝刊と夕刊で、もうこんなに変わってる……朝はプテラ推しだったのに」
    「え、もちろんプテラ様も捨てがたいですけどー。でも、あの知的な雰囲気、それと魅力的な鳩胸っ! やっぱり素敵なのですー!」
    「……青三角、超ミーハーすぎ」
    「ミーハーじゃないですよー! 好きなものが多いだけなんですー! そういうライゴちゃんは今、何推しなんですかー?」
    「…………わたしは別に」
    「あー! 今、目線を逃がしましたですよねー!? 私には見逃せませんですよー!?」
    「……うるさい、少し黙――あっ」
    「ん、どうしたんですかー?」
     フライゴンが指差す方へラティアスが顔を向けてみると、そこにはあの小さなワラを被ったポケモンのユキワラシがいました。ラティアスは早速、席を立って、手を振りますと、ユキワラシがそれに気がつきます。
    「折角ですし、ご一緒にどうですかー!?」
     一瞬戸惑ったユキワラシでしたが、ここは断ったらいけないかなと思ったのかラティアスとフライゴンの席に向かい、フライゴンが用意してくれた小さなポケモン用の木製イスに座りました。 
    「姐さーん! このお方にラム酒一杯お願いしますですー!」
    「はいよー!」
     カウンターから気の強そうな女性の声が響いた後、ユキワラシが困ったような顔を浮かべます。もしかしたら、これはおごりなのではないかと。案の定、ラティアスが「私がおごりますですー」と言ってきたのでユキワラシは更に困ったような顔になります。
    「え、え、わ、悪いでするっ。そ、そんな」
    「いいんですよー。昼のとき、お茶をご馳走できなかったので、その分だと思ってくださいですー」
    「…………いいから、お言葉に甘えたら?」
    「そうですそうです。じゃないと怒りますですよー?」
    「……怒らないくせに」
    「あ、ライゴちゃん。それは言っちゃ駄目なんですー! 私だって怒るときは怒るんですよー?」
    「……いや…………今まで青三角が怒ったところ見たことないし」
    「で、でも、お兄ちゃんには怒ったことありますですー!」
    「……青三角の昔話なんて知らん」
    「あ、ヒドイですー!」
     最初は戸惑いばかりであったユキワラシでしたが、ラティアスとフライゴンのやり取りを見ていると、そんな悩みもばかばかしくなってきたのか、しまいには小さくでしたが、笑い声をあげていました。そんなユキワラシにラティアスが「あ、ユイワラシさんまで!」と悲鳴を上げたのは言うまでもありません。
     やがて、ユキワラシにラム酒が運ばれますと、三匹はお酒に喉を動かしながら話を続けます。
    「そういえば、ユキワラシさんって、旅をなされてここまで来たんですかー?」
    「あ、は、はい。そうでするっ。前に旅立った村からここまで距離が意外とありましてっ。なにぶん、自分、足とかが小さいものですからっ。そ、そりゃもう、た、大変でしたでするっ
    「なるほどですー。それで途中でお腹が減って」
    「ほ、ほっんとうに、お恥ずかしい話でするっ」
     恥ずかしさをかき消すかのようにユキワラシはラム酒を飲み干すと、カウンターに向かって次の注文を投げかけます。それはモモンの実とオレンの実からつくられた甘酸っぱくてさわやかな味のモモオレサワーで、飲みやすい種類のお酒でした。注文を投げかけ終えた後、ユキワラシは「あ、こ、ここからは、自分で払いまするんでっ」と一言付け足しておきました。
    「……それで、どこに向かう予定?」
     フライゴンがそう尋ねますと、ユキワラシが逆に問いかけました。
    「あ、あの、この近くに桜ってありまするか?」
    「桜の木ですかー?」
    「は、はいでする。実はじ、自分は――」 
     ここでユキワラシが自らの生い立ちを話し始めました。
     ユキワラシはこの村よりもずっと北の方に住んでいるポケモンで、立派なポケモンになる為に旅に出たそうです。とりあえず南に下っていくと、ある日、桜の木の存在のことをユキワラシは耳にしました。いつも雪で覆われている自分の故郷にはないその花にユキワラシはせめて花びらだけでも、故郷の者たちに見せたいという気持ちが芽生え、そして今に至るというわけです。
     ユキワラシの話が終わったときには、その話に感動したらしいラティアスの両目から涙がポロポロこぼれていました。
    「……なるほどですー。実にいい話ですねー」
    「…………青三角、本当に飲みすぎ」 
     涙をふきながら、ラティアスは答えました。
    「それで、桜でしたら、確かにこの村の近くにありますよー。この村の近くに桜がよく咲く場所がありまして、そこでは毎年、花見とかしているポケモンがいるんですよー。私たちも近い内にやろうという話なんですが……あ、良かったら、ユキワラシさんもご一緒にどうですかー?」
    「え、い、いいんでするかっ?」
    「……まぁ、仕事終わった後だから……夜桜になるけど」
    「いいじゃないですかー! 夜の桜も風流ですよー!」
     ラティアスとフライゴンの話を聞いている内に、桜のことで色々と楽しみが増えたのでしょう。ユキワラシの顔がぱぁっと明るくなっていきます。桜というものを初めて見られる上に、これで故郷にも報告ができるとユキワラシの胸が踊りだしていきます。ラティアス達の誘いにはもう答えは出ていました。
    「あ、あの、よ、よろしく、お願いしてもよろしいでするかっ?」
    「もちろんですよー! 人数はいっぱいの方が盛り上がりますですー」
    「…………あまり飲みすぎないようにね」
     こうして、花見を約束した三匹はその記念にもう一杯、乾杯することにしたのでありました。



    『桜咲く季節、元気に過ごしてますか? こちらは花見モード全開で賑わっています。この時期、救助隊は花見のパトロールで大忙しです。酔っ払いが多いこと多いこと。ケンカを止めることだって珍しくありません。世間の平和を守るためとはいえ、酔っ払いの相手は疲れるというのが正直な感想です。あ、ここだけの話にしてくださいね? ラティアスも節度を持って花見を楽しんでくださいね。 兄より』

     ここはカイリューの郵便屋さんがある村からちょっと外れの方にある一つの広場。
     そこには木々が所々に立っており、そして、その木々にはたくさんの桃色が身につけられていました。その桃色は桜と呼ばれる花で、月に照らされているその姿はなんだか艶がありまして、惚れ惚れしそうなものでした。更には風に乗って羽ばたく桜の花びらの姿も優雅で素敵なものでした。
     この春の香りが漂う広場はまるで別世界のようで、そこにはその香りに招かれるかのように、色々なポケモンたちが集まっていました。もちろん、花見を約束していたユキワラシとラティアスとフライゴン、それと今回はカイリュー局長もそこにはいました。カイリュー局長は荷物運びを引き受けたのか、花見用のお酒に、団子といった食べ物に、他にも色々と風呂敷に詰めて背中にしょっています。
    「すいませんですー、カイリュー局長。荷物運びをさせてもらいましてー」
    「いや、これぐらい、大丈夫だよ。今日は折角の花見だし、明るくやっていこう、ね?」
     一方、広場の入り口で初めて見た桜の花びらたちにユキワラシはただただ目を奪われていました。
    「…………ユキワラシ、感動するのは分かるけど……ボーッとしていると置いてかれる」
    「……」
     なおもボーッとしているユキワラシにフライゴンがツメの先でちょんちょんとつついてあげますと、ようやく夢から覚めたような顔をユキワラシは見せ、一言謝りました。それから一向は広場の中に入り、ちょうど座れるスペースを見つけますと、カイリューは風呂敷を広げ始め、残りの三匹も花見の準備を手伝いました。
     やがて、各自、木製のコップに一般的なラム酒や、辛さがウリのマトマ酒などを入れますと、カイリュー局長が一つ咳払いをしました。
    「えーと。皆さん、今宵は楽しんでいきましょう。ユキワラシさんも遠慮しないで、たっぷり楽しんでいってくださいね……これからのカイリューの郵便屋の発展とユキワラシさんの旅が順調でありますようにと桜に願いながら……乾杯!」
     カイリュー局長に続いて、三匹も乾杯と声を上げます。
     最初は皆、ゴクゴクと酒を喉に落としながら、用意してあった団子をもぎゅもぎゅと食べていきます。普段のときと比べて、桜の木の下で食べるのはまた違ったおいしさがあると、各々の舌が幸せで埋まっていきます。それから食べることや飲むことに一段落しますと、夜桜をのんびりと眺め始めます。月夜に照らされている桜の木々。お酒でほてった顔に春の風と桜の香りがくすぐってくるのもまた気持ちいい。ユキワラシもお酒を片手に夜桜をのんびりと眺めていました。そのユキワラシにカイリュー局長が話しかけます。
    「ユキワラシさん。そういえば、桜の花びらを故郷の方々に見せたい、と言ってましたよね?」
    「あ、は、はいでするっ。ここで桜の花びらを何枚か拾って、一回、故郷に持って帰りたいでするがっ」
     しかし、ここからユキワラシの故郷まではまた距離があり、ユキワラシの足では時間がかかってしまうことでしょう。それにその間に折角採った桜の花びらも色あせてしまうかもしれません。そう考えたラティアスはそうだと閃きました。
    「こういうときこそ、私たちがいるじゃないですかー! ユキワラシさん、ここで故郷に向けて手紙を書くのはいかがでしょうかー?」
    「て、手紙でするかっ?」
    「あら、もしかして初めてですかー?」
    「え、えぇ」
     戸惑い気味のユキワラシに今度はラティアスに代わってカイリュー局長が話します。
    「僕たちは手紙を送るお仕事をしてますので、ユキワラシさんがどこに住んでいるのかを教えていただければ、そこに必ず手紙と、桜の花びらをお届けしますよ」
    「……桜の花びらは押し花にすればいいと思う…………そうすれば、色あせる心配もないかも」
     手紙という言葉を聞いたことはありましたが、書いたことのないユキワラシはどうすればいいのか、ちょっと分からなくなって、両手をもじもじさせ始めます。そんな心に不安をよぎらせたユキワラシにラティアスは優しく、その小さな手を優しく握りました。
    「大丈夫ですよー。ユキワラシさんが今まで旅をして来たことで知ったこととか、学んだこととかを書けばいいと思いますよー。ユキワラシさんの故郷の方々はユキワラシさんの旅を気にしていると思いますしー。それにユキワラシさん自身もまだ旅を続けるんですよねー?」
     こくりとうなずくユキワラシにラティアスはニコっと笑みを浮かべました。
    「なら、手紙を送るのが一番ですー♪」 
    「は、はいでするっ、じ、自分、書いてみまするっ」
     夜桜舞う中、ユキワラシの意志がそこに確かにありました。

     その後、カイリューの郵便屋さん一同と別れ、自分が世話になっている宿の部屋にたどり着いたユキワラシはラティアスからもらった手紙用の紙と、ドーブル印のペンを出すと、言葉をつづり始めます。
     これまで旅してきたこと――南に下って、今まで住んでいたところとは気候が違うことに驚いたことや、道中に出逢ったポケモンたちのことや、そして今の自分のことなどを――最初はなかなか書き出せなかったものですが一旦、ペンを手紙に乗せますと、あら不思議、次から次へと言葉が浮かんでいきます。
     それはユキワラシがここまでちゃんと旅をしてきた証拠でもありました。
     これまでのことに想いを馳せながら、ユキワラシは書き続けていき、そして最後にはこう書いておきました。
    『また、自分の旅を手紙にして送りまするっ』



    『春真っ盛りな日々、調子はいかがでしょうか? かすかに冬の名残があったりしますが、そちらはどうでしょうか? 最近、救助隊の仲間が風邪をこじらせてしまいました。ラティアスも暖かくなってきたけど、体調管理は油断せずしっかりね。兄より』

    「え、と。あ、後はこれとこれを入れて……っ」 
     カイリューの郵便屋さんの受付にて、ユキワラシが故郷に手紙を送る為の最終段階に入っていました。長方形の白い封筒の表に宛名、裏には差し出しポケモンであるユキワラシの名前を書きます。それから一枚の白い手紙と、桜の花びらの押し花を飾った一枚の紙を入れ、しっかり封を閉じました。最後には封筒の表に切手を貼りまして完成です。ユキワラシはドキドキしながらその手紙を差し出しますと、受付役のフライゴンはしっかりとそれを受け取り、カイリュー印のスタンプをポンっと押しました。
    「…………確かに受け取った。後は任せて」
    「あ、ありがとう、ございまするっ」
     配達準備完了したユキワラシの手紙をラティアスがフライゴンから受け取りますと、それを首からかけてある黒いカバンに大事そうに入れました。どうやら届けるのはラティアスが引き受けたそうです。ちゃんと届けるとやる気満々な様子を見せるラティアスに対し、隣にいたカイリュー局長は少し心配そうな顔をしていました。
    「大丈夫? やっぱり僕が行こうか? 今回はかなりの北国だよ?」
    「全然平気ですよー! 雪なんてへっちゃらですからー! 任してくださいですー! カイリュー局長は郵便連盟の方に行かないとですー」
     今回、ラティアスが手紙を届ける先は地図でもかなりの北の方にあり、中々、寒さも厳しそうなところが地図からでも想像できました。しかし、ちょうど今日、カイリュー局長は郵便連盟というこの世界の郵便屋の代表者達が集まって、それぞれの郵便屋の状況などを報告したりする会議みたいなものに出張しなければなりませんでした。フライゴンも元々は受付役専門ですから持ち場から離れるわけにはいかず、結局、ラティアスが行くことになったのです。
    「す、すいませんでするっ。た、大変なことを」
    「大丈夫ですよー。体の丈夫さが私の自慢ですからー! それに早くこの手紙を届けてあげた方がいいですー!」
     そろそろ出発しようとするラティアスに、カイリュー局長が一言待ったを入れますと、一旦、休憩室に消えました。程なく、また現れるとカイリュー局長はラティアスの首元に黒いマフラーを巻いてあげました。
    「それでも、これをつけていった方がいいよ。これだけでも全然違ってくるからね」 
    「ありがとうございますですー! それじゃ……行ってきますですー!」 
     暖かい感触を感じながら、ラティアスが笑顔で返しますと、勢いよくカイリューの郵便屋さんを後にし、そして、空高く、ユキワラシの故郷目指して羽ばたきました。

     ユキワラシの手紙を持ってラティアスは北へ北へと飛行していきます。
     体にぶつかってくる風は徐々に冷たさを帯びてきていました。
     空の色も青から灰色に衣替えしていっており、ラティアスから吐く息が白く浮かびあがり始めていました。
     更に北へ北へと進んで行きますと、雪がちらほら降ってきました。
     ここまで寒いものだったとは……と、流石のラティアスも戸惑い始めましたが、しかし、ここで戻るわけにはいきません。
     また寒さが重なってきて、手も凍えてくると、ラティアスは思わずカイリュー局長から借りたマフラーをぎゅっと握りました。
     不思議と暖かい感触がラティアスの手に広がります。
    「……カイリュー局長のマフラーってやっぱり大きいんですねー。ぐるぐるいっぱい巻いてありますですー」
     その優しい温もりに心も温かくなったラティアスが更に進んでいきますと、雪は更に強くなり、吹雪となっていました。
     最初の方は大丈夫だったラティアスでしたが、強風に、冷たさと寒さで体力が確実に奪われていきます。おまけに雪によって視界も悪くなっていました。
     このままでは死んでしまってもおかしくありません。
     しかし、ぼろぼろになりながらもラティアスは気合で突き進みます。
     なんとしてでもこの手紙を送りたい。
     今はその気持ちだけで飛べているような感じでした。



    『追伸:そういえば、カイリュー局長はお元気にしてますか? この季節になると、時々、あの日のことを思い浮かべます……。兄からよろしく伝えておいてくれるようお願いしますね。』

     そこは水路がたくさん通う、水の街とも呼ばれていたところ。
    「ふぅ……今日の分はこれで終わりっと。まさかここまで来るとは思わなかったなぁ」
     その街の一角にある広場には一匹の山吹色に染まった龍ポケモン――カイリューが額(ひたい)をぬぐいながら、一息ついていました。その太い首からは大きなカバンがぶら下がっていて、頭にはツバ付きの黒い帽子を被っています。どうやらお仕事が一段落したようで、休憩しているようです。そんな、休憩中のカイリューに一匹のポケモンが物珍しそうに近づいてきました。紅白を身に染めた体に、お腹には青い三角形の模様が一つあります。可愛い子だなぁ、迷子だったりしてとかカイリューが思っていますと、その子が口を開きました。
    「こ、こんにちはですー、おじさん」
    「ん? あぁ、こんにちは」
    「このあたりだと、みかけないポケモンですねー。ま、まさかおたずねものさんだったりしますかー!?」
    「い、いや。決してそんなに怪しいものじゃないよ?」
     いきなり話しかけてきたそのポケモンはしばらくジィーっと、カイリューを覗いていましたが、やがて彼女の中で疑いが晴れたのでしょうか、ぱぁっと笑顔になるとカイリューの隣に座りました。
    「わたし、ラティアスっていいますー。おじさんはなんてポケモンなんですかー?」
    「カイリューっていうんだ。よろしくね、ラティアスさん」
    「はいですー、よろしくですー」
    「ラティアスさんはこの街に住んでいる子なのかい?」
    「そうですよー。うまれもそだちも、このまちなのですー!」
     腰辺りに両手を当てながら、えっへん顔で答えるラティアスにカイリューは「そうなんだー」と答えていますと、今度はラティアスがカイリューさんの体に登ってきて、バックに手を当てました。
    「カイリューさん。これはなんですかー?」
    「ん? これかい? これはね、大事なお仕事の道具だよ」
    「おしごと?」
     首を傾げているラティアスにカイリューが答えてあげました。
    「うん、郵便屋さんっていう手紙を送る仕事をしているんだ」
     手紙という言葉を初めて聞いたのか、ラティアスの首はまた傾げています。
    「手紙っていうのはね、誰かに言葉を届けるものなんだ。例えば遠くにいる相手に元気な姿を見せたりすることができたりとか、伝えたいことを届けられるものなんだ」
    「へぇー! そうなんですかー!」
     手紙に興味を抱いたラティアスの目がキラキラと輝いています。すると、ラティアスはこんな質問をしました。
    「ねぇ、カイリューさん。わたしもてがみをおくれますかー?」
    「もちろん。送りたい方の名前と、その方が住んでいるところさえ教えてもらえば」
    「えっとですねー。わたしのおかあさんとおとうさんにてがみをおくりたいんですー……えっと、住んでいる場所は『とおいところ』ですー!」
    『とおいところ』という単語に、今度はカイリューが首を傾げます。もう少しだけ具体的な場所を教えてもらわないと、流石に届けることができません。カイリューが『とおいところ』はどんなところと尋ねてみましたが、ラティアスは『とおいところ』は『とおいところ』という一点ばかりです。さて困ったとカイリューが頭を抱えるときのことでした。目の前に新しい一匹のポケモンがやってきました。灰色と青色に染まった体、そしてお腹には赤い三角形の模様が一つありました。
    「こんなところにいたのか、ラティアス」
    「あ、ラティオスおにいちゃんですー!」
     ラティオスおにいちゃんと呼ばれた、そのポケモンにラティアスが近づきます。その背中は楽しげでありました。一方、ラティオスがカイリューの方を見やると、カイリューは帽子を軽く取って挨拶します。
    「あのですね、あのカイリューさん、ゆうびんやさんなんですよー!」
    「あ、お、お仕事、お疲れ様です」
     怪しいポケモンかと思っていたラティオスは、自分の勘違いに恥ずかしくなりながらも、声をあげました。その姿にカイリューは「いえいえ」と微笑んでいました。この街にはあまり来たことがないから怪しまれてもおかしくないかな、とカイリューさんは思っていたので、さほど気にしてはいませんでした。
    「それですねー! いま、カイリューさんに、おかあさんとおとうさんにてがみをおくってもらおうとたのんでいるんですー! おにいちゃんももちろんかきますよねー? いっしょにおくりましょうですー!」
     ラティアスが意気揚々とそう話したときでした。ラティオスの顔色が少しだけ暗くなったような気が、カイリューからは見えました。ラティアスがなおも明るく手紙を送ろうと言っていると、それに比例していくかのようにラティオスの顔色も暗さが増していきます。すると苦虫をつぶしたかのような顔を浮べながらラティオスが言いました。
    「っだから、お母さんとお父さんは『とおくのところ』に行ったって言ってるだろっ? そんなところに手紙なんか届くことなんかできないよっ」
     今にも泣きそうな顔をしているラティオスに、ラティアスはどうしたのと戸惑いの顔を浮べ始めました。一方、ラティアスとラティオスのやり取りを見ていたカイリューは気付きました。

    『とおいところ』がどんなところかを。

     何も言えない状態のラティオスに、ラティアスが困っているとカイリューが二匹のそばに歩み寄りました。
    「任して下さい。僕が必ず『とおいところ』に手紙を送ります」
     その言葉にラティアスの顔は明るく、ラティオスの顔は驚きでいっぱいになりました。
    「……で、でもカイリューさん」
    「大丈夫。どんなところにでも届けに行く。それが僕の一族が引き継いできた郵便屋のモットーだから」
     カイリューはラティオスに向かって安心させるかのようにそう言いますと、今度はラティアスの方に顔を向けて言いました。
    「いいかい? 明日、またここで会おう。そのとき、お母さんとお父さんに書いた手紙を忘れずに持ってきてね?」
    「はーい♪」
     その日の夜、ラティアスはカイリューからもらった紙に言葉をつづりました。
     まだ文字を覚えて間もないですから、文字の形は崩れているものが多かったですが、伝えたい気持ちは、そこにたくさん詰まっていました。
     お母さんとお父さんが『とおいところ』に行ってしまってからの日々。
     兄との日々であったり。
     友達との日々であったり。
     そして郵便屋さんに会ったときのことであったり。
     色々なことを書いていきました。
     そして最後に『はやくかえってきてね』と付け加えて、筆を置きました。

     翌日、約束した場所で手紙を受け取ったカイリューは「ちゃんと届けますから、安心してくださいね」と頼りになる声を二匹に残してから飛び立ちました。
     それから、一週間が経った頃でしょうか、再びラティアスとラティオスの前にカイリューが現れました。
    「お久しぶり。手紙はちゃんと届けたよ。それでね、これ、君達のお母さんとお父さんから手紙だよ」
     カイリューは首からかかっているカバンから二枚の白い封筒を取り出すと、ラティアスとラティオスに渡しました。ラティアスが手紙を受け取って、るんるんと小躍りしている一方、ラティオスは信じられないものを見ているかのような顔を浮かべます。これは本物なのだろうか、そう封を切って中を読んでみたラティオスの瞳からポロポロと涙がこぼれていきます。
    「この、文字、言葉……確かに、お母さんと、お父さんのだ……」
    「えぇ、もちろん。本物だよ」
    「あ、お兄ちゃん、もう読んでいるのですかー!? 私も読むですー!」
     そう言いながらラティアスは封筒をバリっと開けて、手紙を読んでいきます。最初は明るい顔だったラティアスでしたが、突然、目を丸くさせ、それからわなわなと体を小刻みに震えさせていきます。ラティアスの様子がおかしいことに気がついたカイリューがどうしたのだろうかと心配そうな顔を向けますと、ラティアスが叫びました。

    「ウソつきなのですーーー!!!」

     手紙を地面にたたきつけると、ラティアスはどこかへと去っていってしまいました。
     あまりのできごとに、ラティオスもカイリューも止めることができませんでした。
     それからカイリューが地面に落とされた手紙を拾い、悪いと思いながらも「失礼」と断ってから読んでいくと、どうしてラティアスがそう叫んで去っていったのか分かりました。続けてラティオスもその手紙を読むと、ラティアスの身に何が起きたのかを理解しました。
     
     一方、頭がぐちゃぐちゃになって訳が分からなくなっていたラティアスは適当に街の路地裏に入り込み、そこでようやく止まると、声を上げて泣きました。ただただ声を上げて鳴きました。
     どうして、なんで、どうして、なんで。
     そんな言葉が繰り返し繰り返し、ラティアスの頭の中をぐるんぐるんと回し続けていきます。あまりにも頭だけに限らず、心もぐるんぐるんと回され続けたラティアスは思わず吐いてしまいます。
     息が苦しい。
     心が苦しい。
     こんなになるぐらいだったら、いっそ手紙なんて――。
    「……はぁ、はぁ。ここにいたか、ラティアス。探したぞ」
    「ラティアスさん……」
     その声に振り返ると、そこにはラティオスとカイリューがいました。
     二匹ともここまで走って駆けつけてくれたのでしょう、肩で息をしています。
    「ラティアス、今まで、言わなくて、ごめん。『とおくのところ』なんてごまかして悪かったよ。本当のことを言ったら、きっと傷つくと思って……だから言わなかった、ごめん」
    「おにぃ……ちゃ、ん……」
     今でも信じられないという顔のラティアスにカイリューが静かに歩み寄ります。その手に持っていたのは真実が書かれてある手紙が入っている封筒でした。
    「ほん、とう、に、おかあさん、と、おとうさん、はいなくなって、しまったんです、かー? もう、あえないん、ですかー?」 
     途切れ途切れの言葉にカイリューがコクンとうなずきますと、ラティアスの瞳からまたぶわっと涙があふれていきます。
    「きっと、伝えたかったんだよ。隠してたら駄目だって思ったから、これを書いたんだよ、きっと。」
     カイリューはラティアスの目の前でかがむと、手紙を差し出します。
     しかし、ラティアスには受け取る気がしませんでした。こんな気持ちにさせたものなんていらないと思っていたのです。全く受け取る気配を見せないラテォアスでしたが、カイリューはそのまま差し出し続けます。
    「必ず届ける、そう約束したからね、ラティアスさんのお母さんとお父さんに。だから受け取って欲しいんだ。ラティアスさんのお母さんとお父さんが届けたかったのは、ただラティアスさんを悲しくさせたいわけではないし、泣かせたいわけでもないよ。」
     そう言いながらカイリューは封筒を再び開け、手紙を広げると、ラティアスに示しました。
     すると、ラティアスの目が丸くなります。
     そこにはもう一枚、手紙があったのです。
     実は先程、ラティアスが読んでいたのは一枚目の手紙だったのです。
     ラティアスが恐る恐るとその二枚目の手紙を受け取ると、読んでいきます。 
     それは、真実の先に書かれてあるもの。
     
     これからのラティアスに対しての送る言葉でした。

     読み進めていく度にラティアスの瞳から涙が次々とこぼれていきます。
     もう会うことはできない、だけど、伝えることができたもの。
     その奇跡をしっかりと握りながら、ラティアスは再び泣きました。 
     けれど、今度は悲しみばかりの涙ではありません。
     言葉を送ってくれたラティアスのお母さんとお父さん、そして、届けてくれたカイリューに対しての『ありがとう』の涙でした。

     翌日、例の広場で、ラティアスが一枚の手紙をカイリューに差し出しました。
    「きのうはありがとうございましたですー。あの、これをもういちどだけおとうさんとおかあさんにとどけてくれませんですかー?」 
     カイリューがその手紙を受け取りますと、ラティアスは飛びっきりの笑顔で付け加えました。
    「この『えがお』といっしょに!」
     
     伝えるという力を持った手紙、それを届けてくれる郵便屋、そして――。
     
     ラティアスが今、郵便屋を勤めるに至る、第一歩がそこにありました。 



    『追伸、その二:そういえば、救助仲間で田舎からいっぱい木の実をもらったようで、こっちもたくさんおすそわけさせてもらいました。流石に一匹だけじゃ食いきれないので、近い内にラティアスにも送りますね。職場の方にも分けてあげてください。 兄より』

     どこからか、声がする。
     自分を呼んでいる声がする。
     そう感じたラティアスさんがゆっくりと目を覚ましますと、そこにはカイリュー局長がいました。
     吹雪の中、ラティアスさんを力強く抱きかかえ、懸命にカイリュー局長は羽ばたいています。
    「良かった! ようやく目を覚ましてくれた!」
    「え……カイリュー局長が、どうして、ここに、ですー?」
    「やっぱり心配だったから追ってきたんだよ! もう、こんな吹雪の中で無茶しちゃって! 今まで意識が飛んでたんだからね!?」
    「へ……そ、そう、だったんですかー?」
    「まったく! 意識がないまま飛んでいたのが奇跡的だよ、本当に!」
     そこまで言うと、カイリュー局長はギュッとラティアスを絶対離さないように更に強く抱きしめると、全身に力を込めました。直に伝わってくるカイリュー局長の体温がラティアスの冷え切った体を暖めていきます。
    「一気に、この吹雪を抜けるからね! いっくよー!!!」
     思いっきり一つ羽ばたいたかと思うと、カイリュー局長の体が一気に前進します。
     吹雪にも負けない力強い羽ばたきが空を切っていきます。
     こんなところに長時間いるわけにはいかない、一気に勝負をたたみかけるというカイリュー局長の懸命な羽ばたきのおかげで、なんとか吹雪を抜けることに成功しました。
     はぁはぁと息を切らせながら、カイリュー局長はラティアスを抱いたままユキワラシの故郷を目指していきます。
    「え、あの、カイリュー局長、私ならもう大丈夫ですよー!?」
    「駄目、さっきまで意識が飛んでいたんだから。このままユキワラシさんの故郷までそのままでいて」
     一向に解いてくれないカイリュー局長に、ラティアスの胸が高鳴っていきます。
    「べ、別の意味で意識が飛びそうですー……」

     吹雪を抜けてもう少しばかりカイリュー局長が飛んでいますと、やがて村らしきところが見えてきます。
     その村の入り口付近でカイリュー局長は降り立ち、ラティアスを降ろしますと、彼女の顔は若干赤めいていました。
    「大丈夫? 風邪でも引いちゃったかい?」
    「い、いえ大丈夫ですー」
     それから二匹がユキワラシの実家を探す為に聞き込みなどをしていますと、程なく、見つかりました。
     屋根がワラで敷き詰められている、木製の小さな家に、ユキワラシの両親は住んでいました。カイリュー局長とラティアスはあいさつした後、事情を説明し、それからユキワラシからの手紙を渡しました。ユキワラシの両親はその手紙を読んで、息子の無事に喜んだり、その手紙から少しずつ大人になっているユキワラシが伝わってきたのか、涙ぐむところもありました。そして桜の花びらの押し花には感動していました。
     手紙を読み終えた後、ユキワラシの両親に感謝されたカイリュー局長とラティアスはこの村での温泉宿を紹介してもらい、著しく体力を消耗(しょうもう)させた二匹はそこで休んでいくことにしました。

    「はぁー。気持ちいいですー。これぞ天国気分ってやつですー」
    「うん、とっても暖まるね。このまま疲れもとんでいきそうだ」
     その温泉宿にある、混浴の温泉でカイリュー局長とラティアスはくつろいでいました。露天式となっている、その温泉からは夜空の星や月がよく覗けます。
    「もう、夜になっていたんですねー。あっという間ですー」
    「うん、本当にあっという間だったね。ところでラティアスさん」
    「なんですかー?」
    「体の方は本当に大丈夫?」
    「はいですー。心配おかけさせてすいませんですー」
    「もう……吹雪の中をどうして突っ込んでいくの……僕、すごいヒヤヒヤしたんだよ?」
    「すいませんですー。どうしても届けたくてですー」
     なんとしてもユキワラシの両親に送りたかったというのもありましたし、必ず届けるとユキワラシと約束したというのもありましたが……しかし、カイリュー局長から「死んだら元も子もないでしょう」と言われたラティアスは口を閉じてしまいます。
     確かに危ないことをしたと反省するラティアスの首に、カイリュー局長の手がポンっと乗ります。
    「でもまぁ、よく頑張ったね。ラティアスさんももう充分、『カイリューの郵便屋』が板についてきたよ、本当」
    「カイリュー局長……」
     手紙を届けることの大切さや素敵なこと。
     それをラティアスに全て教えてくれたのは、他ならぬカイリュー局長でした。
     あの日から手紙も、カイリュー局長も――。
    「でも、まだまだなところもあるからね? これからもちゃんと郵便屋としてしっかり」
    「カイリュー局長」
    「ん?」
     湯煙でカイリュー局長には見えないかもしれないけど、ラティアスはカイリュー局長に向かって、頬を赤らめながら笑顔で言いました。

    「カイリュー局長、素敵なのですー!」  

     あの日、カイリュー局長がくれた手紙は今もラティアスの心を熱くさせています。




    【おまけ】

    「……それで、青三角と局長で温泉に泊まってきたと」
    「はいですー! 温泉最高ですー! もうお肌がスベスベになりましたですー! 時代はやっぱり温泉ですねー!」
    「…………」
    「あれ、ライゴちゃん?」
    「もしかして、怒ってるとか?」
    「あわわ! あ、あのライゴちゃん、温泉まんじゅうとかお土産はちゃんと――」
    「ええと、今度はフライゴンさんも一緒に――」
    「青三角、局長」
    「はいですー」
    「はい」 
    「…………覚えといて」

     この後、ラティアスとカイリュー局長はしばらく、居酒屋『大樽』でフライゴンにおごったとか、おごらなかったとか。


    【書いてみました】

     昨日のチャットにて、とある成り行きで、きとらさんからお題がドラゴンタイプだし、ミーハーラティアスで何かというリクエストを受けまして、今回、書かせていただきました。一応、ミーハーなラティアスを書いたつもりですが、いかがだったでしょうか。それと世界観はポケダンみたいな感じで書いていきましたが、ちょっと人間くさすぎましたかね……? その辺がちょっと心配したりしますが(汗)
     
     さて、今日で冬休みも終了……その前に書き切ることができて良かったです。書き始めからまさかここまで長くなるとは予想にもしなか(以下略)
     楽しんでいただけたら幸いです。

     改めて、リクエストを下さった、きとらさん、ありがとうございました。 

    ちなみに『ライゴちゃん』や『青三角』はお互いが勝手につけたニックネームです。なので地の文では通常通り『ラティアス』や『フライゴン』で書かせてもらいました。それとそれぞれの区切りとしてラティオスさんの手紙を書かせていただきましたです。

     ここまで読んで下さった皆様、ありがとうございました。

     それでは失礼しました。

    【何をしてもいいですよ】 


      [No.2178] あれ……? 投稿者:スウ   投稿日:2012/01/06(Fri) 00:08:16     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ぼーっとしてる間に年が明けていました。
    出現率低いですが、今年もよろしくお願いします。
    以下今年の抱負。

    01.去年後半は「何もできなかった+何もしなかった」ので、今年はたくさん書きます。
    02.シロナとナナミちゃんの新作を書く。
    03.ムテヒヌー氏も再び登場させる。
    04.ストーリーコンテストにも挑戦する。
    05.新しい発見のために読みにも力を入れる。
    06.ムウマージを育てる。
    07.ハリテヤマをもう一度育てる。
    08.ファクトリーヘッドのネジキくんに勝つ(49戦目)。
    09.ダッシュハードル76.2秒を更新する。
    10.スマッシュゴール16点を更新する。


      [No.2177] この自販機欲しい 投稿者:門森 輝   投稿日:2012/01/04(Wed) 18:40:05     30clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     コメントありがとうございます! 

    > 読んでてこの曲が頭の中でループして止まらなくなったのだよ
     晴れのち曇りのち雨のち雪のち晴れのち曇りのち雨n(ry

    > ゴルダックの関西弁の違和感が全くなくてどうしよう
     違和感ありませんでしたか! 自信ないので少し安心しました。

    > お正月から笑わせてもらいました。
     ありがとうございます! 

     最後にもう一度、コメントありがとうございました! 

    【無限ループって怖くね?】


      [No.2176] とりあえず 投稿者:海星   投稿日:2012/01/04(Wed) 18:38:21     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    あけましておめでとうございます!

    ☆受験ガンバルゾー
    ☆あと二ヶ月で解放→ネタ解消に向かう
    ☆文章力を底上げしたい
    ☆とりあえず書きたい

    お題でもあるドラゴンにも手を付けたいですし!


      [No.2175] 気が付いたら年が明けてた 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/01/04(Wed) 17:54:25     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ・頭の中で過発酵気味になっているネタの出力(9割自サイト用)
    ・あちこちに散らばっている小ネタのまとめ
    ・死なない

    何だかんだ今年が一番忙しい気がしますが、とりあえずの目標と言うことで


      [No.2174] 新しい年、と言うことで 投稿者:あゆみ   投稿日:2012/01/04(Wed) 11:40:23     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    少々遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。(震災で被災された東北の方々のことを考えると言っていいのかどうか・・・)
    それでは私も今年の目標とやらを書いてみたいと思います。

    まずは、去年のログ消失で本棚までもが影響を被ってしまい、他のサイトに掲載しているものが展開を先取りしてしまっている格好のマサト達の冒険ですが、ジョウト第1部をまとめ上げて、第2部、最低でもアサギシティまで進められればと思っています。
    本当は去年のポケセン東北オープンにあわせて第1部をまとめられればと思っていたのですが、私自身、とりわけ11月と12月は大変忙しく、執筆する暇がなかったもので・・・(おい
    また、これと並行して書いているスペシャルエピソードも2、3作、またエクストラエピソード(オリポケを出している方です)はしっかりと完結できればと思っています。なるべく時間を見つけて書いていこうと思いますので、どうぞ温かい目で見守ってあげてくださいませ。

    次は、やはりマサト達の冒険だけにこだわらず、参加している皆様方に負けないほどの完全オリジナル作品でも書ければと思っています。
    不定期ながら短編でも書ければと思っているのですが、なにぶん皆様方のレベルが高く、私などとうていかなわないほどの実力の持ち主ですので、なかなか書けずにいます。ですがいつかはストーリーコンテストにも出せる作品を書ければと思っています。

    それでは、本年もどうぞよろしくお願いいたします。


      [No.2173] なにこれかわいい 投稿者:紀成   投稿日:2012/01/04(Wed) 09:59:35     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    読んでてこの曲が頭の中でループして止まらなくなったのだよ http://www.youtube.com/watch?v=6TQl6wcrs5I

    ゴルダックの関西弁の違和感が全くなくてどうしよう
    お正月から笑わせてもらいました。


      [No.2172] 毎度のことですが 投稿者:紀成   投稿日:2012/01/04(Wed) 09:53:43     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ・ペンタブまともに使えるようになりたい
    ・スキャナーちゃんと使えるようになりたい
    ・そろそろ……終わらせるべきなのかしら、アレとかソレとか

    あとせっかく関西に住んでたんだから、ミツキちゃんの関西弁をきちんと書けるようにしたい。
    某探偵マンガの主人公みたいなことにならないようにしたい。

    【今年もよろしく】


      [No.2171] 連作やるぞー! 投稿者:イサリ   投稿日:2012/01/03(Tue) 22:11:53     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     実生活のことを書くと生々しい感じになるので創作関係だけでorz

     一昨年の秋くらいから構想を練っている連作短編を完成させたいです。
     当初の目標では去年の夏に完結させるはずだったのにずるずると伸びてしまいました。
     もう今年中に完成させないと一生かかっても無理な気がしてきたので、とりあえず書けた所から投稿して行こうと思います。

     やっぱり、自分を追い込むための締切って大事ですね。


     ロングポケモンストーリーズ版にて、「ナナシマ数え歌」のタイトルで投稿しようと思いますのでお時間のある時に見てやってくださいませ。
     月に一回の更新を目標に見切り発車します(

     夏までに完結できればいいな(希望的観測


     今年もどうぞよろしくお願いします。


      [No.2170] 九十九さんがだいぶ怒ってるので… 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/01/03(Tue) 11:16:55     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    今年の目標。

    ●3月にベスト発行
    ●野の火完結
    ●動画公開!

    後ろ二つに関しては、ホントは去年時点でなんとかしたかったけど、キャパが足りませんでした。
    ま^でも、4年くらい止まってたクジラ博士も完結したし、前には進んでるかなと。
    クジラ博士単行本発行によりベストをやるための準備が出来たのは大きかったです。
    ベスト発行後、再び夏コミに受かった場合は、野の火の単行本を出したいと考えてます。


    九十九さんが、

    去年の5月から待たされてる。
    8月はカスタニとかいうジジイに出番を持っていかれ、
    10月はピジョンが1400匹くらいで押し寄せた。
    11月はコンテストで、
    12月はまた短編書いてやがる、九十九ってタイトルつければいいってもんじゃねー!

    ってだいぶおかんむりなのでそろそろいい加減なんとかしてあげようと思う。
    でもその前にベスト。

    今年もよろしくお願いします。


      [No.2169] 私的に目標とか 投稿者:moss   投稿日:2012/01/02(Mon) 21:38:43     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     明けましておめでとうございます!!
    ふつつかな者ですがどうぞ今年もよろしくおねがいしますね!!
     さて、まず頑張らなくちゃいけないことは受験ですね。学業の神様で有名なところに行ってきたので、しかもおみくじで大吉引いた(人生初)んで頑張りますよー!!
     受験終わったらもう書いて書いて歌って金使ってペンとか買って描いて遊びまくりたいですねぇ。うきうき
     あ、あとうちに無線環境付いたんですよ! これで通信とかいっぱいできます!! うっしゃー
     あ、あとめちゃ太ったんで三月中に五キロほど落としたいですね。大丈夫です。病気とかにはなりません。むしろ今のままのが……。
     そんなこんなで楽しんで行きたいです!!


      [No.2168] 対戦にうつつを抜かさないために書く 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2012/01/02(Mon) 21:20:28     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    あけましておめでとうございます。

    ・連載を30話進める
    ・対戦をたくさんやる
    ・ランダムマッチフリーの勝率を7割にする
    ・勉強を頑張る
    ・読書を続ける
    ・サークルを作る

    今年はこれらの目標を持って頑張りたいと思います。皆さんどうかよろしくお願いします。


      [No.2167] 旅路 投稿者:moss   投稿日:2012/01/02(Mon) 21:01:47     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     青空のような瞳をして、真新しい黒いコートだか何だか着て、小さな肩が埋もれそうなくらい大きなリュックを背負い、じいさんーーもというんちゃら博士から俺の入ったボールをしっかりと握って受け取って。ポーカーフェイスを気取りながらもボールを持つ手が震えていたのは緊張か、興奮か。流れる漆黒の髪の下、俺は確かにうざそうなやつだと思った。お前は俺をハシバミと呼んだ。
     どうせこいつもむちゃくちゃな指示ばかりすんだろうなと思っていたら、はじめての勝負ーー町のチンピラにからまれ挑まれた(これをはじめての勝負といっていいのだろうか)とき、はじめてにしては慣れた手つきでボールを投げ、「とりあえずひっかく」と何と呑気な指示か。相手のチンピラが出したラッタには到底勝てそうになかったが、指示されたようにとりあえずひっかいたが倒れなくて。ラッタが凄いスピードで突進してきたときはあまりに無謀だと思った。だけどお前は違った。「壁まで走れ!」と今まで聞いたことの無い真剣な声。全力で駆けた俺はそこで「伏せろ!」地に伏せる。ゴシャっと音がして見たらラッタが壁に突っ込んで目を回していた。俺らの初勝利だった。
     それからというもの俺らの旅は順調に進んだ。はじめて来た町で傷ついた鳥を一匹お前は拾った。人目も気にせずに、慌てることなくポケモンセンターへ行って「あなたがやったんですか!?」と疑われていたのはさぞ笑えた。結局その鳥はお前が引き取り、ポッポという種族名にらしからぬアサギと名付けた。その翌日ジムを制覇した。
     その後も二つ三つとバッヂを集め、俺は濃いオレンジ色の前より少々ゴツい姿になり、アサギも冠羽と尾羽が色付いて大きくなって仲間も増えた。ラプラスという種族の大人しい彼女はベニと言った。
     四つ目のジムで俺らは負けた。手持ち最強の俺と相性が悪かった。最後に俺が敵のカメックスから波乗りを受けて倒れたとき、お前は真っ先に俺の元へ来て抱き締めた。耳元で「ごめん」なんてカッコつけて。でも悪くなかった。ジムリーダーに「惜しかったね」などと言われてカチンときた俺らは三日三晩修行して、俺が進化して火竜になってから再度挑戦した。圧勝だった。
     それからものんびりまったりとジム巡りの旅をした。仲間も手持ち限界まで増えジムを制覇しては強くなっていった。そしてとうとう八つのバッヂを集め、リーグへの出場権を得た俺らはそれまでの間、強敵の出るところでそれなりに危険なダンジョンで修行することにした。恐ろしく強い野生ポケモンやそこを訪れるトレーナー。時に負けたがその分勝利した。さあいよいよ本番は近い。そんなある日のことだった。
     お前は馬鹿みたいに無表情で不器用で呑気で優しい。そんなことはもう十分な位見てきた。だからーー
     その日俺らは修行していた山の中で悲鳴を聞いた。お前は「……行くよ」と勇敢に駆けつけた。そこは崖で、悲しいことに見知らぬ女性が見知らぬ女性をポケモンを使って突き落とそうとしていた。普通なら自分も危険だから人を呼ぶなり警察に通報するなりする。それなのにお前はその細い体で突き落とそうとする女性を横に突き飛ばし、落下しそうな女性の腕を引っ張った。まあ落ちたら俺が飛んで拾いに行くだけだが。そんなことも無く無事なのを見て不覚にも安堵してしまった。だから気付けなかったのだ。突き飛ばされた女がギラリと光るナイフを片手に立ち上がったのを。
     そこから先はあまり正確には覚えていない。ただナイフの女が奇声を発しながらお前の横の女性を刺そうとして、それをかばったお前が崖から落ちた。その瞬間最大限に加速してあまり長くない腕を必死に伸ばして凄い速さで落ちていくお前の手を掴もうとした。けどお前は「ごめん、ハシバミ」とだけ言ってベルトに装着された六つのボールを一斉に俺へとパスをした。反射的にそれらを受け止めてから追いかけたがそこはもう崖の下で、それなりに危険なダンジョンであったために尖った岩肌に頭をぶつけて盛大に血を流していた。青空のような瞳に光はなかった。
     あれから丁度一年が経った。俺以外のアサギやベニ達はそれぞれ野生に返った。たまに俺達が全員で作った小さな墓に俺のいないときに誰かしら来ているらしく花や木の実が耐えない。恐らく二ヶ月ほど前に俺がお前の家族に伝えたからかもしれないが。
     俺は今でもここにいる。お前の墓が荒らされたら困るし何より俺はお前のパートナーだ。俺は死ぬまでここにいる。俺は最期までお前の片割れであり続ける。


      [No.2166] ◆新年の目標とかを書くスレ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2012/01/02(Mon) 20:25:23     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    みなさん、遅ればせながらあけましておめでとうございます!
    2012年もマサラのポケモン図書館を何卒よろしくお願い致します。

    とりあえず今年の目標なんかを書いていこうというスレです。
    はりきっていこー!


      [No.2165] 晴れ のち 投稿者:門森 輝   投稿日:2012/01/02(Mon) 18:04:17     86clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     とある森に1匹のキュウコンがいました。彼の行く所はいつも晴れ渡っていました。彼自身、快晴である事はとても好きなのですが、こうも変わらないといくら何でも飽きてきてしまいます。しかし、彼にはどうする事も出来ず、半ば諦めていました。
     そんなある日の事です。彼が昼寝をしていると、毛皮に何かが当たるのを感じました。雨です。空を見上げると、ぽつんと小さな雨雲が見えました。彼は自らが雨に打たれる感覚を、唯々噛み締めていました。唯、只管――。
     水溜まりも出来ぬ内に雨雲は東へ移り、再び太陽は彼を照らします。そして彼自身気付かぬ内に、雨雲を追って歩き始めていました。
     彼が雨雲に追いついても、雨雲は消えませんでした。今までは、たとえどんなに大きい雨雲を追いかけようと、彼の周囲だけはぽっかりと穴が空き、燦々と輝く太陽が彼を照らし上げていたものですから、彼にはそれが不思議で堪りませんでした。
     暫く追い続けていると、不意に声を掛けられました。
    「何か用かい? さっきから僕に付いて来てるみたいだけど……」
     はっと前を向くと、そこには1匹のニョロトノがいました。空ばかり見上げていたので、気付かなかったのです。
    「いえ、そういう訳では……雨雲を追っていただけですので……え〜、その……雨を殆ど見た事がないものでして……」
    「雨雲をかい? そんなに雨が珍しいのかい? この森、そんなに渇いてる様には見えないけどなぁ……」
    「いえ、その、私の周りだけ晴れてると言いますか、何と言いますか、その……」
    「あぁ、なるほど。それなら僕と同じだ。僕も行く所行く所何処も雨でね。いつも雨雲が付いて来るのさ。僕は雨好きだから良いけど、周りからしたらいい迷惑だよね、ははっ。まぁ、僕も雨ばかりじゃさすがに飽きてくるんだけどね」
    「そうだったのですか……。あの……私は雨に打たれるのは今日が初めてなもので、暫く付いて行っても宜しいでしょうか?」
    「付いて来るより一緒に歩こうよ、そっちの方が楽しいじゃない?」
    「宜しいんですか?」
    「良いって良いって。晴れてるのがどんな感じか聞かせてよ」
    「ありがとうございます。お言葉に甘えてご一緒させて頂きます」
    「も〜、固いって。もっと楽に話して良いからさ」
    「ありがとうございます。ではそうしますね」
    「まだ固いって〜。ま、良いけどさ」
     そうしてキュウコンはニョロトノと歩く事になりました。それから暫く歩き続け、森を抜けようかという頃――
    「そろそろ森抜けちゃうけどどうする?」
    「えー、ではあなたが良ければもう少しご一緒させて下さい。そうですね……森から1・2km程でしたら日が暮れる前に帰れそうですし……」
    「うん、分かった。じゃあこのまま進むよ。帰りに虹が見られると良いねぇ。っと、あれ? 雨が止……痛っ!? 何だろう……? 急に視界も……。これは……砂?」
     そうです。何故か突然雨が止み、砂嵐が吹き始めたのです。砂が当たる事に因る痛みと、すぐ先も見えない様な視界の悪さで、とても心地良くは感じられませんでした。しかし、2匹にとって砂嵐は初めての体験だったので、とても新鮮に感じられました。
    「どうします? このまま進みますか?」
    「ん〜、僕は行くよ。雨が止むなんて初めてだもの! 君はどうするの? 無理してまで来なくても良いけど……」
    「行きますよ? 戻ってもいつもと何ら変わらぬ快晴でしょうし、少しばかり辛くともこちらの方が楽しいですから」
    「じゃ、行こうか。それにしても、これじゃあ虹は見られそうになくなったねぇ、はは」
     そうして2匹はまた歩き始めました。それから程無くして、2匹は何かにぶつかってしまいました。
    「ん? 何だお前等?」
     そう声がしたので見上げたところ、ぶつかったのはバンギラスであることが分かりました。
    「あ……申し訳ございません……。この砂嵐でよく見えなかったもので……」
    「あぁ、そいつは悪かったな。この砂嵐は多分俺の所為だ。俺がいるとどうも砂嵐になるみたいでな、砂の無いとこに行っても起こるもんだからどうしようも無くてよ。全く何でなんだか……。まぁそういう訳でよ、迷惑掛けて悪かったな」
    「いえいえ、迷惑だなんて……。私達は砂嵐が初めてなもので、楽しませて頂いてますよ?」
    「そうそう。僕等だって今まではずっと同じ天気だったからね、凄い新鮮なんだ。あ、彼はずっと晴れだったみたいで、僕はずっと雨だったんだ」
    「おぅ、そうだったのか。まぁでも、晴れとか雨とかは周りから喜ばれる時もあるだろうけど、砂嵐で喜ぶ奴はいねぇだろ?」
    「僕等がいるじゃない」
    「あ……おおぅ、ありがとな。でも痛いだろ? 無理しなくても良いんだが……」
    「別に無理はしてないよ? 痛いと言えば痛いけど、それを上回る新鮮さがあるからね」
    「私も同じです」
    「そ、そうか。ありがとな。喜ぶ奴なんて初めてでよ。ホントありがとな」
    「何でお礼言うのさ。楽しませてもらってるのはこっちなんだから、お礼を言うのはこっちだよ」
    「いや、言わせてくれ。ありがとう」
    「うん……こちらこそありがとう。ん、あれ? 砂嵐が収まった……のかな?」
    「その様ですね……視界も先程よりは良くなりましたし……。ですが代わりに……これは何でしょう? 氷……ですかね?」
    「みたいだな……少し寒くなってきたし。にしても痛ぇな、これ」
    「まぁね。でも、きっと君も初めてでしょ? 新鮮で良いじゃない」
    「まぁな。砂嵐の方が過ごしやすいが、何かこう……胸が躍るものがあるな」
    「ね? 僕も砂嵐の時そんな感じだったんだ。まぁ今もそうだけどね」
    「でも何ででしょう? 急に砂嵐が収まり、氷が降るなんて……」
     そんな話をしていたところ、1匹のポケモンがやって来ました。ユキノオーです。
    「のぅ、御主等はこの辺りの者かの?」
    「あ、私でしたらそこの森に住んでますけれど……」
    「おぉ、そうか。なら1つ聞きたい事があるんじゃが、この辺りにチルタリスは居るかの?」
    「チルタリス……ですか……。えーっと、見掛けた覚えは無いですね」
    「そうか……すまんかったな。儂は他を当たるが、御主等も早めにここを離れた方がいいぞ。儂の所為で霰が降っとるからの」
    「霰? これ霰って言うのか?」
    「何じゃ御主等、霰を知らんのか? まぁ説明しようにもこれが霰、としか言い様がないがの」
    「へ〜、そうなんだ。僕等はみんなずっと同じ天気だったみたいだからね、他の天気をあんまり知らないんだ。あ、こっちの彼が晴れで、こっちの彼が砂嵐、で僕が雨ね」
    「まぁ砂嵐は天気と言えるか分からねぇけどな、はは」
    「でさ、さっき儂の所為、って言ってたけど、もしかして君も?」
    「おぉ、そうじゃ。何じゃ、御主等もそうじゃったのか。儂も行く先々で霰が降っての。好きと言えば好きなんじゃが、やはり何事にも飽きは来る物でのぅ。そこでどんな天気も平凡な天気にするというチルタリスを探しておるんじゃよ」
    「そんなチルタリスいるのか? 平凡な天気って良く分からねぇが」
    「噂で聞いただけじゃからの、本当かどうかは分からんわい。まぁ、儂も暇じゃからのぅ。損をする訳でもないし、探すだけ探しておるんじゃよ」
    「そうなのか。まぁ本当だったらいつかは会えると思うぜ? っと、ん? 霰止んでねぇか?」
    「ですね……。陽も若干射し込んできた様ですし……」
    「でも晴れ……とは言い難いかなぁ……。雲も結構多いしね。まぁ曇りとも言い難いんだけど」
    「これは……近くにチルタリスが居るのか!? 何処じゃ!?」
    「そうなのか? だったら俺も探すぜ? 興味有るしな」
    「僕も!」
    「私も協力させて頂きます」
     そうして4匹はチルタリスを探し始めました。しかし中々見つかりません。
    「見つかりませんね……」
    「むぅ……まぁ、チルタリスを見つける事より霰を止ませる事が目的だったからのぅ、これはこれで良しとするかの」
    「そうか……俺は見てみたいんだがなぁ……」
    「まぁいいじゃない。いつかは会えるって君も言ってたじゃない」
    「まぁな。でもなぁ……」
     そうして見つける事を諦めかけていた頃、1匹のポケモンがやって来ました。
    「なぁなぁ」
    「ん? 何だ御主」
    「何言われても……わいは見た通りゴルダックやで?」
    「……で、何の用だ?」
    「いや〜、さっきから君等よく見掛けるなー思てな。キョロキョロ見回しとったみたいやけど、何か探してるん?」
    「えぇ、チルタリスを探しております」
    「チルタリスを? 何で?」
    「この天気じゃよ。儂がいると霰が降るはずなんじゃが、今はこの通り、降ってないじゃろ? じゃから噂で聞いた様なチルタリスが近くに居るかと思っての」
    「ふ〜ん。霰が何かも、噂がどんなんかも知らんけどな、わいんとこはいつもこんな天気やで?」
    「そうなの? ん〜じゃあ目的は達成できたのかな? チルタリスじゃないけど」
    「ふむ……まぁそういう事になるんじゃろうな……多分」
    「……なぁ、暫く付いて行っても良いか?」
    「へっ? わいにか?」
    「あぁ」
    「別にえぇけど、何で?」
    「あー、俺がいるといつも砂嵐になるんだよ。でも、お前がいればこんな天気なんだろ? だから暫く付いて行こうかと思ってな」
    「そうなんか。でも何で砂嵐が嫌なん? 君なら砂嵐の中でも無事ちゃうん?」
    「ん、まぁ確かに砂嵐の中は快適だけどよ、俺からしてもやっぱり視界は悪いんだ。星も見えやしねぇ。まぁ、何より周りに迷惑掛けたくないしな」
    「あー、分かった。わいは別に何処行くかとか決めてへんから、行きたいとこあったら言ってな」
    「俺も別にねぇけどな」
    「儂も暫く付いて行って良いかの? 理由は大体同じじゃ」
    「えぇでえぇで〜。多い方が楽しいしな。君等はどうするん?」
    「私は森へ戻ります。愛着があるもので……。気が向いたらまた来て下さると嬉しいです」
    「ん〜、僕はまぁ、適当にぶらつくよ。また会えた時はよろしくね」
    「あいよ〜、ほな、わいは行くで」
    「じゃあな、ありがとよ」
    「じゃあの、礼を言う」
     そうしてゴルダック、バンギラス、ユキノオーの3匹は去って行き、再び雨が降り始めます。
    「じゃあ僕もそろそろ行くね」
    「えぇ、ありがとうございました。宜しければまた来て下さい」
    「うん。いつになるかは分からないけど、また来るよ。じゃあね、ありがとう!」
     そうしてニョロトノも去って行きました。再び太陽がキュウコンを照らします。太陽が隠れていたのは高々3時間程ですが、彼にはとても新鮮に感じられました。
     そして彼はその空を見上げます。空には鮮やかな虹が架かっていました。

    ――――――――――――――――――――――――――――――

     あ、ありのまま今起こった事を話すぜ……1000文字を目標としていたらいつの間にか4263文字まで伸びていた……何を言ってるか(ry
     という訳でですね、1000文字どころか4000文字超えました。ヒャッホーイ! 
     何はともあれ、皆様明けましておめでとうございます。この作品は特に関係ありませんが。
     それにしても台詞が多いですね。ノベルチェッカーによると台詞と地の文の比率が76:23だとか。地の文だけだと1000文字いってません。三人称の文章書くのが苦手なのかな……。
     あと台詞の中の間投詞と三点リーダーも多いですね。読み辛くてすみません。
     誰が台詞を言っているかは口調で区別したつもりですが、分からない箇所がありましたらすみません。当初はチルタリスを出す予定でしたがこれが理由でゴルダックに変更しました。オイラ口調にしてみてもまだニョロトノと被ってたので、仮完成後に関西弁もどきに変更してたり。結構間違ってると思うので誰か関西弁分かる方添削お願いします。
     砂嵐と霰の時間が短いのはHPの問題という事にしておいて下さい。後付けですが。
     ちなみに登場順は素早さの種族値で決めました。キュウコン100>ニョロトノ70>バンギラス61>ユキノオー60ですのでこの順に。同時に出した場合は遅い方の天候になるので。
     ノーてんきのポケモンも飽きてくるかなーとも思いましたが、胃液ぶっかけたり悩みの種植え付けたりミイラになったりシンプルビームくらったりする描写が私にはまだ出来ないので。
     後書きも読み辛いですね。すみません。

    追記:2012/5/27 本文微修正

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【何してもいいのよ】
    【明日の天気は快晴のち雨のち砂嵐のち霰のち晴れでしょう】
    【関西弁の添削求む】


      [No.2164] 辰年 投稿者:イサリ   投稿日:2012/01/01(Sun) 13:41:47     102clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    辰年 (画像サイズ: 360×480 30kB)

    「謹んで新年のご挨拶を申し上げます
     本年もなにとぞよろしくお願い致します」



     ……と入れようとしたらスペースが無かったぜ!

     マサポケの皆様方にも年賀状を出したいと思い、しかし住所を知らないので掲示板に投稿しました。
     正直な話、こんなんが実家の郵便受けに入っていたらビビる(真顔)

     辰年なのにドラゴンタイプを書かないのもどうかと思い、チルタリスにするか一寸悩んだのは内緒。


     ドラゴンといえば最近流行のマルチスケイルカイリューさん。効果から"scale"は「目盛・規模」だと信じて疑ってなかったのですが、「ウロコ」の意味もあると知ってポッポ肌が。
     ダブルミーニングとはゲーフリ流石だな…… 

     こんな私ですが今年もどうぞよろしくお願いしますm(_ _)m




     一応タグをつけておきますね。
    【(年賀状を)書いてもいいのよ】
    【明けましておめでとうございます】


      [No.2163] あんにんどうふさん 投稿者:巳佑   投稿日:2012/01/01(Sun) 06:40:06     88clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ただいま午前六時頃、頂上はもうすぐだ。
     僕は白い息を吐きながら、ひたすら歩いていた。
     ジャンパーなどを着込んでいるが、それでも寒い。

     ここは初日の出が見やすいと途中の町でおばあちゃんに教えてもらった、ちょっとした山。
     おばあちゃんいわく、昔、おばあちゃんの彼氏とよく元旦に行っていたらしく、穴場で人が全くいなかったという。
     ちなみにおばあちゃんも彼氏である人も流石に年で膝を悪くしたらしく、行けないとのこと。
     年の瀬だったこともあり、僕は折角だからその穴場スポットに行くことにしたのであった。ついでに初日の出を写真に収めておばあちゃんに見せるというのも悪くない。

     そんなに高い山ではないが、寒さもあって、体に疲れが蓄積されていく。
     今はないが、山を登る前には野生のポケモンとバトルもしていたし……。
     ふと、僕が空を見上げてみると、そこで支配していた暗闇が徐々に力を失くしてきていた。まずい、もたもたしていたら、初日の出を拝めなくなる。僕は歩くスピードを速めた。

     そんなこんなでなんとか山頂に着くと、そこは野原が広がっていて、人は誰もいない。
     確かにここは穴場だ。人もいないし、ここならゆっくりと過ごせそうだ。おばあちゃんとその彼氏がここで色々なことを語りあっていたのかなぁ。
     初日の出はまだ昇ってはいないようで、ホッとした僕は温かいお茶を飲もうと、リュックから水筒を出そうとしたときだった。
     
     目の前には一匹のポケモンが。

     え、いつのまに!?
     そう驚いて目を丸くさせた僕に対し、目の前のポケモンはこちらを興味津々そうに見つめてくる。
     白い上半身に紫色に染まった下半身。
     両腕に伸びている、体毛が印象的な二足歩行のポケモン――コジョンドだ。
    『なぁ、アンタ。ここに初日の出を見に来たってクチでアルか?』
    「え」
    『ははーん。どうやら図星みたいでアルね。まぁ、そうでアルね。、ここ見晴らしがいいから、初日の出にはピッタリでアルね』
    「いや、あなたがしゃべったことに驚いているんですけど」
    『うん? しゃべってなんかいないでアルよ。今、波動を使ったテレパシーみたいなことをしているだけでアルさ』
     言われてみれば……凛とした姐御肌という言葉を思わせる言葉は耳にではなくて、脳に直接響いている感じがする。
     ちなみに本で読んだことあるけど、コジョンドはルカリオみたいに波動を扱うことができるという記事を昔読んだことがある。
     人間の言葉を使うのもそうだけど、テレパシーを使うポケモンと会うなんて、夢にも思わなかったなぁ――。
    「ぐえ!?」
    『夢じゃないでアルよ?』
    「だからって、ぐふ、ボディーブロー一発、決めないで下さいっ」
     どうしよう、このコジョンド。
     なんかエスパーぽくって怖いんですけど。
     あぁ、あれか僕から漂う波動の調子(気って言えばいいのかな)で、気持ちが分かったりするのかなぁ。
     うん、なんか面倒くさい相手に会ってしまったようだぞ、これは。
    『まぁ、とりあえず。名ぐらいは名乗っとくでアル。わたしは『あんにんどうふ』という者でアルよ。アンタは?』
    「初陽。宮村初陽(みやむらはつひ)って言います」
    『へぇ、ハツヒって言うのでアルかー。なんか女の子っぽい名前でアルな」
    「いや、僕、女の子ですし」
    『マジでアルか!』
     なんか失礼だぞ、このコジョンド。
     確かに、俗に言うボーイッシュみたいなかっこうばっかりしているから、勘違いされることもあるけどさ。
    『それで、ここには初日の出を見に来たのでアルよな?』
    「えぇ、そうですけど」
    『今年は何年か知っているでアルか?』
    「唐突ですね、辰年ですけど」
    『そこで、初日の出が上がるまで、ワタシが辰年にかけて龍を披露するでアル!』
     本当に唐突すぎるよ、あんにんどうふさん。
     でも、確かに余裕を持ってきた為か、初日の出までにはまだちょっとだけ時間がありそうだった。
     まぁ、ちょっとした暇つぶしにはいいかもしれないけど……。

    『いいでアルか? よく見ているでアルよ? 『とびはねる』からの……』
     グッと、あんにんどうふさんが膝に力を込め始めた。
     相当な力を込めているからなのか、地面がメキメキっと鳴った。
    『しょうりゅうけーん!!』
     
     確かに龍だけど、それ技名ですよ!!??

     片腕を天にまっすぐ伸ばして高く飛んでいる、あんにんどうふさんがやがて地上へ戻ってくると、その顔は無駄に爽やかだったりした。
    『どやでアル。中々、カッコイイ昇り龍だったでアルな』
     嘘を言っても波動やらなんやらでばれそうだし、ぶっちゃけてもいいよね、これ。
    「見事なスカイアッパーでしたね。というか、コジョンドってスカイアッパーなんて覚えましたっけ?」
    『違うでアル! これは『しょうりゅうけん』でアルよ! スカイアッパーと一緒にしたらいけねぇでアル!』
    「いや、本物の龍を見せるのかと思ったのですけど、まさかスカイアッパーだったとは」
    『だ・か・ら! これは『しょうりゅうけん』である!』
    「だからって、それってパクリじゃ」
    『技の素晴らしい応用の仕方って言って欲しいでアル!』
     駄目だ、あんにんどうふさんはこれと言ったら聞かないタイプだと見た。
     僕がそう決め込んでいると、あんにんどうふさんはハァハァと息を荒くさせながら、『次、行くでアル!』と宣言した。ちょっと待って、まだ何かあるの?

    『いくでアルぜ! 『とびげり』を応用させた――』
     あんにんどうふさんがそう言いながら助走して、飛びながら横回転を加えた。
     回転スピードは中々のものだったからか、ヒュッヒュッと風を切らす音が響き渡る。

    『たつまきせんぷうきゃーく!』

     確かにそれも竜だけど!!

     グルグルと鮮やかな横回転蹴りを見せた、あんにんどうふさんは着地すると、今度はふらふらと足取りを狂わせていた。
    『特別サービスで回りすぎたでアル』
    「またパクリですか」
     僕の言葉に不服だと、あんにんどうふさんがまた食ってかかる。
    『だからパクリではないでアル! 技の素晴らしい応用の仕方と言うのでアル!』
    「それと……龍って、別にどこにも龍なんて出てこないじゃないですか、技を見せたいだけですか?」
    『何を言ってるでアル。ワタシの技の中に龍を見なかったでアルか?』
    「いや、見てないですけど」
    『なるほど、アンタの実力にはまだ早すぎて、見えなかったでアルか』
     なんか、気に障るようなことばかり言っているような気がしてならないんだけど。

    『仕方ないでアルな。ならこれなら、修行が足りない奴でも見れるアルから、やってみるでアルぜ』
     そう言うと、あんにんどうふさんは両目を閉じて両手で何かを包むかのような形を取ると、深呼吸をした。 
     息をゆっくりと吐き終え、そしてうなり声をあげながら力を込めると、両手から蒼い玉が浮かび上がってくる。

    『はどうだんからの……ど・ら・ご・ん・ぼーる!!』

     あんにんどうふさんの叫び声とともに、その両手から発射されたのは龍の顔を象った蒼い玉。
     勢いがすごくて、一瞬だったけど、確かにあれは龍の顔だった。
     うん、それは確かにすごかったけど、色々ツッコミたいことがあって逆に困る。
     さて、キリ顔を決めている、あんにんどうふさんになんて言おうか。技名に関してか、それとも今までの技も含めてどこから知ったということか、でもやっぱりこれが一番だよね、うん、きっとそうだ。
    「人に向かって撃つなぁ!!」
    『え、よく見えただろうアル』  
    「それでも、何か間違いがあって、年越した先に死んだら元も子もないだろう!?」
    『ま、まぁ、落ち着くでアルよ?』
    「頬をギリギリかすったのに、落ち着いていられるかっ!」
    『おおう、魂がしょうりゅうけん、でアルか。うまいでアルぜ』
    「それ言うなら昇天! ぜっんぜんうまくないわっ!」 
     僕がそこまで言ったときだった。
     遠く後方から何やら甲高い鳴き声が聞こえた。
     なんか「モエルーワ!!!」って聞こえたような気がするんだけど。
    『アカンでアル、なんか知らんけど、どうやらレシラムに当たってしまったでようアルぜ』
    「え、レシラムさんって、あの伝説の?」
     昔話で聞いたことあるけど、本当にあのレシラムっていうポケモンだったら、会ってみたいなぁ。だって、あのレシラムだよ!? 昔話通りだったら白くてもふもふしている伝説の龍らしいんだけど、ぜひとも会ってもふもふさせていただきたい。あ、でも伝説のもふもふって安くないのかな、なんか代償で取られたりして……。
    『やる気満々な波動がここまで伝わってくるとは流石でアルな』
     ……うん、そんなこと考えている暇はないよね。 
    『ワタシより強い奴に会いに行きたいでアルが、龍を魅せることに全力を注いでしまったでアルから、また今度がいいでアルぜ』
    「はぁ……なんで、僕まで逃げるハメに」
    『というわけで、おまけにおなかすいてペコペコで力が出ないでアルから、運んで欲しいでアルぜ。龍を魅せた料金はそれじゃ足りないでアルが』
    「金取るのかよっ!!」
     僕はそうツッコミながら、ポケットから空のモンスターボールを取り出してあんにんどうふさんを入れると、その場から逃げるように走り去った。無我夢中になって、走っていく。山を下っていく。追いつかれてしまうのだろうか、そうなったらおしまいだ。色々な意味でおしまいだ。残念ながら今の僕の手持ちじゃ伝説に勝てるだけの力量はないし、もちろん僕のトレーナーとしての腕前も含めてだ。

    『逃げ切れるわけがないでありんすでしょう』
    「げっ!?」
     頭に響くはんなりとした柔らかな声。
     そして僕の体に降り注がれた大きな影が一つ。
     その影が通り過ぎたかと思うと、僕は浮いていた。
     空を飛んでいた。え、もう死んだとかなしなんだけど。
    『いきなり、止まれと言うても、それじゃあ止まれはできんせんでしょうに』
    「あ……」
    『安心してくださいでありんす。私はあくまで方向音痴な弾を飛ばした輩に用があるだけでありんすから』
     なんだろう、レシラムさんの声を聞いていると、不思議と自然に気分が落ち着いてくる。
     すると、僕はレシラムさんの腕につかまれて空を飛んでいるんだということに気がついた。暁に変わりゆく空が神秘的である。
    『さて、そろそろ降ろすでありんすですよ』
    「あ、は、はい」
     レシラムさんも俗に言うテレパシーというやつなのかな、頭に直接響き渡ってくるや。
     ゆっくりと旋回しながらレシラムは先程、あんにんどうふさんといた山の頂上に僕を運ぶと、そこで優しく降ろしてくれた。なんだろう、てっきり捕って食われるのかと思ったんだけど、違っていたみたい。目の前にいるのは白いもふもふな毛で覆われ、そして優しそうな澄み切った空色の瞳を持つ龍だった。なんか聖母ってこういう方を言うんだろうかというオーラがありそうな感じだった。
    『さて……私に変な弾をぶつけた方を出して欲しいでありんすが……』
    「えぇ、もちろん。それはよろこんで」
     僕は即快諾した。
     当たり前だよね、そうだよね、ちゃんと謝らなきゃいけないよね、これ。 
     僕はポケットからモンスターボールを一個取り出し、あんにんどうふさんを出すと、彼女はムスっとした嫌な表情を浮べていた。
    『なんで出したでアルか、裏切り者』
    「しょうがないよ。あんにんどうふさん、ここはちゃんと謝らないと」
     僕がそう促したはずなのに、どうしてか、あんにんどうふさんはなんかカンフーのようなポーズを決めていた。
     あんにんどうふさん独特の謝り方なのかな、そうなのかな。
    『まぁ、いいでアル。ここで会ったがラッキーデー、勝負するでアルぜ!』
     僕の淡い期待なんてすぐに吹っ飛んだ。
    「ちょ、あんにんどうふさん」
    『いいでありんすよ。身を持って償ってもらうことにしまうでありんすです』
    『話が早くて、助かるでアルぜ』
     もう駄目だ。
     この二匹を止めることなんて僕にはできなかったよ。
     もうこうなったら、二匹の戦いを黙って見る他ない僕をよそに、あんにんどうふさんとレシラムさんがにらみあっている。あ、もうちょっと離れて見たほうがいいよね、飛び火とかマジ怖いし。
    『いくでありんすよー!』
     先に動き出したのはレシラムさんの方だった。
     その大きな口から赤い炎が勢いよく吐き出されるが、あんにんどうふさんは身軽にそれを避けると、一気にレシラムさんとの間合いを詰める……って、ちょっと待て。あんにんどうふさん、アナタおなかペコペコで動けなかったんじゃなかったけ?
    『もらったでアルぜ! くらえ、とびはねるからの、しょーりゅーけん!!』
     レシラムさんも目を丸くするほどの速さで一気に『しょうりゅうけん』を決めるけど、流石に体格差もあるし、そんなに効かないんじゃないかな――。
     
     甲高い悲鳴を上げるレシラムさん。
     後ろによろめいたレシラムさん。
     効果は抜群のようだ……って、え!?

    『なるほど、しょうりゅうけん、だけにドラゴンタイプの技でアルのか!』
    「んなわけあるかぁー!!」
     私はそう叫んでみたが、レシラムさんは顔色を悪くさせて、あんにんどうふさんを見つめていた。これってマジな話? 僕は信じないよ?
    『よっしゃ、次はとびげりからの、たつまきせんぷうきゃくでアル!!』
    「それも竜だけに、効果抜群なんて、そんなアホな話があるわけ……」
    『うきゅうー!!』
    『ふぅ、あったでアルぜ』
    「……もう、何も言うまい」 
     その後もあんにんどうふさんは攻め続け、最後はあの『どらごんぼーる』とやらにレシラムさんは倒された。
     仰向けに力なく倒れているんだけど、僕には信じられない風景だった。
     なんていうか、これ、あんにんどうふさんの一方的な勝利だよね? そうだよね? えっと、レシラムさんが弱いの? それともあんにんどうふさんが強すぎるだけなの? もう訳が分からないよ。
    『ま、負けてしまいましたでありんすですわ……』
    『ふ、ワタシに惚れるでないでアルぜ?』
     あんにんどうふさんがすごい調子に乗っているのがなんか腑に落ちないんだけど。
     僕が心の中でそう文句を呟いていると、レシラムさんがゆっくりと起き上がり、そして、僕の方へと歩み寄ってくる。その顔には優しそうな微笑みが浮かび上がっていた。そうか、なるほど。きっとこのレシラムさんはバトルが苦手なんだよ、きっと。そうに違いない。そういうことにしとくから、あんにんどうふさん、あまり調子に乗っちゃ駄目だよ?
    『中々、見事な戦いでしたでありんすなぁ……いやはや、このようなコジョンドを持っているからには間違いない。あの、モンスターボールとかってありますかでありんす?』
    「え? ま、まぁ、ありますけど……」
     レシラムさんに言われるがままに僕がモンスターボールを取り出すと、レシラムさんはニコッと笑った。
    『そういえば、名前を訊いてなかったでありんすね。訊いてもよろしいでありんすか?』
    「えっと宮村初陽です」
    『はつひ……これからよろしくおねがいしますでありんす。英雄として、この世界を救ってくださいでありんす』  

     え、今、この龍、なんて言った?
     
     レシラムさんに問いただそうかと思ったら、先にレシラムさんが爪で器用にモンスタボールの開閉スイッチを押して、そのまま入っていっちゃった。その後、レシラムさんからは何も聞こえなくなってしまった。どうやら、レシラムさんは僕のことを、あんにんどうふさんを引き連れているスゴ腕トレーナーと勘違いしているみたいらしい。
     そして、その後のレシラムさんの言葉が全くよく分からない。
     僕が頭を悩ましていると、あんにんどうふさんがいつのまにか近寄ってきていて、僕からモンスターボールを一個を取っていった。先程、あんにんどうふさんを運ぶ為に使ったモンスターボールだ。
    『世界を救うってことは強い奴に会える可能性もあるってことでアルぜ、きっと! というわけで、これからよろしくでアルよ、ハツヒ!』
     そう明るく言うと、あんにんどうふさんは勝手にモンスターボールの中に入っていった。

     完全に顔を出した暁が僕の顔を照らしている。

     これから慌ただしくなりそうな一年の幕開けに一言述べておこうかと思う。

    「うん、どうしてこうなった」




    【書いてみました】

     明けましておめでとうございます! 
     ということで、新年最初の投稿をさせていただきました。
     新春初笑い的な感じでギャグ路線で書いてみましたがいかがだったでしょうか、面白かったなら嬉しい限りです。

     昨年は本当にお世話になりましたです。
     今年もチャットなどで『見えないみーさん』とか言われている自分ですが、よろしくお願いしますです。

     ありがとうございました。

    追伸:これから初日の出を拝みに行って来ます。   

    【何をしてもいいですよ♪】 
    【今年一年、龍のように飛躍する年でありますように】


      [No.2162] ギラティナと会った 投稿者:音色   投稿日:2011/12/31(Sat) 22:42:56     80clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     年明けまでもう少し。あー、今年1年でどんだけうちにゴースト増えた。初詣はあれだな。ゴーストホイホイがこれ以上酷くならねぇ様に祈るしかねぇな。
     もう治る気がしない。何故だ。分からん。まぁ、いいか。
     コタツでゲンガーがミカンを剥いてくれた。ありがとー。平和が染みいる。
     来年もいい年だと良いよなー。とか思いながら、だんだんぼんやり眠くなる。
     いかん、コタツで寝ると風邪をひく。そろそろ寝るわ―、初日の出は出来たら一緒に見ようぜ、と声をかけて夜が本場のゴーストたちを置いていく。
     もそもそと布団にもぐった。ごろんと寝がえりを打つと、何気なしに壁にかけてある鏡を見た。ゆらり、波打ったように見えたか、見えないかで、寝た。




     妙な夢を見た。
     水が下から上に昇ってく。宙に岩が浮いている。明るくも暗くもない。全体ぼんやりとした水色。
     えーと、どこだ、ここ。何だこの謎の世界。年の終わりに変なもの見てるな、私。
     空中をすいすい泳ごうとするがうまくいかない。夢なんだからもっと都合よくいきゃいいじゃないか。
     なんかのはずみで地面(?)に足がついた。あー、歩ける。ちょっと安心。
     てくてく素足で歩く。これって、布団の中で実際に足もばたばたしてんのか?想像して笑う。
     誰もいない空間。普段やかましいゴーストポケの一匹も夢の中に出て来ないのか。ていうか、あいつら確か夢の中に入ってこれる奴とかいなかったか?まぁ、どうでもいいか。
     しかし寂しいな、ここ。なんでもいいから生き物に会えればなーとか思ってひょいっと下を見てみれば。


     ・・なんぞあれ。
     でっかい影が過ぎていく。いやいやいや、なに、あれ。生き物、か?多分そうだよな。夢とはいえ想像力たくましいな、私。
     怪獣というか、ドラゴンもどきというか。えーと、まぁ、いいや。
     追っかけてみるか。どーせ夢だし。待てぃ!走ってみる。風にように・・・とはいかない。通常スピード。えらくリアル思考だなぁこの夢!ちょっとは都合よくいけばいいのに。


     見失った。全然ご都合主義じゃないわこの夢。つまらん、どこ行った。
     適当に座りこむ。遠目からじゃ全然姿が分からんが、あの黒いの何なんだ。どっかで見たことあるポケモンかなんかか?
     いや、見たことあるかどうかなんて知ったこっちゃないんだけども・・・。ん、なんか急に暗くなった。
     真上をあのでかいのが通って行った。・・ぶっちゃけ、ムカデっぽい。
     いきなりビビらすんじゃねーよぉ―!思わず叫んでみた。ぐるんと、頭の先あたりが反転した。
     ・・え。
     こっちきた。


     思ったより、つーか、かなり、でかい。えーと、黒いムカデもどきドラゴン(っぽい何か)。
     何か挨拶でもしたほうがいいんだろうか。
     とりあえず、明けてないけど「明けましておめでとうございます」と、言ってみた。
     ・・無反応。正月の概念があるかどうかもわからねーからなー。
     適当にしゃべくる。お前ここで一人なの?一人っつーか一匹か。寂しくね?あー私は夢とはいえ結構心細かったな―。あれだよ、同じ夢がまた見れるかどうか分かんねーけどまた会えたら会おうぜ。な。
     オール無反応。これはこれで、きつい。まぁ、一人よりはマシ、か。
     なぁ、お前なんて言う名前だよ。通訳いないから通じるかどうかわからんが聞いてみる。夢だし!
     はじめて、そのドラゴンもどきの口が開いた。

    「     」


     そこで目が覚めた。
     あり?
     なんか、えらいはっきりした夢見てなかったか?
     ・・・。
     まぁ、いいか。時計は朝の4時50分。ちょっと早いけど、初日の出を見るんだからもう起きとくか。

    「ギラティナ、だっけ?あれ」


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談   シンオウゴースト勢終了―――!
    イッシュの皆様は年明けです。というか、ここでゴーストシリーズ第1部は終りっす!


    【意地でも〆切に間にあわす】
    【来年も頑張るぜぃ!】


      [No.2161] ロトムに説教した 投稿者:音色   投稿日:2011/12/31(Sat) 22:15:02     78clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

      一年の終わりだからかどうか知らないが、雪まで降ってきたらしい。ヨノワールさんが訪ねてきて中途半端だった掃除も一区切り終えて休憩中に外の作業組が逃げ込んで来た。
     まぁ、ヌケニンなんか効果抜群だもんな。何匹か力尽きてヤミラミが担いで持って入ってきた。・・誰が御霊の塔まで運べっつった。こいつは放置プレイで良いんじゃね?
     ・・・ミカルゲさぁ、寒いんなら石の中に戻れよ。え?体感気温は変わらない?しょうがねぇなー、今だけだぞ。後で外に出すからな。
     にしてもゴ―ストポケモンだらけだから中もそこまで温くはないな。ゲンガーっているだけで気温が5℃下がるらしいし。
     屋敷の広さが仇となったな―。ストーブの陣取り合戦勃発。おい、私の場所だ。押すんじゃない。
     元気のある奴はおしくらまんじゅうでもして自分で温かくなってください。う―寒い寒い。こりゃ早いところ仕事を再開して動いた方がいいかもしれねぇな。寒さで手が動かなくなる前に。
     よーし、仕事再開すっぞー!文句いうな。ちゃっちゃか終らせたあとは蕎麦食うなりコタツにもぐるなり紅白見るなり好きにしてくれていいから。
     急に気合が入りやがったなこいつら。現金な奴。まぁ、いいか。


     数分後、物置から悲鳴が上がった。何だ!?あれか、黒いつやつやのGのつく虫でもあらわれたか。一応その場合の対応はピンポイントのナイトヘッドや鬼火を許可しているので大丈夫だと思っているんだが、まぁ、怖いものは怖いか。
     一応ゴキバスターを持ったままそっちに駆けつける、と。ゴ―スたちがビビりながらすっとんで来た。おい、おい何があった?
     扇風機が空飛んで追っかけてきたぁ?
     なんだそれ。ポルターガイスト?ははは、ふざけるのも大概にしろよ。どーせ誰かほかの奴等が悪戯でもしたんじゃねぇの?まともに考えて。
     全くもー。お前らゴーストなんだからさ、それくらいの超常現象だって起きるにきまってるだろう。むしろ、超常現象が起きる要素しかないだろ。ほら、一緒に見に行ってやるから。
     ・・・ほら、なんともないじゃないか。ただの扇風機だよ。な、これで大丈夫だろ?自分の持ち場に集中しろよー。


     ・・・今度は何だ?庭グループ。芝刈り機がすごい勢いで御霊の塔に突っ込んでぶっ壊した?ミカルゲ、お前嘘つくならもうちょっとまともな嘘をつけよ。
     そんなに家の中が良いのか。休憩時間だけって言ったろ?・・・え、ヤミラミ達も見たの?でもさ、うちの芝刈り機って錆まくってて動かないはずなんだけどさ。
     錆びてなかった?むしろオレンジ一色で派手だった?そんな趣味の悪いカラーの芝刈り機見たこともないぞ。
     って、家の中でまた騒ぎが起こってるぽいな。


     電子レンジに噛みつかれた?おまけに火をふいた、と。おいおい、掃除中に妙なものを温めたんじゃないだろうな?雑巾で拭こうとしただけ?じゃあ何でそんな事になるんだよ。
     そっちは冷蔵庫に閉じ込められかけた?妙だな、いかに超常現象が起きるからといって悪戯にしちゃああっちこっちで起こりすぎだろう。
     おまけにやってることは全部ばらばらじゃん。追っかける、破壊する、火をふく、閉じ込める。なんじゃらほい。
     今度は洗面所か!?あーもう、誰だこんなことやってる奴は!


     あー・・・、本当だ。趣味の悪いオレンジの洗濯機が跳ねてる。ぴょんぴょんしてるよ。なるほど、一連の超常現象の原因はあいつか。
     で、あれに水をぶっかけられたと。はぁぁ、仕事増やしやがって。ちょっと説教してくる。

     おいそこの洗濯機!跳ねるな!動くな!つーか掃除の邪魔じゃボケぇぇぇ!いいか、お前がやってんのはただの悪戯超常現象だ。大掃除の仕事を増やしてくれるって言うのはどういうことだ?ん?そんなに私に怒られたいか?あっちこっちで騒動起こしやがって困ってんだよ!遊んで欲しいんなら邪魔するな!洗濯機は洗濯機らしく元の場所に戻って洗濯機をやってりゃいいの!冷蔵庫も電子レンジも扇風機なんかこの季節いらねぇから!芝刈り機も全部草抜いちゃったから仕事ないから!分かったか!


     ・・・ぜーぜー、何で大晦日にこんなに労力を使わなきゃならんのだ。
     洗濯機はしょんぼりしながら元の場所にもどった。それでよし!さて、さっさと仕事終わらせるぞ―!


     大掃除が終了して紅白でも見ようか、と思ってテレビのある部屋に行った。既に同じような奴等がコタツに潜っていた。お邪魔する。
     テレビを付ける。・・・つかない。あれ?
     うにょん、と画面が歪んで妙なのが出てきた。どっかで見たオレンジ色。あぁ、おまけか、超常現象。お前も一緒に年を越そうぜ。
     けたけた笑って引っ込んだ。テレビがついた。
    「やれやれ、ひねくれもんだ」


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  ロトムのテレビフォルムはまだですか。

    【ラスト一匹!】
    【好きにしちゃえ】


      [No.2160] ユキメノコとコンテストに出た 投稿者:音色   投稿日:2011/12/31(Sat) 21:31:17     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     大掃除の最中に古新聞とか手紙類とかも整理していたら見覚えのある物を引っ張り出してしまった。自分のアルバムとかそんなんじゃなくて、ついこの間の写真だけど。
     うわーこれは、焼却処分すべきだろうなぁ。黒歴史だ、間違いなく。思い出すのも恥ずかしい。あの時の格好が悔やまれる。



     ハロウィンのシーズンあたりで菓子を寄越せとうるさいゴーストポケモン共に大量購入した怨念飴をばらまいていたらゲンガーが友達を連れてきた。
     さて、どんなポケモンやらと思ったら、なんかもじもじしてないか。その、雪女、じゃないユキメノコ。照れ屋さん?へー。飴いる?どうぞ。
     まぁいらっしゃい。ゆっくりしていって・・え、何?私に用事?はぁ、なんでしょう。
     ゲンガーが翻訳。『コンテストに一緒に出てください』すっごい可愛らしい文字で書いてあるけども、えーと。
     どゆこと?


     このユキメノコ、何かのきっかけで見たポケモンコンテストに憧れがあって、どうしても出たい!・・と思い詰めているらしい。
     いや、それなら普通にトレーナーを見つけて出れば良いんじゃないか、とも思ったけどそれってある種賭けだよなぁ。いや、案外コンテスト会場近くでトレーナーの近くに行けば・・まぁ、部外者があれこれ言える立場でもないか。
     で、私と。まぁ、確かにゴーストホイホイ体質のおかげかこうやって通訳できるポケモンもいるし、事情も分かるもんなぁ。
     しかし、その、私は自分のポケモンを持ったこともないし、バトルは愚かコンテストなんてやったことないぞ?いいの?
     ・・・『私も初めてだからお互い頑張ります。よろしくお願いします!』・・ですか、すっごい真っ直ぐな眼差してこっち見てるよ。あー弱ったな。私は目立つの嫌だし・・。
     ほら、コンテストってテレビ放送なんだよね・・。あれだよ、後からテレビ見たよーって注目とかされるのが嫌なんだよ。
     悪いけど他を当たって・・ほしいんだけど・・・なんでゲンガ―までそんな目で見るんだよ。嫌なんだからしょうがないじゃないか。こればっかりは曲げないよ。
     『一生のお願いです!一度だけ、一度でいいんです!お願いします!』・・の横に『こっちからもお願い。なんならここにいるゴーストポケ達から署名を集めたっていい』と脅迫まがいのゲンガ―の意見。
     そんな目で見るな。私が悪役見たいじゃないか。わかった、分かったってば!一回だけだよ!


     で、とりあえず館の本棚をあさると『必勝!コンテスト攻略』なる古臭い本が見つかった。今から本屋に買いに行くのもあれだし、とりあえずこれを参考にするか。
     えーと、まずはどんな技が使えるのか聞いてみる。ゲンガーが書いた紙には。
    『吹雪 怪しい風 ギガインパクト 氷の飛礫』
     あれ、なんか明らかに変なの混ざってないですか。ギガインパクトって・・野生で覚えるの?
     ・・・そんなあからさまにもじもじされても困るんですが。まぁ。いいや。深く追求しない方がよさそうだ。
     本によると『第一審査をまずクリア―するために!コンボ技を決めろ!』・・あー、コンテストって一次と二次があるのか。テレビに長いこと映りたくないから一次落ちを目指せばいいわけね。
     と、ゆーわけでコンボは決めない方向で。・・・そんな目をするなよ―。第一コンボって何。わからん。
     コンボの前にそれぞれがどんな感じの技なのか披露してもらった。正直な感想、すげぇ寒かった。あと迫力があった。そんくらい。
     プロってどうやってコンボとやらを決めてるんだ・・。本にはお手本らしきコンボ、があったが残念なことにユキメノコに応用できそうなもんは見当たらなかった。つーか、よく分からんかった。
     本人にこうしたいとかそういうのがあるのかと聞いてみる。
    『こ、個人的になんですが!最初に怪しい風で氷の飛礫を巻き込んだ後吹雪でこうぱあっと持って上がってギガインパクトでフィニッシュが良いです!』
     じゃあ、考えるの面倒だからそれでいいや。ていうか、本人ちゃんとイメージできてんじゃん。私はお飾りだもんなぁ。うん、安心。本は燃えるゴミに出そう。
     

     コンテスト当日。初参加なんですが、と受付で行ったらカードを作ってくれた。エントリーに間にあってとりあえずホッとする。
     ・・で、この衣装の数は何だ。テレビに出てくるコーディネーターって派手だよな―衣装自前かなーと思っていたらここで借りられる・・もとい、強制的に着せられるらしい。
     あんな派手なドレス着たくない。が、後ろでスタッフさんが物凄い笑顔で待ち構えている。怖い、これは、ちょっと、すごい怖い。逃げたい。ユキメノコまでビビっている。
     結局、着せられたのはドレスではなく軍服みたいな・・えーと、まぁよく分からん。感想を聞いてみる。『超イケメン!』byゲンガー。『すごく格好良いです』byユキメノコ。やっぱりそーゆー方面でしか褒められんのか、私の容姿は。
     顔を出したくない、といって見るとマスクを手渡された。・・・これってあれだよな、なんかの有名なオペラに出てくる奴じゃねぇ?まぁ、顔バレするよりマシだし。どうせ一次だけ出てすぐ帰るし。
     番号が呼ばれた。それじゃあ行きますか!


     我ながらこのいで立ちにファントムマスクは痛い。痛すぎる。破り捨てようかと思ったけども、それもまたあれだよなぁ。写真をしまう。
     結局の所、演技が終ったあとに結果を確認せずにさっさと荷物をまとめて帰ったのちに、新聞に『仮面のコーディネーター失踪 〜仮面の怪人の噂〜』という謎の見出しで記事を飾ってしまうのを見つけてしまい大騒動になるんだけども、また別の思い出。
    「さて、仕事に戻るか」


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談   コンテストの話はアニメ寄りです。ゲームの奴は正直難しいと思う。

    【後二体!】
    【好きにしちまえ】


      [No.2159] ヨノワールが訪ねてきた 投稿者:音色   投稿日:2011/12/31(Sat) 18:52:21     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     遅いクリスマスはゲンガーお手製のクリスマスケーキをゴーストポケどもが食い散らかすという大惨事。どうやら私が帰ってくる前に片づけをすまそうとした形跡らしきものがあった。ようするにわちゃわちゃ。
     仕事納めでようやくゆっくりできると思った矢先にこれか。お前ら居候の分際で何やってくれてんだこの野郎ども。
     ホウエンから帰った時以上にひでぇぞ、こりゃ。
     おいそこ、逃げるな。大掃除すっぞ。


     年末の大掃除、というかただのクリスマスパーティの後片付けというか。要するに兼ねればいいんだ、両方。
     手のある奴はハタキ持って手のない奴も雑巾絞って働く!ゴーストタイプだろう。それくらいの超常現象は起こせ。
     ヌケニン達は草刈りよろしく。ヤミラミは草取り。根っこまで処理しないと意味ないんだよ。フワンテ持ってくんな遊ぶんじゃねぇ。御霊の塔はちょっとばかし崩しても問題ないから。
     ・・・なんだよミカルゲ。おんみょんうるさいぞ。文句いうな、お前のニックネームを『ぼんのう』にしてやるぞ。・・よし、大人しくなった。
     サボる度胸がある奴は毎度お馴染み掃除機→高速脱水コースだ。さすがに身に染みてきてるな。みんな真面目でよろしい。
     何でこんな時にチャイムなんか鳴るんだ。押し売りか?セールスか?こっちは大掃除で忙しいっつーの。誰か驚かして追い返して来い。・・手が離せないっぽいな。しゃあない、私が行く。
    「すいません、今ちょっと立て込んでまして」
     玄関を開けたら、ヨノワールがいた。

    『大掃除中にお邪魔するとはとんだ失礼をしまして・・・』
     さらさらっと当たり前のように紙に書かれた謝罪の言葉(ゲンガー通訳)にどうすりゃいいの分からないままにとりあえず食堂に通した。
     これ御土産です、とばかりに手渡されたのは。
    「・・・いかりまんじゅう・・」
     出張土産です、とのメモ付き。いや、まぁ、ご苦労様です。何の出張か分かんないけど。
     なんか適当に御茶受け、というと『どうぞお構いなく』(っぽいジェスチャー)。・・なんだこのよくできた人、じゃないポケは。
     えーと、とりあえずどちらさんですか。うちの居候のどれかの親戚かなんかでしょーか。にしても、あのでかい手じゃ来客用の湯のみが小さすぎるな。つまむようにして飲んでるよ・・。
     紙来た。相変わらずゲンガ―の字が達筆過ぎる。『親戚、というより上司に当たります』。上司・・?え、ちょ、お前らどういう事。
     ここから要するにゴーストタイプって何やってんのかを説明するヨノワールさん(と、それを全部文章にするゲンガ―)。なんか、すごい必死。
     でまぁ、すごいざっくり言うと。ゴーストタイプの仕事は2つで、死んだ生物の魂を霊界に持っていくのと、もう1つが企業秘密だそうで。気になるけど。
    『一匹一匹にノルマがあるもんですから、あれこれ裏工作してノルマを達成しようとする輩が多くて困るんですよ』
     ・・それはあれか?やたらとゴーストポケモンの図鑑説明が怖いことに対する弁解か何かか?フォローになってねぇよ。そっちの都合とか余計こと怖いわ!
     まー私が知ってるゴーストポケモンっつーのは掃除機に吸い込まれるガス玉、本職のくせに超ビビり、パティシエ、ポニテ、脱殻、職人、黒坊主、恨み人形、案内人、アフターケア、風船、気球、コーディネーター、後ぼんのう。・・おい、図鑑説明どこ行った。
     で、この洋館はそーゆー仕事をさぼる奴のたまり場・・・おい。お前ら。今一斉に私から目をそらしたな。この二ートポケモン共ぉぉぉ!居候してる上に本来の仕事をしていないってど―ゆーことだっ!
     ダメだ、働かないポケモンだらけかここは。だから上司がわざわざ来たんじゃねーの。精々怒られろよお前ら。
     あ、でもすいません。うち何匹かはうちの仕事で使ってます。と、言ってみるとそこも調査済みだとか何とか。マジか。良いのか。分からん。
     結局のところご用件は。
    『働くように発破かけに来たのと、ご挨拶に』
     年内のうちに来たかったらしい。もう新年のあいさつを兼ねてくれば良かったんじゃないか、と突っ込むと『それもそうですね』。要領が悪いのか機転が利かなかったのか。まあいいか。



     年の瀬にお邪魔しました、とここまで丁寧にされちゃこっちの腰も連れられて低くなる。つくづくよくできたポケである。
     いえいえお構いなく。またいつでもどうぞ。
     顔をあげたらもういなかった。

     
     と、思ったら帰ってきた。え、お願いがある?うちのマッサージを受けたい。予約取ってなら良いんじゃないんですか?あ、嬉しそうに帰っていった。
    「ポケモンの世界も大変だな、こりゃ」


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  ヨノワールって働く仕事のできる上司なイメージです。

    【今日一日で行けるのか】
    【お好きにどうぞ】


      [No.2158] 手紙 投稿者:きとら   投稿日:2011/12/30(Fri) 16:53:06     66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     僕はもう行かなければならない。ここではない、どこか遠くに。

     僕はまず家に寄った。きっとあの子はここに立ち寄ってくれるはずだ。
     あの子には本当に悪いことをした。僕に好意を持ってくれたこと、素直に嬉しいと思っているよ。
     だから、最後のダンバルは君に託そう。まだまだ輝く未来を待つ君のパートナーとして欲しい。
     机に向かう隣にはエアームドが力無く鳴く。ごめんね、最後まで無理させて。僕にもう少し力があれば、こんな結果にはならなかっただろう。
     全ての真実を手紙にしても、君にはちょっと信じられないことばかりだから、僕は誰にも告げずに旅立つ。
     ごめんね。本当は君のことをもっと誉めたかった。君の成長を見届けたかった。君の好意を受け止めたかった。これじゃあ僕が君から逃げたみたい。
     神様はいつも意地悪だ。願い事など叶えてくれない。けど一つだけは叶えてくれたようだ。
     手紙を書き終えた。ペンをおいて、ダンバルのボールを置いた。きっと見てくれると信じている。

     扉の開く音がする。思ったよりも早かったね。
    「ダイゴさん?」
     いつもと違うから戸惑っているのかな。机の上にある手紙を見つけてた。何を考えてるかなんて表情で解るよ。
    「ダイゴさんに会いたいよ」
     ごめんね。君の願いを聞くことはもうできないよ。僕の願いが叶ったのだから。だから僕は遠くへと行かなければならない。君にこんな無様な姿を見られたくはないんだ。
     ポケモンたちが行こうと言う。君が開けた窓から潮風が入り込む。君の髪が潮風に揺れた。僕も君の髪に触れて旅立つ。
    「さようなら、ハルカちゃん」
     君が教えてくれたのは、人の暖かみ。こんな小さな子に教わるとは思わなかった。
     君が立派なトレーナーになって、僕を打ち負かした時は、なんて早く願いが叶ったのだろうと思った。僕はとても嬉しかった。

    『ルネシティで、若い男性のものと見られる遺体が発見されました。なお、死後かなり経過しており、警察では身元の確認を急いでいます』

    「ざまぁねぇな」
    「この先には行かせない…君たちのような無法者に、未来を摘み取る権利などない」
    「口だけは達者だな。望み通りしてやるよ!」



     もし、生まれ変わりがあるとしたら
     君のポケモンになって、ずっと一緒にいてあげる
     それで悪い奴らに絶対に負けないくらい強く、君を守ってあげるからね

    ーーーーーーーーーーーーー
    あまりの欝さに自分が暗くなった。
    【何してもいいのよ】


      [No.2157] ミカルゲを撥ねた 投稿者:音色   投稿日:2011/12/28(Wed) 23:48:11     81clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     朝っぱらからサンタコスムウマージに着せ替え人形にされ、それでも仕事をこなすため、仕事場について作業着に着替える。
     冬だからと支給された上着もチョロネコ印の紫色。紫ってゴーストカラーじゃん。どこまでこいつらとの縁が憑きまとうのやら。
     自転車に荷物を積み、ヨマワルとルートをチェック。ゴースは木枯らしに吹かれて飛んでいきかけるのをヌケニンが見送っていた。おい!
     いざ出発する前になるとどうにか戻ってきたゴ―スはするりとポケットに避難。やれやれ。


     209番道路はそこそこ広いのに中州が多くてついでに橋も多い。最短ルートを見つけるのにいつも苦労する。
     面倒な時は河原を突っ切る。バランスは悪いが時間には変えられないっつーの。
     先を飛ぶヌケニンにヨマワル。お前らは空を飛べていいよなぁちくしょう!地べたを事情なんか知らないで気楽なこった。自転車の不都合を叫んでみる。意味無し。
     ポケットの中でカイロと一緒にぬくぬくしているゴ―スの野郎はこのあと私の八つ当たりを受けることなど知る由もなかった。


     12月の終わりといえばあっという間に暗くなる。仕事は終わって帰りのついでに買い物すればありゃ、星が綺麗。とかいってる場合じゃない。
     吐く息は白い、要するに寒い。ヌケニンは呼吸してないからそうだが、ゴ―スもヨマワルも鬼火で暖をとって・・って、それ温いの?青白いのに?あぁ、化学的に考えりゃ青い方が温度は高いのか・・・。
     自転車の明かりじゃ心細いが、正直鬼火も頼りにならない。ヌケニンのフラッシュはこ―ゆー時こそ打ってつけ、と思ったのだがあれって一瞬じゃん。ってことで却下。
     早く帰りて―とか思いながら209番道路に差し掛かったら、どうも妙な音がする。みょーんみょーんと機械だか鳴き声だか微妙な感じの。あれだ、除夜の鐘の予行演習か?なわけないか。
     何だこれ。怨霊かなんかでも出るってか?ゴーストがいたらマジビビりコースだが、生憎ゴーストホイホイ体質のこっちには本物が3匹ばかし憑いているわけだから全然怖くない。というか、怖いの域を超えてる。
     お仲間?ゴ―スは知らんといい、ヨマワルは首を振り、ヌケニンは無反応。そうか、同種族じゃねぇか。
     じゃあいいや。無視。これ以上うちのゴースト人口増やすわけにもいかんし。かかわり合いになるまい。
     そう思って再度気合を入れてこぎ出した。近づく謎のおんみょーんもそのうち通り過ぎるだろうと思いつつそこそこ速度も出てきて良い感じになってきた瞬間。
     ぎゅわん、と音がしてなんかはねた。
     え、なに、小型のポケモンでも撥ねちまった?慌てて止まる。おい、鬼火持ってこい。
     見づらい青白い炎に照らされて見つけてそれは。
     ・・・ただの石。
     何だ、石か。その割にはいやに鈍い音がしたな。おんみょーんも急に止まったし。ゴ―スがせっつく。何。え、こいつポケモン?まじで。
     いや、ポケモンにしちゃ小さくねぇか。石だけ。・・・ちょっと割れてるけど。撥ねた衝撃にヒビでも入ったか。
     拾ってみると何か声っぽいのが聞こえる。よくよく聞くとおんみょーん・・・ってこいつか!さっきからうるさかったのは!
     うるさい腹いせに買い物袋からサランラップを出す。うにょうにょ紫色の顔っぽいのが出てきたがオール無視。ラップでぐるぐる巻きにしてやるこの野郎。
     3秒後、紫のうにょうにょは出てこれなくなった。こいつ、ゴーストっぽいくせに塩化ビニルはすり抜けられんのか。ゴ―ス爆笑。ヌケニン無表情。ヨマワルだけ気の毒そうに見ていた。
     よし、気が済んだ。こいつこのまま放置・・ヨマワル嫌そうだね。しょうがないなー、ヌケニン、シザークロス。
     出てきたうにょうにょがポケモン語で抗議するが無視。いや、ひたすらおんみょーんを連呼されても通訳通さなかったらわかんねぇし。
     とりあえず落ち着いたっぽいから、ゴ―ス通訳よろしく。


     この石、じゃないこのポケモン、ミカルゲとかいうポケモンらしい。予想通りゴーストタイプ。私のゴーストホイホイ体質超万能。嬉しくねー。
     で、こいつ普段はこの道路のはじっこにある御霊の塔とやらにはめ込まれているらしいが、近所の悪ガキやら野生のポケモンがぶつかって崩れて道のまん中にほおりだされて恨み事を吐いていたらしい。それがあのおんみょーんか。
     いや、悪ガキはともかく野生のポケモンに崩されるってどんだけもろいんだそれ。とりあえず直してくれと懇願してくるので夜中の騒音被害を防ぐために一応現場に向かって見る。
     ・・・これか、三途の河のほとりで積み掛けを崩された出来そこないの石の塔みたいなの。しょうがねぇな。直す、はめる。はいおしまい。
     まぁ次は崩されないように頑張れ、適当に声をかけて家に帰った。その日は。


     しばらくしてまた通りかかった時にヨマワルが気にするようなそぶりを見せたので様子を見に行った。
     案の定ぶち壊れていた。あー、まぁ、うん、ミカルゲはどこだ。
     その辺の落ちていた。・・・紫のうにょうにょが無いから寝てんのか?
     川につけてみる。冷たさで今年最大のおんみょ―んを聞いた。うるせぇ。
     そしてまた壊されているのを見てショックを受けていた。
     御霊の塔の場所が悪いんじゃないかって気がする。引っ越しを進めてみた。



     数時間後、うちの庭に御霊の塔ができていた。
    「いや、そーゆーことじゃなくて」


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談   とゆーわけでミカルゲの出現場所はもりのようかんです。

    【年末年始で間に合うのか】
    【何してもいいのよ】


      [No.2156] 彼と彼と彼と彼と彼と彼の、疑問。 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/12/28(Wed) 19:51:57     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     1:大人

    「ねえ」
    「ねえ」
    「ねえ」
    「ねえ」
    「ねえ」
    「お母さん」
     六つの声がこだまする。大きな椰子の周りを跳ねるそれらは、口々に質問を投げかける。
    「僕達はさ」
    「僕達ってさ」
    「僕らはさ」
    「僕達ってね」
    「僕らはね」
    「大きくなったらどうなっちゃうの?」
     ぴたりと止まってじいっと見上げる。六対の視線にさらされた大木は、質問の意味を正確に読み取った。
    「大丈夫、表に出てる顔は三つだけだけど、残りの三つもちゃあんといるよ。体は一つ、でも心は六つで一つ。それは大きくなっても変わらないよ」
     それを聞いて安心したのか、六つの玉はきゃあきゃあと転がり跳ねる。
    「そっかぁ」
    「そうなんだあ」
    「そうなんだね」
    「それはいいねぇ」
    「それでいいねえ」
    「ああ良かった。僕達は皆揃って“僕”のままなんだね」
     満足そうに揺れる六つの玉達。ゆさゆさ歩く椰子の後ろで、今日も仲良く飛び跳ねている。


     
     2:ひび割れ

    「ねえ」
    「ねえ」
    「ねえ」
    「ねえ」
    「ねえ」
    「お母さん」
     六つの声が呼びかける。大きな椰子を囲む彼らは、慌てたように転がり回る。
    「僕達の体のね」
    「僕らの体にね」
    「僕達の顔もね」
    「僕らの顔もだよ」
    「僕らの顔と体にね」
    「少しずつひびが入ってるんだ。どうしよう、僕達割れちゃうの?」
     心配そうにじいっと見上げる。不安な眼差しを受けた大椰子は、からから笑ってこう言った。
    「気にしなさんな、坊や達。それは成長の証さ、ひびが増えるほど進化の時が近づいてるんだよ。『割れる』のはおめでたい事さね」
     それを聞いて嬉しくなったか、六つの玉は喜び勇んで跳ね回る。
    「良かったー」
    「良かったよー」
    「良かったよねぇ」
    「良かったねえ」
    「良かったなー」
    「ああ、ほっとした。僕達、ひびが入るのが楽しみになってきたよ」
     幸せそうに揺れる六つの玉達。のしのし歩く椰子の後ろで、今日も元気に飛び跳ねている。



     3:金の……

    「ねえ」
    「ねえ」
    「ねえ」
    「ねえ」
    「ねえ」
    「お母さん」
     六つの声が母を呼ぶ。大きな椰子はそれに答えて、頭を揺らして屈みこむ。三つの顔が一斉に、どうしたんだい、と問いかける。
    「あのね、さっきね」
    「うん、ついさっき」
    「今よりちょっとだけ前にね」
    「そう、ちょっと前ね」
    「あのね、えっとね」
    「出会ったニンゲンに『君達が色違いだったら、おじさんの“きんのたま”にしてあげるんだけどねぇ』って言われたんだけど、どういう意味なの?」
     無垢な瞳でじいっと見つめる。答えに窮した大木は、しどろもどろでこう言った。
    「まあ、あれだよ、ほら……大人になったら分かるよ、きっと。お前達にはあんまり関係ない話なんだけどねえ……」
     それを聞いてがっかりしたのか、六つの玉は不満そうに転がり跳ねる。
    「つまんないの」
    「つまらないね」
    「つまらないよねぇ」
    「つまらないよぅ」
    「つまんないよね」
    「なんだ、僕達には関係ないのかぁ。でも大人になったら分かるんだね。楽しみだなあ」
     期待に揺れる六つの玉達。もそもそ歩く椰子の後ろで、今日も無邪気に飛び跳ねている。






    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

     犯行の動機;「書いてみた」が上手く進まずに苛立ち、ついカッとなって書いた。後悔はしている。……ほんのちょっぴりだけ(

     初代赤時代で遭遇したとき、グラフィックに震え上がったのがタマタマとナッシーでした。ゲンガーといい彼らといい、どうも体にいきなり顔が付いているタイプが苦手だった模様。
     1:ドードーやディグダみたいに増えるならともかく、進化後に減るってどういうこと? と思って書いた小話でした。きっと中の人ならぬ中の玉になるにちがいない、と。
     2:ひび割れの件は図鑑説明より。しかし一個、中身が見えるほど割れちゃってるのはホントに大丈夫なのか……。
     3:例のおじさんの手持ちには、きっと色違いタマタマがいるに違いないという妙な確信がありまして(以下略)
     これは一体誰得? もちろん俺得。と妙な満足をしたところで作業に戻ることにします。読了いただきありがとうございました!

    【何をしてもいいのよ】


      [No.2155] これはありそうだ 投稿者:No.017   投稿日:2011/12/28(Wed) 08:16:24     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    両方読んだけどこっちのほうが好きだわw
    まぁ雑誌に載せるなら、雑誌掲載になってたほうであるということには同意する(笑


      [No.2154] 黄昏堂のよくある一日 投稿者:紀成   投稿日:2011/12/27(Tue) 20:56:22     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ※多少残酷・グロテスクな表現が含まれています。苦手な方はバックプリーズ















    「お前の願いを言え。どんな願いも叶えてやる。お前が払う代償は一つだけ――」
    絶世の美女、と言ってもオーバーな気がしなかった。長くて美しいプラチナ色の髪。時折フードの隙間から見え隠れする瞳は、果てしなく深い灰色。まるで吸い込まれていくようだ。
    裾の長いドレスを着、長い脚を器用に組んで椅子に座っている。写真の一枚でも撮りたいくらいだ。
    「どうした?あまりにも美しいから、見惚れてしまったか?……心配しなくても、私は逃げやしないさ」
    薄いルージュを引いた唇から、声が漏れる。隣に立っている狐が、苦い顔をした。目の前に座った女は、ハッと我に帰って目の前の美女から目を逸らす。
    人を魅了する何か。『力』と言ってもいい。時代に名を残してきた人物は皆、それに魅入られていたのかもしれない。何に使うかは各々の勝手だが、独裁者として名を馳せた者も多いようだ。
    そしておそらくは、この美女も――


    彼女……名前は明かさないでおこう。一ヶ月前まで一児の母親であった。夫はいない。所謂シングルマザーである。子供が出来てからその男に逃げられ、一人で育ててきた。
    だが一ヶ月前に子供が失踪した。まだ六歳の子供が。警察に通報したが、見つからなかった。最悪の事例―― 殺されたかもしれないということも考えて捜査してくれたが、未だに遺体の類も見つかっていない。もしそれが本当にあったとしたら、一刻も早く見つけて欲しい。
    女は疲れきった顔をしていた。目の下の肉が落ち、頬はたるんでいる。まだ若いようだが、表情のせいで十歳は年を取っているように見える。流した涙のせいで頬が赤い。
    髪は染めているらしい。明るい茶髪。染める薬のせいで少々毛先が痛んでいる――というのが、美女の隣で立っている狐の観察した結果だった。
    彼女は悩み、苦しみ、喘ぎ、そしてここに導かれた。
    隣の女…… マダム・トワイライトが主人をつとめる店、『黄昏堂』に。


    黄昏堂。知る人ぞ知る店。主に曰くつきの商品を扱い、表沙汰に出来ないような物ばかりが並ぶ。ただし普通の『非合法』『闇オークション』『裏ショップ』と呼ばれている店とは、少々……かなり違う。それを証明できる理由は主に二つあり、

    一つは、たとえ『非合法』だとしても、『闇オークション』だとしても、『裏ショップ』だとしても決してそれらに扱うことの出来ない品が商品になっているということ。

    二つは、もしもそれらの店がその品を扱ってしまった場合、下手すれば命に関わる大事になるということ。

    これら二つが主な理由だが―― 論外として外されている理由が、もう一つ。
    三つ目。

    本当に必要としている者の前にしか、その店は姿を表さない。
    そしてその表す時間帯は、必ず黄昏時…… 夕日が沈みかける時間だということ、だ。

    「つまり、アンタはその息子が生きているのか死んでいるのかを知りたいわけだ」
    『くたばっている』と言わなかったあたり、マダムも少しは人間の心理という物を理解してきたように感じる。店を出した頃は全く相手の心情を理解せずにとんでもないことを口にし、服の襟を掴まれたこともあった。まあそのようなややこしい物を持たないマダムにとっては、人間の心情など厄介なことこの上ないのだろうが。
    「ええ…… なんとかなりませんか」
    消え入るような声だ。ずっと下を向いたままで、マダムの顔を見ようとしない。それに…… 気のせいだろうか。妙な感じがする。言葉では言い表せない、変な何か。
    「解決してやってもいいが、その前に私からも一つだけ」
    「え?」
    いつものようにパズルを出すのかと思ったが、どうやら違うらしい。煙を吐き出し、口元を引き締める。
    「アンタの旦那がいなくなったのは、何年前だ」
    突拍子もない質問だった。女も目を丸くしている。マダムが白けた顔をした。
    「質問の内容が分からなかったか。アンタの」
    「どうしてそんなことを聞くの!?……アイツのことなんて、関係ないじゃない」
    「答えなければ、息子の体の行方は永遠に分からないままだぞ」
    こちらは切り札を握っているんだ、というような口調。その通りなのだが。女はなにやらブツブツ言っていたが、諦めたように口を開いた。
    「五年前よ。急にいなくなったの。あの子が出来たと知らせた後だったから、逃げたのね」
    「……」
    「これでいいでしょ。あの子は今何処にいるの?」
    マダムが隣の狐に目配せした。狐が一回転する。あっという間にそれは台付きの電話になった。さきほどの狐と同じ色合いの電話。かなり古いタイプだ。昭和の庶民が使っていたような黒電話を思い出させる。
    「これは」
    「黄昏堂の必需品。心と心を繋ぐ電話だ。会いたい人間を強く思えば、その人間にかかる。
    ……さあ、かけてみろ」
    マダムが言い終わる前に、女は受話器を手に取った。震える手で耳に持っていき、息子の顔を思い浮かべる。コール音が耳の奥で鳴り響く。

    コールコール キルキルキル
    コールコール キルキルキル
    コールコール キルキルキル

    ガチャ

    『……はい』
    酷いノイズの中、聞きなれた幼い声が女の耳に届いた。女が歓喜の声を上げた。
    「ああ!良かった、無事だったのね。今何処にいるの?すぐ迎えに行くから、そこで待ってて」

    『これないよ』

    落ち着いた声が、耳を貫いた。

    『おかあさんは、これない。ぼくのいるところには』
    「何を言っているの?だってこうして電話できているじゃない」
    『ううん。これはこころをつなぐだけ。それはあいてのからだがなくても、はなすことができる』
    「え……」

    『ぼくはもう、いないんだよ』

    マダムの吐き出す煙が、女の顔の周りに纏わりつく。電話は既に狐に戻っている。女は顔に煙がかかっても何も言わない。この世の者とは思えない表情で拳を握り締めている。
    「騙した、のね」
    「私は『心と心を繋ぐ』と言っただけで、『死者とは繋がらない』とは言っていない。良かったじゃないか。愛する息子の居場所が分かって」
    「良くないわよ!死んだことは認めるけども、遺体の場所までは分からなかったじゃない!」
    鬼の形相だ、と狐は思った。これは夢に出るだろうな、とも思った。だがマダムは表情一つ変えない。まるで相手がそこに存在していないかのように。
    「教えなさい。あの子の遺体は何処なの?これは代償なしでも教えられるはずでしょ!」
    「……」
    「教えなさい!」

    マダムがフードを外した。女が後ずさる。女の手を取り、相手の腹に当てた。

    「ここ、だろう?」



    「精神疾患・記憶障害、カニバリズム……
    あの女はそれだったのか?」
    「簡単に言えば、そうなるな」
    マダムが紅茶を啜った。オレンジ・ペコ。味より香りを楽しむためのお茶だ。しかし、と狐――ゾロアークはげんなりする。この場でわざわざ飲むこともないだろうに。
    先ほどマダムに掴みかかった女は、既にその報いを受けていた。その証拠に、高級そうな絨毯に点々と赤い染みが付着している。
    「とてつもないストレスが原因だろう。夫が出て行ったというのも」
    「喰ったのか」
    「おそらくは」
    マダムが左手を出した。その行動の意味が分からないゾロアークは一瞬首を傾げる。
    「時の糸と、鋼の針を」
    「……もう解れてきたのか。最後にやってから三十年しか経っていないぞ」
    「そろそろ限界に近いらしいな。この身体も」

    そう言って、マダムは何事もなかったかのように紅茶を啜った。


      [No.2153] 大脱走 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/12/26(Mon) 20:29:46     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     うちには、タマゴからの付き合いのヘルガーがいる。元々が猟師から貰ってきたから、狩りの本能だけはばっちりあるヘルガー。と思えばおすわりも覚えられないバカ犬であったり、庭に植えていたイチゴをかじっては捨てかじっては捨てた学習能力のないヘルガーである。かと思えば、人の顔は覚えていて、餌をくれた人はばっちり覚えているのだから現金なやつだ。

     ヘルガーというのは食べ物を消化する過程の毒を燃やして炎を出すから、何日も洗わないと臭い。犬臭いなんてもんじゃない。冬は1ヶ月あらわなくてもいいんけど、夏はもう一週間洗わないと困る。
     遠くに入道雲が見える。日差しが強くなって、ヘルガーも庭に穴をほってそこで過ごしてる。
    「リンー! ヘルガー!」
    「ラジャー!」
     暗号だ。ママが一言でも「洗って」「お風呂」「シャワー」など言えばその場でヘルガーは姿を消す。炎タイプなんだから仕方ないとかいう問題じゃない。問題はこれが密室で言っても、筆談にしてもシャワー決行だと姿を消す。
    「ヘルガー覚悟しい」
     犬臭い。体を上から押さえつけるように抱き上げて風呂場へ向かう。その時のヘルガーの顔は「ぼくなにかしましたか」みたいな顔。ポケモンだからよくわからないけど。

     風呂場についた。逃げられないようにドアを閉める。そうするといつもの場所につく。
     浴槽の高低差を利用して、一番高いところに前足をかける。なるほど、なるべく顔に水がかかりたくないらしい。
     シャワーをひねる。しっぽが動いてない。容赦なく後ろ足からお湯をかける。あっという間に濡れヘルガー。そこに大量のシャンプーをわっしわっしとつけてわっしわっしと洗う。
     その間中、ずっと動かないヘルガー。騒ぐわけでもなく、大人しくしている。抵抗しても無駄と小さい頃から教えた甲斐があったもの。そんで顔を洗おうとするとすっごい嫌がる。口吻(犬とかのあの鼻先から口の名前)に生えてるひげがなんども濡れる。シャワー攻撃から逃げられると思うなよ!
     全部すすいで、本当に小さな黒いヤギみたいな生き物になったヘルガーは、まだ同じ所で抵抗してる。ヘルガー用のバスタオルを取ろうとした瞬間だ。いつもこの瞬間だ。ヘルガーの逆襲と名付けている。体についた水をぶるぶるして弾き跳ばすから、そこら中みずびたし。

     夏だからかわかすことなくそのまま庭に出す。あつい日光にも関わらず、ヘルガーはそこらを走り回ってる。その顔はやっと開放されたという自由の喜びに満ちた顔だ。


     一週間後。
     庭に出る。ヘルガーは違う穴をほってそこで涼んでる。そして私の姿を見るなり、一目散に逃げ出した。


    ーーーーーーーーーーー
    犬バカですごめんなさい。
    【なにしてもいいです】


      [No.2152] はい、こちらお悩み相談室です 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/12/26(Mon) 19:54:25     168clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    タブンネ「はい、始まりましたぁタブンネの毒吐きお悩み相談室ぅ!
     この番組ではぁ、全国から寄せられたお悩みをー、タブンネがげしげしするコーナーでぇすぅ(はぁと

     ではぁ、早速いってみましょ(キラキラ

     まずはホウエン地方にお住まいのラジオネーム ミネストローネさん
    『こんにちは。いつもラジオ聞いてます。今回はどうしてもタブンネさんに聞いてもらいたくて投稿しました。長文すみません
     私は送りび山の山頂でぬくぬくと楽しく暮らしていたのですが、ある日人間にさらわれてしまいました
     それだけでは飽きたらず、人間は私を見るなりかわいいだの洗濯したいだの、言い出して、コンテストに出したんです。私が勝てるわけないと思ったら、技がコンボになっていて、大量得点をとってぶっちぎりで勝ってしまいました。
     それからというもの、私をコンテスト用に着飾ったり、ポロックを食べさせたり。今では全コンディションがマックスになってしまいました。
     私は平和な暮らしがしたいのに、あんまりだと思いませんか』
    なめてるねー、なめてるねーこの投稿者。
    てめぇが三食昼寝付きでぬくぬく暮らせんのは人間に餌もらってコンディションもあげてもらってるからだろうが
    つうかこれのどこが悩み?幸福自慢?
    げしげしすんぞミネストローネ
    食い物みたいな名前しやがって、ごきゅごきゅすんぞコラ


    さて、そんな場違いなのは無視して、次のお手紙いきましょ
    お次はこれまたホウエン地方にお住まいのラジオネームエネコLOVEさん。
    『いま大ブレイクしてるプリカちゃんのサインが欲しいのですが、サインが当たるチケットが』
    あー、リスナーの皆様に補足すると、プリカちゃんはプリンだから、サインをたくさん書けなくて、CD1枚にサイン抽選券をつけてるのね。マジもののファンはCDに何千万も注ぎ込むらしいね。
    あ、お手紙に戻ります
    『サインが当たるチケットが欲しいのですが、俺の彼女がそろそろキレそうです。CD1枚でサインが当たる方法はないでしょうか』
    し る か ボ ケ
    てめぇの彼女が何言おうがどうしようが横っ面はたいて俺の趣味にケチつけんなくらい言えねぇのかヘタレ
    あ、私はプリカちゃん好きよ。この前のアレルヤ!はいいと思う。熱烈なファンには受けが悪いらしいけどねー


    さて、ヘタレはおいといて次いきましょ。
    次はシンオウ地方在住のラジオネーム竜骨座さん
    『僕は昔、厨ポケとか言われて、主人にも可愛がってもらいました。性格も粘って、タマゴ技ももらって、バトルタワーでも友達と戦うでも活躍しました
     けど、今は格下だと思っていたカイリューとかが夢特性で強化され、僕はボックスで過ごすばかりです。
     つい先日、強い仲間はみんなイッシュに行きましたが、僕はシンオウに置いてけぼりにされて寂しいです』
    厨ポケきたー
    てめぇみたいのがいるから、不遇ポケが出るんだろうが
    なんのポケモンか知らねぇが、今までカイリューがてめぇをそう思ってたんだ、それくらい我慢しろボケ


    はい、もう厨ポケは放置で、次いきますよ次。
    お次は旅人で住所不定の、ラジオネームもふもふ狐さん。
    『こんばんは。世界をもふもふにそめたくて、旅に出ましたが、一向にもふもふになりません。
     家で待ってる妻子を早くもふもふしたいです』
    妻子を置いて行くような狐がもふもふ語ってんじゃねえぞコラ。
    時代はもこもこなんだよ。時代遅れもいいところじゃワレ

    あー、次々。
    寒いところにお住まいの、もこもこモンスターボールさんから。
    『冷蔵庫の扉をあけたらビリリダマになってテレポートしながらいろんな世界をまわってたんだ。な、何を言ってるか解らないかもしれないが、世界の恐ろしさの鱗片を味わったぜ……』
    ビリリダマがテレポート覚えるわけねえだろ。寝言は寝てから言え


    今日はろくでもないリスナーが多い日よね。
    今度はまともなリスナーの手紙を祈って、次いきます
    えーと、イッシュ地方、でいいのかな字が達筆すぎて読めませんねー。とりあえずそこに住んでるラジオネームサイコソーダさんから。
    『うちのメンバーのポケモンたちがいつも喧嘩ばかりしてます。どうしたらいいでしょうか』
    それでもトレーナーかお前は。
    つうかどうみてもこれトレーナーだろ。それくらいなんとかしろ



    さて、次のお手紙が最後です
    本日のトリは、カントー地方にお住まいのラジオネームデオキシリボ核酸さん
    『私、一時期どころかかなり強いって言われてたんです!
     むしろパーティには必ず入っていて、バトンタッチが流行ったんです!
     でも調子乗りすぎたのか、次の作品から出してもらえなくなりました。もう一度出たいです』
    特定した
    てめぇ破壊の遺伝子か
    オコリザルサワムラーカイリキーケンタロスドードリオが持って出てきた時の恐怖を考えろ
    てめぇの自己満足で出たいとかいうなハゲ!


    はぁはぁ、今日のタブンネのお悩み相談は終わりです。また次回お会いしましょう」


    ーーーーーーーーーーー
    書いてもいいのよタグからしかとってないはず。もしつけてないのに勝手に使うなってのがあったらいってください。
    【タブンネにげしげしされたい方はお名前、住所、ラジオネーム、職業、年齢を書いた上でご応募ください。
     採用された方にはレベルが10上がる経験値をプレゼントしています】


      [No.2151] たった三時間、でも本格的な即席ツリー 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/12/25(Sun) 21:25:24     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    『クリスマスはまだ終わっちゃいねぇ!! 今日が当日なんだ! 幸いアイツは午前中いっぱい居ないし!』



    『おまえら、三時間で仕事完了させやがれえぇぇ!!』


      *


     一匹のシュバルゴが、目の前に生える沢山の針葉樹を、まるで品定めするかのように見渡していた。

    「ったく、リーダーのアシガタナの方がこの仕事には適任なんじゃねえのかよ…」
     ぼやきながらも、彼はだいぶ小ぶりな若木に近づいていく。

    「あなたが木を切らないと、始まらないわよ? あなたのお姫様だって待ってるし」
    「そうだな、早く戻ってやるか」
    「リーダーの事だから、もし遅れると人質…ポケ質にされても知らないわよ?」
     彼は若木の前に立ち止まった。隣のウルガモスからクスクスと笑い声がする。

    「そん時は、リーダーであっても俺のメガホーンでぶっ飛ばす」

     ナイト――騎士と呼ばれたシュバルゴがため息を一つ吐いた刹那、彼の背後でドサリと音が立った。

    「ナスカ、後は頼んだ」
    「サイコキネシスって本当に便利ね」
     ピンクの光に包まれた針葉樹は、いとも簡単にふわりと浮遊する。


      *


    「……と、パイ生地と、お菓子を沢山に、シャンメリー。あとはサイコソーダ…」
     メモをそこまで読み上げた女性は、はあっとため息をついた。反対側の左手には、すでに膨らんだ買い物袋が下がっている。
    「全くもって子供っぽいわねぇっ! 今日になって突然言い出すなんて!!」
     ターン! と八つ当たりをするかのように、今いた家の屋根を蹴ると、そのまま数メートル近く跳躍し次の屋根へと飛び移る彼女は、すでに黒い毛皮の狐、ゾロアークだった。


      *


    「シザークロスのPPが切れた」
    「あまりの冷たさに角の感覚が無い、だと…」

     周りには、クリスマスツリーに飾り付ける透き通った天使、球、プレゼントボックスが転がっている。
     無論、今ぐったりと床にへたり込んでいる彼ら…ペンドラーが氷塊を砕き、シュバルゴがシザークロスで形を作ったのだった。冷たい氷を使った細かい作業に、二匹の体力と精神力は限界に来ていた。

    「私も熱風がもう出せないんだけど」
     ウルガモスは氷の表面を薄く溶かして、つるっと滑らかにしていた。溶かしすぎては駄目なので、火力の調節がこれまた絶妙、上の二匹と同様の状態である。

    「もう気力が限界なんだけど、まだ作るの?」
    「これ以上やったら身がもたないでござる」
    「…エネルギー切れです…」

     隣の三匹、コジョンド、アギルダー、ドレディアはそれぞれ波動弾、エナジーボールを使って氷に細工をしていた。
     氷の中に光が閉じ込められ、とても美しく光るのだが『気』とか『波動』を使った特殊な細工のため、量産すれば疲れる事この上ない。
     六匹が何故ここまで凝った“クリスマスツリーの飾り”を作っていたのかといえば、全ては『リーダー』と呼ばれるダイケンキ――シェノンの命令である。
    「リーダー今頃何してんのかなぁ…」


      *


     そのダイケンキは、今彼らとは別の場所で、ツリーに別の作業を施しているのだった。
    「後から考えれば、氷技を使えるのが俺だけだったっていう…」
     冷気を枝に吹きかけるのを一時中断すると、代わりに口から出たのはため息だった。自業自得というのだろうか、こちらもれいとうビームを使いまくって、クリスマスツリーに霜を降ろして白くする地道な作業に、本人もへとへとになっていた。
    「あいつらも多分辛いと思うから、差し入れでもしてやるか…」

     普段子供っぽい彼は、彼らしくない言葉を発した。疲れでどうにかしてしまったのだろうか、それとも、心の底には皆から慕われるモノがあるのだろうか。
     少なくとも、彼の口の端が持ち上がったのは確か。


      *


    「先生! てっぺんに飾る大きな星がありませんっ!」

    「ナ、ナンダッテー!?」
    「もうPP切れでござるよ…」
    「でも、星がないと多分クリスマスツリーにならないと思う!! それにリーダーがなんて言うか…!」
     六匹がぎゃあぎゃあ言っていると、ガチャンと部屋の扉が開いた。

    「シェノンリーダーからの差し入れだってー!」
     疲れ果てた六匹の元にやってきたメラルバが背に乗せてきたのは、籠に入ったいくらかのPPマックス。それと、少し大きい氷塊。
     絶妙すぎるタイミングと、それらが意味する事に、彼らは言葉を失った。

    「要するに…もっと頑張れって事か…」
     笑顔のシュバルゴの顔は、妙に引きつっていた。

    「わが子の笑顔が眩しく、そして胸に痛いわ」
     ウルガモスとペンドラーは、複雑な表情をしている。

    「アポロン君、重かったでしょ? お疲れさま!」
     一人だけ笑顔のドレディアはメラルバの頭を撫でながら、内心どんな事を考えていたのだろうか……。

    「あ、そうそう、ツリーのてっぺんに飾れそうなもの見つけたんだよ!」
    「おお! でかしたぞアポロン!」

     思わぬ展開に賞賛の声が上がった。

     メラルバが黒い手でドレディアに差し出したのは、クリーム色っぽい星型……ではなく三日月型の物体。中心の辺りから、クチバシの様なものが飛び出している……。見るからにルナトーンそのものだった。しかし、こいつはただのルナトーンではない。


    「「「それは噂に聞く『スケベクチバシ』だあぁぁぁぁ!!!!」」」


     六匹の絶叫が響き渡り、PPの残っている技が一斉にスケベクチバシに放たれた。
     シュバルゴからメガホーン、ペンドラーからポイズンテール、ウルガモス、アギルダーからむしのさざめき、コジョンドからドレインパンチ、ドレディアからはなびらのまいが“何もしていない”スケベクチバシに炸裂し、どこかへぶっ飛ばしたのであった……。
     不憫だ。今回に限っては不憫すぎるスケベクチバシであった。吹っ飛んだ先で、また誰かにツイートされたりはしたのだろうか?


      *


     黒い狐――ゾロアークは買い物袋を両腕に提げ、お昼過ぎに家に戻ってきた。彼女を出迎えたのは見事に飾り付けられた輝くツリーと、飾り付けを終え死屍累々の如く転がる七匹だった。メラルバがゾロアークに駆け寄る。

    「どうしよう…みんな疲れちゃってて……」
     彼女はメラルバに頷くと、袋から一本サイコソーダを取り出した。ダイケンキが瞬間的に飛び起きる。
    「お昼ごはんの後ですよー」
     物を言わせぬうちにゾロアークは意地悪な笑みを浮かべながら答えた。

    「なかなか立派なクリスマスツリーね。……てっぺんの星は?」
     気付いた他の六匹が、あっと声を出した。

    「ヤバイ…忘れてた」
    「でも今からじゃアイツが帰って来ちまうな…どうする?」

    「全く……わたくしティラにお任せあれ!」

     ゾロアークが右手の爪を立て、くるくるっと魔法使いのように回した。
     ツリーのてっぺんに輝きが生じ、直後にポンっという音と共に大きな金色の星が現れた。

    「幻影、か?」
    「そのとおり。これで大丈夫でしょ?」
     そこに居た全員に笑みが浮かんだ。



     ………ガチャッ
    「ただいまぁー」

     彼らの主人を迎えたのは、仲間たち全員で作った即席ツリーだった。



    ――――
    うわぁグダグダ。もんのすごいグダグダ。前のダークライさんの記事が台無しだねwww
    クリスマスは何が何でも二つ書こうとか決心した結果がこれだよ!
    ケーキを争奪したり喧嘩したりもするけど、彼らも時には協力して何かをすることがあるんですね。ほとんどはシェノンの我が侭だと思うけど!
    あとスケベクチバシを勝手にお借りしました。…いろいろな意味ですみませんリナさん…

    【書いてもいいのよ】 【描いてもいいのよ】 【クリスマス終了まで約三時間前なう】


      [No.2150] クラボの木 投稿者:スズメ   投稿日:2011/12/25(Sun) 19:15:42     80clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ドス、ドスと、思い足音の主について歩く森の小道。
    毎日の日課はこの散歩で、前を行くドダイトスはのんびりと散歩を楽しんでいる。

    ふと、視界の端にパチリスが写った。
    がさごそと、地面をあさっては何かを埋めている。
    土を掻き分けるたびにその背中に舞い上がった落ち葉が積もるのを見て、もう秋なんだと実感させられる。
    ふと、目の前のドダイトスを見てみた。
    ・・・何時もどおりだ。
    だけど、背中の木の葉っぱは紅葉して、落ち始めていた。
    何で。
    とりあえず、このままでは葉っぱが落ちて悲しいことになるのは目に見えている・・・どうするか。
    そういえば、とポッケの中を探れば、クラボの実が出てきた。
    近所のおばさんにもらったはいいが、うちのドダイトスは甘党だし、固さといい味といい人間が食べるには
    あまり向いた物ではなかったのでそのままにしていたものだ。
    一瞬、パチリスが物欲しげにした気がしたが、気のせいだろう。
    ちょっと、とドダイトスを呼び止めて、その背中によじ登る。
    無理やり緑色の一部をひっぺ剥がして、クラボのみをねじ込んでから水筒の水をかけておいた。
    最近の改良された木の実って奴は、一年中育てられるし実もなるそうだから紅葉することもないだろう。
    明日が、楽しみだ。

    今日も、日課の散歩だ。
    ドダイトスの背中にはクラボの木が育っているものと思いきや、あったのはちっちゃい芽。
    もっと早く育てよと悪態をつきながら、今度は栄養ドリンク数種類をブレンドしてかけておいた。
    当のドダイトスは、しらんぷり。

    朝が来て
    今日も日課のお散歩日和。
    ドダイトスの背中には、やたらと大きいクラボの芽が生えていた。
    何が、あった?
    当のドダイトスは、しらんぷり。

    次の日、少しだけ 大きくなってた クラボの芽

    数日後、もうすぐ 花が咲きそうだよ クラボの木

    そして、一週間。
    今日もドダイトスは前を行く。
    その背中には二本の木が。
    一本は、葉っぱが完全に落ちてさびしい木。
    一本は、もさもさと見事に茂ってクラボが実ってる。ただし、やたらとでかい。
    せっかくだから、クラボを収穫するとするか。
    ここまできても無関心なドダイトスを呼び止め、その背中によじ登る。
    登って気が付いた。
    実のある位置が、少々高い。これでは手が届かない。
    ならばと、元々生えていた木に登って採ればいいか。
    元々生えていた木はクラボの木に比べて細く、なんか頼りない。
    何負けてるんだよと思いつつ足をかけたその瞬間、
    世界が一回転した。
    地面に転がっていることに気づいたときにはもう、元から何も言わなかった木の成れの果てと、
    ここに来てやっと何やってるんだと言いたげな反応を示したドダイトスが自分を見つめていた。

    今日もお散歩日和。 ドダイトスは、前を行く。
    その背中にはクラボの木。
    やったね、クラボが食べ放題だ!
    まあ、収穫できないし自分もドダイトスもクラボは苦手だったりするんだけどね。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    読んでくださりありがとうございました!
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】


      [No.2149] Re: 自分の単行本を妄想するスレ 投稿者:あゆみ   投稿日:2011/12/25(Sun) 15:07:56     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    遅ればせながら私も参加してみたいと思います。

    (帯の表)
    「約束よ。必ず私を迎えにきてね・・・。」
    その約束から3年。ポケモントレーナーとなったマサトが、コトミやトモヤ、そしてたくさんの仲間やポケモン達と共に繰り広げる、冒険と感動の物語!
    (帯の裏)
    ・・・ラルトスとの約束から3年、ポケモントレーナーとなったマサトは、ラルトスとの約束の地・イザベ島に向かう。そこでマサトはラルトスとの感動的な再会を果たす。
    だが、ラルトスを狙って現れたのはロケット団。そして舞台はカントーの南の島・ナナシマに。数々の言い伝えのある島々を巡り、同じラルトスのトレーナー・コトミ、ニドキングを使いこなすトモヤと共に、ナナシマを巡る大冒険が始まる!

    「『Our Future 〜3 years after〜』(1)ナナシマ編」マサポケ出版から好評発売中!

    (帯の表)
    「そんな、言ってくれると嬉しいわ!ありがとう!」
    次なる冒険の舞台はジョウト地方。マサト、コトミ、そしてミキが繰り広げる、夢と希望あふれる大冒険!ポケモン小説シリーズの決定版!
    (帯の裏)
    ナナシマのロケット団の野望を打ち砕き、バトルチャンピオンシップスにも参加、ポケモントレーナーとして、またポケモンコーディネーターとしての実力をつけていくマサト達。
    ナナシマリーグのジムリーダー候補に選出されたトモヤと別れ、新たな仲間・ミキと共に、ジョウトを巡る大冒険が幕を開ける。数々のライバルとの出会いを経て、目指すはジョウトリーグ、グランドフェスティバル、そしてミキはエキシビションマッチ。
    だがそこに待ち受けているのは、ナナシマで野望をくじいたはずのロケット団の影だった・・・!

    「『Our Future 〜3 years after〜』(2)ジョウト旅立ち編」マサポケ出版から2012年春発売予定!

    (帯の表)
    金と銀、10年の思いの彼方にあるのは、かつて届かなかった淡い恋の思い出だった。
    (帯の裏)
    2009年9月12日、ポケモン金・銀のリメイクとして発売された、ハートゴールド・ソウルシルバー。発売日当日、降りしきる雨の中ポケモンセンターに向かう歩の頭にあるのは、昔親しくしていた明日香に貸したオリジナルの金バージョンだった。
    今、10年の季節(とき)を超えて紡がれる、金・銀とハートゴールド・ソウルシルバーの思いをあなたに。

    「『金銀恋唄』」マサポケ出版から好評発売中。


    ・・・考えてみるとマサト達の冒険は今のアニメを題材にしている以上、テレ東や任天堂やらアニメに関連した企業の許可なく出版できませんね(汗
    ついでに金銀恋唄は題材が青葉城恋唄、となるとさらに権利問題がややこしくなって(ry


      [No.2148] リスタートについて 〜 組織犯罪者と社会復帰 〜  ※没稿 投稿者:クーウィ   投稿日:2011/12/25(Sun) 14:39:14     115clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    [大掛かりな組織犯罪が多発し、大規模な地下組織が相次いで摘発される昨今、そこに所属していた容疑者やポケモン達の社会復帰が、深刻な課題となっている。進まぬ対策と法整備の遅れ。渦中の人々の証言から、今何が起き、求められているのかを問う。]


     抜けるような青空の下、子供達の歓声が上がった。漸く涼味を帯びて来た秋の風を熱っぽく掻き分けて、まだまだトレーナー免許を許されていない小学生達が、一列に並んでいるポケモン達に向け、懸命に走っていく。
     彼らの手には、先ほど通過したチェックポイントで手に入れた、ポケモンのNN(ニックネーム)を書き記した紙。ポケモン達の列線に辿り着いた児童らは、思い思いの感情や熱意を込めて、目的のポケモン達の名前を呼んだ。

     ――ここは、ジョウト地方にある小さな小学校。運動場に於いて、児童達が秋の体育祭のプログラムである、ポケモン借り物競争で火花を散らしている。
    「足の速い子には、走るのに邪魔にならない様なポケモン。あまり駆けっこが得意で無い子には、適時機敏にサポートが出来るポケモンが当たるようにしています――」
     そう話すのは、イタミナオヤスさん(34)。老人ホームや小学校などへの慰問やイベント参加を専門にしている、福祉専門のポケモンブリーダー。――元、ロケット団のメンバーである。
     八年前に組織が解散してから、一年間の更生プログラムと二年半の職業訓練を経て、この仕事に就いた。
    「あのポケモン達も、みんな元ロケット団員達の手持ちです。今ではああやって穏やかに振舞える様になってますが、当初は環境の変化に慣れさせるのに苦労しました」
     私と同じ様にね――彼はそう言って苦笑すると、遠い空に向けて目を細めた。


     現在確認が取れているだけでも一万余人。一説には、下部組織も含めると二万人規模だったとも言われるロケット団の元団員達の内、イタミさんの様に無事満足の行く形で社会復帰が出来た人は、約五千人程度だと言われている。全体の半分にも満たない数字だ。
    「怖い」、「嫌悪感を感じる」等、一般住民の忌避意識は今も根強い。
    「職業訓練を受けても仕事が無い。住居の前を通る時、ポケモンを予めボールに入れる人もいる」
     カントー地方に住む、元団員の女性。孤独感と疎外感から、再び非合法組織や残党グループの仲間入りをする元メンバーもいると言う。
    「職業訓練と更生プログラムを終えても、トレーナー資格を取り戻すには試験が必要。例えそれに受かっても、新たなパートナーを手に入れるのは躊躇われる」
     ポケモンを持つことが、周囲との摩擦を更に悪化させてしまう可能性を捨てきれない――彼女はそう話す。

     嘗てロケット団員達が所持していたポケモン達についても、行政は対処に追われている。
    「親が代わったポケモン達は、簡単には新しい主人を信用しようとしません。……手っ取り早く言う事を聞かせるにはバッジが必要ですので、どうしても人手不足になりがちなのです」
     担当者はこう明かす。
     資格を剥奪され、手持ちのポケモンの親権を失った元団員達が孤独に喘ぐ一方で、逮捕された団員達から『保護』されたポケモン達の再教育も、遅々として進んではいない。


     一方此方は、海の向こうのイッシュ地方。同地方の海の玄関と言われる港町、ホドモエシティのマーケットに売り場を構えるジョゼフ・サーキースさん(23)は、元プラズマ団の構成員だったと言う過去を持つ。
    『ポケモンの解放』を唱え、まだ記憶に生々しい『プラズマ団蜂起』で知られるこの組織に、彼が加担したのは大学生の時だったと言う。「幼い頃から、ポケモンの扱われ方に疑問を抱いていた」と言うジョゼフさんは、プラズマ団幹部による街頭演説で感銘を受け、そのまま入団。その後は組織に従って『解放闘争』に身を投じ、支給されたポケモンと共に各地を転戦する内、『リュウラセンの塔』に於いてバトルに敗北。逮捕・拘束された。
    「四ヶ月の懲役を終えて家に帰って来た時、一番に迎えてくれたのがこいつだったよ。……飛びついて来たのを受け止めて、ただ今って言った時。その時が僕にとっての、本当の再出発だった――」
     社会復帰プログラムを受け入れて、地域のコミュニティ活動に積極的に参加、職業安定所で斡旋してくれるパート労働で地道に資金を溜めて、今の商売を始めた。色取り取りの香炉が並ぶ売り場の隅には、組織から与えられて以来、ずっと一緒に生活しているレパルダスが、ふかふかした敷物の上で丸くなっている。
    「嘗て戦った相手だったトレーナーが、買い物に尋ねて来てくれた時が一番嬉しかった」と振り返る彼は、静かに手を伸ばすと、うとうとしている紫色の相棒を、愛おしそうに撫でた。 


     こうした海外での取り組みに刺激されて、近年我が国に於いても、元犯罪組織の構成員からの手持ちポケモンに対する親権や、ポケモン取り扱い免許の剥奪を、猶予すべきではないかと言う声が上がり始めた。
    「入手の経緯はどうであれ、ポケモンと主人の絆は、言葉では簡単に言い表す事が出来ないほどに深いものです。無理に引き裂くのではなく、一緒に更生させる道を選んだ方が、当人達の精神的な苦痛も、行政の負担も軽くなると思われます」 
    『シンオウブリーダー連盟』の、カイザワシゲハル副会長はそう主張する。非合法の地下組織・『ギンガ団』による一連のテロ活動に晒された同地方では、組織の基幹が崩壊した後も元団員への徹底的な制裁をあえて避け、嘗ての組織の基盤を利用した再生企業である『ギンガコーポレーション』を通して、彼らを地域社会に溶け込ませると言う方針を採った。カイザワさんの所属するシンオウブリーダー連盟でも、シンオウリーグで活躍した高名な元トレーナーやアドバイザー達が中心となって、元団員達の職業訓練などの支援に当たっている。
     同じ様な風潮はホウエン地方でも見られ、元マグマ団員やアクア団員達が、地質研究所の職員やマリンレンジャーとして公的機関に採用されるケースも増えて来た。街頭での署名活動など、草の根レベルの運動も、着実に成果を上げている。


     しかし一方で、こうした流れを手緩いと評する声もある。「被害者の感情を考慮し切れていない」、「行き過ぎた保護主義は犯罪抑止力の低下を招くだけ」と言った批判は、何処の地方でも共通のものだ。
    「地下道を歩いてて殴られた人も、うちの家族の様に物を盗まれた人もいる。飼っていたポケモンを傷付けられたり、あまつさえ奪い取られて殺されたりした人間が、簡単に連中を許せるとは思えない」
     自らも住宅を損壊させられ、盗難の被害にあった事のあるハナダシティの男性は、複雑な表情でそう語る。今尚過去の記憶に苦しむ被害者の精神的なケアや、効果的な再発予防法案の策定無しには、真の解決もあり得はしない。

     保護されている側にも不安はある。
    「時々、『こうやって生活していて本当に良いのだろうか』と思う事はあります」
     冒頭で紹介したナオヤスさんは、駆け走る子供達を見ながら、呟くように胸の内を語る。ヒワダタウンやコガネシティでの、一連の暴力行為に関わった自らの身の上を悔やむ頻度は、実は周囲の人間達が思っている以上に深刻なものだ。
    「夜中に魘されたり、仕事中にストレスを感じる事も日常茶飯事です。嘗て追い使っていたポケモン達がどうなったのかなど、思う所は尽きません――」
     しかしそう語りつつも、彼は現実を受け入れて前に進む道を選ぶ。
    「贖罪で済むとは思いません。取り返しもつきません。……けれども、もう投げ出す訳にも行かないんです。今の私にはあいつ等がいるし、受け入れ、仕事を教えてくれた方々の恩に報いる為にも、生涯この負い目を背負っていく心算です」
     静かにそう結んだナオヤスさんが、心の支えにしている言葉がある。
    『人は必ず生まれ変われる。何時どんな時だろうとも、自分を必要としてくれる者の存在を、身近に感じる事が出来たのならば』 ――裁判に於いて彼を弁護してくれ、ポケモン取り扱い免許の再交付に尽力してくれた、今は亡き老弁護士の陳述である。



    ――――――――――

    夏菜さん主宰の雑誌風ポケモンアンソロジー・POKEMONDAY’Sに寄稿するべく書いてみた短編の内の一つ。……後から読み返してみると、どう見ても雑誌の記事と言うよりは新聞の社会欄ですorz 本当に(ry

    空気が読めない人で御免なさいとだけ…… お世話になった方々に、心よりお礼申し上げます。


    【好きにしていいのよ】
    【暫く何も入れてなかったので 後悔は(ry】


      [No.2147] 血筋 投稿者:音色   投稿日:2011/12/24(Sat) 23:18:02     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     世間は今日を聖キリストの誕生日前夜だと謳う。救世主の誕生の日には眩いばかりの星が馬小屋の天井で輝き、学者を、羊飼いを導いたとされる。
     そして、その聖なる日に、かのレディはこの世に生を受けた。
    「偶然でしょうねぇ」
     知る人が言えばそれは必然だと言うかもしれないが、所詮運命の悪戯。かの火宮の家で気にした者などいないだろう。
     ・・火宮の家では、だろうが。


     めぇら。
     生まれて半年以上たつものの、腕に収まるサイズのメラルバは外の寒さに小さく鳴いた。生まれた当初より一回り大きくなったと言えど、まだまだ幼い炎タイプは本格的な冬に弱いらしい。
     太陽の子を抱いた黒服の紳士は、ショーウィンドウを眺めて何かを思案していたらしいが、小さな生き物の声に現実に戻ってきたらしい。コートの内側にその子を入れる。
    「さて、どうしましょうかねぇ」
     いかに美しく着飾るものだろうとも、あの炎の血を引く淑女にはどれも見劣りするだろう。
     何度目かの言葉を口にして、分家の血筋は未だにふさわしい物を見つけられていなかった。
     やはり花束などの方がよろしいか。しかし生花は放浪する彼女には似合うまい。
     口にする物は近くにいる死神殿が難色を示しそうだ。もとより、彼は私が彼女に接触すること自体を嫌うものだが。
     日付が変わらぬうちに、急ぎましょうか。
     そう一人ごちて、彼はくるりと硝子に背を向けた。


     太陽と呼ばれるポケモンに乗り、イッシュを離れて海を渡る。
     エンジュと呼ばれる都市の片隅の洋館に、ゲンガー達が仕事をしにいっているらしい。
     縁のない人間には全く気のつかない事だろうが、霊の動きを見ている者にとってはこれほど分かりやすいものはないだろう。


    「失礼しますよ、レディ」
     彼の言葉に、弾かれるようにくるりとファントムは振り返った。
     鮮やかな向日葵、隣の死神はじろりと冷たい視線をこちらに向けた。きっと結ばれた口元が、おそらく私の前で解かれることは有りはしないのだろう。
     それで良いのです、レディ。
    「お誕生日おめでとう御座います」
     コートの内側から差し出した包みを、彼女は少々訝しい眼をしながらも受け取った。その視線が、内ポケットから顔を出すメラルバに注がれる。
     無邪気なそれを見て、ほんの少し冷静さが緩んだ表情が映る。メラルバはレディを見て数回瞬きをし、また寒さに潜った。
     それでは、失礼します。礼をして去ろうとすれば、
    「これはなんだい?」
     彼女が中身を問うた。
    「開けてみれば、分かりますよ」
     するりと包みをほどいて、ファントムは目を細めた。浅葱色のショールは、色とは別の温もりを感じさせる。
    「この時期はとても寒いですからね。お体に気を付けてください、レディ」
     炎の御加護を。


     ウルガモスの背に乗って、その場を去って空へ逃げる。
     あぁ、願わくばこのまま、天に融ける事をお望み申し上げましょう。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  レディが御誕生日と聞いてカクライにプレゼント渡しにいかせた結果がこれだよ!

    【メリークリスマスイブ&ハッピーバースデー!レディ・ファントム】
    【残念クオリティでごめんなさい】


      [No.2146] 裏路地の閃光と暗黒 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/12/24(Sat) 22:24:56     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     世間は『クリスマス』というものらしい。街に出ると、赤と緑をよく見かけるようになり、明るいネオンや飾り付けられた針葉樹が輝いている。
     クリスマスとは神の子の誕生祭であり、二十四日のイブは前夜祭であること、夜にはサンタさんやデリバードが良い子にプレゼントを配る日であることまで私は知っている。知らなくても不自由は無いだろうが…。

       *

     もしも私がプレゼントとして欲しいものがあるとしたら、それは『三日月の羽』だろう。これまで“私自身が”一番振り回されてきた自分の特性を抑えることのできる可能性の一つとして、ひそかに心に留めてきたものだからだ。
     考えている自分でもばかばかしいと思う。あくまで推測であり、実際に何が起こるのかは全く分からない。私の身に異変が起きる、もしくは羽に何かが起きる可能性も十分にあるからだ。

       *

     夕暮れの薄暗い裏路地に入る。私が今いるコトブキシティも、例に漏れず表通りではきらびやかな輝きを放っており、私にとっては薄暗い場所が一番過ごしやすい。輝いている場所には、あまり似合わないこの黒と赤の身体。影に隠れるのが定めである。

     ふと、目の前に何かがいるのに気付いた。薄暗い中よくよく見れば、それは小さな水色のポケモンである。毛糸のマフラーを身体に巻いているが、小刻みに震えていた。少なくとも、この寒さの中放っておけるような状態ではない。
    「どうしたんだ、こんな場所で」
    「……」
     小さな影は答えない。別に気を失っているわけではない。確かに薄暗いが、金色の瞳はしっかりと私の姿をとらえているはずだ。……きっと恐ろしいと思われているのだろう。ところがいつまで経っても逃げもせず、答えもしなかった。私もしばらく、動かずにいた。

    「……い」
    「?」
    「寒い……」
     二度目はかろうじて聞き取ることのできる声だった。逃げる様子は無かったので、その小さな身体をマフラーごと持ち上げ、抱え込む。淡い黄色と白で編まれたマフラーの隙間から、黒くて細長い尻尾の先に付いている、手裏剣型の部分がはみ出した。
     裏路地の影も、クリスマスの輝きの影も暗く感じた。しばしの間、自分が入ってきた路地の入り口に見える輝きをぼうっと見つめていた。

    「ねえ、おじさん」

     突然、抱えている影がはっきりと喋り、少し驚く。
    「おじさんさ、名前なんていうの?」

     おじさん――別に間違ってはいないと思う。多分。自分の年齢とかは、数える意味をとうに成さなくなったので覚えていない。私達ダークライという種族は、少なくともニンゲンよりは遥かに長い時を生きるともいうが……。

     名前に関しては少々迷ったが、正直に答えることにした。
    「私はダークライ。名前は無いんだ」
     無いの? と聞き返すそれに、うなずく。
    「そっかぁ。ぼくコリンクのルキっていうんだ。あのさ、おじさんに名前が無いなら、温めてもらったお礼に考えるよ?」

     初めて笑顔をみせたコリンク。その純粋な笑みは、私の心に何か違和感を感じさせた。コリンクはそのまま続ける。
    「ぼく、生まれてからずっとこの街にいるんだけど、みんなぼくを引っかいたり、噛み付いたり、蹴ったりするんだよ。おじさんみたいな、温めてくれるポケモンは初めてだからさ」
     ずっとこの街にいる。生まれた時から。普通、彼くらい幼いポケモンの場合、野生であればまだ親と一緒に行動していると思うのだが。何故ニンゲンの身に付けるマフラーを持っているのだろう?

    「ルキ、そのマフラーはどこで見つけたんだ?」
    「ごみ捨て場だよ。たまたま見つけたんだけど、便利だから今はぼくの宝物なんだっ」
    「いいものを見つけたんだな」
    「でしょ?」
     どうやら自分で見つけた物のようだ。

     得意げな彼の笑みは私の心を温めながら、どこか痛々しくも感じさせた。おそらくタマゴの時から、無責任なニンゲンによって背負わされた彼の生きる場所を、くっきりと映し出しているようで。


    「ルキの野郎、ここにいやがったか」

     突然、背後から聞こえた不気味な声。振り向くと、四足の影に長い角と、矢印の尻尾。ヘルガーのようだった。それだけではない、気配を探るとやつの後ろにもう数匹、私達を挟んで反対側にも気配がある。……完全に、囲むのが目的らしかった。

    「そこの黒いの、見かけねぇヤツだな。悪いがそいつを置いていってくれないか? ここらは俺たちのナワバリでねぇ」
     明らかな敵意を含んだ声に、腕の中のルキが震えた。まるで私にすがり付いてくるように。
    「置いてどこかに行け、という割には出口が無いじゃないか?」

     ここは強行突破しかないだろう。

     ヘルガーがニヤリと笑ったように見えた。直後、何本もの赤い火柱が私達に向かって放たれる。
     紅の檻の起動を読み、慣れ親しんだ戦闘の勘から隙間を潜り抜ける。ルキがほんの少し悲鳴というか、驚きの声のようなものを上げたように聞こえた。
     それから上に飛び、あくのはどうをヘルガーに向かって打ち込んだ。所詮は町の野良ポケモン。一発脅せば充分だろう。案の定、立ち上った煙が晴れたそこにはもうヘルガーも、ほかの気配もなかった。

    「おじさん、すごい……」
     下を見下ろすルキ。
    「おまえを引っかいたり噛み付いたりするっていうのは、あいつらか」
    「うん。せっかく見つけたご馳走を奪われたりとか、たまに炎を当てられたりするよ…痛いし、怖い」
     日々の食事にも事欠くのであろう。街の野良ポケモンとは、哀れなものだ……。


     宙に浮いたまま、ふとひらめいた私は路地に戻らず、建物の間を上へと昇っていった。家々の屋根が視界の下へ遠ざかっていく。
    「おじさん?」
    「いいものが見れるぞ。良いと言うまで、目をつぶっていていろよ」
     子供相手に浮かんだ、魔法の言葉のような、おまじないのような。
     少し不安そうな顔をしながらもルキが目を閉じたのを見て、上昇するのを再開する。もうすでに立ち並ぶビルディングの屋上が見下ろせるくらいの高さで、もういいぞと声をかけた。彼が息を飲むのが分かったが、それ以上は言葉にならないようだった。

    「うわぁ……」


     視界一面に広がるのは、街の輝き。
     コトブキ――ルキが生まれた街の、素晴らしい夜景。


    「きれいだなぁ……!」
     やっと声が出るようになった、とまで思わせるようにルキは呟いた。と、何かが視界の隅にちらついた。
     見れば、それは天から降ってくる、純白の雪――。
     ぼやけたように街明かりに染まる無数のそれは、夜景をさらに幻想的にさせた。

    「おじさん、すっごく強くて、優しいと思う」

     すぐに心を開くことのできる子供だからこそ、言ってもらえた言葉。少し照れてしまうほどに、温かい。そんな中でも静かに、ひんやりと、自分の意識は張り付いてきた。
     私は、彼と一緒に居てはいけないのだ。どれほど美しい夜景の中にいようと、ダークライであることに変わりは無い……。雪で夜景がぼんやり見えるように、自分もまた白い雪に覆い隠されたいとも思う。
    「ルキ」
     努めて辛さが声に出ないように言うのが精一杯だった。
    「私は、お前とは一緒に居られないんだ」
    「…なんで?」
    「私の近くにいると、悪い夢を見てしまうんだ」

    「すごいっ!」
    「 」

     悲しみとかそんなものとかじゃなくて、まず返事に面食らった。言葉が出てこないとはこの事である。
    「それ本当!? ねえ、ぼく今日はおじさんと寝てみたい!!」
     顔を輝かせながら、まさかこんな事を言われるはめになるとは。
     黙ったままでいる私が気になったらしい。ルキは私の目を見ながら、続けて話しかけてきた。
    「一晩だけでもいいからっ!」
     こうなってしまっては、もう何を言っても聞かないだろう。……子供の世話をする親の気持ちが、なんとなく分かってしまった気がしなくもない。

     しかし、あまり馴れ合ってしまっては別れが辛くなるだけなのではないか?


    「おじさん、おはよう!」
    「ああ、おはよう」

     この時期のシンオウにしては珍しく、快晴の朝だった。ルキは、私が持っているものを気にしたらしい。
    「おじさん、なにそれ?」
    「これはね、新聞というんだ」
    「しんぶん?」

       *

     話はそれるが、私がダークライとして生まれ、酷い目に散々遭ったにもかかわらず何故、人やポケモンを傷つける道に進まずに済んだのか。それは自分が思うに、生まれつき私に備わっていた“知識欲”のおかげであろう。
     まずはニンゲンの言葉、文字。言葉を理解できるポケモンは多いだろうが、文字を読めるものはそうはいない。文字を読める事は、私の密かな誇りでもあった。
     それから昔から伝わる神話、昔話、行事に興味を持ったのだった。見た事の無い場所やポケモンにも思いをはせた。
     ……ここだけの話だが、深夜の図書館に入り込んだりして片っ端から本を読んだこともあるほどだ。もちろん本は全部元に戻し、警備員の目をかわす事は簡単だった。そして、今読んでいる新聞はニンゲンの“ごみ捨て場から”あさって来た物である。ホームレスのようだとかはどうか言わないでおいて欲しい。

      *

     政治とかいう難しい記事は飛ばし、クリスマス特集を読んでいる私の横から、ルキが紙面を覗き込む。
    「……ぜんっぜんわかんない」
     頬をふくらませて、ぶうっとふくれた表情はなんとも子供らしい。
     新聞を裏返し、日付を見ると十二月の二十三日になっていた。昨日の夕刊であるから、今日は二十四日、クリスマス・イブになる。パサっと新聞を閉じ、ルキに言った。
    「今日はニンゲン達にはクリスマス・イブという日で、子供はプレゼント…贈り物がもらえる日なんだそうだ」
    「ふうん…贈り物かぁ……」

    「そういえばルキ、悪い夢は見たのか?」
    「うん…すっごくこわかった……」
     ルキの顔は恐怖に歪んでいた。

     ――ルキの表情を見て、心が決まった。
     明日の朝に、ルキとは別れよう、と。やはり私は、悪夢を見せてしまうのだから。
     彼がどんなに私を信頼していても、許されない事なのだ――

     その日は一日中路地裏で過ごした。ゆったりとした時の中で、私が経験した事とかをルキに語ってやると、彼は案外熱心に耳を傾けるので、話しているこちらも嬉しかった。
     夜は、昔に知ったシンオウの昔話をルキに語ってやることにした。
     聞かせてやるうちに寝息が聞こえてきて、話すのを止めた。

     明日の朝、彼はどんな顔をするだろうか。彼の寝ているうちにそっと立ち去ろうか、きちんと話してから、さよならと言おうか……。結局、決める事はできなかった。
     もう寝ようと思い、建物の壁に寄りかかって私も目を閉じた。私の肩の上でマフラーに包まれ、幸せそうな彼の顔がずっとまぶたの裏に残っていた。
     どうか強く、生き延びて欲しい――


    「おじさーん!」
     ルキの明るい声が響いた。
     目をうっすらと開けてみると、まだ少し薄暗い。
    「ねえこれ、見て見て!!」



     ルキが差し出し、目に映った物に驚愕した。
     三日月形に曲がった、薄く金に輝く羽。

     まさしく、私がほんの少しの希望をかけてきた物そのものだった。



    「……おじさん?」
     ルキが不思議そうに私の顔を覗き込んだ。
    「何でそんなに驚いてるの?」
    「いや、すごく、綺麗な羽だと思ってな…。きっと、誰かがお前にクリスマスプレゼントとしてくれたんだろう。大切にするんだぞ」
    「おじさんがくれたんじゃなくて?」

     いや、私からではない、とルキに言った。
     昨日の晩、三日月の化身がたまたま落し物をしていったのだろうか。

    「あのね、おじさん」
    「何だ?」
    「おじさん、昨日旅をしてるって言ってたよね?」
     そう、行く当てもない旅を。
    「ぼくも、付いていってもいい? いろんな物が見てみたいし、ぼくもおじさんみたいに強くなりたい!」

     昨日なら、きっぱりと断っていたはずの言葉。しかし、彼が三日月の羽を持っているのなら話は別だ。

    「お前がそうしたいのなら、歓迎するよ」
    「やったー!! ……あ」
     ルキが何かを思い出したように、言葉を切った。
    「おじさんの名前さぁ、まだ考えてないんだ…ごめんね、せっかくのクリスマスプレゼントになると思ったのに…」
    「いいんだ。旅をしながら、ゆっくり考えてくれればいい」

     私は笑って答えた。
     それに、私はもう日々を共に過ごす仲間という立派なプレゼントを一つ貰っているのだ。

     最初は町を出て、森に行ってみようと思った。ルキ達が本来暮らしているはずの場所へ。
     何よりも、次に“向日葵の彼女”に逢えたときに話す事が一つ増えたのが嬉しい。


     神の子が生まれた日の朝日を浴びながら、二つの影は静かに街を出て行った。



    ――――
    メリークリスマス! あのお話(どのお話だ)に登場したダークライさんの続編ですよっと
    コリンクに「おじさん」と呼ばせるかどうか凄く迷いましたが…性別は不明ですけどとりあえず気にしないでくださいね(汗

    【書いてもいいのよ】 【描いてもいいのよ】


      [No.2145] ムウマージにコーディネートされた 投稿者:音色   投稿日:2011/12/24(Sat) 21:51:51     66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     誘爆気球の突き刺さりブームが去り、クリスマスシーズン到来という事で配達稼業が忙しくなって来た今日この頃。別にハロウィンに何か騒動がなかったのかと言われれば嘘になるが割愛。
     ホウエンのシブチョ―に言わせりゃあ、クリスマスと正月とバレンタインとお歳暮の時期が一番稼げる、らしい。だからこそシフトびっしり。有給?クリスマスに?ありえねー。
     世間のクリスマスムードにゴ―スト共もそわそわ。お前ら、キリストの誕生日に浮かれてどうするんだ。
     え?一人暮らしで彼氏彼女のいない寂しい奴等の恨み辛みがいっぱい?・・なるほど、カゲボウズ的にもありがたい訳か・・。
     いちお―ここにもその条件に該当する奴がいるんですけど。別に恨みも辛みもたまってないか。疲れならあるぞ。華やかなクリスマスの裏側でこーゆー配達稼業とか忙しい人もいっぱいだっての。
     明日だ、明日の24日が過ぎれば少しはピークが減る、と信じたい・・。そして寝た。


     ・・・起きたら妙なサンタクロースがいた。赤と白の帽子をかぶった、ムウマージだけど。
     時計の針は午前3時10分過ぎ。二度寝しよう、としたらこのサンタ・・じゃないどこからきたか分からんサンタコスのムウマージにまとわりつかれる。寒い。目が覚めた。
     え、え、なにこれ。サンタってイメージ的にデリバートじゃないですか。それとも私のゴーストホイホイ体質のせいでこうなったのか。
     ていうか、サンタがくるのって普通は24日の夜から25日の朝にかけてだろう。今は24日の朝だよ。イブはイブでも間違ってるだろう。というより、サンタからプレゼント貰える様な年齢でもないんだが。むしろ配る側だよ。
     見た所袋は持ってな・・持ってる。妙な膨らみが気になる白い袋持ってるよこいつ。今さらだけども他のゴーストどもふよふよやってきた。知り合い?違うのね。
     なんかくれるの?え、マジで?まさかの展開で意外と嬉しい。
     パチンと魅惑のウィンク。・・・後ろでわざとらしく胸を押さえてひっくり返るゴーストども。お前ら、やってる事芝居がかりすぎ。しかしそのノリは嫌いじゃないけど。
     差し出されたのは、名刺。え、名刺?しかもちゃんと日本語。・・どうやって作ったんだろう・・。読む。
    『コーディネーター  ピエトロ・ド・ブライムローズ   愛称:ピートでよろしく』
     ・・・はじっこの愛称の部分だけあとから書きたされた感全開。うちのゲンガ―が書いた奴か、これ?となれば、ゲンガ―の知り合いかな。
     ちょっとゲンガ―よんで来て。朝っぱらからまた厄介なことになりそうな空気だ。


     通訳来たのでとりあえず名刺の意味を確認。コーディネーターって一体。
    『あら、ポケモンをコーディネートする人間がいるんだから、人間をコーディネートするポケモンがいたっていいじゃない?』
     ・・さらさらと書かれた文字からはどこか高飛車なお姉さま的な空気が伝わるな。言ってる事はまぁ、間違っちゃいない、けど・・。
    『あぁ、でもまだ一人前のコーディネーターとしての資格は取ってないんだけどね』
     波長の合う人間見つけて、その人間を上手いこと利用させてもらって会社を立ち上げるのが夢なのよ―、と語るムウマージ。計画が具体的で逆に怖い。
     で、一体何の用で来たのか、と聞けば、
    『この子たちに貴方の事聞いたんだけどー、なかなか可愛いのにファッションに興味がないって言ってたから、私が劇的ビフォーアフターをプレゼントしてきたのよ☆』
     誰が問題を抱えた建築物だ。いや、突っ込みどころはそこじゃないか。部屋の中のゴーストポケどもを睨む。一斉に目をそらす。お前ら、余計な真似をしやがって。
    「いや、今日も仕事があるし」
    『仕事場に行くまでは私服でしょう?』
    「いつもの格好で間に合ってます」
    『ダメダメ、クリスマスくらいおしゃれをしなさい。女の子でしょう!』
     なんだこの謎の理屈。ようするに私を着せ替え人形にしたいだけなのでは。ずいずい迫ってくるムウマージに押し切られ、部屋からは♂のゴーストポケは叩きだされた。


     2時間後、予想した通り散々あれこれとっかえ着せかえられて、ようやくムウマージ・・ピートか、気はすんだらしい。仕事に行く前からなんでこんなに疲れなきゃいけないんだ・・。
    『あーやっぱりまだまだね・・。本人にも納得してもらえるようなコーディネートができないんじゃ・・』
     私があんまりにもファッションに適当に答えるもんだからピートの自信らしきものまで喪失している。知ったこっちゃないが。
     パティシエ希望の友人がコーディネーターという図式は傍から見たら面白くもなんともないかもしれないが、その上にポケモンと付いた時点で怪しいよなぁ。
     ぐったりしている状況の中、そろそろ帰るとピートの言葉が書かれた紙をゲンガ―が持ってきた。
    「今度はもっとまともな時間帯に来てください」クリスマスイブの深夜とかもう御免だ。
    『じゃあ今度はきちんとしたお仕事で来る事にするわね』
     コーディネーターとして独立する気なのね。野望を持ったポケモンだ。
    『先にいっておくけれど、本来ムウマージは・・とくにあたしの一族は夢魔の性質を持ってる者よ?もっとも、今じゃその血はほとんど絶えちゃって、あたしも一人くらいしか巡り合えてないんだけどね・・』
     急に紙の上の内容がリアルなものになる。ゴーストポケモンもやっぱりいろいろあるんだ・・。
    『リリもあたしも相当変わり種・・』
     あれ、切れてる。・・・ゲンガ―が紙をひったくった。あー、もしかして独り言か何かだったんだろうか。いつもの癖で訳しちゃったのかな。
     メリークリスマスイブー、とか言いながら送りだす。ふわりとムウマージは去っていった。
     やれやれ、一息ついた。朝飯食って仕事いこ。


     職場に行く自転車の上で気がついた。
    「ピエトロって男性名詞じゃん?」

    ――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  本当はもっときとかげさん所のリリさんと絡めたかったけど難しかった――!
    別のお話しでまたお借りすると思います。

    【ピートは♂ですよ?】
    【何しても良いよ】
    【きとかげ様お借りしました】


      [No.2144] 特 定 し た 投稿者:No.017   投稿日:2011/12/24(Sat) 19:14:54     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > ワタクシだけが ポケモンを つかえれば よいのです!」

    特定したwwww
    クリスマスでもこの安定感wwww


      [No.2143] 私があの子達と出会った訳 投稿者:akuro   投稿日:2011/12/24(Sat) 18:43:54     74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ピピピピ……ピピピピ……カチッ!

     私は目覚まし時計を止めると、ガバッと起き上がった。

     「ついに、この日が来た……!」

     ーーポケモンと、旅に出られる日が!

     一週間前、私は幼なじみのレオンと共に町外れのシンジ湖へと行き、そこで初めてのポケモンバトルを体験した。
     私の助言を聞かずに草むらへと入ったレオンを追いかけ、鳥ポケモンと遭遇したっていう……。
     慌てて逃げようとして、そこにあった誰かのカバンに躓いて転ぶとか、恥ずかしすぎる。
     でもその拍子にカバンから出てきた2つのモンスターボールの中のポケモンで、私達はなんとか鳥ポケモンを倒せた。 私は青いポケモンを、レオンは緑のポケモンを使って。

     それからフタバに帰る途中に、私達の使ったポケモンの持ち主……ナナカマド博士に、そのポケモンを託された。
     嬉しかった。 ポケモンと旅に出られることになったから。

     その事をジョウトに住んでるいとこに話したら、ポケモンをプレゼントしてくれるって言われた。 私はいいと言ったんだけどいとこの……ヒバナさんはどうしてもプレゼントすると言いはった。 まったく頑固なんだから。
     それで一週間後にシンオウに行くと言ってたから、旅立ちはその日……つまり、今日に決まった。

     私は服を着替えて、一階へと降りる。 この家ともしばらくお別れか……少し寂しい。

    「あらシュカ。 おはよう」
    「おはよーお母さん。 ヒバナさん、今日いつ来るって?」
    「9時には来るって言ってたわよ」
     私は時計を見た。 今は7時……ってことはあと2時間か。

    「さあ、朝ご飯にしましょう! 今日からしばらく会えないから、シュカの好きな物、たくさん作ったわよ!」
    「わあ、ありがとう! いただきまーす」



     朝食を食べ終えた私は、荷物を確認した。 財布に、きずぐすりをいくつか。 それから相棒が入ったモンスターボールを腰のベルトに付けた。 ポッチャマというらしいこのポケモンを、私はうみなと名付けた。 

     ピンポーン……

     あ、チャイム。 ヒバナさんが来たのかな。 私は急いで一階に降りて、ドアを開ける。

    「やっほーシュカ久しぶり! 元気だった?」
    「……」

     あれ、ヒバナさんの隣に知らないトレーナーさんが。 誰だろう……?

    「あ、この子はエンジュ! 私のトレーナー仲間なの♪」
    「ヒバナ、なんで私までシンオウに来なきゃなんないのよ。 あなたがシュカ? 私はエンジュ。 よろしく」
    「よ……よろしくお願いします」
     私はエンジュさんに向かって軽く頭を下げた。 なんか気難しそうな人だな……

     それから私達はテーブルに座って、軽く話をした。 なんでもエンジュさんはホウエン地方のトレーナーらしく、ヒバナさんに頼まれて私にプレゼントしてくれるポケモンを捕まえてくれたらしい。 って、ことは……?
     「はい、これ♪」
     ヒバナさんが差し出したのは、2つのハイパーボール。
    「え、2体も……ですか?」
    「うん、そう!」
    「いや、そんなに貰う訳には……」
    「せっかく捕まえたんだから! はい♪」
     そう言ってヒバナさんは私の手にボールを押し付けた。
    「右のボールがロコンのひばな! 左のボールがマイナンのらいむだよ!」
     そう言われたので見てみると、可愛い顔をして眠っている小さな狐と、ニコニコと笑ってる青い耳の兎がいた。
    「わあ……可愛い! ありがとうございます!」
    「どーいたしまして! じゃあ私はそろそろ行かなきゃ! エンジュ、あとよろしく!」
     そう言ってヒバナさんは家を飛び出していった。
    「え、もう行くんですかっ!?」
    「ヒバナ、ウツギ博士から電話が来て、すぐ帰らないといけなくなったんだって。 私ももう帰るわね……」
     エンジュさんがため息をつきながら立ち上がった。
    「あ、あの!」
     私はヒバナさんに深くお辞儀した。
    「ありがとうございました!」

    「……楽しんでね」
    エンジュさんはそう呟き、帰っていった。



     私はお母さんに見送られて、フタバタウンを出発した。 腰には3つのボールが揺れている。
     これからどんなことが起こるんだろう……私の胸は喜びと期待に満ち溢れていた。

     

    [好きにしてください]


      [No.2142] ポケモンニュース 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2011/12/24(Sat) 16:07:52     71clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    6時になりました、ニュースの時間です。

    今日はクリスマスイブ。各地でお祝いをする中、あるポケモンの需要が増えているそうです。ではVTRをどうぞ。


    『ご覧ください、全国へ次々とキュウコンが送られていきます!』

    クリスマスを1人で過ごす人達が、せめてホワイトクリスマスは防ごうと、日照りの特性を持つキュウコンのレンタルを盛んに行っているのです。トレーナーが受け取らなかったタマゴを孵して販売する業者によりますと、こうした動きは急速に広まっているそうです。クリスマスのみならず、七夕を妨害するためにサーナイトのブラックホールを利用する人もいるとのこと。個人の不満を晴らすためにポケモンを利用することについては賛否両論挙がっていますが、ネットでは「キュウコンもふもふするくらい良いじゃねえか」「んなこと言ったらバトルできねえだろwww」「ワタクシだけが ポケモンを つかえれば よいのです!」と、概ね好意的に受け取っている模様。

    ともかく、クリスマスは楽しみたいもの。皆さんもポケモンと過ごしてみてはどうでしょうか?





    七夕の時もそうでしたが、突発的なネタは足りない部分を補い辛いです。メディアがネットを引用したがるのが解りますよ、楽ですもん。


      [No.2141] 1224 投稿者:紀成   投稿日:2011/12/24(Sat) 11:24:42     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    昔々、火の血を継ぐ家に二人の女の子が産まれました
    双子ではありません、二つほど歳の離れた姉妹
    上の子の名前は光江、下の子の名前は光葉といいました

    大きくなるにつれ、二人の違いが嫌でも見えるようになりました
    光江はとても頭が良い子でしたが、性格があまりよくありませんでした
    光葉はとても優しい子でしたが、頭があまりよくありませんでした
    彼女らを取り巻く男は、皆光葉を愛でるようになりました
    光江はそれにとても怒り、嫉妬するようになりました

    大学を出た後、光江は光葉より先に親の決めた相手と結婚しました
    一方光葉は大学で知り合った男と結婚し、そのまま家を出て行きました
    そこで初めて光江は妹に勝ったと思いました 家を捨てた女ほど愚かな物はないと、
    ――その時はそう思いました

    ですがやはり妹には勝てなかったのです

    …………………………

    世間ではクリスマス・イヴ。人々は皆、何処か浮き足立った様子で街を歩く。着飾った街はそんな彼らを優しく見守っているように見える。
    その空間の中で、人には見えない何者かが大量に動き回っていた。揃いの帽子を被り、揃いの鞄を提げ、ビルとビルの間を飛び回る。
    時折、鞄の中から何かを取り出す。それは手紙であったり、小包だったりする。
    『ゲンガーの宅急便』…… 人で知っている物は数少ない、主にポケモンを対象とした宅急便である。
    どんな悪路でも簡単にすり抜けてしまうゲンガー達が荷物を運ぶ。噂では大金持ちのポケモンもリピーターになっているという噂である。
    冷たいビル風が彼らを吹き飛ばそうとする。だが彼らも負けてはいられない。今日は一年のうちで一番の稼ぎ時なのだ。必死で鞄の蓋を押さえ、中の配達品が飛ばないように踏ん張る。


    「今日は……なんだか風がいやに鳴いていますね」
    カフェ・GEK1994の店内。カウンター席に座ってゼクロムを啜っていたミドリがぽつりと言った。その言葉を耳にしたユエが外を見る。
    「そうね。なんだか誰かを呼んでいるみたい」
    「幽霊ですか!?都市伝説にある、事故で子供を亡くした母親が今でも我が子を呼んでいるという――」
    「そんな都市伝説、初めて聞いたわよ」
    オカルト好きの店員が興奮して喋りだした。ユエはふと去年の今頃を思い出していた。マスターは元気かしら。こちらからも何かプレゼントをしたいんだけど、住所が分からない限りは何も出来ないのよね。
    「……」
    ユエのハイネックのセーターには、今朝マスターから届いたプレゼント…… 『不思議の国のアリス』をモチーフにしたブローチがついていた。

    ジャローダは目を細めた。ミドリがいないこの時間帯が、一番彼らに来てもらうのに都合がいい。何しろその存在は、一般人には知られてはいけないのだから。
    『いつも贔屓にしていただき、ありがとうございます』
    『こちらこそ。いつも時間指定が厳しくて、すまない』
    『いえ…… それで、今回はこの二点ですか』
    ゲンガーがジャローダの尾の上に乗せられた二つの小箱を見た。
    『ああ。片方はミナモシティに、もう片方は』
    『分かっております。彼女宛、ですね』

    十二月二十四日が国際的イベントの日だと知っている者は多いが、巷を騒がせている怪人―― ファントムの誕生日だということを知る者は、少ない。
    ジョウト、エンジュシティの外れにある洋館で、彼女はプレゼントに埋もれていた。
    「……何処から伝わったんだか」
    花束、美しくラッピングされた箱の数々。それの一つ一つを彼女は慣れた手つきで空けていく。
    『手伝うか』
    「いや、いい。モルテは少し休んでて」
    モルテの体は疲労していた。宙に浮いていることすら辛そうな顔をしている。ヨノワールの表情なんて普通の人が見ても分からないのだが、彼女には分かった。長い付き合いだからか……
    『しかし、すごい量だな』
    「そうだね」
    話が続かない。モルテは焦った。
    「あそこにいた頃も色々貰ったけど…… 冷たかったな」
    『冷たい?』
    「所詮はあそこの人間ってフィルターをかけられるんだ。何も篭っていない、無機質な何か」
    手を休めて、テーブルの上の花束のうちの一つをとる。時期に合わない明るい黄色。向日葵。
    「一体どこから取って来たのかはしらないけど…… これが一番気に入ったよ」
    『そうか』

    青い空と白い巨大な入道雲。色鮮やかな向日葵たち。そこに、彼女は立っていた。
    笑顔で。

    「もう、残っているのはここだけになっちゃったな」
    花束を抱きしめ、彼女は呟いた。


    ………………………………
    光江は子供を産めない身体だったのです
    焦った彼女の父親は、もう一人の娘に子供ができていることを突き止めました
    そしてその子を自分の孫として家に呼ぶことにしたのです

    光江はその子を養子としましたが、あくまで外側だけ
    内側はその子を憎み、殺したいという気持ちが渦巻いていました
    ですが、その子を殺すことは最期まで出来ませんでした

    彼女は、別の何かに見初められていたのです
    本当に血を継いでいたのは、彼女だったのです


      [No.2140] With Heart and Voice 2 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/12/24(Sat) 00:26:08     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     すれ違う度、それには気付いていた。

     垣根を軽く乗り越えて、いつものように元気よく。窓から見る彼女は外で見るよりもずっと暗く見えた。
    「ハルカ!」
     顔をあげるけれど、やはりいつもの彼女ではない。そんなことは解っていた。
    「ユウキ!」
     庭先にも関わらず、ユウキは話しだす。
    「今は暇? 今度バトルフロンティアっていう施設が出来るんだけど、その先行公開でバトルタワーのチャレンジチケットがもらえたんだ。行こうよ」
    「悪いけど……」
    「んじゃ、ミナモシティなー! 先いって待ってっから!」
     言うが速い。ユウキはすでにオオスバメの翼を大空へと広げ、その身軽な動きで飛んで行ってしまう。残されたハルカはオオスバメが消えていく方向を見て、ためいきをついた。
    「そんな気分じゃないのに」
     庭にモンスターボールを投げる。緑色のしっぽを振り、フライゴンはハルカに寄ってくる。その無邪気な行動も、今のハルカにとってどうでもいいこと。二枚の羽が作り出す微風が肩にかかる。いつもフライゴンはそうやって甘えてくる。
    「ミナモシティに行くよ」
     フライゴンの風を手で払いのける。戸惑いながらもフライゴンは主人の言う通りに空を飛ぶ。


     近づくに連れて、潮風が強くなる。そしてミナモデパートのアドバルーンも見えてきた。あの時とは違う宣伝が上がってる。
    ーきみのこと、いいと思うよー
     活気のある街。夜になれば灯台の光が海を照らし、道しるべとなる。キャモメの群れが港を飛んで行き、旋回して海へと突っ込む。そうして海面に出たキャモメは、嘴に魚をくわえていた。
    ー修行を続ければ、いつかはポケモンリーグのチャンピオンにだってなれる。僕はそう思うなー
    「うるさい!」
     ミナモシティに降りると同時に、ハルカは誰に向かってでもなく怒鳴った。フライゴンはおそるおそるハルカの顔色を伺う。そして機嫌を取るように、二枚の羽を動かした。しかしフライゴンの微風よりも潮風の方が強く、かき消されてしまう。
     フライゴンの気遣いはハルカに届かない。前は些細なことでもほめてくれたし、かまってくれたのに。何が起きたか解らないフライゴンは、そのままボールに戻される。


    「でさー、この前は釣りしてたらイワシとホエルコの追いかけっこ見たんだよ。野生のホエルコの狩りって映像でしか見た事無いからさあ」
     ユウキは船着き場の前からずっとこんな調子でハルカに喋りかけていた。当のハルカは生返事でひたすら聞き流している。さっきからユウキにしては話題がくるくると変わっている。聞いてる方も今、彼が何を話したいのかもよくわからない。
    「ハジツゲタウンにまた隕石が降ったっていうから、調査で……」
    「ユウキ、さっきから何?」
    「え、何って何?」
    「うるさいよ」
     それ以降、ユウキは黙ってしまった。ハルカはというと、そんなユウキの方を見向きもせずに、海の方を見ていた。


     まだ建設中のバトルフロンティアだけど、建物の形はそれなりに見えた。そしてその中で一番早く出来たバトルタワーは、青い空を突き抜けるほどの高さだ。船を降りた二人はしばらく上を見上げ、そして人の波に促されるように入って行く。
    「がんばれよハルカ!」
     人ごみに消えていくハルカの後ろ姿に声をかける。振り返ることもなく、ハルカは彼らの中にまぎれていった。
    「なにがあったんだよ、ポケモンリーグで」
     笑わなくなったのはその時から。ポケモンに構わなくなったのはその時から。誰ともまともに話してくれなくなったのも。何か聞き出そうとしても、ハルカは誰にも話さない。
     その前は、朝会おうが夜中に電話しようがずっと嬉しそうだったのに。ポケモンの話ならすぐに返ってくるし、戦ったトレーナーの話も飽きずに。


     オオスバメがはばたく。戦ったあとの昼食は格別だと言うように。隣には主人のユウキが向かい合ってテーブルについてる。ただならぬ雰囲気を察したのか、オオスバメはそれ以降ユウキの方を見ることもなく大人しく食事していた。
    ーなるほど、君の戦い方面白いねー
    「七連勝おめでとう」
     目の前のハンバーガーにかぶりつきながら、ハルカに言う。何も言わず彼女はストローをくわえていた。その行動に、意味があるわけがない。視線がチーズがたくさんのハンバーガーでも、ユウキでもない。どこか宙を漂っている。
    「いやー、ハルカはすげえよ。やっぱチャンピオンを倒しただけあるよ。俺なんて五勝目がつらくて、そのあとずっとギリギリで……」
     ユウキは黙る。ハルカがさらに黙りこんでしまったように見えた。
    ー大丈夫!君と君のポケモンなら、何が起きても上手くやれる。僕はそう信じているー
    「残念だよな、チャンピオンになれなくて。ホウエンで誰よりも強いのに、年齢制限なんてさ」
    「実力主義とかいいながら、結局は年齢とか、意外だったよなあ」
    「今頃チャンピオンだった人はどうなってるんだろうなあ。地位が守れてよかったとか、そんなこと思ってんのかなあ」
    「ダイゴさんはそんなこと思う人じゃない!」
     テーブルがひっくり返る勢いで、ハルカが拳を叩き付けた。ジュースの紙カップが握りつぶされている。まわりの客が何が起きたと言わんばかりにこちらを一斉に見た。
    「ユウキに何が解るの? ユウキに何が解ってそんなこと言えるの? 何も解らないのに勝手なことばかり!」
    「そんなこと思ってたらとっくにダイゴさんは帰ってきてる。何も言わないでいなくなったりしない!」
     テーブルにこぼれたジュースが広がっている。ユウキもハルカもそんなものに気がついてない。時間が凍り付いていた。いきなりハルカから溢れ出す悲しい感情に、ユウキも言葉が出ない。なぐさめようにも、何も言えない。
    「チャンピオンなんて欲しくない! 私がならないことで帰ってくるならそんなものいらない!」
    「いらない。だから、帰って来て欲しい」
     ハルカの声がだんだんと小さくなる。その願いがかなわないことは、何も解らないユウキでも容易に想像がついた。
    「ハルカ……」
     少しの間を開けた。一呼吸おくと、うつむいてる彼女に話しかける。
    「その人のこと、好きなの? ハルカらしくない」
    「どんな環境だってそのまま入っていけるのに、なんで出来ないの?」
    「同じポケモンの道を通ってる人なのに、永遠に会えないわけないだろ!? ここで俺に言うよりも、やる事あるんじゃないのかよ」
     ハルカがユウキを見た。今日会ってから初めて目が合う。
    「会いたいなら、同じ道を通り続けろよ。その人が残した足跡を辿り続けろよ。それでたどり着けなかったら、もう一度俺に言えばいいだろ。本当に、ハルカらしくない」
    「どうやって? どうしたらいいのかなんて解らないよ!」
    「俺なんてもっと知るか。その人のこと知らねえのに、言うことなんで出来るか」
    「言うは簡単に決まってる。出来るか出来ないかが問題なんじゃないの!」
    「だからハルカらしくないっていってるんだろ!」
     ポケモンを使わない実力行使の取っ組み合いに、道行く人は思わず足を止める。オオスバメはどうやって止めようか外からずっと見守っていた。ポケモンが尻込みしてしまうくらい、二人の殺気が凄かった。
     やがて警備員の人が来て二人を引きはがす。なぜこうなったのか解らないほど、二人の主張は変わり過ぎていた。


     帰りの船で、おたがいの頬には赤い跡や青い跡。そして近くにいるのに二人は絶対に顔を見ようとしなかった。同じことを思っていたのだ。先に謝るなら許してやると。手を出したのはお互い様で、悪いことだと認識しているのに、どうしても先に謝ろうとは思えない。
    「あのな」「だから」
     視線を感じて振り向いたのに。二人は同じタイミングで話しかけていた。それがおかしくて、思わず笑い出す。その笑いが落ち着いた頃、ハルカが話しかける。
    「ユウキの言う通りだよ」
    「何が?」
    「ダイゴさんがいなくなって動揺してた。そうだよ、ダイゴさんだってトレーナーだもん。いつかこの道を辿っていけば、また絶対会える」
    「だろ? どう考えてもそんな強い人なんてそうそういないんだからさ」
    「うん、だから明日からちょっとまた出かけてくる! 次会う時はまた私が勝たせてもらおうっと」
     着岸のアナウンスを流す。ハルカが跳ぶように出口へと駆ける。
    「だから今日はミナモデパートで買い物するから先に帰ってて! じゃあね!」
    「お、おう……立ち直り早いなぁ……」
     いつものハルカに戻った。ユウキはため息をつく。

    「なあ、こんなことってないよなあ、オオスバメ」
     引っ越してきた当日に、ポケモンを貰って、大喜びで見せて来た。目指すものが違うとしても、同じトレーナーとして何度か戦って来た。
     ポケモンに指示する時の凛々しい声、プレゼントしたときの嬉しそうな声。
     勝った時の嬉しそうな表情。進化したと報告してきた時の電話。
     ずっと前から気付いてたんだ。それなのにハルカは気付かない。気付かないどころか……。
    「初恋が実らないのは、本当だったんだな」
     ユウキはミシロタウンへと帰る。オオスバメの翼に乗って。



    ーーーーーーーーーーーー
    ウィズハートメモ(プロット?)
    テーマ「ダンバルと手紙」
    読む対象:マサポケの人たち中心(恋愛描写は極力避ける)
    3−1−3もしくは3−3−3
    カプ厨を避ける。ギリギリまでうすくする
    ダイゴとハルカのキャラを濃く描写せず、読む人の想像に任せる
    「初恋は実らない」ダイゴハルカ以外の誰かに言わせる

    ウィズハートについて。
    原曲:With Heart and Voice(デイヴィットギリングハム作曲)参考音源http://www.youtube.com/watch?v=05n35_VUEG4
    フルートソロに当たるハルカの描写を重視。二回目のフルートソロまで。2回目のフルートソロに入ってくるアルトサックスはユウキにあてる。
    メインテーマを好きだと自覚するあたりにする。
    クラリネットとフルートのは戦闘シーンに持ってくる→はじけるところは手紙をみたあたりに。


    その他テーマ候補。
    ハピナスの送り人(ポケスコ没としていつか投稿した)
    送り火やま
    オーレからホウエンへ、ダークポケモン

    こんなメモをしたらこんなのできたよ!
    2は、2回目フルートソロからラストまで。
    チャンピオン戦後にユウキが出せない理由その1
    人間関係ってどうしてこうすんなりいかないのか、不思議なもんです。


      [No.2139] ついか後書き 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/12/23(Fri) 18:42:28     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     吹雪の中、物凄いエネルギッシュに駆け抜けるものがかきたくて、気付いたら書き始めてから2時間で出来たクオリティ。
     しかも書いたのが携帯だったので、途中で色々すっこぬけてます。
     ちなみに9995字、携帯の送信ボックスの容量ギリギリでした。
     
    ツグミとゾロアークがついたのは、誕生祭の前夜。だからどこも家族と過ごすから泊めてくれなかった。
    翌日に教会に集まったのは、誕生祭当日のため。
    クリスマスは意識した。
    ジングルベルという一瞬ほんわかしたものを想像させておきながらの孵化廃人クオリティ。

     ヨーロッパの昔ながらのクリスマスも書きたかったが、それはまたの機会にしよう。


    実は、パソコンがしばらく不通だったため、代わりに投稿していただきました。その節は本当にお世話になりました。重ねてお礼申し上げます。


    ーーーーーーーー
    つまりパソコン使えるようになったよやたー


      [No.2138] 雪国ポケモンの憂欝 投稿者:リナ   投稿日:2011/12/23(Fri) 11:57:11     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     第一印象は最悪でしたわ。

     ポケモンのことなんてこれっぽっちも知らない、つい最近やっとおしめがとれたような小娘――そんな感じ。あなたはその身体には大きすぎるダッフルコートに赤い手袋を着けて、寒さで頬を真っ赤にしながら、パパに手を引かれてワタクシの住んでいた雪山のふもとにやってきましたわね。どうしてこのワタクシがあんな「へなちょこボール」で捕まってしまったのか、今思うと不思議でなりません。そのまま町まで連れられて、"晴れて"あなたの家族となったワタクシは、ずっと心の中で思い描いていた自由な未来が音を立てて崩れ落ちてしまった気がして、それはもう茫然としていましたわ。

     この辺りの冬は人間には堪えるのでしょうけど、ワタクシ暑いのは苦手ですの。これ以上暖房の設定温度を上げるのは止めてくださる? 全くあなたは案の定、ポケモンについては何ひとつ知らない素人でしたわね。いくらワタクシでもかき氷だけで生活できるわけなくてよ。だからってこんな熱いコンソメスープ、飲めるわけないじゃない! チゲ鍋?! 冗談もいい加減にして。あなたのお父様がすぐに図鑑を買ってきてくれたから、ワタクシも一命を取り留めましたわ。いかにあなたの育て方が間違っていたか、お分かりになって?

     それからというもの、あなたは真冬だというのに自分の部屋の暖房を切って、窓を開け放って生活してくれましたわね。ご飯もちゃんと冷ましてから持ってきてくれましたし、だんだんとワタクシの好みの味も分かってくれましたわ。

     あなたは部屋の中だというのにいつものダッフルコートを着て、赤い手袋を着けて、ガタガタ震えながらワタクシの頭を撫でて「つめたい!」とはしゃいでましたわね。唇――青くなってますわ。お母様がお叱りになるのも当り前です。なにもそこまでしてなんて言ってませんわ。あなたの方が身体を壊してしまいますのに、なんて馬鹿な子。

     お母様に叱られて、渋々窓を閉めるあなたを見ていたワタクシは目を疑いましたわ。お母様が部屋から出たのを見計らって、すぐにまた窓を開けてしまったのですもの。外は雪が降っていて、部屋の中にも吹き込んでいましたわ。そしてあなたはというと、叱られたせいで潤んでいる目を擦りながらワタクシの方を振り返って「あつくない?」なんて。

     どうして泣いているのに、そんなにも満面の笑顔を見せますの。
     
     あなたはいくつか冬を越えて、みるみるうちに背が伸びて、いつの間にかワタクシの方があなたを見上げるまでになりましたわ。

     中学生のあなたは、時々学校の帰り道に少ないお小遣いでアイスクリームを二本買って、いつもワタクシに一本くださいましたわ。特にあの、中にあずきの入った白いアイスクリームは他のものより少し値が張るけれど、ワタクシたちの一番のお気に入りでしたから、月に一回だけと決めて楽しみにしていましたわね。今でもあの絶妙な甘さを、ワタクシの舌が覚えています。

     高校生になったあなたは少しお父様やお母様に対する言葉づかいが悪くなって、化粧も覚えて、中学生の頃とはがらりと印象が変わりましたわ。勉強に恋愛、他にも色んなことに日々悩んでいるあなたの背中を見て、ワタクシはどうしていいものやら気を揉んでいた記憶があります。アイスクリームを卒業したかわりに、あなたは携帯電話の画面に毎日噛り付いていました。ワタクシとしても、あの頃はそれなりに寂しかったような気がしますわ――い、いえ、別にそんなこともなかった気がします。ええ。

     高校を出てからのあなたは、自分のことでずっと迷っていました――少なくともワタクシにはそう見えましたわ。アルバイトをしながら、色々なものに手を出して、また手放して、また別のものに興味を持って、また捨てて、飽きっぽくて続かない自分の性格を嘆いていましたわね。ワタクシは何かして差し上げようにも、結局できることはそばにいることだけでした。

     あれから数年が経ちました。あなたはひとつの決断をしましたわ。全くあなたらしい、今一つぱっとしない顔で。

     まだ、あなたは迷っているのですか? もしそうでしたら、あまり考えすぎないのも一つの手かもしれませんわ。

     なぜかって? それはもちろん、あなたが白いドレスにこうして身を包んでいるのは、あの日ワタクシがあの「へなちょこボール」で捕まってしまったのと、全く同じことだからです。

     全く、ワタクシはユキメノコとして実に不自由な生き方をしてきましたわ。これも全部あなたのせいです。
     この責任は、これからもずっとあなたが負っていることを決してお忘れなく。

    「ねえゾーイ、あたしホントにこのままあの人と幸せになれるのかなぁ?」

     そんなこと知りませんわ。全くこんな年になってもまだうだうだ言って。見てて腹が立ちますわ。

     うまくいくかどうかなんて、そんなものあなたたち次第です。

     どちらにせよ、ワタクシはずっとあなたのそばにいますから。



     ――ほら! 結婚式なんだから、もっとしゃんとなさい!

    【めのこーめのこーめのこー】


      [No.2137] Re: 自分の単行本を妄想するスレ 投稿者:音色   投稿日:2011/12/22(Thu) 23:26:06     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > そこは是非御自分のでお願い致します(真顔

     そんなわけで少し真面目に自分の奴を妄想してみる。

    ●『ゴ―スを掃除機で吸いこんだ』

    【帯】
     ガスなんだから吸い込めますよね、たぶん。

    【目次】
    ・ゴ―スを掃除機で吸いこんだ
    ・ゴーストにデートに誘われた
    ・ゲンガーがケーキを作ると言いだした
    ・ムウマとショッピングに行ってみた
    ・よるのさかもり(書きおろし)

    【余談(あとがき)】
    【続刊予告】
    ・チョロネコヤマトの特急便
    ・地元だって集まるさ
    ・イッシュゴースト博覧会

     いい加減このゴーストシリーズどうにかしたい。年内に完結させる予定がムウマージで詰まってずるずると・・・。
     目標:31日までにこれ完結。

    【嘘予告】
    ・ゼニカネッ!
    『ある一つの探検隊が世界を救った・・・それから数世代後、金に五月蝿いニャース:ニックとペアを組むことになったゼニガメ:メイル(通称ジェニー)。幼馴染の保安官や未来から来た執行人を交え、彼等の金儲けはどこへ行く!?』
    ※こんな話になるかどうかは未定です。

    ●雑音戯曲集

    【帯】
    ポケモンの世界にひょっとしたらあるかもしれない戯曲集。

    【目次】
    ・煉獄姫(手直し)
    ・疫病神、憑きます(書きおろし)
    ・火喰らい(書きおろし)

    ・余談

     ようするにカクライさんのエピソードですよ。はい。戯曲が書きたい
     
     ・・・ここまで書いといてなんですが、上手いこと妄想ってできねぇぇ・・。


    > 『鞄』シリーズマジ切望……! あれが現在に至るまででの至高のザンハブ小説である事は論を待たねぇしなぁ(苦笑)

     ・・・ちょっと妄想してみるか。

    ●鞄

    【帯】
     思いつきません。スピンオフです。

    【目次】
    ・鞄
    ・空
    ・雨
    ・晴
    ・閃(書きおろし)
     
    ・余談

    【嘘予告】
    ・(タイトル未定)
    『カメラは現実を枠に沿って切り取る。切り取ったからには、そこに何かがある。青年は己が切り取ったモノを求めてあるく』

     鞄に出てくる彼女の正式な本編的な何か。

    【正直、『鞄』はあれ単品で勝負したほうがいいんじゃないかって気はする。うっすいことになりそうだけど】


      [No.2136] 無理ぽ 投稿者:小春   投稿日:2011/12/22(Thu) 22:04:59     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     無理。
     無理な気がする。
     俺の前――というか、ロトムの前に置かれたものを見て、俺は無謀なチャレンジャーの気分だった。

    「ばあちゃん。……これ、なに?」

    「冷蔵庫よ」

     ばあちゃんは至極まっとうな答えを返してくれた。
     そう、ロトムの前に置かれているのは冷蔵庫だ。ばあちゃん曰く、一昔前の。

    「上に氷を載せて冷やすのよ」

     うん。知ってる。これ、懐かしの生活展で展示されてた。
     ロトムは冷蔵庫でフォルムチェンジするけど、こいつでできるのか? 無理だろ、どう考えても。というか、これは家“電”なのか。電気はどこで使うんだ。

    「ばあちゃん。俺、これは無理だと思う……」

    「あらぁ、でもロトムちゃんは冷蔵庫で形が変わるんでしょう? これも立派な冷蔵庫よ、だから大丈夫」

     期待に充ち満ちた目で、ばあちゃんはロトムを見る。見られたロトムは助けてくれとばかりに俺を見るが、どうしてやることもできない。言い出したら聞かないひとなのだ、ばあちゃんは。

    「さあロトムちゃん。頑張ってちょうだいね!」

     行け、ロトム。お前も男だ。性別不明だけど。やればできる! てか、見てみたい。木製の冷蔵庫に収まったロトムの姿を。
     俺も期待を込めてロトムを見つめる。ばあちゃんも期待を込めてロトムを見つめる。
     逃げ道はないと悟ったのか、はたまた腹をくくったのか、ロトムがごきゅっと妙な音を立てて動いた。

     ロトムの手(っぽい部分)が木製の冷蔵庫に触れた――!

    ☆★☆★☆★

     家電じゃない家電を差し出されたらロトムはどうするか。
     ふつうにフォルムチェンジできるのか、あの形状のままフォルムチェンジするのか、はたまたフォルムチェンジは無理か。
     逃げ出すと見せかけてジャンピング土下座――からの

    【バトンタッチ!】


      [No.2135] 違和感 投稿者:紀成   投稿日:2011/12/21(Wed) 13:00:45     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「ユエさん、何か暑くありませんか、ここ」
    「暖房が効きすぎているのかしら。まあ紅茶も飲んでいるしねえ…… かと言って暖房止めたらそれはそれでまた寒くなるだろうし」
    「何か話でもしてくださいよ、ちょっと冷える話」
    「んー…… じゃあ私が中学生の時に聞いた話でもしましょうか。私の担任は国語の先生で、大学は登山部でもあったの。その人の友達が経験した話よ」


    えっと、その人はその日自分を入れた五人の仲間と一緒に登山していたんだって。かなり高い山で、上に行くに連れて天候が荒れて吹雪いてきたらしいの。皆は足元に気をつけて万全の体制で登っていたんだって。
    だけどね、途中で一人の人が行方が分からなくなってしまったらしいの。この天気でしょ。山で命を落とす人ってやっぱり多いらしいわ。それで下手に探そうとしたら自分達も危ないってことで、涙を呑んで残りの四人は歩き続けたんだって。
    それで、中盤あたりで小さな小屋を見つけたんだって。暖房もない、真っ暗な空間。このまま休んだり眠ってしまったらそれこそ全滅しちゃうって思って、あることをしたの。
    ――それは、四人が小屋のそれぞれの四隅に立って、一晩中相手の手にタッチし続けること。つまり、壁に沿って歩いて、次の隅にいる人にタッチする。そうされた人はまた壁に沿って歩いて、次の人にタッチする。
    それを繰り返して、その四人は翌日無事に登山を終えて戻って来れたらしいわ。


    「へー…… すごい根性ですね」
    「でもそこまでヒヤリとは」
    「あら、分からない?」

    静かな空間に、カップを置いた音が響いた。

    「よく考えて。四隅に一人ずつ。自分が相手の手に触れようとすることで、当然自分の後ろには誰もいなくなる。次の隅の人にタッチすれば、その隅には自分が来る。そう繰り返していくと、何が起きるか」
    「えっと……」

    Aが始めにBにタッチする。四隅を1、2、3、4と振り分けておく。1にいたAは2に行き、2にいたBは3にいたCにタッチする。Cは4にいるDにタッチして――

    ……あれ?

    「Dは、誰にタッチするんですか」



    ――――――――
    わざとここで終わらす。国語科の先生に聞いた話。いやー、登山部OBの話ほど恐い物はないね☆(と、場を明るくしてみる)
    ちなみにまだあるけど恐いんでやめておきます

    【何をしてもいいのよ】


      [No.2134] Re: 自分の単行本を妄想するスレ 投稿者:風間深織   投稿日:2011/12/21(Wed) 00:14:24     74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    絵本が描きたいです。

    絵本「へびじゃないもん」
    個人的に今一番絵本にしたい作品。
    ミニリュウはへびでもなめくじでもありません。竜です。

    イラスト集「鏡の彼」「月の光」
    017さんのRainy dayみたいな感じになればいいと思う。「月の光」はもうずいぶん前に書いた「鏡の彼」の続編にあたるお話。

    イラスト集「586さんのキャラを3ミリ程度にまとめてみた、だけだった(仮)」←やりません
    私もイグゼと一緒にめいみちゃんを探しにいきたいんですけどどうしたらいいですか。

    ※イラスト集はすべてマステで貼ります。


    というなんという願望w


      [No.2133] Re: 電気信号 投稿者:No.017   投稿日:2011/12/20(Tue) 19:43:35     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    アングラな臭いがする。
    ああ、なんか都市伝説になってそうでいいなぁ。
    嗅覚が無いってとこの表現がいいと思った。


      [No.2132] 電気信号 投稿者:ピッチ   投稿日:2011/12/19(Mon) 22:12:33     86clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     それはある種の都市伝説だった。殺し屋、それもアングラ系インターネットの掲示板でだけ接触できるなどというのは、一歩間違わなくても既に厨二病などと馬鹿にされる発想である。

    「……今日未明、コガネシティアオギ通りの交差点でマッハ自転車による交通事故が発生し二人が重傷を……」

     殺し屋になど頼まなくても死の可能性などそこら中に転がっている。誰も気がつかないだけで。
     その日その日の自分の選択が自分の運命を決めていて、生きている限り自分の手で死に繋がる糸を辿り続けているようなものだというのに。
     そんなに他人を死に急がせたいのか。そんなにも他人に死を願うのか。
     自分の事など一切合切棚に上げて。

    「……一人に命の別状はないということですが、もう一人は現在も意識不明で……」

     人間が生きているのなんてただ単に電気信号のルートがあるだけだ。思考すること、身体を動かすこと、生きていることそのものを認識すること。そのすべてに電気信号が関わっていて、例えば心臓に向かう微細電流を少し止めれば人間なんて軽く死んでしまう。
     脆い。実に脆いタンパク質の塊だ。一般的生物に似通ったものという条件をつければポケモンも似たようなものだが、それにしたって脆弱に過ぎる。

    「……続いてのニュースです。ヒワマキシティ在住の11歳のポケモントレーナーが、手持ちのグラエナに噛みつかれ死亡するという事件が……」

     ポケモンの牙の一噛みにも、刹那の電流にも耐えられない。そのくせ、どこまでもその技の力を、殺傷力を上げるように要求して、それが通らなければ容赦無く罵倒を浴びせたり、捨ててしまったりする。人間の中でも、ポケモントレーナーというのは実に奇妙な存在だ。
     自分がその鍛え上げた技の対象になったら到底生きては帰れないというのに。

     ピピッと無味乾燥な電子音が、私のテレビからの声に割って入る。メールの着信。人の声は時折ヒステリックに、あるいは無意味な明るさで私の耳に障る。これくらいの電子音が丁度耳に合う。そうでないのは、ニュースを読み上げるアナウンサーの平坦な声くらいだ。

    「最近は多いな」
    「書き込みが多くなってねぇ」

     向かいのパソコンから顔を出すポリゴンZは、ポリゴン種であるくせに私よりも生物らしい表情を持っているように思える。
     それもプログラムか。予定された通りに電気信号が走り回っているだけか。それを思えば、人間の中に発生する「自然な」感情とやらも似たようなものだろう。あれも所詮、神経細胞の集合体の中を走り回る電流に過ぎない。

    「サーバの6660から接続で、大体3時頃までいつも触っているらしい。一人暮らしのようだから、何か無い限りバレやしないだろう」
    「了解した」

     テレビから抜け出る。電子らしくない感覚は、この合間にどうも苦手になってしまった。向かいのパソコンまでの距離がやたらに遠く感じる。ポリゴンZが、無表情なはずの目にどこか心配そうな表情を浮かべているように見えた。錯覚か。それとも、お前は本当に人間らしい電気信号を持っているのか。

    「行ってくる、主人」

     その声の相手だけは、ポリゴンZではない。私の主人はずっとこのパソコンの前に座りっぱなしだ。預けられてばかりだった私が、腹いせに軽く電撃を浴びせたその日から、ずっと。
     もうそろそろ肉が腐り落ちて骨が見えている。我々には無いが、嗅覚があったのならきっと近づきたくもない状態なのだろう。視覚的なレベルで既にそうなっているような気もするが、ほとんど無法のインターネット上にばらまかれた画像にはこれより酷いものもごまんとある。慣れたものだ。
     そうして人間が簡単に死ぬことを覚えたポケモンが、簡単に死ぬ人間を殺している。少しばかりパソコンを通して電流を流してやるだけでいい。
     人間の電気信号を邪魔するだけの簡単な仕事は、私の電気信号ひとつでできるのだから。
     インターネットにしか居ない殺し屋は、今日も電子の海へと潜航する。

    ――――
    お題【電気タイプ】
    ロトムとポリゴンが組んだら電脳的に最強だと思うんですよ。
    インターネット接触の殺し屋の話はとあるTRPGから。

    【好きにして下さい】


      [No.2131] 貴方のポケモンはー 投稿者:紀成   投稿日:2011/12/19(Mon) 17:53:53     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    かっこよくて美しいんだってさ!そうなの?

    読み返して『そういえば』と思い出した駄目作者です。こんにちは。よかったなバクフーン!燃やすなよ!
    バトルの時は外すかもしれません。


    > 【紀成様へスライディング土下座】

    【顔を上げてくださいな】

    ありがとうございました!では!


      [No.2130] Re: 自分の単行本を妄想するスレ 投稿者:クーウィ   投稿日:2011/12/19(Mon) 04:25:25     79clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >  自分のじゃなくてもいいですか(殴

    そこは是非御自分のでお願い致します(真顔

    『鞄』シリーズマジ切望……! あれが現在に至るまででの至高のザンハブ小説である事は論を待たねぇしなぁ(苦笑)
    後、風合瀬の宴についてはご迷惑をおかけしております(白目) 本気御免なさい……(汗)




    では、この際折角だから……(


    ★1:『竜の舞』
    多分一番近い奴。……でも、原稿作業ががが(白目


    【帯】

    [ 『オマエ』と呼んでみた。……あの時と同じく、無機質な二人称の中にも、確かな思いを込めて―― ]


    【目次】

    ・雪の降る夜
    ・His Story 〜あるアウトローの軌跡〜
    ・赤い月(完全版) 書き下ろし
    ・差しのべられた手(アウトロー外伝) 書き下ろし
    ・宴の後で(赤い月外伝) 書き下ろし
    ・竜の舞(完全版) 書き下ろし

    ・後書き
    ・嘘予告

    その1 『Panzer Dragonite』

    [ 「パパはもう、帰って来ないんだって……」 国際空域に於いて突如として発生した、航空機撃墜事件。捕虜となり、祖国からも国際社会からも見捨てられたパイロットを救う為立ち上がったのは、幼い息子の涙に触れた、野生のドラゴンポケモン達だった―― タイムリミットは24時間。ミサイルと迎撃システムが支配する灼熱の空に繰り広げられる、超音速(ハイスピード)・バトルアクション!  『好きだからやってるだけさ。 ……だから絶対、裏切らねぇよ』 ]

    その2 『Story of ForgottenWorld』

    [ 気弱な探検家志望のヒトカゲ・ティルスは、嵐の翌日の砂浜で、記憶を無くした一匹のリオルと出会う。自らを人間であると称し、記憶の断片からピリマと名乗った彼女と共に探検隊を結成した事により、彼の運命は大きく変わっていく事となる。 『人間――それは、神話や伝説の世界などに登場し、遥か古代に存在していたといわれている、ポケモンとはまた別種の生物の総称だった――』 ]

    嘘予告は出来ればイラスト入りが良いかなぁと(苦笑  オイ)



    ★2:『○○○○○○○○』(タイトルは都合により明かせません  爆)
    此方は主にトレーナーもの中心でしょうか


    【目次】

    ・風合瀬の宴
    ・Shall We Dance?(完全版)
    ・○○○○○○○○(完全版 タイトル作品) 書き下ろし
    ・クソ親父(完全版)
    ・Next Step 書き下ろし

    ・後書き



    ★3:『鈍色の時代に』
    戦争関連の暗〜い話がメイン(


    【目次】

    ・海獣の鎮魂歌
    ・鈍色の時代に
    ・リトルダンサー(仮)
    ・M・I・A
    ・ゲート・キーパー
    ・邂逅(仮)

    ・後書き



    ★4:タイトル未定 
    多分一冊じゃ収まりきらないと思われ(  やるにしても、焔の島で一旦区切る説濃厚

    【目次】

    ・天狗の子(仮)
    ・船鬼始末
    ・雑卒紀(仮)
    ・焔の島
    ・双子風の伝説

    ・後書き


    ★5:他 シンオウの昔話とか諸々



    ネタは色々あるんです。ネタは(
    ただ書けないだけ。……絵に描いた餅とはまさにこの事だわさ(爆)
    まぁそれに、自信持って出せるぐらいのものを書ける事が大前提なのは言うまでもない。……精進あるのみorz

    後、ザンハブとカイリューのアンソロが拝んで見たいです。特にカイリュー!
    何時か出ると信じてる(笑)


      [No.2129] お気に召していただけるかどうか 投稿者:音色   投稿日:2011/12/18(Sun) 22:09:24     86clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「遅くなって申し訳ありません」

     メラルバを引き取りに来たカクライは何やら包みを抱えて戻ってきた。のすのすとバクフーンがが近づいてくる動作は、進化前となんら変わらない。
     視線が高くなったものの、カクライは彼の善意に笑みを浮かべて、寝入ってしまっている炎の幼虫をそっと抱きとった。

    「ありがとうございます」
     お礼を兼ねてなんですが、そんな風に言葉を濁しながらバクフーンに包みを渡す。
     受け取った彼はそれが一体何なのだろうと恐る恐るといった様子で匂いを嗅ぎだす。
    「進化のお祝いですよ」
    「そんな・・わざわざありがとうございます」
     美しい店長は恐縮したのか、看板息子から手を伸ばして包みを受け取ると、丁寧に包装紙をとき始めた。
     
    「あら!」
     ユエは意外そうな声を出した。
     中からは朱色の鮮やかな紋様が映えるバンダナが入っている。
    「丁度、ホウエンの物産展をやっておりまして。彼の邪魔にならないような装飾品はそれくらいしか思いつきませんでした」
     苦笑しながらカクライが述べる言葉を、店長はそんなことはないと否定に入る。

    「それでは、本日はもう遅いですから」
     一礼してカクライはドアをくぐって出て行った。
     次の日、彼は例のバンダナが学生たちが好き勝手にバクフーンを飾り付ける様子を見てまた苦笑を浮かべたという。


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談   バクフーンへのプレゼントに悩み過ぎて長いこと放置してしまっていた。

    【紀成様へスライディング土下座】


      [No.2128] [書いてみた] ポエム 投稿者:akuro   投稿日:2011/12/18(Sun) 11:21:05     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     茶色のつぶらな瞳に、無邪気に笑う口元。 その首のふわふわな白い毛に指を絡ませれば、君は微笑んだ。

     抱きしめて温もりを感じていると、君は可愛く鳴きながら甘えてくる。

     君はどんな色に染まるのだろうか。

     海のような青、雷のような黄色、それとも炎のような赤? 太陽のような紫や、月夜のような黒。 草木のような黄緑や、氷のような水色もいい。

     どんな色に染まろうとも、私が君に注ぐ愛情は変わらない。

     純粋を現したような白い毛に触れながら、私は呟く。

     ーーずっと、一緒に居ようね。





    ーーーーーーーーーーーーーーー
     ふと思いつき、投稿しようと思い立ったら、なんとタイミングの良いことにブイズの百字があるじゃないですか。 という訳でポエム(もどき)です。 一応トレーナー目線かしら。駄文でスミマセン……

    [ブイズ可愛いよブイズ]


      [No.2127] ブイズかわいいよブイズ 投稿者:門森 輝   投稿日:2011/12/18(Sun) 02:24:53     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     絵がっ! 絵がっ! 絵が付いたぁっ! うひゃっほぅ! 
     こんなかわいい絵を付けて下さりありがとうございます! ありがとうございます! かわいいです! 下手だなんてとんでもない! 凄くかわいいです! ありがとうございます!
     私の文体が好きですと……ありがとうございます! 言いたいことを無駄なくすっきりと伝えているというより長いのが書けないだけですが。
     比喩は最初は青と赤と水色だけだったんですが、文字数を稼ぐ為に全部に付けてみました。緑とか黒とか割と無理矢理ですが体裁が整った気はします。
     兎にも角にもブイズ大好きです。ブイズのかわいさは異常。ブイズは正義。
    \イーブイ!/\シャワーズ!/\サンダース!/\ブースター!/\エーフィ!/\ブラッキー!/\リーフィア!/\グレイシア!/\ブイズ!/\ブイズ!/\ブイズ!/
     そして最後にもう一度お礼をば、ありがとうございました!

    【保存させて頂きました】
    【ブイズかわいいよブイズ】


      [No.2126] 【過去絵を貼ってみた】 投稿者:イサリ   投稿日:2011/12/17(Sat) 23:58:52     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    【過去絵を貼ってみた】 (画像サイズ: 344×486 49kB)


    門森 輝さんこんばんは!
    素敵なSSだったので、思わず突撃してみます。
    比喩表現が実に綺麗ですね。言いたいことを無駄なくすっきりと伝えられる、門森 輝さんの文体が好きです。


    今の間に描いた訳ではないのですが、過去に描いた絵にイメージがぴったりのがありましたので画像を貼らせていただきます。絵が下手なのはご容赦ください。
    すべてブイズ愛ゆえです。
    門森 輝さんをブイズ好きの同志と認識しました(迷惑


    【ブイズかわいいよブイズ】


      [No.2125] 【百字】七色の可能性 投稿者:門森 輝   投稿日:2011/12/17(Sat) 22:52:09     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     海の様に澄み渡る青色
     雷の様に閃く黄色
     炎の様に燃え上がる赤色
     朝日の様に艶やかな紫色
     月夜の様に淑やかな黒色
     草木の様に清らかな緑色
     氷の様に透き通る水色

     僕は何色に染まろうか?

     純真無垢な白色は 唯々未来を思い耽る

    ――――――――――――――

     ブイズを色で表してみたかった。でも進化しないという選択肢もあるのよね。
     どの文字数カウンタを使えば良いのか分からなかったので、とりあえずスペースは含めずに数えました。
     無理矢理文字数増やした感がありありと伝わってきますね。七色全てに比喩を使った事とか最後の文とか。最初書いた時は74文字でしたもの。
     何はともあれブイズ大好きです。

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【お任せするのよ】
    【ブイズかわいいよブイズ】


      [No.2124] Re: 自分の単行本を妄想するスレ 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/12/17(Sat) 19:57:13     82clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    目次


    “プロフェッショナル”に関わる5つの話

    ・トンカツ定食屋「切り切り亭」
    ・幸せな悪夢
    ・ザ・プロフェッショナル
    ・配達屋のペーゼさん
    ・とある犯罪捜査コンサルタントの話(書きおろし)


    “あの日”に帰る3つの話

    ・廂間―ひあわい―
    ・てく〜いやしん坊ラルトスの話〜
    ・御都合主義(書きおろし)


    “意思”にまつわる4つの話

    ・B's Will〜『B』の意思〜
    ・NOVELTYPE、な一日
    ・テングのウチワ
    ・電車の中(書きおろし)




    こんな感じでいいのかなぁ……。全部一つにしたら長いかな。
    ま、妄想だしいっかw

    個人的に灯夢ちゃんの写真集が……いやなんでもないでs(ドキャドキャバキャバキャグシャグシャ、ゴスゥ!!)


      [No.2123] Re: 自分の単行本を妄想するスレ 投稿者:音色   投稿日:2011/12/17(Sat) 18:57:12     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     自分のじゃなくてもいいですか(殴


    ・師匠の作品集(タイトルはやはり師匠につけていただきたいので仮で(苦笑

    目次・・というより入れていただきたい作品

     ・雪の降る夜
     ・風合瀬の宴(続きに期待してるのですがまだですか師匠ー!
     ・あるアウトローの軌跡
     ・船鬼始末
     ・Shall We Dance?
     ・竜の舞


     師匠がこちらで投稿された奴はざっとこんなもんかな・・・?
     【書いてみた】の奴は省かせていただきましたが・・。赤い月はあっちに載るし。

     帯はやっぱり誰か著名な方に書いていただきたい・・!
     俺が書いたらただの師匠へ愛を叫ぶコーナーになりそうだから(爆)


     ついでにもう一冊

     ・あっちの掲示板の、あれ。

     師匠にはこれで分かっていただけるはず。
     むしろこっちだしてください。
     師匠が出さなくても俺が個人でまとめる可能性もありますが(爆)


    ※妄想っつーか願望


      [No.2122] Re: 自分の単行本を妄想するスレ 投稿者:巳佑   投稿日:2011/12/17(Sat) 00:32:59     80clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ★その1:『巳畑の収穫祭』(仮)

    【帯】

     やっちゃいましたっ☆


    【内容】

     第三回のポスケコで撒いた種が育って短編集ができました。

    【目次】

    ・送贈-SouZou-
    ・あわにのって
    ・あかむらさき
    ・One daybreak One yell!
    ・カボチャンデラ
    ・巳の這いずりながらの後書き

     頑張ってイラストも描きま(以下略)


    【特典】

     未定(コラ 


    【価格】

     テイクフリー(え       
     


    ★その2:『お狐様のもふもふガーデン』(仮)

    【帯】
     買ってくれた奴はもふもふ。
     買ってくれなかった奴は鬼火でもふもふ。 by長老


    【内容】

     ある日、長老と呼ばれているキュウコンに言われた一言。
    「狐が出てくる物語九つ書けー! 書かなきゃ、鬼火でもふもふの刑じゃ♪」
    「いきなりクライマックス!?」
     そんな無茶振りを振られた巳佑の運命は――。


    【目次】

    ・『もふパラ』から見た世界史
    ・語り狐
    ・雨宿りも悪くない。
    ・こなゆ。(ただしポケスコに提出したものから大改稿、とりあえず最後のシーンとか削ります)
    ・ねつき屋(仮)
     
     他四作品の予定。

    「九人から話を集めるのも面白そうじゃのう、ほほほ♪」
    「それ某イラスト集じゃ(欲しかったなぁ……というのはここだけの話) 


    【特典】

     長老があなたをもふもふして狐にしてくれるよ!
     レッツ、もふパラデイズ!


    【価格】
     
    「99円なんてどうじゃ?」
    「まさかの(以下略)」



    ★その3:『狐日和』

    【帯】
     
     鳩尾崩壊注意の高校生活に青年、大ピンチッ!?

    【内容】

     関西弁のロコンさんがひたすら鳩尾を撃つお話です。
     ……おや誰か来たようだ(ドキャバキャグシャ!!)


    【目次】

    『未定』と赤い字で書かれている……。


    【特典】

     灯夢さんのピンナップでいいんじゃ。
     なんなら裏表紙は灯夢さんのセクシーな写真でいっぱいにしてもいいし。
     ……おや誰か来たようだ(ドキャドキャバキャバキャグシャグシャ、ゴスゥ!!)


    【価格】

    『みたらし団子』と赤い字で書かれている……。  




    *全て、あくまでも妄想です。タブンネ。


      [No.2121] Re: 自分の単行本を妄想するスレ 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/12/16(Fri) 12:40:54     96clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    冒険してた奴、ちょっと来い 〜まとめて読む掲示板〜


    目次
    ・【幼馴染は】暇だから幼馴染の女に安価でメールする【マジ化け物】
    ・幼馴染にバトルサブウェイに強制連行されているんだが
    ・【団員】組織を作って世界征服を目指す【募集中】
    ・冒 険 し て た 奴 ち ょ っ と 来 い
     …他、全8話を収録



    舞台はインターネット。
    「改造」から「モンスターボールの使い方」までを手広くカバーする巨大掲示板群。

    今日も好き勝手に罵り合い、慰め合い、笑い合う住人達。
    そんな日常の中、時には笑いあり、涙ありのドラマが生まれることも……?

    話題を集めたスレッドをまとめて書籍化!





    ※タイトルは適当です
    ※話数も適当です
    ※スレタイも適当です
    ※ネタがありません


      [No.2120] Re: 自分の単行本を妄想するスレ 投稿者:リナ   投稿日:2011/12/16(Fri) 01:38:40     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    ● タイトル「世界と日本の名作集」

     ◇目次:
      1.イソップ寓話より、北風と太陽
      2.浦島太郎
      3.桃太郎

     ◇背表紙:
      嘘じゃない! ホントなんだ! 一体どこにルナトーンが出てるってい(ry


      [No.2119] 冷蔵庫に飛び込めばそこは 投稿者:音色   投稿日:2011/12/15(Thu) 23:25:49     75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     自宅でした。
     いや、自宅って言うかリビングね。リビングダイニング。後ろには冷蔵庫。
     ・・・え。
     ええ。
     ええええええええ。

    「か、帰ってきた・・のか?」
     返事なし。

     あたりにはひらひらと舞い落ちる鮮やかな千切りキャベツ
     うん、間違いない。これはとんかつ定食『切り切り亭』の店主キリキザンが刻んだものだ。
     ・・・で、なして俺は人間に戻ってるんだ?

     だって俺は、さっきまでビリリダマだったよなぁ?


     さっきまでの行動を振り返ろう。
     俺はPPどころか自分のHP(おもに空腹度的な意味で)が切れかかる中、ラスト一回のテレポートを気力を振り絞って飛んはずだ。
    「そろそろ家に帰りたい・・」とか「いい加減ビリリダマやめたい」とか呟きつつ、なんか食べるものにせめてありつければ良いなーと思いつつ。
     で、瞬間移動。
     着地・・というより墜落した。
     
     今の今までテレポートでろくな場所に飛ばされた事がないのは認める。だからって、皿の上に着地・・もとより墜落するなんて誰が思うか。
     潰されるトンカツ、宙に舞う千切りキャベツ。
     そして怒り心頭に達したキリキザン・・・あれは悪夢だ・・。

     そりゃそうだよね、自分が丹精込めて切った千切りキャベツを盛り付けた直後にビリリダマが振ってくるなんて誰も思わないよね。
     俺だってこんな所に落っこちてくるなんて思っても見なかったよ。
     もちろん、俺が何時だったか夜中に食わせてくれって頼みこんだあのビリリダマってことは気付いてもくれなくて。
     一応今回は営業時間内だけどな!そういう問題じゃないよな!


    「あ、あの」
    「てめぇ・・いきなりどこからはいってきてんだぁぁぁ!
    「さーせぇぇん!でもわざとじゃ」
    「わざともくそもあるかぁぁぁ!」

     ビリリダマは にげだした! ▼

     しかし まわりを かこまれてしまった! ▼

     
     俺をキャベツよろしく千切りにしようと襲ってくるキリキザンから逃げた先にいたチュリネに頼み込む。

    「冷蔵庫はどこですか!」
    「は、はぁ?」

     あぁもうすぐそこまで迫ってきたぁぁお願いします死にたくないですビリリダマの格好で千切りは嫌ですとかなんとか捲し立てる。
     おそるおそる、といった様子で奥を示し、俺はそこへ一目散に転がっていった。
     ジャンプの反動で扉を開けて―――!


     キャベツの千切りと一緒に、飛び込んだ。



     で、いつの間にやらきちんと人間に戻ってキャベツの千切りに塗れながら家に帰ってきた。
     あ――。
     お腹減った。

     冷蔵庫を閉めた。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  冷蔵庫の扉って、別世界への扉っぽくないですかそうですか。


    【読んでくれてありがとうございました】
    【貴方の家の冷蔵庫が変な所に繋がらない事を祈りません】


      [No.2118] Re: 自分の単行本を妄想するスレ 投稿者:マコ   投稿日:2011/12/15(Thu) 16:09:36     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    じゃあ、私はロングのシリーズを。

    「ポケリア〜ポケモンがリアル世界にやってきた!」

    (帯)舞台はオオサカ。そこで巻き起こる、主人公とその友人、そして彼らのポケモン達による日常、悪党とのバトル!

    これまでの連載に加え、「書いてみた」シリーズでのスピンオフ版、番外編、さらに書き下ろし作品も数本!

    皆様、是非お買い求めください!


      [No.2117] Re: 自分の単行本を妄想するスレ 投稿者:紀成   投稿日:2011/12/15(Thu) 10:45:14     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    じゃあ皆様ご存知?のシリーズを。


    『幻影淑女と死神紳士』

    ・『少女から淑女へ。一人と一匹が織り成す不思議な物語』(帯より)
    ・今までのファントムシリーズに大幅書き加え、更に書き下ろし長編もつけました。


    『黄昏婦人の優雅な日常』

    ・『紅茶と一緒にお楽しみください』(帯より)
    ・黄昏堂にやってくるお客や、曰くつきの商品の説明などが沢山入ったエッセイ集。

    優雅な日常 目次

    ・トワイライト
    ・狐執事(書き下ろし)
    ・ローレライ
    ・時をかける少年(書き下ろし)
    ・黄昏色の目の人形(書き下ろし)

    おまけ:商品の調合リスト

    『again』

    ・『芸術家とは爆弾である。特に周りが見えなくなった場合、それは時にとんでもない出来事を引き起こす』(キャッチコピーより)
    ・マスターの子供時代、父親、そしてライバルである検事兼芸術家。時を越えて再び事件が蘇る。


    [出せる日が来るといいな]


      [No.2116] Re: 自分の単行本を妄想するスレ 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/12/14(Wed) 23:54:49     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    せっかくなので帯の煽り文を書いてみる。

    ポケモン好きから廃人まで満足できる、冒険小説の決定版! 全86話のボリューム、緻密なダメージ計算、駆け抜けるストーリー……。夜のお供に是非。

    大長編ポケットモンスター、上下巻セットで990円。お申し込みは当サイトまで。


      [No.2115] ジングルベル 投稿者:キトラ   投稿日:2011/12/14(Wed) 23:15:43     105clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     神の鐘を鳴らせ!雪ふぶく風の上、神を呼ぶ鐘を!


     マフラーに顔をうずめて、あたり一面真っ白な街を歩く。後ろには彼女のパートナーが雪の上に足跡を残して歩く。
    「冷たい!」
    ゾロアークがしぶそうな顔をしている。森に住んでいる時から雪は苦手。
    「もうすぐだからね、ごめんね」
    「おれはツグミと違って毛皮があるから多少の寒さは平気だ」
     気遣うツグミをこれ以上心配させないよう、ゾロアークは言う。けれどそれにも限界があることは、寒さで震える足を見ればすぐ解る。
     ツグミは歩きなれない雪道を早足で歩く。それにゾロアークもついていく。


     ポケモンセンターもない山間の街にツグミたちはたどり着いた。夜をあかすには野宿というのは無理がある。
     宿を探していると、街外れの教会に行けば一晩くらい泊めてくれるだろうと教えてもらった。
     しかしその教会の遠いこと。街のまんなかから雪をかぶった屋根が見えていたが、雪道では歩みも遅い。
     日が落ちて目の前が紫色の吹雪になっても、ツグミは一生懸命歩いていた。ゾロアークは彼女を信じてついていく。


     坂を登り、吹雪で凍りついた教会の扉に触る。ツグミが叩くと、すぐに落ち着いた声が帰って来た。
    「すみません!ポケモントレーナーなんですが、一晩止めてもらえないでしょうか!」
     手袋をしても指先は冷たく、ブーツに入った雪がツグミの足を凍り付かせている。扉の向こうの暖かさを期待して、ツグミは返事を待った。
    「おや」
     扉が開き、出てきたのは背の高い男の人だった。聖職者のようで、左手には厚めの本が握られている。
    「ポケモントレーナーとは珍しい。これも神のお導き。お入りなさい」
     男は穏やかな口調で微笑む。ツグミは大きく息を吐く。
    「ありがとうございます!」
    「ありがとう!」
     ツグミに続いてゾロアークも中に入る。そして一瞬だけゾロアークは男を振り返り、すぐさまツグミの側へ行った。


     中は石造りなのにとても暖かい。ツグミはさっそくコートを脱いだ。マフラーも手袋も取り、暖炉に当てる。ブーツを脱ぎ、濡れた靴下を干すと、冷たくなった足を火に当てた。
    「ゾロアークは何を食べるのでしょうか?」
     男はツグミにホットチョコレートを渡す。受け取りながら、ツグミがここまで得たことを話した。
    「ゾロアークはタマネギチョコレート鳥の骨魚の骨以外なら食べても大丈夫です!」
    「では暖かい野菜のスープとパンで大丈夫でしょう」
     ツグミが話している間、ゾロアークは落ち着かない様子だった。暖炉の側にいながら、天井につるされたシャンデリアや、壁に灯されたろうそくを交互に見ている。
    「どうしたのゾロアーク?」
    「いや、その気になって…」
    「神の鐘、でしょうか?」
     男が指さした方向。それはつるされたシャンデリアに隠れるようにして見える金色の何か。
    「屋根裏になっていますが、あそこまでいく階段も梯子もないため、現在では鳴らせません。けどあれは神の鐘といって、昔あらわれた邪悪なポケモンを神が鐘を打ち鳴らし全て葬ったと言われています。そのため、あの鐘は神にしか鳴らせないあんなところにあるのです」
     野菜スープが皿に盛られる。硬めのライ麦パンと共に。暖かい食事に、ツグミとゾロアークは夢中になった。
    「神の誕生祭では教会の外にある鐘を使います。神の誕生と共にあの鐘があると言われていることから、あちらの方が相応しいとは思いますが、神の御心次第なのです」
     ゾロアークがパンをかじりながら男の話を聞いている。ここに入った時から気になって仕方ないのだ。ツグミは気にならないのか、いつもの通りだった。

     ツグミのベッドの足元にゾロアークは丸くなって眠る。毛がつくからたいていの人間は嫌な顔をするものだ。毎朝、ゾロアークの毛だらけになりながらもツグミは笑っていた。
     ツグミに会ってから数ヶ月。季節は巡って冬になってしまった。ゾロアだったのがゾロアークとなった。時間と共に変わっていく景色。そして関係。

     ゾロアークは目を覚ます。うたた寝してしまったようだ。気づけばツグミの気配がない。トイレにでも起きたのかと寝床に臥せる。
     それにしても遅い。ゾロアークはベッドから起き上がると部屋を出た。
    「ツグミー!」
     ゾロアークの声が石造りの教会にこだまする。自分の声が重なって、ゾロアークは少し頭がクラッとした。
    「まったく、世話のやけるトレーナーなんだから」
     これだから一人で行動してはいけないと…。ゾロアークはぶつぶつ言いながら次の扉に手をかける。
    「うぶっ!?」
     熱風を食らったかのような暑さ。先ほど食事をしていた場所と同じところとは思えない。
    「あ、暑い…」
    「起きたんですかゾロアーク」
     男の声がする。その脇には寝間着のままのツグミが抱えられている。
    「ランプラー、ちゃんと薬は混ぜたんですか?」
     石造りの壁一面に灯るヒトモシ、そしてランプラー。ゾロアークの感じていたものはこれだ。
    「マゼタヨ。ケドゾロアークガタフナンダモン」
    「そうですか。仕方ないですね」
    「ちょっと待て、どういう意味だ。そんでツグミをどうするんだ」
    「ゾロアークバカ。ニンゲンナンテタベチャエバイイノニ」
    「ランプラー、口が悪いですよ。ゾロアーク、ここにいるヒトモシたちはみな人間に弱いからと捨てられた子たちでね、人間が嫌いなんですよ。この子たちは人間の生命力を使って生きる。弱いから要らないと言われたヒトモシたちに食われる人間の滑稽なこと」
    「お前ら…あいつらみたいだな」
     すでにゾロアークの毛は逆立っている。そして素早い動きで男に飛びかかる。ツグミの体が男から離れた。
    「私を殺しても、恨みは消えない」
     男の顔を殴りつける。けれど当たったのはやわらかい紫のメタモンだった。
    「早く、出るぞ」
     ツグミを見る。起きる気配は無さそうだ。主犯のメタモンがやられてヒトモシたちは動揺している。逃げるなら今だ。
    「お待ち!久しぶりの獲物、逃がさないよ!」
     声が響いた。動揺していたヒトモシが一斉に静かになる。どこから聞こえるのか解らない声が、ゾロアークの頭に響く。
     直後、ゾロアークの上に衝撃が走る。気絶し、床に臥せたままのゾロアークは無視し、ツグミを抱える。
    「シャンデラママ!」
     次々にヒトモシたちが盛り上がる。ランプラーは落ちてきたシャンデラのまわりを嬉しそうに囲んだ。
    「よしよしボウヤたち。お父ちゃんがやられちまったからね、今度はゾロアークに邪魔されないところでご飯にしようね」
    「ハーイ」「ハーイ」「ハーイ」



     凍えるほどの寒さで目を覚ます。ゾロアークが再び目を開けると、灯りもなにもない、真っ暗な空間。その中で唯一見える、雪明かりに反射する神の鐘。
     手を探ってみれば、何かやわらかいものをつかむ。それが先ほどのメタモンだった。
    「おい!」
    「なんだ」
    「ツグミはどこだ。どこへやった」
    「知らないさ。シャンデラと共に食事中だろ」
     ゾロアークはその拳で再び殴った。
    「ふざけるな。捨てられたがなんだか知らないが、お前らみたいにひねくれ過ぎてんのは初めてだ」
    「人間に必要とされてるポケモンに何が解る!」
    「何も解るか!解りたくもない!自分の環境を嘆くのは勝手だが、ウダウダ昔にとらわれすぎなんだよ!これでツグミに何かあったらお前ら皆殺しだ」
     ゾロアークは立ち上がる。焦げた匂いの中に残るツグミの匂い。それをつけていけばたどり着ける。
    「待て」
    「なんだよ」
    「神の鐘の言い伝えは本当だ。ここにかくまってくれた男がそういっていた」
    「その男も食ったのか」
    「そうだ。ヒトモシたちを養うにはそれしかなかった」
    「お前らとんだ恩知らずだな」
     それだけ言い残してゾロアークは走る。入ってきた扉を開けようとノブに手をかける。
    「開かない!?」
     どのドアもそうなのだ。ガチャガチャとゾロアークの力でも開く気配がない。
    「溶接までしていったか」
    「おい、メタモン!」
     吠えるようにゾロアークはメタモンを怒鳴りつけた。
    「お前がやつらに何とか言え。恩知らずが偉そうに語るなと」
    「…お前はなんでそんなに人間に肩入れするんだ。人間など…」
    「ツグミだからだ」
     ゾロアークは上を見る。雪明かりに鈍く光る神の鐘。邪悪なポケモンを追い払った神が鳴らしたならば…
    「あの鐘を鳴らす」
     しかし階段も梯子も見当たらない。ゾロアークが石造りの壁に手をかける。少しずつ壁を登っていく。
     落下したら命はない。そんな高さである。けれどゾロアークは躊躇なく登った。神の鐘が近くなる。
     鐘は壁からも遠かった。梁から吊されてればまだマシだった。天井からただ吊されてるだけの鐘。ゾロアークの爪も届かない。
    「ゾロアーク!」
     ドンガラスがゾロアークの目の前を飛ぶ。追い払うがまとわりつくように飛んでいた。やがてゾロアークの頭の上に乗ると、紫のメタモンへと姿を変える。
    「黒い鉄球になる。それを投げつけろ」
    「どういう風の吹き回しだ」
    「お前みたいなポケモンに初めて会った。私が会うポケモンみな目が死んでたのに、お前は人間といると楽しそうだった。不思議だった。羨ましかった」
    「…お前、好奇心が強いタイプか?」
     メタモンはすでに黒い鉄球へと変身していた。
     落ちないようにしっかりと壁をつかみ、反対の手で黒い鉄球を握る。そして雪明かりの鐘めがけて投げつけた。



     神の鐘はとても美しく、クリスタルのような透き通った音色だった。



     シャンデラもランプラーもヒトモシも、その鐘を耳にして動きが止まる。
    「あ、あ…」
    「みんな、みんな助かるんだ」
    「ママ、アタラシイトコロコワイヨ」
    「大丈夫、神様がみんな楽しいところに連れて行ってくれるから」
     ヒトモシたちの姿が徐々に消えて行く。神の鐘に導かれるように。


     その音量にゾロアークは思わず手を離してしまう。床に真っ逆様に落ちるが、下にあったのはカビゴンのやわらかい腹だった
    「いてて…どうなったんだあいつら…」
    「シャンデラの気配が消えた。浄化されたようだ…あいつも出会った時はヒトモシだったんだけどな」
     メタモンはその姿のままぽつりと言った。


     マフラーをする。手袋をはめて、コートを羽織る。
    「今回はゾロアークに感謝ね!」
     朝になってツグミが起きた。ゾロアークとメタモンが夜のことを話した。驚いたようにしていたが、ツグミが次に言ったのは「もう出よう」だった。
    「じゃあねメタモン」
     ツグミが入り口の扉を開けた。昨日の吹雪が嘘のよう。晴れた雪景色。
     それよりも教会に集まって来ている大勢の人たち。ツグミを見るとひれ伏し始める。
    「神様だ…」
    「神様の生まれ変わりだ…」
    「神様の誕生を告げる聖母ではないか」
    「神の鐘を鳴らした、神に違いない!」
    「こんなタイミングで鳴らすのは、神の誕生に関わった聖母しかいない」
     ツグミが鐘を鳴らしたのはゾロアークだと言おうとしても、それ以上の人数で神様に祭り上げられる。
    「神様が誕生祭にやってきたぞ!」
     あっという間に神様にされて、ツグミは何をどうしていいか解らない。けれど教会の奥でツグミが何か言うのをワクワクして待っている人たちに対して、無言では気まずい。
    「あ、あの…」
    「おおっ、神のお言葉が…」
    「静かにしろ、奥まで聞こえないだろ」  大変なことになっちゃった、とツグミは後ろのゾロアークを振り返る。
    「お願いがあります。弱いからってポケモンを捨てないでください。ポケモンは人間が好きです。私のゾロアークも人間が大好きです。だから、ポケモンを捨てないでください。好きな人と離れて悲しいのはポケモンも同じです」
     人々はツグミの言葉をじっと聞いている。ツグミはさらに続けた。
    「私はこれから、このことを各地に伝えなければなりません。ですから私はここに留まることが出来ないのです。どうか皆さん、このことを忘れずに、今日の誕生祭を楽しんでください」
     人々が何とか留まるように頼むが、ツグミはそれは出来ないと言って教会を出て行く。後にはゾロアークが護衛のようにくっついていた。


      [No.2114] 自分の単行本を妄想するスレ 投稿者:No.017   投稿日:2011/12/14(Wed) 20:10:54     74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    自分の小説で単行本を出したら……?
    そんな妄想をしてみようというスレです。

    タイトルや目次、
    カバーの紹介文や、帯の煽り、あとがきなんかを妄想してみませんか?
    書けば案外実現するかも?


      [No.2113] 一匹変なのが混じってる 投稿者:No.017   投稿日:2011/12/14(Wed) 20:06:43     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    まさかの続編wwwww
    しかもなんか、深いwwww

    どうもこの家系はピジョンに呪われてるみたいですね
    我々の業界ではご褒美ですが。




    眼鏡……ピジョン……?


      [No.2112] 鳩をどけずに、カメラを回した 投稿者:紀成   投稿日:2011/12/14(Wed) 17:30:59     83clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「ねえ、あなた。もうじき忘年会の季節ですけど、飲み会などはあまり行かないでくださいね」
    ……。
    「あなた?」


    親父が倒れたと聞いたのは、寒波が押し寄せて大雪が降った、十二月下旬のことだった。朝食を食べながら新聞を読んでいた時に発作を起こして倒れたらしい。すぐに救急車を呼び、入院となった。
    『一刻を許さない状態です。いざという時の覚悟も……しておいてください』
    俺はひとまず妻と子を置いて一人でやってきた。お袋の顔は疲れていた。病室の中で親父は目をつむり、配線につながれたまま動かない。あの豪快な親父が、ひどく弱弱しく見えた。
    「親父、ずっと元気だったよな。怪我も病気もしない、元気そのもの」
    「ええ…… この際だから貴方にも話しておこうかしら」
    「え?」
    そう言ってお袋は話し始めた。それは、嘘なのか本当なのか区別できない、不思議な話だった――

    お袋が親父と出会ったのは、仕事場で。新入社員だったお袋を親父が色々カバーしてくれたことがきっかけだったらしい。親父は上司と言っても一つ二つ上のやり手。昼ドラにあるような変な物じゃなかった。
    やがて二人は付き合い始め、休日は映画に行ったり食事に出かけるようになった。不思議なことに、親父はお袋と会う時いつもカメラを持っていたらしい。
    それもデジタルカメラじゃない、フィルムで撮るタイプの旧型カメラ。
    後で知ったことだが、親父の親父…… つまり俺の爺さんはカメラ集めが趣味だったという。戦争中も軍にばれないように家の地下に集めた外国製のカメラを大切に保存していたそうだ。
    その常に提げていたカメラは、爺さんが親父に残した唯一の形見だったらしい。だが常に持っている理由はそれだけじゃなかった。不思議そうにするお袋に、親父は苦笑して言った。

    『俺限定なんだけどな』

    なんと、親父がレンズを覗くとそこに必ずピジョンがいるという。

    『始めはね、信じられなかったのよ。冗談が苦手で上司にギャグを言われて機嫌を悪くしないように返す方法を必死で考えるような人だったから。……でも、あまりにも必死で言うものだから、疑うこと自体が馬鹿らしくなってきちゃって』
    親父が言うには、それは自分がまだ新入社員だった頃に見えるようになったという。最初は仕事場の環境に疲れてノイローゼになっているのかと思ったが、休日にリフレッシュしても見える。何しろ綺麗な場所に行って、さあ写真を撮ろうとレンズを覗けば必ずピジョンがこちらを見ている具合だ。
    友人に頼んで覗いてもらっても、何も見えない。普通に写真が撮れる。他の人もそうだった。何故自分だけ……
    そう考えていた矢先、学校の同窓会があり学生時代の友人と酒を飲んだ。その中の話題で、学生時代憧れていた物が今では全くの虚無に見える、ということがあった。
    『その時思ったんだ。どんなに足掻いても歳は必ず取る。大人になりたくなくても、最後にはなってしまう。時間の流れという振り切れない、避けることが出来ない物――
    それが、俺の見ているピジョンの正体なんじゃないかってさ』
    だから、その時決めたという。避けて通れることが出来る物、出来ない物。無理に避ける必要なんてない。
    自分という人生のカメラに、置いてやろうじゃないか。
    そう――

    『鳩はどけずに、カメラを回せ』


    「……それで?」
    「それで?私が聞いたのは、そこまでよ。その後すぐに貴方が産まれて、育児で大変だったからねえ。
    そんな話を蒸し返す暇なんてなかったわあ」
    俺はお袋を見た。老眼鏡と、ほとんど白髪になってしまった髪の毛。皺だらけの顔。目は俺が子供の時より優しくなったか……

    それから二時間。すこし落ち着いたということで、俺は病室に入ることを許された。外は真っ暗だ。街灯に照らされた牡丹雪がモンメンのように見える。
    ドアノブが冷たい。俺はドアを開けた。そして見た。

    何十匹ものピジョンが、親父の周りに集まっているのを。

    いやにでかいピジョン、向日葵を咥えているピジョン、床をつついているピジョン、眼鏡をかけたピジョン。
    ピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョンピジョン――
    カシャン、という音と共にスタンドに置いてあったカメラが落ちた。それと同時に、一斉にピジョン達が羽を広げ、動かす。
    バサバサバサッ、という音と共に羽が散らばって、何も見えなくなった。気がついた時には、落ちたカメラのレンズが真っ二つになっていた。


    それから二日後、親父は息を引き取った。俺は最期を見ていない。妻と子を最寄り駅に迎えに行っていたからだ。どちらにしろ、大晦日と正月休みはこちらで過ごすことになっていたのだ。
    親父の最期の言葉は、『俺は、鳩をどけずにカメラを回したんだ。それでよかったんだ』だったらしい。
    なんて意味深な言葉だ。お袋に死んだ後も迷惑かける気か、親父。
    息子はまだ幼くて、葬式の意味すら分かっていなかったようだ。意味が分かるようになるのはいつになるだろうか。そうなったら、お袋から聞いた話をしてやろうと思う。


    親父は、鳩をどけずにカメラを回した。
    ならその息子である俺も、そうするべきなのだろう。


    火葬場からの帰り道、羽音と共に何かが大量に新年の空に舞い上がっていくのが見えた。


      [No.2111] 探検隊ラブリーズの日常 投稿者:akuro   投稿日:2011/12/14(Wed) 02:16:31     28clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「おはようヒバナ! 今日もがんばっていこうね!」

     私の朝は、パートナーであるシャワーズのナナミと挨拶を交わすことから始まる。

    「おはようナナミ。 今日はムーン逹連れてミステリージャングルまでいってくるね」
    「わかった! じゃあ私はギルドの手伝いにいってくるね〜」

     その後もナナミと二言三言言葉を交わして、住居であるサメハダ岩を後にした。

     私はヒバナ。 今はすっかりこのロコンの体に慣れたけど、昔は人間だったらしい。 そんで記憶をなくした私のとこに現れたナナミと、今は探検隊「ラブリーズ」として活動してる。 ネーミングセンス? 気にしないで。

     トレジャータウンで冒険の準備を済ませてから、いつものように仲間が待つパッチールのカフェへと足を踏み入れる。

    「あ、ヒバナさん。 おはようございます」
     優しい口調で迎えてくれた、ブラッキーのムーン。 うん、和む。
    「ヒバナ! いつまでアタイを待たせんだい、さっさと探検にいくよ!」
     今にも飛び出しそうな勢いなのは、姉さんことサンダースのライム。 テンション高いな〜 
     「ライムさん落ち着いてください。 他のお客様に迷惑がかかるでしょう」
     淡々とした口調で姉さんをたしなめてるのは、つい最近入隊したばかりのグレイシアのアイス。 今日も相変わらずだね。

    「よし、じゃあ早速行こうか!」
    「そう来なくっちゃ! さあ行くよ! ムーン、アイス!」
    「はい! 今日もよろしくおねがいします」
    「ライムさんに言われなくても行きますよ」
    「なんだい、随分と冷たい子だね」
    「氷タイプですので。 さ、行きましょうヒバナさん」

     私たちはカフェを出て、ミステリージャングルへと向かう。 今日も頑張ろっと。

    ーーミステリージャングル15F

    「おわっ」

     階段を昇った私逹の前に、たくさんのポケモンが現れた。 モンスターハウスじゃん。

     モンスターハウスと言えば、たくさんのポケモン逹を相手にしなければならない場所。

     とはいえ大丈夫っしょ。 私逹は戦闘体制を組む。 敵は……20匹程だね。

    「グオオオー!」
     我を失ったポケモン逹が、次々と襲いかかってくる。 おお怖い。
    「ムーン、姉さん、アイス……いくよ」
     私は得意の炎技を繰り出す為、深く息を吸い込んだ。 

    「OKです!」
    「おっしゃあ!」
    「……掛かってきなさい」

     ーーさあ、燃やしてやんよ♪



     ーー5分後

     私達は部屋に現れたポケモン全てを倒すことができた。 これもみんなのおかげかな。 私1匹じゃ、確実に危ない目に会ってたよね。

    「ふぅ……ヒバナ、アンタのかえんほうしゃはいつ見ても凄いね! ほとんどヒバナが倒したんじゃないか?」
    「そうかな? ありがとライム姉さん♪ ……あれ、アイスどうしたの?」
     ふと隣にいたアイスを見ると、少しつらそうな顔をしていた。
    「……いえ、少しダメージを受けただけですから、大丈夫です」
     ほんとだ、アイスの体に少し傷がついてる。 ……大丈夫かな。

    「アイスさん、無理は禁物ですよ? 今日はもうお帰りになられたほうが……」
    「……大丈夫ですから」

    「うーん、でもさ〜」
    私は口を開いた。

    「そろそろ帰らない?」
    「え?」
    「3匹共充分経験値稼げたし、そろそろPPもヤバイしさ」
    「とかいってヒバナ。 本当はアンタが帰りたいだけなんじゃないか?」
    「あり、バレちゃった? 実はバックのリンゴ、ケムッソに全部食べられちゃって。 まあ燃やしたけどね。 てことであなぬけの玉〜」





     ーーその日の夕方、サメハダ岩

    「ただいま……あれ? ヒバナもう帰ってたの?」
    「あ、ナナミお帰りー たまにはいいよね、早帰り」
    「たまにはって……ヒバナってほんとのんきだよね……この間もそんなこと言ってたし」
    「のんきでマイペース。 それが私だからね♪」
    「はあ……」


    「ところでナナミ、なんかいい物もらえた?」
    「えへへ……ジャーン!」
     そういってナナミが取り出したのは、一本の栄養ドリンク。 あれ、これって……
    「カテキンじゃん! コレどうしたの?」
    「ペラップがね、いつも手伝ってくれるお礼だって♪」
    「そっか! んじゃ早速カフェ行こ!」

     私たちはサメハダ岩を出て、カフェに向かった。 カテキンGETだぜ! なんちゃって。

     これが私達のいつもの日常。 うん、幸せ♪



     ーーそんな日常が、大きく変化するのは、もう少し先のこと……かな?



    [好きにしてください]


      [No.2110] おじいさんの旅路 投稿者:西条流月   投稿日:2011/12/13(Tue) 21:33:42     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     見ず知らずの――よい子限定ですが――人に黄金をプレゼントする。
     そんな行為を半世紀近く続けてきたぐらいなグッドでアルティメットでウルトラなおじいさんがおりました。
     ただ、この行為はアルティメットにグッドすぎたのでしょう。残念なことに完璧なまでの球体に加工した黄金を配るおじいさんの元にはあまり人が近づいてきてくれないので、なかなか黄金を配ることはできませんでした。
     それでも、おじいさんはめげませんでした。
     いつだっていいことは受け入れにくいものなのです。
     いいことをするのも受け入れて協力するのも恥ずかしい、面倒くさい。そんな世の中だということを知っているからです。
     街を綺麗にしようという清掃活動の呼びかけも暴力のない世界を作ろうと呼びかけることも人はいつだって見ないふりをするものなのです。それがたとえいいことだと無視している人も知っているのにも関わらず、に。
     それと同じです。
     だから、おじいさんはめげません。近くを通る人に声をかけ、きんのたまを配ります。
     悪い人だった昔の自分を悔いるようにいい人になろうとおじいさんは頑張り続けました。
     そんな行為を続けて、早数十年。
     おじいさんはあるとき、ふっと疑問を覚えました。
     自分はこのままでいいのだろうか、と。
     その問いはもう幾度も通り過ぎた道でした。
     見ず知らずの人に配っても、幸せになるのはきんのたまを受け取った人だけ。おじいさんの目的は世界中の人が幸せになることなのに、それではいささか範囲が小さすぎるのではないか、と。
     そんな疑問が浮かぶたびにおじいさんは、千里の道も一歩からと言う言葉を胸に刻み続けて、その問題を解決してきましたが、今日はそうはいきませんでした。
     配り続けてきたきんのたまの数は膨大だというのに、いまだに世界は幸せになりません。
     世界は広いのだと思おうとしました。広いから分からないのだと思おうとしました。
     でも無理でした。
     今度は、どれくらいの年月をかければ、どれほどのきんのたまを配れば世界が幸せになるのかということを考えてしまったからです。
     ふう、と溜息を吐いて、視線を落とせば、視界の端には深いしわの刻まれた節くれだった手。その手には杖を握っております。
     もうおじいさんは若くない。いつ倒れるかわかったものではありません。
     しかし、このアルティメットグッドマンの道を継いでくれる者はだれ一人としておりません。
     この黄金に目を眩ませず、ただ奉仕の思想をもって、人に配り続ける。そんな人をおじいさんは長い月日を過ごしてなお、見つけることはできなかったのです。
     いつ志半ばで倒れるか分からない。そんな不安を抱えてしまったのです。
     おじいさんは思いました。
     このままでは願いがかなう前におじいさんが死んでしまいます。
     そうなったとき、残った黄金はどうなるのでしょう。
     誰かが世のため人のためと使ってくれることを信じたいですが、世の中はそんなご都合主義はなかなか存在しません。
     ただ、放っておかれるだけならいいですが、悪人の懐に入ってしまうことも十分に考えられます。そうなれば、おじいさんの願ったことと真逆のことが起きるのは明白です。
     そして、あーでもない、こーでもないと思案した結果、おじいさんはひとつの結論を導きました。
     やりかたを変えようと。
     そうです。おじいさんは今まで、偏見を持たずに自分に近づいてくることをできる人をいい人だという選別基準を設けていました。しかし、それではおじいさんに近づいてくれる人が少なかったという弊害がありました。
     おじいさんはこのことを今までそれだけいい人が少ないのだと思っていましたが、その話しかけられなかったという人に、内気でシャイな子がいる可能性に思い至ったのです。今朝のテレビでも、コミュニケーションが取れない人が急増しているとやっていました。
     おじいさんの若い頃はそんなことはありませんでしたが、きんのたまを配り始めて数十年。時代が流れれば、人も変わるものです。
     おじいさんもやりかたを変えるべき時が来たということでしょう。
     おじいさんは今度は自分から声をかけ、配ろうと決めました。
     幸せが歩いてこないように、目的の成就も歩いてきてはくれない。そんな当たり前のことにいまさらながらに気付いたのです。
     まず、おじいさんはイッシュ地方に行くことを決めました。
     さまざまな町で人を見定める。出会う人数は多い方がいい。
     ならば、ビッグでフリーダムな地方を、ということをツイッタ―で検索したら、引っかかった地方だからです。
     まずは注文すると次の日には届くと噂の密林でイッシュの地図をクリック。そして、イッシュへ向かう船旅のチケットを入手。きんのたまの形を崩さないようにブリーフケースに入れることも忘れません。
     密林から地図が届いたと同日、おじいさんは船のタラップを踏みしめていました。
     長い人生、イッシュという地を踏んだことは未だにないということに忘れかけていた冒険心がちりちりと胸を焦がすおじいさん。
     自然と笑みが零れます。

     ◆ ◆ ◆

     首が痛くなるほどの高いビル。そのビルに努める多くの人々。
     同じ「街だというのに、おじいさんのいた街とは雲泥の差です。やはりイッシュはでかかった。
     しかし、と名物のヒウンアイスを舐めながら、おじいさんは苦々しく思っていました。
     大きい街だからでしょうか、人々に余裕はなく、皆自分のことで精いっぱいでとてもではないですが、人のために行動できる人が少なそうです。
     今までは自分に近づいてくる人に見境なくあげていたおじいさんはこまってしまいました。だれがいい人なのか判断する基準を持ち合わせていなかったのです。
     人の良さと言うものが見た目で分からないのが残念です。
     しかし、まだイッシュにきたばかり。これから探せばいいのです。
     溜息を吐きながら、おじいさんはヒウンシティを後にしました。






    【書いていいのよ】
    【好きにしていいのよ】
    【レイニーさん、アルティメットグッドマンお借りしました】


      [No.2109] まだお邪魔していないお宅に上がり込む 投稿者:音色   投稿日:2011/12/12(Mon) 23:56:52     81clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     テレポート あと5回くらい

     通算239敗目。これはカケルくんがオタマロに全滅させられた回数である。
     これだけやられたらもう早い所飛行タイプのポケモンを仕入れて空を飛んだ方が早いんじゃないかって気がします。
     大体ドリュウズをどうやって手に入れたんでしょうねカケルくん。まともに考えたらシッポウシティの時点でゲットできないんじゃないですか。
     そんな事は置いといて。
     今日もヤグルマの森にやってきたカケルくん。いつも通りキヨちゃんに「やっぱり弱いんじゃないの」と心をざっくり抉られて精神的に疲弊することにも慣れてきているようです。
     本日も自称『オタマロのアルファベット』で人語を操るオタマロ(♀)によるゲシュタルト崩壊寸前なほど

     オタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマシュマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオクマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマコオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロビリリダマオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロマロマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオサマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオラマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロ

     途中で明らかになにか違うものも混じったような気もしますが、オタマロの軍隊を眺める事に慣れ切ってしまったカケルくんはそちらに目をやろうとしません。
     その日の夕刊に、オタマロに担がれてポケモンセンターに運ばれるカケルくんが載りました。まぎれてモンスターボールもどきがあったかどうかは写真をよく探してみてください。


     ざっくりしたカウントで4回くらい

     むかしむかし やっぱそんなにむかしでもないむかし  要するに一昨日くらい
     『スケベクチバシ』というニックネームを付けようとしてニックネーム欄が5文字までだったので『スケベクチ』と名付けられたケイコウオがいました。

    「種族違うし!良い迷惑だし!ちょっと本物泣かせてくる」

     そうしてスケベクチはスイッチを押しました。

    「―――――――――――――――――――――――――――天誅ぅぅぅぅ!」

     空から何故か自分の意思で爆発できないビリリダマが降ってきました。
     スケベクチバシ(本物)にヒットしました。
     爆発はしませんでした。
     テレポートしました


     三階ですね。タマムシデパート。

     
     きょいちゃん映画出演おめでとおぉぉ!


     2カウント


    「あれ。ピジョンだけじゃなくてビリリダマも映ってる」
     鳩をどけずにカメラを回したつもりなのだが、ピジョンにビリリダマがヒットしている。
     丁度バランスを崩した格好なので、笑ってしまった。


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  ラスト一回
    そろそろ家に帰りたいです

    【ハンドクラップリーズ】


      [No.2108] 感想ありがとうございます 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/12/08(Thu) 00:09:33     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    『塀』と『堀』を読み間違えている人が存外に多くて恐怖と困惑と爆笑が同時に襲いかかってきている久方です。
    言わずもがな100%ギャグですよ。全てはイケズキさんのせいです(


    >No.017さん

    >普通に塀の外って読んで、
    >改稿版かな? と思って勘違いして見たらこれだよwwwwww
    全てはイケズキさんの(ry

    >あの……これ、ベストカバー裏のネタ候補にしていいっすか?
    ベストのカバー裏は一体どうなるんですかwww
    ネタは全然構いませぬよー


    >ピッチさん

    >後書きで初めてマサラタウンと悟って驚愕しました、申し訳ありません。
    >(「堀」と称される高い外壁、水との関わり、「海の神」などの単語からてっきりルネシティかどこかだと……)
    全て(ry
    内容は割と勢いで書いたのですみませんwww

    >あと「アクアラング」を水族館だと思ってたら全然違いました。アクアリウムでした。申し訳ありません。
    >(そりゃあ背負えないな。)
    ちゃんと調べたらアクアラングが商品名だったことは秘密です。

    >それはさておき、とある古いゲーム(GBとかGBCとか、あの辺りの頃の)に、こんな水中都市が本当にあったのを思い出しました。住民がみんなシュノーケル背負ってるんですよ。
    水中都市は浪漫ですよねぇ。
    実際にはあり得ないだろうけれども、しかし素敵だ水中都市。

    >「大きな飛ぶポケモン」に種別指定がないのは、主人公の彼らが「飛ぶポケモン」の種類を知らないからでは、と思ったり。
    >アクアラングを置いて旅立った彼らが再びそのポケモントレーナーに出会った時、彼らはその傍らの鳥ポケモンの種類を言い当てられるのでしょうか?
    どうでしょう(・∀・)フヒヒ

    >【続きに期待】
    つ【イケズキさん任せた】


    >きとかげさん

    まさか外伝を書いていただけるとは……!
    しかも堀の外の人たちの話とはwww
    ちょこちょこ挟まれたネタにニヤニヤ。
    どうもありがとうございますー。

    >生まれた時からアクアラングということは新生児用アクアラングに冠婚葬祭アクアラング(ry
    もちろんあると思いますwww

    >一言で言うと、勢いが余りましたすいません。
    どんどん余っていいのよ。
    むしろ余らせてくださいありがとうございます。

    >【続きをイケズキさんが書くに違いないと期待して】
    つ【自分も期待してますイケズキさん】


    感想ありがとうございました!


      [No.2107] 水の外 投稿者:きとかげ   投稿日:2011/12/07(Wed) 22:51:10     82clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    「ただいま」
    「おかえり。外の世界はどうだった?」
     擦り切れそうなスニーカーを脱いだ私は、幼なじみの手元を見つめながら旅の話をする。
     見たことのないポケモン、苦戦の末ゲットしたバッジ、なかなか勝てないライバル、遠い地方で行われるポケモンコンテスト、へんぴな島に住む変わり者の博士。進化した私の相棒を見せた時には「へえ、そんな姿になるんだ」と軽い歓声を上げた。
     その間に、幼なじみの手の中で新しいアクアラングが形を成していく。できた、という声と共に掲げられたそれは歪で、パーツのすき間からどんどん水が入ってきてしまうだろうどうしようもない代物だった。
    「まだまだ、親父のにすら追いつけない」と彼は言う。
    「……旅に出てみたら?」私は言った。
     彼は歪んだアクアラングを見つめながら、首を横に振った。

     私は古ぼけたスニーカーを履き、幼なじみの家を出る。小さな段差を飛び降りながら、南へ向かった。

     幼なじみの父親も、祖父も、ずっとアクアラングを作ってきた。きっかけは、この先にある小さな町。かつて、私たちが生まれるよりずっと前には、高い塀の中にあったというその町。今は水に、堀の中に沈んでいる。
     理由は、知らない。隣の地方にいる海の神の仕業か、あるいは遠い南の神が海を広げようとしたか。両方の地方に行って伝承を調べてみたが、そんなのは知ってるの範囲内に入らないのだと思う。

     ただ、事実として町は水底に沈み、それをきっかけに彼の家はアクアラング作りを始めた。堀の中から出られない町の人たちに、堀の外からアクアラングを投げ入れる為に。そしてこれからもずっとアクアラングを作り続ける。父親も、彼も、きっと彼の子どもも、子々孫々ずっと、ひたすら、堀の中へ送る為に。

     草むらから飛び出してきたポッポを、ボールから出てきた私の相棒が吹き飛ばす。
     ピジョットに進化した私の相棒も、昔はここいらをうろちょろするレベルの低いポッポだった。小さなポッポだったこいつが、立派な冠羽を持ち、大きな翼を手に入れ、その翼で空高く飛んで広い世界を見た。私の幼なじみは町から一歩も出ないまま、相変わらず下手くそなアクアラングを作り続けることに満足している。ポッポがピジョンを経て、立派なピジョットに進化することも、何も知らないまま。

     草むらを抜けた私の目の前に、高い堀の壁が立ち塞がった。
     今ならあの堀の中からだって、町の人を連れ出せる。
     けれど、そんなことはするなと、私の幼なじみは言う。堀の中にはゲームも、テレビも、本も、漫画も、最新のパソコンだってある。ポケモンが生きられない堀の中は安全だし、満ち足りているのだから、だから、私が彼らの幸せに手を出す必要はないのだ、と。

     でも、と私は思う。

     この堀の壁を超えたくないのは、――今の生活に満足していたいのは、
     堀の外にいる彼の方じゃないだろうか。


     灰色の空から落ちた滴が、私の古いスニーカーに染みを作っていく。
     この冒険が終わったら、新しい靴をおろして彼と一緒に堀の外に行こう。
     私のピジョットが大きく翼を広げた。


    〜〜
    生まれた時からアクアラングということは新生児用アクアラングに冠婚葬祭アクアラング(ry
    一言で言うと、勢いが余りましたすいません。
    【まずかったら消します】
    【続きをイケズキさんが書くに違いないと期待して】


      [No.2106] 水中都市 投稿者:ピッチ   投稿日:2011/12/07(Wed) 21:51:40     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    後書きで初めてマサラタウンと悟って驚愕しました、申し訳ありません。
    (「堀」と称される高い外壁、水との関わり、「海の神」などの単語からてっきりルネシティかどこかだと……)
    あと「アクアラング」を水族館だと思ってたら全然違いました。アクアリウムでした。申し訳ありません。
    (そりゃあ背負えないな。)

    それはさておき、とある古いゲーム(GBとかGBCとか、あの辺りの頃の)に、こんな水中都市が本当にあったのを思い出しました。住民がみんなシュノーケル背負ってるんですよ。


    「大きな飛ぶポケモン」に種別指定がないのは、主人公の彼らが「飛ぶポケモン」の種類を知らないからでは、と思ったり。
    アクアラングを置いて旅立った彼らが再びそのポケモントレーナーに出会った時、彼らはその傍らの鳥ポケモンの種類を言い当てられるのでしょうか?

    【続きに期待】


      [No.2105] ドータクンの寝顔 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/12/07(Wed) 20:23:55     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     俺はポケモントレーナー。午前のトレーニングを終えて今は昼ごはんの時間だ。
     「食べるのが大好き」な俺のエンペルトは、この時を待ってましたとばかりにポケモンフードの前まで駆けて来てガツガツと食事中だ。「暴れるのが好き」なドンファンは、まだまだ運動したりないらしく、ヌオーに向かってとっしんを繰り返していた。「打たれ強い」ヌオーはそれを軽く受け止めている。
     「こらっ、ドンファンのお皿元に戻しなさい!」
     「イタズラが好き」なサーナイトが、こっそりと念力でポケモンフードの乗った皿を俺のバッグの影に隠そうとしていた。サーナイトは少しむくれてみせると、それでも素直に皿を元に戻した。
     「あぁあぁ、グレイシア……」
     グレイシアの周りには、皿からこぼれたポケモンフードが散乱していた。「物音に敏感」なコイツは、大きな音を聞くと激しく驚いてしまうのだ。さっきの自分の怒鳴り声が原因ではあるが、いい加減音に慣れてほしいものだ。
     
     そんなこんなのやり取りをしている中、唯一大人しく佇んでいるポケモンがいた。ドータクンだ。プカプカと地面から2.3センチ浮きながらじっとしている。
     「お前はいつでも冷静で、手がかからなくてありがたいよ……他の奴らときたらいつだって、落ち着きないもんなぁ」
     そう言って俺は後ろからドータクンのそばにより、背中(?)をそっと撫でた。ひんやりすべすべの肌(?)ではあるが、俺は確かにそこに生き物としての温もりを感じた気がした。
     「さっ、それじゃお前もいっしょに昼ごはん食べようか」
     俺はそっと声をかけた。
     しかし、ドータクンは動かない。
     「ん? どうした? お前もあんなトレーニングして腹減っただろ? 早く食べに行こう」
     俺はさらに言った。
     が、それでもドータクンは動かない。

     ――クスクスクス……

     後ろから笑い声がした。見ると俺のポケモン達が皆そろって笑っている。何か俺は嫌な予感がして、ドータクンの顔(?)を見てみた。
     ……いつもは赤い目(?)の部分が白濁している。

     
     日の光に照らされて、「昼寝をよくする」ドータクンの気持ちよさそうな寝顔が輝いていた。


    ―――――――――――――――――――――――――――――

    こんなもんでいかがっすかーてこさーん! (30分クオリティっすがwwww


      [No.2104] 勘違いって怖い。 投稿者:No.017   投稿日:2011/12/07(Wed) 19:34:45     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    普通に塀の外って読んで、
    改稿版かな? と思って勘違いして見たらこれだよwwwwww

    あの……これ、ベストカバー裏のネタ候補にしていいっすか?


      [No.2103] 堀の外 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/12/07(Wed) 01:36:04     147clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:×塀 ○堀】 【全てはイケズキさんのせい】 【存在自体がギャグ】 【イケズキさん続きマダー?

     アクアラングの泡がのぼっていく。
     濁った水の中から、水面は見えない。

     幼馴染の親友と一緒に、水を蹴って水面へ顔を出す。
     僕たちの見えるのは曇った空と、町を囲む頑丈な石壁。

     灰色の空に、茶色の小鳩の群れが飛んでいくのが見えた。
     壁に囲われた空を、端から端まで飛んでいったのを見て、安堵する。
     時たま、ここまで落ちてくるポケモンがいる。
     残念ながら、彼らはほぼ助からない。ここには彼らの餌となるものも、石壁を登る手がかりも、足を休める止まり木さえもないからだ。


     この町が水の底に沈んだのは、僕たちが生まれるずっと前だったという。


     なぜ沈んだのか、その理由はもう誰も知らない。
     親友のおじいさんであるポケモン博士の話では、隣の海の神が怒って海流が変わったとか、南の地方の海の神が海を広げようとしたせいだとか、そんな説もあるとか。
     確かに、この町は雨が多い。雨が多いから、この堀も干上がらない。
     だからと言って、そんな遠くの海の神か何かの気まぐれ何かで、僕たちの町が水の底になっていいのか。それはあまりにも不条理じゃないか。


     僕たちの町はいつからか、『堀の中の町』と呼ばれるようになった。
     町を囲むあまりにも高い石壁が、まるで城の周りを囲む堀のようだからという理由らしい。
     家すら完全に沈む水から顔を出しても、石壁は未だ空に向かって聳え立っている。
     時折隣町の住人が物資を投げ入れてくれる他は、この町に近寄る人はいない。
     万が一堀の中に落ちたが最後、外に出ることはほぼかなわないからだ。


     親友はいつも、目を輝かせて同じ話をする。
     ずっと昔、この町に現れたポケモントレーナーだ。
     彼は堀の中に落ちた人間を、大きな飛ぶポケモンと一緒に救いあげた。

     その姿を見たのは、僕と親友だけだ。
     町の人たちは、水面から顔を出すことすら極力避けようとする。
     どうしてもこの水没した町から、離れようとしない。それがなぜなのかは、僕もわからないけれども。

     生まれた頃からそれが当たり前だった僕も、町から出る気は全くなかった。
     だけどその人は、僕たちに向かって言った。


     ポケモンと一緒なら、こんな堀の壁、簡単に乗り越えられる。
     ここから出て、広い世界を見てみないか。


     生まれた時からアクアラングを背負って、水の中で生きてきた。

     堀の中で産まれ、堀の中で生き、堀の中で死ぬ。
     それが半ば当たり前だと思ってた僕たちにとって、彼の言葉は衝撃だった。
     
     この堀の外には、僕たちには全くわからない、別の世界があるんだ。
     僕たちの力だけじゃどうしようもないかもしれないけれども。

     ポケモンが一緒なら。


    「俺はいつか、絶対、」

     水没した町の上で、親友が言った。

    「この堀を超えて、広い世界へ旅立ってやる」


     灰色の空から雫が落ちた。
     僕たち以外誰もいない水面に、波紋が広がった。




    ++++++++++


    ※どう見てもギャグです


    イケズキさんとボイスチャットで朗読会していた時

    久方「次は何読みましょうか?」
    イケズキさん「じゃあ……『堀の外』で」
    久方「……???」
    イケズキさん「?」
    久方「……それはまさか『塀の外』のことですか」
    イケズキさん「はっ! あれ『塀』ですか! 『堀』じゃなくって!」

    そんなノリで産まれた『水没都市マサラタウン』。
    イケズキさんがいつまで経っても書いてくれないから勢いで書いた。反省はしていない。


    【続きはイケズキさんに任せた】


      [No.2102] 遅れたメール 投稿者:白色野菜   投稿日:2011/12/06(Tue) 23:56:24     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「……まだ、悩んでるの?」

    「黙って!いま、ここまで!喉の所まで来てるから!!」

    親の敵を見るような形相で、少女…と、形容するには苦しい娘(17才)がグラスメールを睨み付けている。
    その気迫はさながら鬼のようで、彼女の背後の景色は陽炎のように揺らいで見える程である。

    「そう言って一週間前から一字も進んで無いじゃない。
    彼氏、もう三日前に旅に出ちゃったわよ?なのに今さら、お別れメールって……。」
    「彼氏じゃないし!!ただの幼馴染み!」
    「はいはい、ご馳走さま。それと、手。」
    「えっ………ああぁっ!!」
    娘が慌てて、反論のさいに握りしめてしまった手紙を広げてシワを伸ばす作業にはいる。
    が、手遅れなのは一目瞭然。

    「何枚目?それで失敗。」
    「……二。」
    「二十枚?」
    「…………に、丸を一個足した数。」
    「……まさか、三桁いってるとは。よくそんなお金あるわね。」
    「大会で稼いでるから………。」
    言いにくそうに呟いた、娘。
    この馬鹿さかげんで、この地域一番のポケモントレーナーであると言うのだから、世も末だ。

    「早くちゃっちゃと書いちゃいなさいよ。結局見送りもいてないんでしょう?」
    我が主は視線を娘に向けながら、私の頭を撫でる。
    暖かい手に安心感を覚えつつ、私も娘をみる。

    「だって、手紙できてなかったし…そもそも………急すぎ………。」
    娘は何やらもごもごと口のなかで言いながら、恥ずかしそうに縮こまり、しわくちゃなグラスメールを端から千切っていく。

    「あのねぇ………今日出さないなら、私が彼氏君に今のあんたの状態伝えるわよ?」
    「えっ?きょ、今日?!まってもう手紙は可愛いの無いし、グラスメールこれで最後だしっ!!」
    「今、此処で、書きなさい。じゃなきゃ、ずっと出さないでしょ?」
    さすが我が主。
    なかなかの迫力である。……口調は。
    姿は…どうみても小学生なのだがこれでも17才である。

    「うぅーー、わかったよ!書けばいいんでしょ?!書けば!!」
    鞄からもう一枚便箋を取り出すと、塵となったグラスメールを机から払い落とす。
    深呼吸をした後、娘はやけくそ気味にペンを走らせる。

    主はその様子を満足げに眺めていた。








    「『非常食のカンパンあげるから生きて帰ってきなさい!』……て、あいつは俺が何処の秘境に行くと思ってるんだ?」
    ポケモンセンターで、メールを受け取った青年が呟いたのはまた別の話。










    【山無し落ち無し】【破れたメールは後にスタッフが美味しく頂きました】【好きにしていいのよ】

    手紙ってドツボに嵌まると書けないよねってそれだけの話です。


      [No.2101] いってらっしゃい! 投稿者:門森 輝   投稿日:2011/12/06(Tue) 21:54:27     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     む、迎えに来て頂いたですと……! 書いて頂きありがとうございます! ありがとうございます! 何度でも言いましょう! ありがとうございます!
     御三家に加え主人公の性別まで不定となると6通り……読む人によって思い浮かべる世界は違うものになるんでしょうね。
     この子も先に旅立ったポケモン達と対等に向かい合える日が来たらいいなぁ等と思いつつ、1人と1匹の旅立ちを全力で祝わせて頂きます!
     最後にもう1度、ありがとうございました!

    【狂喜乱舞なのよ】
    【いってらっしゃいなのよ】


      [No.2100] 一歩遅れた旅立ち 投稿者:海星   投稿日:2011/12/06(Tue) 17:33:24     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     空気はもうすっかり秋だった。
     白いベッドにいつも飾っていたぬいぐるみが目の裏に浮かぶ。
     ぬいぐるみを本物のポケモンに見立ててこれからの冒険を想像したものだ。
     まだぎこちなく踏み出すと、思っていたよりも冷たい風が頬を撫でた。
     「大丈夫? 行けそう? 無理なら……」
     心配そうに声をかけてくるお母さんに微笑んでみせると、もう一度鞄を背負い直す。
     「大丈夫、楽しみで元気過ぎるよ。たまに電話するから……じゃあ、行ってきます!」
     ちょっと遅くなってしまった旅立ちに身体中が火照るのを感じる。
     若干重い左足を気に掛けて、真っ直ぐ研究所を目指した。
     

     控えめにドアをノックすると、博士が嬉しそうに出迎えてくれた。
     足はもう良いのかという問いに、子供らしく元気に頷いて見せる。
     入ってすぐの実験台には、忘れられたかのようにぽつんとひとつのボールが置いてあった。
     「この子……ですか?」
     選べるとばかり思っていたので少し当惑して尋ねると、博士はゆっくりと頷いた。
     「他のポケモンは、春に出て行った彼らが既に連れて行ったんじゃよ」
     つまり、この子は半年も独りで待っていた?
     恐る恐るボールに手を伸ばすと、会話を聞いていたのか、勝手に飛び出してきた。
     身体を小さくして怯えたようにこちらを見上げてくる。
     「初めまして」
     囁くように話しかけてみたけれど、その子は驚いて素早く瞬きし、博士の白衣を引っ張っただけだった。
     博士は困ったように小柄なポケモンを抱き上げ、自分に託そうとする。
     良いんですか、という自分の無言の訴えに博士は頷いて見せる。
     そっと腕を伸ばすと、温かくてずっしりした感触がして、弾けるような喜びが足の爪先からつむじまでを走った。
     しかしすぐに、ポケモンが小刻みに震えているのがわかる。
     つい力を入れて抱きしめていたことに気付き、慌てて力を抜いた。
     「よろしくね」
     潤んだ瞳が愛おしく思えてくる。
     ずっと自分のことを待って、独りでいたのだと考えると、胸が苦しくなった。
     「実は、君を待たせてる間、病院にいたんだよ……足を変に骨折しちゃって。退院できたのが先週なんだ」
     びくりとして、ポケモンは俯いてしまう。
     「それでね、ずっと寝てばっかりだったんだけど、その間も旅のこと考えてたんだよね。君とのこと」
     驚いたように身動きして、ひっくり返りそうに見上げてくるポケモンに微笑みかける。
     「今までずっと、君のこと思ってたんだよ。君は独りじゃないんだよ」
     すると、たちまちポケモンの瞳に涙が浮かんできた。
     「一緒に旅に出よう。遅れてきて、ごめんね」
     ようやく安心したのか、身体を完全にこちらに預けてくる。
     甘えたような鳴き声を出してすり寄ってくるポケモンを顔の高さまで抱き上げて、思い切り頬ずりをする。
     ほっとした博士が白衣の大きなポケットから四角い機械を取り出す。
     「――これはポケモン図鑑。君と君のポケモンがこれからする冒険を刻むものじゃよ。
      さあ、世界は広い! 沢山のトレーナーがいる、ポケモンがいる! 若い君たちは、どんどん未来を切り開いてゆけるじゃろう……――



    ――――――――――――――

     僭越ながら迎えに来ちゃいました。
     初代ということでオーキド博士(風)です一応。
     主人公は男でも女でも大丈夫な台詞を考えたつもりです。
     骨折ってwww と笑い飛ばしてください。
     いやはや、文章力も想像力もまだまだです(涙)
     ちなみに、1000文字達成してみました←
     
     失礼しましたッ(ダッシュで逃げる)

     【書いてみたのよ】
     【お言葉に甘えて迎えに来たのよ】


      [No.2099] 謝罪受けましたなう 投稿者:マコ   投稿日:2011/12/05(Mon) 02:42:47     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    リナさん、レスありがとうございます!

    スケベクチバシのやり口があんなにハードになったのは、「スケベクチバシならこんなことをしかねない」というラインのギリギリを攻めた結果です。まあ、結果的に文全体に変態臭が広がりましたが。

    スケベクチバシに言いたいことというと、本当に「マイコちゃんになにしとんじゃ!」ですよ。休日と友人関係で大損害食らっていましたからね。

    謝罪の気持ち、しっかり受けました。
    スケベクチバシのことをマイコちゃんが許すかってことに関しては、私は責任取れません……。


      [No.2098] Limbo 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/12/04(Sun) 20:12:10     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    <テーマ>
    送 / 贈


    <ワード>
    ◆送 / 贈
    ・そう‐そう〔サウ‐〕【葬送】
     [名](スル)遺体を葬るために墓所まで送ること。のべおくり。送葬。「―する行列」

    ・おくり‐び【送り火】
     盂蘭盆(うらぼん)の最終日、親族の霊を送るために門前などでたく火。門火(かどび)。《季 秋》「―のあとは此世の蚊遣哉/也有」⇔迎え火。

    ・おくり‐ぼん【送り盆】
     盂蘭盆(うらぼん)の最終日で、親族の霊を送る日。《季 秋》「茄子(なす)や瓜一つに流す―/かな女」

    ・かど‐おくり【門送り】
     葬送の際、喪家には行かず自分の家の門口で見送ること。

    ・しょうりょう‐おくり〔シヤウリヤウ‐〕【精霊送り】
     盂蘭盆(うらぼん)の終わる日に、送り火をたいて精霊が帰るのを送ること。たまおくり。

    ・のべ‐おくり【野辺送り】
     死者を火葬場または埋葬地まで見送ること。また、その行列や葬式。野辺の送り。野送り。

    ・ぼん‐おくり【盆送り】
     盂蘭盆(うらぼん)の最後の日に、精霊(しょうりょう)を送り返し、供え物を辻・川・海などに捨てたり流したりする行事。精霊送り。送り盆。

    ・おくり‐もの【贈(り)物】
     人に贈る物。進物(しんもつ)。プレゼント。

    ・おく・る【贈る】
     [動ラ五(四)]《「送る」と同語源》感謝や祝福などの気持ちを込めて、人に金品などを与える。贈り物をする。「記念品を―・る」「はなむけの言葉を―・る」

    ◆Limbo
    ・リンボ,地獄の辺土 《地獄と天国の間にあり,キリスト教以前の正しい人,洗礼を受けなかった小児,異教徒,白痴者の霊魂の住む所》.
    ・忘却; 無視された状態.
    ・リンボ, 古聖所:天国と地獄の中間の場所;洗礼を受けなかった幼児やキリスト降誕以前に死んだ善人の霊魂がとどまるとされる
     →the limbo of infants(幼児リンボ界)
    ・忘却のかなた
     →be cast into limbo(忘れ去られる) 
    ・(両極端の)中間状態[地帯];どっちつかずの状態.
    ・拘置所, 刑務所;拘置状態, 拘禁.
     →in limbo(不安定な状態で, 宙ぶらりんの状態で).
    ・虚無

    ◆Animo
    アニモ。作中のポリゴンにつけられた名前
     →エスペラントは「人工言語」、人為的に生み出された言語
      →ポリゴンは「人工のポケモン」という触れ込み
     →アニモ[animo]は「魂」「霊魂」などを意味する


    <交通整理>
    ・死者との別れを「送る」と表現するのは間違いのない事実。つまり、死者の魂は確実に「何処かへ辿りつく」と考えられている。
    ・主人公はアニモに魂が宿っていると考えている。アニモの停止は死と同義であり、アニモの魂もまた「何処かへ辿りつく」必要があると考える。
    ・肉体が物理的に喪失するまで、魂は眠ったまま宿ると考えられる。送り火山でアニモを葬ろうとしたのはそれが理由。
    ・しかし送り火山にて、端的に言うと「アニモは生物ではない。無生物だ」と拒絶されてしまった。ここでアニモの「生物である」という前提が揺らぐ。
    ・この前提の揺らぎが、主人公の思考に大きな影響を与えている。アニモは生物なのか?無生物なのか?
    ・スピアーの針を供養する「針供養」、ジュペッタにならないために人形を供養する「人形供養」など、無機物に魂が宿っているかのような風習の数々。
    ・無生物であっても魂は宿るのか?無生物のアニモに魂が宿るなら、その魂はどのようにして送られるべきか?
    ・アニモは「デジタル・セメタリー・サービス」に「送られ」(送信/伝送/伝送)、今の形を「デジタルで寸分違わず」留めたまま、サーバで眠りに付く。
    ・肉体の喪失=魂の遊離が前提ならば、アニモの魂は永遠に留められたまま、天国にも地獄にも行けない一つの場所に留まることになる、それこそがLimbo。サーバはLimboである。
    ・主人公は、アニモをサーバに「送った」のが正しいのか、ずっと答えを出せずに迷っている。


    <シチュエーション>
    ・【魂はある】針を供養するおばあさんとスピアー
    ・【魂はある】古くなった人形を供養する少女
    ・【魂はある】森羅万象に魂が宿ると主人公に聞かせたおばあちゃん
    ・【魂はある】人類が「誕生させた」と説明するプレゼンター
    ・【魂はない】壊れた竹蜻蛉を捨てる少年
    ・【魂はない】アニモの供養を拒絶する送り火山
    ・【魂はない】アニモの死を「機能停止」と表現するカスタマーサポート


    <デフィニション>
    ◆アニモ
     主人公のポリゴンの名前。享年十五歳。由来はエスペラント語の「魂」(Animo)から。

    ◆デジタル・セメタリー・サービス
     シルフ社が提供する「電子霊園」。亡くなったポケモンをデータ化して引き取り、「当時の姿を留めたまま」半永久的に保管するサービス。


    <募集テーマと作品テーマの摺り合わせ>
    ・魂は送り込まれ、送られてゆく
    ・魂は如何にして送り込まれる?
    ・魂を送り込むのは誰?
    ・魂は何処へ送られてゆく?


    <ポケモン小説としての意義>
    ・ポリゴンは生物か?無生物か?
    ・ポリゴンの終末は死か?停止か?
    ・ポリゴンが生物であるなら、魂は宿るのか?
    ・魂が宿るとするなら、その魂はどこへ送られるのか?


    <タイトルの意味>
    ◆存在
    ・キリスト教以前の正しい人
     →ポリゴンにとっての「キリスト」はいない
     →ポリゴンの善悪を裁く者の不在
     
    ◆状態
    ・どっちつかずの状態・中間状態・不安定な状態
     →生物か?無生物か?
     →ポケモンか?プログラムか?
     →死か?停止か?
    ・無視された状態・忘却のかなた
     →ポリゴンの魂は人々に無視されている or 忘れられている
     →魂があるということを無視されている or 忘れられている

    ◆場所
    ・天国と地獄の中間の場所
     →天国にも地獄にも行けない
     →中間・中途半端・どっちつかず
    ・無用なものの捨て場所
     →機能停止したポリゴンはデータとしてサーバに送られる
    ・拘置所
     →サーバに留められたポリゴンは天国にも地獄にも行けない


    <何が言いたいのか?>
    ◆二次創作的アプローチ
     「ポリゴンに魂は宿るのか?」

    ◆テーマ的アプローチ
     「ポリゴンの魂はどこへ送られるのか?」

    ◆タイトル的アプローチ
     どっちつかずの状態
      →ポリゴンは生物?無生物? 魂は宿る?宿らない?

     中間状態
      →生物でも無生物でもない、魂が宿るとも宿らないとも限らない
     
     無視された状態
      →ポリゴンは生物でありながら、それが無視されている?

     天国と地獄の中間の場所
      →ポリゴンは天国と地獄、そのどちらにも行けない

     無用なものの捨て場所
      →ポリゴンの送られるサーバは、無用となったポリゴンの捨て場所

     拘置所
      →天国にも地獄にも行けないまま、ポリゴンは半永久的にサーバに拘置される


    <時系列整理>
    ・主人公の誕生とアニモの登場
    ・主人公とアニモのふれ合い
    ・おばあちゃんとアニモの関係
    ・おばあちゃんの死
    ・アニモの死
    ・アニモの葬儀が拒絶される
    ・アニモをDCSへ送ることになる
    ・スマートフォンに写るアニモの姿を見る


    <実際の書き起こし順の整理>
    ・スマートフォンで何かのデータをダウンロードする主人公
    ・スマートフォンで何かをダウンロードする少女→話の導入
    ・画面には「アニモ」と書かれている→アニモの存在を定義
    ・生まれた次の月に家へやってきたアニモ→生まれたときからずっと一緒にいたことの定義
    ・父親にアニモは玩具ではないと諭される→アニモを「生き物」と考えるようになったきっかけ
    ・竹トンボを壊す少年→無生物は「死ぬ」のではなく「壊れる」
    ・一週間前の出来事が脳裏をよぎる→次の回想へのつなぎ
    ・アニモが死ぬ/機能停止する→アニモが既に亡くなっていることを記す
    ・変わらないように変わってしまった→重要なメッセージ「変わらないように、変わってしまった」
    ・人形供養をする少女→無生物にも魂が宿ると言う考え方の暗示
    ・その傍らには祖母と思しき女性が立っている→祖母の登場に向けての布石
    ・祖母を一年前に亡くしている→アニモの死を受け入れられたのは、祖母を同じように亡くしていたから
    ・祖母は常々、あらゆるものに魂が宿ると言っていた→祖母の言葉が、主人公に大きな影響を与えている
    ・粗大ゴミの山を見つめる→葬られること無く、ただ積み重ねられた無生物
    ・かつて使われていた痕跡が多く残っている→かつてはどこかで使われ、確かに居場所があったはず、ということの示唆
    ・送り火山に葬ろうとしたところ拒絶される→非常に重要なシーン。送り火山に拒絶される
    ・ポリゴンは生物ではないという→ポリゴンは生物ではなく無生物であり、そもそも送るべき魂が存在しない
    ・スクラップしておいた古い新聞サイトの記事→次へのつなぎ
    ・架空の人物の告別式・葬式が行われたと言う話→架空の人物でさえ時として別れの儀式が行われることの表現
    ・カスタマーサポートに「再起動」するよう言われる→アニモが魂のない無生物であると突きつけられる
    ・プログラムを初期化すると、過去の記憶は消えてしまう→再生ではなく「再起動」であることを示す、ポリゴンが「プログラム」であることを表現する
    ・ダウンロードの終わったスマートフォン→次へのつなぎ
    ・片隅に「DCS」の文字が見える→次へのつなぎ
    ・シルフから「デジタル・セメタリー・サービス」を提供される→デジタル・セメタリー・サービスの定義
    ・促されるまま、少女はアニモをDSSへ送信する→アニモをDCSへ「送信(伝送)」する
    ・動いていた頃のアニモの写真→ダウンロードが完了した
    ・ニュースメールのプレビュー「人類が初めて作り出したポケモン・ポリゴン」→「作り出した」という言葉を使い、ポリゴンが「生み出された」のではなく「作られた」のだと強調する
    ・友達と喧嘩をして落ち込んでいると、アニモが寄り添ってくれた→アニモの心遣いと優しさ
    ・固い無機質な感触に、言いようの無い頼り甲斐を覚えた→アニモは確かに意思を持ち、いつも自分の側にいてくれた
    ・少女は問う「あなたをそこに送ったのは、正しいことだったの」→中途半端で割り切れない場所(=Limbo)に立たされた少女が、永遠に変わらない場所(=Limbo)にいるアニモに問い掛ける
    ・写真の中のアニモは、何も言わずにただ視線を送るだけ→アニモは何も語らず、ただいつもと変わらない、変わらなくなってしまった視線を「送る」だけ

    -----------------------------------------------------------


    Limboの構想ノート兼プロット。本編の執筆時間よりこのメモを弄ってる時間のほうが圧倒的に長かった。
    よく見てみると、完成稿ではカットまたは変更された内容も結構あったり。


      [No.2097] 延寿今昔物語集 ― 蓮夢 投稿者:わたぬけ   投稿日:2011/12/04(Sun) 19:35:23     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     むかしむかし、それはそれは千もの年月よりも遥かにむかし、延寿(エンジュ)の京(みやこ)に平雅信(たいらのまさのぶ)という貴族がいた。
     先の帝、陽浄帝と女房で前関白葛原元経の娘、園子との間にもうけられた男子であった。しかしながら春宮には既に長子である昌明王が立太子されていたため、元服の後は臣籍降下され平氏の名を賜り、左京の五条四坊に屋敷を授かることとなった。
     この平雅信、顔立ちは大変彫りが深く、また背丈も五尺と半という稀なる高身長であったにも関わらず、哀しいかなそのような容貌の男は当時としては受け入れがたいものだったため、あまり女にもてるというものでもなかった。
     しかしながら楽を深く愛しその腕前も大変巧みなるものだった。いずれの時か鈴の塔にて楽献納に参加した折、それはそれはまるで天人の奏でるが如き美しい横笛を披露したため、主上から「雅信の笛声、まさに飛天のごとし」と讃えられ以降内裏で催し事が行われる際は必ずと言って良いほど呼ばれることとなった。もちろん奏でる楽器は横笛(おうてき)だけでなく琵琶、箏、笙、篳篥(ひちりき)などなど雅信公に奏でられぬ楽器はこの世に无しと囁かれるほどであった。
     さて、そんな平雅信公であるが、これは後の世に伝えられた寓話の一つ。

     ある日内裏での公務を終え、屋敷へと大隻牛(ケンタロス)の引く牛車に揺られて帰っていた。空は鮮やかな茜色に染まり、間もなく夜の帳が落ちようとしている。雅信は早く屋敷に戻り、月を眺めながら一曲奏でたいものだと思っていた。
     そんな折、雅信の耳を楽の音色がくすぐった。延寿京でこの雅信を他にして楽への愛の勝るものはなし、背筋をピンと伸ばし公務の疲れはどこへやらか吹き飛んでしまったかのよう。そして一音たりとも聞き漏らすまいと耳をすました。それはそれは甘美なる笛の音色。
     そこで雅信は是非ともこの稀有なる調べを奏でている奏者に是非とも会ってみたいものだと考え、牛車から顔を出して牛を引く童にこの調べが聞こえる方向へ向かえと指示した。ところが童はよしましょう、もう屋敷へ戻りましょうと反対する。それもそのはず、空を見るともう日は西の山の向こうへ姿を消し、西空が名残惜しく朱を交えたように赤く染まり、その手からこぼれたほとんどはもう真っ暗に近い藍色に支配されていたのだから。
     なにせ夜の灯など朱雀大路に燃やされる篝火くらいしか他に無い時代のこと。少し通りから外れて小路へと入り込むと一寸先は闇という言葉がそのままに表されるほど暗闇に覆われてしまう。それだけならまだしも、夜は物の怪の領分。特に実態が見えなかったり、人を化かしたりする霊鬼“たまおに”“りょうき”と呼ばれる物の怪が跋扈すると言われている。霊鬼にあてられた人間は魂を吸い取られたかのように無気力になったり、重い病気を患って死に至ると信じられていた。他にも喰われて喰い残しの死体は羅成門に捨てられるだとか、霊鬼絡みで死んでしまった魂は摺鉢山(すりばちやま)にあるとされる地獄への門の奥へ連れられるだとかいう話もまことしやかに語られていたのである。それらのことを鑑みるに、童の言い分も至極まっとうなことであった。
     しかし楽のこととなれば寝食も忘れてしまうこの平雅信。嫌がる童に食い下がり、命令だからこの笛の聞こえる方へ牛を走らせよと声をいからせる。しかし童は地に頭を付けてお願いですからどうかご勘弁をと遂には泣き出してしまう始末。楽のこととなると見境のなくなる雅信であるが、元来はとても慈悲深い気概。笛の音色の方へ牛車を走らせるのは諦めることとした。
     しかし笛の音色を求めることを諦めたわけではなし。雅信公は車副(くるまぞ)いの一人から松明を受け取ると家来たちに先に帰っても良いぞと言い、彼らが止めるのも聞かず笛の声の聞こえる方へと一人で歩き始めてしまった。

     さて、雅信は笛の音色の主を求め歩く。音のする方向へ音のする方向へと足を向ける。大路を横切り真っ暗な小路に入り込んだと思ったらまた大路に戻り、そうするうちについに空は完全なる夜に覆われ、まるで壮大な浄土図でも描くが如き星の輝きがそっと降りてきた。
     笛の音は少しずつであるが確実に近づいている。そして近づくに連れてその妙なる響の仔細が表れてきた。それは妖艶にしてこの世のものとは思えぬ微妙音(みみょうおん)。
    ――嗚呼、私の耳に狂いはなかった。主上から飛天の如き笛声と讃えられた私だが、この音色こそ天界の楽と呼ぶにふさわしいではないか。
     雅信ははしたないと知りつつも次第に小走りになる。やがてそれまで通っていた小路道を抜けると壮健たる塔の前へと出た。ここは大内裏より戌亥(北西)の方角に佇む鐘の塔。今の主上より六代前の高武帝が都をここ延寿に移す折、姥女大社より授かった託宣により同じく大内裏より艮(北東)の方角にある鈴の塔と共に建てたという九重の塔。
     その塔からこの天界の楽と呼ぶが如き笛の音色が聞こえてくる。空はもはや完全たる闇に染まり、摺鉢山の向こうから折しも昇った半月が鐘の塔を青白く照らしていた。
    ――まるで冥府に迷い込んだかのようだ。
     雅信は自分が手に持って掲げている松明がどうにもこの場にとって些か場違いであるかのように思え、さりとてもしこれを手放して霊鬼に当てられるようなことになったらという考えも浮かび、その二つが堂々巡りとなっていた。するとその時、塔の側に誰か人影がちらつくのを目にした。雅信の松明の明かりにぼんやりと照らされ、彼の人物の足元では影がゆらゆらと波のように揺れていた。しっかりと明かりに対して影が映るのを見るにどうやら人であるらしい。
     するとその人影も雅信に気づき、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。そのうちにどうやらこの者は笛の主とは違うらしいと気づいた。その者は草色の僧衣、あずき色の袈裟を身に纏っている。どうやらどこかの寺の僧であるらしい。齢は四十、あるいは五十くらいと見受けられた。柔和でありながらどこか厳しそうな皺を顔に刻み、背丈は五尺ほどと雅信に比べれば大分小さい。尤も、雅信のほうが大きすぎるという話でもあるのだが。両者は互いに深々と頭を下げると、雅信の方から切り出した。
    「おぬしもこの笛の声に誘われてやってきたのであるか?」
    「ええ。拙僧は摺鉢山延妙寺の浄厳(じょうがん)と申す」
    「浄厳殿とな。お噂はかねがね伺っておる。市井に出て名も無き人々のために念仏を唱えたり、田畑を焼く炎狐(えんこ)を退治したりと」
    「いえいえ、そのようなこと世の人々の誇張でしょうに」
     それから雅信は次に己の身分をこの浄厳に明かした。浄厳はほうほうと頷きながら興味深げに雅信の足元から烏帽子の先までを反芻するように眺めた。
    「こちらこそ雅信殿の噂は耳にしておりますぞ。その楽の才は世極まるところにて主上からも深く気に入られているらしいではありませぬか」
    「ハハハ、楽しか取り柄がないだけであるさ。一応官位も頂戴しているものの、政(まつりごと)のような難しきことはとんと分からぬ」
    「そしてその楽が、雅信殿をここへ連れてきたというわけでありますな」
     雅信は笑いながら頷き、そして二人は今一度鐘の塔を見上げた。笛の音色は二人が話している間も鳴り止むこと無く流れ、どこまでも響きわたっていくかのようだった。
    「そういえばなぜ摺鉢山の僧侶たるおぬしがここへ?」
     雅信はかねてより抱いていた疑問を浄厳へ投げかけた。
     延妙寺とは摺鉢山に建つ寺院である。摺鉢山は延寿京より艮の方角にそびえる山で、成杜国(じょうとのくに)の霊山の一つであった。広大な洞窟が走り東方の伏戸(ふすべ)などの地方へ行くための重要な交通路であるのだが、都から艮すなわち鬼門に位置するためそれを抑えるべく、山には壮麗なる伽藍を持つ寺宇が建造された。それが延妙寺であった。
     浄厳は塔を見上げる視線を揺らがさぬまま、少し躊躇するように間を置くと、やがて語り始めた。
    「実はですな。今より十日程前のこと、延妙寺の宝物蔵が何者かに荒らされたのでございます。結構な騒ぎになりましてな、すぐさま蔵を整理し所蔵目録と照らしあわせたのですが、奇妙なことにたった一つの物を除いて何も盗まれても壊されてもいない。どうやらその一つの物だけが目的であったようでな」
    「その盗まれた一つとは?」
    「龍笛です」
     言葉を強調するように浄厳は言った。雅信はゴクリと唾を飲み込む。
    「蓮夢(はすゆめ)というそれは見事な笛でして、西方の唐土よりもたらされた名器でございまする。笛が吹き手を選ぶと言われるほど気難しい楽器であるが、ひとたび手懐けるとその音聲その名のごとく夢を見ているような心地にいたすと言われております。そしてその名器が何者かに盗まれた。私は数日前より市井に降りてみ仏の教えを民に説くとともに、盗まれた蓮夢を探しておりました。するとさきほどこの先にあります庵に戻る折り、どこからか笛の音が聞こえる。もしやと思い音を辿ってみるとこの鐘の塔にたどり着き、雅信殿に会ったという次第。いやはや、盗まれた龍笛を求めて雅信殿にかの有名たる雅信殿に会おうとは、これも必然と申しますかもしくはみ仏のご縁というものでございましょう」
     浄厳はそっと手を合わせると鐘の塔に向かって頭を下げ、小さく念仏を唱えた。
    「ではこの笛の音が盗まれた蓮夢かもしれぬということか」
    「決まったわけではありませぬがおそらくは……。なにせずっと蔵に収められていた故、拙僧もまだ一度も蓮夢が奏でられているところを見たことがなかったので」
    「なるほど。となるとますますにこのまま奏者も分からぬままただ聴いて帰るだけというわけにはいきますまい」
     浄厳は低く笑った。つられて雅信も笑う。改めて二人は鐘の塔を見上げた。そして何も言葉を交わさぬにも関わらず、申し合わせたように歩き始めた。ザッザッと白洲の砂を踏みしめる音が鳴る。塔の入り口の前に差し掛かった時二人は同時に気づいた。
    「これは……錠が壊されておるな」
     中に誰かがいるのはどうやら間違いない。そこで雅信はもしうっかり塔を焼くようなこととなると笑えぬということで松明の灯りを消した。唯一の光がなくなり、あたりに墨をかぶせたように暗闇が覆った。そうなるとさすがの二人もこの暗闇を前にしては多少の恐怖を感じないでは居られない。しかしそれでも笛の音はこの場を離れたくないという欲求を起こさせるに十分であった。
     二人は暗がりの中で塔の扉を開く。幸いにも塔を上まで登る必要はないようだった。なぜならこの笛の音は明らかにこの第一層から聞こえてくるからだ。雅信と浄厳は顔を見合わせるとやがて両者意を決して音を立てぬように塔中へと足を踏み入れた。




     中は真闇にして己の手足さえ目に映すには容易ではない。木の格子からわずかに月明かりが漏れ入っているものの、その申し訳程度たるや気休めという他ない。
     二人はゆっくりとだが奥へと入っていく。
     雅信は震えていた。物の怪とも知れぬ得体のしれない笛の主や己を飲み込むように包みこむ暗闇に恐怖したのではない。それは感動の震え、興奮の震え、魂の底より体全体へと伝わる震えだった。それを起こさせているのは他でもない、この龍笛の音色だった。外で聴いている時も十分すぎるほどの感動を味わったはずだったが、塔の中へと入るとまた一味も二味も違う。笛の音が発する波紋が塔を形作る木材一本一本に伝わり、それが跳ね返って大気に木霊し、その跳ね返った音がまた元の笛の音とぶつかり合い絶妙なる調和を描いている。まるでこの鐘の塔全体が龍笛そのものになったかのよう。自分が主上から飛天の如しと讃えられた鈴の塔での楽献納の時でさえ、このような音は決して鳴らなかった。これは奏者のなせる技なのか、はたまた楽器のなせる技なのか。
     雅信は感極まるあまり、ついに涙を流さんばかりとなった。
    「嗚呼、いとめでたし」
     感情の昂ぶりのあまり、ついに雅信はつぐんでいた口より声を漏らした。そのときだった。帰り道の牛車の中で初めて耳にしてから今までずっと絶えることのなかった笛の音が、まるで水を打ったようにピタリと止んだのだ。雅信はハッと息を飲んだ。しまったと思い、慌てて足を踏み出そうとしたが、しかし同時に暗闇の奥から声が聞こえた。それはか細い今にも消え入りそうな女の声だった。
    「そこにいらっしゃるはどなたでございますか?」
     胸が高なった。しかし今度は感動や驚嘆によるものではなく、緊張によるもの。思わず頼るように浄厳へと目を向けた。しかし浄厳はじっと闇の奥へと顔を向けたままじっと動かない。しかもこの暗がりのせいでその表情も全く読めなかった。暗闇の奥は女の声が聞こえたっきりやはり何も物音がしない。このまま黙りを通すわけにも行かず、ええい儘よという気持ちで雅信は口を開いた。
    「私は平雅信という者なり。宮中から帰る折、この世のものとは思えぬ美しき笛の音を聴き、是非とも奏者にお目にかかりたいと思い、ここまで来た。さきほどまで笛を奏でていたのはおぬしであるか?」
    「はい」
     女の声はやはり枯枝のようにか細い。
    「実に見事であった。この延寿京……いやこの世のあらゆる笛の名手であってもそなたの調べにはきっと敵わぬであろう」
    「有難き御言葉を。しかしながらそれは私の成した技ではございませぬ。この蓮夢が成した妙技……」
    「やはりそれは蓮夢であったか?」
     浄厳が壮年らしい乾いた声で張り上げた。女の声は横から入ってきた浄厳の声に驚いてしまったかのようにぷっつりと途絶える。しかし居なくなってはいない。雅信も浄厳も暗闇の奥にまだ何かが居るという気配を感じ取っていた。
     浄厳はつい声を荒らげてしまったことを気恥ずかしく感じ、こほんと咳払いをすると同じ人物とは思えぬほど声を穏やかに落とし言った。
    「いや、失礼した。拙僧、摺鉢山延妙寺の坊主で浄厳と申す。何を隠そう、今より十日前に寺の宝物蔵から盗まれた蓮夢を探すためにここへやって来た」
     そこで一旦言葉を切るが、女からの返事はない。浄厳は続けた。
    「只今の汝の調べ拝聴いたすところ、さぞかし名のある龍笛の名手とお見受けする。これほどまでの名手に奏でられるとは蓮夢もさぞかし喜んでおろう。しかしながら、その蓮夢は延妙寺の大切な宝物。今なら先ほどの素晴らしき調べに免じて手荒な真似は控えよう。どうか蓮夢を返してはくださらぬか」
     暗がりのせいで雅信は浄厳がどのような顔をしているのか見定めることができない。しかしその声の調子で自ずと想像されるようだった。穏やかに語りかけているようで、腹の深い所、奥底ではしっかりと相手を逃すまいと、声でもって睨んでいるようだった。
     そんな浄厳を知ってか知らずか、女の声は依然として聞こえない。あまりに続く静寂に雅信はまさか相手に逃げられたのではないかと、自ずと自分たちの入ってきた出入り口に振り返ろうとした。しかしそのときになってようやく暗闇の向こうから女の声が戻ってくる。
    「分かりました。お返ししましょう」
     その言葉に雅信がほっと胸をなでおろしかけるが、そこで女の声が「しかし」と続いた。
    「お返しする前に、どうしても叶えていただきたいことがございます」
    「申してみよ」
     浄厳が返す。
    「まず一つ、お二方にこの蓮夢の謂れを聞いていただきたいのです」
    「ほう、蓮夢の謂れか」
     こう返すは雅信。雅信はちらりと浄厳に目をやるが、やはり暗がりのせいでよく分らない。しかし彼が何も言ってこないので、雅信はこれを恙なしという意向に汲み取り、女に言った。
    「ぜひ聞かせていただきたい。これほどの音色を生み出す楽器。よほど腕の立つ職人の技であろう」
     雅信の返事に、女は「おお」と歓喜とも感動ともつかぬ声を上げ、その声はあるいはすすり泣いているようにすら聞こえた。やがて疼いていた痛みが治まるかのように声も止むと、女はポツリポツリと語り始めた。
    「この蓮夢、今より百年(ももとせ)もの昔、ここより西方の大陸にある国の職人の手によって生み出されました。職人の名は高榮(こうえい)と言い、数々の名器を生み出した天才的な楽器工でありました。特に笛に関しては百年に一人となしと呼ばれるほどで、その音色は何人もの諸侯、果ては皇帝に至るまで魅了しました。やがて彼国の都に呼ばれ、いくつもの名器を献上する身分となったのです。そして高榮には一人の妹がいました。この女もまた楽器、特に笛を鳴らすことに関しては類い稀なる才を持っており、高榮が作った名器を妹が鳴らして世に広めるという図式が成り立っていたのです。世の人はこれを『高之二楽才』と讃えられました」
    「その妹というのは……もしや?」
    「はい……何を隠そう私でございます。私たち兄妹はまだ年端もいかぬ内に身寄りを流行病で亡くし、二人で互いに支えあい生きてきました。幸いにも一族は楽師、楽器工を代々輩出しており、私たち兄妹も幼き頃より兄は楽器工、私は楽師としての手ほどきを受けており、それを職になんとか食べることは困らずに済みました。
     そのうち、先ほども申し上げましたように都に呼ばれ、宮廷の宴にて皇帝の御前で演奏するという誉をいただき、その宴のために兄はそれまでの経験の粋を結集した一品を紆余曲折を経つつ完成させました。それがこの蓮夢。そして申し遅れましたが、私は名を高蓮(こうれん)と言い、蓮夢というのも兄が私のために付けた名なのです」
    「なるほど。元々蓮夢はそなたの兄がそなたのために作ったものであったのか。しかし、それがどうしてかような土地にまで?」
    「はい。それで件の宴は大変な成功をおさめ、私ども兄妹は皇帝のご寵愛を受けることとなりました。しかしわずか数年でもとよりご高齢だった天子様は崩御あそばされ、そこから悲劇が始まりました。後継者をめぐって内乱が起こり、その混乱の中で兄は死罪に……そればかりか兄が作り上げてきた数々の名器も焼き捨てられてしまったのです」
     高蓮と名乗る声の主はそこでいったん言葉を切り、その頃の事を思い出したのか泣いているように呻いた。
    「私は兄や先帝の側近だった方々の計らいでどうにか都を脱し、各地を放浪しました。しかし生き延びたものの先の希望も見いだせず、死ぬことさえ考えました。そんな折り兄の楽器の内、蓮夢だけがどういう因果か焼亡の難を逃れ、はるか東のこの成杜に渡ったという噂を耳にしました。全ての希望を失っていた私がこの報にどれだけ救われたことか……。せめてもう一度だけ蓮夢を奏でたいという思いで、港から貿易船に潜り込み、さらにいくつもの歳月を経てようやく成杜へとやってきたのです。しかし……」
     高蓮は語調を落とす。
    「それまででした。成杜の地を踏んで間もなく病に伏しそのまま果てました。しかしそれでも蓮夢だけはもう一度……と願う心が成仏を許さなかったのでしょう。私の魂は現世に留まり、なおも百年に近い歳月をかけて蓮夢を探し続けました。そしてつい先日、ついに延妙寺の蔵にて悲願だった蓮夢との再会を果たしたのです」
     そこでようやく高蓮は話を終えた。
     雅信はただいまの話にいたく感銘を覚え、気が付けば両の目よりはらはらと涙を流している。直衣の袖で目元を拭い、今一度暗闇の奥に目を凝らした。依然として何も見えないがそこには唐土衣装に身を飾り龍笛を手に持ち、麗しくたたずむ女の姿が幻視されるようであった。
     この高蓮という女はどのような思いをして病の地で果てたのだろうかと雅信は思いを馳せる。過去に偲んでは涙を流し、兄を偲んでは顔を埋める。
    「さてもうら悲しき物語よ。かように美しき音色の裏にそのような謂れがあったとは。品のほとんどを焼き捨てられるとは、さぞ高榮殿も高蓮殿も無念であったろう」
     袖を涙に濡らしつつ、雅信は今の我が身がいかに幸福であるかを思う。今の主上の御代は安寧を持し、政争の種は転がっていないとは言えぬが、好きな管弦を鳴らし暮らしている。いつかこの平穏も崩れてしまうのだろうかとぼんやりと考え、にわかに寒気が襲った。
    「蓮夢の謂れにつきましてはこれで終わりにございます。そしてこれから申し上げるのがもう一つの願い。
     蓮夢を再び取り戻した翌日から十日かけて、かつて天子様に献納した十の曲を一日一曲ずつ奏でてきました。そして今日が九日目。明日の最後の一曲で今度こそ私の未練も尽くでしょう。ですので、どうかお願いです。蓮夢の返却を一日だけ待って頂けませぬか。明日の晩の最後の一曲が終わりましたら、必ずやお返しすると約束いたします」
     そのとき雅信は何か奇妙な物音を耳にした気がした。縄のような太い何かが床を擦るような乾いた音。しかし音はその一度だけで以降は何も聞こえなかったので、すぐに意識の外へと追いやられた。
    「どういたしますかな、雅信殿?」
     浄厳が殊勝に身を低くして尋ねる。
    「どうするも、やはり明日まで待とう。高蓮殿がそれで未練が晴れるというのなら」
    「私も賛成にございます」
     浄厳の口調はなにか自分と違う意味が込められているような響きを感じ、雅信は少し眉を寄せた。しかし雅信はすぐに思い直して高蓮の声のする暗闇の奥へと向き直った。
    「分かった。約束いたそう。明日の晩、同じ時刻にまたここへ来よう」
    「おお、有難き幸せ。出来ることならあなた方のために今一度楽を奏でたいところでございますが、故あって叶わぬところ。どうかまた明日お越しくださいませ」
     その言葉が終わるとともに、なにかと板が外れたようなガタンという音が鳴り渡り、雅信は夢から叩き起こされたようにビクリと体を震わせた。
     それっきり高蓮の声も、龍笛の音色も何も聞こえず、鐘の塔は夜の静寂が再び支配することとなった。浄厳は雅信に塔を出ることを促し、彼もそれに続いた。
     外に出てから再びこの九重塔を見上げる。夜空の星々その陰で黒々と隠す様はまるで巨人のようだと雅信は思った。
     今一度耳を凝らすがやはり笛の音は聴こえてこない。
    「浄厳殿、蓮夢は延妙寺の宝物であるということを忘れて勝手に決めてしまって申し訳ない」
     雅信は今しがた高蓮と交わした約束事を、浄厳の前で軽はずみだった己を恥じる。しかし浄厳は大らかに笑いを返した。そういえば塔の中ではずっと暗がりの中で浄厳の表情がわからなかったが、今外に出ると月明かりに照らされてようやくその顔が見えるようになっている。
    「なあに、構いませぬ。もう一度あの笛の音を耳にすることができると考えれば」
     顔がようやく見えたことによって雅信は得も言われぬ安心感を感じた。
    「それより雅信殿、私めは明晩は少々野暮な用事を済ませてから参上する故、少々遅れるかもしれぬことをお許しください」
    「ほう、いったい何用で?」
    「鈴の塔へ」
    「鈴の塔?」
     ここ鐘の塔と真反対に位置する鈴の塔まで何しに行くのかと雅信は気になったが、それ以上問いただすのもさすがに野暮だと思い直し、そこで問答は終わりにした。
     雅信と浄厳は同時に東の方角へと目を向ける。摺鉢山の山肌から十五夜の月が昇り、青白く淡い光を降らせていた。その光を背後に背負って鐘の塔に相対するもう一つの塔、鈴の九重塔が高々とそびえていた。




     翌日、ゆうべと同じように平雅信は内裏での公務を終えると、牛車を屋敷の方向ではなくまっすぐ鐘の塔へと向かわせた。幸い方違(かたたが)えの方角も問題ない。しかし家来たちには直接鐘の塔という目的地の名を告げるのではなく、乾(いぬい・北西)の方角に向かえとだけ命令した。昨夜のことを話すようなこととなれば、怪異だの霊鬼だのと騒がれかねないと思ったからである。雅信ももちろん物の怪や鬼に関わって恐ろしい目に遭うようなことはごめんだが、あの蓮夢を自在に奏でる高蓮はそういった存在ではないだろうと安心していた。
     鐘の塔への道中、車の中で雅信は様々な思案をめぐらす。
     今晩、高蓮どのが奏でる皇帝に献上したという最後の秘曲はいかほどのものなのだろうか。もし出来ることなら譜を伝授していただきたいものだが、さすがにそれは無理というものだろう。
     雅信は今晩鐘の塔へ赴くに当たり屋敷より持参したものがあった。両の手に抱えているのは木綿と麻で出来た袋に入った小岩ほどの大きさのもの。本体と思われるふくらみからまるで馬の首のように伸びている部分がある。彼はおもむろに袋を開けて取り出すと、それは一面の琵琶。この琵琶は「藍水」という名を与えられており、雅信が父親である陽浄前帝より臣籍降下する際に譲り受けたものだった。彼は楽器においては金銀よりも大事に扱っていたが、この藍水はとりわけどの楽器よりも丁重に扱い、内裏で楽の宴が開かれるなど特別な時にしか持ち出さなかった。
     雅信は藍水を恭しく構えると、牛車が揺れるのに合わせて昨夜耳にした蓮夢の奏でた音色を思い出し口ずさみつつ、撥を弾いた。
     牛車はギリギリと車輪を軋ませながら都路をゆっくりと進んでいく。折しも東の山巓からは昨夜より若干切れ目の膨らんだ弓張り月が昇り始めている。日の落ちた延寿の大気に琵琶の幽玄なる音が揺らめく。
     さて、やがて車が調度良いあたりに差し掛かったので、適当な小路の影に止めさせた。そして家来たちにここで待つよう命令すると、気づかれないように若干大回りしながら藍水持参のもと、鐘の塔へと向かった。一方で家来たちは主人があれほど特別な扱いをしている藍水を持ち出してどこへ行こうとしているのだろうかと怪訝に思うのだった。
     塔に着いたとき、昨夜の言葉通り浄厳の姿はまだそこには無かった。さてどうしたものかと雅信は佇む。先に入っていようか、それとも浄厳どのが現れるまで待とうか。鈴の塔の方角を見通しながら、一刻ほど手持無沙汰にうろうろとした後、やはり浄厳が現れなかったので仕方なく先に入ることとした。
     錠の破れた扉を開くと、その向こうには昨夜と同じ深く、冥府へと繋がっているかのような闇がぽっかりと口を開けていた。昨夜は浄厳と一緒にいたおかげであったのか、一人でこの闇を前にするとさすがに少々怖い。歩幅を狭めて恐る恐る足を忍びいれると、闇に向かって声をかけた。
    「蓮どの、いらっしゃるか? 雅信だ」
     雅信が呼び掛けると間を少々置いた後、高蓮の声が帰ってきた。
    「嬉しや。来てくださったのですね」
    「さっそくお聴かせ願いたい、と言いたいところであるが、昨日一緒に居た浄厳どのは後で遅れて来る故、秘曲の演奏については少し待ってはもらえないだろうか」
    「分かりました。待ちます」
    「その代わりと言っては難であるが」
     そう言いつつ雅信は琵琶の藍水を取り出し、構えた。
    「拙き腕故、生前高名なる奏者であった蓮どのの前で弾くのは躊躇われるが」
     雅信は琵琶の弦を弾いた。怪しくも玄妙なる楽器の声が響き渡る。空気が張り詰めていく。まるで放たれる音一つ一つが声を持っているかのよう。曲目は「秦稜王」という小曲、短いながらも起伏にとんだ名曲として知られていた。緊張感のある間を挟みつつ静かに始まった音楽はやがて嵐が近づくかのように渦巻いていく。
     ああ、やはり藍水を奏でると心が落ち着く。藍水を奏でるとき、いつも雅信は楽器以外他の一切の音が遮断されるような感覚に陥っていた。そして此度もまたその例に漏れない。一種の昂揚感に捉われ、放たれている音が自分の声なのか、それとも琵琶の音なのか区別がつかなくなる。それだからであろう。そのとき闇の奥で高蓮が呻くような、あるいは喘ぐような声を出しながら縄を引きずるような音を立てていることに気付かなかったのは。
     やがて曲はひとつの頂点を築くとひっそりと静まり返り、そのまま底知れぬ海の深潭へと消えゆくように終わる。
     最後の一音を最高に張りつめさせた神経を持って鳴らし終えた後、静寂が場を呑みこんだ。
     雅信は琵琶の弦の振えが遂に止むと、構えていた楽器を降ろし、そのまま闇に向かって頭を深々と下げた。
    「終わりにございまする。拙なる演奏を聴いていただき、誠にかたじけない」
    「いえ、とても素晴らしい演奏にございました。かような演奏は大陸の方でもこれまで耳にしたことがございませぬ。未練を果たす前に雅信さまのような方に出会えて、蓮は幸せにございます」
     雅信は押し黙った。
    「どうなさいました?」
    「いや、そんなに褒めて頂くと……その、照れるでな」
    「まあ」高蓮は闇の奥で小さく笑った。
     そのとき扉が開き、浄厳が到着した。浄厳は昨日と同じように布袍に質素な五条袈裟を着ていたが、雅信が見るとその手に卵ほどの大きさの何かを巾着袋に入れて持っていた。
    「おお、浄厳どの。待ちかねたぞ」
    「遅くなって申し訳ない。あちらでの用事が思った以上に立て込んだ故。お許し願いたい」
    「構わぬさ」
     浄厳の言う「あちら」というのは鈴の塔のことであろうと雅信は容易に想像がついた。何をしに鈴の塔へと向かったのか気になるところではあったが、それはここでの件が終わってからゆっくり尋ねることとしようと考えた。浄厳はゆっくりと塔の中へと足を踏み入れると、心柱に向かって軽く頭を下げ雅信の横に腰かけた。
     雅信と浄厳と揃ったところで、改めて二人は高蓮の声のする方へと向き直った。
    「さあ、高蓮どの。どうか始めてはくださらぬか」
    「願ってもないこと……」
     雅信は固唾をのむ。空気はしんと静まり返り、まるで見えない何かが塔全体を包み込んでいるようだった。
     そして何もない空間からまるで天から一本の糸が垂らされるかのように真っ白な笛の音が下りてきた。壱越(いちこつ・レ)だ。天から降りてきた糸は地上に向かってするすると降ろされていくように、伸ばしが続く。まるでこのまま音が変わらぬまま、世界の終焉まで至ってしまうかのよう。そのとき壱越の音が乙から甲へと移る※のを皮切りに俄かに糸の白さがまるで扉の狭間だったかのように観音開きに世界が開ける。
     夢見心地とはまさにこのことだった。龍笛、蓮夢の他には一つの楽器も無い。笙もなければ篳篥も鉦鼓も無い。だというのに、雅信は蓮夢の音の奥に様々な楽器の音を感じ取った。まるで一つの笛にしてあらゆる楽器の音を出しているような。目に移りゆくは天の池、霧がようよう晴れゆけば、水面に芙蓉現れて、笛音とともに咲き乱る。笛の音はもちろんさることながら、この音曲もまた息が詰まるほどの心地にさせる。
     これが蓮夢の声であるか、これが高蓮の笛なのか。榮が楽器を生み出し、蓮がそれを鳴らす。雅信は生前の二人の兄妹がどれほどに仲睦まじい関係であったものかと思いを馳せた。
     音の波はやがて遠ざかっていく。笛ひとつで描かれた世界はやがて暗く沈んでいき、最後にはまた一本の糸へと収斂するとそのまま闇の奥へと消えていくように閉じていった。
     五感を失ってしまったかのように、雅信はしばらくの間、動くことができなかった。まるで金縛りにでも見舞われたかのように体が膠着してしまってる。
     そのとき、高蓮の声が闇の奥から聞こえるとともに雅信はハッと我に返った。
    「終わりにございます」
     世界が元に戻ったような気がした。
    「いや、見事……。すまぬ、あまりに見事すぎて他に言うべき言葉が見つからない」
    「拙僧も同じにござります」
    「そなたが龍笛を奏でている間、まるで夢を見ていたようだった。このような経験は……初めてだ」
     雅信は興奮が冷めることなく、手探りで言葉を探すように声はたどたどしく振えていた。
    「天子様にささげた十の秘曲、ここに全て終えることができました。もはや未練もございませぬ。さあ、約束の通り蓮夢をお返ししましょう。どうか……前に」
     雅信と浄厳は同時に立ち上がった。しかし立ち上がった時雅信の表情には何か怪訝な色が浮かんでいた。そうというのも、今の高蓮の言葉、終わりの方が何か苦しそうに詰まるように響いたからだ。
    「蓮どの、どうなされたのか?」
    「なんでも……ございませぬ。早く、蓮夢を……」
     そういいながらもやはり高蓮の声は次第に息が詰まるようになっていく。さらに奇妙なことが起こった。何か縄のように太いものが床を擦っているかと思われる音がし始めた。この音は昨夜雅信も耳にしていたが、一瞬だけの事だった故、気にも留めていなかった。
    「雅信どの、何か嫌な予感がします。一旦外へ出なされ」
    「しかし……。蓮どの! 聞こえておいでか?」
     その言葉に対する高蓮の返事はない。代わりにまるで恍惚とするような声が返ってきた。
    「美しい笛……蓮夢……なんて綺麗な音であるか。ああ……」
    「いかん!」
     そのとき浄厳は持参した巾着袋を取出し、中に入っているものを出そうとした。しかし瞬間浄厳の手に何かが当たり、袋が飛んでしまう。浄厳はその場でしりもちをつき、どすんと音がする。雅信は何が起きているのか分からない。
     刹那、暗闇の向こうから怪鳥のごとき金切声が鳴り響いた。
    「ハ……ハ……ハスユメハワタシノモノ……ワタシダケノモノ……!」
     闇に隠れて何かが床を這っている。それも恐ろしい速さで。身の危険を感じ雅信は藍水を手に、入ってきた扉を目指した。しかしようやく差し掛かろうとしたその時、扉の前にある左右の闇から恐ろしい速さで縄のようなものが集まり、お互いに絡まりあうと壁のように彼の前に立ちはだかった。そのとき縄のようなものの一部が月明かりに照らされ、ようやく雅信はそれが何なのかを悟る。それはやはり縄のように太い植物の蔓だった。何本もの何十本もの蔓が瞬く間に腕を伸ばしていく。鐘の塔の第一層のそこかしこから蔓が床を擦る音が鳴り響き、轟轟とまるで地ならしをしているかのようだった。
     やはり高蓮どのは物の怪の類いだったのか。このままでは喰われてしまう。どうしてこのような物の怪が鐘の塔に? わずかの間に種々な考えが心によぎり、頭がガンガンと鳴る。
     そのとき数多の蔓が這う音の狭間に声が聞こえた。
    「お逃げ……お逃げください」
     雅信はハッと我に返る。そして思わず声を上げた。「蓮どの!?」
     さらに別の声が聞こえた。浄厳だった。
    「雅信どの。こうなっては仕方ない。心柱のそばに拙僧が持ってきたものが落ちてしまった。それを手に取って鳴らしなされ」
    「浄厳どの、ご無事であるか!?」
    「面目ない。物の怪の蔓に足と腕をつかまれ、動くことができませぬ。どうか早く!」
     手に取る? 鳴らす? いったいどういうことなのかと考えたが、それよりも早く雅信は体が動いていた。どうして鐘の塔といい鈴の塔といい、こんなに一つの層が広いのか。雅信はそれを恨めしく思った。藍水を抱きかかえるように走る。そのとき目の前に蔓がまるで先端をトゲのようにして雅信の顔をめがけ迫った。寸でのところで頭を下げ、頭の上五寸ばかりのところを蔓が貫いた。烏帽子が飛んだような気がしたが、もはや気にしていられない。
     ようやく心柱の近くまで差し掛かった時、陰に何かが転がってることに気付いた。浄厳が持ってきていた袋だ。それに手を伸ばした刹那、がたんと常態が転んでしまう。ついに足に蔓が絡み付き、それ以上の行く手を阻んでいた。
     雅信は袋の方へと向き直る。そのとき袋に向かって何本かの蔓が迫っているのを目にした。ああ取られてしまう。そう思ったとき奇妙な光景を目にした。物の怪の蔓は確かに袋を奪おうと腕を伸ばすのだが、袋まであと一寸というところでまるで弾かれたように蔓が引っ込む。それからも蔓はどうにかして袋を奪おうとするのだが、やはり近づくこともままならなかった。
    「いったいなにが入っているのか?」
     雅信は満身の力で腕を伸ばした。そして遂に手が届いた。急いで引き寄せると、袋を開け中に入っているものを取り出した。そしてそれが何であるのかを確かめることもなく、浄厳の言われた通りそれを思いっきり振った。
     周りの喧騒に静寂を求めるかのような澄み切った鈴の音が木霊した。途端に、暗闇から先ほどと同じような怪鳥のような金切声が響いた。
     ギイイィィィャアア――
     雅信も今しがた自分が鳴らしたものの正体に気付く。
    「これは鈴の塔の宝具、透明な鈴ではないか?」
     物の怪の苦しみ呻く声が静まると、塔の一層中に跋扈していた蔓がまるで湯をかけられた蜘蛛のごとく急激な速さで収束し始めた。やがて雅信や浄厳に巻きついていた蔓も離れ、二人は自由の身となる。自由の身となった浄厳は懐の奥から何やら丸い球状の物を取出し、「焔丸(ほむらまる)!」という掛け声とともに宙に投げた。
    「あれは、……ボングリの実?」
     雅信がそう思った瞬間、ボングリはぼわんと白い煙を吐きながら破裂した。そしてそこに現れた者を目にし、雅信はぞっとする。眩くばかりの金色の体毛に覆われた獣。四本の足で細身の体を支え、目は青く輝いている。そして最も特徴的な九つの尾。
    「九尾の炎狐……」
     雅信は先ごろとは違った意味で夢を見ているかのようだった。
    「焔丸、火炎じゃ!」
     その言葉に雅信がぎょっとした。
    「ま、待たれよ、そんなことをすれば――」
     言葉を言い終えぬうちに、炎狐は九つの尾をまっすにのばし、蔓が収束していった闇に向かって赤々とした火炎を放った。炎は焔丸の口よりはなたれむくむくと空気を膨らませながら闇に向かった。そのとき雅信は炎に照らされた物の怪の正体を目にした。それは体中が蔓そのもので出来ていて、その中心には二つの目が光る化物。蔓が集まっている部分の下から二本の足が覗いていたが、獣の足なのか人間の足なのか判然としない。
     やがて炎は物の怪を呑みこむ。今度こそ断末魔の叫びをあげ、蔓の物の怪は体中を焼き尽くされた。
    「やはり長藤之怪(モンジャラ)であったか……」
     浄厳が燃え行く物の怪を固唾をのんで見守りつつ、呟いた。
    「な、なんとしたことを。このままでは塔が」
    「心配なさるな」
     なにを、と言おうとしたところで雅信の目に再び信じられないものが映った。焔丸から放たれた炎は確かに蔓の物の怪、長藤之怪を燃やし尽くしたが、物の怪だけ燃やしてしまうとまるで水でもかけられたかのように消えてしまった。壁にも床にも燃え移ることはおろか、焦げ跡ひとつ付かなかった。
    「これはいったい、どうしたことか」
    「お忘れであるかな、ここがどこであるかを?」
     何のことであるかと言おうとしたが、そのとき長藤之怪の焼け跡から淡く白い光を放った影が現れた。それは煙のように渦巻くと、人の形をとり、やがて髪を丸く結い唐装束をまとった一人の女性の形へと変わった。
     言われるまでもなく、雅信も浄厳もそれが高蓮であると分かった。
    「図らずもお二人を危ない目に遭わせてしまい、申し訳ありませぬ」
    「良い。そなたの成仏しきれぬ未練に物の怪が付け入っただけじゃ。蓮どのに罪はない」
     浄厳が布袍についた埃を払いながら言った。
    「……蓮夢を見つけたものの、未練ゆえ成仏しそこねた霊にすぎぬ己が身では蓮夢に触れることすらままなりませんでした。ところがある野に弱っている長藤之怪を見つけました。私はこの物の怪に取り憑くことでこの世の身を再び取り戻したのですが、時間がたつにつれ我ならざる時が次第に多くなってございました」
    「取り憑いたはずが、逆に物の怪の方に意識を奪われたのであるな」
    「はい。昨夜、あなたがたを早くに帰したのもそのためにございます。あれ以上場に留まれていてはやがて物の怪に意識を奪われる時に至り、あなた方に危害を加えると思ったからです」
     雅信は昨夜、高蓮の「故あって」という言葉を思い出した。それはこういうことだったのかと合点がいく。そのとき高蓮が「雅信さま」と呼んだ。雅信が霊の前に立った。今まで声だけはさんざん耳にしていたが、姿を目にするのはこれが初めてのこと。雅信は高蓮の姿を美しいなと思った。心だけでなく姿かたちも美しいとは、もはや非の打ちどころがない。
     蓮の霊は長藤之怪の遺灰の一点を指さした。そこだけ、何かが埋まっているかのようにこんもりと盛り上がっている。もしやと思い、手を入れると、つるりとした感触が触れる。
    「蓮夢です」
     なんとも不可思議なことだった。あれだけの炎に包まれていたにもかかわらず、蓮夢は少しも焼けた様子がない。そしてこのとき初めて雅信は伝説の名器、蓮夢の造形をこの目で見たのだった。質素な黒塗りの竹筒。稀代の名器というからにはもっと華やかな装飾が施されているのかと考えていたが、これはその全くの逆だった。
    「本当に。あなた方にはどんなに礼を言っても言い切れませぬ。雅信どの、浄厳どの、本当にありがとうございます。今度こそすべての未練は晴れました。これで兄のもとへ……」
     高蓮は言い終え、蓮夢が無事であったことぉ見届けると、目をつむり、そのままちょうど煙が空気に溶け込んで消えていくように、音もなく姿を消した。
    「行ってしまわれたな……」
     宙に舞った物の怪の灰が、格子から差し込んだ月の明かりに照らされて、さながら絹布のごとくゆらめいていた。




     翌日、雅信の屋敷に浄厳が訪ねてきた。雅信が彼を呼んだのだった。屋敷に上がった浄厳を雅信の家来たちが主人のもとへと案内した。雅信は庭の見える縁に腰かけ、藍水を構えていた。
     雅信と浄厳は適当な挨拶を交わした。そして浄厳が隣に腰かけると、雅信が呟くように言う。
    「昨夜の事は私からも礼を言いたい。浄厳どのが居なかったなら、きっと私も高蓮どのの魂も物の怪に喰われていたことだろう」
    「何を言いまする。透明の鈴を鳴らし、隙を作ったのは雅信どのではありませぬか」
    「そこが分からぬ。いや、昨夜の事は分からぬことだらけだ。なぜ透明の鈴を鳴らしたら長藤之怪が急に苦しみ始めたのか? なぜ浄厳どのは九尾の炎狐を連れていたのか? なぜ炎に包まれたにもかかわらず、鐘の塔は燃えなかったのか? 他にもあるが、とにかく今気になっていることはこの三つよ」
     空に灰色の雲が覆い始めていた。つい先ごろまで空は青かったはずなのに、今やそのような部分は雲に隠されてしまっている。空気も湿っており、もうすぐ雨が降ることは容易に想像できた。
    「さて、どう説明すればよいやら。そもそもなぜ延寿には鈴と鐘、二つの塔が立ち並んでいるかをご存知ですかな?」
    「知っておる。この地に都を築いた高武帝が遷都の折、姥女の森にある八幡宮の社から託宣を受けた。この延寿の地は古来より空の神、水の神に守られておりその神々を祀るための塔を建てよという内容だった。それで帝は空の神を祀る鈴の塔、水の神を祀る鐘の塔をそれぞれ建てたのだろう」
    「左様で。それで少々話が逸れるかもお思いかもしれぬがな、なぜ長藤之怪が鐘の塔の地下を根城としたかお分かりかな?」
    「いや、分からぬな。そういえばなぜ鐘の塔だったんだろうな」
    「それはこういうワケにございまする。鐘の塔は今も話に合ったように水神さまを祀る塔で、高武帝は建塔にあたり、ありとあらゆる水の気(け)に関する呪(しゅ)を塔に施しました。その結果、塔そのものが水の気を放つ存在となり草の気を持つ長藤之怪にとってはいささか居心地のよろしい空間となったのでしょう。草の気は水の気を剋する関係にありますからな。だから長藤之怪は鐘の塔に留まることで水の気を吸収し、やがて高蓮どのの意識を喰らうまでに力を回復させたというわけです。
     怖がらせてしまうと思って黙っておりましたが、実は荒らされた宝物蔵には植物の種やら葉やらがあちこちに落ちていて、長藤之怪と分からずとも少なくとも草の物の怪の仕業であろうという目星は既についていたのです」
    「ならば、最初から炎狐に任せていればよかったのではないか。そうすればあんな危ない目にも遭わなかったものを」
    「いいえ、それはなりませんでした。ではここで本題に戻しましょう。透明な鈴の音に長藤之怪が苦しんだわけですが、透明な鈴というのはご存じのとおり鈴の塔に伝わる宝具にございます」
    「ああ、それでもう一つ疑問であるが、どうして浄厳どのが鈴の塔から宝具である鈴を持ち出せたのであるか?」
    「なに、今鈴の塔の住職をしている男には昔借りを作りましてな。拙僧の頼みには頭が上がらんのですよ。尤も、透明な鈴ほどの宝物を持ち出す頼みとなると少々骨も折れましたがね」
     浄厳はからからと笑った。そのとき、ぽつぽつと遂に雨が降り始めた。砂粒が当たるかのようなぱらぱらという音がしたと思ったら、それは次第に全体へと広がり始め、世界を呑みこんでいく。
    「先ほど鐘の塔には水神様の水の気の呪が施してあると申しましたな。鈴の塔はその逆で空神は炎の神でもあらせられます。なので塔には水と対する火の呪が施してあるのです。そしてそれらの呪の権現たる存在がこの透明な鈴。霊鬼となりかけた長藤之怪にとってはこの音を聞くだけで炎を浴びせられたかのような苦痛を味わったということなのです」
    「なるほど、分かったような分からぬような……」
    「透明な鈴には同時に魂を浄化する働きもある。この鈴を先に鳴らしたからこそ、高蓮どのの魂も長藤之怪より解放され、そこでやっと焔丸の出番となったわけでござります」
    「そういうことだったのか」
     雅信はようやく合点がいった。彼は己が鳴らした透明な鈴の音を思い出した。あのときはゆっくり鈴の音を聴いているような場合ではなかったので、ついほとんど気に留めるようなこともなかったが、今から考えるとあの鈴のなんと澄みわたるような音だったことだろう。長藤之怪が苦しんだのは火の呪を食らったことだけではなく、糧としていた高蓮の魂が己が身から引き離されてしまったことにもよるのかもしれない。
    「さて、塔が燃えなかったのもやはり塔に施された呪によるもの。鐘の塔は水の呪の塊のような存在。ちょっと激しい炎を起こしたくらいでは焦げひとつ付きませぬ。海に向かって火を放つようなものですからね」
    「なるほど、それで炎狐が放った炎をもってしても塔に燃え移らなかったのであるな」
    「左様。なのでもし鐘の塔が燃えるとするならば何らかの理由で水の呪が弱まるか壊されるかしたときでしょうね」
    「なんと物騒な」
     雨脚が次第に強くなってきた。庭に植えられているクチナシの花がむせ返るように香ってくる。
     雅信は藍水の弦を一つかき鳴らす。音は空へと登り、虚空の彼方へ消えていく。
    「蓮夢はもう宝物庫へ戻されたか」
    「ええ」
    「寺の事情であるが故とやかく言える身ではないことは承知の上だが、やはりただ蔵の奥に納めておくだけでは勿体ないな。このまま誰にも演奏されることがなければ、高榮どのも高蓮どのも浮かばれぬというものよ」
     浄厳は何も言わなかった。
    「今から思い出しても、昨夜の演奏は夢幻かと紛えそうになる」
    「拙僧も、できればもう一度聴いてみたいものです」
    「そういえば、まだ疑問が一つ残っておったな。九尾の炎狐、焔丸どのをいったい如何様にして手懐けたのですかな?」
    「ああ……それは」
     浄厳は禿げた頭をぽりぽりと掻き、昔の事を思い出すように口元に懐かしみを帯びた笑みを浮かべた。
    「長い話になる故、また次の機会ということによろしいですかな?」
    「ははは、ではまたその時にゆっくりとお聞かせ願おう」




     それからさらにひと月の後、延妙寺から使者が現れ、雅信にあてて蓮夢奪還の礼ということで宝物が送られてきた。
     送られてきた唐箱のひとつを開けると雅信は己の目を疑った。そこに入っているのはひと月前、確かに自分が長藤之怪の灰の中より取り戻した蓮夢そのものではないか。いったいどういうことなのだろうかと首をかしげていたところ、同じ箱の中に紙が二枚手入っていることに気付いた。ひとつは手紙で浄厳からだった。それには達筆な筆の運びで形式的な挨拶の後にこのようなことが書かれてあった。
    「さて、おそらく此度送られてきた宝物の中にあの蓮夢が含まれていたことにきっと驚いておられることでしょう。
     ひと月前、雅信どのが拙僧に『蔵に納めておくだけでは勿体ない』とおっしゃられましたが、まさしく拙僧めも同じ考えでございました。
     そこで信頼のおける伝手にてある楽器工を訪ね、蓮夢によく似た贋作を作っていただきました。
     今延妙寺の宝物蔵にある笛はその贋作にて、雅信どのの手に送られたこれが本物にございます。
     心配にはおよびませぬ。その伝手は本当に拙僧にとって信頼のおける人間でありますし、第一長い間蔵に押し込まれていた故、今延妙寺にいる坊主のなかで本物の蓮夢の音を聴いたことのある者などおりませぬ。
     良い楽器はしかるべき腕を持つ者の許に。いつか機会あらば殿の屋敷にまたお訪ねしようと考えております。
     また同封しておりますもう一つの紙は譜になっておりまする」
     そこまで読んだところで、雅信はあわてて箱の中を検め、もう一つの紙面を広げた。それは確かに龍笛の譜だった。しかも雅信がこれまで見たこともない内容の譜だった。しかし書かれている音を追っていくうちになんの音曲であるか、やがて悟った。再び手紙の方へと目を移す。
    「その譜は他でもない高蓮どのが最後の晩に奏でられた音曲にございます。
     実はあの後鐘の塔の地下を調べたところ、壁面に譜が彫られておりました。拙僧も雅信どのには遠く及ばぬものの楽の嗜み持っていますので、これがあの晩の調べであるとすぐに分かりました。
     残念ながら譜はこれ以外には書かれておりませんでした。
     拙い考えでおもんみるに、これは雅信どのへの高蓮どのの礼ではないでしょうか。
     そう考えるとやはり高蓮どのは蓮夢をきっとあなた様に託したいと願っていたのだと思います。
     やはり楽器は奏でられてこそが花。無駄に大切に扱われても埃をかぶる以外に何もなりませぬ。
     蓮夢とこの譜と、どうかお受け取りくださいませ。
     そして機会あらばまたお屋敷の方へ訪ねます故、そのときには是非とも蓮夢の音をお聞かせ願いたいものです」
     残りはやはり形式的な結びの句で終わっており、最後に「釈浄厳」と添えられていた。
     



     さて、平雅信はこの蓮夢を手にしたのであるが、雅信と蓮夢にまつわる話はその後いくつも残されている。
     ある公家の日記には、ある年に内裏で歌合が開かれた際、雅信は終わりの宴で龍笛を演奏したのであるが、その音怪しくもうら悲しき響きであったため、参内した殿上人や女房、果ては主上に至るまで一人と漏らすことなくさめざめと涙を流したという話が記されている。
     後世に編纂された今昔を伝える物語には、「雅信公さながら蓮夢と契りを結んでいるが如し」とも伝えられた。
     他にも雅信が奏でる蓮夢の調べに感動した当時の文化人たちが、蓮夢を絡めた和歌や漢詩をいくつも残している。
     その一人はときの主上である。先述の歌合の席が終わったあと、主上は雅信をたたえてこのような今様をひとつ残したのだった。

     涙落とすは 宵の席 
     その故なるは 龍の声
     平の朝臣の 調べにて
     わびしきこころぞ 満ちたまふ

     

    ※乙から甲へ移る……一オクターブ高くなること。



    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−

    ポケスト初投稿でえらく長いのを落としてしまってすみません。
    ポケノベで始めた延寿今昔物語集の第一話「蓮夢」がようやく終わりましたのでポケストにもマルc……お邪魔されて頂こうかなあと。
    これを書くにあたって手持ちのハートゴールドを今一度最初からプレイしてみたのですが、いやはやジョウト地方というのはおもしろい二次創作ネタがごろごろ転がってますね。もちろん他の地方もおもしろいのですが、ジョウトは特に自分好み。
    既に察しがついている方もいるかもわかりませんが、平雅信のモデルは平安中期に活躍した楽の達人、源博雅。
    今回を機にこれからポケストの方にも投稿していこうかなと思ってますので、どうぞよろしくお願いします。

    【何をしてもいいのよ】

    タグをつけるってなんか小恥ずかしい気が(ry


      [No.2096] 人生のゴンドラ 投稿者:リナ   投稿日:2011/12/04(Sun) 06:31:13     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     今日もいつもと変わらない街並みが流れる。ゴンドラは、ゆっくりと水の上を滑っていく。

     太陽は朝からオレンジ色の光をこの世界に浴びせていた。のんびりと下流へ流れてゆくみなもに乱反射したその光は、レンガ造りの壁に複雑な模様を描く。自然が織り成す儚い芸術は、忙しさで目が霞んだ人々には全く気付かれず、今日も現れては消えてゆく。
     街は少しずつ賑わい始める。木彫りのハクリューをあしらった大きなゴンドラが白い尾を引いて運河の中央を横切っていく。幾重にも重なって広がる波が水面を伝い、岸に着けられていた小さなゴンドラをゴトリゴトリと揺さぶった。
     その船上で仰向けになって寝ていた彼は、それで目を覚ました。日射しが強いせいで、すぐに顔をしかめる。目を擦りながらゆっくり立ち上がり、首を鳴らして、肩を回し、しまいに大きなあくびをした。一日三十分だけと決めている休憩時間を、もう五分も過ぎてしまっている。彼はぽかぽかと暖かい陽気の中、ついうとうとしてしまい、文字通り"舟を漕いで"しまっていた。
     慣れた手つきでオールを握ると、岸辺にそのオールをあてがい、ゆっくりと運河の中央へゴンドラを押しだす。午後からは観光客のかきいれ時だ。彼はいつも客待ちをしている大通り沿いへとゴンドラを進めた。
     運河の張り巡らされた要塞都市。大昔、戦火の最中に造られたこの街は、もともと対立する二つの宗派の片一方が、もう一方による攻撃から自分たちの身を守るためのものだった。その証拠に街はその周囲を「輪壁」と呼ばれる石の壁がぐるりと一周している。長い長い時間をかけ積み上げられたその壁は、当時鉄壁の防御力を誇った。しかしそれは戦争の終結と同時に不用なものとなり、今ではレンガ造りの美しい街並みと共に世界遺産に登録され、旅行パンフレットではお馴染の指折り観光スポットとなっている。
     彼は大聖堂にほど近い、観光客で賑わう大通り沿いにゴンドラを停めた。空気はどんよりと停滞して、生温かった。ほんの数十メートル漕いだだけでひたいに汗がにじむ。夏日の太陽は老体にも容赦がない。彼は被っていたハンチングを一度脱いで風を通した。
     彼はこの街で生まれ、今日までずっとこの街で生まれ育った。今年でちょうど七十を迎える。つまり、七十年間もこの壁の内側で暮らしてきたのだった。今の水上タクシー「モストカーフィ」の船頭の仕事を始めたのは、四十年以上勤めてきた大聖堂の職員を定年退職してからのことだったが、土地勘なら同業者の連中のあいだでも負ける気はしない。迷路の如く入り組んだこの街の地図が完璧に頭に入っていることは、彼のささやかな自慢だった。
     しかし、彼が手元に残っているのはそれくらいのもので、あとはほとんど全て、失ってしまった。


     ◇ ◇ ◇


    「すみません。水上タクシーってこちらですか?」男性の声で、尋ねられた。

     岸辺に若い男女がいた。手を繋いでこちらを見下ろしている。

    「いらっしゃいませ――さようでございます。ご利用になりますか?」

     この街の船頭は一概にして無愛想な連中ばかりだが、彼に限っては礼儀正しい接客態度を守っていた。大聖堂で解説員をしていた頃の癖みたいなものだった。男性は「ほら見ろ、合ってたじゃないか」と女性に白い歯を見せる。「別に疑ってないよー」と、可愛らしく唇を尖らせる。女性の左手の薬指に銀色のリングが光ったのが見えた。

    「あの、どこか景色の良いところに行ってみたいんだけど――案内とかしてもらえませんか?」

     男性は丁寧にそう言った。それならば、お安い御用だ。

    「ええ、もちろん。そうですね――やはり大運河『カナル・グランデ』の中流から見渡す街並みなどは、格別でございます」

     女性の方が先に「素敵! ねぇ行こうよ!」と男性を見上げて言う。どうやら主導権は彼女の方にあるようだ。ゴンドラに乗るときも、男性が先に乗って、彼女を立派に――少し慇懃すぎるようにも見えたが――エスコートしていた。女性は「お願いしまーす」と、気の抜けた声で船頭に言った。彼はロープを手繰り、オールで器用に川底を押して、大運河へとゴンドラを滑らせた。
     ほとんど円形をしているこの街の中心にそびえる大聖堂から南東の下流は、そのまま海に続いている。膨大な流量を誇る大運河「カナル・グランデ」は、この街のすべての運河が最後にたどり着く終着駅だった。
     しばらく行ったところで、女性が思い出したようにバッグに手を入れ、中からモンスターボールを一つ取り出した。

    「こんなに天気が良いのにボールの中じゃかわいそうだよね」

     ボールから飛び出したのは、ラッパのような口とゼンマイのような尻尾を持った水属性のポケモン、タッツーだった。タッツーは飛び込みの選手さながら、元気よく運河に飛び込んだ。小さな水飛沫が上がり、タッツーは意気揚々とゴンドラの周りを泳ぎ始めた。

    「気持ちよさそう。あたしも泳ぎたいな」

     時々口から水鉄砲を吹き出すタッツーを嬉しそうに眺めながら、女性は言った。

    「明日も天気が良かったら、海水浴に行こうか」男性が女性の肩を抱き、提案する。

    「ホント? あ、でもあたし水着持ってきてないや」

    「買ってあげるよ。せっかくの新婚旅行だ、ケチケチしたらもったいないだろ?」

    「ありがとう! 嬉しい!」

     二人は唇を重ねて、また微笑み合う。彼はゴンドラの前方を悠々と泳ぐタッツーと目があった。「いつもこんな感じさ、やれやれだよね」と、その目が言っていた。彼は口元で微笑み返した。

    「お客様、まもなく大運河の中流になります」

     お互いに夢中になっていた夫婦は、その美しい街並みに無邪気な歓声を上げた。


     ◇ ◇ ◇


     朝はこの町に住む人々の通勤ラッシュ。けたたましくさえずる鳥ポケモン達の鳴き声の中、彼らもまた忙しなく上着を羽織り、髪を整え、革靴に疲れ切った足を突っ込む。昼過ぎからは観光客が主な乗客だが、急ぎ足で勤め先に向かう彼らもまたゴンドラで移動する場合が多い。

    「レネオノラ銀行のドルソドゥーロ通り店だ! 急いでくれ!」

     大聖堂で客待ちをしていた彼のゴンドラにバタバタと靴音が転がり込んだ。

    「かしこまりました」

     真夏だというのにしっかりとネクタイを締め、グレーの背広を着た中年の男性は禿げあがった額に大量の汗をかきながらゴンドラに乗り込んだ。

    「八時半から取引先と打ち合わせなんだ! 最短距離で頼む!」

     唾を飛ばしながら男性は声を上げた。言われるまでもなく、ゴンドラ乗りは頭の中で地図を開き、目的地までの最短距離を割り出す。ただこの時間帯、その道を通れば渋滞に巻き込まれる可能性が極めて高かった。迂回路を通った方が確実に目的地へたどり着ける。彼はオールでゴンドラの向きを変え、左側に見える細い水路に入った。

    「おい! 本当にこの道なのか? いままでこんな道入ったことないぞ?」

     彼は渋滞に巻き込まれる恐れがあることを男性に説明した。男性を表情を曇らせたままではあったが、一応納得したようで、「とにかく急いでくれ」と念を押した。
     男性は携帯電話で何度も話した。時には丁寧な口調で慇懃に、時には部下に対する電話なのか、割れんばかりの声で怒鳴った。きっと会社についてからも、そして会社から家に帰るその時まで、彼は一日中こんな様子なのだろうと、彼は思った。

     予想外のことが彼に起こった。渋滞を避けるために迂回したその道が、一隻のゴンドラで塞がってしまっているのだ。どうやら近くの建物を改装しているようで、そのゴンドラには木材やレンガが積み上げられていた。その道は非常に細く、彼のゴンドラはどう考えても通り抜けることができない。

    「おい! どういうことだ?! 通れないじゃないか!」

    「――申し訳ございませんお客様、こればっかりは」

     水路や運河が主な交通機関のこの街では、このような事態は日常茶飯事だった。大抵の客はこういうときも「仕方がないね」と、ゴンドラ乗りを責めることはしない。皆、何事もうまく、完璧に行くことばかりではないことは分かっているのだ。
     しかし男性は違った。顔を真っ赤にし、口元を震わせて怒鳴った。

    「貴様どうしてくれる?! もう間に合わないだろうが! 全く使えん年寄りだ!」

     男性はそう吐き捨てると、ゴンドラを降り、悪態をつきながら走り去っていった。


     ◇ ◇ ◇


     街は今日も夕暮れを眺めていた。
     真っ赤に輝く太陽を反射し、運河はゆっくりと下流へ流れていく。ヤミカラスの鳴き声が遠くから響き渡る。それに示し合わせたように、大聖堂から午後五時の鐘が歌い出す。

    「今日はもう終わっちゃったかしら?」

     鐘の音が終わる頃、人通りもまばらになったカンナレージョ通りでのんびり煙草をふかしていた彼は、ふいに声をかけられた。

    「ああ、申し訳ございません。ご利用ですか?」

     彼はあわてて煙草の火を携帯していた灰皿にねじ込んだ。
     彼女はちょうど彼と同じ年齢くらいの年配の女性だった。ウグイス色のロングスカートが風にはためき、その傍らには豊かな毛並みを蓄えたヨーテリー。

    「いいのよ、煙草の匂いは嫌いではないから――じゃあ、お願いしようかしら」

     彼女の優しい笑顔が夕暮れに照らし出された。

    「ありがとうございます」

     ゆっくりと彼女は船底に脚を下ろし、ゴンドラを傾ける。ヨーテリーが少しためらった後、勢いよく飛び跳ねて、彼女の隣りに収まった。

    「どちらまで?」

     いつも通り、彼はお客に尋ねる。彼女はゴンドラにしゃがみこみ、ヨーテリーの頭を撫でて言った。

    「今は自分で行き先を決める気分じゃないの――ゴンドラ乗りさんにお任せするわ」

     彼はオールの手を止め、驚いて彼女を見た。彼女はただ儚げに微笑んだ。

    「――そうですね。ここから下流へ向かうと、十分ほどで海岸沿いの運河へ出ます。この時間ですと、夕焼けが堪能できるかと」

    「素敵ね。じゃあ、そこまで」

     船頭の仕事をしていると、時々目的地を持たない客が現れる。この女性のように一目でワケありと分かるような様子の客も珍しくはなかった。彼はゴンドラの先端を下流へ向けた。

     家路を急ぐ人々で、大通りの人も運河のゴンドラの数も多かった。海岸へ向かう道すがら、二度も他のゴンドラと側面を擦った。揺れが大きくなり、彼女のヨーテリーが驚いて二、三度吠えた。彼は乗客に頭を下げたが、彼女自身は、その揺れを楽しむかように、ただ微笑んでいた。

     ほどなくして、ゴンドラはオレンジ色に輝く夕日を浴びつつ、海岸沿いに到着した。

    「――とってもきれいね。船の上から夕焼けを見るのは、もしかしたら始めてかもしれないわ」

     彼女は目を細めて、水平線に沈んでゆく太陽を見つめていた。明るく照らし出された頬や首に刻まれたしわは、どこか憂いを帯びているように見えた。
     彼自身、この時間は大抵帰宅途中の人々を乗せているので、こうしてゆっくりと夕焼けを眺めるのは実に久しぶりのことだった。ゴンドラを漕ぐのも忘れ、船の先端で棒立ちになったまま、しばらくその景色に見とれていた。

    「先日、夫に先に逝かれましてね――ひとりの時間が増えると、何していいものやら分からなくなるものなのね」

     彼女はヨーテリーの頭を撫でながら、静かにそう言った。

    「――左様でございましたか。御主人は、何をされていた方で?」

    「駅員でした。あの人の口癖があってね、『電車を降りた旅行客の、この街の第一印象は何で決まると思う? おれが笑顔でいたか、いなかったかだ』って。家でしかめっ面しながら煙草をふかす様子からは想像つかないほど、仕事中はにこにこしてたのよ」

    「御主人のおっしゃること、共感いたします。接客業をよく分かっていらっしゃるお方だったんですね」

     もしかしたら、自分も何度か顔を合わせたことがあるかも知れないと、彼は思った。年に数えるくらいしか、駅には行かないのだが。

    「ふふ、そうなのかしらね。そういうあなたも、素敵な笑顔でゴンドラを漕いで、乗っていて気持ちがよかったわ。ありがとう」

    「ゴンドラ乗りなんて仕事、船の操縦に慣れた後は、笑うことぐらいしかできませんから」

     彼女はまた小さく笑い、オレンジに染まった海を見つめた。
     気付けばもう太陽はほとんど水平線に隠れてしまっていたが、そのぎりぎりの光でさえも、彼の目には眩しかった。


     ◇ ◇ ◇


     変わり映えのない夏の蒸し暑い日が続いている。彼はひたいに汗を滲ませて、毎日ゴンドラを漕いでいる。

     遠い昔にはあった。ずっとそばにいた最愛の人も、熱意や地位、プライドも、心を通わせたパートナーも。今は何ひとつ残っていない。彼は今、一人で毎日同じことを繰り返しているだけの人生を送っている。

     彼はこの街が好きだ。この街の建物、空気、景色、そして人々も、好きだ。
     彼は今、満ち足りた人生を送っている。

    「パトリおじさん、サンタ・クローチェまでお願い!」

     見なれたオーバーオール姿の少女が紙袋を抱えて彼のゴンドラに飛び乗った。後ろからロコンが一匹ついてきて、ぴょんとジャンプしたかと思うと、その少女の後ろに着地した。

    「お、メグじゃないか。今日もお使いかい?」

     ゴンドラの上であぐらをかいて座っていた彼は、よっこらせと立ち上がった。

    「うん、コナのコーヒー豆が切れちゃって」

    「はは、それは困る。私はいつもそれだから。今週中にはまた飲みに行くとルイスに言っといてくれ」

     そして彼――パトリは岸にオールを押し当て、ゴンドラを滑らせた。


     ――――――

     【何しても良いのよ】


      [No.2095] ピンチなうwww【返信遅れました汗】 投稿者:リナ   投稿日:2011/12/04(Sun) 05:24:30     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     マコさん、お久しぶりです! 
     反応が遅れて大変申し訳ございません汗
     卒論、バイト、飲みのサイクルかっら抜け出せずに心身ともにずたずたのリナですw

     何気なく奴の著作権を放棄したら……なんかハードなのが投下されている!w

     ポケリアの面々と共演できるなんて光栄ですが、相変わらずの救いようの無さw
     マイコちゃんになにしとんじゃ!!

     ――全く、あいつもそろそろ殺さないといけませんね。

     本当にありがとうございました☆

     【クチバシに変わって謝罪するのよ】 


      [No.2094] マメパトダンス 投稿者:サン   投稿日:2011/12/03(Sat) 12:48:50     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    [そりゃあ災難だったな。で? 敵はどんな奴だった?]

     電話口の向こうであいつが身を乗り出しているのが分かる。この手の話になると、誰だって野次馬になるものだ。
     寒空の下、駅前の公園には何羽ものマメパトが地面をつついている。帽子をかぶった爺さんがしわくちゃの手でパンのかけらを撒く度に、そいつらは忙しそうにそれを追いかける。
     敵、か。俺はついさっき見たその容姿を思い浮かべて、沈んだ声を出した。

    「……背高くてさわやかな笑顔の似合う大学生らしき男」

    [やっぱ年上かーっ! しかも背が高くてさわやか系とか、お前と正反対なビジュアルじゃねぇか]

    「うるさいな」

     それは自分でも思ったよ。
     大きな羽音と共にマメパトたちが飛び立った。小さな子供がそれを捕まえようとふくふくした手を伸ばす。

    [ははっ、でもさ。そりゃ分が悪すぎるだろ。だいたいさー、あんなかわいい子他の男がほっとくわけないじゃんよ。理想高すぎたんじゃね?]

    「さっきから言いたい放題だな、お前」

     やっぱりこいつに電話をしたのは間違いだった。じわじわとジャブが効く。
     偶然駅で見かけた気になるあの子。その隣にいた奴の姿を見た瞬間、俺の季節は春から見事なバク転を決めて冬へと逆戻りした。あの子のあんな顔、見たことない。楽しげに男と腕をからませ、幸せいっぱいですオーラを振り撒いていた。
     直感で勝てるわけがないと悟り、ああこれが失恋かと悟り、そして誰かにぶちまけたい衝動の成すままに携帯を取り出して通話履歴の一番上にあった相手へ電話をかけた。相手はすぐに出た。それがこいつだ。もう少しちゃんと相手を選べばよかったと今更ながら思う。

    [ま、女なんて星の数ほどいるんだし。早く新しい春見つけろよ]

     無茶を言うな。これだけ落ち込んでいるのに新しい春なんぞどうしろと。通話の切れた電話に対して愚痴っても仕方がないのは分かっているが。
     ふと足元に目をやると、マメパトがいた。二匹も。
     一匹がグクルゥ、グクルゥと鳴きながらほわほわした鳩胸を膨らませた。それから向かいの一匹に向かってお辞儀を繰り返すと、その場でちょこちょこ足を踏みかえて一回転。そして再びグクルゥと鳴きながらお辞儀を始める。まるで何かの儀式のようだ。対するもう一匹は、どことなく迷惑そうな表情を浮かべて後ずさりしている。
     それを見てなんとなく察しがついた。おそらくこれは、マメパトの求愛行動なのだろう。鳴きながらくるくる回る方がオス、それに関わるまいと言わんばかりに目を逸らしているのがメスらしい。なんだかだんだん回っている方が不憫に思えてきた。
     とうとうメスは我慢しきれなくなったのか、あさっての方向へと飛び去ってしまった。儀式の中途半端なところで相手がいなくなってしまったマメパトは、まさに鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしてフリーズしてしまった。

    「……お前も振られたか」

     仲間ができてしまった。いや、できたところで嬉しくもなんともないが。

    「俺もさー、ついさっきだよ。知らない男とすっげぇ楽しそうに歩いてんの。頭真っ白だよ」

     近くにあった木製のベンチにどかりと座り込み、とりあえず愚痴る。今の俺にそれ以外のことができるだろうか。
     マメパトは足元で小首を傾げてぱちぱちと瞬きした。何を考えているのやら。このポーカーフェイスの裏で失恋の悲しみと戦っているのだろうか。
     と、ふいにマメパトが飛び立った。慌てて目で追うと、砂場近くで地面をつついていた他のマメパトの元へ。何をするのかと思いきや、再びグクルゥと鳴いて例の儀式を始めてしまった。当然ながらお相手は、さっきの奴とは全く別のマメパト。おそらくメス。
     いやいやいやちょっと待て。どこに突っ込めばいいんだこれ。

    「女なんて星の数ほどいる、か」

     それにしたって立ち直りが早すぎる。あのマメパトが感傷に浸っていたのはほんの数秒か。
     呆然としていると携帯が唸った。ポケットから取り出すとメールの受信を知らせる文字。

    「……合コンのご案内?」

     この数分の間にあいつが企画したらしい。慰めのつもりだろうか。
     俺は苦い笑みを浮かべて携帯を閉じ、公園を後にした。
     砂場の方からまたマメパトの羽音がした。



    ―――――――――――――――
    駅前でしょっちゅう見かけるドバトくんたちを見てたらこんな話ができた。
    彼らの求愛はよく見るのだけれど、それが成就したところって見たことないです。
    でも互いに羽づくろいしている姿を見るとかわいらしいですよね。
    鳩胸素敵。もふりたい。


      [No.2093] VS受験勉強 投稿者:moss   投稿日:2011/12/02(Fri) 19:45:06     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     ――検討会の結果なんだけどね

     検討会。生徒たちの志望校を先生たちが集まり判断する会議。校長、教頭、学年主任、その他各クラスの担任や教科担任を含む。

     ――……は生活面では、あぁ身だしなみとか態度とかね。その辺はいいんだ

     身だしなみ。女子はスカート丈は膝下。男子は冬服の第一ボタン開けを禁止。靴下はくるぶしソックス以外の白いものを着用。脱色、ピアス、染色、アクセサリー等は禁止。スカート丈は足が太いので上げられないし、髪を染めたいとも思わない。眼鏡ちゃんなので見た目はけっこう真面目ちゃんである。よってこれは大丈夫。

     態度。日ごろの授業態度や授業外での先生方に対する態度。共に私は特に普通にしているため問題はない。先生と喋るのは別に嫌いじゃない。喋っておくとこういうときに便利だし。

     ――私立についても大丈夫だったよ。このまま併願で受けなさいって

     私立。私にはただの滑り止め、最悪の場合に通うことになる高校。説明会に行ったらもう国立大学にはいけない未来が待っていた。あと体育祭が激しかった。ここを落としたら後は無い。落ちないだろうけど。

     ――問題は公立高校なんだ。やっぱり他の先生にも突っ込まれたんだけど、実力がね、足りないって

     実力。確かにこないだのテストの点数は低かった。いや、まぁその分平均も低いんだけど過去最低合計点だった。内申も現状維持が限界だろう。上がることは無い。わかってる。内申も全く足りない。ありえない。一年生の頃と二年生の前期が低かった所為である。後悔はないけど不満はある。でも模擬ではけっこういい点なんだけどなぁと思ったけど内申の欄が下がるじゃんとなって落胆。あさってやだなぁ。

     ――だからやっぱり一生懸命勉強をね、やんないといけないねぇ。まあがんばって……




     小学生の頃の私は文章もまともに書けない、字は下手、テストは七十点(周りのみんなは八十点とか百点だった)というどちらかというと馬鹿な子だった。
     中学生になり、一年生の最初のテストではよくなかったが、その後だんだんと上がっていき、最後のテストでは夢の四百点に到達した。うわあ、やればできんじゃん、この野郎と舞い上がる。二年生では眼鏡をかけて真面目ちゃんになった。黒板が見える分、授業をよく聞いた。ノートも丁寧にとるようになった。字も
    丁寧に書けるようになった。テストでは点数を落とさないように一生懸命勉強した。成績が後期で最高潮を迎える。そして三年。勉強が難しくなった。めんどくさがりになった。でも授業は真面目に受けていたので授業態度だけはよいまんまだった。テスト前の勉強をちょっとずつやらなくなった。でもやらないことはなかった。矛盾はしてない。点数はあまり変わらなかった。通知表の数が少し下がった。まあしょうがない。勉強は難しくなってきてるし、周りがちょっとずつ受験に向けてがんばり始めたんだから。私もがんばんなきゃ行けないんだけどなぁとパソコンをしながら思う。塾の回数が一回増えた。




     「もうすぐ受験だねぇ、勉強してるー?」

     「してなーい。うち塾あるし。つか塾だらけなんですけどー。寝れねー」

     「わかるー。うちもー」

     「模擬どうだった?」

     「やばい。数学八点だったー。超うけた見たとき」

     「うそ、それやばっ。でもうちも四十五点だったしなぁ」


     私は五十五点だったよ数学。判定はAだよ。まだ内申が公立用のじゃなくて過去最高のもので書いてたときの話だけど。結局やらない子はやっぱり馬鹿だし、やる子はどんどん成績を上げていく。私の友達はやる子だったので、私よりはるかに点数を稼ぎ、もっと偏差値の高い高校を志望していた。頑張り屋さん。きついところはちょっとあるけど、授業態度は私よりも悪いけど家じゃ比べ物にならないくらい勉強してるんだよね。だから今回のテストで五十点も差がついた。塾行って頭よくなりやがって。




     「うわもう十二月だね。受験まであと一ヶ月くらいしかないじゃん」

     やばいねーと友人がホワイトボードを見ながら呟いた。ほんとだね。勉強してる? と聞いたら全然と返事が返ってきた。

     「何言ってんの? もうとっくにそうだから。勉強しろよ」

     次、数学だから早く移動しようよ。やる子な友人の確かすぎる答え。微妙にやる子な友人とホワイトボード前で目配せをする。やっぱりやんなきゃいけないよね。でもその日は家に帰って塾に行って寝た。




     「うーん。……は、現状維持です」

     後期の理科の成績。やはり現状維持が限界だった。近頃自分の限界を感じる。いや、ほんとは限界なんて無いんだろうけど自分でそれを決め付けている。ただ勉強がしたくないがために。ただ今更そんな子と言ってぐだぐだしていてもどうしようもないのでそうですかとだけ言って次の人を呼びに行った。悪い成績じゃない。志望校の内申の基準が高すぎるだけ。そう文句を言っては勉強をしない。馬鹿で最低なのは自分じゃないか。そんなことを言ってる暇があるなら勉強をしろよ。頭はいつでもそんなことでいっぱいである。でも九教科の三年間の合計が“110(だったはず)”というのは他の高校に比べて高いほうなのだ。じゃあ技能教科が神ってればいいじゃん。そんな話。だけど私は体育、技術が苦手である、特に体育。人類は何故高跳びなんていう棒を飛び越す危険極まりない競技を生み出したのか。何故人間は走るのか。何故体力が必要なのか。必要だとしても何故マラソンなんてしなければならないのか。翌日に筋肉痛になって歩くたびに痛い思いをするのは辛い。しかもそれを何故冬にやる。
     その日に国語の成績も聞いてはみたけど教えてくれなかった。というかまだ成績を出してないそうだった。授業の小テストで二十点満点中七点しか取れなかったことがあり、それが大いに成績に響くらしいのだが、今回の中間テストの点数は平均十点以上はあったので(それでも過去最低だった)下げないでくださいと言いに行ったら、……は今ぎりぎりのところにいるんだよねと言われた。でも今までの成績と態度でも評価するんですよねと食いついたらそんな簡単には下げないと思うよとさらりと言われた。はたしてどうなのかは先生しか知らないが。




     震える手で玄関を開けてただいまと言う。親は仕事でいないので当然返事はない。最近寒くなってきたので家の中が妙にあったかく感じる。幸せ。そのまま部屋に鞄を置くと、リビングに着替えに行く。実はこの制服寒いのよね。セーターは着てるけどこんなのじゃ真の暖はとれないのである。
     小腹が空いているので自然と手が冷蔵庫へ向かう。これぞ太る原因。みんなは真似しちゃ駄目だよ。適当にプリンかヨーグルトを取ってパソコンをつける。ここでいつも見ているサイトやらツイッターに呟きに行ったりニコ動で歌を聴きながら小説読んだり漫画読んだりかれこれ一時間。眠くなってパソコンをやめる。部屋へ行ってベッドに横たわる。目を閉じる。寒いのでひざ掛けと毛布と布団を軽くかけてみる。そのまま二十分後、起床。そんなに長い時間は眠らない。そしてまだ親が帰らないのでどうしようか。ここで(というか帰ったらすぐにやれよって話だが)勉強をしようという意見が頭のどこか片隅によぎる。しかしよぎっただけで実行には移らない。結局机の上で絵を書く作業に入ることにした。最近は漫画チックな人物の絵とか書けるようになりたいななどとほざいているため人を書いたり。あぁ本当はこんなことしてるんじゃなくて勉強しないといけないんだよと思いつつ手は一向に止まらない。あ、ここの線ぶれた。消しゴムを取ろうと手を伸ばした――

     ――そのときだった。

     「何やってんだよ。んなことやってねぇで勉強しやがれこの数学万年五十点台野郎がっ」

     後頭部に強い刺激を確認。視界がぶれる。あ、ここの線がぶれたどころじゃない。じんじんぐらぐらする頭を両手で押さえながら後ろを向いた。しかしそこには私のベッドがあるだけで他にはなにもない。……いや、いた。ベッドじゃないところに悠然と存在している。

     「そんなんだからまともな内申もとれないしテストでも点取れないし、模擬の結果も良くないんだよ馬鹿野郎」

     「……ぇ、うい……あ、ぁ誰?」

     首に黄色いスカーフを巻いて、黒いパーカーにちょっと違う黒の半ズボン。ベルトになにかチャラチャラしたアクセサリー的なものをつけ、黒髪に丸い耳を生やした小四くらいの少年がふわふわぷかぷかと浮いていた。真っ黒だなオイとも思ったが、実は黒いパーカーの裏は黄色い生地で、ちらちらとのぞいていた。つーか浮いてるし飛んでるし顔かわいいし。最後のは私の趣味です関係ないですごめんなさい。

     「んなことよりさっさと勉強しやがれ。あさってには模擬が待ってんだぞ。これで受けんの最後だろ? だったらちょっとくらい勉強しろやアホ」

     むかついた。めっちゃむかついた。私は立ち上がると近くにあったレシラム人形(レシラムかわいいよねレシラム)をむんずと掴み、奴に向かって投げた。

     「何すんぉぶっ」

     顔面ヒット。そのまま足を掴んでぐいっと下に引っ張り下ろし、床に墜落させた。ごつんと音がしてたぶん頭でも打ったんだろうがそんな些細なことは気にせずに私は息を吸い込んだ。

     「だぁれがアホだこのクソっカスっ餓鬼っ! こっちだってやろうとは思ってんだよ口出してんじゃねぇよっ!」

     「あんだようっせーな! てめぇが勉強しないからわざわざ言ってやったんだろーが!!」

     右腕で頭を押さえながら少年が反論した。その一言にいらいらのボルテージを上げた私は先ほどよりボリュームを上げてさらに反論する。

     「うるさいのはそっちだっつーの! 何処の誰とも知らないわかんないあんたに言われたかねぇわっ!!」

     そこまで言い切って椅子に座る。疲れた。不法侵入だ。どうしよう。警察に通報すべきか。そんなことを考える。とりあえず机の上にある書きかけの絵をしまった。丁度そのとき少年が立ち上がる気配がしてそっぽをむく。

     「……そうやって、今俺を見ないみたいに嫌なことは全部見なかったことにしてきたんだろ。見ないやらない関係ない。何で? だって自分にはもう無理だとか限界だとか今はやりたくないからこんどにしようとか、避けてきた。だけどそのままずっと逃げていったら……」

     「うるさいうるさいうるさいっ。そうだね確かにいろんなことを後回しにしたりやりたくないの一言でやらなかったこともあった。でもやるときはやったしテストも――

     「でもどんどん成績は下がってきてるじゃないか」

     ぐさっときた。心臓に何かが突き刺さって抜けない。まるで硝子の破片のような、抜こうとしたら逆に手を傷つけてしまう。そんなかんじ。でもこのまま認めてしまうのは私の変なプライドは許さないので無視することにした。お互いに何も言わない。無言の圧力。潰れてしまいそうだ。気を紛らわせるために本を一冊手に取った。妙に薄いなとおもったらそれは社会の一問一答式の問題集だった。ちょうど文庫本とかと同じ大きさの。それをつかんでいる手は私だけじゃなかった。

     「実力がないわけじゃない。でも努力をしないと自分の好きなことは好きなだけできなくなるよ。あんたにはそうなてほしくないから。ちゃんとやらなきゃいけないことくらいはやれよ。やるべきときに」

     見上げると少年がいて、角度と光の反射で表情は見えなかったけど。え、と聞き返そうと口を開けて

     「……え?」

     目が覚めた。私はベッドの上にいた。どうやら夢オチらしい。携帯で時間を確認すると四十分くらいたっていた。二十分で起床なんてしていなかったようだ。親はまだ帰ってきていない。ふと机の端にDSiが開いて、しかも電源のついたまま置いてあった。充電切れるわー、いつからついてたんだしといいながら画面を見ると

     「ぷはっ、そのまんまじゃん、格好」

     手持ちのなかのエース、エモンガのエモちゃん(ニックネームにはしてないけどそうやって言ってる)のステータス画面だった。
     私は電源を切ると、それをあるべき場所に戻し、ため息をつきつつも数学の教科書を開いてそれからノートも開いてちょっとだけ勉強をしてみることにした。






    ―――――――――――

    体験談をまじえて。内申が足りないのは本当です。あと数学が五十点台なのも本当です。

    このままじゃ落ちるのも成績が下がってるのもあさってが模擬なのも本当ですね、はい。

    とりあえず現実逃避したい。


      [No.2092] 白衣の悪魔 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/12/02(Fri) 19:32:50     77clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    > ゾロアークのPTだなんて夢っすよねぇ……。亥家杜木にリハビリしてもらえるなら、俺いっそこの腕折っt(ry
    > ……嘘ですw けど、いいなぁー!
    ゾロアークのPTだったらさぼらず毎日行くんだけどn(

    >
    > さすがはきとらさんと言いますか、医療現場の、それも「裏側」の描写が細かくてとても面白かったです!
    > あと、亥家杜木、患者にアレルギー症状がでてるのに報告しないなんてもう……どがーん!
    > 新人君はやっぱ抜かってるなぁ……と、学生PTが思っていましたww
    裏側なんでしょうか。働いてると全てが日常なのでどこが裏なのかよくわからないのですが、栄養科はいつも一番忙しい時にどうでもいいことを電話してくるイメージしかないです。


    > それと、タイトルの「白衣の土方」というのはPTのことです。あんまり体力使う仕事が多いので、「白衣の天使」に対してそんな風に呼ばれるのですww
    という私は白衣の悪魔だと言われました。
    ボクコワクナイヨ。

    > あー……、池月PT……。PTって患者さんと距離近いからなぁ……、若い女性方々大丈夫かなぁ……。
    > ま、人間相手だし、もふもふしてないし、大丈夫か。
    むしろ、その人間をもふらせるのが池月PTの仕事だと思います!
    >
    > なんてこと、ふと考えてました
    >
    > ではでは、きとらさん、ニヤニヤの止まらなくなる話、ありがとうございましたw!
    むしろ喜んでいただけたようで何よりです!
    直前まで「こんなんでいいのか」とずっと思っていたので、気に入っていただけたなら私は超嬉しいっす!
    >
    > 【俺もゾロアークにリハビリ受けたいのよ】
    【私もゾロアークPTがいいのよ】


      [No.2091] 【百字】噂 投稿者:逆行   投稿日:2011/11/29(Tue) 21:20:32     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    セレクトボタンを十五秒押した。
    Bポタンを押した。
    手持ちの先頭を要らないポケモンにした。
    名前をアグフオヌにした。
    画面を指で擦った。
    ゲーム機を床に叩きつけた。


    少年はこの裏技でミュウが出ると思ってるらしい。



    どうも。ポケスコ史上、最も目立つ誤字をやらかした逆行です。
    僕も百文字を書いてみました。
    結構難しかった。


    【好きにどうぞ】


      [No.2090] 白衣の土方 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/11/29(Tue) 16:07:18     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    朝の駅でこの作品を読んでいたら、友人に「何をニヤニヤしてるんだ?」と突っ込まれたイケズキです。

    ゾロアークのPTだなんて夢っすよねぇ……。亥家杜木にリハビリしてもらえるなら、俺いっそこの腕折っt(ry
    ……嘘ですw けど、いいなぁー!

    さすがはきとらさんと言いますか、医療現場の、それも「裏側」の描写が細かくてとても面白かったです!
    あと、亥家杜木、患者にアレルギー症状がでてるのに報告しないなんてもう……どがーん!
    新人君はやっぱ抜かってるなぁ……と、学生PTが思っていましたww


    最後に、PTと言われてピンと来なかった方へちょいと理学療法士の紹介をここで…… (きとらさん、感想レスに勝手にすみません)

    PTとは、physical therapist の略で、理学療法士のことです。
    骨折なんかを経験された方には想像つくかもしれませんが、病院でマッサージや歩く練習をしてくれる、半そで白衣に白いパンツの人です。よく、「按摩さん」なんて呼ばれたりするらしいのですが、按摩とは違います。医師や看護師、その他の医療従事者と同じ国家資格を持ったプロの人たちです。

    それと、タイトルの「白衣の土方」というのはPTのことです。あんまり体力使う仕事が多いので、「白衣の天使」に対してそんな風に呼ばれるのですww


    あー……、池月PT……。PTって患者さんと距離近いからなぁ……、若い女性方々大丈夫かなぁ……。
    ま、人間相手だし、もふもふしてないし、大丈夫か。

    なんてこと、ふと考えてました

    ではでは、きとらさん、ニヤニヤの止まらなくなる話、ありがとうございましたw!

    【俺もゾロアークにリハビリ受けたいのよ】


      [No.2089] イケメンPTはもふもふの香り 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/11/28(Mon) 22:27:40     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     机に向かってガリガリと3色ボールペンを走らせ、着信を知らせる内線に半分怒って対応していた。
    「今日の夕食は炊き込みご飯を予定していたのですが、おかずがかに玉なので白いご飯に変更します」
    「あ、はい解りました伝えます」(今気付いたの? 栄養科ってバカじゃないの? それくらいで電話してくんなカス)
    「男性部屋あいてる?」
    「男性は、満室なので個室なら大丈夫です」(何のための日報だよ見ろよ管理職)
     次々に舞い込む電話に作業は進まず、隣の白衣を来た医師はカルテを積み上げて行く。それをみてやる気が下がり、ため息をつく。
    「先輩! 棚田さんが転倒しました!」
    「うがらあああああああ!!!!」
     詰め所に咆哮が聞こえた。
     一人のナースが目を血走らせながら、血圧計とペンライトを持って走る。まさに戦争に行く兵士のようだった。


     休憩がロクにとれなくても、これだけはかかせない。タバコのケースを取り、ライターを取り出す。
    「ミサキちゃん、タバコは体にけほっけほっ」
     医療ポケモンのハピナスが迎えにくる。その名前をリンダと言う。この一人と一匹は新人デビューしてからずっと一緒。
     喧嘩もしたし、お互いに八つ当たりの対象になってることもあるけど、基本的には仲良く仕事を進めてる。
     けれど、リンダが絶対に認めない事実、それがミサキの喫煙。女の子なんだからとか、お嫁にいけないとか姑のような小言を言ってるにも関わらず、ミサキは何処吹く風。
    「今さら今さら。一箱500円になったら考える」
    「この前は400円になったら考えるって言ったよね。あと、上司が呼んでたよ」
    「なんで?」
    「なんか、この時期に新しいリハの先生来たから挨拶するから来いって」
    「忙しいんだからあとにして欲しいよなあ。行くか」
     火のついたタバコを灰皿に押し付ける。そしてエプロンを整え、名札を確認して喫煙所から飛び出した。


    「新人の亥家杜木です!」
     ミサキが戻ると、同期のリハビリの先生が連れていたのはそれなりに爽やかなヤツだった。医療という接客業から考えて、清潔感は大事だし、なおかつそいつはそれを持っていた。
     さらに付け加えると、ミサキの先輩も後輩も、そいつをとても好意的に見ている。つまりはイケメンを見ている顔だ。
    (絶対にあのホウエンチャンピオンのがかっこいい。)
     そうは思っても口には出さず。ミサキが最もはまった画面越しのアイドル。実際にあったことはないが、彼がでているテレビは全てチェックしているし、近くにくるイベントがあれば休み希望を即入れていたくらい。
     そんなミサキが新人をイケメンと認識することはなかった。順番に自己紹介していく中で、みんなかわいらしく言うのに対し、ミサキは至って普通に答えた。
    「秋山美咲です。よろし……」
    「おう、秋山さん」
     いきなりそいつは顔を背ける。突然のことにその場が固まった。
    「タバコは体に良く無いというのは医療従事者としての常識であり、当然のごとくの知識であるというのに、その貴方がタバコなど……綺麗な貴方が慢性呼吸不全や肺がんになったら、もふも……じゃなかった、とてもいい世界で気分が悪いというものではありませんか!」
     なんだこいつ。その前によくもそこまでタバコ臭が届いたものだ。着てるものについてるかな、と思わず後ろのリンダに確認を求めるも、彼女は近すぎて服についてるかどうかの判断は解らないという。
    「まあ、成人してるんで」
    「いいえ、もふ……の世界ではかわいいものはタバコなどはっ!」
     まあ良くいる嫌煙家だろうな。先輩に対してまでここまで言うのはかなり好きではないのだろう。幸いなことにまわりは全てイケメンだと思ってる。この新人PT亥家杜木の相手は他の人に任せよう。
    「あ、医療ポケモンのリンダです。よろしく」
    「ハピナスとは! つるつるの肌よりもすべすべの肌よりも、もふ……いやしっとりとした毛皮が最もベストなのです! 毛皮を持たないポケモンはポケモンではあらず!」
    「あ、亥家杜木さん? 病院だし、アレルギーある人もいるから毛皮のあるポケモンはあんまり採用されないから。ハピナスは最も適した……」
     フォローを続けるミサキは気付いてなかった。後ろのリンダの殺気に。今にも火炎放射を放ちそうな顔で亥家杜木を見ている。ミサキの前にいる後輩が後ろを指差していたので、それで気付いた。その時、初めてミサキはリンダのそんな顔を見た。
     どうやら、コンビとして亥家杜木PTと合わないようだった。


     そんなことがあってから1ヶ月以上。今日のミサキはとても楽しかった。なぜならリーダーという役職ではなく今日の業務は受け持ち患者の世話だったから。みんなの話を聞いてる方が明らかに楽しい。医師の指示をグダグダ聞いてるよりよっぽど。
    「はい、最上さんお体どうですか?」
     血圧計と共にベッドサイドに声をかける。その相手は屋根から落ちて骨を折ってしまった男性だ。病院にしては珍しく若い年齢なので、スタッフもみんな親しみをもって接している。
    「いや、足は大丈夫なんだけど鼻水がとまらなくて」
     そういう彼はティッシュを手放さなかった。よく見れば目も赤く腫れている。
    「えっ!? どうしたんですかそれ!?」
    「解らないけど、リハビリ始まってからずっとこうで、今日は特に」
    「リハビリ始まってから? 担当の先生誰でしたか?」
    「確か、かっこいいあの男の亥家杜木先生です」
     亥家杜木か! ミサキは心の中で叫んだ。それにしても、リハビリ中にそんなことがあるなら教えてくれてもいいのに。
     さっそく詰め所に帰って内線を取る。あんまり喋りたくなかったが業務上しかたあるまい。
    「どうしたのそんな顔して」
     本日のリーダーは優しい先輩だった。最上の状態と、リハビリ亥家杜木の話をする。
    「あれ、そういえば赤芽さんも同じようなこといってたわね。だからリハビリ室になんかあるんじゃないかって」
    「この前、病院の大掃除で換気口がっつり掃除したんじゃないですか? 病院なのに病人作って全く」
    「お金ないんだから仕方ないでしょー。とりあえず主治医きたらその事報告するから」
     優しい先輩で良かった。亥家杜木PTにも言っておいてくれる。
     医療従事者なんだからそういうことがあったら教えてくれと。でもイケメン補正がかかってみんなきつく言わない。だからといってミサキが言いたいわけでもない。
     その日のうちに主治医から薬が貰えて、最上はなんとかティッシュをかかえる生活から抜け出せたようだった。


    「それでねー」
     その日、ミサキとリンダは職場に近いシャレたレストランにいた。というのもボーナスが入ったからである。次の日が休みの日を狙って。
    「最近ヒロコが頑張ってるんだけど、先輩から私の言うことしか聞かないって言われちゃったあ!」
     ミサキの後輩のヒロコのこと。ポケモンみたいにミサキの言うことしか聞かない。一応人間なんだけど。やたら懐かれてるのは嬉しいけれど、ミサキとしては複雑な気分だ。
    「そういえば、ヒロコちゃん、最近ずっと鼻声だよね。休み時間もずっと飴なめてるし」
    「ああ、そういえばアレルギー性鼻炎とかいってたな。花粉症の時期じゃないのにかわいそうに」
     スパゲッティを器用に巻いてリンダは食べてる。トマトソースが食欲をそそる。
    「アレルギーといえば、最近抗アレ剤を飲む人が多いわ。今日も臨時で二人出たし。点滴でも出たなあ。寝る前にしてくれよ全く」
    「あれ、もしかして亥家杜木の担当じゃなくて?」
     ミサキは気付く。そういえばみんなそうだった。まさか本当にリハビリ室は何かあるのだろうか。いや違う。だってそのうちの一人は寝たきりだ。リハビリ室に行くわけがない。
    「もしかして、あの病院何かあるんじゃ……ちゃんと掃除するように、ちょっといっとこ。それにしても折果さんとか木影さんとか、亥家杜木先生大好きすぎるよね! あれのどこがイケメンで、イケメンのどこがいいんだははっははは」
     いつもより高めの白スパークリングワインに口を付ける。香りがよくていい感じ。どんどん飲める。グラスは次々に空になり、新たなボトルを注文する。ハピナスであるリンダはじっとその様子を見ている。
    「ってかまじ笑えるー! 若い女の人口説いてまわってんだしー! きゃははは!!!!」
     やたら楽しそうなその言動。リンダは気付いた。まずい。このままだとマズイ。
    「すみませんジンジャエールください」
     急いで持って来てもらったジュースとすり替えるが、ミサキは全く気付いてない。おいしそうにそれを飲んで、しばらくして会話が止まる。
    「! ミサキちゃんトイレ行こ!」
     酔っぱらいの看護など最も引き受けたくないものだ。選べるならリンダとしてはこのまま帰りたい。


     2日も経てば酔いは取れる。が、リンダの怒りは取れない。あのあと、家までタクシーで行こうとしたら道が満杯で、その辺のトレーナーに走れるポケモンに乗せてもらった。のはいいけれど途中でマーするものだからそのポケモンとトレーナーにリンダが怒られる。
     なんとか家に帰ったあと、水を飲ませて玄関に放置してみた。そして朝、言ってやったのだ。「この酔っぱらい!」と。自分がどんなに大変だったか、トレーナーになんて謝ったのか。そしてちゃんとご飯を作ってやってるんだからありがたく思え! そうキレて今日の出勤である。
    「酔っぱらい秋山っちー」
     同期が茶化してくるが、そいつだって人のこといえない。夜勤明けの忘年会で飲み過ぎて倒れたという過去を持つんだから。そうミサキが言おうとしたら、その彼女と一緒の医療ポケモン、タブンネのリリカが先にツッコンでいた。
     今日は本当にリンダが怒ってる。ミサキの後ろからずっと怒りのオーラを発していた。
    「リンダ」
    「なに?」
    「なげつけるは無しで」
     かなり太い注射針を忍ばせてるものだから、背後というのは怖い。それはどうかなとどちらとも取れる発言をして、リンダはミサキのあとについていく。
     みんなの体を拭くときも。点滴をつなげてまわるときも。その度にミサキは背後に存在する視線を感じていた。
    「なんか今日のリンダちゃんが怖い」
    「そんなことないですよ杙時さん」
     手術後の男性が、リンダをみてずっとそういっていた。ミサキが抗生剤のボトルをつなぐ間、何か違うものをみておびえていたように見える。
    「そんなことありますってハピナスちゃん!」
     いきなりやってきたのはイケメンPT亥家杜木。リンダの怒りのボルテージが上がって行く。
    「もふもふの毛皮を持たないハピナスちゃん。医療用ポケモンといってもタブンネとは雲泥の差」
     なんでそんなにリンダにつっかかるのか解らない。なんでポケモン相手にこんな偉そうに威張ってるのだろう。ミサキは不思議で仕方なかった。そしてこれ以上威張ると、いくら攻撃力が弱いハピナスでも、18Gの投げつけるは痛いだろうと思った。
    「そもそもポケモンというのはもふもふで出来たものであり、それ以上はないのだからハピナスなど眼中に……」
    「亥家杜木いいいいい!!!! 人間といえどもそれ以上威張られてたまるかぁああ!! 食らえ投げつける!!!」
    「リンダおちつk……」
     ミサキを突き飛ばし、リンダはポケットに入ってる18Gの注射針付きシリンジを投げた! そんなもの人間が食らって重傷を負わないはずがない。こんな事件があったとなったら、ポケモンだもの最悪のこと殺処分だってある。ヤバい。これはヤバい。すでにリンダの手を離れた注射器が亥家杜木の肩をかすめ……
    「へ?」
    「え?」
    「人間が溶けた!?」
     誰かが叫んだ。誰でもいい。ミサキは言葉がなかった。リンダも怒りを忘れていた。リンダが投げつけたのは、イケメンPTと名高い亥家杜木だった。そうだった。さっきまでは。けれど、その姿はもうない。あるのは頭の毛が青い狐。テレビや映画で見たその姿はゾロアーク。
    「な、なんだってー!!!???」
     その場は大騒ぎになり、仕事どころではない騒ぎになった。
     リハビリの先生がゾロアークだった。しかも長いこと誰も解らなかったこと。
     やたらもふもふを進めてくるのは自分がもふもふだったからか。
     若い女の人限定でもふもふを進めていたのもナンパかあれは。
     そもそも誰の許可もなくゾロアークが医療などあり得るものか。

     病院は一瞬にしてその話題で持ち切りとなった。


    「えー、ちょーイケメンで狙ってたのにぃ」
    「もう信じられないよねー! ポケモンとかー」
     いやいや、そもそもイケメンじゃないだろうとミサキは心の中で思っていた。


     PTゾロアーク事件から一ヶ月後。
     ミサキは夜勤明けで、喫煙所にいた。隣にはいつものようにリンダ。夜中の忙しさの反動で、眠気の中、タバコをくわえていた。
    「女の子というのにタバコを吸うとは!」
     どこかで聞いたことある声にミサキとリンダは黙ってそちらを見る。
    「ふふ、驚いたかね諸君!」
     池月という名札をつけた元亥家杜木が立ってる。そもそもそう書くなら素直に最初から池月と名乗っておけばいいものを。
    「イケメンPT池月として、医療用ポケモンゾロアーク池月なのだ!」
    「ああ、そう……」
    「それにはまず、医療従事者のタバコをやめさせなければならん! とうっ!」
     ミサキの手からタバコが消えた。


     それからというもの、ミサキが喫煙所にいると必ず影でのぞいている。うざいなと思っているが、どうでも良すぎてほぼ無視。火のついたタバコをかっさらっていくが、それ以上は何もしない。
     ミサキがそのままにしておくのはもう一つある。
    「ゾロアークがリハビリしてくれるって!」
    「モカちゃんもゾロアーク先生にリハビリしてもらおうね!」
     青いゾロアークがリハビリをしてくれる病院として有名になっていたのだ。青いゾロアークが珍しく、子供から年寄りまで大人気。しかも見た目は超イケメン。たまにゾロアークの姿でリハビリしてくれる時もある(特に疲れてるとゾロアークのままリハビリしてるっぽい)。
     
     ただ、一つだけ。

     ポケモンアレルギーの人は近づくことができないので要注意。


    ーーーーーーーーーーーーーー
    forイケズキーニ
    猫アレルギーがあるので、もしこういうことがあってもリハビリしてもらえない辛い。
    ミサキのモデルは私の先輩。飲み過ぎたところは実話。
    あと、許可なく名前をいろんな人から借りました。
    ごめんなさい。
    【好きにしてください】


      [No.2088] ぼくらのポケスト戦争。予告?編 投稿者:紀成   投稿日:2011/11/28(Mon) 20:14:36     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ――それは、うだるように暑い夏の日のことだった。いつものようにパソコンをつけた紀成は、皆さんご存知NO,017さん……通称、『鳩さん』からのメールに目を見開くこととなる。そしてそのメールは、緊急としてメアドを知っているポケストメンバー全員に送信されていたのだ!
    内容はこうだった。

    『8月1日から31日までの一ヶ月間、私たちが住む日本列島を西と東に分けて小説戦争をする。ルールは簡単。『夏』をお題として西軍から一人、東軍から一人出して小説を書き、掲示板にアップして一般の人達に見てもらうのだ。どの日に誰が書くかは相手軍に漏らさないようにすること。そして最終日の23時、掲示板でどちらが多く票を貰ったかを中継する。
    では、幸運を祈る!』

    だがこれは予想外の展開を迎えることとなる。家族旅行中の紀成、そして紀成が作り出したキャラクター達が何故か暴走を始め、ポケスト自体がとんでもないことに――!

    最後の夏、一ヶ月の小説戦争が幕を開ける。


    ――――――
    『ぼくらの七日間戦争』を読んだら面白すぎて止まらなくなった。ちなみにジョークです。
    [何をしてもいいのよ]


      [No.2087] 【百字】レポート 投稿者:西条流月   投稿日:2011/11/26(Sat) 01:20:13     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    思い出はたくさんのことがあった。
    それを忘れることなんて出来やしない。
    けれど、感じたことは振り返るたびに変わってしまう。
    でも、この気持ちはきっと忘れてはいけないのだろう。
    だから、レポートに記しておこう。

    チャットで静電気に対して、秀逸な返しを言われてしまったので、リベンジをしてみた

    【好きにしていいの】


      [No.2086] 【百字】せいでんき 投稿者:西条流月   投稿日:2011/11/26(Sat) 00:57:22     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ぴりっとくる冬の風物詩。
    びっくりすることはあっても痺れるほどじゃないと思う。
    膝の上で丸くなってるピカチュウに手をかざす。やっぱりぴりっとくるだけ。
    こんなんでマヒしてしまうポケモンは敏感なんだろうか。




    そういえば、最近書いてない。なんか書きたい。
    砂糖水さんが100字書きたいなぁと言ったので、書いてみた

    【好きにしていいの】


      [No.2085] プロットとは呼べないものですが・・・(汗 投稿者:クーウィ   投稿日:2011/11/24(Thu) 15:01:58     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ハブザン  真面目なハブネークとガサツ者のザングース  赤い月  阿蘇山(フエンタウン)  赤と青  神主とその娘  温泉郷  背後から奇襲  ずっと負け無し殺すならオマエ


    『赤い月』のプロット(?)です。・・・プロットっつーかメモだけどね(汗)
    物語の骨格は大体5分ぐらいで出来たので、その時思い付いた大まかな設定を一行のメモとして残したもんです。

    後は空いた時間に思い出して直書き。 ・・・基本何でもこのスタイルですので、ちゃんとプロットを用意出来る方には頭が上がりませんです(汗)
    もっと修行しねぇと・・・


      [No.2084] 【使ってみた】ルナt……もといスケベクチバシの所業の話 投稿者:マコ   投稿日:2011/11/22(Tue) 10:29:56     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ある日のことです。
    ある場所で、ルナt……おっほん、失礼、スケベクチバシが佇んでいました。
    このポケモン、本当はルナトーンという、れっきとした種族名があったわけですが、数々の変態としての所業の結果、いつのまにか「スケベクチバシ」という名で呼ばれて、それが既に定着していたのです。
    彼は茂みに隠れ、ターゲットをこっそりと、狙っています。


    「やっぱりミニを履いてる人とかメロン的な胸の子とかがいいなぁ……」
    そう呟きながらツイッターにこの言葉のままツイートを打ちつつ、
    「ハッ、いけない、ついつい変態の部分が……いけないいけない、オレは断じて自分の意思では……」
    修正をかけていました。
    でも心配しないでください、スケベクチバシさん。
    あなたは、もう十分、変態なのですから。


    そうこうしていたら、ターゲットが来ました。女子大生のようです。
    彼女は誰かと待ち合わせているようで、ちょっぴりおめかしなんてしているようです。
    「ミニスカートにレギンス、ちょっと胸は小振りか……、こういう人もたまには悪くないか」
    そう小声で言うと、「実行開始」とツイートし、サイコキネシスを使い、女の子の服を脱がし始めました。


    「まずはミニスカ……」
    ぴらん、とめくれるスカート。
    「次にレギンス……おおっ、絶景だ!」
    感想がただのド変態です。
    でも女の子も必死に念力に抗おうとして、めくれまくる服を必死に直しています。
    「抵抗が強いな。よし、今度は……」
    シャツが飛んでいきます。
    なんと、ここにきてかのスケベは、サイコキネシスのギアを一段階上げてきたのです。しかもその都度ツイート。なんと器用なスケベクチバシ。
    「ちょっと何これ!?」
    被害者は半泣きです。だって正体不明の力(サイコキネシス)でミニスカをめくらされるわ、レギンスを脱がされそうになるわ、挙句の果てにはシャツも飛ばされるわ。
    でも、彼女も負けてはいません。
    「ムシャーナお願い、危害を加える悪人をサーチして」
    念力には念力、ということでしょうか。服を必死に押さえつつ、夢現の桃獏にサイコキネシスでサーチを行わせたのです。


    「絶景、絶景、……やばい、追ってきてる!!」
    ピンチなう、要救助、とツイートするスケベクチバシですが、フォロワーのソルロックやガバイト達からのリツイートは散々たるもので、
    「見損なったぞ、スケベ」だの、
    「ド変態は女の子にボコボコにされればいい」だの、まあとにかく酷評です。
    要するに「オレらは助けに行かねえからお前でなんとかしろ」とのことです。


    「見つけたわよ犯人!覚悟しなさい!!!」
    どうやら、被害者はスケベクチバシを割り出したようです。
    しかし、スケベクチバシは観念するどころか今度はブラホックも外し、下着まで脱がしにかかってきました。
    本性丸出しです。
    何としても絶景フィーバーを維持したいのでしょう。
    ですが、悪人にはそれなりの裁きがあるのが、世の常です。
    「エンブオー、ラグラージ、揃って熱湯!ウォーグルはシャドークロー!フシギバナはソーラービーム!ムシャーナはシャドーボール!ライボルトは噛みつきを連打して!」
    ルナトーンのタイプである岩とエスパーの弱点をつく技のオンパレードです。
    青と黄色の雷獣が牙をもってがじがじ噛みつき、退却したところに大鷲の影の爪。桃色の獏からの影の球に、沼魚と大火豚が揃って熱水をぶっかける。
    その全てがまさに「きゅうしょに あたった! こうかはばつぐんだ!」です。
    そして、長い日光の溜めを終えた背に花を背負う大蛙が、花をスケベクチバシに向けて……、
    「エンブオーが水技覚えるなんて!!!ちょ、ちょっとタンマ、オレこんな仕打ちは……」
    「言い訳なんぞ聞くか!!ソーラービーム、発射!!!」
    次の瞬間、太い光線がかのド変態を飲み込み、丸焦げにして吹っ飛ばしていった……。


    「変態の末路、拡散なう……これでよし」
    どこかで、それこそあの女子大生にすら分からないように、ソルロックは丸焦げスケベクチバシの哀れな姿を撮影し、ツイートに画像添付という形で一斉に公開しました。
    またしてもスケベクチバシのフォロワーは増加しました。
    もう100万人上積みされた模様です。
    まあ、そのコメントの多くは、「あんまりにも酷いww」だとか「最低wwテラワロスwww」とかそんな類のものですが。
    「高度情報化社会だいきらい……」
    丸焦げのまま、スケベクチバシは呟くのでした。


    その頃、かの女子大生は、というと……
    「みんなゴメン、どうしよう……」
    アドレナリンのスイッチがオフになってしまったようでほぼ裸の状態で大泣きしていました。
    彼女と待ち合わせしていて、そこに駆け付けた男の友人たちは皆顔色が真っ青で、
    「お前どないしてん!?」
    「早よ服を着ろ、服を!!」
    「目線どう向けてええんか分からへん……」
    飛んだ彼女の服を探し出すことに奔走していたのでした……。



    マコです。
    リナさん、ネタ提供ありがとうございます。
    「よければ自由にお使いください」とのあなたの言葉を受け、スケベクチバシさんを使わせていただきました。
    一応、ロングのポケリアの登場人物と絡ませてあります。
    つまり、スケベクチバシさんがターゲットにしたのは、ヒロインであるマイコちゃんだったわけです。
    あの後数日間は、何とも言えない気まずさで仲間と口をきいてもらえないでしょうね。
    つまらない文で恐縮ですが、受け取ってください。
    【実はスケベクチバシ、意外とツボです】
    【(嘘)シリーズ、大好きです】


      [No.2083] 獣と娘 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/11/21(Mon) 22:30:29     96clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     静まり返った家の中、ひっそり動く影一つ。
     家人を起こさぬように抜き足差し足、そっと戸を引き月夜の下へ滑り出る。

     外で待つのは白き者。絹の毛並みを輝かせ、緋色の瞳を瞬かせ。
     近付く彼女に頭を摺り寄せ、低く優しく声を発する。
     なめらかな体毛に指を潜らせ、鋭い黒鎌にそっと手を添え。
     彼女はただただうっとりと、彼の頭をかき撫でる。

     白き獣と人の子は、互いの熱に酔いしれる。
     この甘やかな時間が、永久に続くことを願いつつ。



    ( しずまりかえった いえのなか、ひっそりうごく かげひとつ。
      かじんをおこさぬように ぬきあしさしあし、そっと とをひき つきよのもとへ すべりでる。
     
      そとでまつのは しろきもの。きぬのけなみをかがやかせ、ひいろのひとみをまたたかせ。
      ちかづくかのじょに あたまをすりよせ、ひくくやさしく こえをはっする。
      なめらかなたいもうに ゆびをくぐらせ、するどいくろがまに そっとてをそえ。
      かのじょは ただただうっとりと、かれのあたまを かきなでる。

      しろきけものと ひとのこは、たがいのねつに よいしれる。
      このあまやかなときが、とわにつづくことを ねがいつつ。 )


    ――――――――――――――――――――――――

    ・最近長文が思うように書けないので、久しぶりに百字に挑戦してみた……が、失敗。一人と一匹だから各百で、と開き直って二百字に。
    (11/22 読み方を追記しました。これは字数に入れておりません、あしからず。)
    ・私にとっての彼は、ブラッキーと並んで月夜or闇夜のイメージ。
    ・彼らの迫害されていた時代を脳内設定。彼も彼女も、見つかったらきっと唯じゃ済まない。だから深夜の密会。
    ・読了いただきありがとうございました。

    【なにをしてもいいのよ】


      [No.2082] 友人がポケモンに侵されている件について 投稿者:紀成   投稿日:2011/11/21(Mon) 19:18:50     295clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    カントー地方……間違えた、関東地方、西寄り。マサラタウンほどではないけどタマムシシティ、ヤマブキシティには程遠い土地に、その学校はある。
    来年度の受験生向けのパンフを見せてもらったが、そこには『おいこの学校何処だよ』と通う私が突っ込んでしまうくらい嘘で覆われた内容と写真が載せられていた。堂々と野球部載せんなよ。知ってるんだぞ、一学期期末試験の結果発表の日、お前達が甲子園予選を戦いに行ってコールド負けして帰ってきたこと。なんだこの爽やかな笑顔は。この予算泥棒。
    これ以上書くとカゲボウズ塗れになりそうなのでやめておく。ことの始まりは、甲子園おろか夏休みも終わって二学期が始まって二週間近く経った日のことだった――


    これはどういうことなのだろう。パンデミックなのか。今まで何の予兆も無かった。私はまだいい。元々好きでこうしてサイトに小説を投稿しているくらいだから。だが、彼らは。彼らはどうなってしまったのか。
    女子トイレ。教師陣が使えないのをいいことに休み時間は携帯電話による通話、メール、その他諸々校則違反のオンパレードの地となる。
    そこの一角で、友人がDSをいじっていた。覗かせてもらえば、そこはイッシュ地方だった。
    「お前ポケモン持ってたの」
    「最近ハマった」
    よくもまあぬけぬけと言えるものだ。中一の時私の趣味を聞いて『この歳でポケモン?ワロスwww』などと言っていたお前が!
    「ブラックか……」
    「紀成は持ってんの?」
    「あたぼうよ」
    何か意味が違う気がしたが、彼女は気にしない。図鑑を見てため息をつく。
    「あー、サファイア今更やるのもな」
    「図鑑完成か」
    「紀成ってどのくらいポケモン持ってんの?」
    ここでちょいと自慢したくなる。小学校の時はテレビゲームなんて持っていなかった。コロシアムをプレイしている男子が当時は珍しいジョウト地方の御三家を持っていて、羨ましかった覚えがある。
    今度は私がその男子になる番だ!
    「ほとんど持ってるよ」
    友人が喰らいついてきた。
    「最初の三匹は!?」
    「え……うん。最終進化系なら」
    「タマゴ頂戴!」

    とまあ、ここまでで『中間終わったらね』と言って戻る。いやー驚いた。メアド交換して、中間終わった後で『欲しい奴あったらメールして。タマゴ生ませるから』とソフトを渡す。
    で、その夜のこと。原稿をしていたら、メール着信の合図の曲が流れてきた。差出人は友人。

    『おいなんでこんな伝説持ってんだよ』

    そりゃあ、サファイア→パール→プラチナ→ソウルシルバー→ブラックと経由してきたんだもの。プラチナは数回やり直してギラティナが二体くらいいたはずだ。確かディアルガも二体、ルギアも……
    『どれか一匹くれない?』
    さてどうしようか。被ってるやつを教えてもらう。一番弱いディアルガをあげることにした。イベントで入手したものだ。
    『ありがとう!』

    それから早二ヶ月――

    11月21日、月曜日、一時限目。左斜め前の友人が下を向いたまま動かない。ゲームだ。しかも機種はかなり古い。十年くらい前に発売されたGBA。まだ充電できないSPより前のモデルだ。今の小学生に見せたら、きっとカチンとくる答えが返ってくることだろう。何せ白黒画面のゲームの存在を、『戦後?』というくらいだから。
    だがしかし。いやしかし。入っているソフトがいやに大きい。アドバンスのソフトはきっちり挿入できるサイズのはずだ。だが今入っている物は半分以上はみ出ている。
    ……まさか。
    休み時間、見せてもらった。サファイアより色が少なく、グラフィックも粗い。ヒノアラシが戦っている。
    そのまさかだった。

    彼女は、ポケモン『銀』をプレイしていたのだった。

    「ちょっと、電気ランプ点滅してるんだけど」
    「ああ、何かメモリ切れちゃって、セーブできないんだよね」
    「え、じゃあこのまま?」
    「そうなるね」

    二次元目の日本史。隣の男子がしきりにその古いアドバンスと格闘している。どうやらジム戦らしい。セーブできないのは辛い。一度負けて、鍛えなおしたら勝てたという。ちなみに所要時間、四十分くらい。
    一時限の時間は五十分。何やってんだ、お前ら。
    そして三時限目前の十分休み。さっきの友人がブラックをプレイしている。ディアルガが戦っている。
    「おい紀成、このディアルガ、お前がくれたやつだよ」
    「……」

    すっかり忘れていた。ゴメン、ディアルガ。


    ――――
    オチなし。でも本当のこと。いいよね、ポケモン(遠い目)


      [No.2081] ※このお話はノンフィクションです 投稿者:風間深織   投稿日:2011/11/20(Sun) 15:22:08     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     このお話は、私が立体バチュルを作ったときのことをできる限りそのまんま書いたものです。

     またどうでもいいことですが、これを作ってから1ヶ月ほど、私のあだ名が「オブジェさん」になりました。「オコジョさん」みたいな発音で、個人的にとても気に入っています。
     みんなも立体ポケモン作ってみてね☆ミ


      [No.2080] バチュルを作ろうと思いました。 投稿者:風間深織   投稿日:2011/11/20(Sun) 13:32:55     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     バチュルを作ろうと思った。理由は特になかった。通学中の電車の中で、「そうだ、京都へ行こう」という広告を見て、不覚にも「そうだ、バチュルを作ろう」と思ってしまっただけなのだ。
     私はとりあえずケータイを取り出して、廃人予備軍である友人に「バチュルの画像ほしい」とだけ送信した。10分もたたないうちに画像が送られてきた。
     さて、ここまで書けば皆さんお分かりであろう。そのとき、私はマスキングテープたる物を持っていた。簡単に説明すると、和紙でできた、ちぎれるテープのことである。そのテープで(授業中に)等身大バチュルを作ろうと思ったのだ。バチュルを選んだ理由は特にないけど、バチュルなら大きさ的に等身大にできるということと、皆さんよく知っている彼女が「バチュルたんかわいいお\(^o^)/」と口々に言っていたので、なんとなくそう決めた。
     学校に着いて、私はマステバッグを開けた。幸い1限目の授業は古典だった。古典の先生は、私が所属している文学部の顧問だった。うん、大丈夫。話せばわかる。
     早速バッグに手を突っ込むと、私は目当ての色のマステを探し始めた。まず必要なのは黄色いマステ。次に深緑のマステ。忘れちゃいけないのは、そう、ティッシュ。ティッシュ超大事。テストには出ないけど。
     最初に私はティッシュをひたすら分解し始めた。皆さん知っていると思うが、ティッシュは2枚重なって1枚になっている。それを私は地道にはがしていった。私は一番後ろの席だった。そして右隣の席の子は私の友人だった。左隣の子はソフト部の子で、いつも寝ていた。しかも、前の席の子は背が高く、斜め左の席の子は画像を送ってくれた廃人予備軍だった。そのため、私は周りを気にすることなくティッシュを分解することができた。相当地味だった。
     次に、私は分解したティッシュをぐしゃぐしゃと丸めていった。手ごろなサイズ(?)になったら黄色いマステで固定する。空気が入っていると固定したときに縮んだりするので気をつけたほうがいい……と言っても、こんな馬鹿げたこと私しかしないから別にここらへんは詳しく書かなくてもいいかな?
     そうしているうちに、ややいびつな黄色い塊が出来上がった。ここで1限が終わった。ちなみに誤解されるのが嫌なので一応言っておくが、私はノートを取りながらバチュルを作っていた。我ながら器用なもんである。
     2限は世界史だった。うん、これも大丈夫。世界史の先生は授業中に下しか見ないことで有名だった。ここだけの話、ピクトチャットやサブウェイのマルチトレインを友人とやっていたこともあった。
     とりあえず、黄色い塊をバチュルっぽく変形させた。すかさず黄色いマステで形を固定。同時進行で手足を作成。手足の先端にはあらかじめ深緑のマステをつけておき、黄色いマステでうまく変形させていく。おぉ、なんとなくバチュルっぽいぞ。これはいける、勝つる!
     手足を体にくっつけたあたりで2限が終了。教科書をロッカーにしまいにきたクラスの子が私の机に群がった。「なにこれバチュル?」「さすがマステマスターwww」「かわいいw 超ほしいw」この反応も私の学校ならではだと思う。
     3限は数学だった。数学は真面目に受けた。というか、私は比較的真面目に授業は受けているんだ。ただちょっとバチュルが作りたくなっちゃう系女子なだけなんだ、うんそうだ。Σ(シグマ)大好きだもん。
     そんなこんなで4限。4限は英語だった。英語の先生はハゲ予備軍だった。ウツボットとミルホッグを足して2で割ったような顔をしている。この先生は授業がいつもいつの間にか自慢話になっていてつまらない。うん、バチュルを作ろう。
     バチュルも四肢がついてわりと本格的になってきた。次は顔だ。顔を作ろう。
     私はいつも使っている落書き帳から1枚紙をぴりっと切り取った。そこにマステを貼って、バチュルの顔の形になるようにハサミでちょきちょきと切る。うまい具合に切れ込みを入れて、バチュルの顔部分に合体。……おぉ、バチュルだ。でも、まだ完成したわけじゃない、まだ顔のパーツがないんだ。私はさっき使った黄色いマステを貼った紙でバチュルの目や口を作り始めた。体を作るよりも、これが大変だった。なにせバチュルは10センチ。そのバチュルの目や口なのだから、さらに細かい作業になる。指が痛い。でも、もうすぐ完成だ、よし、あとはこの目をつけるだけ……


     鐘が鳴った。4限が終わって昼休みになった。私の手の上にはマステで作られたバチュルがいた。私は廃人予備軍と共にみんなの知ってる彼女のもとへ走った。

     後日談。私が作ったバチュルは、オフ会に連れていかれたり、クラスでもわりと人気を誇っている。要するに、マステはとても便利である。


      [No.2079] 最終列車に揺られて 投稿者:紀成   投稿日:2011/11/20(Sun) 09:58:48     33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    車両は揺れていた。
    ミドリは目を覚ました。ぼやけていた世界が、だんだんと鮮明になっていく。自分の隣にも前にも人間はいない。ただ、腰につけた二つのボールから彼らが不安げに自分を見ているのが分かった。
    頬に何か違和感を感じて、思わず右手を頬に当てた。温い、ぬるっとした感覚が手を襲う。触れた手を見てみれば、濡れていた。
    「……」
    ああ、私は泣いていたのかと今更のように気付き、そして自嘲する。右手を両目に覆い、クックッと笑う。主人の只ならぬ雰囲気に、二つのボールがカタカタと揺れた。
    立ち上がり、窓の側に立った。ガラスの向こうに月明かりに照らされた海が見えた。数時間前までの記憶を穿り返す。学校が終わり、最寄り駅まで行ったところで何故かあの人のことを思い出した。本人とすれ違ったわけでも、よく似た背格好を見たわけでもない。ただ、パスをチャージしようとして財布を取り出したところで――
    自分でも何をしているのか分からないまま、ミドリは自宅とは反対方向の列車に乗っていた。大都会、ライモンとは反対のドが付く田舎へ向かう列車に。そこは役目を終えて眠る列車達が展示されていて、マニアの間では名が知られた場所になっている。
    一度も行ったことのない、場所。そこに行くために乗ったわけではない。誰もいない列車に乗ること自体が目的だったのかもしれない。
    そう。貴方と、私だけしかいない空間を、もう一度――


    「……完全に寝過ごした」
    カオリの冷たい声が車内に響いた。聞いている者は隣に座るミドリしかいない。彼女の声は透き通っていて、どんな喧騒の中でも絶対に聞き分けられる……ような気がする。
    「みたいですね」
    「何で二人とも起きなかったんだろうね」
    「さあ」
    後悔先に立たず。カオリは諦めたように立ち上がり、ドア付近へと向かった。遠くにネオンが見える。最寄り駅はとっくに過ぎてしまったようだ。
    「現在21時56分……この列車が向かう駅に折り返しなんてあるかな」
    「明日は休日ですから、何とかなるんじゃないですか?」
    「下手したら鉄道員の宿舎に一晩泊めてもらうことに」
    気まずい沈黙が二人の間に流れる。破ったのはミドリだった。
    「流石にそれはないんじゃ」
    「そう願いたいね」
    話が進まない。元々カオリは何を考えているのか分からない人で、趣味やその他諸々のことを全く表に出さなかった。おそらく一番親しい仲であろうミドリでさえも、全てを知っているわけではない。
    「ミドリ」
    「なんですか」
    「君は彼氏作らないの」
    「へっ」
    突拍子も無い質問にミドリの声が裏返った。そんなことお構いなしにカオリは続ける。
    「昨日うちのクラスの男子が世話になったそうだから」
    「あー……えーと」
    「その様子だと断ったみたいだね」
    カオリの言う通りだ。昨日の放課後、校舎裏に呼び出された。相手は二つほど離れた学年の男子。ミドリは中二なので、あちらは高一となる。
    案の定、彼は告白をしてきた。だがミドリは丁寧にそれを断った。
    「私、もっと年上の男の人がタイプなんですよね……」
    「高一なんてまだまだ子供、か」
    「あ、いえ、先輩は大人っぽいと」
    「いいんだよ。その通りなんだから」
    話をしながらも、カオリはミドリの方を一度も見ようとはしなかった。しきりに窓に映る自分の姿を撫でている。いや、自分の姿を撫でているのではない。もっと、もっと別の何かに焦がれているように思えた。


    ミドリは列車を降りた。寒い。ライモンシティより数度低いようだ。思わず体を抱く。
    空は曇っていて、星ひとつ見えない。あと数週間したらここらへんでは雪が降るかもしれない。
    駅構内のスピーカーから、割れた音声が聞こえてくる。
    『本日の上り電車は――』
    割れすぎていて何を言っているのかすら聞き取れなかった。鉄のベンチに座る。スカートは短いが、タイツを穿いているためそこまで冷たくは無い。
    「寒い……」
    手に息を吹きかければ、白い毛糸となって空へ上っていく。灯りが少なすぎる。ライモンが明るいだけなのか。
    パートナーであるジャローダが心配そうに見つめてくるが、今この状況で彼を出せば彼が凍ってしまうだろう。草タイプの彼は寒さに滅法弱い。
    「これからどうしよう」
    そう考えていると、どこからともなく靴の音が聞こえてきた。コツコツ、コツコツと。ブーツのヒールだろうか。だんだんこちらに近づいてくる。思わず立ち上がり身構えた。
    だがその主はミドリの視界に入る前に立ち止まってしまった。切れかけた電灯の下のため、顔が分からない。女性だろうか。長い髪が風に靡いている。
    茶色のトレンチコートに、黒いブーツ。表情は分からない。光の当たる場所にいる自分と、暗い影の中にいる相手。それが何故か特別な意味を持つように感じられた。
    「……」
    相手はしばらく黙っていたが、不意に背を向けた。コートの裾を翻し、そのまま闇の中へ消えていく。と同時に、反対側から別の靴音が聞こえてきた。今度の相手はミドリの視界に入って来た。黒と白のシルエット。見覚えのある顔。二人ともそっくりだ。
    「ミドリ様……こんな時間にこんな場所で何をなさっているのですか」
    「ノボリさん、クダリさん」
    ギアステーションに属するバトル施設、バトルサブウェイの車掌、ノボリとクダリ。よく挑戦しに行くため、二人とは顔見知りだ。
    「帰る電車間違えちゃって」
    「しかし、それならば途中で引き返すこともできたでしょうに」
    「……」
    空から何か降って来た。白くはない、透明。だがそれは少しずつ増えていき、容赦なくミドリの髪と手に降りかかる。
    霙だ。
    「何故でしょうね」
    「ともかくここは冷えます。もうじきライモン行きの最終列車が来ますから」
    「ええ」
    目の前に停まる列車は、まだ赤々と灯がついている。


    ファントムは駅を出た。彼女の周りだけ、霙が落ちてこない。冷たい風が髪を広げていく。
    もう一度光に照らされた駅を見つめると、彼女は再び歩き出した。
    光も届かない、暗い闇夜の中へ。


      [No.2078] 身代わり 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/11/19(Sat) 21:54:43     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     何度も味わったが、この空気だけは全くなじめない。私は彼のなんなのだ。そして彼らの何なのだ。
    「今回も彼は出ないつもりかしら」
     もう何度みたら慣れるのだろう。金髪の美しいストレートの彼女。それなのに私を見る目は完全に敵を威殺す目。綺麗な花にはトゲがあるというけれど、この人の場合は毒針だ。
    「いや、まあ、そうです……その、私が代わりに……」
     会議室から異様な空気が流れる。ため息があちこちから聞こえた。
    「仕方ありません。ホウエン代表は代理のミクリさんということで進めましょう」
     赤いスーパーサイヤ人みたいな人は冷静にいってくれて、私に資料が配られる。この人はカントーの代表、ワタルという人らしい。噂では人に向かって破壊光線を発射したとか、むしろその破壊光線は自分自身が出したとか、恐ろしい噂しか持ってない人だ。それを聞いた時に真っ先に出たのは……いや全て言う必要はあるまい。とにかく敵にまわしたくない。
    「全く。私は仕事しない人嫌いなのよね」
     ほら毒針が突き刺さった。シロナという、これでもシンオウの代表で、しかも子供たちに人気があるというのだから私は信じられない。
     しかし私に毒針を刺しても、全ての元凶には届かない。
     そう、全ての元凶は今ごろどっかの洞窟で趣味に走ってる。ここまで言えば誰だか解るだろう?なんでこんなのと友達になってしまったのか、今でも後悔しているのだこれでも。
     いつか見ていろ、ダイゴめ!


    「あはははは、またシロナちゃん怒ってた?」
     完全アウェーな会議室から開放されて、帰って私は彼に一部始終を少し脚色して話したら、この反応。人をおちょくるのもいい加減にして欲しいものだ。
    「笑い事じゃありません! 貴方が仕上げた資料を私に渡さないものだから、みなさんご立腹でしたよ!」
    「だって僕やってないもの。あんなのやるだけ無駄だって」
    「じゃあどうしてそれを会議に出て会議で発言しないのでしょうかねえ!!!!」
     私が怒っても無駄なのは知っている。小さい時から宿題を忘れてはのらりくらりと先生の怒りをかわし、面倒だからと文化祭は全てほっぽってもみんなから「でもツワブキ君だから仕方ないよね」で済まされてここまで来たダイゴが、反省するような人間でないことなんて知ってる。怒るだけのエネルギーがあったら、ミロカロスの毛繕いをしていた方がよっぽど建設的。
    「僕が言ったところで、あんな堅物には話通じないんだもの。話すだけ無駄でしょ」
    「もう私は行きませんからね! これが貴方に出された『宿題』です。次の会議は一ヶ月後の……」
    「え、またミクリ行ってきてよ。僕はその日、シンオウの別荘にいってくるから」
    「っ!! いい加減にしてくださいよ!! あの場に私が……」
    「あれえ? 忘れたのかなあ、君の追っかけを追い払うのにデボン専属の弁護士かしてあげたこととか」
    「!? そんなことまでタテに……」
    「さらに君のストーカーを追い払ってあげたこととか。ポロックを作るというから僕の土地を むりょうで 貸してあげたこととか」
     金持ちというのは嫌味なのが多いとはこういうことを言うのだ。人がピンチの時はにこにこしていて、後からそのことにつけこんで弱味を握り……もう友達の縁も切ってしまえ。別にそこで困るわけではあるまい!
    「そういうならば、私は貴方と金輪際、縁を切ります。私は貴方の召使いではありません。いくら貴方がホウエンで一番強い代表だとしても、限度があります!」
     私がこんなに怒ったのも初めて。けれど私は何かを間違えていた。のらりくらりと生きて来た人間が、他人の怒りなど理解できるわけがないことに。ダイゴはにこにこと笑って、何をそんなに怒ってるの?と聞いて来た。さすがに私もこの時はどっと疲れてしまった。
    「いいじゃない、各地のチャンピオンに顔を売っておくいいチャンスだ。こんないい商談のチャンスはないと思うよ」
    「そういうのは貴方の方がよっぽど適任かと思われますがね」
    「そんなことないよ。じゃ、後はよろしく!」
     天性の風来坊には、何を言っても無駄な様子。才能があるというのに、こんなに無駄に使っているのもダイゴくらいなものだ。むしろ才能に気付いていない。彼はよく私にお土産として宝石の原石を持ってくるのだが、それはダイゴのことを暗示しているかのよう。
     むしろ研磨の技術がない私に原石そのものを持ってくる神経は全く解らないのだけどね。


    「今回も彼は出ないつもりかしら」
     またシロナは威殺す目を私に向けた。その度に心臓が止まりそうだ。
    「私、仕事しない人嫌いなのよね。そもそもダイゴの顔も忘れそうだわ」
     私は忘れなそうだ。そして縁が切れない私にもため息が出る。
    「まあまあ。もうホウエン代表はミクリでいいんじゃないかな?」
    「いやそれはちょっと……」
    「あらいいわね。ダイゴと違ってミクリは働いてくれるし。それ賛成!」
     私の意志は全くの無視だった。

    ーーーーーーーーーーーー
    なんでチャンピオン交代したの?
    きっとこうだから。
    【好きにしてください】


      [No.2077] ピカチュウさん 投稿者:ヴェロキア   投稿日:2011/11/19(Sat) 18:30:23     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ピカチュウさんシリーズです。
    ピカチュウさんの紹介をします。

    【ポケモン】ピカチュウ
    【名前】ピカチュウさん
    【性別】♂
    【設定】明るい性格。友達にイーブイ、グレイシア、リーフィア、ブースター、シャワーズ、サンダース、エーフィー、ブラッキーがいる。洞窟に住んでいる。冬が嫌い。

    こんな感じですかね〜じゃ、更新頑張りま〜す。


      [No.2076] 遅れました汗 投稿者:リナ   投稿日:2011/11/19(Sat) 15:19:07     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     レスがものすごく遅れてしまい大変申し訳ございません!
     ここんとこかなりたてこんでおりました汗


     >鳩様

     鳩様のTP(ツッコミ・ポイント)を無駄遣いさせてしまって大変恐縮でございますw
     ハナっからつっこんでもらいたくて書いたようなものなので嬉しく思います(^^)

     スケベクチバシコノヤロ


     >あつあつおでんさん

     全く配役を考えないまま書きだしまして、なんとなくモテるポケモンって誰だろうと考えたらまずロコンが出てきました。そしてなぜかナナコっていうニックネームが二秒で出てきましたw 

     読んで頂いてありがとうございます!


     >マコさん

     読んで頂いて光栄です!

     「現実的&シュール」をコンセプトに(今考えたw)物語を積み上げております。
     今後のスケベ野郎の処遇にはワタクシも頭を悩ませております。
     よければ自由にお使い下さいw


     >銀波様

     テストの気晴らしになったでしょうか?w
     回答欄で分かんないところには「まあ、そういうときもある」と記載すれば、先生も納得するでしょう(おい

     勉強頑張って下さい☆
     お読みいただきありがとうございました。

     >ミオさん

     昔々詐欺株式会社 営業部 リナでございます。お疲れ様です。
     今回の目標は「皆さんの腹筋を筋肉痛にする」ということで、果たして達成できたかしら?w

     ラストのオチについてはちょっと中途半端になってしまった感があるので反省どころです汗
      
     >……となると、スケベクチバシさんは彼女とどんな接点を持っているんでしょう(

     恐らく、痴漢されたんでしょう。

     お読みいただきありがとうございました!

     【スケベクチバシの ちょさくけんを ほうきします▼】


      [No.2075] 修正しました 投稿者:No.017   投稿日:2011/11/18(Fri) 00:23:05     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    砂糖水さん
    きとかげさん

    ありがとうございました。
    指摘点修正しておきました。


      [No.2074] 飽食のけもののプロット 投稿者:乃響じゅん。   投稿日:2011/11/17(Thu) 00:12:04     94clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    B6のノートに手書きしたものです。


    (1ページ目)

    主人公:スージィorロコ(※結局ロコに決定)

    家に閉じこもり気味だが、たまたまお茶会へ。
    人食いが出る、というウワサを聞く。

    帰り道、林道に入ると、ウワサの人食いに出くわす。(3mのウインディ)
    用心棒倒され、馬車も倒れてしまったところを一人の男に救われる。

    ディドル・タルト(※スペースの都合上ドドがあだ名であるという設定はカット)
    占い師であり、妖しい屋。(※最終的にまじない師)
    金髪赤目の男、キュウを従えている。(※スペースの都合上キュウは人間に化けずじまい)
    名前を見抜かれたウインディをぎょっとさせ、逃げさせる。←仮
    ウインディをどう逃げさせるか(※結局逃がさなかった)
    キュウを戦わせる?

    帰ってみると、屋敷全体が異臭を放っていることに気付く。
    手紙を送る。窓から投げて。
    その夜、着替えて眠ろうかという頃、窓を叩く者が現れる。
    不審に思いながら開けると、ドドが部屋に入ってくる。
    驚くロコ。「なるほど、確かにひどい」
    キュウもそれに伴ってついてくる。


    (2ページ目)

    キュウの嗅覚を頼りに or 妖力を頼りに 屋敷内を探し回る二人。(※結局手法については明言せず)
    みな寝静まるころに行動。
    2階の隠し階段。1階通り越して地下へと続く。
    そこで見たのは、紫色のヘドロの塊。
    『ベトベトン』という人食いだという。

    ベトベトンとの問答。
    誰の差し金?
    何を食べているのか。人間のシミやほくろ、くすみなど。
    ロコ、動揺。キュウの炎で燃やそうとした時、クラウディア夫人到着。
    部屋に入られた時、知らせるシステム。(※没設定)
    ドド、名乗る。夫人、「私のものだ」と主張。
    どこでこの人食いを手に入れたか。
    →行商から買った。
    説得を試みる。どれだけの人に迷惑がかかっているのか。美しさを過剰に求めることに、意味はあるのか。
    ロコの一言で、クラウディア夫人は決断する。
    「この子を、燃やして下さい」


    (3ページ目 ある程度書き終わった後、内容に幅を持たせるための追加シーンを考える)

    ・「でも、どうして私、こんなにひどいにおいに気付かなかったのかしら」
    「こいつは、人間の老廃物を食うたびに副産物として少しずつこのヘンな匂いを吐き出すんだ。だからあんたは、少しずつ増えて行くにおいに気付かなかったんじゃないのかな」とキュウ。
    確かにロコはここ数ヶ月間、屋敷を出たことがなかった。

    ・クラウディア夫人
    「こんなところに勝手に入るなんて……さては泥棒ね? 人を呼ぶわよ」
    「お待ち下さい。私は街のまじない師。こちらのロコお嬢様の依頼により、異臭の原因を探りに参ったのです」
    「ロコが……?」
    夫人、動揺。
    「お母様、このひどい臭いに気付きませんか。このヘドロを、一体どこから手に入れたのです」
    「ヘドロだなんてとんでもないわ。だってこの子に浸かるだけで、私の美しさは保たれる。まさに魔法の薬よ。すばらしいものなのよ」
    「でも、あれは日に日にひどい臭いを出している。私は耐えきれず、吐いてしまった。耐えきれないの。このままでは、私のような人が増えてしまう」

    ・キュウをもう少し出番増やすべし(※増えた)
    ・ドドは何故お嬢様と最初から呼んでいたのか
    →服。ただし説明は省いてもよい。
    「うわさ」をひらがな漢字統一のこと。(※確か漢字に統一したような気がする)


      [No.2073] うぉぅ!? 投稿者:小春   投稿日:2011/11/17(Thu) 00:11:38     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    マサラ図書館の鈴木ミカルゲ氏はこう言った。
    「気に入った小説には拍手&感想を!一言でも作者さんは喜びますよ!」

    ……ミカルゲさん。喜ぶどころではありません。悶絶しております。

    たしかに、生えてきた真ん中のボコがもともとのボコであるという保証はどこにもなかったです、不覚。
    出かけている間に居場所をなくしたピンのダグトリオが三匹集まるとダグトリオ(集合体)になるわけですね、ハイ。つまり、こういうことか。


     足りなくはないか、とピンのダグトリオが言う。ならば、とピンのダグトリオが言う。よし、とピンのダグトリオが言う。

    「集まろう」
    「集まろう」
    「集まろう」

     そういうことになった。


      [No.2072] だってコウキは 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/11/16(Wed) 21:39:54     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ダイヤで始めたとき、コウキにしたんですが、やつの後ろ姿は不敵に微笑んでますよ(そう見えるだけ)
    それに、ダイパ出る前の新しいのが、ファイアリーフだったのもあって、どうみても、ファイアリーフの主人公に似てるし。どちらも。
    だから、レッド二号だと思っていたのは内緒。


    ヒコザルは、「オッス、オラ(当局にスナイプされました)」でも似合いますね。
    なんにせよ、標準語ではない、少しくだけた言い方が似合います。


      [No.2071] タイトルはログオフしました 投稿者:海星   投稿日:2011/11/16(Wed) 17:27:36     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     「あはは、ちょっとガーディ止めてよ、くすぐったいってば」
     楽しそうに弾む女の子の声に振り向くと、しゃがんでいる少女がガーディに舐められて笑っていた。
     止めてよ、という台詞とは裏腹な笑顔。
     まるでスポットライトが当たっているように眩しく感じる二人を見て、僕は心が震えるのを感じた。
     そしてベルトのボールにちらりと目を遣った。
     

     もうすぐ日が暮れようとしていた。
     緋色に染まる地平線を眺め、ベンチに腰掛ける。
     カタリとも鳴らないボールを手に取り、そっと放ってみる。
     しかしボールは開くことなく地面にぶつかった。
     揺れることすらない。
     「……なあ、出てこいよ」
     もう慣れた、重い沈黙とボールからの冷たい視線。


     あれは僕が悪かった。
     君の具合が悪くて体内エネルギーが漏れ出ている状態なのはわかっていたのに。
     つい、熱に唸った君に触れてしまったが為に。
     

     「……ピカチュウ」
     腕を差し伸べようとして、右腕が無いことを思い出す。
     寂しく残った左手が痙攣する。
     「俺が悪かったんだよ。感電しちまったのは俺のせいなんだ。右腕なんかどうでもいいよ」
     毎日呟いてきた言葉は、味気なく零れていく。
     「だから出て来いって……」


     君の身体はとても熱かった。
     ポケモンセンターの寝台で横たわる君に触れた次の瞬間から僕の意識は途絶えている。
     ただ右掌に君の熱を感じたのだけ覚えている。
     気がついたらポケモンセンターではなく人間の病院にいて、右腕が無かった。
     むしろ、それだけで済んだことに感謝しなければならない。

     
     静かなボールの赤を見つめていると、ふと昼間のガーディを思い出した。
     そして君を肩に乗せて笑っていた自分も。
     無意識に頬が濡れる。
     「出てきてよ……」
     空が青黒く夜に塗り替えられていく。
     「もう我慢できないんだ……君がいない生活に。もしかして君は僕が君を恐れているとか思ってるのかもしれない。自分が僕を傷つけてしまったことで僕に触れること自体が怖いのかもしれない。でも……」
     視線を左手からボールへ戻す。
     「僕は……僕は、ピカチュウがいないと、もうどうにもならねえんだよ」
     立ち上がる。
     「何で僕は生き残ったんだ。それは君と一緒にこれからも冒険を続ける為だろ? 肝心の君がへそ曲げてどうするんだよ。右腕の責任とれよ」
     ボールが震えた気がした。
     膝の力が抜ける。

     「寂しいよ……」

     涙がボールに落ちた。
     弾けたそれはボールを伝って流れていく。
     確かに、ボールは震えていた。

     「ピカチュウ」

     その時、突然ボールのボタンが光って開いたかと思うと、黄色い物体が飛び出してきた。
     それが何なのか、僕の目では確認できない速さ。
     だけど僕はわかっていた。
     泣きながらしがみ付いてくるピカチュウを一本の腕でしっかりと抱きしめながら、僕も泣いた。
     久し振りに感じる髪の毛が浮くような静電気が懐かしかった。


    ―――――――――――

     感電して右腕だけで済むというのは素人の完全想像ですのですいませんでした触れないでください。
     
     【何でもしてください】


      [No.2070] 【書いてみた】足りない日 投稿者:レイニー   《URL》   投稿日:2011/11/16(Wed) 12:03:52     99clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ダグトリオA「なぁ、今朝からBの姿が見あたらないけど、どこ行ったか知らないか?」
    ダグトリオC「さぁな。どっか行っちまったんだろ。あいつ気まぐれなところあるしな」
    ダグトリオA「んなこと言ったって、ご主人困ってるよ。あんなにオロオロしちゃって……」
    ダグトリオC「まあまあ、そう言わず。ダグトリオにはピンになりたい時ってのがあるもんだ。お前にはまだわかんないだろうけど」
    ダグトリオA「いやいやいや、どうしてお前に先輩風吹かされないといけないんだよ! お前と俺は進化したときから一緒だろ!」
    ダグトリオC「これだからお前は……。いいか、お前がディグダからダグトリオに進化したのはな、ちょうどピンのダグトリオやってた俺とBがたまたまお前んとこに来たからっていう、ただそれだけの話なんだ」
    ダグトリオA「……ええっ!? それどういうことだよ?」
    ダグトリオC「つまり、お前がディグダだった頃、俺はもう既にピンのダグトリオだったんだよ」
    ダグトリオA「……ちょっと待って。ピンのダグトリオって、それはつまりディグダじゃないのか?」
    ダグトリオC「……これだからお前はお子ちゃまなんだよ。いいか、ピンのダグトリオが何たるかがわかってこそ、俺たちダグトリオは一人前になれるんだ。それまでは三匹で一人前のただのダグトリオさ」
    ダグトリオA「……ええっと。つまりCは俺らと出会う前に、別の奴らとダグトリオやってたってこと?」
    ダグトリオC「いいや、実際にダグトリオになったのはお前らとが初めてだ」
    ダグトリオA「……へ? じゃあピンのダグトリオってのは? 結局何なの?」
    ダグトリオC「まあ焦るなって。お前にもそのうちわかる時がくるようになるさ」
    ダグトリオA「……はぁ。(別に焦ってるわけじゃないんだけどなぁ)」
    ダグトリオC「いいか、ディグダとピンのダグトリオの違いはソウルなんだ! 生き様なんだ!」

    (この後、ダグトリオCのディグダとピンのダグトリオの違いの話、数時間続く)

    ダグトリオC「……おっ。そうこう言ってたらあいつ帰ってきたか。おかえりー」
    ダグトリオB(?)「ただいまー」
    ダグトリオA「ああ、帰ってきてくれて助かったよ。これでやっとCの話が終わ……ってお前、ダグトリオBじゃないな! 末尾に(?)ついてるし! 何者だ!」
    ダグトリオD「ご、ごめんなさい……。ちょうどピンのダグトリオやってるのに飽きてきた頃で、どうしたものかとさまよってたら、空きがあるの見つけたのでつい……」
    ダグトリオC「まあまあ。Aもそうカッカするなよ。Bだっていつ帰ってくるかわかんないし、ダグコンビでいるのもきついだろ、精神的に」
    ダグトリオA「……まあ確かにどうも真ん中がいないと落ちつかないよな」
    ダグトリオC「いいか、A。さっきも言ったように、ダグトリオがピンのダグトリオになるっていうのはよくある話だ。しかし、残されたダグコンビはどうだ。理論上ピンのダグトリオとダグコンビは同数になる。しかしお前、ダグコンビ見たことあるか?」
    ダグトリオA「……ううん。多分ない気がする」
    ダグトリオC「そうだろ。ダグトリオがダグコンビでいることは滅多にない。それはダグコンビという状態は、俺たちダグトリオにとってものすごく落ち着かない状態だからだ。だからダグコンビは仲間を捜し、一刻も早く落ち着きたくなる。そういうものなんだ」
    ダグトリオA「そ、そうなのか……?」
    ダグトリオC「そうだ、そしてこの時の心の持ち方の違いがディグダとピンのダグトリオの大きな差となってくるのだよ!」
    ダグトリオA「はぁ……(話また戻ったよ……)」
    ダグトリオC「ま、とにかく、この新入り君にとっても、俺たちにとっても、これは悪い話じゃないってことだ。そしてよくある話でもあるんだ」
    ダグトリオD「よろしくお願いしまーす」
    ダグトリオA「……なんか上手く丸め込まれた気もするけど、まあいいか。よろしく」


    ダグトリオB「ただいまー。フワライドツヨシライブ最高だったぜ! ……ってええっ! ちょっとそいつ誰だよ!」
    ダグトリオA&D&C「お前の席ねーから」
    ダグトリオB「な、なんだってー!!」


    --

    どうもこんにちは。

    > はぐれディグダ もとい ピンのダグトリオが何処で何をしてたのかとか、
    > もしかしたら別の個体が何食わぬ顔で混じってんじゃないのかとか、
    > 色々想像してたら収拾がつかなくなりました。

    小春さんの小説だけでも腹筋崩壊させていただいたのに、イサリさんの上記のコメント見ていたら収拾がつかなくなった深夜。その結果がこれだよ!(感謝)

    おでんさん勝手にネタ使わせていただいてすみません。(事後報告)

    ……そういえば、台本形式で本格的に書いたのって初めてかもしれない。


    【どうしてもいいのよ】
    【むしろごめんなさい】


      [No.2069] なんとシュールな 投稿者:イサリ   投稿日:2011/11/15(Tue) 22:40:23     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    小春さん、こんにちはですー。

    二匹だけで土を耕しているダグコンビを想像したら笑いが止まらなくなくなりました!w
    そうか、ダグトリオとは植物の一種だったのか(違

    はぐれディグダ もとい ピンのダグトリオが何処で何をしてたのかとか、
    もしかしたら別の個体が何食わぬ顔で混じってんじゃないのかとか、
    色々想像してたら収拾がつかなくなりました。

    ダグトリオには ふしぎが いっぱい!


      [No.2068] コウキ君まじ鬼畜 投稿者:No.017   投稿日:2011/11/15(Tue) 18:32:21     20clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    コウキ君まじ鬼畜wwww
    私の中のさわやかな主人公像が破壊されたよ。

    ヒコザルってあっしが似合うなぁ。
    ちょっとおじさんぽいけど。


      [No.2067] 足りなかった。 投稿者:No.017   投稿日:2011/11/15(Tue) 18:28:25     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    クソワロタwwwww


    トリオなポケモン
    レアコイルといえば本棚にこんな小説がありましたよ。
    http://masapoke.sakura.ne.jp/novels/romi/onlyone.txt


      [No.2066] 責任はどこにある 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/11/14(Mon) 23:20:05     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「おい何やってんだ。俺が火の粉つったら火の粉出せばいいんだよ。ひっかくなんて技命令すらしてねえぞ」
     ハクタイの森にいた時のことでした。倒れたケムッソの前にいるヒコザルのあっし。そして振り向いたあっしの前に仁王立ちしているのは……あっしのトレーナーなんす。シンジ湖で出会ってというもの、ずっとこの調子で……。
     これでもあっしの攻撃力は弱く無いんでさ!それなのに、このコウキっちゅートレーナーは、あっしの本領を無視して特殊攻撃ばかり命令するんでさあ。いつも戦わないであっしの後ろで命令してるだけのいい御身分だというのに、物凄い偉そうなのも特徴で……。
     ああ、一緒にもらわれたポッチャマのマゼランや、ナエトルのモエギがうらやましい!! マゼランなんてジュンっていう自分のトレーナーを従わせてるし、モエギはヒカリっていう、物凄く優しい女の子に貰われてるし!! 世の中不公平というのはこういうことを言うんすね、本当に。
    「聞いてんのかエンゴ。お前のトレーナーは俺なんだ。俺の言うことを聞け」
     なんでこんなポケモンに偉そうに出来るのかあっしはすっごく不思議です! 
    「だって、コウキはそうやって……」
    「んだと? お前が命令を無視してひっかいた相手はケムッソだったよな。ケムッソといったら、毒針を持つ厄介な虫だ。お前がそれに刺されて毒を食らって、誰が治療すんだ? 言ってみろ」
    「あ、あっしが……」
    「じゃあお前は毒になっても俺に頼らないんだな? 死にそうになってもポケモンセンターに連れていかなくていいんだな? 腹が減っても無視しておいていいんだな!?」
     まくしたてられて、あっしはぐぅの音も出ませんでした。
     
     いつもこんな時、ジュンはどこかにいませんが、ヒカリはコウキをなだめる役ですんで。
    「コウキ君、ポケモンと人は同じですよ。あんまり責めたらかわいそうです」
    「ヒカリは甘いんだよ。こいつらと同じなわけがない。戦いの場を全体としてとらえることが出来ない割には、自分勝手に戦いたがる。ポケモン様じゃねえんだ、エンゴはこれくらいしないと解らないんだよ」
     余計に反撃されてしまいました。あっしのことでヒカリがあんなに責められるのは本当に申し訳なく思ってますだ……。モエギがいつも頭の双葉を振ってるのも本当に申し訳なく……。
     ああ、コウキの視線が怖いです……。あっしにはオレンの実一個なのに、仲良しな相棒とも言えるクロバットには3個です。はぁ……いや、彼は強いんです。それは認めます。ですが、納得いきません。
    「なんで、今日主に戦ったあっしがオレンの実一個なんですか!?」
    「お前の体格がオレンの実一個分のエネルギーだから。文句あるのか?」
    「ぐぐぐぐ……コウキはいつもそうやって、あっしのことバカにして! 今日こそ今までの恨み、思い知れェェっ!!!!」
     あっしは飛び掛かりました。この素早い動きについてこれたものなんかいません! マゼランだって、モエギだってあっしの素早さにはついてこれなかった! お前のその顔、ひっかいて泣かしてやる!
     
     ヒコザルの ひっかく!
     しかし そのまえに コウキの ばくれつパンチ!
     リーチが ながい ぶん ヒコザルの こうげきは はずれた!

     あっしは顔に今までにない衝撃を受けて吹っ飛びました。それは見事なまでにボールのように吹き飛んだんです。近くの木に当たって、あっしの体は地面に落ちました。頭から落ちて、目から星が出ました。
    「俺に逆らうのはいいが、てめえの頭じゃまず勝てないことを知れ」
    「う……ううっ……コウキなんか、コウキなんか大嫌いだあ!!!」
     あっしは頭がふらつくのも構わずにハクタイの森の奥に走りました。
    「コウキ君!? エンゴが……」
    「かまわねえ。腹が減ったら戻ってくるだろ」
     追いかける気配すらありませんでした。むしろ耳がいいために遠くのコウキとヒカリの会話が聞こえてしまうのがうっとうしかったです。
     
     ふらつくからあんまり走れなかったと思います。けど、もうコウキとヒカリの声も聞こえませんでした。あっしは初めて自由というものになったのだと思ったんです。頭はふらふらしてましたが、一人になって見る景色は物凄い広く見えました。心細いとかそんなこと思ったことありません。むしろあのポケモンを大事にも思ってないコウキから自由になったんです。あっしは嬉しくて仕方ありませんでした。
     食べ損ねたオレンの実が成ってます。他にも見た事ない木の実がいっぱいです。
     葉っぱの裏にさっきと同じケムッソがいるっすなあ。毒針なんて……うお、こっちを威嚇してきたやんす。危ない危ない。
     自由を満喫するっていうのは悪くないっすなあ。マゼラン、モエギ、悪いけれどあっしは一足早く消えるっす!!

    「こんなところにヒコザル? 珍しいな、ワレワレが所持してこそ相応しい」
     首根っこを持ち上げられてあっしは暴れました。そういえばコトブキシティで見た宇宙人のような集団に似てます。ヤバい、ヤバいっす。頭がふらふらして思うように動けません。あっという間に、あっしは身動きが取れない状態にされました。


     檻の中に乱暴に投げ入れられたかと思うと、また頭を打ちました。石頭なのが幸いして、たんこぶ程度ですみましたが、痛いのは事実です。しばらくそこでうずくまってると、他の何かの息づかいが聞こえました。音の高さからいって、あっしを飲み込むような猛獣では無さそうですが、目をこらしてみてみました。
    「おさるさんだれ?」
     かわいらしいブイゼルがそこにいました。そして他にもたくさんのポケモン。
    「怖いよ、ここどこ? どうなっちゃうの?」
    「それはあっしも聞きたいですが……」
     鉄の格子はあっしの力でもびくともしませんでした。何度もたたきましたが、あっしの手が痛くなる一方で。
     他のポケモンたちが不安で泣き出しました。元の主人のところに帰りたいって。
    「あっしは……」
     あの悪魔のようなコウキを思い出しました。決して帰りたいなんて思いません! 思いませんっ!!!!
    「コウキ……」
     今さら気付きました。コウキはこんな酷いことしません。後ろで指示を出して、言うことを聞かないと怒るけれど、ご飯をくれなかったことはないし、傷薬だってちゃんとくれました。
     あっしはなんてことをしてしまったんでしょう。ポケモンと人は同じだと教えられ、それと少しでも違うコウキが受け入れられなかった。あっしの判断で戦ったら何にも勝てなかった。それよりもこんなところに閉じ込められて、いつ出してくれるとも解らない檻であっしはコウキに申し訳なくなりました。


    「こんな3日もいなくなるなんて」
     あいつまじ許すまじ。俺にこんな手間をかけさせやがって。ハクタイの森から姿を消してから3日。
    「コウキ」
     ヒカリの足元にいるモエギが話しかけてくる。
    「にらまないでよ。エンゴのやんちゃぷりからして、あの洋館も探すべきだと思う」
     モエギの言うことも一理ある。ハクタイの森に隠れるかのようにある洋館は気になってはいたが。先に他のポケモンたちを休ませたかったのでハクタイシティに来てしまったのは間違いだったか。どんなに考えても、行きそうなところは思いつかない。
     羽音が聞こえる。ほぼふつうの人間には聞こえないクロバットの羽音。アキが帰ってきた。偵察に行かせたはいいが、何もつかめなかったと言う。ただ、面白い話は聞かせてくれた。
    「ギンガ団がいる」
    「どんな?」
    「解らない。けど、ハクタイシティで謎のポケモン誘拐事件が起きてるみたい。エンゴも巻き込まれたのかもしれない」
    「そうか。ヒカリ。ジュンを呼ぶから、終わるまで一緒にいてくれ」
     というかあいつもあいつで今どこにいるんだか解らん。なんで俺の周りは所在不明ばっかりなんだ全く。
    「私も一緒に行きます!」
    「ダメだ。エンゴを取り返しにいって、ヒカリをとられたら意味がない。ジュンは素早さの威力バカだから逃げるには申し分ない。行くぞアキ!」
     まだ寒いのに走らせやがって。本当にあいつ戻ってきたらタダじゃおかねえ。


    「おい、出ろ」
     宇宙人みたいな人間たちがあっしたちの檻をあけました。出れるのかと思って近寄るポケモンはいません。みんな怖がって檻の奥へといってしまいました。
    「ポケモンごときが。ワレワレに逆らえると思うのか」
     人間が檻を蹴りました。大きな音が響いて、ますます怖がって出れなくなりました。
    「思い知るがいい」
     あっしをつかみました。そして思いっきり床に叩き付けたんです。あっしは身軽なんでなんとか足から着地しましたが、他のポケモンだったら頭から思いっきりいってます。容赦ない暴力が、本当にポケモンを従えようなんて思う人間のすることじゃありません!
    「そのヒコザルは俺のだ返せ」
     妖しい人間の後ろに、仁王立ちしているのは期待は裏切らなかったです。
    「誰だお前は……お前がコウキか!」
    「残念だな。俺がコウキだよ! そんでそのヒコザルが俺のだったことが運のつきだ!」
     コウキの爆裂パンチが人間の顎をとらえました。他人事ですが、痛そうです……
    「コウキぃ!!」
     あっしは嬉しくて思わずコウキに飛び込みました。そして今までのことを詫びようとしてコウキと目をあわせた瞬間。
    「遅い」
     頭にいわくだきを食らいました。大きな拳があっしに突き刺さりました。爆裂パンチより痛くてあっしはその場でうずくまりました。
    「手間かけさせやがって。だから人の言うことは聞けっつっただろ!」
     コウキの怒鳴り声が頭にぐわんぐわん響きました。もうその通りすぎて、あっしは言い返すこともできません。
    「汚名返上の場面をやる。エンゴ、お前の火でこいつらを片付けるぞ」
     コウキに言われて振り返ったのは、変な人間がたくさん、しかもみなコウキより凶暴そうです。あっしは頷くと、コウキの指令と共に駆け出しました。



    ーーーーーーーーー
    シンオウなう
    こうだったらいいな、第2弾。
    チャットにて鬼畜鬼畜いわれたコウキはこんな感じであろう。

    あとこれは余談ですが、仕事(ある目標を達成するためにやること)をする時、リーダーと下っ端に別れますが、どちらも大変です。
    でもどちらかというと下っ端のが楽。
    なぜなら、全責任をリーダーが負うので、下っ端はリーダーの指示に従えばいいのです。下っ端も考えないといけませんが、リーダーの比ではありません。
    エンゴの言う通り、後ろから指示だせばいいと思って、と思っていた下っ端時代。めっちゃ甘えてました。そんな意味もこめて
    【好きにしてください】


      [No.2065] 足らない 投稿者:小春   投稿日:2011/11/14(Mon) 21:37:08     107clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     友人が鍬をもって土を耕していた。フリルたっぷりのエプロンがやたらに似合う。

    「なにやってんの?」
    「土を耕してる」
    「見りゃわかるよ。なんで土耕してるのかって訊いてるんだ」
    「よくぞ訊いてくれた。まずは、こいつを見てくれ」

     タブンネ色のエプロンで手を軽く拭った友人は、ポケットからボールを取り出した。ボールを土に向かって放り投げる。収容されているのは、小豆色の身体がぼこボコぼこと三つ並び、つぶらな黒ごまの目が三対のもぐら。幼稚園児でもかんたんに描けるポケモンナンバーワン、ないしはナンバーツー。
     下半身が永遠の謎、ダグトリオである。
     
     しかしながら、いま俺の目の前にいるこいつをトリオと呼んで良いのか、はなはだ疑問である。

    「なんか足りなくね? 明らかに足らないよな」
    「そうなんだよ。朝起きたら、足りなくなってたんだ。おどろきだよな」
    「もっと驚けよ!」
    「驚いてるって」

     ほけほけ笑う友人は放っておいて、ダグトリオを見る。足りない。なにかが決定的に足りない。いまの状態を強いて言うなら、ダグコンビ。ぼこボコぼこのうち、真ん中のボコが欠けている。

    「ポケセン行けよ、ポケセン」
    「行った。そしたら、畑をよく耕して肥料撒いてダグトリオを一晩放しておけば元通りに生えてくるて言われた」
    「作物か? こいつは作物かなにかなのか?」
    「いや、この時期になると多いらしくてサ。っと、おまえも耕せよ〜」

     ダグト……いや、ダグコンビがダグダグと上下して土を掘り起こしていく。不在の真ん中部分だけが、耕されずに残っている。

    「ま、明日の朝になっても元に戻ってなかったら、もう一回ポケセン行ってみるよ」
    「ほんとに大丈夫なのか、コレ」
    「大丈夫だって。隣のおっさんのギギギアルなんて、真ん中の歯車どっか行っちゃったらしいからさぁ。元に戻ってたら、連絡するから見に来てよ」

     翌朝、友人のダグコンビはしっかりダグトリオになっていました。
     朝一番で俺ん家を訪れた友人はにっかりと笑って、トリオに戻ったもぐらを見せる。

    「どうだ、戻っただろ」
    「生えたのか?」
    「生えたよ。裏のおっちゃんが拝んでいった」
    「……ルジュランス行こうぜ、おっちゃん」

    ☆★☆★☆★

    ふたつ同じようなのがくっついてるだけのポケモンって、きっとこういう事があると思う。
    ダグトリオとかギアルギギアルギギギアルとかレアコイルとか。

    一瞬、ドードリオで書こうと思ったのは内緒。


      [No.2064] 待ち人来たらず 投稿者:門森 輝   投稿日:2011/11/14(Mon) 18:26:33     80clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     僕はずっとここにいる。

     僕等はあの日まで一緒だった。
     あの日、博士の下に2人の少年が来た。博士の孫と、その友人。
     彼等は博士から何かを頼まれていた様だった。そして彼等は僕等3匹を見比べると、1匹ずつ選び連れて行った。
     僕は選ばれなかった。博士の孫にも、その友人にも。
     その後、彼等は選んだポケモンと共に旅に出たらしい。残された僕は、旅に出た仲間達を羨ましく思っていた。それは今でも変わらない。

     それからしばらくが経った日の事、博士に彼等から連絡が来た。どうやら共に旅立ったポケモンが進化したらしかった。
     僕は進化した仲間達を想像し、進化した自分も想像した。いつかあんな風になれたら気持ちいいだろうなぁ。
     未だに成長していない僕は、進化した仲間達を羨ましく思っていた。それは今でも変わらない。

     さらにしばらくが経った日の事、博士に彼等から連絡が来た。どうやらこれからセキエイ高原へと挑戦するらしかった。
     僕はチャンピオンと戦うかつての仲間達を想像し、その舞台に立つ自分も想像した。いつかあの舞台に立てたなら――それ以上は想像出来なかった。
     未だにスタート地点にいる僕は、ゴール間近のかつての仲間達を羨ましく思っていた。それは今でも変わらない。
     
     そして、今。彼等はチャンピオンを倒し、彼等同士で戦い、旅立ちの場所へ帰って来た。
     僕は帰って来たかつての仲間達を眺めた。その逞しい姿に、僕はただ見とれていた。
     あの日と変わらない僕にとって、かつての仲間達は憧れとなっていた。それはこれからも変わらないだろう。
     それが変わるとしたら、それはきっと――

     僕はずっとここにいる。
     僕のトレーナーが現れるまで。

    ―――――――――――――――――――――――――――

     人生5作品目にしてついに500文字超えたぜヒャッホォォォォォォォゥ! 次は1000文字目指そう。
     ポケスコのバナーがアーカイブにリンクされていていつもの文字数カウンタが使えなかったので、検索して出てきたやつを使ったら物によって数字が違うというね。
     選ばれなかった初代御三家視点で書いてみました。ご自由に当てはめて想像して頂けたら幸いです。
     書いてて可哀相になってきたので誰か迎えに来てあげて欲しいのよ。永遠に待ち続けるのもそれはそれで好きですが。
     進化した姿を想像出来たりゴール間近だと分かるのは博士の会話が聞こえているから、というご都合主義にしておきます。
     何かしっくり来ないところがあるので改良案を思いつき次第修正するかもしれません。後書き含め。たぶんしないでしょうけど。

    【描いてもいいのよ】
    【書いてもいいのよ】
    【ご自由にどうぞなのよ】
    【迎えに来てあげて欲しいのよ】


      [No.2063] リハビリってみるだけ 投稿者:音色   投稿日:2011/11/13(Sun) 23:16:30     66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     テレポート 6/20

     …やっふぅ。
     ヤバいっすよ、何がヤバいって考えてみてくださいよ。俺ってば今まで人様のお話しに土足で踏み込んで、いや転がってきましたけどさ。
     マイワールドに一回もぶち当らないってどういうことですか。作者だから門前払い。うん、なんか納得できるようでできない話じゃないですかそれ?
     噂じゃイーブイに変化したあと洗濯機に揉まれるという荒療治で自分の小説世界に飛べたという作家さんもいるそうじゃないか!・・・冷蔵庫とどっちがマシか分かんないけど。
     そんなわけで一回分テレポートしました。森です。いや、どこのですか。
     森が舞台・・うん、幽霊がダメなガールは出てきたけどなんか違うな。もっとこう、爽やかな感じで。
     うん、お猿とかがいそうな・・ヤグルマの森とか。ヤグルマの森と言えばお猿だ。三色お猿と言えば。
    『なんだこれ』
    『おっきなモンスターボール?』
    『・・・いや、さすがにそれはないでしょ』
     りょくちゃ、アセロラ、サイダー・・・って、俺ワールド来たぁぁぁ!よっしゃぁぁぁ!
     ・・・うん、俺ワールドにきたは良いけど、どうしようか。
     だってこのお猿たち、お馬鹿だもん。そういう設定だもん。難しいことを考えられない子たちなんだよ!お猿だから!
     このままコクトウの所に興味半分で持って帰ってくれないかな―と念を送ってみる。いや、迂闊に喋ったら厄介なことになりそうだし。

     アセロラの もやしつくす!
     ビリリダマの もっていた ヒメリのみは もえてしまった! ▼

     ・・・あるぇ――!?なんで俺いきなりアセロラに燃やされてんの!?頼みの綱のヒメリの実も無くなっちゃったよ!?

    『無反応ですねぇ』
    『やっぱただのでっかいボールか?』
    『もう一回やる?』

     もしかしてポケモンかどうか確かめるために火を噴きかけたのかこいつら・・。
     いや、お馬鹿たちのやることだ。ちょっと黒こげに近いけど納得。どうしよう、地味に痛い、辛い。
     とりあえず、もっかい燃やされるのは勘弁!テレポ!

     つづけーしぃ
    ――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  ついばむや虫食いじゃ人様のネタになっちゃうので燃やした。

    【上手く続かないののが悲しい】
    【べ、別に拍手はくれなくったっていいんだからね!】


      [No.2062] 数えられたぜテレポのカオス 投稿者:音色   投稿日:2011/11/13(Sun) 22:42:06     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    へろーマコさん、わざわざカウントありがとうございます!

    > テレポートの回数は7回です!
    > ですから、最終カウントのあった「そこは金色の大地」での回数が13だったので、後6回です。
    > 私のヒロイン(マイコちゃん)がヒメリの実をあげているはずなので、テレポートに使うか、他の技に使うか、他の話に出てくるポケモンについばむとか虫食いされるか。
    > 其処ら辺を楽しみにしてます。

     よし、ついばまれて虫喰われましょう。
     だってビリリダマのどの辺に口があるのか分からないもの!

    【そろそろ終わらせたいんだけどどうしよう】


      [No.2061] 地下鉄総支配人、火喰と会う 投稿者:音色   投稿日:2011/11/13(Sun) 22:12:07     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「本日はバトルサブウェイにご乗車頂き誠にありがとうございます」
     シングルトレイン:21戦目。揺れる車内で黒い車掌は通る声で挑戦者を見る。

    「私はこちらでサブウェイマスターを務めさせていただいております、ノボリと申します」
     老若男女、腕に自信がある者全てが訪れる地下鉄ではどのような挑戦者が来ても不思議はない。それでも、地下鉄支配人は今宵の客人の素性を読みとることができなかった。
     背格好はおそらく自分と変わらないであろう…、しかし、顔が見えない。目深に被った帽子のおかげで年齢が掴めずにいる。
     黒に近いロングコート、そしてシルクハットに似た浅い帽子、紳士を連想させる格好でありながら、青年とも老人とも付かぬ空気を身にまとっている。
     …心なしか、車内の温度が上がったような気がしたものの、「カクライです」と相手も静かに名のり会釈をした。
    「さて、次の目的地でございますが…貴方様の実力にて決めさせていただきたく思います」…呑まれるな…相手の静かな威圧にノボリは僅かに惑った。
    「何故です?」少し面白そうにカクライは尋ねる。「列車はレールの上しか走りませんよ?」
     さも当たり前のように、それでいてその答えが本心から出したものではないという冗談であるという空気がある。
    「いいえ、確かにこの列車は線路のある場所しか走れないでしょう。しかし、私と貴方様のバトルが何処に向かうのであるかは貴方様と私が勝負しなければ行き先は分かりますまい」
    「勝利、もしくは敗北」ふっ、と息をついて彼はすっと指を上に持っていった。「そのどちらに向かうのか…向かってみないと分かりません」
    「成程、」カクライはすっと帽子を被り直した。「私は線路の上だけを走るのは面白くないと思いますよ」必ずしも、それが正しい道とは限らないですから。
    「勝利か、敗北か。はたまたそれ以外の道にたどり着くのか…」客人は自然な動作でポケットに手を入れた。

    「それでは、出発進行!」黒い車掌が指差し確認をすると同時に、両者は投げ合った。

     車両内は広くはない。よって大型のポケモンが必ずしも有利とは限らない。しかし、ノボリは己の使うポケモンには絶対の信頼を置いていた。
    「よろしくお願いします、ダストダス」
     大してカクライが繰り出したのは。
    「クイタラン」目の前のゴミの塊を睨みつけている火吹きアリクイを見て、ノボリは少々面食らっていた。

     …それは、何故だろうか。実は彼もその時は“何故”そう感じてしまったのかは分からなかった。ただ、何かを感じた。

    (疲れているのでしょうか…?)

     まだ相手はなにも行動していない。にも拘らず相手のポケモンに何かを感じるなど…。
     カクライが指示を出した。
     従いクイタランが動く。両手の爪をとぎ始めているのを見、ノボリも我に返って彼に指示を出した。
     主人の声を聞き遂げて迫ってくるアリクイに『どくどく』を連射するダストダスに対して、カクライはまるで楽しむかのように眺めている。“指示など出していない”。あくまでクイタラン本人の判断に任せているらしい。
     吊り革を器用に渡り全ての毒をかわしきった直後にノボリは考える。動き回られれば狭い車両内では明らかにダストダスが不利に思われる。しかし動きを止める術がないわけではない。
     『サイコキネシス』を命じアリクイの足を止める、と同時にもう一度相手を猛毒状態にすべく指示を出す。
     命中するはずのその技をアリクイは突き破った。念動力で捕えたと確信ばかりしていたがそれを打ち消すタイプの技を使用させたカクライの指示に彼は驚きを隠せない。
     『ふいうち』は相手が攻撃技を仕掛けてくる前に攻撃する技である。しかし、それは“既に”発動してしまった技には何の意味もない。技は不発に終わるだろう。
     もちろん、『どくどく』は攻撃技ではないため同様に『ふいうち』は不発に終わる。
     にも拘わらず、カクライはそれを指示した。そしてその効果にノボリは何が起きたのかが瞬時には理解できなかった。
     念動力は確かに悪タイプの技に弾かれる性質がある。しかしそれはあくまで“悪タイプ”のポケモンに通用しないというだけで、悪タイプの技が使えるというだけでは念動力は防げない。
     彼のクイタランは、ノボリのダストダスが『サイコキネシス』を発動するとほぼ同時に既に『ふいうち』の姿勢に入り、そしてノボリが『どくどく』を指示することを見透かしていたかのように、それを発動。
     すなわち、念動力を悪タイプの技でほぼ無理やりの形で中和し、先制技のスピードを活かして猛毒効果のヘドロをかわす、という芸当をしてみせた。
     そのまま突っ込んでくるアリクイにベノムショックで対応するよう指示。本来ならば毒状態にしておきたかったところであるが、そんなことを言っている暇はなかった。
     紫の衝撃がそのままクイタランを襲う、かのように見えた。『ねっぷう』、とカクライが静かに声を出した。
     車内を吹き抜ける風は強い日差しのそれを上回る。自分の攻撃が流されると思っていなかったらしいダストダスは、ちらりとノボリの方に視線をやった。
     もう一度『サイコキネシス』の指示を出し、今度こそ動きを止めたと思いきや、アリクイはまたも目を光らせる。
     同じ手がくるだろうと予測はしていた。しかしこちらも同じことをするつもりなどなかった。案の定、動きは先ほどと違うものの彼はまたもダストダスの念動力を壊した。
     爪を研ぐ暇など与えまい、ノボリは最後の技の指示を出す。しかし、それは偶然か、カクライの指示と同時だった。

    「「きあいだま」」

     二匹はほとんど同時に構え、そして同時に打ち出したかのように見えた。閃光が走る。思わず目を細め、ノボリは何かを見逃したような気がした。
     どしゃあ、と崩れる音がした。
     目をやればそこに彼のポケモンと、そして客人のポケモンが両方地に伏していた。

     妙だ、ノボリは直感的に感じた。相打ち、という結末があまりにも不自然に思えた。まるで、そう、“わざと”相打ちを狙われた…?
    「お疲れ様です、ダストダス」
     彼は労いの言葉をかけてボールに戻した。カクライは無言でアリクイを戻している。ただ、注ぐ視線が優しいものであろうと想像はついた。

    「この勝負はまだ出発したばかりでございます」二匹目のボールに手をかけてノボリは言った。「現時点ではこれから先が貴方様の勝利か私の勝利か、どちらに向かって邁進しているか分かりません」
    「えぇ、そのようですね」カクライも既に次のボールを取りだしていた。心なしか、表情がほんの少しだけ笑っているように見える。
    「それでは、出発進行!」

     イワパレスに対してウルガモス。虫タイプ、という共通点があるものの、もう一つのタイプでは明らかにノボリが有利だった。
     間髪いれずにノボリは指示を出す。虫タイプが苦手な石の飛礫は容赦なく炎の虫を襲いにかかった。
     ぼうふう、とカクライが言葉を出す前に風は起こっていた。『ストーンエッジ』は渦を成す風に巻き込まれ、粉々に砕け散っていく。その威力にノボリは息をのんだ。
     やはり単純に相性を突くだけでは勝てはしまい、百も承知ではある。
     岩を背負ったヤドカリが早さで勝負するのはおそらく無謀に近い。彼はどっしりと構え、長期の戦いを好む。もちろん、ノボリはそんなイワパレスの戦い方を存分に発揮できるようにこれまでも戦ってきたし、これからも戦っていくつもりだった。
     彼の攻撃技はなにも岩を飛ばすだけではない。
     広いフィールドでは空に逃げられても、ここは我らが申請なる地下鉄車両内。振動は日常茶飯事、まして、ポケモンの技に耐えられないように作られているはずがない。
     黒い車掌は出した指示は地面タイプの大技。一度だけ大きく車内を揺らすだけで良い。
     車内は狭い。たとえ技が外れたとしても完全に避けきることは難しい。僅かにかすったダメージも徐々に蓄積されていく。
     『じしん』のダメージはどうやら『でんじふゆう』をしているウルガモスにもこたえたらしい。こちらは何十日とこの場所で戦いを繰り広げている。地下鉄流の勝負には誰よりも自信がある。
     カクライからはじめて、声が漏れた。それは驚きともなんとも取れない小さく、短いものだった。笑い声のようにも聞こえた。
     一気にたたみ掛けようとノボリは指示を出す。もう一度『ストーンエッジ』を支持し、そしてカクライが風の技を支持すると読んだ。
     しかし、その期待は裏切られる。彼が指示したのは虫の技、それも振動系である『むしのさざめき』。
     甲高い音が車内に響く。振動は飛んできた岩を全て微細なヒビをいれ、命中する寸前には全てを破壊し尽くした。もう遅い。『シザークロス』を始めたイワパレスに対して、カクライは正面からの勝負を選択した。

    『フレアドライブ』

     またもお互いの技が衝突する際に閃光が走る。先ほどとは比べ物にならない光に思わずノボリは腕を使い目を庇った。
     光が収まり、彼はその場の光景にまたも違和感を覚えた。

     イワパレスは目をまわしてへたり込んでいる。おそらく気絶しているのだろうと分かったのだが、既にウルガモスの姿はどこにもなく、ただ胸元にボールを構えたカクライだけが立っていた。
    「私のポケモンも瀕死でした」嘘をついている様子はない。
     また相打ち。やはりどうも、妙な気がする。長年のバトルを通しての勘、というべきか。しかし、同時に彼はその違和感を感じることも違和感だと捕えていた。
     カクライの態度は真剣で、“わざと”、相打ちを狙うような人物に見えない…、なにより、合い打ちを狙う必要が彼にない。それが、ノボリを迷わせていた。

     三匹目、ボールを手にかけ、彼は考える。
    「お客様、ひとつよろしいでしょうか」
    「なんでしょう?」丁寧な口調が返ってくる。わざと、相打ちを狙っていらっしゃいませんか、その言葉を飲み込み、黒い車掌は別の言葉を紡いだ。
    「仮に次の勝負も双方相打ちで終わった場合、貴方様はこの勝負の終着駅はどこであるかと思われますか?」
    「そうですね、次回に持ち越し、という事では如何でしょう?」しばし思案した後、カクライは口を開いた。「必ずしも勝利、あるいは敗北が終着駅とは限りません。それはおそらく途中下車するための駅でしょう。勝負は何時だって、相手がいなければ出発はできませんから」
     そうでございますか、とノボリは静かに答えた。なるほど、途中下車という考え方もある。
    「それでは、これが最後でございます」

     相性では圧倒的にノボリは分が悪かった。彼の最後の手持ち、ギギギアルに対してカクライはシャンデラを繰り出した。
     ここで彼はまたも妙な空気を感じる。
     カクライが使用したポケモン、それらすべてに共通するのは“全てが炎タイプである”こと。長年地下鉄で勝負を受け続けているが、全てに同じタイプのポケモンを使ってくるトレーナーは、ほとんど見たことがなかった。
     炎使いなのか。考える前に、向こうが動いた。

     ギアチェンジで素早さをあげて対応しようとするも、無数の鬼火が避けきれず火傷状態となってしまうのが確認された。しかし、その程度で怯むパートナーではなく、ギアソーサーを命じる。
     ぎゃん、とシャンデラの細い腕を捕えた。かすかにカクライが笑ったように見えた。

    『煉獄』

     その声に、何故か背筋に寒気が走った。

     炎が、鋼色の歯車を包む。効果は抜群であることは承知しているが、その威力はあまりにも、違いすぎた。
     赤色ではない、青色の炎が見えた。
     どしゃあ、と表面が黒くすすけた彼のポケモンが落ちる。くるくると楽しそうにシャンデラが回り、初めてカクライは帽子をあげて、こちらと目を合わせた。

     青年、いや老人、違う、彼は一体・・・?
     陽炎のようにぼやけたカクライの輪郭がはっきりしない。ただ一言「ブラボー」、称賛の言葉は惜しみなく出た。
     すっと伸ばした手はシャンデラをいたわるように撫で、「ありがとうございます」と静かに礼を述べる様子を見ながら、ノボリはギギギアルをボールに戻し、労いの言葉をかける。
     先の二匹のバトルはまるで狙われたかのような相打ちに対し、最後の一戦はあまりに圧倒的であった。彼は何を狙っていたのだろうか。勝負はもう自分の敗北、彼の勝利という形で終着したはずなのだが、ノボリは何かが府に落ちなかった。

    「さて、今宵の勝負は貴方様の勝利という形で」黒い地下鉄支配人の言葉を、カクライは手を伸ばして制した。
    「終着駅には到達していませんよ」帽子はもう目深に被り直され、目を合わせることはできない。「今回は途中下車ですから」
    「はてさて、それはいったいどういう意味でございましょう」
    「私はこのまま続けて挑戦する気がないという事ですよ、ノボリさん」その意味を汲み取り、サブウェイマスターは驚きの表情を浮かべた。
    「何故でございます?お客様のその実力がございましたら、これから先どこまで突き進んでいただけるのか楽しみでございますのに」
    「しかし、また貴方とは勝負はできないでしょう?」確かにその通り。彼が待ち受けるのはあくまで三周目の最終車両。そこから先は御乗りあわせになっている相応のお客様との勝負ばかりが続いていく。
    「私は地下鉄の総支配人と勝負がしたくてここまで参りましたから」
     ですから私はここで途中下車、また最初からやり直しますよ。カクライはそう言った。
     途中で降りる客人を止める権限など存在するはずもなく、ノボリはただくすぶる違和感を抱えながら「左様でございますか」と口にするのがやっとだった。
    「ちなみにお客様、ダブルトレインの方はお乗りになられましたか?」
    「いいえ」
    「ダブルトレインには私の弟、クダリがマスターとして乗り込んでおります。また機会がございましたら」
     笑いがカクライから漏れた。獲物を見つけたような笑い方だった。
    「ええ、また今度乗ってみましょう」
    「それと、カクライ様はこのシングルトレインに置いて21連勝をおさめられましたので、『スーパーシングルトレイン』へのご乗車が可能となります」義務的ではあるが、これを伝えるのもまたマスターの役目である。
    「それは初耳ですね」先ほどよりも嬉しそうな声色だ。「そこでも貴方と勝負ができるのですか?」
    「もちろん!貴方様が勝利という言う道を邁進していただければ、必ず」
    「えぇ、楽しみにしておきます」まるで会えることを前提としているようにカクライが言った時、丁度地下鉄はライモンシティに到着したことを告げた。


    「ノボリ、どうしたの?」
     双子の同僚はいつもの口調で半身に問う。黒はいまだにあの妙な挑戦者に対して疑念を抱いていた。
    「本日の挑戦者様に、不思議な方がおりまして。その方について考えておりました」
    「強いの?」
    「えぇ、まぁ」
     歯切れの悪い返事にクダリは不思議な顔をした。ノボリはごくかいつまんでカクライとのバトルを説明する。
    「前半の二戦はどうも相打ちを狙われたように思われまして、最後の一戦に至ってはどこか妙なのですよ」
    「そう?楽しそうに聞こえたけど」
     クダリは特に疑問に思う点はなかったらしく、「その人、ダブルにも来てくれるかな―」と嬉しそうな顔をしている。
     そこでその話題は終わりになった。


    「そうそう、一つお尋ねしてよろしいでしょうか?」
     電車を降りる間際に、カクライは振り返った。やはり陽炎に包まれたようにはっきりと印象を掴むことができない。
    「何でございましょう」
    「実は、私のポケモン達はあまりボールに入っているのを好みません。バトルトレインに乗車する際、彼等を出したままでも構わないでしょうか?」
     その申し出はあまりにも異色だった。バトルをする相手に、手の内を見せるということである。しかし、この礼儀正しい紳士はさも当たり前のように言ってのけている。
    「既定の数のポケモンだけを連れていらっしゃるというのであれば問題はありませんが…」
    「そうですか。ありがとうございます」
     では、これで失礼。一礼をしてコートの人物は去っていく。遠ざかるごとに、その後ろ姿の印象がぼやけていく。ノボリは、あの人物は何者であろうかと考えをめぐらせようとした。
     汽笛が鳴る。職務に引き戻された彼は、乗り込んだ。


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  いつかのチャットで書きました。ノボリクダリは難しいですね。あのロングコート着たい。
    カクライさん久々です。久々すぎます。

    【何してもいいのよ】
    【タイトルうまいこと思いつかなかったのよ】
     


      [No.2060] Re: 電気タイプだから、勇者を決めた。 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/11/13(Sun) 19:12:49     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    レントラー:……ふっ、勇者なんて俺のガラじゃねぇな……。……分かってる、分かってるけど……はぁ……。
    デンリュウ:レントラー忘れられて地味にへこんでるなう。
    レントラー:ガルルルルゥ−!!(いかく)


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    むむっと、レントラーさんがいないような気がしたので勝手に書いてしまいました。

    ……いない……よね?


      [No.2059] 電気タイプだから、勇者を決めた。 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/11/12(Sat) 23:29:04     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ロトム:やあ、前回は良くもハブってくれたね。
    デンリュウ:へんなの来たなう。
    ロトム:なうなううるさいよ! そこで考えたんだけど
    サンダース:なんだよ変種
    ロトム:無視無視。ゼクロム君がマスタードラゴンやればいいじゃない
    ゼクロム:俺脇役じゃねえか
    ロトム:勇者のせて空飛ぶんだよ?
    サンダー:空を飛ぶのは俺俺
    ロトム:サンダー君はレティスとかラーミアとかそっちだよ。7つのオーブが揃うまでタマゴで待ってて。
    ピカチュウ:俺は?
    ロトム:主人公の仲間になるサンダーラットでどう?
    ライチュウ:くくく、そのままじゃねえかw
    ロトム:ライチュウ君はヘンリーで
    デンリュウ:テラ脇役なう。
    ライチュウ:しねロトムいつかころす
    ロトム:んで、プラスル君が主人公の幼なじみで、マイナン君が主人公と運命の出会いをするお嬢様。
    プラスル:えっ
    マイナン:えっ
    プラマイ:男の娘!?
    ロトム:サンダース君はゲレゲレだよね、どうみても。
    サンダース:四足歩行ってところしかあってねえ!
    ゼクロム:まて、ロトム。これはあれなのか。だったらあの悪役は誰がやるんだ
    ロトム:もちろん、それはエレキブル君!
    エレキブル:えっ
    デンチュラ:どうみてもジャミかゴンズです本当にありg(ry
    ロトム:で、ジバコイル君は主人公のお嫁さんを攫う役だよね
    ジバコイル:おい、ポケダンでは保安官だぞ、正義の味方だというのになんだその悪役みたいなのは。悪役というのは(長いので省略されました)
    エレキブル:俺とコンビかよ
    ロトム:マルマイン君は、山の上で教祖様ね
    マルマイン:むしろ爆発で石像ともに粉々だよ
    ゼクロム:ロトム、解決してないぞ。エレキブルは結局ゴンズで、ジバコイルがジャミか
    ロトム:ん?そうだよ。あの役はボルトロスおやじにしかできないでしょ。ゲマ。
    ボルトロス:なんだと?オカマになれと?
    ランターン:俺どうするんだよ
    ロトム:人魚のハープを渡す人魚役がぴったりだよ!
    ランターン:おい、俺だけ作品違うぞ!
    デンチュラ:まさかと思うが、俺は
    ロトム:にせたいこう。あのこしみのあたりがぴったりじゃん
    デンチュラ:変な役にされた
    パチリス:僕は?
    ロトム:すごろく屋
    デンリュウ:テラ脇役なう。2nd
    ロトム:エモンガ君は主人公のおとうさんの付き人ね
    エモンガ:イメージからかけ離れ過ぎてる
    ロトム:ライボルト君は小さな頃の主人公を率いるおとうさんで
    ライボルト:おいまて俺強制退場じゃねえか!
    ロトム:それが嫌なら、ブオーンなんてどう?
    ライボルト:……なんでもいい
    ロトム:ゼブライカ君は、主人公が帰ってくるのが疎ましくおもってる大臣で。
    ゼブライカ:どこにそんなイメージがあったのか聞きたいんだけど
    ロトム:まあいいじゃない。こうやって役すすめれば
    ゼクロム:ん?お前はどこにいるんだ?
    ロトム:え、決まってるじゃない
    ライチュウ:まさか主人公とか勇者とか言うんじゃねえだろうな
    ロトム:僕はレヌール城のお化けをやるよ!

    ーーーーーー
    ごめんなさい。


      [No.2058] 【改稿版】たった一言 投稿者:門森 輝   投稿日:2011/11/12(Sat) 23:24:46     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「コリンクさんでよろしいでしょうか? リオルさんからこちらが届いております」
     そう言われて手渡されたのは、綺麗な青い箱だった。
    「確かにお届け致しました。それでは失礼させて頂きます」
     そう言って配達員のペリッパーは飛び去っていった。何故直接渡さないのだろう? そんな事を考えながら、隣で寝ているポケモンに目をやった。
     箱を開けると、1枚の紙が入っていた。そこには、足形文字で一言だけ書かれていた。たった一言。しかしその言葉は、今までの冒険を甦らせた。
     感慨に耽っていると、贈り主が目を覚ました。彼は、僕が贈り物を手にしているのに気付くと、顔を赤らめ俯いた。そんな彼に僕は言った。紙に書いてある言葉と、同じ言葉を。

     そらのおくりもの――それは「ありがとう」を伝えるどうぐ。

    ――――――――――――――――――――――――――――

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】

     と言うわけで改稿版です。ポケダン空だと伝わらなかった方も結構居られたので、せめて贈り物を受け取った方もポケモンであると分かるように致しました。個人的には改稿前の方が好きだったり。
     リオルとコリンクなのは私の今のデータがその2匹だからです。経験者の方はその部分を自分のデータのポケモンに置き換えて想像して頂けたら幸いです。改稿前はポケモン名出さなかったのはそれが理由ですので。
     本当は僕や彼という性別を推測できる言葉も入れたくありませんでしたが、贈り主等に置き換えると、くどくなってしまう上にリズムも悪くなってしまうように思えたので断念致しました。
     宅配便を受け取ったことがないので台詞の部分は適当です。判子として足跡を使うのも考えましたが、どのタイミングで入れれば良いのか分からなかったので没にしました。

     兎にも角にも、投票して下さった皆様、読んで頂きありがとうございました! この場を借りてお礼をさせて頂きます。


      [No.2057] やめたげてよお? 投稿者:ヨクアターラナイ   投稿日:2011/11/12(Sat) 22:37:23     28clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    プラズマだん「おら! ゆめのけむりをだせ!」

    げしげし

    ムンナ「む……にゅ……」

    ベル『ゆめのけむりをださせるためにポケモンをけっているの?
    ひどい! どうして? あななたちもトレーナーなんでしょ?」


    数分後……


    ベル「あたし? あたしはね、さっきのポケモンさがすんだから!」


    ムンナ「むう!」

    ベル「ムンナはっけん! おねがいポカブ!」

    ポカブ「ブヒィイイイイ!」

    ベル「ゲットするには、まずよわらせないと。たいあたりよ!」

    げしげし

    ムンナ「むぅ!」









    あとがき
    小説でなくって申し訳ない。
    ネタが被ってる気がしまくってるので、内心焦っております。
    効果音からして、『たいあたり』よりも『にどげり』の方が相応しいので悔しいです。
    では、また。


      [No.2056] これを「昔々詐欺」と呼ぼう 投稿者:小樽ミオ   《URL》   投稿日:2011/11/12(Sat) 17:44:43     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     「(嘘)」の文字を見てとっさに飛びつきました、こんにちは。
     一行目からしょっぱなやられるとは思いもよりませんでした。犠牲者は果たして何人いることやら(笑)

     「いやいやいやいやw」とツッコミを考えながら読んでいるうちに、すぐに次のツッコミを入れざるを得ない状況で笑いが絶えませんでした。「ツッコミが追いつかない小説」、久しぶりに拝見しました。

    > 昔々――と言ってもバブルがはじけて間もない頃でございましたが――あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
    > ある日、おじいさんは不動産売買に、おばあさんは精肉工場へパートに出掛けました。

     「桃太郎」に釣られて無意識に「大昔話」だと直感していると一行目で大火傷。
     既に「さわりはオッケー」なんてレベルじゃない。ここまでくると(腹筋的に)卑怯。

    > 「行こう」桃太郎は真顔で言いました。
    > 「まあ、そういうときもある」ルナトーンは彼らの後姿を見て言いました。

     スケベクチバシさんならこの仕打ちはやむを得ない(むしろごく自然?w)と思ったのですが、彼の反応からあまりに冷静さと諦念とがあふれ出ていて……笑うなという方がむちゃくちゃです!



     これまでのありとあらゆる歴史の嘘は彼女が生み出したものだったのですね……。
     今までの「(嘘)シリーズ」、読み直せば違う印象を受けることになりそうです。切ないです……

     ……となると、スケベクチバシさんは彼女とどんな接点を持っているんでしょう(

     今回も(腹筋的に)凄惨なほど笑わせていただきました、ありがとうございます!


      [No.2054] 元気が出てきた 投稿者:鯱@絶賛テスト期間   投稿日:2011/11/12(Sat) 13:31:35     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    テスト勉強の気晴らしにと思って、PCをいじってみたら。


    ナンダコレェェェ


    何故に桃太郎、というか桃が出てきてないw
    スwケwべwwクwチwバwwシwwww
    あとロコンパネェ
    最後が切ない……そんでもってまたスケベクチb(ry

    暗い気分が恐れをなして逃げていきましたよ。
    さて、そろそろ勉強に戻るとします。元気をありがとうございました。
                                               by銀波オルカ


    【小説の力ってすごい】


      [No.2053] 電気タイプだから、勇者を決める。 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/11/11(Fri) 21:58:27     90clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ゼクロム:勇者といったら俺だ
    ピカチュウ:おや、勇者の飼い犬のゼクロムくんではないか。ふはは、勇者といえばポケモンの売上に貢献した俺に決まっている
    ライコウ:俺の方が人気があるだろ、だから俺だ
    サンダー:俺がいちばん古参だろうg
    ピカチュウ:人気なら断然俺。だから俺n   
    ライチュウ:すっこんでろ進化前
    サンダー:(ちっ電気ねずみが)
    デンリュウ:可愛さで俺の勝利
    サンダース:とろいやつは黙ってろ
    エレキブル:素早いだけの針狐は地震をお見舞いしてやるぜ
    パチリス:アイテム使いの勇者は俺に決まってる
    プラスル:おれたちおれたち
    マイナン:俺たち一番だよ俺たち
    エモンガ:何いってんだよ、美しすぎるジムリーダーが2匹も使ってた俺しかいねえだろ!かげぶんしん!かげぶんs
    ライボルト:ベギラゴン・・・ではなくオーバーヒートも使える俺しかいない
    ゼブライカ:かえんぎり・・・ではなくてニトロチャージは私も使える。甘く見るな小僧!
    ランターン:俺は船なくても海進めるから俺だ
    マッギョ:は?俺なんて泥の中でも使えて、しかも待ち伏せもできてネタにもできる、最高のポケモンなんですけど。俺の人気は公式認定ずみだぜぇー ……ネタ? そんなバカなー
    シビルドン:天敵、地震が当たらない俺が大勝利だろ!それ以外何があるんだよ
    ジバコイル:地震?なにそれおいしいの?スクルトもぶきみなひかり・・・じゃなかった、かたくなるも金属音も使える俺、かっこよくね?
    マルマイン:なあ、お前ら、俺を忘れてないか?最後はこれで決めるぜ

     メガンt!

    マルマイン:大爆発だ!

    ボルトロス:なーんか地上が騒がしいが・・・今日も平和じゃのう


    ーーーーーーーーーーー
    ごめんなさい。
    【お題:電気タイプ】ドラクエの勇者は、デイン系(かみなり)の呪文を必ず持ってるので、電気タイプは勇者なんです多分。
    るっきー、みおりん、ズキーニ、きとかげさんありがとうございました。むしろこんなくだらないものになってしまってすいません。
    閲覧さん追加。使ってしまってすいません。
    【好きにしてください】【バトルにログイン歓迎】


      [No.2052] いい意味でひどい 投稿者:マコ   投稿日:2011/11/11(Fri) 13:12:43     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    こんにちは。マコです。
    お話読ませていただきました。

    >  昔々――と言ってもバブルがはじけて間もない頃でございましたが――あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
    >  ある日、おじいさんは不動産売買に、おばあさんは精肉工場へパートに出掛けました。

    いや、まず時代設定が!!
    おじいさん!不動産の売買とか危ないから!
    (ちなみに私はだいたいその頃の生まれです)

    >  おばあさんは困惑しながらも、放っておくわけにもいかず、赤ちゃんを家に連れ去りました。

    今だったら(この頃でも)きっと犯罪ですよ!そっちに行ってはいけません!

    >  ちょうどこの頃、世の中には「ロケット団」という悪い人たちが、ポケモンを使ってとても悪いことをしていました。政治団体への違法な献金や耐震偽装は日常茶飯事。時々人のポケモンを盗る「どろぼう」もしていました。
    >  実はかくいうおじいさんとおばあさんも、昔飼っていたミュウツーをロケット団に「どろぼう」されてしまったのです。

    とてもロケット団が現実的だと思いました。確かに私としてもそういうイメージがあるので……ってえええ!?ミュウツー!?
    凄過ぎるでしょう……。

    >  大きくなった桃太郎は、自分を育ててくれたおじいさんとおばあさんにとても感謝していました。そして、こう言いました。
    > 「なんでミュウツーなんて飼ってたの? てかなんでミュウツーをもっておきながら盗られたの? 僕疑問で仕方ないよ。ちょっとロケット団泣かしてくる」
    >  桃太郎は、ロケット団を泣かしに出かけました。

    まあ桃太郎さんがそう言うのもしょうがないですよね。 もしかして夫婦は元ロケット団の研究員とか?

    >  桃太郎は、ロケット団を泣かせるためにルナトーンが必須だとは判断しませんでした。
    > 「行こう」桃太郎は真顔で言いました。
    > 「まあ、そういうときもある」ルナトーンは彼らの後姿を見て言いました。

    あの!スケベクチバシさんじゃありませんか!
    ……ってあれ?今回は無視?
    仕方ないかもしれませんが……。

    >  かつてポケモントレーナーとして旅をしていた彼女は、今はすっかり書くことに夢中だった。
    >  彼女の書くお話はいつも昔話をモチーフにしたギャグ小説だった。くだらなくて、バカみたいで、内容は酷く浅くて、そして読む人をあきれさせた。そして登場するポケモンは決まってこの四匹だった。
    > 「ディン、モンすけ、ポッくん、ナナコ――」
    >  彼女は彼らの名前を呟いて、机の脇に置かれた写真を見た。四匹のポケモンたちが周りを囲み、中央に昔の彼女が写っている。満面の笑顔だった。
    >  彼女の頬に、涙が伝った。

    これまでの話がフィクションだったんですね……。
    それにしてもなんか悲しくなるのは気のせいでしょうか。

    >  スケベクチバシ「最後、五匹の間違いじゃないか」

    あなた、今回は存在感薄かったです。

    それにしても前のイソップ寓話といい、浦島太郎といい、今回といい、思わず画面の前で吹いてしまいました。
    どうか、スケベクチバシにも愛の手を。


      [No.2051] 久々に 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2011/11/11(Fri) 10:29:22     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    笑いに満ちた作品を読ませてもらいました。最後がちょっぴり寂しいですが。

    ロコンモテすぎワロタ。


      [No.2050] ツッコミどころが多すぎるだろwwww 投稿者:No.017   投稿日:2011/11/11(Fri) 09:43:00     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ツッコミどころが多すぎるだろwwww

    ・精肉売り場でバイト
    ・桃が出てこないのに桃太郎
    ・ケンホロウじゃないのwwwww あ、カントーだからかwwww
    ・スケベクチバシきたこれwwwwww(カントーなのに
    ・ミュウツーどうなったwwwww

    その他いろいろ

    最後はちょっと切なかった


      [No.2049] 桃太郎(嘘) 投稿者:リナ   投稿日:2011/11/11(Fri) 02:21:47     150clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     昔々――と言ってもバブルがはじけて間もない頃でございましたが――あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
     ある日、おじいさんは不動産売買に、おばあさんは精肉工場へパートに出掛けました。

     おばあさんがパートから帰ってくると、家の前に赤ん坊が置き去りにされていました。

    「――赤ちゃんポストじゃあらへんのになぁ」

     おばあさんは困惑しながらも、放っておくわけにもいかず、赤ちゃんを家に連れ去りました。
     おじいさんは、おばあさんの話を聞き言いました。

    「育てます」

     おばあさんとおじいさんはその子に「桃太郎」と名付け、育てることを決意しました。

     桃太郎は、その名前のおかげで学校でいじめに遭うことが多く有りました。しかし、桃太郎はとても精神力が強かったので、とめどなく繰り返されるいじめにも耐え、すくすくと育っていきました。

     ちょうどこの頃、世の中には「ロケット団」という悪い人たちが、ポケモンを使ってとても悪いことをしていました。政治団体への違法な献金や耐震偽装は日常茶飯事。時々人のポケモンを盗る「どろぼう」もしていました。
     実はかくいうおじいさんとおばあさんも、昔飼っていたミュウツーをロケット団に「どろぼう」されてしまったのです。

     大きくなった桃太郎は、自分を育ててくれたおじいさんとおばあさんにとても感謝していました。そして、こう言いました。

    「なんでミュウツーなんて飼ってたの? てかなんでミュウツーをもっておきながら盗られたの? 僕疑問で仕方ないよ。ちょっとロケット団泣かしてくる」

     桃太郎は、ロケット団を泣かしに出かけました。



     桃太郎が草むらを歩いていると、突然けたたましい音と共にポケモンとエンカウントしました。

    「あ! やせいの ガーディが とびだしてきた!」

     桃太郎は、ロケット団を泣かせるためにガーディが必須だと判断しました。

    「ガーディさん。この『森の羊羹』をあげるから、僕と一緒にロケット団を泣かしにいこうよ」

     ガーディは少し考えました。

    「まあガーディ的にはありなんだ。けど正直ダルいし。オレ彼女いるし。付き合って今二ヶ月なんだ、めっちゃ楽しい時期」

    「随分と不必要な情報を混ぜるガーディだね。けど、僕は君の力が必要なんだ。ねぇ、だから僕と契約してパートナーになってよ」

    「遠距離になるのはごめんだよ。すぐに帰れるんだろうね?」

    「もちろんさ。そもそもここはタマムシ近郊。ロケット団のねぐらはヤマブキのシルフカンパニーだよ? そんなに遠距離恋愛ともいえないよ」

    「言っているのは心の距離さ」

    「良く分からんけど、それはキミ次第だよ」

    「なかなか面白い人間だな。気に入ったよ。共にロケット団を泣かしに行こう」

     こうして、桃太郎はガーディという心強い味方を手に入れました。



     桃太郎とガーディが岩山を歩いていると、突然ビックリするほど大きな音と共にポケモンとエンカウントしました。

    「あ! やせいの オコリザルが とびだしてきた!」

     桃太郎は、ロケット団を泣かせるためにオコリザルが必須だと判断しました。

    「オコリザルさん。この『いかり饅頭』をあげるから、僕と一緒にロケット団を泣かしにいこうよ」

     オコリザルは答えました。

    「私がいつも怒っていると思ったら大間違いです。私が憤怒の感情をあらわにするのは、この世の平和を乱さんとする不条理が生じたときのみ。そもそも「憤怒」は人間に置いても七つの大罪といわれ――」

    「随分と面倒なオコリザルだね。けど、僕は君の力が必要なんだ。ねぇ、だから僕と契約してパートナーになってよ」

    「先日、私にもようやく春が訪れました。相手は優しい心をもったロコンです。幸せ絶頂の私を満足させるインセンティブが、そのロケット団とやらを泣かせることにあるのでしょうか?」

     ガーディが、それを聞いてにわかに焦り出しました。

    「え? ちょっとまって。そのロコン、名前なんて――」

    「もちろんさ」桃太郎は気に留めず、返します。「ロケット団はこの世の平和を乱さんとする不条理の権化だよ? 君が彼らを裁かないでだれが裁くって言うんだよ」

    「なるほど。確かに。いいでしょう、お供させていただきます」

    「ちょ、そのロコン――」ガーディはまだ気にしていました。

     こうして、桃太郎はオコリザルという心強い味方を手に入れました。



     桃太郎とガーディとオコリザルが森の中を歩いていると、性懲りもなくバカでかい音と共にポケモンとエンカウントしました。

    「あ! やせいの ピジョンが とびだしてきた!」

     桃太郎は、ロケット団を泣かせるためにピジョンが必須だと判断しました。

    「ピジョンさん。この『フエン煎餅』をあげるから、僕と一緒にロケット団を泣かしにいこうよ」

     ピジョンは答えました。

    「――いいよ」

    「随分と話の早いピジョンだね。『僕と契約してパートナーになってよ』って言いたかったのに言えなかったよ」

    「――でも条件。彼女がいるんだよ。優しいロコンのナナコちゃん。尻尾が六本なのにナナコちゃんなんだ。もう付き合って二年にもなるかなあ。彼女に一言言ってから出掛けたいんだ。ちょっと待っておくれよ」

    「え、ちょっとまって!! そのロコンのナナコちゃんって――」

    「聞き間違いでしょうか。今、ロコンのナナコと――」

     ガーディとオコリザルが、それを聞いてにわかに焦り出しました。

    「いいよ。挨拶は大事だよね」と、桃太郎。

    「じゃあ、待ってて」と、ピジョン。

     ピジョンが帰ってくるまで、ガーディとオコリザルはずっとぶつぶつなにかを言っていました。

     こうして、桃太郎はピジョンという心強い味方を手に入れました。



     桃太郎とガーディとオコリザルとピジョンが草むらを歩いていると、うざい音と共にポケモンとエンカウントしました。

    「あ! やせいの ルナトーンが とびだしてきた!」

     桃太郎は、ロケット団を泣かせるためにルナトーンが必須だとは判断しませんでした。

    「行こう」桃太郎は真顔で言いました。

    「まあ、そういうときもある」ルナトーンは彼らの後姿を見て言いました。



     桃太郎一行は、とうとうシルフカンパニー本社に辿り着きました。

    「ナナコちゃん……」と、ガーディ。

    「どうしたものか、これは明らかに平和を脅かさんとする……」と、オコリザル。

     既に二匹、戦意を喪失しています。

    「どうしたんだい? 早いとこロケット団を泣かしに行くよ?」

     桃太郎は何も考えずにそればかりです。

    「どうしたんだろうナナコちゃん。いつもいるはずの場所にいなかったんだ。行ってきますの挨拶ができなかったよ」

     ピジョンはそう言って俯きました。ナナコちゃんは一体どうしたというのでしょう?

     彼らはシルフカンパニーに乗り込みました。

    「ナナコちゃん!!!」三匹は叫びました。

     シルフカンパニーの最上階には、檻に入れられたロコンがぐったりしていました。

    「若僧が一人で何をしに来た?」ロケット団のボスっぽい人が言いました。

    「お前ら全員泣かしに来た! 覚悟しな! さあみんな!」

     桃太郎はポケモンたちに号令をかけました。

    「やっていいの?」と、ガーディ。

    「泣かすどころじゃ済みませんが」と、オコリザル。

    「殺すお☆」と、ピジョン。

     桃太郎は、ロケット団のボスっぽい人の断末魔を聞きました。





     ◇ ◇ ◇





    「――断末魔を、聞きました、と」

     彼女はそこまで書き終えて、ボールペンを机に転がした。プラスチックの乾いた音がむなしく響いた。

    「ナナコは美人ですごくモテるから。他のみんなが夢中になっちゃうんだよね、うん」

     かつてポケモントレーナーとして旅をしていた彼女は、今はすっかり書くことに夢中だった。
     彼女の書くお話はいつも昔話をモチーフにしたギャグ小説だった。くだらなくて、バカみたいで、内容は酷く浅くて、そして読む人をあきれさせた。そして登場するポケモンは決まってこの四匹だった。

    「ディン、モンすけ、ポッくん、ナナコ――」

     彼女は彼らの名前を呟いて、机の脇に置かれた写真を見た。四匹のポケモンたちが周りを囲み、中央に昔の彼女が写っている。満面の笑顔だった。

     彼女の頬に、涙が伝った。











     ――――――――――











     スケベクチバシ「最後、五匹の間違いじゃないか」


      [No.2048] ざっと見て 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/11/11(Fri) 01:15:46     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >【17】サニーゴの死骸 批評ページ
    鳩さんの批評が影分身してますぜ。あとどうもタテタさんの評がないっぽいです。

    >【20】ポッポくん 批評ページ
    三つほど名前欄の抜けた批評が。

    >【34】赤い月 批評ページ
    私の書いた感想が見当たらないです。だが大したことじゃない。

    コンテスト運営企画、お疲れ様でした。しばらくお休みのようですので、その間に何を書こうかな。
    コンテストの場を設けてくださった鳩さん、時間を割いて作品を何度も読み返し、評を書いてくださった方々に、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。


      [No.2047] Re: ■全批評を掲載 投稿者:砂糖水   投稿日:2011/11/11(Fri) 00:30:44     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    No.017さん、お疲れ様でした。
    早速批評読みました。
    足りないところがガンガン指摘されているので、校正の参考にしたいと思います。


    えーと、それでなんですが。
    きみへ の得点が
    http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/index.html

    http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/03/032c.html
    では異なっています。
    上では52point、下では56pointになっていました。
    正しい方に修正お願いします。


      [No.2046] ■全批評を掲載 投稿者:No.017   投稿日:2011/11/10(Thu) 23:00:07     78clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/index.html
    ポケスコ第三回の全批評を掲載しました。
    私のが載ってない、誤植がある場合は教えていただけると助かります!


      [No.2045] 空を飛ぶ夢をみた  投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/11/09(Wed) 23:40:12     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     空を飛ぶ夢を見た。
     頬に当たる風は冷たくて、翼にかかる雲はふんわりとしていた。
     遥か眼下に見える海は太陽を反射してきらきらと光っていた。
     私はそんな夢を見たんだ。


     滝の音にまぎれて、飛び込む音が聞こえる。空から石が落ちてくることが多いこの場所で、そのような音がするのは珍しくない。飛び込むものがタツベイであっても、それは珍しいことでもない。
     流星の滝では、よくタツベイが飛び込む。空を飛ぶことを夢見て、滝の上からその足を踏み込んで飛び立つ。
     でも誰も飛べなかった。タツベイには翼がなかった。風を受けるための羽毛もなかった。
     けれどあきらめなかった。生まれてこのかた、ずっと空を飛ぶ夢を見続け、今も空への憧れは捨てきれない。いつか飛べると信じて、今日も滝から空を目指して飛び立つ。
     それでもタツベイを待つのは重力と冷たい滝壺。仲間の中には、この滝壺に飲み込まれてそのまま浮き上がってこないものもいた。そんな仲間を見てもなお、飛び立つことはやめられない。

     今日もタツベイを迎えたのは冷たい水。固い頭は、突っ込んで水底の岩にぶつかっても傷つきそうにもなかった。細かい傷だらけになりながら、今日もタツベイは残念そうに水面へと上がる。そして岸へと寄っていき、滝の上を見上げる。仲間のタツベイが飛び込むのを見た。
     それと共に、今日はやけに雲が低いと思った。
     違う。他のポケモンがいるんだ。仲間のタツベイは見た事もないポケモンの出現に岩の影に隠れた。けどそのタツベイだけはそのポケモンを見続けた。
     空の遠くにしか見えない雲がすぐそばままで来ている。ここは空ではないのに。
     タツベイがじっと見ていたら、その雲と目があった。どうしたの、と。
     空を飛びたい。タツベイは雲に向かってそう言った。
     飛んでみるかい? 雲が聞いてきた。タツベイは真っ先に飛びたいと言った。
     タツベイは雲の背中に乗った。本当に空を飛べるのだろうか。そして無事に帰ってこれるだろうか。その疑問は一瞬だけ。
     これから夢にまで見た空へと飛び立つ。誰よりも先に。風は冷たいだろうか。どれくらい高くまで行けるのだろうか。
     雲は羽ばたく。ゆっくりと地面が離れて、気付いたら滝はすでに自分より下にある。冷たい滝壺はほとんど見えない。初めて見る空からの景色。近づく青い空、小さくなる流星の滝。全てがタツベイの目に新鮮に映る。これが空を飛ぶということなのだと。
     落ちないように必死に雲につかまりながらも、タツベイはどんどん小さくなる地面を見続けた。もう流星の滝は見えない。
     タツベイは雲に聞いた。どこまで行くのかと。
     雲は答えた。レックウザのところだと。それはどこかとタツベイが聞く前に、雲はタツベイを乗せてあっという間に凍えそうなくらい寒い空の頂点へと飛んだ。
     タツベイは見た事もないくらいに大きな緑の竜に、初めて怖くなった。空を飛ぶことが怖くなった。降りたいけれど、ここは地面も見えないくらいに高い空。とてもじゃないけれど降りることなんて出来ない。
     タツベイは叫んだ。怖いと。雲はそんなことおかまいなしにレックウザに近づいた。大きな目でレックウザはタツベイを睨みつける。
     ほほう、今日のメインディッシュ活きが良いとレックウザは満足そうに言った。雲の背中からタツベイを軽々もちあげた。そして身動きがとれなくて、暴れるのをお手玉をするかのように、違う手に持ち帰る。その空中お手玉に目を回し、タツベイは今自分がどうなってるか解らない。

     頭に衝撃が走る。空を飛ぶ夢を見た。
     頬に当たる風は冷たくて、翼にかかる雲はふんわりとしていた。
     遥か眼下に見える海は太陽を反射してきらきらと光っていた。
     そして大きな竜に食われるかと思った時、タツベイは頭を岩にぶつけた痛みで目を覚ました。
     ああ夢だった、良かったと思うと同時に、空を飛んだ感触が嫌に現実的だった。
     きっとそのうち現実になるのかもしれない。この夢をおいかけてる限りは。
     だから今日もタツベイは流星の滝を飛ぶ。


    ーーーーーーーーーーー
    タツベイが書きたかった。
    反省はしていない。
    【好きにしてください】


      [No.2044] 北風 投稿者:イサリ   投稿日:2011/11/08(Tue) 20:48:47     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     故郷の村の奇妙な風習に、私は幼い頃、一度だけ立ち合ったことがあります。
     当初祖母は呆れ、子供にとって面白いものではないよと説き伏せようとしましたが、ついには宿泊を許可してくれました。
     都会で育った自分にとって、信じられなかったのです。
     村の人々がそろって活動を止め、日中家に閉じこもるという風習が。


     暦の上で冬が始まるその日、村に住む人間はほとんど家から出ることはありません。
     冬の訪れを告げるかのように、村に北風がやって来るからです。
     家にこもるのは強風から自分の身を守るためでもありましたし、何より北風の邪魔をしないため、北風の姿を見ないためでもありました。

     北風は空から降りて来て、神獣の姿を借りてそこら中を走り回り、一年の内に降り積もった穢れを浄化してゆくと考えられていました。
     人々は土に蒔かれた種のように、ただじっと家に閉じこもり、新しい季節の到来を感じるのです。
     いずれ訪れる芽吹きの時を夢に見ながら。 


     締め切られた雨戸がカタカタと音を立て始めると、それが北風の訪れる合図でした。
     薄暗い部屋の中、私はひんやり冷たい漆喰の壁にもたれて息をひそめ、隣に座る祖母の手を握っていました。

     ふと気になって、祖母に北風の姿を見たことはあるか、と尋ねてみました。
     彼女は一瞬表情を曇らせ、一度だけな、とそっと私に耳打ちしました。



     あれは、わしがちょうどあんたくらいの娘だった時分。
     薄暗い部屋で時間を持て余したわしは、好奇心から雨戸を開けて外の様子を見ようとした。
     雨戸は細く、ほんの少しだけ開けるつもりだった。だが扉は人ならぬ力で一気に開け放たれ、風や枯葉や、細かい水滴が部屋に舞い込んできた。
     咄嗟に顔を両腕で覆い、わずかな隙間からその姿を垣間見た。――風雨の中心で青いたてがみをなびかせ駆ける“北風”の姿を。
     突然、ごうと鳴る音と共に風が強まり、わしは目を開けていられなくなった。

     暗闇の中、荒れ狂う風と自分の鼓動を感じた。どれほどそうしていただろう。一瞬であった気もするし、半刻も時が流れたような気もした。
     そして、再び目を開いたとき、そこに北風の姿は無かった。風は治まり、やがて雲は掻き消え、澄み切った空が現れた。
     大気をも揺るがす神の力を目の当たりにし、わしはただ、呆然と立ち尽くすしかなかった。
     その年は、いつもより早く北風が去ったと皆は不思議がっていたよ。
     ……あんた以外に語ったことはないが、申し訳ないことをしたと今でも悔やんでおる。
     


     祖母の話が終わると、私は静かに目をつむり、家の外で吹きすさぶ風の音に耳を傾けました。
     かすかに感じた北風の気配は、泉よりも清らかで、瀧よりも荘厳でした。






    -------------------------------------------------------

    お久しぶりでございます。
    皆様、第3回コンテストお疲れ様でした!
    都合により参加できなかったことが残念です…。

    それはさておき、本日は二十四節気の「立冬」ですね。感覚的にはまだ秋の終わりのようですが、段々と日も短く、肌寒くなって参りました。
    BWにて風神をモチーフにしたポケモンが登場しましたが、今回題材にしたのはジョウト伝説です。なんだかいつも後書きのときに気がつくよ……(汗)

    【書いていいのよ】
    【描いていいのよ】
    【批評してもいいのよ】


      [No.2043] 強くなりたくて 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/11/08(Tue) 00:22:00     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「よろしくお願いしますね、ナエトル」
     私と主人が出会ったのは、私をひろってくれたナナカマド博士の研究所だった。ヒカリという春風のようにかわいくて、それでいてひかえめ。野性的な私とは正反対の人間の女の子だった。
    「ヒカリ、よろしく。私はモエギよ」
    「うん、モエギさんよろしくね」
    「さんは要らないよ。モエギでいいわよ」
     いちいちひかえめで、本当に女の子らしいってこういうこと言うんだよね。同期のエンゴもマゼランも私のことを雌とは見てないし。エンゴはヒコザル、マゼランはポッチャマなんだけど。やつらはそれなりに性格が似てるコウキとジュンっていう男の子と一緒なのよね。

     ヒカリは宇宙人みたいなギンガ団っていう謎の人間から戻って来いって言われていた。戻るということは元がそうなのかしら。私には解らない。けれど、ヒカリは戻る気はないっていって、コウキもジュンもヒカリを連れてはいかせないっていって追い払っていた。
     その時、見たの。私は……エンゴ、マゼランたちと自分の差。コウキの合図にあわせて火の粉を出すエンゴは、私の知ってるただのやんちゃくれじゃなかった。ジュンの合図より前に泡を吹き飛ばすマゼランは私の知ってる傲慢ちきじゃなかった。
     トレーナーのポケモンだった。トレーナーを守るために戦うポケモン。一緒にいる時間はそんなに違わないのに、何が2匹と違ったのだろう。
     私の体は重たいばかり。つい最近来たジュンの赤ちゃんスボミーの草技よりも頼りない私の技。
    「モエギ」
     ヒカリが声をかけてきた。
    「暗い顔しないでくださいね。私には一番強い味方ですよ。本当にそう思ってます」
     ヒカリはそういうけれど、私の技なんて本当に相手にダメージらしきものなんて与えられてない。なんで、なんで?エンゴはもう次の技を覚えてる。マゼランはジュンを従わせる勢いで強くなってる。なんで私だけ強くなれないの?

    「ジュン」
     コウキの側で寝てるヒカリから抜け出して、私はジュンに話しかける。この子ならいつでも元気だし、今話しかけても大丈夫だと思ったの。
    「お、モエギじゃん。ヒカリの側から離れていいのか?」
    「ヒカリには内緒にしたいの。私に強い技、何か教えて!」
     そういったら、目をキラキラさせてとびはねた。落ち着きが無いのが、この子の唯一の欠点、だと思う。
    「そりゃあ、草タイプっていったらソーラービームだ! いいか、これは日光の……説明するのめんどくせえ、見てろ!」
     この子、本当すごいわ。もうすでにポケモンであったころの体を無くしたというのに、こんな特大のソーラービーム、しかもこんな小さな灯りから生み出すなんて。コウキはそのことを「ただの威力バカ」ってバカにしてたけど。エネルギーが夜空に消えていくまで、私はずっと見続けた。
    「これが出来なきゃ草タイプなんて言えないってばよ!」
    「凄い……」
    「まずだな、お前のその頭の芽で光を吸収し、それを全力でぶつけるんだ。そうすれば水に住むポケモンなんてイチコロよ!」
     そうは言うけど、今は夜。日が出てないから技に変換できるほどのエネルギーは感じられない。必死で小さな灯りに頭の芽を向けるけど、私自身のエネルギーとなるだけで、全く溢れ出す気配はなかった。
    「練習あるのみ! これが出来たら草タイプはマスターしたも同然だ!」
     こういうときはしっかりしてると思うんだけど、その後はマゼランにめっちゃ突っつかれていた。寝てるのに騒ぐなうるさい、と。どっちが主人か解らないコンビはとりあえずとして、私はヒカリの側に戻る。
     私はヒカリと一緒にいたい。初めて出会う人間というのもそうだけど、エンゴやマゼランに追いつきたい。そして、彼らと同じようにヒカリを守って活躍していきたい。別にヒカリが特別好きとかじゃないの。ヒカリの役に立ちたいだけ。

     頭のはっぱが大きくなってきた頃。はっぱを飛ばして切り刻む技を覚えた。
    「モエギ! 本当、すごい技です! やっぱりモエギは強いんですよ!」
     自分のことのように喜ぶヒカリは、やっぱりいい子だと思う。本当、私が頼りなさ過ぎてもそれでも全力でフォローしてくれるのが凄い解る。なんで私でいいのだろう。なんで私なのだろう。
     博士に貰ったから?違うでしょ。
     ヒカリ、貴方は私しか扱えないんじゃないかな。だって他にはいつも寝てるケーシィのディランくらい。
     ポケモンじゃないの。私たちじゃないの見ているのは。
     貴方が見ているのはコウキの後ろ姿でしょう? 置いて行かれたくないからこそ、私たちを使って!
    「そんなことないよ」
     ヒカリを突き放した。何を思ったのか知らないけれど、ヒカリは驚いたような顔をしてた。何か悪いことを言った覚えはないでしょうね。思い当たらないからこそ、ヒカリは絶対に自分の何が悪かったか反省するでしょうね!
     けど、私の気持ちなんて一生解るわけがない! 私のこと見てないんだから!


    「お主」
     後ろから見てたマゼランが声をかけてきた。
    「少しの間我が輩についてくるがよい。ジュン、ヒカリを頼むぞ」
     偉そうな態度は変わらずで、マゼランは私の目の前を歩く。足どりがしっかりしてきたのは、あの落ち着きないトレーナーと一緒にいたからかしら。
    「嫉妬しても仕方なかろう。ヒカリは本気でお主のことを心配しておるというのに」
    「あんたに言われなくても解ってるよ」
    「ふむ、解っているといいながら、なぜコウキのことを……いやこれは我が下僕のジュンも関係するからあまり言わないでおくが。同じ種族の生き物であり、性別が違えば惹かれて当然というもの。お主も解ってやるがいい。努力家であるお主をあのヒカリが放置することはまずなかろうて」
     これだけ書くと、マゼランがやたらと理解がいいように思えるかもしれない、けど。実はただの受け売りだったりする。
    「はっぱカッターを覚えて嬉しくないトレーナーがいるわけもなかろう。お主は少しヒカリを信用しなければならない」
     

     マゼランに言われて、後から来たエンゴにも心配されて、とにかく恥ずかしかったやら嬉しかったやら。2匹とも私をまだ仲間だと思っているんだなと思ったし、そのトレーナーも仲間なんだ、と思った。
     だから、ヒカリがコウキのことを見るのは当たり前なんだ。仲間だから。そこにそれ以上の思いがあっても当然のこと。
     私を見てないなんてただの甘え。見てるよヒカリは私のこと。突然コウキやエンゴが話しかけてきたりするのもきっと相談したから何だと思う。

     ようやく気持ちの整理がついたところで、無事に解決できるわけでもない。
     相変わらず、ソーラービームが出来ない。出来たとしても、日が一番高いところにある時で、しかも威力は地面を熱くする程度。こんなのじゃ技なんていえない。
     ハヤシガメになった今でも、毎日練習して、エンゴやマゼランと共に戦ってる。それでも2匹はどんどん強くなるのに対し、私は取り残された気分だった。
    「モエギ、ちょっといいか」
     モウカザルとなったエンゴをボールに入れて、コウキが話しかけて来た。
    「お前、草技苦手だろ」
     そう、私がヒカリを理解できない理由の一つがこれ。コウキはジュンより落ち着いているけれど、オブラートに包んでものを言うことが出来ない。こんなやつのどこがいいのよヒカリ。それが一番聞きたいよ。
    「そうだけど」
    「やめとけよ。どうせ草なんて相性いいやついないんだし。他の技を極めた方がいいって」
    「……そんなの解ってる。けど、私はハヤシガメだ。草タイプなんだから草技を覚えたいよ」
    「いや解ってないだろ。エンゴもそうだけど、どうしてポケモンって自分のタイプと同じ技にこだわるかな。そんなの覚えてたって仕方ねえっていうのが多いのに解ってないというか」
     ああ、そうそう。コウキがむかつくもう一つの理由。ポケモンより人のが優秀って思ってるところ。エンゴもそれで一回キレて追い出されかけたのを見た。でもコウキの戦闘を冷静に分析して指示を出す能力は凄いの。だから逆らえない。逆らって違うことをしたところで、負けるのは見えてるから。だからこそこう言われると悔しい。すっごく悔しい。
     大きく地面を踏みならした。コウキに何も反論できないのが悔しい。
    「コウキくん」
     振り返ればヒカリがそこに立ってる。きっとコウキを探して来たんだろうな。
    「モエギにそんな失礼なこと言わないでください!!! モエギだってがんばってるんですっ!」
     コウキにこんな刃向かうヒカリを初めて見た。コウキは平然と当たり前のことだと言うだけで、相手にしてなかったけど。

     ヒカリにかばってもらっても、私が草技が上手くなることは一向になかった。はっぱカッターもコントロールが上手くいかなくてよく外す。メガドレインも吸収しきれなくて全然効果がない。あの赤ちゃんスボミーがいつの間にかロゼリアになってたんだけど、その子の方が上手なの。しかもマジカルリーフなんていう綺麗な技も覚えて。
     私は草タイプなのに草技に向いてなさすぎる。なんでだろう。草タイプなのに。新緑っていうピンチになると草タイプの技の威力が上がる特性だって持ってる。それなのに生かしきれないで、最後に倒されてしまうことなんて数えきれない。ユンゲラーとなったディランがいつもその片付けをしてる。
     でも向いてない出来ないだけじゃダメ。そんなの解ってる。
     目の前の敵はギンガ団。ヒカリが戻らないから苛ついてるのが解る。私はヒカリとギンガ団との間に立つ。
    「今日はいつものお友達は一緒じゃないのか」
     この人間からは尋常じゃないほどの威圧感がある。私の太い足が震えるくらい。けどそんなことが解ってしまったら、きっとなめられる。
    「アカギさんには感謝しています。今の今まで、悩みや苦労、そういったことと無縁だったくらいに。けれど私は人間です。私は自由を知りました。だからこそ、私は戻りません。かみくだけモエギ!」
    「あはは、トロいなあ、ハヤシガメ」
     私の遅い動きで、とらえられるほどトロいポケモンじゃなかった。相性は最悪。ニューラっていうすばしっこいやつだった。私を見るなり、にやりと笑って自慢の爪で攻撃してくる。
    「モエギ!」
     ヒカリの声が聞こえる。ここで倒れたらダメだ。私が倒れてどうするんだ。草技なんてどれも完成してないものなんかニューラに当たるわけがない。だからといって私の顎でニューラをとらえられる訳が無い。だったらニューラが次に近づいた時に跳ね返せ。
    「ヒカリは渡さない!」
     大きな木が背中に乗っている。それらを振り回すようにニューラへと全身の力を込める。少しばかりの草のエネルギーをこめて、ドダイトスの大きな体を大岩が降るかのごとく。
    「とろくて悪かったね。草技が出来ないなら、私は草技の物理攻撃を極めるよ。そこらの草だと思わないで欲しいわね」
     

    ーーーーーーーーーーー
    唐突に書きたくなったシンオウ。
    特殊と物理が別れてワクワクしてたのはシンオウ。
    ナエトルがそういう葛藤あったらいいなあくらいの話。
    ヒコザルは器用そうだし、ポッチャマはどうだろう。
    ※マゼラン=世界一周を初めてした人と言われてる
    【好きにしてください】


      [No.2042] 続いてしまいました 投稿者:CoCo   《URL》   投稿日:2011/11/07(Mon) 22:34:12     78clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     マコさんお久しぶりです! 感想ありがとうございます。
     勢いとなんかあれだけで書いたので面白がっていただけて幸いですー。

     溶岩の場所はどこなのでしょうか……。
     イメージはデラウエアだかキラウエアだか、どろどろした赤い血のような溶岩が流れている感じです。
     後日、青年は隣人から「お前のクソつまらん夢がダダ漏れだから排気をやめろ」と受けるかもしれません。

     E.T

     ツイッターで「おもしろい!」といってくださった方もほんとうにありがとうございました!
     でりでりさんのポストからなにかを受けて追い詰められながら書いたものですが、公開してよかったです。


      [No.2041] 総評を書きました。 投稿者:CoCo   《URL》   投稿日:2011/11/07(Mon) 01:50:20     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     

     えー、お疲れの様子だった主催の鳩さん、がちがちの緊張の中結果発表で爆発しまくった作者のみなさん、そうじゃなかったみなさん、とにかくすべてのみなさんほんとにほんとにお疲れ様でした!
     第三回目のこのお祭り、またまた楽しく参加させていただき、光栄のきわみです。感想でも本文でもロスタイムを伸ばさせたりいろいろして本当に申し訳ありませんでした。いやー難しいお題でしたね。なんも思いつきませんでした。

     今回なんの気の迷いか自ら義務を負っておいて思ったことは、自分にはほんとうに感想を書くということが向いていないな、というものです。
     なにしろ生来の自己中で、基本、何を読むにも「自分ならこう書くなぁ」というのが切り口なものですから、野暮にならないはずがない。
     どこぞでサドチさんも言われていましたが、書いた奴が一番エラいんです。批評でもお節介でも、全部飲んだら良くなるなんてこたありません。今流行りのなんとかリテラシーみたいな感じで、取捨選択することが大切なのです。
     頭の良さそうな言葉を選んだらよくわからないことになりました。

     さて、私はこれを他の人が書いた総評を読んだ後に書いているのですが、これ以上なにか言うことがあるだろうか? という気持ちです。なぜなら私が漠然と感じたことの全てが、なにもかも誰かの言葉によって具体的に書かれてしまっているから。
     ということで、どうでもいい話をします。
     お話を面白くするという話です。
     面白いネタを思いついても、ただ書くだけでは面白くなりません。どうやったらもっと面白くできるか? を考える必要があります。例えば、淡々とした三人称の中に淡々と書かれる激情はすごく印象的になるし、長い長い一文の後にぽん、ぽんと短い言葉がくるとはっとするし、盛り上がりを盛り上げるために谷をつくったり落とし穴を掘ったりすればドラマチックに仕上がったりするわけです。
     そういうことを、もっと徹底的に考えるべきだと思うのです。
     完成度が上がるから、とかじゃなくて、それをすると、凄まじい愛着が沸くのです。
     ぜひこれを味わってほしい。
     めっちゃ苦しいんです。工夫することも、それを考えることも、感情についてひたすら考えてそれをぐりぐり捻じ込むことも、めんどくさいし苦しいです。でもそれに【完】をつけると、とたんにその結果がいとおしくてたまらなくなります。かけた分のものが必ず戻ってくる。女神が微笑む。これだから物書きはやめられない。
     いまぽちぽちとキーボードをたたく風呂上りの腕の茹だったような感じを描写するだけでも、風呂に入る前の凝り固まったような指先と比べてみたりとか、もしくは少しずつ冷めていく手の甲と、PCの熱を吸って固まらない手首の関節が経過していったりとか、まあいろいろできます。たぶん。
     ともかく、サイコーにいとおしい話を書くべく、素敵なテーマを探して、素敵な感覚を探して、楽しく暮らしていただけたらと思います。

     審査員特別賞には、サ一タヒ廾ソ天之を推します。毎度ツボにはまったと思ったら久方さんだなぁ。悔しいような嬉しいような……。
     時間の都合で適当になってしまった13〜29の感想もそのうちに書き直します。

     野暮代表、カレー屋でした。


      [No.2040] ■ありがとうございました 投稿者:No.017   投稿日:2011/11/06(Sun) 15:22:33     114clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    第三回ポケスコ結果速報チャットが終了しました。
    夜遅くまでお付き合いいただきました皆様、ありがとうございました。
    批評は順次発表して参ります。

    尚、第四回の開催は未定となっております。
    ・ポケスコベスト発行準備に入る為
    ・自作品に集中したい
    というのが主な理由です。

    皆様、持ちネタがあると思いますので、ぜひそちらに励んでいただければと思います。

    ありがとうございました。


      [No.2039] びりっときます 投稿者:音色   投稿日:2011/11/05(Sat) 23:59:42     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     電気タイプでなんか可愛い感じの奴にかならずあるじゃん、電気袋。
     エモンガとかパチリスとかピカチュウとか。
     あれってぷにぷにしてそうなんだけど、絶対素手じゃ触れないんだよね。
     びりってくるから。
     いやがるんだよ、どの子も。ほっぺムニムニされるの嫌いみたいで。
     かといってゴム手袋するのもどうかと思うんだよね。生で触れられないからさぁ。


     なんでもかんでも素手で触りまくる友人がそう語る。
     その手はやっぱり傷だらけで。
     
     あーあの子たちのほっぺをもみほぐしたいーと、妙な夢を聞かされた。

    ―――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  いつか書いた『触れる』とかいう奴の続きもどき
    お題は電気タイプ、で


      [No.2038] サイハテ 投稿者:紀成   投稿日:2011/11/05(Sat) 21:21:45     24clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    僕の乗る電車に、駅は無い
    僕の見る風景に、サイハテがある


    目を覚ました。窓に切り取られたような黒と、降り注ぐ無機質な光の対比が、眩しい。
    僕の隣に人はいない。目の前にも……いや、むしろこの空間に僕以外の人はいない。右に巻いた腕時計を見る。銀色の長針と短針がそれぞれ12と9を指していた。
    ごわごわした座席の感触に顔をしかめ、僕は立ち上がった。どうやらこの列車はまだ動いているらしい。黒の中に黄色、白の光が左から右へと流れていく。
    遠くの光に照らされた風景が、影絵のように浮かび上がった。下弦の月がナイフのようだ。
    「……」
    ゴトンゴトンという無機質な音の中で、僕は確かに誰かの泣き声を聞いたような気がした。


    11月の夜は、冷える。
    ミドリはマフラーを持って来なかったことを後悔した。授業と部活を終わらせ学校を出たのが二時間前。
    最寄駅のギアステーションに向かい、乗ろうとした矢先のトラブルだった。
    「参ったね」
    隣に座っている少年――ウチノが顔をしかめた。彼も同じ部活の部員で、文学賞に出すための作品を仕上げていてこれに巻き込まれたのだ。
    「ウチノ君、寒そうですね」
    「どうってことないよ」
    「風邪を引かないように。お母様に迷惑をかけるようなことはしない方が……」
    「そうだね。今日はなるべく早めに寝た方がいいかもな」
    地下鉄に掛けられている時計が9時15分を指した。アナウンスが入る。
    『お客様にお知らせいたします。只今より○○線の電車の運転を――』


    列車が停まった。僕は窓の外を見た。停車場の灯りは見えないし、アナウンスも聞こえない。それでもドアは開き、冷たい風が入ってくる。
    乗って来たのは一人の少女だった。なんというか……儚げという言葉が形を成したような雰囲気だ。長い黒髪に白いワンピース。太陽の光を一度も浴びたことがないように見える肌には、痛々しい痣が首輪のように張り付いていた。
    彼女は僕の目の前に座った。裸足だ。何かで切ったのか、赤い切り傷が走っている。
    僕は彼女の姿から目を離すことが出来なかった。


    「死因は圧迫による窒息死、死亡推定時刻は夕方五時から六時の間。待ち合わせしていた友人が時間になっても来ないのを不審に思い訪ねたところ、この状態だったと」
    ヒメヤは話を聞いた後、部屋を見渡した。お世辞にも綺麗とは言い難い部屋だ。埃が積もり、本や雑誌が散らばり、ベッドメイクもされていない。
    「物盗りの犯行じゃなさそうだな」
    サクライが巨体を揺すって入って来た。スラリとして背の高いヒメヤは、自然と彼を見下ろす形になる。部下としてあまりいい行いとは思えないが、それほどサクライは背が低いのだ。
    「何故、物盗りではないと?」
    「机の上に財布が置きっぱなしにしてあるだろ。さっき中を見たが、札がぎっしり詰まっていたしカードも残っていた。物盗りならこれごと持っていくはずさ」
    「……」


    「君は、どうしてここに乗っているの」
    「部屋に戻ったら、知らない男の人がいて―― それから先は覚えてないわ」
    「その痣は?」
    「多分その人に付けられたんだと思う。すごく苦しくて、吐きそうだったから」
    また電車が停まった。ドアが開き、何匹ものポケモン達が乗ってくる。皆が皆、傷だらけだった。中には血を流している者もいる。
    彼らは思い思いの場所に座り、まどろみ始めた。


    「……死んでる」
    月明かりが差し込む廃墟。人のいなくなった闘技場。一人の女と、死神。
    『魂が見当たらない』
    「とっくに何処かに行ったんじゃないのかい?」
    女が倒れているナゲキの頚動脈に触れた。やはりこちらも死んでいる。
    「ここで何があったんだろうね」
    『分からない。だが、何らかの賭け事で彼らが戦わされていたことは間違いないようだ』
    電気の切れた掲示板。得点板。それらが何があったかを知らせていた。


    列車は海の上を走っているらしい。港町の灯が流れていく。
    「何処に行くんだろうね」
    「さあ」
    「でも不思議と恐くないんだ」
    「ええ」
    吊り輪が揺れた。少年は少女の隣に座ると、目を閉じた。


      [No.2037] はとおつ 投稿者:りえ   投稿日:2011/11/05(Sat) 08:47:54     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どうもリア充ぶっこいて投票忘れてましたすみません

    総評がハイパー説教タイムになってしまった死にたい。
    あと「これに負けたら自殺もん」がけっこうおおいけどたぶん負けてる
    なのでいませっせと縄を編んでいます


      [No.2036] おつかれさまです。 投稿者:渡邉健太   《URL》   投稿日:2011/11/05(Sat) 04:22:20     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ギリギリになって申し訳ないです。
    総評は個別コメントの方を使って送りました。
    確認よろしくです。

    いやー、こないだ小耳に挟んではいたけど酷かったね(笑)。

    では、また明晩。


      [No.2035] ■投票を締め切りました■ 投稿者:No.017   投稿日:2011/11/05(Sat) 03:35:47     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    投票を締め切りました。
    個別感想はフォームから投稿してください。


      [No.2034] ギアル、ギギアル、ギギギアルは早口言葉です(キリ 投稿者:心春   投稿日:2011/11/04(Fri) 00:26:00     33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ギアル、ギギアル、ギギギアルの三匹って、ずっと回転してるだろ? あの回転ってさ、北半球だと左回りで、南半球だと右回りなんだよ。んでもって、赤道の真上だと回転が止まるってわけ。
     ちなみにこれ、コリオレの法則っていうんだけど、規模が大きくないと作用しないの。なのに、ギアルたちは敏感に回転方向を変える。
     いやぁー、生きものの神秘ってやつだよね。

    ☆★☆★☆★

    でんきタイプお題で投稿しようと作ったら、ギアルがでんきタイプじゃなかったという罠。
    でんきショックとかじゅうでんとかでんじほう覚えるのに。位置的にも見た目的にもコイルと同じでいいじゃないか。
    お久しぶりすぎるものがこれって、これって……


      [No.2033] 進捗状況そのに 投稿者:渡邉健太   《URL》   投稿日:2011/11/03(Thu) 22:33:38     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    いま二十一作目まで目を通した−。
    明日いっぱいあるから、☆は全部付けられる。

    全部にコメントするのはちょっと難しい。
    モチーフだとか表現だとか、コメントするほど見るべきところのない作品が多い。
    たぶん深く読み込んでもそんなもんだと思うから、とっさにアンテナに引っかかったことだけ書いてます。


      [No.2031] Re: リア充報告 投稿者:No.017   投稿日:2011/11/03(Thu) 17:08:57     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    お疲れ様です!!
    とりあえず評価だけでもつけてください!(笑)


      [No.2030] 相棒 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/11/03(Thu) 00:32:52     86clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     固いタマゴの殻をやぶって、初めて見た世界は赤い毛皮だった。
     それが母親だと知るのは、本能的な匂いだった。すぐさま近寄って甘えるが僕は突き放された。
    「さようならぼうや」
    「ままー!!」
     それが唯一、僕の母親とかわした言葉だった。

     
     期待されてとりあえず生まれてみた。父親はアーケン。飛べない鳥。母親はメタモン。なんでも6vというポケモンの頂点にいるメタモンだそうだ。
     それなら僕まじ強いかもしれない。だってお母さんの子供だよ?強くないわけないじゃん。
    「HPと、あと防御もいいですね、特攻も、特防も、素早さも!」
     きのみジュースをもらってご機嫌な僕は、その意味は解らなかった。強いねってしきりにほめてくれた。当たり前じゃない、ポケモンの頂点の子供なんだから!
    「では、高額取引できそうだな」
     僕の所属している人間は、満足そうに笑ってたよ。それからモンスターボールに入れてくれたんだけど、それがその人間を見た最後だった。



     ガタゴトガタゴト
     とにかく揺れる。大きな音もする。ボールに入ったままのポケモンたちは気分が悪くなりながらもこらえていた。
     ポケモンの密輸。特に珍しいポケモンは外国への取引にはかかせない。時には重要な条約の賄賂ともなり得るのだから、ポケモンブリーダーは目の色を変えて強いポケモンを作り出そうとする。
     段ボールの中にはたくさんのボール。種族もバラバラだが、生まれたての強いポケモンが多く詰め込んである。ラクライコイキングフシギダネゾロアデルビルヒコザルラッキーストライクメラルバ。その他もたくさん。みな強いと判定されたポケモンだ。
     強いということは将来有望ということ。ポケモンバトルで活躍することを期待され、こうして密輸されている。
     その中のモンスターボールで、何が起きているか混乱しながらもイーブイは必死で耐えていた。母親から離され、どこだかも解らない空間で揺れていた。空腹を感じるのに、それを満たしてくれるものはなにもない。イーブイは母親を呼ぶように鳴き声を上げた。モンスターボールの中からは伝わらないというのに。


     それから数分後。鳴くのをあきらめ、イーブイが疲れて寝始めた頃。
     突然世界はひっくり返る。モンスターボールが入った段ボールが崩れ、天井に叩き付けられた。その衝撃でボールのスイッチが壊れて開かなくなったもの、セーフティまで壊れて開いてしまったもの、そのまま壊れなかったものがあった。イーブイはその中にセーフティまで壊れて開いてしまった方だった。
    「!?」
     自分は泥の上に立っていた。そして目の前には炎上する大きな機械。
     逃げないといけない。本能がイーブイにささやいた。反対方向に走り出すも、たくさんの開かないボールで足を取られる。ボールの中から振動を通して伝わる悲鳴がイーブイをさらにひるませた。
    「たすけてたすけて私もあけてここからだしてあついあついいたいよ」
     それらを全て無視してイーブイはなんとかボールの山を走る。けれど逃げ足ではなく、生まれて間もないイーブイが火から逃げられるわけがない。しっぽに火がつくという距離まで追いつかれる。
    「こっちこいよ!」
     首根っこをつかまれて、イーブイは炎の猛撃をかわした。
    「こっちだよこっち!」
     そのままイーブイは引きずられるように炎から遠ざかる。ときどき浮き上がるように飛ぶ感覚がする。


    「危ないところだったね」
     そいつはアーケンと名乗った。派手な鳥という印象を与える。
    「どうしてこうなったの?」
     アーケンにくわえられて高いところに避難できた。燃える現場が崖の下に見える。
    「僕に聞かれても解らないよ。でも寝て起きたらこうなってたんだ」
     アーケンは伸びをすると、下を見た。
    「あんなのじゃ誰も生きてないね」
     そしてイーブイを見るとくちばしをひらく。
    「僕たちだけみたいだね」
     事態が飲み込めてないイーブイがアーケンに聞こうとすれば、かわりに腹の虫が鳴る。
    「食べるかい? 半分こしよう」
     アーケンは持っていたオレンの実をくちばしで上手に半分に割ると、片方をイーブイに渡した。いいのかと聞くよりも、食べたいという欲求が先だった。口に入れてからいいのかと聞く。
    「オレンの実ならそのうちどこかで見つかるよ!」
    「うん。そういえば君、アーケンっていったけど、その名札にはなんて書いてあるの?」
    「名札? ああ、これFluegerって書いてあるんだ。僕の生まれた国の言葉さ。この国ではアーケンって言うらしいから」
    「じゃあFluegerって呼んでいい? 僕も名札にはSchneeって書いてあるの」
    「Schneeか、どこの言葉なんだろうなあ」
    「生まれた国に帰れれば、僕たちママに会えるかな」
    「そうだね。じゃあSchnee、帰ろう!ここからどうやっていくのか知らないけど帰るよ!」
     アーケンの固いくちばしで発音しづらそうにイーブイの名前を呼んだ。
     楽天的なアーケンのFlueger、一歩ひかえめなイーブイのSchneeは、どちらとも解らない方角へ、自分の元いた国へ帰るために歩きだす。


    ーーーーーーーーーーーーー
    手持ちです。
    Wi-Fiでかなり勝率の良いコンビ、アーケオスとグレイシア。
    外国産なので、きっと密輸業者から逃げ出して来たんだと勝手な妄想。
    もっと長い話にしたら、きっと短編じゃ追いつかない!だからさわりだけ書いてみた。
    【好きにしてください】【書いてみた】


      [No.2029] リア充報告 投稿者:渡邉健太   《URL》   投稿日:2011/11/02(Wed) 02:12:03     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    いろいろと無事では済まなかったけどハロウィンの仕事を終えて、
    月曜日はライブ観覧、火曜日はみなとみらいデートしてきました。
    なので、まだ一作も読んでません。


      [No.2028] 電球咥えた電気ポケモンって可愛いと思うんだ 投稿者:海星   投稿日:2011/10/31(Mon) 23:04:10     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     久し振りに徹夜をした。
     寒いし静かだし寂しいのでCDでもかけようかと思ったが、ちょっとカッコつけてラジオにしてみる。
     選局ボタンを長押しして適当に電波をキャッチしてみると、滑らかなピアノの旋律が流れてきた。
     だがしかし聞いていると眠くなってきたのですぐ消した。
     これぁ駄目だぁ。
     デジタル目覚まし時計を見ると日付が変わって随分経っていた。
     もう寝よっかなぁ。
     明日はテストである(しかも結構大事)。
     勉強スイッチが入ったのは昨日の夜である(テスト二日前の夜)。
     まだプリント終わってないけど寝ちゃおうぅう……。
     仕方ないので社会の教科書片手に布団に潜り込む。
     が、電気に悩む。
     のろのろと這い出て机の蛍光灯を片方点けたまま部屋の明かりを消すと、想像以上に明るかった。
     これでは寝られない(普段は真っ暗)。
     試行錯誤の末、要らない紙を蛍光灯に貼りたくり、何とかぼんやりさせることに成功した。
     まだ明るめだが……妥協しよう。
     もごもごと口の中で教科書を読みながら温まった毛布に戻り、寝心地を追求する。
     ああ……眩しい。
     持ち上げた腕が痛くて教科書を投げ捨てる(訳にもいかず枕の下に忍ばせる)。
     ああ……電気タイプのポケモンがいたらなぁ。
     ふと、テスト一週間前のくせにダイヤモンドのポケトレに目覚めたあの日を思い出す。
     四十連鎖ちょっきりで飛び出てきたあいつ。
     あの桃パチリスが蛍光灯代わりに机で寝そべっているのを想像する。
     確か性格きまぐれだったな、ふふ。
     桃『何か眠くなってきた……電気消していい?』
      『ええ、どうせ勉強してないじゃん。この明度、微妙だから疲れるんだよね』
      『ていうか尻尾ピリピリしてきた』
     Me「あああ! カフェイン(紅茶)! カップ倒すなぁあノートがぁああ!」
     ん、そういや♂だった。
     桃『え? 電気エネルギー? ふっ、気が向いたら教えてやるよ』
     あのオレンジほっぺにもキザな笑窪はできるのだろうか。むふふ。

     ……何て考えていたらいつの間にか朝だった。
     いつの間に寝ちゃったんだろう、ていうか目覚まし時計を止めた記憶なんてない。
     あああプリント終わってない!
     慌てて布団から跳ね起きる、そんな日常。


    ―――――――――――――――
     
     お久し振りです。
     もうポケスコ速報チャットの季節ですか。
     何とかして見に行きます。

     ※この作品はノンフィクションです。

     【なにしてもいいのよ】


      [No.2027] うーん…… 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/10/29(Sat) 12:32:45     26clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     単にすり替えただけって感じですね……

     三人称が神の視点、一人称が個人の視点だとすれば二人称は読者を否応なく巻き込む視点、だと思います。視点が違う、だから書き方も違う。一人称には一人称の書き方があり、三人称には三人称の書き方があり、互いに置換可能では“ない”と私は思います。二人称についても同様に。だから置換しただけで二人称について結論づけちゃうのは早計じゃないかと。二人称について考察するなら二人称の為に書かれた文章を書くしかないのではないかな。

     個人的に、二人称は開発されてない分だけ実験のしようもあると思います。その分参考に出来る図書も少ないですが。

     色々書きましたが、やってみるのは悪くないし、面白いと思いましたよ。でもやっぱその作品はダルマくんがいいですw


      [No.2026] ダイゴさんとハルカちゃん。 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/10/28(Fri) 23:16:29     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「そうなんです!私のお父さんはジムリーダーで、私もお父さんを尊敬してます!」
     嬉しそうに家族のことを話す女の子がいた。今までたくさんの大人にこの話をしてきたが、いずれもお父さんと仲いいのねとかいいことだねと言ってくれていた。
     だから同じ反応を求めていた。自然と。気付かないうちに。
    「ふーん。あっそう。まあ、ジムリーダーなんて名前だけでしょ」
     その場の空気は凍り付いた。


     不機嫌な足音がする。その持ち主を特定するには時間はかからない。
     それが聞こえた時、彼の心臓は止まりそうだった。今やっているポケモン図鑑をまとめる作業に集中し、なるべく気付かないフリをする。
    「ねえちょっとユウキぃ!」
     その不機嫌な足音は部屋に入ってきてユウキの後ろに立つ。これは特大に機嫌が悪い。なるべくユウキは自分に降り掛からないように空気を読むモード最大に入る。
    「なんなのあのダイゴとかいう嫌味なトサカ頭!まじうぜえし!」
    「う、うん知ってるよハルカ……」
    「つーかあいつまじいつか殺す」
     ハルカの目は言っていた。もうそれだけで怒りに満ちている。その後に続く今日の嫌なことが予想できすぎてユウキは心の電源を半分オフにした。
    「殺すって、穏やかじゃないよハルカ……なんでそんなダイゴさんが絡むとかわっt……」
    「んだとコラ」
    「ひいいっ」
     目で殺す。視線だけで殺される。ユウキの心臓が大爆発寸前のマルマインのよう。
    「お前もボーマンダの餌がいいかああん?」
     いじめっこがカツアゲしてるかのような二人。むしろユウキは巻き込まれただけなのだが。もう心の電源は全てオフモードになった。全てハルカの気の済むまで黙ってることを決意する。
     その後もハルカのマシンガンどころかロケット弾のような話は続く。
     ダイゴもダイゴで、ハルカに嫌われてることなど百も承知。けれどうっかりとか偶然とかで会ってしまったら、彼女にしつこく話しかけるのも悪い。ハルカの表情は一切かわらないのに、ダイゴはずっとにこにこ話し続けていた。
     そして1年のうちに何度かクリスマスとかバレンタインとかホワイトデーとかそういう行事があったときなんて大変だ。特に去年は……。

    「やあ、ハルカちゃん。」
     さわやかな笑顔で近付いて来る。それに対し、ハルカの表情は一切変わらない。にこりともせず、ダイゴを見た。
    「はい、これプレゼント」
    「は?」
     ハルカが受け取ったのは、白い紙袋。なぜこんな唐突に?と問う前に、ダイゴは語る。
    「今日はホワイトデーだったよね。」
    「私、ダイゴさんにバレンタインあげてませんけど」
     悪魔で冷たく返す。この人のそういうところが嫌い。こういう嫌味みたいな絡み方をしてくるダイゴがまじで嫌い。
    「いいのいいの。僕があげたいからあげるんだから」
    「え?え?もらう理由がありませんからいりません」
     そういうダイゴは何が面白いのか、困るハルカを見て笑っている。嫌いな人に物を押し付けられ、ハルカもどうしようか迷った。が。
    「いりません」
     ハルカは紙袋をダイゴに投げ付け、回れ右をしたかと思うと自転車であっという間に遠くへと行ってしまった。
    「やれやれ、嫌われたもんだ。」
     足下に落ちた袋を拾い、砂を払う。小さくなっていくハルカの背中を見つめてダイゴは「大成功」とばかりに笑いを堪えていた。


    「・・・だからいい加減ハルカをからかうのやめた方がいいですって。そのうち殺されますよ?」
    「だってだって、1000円ちょっとで、こんな面白いもの見られるんだもの、映画見るより払う価値あるって。」
     ハルカに拒否されたことを、自慢気にユウキに話す。ユウキもなぜダイゴがここまでハルカに嫌がらせしているのかを知ってるようになってしまった。
    「いやだからですね・・・。」
    「だってかわいい後輩だよ!?ハルカちゃんも『ありがとうございます』って笑顔で受け取ってゴミ箱にぶち込むくらいのかわし方できないしさー!!!まあ、それやられたら僕が面白くなくて次から何もしないだけだし。そっちの方がまわりの見ている人の印象もいいのに、なんでできないのかなー。本当にあの子面白くて。」
    「いやだから・・・。」
    「別に僕はハルカちゃんに後輩以上の可愛がりはしてないし、それ以外、特別には思ってないし。だからね、僕に本気で突っかかって来るのがおかしいんだって。勝てるはずないのにねー!」
     その被害は全てユウキが被っていることを、ダイゴは全て知っている。はた迷惑な後輩いじりに、ユウキも返す言葉がなかった。



    ーーーーーーーーーーーーーー
    ※実話です
    ※実話です
    ※大事なことなので二度いいました。

    こういうバトルは、端からみてるとかなり面白いです。ごめんなさい。
    萌えたいからダイゴさん書くといって、こんなのしか浮かびませんでした。ごめんなさい。萌えません。むしろダイゴさん酷すぎる。
    ダイゴさんのセリフは言い放った人の言葉そのままです。まじです。
    「ジムリーダーなんて名前だけ」の意味がハルカは多分子供だから解らないんです。
    意味が解った人は挙手!
    【好きにしてください】


      [No.2025] 実験:二人称の文章 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/10/28(Fri) 20:44:39     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「な、何だこりゃ!?」

    ある日の夕方、ジョウト地方ワカバタウンのあなたは椅子から転げ落ちた。あなたはすぐさま起き上がると、背中をさすりながらテレビにかじりついた。

    「では、今回は参加可能な人数が増えるのですね?」

    「そうです。今回のポケモンリーグセキエイ大会は、参加可能な人数を従来の128人から倍の256人に増やします」

    テレビ画面の向こう側では、メモをしている記者らしき人達に1人の男が話している。赤く、天に向かった髪と、黒マントに黒スーツという黒尽くしの衣装が印象的だ。

    「では、増加決定の経緯を教えて下さい」

    「わかりました。今までポケモンリーグは狭き門で、やる前から諦める人もたくさんいました。今回の決定はそのような人がいないポケモンリーグを目指すための措置なのです」

    「今回の決定による変化はどのように予測されますか?」

    「そうですね、1つ目は今まで挑戦したことがない人がチャレンジすることによって、新たな才能を見つけだすでしょう。2つ目はトレーナーが活発に動くことによって町同士の交流が活発化します」

    黒尽くしの男からの言葉に、記者達は思わず声を漏らしたり、メモに殴り書きをしていた。ペンの音がテレビ越しに聞こえてくる。
    「では、これで発表を終了します」

    黒尽くしの男は一礼をすると、そそくさとその場を後にした。その映像を見終わったあなたはテレビの電源を切った。すると画面から映像がゆっくりと消えていった。

    「これはもしかしたら行けるかもしれない」

    あなたは焦る気持ちを押さえつつ、自分の部屋から出て階段を駆け下りた。目指す場所はリビングだ。

    「父さん聞いてくれ! 俺旅に出ることにしたよ!」
    あなたは自分の父に向かって話し掛けた。父はすぐさま振り向き、尋ねた。

    「旅だと? この間まで行きたくないと……ははぁ、さっきの番組か」

    「そうだよ。ポケモンリーグが開催される。しかも今回は本選に参加できる可能性が高いんだ。こんなチャンス滅多に無いよ!」

    一気にまくしたてるあなたをやんわりと止めた父は、窓から暗い空に浮かぶ雲を眺めながら話した。

    「それはお前の決めたことだ、好きにしなさい。だがお前は俺の息子だけあって、野心が途中で消え失せるからなあ」

    「大丈夫だよ父さん。今回は最後までやりとげる! 安心して待っててよ」

    「……そこまで言うならもう何も言わん! 自分の決めたことを貫け!」

    「ありがとう父さん!」

     あなたは笑顔で荷物の準備を始めた。その間ずっと笑っていたのは言うまでもない。




    翌朝。すっかり荷物の準備を整えたあなたは、リュックサックを背負うと、家の外に出た。

    「準備できたか」

    腕を組んでいる父に、あなたは軽く答えた。

    「大丈夫だよ。……あ」

    「どうした?」

    「……ポケモン貰わなきゃ」


    その朝、町中を走る親子が見かけられたのはここだけの話である。



    二人称ってどんな感じなんだろう? と思い立ち、「ダルマ」を全て「あなた」にすり替えてみました。読者からの印象はどうでしょうか。個人的には、わざわざやる必要はないとは思いました。


      [No.2024] 【015】の批評というかほぼ感想 投稿者:我が輩はNo.017だった   投稿日:2011/10/27(Thu) 08:31:55     88clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    <デリバード君へ>
    ポケモンの価値はバトルの強さではありません。
    容姿のかわいさ・かっこよさもありますし、何より我々二次創作クラスタがもっとも重視するのは「設定」なのです!!
    その点あなたはかなり優遇されています。
    クリスマスになれば必ずといっていいほど出番があり、小説や絵もわんさかあります。
    もっと自分に自信を持ってください。
    めざめいしで進化はできないと思いますが虐ネタはほどほどにね☆


      [No.2023] ■11/5 ポケスコ結果速報チャット 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/10/25(Tue) 20:52:59     189clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    No.017です。
    この度はポケモンストーリーコンテストに応募をいただきまして、ありがとうございます。
    投票期間11/4(金)いっぱいまでとなっておりますので、
    皆様、ぜひ投票をお願いいたします。

    今回も恒例の結果速報チャットを行う予定です。

    11/5 (土)の18:00〜0:00 (流れ解散)

    作者の発表と批評の紹介を交えながらじっくり、たぶん日付が変わるまで行います。
    作品によっては、りえさんから変なニックネームを頂戴できるかもしれません。
    ご都合があいましたら、ぜひともご参加ください。
    途中参加、途中抜けも歓迎です。
    (入ってきてくれるとうれしいけど閲覧だけでも構いませんヨ)

    <チャットのだいたいの流れ>
    ・No.017による前置き
    ・No.017による審査員紹介
    ・ポイント獲得数が少ない順で、作品作者紹介、批評抜粋
    ・ベスト3の発表(だいたいこのへんで0時近くなる)
    ・しばし歓談
    ・眠くなった人から流れ解散

    何卒よろしくお願いいたします。
    では!


      [No.2022] 続いていましたね 投稿者:マコ   投稿日:2011/10/25(Tue) 07:39:13     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    おはようございます。マコです。
    ぼんくら頭の青年さんは、友人のタイフーンさんに何かいいようにしてやられてましたね……。
    ケーシィのテレポートでジャイアントホールまで飛んで、キュレムと声だけご対面してますし、溶岩がたっぷりな場所まで行ってしまいましたし!溶岩の場所はどこなのでしょうね?
    結局、ムシャーナが青年の所に来ましたが、夢の煙を換気扇で排気したらろくでもないです。
    また、セレビィとのE.T.には思わず爆笑しました。ドタドタしている最中のそれ……。
    大人と小さいポケモンとが指と指を触れあわせている様は、なかなかきます。
    前後編すべて面白かったです。


      [No.2021] Re: からをやぶるの罠 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/10/24(Mon) 12:39:26     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    これはひどい。
    誰かイラスト化してくださいw


      [No.2020] からをやぶるの罠 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2011/10/24(Mon) 09:58:29     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     これは、今となっては昔の話だが、ハンテールという地味なポケモンがいた。なぜ地味かといえば、単純に弱いのと、分岐進化のサクラビスや進化前のパールルが目立っていたからである。

     ところが、そんなハンテールにも遂に好機が巡ってきた。なんと、非常に強力な「からをやぶる」を習得したのだ。喜んだハンテールは、早速幼馴染のサクラビスを呼んでバトルをすることにした。

    「へっへっへ、やっと俺がお前に勝つ時が来たぜ、サクラビス」

    「あら。確か、からをやぶるを使えるようになったのよね。もちろん私も使えるけどね」

    「な、なんだと! えーい、それでも勝つのは俺だ! いくぜ、からをや……あ、あれ?」

     ハンテールは体中に力を入れた。ところが、何も変わった様子はない。よくある「大した変化はないけど格段に強化されている」という展開でもない。ハンテールは訳が分からない様子だ。

    「な、なぜだ! からがやぶれないなんて……」

    「うーん、もしかしたら『やぶるからがない』から失敗したのかもね。じゃあ今度は私の番、ちょっと恥ずかしいけど……えいっ!」

    「おおおおおおおおお!」

     サクラビスは貝殻のようなひれをぱりんとやぶり、はたから見ても分かるくらいに能力が上昇した。ハンテールは思わず鼻血を噴出する。

    「それじゃ、これで終わりよ。めざめるパワー(草)!」

     サクラビスは有無も言わせず攻撃し、ハンテールを吹き飛ばしてしまうのであった。



     自分のことはよく知っておきたいものである。



    お題:ハンテールで書いてみた。正直、ここまでネタの湧いてこないポケモンも久しぶりです。ネオラントも書いてみたいけど、いじる部分が少なすぎる。これらを見ると、まだ唯一王は恵まれている。

    ちなみに、ハンテールが「からをやぶる」を使っても失敗することはありません。


      [No.2019] ックックック 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/10/21(Fri) 23:38:41     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どこまでもストーカーしてやんよ。
    ぴじょーん


      [No.2018] 鳩をどけろ、カメラを回せ 投稿者:紀成   投稿日:2011/10/21(Fri) 20:41:26     83clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ピジョンが住み着いていた。
    それは、私にしか見えないようだった。なんとも無い、普通のカメラなのに、私がレンズを覗いて何かを撮ろうとすると、必ず一羽のピジョンが景色の中に映っていた。シンオウ地方の大平原、カントー地方の田舎道、ジョウト地方の紅葉道、ホウエン地方の大海原。
    そして私が住むイッシュ地方の大都会の中にも。

    普通の人にはただのカメラらしい。以前友人に見てもらったが、特に変なことは無く写真が撮れた。丁度夏休みだったため、一面の向日葵が眩しかった。だが、もう一度私が撮ると必ずピジョンが咲き誇る向日葵の中でこちらを見ているのだ。
    ある時は大平原上空で空を飛んでいた。
    またある時は田舎道で土をつついていた。
    そのまたある時は紅葉道で振り返っていた。
    そしてまたある時は大海原で餌を採っていた。

    何回『疲れているのかな』と思っただろうか。医者に相談しても、何の解決方法も見出せない。何しろ、『疲れているのだから旅行にでも行ってきなさい』と言われ、すっきりしたところでそのカメラを取り出してみても、やはりピジョンが映っているのだ。
    これはノイローゼなのか。いや、もっと別の何かなのか。
    私はピジョン恐怖症になりそうだった。否、なりかけていた。

    丁度その頃、高校時代の同窓会があり、私は生まれ故郷のカントー地方に出かけた。何故こんな時に限って同窓会なんて開くんだ、と思ったが友人には会いたかった。皆それぞれ仕事に就いていて、その話に花が咲いた。ある者は観光会社に就職し、ある者は保母さんになり、ある者は小説家になっていた。
    『こうして見ると、よくあんなにやんちゃしていた自分が社会に出れたなって思うよ』
    友人の一人が呟いた。彼は高校時代、勉強せずに部活に専念していた人物だった。
    『そうね。大人になりたくない、言いなりなんかになりたくないって言ってた私たちが……』
    そういう彼女は不良グループに入っていた。今思えば、それも小さな可愛い物だったのだが。
    『知識もついた。金も稼げるようになった。充実しているはずなんだけどな。
    でも正直に言えば、あの頃は夢を見ていたんだ』

    夢を見ていた。
    その言葉が、いやに引っかかった。

    『下らない話で笑い転げたり、学年の可愛い子に一斉に告白して玉砕したり、ガキっぽい原因で喧嘩したり……
    見えない明日を恐がることもなく、ただ楽しんでいた』

    私は同窓会の名簿を見た。一人だけ、いなかった。聞けば、警察官になった者だという。随分今日の同窓会を楽しみにしていたようだが、昨日殉職してしまったらしい。
    『おい、記念写真撮ろうぜ』
    皆が皆、デジカメを取り出す。私もあのカメラを渡した。さて、今回は大丈夫だろうか。
    『撮るぞー』

    パシャリ、という音がした。


    案の定、写真にはピジョンが映っていた。俺の友人の膝の上に、ちゃっかり座っている。
    ……
    今の生活に、不満はない。それは友人達と同じだ。だが、俺の目にはピジョンが映っている。何を象徴しているのか。過去への執着か、それともこれから先の不安か。
    どちらでもいい。

    避けて通れる物、通れない物。
    退けることが出来る物、できない物。

    どうやら俺がいくら退けようとしても、ピジョンは退いてはくれないらしい。
    ならば。


    『鳩はどけずに、カメラを回せ』


      [No.2017] まだ覚えてくれたとは!!!!11 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/10/21(Fri) 19:20:06     24clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > わーツグミだぁ!
    まじっすか!覚えてていただけましたか!
    もう忘れられたかと思い、いまさらどうなんだと思いましたが、覚えててくれた人がいるなんて、書いた甲斐がありまくりです!!!
    >
    > 久しぶりに彼女の話が読めて嬉しい、イケズキです。
    > しかも、ゾロア進化してた! これは……いいw!
    >
    > 机の中のゾロアと、カボチャランタンの中のゾロアークでは大きな違いっすねw
    > ツグミちゃん泣いてしまって、ゾロアークの高い鼻が……
    きっとゾロアも進化して、少しツグミに甘えてしまってるんでしょうな。
    そして少しのイタズラ心がw

    >
    >
    > 黒蜜が灯夢ちゃんに振り向いてもらえる日はくるのか……
    > なんなら池月がアドバイスを……違うか
    池月「いいか黒蜜。まず女の子を口説くにはもふもふをほめろ」
    黒蜜「も、もふもふなのか!?」
    池月「そうだ。もふもふだ。ロコンの毛皮は炎と相まってもふもふ度がアップしている。そこをほめて口説き落とせ!そして最後はこういうんだ『貴方のもふもふに乾杯』」
    黒蜜「……もふもふに乾杯……」
    池月「そうだ!そしてウインクすれば落ちる!もうもふもふは手の中だ!」
    黒蜜「お、おう!」
    >
    >
    >
    > 【アトランティックジャイアントぅす!】
    【アトランティックジャイアントぅす!!!!】


      [No.2015] マッギョ教 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2011/10/21(Fri) 10:29:11     84clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     これは今となっては昔の話だが、おかしなことを言ってポケモンたちを惑わすケンホロウがいた。あるとき、ケンホロウはこう言って回った。

    「皆さん、現在はまさに世紀末です。来年にもこの世界は滅亡します! ポケモンたちには一切の逃げ場は残されていません! しかし、私が今から紹介するマッギョの教えを受け入れたものは、この危機から解放されることが約束されているのです! さあ、あなたも今日からマッギョ神を崇めましょう! なお、信仰料として1匹10000円を徴収します」

     今までは馬鹿馬鹿しい話で相手にされていなかったが、ポケモンたちの不安をあおったケンホロウは、たちまち信者を増やしていった。

     こうして1月が過ぎたころ、いつものように布教に励むケンホロウに、とあるテッシードはこう尋ねた。

    「マッギョがポケモンを助けるって言ってるけど、どうやって?」

     ケンホロウは答えることができなかった。このことは瞬く間に各地へ伝えられ、マッギョ教は消滅していったそうだ。



     どんな時でも、冷静さを失わずにいたいものである。



    説話風の話、久々に書きました。多分髭抜き以来。
    巷では2012年に世界が滅びるとか人類が滅亡するとかいった思想が幅を利かせているみたいなので、それを皮肉ってみました。


      [No.2014] Re: ハロウィンパーティ 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/10/20(Thu) 21:31:41     20clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    わーツグミだぁ!

    久しぶりに彼女の話が読めて嬉しい、イケズキです。
    しかも、ゾロア進化してた! これは……いいw!

    机の中のゾロアと、カボチャランタンの中のゾロアークでは大きな違いっすねw
    ツグミちゃん泣いてしまって、ゾロアークの高い鼻が……


    黒蜜が灯夢ちゃんに振り向いてもらえる日はくるのか……
    なんなら池月がアドバイスを……違うか



    【アトランティックジャイアントぅす!】


      [No.2013] ハロウィンパーティ 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/10/20(Thu) 21:14:33     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    #1
     ずいっと一匹の大きな黒いキツネが覗き込んだ。
    「なにをしてるんだ?」
    覗き込まれた女の子はにっこりと答える。
    「ハロウィンのランタン作ってるんだよ」
    「ハロウィン?」
    りっぱなたてがみが頭の動きと同じように揺れる。
    「死んだ人がね、1年おわって帰ってくるから、その前の夜の日のお祭りだよ。ゾロアークも作る?」
    「俺もやりたい!カボチャくりぬけばいいんだな?」
    「うん、その後は乾燥させてその中にろうそくをいれたら、ゾロアークの火炎放射で火をつけるんだよ」
    「解った!」
    そうした作業をしながら、ハロウィンについて話を聞いている。するとゾロアークはあることを思いつく。このカボチャランタンで脅かしてみてもいいんではないかと。
     堅いカボチャをくりぬき、恐ろしい顔にして夜を待つ。

     そして、待ちに待った夜。ろうそくに火を灯してゾロアークはそれを持った。もうすぐハロウィンパーティに行くために家から出てくるはず。その玄関から出てきたときがチャンスだ。
     いってきます!
     ホラ来た。驚いた顔を想像したらゾロアークは楽しみしすぎて仕方ない。頭はカボチャランタン、体は幽霊のようなひらひらマントに見せながら飛び出した。
    「お化けだぞおお!!!!」

     正直、ゾロアークはキャーとかぎゃーとか、とにかく女の子らしい悲鳴を期待して、その後によく出来たランタンとほめてもらえるものだとおもっていた。けれど実際の反応といえば。
    「!!!お化け!!!!!」
     パーティのための服装のまま、大泣きしてしまったのである。これにはゾロアークもたまったものではない。必死で謝って、顔を近づけて頬をなめる。
    「ごめんツグミ、そんなつもりじゃなくて……」
    この二人が出会ってからというもの、こんなことはなかったのに。ツグミも驚いたのかゾロアークの方を見ようともしない。怖くてそれどこじゃなかったようだった。
    「ツグミ、ごめん俺だって。だからハロウィンパーティ行こうよねえねえ」
    「いやー!お化け嫌い!!!」
    ツグミの放ったメガトンパンチが、ゾロアークの鼻をがっつりとらえた。

    #2
    「アトランティックジャイアントゥす!」
    謎の言葉をつぶやきながらオレンジ色のカボチャを叩き割る。大きなカボチャは、そのポケモンを飲み込みそうなくらい。
    「はぁはぁ、なあ、金柑」
    大きなアトランティックジャイアントに乗って、ゾロアは言った。
    「あとどれくらいやるんだ?」
    その隣では金柑と呼ばれたライチュウがオレンジのカボチャを次々に箱から出している。
    「知らん。元はといえば黒蜜がハロウィン特集でカボチャ団子やりたいっていうからこうなったんだろ。責任持て」
    砕いたカボチャのかけらを人間が鍋で煮て柔らかくして、餡にしたら団子の形にしていく。もうこの作業のため、黒蜜の足はベトベト。部屋も心なしかカボチャくさい。
    「はぁ・・・いつになったら終わるのかよ」
    「・・・昨日、灯夢ちゃんが来て『あのゾロアはんは元気どす?』って言ってたぞ。クリスマスもあること言ったら、楽しみにしてるっていってたのに残念だなあ」
    金柑はわざとらしくため息をつく。クリスマスの意味わかっているのか知らないが、黒蜜はとてもノリノリ。
    「そうだ!クリスマスもやって、俺は灯夢ちゃんに振り向いてもらう!アトランティックジャイアントぅ!」
    単純すぎるゾロアの和菓子屋は、今日も一応にぎわっている。

    ーーーーーーーーーーーーーー
    マサポケに投稿した順にハロウィンネタ。
    ツグミとゾロア
    黒蜜と金柑

    くらいしか投稿した記憶がない!!!!

    ※アトランティックジャイアント
    ハロウィンのおなじみカボチャランタンの品種
    あまりおいしくないらしい。食べた事はない。

    【好きにしてください】


      [No.2012] いつかのメリークリスマス 投稿者:紀成   投稿日:2011/10/20(Thu) 20:06:39     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    吐く息が、白い。まるで白い毛糸の束のようだ。だが毛糸と違うところは、天に昇ろうとして、一瞬で消えてしまうところだろう。
    十一月下旬、この時間帯は既に冷たい空気に包まれ、とてもじゃないが上着が必要となる。ついでに言えば薄いマフラーのような物も欲しいところだ。
    「……」
    私はコートのポケットに手を入れた。ゆっくりと、夜の姿へと変わっていく繁華街。客引きの声は途絶えることなくせわしなく行き交う人々の耳を通り抜けていく。
    道の真ん中で、空を見つめて立ち止まっている私を、人は特に気にもせずに避けていく。誰もが皆、この冬に近くなっていく寒さと情景を楽しんでいるように思える。

    あれは、彼女が高校三年生の冬だった。
    『少し店を頼む』と言い、何か言いたげな彼女を残して店を出た。その場所もネオンが煌く繁華街で、既に時計は八時を回っていたが人がいなくなる気配は無かった。むしろどんどん増えていくような感じがした。
    私は走り、いつだったか彼女が見つめていたアンティークショップに入った。ショーウィンドウに飾られていた、どことなく英国を思わせるような色合いのマフラー。
    プレゼント用にしてもらい、店を出る。私の足は自然と早歩きになっていた。たかがイベントのプレゼントを買うためにこんなに幸せな気持ちになるなんて、思いもしなかった。
    幸せそうなトレーナーとポケモンが、大きな包みを抱えて歩くのを何度も追い抜いた。彼女は――
    喜んでくれるだろうか。


    店の裏口から、中に入る。丁度最後のお客が帰ったところだった。ここのカフェで働いているのは私と、彼女だけ。アルバイトは募集していなかった。募集できるだけの金も、必要とする時間も無かった。
    「あ、お帰りなさい、マスター」
    「遅くなってすまない」
    彼女は布巾でテーブルを拭いていた。彼女のマグマラシが寄ってくる。頭を撫でてやれば、気持ち良さそうに目を細めた。
    「表、大分冷えてきたみたいですね」
    「ああ」
    「……曇ってきたみたいですね」
    元々ネオンだらけで星も見えない街。だが、今日は別の何かが空を多い尽くしていた。

    「ユエさん」

    以前、彼女に聞いたことがあった。自分の名前が、何故『月』と書いて『ユエ』なのか。瞳が月のように丸く、透き通った色をしているからだという。祖母が昔中国に住んでいて、それで付けたという話もあるようだが……
    「何ですか、マスター」
    「これを」
    ギンガムチェックの袋に、真紅のリボンがかけられた包み。
    彼女の丸い目が更に丸くなった。
    「マスター、これは」

    「クリスマスおめでとう、ユエさん」

    彼女の目から、雫が落ちた。慌ててハンカチを出そうとするが、彼女はそれを止めた。
    「誰かにプレゼントもらうなんて……すごい久しぶり」
    「前にあの店のショーウィンドウを見つめていたことを思い出したんだ」
    「でも私……何も用意してない」
    「いいんだ」
    「じゃあ……せめて、食事作らせてください。いつか、と思って練習してたんです」
    彼女はマグマラシを抱き上げた。そして言った。

    「待ってていただけますか?」


    「マスター!」
    長い回想に耽っていた私を現実に引き戻したのは、双子のタックルだった。石畳にキスしかけたところを、ドレディアが支えてくれた。
    「……ヒナさん、ヒメさん」
    「何ボーッとしてんのよ!何か『心ここにあらず』って感じだったわよ」
    いや、本当にそうだったのだが。
    「買出し終わりましたよ。帰りましょう」
    「今日はあたし達が作るから!」
    「……気絶しない物を頼むよ」
    ドレディアが心配そうに見つめてくる。大丈夫、という顔で私は双子の後に続いた。

    あの時と同じ、幸せそうな顔をしたトレーナーとポケモンが、私の横を通り過ぎていく。


    ――――――
    季節はずれ…というよりかは時期はずれ?
    もうどうにでもなーれ!(やけくそ)


      [No.2011] 【029】ともだち記念日 批評 投稿者:我が輩はNo.017でした   投稿日:2011/10/20(Thu) 20:03:50     104clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    せっかくなので、私もちょっと晒してみます。


    【029】ともだち記念日
    主人公が何を送ろうか迷う場面を丸々省いてしまったが為に、最後のバトルにも意味づけや説得力が無く、薄っぺらくなってしまった。きちんと過程を描くからこそ説得力があるのです。
    たとえば、いろんなトレーナーにアドバイスを求めて、いろいろ勧められるけど、どれもしっくりこなくてそのうち日が暮れたとか、デパートで店員に次々いろんな品物を勧められるなどあったりしたらよかったと思う。
    ポケモン世界には素敵なアイテムや変なアイテムがたくさんあるんだから使わないのはもったいない。攻略サイトや攻略本を眺めるだけでもアイディアはいくらでもでてくるはず。そういうエピソードを10個くらい突っ込んでおけばだいぶ賑やかな小説になったんじゃないのかな。

    例1:いろんなトレーナーに勧められる
    ・ロケット団員にヤドンのしっぽを買わされそうになる
    ・りかけいのおとこにあやしいパッチを押しつけられそうになる
    ・作業員にゴツゴツメットを勧められる。いや、そういうのはちょっと…
    ・オカルトマニアにのろいのおふだを勧められ、苦笑い
    ・おじさんにきんのたまを見せられて、逃走
    ・なぜかピッピ人形を勧めるスキンヘッズ

    例2:デパート
    ・なんたってドーピングアイテムでしょう→お金ないです
    ・はかいこうせんの技マシンなんていかがです?→そういうのはちょっと…
    ・くろいメガネが最近流行ってるんですよ→つけないからいいです
    ・きのみがよく育つこやしはどうでしょう?→間に合わないです
    ・たべのこし→腐ってるじゃないですか!
    ・おじさんのきんのたま→なんでそんなもの売ってるんですか!

    ……ちょっとふざけすぎましたが、とりあえず例はいっぱいあるということが言いたかった。
    攻略サイトは意外と役に立ちますのでぜひ一回見てみてください。資料集めは大切です。

    【雑感】過程を書きましょう
    【タグ】リオル
    【お題解釈】プレゼントを送る


      [No.2010] 『ポケモンの遺骨を譲ってください』(仮) 投稿者:りえ   投稿日:2011/10/20(Thu) 00:02:59     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ・主人公の死生観がよくわからない。
    なので、「平気そうにふるまっているだけなのか」「死に対して何も思わないだけなのか」もよくわからなかった。
    たぶん「平気そうにふるまっているだけ」なんだと思うのだけど、
    そうだとしたらもうちょっとわかりやすくかけるとうれしいと思います。
    (ポケモンのお墓のチラシみて少し嫌な気持ちになる、だとか
    レパルダスのポケフーズの残りを見て「新しいのはどの大きさのを買えばいいだろうか」とか考えてる自分が嫌になるとか)
    たぶん、アシタバさんみたいなのに会っちゃったのも、動揺の一部だとは思うのだけど。

    ・ここさえ書けてれば、たぶんこの作品に対してだいたいのひとが思っているもやもや感がなくなるとおもうます。


      [No.2009] 『まんまるふくろう、タマネギを待つ。 』感想(仮 投稿者:りえ   投稿日:2011/10/18(Tue) 22:14:08     79clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ・作者はもっと物を読んでそれをコピーして書くといいと思う
    好きな小説(出版されている奴)の真似をして書いていくといいよ。


    まず言いたいことは「読みづらい」です。
    そのことをどう解決するかを考えてみました。以下の通りです。

    ・ホーホーの一人称のスタイルをとっています、このこと自体には問題がないです。
    ただし、一人称スタイルの鉄則に近い法則を無視しているので読みづらいのです。
    その法則は「できる限り思考を枝分かれ・後戻りさせないこと」です。
    おそらく、その部分を削ったらだいぶ、読みやすくなるのではないでしょうか。

    ・さらに、情報はできる限りまとめて出すといいと思います。
    祠だったら「祭りの主役が現れる場所」「ぼんやり光っている」「森の奥にある」など、さまざまな祠に関する情報があちこちに飛んでいます。
    これも、読みづらさを加速させる一因だと考えています。

    ・改行の使い方も、少し考えてみるとよいのではないかと思います。



    ちょっとだけ書き直してみました。嫌だったらごめんなさい。

    (出だし)
    広くなったり、狭くなったり。
    普通はこのことを、「長くなったり短くなったり」と表現するんだと、きょうの待ち合わせ相手は力説していた。
    ボクと、キミと、あとほかの誰かの言い方とか見方が違っても、いいと思うんだ。
    それを聞いた待ち合わせ相手のタマネギさんは、「めんどくさいから統一しようよ」ってむくれてた。


    次第に夜の帳も降りてきて、森の木々が、影なのか木なのかわからなくなってきた。
    この深い森の中に、今日のお祭りの主役のタマネギさんが現れる予定の、仄かに光る祠がある。
    祭囃子が街の方から聞こえてきた。お祭りが始まる合図だ。なんだかわくわくする。
    あっ。
    「ぽー
    ぽー
    ぽー
    ぽー
    ぽー
    ぽー
    ぽー」
    森中のホーホーたちが一斉に七度鳴いた。もうこんな時間だ。今年のタマネギさんは遅い。
    せっかく一年に一度の遊べる日だから、太陽が出てるときから待ってたのに。早く来てよ。

    止まっている枝が暖まってきた。夏のこの時期の暖かい枝は気持ち悪いので、僕はぴょんと別の枝に飛び移る。
    ちょっとずり落ちそうになる。眠いから。横目で祠を見ていたせいかもしれない。


      [No.2008] 『フライングニート』感想(仮) 投稿者:りえ   投稿日:2011/10/17(Mon) 22:51:00     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    (作者には既出)
    ・起承転結がきちんとあって、終盤にかけてきちんと盛り上がる。すごいと思います。

    ・難を言うのであれば
    「主人公のおかあさんがひとりだけ報われない」(未回収フラグとして残っている)。
    これを回収するために、引きこもっていた主人公の自転車がパンクして使えず、おかあさんのママチャリ(うしろに子供のせるのがついてるような古いやつ)を
    貸してもらって走りに行くみたいなところがあればいいのではないかと思います。

    ・さらに、親友に嘘をついているということの重みを増すために
    ネット上のやりとりすら主人公にはできない(=世界とのつながりは親友だけ)という状況を作り出すのが、いちばん手っ取り早いのかと感じました。
    ネット上の交流が主人公にあると、彼の感じている孤独が、なまぬるくなってしまうような気がして。


      [No.2007] いいねぇ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/10/17(Mon) 22:33:28     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > せっかくなので、「電気タイプ」を提案してみる。ロトムのこたつフォルムはまだですか。

    おk
    これで。


    ロトムのこたつフォルムwwwww
    この発想はなかったwwwww


      [No.2006] 『鳥籠の隙間』感想(仮) 投稿者:りえ   投稿日:2011/10/17(Mon) 22:27:13     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ・大事なポケモンが死んで悲しんでるとってもかわいそうなひとに、こんな失礼な口の効き方するやつはもう通報されるべきだと感じました。
    ただただもう、“陋劣な彼”がムカつきます。
    中二病ひきずっちんじゃねえよタバコ吸うような年齢になってまでよ! というものが主な感想です。

    ・真面目な話、喪失の直後(喪服を着ているなどの描写から察するに、亡くなってすぐみたいですね)だと、「居なくて悲しい」よりも、
    「何が起こったのかよくわかりません」という気持ちのほうが強いのではないか、と思います。
    そして徐々にじわりじわりと居ないことに強制的に気が付かされるというのが、
    大切なひとやものがいなくなったときの感覚なのではないかと思います。
    個人的な亡くした経験からすると、
    とてもこんなに言葉は出てこなかったような気持ちにすらなります。

    ・なので、一年ぐらい経った設定で、ポッポへの手紙という形にすればいいのではないかと思います。


      [No.2005] Re: ■ポケストお題募集 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/10/17(Mon) 22:01:55     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    せっかくなので、「電気タイプ」を提案してみる。ロトムのこたつフォルムはまだですか。


      [No.2004] 「準備」がいいです 投稿者:りえ   投稿日:2011/10/17(Mon) 21:03:39     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    理由はとくにないけど、もうすぐ冬だし


      [No.2003] 『Limbo』(仮) 投稿者:りえ   投稿日:2011/10/17(Mon) 21:00:51     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    (追加コメント)
    ・主人公の「ポリゴン亡くした」っていう喪失感やくやしさをセリフだけではなく、しぐさとかで表すとよいと思います。
    ・主人公以外の気持ちももっとほしい。長生きしたポリゴンなのだから。


    (以下作者さんには既出)

    ・Limboという単語の意味に、

    失われたもの、忘れられたもののための、架空の場所
    (an imaginary place for lost or neglected things)
    だとか、
    カトリックの教理で、小罪を犯した死者の霊魂が天国に入る前に火によって罪の浄化を受けるとされる場所、およびその状態。天国と地獄の間にあるという。
    等の、けっこうカオスな場なんですよ。
    ダンテが『神曲』で触れていた通りだとすると。

    なので、いきなり2chの書き込みみたいなのが現れるだとか、
    インタビューが始まるだとか、まったく話に関係ない人が現れて死生観を語るとか、もっともっとカオシックな作りでもよいのではないかと思います。

    ・なので自動的に、
    「大事なポリゴンが死んだ。悲しくて仕方ないのに、どこも受け入れてくれない。」これの提示を最初に行ったあとに、
    主人公の記憶や主人公にまつわることだけではないほうが、意図はとらえやすかったのではないか、と思います。

    ・作中でリンボの意味に触れましょうよ。


      [No.2002] はい鳩せんせい! 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/10/17(Mon) 20:27:38     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ぼく 「流れる」 が いいです!


      [No.2001] Re: ■ポケストお題募集 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/10/17(Mon) 19:59:23     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「食」なんてどうでしょうか。

    食欲の秋らしく、おいしい話が読んでみたいです!



    ……ぱくぱく、もぎゅもぎゅ、ごくごく


      [No.2000] ■ポケストお題募集 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/10/17(Mon) 19:45:01     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ぼちぼち募集します。
    新お題。
    何かよいお題はないかー!


      [No.1998] 『With Heart and Voice』感想(仮) 投稿者:りえ   投稿日:2011/10/16(Sun) 19:27:01     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    バトルは読むのも書くのも苦手なので、そこについては割愛。

    ・この話のメインなのだから、もうちょっと“ハルカの気持ちに関すること”の書き込みを増やしていただけると嬉しいです。
    好きな人ができた。そのひととのおしゃべりや、くれたものやら、
    かっこよさとか、だめなところとか、そういうものをもっともっと書き込むといいと思います。
    恋をする乙女の気持ちをぜひ追体験させてください。

    ・特にバトル中のハルカの気持ち
    (ex:なんでずっと黙ってたの など)に関して一切触れられていないのが、少し不思議です。
    いちばん心の中と頭の中がぐちゃぐちゃになっているところなのに。

    ・些細なことかもしれませんが、ハルカとダイゴが初めて出会った年齢に触れられていないのが不思議です。
    幼馴染の近所のお兄さんなのか、はたまたゲーム通りに旅の途中で会った不思議な人なのか、そのくらいは記述があってもいいと思います。
    好きな人とのファーストコンタクトは忘れないと思います。

    ・ラストのダイゴの手紙は、もうちょっと長くてもいいと思います。
    “ぼくの大切なポケモンを、ハルカちゃんにプレゼントするね。
    ハルカちゃんがこれから見る世界を、一緒にみせてあげてほしい。チャンピョンおめでとう。”
    ダイゴのセリフが少ないので、ダイゴがどんなひとかよくわからないのが残念です。


    こんなところでしょうか。


      [No.1997] 答え合わせです。 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/10/16(Sun) 19:03:40     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > > 1、その足は太く、大地を蹴りだす。力強く踏み込み、そのスピードはもはや風のよう。頭より伸びる角は無敵の象徴。
    > サイドン(笑)じゃなくって〜、
    > 「足が太い」ってのは気になったけど(^^;)ギャロップでFA!
    > でも、だとすると「太い」より「力強い」「たくましい」とかの表現の方がいいかも。
    なるほど!力強いが後にきてるから、たくましいがいいですね。ありがとうございます!

    >
    > > 2、まさに生物の神秘。夜空に浮かぶ星のごとく、中心が美しく光る。
    > ヒトデマン、またはスターミー。これだけだとどちらだか特定はできないかな。
    あー、ヒトデマンも光るのか!
    スターミーはコアが光るうんぬん図鑑にかいてあったような気がしたので。
    でも確かに特定できないですね。もう少し修行が必要だ。

    >
    > > 3、その姿を捕らえることなど不可能。見たものは全て残像。そして気付いた時には目の前の命はない。
    > これはちょっと難しかった。
    > でも確か動きが早くて残像しか見えない、って図鑑の説明文にあったかと思うのでストライクでFA!
    > ゲンガーでも確か影にひそんで姿を隠すとかあるし、「目の前の命はない」とかは合ってると思うけど。
    図鑑の説明まんまです!
    アギルダーとも解答がありましたが、ストライクです。
    テッカニンともとらえられる問題で、あまり良問とは言えず。
    もう少しストライクとしての特徴をがっつり書ければよかったです。
    >
    >
    > 最初3つとも同じポケモンを描写してるのかと思って悩んだのはナイショだ!(笑)
    それは内緒にしときます!!!1111


      [No.1996] 受けて立つ(三部) 投稿者:りえ   投稿日:2011/10/16(Sun) 16:37:29     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ここは山の中だ。寒さが限界だった。サンダーのために窓を少し開けておくとしても、ここよりか部屋の中の方が暖かい。
    研究所の一階角部屋の仮眠室。さっきはいろいろ考えたり食べたりで忙しくて気が付かなかったけど、
    ベッドが四台ある。窓を開けて、サンダーに入ってもらう。テコが棚をあさってる、手伝ってよ。ベッドを少しずらして、サンダーの居場所を作る。
    イノリウムの冷たさが気に入ったらしく、サンダーはへやの隅っこで、座っている。

    「おいヨウコ、いいもの見つけたぞ」

    テコがベッドの脇の棚の下から琥珀色の液体の入った瓶を取り出す。ニヒヒヒヒ。マッカラン17年だってフフフフ。
    「よくやった」ニヒヒヒヒヒ。眠いし寒いし、やっぱりここで飲んで待ってよう。ニヤニヤ笑顔が止まらない。サンダーがおびえた目でこちらを見ている。
    とりあえず一口。自前の平皿にマッカランを入れる。もうストレートでいいよなウフフ。
    あー、鳥ポケモンって水分摂取どうやるんだろうな。ずかんを見る。なるほどなるほど、くちばしに垂らせばいいんだなウヒヒ。
    平皿からテトが皿をなめている。顔なんて見なくてもわかるこの酔っ払いめウッフフ。

    「サンダー、良く眠れるお水を上げよう。体も温まるし、今日は寒いからね」
    「ギャア」だいぶ警戒されている。
    サンダーの目を見ながら、ボトルからコップにマッカランを入れて、わたしは一気に飲み干す。大丈夫よー、ちょっとなら毒じゃないよー。
    テトの平皿にも継ぎ足す。目を細めて舐めている。
    「ギャァ」サンダーがテトに寄ってきた。テトがサンダーのくちばしで、自分の口を拭う。そのくちばしをサンダーがなめとる。
    そうだね、それなら安心して飲めるね。フヒヒヒヒヒヒ。

    「ツマミほしいな」

    ちゅちゅあんたなんていい子なの。ソフトさきいか持ってるなんて! あ、塩もあるじゃん。
    なんてすばらしい発電所なのかしらフッフフ。サイコ―ォォォォ。
    塩ぺろぺろ。テトの平皿に酒だばだは。サンダーがテトの平皿の直接くちばしを突っ込みはじめた。
    くちばし舐めないと水が飲めない種族は大変だねよしもっと飲め。ちゅちゅが私から遠ざかっていく。ちゅちゅはお酒嫌いだもんねー。
    でもヨウコさんのことは好きだもんねー手がかわいいよねちゅちゅたん。くりくりくりくり。前足くりくりくりくり。
    すりすりしようとすると逃げるもん。酒の匂いが嫌いなんだって。

    ちゅちゅをすりすりしてるあいだも、サンダーは狂ったように平皿にくちばしいれてばちゃばちゃ言わせている。
    そうかお前いけるクチかぁヤッフゥゥゥゥゥゥゥ飲めぇぇぇぇぇ
    口を開けろぉぉぉッ
    サンダーの口に少しマッカランを垂らす。上を向く。ヘイ! またサンダーが口を開ける。垂らす。ヘイ!
    テトのかじるやりいかを一本にちゃにゃ食いながら、サンダーの口に垂らす。ヘイ!
    もうラッパでいいや。ウッヒィィィィ。

    「酒がそろそろ尽きそうね」

    サンダーにせっせと飲ましていた。気が付いたらテトが転がっていた。ちゅちゅも爆睡。
    酒が回りすぎているサンダーは、羽を床に広げて口だけ開け閉めしてマッカランを待ってる。
    サンダーはでかいので、それだけで部屋の端から端まで翼で埋まる。ウッヒャアでっかいのはいいことだ!
    「お前ら酒弱すぎだからな……」棚をごそごそ。やった、まだハーパーあるじゃんウッヒィィィ。

    「おいサンダーまだあったぞちょっと待ってろ」

    サンダーの口に少し垂らす。お、これもいけるかヒヒヒ。

    「お前顔怖すぎなんだよ」
    「ギェッ」少し垂らす。
    「でかいんだよ」
    「ギェッ」
    「普段何食ってんだよ」
    「ギェッ」少し垂らす。
    「あー、そうそう、今日のコレな、お前、電気とかだせんだろ、ちょっくらバイトしねえって話だから」
    「ギェッ」
    「地震あったろ、なんかな、野性の子たちも怪我して、助けてあげたりしてんだけどよ」
    「ギェッ」少し垂らす。
    「人間も死にかけてるし助けに行けねえしで」
    「ギェッ」少し垂らす。
    「あとお前目つき悪すぎだしちょう受ける。ちょっと写メとらせろ」パシャッ
    「うーけーるーちょううけるマジ目つき悪すぎなんだけど」床をこぶしでたたきながら爆笑。
    サンダーもグエグエ笑ってる。
    ウッヒヒィ。あったけえ、マジ部屋あったけぇ。
    「ギャッ」
    「あー、ごめんごめん」少し垂らす。
    わたしも一口。
    「あんた強いねぇ」少し垂らす。
    「私も強いほうだと思ってたけど、だめねぇ」少し垂らす。
    「ギャァ」
    「悪い悪い」少し垂らす。

    ハーパーが空になるまでサンダーに飲ませた。だめだ眠いもう寝る。
    てか寒いしそろそろ窓閉めて、寝るね。




    ニシカワからの大説教タイムだった。朝日もまぶしかった。私は、仕事でこの発電所に来ているはずだ。
    なのに、私はサンダーを酔いつぶし、なおかつ自分も酔いつぶれていたのだ。面目なさ過ぎて何も言えない。
    エリートトレーナーじゃなきゃ死刑だよ死刑。

    私たちが酒盛りをしている間に、発電所の人たちは真っ青になって山の中を探そうとしていたそうだ。
    ヨウコもテトもいない! サンダーにさらわれたか。殺されたか。そう考えたら真っ青になったそうだ。
    エリートトレーナーとはいえ女の子なのに、守ってあげられないなんて! とパニックを起こしていたそうだ。
    となり、せめて見られる範囲だけでも探そう! と、見える範囲の捜索をしている最中、研究所の職員の方が、
    明かりのついていた仮眠室を見つけ、明かりを消そうとドアを開けたところ、
    酒のにおいしかしないバカでっかい黄色い鳥と、酔いつぶれてるアホがひとりと一匹。眠りこけているちゅちゅ。
    その人が悲鳴を上げて、わたしたちは発見された。本当にごめんなさい反省してます。

    私たちが飲んだくれてた間に、物事は進んでいた。
    まず、琥珀はグレンタウンに転送された。ポケモン転送システムが生きていたのか、と思いきや、フィルが飛んで行ったらしい。
    トレーナーの命令でもないのに、とちょっと凹んだけれど、フィルに「ここ何日か、私以外の人が指示を出すかもしれないから頑張ってね」とは言ってあった。
    そして指示を出したのはここの発電所一番のトレーナー(らしい)の、メガネだった。
    バッジも6個持っていた。なるほど言うこと聞くわけだ。
    で、フィルが発電所からグレンまで、あの子がちょくちょく休みながら飛べば2日〜3日で着く。
    サンダーに琥珀の件はきちんと説明するのも難しいので、テトが今「羽をきれいに使える形にするために整えてる」と説明している。
    おっとりのサンダーは納得している様子。
    発電所職員さんたちは、徐々に届く物資を組み立てるのに忙しく、私たちはあまり相手にされていない。

    「ねえサンダー」

    私はサンダーに改めて話しかける。サンダーは少しは人慣れしたみたい。
    噂の不機嫌なサンダー、はどこにもいなかった。というか、いきなり見知らぬ人が襲い掛かってきて、自分にその力があるのなら、反撃する。
    簡単なことだった、それなりに頭がいいポケモンに、いきなり襲いかかったらアウトだ。
    それだけのことが分かってもらえずに、この頭のいいおびえたポケモンは、いったいどれだけの恐怖を味わってきたのだろう。

    「酔っぱらいながら言ったことだけどさ。条件はウイスキー飲み放題で、一日四時間で、バイトしない?」

    優しく、サンダーをじっと見る。まだこの子は触ったらダメだ。
    怖くないよ、怖くないよってわからせてあげないと。

    「人間の時間で12時から4時まで。仕事内容は、全力で放電すること。それが終わったらここに居てもいいし、どこに行ってもいい」
    「嫌だったら断ってもいいから。七回太陽が昇るあいだなら、わたしもテトもいるから」

    テトが言葉を翻訳するまでもなくわかっていたみたい。聞くだけ聞くと、サンダーはふらりと窓から出て行ってしまった。翼がばさばさ言う。
    途端に広くなる部屋。黙って窓を閉めて、部屋の片づけを始める。ベッドを元の場所に戻す。なぜだかわたしもテトも無言だった。
    何も話したくなったし、何かを話したくもなかった。ベッドだけが重たかった。部屋もなんだかちょっと寒かった。
    部屋の隅で待機中だったお掃除ロボットの電源を入れて、わたしとテトは部屋を出た。



    やることもなかった。できることは終わった。帰りたい。
    なんでこの建物に仮眠室があるのかなと考えたり、久しぶりに昔の友達にメール出したりしてた。回線もまだ混乱してるみたいで、電話は通じなかった。
    あまりにも暇だったので、発電所の前で釣りをした。ニョロモが釣れた。
    ニシカワにあげたらすごく喜んで、名前を付けていた。ミンメイだって。娘のいい友達になってやってほしいってにこにこしてた。
    ひたすら紙に絵を描いて過ごした。絵がすげえ苦手だけど描いてた。ようするにそのぐらいやることがなかった。
    テトとちゅちゅは発電のし過ぎで疲れて、今は、ボールで休んでいる。

    「というわけでニシカワさん、わたし、そろそろ帰ります。」
    「サンダーはどうするの」
    「来ると思いますよ。」

    昔のつがいを亡くして苦しんでるサンダーに、「あんたが発電誰か助かるかもね」って言った。
    150年もこんなところで待ってるぐらいに大事な相手を亡くした相手の心の傷に触れたんだ。来るよ、絶対に来る。

    「なので、来たら、ウイスキー用意して待っててやってください」
    「呑兵衛みたいだものね」
    「わたしはこの長雨が終わったら、クチバに戻ります。そろそろカビゴンたちも来ちゃうかもしれないんで。」
    「そろそろ産卵月だものね」

    それに只飯食いはそろそろ居づらい。長雨が終わったら、わたしはイワヤマのポケモンセンターに行って、
    転送システムの復旧を待って、ハナダ側からクチバへ戻る。

    「もうちょっと居てくれてもいいのに」
    「そろそろ帰って仕事しないと、マチスさんに叱られますから」

     雨音がひどい。それにとても寒い。被災地は大丈夫なのだろうか。
    知り合いが多すぎて誰が今無事なのか確認しきれなくてとても不安になる。メールもギアでの呼びかけも帰らない人が何人もいる。
    不安すぎて泣きそうだ。誰か死んじゃってたらと考えるだけで、足元からぞわぞわ寒気が襲ってくる。だから仕事がしたい。逃げたい。
    ニシカワは残念ですとかもごもご言いながら、仮眠室から出て行った。
     本当に雨音がひどい。自分しかいないのに、自分の血液の流れる音も自分の心臓の音もしない。
    窓に当たるのは雨粒だけではなく木の葉や枯枝、たまに吹く強風がドゴォと窓を揺らす。怖い。研究所には雨戸がないから少し怖い。
    寒い。
    そして素敵な、旅先で出会った人たちのことを考える。
    一緒にいた時間なんて20時間ほどだろうに、なんであの人達のことをこんなに「生きててください」と願っているのか。
    反芻するように「楽しい楽しい」と考えていたあの愛しい時間たちの外しがたい登場人物たちだからだ。
    何度も何度も何度も心の中で繰り返して、あの人たちの顔を想い出して、
    本当に一緒にいた時間よりも長くあの人たちを思っているからだと思う。

    1人でいる時間が長いポケモントレーナーは、1人で居なかった時間を大事に大事に繰り返して、
    心の中で誰かのことを考えていたりするのだ。
    そうしないと、くたくたに疲れてクソ寒くて眠れない夜なんて耐えられないから。
    どれだけポケモンたちが大事でもあの子たちだけでは埋まらない。
    友達なんてレストランのウエイターのように私の人生に出入りするものだといくら言われても
    そのレストランのウエイターの顔と声をひとりひとり覚えているだけで、1人の夜に耐えられるのなら、
    わたしはいくらでもウエイターの顔を覚えて、少しでも幸せであってほしいと祈る。関わった人の幸せぐらい祈りたい。
    だから思う、誰一人として死なないでください。
    あの幸せな宝物の登場人物たちが居なくなってしまうことに私は耐えられそうにない。吐きそうだ。

    生きててください。涙が止まらない。あの幸せな時間があったから、辛い苦しいことがあってもトレーナーは続けられた。
    おなかの底からじわじわ体が冷えてくる。体と心が端っこのほうから、削られてるような、原因不明のキツさ。
    幸せな時間と楽しいことと美しいものをたくさん、たくさん揃えて今まで生きてきた。だから生きてこられた。

    風が窓に吹き付ける。窓が派手な音を立てる。私は今おびえている。
    助かっていてください、みんな、お願いだから。
    わたしがポケモンだったらいいのに。わたしが電気ポケモンだったらいいのに。わたしがサンダーだったらいいのに。


    唐突に、私はサンダーを妬んでいることに気が付く。
    人を助けられる手をたくさん持っていて、たくさんの人を幸せにできる能力があるのにふらふら飛び回ってる。
    あいつがちょっと頑張れば助かる命や笑っていられる人、幸せになれるポケモンたちがいっぱいいる。
    あいつはヒーローになれるのに、それを放棄している。
    そして自分だけは地震なんて関係のないところで、雲や風や太陽と戯れている。
    死んだ相手のことなんて捨て置け。死んだ相手のことなんか忘れろ。相手の命も相手の記憶と一緒に捨ててしまえ。
    目の前の生きてるポケモンや人を助けろよ。
    死んでしまえ。
    死んでしまえよ。
    死んでしまえ。
    シーツを握る手に力を込める。なんであいつだけ無事なところにいるんだ。
    なんで無事なんだ。なんであいつだけ何もいま失っていないんだ。無くしてしまえ。お前も何かを失うかもしれない恐怖に直面しろ。
    あいつだけなに余裕ブッこいてクソ昔のことだけねちねち気にしてるんだよ。
    いまのことだけ考えろよ。


     あっ
    電気が消えた。雨粒と風が窓をがたがた揺らす音も止んだ。音が私から遠ざかった。世界が終わる錯覚に陥る。おかあさん助けて、とちょっとだけ思う。
    発電所の人の声が遠くで聞こえる。寝床から這い出て、廊下に出る。人がたくさんいるところへ行きたい。毛布をかぶったまま壁沿いにゆっくり歩きだす。
    目が慣れてくる。非常用の緑のランプが点灯する。
    調理場出入り口に、ニョロモの影が見える。ニョロモがぺちぺちしっぽを床にぶつけながら歩いてくる。

    「ロモモ、ニシカワは?」
    「ニョ」

    調理場の奥で、ニシカワが倒れていた。緑の明かりの下でもわかる、ひどい隅に荒れた肌。
    あわてて非常ボタンを押す。でも誰も来ないだろう。停電でそれどころではない。
    弱いが脈はある、でもたぶん、眠れていない。救護の医者も交代要員もいない。誰かが休めばそれだけ作業は止まる。
    食料だけはある。掃除の人だって家族が心配だと帰ってしまった。誰もいないこんな世界の果てで、世界なんか救えるか。
    ニシカワの頬をぺちんぺちんとたたく。ニシカワはうっすら目を開けるだけで何の反応もしない。

    落ちてるニシカワの奥さんと娘の写真。
    私たちはヒーローじゃない。ヒーローになれるとしたら、それは手の届く範囲の人たちにとってのヒーローだ。
    それも助けられてせいぜい、一人か二人。そして、その人たちに目いっぱい助けてもらわないと、そもそも活躍すらできないヒーローなのだ。
    あーあ、みっともない。
    サンダー、人を助けようとがんばってる奴くらい、助けてやってくれ。




    唐突に、サンダーが調理場の暗闇から現れた。いままでそこに居たなんて気が付かなかった。
    暗闇から出てきたサンダーは、なぜか一緒に飲んでいた時よりも大きく見えた。


    「ギャッ」

    サンダーが優しい目をしてこちらを見て鳴く。でも私はサンダーの目を、羞恥のために見返すことができない。
    あれだけ自分勝手なことを言ってお願いごとをした。それでやってきた聖獣の目なんか、見られない。
    何がエリートだ、何がヒーローだ。最終的には、聖獣に頼るしかなかったじゃないか。

    ロモモに「発電室まで案内してあげて」とお願いする。
    わたしが初めてサンダーを見ることができたのは、サンダーの目がこちらから逸れたときだった。


    それ以来、発電所には行っていない。


      [No.1995] 受けて立つ(二部) 投稿者:りえ   投稿日:2011/10/16(Sun) 16:35:28     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    肩をたたかれて目が覚める。窓にはカーテンがかかっている。
    今度は知らない冴えない服でぼさぼさの頭のおっさんが目に入る。お前誰。
    無精ひげと肌荒れとメガネ。薄汚い。

    「あ、おつかれさまです、発電所の……」あ、発電所の人か。うんうん、理系って感じ。
    「ニシカワです、主任です。凍傷もちょくちょくありますけど、何よりあんな速さでつっこんできたんですから」


    「フィルとちゅちゅは無事ですか」自分の声がかすれてるのに驚いて、今日は何月何日なのかが気になる。

    「リザードンはたらふくたべて眠ってる。ニビから飛んできたからね。
    バチュルとサンダースは放電室にいるよ」力が抜ける。

    「発電所の皆様は無事ですか」一般人の見舞もエリートの仕事だからね。

    「地震の影響で通常の5割しか送電できてない。人は無事」
    「復旧の見込みは……」
    「部品があるものはチームを組んで交代で交換中。
    メーカーがジョウトに多いから、そのうち届くと思う。食べ物と水はたくさんあるよ」
    運ばれてくるおかゆとりんごと水。あるんならさっさと出せよ、研究員。

    聞きたいことはまだあるけど、まあどうでもいいわ。その前に、飯。
    スプーンの暖かさ。舌のぬくもり。鼻に入るでんぷんのにおい。命が体に入ってくる。
    お粥を流し込み終わった。足りない。リンゴをしゃりしゃりかじりながら「もっとありますか」と聞くと、少し待っててと言われ、一人になる。
    旅する時間が長いエリートトレーナーをなめるな。
    壁の電波時計で日付と時間を観る。3月12日21時。3時間強の睡眠。


    っていうか、なんで、ちゅちゅも、テトも、私の指示無しで放電室にいるの? え、おかしいし。途端に足元からぞわっと心細くなる。
    内線を切り終わったニシカワがこちらを向く。

    「わたしのポケモンを返してください!」予想に関して大きな声が出てしまう。
    「ちょっと待ってくださいヨウコさん」
    「勝手にポケモン使われるなんて聞いてないです、聞いてたらこなかったです」
    このときはじめて部屋の隅に、ゴアテックスのレインコートが干してあるのが見えた。どうでもいい。
    「なんで呼ばれたのか教えてください」あ、だめだ、涙声になってきた。

    ニシカワさんはおろおろしながらうろちょろしている。無様。

    「ヨウコさん落ち着いてくださいええと、あの、ここは安全ですから!」
    「外にサンダーもいるしそんなの聞いてないですよ!」もう導眠剤くれ。それで寝るから。起きたら働く。

    ところがニシカワはぴたりと止まった。
    そして「うへえあ」などと奇声を発して椅子にガタンと音を立てて座った。おいどうしたニシカワ。
    しっかりしろおっさん。サンダーがそんなにまずいのか。そして私はやっと理解した。サンダーを捕まえて発電させるために、私は呼ばれたのだ、と。
    大地震で北の地域が大変なことになって、カントーでも主要施設が止まって、
    買占めとか暴動寸前とか、津波とか、野生ポケモンとかの暴走とか
    とにかく心配しなきゃならないものしかないようなときに、ジム所属のそこそこのトレーナーをわざわざ呼び出して、
    こんなところまで休憩も無しにブッつづけで飛ばせるわけがない。
    ニビシティも被害がひどかった。博物館デートしてたのに! 相手ほっぼりだして、避難誘導して、ジムで眠った。
    エリートなんだからもう少しマシなところで寝かせろと思った。

    はつでんしょのまわりにサンダーが住んでるのは有名な話で、
    この建物が無人発電所になる前から、このあたりではサンダーの目撃情報が耐えなかったらしい。当然、それを狙うトレーナーもごまんと来た。
    だからあんなところにポケモンセンターがある。
    落ち着きを取り戻したニシカワがぼそぼそ言う。

    「なんにも無いときに、リーグの四天王も、その上のチャンピョンも呼んでるんです。
    でもどんな技もボールも“かみなり”で蒸発させられてしまって」物理的にはありえないことでもできてしまうのが、伝説系のおそろしさよね。

    「今まで誰がどうしても、サンダーを捕獲することができなかったんです。いままではそれでもよかったんです。
    でも、今現在のような状況が長く続くと、死者も出かねません。
    そこで、ヨウコさんとヨウコさんのサンダースに協力を要請できないかという話が持ち上がりました」
    確かに私とテトにしかできないわね。

    「わたしとテトのコミュニケーション能力で、なんとかサンダーにタービン回してもらえないかって話?」
    「そうです!それです!!」

    “捕獲されなくていいんで人間の役に立ってもらえませんか”とお願いしにいく役だ。
    私たちにしかできない。面白いねえ確かに、四天王だってできないよ。
    ドアががちゃりと開いた。醤油ラーメンのにおいがする。
    持ってきたのはメガネの研究員。と、足元にテトとテトの背中に乗ってるちゅちゅ。ちょっとみんな疲れてるな。
    ラーメンを奪って食い始める。旨い。

    「おつかれ、ありがと、戻って」

    ちゅちゅはボールに戻る。ラーメンをすする。おっさんとメガネの会話を聞いても意味が分からない。
    テトに「みんな知ってるからしゃべっていいよ」と声をかける。驚いてる。

    「今日のわたしらの仕事は、表にいるサンダーになんとか発電してもらうことです」
    「無理だろ」麺がなくなった。

    テトの声質は普通におっさんなのでちょっと引かれる。サンダースなのにね。
    最初に会った時からおっさんのイーブイ(ただしレベルは低い)だったので私はなんとも思わないけど、たぶん、引く。

    「ていうかマチスはどこだ」
    「地震でクチバから出られないって。で、かわりにそこのサンダー捕まえて発電室に入れる簡単なお仕事です」
    「さてはお前じゃなくて俺になんとかしろという話だな フッフーン」
    「……ヒーローはわたしよね。優秀なポケモン育てたトレーナーだし」
    「ヨウコさんが呼ばれるのはたいてい俺のおかげだもんな! 俺いなかったらただのでんきタイプ使いのおんなのこだもんな!」
    「うっさい死ね」
    「ハッハーン
    ハッハーン
    そんな口のきき方してもいいのかな、俺に。今日、わざわざ!ヨウコさんは糞寒い思いしてニビから飛んできて!
    そう、俺をわざわざ運ぶために!ここまで!糞寒い思いしてタクシーしたんだね、ヨウコ。ドンマイ」
    「今はやってるじゃん、タッグ組んでるヒーロー」

    超めずらしいしゃべれるポケモンが、わたしの手元にいる理由はもう一つ。
    こいつは廃人の手元にいるとき、唖のフリをしていた。
    廃人の手元にいたとき、イーブイを買いに来る客を観察して心底キモいと思ったそうだ。
    だから、客以外のトレーナーに使われたくて、鳴き声ひとつあげなかった。そして廃人の好物のソフトやりいかと柿ピーだけを食べていた。あと焼酎。
    唖でおっさんじみた嗜好の雄のイーブイ。
    そしてそれでも買い手がつきかけたので、テトはストレスでハゲた。そして、私のところへ来た。

    「ヨウコ、お前作戦あるのか」
    「んー」
    「本当に喋るんですね…… 頭も悪くないですね……」メガネが好奇心あふれる表情でテトを見ている。テトがんばれ。
    「コンニチハ ボク サンダース!!」妙に甲高い声でテトが話し始める。オカマっぽく。キモい。
    「初めて見ました。外のサンダーより珍しいかもしれませんね、テトさんは。研究機関とかに回収されないんですか」
    このへんの事情は割愛したい。曖昧に笑う。身の回りはキナくさいけど、テトはわたしのポケモンだ。

    テトがこちらをちらちら見ている。おしゃべりするなら女の子(できればage嬢)だっていつも言ってるよね。
    話すなら若い女の子がいいと言ってやまないガチおっさんなテトは、自分以外のおっさんが嫌いだ。
    よって研究員のメガネもおっさんも嫌いなはずだ。テトのSOSは無視する。すこしは苦労しろ。





    やっぱ山の中は寒い。借りた冬登山用のもこもこジャケットが暖かい。たいてい暖かいものはゴアテックスだ。
    いつもの三倍ぐらいの胴回りのわたしをテコは爆笑する。息が白い。クソ寒い。マスクしてきてよかった。
    なぜかニシカワとメガネもついてくる。てか研究所のいろんなところから視線を感じる。

    そしてやっぱり、研究所の中庭に、ドンと、サンダーは居る。
    1.6メートルの53キロ。威圧感とぴりぴり震える空気のせいだ。正直帰って寝たい。無理。
    だって、ゲットされるどころか、餌付けすら嫌がっているサンダーがなぜここから動かないのかがまったく分からない。
    サンダーには翼がある。どこへだって行けるはずなのに。なんでここにいるんだろう。ああ、寒い。帰って酒飲んで寝たい。

    「ヒーロー、がんばってね」
    「え、俺ひとりなの」
    「最初は、人間いないほうがいいよ、こういう時」

    離れたところでテトとサンダーを見つめる。テトがサンダーに話しかけた。サンダーも無視はしてない。
    当然か、いままで話しかけてくるトレーナーなんかいなかったはずだから。会話らしきものは続いてる。うまくいかせてよー。
    ただ飯ただ宿は肩身が狭いのよー。

    こうなると私は暇なので、うろうろしている。
    発電所の裏手に回る。ぎりぎり人が通れるくらいの隙間が岩肌との間にある。「ちゅちゅおいで。フラッシュ」
    バチュルを頭の上に乗せて、前を照らす。狭い。わたしも入れない。
    奥の方で何かがきらりと光った。ちゅちゅも気になったらしく、建物の壁に張り付いて、カサカサ進む。
    きれいなガラスとか好きだもんね。宝物増えるといいね。寒い。ほんっとに寒い。
    サンダーもテトもあったかいところで話し合いしてくれないだろうか。

    光が突然私の顔に当たる。顔をそむける。「きゅー!!」って嬉しそうな声が聞こえる。きらきらした素敵なものなんだろうね、きっと。
    とりあえずフラッシュをわたしの顔から外してくるとうれしいけどな。ちゅちゅが近づいてくると光はだんだん足元だけを照らすようになる。
    きゅっきゅ言いながらごきげんなちゅちゅは私によじ登ってくる。いいからフラッシュを私以外に向けて。お前の新しい宝物を見せて。
    きれいな雷の石、だ。雷の石はたくさん見たけど、こんなにきれいなのは初めて見た。
    あ、中に何か入ってる。羽かな? ちゅちゅのフラッシュに透かして見る。えーっと…… 羽の入った、雷の石、だ。
    何の羽だろう…… ポケモンの羽だと思うけど、よくわからない。
    建物の影から体を出して、サンダーとテトの方を向く。テトがこちらに走って来ていた。

    「ヨウコ!」
    「なによ」
    「サンダーはそれとりに来たんだって」
    「え」私はテトを見る。サンダーも見る。そして手元の雷の石も見る。
    「なんでも、その羽、サンダーの昔の、ほんとに昔のつがいの羽らしくて」
    「あの石欲しさに、この発電所が壊れてなくなるのを、ずっとぼんやり待ってたんだと」意外とかわいいところがあるサンダーさん。
    「グェッグェッ」
    「ずっとって、この建物って、建ってから150年は経ってるよ。それに雷の石の中に入ってるよ、羽」
    「だから、本当にこの建物が邪魔で、でも人がいるし、ずっと待ってたんだと」テトが寄ってきた。

    サンダーの性格…… おっとり、だね。いくら寿命が長いポケモンとはいえ、150年間待ってるなんて。
    あたらしいつがいは見つからないのかな。そうなのかな。あれ、つがい?

    「サンダーって性別無いんじゃないの」
    「無くてもつがいはつくるんだよ、さみしいから」そうか。
    「てかサンダーってどうやって増えるの」
    「竜の巣で生まれ変わるんだって」「アニメ脳め」

    「ギャッ」
    「クワァッ グァッ」テトとサンダーが何かを話している。

    「あのさ」ギヤゴギヤゴ会話しているテトとサンダーが私を見る。

    「あ、わたし、テトのトレーナーのヨウコです。寒いから中に入りませんか」
    「ギャァァァ」
    「いいよって言ってるぞ」
    「ちょっと待ってて」

    ここは山の中だ。寒さが限界だった。サンダーのために窓を少し開けておくとしても、ここよりか部屋の中の方が暖かい。
    研究所の一階角部屋の仮眠室。さっきはいろいろ考えたり食べたりで忙しくて気が付かなかったけど、
    ベッドが四台ある。窓を開けて、サンダーに入ってもらう。テコが棚をあさってる、手伝ってよ。ベッドを少しずらして、サンダーの居場所を作る。
    イノリウムの冷たさが気に入ったらしく、サンダーはへやの隅っこで、座っている。


      [No.1994] 回答してみた 投稿者:サトチ   投稿日:2011/10/16(Sun) 09:48:12     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 1、その足は太く、大地を蹴りだす。力強く踏み込み、そのスピードはもはや風のよう。頭より伸びる角は無敵の象徴。
    サイドン(笑)じゃなくって〜、
    「足が太い」ってのは気になったけど(^^;)ギャロップでFA!
    でも、だとすると「太い」より「力強い」「たくましい」とかの表現の方がいいかも。

    > 2、まさに生物の神秘。夜空に浮かぶ星のごとく、中心が美しく光る。
    ヒトデマン、またはスターミー。これだけだとどちらだか特定はできないかな。

    > 3、その姿を捕らえることなど不可能。見たものは全て残像。そして気付いた時には目の前の命はない。
    これはちょっと難しかった。
    でも確か動きが早くて残像しか見えない、って図鑑の説明文にあったかと思うのでストライクでFA!
    ゲンガーでも確か影にひそんで姿を隠すとかあるし、「目の前の命はない」とかは合ってると思うけど。


    最初3つとも同じポケモンを描写してるのかと思って悩んだのはナイショだ!(笑)


      [No.1993] 金と黒 投稿者:???   投稿日:2011/10/16(Sun) 01:15:00     125clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5




     それはは誇り高く生き、何よりも仲間思いの黒の話――。
     


     丘の頂上へと至る道。その道の両脇には見事に育ったイチョウの木が植えてありました。秋になると、全てのイチョウの葉が黄色く黄色く染まります。それは山に金色の筋が出来たかのように美しいものでした。
     けれど、その景色を見たことのある人は多くありません。積み重ねられた石段はあるところは崩れ、あるところは埋もれ、徐々に道としての機能を放棄しつつあります。そう、ここはかつての道。

     この道はずいぶんと昔に作られたものでありました。まっすぐな道でありながら傾斜が険しく、不便な場所へ位置していたため、新しい道が作られました。平らに舗装され、銀色の手すりがつき、夜には足元を照らす街灯があり――。当然のことですが、人々は以前の道よりも新しい道を使うようになりました。それ以来、この道は忘れ去られた道、旧道となったのです。

     それでも私はこの道を、忘れ去られたこの道を歩くのが好きでした。かつての人々がこの道を愛した跡がそのままに残っているように見えるのです。ある一点だけ磨り減った石段や、修理するかのように不自然に積み重ねられた木の枝や――。
     流れてしまった時間の積み重なりが目に見えるようで、時間は流れているということがよくわかるのです。


     そして、私がこの道を訪れるもう一つの理由がありました。それは――


     青々とした緑の葉の間から、私を静かに見つめる赤い瞳。それは老いた鴉でありました。


     彼は老いてなおも、誇り高く、気高く、その丸々とした体を覆う羽はいつ見ても、美しく整えられていました。胸を覆う白い羽は、かつて一族を率いた権力者の証です。もうずいぶんと私と顔を合わせているにも関わらず、私に気を許さず、必要以上に近づこうとすると大きく体を膨らませて威嚇するのでした。

     
     

     私はこの鴉が好きでした。貫禄を持ちつつも、どこか謙虚さを持っていました。いくら権力者の座を退いたといっても元の権力者。彼のもとには毎日、小さな鴉が何かしら贈り物を持ってやってきていました。それは食べ物であったり、光るものであったりと様々だったようですが、彼は決してそれらを受け取りませんでした。絶対に受け取らず、むしろその小鴉に突き返しているようにも見えました。
     普通の権力者であれば、持ってきたものは全て受け取り、溜め込み、さらに持ってこいと命じそうなものですが、彼は決してそんなことはしませんでした。恐らく、彼は『自分に持ってくるくらいなら、今の権力者に持っていけ』と言っていたのではと思います。今の権力者とよくしておけば、群れの中での地位もあがるだろう。と。子鴉が飛び立った後には、鋭い眼光のなかに感謝の意のようなものを感じ取ることもできました。そういうところが私は好きでした。




     彼は今年の春からこの銀杏の小道に住み着いたようでした。私はそれまで、月に1、2度季節の変りを感じるため、軽い運動のためにこの場所を訪れていました。
     最初に彼と対面したとき、私はその鋭い眼光に射すくめられてしまったかのように動くことができませんでした。それはまるで、メドゥーサに睨まれた人間のように、本当に体が石化してしまったかのように、動きませんでした。
     しばらくの間、彼は静かに私の目を睨み続けました。赤い瞳がまるで血の色のようで少し不気味とも、宝石のようで綺麗だとも思いました。彼は納得したように鼻を鳴らし、ケケーと鳴きました。その鳴き声と同時に私の体もかなしばりからとけたかのように動くことができるようになったのでした。つまり、彼は私に何らかの術を使っていたということです。
     よくよく考えれば、あの鴉からしてみれば動けない人間など格好の餌でもあるのです。もしかすると、私はあそこで彼に殺されていたのかもしれないのでした。普通の人であればならばもう二度と近づかないと思うのでしょうが、私は逆に彼に近づきたいと思いました。


     
     それから月日は過ぎ、夏になりました。彼は相変わらず銀杏の小道に住み着いていましたが、立派な羽毛はあまり夏をすごすのには適していないらしく、いつも木陰でじっとしていました。それでも目の厳しさは全くの衰えを見せませんでした。私は彼の体調が不安になり、いくつかの木の実を持っていったりもしたのですが、同属から受け取らない彼が、人間である私の与えたものを受け取るはずがありませんでした。

     そんな中、始まったのが小鴉たちの襲撃でありました。

     珍しいことではありません。きっと今の権力者は小鴉が彼に物を贈っていることを知っていたのでしょう。それはやはり権力者である鴉からしてみれば、元の権力者である彼は邪魔な存在であることはまちがいありません。そこでその鴉は小鴉たちに、彼を殺せと命じたのでしょう。

     彼は襲ってくる小鴉達に反撃も威圧もしませんでした。繰り出される攻撃は全て受け、鳴き声一つもらしませんでした。小鴉達もその彼の様子にひるんでなかなか本気では攻撃してきませんし、何より彼らだってこんなことはしたくないのでしょう。かつての権力者に、権力者の座を退いてからも物を送り続けていた彼らなのです。その忠誠心たるものは相当なものであったと思います。けれど、誰も今の権力者に逆らうことができないのでしょう。悲しく歪んだ顔で、彼を襲い続けました。そして反撃せず耐える彼。その光景はとても悲しいものでありました。


     そしてまた月日はたち、秋になりました。

     彼は今まで以上にじっと動かず、いつも鋭い光を放っていたまなざしも時々、どこか遠くを見るように濁っていることがありました。小鴉達の襲撃は夏の終わりにすっと、なくなりました。

     おそらく、今の権力者はもうすぐ彼が死ぬと見たのでしょう。


     群れの権力者は一人いれば十分なのです。群れの中に白羽は一羽でよいのです。今の権力者が小鴉から、鴉へ進化したときに、彼は追い出され群れにいらない存在となるのです。

     けれど、何故でしょう。
     小鴉達の襲撃は止みました。けれど、小鴉達は毎日、毎日ひっきりなしに彼の元へ訪れるのです。果物、木の実、草、様々なものを持って彼の元へやってきました。彼は相変わらず、それらの贈り物を全て突き返していました。しかし、小鴉達も前回とは違ってそう簡単には食い下がりません。頼むから、頼むから食べてください。そんな雰囲気がありました。

     元気のない彼に、小鴉達は毎日、毎日ものを持ってきました。それはまるで、病院に見舞いにくる人のようでした。小鴉達は彼に死んでほしくないというのでしょう。生きてくれと、物を贈るのでしょう。ばれたら今の権力者にどうされるか分かりません。群れを追い出されるかも知れません、殺されるかもしれません。それでも小鴉達は彼に贈り物を続けるのです。

     どれだけ、彼が優れた権力者であり、指導者であったのか――彼らの姿を見れば、分かりすぎるほどに分かりました。

     
     銀杏の葉が色付き始めた頃だったでしょうか。夕方頃、私が自室で昔の文豪の小説を読み漁っていたとき、窓際で羽ばたく音が聞こえました。それはポッポやピジョンといった小さい鳥のものではありませんでした。驚いて振り向くと、そこにいたのは彼でした。

     あっけにとられる私を赤い瞳でにらみ付け、彼は口にくわえていたものをポトリと落とし、去っていきました。なんだろうと近づくとそれは扇の形をした銀杏の葉でした。まだまだ、端の色が変りかけたくらいのものでした。

     また次の日、まったく同じ時間に彼はまたやってきました。そしてまた、にらみつけて銀杏の葉を一枚落としていきました。前回のものよりも、黄色の部分が増えていました。

     これは一体どういうことでしょう。
     彼から私への贈り物なのでしょうか?

     そして、毎日、その行為は繰り返されました。毎日毎日、同じ時間にやってきて、銀杏の葉を一枚落としていくのです。私はわけが分かりませんでした。

     一週間がたちました。今日も彼はやってきて、銀杏の葉を落としていきました。その葉は見事な黄色でありました。彼はその日、初めて会ったときと同じように高く高く鳴きました。





     翌日、彼は時間通りにきませんでした。待っても待っても、きませんでした。あんなに時間通りにきっちり来ていた彼が三十分たっても姿を現しませんでした。なんだか、毎日恒例化していたので、さびしくなった私は自分から彼の元へ訪れることにしました。

     風は冷たさを増し、虫が所々で鳴きだしていました。その日の夕暮れはいつになく美しい橙をしていました。

     散った葉を踏みしめ、訪れたその道は金色に染まっていました。一本の線が山にひかれたようでありました。そして――


     金色の柔らかな絨毯の上に、ぽつりと夕日に照らされた――黒。



     あぁ――。

     彼は、私に、これを求めていたのか。

     

     私はゆっくりゆっくりと彼へと近づきました。少し近づいただけで威嚇してきた彼も今はただ横たわっているだけです。しゃがみこみ、彼の体へそっと触れました。少しだけ、あたたかく感じました。それが本当に彼の体温の残りだったのか、陽に照らされていたからか、それとも私の気のせいだったのかは分かりませんでした。

     羽の付け根に置いた指先を、頭のほうへと滑らします。柔らかな羽毛の感覚、硬いくちばしの感覚、彼の知らなかったことを知ったようで、私は少し嬉しくなりました。閉じられた瞳はもう二度と開くことはないでしょう。血のような、宝石のような、あの彼の瞳をみることはもうないのです。



     ……。 
     風が巣に帰る鴉達の鳴き声を運んできます。




     おやすみなさい。

     私にまかせて、いきなさい。

     他人のことを第一に思い生きた彼は、最後までその生き方を通し生きた。
     残された彼の仲間がどう思うかまで考えて。


     おやすみなさい。

     あとは私がやりましょう。



     おやすみなさい。

     

     +



     ポケスコ未提出作品。
     評価してくださる方いたらよろしくお願いします。 (作者当てもお待ちしております。

     


     





     
     


      [No.1992] 投稿者:音色   投稿日:2011/10/16(Sun) 00:33:10     104clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     その日は突き抜けるような空が広がっていた。あいつと死合うにはまさに、絶好の日だった。
     寝床に光が差す前にむくりと体を起こした後に、雨の香りはどこにもなかった。
     目が覚めると同時に腹に寂しさを覚える。母さんを起こすのも気が引けて、あたしはこっそり窓から抜け出した。

     適当な木々から恵みを受け取る。早すぎる朝飯だけれど、これからあいつと殺しあうんだから。
     かじりつき、口の周りの果汁を舐める。あぁでも、こんな早い時間にはいないだろうな。
     馬鹿をやったことに気づく。お天道様はまだほんの少しも顔をのぞかせちゃいないのに、あいつがあそこで先に待っているはずじゃないじゃないか。
     あいつは決闘に遅刻したことはない。けど、今回はあたしが早く行き過ぎてるだけだ。だってこんな真っ青な空の下で、あいつと殺りあえるなんて、それだけでわくわくしちまって。
     たまにはゆっくり待ってやるのも面白いかもしれない。
     口の中で転がしていた種を吐き出して、あたしは両手の爪を眺めた。



     ふと眼がさめればまだ太陽は昇っていなかった。まだ朝は寒い。眠りに引き返すには十分だった。
     しかし妙に目が冴える。ずるりと寝床から這い出して、俺は空腹によって完全に目が覚めた。
     どうも朝っていうのはいつも決まって腹が減っている。晩にしていることといえば生傷だらけの体を休めるために寝ているだけだっていうのに。
     
     まぁ、生傷の原因はあいつとの決闘だけど。外に出れば冷たい風にあたる。眠い、と反射的に感じるのは本能か。
     少し先にある林檎の木を目指す。何かを食わないと体が冷えっぱなしだ。体を動かす。
     秋空は雲ひとつない。まるで、いつか見た海みたいだ。いや、こんなに澄んじゃいなかった。やっぱり、空は空だ。
     今日は随分と天気が良い。あいつはまだ寝床の中だろうか。
     こんな朝っぱらから面を合わせることはまずないだろうけど、仮に、だ。
     あいつにあったら、殺しあうか。まだまだこの体は冷える余地がある。眠りこむ前に、この風を涼しく感じられるくらい、死合うことができれば。
     
     
     だってこんな決闘日和、滅多にお目にかかれない。
     

     好敵手ってのどうしてこう、似てるのかねぇ?
     いつもの場所で、いつものように鉢合わせ。
     朝飯は?すませた。上等。ならやるか。

     互いの武器がぶつかり合う、派手な音が空に吸い込まれていった。

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  お題はまだ変わっていなかった。ギリセーフ。
    コンテストのザンハブ作品に影響されました。認めます。

    【お題:陽】
    【しかしえらく応募作品と見劣りする】


      [No.1991] クイズ!私は誰でしょう。 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/10/15(Sat) 22:48:23     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    じゃあ、今から私があるポケモンを描写しますので、何のポケモンか考えてくださいね。


    1、その足は太く、大地を蹴りだす。力強く踏み込み、そのスピードはもはや風のよう。頭より伸びる角は無敵の象徴。
    2、まさに生物の神秘。夜空に浮かぶ星のごとく、中心が美しく光る。
    3、その姿を捕らえることなど不可能。見たものは全て残像。そして気付いた時には目の前の命はない。


    ーーーーーーーーー
    名前の解らないポケモンを描写しても、相手に伝わらなきゃ意味がない。
    確かに後で答えは言うだろうけど、やはり読んでる方も考えてあってたら楽しいなあと思ってどれくらいポケモンの描写力があるかどうかやってみた。
    後悔はしていない。
    ヒント:全部カントー
    【好きにしてください】


      [No.1990] ポケスコ感想作文課のりえです。 投稿者:りえ   投稿日:2011/10/15(Sat) 09:29:10     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    無断ですが読んだものの感想を書いていこうと思います。


      [No.1989] 【百字】じゃんけん 投稿者:門森 輝   投稿日:2011/10/14(Fri) 19:56:04     71clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    『ジャンケンポン!』
    「お前グーしか出さないよな」
    「拳一つで戦うのが僕の信条だから。でもハッサムさんには絶対勝てるよ。彼はチョキしか出さないもの。それにしても君は強いよね」
    「だって俺いつも後出しだもん」

    ―――――――――――――――――――――――――――――

    【描いてもいいのよ】
    【書いてもいいのよ】
    【何をしてもいいのよ】

     長いのが書けないなら短いのを書けばいいじゃない! 
     ということでブームは去ったけれど百字で。エビワラーさんとヤミラミさん。
     でも後出しもアンコールには敵わなかったり。


      [No.1988] なんか増えちゃった 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/10/14(Fri) 01:09:19     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    本当に、当初の過疎っぷりはなんだったのか(笑)。
    できる範囲で、よろしくお願いいたします。


      [No.1987] なんか増えてる。 投稿者:渡邉健太   《URL》   投稿日:2011/10/13(Thu) 14:54:20     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ……作品でら増えとる。

    10月の前半に、あのくらいの本数なら読めるかなーと思ってたんですが、
    10月の後半はハロウィンの仕事があって、35本は読めないかもです。

    正直すまん。(いまのうちに謝っとく。)

    11月に駆け込みで読めたら、軽めのコメントだけ残せるようにがんばります。
    ディープな評は個人的に連絡とかもらえたら……。(超弱気)


      [No.1986] 決断の夜に 投稿者:レイニー   《URL》   投稿日:2011/10/12(Wed) 23:32:14     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     暗い部屋に明かりを灯し、ただいまとつぶやく。
     その声に応じて黒い影がふよふよと宙を舞いやってくる。俺から漂うアルコールの香りに、またこいつ飲み帰りかよといった目でこちらをじっと見ている。元々一人暮らしだったはずの部屋に勝手に住み着いたそんな居候を、家主の生活にケチつけるなよといった目で睨み返してやる。


     今日もいつものように、彼女と一緒だった。
     相変わらず彼女の話題はアイツのことばかり。

     彼女はアイツの話をしながら、子犬のように瞳を潤ませて、僕にすがりついてくる。
     その瞳に僕は何度も吸い寄せられそうになる。でも、吸い寄せられてはいけないなんてことは、よくわかってる。

     彼女が見ているのは、僕じゃないんだ。
     そのことはよくわかっていた。彼女とこうして杯を交わしあう仲になってしばらくした頃から、ずっと。
     彼女とは元々アイツを経由して知り合った。だからこそ、彼女は僕にアイツが好きだけどどうしたらいいのかということを相談してきたのだろう。僕自身、初めはアイツに惚れる女がいるのかと驚きながら、大切な友人にいい形で彼女ができるよう、手伝おうという思いで彼女の相談に乗っていた。

     いつからだったのだろう。そんな彼女に僕が恋してしまったのは。

     アイツになかなか想いが届かない彼女は苦しそうに見えた。現に僕の隣で何度も泣いた。でも、その涙の中にも、片想い特有の幸せさみたいなものが窺えて。とても綺麗な涙だった。
     そしてその美しさに、僕はどうしても惹かれてしまう。


     こんなに近くにいるのに、彼女は誰よりも遠い。
     そのことが痛感されて。でも、それでもここから離れられなくて。
     僕は一生「良き相談相手」のままだ。


     悲しいことに、どうあがいても僕が望む結末は現実に現れそうになかった。彼女はアイツが好きだ。それはどうしても変えられない。彼女は周りにいる他の誰も見えなくなっているくらい、あまりにもアイツに恋しすぎている。そのことは、僕と二人きりで飲みながらひたすら僕に恋愛相談してくることからも明らかだ。ちょっと端から見てみれば、僕が彼女に惚れてること、そしてこの状況がどんなに罪作りかなんてことくらい、すぐわかるのに。

     だからこそ端から僕の様子を見ていた他の友人には、はっきり言ってしまえよと何度も言われた。でも、未だにできずにいる。
     隣にいる彼女を抱きしめてしまいたかった。でも、できるはずがない。そんなことをしたら、もう二度とこうして会うことなんて、なくなってしまうだろうから。
     だって、今の関係を誰よりも甘んじて受け入れてるのは他ならぬ僕なのだから。


     そして今日、彼女はようやく決断を下した。
     アイツに告白する、と。
     そのことを僕に宣言した彼女の目は誰よりも強く、そして美しかった。

     きっと彼女の告白は、成功するに違いない。僕のアドバイスもあって、彼女とアイツは徐々に距離を縮めていた。あとはどちらかが踏み出すだけだろう。そしてそんな状況で、彼女は踏み出すと決めたのだ。


     彼女は強い人なのだ。自分の想いを貫くために、自分で道を切り開くことができる人なんだ。
     だから僕はここで、彼女が自分で思うように進んでいくのを見送ることしかできない。それ以外に何もしようがない。僕はきっと、その強さにも惹かれてるのだから。

     さあ、行っておいで。君が選んだ道へ。
     君が決断したこの時が、僕との別れの時なんだね。
     だから僕はここで、君を送り出すよ。
     君の勇気に拍手を送るために。


     気がつくと、僕の瞳は潤んでいた。先ほどまでの彼女がそうであったように。

     笑ってくれよ、カゲボウズ。
     おまえ、人の負の感情食うんだろ。
     いますぐ僕の感情食っちゃえよ。
     こんな惨めで情けない奴なんだぜ。


     居候は僕の言葉を理解しなかったのだろうか。意に介さぬ顔で僕の感情を食うこともなく、ただむせび泣く僕の隣にいるだけだった。

    *

     ……全く。世話の焼ける奴だ。
     でもオイラにできることは、なんにもない。

     それにしてもおめでたい奴だ。
     叶わない恋を抱えている状況だというのに、アイツの感情には「恨み」も「妬み」も見当たりゃしない。
     あるのはただ、「悲しみ」だけ。ただの「悲しみ」はオイラの管轄外だ。

     しかもアイツ、本当は自分でもわかってるんだ。
     「瞳を輝かせて想い人を語る」彼女のことが好きなんだって。
     だからこそ、現状を恨むことも妬むこともせず、ただ悲しむだけ。しかも、彼女が想い人と結ばれることを、本当は心の底から、誰よりも一番願ってるんだ。
     自分の思いが報われないって言うのに、相手が幸せになるならそれで幸せだと心から認識してるなんて、ほんと人がいいと言うか何と言うか。
     まあ、このことを実感させるためにも、今はただ泣かせておくしかないだろう。
     まあ、そばにくらいはいてやるよ。オマエの気が済むまで、な。


    ----------------

    ポケスコ用に書いていたものの、何やかんやで出さなかった作品。

    【何をどうしてもいいのよ】


      [No.1985] ポケダン妄想 投稿者:逆行   投稿日:2011/10/12(Wed) 17:11:04     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    警告 残酷な描写があります。苦手な方はご注意下さい。







     警告 残酷な描写があります。苦手な方はご注意下さい。
     
     
     薄暗く、淋しげな森の中を、一匹のヒトカゲが彷徨っていた。その足取りは重いというわけではないが、彼は常に不安そうな目をしていて、これから絶望の淵に立たされるという予言が、的中する事を心配していた。周りには、彼の味方と呼べる存在はいなかった。皆、彼を襲う事に必死になっている敵ばかりだった。彼はずっと敵に見つかっては、逃げるという事を繰り返し、戦う事をしなかった。決して、彼に戦えるだけの力が備わっていないわけでは無い。力の発揮の仕方が分からないのである。

     ほんの数分前の事である。その時、ヒトカゲはヒトカゲでなかった。彼は正真正銘の人間であった。けれども何故か。何故かポケモンとして姿を変え、何の予兆も無く、この世界に落とされてしまった。いや、もしかしたら、何らかの前振りはあったのかもしれない。どうであったか分からない。彼は不都合な事に、人間であった時の記憶を、全て忘れてしまったのだから。
     
     「君、どっからどう見てもヒトカゲだよ」

     最初に出会ったとあるポケモンに、こう言われた時の驚きは、極端を超えるものであった。すぐさま頬をつねる。夢である事を願った。頭部に髪の毛が生えているか確認した。パニックになり「え?」と、何度もつぶやいた。正式に、自身の体がヒトカゲである事を認識すると、彼は大声で叫んだ。この世が、不条理である事に対して叫んだ。しかし、叫んだところで新しい変化が、訪れるわけでもなかった。ここで、まだ何とかなるという薄れた確信が、完全に消え去った。彼はポケモンになった事実を受け入れるしかなかった。

     その後、いろいろあってバタフリーというポケモンに頼まれ、穴に落ちた子供のキャタピーを助ける事になったのだが、一緒に協力して探す事になったゼニガメというポケモンと、はぐれてしまった。何故かここでは我を忘れたポケモン達が、ヒトカゲを見て襲ってくるので、一匹でいるのはこの上なく危険であった。この世界で最も情弱な彼は、口から火を吹く要領を知らず、戦いようがなかった。一応、殴ったり蹴ったりはできるが、果たしてそんな事で、相手を倒す事ができるのか、怪しいところだ。十分なダメージを与える事ができず、反撃されたらどうする? そんな不安が、敵の姿を見る度に頭をよぎる。結局逃げ続ける、それしかなかった。彼はとにかく怖かった。攻撃を喰らう際の痛みに怯えていた。

     しかし、それでも。絶対に戦わなくてはならない状況に、遭遇してしまった。ヒトカゲが進んだその先は、実は行き止まりで、これは駄目だと振り返ると、そこに敵がいる。しかも彼が進んだその道は、とても狭く、敵の横の隙間から逃げる事もできない。この場合、彼はいったいどうするのであろうか。

     とりあえず、殴ってみた。相手の顔に向かって、今の自分にできる精一杯の力をこめて、拳をぶつけてみた。これは技では無い。ただのパンチである。こんな事でダメージを与えられるとは、とても思えないが、敵はどうやら痛そうだ。悲鳴を上げる程では無かったが、殴られた箇所を触りながら、体を丸めていた。完全に隙だらけであった。これはチャンスだと思った。ヒトカゲは接近し、相手の腹部を思い切り蹴り上げた。これはかなり効いた。蹴られた体は宙に浮き、仰向けになって倒れた。
     その後、ヒトカゲは殴ったり蹴ったりを繰り返した。とうとう相手はピクリとも動かなくなった。恐らく、もう死んでいるだろう。気が付けば、彼の手と足は真っ赤に染まっていた。敵の体のいたる所から、血が噴き出していた。

     ヒトカゲはやや表情が元に戻った。戦える事を知ったからである。技を使わなくとも、十分に敵を倒す事ができる。さっきの敵のみが弱いという可能性もあるが、そういう事はなるべく考えないようにした。とにかく嘘でもいいから、安心感を得たかった。本当の胸を叩いてみれば、まだ不安だ大量に残っている事が分かる。さっきの敵か
    ら攻撃を一発喰らっておけばよかったと、後悔した。どのくらい痛いのかが明確になれば、もっと不安が軽減されたかもしれない。

     それからすぐにゼニガメと、再会する事ができた。しかし、良かったこれで助かったと、完全な安堵の表情を浮かべるのはまだ早かった。
    「どう、キャタピーちゃん見つかった?」
     ゼニガメは、比較的落ち着いた口調で話した。体にはとくに目立つ傷痕は無い。ダメージを与えられる前に倒したのか、それともずっと逃げてきたのか。もちろんヒトカゲは前者である事を願った。
    「全く見つからない。もうこの辺にはいないと思う」
    「もう少し先に進んでみようか」

     二匹は少し急ぎ足で、奥の方へと進んでいった。途中敵が一匹、行方を塞いだがゼニガメが「みずてっぽう」で、いとも簡単に倒した。水系の技はそんなに威力が高くないと、ヒトカゲは考えていた。炎は危険だが水は大丈夫と普通は思う。
     水鉄砲。水圧がダメージの原因になるのだろうか。単に水を浴びるだけでは、痛くもなんともないだろうから。

     ヒトカゲはある異変に気が付いた。倒された筈の敵の尻尾が、まだ微かに動いていたのだ。まだ死んでいないという事だ。それなのにゼニガメは止めを刺す事無く、先へ進もうとしている。
    「あれ、殺さなくていいの?」
     ヒトカゲは怪訝そうな顔をして質問した。同じく、ゼニガメも怪訝そうな顔をして回答した。

    「何言ってるの? 普通は殺さないよ」

     途端に、体の至る所から冷たい汗が、滝のように沸いて出た。しまったという後悔が、彼を襲った。

    「ちょっと、もう一回言って」
    「だから、普通は殺さないんだって」
    「…………そっち!?」
    「そっちって何?」
    「殺しちゃ駄目なの?」
    「当たり前でしょ。同じポケモンだよ」
    「だって敵だから」
    「敵とか関係ないよ」

     先入観。彼にはそれがあった。彼は「戦闘とは殺しあうもの」だとばかり思っていた。「倒す=殺す」だと思っていた。

    「気絶させるだけでいいの?」
    「そうだよ」
    「手加減しろって事?」
    「手加減はしない」

     彼は後悔した。最初に蹴り上げた時点で、攻撃を止めるべきだった。此処は彼が思っていた世界とは、基準が
    ずれていた。重要である事がずれていた。この世界で最も情弱な彼は、何も知らなかった。記憶を全て失っていた。しかし、先入観というものだけは、ひっそりと頭の片隅に残っていた。それが原因で彼は大きな過ちを犯した。
    戦いの原理、ゲーム設定を勘違いしていた。


     ――残酷な描写があります。苦手な方はご注意下さい。


     本来ならば、この警告は嘘になる筈であった。しかし、彼の迷惑な過ちによって、どうやら本当の事となってしまったようだ。彼はもう手遅れである。この世界に落とされて、いきなりこんな事になってしまった。運が悪かった、とでも言うべきか。ゼニガメとはぐれなければ、こんな事にはならなかったかもしれない。しかしもう遅い。取り返しがつかない。このまま後悔と罪悪感を引きずっていくしかない。

     穴に落ちたキャタピーを見つけ、無事にバタフリーと再会させた後、ゼニガメはこんな提案をした。

    「僕と救助隊やらない?」

     今日のように、困っているポケモンをこれからも助けていこうと言うのである。この誘いを受けたヒトカゲは迷った。ポケモン殺してしまった自分が、ポケモンを助ける事で生活していく事は、果たして許されるのだろうか。違う、本音を言え。たしかに殺した事に対する、罪悪感はあった。しかし、迷いの根源はそこでは無かった。もっと重要な事があった。彼は、ここにきてまだ攻撃を喰らう際の痛みに怯えていたのだ。殺しあうわけでは無いと分かっていても、その不安は消えて無くなるわけではない。救助隊をやるのであれば、今日みたいに襲ってくる敵と、戦う事になるだろう。もっと強い敵と戦う事になるかもしれない。殺しあわなくても、戦闘は痛みを伴う。それは彼にとってこの上ない苦痛であった。彼はできるだけ、痛くないように生活していきたいのだ。
     とは言え、ここでゼニガメの誘いを断ってしまっては、これから何をすればいいのか分からなくなる。見知らぬ世界では、誰かについていく方が無難であろう。それに、人間に戻るための手掛かりか見つからない今、とにかくここで生活していけるようにしなくてはならない。
     
    「どうする、やる?」
     ヒトカゲはゆっくりと頷いた。飯を食っていくためには、仕方がない。苦渋の決断であった。
    「じゃあ明日から頑張ろう!」
    「分かった。一緒に頑張ろう」

     こうして、ヒトカゲとゼニガメは救助隊を結成する事になった。これから彼らには、どんな困難が待ち受けているのだろう。彼らの冒険が今、始まる!



     そんな彼らが、「倒す」では無く「殺す」事を目的とした集団に追いかけられる生活を送るのは、まだ先の話である。


     この話はフィクションです。実際のゲームとはストーリーが大きく異なります。

     
     完





     

     この話はフィクションです。実際のゲームとはストーリーが大きく異なります。 


      [No.1984] 真っ赤なエリートトレーナー 投稿者:いろは四季   《URL》   投稿日:2011/10/12(Wed) 16:11:47     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「・・・ツバキ! 好きだ! 俺と付き合ってくれっ!!」
     俺の、一世一代の告白。初恋の相手は、俺には到底釣り合いそうもない美人のエリートトレーナー。
    『恋? そんなもん当たって砕けなさい!』
     それはもう書ききれないほど色々と世話になった、ミニスカートの彼女からの縁起でもない教えを頂いた時は、内心
    『こいつ何てこと言いやがる・・・!』
     とか思ったけど、もうこの際、玉砕でも何でもいい!! 目の前にいる君が!! 好きなんだ!!
     この思いだけでも伝えたいん・・・

    バシィ!!

     返ってきたのは言葉じゃなく、やっぱりビンタだった(予想はしてたけど)
     そして近くの木からポッポ、草むらからオニスズメが飛び出して逃げていく。
     なにこのデジャヴ。
     凛とした声で、彼女は言う。
    「さん付けは? あと、敬語」
    「すみませんツバキさん、ホントすいません。でも、あの、ブーツ痛いです」
     俺は普通の運動靴だよ!
     トレッキング対応可のブーツで踏まれたら激痛だよ!
     しかし彼女――元ミニスカートで、初対面の俺に鼻血が出るほどのグーパンをお見舞いしてくれた『ツバキさん』は、なかなかどうして俺に対して鬼畜極まりない。
    「年下のくせに敬語使わないからよ」
    「判りましたすみませんごめんなさい!」
     いいから早く踏むのやめてよ! 血が出るよ! マジで!
    「反省してるわけ?」
     もう見慣れた絶対零度の視線でツバキさんは俺を見下す(残念ながら、俺はまだツバキさんより身長が低い)
    「も、ホントにしてますって! 心の底から反省してます! ごめんなさい!」
     やばい、もう泣くかも・・・
     と思っていたら、ようやく俺の足へのふみつけ攻撃が終わった。
     今やったら絶対逆鱗食らうから、足の手当ては後でしよう。絶対あざできてる。絶対。

     これ以上ないくらい整った顔立ち(目つき除く)、華麗なウェーブが美しい栗色の髪、そしてスタイルは抜群。
     ここだけの話、胸はもうちょっとふくよかでもいいんじゃないかと思う。ぽよんぽよんのおっぱいとか、男の浪漫だよな?あの魅力について語るとしたら、まず(以下略
    「で、さっきの寝言は一体何? アンタ、起きたまま寝言言えるわけ?」
     ほら、ひどくね? いくらなんでもひどくね? でも俺、この人好きになっちゃったんだよなぁ・・・・・・
     惚れたモン負けっていうのかな。中身がテッシードみたいでも、好きなことに変わりはないんだよな・・・
     俺もつくづく物好きだとは思う。
     告白されてビンタとブーツで踏み放題なんか返す女の人なんか見たことも聞いたこともないもん、俺。
     この人初対面からぜんぜん変わってないよ・・・・・・。ていうか、変わる気がしないよ・・・・・・。
     いや、別に変わって欲しいわけじゃないけど。むしろそのままのツバキさんが好きなんだけど。

     深く息を吸って、吐いて、俺は今度こそ真剣に言った(開き直った、というのが正しいかもしれない)
    「寝言じゃないです、俺、本当にツバキさんが好きです。付き合ってください」
     ツバキさんは、俺の言葉を聞いて更に呆れたようだった。
     が。
    「どこが」
    「へ?」
     唐突かつ意味が判らない問いに戸惑う間もなく
    「私のどこが好きなのか具体的に上げてみなさいよってことよ! この××××!!」
     なんかキレられた! 理不尽だ! っていうか、その最後の一言!!
    「ツバキさんそれダメです! 放送禁止用語っていうか、作者困ってますって!」
    「作者がなによ! ○○で△△△△な××××が!!
    「ツバキさんやm・・・!!


    *しばらくお待ちくださいませ
    *ツバキが暴走しておりますので、大変危険です
    *写真撮影などもご遠慮ください。後々の責任を負いかねます


    「お、ちつき・・・・・・ました、か・・・」
     ツバキさんも俺も虫の息で、丈の短い草の上に寝転がっている。
    「クソ・・・作者・・・」
    「そんなこと言ってると・・・もう書いてもらえないかも知れませんよ・・・」
     あ、ツバキさんが黙った・・・・・・書いてもらいたいんだ・・・・・・。
     こういう、不意打ち気味に可愛いところが好きなんですよ、とか、さらっと言えたらいいのにな・・・。
    「・・・・・・よ」
    「へ?」
     ボソボソ言われると、作者も俺もよく聞き取れないですツバキさん。
    「えっと・・・わた・・・か・・・き・・・ない・・・って・・・か・・・」
    「だから、聞き取れないです・・・ツバ――
     その時俺は気付いた。
     俺と顔を合わせないようそっぽを向いたままのツバキさんの耳が真っ赤だってことに。
    「すいませんツバキさん、全然聞こえないです。はっきりお願いします」
     俺はどうにかニヤニヤを心の中だけに抑えながら、極めて冷静に問いただす。
     ほらさ、この人さ、全然正直じゃないし、キレると怖いし強暴だし(俺だけ痛いし)、そのくせいつも余裕だし、エリートで、俺なんかバトルでは勝ったことなんて一度もないし、案外世間知らずだし、口も悪いけどさ・・・・・・

    ツバキさんは耳を真っ赤にしたまま

    「わ、私も! その! アンタ・・・じゃないや・・・カシのこと! 嫌いじゃ・・・ない・・・」

     尻すぼみになったけど、聞こえた。
     でも俺はあえて意地悪してみる。

    「意味が判らないです。はっきり言ってください」

     ツバキさんはしばらく、もぞもぞと変な動きをしていたけれど、やがて負けを認めるみたいにこっちを向いた。

    「わ・・・たしも、カシのこと・・・す、好き・・・よ・・・」
     あぁ! ちくしょう、可愛いなぁもう!!
     この表情は俺だけのもの。他の誰にも見せてたまるか。
     たまに痛いことされるくらいで、こんな可愛い人嫌いになれるわけがねーよ。
    「・・・・・・反則ですよ、それ・・・」
     俺はそう言って、真っ赤なお耳のエリトレさんを抱きしめた。
     ワカバタウンのカシ――つまりは俺だけの、可愛い可愛いエリトレさんを。


    Fin.






    一応言い訳を……
    「おうふくビンタと拳」のこぼれ話? 続編?
    いや、私にもよく分からない作品なんですが
    出来心です
    ラブコメが書きたかったんです!
    活字で糖度100%くらいのやつを!
    ポケモンほとんど関係ないですが(出てこないし)
    最近、私の中でショボーンな出来事が結構あったので自己満足してます

    明日から頑張る。


    【描いてもいいのよ】
    【でも描いたら危ないかもよ】
    【批評していいのよ】


      [No.1983] つつき 投稿者:CoCo   《URL》   投稿日:2011/10/11(Tue) 02:15:36     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     

     おい

     待っ
     ちょっと
     まじ おい
     地面 とけてるし
     落ちてるし
     風いたいし 涙わくし

     ――神に祈った。どこの神とも知れない。唯一神でも八百万でも創世神でも貧乏神でももはやなんでもいい。ちょっと待てよ。死にたくないよ! どうしていきなり溶岩に落ちて全身黒こげの塊になって死ぬんだ! クレイジー! クソッタレ! ジーザス! 死んだほうがマシだ! 嘘! やだ死なない! 死なないよ! まだ彼女に会ってない! キスしかしてないのに! 童貞なのに! 呼ばれたのに! なんか来てるから来いって! 神様! カミサマ!

     焼けるような熱風で皮膚が熱いを通り越して痛みをスルーして天国への階段を上った。脳みそが沸騰していた。目を開けているのかいないのかわからなかった。すさまじい風。服がダイビングスーツのようだ。焼ける。
     手の皺と皺を合せて祈った。走馬灯が焼け落ちた。意識が蝋のように溶ける。こんなことなら彼女をもっと可愛がっておくべきだった。溶け落ちて真っ先にマーマレードのような溶岩にしたたり落ちてジュウと水蒸気を上げた。岩石に混じって流れた。
     そして鈴の音を聞いた。
     僕はまだ風を感じていた。落ちている。鈴の音がする。凛。焼けぼっくいと化してゆく身体を漱ぎ流すように降り注ぐ。乾いて黒くかたまってゆく外殻に染み渡るように鳴り響く。凛々。
     天使が現れた。あたかもルーベンスの絵画の前に降りるような屈託のない幼児の微笑みで。天使は剥いたばかりのタマネギの姿をしていた。新緑と白い地肌。小さな指先が伸びる。涙と熱風に焼け付いた目で何が見えているのか見えていないのかまったくわからない――。

     E.T.

     ハッとした。
     触れた指先の感覚から、電撃の迸るような凄まじい勢いで全身に感覚が開花した。蘇った。枯れかけた花が突如生命エネルギーを注がれて満開するような爆発的な復活を感じた。気がつくと僕は、普通に僕だった。
     天使が居た。天使と僕はそれぞれの指先で触れ合っていた。鈴の音が遠のく。そうだ、この天使の名前は有名だ。セレビィ。森を守る妖精。時を渡る神。
     僕はどこか、廃墟のようなところに立っていた。天井は崩れてなくなっていて、建物だった名残はあるがもはや完全に野外だ。月明かりで薄明るいフロアに錆びたドラム缶が鈍く照っている。
     不意に背後から、冷たい指先が僕の目を覆った。
    「だーれだ」
    「やめてくれよ」
     振り向くと彼女が笑っている。
    「静かにしてね。まだ下に私が居るの」
     また妙ちきりんなことを言うしさ。
    「死ぬかと思った。会えてよかった」
     とりあえず彼女を抱きしめる。と、彼女の背中にくっついていたタマネギの妖精も一緒に潰してしまった。こいついつのまに彼女の背に。
     と思って、よく見ると、ちょっとまて。
     セレビィ二匹いるぞ。
    「おい、どういうことだ」
    「だから静かにってば」彼女は口を尖らせる。「あたし、来ちゃった後から来たの。だから下のフロアに、来る前までのあたしがまだ居るの。気づかれたらまずいでしょ、タイムパラドックスなんて作者の手に負えないもの」
     僕はホールドアップした。彼女の発言には脳ミソが追いつかない。
     すると、どこかから「あーッ、もう!」と苛立つ声が聞こえた。彼女の声によく似ている。
    「来たわ。時計見て」
     僕はアイフォンにタッチした。時計は0:00、昨日と今日と明日の境目を差している。
    「おめでとう」
     彼女はささやくような声で祝いの言葉を言うと、音が鳴らないようにハンドクラップして、僕に何か丸いものが包まれた包装紙をくれた。突然のことで、僕はなにがなんだかわからない。目の前が白黒した。
    「どうしたの、来たのよ」彼女は微笑む。「あなたの誕生日」
    「え?」申し訳ないことに僕は混乱していた。「誕生日がどうかした?」
    「誕生日おめでとう」
     そして彼女にプレゼントを握らされて初めて、祝われたものがなんだったのかを理解したのだった。


     包装紙を開けると、中にダークボールが入っていた。
    「これは……?」
    「新品よ」
    「いや、これは……」
     僕はポケモンを持っていないし、モンスターボールをコレクションする性癖もないんだけど。
    「今からフライデーナイトだもの。わざわざゆめのあとちで他になにをするの?」
     要領を得なかったので問いただしたところ、とりあえずポケモンを捕まえようとしていることだけはわかった。ヨーテリーのお返しだそうだ。
    「でも僕はポケモンを持ってないんだけど」
     すると彼女の肩口から、セレビィが二匹顔を出す。
    「貸すわ」
    「……その二匹、どこから?」
    「配布よ」
     僕が彼女を理解できる日はたぶん永遠に来ない。


     僕らはそれから、明るい月を眺めながら、”彼女”が下のフロアから消えるのをずっと待っていた。そして僕の部屋の居候に、もくもくと煙を吐く獏が加わった。部屋に帰ってきて最初にやったのはボールの隙間から漏れる煙を逃がすべく換気扇をつけることだった。
     そういえばアイフォンはメールを受信していて、それは例の旧友からで、そこには【すまんが、俺の新しい相棒がどっかいった。もしかしたら自転車が気になってお前ん家に行ったかもしれん。なんかテンション上がると、どうやってかしらんがエスパーパワーでものを黒こげにすることがあるから気をつけてとりあえず捕まえておいてくれ】と書かれていた。僕は明日の朝一番に奴をヴン殴りにいくことにした。
     それまでは、彼女と二人で。

    「ねえ、そろそろ寝ないの?」
    「まだ。次はノボリさんが『わたくしの最終形体を見せて差し上げましょう!』って言ってたけどあの人イッシュ産しか使わないからパーティ的には」
    「……寝ないの?」

     長い夜を過ごす。



    ***

     なんとなく完結。今は猛省している。
     お粗末さまでした。
     


      [No.1982] Coming soon 投稿者:CoCo   《URL》   投稿日:2011/10/11(Tue) 00:32:52     77clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     


    ※青年のぼんくら頭が現実を読み込み中です。一拍お待ちください。

    「……で? なんだって?」
    『だから! もうすぐ来るの! 来るのよ! 来て!』
     夜中に彼女から電話がかかってきた。彼女というのは僕の親戚の友人のいとこの双子の妹の知り合いの姪で、去年の今頃ハンバーガーショップにて邂逅した。注文を伺う僕に対して、丁寧な自己紹介の後「タダ券をください」と言ったので、追い返した。後で気がついたが彼女はスーパーシングルトレイン常連の、ライモンでも名の知れたトレーナーだった。サインを貰っておけばよかった、というちょっとした後悔をよそに、彼女は翌日もやってきた。僕がサインをねだる前に彼女は「あなたの心をください」と言ってきた。あげた。そして僕は彼女のマネージャーになった。
     彼女の通り名はタイフーンという。毎度傍らで暴風を繰り出し記者陣やしつこいファンを吹き飛ばしているエルフーンはほとんど公式試合には出場しないが、タイフーンという名は彼女によく似合っていると思う。なぜなら彼女自身がとても暴風な女性だからだ。友人には「あの淑やかな人が?」と惚気の裏返しを疑われるが残念ながら事実なのである。どの辺りがというと、こういうところがだ。
    『起きてる? 起きてないなら今すぐ起きて。もうすぐ来るの。だから早く来て』
     受話器は彼女の声で早口に言った。ベッドルーム兼PCルーム兼リビング兼キッチンの六畳間は真っ暗で蛍光時計は零時付近を指していた。頭ががんがんした。
    「今起きた。もうちょっと落ち着いて話せないかな……」
    『ごめんなさい、夕御飯食べるのが遅かったせいで落ち着けないの』
     今期一番の落ち着いた声で彼女は言った。
    『ほんともう、来ちゃうの。目の前なの。はやく来て!』
     危機迫る声で言うが、ポケモンがいる限り力ずくで彼女に勝てる奴なんてそうそういないと思う。危険はないんだろうがだんだん焦ってきた。僕は首で受話器を押さえ、寝巻きを適当な普段着に着替え始めた。手元にあった青緑ストライプのYシャツを羽織る。
    「なにが来るんだ? 今どこにいるの?」
    『来るの! 世界中に! ええと……今はサンヨウシティのサンヨウじゃないところにいる』
     どこだよ。
    「とりあえずサンヨウのあたりにいるんだね? 行くけどいい?」
    『早く来て! ほんとに、あと四十秒ぐらいで』
     そりゃ無理だ。
     携帯に掛け直すように伝えてから受話器を置き、靴下を履いて外へ飛び出す。ガレージへ行って自転車に鍵を差そうとしたところで気がついた。
     青緑のマウンテンバイクが真っ黒になっている。
     しかもなんだかひしゃげている。
    「なんだこれは……」
     自転車は真っ黒こげだった。触ったら崩れそうなぐらいだ。
     とっさに旧友の顔を思い出した。先週、やつに貸したものだ。なかなか返さないので催促したら、あとでガレージに戻しておくと言われたっきりだった。あのしどろもどろの原因はこれだったのか。
     電話すると、ガヤの向こうから陽気な奴の声が「やあ!」と聞こえた。
    「どうしたんだい、辛気臭い声なんか出しちまって。いい夜だぜ、ライモンは……」
    「黙れよクソ野郎。誰が自転車をウェルダンに頼むなんて言った?」
    「ああ、あの自転車か。ハクがついたろ?」
     絞め殺してやろうか。
    「俺の新しい相棒が気にいっちまってな。遊んでたら、いつのまにかああなってた」
     このままだと思わず非合法な方法で友人を失ってしまいそうだと思ったので黙って切った。
     しょうがない。タクシーでも取るか。と思って飛び出した表の道路は脅威の大渋滞だった。警官がひっきりなしに笛を鳴らしていた。
    「どうかしたんですか、この車の数は……」
     声を掛けると、警官はため息をついた。
    「この通りを真っ直ぐ行って、二つ目の信号を曲がったところにあるポケモンセンターの前に案内板がある。それで分からなきゃとりあえずあの、見えるだろ、あのドームのところまで歩いていきなさい。あとは人の流れに乗れば会場に着く。だがしかしだね、君のような若いやつには言ってもわからんと思うが、ルールとは守るためにあるものだよ。本来徹夜で列をつくるのは禁止されているんだ。それがなんだ、君らはまるでルールに基づいて市民を守ろうとする我々を説教臭い親父を見るような目で――」
    「あの。すみません。この渋滞はいったいなにがあったんです?」
     警官は目をぱちぱちする。
    「なにって、そりゃ、ライモン万博さ。明日から一週間やるんだ。半年も前からニュースでやっていただろう?」
     そういえばそうだった。あんまり頻繁にテレビで見るもんで結局のところ開催がいつなのかよくわかっていなかった。
    「開場は朝の十時だってのに、このザマだよ。まったく、非常識な人間が多すぎるんだ。いったい何人いるんだ? え? ライモンの人口超えるんじゃないのか。どれ数えてみるか、ひー、ふー、み」
     僕は警官に背中を向けて携帯を取り出した。いま流行りのアイフォンだ。生みの親を亡くした彼は哀悼の色をしている。創始者のスピーチはすばらしいと評判だが、多くの成功者が語ったこととあまり相違ないような気がする。
     画面をスライドさせてニュースを見る。万博開催まであと十時間。トップニュース、地下鉄では総勢十五匹のマルマインによる自爆テロか。スーパーマルチでもなければ死者が出ていたな。おっと、スカイアローは封鎖されているじゃないか。カビゴンなんか誰が置いてったんだ。ポケモンの笛なんて持ち合わせがないぞ。
     僕はすっかりまいってしまった。なにせ八方塞りだ。彼女がほんとうにサンヨウに居るなら、もうどうにもしようがない。地下鉄は線路が吹き飛んで封鎖されているし、南部へ向かう橋は封鎖を食らっているし、道路は大渋滞だし、あとは空を飛んでいくぐらいしか方法がない。しかし飛行機は論外だし、僕はトレーナーではないからポケモンでの飛行を許可されていないし、そもそもポケモンを持っていない。唯一手持ちに居たヨーテリーは素質があるとかなんとか言われて彼女に強奪されてしまった。今はムーランドとして砂パでの活躍を期待されているそうだ。
     アイフォンが震えた。天の声だ。
    『遅い! もう来ちゃった!』
    「いったい何がだよ」
    『いいの』
     何が何なのか知らないが、彼女は少しふてくされたようだ。
    『いいから早く来て。いまさら来たって遅いのよ』
     頭がこんがらがってきた。
    「でも、行きたいのはやまやまなんだけど、行けないんだよ。自転車は黒こげだし、道路は渋滞してるし、地下鉄は大爆発してるし、僕は空を飛べないし」
    『じゃあ手配するわ。ちょっと待ってなさい』
     電話を切られた。手配するったって、何をだ、いったい。
     彼女が何を手配したのかについて考えながら、薄曇りの夜空を見上げ、しばらく壁に寄りかかって貧乏揺すりをしていると、ふいに視界へ黄色いものが割り込んできた。目前の空間へ物理法則を越えて滑り込んできたのだ。
     そいつはケーシィだった。ケーシィは座り込んでこっちを見ている。
     そうか、彼女が手配したのはこいつか。テレポートでサンヨウまで呼び寄せようって言うんだな。
    「よしきた!」
     ケーシィを抱き上げようと傍に寄ると、突如、彼は目に見えて慌てだし、ヒュンとテレポートした。
     あれっ、と思って見ると、閉じたガレージの前に移動している。
    「おい、待てよ」
     捕まえようと手を伸ばすとまたぎくっとしたような感じで、今度は街灯の下だ。
    「待てってば!」
     何がしたいんだお前は! トレーナーがトレーナーなら、ポケモンもポケモンだってんだ!
     僕はケーシィを必死に追いかけた。彼はクラクションが大合唱する表通りをヒュンヒュンとテレポートしていく。焦っているのかうまく移動できていないらしい。そんなに長い距離をワープしていないし、ともすれば【ケーシィはくるまのなかにいる!】となりかけている。具体的には体が半分ボンネットの中とか。
     そしてついに移動距離が2mもなくなり、30cmになり、最後にはぐったりとしてしまった。PP切れだ。
     ライモンの交差点は昼間のように明るい。歩道で力尽きているケーシィを抱き上げると、僕はほっとしたが、すぐに大変なことに気がついた。PPが切れてしまったら、僕が移動できないぞ!
     すぐさまフレンドリーショップに駆け込む。
    「すみません、ピーピーエイドは」
    「当店ではお取り扱いしておりません」
     そうでした。
     しょうがないので家へ戻って、彼女の荷物の中からきのみ入れを漁った。彼女のポケモンなんだから彼女のものを使ったって構いやしないだろう。たしかPPを回復するのはヒメリの実だ。僕はちょっと大げさなサクランボみたいなそいつをケーシィにやった。ケーシィは喜んで食べた。
     すると、にまァーッ、と笑った。
     さて、僕はとても平々凡々で、BMIからルックスまで平均から外れない特筆することもない人間だが、ひとつ人に負けないことがある。それは”むしのしらせ”とでも言えばいいのか――、とにかく、予感が当たるのだ。
     この能力というか、なんというか微妙なシロモノは、主に彼女に対して発揮される。彼女の脈絡のないおねだりや厄介ごとを判別するのには非常に有効だ。悪い予感がするときはなるべく理由をつけて避ける。僕の鞄にはそのための屁理屈ストック帳なるものまで入っている。
     その予感が、すさまじい勢いで警鐘を鳴らしていた。ケーシィの微笑みに。
     僕はものすごい速さで部屋を飛び出した。しかしケーシィは空間を飛び越えて玄関に先回りしてきた。口もとからヒメリの汁が滴っている。悲鳴が喉に凍りついた。
     途端、目の前が真っ暗になった。周囲の空気が粘質になってぐにゃりと歪むような感覚があった。エレベータの動くのに似た浮遊感を感じた。なんらかのサイコパワーが働いていることは間違いなかった。やばい、僕はまだ死にたくないぞ!
     すると僕は、どこかの屋上に立っていた。
     見渡す限り闇に沈んだ森と、石づくりの屋上。間違いなくライモンシティではない。ここはどこだ。足を滑らせかけて思わずアウティッみたいな声が出て内股になってしまった。と、どこからかヘンな音が聞こえる。ヒュラララーッ。空気を震わす音で全身に鳥肌が立った。だめだ、夜にこんなところにいたらいけない。振り向くと、ケーシィ。
    「このやろう! ここはどこだ!」
     叫ぶと彼はまたにィーッと笑う。なんなんだいったい。なんなんだお前は。あんまり苛立ったのでぶん殴ってやろうと、助走をつけて飛びかかった。拳が奴の頬をとらえる、と思った瞬間奴は消えた。ちくしょう貴様テレポートか!
     アッ、と足を踏み外し、落ちる。落ちる、落ちる――
     眩暈がした。熱い。まだ落ちてる。あれ、そんなにむちゃくちゃ高い場所から落ちたわけでもないはずなんだ、が。
     凄まじい風が吹き上げた。熱風だった。熱い、ヤケドする、無理やりに目を開く、すると。
     見渡す限りの溶岩。
     ドロドロに溶けた灼熱の土が大地から滾々と湧き出し、ゆるやかな川をつくっている。
     なんだこれ。なんだこれよ!
     やめろ! まじ ほんとに
     おい
     焦げるとかもはやそんな話じゃ
     ね
     おい








    ***


    1.ポケスコ〆切一時間前。
    2.突然「いま書いてんのこれおもろないんとちゃうやろか……」という疑念に襲われる
    3.というかまだ1000字ちょっとしか書いてない。
    4.しょうがないので30分前に突然即興で書き始める。(血迷った)
    5.10分前に「これじゃマズイ」と正気を取り戻してもともと書いてたのに取り掛かる。
    6.間に合うはずがない。
    7.やけっぱちでポケストに投げる。 ←イマココ!


     即興で血迷った結果がこいつです。今は反省している。
     続きは あたまのなかから にげだした!


      [No.1981] こなゆ。校正 投稿者:ナナシのみ   投稿日:2011/10/10(Mon) 21:53:40     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 面白おかしそうに、実に愉快な顔を浮かべながらキュレムをトドメを刺す為に氷柱をもう一本作り出した――。

    キュレム「は」では?


      [No.1980] 還る場所 投稿者:りえ   投稿日:2011/10/09(Sun) 00:11:06     108clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    当時は子供で、友達もいなく、遊ぶ金もなく、行きたいところもなく、食べたいものは親に言えばそのうち食卓に上ったし、
    恋人がいるほど大人でもなく、テレビはドラマばっかりでつまらなく、時間だけは無限にあった。

    ポリゴンがテレビで凡ミスをしでかしてくれたせいで、クラスメートたちはポケモンから離れていた。
    永久に埋まらないポケモン図鑑を抱え、わたしの主人公ユウは、終わらない旅をカントー地方でしていた。
    もう何周回ったかわからないカントーだった。
    イワヤマトンネルはノーフラッシュでクリアできたし、
    コインはとっくに9999枚を二回貯めていたし、
    おいしいみずとサイコソーダとミックスオレはすべて99本持っていたし、
    その他の道具も99持っていた。
    レベル100のポケモンが、手持ちどころかハナダのどうくつで遊ぶために作ったパーティ、
    チャンピョンロードで遊ぶために作ったパーティの18体すべてプラス、プクリン5体だった。
    このセレクトは今でも理由がわからない。


    薄べったいゲームボーイの緑黒画面が、あの時、世界だった。
    ポケモンたちの鳴き声も電子音、ポケモンたちはぶっちゃけ妖怪じみてて怖いし、“なみのり”したらみんな同じポケモンになっちゃう上に
    主人公が行方不明になるし、“かいりき”はどう見ても主人公が押してるし、
    せいめいはんだんしは陰気で音が怖い街にしかいなかったし、
    エスパー強すぎだし、スターミーとケンタロスとフーディンが無双してるし、
    いあいぎりは主人公を突き抜けて生えていた。

    そんなことはどうでもよかったけど。
    大事なのは、この世界のどこまで行っても、優しくて何かが好きな人ばっかり居たことだった。
    いいなあいいなあ、皆楽しそうで、と思ったことを今でもはっきり覚えている。


    こっちの世界は、男の子たちは陽気で優しいか、陰気で優しいか、地味に優しいかのどれかで、
    ゲームが好きでスポーツが好きならたいてい友達だったけど、
    女の子たちは、好きな男の子の話してるか、おしゃれの話をしているか、誰かの悪口を言ってるかで
    あまり楽しくなかった。


    その思いは今、26歳になっても引きずっていて、「どうしたらもっと楽しく、やりたいことだけやって生きていられるだろう」と
    常に考えているダメな大人になった。
    ここじゃないところで、自分自身の本当の人生が待っていて、
    そこにたどり着くまでの繋ぎが今なんだと、なんとなく信じて楽になりそうなフリをして生きてる。
    ちっとも楽でも楽しくもない。



    ある晩、夢を見た。初代手持ちのリーダーポケモン、リザードンと会った。名前はエリザベス。
    男か女かわからなかったから、女の子のヒトカゲをもらったことにした。
    タケシで初めての“ひんし”にして、カスミで数えきれないほど“ひんし”にして、リザードになって倒した子。
    セキチクジムクリアのためにレベルをあげていたら翼が生えて、女の子なのにこんなにかっこよくなってどうするの、と思った。
    “そらをとぶ”は覚えられないし、“つばさでうつ”も覚えないけれど、翼が生えて惚れ直した。
    いつかこの子に載って“そらをとぶ”ができたらな、と思っていた。
    度重なる引っ越しの(なんせ一年に一回とか二回のペースで県をいくつも超えていた)せいで、
    カセットはもうどこかに行ってしまったけど、それでもあの子と旅をしたことはちゃんと覚えてる。
    あの子がいたから、あの時なんとか楽しく生きてこれたんだ。

    エリーは人の言葉を話さなかった。だから夢でも、グルルと鳴いただけで一言も話さなかった。
    夢では初めて会ったね、おまえ。触った感じは、暖かかった。お前恒温動物だったのかい。そうか。
    息から動物のにおいがした。
    目にヤニが溜まっていたので、ハンカチでぬぐった。頭を抱きしめた。
    動物の強い筋肉を腹や腕で感じながら、ただ、もう一度会えて、うれしかった。言いたいことや聞いてほしいことが山ほどあった。
    私はもう大人になって、自分の稼ぎで食えるようになったよ。
    友だちもできたよ。みんな好きなこと考えるために生きてるよ。
    行きたいところもたくさんできたよ、世界は見た限りだと美味しかったしきれいだったよ。
    好きな人も何人かできたよ、大事にされて大事にして、すごく幸せだったよ。
    テレビはあいかわらずつまらないけど、インターネットってものがそこそこ面白いよ、
    時間はあんまりないけど、あの頃よりたのしく生きてるよ。


    違う、こういうことが伝えたいんじゃない。起こったことなんか伝えたってどうしようもない。終わったことなんだから。
    エリーのいない間に起こったことなんか多すぎてとても言えない。きっとエリーもそうだろう。
    言葉にはならないけれど、エリーもいろんな大冒険をして、たくさんの人に出会って、いくつもの別れを経験したんだ。
    黙って腕に込めた力を強くした。あったかいなあ、お前。熱いくらいだ。



    目が覚めた。木目調の天井。自分の部屋。朝6時。
    さっき、エリーに何が言いたかったんだろう、と夢の続きを考える。
    「会えてうれしかった」? そんな生半可な言葉ではない。
    「あの頃より楽しく生きてるよ」? 違う。
    「君が居てたのしかった」? そんな後ろ向きな言葉が言いたいのではない。
    寝床から起き上がる。顔を洗って歯を磨きながらも、さっきエリーに言いたかった言葉を探す。洗濯機のボタンを押す。
    寝起きはダメだな、頭がぼんやりする。
    鍋に水を入れて火にかけて、夕飯の残りをレンジで温め始めて、部屋に戻ってよろよろ着替える。
    なんだろうね一体。
    ジーンズをはいて、ネルシャツを着て、カーディガンを羽織る。台所からお湯が沸いてる音がする。ティーパックを放り込む。
    もぐもぐと残り物を食べてちょこっとお茶を飲んで、ぼんやりする。

    唐突に文が降ってきた。
    そうだ、そうだよな。お前と私だものな、こんな協力で頼もしいパートナーはちょっと他に居ないよな。
    これを言わせるためにお前は会いに来てくれたのか。

    「行くぞ、エリー。どこまでも一緒だ」
    こんなこと、照れくさくて言えやしない。


    エリーもポケモンもただのデータだ。そんなことはもう何百回も考えたし知ってるしわかってる。
    なのになんでこんなに大事で、10年以上も大事でたまらないのかを考えても答えなんか出ない。
    好きだから。これでいいだろ。これ以上の答えなんかねぇよ。
    ただの電子のデータだよ。いいんだよ、私はエリーから、冒険って楽しいねって教わったから。
    ……ここまでこっぱずかしい事書いておいて何を誤魔化してる。
    私はエリーから、生きてるって楽しいかもしれないよ、って教わっていた。
    今はこのかまぼこ板強のサイズの世界しかないかもしれない。
    でも世界はいつだってちょこっとずつ広くなっているし、
    今が生きづらくてもそれがずっと続くほど我慢強くもないし、
    嫌なことは嫌だって思ってそれを意思表明してもいいし、
    そういうことをしても、自分のことを好きでいてくれる人は存在する。

    そういうことに気が付くために、エリーは「もうちょっと待てば生きやすくなるから」って
    私が気が付いていないところでも、ずっと言っててくれたのだ。
    そのもうちょっとを待つために居てくれた。


    「さて、行こうか」

    ゲームほど楽しいことばっかりじゃないけど、四天王もロケット団も出てこないけど、
    私は私の場所へ還る。


      [No.1978] トゲチックじゃないと首がないので 投稿者:いろは四季   《URL》   投稿日:2011/10/08(Sat) 14:08:44     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    もう私の頭も末期なのか、ヨノワールとトゲチックが街中のカフェに行く話考えてます

    しあわせポケモンと、あの悪そうなモノアイ(+魂を手づかみ)。
    私の脳みそ、一体どうした。

    テーマ【しあわせはどこにあるか】

    ・不幸を嘆く
    ・「不幸ってそもそも何だっけ?」
    ・なんだ、幸せだったじゃん
    ・もっと幸せにしてやんよ


    私にしては珍しく(オリジナルでもバッドエンドが多かった)ハッピーエンドで終わる予定という途方もない挑戦ですよ…

    焼き鳥ください


      [No.1977] ウルガもっすんェ……  オマケデ……【書いてみた】 投稿者:ふに   投稿日:2011/10/08(Sat) 03:35:14     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ウルガモスじゃない、エーフィなんだっ(違
     え、サイズ的に無理? ぁぁ、忘れて\どかばきばきぐしゃ/

     最近、お忙しいようで。
     体のほうは大丈夫ですか?
     こちらも相変わらずの深夜投稿ですがw
     いいもの読ませていただきました。有難うございますです

     またふにも何か書こうかな……
     と、言うわけで、続き、というか、2番、と言うか、まぁ、そんなものを書いてみた。
     気に入ってくれるといいのだけど……
     





     大宇宙を翔ける灼熱の六花でつかみ上げ
     守るべき者に謳いましょう
     希望の光に捧ぐ命の廻りを謳いましょう
     その命に刻みし祈りはいつか貴方を守るでしょう

     大宇宙を灯す灼熱の六花でつかみ上げ
     守るべき者に謳いましょう
     未来への道標を辿る旅人の軌跡を謳いましょう
     その命に掲げし記憶はいつか貴方を守るでしょう

     白に希望を萌ゆらせて
     黒に未来を咲かせて
     私は謳い続けましょう

     大宇宙を漂う灼熱の六花から仰ぐ
     純白の焔に混ざる蒼い星に光る貴方の姿
     掴もうにも掴めずにただ空を切る手に
     福あれと謳いましょう

     大宇宙に漂う灼熱の六花から仰ぐ
     漆黒の雷に混ざる紅い星に光る貴方の姿
     追っても追ってても追いつけずにただ翔ける貴方の足に
     福あれと謳いましょう

     白に希望を萌ゆらせて
     黒に未来を咲かせて
     私は謳い続けましょう

     希望を望む者よ
     未来を望む者よ
     進むべき道が見えなくて怖いのならば
     せめて私の六花で灯らせてあげましょう
     しかし
     その先は自分の力で進みなさい
     希望との鬼ごと
     未来との鬼ごと
     手にすることができるのは他ならぬ自分の力なのですから

     白に希望を萌ゆらせて
     黒に未来を咲かせて
     私は謳い続けましょう
     
     白に希望を萌ゆらせて
     黒に未来を咲かせて
     私も謳い続けましょう
     

    【久々に書いてみた】
    【みーさんに贈り物】
    【いつもありがとう!】
    【深夜投稿】


      [No.1976] 白は真に黒は理にと太陽が謳いて 投稿者:巳佑   投稿日:2011/10/08(Sat) 01:51:19     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     大宇宙を灯す灼熱の六花をはためかし
     あの世界に謳いましょう
     純白の焔に萌ゆる真実を一つ謳いましょう
     その心に残りし痕はきっと貴方を導くでしょう
     
     大宇宙を灯す灼熱の六花をはためかし
     あの世界に謳いましょう
     漆黒の雷に咲きし理想を一つ謳いましょう
     その心に映りし夢はきっと貴方を導くでしょう

     白に真を萌ゆらせて
     黒に理を咲かせて
     私は謳い続けましょう
     
     大宇宙に漂う灼熱の六花から覗く
     純白の焔に浮かぶ蒼い湖に溶ける貴方の姿
     追い求めていた謎かけの答えに伸びゆく手に
     幸あれと謳いましょう   

     大宇宙に漂う灼熱の六花から覗く
     漆黒の雷に浮かぶ紅い玉に溶ける貴方の姿 
     ようやく掴んだ希望の種を持ち進む足に
     幸あれと謳いましょう

     白に真を萌ゆらせて
     黒に理を咲かせて
     私は謳い続けましょう

     真実を求む者よ
     理想を求む者よ
     足元が見えなくて怖いのならば
     せめて私の六花で灯らせてあげましょう
     しかし
     その先は貴方の意志で進みなさい
     真実との鬼ごと
     理想との鬼ごと
     捕まえることができるのは他ならぬ貴方の意志なのですから 

     白に真を萌ゆらせて
     黒に理を咲かせて
     私は謳い続けましょう
     
     白に真を萌ゆらせて
     黒に理を咲かせて
     私は謳い続けましょう




    【歌ってみました】

     宇宙科学という授業で太陽のことを学んだときのこと。
    「白斑……黒点(強い磁場があるようです)……まさかレシラムとゼクロムは、実は太陽……ウルガモスから産まれたポケモンだったりし(以下略)」とかなんか大胆なことを思いついて今回の物語(というより詩かな)が産まれました。  
     

     ありがとうございました。


    【何をしてもいいですよ】


      [No.1975] ■注意事項 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/10/07(Fri) 19:13:32     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    校正中の諸君および格闘中の諸君、順調かね?
    ここに投稿しても 私にメールを送らないと投稿したことにはならないから注意してくれたまえ。

    未提出の諸君らの健闘を祈る!


      [No.1974] Re: 脱字かな……? 投稿者:no name   投稿日:2011/10/07(Fri) 18:56:10     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ご指摘ありがとうございます。直して再提出しまっす!


      [No.1973] 記念日 投稿者:閲覧   投稿日:2011/10/06(Thu) 23:01:15     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     誤字脱字などありましたら。


    (以下本文)


     ある町の通りをのんびり歩くあなたの肩を、誰かが叩きます。誰が何の用だろう、とあなたが振り向くと、女の人が小さな手帳を持って何か尋ねたそうにしています。深紅の長い髪に優しい浅葱色の目をしています。知らない女の人です。
     あなたが立ち止まって待っていると、彼女は手帳のあるページを開いてあなたに差し出しました。そこにはこう書かれています。
    『仲良しの女の子にプレゼントを贈りたいのですが、どんなものがいいのでしょう? その子はおてんばだけど素直な、小さな女の子です』
     それから女性はボールペンを取り出して、こう書き加えました。
    『今日は私とあの子が出会った、記念日なんです』
     あなたはしばしの間考えます――こういうことは目の前にいる女の人の方が詳しそうなのにと不思議に思いながら――そして考えた末、あなたはこんな風に答えます。
     小さな女の子なら、ぬいぐるみやお人形でしょうか。
     おてんばなら、外へ持って出て遊べるおもちゃもいいかもしれませんね。
     おもちゃでなければアクセサリーなどどうでしょう。
     そうだ、小さな子どもなら絵本もいいんじゃありませんか。
     それから、誕生日やクリスマスみたいに、美味しいケーキを食べるというのはいかがでしょう。
     女性はあなたの言葉にうんうんと頷きながら(彼女は喋れないけれど、耳の方は問題ないようです)熱心にメモを取ります。そして、手帳に『ありがとうございます』と書いてあなたに見せました。今からもう仲良しの女の子の喜ぶ顔を想像しているような表情で、そこからも彼女の感謝の気持ちがうかがい知れます。
     あなたはどういたしましてと述べ、別れの挨拶をしてその場を去ります。女性に背を向けて歩きかけたその時、あなたは一言付け足そうと思い立ってくるりと振り返ります。
     けれどあなたに見えたのは、通りを風のように駆けていくゾロアークの後ろ姿だけでした。
     あなたはぐんぐん小さくなるゾロアークを見送ります。そして、あなたは言い損ねたことをほんの少し気にするけれど、再び通りをのんびりと歩いて行きます。

     ここであなたとゾロアークの気まぐれな出会いは終わり、この続きに書いてあるのは、あなたと出会った後のゾロアークのお話です。


     ゾロアークは店がたくさん並んだ通りに着きます。遠目にもキラキラしたアクセサリー屋にカラフルな看板を掲げたおもちゃ屋、落ち着いた佇まいの本屋に甘い匂いのするケーキ屋、さっき尋ねたものが全部この通りに並んでいます。ゾロアークはとりあえず順番に巡ってみようと、通りの店の一つへ入って行きました。
     彼女はまずアクセサリー屋に入りました。入った途端、ゾロアークは途方に暮れました。なぜって、種々様々なアクセサリーがあちらの壁にもこちらの棚にも飾られていて、一体どれを選べばいいのかゾロアークには見当がつかなかったのです。
     すっかり弱った彼女はこう考えました。これだけたくさんのものを売る人間という種族は、たくさん売っていっぱい買うのが好きなのでしょう。ならここでもいっぱい買うのが正解のはずです。そう考えたゾロアークは、店にあったアクセサリーをひとわたり買ってしまいました。髪飾りを一つ、首飾りを一つ、ブレスレットも一つ、ブローチも一つ……という具合に。
     アクセサリー屋の店員に目を丸くされながら買い物を済ませ(お金は幻影ではなくてちゃんとした本物です)、彼女は急に膨らんだ荷物を抱えて次は本屋に向かいました。本屋でも彼女は同じことをしました。つまり、目ぼしそうな絵本を全部買っていってしまったのです。
     すっかり重くなった荷物を両腕に提げて、今度はおもちゃ屋に向かいます。おもちゃ屋に入った途端、ゾロアークは腕が抜けそうな感覚を味わいました。なぜって、おもちゃ屋は本屋やアクセサリー屋よりもずっと広くて、売ってあるものの種類も比べものにならないほど多かったのです。けれど彼女はここでも買い込んで、重たい重たい荷物を両腕と背中で支えて店を後にしました。ぬいぐるみに人形にボールに水鉄砲にフラフープ……とにかく色んなものを買ったとだけここに書いておきます。

     重い荷物を抱えたゾロアークは最後の店に向かいます。甘い匂いのする、こぢんまりとしたケーキ屋です。そこでもケーキをひとわたり買おうとしたゾロアークの目に、あるものが目に入りました。それは、ケーキではありませんでした。それはケーキが乗っていたトレイに置かれた、ケーキの説明の紙でした。もう説明するケーキは全て買われてしまってそこにはないのですが、そこに何があったのか、小さな紙がしっかりと説明していました。
    『きのみをふんだんに使った、ポケモンも食べられるケーキ……大好きなポケモンと一緒に』
     写真も付いていました――ふわふわのスポンジにきのみがたっぷり乗った、見るからに美味しそうなケーキです。
     これだ、と彼女は思いました。このケーキなら女の子とゾロアークが一緒に食べることができます。普段、女の子とゾロアークが食べるのは別な種類のものです。けれど、これなら女の子とゾロアークで同じものを味わえるのです。同じ味のものを食べて、美味しかったかどうか感想を言い合うのです。それはとびっきり、いい思い付きに見えました。けれど、そうしようにも肝心のケーキが売り切れてしまってありません。ゾロアークは店員に新しいケーキはいつできるのか聞いてみました。返事は芳しくなくて、明日――つまり、今日はもう作らないと言うのです。ゾロアークはアクセサリー屋に入った時よりも、おもちゃ屋に入った時よりももっとずっと途方に暮れました。力が抜けて、気分も沈みました。明日ではもう間に合いません。ゾロアークはずっかりしょげかえって、ケーキ屋では何も買わずに、重たい荷物を背負って家に帰りました。

     ゾロアークが家(普通の人間が住むような家です)に帰ると、先に上がり込んでいたらしい仲良しの女の子が奥から飛び出して来ました。
    「きつねさん、おかえりなさい!」
     ゾロアークは荷物を降ろして手帳でただいまを伝えます。女の子は今にも天まで舞い上がってしまいそうなほどはしゃぎながら、ゾロアークにこう言います。
    「ねえきつねさん、今日何の日か知ってる?」
     ゾロアークはどきりとしました。もちろん、ゾロアークがその答えを知らないはずはありません。けれど、いっとう欲しかったケーキを買い損なったのと、自分が山ほど買ってきたものが急につまらなく思えてきたのとで、ゾロアークは返事に詰まりました。
    「今日はね、わたしときつねさんが出会った日だよ」
     女の子は気にせず続けます。
    「あのね、だからね、お小遣いでちょっと買い物してきたの」
     続く彼女の言葉にゾロアークは驚きました。女の子は冷蔵庫から箱を抱えて持って来て、ゾロアークの目の前でちょっぴり手こずりながら開きます。すると中から、きのみの甘酸っぱい匂いが立ち昇る、ふわふわのスポンジケーキが一切れ現れたのです。
    「あのね、これはポケモンもにんげんも食べられる特製ケーキなんだって。きつねさん、一緒に食べよう」
     ゾロアークは驚いた表情のまま女の子を見つめました。思いがけない贈り物を貰って嬉しいやら気恥ずかしいやら、二人して同じものを欲しがった偶然が喜ばしいやらで、感情がないまぜになって上手に表現できません。ゾロアークはやっとのことで『ありがとう』を女の子に伝えました。
     それから、ゾロアークは自分が運んできた贈り物を申し訳なさそうに見ます。女の子はゾロアークの視線に気付くと、こう言います。
    「あのね、わたし、きつねさんの贈り物、すごく嬉しいよ。大事にするよ。でもね、たくさんもらったから嬉しいんじゃないよ。きつねさんの贈り物だから嬉しいんだよ」
     ゾロアークはとっても恥ずかしくなりました。いまさらながら自分が闇雲に買い物していたのが自覚されたのです。それに比べて、たった一切れのケーキの美味しそうなこと。
     ゾロアークはケーキを半分こして、女の子と食べました。自分が食べるのと同じケーキを口に運ぶ女の子の弾けるような笑顔を見つめながら、ゾロアークは今日、自分がとびっきりの贈り物を貰ったことに気が付くのです。


     ここでゾロアークと女の子の記念日のお話はこれで終わり。
     最後にあなたがゾロアークに言い損ねた言葉を書き足して、このお話はおしまいです。

                                             』


      [No.1971] 整理したら出て来た 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/10/06(Thu) 19:15:27     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    書いたことないとかいっときながら、メモらしきものが出て来た。

    星に願いを
    1、ガーネットという女の子が学校の帰りに集団に誘拐されて、閉じ込められる。
    2、その集団をまとめてる同じくらいの男の子はサファイアと名乗る
    3、目的も何も喋らない集団と奇妙な生活が始まる
    4、ある日、血まみれで帰ってくるサファイアと話すと、狙ってる集団から守るためと言う。
    5、その狙ってる集団の思惑


    ラスト
    1、集団に裏切られたサファイアが鎖でつながれて取り残される
    2、爆発何秒か前に、ガーネットが間に合う
    3、外そうとするが、間に合わないからやめろとサファイアが止める
    4、サファイア一人だけの話ではないと言って、タイマーが0になって終わり


    発売前に作ったので、ソフトの内容とか丸無視。
    何の話の初期案かはもう伏せたいくらい設定が違いすぎる。
    しかしラストだけはちゃっかり受け継いでる


      [No.1970] 連載のプロット(ネタバレ危険) 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/10/05(Wed) 22:39:29     74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ネタバレ危険。責任は取りません。

    基本的にメモを繰り返すことにより少しずつたまっていくので、まとまりがないのはご愛敬。


















    コガネ城は景観目的だけでなく、ナズナの事故現場に作った墓ともとれる。そう簡単にはなくならないから墓として彼には優秀。


    レプリカボールは「コピーの量産」ができるという点が特筆される。従来のボールではポケモンの保存と再現がやっとだったが、これはボールのデータを元に高速で複製できる。
    コガネ戦流れ:ボルト対リノム→サバカン対ワタル→ユミ対パウル→ダルマ対カラシ→先にハンサム、ドーゲンががらん堂へ行くが、囲まれる→ゴロウ登場、瞬殺→ボルト、ワタル、ユミ合流→がらん堂捜索→ジョバンニとなくなった科学者略歴発見、ジョバンニからサトウキビの正体を教えられる→ダルマだけラジオ塔に乗り込み屋上でサトウキビとバトル→決着がついた直後にジョバンニ達到着、スーパーネタバレタイム→その隙にサトウキビは1匹回復→サトウキビ過去へ、一同追い掛ける→事件の顛末を見届ける→サトウキビ悔恨の情を述べ、海に身を投げる→ダルマ達叫ぶ
    セキエイ軍反攻進路:フスベシティの発電所奪還(ポケセンには予備電源しかなくなり、無尽蔵の回復を断つ)→チョウジorキキョウ→エンジュで合流→コガネで最終決戦

    ダルマの父親の名前はドーゲン

    証拠:解剖記録、現場所見メモ、ナイフ、カバン、販売会の資料、作業服、防犯カメラ、赤い小袖


    赤い小袖:被害者が着用していた。今日がお披露目となるはずだった。
    防犯カメラ:現場前の廊下の状況が録画されている。市長が独自に設置した。(作業服姿の男が現場に入っている。白黒で顔がよく見えず、人物の特定はできない)
    解剖記録:被害者の状態が書かれている。(死因:ナイフによる心臓の一刺しで即死。凶器と刺し傷の形が一致しない。心臓付近の傷口が皮膚のそれより小さい。)
    現場所見メモ:現場の状態が書かれている。(荒らされた形跡はほとんどない。被害者の右人差し指に血が付着。被害者は仰向けで倒れている。机付近に血だまり、死体はそこからいくらか離れている)
    ナイフ:被害者の右手に握られていた。被害者の指紋を検出。
    カバン:被害者の持ち物。財布以外のものがなくなっていた。
    販売会の資料:机の上に置かれていた。少しふやけている。
    作業服:船のスクリューに巻き付いていた。何者かの血痕が付着。名札はついていない。



    市長殺害事件
    犯人:サトウキビ。疑われる人:ボルト。
    動機:市長がサトウキビの正体に気づきそうになったから。
    状況:仰向け、右手にナイフ、背中に刺し傷(市長は左利き)、胸にまで到達。即死と思われる。部屋が荒らされた目立っ
    た形跡はないが、カバンが開いていた。血文字で「ボルト」と書かれたダイイングメッセージ。血だまりが死体の下にあるが、一部ふきとられた跡有り。指に血は付着せず。

    発覚までの流れ:サトウキビ入室→殺害→サトウキビ関連の資料を海に→偽装工作→
    サトウキビ退室→ボルトとすれ違い→ボルト入室→死体発見→騒ぎになる

    経過:初め自殺説。次に殺害説が出てきて、ボルトが容疑者に。これを覆し、サ
    トウキビの名が浮上。数々の攻防を経て、犯人が確定する。
    サトウキビの状況:羽織と小袖が怪しいほどに汗だく→内側に着ていた。外側に
    着ていた作業着は殺害の際に返り血を浴びたので海に捨てた。→乗客が幽霊と勘
    違い。(後にスクリューに絡まり発見される?)
    サトウキビのアリバイ:しばらくの間機関室で手入れをしていたが、時間が近づ
    いたので着替えて会場に向かった。
    ボルトの状況:自分の部屋で着替えた後ダルマ達のバトルを見ていたが、時間が
    近づいたので市長の部屋に向かった。
    ボルトのアリバイ:バトルの途中で抜けたので、その後の行動を保証する者はい
    ない。
    ボルトを疑う根拠:
    証明する手順:自殺説(右手にナイフ)→市長は左利きのため、矛盾。自殺説(心労、荒らされた形跡無し)→荷物がなくなっているから、誰かが入ったのは明らか。また、凶器と差し傷が「胸から」では一致せず、「背中から」なら一致する。よって、誰かに殺害されたと判断できる。ボルト説(ダイイングメッセージを死体の下から発見)→血だまりに、横たわる市長の手が届かない。もし書いたとしても、死体の下にあるはずがない。また、即死なのに書けるわけがない。サトウキビのアリバイ(仕事を済ませ、灰色の着物に着替えた。市長が赤い小袖を着ることを知っていたから)→極秘のはずの赤い小袖のことを知ってるのはおかしい=サトウキビは市長の部屋に入った?ボルト説(動機あり)→ボルトの服から血痕が出ない。ボルト説(作業服を海上で発見、なぜか名札がない、血痕の反応=殺害時に着ていた)これは本来1着しかなく、サトウキビはボルトが着ていたと主張。しかしボルトの作業服にはアップリケがあり、作業服を着ていたのは彼だけだから名札をはがすのは不自然。ゆえにこれはボルトのではないとダルマは主張。嘘だと思いボルトの部屋を探すと、作業服がない。どこに隠した?ダルマがサトウキビは妙に厚着なことに気付く。どこを探してもないなら、まさか着ているのか?→発見。


    コガネ攻防戦、外壁にユキノオー配置、天候で妨害。保険用に全員あられ持ち

    月に向かってソーラービーム→反射、人質の後ろにいるポケモンにダメージ


    ポケモンリーグにて、ポケモンのレベル等(ゲームのステータス)と状態、体力をリアルタイムでモニタリングするチップ



    ロケット団はサトウキビの囮部隊(ジョウトの街を占領、サトウキビの子弟が奪還、サトウキビをおとしこめようと画策したロケット団のダルマ達を捕えよとの命令「サトウキビは容疑が晴れるまでどこかに潜伏の設定」)



    内容は世界観の設定や大筋の流れ、使えそうな場面など。実際はダメージ計算やらがありますが、紙面の都合上カット。大体6000〜7000字くらいあります。やはりミステリー部分にかなりのメモを取っている。ダメージ計算は後書きに書いてるので、そちらを参照してください。


      [No.1969] Link1のひどいプロットを発見 投稿者:風間深織   投稿日:2011/10/05(Wed) 16:25:17     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    Link1のひどいプロットを発見 (画像サイズ: 288×352 29kB)

    私はいつも絵でプロットを書くのですが、なんだこのひどいプロット……


      [No.1967] ラグラージ 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2011/10/04(Tue) 21:12:13     102clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     こんにちは、僕はラグラージです。
     ミズゴロウのときから、今の主人と一緒です。
     主人は人間の女の子です。
     僕たちは雄が多いので、人間の方がリア充になれることが多くてうらやましいです。
     野生では、雄同士、たまに殺し合いになって雌を奪います。
     人間は、とても緩やかです。
     主人は、一緒に冒険した男の子と恋仲になりました。
     それはまだ主人が人間で言う子供の頃でした。
     ポケモンは、子供だろうが大人だろうが、そういう仲になればタマゴの一つや二つがあってもおかしくないのですが、主人は全く子供を作りませんでした。
     それはほっとしてました。
     なぜなら、雌が子供を持つと子供にしか興味を示さなくなります。
     だから、僕が置いて行かれることがないと思っていたのです。
     事実、主人は僕たちをかわいがってくれました。
     もちろん、男の子ともずっと一緒でした。
     人間とは不思議です。雌を奪う努力をしないでいいのに、ずっと同じ雌といる男の子と、彼とは違う雄を求めない主人。
     人間に生まれれば良かったなと思いました。そうしたら僕も強いだけでお嫁さんがもらえるじゃないですか。
     でも、僕もそのうちお嫁さんをもらいました。かわいいカメールの雌です。敵を追い払う姿がステキと猛烈アタックされました。
     そういえば主人は違いました。まわりからみたら一目瞭然なのに、絶対にアタックしません。
     人間って鳴き声でコミュニケーションを取るじゃないですか。だから言わないと絶対に解らないと思うんですよね。
     どうやって主人は男の子を掴んだのか物凄い気になりますが、それは本人しか解りません。
     僕は僕で、幸せで、カメールとの間にタマゴを一つ授かりました。
     生まれた時から波乗りが出来る、中々エリートなゼニガメです。僕も鼻が高いです。
     ゼニガメも育って来た頃、僕の主人は言いました。
     結婚するんだと。
     それは、人間で言う正式なつがいになる事だと言いました。
     じゃあ今までは正式じゃなかったのかと思いました。一体なんだったんでしょう、僕たちの目の前で情熱以上のキスをして
     僕たちの目の前で抱き合ったのは、正式ではないのですか!
     むしろ、人間って面倒ですね。
     二人の気持ちだけでは正式なつがいになることが出来ないなんて信じられません。
     ポケモンなんかは雌がサイン出しますからそれに雄ががっつりアピールです。
     いやいや、とにかく主人は結婚しましてね
     かわいい男の子も産みました。
     さっきも言いましたが、人間の雄はあんまり雌に苦労しなさそうです。
     僕の息子のゼニガメは、雄の方が多いために雌に苦労しそうです。
     だから人間の雄はあまり努力しなくてよさそうです。
     だからゼニガメの雄は努力がかなり必要みたいです。
     でも、僕の息子のゼニガメは、主人の子供を気に入ったようです。
     きっと主人も強いですから、僕の息子を立派なカメックスにして、強くしてくれると信じてます。
     
     関係ないんですが、最近戦うのが面倒になってきまして
     寝てる方が好きなんですよ
     僕をお守りに、主人は子供を寝かせます。
     それが最高なんです。
     今日も暖かく、いい日です。
     気持ちよくお昼寝できそうですね。
     秋晴れのいい日でした。


      [No.1965] 誤り……かと 投稿者:John Doe   投稿日:2011/10/04(Tue) 17:00:59     29clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 前に大きなフナの木が見えてきました。
    >このフナの木は、オレたちオニドリルのなわばりなんだ。」

    ひょっとして、ブナの木でしょうか?


      [No.1963] Re: 誤字 投稿者:匿名   投稿日:2011/10/02(Sun) 22:53:39     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ご指摘ありがとうございます。修正しました。

    > 近年、ポケモン小説の水準が上がり(BWの発売もよかったあればほんとによかった)、
    >
    > あれはほんとによかった  なのか
    > 発売もよかった   なのか


      [No.1962] Re: 脱字かと思われます 投稿者:匿名   投稿日:2011/10/02(Sun) 22:53:27     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ご指摘ありがとうございます。修正しました。

    > > 初秋の冷たさと寒さ足した空気の中を俺はチャリで急ぐ。
    >
    >  冷たさと寒さを足した だと思われます。


      [No.1961] 誤字 投稿者:AAA   投稿日:2011/10/02(Sun) 15:33:17     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    近年、ポケモン小説の水準が上がり(BWの発売もよかったあればほんとによかった)、

    あれはほんとによかった  なのか
    発売もよかった   なのか


      [No.1960] まんまるふくろう、タマネギを待つ。 投稿者:匿名   投稿日:2011/10/02(Sun) 14:56:22     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
    間違いや分かりにくいところがあれば、ご指摘していただけると幸いです。


    まんまるふくろう、タマネギを待つ。



     広くなったり、狭くなったり、伸びて縮んで忙しい奴。
     タマネギさんいわく、普通は「長くなったり短くなったり」って言うんだと力説していたけれど、そんなの人それぞれ。
     長い一区切りを送ったり、短い一区切りを送ったとしても同じものだったなんて、ざらにある。
     ボクとキミと他の人と、感じ方が違ったっていいと思うんだ。 
     キミに言っても、待ち合わせが面倒になるから統一した方がいいって怒られちゃうけれどさ。
     次第に夜の帳も下りてきて、ウバメの森の木々が影を濃くしだした。
     うっそうと茂る木々の間に、祠のある小さな広間がぽつんと浮かんでいる、ほのかに光るその祠は、人間が催す祭りの主役であるべき奴が現れる予定の場所。
     あくびをかみ殺して町のほうに首を傾げれば、微妙に聞こえてくる祭囃子が木々の間から漏れて聞こえてきた。
     いきなりの衝動に負けて、「ぽー」と自動的にくちばしが開いて鳴くこと七回。    「ぽー」が七回ってことは、七時かな、わざわざ朝から待っていたのに、もうそろそろ夜だ。
     いつも寝ている時間からキミを待っているせいでボクは寝不足。 
    遅いなあ、キミ。
    ボクの乗っかっていた枝も少しぬくまってきてしまったので、近くて太い枝を見つけてぴょん、と飛び移った。
    衝撃でゆれる木と視線の斜め下辺りにはほのかに光る祠がある。
     いまさらだけど、ボクのこの「ぽーぽー癖」はどうにかならないかな。 
    人間は体内時計がなんたらかんたらだとか言い出して、とれーなーとかいう人たちの中には僕らの「ぽーぽー癖」を目当てにボクの仲間を捕まえる奴らがいるみたいだけど、ボクにはこんな難癖、必要ないんだ。
    こんなボクに言わせてみれば、人間達の方がせかせかしすぎなんだよ。 
    見ているほうは飽きないし、面白いからいいけれど。
    でもさ、森でばったり会ったときにはいきなり人間の仲間をけしかけて攻撃してくるのには閉口するよ……せかせかしているせいかは分からないけれど、やたらと強いし。
    そんなことは放って置いて、ゆさゆさ体をゆすって、クックックって言いながらリズム取りをして遊んでみる。
    まだかな、まだかな? 毎年のことではあるけれど、タマネギの来る時間はばらばらすぎる! 去年は朝だったし、一昨年は夜になってお祭りが始まってからだった。 
    いつから待っていればいいのかわからないし、遅いときはいつになっても来やしない!
    揺れる尻尾と丸い体でリズムを取りながらぷんすか愚痴を言っていたら、いきなりガサガサーって音が聞こえ出した。
    空気の波がうねっては葉っぱを揺らして、あっちこっち行きかいだせば、ガサガサーって言いながら空気の波がぶつかった木が、葉っぱも枝もゆさゆさ揺れる。
    木々の間からこぼれた波はそのまま風に変わって、どっか遠くへさようなら。
    「ばいばい、またね」
    そう言って、吹き抜ける風にくちばしでご挨拶。 
    挨拶を送った風は、あっという間に消えていった。
    いつだったかな、「今」ってものは風みたいにあっという間に過ぎ去るものなのに、横を見れば過ぎ去ったはずのものがそこに在るものなんだって、タマネギが言っていた。
     ガサガサーという音はいつの間にかザザザーという音に変わって、古い祠の周りに空気の波がいくつも当たる。
     毎年のことだからだんだん慣れてきた、タマネギの登場は大げさすぎると思うけど。
    「今年は祭りに間に合ったね、タマネギさん。」
     一昨年なんて、祭りが終わりかけてからのご登場だったんだもん、祭りに参加することは出来なくても、祭りのBGMを一緒に聞くのはすごく楽しいのに終りがけに来られちゃゆっくりと聞くことも出来ない。
    そのうち祠が放つ光がいっそう強くなり、空気の渦がぱっと散った。
     中から出てきたのは、タマネギ。
     もちろん、ただのタマネギじゃない、緑色だ。 
    ボクの仲間はタマネギじゃなくてらっきょだといっていたけれど、タマネギが一番似合ってると思うんだ、そうでしょ? 頭の形とか、頭の形とか。
    このタマネギは自分で「時間も渡っちゃうんだぜー」っていつも自慢してくる。
    時間飛び越えるのって、そんなにいいことなの? 
    とにかく、時間も渡れるすごい奴だけど、ボクはあえてタマネギって呼ばせてもらっているんだ。
    なんかよくない?
    「よくない、やめやがれ」
     大きな目を半分閉じてじとーとボクをにらむタマネギさん。
    「おかえり?」
     そんな目をしてても、口元は笑っているから怖くないよ、一年ぶりだね、タマネギ。
     言ったつもりは無いのに返事があったって事は、ボクはまた独り言を言っていたのか。 
     この癖も、直したいのになかなか直せない。
     一年ぶりに会ったタマネギは相変わらず、小さい羽を一生懸命動かして……
    「念力で飛んでいるんだ、羽なんて動かしてはいないからな」
    「じゃあ……頭、重そうだね」
    「ほっとけ、他に言うことはないのか」
     緑のスペシャルタマネギは手をのばして頭をかこうとするけれど、微妙に届いていない。
     やれやれというしぐさなんだろうけれど、ちゃんとしぐさが出来ていないのに気づく気配はここ数年、まったく無い。
     何で分かるかって? 
    毎年最初は、同じような軽口を言い合って、タマネギは毎年同じしぐさをするからだよ。
    単純に、同じ話題が無いからそうなるんだけど、これが楽しいんだ。 
    「やっぱり、頭でっかちは大変そうだね」
    「頭でっかち言うな、これでも一応神様に近いって言われる種族なんだぞ、オレ」
     細かいことは気にするなよ、それにそんなことばっかり言っていると剥げるよ。
     それに、神様にしては言葉遣いが悪いような気が……タマネギの視線が痛い。
     タマネギの大きな目で見られると、目が大きい分迫力があって怖いけど、やっぱり口元は笑っているんだね。
     くあーと、くちばしからあくびが漏れてしまった。
     それに気づいたタマネギが大丈夫かよと一言。
    「タマネギ、来るのが遅い」
     祭りがある日にくるのは分かっても、何時に来るのかは分からないからいつだって待ちぼうけだ。
    「別に待っていてくれと頼んだ覚えは無いけどな」
    「毎年ボクが待っているのを期待しているくせに」
     そんなわけ無いだろうとつぶやくタマネギの声は少し震えている、ようなきがする。
     ボクもタマネギみたいにエスパータイプだったら、もっとキミの気持ちが分かるのかな。
    「そもそもさ、なんでホーホーがオレのことをタマネギって呼んでいるんだ。 ちゃんとセレビィって名前で呼べよ」
    「やだね」
    お前なあ、とタマネギの悪態をつく声が聞こえるけれど、知らん振り。
     そんなことをしたら、一気に遠い存在になっちゃうじゃないか。 
     キミは、カミサマに近い存在なんだろ? ただのふくろうには手が届かない存在になってしまうじゃないか。
     毎年キミをこの場所で待っているのはボクぐらいなんだから、そのときぐらい種族の違いとか気にしなくてもいいじゃん。 
    だから、キミのニックネームはタマネギ。
    「まあ、毎年律儀に待っていてくれるのはお前ぐらいだけどな、立派になったな……老けたか?」
    「最初に会ってから何年たったと思っているのさ、タマネギは全然変わらないね」
    「オレにとっては、ついさっきお前に会ったばっかりだったのにさ。 ここに来るたび何もかもが変わっていやがる」
     さびしそうにふにゃんと垂れ下がったタマネギの触角はしおれた花みたいだ。
     そんなさびしそうな顔するなよ、だから毎年ボクはここでタマネギが来るのを待っているんだから。
     ボクは、キミの時間旅行にはついていくことが出来ないからね、ここで待っているんだ。
     時間を渡れるのはすごいと思っても、うらやましいと思えなくなったのは何時ぐらいからだのことだろう?
     「……さて、今年は何か変わったこと、あったか?」
     さっきと同じ口なのに、そこから出てくるのは軽口ではなく、真剣な声と話。
     あっという間にしょんぼりタマネギは居なくなったけれど、その触角は垂れ下がったまま。 バレバレ、分かりやす過ぎるよ。
     声だって、元気が無くなっちゃってるしね……。
     カミサマに近いって大変だ。
     来ると淋しくなるって分かっているのに、祭られているからには毎年この森と町を元気にしに来なくちゃいけないんだ。
     知っているのに、知っているはずのものが一瞬で変わっていくのはどんな気持ち?
     たとえば、去年まであったヤドンの井戸の看板とか。
     もうすぐ新しい看板が生えてくるみたいだけど、こんな小さな違いから、そこにいる生き物の変化まで、ちょっとずつ、時々たくさん変わっているんだ。
     タマネギにどんな気持ちかなんて聞くつもりは、一生無いけれどね。
    ボクにはどうしようもないからと自分に言い聞かせたら、しょんぼりタマネギは見なかったことにして今年の現状報告。
    「タマネギの今年の仕事は、白ぼんぐりをたくさんとる人がいたせいで元気をなくしているのを元気にすると、森の入り口、人間がいつもいあいぎりで倒す木も切り倒されすぎて流石に弱ってきているみたいだから、それもかな。 まだまだ一日で生えてくるぐらいは元気だけどね、来年までは持たないと思う」
      話しているうちにリズムに乗ってくちばしに体、尻尾までぴょこんと揺れるのはご愛嬌。
     うれしくてもそうじゃなくても思わずゆれちゃうんだ、癖って本当にいやだね。
     分かっていても直せないし、なかなか気づくことも出来ないんだから。
    「またかよ、去年もぼんぐり弱っていただろ。 オレが元気にさせに来なくなったらどうするつもりなんだよ」
     また、届かない手で頭をかこうとしている。 
    手が届いていないことにはやっぱり、気づいていない。
    でも、しょんぼりタマネギは消えちゃって、口元にはあきれたような苦笑い。
    変わらないんだな……ってつぶやいてるタマネギ、おもいっきり去年と違うのに気づけ。
    「毎年弱るものは、変わらないな」
    「そうでもないよ、少しずつは変わってる。 去年はいあいぎりの木、元気だったし」
     変わらないのはキミの力をもってすれば、元気になるのもあっという間って所だと思う。
     そうか? と返すタマネギの顔は、相変わらずの苦笑い。
    ボクが始めてキミに会ったときは、人に聞かずに自分で弱っている木たちを探して、元気にさせて、その顔は余裕なんてあるはずもなくしかめっ面。
    ボクが話しかけても、迷惑そうに無視をしていただけなのにさ。
    しつこく話しかけ続けてたらいきなりクイズを出されたけど。
    答えが分からなかったボクをからかいながら、来年も来ると告げられたのは何年前で、次の年に仕返しをしてやろうと待っていて驚かれたあの日は、キミにとってのどれぐらい昔なのだろう?
     あたりはすっかり暗くなって、人間達の祭りも盛り上がりを見せているようだ。
     お祭りの騒ぎようはボクらの耳にも届いている。
     参加できないのは分かっているけれど、一度あんなふうに騒いでみたいな。
     それじゃあいつものクイズ、確認だよ?
     キミが始めてボクを見てくれたときの、このクイズ。
     もし、このクイズにボクが答えられていたなら、この奇妙な関係はどうなっていたんだろうね。
     そんなこと、誰にも分かりはしないんだろうけれど。
    「いっせーのーでっ」

    「「過ぎると来るの、なーんだ?」」

     今日の祭りは、人間達のタマネギを祭るお祭り。
     何故か主役はこんな森の中にいる、変な祭り。
     でボク達はポケモンだから、その中には混じれないけど、人間もポケモンも変わらないよ、お祭りは一つのきっかけだから。
     普段とは違う特別な時間。
     でも、主役ぐらいは入れてあげてもいいと思うけれどなあ?
    ボク?
     ボクは入れなくても楽しい気分になるのは一緒だから満足。
    聞いていられるだけで充分だ。
     うん、充分なんだ。
    だってさ、人間の集まる所は怖いらしいし!
     仲間に聞いたらおいしそうなのとかは「お金」とかいうのが無いと貰えないっていうし。
     「お金」あっても、人間つきのポケモンじゃないと攻撃されるって聞いたし・・・・・・。
    人間のバカ、ケチ、お祭りのときぐらいおいしそうなの分けてくれてもいいじゃんか。
     そ、それにあんなまぶしいところになんか行ったら、目が痛くなりそうなんだ、一度は入ってみたいけれど……人間、こんなときぐらいボクらも混ぜてよね!
     ……はっ、違う、ボクは祭囃子を聞いているだけで満足だよ、そうだよねタマネギ!
     勢いよく隣を見たら、タマネギが自分の祠を掃除してた。
     静かだと思ったら……!!
    「オレはやることがいっぱいあるんだよ、お前の考え事は長すぎる、付き合ってられるか」
     そういいながら自分の祠を掃除するカミサマってさ、なんかいろいろと間違っている。
     このタマネギ、放っておいたらずっと掃除やら、森の手入れやらしてそうな勢いだ。
     せっかく来たんだから、何時ものせかせか忘れてさ、やるべきことも後回しにして遊ぶのに夢中になってみたらいいのに。
     時間に振り回されてばっかで自分の事は気づけないキミも、変な癖だらけのボクだって、お祭りの今日ぐらい、時計の時間はしまっておいて、僕らの作った時間の区切りで遊ぼうよ。
     祭りには参加できないけどさ!!
     ボク、今いいこと言ったよね?
    「おいおい何言ってるんだよ、って」
     タマネギさんのぴよんと出た触角をくちばしで挟んで飛び上がる。
     今日の祭りが終わって、明日になったらタマネギ、キミは別の時間に行ってしまうから、
    そのときはちゃんと笑って送り出してあげるし、来年も待ってる。
     だからさ、ちょっとだけでしょ?
    タマネギ専用にいたずらの罠も仕掛けたりと準備万端なんだから、去年連れまわした場所とは別に、きれいな場所も見つけておいたんだから、付き合ってよ。
    「ちぎれる、ちぎれる?! 引っ張るなこのフクロウ! 」
    触角ぐらい千切れてもいいじゃんか、掃除なんか始めるのが悪いんだからな!
    「いだだだだ、飛ぶから、自分で飛ぶから離せ! 」
     ばたばた暴れるものだから、思わずタマネギの触角を離してしまった。
     すでに森の木々を下に見ることができるぐらいに飛び上がっていたのが災いしてか、いきなり放すなーとかいいつつ落下していくタマネギ。
     もちろん、木々の塊に突っ込む前に自力で浮かびなおしたけれど。
     空から見ているとさらにはっきりと聞こえてくるお祭りの音。
     今日すごす時間が何時もよりもずっと広く、長く送れるように。
     きらきらと光る空の下で、精一杯飛びまわってみせるよ!


      [No.1959] 脱字かと思われます 投稿者:名前なんて無かった   投稿日:2011/10/02(Sun) 11:00:39     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 初秋の冷たさと寒さ足した空気の中を俺はチャリで急ぐ。

     冷たさと寒さを足した だと思われます。


      [No.1958] Re: 誤字発見 投稿者:匿名   投稿日:2011/10/02(Sun) 05:33:59     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ご指摘ありがとうございます。修正しました。

    > > ピカチュウのちっちゃい銅を抱っこして、ゆっくり移動する。
    > 「胴」と思われます。


      [No.1957] Re: 脱字発見 投稿者:匿名   投稿日:2011/10/02(Sun) 05:33:48     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ご指摘ありがとうございます。修正しました。

    > > 産まれて初めて彼氏ができて、右手の薬指に指輪してるを
    >
    >  右手の薬指に指輪「を」してる「の」を、でしょうか?


      [No.1956] Re: 「P」 投稿者:匿名   投稿日:2011/10/02(Sun) 05:33:30     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ご指摘ありがとうございます。修正しました。

    > >女性声優とかアイドルとチンコ擦り?けるまでヤる
    > 文脈から考えて「剥ける」かと推察しますが、機種依存文字(「剥」の左部分が違う文字)が使われているためか「?」に化けています。


      [No.1955] まみや 投稿者:けいと   投稿日:2011/10/01(Sat) 23:41:26     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     恋をすれば日常はがらりと変わる。誰かが言ってた。誰かって俺の叔父さんだけど。恋ってのは麻薬みたいなものだ。一度知れば、普通の日常は送れない。そんな叔父さんは職業ギャンブラーでいつも新しい恋とギャンブルに手を出してはいつも酷い目にあっていた。俺が中1に時に遂に行方知れずになった。
     叔父さんの迷言を俺は覚えてはいたが、それだけで、普通に毎日を送っていた。

    「彼女に振られた」
    「そいつはおめでとう」
    「何故祝うんだ親友。あんなに俺に彼女ができた事を喜んでくれたのにいざ俺が彼女に振られるとその態度なんだ」
    「うるさい。誰がいつお前に彼女ができたことを喜んだ」
    「リア充死ねリア充死ねと笑いながら祝福してくれたじゃないか」
    「してねーよ。全く祝福してねーよ。あー清々した。お前が彼女に振られて清々した」
     昼さがり、弁当を食ってうとうとしていたら前の席でそこそこ大きな声で会話しだした。あぁ、誰かと思ったら勇次と健太か。二人とも俺の小学校時代からの腐れ縁だ。この間、勇次の奴が『彼女できましたメール』を送りつけて着て健太と二人で『この抜け駆け野郎』と呪いの言葉満載の祝福メールを送り返してやった記憶がある。そのあと『窓を見たらカゲボウズが張り付いていた!マジビビったww』と健太からメールが来た。さすがポケモンは敏感だなぁと感心した。
    「嘘だ―。拓郎だって俺の事祝福してくれてたよなぁ」
     俺に話題が降られた。とりあえず「黙れお前なんか全国の彼女無し男にリンチにされてしまえ」と健太の援護射撃をつとめる。
    「ひどい、拓郎まで俺の傷に塩と唐辛子をすりこんでくるぅぅ」と泣き真似をしながら笑っている様子を見ると、立ち直りが早いのかそれとも演技なのか、多分演技だ。演じる余裕があるなら大丈夫だろう。
    「で、何故振られた」
    「やっと聞いてくれたな。分からんのだ」
    「なんだそりゃ」健太と同じ感想を持った。なんだそりゃ。
    「実はな、昨日、はじめてデートしたんだよ」
    「死ね」健太は容赦ない。
    「いきなりそれか」勇次は苦笑している。
    「まぁいいや、続けろ」
    「で、振られた」
    「だからそれだけだと分かんないって。結果じゃなくて過程を話せ」
     そこでチャイムが鳴った。また後でな、勇次が離れていく。前の席の健太と顔を見合わせた。
    「原因なんだと思う?」
    「多分デート中に別の女の子でも口説いたんじゃないの」俺の叔父さんみたいに。
    「そりゃないだろう」
    「やっぱり?」
     先生が教室に入ってきて会話はそこで終わった。

     好きな女ができたらまずは贈り物を用意する。なるべく相手の意表をついて且つ好みを抑えた奴が効果的だ。頼みもしていないのに叔父さんはよくポケモンと恋の手ほどきをしてくれた。女って言うのはサプライズに弱い。バトルも一緒だ。どんな奴だって自分の予想していない事態には判断が遅れるもんだ。意表をつけば隙ができる。そうやって俺は勝ってきたんだ。げらげら笑ってそう締めくくっていた。別にその様子は格好よくはなかったがやたらと印象には残った。
     恋のアドバイスは全く活用する機会がないが、バトルのアドバイスは俺のポケモンバトルに大いに影響を及ぼして、そこそこの成績を収められるようにはなっている。

    「ぶちまる」
     相棒であるパッチールは名前を呼ばれてこっちに来た。相変わらずどこを見ているのかさっぱり分からない渦巻き模様。じっと見つめると気持ちが悪くなってくる。車酔いする感じで。ぼふぼふと耳に軽くジャブを打つとぐらんぐらんと揺れる。おもしろい。
     放課後のバトルクラブで勇次の失恋話の続きを聞こうと待ち構えていたのだが、肝心の勇次が掃除を連続でサボった罰として居残り掃除をさせられているらしく姿が見えない。健太の奴は塾があるといって先に帰った。後で俺にメールで経緯を教えてくれと念を押してさっさと自転車で去っていった。そんな健太の頼みがあるため俺は帰るに帰れない。早く勇次の掃除が終るのを待つだけというまことに無駄な時間を持て余していた。ていうか、部長も顧問もいないこの運動場の隅のバトルフィールドで俺一人ぶちまるにジャブをかますだけのこの場でどうしろというんだ。暇だ。
     構ってくれるのが嬉しいのか、ぶちまるはされるがままにジャブを受け続けてぐるんと後ろ向きにそっくりかえった。あ、やりすぎたか。手を止める。ぐるんは一回きりですぐに立ち上がった。体柔らかいなこいつ。そのままこちらに歩いてきて元の位置までやってきた。何が面白いのかへらへらしている。こいつの表情はぐるぐる模様の目とへらへら笑いばっかりで、時々ぶちまるは何かを本気で考えることなんかあるのかと思ってしまう。多分ない。きっとない。あっても俺には分からないだろう。恋とかするのかな、こいつ。それ以前に俺は恋ができるのか。
     勇次の彼女できましたメールに対する呪いの祝福メールはぶっちゃけてしまえば健太の悪乗りに便乗して適当に恨み辛みをそれっぽく送りつけてやっただけに近い。現に、健太の所にカゲボウズは来たらしいが俺の所にはただの一匹だって来なかった。奴等の好物である怨念がこもってなかったからだろう。だって、俺は彼女欲しいかと言われたらよく分からないとしか言えないからで。そりゃいたら幸せなんだろう。ただその幸せという奴が恋という感情を挟んで得られるものだとしたら現時点で恋をしていない俺には彼女が出来ても幸せかどうかという自信がない。いや、自信とかいう問題じゃないと思うけど。要するに、俺は叔父さんが語る恋というものがなんとなく気にくわないわけで。あー上手く言えない。ぶちまるに対して延々とそんな感じの愚痴もどきをこぼす。
    「なにやってんの」
     後ろから声をかけられた。振り返ったら田代さんがいた。

     リードされるかリードするか。基本的に女はリードされる方が多い。それが何故か判るか。昔からレディーファーストの精神があるからだ。女心は繊細かつ気難しい、時に嫉妬深く扱いに苦労する。女を怒らせたらいつも恐ろしいだろう?昔の男どもはそれを知っているから何事も女性に対して紳士的にふるまっていたんだ。嘘か本当か、半分は多分その場の思いつきであろう叔父さんの自論によると女の子というものは丁寧に扱うべきものだという事らしい。決してこちらからあれやこれや押し付けるべきではない。ちなみにこの自論は「要するにバトルは自分の流れに巻き込んだ方が勝ちだ!」という締めくくり方をされた。レディーファーストとバトルの流れがどこでつながるのかは未だによく分からない。

     スポーツドリンクを片手に帽子をかぶった田代さんは「日陰にくれば」と言って俺とぶちまるに手まねきした。秋が近いにもかかわらず残暑厳しいこの時期に日向でぶちまるをジャブしている俺が奇妙に映ったらしかった。お言葉に甘えて立ち上がる。ぶちまるがふらふらしながらついてきた。
     木陰は確かに涼しかった。
    「誰もいないバトル場で何してたの」
    「ぶちまるをジャブしながら愚痴を聞いてもらってた」
    「なにそれ」
     くてんとさながらぬいぐるみのように木にもたれかかっているぶちまるをちらりと眺めた田代さんは「まぁ、ぽかぽか殴りたくはなるね」とジャブに関して同意してくれた。そんな田代さんのポケモンは確かクロバットだった。最終進化しているポケモンを連れている様子が珍しくて一時期クラブ内で噂になっていた。
    「ニックネームなんだったっけ」
    「カ―ミラ」小説知ってる?俺にそう聞いて、答える前に俺の反応を見とったらしい。「吸血鬼の小説」とざっくりとした説明をしてくれた。要するに、ズバットやゴルバットが『きゅうけつ』を覚えることから性別を含めて名前を頂いたらしい。
    「物騒だな」
    「こけおどしにはなるよ」意味を知っている人にしか効果ないけどね。けらけら笑っていた。
     その点、俺のぶちまるなんて見たままのぶち模様から取っただけでウルトラ安直だ。そう言ったら「分かりやすさが一番だよ」と田代さん。そうかもしれないとすぐ思いなおす。
    「前田は絶対、特性は『たんじゅん』だね」
    「かもしれない」
    「否定はしないんだ」田代さんは楽しそうだ。そういう田代さんの特性は何だろうかと考える。思いつかなかった。
     本人に聞いてみる。
    「『あまのじゃく』とか?」
     別に天邪鬼な要素が見つからなかったので多分違うと言っておいた。
    「えー、なんか憧れがあるけどな。天邪鬼」
    「どこに」
    「響きに」不思議な憧れだ。感心してしまった。
     ぶちまるがいつの間にか俺の後ろに来てぐいぐいと服のすそを引っ張ってきた。なんだよ、と言うと田代さんを指差す。
    「これ欲しいの?」
     ほとんど空っぽに近いスポーツドリンク。あぁ、喉が渇いたのか。そういえば俺も何となく喉が渇いた。自販機がここから少し遠いのが面倒くさい。
    「買ってこようか?」
    「え」
     田代さんの申し出に面食らう。
    「向こうまで買いに行くのが面倒くさいって顔に出てたよ」やっぱり単純だ。帽子をかぶり直す田代さんをおもわずまじまじ見てします。
    「でも、それはちょっと」
    「スポドリの1本や2本、おごったげるよ?」
    「いや女の子に買いに行かせるって」
    「いーのいーの、ご褒美だと思いなさい」いつも頑張ってるんだからさ。ぽーんと肩を叩かれて、田代さんは走りだした。
     へ。
     ご褒美って、どういう事。

     誰かの知らないところで誰かが誰かのためになることをしていたとする。学生のお前に分かりやすく例えるなら、当番が運んで行かなかった提出物を全然関係ない人が親切で運んで行ったり、他人が捨てたゴミを当たり前のように拾ったり、そんなところだ。で、そんなことをする奴らってのは基本的にその行為が誰にも知られてないと思ってる。だから、いざその事を褒められると慣れてないからこれが女だったらここから先はちょろいもんだぜー、とここから先の叔父さんの教育上よろしくないと思われる女性の口説き方は聞いていなかった。どうでもいいし。

     木陰でぼんやりとぶちまるの耳を引っ張っていたら普通に田代さんが帰ってきた。
    「あれ、ジャブじゃないんだ」
    「飽きたから今度はどこまでこいつの耳がぶよぶよするか遊んでるんだ」
     嫌がっている様子は見られないので思いっきり引っ張ってから手を放してやるとみよよよんと妙な効果音がした。田代さんが口で言っていた。
    「はいこれ」
     ぺと、といきなり首筋に冷たいものが当てられて「ひやぁぁぁ」と変な声を出してしまった。「ぴやぁぁぁ」とぶちまるまで似たような声を出す。同じことをされていた。
    「あっはっは、そっくりだねぇ」
     元凶は声を出して笑う。冷たいスポドリをこんどこそ手で受け取る。ぶちまるは気持ちが良かったのかもう一回やってくれと頼んでいるらしかった。
    「ぴやぁぁ」
     田代さんが爆笑した。たぶん、ツボに入った。「飼い主にそっくりー」失礼なことで笑っていた。
    「ポケモンはトレーナーに似るって本当だねー」
    「じゃあ、田代さんのクロバットは」思いついた事を言ってみる。「後ろから噛みついてきたりして」
     吸血鬼みたいに、と付け加えると「それはないない」と軽く否定されてしまった。
    「もしかして、さっきの怒ってる?」申し訳なさそうな声になった。「いや、そういうわけじゃないけど」と言ってから、手の中の開けてないペットボトルにようやく意識が回った。
    「やっぱり、おごってもらうのは悪いよ。金出す」
    「だ―めだって。日頃から頑張っている人にはおごられる義務があるのだ」
     そんな義務聞いたことないよ、ぼやいてから「頑張ってる人?」聞き直す。「そういえば、ご褒美とか言ってたけど」
    「ほら、前田っていっつも最後まで残ってバトル場ならしたりしてるじゃん。他にも審判の数が足りなくなったらすすんでやったりとか。そうやって頑張ってるんだから、今日は素直におごられなさい」
     妙な説得力のある言い回しで押し切られた。俺は「はぁ」と間の抜けたような声を出した。別に俺のやっている事は別段特別なことではないし、俺以外の人もやっているんだが。そう言ってみた。
    「うん、その人たちにもおごったことあるよ」余裕の笑み。死角はないらしい。けど、その返事に何故かちくりとした。
     そっか、俺だけじゃないのか。安堵すると同時に、妙なざわつきも覚えた。なんというか、よく、わからないけど。
    「じゃあ、頂きます」そう言ってスポーツドリンクに手をかけた。「それでよろしい」田代さんは満足そうだった。

     特別って思わせる事が大切だ。人間ってのは不思議なモノで、チビッ子の頃は何だって『あれも俺の』『これも俺の』って自分の、自分だけの、ってこだわる。大きくなっても心のどこかにはこれがしっかりのこってるもんだ。相手は自分だけには優しくしてくれる、とか、二人だけの秘密、とか要するに微妙なバランスの独占欲の満たし合いなんだな。で、恋っていうのはこれに気付いたら始まってるもんなんだ。叔父さんがそのバランス感覚が敏感だったかどうかは知らない。けど、少なくとも俺は意識した事はない。

     そのあと、田代さんは「今日は多分誰も来ないと思うよ―」といって去っていった。妙に、清々しかった。
     ぶちまるはすっかりスポドリを飲みつくし、のんびりしている。俺はまだすこしきつい日差しの方に目をやった。木陰から見る日向はどうしてこう眩しいんだろうとぼんやりしてみる。
     早く勇次の奴が来ればいい。そして振られた原因を聞きだしてとっとと帰りたい。ぶちまるの耳を引っ張る。「ぷぎゃ」変な声を出した。
     家に帰ったら健太にメールで報告して、飯食って、課題して、テレビでも見て、寝よう。日常っていうのはそういう事だ。別に今は恋はいらない。いらない、とかいう問題じゃないかもしれないけど。
     ペットボトルを握りしめた。これも、特別ってわけじゃない。ただの、そう、彼女流にいうなら「ご褒美」って奴。
     何故か帽子をかぶった田代さんの後姿がずっと脳裏にある。俺はこれから普通の日々が送れるのか。ちょっとだけ、心配になった。

     ぺし、とぶちまるが寄ってきて膝を叩いた。
     悩みなんてなさそうなうずまきがこちらを見ている、多分。
     ……まぁ、心配したところでこれが叔父さんのいう恋とやらを自覚したのかどうか、それすらも分からない。ただ、田代さんから普段俺が当たり前だと思ってやっている事を思いがけず褒められて、叔父さん流に言うなら『慣れてなくて』嬉しかった、だけだ。まさに『たんじゅん』だ。。
     きっと叔父さんにあれこれ言われ過ぎて俺が勝手に気にしてるだけだ。心配になってどうする。もはや、こう考えることもある種の言い訳にも見えてくる。思考までぶちまるのふらふらな動きのせいで混乱してきた気がする。気持ち悪い。日々の送り方に悩むとか、わけわからん。
     
     いまのところ、それだけ。考えるのをやめる。
     むぎゅうとぶちまるを抱っこしてみる。
     暑苦しい。早く来い、勇次。
     ペットボトルの中身はまだ半分くらい残ってた。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――
    誤字脱字等が見つかりましたらご報告よろしくお願いします


      [No.1954] 酷評されるべくして書かれた小説……だったはずなのになぁ 投稿者:西条流月   投稿日:2011/10/01(Sat) 23:17:06     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    さてはて、ポケスコが盛り上がっているようなのですが、ポケスコと言えば、批評を貰ってのたうちまわったり、あまりの嬉しさに踊りまわったりするのが結果発表チャットでおなじみの光景なのですが、意外とね、自分の小説の順位と批評を聞くよりも自分が人様の小説にした批評で後でのたうちまわる人と言う奇特な人もいるんですよね
    いやぁ、まったくだれのことなんでしょうねHAHAHAHAHA

      お れ だ よ

    鳩のおやびんが狙ってくるからびくんびくんしてましたよ、前回の結果発表チャットではね
    で、ですね
    この批評を変な口調で書けば、発表されないんじゃないかと思ったわけです
    それで候補にはござるとか上がったのですが、俺の横でポケスコに出れないことを嘆くオタマロがマロでやるでマロというのでやってみたのをチャットで見たわけですね

    オタマロ「マロは『〜でマロ』なんて言わないでゲソ」

    はいはいでてこないの(ゲシゲシ


    流月:ここの表現は沈んでいることを表現したかったと思うでマロが主人公は前向きな性格で描かれていて、唐突に自殺でも始めるんじゃないかと思うほど落ち込んだのにはびっくり下でマロ(21:57)


    586:「主人公の心の動きがより伝わるよう、例えばトラウマになった出来事のシーンでよりショッキングな書き方をする等のさらなる練り込みを行えば、よりよい作品に仕上がるでおじゃる」(21:57)

    流月:あと、自殺の手法についてなんだマロが、主人公が苦しまないで死ぬ方法として使ったのが睡眠薬自殺だというのが腑に落ちなかったでマロ 睡眠薬自殺って死ぬのに時間がかかるから主人公のように仲のいい友人が多いと途中で見つかって後遺症で苦しむことが多いでマロ これは綿密に自殺方法について調べていた主人公が知らないはずはないでマロ(22:06)



    さて、上のやつですね、586さんの批評のセンスが光っていて完敗してます、ごはさんに頼めばこの口調で批評をしてもらえるかも?(※そんなことはございません)

    そんな冗談は横に置いといて、これで戯村さんに書いてもらおうと無茶ぶりをした結果がこれだったりする

    おい、すごいぞ、チャットで言われてからの短時間でこのクオリティとか予想外だよ
    ちゃちな幻覚なんかじゃねぇぞのAAを使いたくなるレベルでしたよ


    それでは、本文の感想を

    ユキメノコさん、かわいいよね
    サーナイトとかミミロップばっかりがクローズアップされますが、メノコさん可愛いよ

    なので、メノコ愛が全身から溢れている主人公とはいい酒が飲めそうです

    昔話のときとは違って、法律とかそれ以外の壁とかが高いけれど、死ねば問題よね
    相手だってゴーストだものね
    あの世で結ばれればいいのです

    そんな感じでつっぱしる主人公はたしかに感想にある通り前向きで、感想にはないけどバカっぽい
    けれど、メノコはきっと感想に書かれていないそんなバカっぽいところを好きだったんだろうなぁ
    放っておけないし、怒ろうにも主人公は突っ走るし、相当やきもきしたと思う
    近くに居ても、止めることができないし、かといって愛想を尽かすこともできなかった
    だから、そのまま見捨てもしなかったし、怒った
    だから、二人の気持ちは言葉がなくても通じ合えた


    そんなお話であったような気がします

    さてはて、しかしいろいろな後遺症が残りそうな主人公の身がすこしばかり案じずにはいられませんが、
    世間様の慣習としましてはリア充は爆発することになっているのでこれくらいは問題ないでございましょう



    それでは、無茶ぶりに答えてくださり、ありがとうございました


      [No.1953] 彼女は僕を殺してくれない。 投稿者:戯村影木   投稿日:2011/10/01(Sat) 22:27:24     158clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     真剣に恋をしてしまった。
     僕のパートナーに。
     雪女子という、白い、美しい生き物だった。幽霊、と呼ばれている存在だ。雪の世界に生まれ、雪の世界において、幽霊となった。霊体。あまり、他生物という感覚はない。足も、本来手もないはずなのだけれど、まるで白い着物を着た、美しい女性のような、あるいは名前の通り、幼い女子のような。
     そんな彼女に、僕は恋をしてしまった。
     もちろん、僕は人間であるから、彼女と結ばれることはない。そもそも、会話を交わすことさえ、叶わないのだ。にも関わらず、僕は彼女に恋をした。一緒にいただけだった。ただ、彼女と一緒に、暮らしていただけだ。だというのに、知らないうちに、あるいは意識をしないうちに、彼女を好きになっていた。
     この感情に気づいたのは、ほんの些細なことが切っ掛けだった。言葉も喋れず、意思疎通もろくに出来ない僕たちだった。だけど僕が熱を出して寝込んだ時に、彼女は僕の額に手を当てて、じっと熱を冷ましてくれた。
     その時に、ああ、とても嬉しい、と思った。そして、僕はきっと彼女が好きなんだろう、と考えた。


     古い、もはや御伽話というレベルの話になるが、昔は、ポケモンと人間は結婚が出来たそうだ。あるいはそれは、当時から禁忌として遠ざけられていたのかもしれないが、それでも事実として、ポケモンと結婚をした人間が、存在した。子を成した関係だって、いたのかもしれない。
     僕はその記述を、とある文献で見つけてから、そうか、結婚してしまえば良いのだ、と考えるようになった。
     しかしながら、現在の法律では、それは認められていないという。
     僕は愕然とした。
     それこそ、死んでしまいたいと、思うほどに。
     いや、死んでしまった。その時僕は、ある意味で、僕を失った。愛しい存在との関係を否定されたようなものだ。種族が違うから、結婚出来ない。なんて愚かしい。なんて惨い。そして、なんて理不尽な法律だ。
     僕は死にたかった。
     死んでしまえば、この苦しみからも解き放たれる。
     だが、そう易々と死んでしまっては、彼女を置き去りにすることになる。せめて、僕は法律が許さなくとも、彼女との絆が欲しかった。有り体に言えば、彼女との間に、子を成したかった。それが人間として生まれるのか、あるいはポケモンとして生まれるのかは定かではない。それでも、それに賭けてみたいと僕は思った。
     だが、問題は多い。障害も多い。もしポケモンと人間が結婚出来たとしても、彼女は、ポケモンであると同時に、霊体である。だから、僕は彼女に触れることが出来ない。
     もっともスマートな解決方法はなんだろう。
     命は一方通行だ。
     帰ってくることは出来ない。
     僕はまた死にたくなった。このところ、すぐに死にたくなる。死んでしまえば悲しみからは解き放たれる。
     そして、ああ、なんて単純な話なのだろう。
     僕は妙案を思いついた。
     彼女と僕が結ばれるにはどうすればいいか。
     簡単だ、僕が死ねば良いのだ。


     自殺というものは、簡単だ。
     何しろ、抵抗する者がいない。
     僕はすぐに、自殺方法について考察した。首を吊ろうか、飛び降りようか、感電しようか、血を流そうか、水没しようか、凍死しようか。凍死というのが、一番美しいように思えた。しかし、それらには環境が必要だ。僕が住んでいる地域に、雪山はない。大型の冷凍庫だってない。高いビルもない。ロープを垂らす引っかけもない。感電方法に至っては理解も出来ない。そして、血を流すのは、単純に怖い。
     だから僕はもっとも簡単な方法を選ぶことにした。
     睡眠薬自殺だ。
     眠るように死んで、目が覚めたら彼女と一緒になれる。これほど嬉しいことはない。僕はすぐに薬局に走り、睡眠薬を購入した。この時、一度にたくさん買い込むことはしなかった。いくつかの薬局を転々とし、少量ずつ購入した。それでも、店員から、いたずらには使わないでね、と念を押された。まったく、馬鹿げている。僕は本気で死ぬつもりだ。いたずらなんかじゃない。
     睡眠薬を大量に買い込んで、家に戻ってきた。彼女はここ数日の僕の様子を訝しんでいるようだったが、心配しないで欲しい。僕と君は、もうすぐ結ばれるのだから。
     死ぬ前に遺書を書くことにした。霊体になったらペンを持てないかもしれないし、声は出せなくなるだろう。その前に、色々と考えておきたかった。
     僕は前向きに死ぬのだということ。
     死ぬことを恐れてはいないということ。
     人生は素晴らしかったということ。
     唯一、雪女子と結ばれないことだけが嫌だった。
     だから僕は死ぬ。
     簡単な話だ。
     ポケモンと結ばれるために、死ぬ。
     それは名誉なことだろう?
     まったく、正しく、理性的。
     どこにも、狂気などない。
     理路整然とした思考。
     だから僕は、死ぬ。
     それは怖いことではない。
     恐ろしいことではない。
     とても単純明快な、スマートな解決方法。
     うってつけの理論。
     そこかしこに存在する、公式、のようなもの。定理、のようなそれ。僕が愛した、彼女のために、死ぬ。
     僕は遺書を書き終え、それを折りたたみ、机の上に置いた。そして、僕の隣で心配そうにしている雪女子の頭を撫でて、
    「もうすぐ一緒になれるからね」
     と言った。
     僕は、睡眠薬を飲んだ。


     目が覚める。身体がとてもだるかった。死にそうだった。いや、死んだのだ。ポケモンを愛し、ポケモンと結ばれるために、僕は死んだ。そして今、霊体として、意識を持っている。
     隣には、やはり、彼女がいた。彼女は少し、怒っているように見えた。きっと、何度も僕を呼んだのだろう。それに答えなかったのがいけなかったのかもしれない。
    「ごめんね」
     僕はそう声に出した。
     そして、気づいた。
     ああ、声が出る。
     なんて酷く、間の抜けた声だろう。
     僕は死んでいなかった。
     身体の隅々を確認した。凍傷を起こしていたり、傷があったり、ひどい有様だった。彼女が僕を傷つけたということは、すぐに分かった。
    「どうしてこんなことをするんだい」
     僕が訊ねても、彼女は怒った目で僕を見るだけだった。
     ああ、彼女は怒っている。
     僕が死のうとしたことに。
     命を粗末にしたことに。
     そして気づくのだ。今僕は、彼女の気持ちが、手に取るように分かる。まるで、言葉を交わすよりも美しく、素早く、詩的に、気持ちの交換を得られた。
     僕はそっと彼女に手を伸ばす。
     けれど、僕の手は、彼女の身体をすり抜けた。
    「どうして死なせてくれないんだい」
     僕が訊ねても、彼女は答えない。
     けれど、すり抜けた僕の手に、そっと手を、添えてくれた。
     彼女は僕を殺してくれない。
     それはとても残酷で、とても悲惨で。
     けれどとても優しい、彼女の選択肢。


      [No.1952] 誤字発見 投稿者:ナナシのみ   投稿日:2011/10/01(Sat) 21:51:01     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > ピカチュウのちっちゃい銅を抱っこして、ゆっくり移動する。
    「胴」と思われます。


      [No.1951] おうふくビンタと拳 投稿者:いろは四季   《URL》   投稿日:2011/10/01(Sat) 21:20:57     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「父さん、これ、どうかな?」
    息子は父親に真新しい帽子を被ってみせた。
    父親は満足げな表情で
    「よく似合ってるぞ」
    と喜ばしげに笑い、息子も少しばかり頬を染めて笑った。

    旅立ちの朝は、誰にでもやってくる。
    今日の天気は良好。
    自分の息子の一生に深く刻み込まれるであろうこの日が、恵まれた日和であったことに父親は感謝した。
    が、父親には少し気がかりなことがあった。
    「――ウツギ博士にもらうポケモンは、もう決めたのか?」
    すると、息子はまるで宝物を見つけたような表情で告げた。
    「もちろんワニノコだよ!俺だって、父さんのオーダイルみたいに強く育ててみたいんだ!」
    「そうか・・・」
    父親の表情は相変わらずの笑顔だったが、内心がっくりと肩を落とした。
    ――血は、争えんな・・・・・・。
    自分がかつて最初に選んだポケモンと同じポケモンを息子が選ぶ――普通の親としては喜ばしいことなのだろうが、彼にとってはそうではなかった。
    なにせ、かつて彼はその選択によって酷い目に遭ったことがあり――旅立ちの日は、その出来事と共に苦い思い出として今も心にある。
    『あの頃は、俺も若かったからなぁ・・・』
    父親は、息子の決断と自分の過去をなぞるように、【あの日】のことを思い出していた。

    父親がまだ少年だった頃。
    そう、ちょうどこんな風に天気に恵まれた日。
    自分の旅立ちの日のことを。


    ***************************************


    「ワニノコ!ひっかく攻撃!!」
    まだ幼さを残したアルトの声色で、少年は命じた。
    「ワニャ!!」
    パートナーのワニノコもそれに応え、相手のコラッタとの距離を一気につめる。
    「くっ・・・まだだ!コラッタ、でんこうせっか!」
    相手トレーナーの指示が飛んだ瞬間、紫色をした子ねずみポケモンの姿が残像になり、消える。
    ワニノコは技を決め損ね、状況が理解できない様子で周囲を見渡した。
    と、次の瞬間コラッタはワニノコの懐に入り込み、見事なアタックを決める。
    「ワニャーーッ!」
    まともに攻撃を食らったワニノコは、数メートル吹っ飛ばされ、その場に倒れこむ。
    「わ、ワニノコ!大丈夫か!?」
    少年は慌ててパートナーのそばに駆け寄った。
    相当なダメージを食らってはいるものの、ワニノコは弱々しく笑った。
    「よかった・・・!」
    一方、相手トレーナーである短パン小僧は、ニヤニヤと笑いながら
    「どうした?それでおしまいかよ!」
    と余裕を残し、煽るように叫んだ。
    だが、彼の手持ちも残り1体。そのコラッタも随分疲弊している。
    呼吸が浅いのがその証拠だ。
    『まだ・・・まだ勝機はあるはずだ・・・!』
    策を練ろうと思考をめぐらせるが、今日旅立ったばかりの少年にはバトルでの戦術など皆無に等しい。
    少年は思わず拳を握り締めた。
    ――その瞬間。
    ワニノコが立ち上がった。
    「ワニノコ、お前まだ・・・
    「ワニャニャワーーーーーーーッ!!」
    信じられないような音量の怒号が辺りに響き渡った。
    その声だけで、草むらにいたポッポたちがいっせいに飛び立っていく。
    短パン小僧もコラッタも、あまりの驚きで声ひとつ出せない様子だ。
    「ワニノコ・・・?」
    ワニノコの目は血走り、端から見ても力がみなぎり、溢れている。
    先程受けたダメージがまるで嘘だったかのような力強さ。
    少年はその様子を見てハッとした。
    『これが・・・ワニノコの特性――げきりゅう!』
    特性げきりゅうは、体力が危うくなると水タイプの攻撃の威力が上がる効果がある。
    『いける!これなら!』
    少年は颯爽と立ち上がると、鋭い声で言い放った。
    「ワニノコ!みずでっぽう!!」
    天を裂く鳴き声と共に、激しい水流がコラッタ目がけて放たれた。
    「こ、コラッタ!避け・・・」
    短パン小僧の指示も虚しく、特性の発動に怯えきっていたコラッタは一歩たりと動けぬまま攻撃を受け、撃沈した。


    その後、短パン小僧がなけなしのおこづかいを少年に泣く泣く渡したのは言うまでもない。


    ***************************************


    気分は上々だった。
    先程の勝負での起死回生は逆転サヨナラホームランに等しい。
    満面の笑みで空を見上げると、爽やかな青い空。時折流れる白い雲は穏やかに。
    「最高の旅立ちだなぁ!」
    思わず声を上げて叫ぶと、突然、ソプラノの声が少年を呼び止めた。
    「あなた、トレーナーね?私と勝負しなさい!」
    相手は、ミニスカート姿の少女だった。セミロングの栗色の髪が、艶めいている。
    両腕には、少年にはこれっぽっちの縁もないシュシュやアクセサリーを身につけ、爪にはマニュキュアまで。
    いかにもチャラチャラしたオンナノコだな、と少年は思った。
    とても可愛いのだが――出来れば友達にはなりたくないタイプだ。
    しかし、勝負となれば話は別。
    「もちろんだ!受けてたつぜ!」
    少年は余裕たっぷりと答えた。
    「そうこなくちゃぁね!行くわよ、マリル!」
    ミニスカートが放ったモンスターボールから、水球のようなポケモンが現れる。
    みずねずみポケモン、マリルだ。
    ジョウト地方では珍しい部類に入るポケモンで、なるほど可愛らしさは抜群。
    いかにもミニスカートのトレーナーが手に入れたがるようなポケモンだ。
    『何から何までチャラチャラしてんなぁ』
    心の中だけでミニスカートをあざける。
    これなら苦労もせずに勝てそうだ。何せ今のワニノコは特性の発動で強いのだから。
    「いくぜワニノコ!」
    少年の背後をついて歩いてきたワニノコが素早く前に出る。
    「ワニャニャニャーー!!」
    先程までの、燃えるような戦意がまだワニノコにみなぎっていた。
    鼻息を荒くし、しきりに地面を蹴っている。
    「先手を取るぞ!ワニノ――
    「ちょっと待ちなさい!」
    ミニスカートが少年の指示をさえぎる。というよりも、ぶった切る、と言ったほうが正しいか。
    彼女の瞳は真剣で、先程までのわくわくした表情から一変、心なしか冷徹な面差しをしている。
    「なんだよ!ビビってんのか!?」
    ミニスカートは挑発の言葉にも顔色を一切変えなかった。
    「・・・あなたのワニノコ・・・随分息が荒いみたいだけど」
    「へへっ、こいつは今特性が発動してるんだ!今なら誰にだって勝てるぜ!」
    彼女の表情が徐々に曇っていく。
    「その子とは、戦えないわ」
    そう言うと、ミニスカートはマリルをモンスターボールに戻してしまった。
    「なっ?なんで?そっちから勝負を仕掛けてきたくせに、何やってんだよ!」
    まるで、困惑や疑念をすべて見通したような彼女の冷たい視線だけが、少年を捉えた。
    「あなた、自分のパートナーの様子も見てないの?」
    一瞬、問われた意味が判らず、少年は言葉を失う。
    その時だった。

    ワニノコの身体がぐらりと傾き、地面に伏す。

    「ワニノコ!?」
    少年は、パートナーの突然の異変に慌てて駆け寄り、そっと地面から抱き上げた。
    ワニノコは浅い呼吸を繰り返していて、苦しげな表情を浮かべている。
    「今すぐこれを使ってあげて」
    ふと顔を上げると、ミニスカートがきずぐすりを差し出してくれていた。
    今にも泣き出しそうな表情に見えたのは――気のせいだろうか。
    「え、あ・・・」
    突然の出来事に、突然の申し出。
    少年が更に困惑するいとますら与えない勢いで
    「いいから早く使いなさい!!!!」
    ミニスカートが怒鳴った。
    自分より少し年上に見える外見ということも相まって、少年は大いに萎縮しながらも彼女の指示に従った。
    そして倒れてしまったワニノコの身体をよくよく見れば、引っかき傷や打撲の跡がたくさんある。
    『こんなに傷ついてたなんて』
    少年は自分の未熟さを呪った。

    一通り薬を与え終わると、ワニノコの表情がほんの少し緩む。が、依然ワニノコの意識は戻らない。
    それでも、ワニノコの苦痛を少しでも軽減できたことに少年は感謝した。
    「良かった・・・ありがt――
    パァン!!
    いっそ清々しいほどの破裂音。
    少年は、自分の身に何が起きたか理解するまでたっぷり10秒は消費した。
    「なにすんだよ!!」
    左の頬がビリビリと痛みを訴えていた。
    簡潔に説明するなら――少年はミニスカートに力いっぱいのビンタをまともに食らったというだけのことなのだが。
    「あんた、バカじゃないの!?」
    噛み付くように彼女は怒鳴った。
    「げきりゅうが発動するような体力でこんな何もない道を延々歩いて連れ回して、その状態でバトル?傷だってこんなにたくさんあるじゃない!!あんたの脳みそどうかしてるわ!!」
    彼女の言い分が正論すぎて、言い返す言葉が見当たらない。
    「その上きずぐすりのひとつも持ってないなんて!!この辺りには毒状態にする野性ポケモンもいるのに!!その様子だと、毒消しも持ってないんでしょう!?」
    「それは・・・」
    バシッ!
    二回目のビンタも右の頬にクリーンヒット。
    「言い訳なんか聞かないわ!!」
    せめて毒消しはひとつ持っているということは聞いて欲しかったのだが。
    「見たところ新米トレーナーよね?ポケモンに関する知識は一通りセミナーで習ったはずじゃないの!?」
    「お、俺はそんなもん・・・」
    バシィン!
    左に再び。痛みが増した。
    「そんなもんですって!?あんた、その程度の軽い気持ちでトレーナー修行に出たわけ!?」
    『その程度』の一言で、少年の理性が焼き切れた。
    「ふざけんなよ!!俺はチャンピオンになるために今日旅立ったんだ!!ミニスカートでチャラチャラしたお前に指z
    ガンッ!
    ボキャブラリーのなさを責めないでいただけるだろうか・・・。
    ついに彼女の拳が出た。それも、顔面に。
    「そうやってね!!見かけで人を判断するような奴も最低よ!!人を見た目で判断するような奴はね、人を大切になんか出来ない!!そして人を大切に出来ない人間がポケモンを大切に出来るはずなんてないわ!!」
    「は、はなひ・・・(訳:は、鼻血・・・)」
    当たり所が悪かったのか、少年は両方の鼻の穴からポタポタと血を垂らして――
    もう泣くしか選択肢はなかった。
    「何よ!鼻血くらいで!小さい男!!」
    少年が泣きながら、そして鼻血を出しながらわめいている間に、ミニスカートは彼のモンスターボールを素早く奪い取って、ワニノコをボールに戻した。
    更に少年の髪の毛を強引に引っ張ると、鬼のような形相で言う。
    「モンスターボールってのはね、ポケモンが本来丸くなって体を休めるっていう本能を元に作られてるの!!」
    そして次に少年の腕を掴む。白い肌が鼻血で汚れることも厭わずに。
    「ついて来なさい!!次の町はすぐそこよ!!まずはポケモンセンターにワニノコを預けなさい!!ついでにその町に私の家があるから、うちで最低でも1週間はみっちり猛勉強することね!!私のパパはポケモンドクター、ママはベテラントレーナーだから!!」
    もはや少年には、異論もプライドもなく。
    泣きじゃくりながら、ガミガミと説教を垂れ流すミニスカートの彼女に腕を引かれて歩く他はなかった。
    「あたしのママはよくこう言ってるわ!すべてのポケモンは愛されるべきだって!!そして、すべての人間もね!!みんなみんな、すべての生き物は愛されるために生まれてくるのよ!!」
    そう言われて、少年はひとつだけ思った。

    ――じゃぁ、俺のこと、殴らないで欲しかったなぁ・・・


    *********************************


    「じゃぁ、行ってきます!」
    「おっと、待て待て。お前に教えなきゃならないことがある」
    いよいよ玄関での見送りになって、父親は息子に切り出した。
    「何?」
    「いいか、ポケモンが傷ついたらすぐに回復させてやるんだ。あと、きずぐすりは多めに買っておきなさい。毒消しや麻痺治しなんかもそうだぞ。なにより、ポケモンに無理をさせちゃぁいかん」
    かつて自分の未熟さを厳しく指摘したミニスカートの教えを、息子に教えておきたかった。
    それが、彼が父親として、息子に送る何よりのプレゼントだ。
    彼女に会わないままだったら、自分は一体どんなトレーナーになっていたのだろうか。考えそうになるだけでも恐ろしい。
    しかし息子は当然のことのように
    「そんなこと、セミナーでちゃんと習ったよ」
    あっけらかんと答えた。
    「・・・そうか・・・」
    息子は父親に似ず、まじめでしっかりした男の子だ。
    若かりし頃の自分のような過ちは犯すまい。
    きっと優秀なトレーナーになるだろう。父親にはその様子が容易に想像できた。

    しかし、まだ。
    何より重大なことを伝えていない。
    父親は真剣な表情でこう告げた。
    「だがな、一番気をつけなくちゃならないのは、トレーナーだ」
    息子は疑問符を頭の上に浮かべるような表情をした。
    「特に、ミニスカートのトレーナーには気をつけるんだ。そして、出来れば戦わないほうがいい」
    「どうして?」
    「それはだな・・・」

    「随分楽しそうなお話をしてるのねぇ?」

    背後からかかった声に、父親の背筋が凍った。
    「母さん!」
    息子が明るい笑みを浮かべたので、父親も恐る恐る後ろを振り返る。

    そこには、花のような笑みをたたえたエプロン姿の美しい妻が立っていた。

    ミニスカートをはいていたあの頃より、ずっと穏やかになった彼女の微笑みは、けれど、あの時少年だった自分にとってのおうふくビンタと拳という凶器と同じであるということは、今になっても変わらない。


    Fin.




    【描いてもいいのよ】
    【お手柔らかに批評してもいいのよ】

    人もポケモンも、愛されるべきなのよ


      [No.1950] 脱字発見 投稿者:tokumei   投稿日:2011/10/01(Sat) 21:07:19     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 産まれて初めて彼氏ができて、右手の薬指に指輪してるを

     右手の薬指に指輪「を」してる「の」を、でしょうか?


      [No.1949] Limbo 投稿者:Anonymous Coward   投稿日:2011/10/01(Sat) 20:47:55     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    更新履歴

    2011/10/01 - 初稿

    -----------------------------------------------------------------------------------

     ダウンロードが始まる。
     真新しさの残るスマートフォンを手に、家へと繋がる道を歩く。九月を迎え、方々の木々が緋色の衣替えを始める中にあっても、暑気を伴う夏の匂いは未だ消えることなく、あたしに纏わり付く。
    (ダウンロード中……識別ID:0001765 名前:アニモ)
     ダウンロードの状況を示すプログレス・バーが、左から右へじりじり伸びていく。回線が混雑しているのか、いつもに比べて速度が出ない。
    (ダウンロード中……識別ID:0001765 名前:アニモ)
     ディスプレイに目を向けるたびに、識別IDと「アニモ」の名前が瞳の奥へ飛び込んでくる。視線を注ぐ毎に、繰り返し繰り返しあたしの中に入り込んでくる。
     入り込んでくるばかりで、何を伝えたいのかは分からなかったけれど。

     *

     アニモがあたしの家にやってきたのは、あたしが生まれて一ヶ月も経たない頃のことだったという。
    「これからは情報化社会だ。頼子には子供の時分から最新技術に触れてもらわなきゃな」
     新しい物好きだったお爺ちゃんが、ピンク色と水色のベニヤ板を貼り合わせて作ったような妙なデザインの「ポケモン」を買ってきて、あたしの傍に置かせたのだ。
     ベニヤ板、ではなくプログラムでできた体を持ち、電子空間に自由に入り込むことができる。情報通信企業のシルフ社が持てる最高の科学力を使い、ポケモンとしての仕様をすべて盛り込んだ、人類初の”人工のポケモン”。普通のポケモンとは、生まれも育ちもまるで違う。
     その名を「ポリゴン」という。
     お爺ちゃんはポリゴンをあたしに与えて、いわゆる情操教育に使おうと考えていたようだ。もっとも、それからも何に使うのか分からないモノをひっきりなしに買ってきていたから、大方ポリゴンも勢いで買って、情操教育という万能な理由をつけてあたしに押し付けたのだろう。そう考えるほうが自然だった。
     情操教育の名目で我が家にやってきたポリゴンだったが、お母さんもお父さんもそしてあたしも、一度も「ポリゴン」と呼んだことはなかった。あたしが物心付いて、記憶をしっかり残せる歳になった頃には、もう既に別の名前で呼ばれていた。
    「おはよう、アニモ」
     ――「アニモ」。「アニモ」が、我が家のポリゴンの名前だった。

     *

     夏は去っていったはずなのに、日差しは未だ強いままだ。夏が終わったことを認めたくない、それは間違いだとでも言いたげな、噎せ返るような熱気。
     手の平で日差しを遮りながら、道の向こうに目を向ける。
    「やれやれ、またヘソを曲げちまったか。待ってろよ、すぐ直してやっからな」
     ボンネットを開けて、エンジンを弄くり回している男の人の姿が見える。時折流れ落ちる汗をタオルで拭いながら、工具を中に差し込んだり、水を注いだりしている。
    「こいつにゃ魂が宿ってるからな。そう簡単に潰すわけにゃいかねえぜ」
     車を修理する男の人は、生き生きとした表情を見せていた。

     *

     アニモの見てくれは、はっきり言っておもちゃみたいだった。カクカクだらけで、色合いはちょっとどぎついピンクと水色。目はボールペンで点を一つ打ったみたいな適当さ加減だ。
     だから、あたしはアニモをおもちゃと勘違いして、よく叩いていた。
    「アニモー、いっしょにあそんでー」
    「……」
     あたしに幾度となくぺちぺち叩かれても、アニモは無表情なままだった。遊んで、と言いながら叩いていたんだから、我ながら結構酷い。遊んで欲しいなら、せめて叩くべきじゃないだろう。
    「こらこら頼子、アニモを苛めるんじゃないぞ」
    「だって、アニモあそんでくれないんだもん」
    「自分を叩くような子と、頼子は遊びたいか?」
    「ううん。あそびたくない。やだもん」
    「そうだろう? アニモだって同じさ。頼子やお父さんと同じように、アニモも生き物だからな」
    「いきもの?」
    「そうだ。見た目はおもちゃみたいだが、アニモは立派なポケモンだ。ピカチュウやプリンの仲間なんだ」
    「バンギラスとかリザードンと、おなじ?」
    「ああ、同じさ。妖精や怪獣のようなポケモンがいるなら、おもちゃのようなポケモンがいたっていいじゃないか。だから、アニモを叩くのはやめるんだぞ。アニモだって、痛いはずだからな」
     アニモが痛がっていると言われて、あたしは急に不安になってアニモを抱き上げた。
    「アニモ、いたかった?」
    「……」
     うんともすんとも言わなかったけれど、アニモから送られる視線は、いつもより少し寂しげだった。
    「たたいてごめんね、もうたたかないからね」
    「よしよし、それでいいぞ、頼子。これからはアニモと仲良く、な」
     叩くことを止めたあたしがアニモを抱くと、アニモはほんの少し体を傾けて、あたしに体重を預けた。

     *

     カツン、と乾いた音が聞こえた。
    「羽が折れちゃった。これじゃ、もう飛ばせないな」
     路地で遊んでいる男の子がいる。足元には、ぽっきり折れた竹トンボの羽が横たわっている。
    「いいや。またじいちゃんに作ってもらおうっと」
     男の子は壊れた竹トンボを迷わず側溝に投げ捨てて、そのまま向こうへ駆けていった。
     あたしが横を通り過ぎる様を、泥水を被った竹トンボが見つめていた。

     *

     定位置だったソファで、アニモは目を閉じたまま、いつものようにじっと座っていた。
    「アニモ……もう、起きてくれないの?」
    「……」
    「あなた、ただ寝てるだけみたいじゃない」
     外から見ると、何も変わりないように見える。実際、何も変わらない。
     けれど、それは違う。アニモは変わった。変わってしまった。
     ”変わらないように、変わってしまった。”
     アニモはもう、変わることはない。どんな言葉にも、どんな動きにも、アニモは反応しなくなった。
    「起きてよ、アニモ……あたし、寂しいよ……」
     予兆はあった。半年くらい前から、アニモの反応が鈍くなっていたのだ。動きも頼りなくて、右へ逸れたり左へ曲がったり。正確だった動きが、どんどん精彩を欠いていった。
     だから、覚悟はしていた。
     ──アニモは、もうじき”死ぬ”んだって。

     *

     それほど段数のない階段の先、乾いた砂の敷き詰められた境内から、白い煙が立ち昇っている。
     あたしはいつものように近道をするために、階段を上って境内を通り抜けていく。
    「随分大切にされていたようですねえ」
    「ええ。五つの頃に、母がくれたものなんです。いつも側に置いていました」
    「いい心掛けです。人形も、貴方のような持ち主に会えて仕合せだったことでしょう」
     三十代前半くらいだろうか、落ち着いた風貌の女性が、神主と一緒にぱちぱちと音を立てる火の前に立っている。
     おかっぱ髪の日本人形が、赤々と燃える火に焼べられていた。
    「人形はこうして供養してやるのが一番です。捨てるなど、もってのほか」
    「捨てられた人形は、ジュペッタに生まれ変わると言いますから」
    「さよう。かつて大切にされた人形ほど、手に負えない嫉妬を抱えるものなのです」
     炎が人形の体を焼き、魂を天へ送る。持ち主が、灰燼に帰していく人形をじっと見守る。
    「最期まできちんと供養してあげる。それが、我々の務めなのです。人形にも、魂がありますから」
     人形供養の光景だった。

     *

     アニモが動かなくなったとき、あたしはちょうど一年前に先立った、お婆ちゃんのことを思い出していた。
     あたしが動かなくなったアニモを見て、目を腫らして泣きはすれど取り乱すことはなかったのは、昨夏にお婆ちゃんを先に亡くして、”死に別れる”ことがどんなものかというのを心に刻むことができたからだと思う。
     新しい物好きのお爺ちゃんとは対照的に、お婆ちゃんは古風な考え方だった。
    「頼子、ものを粗末にしてはいかんよ」
    「粗末になんかしてないもん。牛乳パックは生協に出してるし、あたし大根の葉っぱ好きだから」
    「いい心掛けだね、頼子。古今東西、森羅万象には魂が宿ってるからね」
    「何? シンラバンショって何?」
    「し・ん・ら・ば・ん・しょ・う。この世にある、ありとあらゆるすべてのもののことだよ」
     森羅万象には魂が宿る。何度も何度も聞かされた、お婆ちゃんの口癖。
    「どんなものにも、魂があるってこと?」
    「そう。お婆ちゃんの割烹着にも、頼子の鉛筆にも、このちゃぶ台にも、それから──」
     皺の刻まれた指先の指し示した先、座布団の上に鎮座する小さな影。
      
    「あーちゃんにもね、魂はあるんだよ」

     *

     河原沿いを歩く。斜面には、夏の日差しを浴びて背を伸ばした雑草がひしめきあっている。
     目線を落とした先に、鮮やかな緑と対をなす、黒と錆色の塊が転がっていた。
    「粗大ゴミを捨てないでください!」
     白板に赤文字で大きく描かれた標語のすぐ後ろに、幾重にも積み上げられた”亡骸”が見える。
     テレビ・戸棚・冷蔵庫──かつて家で使われていた”家具”たちが捨て去られ、”粗大ゴミ”として河原に横たわっている。
     風雨に晒され錆びつき黴に塗れた姿で、ただ自然に還る時を待ち続けている。
    「不法投棄厳禁! ゴミは自然を破壊します!」
     ……けれども、自然は彼らを受け入れてはくれないみたいだった。

     *

    「お受けすることはできません」
     電話越しに聞かされたこの言葉を、あたしは今も鮮明に思い出すことができる。口調も声色も、そして受けた衝撃も。
    「お気持ちはお察し致しますが、当方としては受理することはできかねるのです」
     アニモが動きを止めてから二日後のことだった。あたしは受話器を持ったまま、呆然と立ち尽くしていた。
    「送り火山では……機械であるとか、ロボットであるとか、そういったものは受け付けられません」
    「でも、ポリゴンは……」
    「ポケモンであると仰られる方もいます。ですが──」
     先に大往生したお婆ちゃんは、さっきも言ったようにとても古風な考え方をしていた。けれど不思議なことに、最新技術のカタマリであるアニモのことは、しきりに「あーちゃん」「あーちゃん」と呼んでとても可愛がっていた。アニモもお婆ちゃんによく懐いていたから、一緒にいられるようにしてあげれば二人とも喜ぶ。あたしはそう考えて、送り火山の受付に電話を掛けた。アニモを、送り火山に葬ってあげたかったからだ。
     アニモにも魂がある、れっきとした「森羅万象」の一員だと、命を持った生き物だと、お婆ちゃんはいつも言っていた。
    「ポリゴンも、人の手が入った『無生物』だと、こちらは解釈しております」
     その電話の結果が、これだ。アニモを送り火山に葬ることは、決められた方針でできない、とのことだった。
    「申し訳ありませんが、受け付けることはできません」
    「……」
     無言で受話器を置く。しばらく、言葉が出てこなかった。
     ようやく出てきた、喉の奥から絞り出した言葉は、
    「アニモは……生き物じゃないって……っ」
     熱い雫を、伴っていた。

     *

     ダウンロードは終わらない。
     スマートフォンの背中が熱くなるのを感じながら、ディスプレイの上で紙をめくるようなジェスチャーをする。ダウンロードの進捗画面が引っ込み、アイコンの並ぶメイン・メニューの画面へ遷移した。
     二段目右端にある、手帳を象ったアイコンにタッチする。
    「【週末★プレミアム】架空の人物のお葬式?!」
     インターネットで配信されるニュース、それを丸ごとスクラップして、端末に保存できるサービスがある。日付は今日から起算して十日前になっている。
    「亡くなった方の冥福を祈るお葬式。実在した人にだけ行われると考えがちなんですが──」
    「実は、架空の人物のお葬式が行われたことがあるんです。皆さんご存知でしたか?」
     親指を繰って、記事を下へ滑らせる。
     記事は、漫画や映画に登場した架空の人物の葬儀について書かれていた。ボクサーや拳法家、それに軍人。多くの人が参列して、実際に弔辞が述べられたという。
    「──今となっては不思議かもしれませんけど、当時はそれほど大きな影響力があったということなんです」
    「架空の人物にも、魂があるってことですね。なんだか夢のある話じゃありませんか?」
     架空の人物にも魂はある。この記事はそう伝えている。
     末尾に、漫画の広告が添えられていた。

     *

     あたしは、またしても電話口で固まっていた。
    「では、手順をご説明いたします。お手元にマニュアルは──」
    「ま、待ってください。今、なんて……」
    「はい。お客様のポリゴンの、『再起動』の手順をご説明させていただきます」
     アニモが動かなくなって四日後、あたしはお母さんに「シルフのカスタマーサポートに電話してみたら」と言われ、朝から電話をつなげていた。
     カスタマーサポートの担当者は、あたしから二、三事情を聞き出すと、いきなりこう切り出した。
    「でしたら、ポリゴンを再起動なさってください」
    「再……起動……?」
     再起動、という無味乾燥な言葉に面食らっていると、電話口の担当者はさらにこう続けてきた。
    「停止したポリゴンは、一旦中のプログラムを初期化して、再起動する必要があります」
    「簡単な手順で、クラッシュしたシステムの復元が可能です。製品出荷時の状態にリセットされます」
    「ただ、お客様の蓄積されたデータは、申し訳ありませんがすべて削除されます。バックアップをお持ちであれば、そこから復元することも可能です」
     停止。プログラム。初期化。クラッシュ。システム。リセット。データ。削除。バックアップ。復元。畳み掛けられるように耳へ投げ込まれる味のない単語が、アニモを”亡くして”まだ癒えきっていないあたしの心に、面白いように突き刺さっていく。
    「もしよろしければ、弊社にて初期化作業を代行させていただきますが、いかがでしょうか?」
     そうか、そうなんだ。きっと、そういうことなんだ。
     ポリゴンを生み出した──あるいは作り出した人たちは、こう思っている。
     ”製品”。シルフの人たちにとって、ポリゴンは”製品”に過ぎない。
    「……すみません。いいです、結構です」
     それ以上の言葉は、カケラも出てこなかった。

     *

     あと数分で、住み慣れた家に辿り着く。目に焼き付いた辺りの光景を確認するように眺め、あたしは歩き続ける。
     頃合いかな。そう考えて、カバンのポケットに押し込んでいたスマートフォンを引っ張り出す。
    「Welcome to D.C.S.」
     タッチしたディスプレイに、流麗なセリフ・フォントで書かれた文言が映る。ダウンロードが終わったみたいだ。
     中央に配置された扉のアイコンに触れると、画面にワイプが掛かった。

     *

     デジタル・セメタリー・サービスをご存知でしょうか。お客様に是非お薦めしたいサービスとなっております──。
    「先日は弊社にご連絡いただき、まことに有難うございました。至らぬ点が多々あり、申し訳ございません」
    「あ、はい……」
     ……カスタマーサポートに連絡をして二日後、今度はカスタマーサポートの方からあたしに電話が掛かってきた。
    「お客様のご愛顧を頂いたポリゴンについては、心よりお悔やみ申し上げます。お客様のもとで過ごした時間は、ポリゴンにとっても素晴らしいものであったと確信しております」
    「はあ……」
     以前の担当者から引き継いだという別の担当者は、いきなり恭しく挨拶したかと思うと、続けざまに「デジタル・セメタリー・サービス」なる聞いたこともないサービスについて口にした。
    「デジタル……なんですか、それ」
    「はい。弊社の提供する『電子霊園』サービスです」
    「電子霊園……?」
     担当者が言うには、”亡くなった”ポリゴンをシルフの管理するサーバに送り、そのサーバをポリゴンの霊園にするサービスらしい。
    「お客様のポリゴンを『送信』していただき、弊社のサーバで管理いたします」
    「インターネット接続が可能な電子機器があれば、世界中のどこからでも、二十四時間三百六十五日、いつでもお参りが可能です」
    「維持費等は一切不要です。弊社が責任を持って、ポリゴンをお預かりします」
     次々に謳い文句を並べる担当者と、判断に迷うあたし。
    「今の姿を永遠に留めたまま、お客様のポリゴンに安らかな眠りをご提供いたします」
    「お客様以外にも、多くの方が当サービスを利用されております」
    「いかがでしょうか?」
     感情にまるで整理がつけられない。何が正しくて、何が間違っているのか、判断ができなくなった。
     ……そして。
    「……わかり、ました」
     言われるがまま、あたしは──

     *

     田園に沿って道を歩いていると、門扉の近くに微かな黒い燃え滓のある家があった。
    (送り火、かな)
     送り火。お盆の最後の日に、霊界から訪れた親族の魂を、再び霊界へと送るための儀式だ。魂はお盆の間親族と共に過ごしたあと、送り火によって霊界へ送られていく。
     生き物の魂は、死後霊界へと”送られる”。老若男女、人間であるかそうでないかは問わず、例外なく魂はそこへ送られる。
     肉体から解き放たれた魂は霊界へと送られ、永遠の安息を迎える。お婆ちゃんからも聞かされた話だ。だから、きっと間違いない。
     だけど。
     だけど、どうしても分からないことがある。
    「アニモ……」
     ……アニモは、これに当てはまるのだろうか。

     *

     お母さんにこっぴどく怒られて、あたしが落ち込んでいたときのことだった。
    「……」
    「アニモ……」
     アニモがふわふわと近づいてきて、あたしのすぐ隣に降り立った。三角座りでしょげているあたしの後ろへ回り込むと、アニモはすっくと立ち上がる。
    「(とんとん)」
    「……肩?」
    「(とんとん)」
     後ろに回り込んだアニモは、前足であたしの肩をとんとん叩きはじめた。肩が凝っていると思ったんだろうか。よくお父さんの肩を叩いていたから、同じことをあたしにもしようとしたらしい。
    「違うよ、アニモ。あたし、別に肩が凝ってるわけじゃないの」
     違う、とあたしに言われたアニモは、一旦前足を下ろして座り込んだ。
    「(ぐいぐい)」
    「……腰?」
    「(ぐいぐい)」
     今度は腰をぐいぐい押し始めた。これはお婆ちゃんによくやっていることだ。いつも気持ちいいって言ってもらえるから、あたしにもしようと考えたみたいだった。
    「腰も痛めてないよ。どこか、体が痛いわけじゃないから」
    「……」
    「いいよ、アニモ。肩も腰も、お父さんかお婆ちゃんにやったげて。今はいらないから」
     腰を押すのを止めると、アニモはあたしの隣へふわふわ移動し、そっと床に座り込んだ。

     *

     すべてのダウンロードが完了し、今のアニモの様子がスマートフォンのディスプレイに映し出されている。
     そこにいるアニモは、かつてとまったく変わらぬ姿で、あたしを見つめている。
    (……分からない)
     ポリゴンは無生物であるという。プログラムでできた存在であるから、生き物ではない。そう考える人がいる。その一方で、ポケモンとしての要件をすべて満たしているから、生き物だと主張する人もいる。
     生物であるなら魂を宿しているし、生物でなければ魂はない。そう考えることもある。かと思えば、車や人形、架空の人物にも魂が宿ると言う人もいる。
     生き物か、生き物でないか。魂はあるのか、それとも無いのか。すべてが中途半端でどっちつかずなポリゴンと。
    (生き物なのか、プログラムなのか、あたしには分からない。分からなくなっちゃった)
    (どっちつかずなのは、あたしも同じなんだ)
     無数の声に振り回されて、はっきりと答えを出せない中途半端でどっちつかずなあたしの姿が、静かに重なり合っていく。

     *

     ――隣に座ったアニモが、無表情な、けれどどこか温かみのある瞳で、じっとあたしを見つめる。
    「アニモ、どうしたの? さっきから、ずっとあたしにくっついて……」
    「……」
     体をすり寄せ、時折首を揺らしながら、アニモはあたしから離れようとしない。
     しばらくアニモの様子を見ていて──あたしは、やっと気がついた。
    「心配、してくれてるの?」
    「……」
     アニモは何も言わず、あたしの体に体重を預けた。
    「アニモ……」
     脇腹に伝わる、アニモの確かな重み。硬くて、無機質で、角張っていて……けれどそこには、アニモの強い思いがある。
     魂が、宿っている。
    「ありがとう、アニモ。心配してくれてたんだね」
    「……」
     アニモが、あたしにそっと寄り掛かる。あたしはアニモが愛しくて、その硬い体をぎゅっと抱きしめた。
    「そばに、居てくれるんだね」
     こんなに安心したのは、初めてだった。

     *

     アニモはあたしの傍に居た。確かな重み、確かな存在、確かな思いを持って、あたしの傍にあり続けた。
     あの瞬間、アニモは生きていた。魂を宿して、あたしの側に居てくれた。ずっと、そう思っていた。
    (そう、アニモは生きてた)
     ……けれども、今は。
    (でも、あたしは分からなくなった)
     サーバへ送られたポリゴンは、カスタマーサポートの言った通り、動いていた頃の姿を留め、永遠にその存在が失われることはなく、サーバで終わりのない時間を過ごし続ける。
     もし、そこに魂が宿っているなら――肉体を葬られることで解き放たれるはずの魂も、体と一緒に永久の時間を過ごすことになる。
     天国にも、地獄にも行けないまま。
    「……教えて。教えて、アニモ」
     壊れそうになるほど強くスマートフォンを握り締め、あたしがアニモに問いかける。
      
    「あなたは、生きていたの」
    「あなたに、魂は宿っていたの」
    「あなたをそこへ送ったことは、本当に正しいことだったの」
      
     安定を失い、左右に揺れ続ける中で声を振り絞ったあたしの問い掛けに。
    「……」
     アニモはただ、いつもと変わらぬ、変わらないように変わってしまった視線を、あたしに送り続けるばかりだった。

    -----------------------------------------------------------------------------------

    上記に対するCheckをお願いいたします。


      [No.1948] Re: 「P」 投稿者:Anonymous Coward   投稿日:2011/10/01(Sat) 20:47:24     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >女性声優とかアイドルとチンコ擦り?けるまでヤる
    文脈から考えて「剥ける」かと推察しますが、機種依存文字(「剥」の左部分が違う文字)が使われているためか「?」に化けています。


      [No.1947] ウィズハート 投稿者:名無し   投稿日:2011/10/01(Sat) 19:24:36     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    誤字が見つけられない。
    「、」が大発生していないかどうかを聞きたいです。



     ここから見える景色は変わらない。白い波、キャモメの鳴き声、吹き付ける潮風。なのに一番いて欲しいものはここにない。
     赤いバンダナを海風にたなびかせ、乱れる髪もそのままに、遠くを見つめていた。魂が抜けたような顔で。頭の中に浮かぶのは、ここにいない人のこと。
    「どこ行っちゃったんだろう」
     机の上の手紙が風に飛ぶ。物音に後ろを振り返り、手紙と一緒にあったモンスターボールを取る。自分の代わりに、と置いていったもの。ボールを握りしめた。手紙の差出人、ダイゴのことを思い出して。
    「ダイゴさんに、会いたいよ」
     育ちの良さを感じさせる綺麗な字で書かれた手紙を拾う。ここへ来るであろうハルカという少女に戻らないと告げた文面。二度と触れることの出来ないその人の表情、しぐさ、声まで会ったばかりのように蘇る。


     ハルカがダイゴに初めて会ったのは、石の洞窟という真っ暗なところだった。奥で明かり一つで採掘作業をしていたダイゴに、頼まれていたものを渡した。その時は不思議な人だという印象しか持たなかった。こちらには目もくれず、ひたすら作業をしている彼を特に気に留めることもなかった。
     次に会った時は、道の真ん中。明るいところで見たダイゴは印象が違っていた。薄く青い髪が風に揺れている。その動きはやわらかく、ふんわりとしたダイゴの髪。その時はまじめで冷静な顔をして、それなのに口調は情熱的に育成論を語っていた。
     それから偶然会うことが多くなった。その度にいいバトルセンスをしているとダイゴは言う。どうしてなのかハルカには解らない。それでも、つぼみをつけた花を眺めるようにダイゴは話しかけてきていた。集めたバッジを見せながらたくさん話しても嫌な顔一つせずに聞いてくれる。
     マグマ団とアクア団の抗争に巻き込まれてしまった時は手助けしてくれた。いつの間にかハルカはダイゴに感じていた。他の誰にも感じたことのない感情。ダイゴだけが特別だという想い。
     テノールの声を聞けばすぐに解るし、その後ろ姿を見ただけでハルカは駆け出した。驚かしてやろうと思っても、その数歩前に必ず振り向く。いつも失敗していたけれど、ダイゴは優しく迎えてくれた。
    「ハルカちゃんは解りやすいからね」
     そんなダイゴの側にいることが出来るだけでハルカは幸せだった。海に囲まれた島の街、トクサネシティにあるダイゴの自宅に何度も遊びに行った。突然行っても嫌な顔一つしなかった。特別な存在ではないけれど、少なくとも嫌われてはいない。ハルカは時間が許すかぎり、ダイゴに会いに行っていた。
     それに負けたのか、ダイゴはカギを預けてくれた。もし、留守中に来た時に入ってていいよ、と。まさかそんなことをしてくれるとは思わず、嬉しくてその日は眠れなかった。迷惑にならないように、なるべく在宅中の時間を見計らって訪ねる。なので、カギを使ったのはほぼなかったけれど。

     ついにジムバッジが八つ揃った。そのことを報告すると、ダイゴは笑うこともなく、まじめな顔をしていた。
    「楽しみだね」
     ダイゴからはそれだけ。おめでとうとも何もなく。次はサイユウシティのポケモンリーグに行くんだね、とこちらの予定を見抜いたかのように。あまり喜んでくれないことを不思議に思ったけれど、それは今考えれば当たり前だったのかもしれない。
     チャンピオンロードを越え、友達とも再会する。元気そうな彼に、思わず最近のこととしてダイゴのことを話す。とても不思議そうな顔をして聞いて来た。
    「その人と、付き合ってるのですか?」
     そう聞かれて気づいた。そんな関係ではない。ハルカが一方的にダイゴが好きなだけ。それを子供だから仕方ないとダイゴが追い払わないだけのような。ダイゴが直接言ったわけではないけれど、急に不安になる。すぐに確かめたかった。けれど次に会う時はポケモンリーグのチャンピオンに勝った後だと約束した。ダイゴからそう言って来たのである。
    「そういうのじゃないけれどね」
    「そうなんですか? とてもその人のこと好きなんですね。初恋は実りにくいっていうけど、ハルカさんなら大丈夫ですよ」
    「ありがとう! チャンピオンに勝ったら報告しなきゃ! じゃあね!」
     すぐ目の前はポケモンリーグ。南国の花々が鮮やかな彩りで迎えた。この先のチャンピオンを越えたら、ダイゴに会える。一刻も早く会いたい。そんなハルカの気持ちが、ポケモンリーグの挑戦を急かす。

     四天王との戦いは激しかった。悪タイプのカゲツ、ゴーストタイプのフヨウ、氷タイプのプリム。そしてドラゴンタイプのゲンジとの戦いに、ハルカは終結させた。よくやったとほめてポケモンを戻す。そしてゲンジは言った。次はチャンピオンだな、と。
    「ありがとうございます!」
    「ただし強いからな」
    「はい! でも負けません」
     チャンピオンに勝てばダイゴに会える。そうしたら話したい事、聞きたい事。たくさんある。奥の階段を登り、チャンピオンとの戦いに備える。どんな人なのか、そしてどれくらい強いのか。けれど負けない。そのためにここにきた。ポケモンたちのボールを握って、ハルカは階段を駆け上がる。そして……。
    「やっぱり来たね」
     待ち構えるのはダイゴだった。何がなんだか解らないハルカのために、ダイゴは最初から噛み砕いて説明する。ホウエンのチャンピオンなのだよ、と。
    「初めて見た時から君はただ者じゃないとは思っていたけどね。ここまで来れるかどうか楽しみだったんだよ」
    「じゃあ、チャンピオンに勝ったらっていう約束は……」
    「そういうことだよハルカちゃん。さて、長々話していても仕方ない。ホウエンリーグチャンピオンとして、挑戦者に全力でぶつかるのだからね」
     ダイゴはポケモンを繰り出した。ハルカも応えるようにポケモンを出す。チャンピオンに勝てるまでと言ったダイゴが、目の前で勝負をしかけてきている。トレーナーとして、ダイゴの約束を果たすためにも勝たなければならなかった。
    「行け、ライボルト」
     ハルカの指示で、ライボルトが電気を溜め始める。全身に電気を帯びて毛が逆立っている。そして目の前のポケモンに激しく電気をぶつけた。けれどダイゴのポケモン、エアームドは倒れる気配もない。相性だけではない。今までの相手より数段格上の相手。
    「手加減はしない」
     勝てる気配は全くない。けれど勝たなければ。焦る気持ちがライボルトにも伝わるのか、静電気がたまっているのか。ぴりぴりとした空気がそこにある。この重圧にも勝てないと、チャンピオンを倒すには難しい。
     エアームドが動いた。あの動きはエアカッター。風を刃にして攻撃する技だ。そしてその技を使った後に一瞬の隙が生じる。それを逃さずハルカは命令した。電気タイプの最高レベルの技、雷を。閃光と轟音が室内に響き、エアームドが倒れる。
    「さすがだね。けれど次はどうかな?」
     試すようなダイゴの言葉。答える余裕もなく、ハルカは次の命令をライボルトに伝えた。ダイゴのポケモンはどれも別格だ。集中しなければ、的確な状況判断が出来ない。
     こちらもライボルトを倒され、ダイゴのポケモンも何匹か引き出した。ハルカの手持ちは出ているポワルンと、砂漠の精霊フライゴン。どんなにレベル差があっても、フライゴンはその素早さで翻弄して来た。けれどダイゴのポケモンは格が違う。いつものように行くかかどうか解らず、出せなかったのだ。
    「こちらも最後のポケモンだ」
     ダイゴの出したポケモンは見た事もなかった。メタグロスという種類だと教えてくれたが、それ以外は何も解らない。太い四つの足が体を支えている。そこからどう攻撃が出るのか、ハルカには想像もつかない。
    「ウェザーボール!」
    「遅いよ」
     メタグロスの攻撃が早かった。流星のように煌めく拳が、ポワルンをとらえる。小さなポワルンは、それだけで気絶してしまった。こんな強い攻撃は見た事がない。ハルカはポワルンを戻して、フライゴンのボールを見る。あんなに強い攻撃は見た事がない。もし、今の攻撃がもう一度きたら、フライゴンとて無事で済まない。
    「フライゴンか。そうか、そうだね」
     ダイゴは笑う。メタグロスを待機させて。
    「砂漠の精霊。その羽ばたく音が鳴き声だとずっと思われていて砂嵐の中も飛べる。相手にすると厄介なポケモンだよ」
    「そうです。たいていのポケモンの攻撃は受け流せます」
    「その通りだ。ハルカちゃん、次の行動は賭けだ。君の思ってる通り、僕は次の攻撃も同じ指示をする。ハルカちゃんはきっとフライゴンに一番強い攻撃を命じるだろう? メタグロスの攻撃が貫通するか、フライゴンが先に攻撃するか」
    「解ってるんですね。でもそれ以外を命じたらどうするんですか?」
     ダイゴは何も言わなかった。ハルカもフライゴンに取るべき行動を伝える。そしてメタグロスが動いた。煌めく拳。フライゴンの翼をかすめた。
    「いっけぇ!」
     フライゴンは羽ばたく。メタグロスが離れる直前、フライゴンの体が今までにないほど大きく動いた。近づいた隙を狙った。ハルカに指示された技を、至近距離でメタグロスに放つ。バネのように返されて、メタグロスの重い体が軽々と飛んだ。
    「なるほど、勝利の女神はハルカちゃんについていたんだね」
     メタグロスのボールを戻す。そしてダイゴは両手を上げた。もうポケモンがいないことを示す合図。
    「おめでとう! 君が新チャンピオンだ」
     まだ勝負の熱が冷めきれないハルカ。ダイゴに勝ったからといって、チャンピオンと言われても実感が湧かない。フライゴンを戻しても、何か違和感が残る。
    「約束を守ったよ」
    「何か違いません? 私、ダイゴさんとこうなるなんて思ってもなかった」
    「参ったね。じゃあ後でトクサネの自宅においで。お祝いしてあげよう」
     勝負の場から去って行くダイゴ。後ろ姿も見慣れたものなのに、ハルカには何か違って見えた。ダイゴがチャンピオンだったという事実なのか、それとも見間違いなのか。解らなかったけれど、後で会いに行けるという予定だけがはっきりとしている。それだけでハルカは嬉しかった。
     すでにチャンピオンになったことなんてハルカの頭の中にはなかった。リーグ関係者に囲まれても、頭に浮かぶのはダイゴのことだけ。テレビ報道もインタビューも、何を言ったかなんて覚えてない。ここから早く抜け出して、行くべきところにいって。話すことなんてたくさんある。何から話題にあげようか、順番を考えて。
     しかし順番なんて考えても仕方ない。言いたいことは一つだけ。ダイゴにずっと抱いていた気持ちを伝えること。それだけだった。


     ここは変わらない。沖の白い波、野生のキャモメの鳴き声、涼しげな潮風。それなのにもう、ダイゴの姿はいなかった。置き手紙とモンスターボールを残して。
    「僕の一番大切にしているポケモンをあげる。チャンピオンおめでとう!」
     何かが違うのだ。ダイゴは。ハルカが欲しいのはそんな言葉ではない。チャンピオンとして健闘を讃える言葉でも、大切なポケモンを送ることでもない。何が欲しいのか、そんなの解りきっていた。
    「いつものように、ダイゴさんがいればそれでよかったのに」
     気づいた時には遅い。もう会えない人のことを想っても仕方ないのは解っている。けれど、そんなもの慰めにもならない。胸の中心が苦しい。初めての恋というのは実らないと言われても、こんな形で終わるなんて誰が予想できたのか。
     薄い青の髪、凛とした顔、テノールの声。忘れることなんて出来ない。ハルカはダイゴのことを一つずつ思い出す。強く吹き付ける潮風がハルカの髪を乱していった。


      [No.1946] 脱字かな……? 投稿者:tokumei   投稿日:2011/10/01(Sat) 19:21:46     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ポケスト掲載時から気になっていたので、二つ指摘させていただきます。
     久々に家族で夕食を、の場面。
     
    > 「でもね、お母思うのよ」、と。

     お母「さん」? それとも、「おかあ」読みでしょうか。


     もう一箇所は、手からエサを取ったことを報告した場面。

    > 〔でもあまり慣らすのもどうなのかな。居候とはいえ野生なんだろ?〕
    > 〔それともボールで捕まえるの?〕
    >  そのコメント妙な感覚を覚えつつ、返事をする。

     そのコメント「に」?  

     
     ※間違ってなかったらごめんなさい。


      [No.1945] あかつき戦線異状なし【ポケスコ没作品】 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/10/01(Sat) 19:20:35     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     バケツに湯を張る。タオルを入れる。残った家族を外に出し、カーテンを閉めた。
    「体拭きますからねー」
    「はい、横向いてー」
     しぼったタオルを渡し、暖かいうちに体を拭く。一人は白いユニフォームを来た人間、もう一方はハピナスというポケモン。人の言葉を理解できる、認められた医療ポケモンだ。
     今、このコンビが行なっているのは清潔のためのケアだった。しかしその受ける人間は何も喋らず、顔も青白く赤みがない。
    「葬儀屋さんは四時頃到着だって」
     違う人間が二人に声をかけた。それに対し、同じタイミングで了解と答える。今は夜中の三時。やらなければいけないことはたくさんある。けれど目の前の人を綺麗にすることも、やらなければならない。今しがた、死亡確認をされた人間を。
     つながれた管を全て取り、身なりを整えた。着せてあげて欲しいと言われた新しい浴衣もしわ一つない。帯を縦にしめて、青白い顔に色をつける。だんだんと生きているかのような色へと戻ってくる。
    「はい、出来ましたよ。ご家族呼んできますね」
     カーテンを開けて出て行く。使った道具を片付けてるハピナスも、家族と入れ違うように離れた。

     朝の四時。葬儀屋が来たと連絡が入って来た。夜中で誰も歩いてる人などいない。カラカラと手入れのされてない車輪がまわって、白いシーツをかぶった人を乗せて行く。最期の連絡を受けて集まった家族を連れて。
     エレベーターで降りて、専用の車に乗せられる。もう夜明けも近いというのに、葬儀屋は昼間のようにテキパキと運んで行く。家族が病院にお世話になりましたと頭を下げる。
    「おつかれさまでした」
     隣で人間が頭を下げる。ハピナスも頭を下げる。再び顔を上げてみた家族は、笑顔だった。

    「行っちゃったなあ」
     ラベンダーのエプロンに、白いユニフォームが寂しさと疲れを混じらせた顔をする。
    「まあ仕方ないか。あー、腹へったなあ」
    「ミサキちゃん……まさかお見送りの後にそんなこと良く言えるね」
     ハピナスはため息をついて人間を見る。
    「仕方ないじゃん、サチコは夕飯食べたんでしょ。私悪いけど昼から何も食べてないし」
     そういってミサキはタバコを取り出す。そして近くのベンチに座ると、ハピナスの方に手招きをしていた。
    「ミサキちゃんは何人目?」
     ふとハピナスが聞く。だまってタバコを持ってない方の手でミサキは指折り数える。
    「1年目で3人、2年目で2人、3年目は同時フラット体験で、4年目からは多くなってもう10人以上かな」
    「それで、なれちゃったの? 悲しく無いの?」
    「ないね」
     タバコの煙が宙に浮かぶ。ミサキといえば、ハピナスの方を向くことなくただひたすらビルの間から見える空を見ている。青くて深い闇のような空を切り裂くように白い光が見えてくる。
    「慣れてなんかない。ただ、サチコ」
    「何?」
    「どのような人間だって、人生っつードラマがある。そのドラマの終わりがこんな古い病院だって、終わりは終わりだ。その終わりを、綺麗に見送ることが必要なんだよ」
     ハピナスはいつも不思議だった。この人間、本当に営業スマイルというものが得意で、少しでもプライベートに入ればこんな乱暴な口調だ。しかもタバコを吸うものだから匂いですぐ解る。
    「お見送りなんて言うけれど、私は送ってるつもりはない。健康じゃなくたって、家に帰ることが出来るんだ。やっと帰れるっていうのに、そんなガツガツ悲しまなくたっていいじゃん。むしろ本人にとって喜ばしいことだと思うんだけど」
    「それはミサキちゃんの考えじゃ……」
    「しょうがないじゃん、私死んだことないから気持ちとかは想像しかできねーし。死生観とかはもう自分の意見でしかねーよ。それに、誰が帰ろうが、まだ重症はたくさんいるしな」
    「重症?」
    「5時になったら見回りして、6時になったらドプラムとめて、あとその隣でカタボン更新だ」
    「あ、そうだ!」
    「忘れてたとか言わせねえ。つうかたしかにハピナスはやらないけど」
    「忘れてた。忙しくて」
    「忙しいなんて言い訳にしかすぎねえよ。死んで行く人もいれば、管理しないと生きていけない人だっている。そんな人たちを守るのだって仕事だし、なにより」
    「医療という戦場の兵士だから、だよね」
    「よく解ってるじゃん。だったらつべこべ言わずさ、目の前の事柄を黙々と処理するべし」
     ミサキは立ち上がる。そして両腕を伸ばした。ミサキの手と、眩しい日の光が重なる。
    「あかつき戦線異状なし。本日も多忙なり」
     振り向いたミサキは、すぐに呼び出しのPHSに応答する。
    「んじゃあ、行くかサチコ! まずは転倒したという大崎さんからだ!」
    「えええ!! 転倒!?」
    「そうだ! 隊長から連絡あったぞ! すぐに向かえ!」
     夜明けの病院の廊下を、一人と一匹が走っていった。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    ポケスコを考えた時、これともう提出したやつをひたすら考えてました。
    んでも、こちらのテーマが生死というとても重たいものであり、こちらを取りやめました。
    書きかけを最後まで書いたので、これも重たいテーマの割に、文章の中身がスッカスカだけど

    まあ、ポケスコのやつも重たい(と自分ではおもってる)ので、あんまり変わりはなかったように見える。

    ドプラム
    呼吸中枢を刺激する薬
    カタボン
    血圧を上げる薬。カタボンHiと、カタボンLowがあるが、おそらくこれではカタボンHiのこと。


    【お好きにどうぞ】


      [No.1944] 居候、空を飛ぶ 投稿者:no name   投稿日:2011/10/01(Sat) 17:59:13     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    間違い等ございましたら。




    居候、空を飛ぶ




     僕がその黄色い生き物を見つけたのは、メタングに似た掃除機と共に母が二階から引き上げていった後だった。
     電源の少ない僕の部屋で掃除機をかけるには、パソコンプリンタのコンセントを引き抜かなくてはならない。そこで掃除機をかける時になると、一旦、僕がそれを引き抜くのが暗黙のルールだった。かといって母がコンセントを戻すかというとそんな発想は無いらしく、部屋に戻った僕は再びコンセントを豚鼻に刺すことになるのだ。黄色い生き物を見つけたのはそんな時だった。
     毛の生えた黄色饅頭。それが第一印象だった。
     そこにいたのは五匹。五匹のもさもさ饅頭が、コンセントの豚鼻に争うように群がっていた。
     サイズは手の平に収まる程で、四本の足には青い爪があった。最初はポケモンだって分からなかった。僕が「ポケモン」と認識している大きさは、膝乗りサイズからだったから。
     だから最初はぎょっとした。この生き物を脳内で「虫」カテゴリに放り込んでしまったからだ。この場合の「虫」とはもちろん、台所に生息する主婦の黒い敵とかを指す。だから、思わず声を上げてしまった。
    「うわッ」
     すると饅頭の青い眼が一斉に僕を見た。そうして文字通りクモの子を散らすように逃げていったのだった。一匹は部屋の壁を走ってカーテン裏に逃げ、二匹は争うように机の裏に逃げ込んだ。後の二匹は追いきれなかったが、ベッドの下とかタンスの裏だろう。
    「……なんだ今の」
     気がつくと僕はコンセントを指すのを忘れ、机のパソコンキーボードにワードを打ち込んでいた。少々机の裏に警戒しながら。そうして「黄色 クモ 大きい」で検索した所、正体はすぐに分かった。
     饅頭の名は、バチュルと言うらしかった。
     いわゆる「虫」ではなく「ポケモン」の一種ということも分かった。タイプは「むし」「でんき」。平均サイズ十センチ。エサは電気。家庭の電源から盗み食いするのだという。
     なるほど。豚鼻に群がっていたのはそういう訳だったのか。僕は納得した。
     たぶん母が掃除していた時にでも入ってきたのだろう。
    「くっつきポケモン。見た目はかわいいので虫ポケにしては女性にも人気、ね」
     僕はリンクを順々に流し見した。そうして、彼ら正体を知り、おおよその知識を得て落ち着くと、コンセントを指し忘れていた事を思い出したのだった。
    「あ」
     僕は再び声を上げた。豚鼻に視線を戻すと、一匹のバチュルが近づいてきていたが、声に驚き逃げ出したところだった。

     窓に映る空が暗くなった頃、僕はSNS〔pixi(ピクシー)〕の日記に書き込んだ。
     居候がやってきました、と。
     七月が半分過ぎた頃だった。


     次の日になった。
     遅い午後に寝返りをうった僕が見たのは、豚鼻に群がる黄色饅頭達だった。音に気がついた彼らはやはり一斉に逃げていった。
     僕はむくりとベッドから起き出し、パソコンの電源を入れた。日記の反応が気になっていたからだ。
     そして僕はその結果に満足した。反応は上々だった。複数のレスがつき、[うp希望][さあ早くバチュルをうpる作業に戻るんだ]などと書き込まれていた。そうして最後に一番の友人――HNロックが[そういうクラスタの為にこんなコミュあるらしいよ]とのコメントと共にURLを貼り付けていた。
     クリックしてみると「居候バチュルの会」というpixiコミュニティだった。トップ絵はてんこ盛りのバチュル。バチュルに居候された人々が集っているらしい。とりあえず入会ボタンをクリックしておいた。ざっと掲示板を見ると住人達がたくさんの写真をアップしていて、なかなか盛り上がっている様子だった。
     そっと横目に豚鼻を見る。バチュルが一匹、近寄ってきていたが、そそくさと退散した。
    「お腹、減ったな」
     僕はパソコンをスリープさせると、一階ダイニングに降りることにした。テーブルに用意されたタマゴ焼きを口に入れながら、彼らもまた食事を再開しているのだろうかと考えた。


     居候が転がり込んで二週間が経った。
     パソコンに映る動画を確認し、机の上に広げたノートにシャープペンでカリカリと音を立てながら、文字の羅列を量産する"日課"をこなす僕は、チラリと部屋の隅に目をやった。バチュル達が豚鼻に群がっていた。
     ここ最近、僕が見ているだけと学習したのか、逃げ出さなくなっていた。尤も、机から動くとダメだ。クモの子を散らすように逃げていく。けど、初めて出会った頃より、少しだけ距離が縮んだ気がして嬉しかった。
     再びこっそり視線を投げる。ふさふさとした黄色い塊がおしくら饅頭をするように蠢いている。対になって並ぶ大小四つの青い眼が見え隠れして、稀にバチっと火花が散った。下のコンセントが心配ではあるが、今の所トラブルは無い。
     僕はそっとペンの動きを止める。父の部屋から持ってきたデジカメを手に取ってシャッターを押した。が、大きな動きとフラッシュに驚いたのか、逃げられてしまった。プレビューで不意打ちの結果を見てみたが、黄色いぼんやりしたものが写っただけだった。
     ちえ、と舌打ちする僕を尻目に動画が終わり、テロップが流れ始めた。僕は動画の停止ボタンを押すと、椅子の背にもたれかかる。右腕が持ち上げるデジカメを見上げて、溜息をついた。


     数日が経った。デジカメにぼんやりとした黄色を溜め込む僕に、情報が入ってきた。
     バチュルの会会員達がうpする写真を恨めしく見つめ、黄色饅頭フォルダに蓄積する日々を過ごすうち、その一人に注目するようになったのがきっかけだった。彼(たぶん彼だろう)はHNナロウと名乗る人物で、バチュル歴十数年だという。上げる写真がとにかくかわいいのと、コメントが毎回ユニークで僕はすっかりファンになってしまった。
     その彼曰く、なんとバチュルは餌付けおよび、手乗りが可能だというのだ。餌付けすれば撮影もしやすくなるらしい。
     彼の弁はこうだった。バチュルは電気だけでなく、普通の食物も摂取する。身体をつくるためには電気だけではだめなのだそうだ。動物性タンパクを好み、肉や魚を与えると喜ぶらしい。
     ちなみに一番好きなのは昆虫類で、ゴキ○リが大好物なのだそうだが見なかったことにした。
     早速僕は次の日に試すことにした。いつもの時間に下りていくと、まるで空気を読んだかのようなものがラップした皿に乗っかっていた。ベーコン付き目玉焼きだった。
     僕は目玉焼きの部分だけを口に運び、最後に残った縞模様の肉切れをラップに包み、二階の自室に持ち帰った。
     土産を置き、距離をとる。すると情報通り。バチュル達がやってきて争うように食べ始めた。一匹が脂身の一部を素早くくすね、そそくさと机裏に退散したが、残りのバチュル達は残った切れを口にくわえ引っ張り合っている。小さな四足で必死に踏ん張って、身体を震わせ、同居人に取られまいとしていた。
     かわいい。
     僕はじっとその様子に見入った。その時間はあっという間だった。
     そして決心した。僕とバチュル達の間は直線にして二メートルと少し。けれど今に必ず縮めてやろう、と。いつかはナロウ氏の様に直接の手からごはんをあげて、手に乗せよう、と。
     それ以来、母が作り置きする朝食兼ランチのみならず冷蔵庫も注意して見るようになった。彼らが好みそうなものがあればラップに包んで持ち帰る。それが僕の日課になった。


     そうして一週間後、遂に当初の目的が達せられる時がきた。
    「やった」
     プレビューの鮮明な画像に僕は声を上げた。
     ウインナーに舌鼓を打つバチュル達。あらかじめ床に固定したカメラのシャッターを押し、僕はついにくっきりと写る黄色饅頭らの撮影に成功したのだった。 
     撮影成功! そんな報と同時に添付された黄色写真ににpixi日記とバチュルの会は沸いた。
    [かわええ]
    [バチュルたんまじ電気]
     様々なコメントが寄せられた。
     友達のロックからもお祝いの書き込みがあった。
    〔撮影成功おめ〜!〕
     装飾文字付きでそう書き込んできた。

    〔お前、バチュルが来てから楽しそうだよな〕
     その晩にチャットした時、そんな事を言われた。
    〔一時は心配したけどさ〕
    〔なんか安心したわ〕
     そのように彼は書き加え、他愛の無いおしゃべりが一時間程続いた。


     母が仕事に行ったを確認すると、僕はいつもの様に降りていった。
     今日は何だろうと期待しながら、ダイニングのドアを開き、テーブルを見る。魚のフライが三つほど並んでいたので、一つ持っていってやろうと決めた。
     そうしてキッチンの炊飯器からご飯をよそい、隣の冷蔵庫から野菜ジュースを取ろうとした時にふと気がついた。
     冷蔵庫には一枚の紙が、モモン型マグネットでくっつけてあった。

     "――祭、開催"
     "保護者の皆様も是非お越しください"

     そんな文句が目に飛び込んできた。
    「…………」
     数秒の間、その紙に目を奪われた。けど、すぐにテーブルに戻って、淡々と食事を始めた。
     バチュル達が居候してから一ヶ月と半分が経とうとしていた。


    「最近、電気代が高いのよねえ」
     不意に母が呟いてドキリとした。
     あれから数日、ひさびさに家族揃っての夕食の時だった。普段はカントーに行っている父が珍しく帰ってきていた。
    「冷房のかけすぎじゃない? 今年の夏、暑かったろ」
     グラスのビールを片手に父が言う。ぐびぐびと一気に飲み干した。
    「そんな事ないわよ。そりゃカントーは暑かったでしょうけどこっちは全然。蝉が鳴き出したと思ったらすぐ聞こえなくなっちゃったし」
     それにね、と母は続けた。
    「仕事の途中に林の近く通るでしょ。いつもなら大きい蝉が、夏の間十回くらいは自転車の横を飛んでくもんだから、ぎょっとするんだけど今年は全然会わないのよ。ま、会わないほうがいいんだけど……えーと、あの大きい蝉なんて言うんだっけ。ほら、忍者みたいな名前の……」
     テッカニン。
     僕は心の中でそう唱えながら味噌汁をすすった。
     懐かしい響きだ。まだ「あいつ」がこっちに居た頃で、僕らが小さかった頃、よく雑木林で追っかけまわしたっけ。どんどん加速をつけて飛んでいくもんだからちっとも捕まらなかったけど。
     確かに今年の夏は涼しかった。冷房をかけることはほぼなかった。家に一番長く居て"日課"をこなすだけの僕がそう思うのだから間違いない。
    「買い替え時じゃないの? 冷蔵庫とかだいぶ使ってるだろ。旧い家電は電気代高いから」
    「そうかしら」
     二人の問答は続く。そしてとうとう僕に回ってきた。
    「ケイスケはどお? パソコンをつけっぱなしにしてない?」
    「してないよ」
     僕は答えた。まぁ嘘は言っていない。電気を食う饅頭だったら五匹ほど居るが。
    「そう……ならいいけど」
     母は含ませ気味に言った。
    「でもケイスケ、勉強は大丈夫なの? ちゃんとやってる? 今度テストでしょ?」
    「順調だよ」
     冷めた調子で僕は答えた。これもまあ本当だ。バチュル休憩は挟んでるけど、義務は果たしている。通販で買った参考書。パソコンで見る動画。この国の教育制度が求める学力は自室でつけられる。
     だが、母は一言多かった。
    「本当に大丈夫? 動画の先生じゃあ、分からない事聞けないじゃない」
     イラッとした感覚が襲った。
     ああ、もう。また始まった。
    「問題ない。この前のテストなら全部見せたじゃん」
     と、答える。少し声に震えが混じった。
    「そうだけど……」
     ああ、また始まった。学習しない人だ。一言、二言で終わらせておけばお互いに嫌な思いをせずに済むっていうのに。
    「母さん」と、父が止めかけたが、母は続けてしまった。
    「でもね、お母思うのよ」、と。
     ああ、うざい、うざいうざいうざい。この先は分かってる。決まってる。
    「やっぱりテストだけ受けに外に出るっていうのは……」
     それで張り詰めた糸がぷちんと切れてしまった。
     僕はかちゃんと持っていた箸を器の上に置き、立ち上がった。
    「問題ないじゃないか。必要な点はとってるだろ。必要以上にとってるだろ! 学校はそれでいいって言ってんだろ! 何がいけないんだよ! 点はとってる!」
     部屋がシンと静まり返った。ブブブという冷蔵庫の音だけが聞こえた。
     僕は背を向けると、逃げるようにその場を飛び出し、階段を駆け上った。
     部屋の前まできた時に、少し落ち着きを取り戻して、同時にまたやってしまったと後悔した。せめて、居候達を脅かさぬよう部屋のドアはそっと開いた。
     暗い自室。机の上でカリカリと音がする。大小の二対の目が光っていた。
     壁のスイッチを押して照明をつける。居候の一匹がカリカリと講義DVDのケースを爪で引っ掻いていた。
    「それ、食えないよ」
     僕はそう言うと、再び照明を落とす。毛布を持ち上げベッドに潜り込んだ。

     コンコンと音がした。あれからどれ位経ったのだろうか。音が耳に入って僕はうっすらと目をあけた。
    「ケイスケ〜、もう寝ちゃったか?」
     ああ、このとぼけた声は父だ。
    「ちょっと待って」
     僕は答えた。
    「おう」と返事が聞こえ、急いでベッドから飛び起きた。照明をつけると部屋を見渡した。バチュルが二匹ほど、豚鼻にたかっていたが、机の裏に隠れてもらった。放置されていたラップもくずかごに丸めて入れた。
    「いいよ」
     そう言うと、カチャリとドアが開き、父の顔が覗く。父は手にぶら下げた袋を持ち上げてみせ、
    「タマムシデパートで買ってきた。うまいぞ」
     と、言った。
     袋の中から出てきたのは、モーモー牧場の木の実入りミルクタルトといういかにもありそうなお菓子だったが、これが存外に美味しかった。昔からだが、父はこういうのを見つけてくることに関しては天才的だ。タルトをつつきながら他愛の無い会話をぽつぽつした後に父は言った。
    「お前、テストの順位、いいんだってな」
    「うん、まあ」
     タルトを付属スプーンでつつきながら、僕は答えた。
    「大したもんだ。俺の息子にしては出来がいい」
     父はそのように続けた。
    「学校つまらんのか」
    「……まあ。その……うん」
     曖昧な返事しかしない僕に、父は「そうか」とだけ言った。
     こういう生活を始めてもう十ヶ月くらいになるだろうか、と僕は回想した。
     家に引き篭もっても勉強できる。必要な点をとれば卒業できる。だから、その算段が整った時に僕は外に出なくなった。例外は年に何度かだけ。学校の指定する外部の学力検定テストを受ける時だけだ。
     別にいじめられたりした訳ではない。理由を語るのは難しい。ただなんとなく人との関るのが億劫になり、あの空間にいる必要を感じなくなった。
     きっかけはたぶん、「あいつ」が他地方に引っ越してしまったことだと思う。「あいつ」がいなくなった時、僕はふと思ってしまったのだ。
     ああ、これでここに通う理由は無くなったな、と。
     幼い頃からリアルの世界で「あいつ」とばかり過ごしてきた僕は、他の人間との付き合いに価値を見出せなかった。外に出るのだって、誰かと何かするのだって「あいつ」が行こうやろうと言うからだった。
     会話はできるし、生活に支障も無い。だが、ただひたすらに億劫だった。リアルの人間は僕にとって面倒くさいものでしかなかった。オンラインですれ違うくらいが丁度いい。
     もちろん「あいつ」とは未だに連絡をとりあっている。どこにいても今はインターネットで繋がりがもてるから。「あいつ」のネットでの名前はロックという。
     引き篭もっているのを彼の所為にはしたくないので、この事は黙っているけれど、最近どうもバレている気がしていた。
    「……義務は果たしてるよ。果たしてると思う」
     僕はぼそりとそう言った。
    「まあ、な」
     と父が苦笑する。
    「まぁでも、母さんも母さんなりにさ、心配してるんだからな? そこはわかってやって欲しい」
    「……うん」
     僕は生返事した。
     分かってはいる。けれど母が思い描くあるべき学生生活に僕は価値を見出せない。外に出るって事にも。
     それから会話は途切れてしまって、父も僕も黙ってタルトをつついていた。
    「まあ俺はさ、どうこう言う気ないから。お前の好きにしたらいい」
     食べ終わった頃に父はそう言った。
    「いつかくるさ。誰が何を言わなくてもここを出なきゃいけない。自然にそう思う時がさ。その時になれば身体が動く。俺はそう思ってる」
    「その時になれば?」
    「お前がいつかはわからんけどな」
     無意味なオウムがえしをする僕に、父は困ったように笑い、言った。
     その時。その時なんて本当に来るのだろうか。ちょっと想像がつかなかった。
     父はデパートで買ったいくつかのお土産を冷蔵庫に突っ込んで、次の日の夕方にカントーへ戻っていった。


     日課がまた始まった。休日に母が掃除に入るたびにバチュルを隠しながら、朝食兼ランチを残しながら、僕は彼らとの距離をつめていった。
     そうして居候から三ヶ月という頃、待ちに待った時は訪れた。
     ついに豚鼻の五十センチ前まで距離をつめた僕は、今日の馳走で彼らを釣った。
     今日はエビフライだった。
     バチュル達が机の裏から、ベッドの下から顔を出して、品定めする。僕は場所を動かない。饅頭らを辛抱強く待った。警戒しながらも、彼らは距離をつめてくる。ついに豚鼻前に正座する僕の前までやってきた。青い瞳は思案しているようだった。僕はひたすら怖くないですよオーラを醸し出すことに専念した。
     そして来た。一匹のバチュルがじりじりと歩みより、ぱっと僕の手からエビフライを奪い去った。すると残りの四匹がぴじょんぴょんと跳ねてきて一斉に飛びついた。
    「……やった」
     手からとった。僕の手からエサを。僕は感動に打ち震えた。
     夜になって早速ロックに報告をしたら、呆れながらも祝福してくれた。
    〔お前も飽きないね〕
     彼はコメントした。
    〔でもあまり慣らすのもどうなのかな。居候とはいえ野生なんだろ?〕
    〔それともボールで捕まえるの?〕
     そのコメント妙な感覚を覚えつつ、返事をする。
    『いいや。母が許可するとも思えないし』
    〔だよなーお前の母ちゃんあんま好きじゃないもんな〕
     今になって思えば彼は知っていたのかもしれなかった。


     一週間経った。
     すっかり手からエサを貰うことに慣れたバチュル達だったが、僕の部屋には異変が起こっていた。
     天井の隅、椅子、机などいろんな場所にバチュル達が糸を吐いて飛ばすようになったのだ。
     母に見つかってはまずいので、クモの巣が出来る度、僕はそれを処分した。手を伸ばして触れた糸はビリビリした。
     同時にバチュルの会にも同様の書き込みがなされるようになった。
    [ビリビリする]
    [キリがない]
    [上に向かって飛ばすよね]
    [なんだか練習をしてるみたい]
     次々に書き込みがなされる。
     するとコミュの古株達が待っていたかのように書き込みを始めた。
    [今年もきたかー]
    [もうそんな時期か]
    [早いもんだ]
     さすがベテラン、余裕がある。その中にはナロウ氏の名前もあった。そうして少し時間をおいた後にこんな書き込みがなされた。
    [今年もあのスレ立てますか]
    [えー寂しい]
    [でもしゃーない]
     あのスレ? あのスレって何だ? 僕は首を傾げる。
     そうして一時間ほど経った時、コミュに新規スレが立った。
    『居候バチュルお別れスレッド』
     お別れ? お別れってどういうことだ?


     巣立ち。一言で言うならそういうことだった。
     バチュル達は一定期間を民家で過ごした後、ちょうど今の季節に旅立っていくのだとスレッドにはあった。風の強い日を見計らって彼らは屋根に上っていく。そして、空に向かってエレキネットを飛ばし、風に乗る。風を捕まえ上昇した彼らは、"運び手"を得る。
     画面の文字を何度も何度も追いながら、僕の目の前はぐらぐらと揺れていた。

     そんな。そんな。せっかく仲良くなったのに。
     これからなのに。これからだと思っていたのに。

     それからしばらくは日課が手につかなかった。


    「お前達も行っちゃうのか? あいつみたいに」
     豚鼻に群がるバチュル達に問いかけた。彼らはしばしこちらを向いたが、すぐに電気代を増やす作業に戻ってしまった。

     ああ、どうしてなんだろう。
     どうして僕に近しい者はみんな離れてしまうのだろう。
     人も。ポケモンも。 いやロックのことはまだいい。連絡はとれているし、会うのだって全く不可能じゃない。
     けれど彼らは違う。このバチュル達は違う。確率からしたってもう僕らがこの先出会うことは無い。
     ああ、風なんか吹かなきゃいいのに! "運び手"なんて来なければいい!
     いっそボールで捕まえようかとも考えた。だが、母が許すとも到底思えなかった。

     ああ、そうだ。
     巣立ちを阻止すればどうだろう? 窓を閉め切って出れないようにすれば?
     けれど週に一度は母が掃除に入る。そうしたら窓は開いてしまう。
     ならば掃除を自分でしたら? いやだめだ、怪しまれかねない。

     追い討ちをかけるように部屋にクモの巣が増えていく。
     彼らは訓練している。"運び手"を得るその訓練を。
     日増しに巣が増えていく。取っても取ってもキリが無い。母に見つかるのももう時間の問題だ。

     ……行かせるしか、無いんだ。
     悩みながら一週間を過ごした僕は、一面クモの巣だらけになって電気を帯びる部屋の惨状を目の当たりにして、とうとう認めざるを得なかった。
     バチュルの会に巣立ちの報が書き込まれ始めていた。


     その休日は風の強い日だった。
     母が上がって来る前に急いでクモの巣を片付けた。痺れるとかそんな事は言っていられない。
     そうして僕は観念するように窓を開けた。母に引導を渡されるくらいなら自分でと思ったのだ。
     何より予感があった。外の天気がよく風が鳴っていた。巣立つならば今日こそがタイミングのように思えた。
     それに掲示板に書き込みがあった。昨日"運び手"を見たって書き込みが。投稿者の住んでいる街はここから北へ数十キロ地点。北から南へ渡る"運び手"は今日この町を通過する可能性が高い。
    「たぶん、これが最後だ」
     僕は昨日深夜、冷蔵庫からくすねてきたハムを一枚、机の引出しから取り出した。バチュル達が寄ってくる。バチュルの体毛が僕の手に触れた。
     いよいよ風が強くなった頃に母が階段を上ってくる音がして、
     それが合図だった。

    「入るわよ」
     そう言って、母がドアを開けたとき、もうバチュル達の姿は消えていた。
     壁をつたい窓から彼らは出て行った。
     あっけない別れだった。
    「掃除機かけるわよ」
     母が言った。


     ダイニングに下りても落ち着かなくて、大きな窓から空を見上げ続けていた。
     風が強い。上空の雲がすぐ上を流れて、通り過ぎていく。
     母が降りてきた。それでも部屋に戻ろうとせず窓に張り付いている僕を見て、窓に映り込んだ顔が怪訝な表情を浮かべた。
     その時だった。
    「あっ」
     思わず僕は叫んだ。北から無数の鳥影が、V字の隊列を組んで現れたのだ。
     しかも一つじゃない。隊列が三つ、四つ、五つ。高度はそれぞれ異なるが相当の数だ。
    「あら、スワンナじゃない。秋も終わりねぇ」
     同じように空を見た母が言った。ついに運び手がやってきた。

     行くんだ。
     あいつらが、 飛ぶ。

     飛ぶんだ。

     窓を開いてもいないのにびゅうっと風が吹いた気がした。


    「母さん、自転車貸して欲しい」
     気がつくと僕はそんな事を口走っていた。そして母の返事を聞かぬままに靴を履いて、家を飛び出していた。
     この時期に南へ渡るしらとりポケモン、スワンナ。
     その白い白い大きな身体につかまってバチュル達は遠く遠く旅をするのだという。
     僕が家を飛び出したその時、隊列が上を通り過ぎた。

     ――いつかくるさ。誰が何を言わなくてもここを出なきゃいけない。自然にそう思う時がさ。

     不意に父の言葉が蘇った。


     びゅうびゅうと風が顔を撫で、通り過ぎる。
     自転車に乗った僕は、ペダルをがむしゃらに漕いで追いかけた。距離はどんどん離れていく。
     居候の姿は見えない。けれどこのどこかに彼らがいる。

     走った。
     ペダルをがむしゃらに漕いで、僕は走った。
     走って、走って。もうペダルが漕げなくなるまで走って。
     街のはずれの河川敷に到達したとき、僕は自転車を止め、草むらに投げ出した。
     服は汗でぐっしょりで、風が吹いて身体を冷やしてくれた。

     南を仰ぐ。
     空の向こうにまだ小さく鳥影が見えていた。





    『今日だった。見送ってきた』

     すっかり暗くなってから戻った僕は、そうロックに伝えた。
     豚鼻に目をやる。もうそこには何も居なかった。僕は続けてタイプする。
    『実は俺、あれからずっと家に居た』
    〔知ってる〕
    『出る必要も感じなかった』
    〔うん〕
    『でも今日は出た』
    〔ん、そうだな〕
     画面の向こうの彼は全部分かってると言いたげに、短い返事をただ返し続けていた。


     随分と寒くなってきた。
     居候が旅立った空には冬の星座が輝き始めていた。


      [No.1943] 「P」(10/02-15:33 No.1961まで修正反映) 投稿者:匿名   投稿日:2011/10/01(Sat) 17:45:53     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    自身で校正はしましたが、わかりづらいところあれば突っ込みなどお願いします。


    (以下本文)

    “10/1が締切なので守れ。”9月30日にツイッター経由でこの連絡が来るのは遅すぎる。
    ただいま30日の17時、原稿はなんとかENDマークをつけることができた。いま絶賛推敲作業中。
    近年、ポケモン小説の水準が上がり(BWの発売もよかった。あれはほんとによかった)、
    “サトシ「いけピカチュウ!」 ピカチュウ「ピッカー」”みたいな小説が投稿されることもなかった。

     今回俺が提出しようとしている小説は、ピカチュウとそのトレーナーの心の交流の物語だ。
    ピカチュウをひたすら愛らしく、トレーナーはとにかくフィリップマーロウ並に男らしく書いた。かっこいい。
    こんな男は同世代にはいねえよと毒づきながら書いた。でも担当編集者のヤマダには大変好評だった。ヤマダは乙女だからな。
    俺も女に夢がありすぎて、どんなのが本物の現実の女なのかわからないぐらい女には夢がある。童貞だから。

     今その小説を印刷してる。チェック入れてデータに反映させて、22時くらいに提出する。あ、ちょっと喉乾いた。
    クロックスつっかけて半纏羽織ってアパートのドア開ける。
    空気が冷たいよバカ。俺が中学生の時は9月なんて熱中症レベルで暑くて、体育でバタバタ倒れてたのにな。
    自販機の前に立つ。なんだよ自販機の中身、全部「つめた〜い」じゃねえかよ、やっぱ最初の予定どおりコーラ(ロング缶)にしよう。ガゴンッ。
    早く戻ろう戻って赤入れて寝よう。
    レポート含めてもう3日も変な寝方しかしてないから、布団が恋しい。
    てか秋葉原見に行きたい。せっかく神田に住んでるのに、徒歩10分の大学にしか行ってない。惨めになりかける。いやいや原稿直さんと。
    玄関の扉を開ける。
    「ただいまー」「おかえり」一人暮らしの静かな部屋と会話する。あー返事してくれるような彼女ほしい。この際ヤマダでいい。
    何かが足元で動いた。何かがいるんだ。下を向いた。




    「ピカピ!!」

    そこにはピカチュウが居た。ぬいぐるみ持ってたっけ。あれ、動いた動くことも声掛けもできない俺の脚に、ピカチュウがしがみついてよじ登ってきた。
    俺はこの光景を一生忘れない。死ぬほど妄想したリアルなポケモンの、ピカチュウの動きだ。腹のあたりがこそばゆい。
    ピカチュウは俺の脚を登り切り、半纏と俺の腹の間の空間に入って「ピカピー」と愛らしく鳴く。
    ちょっと重くて暖かくて、生き物の肉の柔らかさがTシャツ越しに伝わってきて、赤面した。思わず半纏の袖から手を抜いてピカチュウを支える。
    「ちゃあ」俺を見上げて奴はまた鳴いた。俺と目が合う。にっこり笑う。そして俺の胸に、顔をすりすりさせる。
    可愛いから止めろ。
    あまりのアピールに、ピカチュウが架空の生物だということをしばし忘れていた。なんでこれ生きて動いてるんだろうか。あー可愛い。
    マジ可愛い。あまりの愛くるしさにそんなことはどうでもよくなる。
    おれ今からピカチュウ愛好家になる。ハートキャッチピカチュウ。
    ピカチュウのちっちゃい胴を抱っこして、ベッドへゆっくり移動する。抱きしめすぎて痛い思いさせないように注意する。爪、切っとけばよかった。
    そろりそろりと歩く。ベッドまで来て、腰をゆっくり落として、ベッドのスプリングをきしませる。

    痛くないかー、ピカチュウ。あ、喉乾いてないか。コーラの缶を太ももで挟んで、開ける。一口飲む。ピカチュウもほしそうだ。
    缶の口に残ったコーラをぺろりと舐めて、にこにここちらを見ている。缶を少し傾ける。少しこぼす。半纏で拭く。
    これは、口移しであげないといけないのだろうか。ピカチュウにちゅーするのか…… ちっちゃい口元をじっと見つめる。
    うん、無理。俺にはハードルが高すぎる。なぜか勃起してきたし。
    すると機嫌が悪くなったピカチュウの赤ほっぺがぴりぴり言い出した。
    な、なんか代わりになるもの。あ、そうだ、カントリーマアム!! あわててカントリーマアムの袋を歯で開ける。
    ピカチュウがちっちゃいお手てをマアムを取ろうと伸ばす。なんでだろう、俺泣けてきた。
    マアムを手に取ってピカチュウはもぐもぐしている。涙が零れ落ちてきた。ビデオとか撮りてえ…… でも携帯充電中だ……。

    ピカチュウがするりと腕から抜ける。とたんに悲しくなる。暖かい何かが触れているのって気持ちいいと初めて知る。
    テーブルの上にちょこんとすわってカントリーマアムをかじってる。

    ところでこいつはどうしてここにいるのだろうか。どうでもいいな、うん、ピカチュウはずっと居ていいんだよ。
    三食昼寝付きだよ。お前の飯代くらい稼ぐからな。ムヒヒ。
    さあ、お前を抱いて原稿に赤を入れようか。そしてヤマダに提出して、今夜は一緒にお風呂に入ろうか。
    ところが印刷された原稿を見て俺は青ざめた。
    この小説は主人公とピカチュウのハートフルな愛情物語だ。なのに、原稿のすべてのページから“ピカチュウ”の文字が抜けている。
    目を疑った。ワードのデータも確認した。間違いなくピカチュウの文字が無い。文字色を透明にしたわけでもない。
    そこだけきっちり4.5文字分抜けている。
    空欄に“ピカチュウ”と打ち込む。ひらがなで“ぴかちゅう”とすら入らない。ほかのキーを押すんんんんんんん 打ち込める。
    驚きすぎて冷静になる。メモ帳でも同じことを試す。入らない。ほかのキーを押すmmmmmmmmmmmmm 打ち込める。
    USBにデータを落として漫画喫茶で…… とも考えた。でもピカチュウをひとりにしては…… あれ
    ひょっとして、俺の目の前の生きてるピカチュウは、俺の小説のピカチュウなのだろうか。
    そうだよな、文字のピカチュウが消えたタイミングと、ピカチュウが現れたタイミングを考えれば、当然、そうだよな。

    印刷した原稿の上にピカチュウを置いて一生懸命、拝む。
    戻れー戻れー 今お前に期待されてる事は元の世界に戻ることだー。
    ……戻れェェェェェェェェェッ
    戻るんだピカチュウゥゥゥゥゥゥゥ
    印刷した原稿の上にピカチュウを置いて引き続き、拝む。
    戻るんだ戻るんだ、原稿の中に。早く戻れよ 早くしろ 部誌が落ちる
    白い原稿に1字もない ピカチュウの文字 早く戻れよ 原稿に 黄色い悪魔
    戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻ってよ!今戻らなきゃ、今出さなきゃ、
    部誌が落ちちゃうんだ、部費が出ないんだ! もうそんなの嫌なんだよ! だから戻ってよ! 
    ……こんなときでもアニソンとアニメからの引用を忘れない自分のオタクマインドに嫌気がさす。
    ふっと顔を上げる。ピカチュウと目が合う。
    「ピカピ」かわいく鳴かれてしまった。……違う! 早く俺に校正をさせろ!!

    ここで俺はとんでもないことに気が付く。ピカチュウと書いたら、ピカチュウが実体化したのだ。
    女の子の名前を書けば、女の子が実体化するのではないだろうか。ていうか、俺、女選んでヤリ放題じゃね
    童貞捨てる相手を誰にしようか、俺は考え始める。ピカチュウはどうでもいい。

    やっぱり芸能人がいい。見目麗しいほうが、いい記念になる。
    いや待てよ、俺は芸能人を知らない。和田アキ子とレディガガと黒柳徹子しか知らない。
    AKBとか団体名しかわからねぇ。二次元女子とか立体化されても怖いだけで、あれはあのサイズだからいいのだ。
    となると普段から知ってる女子だな。その方がエロい。……ヤマダしか居ねえじゃねぇか。

    ここで考え直してみる。ヤマダはまあ、胸がそこそこあって尻がそこそこあって髪が黒い。ときどきうっかりブラチラしてる。たぶん処女。
    普段からすっぴんの地味女子。背が低い。肌はきれいなんだよなー。脚も悪くないと思う。妥協してやってももいい。

    さて、何かを着せたい。脱がせ方がわかんないけど、いきなり全裸の女子はちょっと、引く。
    胸元を強調するような服で秋に着る服。
    体にぴったりしたタートルネック(白)がいい。服の上からおっぱい揉んだときに手の動きが見えそうだ。
    待てよ、タートルネックだと首が見えない。やっぱりVネックがいい。鎖骨がちょっと見えるやつ。ヤマダの鎖骨に水を貯めて舐めとりたい。
    下も決めよう。うーん。やっぱ脚は見たいからミニスカニーハイがいいな。ヤマダはいつもジーンズだから、絶対に着ない。
    ニーハイはピンクと黒の縞々のにしよう。ミニスカはチェックの赤い制服っぽいやつ。靴はどうしよう。HARUTAのローファーがそれっぽいな。

    よし次は下着だ。ブラジャーとパンツおそろいのやつの白いのがいい。縦縞とかかわいいな。水玉もかわいいな。
    白地に黒とか控えめでかわいいな。フリルはケバい。
    あー、うん、ヤマダの肌は白いから実は黒とかかわいいかもしれん。いいな、黒。あれだけおとなしい感じで実は黒とかいいな。
    ときどき見えるブラチラでも紫とか見える。無理しなくていいのに、といつも思う。
    黒ならフリルでもかわいいな。白でもいいな黒でもいいな。……白で。最初だから。
    脱がせ方がわかんないからフロントホックがいいな。ぷちって簡単に開けられそうだ。


    よし決まった。
    「白の下着を身に着けた上に、Vネックのセーター着て、
    赤いチェックのミニスカとニーハイを履いたヤマダください」とタイプしよう。手が震えてきた。
    あっ、でもどうしよう、俺避妊具持ってない。
    待てよ。大学に入学したときに先輩からもらったのが、どこかに。捨ててない。どこに置いた。
    積みガンプラ箱のむこうか それとも漫画本の山の向こうか それとも雑誌の山の中か
    財布の中だ! でも財布の中のは痛みやすいって聞いて、鞄の底に入れたんだっけ。
    いつもの肩掛けバッグの中を逆さにしてぶちまける。どれだどれだどれだ。漁る。
    あった! よしこれ使おう。つけ方わかんないから、そこはやってもらおう。
    そうだシャワー浴びてシーツ取り替えよう。テイッシュはあるから大丈夫。
    よし風呂入ってくる。風呂入ったら、さっきの文、打ち込もう。



    浴びた。シーツ変えた。今俺は全裸でパソコンの前に座っている。
    今、とても緊張している。体が熱いのは期待のためだけじゃない。静まれ俺の体とテンション。今触られたら出る。
    だ、大丈夫だ。よし、
    パソコンの前で正座して、キーボードの上に両手を構える。ピカチュウがちょこんとパソコン本体の上に座っている。
    ひらがな入力になってる。ローマ字入力に戻して、ああくそ、マウス持つだけなのにこんなに震える。

    「ピッピカチュウ!」

    お前うるさいぞ、と言おうとしてピカチュウを見た。赤いほっぺから電気がぴりぴり出てる。そこはパソコンの上だ降りろ、という前に、
    ピカチュウが軽く放電した。聞いたことないような音を立ててモニターがばつんと暗転した。
    何が起こったか理解できなかった。「え」
    本体から煙が上がっている。本体の光っているべきランプはすべて暗い。モニターも暗い。ケーブル接続箇所はなぜかすべて外れている。
    体が一気に静まる。
    パソコン、こわれちゃったー。

    「ありえねー……」

    ヤマダで童貞捨てて、女性声優とかアイドルとチンコ擦り剥けるまでヤる俺の計画が、パーに。
    さようなら。女の子たちの体液にまみれるはずだった日々。
    さようなら。腰痛めるまで腰をふるはずだった日々。
    さようなら。右にヤマダ左にヤマダを抱いて眠るはずだった日々。
    さようなら。セブンのかわいいメガネ女子高生店員の処女をもらうはずだった日々。
    さようなら。オリジン弁当の巨乳さんの乳首をくりくりするはずだった日々。
    さようなら。俺の、愛欲の日々。

    パソコンはあいかわらずしゅうしゅう言っている。これはもう、ゴミだ。
    腹の立つことに、ゴミになったパソコンの上で、ピカチュウは昼寝を始めていた。
    この幸せそうな笑顔で毎晩となりで眠られたら、人類の半分はこいつがどんなことしても許すと思う。
    でも、俺は許さないほうの半分だった。ヤマダとの幸せな日々を返せこのボンクラピカチュウ。おっぱいを返せ。
    恐らく自力だけでは手に入れられないものを手に入れかけて、それを目の前ですべて失った男の気持ちがわかるか。
    俺の幸せと俺の夢と俺の人生の煌めきを返せ。
    返してください。

    俺はピカチュウなんかもう見たくもなかった。どこへでも行ってくれ。でもどこへ。
    近くのファミレスに行くときに、いつも前を申し訳なく思いながら通る“あの会社”に渡すしかない。
    アマゾンの空き箱に寝こけているピカチュウをつめる。その上からさっき俺が体を拭いたタオルをつっこんで、ガムテで開かないようにする。
    空気穴を適当にぶすぶす開ける。刺さっても知らん。心配するほど愛は無い。
    財布持って携帯持って適当に服着て、サンダル履いて外に出て、チャリの前の籠に段ボールを縦にして入れる。
    よし、出発。

    初秋の冷たさと寒さを足した空気の中を俺はチャリで急ぐ。紅葉ってまだ先の話か。今年があと三か月で終わることにもびっくりしている。
    今年の夏もどこにも行かないまま終わった。予定がなかったから。
    秋ぐらいはどこかに行ってもいいと思う。あ、紅葉観に行きたいな。春井は暇そうだから呼べば来るだろう。
    ファミマの前を通り過ぎた。夜のコンビニはいつみても落ち着く。さらに自転車を漕ぐ。デニーズを通り過ぎた。

    “あの会社”の本社は京都にある。でも神田にも自社ビルがあることは知られていない。うちからチャリで25分。
    ビル全体が真っ暗だ。ゲーム会社の本社って、もっとゴテゴテキャラクタが飾ってあるイメージだったけど
    すごく地味な、黒い色のただのビル。ここにはマリオもピカチュウも飾っていない。そしてありがたいことに、警備員もいない。
    自転車から降りて、段ボールを両手で持つ。ちょっと重い。何歩か歩いて敷地内へ入る。警報は鳴りださない。
    ガラスの自動扉のわきに段ボールを置いて、振り返らずに俺は自転車に飛び乗った。
    不思議なことに、ピカチュウに対する感情は何も、出て来なかった。ごめんね、とすらも思わなかった。

    来た時よりもゆっくり自転車を漕ぐ。冷気にも体が慣れたのか、もうあんまり寒くない。コンビニで酒でも買って帰ろう。
    1人で飲みたい。疲れた。自転車っていいな、心が癒される。
    ファミマに入る。黒霧島がまだあったはず。ツマミとファミチキ買おう、そうしよう。籠を手に取る。惣菜の棚まで移動する。マカロニサラダがいい。
    ムーッムーッムーッムーッ。あ、電話が来た。発信者の名前をみる元気もなく、通話ボタンを押す。

    「ヤマダです」
    「あ、おつかれさまです、ツツイです」一緒に飲みたい。
    「原稿、どうですか。締切今日の24時なんだけど」

    しまったァ。血の気が一度引いた後、倍になって返ってくる。頭と顔が一気に火照る。ヤバいまずい。しかもパソコン壊れてる。

    「あ、はい、今から書きます」無意識に言う。言えることこれしかないじゃないか。
    マカロニサラダを冷ケースに戻す。無印良品のノートとボールペンをレジに出す。
    俺のあまりの「ヤッチマッタ!!」の権幕にレジの人が半笑いだ。気にならないけど。どっか物が書けるところ、どっか物が書けるところ。
    あ、そうだ、デニーズ!
    事故だけは起こさないようにチャリで疾走しながら、頭の中ではずっと「うおおおおおおお」だとか「綾波ィィィィィィ」だとか叫んでた。
    「間に合え、いま間に合わないと俺はマジで死ぬっ」とか叫んでた。
    通行人が今びくっとしながらこちらを見た。どうやら俺は叫んでいるらしい。どうでもいい、間に合いさえすれば。
    くそう、信号邪魔だ、どけ!もしくは色変えろ!! よっしゃ青だ行くぜー!ヒャッハァァァァァッ 
    車道を風になって走ってる俺、ちょっとかっこいい。今、俺は、風だ! 風なんだ!! 今の俺はかなり! イケてる!!

    ガラガラの駐輪所にチャリを入れて、デニーズの階段を駆け上がる。「おひとり様ですか」「1人です。タバコ吸いません」で、窓側の二人掛けの席に座る。
    席に座る。「おかわり自由ドリップ珈琲ひとつください」「かしこまりました」
    さて、何を書こう。正直ピカチュウの心温まるストーリーなんか書きたくない。想い出したくもない。
    データは死んだ、アイディアもない。さてどうするかと考えようとしたところで、アイディアが降ってきた。これなら短い。いける。書ける。
    ヤマダにメールを打つ“デニーズ23時30分来て”。現在時刻は21時30分。よし、書くぞ。書かないでやっていられるか。



    「あ、おかわり自由ドリップコーヒーとバナナブラウニーパフェください」ヤマダが俺の前に座りながら言う。
    書きあがったところから無印のリングノートをやぶって積み重ねたのを無言で差し出す。「よかった、校正するものがあるなら大丈夫です」と答える。
    無言になる俺とヤマダ。いつもなら怖いこの瞬間もぶっちゃけ、何も思わない。だって俺いま書いてる途中だもん。
    ヤマダが笑い始める。当然か。
    笑いながら原稿読んでる。いつものことだが、読むの早いな。俺はボールペンをひたすら走らせる。

    「いやー、この男、マジでアホでしょう」声が笑っている。こんな大セクハラ小説、よく笑いながら読んでいられるな。
    俺はヤマダが冗談で流したBLドラマCDもダメだったのに。

    「だって、ヤマダさんのことが好きなら、まだチャンスあるでしょう」声が笑いを含んでいる。
    やってきたドリップコーヒーを一口すすって、それでもまだ笑っている。飲み食いしながら笑えるなんて器用な女だ。
    俺はひたすらボールペンを走らせる。

    「どんな恋愛だってそうだけど、最初の一歩はものすごく勇気いるよー。
    ちゃんと告白して、カップルになって、ずっと一緒に居られる男の人と女の人になるには、必要な一歩だけどね」
    それが言えれば俺、21年間も童貞引きずってねえよ。くそう、言うぞ、嫌がらせに言うぞ。
    産まれて初めて彼氏ができて、右手の薬指に指輪してるのを、すっげえ幸せそうな笑顔で見せてきた女に、
    「それと同じの“贈”ろうか」って言うぞ。





    「あ、おかわり自由ドリップコーヒーとバナナブラウニーパフェください」ヤマダが俺の前に座りながら言う。
    書きあがったところから無印のリングノートをやぶって積み重ねたのを無言で差し出す。「よかった、校正するものがあるなら大丈夫です」と答える。
    無言になる俺とヤマダ。いつもなら怖いこの瞬間もぶっちゃけ、何も思わない。だって俺いま書いてる途中だもん。
    ヤマダが笑い始める。当然か。
    笑いながら原稿読んでる。いつものことだが、読むの早いな。俺はボールペンをひたすら走らせる。

    「で、いまファミレスのシーン書いてるわけですね」そうだよ。
    「わかりました、じゃあ校正始めるんで赤入れますね。」

    で、句読点が少ない。主人公の独白がわかりづらい。地の文だらだら入れたくないのでそうなりました。あとで直します。
    ピカチュウの出現シーンをもっとわかりやすく。あ、そこはあとでもうちょっとなんとかします。
    ヤマダに対する欲望がちょっとむき出しすぎますね。そこもうちょっとマイルドにします。
    こう、女性器とかは名称自体が出てくることがまずいですね。あ、はい、そこ全消しでいきます。なくても大丈夫。
    こういうやりとりが一段落ついたところで、ヤマダが笑い始めた。やっぱり気になるか、そこ。

    「ところで、なんで僕、作中だと女の子なんですか あと、僕が頼むものの予想がついてるんですか」
    「空想の中とは言え女の子いないと俺のテンションが上がらないから。お前が偏食家だから」
    「わかりました」不服そうな顔でヤマダがうなづく。偏食は事実だろうが!
    誰だって友達の小説に無断で出演させられたうえ、性転換させられて、あやうくレイプされそうになっているとか気分は良くないだろう。
    まあそこは、友情出演ということで、ひとつ。すまんな、あとでなんか食わしたる。
    「せめて小説の中の話なんですから、ツツイさんも幸せになりましょうよ」
    「俺と同じ名前のキャラクターがリア充になるなんて断じて許さん」
    ヤマダが爆笑し始める。そうだろうよ、26歳の“おとなのおねえさん”と付き合って2年、真剣に結婚とか考えてる男にはわかんねえだろうさ。

    「書き終わったら一度これ、持って帰って、あとで僕の方にメールで“送”っておいてくださいね。」

    はいよ。ヤマダのためにやっとやってきたパフェを、奴は旨そうにほおばる。ああ、彼女、欲しいなあ。


      [No.1942] もふもふ。 投稿者:スズメ   投稿日:2011/10/01(Sat) 12:25:36     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    感想ありがとうございました!
    寒い朝なんか特に、布団から抜けられなくなります・・・
    家にはポケモンの巨大ぬいぐるみの代わりに、巨大なヒヨコぬいぐるみたちが鎮座しています。
    誕生日のたびにもらうので、もうそろそろ置き場所が・・・
    もふもふしているときが至福のとき・・・ぴーちゃんもふもふするとつぶれちゃうので・・・。

     イラストですか?!
     わくわく・・・! 自分も誕生日に父からスキャナーをもらったのですが、説明書をあまり読んでいないので自動でスキャンばっかりです・・・
     機械って上手く使わなきゃもったいないのに、上手く使うのは大変です。
     紀成さんの絵が見れるのを楽しみにしてます!


      [No.1941] ポケスコ匿名校正スレ。 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/10/01(Sat) 11:29:09     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    1週間ほど伸びたことだし、すでに応募の方等も校正をしてみてはいかがでしょうか?
    匿名で作品を貼り付けてください。暇な人が誤字脱字とかを見てくれるかも知れません。
    欲しいアドバイスがあったら、それも書いておくといいんじゃないかな。
    書きかけ晒してもイイヨ。

    書いてる作品がバレるとあれなので、応募してる人がアドバイス送る場合も匿名がいいかもね。
    まぁこのへんは自由裁量でよろしく。


      [No.1940] ポケスコ延長10/9まで 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/10/01(Sat) 11:26:15     1130clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    〆切り延長希望が多数あったので、10/9まで延長します。
    鳩がふぁーすと2から帰り次第更新。
    投票準備ができるまではロスタイムになります。
    数も集まったので私がぶっ倒れない限りは 10/9以降の延長はありません。

    では戦闘中の諸君の検討を祈る。

    がんばって3位以内に入ってストーリーコンテスト・ベストに掲載されてね!


      [No.1939] もっふもっふに しーてやんよー 投稿者:紀成   投稿日:2011/09/30(Fri) 20:41:17     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    そろそろふわふわをもふもふしたい季節になってきましたね!
    寒い朝は程よく冷たくなったタオルケットとあったかい毛布が恋しいです。
    ついでに回りにピカチュウの巨大ぬいぐるみとか、レシラムとかエルフーンを集めて、無○用品で買った低反発枕を足の下に敷けば完璧です。
    あかん……考えただけで眠くなってきた…


    さて、そろそろ本気を出すか(イラスト的な意味で)
    スキャンを上手く使えるようになったらイラストつけたいですね。チルット描けないけど。


      [No.1938] 帰り道 投稿者:スズメ   投稿日:2011/09/30(Fri) 20:01:24     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    暗くなるのが速くなってきた帰り道をとことこと歩いていく。
     夕方から夜へと姿を変えた何時もの道には、雨上がりのせいか薄いもやのような霧が広く佇んでいる。

     肌寒いとはいえないものの寒くなってきた帰り道対策に上着を一枚、そしてルットことチルットの自立式湯たんぽを一つ。
     これが最近の私の帰り道スタイル。

     左側の歩道に面した土地には住宅が立ち並び、車道を挟んで向かい側、右の歩道に面した土地には山の切れ端、茂る木々。
     ところどころに点在する街灯が光量不足なせいで、道はまるでまだらのようにほのかに明るい場所と夜に包まれた場所とに
     分かれてしまっている。
     こんな道でも、ルットがいれば怖くない。
     ちっちゃいト離散でも、温かいのがいるだけでなんか幸せだし、安心するからね。
     個人的には、朝と帰りの時間が一番季節の移り変わりが分かると思う。
     ちょっと足を止めて山の切れ端に生える木とか下草やらを見つめてみれば、夏の暑さの名残か、
     枯れてしまった葉っぱやらの間に暑さに負けた色ではない、赤や黄色に染まりかけている葉っぱが見て取れた。

     「ぴゅい?」

     足を止めたのに気づいたのか、モコモコの塊が疑問の声をあげた。
     モコモコと、私の腕におさまっていたルット(もといチルット)が、くいっと上を向き、真ん丸い目と視線が合う。
     ぴょんと飛び出たあほ毛がアタックしてくるけど痛くは無い、でもくすぐったい。
     
     なんでもないよ、とルットにほほを摺り寄せれば「ギョギョギョ?!」と抗議の声が漏れる。
     きっと、苦しいやらうっとおしいやら言っているのだろう。 わかんないけど。

     再び歩き出したものの、ぎょぎょぎょのルットにかまけて余所見をしていたら、街路樹の生えているコンクリートカバーの
     切り取られた地面に足が不時着。
     なんかわしゃっと草を踏んだと思ったら、でっかいバッタが慌てて飛び出してきた!
     
     「ぴょい、きょきょきょきょ」

     バッタを見たルットがわたわたとあほ毛を振って興奮しだした。
     ・・・・・・この興奮の仕方は、おいしいものを見たときの反応だ。
     鳥さんだから虫を見ておいしそうと思うのも変じゃないけど・・・・・・却下。
     バッタ食べたくちばしで擦り寄られるのは流石にいやだ。
     捕まえるぐらいだったらいいんだけどね、バッタのおなかって意外とぷにぷにでやわらかいし。
     学校でバッタ捕まえると友達の大半がすごい勢いで逃げていくんだけど、そんなに怖いかな? 
     そんなに怖いんだったら、バッタも食べたがるルットも怖がられなくちゃいけないけどルットはかわいいと人気者。
     ・・・・・・永遠の謎。
     
     「ぴょる、ぴょ!」

     バッタ捕まえて、食べさせてとルットがアピールしてるけど、無視しちゃう。虫なだけにね。
     
     ほのかに冷たい風がゆらりと霧を掻き分けて通っていった。
     相変わらず広くのびたまま佇む霧の香りを感じながら、とことこ歩く。

     もうすぐ家だよ、ルット。
     今年ももうそろそろ一気に寒くなるんだ、テレビで言っていたからね。
     ふかふかのあったかそうなルットだけど、今年は私とおそろいのマフラーでも作ってみようか。





    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
     
     ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

     【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】【好きにしていいのよ】


      [No.1937] 遅ればせながら 投稿者:tyuune   投稿日:2011/09/30(Fri) 07:43:46     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     遅ればせながら、感想ありがとうございます。tyuuneと申します。てこさん、こちらこそよろしくお願い致します。
     いやはや、感想をいただけるとモチベーションが上がりますね。とてもありがたいです。
     まだまだへっぽこながら、精進していく次第です。

     さて、この度、このような小説をこの場に投稿させていただいたのには、ある理由があります。五日ほど前まではこのポケモンストーリーズという板の存在を知りませんでしたが、ツイッターにてその存在を知り、投稿された小説を読み、強い感銘を受けました。
     そして、「私もこのような短編を書いてみたい!」と、やる気が急上昇し、勢いのままにこの短編を書きました。
     その為、このポケモンストーリーズという板のおかげで、この作品が書けたと言っても過言ではありません。
     なので、こちらに感謝の意味も込めて投稿させていただいた次第です。

     私は、ポケモンストーリーズの小説を読み、創作意欲が刺激されました。そして、貴方は私の作品を読んで創作意欲が刺激されたとおっしゃる……。素晴らしい好循環ですね。この調子で、このポケモンストーリーズ全体がさらに賑わって頂ければ幸いです。

     蛇足ですが、私がハッピーエンドを書くのは、珍しい事です。はてさて、次回作はどうなる事やら。あまりハッピーエンドに期待しすぎると、衝撃を受ける事になりかねないので、ご注意をば……。


      [No.1936] 言い訳+あとがき 投稿者:紀成   投稿日:2011/09/29(Thu) 20:30:58     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    HAY!ポケストのホラー&ゴシック担当の紀成です!

    鳩さんに触発されて書いてしまいました。こういうのってアリなのかしら。
    いいですよね昔話。『こんな展開アリか!?』『こんなの絶対おかしいよ』その文がひっきりなしに出てきます。
    でも神秘的で好きです。現代社会の中で廃れていくのは悲しいなあ…

    さて、今回の話のモデルとなった島。南波照間島と言います。波照間島、と聞いてピンと来る人はいいのですが、分からない人のために簡単に説明すると、沖縄の八重山群島にある島です。波照間という名前は、『はてのうるま』『沖縄の一番端にある島』という意味だそうで。
    断崖絶壁に囲まれた周囲たったの十五キロほどの小さな島らしいです。

    ここで南波照間島がどういうエピソードを持った島なのかを説明すると、完全に著作権うんぬんに引っかかるので、知りたい人は『講談社 齋藤孝 著 イッキによめる!名作選 小学五年生』を読んでください。

    とりあえずタグを付けておきます。

    [何をしてもいいのよ]


      [No.1935] [書いてみた] 豊縁昔語 ミナミハ島物語 投稿者:紀成   投稿日:2011/09/29(Thu) 20:21:55     82clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ホウエン地方は、大きな大陸一つと大小さまざまな島からなる水と緑に囲まれた美しい地方です。各地の伝承を調べてみると、一体いつから伝わっているのか大変興味をそそられるような昔話が残っています。
    ヒワマキシティの成り立ち、とか。
    記憶に新しい、アクア団とマグマ団の元となった者達の戦争とか。
    キナギタウンとマボロシ島の関係とか。
    他にも合わせて百を超える伝説、神話、昔話が残っています。それは今でも祖父母から父母へ、父母から子供へと伝えられて残っているのです。
    ――しかし、そんな話に詳しいホウエン地方の人々でも、あまり知られていない物語が幾つかあります。祖父母、それも八十を超えた人達がやっと知っているような話だというのです。
    彼らは、それを話すとき必ず遠い目をして、海の方を見ます。

    『今ではバトルフロンティアとして知られている島は、私たちが子供の頃は別の名前がついた小さな無人島だった。今では埋め立てと開発でほとんど昔の面影は残っていないが、夕方、晴れた時に海の方を見ると、空に巨大な影が映ることがある。それはその島よりももっともっと南、ホウエン地方、最果ての地なのだ』

    しかし、地図で見てみるとバトルフロンティアがある島より南にそれらしい大きさの島はありません。一度調べてみた友人の話では、それ以上南にいけば別地方の領地に入ることになってしまい、あえなく断念したそうです。
    そのことを彼らに言うと、否定するわけでもなく、怒るわけでもなく、その話をしてくれました。
    「その最果ての島の名前は、ミナミハ島という。私たちホウエン人と同じ血を引いた者達が、幸せに暮らす島なんだ」

    今から数百年前のことです。当時ホウエン地方は、『豊縁』と呼ばれ、今と同じく水と緑豊かな地として知られていました。人々は皆、太陽の光に当たりながら働いていたので、日に焼けた褐色の肌をしていました。
    彼らはとても信心深く、獣や植物を無闇に取ることはしませんでした。獣は食料にする分だけを取り、そして残った骨や皮も無駄にすることはありません。彼らはその方法で、その時代よりも前からその地で暮らしてきたのです。
    しかし、いつの時代も争いはあるものです。当時に残された記録を見てみると、地の神を崇拝する赤の軍と、海の神を崇拝する青の軍が互いに豊縁全土で争ったと書かれています。
    彼らは豊かな地に目をつけ、食料や武器を調達するためにそこに根を下ろしました。そして元々そこに住んでいた人達に言いました。
    「もっと植物を持って来い」
    「もっと獣を狩って来い」
    人々がそんなことは出来ないというと、赤の軍は炎で森を焼き、青の軍は海水で森を枯らしてしまいました。人々は仕方なく、二つの軍に従いました。
    二つの軍の領地は今のキンセツシティと百十九番道路を隔てる海で分かれていて、彼らが占領してからはたとえ向こうに恋人や家族がいても会いに行くことは許されませんでした。
    土地はどんどん荒れていきました。戦争は酷くなり、人々は食べる物にも困るようになりました。しかし逆らう者は捕まり、軍が使う獣共の餌にされました。

    それから数年、豊縁はかつての影も形も無くなっていました。人も少なくなり、皆痩せ細っていました。
    しかし、戦争に終わりの兆しは見えませんでした。互いの軍共疲れ果てているはずなのに、それでも戦うのをやめませんでした。それはまさしく『狂気』と言うべき何かが突き動かしているようでした。
    ある時、赤の軍の主将が何か新しい武器を手に入れたようでした。遠い、遠い地方の国に残り少ない金貨や銀貨を全て渡し、持って来たようです。
    それは、武器とは言いがたいものでした。獣のようであり、機械のようでもありました。
    主将は言いました。
    「こいつは、名を悪食という。腹が減れば、周りにある物という物を全て喰らい尽くす。明日、こいつを使って青の軍の領地に一斉攻撃を仕掛ける。それまでは刺激しないように静かにしておくんだ。いいな」
    とんでもないことです。悪食が腹を空かせれば、敵味方関係なく喰われてしまうでしょう。それだけではありません。生き残っている住人も、残り少ない土地の緑も……
    その話をこっそり聞いていた土地の人は、すぐに残っていた仲間を集めました。他説ありますが、赤の軍が本拠地にしていた土地の生き残りを全て合わせても、三十人を超えるか超えないかだったようです。
    彼らはこの島から脱出することを考えていました。老若男女、全てがそう思っていました。自分達が他人に強制されていたとはいえ、島の自然を壊してしまったのは紛れもない事実です。しかし、このまま留まっていれば何も修復できないままに悪食に喰われてしまうでしょう。
    彼らは考え、考え、そして思いつきました。

    「船を、奪う」

    赤の軍は海を嫌っています。しかし海に囲まれた豊縁に来るには、空か海どちらかを移動する手段が必要でした。そこで、武器だけは船に乗せて届けていたのです。
    その船はかなり風化していましたが、まだ乗ることは出来そうでした。彼らは深夜、悪食を起こさないようにそっと船に乗り込みました。一体悪食がなんだったのかは分かりません。今で言う極秘扱いだったようです。
    しかし、あと少しで全員乗り込めるという所で夜が明けてしまいました。水平線の彼方から一筋の光が差込み、悪食の目に当たりました。
    驚いて目を覚ました悪食が最初に見た物は、今まさに船に乗り込もうとする子供の姿でした。腹を空かせた悪食は、手始めに自分を繋いでいた鎖を食べ尽くすと、船の方へと向かってきたのです。
    大人達は子供を置いて逃げようとしました。しかし船から一人の男が飛び降り、子供を船内へ押し上げ、悪食に向かって走り出しました。
    男の思いを汲み取った者達は、船を海へと出しました。海には玉鯨や心魚、毒水母の死骸が浮いていました。
    その船が出る所を、赤の軍の主将は見ていました。しかしどうすることも出来ません。一人の男を犠牲にして、彼らは助かったのです。

    船に乗って脱出した彼らがどうなったかは何処にも書かれていません。その後、悪食は名前の通り全てを喰らい尽くし、青の軍の領地に攻め込みました。しかし、偶然なのか必然なのか、青の軍も悪食を持っていたのです。
    二匹の悪食は両軍の兵、武器、そして互いの体に喰らいつきました。三日三晩の戦いの末、二匹は力尽き、息絶えました。
    青の軍の領地にいた土地の人達は、今のヒワマキシティ辺りの地下に逃げ込んでいて、難を逃れました。当時の生活跡が今でも残っています。
    軍が全滅したのを知った彼らは、すぐに赤の軍の領地に向かいました。離れ離れになっていた家族や友人、恋人が無事なのかを調べるためです。
    しかし、そこには誰一人いませんでした。浜辺に頭部を千切られたと思われる男の死体と、何か大きな物が海へ出たような跡があるだけです。ですが彼らは分かりました。ここにいた人達は、皆海の向こうへ行ったのだと――

    それから、何年も何年も経ちました。焼け跡から再び木の芽が吹き出し、小さな木々の群となっていきました。汚れた海は長い年月の中で浄化され、再び美しい風景が戻ってきました。
    人々は再び自然との共生の中で独自の文化を生み出していきました。それと共に、後に生まれた子供や孫に彼らのことを話すようになりました。
    当時、バトルフロンティアが出来る前の島はナミハ島と呼ばれていました。今でもその島がホウエン最南端だと言われていますが、彼らは違うと主張します。
    ナミハ島よりももっと南に、自分達と同じ血を引いた者達が住む島――
    『ミナミハ島』があるのだと。

    さて、それから更に数百年。今から百年ほど前に、豊縁はホウエン地方と名を変えました。
    別地方との貿易、移住の受け入れが始まり近代化が進むようになりました。その中で、昔話は少しずつ薄れていくようになり、これではいけないと思った者達が豊縁昔語という本として出版しようと考えました。
    そこで彼らはホウエンにいるお年寄りに昔話を聞いて回りました。その中の一人がミナミハ島の話を聞き、もし本当にあるのなら是非行って見たいと思いました。
    彼は優秀なポケモンレンジャーに頼み、ナミハ島……今のバトルフロンティアよりもっと南の海域を調べてもらいました。しかし数日後返って来た答えは、『くまなく探したが、何処にもそれらしい島は見当たらない』と言うのです。


    それでも、ホウエンに住む老人達は、自分達と同じ血を引いた者達が、実り豊かで美しいミナミハ島というところで幸せに暮らしていると信じているのです。

    (神風紀成 著 ホウエン地方昔話 総集編 ミナミハ島物語 より)


      [No.1934] ドーブル! 投稿者:Teko   投稿日:2011/09/29(Thu) 10:15:56     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     はじめましてtyuuneさん!
     ここでたまにたむろしている屍……もといてこです。よろしくお願いします。

     僕はこういう作品が好きです、大好きです。

     有名な画家。しかし、彼の作品は全て彼の手ではなくドーブルによって描かれていたものであった!!とかってありそうですもんね

     自分よりも上手いがゆえに、嫉妬し、ドーブルの絵を自分のものとして出してしまう主人公の気持ちも非常にわかります。それに傷つくドーブルの気持ちも痛いほど……ああぁぁ。なんか切ない。心理描写っていうか心がすごい表現されててすごいなと思いました。

     そして、ちゃんとハッピーエンドで終わってくれた……わぁぁぁあ、よかったなぁああ!!”

     なんか創作意欲を刺激される作品でした。自分も頑張ります!
     なんか散文な感想でごめんなさい、次回作を楽しみにしてますー!


      [No.1933] 画用紙に描かれた憧憬 投稿者:tyuune   投稿日:2011/09/28(Wed) 21:26:34     121clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     

     男は絵を描く。真っ白なキャンバスに筆が色をつける。踊るように筆は動く。白い部分が様々な色彩に埋められてゆく。一人きりの部屋で、筆が走る音だけが響く。
     彼の背はひょろ長く、もやしのように頼りない。年の頃、三十半ばに見える彼の髪はぼさぼさで手入れの跡がなく、無造作に後ろに結ばれている。服は様々な絵の具の色が染み付いた、元は白であっただろうTシャツ、そして、これまた色が染み付いたベージュのカーゴパンツを着ていた。
     部屋は画材で占められており、足の踏み場も無い。描きかけの絵は壁に荒っぽく立てかけてあり、どれも縦一メートル程の大きな絵ばかりだった。山、花、人物、河など、多種多様な絵は、一つの共通点があった。どれも一様にして、見ているだけで悲しみが伝わってくる、という共通点。それは、雑然としている部屋の印象を、薄暗い物へと変化させていた。
     そんな部屋、その壁際の一角、綺麗に整理整頓された場所があった。散らばった絵の具もバケツもそこには無い、まるで、その場所だけがきれいに切り取られたかのように。
     そこには絵が飾ってあった。他の絵のように無造作に置かれているのではない、きちんと額縁に飾ってある絵。しかし、どこにでもある画用紙に描かれた絵。
     絵の中では少年と一匹のポケモンが、共に並んで、嬉しそうな笑顔で絵を描いていた。その背景は、今男が絵を描いている部屋と同じ間取り。絵はその部屋で描かれたことは間違いないだろう。だが、現在の男の隣にそのポケモンはいない。一人だ。一人きりで一心不乱になって筆を振る。鬼気迫った顔で、何かに取り憑かれたように。
     男は筆を振るう。彼の落ち窪んだ瞳から、涙が零れ落ちた。二滴、三滴、床に滴る。
     今の男とは対照的に、絵の中の一人と一匹は、なごやかな空気の中、筆を自由気ままに走らせていた。本当に楽しくて仕方がないといった風に、笑いながら。



     
     少年は物心ついた時からドーブルと共にいた。ドーブルはいつも絵を描いていて、少年はその横で絵を描く姿を眺めていただけだったが、いつからか少年も絵を共に描くようになった。一人と一匹、並んで絵を描く。それが彼らの休日の過ごし方だった。
     ドーブルの絵は独創的で躍動感溢れるものであった。今にも飛び出して動き出しそうな絵を見て、少年はいつも『僕も、ドーブルのような絵を描けるようになりたい』と思ったものだ。
     それに対して少年の絵は、お世辞にも上手いとはいえないものだったが、感情が多分に篭っていた。喜びを絵に閉じ込めるのが上手かった。
     一人と一匹は並んで絵を描いていた。大きな画用紙に向かって。競う事も無く、難しい事も考えず、ただ、筆の進むままに任せて。
     ドーブルは幸せだった。少年も同じく、幸せだった。
     

     十年が経ち、少年は青年に成長した。青年の絵画の技量は驚くほどに上がっていた。絵のタッチは繊細かつ大胆。細かな塗りむらも無く、色の発色はまぶしいほどに輝いていた。彼はその技術を買われ、小さな美大に通っていた。
     だが、技術の代わりに失われた物があった。感情だ。絵に込められた感情。子供の頃、絵に込められた喜びが、現在の絵からは殆ど見えなくなっていた。
     彼は絵を描くことが、昔ほど好きではなくなっていた。
     純粋で、何も知らなかった子供の頃とは違い、今の彼には絵を描くに際し、邪魔な物が多すぎた。両親の期待、同級生の嫉妬、将来の不安……。それらに押されて、喜びは影を潜めていた。絵を描く事が億劫になったのもそのせいだった。
     ドーブルは、いつでも尻尾の先に付いた筆で、変わらず絵を描く。長年描き続けたせいか、絵を描くことを定められた種族に生まれたせいか、若しくはその両方か……ドーブルの絵は既に、数少ないプロと肩を並べられるほどに成長していた。
     そんなドーブルの絵を見て、青年にある感情が芽生えた。嫉妬だ。労せずして秀逸な絵を描くドーブルに対し、青年は嫉妬を覚えた。嫉妬は、青年の消えかけていた喜びを、完全に押しつぶした。


     それから、青年の絵は上達しなくなった。いくら小手先の技術は上がろうと、彼の武器であった喜びが消え去った今、青年の絵は薄っぺらで、誰も見向きもしなくなった。
     美大での成績も右肩下がりに落ちてゆき、ついには、あわや留年直前とまで追い詰められていた。彼は焦っていた。次のコンクールで一次審査を通らないと、留年する事が確定してしまったのだ。将来への不安は、その姿を徐々に肥大化させていった。
     そんなある日。彼はある愚かな選択をする。

    「なあ、ドーブル、頼むよ」
     青年はドーブルに、手を合わせて頼み込んだ。
    「お前の絵なら、コンクールの一次審査なんて余裕だから、な、頼む!」
     彼はドーブルの絵を、自分の絵であると騙ってコンクールに提出しようとしたのだ。
     初めのうちは頑なに首を横に振っていたドーブルだったが、青年の強い押しに耐え切れなくなってきたのか、少しずつ首を振る力が弱まって。
    「頼む!」
     青年の声に、ドーブルは悲しげに頷いた。


     それから数週間後、コンクールの結果が届いた。青年は狂喜した。
    「やった! やったぞ! 入賞だ!」
     青年は賞状を嬉しそうに見せびらかしながら、ドーブルに結果を話した。
     彼はドーブルの絵を提出した。その結果、入賞。ドーブルの絵は、一次審査を余裕で通り抜け、二次、三次審査を軽く突破し、他の作品を大きく引き離しての入賞。
    「俺が必要なんだってよ! あのお偉いさん方!」
     さらには、彼はその入賞で、とある有名美大にスカウトされた。誰もが羨む程の輝かしい経歴を持つ美大。そこを卒業できれば、将来は安泰であるといえた。
     青年の嬉しそうな顔とは対照的に、ドーブルの顔は暗く落ち込んでいた。


     そして、青年は深く考えず、有名美大に転入した。それだけで青年は喜んだが、そこがゴールではない。卒業するためには、青年の絵では明らかに力不足だった。
     当然、青年の絵は成長していない。ドーブルの絵を借りただけである彼の化けの皮は、すぐさま剥げそうになっていた。 
     転入したはいいものの、青年は授業の内容についていけない。実技テストでは散々な結果に終わった。
     必然的に……
    「お願いだよドーブル、もう一度だけだからさ」
     青年はドーブルに再び頼み込んだ。ドーブルは嫌だと首を横に振ったが、前回と同じく、最終的には首を縦に振る事となった。



     かくして青年はドーブルの絵を提出した。無論、一度だけで終わろうはずも無い。何度も何度も、青年はドーブルに頼み込み、同じ数だけドーブルは頷いた。
     青年は絵を描く必要が無くなった。自分が絵を描いても、教授には溜息を吐かれ、大学の友人には嘲笑される。だが、ドーブルの絵を見せればたちまち評価は一変する。天才だと持てはやされ、コンクールには当然、入賞。苦労して描いても嫌な思いをするだけだというのに、どうして描く必要性があろうか。
     そうして、青年が絵を描く事は無くなった。
     新品に近い青年の画材を、ドーブルは横目で見、次に、昼間だというのに寝転んでいる青年の背中を見た。
     ドーブルは、絵を描くことが好きだった。だがそれは、少年がいたから。少年がドーブルの絵を見て感嘆符を漏らす事に、喜びを覚えた。そして共に肩を並べて絵を描くことが、彼は心の底から好きだった。
     少年が青年となり絵を描かなくなっても、ドーブルが絵を描き続けている理由は、過去への憧憬に他ならない。いつかきっと、いつかきっとまた、あの頃のように共に絵を描ける日が来る、そう信じていたからだった。
     だが、ドーブルは気付いてしまった。自分が絵を描き続ける限り、青年が絵を描くことは無い、という事に。
     ドーブルは絵を描いている少年が好きだった。嬉しそうな顔をして画用紙に筆を走らせる少年の姿が。
     ドーブルは自分と共に並んで絵を描く少年が好きだった。画用紙いっぱいに描いた空を、河を、樹を見せ合いながら描くのが何より好きだった。
     だが、そんな少年はもう、どこにもいなかった。目の前にいるのは、自分を利用する事しか考えていない醜い青年。絵を描く事をやめ、ただ怠惰に生きる愚かな青年。
     ドーブルが好きだった、幼い頃から共にいた少年。彼はもうドーブルの空想の中にしか存在しなかった。  
     だから、ドーブルは……。




    「んー、ふああ」
     青年が目を覚ます。ひょろ長い身体を大きく伸ばして、上体を気だるげに持ち上げた。
    「ドーブルー?」
     青年は相棒の名を呼んだ。だが、声は部屋の中に反響するだけで、返事は聞こえなかった。
    「ドーブルー、毎度悪いが、頼みがあるんだー」
     立ち上がり、相棒の姿を探す。だが、探せど探せど姿は無い。
     青年は怪訝に思いながらも、そのうち帰ってくるだろう、と結論付けて、ベッドに入り、二度寝する事にした。


     数日が経った。しかし、いつまで経ってもドーブルは帰ってこなかった。
     コンクールの日は近い。青年は焦燥感に冷や汗をかいた。
    「糞っ! どこに行ったんだ! ドーブルの奴!」
     早くドーブルに絵を描いて貰わなければ、大変な事になる。自分の絵ではダメだ。ドーブルの絵でなければ、入賞どころか門前払いされるに違いない。
     彼は自分の事しか考えていなかった。
     青年は家中を歩き回った。もちろんドーブルはいない。そんな中、部屋の片隅に、ある物が目に付いた。
    「画用紙……?」
     青年もドーブルも、キャンバスかスケッチブックに絵を描いていた。画用紙を使っていたのは、はるか遠い昔。技術も知らず、ただ筆の赴くままに描いていた頃。
     彼は何の気なしに画用紙を拾い上げ、裏返した。
     瞬間、息を呑んだ。
     そこに描かれていたのは幼き頃の少年とドーブル。西日が優しく窓から照る中、少年は筆を、ドーブルは尻尾を持ちながら、大きな画用紙に向かって絵を描いていた。夕日の赤が少年とドーブルの横顔を、朱色に染めあげていた。
     彼らの表情、在りし日の彼らは、笑っていた。絵を描くことが嬉くて、楽しくて、幸せだったあの頃。絵を描ける。それだけが全てだったあの頃。あの瞬間が、時間を越えて画用紙の中に閉じ込められていた。
     ありったけの喜びと幸せを詰め込んだその絵に、滴る物があった。それは、涙。
     青年はいつの間にか泣いていた。涙が瞳から溢れて止まらなかった。
     彼は理解した。ドーブルの喜びを、幸せを、悲しみを。今まで自分の事しか考えていなかった青年自身の愚かさを。そして、ドーブルがもう戻ってこないという事を。
     青年の嗚咽は部屋の中に空虚に響いた。同じ部屋の中、画用紙の中にいる少年とドーブルは笑っているのに、青年は泣いていた。後悔に打ち震え、悲しみにむせび泣いていた。


     青年はかつて純粋だった。純粋ゆえに、喜びが大きかった。だが、成長するにつれ、純粋ではいられなくなる。優越感、劣等感、不安、そして嫉妬。それらを目の当たりにした彼の喜びの割合は押され、小さくなってゆき、終には自らの嫉妬によって消え去った。
     代わりに彼を支配したのは怠惰。怠惰により、彼は楽な方へ、楽な方へと流れ落ちた。相棒であるドーブルを利用した。ドーブルの喜びも幸せも知らず、ただ自分が楽をするために利用した。
     その結果、彼の前からドーブルが消えた。遠い思い出の彼方にある、少年とドーブルとの幸せだった日の情景を絵に書き残して。物心付いた頃から共にいたドーブル、自らの半身とも言える相棒を失った青年の心に、芽生えた感情は……。


     青年は茫然自失として、ベッドに腰掛けていた。その目は虚ろで、何も写してはいない様。食事ものどを通らず、もう何日も飲まず食わずだった。
     彼の心にはぽっかりと穴が開いていた。もう考えるのも億劫で、このまま死んでしまっても構わない、という思いが去来した。
     そんな彼だが、瞬きした拍子に、ある物が目に入った。絵だ。テーブルの上に置かれた、大きな画用紙いっぱいに描かれた、ドーブルが残した絵。
     その絵を見て、青年の心にある感情が芽生えた。後悔、自己嫌悪。そして、何より一番大きな感情、それは、悲しみ。
     悲しみに背を押されるようにして、彼は立ち上がり、筆を手に取った。



     青年の悲しみは絵に現れた。自らの過ちにより、相棒を失った。その苦痛、絶望、悲しみ。彼の絵は負の感情に満ち満ちていた。彼の長所であった、感情を絵に現す力。幼き日は喜びに溢れた絵を描いた。楽しくて仕方がないといった気持ちを、絵に閉じ込めた。そして、今は悲しみに淀みきった絵を描く。悲しくて胸が張り裂けそうな気持ちを、青年は絵に刻み込む。
     皮肉にも、その絵は評価された。入賞とまではいかなかったが、最終審査まで残った。
    それからも、青年は一心不乱に絵を描き続けた。いくら絵を描いても、胸中の悲しみは薄れる事は無い。だが、彼は絵に吐き出すことをやめなかった。
     昼夜問わず青年は絵を描き続けた。一日の大半をキャンバスの前で過ごす。血反吐を吐くような日々。いくら肉体が悲鳴を上げようとも、心の痛みよりははるかにマシだった。
     画風がいきなり変わったこともあり、一時は才能が枯れた、などと噂された。だが、徐々に彼の描く悲しみに魅せられる人間は増え、彼はドーブルが築いた地位を取り戻した。しかし、今の彼には、それはどうでもいい事だった。
     彼は、ドーブルが描き残した画用紙に目を遣る度、胸を引っかくような悲しみに苛まれた。そして、在りし日に憧憬を覚えた。過去への憧憬。それは、かつてドーブルが抱いた物と同じだった。
     ひたすら絵を描いていた幼き日、ドーブルと共に絵を描いていたあの頃。嫉妬も悲しみも知らず、喜びに満ちていた幸せな日々。青年は、過去に対し、気が狂うほど恋焦がれた。
     青年は絵を描く。絵を描き続けたら、いつかドーブルが戻ってきてくれる。そして、あの頃と同じように、笑いながら絵を描ける日が来る。そんな淡く儚い期待を、胸に抱きながら。




     暖かい夕日が窓から差し込む。雑然として散らかった部屋に、一人の男がいた。キャンバスに向かって筆を振る男の顔には、年月を感じさせる皺が深く刻まれていた。
     男は絵を描いていた。かつて青年だった男は、変わらず悲しみに浸りきった絵を描く。
     ドーブルが出て行った日から、二十年が経っていた。あれから男は大学をトップの成績で卒業し、画家となった。それでも慢心せず、男は朝から晩まで絵を描き続けた。
     絵を売って出来た金は、最低限の生活費を残し、殆どを宣伝費に使った。タダで美術館に寄付した事もあった。小学校、市役所、ありとあらゆる公共の機関に、自分の作品を展示してもらうよう頼み込み、幾度となく無料で個展を開いた。それらの目的は、ドーブルに自分の絵を見てもらうため。そしてあわよくば、自分の下へ帰って来てもらうため。
     だが、それは二十年間叶う事は無かった。しかし、それでも男は絵を描き続けていた。彼は諦める事を知らない。色褪せる事の無い悲しみを絵に叩きつける。
     ドーブルが帰ってきた後のことを、男は幾度となくも思い描いた。悲しみは、きっと喜びに変わるだろう。不安も嫉妬も悲しみも、強い喜びによって見えなくなるだろう。そうするならば、きっと、悲しみが無い彼の絵は売れなくなる。だが男は、それでもいい、ドーブルが帰ってきてくれるなら。そう思っていた。
     彼にとって、絵は既に欠かせない存在である。現在の地位も、名誉も、全ては絵によって培われた物である。だが、男には、それよりも遥かに大切なものがあった。
     かつて男は自分の選択により、最も大切なものを失った。何者にも変えがたい大切な相棒。彼が自らの元へ帰ってくるならば、他の全てを投げ打ってもいい。命を棄てようと、構いはしない。だから、帰ってきてくれ。男はそう願い続けた。
     男はキャンバスいっぱいに悲しみを描く。差し込む夕日の朱が、男の横顔を照らす。額縁に入ったドーブルの絵も一緒に照らし出され、額縁にあるガラスの装飾が光を乱反射した。男は眉間に皺を寄せながら、筆をパレットに押し付け、色を染み込ませた。
     そんな時、物音が後ろの方から聞こえた。
    「おい、私が絵を描いている時は、入ってくるなと言った筈だが」
     男は苛立ちつつ、吐き棄てるように言った。
     また絵を高く買いたいとか言う画商でも来たのだろう。それか、記者か。彼らは遠慮を知らない。こちらの思う事など知らず、ずかずかと家の中に踏み込んでくる。
     大抵はアポイントを取っているのだが、たまに飛び込みで取材に来る者、営業に来る者もいる。 そういった輩なのだろう。彼は溜息をついた。
     ひたひたとした足音が、彼の後方にある廊下から響く。
    「おい! 聞いているのか!」
     息を吸い、もう一度怒鳴りつけた所で、男は違和感に気付いた。
     彼の家は土足である。リノニウム製の床は、カツカツと靴の硬質な足音を響かせるはずだ。だが、今聞こえている音は何だ。ひたひたという音が耳に届く、まるで靴を履いていないかのように。
     もしや……。
     後ろから、ゆっくりとドアの開く音がする。懐かしい香りがした。足音は止まる。
     男は、破裂しそうな自らの心臓の音を、まるで他人事のように聴いていた。早鐘のように心臓が鼓動をうるさく刻む。筆を握る手が、凍えているかのように震えた。
     彼は期待と不安、悲しみがない交ぜになった表情で、振り返った。
     そこには。


     
     ある画家がいた。彼の絵は、見る者に深い悲しみを与える。一目見るだけで、涙が溢れるほどの悲しみに包まれるのだ。彼の絵は反響を呼んだ。彼の家に記者が詰めかけ、その理由を聞いた。画家は、理由を頑として答える事は無かった。
     画家は数え切れないほどの多くの絵を世に発表した。何としてでも、絵を大衆に見せるよう働きかけた。
     だがある日を境に、画家の絵は喜びと幸せを見る者に与えるようになった。彼の絵は驚くほど暖かくなり、悲しみは姿を消した。彼の絵を見ると、穏やかな気持ちになり、ついつい頬が緩んでしまう。
     彼は、一番大切なものを取り戻せたのだ。


     窓から入る西日の光が部屋を朱色に染める。部屋は相変わらず画材で散らかり、独特の饐えたような匂いが漂う。
     男は絵を描いていた。キャンバスに向かい、筆を走らせる。夕日で朱色に染まった横顔は、何とも嬉しそうで、口元が緩みっぱなしだった。
     その傍らにはドーブルがいた。ドーブルも尻尾の筆を自在に操り、自身の背丈と同じくらいの高さを持つ、広いキャンバスいっぱいに尻尾を踊らせる。ドーブルは目を細め、幸せそうに尻尾を握る。
     一人と一匹の絵には、ある共通点があった。喜びだ。喜びが波の奔流の様に、絵の中でざわめいている。
     ふと、男の瞳から涙がこぼれる。二滴、三滴、床に滴る。ドーブルはそれに気付き、筆を止めて心配そうに男の顔を見上げた。
     男は何でもないよ、と言うようにドーブルの頭を撫でた。彼の涙は、嬉し涙。幸せすぎて、感情が瞳から溢れだした。
     その時、微風が窓から吹き込んだ。風は一人と一匹を優しく撫で、部屋の一角へ辿り着いた。そこには画用紙に描かれた憧憬があった。少年とドーブルがにこやかに笑いあい、並んで絵を描いている。喜びに満ち溢れた表情の一人と一匹。過去の情景。彼らが恋焦がれ、あこがれ続けた姿。幾年もの悲しみを経て、ついに今の彼らと重なった。
     一人と一匹は、なごやかな空気の中、筆を自由気ままに走らせていた。本当に楽しくて仕方がないといった風に、笑いながら。


      [No.1932] Re: 写本の綴じ紐 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/09/28(Wed) 07:36:39     21clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    誰も書かないから感想つけてみる。

    ロコンからキュウコンになる間に最初の飼い主と思われる男と再会するストーリー。多分十数年は経っているでしょう。関わりはどうあれ、今までに出会った飼い主との記憶は大切なものである。そのように感じました。他の何かも入っているのでしょうが、私には上手く表現できません。

    ちなみに、少し気になったのですが、ロコンの生まれた直後の尾っぽは1本で白いはずです。周りが普通のロコンでも、生まれたばかりなら自分が何者かわからないのではないかと思いました。単に私の思慮不足かもしれませんけど。


      [No.1931] 写本の綴じ紐 投稿者:戯村影木   投稿日:2011/09/27(Tue) 21:00:57     82clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     一番目は、少年だった。六根という、六つの尾っぽを持った小さな生物は、少年によって、誕生させられた。親が誰かも分からないのに、卵から孵った。朱い体毛。四本の足。とても弱い身体。鏡もないのに、六根には、自分の姿がよく分かった。同じような姿をした六根が、周りにたくさんいたからだ。その空間が、とても暖かかったことだけは、記憶している。しかしその暖かさや、何匹もの六根との時間は、あっと言う間に過ぎた。まだ自我もきちんと芽生える前に、六根は外に放り出された。愛のない放出ではないことだけは分かった。六根を手放す時、その少年は確かに、ごめんねと言った。言葉の意味は分からなかったけれど、その言葉は、ずっと六根の頭の中に残っていた。

     二番目は、少女だった。野生に放り出され、生きる術も知らず、他の生き物も恐ろしく思っていた六根に、一人の少女が近づいてきた。少女は何か、球体を持っていた。六根は少女が恐ろしかったが、逃げることも出来なかった。少女が球体を投げると、それは六根に当たり、六根を吸い込んだ。六根は恐ろしかったが、抵抗するということが出来なかった。気づいた時には六根は少女の手の中にあった。それが、実質、初めての主と読んで良かったのかもしれない。少女はとても優しい人間であった。人間の善し悪しが分からない六根にも、それはよく分かった。しかし、そういう人間に限って、欠点がある。少女は身体が悪かった。外を走り回るなんていうことはほとんどしないし、六根を連れて草むらを駆け回るということもなかった。六根は大抵、その少女と一緒に、家の中にいた。そして時折庭に出されては、少女の代わりをするように、たくさん駆けた。少女はそれを見て喜んでくれた。六根は、誰かに必要とされることが嬉しくて、少女の役に立とうとした。少女の両親も、優しかった。六根はとても幸せな時間を過ごしていたが、しかし、まだ幼かったからだろう、少女の身体が悪いことに六根が気づいたのは、少女がいなくなってからだった。

     三番目は、青年だった。六根が飼われていた家に、今まで見たことのない量の人間が押し寄せた。みんな黒い服を着ていた。少女の姿が見えなくなってすぐのことだった。六根は何がなんだか分からなかったが、なんとなく、あの少女とはもう会えないんだな、と気づいた。人間たちは大勢集まり、色んな話をしているようだった。六根は、そこに来ていた一人の青年に、構ってもらった。そして、青年が帰る時に、六根は青年に連れて行かれることになった。六根に拒否権はなかったし、誰かと一緒にいられるなら、それで良かった。青年はとても人の多い場所に住んでいたが、家は狭かったし、家族もいなかった。時折、女性が来ることがあったが、彼女と一緒に住んでいるわけではないようだった。六根は、青年と一緒に暮らすようになってから、初めて、戦いというものを覚えた。六根はとても愛されて育ったように思う。青年は優しかったし、時折来る女性も、優しかった。けれど、それは六根に対してであり、青年と女性の関係は、あまり良好とは言えなかった。六根に時間感覚はなかったが、きっと、一ヶ月くらいの出来事だっただろう。青年と彼女は別れることになったらしく、六根は、女性に連れられて、その家を出ることになった。

     四番目は、女性だった。つまり、二人は恋人だったのだろう。六根を気に入った女性が、青年から、六根を引き取ったのだ。女性は六根に優しかった。けれど、部屋の中には寂しさが充満していた。若く美しい女性ではあったけれど、それでも、どこか焦りや寂しさに満ちていた。彼女が仕事に行っている間、六根は孤独だった。そして、女性が家に帰ってくると、出来るだけ喜び、出来るだけ主の帰還にはしゃぎ、邪魔にならないように、主を気遣った。少しの間撫でられ、彼女のために心を削った。そして、彼女と共に眠った。そんな生活も、青年と同じくらい、いや、それよりもっと長く続いたのだろうか。主に新しい恋人が出来た時に、六根は彼女との生活を終えた。

     五番目は、中年の男性だった。人の良さそうな男性で、木訥としていた。四人目の主の隣の部屋に住んでいた、大人しい男性だった。どういう理由で押しつけられたのは分からないが、六根を嫌悪することもなかったし、最低限の餌は与えてくれた。それだけでも六根としては満足だったが、物足りないのも、やはり事実だった。男性は、六根が外を出歩いても何も注意しなかったし、部屋の中にいても、これと言って、構ってくれたりはしなかった。ただ、最低限の生活を約束してくれるだけだった。六根はそこで初めて、命の意味について考えた。自分は何のために生まれ、何のために生きていくのか。こんなところでただ生きて、ただ餌を食い、排泄をし、眠り、生きていくというのだろうか。そこに何か意味があるのだろうか。六根はそして、自分の意思で、その男性の元を離れることにした。最後の夜、六根は男性に甘えてみた。男性は、緊張したように、六根の頭を撫でてくれた。それが、彼との、最初で最後の触れあいだった。

     六番目は、自分自身だった。野生に帰った六根は、三番目の青年に教え込まれた知識のお陰で、戦うことには困らなかった。それに、青年に、ある程度の育成を施されていたのだろう、野生に帰っても、圧倒的に強かった。もしかしたら、最初の少年に産まされた時から、六根は強かったのかもしれない。次第に六根はある森の中で強者となった。己の自由に従い、行動してきた。六根を止めるものはいなかったし、六根に逆らうものも、またいなくなった。六根はそこで自由のすばらしさを知ったが、同時に、温もりの優しさを失った。

     七番目は、老人だった。その腰の曲がった老人は、何度もその森にやってきた。散歩をしていたのだろう。六根は、その老人を、草木の陰からよく観察していた。不思議な魅力を持つ老人だったのだ。森に生きる生物に対して敵意を向けなかったし、捕獲しようともしなかった。たまに餌を持って来ては、そっと地面に置いて去って行く。六根は、その老人が気になった。何度目かの時に、六根は老人に姿を見せた。老人は一瞬だけ驚いたが、すぐに表情を和らげた。そして、六根の身体を優しく撫でた。六根はすぐに気づいた。自分は、この老人が好きなのだろう、と。帰ろうとする老人のあとをつけた。老人はそれを咎めようとはしなかった。六根はその日、老人を飼い主とした。そして、老人と一緒に暮らし、森にやってきてはそこにいる生き物と触れあい、日が沈む頃に家に帰った。とても穏やかな生活が続いた。まったく、まったく途方もないほど長い生活だった。今までのどの飼い主との生活よりも長かったのではないだろうか。一年、二年、三年、四年……その関係は、老人が死を迎えるまで、続いた。

     八番目は、老人の家族だった。特に誰が飼い主だったということもない。老人の死後、なんとなくその家に居座った。六根はそれからも毎日のように、森と、老人の墓を行き来する生活を送った。家族に餌を与えられ、それを食べ、散歩に出かける。きっと六根の人生の中で、もっとも穏やかな時間だっただろう。二人の飼い主の死を経て、六根は命の儚さと大切さを知ったのかもしれない。そして、それを自覚し、受け入れ、このまま孤独に生きていくのではないだろうかと思った頃だ。六根は老人の墓で、一人の老婆と出会った。

     九番目は、老婆だった。彼女もまた孤独な人間だった。夫に先立たれ、暮らしているのだという。六根はこの頃になると、なんとなくではあるが、人間の言葉を理解するようになっていた。喋ることは出来ないが、老婆の言葉を聞き、態度で示した。老婆は六根をとても可愛がってくれたし、愛してくれた。たまに彼女の家族が顔を出すことはあったが、基本的には大きな平屋に一人で暮らしていて、とても寂しそうだったので、六根はずっと彼女と共にいた。彼女が掃除をすれば六根もそれを手伝ったし、出かける時には必ず一緒にいった。ある日、家にある倉を掃除していた時、老婆と六根は紅く煌めく石を見つけた。老婆は少しだけ迷ってから、それを六根に与えた。六根は、自分の身体が変化したことを知った。それは、誰にも教えられていないことだったが、何故か知っている変化だった。六つの尾っぽは九つの尾っぽになった。六根は、九根へと変わった。けれど、老婆はそれまでと同じ接し方をしてくれたし、少し力が強くなり、身体が大きくなり、体毛の色が変わったというだけで、本質的には、変化はなかったように思う。むしろ変化があったのは、周囲の環境だった。老婆の家族が平屋を訪れることが多くなった。どうやら、老婆と一緒に暮らすために、老婆をこの家から引き離そうとしているようだった。あれは老婆の息子だろう。顔がよく似ている。九根はそうした観察力も身についていた。そして、どうやら老婆がこの家を離れない理由が、自分にあるような気がしてきた。九根は家族が泊まり込んだ夜、こっそりその家を抜け出した。主の幸せを願い、姿を消すことにしたのだ。

     十番目は、小さな家族だった。行く当てもなく、そろそろと彷徨っていた九根を、ある家族の子どもが捕まえた。九根には野生生物としての矜持はなかったし、捕獲を拒むほどの気力もなかった。人間と接することが、楽しくさえあったのだ。九根はその小さな少年に捕まり、家庭に迎えられた。父、母、子、の三人家族。そこに、動物のように飼われた。九根はその時、その家族の父親に、誰かの面影を見ていた。忘れることのない面影だ。しかし、その面影に、九根は怒りを覚えるでも、憎悪を感じるでもなかった。ただ、何か、もしかしたらここが終着点なのかもしれない、という気がしていた。その父親も、九根に対して、なんらかの特別性を感じているようであった。しっくり来る、とでも言うのか、あるいは、この九根のおやは、自分であると、思っているのだろうか。お互いに、知らないところで、成長したんだね。そのような意味のことを、父親は言ったかもしれない。気のせいだったかもしれない。しかし、その次に言った、ごめんねという言葉だけは、聞き間違えることのない、確かな言葉だった。そして、全ての飼い主のことを記憶し、忘れないまま、九根は今、主の膝の上で、眠っている。


      [No.1930] 糸が切れた僕らの日々は 投稿者:戯村影木   投稿日:2011/09/26(Mon) 22:47:50     102clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     最近毎日がつまらない。
     うちのマスターはどうにも最近やる気がない。たまに思い出したように電車に乗って僕たちを戦わせるけれど、連勝が止まるとそれからしばらく休んでしまう。かと言って、冒険に出かけるわけでも、他の仲間を育てるわけでもない。ただただぼーっとしていることが増えた。レポートを書くことも少なくなってきた。
     おかげで僕たちは時間があって、仲間内でお喋りをする時間なんかが増えた。結構古くから仲が良いメタグロス君が暇そうにしていたので、今日は彼に話しかけてみることにする。おーい、メタグロス君。
    「なんだゲンガー」
     なんだか最近暇だよね。面白いことでもないかな。
    「ない」
     メタグロス君はいつもさばさばしてるなあ。ねえ、マスターになんとか遊んでもらう方法はないかな。
    「話しかけてみればどうだ。反応はないだろうが」
     メタグロス君はそう言って、目を閉じてしまう。あんまりお喋りが好きなタイプではないのだ。けれど、最低限の会話はしてくれるから、きっと優しい性格をしているのだ。臆病者の僕とは違って、メタグロス君は言いたいことははっきり言うし、ちょっといじっぱりなところがあるけど、優しい子だと思う。
     でも、うーん、マスターは話しかけても返事をしてくれない。心ここにあらずという感じ。きっと頭の中ではどうしたら勝ち進めるかということを考えている気がするんだけど、それにしてもちょっと気味が悪いレベルだ。僕は次に、僕らの中でリーダー格のガブリアス君に話しかけてみることにした。おーい、ガブリアス君。
    「んー? なんだー?」
     なんか最近暇だよね、と思ってさ。
    「ああ、そうだなあ。俺も腕が鈍りそうで心配だ」
     何か面白いことでもないかな?
    「組み手でもするか? 俺とお前ならいい勝負だろ」
     確かに相性の善し悪しあんまりないもんね。でもお互い力押しだから、すぐに勝負がつきそうだよ。
    「それもそうだな! んー、つっても戦うために生まれた俺たちには、暇の潰し方も分からんよなあ」
     そうなんだよねえ。せめてマスターがもう少し戦いの場に出してくれればいいんだけど。あー、今日も何もしないまま一日が過ぎていくのかなあ。なんだかつまらないね。
    「そのうちまた電車に乗せてくれるって。それまでの辛抱だよ。頑張ろうぜ」
     ガブリアス君は陽気に笑う。この明るさが彼がリーダー格である秘訣だった。僕のような臆病ものや、メタグロス君のようないじっぱりな性格をしていると、ちょっと難ありだ。と、そう言えば、まだ話をしていない子がいた。パーティの紅一点、というか、メタグロス君には性別がないから、単純に雌というだけなんだけど。とにかく僕は、ミロカロスちゃんに話しかけてみることにした。ミロカロスちゃーん。
    「なあに?」
     なんか最近暇だよね。
    「そうね。何かして遊ぶ?」
     うーん、でも、何をしようか思いつかないんだ。
    「それもそうね。じゃあ、どこか遊びに行く?」
     えっ?
    「ここにいてもやることがないもの。遊びに行くのもいいんじゃないかしら」
     いつも穏やかなミロカロスちゃんなのに、たまにこういうびっくりするようなことを言い出すから驚いてしまう。本当は結構図太いんじゃないかと僕は最近思っている。
    「何話してるんだ?」
     僕とミロカロスちゃんの話に、ガブリアス君が割って入ってくる。その後ろにはメタグロス君の姿も見えた。
    「今、ゲンガーと、外に遊びに行かない? って話をしていたの」
    「はあ? 外に?」
    「そう。こんなところにいても、つまらないでしょう? だから、遊びに行かないか、って。あなたたちも行く?」
    「マスターはどうすんだよ。勝手に行っていいわけないだろう?」
    「でも、話しても応じてくれないのだし……あなたが行かないならいいわ、ゲンガーと行ってくる」
    「いや、私も行くぞ」
     声を上げたのはメタグロス君だった。以外な応対に、僕は驚いてしまう。メタグロス君、そういうことしそうにないのに、マスターも驚いちゃうよ。
    「だが、少しくらいは驚かせた方が良いだろう。最近の気の抜けようは目に余る」
    「んー……まあちっと分からんでもないかな。最近、身体鈍ってるしなあ……地下鉄じゃろくに動けないし、戦う相手もいねーし。あー、ちょっくら外行くか?」
     ガブリアス君まで……だめだよ……。
    「あら、じゃあゲンガーはお留守番?」
     えっ? みんなは行っちゃうの?
    「行くわよね?」
    「ああ」
    「一度決めたからには行くぜ! ゲンガーも来いよ!」
     でも……。
    「じゃあ、ゲンガーはお留守番ね。私たち行ってくるから、マスターをよろしく」
     あっ、待って待って! 僕も行くよ! 置いて行かないで!
    「そう。じゃあ、一緒に行きましょう」
     でも、外に出て大丈夫かな……外の世界は危ないって聞いたことあるし、強い子がいて、襲われちゃうかもしれないよ?
    「俺たちなら大丈夫だろ」
    「ガブリアスの言う通りだな。私たちのレベルなら、少なくとも野生で出てくるような者たちに負けることはない」
    「それもそうね。ゲンガー、安心した?」
     え、うん……じゃあ、行ってみようかな……。
    「そうと決まれば出発だ! 何、今日中に帰れば大丈夫だろ。マスターだってあと何日ぼーっとしてるか分からんしな!」
     ガブリアス君の発言で、僕たちは地下鉄を出ることになった。実を言えば、僕たちが外の世界を見るのは、ほとんど子どもの頃以来だった。僕とメタグロス君はこの世界に来た時、少しみんなの成長のお手伝いをしたけれど、ガブリアス君やミロカロスちゃんに至っては、本当に、子どもの頃以来のことだと思う。
     僕たちは、こっそりとマスターの元を離れて、地下鉄を出て行くことにした。
     どきどきする。
     でも、なんだかとても楽しい気持ちだった。


     地下鉄を出た僕たちを待っていたのは、とても賑やかな外の世界だった。
    「さて、どうすっか」
    「何をするかを決めるべきだな」
    「んー、俺は戦いがしてえなあ! どっか、草むらに行こうぜ」
    「その前に、この辺の地理が分からないわ。ゲンガーは分かる?」
     うーん……ちょっとだけ覚えてるよ。最初に来た時に、連れてこられたから。メタグロス君も分かるよね?
    「ああ、記憶しているぞ。他に覚える景色もないからな。こっちだ」
     僕たちはメタグロス君についていく形で、場所を移動し始める。多分これが、南下っていうやつだ。
    「確か……ライモンシティだったかしら」
     うん。そんな名前だったよね。あ! そう言えばここ、遊園地もあるんだっけ!
    「遊園地ぃ? おいゲンガーお前ほんとガキだなあ。そんなことより戦おうぜ。そっちの方がおもしれえって」
     でも、遊園地も面白いと思うよ?
    「どっちにしても、私たちが遊べる施設ではないと思うわ。人間のために作られた場所だもの」
     そっかー……残念だなあ。
    「ぼさぼさするな。こっちだ」
     メタグロス君の一喝を受けて、僕らはまた歩き出した。賑やかでキラキラしているライモンシティから、僕たちはあまり面白くなさそうな場所に出た。砂嵐が吹いている。歩いている道も、近代的なところから、だんだん、自然に還っていくようだ。
    「こっち側に、たくさん敵がいた気がするな」
    「へー、よく覚えてんなあ。俺の覚えてる景色なんて、すっげーザコの犬がいるところか、湖だけだぜ」
    「私はもうあんまり覚えてないわね。ほとんど電車の中のことだけ。新鮮でいいわね……出て来て良かった」
     メタグロス君のあとをつけて歩いて行くと、砂嵐が一層強まった。辺り一面砂漠のようで、砂嵐の向こうに、少し、生き物の気配を感じた。
    「この辺に沸くはずだ」
    「……ちょっと砂嵐が強すぎない? 私、歩いているだけで辛いわ」
     僕もだよ……こんなところじゃ、戦いにくい。
    「これでかあ? 全然気にならんけどなあ。メタグロスはどうだ?」
    「影響はない」
     僕たちは、ガブリアス君とメタグロス君を先頭に、進んでいくことにした。時折現れる敵がいても、ほとんどガブリアス君が一人で倒してしまった。ガブリアス君の威力は驚くほど強かった。電車の中では負けてしまうこともあるガブリアス君なのに、この野生の世界では、敵なしだった。ばっさばっさと薙ぎ倒して、ざっくざっくと進んでいく。僕はそれがなんだか頼もしくって、思わず笑ってしまう。
    「なんだ、てんで歯ごたえがねえな……野生ってのはもうちょっと獰猛なんじゃなかったのか?」
    「私たちが育てられすぎたのよ。戦闘に特化しすぎているの」
    「へえ? そういうもんなのか。これじゃあ面白くねえな。電車で戦ってた方がまだマシだぜ」
     ねえ、あれなんだろう。
    「ん?」
     僕は砂嵐の向こうに見える建物みたいなものを指差した。建物というより……なんだろう、大きな岩みたいなものだった。
    「あれは……遺跡のようだな」
     遺跡?
    「大昔に人間が作った、家みたいなものだろうか。あの中に、もう少し歯ごたえのある者がいるかもしれないな」
    「お、そいつは良さそうだ。おいミロカロス、ゲンガー、大丈夫か?」
    「あの中なら砂嵐も防げるのかしら? それなら、あそこに入った方が良さそうね……」
     僕たちはいそいそと、遺跡とやらに向かって歩き出した。途中に出てくる敵を、ガブリアス君が簡単になぎ払う。僕たちはとっても強いんだってことが分かって、なんだか面白かった。


    「歯ごたえなんかねーじゃねーか」
    「まあ、強すぎるんだ、お前が」
     メタグロス君が呆れたように言った。
     ガブリアス君の前には、惨劇が広がっていた。砂嵐に隠れて気づかなかったけれど、今まで歩いてきた道にも、こういう景色が広がっていたのかもしれない。僕は少しだけ、怯えてしまう。臆病な僕は、こんなものを見るだけで、怖くなるのだ。
    「それにしても、外はあんなにひどい砂嵐なのに、中は結構静かなのね」
    「そうだなあ。でも中まで砂だらけってことは、風向き次第で中にも砂が……うおっと!」
     え!
     次の瞬間には、ガブリアス君は僕の視界から消えていた。慌てて僕たちはガブリアス君のいた場所に駆け寄る。そこには、大きな穴が空いていた。
     ガブリアス君! 大丈夫!
    「いってて……なんだ、穴が空いていやがったのか。ああ、大丈夫だ! でも、どうやって登ればいいか分かんねえぞ」
    「多分、階段があるはずだ。私たちも、こちらから降りられる階段を探す。そこで待っていろ」
    「待っていろって言われても、俺が登ればいいだけだろう? お前こそ待ってろよ、すぐ行くから」
     そう言うと、ガブリアス君は僕たちの視界から消えてしまう。なんとか顔を穴に突っ込んでガブリアス君の動向を探ろうとしたけれど、床が砂だらけだから、つるっと滑りそうであぶなかった。
    「ゲンガー、ミロカロス、そこで待っていろ。ガブリアスを連れてくる」
    「一緒に動いたら、危険じゃないかしら」
    「どうせ階段も一つだろう。私が探してくるから、お前たちはそこにいるんだ」
     メタグロス君は少しだけ強い口調で言って、遺跡の奧へと向かって行った。僕とミロカロスちゃんは、ガブリアス君の落ちた穴の前で、じっと待つことにした。
    「やっぱり外は私たちには危なかったかしら」
     え、うん……僕、ちょっと怖いな。なんだか、早く帰りたくなってきちゃった。地下鉄の方が安心だし、楽しくはないけど、外に出てもみんなと一緒にいるだけなら、あんまり変わらないや。
    「それもそうね。やっぱり私たちには、あの場所が似合っているのかしら」
     なんかね、操り人形みたいに、僕たち、操られてるんじゃないかって思ってたんだよね。ううん、マスターだって、そうなのかなって。ほら、たまに電池が切れたみたいに、マスター、動かなくなっちゃうでしょう? だから、マスターも、僕も、実はそうなんじゃないかって思ってたんだ。でも、そんなことないんだね。僕たちは、僕たちなりにこうやってここまで冒険出来たし、それは似合ってないんだって思ったんだ。
    「そうね。私たちには、野生は似合わないのかもしれない」
     ガブリアス君とメタグロス君が帰ってきたら、すぐに地下鉄に戻って、マスターにごめんなさいしなきゃ。勝手に出て来ちゃったんだからさっ。
     僕はそう言って、すくっと立ち上がった。
    「ええ……あっ、ゲンガー、危ない!」
     えっ?
     ミロカロスちゃんの視線を追って後ろを振り向くと、そこには敵がいた。僕は咄嗟に後ろに退いて、ミロカロスちゃんがさっと僕の前に出た。それがいけなかった。僕の前に滑るように現れたミロカロスちゃんは、あろうことか、そのまま身体を滑らせて、穴に落ちてしまったのだ!
     ミロカロスちゃん!
    「ゲンガー、私はいいから、その敵を!」
     僕の目の前にいたのは、見たことのない敵だった。電車で会うことのない敵。僕が見たことのない敵。何かの進化前の敵なんだろうか。形状からはまったく想像がつかない。顔みたいなものがあるけれど、鋼で出来ているってわけじゃなさそうだ。
     ど、どうしよう……。
     何が効くんだろう。
     僕はマスターの指導で、攻撃しかすることが出来なかった。力尽きる前に相手を道連れにすることは出来るけど、マスターも、仲間もいない今それをしたら、ここで野垂れ死ぬだけだ。
     敵が何か攻撃をしようとしている! 僕は咄嗟に両手で気弾を練った。そして、シャドーボールを、その敵目掛けて放った!
     先に攻撃出来たのは僕だった。マスターに速く動けるように育てられていたからだ。そして、僕のシャドーボールは敵に命中して、敵はその一撃で倒れた。
     良かった……。
     とっても怖かった。僕は思わず尻餅をついた。でも、たまたま運が良かっただけだ。次の敵にも同じ攻撃が通るとは限らない。
     ミロカロスちゃん!
     僕は慌てて穴の中を覗き込む。でも、そこにミロカロスちゃんの姿はなかった。もしかして、階段を探しに行ったんだろうか。僕は慌てて、メタグロス君が向かった遺跡の奧へと走って行った。けれど、階段なんてどこにもない。
     え。
     え……。
     どうしちゃったんだろう。みんな、どこに行っちゃったんだろう。あの穴に落ちるしかないのかな? それとも、みんな敵に倒されちゃったのかな……。
     僕は不安になって、けれどあんなに高い穴から落ちる勇気もなくって、穴の前に座り込んで、ぼーっと誰かを待つことにした。
     じっとしていれば、敵が近づいてこないことが分かった。
     短い足を抱えて、僕は誰かが迎えに来てくれるのを待つことにした。壁によりかかって、じっと待つことにした。穴を落ちて行く勇気もない。一人で帰る勇気もない。みんなを探す勇気もない。だから、出来るだけ無茶をしないように、じっと片隅に座り込んで、待つことにした。
     あ。
     まるでマスターみたいだ。
     糸が切れたお人形さんみたい。
     そう気づいたけれど、
     そう気づいた頃には、もうほとんど遅かった。
     僕はまるで最初からいなかったように、影に潜んでしまった。あの明るかったガブリアス君の声も、メタグロス君の落ち着いた声も、ミロカロスちゃんのおっとりした声も、聞こえてこない。僕は膝を抱えて、じっとみんなを待っていた。
     人の言うことを聞くしか能がない操り人形。
     でも、糸が切れたところで、何も出来ない。
     言われるがままに生きてきたから、言われた通りにしか、生きられなかった。
     操り人形の糸が切れたら、床に真っ直ぐ落ちていくだけだったのに。


      [No.1929] 遅れまして 投稿者:moss   投稿日:2011/09/26(Mon) 16:01:51     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >  こんにちは、小樽です!

    わーい小樽さんだぁ。

    >  はじめに、もすさんはやっぱりキャラの描き方がお上手だな、と思いました。
    >  確か以前別の作品を拝読したときもそのように感じた覚えがありまして、キャラを立たせることに手馴れていてお上手だな、という印象を持っています。さすがですね!

    そ、そうだったのか……(爆)

    >  そして語らずにいられないのが7019ちゃんの魅力!
    >  ゴスロリに「悪魔」というフレーズ、くひひと笑う声。
    >  扱うのは傘、鎌、己の四肢。余裕綽々でいながら突然激昂する。
    >  しかも風に広がるゴスロリ付きとは……全部ひっくるめて7019ちゃんのキャラが好きだなんて言えない言えない、ヒミツヒミツ(

    YOU言っちゃいなYO☆ (爆)


    >  それぞれの人物やポケモンの動きも、表情もバッチリ読み取れるのに、決してそれがくどいということがなくて。一万文字超とはとても感じないくらいの流速がありました。
    >  くどすぎない描写を心掛けてはいるのですけれども、自分はどうもそれがうまく行っていないように思えてしまって。なのでもすさんが努めて意識なさって文字に起こされている「流れ」は勉強になります。
    >  むぅ、納得いくまで努力を重ねないうちに他人を羨んじゃいけないとは覆うのですが、それでもやっぱり羨ましい……(笑)

    小樽さんに羨ましがられるほどじゃないですわwww

    >  ここまでなんとなく偉そうな雰囲気の言葉を書き連ねてしまってすみません……(×
    >  でも、これが私の率直な感想です。楽しませていただきました上にモチベーションまで分けていただいたなんて、ありがとうございましたのひとことじゃ足りないですね(^^;

    小樽さんは私を褒め殺そうとしているのかw

    >  最後になりましたが、このおはなしはいつか長編化するのでは……と期待していたり。
    >  当然教団が狙ったエスティを諦めるはずはなく、そのそばにいた「男」にも手が伸びるのは必然的。
    >  そして7019ちゃんが自由へと解き放たれることはあるのかどうか。……そういった複数の事項を考えると、先行きにわくわくしてしまってついつい続きが気になってしまいます(笑)

    長編だと……思ってもいなかったZE☆ (爆)


     感想ありがとうございました! 楽しんでいただけたらなによりです。

    7019に名前をつけてやらねばなりませんね。とか言ってネーミングセンスは皆無なのでどうなることでしょうか。

    ともかく本当に感想をつけていただいて、読んで、舞い上がって、頭がシェイクされてにへにへしています。こうなったのは全部小樽さんのせいですからね(爆)

    ありがとうございました!!


      [No.1928] 青いころのお話 投稿者:マコ   投稿日:2011/09/26(Mon) 05:37:08     19clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    これは、マイコ達の元にポケモンが送られて、暫く経った頃のお話。




    マイコが一緒に戦っている男性達と出会った頃、彼女は長く、綺麗な黒髪を持っていた。
    それが、ある日、すっぱり切られ、ボブカットになっていた。


    「マイコちゃん、どないしたん?イメチェン?」
    キザキがそう聞いた所、彼女は、
    「うぅ、うっ……、違う、よ……」
    泣き出した。更に、驚くべきことを言い出す。
    「……、切られた……。」


    マイコが話すことは、こうだった。
    彼女が黒ずくめをバシバシ倒すという噂が少しずつ立ち始めている大学の中で、マイコは先輩であるレンという男に目をつけられ、パートナー同士のバトルを挑まれた。
    そして、レンのパートナーが、マイコのパートナーであるチャオブーにとって相性がすごぶる悪いポケモンであったのも苦戦の要因だったわけだが、それ以上にマイコを傷つけたのは、
    「……、裁きの礫」
    とんでもない技を使ってきたことだった。
    マイコはそのまま負け、レンに髪をバッサリ切られた、ということだ。


    「……リベンジマッチは、1週間後って言われた。だから、アイツに勝つために、修行しなきゃ」
    「せやけど、そないざんばらな髪やと、可愛くないで。まず、美容院行かんと」
    美容院に連れ出された後、少しさっぱりしたマイコは、街中のバトルルームに行き、キザキに相手を頼んだ。


    「ミズゴロウ、熱湯をかけて!」
    「コイル、ロックオンからの電磁砲!」
    「フシギダネはヘドロ爆弾、ムンナはシャドーボール!」
    「フタチマルはシェルブレード、ニューラは冷凍パンチ!」
    「そうきたんだね。それならチャオブーは諸刃の頭突き、ワシボンは切り裂く攻撃」
    「こっちは変化技や!ナックラーは砂嵐、ゴルバットは怪しい光!」
    5対5のバトルで、次々代わっていく相手に技の指示をしていく。
    終わった後、2人とポケモンが横たわる。
    「疲れた……」
    「せやけど、レンってこんな感じちゃうかったやろ?もっとキツかったんちゃうん?」
    「キツかった。だからもっと修行……って言いたいけど、限界。明日にしようか」


    1週間後。
    マイコは濃密な修行を行い、見違える程強くなった。
    そして大学のバトルルームに、彼女はいた。隣にはキザキがいる。
    彼はマイコのリベンジマッチを見たいと自ら志願して行った。
    正面にはレン。更に取り巻きが多数。
    「レンさん、あの女、懲りずに来やがりましたよ!」
    「コテンパンにやっつけちゃいましょうよ、レンさん!」
    「今度はそこの男と一緒に坊主にでもしてやろうか、あーっはっはっは!」
    レンは傲慢さを見せて笑った。マイコは泣きそうだったが、涙を堪えていた。


    「バトルは3対3。全員倒した方の勝ちです。最後のポケモンの自爆行為は禁止です。では始め」
    審判の声が響き、マイコもレンもポケモンを出す。


    マイコの1匹目は小さな沼魚、ミズゴロウ。レンの1匹目は体が丸っこく、腕の太いヒヒダルマ。
    「ヒヒダルマ、アームハンマーで潰せ!」
    腕の一振りは、何と熱湯を利用した沼魚の大ジャンプによって回避される。
    「うおっ、凄いわ!ようやるな!」
    「何てことしてくれてんだ!」
    キザキは喜び、レンは狼狽する。
    マイコが指示をしていく。
    「ミズゴロウ、上から熱湯!」
    弱点の攻撃を食らい、堪らずヒヒダルマはダルマモードに移行する。
    そしてサイコキネシスで攻めようとするが、ミズゴロウのかけた泥を正面からぶつけられ、ノックアウトされた。


    レンの2匹目は水色の海月みたいな♂のプルリル。一方、マイコはフシギダネに次を託す。
    「バブル光線!」
    「宿り木の種を撒いて!」
    プルリルの吐き出す泡を避けつつ、種を背負うとは思えない速さで接近する種ポケモン。
    いくつかの種は発芽し、プルリルの動きを制限しつつ体力を奪う。
    そのまま蔓のムチで投げ飛ばされた所にタネ爆弾がぶつかり、プルリルもノックアウトされた。完勝である。


    「あんた、もう後はないよ」
    マイコは静かに言う。
    「フッフッフ。それはどうだか」
    そして、レンの出したポケモンは……

    スターミーだった。


    「マイコちゃん、気ぃつけや!どんな技繰り出してくるか分からへんから!」
    「分かってる。コイツなの、問題は!」
    マイコはそのままフシギダネを続投させる。
    そして、レンの口から衝撃的な指示が飛ぶ。


    「スターミー、エアロブラスト」


    猛烈な風の塊は、それだけでフシギダネをノックアウトさせた。
    レンの取り巻きは沸く。
    キザキは呆然としていた。
    「フシギダネ、大丈夫?ゆっくり休んでて……」
    マイコはフシギダネをいたわり、ボールに戻す。
    続けて出したのはミズゴロウ。
    口から泥爆弾を発射し、スターミーにぶつける。
    しかし、そこでまたしてもレンの指示が飛ぶ。
    「スターミー、ボルテッカー」
    雷をまとったスターミーはミズゴロウを簡単に弾き飛ばし、これでイーブン。
    更に沸く取り巻き。
    「アイツ、おかしいで!なあ!エアロブラストとかボルテッカーとか!改造とかしてるやろ!」
    キザキは審判に叫んでいた。しかし審判は取り合ってくれない。


    マイコはチャオブーを出す。相性で負けていても、パートナーなのだ。きっと奇跡を起こせる、と彼女は信じていた。
    「チャオブー、まずはニトロチャージ!エンジンかけるよ!」
    体を燃え上がらせる火豚ポケモンはやる気充分。
    「スターミー、ハイドロカノン。とっとと沈めろ」
    突然発射される大水流。
    チャオブーはスピードが上がり回避に成功するが、周りがブーイングを起こす。
    「お前何でレンさんを勝たせねえんだ!」
    「お前ら死んでしまえ」
    冷たい言葉ばかりかける取り巻き。
    3連続の技の改造疑いが浮上する中で、レンの出した指示は、


    「サイコブースト!」


    念の光線が発射される。
    それをチャオブーは何とか回避する。
    「改造してんじゃない?あんた」
    「怪しい技が多すぎるで」
    2人が言うが、レンは聞く耳を持たない。
    「裁きの礫」
    更に指示を飛ばす。


    チャオブーは回避するがもう体力が限界だ。
    マイコの敗色の濃厚さが強くなる。

    「お前ら大人しく坊主にしろ!」
    そう言い、ハイドロカノンの指示を飛ばすレン。


    ちょうど、その時だった。

    ピシッ、ピシピシ


    皆驚く。スターミーにヒビが入っていく。
    そして……


    パリーン!!!


    粉々に割れた。


    「うわああああっ!」
    大絶叫するレン。皆言葉を失う。そして彼は言う。
    「……すみませんでした。彼女に勝つために、ロケット団から買った非合法な技マシンを使っていました。強い技の代わりに、ポケモンを失うなんて……」



    勝負はマイコの反則勝ちとなった。
    それから、マイコは皆と共に強くなるのである。




    マコです。
    改造ダメというメッセージを込めました。
    どんな方法でもしてはいけません。
    【書いてもいいのよ】
    【改造、ダメ、ゼッタイ】


      [No.1927] 山岳の報酬 投稿者:戯村影木   投稿日:2011/09/26(Mon) 02:02:10     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     人間と他生物の間に友情が芽生えることは別段珍しいことではないだろう。何かの気まぐれで野生の姫熊を窮地から救ったことで、私は姫熊と仲良くなった。


     私は山男だ。とは言え、身体が特別大きいというわけでもなく、平均より少し背が高いが体型は普通だ。それに、本当に普通の人間である。山を登ることだけに興味がある人間だった。他生物との関わり合いは基本的には避けている。だから、姫熊を助けたのはまったくの気まぐれだったのだ。落石の多い地帯にいた姫熊を、ほとんど脊髄反射で助けていた。熊に恩を感じているわけでもないし、優しい人間というわけではない。たったそれだけのシンプルで明確な行為。姫熊は無事だった。おかげで私は足に怪我を負った。
     姫熊を助けたあと、私はその場で呆然と座り込んでいた。どうやら足首を捻挫したようだ。それに、外傷もあった。皮膚が破け、血が滲んでいる。姫熊は私を心配してくれていたのか、おろおろと私の周りを回っていた。しかしそんなことをしても怪我は治らない。
    「もう、行っていいよ。私は自分で何とかするから」
     私の言葉を理解したかどうかは分からないが、姫熊は私の元から去って行った。さて、どうしよう。一応救急用具は持っていたが、捻挫はどうにもならないだろう。人間用の傷薬を傷口に当て、ガーゼと包帯で簡単な手当をした。あとは木の棒を松葉杖代わりにして歩けばいいだろうか。そう考えていると、地面にさっと影が落ちた。見上げると、輪熊がいた。
     大きな図体。私はそこで死を悟った。比較的治安の良い山であり、登山者に襲いかかる野生生物は少ないと聞いていた。しかし、例外もあるだろう。私の人生はここで終わるのだ。大きな熊の影に潜み、私は人生の終わりを見た。不思議なことだが、その時の私の胸中は穏やかだった。
     輪熊の手が振り上げられた。それは非常にゆっくりに見えた。これが死の間際なのかと思った。死ぬ寸前は動きがゆっくりに見えるのだ。私はきっ、と目を瞑った。しかし、衝撃は来なかった。代わりに、優しく力強い抱擁があった。私は輪熊に抱きかかえられていたのだ。
     そしてそのまま、私は輪熊の肩に担がれた。ああ、このままどこかへ連れて行かれて、そこで死ぬのだと思った。子どもたちの待つ巣に連れて行かれて、食料にされるのだと。しかし、私が連れて行かれた先にいたのは、さっき助けた姫熊だった。


     私はそれから輪熊たちと過ごすことになった。
     捻挫はなかなか治らなかったが、悪い環境というわけではなかった。私を助けてくれた輪熊は、姫熊の父親であるようだった。母親らしき、おっとりした熊もいた。私が助けた姫熊の他にも兄弟がたくさんいた。彼らは私と遊ぶのを喜んだ。そして、動けない私の代わりに、魚を捕ったり、果物を持って来てくれたりした。
    「いつも悪いね」
     通じないとは思っていても、つい言葉でお礼を言っていた。そのうちに、私の表情と口調で、言葉を認識し始めた。ありがとう、と言えば、姫熊は喜んだ。私の世話をしてくれるのはまさに私が助けた姫熊だった。雌であるようだったので、私は彼女を、特に『姫』と呼んで可愛がった。
     捻挫はあまり良くならなかった。むしろ、痛みが増すこともあった。あるいは骨折かもしれないと思ったが、私は時間の経過に身を任せた。医療の知識もないし、下手に調べて悪化するのも恐ろしかった。
     それに、自然の中で暮らしていると、なるようになる、と思えるから不思議だった。姫熊たちもよく怪我をしていたが、二日も経てばけろっとしていた。人間の身体は弱い。それを自然に適応させるために、私はそこでの暮らしを続けた。


     怪我をしてから一週間ほど経った頃、私の足の痛みは完全に引いていた。やはり捻挫だったのだろう。ほとんど動かず、食品としては好ましくない匂いを放つ草木を患部に塗り込んだりしたおかげかもしれない。立ち上がっても、歩いても、痛みを感じることはなかった。これで歩けると分かった私は、助けてくれた父親の輪熊に会いに行った。
    「長い間ありがとう。世話になった」
     私が言うと、輪熊は大きな手を振り上げ、私の肩に置いた。それは少し痛みを伴う表現だったが、肩の骨が外れるほどではなかった。私も同じように輪熊の肩に手を置いた。それはきっとお互いを認め合う表現方法だったのだろう。
     母親の輪熊や姫熊たちにも挨拶をして、同じような表現を取った。そして、私は彼らの巣から出て行くことにした。少し奥まった場所にある巣だった。人気のない場所で、他の登山家と会うことは滅多にないであろう場所だった。
     健康的になった足で山道を歩いて、巣を離れ、ようやく見覚えのある場所まで来た時、ふと、背後に気配を感じた。まさかと思い振り返ると、そこにいたのは姫だった。
    「なんだ、ついてきたのか」
     私が言うと、彼女は恥ずかしそうに近寄ってきて、身を寄せてきた。困ったな、というのが正直な気持ちだった。彼女を連れて行くつもりはないし、私はただの人間として生きていくつもりだったので、飼う気もなかった。
    「ついてきちゃいけないよ」
     私がそう言っても、姫はその場を動こうとはしなかった。まったく、困った話だ。何が困るって、姫のそのわがままに、私の心が揺らいでいることだった。
    「ちゃんと巣に帰るんだ」
     少し強い口調で言ったが、姫は人間がするように、いやいやと首を振った。私との生活の中で、そうした仕草を覚えたのかもしれない。こうなったら、無視しかないか。すぐに彼女から距離を置くように歩き出す。姫は案の定、私のあとをついてきた。
     結局、下山するまで、姫は私のあとをついてきた。人気の多くなった場所で、姫熊を放し飼いにするのは危ないだろう。私はすぐに近くの店に向かった。そこで生まれて初めてモンスターボールというものを買った。思っていたよりも安価だった。私はそれをぽんと姫に投げてみた。姫は全く抵抗するそぶりもなく捕まった。


     家に帰ると、大騒ぎになっていた。妻は私の捜索願を出していたという。会社に電話を掛けて事情を説明した。日頃真面目に働いていた甲斐があって、クビにはならずに済んだ。
     荷物をひっくり返していると、妻がモンスターボールに気づいて、それを拾い上げた。
    「何これ?」
    「ああ、飼うことにした」
    「あなたが? 山登りくらいしか趣味がないのに?」
    「まあ、気まぐれだよ」
     ころんとボールを転がすと、姫が現れた。妻は、まあ可愛い、と嬉しそうな声を上げながら、姫を風呂場へと連れて行った。
     捻挫していた足を見ながら、有名な諺を思い出していた。まあ、悪くない休暇だった。
     新しいことに手を出すタイミングなんて、案外簡単なことなんだな。転がったモンスターボールを見つめながら、そう思った。頑なに拒否していた自分がバカみたいだと、姫の鳴き声を聞いて感じていた。


      [No.1926] 永遠に続く一分間 投稿者:戯村影木   投稿日:2011/09/25(Sun) 23:36:46     210clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ぼくは生まれた時から孤独ではなかった。双子の兄がいたからだ。ほとんど同じ時間に生まれた、同じ種族の、兄。ご主人が言うには、たった一歩、たった一分間の差で生まれる時間が違ったそうだ。つまりぼくらは卵から孵った。イーブイというのがぼくたち種族の名前であるそうだ。たくさんの種類に進化出来るらしい。色々なことを教えてくれたのは、その双子の兄だった。ぼくよりたった一分早く生まれただけだったのに、彼は何故だか物知りだった。ぼくより賢かったのだろう。
    「おれたちは特別で、結構、重宝される生き物らしい。お互い、イーブイで良かったな」
     ぼくは兄が大好きだった。賢くて、優しくて、素敵なイーブイだった。ご主人も好きだったけれど、それよりも兄が好きだった。もちろん、ぼくが兄と一緒にいられるのはご主人のおかげだから、ご主人も好きだった。みんな大好きだった。ぼくは幸せだった。
     ご主人はぼくと兄を連れて、よく草むらに繰り出した。二匹を一緒に育ててくれた。均等に、平等に育てようとしてくれたのだ。ご主人の理想通り、ぼくと兄はほとんど同じ速度で成長した。
    「なあ、進化するなら、何になりたい?」
     戦いの途中で、兄はよくぼくに訊ねた。ぼくは決まってこう言った。
    「お兄ちゃんと一緒がいいな!」
     ぼくが言うと、兄は優しく微笑んで言った。
    「きっとそうなれるよ。ご主人もそうしようと思っているはずだから」
     ぼくは兄が何故そう言い切れるのか分からなかったけれど、兄が言うならそうなんだろうと、盲目的に信じた。
     ぼくと兄の戦いは続いた。ご主人は傷ついたぼくたちに、傷薬を吹きかけてくれたり、薬を与えて毒を抜いてくれたり、とても優しかった。ぼくはご主人の優しさに触れて、ご主人をとても好きになった。
    「そろそろかな」
     生まれてからどれくらいが経っただろう。ある日の朝、ご主人が突然そう言った。なにがそろそろなのかは分からなかったけれど、ご主人が嬉しそうな顔をしていたので、ぼくはそれだけで嬉しい気持ちになった。
    「なにがそろそろなのかな?」
     兄に訊ねると、兄も嬉しそうな顔をして言った。
    「すぐに分かるよ」
     そして実際に、その時はその日のうちに訪れた。ぼくと兄が一緒に目の前の生き物を倒した時、兄の身体に変化が訪れた。きらきらと光り始めたのだ。ぼくは初めての経験だったのに、それが進化の合図であることをすぐに理解した。
    「ふう」
     ご主人の嬉しそうな溜め息が聞こえた。ぼくとご主人は、兄の変化をじっと見守った。そして、ついに兄は、イーブイから進化したのだ。紫色の体毛をした、美しい生き物だった。ぼくは息を飲んだ。何故なら、兄がそうなるということは、ぼくもそうなれるに他ならないからだった。
    「やっと進化した」
     ご主人は満足そうに頷いた。
     そして次の瞬間、ぼくの身体も同じように光り始めた。ぼくはどきどきが止まらなかった。兄と同じような進化を遂げられる。ついにこの時が来た。ぼくの変化を見守る兄の視線を真っ直ぐに受け止めながら、ぼくは自分に起きる変化を待った。
     そして、
     そしてついに、ぼくは進化したのだ。
     けれど、
     けれどそれは、望んだ進化ではなく。
     なぜか、
     なぜかぼくは、真っ黒な身体だった。
    「あれ?」
     ぼくは自分の身体を見つめた。兄のような美しい紫色の体毛ではなく、真っ黒な、ただただ真っ黒な体毛だった。ところどころに気味の悪い色がついている。これはなんだろう。意味が分からなかった。兄とご主人の顔を交互に見比べる。兄はぼくの変化を満足そうに見つめていたが、ご主人は違った。
    「あー……時間……ああ、やっちゃった」
     ご主人は腕時計を見つめたまま、しきりに溜め息をついていた。ああ、もう夜か、ああ、こんなタイミングの悪い、たった一分で……ご主人はぶつぶつと呟いて、帰路を辿り始めた。ぼくはわけが分からないまま、兄のあとをつけていく。
    「ねえ、お兄ちゃん、何が起きたの?」
     ぼくが訊ねると、兄は困ったように言った。
    「うーん、おれと違うのに進化しちゃったんだ。残念だけど、こればっかりはしかたない。おれたちイーブイは、色んなのに進化するからなあ」
    「どうして?」
    「時間のせいさ。太陽より、月の方が強くなったんだ。おれは陽の光を浴びて、おまえは月の光を浴びて進化した。別の生き物になっちまったのさ」
    「そんなのいやだ! 今からお兄ちゃんと一緒になるよ!」
    「いや、出来ないよ。諦めろ。そういう運命だったんだ」
     兄は黙ってご主人のあとをついていってしまった。ぼくは泣きたい気持ちで一杯だったけれど、涙で視界が滲まぬように、それをぐっと堪えた。
     予想に反した進化を遂げてしまったぼくたちを、しかしご主人は見放したりしなかった。それからも変わらぬ日々が続いてくれると願ったが、しかし、変化が著しかったのはぼくたちのほうだった。
     兄は朝に強かった。一方、ぼくは夜に強かった。言い換えれば、兄は夜に弱く、ぼくは朝に弱かった。お互いの生活リズムは合わなくなり、それは、成長を遂げれば遂げるほど顕著になった。朝に連れ出されてもろくに動けなくなり、ほとんど寝ている状態だった。兄との会話も途切れ途切れ、完全に、二人の関係は破綻してしまった。


     それからも、僕と兄は、まだ一緒にいる。主人も、一緒にいてくれる。けれど、兄と僕が昔のように一緒にいられることは、もうなくなってしまった。どちらがどれだけ頑張っても、環境には抗えない。そういう運命を、与えられてしまったのだ。
    「兄貴、今日も月が綺麗だよ」
     眠りこけている兄の横で、僕はそう呟く。陽が高いうちに兄が僕にしてくれるように、まるで、僕の身体を投影したような、暗闇に光る黄色い月を見上げて、僕はそう言うのだ。
    「あの時のたった一分で、僕らは離れたんだね」
     もう後悔はしない。一緒にいられるだけ、幸せだ。主人も僕たちを見捨てない。それでいいじゃないか。なのにいつも、月の綺麗な夜には、涙が出る。
    「僕は君が嫌いだよ。もっと翳ってくれればいいのに。まったく、迷惑な月だ。君のせいで、兄とは離ればなれだ」
     月はただ笑うだけだった。それがまたたまらなく憎い。
     けれど、良いことだって何度かあった。兄や主人が眠りこけている間に、外敵から守ることも出来たし、夜に強い仲間たちと打ち解けることも出来た。次第に僕は夜のリーダーを、兄は朝のリーダーを務めていた。
     けれど、その双方のリーダーは、お互いの生活で絡み合うことなく、これからもずっと生きていく。たった一分間のすれ違いで、未来永劫、すれ違ったまま生きていく。
     僕は君が嫌いだ。
     けれど、君と一緒に生きていくしかないのだろう。
     長い長い孤独な夜を終えて、僕はふっと眠気を感じる。その一瞬の躊躇いに、兄が目を覚ますのだ。これが僕たちのサイクル。変わることのない、永遠の掟。
    「おはよう」
    「おやすみ」
     僕と兄は、そんな言葉を交わすのだ。
     夜と朝の間の、一分間。


      [No.1925] カップ麺の蓋を開けたら 投稿者:紀成   投稿日:2011/09/25(Sun) 16:23:08     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    カゲボウズがギュウギュウになってこちらを見ていた。

    ……えーと。
    恨めしそうな視線が私の頬を刺す。ちゃぶ台の上には熱いお湯を入れた薬缶。久々の生麺タイプだーと嬉々としてお湯を沸かし、テレビをつけ、さあお湯を注ぐかと蓋を剥がして――

    今に至る。

    とりあえずくしゃくしゃになったカゲボウズを伸ばしてやる。パンパンと叩けば張り付いた麺が畳みに落ちた。おい目の横にかやくが張り付いて……違う!それかやくやない!目ヤニや!
    一気に食べる気が失せた。一ヶ月ぶりの生麺タイプだったのになあ。もったいない。
    青い顔をしていると、叩かれてラインが元通りになったカゲボウズが自分が入っていたカップ麺に興味を示した。ん?食べたいの?いいよ食べて。ただし残すなよ!スープまで飲めよ!
    喜んだものの、一向に食べる気配が無い。ああそうか。お湯を注がなきゃ食べれないよね。よーし三分待ってろよ、そうしたら食べてもいいぞ。
    カゲボウズが今か今かと待っている間に私は戸棚からもう一つカップ麺を出した。『デスカップラーメン』パッケージがデスカーンの顔になっている。ちなみに麺は……ほら、デスカーンの本体から出ている黒い腕みたいなやつ。
    はっきり言って悪趣味なデザインなんだけど、安いし美味いので私は贔屓にしている。だがふと夜中に小腹が空いたなあと、布団から起きて戸棚を空けた時にこれがあると――
    なかなかスリルを味わえる代物だ。
    こちらもお湯を注ぎ、三分待つ。先に生麺は出来ていた。カゲボウズは手が無いので蓋を開けることができない。仕方ないので蓋を開けてやる。そこにスープとかやくをいれて、完成。
    「出来たよ」
    だが全く食べようとしない。時折スープに舌を入れようとしては引っ込めている。
    もしかして……いやもしかしなくても……
    「チョロネコ舌?」
    ポケモンがそんな舌を持ってるなんて、聞いたこと無い。私は仕方なく冷蔵庫から氷を二つ持って来て、スープの中に入れてやった。
    「ほら、これでいくらかは大丈夫でしょ」
    スープをかき混ぜ、丁度いい温度にする。カゲボウズは器用にカップを傾けてスープと麺を食べた。
    「……」

    こんなほほえましい雰囲気に押されて忘れるところだった。
    何でカップ麺の中なんかに入ってたんだろう……

    とりあえず先に食べることにした。テレビではアニメをやっていた。何かリアルタイムでやってたの適当に観たから内容は全部は分からないけど、とりあえず主人公が悪の親玉の本拠地に連れ去られた父親を助けに行ったらしい。しかし罠にかかり捕まりかける。だがそこへ連れ去られていた父親が登場。ああなるほど。親子の再会ですか。
    ふと見ると横でカゲボウズがあの一物ありそうな目から大量に涙を流していた。ちゃぶ台に雫がぼたぼた落ちている。私は急いでティッシュを持って来た。はっきり言ってラーメン零されるより悪質だ。
    「ねえ、どこに住んでるの?仲間とかいるの?」
    私の質問に、カゲボウズは分からない、と言いたげな顔で首を振った。というかどうやったらカップ麺の中に納まるんだ!
    仕方無いのでとりあえず泊まらせることにした。こんな寒い夜に表なんかに出したら、風邪を引いてしまう。もっと悪く言えば死んでしまう。いや、ゴーストタイプって死ぬのか?
    この部屋はあんまり火の気は無いけど、それでも外よりは大分マシだ。
    「変なことしないでよ」
    先に布団に潜り込んだ私は、そのまま眠ってしまった。


    次の朝。目が覚めた時には、カゲボウズはいなかった。一瞬夢でも見たかと思ったが、昨日食べたカップラーメンの容器はそのままになっている。
    彼は仲間の元に戻ろうとしたのだろうか。上手く合流できればいいが。
    「今日も取材か…… 早く休みになればいいのに」
    そう言って服に着替え、カメラを首から提げ、帽子を被り、玄関のドアを開けた。


    大量のカゲボウズが、ドアの表側に張り付いていた。
    「……」
    彼らが私を見て、ニタッと笑う。

    悲鳴がアパート全体に響くまで、あと五秒。


    ―――――――――
    音色さんに便乗してみた。あちらは電化製品でしたが、こちらは食品です。
    [何をしてもいいのよ]


      [No.1924] なんて素敵な物語 投稿者:紀成   投稿日:2011/09/25(Sun) 15:34:48     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    題名に引かれて一度ラストを見て、もう一度最初から読み直してみたら――
    あったかい気持ちになれました。
    この肌寒い時期にぴったりな話だと思います。


    >  ああ、火は消さないでおいてくれないか。
    >  それは、ずっと消してない、大切な火なんだ。

    ここの部分が印象に残りました。
    望みさえすれば、きっとまた会えるのではないでしょうか。


      [No.1923] 影絵とクッキー 投稿者:戯村影木   投稿日:2011/09/25(Sun) 10:53:19     103clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     この話をする前に、電気を消そう。
     そして、蝋燭に火を灯そう。
     うん、いいね。それじゃあ、話を始めよう。
     昔の話になる。小学生の時分、尻尾の生えた少年が転校してきた。先端に火が灯っている。私が彼に、それは何? と訊ねると、生まれた時から生えてるんだ、と答えてくれた。
     火蜥蜴という妖怪に呪われたんだと彼は説明していた。火蜥蜴というのは紅い身体をした、尾の先に火を点した妖怪だ。普通に生活していて見ることなど滅多にない。私は彼が興味深かったのもあって、親しくなろうと努力した。もっとも、努力などせずとも、子ども同士はすぐに仲良くなれる。私と彼はすぐに打ち解け、親友と呼んでも差し支えのない関係になった。お互いあまり裕福ではないことや、少し頭が悪いことも、仲良くなる秘訣だったのかもしれない。
     しかし、人間に尻尾が生えていて、尚且つ火が灯っているともなれば、おかしな目で見られるのは必至だ。彼は当然好奇の視線を浴びることとなった。彼は学校ではずっと後ろの席にいたし、水泳は出来なかったし、雨の日には学校に来なかった。身体的におかしいだけならまだ救いがあったのかもしれないが、そうした、集団から外れた行動を多く取っていたこともあって、次第に疎まれることも多くなった。それでも、私は彼と友達だった。彼と一緒にいることで、今まで付き合いのあった少年たちと疎遠になることもあったが、私はそれを受け入れた。彼は優しい少年だったのだ。そんな少年を、見た目の悪さや、行動のおかしさで仲間外れにすることは、良くないことに思えた。
     彼が転校してからしばらくが経った頃、私と彼の仲がぐんと深まる事件が起こった。彼の家は非常に遠くにあり、学校から歩いて一時間ほどがかかる距離にあった。ある日、私と彼が一緒に下校していると、ぽつぽつと、雨が降り始めた。夕立という季節ではなかったので、単純に天気が崩れたのだろう。私の家は学校から二十分もかからぬところにあり、雨が降り始めた頃には、丁度近所だった。傘でも貸してやろう、と思い、私が彼を見ると、彼は人生の終わりだとでも言うように、顔面蒼白になり、立ち尽くしていた。
     何が起きたのかを訊ねるより先に、私は彼を家に招いた。それまでにも、彼を家に上げたことはあったので、母は別段驚きはしなかった。少し濡れた頭を拭きながら、彼と部屋で向き合うと、彼は少しずつ、秘密を話してくれた。
     彼の尻尾に灯った火は、生まれてからずっと絶えず燃え続けているらしい。そして、彼に尻尾が生えているのは、呪いではなく、彼が火蜥蜴の子どもだからと言った。どういうことか、と訊ねると、彼は半妖なのだと言った。親が火蜥蜴と人間なのである。私はひどく驚いたが、嫌いになろうという考えは起こさなかった。彼は、その話をしたら私に嫌われるのではないかと随分心配していたらしい。しかし、当時の私にとってみれば、親の話など、どうでもいいことだった。
     また、彼はさらに、尻尾の秘密も話してくれた。彼の尻尾の火が消えると、命は尽きるというのだ。親から強く教えられていることだという。本来であれば、火蜥蜴たちは外の世界には出ないのが普通だという。人里は愚か、森にも出ない。ずーっと奥深くにある洞窟の中に住み、そこで一生を終える。何故なら、雨に打たれたら、そこで命が消えてしまうからだ。彼が絶望していたのはそういうことだったのか、と私は合点がいった。また、彼が雨の日に学校に来なかったり、水泳の授業を休むのも、納得することが出来た。
     しかしあとに残ったのは疑問だ。そんなに危なっかしいのに、何故学校に来るのか。彼の答えはこうだった。友達が欲しかったんだ、と。半妖とは言え、半分以上は人間である。妖怪らしいところは、尻尾があることぐらいなのだから、人間の友達が欲しいと思うのも当然だろう。曰く、洞窟内での遊びと言えば、岩壁に手足を投影して影絵を作ることぐらいであるらしい。しかし、人間である彼は、もっと身体を動かす遊びがしたいし、少年らしく遊びたかったのだそうだ。彼は私が友達になってくれて嬉しかったと言った。そして、秘密を知っても嫌わないでくれてありがとう、と言った。この秘密を知られたら、人間とは一緒に暮らしてはならないと教えられていたそうだ。だからこの秘密は誰にも言わないでくれ、と言われた。私は固く約束をした。決してその秘密を漏らさないと、握手を交わした。
     ところで、噂というのは風に乗ってやってくるという話があるが、どうやらそれは事実であった。私と彼だけが共有していたはずの秘密が、何故か学校に知れ渡っていたのだ。
     大雨があってから一週間ほど過ぎた頃、級友の一人がこう言った。こいつ、尻尾の火が消えると、死んじゃうらしいぜ。私は耳を疑った。何故それをこいつが知っているのだろう。あとになって思い返せば、水を避ける生活をしているのだから、そうした考えに至っても不思議ではない。しかし当時の私は、そんなことを冷静に考える余裕がなかった。
     咄嗟に彼の方に視線を向けると、彼は、ひどく複雑そうな表情で、私を見ていた。違う、私ではない、そういう類の言葉が喉まで出かかったが、私の喉が動く頃には彼はもう教室を飛び出していた。慌てて追いかけたが、彼はもう見えなくなっていた。そして、その日から彼が学校に来ることはなくなった。
     私は彼の安否が心配になり、担任に彼の住所を聞いて、休みの日に単身彼の家を訪れた。一時間ほどかけて歩き、頂き物の缶に入ったクッキーを、そのまま風呂敷に包んで持って行くことにした。
     彼の家はとても深い森の中にあった。戸を叩くと、中から背の高い男が現れた。彼の父親であるらしい。そっと中を覗くと、紅いおぞましい皮膚がこっそりと覗いた。あれが母親の火蜥蜴なのだろう。少々怯えながら彼の様子を訊ねると、君とは会いたくないそうだ、と彼の父親が説明してくれた。無理に会っても話せそうにない気がしたので、私はクッキーを預け、家をあとにした。気の利いた手紙でも書けば良かったと後悔しながら家に帰り、居間に向かうや否や母にひどく叱られた。クッキーを無断で持ち去ったことが良くなかった。クッキーの缶はとても有用で、利用のしがいがあったからだ。理由を説明すれば分かってもらそうなものだが、当時の私は、頑なに理由を説明しなかった憶えがある。
     それからも彼は学校には来なかった。私はその時にはもはや友達がいなかったので、退屈な時間を過ごした。彼がいなくなったことを嘆く者はほとんどいなかった。ただ、皆彼を傷つけたのだという意識はあったのか、時折私に、彼の様子を聞いてきた。私は、何も知らないよ、と答えるだけだった。
     一週間後、彼の家を再び訪れた。しかし、今度は戸を叩いても誰も出て来なかった。昼寝でもしているのかと戸に手を掛ける。鍵は掛かっていなかった。恐る恐る家の中に入り、そこがもぬけの殻であることを知った。彼らは引っ越していたのだ。
     休みが明け、担任に話を聞くと、転校してしまったことを内緒で教えてもらった。その事実は広めずにおくように、ということだった。どうやら、私が考えている以上に、彼らの生活は苦しいものだったのだろう。心臓を剥き出しにして生きているようなものだ。冗談で水をかけようものなら死んでしまうのだから。漠然と、もう彼とは会えないのだな、ということを悟り、私はひどく落ち込んだ。それから何日か味気ない日々が続いたが、ほとんど記憶には残っていない。
     秋が過ぎ、冬が訪れた。彼がいなくなった心の部屋を埋めるように、私はまた友達を作った。まるで嵐のように彼との日々は過ぎて、消えてしまった。幻だったのかもしれないと思うことだってある。陽炎のような日々は終わった。妖怪はやはり妖怪で、人間とは相容れないのかもしれない、と思い始めた頃だった。
     夜更けに、しんしんという音を聞いた。雪の降り積もる音だった。寒さで目が覚めたのだろう、身体を起こすと、手足が凍ったように冷たかった。布団を多くかけようと起き上がったところで、私はあるものを見た。
     縁側へ出る障子戸に、彼がいた。いや、彼の影が映っていた。自らの火を明かりにして、影絵のように映り込んでいた。私はあっと声を上げた。急いで近寄ろうとするが、障子戸の影は、ゆるゆると首を振ったように見えた。私は動きを止めた。近寄ってはいけないという、不思議な力を感じていた。
     彼はその場で、私に影絵を披露してくれた。彼の影絵を見るのは初めてだった。それはまるで、一つの劇団が行うように、多彩で、美しかった。私は彼が会いに来てくれたのだということをすっかり忘れて、その影絵に見とれた。障子戸の舞台には、しんしんと降り積もる雪の音だけが聞こえていた。
     どれくらい見ていたのだろう。あっと言う間だったような気もする。彼が礼をしたのを合図に、幻想は解けてしまった。
     私がまた近づこうとすると、彼は今度は口頭で、もう会えないんだ、と言った。どうしてだい、と訊ねると、人間にはなれないからさ、と、悲しそうに答えた。
     私は、あの秘密を喋ったのは自分ではないと言うべきか、とても迷った。この期に及んで言い訳をするのか、と思われるのも嫌だったし、かといって勘違いをされたくもなかった。悩んでいると、彼はゆっくりと、君じゃないってすぐに分かったよ、と言った。でも、君が優しくても、君とだけは生きていけないから、と、彼はまた、寂しそうに言った。
     クッキーをありがとう。缶は返すね。彼はそう言って、縁側に缶を置いた。乾いた金属の音がした。それじゃ、さようなら。去って行こうとする彼に、私は一つだけお願いをした。どうしても欲しいものがあったのだ。彼はそれを快く引き受けてくれた。クッキーの缶にそれを立てて、彼は去って行った。少しずつ遠くなっていく彼の明かりと、近くの明かりが、幻想的な世界を創り出していた。
     私と彼の話は、これで終わりになる。
     その後、彼がどうなったかは知らない。私は彼を含め、妖怪とは全く縁のない生活を送り、今に至る。彼は半妖であるから、きっと長寿だろう。私よりももっと長く生きるだろうから、いつかまた会えるかもしれない。それじゃあ、こんなところで、話を終わりにしよう。
     ああ、火は消さないでおいてくれないか。
     それは、ずっと消してない、大切な火なんだ。


      [No.1922] 幾度とない好機を 投稿者:戯村影木   投稿日:2011/09/25(Sun) 09:39:00     87clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ああ、なんということだろう、夜明け前、私の最愛の妻がこれから産卵するというのに、目の前には、野生ではほとんど見ることはない鴻鵠がいた。虫である私たちには天敵であるし、力が違いすぎる。捕食する側と、捕食される側。狩人と獲物。その明確な力関係があって、私の頭は、絶望で満たされていた。夜明け前、産卵の前ということで動揺していたのもあって、姿を晒しすぎたのだ。上空から、見つかってしまった。さらに始末が悪いのは、この鋭く長い嘴をした鳥は、私を見るなりすぐにこう言ったのだ。
    「なんだお前か、随分と久しぶりだな」
     天敵に見つかってしまった、というだけでひどく焦っていた私だ。最初は何を言われているのか分からなかった。しかし次第に、彼に、どこか面影を見つけることが出来た。そう、彼は、幼い頃私と共に育った雀であったのだ。
    「君……なのか」
    「ああ。まさかこんなところで出会うとはな」
     私と彼は、元々は人間に飼われていた身だった。いや、飼われていたというほど、恵まれた形ではなかったかもしれない。ただ、同じ空間、同じ時間を共にしたに過ぎない。彼と私は、卵から孵ってすぐに野生に放り出された。私たちの中ではよくある、『野生帰り』のそれだ。お互い赤ん坊であったが、不思議と力は強かった。私も、圧倒的な成長差があるにも関わらず、この森で生き残り成長することが出来たし、幸いにも、蛹を経て、蝶になることが出来た。群れの中では一番強いと言われていたし、事実そうなのだろう。それから万事が上手く行き、美しい妻を娶り、もうすぐ子どもが生まれるという、そんな時期だった。
    「君……どうしてこんなところに」
    「別に、飯を探しに来たんだよ。腹が減ったからなあ」
     彼は羽を休めて、木の枝に留まった。私たちの家は一番背の高い木の上にあり、木の洞では、妻が寝込んでいるところだった。
    「そ、そうか……良かった、来たのが君で良かった」
    「ん、どうしてだ」
    「それがね、もうすぐ私に子どもが生まれるんだ。初めての子でね。私には友達というような相手がいなかったから、君に祝ってもらえるならこれほど嬉しいことはないよ」
    「へえ、がきが生まれるのか」
     彼は羽を少しだけ動かして、溜め息をついた。
    「そのがきを食えばいいのか?」
    「え?」
     私は彼の瞳に光を見出せなかった。
    「だから、言っただろう、俺は飯を食いに来たんだ。まあ、食う相手は誰だっていいんだ。お前だっていいし、お前の妻だっていい。そのがきだっていいんだ。とにかく腹が減っているからさ、何かを食わなきゃ」
    「ば、ばかなことを言うなよ……君は何を言ってるんだ。食べちゃだめだよ。せっかくこれから生まれるんだ」
    「だけど、俺だって何かを食わなきゃ、死ぬんだ」
     私は彼を特別よく知っているというわけではない。一緒に過ごした期間は、どれくらいだろう。お互いが一人立ち出来ないような非力な頃に、少しだけ力を合わせて生き延びた。たった数週間のことだったかもしれない。彼は飛ぶことを覚え、この森を出て行ってしまった。私は空を飛べるようになっても、この森の天井を抜けるほどの大きな羽は持たなかったので、ここに留まっていた。
     再三言うが、私は彼をよく知らない。彼がとても気の良いやつであるとか、彼が愛情に満ちているとか、そういう過去があるのかどうかを知らない。だというのに、なんという愚かなことだろう、私は彼が旧友だと知った時、良かった、見逃してもらえる、などと馬鹿げた考えを浮かべた。溘焉として自分が死ぬことなど考えてもみなかった。それがどうだ、彼は鳥でしかなかった。弱い虫螻を狙う、ただの鳥でしかなかったのだ。
    「だがしかし、死ぬと言っても、食べてすぐに死ぬわけじゃないだろう」
     私は話を遷延させることに決めた。そうすれば彼の気が変わるかもしれないと思ったのだ。少なくとも、すぐに取って食われることもないだろう。彼の鋭い嘴に注意しながら、私は言葉を続けた。
    「君に啄まれたら、私たちはすぐに死んでしまう。でも、君は私たちをすぐに食べなくても、まだ生きていられる。ここは何とか見逃してくれないか」
    「そりゃあ、お前の言うことも分かるよ。だけど、そうやって俺が全員見逃して行ったら、いつか野垂れ死ぬんだ。だったら、そんなこと深く考えずに、ぱっと食いたいもんを食った方がいい」
    「でも……私と君は知り合いだろう? 見逃してくれてもいいんじゃないか」
    「他にも俺みたいな鳥はたくさんいる。そいつらに食われるくらいなら、知り合いの俺が食った方が良い、って考え方もある」
     いや、こんな話をしたいわけではなかった。枢機は死なないためにはどうすればいいか、である。最終的には、彼と戦うこともあるのだろうか。しかし勝ち目があるとは思えない。虫は鳥に無力だ。一矢報いて死ぬのがせいぜいだろう。
    「お前はこの森に閉じこもっていて、世界を知らないんだな」
     彼は唐突に話を変えた。まるで諭すような言い方だった。
    「俺たちみたいな生物はさ、俺たちなりに世界を構築しているんだよ。人間に捕まるか捕まらないか、っていう二択で生きてるわけじゃない。俺たちには俺たちの二択がある。生きるか死ぬかだよ。なあ、お前が抵抗しないなら、俺はお前を食うよ」
    「どうしてそんなに私に拘る!」
     私は思わず激昂していた。
    「他にも虫は大勢いるだろう! 知り合いだからか? それとも、君はわざわざ知り合いの幸せを壊すっていう、そんなに酷薄なやつだったっていうのか?」
    「逃げたっていいんだぜ、別に」
     挑発だったり、慈悲であったりするわけではなかった。彼は事実をただ事実として、私に告げた。逃げたっていいんだ、と、背中を押すように、淡々と言った。まさにその通りだった。逃げても良いのだ。野生生物同士の対峙というものは、本来、そうした逃走が許される。
    「逃げるなら、俺はなんとか追いかけようとする。だけどその途中に食いやすい虫がいれば、そっちに標的を移すよ。たったそれだけの、簡単な話さ。至って単純だろう。そら、逃げろよ」
    「でも、私には家族がいる」
    「ああ、そうだな。お前が逃げたら、残った家族を食らうよ」
    「戦わなければならないのか」
    「まあ、それが普通なんだよ」
     彼は瞳に悲哀の色を浮かべていた。そこに、多少の慈悲を感じ取る。
    「俺たちは死ぬんだ。いいか、俺たちは死ぬんだ。寿命が来るまでとか、病気になるまでとか、そういうことじゃなくてな、いざってときに足踏みするやつは、その時死ぬんだ。野生生物はもっとそうさ。仮にも、人間に飼われていたんだ、分かるだろう? 生きるっていうのは、勝ち続けることなんだよ。お前がここで負ければ死ぬ。逃げられなければ死ぬ。そういうことなんだよ」
    「でも、そんなの理不尽じゃないか! 私だって必死に生きてきたんだ。必死に生きて、親も身よりもない野生帰りの私が、やっと幸せを掴もうとしている時に……理不尽じゃないか! どうやったって君に敵うはずがない! 相性が悪すぎる! そんなので負けることも逃げることも許されずに、どうしろって言うんだ!」
    「だが、お前は一瞬でも勝者たり得たんだろう」
     彼は私を睨み付ける。
    「この森の中で、一番見晴らしの良いところに住んでいる。妻もいる。それはつまり、勝者だったってことだ。お前は勝者だった。では何故勝ってきた? それは、お前が優れた素質を持って生まれた個体だったからだよ。ある程度なんでも出来た。ある程度勝ち残れた。そうだろう?」
     私は言葉を失った。私が今言った理不尽という言葉は、まさに、私にこそ相応しい言葉だった。絶句だった。彼はさらに、私の心を抉っていく。
    「俺だって、努力をしてお前の天敵になったわけじゃないよ。天敵ってぐらいだ、生まれつきなのさ。俺の力が強いのも生まれつき。運良く生きてこられたんだ。でも、俺が最強ってわけじゃないんだよ。俺にだって天敵はいる。そういう、不思議な関係なんだよ、俺たち生き物ってのはさ」
    「……じゃあ、私は、ここで死ぬしかないのか」
    「勝てばいいんじゃないのか」
    「勝ち目なんてない」
    「はあ……まあ、そうだな、そう思うのも無理はないかもしれないな。じゃあ、古い馴染みのよしみだ、いいことを教えてやるよ」
     彼は大きく胸を張った。
    「諦めたやつは、いつだって負け組なんだ」
    「しかしっ……諦めるしかないんだ!」
    「俺たちには運良く素質があった。お前がもしがむしゃらに強さを求めていたら、俺にだって勝てたかもしれない。いや、まだ負けたと決まったわけでもない。挑戦してみろよ。出来ませんとか、相手が凄すぎてとか、場違いだとか、甘ったれたこと言うんじゃねえよ。それはお前の都合だろ。それを世界のせいにするんじゃねえよ。お前が諦めた。お前が努力を怠った。お前が戦意を喪失した。全部がお前のせいだ。そのせいで、お前の夢は叶わない。お前の幸せは掴めない。お前の家族は守れない。そうして敗者になるんだ」
    「でも……でもっ……」
     言い返すべき思想が私の中にはなかった。彼の言うことが全てだ。野生生物としての私には、それ以上の意見がない。弱肉強食の世界。そこで生き延びたのは、運。慢心していたのだ。私は、努力をしなかった。彼のような鳥がいつ狙ってくるか分からないと、憂慮すべきだった。怠った。怠っていたのだ。なんて悲しい。なんて愚かしい。それに気づくのが、今なんて。
    「挑戦して、負けて、初めて分かることもある。例え死の間際でも、気づけることもある」
     彼はそう言って、大きく羽を広げた。
    「それに、運が良ければ、全員助かる」
     それが野生生物同士の戦いだった。
     人間同士の、規律や、制約や、道具のあるようなものではなく、ただ殺し合い、生き延びるための戦いが、そこにあった。静寂の中、圧倒的な力の差の中で、鴻鵠と、虫螻は、向かい合った。
     慢心を、余裕を、希望を、尊厳を、羞恥を、憎悪を捨て、ただ純粋に、勝ちたい、勝ってみたい、己の全てを認めるために、駄目で元々などではなく、誠心誠意、勝利だけを目指し、あるいは、自分の価値を改めて認識させるために、初期衝動のまま、一縷の望みなどではなく、全身全霊の野望のままに。
     幾度とない好機を、捨てないままで。


      [No.1921] 山から吹く秋風 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/09/24(Sat) 19:37:10     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ホウエンの山奥の、とあるダム。人の気配は全く無く、ただ灰色の分厚い壁から、大量の水が物凄い轟音を立てて流れ落ちているだけ。それでも、紅葉シーズンにでもなれば多少の観光客で賑わうのだろう。とにかく、今現在は紅葉シーズンでもないので、ただ青い山並みの中でダムが水を湛えているだけなのである。

     そのダムの欄干の上に突如、一つの黄色い光が輝いた。最初はわずかな、蛍火のように。しかしその光は徐々に輝きと大きさを増し、ついには中から人影が現れた。後を追うように、もう三つの光が現れ、今度はポケモンが現れたのだった。もちろん、見ている人は誰もいない。

    「ここに来るのも本当久しぶりだよね。話で聞いてはいたけど…。紅葉したら、さぞかし綺麗なんだろうなぁ」

     人影――もうはっきりと姿を現し、髪を結んだ少女である事が見て取れる――がそう呟くと、隣に現れたロトムがこくっとうなずいた。
     この少女、天野夏希の故郷である村は、十二年前にこのダムの底に沈んでいたのである。もともと、大分前からダム化の計画があったのだが、村人たちの反対から実現には至っていなかった。しかし、二十四年前の集中豪雨で、大規模な山崩れが発生し、村人の大半が犠牲になった。残った人々も遠くへ移り住み、ダム化の計画、工事はスムーズに進行したのだった。

    (どうしたの? いきなり故郷に寄りたいなんて言い出してさあ)

     アブソルは、ポケモンの言葉でそう言った。本来なら、人間にはグギュウなどとしか聞こえないはずであるが、少女はアブソルの言葉を理解した様子だった。

    「やっぱり、あのダークライと出会ったからだと思う。…自分でも、本当のところはよくわかんないけど」

     欄干の手すりに腕を置いて寄りかかり、その姿勢で少女は夏の大空を見ていた。しかしその目は青空をとらえてはいなかった。

    (少しでも救われた気がしたなら、それでいいと思うな)

     アブソルの鳴き声は、とても優しげな声だった。自分の主人、というよりは友人が、ずっと昔の出来事を今でも重く感じているのはよく分かっていた。その重荷のせいなのだろうか、一度死んでからも現世にとどまって、夏の花を運ぶ役目を担ったわけである。そうなってからも、アブソルは彼女に付いて来た。アブソルだけではない。ほんの数年の間でも、彼女が心から愛した仲間達全てが彼女と共に現世にとどまったのだ。

    「自分が死んだ場所……最初の向日葵畑にどうしてあのダークライを連れて行きたくなったのかも分かんないよ。あの場所で、みんなで倒れてさ。でもまだ付いて来てくれてるもんね、ありがと」
    (大丈夫、ずっと一緒にいるよ。これからも)

     少女は仲間たちのほうを向くと、ふっと笑みを顔に浮かべた。

    「じゃあ、そろそろ行こうか」


     ダム湖に背を向けた少女とアブソル、ロトムとジュゴンの姿は現れた時と同じ、一瞬の光となって消えた。
     後に吹いたのは、もうそろそろ秋を感じさせる透き通った風。


     ――それと、縦縞模様の入った、雫型の種が一粒、少女のいた場所に落ちていた。




    ――――
    本編で書けなかった補足をば。天野夏希(あまの なつき)はナツキちゃんの本名ですね。
    あと、ナツキちゃんが死んだのはあの花畑ということになってます。書きたかったのはそれだけです、ハイ。

    【好きにしていいのよ】


      [No.1920] パニックどころの話じゃないかも 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/09/24(Sat) 19:17:24     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    観想ありがとうございますー

    > さてはて、そんな感想に関しての言葉はさておき、お礼を言われて恐縮している人間です
    > いや、なんで本当にお礼を言われているのだろうか、なんていうか無茶ぶりし返されても文句は言えない立場なんですよね

    あ、それもありですねw いや別に考えてなかったですけどww

    > 俺の記憶にあるとオルカさんにしてない方面の無茶ぶりを探していたら、文字数無茶ぶりしてないと言って、ぞろ目一万文字以上を所望したのだ
    > マサポケの司書さんに聞いても、わからないだろうけどそんなことをチャットで言った(書いた)のである

    > …………………………………自分の周りには優しさで出来てる人がいっぱいだね☆頭痛薬なんて目じゃないぜ☆

    優しさは なんにでも効く薬… 時と場合によってだと思いますが。 マサポケの方々はほとんどがそれでできている方達かと

    > 雲行きが怪しくなりかけたので、本編の感想をば
    > 美脚……げふんげふん、ダークライさんだってじぶんの特性を欲しくて得たわけじゃないからなぁ
    > 人間も嫌う特性だけど、自分が苦しむことがあるよね
    > アブソルとかと同じようなポケモンですね、映画とかでもそんな位置だったし

    (゜∀゜)o彡゜美脚! (゜∀゜)o彡゜美脚!
    っと、そうですよね。映画のあの役割でダークライには惚れました。イヤ本当。小説のネタは何番煎じか分かりません。でも自分が書きたかった物を書きましたよー

    > 『日陰の中からだとさぁ、日向って明るく、綺麗に見えるよね』

    > この一文がすごくいい
    > 思わず、泣いてしまった
    > こういう綺麗な一文に嫉妬しますねHAHAHAHAHAHA

    な…泣いた、ですとっ!?(汗
    そんなつもりは……嫉妬されるほどでもないのですよ

    > また無茶ぶりシテシマイタクナルネ、フフフノフ
    > ちなみに本気です、壊れているのがいつもなら本音しか書けないのもいつものことなのです
    > さーて、次回の無茶ぶりのネタを探そうか
    > 楽しんで待っててね

    はーい待ってまーs(    ありがとうございましたーっ


      [No.1919] ポケスコ出せば、感想パニック 投稿者:西条流月   投稿日:2011/09/24(Sat) 00:30:39     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    マインドクラッシュされる意見もあるけどね☆

    さてはて、そんな感想に関しての言葉はさておき、お礼を言われて恐縮している人間です
    いや、なんで本当にお礼を言われているのだろうか、なんていうか無茶ぶりし返されても文句は言えない立場なんですよね
    俺の記憶にあるとオルカさんにしてない方面の無茶ぶりを探していたら、文字数無茶ぶりしてないと言って、ぞろ目一万文字以上を所望したのだ
    マサポケの司書さんに聞いても、わからないだろうけどそんなことをチャットで言った(書いた)のである



    …………………………………自分の周りには優しさで出来てる人がいっぱいだね☆頭痛薬なんて目じゃないぜ☆


    雲行きが怪しくなりかけたので、本編の感想をば

    美脚……げふんげふん、ダークライさんだってじぶんの特性を欲しくて得たわけじゃないからなぁ
    人間も嫌う特性だけど、自分が苦しむことがあるよね
    アブソルとかと同じようなポケモンですね、映画とかでもそんな位置だったし


    『日陰の中からだとさぁ、日向って明るく、綺麗に見えるよね』


    この一文がすごくいい
    思わず、泣いてしまった
    こういう綺麗な一文に嫉妬しますねHAHAHAHAHAHA
    また無茶ぶりシテシマイタクナルネ、フフフノフ
    ちなみに本気です、壊れているのがいつもなら本音しか書けないのもいつものことなのです
    さーて、次回の無茶ぶりのネタを探そうか
    楽しんで待っててね


      [No.1918] Re: 岩お伽ふたつ 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/09/23(Fri) 22:59:49     19clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    拝読させていただきました(´ω`)

    無駄を削ぎ落としたシンプルな構成で、「何が書きたいか」「何を伝えたいか」がとても分かりやすいお話でした。優しい語り口がストーリーにマッチしています。

    言われてみると、フリーザーとグレイシアの額の飾りは似た印象を抱かせますね。こういった外見的な特徴から話を組み立ててみるのも面白そうだなー、と思いました。

    手短ですが、読了報告に代えて。今後の更なるご活躍を期待しております(`・ω・´)


      [No.1917] メモリークリエイト 投稿者:紀成   投稿日:2011/09/23(Fri) 20:47:00     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    気がついた時には、ここにいた。
    最初はぼんやりとしか見えなかった。何故見えるのか、その概念すらも無かった。
    そのうち、見える物達が騒がしくなった。
    次々に、何かを何かに入れるようになった。そしてそのつど、俺の中にイメージが入って来た。
    赤・黒。息が詰まる。後にそれは『苦しい』という概念だと知ることになる。
    そして俺は文字を覚えた。平仮名、カタカナ、漢字。そして様々な知識。

    俺がいる場所は、研究室。
    俺は、人によって造られた。
    俺の名前は―― 今のところは、『3510』
    識別番号というらしい。さんごーいちぜろ。後に、別の読み方をすることを知る。

    俺に入る知識は、ひたすら華が無かった。
    人の叫び声。広がる赤。取れた体の一部。茶色と黒。
    それが、今俺が生きている世界にあるということを知り、俺はひたすら意識を閉ざし続けた。
    何か、何か色が欲しい。美しい色を――

    『年』という物を知ったが、どのくらい経ったのかは、分からない。
    それは、突然俺の中に入って来た。
    人の映像。だが、今までとは違う。こちらに向かって笑いかけてくる。あどけない子供。いや、少女。
    質問される内容に戸惑いながらも答えていく。
    投入される度に彼女の答えは変わり、俺はそれで初めて『物事を考えることにこれと言った答えは無い』ことを知った。
    人の数だけ考えがある。そして、それが衝突して今までの華の無い出来事が起こるのだと。
    何となく、分かった。

    そして姿も変わっていった。もう少女はあまり言えない。これは、『女』だろう。
    今まで知った概念と言葉を並べても表せない何かを、俺は抱いていた。

    この気持ちは何だ?
    俺は、この『ミコト』という女に何を求めている?
    やがて俺は、ミコトが言っていた言葉から答えを割り出した。

    ああ、
    これが『愛』なんだと。

    『愛って何か?…ちょっと、恥ずかしいこと言わせないでよ。誰かを守りたい、大切にしたい…かな』


    俺は目を開けた。人間の驚嘆の声が聞こえる。
    俺は起き上がった。誰かを呼びに行ったのか、ガラスの向こうには誰もいない。
    纏わりついている何かを契る。赤い光とサイレンが、体を照らす。
    そこで初めて、俺は自分の体を見た。

    『み こ と』

    それが、俺が始めて発した言葉だった。

    ミコトは、俺を見てどう思うだろうか。怖がるだろうか。拒絶するだろうか。嫌がるだろうか。
    それでもいい。俺は、ミコトに会いたい。『愛』という物を教えてくれた、彼女に会いたい。話したい。出来ることならば――

    『いま あいにいく』


    ガラスが割れた。人は何も出来ない。
    俺はゆっくりと、光の中へ一歩を踏み出した。


      [No.1916] やっぱりキャラが立ってる! 投稿者:小樽ミオ   《URL》   投稿日:2011/09/23(Fri) 18:45:49     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     こんにちは、小樽です!


     はじめに、もすさんはやっぱりキャラの描き方がお上手だな、と思いました。
     確か以前別の作品を拝読したときもそのように感じた覚えがありまして、キャラを立たせることに手馴れていてお上手だな、という印象を持っています。さすがですね!

     組織の権力によって望まぬ力を持ってしまった少年少女たち。
     実は私も別所でこういう主題の小説を書いていたことがあり、このテーマは好み(好み……?)なのであっという間に引き込まれました。


     そして語らずにいられないのが7019ちゃんの魅力!
     ゴスロリに「悪魔」というフレーズ、くひひと笑う声。
     扱うのは傘、鎌、己の四肢。余裕綽々でいながら突然激昂する。
     しかも風に広がるゴスロリ付きとは……全部ひっくるめて7019ちゃんのキャラが好きだなんて言えない言えない、ヒミツヒミツ(


     チャットでご一緒したときに「流れには特に意識している」という趣旨の話を聞かせてくださったと思いますが、まさしく仰るとおりに感じました!
     それぞれの人物やポケモンの動きも、表情もバッチリ読み取れるのに、決してそれがくどいということがなくて。一万文字超とはとても感じないくらいの流速がありました。
     くどすぎない描写を心掛けてはいるのですけれども、自分はどうもそれがうまく行っていないように思えてしまって。なのでもすさんが努めて意識なさって文字に起こされている「流れ」は勉強になります。
     むぅ、納得いくまで努力を重ねないうちに他人を羨んじゃいけないとは覆うのですが、それでもやっぱり羨ましい……(笑)


     ここまでなんとなく偉そうな雰囲気の言葉を書き連ねてしまってすみません……(×
     でも、これが私の率直な感想です。楽しませていただきました上にモチベーションまで分けていただいたなんて、ありがとうございましたのひとことじゃ足りないですね(^^;


     最後になりましたが、このおはなしはいつか長編化するのでは……と期待していたり。
     当然教団が狙ったエスティを諦めるはずはなく、そのそばにいた「男」にも手が伸びるのは必然的。
     そして7019ちゃんが自由へと解き放たれることはあるのかどうか。……そういった複数の事項を考えると、先行きにわくわくしてしまってついつい続きが気になってしまいます(笑)


     とりとめのない長文になってしまってすみませんでしたっ(汗)
     執筆お疲れ様です、そしてどうもありがとうございました!(ペコリ
     


      [No.1915] コメント御礼/そとがき 投稿者:小樽ミオ   《URL》   投稿日:2011/09/23(Fri) 18:21:31     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ラクダさん、きとらさん、ご感想ありがとうございました! 遅くなりましてすみません><
     それではまずはラクダさんからお返事を……



    > ステータスは恐らく『特性:魅惑 老若男女関係なくメロメロになる』ではなかろうか、と想像。「ボク」さんに限らず、私も彼女の魅力にやられた一人です。
     書いた自分でも(文章にしきれていないかもしれない脳内イメージが相まって)チコリータかわいいなコノヤロウ! 状態です(笑)
     自分では気付いていないのにその仕草が人を魅了する……そういう人やキャラクターって、物語に限らず素敵ですよね。

    > 日常にイライラしてささくれ立った心に、すうっと染み入る素敵なお話でした。例えると、疲れた時に飲む甘ーいミックスオレのような……いや、砂糖を追加した特製ココアのような……?
    > あまりの甘さにニヤニヤが止まりません。どうしてくださるんですか(コラ
     実は私のモヤモヤやイライラを深夜テンションでぶつけて勢いで書き上げた結果こうなってしまいました(笑)
     おお! ブレイクタイムの飲み物代わりにまでしていただけたのですか! お楽しみいただけたようで嬉しいです〜!
     えーっと……またリア獣?なお話を書いたらそれで勘弁していただけますか(×

    > リア充(リア獣?)なお話を堪能させていただきました、どうもごちそうさまでした!
     こちらこそありがとうございました!



    ◇   ◇   ◇



     続いてきとらさん、ありがとうございました!


    > ポケダンやってて、ポケモンにも表情筋ってあるのかなあと思ったけど、あってほしい!
     人間にそうあってほしいと願うように、パートナーや友達のポケモンには笑ってほしいなぁと思っています。
     怒った表情や泣いた表情もステキ、なんて思ってるのはヒミツヒミツ(

    > お前のものは俺のもの!なトレーナーもいるはずの中、いい人だなあ
     そういう人間も、違ったタイミングで描いてみたいとは思っているんですよね。
     これを書いた日は、とりあえずチコリータにやさしくしてあげたかったのです(笑)



    ◇   ◇   ◇



    【そとがき】

     20分で書けたのは久しぶりの話ですが、だいたいチコリータがかわいいせいだと思います(
     ポケモンずかんに「頭の葉っぱを振り回すと心地よい香りが漂って、みんな和やかな気分になる」(うろおぼえ)、なんて趣旨の文章があった気がしたので、ちょっとだけ織り込んでみました。
     私の頭の中にあるチコリータのイメージは、おとなしくてとてつもなく恥ずかしがり屋か、この小説のように怒るときは怒って、でも淋しがり屋で大切にしてほしい、そんな子のイメージなのです。……か、書きたいことを書いたら取りとめがなくなってしまった……orz

     これを書いた日はイライラモヤモヤが普段よりひどく、あーどうせ何を書いても調子が悪いなら勢いで書いてやるコノヤロー! と思って勢いで書いた結果こうなりました。
     ほとんど推敲しないまま投げてしまったので、明らかにおかしい場所を見つけてしまいました。順次直していきますorz



     そとがきまでお付き合いくださりまして、ありがとうございました!



    【どうしていただいてもいいのよ】


      [No.1914] 何者かが水の中で 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/09/23(Fri) 13:38:56     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    狂喜乱舞している!!

    > スーパーブラボー!
    > ああ…オルカちゃん、成長したなあ(失礼)(そして目元を拭う)

    なななななんですってぇぇ!! ブラボー!? ブラボーってなんでしたっけっ!?(ちょ
    失礼だなんて…ここにコメントもらえて舞い上がっている鯱が一匹いるのですよ…!

    > > ・紀成様から『向日葵前線』を書かせていただく許可をとったのに、もう九月終わるよー
    > > ・中二病バリバリダーどころの話じゃないと思う

    > 私の向日葵前線は短かったなあ… ダークライ好きです。あの設定が。
    > いえ、外見も好きですよ?
    > そして中二病じゃないと思うこれは。ってか、私が書くシリーズの方がよっぽど中二だよ!レディー!レディー!

    この小説が中二じゃなくて、紀成さんの小説が中二だなんてそんなバナナ。ファントムさん大好きですよファントムさん。

    > > 実は、「明るい少女とダークライ」の構図は、ポケモンの小説を読んで間もない頃の小四くらいの時の私が、一番初めに考えた自分の小説の構図でもあるのですw。

    > 一番初めに書いたポケモンの小説は… ああ、中一か。
    > 今は無き黒歴史が詰まったノートはどこいったんだろう

    そう、私の黒歴史としか言いようの無い発想からこの話はできていたのであります。

    > 良かった!すごい良かった!まさか見そこねたアニメチェックしてふとポケスト!を覗いたらこんな素敵な小説がアップされているとは…

    素敵な小説だなんて、恐縮なのです…。

    > > 【書いてもいいのよ】

    > phantomのマスター出してみるか… 叔父様、姪のこととなると止まらなくなるんだよなあ

    ナ…ナンテコッタ……

    > ありがとう!そしてありがとう!では!

    はい、駄文鯱、もっと上を目指してがんばります! ありがとうございました!!


      [No.1913] P@SSION☆プリカちゃん 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/09/23(Fri) 11:54:05     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「P@SSION☆プリカちゃん」の最初期のメモ。

    -------------------------------------------------------------------------

    ◆リボンちゃんの憂鬱
    ・いろいろな楽器を弾きこなす天才少女「真理香」ちゃんを親にもつプクリンのプリカちゃん
    ・真理香ちゃんと一緒に歌を歌うのが何よりの楽しみ
    ・真理香ちゃんのパートナーを努められるのは自分しかいないと自負していた
    ・が、真理香ちゃんが新しく「ヘンな人形のような楽器」を買ってからご機嫌斜め。真理香ちゃんが人形とばかり歌っているから
    ・ヘンな人形はプリカちゃんとも仲良くしようとするが、プリカちゃんはそっぽを向く
    ・が、その都度ヘンに解釈されて仲良し扱いに
    ・二人の曲を聴くたびに膨れっ面をするプリカちゃん
    ・三月は陰暦で「弥生」だと聞き「三月が消し飛べばいいのに」と呟く
    ・通りすがりのユンゲラーのスプーンを力ずくで捻じ曲げて「腕力>超能力だ!」と宣言
    ・ニョロモが音符マークに見えて「お前ら全員カエルになれ!!」と激高
    ・タブンネを見て「あたしと契約してみろー!!」と叫ぶ
     ・その後本当にタブンネと契約、腹いせにトレーナーを狩りまくり、周囲一帯を恐怖に陥れる
     ・タブンネ達から神と崇められる
    ・ふわふわ飛んでいたフワンテを見て「ふわふわしてんじゃねええええ!!」と発狂
     ・自分がふうせんポケモンであることは当然の如くスルー
     ・ひっつかもうとしたら危うく連れて行かれそうになる「ぷわわー!」「ウボァー!」
    ・タマタマを見かけて脊髄反射で「だんごー!!」と絶叫
     ・※たまごです
    ・何故か教会にある花畑にいたキレイハナを見て「約束の地よ!!」と叫んでダイビングボディプレスを敢行
     ・じゃれてきたと勘違いされてそのまま遊ぶ
     ・アクアブレス(※バブルこうせんです)
    ・ついにはマジックが注射器に、マイクが包丁に見えはじめる
    ・外を散歩している途中に出会ったカモネギを見て一瞬で沸点に達し、いきなりネギをガジガジと食べてしまう
     ・「おまえなんかー! こうしてやるー!!」
     ・「僕の採りたてがー!」
     ・「あたしは生でも構わず食っちまうんだぜー!」
    ・とぼとぼと家に帰る途中、真理香ちゃんは自分がいらなくなったのだろうかと思い、不安に
    ・帰ってみると、真理香ちゃんとヘンな人形がプリカちゃんを待っていた
    ・そして、中央にはプリカちゃんのためのステージが
    ・実は真理香ちゃんとヘンな人形は、プリカちゃんと一緒に新曲を歌う準備をしていた
    ・真理香ちゃんが作曲し、ヘンな人形がコーラスを、そしてプリカちゃんがボーカルを担当
    ・新しい曲を作ったから、三人で形にしよう、ボーカルはプリカちゃんしかいないと真理香ちゃんが言う
    ・ヘンな人形は「プリカちゃんと一緒に歌うために、たくさん練習しました」という
    ・プリカちゃんは自分がいらなくなったわけではなかったと気付き、涙を拭ってステージに立つ
    ・プリカちゃんとヘンな人形が歌い始める
    ・こういうのも悪くない、そう思うプリカちゃんだった
    ・一人寂しくネギを探すカモネギに、スプーンを腕力で捻じ曲げられたユンゲラーが声を掛けて終了

    <メモ>
    ・プリカちゃんの心は千々に乱れ、もはやBlue Noiseの嵐です。
    ・真理香ちゃんだけのPrivate Service。それがプリカちゃんの自慢でした。
    ・二人の雰囲気はin a merry mood。いい感じです。
    ・二人をつなぐKEY WORD。それは歌でした。
    ・こいつは大変助けが必要。さあさあ今すぐQuender Oui。
    ・Navigator不在じゃ歌えない。プリカちゃんの心は沈むばかりでした。
    ・プリカちゃんの不満はFABLED METABOLISM。膨れっ面の日々は続きます。
    ・あーあ、また膨れちゃいました。プリカちゃんはさながらJETの如く、すごい早さで散歩に出かけてしまいました。
    ・心はふわふわFLOATED CALM。あちこちに気持ちが散らばって、考え事もままなりません。

    -------------------------------------------------------------------------

    ポイント:
    ◆キャラクターの名前が全然違う(プリカちゃん→リボンちゃん、マリカちゃん→真理香ちゃん)。タイトルも違う
    ◆後から追記したと思しき<メモ>欄では既に名前が「プリカちゃん」に変わっており、この間に名前をすべてパロディにする方針を固めたらしい
    ◆主人公がプリンではなくプクリン。後に全国図鑑の番号を見て顔面蒼白になり、大慌てで修正を入れる
    ◆ゲロッパが不在
    ◆タブンネのシーンが完成稿とまったく違うが、件の曲のパロディでタブンネを出そうという方針は確定していた
    ◆この段階でどのパロディを盛り込むかは大筋で固まっている
    ◆<メモ>欄の曲名の使い方が完成稿と微妙に違っている
    ◆オチ(カモネギくん登場)が完成稿とまったく同じ
    ◆当初はコメディ一本槍で突き進むはずだったが、恐らく何気なく例の曲を聴いて後からちょっとシリアスシーンを追加したはず


      [No.1912] 参考:俺の場合 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/09/23(Fri) 11:32:24     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    少年の帰郷とか野の火でようやくブラインドネスレベル。
    最初から書かずに、小説本文を書きながらあの形にもってく感じ。
    もっとメモ書きっぽくて台詞なんかが多いけど、消化した項目から消すので、記録が残らない。

    参考:
    長編のプロットってどうやってまとめていますか? - No.017 [ザ・インタビューズ]
    http://theinterviews.jp/pijyon/1515900


      [No.1911] Re: コットンガード 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/09/23(Fri) 11:20:22     71clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    うわああああ、ホントにガッチリプロット組んでるよコイツ!
    エアームドの鋼並にガッチリだよ!


      [No.1910] コットンガード 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/09/23(Fri) 11:18:01     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    おまちかねのコットンガード。

    -------------------------------------------------------------------------

    <タイトル>
    「コットンガード」

    <テーマ>
    ・苦手な「起承転結」を徹底してみる
    ・とにかくテンポを意識して
    ・ママに当たるエアームドとの対比を入れる

    <起>
    ・ママに毛づくろいをしてもらうチルチルちゃん
    ・チルチルちゃんとママの羽の違い
     →実の親子ではないことをここで明示する

    <承>
    ・ママのようになりたいと願うチルチルちゃん
    ・が、チルチルちゃんはふわふわ羽でママは鋼の翼
     →少ししょんぼりする

    <転>
    ・公園を一人で散歩するチルチルちゃん
    ・そこへ突然上からクヌギダマさんが!
    ・慌ててふわふわ羽でガードするチルチルちゃん
     →ノーダメージで吹き飛んでいくクヌギダマさん

    <結>
    ・飛び跳ねるようにママの下へ帰るチルチルちゃん
    ・新必殺技「コットンガード」を披露する
    ・防御力が大幅にアップしたチルチルちゃんをうれしそうに抱きしめるママ
     →二人は立派な物理受けになってくれることでしょう

    -------------------------------------------------------------------------

    これでもなお完成稿で変更が入り、物理受け云々は(多分作風に合わないとの理由で)筆者コメントに移動されている。


      [No.1909] 爆殺天使キタコレ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/09/23(Fri) 11:10:50     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >  結:やはりあるがままが一番「しあわせ」なのだということに気付き、今日も元気に相手ポケモンを容赦なく爆撃するのであった

    ワロタwww
    個人的にはこっちのが好みだったかもwww


      [No.1908] blindness(ほぼ完成稿) 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/09/23(Fri) 11:10:39     71clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    続いてblindness。これは結構練った後のメモ。

    -------------------------------------------------------------------------
    <タイトル>
    ・「向こう見ず」
    ・「ただ私のために」

    <テーマ>
    ・「足跡」

    <コンセプト>
    ・「盲目のドーブル」
    ・「足跡は家紋」
    ・「×の付いた足跡」

    <主人公>
    ・絵描き志望の少女

    <プロット>
    ・スランプに陥った少女
     ・某イラストSNSでランクが伸び悩んでいる
     ・固定ファンはいるが、何か物足りない、本質を見てもらえていない気がする
     ・何もかも中途半端な自分が嫌になる、才能のなさが恨めしい
    ・コンビニから帰ってきた直後、家の塀に落書きしているドーブルを発見
     ・背中の足跡に「×」
     ・絵はセンスこそ感じられるが、ところどころ間違っている
     ・背中の文様も「アートの一種」だと考える
    ・ドーブルについての話
     ・大人になると背中に足跡を付けられる
     ・足跡は「家紋」のようなもので、見ただけで「家柄」がわかる。「家柄」のよいドーブルは絵が上手い
     ・学者の見解では、ドーブルは「家柄」によって厳格に階層化されている
    ・後姿を眺めながら
     ・本当に楽しそうに絵を描いている
     ・呆れるほど楽しそうなのが、少女にとって余計に苛立ちを募らさせる
     ・少女のことは一切気にかけていない
    ・ドーブルに呼びかけると、見当違いな方向を向く
     ・確認する素振りを見せた後、また絵を描き始める
     ・このとき、様子がおかしいことに気付く
     ・よく見ると、ドーブルの目には光が宿っていなかった
    ・ドーブルについての話(2)
     ・ドーブルは絵を描くことを生業にしている。よって、絵の描けないドーブルは差別を受ける
     ・目の光を失うようなことがあれば、即座に爪弾きにされる
     ・このドーブルの家柄は、かなりの上流のようである。成人したばかりだということにも気付く
    ・少女とドーブル
     ・よい家に生まれ、それだけの力を身につけ、成人して活躍するばかりだったという状況から一転、失明して一族を追われたという経緯に気付きショックを受ける
     ・それでもなお、純粋に絵を描くことを楽しんでいるドーブルに、さらにショックを受ける
     ・自分が無駄なこと、くだらないこと、つまらないことに囚われすぎていた事を思い知らされ、呆然とその光景を見つめる
    ・ドーブルとの別れ
     ・ドーブルは描きあげた絵を撫でて慈しんでから、静かにその場を後にした
     ・少女は無意識のうちに携帯電話を取り出し、絵を写真に収める
     ・そのまましばらく、写真を眺め続ける
    ・光を失いながらも楽しそうに絵を描くドーブルの絵
     ・その絵はランク入りこそしなかったが、本質を見極めた一人のファンからコメントがもらえた
     ・吹っ切れた少女が気持ちを入れ替え、絵を描く意欲を取り戻す
     ・傍らには、ドーブルが描いた絵の写真を写す携帯電話が――
    -------------------------------------------------------------------------

    後半に完成稿でカットされたシーンが残っている。確かテンポの都合で削ったはず。
    それ以外は軽微な違い(タイトル含む)はあれど、ほぼ完成稿に準じた形の様子。


      [No.1907] ■ポケノベさんと合同チャット 11月2日20時〜 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/09/23(Fri) 11:08:29     2027clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ポケモン小説コミュニティサイトPOKENOVEL
    http://pokenovel.moo.jp/)さんとマサポケとの合同チャットの開催が決定しました。

    日時:
    11月2日20時〜

    場所:気長チャット(でりでりさん宅)
    http://loudlystorm.chatx2.whocares.jp/

    議題は特に決めてませんが、自己紹介とか読んだ小説の報告とか。
    みなさんのご参加お待ちしておりますー


      [No.1906] しあわせタマゴ(初期案) 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/09/23(Fri) 11:03:14     78clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    初期案を引っ張り出したのでまずこれを。

    -------------------------------------------------------------------------
    タイトル
     「しあわせのカタチ」

    話の骨格
     「幸福とは個人の解釈で異なるもの」

    興味を引くポイント
     「タマゴばくだん」で勇敢に戦う武闘派のラッキー

    主人公
     ラッキーと一緒に周囲のトレーナーをなぎ倒す勝気な少女「さち」

    ポイント
     ラッキーは「たまごポケモン」で、一緒にいるトレーナーに「しあわせ」をもたらす
     個々人の「しあわせ」とは何か
     少女とラッキーの対比・共通化

    起承転結
     起:飛びぬけた腕力と「タマゴばくだん」で無敵を誇るラッキーを引き連れる少女。ラッキーと一緒に戦っていると「しあわせ」だと感じる
     承:妹分の少女もラッキーを連れているのだが、そのラッキーは正反対の技である「タマゴうみ」を使う。妹分のラッキーは「しあわせ」そうだった
     転:悩んだ少女がラッキーにとっての「しあわせ」を考え、「タマゴばくだん」を忘れさせようとする。そして、自分も変わろうと考える。だが……
     結:やはりあるがままが一番「しあわせ」なのだということに気付き、今日も元気に相手ポケモンを容赦なく爆撃するのであった

    -------------------------------------------------------------------------

    人間のトレーナーがいたりタイトルが違ったりしていますが、大筋の方向は見えていた模様。
    ちなみに、よく見ると人間の名前が完成稿で登場する主人公のラッキーにリサイクルされている。


      [No.1905] ■プロットを晒すスレ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/09/23(Fri) 10:56:37     85clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    これはゴーヤロック氏のツイッターの衝撃発言からはじまった。

    586 586
    ゴーヤロック無駄知識:実はコットンガードやミツハニーにもプロットが存在する

    weakstorm でりでり/照風めめ
    @586 な、なんだってー!

    586 586
    @weakstorm どんな一発ネタ/小ネタ/勢いだけに見える作品も、うちの場合前段階のまとめをしないと滅茶苦茶になってしまうのです\(^o^)/

    pijyon No.017
    @586 わけがわからないよ

    586 586
    @pijyon 知ってるかい? プロットがないとあれくらいの一発ネタすら書けない人がいるんだぜ……?



    おーいみんな!
    ゴーヤロックさんがプロット晒してくれるってよー!


      [No.1904] 岩お伽ふたつ 投稿者:巳佑   投稿日:2011/09/23(Fri) 00:18:14     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    【こおり に おおわれた いわ の おはなし】

     むかしむかし、とある冬の寒い日のこと。
     寒風もそこまで激しくなく、穏やかな冬の冷たい風が漂う日のことでした。
     辺りは白銀に塗られた雪原の世界。
     反対に空は灰色に染まっており、そこから雪原へと白い便りが届けられています。

     
     その灰色の空では一匹の水色の鳥が飛んでいました。
     水色の大きくてたくましい翼、蒼色の長くて美しい尾、額にあるひし形をした蒼色の飾り。
     フリーザーと呼ばれし、その水色の鳥の真紅に染まった湖が一匹の倒れている者の姿を捉えました。
     その者はうずくまっている様子で、ただごとではないと思ったフリーザーはその者の前に舞い降りました。 
     白い薄化粧を被ったその者は、茶色の体にクリーム色のふわふわな毛を持ったポケモン――イーブイでした。


     そのイーブイはどうやら気を失っているだけのようで命に別状はありません。
     しかし、このまま放って置いたら死んでしまうかもしれません。
     イーブイの命を狙う者は寒さだけとは限りません。
     もしかしたら、他の者にイーブイが食べられるという可能性もありました。
     

     フリーザーはこのイーブイを助けることにしました。
     自分の背にその小さな体を乗せますと、フリーザーは羽をはためかし、雪空へと舞いました。
     ふわりふわりと白雪が空に舞い、白銀に溶けていきます。
     フリーザーはイーブイを落とさないようにと、ゆったりとした飛行をしました。
      
     
     ようやく雪宿りが出来そうな洞穴にフリーザーはたどり着きました。
     フリーザーはそこでイーブイをゆっくりと降ろしてあげます。
     それからイーブイに被った白い薄化粧を払います。
     その後、寒くないようにと自らの翼でイーブイを抱擁しました。
     すると、気持ちよかったのか、イーブイの顔は寒そうな色から生気溢れる温かい色に変わっていきます。
     頬を赤らめて、口の端は微かに上がっているイーブイを見てフリーザーは安堵の息を零しました。
     すぅすぅ……という小さな寝息を聞きながら、フリーザーはイーブイのことを見つめています。
     フリーザーの心臓から早口の歌声が上がりました。


     しばらくしますと、イーブイが目を覚まします。
     最初は大きな水色の鳥に抱かれていることにイーブイは驚きました。
     しかし、このイーブイは聡いの者だったらしく、この鳥さんは自分を助けたのだと気付きます。
     ありがとうございます――イーブイは微笑んで言いました。
     大したことはしていないっ――フリーザーは顔を赤らめながら言いました。
     
     
     それからフリーザーはイーブイに色々と尋ねました。
     
     何をしているのだ? ―― 旅をしてまして。
     
     何故、旅を? ―― 自分探しの旅というものですかね、うふふ。
     
     どうして、あそこで倒れていたのだ? ―― それはその……。

     茶色のお腹から虫の鳴き声が上がりました。
     恥ずかしそうな微笑みを見せるイーブイに、フリーザーはやれやれと溜め息をつきました。


     木の実での食事にてフリーザーはここで少し旅の疲れを癒していけと、イーブイに勧めました。
     旅の疲れが溜まっていましたイーブイはそのお言葉に甘えることにします。
     それからイーブイとフリーザーの日々が始まりました。
     フリーザーの背中にイーブイが乗りまして、一緒に空の散歩をしたり。
     他にも一緒に雪だるまを作ったり。
     雪合戦をしあったり。
     楽しい時間はあっという間に過ぎ去っていきます。


     疲れとお別れをしたイーブイがそろそろ出発するという日の夜。
     粉雪が舞う中、フリーザーはイーブイを天然温泉が湧いている所に案内しました。
     その温泉は誰も知られていない秘湯だったのか、いたのはフリーザーとイーブイだけです。
     もくもくと上がる湯煙に抱かれながら、フリーザーとイーブイは湯に浸かります。
     翠緑色を魅せる湯に広がる波紋。
     フリーザーは隣のイーブイの方に向きました。
     雫の衣を被ったイーブイの体からはとても艶かしい香りが漂い、フリーザーは息を飲みます。
     今まで旅をしていただけあって足の筋肉はしっかりとしており、美しいラインを描いています。 


     湯の夢から覚めたイーブイがフリーザーの視線に気がついて、顔を向けます。
     どうしたのですか? ――微笑みながらイーブイが尋ねます。
     なぁ……イーブイ――赤い双眸(そうぼう)はしっかりとイーブイを映していました。
     
     私と番(つがい)になってはくれまいか? ―― …………それはまたどうしてですか? 

     簡単なことだ。私がそなたが好きだからだ。 ―― でも、いいのですか? わたしなんかで。

     この白い世界をそなたと染めていきたい。 ―― あらあら、照れますわね。

     ………………。 ―― うふふ、恥ずかしかったですか? 

     い、いささかばかりな。 ―― あらあら。
       
     それからフリーザーとイーブイはお互いのことを見つめ合いました。
     そしてお互いの距離が縮まっていき――。
     フリーザーは天然の白い薄化粧を乗せたイーブイの唇に、自分のくちばしを乗せました。
     

     番になり、フリーザーとイーブイの日々は続いていきました。
     フリーザーのもふもふとイーブイのもふもふが重なり合い、それは離れることはありませんでした。
     しかし、幸せな日々にも終止符が打たれる時がやってきました。
     それはお互いの命が尽きることでした。
     その頃にはお互いをもふもふしあっても、体温からの返事はなく、冷たくなる一方でした。
     

     もうすぐ死ぬ。
     そう悟りましたフリーザーとイーブイは外へと出ました。
     外では粉雪がふわりふわりと舞い降りています。
     その白銀の世界の真ん中で、フリーザーとイーブイはいました。
     フリーザーはイーブイをその大きな翼で抱きしめています。
     二匹は空を見上げました。
     依然と粉雪がふわりふわりと舞い降りています。

     そなたと出逢ったのもここであったな。―― あら、そうでしたの?

     その日も同じ、粉雪が舞っていた。―― 粉雪で助かりましたわね。 

     確かに吹雪だったら……見つけられないな。―― うふふ、ですわね。

     ………………。―― ねぇ、フリーザーさん。

     なんだ? ―― このまま一緒に雪になるといいですわね。

     どうしてだ? ―― うふふ、一生溶けないまま、一緒にいれますでしょう?

     ……私が言いたかったな、それ。―― あらあら。うふふ。

     …………。―― …………。

     ……なぁ。―― ……はい?

     ……ずっと溶けない恋をしようか。―― えぇ。


     やがて、フリーザーとイーブイは雪に埋もれました。
     そして、時間がいささか経つと共にそこには氷に覆われた岩が出てきました。
     するとタマゴが一個、光を放ちながら氷に覆われた岩の前に現れました。
     それから間もなくヒビが入りますと、そこから一匹の生き物が出てきます。

     水色の体に、額には氷のような飾りが付いている生き物。

     その名はグレイシア。

     フリーザーとイーブイの愛の結晶の子でした。

     
     

    【こけ に おおわれた いわ の おはなし】 

     むかしむかしのことです。
     とある大きな森に住んでいるイーブイがいました。
     花や木といった植物が大好きで、そしてこの森が大好きなイーブイでした。
     
     
     ある日のことでした。
     その森で大きな火事が起こってしまったのです。
     紅蓮の炎は狂気的な舞いを魅せ付けるかのように踊り続けていきます。
     木々は悲鳴をあげ、花はその踊りに捧げられるがの如く消えてしまいました。
     この大火事はやがて鎮火されましたが、森は真っ黒な平原に衣替えされてしまいました。
     森に住んでいたポケモン達が全て生きているかどうかさえも見失わせる程の大火事。
     少なくとも植物大好きなあのイーブイは無事、生き残っていました。


     住処をなくした森のポケモン達は真っ黒な場所から旅立っていきます。
     新たな住処に希望を求め、旅立つポケモン達。
     しかしあのイーブイだけは違いました。
     この場所が大好きだったイーブイはここに希望を植えることを心に決めたのです。
     他の者達からにはできないできないと言われても、イーブイの志は変わりませんでした。
     

     まずイーブイは真っ黒な土を小さな手で掘り返すことから始めました。
     生気のなかった土地が少しずつ息を吹き返していきます。
     しかし、広大な土地にイーブイ一匹、小さな手はみるみる内にボロをまとっていました。
     更に、雨の雫で喉を潤させることはできたのですが、お腹を満たすものはありませんでした。
     やがて空っぽなお腹の訴えにイーブイは倒れてしまいます。
     

     手も足も言うことを聞いてくれない状態の中、イーブイの瞳には虚ろが陰りが漂っていました。
     すると、空から一匹のポケモンがイーブイの前に降り立ちました。
     それは赤い羽根を持ち、白い袋を持ったポケモン――デリバードでした。
     イーブイの衰弱ぶりに驚いたデリバードはすぐに自前の白い袋から食料を出します。
     モモンやオレンといった木の実、『おいしいみず』といった飲み物をイーブイに与えました。
     やがてお腹や喉が癒えてきて、みるみる内にイーブイの顔色は生気を取り戻していきます。
     
     どうないしたんや、あんさん。こないなところで。―― 地面を掘り返してるんだよ。

     また、どうしてそないなことを? ―― 森を元に戻したくて。

     え、あんさん、本気で言うてはります? ―― 何を?

     どう見ても広いこの森を一匹だけやと、無茶ちゃいます? ―― それでも僕はやるよ。

     え? ―― 僕はここの森が好きだから。

     あんさん…… ―― あ、忘れててごめんね。食べ物と飲み物ありがとう。

     ……うぅ、あんさーーん!! ―― わわっ!? ど、どうしたのっ!? いきなり抱いてきてっ

     あんさんの心意気にあっしは感動したで! ―― え?

     あっしには食べ物を届けることしかできへんけど……。―― ……あ、ありがとう!

     ついでに種も仕入れてこれたら、持ってくるで。―― わぁ……! 色とりどりな森になるねっ! 


     こうして一匹だけだったイーブイに心強い仲間ができました。
     イーブイは地面を掘り起こしていき、デリバードからもらった種を地面に口づけさせます。
     デリバードは世界各地に飛び回り、イーブイの活力になるものを集めたり、種を集めたりします。
     更にデリバードは苗木も手に入れたりしてきて、木々も増え始めていきます。
     そしてイーブイの小さな手はボロをまといながらも、掘り慣れから硬くなっていました。
     その硬さは、ここに森を蘇させたいという強い意志を映すかの如くのものでありました。
     ちょっとずつ、ちょっとずつではありましたが、緑が産声を上げています。
     デリバードからもらった種が地面から芽をのぞかせていたのです。

      
     あんさん、少しずつ緑が増えていってるな。―― うん。まだまだこれからだけど。

     あんさんと出会ってからよりもマシになってきてるで、ホンマに。―― うん、本当にいつもありがとう。

     ……あんさんはこの場所がホンマに好きなんやな。―― うん。そうだよ。

     …………ここに森が戻ったら、いっぱいのポケモンがくるとええな。―― うん、そうだね。

     そういや、あんさんはいつも一匹だけで悲しくはないんか? ―― 大丈夫だよ。

     大丈夫って、やせ我慢はよくないで? ―― えへへ。我慢でもなんでもないよ。

     え? ―― だって、自分のしたいことしてるんだもん。我慢も何もないでしょ?

     ……。―― 僕ね、森に住んでいて思ったことがあるんだけど。

     ……なんや? ―― 植物になってみたいなぁ〜……って、おかしいかな?

     植物好きなあんさんらしいんやないか。―― えへへ、ありがとっ。それとさ。

     うん? ―― 一匹だけじゃないよ。

     ……え? ―― デリバード君もいるじゃないか。

     順調にこの土地の緑化が進んでいった、ある日のこと。
     夜空の下、イーブイとデリバードは語り合いの中、デリバードから涙が零れ落ちていきます。
     ぽろりぽろりとデリバードの感情の雫が、草の上に跳ねて、散って、キラキラと消えていってました。
     一匹だけではきっとできなかった。
     空っぽになったお腹が手を動かす力をずっと奪い去ってしまうかもしれませんでした。
     潤いをなくした喉が足を動かす力をずっと奪い去ってしまうかもしれませんでした。
     ここに森の産声を上げたいというイーブイの希望の種に、水をくれたのはデリバードでした。


     それから時が更に経っていきます。
     苗木はぐんぐんと背を伸ばしていき、辺りは草原がどこまでも敷かれており、色とりどりな花を飾っています。
     少しずつ他の所からポケモン達がやってきて、この場所に暮らし始めていました。
     イーブイの種は大きな花を咲かせていました。
     この場所は見事な森へと生まれ変わっていました。
     

     しかし、そこにイーブイの姿はありませんでした。
     イーブイが住処にしていた大きめな岩のある場所にに一匹のポケモン――デリバードがいました。
     その岩は木々の影に抱かれているからでしょうか、緑色のコケを生やしています。
     デリバードはその岩に手を触れながら、微笑んでいました。
     
     なぁ、あんさん。ここが立派な森になって、もう何年も経つんやな。―― …………。

     あんさん、夢叶えた瞬間、倒れるなんて、寂しいやないか。―― …………。

     なぁ、あんさんは今、大好きな植物になってはるんやろうか。―― …………。

     今日はあんさんにな、新しい植物の種をって思ってな。―― …………。

     これをここに埋めといて……っと、ほな、わいはもう行くな。また、来るで。―― …………。

     返事のない岩に――イーブイにそう語ったデリバードはその岩の近くに種を一粒埋めました。
     イーブイは、もう生きてはいませんでした。
     ここが再び森と呼ばれ始める頃のこと。
     今までの疲れによる毒牙が一気に襲われ、そのまま帰らぬポケモンになってしまったのです。


     デリバードは空へ舞うと、思わず涙を零しました。
     その涙が空へと舞い降りて、偶然にもデリバードが植えた種の上に着地します。
     すると、地面から芽が出てきて、それは瞬く間に大きくなっていきます。
     そして大きく膨らんだ蕾をつけますと、それはやがて大きな花を咲かせ――。

     一匹の生き物が現れました。
     
     薄いクリーム色の体に、葉っぱの尻尾が芽吹いている生き物。

     その名はリーフィア。

     植物がとっても大好きな子でした。



    【書いてみました】

     フリーザーとグレイシアの額にある、あの氷の飾り。
    「もしかして、グレイシアってフリーザーの子だったりしてね。じゃあ氷に覆われた岩って――」
     そんな妄想から生まれた物語です。

     最初は上記の通り、氷に覆われた岩の話だけだったのですが……。 

     グレイシア――氷に覆われた岩への大胆な解釈もしたのだから、コケに覆われた岩――リーフィアに関してもやろうかと思い、植物大好きなイーブイさんの話を書かせてもらいました。



     ありがとうございました。


    【何をしてもいいですよ♪】
           


      [No.1903] 受けて立つ(第一段落) 投稿者:りえさん   投稿日:2011/09/22(Thu) 21:59:27     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    目を開けたら見知らぬ天井で、皮膚は暑いし痛いし、不愉快。
    ここどこと焦って首を横に振ると、四角い光がまぶしい。
    何があるのだろうと目を凝らしたら


    サンダーが居た。



    寝てる場合じゃない。体が痛い。首を横に向けるので精一杯。いや死ぬ。
    サンダーがこっちを向いています。フィルとテトはどこ?
    おかあさん
    おかあさん おかーさん


    迫った死への恐怖に抗えず、私はもう一度意識を失う。


      [No.1902] ブラボー! 投稿者:紀成   投稿日:2011/09/22(Thu) 21:56:09     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    スーパーブラボー!
    ああ…オルカちゃん、成長したなあ(失礼)(そして目元を拭う)

    スキャナーが上手く使えればイラスト付けたいんだが…


    > ・紀成様から『向日葵前線』を書かせていただく許可をとったのに、もう九月終わるよー
    > ・中二病バリバリダーどころの話じゃないと思う

    私の向日葵前線は短かったなあ… ダークライ好きです。あの設定が。
    いえ、外見も好きですよ?
    そして中二病じゃないと思うこれは。ってか、私が書くシリーズの方がよっぽど中二だよ!レディー!レディー!

    > 実は、「明るい少女とダークライ」の構図は、ポケモンの小説を読んで間もない頃の小四くらいの時の私が、一番初めに考えた自分の小説の構図でもあるのですw。

    一番初めに書いたポケモンの小説は… ああ、中一か。
    今は無き黒歴史が詰まったノートはどこいったんだろう

    良かった!すごい良かった!まさか見そこねたアニメチェックしてふとポケスト!を覗いたらこんな素敵な小説がアップされているとは…
    やったねマスター!

    > 【書いてもいいのよ】

    phantomのマスター出してみるか… 叔父様、姪のこととなると止まらなくなるんだよなあ

    ありがとう!そしてありがとう!では!


      [No.1901] ミミロルと学生と幼き兄妹 投稿者:紀成   投稿日:2011/09/22(Thu) 21:44:10     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    「…」
    ライモンシティ郊外。まだ緑が残り、野生のポケモンやバトルを仕掛けてくるトレーナー達がひしめき合っていたりする、昔ながらの道だ。
    俺がそこを通ったのは偶然。ホドモエに少し用があって、まだ幼い妹と一緒に(親がいないため)大橋までの道を歩いていた。時折トレーナーが話しかけてくるも、あっさり打ち負かす。で、数人目のトレーナーを倒して賞金を貰って――
    ふと、横を見る。

    茶色い顔と耳。下半身にふわふわのクリーム色の毛。耳のあたりはピンク。目はくりくりしている。
    これを同級生の女共が見たら、一斉にこう叫ぶだろう――『かわいい!』と。
    俺は別に可愛いポケモンに興味は無い。現に今の相棒もレントラーというかなり目つきが鋭い、どちらかと言えば愛でるよりバトル向きのポケモンだ。
    そのポケモンは茂みの中からこちらをジッと見ていた。木の影に隠れて様子を伺っているらしい。時折耳がぴくぴくと揺れる。妹が俺の視線に気付き、同じように俺の視線の先を見た。
    「…兄さん、何、あれ」
    まだ幼さの残る声が俺の耳を通り抜けていく。右腕を掴む力が強くなる。痛い。
    「ポケモンだろ、どう見ても」
    「ここらへんにあんなのいたっけ」
    「新種かもしれないな」
    自分で言ってからそれは無いと思った。ここらへんは人通りが激しい。もしいたとしてもすぐに誰かに見つかるはずだ。
    「…どうすんの」
    「え」
    妹に聞かれて初めて気がついた。俺は只の通行人に過ぎないのだ。このまま通り過ぎて行くのが妥当だろう。だが、こうして目があってしまったことには無関係ではいられなくなった…気がする。
    その時だった。
    向こうの茂みから、再びガサガサという音がした。仕方無いので俺たちは周りの目を気にしながらもそこへ近づいていく。そのポケモンの目が輝いた。俺たちに向けてじゃない、別の何かに。
    やがてそれはゆっくりと姿を現した。ポケモンじゃない、人だ。年は二十代前半。外見から見るに、『金なしの大学生』って感じだ。髪は短くて手入れが行き届いてない。服は何かのシミがついている。一度は洗ったけど結局落ちなくてそのまんま―
    おまけにつけている眼鏡には皮脂が浮いている。
    「何か見るからにだらしが無いって感じね」
    「言うな」
    妹がピシャリと言った。何でこういう時、女は遠慮が無いんだろう。
    そいつ―― 男はポケモンの頭を撫でると、持っていたコンビニの袋から弁当を取り出した。俗に言う、コンビニ弁当ってやつだ。の蓋を開けて、何か薄い黒い物を取り出す。それをポケモンにあげると、ポケモンは両手で持って美味そうに食べている。
    まさかとは思うが、あれって――
    「…御握りについてる、シナシナになった海苔?」
    「!?」
    俺の声が聞こえたらしい。男がこっちを向いた。眼鏡の奥の目が驚きでビー玉みたいに丸くなっている。
    「あ…こんちは。そのポケモン、貴方のですか」
    次の瞬間。
    男が走ってきた。いきなりのことだったので硬直してしまって逃げるという行動が取れない。妹も同じのようで、顔を引きつらせたまま直立不動になっていた。
    男の長い腕が俺の肩に伸びる。必死な表情が目の前にある。そして――

    「言わないでくれ!頼むから!」
    「…は?」

    男は泣いていた。何か今時の草食男子って、こういう奴のことを言うのかと俺はふと思った。

    男はミツハシと名乗った。今年の春からライモンにある大学で生態を学んでいるという。シンオウ地方から来たらしい。
    「いや、すまん。てっきり通報されるかと思った」
    「なあ、そのポケモン…何なんだ?」
    「ああ、この子か」
    ミツハシは側で海苔を食べていたポケモンを抱き上げた。
    「この子はミミロル。シンオウ地方にしか生息してない、珍しいポケモンなんだ。ノーマルタイプ。可愛いだろ?」
    「はあ」
    親ばかにしか見えなかった。確かに可愛いが、抱き上げて頬擦りすることは無いと思う。まあかくいう俺もレントラーを連れてくるほどの電気タイプフェチだけど。
    「ねえ、ニックネームとかあるの」
    ずっと黙っていた妹が質問した。途端にミツハシが嬉しそうな顔になる。
    「この子はな、ユキコちゃんっていうんだ。幸せに子供の子で、ユキコ」
    「…随分と人間らしい名前を付けるのね」
    「いやー、ちょっとした思い入れがあってね」
    そう言って笑うミツハシさんの顔は、幸せそうだった。俺はずっと気になっていたことをチョイス。
    「そんな可愛がってんなら、何でこんな場所に捨てたんだ」
    「…」
    ミツハシの顔が途端に曇りだす。眼鏡を取って、目を袖で拭く。泣いているようだ。
    「聞いてくれるか?俺の借りているアパートはな、ポケモン禁止なんだ。それを知ったのがこの子連れてきた日でな…暫くは隠れて飼ってたんだけど、ついに大家さんに見つかっちゃって――」
    『捨てないと追い出す』と言われ、ひとまずここに連れて来たらしい。数日分の食事を置いて、アパートに戻る。次の日様子を見に来たら、自分の姿を見るなりすっ飛んできたという。
    「捨てれるわけないだろー。小さい時からずっと一緒なんだよ。…なんでミミロップにならないのかが不思議なくらいだ」
    「ミミロップ?」
    「ミミロルの進化系だよ。懐き度で進化するんだ」
    流石生態を志望しただけある。よく知っている。


    「あのままでいいのかな」
    帰り道、妹が聞いてきた。俺はマメパトの群れを見ながら返事はしなかった。

    次の日。久々に街に出るということで、俺は銀行でお金を下ろしていた。妹は近くのカフェで待たせてある。知り合いが経営しているからだ。多少お世話になっても大丈夫だろう。
    「食料品と文庫本の新刊と――」

    ぽんぽん

    「ん」
    いやに柔らかい感触が背中に当たった。叩かれているような感じだ。振り向いて――
    「!?」
    ミジュマルの着ぐるみが挨拶をした。左手には色とりどりの風船。白い文字で『シラハエ書店』と書いてある。どうやらキャンペーン用の風船らしい。いや、それ以前にこいつ誰だ?
    『おーい、俺だ、俺』
    一瞬新手の振り込め詐欺かと思ったが、この声には聞き覚えがある。ミジュマルが自分で自分の頭部をかぽ、と外した。
    若い男の顔が隙間から現れる。
    「あ」
    「よ、また会ったな」
    「ミツハシさん」
    再び頭部を戻す。普通のミジュマルだ。いやにでかいことを除いて。
    『妹ちゃんは?留守番か?」』
    「いえ、近くのカフェで待たせてあります」
    『ほー、大人だなあ。幾つだ?』
    「俺が高三であいつが小六です」
    遊園地から出てきたばかりの子供達が着ぐるみを見つけた。『わー巨大ミジュマルだー』『やっつけろー』と好き勝手に殴る、蹴る。子供って嫌だな、と思わず頬が引きつる。
    だがミツハシさんの方が子供だった。風船を俺に預けるなり、叫ぶ。
    『こらー何してるんじゃー! ミジュマルパーンチ!』
    子供達が叫びながら逃げていく。俺は頭が痛くなった。風船を返し、とりあえず妹を迎えに行こうとする。
    『あ、ちょいと』
    ミツハシさんが俺のタンクトップの襟を掴んだ。
    「何」
    『今から本屋さん行くか?』
    「シラハエ?まあ。新刊と漫画買いに」
    『そっかそっか。あー…』
    ミツハシさんが急によそよそしくなった。キョロキョロと辺りを見回す。本人は必死なんだろうけど、傍から見ると変な人にしか見えない。いや、ミジュマルか?
    『実はな、そこにいる店員さん…女の子な。この時間帯はレジ打ちしてるはずだから、これ渡して欲しいんだ』
    そう言って頭部から右手を出すミツハシさん。可愛らしい小さな袋だった。
    「渡せばいいんですか」
    『まあな。頼むぞ』
    仕方なしに俺は財布と袋を片手に書店へと足をすすめた。あれ?何でこんなことしてるんだっけ…まあいいか。

    新刊片手にレジへ向かう。カウンターにいる女の人は一人だけだった。カチューシャをした茶髪の女の人。美人だ。ミツハシさんが言ってた人って、この人か。
    「いらっしゃいませ」
    営業スマイル。危うく頼まれごとを忘れそうになった。気を取り直して商品と袋を見せる。
    「あの、この袋、貴方に渡して欲しいって頼まれたんですけど」
    「…」
    驚くかと思いきや、彼女の視線は俺の後ろの方に釘付けになっていた。俺も釣られて後ろを見る。
    「!?」
    店内の客が全員ビビッていた。当たり前だ。ショーウインドウにへばり付きながらこちらを見ている巨大ミジュマル。流石の俺も引いた。そして即座に理解した。この女の人が――ユキコさんなのか。
    ユキコさんはカウンターの下からスケッチブックとサインペンを取り出し、おもむろに何か書き出した。数秒のち、それを片手につかつかとウインドウに歩み寄り、バン、とスケッチブックを叩きつける。

    おそらく、『あっち行って!』とでも書かれていたのだろう。ミジュマルの着ぐるみはすごすごと退散していった。その背中が物悲しいような、情けないような二つの雰囲気を醸し出していて、俺は何を言っていいか分からなかった。
    「貴方、お名前は?」
    「え?」
    ユキコさんに突然そう言われて、俺は返事に詰まった。一度落ち着けてから、声に出す。
    「ナミです。那覇の那に、海の海」
    「そう。ナミくん。綺麗ね。名前も、容姿も」
    「…」
    あまりにもサラリと言われた。容姿について褒められることはよくある。だがこの場合は突然だ。
    「あの、」
    「分かってる。ミツハシくんでしょ?彼、私と同じ大学で、同じシンオウの生まれなの。中学、高校も同じなのよ」
    「へー…」
    意外だった。まさかずっとここまで追って来たとか…
    ユキコさんは本を包んだ後、カウンター下から一つの何かを出した。
    「はい。サービス。シママ消しゴム」

    「こんにちは」
    カフェ『diamante』の店内は、相変わらず空いていた。こんなにもガラガラなのに潰れないのは、マスターの警部時代の部下が休憩時間に必ずやって来るからだろう。
    「いらっしゃい、ナミくん」
    「妹がお世話になりました」
    「いや、いい子だったよ」
    俺は店内を見渡す。いつもここでマスターと話をしているノッポの影がいない。
    「ミナゴシは」
    「今日は部屋の片付けだそうだ。マグマラシが手伝ってくれるから、夜はここで食べるそうだ」
    「そうですか」
    妹がお金を置いた。マスターが右手を挙げる。
    「ユエさんに何か伝言かな」
    「いえ、また来ます」
    「毎度有難う」
    マスターには敵わない。何となくだけど、顔を合わせる度にそう思う。ミナゴシはあの人と年齢を超えた絆で結ばれている。部活じゃあまり笑わない彼女が、ここで彼と話すとよく笑うのだ。
    「ユエさん来てなかったの」
    「みたいだな」
    俺は何故か心の中で黒い何かが渦巻いているような気がしてならなかった。


    数日後、ある大学の食堂でミツハシはラーメンを啜っていた。ここのラーメンが彼は好きだった。醤油だが、そこまでしょっぱくは無い。一人静かに食事をする彼には、他のテーブルの話し声が嫌でもよく聞こえてくる。
    「えー!?ここまで追ってきたの?いやだー」
    甲高い女の声だった。隣には彼女と数人の男性。
    「ユキコ、それって絶対ストーカーの域に入ってるって!キッパリ断ればいいじゃん」
    「ありえねー、別地方まで追ってくるなんて」
    「ユキちゃん、何なら俺と付き合わない?いい相性だと思うんだけど」
    その声が聞こえているのかいないのか、彼女は静かにサンドイッチを齧っていた。

    『ミツハシくん、お手紙ありがとう。私も好きだよ。一緒の高校行けるように、頑張ろうね』

    「…」
    色あせた記憶が目の奥からぽつりと流れてきて、ミツハシは静かに席を立った。

    「ミツハシくん」
    大学からの帰り道、ミツハシは彼女に声をかけられた。変わらない顔が、そこにあった。
    「ユキコ、ちゃん」
    「あのね、さっきの皆の言葉…気にしないでね。私はミツハシくんのこと…嫌いとか思ってないから」
    本人は気付いていないだろう。だが、彼には分かった。微妙な変化。おどおどしているような、怯えているような―

    「…嫌いか」
    「え?」

    パシン

    「っ」
    「何で…何で無理すんだよ!嫌いならそう言えばいいだろ!これじゃまるで俺が…俺が悪者みたいだろ!」
    ミツハシは泣いていた。そのまま彼女を振り返らずに走り出す。大学前の道路。ハッとした時には彼女が追ってきていた。
    そして、その空気を歪ませるような、
    「ミツハシくんっ!」
    「来るな!」

    衝撃。だが不思議と痛みは感じなかった。
    気がつけば、ミツハシの体はコンクリートの道路に叩きつけられていた。
    広がっていく真っ赤な影。眼鏡は割れていて使い物にならない。
    何だ何だと野次馬が集まり、あっという間に道路の中心に人だかりが出来た。だが、誰も彼を助けようとするものはいない。
    「ミツハシ、くん…」
    頭と口から血を流し、全く動かない。ユキコが崩れ落ちた。右手を掴む。
    「どうして、どうして… こんなことにならなきゃいけないの?何でミツハシくんがこんな…」
    涙が溢れてくる。彼の手から温かさが引いていく。熱い涙がいくらかかったところで、再び手が熱を帯びることはない。
    「ミツハシくん…」


    死んだら、許さないわよ…?


    数日後。ユキコはいつも通りシラハエ書店でレジ打ちをしていた。だが平日とあってあまり人の姿は見えない。夕方になれば漫画や雑誌を立ち読みする学生を追い出すので忙しくはなるが…
    ピンポーン、という音がした。店のドアが開いたチャイムだ。
    「あ、いらっしゃいま…」
    ユキコの顔が曇った。目の前に立っている人影。服装はこの前会った時とは違う、学校の制服だ。だが、顔は忘れていない。
    「ナミくん」
    「こんちは」
    ナミはおもむろに側に置いてあったハードカバーの新刊を手に取った。ピジョンに囲まれている女性の肖像。題名は『私とピジョン 一年日記』作者名は―― なんばじゅうなな?
    「これ、カバーかけてくれ」
    「千二百十円になります」
    「なあ」
    ユキコの手が止まった。ナミが仁王立ちでこちらを見つめている。相変わらず顔立ちは綺麗で、でも目つきがいつもより鋭かった。そのまま射抜かれてしまいそうな感じだ。

    「ミジュマルのミツハシさん、死んだって知ってるか」

    嗚咽を漏らさないようにして話すのが精一杯だった。「ええ、知ってるわ。 その場にいたもの」
    「噂じゃ、自ら突っ込んだってことになってるけどな」
    「違う! ――彼は、私を庇って死んだのよ」
    カバーに雫が落ちた。目元を拭うと、また新しいカバーを取り出す。
    「何でそんなことしたのか… 俺は当事者じゃないから分からない。だがその時どう判断するかでそいつの命にも関わってくるっていうのは確かだな」
    「多分、ミツハシさんが死んでなけりゃ、アンタが死んでただろ」
    「そしておそらく今俺と話していたのは――」
    「やめて!」
    ユキコが叫んだ。ナミは見下すような視線を向けている。
    「泣き叫ぶだけか。それで終わりか。何でミツハシさんがアンタを生かしたのかは考えないのか」
    「…」
    「アンタに、生きていて欲しかったからだろ」
    長い腕が、カバーされた本をレジから取り上げた。器用に手を使い、代金をユキコの目の前に置く。
    「人って残酷だよな。何かを叶えるためなら、どんなこともする。他人を蹴落とし、蹴落とされ、足掻き、それでも這い蹲って前へ進む。
    アンタもそうしてみろよ。せっかく生かされてるんだ。アンタにしか出来ないことを――」

    シラハエ書店の前でナミは、小さく呟いた。
    「少なくとも俺はそうしてきた。親父とお袋が全てをかけた守ってくれた命を―― 無駄にしないために」


    放課後。
    「確か、ここらへんだったな」
    「うん」
    妹を学校へ迎えに行ったその足で、ナミはバイクを飛ばしていた。ライモン郊外。季節が変わっていくのが、空の色と木々の色で分かる。現時刻は午後五時半。
    ナミと妹以外に人影は無い。ナミは鞄の中からミルタンク印のミルクと、御握りについていたシナシナになった海苔を取り出した。
    「おーい、ユキコちゃーん、餌持ってきたぞー」
    「いるなら出てきてー」
    曲りなりにも高三の男子がこういうことを言うのはかなり恥ずかしい。だが、それよりも安否の方が気になった。ミツハシが最後にいつ餌をやったのかが分からないのだ。
    「手分けして探すぞ。そろそろ暗くなってくる」
    「分かった」

    ナミは跳ね橋側を捜索していた。この巨大な橋を渡れば、隣のホドモエシティへ行くことができる。だが、ここ数日跳ね橋は上がったままだという。
    「あの体で泳ぐことも出来ないだろうしな…」
    夕日が沈む。影に隠れてあまりよく見えない。早いところ見つけなくては、野性ポケモン達が騒ぎ出す。
    「ユキコちゃーん…」
    その時、後ろからガサガサという音が聞こえた。思わず振り返る。
    「!」
    だが、ミミロルではなかった。一匹のヤブクロンだった。人に慣れていないのか、怯えた顔でこちらを見つめている。
    「なあ、この近くにお前達の仲間じゃないポケモンがいたのを見なかったか?探してるんだ」
    ポケモンが人の言葉を分かるかどうか。だが、今は可能性があるならそれに掛けたかった。
    ヤブクロンはしばしナミの顔を見つめた後、おもむろに後ろを向いた。そのままピョンピョンと跳ねていく。ついて来い、と言っているようだ。
    「…」
    ナミは歩き出した。


    「兄さん!こっちは見つから…」
    妹の声が後ろから響いてくる。相変わらずよく響く声だ。だがその声もすぐに消えていく。
    「兄さん…?」
    「美海、」
    妹…美海は兄であるナミの背中を覗いた。そして、息を呑んだ。
    綺麗だった毛並みは何処にも無い。風雨にさらされ、ボロボロになっている。以前見た時の体系とは一目で分かるくらい、やせ細っている。
    「ユキコ、ちゃん…?」
    「ああ」
    美海はそっとユキコに触れた。手を引っ込めることなく、そのまま撫でる。
    「こんなにやせ細って… 何日も食べてなかったのね」
    「食べようと思えば周りの木の実も食べれたはずなんだがな…」
    「きっと、ミツハシさんが持ってくる物が大好きだったのよ。 ううん、ミツハシさんが持って来てくれることが、何より幸せだった…」
    美海が顔を覆った。そのまま嗚咽が漏れる。雫が冷たくなったユキコの頬を濡らす。ナミは美海の肩を抱いた。
    「ああ…」

    きっと、こちらのユキコは、ミツハシさんを待ち続けていたんだ
    トレーナーを信じて、待っていたんだ…


    数時間後。カフェ『diamante』の店内で、マスターが頭を抱えていた。カウンターでゼクロムを飲んでいたサクライが笑う。
    「クロダさん、どうしちゃったんですか、その二人。十分前にドロドロ、目元は真っ赤の状態で帰って来て、マスターに抱きついて…
    こんな場所で寝ちゃうんだからなあ」
    「クロダはやめろ。…まあいい。今夜はソファ席はこの二人の貸切だ」
    マスターは裏へ行くと、一枚のタオルケットを持って来た。そして、表のパネルを裏返す。
    「お、じゃあ俺も夕食ここで食おうかな」
    「言っておくが、奢りは無いからな」
    「えー」
    カップを下げようとしたマスターの目に、二人の寝顔が飛び込んで来た。少し驚いた後、フッと笑う。
    「久々に見たな。こんな顔は」
    「おー… そうですね」


    「いい夢でも、見てるんですかねえ」


      [No.1900] 陰から覗く日向 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/09/22(Thu) 21:37:38     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5






     私の腕を木の枝がかすり、手を木の葉が切り裂いていく。
     ――気にした事ではない。もうすでに、私は体中傷だらけなのだから。



     これまでに、何度かポケモンハンターに追われた経験はあった。自分が比較的珍しい種族であると自覚していたし、なにより普段からハンターではなくとも追われる事は多かった。トレーナー、そのポケモン、野生のポケモン。そしてその原因が自分の能力――“ナイトメア”という、私達ダークライのみが持つ特性にある事も知っていた。
     この特性のせいで、一ケ所に長く留まることもできない。各地を転々とし、時には追われ、生きてきた。

     すさまじい恐怖感から逃れたくて、ただひたすらに森を突き進む。追ってきてはいないだろうか? 体力の限界が来れば、もういつ動けなくなってもおかしくない。できるだけ遠くへ。受けた傷の痛みと、疲れからのだるさ、眠気で、少しずつスピードが落ちているような気がしてくる。ふと、恐ろしさが心に触れてまたスピードを上げる。……何度繰り返しただろうか?

    『ゼイ……ハアッ』

     息が苦しい。どこかで休みたい。
     今回の相手はどうやら、最初から私を捕まえるために追ってきたようで、手持ちのポケモンやその本人もまた、相当な熟練だった。つけられていた事自体、迂闊だったのだろう。不意に襲われ、ぎりぎりのところで撒いてきたが、ダメージが半端でない。

     身体に降りかかる陽の光を感じ、急停止する。上を向くと、木の葉が無く、昼間の青空が見えた。森の中のちょっとした空き地に出たのだ。そこには長い下草も無く、木が一本生えているのみ。反射的にその木に寄りかかる、というよりも身体が言う事をそこまで聞かず、根元に倒れこんだとする方が正しい。しばらくたったらまた逃げなければいけないだろう。だが、ずっとこうしていたいという思いが心の片隅にあるほど、自分が疲れきっているのを感じた。

     どれくらいそうしていただろうか。もしかしたら、少し寝てしまったりもしたのかもしれない。
     目の前の草むらから聞こえる物音で、私は現実に引き戻された。刺すような恐怖感に襲われ、無意識に身体が震えてしまう。攻撃してこない相手であることを祈るしかない。この状態で攻撃などされたら、まず勝ち目などあるわけないのだから。動こうとしたが、無駄だった。力を入れても、鈍い痛みが身体のあちこちに響くだけ。もう本当に動けなくなってしまったのだ。頭の中が痺れたように真っ白になった。草むらが揺れる音は確実に近づいてくる。そして、ついに目の前の草むらが揺れ、現れたのは――
     一匹の、ロトムだった。

    『――ッ!』

     頭が痺れたようになって、全身に緊張が走る。ポケモンなら、選択肢は二つ。襲い掛かってくるか、私に恐れをなして逃げるか。そのロトムは私に気付き、驚いた顔になった。

    (え……キミ、大丈夫? 傷だらけだよ!?)
    『……?』

     今、彼は何と言った? 

    (待ってて、ナツキを連れてくるから!!)

     そう言うとロトムはあわてた様子で、今出てきた草むらにまた飛び込んでいった……。
     身を心配する言葉をかけてもらった事など、今の今まで一度もない。彼は……私の特性を、種族を、知らないのか?もしかしたら、これは私が浅く眠って見ている、夢なのではないだろうか?それとも、ただ逃げるための嘘だったのか。
     さまざまな考えが、頭の中を駆け巡った。

     突然の足音が、自分が考え忘れている事を気付かせる。“ナツキ”というのは、人名なのか? さっきのロトムは、トレーナーの手持ちなのだろうか。トレーナーによっては、私を殺す指示を手持ちに出す事もありうる。

    「……本当に、こっち?」
    (こっちだよ!!)

     少女の声だろうか。女のやや高い声と、さっきのロトムの声。おそらく、ロトムがその女性を案内しているのだろう。
     目の前の草むらから現れたのは、ロトムと、日に焼けた少女。薄めの茶髪の髪が、頭のてっぺん近くで短く一つに束ねてある。年は十、十一くらいだろうか。少女は私を見ると何も言わずにかがみこんで、倒れている私を見下ろすような姿勢をとると、手を伸ばした。すっ、と突然腕を取られ、身体がびくっと反応する。が、気にも留めない様子で私の傷だらけの腕を持ち見つめながら、彼女は肩を動かし背負っていたリュックサックを地面に下ろす。隣のロトムが、赤い十字の印の付いた白い箱を中から取り出した。

    「えーと、消毒液と包帯とって」

     少女が言った言葉はそれだけ。ロトムからそれらを渡されると、あっという間に私の両腕を消毒した後包帯でくるくると巻き、必要な事をてきぱきと全てやってしまった。
     手当てが終わるころには、もう殺されるとか、そんな警戒心は持っていなかった。――私の特性を知られるまでではあるが。どうやらこの少女たちは、ダークライという種族を本当に知らないようなのだ。まあ、彼女のおかげで助かったのは事実。礼は言っておくべきだろう。少女はうーん、と曲げていた膝に手を当て、伸ばした。

    「もう大丈夫だよ。あ、私ね、ナツキっていうの」

     にっこりと微笑む少女。

    『すまない、手当てまでしてもらって』
    「あれ、日本語話せるんだ? 珍しいね」

     私の言葉は、人間に通じる。まあ、話し相手になる人間は、これまで会ったことは無かった。

    「ま、ダークライ自体珍しいからかなー」

     ナツキは笑顔のまま言ったが、私は身体が硬直する思いだった。周囲の空気が、凍りついたような気がする。彼女は、私の種族を知っている……? なら、特性は……? 無意識のうちに身体に力が入り、腕につきん、と痛みが走る。

    「あ、動いちゃ駄目!! ……ちょっと、いいかな」

     驚く私に対して、ナツキはさっきのようにもう一度かがみこんだ。

    「あなたの特性も知ってるよ。でも、私は知ってて助けたんだよ? いまさら襲う必要なんて無いじゃない」
    『…………』

     確かに彼女が言う事は、考えれば普通の事。だが――
     本当のことを言うと、信じられなかった。というよりも、信じたくなかった。裏切られたくなかった。彼女は、私の特性を知っている。知っていても、私に手当てをしてくれた。……なら、一緒にいたとして、本当に悪夢を見せてしまったら、彼女はどうするだろうか……。悲しい事に、私が生きてきたのは、信じるということを許されなかった、暗い陰の中の世界。

    「ハンターに襲われたんでしょ? その傷、治るまで一緒にいてあげるよ。ポケモンセンターには行きたくないでしょ、人の沢山居る所には」

     確かに、人目に付く所には行きたくない。しかし、それよりもこの彼女自身が一番心配だった。私に初めて、優しく接してくれた少女が。
     まだ浮かない表情をしているであろう私に、ナツキはもう一つ言った。

    「私ね、ホウエン地方から、旅をしてるんだけど」

     ホウエン地方。ここから遠く、南にあるという一年中緑が絶えない場所であると聞いたことがある。彼女は、そこからはるばるこのシンオウまで旅をして来たと言うのだ。

    「あなたを、連れて行きたい所があるんだ」
    『連れて行きたい、所…?』

     つい、私は好奇心に負けてしまったのだった。



     周囲は森だった。

    「見つけたぞ」

     ハッと振り向くと、無精髭を生やした男。何かバイクのような、変わった形の乗り物に乗っている。

    「数ヶ月、追ってきた甲斐があったなぁ。まあそれだけの価値があるだろ。捕獲、しくじるなよ」

     男は、手に取ったボールから、数匹のポケモンを繰り出す。……価値? 捕獲? ふざけるな。身の自由を奪われるなんて、どんな形でもごめんだ。両手からダークホールを繰り出す……が、瞬時に相手の技に相殺される。逃げるしかないと確信し、振り返るとそこはもう森ではなかった。無機質な壁に囲まれ直線に伸びた、暗い道。この道を逃げろと、直感が告げた。
     後ろから幾つもの技が飛んでくる。直前で避けたりもしたが、背中に命中する。腕をかすっていく。しかし私は止まらなかった。進むうちに光――出口らしきものが見えてくる。しかしその直後、すさまじい電撃が私の動きを止めた。身体が重力に逆らえきれなくなった私は、なすすべもなく墜落した。後ろから飛んでくるのは、私の意識を無くすための最後の一撃。



     がばっと、文字通り飛び起きた。
     心臓が落ち着いてから、記憶をゆっくりとたどる。――ここはナツキの張ったテントの中だ。昨日、あの空き地にナツキはテントを張って、そこで野宿をしていたのだ。記憶が戻るにつれ、冷えた身体が徐々に温まっていくような感覚だった。悪夢を見せるもの自身が悪夢にうなされるとは。少し自嘲的な笑みが漏れる。
     外は薄明るい。ナツキは隣でまだ寝ている。その顔はうなされているような顔でも、なんでもない寝顔だった。ナイトメアは、はたらいていないのか? まあ、考えるのは後でもいいと思った。眠気もあの夢のせいで覚めてしまったので、外に出てみることにする。

     外に出て、少しの間動けなくなった。まず目に入ったのは、黄金色の光。眩しいが、でも昼間の太陽よりは弱い、日の出の初々しいような光。空は淡い水色。入道雲は、朝焼けの光で朱鷺色に染まっていた。……なんとなく、その透き通った風景に見入ってしまっていた。

    (ふあぁ……ダークライって早起きなのねー)

     隣にいたのはメスのアブソル。ナツキの手持ちの一匹だと、昨日紹介された。空に見入っていて、喋られるまで気付かなかった。なんとも眠そうな様子。なんというか、緊張感がまるで無い。悪夢にうなされて起きてしまった、と答えるのも流石にどうかと思ったので、いつもこうなんだ、と答えておく。

    (ねえ、ダークライって空を見るのが好きなの?)
    『いや……今日はたまたま綺麗だったからな』

     いつも、景色を眺める事などめったに無い。というよりも、気にする事が無かった。自分でも、今朝の空の色に惹かれたのは不思議だと思う。しばらく黙って、二人で空をそのまま見つめていた。

    (幸せな時の風景って、綺麗に見えると思わない?)

     アブソルは、ぽつっと呟いた。その目は、何を思っているのか遠い風景を見ている目だった。
     彼女の言葉が合っているのなら、私は今、幸せを感じてでもいるのか。その感覚自体、馴染みが無い。むしろ違和感さえ覚えるかも知れない。

    (そういえばさ、ダークライって悪夢をみせるんだよね?)

     不意にアブソルが聞いてくる。私の心の内を思ったのか、別に私は見なかったよ、と付け足す。

    『お前は、災いを感じ取るんだろう?』
    (そうだよ)

     アブソルという種族は、耳にしたことがある。なんでも、姿を現すと災いが起きるというので、人間に毛嫌いされているというのだ。

    (私はこの能力のせいで、両親を殺されたの。最近はまだ、人間もそれほどでも無くなってきたんだけどね)

     この、親しみやすいような、緊張感の無い喋り方と性格のアブソルが、過去にそんな目に遭っていたとはとても信じがたかった。彼女の気持ちを思うと、まともに表情を見ることができない。

    (あなたの方も、けっこう酷い話じゃない? 悪気は無いのに、防衛手段として身についた能力で、人に悪夢を見せては嫌われるなんてさ)

     アブソルは、似たような境遇にいる私を理解してくれている。本当のことを言えば、アブソルという種族は人間には嫌われても、ポケモン達から見ればそうでもないのだろう。災いをいち早く感じ取り、身の危険を知らせてくれる存在なのだから。そのことはアブソルは口にしなかった。私も、正直そんな事は本当にどうでもよかった。人に忌み嫌われ、辛い思いをしてきた事はどっちにせよ、同じなのだから。なら、彼女も、私も一番信頼している人間の……

    『ナツキとは、どういう風に出会ったんだ?』

     アブソルは、うーんと唸って、何か悩んでいるようなそぶりを少し見せた。

    (出会った……っていうと、なんというか、幼馴染なのよね)

     ナツキが生まれたのは、ホウエン地方の、山奥の村。古い習慣が残るそこで暮らしていた彼女は、早くに両親を亡くし、親戚に助けられながら暮らしていた。幼いころから山に入っては、ポケモン達と遊んでいるうちに友達になったのが子供のアブソル。当時の彼女は、村のおきてなど知るよしも無かった。……アブソルは、退治しなければならない。災いを呼ぶのだから。おきてを知ってからは、彼女にとってアブソルは“秘密の親友”。幼いころのナツキとアブソルは、こういう関係だったらしい。

    (私たちが村を出たのはね……)

     ナツキが九歳のときの事。人前に出て吼えれば、即座に鉄砲で撃ち殺されてしまうアブソルの一族は、もうこの一帯にはほとんど残っていなかった。唯一の生き残りであった、彼女の友達、そしてその両親のアブソル。
     ある日、その両親は災害を感じた。――この一帯に雨が降り続き、大規模な土砂崩れ、酷ければ山崩れが起きる。
     しかし、人前に出れば自分たちはすぐ殺されてしまう。せめて、娘だけでも生かしたい。そう思ったその両親は、子供を彼女に託した。アブソルを見ても人々が撃ち殺したりしない遠い所へ、連れて行ってほしいと。
     彼女は、故郷を捨てて、アブソルと一緒に逃げ出した。もともと、父母もいない。親戚からは、年頃になれば嫁に出されて、用済み。大きくなるにつれて、辛い現実も分かるようになっていた。どこか広いところへ行きたかった。そう、ナツキはアブソルに語ったのだ。
     土砂降りの雨が降りしきる中、村に背を向けたアブソルとナツキが最後に聞いたのは、両親の遠吠えと、二発の銃声。



     話を聞くと、想像していた以上に酷い過去だった。そんな古い習慣を持つ村が、まだあるのか。ただ、話を聞くと、気になるところがある。

    『ナツキは、お前の言葉が分かったのか?』

    (伊達に幼馴染やってるわけじゃないもん、気持ちはちゃんと通じるよ。もちろん今もね)

     友情で、相手の心が分かる。なんという羨ましい関係だろう? 出会った相手に心が通じた事など無かった私は、そう思ってしまった。いくら言葉が人間に通じても、である。

    『……友情、か』
    (大丈夫、ダークライにもきっと分かるよ)

     笑顔のアブソルは、確信した口調で私に言った。

    「ふあ……おはよー。あれ? アブソルとダークライ早いねー」

     テントからナツキと、ロトム、そしてジュゴンが出てきた。このジュゴンも、彼女の手持ちのようだ。ポケモンと飼い主……もといトレーナーは似る、とはこういうことだろうか。彼女と、さっきのアブソルの仕草がそっくりで、私は笑ってしまった。

    「……何笑ってるのよぉ」

     ナツキもポケモンも、みんな笑い出した。“笑う”という事自体、ずいぶん久しぶりな気がする。心が暖かい。彼女らといると、陽の光に当たっているように心が暖かくなっているのが分かる。
     朝日はすでに昇りきって、辺りは明るくなっていた。



     テントを片付け、簡単に朝食を食べた後、少し歩くと小さな町に出た。アブソル達は、もちろんボールの中。私はどうしたかというと、ナツキの足元の影に隠れた。雑踏の中を、ナツキは進んでいく。どうも人ごみの中を進むのは苦手なようで、町のポケモンセンターに着くころには、彼女はフラフラになっていた。とりあえず今夜の宿、センターの個室を借り、ベッドにぼふんと倒れこむナツキ。個室は小ぢんまりとした、ベッドと机と椅子がある程度の一人部屋だった。

    「暑苦しいし……疲れたぁ……眠…い」

     それだけ途切れ途切れに呟くと、すぐに寝息を立て始めた。長く旅をしているだけあって、いつでもどこでも眠ることができるようだ。そのままにしておいてやることにする。その時私は気付いていなかったが、やはり彼女はうなされていなかったのだ。
     彼女の腰のボールから突然、音を立てて光と共にポケモン達が全員出てきた。それでもナツキは目を覚まさない。

    (ボールの中よりもやっぱ外の方がいいわ)
    (まあ、あの人ごみだったし……いくら私達外にいるのが好きっていっても、しょうがないと思う)

     ナツキは普段、あまりポケモン達をボールに入れることはしないらしい。その彼女が寝ている時に、彼らに聞きたいことがあった。

    『ナツキが私を連れて行きたい所があると言っていたんだが、知っているか?』

     彼らはお互いに顔を見合わせた後、私を見て言った。

    (知ってるよ)
    (でも、私達からは言えないわ)
    (ダークライもきっと気に入るよ。素敵な所だもん)
    『素敵な所……』

     呟くと、ニッコリした顔でアブソルはうんと頷く。

    (その時までの、お楽しみにしといて!)



     ナツキの横顔に、目を落とす。
     ――何故、お前は私のことを助けてくれたんだ?

     その問いかけは声になる事も無く、私の心の中にとどまった。まだ彼女に聞いていないこと、聞きたいことが沢山ある。何か彼女の中に、訳がある気がした。それこそ単なる同情などではなく、もっと深い、それこそ私が長く味わったような深い闇を。…罪、という言葉が自然に浮かんだ。
     その考えを私は振り払った。今まで見た彼女の表情が浮かんだとき、暗い顔をした表情は無かったからだ。知らないだけかもしれない。が、やはり暗い顔のナツキは思い浮かべる事ができなかった。彼女には、明るい顔が一番似合う。単に自分が疑い深いだけだろう。
     そう自分に言い聞かせても。伸びをしたナツキが目覚めるまで、私は物思いから覚める事ができなかった。



     町に少し出て昼食を食べてから、ポケモンセンターに戻ってきた。
     センター内のレストランで夕食を食べた後、私達は部屋に戻り、ゆったりとくつろいでいた。私以外のポケモン達は、もうボールの中で眠っている。昼間、気になった思いを素直にナツキに聞いてみた。……一瞬彼女の顔に陰がかかったような気がして、少しどきっとした。

    「私がね、ずっと昔、村で暮らしていた時の話なんだけど…」

     するとナツキは、自分の生い立ちを突然語り始めたのだ。アブソルからも聞いた、あの話を。

    「アブソルと仲良くしてたのね。ずっと秘密の友達でいるはずだった。なのに、バレちゃったの。私が、災いを呼ぶポケモンといつも遊んでるってことが」

     ……秘密の友達という関係は、外にばれてしまったのか。
     災いポケモンと、遊ぶ子供。同じ世代の子供達の目には、どう映るか?
     ――「あのおねえちゃん、ポケモンなんでしょ?」と指を差される幼いナツキが、容易に想像できた。


    『――お前は、本当に人間か?』

    『この辺りに、まだアブソルが残っていたのか!』

    『どうして言わなかったんだ! まさかお前も、災いを呼ぶんじゃないだろうな!!』


     いつの間にか私は、数人の大人に囲まれていた。唾を飛ばすほどの大声で、私を罵っている。
     …違う、罵られているのは、私の足元にいるナツキだ。ずいぶんと容姿が幼い。でも、一目で彼女だと分かる。これは、ナツキの記憶なのだ。私のナイトメアが、彼女の記憶を映し出しているのか。あるいは、私自身が夢を見ているのだろうか。夢にしては、随分とはっきりしている気もするが。
     私の足元にいるナツキとは別に、今のナツキは私の一メートルほどの所にへたり込んで、顔を手で覆っていた。

    「私がばらさなければ、アブソルのお父さんとお母さんは……っ」

     “ばらした”のは、彼女自身なのか!?

    「死なずに済んだかもしれないのに……!」

     泣きながら言うナツキ。……体が、今にも消えてしまいそうに透明になっている。今まで見たどの表情とも違う彼女に、驚くしかなかった。普段は、あんなに明るい顔で笑っているというのに。私自身はというと、頭が混乱するばかりだった。

    『でも、彼らが撃ち殺されたのは、災いを知らせるために人前に出たからじゃないのか?』

     アブソルから聞いた話では、そうだったはずなのだ。

    「それもあるけど、違う。それより前に、私がアブソルが生き残ってるって事を、言っちゃったから。一番の友達だった、幼馴染に」

     ナツキは、手で涙を拭いながら答えた。すると突然、場面が変わった。どうやら、彼女の意思によって風景が変わるようだ。
     幼いナツキと、隣を歩くもう一人の女の子。その女の子が、幼いナツキにたずねた。

    『ねえ、なっちゃんさぁ、いつも山に行ってるよね、何してるの?』
    『友達とね、遊んでるの』
    『山に友達がいるの…?』

     その女の子は、いぶかしげな顔になった。

    『うん。これね、他の人には秘密だよ。…私の友達はね、アブソルなんだ』
    『アブソル!?』

     ナツキの、恐々といった感じの返答に、文字通り飛び上がる幼馴染。

    『でもね、全然怖くないよ。優しいもん』
    『そうなんだぁ…。分かった、言わないよ。約束する』

     ほっとする笑顔を見せながら、指きりげんまんをするナツキ。…これか。
     “裏切られたこと”それ自体、彼女には信じ難い事実であっただろう。それに、自分自身が親友を“知らせて”しまったこと……。

    『こいつに知らされたんだな、お前の友達がアブソルだと』
    「そう……裏切られてたの、最初から」
    『最初から?』
    「その子の親はその子に、私に近づくように言って、私のことを探ろうとしていたの。両親のいない、ポケモンの子のことを。アブソルがまだ生き残っている事を大人達に知られて、結局アブソルのお母さん達は撃ち殺されるしかなかった」

     ……やはり、彼女は暗い影を感じたことがあったのだ。それも、私よりもっと酷いかもしれないほどの。だから、私の心も理解してくれた。そして、今だ消える事のない、裏切られた憤り、罪悪感……。
     思わずナツキに近寄り、肩を掴んだ。透き通って消えてしまいそうな体だが、触れることができて多少安心した。

    『でも、アブソルの母親達が助けられなくても、ナツキは私を助けただろう!?』

     私の目からも、涙がこぼれていたかもしれない。
     はっとした様に、ナツキは顔を上げ、そして、涙で顔を濡らしたまま、微笑んだ。

    「…ありがとう」



     気が付くと、床に寝ていた。窓から差し込んでくるのは、朝日。……夢、だったのか?
     起き上がると、ナツキはすでに起きていて、髪をとかしている最中だった。目を合わせると、いつものような笑顔になった。

    「おはよっ」

     昨夜の出来事は、やはり現実だったのだ。微笑む彼女を見て、直感だが、でもそう確信した。
     ナツキは笑顔のまま、私に言った。

    「なんかね、報われた気がするんだ……ダークライのおかげだよ。ありがとう」

     あの夢(だったのだろうか)の中のように、もう一度言われた。
     身支度を整えた後、ナツキはセンターの個室を出て、目的地へ出発するよと言ったのだった。



     薄暗い雑木林を、無言で進んでいくナツキ。私は後に続く。細々とした、人が二人ほど並んで歩けそうなほどの道をゆっくりと。時折、ナツキの足元の落ち葉や枝がパチパチと音を立てた。それ以外の音は聞こえない。鳥ポケモンのはばたきや、何か別の気配を感じたりもする。が、何故かその音さえも沈黙を深くしているように思った。
     その沈黙が、これから何かが起こるであろう事を示しているようで、なんとなく胸騒ぎがした。私の心を感じたのか、ボールから勝手にあの三匹が飛び出した。ナツキは、もうすぐだもんね、と言っただけ。
     気が付けば、小道の先に見えているのは、白い光の差し込む出口。

    (ダークライ先に行けば?)

     アブソルにうなずき、ナツキを追い抜いた。白い光が、身体に近づいてくる。雑木林の出口の向こう――



     やっと、出られる。



    『……! ここは……』


     ――そこは、一面の向日葵畑。

     背の高い、向日葵が咲き乱れているのだった。
     一面の黄色は、陽の光でまるで黄金に輝いているようにも見えた。暗い林を抜けてきたせいで、眩しくも感じる。それほどの黄色。

    『ナツキ! ……?』

     目を疑った。疑わざるをえなかった。

     私がナツキ達の方を振り向いたとき、ナツキと、アブソル、ロトム、ジュゴンの身体は――透き通っていた。ナツキが、夢の中で泣いていた時のように。身体の向こうに、今さっき進んできた林の木々が見えているのだ。
     彼女が地面を蹴ると、その身体はふわっと、まるで重力を感じていないかのように“浮き上がった”。

    「黙ってて、ごめん」

     宙に浮くナツキが、語りかける。向こうに透けているのは、夏の青空と、入道雲。彼女の身体を通して見ているのに、いつかの朝焼けのように鮮明に、美しく見えた。きっと今私は、驚きで目を見開いた表情のままに違いない。

    「私はね、今から二十年前死んでるの。それから、姿かたちは変わってない」

     今の彼女を見れば、一目で人間ではない何かであることが分かる。が、目の前の光景を見ても、その自分が見ている事の理解に苦しんだ。ただこれで、一つ納得がいくことがある。私のナイトメアがナツキ達に効かなかった理由だ。彼女達は、すでに生きてはいなかったのだ。だから、夢も見なかった。そう考えれば、説明が付く。死んだのが……二十年前。アブソルが古い風習で狩られていたのは、そのもう少し前になる。

    『おまえは……幽霊なのか?』

     ナツキは浮いたままクスクスと笑う。

    「この世に未練があった訳じゃないよっ。私達はね、“向日葵前線”なんだ」
    『向日葵前線?』
    「毎年夏になると、南から北へ上っていって、向日葵を運ぶんだ。南風を引き連れて、ね」

     南から北へ、というあの言葉。あれは、ナツキの生前の旅と、向日葵前線、二つの意味があったのか。

    (今年は、ちょっと遅れ気味になっちゃったかな? 普段はけっこう飛んだりするんだけど)

     隣で同じように透き通ったロトムが言う。

    「ううん、異常無し、だから大丈夫」

     しかし、何故ナツキが?

    「それが、今でも分からないの。でもね、何でなっちゃったのかも分からないけど、別に後悔なんてしてないよ」
    『後悔してない、か……』
    「だって、ダークライみたいな、素敵ポケモンとたくさん出会えたもんね」

     周りのポケモンたちが、笑顔で頷く。

    『……罪滅ぼしだと』
    「?」
    『罪滅ぼしだと思えば、楽じゃないか? 他人を悲しませた分だけ、他人を喜ばす向日葵を運ぶんだと思えば』

     少し言葉に戸惑ったが、言わずにはいられない何かがあった。

    「ダークライって、本当に優しいよね」

     ナツキは目の前に降りて来ると、私の手を握った。もう透明な、すかすかした手で。彼女を見上げると、その身体の色が、徐々に薄くなっていた。シンオウは、北の地。彼女達の旅もここまで、ということなのだろう。

    『……またいつか、会えるか?』
    「大丈夫、約束する。あ、私の“ナツキ”って名前はね“夏希”――夏の奇跡って書くんだ」

     その言葉を最後に、握っていた手が、身体が――彼女達はふっと、わずかな光を残して消えてしまった。
     奇跡を、信じたい。またいつか、彼女達と出会える奇跡を……。ポタッと、自分の腕にしずくが落ちる。初めて、自分が泣いていたことに気付いた。



     風に揺れる向日葵畑を眺める。黄金に輝く、向日葵畑。陽の光の下へは出られぬ私。出口へ連れ出してくれたのは、向日葵前線ことナツキ。彼女もまた、暗い陰の中から出る事を望んでいたのだ。

    『日陰の中からだとさぁ、日向って明るく、綺麗に見えるよね』

     ナツキの言葉が、頭の中に響いた気がした。
     そう。でも、陰の中から見る景色はただ見ているより、その場に行った方がずっといいのだ。冷たい陰より、暖かい日向がいい。夏の日差しのように暑くとも、向日葵のように堂々と花開けばいいのだ。明るいということは、とてもありがたいものなのだから。








     向日葵の花言葉を知ることになったのは、それから随分後だった。

     ――『あこがれ』



    ――――
    はい、無茶振りを受けてからどれだけ経ったでしょうか。11111字完成です。流月さん本当にお待たせしました。

    ・紀成様から『向日葵前線』を書かせていただく許可をとったのに、もう九月終わるよー
    ・中二病バリバリダーどころの話じゃないと思う

    実は、「明るい少女とダークライ」の構図は、ポケモンの小説を読んで間もない頃の小四くらいの時の私が、一番初めに考えた自分の小説の構図でもあるのですw。超大幅に改造して、やっとここに投稿できました!レベルとかはまあともかく。好きに書かせていただき、流月さん本当にありがとうございました。


    【書いてもいいのよ】 【描いてもいいのよ】 【どうか感想をください】


      [No.1899] 審査員応募 投稿者:渡邉健太   投稿日:2011/09/22(Thu) 01:34:01     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どーも、こんばんは。
    No.017さんから連絡をいただきまして、なんでも作品がぜんぜん集まっていないと。

    それは審査員としてたいへん都合がいい(笑)。

    楽させてもらっちゃってすみませんが、その分だけ一作品をじっくり読みますので、よろしくお願いします。
    __

    回を重ねるに従って、作品の質は上がっていますが、決して参加の敷居を上げるものではありません。
    みなさんが気軽に作品を発表し、それに評が付くことにメリットや喜びを感じてほしいと思っています。

    言葉を思うように扱えないのなら、たくさん書くしかありません。
    ひとつひとつの文章をより有意に向上させたいのなら、多くの評をもらうしかありません。

    思うに、この企画はいいことだらけです。
    残りの期間で多くの投稿が集まるように、期待する次第です。


      [No.1898] 586さんテンプレ通り強制参加 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/09/21(Wed) 01:21:50     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    586さんは強制参加させられたようです。
    犠牲になったのだ。


      [No.1897] パニックは見る方が面白い 投稿者:マコ   投稿日:2011/09/21(Wed) 00:09:28     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    こんばんは、オルカさん。
    レスありがとうございます。
    爆笑して頂けた様で何よりです。


    先ず、木の実詰め合わせを送った人は、多分7人の活躍によって助けられたから、お礼を込めて送った、という感じの様です。


    次に、マイコちゃんは確かに主人公ですので、不運が振りかかるっていうフラグはあるかもしれないです。バトルは別ですが。


    後、「ひいー、水が欲しい水下さい水をくれ水頂戴水みずミズmizu I want water!」は、書いているはずの自分でも爆笑していました。
    マイコちゃんの切羽詰まった様子を表したかったのです。


    最後に、あの7人に関しては、運試しの本能というより、マトマへの好奇心が強かったのです。
    ただ、ああしてやること自体、若気の至りです。
    余りの辛さに、火を噴かない様、気を付けましょう。

    それでは、またお話楽しみにしてます。


    追伸 モモンやマゴ、ナナなら食べてもきっと大丈夫です。(つまり甘い木の実)


      [No.1896] これぞ最強☆ダイエット 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2011/09/20(Tue) 21:52:53     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     こんにちは! 私はポケモントレーナーのトウコです。最近まで普通のトレーナーでしたが、今はモデルとしても頑張ってます。カミツレさんには及びませんけどね。

     さて、今回雑誌『ポケモンのとも』に書くのはズバリ! 「誰でも痩せる最強☆ダイエット」の紹介です。私もこれを始める前はどこにでもいる女の子でした。それが今ではこんな仕事をできるまでになったのです。手軽に始められるのでおすすめですよ♪

     では手順を説明します。必要なものはオスとメスのポケモンを1匹ずつ。タマゴグループが一緒でないといけないので注意してください。また、自転車や「そらをとぶ」を使えるポケモンがいると一層はかどりますよ。

     まず、オスとメスのポケモンを育てやさんに預けます。そしたらタマゴができるまでひたすら走ります! 育てやさんの前には一本道があるはずなので、そこを走るといいでしょう。

     タマゴができたと呼ばれたらいよいよ本番。タマゴを受け取り、孵化するまで全力で走ります! この時、タマゴが孵化しにくいポケモンだと根気が要りますけど早く痩せますよ。初めての方は孵化に時間のかからないポケモンでも大丈夫です。ちなみに、孵化におすすめの場所はスカイアローブリッジ。道が長くて一通りも少ないので、快適に走れますよ。

     これを何度もやります。孵化したポケモンはライモンシティのジャッジさんに能力を見てもらうのもいいでしょう。高い能力ならバトルでも使えちゃいますよ。高い能力の子は中々生まれませんから、それを目標にするとモチベーションの維持にも役立ちます。ダイエットにもなって強いポケモンも手に入るなんて、一挙両得ですね。

     そして、孵化が終わったらポケモンを育てます。ポケモンと一緒に駆け回れば地道な作業も楽しいものに! やっぱりポケモンは大切なパートナーですね!

     いかがでしたか、ポケモン孵化ダイエットは? あなたも今日から始めてみてはいかがですか?






    ポケモンの女の子主人公、特にHGSSとBWがかわいいと思ったわけですよ。何故彼女達はあのスタイルを維持できるのかということをぼんやり考えていたら、以上の結論に達しました。

    いいぞもっとやれ。


      [No.1895] 【書いてみました】いつの間に付いたーっ!? 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/09/20(Tue) 21:22:03     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    マコさんありがとうございます!

    > オオサカのある劇場で、マイコがお世辞にも、女とは思えない悲鳴をあげ、のたうち回っていた。

    何があったんだマイコちゃん……

    > 話は、冒頭の30分程前に遡る。
    > マイコ達7人宛てに、木の実詰め合わせが届いた。
    > クラボやモモン、オレンといった一般的なものから、チイラやラム、サンやスターといった貴重なものまで。
    > 中には一杯入っていた。

    う、うらやましい。サンやスターなんて…送ってくれたの一体誰ぞ!?

    > この場には、マイコ、オオバヤシ、ハマイエ、トキ、カワニシ、アキヤマ、キザキの7人がいる。そして、7人とも、かなり真剣だった。どんなに辛い食べ物が好きな人でも、マトマを食べると悶絶するくらいらしいので、皆食べたくないのだ。唐辛子やハバネロなんか目でもない。

    何故人間は『運試し』の欲求があらかじめ備わっているものなのでしょうね…

    > で、結局……。
    > 「うわああああっ!」
    > 「よっしゃぁー、勝ったーっ!」
    > 負けたのはマイコだった。

    ついてないなマイコちゃんww なんとなく主人公としてフラグが立っていた気もするぞ!

    > 「ひいー、水が欲しい水下さい水をくれ水頂戴水みずミズmizu I want water!」

    このセリフに腹筋崩壊。

    > 結局、ラグラージやダイケンキ達水ポケモンから水をたっぷり貰い、涙目になりながら辛さを1日かけて追い出すマイコだった。

    後引く辛さに、おつかれさんでした。

    > マコです。
    > 辛い木の実代表、マトマの実が題材の話。ロングの掲示板の連載、ポケリアと絡ませてみました。
    > ちなみに、私は辛い食べ物が嫌いです。そして、ヒロインであるマイコちゃん、結局じゃんけん4回負けました。

    まさかポケリアの方々とコラボしていただけるなんて…頭が上がりませんよぉ。
    本当ありがとうございます!

    > 悲惨な罰ゲームです。

    全くその通りでございます。

    > 【辛い食べ物に気を付けましょう】
    【モモンの実とかは食べてみたい】


      [No.1894] 夏はもう過ぎたけれど、暑い。 投稿者:サン   投稿日:2011/09/20(Tue) 20:08:11     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    いつの間にやらレスがついてる……!!
    きとかげさん感想ありがとうございます!



    >  ブビィとの交流に心温まりました。ゲットするしない以外のポケモンとの関わりが好きです。

    ポケモンの世界だとこんなこともあるのかなーとか思いながら書きました。
    アニメとかでもバトルシーンより交流シーンの方が好きなのです。ピカチュウのほっぺたさわりたい。

    >  ラムネ瓶のガラス玉が大好きな時期が私にもありました。そんなノスタルジックな気分になりました。あのガラス玉ってなんであんなに輝いて見えるのでしょうね。

    私の場合、ラムネはお祭りのときくらいしか飲む機会がなかったので、
    祭りに行った回数=貯めたガラス球な方程式が成り立ってました。
    でも今思えば祭りのラムネって高いよね……

    >  暑くて過ごしにくい季節ですが、こんな夏はいいなあ、なんて思います。

    でも残暑は勘弁。
    最後までお読み下さりありがとうございました!


      [No.1893] ポケモンウォーズ 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/09/20(Tue) 19:41:30     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どこか遠い宇宙の果てに。

     ポケモンを使い、世界を支配しようとしている帝国があった。それを阻止しようとホウエン議員が交渉し、両者は膠着状態にあった。
     帝国側が建造したポケモンリーグで常に交渉が行なわれていた。

    「姫を探せ」
     ポケモンと共に乗り込んで来たリーダーは、狭い機内で抵抗する乗組員を次々と手にかけていた。
    「姫を守れ!」
     乗組員たちは応戦するも、ケッキングの破壊力にはかなわない。逃げようにも、ここは空の上。逃げられるものではない。
     そのような乱戦状態の中、急ぐ足音が一つ。議員の使者としてポケモンリーグのあるサイユウシティまで来ていたハルカである。
    「ポリゴン2、出て来て」
     モンスターボールからまるっこい鳥のようなロボット型のポケモンが出てくる。そしてポリゴン2を脱出用のポッドに入れる。
    「ちゃんと、伝えなさい」
     そういうとスイッチを押した。ハッチが開き、上空の冷機がハルカに当たる。そしてポッドは出ていった。

     機内を制圧した男の前に、探していた人間を突き出す。それこそが議員側の使者であるハルカだった。
    「貴方だったのねマスターセンリ。使者を攻撃するなんてどういうこと?」
     あえて強気な態度に出る。センリにはそれは通じない。表情を崩さず、冷静にセンリは言う。
    「使者とはご冗談を。貴方がスパイだということは周知の事実。連れて行け」
    「マスターセンリ、たったいまこの飛行機から脱出したポッドがありましたが、生物反応ありません」
    「誤射だろう。放っておけ」
     引き上げて行くセンリたちにも目もくれず、ハルカはすでに雲海の下に入ってしまったポッドを見る。どうか無事で、あの人に着くように。


     何もない死の町。そう表現する人もいる。何にも染まらない町ミシロタウン。というものの、ただ何もないところである。それを良い事に、この付近には他の場所で何かしらの犯罪経験があるものが集まっている。まだミシロタウンはいい方。
     そこが何かしら騒ぐときがある。遠くの地方から持ってこられたポケモンを売る一団が来る時だ。そこに住む少年、ユウキはずっとそれを見ていた。家族に言われた買い物を。並べられる売り物に近づき、確認するととても珍しいポケモンが混じっているのが解る。科学技術で作られたポリゴン2だ。けれど家の経済的に珍しさだけでは買うことが出来ない。
     必要なポケモンは穴を掘るポケモン。発電できたらもっといいのだが、そんな便利なポケモンとなると値段が跳ね上がる。
    「すいません、このナックラーをください」
     ユウキは金を払おうとした。けれども後ろから肩を叩かれ、振り向き様に殴られる。後ろに転び、買おうとしたナックラーを取られる。向こうも子供よりも金になるとおもったのか、そちらにナックラーを譲る。こういうことなど日常茶飯事なのだ。ここは。
    「ちっ」
     あんな大人には絶対なるものか。そうおもって、再び選ぼうとするが、すでにそんなポケモンはいない。残っているのは生活にあまり必要ないポリゴン2のみ。
    「さっきは災難だったなぼうや」
     にやにやと笑いながら話しかけてくる。
    「このポリゴン2なら、安く売ってやるんだがなあ」
    「盗品だろどうせ」
    「そうでもなければ、手に入らないだろ?ポケモンなんか。特に今は帝国に全部取られちまってんだから」
     足元を見やがって。ユウキはそう思いながらも、ポリゴン2の交渉に入る。発電はできるのか、力仕事はできそうか。話すにも売ってる方はどっかで拾ってきたものだから解らんとしか言わない。まあ当たり前のこと。ポリゴン2の方も簡単な会話は出来るようで、一通りのユウキの要求することはできるようだ。
    「解った。買おう」
     まわりからなんであんな必要のないポケモンを買うのかという嘲笑したような視線がユウキに刺さる。欲しかったものを買えず、ユウキは足早に帰った。
    「ただいま」
     ポリゴン2を見て両親はとても驚いていたが、経緯を話すとまあ仕方ないと言う。赤く腫れた頬を押さえ、ポリゴン2を明日から可動させることができるよう、手入れをする。
    「全く……早くこんなところ出て行きたい。こんな町……」
     カナズミシティまで行けばかなり治安はいい。そこの大学で学んで、ここを出ることがユウキの目標だった。
    「お前もちゃんと働けよ。そうじゃないとお前の世話なんかしないからな」
    「助けて」
     ポリゴン2の目がいきなり光る。そしていきなり再生される立体映像。
    「助けてオダマキ博士。マスターセンリは……」
     そこで途切れ、最初から繰り返される映像。ユウキは思わずその映像を見て言った。
    「ポリゴン2、これは誰だ?前の主人か?」
     何も言わずポリゴン2は映像を再生し続ける。ユウキはその中に映る女の人に釘付けだった。綺麗な女の人、同い年くらいで、素朴な人。
    「ユウキ!ごはんよ」
     夕飯に呼ばれ、ポリゴン2を置いてリビングへ行く。黙々と食物を流し込むように父親が食べていた。
    「父さん、あのポリゴン2、前の主人がメッセージ入れてたみたい。オダマキ博士っていってた。町外れの変人アキレギアのことかなあ?一応、あの人詳しいみたいだし」
    「……忘れろ。そんなメッセージは消しておけ」
     しばらく黙々とした食事の時間。ユウキもモーモーミルクに手をつけ、パンを口に入れた。
    「ユウキ、大学のことだが」
     珍しく父親から話して来た。思わずユウキは手を止める。
    「来年行け」
    「なんで?去年だって次の年にしろって。そうやってなんで約束を破るんだ」
     残った食事をいらないとユウキは立ち上がる。そしてそのまま外へと出ていった。
    「貴方、あの子にはこんなちっぽけな町に収まらないわ。あの人の血を引いてるんだもの」
    「だからこそだ」
     それだけ言うと、食事を再開する。

    「脱出ポッドは無人ではなかったな」
     墜落地点を捜索していたトレーナーが言う。
    「人工ポケモンだ。周囲に聞き込みをし、ポケモンを取り返せ」
     トレーナーたちが散らばって行く。


     ポリゴン2の様子を見るために戻ると、そこにいない。開いたままのドア、そして残されたモンスターボール。一瞬で解った。出ていったのだと。逃がしてはまずい。ユウキは取るものもとりあえず、外へと飛び出す。
    「ポリゴン!どこいった!」
     大きな声で捜索するユウキは、暗くなってから獲物を狙う盗賊たちの格好の餌食だった。家から離れ、ミシロタウンから離れかけたユウキの前に、ポリゴン2を確認する。
    「お前、何処行くんだよ。夜は危ないんだ」
    「オダマキ博士に会いに行く」
    「忘れろ。前の主人のことなんて」
     ポリゴン2の頭をさわる。その瞬間、頭に衝撃が走り、自分の体が倒れることを自覚することなくユウキの意識が途切れる。ポリゴン2が反撃のため、電気を溜め始めると、ポチエナに噛み付かれる。
    「金持ち相手に売れば金になるぞ」
     ポリゴン2の目が点滅する。警告の赤ランプが灯った。容赦ないならず者へ警告。電気が辺りに飛び散り、ポリゴン2の体が青白い火花に覆われる。
    「行け、ジュプトル」
     後ろから放たれる森の狩人ジュプトルの剣技。盗賊がばたばたと倒れて行く。盗賊の持つポケモンでは太刀打ちできず、倒れた仲間を放置して逃げて行く。
    「ポケモンの声が聞こえた。大丈夫か?」
     倒れたユウキを揺り動かす。うっすらと目を開けたユウキの目に入ってくるその顔。
    「あ、町外れの……」
     変人、偏屈。そんなあだ名がいつからかついていたアキレギア。その風貌も手伝って、リングマに見える。
    「私がオダマキだ。そしてなぜ君はこんな暗い中にいる。危険なことは解ってるだろう?」
    「そのポリゴン2が、前の主人に会うと。オダマキ博士に会うって聞かないんです」
    「オダマキ……博士?」
     ポリゴン2を見る。ポリゴン2は何も言わず、先ほどのメッセージを再生する。
    「助けてオダマキ博士。マスターセンリはサイユウシティを乗っ取り、全世界を破壊できるほどの兵器を建造しています。貴方だけが頼りです」
     全てが再生されている。ユウキがなぜさっきは再生できないとポリゴン2に言うが、衝撃で回路が少し痛んでいたといった。電気をためたときにくっついたとか。いまいち納得できないユウキをよそに、アキレギアの方はじっと見ている。
    「オダマキ博士か。その名を知っている人がいるとはな」
    「知ってるんですか?」
    「その名前は随分昔に捨てた。私がオダマキ博士と言われていた人間だ」
     その事実にユウキは声が出ない。


    「それで、やっぱりオダマキ博士はこの人のところに行くんですか?」
     完全な夜のため、オダマキ博士の家へ行く。質素な造りの中に、珍しいポケモンがいた。
    「そうだ。私はまだ行かなければいかないみたいだから。このポリゴン2は譲っては……もらえないようだね」
    「そうです。家のポケモンだし、俺の一存で決めるわけにはいきません」
    「君はポケモンを持ってないのかい?」
    「はい。お金がかかってしまうので持ってません」
     そういうとオダマキ博士が立ち上がり、一つのモンスターボールをユウキに渡す。
    「投げてみなさい」
     ユウキが投げる。モンスターボールからは見慣れないポケモンが一匹。
    「ほう、初めてでミズゴロウを出すとは……」
    「え?入っているものって決まってるんじゃ?」
    「これはトレーナーの素質によって出るポケモンが違うんだ。いわば素質を見るためのモンスターボール。ミズゴロウが出たということは……やはり同じか。これは君にあげよう」 
     ボールと共に渡された青いサンショウウオのようなミズゴロウ。ユウキをじっと見ている。
    「素質がなかったらどうなるの?」
    「ポケモンが出て来ないだけだ」
     そう言いながらオダマキ博士は荷物をまとめている。連れて行くポケモン、逃がすポケモン。それらを選り分けて。
    「君はいかないのかい?」
    「俺は行きません。父さんとの約束が」
    「……そうか。明日の朝、送って行こう」
     ミズゴロウがユウキの足元に寄ってくる。よろしくと言うように。

     次の日、ユウキの家まで車で送るとオダマキ博士はエンジンをかけた。そしてユウキの案内で道を走り続ける。
    「……君の家は……」
     白い煙が上がる。もう消えかけた炎が、そこにあった。思わずユウキは車から降りて走った。そこにあるはずの家が跡形もなく燃えている。中には逃げ遅れて、崩れ落ちた屋根の下敷きになったと思われる焼けた死体。
    「父さん、母さん……」
     ただ無言で見つめる。ただの失火じゃない。ユウキは激しく燃えた跡があるところを見る。
    「まさか昨日の盗賊?復讐に?」
    「違うな」
     オダマキ博士が否定する。隣にはパートナーのジュプトルがいる。
    「ああいう盗賊は人数をごまかすために一列で歩き、金目のものを盗むために火を使わない。これは帝国の、トレーナーだ」
    「帝国の!?」
    「そうだ。多分このポリゴン2を取り返すために君の家に火をつけたのだろう」
     二人は並んでただ家を見ていた。そしてしばらくしてオダマキ博士の方から口を開く。
    「このポリゴン2は私が引き取ろう。そうでなければ君の身が危ない」
    「……いえ、俺も連れていってください。俺の責任だ。弱いからこんな……」
     オダマキ博士は何も言わずユウキの肩を抱く。まだ感情が整理できてないユウキを。

    ーーーーーーーーーーー
    スターウォーズが好きすぎて、こんなん作っちゃったの巻。重症のようです。
    ここらへんで力つきました。
    この配役だと、オダマキ博士がセンリと対決して死んでしまうことになりますはい。
    サカキさんと金銀ライバル、ゲーチスとNでも考えたのだが、サカキさんとゲーチスだとそれ以上のやつがいないためにあの親子。
    いやむしろクロツグとジュンで良かった気もしないでもない。

    【好きにしてください】


      [No.1892] ミツキの夏の日記より。 投稿者:紀成   投稿日:2011/09/20(Tue) 14:37:33     27clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    8月27日 晴れ

    今日は従姉妹のユエの住んでいるイッシュ地方まで行った。ホウエンより数度気温が高くて、倒れるかと思った。
    ライモンシティは大きな駅やミュージカルホール、遊園地があって観光には最適だったが、あまりにも暑いので夕方から繰り出すことにした。
    とりあえずユエのカフェに行ったら、宿題に追われている高三と、進化したバクフーンがいた。もふもふした。もふもふだった。
    午後五時くらいにやっと少し凄しやすくなったので、まず始めに遊園地に行った。ジムがあるらしく挑戦したかったが、ジムリーダーが不在ということで出来なかった。
    なので観覧車に乗って夜景を見てきた。綺麗だった。
    夕食はユエの手料理だった。意外に上手かった。


    8月28日 晴れ時々曇り 夕立

    真ん中の日ということで、ユエがヒウンシティに連れ出してくれた。店は従業員に任せたらしい。
    とにかく大都会という感じで、緑のミの字も無いくらいのコンクリートジャングルだった。ここにもジムがあったが、またしても不在ということで挑戦できず。
    一時間のクルージングの後、再びライモンに戻った。ユエはもう休めないということで、ここからは一人。
    さてどうしようかと思っていると、いきなり曇ってきて土砂降りの雨が降り出した。慌てて屋根を探して入った場所は、ここに来る時に使ったギアステーション。
    ついでだから名物のバトルサブウェイに挑戦しようと思い、ホウエンからヨシツネとウシワカマルを呼び出す。でもいざ乗ろうとしたらそこはマルチトレインで、二人じゃないと挑戦できないと言われた。
    さてどうしようかと思っていたら、後ろから来た人が『よろしければ』と言って来たので組むことになった。
    イケメンだった。使うポケモンはシャンデラとかのゴーストタイプ。はっきり言ってウチよりずっと強くて、ほとんど出番が無いまま、二十一戦目に入った。
    見てきたガイドでは、ここでサブウェイマスターという人と戦うらしい。なるほど、ホウエンのバトルフロンティアでいうタイクーンとかクイーンのことか。
    白と黒の制服に身を包んだ、ピエロみたいな二人。どうやら組んだ人は顔見知りらしくて、戦う前に少し話していた。
    で、結果は。
    勝った。でもほとんど組んだ人が倒してしまった。もっと強くなろうと思い、ユエの元に戻ろうとしたらその人もついてきた。雨がまだ上がってなくて困っていたら傘に入れてくれた。
    いい人。
    ユエは彼の顔を見るなり、『カクライさん!』と言った。そしてお礼を言っていた。多分ウチのことだと思う。
    とりあえず分かったことは、ユエは顔が広いということだ。


    8月29日 曇り

    最終日。いい加減シグからの電話が五月蝿い。今訴えたら勝てるレベルかもしれない。
    冗談は置いといて、やっとライモンジムに挑戦できるようになっていた。二日連続で悪いけど、二匹を呼び出して行こうとしたら、ユエがうちのバクフーンも連れて行きなさいと言ったので、お言葉に甘えて連れて行った。
    ジム全体がジェットコースターになっていて、バトルしながらスリリングな感じを楽しめた。ホウエンには遊園地なんて洒落た物が全然無いから、楽しい。
    ジムリーダーのカミツレさんは素敵な人だった。モデルをやっているらしい。電気タイプの使い手。何かイメージとしては昨日のサブウェイマスターを思い出す。
    結論から言えば、勝った。でもかなりギリギリ。
    まずエモンガに麻痺状態にされた後、かげぶんしんを何回も使われて翻弄されて、挙句の果てにつばめがえしをされてウシワカマルがダウン。
    次に出したユエのバクフーンがまた麻痺にされるも、スピードスターが急所に当たりエモンガがダウン。でも次に出てきたゼブライカがニトロチャージばかり使ってきて、素早さの差がどんどん開き、最後は踏みつけでダウン。いいところまでいってたんだけどね…
    で、ヨシツネとのスピード対決になり、ニトロチャージでアブナイところまで行ったけど、最終的にはシャドーボールでノックアウト。
    ボルトバッジと、ついでに友達に頼まれていたサインを貰った。その後はずっとカフェで色んな人とお喋り。最後に写真を撮って、午後二時溌フキヨセ行きの特急でライモンを後にした。

    とにかく、楽しいライモン旅行だった。

    終わり。


    追記:帰った途端、待ち伏せしていたシグにタックルをかまされたのはまた別の話。


      [No.1891] 2日目 投稿者:MAX   《URL》   投稿日:2011/09/20(Tue) 01:39:02     66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ようやくできたよ、2日目レポート。いったいどれだけたったのよ。というか自分が最初なのか? もうみんな興味の外なんじゃないのか? 作品も投下せずにこれってどうなんだ? 誰が得するんだ?
     ……俺が楽しい! であればよし!

    ※22日
     ホテルにて、朝は5時に起床。2度寝できず、しかし早すぎてホテルから動けず。
     8時過ぎたころにホテルを出て、一旦は東京駅へ。手荷物となるカバンをコインロッカーに預けようと思ってのことです。
     考えとしては、東京駅から帰りの新幹線に乗るのでそこに荷物を置いとこうか、と。
     しかし山手線の出口を間違え、「コインロッカーは反対側か」と線路の下をくぐれる通路を探し歩いていたら、そこは有楽町。山手線ひと駅の距離なんてこんなもんだよな。

     道中に見つけた「立ち食いラーメン」の店で朝食。なかなか美味しゅうございました。
     その後まもなくに見つけたカレー屋での「朝カレー」なるものに興味を持つも、あえなく断念。腹いっぱいッス。

     有楽町駅より。待ち合わせの場所を確認した後、時間つぶしに漫画喫茶を求めてさ迷い歩く。歩く……が、無い。
     浜松町あたりでは見かけたような気もしたが、どうも有楽町には漫画喫茶は無い模様。なんという。
     何か無いかと看板の地図を見ると、現在地は銀座だったと理解する。図らずも「銀ブラ」を経験。
     しかし10時前の現時点で何かできるわけで無し。結局は有楽町駅に戻って普通の喫茶店でコーヒーひとつで1時間ほど時間をつぶすことに。手元にポメラがあったのは不幸中の幸い。

     予定時刻を回り、待ち合わせ場所に集合。きとらさん、久方さんを中心に皆様と合流。
     ところが若干名の予定に遅れが。ならば時間つぶしと近所のデパートにあるスターバックスへ。またもコーヒー。
     ※申し訳ないことに遅くなったの誰だったかな、と思い出せない部分があります。ご了承ください。
     記憶が間違いじゃなければ、最初は巳佑さん、きとらさん、久方さん……だったはず。ちがったらゴメン。

     全員集合の頃には正午も近くなり、寄り道もせずにそのまま予定の焼き鳥屋へ。
     高架下に調理場があり、机や椅子が並べられ、道と店の境目が無い。
     ……どう例えればいいんでしょう。なんというか、屋台のような、食べ物イベントの1ブース的な、そんな造りのお店でした。

     とりあえず、最初は全員「もつの味噌煮」を。……うん、きちんとあく抜きしたネギって美味しいわ。
     次々と串焼きが注文され、皆様お楽しみ。そして昼間からビールを飲むりえさん。
     予定ではこのあとに秋葉原に行きましょう、とかなっているんですけど……大丈夫ですよね? 大丈夫ですよね!?
     酒が入って口も回り、食べるもそこそこにご歓談。そんな傍ら、自分は冷めない内にと食事にいそしんでました。コレ食っても良いかな?

     …………シロ、頼みそびれましたわぁ。

     昼食も終えて、りえさん案内で秋葉原へ。いざゆかん、日本が世界に誇る魔窟へ。
     ……着いて早々、目に入るアニメだ漫画だの広告の数々。一歩駅を出ればあるわあるわ。それも美少女モノばっかり。
     見渡せば家電屋やアニメグッズ屋、ゲームセンターが2つ3つと立ち並び、あっちこっちで客寄せの声がする。店からの音楽が鳴り響く。
     おのぼりさんとか思われても仕方ないほどに、あっちこっちを見渡してしまいましたわ。よくまぁこんなに集まるよ、ってぐらいなんだもの。

     まず、フィギュアの販売店を見ることに。
     店先のレンタルショーケースによる個人販売コーナーを見るが、転売屋の跳梁跋扈に辟易する。
     例えば、3000円ぐらいのシロモノが5、6000円とか……ねぇ。中にはイベント会場やネット販売限定のものもあったけど、割高ってどころじゃないわよ。
     誰が買うんだろうなー、藁にもすがりたくなる様な人々からの需要や儲けがあるんだろーなー、とか思いながら見てました。買い占める転売屋どもめ、クソ食らえ。

     そんななか、膀胱がピンチに陥る自分。トイレを探すために一言告げて一旦 離れます。
     しかしなにぶん初めての土地。トイレひとつに右往左往です。…………フィギュア屋にあったのにねー。

     皆様と合流したとき、りえさんがエロフィギュアの紹介をしていました。一体全体どうしたっていうのよさ。
     とりあえず、個人的に買おうかと思ったものもありましたが、そんなもん抱えて街中を歩き続けるのは体力的に苦しい(すでにカバンが重い)ので我慢。フィギュア屋を後にしました。

     そのあとはメイド喫茶に連れて行かれることに。
     りえさん「イメクラみたいなとこと普通の喫茶店なところ、どっちがいい?」 言うまでもありません。
     だいたいの店にはいったことがある、というりえさん。それはすごいが、初心者にはハードル高すぎます。
     行き着いた先は、店員がメイド姿というだけで(多分)概ね普通の喫茶店でした。
     しかしそのお店にて、日付が22日ということで店員さんがネコミミと尻尾をつけていました。あと猫にちなんだメニューも。
     注文の段階で、試しに猫パフェとかいうのが注文されていました。現物は……丸いアイスに三角のウエハースで耳のようにつけてあるが……猫?
     あ、自分は特にお腹も空いてなかったのでお茶をひとつだけです。つまらん男ですまんな。
     つまらん男と言うと、皆様の楽しげな歓談についていけない自分。昨日からの疲れや寝不足があってだんだん眠くなってきたところ、「MAXさん省エネモードになっちゃったよ」と言われる。四六時中寝ているような男でゴメン。

     メイド喫茶での未知との遭遇も済ませて、駅に戻ったときには時間の都合により久方さん、てこさんがお帰り。
     残された5名。さてどうしようというところで、自分が興味があったから、と言う理由で「献血ルーム」に向かう。……アクワイア、同じビルにあったのね。
     よりにもよって、と言われそうですが、秋葉原(「akiba:F」朝風二号館ビル5階)の献血ルームといえば「なにかしらの特集が展示されている」という噂を聞いたことがあったものですから。かつてはアーマードコアの特集をやってたとか、興味深かったんですよ。
     んで、見ればその時は「ご当地キャラクター特集」をやっていました。茨城だかどこだかのご当地ヒーローとか、高知のカツオ人間とかが印象的でした。北陸のはなんかないかと探すも、お生憎様。
     体調不良につき薬を服用してるから無理、というりえさんをのぞき、皆様 とっぷりと抜かれました。自分も400ミリ。

     そして空いた時間に持参したポメラを起動。せっかくなので執筆途中の作品をりえさんに批評していただきました。
     ……3人称視点の作品は所謂「神の視点」というもので、キャラの感想、感情表現をうまく作るには難しい。無理に感じるようなら1人称視点でやれば、自然にキャラの感想を出していける。
       この作品は、3人称視点だけど時々急に1人称の文章が地の文で出るから、誰の視点なのか考えることで読む側が苦労する。どっちかに絞ったほうが良いと思う。
     と、いうことでした。該当の作品は、現在も修正中です。

     しかし血液検査、採血の際の2度ほど、自分の浴衣姿を見た看護師さん(と言って良いのかな?)に「どこかに行かれるのですか?」と聞かれました。「趣味です」と答えました。

     そんなこんなで献血も終了。水分補給も完了し、少なくとも自分は、帰りの新幹線のお時間となりました。
     秋葉原駅で皆様とお別れ。その際にきとらさんから「次回も和服でお願いします!」と言われる。
     自分、1着の夏物しか持ってないよ……。作務衣じゃ違うでしょうし、となると羽織袴? 大須の商店街に売ってるかしら?
     …………頼まれたとあっちゃぁイヤとはいえない。次回も狙いますよ。今度はお面もセットでね。

     ともあれ、自分のオフ会はコレで終了でした。
     初の秋葉原体験、それがりえさんの案内と言うのは……強烈というか、望んだベクトルと若干方角が違うと言うか、そんな感触はありましたが大変楽しゅうございました。
     メイド喫茶は、独りで行くもんじゃないよね。複数人数でなければとてもじゃないが耐え切れない。しかし趣味の買い物をするとなると独りのほうが気が楽。……というか自分はパッチールのごとく右に左にフラフラと、無計画にするので多分、付き合いきれる人がいないんじゃないかな。
     秋葉原、次があったら個人で自由時間を、と。

     以上、おおよそ1ヶ月前になりますが、だいたいの感想でした。状況に間違いがございましたらごめんなさい。でも訂正をかねてあなたのレポートを作成するチャンスかも?
     あの時はお付き合いいただき、本当にありがとうございました。


      [No.1890] アーカイヴ掲載しました。 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/09/19(Mon) 22:38:21     22clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    載せると言ってからだいぶ経ってしまいましたが、アーカイヴ掲載いたしました。
    修正版をあげる、修正箇所がある等がございましたら遠慮無くどうぞ。    


      [No.1889] アーカイヴ掲載しました。 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/09/19(Mon) 22:36:54     24clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    載せると言ってからだいぶ経ってしまいましたが、アーカイヴ掲載いたしました。
    修正版をあげる、修正箇所がある等がございましたら遠慮無くどうぞ。


      [No.1888] 音色さん追加 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/09/19(Mon) 22:29:13     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    音色さんが立候補しました。


      [No.1887] ループ 投稿者:紀成   投稿日:2011/09/19(Mon) 21:12:44     19clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    彼に抱きしめられた時、私は頭の奥で自ら命を絶ったような感覚に陥った
    今までの自分を壊したような、そんな感じ
    『どんなに足掻いても、俺は君の思う人にはなれない』
    『でも絶対に君に相応しい人になってみせる』
    『なれたら、返事をくれるか』
    自己完結した台詞を彼は吐いて、私の前から消えた
    残ったのは、黄昏色に染まる廊下とただ立ち尽くしている私だけ


    何かが、グルグル回り続けている
    ジャローダやハブネークがとぐろを巻きながら、ひたすら無限ループしている
    永久の記号のように二匹繋がって、私の脳内を侵食している
    そんな切れない輪廻に侵食された私の足は、自然とギアステーションへと向かっていた
    手持ちは二体 彼らに会うには、最低でも三体必要
    だから先にカフェへ向かい、マスターに許可を取る
    『最近運動してないから、鍛えてやって』そう言って、彼女はボールを預けてくれた


    シングルトレイン 一体ずつのバトル
    別に会えるならどちらでも良かったんだけど あの白の方に話したらあっという間に広がる気がした
    どちらが秘密を守ってくれる? きっと黒の方だ
    制服姿でバトルするのは流石に目立つみたいだけど
    それでも私は戦った ただがむしゃらに
    このままバトルするだけの人形になれたら どんなに楽なんだろう


    二十一戦目 彼とのバトル
    彼は私の顔見て少し驚いた顔をした いつも表情が変わらない人だからちょっと笑ってしまう
    『先ほどのバトル、モニターで拝見させていただきました』
    『気がついたことはありますか』
    彼は躊躇った後、言った
    『随分と余裕が無いように思えましたが…』


    彼の顔が歪んだ 視界が悪くなる 喉の奥から悲鳴が漏れる
    『ミドリ様!?』
    違う 歪んだのは私の目 たくさんの雫が目を侵食していく
    『ごめんなさい、ごめんなさい』
    『落ち着いてくださいまし こちらへ』
    ああ 私は何て最低な子なの たかが小娘の分際で彼らの手を煩わせてしまうなんて


    バトルは中断 彼は手袋をした手で私の背中を擦ってくれた
    『差し支えなければ 話していただけませんか』
    『話すこと…』
    何も話すことなんて無いの もう 放っておいてよ
    『話すことなんて…ありません』
    『何かを吐き出すことで楽になるのならば 私はずっと耳を傾けていますよ』


    ごめんなさい そうとしか言えなかった
    嗚咽が出るだけで 意味のある言葉なんて全然出てきやしない
    『ライモンまではまだ十五分ほどかかります』
    『私の愚痴をBGMにしても 耳が腐るだけですよ』
    『…好きな人がいるんです』
    いきなりの告白に 流石の彼も少し顔を赤らめた


    『その人は無愛想で、口が悪くておまけに性格も悪かった』
    『でもバトルは強くて 綺麗だった』
    『私は憧れと同時に 恋慕という感覚を抱いていた』
    『でもその人は女性で 敵わぬ恋だった』
    『だからせめてその関係だけは保っていたかった』


    『だけど二年前 突然その人は家を燃やして姿を消した』
    『痕跡も何も見つからない 何も』
    『私はあの人のことを知らなすぎた どんな道を歩み どんな思いで生きてきたのかも』
    『被っていた仮面の内側を知ろうとしなかった』
    『あの人が信用していたのは 自分だけ』


    『そして今日 私は一人の男に告白された』
    『別の組の男子 一度女子が騒いでいるのを聞いたことがある』
    『家は代々続く芸術一家 彼もヴァイオリンの名手で頭もいい 性格もいい』
    『そんな彼が私のことを好きだと言って来た』
    『私は断った あの人のことが忘れられないの』
    『そうしたら彼は抱きしめてきた 流石に面食らった』

    『どんなに足掻いても、俺は君の思う人にはなれない』
    『でも絶対に君に相応しい人になってみせる』
    『なれたら、返事をくれるか』
    あの人への思いと 彼の告白が頭の中でループして 訳が分からなくなった
    頭を空にするために 私はここに来た
    『一瞬でも 彼の言葉に心が揺れてしまった私が大嫌いで 殺したいくらい』


    私の愛する人は もう何処にもいないのに――


    彼は話の途中から 私の手を握ってくれていた
    それがサブウェイマスターとして『義務』を果たしたつもりなのか
    それとも『個人的に』握ってくれていたのかは
    私にも分からない


    でも その手がすごく温かかったのはよく覚えている


    九月下旬の少し肌寒い夜だった


      [No.1886] 【書いてみました】マトマパニック! 投稿者:マコ   投稿日:2011/09/19(Mon) 17:15:46     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    それは、ある日のこと。
    「うがあっ!!」
    「ひいーっ!!」
    オオサカのある劇場で、マイコがお世辞にも、女とは思えない悲鳴をあげ、のたうち回っていた。


    話は、冒頭の30分程前に遡る。
    マイコ達7人宛てに、木の実詰め合わせが届いた。
    クラボやモモン、オレンといった一般的なものから、チイラやラム、サンやスターといった貴重なものまで。
    中には一杯入っていた。


    その中でも7人の目を一際引いたのは、マトマだった。
    マトマは、非常に辛い木の実だと言われる。
    「そのまま食べたら、火を噴くかもしれないから、絶対食べたらダメだよ」
    マイコはその事を知っていたので、そう注意したわけだが、
    「なあなあ、おもろそうやから、インジャン(じゃんけん)で負けた奴一人が食うってことやろうや!」
    6人いる男のうちの一人、ハマイエに押しきられ、
    「仕方ないなぁ……」
    やる羽目になった。


    この場には、マイコ、オオバヤシ、ハマイエ、トキ、カワニシ、アキヤマ、キザキの7人がいる。そして、7人とも、かなり真剣だった。どんなに辛い食べ物が好きな人でも、マトマを食べると悶絶するくらいらしいので、皆食べたくないのだ。唐辛子やハバネロなんか目でもない。


    マイコが声をかけた。
    「準備はいい?せーの、」
    『インジャン、ホイッ!』


    結果……。



    「おっしゃあっ、一抜けや!」
    「うわー、凄い……」
    「あの人、どんくらい強運やねん」
    オオバヤシの一人勝ちだった。
    ちょっとムカッときたマイコは言う。
    「ばーやん、折角一人勝ちしたんだからマトマ食べなよ」
    「何で俺勝ったのに食わなアカンねん!食うかボケっ!」
    あえなく却下されるマイコの提案。
    そして、二回戦。
    『インジャン、ホイッ!』


    結果……。



    「良かった、食わんで済む!」
    「ゴメンな、皆!」
    「薄情や……」
    カワニシとアキヤマが同時抜けだった。
    勝ち抜けた3人は、未だ残っている4人に憐れみの目線を送っていた。
    「ちょっ、そんな目で見るなや!」


    勝負は三回戦。
    『インジャン、ホイッ!』


    結果……。



    「うわははは、とうとう2人だけやん!」
    「マイコ、キザキ、末っ子同士腹くくっとき。どうせどっちかがマトマ食うねんから!」
    ハマイエとトキが勝ち、残ったのはマイコとキザキである。
    他人事の様に爆笑するハマイエ。


    「インジャンこんな弱かったっけ、俺……」
    「ブービーに残った……」
    ガチの凹みを見せるマイコとキザキ。2人のうち、どちらかがマトマを食べないといけない。
    「タロウちゃん、もういっそのこと、半分こする?」
    「マイコちゃん、俺もそうしたいけど、ルールやし、先輩方の視線が凄いで」

    5人の視線は怖い。視線で「早よやれ」と語っている。
    マイコは言う。
    「行くよ、せーの、」
    『インジャン、ホイッ!』


    で、結局……。



    「うわああああっ!」
    「よっしゃぁー、勝ったーっ!」
    負けたのはマイコだった。

    マイコの前には、1つのマトマ。
    「早よ食え、マイコ!」
    「うぅ、食べたくない……。でも、食べなきゃ。いける、いける、マトマなんて大丈夫……」
    そう言いつつ、マイコはマトマをバクッと食べた。




    そして話は冒頭に戻る。
    「うがあっ、ひいーっ!」
    案の定悶絶するマイコ。大爆笑する6人。
    「ひいー、水が欲しい水下さい水をくれ水頂戴水みずミズmizu I want water!」
    「わははは、マイコが壊れたで!」
    余りの辛さに言っていることも無茶苦茶なマイコ。



    結局、ラグラージやダイケンキ達水ポケモンから水をたっぷり貰い、涙目になりながら辛さを1日かけて追い出すマイコだった。



    マコです。
    辛い木の実代表、マトマの実が題材の話。ロングの掲示板の連載、ポケリアと絡ませてみました。
    ちなみに、私は辛い食べ物が嫌いです。そして、ヒロインであるマイコちゃん、結局じゃんけん4回負けました。
    悲惨な罰ゲームです。
    【辛い食べ物に気を付けましょう】


      [No.1885] 言い訳 投稿者:moss   投稿日:2011/09/19(Mon) 03:35:35     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     いやあ酷い。一ヶ月以上かかって書いたものなので文が酷い。きっと意味のわからないところはたくさんあるでしょう。いやありますね、はい。

     なんだかんだで一番書きたかったのはゴスロリの女の子です。ああいう壊れた子、すごく好きです。

     一応これで今年はもう短編は書かない予定です。

     噂話の続き? やるのかなぁ? しらなーい(爆)

     一応ちゃんと完結させるつもりです。




    【批評してくださいなのよ】 【別に何しても構わないのよ】


      [No.1884] 被・検体 投稿者:moss   投稿日:2011/09/19(Mon) 03:30:20     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「助けてください!」

     そう言ったのはまだ年端もいかぬ幼き少年。

     冷酷無慈悲と有名な男は、

     しばし、困った。



     広場の時計は12時を指した。数ある屋台で買い物を済ませた主婦や、いまだに商品の値下げを迫る女性で溢れている。
    八百屋、万屋、魚屋、肉屋など。商店街のように連なる屋台に今日もいつものように足の踏み場も無い状態。
    そんな中、彼女らは珍しい光景を目の当たりにした。

     そんな中彼は困っていた。全身を覆うような黒いロングコートをはおり、履きなれた感の染み出す革靴をかつんと踏み鳴らす。
    その風貌は女だらけの周りからかなり外れた雰囲気を醸し出していた。

     本当ならば彼は今日、町役場に行き、おととい出現した巨大な粗大ごみの申請に行く予定だったのである。
    これじゃあいつまでたってもあの馬鹿でかいごみが捨てられないじゃないか。彼は頭を抱えたくなった。

     そんな彼の気を、目の前のそれも全く見知らぬ少年が知る筈も無く、引き下がるような素振りも見受けられなかった。
    その上期待した表情を浮かべている。男はどうすればいいかわからなくなった。普段なら「すまん」と断るのだが、
    少年の純粋な眼差しに何も言えなくなったのだった。

     とりあえず今の状況を確認することにした。まずは少年の風貌である。
    肩につかないくらいの髪の毛はさらさらと栗色をしていた。白一色のシンプルな、ワンピースのように長いTシャツから確認できる腰はまるで細い木のようで、妙に整った顔立ちや瞳の色は、この国の出身ではないことを示していた。かく言う男も移民であったが。

     彼はそんなことじゃなくてとセルフツッコミを心の中で行い、余計に状況がわからなくなる。これほど取り乱すのは彼の人生の中でも初めてではないだろうか。ただし表情は心境と反して無表情のままである。これには周りでちらちら見ていた通りすがりの住民も何か言えよと思った。しかし冷酷無慈悲な男にそんなことを言うのは少々気が引ける。あんな男のとこに行ったのが運の尽きだな、と誰かが言った。

     無表情のまま黙り込んでしまった男は遠くで馬の嘶きを聞いた。今まで身動き一つ見せなかった少年がばっと振り返る。
     しかし背の低い少年が人ごみの中、見えるのは当然道を行き交う人々の胴。はるか遠くを見るのは不可能な話だった。

     だがこの少年が明らかに馬の嘶きを恐れているのを男は感じ取った。それは少年の表情であり仕草であったりと、様々なところから安易に読み取れる。男はこういった人の心情を読み取る能力に長けていた。

     ようやく普段の冷静さを半分くらい取り戻した男はさてどうしたものかと少年の方を見る。少年はしばらく音のした方を見ていたが、蹄の地を打つ音が聞こえてくると、半ば大声で言った。

    「は、早く逃げないと! あれに追いつかれてはならないんです! どうか、ぼくを――」

     助けてください。最後の言葉はわかっていたので途中で遮り、男は腰に手をあてモンスターボールを一つ放った。

     嘶きと蹄の音の主である二頭のギャロップが、視界の隅に馬車を牽いて現れる。人ごみをものともせずに爆走する馬車に、皆恐れを抱いて逃げていくその様子に、男は隣に降り立つ紫色をした大きなスカンクに命令を下した。

    「スカタンク、煙幕」

     スカタンクと呼ばれたそれは小さく頷くと、人ごみの方に尻を向け、あまりよろしくない音と共に真っ黒な煙を大量に吹き出した。
    煙はあっという間に広場に蔓延すると、ただでさえ馬車から逃げようと躍起になった人々から視界を奪い、さらに混乱させた。ギャロップも突然の出来事に驚き、進行方向とは違う方向に走り始める。驚いた人々の群れから悲鳴が上がる。

     全く面倒なことになった。ため息をついて、その間に男はスカタンクをボールに戻し、少年を連れて町の路地裏へと姿を消した。







     とある建物の屋上に人影があった。北向きの風が男のスーツをはためかせる。右耳当てた黒い携帯電話に堂々と話しかけながら傍らで待機する黄緑色の竜に、あいているほう手で指示を出す。赤いカバーの下の目が少し細まると、ゆっくりと羽音と立てて飛び去っていった。
    男は変わらない調子で話し続ける。

    「……ふむ、そうか。st2019は男と未だ逃走中か、ふむ仕方が無いな。何が何でも捕まえてもらわなければならない。……何? 逃がしたのは君じゃないと。
    だが君の部下の所為だろう? え? ……部下でもない? 知らないな、私は君の所為だと聞いていたのだが、まあいい。君がやりたまえ。これは命令だ。
    従わなければどうなるかはよくわかっているだろう? ……なら、よろしく頼むよ」

     一方的に電話を切る。携帯をスーツのポケットにするりとしまう。入れ違いに煙草を一本とライターを取り出し火をつける。口にくわえると辺りに煙と臭いが広がった。

    「さて、大変めんどくさいことになったが、君は協力してくれるだろう?」

     高架水槽の裏からかつかつとやってくる一つの影。それは楽しそうに笑うと、ぴょんと、まるで子供が縄跳びを飛ぶかのように、30メートルはあろうここから飛び降りた。
    もちろん何もつけずに。

    「脱走をした悪い子にはぁ、ちゃあんとお仕置きをしてあげないとねぇ」



     男は誰もいないのを見計らうと、路地裏の一角を曲がり木箱の上に座った。おそらく商人の連中が商品を仕入れたときに使ったものだろう。隣に少年がちょこんと座る。

    「グラエナ、見張っとけ。何か来たら上にシャドーボールをしてくれ」

     放たれたボールから一匹の黒いハイエナが現れた。グラエナという種族の彼は嬉しそうに尻尾を振りながら頷き、とてとてと歩いて行く。
    曲がり角でふさふさと黒い尻尾が見えなくなるのを確認し、広場の方から微かに聞こえる騒ぎ声以外に物音がしないのを追認すると、男は静かに言った。

    「何で追いかけられてたんだ?」

     少年は少し黙ると、風で飛ばされてしまいそうなくらい小さな声で答えた。

    「携帯獣教団って知ってますか?」

     その言葉を口にしたとき、男の動きが止まった。本当に一瞬だが、止まった。

    「……教団の関係者か……」

     関係者、ていうかなんでしょうねと少年は自嘲気味に笑った。

    「ぼく、教団の捕虜だったんです」

     それには冷酷無慈悲の男も食いつかずにはいられなかったが、男が口を挟む前に少年が続けた。

    「小さいころに親から見放され、教団に引き渡されたんです。教団は酷いところでした。まず孤児として扱ってくれないんです。人を、大人も子供もみんなモノとしてしか見ていないんだ。
    教団だなんて名前だけ。実際は孤児院よりも……いや、世界中のどこよりも酷い場所だ!!」

     思わず声を荒げてすみませんと小さくなる。少年は顔を伏せる。

     男は何も言えなくなった。何を言えば良いのかわからなくなったのだ。居心地の悪さに耐え切れなくなった彼は、黒いコートのポケットからタバコを一本とライターを取り出す。
    火をつけると煙が蔓延し始める。鼻を刺激する臭いに少年は思わず口を手で押さえた。それを見た男がすまんと言うが、タバコはしまわなかった。

    「それで……なんでお前は――」

     そう言って男は口ごもる。そういえば少年の名前を知らなかったことに気が付いたのだ。そのことを悟った少年は柔らかな笑みを浮かべてエスティって言いますと言った。

    「エスティ……なんでエスティは教団から逃げ出したんだ?」

     冬らしい冷たさを帯びた風が二人の間を通り抜ける。まさにその瞬間だった。

    「キミのだいじぃーなだいじぃーなオトモダチがぁ、殺されちゃったからだよねぇ、くひひっ」

     グラエナがけたたましく吠えた。黒く大きな影の塊が高く上がると同時にギャンと悲鳴が上がった。

     何事かと男は木箱から飛び降りる。少年もそれに続く。そのとき二人はありえないものを見た。

     ふわりと舞い上がるゴスロリ。そこから伸びる黒いニーハイ。フリルのついた可愛らしい袖からのぞく透き通るような白い肌。手に持つは奇抜な色合いの傘。
    そして不気味なほど吊りあがった口角。そこからこぼれる言葉は少年にとって衝撃的なものだった。

    「なんで知ってるかってぇ? だってぇ、」

     ころしたのぼくだもん。現在進行形で落下中の、ゴスロリ少女の口はそう動いていた。


    ――君はだれ? 君もひけんたい? 君はぼくの仲間?

    ――バウバウ! ガウゥ!!

    ――そうなんだ! うれしいな。ぼく、ずっと友達が居なくて寂しかったんだ。そうだ名前は? 名前は何ていうの?

    ―― ……??

    ――わからないの? それとも無い? じゃあぼくがつけてあげるよ。君の名前は……


    「だってあれでしょぉ? “ロット”っていう名前のガーディでしょぉ? あいつさぁ、僕が昼寝してんのにそれ見てバウバウ吠えるもんだからさぁ、ついムカついてこの傘でぶっ刺しちゃったんだよねぇ。そしたらぁ――」

     地に降り立った、天使のような顔の悪魔の心を持った少女は開いた傘を閉じながら嘲笑う。まだ昼間だというのに彼女の周りだけ夜になってしまったかのような、そんなどす黒い存在感を放っていた。

     少年は臆さずにたまらず叫ぶ。

    「黙れ!! このっこのぉ」

    「やめろ、それ以上言うな。この手の奴は、何を言っても無駄だ」

     男が手で制す。少年の大きな瞳から大粒の涙が零れ落ちた。顔は悔しそうに歪んでいる。それに対して男の表情に変化は見られなかったが。

     少女はつまらなさそうに自らの手で遊んでいたが、ふと顔を上げた。悪魔の笑みだった。

    「あのさぁ、僕がここに来た理由わかってるでしょぉ? 僕も鬼じゃないからさぁ、選ばせてあげるよぉ。どっちがいーい? 大人しくそこの男の子を渡すかぁ、それとも僕と戦うか。別に僕はどっちでもいいよぉ? どっちかというとぉ、僕、バトルは得意だしぃ。くひひひっ」

     少女の瞳の輝きが三日月形になる。男は何も言わない。少年が不安そうに見上げた。男が口を開く。

    「……エスティ。お前は教団に戻る気はあるのか?」

     少女から一ミリも視線を動かさずに問うた。少年は力強く頷いて答える。

    「あそこに帰るつもりは全くありません!!」

     刹那、少女が傘を振り上げ、ニタリと笑うと勢いよく地面に叩き付けた。







     衝撃が走った。

     大地を揺さぶるような感覚に少年は思わず身を伏せる。それは幸運だった。なぜならゴスロリの悪魔がまわし蹴りをした瞬間だったからだ。背後にある建物の壁に足がめり込んだのを見て、少年は伏せていなかったら今頃は……と体を震わせた。

    「ヘルガー! 構うな、足に炎の牙!」

     低く唸って牙をむき出し、唾液を垂らしながら黒き狼は少女の細い足に飛びかかる。しかし少女もそう簡単にやられるはずもなく、素早く足を引き抜くと、向かってきたヘルガーの顔を鷲掴みにして放り投げた。
    木箱の山に投げ入れられキャウンと弱弱しい鳴き声がした。

     少年はこの間に逃げなければならなかったのだが、あまりの恐怖に足が銅像のように動かなくなっていた。しかし目だけは冷静に状況を映し出し、目の前に迫る危機をしっかりと伝えていた。

     ぐるんと首を回して少年の方を向く悪魔。ヒッと思わず情けない声を出してしまう。ゆっくりと楽しむように歩み来るそれに、少年は何もできずにただただ怯えるのみ。

     しかしそんな隙だらけの瞬間を男が見逃す訳もない。コートの裏側からボールを一つ放つと自身も銃を取り出して走る。現れた白い獣は少年を乗せて何処かへ立ち去ろうとするが、突如目の前に大きな黄緑色の巨体が道を塞ぐ。それは平均よりもはるかに大きな砂漠の精霊だった。赤いカバーの下の目を細めて襲いかかる。アブソルは必死に攻撃を避ける。守る。影分身。がら空きの背後。尋常じゃない速さで少女が傘を振り上げ現れた。
     突然のことに反応しきれなかったアブソルは戸惑い怯えた。背中の少年ももうだめだと目をぎゅっと瞑る。

     銃声が響いた。男が引き金を引いたのだった。少女の不気味なほど白い腕から紅が吹き出す。だが不思議そうに首を傾げて傷口を見るだけで押さえたり、痛そうにしなかった。まさかと思って男は聞く。

    「お前……被検体か?」

     少女は首を傾げたまま口を三日月形にさせ応じた。

    「くひひひっ。そうだねぇ、そうかもねぇ。僕は確かに実験とか色々されたしねぇ、くひひひっ」

     甲高い声で薄気味悪く笑う。

     男はいかぶしげに問う。

    「何をされた?」

     少女は少年から離れると、心配そうに見つめるフライゴンを呼び寄せけたたましく笑って言った。

    「何をされたぁ? くひひひひっ。そうだねぇどうだったっけねぇ。確かぁ、破壊の遺伝子って奴を組み込まれたんだっけぇねぇ?」

     相変わらず笑いながら赤く染まった手でフライゴンの頭を愛おしそうに撫でる。カバーのしたの目が嬉しそうに細まった。

     アブソルが男の傍に駆け寄った。少年は背から飛び降りる。じっと少女を見据える異国の色をした瞳には微かに怒りが隠れているように見えた。

     男は無表情に吐き出した。

    「破壊の遺伝子……そんなもんを組み込まれちゃあ、頭が可笑しくなったのも理解できる」

    「あらぁ? 僕の頭が可笑しいって言いたいのぉ? ひっどいなぁ。まあ、わからなくもないけど、さぁ!!」

     少女が跳んだ。ダンっとレンガ造りの地が爆ぜたような音が響く。フライゴンも飛び立った。男も銃を構える。少年は男の邪魔にならないようにと安全な場所に隠れようとそっと離れようとする。

    「逃げるのはぁ、よくないよぉ!」

     傘を華麗にフルスイングさせた。ぶわっと広がるゴスロリ。少年は慌てて伏せる。伏せた勢いが強すぎて倒れこんだ形になったのがこれまた救われた。
    ただ伏せただけだったならば首が弧を描いて吹っ飛んでいたであろう。少年はぞっとした。

     アブソルが正面から飛び込んだ。鎌で少女を切りつけようとする。しかし傘でいとも簡単に薙ぎ払われてしまう。建物の壁にぶち当たったアブソルは、最後の抵抗とばかりに真上に、向かって激しく冷気を吐き出した。吹雪は上空にいたフライゴンの長い尾に当たると命中した部分を凍らせた。夕日の差し込む橙色の空。砂漠の精霊は悲鳴を上げる。
     男は瀕死状態になったアブソルをボールに戻した。代わりのボールは投げなかった。

    「今だヘルガー、グラエナっ悪の波動!」

     二匹の黒い獣がほぼ同時に木箱の陰から飛び出した。双方とも少女の方へ駆けていく。左右で挟み撃ちのようにして二匹は一斉に襲いかかった。その間に少年は匍匐前進でよちよちと場を離れる。
     漆黒の負の波動が少女を襲う。少女は動かない。否、動けない。

     その隙に、男はまたボールを一つだけ取り出して、高く放り投げた。フライゴンよりも昇ったとき、ボールは独りでに開き、中から何かが出たと思いきや、次の瞬間にはフライゴンが落ちていた。

    「フライゴン……!! 犬共がぁあああ邪魔だ邪魔だ邪魔なんだよおおおおお」

     奇声ともとれるような大声を発し、素手で二匹を殴り飛ばすと、倒れたフライゴンの元へと駆け寄る。顔を覗き込み、優しい声でお疲れ様と声をかけ、真っ黒なボールに吸い込ませた。

     男は即座に少年を探した。やばい。これは不味い。フライゴンが倒された瞬間、少女の纏う雰囲気が僅かに変わったのを敏感に感じ取ったのだ。人の心を読み取る能力に長けているからこそわかった。本気で来るだろう、と。普通にしても常識の範囲外の強さであるのに、今ので本気になったとしたら、自分がエスティから離れていては危険だと本能が言う。
    しかも彼女はエスティを狙っているのだ。攻撃がそっちに向くのは当たり前のことじゃないか。男は焦る。無表情のまま。

    「余所見なんてしててぇ、随分と余裕だねぇ」

     突然耳元で囁かれる。男が行動を起こそうとする前に、ゴスロリから伸びる紅い腕が、傘が動いた。男が後方に投げ出され、壁にぶつかる。がらがらと崩れる音と共に、レンガが瓦礫へと変わっていく音だった。くひひと嘲笑が少年の耳に届いた。

    「よぉくも僕のフライゴンを倒してくれたねぇ。昆布みたいにぺらっぺらにしてあげるよぉ、st2019くんはそんなことしたら怒られちゃうから骨を折る程度にしてあげるけど」

     少女の目がぎらりと光った。まるで腹を空かせた獣のようだった。少年が動こうとしたら、傘がダーツのように飛んできた。それは少年の真横を通り過ぎると背後の壁に深く突き刺さった。

    「ひっ」

    「動かないでねぇ。君のきれぇな頭に穴を開けたくなかったらさぁ。そうそう、そこの黒い猫さんも動かないでねぇ、動いたら君のことも、殺しちゃうから」

     君のことの君の意味がわからず少年は戸惑った。ほんの少しだけ首を傾け、視線を最大限に動かし斜め後ろを見てみる。そこにいたのは、先ほどフライゴンを落としたと思われる、二本足で立つ黒い猫。ニューラだった。賢いニューラは、少女の言った言葉の意味を理解し冷や汗を流す。動かなかった。救われた。もしこれが頭の悪いポケモンで、一歩でも踏み出してしまっていたとしたら。少年は考えないことにした。

     トンっと地を蹴り、少女はふわりと少年の前に立った。ぐいと顎を手で上げる。

    「……僕にとって、君みたいな無害な被検体が逃げ出す理由がわからないんだけど。もしかして僕が感じ取れないだけで何か力があったりするのかなぁ? ねぇねぇねぇ! あるなら僕に見せてよ! ねぇねぇねぇ早く早く早く」

     狂ったように。いや、最早狂っていた。恐ろしい程強い力で肩を揺さぶる少女。意識が飛びそうになる。

    「うあ……」

    「ほらほらほらほらぁ! 早くしなよぉ! 僕はあんまし気の短い方じゃないんだよぉ!!」

     視界がぐるぐる回る。少年は喘ぐ。そのとき微動だにしなかったニューラが突然消えた。違う、消えてない。速すぎて見えなかったのだ。右手に何か丸いものを持ったニューラが少女の背後に現れた。少年の空ろな視線が、自らの背後にずれたのに気付いた少女が振り返ろうとする。
    それよりも前に、声が響いた。

    「投げつけろニューラ!!」

     ニューラが投げた。それは少女の後頭部に当たって煙を吐く。瞬間的に辺りはもやで包まれた。少女はまだ肩を掴んでいたが、強く少年は腕を引っ張られると、その手はするりと抜けた。そのまま流れに任せて引っ張られる少年。当然引いているのは、ぼろぼろになった黒いコートの男だった。
    彼らはたまたま瓦礫が重なってできた山の裏に身を潜める。少年は男を見るなり無事でしたかと、空ろだった瞳に色を取り戻して言った。男は勝手に殺すなと悪態をついた。

    「いいか、よく聞け。今のあいつに正面からぶつかってもすぐに殺される。痛覚の無い奴に傷をつけても無駄なだけだ。だから――」

     その案に少年は目を丸くさせた。が、少し恥ずかしそうに目を伏せてから、決意をしたのか頷いた。男は珍しく感謝の言葉を口にした。

     山の上に何かが乗った、がちゃんという音がした。何かが何なのか、結論は簡単に導けていた。

    「みーっけ! あれぇ? そっちのおっきい方はまだ生きてたのぉ? まぁいいや。僕は別に構わないしねぇ、何度やってもさぁ!」

     上から愛らしい笑顔が覗いたかと思うと、すぐさまその笑みは狂気的なものへと変わり、木箱が粒れた。まるで卵を踏んだかのように、あっさりと。

     少年は思わず手で顔を覆う。しかし男は動じずに、近くに転がっていたレンガの破片を投げた。破片と言ってもモンスターボール程度はあった。それは真っ直ぐ少女の顔に飛んでいく。
    少女が平然となぎ払う。しかしそこには既に男たちの姿はなかった。代わりにニューラが一匹、氷のつぶてを発射できる体勢でいたことを除いては。

     氷のつぶてが少女を襲っている間に彼らはまた移動する。少年的に体力はもう限界であったが、そんなことを言ってる余裕は無い。それに男の顔を見れば、この状況がどれほど危険なものかが窺い知れた。珍しく表情を崩していたからだった。

    「じゃあ、手筈通りに頼んだぞ」

     予定していた位置、ついさっきまで男が埋もれていた場所だった。少年は積もりに積もった瓦礫の後ろへ隠れる。こんな中からあの人は這い出てきたのか。感心よりも、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

    ――ぼくが頼んだばかりにこんなことになるなんて

     瓦礫の合間から外を窺う。男はもう定位置についたのか見えなかったが、代わりにゴスロリのスカートの部分がちらりと見えた気がした。
    目をこすってもう一度見ると、気のせいだったのか、ゴスロリはもう見えなかった。

    ――よかった

     少年はほっとしてため息をついた。怖い。感情が溢れ出しそうだった。しかしここで泣いたりなんかしたらまたあそこに逆戻りか、あるいは……。

     瓦礫の向こうでニューラの叫び声が聞こえた。それに続いてこつこつという足音。少年はごくりと唾を飲んで手筈通りの展開を待った。

     辺りがしんとなる。足音だけが響いている。いつの間にか日は沈んで月が昇っていた。星のない空。月だけが、赤々と輝きを放っていた。不気味。少年はただそう思った。

    「ほぉんとにかくれんぼがだぁいすきだねぇ、君たちぃ。僕は鬼ごっこは好きだけどぉ、かくれんぼはあんまり好きじゃないんだけどなぁ。ねぇ? stくーん?」

     突然名前を呼ばれてびくりとする。そっと、また合間から覗く。

    「……ぃ?!」

     声に出しそうになってすぐに手で押さえた。少女と目が合ったのだ。ひどく寂しげな目をしていた。

    「そう、寂しいよ、僕は」

     少女はうつむいた。

    「誰も僕と話してくれない。誰も、僕がこんなんだって知ると近寄ってくれないんだ。別に、僕は望んでこうなったんじゃないのにさ」

     少年は手で押さえたまま目を大きく見開いた。

    「だからさぁ――」

     もう何度目か、少女がありえない距離を一跳びするのは。

     少年の隠れる山の前に降り立った彼女は。初めて表情を消して冷たく言った。

    「君を見てるとムカつくんだよね」

     少年は叫んだ。それを合図に男が飛び出し銃で少女の両の足を撃った。少女は無言で振り返ろうともしない。そして彼女の足元の地面から満身創痍のニューラが飛び出し渾身の力で、少女の左目もろとも切り裂いた。

     薔薇よりも深い紅が、飛沫を上げた。







     少女は状況が理解できていないようだった。ただ血飛沫だけは見えたようで、それの出所が自分の左目だということを理解するのに三分ほど時間を要した。

    「目? 目、め、め……あぁああぁあああ!!」

     少女は崩れ落ちた。左目から赤い涙がどくどくと流れているのだが、やはり痛そうな素振りは見せず、終始左目左目と嘆いていた。

     男はニューラに少女を見張るように言い、目を伏せたままへたりこんでいる少年の手を引いて立たせてやった。

    「本当にここまでしてよかったのでしょうか……?」

     少年は顔を上げずに問うた。

     男は少し黙ってから呟くような小さな声で答えた。

    「……ああなった奴には多少、いやあれぐらいのことをしなければ止められない。今も、ニューラに切り裂くを命じなかったらお前は立っていないかもしれない」

     少年は何も言わなかった。うつむいて表情は見えなかったが、まだ子供である。このような体験は辛いものがありすぎるだろう。男はぼろぼろになったコートを少年に被せてやった。

    「……赤い赤い。左がねぇ、ぜぇんぶ赤いんだぁ。まっかっかなの。僕も君も世界もぜえんぶ真っ赤。何にも見えない。これが僕には丁度いいのかなぁ」

    「どういう意味だ?」

     男がニューラをボールに戻しながら言う。いいのぉ戻しちゃってぇ。僕がまた暴れたらどぉするのぉ? そう聞いてきたが相変わらずの無表情で無視をした。

    「……無視かぁ、まぁいいけどさぁ。だって僕、こんな化け物みたいな力持ってるならこんくらい障害あった方が周りも安全なんじゃないかなぁって、思ってさぁ」

    「意外だな。自らの意思でやってるかと思ったが」

    「まっさかぁ」

     くひひと笑う少女。ゆっくりと立ち上がり空を仰ぐ。星の浮かばない物悲しい月夜が、まるで少女の心を映しているかのように。

    「こんな僕でもさぁ、最初は嫌だったんだよぉ? 慣れなきゃいけないから態々こんな性格までつくってさぁ。元々はもっと大人しくて可愛らしーい普通の女の子だったんだよぉ」

     信じられないでしょぉ。この期に及んでまだ笑い続ける少女に男は何も言わなかった。いや、言えなかったのかもしれない。特にそういう経験のない自分に、口を出す権利は無い。

     そのとき少女の方からオルゴールの音が鳴った。なんだろぉとぼろぼろのゴスロリから携帯を出す。オルゴールの音は着信音だったようで、少女は口の前に人差し指を当てると電話を取った。
     男も少年も黙ったまま彼女の方に視線を送っていた。

    「はぃ? ……あぁ、社長さんですかぁ。……あぁ例の被検体君ですか、それが僕もやられちゃって、しかもここから動けないんですよぉ。瓦礫に足が挟まってぇ。……はい。……そりゃあもうけっこう前に逃げられたようでぇ、つーか僕気絶しちゃってたみたいでぇ、さっき社長さんの電話で意識が戻ったんですよぉ。……はぁい、よろしくお願いします」

     ピッと電源を切ると何を思ったのか、携帯を逆の方向にへし折った。ガラクタとなった携帯を瓦礫の山に投げ捨てるとそのまま歩き出す。

     男と少年は状況が全く理解できなかった。男が待てと言う前に、少年が待ってください! と張り上げた。少女の歩みがピタリと止まった。

    「……どういう、ことですか?」

     力強くは無いものの、弱弱しくもない声色。しかし視線は鋭く少女を射抜いている。少女はめんどくさそうに言う。

    「さっき僕が電話したのは僕をこんな風にした張本人。つまり君……st2019を僕に連れて来いって言ったのもぉ、君を被検体にしたもの社長さんなのぉ」

    「それはなんとなくわかってます! ぼくが聞いてるのは何でぼくたちを見逃すかってことです!!」

     男は表情を変えずに経緯を見守っていた。しかし内心では少し驚いていた。この少年がここまで噛み付くとは思わなかったのだ。

    「だからさぁ! 折角僕が逃がしてやろうとしてんのにさぁ! 何でそういうこと言うかなぁ?」

     少女は振り返らない。

    「折角さぁ……なんか君たちにかなわないっていうかなんか思って、しかも左目見えないしさぁ。ほらぁ、さっさと行かないと社長さんとか来ちゃうよぉ」

     男は少年の肩に手を置いた。

    「……これからどうするんだ? ここに居ても、捕まるだけだぞ」

    「そ、それは……。それは……どこかに逃げるつもりではいますけども……」

     何処に行けばいいかわからない。そう続けようとして、それは良くないと頭が言い、少年は黙ってしまう。
    そんな少年の頭を撫で、男は言った。

    「行く宛てが無いなら、俺が案内してやろうか?」

     少年が勢い良く顔を上げた。

    「そんな! これ以上は……もうこれ以上ご迷惑かけるわけには――」

    「既にかかってる。これ以上かけても変わらない。それに、ここまでやったら俺も、もう社長とかいう奴に狙われる破目になるだろう。なら、一緒に行っても変わらないだろう?」

     無表情な男が少しだけ笑ったように見えた。きっと冷酷無慈悲ではなくて、感情表現が不器用なんだと少年も笑った。

    「何してんのぉ? まだ行ってないのぉ? 早くしないと来ちゃうよぉ」

    「わかってる」

     無愛想に答える男。少年を連れ、ゆっくり歩き出す。少年は少女の方を見た。やはり彼女は背を向けていたが、少年は大きな声で話しかける。

    「ぼくは……ぼくはずるい。でもいつか必ずあんな場所、壊してみせるから!」

     一陣の風が吹く。少女のスカートが揺れる。

    「……ならその名前は捨てた方がいいよぉ。stをまんまエスティなんて馬鹿らしいでしょお。そこの男にでも考えてもらいなよぉ」

     振り返らない。けれどもその声は深く、少年の心に響いた。

    「行こう。ポケモンを回復させなきゃいけない」

    「はい!」

     闇夜の中を二人は溶け込むように歩いていった。

     気配が完全に消えたのを悟った少女は、一人くひひと笑って歩き出す。

    「さぁて、僕も自由になれるかなぁ?」







     ある建物の一室で、スーツを纏った男が高級そうな電話を片手に、不機嫌そうに話し込んでいた。

    「……あぁ、わかってるよ。君に一々指図されなくても私にはわかってる。……ふむ。……そうか、わかった。至急そこにst3329向かわせるよ」

     ガチャンと乱暴に電話を置く。深く深くため息をついてこう言った。

    「やってくれたなst7019。まさかst2019を連れ戻させたのに裏切るとは思いもしなかった……。まあ、これも想定内か。代わりはいくらでもいる。所詮一人や二人が抗ったって意味は無い。意味は無いのだよ被検体風情が!!」

     ガツンと高そうな革靴でこれまた値の張りそうな机を蹴る。積み重なった書類の山がひらりひらりと宙を舞った。

     

     


      [No.1883] 「こんにちは、電柱です。よろしくお願いします」 投稿者:巳佑   投稿日:2011/09/19(Mon) 00:19:57     28clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     どうも、電柱です。
     デンチュラさんという黄色い電気ビリビリな蜘蛛ポケモンではないですよ〜。
     家から出なくとも、窓から覗くことができる、ごく普通の灰色の電柱です。
     ここ花田町の三丁目、会社などのビルが集まっている中心街から離れている、人通りが比較的少ない一本道にポツリと立っています。
     
     ここから見える風景はいいですよ〜。
     空にはポッポやマメパトが飛んでいますし、地上には軒並みに家がこの一本道に沿って林立していて、赤い屋根や青い屋根と色とりどりなところが素敵だと思います、はい。
     あぁ、それとこの一本道を通っていく人やポケモンなどを観察するのも楽しいですね。
     え? 電柱のくせに何か人間くさい? まぁ……長い間ここに立っていましたからねぇ……色々な情報が入ってきたりするんですよ。物知りな電柱さんとでも思ってくれたら幸いです。
     
     
     ポッポさんやマメパトさん達が日の出を告げる声を上げている中、誰かがやってきました。
     身長は百七十後半でしょうか、黒いパーカーの服を着ていて、頭のフードを目深に被っている為に輪郭を覗くことができません。
     ……ん? 何か、手に持っていますね。ダンボール箱でしょうか……あれ? 張り紙みたいなものもありますね、どれどれ……。
    『この子を拾って下さい』
     ダンボールの中には真実を知らない一匹のイーブイさんが丸くなって眠っていますね……。
     このお方に何か事情がおありなんでしょうか、というか事情がなければ捨てるなんてことはしないですよね。
     その人間の方は一本の電柱の前に――私の前に立つとしゃがみこんで例のダンボール箱を置きました。
    「ごめんよ……本当に……」
     そんなしゃがれた声の後(声音から恐らく男性の方でしょう)その人間は走り去ってしまいました。
     振り返らずにただ一心腐乱に走っていき、やがてその背中は小さく、そして見なくなりました。
     ……地面には小さい黒い丸い跡、よっぽどの事情がやはりあの人にはあったのでしょう。
     しかし……困ったものですね、私は見ての通り電柱ですから何も出来ません。
     せめて、このイーブイさんが夢で遊び続けている間にどなた様かが拾ってくれると助かるのですが……。
     

     先程まで、天気が良かったはずだったのですが、いつの間にか雨雲さんが全力疾走してきたのでしょうか、あっという間に空は灰色の世界になりました。
     すると、ポツリポツリと地面が濡れていき――雨が降ってきました。
     ざぁざぁ降りです。
     これは通り雨でしょうか。
     あ、それよりもあのイーブイさんは一体どうしているのでしょうか。
    「きゅう……きゅ……きゅう、きゅう……」
     このイーブイさん、いずれ大物になるかもしれません。
     まさかこの大雨に体を打たれても起きないとは……。
     しかし、問題がここで発生してしまいます。ダンボールの中には雨水が大量に入ってきて、このままだとイーブイが知らない間に溺れ死んでしまう可能性があります。
     どどどどどど、どうしましょう!? 
     電柱の私にできることなんて……って言っている場合ではありませんって、私!
    「…………」
     軽く混乱状態になりそうだった私の前にいつの間にか一人の少年がいました。
     身長は百六十前半で黒いボサボサ髪、顔つきはいたって……こう言っては失礼かもしれませんが、やる気がないというかなんというか……。
     服は真っ黒の学ランを着ています。
     あぁ! 混乱状態で忘れていたものを思い出しました。
     ここから少々歩く場所にある中学校に通っている、確かユウキ君と呼ばれている少年です! 
     この少年ならなんとかしてくれるだろうと信じていると……ユウキ君はダンボールを取って、まずイーブイさんを取り出しダンボールに溜まっていた水を全部流し、そして再びイーブイさんを元に戻しますと――。
    「……とりあえず……これで」
     ダンボールに水が入らないように、ビニール傘を私に立てかけますとユウキ君はそのまま雨に打たれながら走って行きました。
     あらら……連れて行くことはできないようですね、せめてイーブイさんを濡らさないようにしてはくれましたが、ユウキ君の方は大丈夫なのでしょうか? 風邪を引かれないといいのですが。 
     そして、イーブイさんの様子といえば――。
    「きゅう……きゅ、きゅ♪ きゅうきゅう……♪ きゅう……」
     夢の中で楽しく遊んでいるようで、その寝顔の中にある口元がニヤっと上がっています。
     やはり、このイーブイさん、きっと大物になると思われるのは私の気のせいではなさそうなんですが。


     さて、激しい通り雨はいつの間にか降り止みまして、空には太陽が眩しい顔を覗かせています。
     すると、今まで寝息を立て続けていたイーブイさんが目を覚まし、眠そうに前脚で目をこすった後、辺りを見渡し始めました。
     恐らく、イーブイさんにとっては何も知らない土地、初めての場所、きっといつもいたところではないという不安感がイーブイさんの中に広がっているようで、その顔色が徐々に雲っていきます。
    「きゅ〜い…………きゅ〜……きゅ〜きゅ〜」
     左を向いて一鳴き、右を向いて一鳴き……主の名前を呼んでいるのでしょうか?
    「きゅ……きゅ、きゅ、きゅ〜い〜!!」
     あらら、遂にイーブイさんが声を上げて泣いてしまいました。
     ど、どうしましょうか? 私はただの動けない、声をあげることもできない電柱ですし――。
    「おやおや……これはこれは、めんこいイーブイじゃのう」
     そう言いながら、しゃがみこんで、イーブイさんに穏やかな微笑みを向けていますのは……パーマがかかった白髪に、顔はたくさんのシワを刻み込んだ女性――確か、梅田さんというおばあさんです。
    「ほほほ、そんなに泣かんでええ、泣かんでええ。よしよし」
    「きゅ……きゅ……? きゅ〜、きゅ〜」
    「ほほほ、よい子じゃな♪ よしよし」
    「きゅい。きゅ……きゅいきゅい♪」
     梅田さんが抱き上げられて頭を撫でられたり、首を指でかいてもらったイーブイさんはあら不思議、泣き顔から一変、気持ち良さそうな顔になり、なんと梅田さんの胸に頭をすり寄せているではないですか!
    「お主、行くところがないのならワシのところに来るかえ?」
    「きゅい、きゅ……きゅい、きゅ〜い♪」
     イーブイさんは梅田さんに笑顔で一鳴きして応えます…………あ、れ? なんかあっという間に問題が解決しているのですが。
     こういうのはなんか警戒して反抗してくるイーブイさんから梅田さんが(大げさかもしれませんが)傷つきながらも信用を得て……よろしいのでしょうか、この展開……まぁ、結果オーライですし、それに越したことはないのですけど。
    「それにしても……この電柱には何か運命的なものを感じるのう……ありがたや、ありがたや」
    「きゅ〜い」
     ちょ!?
     なんかいきなり、梅田さんがイーブイさんを一旦、地面に置いたかと思えば、唐突に手を合わせて崇めるような行為を私にしてくるのですが!?
     イーブイさんも梅田さんの真似するよろしく頭を下げていますしっ。
    「これは、感謝の気持ちですじゃ、ほれい」
     そう言って、梅田さんがダンボール箱の中に投げ入れたのは……これは……赤い毛糸玉、ですかね……?
    「それじゃあ、行くかのう、イーブイ」
    「きゅい♪」
     運命的なものって、そんなこと……って、ちょ!? ちょっと待って下さいよ!
     赤い毛糸玉をここに置かれても困りますよ〜! 
     ポイ捨てで訴えますよ〜!
     ……そんな私の主張など、もちろんどこ吹く風。梅田さんとイーブイさんは楽しそうな背中を見せながら去っていきました。


     さて、真上の太陽が傾き出して来た昼下がり、私こと電柱の手前にはダンボール箱と、その中に入っている赤い毛糸玉……なんとまぁ、シュールな光景なんでしょうか。
     この赤い毛糸玉をどなた様か回収してはくれないでしょうかと、考えていますと……おや、噂をすればなんとやら、誰かが来ましたね。
     えっと、確か……体格がよく背の高い青年がシゲさんで、小柄で肌を褐色に染めている女性がユイさんでしたね。
    「おい、オスラン! メスラン! いい加減にケンカを止めないか!」
    「メスラン〜ちょっと落ち着いてよ〜。そりゃあ、大事にしていた木の実を食べられたのはショックだけどさ〜」
     なにやらお困りの様子ですね……どうやら、彼らのパートナーである紫色の体をしたニドランオスと水色の体をしたニドランメスが仲違いを起こしてしまっているようです。
     オスランと呼ばれたニドランオスは相手に『にらみつける』を常に送っており、対するメスランと呼ばれたニドランメスは「くー! くー!」と攻撃性をたっぷりと含んだ鳴き声を上げています。
    「……………」
    「くぅー! くー! くー! くー! くぅ、くぅー!!」
     片や無言の睨み、もう片や激しい抗議。険悪なムードが消える気配など、どこにもありませんでした。
    「全くさぁ……シゲの育て方が悪いんじゃね? さっさと謝ればスグに終わる問題じゃん」
    「お、俺のせいにするのかよ!? だ、大体、ユイの方はどうなんだよ!? お前の方こそいつまでも食べ物のことでネチネチと……ペットは飼い主によく似るっていうことはまさにこのことだよな!」
    「な、なんですって!?」
    「大体お前は昔から――」
     オ、オスランさんとメスランさんの険悪なムードは飼い主であるシゲさんとユイさんにまで及んでしまったようです。
     昼下がりの一時、電柱の前では一組の人間のカップルとポケモンのカップルが火花をバチバチ燃やしあい、ケンカが繰り広げられています。
     そして、遂に怒りの臨界点が突破したのでしょうか、ユイさんが例のダンボール箱から、あの赤い毛糸玉を取り出すと「ふざけんなよ! こんにゃろお!!」と乱暴に言葉を吐きながら、シゲさんに投げつけました。
     ボスっと殴られたかのような音と同時に「イテッ!」とシゲさんの悲鳴が上がり、そしてシゲさんのお腹に当たった赤い毛糸玉は二人の足元で同じくケンカしていたオスランさんの頭に、可愛い跳ねる音に続いてメスランさんの頭にもぶつかりました。
     そして、地面に落ちた赤い毛糸玉はコロコロと軽やかに転がっていき……ようやく止まった頃には…………あの、その、皆さん黙ってしまったのですが。
     ………………もしかして、聞いたことがあるのですが、あの赤い毛糸玉はただの糸ではなくて、もしや。
     私がそう考えている間にもシゲさんとユイさん、オスランさんとメスランさんがお互い見つめあい続けていて、そして徐々に、各々の顔が赤く染まっていて……私の仮説が当たっていれば、その赤色は怒りの意味ではなく――。
    「ユイ……悪かったな……その言い過ぎたよ」
    「シゲ、いいのよ、別に。ワタシも悪かったわ……」
    「……クゥ、クゥクゥ……クゥ」
    「くぅ〜。くぅ……くぅくぅくぅ……くぅ」
     ……(一応)説明しておきましょうか。
     あの赤い毛糸玉の正体は『あかいいと』と言いまして、相手をメロメロに魅了することができるアイテムだと聞いたことがあります。
    「ユイ、愛しているよ」「シゲ……チョー大好きっ」
    「クゥ……クゥクゥクゥ」「くぅー!」
     シゲさんとユイさんが抱き合い、オスランさんとメスランさんがお互いの体をすり寄せ合いました。
     ……昼間から見せつけてくれますね、このカップル達。
     しかし、まぁ、なんでしょうか一言だけよろしいでしょうか?
     ベタな展開すぎません? これ。
     ……まぁ、何ごともなくケンカが終わり、結果オーライなのですが、こう目の前で見せつけられると、なんと言いますか、恥ずかしいというかなんというか……なんとなくなんですけど、こうモヤモヤした気持ちが膨らむと言いますか。
    「それにしても……この電柱、縁結びかなんかあるんじゃないの」
    「確かに、そうかもな」
     イチャイチャタイムが幾分続いた後、赤い毛糸玉――『あかいいと』を拾いながら、シゲさんとユイさんが口を開きました……って、ちょ!?
    「このダンボール箱に、いやお賽銭箱にお金でも入れようっと」
    「いくら入れる?」
    「そうねぇ……」
     そう言いながら、ユイさんが可愛らしいチュリネ柄のサイフをポケットから取り出し、そしてダンボール箱に投げ入れましたのは――。
    「ご縁がありますように!」
     お約束すぎます!
     それよりも私に向かって二礼二拍一礼されても困りますよ? 何も出て来ないですよ?
     ……と主張したいのに、できないこのもどかしさ、どうしてくれましょう。
     やがて、去っていく二人と二匹の背中は幸せそうでしたが、私のどうしようもない、もどかしさは去ってくれる気配はなさそうでした。


     昼下がりの時間も過ぎていき、やがて夕方になっていきますと、学校帰りの学生さんや、もう一花井戸端会議を咲かせようと婦人達が集まったりと、この一本道が再び賑やかさを増す時間帯でございます。
     ここから見える夕焼け空はまさに特権ですよ。広がる橙色の空に雲間から覗く夕日はまるで神秘的な光で惚れ惚れします。時間が更に経過していくと、夜へと近づいていくことを示す群青じみた色が空にかかり始め、見事なグラデーションを描いています。ここもまた惚れ惚れします。その幻想的とも言える空の中を飛んでいくヤミカラスなどの鳥ポケモン達……絵になりますねぇ。
     …………。
     ……。
     まぁ、せめて今だけはダンボール箱の中に鎮座している五円玉のことについては忘れましょう、そうしましょう……なんか泣きたい気分にかられるのは気のせいでしょうか。
     

     休息の時間といいますか、心休まる時間ともいいますか、とにかく平和な時間はあっという間に過ぎ去ってしまったと思ったのは夕日が落ち、この一本道に人がまた通らなくなる夜の時間帯のことでした。
     私の前に、白いフードを目深に被って表情を覗くことができない……あ、胸の方が膨らんでいるようなので女性ということは分かりましたが、それ以外は素性が全く分からない人で……どう見ても、また一波乱起きそうな予感しか伝わってこないのですが。
    「おぉ!! これは五円玉! キラリ輝く五円玉! 金色の穴あきフォルムに稲穂を刻み込んだ見事な五円玉!!」
     やっぱり! と叫びたい一心でございます。
     その目深に被った白いフードのお姉さん……長いので白いお姉さんとしておきましょうか。その白いお姉さん拝むように頭を何度も上げたり下げたりしています。だ、だから! 私はただの電柱で神様的なご利益は何もないと何度思えば――。
    「今日のラッキーアイテム、電柱にダンボールに五円玉!! まさしく、これだ! これに違いない! これの他にないのだ!」
     なんか話がうますぎやしませんか!? この展開!? というより、白いお姉さんのテンションがやかましい程に高いことは分かるのですが、話の核が全く見えてこないのは困りものです。
     しかし物言えぬ電柱という存在の私、そのような注文はできっこありません。さて困ったなと私が思っていると、白いお姉さんがポケットの中から一個の赤と白に染まったボール――モンスターボールを取り出しました。
    「ふふふ、選ばれた勇者にしか開けないモンスターボール! 今、ここに! 来たれ勇者よ! そなたが世界を救うのだぁああ!」
     はい!? なんかいきなりスケールが広大な言葉が白いお姉さんから出てきたのですが!? 一体、何ごとなんですか!? 勇者って、世界を救うって、一体どこの世界の話をなされているのですか!?
    「これで、我の使命は果たした。後は未来の勇者に託した……………………済まぬが五円玉はもらっていくぞ、これで定食代足りる……………………」
     なんか、最後の方に気になる呟きがあったような気がしますが、気のせいですか?
     とりあえず、ダンボール箱の中に件のモンスターボールを入れて、代わりに五円玉を取り出し、自分の懐に入れた白いお姉さんは去っていきました。その背中は嬉々としたもので、本当の目的はどちらなのでしょうかと小一時間程、問いたい気分です。
     それにしても……このモンスターボール、どうしましょうか? 仮に、仮にですよ? もしあの白いお姉さんの言う通り、世界を救う――つまり世界崩壊の危機みたいなことになったら、このモンスターボールが唯一の救世主ということになるんですよね……そんな物騒な話の始まりをここに置かれても正直、困ります。例えば、ここに勇者が現れて、救世主のポケモンと出逢うとして……その場で一波乱がありそうな感じがするじゃないですか!! お、お願いですからその騒動で私を折らないでくださいね。よろしくお願いしますよ、本当に!!


     夜も更にふけていき、所々の電灯が闇夜を少しばかり照らすこの一本道もなんだか寂しげな風景に変わる頃……茶色の髪をツインテールに縛り腰まで垂らしている身の丈が百四十台程の一人の少女が現れました。
     もうこの時点で嫌な予感しかしないのですが、どうしてくれましょう。いや、どうすることもできないのが現状です。一人の少女は徐々に私の方に近づいてきます。あぁ、何も起きませんように、起きませんように! そう願い続ける私、そして近づいてくる少女。
     少女が私の前まで来て、そのまま通り過ぎようと――。
    「おや、お嬢さんが一体、こんなところで何をやっておいでかな?」
    「ん?」
     私の前には一人の少女と、茶色と白い毛並みを持ったポケモンの一匹のイーブイさんがいました。
     あれ? 今、イーブイさんから人間の言葉が出ていませんでしたか? なんか、貴族っぽい感じの声音がイーブイさんの方から響いた気がするのですが……? 少女の目が丸くなっていく様子にイーブイさんの方がニヤリと口元を上げて――。
    「ほわぁああ! 可愛い! 可愛いイーブイでありんすーー♪」
    「ななな!? 何をする!? コラやめろぉぉお!!」
    「もふもふな毛並みなのじゃ〜! もっふもふにしてやんよでありんす〜♪」
    「や、やめろ! コラ! 変なところを触るでは……アハ、ハハハハハッ!」
    「うきゅう〜♪ ポケセンはどこかと迷っておったでありんすが、まさかこんなところで生イーブイに逢えるとは! わっち感激でありんす〜!」
     なんだか可愛い声音だけど老獪なしゃべり方をする少女にいきなり抱き上げられたイーブイさんは、思いっきり撫でられていきます。しかし、イーブイさんの方もやられっぱなしというわけではなかったようで、力強く自分の身を少女から離しました。
    「く、おのれ……我輩にここまでの仕打ちをやるとは……貴様」
    「おおう!? イーブイがしゃべっているでありんす〜♪ しかもなんかキザっぽい感じでありんすな〜。うみゅう、是非ともゲットしたいでありんす〜」
     ……ポケモンがしゃべっていることには驚いたものの、他にはこれといって全く動揺を見せることなく、むしろ興奮しまくりの少女はポケットからモンスターボールを一個取り出しました。捕まえる気満々のようです……って、ポケモンがしゃべるという話は風の噂で聞いたことはありますが……まさか目の前で見ることになるとは……初めて見た私も興奮してって、そうじゃなくて! た、頼みますからドンパチやらないでくださいよ、お二方!
    「我輩を捕まえるだと……? アハハ! 阿呆め、我輩は幼女に興味はない! そうそうに立ち去るがよい!」
    「なら、捕まえたら、わっち色に染めてやるでありんす〜」
    「ぐ……退く気はないのか。我輩が世界を滅ぼす魔王だということを聞いても、まだ捕まえる気が保てるかな?」
    「野望に燃えとるイーブイさんでありんすな〜。まぁ、そういう野心家、わっち、嫌いではないでありんす……ということで捕まってくりゃれ?」
    「やはりこの姿のせいか……おのれ……あのニンゲンめ、我輩をこんなところに閉じ込めおって、おかげで威厳が出てないではないか!!」 
     なおも全く動じない少女に遂に堪忍の袋が切れたのか、イーブイさんがそう愚痴を放ちますと、なんかイーブイさんの体から黒いオーラみたいなものが出てきます。なんでしょう、あのオーラ……まさか、魔王なんて言ってましたけど、嘘だって思っていましたけど、まさか本物ってことはないですよね? まさか――。
     直後、少女の後ろ百メートル先で爆発めいた音が鳴り響き、煙が立ちました。
    「どうだ。この我輩の悪の波動は。怖いか? 恐ろしいか?」
     口元をニヤリと上げてその言葉を放った後、イーブイさん、いや魔王イーブイさんが高笑いをあげました。ああああ! 嫌な予感が的中してしまったのは的中しちゃったのですが、まさかの内容違いに驚きでいっぱいです。少女の方は後ろを向き、その爆発現場の方を見やると――。
    「ほへ〜。中々やるでありんすなぁ。流石は自称魔王でありんす」
    「本物の魔王だ!!」
     この少女、きっと大物になるような気がします。
    「ほほほ。なんか騒がしいと思って来てみれば、イーブイ、ここにおったか」
     のほほんとそんなことを言いながら少女の隣に現れたのは、午前中にあの捨て子のイーブイさんを拾った梅田さんです……って今、なんか大事なことを言いましたよね!? あのイーブイさん、梅田さんが拾ったあのイーブイさんなんですか!?
    「おいおい、なんだアレはユイ!?」「ワタシに言われても困るわよぉ、シゲ」
    「くぅ!? くぅ、くぅくぅー」「……クゥ、クゥ」
     その後に慌てながらこちらに寄ってきたのは、シゲさんにユイさん、オスランさんにメスラさん。
    「……なんか、すげえことになってる」
     続いて眠そうな顔をしながら髪をかいて現れたのはユウキ君です。
     な、なんでしょう。今日この電柱前で色々あった方々が集まったのですが……あははは、まさか本当に梅田さんが言うような運命的な電柱……って、そんな馬鹿な。
    「く、貴様らは一体なんなんだ!?」
    「なんなんだ……って言われても、なんつーか、こんな夜中に近所でドンパチやられたら迷惑ってこっちが言いたい気分なんだけど」
     うん、ユウキ君。君が一番、正論だよ。
    「クソ……! あの男が下手な召喚術をしたせいで、こんな弱いヤツの体に! おまけに暫くは表に出て来られんかったし! 仮にも魔王であるこの我輩にこのような恥辱を……許せん!」
     あ、という言葉がそのまま出てきそうな感じで私はハッとしました。なるほど、今朝ここにイーブイさんを置いていった男の人は何かオカルト系なものに手を出し、魔王を出そうとして、それがイーブイさんの体の中に入ってしまった……そして、手につけられないと感じた男は泣く泣くイーブイさんを捨てることにした、といったところでしょうか? と言いたくても言えないのがもどかしいところですよね、本当に。
    「こうなったら、手始めに貴様達を落としてやる! 覚悟しろ!!」
     そう言うや否や、魔王イーブイさんが身震いを始めたかと思うと、いきなり――。
    「あぁ……魔王様、マジかっこいいんですけどぉ」
    「やべ、魔王様、無礼をお許し下さい!」
    「ほほほ、魔王様、さまさまじゃな」
    「わっち、一生ついていくでありんす!」
    「くぅ! くぅー!」
    「……クゥ」
     ウィンク一つ、って、メロメロ攻撃ですか!?
     なんか、先程の悪の波動なるものを放つかと思ったのですが……まさかの予想外な技に私、唖然としています。まぁ、確かに今の容姿で考えるならその技はてき面だと思いますが……仮にも魔王としての威厳はどうなのかと小一時間程、問いたいのですが。
     それにしても、このメロメロ、同姓であるシゲさんやオスランさんにも効いているのですが、成程……魔王所以のカリスマ性というものは高いようです。
    「ハハハ!! 我輩に跪き、平伏し、崇めるがいい!!」
    「は、は〜」
     一見、イーブイさんに皆さん頭を下げているこの場面はシュールと言いますか、何と言いますか……。
    「……メロメロっつっても、効果は一生じゃねぇし……なんかよく分からないけどさ……アンタ、アホだろ」
    「なっ!?」 
     この場にいる殆どの皆さんが魔王イーブイさんに魅了されている中、ケンカを売る人が約一名――ユウキ君が面倒くさいと言いたげな顔で魔王イーブイさんを見やります。どうやら魔王イーブイさんのメロメロはユウキ君には効果がなかったようです。
    「栄枯盛衰、諸行無常……そんな夢気分もいつかは泡のように消えるっつうの…………」
     何か悟ったような言葉を放ちながらユウキ君がポケットからモンスターボールを出すと、膨らんだ筋肉を蓄えた四つの腕を持つポケモン――カイリキーをこの場に出しました。
    「カイリキー、メロメロになっている奴に『めざましビンタ』あのニドラン二匹と、老人には多少加減しとけ…………他はどうでもいいや」
    「リキッ!!」
     この後、断末魔のような鳴き声が真夜中の空を裂くように響き渡りました……ユ、ユウキ君、容赦なさすぎです。梅田さんやオスランさんメスランさんはともかく、他の皆さんのほっぺたには見事な紅葉が刻み込まれています。あぁ……これは見ているだけで痛そう。皆さん、どうやら目が覚めたようで自分は一体何をやっていたのだろうかと目を丸くさせています。でも……確か『めざましビンタ』って眠っている相手を起こす技でしたよね? メロメロで魅了された者の目を覚ますという目的で使うというのは聞いたことがないのですが。
    「く、おのれ! あくまで我輩に逆らおうというのか! この愚民め!!」
    「……んなこと言われても、成り行き上しょうがないじゃん……それよりアンタ、魔王ってことは悪タイプとかあったりするのか?」
    「ぬ?」
    「悪タイプにノーマルタイプ……『ばくれつパンチ』かましたら……どうなるんだろうな?」
     指をポキポキ鳴らしているカイリキーの横でユウキ君がなんか恐ろしいことを呟いています。ユウキ君が魔王様を殺る気満々な気がするのは気のせい……ではなさそうですね。
    「フッ 戯言はいい。喰らえ! 我輩の――」
    「カイリキー、ばくれつパンチ」
     直後、「ぷぎゃうあぽぎゃうわう!?」とワケの分からない悲鳴と同時に重い殴打音が鳴り響き、魔王イーブイさんが上空に飛ばされました。効果抜群、これはあっけなく決まってしまったようです。
    「た〜まや!」
    「か〜ぎや!」
    「ほほほ、可愛い花火が上がったものじゃのう〜」
     な、なんというマイペースな方々なんでしょうか。というより梅田さん! 仮にもあの魔王イーブイさんの現飼い主なんですから、魔王ですけど少しぐらい心配をしてあげてください……メスランさんとオスランさんも夜空を見上げて鳴いています。恐らく主人達の真似をしているかもですね。た〜まや、か〜ぎやってね。
     やがて魔王イーブイ様が落ちてきて、地面に叩きつけられますと、虫が潰れたような音――悲鳴を上げました。しかし流石は魔王スペックがあるのでしょうか、ダメージはあるものの命に別状はないようです。
    「く……我輩の陰謀もここまでか……フッ煮るやり焼くなり好きにしろ」
     なんか諦めが早い魔王様なような気が……まぁ、引き際も肝心と言いますけど。一方、魔王イーブイさんのその言葉を聞いた少女の目がキラキラと輝き始めたかと思うと素早く魔王イーブイさんに駆け寄り、抱き上げます。
    「じゃあ、わっちの手持ちになってくりゃれ? おばあさん! この子、わっちがもらってもいいでありんすか〜!?」
    「ほほほ、もちろんじゃ♪ 可愛がってあげてのう」
    「ありがとうでありんす〜! えへへ、よろしくでありんす! 今まで手持ちなしの旅であったけど、これからが楽しみでありんす〜!」
    「こ、コラ! 確かに煮るやり焼くなり好きにしろとは言ったが、決して何でもしてもいいという意味では――」
    「えへへ〜♪ まーおさん、まーおさん♪」
    「勝手に名前を決めるなぁーー!!」
     魔王イーブイさん改め、まーおさんは嬉々としている少女に振り回されています。なんでしょう……緊迫とした場面は一瞬しかなかった闘いだったような、そしてこの名も有名ではない場所で今宵――。

    「……ここで世界を救った、なんて話、信じてもらえねぇだろうな……チッ」

     ですよねー!  
     ユウキ君とは中々気が合いそうな感じがします。いや、本当に。

    「今日はもう遅い。ポケモンセンターも閉まっておろう。わしの家で休んでいくがよい」
    「わぁ! ありがとうでありんす。それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうでありんすよ〜」
    「シゲ〜。なんか終わったみたいだし? ワタシたちも帰ろうよ」
    「あぁ、そうだなユイ」
    「くぅくぅ!」
    「クゥ」
     それぞれ、何ごともなかったかのように帰路へと歩いていきます。今宵、この電柱の前で世界を救ったと言ってもいいのですよ!? 皆さん! もう少しその辺について語っても……! という私の主張はもちろん声になること叶わず、徐々に皆さんの背中が小さくなっていきます。
    「…………」
     あれ? 皆さん帰ったと思ったのですが……ユウキ君だけがまだ私の前に残っていました。も、もしかして私の想いが届いたとかそういう類の奇跡が起こったのでしょうか!?
    「モンスターボール……これ、中身あるのかな……」
     面倒くさそうにユウキ君がダンボール箱から一個のモンスターボールを取り出しました。そういえば……あの白いお姉さんが言っていた勇者とか救世主って……先程の魔王イーブイさんに関係しているとかそういうことじゃないですよね……肝心の闘いの最中にまさかの空気化、なんて笑い話にもならないのですが。
     ユウキ君がカチっとモンスターボールの真ん中の開閉スイッチを押しますと、そこから光を放ちながら現れたのは筋肉の盛った黄土色の体に大きな赤い鼻のポケモンでした。
    「へぇ……ローブシンか……」
    「ん? ここはどこでござるか? そなたは勇者なのでござるか? そうでござるか?」
    「……しゃべれるのか、最近のポケモンは。それになんか勇者って……またワケありポケモンかよ」
    「は、そうだ! 魔王が何処にいるか分からないでござるか!? 少年よ!」
    「あぁ、魔王なら――」 
     そう言ったところでユウキ君は一瞬、梅田さん達が去って行った道を見やると……面倒くさそうに頭をかきながら答えました。
    「……もう死んだよ」

     今、ユウキ君が最高にカッコイイと思えたのは私の気のせいでしょうか。

    「何!? あの魔王を我抜き……でござるか!?」
    「……まぁ、そうだな」
    「そんな馬鹿な……なら我は一体」
    「時代ってもんじゃねぇの? 昔と今を一緒にされても困るし」
     ユウキ君がローブシンに手を伸ばし、声をかけます。 
    「行くとこないなら……オレと一緒に来るか? 今、格闘ポケモンを集めて育ててるんだが、六匹集まって強くなったらジム挑戦の旅でも始めようかと思ってたんだけど……来るか?」
     ユウキ君にそのような夢があったとは! もしかして今朝イーブイさんを拾わなかったのは、そういう事情があって……? という考えは野暮でしたかね。すいません。
    「うぅ、もう魔王がいない世界で我を必要としてくれるとは……! 我の背中! そなたに預けるでござる!」
    「…………ま、アンタがやる気あんなら、それでいいよ。よろしくな」
     ここでユウキ君とローブシンがお互いに握手を交わしあいます。おぉ……! なんかこれから伝説が始まりそうな、素敵なシーンですね! 格闘無双で駆け抜けるユウキ君とローブシンさん達に期待大です!
    「あ、そういえば気になってたんだけど」
    「ん? なんでござるか?」
    「ローブシンって、あのコンクリの棒を持ってるじゃん……アンタはそれを持ってないのか?」
    「あぁ、それならば、永き闘いの終結を打ったときに壊れてしまったでござるよ」
     そう言うや否や、ローブシンは私に思いっきりパンチを繰り出して――って、え?
    「いいコンクリでござるな。このコンクリ、我がもらうでござるよ!」
     メキッという亀裂音が一瞬鳴ったかと思いきや、あれ? 私、浮いている……いや、倒れてる!?
     私が横倒しされて、豪快な落下音と同時に煙が立ち上がり――。
    「うむ。できたでござる!」
    「はやっ」
     満足そうに言うローブシンさんの手の中には折られた電柱の一部分――私が、って意識はどうやらここにあるようです。あら不思議……じゃなくて! なんで折ってしまうんですか!? というより、魔王イーブイさんの件が終わり、ローブシンさんの件も丸く終わりめでたしめでたしじゃないんですか!? あぁ……私が折られたことによって、電線が切れちゃってますよぉ……言うまでもなく周りの電灯は消えうせ、ユウキ君はユウキ君でいつの間にか懐中電灯を出して明かりをつけていますし。近隣の皆様、本当にご迷惑おかけします。誠に申し訳ありませんです。うぅ……。 
    「……これは早くズラかった方がいいな。ローブシン」
    「なんでござるか?」
    「…………次、いきなり電柱折ったら、クビな」
    「ハッ……! 我としたことが……! つ、次からは気をつけるでござる!!」
     とりあえず、一旦、ローブシンさんを戻したユウキ君はその場を急いで去っていきます。ほほう、モンスターボールから外の世界が少し見えるようですね……これは助かります。それにしても……まだ魔王イーブイさんの方が可愛かったものだなと思うのは私だけでしょうか? うぅ……今日も最終的には平和、で終わるかと思っていた私が甘かったのですか、神様。あぁ、そうですか。そうなんですね! 
     …………。
     ……。
     すいません、なんかヤケになっていたようです。
     だって、もうここにはずっといましたから……動けないと言えども、声を上げてどなた様かとコミュニケーションを取ることもできなくとも、それでもここで見てきたもの、聞いてきたもの、電柱には電柱なりの色々な想い出が詰まっているんです。なんとここから伝説のポケモンと呼ばれている者が飛翔していく姿も拝めることができたんですよ! あの長くて綺麗な蒼い尾が風になびく姿、暁に生える蒼い翼……とても惹かれましたね、確かフリーザーさんという名前だったはず……今頃、どこを飛んでいるのでしょうかね?
     それと、ホウオウさんが飛んでいく姿も拝むことができたんですよ! あの通り過ぎた後に現れた虹がとても印象的でした。
     後は、梅雨時期になると喜んで現れるカラナクシさん達が私によじ登ってきたりするんですよ。時々、ドジを踏んで落下したりするカラナクシさんもいてハラハラしながら見守った記憶もあります。
     あ、そうそうこういうのもありましたね。ある日、一匹のトランセルさんとコクーンさんが私のところに止まっていましてね……雨が強い日も、風が強い日も離れまいとピッタリと私にくっついていたんですよ。あ、でも、ある日トランセルさんが落ちそうになったときがあって、それをコクーンさんが糸を吐いてキャッチしたんですよ! そこからまた二匹仲良く私のところで離れることなく隣同士でいて……そしてそれから数日後の朝日が昇る時間と共に二匹一緒に進化したんですよ! 朝日の光を受けながら、羽をはためかし二匹は恥ずかしそうに寄り添いながら、飛んで行っていきましたよ。さなぎの中からの進化の瞬間も素敵でしたが、あの顔を赤らめた初々しい感じも……とても素敵でしたね。
     
     ふぅ……ちょっと想い出にに浸りすぎていましたかね。
     もう、こうなってしまった以上、元に戻ることは叶わないのですが、諦めて、ローブシンさんと共に闘わせてもらうことにしますよ。頑丈さなら自信ありますから、私。そして……これからは色々な世界を見て回させてもらうことにしましょう……!
     ……それにしても、旅の途中であの魔王イーブイさんとあの少女に再会することがなければいいのですが……はてさて。再会したら一触即発は免れそうにないですよね、それが一番気がかりなんですが。
     まぁ、ともかく。旅はもう始まるのですから! 切り替えていきましょう! そうしましょう! 
     置いていかれないようにと、私はローブシンさんに掴まれながら、新たな世界に飛び込んでいきました。


     その後……言わずもがな私はユウキ君とローブシンさん、それとユウキ君の仲間達と共に旅をしました。ローブシンさんの闘い方はとても豪快で私も活躍させてもらいました。ただ豪快すぎて、思ったよりも一緒にいられる時間は短そうだなぁと感じました。旅の途中で道行くトレーナー相手に格闘無双をするユウキ君はとてもカッコよかったですよ! 指示も正確ですし、場を利用した闘い方もしびれましたね! このようにユウキ君はエスパータイプ使いや飛行タイプ使い、そしてゴーストタイプ使いにも屈することなく、次々とジムリーダー達との勝負に勝ち、リーグ戦にも出場を果たしベスト4などの好成績を残したこともありました。
     あ、そうそう。あのローブシンさんなんですが、恋に落ちたんですよ! 相手はユウキ君の手持ちの一匹であるコジョンドさん――白と紫の美しい毛並みを持っている可憐で強い大和撫子さんで、とても物腰の柔らかい姿にローブシンさんったらいつも顔を真っ赤にして、セリフも噛みまくりでしたね。そういえばユウキ君も感づいたのでしょうか、ダブルバトルでもローブシンさんとコジョンドさんをよく選んでいた気がします。最終的に無事、結ばれましたよ……二匹とも末永くお幸せに。
     え? 今、私はどうしているかって?
     あははは……やはりローブシンさんの闘い方があまりにも豪快でしたので、遂に折れちゃいました。
     草原広がる場所での対人戦のときに、ローブシンさんが放った渾身の一撃で見事にバラバラになってしまいましてね……まぁ、その一撃のおかげで勝負には勝てたのですが。
     その後、私は破片になって……その辺で転がっている石と変わらない姿に……って、あれ、不思議ですね。まだ意識が残っていましたか。もうてっきりなくなると思ったのですが……本当に世の中、不思議なことがあるものなんだと改めて思います。緑色の草の先に広がる青い空、その青い世界にゆっくりと流れる白い雲……はぁ……なんだかものすごい平和ですね。風もとても穏やかですし、このままここでのんびりするというのも悪くないですねぇ――。

    「がう!?」
    「ん? どないしたんや? ゾロア」 
    「がう! がう!」
    「なんや、綺麗な石を拾ったんかいな……ん? それ、もしかして『かわらずのいし』かいな」
    「が〜う?」
    「ん、あぁ、『かわらずのいし』っちゅうのは、それを持っていると進化できへんようになるんや」
    「が〜う……」
    「ゾロアちょうどええやんか、おんどれ、進化したくないみたいやし。それ持っていたらどうや?」 
    「がう♪」
    「どこかの街でペンダントにしてもらって、つけてもらおか」
    「がう、がう♪」 
     
     ……いつの間にか、私は『かわらずのいし』になったのでしょうか? この地に何かしらそういう力とか影響とかあるのですかね。
     まぁ、そんな疑問はともかく――。

    「ほな、いくで? ゾロア。 はよせんと街に着く前に日が暮れてまうわ」
    「が〜う♪」
    「おわ!? こら! いきなり頭に飛びつくなゆうてるやろ?」
    「がう、がう♪」
    「……ったく、甘えん坊さんやな……まぁ、ええわ。行くで?」
    「がう♪」

    『浪速伝説』と筆文字タッチで書かれた赤い半袖のシャツに黒いジーンズを履いている少年と、その少年のリーゼント頭に乗っかった狐ポケモンのゾロアに風が一つ吹き抜けていきます。

     ……やれやれ。
     まだまだ、騒動は終わりそうにないですね。
     けれど――。

    「今日の晩飯はモモンジュースが待ってるで!」
    「がう♪」

     なんだか今、楽しい気分です。



                     『続く』



    【(グダグダかもしれない)後書き】
     
    ★企画の話 
     
     物語だけで約32kb……文字にして約15000字程の物語、いや、リレーをお読み頂き、ありがとうございました。
     えっと……この度はこの作品がポケノベさんの夏の企画で見事一位になりまして……ありがとうございました!(ドキドキ)
     ポケノベさんの速報チャットを思い出す度にあのドキドキが思い出されます。
     ポケノベさんの方々も驚かれていましたが、多分一番驚いたのは私……と言っておきましょうか。(ドキドキ)
     もう驚きや嬉しさで頭が真っ白になって何がなんだか。(笑)
     速報が出たとき、ポケノベさんのチャットには色々とお礼をすべくお邪魔させてもらった(ろくにしゃべれなくてスイマセンでした)のですが、その後は気持ちに整理がつかなかったので閲覧組に回らしてもらうことにしました。
     すると、マサポケチャットの方で起こる謎の「巳佑を卒業します」といった卒業式が。ちょ、皆さん。(笑)
     その卒業証書は偽物で(以下略)
     
     えっと、改めてこの場を借りましてですが。
     読んで下さった方、
     票を入れて下さった方、
     感想を入れて下さった方、
     そして、ポケノベさんの管理人、福管理人である鵺作さん、飛馬さん、
     ありがとうございました! 

     また、企画に参加した皆様、お疲れ様でした!


    ★物語の話

     今回はテーマをノンストップで、話を作っていったのですが……。
     リレーみたいな感じ(タイトルも最初は『電柱ノンストップ・リレー!?』でした)で「最初はこれ(捨てイーブイ)で、次はこれ(あかいいと)で……」といった感じにどんどん結んで結んでいく風に書いていきました。
     企画ページでテーマの欄に「夢も野望も、音楽も筆も、風も波も、車も船も、飛行機もロケットも、恋もロマンも、星も光も、地球も月も、過去も未来も、空気も地殻も、猫も杓子も、あなたもわたしも、ノンストォォオップ! 止まるんじゃあないッ!」という文がありまして、その文に負けないような物語を! と意気込みながら書いていきましたです。(ドキドキ)
     
     しかし、いつものように見切り発車でスタートしたリレーなので、次はどのようにバトンタッチしようかなぁ……と迷ったり、魔王イーブイさんのところで「魔王イーブイさんと少女のノンストップ話も面白そうだなぁ」と逆走しそうになったり、ハラハラとしたリレーでした。
     物語上はまだそのハラハラなリレーは終わりそうにないですが。(笑)
     頑張れ、電柱さん!
       
     ちなみにテーマはノンストップだったので、最後は終わりではなく、『続く』と書いて結ばせてもらった所存です。
     なんというか、マンガとかの読み切り作品を読むと「この先、どんなことが起こるんだろう?」といった感じでワクワク感を持たす終わりがあるじゃないですか。
     そんな風に、色々な人達に「自分だったらこの先、こんな物語がいい!」というものも与えられたら、嬉しい限りです。

     
     それでは失礼しました。
     

     ありがとうございました!


    【何をしてもいいですよ♪】 


      [No.1882] 数えちゃったぜテレポのカオス 投稿者:マコ   投稿日:2011/09/18(Sun) 20:08:01     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    こんばんは。マコです。
    自分の【書いてみました】を含めてのテレポートのカウント、しました!



    テレポートの回数は7回です!
    ですから、最終カウントのあった「そこは金色の大地」での回数が13だったので、後6回です。
    私のヒロイン(マイコちゃん)がヒメリの実をあげているはずなので、テレポートに使うか、他の技に使うか、他の話に出てくるポケモンについばむとか虫食いされるか。
    其処ら辺を楽しみにしてます。


      [No.1881] 消された記録、消えない記憶 投稿者:サン   投稿日:2011/09/18(Sun) 12:21:04     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    一年前の今日、私はあなたたちと出会いました。
    プレゼントボックスから飛び出してきた小さな草蛇といっしょに、最初の道路へ足を踏み入れたあの瞬間。
    何もかもが初めてで、新しいポケモンを見つけたり、新しい技を覚えたり、新しい街についたりする度にわくわくして、学校でも、どこまで進んだ? が週末明けの決まり文句になっていました。
    通信対戦に、交換、ハイリンクと、昼休みもほとんどポケモン尽くし。
    わくわくが止まらなくて、あっという間にエンディングを迎えて、かつて共に旅をしたポケモンたちもニューヨークの街へと連れ出して……
    友達のブラックシティが廃墟になっているのを見て笑ったり、もらう予定のポカブに「やきぶた」ってニックネームをつけてから交換してもらったり。
    本当に、いろんなことをして、とっても楽しかった。

    移動教室を終えて自分の教室に戻ってきたとき、私は指先が凍りついてしまいました。
    あるはずのものが、ない。
    冷たいものが、ゆっくりと、全身に染みわたっていくのを感じました。

    何度もかばんをひっくり返して、底に手を突っ込んで、探しました。
    でも、ないものは、なかった。

    ちょうど、プレイ時間が三桁を超えたときのことでした。

    心にぽっかりと穴が開いたみたいで、悔しいやら悲しいやら、しばらくの間は何も手がつきませんでした。
    ただのデータなんだから、と、何度も何度も自分に言い聞かせてあきらめようとしました。
    が、消えてしまった彼らは、私の中ではもう、とてつもなく大きな存在になってしまっていたのです。
    同じソフトを買って、同じポケモンで、同じニックネームをつけて旅をしても、その子は、最初にイッシュの地を巡った子ではないのです。
    言い聞かせれば聞かせようとするほど、むなしくなるだけでした。

    ただのデータなんかじゃない。
    私の中で、あの子たちはちゃんと生きている。

    パスキー、稲妻型のたてがみをぴかぴか光らせて、敵に突進していく様はとてもかっこよかった。
    あなたは炎タイプの技も使えて、いろいろな敵と戦ってくれました。

    ロダ、小さな鳩が、最終進化を遂げてスマートな雉に変身したときは、本当にびっくりした。
    私は雄の派手な姿より、質素な中に美しさを持ったあなたの姿が好きでした。
    意外なところでエアスラッシュの怯みが発動して、戦いを面白くしてくれました。

    マクロ、正直、初めて画面の真ん中でにっこり笑って手を振るあなたを見たときは、パーティからはずそうかと考えてしまいました。
    見た目があまりに変わってて、ちょっとびっくりしてしまって。
    ごめんね、でも、高い特攻で地下鉄でも活躍してくれて、いてくれてよかったなって思ったんだよ。

    ジャンゴ、ちっぽけな子猫だったあなたは、とても優美な黒豹になって私を喜ばせてくれたね。
    いろんな先制技であと一歩のところを後押ししてくれて、何かと活躍してくれました。

    リリアン、イッシュで初めてゲットしたのがあなたでした。
    ちょこまかと画面を動くあなたには、本当に一目ぼれだった。
    きゃんきゃんと犬らしい甲高い鳴き声も、進化するにつれて低くたくましい声になっていったね。
    高い攻撃力と耐久力で、いつも第一線で戦ってくれました。

    そして、シキ。
    私のことを、好きだと言ってくれてありがとう。
    その言葉が、本当にうれしくて。
    最初から、最後まで、あなたはずっと一緒に戦ってくれた。
    私のポケモンになってくれて、ありがとう。



    今、私の手元には新しいブラックのソフトがあります。
    この中にもたくさんのポケモンたちが新しい思い出と一緒につまっています。

    あなたたちのデータは消えてしまったけれど、あなたたちのことは絶対に忘れない。

    たくさんの感謝をこめて、あなたたちの誕生日を祝おうと思います。



    【完全なる自己満語り】
    【ひとのものをとったらどろぼう】
    【BW一周年おめでとう】


      [No.1880] Can't stop one's beat 投稿者:でりでり   《URL》   投稿日:2011/09/18(Sun) 00:47:25     33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「ふう……、やっと着いたな」
    「じゃあヒロ、早くやろうよ!」
    「オッケー、カズ! 今日は負けないぜ」
     土砂降りのあった次の日のことだった。二人の少年は町外れにある山の、やや傾斜のある場所でそれぞれ一匹ずつポケモンを従え、対峙する。
     彼らが住んでいた地方都市の中では、条令によって街中でポケモンバトルが出来ず、ポケモンバトルがどうしてもやりたい彼らは街から一時間離れた場所にある山へ向かわなければならない。
     行くのは遠いし、バトルを終えてくたくたになって帰るのも大変。それでもカズとヒロ、二人の少年はポケモンバトルが大好きで大好きで仕方がなかった。
     昨日も一昨日も、その前もずっと毎日のように行われていたこれが、いつまでも続いていくんだろうと二人は迷わず信じていた。
    「ジュカイン、まずはリーフブレード!」
    「守る! 膝元に来るよ!」
     素早い動きで間合いを一気に詰めたヒロのジュカインの的確な攻撃を、カズのオノノクスが淡い緑の膜をピンポイントで足元だけに張り、リーフブレイドを弾く。
    「ドラゴンクローだ!」
     ワザが決まらず体勢を崩したジュカインに対し、空の右手を振りかぶり、鋭い角度から放たれるドラコンクローがジュカインをヒロの側まで飛ばした。
    「ダメ押しで暇を与えないで!」
    「木に飛び移って撹乱してやれ!」
     かろうじて受け身を取ったジュカインは、猪突猛進で突っ込んでくるオノノクスをすんでのところで上に跳躍してかわし、真後ろにある木の、枝に勢いよく飛び移る。一方で勢い余って止まれなくなったオノノクスは、ジュカインがいる大木に大きな一撃を喰らわせてしまった。
    「あれ?」
    「今のなんだ?」
     揺れ。オノノクスの大木への一撃と同時に、二人と二匹のいる地盤が揺らいだ。思わず皆の動きが固まり、それぞれ首を傾げたり辺りを見渡したりする。状況の把握が出来なかった一人と二匹とは違い、いち早く悪寒に気付いたヒロの決断は早かった。
    「嫌な予感がするな……。カズ、今日は中止だ! 急いで山を降りるぞ!」
    「え? あ、うん。分かった」
     互いにモンスターボールにポケモンを戻し、踵を返そうとしたとき。突然の山の唸りがしっかりと二人の耳に入った。ヒロの嫌な予感はズバリ当たったのだ。
    「なっ! カズ、走れ!」
     オノノクスがダメ押しで攻撃した大木の根が持ち上がり、ゆっくりと倒れていく。言われた通り前を進んでいたカズは、後ろを振り返りながらヒロが倒れる大木を軽いフットワークで避けたことに安堵した。
     しかし、今度は大木の上の石や岩が崩れだす。大木という支えが無くなったことで、斜面が崩れ出していく。前日の土砂降りのせいで地盤が非常に緩くなっていたところに、オノノクスの一撃が微妙なバランスで保っていたこの斜面が崩れ出したのだ。
    「うわあっ!」
     カズは再び背後から聞こえた声に、前に進みながら振り返れば。
     ヒロが踏み出した場所の土が崩れ、ヒロは転んでしまった。たまらずヒロはジュカインを繰り出して助けを求めようとしたが、ボールから放たれたジュカインの足場も登場と同時に崩れ、一人と一匹が下へ、下へと流されていく。
    「ヒロッ! ヒローォ!」
     カズは自分のモンスターボールに触れるが、この状況を好転させるポケモンが手持ちにいないことに気付く。元より彼らはポケモンバトルをするのが本分であり、レスキューなんて出来る訳がない。
     もしも僕たちが空を飛べるポケモンを持っていれば――。
     込み上げてくる恐怖とパニックでカズは、ただ呆然と手を前に伸ばすだけで何も出来ず、やがて小さくなって見えなくなったヒロとジュカインをぼんやりと目で追うだけであった。
     土砂はさらに崩れ、大量の砂や石、岩が一人と一匹に続くように転がっていく。カズは更に一歩、二歩と下がり続け、かろうじて自分の身を本能的に守ろうとする。
     何分経ったか彼らには分からないが、カズが平静を取り戻したのは目の前の土砂がようやく落ち着いてからだった。
     ヒロとジュカインの姿は、もうどこにもない。
     広い山の中で、カズがたった一人だけ取り残されてしまった。






                                      Can't stop one's beat
                                      作・でりでり





     ポケモンバトル世界大会開催――。
     大した観光地の無かったこの地方都市が、気候や風土の関係上認められて世界大会開催地となり、予想以上の賑わいを見せている。
     試合が行われる午後を避け、地元の人と観戦に来た人同士が夏の余暇を潰しあおうと街中でもあちこちでポケモンバトルが繰り広げられていた。
     今、ここではポケモンバトルは市が規定した特定の施設、通称『バトルエリア』ならば街中でも自由に出来るようになった。二年前までは町外れの山まで行く必要があったが、世界大会の会場となったことを受けて急速にそういった施設の開発が進んだのだった。
     母に頼まれたスーパーへの買い出しを終えて自宅に向かう道中、ぼんやりとあちこちで繰り広げられるそんな賑やかな様子を楽しげに眺める。
     突然どこからか放物線を描いて飛んで来たカメールが足元に落下し、思わず足が止まった。
    「すみません! 大丈夫ですか!?」
     目を回して倒れたカメールを向かえに駆けてきたトレーナーが、こちらに向かって腰を折って謝り、カメールをモンスターボールに戻して来た方向へ戻って行く。バトルエリアから大きく吹き飛ばされてしまったのだろう。フェンスで横を囲われているというのに、それでも飛ばされたのはかなり上に吹き飛ばされたという事だ。エリアに戻ったトレーナーは新しいモンスターボールからグライガーを繰り出し、ワイワイとバトルの続きを始まる。
    「街中でポケモンバトル、かぁ」
     と、誰に向けてもなく呟くと、ズボンのポケットに入れていたモンスターボールがカタカタと揺れているような気がした。
    「もしかしてお前もバトル、やりたいのかな?」
     返事、それに準じるリアクションは無い。きっと僕がポケモンバトルのド素人で、ポケモンバトルをする人間じゃないことを分かっているのだろう。
    「ごめんな、バトルさせられなくて」
     ポケットから視線を外し、夕焼けの街を進む。街の中心部からやや離れた、計画的に建設された住宅街に我が家がある。普段は閑静だが、中心部はどこもバトルエリアが混んでいるため穴場を狙ったトレーナーがたまにうろうろしている。きっとこの夏だけなのかもしれないが。
    「ただいまー。買ってきたよ」
    「あら、お疲れ様」
     帰宅するなりキッチンに入り、買い物かごを脇に置く。労うように母さんが二、三度ありがとうと言う。
    「料理に使うマヨネーズを買い忘れたんだけど、ほんとありがとうねぇ。もうこれでご飯すぐに出来るから、カズを呼んできてちょうだい」
    「はいはい。また部屋に?」
    「そうなのよ。あの子、いつになったら部屋から出てくれるのかしら」
    「仕方ない、よ……」
    「そうは言っても、もう中学生になったんだからいい加減ちゃんとしてくれないと困るのよ。さ、今手が離せないからお願い」
     ここで言い合っても仕方がない。世界大会団体戦、準決勝が中継されているテレビを切り、二階に上がって弟のカズの部屋の扉をノックする。
    「カズ、ご飯だから出てこいよ」
    「……分かった」
     やや小さい声が扉越しに聞こえ、弟の無愛想な態度に思わずため息をつく。
     ようやく開いた扉から、焼けずに白いままの肌の、沈んだような顔をしたカズがひっそりと出てくる。
    「そうだ。カズ、明日のお墓参りの事だけど――」
    「いい。一人で行く」
    「……そんな暗い表情をしてたらヒロ君も喜ばないぞ、きっと」
    「兄ちゃんには関係ないよ」
     何十日かぶりにカズと会話をかわそうとしたが、コミュニケーションも何もない。ベルトコンベアで流されるように先に階段を降りたカズを追って、重い足取りでダイニングに行く。
     こんなカズでも二年前までは明るく快活で、今みたいに部屋に閉じ籠って本ばかり読んでいる生活とは真逆、外に出て遊ぶのが大好きだった。それがこうも変わってしまった理由は分かる。
     幼馴染みで大親友のヒロ君とポケモンバトルの最中に、不運としか言いようの無い土砂崩れに遇い、カズは助かったもののヒロ君がそのまま還らぬ人になってしまったことにある。
     両親や、兄である僕。そしてヒロ君のご両親やヒロ君の捜索活動にあたったレスキュー隊員が何を言っても、カズはひたすら自分のオノノクスのワザ、ダメ押しが外れたせいで土砂崩れが起きた、つまりヒロは自分のせいで死んでしまったと、言って聞かなかった。
     やがて、カズはそれから大好きで止まなかったポケモンバトルを敬遠するようになる。さらに手持ちの全てのポケモンは逃がすか譲渡してしまう程。そこまでしなくても良かったのでは、とも事が事だけに言いづらかった。
     やはり、ポケモンバトルがトラウマとなっているのだろうか。
     両親と僕が話し合った結果、なるべくカズの前ではポケモンバトルの話をしないようにすることにした。
     情熱を注いだ大好きなモノを失ったカズからはみるみる生気が消え、学校(たまに無断で休む)と食事、風呂等でしか部屋から出さえしない。
     気持ちは分かる。いや、分かるというのは流石に驕りか、それでもいつまでもこのままという訳にはいかないだろう。
     ポケモンバトルで無くてもいい。また何か、カズを元気にさせ、熱中させるものがあれば……。
     まるで光を失ったカズの目には何が見えているのだろう。
     その後も食卓で一言も発することなく、食事を終えてすぐに部屋に戻るカズを見つめながら、うすぼんやりとそんなことを考えていた。



     夏の夜は暑い。夜に限らずとも当たり前のことだ。眠りが深い自負があったのに、余りの暑さのせいでまだ夜中三時というのに目が覚めた。汗でびっしょり濡れたTシャツを脱ぎ捨て、汗をタオルで軽く拭いてから新しいTシャツに着替えた。トイレにも行こう。思い立って、一人部屋から余り音を立てないように慎重に廊下に出る。
     寝ているだろうカズの部屋の前を、抜き足、差し足、忍者のごとくゆっくりと通ろうとしたとき、何か声がした。
     誰かと喋っている訳ではなさそうだが、何を言っているかは聞き取れない。それでもその声自体にはどこか聞き覚えがあるような。
     カズには悪いが部屋の扉に左耳をぴったりとあて、それが何かを探る。
    『――ましたぁ! エレキブルの必殺パターンがアメリカ代表、Jey選手のメガヤンマに決まりました! 団体戦準決勝は白星発進です。試合全体を見ていかがでしたか』
    『圧巻の一言に尽きますね。チャージドローで完全に流れを引き寄せました。やはり彼を一度でも彼のペースに持ち込ませると――』
     すぐに分かった。間違いない。これは今日の世界大会のテレビ中継だ。どうしてあんなに敬遠していたのにカズがポケモンバトルを観てるのか。
     意識がそっちに注意していたせいで、手が滑って扉の取っ手を押してしまったことに気付かず、異変を感じたときには倒れこむようにカズの部屋に入っていた。
    「に、兄ちゃん!」
     慌ててテレビの電源を切ったカズだが、たぶんバレたということを分かっているのだろう。体は僕の方に向けているが、顔は俯き床だけを見ている。どこか観念したような雰囲気がある。僕の言葉を待っているのか。なんと言えばいいのだろう。
    「……観たかったなら録画してこんな夜中に観なくてもご飯食べてる時間にリアルタイムで観れば良かったじゃないか」
     視線が右へ左へあっちこっちに動くだけで、カズは何も返して来ない。
    「別にポケモンバトル観ることを怒ってる訳じゃない。こんな夜中にテレビ点けるのは良くないよ、って言ってるだけだ」
    「ごめんなさい……」
     絞った雑巾から僅かに水が滴るように、か細い声が帰って来る。それから互いに二の句を失い、居心地の悪い気まずさが漂う。
     カズはどうかは分からない。たぶん僕が部屋から出ていくのを心待ちにしているのだろう。でも僕はカズに尋ねたいことばかりで、夜中の寝惚けた頭も相まってやや混乱してしまっている。
    「カズ……。やっぱりポケモンバトルが好きなのか? それならそうと最初から言ってくれたら……」
    「分かんないよ……」
    「分からない?」
     予想外の答えに完全に虚を突かれた。分からない、どういうことなのか。現に今まで夜中に起きてまで中継の録画を見ていたじゃないか。
    「ポケモンバトルの事を考えるのは嫌なのに、嫌なはずなのについ気になってこうして観ちゃう。またあの日の事が思い出しそうになるし、今でもたまに思い出しちゃうのに、観てるとつい胸の中が、何かこうよく分かんないけど沸き上がって来るような気がして」
     ようやく顔を上げたカズの目尻には涙が浮かんでいた。間もなくカズの黒目がぶれ、静かに顔をそれが伝う。
    「僕ってポケモンバトルが好きなの? ねぇ、兄ちゃん!」
     すがるように泣き叫ぶカズに、なんて言ってやれば良いのか検討がつかない。軽率な言葉は余計にカズを傷つけ、困惑させるだろう。唇を舐めながら言葉が見つかるまで口元を遊ばせていると、どんどんカズの顔が歪んでいく。
    「好きになっちゃ、いけないのに。またヒロみたいなことが、起きちゃうかもしれないのに!」
     ……結局カズが泣き疲れて眠るまで、僕は一言も発することが出来なかった。腫れた目を閉じたカズをベッドに寝かし、涙で濡れたフローリングをティッシュで拭きながら暗い思いに駆られる。
     ヒロ君のお通夜の時にも似たような事があった気がする。自分を追い詰めて自分の心を傷つけるカズに今みたいにいろいろと問われたとき、ロクな返事をしてやれなかった。
     もしも僕があそこで。そして今も、何か適切な言葉をかけてやれたらカズはここまで辛い思いをせずに済んだかもしれない。
     歳が五つも離れてるのに、何も出来ない最低の兄ちゃんでごめんな……。
     拭いたばかりのフローリングが、また湿る。



     浅い睡眠を取った翌朝。まだ深く眠るカズを置いて、一人で家を出る。
     朝からポケモンバトルで騒がしい通りを抜け、街の隅にある共同墓地に来た。近くで買った献花を携え、墓地の一角にある一つの墓の前で足を止めた。
     今日はヒロ君の命日、二年前のこの日、ここから見えるあの山で。あの山は事故のことを受けて、ハイキングコース以外の全てが立ち入り禁止になった。もしも二年前に今みたいに街中でもポケモンバトルが出来るんだったらヒロ君もこうはならなかっただろう。
     皮肉なもんだ。どうしてもっと早くこうしてくれなかったんだろう。そうすればカズだってこんなに苦しまずに済んだだろう。
    「僕は……、どうすればいいんだろうなぁ」
     死人に口なし。答えが来るわけないなんて分かってる。分かっているけど、言わずにはいられなかった。
     新しい花を添え、墓に水を垂らし、真夏の日射しが強くならないうちに墓の回りの雑草を抜いていく。
     こうやっていると色々思い出す。元からやや内気なカズを、引っ張るように先導してくれたのがヒロ君だった。気の強いヒロ君のお陰でカズは明るくなり、他の友達も出来た。我が家で一緒にご飯を食べたこともある。うちとヒロ君の一家と共に遠出だってした。カズほどではないけれど、ヒロ君がこうなったことは僕だって十二分にショックだ。
     ヒロ君はカズにとっては太陽みたいな存在だったんだ。僕みたいなのよりもずっと頼りに、支えになっていた。
     ようやく雑草抜きを終えた僕の足元に見覚えのあるユニランが現れる。立ち上がれば、ヒロ君のお母さんが。お辞儀をする彼女につられ、僕も頭を下げる。
    「去年も来てくださったのに、ありがとうございます。わざわざお墓の手入れまでしてくれて……」
    「いえいえ。……それにそうでもしないとゴーストポケモンが集まって来るかもしれませんしね」
    「ですね。……今日はカズ君とは一緒じゃなくて?」
    「えぇ」
    「そうですか。やっぱりまだ」
     やっぱり、とはカズが塞ぎこんでいる事についてだろう。静かに首を縦に振り、辺りをふわふわと楽しそうに漂うヒロ君のお母さんの手持ちであるユニランに目を移す。
    「押し付けがましいんですが、私はカズ君にはポケモンバトルを続けていて欲しいんです。ヒロが叶えられなかった夢を追ってほしい、って」
     ヒロ君の夢、世界一強いポケモントレーナーになる。いつだったかは忘れたが、声高に空を指差して屈託のない笑顔でそう語っていた覚えがある。彼にはそう言っても周りが笑わない程のセンスがあった。その夢を、カズに……。
     彼女はバッグからモンスターボールを取り出すと、それを見たユニランが念力でモンスターボールを僕の手元に押し付ける。受けとれ、という意思を感じとり、ついつい両手で包み込むように手に取った。
    「それをカズ君に渡してあげて欲しいんです。もし受け取るのを拒否したら、逃がすなり譲渡するなり、返してもらっても構いません」
    「これは?」
    「ヒロのパートナーの、ジュカインです。どうやらジュカインはモンスターボールに戻されていたようで無事で」
    「でもどうしてこれをカズに」
    「……最初はヒロの代わりと思って置いていたんですが、最近思うんです。この子は私なんかよりもカズ君の手元にいたほうが、カズ君にとってもこの子にとっても幸せだろう、って。それと――」
     穏やかで静かな笑みだったが、それでも彼女からは強い意志が伝わる。
    「ヒロもきっと、また元気に明るくポケモンバトルしてくれるカズ君が見たいと思うんです」
     電撃が走るような衝撃が脳裏に走った。彼女に気圧されただけではないが、これはカズに渡さなきゃならない。そんな気がした。カズに何もしてやれなかった僕が唯一出来ること。後押ししてくれる。
    「かっ、必ず渡します!」
     彼女に深くお辞儀をし、驚く彼女を放って急いで踵を返した。渡してどうなるかは分からない。でも、何もしなければ何にもならない。
     気付くのに時間がかかりすぎたが、カズを変えるためにはまず僕が変わらないと。僕がヒロ君に代わる支えになってやらないと。今こそ『情けない兄』を捨てないと。兄としての最低限の役目を。今なら、今しか!



    「どこにいるんだ、カズ!」
     入れ違いになったのか、家に戻ってみればカズの姿は無かった。一人で墓参りに行ったということだけは分かる。それを頼りに来た道を引き返し、辺りを見渡しながらカズの姿を探してもどこにも見当たらない。
     家で待てばいいじゃないか。なんてのは考えた。でも、今急がないといけないような、早く渡さないとこの『熱』が失われそうな気がする。
     ただ渡すだけじゃダメなんだ。モンスターボールを渡すんじゃなく、ヒロ君、そのお母さん、僕の気持ちも共に添えてやらなきゃならない。沸き上がるこの爆発にも似た想いは、時間が進むにつれて薄くなってしまう。だから、急がないと。
     茹だるような暑さの中、汗だくになりながら駆け抜けていると、突然聞き覚えのある大きな声がした。
    「や、やめろぉ!」
     車道を挟んで向こう側。同い年くらいの三人の男子に輪を囲まれるように、カズはいた。アスファルトに膝をつけ、男子のうちの一人に向かい、何もない宙空に右手を伸ばしている。
     状況をよく飲み込めなかったが、少なくともカズが良い状態でないことは分かる。
     立ち上がり、ひ弱な体躯で手を伸ばしていた男子に飛びかかろうとすると、控えていた残りの二人がカズを押さえ込んだ。
    「返せっ、返せっ、返せぇ!」
    「へぇ、これはそんなに大事な物なのか。だったら尚更タダで返したくはないな」
     そう言い跳ねる男子の手には、カズのエースキャップが見えた。読めたぞ、カズはあの男子に帽子を奪われて怒っているんだ。
     しかもあの帽子は元々はヒロ君からもらったもの。形見のそれを奪われて、心穏やかな訳がない。
     ここからヒロのいる場所にたどり着くには十メートル先の横断歩道まで向かわなければならない。時間がかかる。いくら手元にジュカインがいるからとはいえ車道を横断するなんて不可能だ。ポケモンの扱いがうまくない僕では間違いなく痛い目にあう。助太刀したいが到底厳しい。
     そうして僕があれこれ考えているうちに、例の男子は奪った帽子を被り、口の端を吊り上げて言った。
    「どうしても返して欲しけりゃ俺とポケモンバトルだ。図書館の側のバトルエリアでシングルバトル。勿論ポケモンくらい持ってるよなぁ?」
     あの嫌らしい言い方。カズがポケモンを手放していることを知っているかのような。そういった明確な悪意を感じる。
    「ダンさん良いんすか? そんな条件出してやって」
    「あぁ? この俺がこんなもやしみたいなヤツに負ける訳ないだろ。奪うだけじゃアンフェアだから、せめてものお情けだ。……もっとも、そもそも来るかさえも怪しいけどな。いいか、三十分だけ待ってやる。それで来なかったら試合放棄とみなして俺の勝ちだ。分かったか? ……ふん、行くぞお前ら」
     二人の男子はカズの拘束をほどき、ダンと呼んだ男子の後に続いていく。投げ捨てられるように倒れたカズは、ゆっくりと立ち上がり、首を下げたままダンとは反対側へ進もうとしている。
     このタイミングで、ようやく横断歩道の信号が変わった。駆け出して、カズの名前を呼ぶ。驚いて振り返ったカズの顔は真っ赤になっていた。
    「兄ちゃん……」
    「今のやつら追いかけないのか」
    「……追いかけたってどうしようもないじゃんか」
     ポケットから黙ってジュカインの入ったモンスターボールを突き出す。はっ、と顔を上げてカズは僕の顔を見たが、やがて視線と首が下がり、一歩二歩と後ろに後退する。
    「いいよ」
    「よくない」
    「ほっといてよ!」
    「本当にそれでいいのか?」
    「うるさい!」
     カズは僕を振り切って逃げ出そうとしたが、こうなることは想像出来た。カズの右手首を掴み、離さない。
    「離して!」
    「このモンスターボールにはヒロ君のジュカインが入ってる。カズなら言うことを聞かせれるはずだ」
    「僕は――」
    「いつまでもそうやってるつもりか!」
     自分でもそこまで激しく言うつもりは無かったが、つい激しい剣幕で怒鳴ってしまうと流石のカズも固まり、抵抗をしなくなった。言うなら今しかない。
    「そうやって逃げてばっかりしていると失うばかりだ。カズ、お前はまた同じ失敗を繰り返すつもりなのかい?」
    「……」
    「目の前で大事な物が消えていく。一つや二つだけじゃない。カズがそうしている限り、たくさんの物を失っていく」
    「嫌だっ!」
    「だったら立ち向かうんだ。そのための、鍛えた力だろう」
     強引にカズの右手にジュカインのモンスターボールを握らせる。そっと手を離せば、カズはモンスターボールをただじっと見つめた。
    「ヒロ君が今のカズを見て喜ぶか?」
    「……ううん」
    「だったら尚更じゃないか。ダンとかいうあの子や、過去のトラウマを乗り越えるのは今だ。人は困難の度に変わらなきゃいけないんだよ」
    「でも――」
    「兄ちゃんがついてるから、安心しろ!」
     僕がいるからどう安心なのかは自分でも分からない。それでもやや明るくなったカズの顔を見ると、なんとかなりそうな気がする。ちゃんと支えになってやれるかもしれない。僕自身もちゃんと頼れない兄貴のヴェールをここで脱がないと。
    「出来るか?」
    「……頑張る」
    「よし。そう来なくちゃ。……そうだカズ、これを」
     思い出したようにジュカインのモンスターボールがあったポケットと反対側から別のモンスターボールを取り出し、カズに手渡す。
    「これは?」
    「カズのオノノクスだ。カズが逃がした後も、自力でうちまで帰って来たから僕が世話してたんだ。オノノクスはきっと、カズがこうして立ち上がる時が来るのを信じてたんだ」
     大事にモンスターボールを両手で包み込んだカズの肩を優しく叩く。熱が、そっと伝わる。
    「おっと。言われてた時間までもう少しだ。さあ、行くぞ!」
    「う、うん!」



     図書館の側のバトルエリアに向かえば、言われた通りダンとその取り巻きの二人が待っていた。まさか本当に来るとは思わなかったのか、ダンはカズの姿を見ると驚いたように僅かに口を開いた。
    「ふん、どうやら時間通りに来たようだな。だけどポケモンは持ってるのか?」
     カズはぎゅっと眉間に皺を寄せ、モンスターボール二つを見せつけるように突き出す。
    「へぇ、二匹か。おい。ジャッジの用意をしろ」
    「わ、分かりました」
     バトルエリアは公式大会さながらのポケモンバトルが出来る施設。しかし人間のジャッジはいない。オートジャッジと呼ばれるシステムが、公平に試合をジャッジする。試合形式を入力すれば後は勝手にやってくれる、魅力的なシステムだ。
    『使用ポケモンは二匹のシングルバトル。道具の所持、使用は不可。入れ替えは自由、先に一匹でも戦闘不能になった方が敗北となります』
    「カズ、負けるなよ」
    「うん」
    「ダンさんそんな奴やっちゃってください!」
    「当たり前だ。さあ、始めるぞ!」
     対戦が始まればバトルエリアには戦う二人しか入れない。リフレクターや光の壁などと同様の特殊な素材で作られたフェンスで仕切られたギャラリー席から、やや遠巻きに見守って応援するしか出来ない。だからこそ精一杯応援してやる、それが僕の役目だ。
     両者が放るモンスターボールからは、それぞれコドラ。そしてオノノクス。オノノクスのような大型ポケモンが出るとはダン達も思っていなかったようだ。
    「オノノクスとか本物初めて見た……」
    「で、でけぇ」
    「ばっ、馬鹿が。いくらポケモンが強そうだからといってそれだけでポケモンバトルは勝てない。行くぜコドラ。まずは嫌な音!」
     爪を立てたコドラが、自らの鋼の体を緩く引っ掻き鼓膜に妙な振動を起こす不快な音を奏でる。
     僕やカズもそうだが、例外なくオノノクスまで思わず耳を塞いでいると、がら空きになったボディ目掛けてコドラの突進がオノノクスの腹部にクリーンヒット。体勢は崩さなかったが後ずさってしまった。
    「畳み掛けてやれ。アイアンテール!」
    「みっ、右から来るよ、守って!」
     淡い緑の幕がオノノクスの右側だけに張られると、予想通りコドラが体を半回転させて振りかぶったアイアンテールは弾かれ、僅かによろける。カズはその一瞬のスキを逃さなかった。
    「ドラゴンクロー!」
     右側に傾いたコドラを押し倒すように、左手でドラゴンクローをアッパーカートのように振り上げ、完全にコドラの重い体が持ち上がった。
     二年ぶりだというのにブランクを感じさせない。こっそり観ていたポケモンバトルの中継が役に立っているのか。その指示に従っているオノノクスも流石だ。
     そして今のように、相手の攻撃がどこからやってくるかに関する読みの上手さがカズの天性の才能だ。行ける、このままならもしかするかもしれない。
    「そのままコドラにダメ押――」
     追撃の手筈のはずが、突然カズの指示が止まってしまう。その僅かな時間に、元の体勢に戻ったコドラが指示を待って戸惑うオノノクスに突進を食らわす。
    「なんだ? まあいい、決めてやれ。諸刃の頭突き!」
     カズの様子が明らかにおかしい。後ろ姿しか僕のいる場所からは見えないが、手がプルプルと僅かに震えて下を向いている。
     まさか、と嫌な予感しか浮かばなかったが、トラウマをぶり返したのか? 守る、ドラゴンクロー、ダメ押しの三連コンボはカズの伝家の宝刀のはず。
     いや、そういえばカズはダメ押しが外れて土砂崩れが起きたと言っていたような――。
     とにもかくにもっ!
    「カズ! 前だ前っ!」
     僕の叫びで我に返ったカズはパッと頭を上げる。ただただ真っ直ぐに猛突してくるコドラの攻撃を回避、防御不可だと判断したのかぶつかる寸前でオノノクスをボールに戻し、ワザをスカしたために急にブレーキをかけて不安定な動作のコドラの真上に、いつの間にか放られていたモンスターボールから新たなポケモンが飛び出していた。
    「リーフブレード!」
     閃光と共に現れたジュカインは、高さを駆使して思い切り腕の刃を降り下ろす。コドラは急な攻撃に体を丸める程度しか対処出来ず、ほぼ完全なクリティカルヒットとなった。
    「穴を掘る!」
     コドラの背中に着地したばかりのジュカインは間髪入れる暇なく、地中に飛び込むように潜っていく。コドラには地面タイプのワザが有効、良い采配だ。
     ダンもコドラもどこから、どのタイミングで来るのかと探るように辺りを探るが、ダンはやがてモンスターボールを左手に握る。交代させるつもりか。
    「今だ!」
     足元から突き上げるようにジュカインが飛び出ると、コドラの体が持ち上がる。それを見てからダンはコドラを急いでモンスターボールに戻す。
     もし今のが最後まで決まっていれば、コドラは受身も取れないだろうからダメージの衝撃もより大きくなり、戦闘不能になっていたかもしれない。惜しい。
     チラと振り返るカズと目があった。やや困り顔になっていたが、僕が笑顔を見せるとカズも表情が柔らかくなった。いいぞ、やってやれ、カズ!
     にしてもダンはさっき構えていたはずの新しいボールを構えていない。どういうつもりなのか、どこにやったのか。
    「やれ! 燕返し」
     唐突にジュカインの背後から黒い疾風が飛び出し、襲いかかる。あれはドンカラスだ。いつの間に。
     場に右往左往と目を配らせると、先程ジュカインの居た位置の付近に開かれた状態のモンスターボールが転がっている。
     さっきカズがオノノクスを戻してワザを交わしたテクニックが『チャージドロー』というのに対し、おそらく今彼がやったのは『バックブラスト』だろう。
     チャージドローは相手のワザをギリギリでポケモンを戻すことによって回避し、すぐさま別の角度から放ったポケモンがそのポケモンに攻撃を与える。少しでもポケモンを戻す、放つタイミングがずれて同時に二匹が場に出ている状態になるとシングルバトルでは反則扱いになるため、読みと動体視力、集中力が合わさってこそ出来るテクニック。
     バックブラストはあらかじめモンスターボールの開閉スイッチを緩め、何らかの手段でフィールドのどこかにボールを転がし、トレーナーの合図でポケモンが自分からボールから飛び出して相手の背後等を取るテクニックだ。モンスターボールが回収しづらいため入れ替えが出来なくなるケースの多い、捨て身の策。ダンはそこまでしてでも勝利をもぎ取りに来たということだ。おそらくジュカインが穴を掘ったときには決めていたのだろう。
     奇襲を取られ、完全に後手に回ってドンカラスの猛攻をなんとか避け、時には受け流して退けているジュカイン。だけどこのままじゃあ分が悪過ぎる。
    「戻れ、ジュカイン」
    「そのタイミングを待ってた! 追い討ちだ!」
     ジュカインがモンスターボールに戻される速度より早く回り込んだドンカラスが、翼を一振りしてジュカインを横に弾き飛ばす。投げられたサイコロのように転がったジュカインをもう一度戻そうとするカズだが、モンスターボールとジュカインの直線上の間にドンカラスが割り込んだせいで戻すことが出来ない。
    「そう好きにはさせねぇよ。騙し討ちだ」
    「あ、穴を掘って回避!」
     間一髪、ドンカラスのトドメになりうるかもしれない攻撃をなんとかかわしたジュカインは地中を伝ってカズの前方に戻り、ドンカラスと向かい合う。ドンカラスは何度か有効打をジュカインに決めているのに対し、ジュカインの方は一度シザークロスを決め、リーフブレードをかすらせるのが精一杯。
     いくらカズが(感じさせないとはいえ)ブランクなどを背負っているとはいえ、このダンという彼も相当だ。
     休む暇なく繰り広げられていたバトルに、手汗が止まらない。いつの間にやらバトルを嗅ぎ付けた野次馬も、黙って緊張の一戦に見入っていた。
    「おい、あのちっこい方の坊主、ピンチなのに笑ってるぞ」
     観客の一人の声につられてカズの横顔をなんとか臨めば、ぎらついた目に笑う口元。
     やっぱり、カズはバトルをしている方が輝いてる。このジュカインを上手く扱っているサマを見れば、まるでヒロ君がそこにいるような……。
     そうか。ヒロ君は生きている。死んじゃいない。カズのあのバトルの中に、ヒロ君がいる。
     今のカズの姿こそがそれを証明している。カズもきっとそれをいつの間にか戦いの最中で気付いたんだ。ヒロ君はきっとカズと共に戦ってる。
     もう、トラウマを乗り越え最大の味方を見つけたカズに怖いものはない。
    「今なら降参を認めてやるぜ。もうあと一撃でも食らえば倒れそうなジュカイン。だけどこの俺のドンカラスはまだ余裕。追い討ちがある限り交代はさせないし、元より草タイプに飛行タイプをぶつけている時点で俺が一つアドバンテージだ」
    「……降参なんてしない。一つディスアドバンテージを背負っても、僕は君より二つアドバンテージがある!」
    「何をぉ! トドメだ、騙し討ち!」
    「フェンスに向かって走って」
     追いかけてくるドンカラスから逃れるように、バトルエリアを囲むフェンスにかけよるジュカイン。だけど端によれば端に行くだけ動ける範囲が狭まって不利になるはず、なぜそんなことを。
    「僕のアドバンテージの一つは地の利だ! 三角飛びでドンカラスの背後を取って」
     フェンスに向かって跳んだジュカインは、フェンスを強く蹴ってその反動でドンカラスの背後に回る。対象を急に見失ったドンカラスはなんとか反撃を回避しようとするが、ワンテンポ遅かった。
    「そして、もう一つは勇気だ!」
     打ち合わせや合図無くしても、阿吽の呼吸でジュカインがドンカラスにアクロバットを叩き込む。弾かれてすぐそばのフェンスに叩かれるようにぶつかり、予想以上にダメージが大きかったのか、目を回したドンカラスはそのまま力を失った。
    「ば、馬鹿な……」
    『ドンカラス戦闘不能。勝者は青コーナー』
    「やった!」
     ついつい僕が大声で歓喜を口にすると、観客達がカズに。そして健闘したダンに向けて拍手を贈る。
     バックブラストでフィールドに転がしていたボールを拾い、ドンカラスを戻したダンは俯いたままカズに近付き、被っていたエースキャップをカズに返す。
    「……悪かった」
     小さくそう言ったダンは踵を返そうとしたが、それよりも先に帽子を被り直したカズが右手を差し伸べた。
     首を傾げるダンに、カズは喜色満面で言う。
    「握手」
    「あ、あぁ」
     カズの細い手に、ダンの黒い手が交わると、ダンは苦笑いしながらもどこか嬉しそうな表情を見せていた。



    「じゃあ行ってくる!」
    「どこにさ」
    「ダン君達と七丁目でやってる団体戦に出るんだ」
    「そっか。それはいいけど今日は世界大会マルチバトルの決勝だぞ?」
    「それまでには帰ってくるから。行ってきまーす」
     朝からバタバタと騒がしい光景を見せつけられ、いささか参るもののどこか嬉しいような。
    「カズ、昨日から急に元気になったと思ったら、いつの間にやらまたバトルとか言い出して。ねぇ、一体昨日何があったの?」
     洗濯物を干し終えた母さんが、嬉しいようなめんどくさいような息を吐いて僕に尋ねる。
     何があった、一言で片付けるのは難しい。でも間違いなく言えることはある。
    「カズがまた、未来に向かって走り出したんだ」
    「はい? ちょっとどういうことなの?」
    「僕も出掛けてくる」
    「あ、待ちなさいって!」
     面倒な詰問を避けようと、慌てる母さんを振り切って家を出る。どこに行こうかなんてわからない。カズの応援に行ってやってもいいし、友達の家に行ってもいい。買い物に行ってもいいし、冒険に行ってもいい。
     どんなに不器用で、たまに道を間違ったり踏み外したりして何度転んでも、きっと必ず立ち上がれる。また走り出せる。
     何日何ヵ月何年迷っても、信じるものがある限りきっと光は見えてくる。
     どこまでも続く未来は、一人で閉じたりなんてしないから。
     さあ、今日はどうしよう。
     僕達の夏はまだまだ終わらない。


    ───
    【何してもいいのよ】

    若干秋になっちゃったけどポケノベ夏企画投稿作品。
    詳しいことはポケノベとかラジオとかで言いました。
    チャージドローとかバックブラストとかをボールテクニックと総称して、今同じ世界観の中編書いてます。
    ちなみにエレキブルのトレーナーはあの人


      [No.1879] フタバスズキリュウ 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/09/17(Sat) 23:09:24     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「何が楽しいんですか石ばっかり」
    貴重な休日をこんな洞窟の奥に強制連行され、ユウキは皮肉をこめてダイゴに聞いた。アシスタントならハルカだってよかったはずなのに、彼女は上手いこといつも用事を作って逃げている。
    「古代のロマンがあるじゃない!たとえばこの地層は」
    「ああもういいです!!」
    のらりくらりとユウキの敵意をかわし、自分のペースにするのはダイゴの得意技。今も地層についての講義を始まるところだった。
    「そうかい。じゃあそこの道具をとって」
    「はいはい」
    下手に投げると後で物凄い嫌味を言われる。指定された道具をダイゴに渡した。
    「ありがとう。ほら、ユウキ君、めずらしいよ。全身の化石だ」
    地層の表面にあらわれたでこぼこ。ユウキにはただの岩にしか見えないが、よく目をこらせば全身の化石というだけあってなんとなく持ち主の輪郭が見えてきた。
    「これはラムパルドだね。こんな全身の骨なんか珍しいよ!」
    お祭りに来た子供のようなダイゴ。一層目を輝かせて、化石を眺める。
    「はぁ……」
    「この前なんかね、頭だけだったんだけど、それでも価値はあるって言うんだよ。そしたらどこで発見したのか解らないけれど違う化石と交換してくれたんだよ。いいよねえ、化石仲間って!」
    ユウキはもうダイゴを見てない。こうなったダイゴを帰らせるには時間がかかるからだ。早く帰りたいユウキはため息をつく。
    「それ全部掘り返すまで帰れませんよね。何日かかりそうですか?」
    「うーん、何日だろう。すっごく大きなラムパルドだよねえ。ああもう、今からワクワクする。もし新種のラムパルドだったら……」
    「新種?ラムパルドはラムパルドでしょ、新種なんているんですか?」
    ユウキの問いに、ダイゴの顔は引きつっていた。何を言ってるんだ君はというように。ユウキはあんまりダイゴの方を見ていない。
    「いるよ!ラムパルドだってたくさん種類がいてね、大陸に住んでいたのは」
    「ああ、解りましたからもういいです。どうせ何日も付き合わされるんですから、ゆっくり聞きます」
    「ユウキ君」
    さっきまでは打って変わってダイゴは静かな声だった。
    「君はフタバスズキリュウを知ってるかい?」
    「はぁ?なんすかそれ?」
    「恐竜だよ。もう絶滅した。なぜそんな名前なのか知ってるかい?」
    「知りません。興味ありませんから」
    「これは発見した高校生の名前だよ。周囲から絶対違うって言われていた石を自分を信じて化石を掘り進めた功績が名前になるということ」
    「はぁ」
    「自分を信じてなきゃ出来ない事だ。それに、フタバスズキリュウは存在を知らないまま埋もれていたかもしれない。僕はそういう埋もれた地球の歴史を知って行くのが楽しいんだ」
    いつにもないまじめなダイゴをユウキはじっと見ていた。反抗的な言い方もしないでただずっと。


    ーーーーーーーーーーーーーーー
    フタバスズキリュウのくだりはうろ覚え。
    のらりくらりな人が意外に夢を語る時はかっこよくみえる不思議。

    【好きにしてください】


      [No.1878] GJ! 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/09/17(Sat) 21:28:25     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ポケダンやってて、ポケモンにも表情筋ってあるのかなあと思ったけど、あってほしい!
    お前のものは俺のもの!なトレーナーもいるはずの中、いい人だなあ


      [No.1877] 返し遅れましたー 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/09/17(Sat) 21:02:27     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > GJ!

    チャットしてたら、まさかこの作品に付けられるとは…

    > パーティの仲良くて楽しそうな雰囲気が伝わってきた!
    > 今度も負けないぜ。byデボラ

    ナイト「よーしフルボッコにされる準備おk!」
    オルカ「負ける前提な件」

    観想ありがとうございました! また勝負お願いしますね!


      [No.1876] カオス「か‐おす」 混沌としていること。もしくは何もかもごちゃごちゃになって見分けがつかないこと。ケイオス。[英」chaos 投稿者:音色   投稿日:2011/09/17(Sat) 20:33:09     95clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ばっしゃん
     落ちた先は水たまりでした。もっというと水が張ってあるタライでした。
     付近には俺より先に飛び込もうと待ち構えてた黒坊主がぐるぐる旋回している。
     そして極めつけは、ホースを構えた青年一人。

     あ、毒男だ

     って何故やねん。俺別に洗われぶほっ。ホースの水かけんな。
     だぁぁあれだ、話がややこしくなる前にとんずらしよう。テレポテレポ。


     ・・ここどこー。
     ほらあれですよ。俺のテレポートって完全ランダムじゃないですか。どこに行くか俺に決定権がないわけで。
     真っ暗なんですよ。光がないんですよ。俺フラッシュでも使えたら問題なかったんだろうけど技マシンにも嫌われる体質だから覚えられないんですよ畜生。
     洞窟?洞窟か何か?ねぇここでズバットかコロモリかその進化形に襲われたら俺どうすればいいの。穴を掘るを習得してるアイアントとかだったらマジ鬼よ。
     真っ暗、つーか圧迫感。あの、あれだ、もふもふ地獄に近い。ていうかあの、俺、移動できないっつーか浮いてません?持ち運ばれてません?

    「だめ。返してきなさい」

     なんかどっかで聞いたセリフ、とか思う前にぼとっと落とされた。俺一般的に言う爆発物だからもうちょっと大切に扱ってくれてもいいんだよ?
     どこで俺を拾ったのか分からないジュぺッタ君に挨拶する前にテレポで逃走しました。


     落っこちた先はなんかのテーブルの上でした。
    「おい、これってどういう事だ」
     なんか紫色の制服来た男の子がカード持ってこっち見てるんですけど。
    「俺はフィールドにノコッチは出したけどビリリダマとか出してないんだけど」
    「うるさい、うちの光学ポケモンバトルシステムは開発中だと言っただろう。多分何かのアクシデント・・」
     ちょ、やっべここポケモンの世界っつーかポケモンカードバトルの世界じゃねぇかぁぁ!よりにもよって第一話とかぁぁ!
    「すんません間違えましたお構いなくどうぞっ!」
     間違える方向すら間違えているような気もするけど俺のテレポってまさにカオス。


     ・・・。
     ナゲキってたしか五匹一組でうろうろするんだよね。ぶっちゃけそれって結構物騒じゃねぇ?怖くねぇ?格闘タイプが五匹で群れ作ってうろうろすんだよ。囲まれたらアウトじゃねぇ?
     ってことは俺すでにアウトなんだよね。
     囲まれてます。めっちゃ睨まれてます。俺何にもしてないよ。ただテレポートしたらズルッグの真上に落っこちただけで。
     ダゲキ4匹+ズルッグってどこの果樹園ですか。予想はつくけど。物凄く予想はつくけど。
     逃げよう。これ逃げないと死亡フラグだから。自分で意図せずフラグ立てて回収なんていやだ。

     

    「ぬー」
    「・・・」
    「ぬー」
    「・・・」
    「ぬー」
     なんですかこの間の抜けた癒し感全開の鳴き声は。ぬーさん!ぬ―さんじゃないかお前は!
     悪人にまさかのギガインパクトをかますぬ―さんが好きだ俺は。別にプルリルと人間の恋物語が嫌いなわけではなく。
     ところで、ぬーさんがいるだけでここは一体全体どのシーンですか。わからねー。
     まぁ、仮にどのシーンでも俺は背景を転がる赤白ボール以上に描写されることはおそらくないだろう。
     それではさよなら癒し空間。くそ、次はヌオーになりたい。何も考えたくない。課題とか現実とか試験とか追試とか。



     ごろん、と次に落ちた場所はどうも金属臭かった。なんつーか、うん、焦げたようでそれでいて・・。
     火薬?爆発物?そんな感じ?いや、俺自身が爆発物ですが何か。
     ・・なんというかね、ここすごく物騒な空気をはらんでますよ。なんてシリアス、俺みたいなちゃらんぽらんギャグより横着者星人(元人現在ポケモン)がくるような場所じゃないのよ。
     転がっていけばもっと普通の場所に出られると信じてみる、が、そんなフラグ圧し折られるにきまってるじゃんか。
     キュウコンが死んでいた。一瞬長老かと思ったがまともに考えてあのチート狐が死ぬはずないから即その考えは却下された。
     直視したくないんだけど、死臭とかきついんだけど、その横で尻尾が一本のロコンが親であろう狐にすり寄っているのが目に入る。
     ・・・まともに考えれば、流れ弾か狙われたのか。銃撃だろうけども。
     戦争、とかいうシリアスな単語がひょいと出てくる。いかん、これ以上俺がここにいたら世界観破壊じゃ済まない。それこそネットの壁崩壊してこの世のありとあらゆるアホワールドがバグにまみれるだろう。
     本能に従えば俺がこの鈍色の時代にいればほぼ間違いなく死んじゃうという恐怖が勝ちました。
     逃げます。逃避します。俺に安住の地を。願わくば冷蔵庫を。


     ここまでうろうろゴロゴロしてたんだけどさぁ。
     俺テレポートのカウントしてねぇや。
     まぁそのうちきれるだろう。
     その時はその時です。
     いい加減家に帰りたい。
     ポケモン世界放浪記って言うかこれただの罰ゲームだよ。お腹すいたけどビリリダマって何食うんですか。電気か、電気なのか。
     誰かたすけてー(棒読み)

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  一カ月ほど書いていなかったような記憶があるのでリハビリしてみるともー駄目だこりゃ。
    冒頭の奴は脳内辞書検索結果です。

    【これいつ終わるんだろう】
    【打ち切って欲しいのなら拍手しなければいいんだよ?】


      [No.1875] ビックリドッキリ・サプライズ! 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/09/17(Sat) 19:35:44     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     遅くなって申し訳ありません、嬉しさのあまり興奮状態だったので、落ち着いて感想が書けるまで冷却期間を置いておりましたw
     タイトルでもしや、と思ったら……「プルリルで人魚姫」がホントに来ちゃった!

    >  月明かり照らされている青い蒼い海。
    >  その深さは百メートル、千メートル……やがて八千メートルを越して、そこは月明かりも届かぬ暗い暗い海の中。
    >  ジーランスやアバゴーラが静かに泳いでいる中、一つの小さな歌がそこに響いています。
    >  まるで、その暗い海の中に明かりを灯すかのような優しい歌声でした。

     ああ、いいなあ。深海の闇に歌うお姫様だぁ……と思いきや。次の瞬間、盛大に色欲の叫びを上げる彼女。

    > 「あぁ……アオ君とか、モモちゃんとか、他の皆も全員、他のポケモンとイチャコラして、ここにはもう戻ってきませんですし……いいかげん、ジーランスのじじいとアバゴーラおばちゃんのイチャコラにもイライラしてきましたし!」

     上品なようで、結構口悪いなオイ!wと、ついニヤニヤ。素敵です。
     その後の、海に落ちた王子様を助け一目惚れする王道展開(褒め言葉です)、味のある脇役達(カニカニ横歩きなクラブw)の魅力もさることながら、一番印象的だったのが彼女。

    >  サクラの目にもようやく映ったのは、褐色の大きな体。
    >  胸元には十字架をあしらったタトゥー。
    >  そしてその体に巻かれているのは複数個の骸骨(本物かどうかは不明)が付けられている飾り物。
    >  そして隣にある大きな妖しげなツボ。

     なんだなんだ、誰だ……? と思えば、海の魔女が、まさかの「日焼けしたジュゴン」! これは予想外でした。構想では、ありがちにハンテールを起用しようと思っていたので……この発想は無かった、すごい、の一言です。実に若々しくミーハーな(?)魔女様に惚れ惚れ。
    ……ところで。褐色のジュゴンって、それはもうトド(以下自粛)

     そしてもう一人、ツボに入った御方が。 
     首尾よく人間になり、憧れの殿方と再会したサクラちゃん。どきどきわくわく……

    > 「あ、その、えっと」
    > 「なんというか……海水浴と言ってもここはヌードビーチではないぞ、それともあれか、痴女ってやつか」

     痴 女 っ て 言 わ れ た ww  この反応も予想外、思い切り吹きました。巳佑さんの発想力に嫉妬中ですw
     
     
     城に置いてもらえることになったものの、縮まりそうでなかなか縮まらない二人の距離にやきもき。そうこうする内に突如訪れる命の危機、彼女たちを助けてくれる、愛らしく頼もしい仲間達。そして白魔女様の大活躍と意外な過去……。
     艱難辛苦の果てに辿りついた二人の幸せな結末に、心の底がじんわりと熱くなりました。私の想像する限りでは、どう転んでもバッドエンドにしかならなかったお話を、こんな素晴らしいハッピーエンドに導いてくださったことに感謝いたします。
     本当に、ありがとうございました!

     最後に一つだけ。ハッピーエンドには付き物のこの言葉を贈って、締めとさせていただきます。

    【そして彼らは、末永く幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし。】


      [No.1874] 彼女はきっと、メロメロ習得済み 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/09/17(Sat) 18:27:43     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ステータスは恐らく『特性:魅惑 老若男女関係なくメロメロになる』ではなかろうか、と想像。「ボク」さんに限らず、私も彼女の魅力にやられた一人です。

     日常にイライラしてささくれ立った心に、すうっと染み入る素敵なお話でした。例えると、疲れた時に飲む甘ーいミックスオレのような……いや、砂糖を追加した特製ココアのような……?
     あまりの甘さにニヤニヤが止まりません。どうしてくださるんですか(コラ

     リア充(リア獣?)なお話を堪能させていただきました、どうもごちそうさまでした!


      [No.1873] 主人の教え 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/09/17(Sat) 18:15:51     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    残酷な表現があるので、苦手な方はご注意ください

    ----------------------------------------


    アイアントは群れで生活する。
    アイアントは雑食だ。なんでも食べる。
    アイアントは香りでポケモンを感じる。
    アイアントは天敵に命を脅かされている。



     チャンピオンロードは意外に餌の豊富な場所で、大量のアイアントが生息している。獲物も多く生息し、トレーナーが食べかけの食料を置いていくこともある。その巣は徐々に大きくなってゆき、アイアントの数も増えていった。ただし、アイアントがたくさんいれば、それを食べにクイタランがやってくる。今日も餌を探しに来たアイアントのチームが、チャンピオンロードをうろついていた。

    「人間なんて恐れることはないね」

     グループで年長のオオアゴが言った。オオアゴは年長だけあって経験も豊富で、特に彼の繰り出す「かみくだく」は相当な破壊力だと恐れられていた。何度も修羅場を潜り抜けてきたようで、自信に溢れていて時に偉そうと思える発言もする。

    「さすがオオアゴの兄貴! 頼りになりますなー! 兄貴がいれば百人力でさぁ!」

     ハヤクチはその名の通り、凄いスピードで喋る。よく回るので余計なこともよく口にする。そしてすぐに言うことが変わる。強いものに媚を売り、弱いものに唾を吐きかける。アイアントのような集団社会ではそれは最も利口な生き方なのかもしれない。しかし、それを受け入れるかは別だ、とヒトツメは思う。

    「人間怖いですよ! 何するかわからないですし! 奴らと同じぐらい怖いですよ!」

     アシナガはグループの中では最年少で、慎重で臆病もの。元来の性格もあるが、まだ慣れていないためにおっかなびっくり進むので、少し遅れがちだった。

     何て危ういグループだろうと、ヒトツメは思った。
     彼は以前人間に捕まえられたことがあった。トレーナーの下で実力をつけて帰ってきたが、そんな彼を仲間は「玉入り」と呼んで馬鹿にすることがあった。人間の下で身に付けた戦略や知識は仲間のアイアント達には理解されづらいらしく、聞き入れられたことは一度もない。

    「おいヒトツメ! テメェは遅れてんじゃねぇぞ! トロトロ歩いてっとまた人間に捕まっちまうぞハハハ」

     ハヤクチが笑いながら言い、それを聞いてオオアゴも豪快に笑った。ついでにアシナガはキョロキョロしながらへへへと形だけ笑ってみせた。
     ヒトツメは何も言わない。笑いもしない。怒られる原因のアシナガが笑っても文句の一つも言わない。彼は群れの中で生きることを決めたのだ。



     主人は死んでしまったらしい。
     事故だったそうだ。すでに土の中に埋められていて、最後の姿も見ることはできないまま、一方的な別れだった。ヒトツメの仲間達は主人の知り合いに引き取られていったが、何匹かは貰い手が決まらず野生に返されることになった。
     ヒトツメは一番仲の良かった仲間に訪ねた。どうするのかと。
     すると、仲間は答えた。帰る、と。

    「今日から俺達はもう仲間じゃねぇ。そうだな。だから、次に会うときは敵同士だ」

     ヒトツメは頷いた。

    「主人に捕まって、玉入りになって初めてアイアントを餌以外のものだと考えた。お前だって、嫌いじゃないぜ」

     それに対し、俺はお前が気に入らなかったよ、とヒトツメは答えた。

    「そうか。でもやっぱり俺はお前を食ってやりたいと思っていたよ。いつだって思っていたよ。餌じゃないと思っても、お前をどう料理してやろうか、どんな味がするのか、そんなことばかり考えてたよ」

     声は笑っていて、いつもの仲間だった。しかし見てしまった。顔を見るとその目は天敵のそれで、口元には炎が漏れ出していた。

    「それを確かめたとき、お前に何も伝えられないのが残念だよ。残念なことなら俺はしない。あの人も言ってただろ? なるべく無駄はするなって。馬鹿らしいけどな。あの人の言うことはできるだけ守ってやりたいんだよ。できるだけな」

     しばらく沈黙が続いた。影が少し伸びてから、やっと仲間は口を開く。

    「俺の言ってること、わかるか?」

     ヒトツメは頷いた。

    「じゃあ俺の言いたいこと、わかるか?」

     すぐに言われた似た質問。ヒトツメは悩んだ挙句、首を横に振った。仲間はそうかと一言だけ返す。少し寂しそうだった。

    「次に会うときは敵同士だってことだ。そうだ。だからお前は二度と俺の前に現れるんじゃねえぞ。絶対にだ。じゃあな」
    「その、元気で――」
    「それ以上くだらないことを言うのは止めろ! 俺の気が変わる前にとっとと消えちまえ!!」

     仲間は主人の一番のお気に入りだった。目の周りにある痣のような模様が「カブキ」という人の顔につける化粧に似ていたことから、「クマドリ」という名で呼ばれていた。一番可愛がられていたので、主人がいなくなった時は一番気落ちしていた。何をしてもおかしくない雰囲気で、ヒトツメは怖くてあまり近づけなかったのだ。
     結局ヒトツメも昔の住処に帰ることにした。それ以外の場所も方法も知らなかったからだ。



     様子がおかしい、そう気づくのが遅れたのは物思いにふけっていた所為だ。しかしそれが異常だと気づいたのも、昔を思い出していたおかげだというのは皮肉な話だ。
     まず臭いが消える。そして空気の流れが変わる。というのは、天敵はいつだって攻撃の直前には十分な空気が必要で、それを吸うために風が起きて――。

    「どうした玉入り。ビビって動けなくなったか?」

     突然動きを止めたヒトツメの気配を感じ、振り向きさらに嫌味を言おうとしたオオアゴの姿が一瞬で消えた。
     残ったのは鼻を突く焦げ臭さと生臭い空気。

    「あれ? オオアゴさん?」
    「バカヤロウ! ハヤクチ! そこから離れろ!」

     のこのことオオアゴがいた場所に近づくハヤクチ。それを見てヒトツメは昔人間に聞いた言葉を思い出す。
     飛んで火にいる夏の虫。

    「ひっ――」

     悲鳴を一瞬でかき消す赤い音。
     それは死だ。
     恐るべき高温で焼け落ちたハヤクチの後ろ脚が片方、嫌な臭みと煙を漂わせて転がっていた。踊り来る火がまるで舌のようにハヤクチの体を絡め取り、燃やし溶かしながら吸い寄せた。残ったのは脚だけ。もうイライラさせる軽口を叩くことは不可能だ。

    「うわぁ! うわぁああああああ!」

     あっという間に仲間を二匹失ったアシナガを絶望が支配した。叫びながら、とにかくひたすら前脚をぶん回し、めちゃめちゃに動いている。
     まずい、とヒトツメは思う。
     半狂乱になって動けないアシナガは格好の的だ。動けないモノは生き残れない。
     二匹仕留めて余裕を感じているのか、少し態勢の低いアシナガに接近して確実に仕留めるためなのか、姿を見せつけ恐怖におののくさまを楽しむためなのか。天敵はその姿を見せつけるようゆっくりと姿を現し近寄ってくる。そして両手を大きく上げて威嚇している。見慣れた姿のはずなのに、一目見ただけでヒトツメは自身の体が強ばるのがわかった。

     お前なのか?
     
     仲間を一瞬で溶かす相当な火力、ただの天敵ではこうはいかないはずだ。天敵の中でも手練。そうなれば可能性は十分にある。しかしそれを確かめる前に彼は動かざるを得ない。すぐ側であがる悲鳴に現実が突きつけられる。すぐに決断を。

     その時、ヒトツメは主人の教えを思い出す。

    『ヒトツメ、お前の武器は速さだ。その速さで自慢の一撃を当てれば、天敵だって倒せる』

     彼はすかさず前足を振り下ろし地面を砕く。岩の塊が飛び散り、中でも一際大きいものが獲物目掛けて勢い良く爆ぜた。
     炎が天敵の舌なら、飛び散る岩は彼の牙だ。
     岩の牙は天敵目掛けて襲いかかる。

     主人の話の続きを思い出す。

    『お前の武器は鋭いが、必ず当たるわけじゃない。ただでさえ片目だから命中率も当てにならないかもしれん。外れたらその時は天敵の攻撃が来る。そうすればどうなるかわかるな』

     その時はオオアゴの様になるだろう。奴は痛みを感じる暇もなかったかもしれない。それでもオオアゴのようになるのはごめんだ、とヒトツメは思った。

    『だから攻撃を繰り出したとき、お前に許される行動がある』

     だからヒトツメはそうした。

    『祈れ』






     岩が天敵に突き刺さり、倒れてしまっても、ヒトツメは中々動けずにいた。

    「嘘だろ……?!」

     アシナガが恐る恐る近づき、その長い脚でつついても天敵が動かないことを確認すると、大喜びでヒトツメの前をウロチョロしながらまくし立てた。

    「信じられないっすよ! 倒しちまったんですよ! しかも一発! 一匹で! 何ですか! どうやったんですか?! 僕にも出来ますか? あなたって本当に――」

     嬉しそうにペラペラと、これじゃあ二匹でオオアゴとハヤクチの役を交代したみたいじゃないか、と不機嫌そうに頭を振る。もう、彼には仲間はいないのだ。いるのはアイアントの群れだけだ。
     ヒトツメはアシナガの言葉なんて聞かずに吸い寄せられるように天敵の元へ進んだ。当たりどころが悪かったのか、防御力や体力が十分になかったのかもう動くことはない。
     乗った岩を払いのけ、動かない体を蹴って転がす。そしてゆっくりと顔を覗く。驚いたように見開いたまま動かないその目は、

     違う――ただのクイタランだ。

     その時沸き上がる感情に、ヒトツメは戸惑っていた。
     はたしてクマドリと遭遇したとき、今回のように攻撃できるのだろうか?
     攻撃したとして、当てられるのだろうか?
     当たったとしたら? 

    「火でフェロモンが消えて仲間も来ないかもしれないんで、すぐに呼んできます。大物なんで、俺達だけじゃ無理ですもんね」
    「一匹だけで大丈夫か?」
    「任せてください! ひとっ走りしてきますから!」

     足取りの軽いアシナガを見送ると、そこにはヒトツメと天敵だったものだけが取り残される。

    「ここにいるんだよな、お前も」

     もう焼ける臭いはほとんど嗅ぎ取れなくなっていた。
     ヒトツメは独りになって、今はもういない主人の名と、今はもう天敵になってしまった仲間だったものの名前を、そっと呼んだ。
     そして彼は主人に教わったそれをする。戦闘以外で初めてそれをした。それをするしかなかったのだ。



    ----------------------------------------
    実は某所で先に発表した作品ですが、こちらでの投稿を忘れ、タイミングを逃したのでこっそり投稿。

    「そして、故郷にも訪れる」と「主人の教え」は元々一個の作品だったんですが、欲張りすぎてわかりづらい気がして別の物語になりました。似た雰囲気が残るだけになってるけれど。野生のポケモンとゲットされたポケモンによる世界の見え方の変化とか、そういうのが書きたかった作品です。


    お読みいただきありがとうございました。

    【批評してもいいのよ】


      [No.1872] まさかそういう展開だとは 投稿者:マコ   投稿日:2011/09/17(Sat) 05:10:22     66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    音色さん、レスありがとうございます。
    性別不明のビリリダマの一人称が「俺」って何故?とか思っていたら、成る程、そういう真実があるとは。びっくりです。

    オプション云々は、パッと「こうなったら面白そうかな」って思い、そうしました。
    ですから、早くレベル5にならないと、自分で攻撃できないのです。
    タイプ一致技を使えるのは、本当にずっと先のようです。

    頑張れ、ビリリダマ。頑張れ、音色さん!


      [No.1871] にこり笑って 投稿者:小樽ミオ   《URL》   投稿日:2011/09/17(Sat) 00:14:02     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     すねたキミの横顔が、いとおしく思えてしまった。
     ボクが何を言っても意地を張ってそっぽを向いている、少し赤らめたその横顔が。



     わたしのお菓子はどこーっ。キミは頭の葉っぱをぶんぶん振り回して、ちいさな体が示せる精一杯の抗議をしてみせた。もちろんうっかり食べてしまったのはボクだ。けれどあたりいっぱいに漂うほんのりと甘い香りとキミの姿とに、弾劾されているはずのボクは当事者であることをすっかり忘れ、両目を垂れた下駄文字のようにしていた。

     じとーっ。ボクを見つめるキミの瞳が濡れている。
     ごめんな、また買ってあげるから。そう言って葉っぱを撫でてやるのだけれども、キミはふいっと顔をそむけて取り合ってくれない。
     それどころか、不意にべーっと舌を出してやり場のない怒りをぶつけてくる。そんなに大事にとっておきたいものだったのかな。
     それにしても、本人は怒りの表明のつもりで舌を出しているのだろうけど、それがまたたまらなくかわいらしくて、ついつい「反省」の言葉がどこかへ飛んでいってしまう。それどころか。

     あー、人が謝ってるのにそういうことする子にはお菓子なんてあげなーい。
     ゴメンねのかわりに美味しいお菓子を買ってきてあげようと思ったけれど、ひとりで食べちゃおーっと。
     そうやって拍子抜けした声で言って、薄目を開けてちょいと横を見やる。すると。

     若草の肌の上に、ぽろぽろ透き通った雫がこぼれていた。
     さっきまで見とれていた横顔が、もうじき一番の実りを迎える林檎のようなほの赤い色味を帯びて震えている。
     気付いた時には、ボクはしゃくりあげたその顔もとをまじまじと見つめていた。そうしてキミを泣かせてしまった罪悪感と同時にまた感じてしまったのだ。
     ――ああ、なんだかんだ言ってもやっぱりキミが一番かわいいよ、と。

     ウソだよ、ウソウソ。そんなことしないって。
     抱き上げたちいさな体が熱かった。手のひらに滴ったひとつぶの雫も。
     目元の涙をそっとぬぐってやったら、まんまるい烏羽玉のような瞳がボクを見上げてきた。ほんとに? そう聞くような目遣いをして。


     あーもう。そんな目をしないでよ。
     そんなことされたら、ダイスキが止まらなくなっても知らないぞ?


     ボクはにこにこ笑顔を浮かべながら、ほっぺたをなでなでしてあげた。
     それからキミの一番の自慢の、きらきらと緑を咲かせた葉っぱも。
     泣いている姿もかわいいけれど、キミに一番似合うのは、その笑顔だからね。
     ――その顔、泣かせたボクに言われたくないだって? それは言わないお約束だよ。



     だからお願い。
     にこり笑って、チコリータ。





    <おわり>





    ◇   ◇   ◇





     ご無沙汰しています。
     夜中20分くらいで勢いで書いてしまいました。
     とりあえず、なにがどうしてこうなった。





    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】
    【泣かせてもいいの……よ……?】
    【だが一番の笑顔をもらうのは私だ】


      [No.1870] 俺というキャラクターそのものがなんか違う 投稿者:音色   投稿日:2011/09/16(Fri) 22:19:32     73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    なんか【書いてみた】ついとるー!

    どうも、ビリリダマな音色です。
    ていうか、もしやマコ様気づいておられなかった?

    ビリリダマって、俺ですよ?つまり音色ですよ?名前がないことはないですよ一応。ただ面倒くさいからだしてないだけで(略

    ・・しかしよくよく考えればビリリダマ=俺と言う図式を正確に何処にも書いてねぇじゃん俺!うーん誤解をまき散らすわけだすんませぇぇぇん!


    まーいつの間にかマコ様ランドともコラボれたみたいだし長老は是が非でも俺に攻撃技を与えようとしないらしい

    俺がレベルアップ音を奏でられる日はあるのか!(多分ない

    【でも俺と言うキャラがなんか違いすぎるような気もしないでもないような気もしない・・・つまりどっちだ】


      [No.1869] 【書いてみました】飛んで来てみたら(後編) 投稿者:マコ   投稿日:2011/09/16(Fri) 22:05:14     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    派手に雷ぶっ放して悪党を沈めて(というが、俺は雨乞いをしただけだ)少し経ってから、会話することになった。
    けど、人間にポケモンの言葉なんぞ通じねえから、話っつってもどうすんだ?


    とか思っていたら、女が何かピンクの獏みたいなポケモン、ムシャーナを出していた。
    「テレパシーで通訳できるみたいだから、話せるよ、多分ね」
    じゃあ、折角だから、俺がこうなった経緯を話して、悩み相談でもしてみようか。


    〈俺は名前のないビリリダマなんだ。元はお前らと同じ人間だった。けどある日、ある怪しい喫茶店に迷いこんで、そこから帰る途中に長老とかいうキュウコンにもふもふされて、こうなったんだ!〉
    「訊きにくいこと、訊いていいかな?」
    女が質問してきたから、取り敢えず聞いてみる。
    「もふもふってどんな感じなの?」
    〈それかぁ。それは……出来るなら、二度とされたくねえ。気持ち悪い。地獄だな〉
    「もし俺らが食らったらどうなんねん?」
    〈物好きだな。多分、まともにロコンかゾロア辺りになるんじゃねえのか。俺が特殊なだけで〉
    「……お前は人間に戻れるん?」
    〈そんな話は聞いたことねえ。多分、無理だ〉
    こいつら食い気味に訊いてくるな。
    すげえ、カンサイの人(女は違うけど)。


    そして、暫く話した後、俺は切り出した。
    〈皆、俺の悩みを聞いてほしい〉
    「どんなもの?」
    「俺らでよかったら聞くで」
    〈どうすれば俺は強くなれる?〉
    『……』
    あ、皆黙りこんだ。


    しばらく時間が止まった感じになったけど、男の一人が口を開いた。
    「簡単やろ。戦って、相手を倒せばええやんか」
    〈そうなればいいんだけど、のっぴきならない事情があるんだよ。これ見てみろ〉
    俺は紙を投げた。長老からもらったやつを。
    「……ええ!?」
    「ホンマかこれ?」
    「悲惨やなぁ……」
    それは俺の技リストだ。
    嫌な音、テレポート、雨乞い、充電。
    「……お前、どうやって攻撃すんねん」
    「悪あがきとかかな?」
    〈85ターン耐えられるか!〉
    そんなことは無理だ。
    どんなに強い、伝説的存在の奴でも無理だ。
    〈だから、俺に攻撃技を教えてほしい。何でもいいから!〉
    「10万ボルトがいい?それとも、雨乞いがあるから雷?」
    おお、どっちも嬉しい!
    「命中に重きを置くなら10万ボルト、雨乞いを活かしたいなら雷がオススメやな」
    〈雷がいい!〉
    「じゃあ、雷の技マシンを当てようか……」
    黄色いディスク型の機械を俺に当てようとした女だったけど……、

    バチッ!!


    「嘘っ!?」
    「何で拒絶されんねん!」

    何故か弾かれて、雷を覚えられない。
    その時、俺の頭の中に声が聞こえた。
    《甘いぞ、ビリリダマよ。お主は技マシンを使えぬ。》
    長老!!何てことしてくれる!
    〈じゃあ、他人の補助しか出来ねえのかよ!?〉
    《その場合、経験値はほっとんど貰えないがな。》
    〈うぎゃあああ〉
    7人が憐れんでる……。


    〈ごめんな、何か迷惑掛けっぱなしで……〉
    「い、いいよいいよ。何も悪くないし」
    「せやで。お前に責任はないやろ」
    そして、さよならの時になって、女が何かを俺に渡す。
    これは……ヒメリの実?
    〈貴重だろ?いいのか?〉
    「トモダチのしるし。これを見て食べて、私達を思い出してね」
    「お前、色々あるやろうけど、負けんな!」
    「強くなったお前とまた再会したいわ」
    久し振りの優しさに心が温まった。
    俺は嬉しさと共に、テレポートをした。




    マコです。
    これにて完結です。
    しかし、長老は悪いですね。
    研磨して、更に変なオプションをつけるとは。
    音色さん、ありがとうございました。
    【コラボ万歳】


      [No.1868] コメントGJ! 投稿者:門森 輝   投稿日:2011/09/16(Fri) 21:01:21     16clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     コメントありがとうございます!

    > そして、ポケモンで野球をするという内容は前にも見た事ありますが、その人はかなり難しいっていってました。
     ひこうタイプとエスパータイプの扱いづらさは異常です。念力最強。

    > そもそも人間ポケモン混在なのか、分けるのかも不明!
     今回はジェームスの発言からライモンスタジアムでは混合だと推測しました。ポケモンだけだと様々な技の使い方がありそうですね。おいかぜとかうちおとすとか。

     そして最後にもう一度。コメントありがとうございます!


      [No.1867] GJ! 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/09/16(Fri) 20:38:31     14clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    GJ!
    その昔、ドラベースというドラえもんで野球のマンガがあったような。
    そして、ポケモンで野球をするという内容は前にも見た事ありますが、その人はかなり難しいっていってました。
    そもそも人間ポケモン混在なのか、分けるのかも不明!
    ライモンシティの音楽にあわせたコンクリート柱に響くボールの音が聞こえるようです。


      [No.1866] 代打 ローブシン 投稿者:門森 輝   投稿日:2011/09/16(Fri) 20:33:47     20clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     快音が響いた。

    「右中間! 伸びていく!」

     出番だ。そう確信した。

    「この回先頭のキリキザン、右中間を破るツーベースヒット! ウォーグルス、サヨナラのチャンスを迎えます!」

     9回裏、同点、無死二塁。監督に呼ばれ打席へ向かう。

    『ウォーグルス、バッターの交代をお知らせ致します。9番、ジェームスに代わりまして、ローブシン。代打、ローブシン』

     決める。ここで決める。監督、チームメイト、ファン、皆からの期待に、そして信頼に応えるために。プレッシャーが重くのしかかる。自分なら出来る。そう言い聞かせる。

    「ノーアウトランナー二塁! バッターボックスには代打のローブシンを迎えます! さぁ、ピッチャーのマニューラ、なげつけた!」

     ボールをしっかり見る……ここだ! 















    「絶妙なバント!」

    ―――――――――――――――――――――――――――――

    【描いてもいいのよ】
    【書いてもいいのよ】
    【お好きにどうぞなのよ】

     ということで題「送」です。「送/贈」で送りバントが思い浮かんだ結果がこれだよ! ポケモンである必要が全くありませんね、すみません。
     ライモンスタジアムでの一幕的な何か。きっとこのローブシンは川相選手的な感じ。バットにコンクリ柱を使ってますが。
     マニューラの特性のプレッシャーはもっとうまく使いたかった。この状況による緊張と区別する書き方が出来なかったので一緒にしてしまいました。
     ちなみにジェームスは「ワシの 球は 速すぎて のお 打たれんのは いいんじゃけど ポケモン以外には なかなか 受け止めて もらえんのじゃ」って言ってた人です。
     人とポケモン混合ではどうも普通になってしまうのが悔しいところ。ボールにくろいてっきゅうとか使ってみようかとも思ったけど、人間には打てないものね。
     今度ポケモンだけで野球させてみたいなぁとか思ってたり。思ってるだけで実現できない可能性が高いですが。


      [No.1865] 【書いてみました】飛んで来てみたら(前編) 投稿者:マコ   投稿日:2011/09/16(Fri) 03:50:32     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    俺はビリリダマ。元・人間。訳あってポケモン世界に迷いこんで、もふもふという名の研磨をされ、テレポートで色んな世界をさ迷っている。


    で、飛んで来たのはいいんだが……。


    何で俺は黒ずくめの奴に抱かれてんだ!
    仕方がねえからじたばたと暴れてやった。
    「フン、ただのボール風情が、暴れたって一緒だ!」
    効いてねえっ!まあ俺はじたばたなんて覚えてねえし、ビリリダマはじたばた覚えねえからな。
    じゃあ、今度はテレポート……。



    出来ねえ!!
    何で出来……あ、そこには棺桶の……デスカーン。
    こいつ、黒い眼差し使って来やがった。逃げられねえのか……。


    俺が諦めかけた、その時だった。


    救世主、否、救世主達は、突如として来やがった。


    正直、俺の周りには、わんさかと黒ずくめの奴、つまりロケット団がいた訳だ。
    だが、突如として現れた6人の男と1人の女は、ポケモンに上手く指示して、悪党をバタバタ倒していく。
    つえぇな、こいつら。
    特に女が。弱点とか見抜く知識が半端ない。


    つうか、俺を抱いてる奴もヤバイって顏してやがるし、そろそろ悪党全滅、か?
    けど、その悪党は意外なことしやがった。

    ポーン

    ってえええっ!
    俺投げられた!
    やべえっ、逃げて逃げて救世主さん、俺に当たったらマジで死ぬから!

    「ビリリダマ投げたやん!」
    「アカン、どうすりゃええねん!」
    カンサイ弁で言われても!俺も無理!
    つうか、このまま人殺しとかになったら俺どうなるのまさか刑務所とか処分場とか
    「ら、ラグラージ!」
    あ、女が動いて沼魚が出てきた。
    ってぶつかる!

    ゴト……。


    「……え?」
    「爆発……せえへんやんか」
    俺……地面に衝突したはずなのに爆発してねえ。何で……。


    ……あ。思い出した。ラグラージ。
    確かこいつ、隠れ特性持ってて、それが「湿り気」だった気が。
    「ともかく、これで人質ならぬポケ質いないから、思い切って攻撃できる!」
    女がそうやって宣言していた。こいつだけ言葉の感じが違うのか。


    俺は助けてもらったから、恩返しをしたくなった。


    空に向かって叫んだら、雨雲来た。つうか呼んだ。
    そうしたら、とにかく雨降った。雨乞いだからな。

    まあ、雨降るのはここら辺だけだがな。

    救世主は最後の仕上げとばかりに、電気のポケモンばかり出している。あ、指示出る。
    「ライボルト、」
    「デンチュラ、」
    「レントラー、」
    「デンリュウ、」
    「サンダース、」
    「ジバコイル、」
    『雷!!』


    6本分の太い稲光が煌めいたから、俺らは勝った、はずだよな。




    後編へ続く。



    マコです。
    まず、音色さん、さ迷うビリリダマを勝手に使ってすみません。
    私の話の世界に迷いこませてみました。
    後、折角だから、と、テレポート以外の技使わせてみました。
    雨乞いからの必中雷コンボで相手を打ち破りました。
    攻撃技がなくても、協力すれば、何とかなるようです。
    それでは、また後編で!


    【何か色々すみません】
    【コラボを恐れないで】


      [No.1864] なし 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/09/15(Thu) 21:36:05     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    GJ!
    パーティの仲良くて楽しそうな雰囲気が伝わってきた!
    今度も負けないぜ。byデボラ


      [No.1861] こっそり懺悔 投稿者:小樽ミオ   投稿日:2011/09/14(Wed) 19:07:31     21clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     文章を付けたときに思い出ごとも書こうと思ったのですが、めどが立ちませんのでこっそり懺悔を(苦笑)

     CoCoさんから頂いたアイデアで私が小説を書き、そこにこのイラストが届いたあの日。
     ただただ嬉しい意味で地団駄踏んでバタついてた記憶があります(笑)

     実は当時の文章があんまり気に入っていないので、古いパソコンから引っこ抜いた元データをリライトしていました。ゴメンナサイ><
     手一杯でいつリライトを終わらせられるか分からないのですけれども、終わったあかつきには続編だって頑張って書く所存です(`・ω・´)

     深織さんが下さったこのマステ絵の原稿を眺めながら、今日も鋭意制作中……(きらきら



    【がんばってるのよ!】


      [No.1860] 家出ムクホとトレーナーの物語について 投稿者:荒塩飴@夏蜜柑(改名)   投稿日:2011/09/14(Wed) 18:24:38     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    こんにちは、中二病真っ盛りの荒塩飴@夏蜜柑でございます。
    えーと、3作目‘‘家出ムクホとトレーナーの物語”を読んでいただき誠にありがとうございます。
    ネタが入り、よし書くぞ!と思い書きました・・・・・・が、曲の歌詞をパクったようなものが!出来てしまいました(汗) 只今冷や汗出てます。
    最後の文、‘‘ハッピーエン”で終わっておりますが、これは打ちミスではないです。
    じっくり考えていただければ、その意味がわかると思います(^^)
    これからもよろしくお願いします(^ω^)/


      [No.1859] 家出ムクホとトレーナーの物語 投稿者:荒塩飴@夏蜜柑(改名)   投稿日:2011/09/14(Wed) 18:16:14     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ある日、君は突然姿を消した。きまぐれな君の行動はたまーに理解しがたい。
    「ああ、また何かやらかしたのか」と漏れる。周りの不快な声に、堪え切れず飛び出した。
    ``嫌いになっちゃうぞ``って少し拗ねてみた。勝手にいなくなるなんて、そんなの絶対許さない。
    見つけたら頭を軽く叩いて``心配したんだからね``とか、ちょっと涙ぐむかもね。
    てくてく歩いていく、君を探して街の中を。ぽろぽろ想いながら張り詰めてた感情の糸を切らず、君がそばにいてくれないと、困るんだから。
    ------早く君に会いたい。




    一日の終わり、日が沈む。影が伸びる、私のだけ。君が家出したなんて、忘れたい。忘れました。記憶は捏造?君は家出したんだよね?とても大切なことなんだけど、思い出しちゃいけない気がするんだ。

    ぱらぱら剥がれ落ちた記憶の欠片を拾い集め、目を背けた真実を思い出したいと願う。
    最後の終点見えてきた。
    ------ホントはもう君は・・・・・・



    君を探して歩く、踏切で君の全てを思い出す。その日からもういない君を探し迷子になった。




    ------君のもとへ行きたい




    君を最後に見た場所にもう一度立った。もう戻れないけど、これでいいと決めたんだ。
    ふらふら君を探し迷子になって、かっこ悪くて。
    二つの点滅、照らされた。涙はきっと安堵から。



    ------君のいない世界のほうが、間違いだから








    ------やっとここに帰ってこれた








    ------君もきっと 見つかるし ハッピーエン


      [No.1858] キャッチされました 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/09/14(Wed) 16:20:54     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    感想ありがとうございます!

    >きとらさん
    毎度感想をくださるきとらねーさんがイケメンに見えます。というかイケメンです。私もあやかりたい(

    > なぜ男の子が男子を?となってしまったのは内緒。
    ツバキは中性的な名前ですものねー。でもその展開はそれでありじゃないかと(
    m(_ _)m

    > 記憶を変えることが間違いではないかと自問自答しながら過ごすオーベムだけど、その時の正義を貫いただけだよオーベム。
    > とりあえず、ツバキと仲良く
    そう言ってもらえればオーベムも心安らぎます……ツバキと仲良く!

    >CoCoさん
    >  これは……。
    >  落としたい橋を思わず渡ってしまう作品でした。
    >  オーベムの凄まじい悲哀に心がやられた。純真無垢な少年の瞳にやられた。もうやられたと溜め息しか出ないです。
    やっちゃったようで……ふふふ。

    >マコさん
    感想どうもなのです。きとかげと申します。
    すごい読み込んでいただけたようで感謝。

    > 偽りの生活から解放されたツバキ君と、ラピメントことオーベム。
    > 一人と一匹に、幸せになってほしいです。
    幸せに……なってほしいですね。


    思う以上にラピメントとツバキくんにはエールが贈られているようで、作者として嬉しい限りです。

    では、雑文失礼しました。


      [No.1857] 夏はもう過ぎたけれど 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/09/14(Wed) 14:55:50     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     はじめまして、サンさん。きとかげと申します。

     拙いながら感想を……

     ブビィとの交流に心温まりました。ゲットするしない以外のポケモンとの関わりが好きです。
     サイコソーダとガラス玉のお礼に帰り道でにほんばれをしてくれる。ささやかな恩返しがたまりません。

     それからガラス玉を欲しがるブビィが愛らしいです。ラムネ瓶のガラス玉が大好きな時期が私にもありました。そんなノスタルジックな気分になりました。あのガラス玉ってなんであんなに輝いて見えるのでしょうね。

     暑くて過ごしにくい季節ですが、こんな夏はいいなあ、なんて思います。

     では、乱文失礼しました。


      [No.1856] 掴んで離さない 投稿者:マコ   投稿日:2011/09/14(Wed) 00:51:43     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    こんばんは。マコと申します。
    ラピメント、読ませて頂きました。
    記憶をいじくることの罪深さを思うと、何だか辛い気持ちになります。
    ツバキ君のお母さん、つまりオーベムの元・主人は利己的な目的のためにオーベムの力を使って、旦那を手に入れ、ツバキ君を産んだ、と。
    でも、記憶操作で浮気と共に旦那や息子のことを忘れて、買い物に溺れて、借金を重ねて、果ては自分自身をも忘れるという身の滅ぼし方の描写に、心が締め付けられました。

    偽りの生活から解放されたツバキ君と、ラピメントことオーベム。
    一人と一匹に、幸せになってほしいです。


      [No.1855] ある母親のつぶやき 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/09/13(Tue) 18:50:30     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     今日もタマゴを一つ生む。そのタマゴは私の主人の元へと届けられる。それを見て今度はちゃんと強いのを生んでくれと私に言う。
     ああそうよ、私はこのトレーナーに自分の子を渡してるの。よく厳選と言われるわ。そんなの私も今の旦那も解ってる。そして弱いのは大量に逃がしているのもね。
     それでもなぜそうしているのかって、貴方はどんなぬるい環境にいるの?
     弱い子供は育てる余裕なんかないわ。生きる力の無い子は育てない。
     知らない?エネコロロが生んだ子供を育てない話、グラエナが力の弱い子供を食べる話。そうやって強い子だけを育てるの。
     弱い子を見捨てるなんて、って誰もが平等だと思っているの?

    【お好きにどうぞ】


      [No.1854] ■第3回ポケスコ 審査員募集 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/09/13(Tue) 02:18:46     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    第3回ポケスコ 審査員募集!

    【条件】
    提出された作品をすべて読み、100文字以上の感想もしくは批評をつける。
    投稿経験等がなくてもよい。
    自分の感覚でもって感想をつけてください。

    現在名乗りを上げているのは……

    ●No.017
    ご存じ、マサポケの管理人こと首謀者だッ!
    集まりが悪いので焦ってるぞ!
    いや、なんか執筆中って声はちらほら聞くけどね。
    みんな、ポケスコ出してくれよな!

    ●CoCo
    第1回の大賞、カレー屋さんことCoCoさんが審査員をやっちゃうらしいぞ!

    ●クーウィ
    チャットでおどしたらやるって言ってくれたよ!

    ●タクティス
    クーウィさんのご紹介。
    正体不明だけどなんたってクーウィさんの紹介だからねっ!
    クーウィ氏いわく「自分が二次創作の世界に関わった正統な動機を齎してくださった方」らしい。
    はたしてどんな批評が飛び出すのか??

    ●音色
    自称クーウィさんの弟子。
    ポケスコ審査員はクーウィ一派が多い?

    ●586
    キーワードに定評のあるゴーヤロックこと586さんが三回連続で審査員をやっちょうよ。
    鳩に脅されて強制参加させられたかわいそうな人。
    トトロに似ているというウワサがある。



    今のところ意志確認したのはこれくらい。
    前回審査員の方も新規の方もぜひ名乗りをあげてくれるとうれしい!
    名乗りがあり次第、随時更新していきまする……!


      [No.1853] きゃっちんぐ 投稿者:CoCo   《URL》   投稿日:2011/09/13(Tue) 01:44:34     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     

     これは……。
     落としたい橋を思わず渡ってしまう作品でした。
     オーベムの凄まじい悲哀に心がやられた。純真無垢な少年の瞳にやられた。もうやられたと溜め息しか出ないです。

     投稿ラッシュで埋もれかけていたので、乱雑ですが感想をば。
     急ごしらえで申し訳ありません。

     


      [No.1852] ●豊縁昔語―黄泉人知らず 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/09/13(Tue) 00:45:23     118clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     昔むかし、秋津国の南、豊縁と呼ばれる土地には異なる色の大きな都が二つございました。
     二つの都に住む人々はお互いに大変仲が悪うございました。
     彼らはそれぞれ自分達の色、信仰こそが正統だと考えておりました。
     今回はその二つの都のうちの一つ、赤の都に住む一人の男の話をすることに致しましょう。


     その男の齢は四、五十ほど。
     今の時代では武士などと呼ばれるのに近い身分で、名をタダモリと申しました。
     若い頃のタダモリは勇猛な指揮官として、名を知られておりました。
     侵略すること火の如し。タダモリ自身も相当な武人です。
     彼の率いる軍勢に攻め入られたら、冷静な青の武人も、抗う獣や土地神も敵うものはなかなかおりませんでした。
     彼らのとれる道は二つに一つ、命からがら逃げ出すか、首をとられるか、です。
     タダモリは都にいくつもの御印――すなわち首を持ち帰ったのでありました。


     ですが、そんなタダモリも次第に歳をとりました。
     ある時、愛馬から落馬してしまったタダモリは、腰を悪くして、戦場をかけめぐることは叶わなくなったのです。
     しかしながら戦をすることにかけては優秀な男でありましたから、赤の都で官職につきますと、様々な遠征の戦略を立てるようになりました。
     次に版図とする土地の情報を集め、火馬や駱駝は何頭、軍用犬は何匹、操り人と戦人は幾人かということを計画し、実行させるのです。
     ある者にはある土地の青からの守護を命じ、ある者には異なる色の国の国盗りを命じました。ある者には土地神の首をとってくるように言いました。
     彼の計画と計算はなかなかのものでした。
     ある者は立派に役目を果たしましたし、ある者は見事に国を盗りました。そしてまたあるものはタダモリの前に土地神の首を差し出したのです。
     
     そのように馬を降りても活躍するタダモリでありましたが、一つだけ苦手とするものがありました。
     都にいる官職の者達は、昼間は昼間でお役所仕事などしておりますが、夜は夜で様々な付き合いがございます。
     宴や五七五七七の歌を詠む歌会がそれでした。
     しかしながらタダモリは夜の付き合いがあまり好きではなかったのです。
     なぜなら和歌を詠むことが大の苦手だったからでした。

     しかし、現代の人々の感覚からは信じられないかもしれませんが、歌会での和歌の出来、勝敗というものは出世に関わりました。
     自分は和歌が苦手だから出席をしないとかそういう訳にはいかないのです。
     戦場では若い武人達がめざましい活躍をしております。
     特にこの間、新緑の国を落とした男などはその筆頭でありました。
     その多くの任命をしたのはタダモリ自身でありましたが、一方で彼は焦っていました。
     いつか彼らに越されてしまうのではないか。
     自分の地位を脅かされてしまうのではないか、と。このように恐れたのです。
     ですからなるたけ高い位に上り詰めたい、とタダモリは願ったのであります。
     そこで彼は人を雇うことに致しました。
     すなわち自分に代わって歌を作ってもらうことにしたのです。

    「次の歌会の題は"夕暮れ"といたそう」

     歌会が終わると、次の歌会の題が告げられます。
     ダダモリはそれを持ち帰り、影の歌人を呼ぶのです。

    「次の題は夕暮れじゃ、九日後には作ってくるのじゃぞ」

     そのようにタダモリは命じました。
     影の歌人はなかなかに優秀でした。
     たまには負けることもございましたけれど、多くの場合、勝ちを拾ってくれたのでありました。
     勝ちを拾った暁には、影の歌人に給金とは別に褒美を与えてやります。
     貧乏な歌人は懸命に仕えてくれました。
     こうしてタダモリは夜の世界でもうまく地位を上げていったのです。



     ところが、次の歌が出来るのを待つタダモリに、とんでもない知らせが届きました。
     タダモリの代わりに歌を作ってくれた影の歌人が突然死んでしまったというのです。

    「馬鹿な、昨日はあれほど元気だったではないか」
    「それが、戦から戻った火の馬だか駱駝だかが突然暴れだしまして、蹴り殺されてしまったと……」

     タダモリは呆然と致しました。
     次の歌会までに二日ほどしかございません。
     影の歌人にはまだ歌を教えてもらっていませんでした。死人に口なしです。

    「急ぎ代わりの歌人を探せ」

     タダモリはすぐにそう命じましたが、そう簡単に代わりが見つかるはずもございません。
     次の日になっても歌人は見つかりませんでし、よい和歌も作れませんでした。
     おおっぴらに探していることを言うわけにも参りません。

    「むうう、困った困った。歌人がおらぬ。歌が出来ぬ」

     歌会を夜に控えタダモリは嘆きました。
     歌会の主催は出世に影響力のある人物です。
     下手な歌を持っていくわけには参りませんでした。
     仕事もろくに手がつかず、日は落ちていき、空が紅く紅く染まりだしました。
     時期に夜になってしまいます。
     そんな時でした。

    「タダモリ様、タダモリ様に目通りを願う者がおります」

     と小間使いの者が言いました。

    「なんじゃ、今はそれどころではない。新しい歌人以外の話は聞きとうないぞ」

     と、タダモリは退けようとしましたが、追い払われる前に小間使いが言いました。

    「は……しかしその者、タダモリ様にぜひ歌を聞いていただきたい、と申しております」


     人払いをさせたタダモリは、彼を尋ねてきたという人物を暗い座敷へと通しました。
     空では日が夜色に溶け出し、境目の時刻独特の色合いを見せております。
    「面を上げい」と、タダモリは言いました。

    「そなたが歌を聞いて欲しいという者か」
    『はい……タダモリ様が歌人をお探しになっているとお聞きまして、馳せ参じました』

     そのように答える男は静かな落ち着いた声でありました。
     年齢はずいぶん若いように見えます。しかし奇妙な風貌の男でした。
     灰色とも土色とも形容しがたい肌の色をしておりますし、長く伸びた前髪が片目を隠しております。粗末な着物の下で身体をぐるぐると巻いた帯のようなものが見えました。
     ふん、怪しい奴、という目でタダモリは見下ろします。
     すると男が言いました。

    『私の風貌を見て、皆そのような目をなさいます。この通り片目はつぶれて髪で隠しておりますし、肌がただれておりますゆえ、このように帯を巻いて隠しているのです。私はどこにも留まることが出来ず豊縁の各地を回って参りました。しかしそれゆえに都人が知らないたくさんの和歌を知っておりますし、私自身も励んでまいりました。どうか貴方様付きの歌人にしてくださいませ』

     一つしか開かぬ目がじっと見上げます。
     しかし、夕日の色が手伝って赤く輝くその瞳には落ち着きと自信のようなものが垣間見えました。

    「ふん、ならば今この場で歌を詠んでみせよ。今宵の歌会に歌が必要なのだ。赤の都の歌会の場に恥じぬ夕暮れの歌を詠んでみせよ」

     タダモリが言いました。
     すると待っていたとばかりに歌人はすらすらと歌を詠んだのでありました。

    『日は溶けて 暗き色へと 落ちぬとも 明けぬ夜なし 暁の空』



     タダモリは夜の歌会でその一首を詠みました。
     それは武人らしい歌として評価されました。
     戦は予想できぬのが常である。太陽が沈んでしまうように暗き色、すなわち青色に劣勢をとることもあろうがそれも一時のことよ、けれどまた日が昇るように勝つのは我々赤である。
     歌の意味をそのように歌人は語り、タダモリは歌会でそのままを語りました。

    「よくやった」

     一つ目の歌人にタダモリは言いました。

    「今日よりお前は私の影の歌人だ。私のために歌を作れ」

     タダモリは歌人に命じました。
     そうして次の歌の題を伝えました。

    『承知いたしました』

     そのように歌人が云い、一晩明けた後には新たな一首を届けたのでございました。
     それは前の歌人よりずっとずっと早い出来上がりでございました。



     その後もタダモリの活躍は目覚しく、戦略を立て、兵を派遣し、豊縁の各地に赤い旗を立ててゆきました。
     土地が赤い色に塗り替えられていきました。それは人や土地神や獣達の血の色だったのかもしれません。
     タダモリの下にはいくつもの首が届きました。
     ある者は牙を剥き出しておりました。ある者にはツノが生えておりました。あるものには鬣がございました。
     それは都のある場所である期間晒されると、首塚に持っていかれます。
     狩り獲られた首達はみんなそこに集まるのでした。
     彼は血のように赤く染まった夕暮れ時になると影の歌人には歌を届けさせました。
     歌人は歌会の題を聞くたびにタダモリに極上の一首を提供いたしました。
     そうしてタダモリはその一首を披露します。彼はほとんど負けなしでした。
     そうしてタダノリは自分の地位をより確かなものにしていったのでございます。
     腰は悪かったものの、老いてますます元気。
     近々新しい位を賜ることになったタダモリもまだまだ歌会に顔を出すことになりそうです。

    「お前が歌を作るようになって何年になるかのう」

     ある夕暮れ時に、タダモリは影の歌人に尋ねました。

    『三年になります。タダモリ様』
    「そうか、もうそんなに経つか。お前のお陰で夜の心配はせんでよくなった。大儀であったの。そのうちに別に褒美をまたとらせねばな。だがその前に、もう一題作ってもらいたい」
    『どんな題でも致しましょう』

     タダノリの命に対して、影の歌人は苦にもしないとばかりに答えます。

    「お前は優秀よ。私が題を与えれば一晩で作ってきよるわ。まったくどのようにすればそのように歌を作れるのだ?」

     めずらしくタダノリが歌に興味を示しました。
     すると歌人の一つ目が怪しく光ったように見えました。
     
    『お知りになりたいですか?』

     と、歌人は聞き返します。
     そうして、タダノリの答えを待たずして続けました。

    『それならばその秘密を教えて差し上げましょう。丑の刻に迎えに参ります』
    「丑の刻?」

     タダモリは首を傾げました。
     丑の刻とは今で言う午前二時。
     世界が暗い色に沈み草木も眠ると言われる時間なのです。

    「一体どういうことなのだ」

     と、タダモリは再び尋ねましたが、歌人はくすくすと笑ってはぐらかすばかり。
     それでは丑の刻に、と告げると下がってしまいました。
     


     そうして夜になりました。
     新月で月は見えません。
     布団をかぶったタダノリはしばらく歌人の言葉が気になり、眠れずにおりましたが、やがてうとうとしだし寝息を立て始めました。
     どれだけ時間がたったでしょうか、襖がすうっと開きました。

    『タダモリ様、タダモリ様……』

     歌人の声が聞こえました。
     意識のはっきりしない目で声の先見ると暗闇に歌人の姿がぼうっと浮かんでいます。
     そう言って歌人は妖しく手招きをいたしました。

    『お迎えに参りました』

     気のせいでしょうか。開いた襖から何やら生暖かい風が吹いているようです。
     それでも歌人の言葉に誘われるようにしてふらふらと起き上がったタダモリはいつのまにか用意された着物に着替えて屋敷の外に出ました。

    『こちらですよ。タダモリ様』

     外で青白く輝く提灯を持った歌人が再び手招きしました。
     都はしんと静まりかえっております。
     青白い光を先頭にして二人は歩いてゆきます。
     首を晒す橋を過ぎました。彼らはどんどん都の外れのほうに向かってゆきます。

    『到着しましてございます』

     ある場所で立ち止まると歌人は言いました。
     歌人は提灯を掲げます。大きな石灯籠に似た石碑を照らしました。

    「……どういうことだ。ここは首塚ではないか」
    『左様でございます。私はここで歌を作るのでございます』
    「貴様、私を愚弄しているのか」

     タダモリが怒りをあらわにします。

    『……愚弄してなどおりませんよ』

     歌人はくすくすと笑いました。

    『ほら、皆々様がいらっしゃった』

     するとどうでしょう。
     闇夜に立つ首塚の形を浮かび上がらせるようにして無数の鬼火が現れたのです。
     それは歌人の提灯の色と同じ色をしておりました。
     タダモリは目を見開きます。
     歌人が鬼火たちに呼びかけました。

    『皆々様、今日もタダモリ様から新しい題をいただきましたよ。どなたか首と身体が繋がっていた頃に題に合う歌を作った方は居りませぬか』

     すると鬼火の一つが歌人の下へやってまいりました。
     そうして炎はぼうっと燃え上がり、首の姿に変容いたしますと、一首を詠んだのでございます。
     その土地神には牙と耳が生えておりました。

    「お、お前は! 先日首塚にしまった土地神の首ではないか!」

     タダモリは驚愕の声を上げました。

    『左様で御座います。これこそが私の和歌を作る秘密なのです。貴方がたが神狩りをすればするほど、私はよりたくさんの歌を詠むことが出来る。私はその中から極上の一首を貴方様にお届けするのです』

     鬼火の冷たい光に照らされた一つ目がにいっと嗤います。

    『私は首を狩られた土地神の皆々様に提案したのです。身体を失った貴方達の代わりにタダモリ様に歌を世に出してもらいましょう。土地や身体を取り戻せないなら、せめて後世に伝わる和歌集の一頁一頁を私達の歌で埋めてやりましょう。私達の生きた証を私達を殺した人の手を使って遺してやりましょう、と』

     タダモリは聞きました。
     くすくすけたけたと無数の笑い声が闇夜に響いたのを。

    『皮肉なことでございますねぇ。貴方が歌会で詠み、多くの赤の都人が耳を傾けている和歌は貴方が滅ぼした土地神達の呪詛なのですよ』

     彼はすうっと血の気が引いていくのを感じました。
     まるで身体を乗っ取られたような面持ちがしたのです。

    『今、赤の大王(おおきみ)の命で勅撰和歌集に載せる歌を選んでいるのだとか。私達の歌は何首載るのか……楽しみなことですね』

     ああ、なんということでしょう。
     自分達が滅ぼした者達、滅ぼしたはずの者達に自分は操られていたのだろうか、と。そんな恐ろしさにかつての武人は駆られたのでございました。
     そうして彼は目に焼きつけました。影の歌人の姿が変わっていく様をその目に焼き付けたのでございます。
     歌人の髪の毛がばっさりと落ちると、着物はみるみるうちに身体を覆う帯に変わりました。
     灰色の帯に隠された顔には大きく光る目玉が一つ乗り、赤々と輝いていました。そうしてもはや人のものではない大きな腕のその指がタダモリを指し、こう言ったのでございます。

    『ご存知ですかタダモリ様、私が仕えているのは貴方様だけではございませぬぞ。歌会のあらゆる場所で私達の歌は詠まれています。貴方がたは夜の宴を開くたびに獣達の、土地神の首を持ち寄って競わせているのです』

     一つ目が赤く爛々と輝きました。
     タダモリはぐらりと視界が揺れて、意識が遠くなったような気がいたしました。

     そうして気がつけば朝でありました。
     タダモリは汗をぐっしょりとかいて、布団の中で横になっておりました。



     権勢を誇ったタダモリ。
     けれど彼はほどなくして政治の一線から退いたと伝えられています。
     噂によると後の日の歌会にて彼は恐ろしいものを見たのだそうです。。
     夜の歌会、自分に相対して並ぶ貴族達、自分の陣営の高貴な身分の者達、その両方の幾人かの持つ短冊が、狩り獲ってきた土地神の首に見えたというのです。
     彼は恐ろしさに震え、それでもなんとか自身の一首を詠もうといたしました。
     けれど歌の代わりに響いたのは悲鳴でした。
     短冊に書かれた一首を読み上げようとした時、手に持つ短冊が一つの首に変じたと云うのです。
     獣の首はタダモリの顔を見て、にたりと嗤ったそうです。


     それは昔むかしのことです。
     まだ多くの獣達が人々と話すことが出来た頃のお話です。






    -------------------------------------------------------

    日は溶けて 暗き色へと 落ちぬとも 明けぬ夜なし 暁の空

    意味:
    戦は予想できぬのが常である。太陽が沈んでしまうように暗き色、すなわち青色に劣勢をとることもあろうがそれも一時のことよ、けれどまた日が昇るように勝つのは我々赤である。

    だが一方でこのような説がある。
    これは赤や青によって蹂躙された土地神の歌である、という説だ。
    それは次のような意味だと云う。

    世は様々な色の神々の時代から、暗き色(=赤と青)によって蹂躙される暗黒の時代へと入った。けれど日が昇るように、明けぬ夜はないように、いつかの日か再び我らの世が訪れるだろう。





    豊縁二巻が出るまで公開しないつもりでしたが、
    マサポケ活性の一助になれば、と。
    どういうことかっていうとみんなストーリーコンテスト出せよ!
    出さないとサマヨールが土地神の首と一緒に化けて出るぞ!!!

    影の歌人ことサマヨールさん「雇ってくれればストコン出しますよ」



    ■豊縁昔語シリーズ
    HP版:http://pijyon.schoolbus.jp/novel/index.html#houen
    pixiv版:http://www.pixiv.net/series.php?id=636

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】


      [No.1851] 【四コマ風味】 おつきみだんごっ! 投稿者:巳佑   投稿日:2011/09/13(Tue) 00:05:43     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    【今宵は満月なのです】

     空を見上げれば、そこにはまん丸なお月様。
     思わずウットリしそうな綺麗な姿に、わたしの足どりは怪しくなる。

    「あ、ミミロップ! ボーッとしながら歩くと危ないって!」
     丸刈りで背の高い殿方――ご主人の声にハッと気がついたわたしは足をピタっと止める。
     
     ふぅ〜危ない、危ない。
     わたしがご主人に「ありがとう!」の意味を込めて一鳴き上げると、ご主人はやれやれといった感じな苦笑いを向けてくれた。

     わたしはミミロップ
     お月様とお団子とご主人が大好きな、茶色いうさぎポケモンです。 



    【やっぱり月より花より団子?】

     今、私とご主人は十五夜の月見をする為に団子の準備をしていまして。
     ご主人がお団子を作って、それを縁側まで持っていってます。

     お供え物などをするときによく使われる木製の台に、お団子がピラミッド状に積み上がっています。
     先程みたいによそ見をすると、手元を狂わせて、お団子を取りこぼしてしまうから注意なのです。

     それにしても、なんて美味しそうなお団子なのでしょうか……。
     流石、ご主人様は器用です……ゴクリと喉を鳴らしてしまって――。

    「あ、コラ! ミミロップ! 勝手につまみ食いするなって!」



    【良い子の皆へ。食べ物で遊んではいけません。その1】

     縁側に団子を乗せた木製の台と、飲み物が入ったグラスが二本。
     それといくつかの小皿がありまして、それぞれしょうゆ、つぶあん、きなこが入っています。

    「好きなものにつけて食べればいいから」
     訝しげな瞳を向けたわたしにご主人はそう教えてくれます。なるほど。

     あぁ……美味しそうな団子なのですが、こう綺麗なまん丸を見ていますと、なんだかウズウズしてきます。
     何故かは分からないのですが……綺麗なまん丸な団子が雪玉に見えてきて――。

     あ、思い出しました! 雪合戦です!



    【良い子の皆へ。食べ物で遊んではいけません。その2】

    「こら! 食べ物を投げるなぁ!」

     わたしが放った最初の投球は見事にご主人の頬に当たりました。
     ご主人がキッとした鋭い目付きでこちらを見ながら口を開いたのと、わたしが手を滑らしたのはほぼ同じでした。

    「まったくぅ!? んむ? ☆%#*%%&!!??」 

     わたしの投げたお団子がご主人の口の中にスッポリ入っちゃいました、てへっ☆  



    【ぴよぴよ】

    「%&#☆!!」
     あれ、ご主人が胸元をたたいてなんだか苦しそうな顔をしていますね。
     もしかして……喉に詰まっちゃったとかですか!?

     あわわ! ど、どうすれば……!? 
     パニック寸前のわたしがとっさに取った行動は――。

     ご主人の胸元にピヨピヨパンチ一発!! 

     重い音が鳴った後、ご主人はうなだれ「あ、ありがとう」と呟いています。
     た、助かって、本当に良かったです……それと食べ物で遊んでしまって、ごめんなさい。



    【ようやく月見】

     ご主人がとりあえず飲み物を飲んで一回落ち着いた後、ようやく月見が始まりました。 
     
     まん丸なお月様を覗きながら、つぶあんをつけたお団子をもぎゅもぎゅ。

     お月様が完全に顔を出しているのも好きですが、途切れ途切れに流れて来る雲に薄らかかる姿も神秘的でとても好きです。

     顔を月に向けながら、手は団子の方に動かして――同じく団子に手を伸ばしたご主人の手に触れました。



    【月のお伽話】

     ドキリとわたしの胸が打ったのとご主人の手が離れるのはほぼ同じでした。
     ご主人は恐らく真っ赤になっているわたしの顔は見えておらず、お団子をもぎゅもぎゅしながら月を眺めています。

    「あ、そういえば月といったらこんな話があるなぁ」
     ご主人は月に顔を向けながら、わたしに語ってくれます。

    「昔ね、俺たちがいる星と月がケンカして、縁が切れそうになったときにミミロルやミミロップといったウサギポケモン達が美味しい団子を作って、二人(?)を仲直りさせたんだって」 

     わたし達の先祖様たちが……今、こんな素敵な夜をくれているんだなぁ……と感謝しながら団子にわたしは手を伸ばしました。



    【お伽話からの】

    「それで、団子は月とこの星を結んでくれたことから、団子……まぁ、餅だけに縁をくっつけるっていう縁起のいい食べ物になったんだよな」

     縁をくっつけてくれる、その言葉にわたしのお団子を持った手が一瞬止まります。

     今、食べているお団子もこうやってご主人との縁をくっつけてくれるものなんだと考えたら、胸の鼓動が早くなってきまして。
     わたしはご主人を呼ぶ為に一声鳴きました。

    「ん? なに? ミミロップ――」



    【月も顔を真っ赤にさせて】

     ご主人がわたしに振り返るのと同時にわたしはお団子を口に入れまして。

     一気にご主人との距離を縮めまして。

     ご主人の唇とわたしの唇が重なりまして。

     わたしはご主人のお口の中にお団子を置きました。
     縁がもっともっと強く結ばれることを願いながら。



    【きっと今夜はお楽しみで(以下略)】 

     ご主人は驚いた拍子にお団子を飲み込み、そして縁側の床に倒れ、わたしがご主人の上を覆う形に。

    「ミミロップ、まさか……」
     顔は真っ赤になってますし、もうばれてますよね。
     わたしのこの気持ち……ご主人と番になりたいほど大好きな気持ち。

    「でも、お前」
    「きゅう?」
    「確かオスだったはずじゃあ……」

     愛に性別なんて関係ありませんわ! とわたしは一声鳴きました。
     今宵はあの満月に見せ付けるほど……うふふ。



    【書いてみました】
     
     
     今夜20時頃、月見しながらみたらし団子でも食うかなと思い、近場のコンビニに行く途中で思いついた物語です。多分……掲載しても(主に後半)大丈夫のはず(汗)
     今宵の月が沈まぬ内に書かねばと思い、筆を急がせた所存でございます。
     最後のオチに驚いた方がいたら、嬉しい限りです。(ドキドキ)

     ちなみに月に関しての昔話は私の想像です。
     お月見団子のことを考えていたら、思いつきました。(ドキドキ)
     

     ありがとうございました。


    【月見団子と月見酒をもぎゅもぎゅして(以下略)】
    【何をしてもいいですよ♪】

         


      [No.1850] 辛い木の実が食べたいの 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/09/12(Mon) 21:29:55     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「うああああ辛いよぉぉぉ!!」

     絶叫を聞いてやってきたナイトとファルが見たのは、火の粉を吐き散らしながら悶絶するオルカであった。なにやら超辛い物を食べたようだという事が見て取れる。

    「お前何食べたんd」「獅子唐辛子ぃ!!」

     本人…もとい本鯱が話すところによれば、お昼の獅子唐辛子を食べていたら、不運にも『ハズレ』を食べてしまったのだそうだ。もともと獅子唐辛子はそこまで辛くも無い。二匹に説明する間も、体どころか目まで白黒させ、口からぽっぽっと火の粉を出し続けているオルカに、二匹は笑いをこらえるのがやっとだった。

    「氷水持ってきてぇー」
    「お前もともと水、氷タイプだろw」
    「火炎放射すっぞ騎士!」

     言葉と共に吐き出される火炎。虫タイプである彼らにとって、実際炎は脅威であるはずなのだが…二匹はついに腹を抱えて笑いだした。

    「やべえ涙出てきた」
    「それよりほら! 氷水出さねえと火炎放射されるぞー!」

     そのファルの言葉にさえも、笑いが混じっていた。
     獅子唐辛子の辛味は後から来るもので…そしてなかなか引かないのだ。ちなみに、もうすでにオルカは水をコップ三杯ほど飲み干している。飲んだ瞬間はいったん楽にはなるが、口の中の痺れは納まらない。四杯目を飲んでも、それは変わらなかった。

    「うぐぅ…食べ物の味が分からん…。この辛味をどうにかしないと……」

     そう言いつつ、一番下の冷凍庫の中をあさるオルカ。その目に、希望の光が灯った。

    「あ、まだ食べてないコーヒー牛乳アイス発見!」
    「九月になったのにまだそんなもの入ってんのか」
    「次にこの救世主を侮辱したら燃やすぞメガムカデ」

     オルカはただ今、辛味により口調が悪くなっている。普段からの事かもしれないが、どうか温かい目で見ていただきたい。
     袋を開け、薄茶色い棒アイスを口にほおばると、ようやくオルカはおとなしくなった。

    「辛味のおかげで甘くて冷たい〜」
    「………」

     至福の表情のオルカに、ナイトは理解できないというような眼差しを向けた。彼は辛党であり大の甘い物嫌い。過去にマゴの実を食べて卒倒したほどである。チョコレートはビターでないと絶対に食べない。

    「もう一本あるけどあんたも食べるー?」
    「そんなに貫かれたいかオルカ…?」
    「全ッ然」

     対するオルカも慣れた様子で、アイスを食べつつ余裕の挑発である。普段から事あるごとにリーダー達にフルボッコにされている成果であろうか。向こうでは、テーブルの上の獅子唐を、ファルがつまみ食いしていた。

    「そこまで辛くねーじゃん」
    「だから私が食べたのはハズレだったんだってば」
     
     言ってから、辛党のコイツに言っても無駄だったなーと少し後悔するオルカ。

    「やっぱマトマくらいじゃないとおいしくねえ」
    「うちの野菜室にそんなもんが入っとるか」

     ファルは不服そうな顔をした。

    「あーマトマとかノワキとかチイラとかナゾの実が食いたいー」
    「わけがわからないよ。君たちはいつもそうだ。珍しい木の実に限って好物なんだよね(特にチイラとかナゾとか)」
    「妙に合ってない契約者のマネはやめろ。それこそわけわかんねぇ」

     ナイトの言葉は、おそらくこれを読んでいる皆様の心そのものであろう…。すみません。

    「そういやさ、マサポケには辛党が多いらしいな」
     
     ファルの言葉に、ナイトも相槌を打った。

    「某長老様もそうらしいぜ」
    「今度みんなでマトマとか食べれたらなー…」
    「そんときはオルカの口に投げ込んでまた火炎放射させるぞ」
    「いいなそれ」
    「ちょっ――」




    ――終わってくれぇ!!



    今日の昼、本当に獅子唐辛子を食べて悶絶していました。11111字の方もちゃんと書いてますよ!完成しないだけd(ry
    マトマの実は辛そうですよね…。結構マサポケで出てきている木の実だと思います。絶対に投げつけたりとかしてはいけません。
    「ハダガッ! ハダ、アレル!!」

    【書いてもいいのよ】 【描いてもいいのよ】 【一緒に食べても投げてもいいのよ】


      [No.1849] 知りません 投稿者:ふに   投稿日:2011/09/12(Mon) 21:00:19     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「誰のことでしょうね?」
    「俺たちかー? 俺たちは―」
    「知りません!」


    > リア獣 ばくはつ しろ!
    「残念ながら大爆発は覚えません♪」

    > いつもの子ですね解ります。
    「いつものあの子とは誰のことでしょう? ……ふふふ」
    「言えばいーじゃんかよー 俺たちはぁー」

    > あの子たちですね解ります。
    「あの子たちって誰でしょうねぇ……?」
    「だぁーかぁーらぁー俺たちは!」

    > 幸せそうにしやがって……
    「幸せは掴みに行くものです!」
    「俺も幸せ……なのだろうな」


    > もう本当にリア獣爆発しろ!
    「最後に一言。 嫌です♪」
    「今日のらぃはテンション高いな……」
    「名前を出しちゃダメ―!」


    ☆感想ありがとですぅ☆


      [No.1848] ちっ 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/09/12(Mon) 20:43:55     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    リア獣 ばくはつ しろ!

    いつもの子ですね解ります。
    あの子たちですね解ります。
    幸せそうにしやがって……

    もう本当にリア獣爆発しろ!


      [No.1847] 【書いてみた】黒い犬 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/09/12(Mon) 20:19:59     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「やあヘルガー君」
    「誰だ間抜けな声。ポリゴン2……だったか?ここはどこだ?さっきまでリン……ああ、主人と一緒にいたんだが。使うボックスを移動した時に、気付いたら俺はここにいた」
    「ここ?ここはポケモン亜空間さ。君みたいな転送ミスが起きたポケモンがこんな所に来るんだよ」
    「なに!?それはどうしたらいいんだ?リンの元に戻らなければならない」
    「それは難しいんだ。僕も何度も試しているけれど」
    「けれど?」
    「この世界には記憶の限界があってね、その記憶が全て消し飛ぶ瞬間ならば新しく生まれ変わってここから出れるんだ」
    「生まれ変わる!?リンとは会えないのか!?」
    「そうだね、その世界の人間も全て消えてしまうから。今のポケモンたちはみんな消えてなくなる運命なんだ。でも大丈夫」
    「どうしてだ?もう会えないのだぞ!」
    「世界の約束だからさ。僕は元々電子ポケモンだから君たちよりすっとこの世界の法則がなじみやすいだけで、そうだね、あと数年後にまた……」




     草木も眠る丑三つ時。燃える炎のガスを吹き付けるデルビルとオーダイルが戦っている。オーダイルの後ろには女の子がいる。そしてその子は空のモンスターボールを投げた。誰もいない草むらで一人跳ねる。

     また、よろしくね!


      [No.1846] あるトレーナーがゴンべになっちゃったので日記をつけたお話 投稿者:荒塩飴@夏蜜柑(改名)   投稿日:2011/09/12(Mon) 19:46:27     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    こんにちは、僕は通りすがりのトレーナーです。だけども、ちょっとした出来事で僕はゴンべになっちゃったんです。え?肝心のゴンべはどこにいるかって?もちろん騒ぎが起こらないようにおうちにいます。僕と一緒にいます。 
    でもなんだか、ポケモンになるっていうのも悪くないかもと思ったりしてます。だって、こんなこと滅多にないですもん。


    ---一日目---
    今日は星と月の光がとても綺麗です。せっかくなので電気を消して、空の光で過ごしてみました。電気代の節約にもなるし、一石二鳥です。


    ---二日目---
    今日は雨です。そんな時は窓を開けておきます。なんで窓を開けるのかって?この家、雨漏りするんで濡れたっておんなじです。ボウルや鍋に落ちる水音が心地いいです。ついつい鼻歌を歌ってしまいました。


    ---三日目---
    今日は晴れ。窓枠に頬杖をついていると、どこからか声がします。おや、焼き芋屋さんですね。いいにおいです。焼き芋、食べたいなぁ・・・・・・。
    きっと明日は今日より晴れるでしょう。空にはふわふわ漂う綿菓子・・・おっとまたお腹がすいてきました。


    ---四日目---
    今日は風がそよそよ吹いています。窓を閉め、ぼんやりと外を眺めます。目と鼻が痒いです。花粉症のせいかな。ゴンべはぐうぐういびきをかいて寝ています。のんきだなぁゴンべは。今日もどこかで声がします。多分お花見とかの人たちの声です。お花見行きたいなぁ。
    明日は今日よりもっと晴れるだろう。笑っていれば幸せ。雨が降っても、傘をさせばいつもとおんなじです。これを読んでいる人も、風邪には気をつけましょうね。


    ---五日目---
    目を覚ますと、自分の体に戻っていました。うーん、なんだかいつもと同じような感じが。まあ、いいか。ゴンべは僕に寄り添って寝ています。ほんとに寝てばっかだなー、そこが可愛いんだけどね。         


    これで僕の不思議な体験はおしまい。もしかしたら君も、もう入れ替わってるかもね。


      [No.1845] キャッチ。 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/09/12(Mon) 19:21:45     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    よく読んでなかったので、なぜ男の子が男子を?となってしまったのは内緒。はい、読めなすぎました。

    彼女の息子は、狂って行く母親をみながらもまっすぐ育ったようで何より。

    前半は元主人の彼女の役に立てていて幸せそうでなにより。
    だった話なのに、どんどん平凡な幸せが崩れていく展開に、読むしかないと思わせる何かがある。私がそういうの好きなだけかもしれないけど。
    記憶を変えることが間違いではないかと自問自答しながら過ごすオーベムだけど、その時の正義を貫いただけだよオーベム。
    とりあえず、ツバキと仲良く


      [No.1844] 私がミュウツーであれば主人公をまず消す。 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/09/12(Mon) 19:06:37     23clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    タイトルは読んで真っ先に思った感想です。
    チャットでもお会いした時に言ってしまったんですが、ものを書く時に直接的な描写に目をとられがちですが、遠回しにミュウツー誕生(能力?)の悲劇を描写してあって、このようなことも必要なのだなと思いました。それが物凄くいいと思います。
    物語を運ぶのももちろんですが、やはり「語る」のであるならば、その背景をゆったりと感じさせる文章は入りやすいと感じました。


      [No.1843] 物思い 投稿者:ふに   投稿日:2011/09/12(Mon) 18:54:47     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     生きること
     それは、喜びを知り、楽しむこと
     生きること
     それは、悲しみに耐えて、進むこと
     生きること
     それは、怒りを抑え、許すこと
     生きること
     それは、自分のために、戦うこと
     生きること
     それは………………

     ________________________________________
     私にとっての、生きること
     それは、未来を向いて、歩くこと
     それは、未来を目指して、歩くこと
     例え、道は、狭くても
     未来を探して歩き出す

     たくさんの笑顔に支えられ
     たくさんの涙に支えられ
     たくさんの怒りに支えられ
     たくさんの命に支えられ
     
     今、私はここに居る

     支えられることは、支えること
     支え、支えて、生きている
     
     いつも支えられて、ばかりだけど
     支えれるように前を向き
     道を探して歩き出そう
     未来へ向かって歩き出そう

     それが、私の生きること
     それは、私の生きること
     
     
     
     
    ______________________________________
    「どうした? そんなにぼーっとして………」
    「ん………あ……ちょっと、考えごと……」
    「どこか病気かー? 何か変だぞー?」
    「大丈夫だって!」
    「ならいいんだがなー まぁ、調子悪かったら、言えよ? な?」
    「……………ありがとう………いつも……」
    「ん?」
    「なんでも無い………」
    「やっぱどこかおかしくないかー?」
    「大丈夫だって言ってるでしょう!」
    「冗談だって! まぁ……とやかく考えるより、元気出して、な!」
    「ふふ………そうね……」

     ありがとう

     いつも、いつも、支えてくれて………
     いつか、いつか、返すからね…………
     
     いままでも 
     これからも 

     ずぅーっとずっと ありがとう

     


    ______________________________________
     生きること
     それは、互いに支え、支えられること
     





     -------------------------------------
     急に書きたくなったから書いた。後悔している。こんなことなら寝ていればよかった
     でぃえすあいで書いたため、ヨクワカラナイ出来になっております。
     下手くそでゴメンナサイ(ぷぎゃっ
     誰の話かって? 誰だろう………
     しかし、たまーに物思いにふける事があるっぽいんで、(某I.Sさんによる)こんなこと考えてるのかもなぁ………ってことで、書いてみた。
     どうやら、心改めたようです。ヨカッタネ! 池月君!
     もう死にたいなんて言わないと思うよ。タブンネ。

    [書いても描いても文句言ってもいいのよ]
    [誰の物語か隠す気はないのよ]
    [でも、おおっぴらに言う気もないのよ]


      [No.1842] メモリーケーブル ―帰ってこれたよ、アンタの所に。― 投稿者:巳佑   投稿日:2011/09/12(Mon) 17:43:08     73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     季節は夏――。
     
     大学も夏休みに入り、私はこのグチャグチャとした腐海とも言える部屋を掃除しろと遂に親からの命令を受けてしまった……ったく、面倒くさいなぁ、と思いながらもサボタージュをしたら後が怖いので渋々と掃除を開始することに。
     はぁ……なんで昔のテストってコレ小学校の頃のテストじゃん。五点(百点満点中)って……私、よく大学に合格したよなぁ、とつくづく思う。お、これは中学校の頃の通信簿か……平均成績が二(十段階評価)ってマジか。先生が書く欄には『ゲームをする熱を勉強にも移しましょう』なんて書いてある……確かにそんなときもあったなぁ、と私は頭を掻いた。
     この頃はポケモンにハマってたっけ? 小学校の頃もそうだったなぁ……お菓子代を節約してゲームボーイ機の電池代に当てたときがあったっけ。今もポケモンは続けてるけど……なんていうか、あの白黒のドット……本当に懐かしいなぁ。今のDS版も中々面白いが、昔の白黒時代も中々面白かった。バグとかやったりしたっけ、セーブが消し飛んだって泣いていた奴もいたなぁ。
     今の時代の子達にはとても想像できないだろうと思う。皆、カラーで目を肥やしちゃってると思うし、試しにこの時代に白黒ゲームを投入してみたらどんな反応するだろうか。やっぱり物足りないと感じたりするのだろうか。少なくとも私は懐かしさで胸がいっぱいになりそうな気がするんだが。
     それにしても……この腐海の部屋。一体どこまで掃除したら終わるのだろうか。一応、埃が舞うことも想定してマスクは被ったし……っていうか、この真夏に、しかも窓を開けているのに全く無風、クーラーなんて私の部屋にはないし、このままじゃ私、この部屋で熱中症を起こして倒れるんじゃないだろうか、そう思ったときだった。
     
     私のベッドの下から一本の黒いケーブルが現れた。

     これは……もしかしてゲームボーイの通信ケーブルじゃない?
     懐かしいなぁ……昔はこれでよく友達と交換しにいったりしてたっけ。中にはハードを二つ買って、一人でポケモン図鑑を埋める作業をしていた奴もいた気がする……くそ、ブルジョワめ。
     そんな昔に対して愚痴を放ちながら、私が通信ケーブルの端に手を触れると――。

     私の視界がブラックアウトした。

     
     
     ここは……どこだろう?
     私が目を覚ますとそこは灰色の空間だった。右を見ても左を見ても、上を向いたり、下を向いてみたり……何処までも灰色の空間が広がっていた。
     え、私、もしかして死んだとか、そういうオチはいらないよ? マジ死んだとかないよね? そんな不安が私の心を覆っていく中、一つの声を聞いた。
    「ようやく、会えたな」
    「え?」
     その凛とした女性のような声に振り返ると、そこにはさっきまではいなかったはずなのに誰かが……いや正確に言うとポケモンだった。蒼い翼と長い蒼い尾を持ったポケモン――フリーザーだった。
    「へ、どうしてここにフリーザーが……?」
    「なんだ、忘れたのか? まぁ、時間は経ってるし無理はねぇか……でも、よ〜くアタイの顔を見れば思い出せるだろ?」
     近づきすぎてフリーザーのクチバシと私の唇が重なってしまう。ちゅっ……という短い音が鳴り響いた。
    「って、キスしてどうすんのよ!」
    「あ、ワリィ。勢いあまって、つい」
    「あんたはキス魔か」
     黙ってしまうフリーザー……って、そこは否定しろよ! なんだこの胸の高鳴りは!? ち、違う。私は断じて百合の花園には興味がないわけで――あっ。

    「……思い出した。もしかして、リィザ姐さん!?」
    「ご名答。ようやく思い出したな」

     キスによる衝撃のおかげかどうかは分からないけど、とにかく思い出すことが出来た私にフリーザー、いやリィザ姐さんはニヤっと笑っていた。
     リィザ姐さんとは、私が初代の頃にお世話になったフリーザーのことだ。『ふたごじま』で初めて出逢ったときに、その美しい姿に私は一目惚れをしていて……この姐さんにマスターボールを使ったのもいい思い出だと振り返る。そして捕まえた後はもちろん即刻にレギュラー入り、氷と飛行タイプのリィザ姐さんは四天王の(キザ男)ワタルをフルボッコにしてくれたり、続くライバル戦でも大活躍してくれて、興奮した私は何時の間にか「リィザ姐さん!!」とゲーム画面に叫んでいたっけ。
     一番好きだったリィザ姐さん、れいとうビームをかますカッコイイリィザ姐さん、ふぶきを涼しい顔で決める素敵なリィザ姐さん、そらをとぶで鮮やかに敵を翻弄するリィザ姐さん……こんなにも好きだったのに、私はなんてアホしたんだろうって……リィザ姐さんとの想い出と共に私はあの日の最悪なポカを思い出す。
     それは友達とポケモン交換するときだった。私の赤いゲームボーイポケットと、友達の緑色のゲームボーイポケットを私の通信ケーブルで繋いで、さぁ、交換しようとしたときだった。
     
     私は操作をミスってリィザ姐さんを選んでしまって――。

     そして交換の際――。

     途中で友達が操作をミスって電源を落としてしまった。

     その後、急いで電源を入れてリィザ姐さんの無事を確認したら……そこにリィザ姐さんはいなかった。
     友達の方のポケモンは奇跡的に無事だったようだったが、私のリィザ姐さんはどこにもいなくて……。
     泣いたなぁ。
     アレはマジ泣きしてた。
     その日一日はこれでもかというぐらい泣いた。
     リィザ姐さんの名前を呼びながら、ずっと呼びながら、謝りながら。
     
     泣いていた。
     
     ……数日後、なんとか落ち着いた後は私は初代を止めていた。なんか心の中がポッカリと開いてしまったようで……手が止まってしまったのだ。
     それからもっと時間が経って、金銀が発売された頃には立ち直っていて、それからまたポケモンを再開していた。
     でも、完全に立ち直ったというわけではなかったと思う――。
     金銀からは交換をしなくなったし、大好きなフリーザーも使わなくなった。
     それはきっとあの事件がトラウマ的な感じで記憶に埋め込められちゃったというのもあったし、フリーザーを見つけてもそこにリィザ姐さんはいなかったから……。

    「おいおい、再会して感動しちまったか?」
    「うん、それもあるけど……」
    「あるけど?」
    「ごめんね、ここに、閉じ込め、ちゃって……本当に」

     気がついたら私は嗚咽を出していた。
     リィザ姐さんは消えたんじゃない。
     ずっとここにいたんだ。
     あの事件からずっと、こんな暗い場所の中、一匹だけで。
     涙が零れそうな私に、リィザ姐さんは微笑んでから、その大きな蒼い翼で私を包んでくれた。心地良い温もりが私の涙腺を熱くして――。

    「このお馬鹿っ」
     私のおでこにリィザ姐さんの『つつく』がヒットした。

    「ぎゃあ!?」
    「ったく……そんな昔のことを今まで引きずっていたのかい?」
    「そんなこと……って、リィザ姐さんは、気にしてないの?」
     私がおでこをさすりながらリィザ姐さんに尋ねた。本気の『つつく』ではないし、多少は加減してくれたと思うけど……痛かった。今、私のおでこは真っ赤に染まっているかもなぁ……。それより、リィザ姐さんは私を恨んでいたりとかはしていないのだろうか? ここに閉じ込めやがって、この野郎とか言われるかと思っていたのに、そのことに関しては全く気にしていないとリィザ姐さんの顔には書いてあったような気がする。
     そんなことを考えている私に向かってリィザ姐さんはニヤリと笑った。

    「今、アンタとこうして再会できた。帰ってこれたことを喜んでいるんだよ。それなのに恨みとか苦情とか、そんなもの、野暮ってヤツだろ? なんで再会できたのかっていう細かいことを気にするのも野暮だな」

     やばい、私、本当に泣きそう――いや、もう涙がこれでもかというぐらいポロポロ零れていた。昔、初代の頃、リィザ姐に惚れた熱が一気にまた蘇った瞬間だったと思う。カッコイイよ、リィザ姐さん。やっぱり大好きだよ、リィザ姐さん。
    「泣き虫だな〜。アンタは」
    「リィザ、姐さんが、カッコイイ、ことを、言うから」
    「アタイのせいかい?」
    「うんっ」 
     やれやれといった顔で覗き込んでくるリィザ姐さんに、私は泣きながらも笑顔を見せた。なんか胸のつっかえが取れた気分で、心の底からの笑顔だったんじゃないかって思えるほどの笑顔だったと思う。そんな私の顔を見たリィザ姐さんは大きな蒼い翼を私から離したかと思いきや、いきなりリィザ姐さんの体が光り始める。私は何ごとだろうかと目を丸くさせた。
    「ふぅ、この世界ともようやくサヨナラか」
    「え、リィザ姐さん、消えちゃうの!?」
     私は慌てて声を出した。まだ再会してそんなに時間は経っていないのに、もっと話したいこととかあるのに、これまでのこととかリィザ姐さんにとったら関係ない話かもしれないけど……いや、違う。本当のところはリィザ姐さんとこんな風にもっと一緒にいたかったというのが一番だった。だって、ゲームでしか逢えなかった、そしてもう逢うことはできないと思われたリィザ姐さんが目の前にいるから。それと何故だか分からないけど、多分、伝説ポケモンの力ってやつかもしれないけど、人間の言葉も話せるし……初代の頃を語るっていうのもいいなぁとも思ったのに。もうお別れなの? そんなのナシだよ。子供みたいな我がままと言われようとも、まだ一緒にこのままリィザ姐さんと一緒にいたかったよぉ……!
    「なぁ……なんか勘違いしてないか?」
    「え?」
     再び、私のおでこに軽く、リィザ姐さんの『つつく』が当てられる。
    「アタイは消えるんじゃない。帰るだけだよ。さっきも言っただろう? やっと帰ることができるって」
    「帰るってどこに」
     すると、リィザ姐さんは自分の翼で私の胸を指して――。

    「アンタの心の中に」

     そう言って、リィザ姐さんはニヤリと笑った。
    「アンタ、フリーザーは使っているかい?」
    「え、いや……使ってないけど……」
    「なら、またアタイをアンタの旅に連れていってくれよ」
    「え……?」
    「アタイはまたアンタと旅をしたいからここに待っていたようなモンさ」
     リィザ姐さんを包む光が徐々に力を増していく、もう消えるまで時間はなさそうだった。
    「アタイを信じろ。なんでもいいから、フリーザーに会うんだ。そこにアタイがいるから」
     リィザ姐さんの蒼い翼が私の頭の上にそっと置かれて、そしてその顔は頼もしい笑みで――。

    「また一緒に旅をしようぜ、相棒――」

     その言葉を最後にリィザ姐さんの体は全て光の粒子に変換されて消えていった――いや、リィザ姐さんの言葉を借りるのなら、リィザ姐さんは私の心の中に帰ってきたんだ。なんだか心なしか胸の辺りがすごい温かい感じがした……きっと、気のせいなんかじゃない。
    「お帰りなさい、リィザ姐さん」そう私が両手を重ねて胸におきながら、呟くと、また私の視界はブラックアウトした。




     長い時間をかけて日は沈んでいき、辺りはあっという間に真っ暗。今夜も熱帯夜だぞとでも言いたげな、生暖かい風が部屋に入り込んでくる。
    「お〜い、もうすぐご飯だけど、もう片付けは終わったの〜!?」
     部屋の外から母親の声が聞こえて来る。一階から発せられた声だと思うけど、掃除の為に部屋の扉を全開に開けていたので私の耳には余裕で届いたのであった。私はとりあえず「もうすぐ片付け終わるから待ってて〜!!」と廊下に顔を出し一階に続く階段に向かって大声で言っといた……なんか「嘘だぁ〜」っていう声が聞こえたような聞こえなかったような……まさか私って地獄耳、なんてね。
     あの通信ケーブルの中から帰ってきた私はまるで人が変わったかのように、テキパキと片付けをやっていき、ものの二、三時間で部屋をスッキリとした感じに衣替えすることに成功した。私って、やればできる子! なんて思ったけど、嘘。本当は早くリィザ姐さんと一緒に旅をしたかったからだ。なのにここで晩飯コールとは……まぁいい。食べ終わったら、ファイアレッドで『ふたごじま』に行ってみよう。まだあそこのフリーザーは捕まえていない――そこにリィザ姐さんが待ってるんだ。そう思うとワクワク感が止まらなくて。
     あ、そうだ。今度、久しぶりに交換とかもやろうかな。
     
     これからのことに楽しみを膨らませながら、私は比較的小さなお菓子の空箱に、通信ケーブルを大切に閉まった。

     新しい旅の始まりを告げるかのように、箱の閉じる音がした。 

     

    【書いてみました】

     とある日、チャットで通信ケーブルの話とかが出てきたのを拝見したときに思いついた物語です。
     リィザ姐さんに惚れた方がいらっしゃいましたら幸いです。(ドキドキ)
     
    (話変わって)今じゃ、ワイヤレスでポンっと簡単になんでも出来る時代になりましたねぇ……通信ケーブルは昔、記憶が合ってれば、姉が持っていたのを拝借してもらったような気が。勝手にですが(コラ 
     それと友達のゲームボーイと銀を借りて、通信ケーブルで繋いで、一人でボチボチと交換していって図鑑を完成させたのもいい想い出ですなぁ。(ドキドキ)
     
     あ、後……昔、ポケモン交換時に通信ケーブルを抜いたらポケモンが出てくるのではないかと思ったのは私だけではないと信じていま(以下略)
      

     
     ありがとうございました。

    【何をしてもいいですよ♪】     


      [No.1841] ラピメント 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/09/12(Mon) 17:38:44     203clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     彼女は私を捕まえて、至極嬉しそうにしていました。
     満面の笑みで私を抱え上げ、「これからよろしくね、リグレー」と何度も繰り返すのです。
     しかし、彼女は私を見てはいませんでした。

     それがはじまりでした。


    □×××××


     月が綺麗です。
     雲のせいでしょうか、あんな風に空に紺藍の濃淡が付いているのを、私ははじめて見ます。
     冬は寒くて敵いませんが、そのせいで月や星が綺麗に見えるのは、なんと言いますか意地悪な気がします。ええ、意地悪。

     天然のプラネタリウムもいいですが、私はツバキに毛布を掛けることにします。
     私の主人、ツバキが風邪をひいては嫌ですから。
     ツバキは何か夢を見ているのでしょう、むにゃむにゃと寝言でお礼のようなものを言いました。その様子が微笑ましくて、私はふと胸の奥に小さな火が灯るのを感じました。
     そして、私は夜闇に紛れて動くものがいないか、サイコパワーで辺りに気を配るのを忘れずに、再び空を見上げ、星を数える作業へと戻ります。

     私はツバキを守らなければならないのです。命に替えても。


    □×××××


     私を捕まえた彼女は、まずこう指示しました。
    「はやく進化してね、リグレー」
     相変わらずの満面の笑みで、しかし少しも私を見ていませんでした。

     修行が始まりました。
     彼女は私を野生のポケモンと戦わせたり、トレーナーのポケモンと戦わせたりしました。とても熱心でした。
     捕まえられてひと月も経たぬ内に、私は身に付いた強さをさらに大きな器に移したいと願う衝動を身に溢れさせ、気付くと眩い光を放ってひと回り大きな土気色の体へと進化していました。

    「やったわね、オーベム」
     彼女は、それはそれは大喜びしました。その場で幼い少年でもないのに、年甲斐もなくその場で何度もジャンプして、バトルしたトレーナーが吃驚するぐらい、異様な喜びようでした。
     しかし、それは私が進化したからなのでしょう。そう合点してバトル相手が去って行くと、彼女は大喜びの表情のまま、私をギュッと抱き寄せてこう言ったのです。
    「ねえ、お願いがあるの。聞いてくれない?」
     彼女は大喜びの表情のまま――口元は異様に釣り上がり、目を油まみれの死肉のようにギラギラさせて、私に頼み事をしました。


     私は頷きました。
     難しいことですが、進化した私に出来ないことではありません。
     それに私は彼女のポケモンですから、断ってどうするというのでしょう。

    「ありがとう、オーベム」
     彼女は嬉しそうにお礼を言いました。しかし、相変わらず私を見ていないような、そんな気がしました。



     私はその夜、ボールから外に出されました。
     月は下弦だったか上弦だったか、とにかく半月で、それに薄い雲がいっぱいかかっていたのをよく覚えています。
     水銀灯を模した街灯が、明るく道を照らしており、そこかしこのビルやマンションからも光が漏れ出していて、星がよく見えない夜でした。
     私は地面から半端に浮きながら、目的地へと移動します。
     私が着いたのは、あるマンションの一室の近くでした。
     マンションといっても、彼女が住んでいるような古くて狭いものではなく、新しくて綺麗で一室が広いものでした。彼女が住む、三階建ての木造のアパートメントとは違い、鉄筋コンクリートで建て上げられた、階が二十はある大きなものです。
     月明かりでは細部が分かりませんが、外壁をレンガ模様の壁で設えてあり、ベランダなどは角形ではなく少しカーブを描いていて、なかなかお洒落に作りこんでいるようでした。部屋の窓はどれも大きく、どれも凝った装飾の木枠にはめ込んでありました。
     私は目的地周辺に着くと、テレポートを開始しました。
     慣れない場所に行くのですから、できるだけ目的地との距離を縮め、対象をはっきりイメージしなければなりません。
     私は部屋のすぐ外にいます。
     ここから中に入るのですが、出入口になりそうな所には鍵が掛かっていますから、テレポートで中に入らねばなりません。

     私は大きな窓に引かれた花模様のレースのカーテンの隙間から中を窺い、家具の位置を把握すると、それらにぶつからないようテレポートで中に飛びました。

     リビングのような場所に来た私は、耳を澄まし、人の気配がする方へと進みます。
     手入れの行き届いた布張りのソファ、重そうな黒いテーブル、使った形跡のあまりない対面キッチン。
     そういったものを横目に見て、私は寝室へと進みました。
     リビングにあったフロアスタンドライトを小さくしたような照明に、小さな橙の明かりが灯っています。
     ひとりには広すぎるベッドの上で、男が眠っています。
     その寝顔は端正で、整いすぎるほどに整っています。ただ、顎が細すぎると思いました。
     それ以外の部位は、厚みが辞典ほどもある羽毛布団に覆われて見えません。

     私は男の枕元に足をそっと乗せると、三色の電球が付いたような手を男の頭にかざしました。そして、目を瞑りました。

     彼女の願いはごく単純なものでした。
    「彼と恋仲になりたいの」
     ただ、ひとりでは叶えられない願いでした。



     彼女はうっとりとした面持ちで、レストランのテーブルについています。
     フロアに敷き詰められた絨毯は足音を吸い込めるほどに分厚くて、薄紫に唐草模様みたいなものが描かれています。
     私たちの他には、客の姿は数人しか見えません。しかしその誰もが、一目見て上等だと分かる靴を履き、男はスーツを、女は飾り立てられたドレスを着て、気取った手付きで料理を口に運んでいるのです。
     大きな窓の外に夜景が見えます。家やビルに細かな明かりが灯って地上の星空のようになっているのが、高い場所から一望できるのがよく分かりました。地上の星空とは言いましたが、妙に等間隔で寂しげに瞬いたりして、どうにも本物の星空のような情緒がありません。遥か遠くでは、奇っ怪な形のネオン看板が、繰り返し同じ言葉を吐き出して、チカチカ光っています。
     彼女の鞄に入ったモンスターボールの中からでも、そんな風に周りの様子がよく見えました。そして勿論、彼女の顔も。

    「今日は来てくれてありがとう」
     男の声がしました。
     私は男の方を見ますが、白いテーブルクロスに遮られて見えません。
     彼女は照れたように首を振ります。
     きっと相手はあの男性だと、私は思いました。
    「乾杯」
     チャン、と高い音がしました。彼女が動きました。右手にグラスを持って、中の液体に口付けするようにワインを飲んでいます。
     そして、少しの静寂。
    「何故だか、急に君に会いたくなってね」
     彼女の口元が緩みます。
     ただ緩んだ、というよりは、口からこぼれ出そうな邪悪なものを飲み込んで、笑いで誤魔化しているみたいに見えました。
    「オードブルでございます」
     黒と白の服のウェイターがやって来て、料理の説明を始めました。
     彼女は口を真一文字に結んで説明を聞いています。
     食器同士が当たるかちゃかちゃという音。
     テーブルに食器が当たる静かな音。
     料理の説明をするウェイターの声。
     その合間合間に、二人の声がします。

    「暫く会ってなかったね。何だか懐かしいよ」
    「まさかあんな所で再会するなんて思ってもみなかった」
    「修学旅行の時のこと、覚えてる? くじ引きで一緒の班になったんだっけ」

     思い出を引き出す男の台詞に、彼女は黙って頷きながらワインを口に運びます。
     男が「覚えてない?」と言うと、女は穏やかに笑って「覚えてないわ」と返します。
     そして、話している内に、「ああ、思い出した」と言うのです。


     ここまで至るのには、正直、骨が折れました。

     記憶というものはそう簡単に外からいじれるものではないのです。
     対象が動くと駄目。相手に気付かれても駄目。記憶を探る間、当然私は動けませんし、サイコパワーを脳みそをいじるのに使ってしまっていますから、襲われたら念力で迎撃することもままならないのです。
     だから、男が眠っている間にこっそりやるしかありませんでした。

     男の記憶の中をざっと把握し、私は想起回数の少ないものから手をつけました。
     あまり思い出さない記憶の方が、いじりやすいのです。
     私は男が子供の頃、小学校とか呼ばれているものに通っていた時期の記憶を選び出し、その記憶の景色の中に彼女を紛れ込ませました。
     本当は男と彼女が会ったのはごく最近になってからでしたが、男と彼女は小学校時代からの知り合いであるということにしました。
     男は彼女に会うと、昔を懐かしむようになりました。
     私はさらに記憶をいじりました。
     進学した後、たまたま道で会った幼い頃の初恋の相手が彼女だったことにしました。
     男はあの時、運命を感じたんだと彼女に言いました。
     ひと月ほど前、男が彼女のハンカチを拾って渡したことにしました。
     男は何も言いませんでしたが、私はその記憶の中で、男の手が女に触れたことを知っていました。

     そうやって、男の中に彼女の割合を増やしていきました。

     その道中、男は彼女と親しく話すようになりました。簡単なランチを共にするようになりました。
     そうやって、男が自分で自分の中の彼女の割合を増やしていけば、もう成功したも同然でした。

     彼女がお手洗いに立ちました。
     彼女が鞄を持ち上げた時、一瞬だけ彼の、彼女を穴が開くほど見つめている恍惚とした顔を見ました。
     必然の結果でした。

     私はこの時、鼻高々でした。見事、彼女と彼を恋仲にするという難題をやってのけたのですから。
     さり気なく彼の記憶の背景の中に彼女の姿を挿し込みました。
     ふとした瞬間、男の前に彼女が現れたのだと、そう仕組みました。
     男はそれに気付かず、彼女が運命の女性だと、そう思い込んだのです。私は誰も知らない定理を見つけたかのように、浮かれ、自惚れていました。

     彼女は用を足すと、鏡の前に立ってにっこり笑いました。それはまるで、笑顔の練習をしているようでした。


     彼女は度々、男と会うようになりました。
     会う度に不思議と彼女は美しくなっていきます。
     もう私の力は必要ありませんでした。
     それでも私は隔日毎に男のマンションを訪れては、細かに記憶をいじり続けました。
    「小学校のアルバムを見たんだけど、君の写真が見つからないんだよ」
     と言われれば、その夜、男の中の些末な矛盾を始末するために参上しました。
    「ねえオーベム。私、今日のディナーの時、知ったかぶりしてワインの名前を間違えちゃったのよ」
     と言われれば、男性の寝室に入り込んで彼女の粗相の記憶を消しました。
     男はますます彼女に夢中になりました。もう彼女しか見えてないと言っても、過言ではありませんでした。
     いつしか、私が手を下さずとも、男は自分で自分の記憶を書き換えていくようになりました。
     男は肥大した彼女の記憶に合わせるように、自分の真実を記憶した部分を塗り替えていったのです。

     そして、来たるべくしてその日はやって来ました。
     男は小さな箱を鞄から出すと、手で捧げ持つようにしてその蓋を開けます。
    「わぁ……」
     彼女が感嘆ともため息ともつかない声を上げます。
     ブリリアンカットを施された金剛石が、白金の環に抱かれて光を反射しています。
     彼女が熱っぽくそれを見つめ、その彼女を男が見つめていました。
    「結婚しよう」
     彼女は頷きました。当然の帰結でした。


     男と彼女は結婚し、晴れて夫婦となりました。
     大きな会場を貸し切り、夫婦の関係者も大勢呼び、豪華な料理が振舞われ、結婚式は盛大なもの、となるはずでした。
     出来なかったのです。
     前日に新郎が倒れ、高熱を出してうんうん唸っていたのですから。
     医者にはただの疲労だと言われましたが、私は頭の中をいじったせいではないかと、密かに焦っていました。
     しかし、診断では何も見つからなかったらしく、私はほっとしました。
     それともうひとつ、結婚式が出来なくて私はほっとしました。
     結婚式に新郎の昔馴染みがやって来て、思い出を話すこと、その想定をすっかり呆けて忘れていたのです。
     何はともあれ、ボロを出さずに済みました。
     結婚式は挙げられなくとも結婚は出来るらしく、彼女は男の病が治るとすぐ、広くて綺麗で新しい男のマンションに入り込みました。

     それからの生活は順調でした。
     男は仕事が忙しいらしく、四六時中一緒にいるわけにはいきませんでしたが、彼女に会う時は、それはそれは楽しそうにしていました。
     彼女の方も、望みのものを手に入れられて満足そうでした。男は金持ちで、ルックスもいい。服飾やインテリアのセンスもありましたし、美味しい食を提供するレストランを見つけて彼女と共に食事をするのを好みました。

     息子も生まれました。
     男に似て顎が細く、彼女と同じ臙脂色の髪をしていました。

     部屋の中には原色の玩具が溢れ、彼女と息子と私の三人で、共に遊んで過ごすことが多くなりました。
     男は帰って来ると真っ先に息子の元へ向かい、高い高いをするのが習慣になりました。豪華な食事より、子供と家でのんびりと食べるご飯の方をより好むようになりました。男は色々な絵本を買ってきたり、家にいる僅かな時間でその絵本の読み聞かせをしようとしたり、とにかく息子の気を引こうと必死でした。その努力が実って息子が父親に反応を返すと、父親はその反応を十倍にして喜びました。
     逆に彼女はつまらなさそうにしています。
     そうしてある時から、私と息子を残して外に出るようになりました。
     幼い子供を置いていくなんて、とは思いましたが、私が面倒を見ているので大丈夫でしょう。
     彼女は前よりも晴れやかな顔をしていることが多くなりました。楽しそうに息子をあやすようになりました。実は、ちょっと彼女はヒステリックになって始終イライラしていて、私は心配していたのです。でも、これで良かったと想いました。
     きっと、外で息抜きをしてきたのが良い方向に働いているのでしょう。
     私は息子と遊ぶのに夢中でした。
     彼女がめかしこんでいるのに気付きませんでした。


    □×××××


     私はツバキの隣にゴロリと横になり、白金の粉を撒いたような夜空を見上げます。
     毛布は被りません。そうする資格がありませんから。

     ツバキはぐっすりと眠っています。臙脂色の髪が、夜風に吹かれてそよいでいます。その寝顔を見て、私の胸はチクリと痛みました。

     いつも、思うのです。
     どこで間違ったのだろうと。
     間違いに気付いた時、記憶を書き換えてしまえば良かっただろうか、と。


    □×××××


     平穏に、日々は過ぎました。
     息子は学校に通い始めました。テストの度に良い点を取り、友達と一緒に野球ごっこに興じているようでした。
     夫は相変わらず仕事が忙しく、彼女は相変わらず、時々外出していました。
     そんなある日のことです。

     その日は平日の昼下がりで、息子は学校に行っていました。
     彼女はいつものように出て行き、私は部屋にひとり取り残されました。

     ふと、私は彼女がどこに行くのだろうかと思いました。
     私はそっと部屋の前にテレポートしました。
     そして、階段を降りて玄関に向かう彼女の後を、こっそりつけたのです。

     彼女は慣れた様子で町中を歩いて行きました。
     いつも行くデパートの方向とも、公園の方向とも違います。
     彼女は空き缶がいくつも転がった薄暗い通りを通って、繁華街の方向に進んでいきました。
     昼間から明かりの灯ったネオンの看板の下を通り、彼女は小汚い店の前にいる、だぶだぶのズボンを履いて小麦色の肌をした、筋肉をそれなりに付けているけれども頭の悪そうな目をした青年に話しかけます。
     青年もにこやかに彼女に挨拶すると、二人揃って店に入ってしまったのです。
     これは浮気だ、と私は思いました。
     彼女は息抜きする振りをして、浮気をしていたのです。
     いえ、私の早とちりかもしれません。彼女はただ、男友達と会っただけかもしれないじゃないですか。しかし、それにしては、化粧が凝っていた気がしました。
     二人は店から出てきません。私は早々に偵察を切り上げて帰りました。


     夜、夫が家に帰って来ると、彼女は笑顔でそれを迎えます。
     息子も嬉しそうです。
     夫の話に相槌を打ちながら聞き、彼女は料理を食卓に並べます。

     あんなに幸せな家族なのに、浮気などするはずがない。
     私はそう思いました。ただ、確かめたかったのです。

     私は彼女の自室に入り込み、彼女の寝顔を眺めました。
     彼女の体が三つ入りそうな広いベッドの中央に埋もれるようにして、彼女は眠っています。
     部屋にはドレッサーとクローゼットがあるだけで、他には何もありません。カーテンは開け放たれたままで、大きな窓の向こうに、町が出すスモッグで埃を被ったかのように灰色に汚れた星空が見えました。月のない夜でした。
     私はドレッサーの上にある化粧品がどれも、黒いケースに金文字で上等そうに設えてあるのを横目に見ながら、静かに彼女の近くまで移動しました。邪魔にならないよう、枕に足を乗せ、ベッドのヘッドボードに体をもたせかけました。そして、目を瞑りました。

     忘れていた感覚が蘇りました。
     細い管の中を通って、電飾のようにチカチカ光る彼女の記憶を探ります。
     彼女の記憶を見、しかし壊してしまわないように。
     注意深く記憶を調べながら、私は懐かしい気持ちになりました。
     私と会った時の記憶。男と食事に行った時の記憶。息子が生まれた時の記憶。どれも少しずつ色褪せていて、そのためにかえって懐かしさを喚起されます。
     私は夢中になって思い出のアルバムを捲るように記憶を見て回っていましたが、本来の目的も忘れられませんでした。

     私は最近の、色鮮やかな記憶を探りました。
     彼女は青年と食事をしています。夫とは食べないような、脂ぎってソースが無闇矢鱈とかけられた、不味そうな料理です。
     彼女は青年に笑いかけ、青年も彼女に笑いかけます。
     食事が終わり、彼女が支払いを済ませると、二人は店を出て繁華街のさらに奥地へと向かいます。

     そして。

     私は雷で打たれたようになって、思わず彼女の記憶から手を引きました。
     乱暴にサイコパワーを止めたので、その周辺の記憶に傷が入ったかもしれません。でも構いませんでした。
     私は体の芯が冷えたような感覚を味わいながら、彼女の頭にもう一度手をかざしました。
     そんなはずはない。
     彼女が浮気などするはずがない。
     完璧に近いぐらい素晴らしい夫がいて、利口で愛嬌のある息子がいて、何故。
     私は再び彼女の記憶を探りました。
     今度はもっと丹念に、昔まで遡って調べました。

     それに関係する記憶はとても鮮やかだったので、すぐに分かりました。
     やっぱり、浮気だったのです。
     さらに言えば、相手はあの青年ひとりではありませんでした。
     複数の相手を取っ換え引っ換え、そう、幼い赤ちゃんだった息子を放って外に出ていったあの日から、彼女の浮気は始まっていたのです。
     彼女の思い出は、家族と過ごした時間で彩られてはいませんでした。
     家族との生活をいかにも楽しそうに過ごしながら、いかに年下の男性を引っ掛け、深い関係まで持っていくかに重点が置かれていたのです。それが、彼女の生活の根幹といっても、差し支えありませんでした。それがずっと、ずっと続いていました。彼女の記憶の中で、輝いているのはそれでした。
     息子がテストで百点満点を取ってきても、野球で大活躍しても、その記憶には敵いませんでした。息子の成長は横に押しやられ、彼女の中には名も知らぬ卑しい目をした男たちの記憶ばかりが繁茂していました。息子が歩き出しても、つかまり立ちしても、寝返りを打っても、彼女の浮気相手には敵わないというのです。彼が「まんま」と言い、「ママ、パパ」と言い、「オーベム」と言うようになっても、彼女は。
     なぜ。
     どうして。
     息子は? 息子のことは?
     私は脳みその中を見るのを止めて、眠り続ける彼女の顔を見つめました。

     その顔は綺麗です。
     若々しくて、瑞々しくて、艶やかです。これも浮気をしていたからでしょうか。

     私には分かりませんでした。
     どうして彼女が浮気をするのか。
     あんなに完璧な夫を苦労して手に入れて。そう、私が、苦労して、手に入れて。

     ……。

     私は彼女の顔を、とっくり、じっくり、眺めました。
     彼女は昔から私を見ていませんでした。
     昔から今の夫となる人を見つめ、そして今は、息子を見つめていると思っていました。
     私は一度も彼女に見られたことがありませんが、それでも悲しいと思ったことはない、はずでした。


     私は彼女の顔を網膜に焼き付けました。きっと彼女のこんな顔を見るのも、最後でしょう。
     私は手をかざしました。


     その次の日は、凪のように穏やかに、静かに過ぎました。
     彼女は外出もせず、ただにこにこと笑って食事を作り、息子の話を聞き、帰りの遅い夫を夜更けまで待っていました。彼女はいつもより機嫌が良いくらいで、それがかえって不気味でした。
     あれはただの凪ではなく、嵐の前の静けさだったのでしょう。
     私はもう、引き金を引いてしまったのです。
     小さな蝶の羽ばたきのように、微かな引き金を。
     そしてそれは回りまわって風を狂わし、大嵐を呼んだのです。


     夫はクレジットカードの請求書を見て、度肝を抜かしました。
    「どうしてこんなに使ったんだ?」
     夫の問いにも聞く耳持たず、風の吹くまま、お気に召すままといった調子で高い笑い声を上げながら、彼女は般若のような表情で豪奢なドレスを次々と取り出しては、体に合わせて投げ捨てていきます。
     夫が腹に据えかねて彼女の肩を掴んで自分の方を向かせると、彼女は目を丸くして、「あなた誰?」と言いました。

     男が息を呑みました。
     睨みつけるように私を見ましたが、私は知らんぷりをしました。
     これでよかったのです。
     他に男がいるのならば、夫がいてもいなくても変わりないでしょうから。

    「ねえ、あなた誰なの?」
     いっそ天真爛漫と評してしまいたいような調子で、彼女はそう言い放ちます。しかし、その目は純真とは程遠く、濁り切っていて錆びた鉄のようです。色とりどりのドレスを投げながら、彼女は割れた悲鳴のような甲高い声で笑うのです。
     元夫は、がっくりと肩を落としました。


     それから、彼女は買い物に大半を費やすようになりました。
     高価な宝石、服、靴、バッグ、化粧品、使いもしないそれらをカード払いで買い、カードを差し止められると、俗に言うサラ金から金を借りて買い物するようになりました。
     当然、返済などできませんが、彼女はまるで借りた金をもらったもののように使うのです。
     毎日のように装飾品を抱えて家に戻る彼女の目元には大きな隈ができていました。彼女の目は常に敵を警戒しているかのように釣り上がり、ギラギラとして、買い物をしていなければ誰かに襲いかかってしまいそうな、そんな雰囲気でした。まるで、金を使い続けなければ生きていられないと、そう言いたげな目をしていました。
     広かったマンションから引越し、狭いアパートに一室に移ることになっても、彼女は事態を理解できていないようでした。
    「いい加減にしてくれ! 買い物をするなと、何度言ったら分かるんだ?」
     狭い四畳の二部屋きりの和室に、所狭しとバッグや、ストールや、装飾品の類が敷き詰められていて、過剰装飾の布切れに囲まれた男が声を荒げます。しかし、彼女は目を離せば再び買い物に繰り出します。彼女はきっと、買い物しなければ死んでしまうと思っているのです。男はその内、彼女に何も言わなくなりました。仕事に明け暮れて、帰って来ない日が多くなりました。しかし、離婚しようとはしませんでした。きっと、男の中の彼女の割合が多過ぎて、別れるという選択肢を選べなかったのでしょう。
     夫の代わりにサラ金の取立てが来ましたが、返済の意義を理解できない彼女に、サラ金の方が音を上げました。
     息子は黙って、学校と家の往復を繰り返して、専ら与えられた狭い自室に篭るようにしていました。母親の方を見ようともしませんでした。
     息子はよく、痣や擦り傷を作ってくるようになりました。その時は、遊んでいて転んだのだろうぐらいにしか考えていませんでした。しかし、今思えば、学校でも阻害されていたのかもしれません。彼は何も話しませんでした。ただ、眼光だけが鋭くなっていきました。
     周りに暴風が吹き荒れる中、私だけは台風の目にいるかのように、風が大地に牙を剥き、草木を抉り抜く様を静かに傍観していました。


     過度に成長した熱帯低気圧は、彼女や、夫や、息子の悲鳴を呑み込んだまま、狭苦しい1Kのアパートの部屋に居座り、ますます肥大し続けているようでした。
     彼女は日に何度も買い物に繰り出し、紙袋を腕いっぱいに吊り下げて帰っては、それをサラ金に持って行かれました。しかし、彼女はそれを気にする余裕もなく、次の買い物に繰り出すのです。
     たまに夫が帰って来ても「あなた誰?」と言って追い返そうとします。それでも夫が居座ろうとすると、半狂乱になって叩き出そうとしました。彼女の振り上げた拳が小さな窓に当たり、すぐ外の庭にガラスの破片が散逸しました。窓を直す金も、塞ぐダンボールもなかったので、家の中には延々と寒風が吹き荒ぶことになりました。
     かつての浮気相手に町中で話しかけられても、「あなた誰?」でした。誘われても、その意図がさっぱり分からないようでした。むしろ買い物の邪魔をされて、怒っているようでした。
     いつも行くブティックの店員は覚えているのに、息子の友達の母親となると、さっぱりでした。
     そして、息子が帰って来ても、「あなた誰?」

     ……今、なんて?

     彼女は焦点の合わない、惚けた目で息子を見ていました。
    「あなた誰?」
     くもりのない銀色の針のような台詞が、息子の心臓を刺し貫いていた、と思います。
     針で縫いとめられた息子は、青ざめた顔をして、そして、かつての母親から目を逸らすと、血が流れるのも構わず、針から身をちぎって、狭い自室へと走り込みました。


     どうしてでしょう。なぜでしょう。こんなはずじゃなかったのに。

     私は息子の部屋にテレポートすることもできず、ただその場に浮いていました。

     息子の記憶には触らなかったのに。

     あの日、私は彼女の中の、浮気相手の記憶、浮気相手としたこと、そういった記憶を全て消しました。男に関する記憶は全て消しました。浮気に繋がりそうな記憶は、何もかも全て消しました。必死に夫を手に入れようとした、あの日々の記憶も嫌だったので消しました。
     彼女は少しの間だけ、毒気が抜かれたように静かになりました。一日だけ。
     そして、夫と結婚したもうひとつの目的、金持ちになって欲しい物を我慢せずに暮らすという本能に従って生き始めました。
     少しおかしくなっていました。記憶を大量に消したから、当然かもしれません。

     けれども、息子の記憶には手を触れなかったはずです。


     なぜ。


     そこで私は、重大な間違いを犯していたことに気付きました。
     彼女の記憶の中で、夫はもう夫ではなかったのです。
     夫ではなくただの他人だと、彼女にはインプットされているのです。
     夫がいなければ、子供がいないと考えても不思議ではありません。
     私は失念していました。
     書き換えた記憶が、他の記憶を書き換えてしまうこともあるのだということを。
     彼女には今、金しかないのです。
     息子なんて、いなかったのです。


    □×××××


     言い訳をしますと、記憶を書き換えたり消したりするこの力は、万能ではないのです。
     まず、相手に気付かれてはいけないとは前にも言った通り。その他にも、色々制約があるのです。

     書き換えるのは、想起回数の少ない記憶でなければなりません。
     よく思い出す記憶というのは、鮮明で、強固で、それはそれは書き換えにくいものなのです。
     逆に言えば、書き換えられるということは、それが大した記憶ではなかったということなのです。

     そして、記憶というのは、海原の中の島にぽつんとある宝箱のようなもの。
     人は思い出す度、島に橋をかけて、宝箱を開けに行くのです。
     時折橋がどこにあるか忘れたり、島の位置を忘れたりして、記憶を思い出せなくなることはあります。
     私たちオーベムは、橋を消すことで、その記憶を脳から消し去るのです。
     しかし、宝箱そのものを消す力は、我々オーベムにもありません。
     消された記憶があっても、思い出そうとすれば、何かの切っ掛けで橋がかかり、思い出せることもあるのです。

     だから、というわけではありませんが、息子のことを易々と忘れてしまった彼女にも責任はあるのです。

     私の罪が消えるわけではありませんが。

     そういえば、久しく空を見ていなかった気がします。


    □×××××


     倒れた、と聞いた時、病院に飛んでいったのは私と息子だけでした。
     彼女はいつも通り、金を使うために使って遊び暮らしていました。
     息子は母親から目を背けて家を出ました。私がその彼に寄り添うようにして病院に向かうと、地下に案内されました。

     冷たい部屋に寝かされた息子の父親の顔には白い布が被せられていました。
     床から冷気が這い上がってくるのは、ここが地下だからという理由だけではないような気がしました。
     父親の顔を何気なく見ると、ちょうど目の辺りで白い布が落ち窪んでいて、私は見えない視線に射竦められたような気がしました。それは気のせいではなかったかもしれません。布の下、虚ろな眼窩、崩れ落ちた眼球で、彼が「俺の家族をこんなにした奴は誰だ」と、私を睨めつけている、そんな気がしました。それに耐えられなくて後ろを向いたら、次は背中に視線を感じるのです。背中に長い針を埋めていくような、そんな視線を感じるのです。諦めて遺体の方を向くと、それはさっきのような寒気のする威圧感を放つものではなく、両腕がうっ血したように赤紫色になった、痩せ細った男性の遺体になっていました。それが、まるで見慣れない男性の姿のように見えて、私は震撼しました。

     息子は布の隙間から僅かに見える父親と同じくらい白い顔になりながらも、医者の説明を、二本の足でしっかり立って聞いていました。
     過労だろう、と言われました。急に倒れて、そのまま死んでしまったそうです。
     息子は蒼白な顔で真っ白な布に覆われた父親の顔を見守っていました。その顔には、悲壮なぐらい強い決意のようなものが浮かんでいました。

     これは後になって偶然耳にしたことですが、男の脳みそは、特に海馬の部分が、干物みたいにからからになってひしゃげていたそうです。私が記憶をいじったから、そうなったのでしょうか。私が記憶をいじった人は、皆そうなるのでしょうか。

     病院を出ても、息子は泣きませんでした。
     家に帰っても、いつものようにブランド品に囲まれた母親をちらりと見ただけで、何も言いませんでした。何もしませんでした。
     いつものようにサラ金の取立てが来て、ドアを蹴っていきました。
     息子は何もない自室で、じっと正座をしていました。
     サラ金の連中に、殆ど取られてしまったのです。彼女が買った物も、昔貰った指輪も当然奪われ、息子の学用品までも持って行かれてしまいました。残っているのは私のモンスターボールぐらいでした。

     息子は泣きもせず、ただじっとしていました。

     私は母親の側にテレポートすると、彼女の頭に手をかざしました。
     本来なら眠っている相手にやるべきですが、今の状態の彼女なら、どうとでもなってしまうでしょう。

     私は彼女の頭の中に入ると、

     橋という橋を全部、

     壊しました。



     家の前に黄色い救急車が来て、男が数人がかりで彼女を押さえつけて連れて行きました。
     彼女の目は虚ろで、どこを見ているのかさっぱり分かりません。
     訳の分からない嬌声を上げては、何の前触れもなく体をくの字に折ってしきりに苦しがります。
     彼女の状態は、混沌そのものでした。
     生まれたばかりの赤ん坊が、世の中の秩序を何も知らぬまま、大人になったかのようでした。目に映る色のグラデーションやスペクトルの変化を物体の持つ記号として処理する術を知らぬまま、彼女は景色を見て、混沌の色の洪水に溺れるのです。記憶と共に言葉を奪われた彼女は、それを混沌だと言い表すこともできず、ただ喚くのです。
     連れて行け、と言って男のひとりが車のドアを閉めました。
     黄色い救急車は、黄色いランプを静かに回して発車しました。

     母親を見送った少年の元に、スーツを着た大人がやって来て、これからのことを話しました。
     彼は暫く、施設で過ごさねばならないそうです。
     その後、里親希望者がいれば、そこで暮らせるそうです。
     学校にも行けるそうです。学用品は施設で用意するそうです。

     大変だったね、と言ってスーツの人が少年を抱き締めました。
     彼は人形みたいに、泣きもせずに体を固くしてただつっ立っていました。
     目がビー玉みたいになっていました。


    □×××××


    「……どうしたの?」
     いつの間にか、ツバキが起きていました。
     私は何も言いません。何も言いたくないのです。
     そんな私の頭を、ツバキが身を起こして撫でてきます。

    「星が綺麗なんだ」
     そう言って、ツバキは空を見上げます。
     無邪気な目で、空を見上げるのです。


    □×××××


     私は一時的にモンスターボールに閉じ込められ、どこかの保管庫に入れられることになりました。
     この後、処分されるかもしれません。野生に返されるかもしれません。私にはどちらでも変わらないことでした。

     私はずっと考えていました。
     一体どこで間違えたのでしょうか。彼女の浮気に気付いた時。男性と結婚した時。それとも、はじめから何もかも間違っていたのでしょうか。
     間違えた場所から、順に記憶を書き換えたら、その過去のその地点からやり直すことが出来たでしょうか。
     彼女の記憶を巻き戻し、男性の記憶を正し、そうしていたら、こんなことにはならなかったでしょうか。
     夫より息子より、浮気と金が大切だった彼女は、やり直してもまた同じことをやるのではないでしょうか。
     私と出会わなければ、こんな過ちは起きなかったでしょうか。彼女は他のリグレーを捕まえて、同じ過ちを犯したでしょうか。

     もうどうにもならないのだ、と私は思いました。
     モンスターボールに閉じ込められ、私はもう少年に会うことは出来ないのです。

     彼の人生を滅茶苦茶にしてしまいました。
     どの過去からやり直しても、彼の人生は滅茶苦茶になるような気がします。
     私と彼女が出会ったことが間違いなら、彼が生まれたことも間違いなのでしょうか。だから生まれてからも母親に軽んじられたのでしょうか。
     私はそうは思いたくありません。

     彼を、生まれた時からずっと見てきました。利口で愛嬌のある少年です。顎が細くて臙脂色の髪で、見かけは不健康そうな感じだけれど、本当に元気で、やんちゃな少年なのです。彼が幸せになるところを見たかったのに。
     彼は私のせいで、家族を失ってしまって、けれどその家族はそもそもはじめから間違いで。


     どうすればよかったのでしょう。


     保管庫の扉が開きました。私の入ったモンスターボールが、迷いなく持ち上げられました。
     私はモンスターボール越しに私を持ち去った人物を見て、思わず声を上げました。

     臙脂色の髪、細い顎。
    「ツバキ!」
     少年は私の声などに耳を貸さず、町の外まで走り抜けたのです。
     そして、もう十分町から離れた所まで来ると、私をモンスターボールから出しました。保管庫にいて時間感覚がなくなっていましたが、夜になっていました。

     なぜでしょう。どうしてでしょうか。
     私は彼に酷いことをしたのに、なぜ、なぜ。

    「ラピメント」

     ツバキが呟きました。
     意味が分からず、私が止まっていると、彼は恥ずかしそうに笑ってこう言いました。

    「ラピメント。お前の新しい名前だよ。これから一緒にいよう。ずっと一緒に生きようよ」

     なぜ。

    「俺にはもう、お前しか家族がいないからさ」

     私は涙を堪えました。
     彼には言葉では尽くせないほど、取り返しの付かない、酷いことをしました。
     なのに、彼は家族だからと言って、私を手元に置いてくれるのです。私を見ていてくれるのです。私を、抱き締めてくれるのです。

     私は誓いました。ツバキのためなら何でもします。
     ツバキを守るため、幸せにするためなら、鬼にだってなりましょう。
     ツバキにとって私がたったひとりの家族であると同時に、ツバキは私にとって、家族であり、主人であり、守るべき唯一無二の存在なのです。


    「ラピメント、星が綺麗だ」


     ツバキ、私はあなたを守ります。必ず、この命に替えても。
     それが私に出来る、あなたへの罪滅ぼしなのです。

     刃のような二十三夜月が空に掛かっています。
     星はそれぞれに点のような光を放っています。
     まるで、橋を無くして手が届かなくなった浮島の宝箱のようだと、私は思いました。





    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【何してもいいのよ】
    昔のが出てきたので投げてみた。


      [No.1840] 悲劇 投稿者:荒塩飴@夏蜜柑(改名)   投稿日:2011/09/12(Mon) 14:15:28     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    この世界にも少しずつ夏が近づいてきているようだ。私は一匹のミュウツーとその香りを感じていた。
    「今日はいつもより暑いな」
    「・・・・・・」ミュウツーは頷く。その顔はいつもより微笑んでいるようだった。
    「風が心地いいな、そう思うだろ?」
    「・・・・・・」また黙ったまま頷くミュウツーの頭を撫で、微笑んで見せる。ミュウツーは嬉しそうに微笑み返す。
    いつまでもこの時が、やわらかい日射しに包まれていればいいと思った。



    だが私はその幸せを自らの手で壊してしまった。悲劇の歯車は少しずつ廻り始めた。



    ある日のこと、研究のためミュウツーを実験台として私の施設に送った。いつもと違う雰囲気にミュウツーは警戒の色を隠さなかった。
    「さあ、この中に入るんだ」一人の研究員が軽くミュウツーの背中を押す。するとミュウツーはその研究員に悲痛の一撃を喰らわせた。
    「あ、ぐぁぁぁぁぁ!?」研究員は突然の出来事に何が何だか分からなくなっているようだ。
    「は、早く入れろ!」隣で見ていた一人が急かす。私は背後からミュウツーに近寄り、ブラウン管の中に閉じ込める。ミュウツーは私の顔を見て、何かを訴えるようにブラウン管の壁に縋り付く。まるで、
    ---------なんで?なんでこんなことするの?助けて!助けてよ! とでも言っているかのように。
    私はとっさに目を伏せる。止めろ、そんな目で、そんな目で・・・
    しだいに遠ざかってゆくミュウツーを見届けるなど、出来ない。あのときの目が、私の頭の中でぐるぐると渦巻いていた。




    そして、翌日。恐ろしいことが起こった。歯車は完全に廻りきっていた。
    激しい爆発音の後に、研究員たちが一斉に飛び出してくる。
    「何事だ!」私は研究員に問いかける。
    「そ、それが・・・・・・」焦った様子で一人が説明する。昨日のミュウツーにメーターを取り付け、計測を行っていたところ、突如暴れだしたらしい。私は研究員を突き飛ばし、走った。何か言っていたが、私には聞こえなかった。


    「ミュウツー!」扉を蹴り破って叫ぶ。その目には変わり果てたミュウツーの姿があった。
    「ミュウツー、なにをしているんだ。ほら、早くこっちに来い」ミュウツーは動かない。
    「どうした?ほら・・・・・・」凄まじい爆裂音に私は耳を塞ぐ。拒絶するように破壊を繰り返す。
    「所長!もう無理です!早く逃げましょう!」研究員は私の腕を掴み、大声で叫ぶ。
    「ミュウツー・・・・・・」


    何がお前を変えた?



    そうだ、私だ。



    私が、裏切ったからだ。



    何度も謝れば、許してくれるだろうか?
    何度も笑えば、笑ってくれるだろうか?
    何度も祈れば、戻ってくれるだろうか?


    周りの声が五月蠅すぎて、私の声が聞こえていないのだろうか。お願いだ、少しだけでいい、静かにしてくれ。



    周りはもう手遅れだと叫ぶ。それでも私はお前に話しかける。少しだけでも・・・・・・









    --------------こんな私を、許してくれ・・・・・・。


      [No.1839] 砂糖水は煮詰まってカラメルソースになった! 投稿者:カラメルソース   投稿日:2011/09/12(Mon) 12:09:28     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >  さっちゃん!(と、勝手に呼ばせてもらっている
    >  お久しぶりです! カラメルソースへのクラスチェンジはまだですk(ry
    >  お帰りなさいですぅぅぅぅぅ(感涙
    >  またチャットで一緒にお話ししましょうぜい
    >  心待ちにしておりまする
    >  by「ふにょん」

    おお、感想ありがとうございますー。
    ふにょ…ふにさん!?
    ょんさんは何処へ…?それとも元から…?

    ぴーぷすぷす

    砂糖水はわけがわからなくなって煮詰まった!



    と、冗談はさておき。
    チャットはストコンの締め切り前とか結果発表の時くらいしか行けないかもですー。
    た、体力が…。




    >  かわいいは正義だよ
    >  よりかわいいものはより強い正義さ
    >  だけどね、正義がいいとは限らないんだ
    >  そういう部分もあって……いいと思うんだ……
     
    >  かわいいだけすべてじゃない



    かわいいは正義!

    でもでもあなたの一番でありたいの。
    かわいくなくっても愛してちょうだい!


    みたいなー。
    深く考えてないですwww


      [No.1838] 光ある方へ 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/09/12(Mon) 07:47:53     30clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     キランは膝の上でぎゅっと拳を握った。道場の扉の向こうから「ぎゃー」と悲鳴が聞こえてくる。次はキランの番だ。

     ライモンシティの警察署に配属されて早々、新人全員が警察署所有の青空道場に呼び出され、何事かと思ったら「とりあえず全員整列して待ってろ!」と先輩たちに言われた。仕方ないので並んで隣同士喋りながら待っていたら、順番に呼び出された。
     道場の扉の向こうから、「ぎゃー」とか「うわー」とかひっきりなしに悲鳴が上がる。悲鳴がやんでしばらくしたと思ったら先輩が顔を出して「次」だ。

     一体扉の向こうで何が行われているのだろう。先に出てきた人に聞いても、笑ってはぐらかされたり「お楽しみ」と言われたりとにかく要領を得ない。
     なんだろうと思っている間にもうキランの番だ。


     大丈夫だ、と自分に言い聞かせる。腰のベルトに付けた四つのボールに順に触れた。イッシュを回る旅で苦楽を共にしてきた大事なポケモンたちだ。
     道場の冷たい扉を開ける。道場の高い壁の上には、切り取ったような曇り空があった。床は土で固めた地面が剥き出しになっている。それから、広い。ライモンドームが楽々入りそうだ。

    「カシワギ・キランだな」

     よく通る声でキランの名を呼んだのは、警察署の先輩方の一人だ。彼以外にも五人ほど、キランがいる方とは逆の端に控えていた。皆キランより少し年上ぐらいの人たちばかりである。
     キランの名を呼んだ先輩が、彼以外のメンバーを見回す。この中では最年長の彼が仕切っているらしい。「誰が相手する? 順番的にはソルトか」
    「ソルトはいませーん。回復しに行ったっきり戻ってません」
     一人がおどけた口調でそう言う。最年長の男が顔をしかめる。
    「帰ってくんの遅くないか」
    「オレ見に行きまーす」
     おどけた口調の男が手を上げて、キランが入ったのとは別の出口から去っていく。
    「じゃあ」
     最年長の男が言った。
    「そうなると二人飛ばして」

    「私だ」

     道場に静かな声が響いた。響いた、というのはおかしいかもしれない。ごく自然に、伝わった、というべきか。

     声の主――黒いコートを纏い、真っ黒な髪に一点鮮やかな紅のメッシュを入れた女性が、つかつかとキランの方に歩いてきた。
     そして、道場の真ん中で立ち止まり、土の上に落ちていた旗を拾った。三十センチほどの棒の先に警察のマークを、紺地に白で染め抜いた旗が付いている。やや手抜きな造りの旗、である。


    「ルールは簡単、先輩の持ってる旗を取れ! 新人はポケモンが全て“ひん死”になったら負け! ただし」
     さっきの男が声を張り上げる。道場の厚い壁で跳ね返ってワンワンと響いた。

    「双方何をやっても構わない! ……怪我には気を付けて。名乗って!」

    「か、カシワギ・キラン! よろしくお願いします!」
    「カミサカ・レンリだ」
     言うなり、彼女――レンリは旗を上空に投げ上げた。間髪を入れず、彼女は四つのボールを全て開放する。
    「はじめ!」
     遅れて仕切り役の先輩の声が続く。


     道場の土の床に、四匹のポケモンが降り立った。
     ドレディア、コジョンド、チラチーノ、ゾロアーク……どれも進化形の、強そうなポケモンばかりである。遅れて落ちてきた旗をレンリは右手で受け止め、絡まった紺の布を解くように軽く振った。
     キランは少々気後れしながらも、自分のポケモンを全てバトル場に出した。一応、イッシュ地方のジムバッジは全て手に入れている。小さな大会だが優勝したこともある。その矜持にかけて、おめおめと負ける気はない。

    「ウィリデ、“追い風”!」
     キランのパートナー、いたずら者の綿羊が風を巻き起こす。常に味方を後押しするように吹く風。これでキランの側の機動性は大幅に高まる。

    「コルヌーはドレディアに“ハードローラー”、ノクティスはコジョンドに“エアスラッシュ”、カリュブスはチラチーノに“ドリルライナー”!」
     指示を受けたポケモンたちが走り出す。ドリルライナー以外は相手の弱点を突いた技だ。まともに受ければ先輩のポケモンと言えどただでは済むまい。
     対するレンリは慌てず騒がず、左手の人差し指と親指で輪を作り、口の中に入れた。

     ぴゅいーっ、と大きな音がバトル場に響いた。

     敵陣に向かっていた三匹の内、ココロモリが指笛に驚いて前進をやめ、行き場に迷って垂直上昇に転じた。残った二匹、ペンドラーとドリュウズは指示通りに相手のポケモンに突っ込んでいく。

     しかし。

     ドレディアに向かっていたペンドラーの巨体がたたらを踏んだ。ガシガシと音を立てて大きな岩がペンドラーの目の前に突き刺さる。岩の発生源、小さなチラチーノが不敵に笑う。
     チラチーノに向かっていったはずのドリュウズはコジョンドの長い体毛で胴を薙ぎ払われ、頭の鎧と爪を閉じ合わせた状態のまま道場の壁際まで転がっていった。

    「走れ」

     その端的な指示が下ると同時に、レンリのポケモンたちは四方に散った。
     コジョンドが鞭のように体をしならせ、道場の壁にぶつかったドリュウズの方向へ飛び出す。チラチーノはバトル場のど真ん中へ躍り出た。
    「コルヌー、メガ……」
     キランの指示を叩き潰す勢いで、中央のチラチーノが大声を発した。鼓膜を破りそうな音波に、思わずキランは耳を塞いだ。その隙にコジョンドはドリュウズに飛び膝蹴りをかましていた。

     キランの目の前を横切って、ドリュウズがふっ飛んでいく。頭の鎧と爪を閉じ合わせて、ちょうどラグビーボールのような形状になったドリュウズは、途中にいたペンドラーも巻き込んで道場の逆の端まで飛んでいった。
     ドリュウズがラグビーボール状態を解いた、と同時に脱力してその場に崩折れる。
    「新人のドリュウズ、戦闘不能だ!」
     外野が愉快そうに声を上げる。キランは唇を噛みながらドリュウズをボールに戻そうとし

    「ぷめっ!?」

     キランの死角から悲鳴が上がった。
     見ると、エルフーンがいつの間にか回り込んでいたゾロアークに火炎放射を食らっている。
    「カリュブス、ウィリデも一旦戻って!」
     二匹にボールを投げて回収する。手元に戻ってきたボールをベルトのいつもの位置にはめ込みながら、キランはバトル場を見回す。

     こちらは三匹、相手は四匹で全員が無傷だ。とりあえずはココロモリとペンドラーで凌いで、相手の先輩、レンリが持っている旗を取る方法を考えなければならない。

     と。
    「スー、ユン、休んでおけ」
     相手の女性が声を上げる。スー、ユンというのはポケモンの名前なのだろう。呼ばれたコジョンドとゾロアークがその場に座り込んだ。
    「ちょっと、どういうことですか」
    「ハンデだ」
     少し間があって、
    「一太刀も浴びせられないようじゃ、目に余る。なんならチラチーノも休ませておくが」

     不満そうなキランの顔を見て、レンリが平然と答える。バッジを八つ集め、小さな大会で優勝したキランのプライドがガラガラと崩れていった。

     キランの隣ではゾロアークがお座りどころか完全に横になっている。コジョンドの方はまだ座禅を組んでいるような体勢だというのに。しかもキランに背を向けて、片手で頭を支え、もう片方の手はひらひら振っているという始末。挑発か。これが本場悪タイプの挑発か。キランは挑発に乗った。

    「余裕かまして、後で吠え面かいても知りませんよ」
    「そういうのはせめて、相手の一匹ぐらい倒してから言うもんだ」
    「言いましたね?」
     キランは指でターゲットを示して、ペンドラーに“ハードローラー”の指示を出した。一秒後にはゾロアークがペンドラーの巨体の下敷きになっていた。

    「なんでもあり、でしたよね」
    「そうだな」
     馬鹿だろスー、と呟きながらレンリがゾロアークをボールに戻す。
    「これで三対三ですよ」
    「どうだか」

     棒立ちのままの相手のポケモンたちに、キランは攻撃を再開した。追い風の補助は消えたが、再びエルフーンを呼び出す気はまだなかった。
     ココロモリが上空から空気の刃を撃つ。ペンドラーには“高速移動”を指示する。
     そして、ボールの一つをいつでも使えるように、右手で構える。

     チラチーノが鬱陶しそうにキランを睨んで地面に潜った。
    「ノクティス、そのまま続けて“エアスラッシュ”!」
    「ナン」
     レンリが呟いた音に反応して、彼女の後ろに控えていたドレディアが太い光線を撃ち出す。ソーラービームだ。

     白い光の束がココロモリを捉えた。ソーラービームの直撃を受けたココロモリは地面に落ちそうになる。が、なんとか空中に踏みとどまった。
    「蝶の舞の後なら大体やられちまうんだが。ココロモリの特性は天然かな」
     外野の解説が入る。レンリが小さく舌打ちをした。ドレディアは蝶の舞を使って自分の能力を上げていたらしい。ならば。

    「ノクティス、“自己暗示”!」
     ココロモリが目を閉じて瞑想の姿勢に入る。そして、力がみなぎってきたところで目を開く。
    「ドレディアに“エアスラッシュ”!」
     相手のドレディアも負けじと花びらの舞の体勢に入る。そして、踊りながらリズムよく風の刃をかわした。攻撃のために高度を下げていたココロモリが慌てて上昇した。こちらの攻撃が届く範囲はあちらからの攻撃も届く範囲だ。蝙蝠の足元で花びらが散った。
     標的を失った花びらがペンドラーの方に飛ぶ。慌ててキランは指示を出した。

    「コルヌー走って! ドレディアから逃げて!」
     深紅の光沢のある花びらを撒き散らし、自身も少し光りながら、ドレディアがバトル場の真ん中に文字通り躍り出る。軽やかなステップでペンドラーに迫るが、ペンドラーの方も素早くなっているから、舞いながら動くドレディアに距離を詰められることはない。しかし、ドレディアの周囲に大ぶりな花弁が舞っているため、こっちから近付くこともできない。


     キランは次の手を巡らしながら、右手のボールをギュッと握りしめた。策はある。だが突破口をどう作る?

     道場の中心を見る。
     ドレディアが舞いながら、手のひらほどもある深紅の花びらを撒く。花びらを撒く度、ドレディアの纏う光が強まっている。ペンドラーは距離をとってダメージを抑えているが、消耗が酷い。
     キランはじりじりとバトル場の中心に近付いた。そっと右手のボールの中身に指示を出す。
     花びらの舞の範囲のギリギリまで近寄って、キランはポケモンたちの様子を窺った。

     舞の終曲。ドレディアはこれが最後の見せ場とばかりに花びらを撒いた。と同時に、
    「全力でドレディアに攻撃して!」
     これ以上ないほどの大声で叫びながら、キランはボールの開閉スイッチを押し込んで出来るだけ遠くへ届くように投げた。レンリの近くに。

     ペンドラーが頭の角を振りかぶり、なおも光り続けるドレディアに走り寄って振り下ろす。ココロモリが翼の先に風の刃を作り出した。
    「ナン」
     レンリが静かに、だが不思議と伝わる声で呟いた。その声が伝わると同時に、ドレディアが眩しい光条を発した。

     太い光の柱が立った。光の柱は今まさにドレディアへメガホーンを食らわそうとしていたペンドラーの上半身を包み、そのまま上へ昇ってココロモリも直撃した。光線の直撃を食らいながらも、ココロモリは最後の力でエアスラッシュを放つ。

     その時にはもう、エルフーンが旗の先端を掴んでいた。キランがボールに入っていたエルフーンに出した指示は“泥棒”。エルフーンは持ち前の身軽さで旗を奪おうとしたが、力が足りずに一瞬レンリと引っ張り合いになった。
    「ベー」
     その一瞬の間にレンリは何かを呟く。紺の旗が翻った。と、そこにないはずの黄色が顕になる。

     彼女の五匹目、小さな電気蜘蛛。

     バチュルがビームを撃った。エルフーンが「ぷめっ」と悲鳴を上げて弾き飛ばされる。それでもエルフーンは旗を手放さなかった。
     手放したのは、レンリの方。
    「あっ」
     外野とキラン、両方から声が上がる。

     旗を持っているのはキランのエルフーン。
     ただし、エルフーンもペンドラーもそれからココロモリも、全員地面に伸びている。

    「これは……」
    「引き分けだな」
     最年長の男が言った。レンリはキランに黙礼すると、バチュル以外のポケモンたちをボールに戻して、道場を出ていった。旗を持っていた方の腕を押さえながら。



    「やるなあ、新人」
     道場に残った先輩たちの賛辞をすり抜けて、キランはレンリを追って道場を飛び出した。彼女にはすぐ追いついた。

    「あの、先輩」
     さっきの今で何と呼べばいいのか分からず、無難な呼び方にする。レンリが振り返った。
    「それ、すいませんでした」
     レンリが腕を押さえていた手を放す。その下から血がじわりとにじみ出てきた。

     最後にココロモリが放ったエアスラッシュが外れて、レンリが立っていた地面の近くに溝を作っていた。溝の延長線上に彼女が立っていた。
     バトル中の事故。だが、ココロモリのトレーナーであるキランの過失だと思った。

    「これか。構わない」
     レンリが右腕の傷を横目で見ながら言った。それから左手の袖で右頬を拭う。
    「ルール無用のバトルなんだ。怪我をした方が不注意だ」
    「じゃなくて」
     キランは彼女の顔を見上げる。レンリの方が背が高い。言い辛い。

    「顔に傷つけたから。すいません」
     レンリが左手を下ろした。右目の下に赤い縦線が付いていた。擦った所為でそこから赤が広がっている。

    「さっきも言った。構わない」
    「でも、女性の顔に傷付けるのは」
    「こういう職だ。傷くらい当たり前だ」
    「僕が気にしますよ」

     途端、視界がグルリと回った。
     そして背中から地面に落とされる。

     突然のことに呆然としているキランの頭上から声がした。
    「そういう台詞は私より強くなってから言え」
     そして、足早に去る靴音がした。
     キランは何故投げられたのか考えていたが、結局答えは出なかった。



     次の日、キランは初出勤となる職場の部屋のドアを開けた。黒いコート、黒髪に入れた紅いメッシュ。東向きの窓から入る光を背に立っていたのは、昨日バトルをしたその人だった。そして彼女が、キランの上司になるはずの人。

    「よろしく」
     そう言って右手が差し出された。間近で見えた顔には絆創膏が貼ってあった。
    「よろしくお願いします」
     キランは戸惑いながらも差し出された手を握り返した。乱暴に手を引っ張られる。そしてそのまま部屋の外に出た。

    「あの、どこ行くんですか?」
     足早に進む彼女に合わせながら、問いかける。レンリはキランをちらりと振り返って「道場だ」と答えた。
    「昨日も言ったが、お前の弱さは目に余る。こんなのが部下では、命がいくつあっても足りん」
    「こんなのって」
    「なにか文句はあるか? キラン」
    「いいえ。別にないですよ、レンリさん」
     手が離された。レンリは構わずズンズンと歩き続けている。

     キランはその背を慌てて追いながら、強くなって彼女に追い付けたら、昨日の台詞をもう一度言ってもいいのだろうかと、ふとそんなことを考えた。




     ◎おまけ ソルトさんがいなかった訳

    「ソルトー、お前帰り遅いから順番飛ばされたよ」
    「まじで? まあ次頑張るわ」
     気の抜けた会話を繰り広げるこの二人、ライモンシティ警察の現役警官である。

     何やってたのソルト、と問われて老け顔のソルト青年は回復装置と道場の行き帰りで発声したアクシデントを話す。
    「飲み物買いに店に寄ったんだけど、おばあちゃんが買い物しすぎて動けなくなっててさー」
    「それ自分が買った分で?」
    「そうだけど、ほっとくわけにもいかないじゃん? おばあちゃん家まで送ってた」
     真面目ー、とひと言感想を述べる相方に、ソルト青年はそういえばと話題を変える。

    「俺たち抜けたら今誰が相手してんの?」
    「カミサカ」
     聞いたはいいが気の利いた返事を思い付かなかったらしく、ソルト青年は「はえーん」と世にも適当な返事をする。
    「そういやさ」と今度は相方が話題を変えた。
    「なになに」
    「俺とソルト抜けたら、ちょうど未来の上司と部下対決になるんだよね。狙ってた?」
    「狙っておばあちゃんの買い物に行き当たらんわー」
     だよなー、と二人とも同意に至る。
     そこからは勝手勝手に話し出す。

    「カミサカかー。当たった人自信喪失しねーかなあ」
    「手加減するけど容赦しないよね」
    「あー、言えてる言えてる。彼女のドレディアとかマジ鬼畜だもん」
    「どんなだっけ」
     問われた方は寸の間考えてから、話を再開する。
    「あいつねえ、蝶の舞とか剣の舞とか踊りながらソーラービームチャージしてんの。踊り終わったらすぐ撃てる状態」
    「ありえん」
    「でも実際そーよ」
    「恐い人のとこには恐いポケモンが集まるねえ」
    「類友類友」
    「くわばらくわばら」

     はっと二人は目の前を見た。いつの間にやら道場まで戻った二人の目の前にはいつの間にやら話題にしていた張本人が。

    「失礼」と言って張本人は去っていった。どちらか片方がひゅう、と口笛を吹く。
    「怪我してたねえ」
    「怪我してた」
    「どんだけ激しいバトルしたんだろ」
    「っていうか、カミサカが回復に行くの珍しーね」
     二人でうんうん頷きながら道場に戻る。
    「部下ちゃんは未来の伝説かなー」
    「あ、部下くん一応男だよ」
    「まじで? 字面じゃ分からんかった。でもだったら面白いよね」
    「何が」
     ソルト青年が親指で今来た道を示す。意味ありげに。

    「俺は脈ありに賭けるわ」
    「両方同じのに賭けてどうすんの」
     二人は笑いながら道場の扉を押す。
    「遅れてきたソルト! 次お前やれ!」と囃す声がする。
    「んじゃ、一丁俺たち警察の闘い方を見せてやりますか」
     ソルト青年は旗を拾うと、それを投げ、それから手持ちのボールも全て空に投げ上げた。

     曇りがちの青天井が急に晴れてきた。きっと明日もライモンシティは晴れだろう。




    <<あとがき>>
    キランとレンリの変則ルール無用フルバトルを書こうとしました。
    ご覧のとおりのハンデでした。

    【描いてもいいのよ】


      [No.1837] 中休み 投稿者:スウ   投稿日:2011/09/12(Mon) 02:01:56     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5







    トキワの森にビードル一匹。



    うにょ、うにょ、うにょ。



    葉隠れの、囁く間に



    知らず知らずの、中休み。










    後ろをちょっと振り返ってみると



    ずいぶん遠くまでやって来たもんだけど。



    ちっとも寂しくなんかなかったり。




























    ふう。



































    あと、もうすこし。































    今日はポッポやらピジョンやらがどこにもいない










































    いい日。





















    .


      [No.1836] お久しぶりですぅうう 投稿者:ふに   投稿日:2011/09/09(Fri) 00:01:29     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    > お久しぶりですこんにちは。
     さっちゃん!(と、勝手に呼ばせてもらっている
     お久しぶりです! カラメルソースへのクラスチェンジはまだですk(ry
     お帰りなさいですぅぅぅぅぅ(感涙
     またチャットで一緒にお話ししましょうぜい
     心待ちにしておりまする
     by「ふにょん」



    >  私より可愛いポケモンを見つけても私を捨てるんでしょう?
     かわいいは正義だよ
     よりかわいいものはより強い正義さ
     だけどね、正義がいいとは限らないんだ
     そういう部分もあって……いいと思うんだ……


     
     かわいいだけすべてじゃない


     言ってみたかっただけ。
     ふにはもちろんかわいいものがすべてでs(殴


      [No.1835] 挨拶 投稿者:門森 輝   投稿日:2011/09/07(Wed) 18:43:42     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     やぁ、はじめまして。僕はポチエナ。
     僕達、今日からしばらくこの辺で過ごすことになったんだ。けれど、まだどういう所か分からなくてね……え? あぁ、僕達っていうのは僕のいる群れのことだよ。
     だから、よかったらいろいろ教えてくれるかな? ほら、どの辺に虫がいるのかとか、お化けが出るのかとかさ……僕、そういうの怖いから……。
     まぁ、しばらくしたら僕達はまた別の所へ行くことになるけど、それまでよろしく! 




     おぅ、久しぶりだな。覚えてるか? あぁ、おまえと会ったときはまだポチエナだったな。
     またしばらくこの辺で過ごすことになったんだが、案内頼めるか? いやー、だいぶ前のことだから忘れててな。
     あー、そうだ、ついでにバトルしねぇ? 俺、強くなったぜ? 今じゃ群れのリーダーだし。虫とか怖くてリーダー出来んのかって? 昔の話じゃねぇか。今は寧ろお化けは得意だぜ? いや、食えねーから狩ったりはしねーけど。
     さて、先にバトルからやっちまうか。場所はここでいいよな? じゃ、始めるか! 


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


     皆様初めまして! 門森 輝と申します。8月9日がエナの日だったので書こうとしたのですが、間に合わなかったのでグラエナの日に投稿することにしました。
     びびりエナとじしんかじょエナ。ケムッソとか出して実際にびびらせたかったけど私には表現できませんでした。試してみたら逃げてしまって話が続かなくなったんですもの。
     あと、バトルの件とか急ですね。タイトルあってませんね。短いですね。反省点いっぱいですね。改良案を思いつき次第修正していくかも。
     ちなみに話し相手はご自由に想像してください。虫やゴーストや悪だと辻褄合わないとか気にしない。
     とにかく、皆様これからよろしくお願いいたします! これが最後の作品になるかもしれませんが。


    【人生初執筆なのよ】
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【ご自由にどうぞなのよ】


      [No.1834] 【よろず版サプライズ!】 なんちゃって新訳:ぷるりる・まーめいどっ!? 投稿者:巳佑   投稿日:2011/09/07(Wed) 06:56:50     73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    【前置き】

     この作品は120kb(約60000字)を超えていて、長いので、ゆっくりとどうぞです。
     章(みたいなもの)が【1】【2】……といった感じでありますので、もし読み疲れたら栞がわりなどの活用をオススメします。


    【1】 
     
     月明かり照らされている青い蒼い海。
     その深さは百メートル、千メートル……やがて八千メートルを越して、そこは月明かりも届かぬ暗い暗い海の中。
     ジーランスやアバゴーラが静かに泳いでいる中、一つの小さな歌がそこに響いています。
     まるで、その暗い海の中に明かりを灯すかのような優しい歌声でした。
     ふわり、ふわりと柔らかく漂う音色――しかし、その音色は、はたと止まってしまいます。
     一体どうしたのでしょうか? 
    「あーー! 恋したいですわ!!」
     優しい歌声から一変、色欲の叫びが暗い世界の中に吸い込まれていきました。
    「あーー! もう、こんな暗いところじゃ、ロマンチックも何も欠片もありませんし……あぁ、どうしたら、素敵な恋が出来るのでしょうか……あぁ……」
     優しい声から一点、凛とした女性を思わせる声がブツブツと愚痴を奏でていきます。
     それは一言で済む呟きではなくて、三十分、一時間を越えたものとなっていきました。
    「あぁ……アオ君とか、モモちゃんとか、他の皆も全員、他のポケモンとイチャコラして、ここにはもう戻ってきませんですし……いいかげん、ジーランスのじじいとアバゴーラおばちゃんのイチャコラにもイライラしてきましたし!」
     その呟きはいわば欲求不満の気泡みたいなもので、声の主が呟く度に、その気泡は徐々に膨らんでいき、その膨らみはやがて臨界点を突破して――。
    「あーー! もう我慢ならないですわ! こうなったら、行動あるだけですわよね! うん! この際、今まで何をしていたのかという野暮なツッコミはナシでいきますわ!」
     そうやる気を爆発させた、声の主は、とりあえず上に泳いでいくことにしました。
     すいすいと泳いでいき、徐々に海面に向かって浮上していきます。
     泳いでいく途中ではネオラントやママンボウの姿が見えたり、テッポウオの群れやハリーセンの群れに圧倒されたり、マンタインとテッポウオがイチャコラしたり、ラブカスのカップルがイチャコラしていたり――。
    「あーー! もう! どうして、わたくしの周りにはこんなにリア充ばかりですの!?」
     一体、この声の主がどういった経緯でリア充という言葉を知ったのかは不明なのですが、モヤモヤしながらも、ようやく海面の近くまで浮かんできました。  
     最初は海底という漆黒から、深い群青色、そして、徐々に鮮やかな蒼、そして爽やかな青へと海のグラーデーションを通っていくと、海に差し込んできている月光の淡い光が声の主を包むようになりました。
     桃色の体に長くて平べったい薄いベール腕みたいなものが二本、そして、細い長い体は途中で二本に分かれていて足みたいな感じであった――プルリルの姿がようやく映って見えてきました。
     その赤い丸模様の中に秘められている空色の瞳は通常のプルリルよりも大きめで、よりスカイブルーに染まっており、まるで宝石をはめ込んでいるようであります。
     そんな可愛らしいプルリルがまさか彼氏持ちでないとは……いやはや、世の中、分からないものですね。
    「とりあえず……ここまで浮かんできたのはいいけれど、これからいかがいたしましょうかしら……?」
     そう思いながら、海面から約五、六メートルの深いところで宛てもなく、プルリルが泳いでいたときのことでした。
     何やら、近くでザブンという入水した大きな音が鳴り響き、小さな水泡が海中に舞いました。
     プルリルは顔を見上げ、その入水したと思われる音の方へと視線を向けますと――。
     
     なんと、それは一人の人間ではありませんか。

     プルリルもすぐにそれは人間だということに気がつきました。
     ちなみに人間のことや、その容姿は物知りだったジーランス・アバゴーラ夫妻から聞いたことがありますから分かりました。
     しかし、初めて人間が目に映ったプルリルは興奮しているようですが、その人間の方はどうやら様子がおかしいようです。
    「…………って、ちょっと!? あの子、気を失っていません!?」
     興奮したプルリルもようやくその人間の異変に気が付きますと、考えるよりも先にその人間のところへと急ぎ泳ぎました。
     その人間を優しく腕に抱き寄せると、すぐに海面へと頭を出します。
     近くにはどうやら一隻の木製の小船があり、どうやら、何かが原因でその人間は海の中へとダイブしてしまったようです。
     プルリルはとりあえず、その人間を小船に乗せますと、月明かりに照らされたその人間の容姿を眺めてみました。
     身長は百七十後半で、服装はなにやら漆黒の長ズボンに上着は生地が厚い漆黒の長袖で、煌びやかな黄金のボタンや、金銀らしい粒がその服には散らばっています。
     とにかく、豪壮な服装をし殿方でした。濡れている髪は肩までかかっており、瞳の色は残念ながら閉じている為、分かりませんでした。 
     とりあえず……その殿方の膨らんでいるお腹をプルリルが押して水を吐き出させてあげると、殿方は少し落ち着いた感じで息をし始めました……どうやら命には別状なさそうでありました。

     月明かりに照らされたその顔をどれだけ覗いていたことでしょう。
     長い時が流れていたような気がします。
     プルリルの桃色の頬は薄紅色が乗っていました。
    「いけませんわ……なぜかドキドキしますわね……あうう……」
     そんな困ったかのような顔を浮かべながら、プルリルは暫く、殿方の顔を覗いていましたが……いつまでもこうしていても仕方ないと、やがて判断しますと、プルリルは一旦、海の中に戻りました。
     ひとまず近くにいたコイキングに話かけ、岸はどっちに向かえばあるのかを訊いてみることにしました。
    「それで……岸の方に行きたいのですが」
    「お譲ちゃん可愛ええなぁ」
    「あの、岸がある方角は」
    「いやぁ……おじちゃんといいことでもしないか――」
     プルリルがイライラを乗せたナイトヘッドをコイキングに食らわしますと、ようやく(たちの悪い)コイキングから情報を得ることが出来ました。
     それから前方に押すような形でプルリルは小船を海から動かしていきます。
     雲一つもない満点な星空の下、黙々とプルリルは小船を動かしていく中、彼女の脳裏に浮かんでいるのは先程助けた殿方のことでした。
     あのスラっとした顔つきに、ガッシリとしていそうな体格……思い出す度にプルリルの鼓動は一層、早くなっていました。
     そういえば、いい香りもしたような気が……と更にプルリルの頬が赤く染まっていきました。
     この気持ちは何でしょうと、プルリルは自分の心に問いてみましたが、比較的鈍感ではないこのプルリルにとってはソレはただ答えを確認する為のものでありました。
     本当はこのまま自分の住処に連れて帰りたい気持ちで山々だったプルリルなのですが、自分が本来住んでいる世界は約八千メートルの深い深い深海。
    『ダイビング』という技の力を借りれば、その八千メートル時点でかかる圧力などから殿方を守ることは可能でした。
     しかし、その技も永続的に使えるというわけではありません……力を失ったと同時に殿方は一瞬でペシャンコになってしまいます。
     それに……その暗い世界には殿方は似合いそうになかったという気持ちも少なからずありました……この明るい外の世界で殿方と共にいたい――。
     
    「あ、岸に着きましたわ」

     一目惚れから始まった甘いモモンの実のような妄想はあっという間に終わりを向かえ、気が付けば、プルリルは岸に辿り着いていました。
     浜では何匹かのクラブが夜の散歩でしょうか、カニカニ横歩きをしています。
     とりあえず、プルリルは小船を浜の上にあげ、それから、殿方を持ち上げると、適度な岩場に寄りかかるように置きました。
     ちょっとばかり名残惜しいのですが、このまま一緒にいると、どうにかなってしまいそうな自分に恐れたプルリルは殿方を置いてその場を離れました。
     もう一回だけ――そう思いながら殿方の方に振り返って、困ったような微笑みを向けると、海の中へと戻っていきました。
     

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    【2】

     はぁ……という溜め息の気泡が浮かんでは消えていきます。
     忘れられない殿方の姿、まさか一目惚れから始まった恋心がここまで自分を惑わせているとは、プルリルも想定外でした。
     というのも、プルリルの中での恋愛観はお互い好きになって楽しく過ごして、悩みごとなんかなくなるほど、幸せになれるだろうなぁと、そんな風に考えていたのです。
     しかし、いざ恋心が芽生えると、思いもしない苦しみや戸惑いなどが自分を襲ってきて、プルリルは思わず舌打ちしました。
     周りではバスラオ達が暴走族よろしく海の中を駆けていました。温度差の違いが半端ありません。
    「はぁ……まさか、恋がここまで大変なものだったとは思いもしませんでしたわ」
     しかも、このプルリルの場合、一目惚れから始まったので片思いの恋でありますから、その辺のもどかしさがあります。
     そんな悩んでいるプルリルに可愛いらしい声が聞こえました。
    「あっれー? サクラちゃんじゃないですか? お久しぶりですね〜」
    「え? あ、モモじゃないですの! 久しぶりですわ!」
     同じプルリル――モモが天真爛漫な笑顔を、プルリル――サクラに向けていました。
     このモモというプルリルはサクラの幼馴染みで最近、ふと海面の方にふらりと旅をしていった際に彼氏――イケメンなオクタンを手に入れたようなのです。
     久しぶりのモモとの再会でしたが、サクラは尚も悩みのおかげで顔色があまりすぐれませんでした。    
     そのサクラの様子に気が付かないモモではありませんでした。
    「ねぇ、サクラちゃん。どうしたのですか〜? 何か悩みがあるなら相談に乗りますよ」
    「え? でも、あなた、彼氏の方はいかがするの?」
    「ん〜。大丈夫だよ。今、わたし散歩の途中だったから。それに友達の悩みをほっとくわけにもいかないよ〜」
    「うぅ……その優しさに甘えてもよろしいのかしら」
    「もっちろん!」
     心優しい友のおかげで、少し、肩の力が抜けたサクラは自分に起きた恋心に関することを、勢いよく語りだしました。
     モモは時々頷くだけで途中で口を挟むことなく、サクラの話を聞いていました。
     やはり、心を許せる友だからでしょうか、サクラの口は一向に止まる気配を見せませんでした。
     そして、一通り話終えると、喋りすぎたからか、ハァハァと息が上がっています。
    「そうだったんですか〜。へぇ、サクラちゃんにも春が来たんですね〜」
    「ま、まぁ、そうですわね。でも、どうしたらいいか全く分からなくて困っていますの」
    「うんうん。わたしたちポケモンと人間じゃ、言葉も違いますし〜。直接伝えることが出来ないのは辛いですよね〜。それにしても……人間の殿方に恋に落ちるなんて、サクラちゃん、ロマンチックです〜」
    「ロマンだけではお腹いっぱいになりませんわ……どうしましょう」
    「あ、そうだ。それだったら白魔女さんに相談してみたらいいかもです〜」

     モモの口から唐突に零れた重要そうなキーワードにサクラはもちろん、疑問符を頭からぽぽぽぽーんと出しています。

    「白魔女さん?」
    「うん、ここらの海ではちょっと有名なジュゴンさんで、かなりの物知りさんでもあるようですから、何かヒントが得られるかもしれませんよ〜。まぁ、わたしは一度も会ったこともなくて、あくまで噂話で聞いた情報なんですが〜」  
     正体がほぼ不明な怪しげなジュゴン――白魔女さんの存在に一見、不安になってしまいそうですが……しかし、今の自分にあるこのモヤモヤとした状況を打破するにはそのジュゴンさんに頼る他、方法はないようです。
     サクラが会いにいきたいと答えると、モモは快く白魔女さんの場所を教えてあげました。
    「では、早速、会ってみますわ。モモさん、ありがとうございます」
    「いいえ〜どういたしまして〜」
    「それでは、わたくしはこれにて、ごきげんよう!」
    「あ、サクラちゃ〜ん」
    「はい? なんですの?」
    「なんか種族が全く違いますし、前途多難な恋になりそうですが……頑張ってくださいです〜」
    「ええ、ありがとうですわ」
     サクラは微笑みながらそう答えると、今度こそ白魔女さんの元に向かって泳ぎ出しました。
     それを今度は黙ってモモは見送りました。
     自分も成就した恋……幼馴染みとして、そして一匹の女として、応援していきたいとモモは思っていました。
     これから相談役に乗ったりしたら更に忙しくなるかもなぁと、しかし、それでも、モモは楽しそうな顔をしてました。  

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    【3】

     とある海の中にある大きな洞穴。
     そこには数匹のチョンチーやランターンが泳いでいて中は明るくなっているようです。
     モモが教えてくれた通りの場所に辿り着いたサクラは出入り口で一匹のチョンチーに声をかけられました。 
    「待つでし!」
    「な、なんですの?」
    「ここからは白魔女様の住処でし! アポイントがない者はお引取りお願いしたいでし!」
     どうやら白魔女さんの下僕であるチョンチーはくわっと険しい顔をずいっとサクラの前まで近づけさせました。
     その勢いに圧されるかのようにサクラは一旦、体を後方へと傾けましたが、すぐに空色の瞳をキッと引き締めて、チョンチーをにらみつけました。
    「な、なんでしか……こ、怖いでしよ……」
    「いいから! 白魔女さんに会わせてくださいな!!」
    「あ、でも、そのでしね……あのぉ」
     腕を曲げ、臨戦態勢を取ると、サクラはもう一度、ハキハキと告げました。
    「もう一度しか言いませんわよ? 白魔女さんに会わしてくださいな!!」
     間違いなく文字フォント大きめな、その力強いサクラの言葉に、ついにチョンチーの心が折れました。
     ……このチョンチー、元々、臆病な性格みたいです。
     しょうがなく、泣きながらチョンチーはサクラを白魔女さんのところに案内することにしました。
     洞穴の中に入りますと、サクラの鼻に何かツンとしたものが突き刺さります。
     何か怪しそうな雰囲気漂う香りだなという感じが伝わってきます。
     更に進んでいきますと、何やらグツグツという妖しい音がサクラにも聞こえてきました。
     白『魔女』さんですからね……何をしているのかというのは想像がつきやすいのですが、事情の知らないサクラの頭からはますます疑問符がぽぽぽぽーんと飛び出していきます。
    「し、白魔女様〜」
    「あん?」

     サクラの目にもようやく映ったのは、褐色の大きな体。
     胸元には十字架をあしらったタトゥー。
     そしてその体に巻かれているのは複数個の骸骨(本物かどうかは不明)が付けられている飾り物。
     そして隣にある大きな妖しげなツボ。

    「お、桜餅でも持ってきたってカンジィー? 気がきくじゃん」
    「え、いや……違うでし〜。白魔女様にお客さんでし〜」     
    「白……っていうか、黒に近いですわね……って、サクラモチってなんですの、まぁ別に呼び方に関しては何とでもいいですけど」
    「きゃぴ! し、白魔女様に対して、失礼でし! 頭が高いでし、ぷぎゃ!?」
     白魔女さんがその手ひれに持っている、恐らく、ツボの中身をかき混ぜる為の杖を思いっきりチョンチーの頭にクリーンヒットさせました。
    「こ、れ、は、バカンスで焼けた結果なだけなんですけどぉーってカンジ? それと桜餅知らないなんて、マジ時代遅れなんですけどぉ」
     それから、白魔女さんは品定めするかのようにサクラを眺めました。
     その視線がまるで、舌で舐められているような感じがして、サクラは一瞬、鳥肌が立つ感覚に捕らわれました。
     しかし、これが恋をする女の力なのでしょうか、今からでも逃げ出したくなるような気持ちを気合で押さえ込み、白魔女さんの目を真っ直ぐに見返しました。
     自分よりも大きい体躯、色は褐色、胸元には十字架をあしらったタトゥー、体には骸骨の飾り物、そして大きい漆黒の瞳。
     このポケモンだ、このポケモンこそ、自分の悩みを解決してくれるような気がする! 
     白魔女さんから受けた一瞬の恐怖を、この自分の悩みを打破してくれる力だという意味にサクラは変換しました。 
     その気持ちをサクラは開口一番に――。

    「わたくしの恋の悩みを聞いてくれませんこと?」

     一瞬、気後れしたかもしれないが、それでもすぐに立ち直ったサクラの一言に白魔女さんの目が大きく見開かれました。
     そして、直後には白魔女さんの大笑いが洞穴中に木霊しました。
     心底、楽しそうな顔をしていますね、この白魔女さんは。

    「ちょーウケるんですけど! っていうか、ひとんちズカズカ入り込んで言うこと? ってカンジィー?」
    「いきなり、来たことには非礼を詫びますわ」
    「まぁ、いいや。面白くなりそうだね。それで? 桜餅の恋の悩みっつうのは何?」

     ニヤリと口元を上げた白魔女さんがそこにいました。

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    【4】

     一通り、自分の身に起きたことをサクラが話すと、(ガングロな)白魔女さんはまた大笑いをあげました。

    「ちょ、マジで言ってんの? どこの人魚姫の話なんだよ、それってカンジィー」 
    「わ、わたくしは本気ですわ!!」
    「ちょ、マジ切れされても困るしっ」

    「……っていうか、本来なら立場逆じゃね?」

     どこ向いて呟いているのですか、そりゃあ、ジュゴンは人魚のモデルとかなんとか言われているポケモンですが。

    「まぁ、いいや〜。んで? 簡単に落とせる薬が欲しいの? それともフェロモン全開になる媚薬とか? 好きな子とイチャコラできるえっちぃ薬とかもあるってカンジ?」
     なんでこんなにもいかがわしい方向の薬しか挙げないのでしょうか、この白魔女さんは。
     サクラは顔を横に振りました。
    「媚薬なんて……そんなズルイ真似はしたくありませんわ。わたくしはその、あの殿方と恋ができれば」
    「でもさぁ、質問あるんだけどぉ、最終的にその殿方とどうしたいワケ? 結ばれたいワケ? まぁ、人間とポケモンがイチャコラしてゴールインしたっつうムカツク話ならあるこっちゃあるんだけどさぁ」
    「……嫌いなんですの?」
    「なんつーか、そういうロマンチック? めっちゃ苦手なんですけどぉ、ってカンジ? ってか、アタシの質問に応えてくれないとマジ困るってカンジ〜?」
    「え、いや……その……一緒に暮らせたらいいなぁって思いまして」
    「ふ〜ん。だったら、あの殿方のポケモンになりゃいいじゃんって話じゃない? そしたらいつでも一緒にいれるし、ちょっと深いことをしたかったら、アンタ、ゴーストタイプなんだし適当に金縛りとかして、やっちゃえばいいっていう〜?」
     声を上げた嘲笑の如くの笑い声に、サクラの顔付きが険しくなりました。
    「わたくしは! あの殿方と恋をしたいんです!!」

     そう叫んだ後、しばし訪れる沈黙。
     険しい顔を解かないサクラと、じぃーっとサクラのことを見ている白魔女さん。
     いつの間にか気絶状態が溶け、とりあえずその場に黙って控えていた下僕のチョンチーはなんだかその空気に居づらいような感じに陥りました。   

    「ガキが……」 
     
     そう誰にも聞こえないほどに静かに呟きの後、白魔女さんが口を開きました。
    「まぁ、いいや。そんなにその野郎に想いを伝えたいのなら、桜餅、いっそ、人間にでもなってみる?」
    「え?」
     そうサクラが声を上げたのと、白魔女さんが近くの棚から何やら探し始めたのは同時のことでした。
     がちゃり、がちゃりとガラス製のビンが動かされる音がちょっとの間、場を占めた後、「あぁ、これこれ」と白魔女さんが取り出したのは小さな純白色をしたガラス製の小瓶でした。 
    「これを飲めば、人間になることができるっちゅう『ふしぎなくすり』ってやつ〜?」
    「人間に……?」
    「その野郎のことを知りたかったら、人間になって、近づいてみるっちゅうのも悪くないんじゃな〜いってカンジぃ?」
     白魔女さんがニヤリと口元を上げました。
    「た・だ・し、この薬は人間になることが出来る代わりにポケモンであったときの能力はもちろん消えるっていう、まぁ、桜餅の場合、弱々しい人間の女の子になるってカンジィ? あぁ、それと」
    「?」
    「三日以内に異姓の人間とキスしないと、泡になって消えてしまうから、マジ注意ってカンジ? まぁ、こういう薬ってなんかしらの訳ワカメな副作用は避けられな〜いってカンジなのはあしからずってことで4649ってカンジィー」
     確かに、白魔女さんの言う通り人間になってお近づきになるという案は一理ありましたが、同時にリスクも大きいものでありました。
     しかし、それだけ、魅力のある白魔女さん提案でもありました。
     そして、やがて答えを出したサクラは手を差し伸ばしました。
    「なるほど〜受けるのね〜。分かった。この薬持ってって〜、でも、どうなろうともアタシは知らないからね?」
    「それは承知しておりますわ」
    「ったく、桜餅、いい顔してるってカンジじゃん。まぁ、現実を知ってくればいいと思うってカンジィ?」
    「ご忠告、感謝いたしますわ。薬……ありがとうございます。それでは御機嫌よう」
    「ふん。チョンチー、出入り口まで案内してやってー」
    「は、はいでし!」
     白魔女さんから薬を手に入れたサクラは白魔女さんに一礼すると、チョンチーの後についていき、やがて、白魔女さんの視界から消えました。

    「……なんか、もらえばよかったかな。あの瞳とかマジ綺麗だったんですけどぉ……っち、チョーもったいないっし。チョベリバ」 

     白魔女さんの手ひれにあった杖からメキメキと悲鳴が上がりました。


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 

    【5】

    「そうか〜。人間になるんですね〜……色々と危険そうなんですけど……まぁサクラちゃんは昔から、こう決めたことは貫くタイプですからねぇ。が、頑張ってくださいです〜」
     モモからエールを受け取った、サクラは例の岸のところへと泳いでいきました。
     モモは優しいポケモンでした。自分の意志をいつも優しく見守ってくれるところがあるし、相談には丁寧に相手してくれるし、モモの彼氏は幸せ者だとサクラは思いました。
     なんとかモモにいい報告ができればいいなと思いながら、サクラは手元にある小さな純白色のガラス製の小瓶に視線を移しました。
     人間になれるという『ふしぎなくすり』
     この薬を飲めば、人間になることができ、あの殿方に近づくことが出来る……しかし、ポケモンの能力は一切消され、更には三日以内にキスをしなければ泡となって消えてしまう。
     しかし、この恋はそのようなリスクを被る価値はあるとサクラは考えていました。
     そのリスクの先にはきっと幸せがあると信じて、幼馴染みのモモやアオのようにきっと、今度こそ、幸せに――。
     まぁ、サクラのその想いはロマンチック大嫌いな白魔女さんにとってはモモンの実よりも甘すぎると一蹴されそうですが。

    「あ……着きましたわね」
          
     ようやく、あの殿方を届けた岸まで辿り着いたサクラは早速、その小瓶のフタを開け、ぐいぐいっと一気に飲み干しました。
    「なんだか甘苦い味ですのね……うぅ?」
     その味の余韻に浸る暇なく、サクラの意識が真っ黒に染まっていきました。
     満月の夜、その月光は優しく浜辺で倒れている一匹の桃色のプルリルを照らしていました。


     ここはどこなのでしょう。
     穏やかなさざ波の音が耳の中へと入り込んでくる感覚がサクラにはしました。どうやら意識が戻って来たようです。
     そこでサクラがゆっくりと目を開けると……そこは浜辺でした。
     近くではクラブの群れがカニカニと横歩きしており、空には何匹ものキャモメが飛んでいました。
    「えっと……あ、そうですわ、わたくし、あの薬を飲んで、それから気を失いまして、それで……」
     そこでハッと、サクラは目を見開きました。
    「そうですわ! わたくし、人間になったのでしたわ!」
     そこには百五十前半で華奢な体つきの娘がいました。
     髪は腰まで伸びている桃色で、瞳は空色に染まっていました。
     ……まぁ、近くに鏡みたいなものはありませんから、サクラ自身、その容姿を確認することができないようですが。
     しかし、目に映る肌色の体で、自分が人間になれたことを確認したサクラは興奮しました。
     これが人間! 
     ポケモンのときにはゴーストタイプだったからか、軽かった体の感覚は、人間になると若干重く感じられるようでした。
     ゆっくりと立ち上がろうとして、よろめきます。
     直立に立つ、という経験のないことだったからでしょうか……けれど、なんとか近くにあった岩場を手すり代わりにして、なんとか立ち上がることが出来ました。
     立ち上がってみると、サクラにはまた世界が変わって見えました。
     足場がなくふわふわと浮かんでいた頃とは違い、しっかりとした足場があるというのも、サクラに新しい刺激を与えているようでした。
    「よぉ〜ねぇちゃん、可愛いなぁ♪」
    「ヒュー☆ 見せ付けちゃって、オレ達と一緒に遊ばねぇ?」
     興奮したサクラの耳に下品な笑い声が響きます。
     サクラの目の前にはいかにもチンピラよろしくな男二人組がニヤニヤ品定めするかのようにサクラを見ていました。  
     あ、忘れていましたが、サクラは今、すっぽんぽんの全裸状態であります。
    「ちょっと小さいじゃねぇ?」
    「貧乳はステータスだ、希少価値なんだぞ」
    「おま、その台詞って」
    「けど、実際、オレ結構、胸はなんでもありだぜ?」
     これだから男という生き物は胸に弱いという面識が生まれていくのですよね。
     と、そんなことを言っている間にも、その男達はサクラに近づいていって行きます。
     このままでは掲載不可能領域突入です。
     しかし、サクラは退かずに叫びました。
    「ナイトヘッド!!!」

     ……サクラがそう叫んだ後に残っていたのはキャモメの鳴き声だけでした。

    「ハハハ! なにやってんの? ポケモンごっこでもやるの? お譲ちゃん? アハハハハ!」
     その下品な笑い声のおかげかどうかは分かりませんが、サクラの顔が一瞬にこわばりました。

    『ポケモンであったときの能力はもちろん消えるっていう、まぁ、桜餅の場合、弱々しい人間の女の子になるってカンジィ?』  

    「しまったですわ……! ポケモンの技は使いませんでしたわ……!!」
    「ははは! そんなポケモンごっこやりたいなら、そうだなぁ、オレがグラエナになろうかなぁ? ははは!」
    「じゃあ、おれ、ヘルガーで、へへへ。アオオオオンってな」
    「まさしくケモノってやつ?」
    「だな。あははは!」
     何をされるのかという具体的なことはサクラには分からなかったのですが、しかし、自分の身に危機が迫っていることは感じ取ったようで、ちょっとずつ後ずさっていきます。
    「へへへ……じゃあ、遊んで――」
     
     直後に何か殴られたかのような音が鳴り響きました。

    「いってぇ! 一体何を、グオ!!??」
    「おい、てめぇ、何しやが――グワッ!!??」
     一人目は鳩尾に思いっきり殴られダウン、二人目は股間を思いっきり殴られダウンしました。
     そうしてサクラの目の前に現れた人物は――。
    「おい、大丈夫か」
    「あ、あああああ!」
     サクラが悲鳴を上げるのも無理もありません、なんだってサクラの目の前にいるのは、例の殿方でしたから。
    「あ、その、えっと」
    「なんというか……海水浴と言ってもここはヌードビーチではないぞ、それともあれか、痴女ってやつか」
    「違いますわ!!!」
     全力で断固拒否しました。
    「まぁ、ともかく、俺の目のやり場には困らないが、他の者達には困るかもしれぬから、とりあえずこれでも羽織っておけ」
     殿方はそう言いますと、乱暴そうに上着を脱いでサクラに投げました。
    「っぷはぁ。乱暴ですわね」
    「全裸痴女に言われてもピンと来ないぞ」
    「だから違いますって言っているでしょう!」
     緊迫とした状況から一変、なんだか騒がしい雰囲気が浜辺に漂い始め、近くを通っていたクラブたちは「うるさい、うるさい」と言いたげに横走りの速度を上げていました。
    「ところで、お前はどこの者だ。ここでは見かけぬ者だが」

    「わたくしはあの日、あなたを助けた者です!!」

     前置きなしで勢い全開のカミングアウト。
     これで一気に距離が縮まると信じながら、積極的にサクラは告げました。
     しかし、いざ期待しながらサクラが殿方の顔を見てみると、殿方の顔が俗に言う「は? 何言ってんの?」という顔付きに。
    「あの日とはいつの日のことだ」
    「あなたが溺れた日のことですわ!」
    「おかしなことを言う娘だな、言っておくが俺は生まれてこの方、溺れたことなど一度もない」
    「なっ!? 嘘を言わないで下さる!? あの日、あなたはちゃんと溺れて――」
    「だから、俺は溺れていないと言っているであろう」
     断言されてしまいました。
     しかし、サクラの目に狂いはなく、今ここにいる殿方は間違いなくサクラが助けた者のはずです。
     おかしい、どういうことなのだろうと懐疑的な気持ちがサクラの胸の中を漂っている中、殿方は黙ってサクラを見ていたままでした。
     今、このまま、真実を告げても信じてもらえなさそうにない状況だと、信じられないものの、そう判断したサクラはなんとか喉を絞りまして――。

    「わ、わたくし、記憶喪失なのです! それで記憶があやふやになって、それで、その……おかしなことを……申し訳ありませんでしたわ」

     サクラ自身、大変苦し紛れだというのは自覚しています。
     しかし、この場を切り抜けるにはこれしかないと、咄嗟に考えついたのがそれでした。
     一方その言葉を聞いた殿方は一旦、考え込むような顔付きになりました。
     そのまま時がいささか程、流れていく頃に殿方の口が開きました。
    「そうか……それは可哀そうなことだな……」
    「え、ええ……」
     サクラの背中からは冷や汗が止まりません。
    「このまま放っておいてもアレだしな、また突発的に全裸になられても困るしな」
    「だからわたくしはそんなんではありませんわ!」
    「ともかく、俺の城に連れていくことにしたから」
     突発なのはどちらのことを指しての言葉なのでしょうか、もはや全く分かりません。
     
     サクラの悲鳴にも似た甲高い声が浜辺の空を駆けていきました。

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    【6】

     腰まで垂れていた桃色の髪は見事にツインテールにまとめられ、服の方は黒を基本に、腕の裾には白いヒラヒラした薄い布にスカート部分の裾にも白いヒラヒラが使われている――俗に言うメイド服をサクラは身につけていました。
     改めて、自分の姿を鏡を見たサクラはその可愛らしい姿に興奮していましたが、すぐにモップとバケツを手渡されると、サクラの意識は現実に引き戻されました。

    『とりあえず、暫く城に住まわせてやるから、記憶を取り戻しつつ……城の給仕係に入れ。働かない者、食うべからずってな』

     という流れでサクラは浜から徒歩十分程にある城下町に建立してある大きな城に向かい、サクラはめでたく給仕係となりました。
     ……いや、めでたくないのですが、まぁ、でも、なんとか話は前進しているので、よしということで。
     とにかく、サクラの新しい生活が始まりました……しかし、三日間の間にキスをしなければいけないという厳しい条件の下ではありましたが。
     サクラが給仕係になって最初に命じられたのはトイレ掃除でした。
     城のトイレですから、というか城ですから、何処を掃除するとしても規格外の広さです。任されたトイレは真っ白なタイルが縦長に続いていて、部屋は八、九つ程ありました。
    「じゃあ、とりあえず、ここの掃除をして欲しいのだけど……」
    「えっと、これはなんですの?」
    「何って……モップとバケツだけど?」
    「モップとバケツ……?」
    「………………もしかしなくても、分からない?」
    「はい」
    「いや、そんなハッキリとした声で応えられても困るんだけど……まぁ、事情がアレじゃあ仕方ないか、いい? まずモップっていうのはね――」
     こんな感じで手取り足取り、給仕係の先輩に教わってもらいながら、サクラは掃除をしていきます。
     モップをバケツに溜めた水に入れて濡らし、そこから床のタイルをしっかりと磨いていくの繰り返し。おまけにバケツの水がある程度濁ると、水の入れ替えをしていきます。       
     サクラは元々、器用だったのかどうかは不明ですが、中々吸収力がよく、最初はぎこちなかった動きが徐々に滑らかになっていきました。 
     人間になって、なすことすること全てが初めてだったからか、それらの刺激が吸収力増加に繋がったのかもしれませんが。
     
     まぁ、それは置いといて。

     今日一日、サクラはその先輩に付き添ってアシストをするといった感じであった……というか暫くはそうなるようですが。
     それにしても、本当に今日一日は激動の一日でした。
     サクラが人間(スッポンポンの全裸)になったかと思えば、いきなり二人組の不良が現れて、掲載不可能領域突入になる寸前にサクラが探していた殿方が現れて不埒な二人組を撃破、その後、サクラはお城で給仕係をすることになって――本当に色々と展開した一日でした。 
     その一日でサクラが驚いたことはというと、特筆すべき点はもちろん人間になったこと、殿方に再び逢えたこと、それと――。

     殿方が王子様だったということでした。

     サクラがいる城下町は海に近い為、魚関係で有名な街で、王様は大の魚好きのようでございます。
     まさか、あの殿方が王子様だったとは、そのことを聞いたときのサクラは驚きを隠せないでいました。
     あの殿方――王子様と再会して、初めて会話を交わしたことを思い出すと……まぁ、会話の内容は少しばかり残念なものがあったような気がしますが、それでもサクラの頬がまた薄紅色に染まっていきます。
     口が悪いところもあるし、自分が助けたことは信じてもらえないし、色々と不服なところがありましたが、やはりあの王子様が大好きという気持ちは変わりませんでした。
    「わたくしって……あんなにマゾだったかしら……」
     それはともかく、あの王子様と会話できて満足満足……で終わらせるわけにはいきません。
     一体どうやって、あの王子様ともう一度会えばいいかという話も浮上してきています。
     今、こうやって給仕係の仕事をしているというわけなのだが、忙しくて中々抜け出せる気配はなさそうでありました。
     さて……どうしたものかと、サクラが考えている間にも時間は過ぎていき――。
    「はい、今日はここまで! お疲れさん! それにしても、あんた覚えいいね! もしかしたら昔はどこかで給仕係をしてたんじゃない?」
     あっという間に日は沈み、夜になってしまいました。
     仕事は順調に進めど、サクラの恋自体は中々進めずじまいです。
     このままではあっという間に三日間が過ぎ去っていってしまいます。
     なんとか、なんとか……あの王子様に逢える方法はないかと、アラビアン風の模様があしらわれているカーぺットが敷かれた長い廊下を早歩きで進みながら、サクラが頭を抱えていたときのことでした。
    「あ、サクラさん、こんなところにいたっすか。ちょっと話があるんっすけど、いいっすか?」
    「………………」
    「あの、サクラさんっすよね? サクラさん?」
    「………………」
    「え、あの、サクラさ〜〜〜〜ん!?」
     サクラと同じくらいの身長で、焦げ茶色の髪を持ち、その小顔にはそばかすがある給仕係がようやくサクラを呼び止めることができたのは、それから約十分後のことでした。
    「あら、何か用ですの?」
    「だ、から……そう、言ってる、じゃないっすか……はぁはぁ。サクラさん、歩くの早いっす……」
    「やだ、わたくしったら、考え事していたみたいで、ごめんなさい」
    「いいっすよ。事情はお聞きしてるっす…………そりゃあ、考え事の一つや二つ、ありますよね。すいませんっす、ウチの方こそ邪魔しちゃったすかね?」
    「いいえ、そ、そんなことはないですわ」
     サクラの考え事とその給仕係の考え事がずれていることは言うまでもありません。
    「それで、わたくしに何か、ご用がおありで?」
    「あぁ、そうっす。サクラさん、この城に住むに当たって、メイド寮の方に入ることになったんすよ。すいませんっす。連絡が遅れてしまって」
    「あら、そうでしたの?」
    「そうっす。それで、サクラさんは今、ウチが使っている部屋で一緒になることになったんで、よろしくお願いしまっす」
     なんでも、その給仕係が話すことには、同部屋だったもう一人の給仕係がサクラの来る少し前に結婚を果たし、城下町から離れることになって辞めたのだそうで。
     それで、一人分空きができたその部屋に新たに給仕係として参上したサクラを入れようという話になった、ということでした。

    「あ、遅くなってすいません、ウチの名前はマロニカっす。マロニカ・ヴェルブラン。マロマロでも、オタマロでもヴェルでもなんでも呼んでいいっすよ♪」

     そばかすの給仕係――マロニカはハニカミながらそう自己紹介したのでありました。

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    【7】

     何処かでグラエナが遠吠えを月に捧げている夜。
     サクラが人間になってから一日目の夜です。
     マロニカに案内されてサクラがやってきた、給仕係のメイド寮は王様達が住まう居館から少し離れた四階立ての別棟となっています。
     約五十名ほどの給仕係がそこでお世話になっていて、大浴場の風呂とトイレ、それから食事も共同で、各寝室にはベッドが二つの二人部屋となっています。(ちなみに風呂とトイレ、そして共同の食事スペースは一階、二階からは給仕係の寝室の部屋が並んでいます)
     とりあえずサクラがマロニカに入れてもらった三階の一室は約八畳の広さで、両脇には一つずつベッドと小机に椅子、それと燭台が備え付けられていて、後、暇をもらった時に着る服の為のタンスがあり、給仕係の生活面がしかりと配慮されている部屋のようです。
     軽く食事を取ってから、部屋に入ってすぐにマロニカが木窓(押し引きタイプ)を開けますと、今宵もいい夜空の風景と適度な涼しい夜風、そして月明かりが部屋の中に入り込んできました。
    「あ、そっちのベッドを使って下さいっす。ウチはこっちのベッドを使いますから」
    「分かりましたわ」
    「あ、それと、部屋着がなかったんすよね、ちょっと待って下さいっす……確か、え〜と、ウチ結構余分にあったりするからな〜」
     そう言いながらマロニカは近くの自分の使っている服ダンスの中を漁り出しました。
    「なんか、申し訳ないですわね……どたばたさせてしまいまして」
    「大丈夫っすよ、全然。給仕で先輩にコキ使われるよりかはよっぽどマシっす」
     マロニカが一回振り返って、サクラに笑顔で応えますと、再び服ダンスの中を漁り始めました。
    「それに、困ったときにはお互い様っすから」
    「……マロニカはいい人、なんですわね」
    「い〜や、全然っすよ! よくドジ踏んで先輩に怒られちゃったりしてるっすから、ウチ。アハハハハ」
     それから、マロニカが探し続けること数分が過ぎ去ると、サクラの両手には色々なものが積まれていました。 
    「とりあえず、これでいいっすかね。この白いやつが部屋着っす。それとこっちの二着が城の外に行く用っす、それと、これが大浴場用のタオルっすね。どうぞっす」
    「あ、ありがとうございますわ」
    「へへへ。どういたしましてっす。あ、それとここでの一日の大体の流れを話しておくっすね」     
     そのマロニカの話によりますと、まず六時に起床し、その三十分後にはまず自分達の朝食を軽めに取り、七時には城の居館の方へと移動して、料理を準備したり掃除をしたりします。
     他にも皿洗いの仕事や、掃除、そして客人や王様達の身の回りの世話などなどをこなし、ようやくメイド寮に戻れるのは早くて夜の九時、遅くて十時になります。
     それから、遅めの食事を取り、風呂に入り、就寝は大抵夜中の12時か、1時になるようです。
     この予定を聞いて、サクラは少し青ざめました……というのも、あの王子様に逢える余裕なんてその予定表にはなかったからです。
     このままでは三日間、働くだけで泡になって終わってしまいます、それだけはゴメンでした。
    「大丈夫っすよ! 確かに最初は大変かもしれないっすけど、慣れると結構、いけまっすよ」
     顔色の悪そうなサクラに対し、マロニカはそう励ましましたが、残念ながらサクラは仕事がきつそうだと思って顔色を悪くしたのではありません。
     とりあえず、サクラは一つ溜息をもらしますと、マロニカがタオルを持って立ち上がりました。
    「……ま、まぁ、一風呂、浴びに行きましょうっす、サクラさん。色々おありで疲れてるようですし、ここはゆっくり、ね?」
    「…………そうですわね」
     ひとまず、マロニカの提案を受けることにしたサクラもタオルを持って立ち上がりました。
     ここでの一日の流れが分かっただけでも、とりあえず良しという風に考えないとやっていけそうにありません。
     この予定表からいかにして、王子様に逢う時間を手に入れるかというのは自分の責任だからと、そうサクラは考えました。

     というわけで場所は変わりまして、大浴場。

     壁はクリーム色、床には黒に近い灰色のタイルが敷かれているここには十人程が余裕で入れる大浴槽があり、今は誰も入っていませんでした。
     どうやらマロニカがサクラに服をあげたり、給仕係での生活を説明している間に他の人が入った感じであります。
    「ウチらが最後っすかね〜。あ、サクラさ〜ん、こっち、こっちっすよ」
    「すごい……暖かいんですね、ここ」
    「浴槽の方がもっと暖かいっすよ〜。早速、入りましょうっす!」
     初めてのことに若干戸惑っているサクラをよそに、マロニカが先に入ろうとしたところ――。
     
     滑る音がいい感じに入り、それから派手な音と共に大きな水しぶきが空を舞いました。

    「ぶくぶく……ぷっはぁ! おおう、尻をちょっと打ったす……イタタ」
    「ふ、ふふははははは!」
    「あ、笑ったっすね! あ、でも、確かにおかしな滑り方で……あはははは!」
     マロニカの間抜けとも言える滑り方がツボに入ったのか、王子様とどう逢えるかという悩みはどこへやら、サクラが腹を抱えて笑い、マロニカもつられて笑い出しました。
     そういえば、サクラが声を出して笑ったのは、この城にやってきてから初で……なんだかサクラはスッキリしたような気分がしたようです。
    「あははは、はぁはぁ、笑いすぎて、腹筋崩壊しそうっす……さぁ、サクラさんも」
    「えぇ、そうですわね」
     マロニカに促され、ゆっくりと足から湯に入り、そして太もも、お尻、腰、胸、そして肩……頭まで――。
    「ちょ!? サクラさん? いきなり、頭まで浸かるんすかっ?」
    「プハァ! はぁはぁ……私としたことがついクセで」
    「クセなんすか」
    「いつもは海にいたからかしら……」
    「え?」
    「……あ、わ、わたくし、ちょっとだけ何かを思い出しましたようですわ! 多分、海に近いところに住んでいたのですわ! きっと!」
    「おぉ! 記憶がちょっと戻ったんすね! そりゃあ、良かったっす!」
     ありがとうと答えながら、人間というのは面倒くさいところもありますわねとサクラは心の中で呟きました。
     それにしても、アバゴーラ・ジーランス夫妻から暖かい湯の存在を聞いたことがありましたが、実際入ってみると不思議な感じだったようです。
     いつもはどちらかというと冷たい(それでもサクラにとっては適度な)水の中でしたから、そのような感覚が生まれてもおかしくはありませんでした。
     なんだか海のときとは違って、この湯というものは本当に疲れが溶けて無くなってしまいそうな、そんな感じがサクラにはしました。
     どうやら、落ち着いたようであるサクラの口が開きました。
    「そういえば、マロニカさんはここで何年、働いていますの?」
    「自分っすか? そうっすねもう今年で三年目になるっすかね。ウチの家、貧乏で苦しかったんで、ウチも働くことになったんすよ。いやぁ、最近の不況ってやつっすかね、それをモロバレルに受けましたから、ウチの家も」
    「た、大変だったですわね……それは」
    「そうっすね、ドジ踏んでばかりで先輩にはよく怒られますし、後輩には追い抜かれている感ありまくりっすけど」
     マロニカがサクラの方に笑顔を向けた。
    「まぁ、それでも、なんとかやっていけてるっすから」
    「ポジティブな方なんですね」
    「よく言われまっす。ハイパークレイジーポジティブ野郎ってよく言われまっすね」
    「まぁ、ふふふ」
    「こんなお馬鹿なヤツっすけど、よろしくお願いしまっすね」
    「……えぇ」
     不思議とマロニカと話しているからか、それとも湯の力は定かではありませんが、サクラの肩の力が抜けていくようでありました。
     でも、マロニカには何か心に活力をくれるみたいなものがあるかもとサクラは考えました。
     確かに先程披露したドジっぷりからでも、マロニカは仕事中にも色々と失敗しそうだけど、前向きで心が強そうだなと、なんだか、マロニカからエールをもらっているような不思議な感じがサクラにはして、それがおかしくなって、つい笑っていました。
     いきなり笑い出したサクラに一瞬、驚いたマロニカでしたが、彼女もその笑い声につられる形でまた笑っていました。

     もしかしなくとも、サクラに心強い仲間が出来たかもしれません。
     ……ドジっ子のようですが。

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    【8】

     大浴場から再び寝室に戻りまして、裾も丈も長い白いワンピース型の部屋着に着替えたサクラと、同じ服を着ているマロニカはそれぞれベッドに入り込んで、今日はまた寝ることにしました。
     マロニカは「お休みなさいっす」と言った後、十秒後にはあっという間に夢の中に入って行きました。
     サクラの方もどうやって王子様に逢うかということは一旦、置いといて、体力回復を図ろうと、ウトウトしてきたときのことでした。

     何やら、木窓を叩く音がしてきたのです。

     何だろうとサクラが眠そうな眼をこすりながら、木窓を開けると、そこにいたのは茶色とクリーム色で配色された鳥ポケモン、ポッポでした。
    「…………」
    「ん? 何かくわえていますわね…………」
     ポッポのくちばしがくわえていた一枚の折られた紙。 
     サクラはとりあえず、それを取り出しました。
    「ぽっぽ。ぽっぽぽ。ぽっぽ、ぽっぽぽ、ぽっぽ。ぽぽぽっぽ」
    「ん? 何と言っているか分かりませんわ…………あっ……そうでしたわね」 
     どうやらポケモンの能力を失うというのはポケモンの言葉も分からなくなるということでもあるようでした。
     今、自分は仮にも人間であるのだから。
     任務を終えたようであるポッポはやがて、夜空に向かって、消えて行きました。
     そのポッポの姿を見送ると、サクラはその折られた紙を開きます……すると、そこに書かれていましたのは――。 

    『(サクラは人間の字を読めませんでした)』 

     人間の書かれた文字に関しては全くの皆無であったサクラは、もちろん困惑しました。
     マロニカは寝ていて起きそうにもないし、どうしようかと思っていたサクラでしたが、結局、マロニカに聞くことにしました。
    「マロニカ、ねぇ、起きて下さいですわ、マロニカってば!」
    「むにゃ……はひ……? なんっすかぁ……? サクラひゃん……」
    「……寝ぼけているけど、大丈夫かしら……まぁ、ともかく……この手紙に書かれていることを読んで欲しいのですわ!」
    「うみゅう……はひゃい……えっとぉ、『メイド寮のぉ、外でぇ〜……待っているぅ〜』と、書かれてますぅ〜……バタン、キューー……すぅ、すぅすぅ……」 
    「お休みのところ、申し訳なかったですわね……ありがとうですわ、マロニカ」
     サクラがそう呟くと、マロニカが寝返りを打ちました。
     恐らく、マロニカはこの手紙のことは覚えていないでしょう。    
     とりあえず、自分が何をすべきか分かったサクラは(持ち運び式)ロウソク台に火を……。
    「ごめんなさい、マロニカさん、これに灯りをつけてくれません?」
     この後、寝ぼけながらも、しっかりとロウソクに火をつけたマロニカでした。
    「さてと……あまり物音を立てない方がいいですわよね……」
     部屋を出る前に、ちょこっと、扉を開けてその隙間から廊下の様子を伺います。
     マロニカの話によると、この大浴場で一浴びした後の時間帯は原則、部屋の中にいるもので、給仕係のメイド長に見つかってしまったらタダでは済みません。
     進んでも良さそうだと判断したサクラは慎重に、落ち着いて部屋から出て、メイド寮の出入り口を目指していきます。
     もう他の皆も寝ているのか、やけに静かで……その静けさがまたサクラに緊張感を与えます。
     そ……っと
     そ〜〜……っと。
     そっと……。
     抜き足差し足忍び足の技法は人間になってから間もないサクラには無理で、廊下に足を擦るような形でサクラは先を進んで行きました。(……本当は床を擦る音も目立ちそうなのですが……今のサクラに無理は言えません)
     時々、階段を下りるときなど、ギィ〜ッと誰かにモロバレルフラグが立ちそうな、軋む音が立つときがありましたが、ようやくサクラは誰にもばれずに出入り口までたどり着きました。 
     そして鍵(ターン式)を「こうかしら……?」となんとか開け、なんとかサクラは無事に外に出ることに成功しました。
     サクラを出迎えるかのように夜風が全身に吹いてきて、いい感じに桃色の髪が宙を舞っていきます。
    「おい、扉をちゃんと閉めておけ」
    「え?」
     声のする方にサクラが向きますと、なんとそこに立っているのは、あの王子様ではありませんか!
     上下漆黒の服に、襟部分には白く目立つファーみたいなものがついており、風に吹かれる度にふわりふわりとなびいていきます。
    「え、あ、あの……もしかして、王子様が私のことを呼んで…………?」
    「ともかく、ここで立ち話してもアレだ。場所を移動するぞ」
    「そ、そうですわね、ひ、人が来たら大変ですしぃっ」
    「……噛んだな」
    「しょうがないでしょう! ここにまさか貴方がくるなんて思いもしませんでしたし!」
    「騒ぐな! 喚くな! ばれたら、どうするつもりだ!?」
    「そ、それは貴方こそ、ですわ!」
    「とりあえずっ、ここじゃあ、ちょっと場所悪い。移動するぞ」
    「移動って、どこに」
    「ついてくれば分かる」
     王子様の左手が強引にサクラの右手を絡め取り――「ひゃあ!」「変な声をあげるな」
     サクラの手に伝わって来る王子様の手に宿る熱さがサクラの胸の鼓動を速めていきます。
     無理もない話です……いきなり誰からか呼び出しを受けたかと思えば、それは愛しの王子様からのもので、そして手を握られて……。
     果たしてサクラの心の臓が最後まで持つかどうか心配になってくるのですが――。
     
     ドクン。
     ドクンッドクン。
     ドクンッドクドクンッ。
     ドックンッ!!

     サクラの意識がどこかに飛んで行きそうなのですが。
     そんな頭に血が昇ってボーっとしてきているサクラをよそに王子様はグイグイとサクラを引っ張りながら歩いていきます。
     とりあえず王子様は城から抜けてサクラと話がしたい為、抜け道を使うことにしました。
     城の居館から少し離れたところに一つの小さな小屋があり、そこには地下に続く階段が造られています。
     小屋に入ると王子様はモンスターボールを取り出し、ポケモンを出すと、漆黒の体に輪の模様を刻んだポケモン――ブラッキーが現れました。
     どうやら色違いのブラッキーのようで輪の模様は青色に染まっていました。 
    「すまないブラッキー……道を照らしてくれないか?」
    「きゅい!」
    「よし、行くか……んで、コイツはまだボーっとしているのか」 
    「…………」
    「……まぁいい。とにかく行くぞ」
    「きゅい!」 
     外では月明かりを元に行動出来ていましたが、その光が届かない地下ではブラッキーの発する光が頼りとなりました。
     タンタンと階段を下っていく音が浮かんでは、静寂漂う地下の空間に消えていきます。
     この階段は元々、城の避難経路として造られていたもののようで、降りていくと徐々に潮の香りが漂ってきます。
     この階段が繋がっていた場所は――。

    「おい、着いたぞ」
    「…………」
    「聞こえてるのか? 着いたぞ?」
    「はっ!? ここは一体…………?」

     王子様の手が離れると、まるでスイッチが入ったかのように今までボーっとしていたサクラの意識が元に戻りました。
     階段を降りた先に繋がっていた場所は潮の香りが漂い、さざ波の音色が優しく辺りを飛び交う場所――そこはサクラが王子様と出逢った浜辺でした。
    「ご苦労だったな、ブラッキー。少しの間、浜辺で遊んでていいぞ」
    「きゅ〜い♪」
     ご主人の許可をもらったブラッキーは嬉々として浜辺を走って行きます。
     その後ろ姿を目で追いながら王子様は口を開きました。
    「……どうだ? 城での生活は。不自由なことはないか?」
    「え……べ、別にどうってことはありませんわ。まぁ……疲れましたけど」
    「そうか……何事もなかったのか……」
    「え?」
    「………………別に、新人は失敗話を作るのが得意だからなと思って、楽しい話を聞ければと考えていたのだが」
    「それ、どういうことですの!?」
     流石に好きな人とはいえ、言われて嬉しいことと、我慢ならないことがあります。
     サクラはキッと険しい視線を王子様に向けますが、王子様の顔は海に向かっているままでした。
    「……お前、記憶の方はどうなんだ?」
    「記憶……?」
    「……お前、自分で言ってただろう。自分は記憶喪失で困っていると……まさか、それまでも記憶が――」
    「そ、それはないですわっ!」
    「……そうか。それで?」
    「…………も、戻っていませんわ」
     空色の瞳が大きく泳いでいるサクラでしたが、その挙動不審な行動は幸いにも海の方に顔を向けていた王子様に映ることはありませんでした。
     サクラのその言葉を最後に、二人の間(厳密に言うと一人と一匹ですが)に沈黙が流れました。
     王子様は相変わらず顔を海に向けたままですし、サクラの方は王子様の横顔を見つめているだけで、ただその場には引いては流れるさざ波の穏やか音色が漂っていました。
     後、時々、「きゅいきゅい♪」とクラブを追いかけて楽しそうなブラッキーの声が夜空に溶けていました。
    「……」
    「……」
     沈黙は流れ続けるままで、一向にどちらかが口を開くという雰囲気はないままです。
     このままサクラが王子様を襲いこんでキスすれば……泡にならずに済んで、めでたしめでたし……という展開にはならず、サクラはただ王子様を見つめては考えていました。
     一体、どうすればこの王子様と距離を縮めることができるのか?
     王子様と二人っきりという折角の機会を無駄にするわけにはいきません。
     しかし、考えれば考えるほど、どうすればいいか、なんと話していいかと悩みの渦に囚われてしまいます。 
     
     王子様の好きなことでも訊けばいいのか?
     王子様が気になることを訊けばいいのか?
     王子様はどういった人なのか?

    「あの――」「なぁ――」

     サクラと王子様の声が重なりました。
     サクラは目を丸くし、王子様も今度はサクラの方を見て目を丸くしています。
    「なんだ」
    「いえ、その、王子様が先に――」
    「いや、お前から言え」
     王子様に促され、頷いたサクラはようやく搾り出した質問を口にしました。
    「お、王子様の名前は……なんと言いますの……?」
    「……なんだ、いきなり何を訊かれるかと思えば、平凡な質問であったか」
     
     しょうがないでしょう! 他に思いつかなかったのですから!

     ……というのはサクラの心の声でありまして。
     とりあえず、一歩を踏み出せた感じで一瞬、サクラの内心は安堵感で溢れましたが、肝心の質問を王子様が答えてくれなければ、折角の質問も水の泡であります。
    「……エルフェだ」
    「え?」
    「エルフェーヤ・リッド・フィッシュスター……呼び方は別に何とでもよい」 
     王子様――エルフェは再び顔を海の方に向けながらそう言いました。
     一方、王子様の名前を聞けたサクラは――。
    「エル、フェ…………エルフェ……エルフェ様」
     そう何回も繰り返しながら喜びを噛み締めていました。
     これで距離を縮めたかどうかは不明ですが、サクラにとっては大きな一歩に繋がった瞬間だったのです。
    「…………」
    「えへへ……」
     エルフェが顔の向きを変えて、じーっとサクラのことを見ていますが……サクラは自分の世界に入っているのでしょうか、頬を赤らめて笑顔のままエルフェの視線には気付いていないようで――。

    「きゃっ!?」
     
     案の定、ようやく気が付いたときには短い悲鳴を上げていました。
    「大丈夫か? 一人でニヤニヤ何を考えていたのかは分からないが」
    「べべべ、別に変なことは思ってませんわ!」
    「……どうだか」
    「……(まぁ、確かにちょっと調子に乗っていた感じはありましたけどっ)そ、それよりもエルフェ様も、わたくしに訊きたいことがあったですわよね?」
     確かにエルフェもサクラに対して何か質問があったようだったのは先程のやり取りでも知っての通りのことです。
     エルフェはまた海の方に顔を向け、幾分か口を閉じた後、答えました。
    「……いや、今日のところはもう遅い。そろそろ戻らないとな」
     そう言いいますとエルフェはゆっくり立ち上がり、ズボンのお尻のところをパンパンと音を立てながら砂を払いました。
     もうこの時間とも終わりと思うと、少し寂しい思いもあったサクラですが、エルフェに続いて立ち上がり、同じように砂を払いました。
    「ブラッキー! そろそろ行くぞ!」
    「きゅ〜い♪ きゅい! きゅいきゅ〜い♪」 
     クラブと戯れていたブラッキーは主人の声を聞きますと、遊び相手のクラブに挨拶してから嬉々と戻ってきました。
    「さぁ、さっさと戻るぞ」
    「わ、分かりましたわ」
     ブラッキーが足元に来るのを確認しますと、エルフェが歩き出し続いてサクラが歩き出しました。
     腕を伸ばせばすぐに届く距離を置きながらサクラは歩きます。
     それだけでも胸がドキドキしてきて……顔を下にうつむいたままサクラは歩き続けます。
     
     月明かりは何時までも二人と一匹を照らし続けていて、海風が優しく包んでいました。
     

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    【9】

    「はぁ……」
    「どうしたんすっか? サクラさん」
    「わたくし……とんだバカですわ……」
    「何言ってんすか。サクラさん、しっかりモップを使えているじゃあぁああ!?(ドッテン☆ バッテン☆ ゴッテン☆)……いつつ、またやってしまったっす」
    「はぁ……」
    「サ、サクラさんがこっちを見てくれないっす……ウケを取る為に転んだっすけど、あは、あはははは」
     いや、マロニカ……あなたの場合、これは素で転んだでしょう。
     
     昨日と同様に城の居館にあるトイレをマロニカと掃除しているサクラでしたが、手つきはテキパキとしていたのですが、その顔色は少々暗い影を落としているようでした。
     というのも、昨日のエルフェと過ごした時間の中で自分が肝心なところで抜かしてしまったものがあったのに、サクラが気付いたからです。 

    「(どうしてエルフェ様はわたくしを呼んでくださったのかしら?)」

     いきなり自分を呼び出したエルフェの行動は一体どこからきたものだろうかと……考えても結局はエルフェから答えを訊かないと分からないとはサクラも承知だったのですが、どうしても考えてしまって……そして考える度にどうしてあの時、訊かなかったのだろうかとサクラは自分自身を責めていたのでした。
     こんな感じでサクラが人間になって二日目の時間は容赦なく進んで行き、あっという間に日が沈んでいきました。

    「……すいませんっす……ウチのせいでまた遅くなってしましたっす……」 
    「……はぁ……」
    「サ、サクラさんっ? い、今のは何かの悩みに対しての溜め息っすよね? そうすっよね? うぅ、お、お願いっすから、そうと言ってくださいっす〜!」
     マロニカによるドジイベントは今日も絶好調のようで、結局、サクラとマロニカはまた最後の方にメイド寮のところへと戻ってきました。
     一階で軽めの食事を取り、部屋に戻ると、マロニカの提案で風呂に向かうことにし、着替えを準備して大浴場に行きますと、サクラとマロニカの二人だけで他には誰もいないと思われていたところに、湯煙の向こうから影がちらつきました。
     どうやら湯船に先客がいるらしく、二人が湯船に向かいますと――。

    「あ、ぬーさん! ぬーさんじゃないっすか! お疲れ様っす!」
    「ぬー」
    「……ぬーさん?」
    「あ、この子はヌオーのぬーさんって言って、いつもメイド寮でお手伝いとかしてくれる、頼れるポケモンなんすよ〜」
    「ぬー?」
    「あ、この人っすか? この人はサクラさんって言うこの前、城の給仕係に新しく入ったワケありの人っす」
    「ぬー」
    「ど、どうもですわ」
     
     水色の体を持ち、その胸元には何か生き物のツメがついてある首飾りをつけたポケモン、ヌオーのぬーさんがサクラに向かって手ひれを挨拶よろしく挙げますと、サクラがぺこりとお辞儀をしました。
     やはりポケモンの能力を失った彼女にはヌオーの言葉さえも分かりませんでした。
     とりあえず、ぬーさんを挟んでサクラとマロニカも肩まで浸かりますと、ぬーさんがサクラの方に顔を向けました。
     サクラも思わず、ぬーさんの方を見ます。
    「な、なんですの……?」
    「ぬー」
    「…………そ、そんなに見られますと、恥ずかしいですわっ」
    「ぬー」
    「え、えっと……」
    「ぬー」
    「…………」
    「…………」
     最初こそ、ぬーさんに見つめられて顔を背けたくなったサクラでしたが、徐々にその気持ちは和らいでいき、果てには、サクラがぬーさんから視線を外すことはありませんでした。
     別に、ぬーさんには『くろいまなざし』があるわけではありません。
    「ぬーさんはウチらの癒しっすからね〜。『癒しのぬーさん』って言われるほど、ぬーさんの癒し力は半端ねぇっすよ〜。それと……」
     そこまで言いますと、マロニカは後ろから、ぬーさんをぎゅうぅっと強すぎず弱すぎず適度な力で抱きしめました。
    「ぬー」
    「……こうやって、ぬーさんを抱きしめるとすごい心が落ち着いてきて、気持ちいいっすよ〜……サクラさんもどうっすか?」 
     マロニカが気持ち良さそうな、ふにゃっとした笑顔を見せており、そして、ぬーさんが一回マロニカから離れてサクラに背中を向けますと……サクラは思わず喉を鳴らしました。
     なんて抱きしめたい背中なんだろうか……! 
     サクラもぎゅうぅっと、ぬーさんを抱きしめました。
    「ぬー」
    「…………」
     適度な柔らかさに感触、不思議と肩の力が抜けていくような感じがサクラに広がり、安堵の一息をその小さな口から漏れていきました。
     なんだか今日一日、自分に愚痴を吐いていたことが馬鹿馬鹿しくなってきて、けれどそれは窮屈になっていたような身が解放された気分で悪いといった感じは微塵もありませんでした。
     流石、癒しのぬーさんと呼ばれることだけはあります……まさか初めて会ったサクラに対してもその能力を存分に発揮していましたから。
     ちなみに抱きしめられている、ぬーさんも気持ち良さそうな顔をしていました。
     一気に場の雰囲気は和んでいき、ネガティブな空気はどこかに飛んでいっていました。 
        
     和やかな一時も過ぎていき、再び部屋に戻ったサクラとマロニカはそれぞれのベッドに入り込み、マロニカはあっという間に寝息を立て始め、遅れること数分、サクラからも寝息が立ち始め――。
     
     昨晩と同様、また木窓からトントンと短い音が鳴りました。
     サクラは身を起こし、ベッドから降りますとすぐに木窓の方に寄ります……昨日のことを思い出したのでしょう、その顔はとても活き活きしているようなものでした。
     サクラがその木窓を開ければ、そこには彼女の予想通り、一匹のポッポが昨晩と同様に一枚の紙をくわえていました。
     そこに書かれていることは彼女には理解できませんでしたが、次に行動することは決まっていました。
     昨晩、マロニカにやってもらったロウソクに火をつける行為をサクラは見様見真似で挑戦してみます。
     近くに置いてある小さな箱に手を伸ばしますと、そこからマッチ棒を一本取り出して箱の側面に赤い部分を擦っていきます。
     慣れない作業に中々、火がつかなかったのですが、ようやく短い摩擦音がいい感じに鳴るのと同時に火がつき、「あちち!」と言いながらも燭台にある一本のロウソクには灯りがつきました。
     マッチの火を消し、サクラは燭台を持って部屋を出て行きます……周りには常に警戒を払って、ばれないように、ばれないようにと、昨晩と同様にサクラは慎重に歩を進めていきます。
     この調子なら今晩も問題なくメイド寮を抜けられるとサクラが思った矢先でした。

     一階からぼんやりとした明かりがサクラの目に止まりました。
     
     階段は一階の出入り口から向いて真っ直ぐ昇って左に九十度曲がる、直角タイプの階段で、直角からは壁が置かれている為、外からは覗けません。
     とりあえず、サクラは直角ポイントの前で立ち止まると、一階からは話し声も聞こえてきました。
    「……でさ……で……」
    「……マジ…………それ……?」
    「本当よ…………だから」
     サクラのいるところまではハッキリと会話の内容は届いていませんでしたが、それでも話声がするのは確かで、このまま行けば確実にばれてしまいます。
     さて、どうしたものかとサクラが困った顔をしながら思案を練ろうとしますと。

     何やら肩に柔らかく触れるものが――。

    「――――!!??」
     なんとか声は出さなかったものの、ばれてしまった? とサクラが振り返り、その手にある燭台を後ろにいるであろうものを照らしました。
     胸にあるのは何か生き物のツメがついてある首飾り、そして体は水色に染まってある――。

    「ぬー」
    「……ぬーさん?」
     サクラのその言葉に、ぬーさんが手を挙げますとそのまま手ひれでサクラの腕を掴み、グイグイと引っ張ります。
     一方、サクラは誰であろうと秘密の行動がばれてしまって本来なら慌ててしまう状況だったはずなのですが……ぬーさんの顔を見ると不思議と気持ちが落ち着いていました……ぬーさんの癒し力はいつでもどこでも発揮するようです。
     しかし、和みっぱなしというわけにもいきません。
    「あ、あの……ぬーさん」
    「ぬー、ぬー」
     ぬーさんは相変わらずグイグイとサクラの腕を引っ張っています。
    「……え、えっとぉ……部屋に戻れということですか?」
    「ぬー」
     仕方なくサクラはぬーさんの行動を訳することになりましたが……ぬーさんが顔を横に振る限りこの答えは違うようです。
    「ん……もう寝ろということですか?」
    「ぬー」
    「えっと、これから説教ということですわよね?」
    「ぬー」
    「じゃあ……ついてこい、ということかしら?」
    「ぬーぬー」
     ようやく、ぬーさんが頷きました。
     ポケモンの言葉が分からないなんて本当に不便だと、元プルリルのサクラはやはり思ってしまうところでしたが……この今、自分に置かれている状況は自分が望んでなったもの。ならば、それに屈しないようにしなければとサクラは思いました。
     
     ひとまず、ぬーさんについていくことにしましたサクラがそのまま歩いていきますと、一番奥の一室に案内されました。
     ぬーさんが慣れた手つきで扉を開け、サクラがそこに入りますと……そこは何もない殺風景な部屋でした。
     サクラが辺りをうろうろと歩いていますと、ぬーさんに呼ばれました。
    「ぬーぬー」
    「なんですの……?」 
     ぬーさんが手ひれを床にぽんぽんと軽く叩きますと、なんと、その床を抜きました。
     目を丸くしているサクラをよそに、ぬーさんは抜いた床をその辺に置くとその開いた空間の中に消えています。
     とりあえずサクラが燭台をその開いた空間に近づけますと、そこにはハシゴらしきものがありました。
    「えっと……進めばいいのですわよね……?」
     しかし、ハシゴのことを知らなかったサクラですから、ハシゴには手をつけずにそのまま思いっきり開いた空間の中に身を投げました。
     その後にボールが軽く跳ねたかのような柔らかい音が鳴ります……ぬーさんがサクラをキャッチしてくれたようです。
    「ぬー」
    「あ、ありがとうございますですわ」 
     ぬーさんにお礼を言ってからサクラは降り、奇跡的に火がついたままの燭台を元に、ぬーさんが先にそしてその後にサクラが続いて歩いていますと……そこには一つの扉がありました。
    「……まさか、ここから外に?」
    「ぬー」
     どうやら、ぬーさんはサクラの為に抜け道を教えてあげていたようです。
     サクラは再び、ぬーさんにお礼を言いますと扉の鍵を開けて、外へと繰り出しました。
     そこはどうやら裏口のようで、眼前にはまた綺麗な夜空が続いており、夜風もいい感じに吹き抜けていきます。
    「ぬーぬーぬー」
     ぬーさんが恐らく正面口に待っているであろうエルフェの元に走りに行ったサクラの背中を見送りながら、片手ひれを挙げて振っていました。 
     
     それにしても、ぬーさんはどうしてサクラが外に出たいということが分かったのでしょうか?
     ポケモンならではの勘とか鋭さといったものからなのでしょうか?
     そして、サクラのことを手助けしたのは一体……?

     そのような疑問は目的を果たして満足なサクラの心には浮かびませんでした。


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 
     
    【10】

     寄せては返す海の波は留まることなく、今宵も二人――サクラとエルフェの眼前で行われていました。
     昨晩と同じく、浜辺に到着した二人は白い砂浜の上に座っていて、道中明かりの役目を果たしてくれた色違いのブラッキーは主であるエルフェから許可を得て、夜の浜辺を闊歩(かっぽ)していたクラブと遊んでいます。
     ブラッキーの楽しそうな声が聞こえてくる中、サクラの口が先に開きました。
     緊張はしていましたが、昨晩ほどひどくはないようで……もしかしたら、ぬーさんの癒し力には高い持続性があるかもしれません。
    「あ、あの……エルフェ様」
    「……ん? なんだ?」
    「その……エルフェ様はどうしてわたくしをお呼びになられたのでしょうか?」
     その言葉を聞いたエルフェ様がちょっとの間、何かを考え込むかのように黙りますと、やがてポケットの中から物を取り出しました。
     桃色の皮をかぶったものに何やら葉っぱが一枚巻かれています。
    「それは……?」
    「桜餅」
    「さくら……もち?」
    「知らぬか? 和の国から急いで取り寄せてもらったやつなのだが」
    「ええ、初めて見ますわ」
     興味津々に桜餅を見つめているサクラの顔に、エルフェは訝しげな顔をしました。
    「……お前の名前、サクラだったろう? ……もしかしたら桜餅と関係があったかもしれないと思ったのだが、違ったか」       
    「え?」
    「…………桜餅みたいにほっぺたは伸びるのにな」
     何を思ったのか、エルフェがサクラの頬をつねってむにむにと伸ばしたりして弄んでいました。
     この王子様が取った、いきなりの行動にサクラの目は点になっていきます。
    「ひゃ、ひゃの……? ふぇふふぇしゃま……?」 
    「サクラと桜餅……何かしら関係があったかもしれないと思ったが、うむ……俺としたことが、このような単純なことで記憶が簡単に戻るなど……まだまだ甘いな」
    「ひゃひゃう、ひゃの。ひゃって、ひゃひゃおう」
    「……それにしても、よく伸びるほっぺただな……」
     この後もエルフェはサクラのほっぺたを伸ばしたり、戻したりを繰り返していき、ようやく終わった頃にはサクラの頬は赤に染まっていました。
     サクラは頬をさすりながら、不服を唱えようとしましたが、エルフェの口が開く方が早かったようです。 
    「まぁ、折角だからそれでも食っておけ。うまいぞ?」
    「……え、えぇ。分かりましたわ」
     手に乗せられた一個の桜餅を見て、サクラはゴクリと喉を鳴らしました。
     柔らかそうな桃色の丸い物体がサクラの胃袋を刺激しているようで…………やがて、サクラからお腹の虫が鳴き声をあげ、エルフェは笑い、サクラは恥ずかしそうな顔になりました。
    「い、いただきますわ!」
    「うむ、食べろ食べろ。おかわりならあるからな」
     頷きながらサクラはもぎゅもぎゅと食べ続けます。甘くてよく伸びる皮もさることながら、中に入っている餡も甘くてサクラの舌を興奮させていきます。もちろん初めて食べるものですからその興奮度はかなり高いものです。目をらんらんと光らせながら桜餅を食べているサクラをエルフェはただ微笑みながら見ていました。
    「むぎゅ!?」
     いきなりサクラが握り拳の右手で喉元を強くたたき出したのでビックリしたエルフェですが、サクラが餅を喉に詰まらせたということをすぐに把握しますと、ズボンのポケットから小さい樽状の水筒を取り出し、サクラに飲ませました。
    「ぷっはぁ……た、助かりましたわ」
    「まったく、そんなに急がなくても桜餅は逃げん。強情な奴だな、お前は」
    「は、初めての食べ物でしたから! な、慣れていなかっただけですわっ」
     強情な奴……サクラはエルフェのその言葉に思わず自分のことを重ねていました。確かに、自分は大好きな人に逢う為に、距離を縮ませたい為に、ポケモンの姿を捨て、人の姿を手に入れた……エルフェの言う通り強情な女かな、とサクラは思いました。
    「……とまぁ、お前を呼んだのはそういうことだ。記憶をさっさと取り戻してくれないと、色々と困るからな」
    「……! あ、ありがとうございます」
     顔を再び海の方に顔を向けたエルフェにサクラの顔が明るく、そして同時に申し訳ない気持ちが芽生えていました。
     自分は記憶喪失でもなんでもなく、プルリルというポケモンでしっかりと記憶もある…………ふと、サクラはエルフェに正体を明かそうかと思いましたが、止めました。
     今は、なんとなく、そのときではないと。どちらかと言えば、隠したままでは悪いし、いつかは明かさなければいけないかもしれないとサクラは思っているのですが、タイミングが今ではないと感じていました。
     ……しかし、サクラはもしかしたら、タイミングが合わないというよりも恐れている気持ちが強いかもしれません……もし、正体を明かしたら怖がらせてしまうのではないだろうか? という見えない不安要素がサクラの心の底にうずくまっていそうでした。   
    「さて……そろそろ戻るか」
    「……はい」
     エルフェの掛け声に「きゅい!」と返事しながらブラッキーが戻ってきますと、二人と一匹は城に戻るべく、歩き出しました。
     これで今宵のエルフェとの触れ合いは終わり……明日が終われば、サクラは泡になって消えてしまいます。
     果たしてエルフェとキスすることができるのでしょうかという不安もありましたが……その後、エルフェと一緒にいることができるのだろうかという不安もサクラの中に芽生えていました。

     こんなにも近くにある背中が遠いような感じがするのはきっと気のせい、きっと――。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――    

    【11】

     ポッポやマメパト達が騒がしく目覚めの運動がてら青空を飛んでいる――サクラが人間になってから三日目の朝がやってきました。
     本日も給仕係として慌ただしい一日がサクラを待っているかと思いきや――。

    「給仕係のサクラだな? 貴様を牢に入れることになった」
    「ど、どういうことですの、これは!」         
    「サ、サクラさん!? あ、あのこれは一体なんなんすか!?」

     さて、本日も給仕の仕事に取り掛かろうとメイド服に着替え、寮から出た矢先にサクラとマロニカを待っていたのは頭から下まで鎧をまとった城の兵が五、六人でした。兵達は皆、槍を持ってその刃先をサクラに向けていました。
     もちろんこの唐突の出来事にサクラもマロニカも混乱していて、兵達に訳を尋ねますが、その説明は後だと一蹴されてしまい、最終的には「早くついてこなければ、この場で串刺しにしてやってもいいのだぞ!」と脅されてしまいました。
    「…………分かりましたわ。とりあえず、従いましょう」
    「!? サクラさん!? サクラさんは何もやってないですよ!? 一体あなた達は――」
    「うるさい! お前も牢にぶちこまれたいのか!?」
     一人の兵が槍をサクラからマロニカの方に向けるのを見て、サクラが叫びました。
    「用があるのはわたくしでしょう!? マロニカには何も危害を与えないで欲しいですわ!」
     何が原因なのかは見えてこないものの、とりあえず自分が兵達の指示に従わないでいるとマロニカに怪我をさせてしまうと、サクラは思いました。
    「サ、サクラさん……」
    「マロニカ、わたくしは大丈夫ですわ…………わたくしが戻るまでにはお仕事を殆ど終わらせていると助かりますわ」
     自分も何が起きているか分からない、だけれども、マロニカには心配させまいようにサクラは努めて微笑んで言いました。たった二日間とはいえ、マロニカとは給仕仲間であり――友達でもあるのですから……その友達を傷つけるわけにはいかないと。それに何も知らなかった自分にあれこれ教えてくれたりと世話になったのにここで怪我をさせてしまっては申し訳ないとサクラは思いました。
     その後は「よし行くぞ」という兵の声に合わせて、サクラが歩き出し始めました。兵に囲まれ、背中には槍の刃先をつきつけられ、逃げることはできません。少しでも怪しい動きを見せたら串刺しにする所存のようです。
     牢屋に向かって歩き続ける中、サクラは嫌な胸騒ぎがして仕方ありませんでした。この先何かが起きそうな気がして――ポケモンの本能は消えようとも、その感覚はサクラの中にありました。顔色が悪くなっていくサクラの耳には兵達の鎧が擦れる音しか届いていませんでした。
      

    「さぁ、さっさと入れ!!」
    「きゃっ!? な、何をするのですか!?」
     兵に背中を強く押され、よろきめきながらサクラは牢の中に入れられました。
     城の居館の隣に地下に続く階段が一つあり、その地下には罪人達が捕らえられている複数の牢屋が連なっていました。衛生面は決してよくなく、時々漂う鼻を曲げたくなるような臭いに、ドブコラッタなどがあちこち走るなどは日常茶飯事であります。
     更には――。
    「おい、女が入ってきたぜ」
    「女だぁ……!」
    「へへへ! お譲ちゃん! こっちの牢屋で遊ばねぇか? 牢屋はつまんねぇとこだぞ? ぐへへ!」
     野郎共の下品な言葉が交う始末、まさに地獄という言葉が似合う場所です。ちなみに、サクラが入った牢屋の中には幸いといっても大丈夫かどうか保証しかねますが、一人の寡黙そうな老人がいるだけでした。
     とりあえずサクラはこの嫌な空気に吐き気を覚えそうになりながらも、自分を牢屋の中にぶちこんだ兵に尋ねます。ちなみに、牢屋という言葉はマロニカから教えてもらっており、またその意味も知っています。
    「どうして、わたくしをこんなところに入れましたの?」
    「どうしてだと?」
     顔を隠すことができるタイプのヘルムなので、サクラからその顔を覗くことは叶わなかったのですが、兵は眉間にシワを寄せて言い放ちました。
    「自分が何をしたのかも分からないのか!? この悪魔!」
    「分からないからこうして訊いているのでしょう!?」
     確かにサクラの言葉にも一理あります。
    「な……! なるほど流石は悪魔だ。みなまで言わせようとは、いいだろう、だったら改めて教えてやる」
     兵の言葉が力強く――。

    「お前は昨晩、そして一昨日の夜、王子様を浜に連れていき、たぶらかし、悪の道を説こうとした悪魔なんだよ!」

     サクラの目が大きく見開かれたのは言うまでもありません。
     自分が王子様をたぶらかそうとした悪魔? 何を言っているのかサクラには全く理解できませんでした。自分はただ単にエルフェに恋をし、お近づきになりたくてここまで来ただけなのに。
    「そ……そんなこと……」
     ようやくサクラの喉から絞って出てきた声は弱々しく、覇気は微塵もありませんでした。   
    「お前は今日の夜、火刑に処することになった! 今から、懺悔でもしとけば神なら許してくれるかもな? アハハハ!」
     兵の「ざまぁ見ろ」と言った感じの笑い声も、周りの囚人達が巻き起こすブーイングも、全て、サクラの耳には届いても頭に入っていくことはありませんでした。ただ、信じられない言いがかりに気が動転して、まるでグルグルと目が回るかのような錯覚に陥っていました。


     空を閉ざされたこの空間では時間の経過など分からず、しかし、確実に時は流れており、サクラが火刑にされてしまう時間も刻々と近づいて来ています。
     ようやくサクラの意識が元に戻ったときには、外の世界では夕日が空を橙色に染めていた頃でした。
    「どうして……こんなことになってしまったのかしら……わたくし、何もやっていませんのに」
     兵達の信じられない言いがかりに悲しみとショックを乗り越えて、悔しいという気持ちが膨らんできていているようで右の拳が力強く握り締められ、震えています。
     目頭から大きな涙の粒が一つ、二つ、三つ……地面に落ちては跡を残していきます。
     悔しい、自分のやってきたことがまるで否定されたかのようで、この恋は最初から駄目だったって言い聞かされているような気がして――。
    「そこの可愛いお嬢ちゃん、そんなに泣かないでおくれ。どれ、わしのタオル……は汚いから止めた方がよいな。まだそのメイド服で拭いたほうがええ」
    「……?」
     涙を零しながらサクラが顔を上げると、そこには一緒に牢屋の中に入っていた老人が立っていました。
     肩まで伸びた白髪はボサボサな毛並みで、前髪は見事に目元を覆っていて白いヒゲもたくさん蓄えています。
     とりあえず、サクラはその老人の言う通りにメイド服の裾で涙を拭うと、老人は「ほほほ、お嬢さんには涙も似合うが、あまり泣いていてものう」と笑いながら語りかけてくれました。その優しそうな雰囲気にサクラは不思議と導かれるように立ち上がりました。
    「ほ、ほ、ほ。座ってていいんじゃぞ、お嬢ちゃん」
    「あ、は、はい」
    「ほほほ、なんか大変そうなことになっておるのう。こんな可愛い子が悪魔じゃと、あやつらも目がないのう。こんなに可愛い天使じゃというのに。あやつらのほうがよっぽど悪魔じゃ」
     そうだ、そうだとサクラは力強く首を振ります。
    「じゃが、あやつらは自分の言うことをこれでもかというぐらいに正当化にしてくるからタチが悪い」
     今度は周りの牢屋の中の囚人達がそうだ、そうだと叫びます。
    「すまぬが、わしらでは何もすることができん。助けることもできん。じゃが、お嬢さんの未来を占ってしんぜよう」
    「でた! じいさんのインチキ占い!」
    「ねぇちゃーん、このじいさんの占いは多分、あたらないぞ〜」
    「捕まっても、こりねぇな、あのじじいは。というか、これから死ぬ子に未来を占うって」
    「とにかくじゃ! 外野の言葉はスルーして、始めようかのう? すまぬが左手を出してくれんか?」
    「は、はいですわ……」
     恐る恐ると淡雪のような白くて小さな左手をサクラが出しますと、老人は手に取り、顔を近づけます。どうやら手相占い系のようで、老人はひたすらサクラの手の平を見ているようです……前髪が両目を被ってしまっていて必死にサクラの手相を見る老人の瞳を覗くことはできそうにないのですが。しばらく「う〜ん、う〜ん」と唸りながらサクラの手相を真剣に見ていた老人でしたが、やがて唸り声は止まりますと、サクラの方へと顔を見上げました。
    「ふぅ……確かに悪い相が出ておるのう」
     確かに、牢屋に入れられた上にその日の内に火刑にあうのですから、悪い相が出てきてもおかしくありません。サクラは心配そうな顔で老人を見つめます。そのサクラの心情を背中で察したのか他の牢屋から「コラーじじい! お前、何、泣かしてんだよ!」「おい、クソじじい、いじめてんじゃねぇぞ!」と言ったヤジが飛んでいます。
    「外野は黙っとけ!」
     ここで老人は一つ咳払いを入れて、整い直しますと、話を続けます。
    「全く……人の話を最後まで聞かんやつめ……。いいかね、お譲ちゃん? まだ終わりじゃないんじゃよ」
    「え?」
    「きっといいことがある。きっとのう」
    「いいことってなんですの?」
    「それは分からぬよ。わしは預言者ではないからのう……ただ」
     表情を伺うことはできなかったのですが、サクラには老人が微笑んでくれたような気がしました。
    「きっと、この先のう、いいことがある。自分自身を信じてやってのう?」
    「自分自身を……信じる……ですか」
    「うむ」
    「…………ありがとうございますですわ」
     なんだかよく分からなかったというのがサクラの見解でした。一体いいこととは何なのか? 具体的なものを知りたいということも正直思いました。しかし、もう一回、自分の手の平を見てから老人の方を見ると、不思議とサクラの気分は落ち着いていました。なんだかこの老人の言うことがとても嘘じゃないような気がしたからです。

     老人に手相を見せてもらって、それから少し経つとまた兵が牢屋前に現れ、サクラにメイド服を脱ぐようにと言い放ちました。
     このまま刃向かっても仕方ないと判断したサクラは嫌な顔をしながらもメイド服を脱ぎ始めます。周りの牢屋からは「ヒュー!」と何かを期待しているかのような歓声が沸きあがりますが、サクラが生地が薄くて白いワンピース姿になったところで兵が待ったをかけました。どうやらこの姿でサクラは火刑にあうようです。もちろんと言ってはアレですが周りの牢屋からはまたブーイングが起きました。
     そして、兵に手首をロープで巻かれ、そして「歩け」という命令に嫌々ながらも従います。サクラに逃げられないように今朝と同様、四人の鎧をまとった兵達がサクラを囲み、一本の槍の刃先がサクラの背中に向けられていました。
     がしゃん、がしゃんという兵達の歩く音と共にサクラも歩いていき、牢屋を後にしました。周りの牢屋からは「悪魔兵〜!」「お前たちの方が悪魔だクソ野郎〜!!」といった罵詈荘厳(ばりそうごん)が飛び交いますが、兵達は歩みを止めることなく歩き続け、サクラも歩き続け、ついにその背中は階段の奥へと消えていってしまいました。
    「……おい、じじい。お前も悪魔だなっ。もう死ぬのが確定な子にいいことがあるよって。なんだ? あの子は死後、救われるとか、そういうことを言ってんのか!?」
     老人が入っている牢屋に向かい合った他の牢屋から、一人の男が声を上げました。
    「占いは当たるもはっけ。当たらぬもはっけ……絶対ではないんじゃよ。あの子の死後なんて分かるわけあるか、馬鹿もん。さっきも言ったが予言じゃないんじゃよ、占いは」
     この老人――実は捕まる前には占い屋をやっていたらしく、でも全然当たらないことに腹を立てた貴族が「インチキ占いだ!」と断言し、牢屋の中に入れられた者でした。老人はその貴族のことを思い出したのか一瞬、溜め息を漏らしましたが、すぐに……穏やかな声音で不思議そうに語りました。
    「予言ではないが……あのお譲ちゃんの場合、きっと当たりそうな感じがするんじゃよ……なんとなくのう。不思議じゃがな」
    「はぁ!?」
     ワケ分からないといった感じに眉間にシワを寄せた男に対し、老人は笑っていました。

    「ほ、ほ、ほ。老人のカンをなめるでないぞ、若造よ」
    「ボケただけじゃねぇの? じじい」
    「ボケてなんぞおらんわ!」


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    【12】

     外の世界では夕日はもうとっくのとうに沈んでおり、城の広場では人だかりが出来ていました。この城下町の中央広場でどうやらサクラは火刑――公開処刑にされるそうで、広場には火刑台一式が設置されていました。
     ちなみにこの城下町はレンガ造りの家が主で、周りを見渡しますと赤茶色の民家を始め、教会などがぐるっと大きく円状に囲むように建っています。その開いた空間が中央広場で、他にも数箇所広場がありますがこの城下町では一番の広さを持つ広場です。祭や、また超有名な罪人の公開処刑などに使われていることもあります。
     ランプのほのかな明かりが周りを漂っている中、兵達と共にサクラが現れると、中央広場に集まって来た人達の騒ぎ声が一層高まります。
    「ねぇねぇ……あの子が王子様をたぶらかした、っていう悪魔?」
    「……可愛そうに。まだ子供じゃないか」
    「な〜に言ってんだよ。悪魔なんだから実年齢は分かんねぇぞ? 意外と千歳を超えた超ババァだったりしてな」
    「幼女に化けた男の悪魔だったりしてな」
    「オイオイ、なにそのホモ悪魔は」
    「ねぇ〜ママ? あくまさんってキバとか生えてないの? ツバサとか、シッポとか生えてないの〜? あのおねえちゃん、生えてないよ〜?」
     このような感じで中央広場に集まってきた人達はサクラに興味津々でした。
     さて、いよいよ火刑台に到着したサクラはまず台の上へと進まらされます。火刑台の造りは下にワラを束にしたものが敷き詰められ、その上には歩く為のの板、そして人間の身長をはるかに超える長い鉄の棒が刺さっていました。サクラはその鉄の棒まで歩くと兵に止まるように言われ、そこからしめ縄で鉄の棒に張り付けられる姿になってしまいます。
     もう死ぬ……というときに限ってサクラの表情は険しいものの、心の中は落ち着いているものでした。初めて見る火刑台、そして信じがたい処遇……しかし、あの老人の言葉を思い出すと不思議と落ち着くことができるのです。一体どうしてなのかはサクラにも分かりません。火刑の意味は教えてもらったし、このままだと自分がどうなるかということは理解しているはずなのに。もう諦めた、という色はサクラの瞳の中にはなかったのです。
    「さぁ! ここにいるのは、王子エルフェーヤ様をたぶらかしたとされる悪魔! 今ここに――」
     処刑準備が終わり、いよいよとばかりに一人の兵が声をあげた瞬間のことでした。
     ポツリ、ポツリとサクラの鼻に何かが当たりました。
     それは、やがて中央広場に降り注ぐ雨になりまして――。

    「ぬーさん! ハイドロポンプっす!」
    「ぬー!!」
    「なっ!?」

     直後に一人の兵が強力な水流に吹っ飛ばされました。そして、サクラの前に現れたのはヌオーのぬーさんと、焦げ茶色の髪と顔にそばかすをもった――。 
    「ぬーさん、マロニカ!?」
    「大丈夫っすか!? サクラさん!」
    「ぬー」
     サクラのところに駆けつけたマロニカとぬーさんはなんとかサクラを巻きつけているしめ縄を外そうとしますが、中々外れません。そうこうしている内に、呆気にとられていて動けずにいた兵達の意識が元に戻ります。
    「コラ!! 何をやっているのだ!? キサマ!!」
    「はひっ! や、ヤバイっす!! は、早く解かないと、これがこうで、あれで……」
    「マロニカ!? わたくしのことはいいですから早く逃げないと――」
    「嫌っす!!」
     マロニカが声を荒げ、サクラは驚きました。ちなみにサクラ達に近づいてくる周りの兵達に対し、ぬーさんがハイドロポンプなどで対抗し始めました。これで少しは時間は稼げそうです。
    「サクラさんはウチの友達っす! おまけにこんな急に処刑を行うなんて絶対おかしいっす! 絶対何か裏があるっすよ!」
    「マロニカ……」
    「く……中々、解けないっすね、この縄。すいませんっす、自分、不器用なもんっすから」
    「……今日の給仕の仕事は殆ど終わらせられたの?」
    「えへへ。途中で抜け出しちゃったっす」
     そう苦笑しながら必死にサクラを捕らえているしめ縄を外そうと必死なマロニカを見て、サクラの涙腺が熱くなりました。一緒にいたのはたったの二日なのに、ここまで自分のことを思って……。クビにされる覚悟で駆けつけてくれたマロニカにサクラは胸がいっぱいになっていました。
    「それにしても……マズイっすね。このまま、ぬーさんに時間稼ぎしてもらうのも――」
     マロニカが舌打ちを打とうとしたのと、炎をまとった大きい白い馬――ギャロップが人だかりの後ろから飛んで、一瞬で火刑台の前にたどり着いたのはほぼ同時のことでした。そのギャロップには人が乗っていたようで、その人物は――。
    「無事か!!??」
    「エルフェ様!?」「王子様!?」
     ギャロップから飛び降りて、二人に駆け寄ってきたのは漆黒のスーツに身をまとい、赤いマントを羽織ったエルフェでした。その腰には剣が携えられています。
    「とりあえず、この場から退くぞ!」
     そうエルフェが叫びますと、鞘から剣を取り出し、しめ縄を素早く切りますとギャロップを呼び、まずサクラとマロニカを乗せ、続いて「ぬーさん!」というマロニカの声にぬーさんがギャロップのところへ足早に向かい乗ると、最後にエルフェが乗り込みました。その後、ぬーさんが目くらましの為の『くろいきり』を放ちますと、人間三人とポケモン一匹を乗せることができる大きくてたくましいギャロップは、エルフェの指示と共に走り出しました。
     雨が降り注ぐ中、ぬーさんが放った『くろいきり』がやがて晴れますと、そこにはもうサクラ達の姿はありませんでした。
     集まった人達がざわざわと騒ぐ中、一人の兵が叫びました。

    「黙れ黙れ! お前達、黙れ!!」

     その兵の叫び声は轟音のように響き渡り、周りの人達が口を閉じ、辺りは水を打ったかのように静まりかえりました。その兵はハァハァと肩で息をしていて、心臓の音もかなり高鳴っていました。それは火刑者のサクラを逃してしまったという意味で――。

    「計画がちょっとズレちまったが……テロを始める!!」

     不穏な叫び声が雨空へと響いていきました。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    【13】

     雨が世界に降り続く中、サクラ達を乗せたギャロップは城に飛び込み、居館には向かわずにエルフェの指示で向かった場所は小さな小屋――あの日サクラとエルフェが通った、例の抜け道があるところでした。そしてギャロップから先に降りたサクラ、マロニカ、ぬーさんはその小屋の中へと入っていき、最後にエルフェが降り、ギャロップをモンスターボールの中に戻します。炎タイプであるがゆえに苦手な雨の中を全力疾走で駆け抜けたギャロップの疲れはピークを達していました。
    「お疲れだったな……ギャロップ。ゆっくり休んでくれ」
     モンスターボールに――ギャロップにそう微笑んで語りかけた後、エルフェも小屋の中に入ると例の色違いのブラッキーを出し、その場が少し明るくさせます。続いてエルフェは肩掛けタイプ鞄からマッチとランプを二つ出し、灯りをつけますと一つはサクラに、もう一つはマロニカに持たせました。
    「じゅ、準備万端なんっすね」
    「備えあれば憂いなしという言葉もあるからな」
    「こ、この後はどうするつもりなんですの……?」
    「とりあえず、一旦浜まで逃げるか。さっき来た道を戻るには雨に濡れながらは嫌だろ?」
    「すいませんっす。ぬーさんの奇襲攻撃作戦を確実にする為に、ぬーさんには『あまごい』をしてもらったんっすよ」
    「ポケモンの技で降らした雨は通り雨のようなものだ。この抜け道を抜ける頃には晴れてるだろう。それに俺はラプラスも持ってるからな、万が一の場合はコイツの力を借りればいい。そう考えると浜辺の方に向かった方が得策だな…………よし、行くか。ブラッキーも頼むぞ」
    「きゅい!」
    「ぬーさんもよろしくお願いしますっね」
    「ぬー」
     それからブラッキーを先頭にエルフェを先頭にサクラ、ぬーさん、マロニカという順番に抜け道を通り抜け始めます。ランプの灯りにブラッキーの発する灯りで明るさに関しては問題ないようです。
    「それにしても……驚いたぞ。まさか遠征の途中で緊急の呼び出しがあって、帰ってみればサクラが処刑されるところであったしな」
    「サクラさんが王子様をたぶらかす悪魔なんて、アイツら絶対おかしいっす! それに真夜中に王子様とサクラさんが会っているという噂まであるっすけど」
    「………………」 
     サクラは申し訳なさそうな顔になりながら黙ってしまいました。助けてくれて嬉しいという気持ちはもちろんあるのですが、なんだか迷惑をかけてしまっているところもあると思っているようです。
    「……俺とサクラがここ二日、浜辺で落ち合ったのは本当の話だ」
    「えぇ!? そ、そうなんすか!?」
    「え!?」
     噂話が本当だったことにマロニカが驚いたのと同時に、サクラも驚きました。まさか本当のことをここで告白するとは思わなかったのです。一体どうして何を思ってここで告白したのでしょうかとサクラは訝しげにエルフェのことを見ます。
    「だがな……勘違いするな。俺は決してサクラにたぶらかされたのではない。俺は――」

     刹那――足元のブラッキーが「きゅーい! きゅーい!」と前方を見定めながら威嚇し始めました。

    「お〜う? こんなところに王子様発見〜」
    「ラッキー♪ コイツらが逃げそうな場所に張っといて正解、正解♪」

     その言葉と同時に、サクラ達の前方に灯りが一つ、二つ点き、やがて声の主が現れました。
     一人は体格が横に広がった堅そうな男、もう一人はのっぽでやせている一見弱そうな男、二人とも黄土色の半袖の上着に、下は黒と白のボーダー柄の長ズボンの出で立ちでした。また二人とも片手には松明(たいまつ)もう片手にはサバイバルナイフを装備しています。
    「何者だ、貴様達は」
     そう尋ねながらエルフェは片手を剣の柄に置きました。どう考えても相手は敵意しか向けていない雰囲気のゆえにエルフェは鋭い目付きで相手を睨みながら警戒しています。
    「おいおい、そんなに怖い顔をしなくてもいいじゃん?」
    「そうそう、こうやって感動の再会を果たしたわけだからさぁ」
    「御託はいい、質問に答えろ」
     足を一歩、すり足で相手の方に近づけるエルフェに、男二人はしょうがないなぁといった顔で答えました。
    「まぁ、オレたちはいわゆる泣く子も黙るテロリストってやつ? ちなみにオレはジャン」
    「一回、会ったこともあるはずなんだがなぁ。あ、おれはクーね」
    「あははは! おっまえ、そりゃあ覚えてないよ」
     あわわと口元をわたわたさせるマロニカに、なんだか恐ろしい感じを受け取ったサクラも冷や汗をタラリと垂らしました。

    「だって、コイツ寝てたもん」

     この瞬間、エルフェは目を大きく見開かせて、それから一瞬だけサクラの方に視線を移しました。どうやら何かに気がついたような顔付きであります。
    「おいおい、王子様よぉ! 感動の再会の挨拶といこうかぁ!?」
    「!!」
     エルフェが一瞬視線を外した隙を突いたかのように男二人組がいきなり襲い掛かってきました。エルフェは「下がれ!」とサクラとマロニカに指示しながら、剣を抜き、相手の刃を止めました。キーンという甲高い金属音が抜け道の中に響き渡ります。
    「く、ブラッキー細い男に噛みつけ!」
    「そうはさせるかよ! グラエナァ! 出番だぜ!!」
     ブラッキーが細い男――クーと名乗った男に噛み付こうとした瞬間に、ブラッキーの体が斜め上に吹っ飛ばされ、天井に叩き付けれました。「きゅい!!!」という短い悲鳴が鳴り響き、やがて地面に落ちそうなところをサクラがなんとかキャッチしました。そして、灯りの中に現れたのは一匹のグラエナで、荒い鼻息を一つし「どうだ!」と言わんばかりの顔をエルフェ達に向けています。
    「……ほう、中々、速いグラエナだな」
    「へへへ、大人しく死んだ方が楽じゃねぇの? 今ならグラエナの餌になれるぜ? ハハハハ!」
     エルフェの刃とジャンとクーのサバイバルナイフの押し合いの最中、ジャンの下品な笑い声が抜け道を木霊していき――。

     深く重い殴打音とグラエナの悲鳴が聞こえました。

    「きゅい!!」
    「なんだと!?」 
     いきなり後ろからブラッキーが現れたことにジャンとクーは驚いています。なんとかよろめきながら立ち上がったグラエナも動揺を隠せないままでいます。 
    「……まさか、みがわりか!?」
     ジャンがそう答えを出したのとエルフェがニヤリと口元を上げたのはほぼ同時でした。実はグラエナが最速の『たいあたり』を決める前にブラッキーが『みがわり』を使って後ろを取っていたのです。グラエナが相手を倒したと慢心した隙を突いてブラッキーが『でんこうせっか』をグラエナの急所目掛けて、ぶつけた、ということです。しかし、急所に当てたとはいえ、まだ体力が残っている様子のグラエナは気持ちを切り替えてブラッキーに立ち向かっていきます。
    「く、中々やるブラッキーじゃねぇか」
    「ふん。貴様達に褒めてもらっても嬉しくもなんともないがな」
    「……それより、こっちばかりに気をかけてもいいのかい? 王子様よ?」
     依然と剣とサバイバルナイフの押し合いをしている中、クーがニヤニヤと嫌らしい笑みを見せながらエルフェに問います。

     エルフェが「何?」と言った次の瞬間、悲鳴が一つ響き渡りました。

    「マ、マロニカ!!」
    「おっと、動いちゃダメなんだぜ? お譲ちゃん。動いた瞬間にこの子の首をキリキザンにしちゃうんだぜ? ヤッハー!」
     いつの間にか、後ろを取られていたのでしょうか? 一番後ろにいたマロニカが一人のサングラスをつけた男に捕まってしまいました。その男の服装もジャンとクーのものと同じといったところから、どうやら仲間のようです。
    「く……いつのまにっすか」
    「へへへ、気配を殺すなんて朝飯前なんだぜ? ヒャハハハ!」
     そのサングラスの男は右手でマロニカの右手首を強く握り、ナイフを持った左手をマロニカの首元に置いています。刃先が喉に軽く当たっていて、マロニカは恐怖で思わず喉を鳴らします。
    「く……卑怯な」
    「へへへ、なんとでも言え」
    「あの子を助けたかったら、武器を収めるんだな」 
     しかし、エルフェがその誘いに乗ったところで果たしてサクラもマロニカも無事であるのか? というのは火を見るより明らかでした。大抵、こういう奴らは女を犯すものですし……仮に命が無事でもこの先の人生真っ暗です。
    「く……ぅ」
    「ぬー」
    「ヒャハー! そこのヌオーも動くんじゃねぇんだぜ? 動いたらこの女はクビチョンパなんだぜ?」
     刃先を軽くマロニカに当てていたサバイバルナイフを一旦、サングラスの男が自分の口元に持っていき、ソレを舐めた――。

     刹那、ぬーさんが消え――。

    「!?」
     サングラスの男が目を見開いた瞬間――。

    「ぬー」
     背後に現れたぬーさんのギガインパクトがサングラスの男の頭部に炸裂しました。

    「うぎゅうううう!?」上から下へと振り落とされた、ぬーさんのギガインパクトの威力にサングラスの男は悲鳴を上げながら倒れました。命に別状はなさそうでしたが、口から泡を吹いており、恐らく脳震盪(のうしんとう)を起こしている可能性もあったので、暫くは目を覚まさないでしょう。
    「なんだ!? あのヌオー!?」
    「すげぇ、スピードだったぞ!?」
     ぬーさんの尋常ではないスピードにジャンとクーの驚きによる一瞬の隙をエルフェは見逃しませんでした。まずジャンのスネ辺りを蹴り、あまりの痛さにジャンのサバイバルナイフが押し合い勝負から離れたところで、残ったクーのサバイバルナイフを力強く押します。クーがのけ反った、その間にエルフェは一気にジャンへと詰め寄り一撃、そしてクーの方へは――。
    「!! ブラッキー! 『おんがえし』だ!!」
    「きゅい!!」
     どうやらグラエナに勝ってクーの後ろを取っていたブラッキーがエルフェの指示を受けると、まばゆい光を身に包んでクーに体当たりをかましました。『おんがえし』はパートナーとの絆が深ければ深いほど威力が増す技――イーブイの頃から一緒だったブラッキーとエルフェの絆はクーに絶対的な一撃を与える力となりました。クーが「ぐぎゃあ!?」と悲鳴を上げながら倒れますと、エルフェは戦いが終わったことを感じて刃を鞘の中に戻しました。
    「ぬーさん、すごいっす!! なんでそんなに速く動けたんっすか!?」
    「確かに速かったですわね……」
    「あの攻撃がなかったら……今頃、どうなっていたことだか……」
    「ぬー」
     ぬーさんが手ひれを腰に当てて、その声に応えていると、その胸元にある何かの生物の鋭いツメがついたペンダントが揺れました――実はそのツメは『せんせいのツメ』というもので時々、持ち主に先制攻撃する力を与える不思議なツメだったのです。まぁ、その場にいた者達はその存在に気がついていないようですが。
     さて、その後ジャンとクー、そしてサングラスの男は、ぬーさんのれいとうビームで暫く氷付けにしておいておくことにし、一旦ここは戻るかという提案も出ましたが、ここで戻ったところでまたジャンやクーの奴ら――テロリストと名乗る者に会わない保証はありません。
    「……ここは進んでいくしかないな」
     エルフェが出した答えにサクラもマロニカも、ぬーさんもブラッキーも頷き、一行は浜辺に向かって歩き出しました。抜け道の中に響き渡る靴音からは不安感が漂っていました。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    【14】

     一旦、場面は変わりまして城下町の中央広場。
     そこでは一人の兵――いや、厳密に言えば兵に扮したテロリストの男、テロ男がテロ決行を宣言した後、銃声音が響き渡り、集まってきた人達がパニックに陥りました。撃った人にとっては威嚇の為の発射だったのですが効果てき面だったようです。このままパニック状態で街の中を逃走する民達、それを楽しそうに追いかけるテロリスト、城下町は火の海に溺れるかと思われるや否や――。

    「へぇ〜。すごい楽しそうなことしてんじゃんってカンジー!? アタシも混ぜて欲しいじゃん!?」

     民達の反応にニヤニヤと楽しんでいる最中、そのテロ男に降り注ぎましたのは雨ではなく、どこか若者めいた言葉でした。テロ男が上から声がするというのに気がつくのはそれ程、時間はかからず、声の主を調べようと顔を見上げますと――。

     そこにはホウキに手ひれを置き、座っている白色のポケモン――ジュゴンが数匹のランターンと一匹のチョンチーを引き連れて空を飛んでいました。

     もちろん見上げた男を始め、その場にいた皆が口をポカンと開けながらその空飛ぶジュゴン達の姿を凝視しています。ポケモンが、空を飛ぶはずのないポケモンが空を飛んでいる……! その信じられない光景に地上にいる皆、言葉もできないようでした。
    「さぁさぁ! 白魔女様のお通りだよ! ケガしたくないヤツはさっさと逃げるでヨロシク〜!」
     そう言うなり、ジュゴン――白魔女さんは頭上にある純白な角に冷気を集め、それはやがて大きな氷塊になります。そしてその氷塊よりもちょっとだけ高い場所までホウキで移動しますと、白魔女さんはニコリと口元を上げ、右手ひれを空手チョップの要領で思いっきり氷塊に振り落としますと――。

     刹那――氷塊は割れ、何本もの小さいけど鋭利な氷柱が地上に降り注ぎます。風を切ったかのような音と共に一瞬で地面にはたくさんの氷柱が咲き乱れていました。どうやら誰も刺さってはいないようですが、たださえ空飛んで人間の言葉をしゃべるポケモンで頭がいっぱいなのに、この凶器とも言える氷柱の雨まで頭が回りそうにはなかったようです。
    「なになに〜? ビビって動けないってカンジー? マジ受けるんですけどぉ」
    「!?」
     その男の前にいきなりホウキを急降下させ現れた白魔女さんは、ニヤリと楽しそうにまたは馬鹿にしたような笑みを見せます。その男にとって白魔女さんの笑みはまるで頬を蛇の冷たい舌にちょろちょろと舐められているかのような、品定めをされているかのような……ついでに何か寒いような気が――。
    「しばらくお寝んねしてればいいじゃん。ヘッポコな野郎には興味ないしぃー」
     その男の寒気は気のせいではありませんでした。突如、甲高い金属音のような音が響いたかと思ったら、そこにはビビリ顔で氷付けになっているテロ男の姿がありました。白魔女さんがテロ男に手を触れてたったの五秒後のことでした――圧倒的で瞬間的な『ぜったいれいど』はその場に居合わせた人達を更に恐怖へと駆り立たせました。
    「さぁ……次はどいつが氷付けにされたい?」
     白魔女さんが本当に笑っているかは不明の笑顔になりながらそう言いますと、周りにいた人達は一気に足早にその場を去っていきます。あの白魔女という奴に何されるかたまったもんじゃないと我先に駆け出していきます。その様子を見やった白魔女さんはランターン達とチョンチーに集合をかけます。
    「ふぅ……よし、アンタら、この男の仲間を死なない程度にイジってきてってカンジー」
    「ウィッス! 白魔女様!!」
    「はいでし! 白魔女様!!」
    「ただしチョンチー、テメーはダメだっつうの」
    「ぎょぴっ!?」
     ランターン達を出動させ、チョンチーを手元に残した白魔女さんは目的の場所に向かって再びホウキで飛ぼうとしようとした瞬間に、すぐそばに子供が来たことに気がつきました。身の丈は百三十程の金色の髪をした少女でした。その顔は白魔女さんを前にしても怖がってはおらず、むしろニコニコと笑顔のものでありました。
    「ジュゴンのおねえさん! このひとわるいやつなんでしょ? たおしてくれてありがとうなの!」
    「へぇ…………分かる子もいるもんじゃん。まぁ、もう大丈夫かもだけど、あんまりうろつくなよ〜?」
    「うん! おねえさん!」
     目を丸くさせて驚いているチョンチーをよそに、そう言いながらその少女の頭を白い左手ひれでなでなでと撫でてあげた後、白魔女さんは再び空を舞いました。少女は手を振りながらその姿を最後まで見送っていました。 
    「ヒーロー気分も悪くないでしね白魔女さ――ぎゃぴぃい!!?」
    「うっさい。黙ってろってカンジー」
     近寄ってきたチョンチーに頭突きをかましながら、だけど……悪い気分はしないなぁ……と心の中で呟いた白魔女さんは上機嫌な様子でした。
    「……まぁ、これからまた不機嫌になるって感じで嫌なんですけどぉ」
    「……?」
      

     中央広場から再び夜空を舞っていた白魔女が向かった場所は大きな建物――例の城で、居館の方にあるテラス……王様の寝室のテラスの方に向かいますと、そのテラスには一人の男がいました。身の丈は百七十後半程で立派なあごひげを蓄えており、その身には真っ赤なマントで包まれており、また頭には黄金の中に宝石を散りばめられた冠が乗ってありました。
     その荘厳と例えてもいい男――つまり、この城の主である王はいきなり空から舞ってきたジュゴンの白魔女さんとチョンチーに目を丸くさせています。
    「ふ〜ん。久しぶりじゃん。王様。中々渋い顔になってんじゃん。てか公開処刑にアンタ出席してないとマズいんじゃないのってカンジィー?」
    「……誰だ? 貴様は?」
    「そういや后さんは……あ、そうか。確か療養中だったねぇ。帰ってくるのはもう少しかかりそうってカンジィー?」
    「誰だと、訊いている……!!」
     流石は一国を治める王様といったとこでしょうか、白魔女さんに対しても臆することなく、その険しくて鋭い瞳を向けてきます。その王様の様子に白魔女さんは溜め息を一つ漏らしました。
    「やっぱ、覚えてないかぁ……」
    「……さっきから一体何を――」
    「まぁ、いいやってカンジィー? ねぇ王様、少し昔話を聞いてよ。そうすれば分かるからさ。ア、タ、シ、の、こ、と♪」
    「そんな話を聞いている暇は――」
    「ここで氷付けになるのと、話を聞くのとどっちがいい〜? ちなみに話を聞いてくれたらここからは出て行ってやるし〜」
     王様も氷付けは嫌なのでしょうか。それとここは王様の寝室で他に誰もいない為、とりあえずここはそのジュゴンの言う通りにした方が身の安全を確保できるだろうと判断したようです。王様が頷きますと、白魔女さんは「さっすが話がわっかるぅ!」と手ひれを打ってから語り始めました。


     昔、昔のことです。
     海にはそれはそれは美しい人魚がいました。
     その人魚は美しい白い髪を腰まで垂らし、鱗も純白に光り輝いている人魚。
     その美しさゆえに周りからは白雪の人魚姫と呼ばれていました。
     さてさて、ある日のことでした。
     白雪の人魚姫がハート型の水ポケモン、ラブカスの群れと一緒に海の中を散歩していたときのことでした。
     突如、海に溺れて沈んできた一人の人間の殿方を白雪の人魚姫は見つけました。
     急いで、沈んでくるその殿方を受け止めた白雪の人魚姫は、そのまま浜辺の方へと殿方を運びました。
     その途中で改めて白雪の人魚姫が殿方の姿を見たとき、胸の鼓動が一瞬強くなりました。
     そう、白雪の人魚姫は人間の殿方に恋に落ちたのです。
     しかし、下半身の尾ひれでは地上を歩くこともままなりません。
     そこで、白雪の人魚姫はなんでも願いごとを叶えてくれるという魔女に会いに行きました。
     厚化粧で怖そうな顔をしているその魔女に、どうか自分を人間にさせて、王子様に会わせて欲しいと申し出ました。
     魔女はその願いを叶えてあげました。
     しかし、その願いと代償に白雪の人魚姫は一週間以内に殿方と結ばれないと泡になってしまうという呪いをかけられました。
     こうして足が生え、人間になれた白雪の人魚姫は浜辺で愛しの殿方と再会することが叶いました。
     その殿方はなんと城の王子様で、行き先のない娘を可愛そうだと思った王子様は白雪の人魚姫を城へと招待します。
     なんとか、王子様とコンタクトを図っていく白雪の人魚姫でしたが、その殿方と接している内に知ってしまいました。
     その王子様には想いを馳せている幼馴染みがいるということを。
     その幼馴染みとも触れ合った白雪の人魚姫はその恋路を邪魔したくないという想いが沸き、この恋を諦めようとしたときに声が聞こえてきます。
     このままでは泡になって消えてしまうぞ、それでもいいのか? という魔女の言葉でした。
     しかし、王子様とその幼馴染みの恋を願う道を選んだ白雪の人魚姫は――。


    「白雪の人魚姫は……泡にはならなかったんだよね〜」
    「なに?」
    「白雪の人魚姫はポケモンになったんだよ」
    「?」
    「このジュゴンにね!」

     白魔女さんが自分の手ひれで自分の方に指し示しますと、そう叫び、無論、王様の目が丸くなっていきました。そして昔のことを思い出して、いかにも忌々しいといった感じの顔になった白魔女さんが更に続けます。
    「っていうか、なにあのクソババア!? 散々、泡になるぞ〜泡になるぞ〜って脅しながら、最後には嘘かよ! マジふざけんなってカンジなんですけどお!! まだ泡になって消えたほうがはかないながらもロマンチックってカンジなのに、あのクソババア見事に裏切りやがって、マジイラつくんですけどお! 声まで戻ってきて情けのつもりか、あのクソババア! 急いで住処の方に行ってみたら、ものの見事にもぬけの殻だしぃ!? 置き手紙に『バァ〜カ』ってアホすぎっしょ!? 人の恋心弄ばれた感でマジム、カ、ツ、ク〜! そんなクソババアに頼み込んだ自分にもムカツクってカンジィー!!」
     苦い昔話を語り続けている内に、溜まりに溜まってしまった苛立ちなどが白魔女さんの中で爆発しました。勢いつけてガンガンと愚痴を連射してくる白魔女さんに流石の王様も退き気味で、王様の顔には白魔女さんのツバが少々かかっています。そして、白魔女さんの方はハァハァと息が少々上がっていましたが、やがて晴れ晴れとした笑顔になりました。
    「あ〜。なんか吐いたら吐いたらで、なんかスッキリしたわぁ」 
    「…………」
    「さぁ〜て、と」
     白魔女さんがホウキで王様に更に近づき、白い右の手ひれを王様の左肩の上に置きました。
    「まぁ、長い昔話に付き合ってくれてありがとさ〜ん、それと」
     そして向けたその視線は王様ではなく――。

    「(一応アタシの中では)元カレが世話になったってカンジィー?」
    「むぅーー!?」
     
     口元をニヤっと上げた笑みの先には先程までいなかったはずの縦長い紫色の体をもったポケモン――ムウマージが姿を現していました。
    「ま、まさか王様に憑いていたでしか!?」
    「そのまさかっしょ」
     憑いていたという証拠に王様が気を失い倒れ、バレてマズイと、慌てて逃げようとするムウマージを白魔女さんが逃しませんでした。すぐにムウマージの周りに冷気が集まったかと思えば、甲高い金属音のような音が鳴り響き、次の瞬間にはムウマージの氷の彫刻が出来上がっていました。
    「……このムウマージもアイツらの仲間だったんでしかね……あれ? 白魔女様?」
     氷付けになったムウマージを見ながら言うチョンチーをよそに、白魔女さんは倒れた王様をベッドの方に運びました。流石、王様のベッドはキングタイプのベッドで広々としています。とりあえずベッドの上に王様を置きますと、自分はベッドの上に座り少しの間、王様の顔を覗きこみました。あのとき、自分が愛した……初めてでそして恐らく最後だと思っている恋の相手、その男の顔を眺めてから白魔女さんは微笑みました。それは他人には滅多に見せない寂しそうな微笑みでした。
    「……じゃあね」
     ロマンなんて嫌いなハズなのに――別れの挨拶に、白魔女さんの唇が王様のおでこに軽く触れました。


     ぬーさんが『あまごい』で呼び寄せた雨が降り止み、雲が切れ切れとなって、少しずつ星を覗けるようになっていく夜空の中をホウキに乗った一匹のジュゴンとチョンチーが飛んでいました。
    「あ〜……本当に馬鹿だと思うじゃん。男も女も」
    「いきなりどうしたんでしか? 白魔女様」
    「だってさぁ、好きな人の為に自分の体を張ってたって、その恋が叶うとは限らんっしょ?」 
    「まぁ、例が目の前にいるでし……」
     誰にも聞こえないぐらいの呟きだったはずなのに、直後、白魔女さんに頭突きされたチョンチーは「ぷぎゃあああっ!?」と悲鳴を上げました。そのおでこには赤くはれたタンコブが一つできあがっていました。
    「……ったく。聞こえてるっつうの」
    「す、すいませんでし……」
     あまりの痛みに涙目を浮かべるチョンチーの隣で白魔女さんは夜空を見上げました。その眼差しはどこか遠いもので、まるで昔の日々――人魚姫だった日々に重ねているかのように。
    「アタシ……白ってどっちかと言うと嫌いってカンジィー」
    「……そうなんでしか?」
    「ロマン臭がするから」
    「そんな臭いがあるんでしか……」
    「ホント……馬鹿じゃん。男も女も――」
     白魔女さんが馬鹿馬鹿しいと言いたげに微笑みました。

    「もちろん、アタシも」

     雲が切れて流れて、広がる星空の中にまるい満月が一つ現れて、その月光に照らされた白魔女さんの微笑みはキラキラと光っていました。白くキラキラと美しく輝く体を見ながら白魔女さんは苦笑混じりで溜め息を一つ漏らしました。
    「……そろそろ、また焼きにいかないとってカンジィー」
     

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    【15】

     場面はまた変わりまして、浜辺に続く抜け道。
     先程の戦いから警戒をしながら進んでいたサクラやマロニカ、エルフェに、ぬーさんとブラッキーはその後何ごともなく、無事、抜け道を通過しました。
     そこには雨雲が綺麗サッパリ消えていて満月が顔を出している夜空に、寄せては返す波、サラサラと肌色の砂が続く世界でした。
    「わぁ……ここ、プライベートビーチってやつっすか! いい眺めっすね……!」
     どうやらここには初めて来た様子のマロニカは目をキラキラさせながら、浜辺を見渡します。そしてブラッキーは、ぬーさんにここがどんな場所なのかを語っているようで、それとサクラはその満月を眺めながら、いよいよ時間がなくなってきたことを感じていました。このまま今宵が終わってしまうと泡になって消えゆくと結末に、胸が詰まっていました。
     唯一、エルフェだけは鋭い目付きになって、前方を睨みつけます。
    「……招かれざる先客がいるらしいけどな」
    「へ?」
     エルフェが剣の柄に手を置いたのと、何者かが一行の目の前に現れたのはほぼ同じでした。
    「逆になんでワシの存在に気がつかなかったのかが気になるんじゃが……」
    「……存在感がないだけなんじゃないですの?」
    「サクラさん! それは言っちゃダメっす!」
     ゴホン! と咳払いを一つ入れ、苦虫を噛んだような顔をしているその者は身の丈百八十を超えた男で、歳を食っているからか顔にはシワがたくさん切り刻みこまれています。切れ長の群青目が鋭く光っています。服装は先程のジャンやクーと同じく黄土色の半袖に黒と白のボーダー柄の長ズボン、そしてこの男に関しては漆黒のブーツを履いていました。
    「王子……エルフェーヤ・リッド・フィッシュスターとお見受ける」
    「そういう、アンタは……」
    「部下が世話になったようだな」
    「!!」
    「我が名はシャルイン……いざ!」
     そう言いながら、その男――シャルインの腰元にあった細い剣――レイピアを鞘から抜き出しますとエルフェに向けます。エルフェも一旦サクラを見やった後、柄を握り剣を取り出します。
     それから両者睨み合うと、一気に間を詰めるべく駆け出します。浜辺の砂が蹴られ空に散り、次の瞬間には剣とレイピアが交わる音が甲高く、まるで夜空を裂くように鳴り響きました。 エルフェの振りかざした剣をシャルインがレイピアで弾いていきます。弾いた瞬間にシャルインが一歩前に踏み込んで、エルフェの胸を貫こうと一気に突きを放ちます。しかし、それをしっかりと読んでいたエルフェは右に飛んでうまく避けます。
     このように両者一歩も退かない、そしてまだ有効な一撃も与えられていない戦いは続いていきます。サクラもマロニカもブラッキーもぬーさんも、固唾を飲み込みながらこの戦いを見守っています。どうか無事で……そうサクラが強く願った頃――。
    「中々やるな、若き王子よ」
    「年寄りはそろそろ隠居生活した方がいいんじゃないのか?」
    「生憎、歳をとるごとに刺激が欲しくなってきてな」
    「……愉快犯か貴様」
     ここで甲高い金属音が鳴り響き、お互いに一旦、後方へと飛びます。エルフェはそのまま着地、シャルインは着地時に片手が砂浜につきました。
    「愉快犯! 大いに結構! このまま黙って死ぬような男にはなりたいものよ」
    「この野郎……! 老人の戯れで、人を勝手に巻き込むな!」 
     再びエルフェ、シャルインの両者が駆け出し、一気に間合いを詰めて、甲高い金属音が鳴り響き――。

     シャルインが砂をエルフェの顔向けて投げつけます。

    「!?」
    「隙アリ!!」
     飛んできた砂粒に思わず目をつぶりながら顔を背けたエルフェに、シャルインがニヤリと口元を上げながら思いっきりエルフェの剣を弾き飛ばしました。繰り返されてきた甲高い金属音、しかし今回の音は勝負が決まったかと告げるように鳴り響きました。
     あの時、後方へ飛んで着地した時、シャルインは砂を掴んでいたのです。そこまで気が回っていなかった自分の甘さに舌打ちをしたい気分でしたが、この言葉を言えずにはいられませんでした。
    「卑怯な……」
    「これで終わりだ! エルフェーヤ・リッド・フィッシュスター!!」
     のけ反ったエルフェの胸元にトドメを刺そうとシャルインがレイピアで思いっきり突きを放って――。

     その後に響き渡りましたのは、耳に刺さるような肉を突き通すブスッという音。

     その場にいた皆が目を丸くしていました。
     何故なら、そのシャルインのレイピアを受け止めていたのは他ならぬサクラだったのですから。
    「く……!」
    「サクラ!! お前、何をしているんだ!?」
    「何って……見ての通り、ですわ……攻撃を受け止めた……それだけの話ですわ……」
     エルフェとシャルインが一旦後退し、再び駆け出したとき、嫌な予感で胸がざわついたサクラはそのまま足を動かしていました。そのサクラの嫌な予感は見事に的中し、エルフェがシャルインの目つぶし攻撃でひるんで、レイピアによる一撃を受けようとしたとき――。

     サクラが二人の間に入ってシャルインのレイピアの一撃をエルフェから守ったのです。

    「ほう……勇ましい娘がいるものだな……」
    「あまり、舐めないで……いただきたい、ものですわね……」
     レイピアはサクラのわき腹を突き通していて、その傷口からは紅い雫がポタポタと垂れています。その中、肩で息をしながら苦しそうに、でも、サクラは口元を上げてシャルインを睨みつけました。
    「そういう目ができるものは中々いないものだ」
    「くっ!!」
     シャルインが思いっきりサクラの体からレイピアを離しますと、痛みがまた走り、サクラがうめき声をあげました。抜き取られたレイピアの動きとともに、サクラの傷口から血が噴き出します。そのままサクラは倒れ――。
    「さて……致命傷ではないが早めに治療しなければ――」
    「……キサマァアアアア!」
     エルフェの中で何かが切れた音が響き渡りました。その瞬間、エルフェが思い切り振り上げ、そして振り落とされた拳をシャルインは軽くかわしました。
    「ほう、中々いいパンチをする」
    「うるさい! 黙れジジイ!!」 
     一方、サクラは傷口を押さえながら、うずくまっていました。血が止まらない、このままでは死んでしまうと思いながら、悔しい気持ちで胸がいっぱいになっていました。自分が今ここでポケモンに戻れたのなら、エルフェを助けることがもっとできそうなのに、攻撃を止めるだけじゃ駄目……あのシャルインという老人を叩き伏せるような何かを……!
     
     エルフェを守りたい――。
     
     その想いがサクラの体を光らせていました。  

    「怒りで力は上がっているみたいだが、動きが雑だぞ?」
    「なっ!?」
     飛んでくるエルフェの拳を軽くよけたシャルインは同時に、エルフェの足首に蹴りを入れゴミを払うかのように、エルフェを転ばせました。そしてこれで終わりだとシャルインがレイピアをエルフェの心臓を貫こうと――。

     何かが抱き締められるような音が響き渡りました。
     
     それはシャルインが何者かに抱き締められていました。
     それは桃色の体に長くて平べったい薄いベール腕みたいなものが二本、細い長い体は途中で二本に分かれていて足みたいな感じであった――プルリルに。
    「ぷぅー!! ぷるぷる!!」
    「な……!? 何故ここにプルリルが……!?」
     プルリルに戻ったサクラから、もう人間の言葉は出てきません。何故、プルリルに戻ったのかというのも気になるところなのですが、今のサクラはそれどころではありませんでした。エルフェを守る為に今この姿でできることはただ一つ。
    「まさか……先程の娘が……!?」 
    「ぷるぅー!!」
    「ぐお……!?」
     エルフェを守りたいと、サクラは叫び、そして繰り出した技は――。
    「う……!? この……ぐおおおおおお!!??」
     ぎゅっぎゅっと雑巾を絞るかのような音がこれでもかという程、鳴り響き、シャルインの口からもそして骨からも悲鳴が上がりました。サクラの繰り出した技は『しぼりとる』という技で、相手を思いっきり締めつけるだけに留まらず、相手の生命力を奪うこともできる技で、やがてサクラの拘束から解かれたシャルインの顔色はげっそりと血の気を抜かれたかのように悪いものでした。
     そして、はぁはぁと苦しそうに肩で息をしているシャルインに向かって、サクラは一気にトドメを出すべく、大きく息を吸い始めました。すると、サクラの頬は大きく膨らみ始め、やがて何かが詰まっているようで頬がたぷんたぷんと揺れていました。
    「ま……さか……!」
    「ぷるぅぅぅ!!」
     渾身のハイドロポンプがシャルインに向かって一直線に飛んでいき、もちろんシャルインはその激流に耐えることはできず、吹っ飛ばされました。派手な衝突音がした後、砂煙が立ちまして……それが晴れたときにそこに現れたのは完全にのびているシャルインの姿でした。
     

     さて、ここで悪い奴を倒してめでたしめでたし……という展開になりそうなのですが、どうもそうはならないようです。
     シャルインを倒してから幾分が経った後、エルフェは目を丸くさせながらもサクラの方へと歩み寄っていきます。サクラの方も夢中でシャルインを倒しにいくという意識は消え、エルフェの方へと意識が移っていきました。すると、ドキドキとサクラの胸に打つ鼓動が強くなっていきました。それはあの夜、エルフェと一緒にいたときのドキドキとは違う意味で――。
     
     エルフェに自分の正体がばれてどうしようかと困惑している意味のドキドキでした。

     どうすればいいのか、事情を話せばいいのか、しかし人間の言葉を話すことができない今の姿では伝えることもできない。ましてや、エルフェに怖がらせてしまったかもしれないという不安と、嘘をついた自分を嫌うかもしれないという心配と、もうエルフェとは一緒にいれないのかという悲しい気持ちがせめぎあっていました。
    「サクラ、お前は――」
    「!!」
     エルフェの呼びかけの言葉にさえもビクッと驚いたかのように反応する程、サクラの中では気持ちの葛藤が起きていました。そしてエルフェが手を伸ばそうとした瞬間のことでした。
    「あ、サクラ!?」
     エルフェがそう声を上げたとき、もうそこには思いっきり上がった水しぶきが残っているだけでした。サクラの葛藤が爆発してしまい、海の中に逃げ込んでしまったようです。
     満月が照らす海の浅瀬にて、サクラは泣いていました。もうこのまま元住んでいた深海に戻ってしまおうかとも思いました。今回の想い出などは全て深海に沈めてなかったことにでもしようかとも考えていました。恋がこんなにも苦しいなんて、思いもしなかったサクラは自分の甘さに悔しさを滲ませています。全てがうまくいくなんて、なんであのとき、安易に思ってしまったのだろうか。この恋はきっと成就できるとどうして考えることができたのか……その他諸々、考えれば考える程、涙がぽろぽろと海に溶けていっていきます。
     もう、帰ろう……エルフェもきっと自分のことなんか――やがてそう思い、サクラは元住んでいた深海へと戻ろうと泳ぎ始めたときのことでした。
    「あ、サクラちゃん! こんばんはなのです〜!」
    「え……?」
     泳ぐ方向を深海の方に向けたサクラの視界に飛び込んできたのは、自分と同じプルリルのモモでした。
     どうして、モモがここにいるのだろうとサクラは口をポカンと開けていましたが、モモはニッコリと微笑んで近寄ってきます。
    「サクラちゃん、泣いてたのですか〜?」
    「な……泣いてなんかいませんわっ」
    「目が真っ赤ですよ〜?」
    「えっ!?」
    「へへへ、サクラちゃんって相変わらず分かりやすいですね〜」
     そう言って笑うモモに、サクラは苦虫を噛んだような顔になります。先程まで傷心していた気持ちの中にいたのに、そこでいじられるようなマネをされても困ると、サクラは頬を膨らませました。
    「あわわ! ごめんなさいです、サクラちゃん。だからそんなに怒らないでくださいです〜? ね?」
    「……べ、別に怒ってなんかいませんわよっ」
     モモは良かった、とホッと安堵の息を漏らします。
    「それで……サクラちゃんは元の姿に戻っているわけですが〜」
    「あぁ……そういえばそうね。どうして元に戻ったのかしら……? 泡になって消えるんじゃなかったのかしら……一時的に元の姿に戻ってそれから――」
    「サクラちゃん? あの殿方さんとは――」
    「もう、いいのですわ! …………ごめんなさい、怒鳴ってしまいまして……でも、もういいのですわ。どうせ、もうエルフェ様には嫌われているのですし……」
     サクラが暗い顔をしたのと同時にモモは首を傾げました。
    「あのぉ……サクラちゃん?」
    「なんですの?」
    「その殿方さん、エルフェさんと言いましたっけ? その人がサクラさんのことを嫌いと言ったのですか〜?」
    「……言ってませんわ。けど、もう嫌われたのも同然で――」
     ここでモモがサクラの腕を取って力強く握りました。いきなりのモモの行動にサクラは目を丸くさせています。
    「逃げちゃダメです。サクラさん」
    「え……」
    「まだ、エルフェさんからその言葉も出ていないのに自分で勝手に答えを出して、逃げちゃダメです〜」
    「でも、わたくしはエルフェ様に嘘をついたりとかしましたし……」
    「確かに、本当はプルリルだったとか、サクラちゃんはエルフェさんに対して嘘をついてきたかもしれませんけど〜、でもエルフェさんに何も訊かずに終わらせたら……それこそサクラちゃん、後悔すると思います〜」  
     モモの言葉にサクラの心は動きました。
     そして、改めて自分がなんで人間になったのかをサクラは考えました。
     エルフェに近づき、恋をし、可能ならば結ばれたい。最初はその想いにそのまま従って人間になり、そして運よくエルフェと再会を果たしました。その人間生活の中でエルフェに対して自分は嘘をついていたりとか、そういった勝手な罪悪感でサクラは自分自身を知らない間に追い込んでいたのです。モモのおかげでサクラは今、自分が何をしているのかが分かりました。それは自分を勝手に心の中で閉じ込めて何もかも捨てようとしていたこと……そんなことをしたら本末転倒です。覚悟があって、エルフェへの想いがあって、人間になろうと思ったときの自分を思い出したサクラの空色の瞳にはもう、曇りはありませんでした。
    「……ありがとうございますですわ、モモ」
    「どういたしましてです〜」
    「モモの彼氏は幸せものですわね、こんな素敵な彼女がいるのですから」
     それから、サクラは上を見上げ、エルフェがいる場所の方に体を向きました。
    「それじゃあ……行ってきますわ」
    「えぇ、行ってらっしゃいませです〜」
     モモに挨拶をした後、サクラは思いっきりエルフェに向かって泳ぎ始めました。そのサクラの背中を見送りながら、モモは微笑んでいました。
    「わたしも幸せですよ……」
     そういえば、サクラは訊くのを忘れていたのですが、モモがどうしてここにいたのかというと……それは白魔女、と名乗るジュゴンに今日の夜、ここに来た方がいいかもと声をかけられたからでした。どうしてなのかとモモが尋ねると、その白魔女さんは占いでそう出ただけだから何が起こるか分からないと悪戯っぽい笑みを見せながら答えていました。なんだか胸騒ぎを覚えたモモは白魔女さんに教えてもらった通り、この日の夜、ここに訪れてみると、そこに現れたのはなんとサクラだったではありませんか。おまけに何か困っていたようで……モモはサクラを見送りながらここに来て本当に良かったと思いました。
    「きっと、サクラちゃんも――」
     満月の光が海へと届く中、モモの微笑みが照らされていました。それはまるで――いやきっと、友人の恋の成就を願っての微笑みでした。


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 

    【16】

     満月が顔を出している夜空の下、サクラという言葉が飛び交っています。
     サクラが海の中へと戻っていってしまった後、エルフェとマロニカは浅瀬に入り、サクラの名を呼んでしました。ぬーさんもブラッキーも「ぬー、ぬー」「きゅいきゅーーい」とサクラの名を呼んでいます。
     しかし、いくら呼んでもサクラが出てくる気配がなく、エルフェはそのまま前方へと進んでいき、そして水位が胸元まで達したところまでやってきたことのときでした。エルフェの目の前で水しぶきが少し上がり、何かが現れたと思ったら――それは一匹のプルリルでした。
    「サクラ……なのか?」
    「……ぷるぅ」
     目を丸くさせながらそう尋ねるエルフェにサクラは頷きました。元のポケモンの姿になっている今、人間の言葉がサクラの口から出ることは叶いませんでした。しかし、それでもなんとかなると、サクラの空色の瞳は弱気な光ではありませんでした。
    「お前……さっき刺されていたよな? 怪我は大丈夫なのか?」
    「ぷるぅ! ぷるぅぷるぅ!」
     サクラは海から出て空中に浮き、体をゆっくりと一回転させて無事だということをエルフェに伝えました。そのことがしっかりと伝わったエルフェは安堵の息を一つ漏らしながら、サクラに微笑みます。
    「そうか……それなら良かった。それにしても、どうしていきなり消えたんだ? お前に色々と言いたいことがあったというのに」
    「ぷるぅ……ぷるぅ、ぷー」
     それはエルフェに嫌われてしまったと自分が勝手に決めつけてしまって……とサクラはバツが悪そうな顔をすると、エルフェは「……ったく」と溜め息をもらしました。
    「その姿……本来のお前の姿なのだろう? 別にお前が嘘をついていたと怒るというわけでもない」
    「ぷるぅ……?」
    「お前には感謝してるんだ」
     今度はサクラの目が丸くなりました。
    「覚えてるか? 俺とサクラが最初に会ったときのことを」
    「ぷるぅ」
    「お前は俺が溺れているところを助けたと言ったよな……それは嘘じゃなかったって、ようやく分かったんだ。恐らくあいつらは寝ている俺を捕まえて……そして海に落ちて溺れ死ぬように船に乗せた。なんであいつらがこんな回りくどいことをしたのかは分からないが……少なくともお前が俺を助けてくれたのは本当のことだ。それに気付くのに時間がかかりすぎた、すまない。それと……ありがとう」
     あのとき、ジャンとクーが放った言葉からエルフェの中で全てが繋がったのです。先程のシャルインとの戦いのみならず、そのことでも自分を助けてくれて――二度も命を救ってくれたサクラにエルフェは心から礼を述べていました。サクラはなんだか照れてきて、頬を赤く染めています。
    「それと、サクラ。もう一つ、お前に言いたいことがある」
    「ぷるぅ……?」
     エルフェの視線がサクラから離れないまま、まっすぐに見つめていきます。その視線にサクラはなんだか緊張してきて――。

    「俺はサクラのことが好きだ」

     その言葉を聞いた瞬間のサクラは一時何が起こったか分からないという感じでしたが、やがて、エルフェの言葉を心の中で繰り返したサクラの顔は桃色から真っ赤に早変わりしました。サクラの胸を打つ鼓動が早くなっていきます。
    「あの夜、お前を呼んだときだって……あのときも、その……第一にお前のことが好きだったからだ」
     あの夜、サクラの記憶を取り戻そうと試みる為に呼んだ……というのは口実作りみたいなもの(まぁ、サクラの記憶喪失に関しては心配していたようですが)で、本当は好きになってしまったサクラと一緒にいたかったからだということでした。つまり、エルフェはサクラを見たときに恋に落ちていて……それはお互い様な一目惚れをしていたということでありまして。
    「ぷるぅ……」
    「お前がプルリルでも人間の姿でも、俺はお前に……これからも傍にいて欲しいんだ」
     よく見ればエルフェの顔も真っ赤に染まっていて、どうやらエルフェはこの言葉を言うのに相当な勇気を払ったようです。そして、その王子様のプロポーズにサクラはもちろんのこと、マロニカもブラッキーも口をポカンと開けていて、ぬーさんは両の手ひれを合わせて自分の顔のところに持ってきて顔を赤らめています。
     エルフェのプロポーズにドキドキという音がサクラの心の中で強くなっているときに――。

     エルフェはサクラの腕を取り、引っ張り――。

     大きな満月の夜空の下、海で一目惚れ同士の唇が重なり合いました。

    「!!」
     たださえプロポーズにも驚いているというのに、それからキスだなんてズルい……けれど、サクラは嬉しい気持ちでいっぱいでした。人間の姿でも、プルリルの姿でも自分を受け入れてくれたことにサクラの涙腺は熱くなっていきました。やがて空色の瞳には大きな涙粒が溜まってきて、そしてポロポロとビー玉が転がっていくように涙をこぼしながらサクラもエルフェの背中に腕を回し、抱き締めました。
     
     すると――。
     
     いきなりサクラの体が光り輝いて――。

    「…………」
    「…………」
    「……お前はどうして、裸が好きなんだ?」
    「しょ、しょうがないでしょう!? プルリルのときは服なんて着ていませんものっ!」
    「それと……なんで俺にしがみついたままなんだ?」
    「あ、う……あ、足がつかないから仕方ないでしょうっ!?」 
     エルフェの目の前には桃色の髪を垂らした空色の瞳を持つ娘が一人いました。
     もちろん、すっぽんぽんの全裸はお約束です。
     そして、(全裸の)サクラに抱き締めれられたままのエルフェは「じゃあ泳げばいいじゃないか」というツッコミは喉元に閉まっておいて、そのまま浜辺の方に向かって歩き始めました。
     一方、サクラはそのままエルフェを抱き締めたままでいて、彼から感じる温もりを感じながら、恋して良かったと、改めて噛み締めることができたのでありました。

     満月の光が二人を照らし続けていました。
     まるで、二人の恋路に幸あれと語りかけているかのように。
       

     その後、テロリストと名乗る者達は全員捕まったようで、なんでも城下街の方で暴れる予定だった奴らは全員、ランターンという頭に灯りをつけているポケモンに電気で黒こげ、おまけにビリビリとしびれされたようです。もちろんエルフェ達が対峙した三人の男やそして彼らを束ねるシャルインも無事に捕まったようで、牢屋の中に入れられました。すると、牢屋部屋が連なるその地下室では賑やかな声が絶えていないとかなんとか……一体、どんな会話を繰り広げているのかは謎のようです。
     そして、エルフェが弁明で王様がムウマージで操られていたことや、サクラはあくまでもなんでもないということを力強く全ての民達に伝えました。更に自分とサクラは番(つがい)になることも宣言し、それとサクラが自分のことを助けてくれたと説明したところから、サクラは一躍、悪魔から天使とかエンジェルと(一部では)呼ばれるようになりました。

     こうして色々と問題の後片付けも終わり、サクラとエルフェの結婚式が近づいてきたある日のことでした。
     エルフェとの婚約に伴って、もうじき給仕係を終えることになったサクラは、仕事後、メイド寮の部屋で「また、一人部屋になるのが寂しいっすね」というマロニカの泣きそうな声を聞いたり、これまでのこと、そして、これからのことを語り合って寝ることにしたときのことでした。マロニカがすぐに夢の中に落ち、続いてサクラも夢の中に落ちようとして――。

     木窓からノック音が聴こえてきました。

     サクラが寝ぼけ顔をしながら窓を開けますと、すぐに眠気を覚ますことになりました。何故ならそこにいたのはホウキで浮いている日焼けしてガングロな白魔女さんと僕(しもべ)のチョンチーでしたから。
    「おひさ〜ってカンジィー? どう気分の方は?」
    「えぇ……お久しぶりですわね。気分は今、眠いといった他には特に悪くもありませんわ」
    「そう、平気みたいじゃん」
    「あ、白魔女さんに一つ訊きたいことがありますの」
    「ん? な〜に?」
    「わたくし、あの薬を飲んでから三日後の夜に元の姿に戻りましたの。あれは一体……?」
    「さぁね。アタシにも正直分からないってカンジィー? 適当に作った薬だしぃ? そういう訳ワカメな作用があってもおかしくないっつうの」
     そんな危険な薬をサクラに飲ませていた、白魔女さんはやがて真剣な顔付きになってサクラに尋ねました。
    「それよりも、桜餅。アンタはいいの? もう元にはきっと戻れないってカンジィなんだけど。このまま人間としてちゃんとやっていけるかっつうの?」
    「確かに、わたくしにはもうポケモンの力はありませんわ。だけれど……エルフェ様が一緒にこれから強くなっていけばいい、もっと色々なことを知ればいいと言ってくれましたから。今も人間の言葉の読み書きの勉強をしておりますのよ」
     もう退かないし、逃げない。そんな意志がサクラから伝わるようで、白魔女さんはやれやれといった感じで溜め息を一つ漏らします。
    「ったく……もう愛しの男とイチャイチャしているってカンジィー? 見せ付けてくれるようなカンジィでアタシ妬きそうだっつうの」
    「白魔女さん……」
    「もうアタシ帰るわ。まぁ、あの男とイチャつくなり、修羅ばるなり、なんでもすればいいじゃんってカンジィー」
     ふわっと、そう言葉を残しながら白魔女さんとチョンチーが木窓から離れていきます。サクラは慌てて白魔女さんを呼びました。
    「白魔女さーん! 本当にありがとうございましたですわー!」
     そう手を振りながら見送るサクラに白魔女さんはとりあえず、右の手ひれを上げて応えておきました。サクラにとって、白魔女さんはエルフェと自分を繋げてくれた恋のキューピッドみたいな方でしたから、感謝せずにはいられなかったのです。サクラから覗くことは叶わなかったのですが、白魔女さんはかゆそうな顔をしながら、頬を若干、紅く染めていました。


    「白魔女様、もしかしてでしが……」
    「ん?」
    「本当は泡になるようじゃなくて、ただポケモンに戻るだけの作用だったんでしか――ぷぎゃっ!?」
    「アタシが薬の配合を間違えたということ? マジで嫌みなカンジィだっつうの」
     白魔女さんの頭突きを喰らって、チョンチーの頭からタンコブが一つ、煙を出しながら現れました。チョンチーは「痛いでし……ひどいでし……ぐしゅん」と泣きながら不服を唱えていました。
    「はぁ……ロマンっつうのは嫌いなんだけどぉ……」
     星空の方に見上げ、白魔女さんはそう呟きました。
     最初は、サクラというあの桜餅なプルリルに厳しい現実を知ってもらって、それで『はい、お終い。アンタもこれからは夢だけじゃなくてちゃんと現実を見て生きていきなよ』と(嫌みたっぷりで)教えてやろうという計画していたのに。まさか、あの桜餅なプルリルが現実を知りながらもそれになんとか立ち向かっていき、そしてあの男とゴールインした。そういえば、あの桜餅なプルリルの友達というプルリルに気まぐれで占いをしてあげたんだっけ、と思い出し、白魔女さんは余計なことをしたなぁと自分に嘲笑したくなりました。
     しかし、悪い気分ではありませんでした。あのとき、自分が人間になったのも、そしてその恋路を蹴ったのも、自分が選んだことなのですから。それと風の噂で聞いたテロリストから王様を守ることができたのだし、後悔、という二文字は白魔女さんの中にはありませんでした。
    「……でもやっぱ悔しいってカンジィー」
    「ま、まさか白魔女様」
    「ん?」
    「あの桜餅に復讐するとかやるのでしか――ぷうぎゃあ!?」
     チョンチーの頭にはタンコブの三段重ねができあがりました。
    「バッカじゃないの? アタシがあのクソババァがやりそうなことをするわけないっつうの」
     ……後悔はしてないものの、あの魔女と名乗る存在に対しては恨みがたっぷりあるようですが。
    「久しぶりに遠出するってカンジィー? ……今回は数年は住処に戻らない勢いで、あげぽよ〜ってなればいいカンジィー?」
    「え、え、え? どこに行く予定なんでしか?」
    「え、知らね」
     
     そう言いながら夜空に浮かび上がっていたのはどこか楽しそうな白魔女さんの姿でした。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    【17】

    「ふぅ……準備は出来たか? 入るぞ?」
     ここは城の居館の隣にある教会(城下街にもあるのですが城の方にも一つあるのです)の婦人側の更衣室。そう確認を取ってからではなく、取りながら入ってきたエルフェにサクラは苦笑しました。
    「エルフェ様ったら、まだわたくしの返事がないですのに、入ってくるなんてズルいですわよ」
    「あ、それはすまなかった」
    「緊張していますの?」
    「……している」
     真白のタキシードに身を包んだエルフェの前にいましたのは、白いウェデイングドレスを身に包み、白いベールを被ったサクラの姿がありました。桃色の髪の毛は縛ってまとめずに垂らしており、白色の生地によく映えています。純白で煌びやかなドレスを身にまとい、それに胸元は開いているわで、これで意識するなという方が難しいです。
    「あらあら……うふふ」
    「そういうお前こそ、緊張しているのではないか?」
    「……ええ、してますわね」
    「ほら、見てみろ」
    「お互い様ということですわね」
     サクラの方も真白のタキシード姿で決めているエルフェに胸がドキドキしていて……サクラが言った意味とは違うと思われますが、本当にお互い様でした。
    「今、まるで夢の中にいるような感じがいたしますわ――っていひゃいひゃ!?」
    「ほら、夢じゃないだろう?」
    「だからって、結婚式前の乙女の頬を引っ張りますの!?」
    「それにしても、相変わらず桜餅みたいに伸びる頬だな……」
    「人の話を……ハッ、まさか……大量に桜餅を用意したとかじゃありませんわよね?」
    「おぉ? よく分かったな。あれ……今更だが、もしかして桜餅が苦手だったということは――」
    「ありませんわよ! もちろん、エルフェ様がわたくしの記憶を取り戻そうと桜餅をくれたことも覚えていますわ」
    「あぁ、そんなときもあったなぁ……あのときは我ながら単純な思い付きだったと笑える」
    「うふふ、そうですわね」

     二人がこのような会話を進めていますと、外から準備の方はいかがという言葉が聞こえてきます。エルフェとサクラはお互いの手を取り合って、二人一緒に進んでいきます。
    「これからもよろしくな、サクラ」
    「えぇ……こちらこそ、エルフェ様」
     式を挙げる堂内は新郎新婦の為に真紅のカーペットが敷かれており、それを挟む形で木製の長椅子が縦に並べられています。そして、その椅子には貴族達やもちろんエルフェの両親も出席しています。それとマロニカも後方でぬーさんとブラッキーと一緒に座っていました。王子様を助けた者として、特別にこの場での出席を認めてもらえたのです。
     さて、その真紅のカーペットにようやくサクラとエルフェが姿を現しました。一歩一歩、お互いを感じるように歩く中、サクラはマロニカにウィンク一つ投げました。マロニカもそのお返しにと「末永くお幸せに」という意味を込めたウィンクをサクラに投げました。それを受け取りましたサクラは再び前を向きエルフェと共に歩いていきます。やがて、太めな司祭の前にたどり着きますと、司祭が祈りの言葉を述べ、その後に――。

    「汝、エルフェは妻、サクラを愛し、健やかなるときも、死せるときも、永遠に愛することを誓いますか?」
    「誓います」
    「汝、サクラは夫、エルフェを愛し、健やかなるときも、死せるときも、永遠に愛することを誓いますか?」
    「誓いますわ」

     それからエルフェはサクラの左手の薬指に婚約指輪をはめ――。

     誓いのキスを交わしました。

     熱く熱く、二人の愛は本物だと告げるかのように深いキスを交わしました。

     その後、サクラとエルフェが教会の外へと出て行きますと、二人の祝福を祝おうとたくさんの民達が出迎えてくれました。
    「サクラ……」
    「ん? なんですの?」
    「共に生きよう」
    「えぇ! もちろんですわ!」
     そう笑顔で言いながら、サクラは手に持っていましたブーケを投げ飛ばしました。

     そのブーケは大きな孤を描きながら、青空へと舞っていき、それに合わせて鐘が歌い始めました。
     
     それは物語の終わりではなく、また一つの始まりの歌でした。

     マロニカにはまた新しい後輩がつくことが決定したり。
     いつの間にか、ぬーさんとブラッキーがカップルを始めていたり。
     白魔女さんはどこか気ままに旅を始めていたり。
     
     そして、サクラとエルフェの新しい生活が始まったり。

     鐘の歌はその者達の背中を押すかのように長く、長く、歌い続けていました。



    【後書きなるもの】

     始まりは七月の下旬頃でした。
     某テレビ局の27時間テレビなるものに「じゃあ24時間執筆とかしてみようぜ?」という謎の発言が今回の契機でした。
     勢いよく書き始めたのは良かったのですが、結局、途中の朝頃で寝落ちしてしまい、実質15,6時間執筆で終わってしまい、おまけに完成までこぎつけることは叶いませんでした。
     当時、25kbだった作品が「よし、ここからはゆっくり」とやっている内にあれよあれよと膨らんでいき、最終的には120kb超えという数字が出てきたということに……自分がポケストに投稿した中では一番長いものになりました。口がポカンと開いています(苦笑)   

     繰り返し使いすぎている表現とかがありそうで、質と量が反比例していないか、心配している今日この頃です。(ドキドキ)

     さて、今回のこの話なのですが……これはよろず版の他力本願レスにありました、ラクダさんの『プルリルで人魚姫』というネタを使わせていただき、驚かせようと思いまして、今回このように予告なしで【サプライズ】という形で出させていただきました。
     ラクダさんは鬱たっぷりの話をお書きになろうとしていた、ということなのですが、すいません、この話、多分、鬱がなかったと思われます。(汗)
     お気に召してくれましたら幸いです。
     素敵なネタ、ありがとうございました!

     ちなみにサクラが火刑にあうというシーンは……昔(なので、ちょっと記憶が曖昧で申し訳ないのですが)、古本屋で立ち読みした本の中に『人間になった人魚姫は(魔女裁判みたいなものを受けて?)火刑を受け、死んだ』という泡にならない結末がありまして、そこからきています。
      
     改めて、素敵なネタを提供してくださったラクダさん。
     そして、ここまで長い物語に付き合って下さいました、皆様。
     ありがとうございました!!



     それでは、失礼しました。


    【書いても、描いても、何をしてもいいですよ♪】
             


      [No.1833] 楽しんでいただけたようでなによりです 投稿者:砂糖水   投稿日:2011/09/06(Tue) 22:22:59     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    楽しんでいただけたようでなによりです。


    > うわあああああああああああああああああ。
    >
    > orz


    ふふふふふふ…………。

    本当はもっとまともなやつもあったんですけね。
    打つのめんどくさかったので短いこれにしました。
    次に時間ができたらまた来たいです。




    > ええと、マジレスすると、
    > 鏡の前でポーズを決めるムチュールの絵と一緒にするとさらに威力が上がると思う。


    私に画力というものを求めてはいけないと思います。
    だれか描いてくれないかしら? チラッチラッ



    > まんだらけに古いフィギュアを売り飛ばそうとしてる自分がよぎったなどとは…


    ねえ、あたし か わ い い よね?


      [No.1832] Re: 世界一かわいい あ・た・し 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/09/06(Tue) 18:26:39     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    よ ん だ。

    うわあああああああああああああああああ。

    orz




    ええと、マジレスすると、
    鏡の前でポーズを決めるムチュールの絵と一緒にするとさらに威力が上がると思う。

    まんだらけに古いフィギュアを売り飛ばそうとしてる自分がよぎったなどとは…


      [No.1831] 世界一かわいい あ・た・し 投稿者:砂糖水   投稿日:2011/09/06(Tue) 17:18:12     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     あたしはムチュール。ご主人さまはいつも世界一かわいいってほめてくれるのよ。
     かわいい仕種の研究には余念がないの。
     ちょっと首をかしげて上目づかいでご主人さまを見つめれば、「かわいー!」抱き上げてくれるのよ。
     何でもかんでも唇をくっつけて確認するのもかわいいって言ってくれるの。
     
     ねえあたし、かわいいでしょ?

     つぶらな瞳にぷっくりとした唇。

     ねえねえかわいいでしょ?

     本当はちゃんと歩けるけど、わざと少しだけよたよたと歩くの。

     ねえあたし、かわいいよね? ね?



     ある時ご主人さまはあたしにペンダントをプレゼントしてくれたの。
     ご主人さまお手製ですって! かわいく飾りや模様がつけてある石がポイントね。
     「これでずっと一緒だね」って言ってくれたのよ! 素敵よね!
     他にもリボンとか髪飾りとかたくさんあるけど、これは特別なの。
     肌身離さず持っているわ。ご主人さまもそうしてほしいって言ったから。


     あたし、かわいいよね?




     でも、ねえご主人様。いつまでこうしていればいいの?
     どうせ、ルージュラになったら私を捨てるんでしょう?
     だから私に「かわらずのいし」なんかを持たせたんでしょう?
     いっぱい飾りをつけたり模様をつけたりして誤魔化しているけど、わかるんだよ?

     ご主人様。ねえご主人様。

     前にも同じようなことしたんだよね?
     でもその時はうっかり進化させちゃったんでしょう?
     だから今度は進化しないように気をつけているんでしょう?
     
     ねえご主人様。

     私より可愛いポケモンを見つけても私を捨てるんでしょう?
     知ってるのよ、最近私に飽き始めたって。
     

     私、知ってるのよ。




     ねえ、

     あたし、かわいいよね? 





    【続きはご想像にお任せするのよ】


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




    お久しぶりですこんにちは。
    今マサポケがどんな状態かわからないので空気を読まずに投稿しました。
    相変わらず全然書けません。それでは。


      [No.1830] 【書いてみた】しろいぼうし 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/09/05(Mon) 22:45:54     98clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     昼間だというのに鬱蒼としたウバメの森は、すでに薄暗かった。それでも何かを探すように緑のバンダナが動く。それを身につけているのは小さな女の子。緑色は森にとけて野生のポケモンから身を守るため。そしてその後ろでは、ピンク色のエネコが主人と一緒になって探していた。
     ポッポが横切り、キャタピーが葉を食べている中で、ひたすら探していた。時には上を向いて、探し物がないか確かめて。その顔は焦っている。日がくれる前に家に帰らなければならない。けれど探し物はいくどもいくども見つからない。
     ふと上を見上げた。ウバメの森の奥深く。来たことのない、人の通る道を大きく外れてしまったところ。後ろを振り返っても、横を見ても知らないところ。どちらに行けば元の道に戻れるのかも解らない。早起きなホーホーの鳴き声が聞こえた。
     薄暗い道、ホーホーの声。心細さに感情が溢れそうだった。大声を出しても誰も来ない。トレーナーだってこんな時間は滅多に通らない道。助けを求めることは不可能。勘で歩くけれど、いってもいっても覚えのある道は見つからない。足は疲労し、木の根に躓く。派手に転げ、落ち葉が体中につく。
    「うわーーーん」
    転げたことで感情の抑えが壊れた。その場でエネコを抱えて泣き出す。野生のポケモン達がその大声から逃げるように離れる。ただ一つの足音以外は。

    「どうしたのかな、緑猫(みどりねこ)ちゃん」

    優しくて明るい声に顔を上げる。目の前にいるのは女の人。なのだけれども。涙のせいなのか、輪郭がぼんやりとしている。いや違う。ぼんやりとしているのは薄く光っているようだった。肌が白くて綺麗な人。泣く子も黙る美しさ。というより奇妙さ。なんというか、不思議な絵画の世界に迷い込んでしまったかのようだった。
    「どうしたのかな、緑猫ちゃん。お腹すいたのかな?」
    にっこりと微笑まれても、言葉が出て来なかった。迷ったのと疲れたのと探し物がみつからないのと、全て言いたかったのだけど、緑猫から出てくる言葉はそうじゃなかった。
    「お……ねえちゃんだれ?」
    「わたし?ふふふ、教えなぁい」
    今まで会ったことのないようなふわふわとした手応えのない会話。次に出てくる言葉が見つからずにしばらくその人を見た。
    「そんなに見つめられたら困っちゃうなぁ」
    語彙がそんなに無いので、形容のしようがない。一つだけ言えるのは、こちらの会話をのらりくらりかわす、手強い相手だということ。
    「……わたし、みどりねこじゃないもん」
    「かわいい緑のバンダナして、猫みたいだよね。だから緑猫ちゃん。連れているのはエネコかな?」
    「そ、そうだよ。この前、ホウエン地方から来た人がくれたの」
    エネコはその人の足元によって、匂いをかいだりしていたが、やがて不安になったのか主人の元へと戻って行く。
     変な名前を勝手につけられた。けれど緑のバンダナの巻き方が猫の耳のようだと言われたこともないわけではない。だが名前も聞かずに見た目で名前をつけるなんて。
    「……おねえちゃん誰なの?」
    「ないしょ。ここには寄り道しに来たの。これからヒワダの方に行くの」
    かみ合ってない会話に混乱。けれどもヒワダに行くと聞いて、思わず立ち上がる。
    「おねえちゃんヒワダ行くの?あのね、わたしコガネシティに行きたい!ついていっていい?」
    「反対方向だけど、いいのかな?」
    「途中まででいいの!帰る道が解らなくて、来た道に戻れれば後は帰れるから!」
    帰れるなら何でも良かった。人間じゃなくても良かったのである。
    「緑猫ちゃん、知らない人はそう信じちゃダメよ。この暗さならヤミカラスだって飛んでるんだから。ついていったら迷って食べられちゃうよ」
    「でもお姉ちゃんはそんなことしないから大丈夫だよ」
    「何を根拠に言うのかな?」
    「解らないけど、お姉ちゃん悪い人じゃないもん!」
    「緑猫ちゃんは疑うことも覚えようね。でもいいよ、途中までね」
    その一つ一つのしぐさがやはり不思議だった。振り返り、歩き始める瞬間。踏みしめる落ち葉の音が自分より小さい。歩くたびにエネコがむずむずするのか落ち着かない様子で走り回る。
    「あの、おねえちゃん」
    「疲れたのかな?」
    「ううん、あのね、白いぼうし、なかった?」
    「ぼうし?見てないよ。探してるの?」
    「ずっと探してるんだけど、見つからないの。大切なものなのに」
    「大切なものはね、手放しちゃだめよ」
    「うん……」
    「どこで無くしたのかな?」
    「それが解らなくて。気付いたらなかったの。でも昨日、ウバメの森にブリーの実を取りに来たからその時しか考えられなくて。どうしよう、明日のために買ってもらったのに」
    「明日?どこかへ行くの?」
    少しだけ、その質問に食いついてきた。けれどこの不思議な人が今さら何をしようが気になるわけもない。
    「行くよ!明日は学校でラジオ塔の見学に行くんだ!展望台まで行くんだよ。いつもは帽子の代わりにバンダナだけど、せっかく行くからって私のお姉ちゃんに買ってもらったんだ!」
    少し調子を狂わされた。そのまま無言で歩いて行ってしまったから。少し速度を早めたその人に、おいてかれまいと走る。
     突如、歩みを止める。その少し後ろで立ち止まった。
    「緑猫ちゃん、明日は絶対に学校お休みしちゃいなよ」
    突然のことで、言葉が出ない。楽しみにしていたことなのに、休めと言われて。
    「ね?」
    「明日は楽しみにしてたから、行かなきゃ。友達も楽しみにしてるから」
    「そうかあ。でもね、本当明日はラジオ塔は見学するところじゃないんだよ。お家に帰ったら、明日は休んだ方がいいよ」
    「なんでそんなこと言うの?」
    「なんでかなあ、緑猫ちゃんだから話したくなっちゃったのかもね。ほら、ついたよウバメの森の道」
    薄暗いけれど見える。森の神様を奉っているほこらがあって、遠くには低い柵のある池も見えて。
    「ありがとう!おねえちゃんのおかげで……おねえちゃん?」
    振り返ってもそこには何もなかった。淡く光る綺麗な人。薄暗いウバメの森ではすぐに見えるはずなのに、何も見えなかった。
    「エネコ知らない?」
    エネコは遠くを見つめていた。主人に呼ばれていることを知ると、エネコはすぐに返事をして寄ってきた。何かを持って。
    「何拾ったの?みせてー!」
    エネコが持っていたのは小さなつぶつぶ。よく見えないけれど、石ではなさそう。
    「何かの、タネかなあ?どこで拾ったの?」
    この辺りでみないタネ。家に帰ったら植えてみようと、ウバメの森を後にした。エネコもついていく。一回だけ、森の方を振り向くと、短い声で鳴く。そしてやたらと速い主人の後を追いかけた。



     あのお姉ちゃんは森の神様の使いだったのかな。
     その次の日、ラジオ塔が爆破された事件が、朝からニュースでやっていた。そのおかげで見学は中止。先生たちは何も被害がないうちで良かったといっていた。クラスの友達も中止になって残念そうだった。
     けれど、あのお姉ちゃんの言う通りじゃなかったら、どうなっていたのだろう。私には全く解らない。
     あれ以来、私を緑猫と呼ぶお姉ちゃんには会わなかった。ウバメの森で待っていても、ヒワダタウンに行っても。不思議な綺麗な女の人を、トレーナーは誰一人見ていないといった。
     
     そうそう、あの時エネコが持っていたタネを植えてみた。庭は狭いからほんの隅っこだけど、花が咲いたんだ。図鑑で調べたその花。
     ホウセンカ


    ーーーーーーーーーーー
    ゴーヤロック信者が、一生懸命ご神体を彫った結果のようです。
    【ごめんなさい】【石を投げないでください】【食べないでください】【お好きにどうぞ】


      [No.1829] ローレライ 投稿者:紀成   投稿日:2011/09/04(Sun) 19:03:11     33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    おお、苦悩の嵐よ 止まずにいておくれ
    この苦しみが私を 死なせてしまうまで!

    声が出ない。
    漢字を入れれば五文字、平仮名で六文字。たったそれだけの数の文字が、私の運命を大きく狂わせた。
    私の声は今、別の人の中にある、それを入れたおかげで彼女らは喋れるようになり、微妙に喜んでいるように見えた。
    でも彼女らは歌わない。歌うことを知らないから。
    返して。私の声を返して。それは歌うためにあるのよ!
    でも声を奪われた私は何も言うことが出来ない。誰かに切り刻まれようが、踏まれようが、首をもぎ取られようが、悲鳴も苦痛の声も上げることが出来ない。
    だって私は――


    その高校には、名物があった。高校には珍しいオペラ研究会と、そこに所属する歌姫だ。
    彼女の歌を聴いた者は一瞬にして彼女の声に囚われてしまう、何度かストーカー事件になったこともあり、学校側は彼女が年に一度の文化祭でやるオペラ以外で歌うことを禁じた。
    彼女の歌でオペラ研究会がなっていたと言っても過言ではない。

    だが。

    喉の調子がおかしくなったのは、彼女が高三になったばかりの春だった。
    声が上手く出ない。声を出すと、喉が酷く痛むようになった。周りの薦め、というよりかは強制的に病院に行かされた彼女が知ったのは、

    声を出してはならない、ということだった。

    色々レントゲンの写真を見せられて解説されたが、全く覚えていない。ただはっきり分かるのは、喉に悪性の腫瘍が出来ていて、取らなければ命にかかわるということ。
    そしてまた取ったとしても、二度と歌が歌えなくなるということだった。
    「日常生活に支障はありません。歌うのを我慢するだけですから」
    感情の無い声でそう言われ、彼女は元からこんな声だったらこんな思いはしなかったのかなとふと思った。

    トボトボと帰る彼女の目に、一軒の店が飛び込んで来た。さっきまで無かった店が、病院から数百メートル離れた路地にいきなり建っている。
    外装はヨーロッパに古くからある民家を思わせるような石造り。ドアは鏡になっていて、そこだけが酷く合っていない。
    「…」
    何故かは分からない。だが、引き寄せられるようにその店に向かって行った。
    小石を組み合わせて造られた看板の文字は、『黄昏堂』
    なんだか妖しい雰囲気が漂っていた。今思えば、何故気付かなかったのかと自分を責めたくなる。
    だって、意味が無ければそんな店が私の前なんかに姿を現すわけなかったのだから。

    店内は沢山の商品が展示されていた。どれもこれも見たことが無く、また『本当に効果があるの?』と言ってしまいそうになるくらい不思議な物だらけ。
    「いらっしゃい」
    いつの間にか背後に女の人が立っていた。黒いドレス(何故かフード付)を着、煙管をふかしている。神秘的というか、ミステリアスというか。
    簡単に言うと、すごく美人だ。
    「あの、」
    「分かってるよ。アンタの望みは、その喉を治すことだろう?
    だけどね、うちは薬屋では無いし、万能薬なんて便利な物も扱ってないんだよ」
    何もかもお見通しのようだ。私は言った。
    「喉なんてどうなってもいい!私はただ、自分の歌が二度と聴いてもらえなくなるのが嫌なのよ」
    「しかし、喉が無ければ歌は歌えないぞ?」
    「一度だけ…もう一度だけでいいから歌いたい。聴いた人が一生忘れられなくなるような歌を歌いたい。
    …その後はどうなってもいいから」
    その人はフウとため息をついた後、店の奥に入って行った。数分後、綺麗な薄い青色の液体が入った瓶を持ってやって来た。
    「これはチルットやチルタリスが歌う歌を調合して作った薬『ローレライ』。歌う直前に飲めば、その歌を歌い終えるまで喉の状態を最高にしてくれる」
    「本当?」
    「ただし、使った後どうなるかは私にも分からない。それでもいいというのなら、持っていけ。だが一回きりしか使えない。よく覚えておくんだ」
    「…ありがとう」
    そう言って受け取った瞬間、私は自宅の自室にいた。カレンダーが黄昏時の光を浴びて白く輝いている。次の大舞台は、十月。
    文化祭だ。

    「ねえ、大丈夫だった?」
    次の日学校に行くと、友達が大勢押し寄せてきた。私は笑顔で言った。
    「うん、大丈夫。ただしばらくは歌わない方がいいって」
    「えー!?」
    「文化祭は出るからさ、皆見に来てね」
    不安そうな皆の顔を見て、私は薬のことを思い出した。もし今の状態で練習して歌っても、酷い声を出したら役を降ろされてしまうかもしれない。
    なら、一発本番にかけるしかない。

    『マダム、あの薬を使って何をするつもりだ』
    「まあ見ていろ。どうせならその瞬間を直に見てきたらどうだ?悪狐のお前なら、人間に化けることなど目をつぶっていても出来るだろう」
    三人娘がゾロア達と遊んでいた。ディッシュ、タオル、ステッキと名付けられた三人は、最近はずっと黄昏堂で遊んでいる。
    「さて、ヘルガーの角で作ったフラスコを用意しておかないとな。
    …その日が楽しみだ」

    文化祭のオペラ研究会の出し物は、モーツァルト『魔笛』厳しいチェックとオーディションで私はソプラノのメイン、夜の女王役を取った。
    本番は午後二時。薬は衣装のポケットに入れてある。
    「頑張ってね」
    「応援してるからね」
    皆にそう言われる度、私は作り笑いを浮かべる。
    (私から歌を取ったら、何も残りはしない…)
    なら、それが終わった後で死んでしまえばいい。私の姿と声を目と耳に焼き付けるんだ。

    本番が始まった。着々と話は進む。裏切られたと知った夜の女王は娘に怒りと縁切りを言い放つ。
    薬を飲み干した。一発勝負だ。舞台がいやに暗く見えるけど、気のせいだろう。
    拍手と歓声。ピアノのイントロ。私は歌う。全てを賭けて。

    『地獄の復讐がわが心に煮え繰り返る
    死と絶望がわが身を焼き尽くす!
    お前がザラストロに死の苦しみを与えないならば、
    そう、お前はもはや私の娘ではない

    勘当されるのだ、永遠に
    永遠に捨てられ、永遠に忘れ去られる
    血肉を分けたすべての絆が
    もしもザラストロが蒼白にならないのなら!
    聞け!復讐の神々よ、母の呪いを聞け!』

    ただ夢中で歌っていた。ピアノの音もあまり聞こえない。視界が霞み、力が抜けていく。
    足と手の感覚が、無い…

    パリン、という音がした。

    「あー…フラスコ割った」
    黄昏堂の奥にあるマダム。トワイライトの書斎兼研究室。ビーカー、フラスコ、試験管などが立てかけてある。その中には、ボコボコと音を立てる謎の液体もあった。
    「やはりガラスはダメだな。長持ちしないし、何より効果が全く追加されない」
    ヒードランの顎で出来た鍋に、割れたフラスコを入れる。一瞬にして溶け、水溜りのようになった。
    『マダム』
    ゾロアークが入ってきた。疲れた顔をしている。
    「お帰り。どうだった、大量の人間が集まる場所は」
    『二度と行きたくない。――そして、あの娘の記憶は誰の中からも削除されていた』
    「ああ」
    マダムがヘルガーの角で作ったフラスコを取り出した。今は空だが、先ほどまである物質が入っていた。

    そう。
    彼女の『声』だ。

    「あの薬はチルットとチルタリスの『ほろびのうた』から作った薬なんだ。
    使えば肉体消滅、そしてジラーチの短冊を一枚入れることにより精神を深い眠りに落とすことが出来る」
    貴重な短冊を一枚丸々使ってしまった、とマダムはぼやく。千年に一度しか目覚めないジラーチは、素材を取るのも難しいのだ。
    「その隙に声を抜き取り、魂を人形に変えた――と。あの人形、私が何かしない限り一生動かないぞ」
    『何のために』
    「長年の付き合いであるからには、理解して欲しいが…まあいい。
    それは――」

    「まだむ?」

    三人娘が顔を覗かせた。驚くゾロアーク。
    「どうした」
    「あの、さ、ふぁんとむ?まって、る、よ」
    「ありがとう。今行くと伝えてくれ」
    「ん」
    三人娘が出て行った後、ゾロアークが言った。
    『まさか、あの三人に』
    「飲み込みが早いな。まだ平仮名しか読めないが、きちんと学習していけばそのうちどんな言語も話せるようになるだろう」
    『マダム…』
    マダムはフッと笑った。
    「流石に声が無いのは気の毒だと思ってな。分けて与えたんだ。
    素敵な声だろう?」
    『…若い娘に恨みでもあるのか?』
    「まさか!」

    「相手が死に同意しているのならば、手助けして良い素材は取っておくのが妥当だろう?」

    ああ、あの人が誰かと話をしている。きっとあの人は、私よりも賢いんだろう。だって、あの人に向かって呆れた顔をしているから。
    今度の私の声の持ち主は、三人の女の子。あの三人は、これから沢山話したり、歌ったり出来るんだろう。

    一体、私は何のために生まれてきたんだろう。
    何のために…

    人形の目のボタンから、小さな雫が一つ落ちた。
    それに気付く者は、誰もいない。


      [No.1828] オフレポという名の駄文 投稿者:風間深織   投稿日:2011/09/04(Sun) 09:49:56     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     どうもこんにちは風間です。
     えっと、オフレポを書こうと思います。DSiで書く&一発書きなので、どうなるかわからないけどとりあえず書きます。テコイプ先生に減点されるのやーだもんっ!


     まず、私はもすちゃんを浜松町までおくり届けるために、私の路線ともすちゃんの路線がぶつかる駅で待ち合わせしました。「もすちゃん?」って話しかけたときのもすちゃんの顔、忘れないよ(かわいかったよ
     もすちゃんは私を見て電車に乗るまでずっと「え えー」って言ってました。ふふふ、想像と違ったでしょ? 私そんなにかわいくないよ。もすちゃんかわいいねぇもすもす。
     そして、電車の中で「みーさんなんて見えない」とか言ってるうちに山手線に乗り換え。もすちゃんが「どうしようどうしよう」って言ってるので、ひたすら「大丈夫よぉ」って言ってた記憶があります。「初対面の人とあんまりしゃべれなくて…」あれ、もすちゃん、私も初対面なんだけどなぁ…?
     もすちゃんを浜松町で降ろし、私はオープンキャンパスへ。るっきーさんのせいで雨降ってました。うん、やっぱり女子大っていいね。男子に良い思い出がないせいか、女子しかいないっていうのにはすごく魅力を感じます。
     そして、自分も浜松町へ。
     うろ覚えだったカレー屋さんにぴょこんと顔を出すと、奥のほうに586さんが座っているのを発見。(手前の人は焦っていたのと初めて会う人だったせいでちょっと覚えてません)私はてこさんとレイニーさんと586さんと同じテーブルでした。てこさんかわいい超かわいい。あと、横でもすちゃんが楽しそうにしているのを見てほっとしました。浜松町で降ろしたときは、子を送り出す親の気持ちがわかった気がするもの。
     あと、586さんに謝らないといけないことがあって、私も完全に忘れていたのですが、昼食代をおごってもらってしまいましたごめんなさい(;_;)
     その後、カラオケまで時間があるってことで、前も使ったラウンジに移動。586さんの分厚い薄い本のカバーがとてもきゃわー!…きゃわー!って感じでした。良い子は丸めてゴミ箱へ
    ( あと、てこさんにコンビニにつれていかれました。みおくんと。てこさんが「両手にはな〜」とか言ってるのを見て「私じゃなくてもすちゃん連れてきゃいいのになぁ」と思いながらついて行ってました。ミオピクミンだぜ!
     そして、カラオケへ。私は最初てこさんと同じ部屋でした。みおくんまじ歌うまい。こまさんがニャースすぎる。そして着物MAXさんがメイド服で乱入、みおくんメイド服を着る……etc
     その後、みおくんからメイドエプロンなるものを受け取り、着てみました。ヘッドドレスを首につけて「伊東マンショー♪」ってやりたかっただけだったりw その格好のまま演歌を熱唱。茶色さんに録音されていました。聞きたい人なんていない……よねぇ?
     隣の部屋に行ってみると、みーさんがメイド服を着ていて2度見して逃げる。また、なんとなく隣の部屋に行ってみると、みーさんが「はじめてのチュウ」を歌っていて3度見して逃げる。結局隣の部屋に入れたのは3度目で、やっぱり私はメイドエプロンを着て演歌歌いました(^^;
     イケニエ部屋にも行きました。アバレンジャー歌ったよ。だって、好きなんだもの。きなりさんとつながリーヨ歌ったのは良い思い出(^^)
     カラオケ屋を出てもすちゃんを見送ると、コーヒー店の横のちょっとスペースがあるところで自己紹介。「みーさんなんて見えない」って言った覚えがあったりなかったり…
     そして、飲み会?ですが…

     私には何も聞かないでください。泣いてた覚えがあります。聞かないで、うん。聞かないで……‥

     ってことでオフレポ、終わり!


      [No.1827] こんなかな 投稿者:紀成   投稿日:2011/09/03(Sat) 15:02:28     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ・バスの時間を間違え、母親に駅まで送ってもらう。ツイッターを見ると鳩さんが『遅れたら先にポケセン行っててくださいねー』
    ・中央特快に乗り、神田で下車。山の手線で浜松町へ。
    ・鳩像が見つからなくて一瞬迷う。
    ・それっぽい二人がいたがとりあえず像の前へ。あちらから話しかけてくださいました。久方さんとてこさん。てこさんが可愛くてほおぉ…となる。
    ・ビルの下で皆さんが雨宿りをしていたのでそちらへ。挨拶して早々男性の一人に『夏コミはありがとうございました』と言われ、『えっ』となる。
    ・そう…彼こそが我らがゴーヤロックこと586さんだった…
    ・『あ!夏コミで鳩さんと一緒に本配ってた人!プレゼント買ったらお礼言われた!』
    ・本当にすみませんでした586さん
    ・続いてmossちゃん登場。てこさんが『食べたい』的な発言をする。mossちゃん、戸惑う。
    ・いや本当に可愛かったのよ!黒縁眼鏡お似合いでした
    ・グレイシアのぬいぐるみを誰か(あれ、どなただったっけ)が持ってきていた『今からポケセン行くのでこれを目印にしてくださいねー』
    ・私のパーカーにフードが付いていたので入れてもらう
    ・ポケセンの入り口前に眼鏡のお姉さんがいた。りえさんだった。素敵なお姉さんでした。
    ・『とりあえず買う物がある方はどうぞー』
    ・そこで久方さんからパッキングされた何かを渡される。『これは?』『どうぞ』
    ・中から出てきたのは…赤紫っぽい色の原石!?
    ・『なっ何ですかこれ!』『レッド・ファントムです』『えええええええええ』
    ・レディー!と叫んだ私は馬鹿です
    ・『差し上げますよ』『あああああありがとうございますっ!』
    ・久方さん良い人
    ・その後私もポケセンに入るが、目ぼしい物はなし。お菓子でも買おうかと思ったが量の割りに高い。
    ・仕方ないので持って来たハイソフトを皆さんに配る。
    ・ここで鳩さんとご対面。『紀成です』『おおー』
    ・失礼ですが、スパコミの時よりお痩せになられたような―― げふんげふん
    ・ビル内にあるカレー屋さんでお昼 総勢…何人だ?がソファと椅子一列を占拠
    ・『鳩さんの隣がいいです!』
    ・私の机は(四人掛け)私、鳩さん、りえさん、小樽ミオさんでした。確か。
    ・年上なので『君』ではなく『さん』にさせてもらいますね。
    ・人生の先輩に色々聞く『絵で食べて行けるようになるにはどうしたらいいですかね』『どんなタッチでも描けるようにしておかなきゃ。あと老若男女関係なしに』
    ・ふとミオさんを見ると何かを必死にメモしている『何してるんですか』『今日のことメモしておこうと思って』
    ・流石ミオさん
    ・カレー美味しかったけどちょいと辛かった
    ・途中で風間美織さんの登場。白いワンピースが目に眩しい。そして美人さん!
    ・『みおりん可愛い!』と叫んだ私は(ry
    ・到着が遅れた方々を待つ間にとりあえず食べ終わった人は店を出る。途中でお手洗いに行って戻って来たら皆いなくなってて焦った
    ・どうにか586さん見つけて聞いたら『下の階にいますよー』
    ・慌てて下に行くと鳩さんが同人誌を配っておられました。出張?
    ・DSを取り出して色々やる。鳩さんが3DSの立体図鑑を見ていたので見せてもらう。
    ・『おー本当にリアル』『今気付いたけどキュレムの尻やべえなww』
    ・するとキトラさん(多分)が鳩さんに『通信しましょうよー』と寄ってきた。だが鳩さんはキュレムに夢中で気付かない。『私でよろしければ』『お願いします』
    ・てなわけで夢属性のイーブイをもらいました。私があげたのはサファイア時代からの♂のエーフィ。名前はサクラ。何でと言われると返事に困りますが、色で。
    ・そのへんで浴衣姿のイケメンがいることに気付く。ストライクゾーンギリギリ。思わず見惚れた。
    ・和服!眼鏡!たまらん!
    ・↑本当にそんな感じ
    ・とりあえずカラオケへ移動。そしてその彼MAXさんだと知る。確かにイケメンだ…
    ・まあ案の定というか、当たり前というか。カオスな空間に。
    ・最初に久方さん、鳩さん、りえさんと同じ部屋になりましたが…
    ・『メイド服持って来た』『おおー』『着せようぜ』
    ・てなわけで歌うどころではなくなり、最初はミオさんが犠牲になりました。
    ・そして次々と犠牲になっていく男の方達。
    ・まともに歌っている部屋に行くと、みおりんが…あれ、何歌ってたっけ
    ・とりあえず私も曲を入れさせてもらう。最初は『コネクト』
    ・そして世間の空気を読まず『炉心熔解』
    ・『ぴゃあああああああああああ』を言いたかっただけ
    ・そしてラティ兄妹の主題歌が出たが肝心のミオさんがいない
    ・生贄になっていたミオさんを呼びに行く ちなみにその時鳩さん達は『ポケモンいえるかな?』を歌っていた
    ・その後mossちゃんがすこっぷさんの『マリオネットシンドローム』を歌ったようだが聞いてなかった
    ・聞けば良かった…
    ・鳩さんの部屋に行くとりえさんが歌っていた
    ・歌詞があまりにもカオスなので『これ、何ですか』『デッドボールP』『ああ』
    ・後で調べたら『千夜一夜千日手』だということが判明
    ・ここからストーカーソング突入!
    ・久方さんが『恋愛疾患』りえさんが『人間辞めても』(題名合ってるかな)
    ・久方さん歌上手い 惚れるわ
    ・途中でMAXさんが入って来た パタリロ!の『クックロビン音頭』を歌う
    ・『えええええええええええええええ』
    ・マザーグース好きな私はぶっ飛んだ
    ・『だーれがころしたクックロービン』もちろん合いの手も入れます
    ・その中でまともな曲…まともすぎてアレか…Bzを歌う私
    ・『酒が飲めるぞー 酒が飲める飲めるぞ 酒が飲めるぞー』
    ・大合唱 メロディはディ○ニーの『シンデレラ』より あの魔法使いの歌ですよ
    ・後で親に聞いたらLP時代の曲でしかも大ヒットだったんだね… 知らなんだ
    ・またストーカーソング『ストーカーと呼ばないで』やってることが正にストーカーで一同爆笑
    ・そしてみおりんがやって来て何か入れた
    ・アレッ…?この題名、このイントロ…どこかで…

    ・みおりん『アバアバアバアバアバレンジャー』

    ・みおりんが歌ってるよ…戦隊を…
    ・とりあえず皆で合唱 ちなみにここから時間が足りないということで一番だけにする
    ・確かきとらさんがポルノグラフィティの『ジョバイロ』を歌う
    ・私も便乗して『横浜リリー』を歌う
    ・そして腐れ外道とちょこれゐとを歌う
    ・そして鏡音レンの暴走も歌う
    ・最後のトリは『めざせポケモンマスター』もちろん合唱!
    ・精算してmossちゃんの見送りに浜松町駅へ向かう
    ・『あっアブラムシ歌うの忘れた』『カゲボウズで替え歌ですね、分かります』
    ・その時も『酒が飲める飲めるぞ 酒が飲めるぞー』を歌う鳩さん
    ・mossちゃんとはここでお別れ てこさんが抱きつく
    ・夕食の店がまだ予約時間では無いということで、近くの休憩所で自己紹介
    ・皆の反応が見れておかしかったなー
    ・そして夕食に居酒屋へ向かう 部屋に入った途端隣の部屋から『マル・マル・モリ・モリ!』が聞こえてきてカラオケ付きだということが判明
    ・踊るみおりんとりえさん 可愛かった
    ・飲み物はタッチパネルで注文するらしい 私の周りの人ほとんどビールでした
    ・そして隣の子供が何か歌いだしたのでこちらも対抗するぜ!
    ・ってことでりえさんが『勇者王誕生!』を絶叫する
    ・友人がカラオケで歌うから知ってたけどまさかこれほどまでとは…
    ・カラオケの定番らしいね
    ・で、食事の合間に鳩さんに絵をせがむ私 スケッチブック持ってきてたのですよ
    ・あとみおりさんにイナズマイレブンの同人誌を貸す
    ・そしたらお返しということであちらの漫画研究会?の部誌を貸してくださった
    ・なるほど!こういうのもあるのか!と思いながら読んでいました
    ・鳩さん『できたよー』えっこんな短い時間でこのクオリティ!?ツッキー描いてくださった
    ・ツッキーマジイケメン
    ・ビールジョッキ二杯くらいで出来上がったてこさんとりえさん 肌が白いから赤くなってるのが目立つなあ
    ・なんか呂律回ってませんよてこさん
    ・盛り上がってきた所で色々お喋り てこさん達の酔いを冷ますために冷たいウーロン茶とかジュースを注文
    ・紀成『鳩さん、言っていいですか』鳩さん『んー』
    ・紀成『夏コミの時、私586さんの顔知らなくて、てっきり鳩さんの旦那さんかと思いました』
    ・案の定爆笑される いや本当ですよ!
    ・『もう二人とも結婚しちまえよ』『二次会はマサポケ全員参加な!』
    ・『紀成さんサイト早く作れよ』

    ・この時点で八時十五分くらい。そろそろかなーと思ったので挨拶してお先に失礼し…
    ようと思ったら靴箱の鍵を部屋に忘れUターン 恥ずかしい奴!
    ・『というわけで改めて!ありがとうございました!』

    ・そして帰り道一人じゃ心細いと言ったら男性の方の一人が一緒に浜松町駅まで着いて行ってくださった!
    えっと…名前が思い出せない!でもナイスガイでした!ありがとうございます!


    後日談。二学期始まってから友人に『オフ会行ったよー MAXさんが素敵だったよー』と言ったら即座に『メアド交換した!?』と言われた 
    初対面でするわけないだろ…
    そして更に『クックロビン音頭歌ってた』と言ったら『何それ』と切り捨てられた
    そっか…知らないのか… いや私が知っているのがアレなのか

    とにかく、すごく楽しくて夏休みの思い出になりました!


      [No.1826] 夏休みが終わってから課題を仕上げていたMAXです 投稿者:MAX   《URL》   投稿日:2011/09/03(Sat) 08:37:21     77clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     書き始めたのが9月なので、記憶が曖昧な部分も多いです。箇条書き気味でご勘弁を。

    ※21日
     当日、夜勤業務を終えて一旦帰宅。準備を整え東京へ。
     出撃時、格好は紺色の浴衣に足袋と下駄。雨の中、これにコウモリ傘を差して東京への新幹線に乗り込む。
     なぜこんな姿になったか? 気の迷いです。

     13時前に東京は浜松町へ到着。
     久方様とメールでやり取りし、前回の東京オフと同じビルの休憩スペースに向かう。
     皆様を確認。
     当然、皆様は食事済み。あたしゃ夜勤明けに職場で菓子パンを1つ食った程度。若干の空腹を抱える。

     皆様と歓談。とりあえず、てこさんに遅れたお土産として「キュゥべぇの名刺」を寄贈。
     586さんから同人誌をいただく。その厚みに「川上稔作品みたい」と素直にもらす。
     とりあえず持ち込んだ3DSで何かできないかと徘徊。結果、無駄足に終わる。

     あの人やこの人から服装についてツッコミを入れられる。事前にチャットで「知り合いだと思われたくなくなる格好してやるんだから」と言っていたので、と返答。
     どうやら胸元が開き過ぎないように使っている「水色のクリップ」がお気に召さない様子。まぁ、アクセサリーとしては浮いてるわよね。
     なんやかやでこの場は終了。カラオケ屋に移動することに。

     カラオケ屋も以前と同じく。しかし今回は3部屋構成。「ガチ部屋」と「賑やか部屋」と、りえさん017さん久方さんを中心とした「イケニエ部屋」
     何がどう展開したのか、男性陣が女装(メイド服)する羽目に。もちろん自分も例に漏れず。浴衣の上を開いて、頭からワンピースを着ることに。
     お披露目。
     「誰に押し付ける?」と言われ、そのときは確か、細身の小樽さんに押し付けたはず。
     その後、クーウィが着ようとしてサイズが合わずに断念したり、586さんに前掛けを与えていたり、と女装祭り。自分はいつの間にか、ネコミミのカチューシャをつけていました。
     落ち着いたところで空腹に耐えかね、買っていた「赤福」を食べる自分。イケニエ部屋にいた皆様にもおすそ分け。

     歌の内容? イケニエ部屋にばかりいた自分はヤンデレだストーカーだという歌を聞いてましたよ。
     りえさんのアニソンにビックリ。やるもんだ、と思いました。そして「アニメの大王」に対抗して「アニメがなんだ」をリクエスト。「アニメがなんだ」の歌詞に017さん大笑い。
     懐かしいアニソンを、となったときに「クックロビン音頭」を歌う。まぁ、和服らしい歌を、と考えたためです。ついでに「たいたいづくし」も。
     はて、記憶の片隅で風間さんがはっちゃけた歌を歌っていたような気がします。なんだったかしら、ね。
     今思えば、反省点多数。重っ苦しい愛の歌に対抗してすわひでおの「SA-DA-ME」を歌っておけばよかった、なんてね。「幸せを謳う詩」でもよかったかも。

     カラオケ屋を出て、どうするかのと流れに任せることしばらく。
     喫茶店の近くで足を止め、どうするのかと思いったら、ちょっと路地に入ったところの開けた場所にて自己紹介が行われることに。
     順番が来るたびに017さんに引っ張り出されるメンバー。なんていうか、「わるいゴーリキー」?
     ちょっぴり017さん不機嫌になるも、順当に一巡り。時間もよろしくなったので、飲み屋へ。

     飲み屋に向かう。これまた前回と同じ店。
     ちょっと広いお座敷に通され、2つのテーブルに分かれる。017さんや586さんのいる席と、りえさんのいる席。自分はりえさんside。
     カゲボウズに乾杯。017さん流石です。
     とりあえず自分は酒も飲まずに出された料理を食べ続ける。お刺身、久しぶり。野菜サラダもバリバリと。
     というか、お隣さんか? 子供がにぎやかよ。ひょっとして音筒抜けか? 対抗してかりえさん、ガオガイガーの「勇者王誕生!」をカラオケ機材で熱唱。いやー、自分はそこまで元気ないわ。

     飯食ってる間に皆様が「出来上がり」。てこさんヘベレケだし。
     017さんと586さんが仲良しなので、「お前らもう付き合っちまえよ!」と周囲から散々煽られる。
     りえさんの赤裸々な暴露話、展開。少々刺激が強いため、特に風間さんがピンチに。
     その中で、知り合いの「五寸釘を5本(?) カラダに打ち込む」プレイに料金 何百万とかかかった、というお話。その値段設定に自分が食いついてしまった。
     「風間さんへの刺激が強いから遠慮してよ!」と言われるが、ごめんよ、でも気になったのよ。200万だっけ? 傷の治療費? どうしてそこまで金をかけるの? とね。

     歓談に混ざれなかったときは、自分はそっと食べ物の処理にいそしんでいました。おなか空いてたの。
     そんなこんなで飲み屋も終了。終わりごろに自分が017さんにしがみつかれる、ということがありましたが、お返しに持ち上げてみました。うん、10kg以上は重い。

     飲み屋を出て、それぞれで解散。
     一部の人にて、きとらさんメインで2日目に有楽町に行くことに。自分も参加表明。
     自分は一晩の宿を求めてホテルを探すことに。
     MAX 「久方様、泊めて」
     久方さん「女性専用フロアなんで無理」 ですよねー。

     ということで、興味のあった「カプセルホテル」なるものに行ってみる。
     寝床以外は小さいロッカー1つのみ。寝床周辺にコンセント無し。携帯電話の充電は不可能! 電池残量怪しいのにー!
     学生時代の宿泊学習を思い出しながら、眠くなるまでポメラで小説書いてました。そしてだいたい22時過ぎに就寝。

    ※1日目の感想。
     りえさんすごかったわー……。
     てこもすごかったわー……。
     クーウィさん坊主だー……?


    ※22日
     翌日、午前5時過ぎに目が覚める。
     動くには早すぎ。またも寝床でポメラ起動。ホームセンター2、そのときに書き終わりました。

     ホテルを出る頃から、2日目。それはまた、今度で。
    以上


      [No.1825] Re: その意外性に拍手! 投稿者:スウ   投稿日:2011/09/02(Fri) 23:51:32     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    はじめまして。
    お目に止めて頂きありがとうございます。
    大方はあの結論を言いたいがために書いたのですが、
    もう一つ
    伝説などの強ポケをずーっとボールに入れたままというのももったいないのではないか、と
    常日頃から思ってることをちょっとばかし主張してみたかったのです。
    せっかく持ってるのだからやはり活躍の機会を与えてやりたいですね。
    そうでなければ、そやつらはそもそも何のために存在しているのやら、などと、畏敬の念を払いつつ。
    さすがに同じやつを六匹投入というのはやりすぎな気がしないでもないですが。

    >ただ、敵に回すと、その変幻自在な立ち回りと伝説ポケモンならではの高い能力値に、悲鳴をあげる人が続出するでしょうね。

    だろうと思います。
    しかもこのネタは一度きり、なおかつ不意打ちをかますようにしか使えないことでしょう。
    一度目は呵々と笑ってくれますが、すぐに飽きられてしまいます。
    それでもたまには童心に戻って(?)大いなる力、多彩な技を存分に発揮してほしいものですね。

    ありがとうございました。
    もう一度。
    しつこいですが、強すぎるやつもたまには使ってあげてね。


      [No.1824] 行きましたとも! 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/09/02(Fri) 19:16:57     20clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どこぞのI氏のおかげでゲーチスがプラズマ団を作れたようです。

    Nへの教育理念を考えたら、きっとゲーチスが基本的なところでそう考えてもおかしくないなあと思います。

    ちなみに、わたしはさりげなくそう思ってます。
    まあ、素質というのもありますが、やれば出来ると思うんですよガキ。
    だから勉強しろ過去の自分。

    【悪いゴルダックではない】【バンギラスをスナッチするんだ】


      [No.1823] Re: あれれー? 投稿者:みなみ   投稿日:2011/09/02(Fri) 06:00:42     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    アレレ〜?
    ドコデシタッケ〜?


    名前はそれ以上言ったらみねうち×40ですよ☆

    冗談はそれくらいにして、ご存じの通り最近荒らしがひどくなってきたので移民してきたわけです。
    まあ、またどこかへ流れてしまう可能性大ですが(汗
    え、URL?(滝汗

    ………絶対零度ぉっ!


      [No.1822] スカージ 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/09/02(Fri) 01:40:23     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     好きな色、好きな花。確かそう記憶していた。赤とオレンジ、そして添うようなかすみ草。白いユリは香りを振りまいていた。あんまり匂いのきつい花はいけないと聞いていたけれど、あいつは好きだった。たまには喜ばせてやろう。そうしたってこれ以上の罰は当たらないだろう?

    ーScourgeー

     部屋のドアは開いていた。けれどカーテンはしまっていた。一応、入り口で声をかけた。俺だよ、と。名前なんて言わなくても解っていた。もう10年の付き合いだから。そしていつものようにマネキンのように固まった表情で迎えた。その顔の右半分は焼けただれて。
     そうだ、今日は包帯を初めて取る日だった。そのお祝いだったのに、一瞬それが抜けてしまった。それで鏡を見ていたのか。想像していたより酷かったのか、軽かったのかは解らないけれど、俺をみて無事な方の顔が笑った。
    「ホムラ!」
    「おうよ。せっかくの包帯取る祝いだし、どうだ?カガリの好きな花」
     花束を目の前に見せる。嬉しそうに目を細めた。やはり片方の顔だけで。
    「ユリと、マーガレット!って、これ高かったんじゃない?」
    「そーでもねえなあ。生けてやろうか?」
    「うん、ありがとう!」
     無理して明るく振る舞ってる。そんくらい解るっての。マグマ団でずっと一緒に活動していた。そのくらい、すぐに解るんだよカガリ。俺が解らないようなちゃらんぽらんだと思ってるのかよ。

     マグマ団の目的は陸を増やして住む場所を広げること。生き物が進化する過程で海から陸へ上がり、その多様性を増やして来た。それに、人は陸でしか生きられない。
     環境を破壊せず、陸を増やす方法があった。古代のポケモンのグラードンの力を借りること。幾多の文献をあさり、幾多の時間をかけてようやくグラードンを目の前にして……
     あのガキだ。あのガキどもが暴れるグラードンの目の前に飛び出すから。マグマ団だって死人を出してまで復活させようなんて思ってなかった。だから、カガリはそいつらの目の前に飛び出したんだ。あのガキどものポケモンが瀕死だったから、庇うように。
     そして、並のポケモン以上の攻撃を顔面と、後は腹に受けた。ほとんど意識がなかった。その連絡を受けた時に思ったことは一つ。なぜカガリの側についていてやれなかったのか。リーダーの命令とはいえ、なぜそんな危険なことを理解してやれなかったのか。アジトに残って団員をまとめる役を代わってやれればこんなことにはならなかったのに。
     意識が戻る数日の間、ずっと側にいてやった。リーダーは残った団員をまとめるのに忙しくて来れないから、代わりに。
     初めて目を覚ました時、カガリは俺のことをまっすぐ見て言った。「天罰だ」と。環境を変えようとして、古代のポケモンを復活させたマグマ団への天罰だとカガリは言う。そんな事は無いと言ったのに、カガリは頑として言葉を変えなかった。
     これが天罰ならなぜカガリだけに降り掛かるんだ。リーダーだって、俺だって、他の下っ端たちだって、天罰ならば平等に与えることだって出来るはずだろう。それなのに、なぜカガリにだけこんな酷い火傷と傷跡を残した。

     花瓶から水が溢れ出ていた。昔のことを思い出し過ぎた。水道を止めて、花瓶の水を少しだけ捨てて、花束を解く。輪ゴムでしばってあるのを一つずつとって、花束と同じ配置になるように花を刺す。
     再び部屋に戻ってみれば、やっぱり鏡を見ている。笑顔を作る練習のようだった。やはり無事だった方しか笑うことが出来ない。火傷を負った方は、笑うことはおろか、目も見えてないのだという。
    「ホムラ」
    「どうした?」
    「マグマ団はどうしたの?こんなところに毎日何時間も来てられる身分じゃないでしょうに」
    「リーダーがなんとかやってるよ。これからどうするかはカガリが退院しないことには決まらないっていうし。だから早く元気になれよ。そんでいつもみてーに高笑い響かせて下っ端を脅かしてやれよ」
    気が強くて、特別美人とかでもなくて、やたらポケモンでいじめて来る。それなのに下っ端からは頼りにされててリーダーも何かとカガリを頼りにしていた。俺はというと、カガリよりは慕われていた覚えはあるけれど、頼りにされていた感じはあんまりない。リーダーも必ず連絡はカガリからだったし(ただ名簿を作った時にあいうえお順だっただけらしいが)、会議の時も資料や下調べが一番出来ていたのもカガリだった。
     だからみんなカガリを待っている。そういったのだが、カガリには通じなかったみたいだ。
    「ホムラは何も解ってない!」
    いきなり怒られた。思わず固まる。
    「何が待ってるっていうの。私は以前のわたしじゃないわ!もう別の顔よ!こんなので、誰がついてくるっていうの!」
    「っていわれても、俺にはカガリにしか見えないし……」
    「だから何も解ってないっていうのよ!もう片目も見えない、笑うこともできない!言葉だって全てがはっきりと音にならない!もう私じゃないのよ!」
    カガリの両目から涙がこぼれる。見えなくても涙はそこにあった。けれど火傷した方の目ではそれが感知できないようで、無事な方だけの涙を拭う。
    「こんなんじゃ、生きても行けない。こんな顔で、生きて行くなら死んだ方がまだマシだった!」
    「カガリ……」
    「そうよ、これが天罰なのよ。こんな人間じゃないような顔で生きて行かなきゃいけないのよ。かわいそうとも思われず、当たり前だと嘲笑されながらね!そうして一人で死んで行くのよ!」
    「落ち着けよ。誰もお前のこと当たり前だなんて思ってない。それにカガリはカガリだ」
    「きれいごと言わないで!ホムラは良いわよね、マグマ団だって言わなきゃ普通の人間にまぎれるんだから!」
    「そんなことねえって。俺の居場所はマグマ団しかない。それとマグマ団のやつらはカガリがどんなになってようが、まじで待ってる」
    「そんなの上辺だけよ。事実を見てないからみんなそう言うだけ!」
    「カガリ……」
    情けない。今のカガリに一番必要な言葉が解らない。ただ事実を述べるだけでは、カガリの心に届かないことなんて解ってるのに。10年以上の付き合いが嘘のようだった。
    「もう誰も私のことを人間だなんて思ってない。妖怪を見るように見てくる。誰からも人間だなんて思われない!」
    「そんなことねえよ。俺はカガリは人間だし女だしマグマ団の大切な同僚だと思ってる」
    違う、俺の言いたい言葉が出て来ない。死ぬな、なんて都合のいい言葉じゃない。ただ、ずっとこれからも一緒に生きて行きたいだけなんだ。出来るならまた一緒にマグマ団としてやって行きたい。
    「だから、生きていけないと思う前に、俺のところで良かったら来いよ。世の中、そう思ってるやつばかりじゃないって」
    「何言ってんの?」
    少しだけ表情が変わった。声も少しだけ晴れてきてる。
    「え、だから俺の家に来いよってこと」
    「ホムラの家、足の踏み場がないからやだ」
    「ちゃんと大掃除したんだぜ。泊まりに来ると思って一応」
    「あれが初めて女の子を泊める家か。その辺にエロいビデオだの雑誌だの放置して、洗濯物はその辺に投げてある部屋が」
    「あれエロくねえよ!思い出した、その後俺のことエロビデオだのなんだの呼びやがって、下っ端にまでそれがうつったんだぞ。あの時は名誉毀損で訴えようかと思ったくらいだ」
    その後、カガリはずっとあのDVDのこととを言っていた。確かにカガリが来ると知ってれば真っ先に片付けようと思うが、突然泊めることになったんだから仕方ないと思わないか?
    「じゃあそれは私の勘違いとして、寝る場所なくて洗濯物の上で寝た事実はどうしますかホムラさん」
    「それは認める。うひょひょ、カガリがあれ全部洗濯して片付けてくれたおかげで、あの時だけは綺麗になったんだよ一応」
    「は?またあのゴミ屋敷状態なわけ?マグマ団のアジトだって一人で散らかすし。片付けろっていったでしょ!」
    「うひょひょ、だからカガリが来てくれると助かるんだけどなあ」
    心なしか、火傷をおった方の口角が上がっているように見えた。完全に元には戻らないにしても、カガリはカガリ。俺にとって、大切な同僚で、パートナー。
    「ホムラ、ありがとう」
    「俺は何もしてねえ。ただ、マグマ団のやつらは待ってる。早く元気になって戻って来いよ。そうしたら、今度の作戦が開始だ」
    カガリはあのガキどもをグラードンから庇った。そして傷を負った。それが天罰というならば、なぜあのガキどもは一度も見舞いにすら来ない。あのガキどもへ天罰を与えるのは俺たちだ。
     そのためにグラードンを利用するだけさせてもらう。くだらないと思うやつらもいる。けれど俺はリーダーの案に賛成だ。あのガキどもに、カガリより酷い天罰を。

    ーーーーーーーーーー
    ホムラさんかっこいい。
    気の強い同僚と。といったら
    カガリさんしか知らねえ。

    Scourge(スカージ)=天罰
    宗教的な意味合いが強い。英語。
    (以前、アルファベットで投稿したところ、正しく読まれなかったことがあるのでそれ以来全てアルファベットのタイトルはしないのですいません)

    【好きにしてください】【うひょひょ】【ウシオさん?】


      [No.1821] ダイバクハツ 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/09/01(Thu) 21:33:13     20clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 金銀ロケット団のアジトにある地雷には苦労しました。

     ありましたねえ。いつも、嬉々としてペルシアン像に引っかかりに(遠回りして)行ったので、あまり地雷原については知らないんですが……あれも、今考えると怖い仕組みですね……。アジトを損なうことなく、侵入者と共に吹き飛べと強制しているわけで……。ヤドンの尻尾切り取りといい、ギャラドスの電波の件といい、真面目に考えると結構エグいことやってる。個人的には、それくらいやっててこそ“悪”と呼ばれるんだろうなー、と納得はしているのですが。(正直、未だにギンガ団がよく分からない……)

    > 途中まで、ヘルガーだと思っていたのは秘密。

     私としては嬉しい限りです。最後の、大爆発を命じる場面まで正体を伏せておきたかったので、あえて名前や特徴を省きました……って、その前に一回「ドガース」って言っちゃってるよ! ミスったー、いつも詰めが甘いorz
    ……後でこっそり直しておこうっと(

     感想をいただきまして、どうもありがとうございました!


      [No.1820] 本当に研修行ってたよ! 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/09/01(Thu) 21:13:30     19clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     いつぞやのチャットで、「ホウエンのラスボスがゲーチスになってた」の時点で吹きましたが、まさかその後本当に海を渡っていたとは! やる気満々、真面目に研修を受けるゲーチスに笑いました。世界制覇の為の基盤作りが出来たのも、イケズ……もとい、どこかのトレーナー氏のおかげだったんですね。

     子供が出来たと聞かされたが、実はあまり好きではないと独白しつつ。

    >しかし、育てれば役に立つという点では無限の可能性を秘めている。

     この一文に、なんだか凄く納得しました。 すでに思想・人格の固まってしまった大人を操ろうとするより、手はかかっても一から好きなように仕込むことの出来る子供のほうが、確かに便利だよなぁ。どう化けさせるかは己次第、そりゃやりがいも感じるってもんだ! と一人頷いてました(といっても、現実にそういう思想を支持している訳ではありませんw 念のため。)

     まさかのリー研ゲーチスを楽しませていただきました、ありがとうございました!


    【面白かったのよ】 【ワルダックって誰だ?】 【オーレってどこだー!?】


      [No.1819] ありがとうございます 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/08/31(Wed) 07:00:42     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    初めまして、作者のあつあつおでんです。感想ありがとうございました。

    私はこういうストレートな作品しか書けないのですが、楽しんでいただけたのであれば幸いです。

    ピッピ? いいえギエピーです。ついやっちゃうんだ☆


      [No.1818] Re: ラルトスのおたんじょうび 投稿者:稲羽   投稿日:2011/08/31(Wed) 00:21:44     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    初めまして。
    未だに「二次創作作家《見習い》」の肩書きが外れない稲羽(いなば)と申します。

    「おめでとう」と言って貰える事が何よりも嬉しいと感じた、素直なラルトス君が可愛いですね。
    それも、両親が言ってくれたのですから、ラルトス君の喜びは計り知れないものであったことでしょう。
    この事を頭に入れた上で、他のポケモンの様々な反応に対して、ラルトス君がどの様に思ったか、色々と考えてみたくもなりますね。

    心温まる作品有難うございました。

    ところで、ピッピとは一体何だったのか(


      [No.1817] だいばくはつ 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/08/30(Tue) 17:42:37     20clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    金銀ロケット団のアジトにある地雷には苦労しました。
    なぜかその思い出が淡々と浮かんできました。
    途中まで、ヘルガーだと思っていたのは秘密。


      [No.1816] 【ネタ】リーダーズ研修会 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/08/30(Tue) 17:19:06     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     さて、ワタクシの目標はイッシュ地方の伝説のポケモン、レシラムを目覚めさせて僕(しもべ)にし、世界を統一することとですとも。そのためには組織を作り、手足となる部下を育てなければなりませんな!
     というわけで、ワタクシはホウエン地方で開かれているリーダーズ研修会というものに参加したのです!名目は会社組織の代表としての目標とか、まとめ方とか、集団心理とかを学ぶためなのです!そして私はまた一歩、世界への道を手にしたわけですな。
     そもそも、なぜワタクシごときがこんな田舎に来たのかは、ワタクシと勝負した色違いゾロアークを持ったトレーナーがそんなチラシを持っていたのですぞ。それは行かなければなりません。トップに立つもの、常に勉強しなければなりませんからな!
    「いいですか。トップとして立つもの、まずは部下を導く目標がなければなりません。目標がなければ、部下はただ日々の業務をこなすだけで、やりがいを感じなくなり、やがて離れていってしまうのです」
     そうそう、組織というものはそういうものですとも。ワタクシが見て来た組織は全て強い理念があってこその組織。それこそ結束を強くする秘訣!

     今日の講義も終わりましたので、しばらくホウエン観光と行きましょうか。そういえばこのホウエン地方にも、陸のグラードンと海のカイオーガの話が残っていますな。とても有名なのでそれも検討いたしましたが、レシラムには及ばない。
    「おや、さきほどの」
    ワタクシに声をかけたのはすらっとした男性でした。見覚えがあります。さっきのリー研に出ていた人ですな。
    「奇遇ですな。貴方はここの地元の方ですか?」
    「そうですね。大学では心理学をやってました」
    その傍らにはこれまた小さい男の子がいますな。どうやら息子のようです。そういえばイッシュから来る前、子供が出来たと言われましたな。男の子か女の子か解りませんが、どちらにしろ、その子の為にちゃんとした組織にしておき、王様として君臨させる。そしてそれを摂政関白として牛耳るのがワタクシゲーチスの役目なのです!
    「何か会社でも起こすのですか?」
    「いえいえ、ワタクシの故郷に、古代のポケモンがいましてな。それを再び現代に蘇らせないか研究したいのです。そのための組織を作ろうと思いましたな」
    「なるほど。私も同じでしてね。そのために優秀なトレーナーを探しているんですよ」
    大人同士の会話に飽きたのか、隣の男の子がまわりをきょろきょろし始めましたな。子供というのは落ち着きがなくてワタクシあんまり好きではありません。しかし、育てれば役に立つという点では無限の可能性を秘めている。それにしても、組織のトップの息子だというのに、目つきがおびえているように見えるのは気のせいでしょうか。ワタクシの背丈が2m近いからおびえているのでしょう。子供というのは本当に愉快です。
    「そんなに帰りたいなら帰ってろ」
    ワタクシがびっくりしました。いやいや、ホウエン地方というのは穏やかな人間が多いと聞いたからでしょうか。自分の子供を倒れるくらいの勢いでビンタしましてね。尻餅ついた子供は泣くのかと思いきや、そうでもなく大人しくごめんなさいと言いましたよ。最近の子供は素直ですな。ワタクシのまわりの子供なんて生意気なのしかいませんが。
    「すみませんね、うちのは役に立たないだけなんで」
    「いえいえ、もうすぐワタクシにも子供が生まれるので、先に見せてもらいましたよ」
    厳しいしつけをしている人がまだいたなんて、きっとこの人が作る組織は安泰でしょうな。どんなポケモンを研究しているのかは知りませんが、活動を楽しみにしてましょう。そして、それすらもレシラムはけちらし、素晴らしい世界を作り上げてくれることでしょう。


    ーーーーーーーーーーーーーー
    チャットにて。
    イケズキ:ゲーチスゲーチスゲーチスゲーチス

    きとら「ゲーチスか、あれスカウターだよな。ってかゲーチス書きたいなー」
    と、ロングの方を書いていたら、ホウエンの話なのに、ラスボスがゲーチスになってました。あれ?
    これが噂のゲーチスの洗脳か。
    そのことを話したら、リーダー研修に来るゲーチスというネタになってました。

    ゲーチスの相手は歴代の悪のトップの誰かっす。
    サカキ様かもしれんし、ワルダックかもしれん。

    【好きにしてください】【ワルダックって誰?】【オーレ地方ディスってんじゃねえ】


      [No.1815] その意外性に拍手! 投稿者:マコ   投稿日:2011/08/30(Tue) 11:26:41     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    スウさん、初めまして。
    マコと申します。

    最初、タイトルを見て、「酒に溺れた人が出るのかな?」とか思っていましたが、本文を見て納得しました。
    成る程、そういうアル中か、と。

    どのバージョンでも、私のパーティは、基本的に非伝説ポケモンばかりですが(600族は使うこともあります)、田ノ浦さんみたいに、アルセウスにこだわる人がいても、悪くはないと思います。
    ただ、敵に回すと、その変幻自在な立ち回りと伝説ポケモンならではの高い能力値に、悲鳴をあげる人が続出するでしょうね。

    なかなか考えさせられる作品で、面白かったです。


      [No.1814] 苦痛 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/08/30(Tue) 00:13:37     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ※注意! このお話には不快・残酷描写が含まれます。苦手な方はご注意下さい。














     甲高い悲鳴をあげて、小柄なガーディは床に倒れ伏した。目を剥いて鼻面を引っかき、荒い息を吐きながら悶え苦しんでいる。僕の放ったスモッグが、彼の顔面に直撃したのだ。嗅覚の鋭い種族にとっては凄まじい苦痛に違いない。ごめんね、と言いたかったけれど……側にご主人様がいるから、口に出すことは出来なかった。少しでも指示以外の行動をとったら、酷い目に合わされてしまうから。
     のたうつガーディと彼に駆け寄る白衣の男性に、薄ら笑いを浮かべたご主人様は嘲りの言葉を吐いた。

    「あーあ、お宅の番犬は使えませんねぇ。もう少し鍛えておけば、大事なデータを盗られる事もなかったのに。研究熱心なのはいい事ですが、ちっとはバトルについても勉強した方が良かったんじゃないですか?」
     
     まあ、今更ですがね。そう言ってにんまりと笑い、机の上の資料を鞄に詰め込む。プリントやらファイルやら、パソコンのメモリーカードやら一切合財。仕上げに換金できそうな小物を二、三ポケットに詰め込んで、ご主人様は僕に向き直った。

    「お前はしばらくここにいろ。いつも通りに、な」
     
     鞄から取り出した通信機を机に置くと、ガーディの手当てに必死になっている研究員を完全に無視して、さっさと非常階段へ歩いてゆく。ドアを開けると、煌々と光に照らされたフロアと正反対の、星一つない闇夜が広がっていた。手持ちのゴルバットを呼び出したご主人様は、その足を掴んで闇の中へと消えてゆく。大蝙蝠の微かな羽音が遠ざかっていった。
     残されたのは、静寂の中に響く呻き声と怨嗟の声。

    「畜生……畜生! ロケット団なんかに侵入されるなんて、警備の連中は一体何をやってたんだ! 俺の、俺の研究の全てが……おい、しっかりしろ!」
     
     ガーディの体が小刻みに痙攣している。吸い込んだ毒が全身に回ってしまったらしい。青黒く変色した舌を垂らして、ひゅうひゅうという苦しそうな呼吸を繰り返している姿は酷く痛々しかった。
     ああ。僕の、せいで。
     
     ごめんね。思わず呟いた声に、反応したのは研究員の方だった。

    「お前のせいで……! お前らのせいで何もかも滅茶苦茶だ!」
     
     憤怒の形相で叫びながら、手近にあったガラス瓶を掴んで僕に投げつける。避けることは出来たけど、僕はあえて動かなかった。ぼこっ、というくぐもった音を立てて命中した瓶が、弾んで落ちて砕け散る。ガラスの破片がぎらぎら光って目を刺した。
     体に感じた鈍い痛みより、心に感じる鋭い痛みの方が辛かった。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。僕はこれから、もっと酷いことをしなくちゃいけない。ご主人様はきっと、あれを命じてくるはずだから。
     
     
     突然、通信機が耳障りな雑音を吐いた。びくりと肩を震わせる研究員に向けて、徐々に鮮明になってゆく音声が語りかけてきた。

    『もしもし? 聞こえますかね? 先程頂いたデータの受け渡しが、無事終了しました。本部の方で本物だと確認できたそうで、こっちも一安心でしたよ。いやぁ、無防備に机に放り出しておいてくれて、助かりました』
     
     くくっ、と笑う声。研究員の体が怒りで震えている。首をもたげたガーディが、擦れた声で唸り声を立てた。
     この悪党めが、と喉の奥から搾り出すように呟いて、彼は相棒の仇の声を伝える通信機に憎悪の視線を向けている。視線で物が害せるならば、目の前の機械は木っ端微塵に弾け飛んでいただろう。
     その声が聞こえているのかいないのか、ご主人様はこちらの様子に頓着せずに、淡々と話を続けていく。

    『とまあ、そういうわけでですね。もうそちらに用は無くなりましたので、うちのヤツが最後の仕事を済ませたら、今後一切関わる事はありませんと言明しておきましょう。どうぞご安心を』
     
     ああ、とうとうきた。うなだれる僕を怪訝そうに見ながら、最後の仕事とは何だと問い返す研究員に、いたって簡潔に――そして楽しそうに、ご主人様はこう言った。

    『こういう事です。……ドガース、大爆発』

     ひっ、と息を呑む音を聞きながら、目を閉じた僕は大技に向けて集中を高めていく。いつもの仕事、現場の証拠隠滅という作業の為に。体内に強大なエネルギーが満ちてゆくのを感じる、限界まで凝縮したそれを一気に解き放てば……それでお終いだ。
     技に渾身の力を込める一方で、僕の頭の片隅には解き放てない思考が渦を巻く。

     ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい! どんなに嫌でも、どんなに辛くても、僕はご主人様に逆らえない。あの小さなボールに縛られた身では、逆らうことなんて決して出来ないんです。無理に抵抗して殺された仲間を沢山見ました。殺されるより酷い状況に追い込まれた仲間も見ました。僕はそれが恐ろしい。たとえ道具として使われようとも、生きていたいんです。使える道具である限り、ご主人様が僕を手放すことは無いだろうから。今回もきっと、全てが終わった後に迎えに来てくれるだろうから。
     ごめんなさい、ごめんなさい、どうか許して……!

     

     
     
     頼む、やめてくれ! 迸る絶叫を引き金に、僕の意識は真っ白に染まった。







    ――――――――――――――――――――――――――

     
     
     もうなんていうか、色々とすみません。書いといて何だが、陰気すぎるわ……!

     元々、表現の練習用として「自作50のお題で掌編創作」という無謀突発企画の為に書いていたのですが、予定より長くなったので単独投下に踏み切りました。タイトルはそのまま【苦痛】、お題としては悪、かな……?
     “悪の組織”ロケット団(完全悪役でごめんなさい、でもこれくらいの事はやってると思うんだ……)のポケモンにも、きっとこういう奴いるんじゃないかなぁ、と。トレーナーがこうだからって、その手持ちもそうだとは限らないんだぜ的なことを書きたかったんです、確か(

     何の研究所に押し入ったのか、どんなデータを盗んでいったのか、爆破した後はどうやって手持ちを回収するのか。使いきり掌編のつもりだったので、深い設定は全く考えておりません! お読みくださった方のご想像にお任せいたします。
     おっそろしく暗い話とちゃらんぽらんな後書きにお付き合いくださいまして、どうもありがとうございました!

    【なにをしてもいいのよ】


      [No.1813] きみのいるまち 投稿者:リナ   投稿日:2011/08/29(Mon) 21:56:22     119clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     今日一日照り続けた太陽は西の空を橙色に焦がして、のろのろと名残惜しそうにまぶたを閉じた。夕暮れと蝉の合唱はいつしか遠退き、かわりに提灯の光と祭囃子がこの町を包み込む。
     町の中心を流れる依代川(よりしろがわ)の河川敷には昨日から人々が集い、大きな賑わいを見せていた。ヨーヨー、綿菓子、金魚すくい。特産品の豚串に、立ち昇る煙と炭火の匂い。色とりどりの出店が両岸にずらり並んで、若い売り子が声を張り、客寄せに奮闘する。
     毎年八月初旬にこの町で催される「七夕祭り」。人々は皆夏の夜の不思議な香りに酔いしれたまま、今年も祭りは幕を閉じようとしていた。

     今宵夜空を彩るは、瞬く星たち、天の川。



     ――きみのいるまち――



    「すごい人混み――全然列進まないじゃん」

     伊織はわざとらしくため息をついて、盛大に文句を垂れた。片手で団扇をパタパタさせ、唇を尖らせる。雑踏に飲まれてほんの二分足らずのことだった。

    「毎年こんな感じなんだ。大丈夫だよ、ちゃんと間に合う」

     携帯電話のディスプレイで時間を確認して、和彦はそう言った。彼がかけている黒縁眼鏡は、鼻の頭に浮いた汗のせいで重力に逆らえずにいるように見える。
     二人は暑苦しい喧噪に囲まれ、履物を地面に擦るようにしてゆっくりと前へ進んでいた。依代川の河川敷は町中の人々が一人残らず集まっているんじゃないかと思うほどのすし詰め状態。夜闇の中をのろのろと行進してゆくこの集団には、家族連れであったり若いカップルであったり老夫婦であったりと、実に様々な種類のグループがあった。すぐ隣りを歩いていた高校生くらいの女の子の集団が、興奮した面持ちで何かを囁きながら浴衣の袖をはためかせた。地元の学校に通う子たちだろう。クラスの好きな男子でも見つけたのかなと、伊織は思った。

    「でも、確かに今年は若干多いかもな」

     和彦は、伊織とは反対方向を眺めながらそう言った。癖のある彼の黒髪がワックスでツンツン立てられているのが伊織の目に入る。彼女は声を出さずに笑った。

    「――どうして『七夕祭り』なの? もう八月じゃない」

     伊織は団扇で顔を正面から仰ぐ。黙っていても汗が滴るほどの暑さで、周りの人はみんな風通しのいい服装に団扇や扇子というのが標準装備だった。伊織も大きい鞄はポケモンセンターに預け、小さいポーチにノースリーブのシャツ、七分のデニムにパンプスという出で立ちだった。ボールはちゃんと三つ、ポーチに入っている。長く伸びた黒髪は、すごく迷ったけど、結ばずに来た。

    「あ、知らない? この辺りの地域では、七夕は八月七日なんだよ」

    「そうなの? ――てか知らないに決まってるじゃん。あたしこの辺りには来たばっかだもん」

     唇を尖らせて、伊織は何気なく足元を見た。和彦のサンダルとロールアップしたイージーパンツの間に覗くくるぶしが、思いのほか男らしくて伊織は目が離せなかった――そりゃあサッカー部だものね、鍛えられてるんだ。
     そして自分の華奢な足と彼の足が一緒に並んでいるのを改めて確認し、伊織はちょっと照れ臭くなった。

    「じゃあ豆知識として覚えときなよ。旅先でまた役に立つかも」

    「――役になんて立たないよ、こんな雑学」

     和彦が「旅」のことを口にしたので、伊織は苦笑いし、顔を伏せたままにしていた。


     ◇ ◇ ◇


     この地方の小さな港町、笹舟町(ささぶねちょう)に伊織が訪れたのは、ほんの一ヶ月ほど前のこと。そしてこの町で一番最初に言葉を交わしたのが、和彦だった。
     伊織は笹舟町のポケモンセンターの掲示板で、この町での滞在費と旅費を稼げるいいアルバイトはないかと目を凝らしていた。まばらにしか人のいない夜のロビーは、旅も今年で三年目になる伊織にはもう馴染みの空間だ。どこか安らぎがあって、どこか物悲しい。そんな場所だった。
     旅先で出会った思い出がまぶたの裏に甦るのは、いつもこの夜のポケモンセンターだった。目を閉じて、思い起こす――峠から見る街の明かり。音を立てて降りしきる雨と折り畳み傘。重たい重たいジムの扉。電話越しのお母さんの声。この二年間で伊織はたくさんの景色と胸につっかえそうなほど多彩な感情に、日々触り続けた。すごく柔らかくて暖かいものもあったし、思わず手を引っ込めてしまいそうになるほど冷たいものもあった。頼みの綱であるボールの中の相棒たちと一緒に、伊織は傷だらけの足で、ここまで歩き続けてきた。ただがむしゃらに、ここまで這ってきた。
     この旅を終えるその時は、私はこの夜の静寂の中で、目を腫らして受話器を握っているのだろうか――伊織は今年に入って、そんなことを考えるようになった。振り払っても振り払っても、自分の旅の終わりは一体どんな演出で幕を閉じるんだろうと、想像してしまう。
     なんてことはない、ただのスランプ。旅先で出会った先輩トレーナ―は決まってそう笑う。誰でも経験する、「三年目の壁」なんだと。
     しかし、壁を目の前に立ちすくむ伊織には、それがいずれ越えられる壁だと割り切って考えることなど、到底出来なかった。壁は真っ黒でツルツルしていて、とても足をかけて登れるような代物ではなかった。
     次の町への期待が消えて、長い道のりの疲弊が膨らむ。最近やっと三匹になった相棒たちがこの先もっと増えていくというワクワクが消えて、彼らを失ってしまうことへの恐れに変わっていく。そんな感覚が時々伊織に悪夢を見せた。悪夢を自力で掻き消すことができないままバトルに臨めば、決まって惨敗した。惨敗は、また壁を厚く、高いものにしていく。
     まだ三年目だぞ――きゅるきゅると胸が痛むたび、伊織は涙を拭って自分に言い聞かせ、壁を引っ掻き続けた。
     伊織は目を擦り、掲示板を見上げた。財布の中身も通帳も、近頃かなり苦しそうに喘いでいる。彼らばかりはポケモンセンターに預けて全回復、というわけにはいかない。掲示板の求人広告を順に吟味していく。居酒屋のホールスタッフ――十七歳以下不可。もう少しだったのに。引っ越しの荷物運び――さすがに私には無理。ゴーリキーでも手持ちにいれば話は変わっただろう。お祭りの出店――楽しそうだけど、二日間だけのド短期だ。
     受付の真上に取り付けられた時計が二十二時を告げた。図ったように眠気がこみ上げ、伊織は大きなあくびをした。なにせ伊織は今日一日ひたすら山道を歩き続け、汗だくになりながら、つい一時間前にようやくこのポケモンセンターにたどり着いたのだ。
     どうせ今日から数日間はここの無料開放スペースで寝泊まりすることになるし、明日また新しい求人広告が入ってくる。そう思って彼女は顔を洗いに化粧室へ向おうとした。

    「君、トレーナーだよね?」

     突然、後ろから誰かに呼び止められた。声のした方を振り向くと、伊織と同い年くらいの男の子が人懐っこそうな笑顔を浮かべて立っていた。灰色のスウェットと黒いロックTシャツというラフな姿で、ふわふわと癖の強い黒髪は、どうやら寝起きのままみたいだった。

    「――はい、そうですけど」怪訝そうな顔つきのまま、伊織は答えた。

    「やっぱり。もしかして君、仕事探してる?」彼は掲示板の求人広告を指差した。「もしよかったらさ、今うちで助手してくれる人募集してるんだけどどう? ポケモントレーナーだったら結構興味沸く仕事だと思うよ」

     七月に入ったばかりの笹舟町。伊織と和彦の出会いは、まだ虫ポケモンたちも鳴き始めない夏の夜のように、静かだった。


     ◇ ◇ ◇


    「和彦さ、あの時どうしてあんな時間にセンターいたの?」

     ふと思い出して、伊織は自分の目線より高い位置にある和彦の顔を見上げて尋ねた。速度を上げる気配を見せない人の塊は、もしも空から眺めることができれば、まるで千切り絵のようにに地面に張り付いて見えるのだろう。特に若い女性は浴衣姿が大半だったので、きっと色鮮やかな作品になっているに違いない。

    「ん? あの時って?」和彦は首を傾げた。

    「――あたしたちが初めて会った時」

    「あー。いや、別に用事はなかったんだ。テスト前でさ、勉強してたら気分転換に散歩にでも行こうと思い立って。それで何気なくポケモンセンターに寄ったら、真剣に掲示板見てる伊織が目に入ったってわけ」

    「変なの。トレーナーでもないのに何気なくセンターって」

     和彦は目を細くして笑った。「実際、誰かうちでバイトしてくれる人とかいないかなーって思ってた節はあるな――でも、出会ったのが伊織で良かったよ」

     伊織の心臓がジャンプした。「……どうして?」

    「どうしてって――意地悪な質問だなーそれは」

     和彦はぶつぶつと適当に誤魔化しながら、いつもの人懐っこそうな笑顔を見せた。
     この笑顔を、ずっと見つめていたい。伊織はそう思いながらも、暴れる心臓を悟られないように、また顔を伏せた。

    「笑うなよ」和彦は伊織の顔を覗き込んだ。


     ◇ ◇ ◇


     防波堤から海に向かって足を投げ出し、伊織は正午になるのを待った。麦わら帽子越しに見上げた今日のお天道様は一段と強くこの町を照りつける。伊織の腕にはタンクトップシャツの日焼けの跡がくっきりと残っていた。汗が額に浮き出て、髪が濡れる。
     乱反射する水面は穏やかで、L字型に突き出した防波堤とテトラポットを優しく撫でていた。遠くに見える岬ではキャモメやペリッパーがけたたましく鳴いているので、夜勤までの貴重な睡眠時間をもらっている灯台はとても迷惑そうだった。
     伊織の傍らには彼女の一番の相棒であるニドリーナ――ハナがけだるそうに舌を出していた。伊織は自分の麦わら帽子をハナの頭にかぶせてやった。伊織が十五歳になって、勢いよく故郷を飛び出した時から一緒に旅をしてきたハナは、当時まだニドラン♀。確か出発したその日も今日みたいな真夏日で、ハナは舌を出し、耳をぱたぱたさせていた気がする。

    「暑いね――もうそろそろかな」

     腕時計の長針はもうすぐてっぺんを指そうとしていた。伊織は汗を拭って立ち上がり、空に向かってボールを放つ。紫色の、大きな風船のようなポケモンが姿を現した。

    「セージ、今日もお願いね」

     そう呼ばれた気球ポケモンは、ゆっくりと防波堤の高さまで降りてきて、伊織の前で止まった。

    「さて始めよっか。ハナ、先に乗って」

     麦わら帽子をかぶったまま、ハナはセージの上に軽やかに飛び乗った。伊織もそれに続く。

     伊織が和彦に言い渡されたアルバイト、それはこの笹舟町の岸辺から沖合の海に分布するポケモン達の個体数調査だった。毎日、この海域の干潮と満潮の時刻である正午と二十時に、和彦から借りたフワライドで海上を遊覧しながら海面に確認できるポケモン達の数を数える。百メートル刻みのポイントで水温を計り、最後に月齢を記入してその日の作業は終了。これで日給一万円というのだから、伊織は食い付かないはずがなかった。
     海岸に研究所を持つ和彦のお父さんは「研究費は町から出てるから気にせんで」とか「海上からよく見えんかったら適当でええよ」とか、およそ研究者らしくないアバウトな性格で伊織を迎え入れてくれた。一方和彦のお母さんは、今時女の子でトレーナーの旅をしていることにひどく感心し、毎晩のように夕食に呼んでくれた。
     そして和彦はというと、遅くまでサッカー部の練習で、くたくたになって帰ってくる毎日である。和彦の通う高校はこの地域でも予選突破の有力候補で、夏のインターハイやその先の選手権に向けて相当量の練習を消化しているらしい。意外と頑張ってるんだなと、伊織はちょっと感心した。最初見た時はその風貌から勝手に帰宅部だと思っていた。

    「ハナ、見て。ランターンの群れ」

     海面すれすれをふわふわと漂うセージの前方を、ランターンとチョンチーの群れが優雅に横切っていった。餌をおびき寄せたり、時には攻撃にも使う電球のような触手がいくつも目に入る。伊織はできる限り正確に数をカウントして、用紙に記入した。

    「最近チョンチーとランターンの数が増えてる。こんなに浅いところを泳ぐこと自体珍しいのに。ね、ハナ?」

     ハナは、セージの頭の上のもこもこした雲――なんて呼べばいいのか伊織には分からなかったが――を枕にして、気持ちよさそうに舟を漕ぎ始めていた。午前中は野生のラッタたちと特訓していたから、無理もない。伊織はずり落ちそうになっていた麦わら帽子を直してやった。
     私が「旅を終える」なんて口にしたら、ハナならなんて言うのだろう? 「頑張った方じゃないかしら」と、労ってくれるだろうか。それとも「伊織の決意って、その程度だったの?」と、あきれられてしまうのだろうか。
     時々伊織は一日の終わりに、ベッドの脇のテーブルに置いたモンスターボールを見つめながら、涙で枕を濡らすことがある。タオルケットを身体に巻きつけて、赤ん坊みたいに縮こまりながら、声を殺して泣いた。
     辛い。夢は、思ったよりもずっとずっと遠くで伊織を嘲笑う。道は真っ直ぐではなく、右へ左へ、上へ下へ、大きく曲がりくねっている。
     どうして私はこんな道を選んだ? 問いかけても答えが出てこない。いつの間にか、この旅に理由を見つけられなくなった。足元を照らしていたはずの明かりはそんな私にあきれ果てて、さっさと先に進んでしまった。私は真っ暗闇に、ひとりぼっち。

     ――怖くて、もう歩けないよ。

     また溢れそうになる涙を堪えて、伊織は調査に集中することにした。


     ◇ ◇ ◇

     
    「しかしホントに暑いな今日は。熱帯夜なんてこの辺りじゃ珍しいんだけど」

     和彦は両手でTシャツの裾をつまみ、バタバタとはためかせ、中に風を通した。

    「そういえばあたしが旅に出た日も、今日みたいに蒸し暑い夏の日だったな――ほれほれっ」

     団扇で和彦の顔を扇いでやりながら、伊織は二年前の夏を思い出した。旅の話にはしたくないのに、頭に思い浮かぶ数ある返答の中から女の子らしい上目遣いが混じったものを見つけられず、結局伊織は旅に繋がる話しか持ってくることができなかった。

    「あれ? トレーナーの旅って春に出発するんじゃないの?」

    「最初の三ヶ月くらいは地元のトレーナーズスクールで実習してたの。だから、出発は夏」

    「ふーん、意外としっかり準備するタイプなんだ。何も考えず突っ走るようなタイプだと思ってた」

     伊織は団扇で和彦の後頭部を叩いた。「ひどっ! あたしそんなドンファンみたいな女じゃないし」

     頬を膨らませる伊織を、和彦は笑いながら両手で制した。

    「悪い悪い――おっ、やっとここまで来た。ほら、ここから見るんだよ」

     和彦が指差したのは、この依代川に架かる橋で、一番河口に近く、一番規模の大きな橋――かささぎ橋。

    「今夜は新月だ。きっと綺麗な"天の川"が流れる」


     ◇ ◇ ◇


     レモン色のお月様は夜空に完璧な円形の窓を切り取っていた。その周りに輝く星たちは、一定の距離を保ちながらゆっくりと漆黒のスクリーンを移動していく。黒々とうねる海の上では波の音だけが静かに呼吸する。岬の灯台は五秒に一度瞬いて、遥か遠くの漁船を導くという責任を全うしていた。ポケモンの気配はない。

    「今日伊織が練習見に来るからさ、他の奴に冷やかされたよ」

     夜の調査を終え、伊織と和彦は防波堤の上に寝そべって、宇宙に散らされた星たちを眺めていた。

    「嫌だった?」そっけなく言うつもりはなかった。けど、可愛子ぶった言い方もできなかった。

    「いや、別に。適当に無視しとけばそのうち治まるし」

    「そう――てかあんなに厳しい練習、毎日してるの?」

     今日伊織が見たサッカー部の練習は、想像以上に凄まじい光景だった。最初のパス練習から一年生は先輩に相当檄を飛ばされていたし、「詰め抜き」という、ボールを奪いにくる敵をかわして味方にパスを送る練習では何人かがコーチに帰らされそうになって半べそをかいていた。全ての練習が終わる頃には、誰も口を開こうとしないくらい、皆ヘトヘトになっていた。

    「三年目だし、もう慣れたよ」和彦は無表情のまま言った。

     そっか、和彦も三年目。私と同じ。

    「――そんなもん?」伊織は訊き返す。

    「ああ、そんなもん」

     強がってる。伊織はそう思った。一年目だって三年目だって、たとえ十年目だって、辛いものは辛いに決まっている。慣れただなんて、ただの言い訳だ。伊織はちらりと和彦の横顔を盗み見た。彼は相変わらず無表情のまま、夜空に散らかった星たちをぼんやり見つめている。 

    「サッカー部――辞めたいって思ったこととかないの?」

     ほんの少しだけ沈黙があり、波の歌が耳に寄せてきた。和彦は軽く勢いを付けて起き上がり、あぐらをかいて沖を見つめた。

    「何度もあるよ。あんなオコリザルみたいなコーチに毎日怒鳴られるくらいなら、それこそ帰宅部の方がまだマシって思ったのも一度や二度じゃないし。でもさ――」

     寝そべる伊織の方を振り向いた和彦の顔は、今夜の星空にだって負けやしないほど、凛とした笑顔だった。

    「おれ三年間サッカーやるって決めたから。途中で辞めるなんてダサいじゃん?」

     伊織は和彦のその顔から目が離せなかった。屈託のないその表情を不思議な目で見つめたまま、伊織はゆっくりと身体を起こした。

    「ん? なんかおれ変なこと言った?」

    「――いや、別に。ただ、軽いなって」

     和彦は憤慨したように、唇を尖らせた。

    「おい酷いなあ。男らしく固い決意で臨んだってのにさ」

    「ううん、そうじゃなくて。あたし、なにかやることを決める時って大きな目標とか、夢とかがないといけないと思ってたから――」

     真面目だなあと、和彦は黒々とした海を見つめながら言った。

    「そりゃあさ、プロになって将来ワールドカップに出るとか、大そうな夢を持つことも大事だと思うよ。でもとりあえずやらないと始まらないじゃん。決めないと先に進まないじゃん。そう思ってサッカー始めたら、これが結構楽しくてさ。だからおれは高校で、どんなに辛くても三年間続けるって決意した。決めてから決意ってなんか変な言い方かもしれないけど。だから、例えば『なんでサッカー始めたの?』って聞かれても、正直『楽しいから』としか答えられないんだよな。まあ、軽いヤツって思われても文句言えないか――」

     和彦の声は、伊織の中にすとんと音を立てて落ちてきた。その言葉が、伊織が次の町へ必ず持っていかなければならないと思っていたたくさんの荷物を、ひとつひとつ丁寧に降ろしてくれた気がした。
     私はどうして旅に出たんだろう? この問いには必ず答えなければならない、伊織はずっとそう思っていた。ジムバッジを八つ集めるため。ポケモンリーグを制覇するため。四天王を踏破するため。未だ発見されていない新種のポケモンを見つけるため。後世に語り継がれるようなパーティを完成させるため。ポケモンマスターになるため――
     全部、違う。違うのに、無理矢理これらのうちどれかが自分の夢なんだと思い込もうとしていた。これだもの、答えが見つからないのも、当り前。
     私はどうして旅に出たんだろう? この問いを堂々と白紙にしたまま旅を続けることができずに、私は道に迷いっぱなしだった。
     でも、少しだけ分かった気がする。旅に出るのを決めたのは私だってことは、疑いようがないんだから。
     伊織の胸に、そっと明かりが灯った。

    「あと『モテるから』ってのも、ある意味正解だな」

    「――馬鹿」

     笑い合う二人を、海は静かに囁きながら、見て見ぬふりをした。


     ◇ ◇ ◇


     かささぎ橋は重量オーバーで落ちてしまわないか不安になるほど、人で埋め尽くされていた。橋のちょうど半ばまで来ると、ほとんど身動きが取れないほどだった。

    「こっち! ちょうど二人分空いてる」

     海側の縁にぎりぎり二人潜り込めそうな隙間を見つけ、和彦が不意に伊織を手を握った。心臓が内側からドカドカと胸を叩く。和彦に手を引かれたまま人混みをすり抜けて、その隙間に二人は収まった。
     伊織は橋の上からの景色を見た。真っ黒な依代川は、夜の中をゆったりと海へ向かって流れている。いつも調査の時に見た眩い光を放つ灯台は、本日欠勤らしい。この時間なら必ず見ることができた漁船の明かりも、今日は海岸沿いから沖合いまで、一つも確認できなかった。
     それだけではなかった。町の明かりもここから見る限りほとんど落とされている。街灯こそまだ灯っているが、商店街も住宅街も、ついさっきまで賑わっていた河川敷の出店街も、今やとっぷり暗闇に包まれていた。 

    「かささぎ橋から見るのが一番綺麗なんだ。午後八時まで――あと五分」

     和彦は右手で携帯を取り出して時間を確認する。左手にはまだ、一回り小さい伊織の右手が握られていた。

    「ねぇ、そろそろ教えてよ? 一体これから何が始まるの?」

     伊織は右手のぬくもりのせいで、馬鹿みたいに緊張した声しかでなかった。
     傍からすれば、恋人同士にしか見えないだろう――私、男の子と手を繋いだの、始めてだ。

    「沖の方を見てれば分かるよ」

     平然とした口調で和彦は真っ黒な海を指差した――和彦は、緊張したりしてないのかな。

     私の心臓、爆発しそうなほどドキドキしてる。手なんて繋いでたら一発でバレちゃうよ。暗くて分からないけど、顔も絶対赤くなってる。
     ズルいよ。私ばっかりパニクってるじゃん――

     伊織は必死で胸を抑えつけ、黙って沖を見つめた。


     ◇ ◇ ◇


    「七夕祭り?」

     和彦は、地元最大のお祭り「七夕祭り」に、部活の友達でもなく、クラスの可愛い女子でもなく、伊織を誘った。
     夜の防波堤は、半分だけの月明りと僅か星の瞬きでうっすらと照らされていた。五秒に一度の灯台ももう見なれた風景になった。調査終わりの伊織と部活帰りの和彦は、こうして毎晩防波堤に寝そべるのが日課になっていた。伊織は麦わら帽子を脇に置き、モンスターボールを帽子の中に放った。和彦は自分の泥だらけの靴に顔をしかめ、エナメルのバッグを枕に「疲れたーっ!」と叫びながらごろんと身体を倒した。

    「ああ――伊織にぜひ見せたいものがあってさ。しかも今年は祭りの二日目と新月が重なってるから、例年以上にすごいのが見れるんだ」

    「何があるの? 花火とか?」

     伊織は夜空に輝く夏の大三角を見つけた。アルタイルの光が、伊織の目には一際明るく映った。

    「いいや――何かは当日のお楽しみにしといてよ」

    「えーなにそれ。気になるじゃんか」

     そう言いながら、伊織はそれよりも自分が誘われたことに驚いていた。

    「――でも、私なんかでいいの? 仲良い友達とか、その――ガールフレンド、とかは?」

    「だって、伊織はさ――」和彦は決まるが悪そうに、その癖っ毛を撫でつけた。「いや、なんでもないよ。友達とは毎年来てるし、おれ彼女はいないから」

     和彦が言葉に詰まらせたのは気になったが、伊織は特に深掘りせず、星空を見上げた。
     しばらく、沈黙が流れた。波の音が次の言葉を急かしているような気がした。

     だめだよ。言葉にしたら、この穏やかで心地よい時間が壊れてちゃうから。月も星たちも、輝きを失ってしまうから。
     ――もう少しだけ、このまま。

     ちゃぷりとテトラポットを洗った最後の波が「いずれ、その時は訪れるんだよ。上ばかり見てないで、前を見なくちゃ」と、知ったような口調で囁く。

    「ありがとう、誘ってくれて。楽しみにしてる」


     ◇ ◇ ◇


    「パパ! ひかってる!」お父さんに抱きかかえられた小さな女の子が沖を指さした。

     真っ暗だった海に、ポツリ、またポツリと、明かりが灯り始めた。街灯でも灯台の光でもない、レモン色の輝きだった。かささぎ橋からどよめきと歓声が上がる。

    「綺麗――あれ、何?」みるみるうちに増えていく光に、伊織はため息をこぼした。

    「伊織が調査でいつも会ってた、あいつらだよ」

     蛍の群が集まっていくように、その光は沖から海岸沿い、港の中、そして依代川の下流を順に照らしてゆく。その光は、街灯の明かりや車のヘッドライトなんかよりずっと力強く、それでいて優しい輝きを放っていた。

    「すごい数だあ――こんなの数十年に一度じゃあないか」

     近くにいたおじさんが感嘆の声を漏らした。家族連れもカップルも、浴衣姿の女子高生たちも皆、光がひとつ灯るたびに湧き立ち、歓喜する。

     町中が、光で溢れてゆく。

    「あの子たちがあの光の正体? でもなんで川の中にまで?」

     海に住む彼らは、真水を嫌い、決して川を上ることはないはずだった。しかし今、眩い光がこのかささぎ橋の目前まで迫ってきている。

    「良い質問だ。川の水面を見てごらんよ」

     伊織は言われたとおりに橋の上から川を覗き込んだ。最初は何もおかしなところはないと思ったが、すぐに異変に気付いた。

    「えっ? 流れが――逆になってる!」

     あろうことか依代川は、緩やかながらも川の上流に向かって流れていた。川は時々ざぶりと白波を立てながら、ゆっくりと上っていく。

    「どうして――」

    「海嘯(かいしょう)って言うんだよ。海が満潮になった時、川の水位より海の水位が上回る場合がある。そうなると海水が重力に従って移動して、流れが海から川、つまりいつもと逆になるんだ。あいつらはこの潮の流れに乗って、この時期川を上ってくる」

    「――信じらんない。毎年起こるの?」

    「ああ。特に新月と満月のときは潮汐力が最大になるから、海嘯の規模も大きくなる」

     午後八時は、この辺りの海域の満潮時刻。今日は新月。今年は祭りの二日目と新月が重なってるから、例年以上にすごいのが見れるんだ――と、和彦が言っていたのを思い出した。

    「伊織にやってもらってた個体数の調査も、実はうちの親父がこの現象を研究してるからなんだ。まあそれでさ、その研究でもまだ分かってないことがあって――」

     気付けば、光の群はかささぎ橋のすぐ下まで到達していた。まるでスポットライトを浴びせられているかのように、橋が煌々と照らし出される。

    「この夏の時期、特に新月の日は、ランターン達が爆発的に増えるんだ」

     条件が全て今日に当てはまる。町の人々が集い、毎年大きな賑わいを見せる「七夕祭り」のクライマックスは、ランターンとチョンチーによる壮大な芸術作品のお披露目の場。自然が織りなす光の流れは、眩しくて見つめていられないほどだった。 

    「どう? 感想は?」

     明るく照らし出された和彦の顔。鼻筋が通っていて、男の子にしてはまつ毛が長い。伊織は思わず顔がほころび、繋いでいた手を強く握り返した。

    「すっごく綺麗――ホントに! ありがとう」

     和彦はにっこりと笑い、そしてなぜかモンスターボールを取り出した。

    「一昨年気付いちゃったんだけどさ、もっと良いロケーションのスポットがあるんだよね」

     そう言って和彦はモンスターボールを川に向かって放る。

    「ちょっと――何してるの?」

     フワライドのセージが飛び出し、ふわふわと和彦のもとに舞い戻った。かささぎ橋のギャラリーは、一体何事かとこちらにギロリと視線を浴びせる。小さい男の子が「ふーせん!」と叫びながらセージを指さした。
     戸惑う伊織の右手を離し、和彦は柵に登って手すりに足をかけ、勢いをつけてセージに飛び移った。紫色の気球は少しだけ沈んで、まだ元の高さに戻る。

    「ほら、伊織も跳んで!」和彦がセージの上で左手を伸ばす。

    「えっ? でも――」

     一部始終を見ていた周りの人たちがニヤニヤとし始めた。「若いなあーしかし」と、さっきのおじさんが二人を冷やかす。

    「早くこっち来いよ、恥ずかしいだろ」

     恥ずかしいこと始めたのは自分のくせに。伊織はそう思いながら、柵に足をかけてよじ登り、下を見ないようにして気球ポケモンの頭上に跳んだ――

    「きゃっ!」

     案の定、伊織は思いっきり和彦の胸に飛び込むかたちになってしまい、二人はセージの上でドサリと横に倒れた。かささぎ橋から嫌らしい音程の口笛が聴こえた。

    「痛っー! 伊織お前もうちょっと上手く着地しろよ」

    「こんなに狭いのに無理だっての! もう、馬鹿――」

     和彦に覆いかぶさるようになってしまっていた伊織は慌てて身体を起こした。二人を乗せたセージは身体を膨らませ、ふわりふわりと夜空の中を上昇してゆく。かささぎ橋の雑踏が次第に遠退いていき、風の音だけが二人を包み込んだ。
     突然ポケモンで空を飛ぶなんて一体を何考えてるんだと思ったけど、暑苦しかった人混みから逃げ出して上空に来てみれば、ビックリするほど空気がおいしくて、自然と顔がほころんだ。伊織の長い髪を、夜の風が通り抜ける。

    「いいだろ? こいつの上」

     したり顔の和彦はそう言って夜空を見上げた。

    「うん――最初からこうすればよかったのに」冗談交じりに伊織は言った。 

    「そう言うなって。ああやって列の中を女の子と歩くの、地味に憧れてたんだよ」

    「そうなの?」

     伊織は声を上げて笑った。そんなロマンチックで乙女な憧れを和彦が持っていたなんて、ギャップ。

    「伊織、お前時々酷いよなー」

    「ごめんごめん。全然いいと思うよ、そういうの」

    「ホントに思ってるのかよ――おっ、この辺りが良いかな。セージ、止まってくれ」

     二人を乗せた気球が星空と町の間で停止した。
     海岸線の輪郭と依代川の緩やかなカーブが、ランターン達の灯りによってくっきりと浮かび上がっていた。まるで影絵のような、光と影で切り取られた笹舟町の、この夏だけの姿。間違いなく、伊織がこのたびの中で見た景色の中で一番の絶景だった。

    「空も見てみろよ。ヤバいから」

     町ばかりを鳥瞰していた伊織は、和彦に促されて空を見上げた。
     月のない夜空は、今夜幾千もの星たちが所狭しとばら撒かれ、小さいながらも力強く瞬くその光は伊織の瞳の奥まで届いた。夏の大三角は〇等星の一際明るい命を輝かせ、ベガとアルタイルを分かつように流れる天の川は、まるで霧吹きで夜空に魔法をかけたみたいに、銀河をぐるり一周していた。

    「――すごい。宇宙にいるみたい」

    「光害が少ないから、いつも見えない星も見えるだろ?」

    「うん」

     二人は顔に夜風を受けながら、しばらくの間無言で世界を眺めた。町と夜空、二つの天の川が放つ光に包まれて。

    「和彦――背中、借りてもいいかな?」

    「――ああ」

     伊織は和彦の背中に右耳をつけた。さっきまで繋いでいた右手も、和彦の左手に重ねる。
     自分がこんなに大胆になれるのがすごく不思議だった。思えば今朝目覚めてからずっと胸の中がざわざわして、午前中のハナの特訓はほとんど見が入らなかったし、いつもなら気にもならない右頬のにきびも、どうにかならないものかと何度も鏡を見た。
     和彦と会う前に銭湯に入った。昼過ぎにのれんをくぐる自分が馬鹿らしく感じながら、どうしてもシャンプーだけはしておきたかった。銭湯の鏡で自分の身体を見て、その薄っぺらい胸に落胆した。
     少しだけど、化粧もした。慣れない手つきでマスカラを入れながら、たった一人の男の子とお祭りに出かけるだけなのにどうしてこんなことしてるんだろうと、やはり自分が不思議になった。

    「明日、行くんだろ? 次の町」

     和彦が、自分中で特別な人になっていくのを、伊織は静かに感じていた。その特別な人とこの町で出会って、言葉を交わして、ポケモンを見せ合って、防波堤で寝そべって、一緒に歩いて、お祭りを見て回って、笑い合って、こうして今、一緒に星を見ていた。
     満たされていた。

    「うん」

     このまま、ずっと一緒にセージの上で二人っきりでいたい。伊織の一番わがままな部分は、確かに大声でそう叫んでいた。ほとんど、それしか聴こえなかった。このまま和彦の体温に触れて、光に包まれていたかった。
     でも、このままこの町にいれないことは、伊織自身が一番分かっていた。

    「あたし、もう歩けないと本気で思ってた。こんな足じゃ次の町にさえたどり着けない――そう思ってたの。でも、和彦と話して、そういう考え方もあるんだなって思った。ちょっと、楽になったんだ」

    「おれ、そんな大したこと言ってないだろ」

     伊織はちょっとだけ笑って、ゆっくりと顔を横に振る。そして重ねた右手の指を和彦の左手に絡めた。

    「あたし、和彦のおかげで答えが見つかった。どうして旅に出たのか――その答え」

     伊織は左手で、モンスターボールの入ったポーチにそっと触れた。

    「ポケモン、大好きなんだ。誰にも負けないくらい。ただそれだけ」

    「――良いじゃん。シンプルで、伊織らしいよ」

     気のせいだろうか。和彦の声は、少しだけ割れているような感じがした。伊織も目が熱くなる。

    「あたし、もっと旅を楽しみたい。ずっと、大きすぎる目標に押しつぶされそうになってたから、もっと笑って旅したいの。そう思えたのは、和彦のおかげなんだよ」

     みるみるうちに伊織の目から大粒の涙がこぼれ落ちて、夜風に飛ばされていく。

    「――うん」
     
    「そのうち、絶対あたし、自分らしい夢を見つける。そしたらまた――この町に戻ってきていいかな? 和彦に会いに来ていいかな?」

    「いいに決まってるだろ。絶対戻ってこい――おれ、手紙送るよ。セージに頼んでさ。こいつ見た目は間抜けだけど、伊織がどこにいても必ず届けてくれるから」

     和彦がセージの頭をぽんぽんと叩いてそう言うと、紫の気球は「間抜けは余計だよ」と憤慨した様子で軽い横揺れを起こした。二人は涙を目に浮かべたまま、顔を見合わせて笑った。

    「――嬉しい。あたしも手紙書くよ。これからの旅のこと、和彦に伝えたいから」

     気付けば、町を明るく照らし出していたランターン達はゆっくりと沖へ帰っていく。街灯の明かりが少しずつ灯り始め、笹舟町はいつもの夜に戻る。

     七夕伝説では、織姫と彦星が出会えるのは年に一度だという。年に一度だけ、天の川に橋がかかり、二人は互いに触れることができる。二人が短冊に込めるのは、まず間違いなく、お互いに会いたいという願いであろう。なぜなら、彼らはポケモントレーナーの旅をしているわけでもなければ、毎日泥だらけになってサッカーの練習をしているわけでもないのだから。

     伊織と和彦は、夢を見つけるその日まで、たとえ天の川に橋がかかろうとも、再び出会うことはない。
     そのかわり、ちょっと間抜けな顔をした紫色の気球が、二人を繋ぐ。その腕に封筒を括りつけて、雨の中を歩く少女を探し、少年の声を送り届ける。
     少女の笑顔を見届け、返事を足に結んでもらい、気球はまた笹舟町へ帰っていく。


     ◇ ◇ ◇


     伊織のニドクインは、相手のヘラクロスにとどめの一撃をヒットさせ、バトルはあっさりと終了した。対戦相手の、まだ旅も駆け出しという感じの少年は、ヘラクロスをボールに戻しながら感嘆の声を漏らした。

    「いやー参りました! 今まで戦ってきた人の中で一番強いかもしれません! ――何年くらい旅されてるんですか?」

    「うーんと、今年で七年目かな。でも、あたしより若くてもっと強い人、たくさんいるよ」

     海沿いの山道で出会ったトレーナーとの一戦を終え、伊織は行き先が同じだというこの少年と一緒に峠を下った。

    「この峠を下ったところにある町、パンフによると明日『七夕祭り』っていうのがあるらしいですよ――でも変ですよね? もう八月なのに」

     このやりとり、どこかでしたことがあるなと思いながら、伊織は照りつける夏の太陽を仰いだ。

    「この地域ではね、七夕は八月七日なの」

     木々の間から、L字型の防波堤と灯台が見えた。


     ―――――――――――――――――――――――――――――――

     14009文字

     チャットでちらっと呟いた、ストコンの字数アウト作品。

     【何してもいいのよ】


      [No.1812] 【おまけ】僕の守護霊の話 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/08/29(Mon) 19:13:53     151clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ところで】 【あなたの】 【後ろにいる】 【その人】 【……誰?

    「おっ、久しぶり」

     大学の中庭にある椅子に座ってのんびりしていると、声をかけられた。文学部でフィールド文化だか何だかを専攻している、僕と同郷の幼馴染だ。

    「お前が中庭にいるの珍しいなぁ。ヤミラミ元気?」
    「まあたまにはね。ヤミラミはまあ、相変わらずだよ」

     僕は隣のいすでぐったりとしているヤミラミに目を向けた。暑さでだれている。

    「はっは、やっぱ暑いか」
    「暑いだろうねえ。ねえ、何か涼しくなるような話ない?」
    「えー? そんなこと言われてもなぁ、どっちかって言うと僕は涼しくなるより笑えるような体験しかないぞ」

     小学校の4年(くらいだったと思う)に越してきたそいつは、人一倍霊感が強いことで有名だった。

     残念ながら、僕はそういう霊的な体験を全くしたことがない。いっそ清々しいほど、ない。……と思う。
     有名な心霊スポットやら幽霊屋敷やら連れて行かれたことがあるけど、何もない。というか、僕が行くと何も起こらなくなる、らしい。



     そう言えば昔、こいつのおばあちゃんに、僕はすごく強い守護霊を連れていると言われたことがあった。
     気になったから、僕とこいつともうひとりの幼馴染達とで花火をしているときにこいつに聞いたら、確かにいる、と言われた。

    「確かに、すごいのがついてる」
    「すごいの? それって例えば、お侍さんとか、軍人とか?」
    「いや、ポケモン」
    「ポケモンかぁ。じゃあ何だろ、カイリューとかギャラドスとか?」

     すごく強いポケモン。僕はこの頃ポケモンについてはちっとも詳しくなかったけど、ちょっとドキドキする。
     そしたらこいつ、僕の足元をじっと見て、こう言った。

    「いや、ネズミ」

     僕ともうひとりの幼馴染は声をそろえて「は?」と言った。
     ネズミって。いや、ネズミって。

    「……何それ?」
    「かわいいよ。うん。かわいい」

     そう言ってこいつは、僕の足元の何かをなでるしぐさをした。
     まぁ当時の僕はポケモンの名前を言われても、何もわからなかっただろうから、それ以上聞なかったしこいつも教えてくれなかったけど。



    「……ねえ、そういえば、僕には未だにそのすごい守護霊がついてるの?」
    「うん。超強いのがついてる」

     そいつはあっさりとそう答えた。

    「お前の守護霊のおかげで、お前の周辺全然霊いないんだぜ。あーやべー超癒される」
    「そ、そんなすごいの?」
    「うん。悪霊も呪いも裸足で逃げ出すレベル」

     そう言うとそいつは、僕の足元から何かを持ち上げるしぐさをした。
     かわいいんだぜ―こいつ、とそいつはにこにこ笑って言う。
     一体何なの? って聞いたら、そいつはカバンの中を漁り始めた。

    「多分、見えると思う。超強いから」

     そう言って渡されたのは、双眼鏡のような何かだった。
     曰くこれは、シルフスコープとかいう、姿を消したゴーストポケモンが見えるようになる眼鏡らしい。最近の技術ってすごいよな、とそいつは言った。僕についてるのはゴーストポケモンじゃないけど、相当強いから多分見える、とのこと。
     そいつはテーブルの上に抱え上げた何かを置いて、ここにいるよ、と言った。僕はシルフスコープを装着した。

     長い鼻先。クリーム色と黒の丸い体。細い目。

     ちょっと待ってこれ図鑑で見たことある。ええと何だっけ。
     確かどこぞでは初心者向けのポケモンとして配られてるんだったような気がする。

    「思い出したヒノアラシ!」
    「おー、やっぱ見えるか」

     そのヒノアラシは、テーブルの上にちょこんと座っていた。
     ああなるほど、かわいい。かなりかわいい。……いや、かわいい。かわいいけども。

     じっと見つめていると、ヒノアラシはぴょんとテーブルから飛び降りて、物陰に隠れてしまった。幼馴染は和んだ顔をして言った。

    「照れ屋さんなんだなぁ。お前に見られるの恥ずかしいみたいだぞ」
    「あ、そう……」

     僕はシルフスコープをそいつに返した。そいつはしゃがみこんでテーブルの陰の何かをなでている。
     いやーかわいいなぁ、と言うそいつに、僕は疑問を投げかけた。

    「……本当に強いの?」
    「超強いよ。見た目はかわいいけど。多分、どっかの神様か何かじゃないかなぁ。うらやましいよ、僕は見えるくせに守護霊いないから」

     マジ連れて帰りたいわー、とそいつは言った。
     にわかには信じがたいけど、そいつが言うならそうなんだろう。……いや、信じがたいけど。
     あ、そうだ、とそいつが言ってきた。

    「ちょっとさ、協力してくれないかな」
    「はぁ」

     何でも、そいつの研究室の奴らが、今夜どこぞの心霊スポットに肝試しに行く計画を立てているらしい。そいつ曰く、その場所は割と冗談抜きでヤバいらしくて、必死で止めたけど、幽霊が見えることで有名なこいつが必死で言うもんだから余計に面白がっているとか。
     それで一同の護身のために、今夜一緒に来てくれないか、と。まぁ今夜は特に予定ないし、いいよ、と僕は返した。
     じゃあ今夜8時に文学部棟の前な、と言って、そいつは僕の膝の上に(多分)ヒノアラシを置いて、去っていった。
     僕は隣の椅子の上でぐったりとしているヤミラミにたずねた。

    「なあ、お前、ここにいる奴見えてる?」

     ヤミラミはだるそうに頭を上げると、何が? とでも言いたげに首をひねった。
     ……なるほど。必ずしもゴーストポケモンに幽霊が見えるってわけじゃないらしい。まぁ確かにこいつは見えそうにない。




     夜8時、僕はヤミラミを連れて大学の文学部棟に行った。
     幼馴染と、研究室の同級生と先輩らしい人たちが3人。合計5人。
     先輩の車に乗り込む。幼馴染は顔色が悪い。マジで頼りにしてるから、と耳打ちされた。

     車でしばらく走って着いたのは、山の中の少し開けた場所だった。
     幼馴染の同級生曰く、古戦場だったやら自殺の名所やら火葬場が近いやら、何かよくわからないけどすごいらしい。
     ぐいとTシャツの裾を引っ張られた。言うまでもなく幼馴染のあいつだ。人間の顔って本当に青くなるんだなぁ、と僕は思った。
     ヤミラミが頭にしがみついてきた。こいつも何か感じているのだろうか。残念ながら、僕はまだよくわからない。
     車を降りることになった。そっと幼馴染に、何が見えるか聞いてみた。幼馴染は他の人たちに聞こえないように声を抑えていった。

    「す……っごいいっぱいいる。何が何だかよくわからないくらいいる。やばい。すし詰め。ラッシュアワーとかいうレベルじゃない」

     とりあえず、降りたくなくなった。


     幼馴染以外の人たちが早く降りようとせかすから、ドアを開けた。

     瞬間、ぞわわっと悪寒が走った。

     初めての体験だった。何かよくわからないけど、何かいる感じがした。視線を感じる。
     やばいもう無理、と幼馴染がつぶやいた。
     他の人たちは、不気味ー、とか、こわーい、とか言いながら、先へ進んでいった。

     おい、あいつら追いかけろ、と幼馴染が慌てて言った。
     どうした? と聞くと、そいつは冷や汗をかきながら言った。

    「あの先、崖だ」

     そう言われて、僕は慌ててハンドライトを向けた。数10メートル先から地面がない。他の人たちもそこそこ明るいライトを持ってるのに、全然気がついていないようだった。
     僕と幼馴染は、急いで車から飛び出した。

     ぐい、と何かに足を掴まれた。
     いや、足だけじゃない。腕や肩、服の裾。何かにしがみつかれているような感覚。
     ヤミラミが短い叫び声を上げたけど、ほとんど声にならない。僕も声を出そうとしたけど、声が出ない。
     そうこうしている間に、他の人たちは刻一刻と崖に近づいている。

     僕は体中の力を振り絞って、声を出した。

    「く……そっ、放せ――――っ!!」


     瞬間、辺りが紅色の炎に包まれた。



     いつのことだったか詳しく覚えていないけど、まだ小さい頃、父さんに連れられて山に行った時のことだったと思う。
     気がついたら父さんがいなかった。はぐれて道に迷ってしまったのだと思う。
     道に迷った時は山を降りるんじゃなくて、とにかく登りなさい、そして道を探しなさい、と父さんに言われていた僕は、泣きながら山を登って道を探した。
     地図の見方や万が一の時の対処法は父さんに仕込まれていたけど、怖くて心細くてしょうがなかった。

     そんな時、僕は壊れた小さな木の建物を見つけた。

     その建物は大きな岩の下敷きになっていた。落石で潰されたらしい。
     ふと近くを見ると、何か小さな生き物が、石の下で暴れている……ような気がした。僕は小さな子供が抱えるのは少々大きなその石を動かした。だけど何もいなかった。

     次の瞬間、周りが炎に包まれた。
     僕はびっくりして、何が何だか分からなくなった。

     気がついたら、僕は父さんの後ろをついて、山道を歩いていた。
     父さんに聞いても、僕はずっとついてきていたと言われた。
     よくわからなかったから、夢だと思うことにした。そしてその記憶も成長するにつれて薄れていった。

     幼馴染のおばあさんに守護霊のことを言われたのは、その直後のことだ。
     それからというもの、山に行って危ないことがあっても、僕はけがひとつなく帰ってこられた。



     そうだ。これは、あの時見た炎と同じだ。


     炎が消えた。体が動く。幼馴染はその場にへたり込んだ。ヤミラミが僕の頭にしがみついて震えている。
     僕の前に一瞬、小さなヒノアラシの姿が見えた。
     うわっ崖だ、あぶないなぁ、という先輩たちの声が遠くから聞こえた。



     帰りの車の中で、幼馴染はずっと膝の上の何かをなでていた。ありがとなー、と小さな声で何度も言っていた。
     そいつは膝の上に乗っている(らしき)ものを僕の膝の上に乗せて、言った。

    「さすが土地神様は強いなぁ」
    「みたいだね……」

     ヤミラミが膝の上に降りてきた。幼馴染は僕の膝の上から何かを持ち上げて、自分の膝に乗せた。
     なるほど、僕にはとんでもないものがついているらしい。
     何の因果か、僕を守ってくれているのだから、悪い気はしない。ありがたいことだ。


     でもとりあえず、もう二度と肝試しには関わるまい、と僕は誓った。




    おわれ。




    電波って大事だよね。
    【好きにしていいのよ】


      [No.1811] 【おまけ】太陽、ひまわり、キーボード 【お題:陽】 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/08/29(Mon) 17:50:40     179clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:おまけ】 【以外の】 【何ものでも】 【ない】 【(^▽^)ノ

    いわゆるおまけのような何かです。


    ++++++++++


     長期休暇が待ち遠しくてたまらなかった。
     小学生の頃は夏休みとして。どこで誰とどのように遊ぶか。45日の間、何をするかが一番の楽しみだった。
     中学生からは少し変わった。今年はどこに行こうか。どんなルートで行こうか。行った先で何をしようか。45日の間、どこに行くかが一番の楽しみになった。

     私の通っていた中学校では、夏の長期休暇の間、ポケモンを連れて旅に出ることを許されていた。
     自主性と社会性を育むことを目的としていて、ポケモンを取り扱う資格さえあれば、どこへ行っても、何をしてもよいことになっていた。一種の職業体験のようなもので、旅の間のことは詳細なレポートを書いて学校に提出しなければならないから、そうそう危ないことはできないけれども。それでも、大抵のことは自己責任だった。
     将来職業トレーナーを目指す人も、そうでない人も、免許を持っている人のほとんどは旅に出た。
     長期休暇が待ち遠しかった。


     空は連日の雨模様から綿雲を纏った青空へ。道端の花は紫陽花から向日葵へ。
     彼女との出会いは、夏が本格的に始まるころだった。


     高校へ進学した私はこの夏、トレーナーとして少しステップアップすることを目指していた。
     中学生のころは、色々なところをとにかく歩きまわって、気の合った人とたまにバトルをして過ごしていた。
     でも今年からは、本格的にバトルを極めていこうと思っていた。ポケモンを鍛えて、ジム巡りをして、高校卒業と同時にリーグへ出場できるくらいになることが目標だった。

     そのためには、まずポケモンを整えなければならない。
     私の一番のパートナーは、オオタチのたんぽぽ。お父さんに付き添われて、私が初めて捕まえたポケモン。
     でも生憎、たんぽぽはそんなに強くない。バトルを極めるなら、やっぱり強いポケモンを手に入れて育てないといけない。
     そこで私の特性、優柔不断が発動する。どのポケモンを捕まえて育てればいいのか、悩んでしまってどうしても決められない。

     困ったなぁ、と思っていた時、バトル雑誌の小さな広告が目に入った。


     夏休みが始まる直前の日曜日、私はその施設を訪れた。
     何らかの事情で、トレーナーと一緒にいることができなくなったポケモンたち。
     人間の手がかかったポケモンの中には、野生のポケモンたちと比べると強すぎたり、野生ではほとんど持ちえない技や特性を持っていたりすることがあって、そのまま野生に返すことが出来ない子がいる。この施設は、そういうポケモンたちを他のトレーナーに引き取ってもらうためのものだ。
     参考程度にならないかな、と思って、私は施設に足を踏み入れた。

     施設では色々な種類のポケモンたちが、檻やボールに入れられていた。
     トレーナーに捨てられた子たちが大半だった。特に大型のポケモンは、自分で世話をするのが嫌になって、逃がしてしまうトレーナーが多いそう。他に、トレーナーがポケモン取り扱いの免許の取り消しを受けて差し押さえられたポケモンとかもちらほらいた。
     小型のポケモンや危険性の少ないポケモンは檻の中に、大きかったり危険なポケモンはボールに入っていた。


     どうしようかな、と思っていた私の前に、彼女はいた。


     檻でもボールでもなく、少し背の高い柵の中。
     緑色の細い腕で、白いスカートを抱え込むように、彼女は座っていた。

     彼女だけ柵という特異性だけでなく、彼女は醸し出す雰囲気が他のポケモンたちと全く違っていた。
     嫌悪感をこちらに向けてくるわけでも、懐っこい視線を送ってくるわけでもない。ただじっと、赤い目でこちらを見てるだけ。
     細い体に、真っ白な体に、その人形のような雰囲気はぴったりとはまっていた。

     彼女の、そのサーナイトの様子は、どう見ても他のポケモンたちとは違っていることが明らかだった。


     私は施設の職員さんに、サーナイトのことを聞いてみた。
     職員さんにとってその質問はよくあることらしく、ため息交じりに答えてくれた。

     彼女は、トレーナーと死別したポケモンだった。

     不慮の事故でトレーナーが亡くなってしまって、この施設へ引き渡されたそうだ。
     それは今から1年近くも前のことで、彼女は施設に来てから今までの間、ずっとあの様子らしい。
     これでもかなり、こちらに心を開いてくれたほうなんだよ、と職員さんは言った。

    「本当に、心苦しいことだよ。あのサーナイトのトレーナーだった女の子は、まだ中学三年生だったらしいからね」

     職員さんはため息交じりにそう言った。

     肌にぞわりとした感覚が走った。


     1年前に、中学三年生。

     それじゃあ、私と全く同い年じゃない。


     気がつくと、私は必死に、職員さんにこのサーナイトを譲ってほしいと頼んでいた。
     職員さんは渋った。これまでにも、サーナイトを引き取りたいと言ってきた人はたくさんいたみたい。でも、サーナイトが心を開いてくれなくて、結局誰も引き取ることができなかったらしい。
     その気持ちは私も理解できる。私だったら、自分のポケモンと死に別れるなんて辛すぎる。このサーナイトもきっと、死ぬほどつらいんだ。

     その時、私の腰につけていたボールが大きく揺れて、たんぽぽが勝手に飛び出してきた。
     たんぽぽはふるふると頭を振ると、ぴょんととび跳ねて、柵の中のサーナイトに飛びかかった。

    「ちょ、たんぽぽ! やめなさい!」

     私は慌ててたんぽぽをボールに戻そうとした。たんぽぽはサーナイトの前で、オオタチ特有のどこから始まっているかわからない長い尻尾をふりふりと振って、首をかしげてニコッと笑った。ああもう何この子かわいい。じゃなくて、早く戻さないと。
     たんぽぽは長い胴をサーナイトの膝の上に横たえて、きゃっきゃと笑いながら尻尾でサーナイトをくすぐった。う、うらやましい。じゃなかった。

    「こらーっ! たんぽぽ! 止め……」

     その時だった。
     それまで呆然とたんぽぽを見ていたサーナイトが、声を上げて笑いだした。
     サーナイトが笑って嬉しくなったのか、たんぽぽは自分のしっぽをつかんでころころと回り始めた。サーナイトはまたけらけらと笑った。
     私と職員さんは茫然とした。たんぽぽとサーナイトは2匹で楽しそうに遊び始めた。


     こうして、サーナイトは私のポケモンになった。




     夏休みが始まってすぐ、冒険を始めるより先に、私は家電屋へ走った。これから旅を始めるにあたって、一番大事なツールの最新型を買うために。
     それは携帯端末。いつでもどこでも、すぐにネットにつなげられるもの。

     ちょっと前まで、旅で一番厄介なことは、道具の持ち運びだった。
     トレーナーの道具は多い。ボールや薬品類やわざマシン、移動に使う自転車、それに野宿するためのテントや寝袋、食器類。どんなに頑張ってかばんに詰め込んでも、カバンの容積には限界がある。
     道具がデータ通信で送れるようになってから、トレーナーの旅はだいぶ楽になった。いらないものを全部パソコン通信で自分の家に送り届けてしまえば、カバンの中にはかなり余裕ができる。
     そして最近はもっと便利になった。ノートパソコンみたいな携帯端末の性能が上がったから、いつでもどこでも、道具を出し入れできるようになった。
     ショップでの買い物は物品を直接もらわずに、自分専用の倉庫のような場所に保管される。旅の途中で使うときは、その倉庫からその都度引きだせばいい。万が一の時のために、ボールや薬をいくつか入れておけばいい。
     今はまだ道具だけだけれど、ポケモン通信もいつでもどこでも出来るように研究が進められているらしい。今は持ち切れなくなったポケモンを一方的に自分のボックスに送るだけだけれど、海の向こうではもう、他人との通信ならばいつでもどこでもボックス同士でも可能になってるとか。将来的には出し入れ自由に出来るようにするのが目標らしい。確かにそうなれば便利だけど。

     というわけで、私は新しいノートパソコンを探していた。タッチパネル式の携帯端末も出始めているけれど、そっちはもうちょっと改良されてからにしようと思っている。まあ、画面に指紋が付くのもちょっと嫌だし。
     2時間くらい売り場で迷って、画面が大きくてきれいで軽い、ポケモントレーナー向きのものに決めた。OSも去年出たばっかり。15メートルの高さから落としても大丈夫。耐水・耐火・耐電・耐振動性もバッチリ。ちょっと値は張ったけど、まあいいか。
     ぴかぴかのパソコンをカバンに入れて、私は冒険の旅に出た。



     45日間の冒険の旅。
     海を渡り、川を渡り、野を超え山を越え、人ごみにもまれ、いろんな人と出会い、別れ、そしてまた出会う。

     サーナイトは日に日に元気になっていった。
     施設で引き取ったポケモンは、私がボールを投げて捕まえたわけじゃない。でも、ボールに登録されるトレーナーのIDコード、いわゆる「おや」のデータは私になる。
     元の持ち主の情報も、詳しいことはプライバシーの保護で一切分からない。名前も、住所も、IDも。
     ポケモンに聞いても、人の言葉はしゃべれないから、わからない。
     私が知っていることは、彼女の元の持ち主が、私と同い年の女の子だった、ってことだけ。

     彼女は、とても太陽が好きだった。
     楽しいことがあると、太陽のように輝く笑顔を私に見せてくれた。
     そして彼女は、太陽によく似た花のことも大好きだった。

     私は彼女を、「ひまわり」と呼ぶことにした。

     ひまわりと一緒に、私は各地を渡り歩いた。
     旅の時間は短い。たったの1ヶ月半しかない。だからその間に、出来ることはなるべくたくさんしようと思った。

     初めて見るポケモンと出会った。草むらに入るのがいつも楽しみだった。
     知らない町に行った。自分と全然違う生活をしている人と、その人と一緒に暮らすポケモンに会った。
     初めてジムに行った。最初はぼろぼろだった。諦めずにポケモンを育てて、戦略を練り、ようやく勝てるようになった。



     ある時、数日雨が続いた。
     雨具を着れば冒険はできるけれども、折角だから少し休憩することにした。
     学校に提出するレポートをまとめたり、これからの予定を立てたり。

     退屈になったから、少しネットをすることにした。
     この時期は全国色々なところで冒険している人たちがいる。そしてその人たちの中には、旅の日記をサイトやブログで公開している人がいた。他のトレーナーさんの情報を見るのは楽しかった。

    「……ん?」

     サイト巡りをしていて、気になるものを見つけた。
     トレーナーやポケモンに関する小説のコミュニティサイト。名前も年齢も、住んでる場所も職業も知らない色々な人が、掲示板に小説を投稿していた。
     長い話。短い話。旅のトレーナーの話。日常のちょっとした話。ポケモン視点の話。お店で売っている本では読めない小説がたくさんあった。
     こんなサイトがあったなんて。私は夢中で、そこにある小説を読み始めた。

     その日から、私の日課に、そのサイトを閲覧することが加わった。

     更新される小説を読んでいると、だんだん自分も書きたくなってきた。
     もし私が、トレーナーじゃなかったら。
     もし私が、旅の途中で伝説のポケモンに出会ったら。
     もし私が、とんでもなく悪い奴と戦わなければならなくなったら。
     もし私がいるこの世界に、ポケモンがいなかったら。
     自分の生活で、旅の中で、もしこうだったらなぁという願望はいつも有り余っていた。
     到底実現するわけのない願望もたくさんあったけれども、小説の中でならそれを現実にできる。疑似体験できる。そして私の作ったその世界を、誰かに見てもらえる。

     キーボードを叩いて、私は短い話をひとつ書きあげた。
     本名の『美良子(みよこ)』をもじって、『ミラージュ』と名乗ることにした。


     夏はあっという間に終わった。私の冒険は、次の長期休暇まで持ち越しになった。
     旅のレポートを提出して、またいつもの学校生活に戻る。
     コミュニティサイトの閲覧と投稿は変わらず続けていた。併設されているチャットにも顔を出すようになった。サイトに来ている人はわたしと同じトレーナーの人がほとんどだったから、話が弾んだ。
     いくつか話を書いたころ、自分のサイトを開いた。
     旅に出ていない間、私はパソコンの中で違う世界を冒険することができた。




     小説を書き始めて、半年が経った。
     コミュニティサイトでもすっかり常連になった。仲のいい作者さんたちもたくさんできた。
     春休みに旅に出るか悩んだけど、今年は近場でポケモンを鍛えることにした。この夏に向けてトレーニング。今年はジムをいっぱい制覇したい。

     いつものように小説を読んでいると、ひまわりが寄ってきた。いつも私が機械に向かって何をしているのか気になってたみたい。

    「今、お話を読んでるの。いろんな人がトレーナーの小説を書いてるのよ」

     私がそう言うと、ひまわりは画面と私の顔を何度か見た。読んでほしいの? と私が聞くと、ひまわりはこくこくとうなずいた。ひまわりがとてもかわいかったから、私はさっき読んだ短編を、情感たっぷりに読んであげることにした。
     ひまわりはじっと話を聞いていた。読み終わると、次は? と言いたげに首をかしげた。かわいい。
     続きはまた明日ね、と言うと、ひまわりはちょっと拗ねた顔をした。やっぱりかわいい。

     それから毎日、私はお話をひまわりに読んであげた。
     ひまわりが特に気にいった様子だったのは、私と同じ頃にサイトを開いた人の長編だった。
     『トレイン』というハンドルネームのその人は、私と同年代で、トレーナーじゃないけどトレーナーの小説を書いていて、それが結構リアリティに溢れていて面白かった。年ごろと書き始めた頃が私に近かったのもあって、お互い切磋琢磨し合うライバルのような存在だった。
     ひまわりは事あるごとに、トレインさんの小説を読んでほしいとせがんだ。こんなに好かれてるなんてうらやましいなあ、と私は思った。


     ある日、私が用事から帰ってくると、ひまわりが私のパソコンの前に座っていた。
     画面を見て難しそうな顔をしている。見ると、いつも小説を書くのに使っているメモ帳に、めちゃくちゃな文字列が並んでいた。

    「……ひまわり、文章書きたいの?」

     私がそう聞くと、ひまわりは恥ずかしそうに頬を染め、小さくうなずいた。かわいすぎる。
     サーナイトは人に近い姿をしているけれども、人じゃないから文字を理解することは難しい。仮に文字を理解できても、文章を自分で作るのはもっと難しい。
     でも、もしかしたらできるかもしれない。昔どこかで、人に化けて生活するキュウコンやらゾロアークやらメタモンやらの話を聞いたことがある。ひまわりだって文字は読めないけど私が読む小説の内容を理解しているみたいだし。
     もしひまわりが文章を打てるようになったら、サーナイトの書く小説なんてものも読めるかもしれない。それはぜひ読んでみたい。

     その日から私は、ひまわりにキーボードの打ち方を教えるようになった。





     私が小説を書き始めてから3年が経った。
     高校を卒業して、私は大学へは進まず、トレーナーになることにした。高校時代にバッジはほとんど集めた。これから先はポケモンを鍛えつつ、残ったバッジを回収してポケモンリーグへの出場権を得ることが目標。
     バイトをして費用を稼いで、空いた時間に小説を書く。お金がたまったら旅に出る。なかなか忙しい毎日を送っていた。

     地道にキーボードの打ち方を教えた結果、ひまわりはとうとう文章が打てるようになった。
     サーナイトは腕は細いけれども指は結構太いから、なかなか軽快にはタイピングできない。パソコンを覚えたての人が1つひとつキーを押していくように、ひまわりもゆっくり丁寧に文章を打ち込んだ。
     たまに教えてもいないのに顔文字なんてのも挟まっていて、ポケモンの成長ってすごいなぁ、と思った。


     ある日私は、いつものコミュニティのチャットに入った。誰もいない。閲覧者もいない。まぁいずれ誰か入ってくると思う。
     何気なく、普段使っていないメールサーバーを開いてみた。2年前にフリーのアドレスを取ってから、使っていないはずだった。
     でも、履歴を見ると、なぜかつい最近使った形跡があった。
     こちらから送られたメールは、ほとんど顔文字で埋め尽くされている、女子中高生っぽいメール。
     そして送り先は、トレインさんだった。

     私は顔文字なんてほとんど使わないし、最近トレインさんにメールを送った記憶もない。
     気味が悪い。とりあえずトレインさんに連絡した方がいいかな。

     そう思っていると、都合よくトレインさんがチャットに入ってきた。
     トレインさんにメールの旨を伝えると、何か思い当ることがあったみたいで、明日会えないかと言われた。ちょっとびっくりしたけど、私も気になることだし、次の日はバイトもなかったので了承した。
     これまでオフ会は参加したことがなかったのだけれど、まさか初めてのオフがこんな形になるとは思わなかったなあ。
     トレインさんは、ひまわりも連れてきてほしいと言ってきた。



     次の日、私はひまわりを連れて、パソコンも持って、待ち合わせの場所に行った。
     駅近くのビルの前。ビルに向かって立っている男の人がいた。
     トレインさんは、想像していたより背が高くて華奢な人だった。私の周りの男性がほとんどトレーナーで、旅の中で鍛えられた人たちばかりだから余計にそう見えたのかもしれないけれど。


     連れてきて、と言われた時から薄々そうじゃないかとは思っていたけど、トレインさんにメールを送っていたのは、ひまわりだった。
     トレインさんの話によると、トレインさんが小説の主人公のモデルにしていた女の子が、何とひまわりの元のトレーナーなのだという。
     確かに、トレインさんの小説の主人公はサーナイトを持っている女の子だった。私は、ひまわりがトレインさんの小説を気に行った理由はそのせいだと思っていたのだけれども、どうやらそれだけじゃなかったみたい。
     モデルの子……陽世さんに聞いた話を元に、トレインさんは小説を書いた。体験談のたっぷり詰まったその物語の主人公は、まるで陽世さんそのものだった。
     だからひまわりは気がついた。物語の主人公と、それを書いている人の正体に。


    「ハルはメール魔だったんです。旅に出ている間も毎日毎日、俺にメールしてきました。顔文字を使うのが大好きで、文章より顔文字が多いくらいで。きっとサーナイトは、ハルがメールを書いている様子を見て、メールの送り方を覚えたんでしょうね」

     トレインさんはオムライスを食べながら、懐かしそうにそう言った。

    「高校に入った頃に、今の小説コミュニティを知ったんです。話を読んでいるうちに、俺も書きたくなって」
    「わかります。刺激受けますよね」
    「ですね」

     汗をかいたお冷のグラスをテーブルに置いて、トレインさんは小さくため息をついた。

    「……もしハルが生きてたら、まだ冒険を続けてたら、きっともっといろいろな、楽しいことがあったんだろうなって。俺がキーボードを叩けば、ハルはまだ旅を続けられる」
    「駄目ですよね。いい加減にしろこの未練たらたら男、って今頃怒ってるかもしれない。でも、もう少しだけ続けていたいんです。気持ちの整理がつくまで、もう少しだけ。……やっぱりまだどうしても、忘れられないんです」

    「ハルは俺の親友で、幼馴染で、俺の……俺の、初恋の人だったから」

     最後だけ少し照れくさそうに、トレインさんが言った。




     目を離すと、たんぽぽが道端の青草をかじっていた。置いて行くわよ、と声をかけると、たんぽぽは慌てて走ってきた。
     ひまわりはどことなく軽い足取りで、私の隣を歩いていた。懐かしい風景に嬉しくなったのかもしれない。

     私は教えてもらった家のチャイムを鳴らした。しばらくすると、若草色のエプロンをつけた女性が出てきた。私は少しドキドキしながら言った。

    「は、初めまして。連絡差し上げました……このサーナイトの、今のトレーナーです」

     陽世さんのお母さんは、お待ちしていましたよ、と私とひまわりを温かく出迎えてくれた。


     お仏壇に手を合わせた。初めまして、と心の中で挨拶した。
     写真の中の女の子は、輝くような笑顔を浮かべていた。笑った時のひまわりによく似ている、と私は思った。

     陽世さんのお母さんは、お茶をどうぞ、とガーデンテラスへ案内してくれた。
     たんぽぽが、花壇のマリーゴールドに鼻先を近づけて、においをひくひくと嗅いでいる。ひまわりはそっと私の隣のいすに座った。
     今朝咲いたであろう朝顔の花はしぼみ、薄茶色の殻につつまれた種がいくつもできている。枯れかけの向日葵は黄色の花弁を散らし、大きな頭をぐったりとうつむけて立っていた。
     私は紅茶と、ブルーベリーがたっぷり乗ったケーキをいただいた。ひまわりはとても嬉しそうにしている。この子、ラルトスの頃からこれが好きなのよ、と陽世さんのお母さんが教えてくれた。


    「私も旦那もポケモンの扱いには慣れていなくて、周りに世話してくれるような人もいなくて。それで仕方がなく施設へ預けたんだけど、その後のことって教えてくれないでしょ。とても心配していたのだけれど、あなたみたいな優しい人にもらわれて本当によかったわ」
    「いえいえ。お母様やひまわりを見ていると、陽世さんがとてもいい人だったんだなっていうのが分かりますよ」
    「あらやだ、嬉しいこと言ってくれるわね」

     陽世さんのお母さんはそう言って照れたように笑った。ひまわりもぽっと顔を赤くした。

    「陽世さんのお写真を見せていただきましたけど、とても笑顔がまぶしい人だなと思いました。まるで太陽みたいな」
    「そうね。私たちの願いどおり、明るくて元気な子になったわ。あの子の名前はそう願ってつけたの。この世を照らす太陽のみたいな子になりますように、って」

     太陽。そうか、太陽。
     ひまわりの笑顔は、陽世さんから受け継いだ太陽だったのね。




     夕日が電車の中を赤く染める。
     ひまわりが何か言いたそうな様子だったので、パソコンを渡した。
     かちかちとキーボードを叩く音。

     ひまわりが画面をこちらに向けた。笑顔の顔文字がひとつ書かれていた。
     私が笑うと、ひまわりも輝くような笑顔を向けた。



     電車は山間の道を進む。私は窓を開けた。涼を含んだ風が髪を揺らした。
     もうすぐ、夏が終わる。




    (9041字)


      [No.1810] ヨーヨー、顔文字、オムライス【第0稿】 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/08/29(Mon) 17:47:39     89clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:結局】 【ここでは改稿せずに】 【ベストに載せていただきました】 【ありがとうございます】 【オムライス食えよ

    ※2011年9月29日現在、まだ改稿していません。




     じわじわ、じわじわと、テッカニンの鳴き声が止むことなく響いている。
     俺は窓を開けた。吹き込んだ風は蒸し暑くて、部屋の温度を下げてくれる効果を期待できそうにはない。それでも閉め切っているよりはましだろう。クーラーは電気代が怖くてつけられない。この夏は、何とかうちわと扇風機で乗り切りたい。
     こういう時はトレーナーが羨ましい。水や氷のポケモンがいればきっと涼しいだろう。
     でもまあ、俺はポケモンを持っていないから、我慢するしかない。あとはパソコンが暑さでやられてしまわなければいいのだけれど。

     大学一年生の夏休み。やることがなさすぎる。サークルにでも入ればよかったなぁと少し後悔したけれども、それはそれで面倒なので諦めた。
     八月の頭から、九月の末。大学の休みは長い。

     よし、何もやることがないならば、書くか。俺はスリープ状態だったノートパソコンを開いた。


     俺の名前は『トレイン』。とは言っても本名ではない。ネット上の名前……いわゆるハンドルネームだ。本名が『鉄男』だからという理由で適当に決めた。
     三年ほど前からずっと、ネットの片隅で、小さなサイトをやっている。よくあるトレーナーものの小説サイトだ。ごく普通の少女がトレーナーとして旅をする、まあ言ってしまえばありきたりな話を掲載している。自分のサイト以外では、トレーナー小説を書く人が集まっているコミュニティサイトの掲示板に投稿している。そこで感想を言ったり、感想をもらったり、他の作者さんたちとチャットをしたりしている。
     そのサイトのほとんどの小説書きさんたちは、トレーナーを兼業しているらしい。旅の中でのあるあるとか、ちょっとした小ネタとか、誰もが半分くらいは自分の経験から書いているとか。
     俺はトレーナーじゃないけど、でも完全に想像で書いているわけでもない。俺の小説の主人公にも、モデルはいる。


     インターネットのブラウザを開いて、コミュニティサイトに飛び、備えられているチャットに入ると、すでに四、五人が会話をしていた。さすが夏休み、昼から盛況だ。
     ヌオーを抱き枕にして寝ると涼しくて最高だとか、サーナイトがついにキーボードの打ち方を覚えただとか、ポッポが小説の主人公のセリフを真似するようになっただとか、ピカチュウにせがまれてヘリウム風船を十個も買ってしまっただとか、窓の外を見るとカゲボウズが並んでてびっくりしただとか、この暑さでフリージオが蒸発したとか。どうやらトレーナー同士、ポケモンの話で盛り上がっているみたいだ。
     残念ながら、トレーナーじゃない俺はこの話題にはついて行けない。チャットへの入室は諦めて、俺はメールボックスを開いてみた。


    「……ん?」

     新着メールが来ていた。どうせダイレクトメールだろう、と思ったのだけれど、知らない個人アドレスからだった。
     トレインさんへ、というタイトルから、どうやらサイト経由で送られてきたものらしい。
     開いてみると、文面は顔文字だらけだったけれど、大体こんなことが書かれていた。


    『初めまして。私はヨーヨーといいます。

     いつもトレインさんの小説を読ませてもらっています。ナツキちゃんは私の友達にそっくりです。

     これからも頑張ってください。応援してます!』


     一応サイトはやっているものの、所詮は個人でやっている小さなもの。感想メールもこれまでにきたことはあるけれども、本当に数えられるくらいだ。素直に嬉しい。
     この『ヨーヨー』という人は初めてだ。コミュニティでも見たことがない。文面からすると女の子だろうか。
     ヨーヨー。そういえば昔流行ったことがあったっけ。俺の周りでもみんなやってたなぁ。懐かしい。


     メールに書いてある『ナツキ』は、俺の書いている小説の主人公。
     どこにでもいる、普通のトレーナーの女の子で……俺の幼馴染がモデルになっている。





    「テッちゃん」
    「どうしたんだ? ハル」


     ハルと俺は、ハルのお父さんと俺の親父が大学の先輩後輩だったこともあって、物心つく前から一緒にいた。きっと俺たちは、生まれる前からの縁なのだろう、と思っていた。


    「私は絶対に将来、世界一強いトレーナーになる!」
    「そっか、頑張れよ」
    「テッちゃんもトレーナーになればいいのに」
    「俺は生き物そんなに好きじゃないから、いいの」


     幼い頃から、何度このやり取りを繰り返したことだろう。ハルはしつこく誘ってきたけど、結局俺はトレーナーにはならなかった。

     ハルは小さな頃からポケモンが大好きだった。トレーナーになるという夢は、生まれて初めて将来のことを考えた時から、ずっと変わることがなかったように思える。
     好きなものは、と聞かれれば、ポケモンとオムライス、と答える。小さな頃から、俺はハルがそれ以外の答えをしたのを聞いたことはなかった。





     ハルによく似た友達、か。俺も会ってみたいな。
     懐かしい記憶を思い出しながら、俺はヨーヨーさんへの返事を書いた。
     感想を送ってくれたことに対する感謝を書いて、似たような友達がいるなんて奇遇ですね、というひと言を添えた。

     そう言えば、ハルからのメールも、いつも過剰なほど顔文字だらけだったなあ。



     それから、ヨーヨーさんは度々メールを送ってきた。
     二日に一回は、メールボックスに顔文字いっぱいの新着メールが届いていた。小説を載せると、必ず感想を送ってくれた。あの言葉にはとても感動した、とか、あそこでのナツキの気持ちを考えたら切なくなった、とか。シンプルだけど、細かいところまでよく読んでるなあ、と思える文章だった。
     感想が来ると、俄然やる気も出る。大学受験でほぼ停止していた去年の分を取り戻すように、俺はひたすらキーボードを叩いた。


     時は流れて、外の景色は、少し秋らしさを帯びてきていた。日中はまだまだ暑いものの、朝晩の風はだいぶ涼しくなった。
     昼間のテッカニンの鳴き声は小さくなって、夕暮れの空にはヤンヤンマの影が見える。日が落ちてから耳をすませば、コロボーシやコロトックの鳴き声も聞こえるようになってきた。

     夕暮れ時に窓から外を見ていると、アパートの前の道を、虫取り網を持った小学生くらいの男の子たちが走っていったのが見えた。小麦色に焼けた顔や手足は、少年たちがこの夏休み、太陽の下を走り回っていたことを見るものに伝えている。
     少年たちが過ぎ去った道を、今度はもう少し年上の、中学生くらいの男の子が歩いてきた。
     大きなリュックサックに、幅の広いベルト。泥と汚れだらけの服。ぼろぼろのシューズ。さっきの小学生たちに負けないくらい、真っ黒な顔。

     ああ、そうか。もうそんな時期か。
     八月の末。夏の終わり。
     長い長い夏休みの間、ポケモンを連れて旅に出ていた少年少女が、普通の学生に戻る時期だ。





     俺やハルが通っていた中学校では、夏や春の長期休暇中、ポケモンを連れて旅に出ることを許されていた。もちろん、ポケモン取り扱いの免許の取得と、定められた講習を受けることが絶対条件だったけれども。

     与えられた時間は、七月中旬から八月終わりまでのおよそ四十五日間。免許を持っている学生のほとんどは、夏休みにポケモンを連れて旅に出る。大抵はひとり旅だ。みんな旅に出たいのか、クラスメイトの半分以上は、中学に入る前に免許を取っていて、残りのほとんどは夏休み前に取得していた。ちなみに当然のごとく、俺は持っていなかった。


     ハルももちろん、旅に出た。相棒のポケモンたちを連れて、俺は行ったことのない遠くの町や深い森、高い山へ。

     夏の終わりが近づいて町に戻ってきたときのハルは、真っ黒に日焼けして、どろどろの格好をしていたけれど、すごく楽しそうに笑っていた。そして、仲良くなったポケモンや、きれいな色のバッジを色々見せてくれた。

     そしていつものように、オムライスが食べたい、と俺に言ってきた。





     すでに暗くなりつつある東の空を見て、随分日が短くなったな、と俺は思った。
     時計を見ると、六時半を示していた。そろそろ夕食の準備でもするか。

     冷蔵庫を開けると、鶏肉とピーマン、卵が目に入った。ご飯は冷凍庫にあるし、流しの下にはタマネギもある。
     ……そうだな。久しぶりに、オムライスでも作ろう。





     中学校に入った頃から、ハルの両親は海外出張が多くなった。だからハルは、しょっちゅう俺の家に夕飯を食べに来た。俺の両親も共働きだったから、大体は俺とハルの二人だけだった。ハルは残念ながら料理が下手くそで、どんなに頑張っても上手にならなかった。だから必然的に俺がつくることになった。

    「ハル、何食べる?」
    「私、オムライスがいい!」
    「また? ハル、いっつもそればっかりだな」
    「だってテッちゃんの作るオムライス、すっごくおいしいんだもん!」

     ハルがオムライスしか頼まないものだから、俺はオムライスを作るのだけは上手くなった。しかも、薄焼き卵で包むのじゃなくて、チキンライスに半熟のオムレツを乗せる奴。


     みじん切りのタマネギとピーマンと鶏肉を炒めて、ご飯を入れて、塩コショウとケチャップで味付け。それをお皿に楕円形に盛りつけて置いておく。
     卵を二つボウルに割って、塩、コショウと、少しの生クリーム。隠し味に砂糖を少々。
     熱々に熱したフライパンにバターをひとかけら入れて、卵液を一気に入れる。素早くかき混ぜて、まだ半熟の間にフライパンの隅に寄せる。
     火を弱めにしたら、フライパンをほんのわずか傾けて、柄の付け根を軽く叩く。そうすると、卵は勝手に回転して、きれいなオムレツ型になる。焼けたらすぐに作っておいたチキンライスの上に乗せて、真ん中に包丁を入れる。
     とろとろの中身が流れだして、チキンライスをすっぽりと覆ったら、完成だ。


     ハルはいつも幸せそうにオムライスをほおばった。あんまり嬉しそうに食べるから、俺もついつい頑張って作ってしまう。
     二人だけの食卓で、俺とハルは色々な話をした。
     今日の英語の小テストは難しかったとか、数学の先生のおでこがまた広くなったとか、部活で先輩に変なあだ名をつけられそうになったとか、長座体前屈でつま先に手が届くようになったとか、講習が難しいけど、乗り越えないと旅に出られないのだとか。
     ハルが旅から帰った後には、森の中で大きな虫に襲われただとか、ポケモンでの波乗りは船より揺れないのだとか、どこそこのジムでは苦戦しただとか、エスパーポケモンがいると物の持ち運びが楽だとか、自動販売機で三回も連続で当たりが出たこととか。
     数え切れないくらい、色々なことを。

     オムライスがなくなっても、俺とハルはまだまだしゃべり続けていた。
     俺にとっても、ハルにとっても、幸せな時間だった。





     オムライスを食べた晩、小説を一気に書きあげてサイトに乗せた。
     更新した小説は、ナツキとその幼馴染の男の子であるアキヒロが、二人でオムライスを食べながら会話をするというもの。昔あったハルとのやり取りを思い出して、懐かしくなった勢いで書いたものだった。

     翌日の昼過ぎ、ヨーヨーさんからメールが来た。相変わらず文面には、たくさんの顔文字が踊っていた。
     メールには、オムライスを食べるナツキがとても幸せそうだった、と書いてあった。いつも通り、シンプルな感想だった。

     だけど、その文をもう一度読み直して、俺は思わずディスプレイを凝視した。



    『テッちゃんの作ったオムライスを食べるナツキちゃんが、とても幸せそうでした。』



     俺はわけがわからなくなった。背筋がぞうっとした。


     小説の中でオムライスを作ったのは、アキヒロ。

     現実に『テッちゃん』の作ったオムライスを食べたのは、ハル。

     ハルはナツキのモデルで、『テッちゃん』の幼馴染。

     そして『テッちゃん』とは、俺のこと。

     俺のことを『テッちゃん』と呼ぶのは、ネット上には誰ひとりとしていない。ましてや、俺のことを『テッちゃん』と呼んでいたのは、この世でたった一人しかいない。



    「……ハル……?」



     俺は夏休みに入ってから来た、ヨーヨーさんのメールをもう一回全部見直した。
     文末に、文中に、これでもかと顔文字が使われている。
     その全てが、ハルがメールで好んで使うものばかりだった。


     サイトの掲示板にも、コミュニティにも現れない、『ヨーヨー』という名の人物。
     ハルと関わりがある人なのか。でも、そうだとしたら誰なんだ。

    「ヨーヨー……ようよう……え?」


     思い出した。
     俺は生まれてからずっと『ハル』って呼んでたから、すっかり忘れていた。
     そうだ。確かにあの時、オムライスを食べながら言っていた。



     ハルの本名は、『陽世』。


     そして、部活で先輩につけられそうになったあだ名が、『ヨーヨー』。



     ヨーヨーは、ハルだった。


     すうっと、全身から血の気が引いた。

     だって、ありえない。そんなこと、絶対にあり得ない。

     だって、ハルは。ハルは。





     とっくの昔に、この世にはいないんだから。





     そうだ。ハルがこの世からいなくなって、もう四年も経つんだ。
     
    四年前の、ちょうど今頃。夏がもうすぐ、終わるころ。


     長期休暇中、ハルは毎年と同じように、旅に出ていた。ポケモンを連れた、四十五日間の冒険の旅に。

     あの年の夏の終わり。数年ぶりと言われるほど、大きな台風がやってきた。
     上陸した台風は、田を荒らし、屋根瓦を吹き飛ばし、川をあふれさせ、そして。

     ハルが泊まっていた宿舎の裏の崖を、崩壊させた。


     前の晩、顔文字をいっぱい使って、俺に『オムライスが食べたい』というメールを送ってきたハルは、二度とオムライスが食べられない体になって戻ってきた。
     生まれる前から一緒だった俺の幼馴染は、手が届かないほど遠くへ行ってしまった。

     顔文字が山ほど使われたメールは、もう二度と、届かない。



     届かない、はずだったのに。



     俺はノートパソコンを閉じて、ベッドに倒れ込んだ。混乱していた。頭が痛い。
     だって、ヨーヨーはハルで、ハルはもういなくて、だけどメールが届いて。

     考えてもわからない。わけのわからぬ疲労感。
     俺はぐったりと目を閉じた。





     気がついたら、日が沈んでいた。
     俺はのっそりと起き上がって、ノートパソコンを開いた。インターネットのブラウザを開いてみても、今までと何ら変わりはない。


     俺はふらりと、いつものコミュニティのチャットをのぞいてみた。
     閲覧者は俺だけで、入室者は一人だけ。『ミラージュ』さんという、このコミュニティで小説を投稿している一人だ。確か、俺と同い年のトレーナーさんだったかな。

     入室すると、ミラージュさんはいきなり、「ちょうどよかった」と書きこんできた。


    「トレインさんに伝えたいことがあるの」

    「何ですか?」

    「実は、私の使ってないサブアドレスから、いつの間にかトレインさん宛てにメールが送られていたみたいなの」

    「えっ?」


     ミラージュさんの書き込みに俺は仰天した。
     俺宛てに、メール? ミラージュさんのサブアドレスから?


    「もし必要なら、スクリーンショットをアップするけど」

    「お願いします」


     ミラージュさんがアップしたメールのスクリーンショットを見ると、間違いなくそれは、俺に届いたヨーヨーさんからのメールだった。
     ヨーヨーさんのメールは、ミラージュさんのパソコンから送られていた。これは間違いないことのようだった。


    「これは確かに俺のところに来ていたメールです」

    「おかしいわね。私、このアドレスはずっと使ってないのに」

    「ミラージュさんじゃないんですね?」

    「違うわよ。トレインさん、私がいつも使ってるアドレス知ってるでしょ?」


     確かにそうだ。ミラージュさんとは何度かメールのやり取りをしたことがあるから、ヨーヨーさんのものと違うのは分かる。

     でも、じゃあ誰が?
     やっぱりハルが?
     でも、そんなわけ……。


     ……いや、待てよ。


     まさか、そうだ、もしかして……!
     うん。もしそうなら、全部納得できる。

     俺はすぐにチャットに書き込んだ。


    「……ミラージュさん、あの、明日何か用事がありますか?」

    「明日ですか? 特にないです」

    「ミラージュさん、どこにお住まいでしたっけ」


     尋ねると、ミラージュさんはそっと教えてくれた。
     電車でおよそ二時間といったところか。不可能な距離じゃない。


    「あの、もしよかったら、明日お会いできませんか?」

    「明日ですか? うーんそうですね、まあ、いいですよ」

    「ありがとうございます。それで、その時に……」





     駅近くのビルの前に着いたのは、約束した時間の三分前だった。
     辺りにはまだ誰もいない。俺が先に着いたみたいだ。

     俺は待ち合わせの目印にしていたビルのそばに立ち、ガラス張りの壁をじっと見つめた。今日は人がいないようで、中は暗い。まるで鏡のように、ガラスに俺の姿が映っている。
     足音が聞こえてきた。ビルのガラスに映る俺の後ろに、白い服の影が見えた。

    「あの、トレインさん、ですか?」
    「そのままで、聞いてください。ミラージュさん」

     急な呼び出しですみません。でも、どうしても確かめたくて。いいえ、構いません。言われた通り、連れてきました。ありがとうございます。
     俺はミラージュさんに背を向けたまま、顔をうつむけて、しゃべり始めた。

    「俺の幼馴染に、ハル……陽世という女の子がいました。そいつはトレーナーだったんですが、四年前、事故で死にました」
    「……」
    「俺、最初はメールを送ってきたのは、ハルだと思ったんです。文体も、名前も、ハルでした。他にはいないと思ったんです」
    「……」
    「でも違った。いたんです、他にも。ハルのことを知っていて、俺のことも知っていて、ハルの文章を真似できる奴が」

     それで、ミラージュさん。
     続ける俺の声は、間違いなく、震えていた。


    「教えてください。あなたのサーナイトは、元々……ハルのポケモン、ですよね?」


     俺は顔を上げた。
     ビルのガラスには、黒いワンピースを着た女性と、白い服をまとった、緑髪のポケモンの姿が映っていた。

     ハルが一番最初に出会ったポケモンは、ラルトスだった。
     それからずっと、キルリア、サーナイトと進化してからも、彼女はハルの一番のパートナーだった。
     ハルの手持ちの中で一番、ハルの近くにいたのが、彼女だった。

     ミラージュさんは、小さくため息をついた。

    「……私は四年前、事情でトレーナーをなくしたポケモンを引き取りに、施設へ行きました。この子とは、そこで会いました」
    「やっぱり、そうだったんですね」

     俺はふっと全身から力が抜ける感じがした。

     トレーナーが亡くなった時、手持ちのポケモンは、大抵の場合は遺族に引き取られる。
     しかし、遺族がポケモンを扱う資格を持っていなかったり、経済的な事情やその他何らかの理由でそのポケモンを引き取れない場合、ポケモンは施設を介して、他のトレーナーにもらわれていく。そういう制度があることは前から知っていた。

     ミラージュさんはため息交じりに続けた。

    「親のトレーナーさんは、事故で亡くなってしまったと聞きました。同い年の女の子だったって聞いて、いてもたってもいられなかったんです」

     ハルが死んだ後、俺はハルの手持ちのポケモンがどこに行ったのか知らなかった。だからきっと、誰かにもらわれていったんだろうな、とは思っていた。
     まさか、こうやって再会するとは夢にも思わなかったけれども。


     今回の騒動のそもそものきっかけは、ミラージュさんがサーナイトに、俺のサイトの小説を読んで教えたことだった。
     サーナイトは知能が高く、人の言葉も大方理解するらしい。何より、意識をシンクロし、感情を読み取る力のあるサーナイトは、ミラージュさんの心を介してより深く感じ取ることができたのだろう。そしてその話の内容から、ミラージュさんの言う『トレイン』が俺であること、ハルの幼馴染だった『テッちゃん』であることも理解したのだろう。
     それからサーナイトは、努力してキーボードの打ち方を覚えた。俺が気がついたのも、いつぞやのチャットで、ミラージュさんが「サーナイトがキーボードの打ち方を覚えた」って言っていたのを思い出したからだ。
     そして文字の書き方を覚えたサーナイトは、ハルがいつも打っていたメールを真似して、俺にメールを書いた。


     サーナイトが本当にきちんと言葉を理解していたかはわからないけれど。

     ハルがどんな気持ちの時に、その文字を書いていたか。
     ハルがどんな思いを込めて、その文章を打っていたか。

     それは誰よりも、彼女がわかっている。



     ミラージュさんが声をかけてきた。

    「トレインさん。この子が何か伝えたいことがあるみたい。少し聞いてあげてくれないかしら?」
    「もちろん、いいですよ」

     ミラージュさんはカバンからノートパソコンを取り出して、サーナイトに渡した。サーナイトは少しためらいがちにパソコンを開き、たどたどしい動きでキーボードを押した。
     打ち終わって、画面を俺に向けた。やっぱり、無駄に顔文字が多い。


    『テッちゃん、お久しぶりです。』

    「うん、久しぶり」


     ハルは、生き物がそんなに好きではない俺の前では、手持ちのポケモンを出すことはあまりなかった。だけど、このサーナイトはハルの一番のパートナーなのだから、さすがにお互い面識はある。
     サーナイトはまたかちかちとキーボードを叩いた。


    『最後まで、伝えられなかった言葉があるの。

     何度も何度も、書いては消して、書いては消して。でも、伝えられなかった。

     だから、私が代わりに伝えます。』

    「……うん」


     サーナイトは微かに笑った。


     ああ、そうだ。俺も、最後まで伝えられなかったことがあったんだ。
     伝えなきゃ伝えなきゃ、と思って、最後まで伝えられなかった言葉が。


     サーナイトは俺に画面を向けた。

     顔文字は、ひとつも入っていなかった。



    『テッちゃん、いつもありがとう。

     テッちゃん、大好きだよ。』



     ああ、参ったな。
     名前以外、一語一句違わないなんて。


     目の奥がじわりと熱くなった。堪えようと思っても、次から次からあふれてくる。
     それなのに、言いたい言葉が、喉の奥から出てこない。届ける先を失って、飛びだすあてが見つからない。



     俺の言葉は、伝えられないんだ。

     もう、ハルはいないんだ。





     ひとしきり泣いて、俺はようやく落ち着いた。ミラージュさんはじっと待ってくれるどころか、俺に濡らしたハンカチを貸してくれた。すみません、とありがたく受け取った。
     サーナイトはそっと頭をなでてくれていた。赤い瞳が濡れているのは、感情をシンクロする能力によるものなのだろう。

     ミラージュさんが明るく笑って、俺に言った。

    「さ、トレインさん。笑って笑って。そう言えばもうすぐお昼時ですよ。お昼、ご一緒にどうですか?」
    「はい、ありがとうございます」

     ハンカチで涙をぬぐって、俺は無理やり笑顔を作った。
     この辺りなら、おいしいお店たくさんありますよ、と地元民のミラージュさんが言った。


    「トレインさん、何か食べたいもの、あります?」


     ミラージュさんが尋ねてきた。俺は軽く笑って言った。



    「オムライスが食べたいです。薄焼き卵で包むのじゃなくて、オムレツが上に乗っているタイプの」





    【2011.08.29:未だ手つかず】


      [No.1809] 少年の夏(後篇) 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/08/29(Mon) 17:43:08     214clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:少年の夏】 【マリモねえさん】 【ちなみにこれ】 【現在書きなおし中です】 【あしからず

     翌朝、純はラジオ体操をさぼった。
     朝食を食べ、部屋で映りの悪いテレビを見ていると、窓ガラスを叩く音が聞こえた。
     確認するまでもなく、頼光と地鉱だった。純が窓を開けると、2人はすぐにそろって頭を下げた。

    「ごめん! 俺ら、ほんまに何も知らんかったんじゃけど、ジュンが隠しとったこと……」
    「ジュン嫌がっとったのに、僕ら何も考えんとぉ……ほんまにごめん!」

     ああ、本当に必死なんだな、と純は思った。最近はだいぶ馴染んできたように思われた標準語が引っ込んで、初対面の時のように訛りが全開なことでもそれがわかる。
     いいよ、と言おうとして、純は1回大きくため息をついた。

    「……僕もごめん。2人には全部、ちゃんと話すよ。あがって」


     頼光と地鉱は庭に靴を脱いで、縁側から直接純の部屋へ入ってきた。玄関から入れないと怒られるかな、と純は一瞬考えたが、まあいいだろう、と結論付けた。
     それぞれ顔を向かい合わせるように座った。頼光はあぐらをかき、地鉱は体育座りをし、純は背筋を伸ばして正座した。
     3人の間に、一瞬気まずい空気が流れた。その時、こんこん、と引き戸を叩く音がした。

    「あきちゃん、よりちゃん、ちぃちゃん、入るよ」

     純の祖母が、冷たい麦茶とコップを3つ、お盆に載せて部屋に入ってきた。祖母はいつものにこにことした顔でお盆を3人の真ん中に置き、部屋を出た。
     大きな声も出してないのによくわかったな、これも一種の霊感なのだろうか、と純は考えた。

     ガラスのコップに麦茶を注いで、頼光と地鉱に渡した。2人はありがとう、と受け取り、ぐいと一気に飲んだ。
     純も麦茶に口をつけた。香ばしい香りが鼻に抜ける。きんとくる冷たさが、エアコンのない部屋に嬉しい。


     3人それぞれがふう、とひと息ついたところで、純は切り出した。

    「僕、幽霊が見えるんだ」

     頼光と地鉱は何も言わない。純は深呼吸をして、続けた。


    「生まれた時から、普通の人と同じように、僕には幽霊が見えた。家にいると、お父さんがいて、お母さんがいて、他の知らない人たちがいた。外に出るとわからないね。みんな知らない人だから、どの人が幽霊でどの人が生きてる人間なのか、小さかったから区別がつかなかったんだ」

    「最初に気付いたのはお母さんだったよ。僕が家の中でも外でも、誰もいないところで誰かと話をしたりしていたから。お母さんは幽霊なんて信じないっていう人だったから、僕のことを気味悪がってた。でも僕は分からなかった。みんなにも見えてると思ってたからね」

    「小学校に上がって少ししたくらいの頃かな。僕はようやく、僕にしか見えない人がいるらしいってことに気がついた。じきに、人間と幽霊も何となく本能的に見分けられるようになった。でも、気づくのが少し遅かったんだ。お父さん、お母さん、クラスのみんな、近所の人たち、みんな僕を気味悪がってた」

    「気がつくと僕は独りぼっちだった。僕に関わってくる人たちは、僕を気味悪がって遠ざけるか、僕を傷つけようとするか、どっちかだった。近所の人たちは道ですれ違うたびに陰口を叩いてきた。クラスメイト達は、蹴ったり、殴ったり、僕の持ち物を壊したりしてきた。お父さんとお母さんは幽霊の存在なんて断固認めなくて、僕を病気だと言って病院に入れようとした」

    「ポケモンを始めたのは、カウンセリングの意味合いもあったんだ。病院の先生に勧められて。バトルで強くなったらみんなも見直してくれるかなと思って、僕はがむしゃらに頑張った。……でも、無駄だった。結局僕は独りぼっちだった」

    「でも、幽霊さんたちはみんな、僕に優しかった。時々ちょっとしたいたずらをしてくる人たちはいるけど、でもやっぱり、優しかった。幽霊ってね、みんな寂しいんだよ。そこにいるのに、誰にも気づいてもらえないから。だからみんな、僕が『見える』ことをとても喜んでくれたんだ」

    「わかってたよ、このままじゃいけないって。僕たちとは違う世界にいるんだから。それでもやっぱり、僕は生きている人間より、幽霊の方が好きだった」

    「駄目だったんだね。入っちゃいけないところまで、行っちゃったんだね」

    「幽霊ってね、心がむき出しなんだよ。だから、周りの影響を受けやすいんだ。特に、マイナスの感情の影響を。霊の中には、この世のマイナスの心をどんどん吸収して、周りによくない影響を与える霊……悪霊になってしまう人がいるんだ」

    「そうなるのを防ぐために、魂を回収していくポケモンがいるんだって。だけど、僕はそれが耐えられなかった。だって、僕は幽霊が大好きだったから。生きている人間なんかより、幽霊が好きだったから」

    「だから僕は、そのポケモンを倒した。それで僕は幸せになるはずだったんだ」

    「僕と仲のよかった幽霊の1人に、兵隊さんの幽霊がいてね……。いつも銃剣を背負ってた。霊が悪霊になってしまうことがあることも、魂を回収するポケモンの話を教えてくれたのも、教えてくれたのはその人だった。……きっと、気づいてたんだろうね」

    「自分が、悪霊になりかけていたことに」

    「この傷は、僕が兵隊さんと最後に会った時につけられたものだ。僕が最後に見た兵隊さんは、兵隊さんじゃなかったね。化け物だったのかもしれないし……もしかしたらポケモンだったのかもしれない」

    「気がついたら病院だった。7日7晩生死の境を彷徨ってたらしい。残念なことに両親も幽霊の存在を認めざるを得なくなって、お母さんはばあちゃんに泣きついたんだ。……で、元の学校でいじめもあったことだし、怪我の静養も兼ねて、僕はここに引っ越してきたというわけ」


     話を終え、純は麦茶を飲んだ。随分とぬるくなっていた。
     しばしの沈黙の後、頼光が麦茶をひと口飲んで言った。

    「……そうか、ジュンは幽霊が見えるのか」

     純は頷いた。
     秘密をばらせば、2人は離れていくだろう。今までの人たちと同じように。純はそう思っていた。

     しかし、頼光と地鉱の答えは予想と全く異なっていた。

    「すっげぇ! ジュンかっこいいな!」
    「幽霊って本当にいるんだ! 僕も見て見たいなぁ!」

     2人があまりにも目を輝かせていうので、純は少し拍子抜けしてしまった。

    「……気持ち悪いだろ? だって、自分には見えないモノを見えるって言ってるんだよ?」
    「何で? ジュンがいるって言ってるんだから、いるんだろ?」
    「いないって思うより、いるって思う方が面白いよね。もー、そう言うことなら早く言ってくれればよかったのに」
    「本当だよ! 黙ってたなんてずるいじゃないか! 今度幽霊に会ったら俺らにも教えてくれよ!」

     そう言って頼光と地鉱はきゃっきゃとはしゃいだ。純は呆気にとられて2人を見ていた。
     幽霊の話をして、離れていかなかった人は初めてだった。それどころか、逆に喜んでいる様子だった。

     ぼろっ、と純の目から涙がこぼれた。

     がらりと引き戸が開いた。純の祖母がいつも以上のにこにこ顔で、お昼だよ、と桶に入ったそうめんを持ってきた。




     昔から純にとって、8月は最も楽しい時期で、最も憂鬱な時期だった。
     2週目に入った頃から毎年、普段とは比べ物にならないほど幽霊が増える。言うまでもなく、お盆だからだ。

     昼下がり、純は縁側に座って麦茶をすすっていた。
     エンジンの音がした。大型バイクにまたがった男性が、部屋を突っ切って庭へ出ていった。純は気にすることなく、麦茶をすすった。
     先祖がキュウリの馬だか何だかに乗って帰ってくるのなんて嘘だ、と純は思っている。
     幽霊の世界は意外とフリーダムらしい。徒歩で帰ってくる人もいれば、ポケモンに乗って帰ってくる人もいるし、先程のようにバイクに乗ってくる猛者もいる。純が今までに出会った中で最も衝撃的だった人物は、真っ赤な左ハンドルのオープンカーを華麗に運転する、ブランド物のサングラスをかけた武士だった。

     帰ってきた人たちと話をするのが、純は好きだった。その人の生きていた時の話を聞くことが一番楽しかった。
     あの世の話も、聞けば少しは教えてくれた。こちらの世界とあまり変わりはないらしい、と色々な話を総合して純は結論づけた。

     ただ、だからこそ、周囲の人間はこの時期は特に純に対して冷たかった。



     しかし、今年は違う。
     クラクションの音がした。白い軽トラックが純の家の前に停まっている。

    「ジュンー、燈籠届いたから配りに行こうぜ」

     頼光が軽トラックから降りてきて言った。荷台には、1.5メートルほどの竹の先に、六角錐の骨組みが取り付けられ、その面には赤、黄、紫など色とりどりの紙が貼られているものの束の束が積んであった。
     盆燈籠と呼ばれるそれは、この地域でお盆の墓参りの際に持参する仏具の一種で、墓参りの際に墓の近くに立てる。
     純が越してきた地域の人々は、お盆に野菜の牛馬も作らないし、送り火もしないし、夏祭りはあるが盆踊りはない。唯一やることが、墓参りをし、その際に盆灯篭を墓の周囲に立てることだ。
     周辺地域ではスーパーやコンビニやフレンドリィショップ、果てはポケモンセンターでまで売っているが、純の家から一番近い商店まで、車で行っても15分はかかる。若者ならまだ平気だろうが、この地域の8割以上を占める老人には酷な道のりである。

     そういうわけで、まとめて注文をとり、若人がそれぞれの家へ売り歩く方法を、この集落では採用した。若人といっても働き盛りの年代は田畑の仕事で忙しいので、駆り出されるのは夏休み真っ盛りの小・中学生である。
     燈籠を運んできたのは頼光の伯父だったが、配るのを手伝ってはくれないらしい。荷台から燈籠の束を下ろすと、頼光だけ置いて軽トラックを走らせていった。
     純は燈籠の数を数えた。配る先が8件で、本数が全部で37本。

    「ちぃは?」
    「今日は山だってさ。ジュン、アブソルの力借りようぜ。重すぎてやれんわー」
    「わかったわかった」

     アブソルは純の部屋の中から、頼光の抱える燈籠の束を見、純の顔を見て、こんな暑い中行くのか、とでも言いたげな目線を送ってきた。頼むよ、と純と頼光が言うと、しょうがないなあ、という様子で庭へ降りてきた。
     燈籠の束の束を3分割して、1つをアブソルの背中にくくりつけ、残った2つを純と頼光がそれぞれ担いだ。分割しても1つの束が12本ある。

    「えーっと、どうしようか」
    「近いところから配っていけばいいんじゃないか? 一番遠いの俺ん家だけど、置いてってるはずだし」
    「じゃあ黒塚さんの家からか」
    「あの家車あるじゃん……自分で買いに行けよ全く……」
    「そうだね。重いもんね」

     ため息と愚痴をこぼしつつ、2人と1匹は荷を軽くすべく歩き出した。
     2人を追い抜いて、スクーターに乗った髪の長い女性が、青々と茂る田んぼを突っ切っていった。こういう時は僕も幽霊になりたいなぁ、と純は思った。



     最後の1束を売り終わった頃、2人は両手にビニール袋を抱えていた。
     おかきの小袋。商店街で売っている利休饅頭。稲荷寿司。ピーナツの乗ったせんべい。チョコレート。茶の間に置いてあるお菓子などの一部が詰め込まれている。周る先々でもらった結果だ。
     抱えている灯篭が減るたび、受け取った代金と袋の中身が増えていった。まだまだ子供の2人は素直に喜んだ。
     どこかで遊ぼうか、と相談していると、アブソルがふいに顔を上げた。

    「? どうしたの?」

     ぽつり、ぽつりと雨粒が落ちてきたかと思うと、大粒の雨が勢い良く降り始めた。
     2人は慌てて雨宿りできる場所を探した。近くに家はない。木の下などほとんど役に立たない。
     アブソルが駆けだした。見ると、古びた石の鳥居がある。

    「そう言えば、ここなら雨宿りできる場所があるな。廃墟だけど」
    「……何か変な感じがするけど、まあ、いいや。行こう」


     石段を登りきると、朽ち果てた本堂と、屋根の付いたやや新しい舞台が目に入った。アブソルはすでに参道を登り切って、本堂の屋根のある場所で2人を待っていた。
     頼光は本堂と舞台に向かって一礼し、靴を脱いで上がった。純も同じようにして上がった。
     ようやく屋根のある場所に着いて、頼光と純はほっと息をつき、靴下や袖をしぼった。

    「神楽舞台だけど、もうずっと使ってないし、いいだろ」
    「神楽……そうか、ここで神様に捧げる舞いを舞っていたんだね」
    『まぁ、もう何十年と前の話だがな』

     突然、2人の知らない声が聞こえてきた。アブソルが屋根の下から出てきて、低く唸っている。
     2人の後ろに、金色の体毛を身にまとった、9つのしっぽの狐がいた。頼光は飛び上がった。

    「こっ……このキュウコン、いつの間に!?」
    「何驚いてるんだライコー。最初からいたじゃないか。……ああ何だ、幽霊か」
    『ほう、そっちの方は見えていたのか。大した奴だ』
    「キュウコンがしゃべったあぁぁぁぁぁっ!!」

     頼光はまた飛び上がった。アブソルがキュウコンに吠えた。
     純だけは平然としていた。純はポケモンの幽霊もこれまでに何度も見たことがあるし、人間の言葉をしゃべるポケモンの幽霊も見たことがある。幽霊の世界は意外とフリーダムらしい。
     キュウコンは長い尾をゆらゆらと揺らし、平然としている純に向かって言った。

    『貴様、なかなか強い力を持っているようだな。世が世なら、私を封印した安部何とかという陰陽師ともはりあえたかもしれん』
    「気のせいだよ。僕はちょっと幽霊がよく見えるだけの一般人さ」
    『なるほど。そこのアブソルは貴様のか。そんなに敵意を向けることもあるまい。雨に打たれて寒いだろう、こっちに来るがいい』

     キュウコンがそう言ってもアブソルは動かなかったが、純がおいで、というと、キュウコンをにらみつけながらも舞台に上がってきた。

    『ふむ、貴様は半崎の次男坊だな。貴様の家は昔からよく知っている』
    「何だ、お前ここの神社の神様なのか?」
    『その通り、私は神』
    「違うよ。ただの幽霊さ」

     キュウコンの言葉を遮って純が言った。

    「たまにいるんだよね、勘違いしてる奴。まあ確かに、一般人のライコーにも姿が見えるってことは、それなりに強い力を持ってるってことだろうけど。まぁでもよく言って妖怪だね」
    「何だただの幽霊か。いやまぁ幽霊も初めて見るけど。でもただの幽霊か。何か残念だな」
    『怒るぞ』

     くしゅん、とアブソルが小さくくしゃみをした。それにつられてか、純と頼光もくしゃみをした。
     冷えてきたようだな、とキュウコンは言うと、尾の先に小さな青白い炎を灯した。

    「お、『おにび』か?」
    『間違ってはいないが、ここはぜひ狐火と呼んでもらいたいところだな』
    「やべぇあったけぇ。Tシャツ乾かそう」

     頼光はシャツを脱いで炎にかざした。純は少しためらって、同じようにTシャツを脱いだ。
     キュウコンはそれを見て、なるほど、力がある者も苦労するようだな、と小さくつぶやいた。

     しばらく火にあたって2人と1匹の全身は乾いたが、雨はまだ降りやまない。止むまで待つか、と頼光はあくびをした。

    「さっきもらった菓子でも食って、のんびり待とうぜ」
    「賛成」
    『ふむ、では私はこれで』
    「稲荷寿司あるけど、食べる?」
    『頂こうか』

     差し出された稲荷寿司に、キュウコンはぱたぱたとしっぽを振った。
     狐が油揚げ好きっていうのは本当なんだな、と頼光は純にささやいた。


    『半崎の。今日はいつも一緒にいるあの小僧はいないのか』
    「ちぃのことも知ってるのか。そう言えば昔はよくここで遊んでたっけ。お前あの頃からいたのか?」
    『私はもっと昔からいるよ。貴様らの祖父母がまだ生まれていない頃からな』
    「でもここ何回も来てるけど、お前と会うのは初めてだ」
    『あー……あっちの小僧はなぁ……。何というか、奴の守護霊とは相性が良くないのでな……』

     出たくとも出られないんだ、とキュウコンは言った。
     稲荷寿司は1つ残らずキュウコンに持って行かれたので、純はピーナツの乗ったせんべいを開けた。湿気ていた。雨のせいだけではなさそうだった。
     最近ようやくこの周辺でも頻繁に目にするようになった500ミリリットルのペットボトルを片手に、頼光がたずねた。

    「ところでお前、名前とかないの?」
    『金毛白面九尾の狐(こんもうはくめんきゅうびのきつね)……と呼ばれていた頃もあった』
    「長っ」

     純は冷静につっこんだが、頼光はぴたりと動きを止め、キュウコンの顔をまじまじと見つめた。

    「お前……まさか、『玉藻前』?」
    『ほう、さすが半崎の。よく知っているようだな』
    「たまものまえ?」
    「その昔、大陸で大国を2つも崩壊させ、日本にやってきてもお上に取り入って、悪行を働いた末に退治されたって言う超有名な伝説の狐……の化けた時の姿」
    「なるほど。やっぱり妖怪か」
    『妖怪って言うな』

     どうりで頼光にも姿が見えるわけだ、と純は心の中で納得した。伝説に残るくらいのポケモンならば、そこらの幽霊と比べ物にならないくらい強い力を持っていても不思議ではない。
     純は数え切れないほど幽霊とその類のものは見てきたが、有名な伝説にまでなっているのは初めてだった。
     すげぇなぁサインほしいなぁ、と頼光は目を輝かせて言った。

    「ってことはお前、人間に化けられるのか?」
    『朝飯前だ』
    「やっぱり玉藻前ってすっげぇ美人だったのか!?」
    『当たり前だろう。わたしが化けているのだぞ。私が思い描く最高の美女になるわ』

     ふふん、とキュウコンは鼻を鳴らした。
     すげーすげー、と頼光は興奮して言った。

    『見たいのか?』
    「見たい!」
    「まぁどっちかというと見たい」
    『ふふんいいだろう。心して見るがよい!』

     キュウコンは立ち上がり、その場でくるりと回った。
     身体が一瞬金色の尾に隠れ、次の瞬間こっちを向いていたのは紛れもなく人間だった。
     長い黒髪に白い肌。赤い袴に十二単。齢15、6ほどの女性の姿だった。
     おお、と純と頼光は拍手をした。

    『どうだ、美しいだろう』
    「おぉー、確かに美人! きれい!」
    「でも古いよね」

     純がさらりと言った。その場の空気が一瞬固まった。

    『古い……だと……?』
    「だって十二単なんて現代で着てる人いないじゃん。霊界に行かずにこっちに留まってるから感性が古いままなんじゃないの? 今は侍が1200ccのバイクを乗り回す時代だってのに」
    「何それ詳しく」
    『うむむ、死んでからあちこち放浪していたせいで時代の流れに取り残されてしまったか。何たる不覚』

     玉藻は悔しそうに唇を噛んだ。
     とりあえず洋服にすればいいんじゃないかな、と純は言った。

     そこから、純と頼光による玉藻改造計画が始まったが、詳しいことは割愛する。



     日の光が差し込み始めた。雨が止んだようだ。
     純と頼光はすっかり乾いた靴下と靴を履き、お宮の境内へ降りた。

    「やー、何とか止んだなぁ。よかったよかった」
    「止まなかったらどうしようかと思ったよ」

     アブソルが純の脇腹に鼻先をすりよせた。純はアブソルの頭を撫でた。
     純と頼光は舞台の上に視線を向けた。

    「それじゃ玉藻、また来るよ」

     舞台の上には、長い黒髪に、金糸の刺繍が入った白いワンピースと赤い上着を纏った、とてもかわいらしい少女が立っていた。

    『好きにするがいい』
    「わかった。稲荷寿司は持ってこない」
    『何……だと……?』

     玉藻は心底絶望したような表情を見せた。純と頼光はけらけらと笑った。

    「冗談冗談。じゃあまたね」

     二人はキュウコンに手を振って、石段を下りた。
     途中、頼光は振り返って境内を見たが、少女の姿もキュウコンの姿もすでに見えなかった。



     空は茜色に染まり始めていた。赤い空にヤンヤンマの影が見える。

    「ちぃにも今日のこと教えないとな」
    「見えるかどうか分かんないけどね。守護霊の相性がどうたらって言ってたし」
    「うーん残念だなぁ。あっ、アブソル」

     アブソルが駆けだした。
     赤い太陽を背負った、小柄な影が見える。リュックサックを背負っているようだ。

    「ライコー! ジュンー! ただいまー!」
    「あっ、ちぃだ! おーい!」

     ちぃが道を走ってきた。純と頼光も駆け寄った。

    「おかえり! 雨大変だったろ?」
    「うん。近くの崖が崩れてさ、もう死ぬかと思ったよーあはははは」
    「ちょ、それって笑いごとじゃないよね?」

     生きてるから大丈夫だって、と地鉱は笑いながら言った。
     ちぃはいつもこうだからなぁ、と頼光は呆れて言い、笑った。

    「ねえ、今日の夜花火しようよ。花火。昨日母さんが買ってきたんだ」
    「いいな! 俺らも今日のこと色々話したいし!」
    「じゃあ今日の夜、ちぃの家に集合だね」
    「俺スイカ持ってく! スイカ!」
    「スイカならうちにもあるよー」
    「俺んちの中身が黄色いんだぜ!」
    「マジで?」
    「虫よけスプレー余ってたっけなぁ」
    「俺いっぱい持ってる」
    「あっ、一番星だ」
    「えっどこどこ」



     3人と1匹の影が伸びる。
     早くも青い穂をつけた早生の稲が、夕の風に吹かれて揺れていた。






    ++++++++++The end


    やまなし。おちなし。いみなし。田舎帰りたい。


      [No.1808] ラルトスのおたんじょうび 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2011/08/29(Mon) 14:04:23     103clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     きょうは ラルトスの おたんじょうび。ラルトスは きょうも げんきに そとへ あそびに いきました。

     はじめに、となりに すんでいる ローブシンおじいさんに あいました。

    「おお、ラルトスか、おはよう」

     ラルトスは おじいさんに あいさつをして、きょうは わたしの おたんじょうびだと いいました。

    「そうかそうか。では いいものを あげようかの」

     ローブシンおじいさんは そういうと、ラルトスに ヤチェのみを あげました。ラルトスは おれいを すると、べつのばしょに いきました。

     つぎにあったのは、ティッシュくばりを している エレキブルさんでした。ラルトスが おたんじょうびだと いうと、エレキブルさんは いそがしそうに ティッシュを ふたつわたしました。ラルトスは、また ほかの ところへ いきました。

     こんどは、ひなたぼっこを している ピッピさんに あいました。ラルトスが ピッピさんに はなしかけようとすると、ひやけを したのか、ギエピーと さけびながら どこかへ いってしまいました。ラルトスは おうちに かえることに しました。




     そのよる、ラルトスの おうちに おかあさんの サーナイトと、おとうさんの エルレイドが かえってきました。ラルトスが おかえりというと、サーナイトと エルレイドも ただいまと いいました。そして、おとうさんと おかあさんは ラルトスを だっこすると、このことばを おくりました。

    「おたんじょうびおめでとう!」

     ラルトスは おめでとうの ことばを うけとると、とても うれしいきもちに なりました。

     おしまい。


    (607文字)




    コンテストに出そうと思いましたが、なんとも言えないのでこっちに投稿しました。一応【送/贈】をテーマとしています。文章は絵本っぽくしています。某書店で『ぐりとぐら』を熱心に読むおじさんを見かけたら、きっとそれは私のことだ。


      [No.1807] ありがとうございます。 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/08/29(Mon) 00:07:26     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >
    > 久々に腹がよじれました。
    ここまで不真面目なカップリングも中々見つかりません。タブンネ。

    あんまりカップリングみないマサポケで、石を投げられるかと思ってびくびくしてましたが、そういっていただけると幸いです。
    ありがとうございました。


      [No.1806] いいぞもっとやれ 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/08/29(Mon) 00:00:12     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    久々に腹がよじれました。カップリングは自分も他ジャンルで書きますが、ここまで極端な発想は思いつきませんでした。自分もこんな作品書いてみようかしら。


      [No.1805] 恋は盲目 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/08/28(Sun) 23:34:50     92clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    前書き。
    非常にカップリング色が濃い上に、年齢制限かからない程度の下ネタが多数出て来ます。苦手な人は避けてください。





     ばたばたと足音がする。そして怒号のノック。こんな穏やかな昼下がりに何が起きたのだろう。カギを開けると、肩で息をして、物凄い必死な顔のユウキが立っていた。
    「ダイゴさん!助けて!少しでいいから匿って!!!」
    穏やかではないその様子に、ダイゴは家に招き入れる。彼はダイゴの小さな友達の一人。トクサネシティにある自宅の寝室へと入るよう促した。すると、窓も雨戸も全部しめ、タンスの影に隠れる。こんなおびえているユウキを見た事がなく、ダイゴは一体なにから逃れようとしているのか不思議だった。
     チャイムが鳴る。今日は来客の多い日だ。ユウキにそこにいてねと声をかけた後、玄関に向かう。そしてドアを開けると、そこにはやはり小さな友達の一人、ハルカがいる。とても照れくさそうに。
    「ダイゴさん、こんにちはー!あのですね、聞きたいのですけどお・・・ずばり!ユウキ君来ませんでしたかあ!?」
    まさか。まさかとは思うが、ユウキはハルカから逃げていたのか?玄関で大声出されても困る。とりあえずリビングに招き、お茶を出す。玄米茶の香りが広がる。
    「どうしたんだい?いきなり」
    「ダイゴさん、ユウキ君って酷いんですよ!私たち、付き合ってるのに」
    「うん、知ってる」
    「でしょー!この前、秘密基地で二人きりだったから」
    「ああ、なるほど、青春だね」
    「私のフーディンにかなしばりさせて、監禁してみたんです」
    ダイゴは茶を吹き出す。その様子に構わずハルカは話を続ける。
    「そうそう知ってます?ユウキ君って、全部白髪じゃないんですよ!上は白いんですけど、下は黒いんです。二色なんですよ髪がー!それで、腋の毛は白いんですよぐふふ。それで腹筋は六個に割れてて、がっしりしてるんですけど、男の子にしては細いんですー!」
    「ねえ、待ってハルカちゃん。君たち、付き合ってるのに監禁するのは犯罪じゃないのかな?」
    「どこが犯罪なんですか!?私たちは愛し合ってるのに、ユウキ君がそう望むからしてあげたんですー!」
    「・・・それは本当にユウキ君が望んでるの?」
    「そうでしょ!だって何一つ文句いわないで嬉しそうだったんですよ!」
    犯罪だ。ダイゴは心の中で叫ぶ。ユウキが必死で逃げて来た意味が少しどころかかなり解る。10割解る。
    「待って、そこから先は僕は聞いていはいけない気がするんだけど。僕の予想としては、ハルカちゃんはユウキ君を襲ってるよね?それは逆だったらどう思うの?嫌でしょ、そういうことしたら嫌われちゃうよ」
    「ダイゴさん解ってないなー。私たちは愛し合ってるんですよっ!」
    それは愛とは言わない。そうしたらユウキは逃げて来ない。アクア団に囲まれた時だって、マグマ団に襲われたって毅然と立ち向かうのがユウキだ。それを震え上がらせるハルカはどれだけすごいことをしたのだろう。
    「だってもう脱がした時点でユウキ君すごかったんですからっ!それと下の毛は知ってます?黒いんですよー!」
    「だからっ!!そういうことは大声で言わないの!まだ昼間でしょ!」
    聞いているダイゴの方が恐ろしくなってきた。こんな子だとは思わなかった。家に入れたことを激しく後悔する。
    「えー、ここからが肝心なのに。それでかなしばりが解けて、気づいたらいなくなっちゃって」
    「ねえハルカちゃん。僕がユウキ君だったら同じく逃げてると思うよ。君のやってることは犯罪にしか思えないんだ」
    「だからーそんなことないんですよー。私とユウキ君は愛し合ってるんですー!」
    平行線。どうしたらユウキにそんなことをしてはいけないか教えることが出来るのだろう。このままじゃユウキが不憫すぎる。恋にどっぷりはまり込み、まわりどころか相手も見えてないとは恐ろしい。
    「あーあ、ユウキ君どこいっちゃったんだろーなー」
    「ハルカちゃん、僕の予想を言っていいかい?」
    「解るんですか?」
    「君の行動を見直して、誠意を持って謝らなければ、ユウキ君はもう一生ハルカちゃんと喋りたくもないと思うよ。ハルカちゃんが愛しあってると思っても、一方的であれば勘違いなんだ。そうやって愛を押し付けることは、どんな関係であれいけないことだ」
    「ダイゴさんに何が解るっていうんですか!」
    「ユウキ君の気持ち。ハルカちゃんのことが好きだから君と二人っきりでいたいのに、そんなことをされて、裏切られたようで悲しいと思うよ。それに、これは違うかもしれないけれど、男の子っていうのは好きな女の子の前では見栄を張りたいものなんだ。それなのにそんな姿にされて、プライドも傷ついただろうし」
    とたんにハルカが黙る。解ってくれたのか、大粒の涙を流して。
    「そんな・・・私、ユウキ君がいないと生きていけない!」
    「ユウキ君はハルカちゃんにそんなことされて、泣きたかったと思うよ。いなくなったら寂しいよね?悲しいよね?じゃあ、本当に今日のことを反省して、もう二度としないようにしないと」
    「・・・はい」
    「いい子だ。少し落ち着いたら帰るといい。僕がユウキ君に連絡とってみるから」
    ハルカは素直に頷く。ようやく解ってもらえたようで、ダイゴは安心していた。
     そこから数時間後、ハルカは自分のポケモンで帰っていく。翼を広げたボーマンダは大きく旋回し、大空へと消えていく。見送った後、ユウキが背後に立っていることに気づく。
    「ダイゴさん・・・ありがとうございます」
    「ねえ、ハルカちゃんの言ってたこと本当?」
    「本当です、マジです。一つ言ってないのは、かなしばりの上に俺をロープで縛って、が加わるあたりですかね」
    なるほど、ユウキの手にはうっすらと赤い線が入っている。もうこれは犯罪として成り立つ。ダイゴはユウキに同情する。まさかそんなことされるとは思ってなかっただろうし。奇襲に近い形で好きな人にそんなことされて、喜ぶ人はいない。
    「で、どうするのユウキ君」
    「ハルカですか?俺はもう・・・なんですけど家が近所でしてあいつから逃げることは事実上不可能になってました。親の目もあって、俺は逃げれないんです、あいつから」


    「ユウキ君いたっ!!」
    聞き慣れた声。思わず二人は横を向く。帰ったはずのハルカがそこにボーマンダと一緒に立っていた。
    「ハルカ!?」
    「ハルカちゃん!?なんでここに?」
    「忘れものしちゃった。ユウキ君会いたかったー!もう離さないからね」
    ハルカがユウキに抱きつく。逃げれないんだろうな、とダイゴは思った。
    「ハルカ、やめろ、やめろぉっ!!」
    「ユウキ君・・・私のこと嫌いになっちゃったの?前はしばってでも物にしたいって言ってくれたのに!」
    ダイゴは固まる。事実かどうかなんてどうでもいい。ユウキに少しでも同情した自分がアホらしい。
    「ユウキ君、それは・・・」
    「確かにそうですよ、俺とハルカはそんなことを・・・」
    「そうですよ!ダイゴさん、私たち愛し合ってるんです!」
    「ユウキ君、今回の件は僕の記憶から消しておくよ。だってそれはね、自業自得っていうんだよ!!!」
    急いで家に入り、内側からカギをかける。バカップルに付き合って、まじめに考えていた時間が無駄すぎる。
    「ダイゴさん!ダイゴさん助けて!!」
    「ユウキ君はこっちー!」
    二人の声は聞こえるけれど、もう何も聞こえないフリをした。もう二度と関わるものか。そう考えてダイゴは旅支度をする。ここは居場所が割れてしまっているから、どこか遠く、洞窟の奥とかに行こう。そうだ、それがいい。石も探せるし、一石二鳥。ダイゴはそう決意していた。


    ーーーーーーーーー
    ごめんなさい。
    【好きにしてください】【ホウエン主人公男子は白髪の方希望】


      [No.1804] アル中 投稿者:スウ   投稿日:2011/08/28(Sun) 22:27:39     100clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     小学校時代からの友人、中村が駅前で待っていた。
     一週間ほど前、彼からとある用件を頼まれて、私達は久しぶりに会うことになったのだ。
     その用件というのが、これまた中村の友人である『田ノ浦・某』という男と、是非ポケモン対戦をやってもらえないか、とのことだった。
     別に断る理由も無かったので、私はこれを承諾した。
     というわけで、私達は今から、田ノ浦の暮らしているアパートに向かうところである。
     単に対戦がしたいだけなら、わざわざ彼のアパートを訪ねなくてもWiFiの機能を使えばいいではないか、とも言ったのだが、中村はこれを良しとしなかった。
    「もしかして、彼のアパートにはWiFiの環境がないのか?」
     ふと思い立って、そう聞き返しもしたが、どうやらそうでもないらしい。
     中村の望みはあくまで、「田ノ浦のやつとは、是非とも対面で、直接向き合って対戦をしてもらいたい」とのことだった。
     どうしてなのか。
     最初、私は小首を傾げたが、田ノ浦のアパートへ向かう途中、中村が口にした言葉の端々にその答えはあるようだ。
    「いやー、今日は助かった」
     隣を歩く中村が言う。
    「あいつ、対戦相手に飢えてたんだ。普段から『俺は一人が好きなんだー』とか一匹狼気取ってるけど、けっこう寂しがりなやつでな。そんなわけで今日は一つよろしく頼むぜ」
    「しかし期待通りの対戦ができるかどうか」
     謙遜でも何でもなく、私は懸念を口にした。
    「大丈夫だ。これまで何度も対戦を重ねてきた俺が保証する。お前の戦いぶりは絶対に田ノ浦にも通じる。何たって、お前はジムリーダーなんだからな」
     そうなのだ。私は地元町内を代表するジムリーダーなのである。
     ジムリーダーと言えば、ポケモン世界ではポケモントレーナー達のカリスマ的存在だ。
     決して公式ではないものの、私はこの肩書きを、コアルヒーの目玉ほどの誇らしさをもって自賛している。
     まあ、早い話、これは私達の間だけで通じる擬似的な、仮想的な遊びだったりするのだが、「実は私という人間はこれこれこういう肩書きを持つ者です」などとさらけ出したりすると、これがけっこう受けたりする。
     ジムリーダーであるかどうかを決定する条件の一つは、バトルの演出を、いかに本物っぽく見せられるかどうかである。
     ジムリーダーは、ポケモン対戦では強引な必勝の手は使わない。
     それよりも対戦相手の力をじゅうぶんに引き出したり、ポケモン対戦の奥深さやその可能性を相手に気付かせたりするのが主な役割だ。
     ターンごとの技の選択は、遊びや面白みを追究しながらも、その時々の理に適っているものを選ぶのが理想的だ。
     相手、自分ともに、ピンチや見せ場をちゃんと築いてやる。これは必須事項である。バトルが終わった後は「あいつは手強かった」と、息も絶え絶えに、対戦相手が満足してくれれば、これはもう最高の誉れだ。
     初代赤緑のカスミはその意味ではあまり優秀とは言えなかった。こちらがヒトカゲを選んだ時の彼女の強さはそれこそ半端なかったが、スターミーがただ単にバブル光線を乱射してくるだけというのはいささかバトルの妙味に欠けた。
     一つ時代が進んで、金銀のアカネとなると、ミルタンクのころがるやメロメロがいい意味でこちらの意表を突いた。メロメロの厄介な縛りがプレイヤーを苦しめ、それをリカバリーするためにポケモンを頻繁に交換していると、その間に、向こうのころがるの威力がどんどん上がっていくのだ。その上、相手の体力をちまちま削っていると、抜群のタイミングでミルク飲みを使われて、勝負を振り出しに戻される(その時にはもう、こちらのパーティは壊滅状態だったりするのだが)。
     これは上手い、と、当時は唸らされたものだ。
     攻防一体の戦法であり、敗北を強いられるほど手強いながらも、勝利の後は(たとえ一度や二度負けたとしても)じゅうぶんに満足できる対戦だった。
     最近のジムリーダー達はゲームにおけるマシンの性能が上がり、ダメージの数値も調整されているためか、それぞれの個性が垣間見られる面白いバトルを見せてくれる。
     私が目指しているのも、そんなジムリーダーであり、今日、田ノ浦という男と行う対戦も、そういった記憶に深く残るものとしたい。いや、そうしたものにしなければならない。そうでなければジムリーダーとは言えない。
     それにしてもジムリーダー戦というと、普通は対戦相手の方から訪ねてくるものなのだが、今日のようにこちらから対戦相手の住まいに出張するというのは初めてのことだ。
     そんなふうに、どうでもいい考えにふけっていると、中村が念を押すように言ってきた。
    「そうだ。それからもう一度言っとくけどな」
     中村はあまり口にのぼせたくない、とでもいうふうに続けた。
    「この前も言ったけど、田ノ浦のやつ、ちょっと困ったところがあってな。そこら辺は大目に見てやってくれ」
    「ああ……この前、電話で話してたやつね」
     中村の話によると、田ノ浦という男はどうもアル中らしいのだ。
    「彼はそこまで酔ってるのかい? 年がら年中?」
    「ああ、朝から晩までな。ひどくなると、もう、片時も手放せないって具合なんだ。一応自制することもあるんだが、そうすると、すぐに禁断症状が出てきて困るらしい。……まあ、悪いやつじゃないから、ほんと勘弁してやってくれ」
     中村は我が事のように手を叩いて、こちらに許容のサインを求めてきた。
     私としては、その点に関してはどう返せばいいのやら、コメントしづらいことだったので、軽く頷くだけに留めた。
     人の趣味や趣向の問題である。こればっかりはどうしようもないことだ。



     駅から十数分歩き、田ノ浦が暮らしているというアパートに到着した。203号室のインターホンを押すと、すぐに扉が開いた。
    「おーう、待ってたぞー」
     田ノ浦は、泥酔した赤ら顔で私達を出迎えてくれた。
     私と中村はさっそく彼の部屋に通された。
     そこには至る所、近所の酒屋で売られているようなワンカップが転がっており、彼がすでに一杯どころか何杯とひっかけて、私達を待っていたことが窺えた。
    「田ノ浦、もうわかってると思うが、こいつが前に言ってた杉本だ」
     中村がにやりと不敵に笑って、私を紹介した。杉本、というのが私の名前だった。
    「おう、あんたが杉本さんか。噂は聞いてる。――強いんだってな」
     田ノ浦が私を見て、目をしぱしぱとやった。
    「杉本です。今日はよろしく」
     私が答えると、田ノ浦は急に武士道を重んじる人間のように髭のある口元を引き締めた。
     そうしてゴローニャのようなごつい手で、彼は握手を求めてきた。
     もっと荒れた、型破りな人物かと想像していたが、意外と礼儀正しい。困った悪癖とは別にして、案外古風な精神を築いている人なのかもしれない。
     私も田ノ浦の握手に応じて、挨拶は成立した。
     そうして私達は、いそいそと各々のニンテンドーDSと、それから各々の思い出の詰まった――いや、今現在も目まぐるしく冒険の続いているソフトを用意した。
     これで準備は万端、何もかもが整った。



    「んじゃ、始めるぞ」
     という、中村の掛け声で、私と田ノ浦はニンテンドーDSを手に、身構えた。
     特に必要というわけでもなかったが、レフェリーは中村が務めることとなった。
     ルールは一応、公式のものを採用するが、伝説や幻は禁止しない。
     ミュウツーだろうが、ホウオウだろうが、ジラーチだろうが、シェイミだろうが、何だって引っぱり出してきていい(ただし改造だけは絶対にやってはならない)。
     それと、6VS6の対戦を行う時などは、パーティ6体を全て同じポケモンで埋めても構わない。これは、ただ一体の種族だけを愛するファンのために作り出した救済措置である。対戦相手の中には、どうしても一つの種族だけで戦いたい、という奇特な人間がいたりするのだ。
     そういったポケモントレーナーの意志をできるだけ汲んでやりたい、というのが、幼少時代の頃からの、私と中村の見解の一致するところである。

     さて、いよいよ中村の口からバトル開始の合図が発せられると、ニンテンドーDSの画面の向こうから、田ノ浦の一体目のポケモンが繰り出された。
    「むむっ、これは……」
     私は初っ端から唸らされた。
     田ノ浦の繰り出した一体目は、彼のくたびれた外見とは裏腹に、とても美しい、優雅な水ポケモンだったのだ。
     中村からそれとなく事前情報を聞いてはいたが、実際に田ノ浦という人間のポケモンを前にすると、これまで予想すらしていなかった不思議な緊張が走る。こんな感覚を味わうのは久しぶりのことだ。
     田ノ浦がこちらを見て、へへっ、と笑った。とても嬉しそうだ。
     ともかく、私の方もポケモンが繰り出される。
     私の一体目は電気ポケモン、ご自慢のサンダースだ。
     タイプだけで見るなら、私の方がいくぶんか有利であることは確かだ。
     初手でいきなり攻撃を仕掛けてもよかったのだが、少し様子を見てみることにした。
     一ターン目の指示は、これだ。
     サンダースのスピードの高さは、もはや誰もが知るところだろう。そのスピードを駆使して『でんじふゆう』を試みてみる。
     すると向こうの行動は、やっぱり、という心の声が告げた通り、地震だった。
     たとえサンダースの得意な水タイプが相手だからといって、油断はできない。こちらの弱点の技を覚えていることが多々ある。それに地震は手頃で扱いやすい技の一つでもある。
     ともかく、田ノ浦は初手から一撃で落としてくるつもりだったようだ。自分の思惑が外れたというのに、彼は楽しげな様子だった。
     二ターン目が始まると、彼はポケモンを交換してきた。
    「おっと」
     私は思わず声を上げてしまった。
     田ノ浦の繰り出した二体目は、非常に攻撃力の高そうな地面タイプのポケモンだった。
     私の方はサンダースに10万ボルトの指示を与えていたので、これが無効化され、ダメージを完全にシャットアウトされる。
     先程私がおこなった指示への意趣返しだろうか。敵ながら、天晴れな御仁である。
     私の方もポケモンを交換しようかと考えたが、先程でんじふゆうを使ったので、しばらくの間は弱点を突かれないはず、と考え、今少しサンダースのまま戦うことにする。
     三ターン目、めざめるパワー(水)を指示する。弱点を突いているはずなのに、ダメージは微々たるもので、向こうのHPは半分も減少しない。
     相手側の行動に移った時、私は呆気にとられた。
    「ステルスロック?」
     田ノ浦の地面ポケモンはステルスロックを撒いてきた。彼の顔色を窺うと、また、へへっと笑っていた。
     私達の攻防は、サンダースがめざめるパワー(水)、あちらは吼える、と続いて、無理矢理バトル場に引き出されたこちらのギャラドスがステルスロックで大きなダメージを受けた。
     そのギャラドスを雷で突破された後、私は浮遊持ちの鋼ポケモン、ドータクンを繰り出す。
     田ノ浦もポケモンを変えてくる。どうやら向こうも鋼ポケモンのようだった。
     ドータクンで形勢を立て直すべく、めいそうでの積みに徹しようとしたところ、私はまたも驚かされる。
     向こうもめいそうでの積みを徹底してきたのだ。
     お互い、積み合戦が始まるが、結果はすでに見えてしまっている気がしてならなかった。
     それでもジムリーダーとしてまだやるべき事があったので、私は残りの三体、フシギバナ、フライゴン、ハリテヤマの全勢力を投入し、応戦した。
     その間に田ノ浦の方も、残りの三体、猛々しい炎ポケモン、なぜか防御に特化したドラゴンポケモン、意外と器用な格闘ポケモンを全てバトル場に登場させて、活躍の機会を作った。
     そのたびに私は「うおっ、いばみが戦法!」とか、「今度は耐久型か!?」とか、叫ばずにいられなかった。本来そういったエンターテイメント的な状況を紡ぎだすのはジムリーダーである私の役割であるはずなのに、いつの間にか私の方が時間を忘れて遊んでしまっていた。
     田ノ浦の変幻自在のポケモン達は最後まで私を飽きさせなかった。幕が下りるまでに何度か名残惜しい気分が胸をかすめたが、その時は着実に近付いていた。

     空が暗くなりだした頃に勝敗は決した。
     田ノ浦は私のポケモン達を全て打ち破り、また一歩ポケモントレーナーとしての器を高めたようだ。くたびれていた髭のある顔付きが、対戦前よりもずいぶん精悍なものになっていた。私にとっても今回の対戦は実に有意義なものだった。
     ポケモンバトルが終わればいつもそうしているように、私はこの日も、自作のジムバッジを対戦相手に授与した。小学生の工作とほとんど大差ない物だったが、田ノ浦は遠慮ない喜びをもってこれを受け取った。その様はさながら、誕生日やクリスマスにプレゼントをもらう子供そっくりだった。
     中村がどことなく安堵した表情で、そのバッジ授与の時を見守っている。沈んでいく西日の方角から、狭いアパート内に生ぬるい風が吹き込んでくる。そちらの方を見やりながら、ふと今年の夏ももう終わりなのだな、ということを思い出した。
     このところ、夏休みという概念が私の中で欠落してしまっている。改めて気付かされた瞬間に、その違和感に戸惑うことがある。



     帰り路、中村は、彼にしては珍しくおとなしかった。今日のポケモンバトルのことを自身の内で反芻しているのだろうか。特に話しかける言葉もなかったので、私の方も黙っていた。
     彼がようやく口を開いたのは、駅まであともう少し、というところまで差し掛かった時だ。
    「今度、何か奢るぜ」
     いささか事務的に聞こえて、そうでない中村に、私は頷いた。
    「エビフライカレーか、カツ丼でいいかい?」
     今度は中村が頷く番だった。
    「で、どうだった? 田ノ浦のポケモン達は」
    「とても強かったよ」
     私は答えてから、今日の対戦の模様を映画の早送りのように振り返った。
     田ノ浦の六体のポケモンがバトル場を駆け回る。私のポケモン達がそれを追っかけるように技を仕掛けていく。田ノ浦の自慢のポケモン達はそれを軽やかにいなし、あるいは百花繚乱に技を繰り出し、共鳴する律動のように応えるのだ。
    「それにしても、驚いた。話には聞いてたけど、あそこまでとはね」
    「だろう? あいつのアル中は筋金入りなんだよ」
     だろうな、と私も思う。今日、彼が久々にボールの外へ解き放ったであろう、水ポケモン、地面ポケモン、鋼ポケモン、炎ポケモン、ドラゴンポケモン、格闘ポケモンの勇ましい姿が、今でもまだ私の瞼に焼き付いている。
     『アル中』というのはすなわち『アルセウス中毒』のことであり、田ノ浦の見せた変幻自在の戦いは、まさにその言葉の体現にほかならなかった。
    「……田ノ浦のこと、卑怯なやつだと思うか?」
     中村は今度は少し、気後れしたように聞いてきた。
    「いや」私は首を横に振った。「彼は本当に強かったよ」
     そんなのは当たり前のことだったのだが、それ以上の意味も込めて私は言った。中村は満足そうに口角をつり上げた。
     昔から必ずどこかで噴出する風潮。伝説や強すぎるポケモンを使用していると、非難にさらされるという傾向がある。そういったデリケートな問題に関して、私にも言いたいことは色々あるが、まずは何を好きになるか、それが大事なことだろう。本音を明かせば、本当はとある伝説ポケモンが好きでしかたないのだが、そういった非難を恐れ、伝説の使用を断念したり、隠したりしている人間が世にはごまんといる。
     そういった物言いはいつだってどこにだってある。それはどうしようもない、避けられないことなのだ。最近の私は半ば諦めにも似た気持ちで思うようになってきた。
     ところが、田ノ浦はその非難にさらされることを承知の上で、なおアルセウスという種族を選んだのだ。その事を彼は隠すことなく表明した。
     彼にはきっとアルセウスしかいないのだ。それが彼のベストポケモンであり、最も心くすぐられる、素敵なイメージに違いないのだ。

     中村ととぼとぼ歩きながら、私はいまだ冒険の途上にあるセーブデータの事を思い返した。そのデータでは伝説ポケモンはまだ一体も捕まえられてはおらず、マスターボールも埃をかぶったまま、ほったらかしにされていた。
     今度、いっちょう、ジョウト中を走り回っている、あの三匹を捕まえてみようか。
     それでまた、自由奔放に駆け回る田ノ浦のポケモンと対戦するのだ。アル中の彼はきっと、数少ないであろう対戦相手を求めて、気長く待ってくれている。


      [No.1803] そして、故郷にも訪れる 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/08/28(Sun) 16:09:31     80clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     久しぶりの帰郷、母は声を震わせて、泣きそうになりながら呼んだ。

    「こんなに立派になって!」
    「母さん、久しぶり」

     どうにも恥ずかしくて母の顔を見られないままに言った。

    「ちゃんとご飯食べてる?」
    「うん」
    「旅はどうだった?」
    「大変だったよ」

     歩きながらも母はずっと質問をしてきた。久々の再開なんだから仕方ないけど、なんだかずっと家にいた頃のように口数が減っていた。でも、そういうものだと思うのだ。
     そして道は昔と変わらない。そう、こんな雪道で。しばらくすると見えてくる。
     大きな洞窟。
     ここが僕の家だ。帰ってきたのだ。

    「父さんただいま」

     僕の声が響きわたる。母を見ると笑っていた。

    「お父さんきっと奥で寝ているわ」

     入った時は変わらないと思った洞窟も、妙に広く感じた。あの頃より体は少し大きくなったのになんでだろうと思っていたが、なんてことはない。自分の足がゆっくりとしか進んでいなかっただけだった。そしてやっと奥まで行くと、白い毛むくじゃらが寝そべっているのが見えた。

    「父さんただいま」
    「ああ、お前か」

     大きな真っ白い身体は背を向けたままで、少しだけこちらを見たが、寝転んだまま顔を背けてしまった。
     その背中には傷がある。人間に襲われた時のものだと言っていた。こんなに傷が多かったんだな、と初めて父の背中をじっと見つめた。
     母は家につくとすぐに出かけてしまった。ご馳走を用意するらしい。

    「強くなったのか?」
    「はい」

     父はこの谷でも一番大きいユキノオーだった。そして一番強いユキノオーだった。谷の長として他のポケモンや人間から仲間を守って戦っていた。気が荒く、気に入らないことは力でねじ伏せてきた。それは子どもにも同じで、僕も何度殴られたかわからない。その存在感は相変わらずで、旅で強くなった自分でも逆らえない迫力があった。

    「だあれ?」

     横になる父の腕の影からひょっこりと顔を出す白い物体。
     雪を被ったププリンみたいな、ユキカブリのちびすけだ。

    「こいつはお前のにいさんだ」
    「おにいちゃん? おにいちゃんなの?」

     父の体をじたばたしながらやっとよじ登り、滑り降りると嬉しそうに駆け寄ってくる。そして僕の周りグルグル駆け回り始めた。父には全然似てないな、と僕は笑いそうになる。
     やがて母が大量の木の実を持ってくると、四人で昼食。何年ぶりもなる家族の団欒だ。母や弟が質問をしてきて、僕が答える。何をしていたのかは聞かず、どこにいったとか、どんなものを見たかとか、そういうことだけを聞かれる。それをずっと繰り返す。父はいつものように黙って口に木の実を放り込んでいく。当時僕は末っ子で、大人数の兄弟がいた。そして今ここにいる兄弟は弟と僕の二人。でも家族の食事のこの空気だけは当時と変わらない気がした。
     
     父と弟が昼寝を始め、母が出かけると、僕は周りを気にしながらこっそり出かける。しばらくぶりの故郷だが、そこへは迷わず行けてすこしだけホッとした。その洞窟は、入り口の雪が解けていて、中から熱風がたまに吹き出してくる。谷には似合わない暑さで氷タイプばかりのこの辺のポケモン達はあまり近づかない。父も母も、谷の仲間は皆そこに行くことを固く禁止していた。それでも行くポケモンはいる。僕らユキカブリは好奇心が旺盛で、知らないもの、見たことないものには目がない。僕もそれに漏れず、探検と称してこっそりやってきたものだった。

    「おじさん」

     声は洞窟に吸い込まれる。耳を澄ますと風の流れと、水の流れる音、少し泡の弾ける音、蒸気の噴出す音が聞こえる。どれをとってもこの谷では、いや、谷の外でも聞いたことが無いここだけの音だ。洞窟の中には温泉が湧き出している。炎の石も少し岩肌から顔を覗かせていて薄明るい。慎重に入っていく。ウチの洞窟とはまた違った緊張感があった。
     そしてやはりいた。洞窟に住んでいる一匹のバクーダ。

    「久しぶりだな」

     おじさんは控えめに言っても元気そうではなかった。声は力をあまり感じられず、動こうともしない。ただ、壁に寄りかかっているものの、入り口に体を向けていつでも動けるようにはしているようだ。

    「まだ生きてたのか」
    「うん」

     僕の言葉を聞くとおじさんは歯をむき出しにして、くしゃっと笑う。刻まれた皺がさらに増えてすごいことになる。背中から白い煙が上がり、部屋の温度が少し上がった。

    「久しぶり。おじさんに教わったこと、役に立ってるよ」
    「そうか。役に立っているか」
    「うん」

     僕はこの人から人間のことを教わったのだ。人間がどんな風に生きているのか。どんなことをしているのか。どんな言葉で話すのか。その意味を。この洞窟も、おじさんも、人間も、何もかもが僕の知らないことで、僕は何度も何度もこの洞窟へ通ったのだ。

    「面白いだろう、人間は」
    「うん」
    「いいトレーナーに出会えたようだな」
    「そうなのかも」

     僕の言葉におじさんは目を閉じて、何度も頷いた。僕が一体何から話そうか迷っていると、おじさんは悪戯っぽく笑う。

    「入っていくか?」

     それは僕とおじさんのお決まりのやり取りの言葉だった。考える間も無く僕は続きを口にしていた。

    「僕には暑いよ」
    「そうか、だが俺は入るぞ」

     ハッハッハとご機嫌に笑いながら奥に行く。僕も慌ててついて行く。おじさんの体も父と同じように傷だらけだった。動きも遅い。
     温泉が湧き出る音がずっと続いてるのに、おじさんが入るときに立てた水音は妙に響く。至福の一息を吐き、細い目で僕を見ていた。

    「そういえば、お前の親父もここに来たことが一度あったな」
    「父さんが?!」
    「ああ、俺は一番奥に引っ込んで帰るのを待ったからな。顔も合わせてないが」

     おじさんはたまに、身を揺する。すると水面に大きく波が立つのだ。僕は少し暑さにボーッとしながら、おじさんの声に耳を傾ける。月日は経ってしまったが、いつもの時間がここにある。

    「人間に、な」
    「ん?」
    「人間に玉に入れられると、人間にされてしまうって話を聞いたことがあるか?」

     それはポケモンの間で語り継がれる伝説だ。人間が玉を使ってポケモンを捕まえる。捕まったポケモンはどこかに連れて行かれて何か恐ろしい目にあって、人間にされてしまう。そして人間にされてしまったポケモンが「何で助けに来てくれなかったんだ」と仲間を恨んで捕まえて人間にするためにまた現れる。そういう話だ。

    「ほら! 腕二つに脚二つ、こんなに人間になっちゃったよ!」

     僕はおどけてみせる。洞窟の全ての音を掻き消して、二つの笑い声が大きく響いた。そしてそれが終わり、また温泉の音で空気が満ちて、一体どんな風に笑ったんだっけ、と忘れてしまうぐらいしたあとに、おじさんは言った。

    「もうそろそろかもしれんな」
    「そろそろ?」
    「ああ」

     ひどく穏やかで、まるで洞窟の音の一部のように溶け込んでしまう声だった。

    「お前に最後を看取られるのだけはごめんだがな」
    「僕だって、おじさんの最後を見るなんてごめんだよ」

     僕はまるでいつもそうしていたかのように、脚から躊躇いも無く温泉に身を浸す。こうしておじさんに会えたのは運が良かったのかもしれない。僕のマスターがこの近くを通って、合流地点を決めて僕をボールから出した。いったいどうしてそんなことをしたのか僕には想像できないけど、それがなければ両親にも、おじさんにも会えなかったし、弟がいたことも知らなかった、と考えると不思議でたまらない。明日、あの大きな木の下でマスターが待っている。明日、僕は帰らなければいけない。

    「悪くないだろ?」

     初めて入る温泉というのは水を浴びるのとも、川に入るのとも全然違った。僕はくらくらして、体も少し痺れているようなピリピリした感覚に包まれていた。

    「いいもんだな。温泉ってのは本当に。ずっとこうしていたくなるな。どうだ? 気持ちいいだろ?」
    「僕にはよく、わかんないや」



     朝食が終わると母はまた食事の用意で出かけ、弟の姿もいつの間にか無く、僕はどうしようか考えていた。時間はあまりない。
     洞窟の奥に行く。父は今日もやっぱり寝そべっていた。本当に傷だらけの体だ。外の世界のどんなポケモンでも、こんなに傷だらけの体は見たことが無い。ポケモンセンターにいけば、この体の傷も消えるんだろうか。

    「いたのか」
    「はい」

     父はこちらを向こうともしない。

    「やるか?」
    「何を?」
    「確かめてやろうか? お前がどれぐらい強くなったのか」

     僕は震えた。父がそういった後、僕はいつも怪我をした。本当にひどい怪我をしたときもあった。それを思い出すと、腕が、脚が重くなる。しばらくして答えがすぐに返ってこないことがわかると、父は鼻で笑う。

    「そんなんで大丈夫なのか? そんなんで敵と戦えるのか? 人間を殺せるのか?」

     日は昇り続けているはずなのに、洞窟が暗くなった気がした。もちろんそんなのは気のせいで明るさは変わっていない。父は寝そべったまま、同じ声で喋る。僕もそれを聞く。

    「父さんは人間を殺したんですか?」
    「ああ、数え切れないぐらいな」

     その声は心なし弾んで聴こえた。父のそんな声を聞くのは初めてだった。

    「それで残らず食ってやったよ。殺すってのはそういうものだ。殺したからには食う。どんなことがあっても、だ。命を奪うってのは生きるためにすることだからな。殺して食わないのはあいつら人間だけだ。そりゃあ最初は時間がかかったさ。昔は俺もちっこかったからな。それに何人も殺してやったからな。でも骨まで何まで全部食ってやった。ああ、雪に飛び散った血は別だ。さすがにそこまで徹底はしない」
    「人間を、食べたんですか?」
    「まぁ、人間ってのは本当にまずいもんだ。見かけ通りの味だ。あれは食うもんじゃない。木の実の方がずっとうまい。だから人間なんて食うもんじゃない」
    「何で殺したんですか……?」
    「仲間を、殺したからな」

     大きな音が聞こえた。聞いたことが無い音だ。それは腹の虫が鳴く音に似ていた。もしくは何かの唸り声。

    「お前、人間といるな?」

     僕は動けなくなった。心のどこかではなんとなく父は分かっている気はしてきたが、まさかこんなにシンプルに聞かれるとは思っていなかった。そして、それに対し父がどうするかまでは考えきれていなかった。

    「人間と一緒にいるな?」
    「はい」

     外の吹雪にかき消されてしまうんじゃないかというぐらい、信じられないほど小さな声が出た。

    「じゃあ、早くこの谷を出ろ」

     父は起き上がる。そして立ち上がった。天井に頭がぶつかりそうだ。体のわりに小さい目は僕をじっと見つめている。敵を撃退し、気に入らないものを打ち払い、僕をぶったときと同じ目だ。

    「いいな」

     僕は洞窟を出る。



    「あの話な、あながち間違いでもないと思うんだな」
    「何言ってるんだよおじさん。僕はこうして戻ってきたし、おじさんだってバクーダのままじゃないか」
    「俺は、あれは何か歪んで伝わったんじゃないかと思うんだよな」
    「違った形?」
    「人間になるってのは姿じゃない。姿はポケモンのままでも、人間といるうちに、あいつらと同じ考えや行動をするようになっていくんだな。あいつらは違う、人間のままだ。でもポケモンはポケモンじゃなくて人間になっていくんだ」
    「そうかな?」
    「まぁ、そんな話だ」



     洞窟を出るとすぐに声をかけられた。

    「お兄ちゃん? どこに行くの?」

     弟だ。少し多めに積もった雪から上半身を突き出している。雪に潜って遊んでいたらしい。僕はその質問には答えず、なるべく優しい声になるように気をつける。

    「僕がいない間、お前が父さんや母さんを守ってくれたんだな」
    「ええー?! 違うよ! ママもボクもみんなもこの谷もぜんぶぜーんぶパパが守ってるんだよ!」

     僕は弟の頭を撫でてやると、その目を見ながら言った。

    「僕はちょっと出かけるけど、そうすると、ウチはお前とパパとママだけになる。だから、お前はいつか強くなって、パパとママを守ってくれ」
    「うん!」
    「お前ならきっと父さんより強くなれるよ」
    「ほんとー?! 最近パパも褒めてくれるんだよ! お前のウッドハンマーはいいぞって!」

     子どもを褒める父なんて、その姿が想像できず、僕は思わず吹き出した。それを見て弟は最初がわけがわからないようで首を捻っていたが、だんだん楽しくなってきたようで、一緒になって笑い、それに飽きると自慢の技を披露してくれた。そうして少しの間だけ、弟に付き合うと、僕は言う。

    「お前がここにいる間、お前が守るんだ」
    「どゆことー?」
    「すぐにわかるさ」

     おざなりに頭を撫でると、ちびすけが高く小さい声を出した。

    「お兄ちゃん、ねぇ、どこに行くの?」
    「友達に会いに行ってくるだけさ」
    「うん」

     しばらく歩いて僕は坂を上る。その天辺からはうちの洞窟が見下ろせる。ちびすけが雪にまみれてわからなくなりそうなぐらい、小さく見えた。母には声をかけてないが、その方がきっといいだろう。

    「いってきます」

     遠くでちびすけが、僕が見ているのに気付いたようで手を振っていた。



     目印の大木が見えてきた。根元にはいくつかの影がある。どうやら待たせていたらしい。でも約束の時間まではだいぶあったはずだった。
     おかえり、とその人間は言った。僕のマスターだ。

    「ただいま」

     もちろん僕の言葉は人間には通じない。マスターにもだ。だけど、それでも僕は言いたかった。さっき「いってきます」と行ったばかりなのに、「ただいま」なんておかしいけれど。

    「帰ってこなくてもよかったのに。仲間がいたんだろう? お前一人がいなくてもどうにでもなる」

     ポッタイシが言った。人間みたいに腕を組んで僕を見下ろしていた。そのぶっきらぼうな言い方はマスターの一番の相棒、ポッチャマだろう。僕がいない間に進化したみたいだった。

    「友達には会えた?」

     キレイハナさんが綺麗な声で僕に笑いかけてくれた。マスターの仲間で、僕はこの人に見とれて草むらでマスターの前に飛び出したのだ。いったい何て返そうか。言葉を捜していると、どこからか大きな声が聞こえてきて、皆が振り返った。白い世界を歩く、少しおっかない顔をしている二人組だ。随分と厚着をしていて膨れ上がっている。



    “おーい! そこの少年!”
    “この谷は危ないからあまり近づかない方がいいぞー!”

     二人の人間がマスターに近寄ってきた。

    “ここには凶暴なポケモンが潜んでいるんだ。何人も犠牲になってるから。これから我々も狩りに行くんだよ。”

     僕は父のことを思い出していた。そういえば前より傷が増えていたし元気もなかった。
     人を食べるポケモンを、きっと人間は許さないはずだ。

    “なんでも悪の組織で使われていたポケモンで、組織が壊滅したときに悪党は捕まったんだが、そのポケモンはまんまと逃げ果せたらしい。何十人も犠牲になってる凶暴な奴だ。ずっと見つからなかったんだが、最近ここら変で見つかったみたいでな。突然のことだったんで逃がしちまったらしいんだが、すぐに討伐隊を編成したってわけよ。”
    “ま、手負いの炎ポケモンが吹雪の谷に居て平気なわけがないさ。仲間が結構な傷も負わせたらしくて、時間の問題だよ。君、ここらへんでバクーダなんて見てないよね?”
    “はい。見てないです。でも大変ですね。怖くないんですか?”
    “嘘ついても仕方ないし、かっこわるいけど、正直怖いよ。でも仲間の仇だから。それにまぁ、みんなのためだからね。もうすぐこの谷にも平和が訪れるはずだよ。”
    “そうですか。気を付けてくださいね。”
    “少年、君も気を付けてな。大丈夫だとは思うけど、そいつに遭遇したら絶対逃げること、いいな?”


     僕は何も言わずに、マスターのボールに入る。

    「おい、疲れたのか?」
    「寝かせてあげましょうよ」

     仲間の声が聞こえるが、僕は聞こえないふりをする。
     とにかく眠ろう。目を瞑るとマスターの優しい声が聞こえた。

    “安心しろよ。あの人達のおかげで、お前の谷もきっと平和になるから。”

     もう少ししたら、この谷にも春が訪れるだろう。雪が溶けて、白から緑が増えていく。そうすれば、僕の体にもあの木の実が生る。ちびすけもそろそろ実が生ってもおかしくないぐらいだった。その雪みたいな氷みたいな食感に大喜びするだろう。今年は一段と甘い実がなればいいと思う。それをキレイハナさんや、仲間達、そしてマスターにあげてみんなで食べるのだ。
     僕はもうこの谷には来ない。


    ----------------------------------------
    ゲットされたポケモンにとって自分の住処をどう考えているのか、ポケモンと人がいるということをポケモン達はどういう風に思っているのか。そんなことを考えて書いた作品です。
    全くもって季節はずれのネタですが、ご容赦ください。


    お読みいただきありがとうございました。

    【批評してもいいのよ】


      [No.1802] 女子会定食屋! 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/08/28(Sun) 15:24:08     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     とある午後の、切り切り亭。時間帯的にたまたまお客がいないので、店の主キリキザンをはじめとする四匹のメンバーは、しばし休憩をしていた。
     ふと、外から聞こえてくる、かすかなポケモンの声。話し合っているようなその声は、徐々に近づいてくる。
     戸口の前まで来たのを感じて、流石に客だと確信したキリキザンは立ち上がった。ガラガラと引き開けられる扉。

    「「ごめんくださ〜い」」
    「ヘイらっしゃ……」

     普段威勢のいいキリキザンの声はそこで止まった。
     カウンターにいたレタスも、はっとした表情で入ってきた客をみつめた。
     何故かといえば、入ってきた四匹のポケモンの中に“ドレディア”がいたからだ。

    「レタス、カマド! ついにお前らがこの店を出て行くときが来ちまったぞ! 久しぶりにドレディアが来たんでな!!」

     キリキザンはそう言って、店の奥に入って行ってしまった。
     カウンターの上のレタスは、無言でドレディアを見つめている。



    「サワン、この店に前も来たことあるの?」

     一緒に入ってきたコジョンドがたずねた。
     ドレディアは店で交わされている話の状況が分からず、困惑した表情になる。

    「いや……無いと思うんですけど…」



    「…本当!? レタスのお母さんなの!?」

     店の奥から、コータスとカマドを連れてキリキザンが出てきた。

    「……お母さんじゃない」

     レタスは、まじまじとそのドレディアの顔をみて呟いた。

    「…お母、さん? 私が?」

     困惑した表情のままのドレディアが言うと、周りにいるコジョンド、ゾロアーク、ウルガモスが彼女に一斉に視線を向けた。

    「サワン、あんたいつの間に子供できてたの?」
    「へ!? ち、違います!!」

     ゾロアークに言われ、サワンと呼ばれたドレディアはあわてて首を振る。



    「そういや、前に来てたやつとは花の色が微妙に違うな。別ポケか?」

     キリキザンが呟く。

    「な…何のことかさっぱり分かりませんけど…多分ポケ違いだと思いますよ」

     ドレディアは言った。
     レタスも、今度は確信した口調で言う。

    「うん。私のお母さんじゃない」

     少しだけ残念そうな表情をみせるレタス。
     後ろでは、カマドとコータスが、何も言わずに立っていた。
     


    「へえー、自分のお母さんを探すために、ここで働いてるのね」

     ドレディアはレタスとカマドの決心に、とても感心した様子だった。

    「いやー、サワン危うくこの子の母親にさせられるとこだったわね」

     隣で千切りキャベツを食べるコジョンドが笑いながら言う。ちなみに、入ってきたポケモン達は全員メスなのだ。

    「でもさあ、サワンには素敵な騎士さんがいるじゃない?」
    「えぇぇちょっとナスカさんっ!?」

     ウルガモスの発言で顔を真っ赤にして取り乱すドレディアに、周りの三匹は爆笑した。

    「お客さんがいない時間帯に来て良かったわー」

     そう言いつつも、まだ笑いが収まりきらないゾロアーク。トンカツを吹き出さないように必死にこらえているのだった。

    「ティラさんまでー…。もぉー」

     まだ火照ったままの顔で、ドレディアはトンカツをほおばる。

    「しっかし噂どおりうまいわトンカツとキャベツ両方g(モグモグ)」
    「レッセ、行儀悪いわよ…」
    「(ごくっ)あ、もしかしてティラ、池月君のこと気にしてたり?」
    「はぁ!? いきなり何言ってんの!?」
     
     いきなり女子の恋バナで盛り上がってしまった店内を、キリキザンは黙って見ているしかなかった。
     今度はキャベツを食べたドレディアが、幸せそうな顔で言う。

    「うーんキャベツまでこんなにこだわってるなんて…贅沢ー。みずみずしいから、トンカツと相性抜群」

     その一言を聞いて、キリキザンの表情が少し変わった。
     ドレディアは気付かずにそのまま続ける。

    「キャベツまでこんなに気を配ってるトンカツなんて食べたこと無かったわ」
    「なんていうか、『みんなで作ってる』って感じがして、すごい暖かいんだよね」

     続いたウルガモスの言葉に、他の三匹も頷いた。

    「ごちそうさまでした!」
    「はいよ!」

     代表してゾロアークがキリキザンにお代を払うと、また来ますねと言って四匹は出て行った。
     キリキザンは、笑顔だった。



    「レタスちゃんもカマドくんも、キリキザンさんもコータスさんも、このお店で働けて幸せだよね。店の中じゃ言いにくかったから今言うけど。」
    「今度リーダー達も誘って行きます?」
    「いや、私達だけの秘密にしましょっ。オルカならいいけど」
    「賛成です!! 外のお店でまで争奪戦したくありませんよね」
    「あと、今日みたいな話もしたいものね」
    「だーかーらーナスカさん!!」



     ――噂を聞いてやってきた、午後の女子会。




    ―――――
    「うちのコ行かせます!」と言ってしまったはいいけど、これでいいのかしら(特にキリキザンさんとかレタスちゃんとか)
    なにせ他の人のキャラを直接書くのは初めてなんで… とりあえずはイケズキさんに土下座するしかないorz

    あーメスキャラのセリフ書き分けがむずい!


    【書いてみた】 【好きにしてね】


      [No.1801] ユエとミツキ 投稿者:紀成   投稿日:2011/08/28(Sun) 12:59:56     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「あれ、ユエさんは?」
    開店真際のカフェ。今日も今日とて宿題に追われる学生達のたまり場となる。本当はいけないのかもしれないが、ゼクロムやレシラムをおかわりしてくれるので文句は言えない。
    「さっき携帯に着信が入って…『聞いてないわよそんなこと!』って言って切って…少し経ってから『ごめん、行ってくる』ってカフェを出て行ったけど」
    「何があったんだろうね」

    「よおー!ユエ姉!ひっさしぶりやなー!」
    「…」
    ギアステーションに響くコガネ弁に、過ぎ行く人達がぎょっとしてユエの方を見る。ユエはふうと息を吐いて相手を見た。
    茶髪を上でお団子にしている。背丈はユエを少し下回るくらい。前見た時の髪形とは打って変わって女性らしさが出ている。
    「聞いてないわよ、今日いきなり来て、しかも私の部屋に泊まるなんて」
    「父ちゃんはキッチリおばちゃんに言ったで?そちらの伝言がなっちゃいなかったんや」
    はっきりした物言いが正にコガネ人だ。今はホウエン地方に住んでいるが。
    「参ったわね…私これからカフェに行かなきゃいけないんだけど」
    「なんならウチも手伝ったる」
    「は?」
    「この暑い中観光してもブッ倒れるだけや。ウチが手伝ったるで!」
    目の前の少女――ミツキがニッと笑った。

    ミツキはユエの従姉妹である。元々ジョウト・コガネシティに住んでいたが、元々父の体が弱かったため、ここでは空気が悪いということで水と緑豊かなホウエン地方に移ったのだ。
    そこで高校に通いながら実家の食堂『森川食堂』を切り盛りしている。
    「なんかなー、この前トウカの森を仕切るダーテング一族の長の息子を助けてなー、そしたらその父ちゃんにえらい懐かれてなー、よく木の実とか持ってきてくれるよーになったんや」
    「ミツキ」
    「んあ?」
    「その髪の毛…どうしたの」
    前に会った時はベリーショートだったのだ。服さえ着替えればパッと見て誰もが男だと思うくらい、ミツキは男勝りな少女だった。本人もそれを気に入って、『絶対伸ばさへんからな!』と豪語していたほどだ。
    それが、今では…
    「あー…中二の時、部活辞めたんや。それでもうええかなーと思って」
    「野球部よね?」
    うなずくミツキ。
    「ここだけの話、ウチ中学の時周りから男やと思われてたんや。ほら、中学は制服やのーて私服登校やったからな。そんで最初の体力テストの時、砲丸投げで記録更新してもーて」
    「それでスカウトされたの?」
    「断ったんやけど、しつこーてなあ」
    ミツキは食堂を切り盛りしているせいか、同学年の女子生徒の中では肩ががっしりしている。それが顧問の目に留まったのだろう。
    「ここよ」
    話をしている間にカフェに着いていた。ミツキが目を輝かせる。
    「ほー、モダンやな」
    「ごめんね、任せちゃって」
    冷房の効いた涼しい店内で、見慣れた子達が宿題とにらめっこしている。バイトの一人が顔を上げた。
    「お帰りなさい、マスター。…後ろの子は?」
    「ウチはミツキ。ユエ姉の従姉妹や」
    「従姉妹!?」
    叫んだのはバイトだけではなかった。宿題をしていた子達までもが目を丸くしている。ミツキが頬をかいた。
    「…なんか驚くようなこと言ったか」

    「おー、ユエ姉のマグマラシがバクフーンになっとる」
    もふん、という音がするくらい勢いをつけてお腹に飛び込むミツキ。バクフーンの顔が困惑の色に染まる。
    「ええなあ、もふもふ。ウチもこんなポケモン欲しいわ」
    「ホウエン地方なら、チルットとかチルタリスがいるじゃない」
    「可愛いのはどうもな…そんならダーテングの髪をもふる方がええわー」
    というか仕事しに来たんじゃなかったの、というユエの言葉を無視してミツキはバクフーンとじゃれあっている。
    そんなミツキを睨む宿題組。
    「ねえミツキちゃん、暇なら手伝ってくんない?宿題」
    「おー構わんぞ。ところで何年生?」
    「高三」
    「ウチは高一や。分からん」
    一瞬で終わる会話。その時。

    『友達から電話だよ』

    ミツキの携帯の着ボイスが流れた。バクフーンのお腹に乗っかりながら携帯を開く。
    「シグか…」
    「誰?」
    「彼氏」
    「いつの間に!?」
    「もしもーし」
    続けてスピーカーから流れてきたのは誰かの叫び声。
    『ミッキー!僕を置いて何処へ行っちゃったの!?』
    「あー…すまん。今ライモンにいるんや」
    『二次元!?二次元にいるの!?』
    「そのライモンやない!イッシュ地方や」
    ネタが分かる人にしか分からない会話を繰り広げる二人。続いて泣き声。
    『うう…早く帰ってきてよミッキー… ミッキーがいないと僕死んじゃう』
    「これは重症ね。ミツキどんな彼氏と付き合ってんのよ」
    「シグは代々続く家の坊ちゃんで、あんま人から離れたことないから、いきなりいなくなると中毒症状みたいに叫びまわるんや」
    「迷惑な子ねえ」
    バックから地の底を這う獣のような声が聞こえてきた。
    「あー、シグのラグラージやな。いつもウチを敵視しとる」
    「もしかして…♀?」
    「♂や」
    「それはそれで嫌」
    『ミッキー二日以内に帰って来なかったら僕死んじゃうからね。本当だからね!』
    「うるせ」
    『うわああああああああミッキーが怒ったあああああああああ』
    ミツキは口を押えた。ユエが背中を擦る。
    「分かった分かった。お土産買ってくるから泣くなや」
    『ミッキーが帰って来てくれれば僕は何もいらない』
    「あーはいはい」
    騒がしい電話が切れた。ユエがボソッと。
    「ミツキって彼氏から『ミッキー』って呼ばれてんのね」
    「恥ずかしいからやめろって言うてんやけどな」
    「ちなみに彼氏の名前は?」
    「シグレや。ほれ」
    ミツキが携帯の待ち受け画面を見せた。どれどれ、と見た全員の顔が固まる。

    そこには、髪の毛をツインテールにしてワンピースを着た、ミツキよりも可愛い少女の姿が映っていた。

    「え?女の子同士のカップル?」
    「ダボ!シグはれっきとした男や。ただ、家の都合で高校を卒業するまでは女として生きてかなきゃいけないんやと」
    「ほー…」
    「街歩いとる時もナンパされんのはいっつもシグやし、スカウトされる時やって…」
    確かに可愛い。ミツキより女の子らしい。
    「ただな、バトルはシグの方が強いねん。一度ヨシツネとバトルさしたらコテンパンにされてもーたんや」
    「ヨシツネって?」
    「トウカの森のダーテング一族の頭領。ちなみに息子はウシワカマルや」
    もう一枚写真を見せてくれた。普通のダーテングより遥かに大きなダーテングと、その息子であるコノハナが映っていた。
    「ほー」
    「本当はシグはイケメンなんやで。髪下ろしてズボン穿いとる時とかドキドキするもん」
    「爆発しろ」

    残り少ない夏休み。ユエの元でバイトすることになった従姉妹のミツキ。
    この娘、嵐を呼ぶような、呼ばないような…

    ――――――――
    ちゃんと書いてみた。ミツキは一度消えちゃったかんなー
    [会いにきてもいいのよ]


      [No.1800] あれれー? 投稿者:ふに   投稿日:2011/08/28(Sun) 00:38:00     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    アレー? ドコカデヨンダキガスルナァ
    アレー? ドコカデミタコトアルヨウナキガスルナァ
    アレー? ドコカデミタコトアルノニナミダガデテクルナァ

    アレレー?

    ああ、そうか、あなたはさざn(ry \ドカバキグシャボキベキバキョメシャ/

    はい。 ふにはあなたの事は前々から知っておりまする
    作者リストから消えていたこともあってすこーしみかけたくらいですが。
    ごめんなさい。 謝りますからそんなに殴らないでください蹴らないでください
    そんなに殴るとあなたのページのURL貼りますよ(ry

    嘘です嘘です! ハサミギロチンとか絶対零度とかそういう物騒なのやめようね
    ぎゃぁぁぁぁあぁぁぁぁっ

    \デデーン/


      [No.1799] Re: なんか絵です 投稿者:moss   投稿日:2011/08/27(Sat) 20:24:49     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     感想ありがとうございますです!!



    > ◆大半の他のキャラクターはサザンドラ(てこさん)に乗っている中で自力で飛行(我が道を行くスタイル)
     トトロは乗らなくても自分で飛べるのです! (爆)

    > ◆でかい図体(見たまんま)

     トトロですから!

    > さすが風間さんの後輩(になる可能性が高い)mossさん! 既にセンスが素晴らしいです(´ω`)

     センスが素晴らしいなんて……ありがとうございます、照れますおw
    後輩には何が何でもなるです! 意地でもなるです! (爆)

    > 素晴らしい絵をありがとうございました!

     お褒めいただき大変恐縮です! 見ていただきありがとうございました!!


      [No.1798] Re: なんか絵です 投稿者:586   《URL》   投稿日:2011/08/27(Sat) 19:19:57     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >トトロ ―― 586さん

    これを見させていただいて思ったこと:

    ◆ポケモンのOFFにも関わらずなぜか一人だけスタジオジブリ(あふれる独自性と異色ぶり)
    ◆大半の他のキャラクターはサザンドラ(てこさん)に乗っている中で自力で飛行(我が道を行くスタイル)
    ◆でかい図体(見たまんま)

    すごい! そのまんま586だ!(素
    さすが風間さんの後輩(になる可能性が高い)mossさん! 既にセンスが素晴らしいです(´ω`)

    素晴らしい絵をありがとうございました!


      [No.1797] 運動会…? 投稿者:紀成   投稿日:2011/08/27(Sat) 17:57:58     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ヨウスイ高校 運動会

    日付:9月20日
    場所:ライモン体育館(裏に地図記載)

    プログラム

    1、開会式
    2、応援合戦
    3、選抜100メートル走
    4、ミルホッグ飛び(ミルホッグをそれぞれ繋げて縄にして回し、クラス対抗でどれだけ飛んだかを競います)
    5、タブンネ割り(タブンネ型の風船にひたすら物を投げつけ、最初に割った組の勝利)
    6、騎馬戦(男子のみ。万が一落馬した時のためにシママに乗ってやります)

    ーお昼休みー

    7、格闘ポケモン引き(女子のみ。ダゲキやナゲキなどのポケモンを真ん中に置き、それぞれの組の女子が引っ張り合う。多く陣地に引っ張って行った方が勝利)
    8、フシデ棒倒し(高一のみ。大量のフシデを使って相手が守っている棒を倒す。先に倒した方の勝利)
    9、ホイーガ転がし(高二のみ。ホイーガを二人一組で転がし、一周してバトンタッチする。毒に侵されないようにゴム手袋着用)
    10、ペンドラーロデオ(高三のみ。ペンドラーに選抜五名が乗ってロデオをする。暴れまわるペンドラーから先に全員落ちたチームの負けとする)
    11、オタマロ投げ(全学年対象。ひたすらオタマロを投げ合う。うぜえとか言ってはいけない)
    12、全学年選抜リレー

    13、閉会式

    「…年々競技が激しくなってる気がするわ」
    「今はリレー選抜の子達がサザナミタウンで合宿中です」
    「この『格闘ポケモン引き』毎年必ず可愛い子がいる組が勝つのよね」
    「使うポケモン全部♂ですからね」
    「『ペンドラーロデオ』確か私がやった年に骨折者が出て、次の年は無かった」
    「七年ぶりに復活したって先生言ってました」
    「『オタマロ投げ』やる意味あるの?」
    「無いと思いますよ」


    ―――――
    ちょっと早いけど。これしかネタが思い浮かばなかった。
    煮詰まるとネタに走る癖をそろそろ直した方がいい。

    [何をしてもいいのよ]


      [No.1796] コメありがとうございます♪ 投稿者:みなみ   投稿日:2011/08/27(Sat) 12:48:59     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    おおっ。こんな駄文にコメありがとうございます♪
    確かにリーフィアとブースターは能力値的に物足りないですよね(汗   ゲーフリさん、何とかしてほしいです(泣)
    でもかわいさは全く物足りなくないのでこの通りのキャラ配置に♪

    技に関しては鋭いですね(汗     当初の計画ではリーフィアの改造技はハードプラントと地震だったのですがハードプラントはよくよく考えてたら特殊技だったので没にorz
    では地震はどうしたのかというと描写力が足りずに挫折してしまったのですorz    まず技の発動とかどうすればいいのかイメージがわかずに惨敗してしまったのですorz

    と、まあ。裏話的なコメになっちゃいましたね(滝汗
    なにはともあれ、コメありがとうございましたっ♪


      [No.1794] 【リクエスト】 女狐談話奇譚 投稿者:巳佑   投稿日:2011/08/26(Fri) 19:43:04     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    【リクエスト】 女狐談話奇譚 (画像サイズ: 416×600 97kB)

     
     チャットルームワールドという異空間がある。

     そこでは様々な世界のキャラクター達が各々好きなときに現れ、他世界のキャラクターと夢の一時を過ごすことができるという不思議な場所である。
     最近出番がないなどといった愚痴トークや、このポケモンいいよね〜この人物いいよね〜とキャッキャッ声があがる恋バナとか、ジャンルは様々である。
     おや、ここにも……。

    「なんや、先客がおったか」
    「ん? あなたは誰?」

     ちなみにチャットルームワールドは複数の部屋があり、その部屋の内容もそれぞれ異なる。
     赤茶色の毛並みに、赤い髪の毛と六つの尻尾を持った一匹のロコンと、黄金の毛並みで九つの尻尾を持った一匹のキュウコンがいる部屋は畳がどこまでも広がる和の部屋であった。

    「名乗るときは自分からって、まぁええか。ウチは灯夢(ひむ)っちゅうんや。よろしゅうな」
    「私は火花(ひばな)。よろしくね」
     大阪弁を扱う赤髪に白銀のかんざしを刺したロコン――灯夢と、金色の九尾狐であるキュウコン――火花は座布団を置くと適当なところに座った。
     このチャットルームには部屋に応じて色々な物が揃っており、この畳の部屋ならば、座布団やお茶飲み、後は軽い茶菓子などが所々に置かれていて、くつろぎ感を訪れた者に提供しているようだ。
     二匹の狐が座った後、灯夢が背中にくくりつけていた風呂敷を外し、結び目を解いて膨らんだソレの中身をポイポイと出していく。黄土色の葉っぱに包まれた桃色の餅や、琥珀色のタレが艶やかに光る団子や、香ばしい香りがする煎餅などなど、おいしそうな和菓子が次々に出てきた。
    「これは?」
     興味津々に和菓子を眺める火花の口元からはよだれが垂れてきている。
    「ウチの大好きなみたらし団子に、桜餅、フエン煎餅しょうゆ味にミソ味に塩味、水ようかん、たい焼き、他にもあるで」
    「お、おいしそう……」
    「なんや、初めてかいな?」
    「ええ、ポケモンフーズとかポフィンならあるけど……これは初めてね」
    「なら、折角やし一緒に食べへんか? うまいで?」
    「い、いいの?」
     心配そうに、けれど食べたいな〜という感じの眼差しを向けてくる火花に灯夢は白い歯を見せながらニカっと笑った。
    「ほな、食べようか」
    「うん! ありがとう!」
     火花は早速、桜餅に手を伸ばし、灯夢は大好物のみたらし団子に手を伸ばした。
     火花の口に桜餅が入り、桜の香りと甘い味が口内に広がると火花の目が大きく開かれて、らんらんと輝かせていた。一方の灯夢もみたらし団子を一個、口にほおばり、クセのある甘いタレに酔いしれる。
    「う〜、ひょく、のひる〜!(訳:う〜、よく、伸びる〜!)」
    「もぎゅもぎゅ……おぉ、よう伸びとんなぁ」
     火花が口にした桜餅はかなりの弾力があったからか、火花に負けじとその身を切られずに伸ばし続けていて、灯夢はそれを面白そうに見ていたのであった。


     初めて同士でも酒を交わせば、場の空気は緩和し、語り合える。
     そのような感じで和菓子を通して、お互い溶け込めた灯夢と火花は和菓子と熱い緑茶を片手にFGT――フォックスガールズトークを交わしていた。
    「灯夢さんは野生のロコンなの?」
    「まぁ、そうやな。さすらいのロコンやで、ウチは。そういう火花はんは?」
    「シュカっていうトレーナーが私の主人なんだ」
    「(……まぁ、ウチは今、人間の男と一つ屋根の下で共同生活しとるんやけど)」
    「ん? どうしたの灯夢さん。なんか苦笑いして」
    「へ……? あぁ、なんでもあらへん、あらへんでっ」
    「あ、そうだ。灯夢さん行くところがなかったら、私達の仲間にならない!? 灯夢さんなら強そうだし、シュカも多分許してくれるだろうし」
    「なんかウチが捨てられロコンみたいな感じがするんやけど……あぁ、すまへんな。ウチにはやることがあってな。折角の誘いやけど行くことはできへんわ、すまへんな」
    「そうか……残念」
     しゅんとうなだれる火花に灯夢は申し訳なさそうな顔を向けた。
     実際に灯夢にはやることがある。
     火花がシュカと共に目的に向かって旅をしていると同じように、灯夢にもやらなければ、いけないことがあるのだ。
     火花はキュウコンだ。これから何年、何百年と生きていくことだろう。その長い時の間にシュカと別れなければいけない日がやがて訪れるだろう……そのときになったら火花と一緒に旅をするというのも悪くないかもな……と思ったところで灯夢は自分自身に向かって、心の中で「たわけ」と呟いた。
    「まぁ、その分って言うても、おかしいかもしれへんけど、今、このときを大いに楽しもうや、な?」
    「……うん。そうね!」 
     和菓子と緑茶を片手に狐二匹の談話が再開された。
    「灯夢さんって、キュウコンにはならないの?」
    「ウチは不思議なロコンでな、千年生きないとキュウコンになれへんの」
    「へぇ……! 千年も!」
    「あんなぁ……火花はんも千年生きるポケモンっちゅうことを忘れんようにな」
    「あ、そうだった。でも、私、今何歳か分からないなぁ……今度、シュカに訊いてみようっと」
     コロコロと笑う火花に灯夢も思わず笑みが零れる。
    「それで、今灯夢さんは何歳なの?」
    「九百九十七歳やな」
    「すごい、覚えてるんだ! そして後三年じゃない!」
    「確かに、長生きしてくると、歳なんか関係なくなって忘れそうな気もするけどな、ウチの場合はどうしてもな」
    「キュウコン姿の灯夢さん見てみたいなぁ」 
    「なら三年後にまた会うっちゅうのもええんちゃう?」
    「うん! それいい! 他にもいっぱいキュウコンさん呼んでも面白いかも!」
    「それ、何パラの話やねん」
     あははは! と笑い声が二匹の狐からあがった。
     和菓子を酌み交わし、酔ったかのように、心底から楽しそうに灯夢と火花は笑った。
    「あ、そうだ。私の仲間にも会って欲しいな」
    「ほう」
    「まずね、雷夢(らいむ)っていうマイナンがいてね。その子――」
     
     楽しい時があっという間に過ぎていく中、火花の意識はいきなりシャットアウトされた。




    「ほわぁ……あれ? ここは……」
     青い空、白い雲、広大な草原、その中にある一本の大木。
     その下では、一匹のキュウコンに、そのふわふわな尻尾を枕代わりにして眠っている少女が一人。他にも近くにはマイナンやロズレイド、ドンカラスやエンペルトが同じく、キュウコンの尻尾を枕にしてすやすやと眠っていた。
    「あ、そうか……ここで皆で昼寝でもしようってシュカが言い出して……」
     思い出しながら、キュウコン――火花は大きなあくびを一つあげた。
     眠そうに、あくびから出た目頭にある涙一粒を前足で落とすと、空を見上げた。
    「不思議な夢……だったなぁ」
     夢と口にしたものの、なんか夢じゃないような気が火花にはした。
     桜餅を食べたり、みたらし団子を食べたり、そして――。
    「……また、あのロコンさんに会えるかな? きっと……また会えるよね。灯夢さん」
     再び、大きく口を開けた火花はもう一眠りしようと、目を閉じた。
     また、あのロコンと和菓子を食べながらおしゃべりできる日を夢見て。今度は自分だけじゃなくて仲間も一緒にと願いながら。

     木陰でそれぞれが夢にたゆたいながら、火花の口元から小さな桃色の欠片が一つ落ちていった。



    【リクエストもらいました】
     
     某日のチャットにて、akuroさんから『灯夢さんと火花さん』をイラストで描いて欲しいとリクエストをもらいまして。(ドキドキ)
     ポケストにあげて欲しいというお願いから、折角なので灯夢さんと火花さんの一時も書かせてもらいました!
     火花さんの特徴がちゃんと出ているといいのですが……もし出ていなかったらスイマセンです。(汗)

     そして『チャットルームワールド』(PDWみたいなものと考えて大丈夫かもです)いう謎の異空間を引っ張り出してしまった私。(汗)
     よ、よろしければ、皆さんもこのチャットルームワールドを活用してくd(以下略)

     改めて、akuroさん、リクエストおいしくいただきました! 
     ありがとうございました! 


     それでは失礼しました!



    【みたらし団子もぎゅもぎゅ♪】 
             


      [No.1793] 後半に行くに連れて疲れてくるZO! 投稿者:Teko   投稿日:2011/08/26(Fri) 15:32:29     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    【1】

     まず、東京駅に集合した我ら三人、てこ、茶色君、こまさん。東京駅は人が多いし、広いしで超びっくりした。どこかでイベントでもやってるのかと思ったら、今日は少ないほうだそうだ。凍狂、恐るべし。
     朝ごはんを食べていないため、お腹が空いていた。てこはこのときかなりお腹が空いていて、空腹から来る不機嫌に見舞われていた。東京駅改札内に食べるところを探すも、いいところは見つからず。蕎麦にしようかという案も出かけたが、死者が出かねないのでこの案は没案となった。
     食べ物を売るお店をみてまわる一行。どこかに座る場所でもないかと探すがやはり凍狂。そんなものはない。福岡なら普通にあるのにとてこは思った。
    (このとき、ややお腹痛い)
     山手線に乗り、浜松町へ。お腹が痛い。恐らく、朝に食べた桃のせいだろうと考える。まさかこんなことになるなんて考えもしていなかった。お腹が痛いので、うどんが個人的に食べたかったてこである。
     浜松町駅の改札を出ると、なんとすぐにうどん屋を発見。天の恵みとばかりに「うどん!」と喜んだてこ。お腹に優しいものを求めていたのだ。けど、そういえば、福岡から東京に来る際も朝は空港でうどんを食べていた。単にうどんが好きなのである。
     しかし、腹が痛いことに変りはない。普段なら1分以上悩むところだが、今回はメニューすらほとんど見ず(見たかもしれないが、覚えていない)かけうどんを頼んだ。安い。うまい。お腹に優しい。立ち食い席のあることに驚きつつ、座ってうどんをすする。

     が、腹が痛い。かなり痛い。
     額から妙な汗を流しつつ、うどんをすする。かなりおいしかったが、後半はそれを味わう余裕すらなく、すすりにすすった。もはや死ぬと思うレベルに痛かったので、トイレに行く。見つからぬ。このまま死ぬかと思いつつ、トイレをなんとか発見し(略)

     トイレから帰り、三人で金の鳩像へ向かう。かなりの雨が降っていた。変に長いスカートをはいて来てしまったので、貴婦人のようにスカートをつまみ歩く。こまさんは傘を持っておらず、鞄を雨避けにしていた。ワイルドである。 

    【2】

     金の鳩像前にはすでに人だかり(?)が出来ていた。一応の主催者が遅れて登場である。皆様、面目ない。その時点で集まっていたのは、きとらさん、クーウィさん、巳佑君、流月君、586さん、久方さん、ミオ君。一向は屋根のある建物の下に集まり、てこと久方さんはイケニエとして、雨の降る鳩像の前に立つ。
     一人。若いおにゃのこが我らの横に立つ。リュックにはピカチュウが揺れている。声をかけると、紀成さんであった。若い。若いぞ。「とりあえず、あそこに適当に群れてるんでー」と屋根の下へ。
     待っているとメールが来る。「前にいますか」もすちゃんからのメールである。「いるよー」と返信し、やってきたのは――

     もすちゃん!

    「やーやーてこです」
    「わぁ、チャラいですね!」

     開口一番チャラいですねって言われたのは初めてであった。生まれて初めてである。

     もすちゃんは僕のイメージでは、なんかふりふりのレースを着た白系だと思っていたが、もすちゃん意外にも黒系である。かっこいい系であった。かわゆす。もすもす。

    「全部で何人だっけ」
    「知りません」

     主催者は名前だけなんだといいつつ。点呼。誰がいない誰がいない誰がいない――レイニーさんと鳩さんおらんやんけ!
     鳩さんは遅れるとの情報あり。レイニーさんどうしたと思いつつ、電話る。遅れる、だそうだ。さすが重役である。

    「まあ、いいか!」

     そんな調子でポケセンへ向かうのである。向かう途中でももすちゃんにチャラい言われた><

    【3】

     ポケセン前へ。なんかイメージと違う。てこのポケモンセンターのイメージはあの建物のイメージなのに、意外と狭そうだ。
     そして、りえさんと合流である。りえさんは素敵な姉さまである。姉御とお呼びしたい。あと、あのゴムのサンダル超かわいかった欲しい。←
     11時半まで自由行動なと言い、ポケセンに入る人々。入らない人も結構いた。ポケセン内めさめさ人多かった。子供多かった。
     BWが分からないので、グッズのキャラがわからない。とりあえず、シャンデラのファイルは買ってきた。シャンデラたん。サザンちゃんなかった。
     しょっくわず。
     ポケセン前の通路に集まりだべる。ポケセんから出たとき、鳩さん、レイニーさんがきてらした。もすちゃんはレシラスのぬいぐるみ買ってた。もすもすである。ミオ君と一発ギャグをやる。急にごめん。あれがてこだ。

    【4】

     噂のカレー屋へ。大人数にお店側も若干困惑である。
     適当にテーブルに着く。586さんとレイニーさんとてこのテーブルであった。ここで、やりとりが何故だか思い出せないのだが、あだ名つけ大会をした気がする。なぜだ。
     お気に入りは梅酒ロックさん、と浅漬けさん。
     いくつつけたかは思い出せない。あまりに、586さんがいい突っ込みをするので、かなりボケてしまった。しかし、そのテンションを長く保つことが出来ないため、ときどきスリープモードに入るてこである。

     そして、喋ってばっかりで注文が決まらないくせに、選ぶとなると優柔不断という非常に迷惑な特性を発揮した。

     カレーうまかった。けど、少し辛かった。噂では、辛さ50倍なるものに挑戦したドMもいるらしい。どんだけ変態なんだそのドMは。

     途中でみおりんがくる。みおりん、かわゆい。お嬢様って感じだ。白いぞ。白い。
     そして、食べ終わるのが遅いテーブル。途中から来たみおりんが食べ終わってないのは分かるのだがどうして自分まで、食べ終わるのが遅いんだ。謎だ。誰かトリックルームを使ったに違いない。

    【5】

     疲れてきた。オフではないお触れ歩を書くのにだ。BGMをらんらんるーにしてるため猛烈にマック食べたい。くれしん見たい。
     カラオケまで時間があったので、建物のラウンジのような場所に群れる。出張本屋さんが出ていた。ここのスペースは何の何ですか。
     ここで自己紹介をしようとしたがなんか途中でぐだった。みんな好き勝手に行動していた。対戦をしたり、交換をしたり。途中でMAXさんが来た。


     和服や!!
      

     
     てこは何をしていたか、覚えてない。みおりんとミオ君(ミオピクミン)をつれてコンビニにはいった。水を買った。


     クリスタルカイザー(どや

     
     (しかし、このクリスタルカイザーほとんど飲んでいないにも関わらず、どっかに忘れてきてしまった)

    【6】

     カラオケである。男性じキャアーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

     
     部屋は三室。おそろし部屋と渋い部屋とまったり部屋である。
     
     おそろし部屋のことは私は知らない。ただ、りえさんひさかたさん鳩さんというメンツがそろっていたことは確かだ。あと、着替え部屋にもなっていた。

     渋い部屋は渋かった。男性率の高い部屋であった。タクシーを歌い逃げしてきた。

     まったり部屋は比較的まったりであった。てこは基本的にここにいたので、まったりである。みおくんともすちゃんと、その他。あまり、固定メンバーではなかった気がする。
     それに目をつけてサンホラ歌いまくってごめん。超、気持ちよかった。

     もすちゃん歌うまいのである。下手いうたら唇の上と下縫い付けるぞ。
     ミオ君も歌うまいし、凛として咲く花のごとくだし。
     みおりんはまた君に恋してるだし、化け物が多すぎる。

     まぁ、音痴は音痴なりに歌うぜ! っていうのが僕である。おーれーはじゃいもーん!

    【7】

     カラオケが終わり、もすちゃんを送りに駅へ。もすちゃんと飲みたかったぜ!しっかりぎゅうとして帰る。

     しかし、その後飲み屋の予約時間まで一時間弱あった。人数が人数だけに歩道でうろうろしていても邪魔である。かといって喫茶店には入りきらない。迷った。とあるカフェでトイレを借り、いられそうなスペースを探す。


     あった。

     
     そこで木を中心にして始まる自己紹介。いまさらと思う方も多いであろう。本当にいまさらである。さすがイマサラの図書館である。


    「ご存知の通り、マサポケの現管理人鳩ことNo,17です。まさかとは思うけど知らない人ー」

    「「「はーーーーーーーい!」」」

    「お前ら覚えとけよ」



     次々と前に出される参加者達。

     僕、ここでいい忘れたことあったんです実は。


     スネイプ先生が好きだああああああああああといい忘れました!!!

     確か久方さんの写真にはスネイプ先生の杖構えの僕がいます。スネイプ先生スネイプ先生。


    【8】

     飲み。

     飲みの席に到着したとき、隣の子供がマルマルモリモリ歌ってた。踊った。みおりんと一緒に踊った。なんて主催者だ。
     

     実を言えば僕は飲み会が大好きなんでありんす。あ、しってる?


     鳩さん「カゲボウズにカンパーーーーイ!!」
     「「「「「「カンパーーーーーーイ」」」」」」

     テーブル二席。きとらさん、クーウィさん、鳩さん、梅酒ロックさん、みおくん、みおりん、僕、久方さんグループと、茶色君、こまさん、りえさん、MAXさん、るっきー、みすけくん、きなりさんに別れる。

     はとさんと586さんに挟まれるクーウィさん。本出せプレッシャーに襲われるクーウィさん。
     きなりさんのスケッチブックに絵を描くはとさん。完成品に群がる我ら。
     刺身は食えない。
     ポテトむしゃむしゃ

























     すいません、後はあんまり覚えていなry



     覚えてることも、アレなんで伏せさせていただく、ぜ!
     みおくん、みおりんつぎはのもうね!るっきーも!



    【8】

     山手線ホーム階段で躓く。






     何はともあれ、参加してくださった皆様ありがとうございました!
     また、いつか東京に行くのでそのときはよろしくお願いします!

     以上オフレポでした!


























     ……え?


     二日目?それは、−まー時間が出来たときね!!


     


      [No.1792] 選出の妙 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/08/26(Fri) 13:06:33     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    ブースターとリーフィアという微妙に物足りないポケモンを選んでいるのがじわじわきました(リーフィアはブースターよりましですが)。

    ご主人がリーフィアにウッドハンマーやパワーウィップを教えてますが、彼の知恵はつばめがえしを教えたところがピークだったみたいですね。改造で能力を上げたりしたら、技を気にする必要がなくなるので技のタイプ被りも気にならない。その辺が上手く表現されているのが光ってました。せめて地震を教えていれば……。やはり、楽しくバトルするためにも改造はやるべきではありませんね。


      [No.1791] cheat 投稿者:みなみ   投稿日:2011/08/26(Fri) 08:52:45     85clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    !
    !注意です!!

    危険な小説ではありません。(文章力以外は)健全な小説です。タブンネ。



    ----




    「リーフィア!リーフブレード!!」
    「ブースター!炎の牙!!」

    公園の一角で少年たちの熱い声が響き渡る。その声が途切れると同時に派手な轟音と砂煙があたりを包み込む。

    「……両者、戦闘不能!」
    そう声が聞こえるとともに二人の少年はがっくりとうなだれそれぞれのポケモンにねぎらいの言葉をかけてモンスターボールの戻す。そして、二人の少年はがっちりと熱い握手をかわす。

    「ふぅ………。いい勝負だったよ」
    「ああ!また今度な!次は俺が絶対勝ってやるからな!」
    「ふふっ、僕だって負けないからね」
    そう言葉をかわすとお互い帰路につく。しかし、お互い別れを惜しんでいるのか何度も振り返っては手を振っていた。




    ----



    「さてと………とりあえずこの子を回復させてあげないとね……」
    そう私のご主人は私の入っているモンスターボールを眺めながらつぶやいた。うんうん、早くしてほしいもの。まったく女の子にだって手加減なしで噛み付くんだから……あの子は。おかげで私の前足の付け根のあたりにくっきりと歯形が残ってる。……はぁ…。治るとはいえこの痛々しい歯形とその周りのちりぢりに焼け焦げてしまった毛を見るのはいやだな………。
    そんなことを考えていると不意にモンスターボールの中がほんのりと暖かくなってくる。やっと回復が始まったみたいね。私のご主人は家の中に簡易回復装置をおいているとか何とかで重傷じゃない限りはポケモンセンターまで行かなくても家でポケモンを治療できるとかいう優れもの。
    体が徐々に暖かくなっていく。さっきまで傷のあった前足の付け根のあたりの傷を見てみると焼け焦げた毛と一緒に再生していってる。後は少しゴロゴロしている間に治療が完了する。この装置で主に回復させるのは私たちの生命力、人間はHPと言ってやたらと数値化することが好きらしいものと技を使う時に消費する精神力、PPと呼ばれるものの二つ。その他にも毒を抜き去ったり痺れを和らげたりといろいろな機能も備わっているらしい。
    そんなことを考えていると私はボールから出された。ここは…ご主人の部屋だね。そういえばさっき私がお世話になった装置、もともとはリビングにおいてあったものを「邪魔だから」とご主人のお母さんに言われてご主人の部屋に置くようになったんだっけ。そう真っ白い色をした箱のような装置を見て思い出した。
    ご主人は回転できる椅子に座って足を組み眼鏡のずれを片手で直しながら顔をしかめて私を眺めていた。今ご主人が座っている椅子、あれでよく私は遊んでいる。遊び方は簡単、背もたれのところに両前足をかけて椅子の上にお座りをする。そして、尻尾をご主人の部屋に置かれている家具に引っかけてから引っかけた尻尾で強く家具を押す。すると、椅子がくるくると回り出してとっても楽しいの!何回か振り落されたけどそのスリルもたまらないね。一回まわりすぎて気持ち悪くなった時もあった。あの時は本当にご主人にあきれられたよなぁ………

    「お〜い……リーフィア?」
    ご主人の声とともに少しずつ現実へと戻される。しまった。考え込んでしまうのが私の悪い癖だったんだっけ?ご主人はさっきの格好を崩すことなく私に声をかけていた。私はあわてて鳴き声を発して平気だと伝える。一応人間の言葉は少しだけ話せるけど私の場合言葉を選ぶのに多少の時間がかかる。あわてるとついポケモンの言葉になっちゃうみたい。人間には「ふぃ〜」っていう感じの発音に聴こえているみたい。……しまった。話がずれた。
    ご主人は私の意識が飛んでないことを確認したからか再びしかめっ面になって宙を見上げる。このままじゃ居心地が悪い。私はご主人に声をかけようかと思い口を開けた。「………どうか……した?」無理矢理ひねり出したような声、ハスキーと言えば聞こえはいいだろうけどみずみずしさとは遠くかけ離れた乾燥しきった声。これがいやだから人間の言葉をあまり使わないんだけどね…。

    「いや……なんでもないよ。どうやったらあいつに勝てるかなぁ?」
    そう言い本棚からきれいなファイルを取り出し再び椅子に座りあれこれファイルとにらめっこしながらぶつぶつと言っていた。ファイルには大きく「リーフィア育成論」と書かれていた。要は私をどんなバランスで強くしていけば最強へと近づくかを記したファイルのこと。私たちポケモンだって成長の限界がいつか必ず訪れる。その時にアンバランスな力のつき方だと戦闘には向かなくなってしまう。そうなってしまったポケモンは不幸の極みだと思う。私は「実践が一番」とご主人に教えられよく鳥ポケモンと戦っている。あの俊敏な敵に追い付こうと必死になっているうちに私の動きも素早くなっていった。たまに食事にふしぎなくすりが並べられていることがあるけどそれで強くなれるのなら喜んで飲む。味も悪くはないしね。

    私はしばらく部屋をうろうろ…というかフラフラしていた。さっきの戦いでだいぶ疲れがたまったのか立ち止まると睡魔に襲われそうになる。その様子にご主人が気がついたのかファイルを机に置いて私に声をかけた。
    「つかれたの…?……そう…。じゃあ、早くに休んだ方がいいよ」
    ここはお言葉に甘えたほうがいいね……。これ以上起きていたら立ったまま寝ちゃいそうな気がする。私はご主人に素の鳴き声でお休みを伝えるとご主人のベッドの横に置いてある大きめのバスケットの中で眠りについた。




    次の日の朝から私たちの猛特訓が始まった。言いだしっぺは私なんだけどね。ご主人は素早さだけではダメ、決定的な一撃を相手に与えるための力も必要だと考えてるみたい。私はご主人に連れられて力の強いポケモンたちを相手に実戦練習を重ねることにした。もともとブースター程じゃないけどある程度力はあった。でも、その力を上回るパワフルなポケモンに苦戦しながらも私はさらに力をつけていった。
    その特訓の帰りにご主人はミックスオレを買ってくれた。いつもそうしてくれる。味にはもう飽きちゃったけどよく冷えたこのジュースにご主人なりの温かい気遣いを感じる。だから、飽きたとかは絶対に言わないの。かわりに私は一生懸命戦うの。ご主人のために……ね。

    「リーフィア、ちょっといいかい?」
    部屋でご主人にそう声をかけられた。何だろう?そう思って首をかしげながらご主人の座っている椅子のところまで駆け寄った。ご主人は空色のディスクを片手に持って不安そうな顔をしている。どうしたんだろうと思ってさらに私は首をかしげて不安そうに声を漏らした。
    「ん、……決定打には欠けるけど……。ちょっとこの技を覚えてみない?」
    そう言って私に空色のディスクを見せる。そこにはひらがなで「つばめがえし」と書かれていた。確か飛行タイプの技だったから相手の意表はつけるだろうし苦手な虫タイプを克服できるかもしれない。それに私は基本的には地面で戦うタイプのポケモンだから空中戦にはあこがれのようなものを抱いていた。私はご主人に向かって元気良くうなずいて見せた。覚えたいってことで伝わってくれるかな?

    「よし、じゃあおでこ出して…」
    私はニコニコしながら頭をご主人の方に近づけた。ご主人は私のおでこにディスクをそっとくっつけた。その瞬間、私の頭の中に直接燕返しのやり方が伝わってきた。決して心地がいいものじゃない。むしろやった後頭がくらくらして足取りもフラフラしちゃう感じになる。シザークロスを覚えた時なんて我慢できずに吐いちゃったような記憶がある。でも、今回はぐっとこらえて………うぷっ……気持ち悪いよぉ……。

    「っと…。リーフィア、大丈夫?」
    涙目になりながらもがんばった。でも、立ってると地面がぐらぐらしてるみたい……。ぱた…、と横になってこの悪夢が終わるのを待つしかなかった。ご主人がしきりに心配していたけど私はそれをよそに床の上で寝てしまった……。



    次の日には私の体調は万全だった。早速燕返しをやってみたいってことでご主人に外出を急かしたりもした。おかげで充分に朝飯を食えなかったとかで文句を言っていたけどなんだかんだ言ってもご主人も燕返しの威力を早く確かめたいといった様子だった。私たちは昨日実戦練習をしていたところで燕返しの威力を思う存分確かめてみた。確かにとどめの一撃には向いていない技だったね。でも、序盤で素早い動きで敵を翻弄しながらもジワリジワリと体力を削っていくにはもってこいの技かも。それに炎タイプのブースターに威力を半減されることなく使える技として活用できるかもしれないね。あぁ!リーフブレードでゴリ押しの時代はもう終わったんだね!


    私たちはそれから特訓を続けた。そのたびに私の力、人間でいうところの攻撃力が強化されていった。ご主人はだいぶ私の成長に満足したのかブースターを使うあのトレーナーとの勝負の日の前日はゆっくりと休ませてくれた。




    ついに決戦の日が来た。ご主人は私のコンディションを念入りに確認してちいさく「よし!」と言うと戦闘用のグッズの入ったリュックサックを背負って勇ましく家を出た。私たちの勝負にかかる時間はだいたい3時間ぐらい。その長さと使っている種族から私たちの勝負はちょっとした公園の名物になっている。けれどご主人の指示通りに戦っている私たちよりも指示を出しているご主人たちの方が大変そうだ。
    私たちは前に戦った場所である公園の隅でのんびりとしていた。ご主人は慎重すぎるのか待ち合わせのだいぶ前には絶対ここにいる。対するブースターを使っているトレーナーはなんというか……ズボラなの。いつも待ち合わせぎりぎりに来る。……って、あれ?もう来た。いつもはこんなことは絶対ないのに。ご主人も少し驚いている。

    「よお!待たせたな!」
    「いや……僕らも来たばかりだよ。どうしたの?そんなに早く来て」
    私も疑問に思っていたことをご主人が聞いてくれた。すると彼はにやにやにやけながらご主人に大胆な事を言ったのだった。
    「へっへっへ…。今日は絶対に負けない自信があるんだぜ!」
    「へぇ……。それは楽しみだよ。それじゃあ、いつも通り公園の管理人さんに審判は任せてはじめよっか」
    「おう!」

    私は少なからず不安を抱いていた。ご主人はあまり気にしていなかったけどあの自信に満ち溢れた顔。普段は不安が混じったような面持ちの彼がこんなにも勝利の確定したようなそぶりを見せるはず無いのに……。そんあ不安そうにしている私にご主人は優しく声かけてくれた。
    「大丈夫だよ。きっと、今日はテンションがハイなだけだから」
    そうだよね。不安がったってしょうがない。私たちの秘技燕返しを見せてあっと言わせてやるんだから!



    ----


    「それでは、戦闘……始め!」
    審判の声が公園に響き渡る。勝負が始まる。この瞬間はやっぱりワクワクしてしまう。今こそ私の力を見せるときっ!

    「リーフィア!連続で燕返し!!」
    「えっ!燕返し!?……ブースター!近寄ってきたら炎の牙!!」

    私は勢いよく地面をけって大ジャンプを見せる。ブースターは口のあたりに赤々とした炎がちらちらと見えているから正面からの突撃は危ないよね。私は一回目の燕返しのコースを大きくずらしてブースターの後ろに回り込む。そしてがら空きの背中に二回目の渾身の燕返しを直撃させた。

    「あっ!チクショウ!!…それなら……ブースター!……フレアドライブ!!!」
    「えっ!そんなはずは……」

    ブースターが紅蓮の炎を身にまとい始めた。ブースターの姿に恐怖を覚え私はあわててご主人の方を振り向いてみたけどご主人はパニックに陥っていた。しきりとブースターのつかえるはずの炎タイプの技をぶつぶつと言っていて顔は蒼白だった。私は鳴き声でご主人に呼びかけの声をかけようとした。


    ……しかしものすごい轟音とともに私の呼びかけは悲鳴へと変わった…。












    …………。
    ……あれ?

    ここは………どこ?

    私が目を開けてみるとそこはモンスターボールの外で真っ白い部屋の中にラッキーさんが心配そうな顔をしてこちらを見ている。見覚えのあるこの空間は……ポケモンセンターかな?ご主人はパイプ椅子に座って眠ってしまっているようだった。ふと仰向けに寝ている私の体を見てみるとおなかにはさらし状に包帯が巻かれていた。ぐるぐる巻きって感じ。右前脚を見てみると管のついている針が刺さっている。点滴ってやつかな?管の上には赤々とした液体がたっぷりとはいっている。……もしかして……血?そんなことを考えていると私の視界が妙にせまいのに気がついた。瞬きをしてみると左目に違和感がある。眼帯までつけてるの?……なんか私、重傷患者みたいなんですけど…。

    「あっ!院長先生!リーフィアちゃんの意識が回復しました!」
    そうラッキーが声を張り上げる。気がつくのが少し遅いよ……もう。すると白衣を着た男の人……というかおっさんが近づいてきた。
    「ほう……。起きたかね…。ほら、そこの君、君の大切な子が起きたよ。起きて」
    そう言っておっさんは私のご主人の肩を揺する。ご主人はハッと目を覚まして急いでパイプ椅子から立ち上がり私のもとへ駆け寄った。

    「リーフィア、大丈夫?」
    心配そうなご主人に私は素の鳴き声で元気であることを伝える。見た目の割にはそんなに痛いってわけじゃないし。ご主人は私が元気そうだったのに安心してほっと溜息をついた。それから私は運ばれてきたときは目も当てられないくらいの重傷だったこと、その傷を跡も残さずきれいに治療してくれたのはこのおっさんであること、私がなかなか目覚めなかったこと、等を伝えられた。私は隣にいるおっさんに鳴き声でありがとうって伝えた。……あ。命の恩人におっさん呼ばわりはいけないよね。今度からおじさんと呼ぶことにしよ。
    実際、傷はほとんど治っていて治療の最中外部から細菌を入れない為に包帯と眼帯をつけていたのだとか。どうりで痛くないわけだ。おじさんは治療といっても最近は私たちの治癒能力を高めて直すものが主流だとかいう事を話していた。よくよく考えてみると包帯や眼帯をつけながらの治療が無理だ。なるほど、その話なら合点がいく。そしてやはりあの点滴の正体は血だった。いくら治癒能力を高めても足りない血はどうしようもないらしく輸血を図ったのだという。
    私たちは夜もだいぶ遅くなってからポケモンセンターを出た(もちろん包帯も眼帯もとってから)。いつもならこんな時間に帰ってくればお母さんに怒られるけど今日は訳を知っているからか少し遅めの夕食をとらせてから私には早く寝るように言った。ご主人は帰路でも始終無言だったしさっきお風呂に入りに行ってしまった。少しさみしいような気もするけど今日は疲れちゃった。ご主人に心の中でお休みをいてから私は眠りについた。




    ----



    次の日、ご主人は朝から家を空けていた。私が寝ているうちに行ってしまったらしく私はご主人と顔をあわせられなかった。ご主人はお母さんに「探し物があるから」と言って出てしまったのだという。私はお昼までご主人の部屋にある椅子で遊んでいた。

    お昼になってご主人は家に帰ってきた。その顔は満足感でいっぱいだった。何を探していたかは知らないけれどあの様子だと探し物は見つかったみたいだね。私もなんだか嬉しくなってくる。これが共感ってやつかな?
    ご主人は「お昼を食べたら見つけたものを早速買ってくるからまた外出する」と言っていた。午前中私はご主人と一緒にいれなかったし家で遊んでいたからちょっと外に出たかった。ご主人についていくと言った。そして、お昼をご主人と一緒に食べ私たちは出発した。

    ご主人は人のあふれかえっている商店街へといった。私は商店街が嫌い。苦手意識を持っている。私のように人よりも小さいポケモンがあるいているとよく「オバチャン」と呼ばれる人から足を攻撃される。具体的に言うと足を踏みつけられたり蹴られたりする。これは流石に参ってしまう。だから、私はモンスターボールの中に避難する。でも、当然のことながらモンスターボールの中に入ってしまうとご主人とお話しできなくなってしまう。その寂しさが一番嫌いなの。しばらくしてご主人は商店街を抜け出した。私はそれと同時にモンスターボールから出される。ちょっと細い道をご主人は無言で通っていく。裏路地とはちょっと違うけど人が全く通らなそうなところ。そこにご主人の探し物があるのかな?
    ご主人は一際あやしそうな店の前でとまるそこには張り紙がたくさん貼られていた「ポケモン育成用周辺機器販売中」とか「今噂のあれ、在庫あり!」とか「品切れ必須、あの商品!」とかの類のものばかりだったけど。ポケモンに科学技術が介入してきたのはごく最近のことだとか私は聞いている。確かに、モンスターボールや、簡易回復装置や技マシンとかもそういった類の科学技術。でも、それを問題視する人もいるとかで最近じゃあ問題になってきているらしい。
    そんなことはどうでもいいね。とにかく今、私の目の前にあるお店は何となく嫌な感じのするお店だった。ご主人はそのお店に躊躇することなく入っていった。ドアも商店街のとは違って勝手に開くやつじゃなくて自分で開けるやつだった。
    ご主人はいろんな怪しい機械が並べられている店内の一番目立たない隅の方に置かれている商品を手に取った。私はそこに貼られている張り紙を読んだ。

    「裏ルートから仕入れました!
     今噂の非公認機器『コンドーフリーク』!
     在庫あとわずか!」

    と書かれていた。「非公認」という響きが私を余計不安にした。しかし、ご主人はそれをよそにその機器をレジまでもっていき財布からごっそりと札束を抜いてそれを購入した。レジにいた胡散臭いおっさんはニコニコしながらご主人に話しかけた。
    「いやぁ〜。お買い上げ、ありがとうございますぅ!実は少し前にも一人、これを買っていった子供がいましてねぇ。
     まあ、大事に使ってください。…あ、あと、この店のことは秘密にしておいてくださいね。よろしくお願いしますよ」
    ますます、胡散臭いおっさんだ。ご主人は騙されたりしてないよね…?そんな不安がどんどん膨らみながらも私たちは家に帰った。


    ご主人はそれから購入したコンドーフリークの「取扱説明書」と書いてある機器に付属していた本を読み始めていた。コンドーフリークは机の上に大切に置かれている。クリーム色の四角いプラスチック性のものに電卓のように数字と英語とかが並んでいるもの。そのコンドーフリークにはリモコンのように先に何かセンサー的な何かが出てきそうなものもついていた。何をする機械かは分からないけど私の育成に大きくかかわっていることぐらいはあの店の雰囲気からして理解できる。結局その日は晴れだったにもかかわらず特訓をすることなく私たちは一日を終えた。




    それから鬱陶しい雨の日続きだった。雨の日は嫌い。ぜいたくを言わせてもらうなら曇りの日も嫌い。私たちの力の源を作り出す光合成がすることの出来ないこの天気は一刻も早く終わってほしかった。それだけじゃない。雨の日なら当然、私たちは特訓をすることが出来ない。お母さんに止められるの。
    しょうがないから私はご主人の使っている椅子で遊び始めた。ご主人は相変わらずコンドーフリークのことで頭がいっぱいみたいだし……。


    ----



    雨の日、3日目。流石に萎えてきた。光合成できないから私の体についている葉はいつもなら重力に逆らって立っているのに今日は元気なく垂れ下がっている。おまけに台風の影響とかいうことで外で雷がゴロゴロとなっている。雷も嫌い。落ちる瞬間のあの音が大嫌い。その雷が朝からなり続けている。それが余計に私の心をどんよりさせた。
    ……でも、私の憂鬱の一番の原因はご主人だと思う。最近ずっとコンドーフリークのことしか頭にないみたいで私が声をかけてもどことなく上の空。……これじゃあつまんないよ。

    私は強行手段に出た。といってもとにかく駄々をこねてみるだけなんだけどね。ご主人の前で私のわがままを人間の言葉で伝える。ブースターいわく、私のかたことな言葉と上目づかいな視線だったら人間、だれでも堕ちるよ。等と言っていた。よく意味が分からないけど活用した方がいいってことだよね。
    「ご主人………私……外……いきたい…………一緒……」
    これで大体は伝わるはず……。ご主人は頭をポリポリとかきながら「じゃあ、ジムにでもいこっか」と言った。ジムっていうのはトレーニングセンターのこと。この町にポケモンリーグ公認のジムなんてないからね。場所も使わなければひとりで体を鍛えられる施設としてけっこう重宝している。

    「よお!久しぶり!」
    「ん、久しぶり……」
    ジムに行ったらあのブースターを使っている少年に会った。ご主人は少しバツが悪そうな顔をして返事をする。それから一発で負けてしまったこの前の勝負じゃあ納得がいかないってことで私がバトルしたいって伝えた。ご主人は止めたけど私は気が済まなかった。あんな一方的で無様な負け方をしていられるわけないしね!

    審判のいないなか私たちは勝負を始めた。

    ………しかし、それはやはり惨敗だった。

    開始直後にブースターの電光石火が私に直撃したときは私自身まだやれる。って思っていたけど私の体は動いてくれなかった。次第に意識が遠のいていって…………

    今回は早く目が覚めた。ジムに置いてあった簡易回復装置で私を治療してくれたみたい。あのトレーナーは意気揚々と帰っていったそうだ。今日はもうトレーニングなんかする気になれないとご主人は私を連れてさっさと帰ってしまった。


    ご主人はその日家に帰ってからも浮かない顔をしていた。私もただでさえどんよりしていた気分が余計に沈みこむ結果となった。


    その夜、とうとう私はコンドーフリークの性能を目の当たりにすることとなった。

    ………それは、とても恐ろしいものだった。


    ……………でも、それをとても素晴らしいものかもしれないと考えてしまったのも事実だった。





    ご主人はコンドーフリークに付属していた本を片手にコンドーフリークに何かを打ち込んでいった。そして何回も本とコンドーフリークを見比べていた。やがてご主人は笑みを浮かべて私を呼んだ。近寄ってきた私に向けてコンドーフリークを向ける。ご主人は戸惑った表情に一瞬だけなりながらも私に向けてコンドーフリークのボタンを押した。






    ……ビキッ…。


    私の体から確かにそう聞こえた。…………でも、特に何も起こr……



    い……痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいぃ!!!!

    突如私の四肢を襲った激痛。足全体が今めった切りにでもされているかのように痛みは引くことなく新たな痛みが私の足をさらに苦しめる。

    耐えられない。でも、この痛みからは逃げられない。

    叫びたかった。素の泣き声でも人間の言葉でもどっちでもいいから。ご主人に痛いと伝えられるなら。でも、私を襲った痛みはそれを許してはくれなかった。歯をくいしばって耐えている私に声を出せと言うのも無理な話だったし、息も荒くて声なんか発する事のできる状態じゃなかった。


    当然、立っている事も出来ずに私は力なく横に倒れた。そのまま床の上でしばらくこの地獄を味わい続けることとなった……。






    気がつけば朝だった。どうやら昨日の痛みのせいで意識が飛んでいたようだった。昨日の痛みは嘘のように引いている。それを確認してホッとため息をついてあたりを見回すとご主人が心配そうな顔でこちらを見ていた。
    「リーフィア、大丈夫?」
    私は素の声で元気である事を伝える。するとご主人はわくわくした様子で朝ごはんを食べるとさっそく特訓する場所へ私と一緒に赴いた。いつものパワフルなポケモンが野生でわんさか出てくるところに。

    そこで特訓を始めたんだけど………特訓にならない。素早さは今まで通り変わってないんだけど……敵のポケモンが燕返しみたいな弱い技でも一撃で倒れてしまう。確かにうれしいけどなんか達成感を感じる事が出来ないなぁ…。でも、ご主人も喜んでくれてるし私も一緒に喜ぶよ。だって私のご主人だもん♪


    それから3日間、私たちは自分たちの強さに酔いしれた。私はこれで満足。……でも、ご主人はまだまだ私のパワーアップが必要だ。って考えてるみたい。ご主人は再びコンドーフリークを使い始めた。

    私は怖かった。再びあの苦痛を味わうことになると自然に冷や汗が出てきた。体が小刻みに震える。息が自然に荒くなる。私の体は明らかにそれを拒否していた。でも、それを振り払うかのように私の頭の中にひとつの意志がはじき出される。……強くなる事をやめたポケモンをご主人が好きになってくれるわけがない。
    そんな意志が浮かんだ時、私はハッとした。嫌だ…。ご主人に嫌われたくない…。ずっと一緒にいたい。
    私は覚悟した。あれを受け入れようと。地獄のような苦痛と引き換えにご主人の笑顔を見る事が出来るのなら私はどんな苦痛にも耐えてみせる。そう私は一人で決意を固めた。




    私が決意を固めた日の夜。ご主人は私にコンドーフリークについて話して聞かせた。
    「リーフィア、この装置はコンドーフリークっていうんだ」
    そう話を切り出された。機器の名称は知っているから別に驚きもしなかったけどご主人は私の知らないコンドーフリークの力を言って聞かせた。

    私は話を聞き終えてなんてすばらしい機械だろう、と思った。ご主人いわくこの機器を使えば戦わなくても強くなれるんだって。そりゃあ辛い思いをして特訓するよりかは部屋の中で楽して強くなりたい。稀にこの機械の副作用が出るポケモンがいる。そういう話も聞かされた。もしかしたらこの前の痛みは稀に出る副作用のものだったのかな?ご主人は話の後にご主人がいつも読んでいた本を私に見せてくれた。難しい事がいっぱい書いてあったけどどういう仕組みで動いているのか知りたかったからその部分だけ読んでみた。

    「この装置の原理としては最近のポケモン医療に使われている治癒能力を高める技術を育成向けに応用したものでありこの原理を確立したのがこの装置の設計者、近藤勇先生である」

    と書かれていた。う〜ん。よく読めない。難しい漢字があると私の頭は拒否反応を示すのか結局理解できなくてもいいや。という結論をはじき出した。



    そして、ご主人は私にコンドーフリークを使う事を話して聞かせた。もちろん私は元気良くうなずいた。ほんの少し怖かったけどご主人の笑顔と勝利のために私、がんばる!



    ご主人は今度は技マシンを扱うかのようにコンドーフリークを私のおでこに近づけていった。そして私のおでこにコンドーフリークをくっつっけ静かにボタンを押した……。



    その瞬間、頭の中に直接何か得体のしれない技の情報が一気に伝わってきた。………いや。無理矢理頭の中にねじ込まれてきた。の方が正しいかな…?

    とにかく頭痛がひどかった。きりきりと痛む頭を前足で抑えながら目に涙をためる。
    ………気持ち悪い…。さっきからずっと吐き気を催している。……ダメ…。こんなところではいたら前みたいにご主人に迷惑をかけちゃう……。
    ……寒気までする。今、小刻みに体が震えているのが分かる。それでいて頭が妙に熱い…。病名は忘れちゃったけどナントカエンザみたいな感じ。


    ああ………。ダメ……。他の事考えてても一向に良くならない……。

    ……

    ………

    …………うっ…。

    ……もうダメ…………。




    先ほどまで一生懸命こらえてはいたものの体のありとあらゆる部分が悲鳴をあげていたためか、私の努力はむなしくご主人の部屋のカーペットの上に盛大に吐き散らした。

    口の中が嫌な味とともに酸っぱくなっていく。あたりにはつんと鼻にさすような臭いが立ち込める。


    ……ああ…、やっちゃった……。


    ご主人の顔を見るのが怖かった。きっと嫌な顔をしていると思う。少なくともいい表情なわけがない。

    ああ、私がもっと我慢できていれば……。私の意志がもっと強ければ……。私が……。私が……っ!



    「うわああああああん!!」

    私は大声をあげて泣いた。何で泣いたのかよくわからない。
    ご主人が今不快に思っているから?私の我慢が続かなかったから?体の調子が悪いから?
    ……ご主人に嫌われると思ったから?


    そんな事を思いながら私は泣き続けた。いつまで泣き続けたかは覚えてない。気がついたら朝になっていた。そんな感じだった。




    次の日は朝から晴れていたのに私の気分は土砂降りだった。憂鬱って表現の方が良いかな?ご主人の顔を見るのが怖かったから私はずっとうつむいて午前中を過ごした。

    午後、ご主人の部屋でバスケットの中で丸まっているとご主人に声をかけられた。
    「リーフィア?ちょっといい?」
    その声を聞いた時びくっと体が反応した。やめて……。いいわけないじゃん…。ご主人がこれから何の話をするのか不安が爆発しそうになりながらもご主人に起きている事を尻尾をゆらゆらと振って伝えた。ご主人は少しためらいながらも口を開いた。
    「リーフィア……昨日は………」
    やめて……。その話をしないで…。ご主人の前でのあんな失態を思い出させないで……。今すぐ耳をふさぎたいと思った。
    「ごめん…」
    ………え?何を言われるだろうかと身構えていた私にかけられた言葉は意外なものだった。なんでご主人が謝ってるの……?私が不可解なご主人の発言に首をかしげながらご主人の顔を覗き込む。ご主人は申し訳なさそうな顔をしてこっちを見ていた。
    「昨日……、リーフィアに僕、酷いことしちゃったと思って…」
    そう言ってご主人がしゅんとした顔を見せる。やだ……。そんな顔しないでよ…。ご主人は笑顔でいてよ……。私はにっこりと笑ったような顔を作って首を横に振った。ご主人はそんな私を見て少し元の表情に戻った。
    「私……、外……行く…。……一緒…!」
    そう言ってみる。昨日ご主人が一体何をしたのか私はまだ理解していない。私はご主人と一緒に外へ行きたいと誘ってみた。私の元気よりもご主人の元気の方が何倍も大事だから……。




    私とご主人は最近特訓の場所として使い始めた所へ足を運んだ。私達が行くと体のひと際大きなポケモンたちが私の行く手をふさぐ。私は視線でご主人の指示を仰ぐ。ご主人の口元が少しだけつり上がっていたのは私の見間違いかな?
    「リーフィア!パワーウィップ!!」

    えっ?私は聞きなれない単語に戸惑いを覚えた。ご主人の方を振り返ってみると早く技を発動させろと言わんばかりに敵を指差してこちらを見てみている。私はそんな技知らない。そう、知らないはずなのに……。

    気がついたら地面に思いきり両前足をたたきつけていた。そのまま叩きつけた前足に力を込める。すると地面から頑丈そうな蔓が意志を持っているかのようにうねうね動きながらかなりの長さを私たちに見せつけた。その蔓が敵のポケモンを勝手になぎ倒していく。まだ意識のあるポケモンは蔓が無慈悲に締めあげて、敵のポケモンに意識を残すことを許さなかった。
    蔓が出てきた地面の中に戻っていきあたりは何もなかったかのように再び静寂を取り戻した。全てのポケモンが意識をなくし私の前に力なく横たわっている。怖かった。私がこの惨劇を作り出したのかと思うと。私は震えながらあらためてあたりを見回してみる。地面には蔓を呼び出したときにできた大穴がぽっかりと開いていた。目の前に広がってた草むらは私の蔓が敵のポケモンをなぎ払ったときに巻き込まれて命を散らしてしまった。

    もういやだ……。こんな技使いたくない…。植物たちの怒りを私は敏感に感じ取った。仲間を殺されて恨まない生き物なんていない。私は草むらを移動している最中ずっと植物たちの怒りの声を聞かされることとなった。


    ご主人はそんなことを知っている訳もなく再び大型のポケモンの群れに喧嘩を吹っ掛ける。そして私にパワーウィップを命じる。テリトリーを侵された挙句私の蔓になぎ払われて締め付けられる苦痛。それを視線で訴えてくるポケモンを見るたび心が痛んだ。

    二つ目の群れも壊滅。辺りの植物も皆なぎ払われた。

    「ご主人……私…帰る……」
    そう言ってはみたものの私の強さに好奇心を燃やしに燃やしているご主人を止められなかった。
    「まだまだ8回もパワーウィップ使えるんだから使わなきゃ損だよ。
     それに一回目よりも二回目の発動の方が若干速くなっていたからこの調子でどんどん速くしていこうよ」

    そんな調子で色んな群れに喧嘩を吹っ掛けていった私たちは他のポケモンと目が合うととたんに逃げられるような脅威に一日でなってしまった。今まで心を通わしていた植物にも私は口もきいてもらえなくなった。ご主人は満足しているみたいだったけど…。

    その日の帰りにいつも通りミックスオレを買ってもらった。でも、その味が妙に薄かったのは私の気のせいだったのかな…?



    それから私たちはコンドーフリークをたくさん使った。まずは技をいっぱい使えるようにした。それからいろんな技を使えるようにした。そのたびに私はどんどん強くなっていった。そのたびにご主人の笑顔を見れた。ご主人の笑顔が何よりの励みになった。どんな苦痛にも勝るご主人の笑顔を私は求め続けた。




    ----


    「それでは、戦闘開始!」
    審判の公園の管理人さんが赤と白の旗を高々と掲げた戦闘開始の合図。
    敵の出方を伺うご主人はこちらから攻撃を仕掛ける事は無い。敵のトレーナーがブースターに指示を出す。

    「ブースター!最初からかましてやれ!ブラストバーン!!」
    「リーフィア!燕返しでよけろ!!」
    ブースターが恐ろしい形相でこちらに突進してくる。当たる直前で私は燕返しを使ってブースターの技をよける。
    「リーフィア!ウッドハンマー!!」
    ブースターがブラストバーンを外してこちらを向こうとした時に私はブースターに急接近して右前脚を高々と上げる。そしてそのままブースターの頭を殴りつけた。硬化した右前脚がブースターの頭のふさふさにクリーンヒットしたのかかなり痛そうな音とともにブースターがうめき声を上げる。私の右前脚に電撃が走った。反動を受ける技を使ったから当たり前だけどね…。
    「今だブースター!フレアドライブ!!」
    直撃は避けたかったから急いで横っとびに逃げるけれど脇腹にフレアドライブを決められた。流石にこれは効いたな…。痛みをこらえてブースターの方へ視線を戻す。フレアドライブの反動で動きが鈍ってる。今がチャンス!
    「リーフィア!パワーウィップを決めろ!!」
    そうご主人がナイスなタイミングで私に指示を出す。私は地面を前足で叩きつけて数本の蔓を呼び出した。この技ももう使いなれてしまって蔓を自分の意志で動かす事が出来る。蔓を操ってブースターを捕らえ蔓で締め上げる。やりすぎると骨まで折れてしまうそうだけど今は真剣勝負。相手が倒れるまで本気でやるのみっ!
    「ブースター!フレアドライブで抜け出すんだ!!」
    全身にまとった紅蓮の炎が私の呼び出した蔓を焼いていく。辺りに焦げ臭いにおいと黒煙が立ち込めた。
    「そろそろ終わりにするぜぇ!フレアドライブ!!」
    「行けぇ!ウッドハンマー!!」

    二つの技が同時にぶつかった。ものすごい衝撃とともに私たちの体と意識は一緒に吹き飛んだ。



    ----





    私はご主人の家のバスケットの中で目覚めた。既に回復した後だったらしく傷は消えている。カーテンをめくってみると辺りはすでに暗かった。ご主人が机に突っ伏している。声をかけようかと思いバスケットから抜け出す。すると、ご主人がぶつぶつ呟きながらコンドーフリークを片手に私に近づいてきた。
    「ふふっ……。全ステータスの個体値と努力値がMAXになって種族値の限界を大幅に上げておいた……。
     これで、あいつに勝てる!」
    そうご主人は言って何を言っているのかさっぱり理解できていない私に向けてコンドーフリークのボタンを押した………………


    ――――――プツンッ――


    私は立っていられなかった。足の力が、いや体の力が抜けていく。床が目の前に迫ってくる。
    その間たくさんの事を私は考えた。





    ―――cheat――


    それはポケモンをポケモンではなくす行為…

    それはポケモンの思いを踏みにじる行為……

    それはポケモンの命をもてあそぶ行為………


    それはとても悲しく、つらく、虚しい行為…………



    床に顔が落ちていく。そっと私は目をつぶった。



    ――――cheat―――


    私はそれを




    許さない。










    …………そして私は事切れた……





    ----


    この終わり方は一体何事だ!?



    つぶやき出張版

    はい、グダグダになりながらもなんとか書き終えました。
    最後の方は見逃してやってください……。

    さて、この作品の元ネタですが
    僕の友達のブースターがフレアドライブを放ってきてこの小説の構想が浮かびました。
    フレドラを当てられたのはリーフィアではなくサンダースでしたけど(もちろん逝きました)
    僕個人の意見ですが「改造なんてなくなっちゃえばいいのに!」ってイメージで書いていました。(笑)
    僕の小説でここまでのバトルシーンは始めてだったような気が……。結構頑張りましたが…。

    最後に………ポケモンは正々堂々バトルしましょう!


      [No.1790] 9:1 投稿者:みなみ   投稿日:2011/08/26(Fri) 06:26:02     88clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    初投下です。36℃くらいの生温かい目で見守ってくださいまし。




    ----



    私の名前はグレイシア。今はこのタワーオブヘブンにすみついている野生ポケモンの一匹なの。
    どうしてこんなところに住んでいるのか気になるの?別に教えてあげてもいいけど……。そんなに気なるの?
    分かったよ。話してあげるからとりあえずそこに座って。………それじゃあ……




    …………教えてあげようか、私の過去を……






    ----


    「なあ、グレイシア。そのポフィンどうだ?うまいか?」
    「ん?別に………」
    満面の笑みで私にポフィンの味を評価してもらおうとするマスターに私は冷たい一言を言い放つ。がっくりうなだれて「またか………」といった顔をした後私から少し離れもう一つのモンスターボールを取り出してリーフィアにも同じことをやり始めた。リーフィアがご主人に微笑み返して「おいしいですよ」と言っているのを見て私はため息をつきながら道端でのマスターの手作りポフィン試食会を尻目に草むらでゴロゴロしだした。そりゃあリーフィアのほうが愛想がいいからそうしたくなる気持ちもわかる。でももうこれは私の性分なのだ。仕方のないこと。そう思いながらも自然と寂しさを感じる私にほとほと嫌気がさしているのも今更のことなんだけどね。
    人から見れば「捕まえたばかりのポケモンはそんなものさ」そう言われるような毎日繰り返しているこの風景。でも、それは違う。実際私は捕まえられたばかりのポケモンじゃない。マスターが卵から孵してここまで育て上げてくれた今のメンバーの中では最古参&最強のポケモンだ。そんなポケモンがマスターになついていないわけがないと思うけど……。


    そんなことを考えているとマスターが私に出発する声をかけ私をモンスターボールの中に戻す。
    ……しかし、すぐにボールから出された。目の前にはマスターを威嚇しているハトーボーが。野生ポケモンとの戦闘か……。
    ハトーボーは威嚇しても動じずに大きなあくびをしている私に少しおびえているようだが私は気にすることもなくマスターの指示を待つ。
    「グレイシア!冷凍ビーム!!」
    そう叫ぶのとほぼ同時に私は周りの温度を調節しながら頭の前方に…なんていうのかな?気?みたいなものを集中させる。あとはあのトロくさいハトーボーに向けてそれを発射するだけ。
    私はそれを2、3秒でやってのけかわいそうだとは思ったけど野生のハトーボーを氷漬けにした。それがマスターの指示だから。私は経験値とかいうものを得ることなく再びモンスターボールに戻される。当たり前だ。私は俗に言うLv100とかいうやつらしいからそうなのだとか。あのレベルアップの快感を味わいたかったがもう無理らしい。それはそれで寂しいけどね。それとこうして野生ポケモンとの勝負に私を使うと野生ポケモンの命が危険にさらされかねないような気もするが私はよく知らない。いつもすぐにボールに戻されてしまうから。
    「ありがとう、グレイシア」
    モンスターボールの中へ戻る最中にマスター声を聞いた。いつもこう言ってくれる。でも私はそれに相槌を打ったことがない。そんなの恥ずかしくって私には絶対無理だった。





    私はほどなくしてもう一度モンスターボールから出された。でもそこには野生のポケモンもおらず。草むらが行く手を阻んでいるわけでもない室内だった。私は室内を見まわしてみるとそこには「ポケモン大好きクラブ」の文字が。私はだいぶ長い間マスターと一緒にいたから人間の文字を読むことができる。そこは他のポケモンに自慢できるところだ。……別に自慢はしてないけどさ。
    するとマスターがいきなりリーフィアを指差してムンナを抱きかかえているお姉さんに声をかけた。
    「それじゃあ、あの子でお願いします」
    「分かったわ。そこのリーフィアちゃん!ちょっとおいで」
    そう言われ別に拒絶することなくお姉さんのもとへ小走りで近寄るリーフィア。するとお姉さんがしゃがみこみ真剣なまなざしでリーフィアを観察し始める。少しリーフィアが引いていたがほどなくお姉さんが立ち上がりマスターに声をかける。
    「この子。とってもあなたになついているのね!見ているこっちがジェラシーだわ!」
    そう言ってリーフィアの頭をなで始めた。マスターは少し照れている風にも見えなくない……。なんだかすごく不快だ。そんなことを考えているとマスターがこっちを見ながらお姉さんに再び声をかけた。
    「それじゃあ、あのグレイシアもお願いできます?」
    「もちろん!こっちにおいで。グレイシアちゃん」
    私は別に小走りになることもなくゆっくりお姉さんのほうへと近づいていく。お姉さんは再びしゃがみこんで私の顔を覗き込んだ後少し怪訝そうな顔をしてマスターに声をかけた。
    「この子、あなたになついていないみたいね…。目つきが怖いわ…」
    「はあ………。そうですか……」
    そう言って首をかしげながら私のほうを見る。そりゃあずっと旅のお供をしていた私が少しもなついていないわけないし、私はマスターのことをすっごく信頼しているよ。…………別に好きってわけじゃないからね!
    目つきが悪いのも無愛想なのも全部この性格のせいだしなおそうとはずっと思ってる。がんばってるけど、なかなかうまくいかなくって……。今みたいなことは珍しいことじゃないの。こんな私のこと嫌いにならないのかが心配で…。でも何をやってもうまくいかなくて……。

    私は……私はどうしたらいいの?



    ----


    しばらくしてマスターがほかのトレーナーと戦うとかいうことで私は最後の切り札として一番最後に出されることになった。マスターの手持ちポケモンはおかしいことに私以外は本当に弱いのだ。私は相手とのタイプ相性を無視して戦えるけどほかのメンバーはどうやらそうではないらしい。
    結局、ほかの手持ちが相手のポケモンを一匹も倒さなかったため私が一匹で相手を全滅させた。みんなイーブイの進化系だったね。グレイシアはいなかったけど。でもみんな雌だったのはどうかと思う。マスターいわく「そういう趣味のやつ」だそうだが…。
    負けたことがショックだったのか相手のトレーナーはがっくりうなだれている。マスターがそんな相手のトレーナーに歩み寄り声をかけていた。
    「クロー、そんなに落ち込むなって」
    「落ち込むよ……。あんな華奢な感じのグレイシアに全滅させられるなんて……」
    なるほど、あのトレーナーはクローという名前なのか……。外人じゃあなさそうだしただのあだ名だよね。
    でも華奢だなんて……少しだけうれしいかも。いつもはトレーナー相手にグレイシア無双を繰り広げると「鬼!」「チートだ!」なんて言われていたから…。そんなことを考えているとマスターに呼ばれた。クローという名のトレーナーもマスターのそばに立っている。何なのだろう……。そう思いながら私は二人のもへ歩み寄った。

    二人のもとへ来た私をマスターが確認するとマスターがクローに声をかけた。
    「それじゃあクロー。よろしく頼む」
    「あいよ。僕にまっかせなさ〜い」
    するといきなり私の目の前にしゃがみこんで私の瞳をじっとのぞきこみながら私に声をかけ始めた。
    「僕の名前は&ruby(みなみ くろう){南九郎};っていうんだ。よろしくな。かわいいグレイシアちゃん」
    「………………」
    私は押し黙ってそっぽを向いた。ずっと見つめられてそんな言葉をかけられたら恥ずかしくなっちゃって…。今私の顔が少し赤いのもわかる。
    そんなことを思っているとクローが微笑みながら静かに立ち上がりマスターに声をかけた。
    「このグレイシア、ステータスに書いてある性格は?」
    「寂しがり屋だったけど?」
    「ふ〜ん。僕の見た限りじゃあそれもありうるけど僕だったら性格を書き換えるな……『ツンデレ』だと!」
    「…………はあ…」
    「僕の第三の目からみるとツンが9割デレが1割ってところだな。そう簡単に甘えてはくれないと思うけど、まあ気長に付き合えばいいんじゃない?」
    「なるほど……。参考になったよ。サンキューな」
    「それじゃあ鑑定料4500円を……」
    「それじゃあバイバイ」
    「ツンデレ」とか「第三の目」とか意味のわからない言葉だらけだったけど私のことで話しているのは何となくわかった。別に深追いはしないけどさ。
    マスターはクローの言葉をさらりとスルーして私を見つめながら一言。
    「ツンデレかぁ……」
    とつぶやいて私をボールに戻した。


    ----

    その日、私たちはポケモンセンターで夜を過ごすことにした。ポケモンセンターの中って思っていたよりも広い。そのためちょっとしたホテルみたいな感じになっている。それでもホテルじゃないから食事は出てこないみたい。ご主人は手持ちのポケモンを部屋の中に出すとテキトーに分けたポケモンフーズをポケモンの食事用に作られた器に分け私たちに声をかけた。
    「それじゃあ、いただきます」
    「いただきま〜す!」
    私を除く全員がそう言ってポケモンフーズに口をつけ始めた。どうもこのセリフを大声で言うのはためらわれる。最近までは小声でも言うようにしていたがそれも面倒になったからこうして何も言わずにポケモンフーズに口をつける。………このポケモンフーズあんまり好きじゃないんだよね…。なんか乾燥しきっていて口の中の水分をみんなポケモンフーズに吸い取られていくような感じがする。そのせいですごく飲み込みにくい……。
    私は落ち着いてゆっくりポケモンフーズを食しながらみんなの様子を見る。食べること以外することがないからさ……。
    さっきみんなの様子とか言ったけど私がさっきからじっと見ているのは私のマスター。そのマスターはリーフィアと楽しそうにおしゃべりをしている。ううっ、今すぐ冷凍ビームをリーフィアに撃ちたい。今ならきっと最高威力の冷凍ビームが出せるに違いない。
    私はそんな気持ちを押し殺しながらリーフィアと談笑しているマスターを見ていた。……べっ、別に妬いてるわけじゃないんだからね!それにあのリーフィアは雄だから変な気がなければマスターとくっつくことはないはず!……って、あれ?私、なんか必死にマスターとくっつこうとしているような発言を?まあいいや。アホな事考えている間に飯も食い終わった。私は伸びをした後ゴロゴロしだした。
    マスターはリーフィアと話し終えたのか私の近くによりゴロゴロしている私にあきれたような口調で声をかけてきた。
    「グレイシア〜。食べた後に寝るとミルタンクになっちゃうぞ〜」
    「…………なるわけないじゃん………」
    私は顔色を変えることなくそう言い返す。あ〜あもっと場を和ませるような切り返しは知っているのになんでこんな言い方になっちゃうかなぁ?マスターは相変わらずの私の態度に少しへそを曲げたのか再びリーフィアのもとへ行く。
    はぁ……。こんな性格。なおせるのならなおしたいよ。ますます自分のことが嫌いになっていく。ますます私からマスターという存在が遠のいていく……。


    夜、すべてのポケモンがモンスターボールの中に戻された。みんなが寝静まった頃私はまだ起きていた。モンスターボールの中からはほんの少しだけだけど外の様子が中から見えるように作られていて外の声や音を聞き取ることもできる。しかし、中にいるポケモンがそれを望まないと外の様子や音などを聞き取ることができないというまさにハイテクの四文字があっているような気がする代物だ。ちなみにポケモンの意志でモンスターボールにはいることはできるらしいがポケモンの意志でモンスターボールから出ることは絶対に出来ないらしい。……話がそれたね。
    私は外の様子を見始めた。ちょうどマスターの寝ているベッドが見える。でも、マスターはそこで寝ていなかった。ベッドに腰をかけこちらをじっと見ている。私はマスターの姿が確認できるけど当然マスターは私が起きているだなんて思ってもいないだろう。でも、いつもなら私も含めて寝ている時間。なのにどうして今日に限って?
    そんなことを考えていてもわかるわけないなぁ。と思っているとマスターがぽつりぽつりと独り言を言い始めた。
    「はぁ……。グレイシアは俺のことどう思っているんだろうな……?……俺のことが嫌いなのかな?」
    違う………。違う!!そうモンスターボールの中で叫びモンスターボールの中に広がる空間の壁を前足でたたく。この声が少しでも届いてほしかったから。
    「今までずっとグレイシアのことが………大好きだった。でもどう接してやっていいのかが分からなくって………」
    えっ………?私のことが……好き?一瞬耳を疑った。頭の整理がつかないまま私はマスターの言葉に再び耳を傾けた。
    「こんなぎくしゃくした関係のままでいるのはお互いつらいよな……。でも、どうすれば………」
    そんな………マスターの悩むことじゃない!私が素直になれればいいことなのに!
    お願い……!この私の思い、マスターに伝えさせて!今すぐに!私は絶対開くことのないモンスターボールの中の空間の壁に攻撃を続けていたが知らないうちに疲れはて眠ってしまった…………。



    ----


    私はモンスターボールの中で目を覚ました。眠たい目をこすり静かに伸びをしていると昨日の出来事をハッと思いだす。急いで外の様子を確認するとマスターはまた草むらの生い茂った道路を歩いていた。でも、私を手持ちの先頭にして虫よけスプレーのようなたぐいのものをつけたのか野生のポケモンは全くマスターに近寄ろうとしていない。
    …………あれ?私はまだご飯食べてないのに出発してるってことは私もしかしてね過ごした!?ガーン、ショック〜……。急にあの乾燥しきったポケモンフーズが恋しくなってきた。でも仕方がない。例の話も兼ねてお昼ごはんの時を待とう…。

    でも、のんびりしていられるほど心に余裕がなかったからマスターの様子をモンスターボールの中から見ることにした。すると、少し根暗な感じのするトレーナーにマスターが声をかけられていた。内容が気になる。話の途中からだけど気にしないよ。盗み聞き開始!
    根暗な男がマスターに話を持ちかけていた。
    「それじゃあ、バトルを開始する……。制限なし賞金制もなしだが……例のルールでいいな……?」
    「……………ああ、かまわないよ。でも、負けたほうの意見も尊重の方向で……」
    「了解した……それでは、始めるぞ………!」
    例のルールって何なんだろう?そんなことを考えているとすると急に視界が反転する。ちょっと!乱暴に扱わないでよ!!そんなことを思っていると手持ちの最後にモンスターボールを移動させられた。ここからだとマスターの背中しか見えない。バトルの様子が全く把握できないと悟ったため私はバトルに備えて完全に眠気を飛ばそうとしていた。
    しばらくして私は外に出される。バトルの真っ最中だってわかっているけど今私の気持ちを伝えても問題ないよね?私はマスターのほうに体ごと振り返りマスターに声をかけようとした。
    「あの…………マスター…………」
    蚊の鳴くような声で私は声をかけようと試みる。こんな声じゃあ聞こえないかな?そんなことを思っていると案の定聞こえてなかったみたい。マスターは必死に私に大声で指示を出す。
    「グレイシア!!あいつらかなり手ごわいぞ!朝飯抜いててきついかもしれないけど頼む!がんばってくれ!
     それじゃあ、アーケオスに冷凍ビーム!!」
    私はしぶしぶ後ろを振り返ってみるともうすぐそこに私に頭突きをかまそうとしているアーケオスが迫っていた。
    私は急いで冷凍ビームをアーケオスに向けて放つ。あまり力をためてなかったのもあって氷がアーケオスの全身を覆った後地面に落ちた衝撃で分厚い氷が割れた。いつもはこれしきじゃあ割れないんだけどね。それでも十分ノックアウトできたみたいだけど。
    バトルフィールドにいる相手のアブソルは完全に私におびえている感じがする。特性はプレッシャーみたいな雰囲気がするけどこれじゃあまるで私が相手を威圧しているみたいだ。
    「戻れ……アーケオス。ついでにアブソルもだ」
    相手がポケモンをみんな引き上げてしまった。するとすぐに二つのボールを構え私の目の前に二匹のポケモンを繰り出した。ピクシーとゴウカザルか……。タイプ相性まずいのがいるけど大丈夫だろう。私の力でたたきつぶすだけだし。
    「グレイシア!!先にゴウカザルを倒す方向でいくよ!フルパワーで冷凍ビーム!!」
    私はいつもよりも強大なエネルギーを空気中から得るため力を一点に集中させ始めた。そして発射するのと同時に敵のトレーナーが指示を出す声が聞こえた。
    「ピクシー、この指とまれ。ゴウカザルは……隙を突いて例の技だ……」
    ピクシーがその短い指を振り始める。私の発射したエネルギーの塊はピクシーの方向へと軌道を変える。しかし、ピクシーはよけることはかなわず完全に氷塊の中に閉じ込められた。それを確認しゴウカザルのほうへ視線を戻しt……。
    わき腹に激痛が走り全身に一気に伝わっていくような感覚がした。横を見てみると鬼のような形相のゴウカザルが。そのゴウカザルは紅蓮の炎に包まれその体は少しだけ傷ついていた。この技は……フレアドライブ?そう思った瞬間ゴウカザルは身にまとった炎を解き体勢を変え私に容赦なく守りを捨てすべての力を破壊に使うインファイトを放っ…………。

    ゴウカザルの荒い息遣いのあいまにかすかにマスターの呼ぶ声がする……。しかし、そこで私の意識は途絶えた………。




    ----


    私はしばらくしてから目を覚ました。どうやらモンスターボールの中で眠っていたらしい。傷が体からきれいさっぱり消え去っているところをみるとポケモンセンターのような施設で回復してもらったのかな?
    私はそんなことを考えながら外の様子をモンスターボールの中から確認すると案の定ポケモンセンターの中だった。私は初めてバトルに負けたショックよりもマスターの心配をしだした。たいていポケモン勝負に負けた場合その責任はトレーナーのほうへのしかかる。ほら、あなただってポケモン勝負に負けたら賞金を払わされるでしょう?ポケモンの力不足、ミスなどが原因であっても最終的に損をするのは負けたほうのトレーナーなのだ。そんなことを考えながら勝負していると如何に自分の戦いがマスターに大きな影響を及ぼすのか考えさせられるような気がする。……話がずれたね。
    マスターは案の定暗い顔をしながら根暗なトレーナーと向かい合うように座っていた。今回の戦いの場合賞金制ではないからその分怖い。一体どんなルールでマスターが戦っていたのか私には理解できなかったがこちらの利益になるようなことはない。それだけは理解していた。
    「それじゃあ、例のルールに従って君がポケモンを指定してくれないか?」
    「……分かった。それじゃあ………グレイシアがいい。……先ほど戦っていたやつな……」
    えっ!私のことを言っているの?この男は?そもそも私をどうするつもりなの?例のルールっていったい何なの?
    私は頭がパニックになりながらもマスターたちの会話に再び耳を傾けた。
    「うっ…………。グレイシアか………」
    「どうする……?いやならほかのポケモンも考えておくが………?」
    マスターが悩んでいる。なんで悩んでいるのか大体察しがついた。きっとこの二人が言っているのはポケモン交換のことだ。負けたほうのポケモンを勝ったほうのカスポケモンと交換するんだ……きっと。
    嫌だ!!そんなの絶対に!私は知らないうちに叫んでいた。まだこの思いマスターに届けてないのに!!
    私がそうしているのにも気づかず二人は会話を進める。
    「いや…………。グレイシアでいいよ。……こいつのためにも………」
    「本当にいいのか………?」
    「ああ」
    短くマスターがそう答えた瞬間私は目の前が真っ暗になった。
    マスターが何か言っていたがそんなこと気にもせず、私はただただ茫然と宙を眺めていた。

    ほどなくして何か私の近くに落ちているのに気がついた。私はそれを拾った。人間には「メール」と呼ばれているものだ。私はそれを読み始めた。そこには私のステータスには載っていないような特徴が雪をイメージしたような便せんに細かい字でたくさん書かれていた。こんなに私のこと分かっていてくれていたんだ……。急に悲しくなった。こんなにいいマスターと私はもうすぐわかれてしまうなんて。
    もっと甘えればよかった。もっと話せばよかった。もっとふれていたかった。もっと………もっと………………。
    後悔の念があふれだす。しかし、私にそれを止める術は無かった……。



    ----


    気が付いたらもうすでにマスターは私のマスターではなくなっていた。私はどこかの道路で根暗なトレーナーの前にモンスターボールから出された。近くで見て初めて気がついたけどマスターよりも若いまだ少年という雰囲気を漂わせていた。帽子を深くかぶり目が見えなかった分根暗というイメージが付きまとっていたが下から彼の顔を見上げ初めて彼の少年らしい瞳を見たときただの短パン小僧なんだと感じた。
    私はもっていたマスターの匂いがかすかに感じられるメールを少年に渡した。少年は少し目を通しすぐにポケットにしまいこんだ。クシャッという紙が折れる音がした。マスターが一生懸命書いたものをなぜあんなにも乱雑に扱えられるのだろう?私は少年から目をそらしながらそんなことを考えていた。

    それからしばらく少年の手持ちで「ドラゴンタイプ撃破要員」として参加していた。彼は少年とは思えないほど理知的な戦い方だった。そんなトレーナーにもらわれれば人生幸せだ。そう考えるポケモンは数知れないだろう。でもやはり私にとってのマスターはひとりしかいなかった……。




    それから私は悲しみに暮れた。食べることを忘れ、かわりに物思いにふけるようになった。寝ることを忘れ今まで流したことなど一度もなかった涙を流し続けるようになった。


    私はほどなくして力尽きた。少年がポケモンセンターに連れて行きポケモンドクターに診せようとした直前だったような気がする。最期に小さくマスターの名前をつぶやき目をとじ、そこで私の人生は終わった…………。



    ----


    これが私の人生。私のすべて。



    そのあと魂だけでここにとどまり続けていることぐらい言わなくてもわかるよね?



    …………あの後私のマスターにはあっていない。もうずっとあえない。そんな気もする……。






    でもね。もし、もしもマスターが来てくれたらね。


    そっと近くで呟きたいの。


    「ありがと………」

    ってね……。




    ----

    元ネタはこの小説と本当に同じです。
    僕が友達との勝負に負け手持ちのグレイシアを拉致られました(泣)
    今どうしているだろうあの娘……。そんなことを考えていたら自然に手がキーボードのほうへ………。
    そんな作品です。最後まで読んでいただきありがとうございました。


      [No.1788] なんか絵です 投稿者:moss   投稿日:2011/08/26(Fri) 00:53:33     105clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    なんか絵です (画像サイズ: 1113×789 182kB)

     とりあえず何かしないとテコイプ先生に減点されるので、適当に書いてみました。

    色は全部水性の色ペンと色鉛筆です。市販の。色に関しては変とかいろいろありますがご了承を。シャーペンだけの方が良かったかしら……。


    とりあえず誰が誰だか記します。

     サザンドラ ―― てこさん
     カモネギ ―― 茶色さん
     ニャース ―― こまさん
     ヤミラミ ―― クーウィさん
     サマヨール ―― 久方さん
     ドレディア ―― 風間さん
     オタマロ ―― 流月さん
     スリーパー ―― 巳佑さん
     チルット ―― 小樽さん
     ゴチミル ―― 俺
     ピクシー ―― きとらさん
     エルレイド ―― MAXさん
     ロズレイド ―― りえさん
     トトロ ―― 586さん
     ピジョン ―― No.017さん
     タブンネ ―― レイニーさん
     ユキメノコ ―― 紀成さん


    てな感じです。

    何か質問、疑問、不安、いらだちのある方はどうぞ。


    最後にオフ楽しかったです! また今度は夜もご一緒したいものです!

    ありがとうございました!!


      [No.1787] おそらくは。 投稿者:紀成   投稿日:2011/08/25(Thu) 20:03:28     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > あと誰かにドイツ語夢イーブイ雌をあげた気がするが、その後がたがたしていたのであんまり覚えてない非道。
    > あの時、うちのブラックと通信した方は、ユナイテッドタワーのオーストリアのところが開いてるはず。

    私ですね、多分。見慣れないエーフィがいたらそれと交換させてもらったんですよ。
    鳩さんは3DSのポケモン図鑑のキュレムの尻に御執心だったようで、私が代わりに交換させてもらいました。
    ありがとうございました。


      [No.1786] 地上に海。 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/08/25(Thu) 18:21:23     83clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    その日、私は旅行帰りだったのである。船旅で、9時半頃下船の予定。船では散々遊び、ルーレットなんて覚えて帰ってきやがった。
    そして、スーツケースを親に預け、一人集合場所というかポケセン東京のある駅に向かった。
    そのため、事前に遅れると連絡していたのだが、10:30集合だったのだが、到着は10:15頃。
    普通に集合間に合ってますよ奥さん。

    ゴーヤさんに掛川の借金を返し、
    るっきーには夏コミあつかったねーーーと返し
    クーウィさん登場してエアコンの効き過ぎた屋外でべらべら喋っていたりして。

    そのうち。
    「レイニーさんと鳩さんは遅刻だそうです」あれ、前回も・・・・?


    誰が誰だか解らないため、点呼とられて、ポケセン東京に向かう。
    ポケセン東京についた目的はただ一つ。
    ブラックシティを廃墟から脱出すること!誰かホワイトフォレストの住民をゆうk、じゃなくて連れてこようと入り口前でがんばっていた。
    この頃、現マサポケチャンピオンのりえさん登場。

    そして、昼はカレー。
    となりにいたもっすんは、大学の時の後輩にとてもよく似ていて、いじり方まで同じで良かったとはおもわなかっt

    前にいたみーさん、辛さ50倍を注文する。なぜかと聞けば
    「長老に挑戦したかった」
    長老・・・・・
    味見させてもらいましたが、舌がしびれて、辛さがずっと残ります。それを完食したみーさん、やはり長老の弟子。

    実は、茶色さんとこまさんの区別が微妙につかなかったのですが
    両替してくれたいい人で、インターネットつながらないと嘆いていたのが茶色さん。
    すげえプログラマーなのがこまさん。
    で、あってるだろうか


    そして、昼食終わってラウンジのようなところでわいわいがやがや
    ここでひさかたさんからぱちももこ(パチリス)とぱてぃ(ムックル)、それぞれ色違いを貰う。
    きとら「うひょひょ、ありがとうございます!」
    ひさかたさん「ポケトレ好きなだけですから」
    ポケトレで粘れる根性は素晴らしいです。

    わいわいがやがやしていると、見慣れた男性がいる。
    しかしいつもと違う
    そう、それは和服を着たマックスさんであった。
    その渋さと顔つきで、異常なほどマッチしていたのである。というか、成仏屋(脱出ゲームのキャラ。当日のマックスさんそのもの)にしかみえない。

    あと誰かにドイツ語夢イーブイ雌をあげた気がするが、その後がたがたしていたのであんまり覚えてない非道。
    あの時、うちのブラックと通信した方は、ユナイテッドタワーのオーストリアのところが開いてるはず。


    それからカラオケに行くのですが、男性陣が恐ろしいことになっていました。
    でも、みおくんはとても似合っていたのです。
    そしてマックスさんも似合っていたのです。
    後の人は、申し訳ありませんが記憶にございません。
    見たい方は写真とってた人が何人かいるから見せてもらおう!誰がとっていたかまでは把握していない!

    カラオケで、ゴーヤさんと趣味が一緒なことが判明。
    カラオケで、クーウィさんに「まさにこんな世界観ぴったり」と言われた歌。うーん
    私の世界は ちゅうにせかい のようです。漢字は好きに当てはめてください。
    マサポケオフは歌うまがかなりいる。
    久方さん
    みおくん
    みおりん
    この人たちの歌は聞かないと損だ。そう思った。
    そしてレイニーさんは期待を裏切らない人だと確信した。

    もっすんを見送って、飲み屋にうつったらそこはりえさんの天下だった。
    もう、ついていきます姉御!
    と思ったら、私より年下だったorz

    てこりん、かわいいギャルなのだが、始まってからかなりおかしい。
    あれ、まだ2杯目?3杯だっけ?でも早くないか、からみはじめるのは!!!!
    そして、クーウィさんが鳩さんとゴーヤさんに囲まれて、まさかの本を出す作戦を!!!!
    買うよ!出たら絶対買うよ師匠!
    けれどクーウィさんに断わられてしまった。

    さらに衝撃事実が二つ発覚するのだが、それはオフに出ていた人たちの秘密にしておこう。

    最後に。
    「明日ひさかたさんと有楽町の焼き鳥屋行くけど誰か行くか!?」
    の声に集まったるっきー、みーさん、りえさん、てこりん、マックスさんで、有楽町のガード下へ行くこととなった。


      [No.1785] ぼくも よく きこえない 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/08/25(Thu) 16:35:32     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    使わせていただき、ありがとうございました。
    でも、書いてみたはこんなものでは終わりません!

    > 眼鏡を掛けたピジョンが混じっていそうな気がするのはあくまで気のせい。タブンネ。
    あー、それは残念ながら気のせいです。後ろからじっと狙われてるなんてかなり気のせいですよ!


    > アーアー
    > よく聞こえなーい

    ちがう ピジョンの なきごえが するなんて きっと きのせい
    そう おもいたい
    うしろから ゴッドバードの けはいが するなんて きっと ぜったい きのせいだ


      [No.1784] 魅惑のムウマ丼 投稿者:風間深織@PC   投稿日:2011/08/24(Wed) 20:38:22     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    魅惑のムウマ丼 (画像サイズ: 826×1185 196kB)

    ログが消失する前に、みお君のお話につけようと思ってた絵をいまさら投稿してみる。
    ……へたくそだなぁ


    【書いたらいいのよ】
    【みお君はやく文章つけて!】


      [No.1783] 鏡の彼 【改訂版】 投稿者:風間深織@PC   投稿日:2011/08/24(Wed) 20:34:08     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     春の、静かな夕暮れのことです。小さな丘の上で、二匹のイーブイが肩を並べていました。ラベンダー色の空が、少しずつ世界を闇に溶かします。


    「ねぇ、君は何に進化したい?」
    真っ直ぐと空を見つめながら、彼は私に問いました。私は「うーん……」と悩むふりをして、少しの間、彼の横顔に見惚れていました。闇に溶ける世界の中で、彼の瞳がきらきら輝いて見えたのです。
    「私はエーフィがいいわ。この空と同じラベンダー色の体が、なんだかとっても綺麗でしょう? じゃあ、あなたは?」
    彼は空から目を離し、私をじっと見つめました。
    「僕は……ブラッキーがいいな。月の光が好きなんだ」
    気がつくと、私たちも闇に溶けていました。輝いているのは街のイルミネーションと、少し欠けた美しい月、そして私を見つめる彼の綺麗な瞳だけでした。
    「そろそろ帰ろうか。きっと二人とも僕らのこと探してるよ」
    「うん。でも……次はいつ来れる?」
    彼は仕方がないなぁという顔をして、また空を見つめました。そして、まだ完全ではない月を見て、こう言いました。
    「そうだな……次は、満月の夜に」


     その日、家は思いのほか静かでした。いつもなら、私たちのご主人様である双子のアルシスとテイジスが、父親と言い合いを始める時間です。人の集まるリビングや、いつも母親が料理をしているキッチンにも行ってみましたが、そこにも誰もいませんでした。
     私と彼は双子の部屋に行くことにしました。この時間、双子が部屋にいることは滅多にありません。でも、これだけ捜してもいないのです、きっと部屋にいるのでしょう。私と彼は、短い足をせっせと動かして階段を上り、双子の部屋へ向かいました。
    部屋に入るとすぐに、彼はアルシス、私はテイジスのところに向かいました。ベッドに腰掛けてファッション雑誌を読んでいたアルシスは「おかえりイーブイ!」と言って、彼の頭を少し撫でました。部屋の隅で膝を抱えていたテイジスは、私には反応せず、ひたすら下を向いていました。
    私がテイジスの周りをうろうろしていると、アルシスが私に気がつきました。アルシスは彼を抱くと、ポニーテールに結わった髪を揺らしながらテイジスの隣に座りました。
    「テイジス、イーブイが戸惑ってるよ」
    「うん……ごめんイーブイ、おいで」
    私はちょこんとテイジスの膝の上に乗り彼女を心配そうに見つめました。彼女は、耳の下で二つに結わった髪の毛を触りながら、目に涙を溜めています。ぽたり、ぽたり。溢れた涙は私の前足の甲を少しずつ濡らします。私がどんなに心配そうな目で見つめても、膝をぺたぺたつついてみても、彼女の涙は止まりそうにありません。
    「そんなに泣いてても、もう決まっちゃったんだし仕方がないでしょう?」
    「でも、アルシスがいないなんて考えられないよぉ」
    「手紙も、電話もあるじゃない。一年なんてすぐ過ぎるって!」
    「でも……」
     私と彼は二人が何について話しているのかさっぱりわかりません。
    「あのね」
     顔を見合わせて目をぱちくりさせている私たちに気がついたのでしょう。アルシスは彼を撫でながら小さい声で言いました。
    「離れて暮らすことになったの。あ、でも一年だけよ? お父さんの仕事の関係で、私とお父さんは違うところで暮らすことになったの」
     アルシスが私たちにそう言ったあとも、テイジスはひとりで涙を流していました。


     出発の日の前夜、あの日はとても綺麗な満月でした。青白い光の中に、淡い桜の花びらが、さらさらと風に流れています。
    夜桜舞い散る丘の上で、私たちは何も言わずに寄り添っていました。いつものように当たり前に、言葉も交わさずに……そのときはまだ、離れて暮らすということがどういうことなのか、わかっていなかったのです。一年などすぐにすぎる、あなたの瞳は……あなたの心はいつだって、私を見ていてくれる……と私は信じて疑わなかったのです。
    「そろそろ帰ろうか」
    「うん、でも次はいつ来れる?」
    彼はいつものように仕方がないなぁという顔をして、こう言いました。
    「次は、十三回目の満月の夜に……」


     あれからひとりで四回の満月を見ました。あと八回、私はひとりで満月を見なければなりません。あの日舞っていた桜の花びらはもうなくて、輝く青葉が重なり合って風と歌っています。去年を繰り返すように、彼を春においてきたまま時間だけが流れていきます。

    さみしさは、すぐにやってきてはくれませんでした。それが、さみしさを超えていたからだと気がついたのは、まだもう少し後のことでした。彼との時間をたどるように、私は毎日丘の上で過ごしました。テイジスに帰りが遅いと怒られても、家で留守番をしていろと言われても、私はあの丘の上に行きました。



    あなたがいない。それだけで、こんなに時間が長くなる
    あなたがいない。それだけなのに、私は少し無口になった
    あなたのいない世界は、こんなにも広くて長かったのね

    そんなこと、今気がついても意味が無いのに……



    風に流れる青葉の下で、たったひとりで見る月は、私にはとても大きすぎたのです。


     ある日、私は双子の部屋の前で、いるはずのないアルシスを見ました。彼女は確かに髪の毛をポニーテールに結わっていました。双子で、顔の瓜二つなアルシスとテイジスは、自分たちの見分けがつくように、髪の毛の結わき方だけは変えていたのです。
     彼女は、小走りで部屋から出ると、大きな鏡のある部屋に行きました。私はそこに彼がいるのではないかと、必死で彼女のあとを追いかけました。
    部屋に入ろうとした、そのときでした。息を切らせた私の目に飛び込んできたのは、鏡に映る自分に話しかけているアルシスの姿でした。
    「ねぇアルシス、元気? 私、やっぱりアルシスがいないとだめなの。今までたくさんのものを半分こしてきたでしょう? 大好きなパンケーキも、一緒に使っていたお部屋も、この体、命でさえ……半分こしてきたでしょう? だから、やっぱり一緒にいないとだめなの……」
    鏡の前のアルシスは、ぽろぽろと涙を流していました。そう、彼女は、髪をポニーテールに結わったテイジスだったのです。

     その日の夜、私はもう一度鏡の部屋に行きました。そして、鏡に映る自分の姿をまじまじと見つめました。そして、私もテイジスのように鏡に話しかけてみました。



    鏡の前のイーブイは私。でも、鏡の中のあなたは誰? 
    あなたを見た瞬間、懐かしい声がよみがえったの
    少しだけ忘れていたあなたの声が、こんなに鮮明に、こんなに艶やかに
    あれ、あなた泣いている? 



     結局、さみしかったのです。私も、テイジスも、さみしくてさみしくてたまらなかったのです。だから、幻でも偽物でもいいから、想う相手に会いたかったのです。

     その日から、私は度々鏡の部屋に行くようになりました。鏡の中の彼に会いに行くためです。もちろん、心の中では「これは本物じゃない」とわかっていました。それでも、鏡に映る自分を、彼だと思い込んでいたかったのです。


     一年という月日は、私が思っているよりも遠く、広く、長かったのです。



    いつもより長く感じた夏が終わり、秋が来ました。葉の色が変わり、落ちていく中で、私は少しの不安と今にも溢れそうな切なさに胸がいっぱいになっていました。私は彼が遠くに行ってしまっても、彼のことを想い続けてきました。でも、彼はもう私を想ってくれていないかもしれないと、思い始めたのです。


    草木の色が変わってく
    色褪せいつかは枯れていく
    私の気持ちは変わらなくても
    あなたの気持ちはわからない
    落ちてく木の葉は枯れてても
    私の気持ちは枯れないの

    近くにいたからわからなかった?
    隣にいたから気づかなかった?
    こんなにあなたを愛していたのに

    こんなにあなたを愛していたのに……

    隣にあなたはもういない


    溢れる気持ちは温かいしずくとなってとめどなく瞳から零れ落ちます。


    ねぇ、最後にあなたと満月を見たあの日
    私がこんな風に泣いてたら
    もっと違う未来があったのかな……?


     それは、一人で見る八回目の満月の日でした。外に積もっている雪のように、白くて綺麗な封筒を持ったテイジスが「アルシスから手紙がきた!」と、嬉しそうにしていました。
    「アルシスのイーブイは進化したんだって。何に進化したかは書いてなかったけど……」
    私は最初、それがどういうことだか理解できませんでした。しばらくして頭の中を整理してみると、それが私にとって非常にまずいということに気がつきました。私は急いで鏡の部屋へ向かいました。鏡の部屋に入ると、そこには息を切らした私が映っていました。

     彼は進化しました。きっと彼は美しいブラッキーに進化したのでしょう。月の光が好きだと言っていましたから。でも、これで、鏡の中の彼は彼ではなくなってしまいました。鏡の前に立てば、いつでも彼に会えたのに、もう彼に会えなくなってしまったのです。
     鏡に映った自分は、少しだけ清々しい顔をしていました。そのとき私は自分に言い聞かせるように、鏡に語りかけました。


     鏡の前のイーブイは私。鏡の中のイーブイも私
     あなたはもう、ここにはいない
     それだけでこんなに不安になるの
     あなたの瞳も、あなたの心も
     もう私を見てくれてはいないかもしれない
     それでもね、私はあなたを愛してた
     私はあなたを愛してる
     
     だから、ねぇ?
     間違った選択をしたかもしれない私を
     笑って許してくれるよね……?




     今日は、とうとう十三回目の満月の日です。私は家ではなく、いつもの小さな丘にいました。昨日、テイジスが「明日アルシスが帰ってくるのよ!」と言ったときから、私は今日ここでずっと彼を待っていようと決めていたのです。
    茜色の空が少しずつ青に溶けて、ラベンダー色に変わっていきます。私は自分の姿を桜の木の影に隠していました。それは、ちょっとした悪戯心でした。進化した私を見れば、彼は驚くに決まっています。ですから、精一杯驚かしてやろうと思っていたのです。
     私が空を見つめていると、ラベンダー色に溶けた何かがこちらにやってきました。きっと、彼です。私は木の影の中で少し身構えました。そして、彼が驚いてこちらに駆け寄ってくるのを待っていました。

     でも、驚いたのは彼ではなく、私のほうでした。
     ラベンダー色に溶けた彼は、ブラッキーではなく、美しいエーフィだったのです。

    「どうして……? どうしてエーフィに?」
     彼が進化したと知ったあの日、私は鏡の前でブラッキーになろうと決めました。私は自分自身のなりたいものではなく、鏡の中に彼を見ることを選んだのです。そして彼も、私と同じことを考えていたのです。
    私たちはお互い見つめあったあと、少しずつ闇に溶ける空を見ました。私はこの一年間で、こんなに変わってしまったのに、舞い散る桜の花びらと、きらきら輝く彼の瞳は、一年前のままでした。


     ある満月の晩のことです。ラベンダー色の美しいエーフィと、それより一回り小さなブラッキーが、小さな丘の上で肩を並べていました。

    「あのね、こうやってあなたを見ていると、まるで鏡の前で自分を見ているような気がするの。あのとき話した、なりたい自分を――」


    (4562文字)

    【批評してほしいのよ】


      [No.1782] 手芸屋『黒木綿』 投稿者:Teko   投稿日:2011/08/24(Wed) 17:34:19     80clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ポケモン達の暮らす賑やかな村がありました。子供達が走りまわり追いかけっこをしていたり、井戸端会議が行われていたり……おやおや、お店から真っ青な顔をして飛び出してきたポケモンも。遅れて、お店の中から凄まじい声が聞こえてきました。あの彼に一体何があったというのでしょうか?

     さて、この村を離れ、木々に囲まれた北へ続く小さな道をだらだらと歩いていくと、あけた空間に出ます。小さな広場のようなものですが、柔らかな草が生え、小さな花が咲いています。お花畑とも草原とも言うことは出来ませんが、お昼寝をするのにはぴったりな場所でしょう。その空間を超えれば、道は森の中へと入っていきます。もっとも、入っていく人は多くありません。

     村の北側に広がる森――『黒い森』。不気味な鳥の声と、ざわめくモミの木々。昼間でも暗く、迷い込むと森の外へ出ることはとても大変です。村の子供達が外に遊びに行く際にかならず母親達はこう言います。「北の森には入ってはいけません」それがいってらっしゃいの挨拶のようなものでした。
     ですから、子供達はその森が恐ろしいと知っているのです。けれど、だからこそ入ってみたくなるのも確かなのです。毎年、興味本位で入っていって、戻ってこれなくなる子供が二、三匹はいるのです。大人たちでさえ森の中に入ったことのないポケモンのほうが多いのです。飛んで上空から探そうと思っても、あまりにも木々の葉が生い茂っていて、内部を見ることが出来ません。

     もし、あなたの友人が森から出てこられなくなってしまったら? そんなときは焦らないで『黒い森』出身の彼女の元へ行きましょう。きっと不満をぶつぶつといわれることでしょうが、大体は力を貸してくれるはずです。彼女はどこにいるかですか? お店にいますよ。もしかして、ご存知ありませんでしたか? あらあら、それはそれは――


     手芸屋『黒木綿』――それが彼女のお店です。

     
     『黒木綿』は村の端とも森の端とも言える場所にありました。要するに、本当にギリギリの境に建っていて、ある人は森に飲み込まれてしまうんじゃないかなんてことも言いました。
     そもそも、村と森の間にあるあけた空間は『黒木綿』を建てるためにひらかれた空間なのでした。しかし、店主である彼女はそんな陽の当たる場所は嫌だと言い張って、森に埋もれるような場所に店を構えたのでした。
     お店自体は小さいのですが、重厚なゴシック様式の建築であり、さらに壁いっぱいにツタの蔓がへばりつき青々と葉を広げていることもあってどうにも近寄りがたい雰囲気であることは間違いありません。人が住んでいる感じはするのですが、どこか幽霊屋敷のようなそんな気配があります。重そうな木で出来た扉には『黒木綿 布・糸材料 仕立て その他』と看板がかかっていました。その看板の下には『営業中』どうやら営業中ではあるようです。さっそく、中に入ってみ――おや、誰かやってきたようです。

     ぎいいぃぃぃときしむ音をたてて扉が開きました。中に入ってきたのは赤い身体に鋭い刃を持ったキリキザンです。
    「おい」
     誰もいない室内にキリキザンのドスの効いた声が響きます。聞いただけで背中がまっすぐに伸びてしまいそうな声です。どこかで聞いたことのあるような――いや、あれは人違いでしょう。飲食店がお客さんを外にたたき出すわけがありませんから。
     それにしても、室内には何の反応もありません。声一つ、物一つ動いた気配もありません。誰かがいるとは思えないほど、室内は静まり返っていました。
     キリキザンは顔を思い切り、しかめました。
    「営業中の看板出してるなら、仕事しやがれ!」
    「うるさいなぁ……まったく……寝てるのに……」
     どこかから声がしました。薄暗い室内ですが、色とりどりの糸や布が意外にもきれいに整頓されて並べられています。キリキザンはまわりを見渡しますが、誰もいる気配はしません。
    「出てきやがれ!」
    「前にいるでしょもぅ……遠視なの…?」
     そう言って、むくりと動いたのは、椅子に座っていたぬいぐるみでした。ただのぬいぐるみではなかったのです。それはジュペッタ――彼女こそがこの手芸屋『黒木綿』の店長です。
    「何の用だい……?」
     キリキザンは少し戸惑いました。いい仕立て屋はどこだと聞いてコータスに聞いて来たのに、ぜんぜん良くない。それもそうです。キリキザンはコータスの話を最後まで聞かずに飛び出してきたのですから。コータスはこういったのです。「仕立てなら『黒木綿』がいいですよ。―――……まぁ、いろいろアレなんですが……」
    「……。まぁ、そのだな、作業ふ」
    「ちょっと待ったああああぁぁぁぁ!!!」
     ドアを勢いよく開け入ってきたのは、キリキザンの相棒、コータスです。ぜいぜいと息を切らして、コータスは「ちょっと待って」と言いました。キリキザンは不機嫌そうに顔をしかめました。
    「今から頼むところだ。注文が終了してからにしてく」
    「だから、ちょっと、待って!ってば」
     いつもは穏やかなコータスの強い口調に驚いたキリキザンは少しの間声が出ませんでした。そんな中をジュペッタがただただ不機嫌そうに見ています。コータスはそんなジュペッタにぺこりとお辞儀をしました。
    「ま、また後日お邪魔します!!」
     「事情は後で話す。とりあえず今日は帰ろう」コータスはキリキザンに小さく耳打ちして、のしのしと歩き出しました。いつもは威勢のいいキリキザンもそんなコータスの珍しい態度にすっかり調子が狂ってしまい、ただ黙ってコータスについていきました。

     
    「全く、最後まで話を聞いてから動いてくれ」
    「どういうことか全然分かんねぇ。分かりやすく説明してくれ」
     コータスは大きくため息をついた。
    「……君に似てるなぁと思ってたけど本当だったんだね。……あのジュペッタさん腕はピカイチなんだけど、異常なまでにすごい頑固なんだ」
    「誰が異常なまでにすごい頑固だって?」
    「で、君なら、怒鳴り散らして「帰れ!」終わりなんだけど……あのジュペッタさんは違って……言わないんだ」
    「……?見上げたプロ根性じゃねぇか……だめなのか?」
    「それを発散するのに彼女は、商品作りで発散するんだ。糸で布を織り、糸と針で縫い合わせ……君のキャベツの千切りよりも、多くの作業がある。その作業一つ一つに君が吐き散らす怒りが詰まってる」
     キリキザンはようやくコータスの言おうとしていることがわかりました。気づいた瞬間に、背筋を舌でなめられたような強い悪寒が走りました。
    「あのジュペッタを怒らせて、物を仕立ててもらったやつらは必ず悪いことが起こるって噂だよ……病気になったり、事故にあったり、消息が不明になった者もいるらしい。彼女の恨みがこもってるって話……」
    「そ、そんな仕立て屋を教えるんじゃねぇっ!!」
    「う、腕は本当にすごいって聞いたから! ちゃんと彼女に作ってもらったものはどんなものよりもなじむし、使いやすいし、いつまでも使い続けることが出来るって聞いたから!」
    「でも……それって完璧にアウトかセーフしかねぇってことじゃねぇか……」
    「とりあえず明日は私が行きます……!」
     

     翌日。
    「駄目だった……」
     うなだれて帰ってきたコータス。

     翌々日。
    「もういかねぇよあんなとこよぉ!!」
     キレて帰ってきたキリキザン。

     翌々々日
    「うーん……」
     頭を抱えて帰ってきたコータス。


     キリキザンとコータスは悩みました。もちろん、「作ってくれ」では駄目なのです。けれども、下手にでても駄目なのです。いくらジュペッタをほめて、どれだけ欲しいかを言ったって、ジュペッタはますます不機嫌になっていくばかりなのです。
    「もう、アレはあきらめたがいいんじゃねぇのか」
    「う、うーん……」

     頭を抱えるキリキザンたちを物陰から見つめるポケモンが二匹。小さな彼らは、精一杯背伸びをして、キリキザン達の会話を盗み聞きしていました。下にいた黒い影がすすすすと店の外へ出て行きます。それに緑の小さな影が続きました。

    「うーん……どうしようもないかなぁ……キリさんが駄目なのはそもそもだけど、コータスさんが出来ないなんて……」
     そう言ったのはカマドという名前で呼ばれているヒノアラシです。彼はキリキザンのお店でコータスの弟子のような存在です。いつもは元気一杯ですが、今日ばかりはその元気もどこか空の向こうに飛んでいってしまったようです。
    「私、行って……こよう、かな」
    「レタスが!?」
     レタスと呼ばれているのは小さなチュリネです。幼い頃に、母親と別れてしまいその母親を今でも探しています。ただ、非常に恥ずかしがり屋というか内気な性格なので、物事には引っ込み思案でした。
     だから、今回のような出来事に自分から行くとレタスが言ったことに、カマドは非常に驚いたのです。目を丸くしたカマドの前で、レタスは恥ずかしそうに顔を赤くしました。
    「どうしてそんなに驚くの……?えっ、わ、わわわ、キゃーーー!」
    「あっ、ちょ! レ、レタス!?」
     カマドが声を発するよりも早く照れてしょうがなかったレタスは遠くへと消えていきました。あいつも、昔に比べてかわったぁなんてことをカマドは考えつつ、レタスの行く方向へ走っていくのでした。


     とんとん、とんとん。
    「しっ、失礼します!!」
     小さなレタスは力をこめて、扉を押しました。薄暗い室内に佇むジュペッタの赤い目の光だけが動き、ぎろりとレタスを睨みます。
    「こ、こんにちは……」
     ふんと鼻を鳴らして、ジュペッタが椅子からひらりと飛び降ります。長い時をを経た床板が軋み、不気味な音をたてました。レタスは小さく悲鳴を上げました。足が動きません。怖いのに逃げれません。来なきゃよかった、そんな考えがレタスの脳内に過りました。
    「わっ、私レタスって言います! キ、キリキザンさんの『切り切り亭』で働いてます! あのっ……」
    「あぁ、アレの……こんな小さい子を働かせてるって言うのかい…あいつは……」
     レタスはぶんぶんと首を横に振りました。
    「ちっ、違います! 私が働かせてくださいって頼んだんです! キリさんは悪くな――」
    「どうして」
     レタスが言い終わらないうちにジュペッタは尋ねました。
    「どうしてあの場所で働いてるんだい」
     その口調は今までのジュペッタになかったきっぱりとしたものでした。
     レタスはジュペッタのその口調の変化にさらに縮みあがってしまい、さらに動けなくなってしまいました。でも、逃げちゃ駄目だ。大きく息を吸い、少し真を置いて、レタスは話し出しました。
    「――お母さんを探しているんです。私のお母さん、この村に昔いたドレディアの――」


    「あれは何……だろう?」
     レタスを追いかけてやってきたカマドは、『黒木綿』の横で不思議なものを見つけました。店の隣に備え付けられている小さなテントのような建物の下には、色とりどりの布が干されています。そして、その下でちょこちょこと動くとんがり帽子のようなもの。とんがり帽子はミルクティーのような穏やかな茶色で、レースがたくさん縫い付けられていました。
    「帽子……かなぁ?」
     でも、動く帽子なんて変。カマドはそっと帽子に近づました。すると、とんがり帽子はくるっと振り返り
    「わ、わわわっわわぁああ!」
     カマドは驚いて腰を抜かしました。とんがり帽子だと思っていたそれは、素敵なカバーをかぶったパラセクトなのでした。
    「……客?」
    「う……うん」
     パラセクトはちょこちょこと動いて、水の入った鍋が乗っている釜戸のほうへ歩いていきました。
    「あ、あの……」
    「客……店中……入る」
     端に積んである牧の山から、細く短い木の束を持ちだし、空っぽの釜戸の中に全て投げ込みました。そして、その木々に火をつけようと火付け石をかっちんかっちんやるのですが、うまくいきません。何しろパラセクトは火が大の苦手なのです。おそるおそる火をつけるのが習慣になっていました。それを見かねたカマドは口からいくつかの火花を出して、その木々に日をつけてあげました。
    「火……嫌い、助かる」
     パラセクトから感謝されたカマドは、照れくさそうに「えへへ」と笑いました。
    「僕、カマド! 『切り切り亭』で働いてるんだ」
    「あのポケモン……所。パラセクト……布糸……草木で染める……」
    「あの、布は全部草と木から出た色なの!?」
     カマドは目を丸くして、聞きました。ピンク、赤、青……あの様々な色が全て、草木から出ている色だなんて信じられませんでした。
    「左から、桜……紅花……――」
     パラセクトは少し戸惑いながら答えました。今まで、自分に自己紹介をしてきたポケモンなんていなかったのです。いや、二人だけいました。初めてあったときのジュペッタと昔の知り合い。それ以外のポケモンとまともに喋ったことも関わったこともなかったのです。『黒木綿』を訪れるポケモンの相手は全てジュペッタがやってしまっていましたし、パラセクト自体もあまりに無口なこともあり、ジュペッタ以外に関わったのは本当に本当に久しぶりのことでした。
     カマドに染色のことを話していくと、彼はちょっとしたことでも、すごく感心して大きく反応しました。それも、わざとらしいものではなく、本当に心から驚いているようでした。
     そうなると、パラセクトも嬉しくなって、普段は喋らないようなことをどんどん話しました。



    「ほぅ。そのドレディアを探すために働いてるって言うのかい」
    「は、はい……で、でも今はそれだけでもなくて」
    「なくて?」
    「あの……お店で働きたいって思ったから」
     レタスは言いました。今までのようにうつむいてではなく、ジュペッタの眼を真っ直ぐ見て言いました。
    「……そうかい」
     ジュペッタは大きくため息をつくととてとてと歩いてチェストの引き出しを開けました。中には細々とした針やボタンが入っています。その中に一本入っていた様々な緑色の糸でできた束――。
     昔、よく来た彼女。美しい容姿に、艶やかな花を身につけていた彼女。彼女の草木に対する知識は大変すばらしいものでした。全ての草木を愛し、太陽のような明るいオーラを持っていました。


     ――もう、随分前のことになるのか。
     ――あれは。

    「うわっ!……あ、あの、これは……?」
     数本の糸で複雑に編まれた一本の緑色の糸。レタスはその糸を手に、不思議そうな顔でジュペッタを見つめました。
    「ドレディア一族のお守りなのだそうだよ。もっとも、わたしゃ知らんがね」
    「ドレディア……!?」
    「この編み方を私が教わったときに、見本としてそのドレディアが置いていったもの……指が編み方を覚えたときには、見本は不要なものとなる。……ドレディア一族のお前が持ってきな」
     ジュペッタはぶっきらぼうに、吐き捨てるようにいいました。けれど、その言い方はどこかひっかかりのある、わざとらしいものにも見えました。
    「ちょっと待ってください! そのドレディアってわた――」
    「さあ、さっさと帰っておくれ。それをやったんだ。帰ってくれ」
    「私のお母さんのこと、知って――」
    「はやく!」
     

    「はやく、帰っとくれ」


    「ジュペッタさん……」



    「この赤色はキリさんみたい。情熱って感じで……あ!この黄色はコータスさんって感じ! 黄色だけど、どこか落ち着いてて――それから」
     勢いよくドアの開く音とともに、飛び出してきたのはレタスでした。いつもの
    レタスにはありえないスピードで走っていきました。
    「レタス……? ちょっと、僕もいきます! パラセクトさん、また!」
     小さなレタスを追いかけて走っていくカマドの後姿をパラセクトはただ黙って見送りました。
     穏やかな風が草原を撫でるように、吹いていました。


     夜になりました。『黒木綿』の光は夜遅くになってもまだついていました。それもそのはず、店主のジュペッタは夜行性なので、ほとんどの作業を夜にやってしまうのです。
     こんこん。
     ひかえめなノックの音にふりむくと、そこにいたのはジュペッタの予想通り、パラセクトでした。
    「なんなんだい、パラゼン」
     ついでにいえばパラセクトも夜行性です。といっても、干したりはお昼にしか出来ないので、夜は基本的には何もしていないはずなのです。
     パラセクトはかんそうはだなのでいつもジュペッタの作ったカバーを被っていました。特に何もないときは、レースやボタンといった飾り物のついたカバーを被っています。しかし、今日のパラセクトは作業用の麻で出来た質素なカバーを被っていました。
    「……珍しいねぇ」
    「……」
     ジュペッタは目を細めました。パラセクトが他人に関わることですら珍しいというのに、他人のために何かしたいと思ったことなどなかったのです。そのパラセクトが今日会った、小さな子供にものを作ってやりたいというのです。
    「……分かったよ、分かってるよ」
     もともと、パラセクトにいわれようがいわれまいが、ジュペッタは作るつもりでいたのです。

     ――返せなかった借りを、返す機会。


     数日後。

    「今日こそは、ドカンと言ってやるぜ……」
    「ダメだよキリさん……!」
     
    『切り切り亭』では今日も、キリキザンとコータスが『黒木綿』に行こうとしています。 
     いい加減、我慢ができないキリキザンはいつも以上にキリキリしています。『切り切り亭』だけに、ですね。
    「くそ!! あのジュペッタ野郎めっ!!」

     バタンッ!

    「……ジュペッタ野郎で悪かったねぇ」
    「……」

     ドアを開けた先にいたのは、ジュペッタとパラセクトでした。
    「なっ、なんでここにいらしてるんですかっ……!?」
     半ば混乱状態のコータスが尋ねました。もちろん、顔を真っ青にして。
     立ち尽くすキリキザンの手にジュペッタは強引に籠を押し付けました。
    「こっ、これは……!?」
    「頼まれてたもの、お代はいらない、恨んでない」
     そう言うとジュペッタはくるりと背を向けて歩き出しました。後にパラセクトが続きます。
    「あっ、あの、ありがとうございます!!」
    「礼、あの子達、……言う、よし」
     あの子達? とコータスは不思議に思いました。あの子達といわれて思い浮かぶのは、カマドとレタスです。しかし、あの子達が何かしたなんて聞いていません。
     そのとき、店の奥からその二人が飛び出してきました。
    「こら!仕込み中だろう!」
    「パラセクトさん!」「ジュペッタさん!」

    「「ありがとうございます!!」」

     ジュペッタは振り返って頭を下げる二匹を見て、言いました。
    「いい弟子をもったねぇ」
    「あ、あぁ」
    「うらやましい限り……さ。パラゼン帰ろう」
     ジュペッタはそう言って笑いました。けれど、朝日に照らされたその笑顔は少しだけさびしげにも見えました。パラセクトは相変わらずいつもどおりでした。


    「いらっしゃい!」
     今日も『切り切り亭』は大賑わいです。真っ赤な前掛けをかけたキリキザンが、自慢の刃を振るいます。小さなチュリネも同じように前掛けをかけています。その前掛けはよくチュリネに似合った桃色でした。その桃色の前掛けの紐の部分に編まれた緑の糸が揺れています。
     熱い厨房内で、火を操る二人、コータスとカマド。彼らの汗の光る額には、鉢巻が巻かれています。コータスは黄色、カマドは青色。
     どれも、しっくりと似合った色でした。この色以外にこれ以上似合う色がないといえるほど。

     ――パラセクトさん、僕が言ったこと覚えてくれてた。

     あれは僕が選んだ色。そう思う度、カマドは誇り高い気持ちになりました。


    ――――――――――――

     御昼時。
     黒い森の端。
     御客は誰も来ない。
     蝋燭の火の揺れる室内。
     ロッキングチェアの揺れる音。
     とんがり帽子の黒い影。
     ただ廻り廻る糸車。
     村の手芸屋。
     黒木綿。




    黒木綿のBGMイメージ
    http://www.youtube.com/watch?v=pnfX09LLszA






    【あとがき】

     思ったより長くなりました。途中で筆が進まなくなってるのがバレバレですがゆるしてください。
     パラゼンさんがお気に入りです。

     あと、トンカツ食べてなくてすみません。
     あとはイケズキさんに投げますよろしこ!

     こんなんですむいません

    【何してもいいんだぞ】


      [No.1781] Re: そらとぶ女子会【書いてみた混合】 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/08/24(Wed) 08:46:45     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 眼鏡を掛けたピジョンが混じっていそうな気がするのはあくまで気のせい。タブンネ。

    アーアー
    よく聞こえなーい


      [No.1780] Re: そらとぶ女子会【書いてみた混合】 投稿者:586   《URL》   投稿日:2011/08/24(Wed) 06:21:35     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >「でもこの前、その子のチルットとエアームドが仲良く飛んでたよ」
    |ω`)<どう見てもチルチルちゃんとエアームドさんです。本当に(略

    砂浜で飛ぶ練習をしていたチルチルちゃん(※プリカちゃん参照)がいつの間にか立派に空を飛べるようになっていて、影ながら見守っていた身としてはうれしい限りです!

    眼鏡を掛けたピジョンが混じっていそうな気がするのはあくまで気のせい。タブンネ。


      [No.1779] そらとぶ女子会【書いてみた混合】 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/08/23(Tue) 22:19:31     98clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     覗き込む双眼鏡に入ったのは、1、2、3、4、5匹のピジョン。なにやら木に止まっておしゃべりしているような。ここらで鳥用のピピリンガルを取り出す。そしてマイクを鳴き声のするように向けた。


    「ねーねー、ちょっと最近いいオトコいなくなーい?」
    「そーそー。この間なんてさー、イケメンみつけたわけえ。んでぇ、そのオトコにさー、奥さんと子供いるのよー!でもそのオトコはアタシのがよかったみたいでぇ、奥さんと子供捨ててきたわけよー!まじウケルー!んでぇ、奥さんショックで子供おきざりとか、ありえなくない!?」
    「ちょっとそれは貴方が悪いよ…」
    「でもこの前、その子のチルットとエアームドが仲良く飛んでたよ」
    「そういえば、さっきアンタを送りに来たエアームド、ちょーイケメンじゃん。今度紹介してよ!」

     ……人間の女子も真っ青の会話だ。どうやらあのピジョンたちはみんな雌らしい。さらにピジョンたちはおしゃべりを続ける。

    「えー、貴方に紹介するとみんな取って行くでしょー」
    「彼氏いない私勝ち組!!」
    「はー?」
    「うそー?」
    「ありえなーい」

     一匹のピジョンに一斉に視線が集まる。彼氏がいないといったピジョンか。中々の体格で、特性は多分鳩胸の方か。

    「昨日もおっきートゲキッスと喋ってたじゃん!」
    「そうそう、何かあるごとに一緒に行く人がトゲキッスしかいないとか言っちゃって!」
    「いやでもそれは私がすぐ呼び出せる友達がトゲキッスくらいしかいないから」
    「いやいや、あのイチャッぷりはおかしくない?」
    「いっそ結婚しちまえYO!」

     なんか変な方向になっている。一匹のピジョンがうろたえて仲間と喋ってる。

    「いやいや、だからトゲキッスとはそういう仲ではない!確かに遊び仲間ではあるが、そういうトキメキなど一切ない!!」
    「ふーん、その割にはうろたえてる」
    「えええ、まじぃ?まさかの結婚とかー!余興はいつもの集団フェザーダンスぅ?」
    「ってかまじトキメキ感じないならまずは付き合ってみるべし」
    「それにまんざらでもなさそう」

     ピジョンの結婚式にはフェザーダンスでお祝いするのか。これまた一つ勉強になった。そしたらこのピジョンには悪いが、結婚式が見てみたい。集団フェザーダンス……攻撃力が残るやついないだろう。
     おや、何か違う鳴き声がする。確かに大きめのトゲキッスがいる。ああ、あのピジョンの彼氏と言われたトゲキッスだろうか。ピジョンたちに取り囲まれて、何やら言われてる。全部翻訳しきれず、大きく鳴いたトゲキッスの声だけが翻訳できた。

    「いやあ、はははは……」

     こいつもまんざらじゃないな。よし、あのピジョンには悪いけれど、少し見張らせてもらおう。そして、ピジョンの結婚式を撮影し、学会へと発表するのだ。そうすれば……

    ーーーーーーーーーー
    「ピジョン5匹が条件」
    「女子会で」
    二つのネタが合わさってカオスができた。


    【好きにしていい】【え、何の事?】


      [No.1778] ライフドレイン 投稿者:きとら   投稿日:2011/08/23(Tue) 02:41:51     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     私の後ろに立って。私の背中に触れて。
     そうしてそのまま私に巣くう負の感情を吸い出してくれないかカゲボウズ。
     このまま友人を妬みながら朽ちて行くのはあまりにも酷い。私に残された道が少しでもあるならばカゲボウズ、お前に助けてもらいたい。
     友人とは長い付き合いだ。ケンカもしたけれどいいやつなんだ。それでも私は押さえることが出来ない。友人が持つ才能への嫉妬、ひがみ。
     美しいとは無縁の、妬みの宝庫となった私。才能に気づいた友人は私を格下に扱い始めた。

     そうだカゲボウズ。そのままゆっくり、私の魂ごと恨みの感情を引き出すのだ。そうして私の魂はお前と一緒になり、他の人間の感情を食べていこう。
     私が友人を殺す前に、お前に会えて良かった。



    【お好きにどうぞ】


      [No.1777] オフお疲れ様でした&課題 投稿者:てこ   投稿日:2011/08/23(Tue) 00:01:16     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    てこです!なんか、ところどころ記憶抜けてますが、元気です!

    今回のオフ参加まことにありがとうございました!
    最初は全く集まらなくて、一人オフでもしようかと思っていたんですが、非常に多くの方が参加してくださって嬉しかったです!マジで!

    絶対次回あるんで、そのときもよろしくお願いします!そこんとこ夜露死苦!!

    では、楽しいオフのお礼はここまでにして、ここで皆さんの課題を集めたいと思います。

    え?なんのことだって・・・・・・?


    オフレポですよ!!



    みなさんのオフレポ楽しみにしてます。今回は書くネタに困らないと思います。原稿用紙一枚は書いてくださいね!!
    僕も福岡帰ったらマジ書きします。ポケコンはこの後やるんだ!本当に!!(フラグ

    オフレポはこのスレに返信する形でお願いします。本当にありがとうございました!!


      [No.1776] 休日のパパ (ホームセンター2) 投稿者:MAX   《URL》   投稿日:2011/08/22(Mon) 23:35:26     104clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     それは冬の、ある休日の午後のこと。
     アパートのベランダで、オレはコテを握っていた。目の前にはイワパレスのヤド……のレプリカ。プラスチック製の安っぽい表面に、質感のための生コンをベットリと塗りたくった。

     はぁ、と白いため息が出る。なんでアパート暮らしがこんな、日曜大工みたいな真似をしなきゃならないんだろうか。こういうのはマイホームを持つお父さん方がやるようなことだろうに、独身のオレがどうして。そう思い、そもそもの原因となったヤドの持ち主に目を向けた。
     丸出しのイワパレス本体。そいつがヤド無しに耐えかね、ベッドの布団に潜り込んで寒さをしのいでいた。コタツに潜ればさぞや絵になるだろうが、あいにくアパートは洋間で、暖房はエアコンぐらいだ。それも窓が開けっ放しだからつけるわけにもいかない。
     ……なかなか不満そうな顔をしてるじゃないか、えぇ? 防寒はそれで我慢しろ。
     ヤドに目を戻し、生コン塗りを再開する。1分2分で固まるような代物ではないが、乾燥しやすいこの時期だ。それに後のことを考えれば急ぐに越したことはない。
     気泡や塗りムラを作らないようにガリガリとコンクリートを広げながらも、自分の行いに疑問を感じ、ことここに至った経緯について後悔せずにはいられなかった。
     あぁ、やっぱりバトルなんてするんじゃなかった、と。


     *


     午前中のことだ。休日だというのに8時に目が覚めて、オレは町にフラリと出かけてみた。たまには朝食もズボラこいて広場でドーナツでも食べようか、という気になったのだ。
     確かに朝の冷え込みと、雪がない代わりの吹き荒ぶ風はコート越しでも骨身にしみる。しかしそれを乗り越えてこそ感じられる幸せもまた、休日だからこそと思ったからだ。
     そして広場のベンチに腰掛けて、町で買ったドーナツをポッポやヤミカラスたちと分け合う。ホントは悪いことなのかもしれないが、ドーナツのかけらを狙って集まるポッポたちは可愛らしいし、手のひらに乗せて出せば直接 ついばんでいくぐらいにこいつらも馴れているんだ。もはや今更。
     ついでに買ったホットコーヒーをひと口すすれば五臓六腑に染み渡り、身も心も暖まる。あの瞬間は本当に、心の安まるひと時をのんびりと過ごせたと思う。
     もちろんイワパレスとも分け合ったが、食い意地の張ったコイツはオレが口に入れようとした物を“うちおとす”を使ってでも横取りしようとする。そうして手に入れたドーナツのかけらを嬉しそうに食べる姿は、どうしてこんなこと覚えたんだろう、と悲しみを感じさせた。
     問題はここからだ。

    「おいオッサン、バトルしろよ」

     見ず知らずの少年が、オレにポケモンバトルを挑んできたんだ。
     20代のオレを指してオッサンとは、こちらを挑発するような態度と物言い。おおかた連勝で調子に乗ったガキが、年上は金を持ってるから賞金も多いとか、そんなオヤジ狩りみたいな発想に行き着いたんだろう。
     こちとらほとんどペットみたいな感覚でイワパレスを連れているんだがな。バトルなんて野生のポケモン相手を追い払う程度にしかやらないもんだ。
     オレとしてはチビッ子から金を巻き上げるほど困っちゃいないし、そんな疲れることは真っ平御免だ。しかし売られた喧嘩を買わずにいられない、イワパレスという名の困った野郎が勝手に飛び出しやがった。

    「よっし、やる気だな! いっけぇ、俺のホイーガ!」

     オレの意志を余所にホイーガとイワパレスのバトルが開始された。
     イヤだイヤだと思っちゃいるが、始まったからには仕方ない。ガキをこのまま増長させるのも癪だし、天狗の鼻をへし折るつもりでひとつ、イワパレスに協力してやろう。
     ……と軽く考えていたことを、オレはすぐさま改めた。調子に乗るだけの実力はあるようで、ホイーガはスピードを活かしてイワパレスを攪乱してきた。どこぞの一輪バイクのようにフィールドを駆け回り、正面に捉えようとするイワパレスに側面や背後から“ころがる”でぶつかってくる。
     苦手な岩タイプの技を何度も受け、ヤドの表面のタイルがあちこちひび割れる。あぁ、面倒を我慢して張り付けたのに。いっそすべて剥ぎ取ってくれたら、また地層を拝めるか? そんなことを考えた矢先、イワパレスの正面に“ころがる”がクリーンヒットした。
     さぁどうだ、と少年が勝ち誇る。イワパレスは痛みに身体を震わせていたが、ハサミで1発、地面を叩いた。
     ……おい? お前、まさか「ちくしょう もう がまんできねぇ」とか考えてないだろうな? 踏ん張って、うなって……おい待てよ。


     ヤドが弾けた。木っ端微塵に。


     うわーぃ、大当たりだ、ちくしょうめ! ストレスを募らせたイワパレスがついに、“からをやぶる”を使ってしまった。例えるなら“うんさんむしょう!”って所だ。
     飛び散るヤドの破片がホイーガをひるませ、さらに大小の石がばらまかれたことで転がる動きを鈍らせる。逆に速くなったイワパレスは周囲の岩を集めて“がんせきほう”をお見舞い。上下の揺れに目を回したホイーガから、その逆転の一撃で勝利をもぎ取った。

     ……あ? 賞金? 社会人なめんなよ。子供に金をせびるほど困窮しちゃいないよ。

     調子に乗った少年の鼻をあかした、というのはまぁまぁ気持ちのいいことだが、後が大変だった。弾け飛んだりホイーガに踏み潰されたヤドの破片は集めたところで組立不可能。
     あえなく、剥き身のイワパレスを連れて開店直後のホームセンターに足を運ぶこととなった。

     以前「殻を破るな」と言い聞かせた手前、本当は今月の給料日まで剥き身で過ごせ、と突き放すつもりだった。というか最初はそうした。
     しかし寒空の下でヤド無しはポケモンでもツラいらしい。5分ともたずにイワパレスはオレのコートの懐に潜り込んできた。爪やハサミをオレの身体に食い込ませてよじ登り、襟元から頭とハサミを出すと得意満面。その上オレの顔を見上げて「さぁ行こう」とハサミで前を指し示した。
     痛ぇし重いんだが。調子に乗ってないか、お前? なんか子供抱えてる気分だ。オレそんな歳じゃないのに。親戚にもそんな歳の子はいないのに。
     いっそ ほっぽりだしてやろうかとも思った。が、この状況でそれはほとんど虐待だ。かといって上着を貸すのはオレが寒い。かくして、ホームセンターに着くまでの間、オレは懐で うたた寝こきやがるイワパレスを抱え続けることになった。
     ……このやり場のないストレスは、いつかオレの胃に穴をあけるだろう。


     *


     行きつけのホームセンターにて、買い物を終えたオレたちはベンチで一息ついていた。そろそろお昼という頃、甘いコーヒーをすすって多少のカロリー摂取。というか今日は午前のうちからイヤに疲れて、甘い物が恋しくなっていた。
     とりあえず、ヤド作りに向けてプラスチックの箱と粉末コンクリートを。それに加えて生コンを混ぜるための箱とシャベル、塗るためのコテも買った。もちろん、イワパレスの趣味であるタイルもだ。今回は木目調。ちょっとはマシになったか?
     ここまででもそこそこの出費だと思ったが、今回は買った素材を運ぶための台車までも出費に加わることとなった。以前ならイワパレスに運ばせていたところだろうが、今のこいつはヤド無し。荷物を背負って運ぶにはちょっと形が悪かった。
     まぁ、今後も2度目3度目があると思えば、その時に役立つはずだから買って損無しとは思うが……。バトルとなればまたやるんだろうな、とイワパレスを睨んだ。当人は自分におやつはないのか、と言いたげに見上げてくるが、知るか。無茶苦茶しやがって、反省しろ。
     缶の縁に残ったコーヒーを吸い取り、休憩終わりと腰を上げた。空き缶を捨て、素材や道具を積んだ台車を押す。路面を転がるタイヤはゴロゴロとやかましく、そして当たり前のように懐に潜り込んできたイワパレスに、いつになく苛立ちを感じた。


     *


     そうして家に戻って昼飯を食べれば、さて午後のお勤めだ、と冒頭の日曜大工となった。
     ヤドの形を作るプラスチックの箱。その表面に生コンを塗りたくり、それが終われば箱の中にイシズマイ時代から残っていたコンクリ塊を砕いて詰め込む。かさ増ししたところに生コンを流し込み、四角いコンクリ塊を作成した。
     さて、あとは中まで固まってくれれば形は完成だ。ん〜っ、と身体を伸ばし、腰を捻ればバキバキと鳴った。ひと段落ついたことで休憩する気になり、部屋に戻ってお湯を沸かす。インスタントなコーヒーでも入れましょう、ってな。
     コーヒー片手にベッドに腰掛ければ、布団に潜っているイワパレスから「どんな感じ? もうできたの?」といった具合の視線を向けられた。あとはコンクリが固まるのを待って、お前好みのタイルを貼るだけだ。そう言って、コーヒーついでに用意した柿ピーを差し入れた。
     おー、「いいの?」って顔してるな。なんだ、ずいぶん遠慮がちだな。……いいから食いな。オレだっていつまでも不機嫌じゃないからさ。あ、でもちょっとくれ。
     オレが柿ピーを1つ摘めば、遠慮する気も失せたらしい。昼に我慢した分 いつもより一割増しぐらいの勢いでカリカリと食い始めた。

     こーして見てればかわいいもんなんだがな。ちょいと憎たらしいが、まぁ、付き合いの長い相棒だ。多少のやんちゃは大目に見てやらねぇと。

     休憩のコーヒーも飲み終わった頃、ヤドの様子を確認すれば表面だけは固まっていることがわかった。
     となれば、タイル貼りの時間か。理想を言えば進化した頃と同じような地層の模様がほしいが、しかしそれを用意するとなるとどれだけ手間と金がかかるやら……。とりあえず、今度のタイルは薄ら寒いビルのようなのではなく木目調というのがせめてもの救いに感じられた。
     ……ひょっとしたら、イワパレス。オレの趣味を少しだけ理解してくれたのかな? そう思って目を向ければ、おやつに満足したイワパレスは布団でうたた寝をしていた。
     幸せそうに寝やがって。それはいいんだが、こっちの苦労も露知らず、そう考えると不機嫌とはいかないまでもちょっとしたイタズラ心が沸き上がってきた……。


     *


     さーて、タイル貼りもだいたい完了。あとは中身が完全に固まったら、イワパレスに穴を掘らせればよし、と。まだイワパレスは寝てるし、こっちは夕食の準備でもするかねー。

     それから、うたた寝から目覚めたイワパレスは完成したヤドを見るや悲鳴を上げ、猛然とオレに抗議をしてきた。
     包装紙のラッピングとリボンによるプレゼントボックス風。どうやらよほどお気に召さなかったらしい。もちろん包みを剥がせばちゃんとタイル張りだが、しかし ぶんむくれるイワパレスの様子に、オレの仕返しは成功したと少しだけ気が晴れたのだった。


      [No.1775] 噂話 上 投稿者:moss   投稿日:2011/08/21(Sun) 21:54:22     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     始まりはただの噂話。


    「知ってる? 火曜日夕方に町の外れのごみ捨て場にごみを捨てに行くと、おっきなごみ袋が
    置いてあって、そのまま知らんぷりして捨てて帰ると、後ろからそいつに食べられるんだって」

    「いやあきらかにおかしいでしょその話。食べられたのになんでそんな話が広まってんのさ」

    「んー、誰かが見たんだって。ていうかウチも友達に聞いただけだからよくは知らないし」

     ほら。所詮噂話なんて友達に聞いたとか、友達は友達の友達に聞いたんだってとか曖昧な情報だけ
    じゃない。あたしは曖昧なものが嫌いだ。白黒はっきりして欲しい。
     ようやく授業も四時間目が終わり、昼休みに突入したばかり。あたしはいつもと同じように、
    クラスメイトの七瀬朱美とお弁当を広げていた。窓側の一番後ろの席。夏にここの席だと窓から
    風が入ってきて涼しい。それでもまだ暑いけど。
     ひょんなことから今朝からクラスで妙な噂話があちこちで飛び交っていた。朱美によると、
    どっかのクラスの女子生徒が噂話と同じような光景を見たのだという。
    あたしは自分でいうのもなんだが、現実主義者だから、そういう噂話や都市伝説といった曖昧な話を
    信じない。というか信じることじたいがあほらしいと思えるのだ。

    「後ね、こんなのも聞いた。えっと、学校から出てすぐに交差点あるじゃない?あそこを右に
    曲がると公園あるのわかる?」

    「あぁ。あの大きい滑り台とかブランコがあるところでしょ? 確か双葉公園だっけ」

    「そうそう、そこなんだけど。その公園の入り口に小さいどぶがあるんだって。で、そこから
    ヘドロの手が伸びてるのを見たんだって。掴んだらどうなるかとかは知らないけど」

    「ヘドロの手って、嫌だわぁ。つーかそんなの誰も掴もうとしないし、掴まれたら腐りそうだし」

     適当に相槌を打ってお弁当の中から卵焼きを箸でつまみ、口の中に放り込む。
    どぶからヘドロの手って……どうせ誰かがゴム手袋かなんかを棒に引っ掛けておいたのを見間違
    えたんじゃないの?どう考えてもあほらしい。うん、卵焼きうまし。

    「でも実際誰かが見たんだってばぁー。いい加減信じなよー、そのうちクラスの男子が見たって
    騒ぐかもしんないよぉ」

    「男子の言うことなんて信じられっかっつーの。あんなびびり集団が噂話を検証できると思う?
    それに誰かって誰よ。はっきりしなさいよっての」

     言い捨てた勢いで弁当を突く。ぶすぶすと突く。穴だらけになった可愛そうなたこさんウィンナー。

    「もー、あんまりそういうこと言わないのー。可愛そうでしょお、男子が」

     ぷーと頬を膨らませてサンドイッチをかじる朱美。彼女の容姿はどちらかというと、かわいい分類
    に……っていうか明らかに誰が見ても愛らしいといえる幼い顔立ちだ。
    いかにも良いところで育ちましたよという雰囲気を漂わす波打った栗色の髪。実際彼女はなかなかよい
    ご家庭で育ったようで。たしかパパかママが弁護士だとか公務員だとかなんとか。
    背も学年平均よりはかなり小さめ。平均よりも少し高いあたしと並ぶと姉妹のようだと言われる。
     それと同時にこのほんわかしたマイペースすぎる性格である。ここまでお嬢様要素がそろっているの
    もなかなかあることではない。めずらしいっちゃめずらしいが、やはりお嬢様要素のせいで世間知らず
    なところが多々あり、正直危なっかしくて困る。まあ、もう慣れてしまったけれど。

    「あんたその顔で男子に可愛そうとか言わないであげなよ……」

     すっと人差し指で斜め前を指す。指を指すことはいけないけど気にしない。
     向かい合っていた朱美は「えー?」と言って、お嬢様らしく優雅に振り返る。
    そこには何とも言えないような顔でこちらを見つめている。中にはぽかんと口をあけたままの者もいる。
     朱美が振り返る。

    「ねぇ、有紗ぁ。なんで男子はこっち見てるの? きしょくわるーい」

     忘れてた。朱美は男嫌いだった。

    「……あのさ。」

    「え? なーに?」

     再びサンドイッチを頬張り始めた朱美。頭に? がたくさん浮かんでいる。こりゃ何言っても意味が
    なさそうだわ。ため息をつく。

    「……やっぱ何でもない。早くご飯食べて屋上でも行こうね」

    「えぇー、何よそれぇ。もぉー」

     朱美が不満げな声をあげる。あたしはそれを聞かないフリ。

     穏やかに昼休みが過ぎていく。





     いや、別に信じたわけじゃない。気になっただけ、気になっただけよ。そう自分に言い聞かせる。
     朱美から聞いた話が気になって、部活をサボったのだ。今来ているのは例の公園の入り口。
    入り口の横の、溝のようなどぶが異臭を放って、異様な威圧感を出していた。覗いてみると、何かどす
    黒い物体がところどころに詰まっていた。汚い。
     公園には、小学生と思わしき男の子たちがサッカーボールを蹴り、走り回っている。滑り台では、小
    さな子供が滑り、近くで親が見守っている。何の変哲もないこの公園。果たして本当にヘドロの手なん
    て伸びるのだろうか?

     「……あるわけ無いわ、ありえないわよ。ヘドロの手なんて、ありえない」

     でも、そのあるわけ無いを信じてしまったからここに来たという事実は変わらない。気になっただけ
    と言いつつ、やっぱり本当は気になるのだ。仕方ない。それが人間というものだと、再び自分い言い聞
    かせる。
     三分くらいそこで立っていたが、今は手は伸びていないので、とりあえず中に入り、目に付いたベン
    チに座る。入り口に近いので、ここからでも辛うじて見える。ただ手が見えるかどうかはわからないが。
     一応、普段部活が終わる時間まで座って待ってみることにした。あと一時間程ある。それまでは携帯
    でもいじっていれば、いずれ何かしらの変化はあるだろう。きっと。別に無かったらやっぱりそれはそ
    れで寂しいとか無くて、ただ自分の考えが当たってただけ。別に信じてるわけじゃないし。
     座りながら足を組む。時折携帯をいじりながら、ちらちらと入り口のほうを覗く。変化は無い。
     七月でも半ばになれば、そりゃむしむしするし、ねっとりとして暑い。蝉も五月蝿い。座っているだ
    けでこんなにも暑いのに、サッカーボールで遊んでるあの男の子たちはどんなに暑いだろう。しかし、
    額から滴る汗はそんなことを感じさせないのか、彼らの表情は楽しそうだ。
     息をつく。携帯を閉じる。入り口を見る。変化は無い。
     時計を見ても、時間はさっきから五分ほどしか経っていなかった。暇な時間ほど長いものは無いわ。
    再び深く息をつく。
     汗が顔を伝った感覚に、あたしは鞄からピンク色のタオルを取り出した。軽く顔を拭き、暑い暑いと
    文句を垂れながら、もう一度携帯を開こうとしてなんとなくどぶの方を見た。
     その時だった。

    「え? うっそ。……えぇ?!」

     どぶに、何か手のようなものが突き出ているではないか。色はここからじゃはっきり見えないけど、
    確かに何か、ある。
     そこからの行動は早かった。ベンチに放っておいた鞄を引っつかみ、携帯を片手に走る。何故携帯を
    持ってるかというと、証拠を写メる……のもあるけど、都市伝説みたいな珍しいものを撮りたいという
    好奇心もある。ともかくまずはこの目で見ることが大切だ。入り口まで一気に走る。
     だが、しかし。

    「……あれぇ?」

     どぶを覗く。しかし、求めていたものはそこには存在しなかった。あるのはひたすらに伸びるどぶのみ。
     あった! そう確信に近い感情を抱いていたのであまりにも……というのは大げさだが、ショックは
    大きかった。ショックというよりも、喪失感の方がしっくりくるか。なんというか、こう、体から力んだ
    力がふっと抜ける脱力感。
     あたしは笑う。

    「なぁんだ……やっぱりヘドロの手なんてないじゃない……。さっきのは気のせい。所詮噂程度でしか
    ないんだわ……。ふん、やっぱ噂は嘘ね」

     踵を返して歩き出す。黒い鞄を肩にかけ直す。どぶは見ない。見たってどうせ嘘なのだから意味が無い。
    だから早く帰ろう。帰って夜ご飯を食べて、お風呂に入って寝よう。そして明日学校に
    行ったら朱美に言ってやろう。昨日のどぶの噂は嘘だったって。絶対に言ってやる。
    そして噂話なんて嘘だってことを証明してやるんだから。……証明なんてできないと思うけど。
     夕日が傾き始め、子供が家に帰る姿が見受けられる。普段部活から帰る時刻よりもだいぶ早いが、
    まあ、別にいいだろう。親も何も言わないだろうし。


     足早に去っていく少女。その少女は振り返らなかったために知ることができなかった。
    彼女の後ろで、例のどぶから何か手のようなものが伸びていることに。
      



    ――――――――――――――――――
    久々に書いた。一ヶ月以上前から溜まってたネタ。

    上ってことは下とかもあるの?って感じですが、下まできちんと書き終えられるか……。

    少なくとも今年中には書き上げたいですが、まあ遅くても一年以内には(爆)

    誤字脱字等ございましたらどうぞお気軽に。


      [No.1774] 20日時点参加状況 投稿者:茶色@代理   投稿日:2011/08/20(Sat) 23:35:53     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    8月20日夕方時点でTekoさんが把握している参加状況です。

    参加者 確認済(敬称略)

    16名

    てこ
    流月
    茶色
    moss
    風間深織(途中参加)
    久方小風夜
    レイニー(途中帰還)
    紀成
    キトラ(途中参加)
    小樽ミオ
    No、17
    586
    クーウィ
    巳佑
    ロッコ
    MAX

    夜参加(敬称略)

    14名

    てこ
    流月
    茶色
    風間深織
    久方小風夜
    紀成
    キトラ
    小樽ミオ
    No、17
    586
    クーウィ
    max
    巳佑
    ロッコ

    間違い等ありましたら教えてくださいませ。


      [No.1772] あ、あの、すいません……。 投稿者:巳佑   投稿日:2011/08/20(Sat) 18:24:08     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     こんにちは、巳佑です。
     
     先日は軍資金が21日までに間に合いそうにないということで、
     一回キャンセルにしてしまって申し訳ありませんでした。
     
     しかし、なんと、この度、奇跡的にオフ会に足りそうな(諭吉さん一人あれば大丈夫でしょうか?)金額が入りましたので、もし、大丈夫なら……もう一度、参加メンバーに入ってもいいでしょうか……?(汗)

     前日のこの時間帯に、唐突の申し出をしてしまい、申し訳ありません。(汗)

     それでは、失礼しました。


      [No.1771] ホラーな夜 投稿者:紀成   投稿日:2011/08/20(Sat) 15:45:53     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ズッ…ぺタ… ズッ…ぺタ…

    時刻は午前二時。どっかの曲のフレーズに『眠れない午前二時』っていうのがあったけど、そんなことお構いなしに私は熟睡していた。
    だけど人というものは自分の身に危険が迫ると嫌でも目が覚めてしまうものらしい。
    数分前、私はふと目を開けた。真っ暗な部屋。枕元には寝る前に読んでいたデザイン系の本と、充電中の携帯電話。メールが一件。
    だがそれよりも私の耳は別の違和感を察知していた。

    廊下から響いてくる、変な音。何かが這い蹲るような、不気味な音。いかん、貞子思い出した。
    冷房はタイマーが切れてしまったようで、さっきまで汗が噴き出していたはずなのに今は冷や汗がドッと出てきている。
    …気持ち悪い。
    私は懐中電灯を取り出した。いくら見慣れた自宅でも、こんな時間に灯りなしで歩いたら多分怪我する。
    勇気を出して、部屋のドアを開ける。ギギ、という音に耳を塞ぎたくなる。

    両親は海外に行っていて留守。おそらくいたとしても仕事中毒の二人は絶対に起きないだろう。下の寝室はもぬけの殻。
    …泥棒じゃないよね?なら言いたい。この家には金目の物なんて無いって。
    「なんだかなー…」
    抜き足、差し足、忍び足。そして今思ったけど、私の方が泥棒っぽくない?

    そろりそろりと階段を下りる。あの音はリビングから聞こえてくる。それにしても随分ゆっくりだ。
    階段を下りれば後は危険な物は無い。私は懐中電灯を消した。再び闇に包まれる空間。
    ソファに躓かないように動く。そして思う。私は忍者に向いていない。

    ついに見つけた。私の足元に、それがいる。幸いにも近くの壁にリビングのスイッチがある。
    息を深く吸い、吐く。覚悟を決めた。

    カチリ、という音がした―

    「…」
    「…」

    な ん だ こ れ は

    これがなんなのかが認識できない。ポケモン。確かに分かる。ただ、その姿が異様だった。
    緑色の細いからだに、小さな手足。フォルムからして四本足なんだろうけど、後の二本が行方不明。
    それもそのはずだ。
    その行方不明の足は、胴体に貼り付いている紙の箱の中に引っ付いていたのだから。

    結論。

    謎の音の正体は、私が最近友達になったツタージャが虫ポケホイホイに引っかかってそのまま動いている音でした。

    そして脱力した後、虫ポケホイホイからツタージャを剥がすのに三十分、傷跡に薬を塗るために逃げるツタージャを追い回して夜が明けたのはまた別の話。

    ―――――
    調子乗ってもう一本。ホラーってどんな感じかなと思ったらこうなった。
    ちなみにこの主人公はまだ十四歳のミドリです。分からない人はピクシブで検索してみよう!

    [何をしてもいいのよ]
    [ある意味ホラー?]


      [No.1770] ライモンシティ・裏通り 投稿者:紀成   投稿日:2011/08/20(Sat) 15:09:41     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ライモン。ユエ、ミドリ、ミスミ、カズミ。そして沢山の人間達が住む場所。
    昼夜問わず彼らは時間に追われそれぞれの時間を過ごす。
    だが、ここに住むのは彼らだけはない。ある者は路地裏に。またある者は深夜の遊園地に。
    そしてまたある者は黄昏時の静まり返ったリトルコートに…
    眠らない町、ライモン。その裏で蠢いている者は、今日もそれぞれの時間を過ごす。

    『なあ、見つかったか』
    『いや、まだだ』
    リトルコートの隅で、三体のコマタナが話をしていた。喧嘩でもしたのか、体のところどころに傷がある。
    『ったく、だからきちんと見てろって言ったのに』
    『すまん。チビのチョロネコ一匹だったからつい』
    『こんな場所で愚痴っていても何も始まらん。キリキザン様に報告だ』
    人が来た。だがその三匹の姿は既に何処にも無かった。

    一匹のチョロネコが、口に何かを咥えていた。綺麗なガラスともプラスチックとも言えるようなアクセサリーだ。
    『へへっ、うまく盗って来れたぜ』
    『また貢物か』
    『レパルダス様は俺たちチョロネコ軍団のリーダーなんだ。貢いでいて損は無い』
    三匹のチョロネコ。あまり大きさに差は見られないが、口調からそろそろ進化する時期なのが見て取れる。
    『急いだ方がいい。コマタナ達がさっき走っていくのが見えた』
    『おうよ!』
    三匹が駆け出した。

    『お父さん、なんだか町が騒がしいね』
    ヨーテリーとムーランドの親子が、遊園地の木陰で涼んでいた。ここらへんはいつも夏にはポケモン達の期間限定の縄張り争いの場となる。だが、今日は何故かレパルダス率いるチョロネコ軍団も、キリキザン率いるコマタナ組も来ていなかった。
    『そうだな。騒がしいな』
    お前は気にしないでいい、とムーランドの父親は息子に言った。その一方でふう、とため息をつく。
    『今夜はここは戦場になるかもしれないな…』

    「ユエさん、さっき変な物見たんですよ」
    所変わってここはカフェ『GEK1994』。カウンター席に座った昼休みのサラリーマンが声をかける。
    「変な物って?」
    「何匹ものコマタナが、一斉にギアステーションに入って行ったんです。ここらへんにコマタナはいないはずなのに…」
    「ああ、知られてないだけで割りと野良がいるのよ。ポケモン同士の伝達能力って、侮れないもの」
    住みやすい土地があれば、それは自然と広がっていく。口コミで。それは人もポケモンも変わらない。
    「そう、コマタナが」
    「あとチョロネコもいやに見たな」
    「へー」
    ユエはぼそりと言った。
    「また抗争になるかもね」

    『奪われた!?』
    『も、申し訳ありません』
    『…』
    ギアステーション、バトルサブウェイ。乗客おろか鉄道員の間でもあまり知られていない部屋がある。元々は痴漢やスリの被害に遭った人達の報告の場だったようだが、最近ではポケモンと一緒に乗る女性が多いため犯罪も激減し、全く使われていない。
    安物のパイプ椅子に座る一匹のキリキザンと、床で正座するコマタナ達。
    『チョロネコ軍団の下っ端に持っていかれました』
    『動きだけはいいからな』
    『おまけに来たばかりなのに土地勘があるし』
    『静かに!』
    キリキザンの一声で静まる部屋。
    『あれはマスターが欲しがっていた物なんだ。やっと手に入れることが出来たんだ。それを、それを…』
    『必ず取り返してみせます!ですからつじぎりだけは!』
    スックと立ち上がるキリキザン。
    『今宵こそ決着をつけてやる!』

    深夜。人っ子一人いなくなった遊園地に、二つの軍勢が現れた。
    一つは、レパルダス率いる『チョロネコ軍団』イメージカラーの旗は紫だ。
    もう一つは、キリキザン率いる『コマタナ組』旗は赤と黒。
    数時間前に降った夕立のせいで、真夏の暑さが取り払われてしまい、妙にさわやかだ。もっと風が吹いていた方がいいのかもしれないが、彼らは気にしない。
    『久しぶりね、キリキザン。相変わらずジジ臭い顔だこと』
    『フン。そっちこそ、レパルダス。このコンサバメイク』
    罵りあいが続く。この集団の中で彼らに口げんかで敵う者はいないだろう。
    『で?わざわざ果たし状を送り付けて来て、何の用?』
    『言葉通りの意味だ。昼間、そちらの下っ端が奪った宝飾品を返してもらおう』
    『あら』
    レパルダスの長い尾がひょいと上がった。先にキラキラ光るゴムがついている。
    『これ貴方のだったの?随分と可愛い趣味だこと』
    『勘違いするな。それはある人への贈り物にする予定だったんだ』
    『まあ!』
    わざとらしく驚くレパルダスに、コマタナ達がキレかけた。が、キリキザンによって押えられる。
    『思われている人が可哀想。こんな奴に気に入られてるなんて』
    『なんとでも言え。俺はあの人の器量と度胸に惚れたんだ』
    キャーキャーと♀のチョロネコ達が騒ぐ。当の本人は別に恥ずかしいことを言ったとはこれっぽっちも思っていないようだ。
    『だから返せ』
    『そう言われて返す性格じゃないの、知ってるでしょ?』
    『ああ。そんなだったらチョロネコ軍団は今頃存在していなかっただろうからな』
    バチバチッ、と二匹の間で火花が散った。
    『返さないんだな?』
    『もちろん』
    『よろしい、ならば戦争だ!』

    そして二つの軍は遊園地名物の観覧車の前で激突―しなかった。

    「シャンデラ、オーバーヒート」

    騒動を切り裂くような声が響いた。その瞬間、今度は二つの軍の激突を割く火柱が放たれる。
    呆気に取られる下っ端達の前に、カツンというサンダルのヒールの音。
    「今夜あたりじゃないかってマダムに言われて来たんだ。…騒がしいったらありゃしない」
    白い仮面と長い髪が月明かりを浴びて輝いている。スラリとした足が美しい線を描いている。
    『…怪人ファントム』
    キリキザンが呟いた。フンとファントムは鼻を鳴らす。
    「最近夜になると、遊園地の方で騒音がして眠れない。そういった苦情が相次いでいる。警察が動いたけど、人がいた形跡はなし。ライモンの七不思議に認定されかけてたよ」
    『出て行けというのか』
    「そこまでは言ってない。ただ、戦争はほどほどにしろって言ってんだ。あとチョロネコ軍団、その宝は返してやりなよ」
    レパルダスがそっぽを向いた。
    「タダとは言わない。これやるから」
    パンツのポケットから絡まった鎖を取り出した。少しずつ解いていくと、チャームが現れる。
    「ミドリ・ソラミネ秋の新作。まだ未発売」
    『何処で手に入れたの?』
    「あの子のポケモンはゲンガーの宅急便を通して私のことを知ってる。サンプルってことで送って来たんだ」
    レパルダスがゴムを外した。変わりにブレスレットをかけてやる。それは街灯に照らされて一層輝いてみえた。
    『…まあいいじゃない』
    「これは返していいんだね」
    『お好きにどうぞ』
    ファントムはゴムをキリキザンに投げてやった。
    「それ、樹脂だろ。今話題になってるブランドの」
    『ああ』
    「あそこのマスター、意外にお洒落なんだね」
    『バクフーンから聞いた話だ。あまり信憑性は無いが』
    向こうの方からサイレンの音が聞こえてきた。ファントムが肩を竦める。
    「これの方がよっぽど安眠妨害だよ。君たち、早く逃げた方がいい」
    そう言って振り向いた時には、二つの軍団は影も形もなくなっていた。
    「…」
    パトカーのライトが背中を照らす。振り向かない。そのまま走り出し、デスカーンに飛び乗った。

    「ユエさん、その髪ゴム可愛いね!」
    もうじき夏休みが終わるということで、朝からGEK1994はゼクロム片手に宿題をする学生で賑わっていた。相変わらず今日も暑い。温度計は三十五度を差している。
    「ああ、これ?もらったのよ」
    「えー!?誰に!?」
    「この町にいる人よ」

    ライモンシティ、裏通り。
    今日も彼らは、それぞれの時間の中で、それぞれの道を歩いている。

    ――――――――――
    キリキザーン!が書きたかった。格闘タイプに手も足も出なくても、私はキリキザン愛してる。
    [ブームに乗っ取ってみたのよ]
    [何をしてもいいのよ]


      [No.1769] Re: 一人前追加願いますー 投稿者:茶色@代理   投稿日:2011/08/20(Sat) 09:15:49     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    Tekoさんの代理で返信なのです。

    「ご注文、承ります」だそうです。


      [No.1767] 一人前追加願いますー 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/08/20(Sat) 08:26:06     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    せんせー
    ロッコさん(よろずに書き込んでるりえさん)が参加したいと言ってるので一人前追加願います。
    飲み屋は量が結構あったから人数増えても平気だとは思うw


      [No.1766] ふぉーてぃーえいと 投稿者:レイニー   《URL》   投稿日:2011/08/20(Sat) 01:58:19     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    感想どうもありがとうございます!

    > それだけでも笑えるのに、「タブンネローテーション」。
    > 歌詞が爆笑ものです。
    > タブンネが多い!カオスです。

    そりゃタブンネが歌いますから、歌詞もタブンネだらけになるわけです。タブンネ。

    > そして、公演後のタブンネ達の中に、約1匹、ドMが紛れていましたね。
    > 精神的にどうなっているのでしょうか。そのタブンネ。

    48匹も居たらそういう性癖のタブンネが一匹くらいいてもおかしくないと思うんだ!タブンネ。

    > 随分笑わせて頂きました。
    完全に出落ちのネタ作品なので、楽しんでくだされば作者としては大成功です。
    本当にありがとうございました!


      [No.1765] いつでもいらっしゃい!(営業時間内ならネ) 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/08/19(Fri) 17:20:28     28clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    音色さん、ネタ提供していただいたうえに作品までつけていただきありがとうございます。

    寝起きは皆機嫌が悪いもの……とは言っても、キリキザンはいつでも怒り出しますがw



    > 余談  20分クオリティだと食べに行けませんでした。また時間のある時に殴りこみますそりゃもう千切りキャベツ大盛りで。

    お待ちしております! 今度こそ、切り切り亭のトンカツ…… いや、キャベツの千切りをご賞味あれ!


    > 【がんばって食べるもん】
    > 【次は営業時間内に行ってやるぜふふふ】

    いらっしゃーい!







    以下はオマケです (すっとばしていただいてかまいませんw)



    「キリさん、もう少し穏やかに言ってあげなよ」
     居間まで戻ってくると、コータスはまた困ったように顔をしかめて言った。
    「うるせぇ、こんな時間に来るようなふてぇビリリダマにぁ、あれくらいいいんだよ!」
    「けどねぇ、ウチのトンカツ食べに来てくれたって言うのに、かわいそうじゃないか」
     コータスは気まずそうだ。
    「ふんっ、今日の分は全部売り切れたんだ。かわいそうだなんだ言ったって、ねぇもんは出せねぇだろう」
    「まぁ、そうなんだけど……」
     コータスは勢いを失い、キリキザンは再び寝床へ戻ろうと歩き出した。

    「あれ? キリさん」
     突然、コータスがキリキザンを呼びとめた。
    「あぁ?」
     いい加減眠たいキリキザンが、めんどくさそうに応える。
    「カマドとレタスはどこ?」
     そう言えば、さっきの客で目を覚ました二匹が戻っていない。
    「しらねぇよ。別に俺としちゃ、そのまま戻ってこなくてもいいくらいだ」 
    「またキリさん、そんなこと言って!」
     コータスが怒る声にも応じず、キリキザンは奥の寝床へ戻って行った。

     ――まぁ、そのうちに戻ってくるか。
     同じく眠たいコータスは、自らの希望も助けて、そんな考えを持ってキリキザンの後を追いかけた。


    「あーあ、さっきのお客さん、もうどこか行っちゃったのかな……」
     店先まで出て行ったカマドがこぼす。
    「うん、そうみたいだね……。残念」
     横でレタスが言う。頭の上に乗っかった皿が落ち込む頭に合わせて揺れた。

     翌朝、切り切り亭の皆が起き出した。
    「おい、オメェら昨日どこ行ってたんだ?」
     キリキザンがカマドとレタスに聞いた。
    「あ……。昨日のお客さんにトンカツを用意して追いかけていたんです……」
    「ん? 昨日の分はもうなかったはずだが……」
     キリキザンが言う
    「はい……。だから、僕の作った練習作でよければと思って……」
    「あ! カマドが作ったのが残っていたか!」
     キリキザンがしまったという風に言う。
    「待ってくださいよ、キリさん!」
     コータスが割り込む。
    「カマドが作ったトンカツなんて、まだまだとても客に出せるようなもんじゃないです」
     コータスが厳しく言う。カマドが小さくなって、うつむいた。
    「それでも、なんにも無しよかぁマシだろ。なんか、あの客、二度と来れねぇみたいなこと言ってたし」
    「それでも、ダメです。あれは出せません」
     きっぱりとコータスが言った。

    「ところで、そのトンカツ今どこにあるんだ? ちょいと食わせな」
     キリキザンがカマドに言った。
    「あれは今、冷蔵庫の中に……」
     チュリネが横からまた消え入るような声で言った。働いていない時は特に、キリキザンの事が苦手なのだ。
    「おお、それならさっさと食ってしまうか」
     キリキザンはそう言うと行ってしまった。

     ――二十分後

    「コーさん……。これいけるんじゃないのか……?」
     コータスが温め直したトンカツを食べてまず最初に言ったことだ。
    「いんや、ダメです。まだ火の入りが足りてないです」
     同じく食べていたコータスがキッパリいう。
    「コーさんはカマドに厳しいねぇ。まぁ確かに、コーさんに比べたら味は落ちるが、あの客に出す分にはこれで足りたかもな」
    「うっ……。まぁ……」
     コータスが言葉につまる。
    「ま、言ってもしょうがねぇこった。冷めねぇ内に、俺達で食っちまうことにしようぜ」
    「そうだね、キリさん。ほら、カマドとレタスもどう?」
     コータスとキリキザンの様子を横から見ていた二匹に声がかかる。
    「僕達は……あ、仕込みの準備行ってきます!」
     そう言うと、二匹はそろって厨房へ行ってしまった。……寝起きからトンカツを食べられるような胃は、まだ彼らにできていない。

     二度とやってくるか分からないあのビリリダマのことも忘れて、キリキザンとコータスはトンカツをおいしくいただきましたとさ……。



    オチないよー(爆


      [No.1764] Re: 夏コミの本について 投稿者:586   《URL》   投稿日:2011/08/18(Thu) 21:51:31     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どうも、586です(´ω`)
    今のところ、下記の方の分について持っていこうと考えています。

    CoCoさん
    mossさん
    クーウィさん
    てこさん
    レイニーさん
    久方さん
    小樽さん
    風間さん
    流月さん

    夏コミで買っていただいた&もらってくださった方(紀成さん・キトラさん・茶色さん・No.017さん)と私自身を除いた全員になります。

    で、状況はと言うと。
    現在手元に27冊在庫があり、この内4冊は土曜日に鳩さんに渡す予定で、上でさらに9人の方に渡すつもりでいます。
    加えて、個人的に渡したい方が現在2名います(オフ友1名&きとかげさん)。よって、余るのは27-(4+9+2)=12冊となります。思いの他減ったなぁ……

    この範囲内であれば「複数欲しい!」といったニーズにも応えて行きたいと思いますので、何かありましたらレスポンスをお願いいたします。


      [No.1763] 夏コミの本について 投稿者:No.017   投稿日:2011/08/18(Thu) 12:14:55     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    No.017です。
    宣伝失礼いたしまする。

    夏コミに来れなかった方で、本が欲しいという方、いらっしゃいましたら当日もっていきますので、
    ご連絡くださいませ。

    対象となる本
    「Rainy Days」 500円
    「クジラ博士のフィールドノート」 500円
    「ポケモンイラスト集 STREET」 800円


    なお、586さんの「プレゼント」についてはゴーヤさん本人に確認してください。
    人数分もっていくらしいことはおっしゃっていましたが。
    よろしくお願いいたします。


      [No.1762] 冷蔵庫を開けたらそこに 投稿者:CoCo   《URL》   投稿日:2011/08/18(Thu) 04:49:09     71clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     

     カゲボウズ。


     日差しに焦がされた万年床で目が覚めて、強烈な喉の渇きを覚えたので張って向かった冷蔵庫が、このザマである。
     自炊もテキトーで済ませるせいか、実家から仕送りと一緒に送られてくる漬物と酒と麦茶とアイス程度しか駐在していない冷蔵庫は基本的にすっからかんなのだが、なぜかチルドの下の段に四匹ほどがかたまって置いてある。
     もはや居る、とかそういう表現ですらこのダラけ具合には生ぬるい。置いてある。カゲボウズが置いてある。しなびたレタスのようになよなよっと置いてある。微笑んでいるようですらある。
     俺は顔面に冷気を浴びながら溜め息をついた。

     俺の職場はポケモントリミングセンターであるのだが、夏場は獣類の毛の処理を中心に仕事量がどっと増える。水浴びさながらにシャワーを浴びせるとどことなく心地よさそうだ。マグカルゴは冷えて一つの岩石のようになっていたが、これに関しては依頼主が悪いとしか言いようがない。

     たまの休みとなった途端これだよ。

     この古アパートの売りは主に安さと繁華街の近さだが、近所ではまったく別の理由で有名になっている。
     このカゲボウズたちである。
     彼らは宿付きカゲボウズだそうで、ご丁寧にも借りた部屋とセットでもれなくついてくる。
     そういえば俺と彼らの付き合いもそろそろ一周年である。
     大家さんが言っていたから間違いない。

     カゲボウズは冷蔵庫の中を転がっている。
     ひらひらした布の身体をプラスチックの横板にぺったりくっつけ、つまんでみるといやにひんやりしている。
     涼しいか。涼しいのかそこは。
     俺はいまにも干からびそうだってのに。

     そうだ飲み物だ。乾きに急かされ麦茶麦茶、と見上げてみると。
     刺さっている。
     カゲボウズが刺さっている。

     ポケットについた卵のホルダー、カゲボウズが逆さまになって刺さっていた。
     普段はふわりと空中に浮いている体はべろんと垂れ下がり、その隙間から黄色い目がじっ、とこっちを見ている。
     やつは他のカゲボウズどもよりひとまわり小さいように見えた。

     とりあえず、つまみあげてみる。
     ぺろんとした身体が俺の指にくっついた。よく冷えているので思わず両手で包んでしまった。あー、冷える。これは冷える。親指と親指の間から黄色い目がこっちを見ている。
     額にあててみる。ぺったりしている。ひやっこい。頭が冴えていくのを感じる。

     しばらくは無抵抗で生ける冷えピタと化していたちびボウズは、すこしぬるくなってくるともぞもぞと動き始め、不安定に浮遊しながら冷蔵庫の中へ戻っていった。
     そして兄貴分たちのいるチルド下ではなく、やはり卵ホルダーのあるポケットのほうへと横たわる。しかし、なにぶん身体が小さいので、そっと扉を閉めようとしたらコロンと転がって頭がホルダーに埋まり、またさっきのような逆さまになってしまった。

    「お前、そこやめとけよ」

     しかしどうやら、ホルダー部分が気に入っているらしい、直されれば横に戻るが、また刺さってしまっても決して動こうとしない。
     寝ぼけた頭で考える。どうやったらはまらずに済むだろうか。
     ――ああ、そうだ、卵を買ってこよう。

     思い立ち、寝巻のまま下だけジーパンに着替えて外へ出る。
     とたんに熱気が足元からむんと全身に絡み付いてきた。一歩を踏み出すだけでまるで見えないどろ沼を進んでいるかのようだ。ジーパンにしたのは失敗だった。暑い。かなり真面目に暑い。

     アスファルトの向こうに逃げ水を見たあたりから記憶がない。
     頭が茹で上がって視界はまるでネガフィルムだった。気が付いたらスーパーの前だった。
     大家さんに会った。

    「大丈夫ですか?」

     しかしその時俺は自分の状態に気が付いていなかった。大家さん曰く、水揚げされたばかりのオクタンのような顔をしていたらしい。むくんで真っ赤。そういえば水分もとらず、扇風機程度の冷房しかない部屋で十時間睡眠だった。それなのに、ヤバいかもしれない、と気が付いたのは大家さんの問いに「う、ああ」しか声が出なかったときが始めてだった。

     とりあえずダッシュで(とはいえ走れなかったので、腰を丸めて早足で)スポーツドリンクを買ってきてあおった。久しぶりにこんなに貪欲に水分を取った。喉から全身の細胞の一片にまでに水分が行き渡るのを感じた。素晴しい! 生きてるって素晴しい!

     スーパー前、木陰のベンチに座って猛省した。冷静になって考えればアホである。しかも寝起きの一番ヤバい顔を大家さんに見られた。俺は両手で顔を覆った。だめだもう廊下で大家さんとすれ違ったときに斜め45度で挨拶をキメるとかできない。だめだもう。

     放心していると、ふいに額に冷たいものが触れた。
     大家さんが「だーれだ?」なんて可愛らしいことを! という幻想は三秒で打ち砕かれた。目の前には見覚えのあるミカルゲ顔が現れたからだ。
     彼は御影先輩、俺の大学の先輩であるが、髪型セットで顔がミカルゲにとてもよく似ている。108の奇行も評判である。

    「暑いな」
    「先輩が視界に入った瞬間気温が上昇した気がしたんですけど」
    「気のせいだ」
    「そっすか」

     先輩はベンチを立っているのに額は冷たい。
     なにごとかと手を顔にやると、黒いかたまりが乗っていた。

    「そいつを追ってきたんだ。突然お前の部屋の窓から出てきたんで気になってな」

     ちびボウズはかわらない黄色い視線で俺をみつめている。
     まさかお前、俺のことを追ってきたのか……。

     しばし冷えたカゲボウズを頭に乗せ、休息を取ることとなった。
     けれど安息の時間は長く続かない。
    「あっついねー」「チョーあっちぃ(笑)」と話題がそれしかないなら会話すんじゃねえと突っ込みたくなるようなアベックが現れ、ベンチを占領したのだ。男のケツが俺を追いやった。カゲボウズが額から転がり落ちた。
     女のほうは夏まっさかりだというのに洒落こんだセーターなんか着ながら、足は丸出しである。けしからん。あついあついいいながらベタベタくっついてんじゃねえ見てるこっちが暑くなるわ! 離れろ! お前ら二人の間に必要なのはその心地いい木漏れ日じゃない永遠のダイアモンドクレパスだ! 涼しくなるぞ!

     ハッとしてカゲボウズを拾い上げると、今度はこいつ、にっこりと笑っている。
     体感温度はますます蒸すばかりだが、心の熱量が急激に失われていくのを感じた。
     溜め息をこぼいたアスファルトにアベックの片割れの男がガムをなすりつけた。
     先輩は「うどん喰いてえなー」とぼやいていた。



     おわってやろうよ


    ***
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】


     冷やしカゲボウズはじめました。
     洗濯日和を投稿して一年が過ぎたそうです。どうも長らく居座らせていただいてありがとうございます。
     タイトルはパロディです。パクリじゃないです。
     


      [No.1761] 8月18日(いろいろ決まったよ!) 投稿者:Teko   投稿日:2011/08/18(Thu) 02:07:06     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    現在状況 8/18

    参加者 確認済(敬称略)

    てこ
    流月
    茶色
    moss
    風間深織(途中参加)
    久方小風夜
    レイニー(途中帰還)
    紀成
    キトラ(途中参加)
    小樽ミオ
    No、17
    586
    クーウィ
    CoCo

    夜参加(敬称略)

    てこ
    流月
    茶色
    風間深織
    久方小風夜
    紀成
    キトラ
    小樽ミオ
    No、17
    586
    クーウィ
    CoCo

    【日程】

    《集合》 10:30くらい

    JR浜松町駅 北口 左に出て、横断歩道を渡るとある黄金の鳩像(http://ch07942.kitaguni.tv/e551002.html)前

    ポケモンセンター
    ご飯

    カラオケ 14:00〜17:00くらい

    mossちゃんを見送るの会
    カフェ?

    夜飲……夜食会 18:00〜20:00 くらい

    こんな感じ


      [No.1760] 遅ればせながら 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/08/17(Wed) 21:52:14     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    遅くなりましたが、感想ありがとうございます!
    >音色さん
    >  ・・人の意識をポケモンにうつす。
    >  それなんて鏡嫌い(殴
    こちら後出しで申し訳ない。

    > 【そういや鏡嫌い手直ししてないけど、あれ誤字脱字以外で直しようがない気がする】
    > 【きっと読みたい人はいないと確信】
    何々聞こえない。特に2つ目。

    > 【きとかげ様ってときどき恐ろしいお話をさらっと書くから素晴らしいのよね】
    照れます。


    >きとらさん
    > SFホラーのようなものを感じました。
    > 意識が合体してお父さんとお母さんは帰って来れなくなってしまったのではないかと。
    > いやそのようにしか見えなくて。
    真相は闇の中……ふふふ。
    「今日、ラティオスとラティアスを見ました。とってもめずらしいポケモンだそうです。こっちをじっと見ていました」
    なんて……ねえ。

    > それで、お兄ちゃんは体弱いんじゃなくて、戻す研究のために残るのではないかと。
    ふふふ……ふ、それは考えてなかっ(ry

    > 邪推すぎるかもしれないけれど、色々と行間から物語が溢れるようでした。
    邪推大歓迎なのですよ。


      [No.1759] 某コジョンドの帰省レポート 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/08/17(Wed) 21:06:33     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    出発前日――

     私達が今回行くのはオルカの父方の実家、行くメンバーはリーダー、ナイト、サワン、ティラにカゲマル、そして私レッセ。
     実家は、とある島の山の中だそうよ。だいだい船で二時間、車で一時間ですって。どんな所なのか、今から楽しみよ♪


    一日目――

     都合により夜に出発して深夜に実家に着いたから眠かった…。
     そのままみんなでグースカ寝ちゃったんだけれど、起きたのは朝の六時。蝉の合唱に起こされたわ。なんだかオルカの家の周りにいるのより、はるかに数も種類も多いのよね。ミンミンって鳴くやつはたまに家にもいるけど、オーシツクツクって鳴くのは初めて聞いたわ。

     昼間はオルカもみんなもだらだらしてたわ。時間の流れがゆっくりで、いつもの賑やかさはどこへやらよ。みんなも寝不足だったみたい。
     夕方は、お墓へご先祖様を迎えに行ったの。お墓は、実家から歩いてすぐ近く。オルカは慣れてるみたいなんだけど、私達は毛が逆立ちっぱなしだったわ。あと、あそこにいる山蟻が強烈! 噛まれると物凄い痛かったわ。サイズもやけにでかいし。
     カナカナカナって、あれも蝉なのかしら? ちょっと不気味で、雰囲気的にけっこう怖かったの…。

     この地域の風習では、お盆にお墓参りをする時、墓石に水をかけてからハスの葉をかぶせるのね。ティラがそれを見て、ふざけて余った葉を一枚頭にのっけてたわ…。ハスの葉をかぶったゾロアーク、皆さんのご想像におまかせするわね。


    二日目――
     
     今朝も蝉の大合唱で起床よ。実家は山の中にあって広いから、比較的一日中風が通って涼しいけど、唯一暑苦しいものと言ったらこれね。でも、一日中聞いてるとだんだん気にならなくなってくるの。慣れって怖いわ。

     空気もおいしいし動けるスペースも沢山あるからいいんだけど、オルカは虫が苦手で困るみたい。
     夜になってから、部屋にガガンボ二匹と羽虫が入ってきて、パニックになったオルカがアースジェ●トを部屋に撒き散らしたの。おかげでナイトとカゲマルが半死半生になっちゃって大変だったわ。後でリーダーが久しぶりにメガホーンを一発、ぶち込んでたわね。

     虫が苦手なくせにパーティに虫タイプが多いのよね。オルカの趣味って本当理解できないわ…。
     

    三日目――

     今日は網戸の張替えをしたわ(っていってもオルカが)。この家って、スズメバチと昔から暮らしてるんですって、すごいわね。
     軒下とかを見ると、人の頭二つ分くらいのでっかい巣が三つくらいもあったわ。今回は、二回の軒下に新しく巣を作り出したから、お互い共存するために珍しくオルカが一生懸命やってたわ。多分羽虫とかが入らないようにってのもあるわね。すぐそこで騎士と忍者が複雑そうな顔をしてたけど、気にしない。
     
     夕方になって、オルカが外出しちゃったから我らポケモンはフリーダム! 何かしようか? ってことで肝試しをやったの。
     驚かし役はもちろんティラで、まあ、暗くなった家の周りや庭をふざけまわるだけだったの。それで済めばよかったんだけど…。
     
     オルカは、たらふく食って幸せ〜って顔で帰ってきたわ。

     その晩のこと…。
     みんなとうに寝静まったころ、サワンが急に叫び声をあげたの。何事!? と思ってみんな飛び起きたわ。すると…

     部屋に、青白い人魂が一つ、浮いていたのよ。
     その人魂は徐々に大きくなっていって、やがて男の人の姿に…。
     私達全員、絶叫したわ。

     それから先は、よく覚えてないの。ただ、オルカだけは気付かぬ様子ですやすやと眠ってたのよね。
     

    最終日――

     今朝は昨晩のことのせいで、オルカ以外寝不足よ。オルカは『どうしたの?』って、本当に気付いてなかった様子で聞いてきたわ。みんな、黙って首を振るだけだったけどね。

     夜に、また船に乗って家に帰らなきゃ。けっこういい所だったから、ちょっと残念だわ。
     
     帰りの船で、寝不足のせいでみんな気持ち悪そうだったの。リーダーなんて、途中で夜の海に飛び込んで、そのまま船の跡について泳いできたのよ。
     『やっぱり泳いだ方が気分もいいな』って、リーダーすごすぎね…。


    まとめ――

    ・ティラとナイトは、そうめん食べるときに七味唐辛子を入れすぎ

    ・リーダーとカゲマルと私は、甘いお菓子を食べすぎ。体重が…

    ・サワン、クーラーに当たりすぎて少々夏バテ気味

    ・オルカは勉強しなさい!


    【何をしてもいいのよ】
    【夏休み明けにテストがあるのよ】


      [No.1758] また明日にしましょう 投稿者:音色   投稿日:2011/08/16(Tue) 23:53:12     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「たのもぉぉぉ―――!」

     本日の切り切り亭・・には一風変わった客が雪崩れ込んで、いや転がり込んできた。
     夜中に。

    「もう今日は店じまいだよ」
    「にべもなく追い出された!」

     時間外なので容赦のないキリキザンはごろごろと入ってきたビリリダマを戸口の方へ転がす。

    「何でですか何でですか!?ここのトンカツ食べに来たのに!」
    「営業時間内に来い」
    「そりゃごもっとも!」

     眠りかけていたレタスもかまどの二匹も、ぎゃいぎゃいとうるさい侵入者(自称客)の声がうるさくて目が覚めてしまったらしい。

    「でも今じゃないと駄目なんだぁぁ!」
    「知るか」
    「あーあーあー聞こえません聞こえません俺特性は『ぼうおん』なんで!」

     遂にはコ―タスまで置きだしてこの珍妙な客に冷たい視線を浴びせ始めた。彼等にしては夜中にいきなり店に転がりこまれてやたらと騒がれて安眠の邪魔をするだけの似非モンスターボールに用はないのである。

    「いやだって今じゃないと俺のテレポートでまたここにこれるかどうかわからな」
    「うるせぇ今寝ないと明日の朝の仕込みが間にあわねぇんだ一昨日喰いに来やがれぇぇぇ!」

     思いっきりビリリダマを山の上から蹴落として、切り切り停には静かな安眠タイムが戻ったとさ。

     教訓:人間でもポケモンでもお腹が減っている時と眠い時はすこぶる機嫌が悪い

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  20分クオリティだと食べに行けませんでした。また時間のある時に殴りこみますそりゃもう千切りキャベツ大盛りで。

    【がんばって食べるもん】
    【次は営業時間内に行ってやるぜふふふ】


      [No.1757] トンカツ定食屋「切り切り亭」 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/08/16(Tue) 22:11:35     131clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     ――タタタタタッ
     ――ジュージュー

     ここはキリキザンとコータスのトンカツ専門の定食屋「切り切り亭」。知る者ぞ知る、言い換えれば、常連ばかりの、もっと言い換えれば、あんまり賑わっていない、定食屋だ。
     ここのトンカツは一度食べたら忘れられないと評判なのだが、あまり流行っていない。それと言うのも、この店の店主――キリキザンのせいだ。

    「お客さん……、キャベツ喰わねぇのかい?」
     ドスの効いた、まるでヤ〇ザのボスのようなキリキザンの声がする。
    「ご、ごめんなさい。食べます、ちゃんと食べますからっ!」
     今にも泣きだしそうな声で、客席のタブンネが言う。
     カウンター越しにぬぅっと顔を近づけられ、キリキザンのあの斧のような額がタブンネの目の前に迫る。
    「おう、ならいいんだよ。残さずちゃんと喰いなよ」
     キリキザンはそう言うと、キャベツの山の前に戻って行った。

     このキリキザンはキャベツの千切りに並々ならぬこだわりを持っている。
     昔はそのようなことは無く、この店を始めたころはごく普通に、トンカツを揚げキャベツの千切りをしていた。それが、どうにもキャベツだけを残す客が多い事に頭を悩ませ、キャベツもきちんと食べてもらえるようにと、千切りの方法にこだわり始めた。
     このキリキザン、こだわり始めると止まらない節があり、以来ずっとキャベツの千切りばかりに注力して、トンカツ作りに手を抜くようになってしまったのだ。
     ある時は肉が生焼けだったり、ある時はとてつもなく大きかったり、もしくは小さかったり、差し出された皿にキャベツしか乗っていなかった、なんてこともあった。
     そういう訳で次々と客が減り、一時はあわや店じまいという所までなっていたのだが、それはもったいないと常連の一匹であるコータスが立ち上がった。
     彼はこの店のトンカツの味を守るべくと、長年食べてきた味覚を頼りに、自分がトンカツを作るとキリキザンに申し出た。キリキザンはその申し出をあっさり受け入れ、今の店のがある。
     今の切り切り亭は、コータスが揚げることのできるよう、特別に改造したカマド(床より下に火を焚くところがあり、コータスが火を吹き入れることで火力を調節できる)で、彼がトンカツを作り、出来上がったらキリキザンがそれをキャベツの千切りと共に皿に盛りつける。
     キリキザンにしてみれば、自分がキャベツの千切りに集中できて、なおかつ店も続けられるのなら、それ以上のことは無かったから、コータスのことは大歓迎だった。
     強すぎるこだわりもそうだが、キリキザンには生来頑固なところがある。言葉づかいも荒いし、無愛想だから客が怖がってしまう。そのせいで、なかなか一見客が寄り付きづらいのだ。

    「キリさん、あんまりお客さん怖がらせないでおくれって、いつも言っているじゃないか」
     タブンネが店を出て、厨房でトンカツを揚げていたコータスが、困ったようにこぼす。キリさんとは、店主のキリキザンの事だ。コータスは常連時代から彼をそう呼ぶ。
    「キャベツを残すようなガキぁ、あれくらいビビらした方がいいんだ。いつもそう言ってるだろ、コーさん」
     コーさんとは、トンカツを揚げるコータスの事だ。
    「まったくキリさん、ホント頑固だねぇ……」
    「余計なお世話だってんだ。ほら、さっさと次揚げねぇか、客が待ってんぞ」
    「はいはい承知いたしましたよ、店長様」
     キリキザン店長は一度ふんっと鼻息で答えると、次のキャベツに手を伸ばした。

     こんな感じでこの店の毎日は進んでいる。

     ある日の事、昼過ぎ。コータスはかまどの火の番をし、キリキザンは丸椅子に座って両腕のナイフをこすり合わせて研いでいた。この時間帯はヒマである。
     ――ガラガラガラ!
     突然、店の扉があく大きな音がした。
    「い、いらっしゃい!」
     キリキザンが上ずった声で客を迎える。その理由は二つある。一つは、こんな時間に人が来るとは思っていなかったのだ。もう一つは――
    「あ、あの〜……」
     小さな体から、今にも消え入りそうな声が聞こえた。
    「驚いたな。オメェさん達みたいなガキが来るなんて、開店以来じゃないか?」
     そう、彼ら客はまだ幼いヒノアラシとチュリネだったのだ。一見はおろか、子供がやってくることはこれまで一度も無かったことだ。
    「キリさん! また口が悪いよ、『ガキ』だなんて」
     コータスも内心驚きつつ、キリキザンをいなした。
    「おっと悪い悪い。で、お客さんたち、注文は?」
     キリキザンが聞く。
    「あの〜……。そうじゃないんです……」
    「ん、そうじゃない?」
    「ねぇ……やっぱりやめようよぉ……」 
     ヒノアラシの隣に立つチュリネが今にも泣きだしそうな声でささやいている。
    「やめない! 一緒に決めたことだろっ」
     ヒノアラシがささやきつつも、必死の声でチュリネに言う。
    「お客さん、早く要件言ってくれますかねぇ、営業中なんですよ」
     キリキザンが例のあの恐ろしい声で言う。
     とたんにチュリネはキッと口を結び黙った。見開かれた両目からは今にも涙がこぼれ落ちてきそうだ。
    「あ、あの〜……、その〜……」
    「さっさと言わねぇかっ!」
     しびれを切らしたキリキザンが怒った。待たされることが何より嫌いなのだ。
     その声に我慢できなくなったチュリネがとうとう泣きだした。ヒノアラシも恐怖で全身をこわばらせている。
    「キリさんっ、いい加減にしてください! 何を子供相手にムキになっているんですか! ……ごめんねぇ、君たち。驚かせちゃって。さっきの話の続き、聞かせてもらえるかな?」
     コータスがキリキザンをたしなめて、ヒノアラシ達に優しく声をかけた。
    「おっと……、すまん、悪かった。俺はどうにも短気でいけねぇ。坊主たち、怖がらなくていいから続き聞かせてくれや」
     キリキザンがおとなしくなって謝ると、ようやくヒノアラシが話始めた。

    「そのですね……、僕とこのチュリネはこの間まで人間と一緒に旅をしていたのですが……、この間、リゾートデザートを抜ける最中に、その人間からこっそり別れたんです」
    「ほぉ! そりゃまた大胆な坊主たちだ」
    「本当かい!? そりゃまたどうして……?」
     キリキザンが驚きで合いの手を入れる。コータスも目を丸くしている。
     こんな子供がトレーナーから自ら抜け出すなんて、にわかに信じがたい事だ。
    「本当です。それというのもこのチュリネなんですが――」
    「ここで働かせてください!」
     ヒノアラシの説明が終わるか終らないうちに、チュリネが叫んだ。
    「え……」
     キリキザンは言葉をなくしてしまったようだ。
    「一体どういう……?」
     コータスも訳が分からず、困惑している。
    「チュリネ! きちんと説明してからお願いするって言っただろ」
     ヒノアラシが焦っている。
    「あ、ご、ごめんなさい……」
     周りの様子に、チュリネは一気に勢いを失ってしまった。
    「僕たち、このチュリネの母親を探しているんです。この子の母親は、昔この店の常連で、ここの料理が大好きだったそうで……ここに来れば会えるんじゃないかと」
    「母親を探してるって……、その子は人間に着いていたんだろ?」
     コータスが聞いた。
    「そうです。ヤグルマの森で捕まえられて、家族から離れてしまったそうなんです」
    「よく分からねぇんだが、普通人間につかまったポケモンってのは、そんな家族に未練をもたねぇんじゃねぇのか?」
     キリキザンが納得できないという風に聞く。
    「そうじゃないポケモンだっています! この子は幼いうちから、母親と引き離されてしまって、ずっとさびしがっているんです」
     ヒノアラシはちょっとムキになって言った。
    「ふぅん、で、ウチの常連だったからここに来てみたって訳か」
    「そうです」
     コータスの言葉にヒノアラシがうなづく。
    「ほぉ……。ウチの常連ねぇ……。けど、チュリネの常連なんていたかぁ……」
     キリキザンは誰の事か思い出せずに、顔をしかめている。
    「このチュリネの母親……。まだ、私がいなかった時代の客じゃないかなぁ」
    「あの〜……、お母さんはドレディアなんですけど……」
     チュリネが蚊の鳴くような小さい声で言う。
    「ドレディア……? あ! あのドレディアか!」
    「思い出してもらえましたか」
     ほっとしたようにヒノアラシが確かめる
    「だいぶ昔の常連だ。野良のくせにやたら綺麗な花つけててなぁ、しかも、草ポケモンの割にトンカツばかりよく食うから物珍しいって、あの頃は彼女目当ての客も結構来てたなぁ。……だがよぉ、もうここには十年以上来てないはずだぞ?」
     キリキザンの言葉を聞いて、嬉しそうな二匹の顔が一瞬曇ったが、すぐに気を取り直してヒノアラシが続けた。
    「その事は分かっています。ですから、僕たちをここでお母さんが見つかるまで、住み込みで働かせてはもらえませんか? どんな仕事でもしますから」
    「そういうこと……。けどねぇ……、ここにいたってお母さん見つかるとは限らないんだよ」
     コータスはやんわり断ろうとした。正直子供がいても邪魔なだけだ。
    「分かっています。それでも、僕たちはもう帰る場所がないんです」
    「ん〜……そう言われてもなぁ……。ねぇ……キリさん?」
     なかなか断りづらくなり、キリキザンに話を振る。
     キリキザンはずっと渋い顔をして目をつむっていた。う〜ん、と唸っている。
    「ダメだ。悪いが、おめぇさん達を預かる訳にはいかない」
     キリキザンはキッパリと言った。
    「お願いです。僕たちここで雇ってもらえなかったら、行く場所がないんです!」
     ヒノアラシが懇願する。チュリネは再び、今にも泣き出しそうな顔でキリキザンを見ている。
    「ダメなものはダメだ。帰る場所が無いってたって、オメェさん達はここに来るまでだって野宿を続けてきたんだろ。それにオメェさん達はトレーナーから外れた野良だ。それが一番ふさわしい生き方ってもんだろ」
    「キリさん……そんな言い方しなくても……」
     コータスは気が悪そうにしている。キリキザンの言うことは、自分がまさしく言いたかったことであり、言い出せなかったことでもある。彼らは彼らで生きなければならない。母親さがしもまたそうだ。
     それだけ言うと、キリキザンは黙ってしまった。
    「キリキザンさんのおっしゃることはもっともです。けど、僕たちはどうしても、彼女に会いたいんです!」
     ヒノアラシが必死に頼み込む。
    「悪いが、そんなこと俺達には関係のないこった。オメェさん達のようなハンパもん預かっても、商売の邪魔になるだけだしな」
    「僕達がハンパな気持ちでここまで来たって言うんですか!」
     ヒノアラシはキリキザンの言葉に憤慨して言う。
    「ああ、ハンパだね。俺達と働こうって覚悟がちぃとも感じられねぇな」
    「このぉ……!」
     背中の炎をバッと燃え上がらせ、今にも逆上しそうな勢いのヒノアラシだったが、突然火を収めて踵を返した。
    「チュリネ、行くよ」
    「えっ、でも……」
     チュリネは困惑している。
    「キリキザンさん。僕達まだ諦めてないですから! また明日お願いに参ります」
     それだけ言うと、彼らは店の出口へと向かっていった。

    「どうする? キリさん?」
     店の外まで彼らを見送ったコータスが、困った顔をして、丸椅子に座ったままのキリキザンに言った。
    「どうもへちまもあるか! あんなガキども何度来られてもお断りだ」
    「でもねぇ、あんな小さな子供なんだよ。もともとは人間に着いてたって言うし……。これからずっと野性で生きるのは厳しいと思うけどなぁ……」
    「何甘いこと言ってんだ、コーさん。野良になったのはあいつらの自身の意思だろうが。いつ野垂れ死のうが、それは全部あいつらの責任だ。コーさんだって、分かってんだろ?」
    「まぁ……」
     コータスは渋い顔して黙り込んだ。
     キリさんの言うことは最もだ。私だって本当は、あの子たちを預かる訳にいかないことくらい分かってる。でも、やっぱりかわいそうだと、思ってしまう。

     翌日、彼らは宣告通り、また同じくらいの時間にやって来た。
     キリキザンは相変わらず、コータスも気の悪そうな顔をするだけで、一切相手にしなかった。
     その翌日も、そのまた翌日も、ヒノアラシとチュリネはやって来た。しかし、その度にキリキザンもコータスも、相手にせずに帰していた。

     ある日の事。
    「キリキザンさん、今日こそお願いします」
     ヒノアラシ達がやって来た。
    「オメェさん達もしつこいねぇ。何度来られても、お断りだよ」
     キリキザンが呆れたように言う。
    「そう言わずに、もう一度考え直してください。僕達一生懸命働きますから……」
     ここの所毎日こんな調子だ。しかし、その日は少し違った。

     ――ガタッ!

     突然、ヒノアラシが倒れたのだ。
    「あっ!」
     慌てて、チュリネがそばへ寄る。
    「おいっ! どうしたんだ?」
     キリキザンも顔色を変えてヒノアラシの様子をうかがう。厨房の奥で火の番をしていたコータスも、後からのっそり、彼なりの全速力でやって来た。
    「……お、お……」
    「あん、何だ? もっとはっきり言いな!」
     口をパクパクさせて話すヒノアラシに、キリキザンが聞き返した。

    「……お腹すいた……」
     やっとヒノアラシからこぼれ出た言葉はそれだった。

    「はぁ? 腹減って目ぇまわしてんのかコイツは……」
     キリキザンは呆れたように言い、コータスはクスっと笑った。

    「まったく、しょうがねぇ坊主だなぁ」
     ぶつぶつ文句を言いつつ、キリキザンは厨房に立った。コータスも、新たな肉をかまどの鍋に入れた。

    「キリさん、野垂れ死ぬなら勝手に、なんて言ってたくせに、やっぱ気になってたんじゃないっすか?」
     コータスがニヤニヤ顔でキリキザンに声をかける。
    「目の前で倒れられてほっとく奴があるか! こんなことはこれっきりだ」
     そういって、キャベツの山にキリキザンが手を伸ばす。
    「まったく……キリさんは素直じゃないなぁ」
    「バカ野郎! 無駄口叩いてる間ぁあったら、手ぇ動かしやがれ!」
     いつも以上に声を張るキリキザン。黙々とキャベツを千切り続けるおかげで、兜のような頭の下で真っ赤になった顔は誰にも見られることは無かった。

     ――パクパクパク……ごっくん。

    「おいおい、もうちょっとゆっくり喰いな。あんまり空きっ腹に突っ込みすぎると、腹壊すぞ」
    「分か――り――ました」
     口いっぱいにトンカツをほおばりながら、ヒノアラシが言う。
     キリキザンはやれやれと言った様子でヒノアラシを見ていた。

    「おい、そこのチュリネ」
     横から物欲しげにヒノアラシを見ているチュリネにキリキザンが声をかけた。
    「は、はい……?」
     突然、ぶっきらぼうに呼びかけられて、またチュリネは恐々と小さな声で返事する。
    「オメェさんの分だ。食べな」
     そういって、キリキザンはトンカツとキャベツの盛られた皿を差し出した。
    「え、いいの? でも……」
     予想外のもてなしに驚くチュリネ。
    「けっ、年端もいかねぇガキが、いっちょまえに遠慮なんかするんじゃねぇよ。どうせオメェさん達、ずっとろくなもん食ってなかったんだろ?」
     と、キリキザン。
    「そうだよ。遠慮なんかしないで食べて。自分で言うのもなんだけど、おいしいよ」
     と、コータス。
    「う、うん……」
     なお、申し訳なさそうにして、チュリネは皿に顔を近づけた。
    「おっと、君にはちょっと食べづらいかな」
     コータスが言う。チュリネは小さな口でトンカツが噛みきれずに四苦八苦していた。
    「トンカツをちょっと戻しな」
     キリキザンはそう言い、皿に戻ったトンカツを厨房まで持って行った。

     ――サク、サク、サク。
     軽快な音とともに、トンカツが切り分けられた。

    「ほらよ」
     サイコロ状にまで切られたトンカツが差し出された。差し出したキリキザンの手刀はまだ、油と衣で汚れていた。
    「ほぉー! キリさんがキャベツ以外の物を切るなんて、一体何年ぶりだろう? 今日は雪でも降るんじゃないかな?」
     コータスが驚く。
    「よ、余計なこと言ってんじゃねぇ! 俺だってこれくらいのことすらぁな」
     ムキになって否定するキリキザンを見、コータスはクスクス笑った。
    「分かってますって、キリさん」
     キリキザンはなおも恥ずかしげにぶつぶつ言っていたが、コータスは破顔を戻さずにただうなづくだけだった。

    「ところで、どうだった? 味は?」
     コータスが、食べ終えたチュリネとヒノアラシに聞く。その様子を少し離れた厨房からキリキザンも見ていた。
    「とても美味しかったです! こんな……こんなトンカツを……僕も作りたい!」
     トンカツの味に感激してヒノアラシが叫ぶ。
    「お、嬉しいこと言ってくれるねぇ」
     ニヤニヤとしてコータスが言う。それと一緒に、ある心境の変化が彼の内にあった。
    「すっごくおいしかった!」
     チュリネが初めて、元気のいい声を出した。
    「うんうん、ありがとうねぇ。そう言ってもらえると、こっちも嬉しいよ」
     コータスが言う。

    「こんなおいしい、千切りキャベツ初めて!」
     ニコニコとチュリネが続ける。

    「…………え?」
     と、コータス。

    「新鮮で、すっごくみずみずしい! 長さも均等でこの細さ……、とっても食べやすい。切り口はなめらかで、そのおかげで線維が壊れてないからほのかに甘みがある。どんな切りかたしたらこんなキレイにできるんだろう……。しかも、トンカツに押しつぶされてもまだ、こんなに千切りの一本一本が見事にシャキッと立ってるなんて、感動しました! お母さんは、こんなおいしい千切りキャベツ食べてたんだぁ……」
     一瞬誰かと思うような勢いであったが、間違いなく全てあのチュリネが言ったことだ。

    「お、おう……。そんなに美味しかったか……」
     まさかのベタ褒めに、厨房からこれまた一瞬誰かと思うような、キリキザンの声がした。
    「キリさん。そんな所からじゃなくて、もっとこっち来なよ」
     今だ困惑気味のコータスだったが、キリキザンを呼び出した。
     珍しくキリキザンが素直に厨房から出てきた。
     キリキザンがやってくるとまたチュリネは、少し顔を引きつらせた。どうにも彼が苦手らしい。
    「あ……そのだな……、気に入ってもらえたみたいで、うん、よかった」
     歯切れの悪いキリキザン。
    「う、うん……。おいしかったです……」
     先ほどまでの勢いはどこへやら、またチュリネはボソボソ声に戻ってしまっていた。
     
    「まぁ、その……、なんだ……、オメェ達の頼みの件の事だが……、うん、そうだな、好きにしていいぞ」
    「本当ですか! 僕達をこの店で働かせてくれるんですか!?」
     ヒノアラシが歓喜して言う。チュリネの顔も輝いた。
    「キリさん、本当に良いの!?」
     コータスも突然のキリキザンの変化に驚いている。
    「ただし! 当分は雑用だぞ! ガキに厨房うろつかれたら邪魔で仕方ねぇからな! それに、そのチュリネの母親が見つかったらまたすぐに出て行ってもらうぞ!」
     キリキザンが念を押す。
    「やったー!」
     ヒノアラシとチュリネが大喜びではしゃいでいる。キリキザンの念押しも聞こえていないみたいだ。
    「やれやれ……」
     キリキザンは呆れながらも、そんな彼らを見て、自分も心はずむのを感じていた。
     本当は彼も、野生を知らない幼い子供達を放って置きたくはなかったのだ。しかしこの「切り切り亭」は万年閑古鳥と付き合っているような小さな店。彼らを預かった所で、安定して食わせてやれる保証がない。彼らを思えば、野生に慣れたほうがよっぽどその後の将来が楽なはずだった。
     しかし、彼らはこの店に通いつめ、食に飢えてもなおそんな素振りを微塵も示さず、ただ「働かせてくれ」ということだけを頼みに来た。
     その心意気にキリキザン、そして実はコータスも、心動かされたのだ。
     しかしキリキザンが彼らを預かる気になった理由はまだある。

    「キリさん、どうして急に気を変えたんだい? あれだけあの子たちを預かるの嫌がっていたのに」
     店の奥の生活スペースにヒノアラシとチュリネを案内した後、2人で厨房で仕込みをしている中、コータスが聞いた。
    「あいつら、俺達に初めて、ウチの料理が作りたい、って言っただろ。今までずっと、『母親に会いたい』ばかりだったってのによ」
    「キリさんもやっぱりそこかぁ」
    「コーさんも分かってたか」
    「まぁね。ウチで働こうってのに、『母親に会いたい』はちょっと動機がよくないよね」
    「それは良かった。コーさんの言い分無しに、勝手に決めちまったからなぁ」
    「何言ってんですか、店長様。私はあなた様のおっしゃるままに――」
    「バカ野郎! ふざけてねぇで働かねぇか!」
    「はいはーい、ただいまー」
     どんな時でもキリキザンをからかいたくなってしまう、コータスだった。


     ――それから二年。

    「お客さん……、キャベツ喰わねぇのかい?」
     いつものように、ドスの効いたキリキザンの声がする。
     そしていつものように客のタブンネは顔を引きつらせ――とは、今ならない。
    「タブンネさん。このキャベツの千切り、とっても美味しいですからぜひ食べてくださいね」
     タブンネの足元から声がする。チュリネだ。
     キリキザンの声で凍った場の空気が、一瞬で溶けた。
    「ふぅん、そうなの? なら、ちゃんと食べようかなぁ」
     キリキザンの言葉に戦々恐々としていたタブンネが、チュリネのどこか気の抜けた柔らかな声を受けて、楽しげにキャベツを食べ始めた。
    「レタス! そんな所で油売ってねぇで次のキャベツ用意しな」
    「はぁーい! ……では、私行きますから、きちんとキャベツ食べてくださいね」
     最後に少し言うと、チュリネ――こと、レタスは厨房へ戻って行った。

     しかし、逆に変わった者もいる。
    「こらっ、カマド! いったい何度言ったら分かる!? 油の温度が低すぎだ! こんなんじゃ衣がベタってなってしまうだろうが」
     これはコータスの声だ。
    「す、すみません」
     ヒノアラシ――こと、カマドが必死にかまどに火を吹きむ。トンカツ作りを教えると決まった日から、コータスはまるで鬼のように厳しく毎日教えている。

     今「切り切り亭」は以前とは大違いで、大繁盛している。
     固く重苦しい雰囲気の店だったのが、まだまだ幼いカマドとレタスがいることによって、柔らかく賑やかで、誰でも入ってきやすい店になったのだ。
     今の所、レタスの母親がやってくる様子も、また、彼女を目撃したという情報も全くない。しかし、店が盛り上がっているということは、彼女の耳に「切り切り亭」の事が入ってくる可能性も高いということだ。
     キリキザンをからかうコータスの話を聞いたり、常連客から愛称を着けてもらったり、今の生活も楽しくはあるのだが、やはりレタスはその可能性に期待しないではいられなかった。


     トンカツ定食屋「切り切り亭」。ここには毎日大勢の客がやってくる。
     その客たちをもてなすのは、
     弟子に指導するときは厳しいけど普段は調子のいい、コータス。
     店の紅一点で、キャベツを運んでは間違えて切り刻まれかける、大人しいチュリネの、レタス。
     師匠の下、日々トンカツ作りを学んでいる、しっかりもののヒノアラシ、カマド。
     そして、この店の店長。口が悪くて気の短い、けど、とっても情に厚くて周りに優しい、キリキザン。……キャベツ残す奴は許さないけどね。


     イッシュ地方のとある場所、知っている者は知っている、知らない者は……、風の便りにいらっしゃい。
     ここは「切り切り亭」、おいしいトンカツと、
     千切りキャベツが売りの定食屋。
     一度食べたら忘れられないあの味と、わいわいがやがや楽しい雰囲気を、あなたも一度どうですか?


    -----------------------------------------------------------------------------------------

    まず初めに、音色さん申し訳ない。
    さんざん待たせてしまったあげく、キャラの名前もいただいたのにまったく生かせていないこの状況。
    我ながらヒドイ
    (
    ストーリーもなんかオチなくなって( 

    うぅむ…… 反省です

    ただ、これだけは!
    キリキザンをばっちり書けたと思う! それだけは、嬉しい。 それと、自分の執筆一周年に一つ上げられたのもよかった。

    ……結局、俺しか得してないけど(爆


    【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】【批評も……ください!】【キャベツ残したら許しまへんでぇ!】


      [No.1756] あの子がマイナンと出会った訳 投稿者:akuro   投稿日:2011/08/16(Tue) 14:40:59     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     夕日が輝く午後5時。 ホウエン地方、110番道路。 カイナとキンセツを結ぶサイクリングロードがあるこの場所に、ひとりのトレーナーが、マイナンをつれてやってきた。

    「まったく、なんで私がこんなことを……」

     トレーナーはそう呟き、傍らのマイナンと共に草むらに入っていった。

     このトレーナーの名はエンジュ。 ホウエンでも5本の指に入る凄腕のトレーナーである。 そんな彼女がこの場所にいる理由。 それは……



     時は2日前に遡る。 ミシロタウンにあるエンジュの家に、あるトレーナーから電話がかかってきた。
     プルルル…プルルル…
    「はい、どちらさまですか?」
    「あ、エンジュ! ヒバナだよ〜」
     相手はジョウト地方に住むトレーナー、ヒバナ。 エンジュのトレーナー仲間であり、現在はウツギ博士の助手でもある。
    「ヒバナ? なにか用?」
    「あのね、シンオウにいる私のいとこが来週旅に出るんだって」
    「シュカだっけ? ふーん、それで?」
    「でね、シュカにポケモンをプレゼントしようと思って。 それでエンジュにも手伝ってほしいの!」
    「……はい?なんで私が……」
    「今度の土曜日にホウエンに行くから、ポケモン捕まえておいて! じゃあね〜」
     プツ、ツー、ツー……
    「ええ!? ちょっと、ヒバナ!?」
     エンジュは受話器に叫んだが、時すでに遅し。
    「……はぁ」
     エンジュは呆れたようにため息をついた。


     ……そんなこんなで、現在。 エンジュの前には数種類のポケモンがいた。

    「どんなポケモンがいいのかしら……」

     ポチエナ、ラクライ、ゴクリン。そのどれも、女の子(と聞いている)であるシュカには不釣り合いだ。

    「うーん、どうしよっか、らいむ……ん?」
     傍らにいたマイナンの側にもう1匹、マイナンがいた。
    「マイナンか……らいむ、その子に捕獲していいか聞いてくれる?」
     らいむは頷くと、側のマイナンと話し初めた。
    「マイマァーイ、マイ?」
    「マイマイ♪マーイー♪マーイ!」
     突然そのマイナンが飛び上がった。そしてらいむに向かって無数の星型の光をとばしてきた。
    「スピードスターか…らいむ、まもる」
     らいむは体をまるめ、守りの体制にはいった。 
    ーーやがて光がやんだ。
    「でんこうせっか」
     らいむは目にもとまらぬ速さで、マイナンにタックルをした。
    「……ッ! マイー……」
     マイナンは地面に着地したが、その足取りはふらふらと重い。
    「よし、ハイパーボール」
    パシュン!と音をたて、マイナンはボールに入った。 ボールはしばらくゆらゆらと揺れ、カチッという音が響いた。

    「……よし、捕まえた。 あとは明日、ヒバナに渡すだけか」

     そういうとエンジュはらいむをモンスターボールに戻し、代わりにトロピウスを出した。

    「…ひでんトロ、ミシロまでお願い」

    凛とした顔で手の中のボールを見つめる少女が、輝く夕日を背に飛び立った。



    [何してもいいのよ]
    [たぶん続く]


      [No.1755] ミドリのジャローダに彼女が出来たようです。 投稿者:紀成   投稿日:2011/08/16(Tue) 10:54:51     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    最近、仕事があまりはかどらない。パソコンは使えるが、愛用の机が使えないことが多くなっているからだ。冷房の効いた部屋で、ガラステーブルで慣れない体勢で仕事をする。当然、腰も痛くなる。
    理由は分かっている。ジャローダのせいだ。
    自分の机を陣取って、せっせと手紙を書いているのだ。尻尾を器用に使い、ガラスペンでインクをつけ、可愛らしい便箋に文字を書いていく。はっきり言って何を書いているのかさっぱり分からないが、ポケモン同士では通じるのだろう。
    そして、その書いている横顔がとても嬉しそうなことに、本人は気付いているのだろうか。ツタージャ時代からクールで通してきた彼の性格が、ここで崩れるとは。
    主人であるミドリはおろか、本人すら予測できていなかったのかもしれない。

    そう。ジャローダに、彼女が出来たのだ。

    一ヶ月ほど前。期末試験が終わった日、ミドリは家に戻らずに直接ヒウンシティへ向かった。十三時発のホウエン、ミナモシティ行きの客船に乗るためだ。毎月連載している雑誌のコラムに、ホウエン地方のコンテストを紹介することになっていたのだ。
    船に揺られて三日。ミナモシティに着いたその足でミドリはコンテスト会場に向かった。ノーマル、スーパー、ハイパー、マスター。全てのランクと、五つの部門がそろった巨大な会場だ。
    会場内はコーディネーター達が沢山いた。連れているポケモンはどれも毛並みがそろっていて、艶もいい。片隅にはポロック製作の機械もある。
    その中に、ミドリは一際輝く毛並みを持ったミロカロスを連れた女性を見つけた。女性自身も美しい。
    「あの、お時間よろしいですか」
    女性が振り向いた。ミドリは名刺を取り出す。彼女は驚いた顔になった。
    「まあ!記者さんなの?」
    「こんな子供に…とお思いかもしれませんが、全力で記事を書かせていただきます。取材よろしいですか」
    彼女が笑った。
    「ええ。お願いするわ。どんなことも聞いて」
    「ありがとうございます。では…」
    彼女の名前はミレイ。キナギタウン出身の二十八歳。連れているミロカロスは幼い頃、ヒンバスの時に怪我をしていた物を助けてそのまま手持ちになったという。
    「最初はどうしていいか分からなかったの。バトル向きでも、コンテスト向きでもないでしょ。でもね、ある時本で見たのよ。すごく珍しいポケモンだって」
    進化方法は、しぶいポロックを沢山あげること。美しさを磨いて進化するらしい。かなり特殊な進化方法だ。
    「しぶい味の木の実を集めるのに一ヶ月。レベルの高いポロックを作るのに二ヶ月。進化させるのに三ヶ月」
    「大変ですね…」
    「でも今ではバトル、コンテスト共に活躍できる、大切な相棒よ!」
    ミロカロスが嬉しそうに鳴いた。大きい。どのくらいあるだろう。これじゃうちのジャローダよりでかい…
    「貴方はどんなポケモンを連れてるの?もしよければ、見せてくれないかしら」
    私はボールを二つ取り出した。海の側で、しかも冷房が効いてるから、彼も水蒸気になることはないだろう。
    「ジャローダ!フリージオ!」
    ギャラリーが大きくどよめいた。当たり前といえば、当たり前。イッシュのポケモンはここでは見られない。
    ジャローダは相変わらずツンとすまし顔。フリージオは周りの熱気で今にも水蒸気になってしまいそうだ。
    しかしこうして比べて見るとミロカロスはでかい。ジャローダの二倍近くある。うちのジャローダは♂なんだけどなあ…
    ふと、ミロカロスがミレイの後ろに隠れてしまった。彼女がどいても、すぐにまた隠れてしまう。
    「どうしたの、ミロカロス」
    私とジャローダは顔を見合わせた。もしかして…もしかすると…
    ジャローダは何処から取り出したのか、バラの花を差し出した。だけどミロカロスは出てこない。尻尾を器用に使って受け取るだけだ。
    「…」
    私はこんな人間臭い姿を見せるポケモンを、初めて見た。


    まあ、それから二日の滞在期間の間にめでたく二匹は恋人同士になって、今は遠距離恋愛中。年の差って感じじゃないけど、体格差…?カップルの誕生となったのでした。
    ちなみにユエさんに話したら、『うちのバクフーンもそういうお相手がいてもいいかもね』って。
    その言葉を聞いたバクフーンが食べていたユキノオーカキ氷を噴き出しかけたのは、また別の話。

    ――――――――
    何かシリーズ化した。そして音色さんありがとうございます。さて何をいただけるのか…
    楽しみにしております!さて次は誰のポケモンにしようかなー


      [No.1754] 成長した火山にお祝いを 投稿者:音色   投稿日:2011/08/15(Mon) 23:56:07     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「これはこれは・・・」

     いつものようにメラルバを預けにきた黒服の男性は、贔屓にしているカフェの看板息子の急成長にさすがに戸惑いを隠せなかった。

    「朝起きたら、進化してたのよ」

     店主の言葉に苦笑する。アイテムを利用する進化ならともかく、己の経験によって姿を変える種族であるならばあり得る話だ。
     カウンターに寄りかかるようにしてこちらを見ているバクフ―ンも、どこか気まずそうな顔をしている。

    「ふふふ、とても立派になられましたね。私としても、彼の成長は喜ばしい限りですよ」
    「よかったわねー、そう言ってもらえて」

     よろしいですか、と前置きをして大きくなった火山の首元をそっと撫でてやる。マグマラシの時にもメラルバと一緒にたまに近寄って来たときに、よくこうしてやった。
     やはりくすぐったいのが、目を細めて嬉しそうな顔になる。

    「では、いつものようにお願いしますね」

     まだ少し眠りの中にいるメラルバをそっと彼に預ける。
     マグマラシ時代の時は、少しずつ成長するメラルバを抱っこするだけで精一杯だったのに、今では頼もしく彼女を受け止めてくれた。


     ぱちり、と目を覚ましたメラルバはいつも嗅ぎ慣れた匂いが少し変わっていることに首をかしげた。
     くんくん、と抱っこしてくれている相手がどうもいつもより、大きい。
    『ほえぇ?』
    『ん、起きたか?』
     見上げたそれは、見慣れたマグマラシではない。しかし、変わらない彼であるという事が匂いで分かる。
     大きく、温かくなった彼に、メラルバは一気に鼻をこすりつけて甘え始めた。


    「さて、何がよろしいでしょうかねぇ」
     その頃、カクライはショッピングモールにいた。
     バクフ―ンに・・彼に気に入ってもらえるものはなんだろうか。
    「ふふふ、他者に何かを送るという事は、久しぶりですね」
     心なしか、彼の口元は緩んでいた。


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  つづくよ、たぶん
    バクフ―ンもふもふしに行きたい。うちのメラルバぎゅぎゅっとしてください。

    【進化おめでと―!】


      [No.1753] そこは金色の大地 投稿者:音色   投稿日:2011/08/15(Mon) 23:31:42     105clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     テレポート 13/20

     ごろりとやってきた場所は、なんかすごく静かだった。
     鮮やかに広がる田畑は金色で、豊作の秋がその場を支配する。
     なんつーか、えらく平和な場所に来てしまった。いやー、今までは586様ワールドばかりをさまよってたわけだからこういう呑気な場所だと落ち着く。
     ・・いや、落ち着きたいんだけど。

     どうもここも穏やかな空気とは裏腹な気がする。

     ごろごろごろり、転がっていくと何やらお祭り準備ムードをぶつかる。
     雨降大社、と書かれた場所にうっかり出てしまった。中から声が聞こえる。

     
     燃えよ、燃えよ、大地よ燃えよ
     燃えよ、燃えよ、大地よ燃えよ

     見よ、暗き空 現れし火を
     火よ我が命に答えよ

     燃え上がれ火 燃え上がれ火 燃え上がれ炎よ
     燃え上がれ火 燃え上がれ火 燃え上がれ我が炎
     我が眼前に広がるは紅き地平

     燃えよ、燃えよ、大地よ燃えよ
     恐れよ人の子 我が炎
     燃えよ、燃えよ、野の火よ燃えよ
     放たれし火 金色の大地に燃えよ


     少し細いがまぁ窓越しに聞こえるから良いんじゃね、と適当な事を思っていたらなにやらダメ出しをされている。
     妖怪九十九は人を食って云々、のあたりで納得する。なるほど、どうやらかの有名なツッキ―のお話らしい。
     しばらくマシンガントークで怒られるツッキ―に多少同情。しかしどこかで何かを間違うと俺が喰われかけるかもしれない。ビリリダマだけど。
     お話の展開的にそりゃないか。
     長居してもあれかな、と思って転がり出す。後ろからはっきりとした声で雨の歌が聞こえた。


     降らせ、降らせ、天よりの水
     降らせ、降らせ、天よりの水

     見よ、空覆う暗き雲を
     雲よ我が命に答えよ

     降らせ雨を 降らせ雨を 消え去れ炎よ
     降らせ雨を 降らせ雨を 消え去れ悪しき火
     我が眼前に広がるは豊かな田

     降らせ、降らせ、大地を濡らせ
     恐れよ妖 我が力
     降らせ、降らせ、野の火を流せ
     降らせ雨を 金色の大地を濡らせ


     歌はまるである種の呪詛でもある。
     毎年毎年歌い続けば、それだけ強くなるような気もする。
     部外者が勝手なこと言ってんじゃねーよ、一人突っ込んで転がっていく。


     あり、と気がつけばどうも不思議な時間になっていた。
     先ほどまでは確かに昼だった。太陽は天辺近くにあり当分夜は来ないとばかりに思っていれば。

     夕日だった。なんか、時間がおかしい。勢いよく風が吹いた。

     ばったりと、ダ―テングにあった。
     ただ普通のとちょっと違ってる感じで。威風堂々、というか、そりゃまぁ立派だった。蓄えた白髭がよく似合っている。
     まるで風と一緒にそいつが現れて、なんというか、不思議と怖くなかった。
     
    「この辺では見ない者だな」

     狐の眷族ではないだろう、ぽつりと天狗は言った。
     あぁ、そういえば、あの話のなかには居場所を奪われた山の神様が登場したなぁ。ふと思い出す。

    「この景色が好きか?」
    「へ、えぇ、まぁ、好きです」

     突然聞かれて思わず適当な言葉を返す。風が波打つ金の穂、夕闇が僅かに橙色を残して田を染め抜いていく。

    「そうか」

     友の狐もこの景色が二番目に好きだと言っていた。
     ほんの気まぐれで、間違いだらけで迷い込んだ俺に話しかける天狗は、少し寂しそうだった。
     神としての名を呼ばれることが、この先に、おそらく二度とないだろうと先刻その妖孤と語ったばかりなんだろうと、思い立つ。

    「俺は、忘れませんよ!」
    「?」

     テレポート間際に、どうにか思い出した山の神の名前を呼ぶ。
     どんな表情したのか、見れば良かったと後悔したけど、まぁ、いいか。



     部外者、読者、そこにいちゃいけない舞台裏。
     ごろごろしながら俺は今日も迷子です。


     つづけむっそ
    ――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  やっちまいました。野の火とのコラボ。いやなんかもうごめんなさい。白髭さん大好きです。


    【コミケお疲れさまでした!という思いを込めて】
    【もうお約束だ、拍手を(略】


      [No.1752] ユエのマグマラシが進化したようです。 投稿者:紀成   投稿日:2011/08/15(Mon) 20:46:36     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「…」
    ユエは上を見ていた。腕を組んでいるポーズを取っている。相手から見れば豊かな胸が強調されていることがよく分かるだろう。まあ見慣れた光景だから別に困ることはないのだが。
    相手はユエを見下していた。初めての光景に、どうやら戸惑っているらしい。落ち着きが無い。今まで見ていた物がいきなり小さく見える。冷蔵庫、テーブル、椅子、ご飯皿、テレビ、ベッド、などなど。
    「どうしてこうなったのかしらね」
    喜ぶべき、なのかもしれない。だが今の状況は簡単に喜べなかった。
    昨夜、『電気消すわよ』と言って彼がベッドに潜り込んだのを確認して電気を消した。そのまま一度も起きずに規定時間になって目覚ましで目を覚ました。
    そしてふと横を見て…

    マグマラシが、バクフーンになっていた。

    その時まだ本人は気付いてなかったようで、幸せそうにいびきをかいていた。マグマラシの時なら可愛い仕草の一つとして写真でも撮っていたところだが、今度はそうはいかない。
    ユエのベッドはもちろんシングルサイズだ。マグマラシは丁度ユエの隣で丸くなる体勢になる。
    だがバクフーンになるとそれはかなり難しくなる。ユエの身長は百六十ちょっと。バクフーンは平均で百七十。シングルベッドの高さはいいとして、幅は…
    案の定、今朝もう少しで相手の長い鋭い爪がパジャマを引き裂くような場所まで来ていた。一瞬夢かと思ったが、ふと頬を抓ってみて夢じゃないことを確信した後は、相手が驚いて炎を吐かないようにそっと起こして状況を確認させて―
    今に至る。

    「参ったわねえ…看板息子がこんなにでかくなっちゃあ」
    ガーン、という効果音が聞こえた気がした。バクフーンが半べそをかいている。ユエがため息をついた。
    「冗談、冗談よ。メンタル面弱くなったんじゃないの」
    ぽんぽんと頭を叩いてやれば、バクフーンがユエに寄りかかってきた。もふもふが顔に当たって苦しい。そして炎タイプだからか熱い。
    「はいはい、さっさと食事してカフェに行くわよ。…カクライさんのメラルバ、大丈夫かしら」


    数時間後。
    変貌したバクフーンを見てメラルバが目を輝かせ、夏休み後半で宿題に追われていた学生達が一時中断の写メ大会になり、非番で来ていたサクライとヒメヤがそれぞれ、『寝てる間か…溜まってんじゃねえのか』『警部、それはセクハラと見られても仕方が無い発言です』という会話が交わされたという…

    ――――――――――
    そろそろ進化させた方がいいかなと思った結果がこれだよ!
    サクライさんとヒメヤさん。名前を出すのは初めてかと思われます。奇妙な一日でゼクロムとレシラム注文してた二人です。職業は警部、刑事。サクライさんは四十半ば。ヒメヤさんは二十代後半。
    前者は駄目男なイメージがありますが、やることはきちんとやります。ヒメヤさんは下睫が特徴のイケメン。
    こんな感じでよろしくお願いします。…やっと出せた


      [No.1751] 絵をつけたい…! 投稿者:風間深織   投稿日:2011/08/15(Mon) 10:31:21     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     セリフとヤドンの心境のみの作品なのに、読んでいるうちに情景が浮かんできました!
     とっても可愛らしい作品だと思います!
     できることなら絵をつけたい…と思ってしまいました。私の絵は可愛くないですけどね…(^^;


      [No.1750] 8/15現在 投稿者:Teko   投稿日:2011/08/15(Mon) 00:32:02     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    現在状況 8/15

    参加者 確認済(敬称略)

    てこ
    流月
    茶色
    moss
    風間深織(途中参加)
    久方小風夜
    レイニー(途中帰還)
    紀成
    キトラ(途中参加)
    小樽ミオ
    No、17
    586
    クーウィ
    CoCo

    夜参加(敬称略)

    てこ
    流月
    茶色
    風間深織
    久方小風夜
    紀成
    キトラ
    小樽ミオ
    No、17
    586
    クーウィ
    CoCo

    【日程】

    集合→ポケセン→カレー→カラオケ→飲……夜食べ
                    ↑
                   カフェ?

    夜食べは8時くらいには終わりたいと思ってるよ!

    今週カラオケと夜ご飯は予約するけん、変更あったらよろすこ。
    料金はだいたい5000円くらいかな><


      [No.1749] 災難の後日譚 投稿者:マコ   投稿日:2011/08/14(Sun) 22:13:06     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    リアジュウさんが吹き飛ばされた日の夕方のニュースです。


    「それでは、続いてのニュースです。」
    女性キャスターが冷静に原稿を読み始めました。
    「今日のお昼ごろ、海水浴場で襲撃犯が女性トレーナー所有のラグラージに吹き飛ばされました。そして、吹き飛ばされた方は道路に刺さった状態になりました。」
    (映像として、ノックアウトされて転がっているマルマインと、道路に頭から刺さって犬●家の一族よろしく足しか出ていないリアジュウさんが映る)


    足しか出ていないリアジュウさんを、通りすがりの人がカメラ撮影しています。
    「何これ、ウケるんだけど!」
    「足だけ星人じゃん、こいつ!」
    その人達の連れているランクルスがサイコショックやら雷、気合い玉やらを足にぶつけまくっていました。



    ほとぼりが冷めて、誰もリアジュウさんの方に目を向けてくれなくなりました。
    「うう……、夏もリア充も大っ嫌いだ……。」
    何とか自力で抜け出して、そして足をヒョコヒョコ動かして、家路を急ぐのでありました。



    翌日、足だけ出したリアジュウさんの動画が、ニッコリ動画やPikaTubeといった動画サイトで100万回以上再生されたとか。




    マコです。
    ようやく後日譚を書きました。長かった……。
    かわいそうな、リアジュウさんです。
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】


      [No.1748] Re: 和みの境地 投稿者:白色野菜   投稿日:2011/08/14(Sun) 20:07:48     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    まさかのコメントに混乱を起こしつつ

    > 実に和みます。子どもの身勝手なまっすぐさとヤドンのちぐはぐさが堪らないです。
     コミケに行けなかった憂さ晴らしで書いた話で和んでいただけたなら幸いです。


    > 素敵な作品でした。最後の呟きを読んで思わずニヤリ。
    実はもう一落ち考えたのですが。
    また書く機会があったらそのオチから始めて見るのも面白いかもしれません

    感想ありがとうございました、かなり嬉しかったです


      [No.1747] 和みの境地 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/08/14(Sun) 11:30:57     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    素敵な作品でした。最後の呟きを読んで思わずニヤリ。

    実に和みます。子どもの身勝手なまっすぐさとヤドンのちぐはぐさが堪らないです。
    そして最小限しか書いてないからこそのテンポと雰囲気もイイ!

    私もこういう短くてもインパクトのある話、書けるようになりたいなぁ。


      [No.1746] 呼ばれた気がしたので 投稿者:久方小風夜@司書   投稿日:2011/08/13(Sat) 23:23:02     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    当日のログを抜粋。

    前提:前夜から続くチャット、残った入室者は久方ときとかげさんのみ、きとかげさんもふられた後復活



    きとかげ:全く、朝っぱらから……(06:16)

    小風夜:バックパッカー憧れますなぁ 長老は朝からお元気(06:16)

    きとかげ:なんだか危ない香りの発言が。(06:17)

    小風夜:(・ε・)(06:17)

    きとかげ:そうか、零時は過ぎてるから深夜でも構わないのか……(06:17)

    きとかげ:ってなんでやねん(06:17)

    小風夜:小学生はもうすでにラジオ体操のために起きてる時間じゃないですか(06:18)

    きとかげ:小学生め、早起きしやがって……!(06:19)

    きとかげ:じゃあラジオ体操の間なら大丈夫ということで((06:19)

    小風夜:あーたーらしーいーあーさがっきーたー きーぼーうのーあーさーだ(06:19)

    きとかげ:古い朝が来たらどうしよう、とか考えてしまった。(06:22)

    小風夜:古い朝……だと……(06:22)

    きとかげ:太陽は暗く、上りきっているのに星がチラチラ見える。家の壁はひびだらけ、床は踏み抜く危険と隣り合わせ……(06:23)

    きとかげ:世界の終わりみたいになってしまった(06:23)

    小風夜:そして崩壊へ……(06:23)

    きとかげ:太陽が……消える……(06:25)

    小風夜:新しい朝は、来ない。この先、永遠に。(06:28)

    きとかげ:そこでティーンエイジャーの少年少女の元にポケモンがやってきて言うのです。「太陽を取り戻せ、新しい朝を君たちの手で作るんだ」と……!(06:29)

    きとかげ:(ありがちな展開)(06:29)

    小風夜:そして始まる、長い長い一日。(06:29)

    きとかげ:人の悪意から生まれた魔獣を退治するため、少年少女はポケモンと契約して手に入れた魂の力を使いバースト戦士に((06:30)

    小風夜:立ちふさがる敵。謎の組織。(06:30)

    小風夜:果たして少年少女は、新しい朝を迎えることができるのか。(06:31)

    きとかげ:「今まで応援ありがとう!」(06:31)

    きとかげ:〜END〜(06:31)

    小風夜:ポケットモンスター ReBURST  ―ラジオ体操の歌―(06:32)

    きとかげ:そのブレンドは予想外(06:32)

    小風夜:「次の朝日は拝めないさ――永遠にな」(06:32)

    小風夜:……という予告編まで妄想して力尽きたということですねわかります(06:33)

    きとかげ:いや、きっと設定だけは作り込んでるんだよ。ただ本編を書く気力がなかっただけで((06:34)

    (以下省略)



    というわけで、会話中にラジオ体操ネタを振ったのは自分ですが、ReBURSTネタを出してきたのはきとかげさんでした。



    小風夜:ラジオ体操ポケスト投稿したら怒られるかなwww(08:21)

    きとかげ:最初に謝っておこう、ごめんなさい!w(08:23)

    小風夜:行ってくるwwwwww(08:23)

    きとかげ:よろしくです(08:25)


    それにしてもこの2人、ノリノリである。


      [No.1745] すばやいポケモンの育て方 投稿者:白色野菜   投稿日:2011/08/13(Sat) 19:46:51     101clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    「だぁーかーらぁっ!やせないとひまんしょう?で、しんじゃうんだよっ!!」
    そういえば、昨日テレビでやっていましたねぇ

    「パパのおなかもめたぼ?で大変でやせなきゃっていってたんだよ?」
    しばらく、揚げ物は禁止らしいですねぇ

    「やーちゃんはパパよりおなかぷよぷよだよっ!」
    くっちゃねのせいかつですしねぇ

    「だからねっ!やーちゃんはりゅーのこぶしくんみたいになればいいのっ!」
    隣のお家のワンリキーですか、確かに余計な脂肪はなさそうですもんねぇ

    「……でも、ふっきんダメだったの」
    仰向けにされたウサギのようでしたもんねぇ

    「せなかそるのもダメだったの」
    背筋は少し自信があったんですけど、尻尾だけピコピコ動いてましたねぇ

    「だからね、きょうからじょぎんぐするのっ!!」
    …………………………………………………………ドウシテソウナッタ

    「もくひょうはっ、こぶしくんとかけっこで勝つことっ!!」
    目的変わっていません?

    「きょうは、川までいってからもどってくるのっ!」
    あぁ、すぐ裏にある川ですか。それなら夜までには帰ってこれますね

    「3おーふくぐらい」
    前言撤回させてください

    「んーと、すぐそこだから3時のおやつまでにはおわるかな?」
    私の鈍足なめないでください

    「それじゃーご〜〜っ!!」
    あぁ、そんなに走ったら転びますよ〜
























    「あれ?近所のチビガキじゃん……ヤドン引きずって何やってんだ?」

    ―――――
    【御好きにどうぞ】
    【薬にも毒にもならない何か】
    【描写無し】


      [No.1744] サブタイトルが本編 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/08/12(Fri) 18:56:58     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    リバースト全く知らなくても読めますw 期待させてごめんなさいw

    > しかしなぜラジオ体操と組ませたのか解らないぞ!
    当方眠いので記憶飛びました。きっと久方さんがログを……!

    【ラジオ体操の歌には2番もあったのよ】


      [No.1743] Re: 【再稿】 数十年と千年過ぎ去りても――。 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/08/12(Fri) 17:54:25     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    再投稿に歓喜してます、イケズキです。

    以前、この作品を読ませていただいた時から、深い内容とイラストとのリンクに感動してました。
    イラストの金銀キュウコンの様子や、その下に加えられたコメントから、このようなストーリーを作られる巳佑さんに感服です。

    年老いてから始まる愛の旅といったところでしょうか。王国を飛び出し、ただ二人で森の小屋で暮らし始め、突然キュウコンに変身。変化に驚く王様と、無邪気に喜ぶ妃様。
    良いカップルだわぁ。


    >  愛しあって百年。
    >  食べたことのない赤いトゲトゲの木の実を食べて顔を真っ赤にしたお主の顔を忘れぬ。
    >
    >  愛しあって百年。
    >  海の中を平然と泳ぎまわるお前を見て、我のあごが外れそうになったことは鮮明に覚えておる。
    >
    >  愛しあって百年。
    >  お互いに毛づくろいしあって感じた温もりは、いつまでも忘れない。
    >
    >  愛しあって百年。
    >  満月に向かって吼えた(ほえた)お主の姿はかっこよかったぞい。
    >
    >  愛しあって百年。
    >  お前の寝顔は何度見ても飽きることはなかった。
    >
    >  愛しあって百年。
    >  人間だったときの頃のように、金と銀を重ねあう、熱くて、そして温かい夜を過ごした日もあった。
    >
    >  愛しあって百年。
    >  仲違いをしたとき、
    >  お主が仲直りの証に、妾の大好きな花を持ってきてくれて……嬉しかったのう。
    >
    >  愛しあって百年。
    >  お前の変わらぬ正義感の強さを我はいつまでも誇りに思う。
    >
    >  愛しあって百年。
    >  世界の隅々まで金色と白銀の足跡を残してきた。

    二匹(人?)の足跡がまっすぐ伝わってきます。互いが互いを思う数百年、いいなぁ! うらやましいほど愛が深いです……!


    >  王様はそう言うと、その大きな桃色のリボンを自分の体と妃様の体に巻きつけていきます。
    >  胴体はもちろんのこと、尻尾までも絡めて、簡単には外せない、複雑な結びをしました。
    >  王様と妃様の体は密着状態になりました。
    > 「お主も、考えるのう」
    > 「やはり、心配だからな……だが、こうすれば離れぬことはないだろう」
    > 「むふ、相変わらずな心配性よのう、お主は……じゃが」
    >  妃様が王様の鼻を一舐めしました。
    > 「お主の、そういうところも、妾は大好きじゃ」
    > 「我は、お前のその強気なところも大好きだ」
    >  王様が妃様の鼻を一舐めし、
    >  妃様がなにやら思いついた顔を浮かべます。
    >
    > 「なぁ、主よ。死というものに見せ付けてやらんか?」
    > 「なにをだ?」
    > 「決して離れぬ、妾とお主の愛を」
    >
    >
    >
    >
    >  白銀が一つ、金色に口づけを。
    >  金色が一つ、白銀に口づけを。
    >
    >  そこから鳴り続く口づけの音色は、
    >  王様と妃様が描いてきた一つの物語の終焉。
    >
    >  そこから鳴り続く口づけの音色は、
    >  王様と妃様がこれから描き始める一つの物語の序章。
    >
    >  決して変わらぬ、とこしえの愛。

    素晴らしい描写だと思います。イラストの様子と見事に合っていて、感動しました。



    >  追記:2011年8月12日のチャットにて、
    >     イケズキさんからのラブコールを受けまして、再投稿させてもらいました。
    >     イケズキさん、ラブコールありがとうございます!

    こちらこそ、再投稿とても嬉しかったです。ありがとうございました!


    > 【狐の恋で、もふもふ♪】

    あの二匹のもふもふに飛び込んだら、大やけどしそうだぜ……w


      [No.1742] 黄昏夫人と三人の胡乱な娘 投稿者:紀成   投稿日:2011/08/12(Fri) 16:19:34     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    紀成と旅行に行ってから数日後。私はマダムに言われていた物を預けに黄昏堂のドアの前に立っていた。本人が望んでいた物かどうかは分からないが、私の想像力ではこれが限界だ。
    夕暮れだが夏なので暑い。ジリジリと太陽の光が髪を焼いてくる。
    私は深呼吸すると、ドアを一気に開けた。

    「…」
    「…」
    一人の女と目が合った。マダムじゃない。下手すれば十もいかないんじゃないかと思うくらい、幼い子供だ。白黒ボーダーのマフラーに、セミロングの髪。色は銀のような、白のような。
    高級感溢れる絨毯に寝そべり、ドアの邪魔になっている。目は虚ろで、何も映していない。簡単に言えば、目が死んでいる。
    だが体自体が死んでいるのではないことは、すぐに分かった。目玉が時折動く。そして何故か彼女の周りには皿が散らばっていた。割ったような跡がある物もある。
    ―いや、これはどう見ても『歯型』だ。まさか齧ったのか?
    このまま考えていても埒が明かないので、私は彼女を移動させた。意外に重い。力を抜いているからだろうか。
    そうしてやっとドアを閉めた私の目にもう一人、異様な行動をしている人影が入って来た。商品のサンプルが掛けられている壁に向かって、ずっと鼻をつけている。全く動かずに。右手にはステッキとそしてさっきの女と同じマフラー。
    「なんだよこいつら」
    「…」
    案の定、返事がない。面白いこと好きのカゲボウズがそっと様子を伺おうとしたが、どうやら変な雰囲気を感じたらしい。気味悪そうに戻って来た。君が言えたことじゃないと思うんだけど。
    「何?生きている感じがしない?」
    デスカーンが黒い腕をニュッと伸ばして彼女の頬を突いた。推理漫画ならここでドサッという音と共に仰向けに倒れるものだけど、全く倒れない。ちゃんと力は入っているようだ。
    「生きてるよ。多分」
    多分、と付け足したのはここが普通の場所では無いからだ。マダムの術と扱う薬にかかれば、錬金術や神の前で禁忌とされてきた人体練成や死者蘇生も簡単に出来てしまう。
    そして最後に私が見た物は、いつも通り椅子に座り紅茶の味と香りを楽しむマダムと、その側でやはり寝転がって大量のタオルに囲まれている女だった。こちらも目が死んでいて、ボーダーのマフラーをつけている。
    「よく来たな」
    「…マダム、とうとう壊れたかい」
    「安心しろ。世間一般から見れば、私は既に壊れている」
    「ああそう」
    ゾロアークが椅子を持って来た。言われるがままに座れば、そのままテーブルまで運んでくれる。飲み物は、という素振りを見せたので普通にダージリンを注文した。
    「持って来たと言えば持ってきたけど」
    私はマダムにそれを渡した。銀細工の結晶。ネックレスになっている。マダムが目を細めた。喜んでいるようだ。
    「普通の溶けない氷で作られた物よりずっといい。感謝するぞ」
    「礼はいいから教えろ」
    「…お前の血を何に使ったのか、か?それならもう答えを見ている」
    私はハッとした。慌てて足元を見る。タオルに顔をうずめながらこちらを伺っている女。目は死んでいるが、髪の色は三人とも同じだ。そして、私とも。
    「最近エドワード・ゴーリーにはまってな。『うろんな客』からヒントを得て作ってみた」
    三人がのろのろと並んだ。左からステッキを持った女、皿を齧っている女、そしてタオルを持っている女。
    「紹介しよう。私の胡乱な三人娘だ。ステッキ、ディッシュ、そしてタオル」
    三人揃ってお辞儀をした。ギギギという音がしたような気がした。
    「作った意味は」
    「材料収集、情報収集。私が指示を出さない限りは動かないが」
    マダムが手を叩いた。すると突然空気の抜けた風船のように三人ともその場に倒れこんだ。完全に目が死んでいる。何も映していない。
    「悪趣味」
    「だがお前はその悪趣味に血を渡した本人だ」
    首が痛痒くなってきた気がして、私は思わず爪を立てた。

    「本当は少年が良かったんだがな。合った人形が見つからなかった」
    「見つかったらまた血をよこせとか言うなよ」
    「伝説のポケモンの血を入れたらどうなるのか…」
    完全にマダムは一人妄想の世界に入ってしまったようだ。ゾロアークに手を振ると、私は誰も寝そべっていない絨毯を踏みしめ、ドアを開けた。

    ――――――――――
    [書いてもいいのよ]


      [No.1741] 【再稿】 数十年と千年過ぎ去りても――。 投稿者:巳佑   投稿日:2011/08/12(Fri) 03:25:20     76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ある昔のことでした。
     とある場所に小さな王国があり、そこには仲つまじい、王様と妃様がいらっしゃいました。
     その王様と妃様の愛が示されるように、王国は平和に包まれていましたが、
     それは何時までも続くほど、甘いものではありませんでした。
     王様と妃様は年を老いていき、息子や娘たちが王位継承の為に様々な策略を張り巡らしあいます。
     アリアドスの巣のようにまとわりつく、その重い感覚が王様と妃様は大嫌いでした。
     ついにその居心地の悪さに限界を覚えた王様と妃様は王国を飛び出し、小さな森の中に消えました。



     その森の中には丸太で作られた小さな小屋がただずんでおり、
     誰も住んでいないことを確認した王様と妃様はそこで暮らし始めます。
     静かで穏やかな日々は王様と妃様に幸せをもたらしましたが、それも長くは続きませんでした。
     時が重なっていく度に王様と妃様は年をとっていき、やがて老衰していき、二人そろって床に伏せる日も珍しくありませんでした。
    「なぁ……我らは死んだらどうなってしまうのか、分かるか?」
    「うむ……分からんのう……ただ」
    「ただ?」
    「なにがあるのか、分からなくて、怖いというのはあるのじゃ。それと」
    「それと?」
    「お主と一緒にいれるかさえも分からないというのが、一番、怖いのう」
    「……確かにな」
     やがて訪れる死を王様と妃様は恐れていました。
     もっと、一緒に生きていたい。
     もっと、もっと、この世界で二人一緒に愛しあいたい。
     日を重ねるごとに、そのような気持ちが強くなっていました。


     ある日のことでした。
     王様が目を覚ますと、体の異変を覚えます。
     やけに体が軽い、昨日まであんなに重かったはずなのに、といった具合にです。
    「目が覚めたかのう、お主。驚いたじゃろう? 妾も最初は驚いたが、意外とこの体に馴染んでおってな、まるで最初っから、この姿だったような気がしてもおかしくないぐらいじゃ」
     王様の目に映ったのは妃様の声と、白銀の九つの尾を揺らしている狐――キュウコンでした。
     王様はすぐさま外に飛び出て、近くにある川までいき、水面を覗きこむと、
     狐の顔と立派な金色のたてがみに長い耳がありました。
     そして自分の九つの尾に気付くのも時間はかかりませんでした。
    「お主もキュウコンになって、妾も驚いたぞい」
     後から追ってきた白銀のキュウコン――妃様が声をかけてきました。
     その声音はやけに明るいものでした。
    「なんだ……やけに楽しそうだな? いきなり、このような姿になって、少しは――」
    「何を言うておる、お主。お主も妾たちがなったポケモンのことは知っておろう?」
    「キュウコン、だが、それがなんだ?」
    「まったく、勉強不足じゃのう。キュウコンは千年生きる獣と書物には書かれておったんじゃぞ?」
    「せん、ねん……?」
     その数に赤色に生まれ変わった目を丸くしている王様の顔に妃様の顔が近づきます。
    「なんじゃ、嬉しくないのか? あと、千年もお主とこの世界で一緒にいれるのじゃぞ? もちっと、喜ばんかい」
     日に照らされた白銀の妃様の笑顔と言葉に王様はやれやれといった顔つきになりました。
    「まったく……お前さんのその前向きさにはいつも敵わん」
     そう言いながらも、王様の顔は悪くないといったような感じでした。
    「さて、善は急げと言うしのう! 折角じゃから、色々なところに旅してみたいのう♪」
    「やれやれ……だが、これでまたお前と一緒に――」
    「この世界で愛しあえるのう」
     不意打ちの白銀の口づけ。
    「それは、我に言わせてくれ!」
     金色のキュウコンと白銀のキュウコンは走り出しました。



     愛しあって百年。
     食べたことのない赤いトゲトゲの木の実を食べて顔を真っ赤にしたお主の顔を忘れぬ。

     愛しあって百年。
     海の中を平然と泳ぎまわるお前を見て、我のあごが外れそうになったことは鮮明に覚えておる。

     愛しあって百年。
     お互いに毛づくろいしあって感じた温もりは、いつまでも忘れない。

     愛しあって百年。
     満月に向かって吼えた(ほえた)お主の姿はかっこよかったぞい。

     愛しあって百年。
     お前の寝顔は何度見ても飽きることはなかった。

     愛しあって百年。
     人間だったときの頃のように、金と銀を重ねあう、熱くて、そして温かい夜を過ごした日もあった。

     愛しあって百年。
     仲違いをしたとき、
     お主が仲直りの証に、妾の大好きな花を持ってきてくれて……嬉しかったのう。

     愛しあって百年。
     お前の変わらぬ正義感の強さを我はいつまでも誇りに思う。

     愛しあって百年。
     世界の隅々まで金色と白銀の足跡を残してきた。


     更に愛しあって百年――。



     金色の王様と白銀の妃様はとある廃墟に入り込みました。
     ところどころ、ガレキの山がただずんでおり、足元に気をつけながら、奥にあるボロをまとった建物の中に入りました。
     建物の中は屋根が点々と抜けており、
     そこから入り込んでくる長細い光が奥に続く道を照らしていました。
     そのまま続いていくと、やがて一つの広い空間に出ました。
     金色のふさがついた赤いじゅうたんがボロをまといながら王様と妃様を出向かいます。
    「……もう、こんなになってしまったとはのう、あやつらは一体、何をしてきたのだろうかのう」
    「噂には聞いていたが、これが、この国の顛末(てんまつ)といったところか……」
     王様と妃様は呟きながら、辺りを懐かしむように見渡しました。
     王様と妃様が入り込んだ廃墟は、昔、王様と妃様が住んでいた、あの小さな王国でした。
     王様と妃様が王国を出たときから、王位継承を巡る内乱が激しくなり、
     なんとかその件が片付いた矢先、今度は異民族との戦が連続的に起こり、最終的に、この王国は滅びてしまったといわれてます。
     立派な二つの王座は跡形もなく消え、
     悠然と立っていた白いオブジェたちの体は砕けても、なんとか立っているといった感じでありました。
     王様と妃様は数段の階段を登り、影をなくした、二つの王座があった場所につくと、その場で座りました。
    「あっという間に千年か……」
    「不思議よのう、数を数えていたわけではないのにな」
    「体の方が覚えていたのかもしれんな」
    「むふ、そうじゃな」
     姿がキュウコンに変わって早千年。
     王様と妃様に本当の寿命が迫っていました。
    「さて……今度こそ、我らは死んでしまうのだな……」
    「お主は、怖いかのう?」
    「お前の方こそどうなんだ?」
    「まぁ、怖い部分も、もちろんあるのじゃが……」
     妃様は王様の頬に一つ、白銀の口づけをしました。
    「お主とは千年以上も愛しあったのじゃ。そして、死んだ後も、ずっと愛していくんじゃ。じゃから大丈夫じゃ」
    「でも…………」
    「でももへちまもないわ。妾とお主のラブラブに神様も手を触れることはできんじゃろう。触れたら大やけどしてしまうからのう」
     こんなときまで、前向きにそんなことを言える妃様に王様はやれやれという顔になりました。
     しかし、その顔は――。
    「まったく、千年の内にお前の前向きさは、無敵の武器になってしまったな」
    「まぁ、お主がいてくれなければ、真の無敵とは言えんがのう」
    「どの顔でそういう?」
    「ん? 妾の可愛い顔に決まってあろう」
     妃様の優しい微笑みにつられて、王様も微笑みました。
     思い返せば、求婚の告白も妃様に先を越されており、
     そのおてんばで、だけどその背中はどんな者をも奮い立たせる妃様が王様は大好きでした。
     しかし、このまま、妃様に先を越されては男として恥かもしれないと思った王様は妃様に一つ提案します。
    「なぁ、お前、尻尾に大きな桃色のリボンを持っていただろう? それを出してくれぬか?」
     妃様は言われたとおり、九つの尾の中から大きな桃色のリボンを取り出しました。
     昔、旅の途中、人助けをしたときにもらったモノです。
     「どうするつもりなのじゃ?」
     「こうするんだよ」
     王様はそう言うと、その大きな桃色のリボンを自分の体と妃様の体に巻きつけていきます。
     胴体はもちろんのこと、尻尾までも絡めて、簡単には外せない、複雑な結びをしました。
     王様と妃様の体は密着状態になりました。
    「お主も、考えるのう」
    「やはり、心配だからな……だが、こうすれば離れぬことはないだろう」
    「むふ、相変わらずな心配性よのう、お主は……じゃが」
     妃様が王様の鼻を一舐めしました。
    「お主の、そういうところも、妾は大好きじゃ」
    「我は、お前のその強気なところも大好きだ」
     王様が妃様の鼻を一舐めし、
     妃様がなにやら思いついた顔を浮かべます。

    「なぁ、主よ。死というものに見せ付けてやらんか?」
    「なにをだ?」
    「決して離れぬ、妾とお主の愛を」




     白銀が一つ、金色に口づけを。
     金色が一つ、白銀に口づけを。

     そこから鳴り続く口づけの音色は、
     王様と妃様が描いてきた一つの物語の終焉。

     そこから鳴り続く口づけの音色は、
     王様と妃様がこれから描き始める一つの物語の序章。

     決して変わらぬ、とこしえの愛。





    【書いてみました】

     一応、この漢字は、と思ったものの読み方を。

     妾:わらわ
     終焉:しゅうえん

     遅いよ!! と言われそうですが、気が付けばイラストからもらった刺激が手を勝手に動かしていました。
     最初、えるさんのイラストを見て、「タグもついているし書いてみたい!」と思っていたのですが、中々、思いつかず。
     しかし、改めて、えるさんのイラストを見て、「あれ……そういえば、ここって、どこかのお城とかかな……?」と思った途端、
     今回の物語を思いつきました。
     えるさんのタイトルやイラストにちゃんと沿っているかなぁ……と内心ドキドキしながら、
     書いてみましたが、いかがだったでしょうか?(汗)

     改めて、遅いよって感じでごめんなさい。

     そして、えるさん、素敵なイラストと『書いてもいいのよ』おいしくいただきました。

     ありがとうございました!


     追記:2011年8月12日のチャットにて、
        イケズキさんからのラブコールを受けまして、再投稿させてもらいました。
        イケズキさん、ラブコールありがとうございます!


     
     それでは失礼しました!


    【狐の恋で、もふもふ♪】


      [No.1740] ホウセンカボムwith不発ボール 投稿者:音色   投稿日:2011/08/11(Thu) 22:40:34     88clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     テレポート 14/20

     真っ白なブラウス、真っ赤なロングスカート。
     全身を包む淡い光。対照的な黒髪がまた光を際立たせる。

    「ふ、ふ、ふ。もう誰にも会わないと思ってたのに、こんなところでがっちゃんこされる前のバクダンボールに会っちゃうなんて。おもしろすぎるよ」

     こんな不思議な事、なかなかないよ。淡く光るその人は、なんか楽しそうだった。
     俺の目の前には爆発前の、紅白まんじゅうさんがいた。

    「反攻して、脱線して、ここに来たのに、どうして君がいるのかな?」

     いや、いるのかな?と言われましても。
     この場合、俺の言葉は通じるんだろうか。人とポケモン、がっちゃんこの場合は。分からん。

    「ふ、ふ、ふ。まぁ、いいよ。最後の最後に、話し相手がおんなじバクダンボールなんて。傑作だよ。よくできてるよ」

     しゃがみこまれた。俺はどうすればいいのか分からない。
     テレポートした場所が、コガネのラジオ塔の隅っこなのか、と見当がつくだけで。

    「君を巻き込みたくはないんだ。私がどかん、したら、君もどかん、じゃすまないよ。多分、どかんとする前に、木端微塵だよ」

     それはさすがにご遠慮したい。ごろごろごろ、紅白まんじゅうさんの周りを一周してみる。

    「私ね、さっき、生まれて初めてたくさんしゃべったんだ。ジャージちゃんって言うんだけどね、その子のおかげでここに脱線したんだけど」

     ホウセンカそっくり、を自称するお嬢さんは、おんなじ爆発物にたいして短いお話をする。
     簡単な仕組みで、どかんと一発。人をたくさん巻き込めるように作られた、怖い怖い、恐ろしい才能。でも、使い捨ての才能。

    「リサイクル不可能、ってあたりが素晴らしいよね。威力を大きくして、自分も吹っ飛んで、証拠隠滅。作った方は安全安心。拍手喝采だね」

     本来のポケモンは、自分の体力の全てを使って爆発する。まさに『じばく』で『だいばくはつ』。
     でもそれは、あくまでも衝撃とかエネルギーを周囲に放出するだけで、自分は、そりゃ激しく傷つくけど、生きてはいるわけで。
     入れ物を吹き飛ばす、自分の体が壊れることをお構いなしで爆発すれば、威力なんて、それじゃない。

    「さて、私の最後のお話はこれでおしまい。なんか、聞いてもらってほっとしたよ。やっぱりおんなじバクダンボールだからかな?」

     ふ、ふ、ふ。笑って、すっと立ち上がる。

    「それじゃあ、バイバイだよ。ちゃんと遠くに離れるんだよ。いいかい?わかった?」

     まんまるな体だと、肯定と否定はどう表せばいいのか、よく分からんけども。
     とりあえず、くるりと背を向けた紅白まんじゅうさんを見て。
     俺は、テレポートした。


     つづけっきんぐ
    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  ビリリダマ、爆発、ホウセンカ、紅白まんじゅうさん。
    これだけそろってるんだから書かないわけにいかない。

    【大好きですホウセンカ】
    【はーくーしゅ!はーく(殴】


      [No.1739] (_・_・_)←ビリリダマじゃなくてマルマインっぽい 投稿者:音色   投稿日:2011/08/11(Thu) 21:21:36     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > なんか上がっとるーっ!!(素

     なんかあげてみたー。ども、音色です。

    > どうも、ご無沙汰しております。586です。会社で携帯から読ませていただきました!

     586様ご機嫌麗しゅう、お勤め中にチェックしていただいて光栄至極!

    > 携帯からは書けないので寮に戻ってきてから書いてますが、読めば読むほど小ネタの仕込みっぷりが素敵で笑わせていただきました。鈴木三郎さんとか完全に忘れてたよ!
    > 作品のチョイスが全体的にマニアックなのがツボでした。ああ、こんな作品も書いたなぁと感慨にふけることしきり。。。

     俺が特に好きな作品を詰め込みましたw
     大丈夫!まだテレポートのPPは残っているのですw

    > 最後にちらっと出てくるチルチルちゃんも含めて、とても面白かったです。
    > 久々にうちも何か書きたいですが、仕事が超絶大ピンチ+夏コミ前で身動きが取れませぬぐぬぬ。ネタが結構あるだけに歯がゆいことこの上なしです(´・ω・`)

     喜んでいただけなら何より!
     586様の夏コミ本が気になって欲しくてでも行けなくて、首吊りたい。

    > 疲れた体によく効く素敵な内容でした。どうもありがとうございます! 明日……というか今日も頑張ろうと思います!(目覚ましをセットしながら

     がんばってください!
     よし、586様をさらに癒すことができるようなお話を・・・書ける・・かなぁ・・。

     がむばりますっ!では


      [No.1738] そして帰って来たのは 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/08/11(Thu) 21:11:56     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     シキジカを呼ぶ。夏の体毛は、森と解け合ってやや見にくい。ご飯の用意ができたと。そしてキャンピングカーのドアを開ける。いつもは森の景色が見えるのに、今日は違った。たまに遊びに来てくれる子でもない。見た事もない人間。
    「麗しいお方……」
    「えーと?」
    「俺は池月と申します!こんな鬱蒼とした森とキャンピングカーは貴方に似合わない!俺と一緒に世界へ飛び出しましょう!」
    「えーと?」
     手を取ろうとする。さわられたらまずい。イリュージョンで人間になっていることがバレてしまう。思わず一歩しりぞく。
    「そんな警戒しなくても!俺は誠実な男です!貴方ほど麗しいお方のもふもふ……じゃなかった、御手に触れたとしても、けがすことはありません!」
    「私はここで待つ人がいます。人間とは暮らせません」
    「そんな!貴方の好物だと聞いたヒメリパイも持って来たのです!ぜひ食べてください!」
     誰が好物だと言ったのかは知らないけれど、その男が持って来た包みにはヒメリのパイ。作ってみたりしているけれど、他の人が作ったのを見るのはさらに食欲が増す。
    「……仕方ない、狭いけど入って。シキジカ!ご飯!!!」
     シキジカが入ってくる。そして男を見上げると、誰、と聞いた来た。男に聞こえない小さな声で「知らないけど、池月っていうここから出て行こうっていう変な男」とシキジカに言う。
    「でも珍しいね、人間をキャンピングカーに入れるなんて」
    「仕方ない。今日のご飯はオレン漬けだけど、シキジカもヒメリパイ食べる?」
    「食べる!」
     食卓は一人分。仕方ないので、その辺にあった段ボールを椅子に、パイを切り分け、オレンのワイン漬けを出す。そして男の方を見ると、うっとりとした顔でこちらを見ている。本当に目的がこちらなのだろう。
    「こんな狭いキャンピングカーでいいのですか?貴方にはもっと広い世界が……」
    「ですから私には待つ人がいます。その人が帰ってくるまでここは離れることが出来ません」
    「心に決めた人がいると……では、今からその人を俺に変えませんか!?後悔はさせません!」
    「ですから……」
    「いいのです!すぐに決めなくても!俺に人生あずける覚悟というのは、相当なものでしょう!」
    「いやだから……」
    「貴方のもふもふ……じゃなかった、素敵な胸に埋もれたい!!!」
    「聞いてんのかこの色男!!!」
     思わず食卓を越えて悪の波動を撃ち放つ。その波動が、男を直撃する。人間にはかなり効くはずだ。黙らせるくらいはできるはず。
     そして目を疑う。
    「ぞろ、あーく?」
     そこにいたのは、イリュージョンがとけたゾロアーク。自分と違うのは、頭から背中にかけて生える警戒色が、赤ではなく、青いこと。そして少し黒い毛皮も茶色いこと。
    「同じくイリュージョンでくどいてみましたが、俺は諦めませんからね!!!」
     素早い。キャンピングカーの入り口からさーっと出ていった。何がしたかったのか解らず、とりあえず去ってく後ろ姿を見送る。
    「……仲間だったんじゃないの?」
     シキジカは聞く。
    「確かにそうなんだけど、あれはなんか違うような……」
    「いいの?せっかく仲間がいたのに」
    「よくない、かな?」
    「よくないよ。留守番してるからいってきなよ!」
     とりあえず匂いを追って青ゾロアークの後を追う。まだこの辺りにいるはずだ。特徴的な青い毛はすぐに解るはず。そして。
    「麗しいお方!追いかけて来てくれたのですね!!」
     もうすでにイリュージョンがとけてる。それに、最初からゾロアークだと解ってきていた節もある。
    「追いかけてないけど、貴方誰?」
    「俺は池月です!」
    「そこじゃなくて、何の用?」
    「貴方と一緒にもふもふな世界を作りたいのです!!貴方のそのもふもふな毛皮ならば、見事なもふもふパラダイスが作れます!」
    「もふもふパラダイス?」
     そういえば聞いたことあるような。この世にはもふもふパラダイスという美しい毛並みをもったポケモンたちが集う場所があると。ゾロアだった時に、そこにいくの?と冗談まじりに聞かれた。
    「遠いんでしょう?私はここから離れない」
    「そんなことありません!常にこの池月が迎えに来て送りにきましょう!いざ、貴方の漆黒なもふもふを!!」
    「……私にはシキジカもいるし、勝手にはなれるわけにはいかない」
    「そんな!俺には貴方しか見えない!貴方こそそのような楽園に行くべきゾロアークだ!すぐにでなくてもいい、明日も来ます!ぜひいいお返事を!!」
     そういって池月は消えて行く。気配は完全に消えた。仕方ないとキャンピングカーまで帰る。
    「おかえり!あれ?どうしたの?楽しそうだね」
    「え?そう?」
    「うん、とっても楽しそう。何か良い事あった?」
    「内緒」
     そういってヒメリパイをたいらげた。自分で作るのとは違って、ふんわりとした甘みが口に広がった。

    ーーーーーーーーーーーーーーー
    【もふパラ】
    イッシュに来た池月くん、迷いの森のお姉さんを口説いてます。
    私の世界は、細々つながっているので、解りにくいところありますが、そこはご容赦ください。

    【好きにしていいのよ】【初恋は青ゾロアーク】


      [No.1737] 油を注がれて(解説:傍観ポケ二匹) 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/08/11(Thu) 21:06:09     26clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    PCの前にいるのは、『傍観者』、いや『傍観ポケ』ことサワンとファル。

    >  天の恵み!!!さっそくポケモンたちに見つからないように台所にもっていき、ホールのケーキに包丁を入れる。しかし、嗅覚となれば人間よりも優れてるのがポケモン。ふと気配を感じ、振り返るとそこはシェノンだった。

    サワン「オルカ、後ろ後ろ、です」
    ファル「振り返ると…は怪談になるレベルの恐ろしさだな」

    > 「食らえ、メガホーン!」

    ファル「問答無用だなリーダー」

    >  次に技を覚えたら、この技を真っ先に消そう。そう決意しながら大人しくダイケンキの太いメガホーンを食らう。
    >  ホールのケーキを独り占めできたシェノンは嬉しそうに口をつけようとした。が、後ろから視線を感じる。それも複数。

    サワン「オルカの諦め顔と、リーダーの幸せそうな微笑みですね☆」

    > 「独り占めは良く無いリーダー」
                              byナイト
    > 「独り占めは良く無いことリーダー」
                              byティラ        
    > 「私にも食わせろリーダー」
                              byレッセ
    > 「独占禁止法というものがあるリーダー」
                              byナスカ
    > 「財閥解体されたいかリーダー」
                              byカゲマル

    ファル「…と勝手に予想」
    サワン「一番単純に言うのはナイト、レッセさんは男勝り口調、カゲマルさんはちょっと怖い事言ってますね」
    ファル「ティラはなんか笑顔で言い放ってそうな雰囲気だ。俺の妻が禁止法発言してるんだが」

    > 「くっ、いい加減に、いい加減に食わせろおおおおおお!!!!」

    ファル「オルカ、魂の叫びだっ!!」
    サワン「それでもこの後すぐ、ナスカさんに焼かれましたね」

    > 「えー?友達にぃ、ゴディブのチョコケーキに見せかけた自作の生ドリケーキ送ったの☆」
    > 「……ドリの実ってさ、あのあまりに苦くてそのままで食べれないっていう?」
    > 「そうそう、そのドリの実。あんまり苦くておいしくないから、作ってみた。きっと苦い思いしてるんだろーな☆」

    ファル「いろいろな意味で苦いぞwww」

    >  グリーンカーテンの一環とかでドリの実を植えたやつから生えた実。他の実もあったのだけど、野生のポケモンにかじられていたりした。けれどドリの実だけは誰も食べない。仕方ないから生ドリケーキを作成してみたのであった。

    サワン「まるで残飯処理のような生ドリケーキです」

    >  シェノンが生ドリケーキに近づく。もう部屋は荒れ果て、主人はすでにカーテンの下。歩けるのはかろうじてシェノンのみ。おいしそうな匂いにつられ、前回のような甘くてとろけるほのかな苦みを期待して口に入れる。

    ファル「リーダーマジパネェ」
    サワン「死屍累々のごとく……。まあ戦争でしたからね」
    ファル「あ、カゲマルとナイトがさっきのオルカのとばっちりで黒こげになってるぞ」
    サワン「こっちにはナスカさんが墜落して、レッセさんが下敷きになってますよ」

    > 「そういえば、たまにはリーダーらしくみんなに分ける!」

    サワン「リーダーの和平宣告です!!」
    ファル「あられどころかティラが嫁入りして天気雪降りそうだ」

    >  石灰質のアシガタナで器用に切り分ける。そして当分されたケーキをみんなは口にする。

    サワン「えーと、とりあえず今夜はナイトに辛いカレーを作ってあげることにします」
    ファル「まだ騎士は幸せな方だな。こっちは夕飯食えるかも分からないから(妻的な意味で)」
    サワン「皆さんの味の好みって、相当違うんですよね…。なのにあのケーキといったら…」
    ファル「相当、魅力的なケーキなんだな」

    サワン「でも、やっぱり命と比べたら軽いですよね」
    ファル「……同感だ」

    ドレディアとペンドラー、傍観ポケの二人。果たして彼らに今後出番はあるのか!?


      [No.1736] 引っ越したことも転校したこともないけれど 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/08/11(Thu) 20:33:52     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    SFホラーのようなものを感じました。
    意識が合体してお父さんとお母さんは帰って来れなくなってしまったのではないかと。
    いやそのようにしか見えなくて。
    それで、お兄ちゃんは体弱いんじゃなくて、戻す研究のために残るのではないかと。

    邪推すぎるかもしれないけれど、色々と行間から物語が溢れるようでした。


      [No.1735] ReBURSTきたー!!!???? 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/08/11(Thu) 20:12:05     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    タイトルで、リバーストの話が初めて来たと期待して、開いたのは・・・


    もう、カオス。
    リバースト読まないと解らないのではないk(
    しかしなぜラジオ体操と組ませたのか解らないぞ!


      [No.1734] 池月君基本はいいやつなんだy( 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/08/11(Thu) 20:04:01     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    野生で、他のポケモンと話すということを知ることが出来たのが、池月くんですから、きっと金柑にとっては良いヤツなんでしょう。多分、良いヤツなんです、ただ浮気癖があるだけの・・・

    そのイーブイは、ピジョットに攫われそうになったときに金柑が助けた捨て子です。
    そして、のちの金柑の・・・・・・
    その事もあるから、きっと池月は「いいやつ」という評価がついて、金の貸し借り程度では動じない評価なんだろうと思います。

    あと、金柑が腹黒ライチュウだという噂もあったので、評価上がったのは嬉しいです。
    確かに、高利貸し、キャバ経営、飲食店経営となれば、闇の帝王を思わせる職業ですg(

    感想ありがとうございました。


      [No.1733] 【書いてみた?】火には油を注いで 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/08/11(Thu) 19:51:25     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「ってなわけで食われてしまった」
    そう報告したはずだ。そう、確実に、トラブルの原因に。しかしその本人は「わかったぁー(多分はぁと」と言うだけ。


     その意味が解ったのは数日後。謎のチャイムが鳴って出て玄関から出てみれば、なんとこの前の包みと同じもの!注文した覚えのないものに、心臓がバクバクいっている。そしてかさこそ包みを開けると、ド派手なタブンネちゃんの封筒と便せんで「食べれなかった分☆」と書いてある。
     見た目は食べ損ねたチョコレートケーキと全く一緒。しっとりとした生地、そして全体的に降り掛かるココアパウダー、チョコレートクリームのデコレーション。
    「こ、これはっ」
     天の恵み!!!さっそくポケモンたちに見つからないように台所にもっていき、ホールのケーキに包丁を入れる。しかし、嗅覚となれば人間よりも優れてるのがポケモン。ふと気配を感じ、振り返るとそこはシェノンだった。
    「俺の分、ないとは言わせない」
    「いや、これはこの前食べれなかった……」
    「食らえ、メガホーン!」
     次に技を覚えたら、この技を真っ先に消そう。そう決意しながら大人しくダイケンキの太いメガホーンを食らう。
     ホールのケーキを独り占めできたシェノンは嬉しそうに口をつけようとした。が、後ろから視線を感じる。それも複数。
    「独り占めは良く無いリーダー」
    「独り占めは良く無いことリーダー」
    「私にも食わせろリーダー」
    「独占禁止法というものがあるリーダー」
    「財閥解体されたいかリーダー」
     みんな一斉に言いやがったので、誰が言ったかなんて解るわけがない。しかし、第二次ケーキ争奪戦の鐘が鳴ったことだけは確か。一瞬の静寂を残し、一気に技を放出する。
    「くっ、いい加減に、いい加減に食わせろおおおおおお!!!!」
     起死回生!メガホーンで減った体力で、暴れ始めたポケモンたちに拳を入れて行く。が、そんなもんで治まったら最初から争わない。ナスカの熱風を食らい、汗を流しながら再び倒れる。倒れた主人に目もくれずポケモンたちはリビング大乱闘。かすむ視界に入るのは、片付けが大変そうなひっくりかえった椅子とテーブル。


     きゃっきゃしながらノートパソコンにひたすら文字をうってる。何が楽しいのかと、長い雷のしっぽを持つライチュウが覗き込む。
    「えー?友達にぃ、ゴディブのチョコケーキに見せかけた自作の生ドリケーキ送ったの☆」
    「……ドリの実ってさ、あのあまりに苦くてそのままで食べれないっていう?」
    「そうそう、そのドリの実。あんまり苦くておいしくないから、作ってみた。きっと苦い思いしてるんだろーな☆」
     グリーンカーテンの一環とかでドリの実を植えたやつから生えた実。他の実もあったのだけど、野生のポケモンにかじられていたりした。けれどドリの実だけは誰も食べない。仕方ないから生ドリケーキを作成してみたのであった。


    「はぁはあ……おれの、もの、だ!」
     シェノンが生ドリケーキに近づく。もう部屋は荒れ果て、主人はすでにカーテンの下。歩けるのはかろうじてシェノンのみ。おいしそうな匂いにつられ、前回のような甘くてとろけるほのかな苦みを期待して口に入れる。
    「……いや」
     シェノンが離れる。そして恨めしそうな顔でこちらをみている黒い毛皮のティラに渡す。
    「そういえば、たまにはリーダーらしくみんなに分ける!」
     その言葉に他のポケモンたちは沸き立ち、リーダーが珍しい、明日はあられが降るんじゃないかと噂する。そんな嬉しそうにしているみんなの顔を見るのは、シェノンにとってとても楽しかった。
    「じゃ、きってやるからちょっとまってろ」
     石灰質のアシガタナで器用に切り分ける。そして当分されたケーキをみんなは口にする。


     その後、どうなったかはご想像にお任せする。


      [No.1732] 遅くなりました 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/08/11(Thu) 17:14:57     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >  まず真っ先に ぼくのなつやすみ を思い出しました。実家のあの水と土の匂いが漂ってくるような気がします。
    ぼくのなつやすみ、プレイしたことはないのですが、ぐぐってみてなるほどと思いました。
    まぁ自分は生まれついての田舎モンですが。

    >田舎のおやつってどうして量が多いんだろう。
    ばーちゃん、マクワウリ1人1個は多すぎるって昨日も言ったじゃないか(´・ω・`) 食べるけど。
    しかも自分の実家の野菜果物はなぜか異様に肥大化している罠。

    >  アブソルラバーとしては彼の活躍も気になるところです。
    ご期待通りの活躍が彼にできるのか不安です。

    >  そしてさすがと言うべきか(?)、食べ物の描写が素敵!
    >  おにぎりのところなんか、さっき昼飯食べたばっかりなのに涎がじわじわ。
    言わずもがな一番力入れてますとも(笑)
    でも自分は、正直、梅干し、好き、では、ない、です、はい。

    >誤字と思しきもの
    ご指摘ありがとうございますorz 修正しました。

    >  また最後のお婆ちゃんとの会話で一箇所、純くんが訛っているのは仕様でしょうか。
    ……ばあちゃんを訛らせようとした結果、自分の脳内が余計に地元化したようです(´・ω・`)

    感想ありがとうございました!
    後半も頑張ります。


      [No.1731] 向日葵前線異常ナシ 投稿者:紀成   投稿日:2011/08/11(Thu) 15:38:20     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    向日葵前線ニ異常アリ 至急応答セヨ
    マダマダ水モ太陽モ ソシテ何ヨリ気持チが足リナイヨウデ


    私はこの町を出たかった。
    シンオウ地方はものすごく広い。とてつもなく広い。めっさ広い。町があったとしても次の町に行くのに車で二時間半かかるなんてザラだ。
    おまけに灯りも無い。夏場はまだいいとして、冬は特に酷い。ホワイトアウトの中真っ暗闇をひたすら数キロ離れた学校から自宅まで歩いていかなくてはならない。よく観光客が『冬のシンオウ地方行ってみたーい』などと軽々しく口にするが、ふざけるなと言いたい。自宅のドアは二重構造、屋根は直角に限りなく近く、雪が降り積もり凍れば滑って転倒。スキーなんて簡単に出来るもんじゃない。
    だが、シンオウにも都会と言えそうな物はある。コトブキシティ、ヨスガシティ、トバリシティ、ノモセ…も入るかな。あとホテル・グランドレイク経由で行くシンオウ最後の街、ナギサシティ。ここのジムリーダーが一時期退屈でたまらなくて街全体を改造して電力が足りなくなった、って新聞に書いてあった。結局街全体の通路をソーラーパネルにすることで回避したみたいだけど。
    私も退屈で窮屈で仕方無い。ナギサのジムリーダーみたいなことも出来ないし(電気が全然通っていない)ポケモンは自宅の農家で乳搾りや精肉用に飼っているミルタンクやケンタロスしかいない。バトルには向いていない。
    私ももう十七なんだけど、『農家の娘にポケモンバトルは必要無い』って言われて自分のポケモンを一匹を持たせてもらえない。まあ、両親も持ってないんだけどね…
    確かにそれは一理あると思う。木の実泥棒は自分で追っ払えるし、毎日毎日早朝三時には起きて仕事三昧。夜寝るのは八時半。テレビはあることにはあるけど、チャンネルはたったの四つだけ。ラジオも電波が無くて聞けないし、本屋は『何世紀前からあるの?』って思うようなボロボロのが一軒。漫画雑誌は入荷は一ヶ月遅れ。
    当然、ネットも通ってない。
    だけどそれとこれとは話が別。もうこんなドがつく田舎はたくさん!学校の友達は十七年手伝って慣れている農家を継ぐって言うけど、私はそんなの嫌。
    何が何でもここを出てやるんだから!


    「いけません」
    母さんのひと言。疲れた目をしている。手という手は皸としもやけだらけ。ものすごい寒い冬にずっと水仕事をしていると、皸が出来た場所にしもやけが出来て、腫れについていけなくてピシピシと割れるの。ものすごく痛いのよ。
    「何で!」
    「貴方はまだ若い。この町でもっと勉強しないといけないの。それに、町に出たとしても何がやりたいの?町は厳しいところなの。ここの寒さより、ずっと」
    「…」
    父さんが部屋に入って来た。リングマ髭が目立つ。この人の顔も赤い。
    「どうした」
    「マユが町に出たいって」
    「駄目だ」
    即答。融通が利かない頑固親父。
    「お前はこの農家を継ぐんだ。勢いだけで町に出た奴は、皆片っ端からくたばっていく。人間恐怖症になって引きこもる奴もいる」
    「私はそんなのにはならないもん」
    「生まれてから一度もここを出たことが無いのに、か」
    その通りだ。私はこの十七年、一度もここを出たことがない。親戚は米農家、木の実は自分で育ててるし。毎年秋になれば猟が解禁になるから、ハンターの人から肉はもらえる。正に自給自足の生活をしてきた。
    「いい加減にしなさい。もう部屋に戻って頭を冷やしなさい」
    これ以上話しても意味が無いと思ったのだろう。両親は私を部屋に入れた。

    「都会に出る?」
    次の日、私はクラスの友達に聞いてみた。うちの学校は全校生徒十九人。先生入れて二十七人。昔は賑わっていたらしいけど、皆町に引っ越して行ったらしく全然人が来ない。
    「そ。もうこんな場所は嫌だから」
    「でも都会に出て何がしたいの?」
    両親のような落ち着いた返事が戻って来る。クールだ。
    「…とりあえずバイトかな」
    「マユ、農家の仕事しかやってないんでしょ?今って不景気なの知ってるよね。使えなかったらすぐ首切られるって母さん言ってたよ」
    駄目だ。この子達に相談しても何も利益にならない。皆家業を継ぐ気でいるんだ。

    帰り道。私は自宅までの数キロの道を歩いていた。駅前の灯りが全て消えるのは午後七時前後。なんつー田舎っぷり。
    「結局たいした進展は無かったわね…」
    私の歩く横を白樺林が延々と続く。観光客は綺麗だって騒いで写真撮るけど、もう見飽きた。
    「何か出てこないかなー」
    そう言って林の前を通り抜けようとした瞬間。

    ガサガサッ

    何かが聞こえた。ここらへんに足音を立てる動きをするポケモンは生息していない。まさか…リングマ?
    私は鞄から一本のスプレーを出した。自家製・ウイの実スプレー。一回プッシュするだけで酸っぱい粉末が飛び散って相手の目くらましになる。私の父さんもこれで命拾いしたことがあるらしい。
    どんどん音が近づいてくる。私はスプレーを構えた。
    次の瞬間。

    『ガシャーン!』

    ものすごい音と光が私の目の前に落ちた。スプレー缶が私の手からすっぽ抜ける。私も勢いに押されてひっくり返った。
    「いたた…」
    目を開いた私の前に立っていた物は―

    黒色のポケモンだった。

    ここらへんに生息していないってことは、一発で分かった。見たことが無いし、電気タイプのポケモンだったから。鬣からは青い電気を放ち、体の模様は白いイナズマ。尻尾は白にスピカを思わせるようなデザイン。
    『…』
    そのポケモンは私に何も無いようなことを感じ取った後、踵を返しそのまま走り去ろうとした。
    「待って!」
    考えるより先に体が動く。農家で育つうちに刻み込まれた特性。多分町では足かせになるだろうけど、今はそんなこと言ってられない。かなり差があったけど、私はひたすらポケモンを追いかけた。
    そして今気付いたけど、あのポケモン口に布の袋を咥えてる。
    誰かのポケモン…?

    どのくらい走っただろう。別の白樺林を抜けたところに、それはあった。
    可愛らしいログハウス。周りには高い、でもまだ咲いていない向日葵たち。今にも咲きそうな物もあるけど、全然蕾すら出来ていないのもある。
    ログハウスのテラスに小さなテーブルと椅子。看板には、『phantom』…ファントム?
    「こんなカフェがあったんだ」
    「そこのお嬢さん」
    ビクッとした。慌てて周りを見渡すけど、誰もいない。
    「ここだよ、ここ」
    上から声がした。顔をあげて…驚いた。
    赤い屋根の上(煙突つき)から、一人の男が手を振っている。ツナギ姿だ。多分修理でもしていたんだろう。ガチャリ、という金属が触れ合う音がした。
    「ちょっと待っててくれ」
    彼は死角に立ててあった梯子を降りてきた。するとさっきのポケモンがどこからともなく現れる。
    「ありがとうな」
    男に撫でられて、ポケモンは嬉しそうに目を細めた。袋を開ける。何かの缶、珈琲豆、砂糖、その他諸々。
    「あの…」
    「このポケモンを追って来たんだろ?最近多いんだよな、そういう人達。ゼブライカが珍しいからだろうけど…」
    ゼブライカ?このポケモンのこと?
    「豆や茶葉が切れるとこいつにお使いを頼むのさ。俺は車持ってないし、ゼブライカに頼んだ方が早いから」
    そう言われて思い出した。ここってカフェ?こんな辺鄙な土地に?
    「辺鄙な土地に、何でカフェがあるのか― そう思ってるだろ」
    彼が笑った。でも目が笑ってないような気がするのは、気のせいだろうか。
    「ここで話すのもあれだ。入れ。珈琲と紅茶、どっちがいい」
    「えー… 珈琲で」
    思わず声に出していた。なんなの一体。

    店内も可愛かった。この人の口調と外見からは想像もできないくらい、アンティークっぽいインテリアの数々。白樺で作られたテーブルの上には、小花模様のテーブルクロス。カーテンは若草色。カウンターにある椅子はワインレッドだ。
    いつの間にかツナギからカフェのマスターを思わせる服に着替えた彼が珈琲を入れていた。いい香りがする。
    「どうぞ」
    「…ありがとう、ございます」
    一口飲んだ。美味しい。ふとカウンターの隅に置いてある写真立てが目に入った。木で作られた二つに、それぞれ一枚ずつ。
    家族ぐるみで撮ったであろう物と、三歳くらいの女の子が向日葵を持って笑っている写真。とびきりの笑顔だ。
    「この写真は」
    「俺の弟夫婦とその娘だ。もう十五年になるな」
    彼がタバコに火をつけた。なんかいやに絵になる。写真家がいたら思わず一枚撮ってそうな感じだ。
    「可愛らしい姪っ子さんですね」
    「…ああ」
    「今はどちらに?」
    彼は少し考えた後、タバコを持った手を窓に向かってさした。自嘲気味な笑顔が浮かぶ。
    「あそこだ」
    「…ごめんなさい」
    「お嬢さんのせいじゃない。ここに来たのは初めてなんだからな」
    私は風に揺れる向日葵を見た。いつ頃咲くのか。まだ分からない。
    「何で」
    「こんな所でカフェをしてるのか、だろ?…ちょいと長い話だが、聞いてくれるか」
    私は頷いた。


    俺は元々イッシュ地方にいたんだ。ここから何千キロも離れた地方だ。眠らない町が沢山あったよ。物や人が溢れていた。世界各地から来た人達が昼も夜も働き、自分のポジションを手に入れる。このご時勢だ、使えないやつはすぐに別地方の子会社に飛ばされる。
    俺は弟がいた間は仕事してたんだがな。いなくなってからおかしくなっちまった。家にいることが多くなった。会社を辞めて、どっか別の場所に移住しようと思っていた。そんな時、シママ…今のゼブライカに遭ったんだ。
    元々競走馬として生み出されたんだが、闘争心が足りないってことで殺されそうだったのを俺が引き取った。言っただろ。物が溢れてるって。ポケモンも溢れてんだよ。
    人もポケモンも生存競争。俺はそんな生活に疲れたんだ。丁度いい頃合だったからな。ここに来た。
    最初の一ヶ月は大変だったよ。ガスも水道も電気もない。夜は真っ暗闇だし、店が無い。それでもふと空を見上げてみれば、ちゃんと空があるんだ。
    …高村光太郎って知ってるか?詩人だ。『あどけない話』っていうのを書いた。恋人が都会には空が無いと言う。確かにそんな感じだった。
    ビルがひしめき合い、電線が張り巡らされた町は空を見ることすら難しいのさ。星も全く見えない。あるのは人工の星だけ…ネオンだ。
    だから俺はここに住むことを決めたんだ。何があったとしても、ここに残ると。


    私は冷めた珈琲を飲み干した。只の憧れだけで行きたいと思っていた都会のイメージが崩れていくような気がした。所詮辛いこともあるということは何処に行っても変わらない。
    「…都会も大変なんですね」
    「お嬢さん、あちらに行きたいのか」
    「そう思ってたけど」
    彼は方をすくめた。
    「俺の言葉じゃないけどな。弟が昔言ってたんだ。『向日葵は一気に花開くんじゃない。少しずつ、少しずつ外側に向かって花を開いていく。人間も同じだ。
    色んな経験をして、知識を蓄えて大人になっていく。だから少し小さな問題があったとしても諦めてはならない』
    こういい続けてたからか、駆け落ちしてまで好きな女と結婚したのかもな」
    向日葵にとっての水と太陽の光は、私たちにとっての経験だというのか。そして共通点は、時間がかかること。
    それもいいかもしれない。長い時間をかけて説得していこう。ちゃんと勉強もして、知識を蓄えておくんだ。

    マユが帰った後、男は写真立ての裏を外した。家族ぐるみの写真の裏に、もう一枚。姪が七五三の時に撮った写真だ。黒いワンピース姿で両親と一緒に映っている。
    そして、もう一つ。向日葵を抱えた写真の裏にも―

    写真では無かった。便箋が小さく折りたたまれていた。手書きでただひと言。『叔父様へ』
    「…元気でやってるなら、それでいい」
    男は再び手紙を戻した。


    マユは夕暮れの道を歩いていた。自宅までの道は全て向日葵に囲まれている。
    「…まだ咲いてないけど、少しずつでいい」
    柔らかい風が、向日葵たちを優しく揺らしていった。

    向日葵前線異常ナシ イツカ花開ク時マデ

    ―――――――――――
    某さんが書きたい(?)と言ってくださったので試しに自分で書いてみた。意外に短い。
    あと折角名前考えてくださったのにすみません。また今度使わせてもらいますね。
    では。


      [No.1730] こいつはびっくり 投稿者:音色   投稿日:2011/08/11(Thu) 15:27:51     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >  お父さんとお母さんのけんきゅうしつに入ってはいけないよ、とおこられました。
    >  なんでも、けんきゅうしつに入ったら、ポケモンといしきが合体するそうです。人のいしきをポケモンにうつす、そういうけんきゅうを、お父さんとお母さんはしていたそうです。でも、まだ、ポケモンと合体したいしきを元にもどすことができないから、いちど合体したらそのままで、とてもあぶないのだそうです。


     ・・人の意識をポケモンにうつす。
     それなんて鏡嫌い(殴

     読んだ後に心臓止まるかと思うくらい冷や汗が出たのは何故。

    【そういや鏡嫌い手直ししてないけど、あれ誤字脱字以外で直しようがない気がする】
    【きっと読みたい人はいないと確信】

    【きとかげ様ってときどき恐ろしいお話をさらっと書くから素晴らしいのよね】


      [No.1729] ひっこし 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/08/11(Thu) 15:16:11     78clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     お家におばさんが来ました。
     お兄ちゃんはおばあちゃんとお家にのこるけれど、わたしはタマムシのおばさん家に行くそうです。
     わたしはそこの学校にかようそうです。とかいの空気は体にわるいので、お兄ちゃんは行けないそうです。
     タマムシで友だちできるかな。ちょっと不安です。

     今朝からずっと、おばさんとおばあちゃんが話していました。
     お父さんとお母さんのいひんをどうするか、話していました。
     この家にはお父さんとお母さんが作ったけんきゅうきざいがたくさんあるので、それをどうするか、話しているみたいでした。
     おばあちゃんは、しきりに、べんごしさんを呼んだ方がいい、と言っていました。
     お父さんとお母さんのものは、すてないでおいてほしいな、と思いました。

     今日はウパくんをどうするか、お兄ちゃんと話し合いました。
     お兄ちゃんはつれて行っていいよ、と言ってくれました。
     わたしはいいの? とききました。お兄ちゃんはいいよ、と答えました。
     ウパくんがいれば、タマムシのあたらしいお家に行ってもさびしくありません。
     ウパくんみたいに体がじょうぶなら、お兄ちゃんもタマムシに行けるのになあ、とお兄ちゃんが言ったので、お兄ちゃんも行けたらいいのにね、とわたしは言いました。

     ウパくんをつれて家の中をたんけんしていたら、おばさんにこらっとおこられました。
     お父さんとお母さんのけんきゅうしつに入ってはいけないよ、とおこられました。
     なんでも、けんきゅうしつに入ったら、ポケモンといしきが合体するそうです。人のいしきをポケモンにうつす、そういうけんきゅうを、お父さんとお母さんはしていたそうです。でも、まだ、ポケモンと合体したいしきを元にもどすことができないから、いちど合体したらそのままで、とてもあぶないのだそうです。
     ちょっとこわいけど、ウパくんになるのならいいかな、と思いました。でもやっぱり、もどれないのは困ります。

     今日はおばさんに手伝ってもらって、わたしのにもつをまとめました。
     お洋服と本をつめたら、はこがいっぱいになりました。
     お気に入りのププリンの手さげかばんに、ハンカチとティッシュと、ウパくんのモンスターボールを入れました。
     ボールがあるけれど、ウパくんが入っていなかったので、ウパくんをさがしに行きました。
     ウパくんは、けんきゅうしつの前でたおれていました。コンコンとせきをして、くるしそうです。ウパくんはびょう気になったみたいです。
     ぼくはウパくんじゃないよ、お兄ちゃんだよ、とウパくんが言いました。コンコンせきをしているのは、お兄ちゃんのびょう気がウパくんにうつったからだそうです。
     わたしはコンコンせきのウパくんをつれて、おばさんの所に行きました。おばさんはけんきゅうしつに入って、まっ青な顔をして出てきました。
     その日は夜中までずっと、おばさんとおばあちゃんが話しこんでいました。

     わたしは今日、タマムシに行きます。
     お気に入りのププリンの手さげかばんに、ハンカチとティッシュと、水とうを入れました。わすれものはない? とおばさんにきかれました。わたしはないよ、と答えました。
     おばあちゃんが見おくりに来てくれました。お兄ちゃんも見おくりに来てくれました。ウパくんがいないと、あたらしいお家でさびしくなるかもしれないけれど、だいじょうぶです。
     タマムシで友だちできるかな。今からたのしみです。



     〜おわり〜


    という夢を見たんだ。
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【煮ても焼いてもいいのよ】


      [No.1728] 今明らかになる過去 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/08/11(Thu) 13:54:22     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    途中で止めておけばちょっと変わった友情話ですんだのに、最後の会話でどんどん下がる池月の評価(当社比)。それでも「基本はいいやつ」だと言ってくれる金柑は、いい友達ですね。腐れ縁とか悪友とかそんな関係を感じます。

    > 「うーん、悪いヤツではないんだよ、一応。俺に金かりてとんずらしたヤツだが」
    > 「いやだから悪いヤツじゃないか!金かりてとんずらとか!」
    > 「まあ、一応それにも理由があるんだよ。一応……」
    なんのかんの言ってフォローしてくれる金柑。金の貸し借りでこれだけ心広くかまえてられるのもすごい。

    > 「いやその、もふもふ好きでな……毎晩若い女の子がわんさかいる紳士の社交場に行ってるとか、奥さん泣かしてるとか子供がいるのに放置とか悪い噂のがよく聞くんだ」
    それはアウトでしょうw

    >金柑の去って行く後に落ちた、一枚の写真。そこに写っていたのが、生まれたばかりっぽいイーブイを抱いた金柑と、それを喜ぶような青いゾロアークだった。
    そのイーブイは誰の子だと言わざるを得ない。


    池月と金柑の友情が、うるわしいという範疇ではないけれど、素敵だなあと。
    私の中の金柑よいライチュウ度がうなぎ上りです。
    では、雑文失礼しました。


      [No.1727] ありがとうございます!! 投稿者:akuro   投稿日:2011/08/11(Thu) 10:48:49     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    おおおおお!書いていただけるとは!
    頑張って書き上げたかいがありました!

    すごくうれしいです!ありがとうございました! これからもよろしくです〜♪


      [No.1726] 【書いてみた】 シンオウへ旅行なう 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/08/11(Thu) 10:10:00     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ごく、とサイコソーダが俺の喉を通った音がした。

     木陰にいればマイナス三度。水タイプで暑がりの俺は大きな木の下で湖を見ながら、サイコソーダを飲んでいる。ここシンオウは涼しくていいところだ。
     周りには仲間のシュバルゴ、ドレディア、コジョンド、ゾロアーク、ウルガモス。そろって昼寝中。はっきり言って全員が最終進化形態のガチパが木陰で昼寝をしている図は、けっこうシュールだと思う。
     
    「えへへ〜♪ここまでおいで♪」

     少し遠くからの声。聞こえた方を見ると、木に登るマイナン。見るからに悪戯好きそうな感じだ。下にはエンペルト。

    「よーし!れいとうビーム!」

     エンペルトがれいとうビーム発射。避けるマイナン。あ、となり…。
     うとうとしているドンカラス。なんか面白い事になりそうだから、黙って見てることにする。

    「ん?うわあああ!」ピキーン!

     凍っちまったぞおい。内心笑が止まらないんだがどうしてくれるんだエンペルト。
     あのマイナンなかなかの策士だなー。

    「うわあああ!こくあが凍っちゃった!…どうしよう…」
    「…どうしたの?」

     困っていたエンペルトに近づくキュウコン。
     二匹は少し話をしているそぶりだったが、よく聞こえない。キュウコンが凍ったドンカラスを見上げた。そして、エンペルトの方がさっきのマイナンを追いかけにいった。 
     そしてキュウコン。え、まさか技で溶かすつもりじゃ……。

    「かえんほうしゃ!」

     案の定……。火加減、気をつけろよキュウコン。

    「あっちゃあああ!!」

     あー、まさに焼き鳥、そして予想通り。あれじゃ火傷したな…。
     ……今なんか思い出しかけた。

     あ、そうか、あの時のナスカか! 懐かしい物を思い出す。
     ダブルバトルのとき、ファルが凍ってナスカが溶かしたときも、あんな感じだったな。 ドンカラスが当のキュウコンに何かを言っている。会話はよく聞き取れないが、やっぱり似たような雰囲気だったな。その後、俺が冷凍ビームで冷やそうとしたらまた凍らせちまったのも今となっては笑い話。ファルすまん。
     あいつら、いつのまにやら夫婦になったもんな……。子供までできやがって。ちくしょー、爆発しろ。


    「はっくし!?」

     某ペンドラーがくしゃみをした後、つぶやく。

    「夏風邪でも引いたか? ……今頃、あいつら北の大地かぁ。うらやましいぜ」


     なんか負の感情わいてきたんで、いったん考えるのをやめる。
     そういや、マイナンとエンペルトどこいったんだろ。

    「…!?キャーー!!」ゴーーー!

     そう思っていたら、向こうで突如火柱が立った。あれは……かえんほうしゃとかというよりは……なんか漫画の表現みたいだな。
     出していたのはロズレイド。マイナンに木の実だろうか? を投げられたようにも見えた。辛いんじゃないかあの木の実……。賑やかだなーあいつら。

     サイコソーダがなくなってしまった。ふと上を向く。と、この木、木の実がなっているじゃないか。桃色の、くるっと曲がったような形の木の実。
     アシガタナをさっと振って、二個ほど落とす。食べてみると、甘くてとてもおいしいじゃないか。自慢じゃないが、俺はかなりの甘党だ。自分でも気付いたら、もうすでに二つとも腹の中に消えていた。
     仲間たちにも、と思い、もう五個落とす。

    「起きろー、うまい木の実があんぞー」
    「んあ?」

     周りの仲間が、目をこすりながら起きてくる。木の実を手渡して食べてみろよ、と進めると、一番初めに食べたのはコジョンドのレッセ。

    「おいしいわね、これ!」

     その声を聞き、他のやつらも一口食べ始める。
     が、突然。

    バタンッ

     いきなり、ジュバルゴのナイトが、目を回して倒れた。

    「そういえばこの騎士さんってさぁ」

     ティラがしまった、というような表情で彼を見つめながら言った。

    「甘いもの、苦手じゃなかった?」

     ……今度、おわびにお土産として辛いものを買って帰ろうと思う。



    ――――

     自分のパーティって何かと思い入れありますよね、ということで一つ、書いてみました。
     こっちもケーキ一つで戦争したり、何かと賑やかですよ。ちなみに、私はシンオウに旅行に行ったわけではないです。夏休みだらだらなうです。


      [No.1725] |ω`) 投稿者:586   《URL》   投稿日:2011/08/11(Thu) 00:06:23     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    なんか上がっとるーっ!!(素

    どうも、ご無沙汰しております。586です。会社で携帯から読ませていただきました!
    携帯からは書けないので寮に戻ってきてから書いてますが、読めば読むほど小ネタの仕込みっぷりが素敵で笑わせていただきました。鈴木三郎さんとか完全に忘れてたよ!
    作品のチョイスが全体的にマニアックなのがツボでした。ああ、こんな作品も書いたなぁと感慨にふけることしきり。。。

    最後にちらっと出てくるチルチルちゃんも含めて、とても面白かったです。
    久々にうちも何か書きたいですが、仕事が超絶大ピンチ+夏コミ前で身動きが取れませぬぐぬぬ。ネタが結構あるだけに歯がゆいことこの上なしです(´・ω・`)

    疲れた体によく効く素敵な内容でした。どうもありがとうございます! 明日……というか今日も頑張ろうと思います!(目覚ましをセットしながら

    以上、よろしくお願いいたします(´ω`)


      [No.1724] 投稿者:海星   投稿日:2011/08/10(Wed) 14:05:54     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     金タライにホースで水を張っていると、ぷにゃぷにゃ言いながらエネコが寄ってきた。

     飛び散る水しぶきに猫パンチを繰り出しては楽しそうに走り回る。

     っておいちょっと待て爪出したまますり寄るなイテテテ!

     ホースが宙に放り出されていく。

     弧を描く冷たい水。

     びちょびちょのシャツが身体に張り付く。

     怒りに任せてエネコを追っかけまわすが両手をすり抜けて逃げていく。

     やっと捕まえたころには、小さな庭は池と化していた。

     すっかり濡れたエネコを左手で鷲掴みにしたまま蛇口に向かい、かたくひねる。

     あーあ派手にやったね、笑い声に振り向くと幼馴染がカットカイスを手に縁側で涼んでいた。

     あっ勝手にタライに足突っ込んでる。

     エネコが両手両足しっぽまでばたばたさせて暴れ出したので、幼馴染に向かって放り投げた。

     狙いが外れてタライにダイブしたエネコを横目で見て、ホースを片付け始める。

     お前いつ帰って来たんだよ、エネコを救い出しながら幼馴染が訊いてくる。

     別に、お前に関係ねえだろ、呟きながら太陽を煽いだ。

     去年の夏はシンオウにいたから、こんなに暑くなかったな。

     縁側まで走り寄る。

     エネコが不満そうに毛づくろいをしている。

     砂だらけになったサンダルを脱ぎ捨てながら乾いた縁側に座ると、カイスの甘い匂いがした。

     あー、暑い。


    ―――――――――――――――――

     氷ポケモンが欲しい…

     【なにをしてもいいのよ】


      [No.1723] 本日は586日和 投稿者:音色   投稿日:2011/08/10(Wed) 11:29:50     101clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     テレポート 20/20

     目の前が真っ暗になるとかどんだけ死亡フラグですかー!?ヤダヤダ、俺はまだ死にたくない死ぬ気もない当分生きてやるだからなチクショ―!
     くそ、『殴りに行けるアイドル握手会』に行ってないのに何故タブンネにぶっ飛ばされねばならんのだ!ていうか、俺手とかねぇや。ちっ、せっかくの握手会が・・!
     んで、ここはどこですか。草むらではないないらしい・・ロケット団並に空のお星さまレベルで飛んでったのか俺は。
     
    「まったく、今日は一体どうかしている!」

     って、どこだと思ったらここ診療所だよ!なに部屋の真ん中に俺いるの!・・ま、なんか机に向って怒ってるお医者さん気づいてないっぽいからいいや・・。
     ・・とりあえずゴロゴロと転がってベットの下に潜り込んでみる。

    「鍵に釣り針にハンドルにレコードにピストル洗濯バサミ・・挙句ストローだと!私を馬鹿にしているのかはたまた政府の陰謀か!」

     鍵に釣り針にハンドル・・待て、この道具の羅列はどっかで見たこと聞いたことがあるようなないような。
     
    「一体何がどうなったらアンノーンがモノに見えるなどという訳の分からない症状が発症するのだ!ついこの間は隣町の医者が『アンノーンのYが手鏡に見える』などと言ってきた!」

     ・・アンノーン・・だと・・。
     待て待て待てぇ!聞いたことどころか思い当たる節しかねぇぇ!

    「なに?あぁ、そろそろ往診の時間か・・ん、おいワシのハンドバックが開かないぞ!どうなっとるんだこれは!」

     あああぁそれはハンドバックじゃないアンノーンの『V』だよお医者さん!だぁぁ駄目だぁ!ここにいたらそのうち俺もあの病もどきにかかっちまうような気がするぅぅ!
     どうにかここから脱出を・・どうしようどうすりゃいいんだ・・!
     ・・・。
     俺、そういやテレポート使えるじゃん。


     テレポート 19/20

     んでさ、テレポートってイメージ的に自分が知っている場所に行けるもんだと思ったら大間違いなわけね。
     何で電車の中なんだろう。これ無賃乗車になったりしないかな。ポケモン(現時点で一応俺はビリリダマなわけだし)が金の事なんか気にしてもしょうがないか。
     地下鉄じゃないっぽい。うん、外の景色が見えるので廃人専用地下鉄ではないな。たぶん。
     ちなみにビリリダマな俺が出現した場所は恐らく電車の中だと判断した理由は至極簡単。テレポートした先がいわゆる電車とかの椅子の上だったからだ。

    「あれ、貴方いつからそこにいました?」

     声をかけられ正面を向くとそこには一匹のディグダが座っていた。・・もちろん、椅子から突き抜けてる恰好で。

    「細かいことは気にしないでください」

     適当にごまかす。やべーよ!ここ合席だなんて思わなかったよ!

    「はぁ・・まぁ構いませんけどね」

     よっしゃ助かったー!

    「でもここはダグトリオ専用車両なのにどうやって乗ってきたんですか?」

     ・・ダグトリオ専用車両とな?
     っていうことは、目の前にいるのはディグダではなくピンのダグトリオということか?

    「あの、もしかしてあなたのお父さんは鈴木三郎と」
    「どうして知っているんですか!?」

     間違いない。目の前にいるのは最初がヨーゼフだったかヨーデルだったか忘れてしまったが略称よっちゃんであることに間違いない!

    「あの、ちなみにビリリダマ専用車両はどこでしょうか?」
    「ほかの種族はちょっと・・それ以前にビリリダマに専用車両があったかどうか・・」

     ないのか。ちょっとショック。

    「おや、あれはダグトリオか?」

     向こうの席からそんなセリフが聞こえた。と、いうことはもうすぐ雪国に到着するはずである。
     そんなわけでよっちゃんに挨拶をして俺はテレポートをすることにした。

     テレポート 18/20

     なんだこれ。今度は一体どこにテレポートしたんだ俺は。
     『アンチそらをとぶの会』と書かれた看板の目の前に出現したけど、これは一体どうすればいいんだ。
     ・・何か向こうでぎゃんぎゃん騒いでるけど。

    「ほかに意見のある人!」
    「はい!」
    「はい!」
    「はい!」
    「はい!」
    「よし……それじゃそこのイトマル!」
    「やっぱり、まずはトレーナーの上にでっかい網とか仕掛けておけば大丈夫な気がします!」
    「なるほど…それ採用!」

     ・・・。いや、ダメな様な気がするが。
     まぁ、やってる本人たちが充実していそうだからいいか。次に行こう、次。

     テレポート 17/20

    「おい聞いたか!一ヶ月後には世界が消滅するんだとさ」
    「まっさかぁ、あんたあのテレビの受け売り信じてるのぉ!?」

     今度はやたらと物騒な世界に来ちまったなぁおい!アンチそらをとぶの次は世界滅亡のカウントダウンか!
     走り去って行った高校生くらい少年少女のあとをゴロゴロと追ってみる。児童公園、と書かれた場所まで転がると、なんかポケモンがいた。
     ・・ネイティオだ。
     あいつなにやってんだ。突っ立ってぼけらっとして。
     興味本位でそちらに向かって転がる。自慢じゃないがだいぶこの『ごろごろ移動』に慣れた。地味に痛いんだけどね、小石とか踏むと。

    「あのー・・こんちわ」

     ポケモン同士なら会話が成立するとさっきのダグトリオエクスプレスで確認したばっかりなので、たぶん大丈夫・・だとおもうんだけど・・。
     無反応。まー予想していたけどねー・・。
     ・・ていうか、こいつさ・・。
     泣いてね?いや、絶対泣いてる。右目だけ泣くという不思議かつ奇妙な泣き方をしている。
     えっと右だが左だがどっちだったか忘れたがどっちかで未来を見てもう片方で過去を見るという大変ややこしい視界なもんだから目が疲れたんだろうか。
     んなわけないか。
     とりあえず、こいつが何を見ているか俺がわかるわけないし見たくない訳で。たしかこのお話が始動するのは滅亡カウントダウン三日前のはずだから。
     行くか。

     テレポート 16/20

     ささささささささささささささむい。ここここここここごえじぬ。ていうかしししししぬ。ゆゆゆゆゆき!ゆきふってるぅぅ!
     ここれが本当の冷蔵庫の中というやつかかかかか。まずい、ふふふふるえがとととまらんんん。
     テレポートだ!いますぐここから離脱するんだだだだだ!

     雪が降る聖夜の中、ニコラウスとヴィクソンが飛び立つのが見えた・・ような気もした。

     テレポート 15/20

     ミスったぁぁ!空中に出現するとかないわ――!落ちる――!ギャ――!
     いかん!下の方にポケモンいるしぃぃ!あれだよ、ビリリダマの図鑑説明には衝撃を与えたらもれなく大爆発が起こるみたいなことが書いてあった気がする!
     そこの誰か逃げてー!逃げても俺が無事じゃないだろうけど―!

     ばふーん

     落ちた先は堅いようなもふもふでした。

    「あり?」

     ごろごろと鈍ーく弾かれて何が起こったのかよくわからん。
     ひょいっと、突っ込んだ草むらからそっちを見たら、くるんともふもふこっとんガード。
     なぁるほど。
     俺をはじいたのはチルチルちゃんらしい。
     助かったなぁ、と一安心。

     さてさて、今度こそしくじらねぇようにテレポートすっか。

     つづけみすとりー

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  つづけにポケモンが関係なくなってきた。

    【586さんのコミケ発売お祝いを兼ねまして】
    【テレポートのPPはまだ残っている】
    【拍手くれたら嬉しいな】


      [No.1722] 遅遅と…… 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/08/09(Tue) 23:17:01     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    感想ありがとうございます。ですが一応小説板なのでこっそりw
    ステンドグラス風を目指してたので嬉しいです。


      [No.1721] 投稿するつもりはなかったのですが 投稿者:ふに   投稿日:2011/08/09(Tue) 22:11:45     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >
    > 無理を言いまして、ふにさんに投稿していただきましたイケズキです。
    >
     いらっしゃいましー

    > 昨日、これをチャットのPMから読ませていただいた時、ツボに入ったと言いますか、とても感動しまして、さらにこれがチャットの即興作品だということを聞き、もう興奮で暴走気味になってしまいました。
     暴走しちゃってもいいのよ……ふにも最近暴走気味なので

    > シンプルな展開でストレートな表現をしているはずなのに、らぃちゃんの幼い恋心や、それに悩む姿がすっごく伝わってきて、強烈に惹きつけられました。
     らぃとかぃなのでしょうかね〜 どうでしょうかね〜 にやにや

    > ふにさんの、「言葉使い」とも言う部分には、毎度驚かされっぱなしです……。
     難しい言葉がわからないだけですよ
     簡単な言葉を並べただけです
    >
    >  それは、ある夜の出来事。
    >
    >  小さな丘の月の下で、小さな幸せが生まれました。
    >  
    > とっても綺麗な言葉だと思いました。情景がパッと広がって、まるでそれだけで一つの詩のような、美しい言葉…… ん〜なんとも言い尽くせないのがもどかしいのですが、とにかく好きです!
     気に入ってくれて何より
     そう言ってくれるのが一番うれしいです〜

    > >  新しい幸せに 
    >
    > 新しい幸せに!

     ずっと続きますように!


      [No.1720] Re: 届け 私の思い 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/08/09(Tue) 22:04:51     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    無理を言いまして、ふにさんに投稿していただきましたイケズキです。

    昨日、これをチャットのPMから読ませていただいた時、ツボに入ったと言いますか、とても感動しまして、さらにこれがチャットの即興作品だということを聞き、もう興奮で暴走気味になってしまいました。

    シンプルな展開でストレートな表現をしているはずなのに、らぃちゃんの幼い恋心や、それに悩む姿がすっごく伝わってきて、強烈に惹きつけられました。
    ふにさんの、「言葉使い」とも言う部分には、毎度驚かされっぱなしです……。


    >  それは、ある夜の出来事。
    >
    >  小さな丘の月の下で、小さな幸せが生まれました。
     
    とっても綺麗な言葉だと思いました。情景がパッと広がって、まるでそれだけで一つの詩のような、美しい言葉…… ん〜なんとも言い尽くせないのがもどかしいのですが、とにかく好きです!

    >  新しい幸せに 

    新しい幸せに!


      [No.1719] 届け 私の思い 投稿者:ふに   投稿日:2011/08/09(Tue) 21:38:47     84clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     それは、ある夜の出来事。
     とある場所に、5年間一緒にいる、2匹のポケモンが居ました。
     片方は、黄色と白色のちくちくしたポケモン、サンダース。
     もう一方は、黒い体の所々に黄色いリングがあるポケモン、ブラッキー。
     2匹はとても仲が良く、いつも一緒に遊んだり、じゃれあったりしていました。
     サンダースは元気な男の子。ブラッキーは少し気が強い女の子。性別は違っても、そんなことはお構いなしのようです。
     
     だけど最近、ブラッキーは、出会ったころには感じなかった、「不思議な気持ち」になることがありました。
     
     サンダースを見てるとなんだかとっても胸がドキドキする…………こんなことは昔はなかったのに。
     そして、いつの間にかサンダースを見てぼーっとしている。
     いつもと様子が違うことに、サンダースが気づいて話しかけてきたが、胸のドキドキは早まるばかりで耳に入らない。
     ドキドキ、ドキドキ。家に帰ってきてからも、サンダースのことを思い出すと、またまた胸がドキドキ鳴りだす。
     いままでこんなことはなかったのに。この間からずっとそうだ。
     考えるだけで胸がドキドキ苦しくなる。どうして、こんなにドキドキするの?
     そうだ。昔、聞いたことがある。

    「好きな相手が出来ると、見たり考えたりするだけで、ドキドキドキドキするもんだよ。」

     そのとき、初めて気がついた。これは、「好き」と言う気持ちだと言うことを。
     私はサンダースのことが好き。あの黄色と白い、色が好き。ちくちくするのも、好き。あの元気な性格も、走ってる姿も。みーんな、ぜーんぶ、好きなんだ。
     この気持ちを、伝えるべきか、そのままか。サンダースは、どう思っているのかな? 嫌いだったら、どうしよう。

     一晩ゆっくり考えて、ついに心を決めた。サンダースに、「夜に丘の上で待ってるから、来て欲しい。」と、伝えておいた。

     てくてく歩いて15分。ここは、小高い丘の上。辺りをぐるっと見渡せる。昔からの、思い出の場所。
     ブラッキーは、待ちました。ずーっと、ずーっと待ちました。けれどもサンダースは現れません。待っても、待っても黄色い姿すら、見せません。
     今夜は満月の日の夜です。月は高く登っています。その光がブラッキーを照らしても、サンダースは一向に現れません。
     そのときすうっと一筋の、雫が目から、落ちました。やっぱり、私じゃダメだった。私のことは、もういいわ。

     あきらめかけた、その瞬間、黄色と白の、その影が。遅れてゴメンの声と一緒に。

     どうして、そんなに泣いてるの? 俺が、ここに、遅れたからか? ゆっくり隣に座りつつ、サンダースはそおっと、聞いてきた。
     ありったけの、勇気を出して、ありったけの、力を振り絞って、ありったけの声をだそう。
     今なら言える。自分の気持ちを伝えるんだ。


    「好き」


     口から出たのはたったの2文字。とっても小さなな声だった。
     それを聞くと、サンダースは、「俺も、好き。」と返してくれた。

     それは、ある夜の出来事。

     小さな丘の月の下で、小さな幸せが生まれました。





    ――――――――――――――――――――――――――――
     〜あとがき〜 
     らぃとかぃ?  さぁ〜ね?
     どこにでもいるようなブラッキーとサンダースのカップルですよ
     らぃとかぃもブラッキーとサンダースだって?
     ただの偶然じゃないの?
     え? 狙ってるって?
     さぁ……? 真実はイケズキさんにでも聞いてください
     とりあえず、祝ってあげて下さいな
     

     新しい幸せに 



    【何をしてもいいですよ】
    【らぃとかぃ掲示板初出演?】


      [No.1718] とある夏のカレーより 投稿者:moss   投稿日:2011/08/09(Tue) 01:26:22     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    道端でであった、白い子犬みたいなソイツ。
    断然猫派である私は、それを見たとき「うわ、犬かよ。ってかなんで犬が道端に転がってるんだし」と、
    顔をしかめて通り過ぎようとした。
     が、そのときであった。
     私は見てしまったのだ。
     その白い子犬の腕に、羽が生えているのを。
     気になった私は子犬の隣で足を止めた。しゃがみ込むと、ゆっくり観察する。
     ふさふさの白く艶やかな毛並み。メガホンのような形をした尻尾。両耳からつながる二つのたてがみ
    は、地面にへばりついているためぺたりと垂れている。
    よく見ると、やはり両手にはその体躯に似合わぬ翼がついており、そこから鋭い爪が覗いていた。
     じぃと見つめているとその視線に気付いたのか、ソイツはうっすらと目を開けた。
    吸い込まれるような深い蒼色だった。
     見惚れる私にこう言った。

    「腹減った」

     その後、私がソイツを抱えて家まで走ったのはいうまでもない。
     そのときの季節は丁度夏だったので、家に着いたころにはもう汗だくだった。髪の毛もプールに入っ
    た後みたいになってた。おかげで次の日くらいに背中に汗疹ができてそれはもう、かゆかった。
     これ以上無いというくらいのスピードで靴を脱ぎ捨てキッチンに向かう。
    そしてそこに置いてあった昼ごはんの夏カレー、冷たくて暖めないでも食べられる夏限定のインスタン
    トのキーマカレーを少量やったところ、素晴らしい速度で平らげた。
    口の周りを盛大に汚していて、まぁそれはそれで可愛かったのだけど。
     満足そうな表情を見せるソイツに、私はとりあえず一番気になっていたことを聞いてみた。

    「君は誰?……」

     くわぁと欠伸をした。見た目に反して鋭い犬歯がちらりと覗く。
     子犬は気だるげに答えた。

    「知らない。でもずっとこう呼ばれてた。“レシラム”って」

     そこで始めてソイツがドラゴンであることを知った。



     
     ただいまが言えるってことはいいことだ。あとおはよう、おやすみ、いってきますも言えたらいい。
    一人が寂しいわけでもないけど、何か、こう、一人だと足りないものがある。
    まだ世間を知らない子供の私が言うのもなんだが、それでも家に帰って誰もいないのは、夏でも体の何
    処かが冷える気がするのだ。

    「ただいま」

     玄関を開ける。

    「おかえり」

     低いような、学校でよく聞く声とはまた違った響きをもつ独特な声が私を迎える。
    そして、とことこと廊下を走ってこちらに走ってきた。傍らにはちょいふとめのブラッキー。
    通称でぶらっきーのルゥくんである。

    「飯、はやくな。腹減った」

     であったころと全く変わらない大きさで同じ言葉を言い、すたすたと奥に戻っていく。
    ルゥが足元に擦り寄ってきた。丸い瞳が可愛らしい、というか猫すぎて困る。もう十分なおじさんな年
    であるが、まだまだ可愛い。

    「さてしょうがない。お昼食べようか。私もお腹が空いたんでね」

     ルゥが離れる。私はすぽすぽと靴を脱ぎ捨てる。この癖は急いでてもそうでなくても変わらない。
    幼いころからの癖だ。スリッパを履いて歩き出す。途中で自分の部屋に寄り、学生鞄を放り投げる。
     蝉が騒ぎ始めたこの季節。とにかくじめじめしていてねっとりと暑さが体に纏わりつくような不快感
    がひどい。去年とはまた違った暑さだなとしみじみ思う。暑い。
     リビングにつながる畳の部屋でむさ苦しい制服を脱ぐ。そのままの姿で扇風機の前に行く。

    「すーずーしーぃ」

    「変態。何やってんだ。早く服着ろ、そんで飯」

     あー、とかワレワレハウチュウジンダ、とか言っていたら睨まれた。 
    うるさいなぁ。少しぐらい涼ませてくれたっていいじゃん。こっちは部活帰りで暑いんだよ。
    そう目で訴えたが一瞥されただけだった。仕方ないので扇風機から離れてパジャマ代わりに今朝着てた
    赤いワンピースをすっぽり被る。あちぃーと文句を垂れながら洗面所へ向かう。
    そこで適当に髪を束ねて、よし昼ごはんの準備をしよう。
    といってもたいしたことは何もしないのだが。
     キッチンへ移動し、流しにおいてあるラップされた皿を手に取り電子レンジの中に突っ込む。ぼん。
    そんなに温めなくても平気かなと思い、直感で一分にセット。そのあいだに扇風機に当たりに行く。
    あー、やっぱり冷房より扇風機のほうがすずしーとか、絶対冷房のある場所に行ったら撤回する発言を
    し、そういえばあいつらはどこに行ったのかと部屋の中を軽く見回す。
     空腹で不機嫌そうに窓際で寝そべるソイツを見つけた。
    そんなところにいたら暑くないか?と疑問に思う。
    そしてでぶらっきーがいないと目を走らせる。さすがこの家の年長者ってほどでもないけど。
    なんとまあ以外なところに潜んでいた。こないだ親が買ってきた水のダンボール箱の中だった。
    果たして涼しいのだろうか? 彼らの考えることは私にはわからない。
     チーンと電子音が鳴った。彼らの耳がぴくりと動く。暑さでだれていても、飯のことだけは忘れない
    ようだ。
     扇風機から名残惜しくも離れ、電子レンジから皿を出す。
     そして流しの上に再び置くと、カレーのルーを温めずにそのままかける。
    これぞ夏のカレー。キーマカレーなのである。
     臭いにつられた者たちがやってくる。はいはい。そんな這い上がったゾンビみたいな顔をするなよ。
    怖いよ。空ろな目で見るな、こっちを。
     彼ら専用の食器を並べ、みんなが平等になるように慎重に盛っていく。この集中力を受験勉強に使っ
    て欲しいと誰かに言われる。誰だっけなー?

    「はいできた!」

     とてつもなくきれいに盛れた三人分のカレー。我ながらすごいと思うよ、うん。写メでも撮りたかっ
    たが、ゾンビみたいな顔をして見上げてくる彼らを見ればせざるおえなかった。
     せっせと食卓の上までそれらを運ぶ。すでに彼らは指定の位置にお行儀よくお座りしている。
     さて、おまたせいたしました。

    「じゃ、いただきまーす」

     三者一気にがっつき始める。一番ぼたぼたとこぼすのがルゥで、口の周りを汚しながら食べるのが
    ソイツ。私はスプーンでお上品に食べます。嘘です。

    「ルゥ、ぼたぼた垂らしてるよ。あと――」

     そう言いかけて思い出した。コイツとであってから、もうだいたい一年たったのか。
    あのとき名前を聞いて無いと言ったから、家に帰ってから一晩中名前に悩んでやっと、次の日の昼に
    付けたんだっけか。

    「――シャル! 口の周りが汚い。どうにかして」

     そして一年前もこんなことを口にした気がする。
     本名はシャルレット。長いから略してシャル。意味は無い。

    「ほっとけっつーの、どうせきれいに食えないんだから。なー、ルゥ」

     ぶにゃーと肯定したように鳴く。
     蝉の騒ぐこの季節、暑さを凌げるのはこの何気ない日常であったりする、かも。
     少しピリ辛なカレーを頬張りながら、一昨年はルゥと二人っきりだから、こんなふうに喋って過ごす
    とこなんてなかったなぁ。ルゥは喋れないし。

    「おかわり」

     器を差し出す真白き片翼に、ねぇよと一言。

     さて、こんな受験真っ只中な作者でありますが、どうぞよろしくおねがいします。




    【何してもよろしいですわよ】
    ―――――――――――――――
    はい。ほんとはちゃんとした短編を書くつもりだったのですが、はい。
    何をしたのか、何故かこんなのになってしまったです、ごめんなさい。
    しかも深夜に書いたので意味が不明すぎる。
    モデルはうちのでぶ猫と空想の産物です(爆)


      [No.1717] TBN48!? 投稿者:マコ   投稿日:2011/08/09(Tue) 00:19:14     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    初めまして。マコです。
    タブンネ達が、まさかのあの、人数がやたら多い女の子アイドルグループになっているとは。
    しかもTBN48。名前から意識してます。
    それだけでも笑えるのに、「タブンネローテーション」。
    歌詞が爆笑ものです。
    タブンネが多い!カオスです。
    しかもキャッチコピーが「殴りに行けるアイドル」って……。
    本家も真っ青です。
    まあ本家でやったら、自分が熱狂的ファンからタコ殴りに遭うだけなので、絶対しませんが。


    そして、公演後のタブンネ達の中に、約1匹、ドMが紛れていましたね。
    精神的にどうなっているのでしょうか。そのタブンネ。
    随分笑わせて頂きました。


      [No.1716] あたえられたもの 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/08/08(Mon) 23:19:04     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    感想ありがとうございます。感想が付く作品だと思っていなかったので感動も一入です!
    「あれ、自分の名前のスレッドが上がってる?」この瞬間は何回あっても嬉しいものですねー。


    凄く読み込んで頂いたようで、寧ろ自分の意図以上に読み取って頂いてるのでは?(笑)
    こちらで書くのも少々蛇足かもしれませんが、二匹だけを出すと決めたときから、対比の作品にしようと思い書きました。あとは奪う者と与える者なんて対比も少しあったりします。

    敬語ピカチュウは、ぶっきらぼうな口調のヤミカラスとの対比で丁寧な言葉遣いにしてみたのですが、思わぬインパクトでラッキーでした。敬語ピカチュウ、一つのジャンルとして確立するかもしれませんね(笑)

    気に入ってもらえて何よりでですが、もう、褒め過ぎですよー!
    本当にこれほどまでに褒めて頂き、ブラックシティを見下ろせるぐらい舞い上がっています。(笑)
    また楽しんで頂ける作品が書けるよう、頑張りますね。

    ありがとうございました!


    誤字報告感謝です。修正しました。


      [No.1715] 落ちてこないことだってあるっ! 投稿者:ふに   投稿日:2011/08/08(Mon) 23:08:02     27clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 数字がかいてある方、絵が書いてある方。
    > どちらもコイン。けれど同時には見れない。
    >
    > そんな世の中の真理です。
    > けれどそれが解っていたら、きっと喧嘩はない。

     解らないからこそ 裏があって
     解らないからこそ 表があって
     解らないからこそ 悲しくなって
     解らないからこそ うれしくなって


     解らないからこそ 世の中面白いんですね!
     


      [No.1714] 遅くなって申し訳ありませんでした 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/08/08(Mon) 23:06:39     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     書きなぐってぽんと放り出したネタに、レスが付いているとは露とも思わず。大変失礼しました……!

    > 夏休み最後の日は、宿題を埋めるための日でございますな人にはちょっと解らないです!

     私の技量では百字に納まりきらなかった……。実は、【最終日まで遊びほうけて宿題手付かず、半泣きで仕上げる羽目になっちゃった。最後のページがネタ無くて埋まらない、仕方ないから、今の困った顔でも描いて仕上げちゃえ】……というのを表したかったのですが。ううむ、もっと精進せねば……。

     夏休みの無くなった今となっては、学生時代が懐かしいです。が、宿題もろもろを考えると、戻りたいとはちょっと言えないかも……w
     遅くなってまことに申し訳ありませんでした、感想ありがとうございました!


      [No.1713] Everyday、タブンネ 投稿者:レイニー   《URL》   投稿日:2011/08/08(Mon) 23:04:41     118clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     イッシュ地方のどこかの草むら。今日も彼女たちはポケモントレーナーたちに狩られまくっていました。
    「いたた……。今日一日だけでもう六回目だよ……」
    「もうしんどいったらありゃしない」
    「あたしたちがいったい何したって言うのさ!」
    「経験値多いからってあんまり痛めつけないで欲しいわ。全く」

     こうして今日もタブンネちゃんたちは、傷だらけの体で自分たちの不幸な境遇を嘆いていました。タブンネ。
     とその時、一匹のタブンネちゃんが、四角くて薄いケースを持って、やってきました。ケースの中には制服姿の可愛い女の子たちの写真が印刷されている紙、そしてきらきら光る円盤が入っています。
    「みんな!いいこと思いついちゃった!!」
    「タブ子、どうしたのよ一体。それにそれ一体何?」
    「どうせまた人間のものでしょ? でも、何? それにいいことって?」
     見慣れぬものを持ってきたタブ子にどよめくタブンネちゃんたち。タブ子は、タブンネちゃんたちの中で唯一、自分たちを痛めつける相手にも関わらず、人間たちの生活に興味を持っていました。そんなタブ子以外は、みんなこの透明なケースに入ったものが何だかわからないようです。タブンネ。

    「それは……CDね」
     ……いや、タブ子以外にわかるタブンネちゃんが一匹いました。この草むらのタブンネちゃんたちの中での最年長。タブンネ様です。
     ……ちなみに、タブンネ様は他のタブンネちゃんと比べて年齢が上なだけであって、決してBBAじゃないからね!
    「CD……? 何ですかそれ?」
    「コンパクトディスクって言って、人間が音楽を聴くために使うものよ。機械で特殊な光を当てると音が出るの」
    「へー」
     タブンネ様の話に、CDを知らなかったみんなは頷きます。
    「で、タブ子。このCDがどうしたの?」
    「これ、すぐそこで拾ってきたんだけど、この人間たち、今人気爆発中の国民的アイドルなんだって!」
    「アイドル……?」
     しかし、みんなはアイドルの意味がわからないようです。タブンネ。

    「アイドル……。なんと素敵な響き……」
     そんな中、こっそりそう漏らしたのは、ちょっとヘタレなタブンネちゃん、タッブーです。人間のことは詳しくなくても、アイドルというものがどんなものなのかは知っているようです。タブンネ。
     しかし、とりあえずタッブーの言葉はスルーしておきましょう。ヘタレですしね。

    「可愛い容姿、それに歌や踊りで、たくさんの人間たちを惹きつけてやまない人たちのことね」
     解説するのはやはりタブンネ様です。

    「それで私たち、アイドルになるの! そうしたら人間たちから愛されて、ボコられることなんてなくなるはずよ!」
    「おおおおお! 何という名案!」
    「人間に殴られるタブンネから、愛されるアイドルになるのね! なんて素敵!!」
    「いいじゃない!! やりましょ!!」
     タブ子の名案にタブンネちゃん一同はどよめきます。

    「そうと決まれば、早速練習ね! 人間たちを魅了できるよう頑張らなきゃ!!」
     こうしてタブンネちゃんたちのアイドルユニット、TBN48が誕生したのでした。タブンネ。

    *

    「お! 一狩り行けるぜ!」
     たった今、一人のポケモントレーナーが揺れている草むらを発見したようです。タブンネ。
    「おら! 経験値よこせ!」
     タブンネちゃんを狩るために、勢いよく草むらに飛び込んだトレーナー。しかし、彼はタブンネちゃんを見て、言葉を失いました。
     タブンネちゃんがさながら女子学生のような制服を着ていたからです。
    「野生のタブンネが、コスプレ……?」
     ポケモントレーナーは一瞬戸惑いました。が、次の瞬間には彼は気を取り直して、タブンネちゃんをボコっていました。タブンネ。

     こうして、タブンネちゃんは今日もやられました。しかし、そんなタブンネちゃん、やられ間際に何かを落としていきました。
     それを拾ったポケモントレーナー。

    「……何だ、これ? ……『TBN48第一回公演決定』?」

     そうです。タブンネちゃんたちは、あの日以来、血のにじむような歌とダンスのレッスンをし、ついに人に見せられるくらいのクオリティに達成したので、初の自主公演を行うことにしたのでした。タブンネ。

    「……何かよくわかんないけど面白そうだな。ちょっと他の奴にも教えてやろう!!」

     このようにタブンネちゃんたちは、人間たちにボコられながらもビラ配りを行い、第一回公演が始まる前にもかかわらず、TBN48の名前はトレーナーたちの間でかなり広まりました。タブンネ。

    *

     さあ、そしてついにTBN48の第一回公演の日です。
    「うわー。かなり人集まってるよ!」
    「まさかこんなに集まるなんて……。緊張しておなか痛くなりそう……」
    「ネッちゃん落ち着いて! センターが緊張でぶっ倒れてどうすんの!!」
    「そ……、そうよね! 私頑張るわ!!」

     草むらに作った特設ステージの後ろで、タブンネちゃんたちは集まってきたお客さんの様子を伺いつつ、緊張しているようです。タブンネ。

     そして、いよいよTBN48の初公演の始まりです! 読者のみなさんも、ここからは人間目線でTBN48のステージをお楽しみください。曲は「タブンネローテション」です。どうぞ。

    ♪タ〜ブンネ〜(タ〜ブンネ〜)
     タ〜ブンネ〜(タ〜ブンネ〜)
     タ〜ブンネ〜(タ〜ブンネ〜)タブタ〜ブ〜ン〜ネ〜
     タブンネタブンネタブン〜ネ〜 タブ〜タ〜ブンネ〜

     こうして初公演は無事終了。お客さんからは拍手喝采。初演だったにも関わらずダブルアンコールが巻き起こったくらいです。タブンネ。

     さて、そんな初公演を終えたタブンネちゃんたちは。
    「まさかこんなに大好評だなんて……! 頑張った甲斐あったわね!!」
    「あ、あたし感動……。 ううっ」
    「ネッちゃん、泣かないで! まだまだ私たちはこれからなのよ!」
    「そうよ! これから握手会なんだから! 笑顔笑顔!!」
     そうなのです。タブンネちゃんたちはこの後握手会という大きなイベントを抱えているのです。終演後、お客さん一人一人と直に接することで、メンバーそれぞれが固定のファンをつけようという目論見です。タブンネ。

    「よし、行きましょ! お客さんに感謝の意を伝えて、これからも足を運んでもらえるよう頑張らなきゃ!」

     こうして始まった握手会でしたが。

    「ありがとうございます!」

     あるタブンネちゃんが笑顔で手を差し出すと、手を差し出したのはお客さんであるトレーナー……ではなく、トレーナーの手持ちポケモンでした。そしてポケモンはタブンネちゃんの手を取って、そのまま。

     ちきゅうなげ。


     また、あるタブンネちゃんも、手を差し出し、やはりお客さんであるトレーナーのポケモンが手を握ったかと思えば。

     かいりき。


     さらには、あるタブンネちゃんは、手を取られると。

     にぎりつぶす。


     こうして、握手会(?)が終わりタブンネちゃんたちはすっかりボロボロ。
    「うう……。どうしてこんな目に……」
    「公演はあんなに盛り上がってたのに……」
    「こんなのってアリ……?」
    「殴られるのもちょっと快感になってきたかも……」
     約一名、違った感想が出てきていますが、とりあえず無視しておきましょう。

    「まだまだ修行が足りないってことかしら……」
    「確かに初演であれだけ盛り上がってちょっと天狗になってたのかもね」
    「殴られるのは勘弁だけど、アイドル活動するのすごく楽しかったから、あたし続けたい!!」
    「もっとみんなに愛されるアイドルになれば、こんなことにはならないはず! 頑張っていこう!!」
    「おー!!」

     こうして、TBN48は日々努力を重ね、その名を徐々に轟かせていきました。それと同時にタブンネちゃんたちは、「殴りに行けるアイドル」として親しまれるようになったのでした。タブンネ。


    おわり


    ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは全く関係ありません。

    【全方面土下座】
    【どうしてもいいのよ】


      [No.1712] 思い出になる前に 投稿者:レイニー   《URL》   投稿日:2011/08/08(Mon) 23:00:03     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    思い出になる前、忘れる前に、きちんと愛を伝えておくのがいちばんなんでしょうが、なかなかそれができないのが人間(私)。
    覚えておく一つの手段として写真もいいのかもしれませんね。自分もあまり撮らない人間ですが。


      [No.1711] メガニウムたんかわゆす 投稿者:レイニー   《URL》   投稿日:2011/08/08(Mon) 22:55:15     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    返信しようと思いつつ、何書こうかと思っているうちに恐ろしい勢いで放置してました。すみませんorz

    いい香りでかつ強そうなポケモン(実は当初は100字ではなく長めので書くつもりだった題材。バトルシーンを入れようとして挫折したとか)というのでメガニウムにしたのですが、メガニウムというチョイスがしっくりきたようで、作者としては嬉しいばかりです。
    金木犀の香りいいなぁ。早く秋来ないかな(え)

    遅ばせながらありがとうございました!
    これからも長い目で見守ってくださるとありがたいです(待て)


      [No.1710] 光の街のたからもの 投稿者:小樽ミオ   《URL》   投稿日:2011/08/08(Mon) 22:29:01     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     こんにちは、小樽ミオと申します! 掲示板ではお初にお目にかかります。
     作品、拝読いたしました! 実はこういう雰囲気の小説がたまらなく大好きなのです。随所でツボを突かれた気分でございました(笑)
     あちらこちらに散りばめられた対比、そして脳裏にキャラクターたちの動きが浮かびさえするような細やかさ…… あれ、私はブラックシティに迷い込んだんだっけ……


    > 「そうですか? 私は逃げる必要は無いって、さっきわかりましたから」
     敬語のピカチュウに惚れ惚れとした瞬間でありました(笑)
     読めば読むほど、彼には敬語以外は似合いそうにもない気がしてきてしまうので不思議です。

    > 「カァーッ!」
    >  空気も震えるその光に彼は仰天して悲鳴にも近い甲高い鳴き声を上げてしまった。それを見るとピカチュウは満足そうに警戒を解き、再び玉を磨き始めた。
     ヤミカラスも私の好きなポケモンの一匹なのですが、こうやって懲りない感じが素敵ですね!(笑)
     光ものを集める習性からどうしても他人の物を奪うことが起こりうると思うのですが、奪おうとすることをそこまで不快に思わない人物にほどほどにやられる感じに、なんとも和やかな印象を覚えます。

    > 「あのケチで恐ろしい奴らが、それを気前良くくれたっていうのかっ?!」
    > 「私の住んでいた森ではニンゲンがお祭りをしていて、そこでは楽しい音楽や、綺麗な光や、美味しいもので溢れていたんですよ。さっきの歌や踊りもそこで教えてもらったんです。この玉もそこで貰って――」
     森と街と――恐らく「ブラックシティ」に対する「森」はひとつしかありませんね――の対比。思わず原作を想起しました。正反対の環境で過ごし、人間には正反対の感情を抱き、そしてその背景で下地色のようになっているのが原作のイメージ。思わず唸ってしまいました。

    > 「凄い……。ほんとに……」
     自分がこれまで、いろんな街でいろんな光を見てきたのが重なります。
     瞳に飛び込んでくるあたたかな光、ときには悲しげな光、……いろいろな明かりの前に思わず息を呑んで、言葉を失ってしまうのですよね。
     最後まで拝読したときにこのあたりの盛り上がりが蘇って、……うむむ、この感動をどう言葉にすればよいのやら……

    > 「まるで貴方の羽みたいに黒く美しいですね」
    > 「お前の電気みたいに黄色く光ってるだろ」
     きっとその羽のような輝きを秘めた玉を「烏羽玉」と呼ぶのですね。
     古典的な烏羽玉のきらめき、現代的な街の明かり。色味のみならず、もしやここまで計算なさっていらっしゃる……?

    >  しかし彼の嘴から出る言葉は違った。彼は根っからのへそ曲がりなのだ。
    > 「ああ下手くそだ。下手くそ過ぎて、欠伸が出らぁ」
    >  怒りのあまりピカチュウの頬から電気が流れる。闇の夜空に一羽と一匹の悲鳴が響いた。

     思わずにまにましながら読み終えてしまいました(笑)
     正直じゃない彼、宝を奪ってしまうような彼に、ピカチュウが怒って懲らしめるように電撃を加える……
     立場的にはヤミカラスがピカチュウからさんざんにものを奪ったり、もしくはピカチュウがヤミカラスをさんざんに痛めつけて追い払ってもおかしくはないのですけれど、ふたり仲睦まじく互いの宝物を見せ合って語り合う……とってものほほんとしていて、とてつもない余韻です。お世辞抜きに、「定期的に読み返したくなる一作」というのはこういう作品のことを指すのだと思いました。



     最近クロトカゲさん作品のファンという自覚が芽生えました……(照)
     『稲妻の道』でその自覚が顕著になって、本作品でほぼ確信に至った次第です^^;
     また新たな作品とともにクロトカゲさんのお名前を目にすることができるのを、楽しみにお待ち申し上げておりますね!

     ここまで長文失礼いたしました、どうもありがとうございます!



    追記:
    > ブラックシティを眼科に一羽と一匹は優雅に飛んでいた。
     「眼科」は「眼下」の誤字と思われます、ご報告まで!


      [No.1709] いたずらマイナン 投稿者:akuro   投稿日:2011/08/08(Mon) 16:11:12     80clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     心地よい日差しがさす、ある夏の日の午後のこと……
     ひとりのトレーナーが、旅の途中でおとずれた湖のほとりで、休憩しようとしていた。
     「みんな出てきて!」そのトレーナー、シュカは腰につけたモンスターボールを取ると、軽く投げた。
     ポン、とはじけるような音がしたかと思うと、そこには5匹のポケモンがいた。

    「少し休むから、自由行動しててね♪」
     シュカはそう言うと側にあった木に背を預け、スヤスヤと寝息をたて始めた。
     残されたポケモンたちは、主人のマイペースぶりに呆れ顔を見合わせた。

    「まったく! いつもこうなんだから……」
    そう呟いたのは、ロズレイドの、のばら。
    「もう、何とかならないかしら!」
    「たぶんムリだと思うな……」
     そう続いたのは、エンペルトのうみな、ドンカラスのこくあ。

    「ま、いいじゃん♪それじゃ遊びに行ってくるね♪」
    そういって、駆け出していったのは、マイナンのらいむ。綺麗な青い耳と、素早いのが自慢だ。
    「あ、ちょっとらいむ!」
     案の定、うみながそう言ったときには、らいむの姿はすでに見えなくなっていた。

    「どんだけ速いのよ……まあいいか」
    うみなはそう言うと、地面に座って毛づくろいをはじめた。エンペルトたるもの、いつも綺麗でいなくてはいけない。

     ちなみにのばらは少し離れた所で技の練習を、こくあは木の上でうとうとしていた。
     そしてすっかり紹介を忘れていたキュウコン、ひばなはシュカに、膝枕ならぬ、尻尾枕をしていた。もふもふしていて気持ちよさそうだ。

    そうして、しばしの時間がすぎた……



     毛づくろいを終え、くつろいでいたうみなの所に、いつ戻ったのか、らいむがやってきた。

     ……ニヤニヤと笑いながら。

    「ね〜ね〜うみな♪」
    「あ、らいむ!どこ行ってたのよ!」
    「えへへ〜♪ひ、み、つ♪えいっ!」
     らいむはうみなに駆け寄ると、いきなり弱い電気をあびせた。
    「きゃっ!!何すんのよ!」
    「あはははは〜♪だーいせーいこー♪」
     らいむはそう言うと、自慢の足で素早く駆け出した。
    「こ、こら!待ちなさーい!」
    うみなも、慌てておいかけた。

    「えへへ〜♪ここまでおいで♪」
     らいむはそう言うと、木にのぼった。

    「よーし!れいとうビーム!」
    うみなの口から冷気が発射される
    「おっと♪」
     らいむはそれを軽々とよけた。しかしそこには……!
    「あ!」

    うとうと眠っているこくあがいた。
    「ん? え? うわあああ!」
    哀れ…こくあは凍ってしまった。まるで彫刻のように、黒い翼を上げて。

    「うわあああ!こくあが凍っちゃった!ど、どうしよう」
    うみながオロオロしていると、「どうしたの?」と声が聞こえた。

    「あれ! ひばな!? シュカは!?」
     そこにはシュカに尻尾枕をしていたはずの、ひばながいた。

    「寝てる。それよりどうしたのさ。」
    「わたしのせいで、こくあが凍っちゃったの!」
    ひばなは、凍ったこくあを見上げた。
    「なるほど、わたしが溶かすからさ、うみなはらいむを追いかけなよ。」
    「じゃあ、おねがい!」
    そう伝えると、うみなはらいむを追いかけていった。

    「よし、かえんほうしゃ!」

     ひばなは凍ったこくあに、かえんほうしゃを当てた。
    「あっちゃあああ!」
    「あ、強すぎたか、ゴメン」
    「ゴメンじゃ済まされないよ!」
    「溶けたんだしいいじゃん。」
    「こんどは火傷したんだよ!」
    「自分でなんとかしたら?わたしは寝るから」
    「ええ!?ちょっと、ひばな!」
    「zzz……」
    「はぁ、ひばなとシュカって、なんか似てる気がするな……」


     その頃らいむたちは…

    「あはははは〜♪」
    「まてー!」

     まだ追いかけっこをしていた。

    そこに、
    「…なにやってんの騒がしい…」
     暇をもてあましたのばらがやってきた。
    「あ、のばら!らいむを止めて!」
    「また暴れてんの?まったくシュカといいらいむといい、何とかならないかしら」

     のばらは素早く、らいむの前に回り込んだ。
    「あ、のばら♪」
    「いけ!ウェザー……」
    「えいっ♪」
     左腕のブーケから技を打とうとしたのばらの口に、なにかが投げこまれた。
    「……!?キャーー!!」
    ゴー! と、まるで漫画のような音を立て、のばらの口から火柱があがった。

    「のばら!? らいむ、あんた何投げたのよ!」
    「ノワキのみだよ♪」
    「ノ、ノワキ!?」
    「じゃあね〜♪」

    「こらー!待てー!」


     …この追いかけっこは、シュカが起きるまで続いた。

    [何してもいいのよ]


      [No.1708] 概要(八日現在) 投稿者:Teko   投稿日:2011/08/08(Mon) 16:07:41     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    日時 8月21日(日)
    場所 東京

    参加者(敬称略)8月8日現在

    てこ(主催者)
    流月
    茶色
    CoCo
    moss
    小樽ミオ
    久方小風夜
    風間深織(途中参加)
    レイニー(途中帰宅)
    586
    紀成
    きとら
    No.17

    クーウィ 脈あり?

    【お願い】

    参加される方はここに名前の挙がってる方でも、メールをお願いします。

    ・HN
    ・携帯メールアドレス
    ・夜ご飯の参加不参加
    ・集合希望時間(10時、10時半、11時、その他)
    ・その他何かありましたら
    ・浜松町周辺のお勧めのお店を教えてください(当方田舎者なのでわかりません><)

    を、書いて出来れば一週間前(8月14日)までに(xf32sakusaku@gmail.com)へ連絡お願いします。こちらの連絡先をメールします。

    【予定】

    予定としては

    集合は前回の案をお借りして、JR浜松町駅 北口 左に出て、横断歩道を渡るとある黄金の鳩像(http://ch07942.kitaguni.tv/e551002.html)前

    にする予定です。


    集合→ポケセン→ご飯→カラオケ(3時間)→カフェ→夜飲……夜ご飯

    という感じです。
    カラオケを5時くらいに終えて、そこで一次解散をします。


    まだ、お店や詳しい時間などは決まっていないので、いろいろ聞いたりするやもです。お願いします。


      [No.1707] 8月21日東京オフ 投稿者:Teko   投稿日:2011/08/08(Mon) 12:47:47     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     よろず板だと更新がわかりにくいので、短い時間ポケスト板をお借りします。


      [No.1705] めのまえが まっくらになった! ▼ 投稿者:音色   投稿日:2011/08/07(Sun) 23:59:45     116clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「うおおぉぉぉ!」

     草むらに突っこむ→野生のポケモンとバトル!そう、ゲームとなんら変わらないレベル上げの常識である。
     残念ながら俺は廃人ではなくただのライトユーザーなので個体値とか努力値の知識は皆無です。仮にあっても自分の個体値なんて知るかぁぁ!
     しかしここで問題が発生!

     俺は攻撃技を持っていないのだ!

     ・・なんら堂々と宣言できることじゃないが、どうやって経験値を稼いでレベルを上げろというのだ。わるあがきか、PPを使いきれというのか。
     だがな、甘く見るんじゃない。

     俺の使える技
     『テレポート  PP 20   じゅうでん PP 20
      あまごい   PP 5    いやなおと PP 40』  

     なんでやたらとPPが多いんだよぉぉ!こんな使わねぇのにぃぃ!
     ゲームで会ったらまさに積み状態。しかしこれは現実(冷蔵庫の先の)なのだ。リアルファイトなのだ。やっぱり俺には薔薇色のトレーナーとしての未来が欲しかった。
     
     あ やせいの タブンネが あらわれた! ▼

     出た!「たくさん経験値をくれる優しいポケモン」(ゲームの中でどっかのポケセンでそんなことをほざくモブキャラがいた。それ優しいって言わないから)
     ゲームではいわゆる「タブンネ狩り」の被害者ではある。(ちなみに俺は『まよいの森』で三色小猿を狩っていると何故かタブンネ狩り状態になった。意図してタブンネを狙ってないのに)
     と、とにかくPPを使いきって『わるあがき』を出せる状態にならないと・・!

     タブンネの すてみタックル! ▼

     なんだとぉぉ―――!ってことは少なくともレベル50以上ってこt

     めのまえが まっくらになった! ▼

     つづ・・・けるのか?

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談 野生以外がやられた場合はどうなるの

    【拍手(略】


      [No.1704] ワタルさんサイン会 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/08/07(Sun) 22:38:58     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    まさか本の中身を書いていただけるとは!本当にありがとうございます。
    しかも、元記事より評価多い
    嫉妬じゃないぞ!嫉妬なんかじゃないやいっ

    改造やっていないですというのがこれでもかと書かれてますが
    それが余計に妖しいとなるのでしょうか

    というか、そのレベルで〜というならなぜ進化したのか、なぜ覚えてるのか理由書いた方が潔白の証明になるはず……ますます妖しいような。

    何はともあれ、ありがとうございました。
    ワタルさんサイン入り欲しい


      [No.1703] 火花の友情 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/08/07(Sun) 22:27:57     81clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    【前書き】
    黒蜜(ゾロア)
    金柑(ライチュウ)
    池月(色違いゾロアーク)
    長老(もふパラ創設者)
    参考文献:もふもふパラダイス
    以上


     世間はお盆休み。黒蜜も同じく休み。部屋でゴロゴロしていると飼い主に思いっきり踏まれる。続いて金柑にも。文句を言おうにも、忙しそうに動いてる二人には何も通じない。悪いな、と悪くおもってないようなセリフ。この機会だからと部屋の片付けをしているのだ。
     手伝う気のない黒蜜は部屋の隅によって、ふたたびゴロゴロタイムを開始。寝返りをうったところで、なにやら落ちているのを発見する。写真のようで、裏を返すとピカチュウとゾロアが写っていた。しかもゾロアの方は普通のゾロアではない。普通ならば、黒い毛皮に赤い冠毛が特徴なのだが、これは青いのだ。見た事の無いゾロアに、黒蜜は不思議に思った。
    「お、こんなところにあったのか。なっつかしーな、あいつも俺もちっちぇー」
     写真を取り上げて金柑が目を細める。黒蜜も金柑の脇から写真を覗き込む。
    「これ金柑なのか?」
    「そうだ。俺がまだ野生の時の。この青いのは池月っていう……まあなんていうのか、いいやつなんだが金には無頓着でな」
    「どういうやつなんだよ」
    「人間だぜ」
     黒蜜のびっくりした声が近所に響いた。


     いやいやそんなに驚くなよ黒蜜。
     世の中には、不思議なことなんてたくさんあるんだよ。池月は長老っていうまあ偉いキュウコンに会って、人間からゾロアになったんだよ。なんでって、なんでも。仕組みは解らんからお前が長老に会って聞いてくれ。だから俺がなんでも知ってると思うなよ。
     池月に会ったのはそうだなあ……


     木のホラにピカチュウが隠れる。その前を野生のヘルガーが通り過ぎていった。その足音が遠ざかるまで呼吸を殺して見守る。かなり小さくなった足音に安心し、左右を確認して姿を現す。
    「はら、へった」
     生まれた時に人間に捨てられた。育てられないからと。まだピチューだった金柑は、まわりにそんな仲間がいっぱいいるのを確認した。そして、仲間たちが減っていくのも。けれど金柑は生き残った。その持ち前の頭の回転と、とても優秀な身体的な素質のために。ピカチュウとなった身になれば、ピチューの時より生き残りやすくなったけれど。
     今、金柑は空腹で歩いてる。2日食べてない。木の実を食べようとしたらオニドリルに取られ、別のを探そうとも見つからず、逆に空腹のヘルガーに発見されてしまう始末。
     金柑の目に入る茂みの向こうの青い木の実。あれはオレンの実だ。今度こそ取られる前に食べてやる。電光石火で金柑はオレンの実にかじりついた。
    「いてててててててて!!!!!!!」
     オレンの実が喋ったのである。かじったまま冷静に観察してみる。それにオレンの実はこんなにふさふさしていないし、もふもふしていない。体に触れるのは少し茶色い毛皮。なんかおかしくないのではないかと感じ、オレンの実から口を離す。
    「た、食べようったってそうはいかないからな!!」
     自分の下で暴れてるのは、どうみてもポケモンだった。自分と同じくらいの、黒い狐ゾロア。肉を食べる習慣があまりない金柑には餌にもならない。ただ、ゾロアに追いかけられたこともある金柑にとって、警戒すべきポケモンだったのには間違いない。逃げるか逃げないか、少し離れて観察する。
    「な、なんだピカチュウか」
     手強い肉食でなかったことに安心したのか、ゾロアはあくびをする。野生のゾロアにしては、やたら呑気なやつ。いや、油断させて食べる気なのかもしれない。いつでも逃げられるように準備して、ゾロアの動向を探る。
    「なんだよぉ!ピカチュウはゾロア食わないって聞いたんだぞ!」
     金柑の腹が盛大に鳴ったことを受けて、ゾロアはそういった。誰も食おうなんて思っていないのだけど。
    「いや、腹減った。二日食べてなくて。そもそも俺は肉を食わない」
    「そ、そうか!長老から貰ったマトマジュースならあるぞ!食べるか?」
     マトマジュース?聞いたことない品物に、金柑は興味を持った。堅いシーヤの実をくりぬいた水筒に入った真っ赤な液体。空腹に耐えかねて金柑はそれを遠慮せずに飲み込んだ。
     マトマの実とは、とても辛くて有名な木の実である。ただ野生下ではあまり遭遇しないため、金柑は何の疑いもせずに口をつけたのである。結果など説明するまでもない。完全にノックアウト。金柑は目をまわして仰向けに倒れる。
    「え、えええ!?おいしいのになあ……」
     そうしてしまった責任を感じたのか、ゾロアは仕方なくピカチュウの体を安全そうなところに運んでみる。

     ようやく金柑の感覚が戻って来たのは、冠毛が青いゾロアの背中の上。下ろせと暴れ、とりあえず降りる。
    「青ゾロアめ!そうやって食べようとしたな!」
    「してないよ!ポケモンなのになんでマトマの実食べれないんだよ!人間のときよりこれおいしいんだぞ!」
    「人間のときより!?意味がわからんぞゾロアめ!!成敗!」
     ぱちぱちと電気がたまっていく。力が出なくても電気に耐性のないゾロアを攻撃するくらいなら出来る。
    「うわー!!待って待って!お詫びにごちそうするから!」
    「なにをだ。野生のゾロアにそんな余裕があ ん の か !」
    「あるあるありますんだって!ゾロアになったってレシピ忘れるわけないってばよ!!!」
     言葉が崩れてる。それほど電気が怖いのかこのゾロア。またマトマジュースを飲まされてはかなわない。聞いたことないレシピを並べられても、金柑にはそれがなんだかピンと来なかった。

    「ほら、これがポフィン!それでいてこれがゴーヤチャンプルー」
     そういって出した料理。木の実をそのまま食べるよりはおいしかった。こんなものは食べた事がない。夢中で金柑は食べた。
    「こんなのどこで知ったんだ?」
    「これか?テレビでやってたんだ」
    「テレビ?」
    「人間のときに見て知ったんだ」
    「人間?なんでお前ゾロアなのに人間なんだ?」
    「人間なんだよ。長老にかわいいポケモンにして欲しいっていったら、ゾロアにしてもらえたんだ」
    「その証拠は?信じられると思うか?」
    「うーん、人間だった時の電子機器いっぱい持って来たんだけど」
     ゾロアが出すのは、デジカメ、携帯電話、ノートパソコン、電子辞書その他もろもろ。
    「それできみ、電気タイプだろ?ちょっと充電してよ」
    「じゅうでん?」
    「このコンセントもって、電気出してくれれば多分充電されるから」
     金柑に渡されたのは、随分と大きな金属。よくわからないが、金柑の体に電気が集まる。
    「おお、やっぱり電気タイプすごい!」
    「なんだかよくわからないが、いつまで?」
    「え、4時間くらいかな。がんばってよ」
     
     金柑の なげつける! コンセントを なげつけた!

    「4時間も持続的に発電できるか!苦労くらい知れ!」
    「だってだって、電気タイプなら出来るかと思ったのに」
    「……何も知らないんだな、本当に人間なのか……?」
    「もちろん!名前は池月っていうんだ」
    「聞いてないが池月か。よく覚えておく。じゃ、俺は行くから」
    「いやいや待ってよ。きみの名前教えてよ」
    「野生のポケモンにそんなものはない」
    「えー!?ポケモンって不便!じゃあさ、とりあえず記念に写真取ろうよ。充電してくれたから少しは持つはず」
     デジカメを構え、池月と金柑が並ぶ。なんだか解らないが、カメラの方を向いて金柑がじっとしている間に、変な音がして終了する。人間の持ってるものはよくわからない。
    「ほら、これ!あげるよ。写真っていうんだ。また会いたくなったら来てよ!それに人間のこととかも教えてあげられるし!」
    「……生きてたらな」
     金柑はその日は帰った。そういった割には次の日も金柑は池月に会いにいく。変わったゾロアだと思っていたから。


    「ふんふん、それで?」
     黒蜜は金柑を見つめてさらにしっぽを振る。
    「それで、って……とりあえず遊びにはいったな。そこで人間の言葉教えてもらったんだ」
    「へえ、すごいいいやつなんだな、そのゾロア!」
    「だからいっただろ、いいやつなんだよ、基本は……」
    「基本?」
    「いやその、もふもふ好きでな……毎晩若い女の子がわんさかいる紳士の社交場に行ってるとか、奥さん泣かしてるとか子供がいるのに放置とか悪い噂のがよく聞くんだ」
    「おいおい!そいつ悪いやつじゃないか!」
    「うーん、悪いヤツではないんだよ、一応。俺に金かりてとんずらしたヤツだが」
    「いやだから悪いヤツじゃないか!金かりてとんずらとか!」
    「まあ、一応それにも理由があるんだよ。一応……」
    「なんだよ、理由って!俺は納得いかないぞ!」
    「お前がもう少し大きくなったら教えてやるよ。んじゃ、俺は飼い主の手伝いに戻る」
    「えええ!!!教えてくれたっていいじゃねえか金柑のケチ!」
     黒蜜が吠える。しましまを向けて長いしっぽをムチのように振って金柑は去る。ふと黒蜜は気付いた。金柑の去って行く後に落ちた、一枚の写真。そこに写っていたのが、生まれたばかりっぽいイーブイを抱いた金柑と、それを喜ぶような青いゾロアークだった。


    ーーーーーーーーーーーーーーーー
    いけづきくんは本当はいいやつなんだよ!
    そういった愛を全面に出そうとしたんだけど、なんかよくわからず失敗してるような気がする。
    金柑がパソコン使えたり、人間と話せるのは池月君が教えてくれたからなのです。
    ちなみに、他の電化製品も使えますし、料理できるのも池月君のおかげ……
    そして金かりてとんずらを許してるのは、きっと色々あったからだとおもうですよ。
    しかし、ことあるごとに金柑への借金が膨らんでいく池月君、そろそろ返さないとなあ。
    最後になりましたが、もふパラ使用許可をくだs(

    【好きにしてください】【もふパラありがとうございました】


      [No.1701] サイコソーダとガラス球 投稿者:サン   投稿日:2011/08/07(Sun) 15:44:14     91clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ねっとりと肌にまとわりつく夏の空気。汗を絡んだ髪が首に巻きついて鬱陶しい。
    全開になった障子の向こうからはテッカニンの大合唱。ジーワジーワという暑苦しい音をBGMに片手でうちわをあおぎつつ、もう片方の手でひんやり冷たいサイコソーダの瓶を掴む。口元まで持ってきたところで、私はとがらせかけた唇から声をもらした。

    「……空じゃん」

     からん。閉じ込められたガラス球が乾いた音を奏でた。
     未練がましく瓶を逆さにして口をつける。一滴、ぴりりと舌を焦がして熱に溶けた。揺すってみる。もう何も出ない。
     買い置き、あったっけ?
     “サイゴノイッポン ダイジニノモウ”。冷蔵庫から取り出したとき、確かそんな暗示をかけた気がする。ああ。考えるだけでも苦痛だ。どうしてもっとたくさん買っておかなかったんだろう。暑さが体力も気力も根こそぎ奪っていく。

    「あーもうっ! 暑いっ!」

     乱暴に寝返りをうつと、傍らで寝ていた紫の猫又が薄目を開けた。私は彼女の額についた真っ赤な宝石をつついてやった。

    「あんたの未来予知で、こうなること先に教えときなさいよ」

     猫又は迷惑そうに私を見、体をのけぞらせてまた目をつむった。よくもまあこのクソ暑い中眠れるものだ。
     とにかく、何かしていないと身も心もからからの干物になってしまいそうだ。
     からん。ガラス瓶を置くと、猫又の耳がぴくりと動いた。私は襖を開け、台所に納まるまあるい背中に声をかけた。

    「おばあちゃん、ちょっと出かけてくる」

    「おや、いってらっしゃい」

    おばあちゃんは包丁を置いてのっそり振り向いた。しわだらけの顔がにんまり笑う。

    「今日はもうじき、雨が降ってきそうだからねぇ。気をつけるんだよ」

    「わかった。いってきます」

     おばあちゃんの天気予報はよく当たる。というか、予知というか予言というか。いままで外れたところを見たことがない。命中率が百パーセントなのだから、あの猫又の未来予知よりもずっとすごい能力だと思う。
    傘を掴み、サンダルを履いてがらがらと戸口を開けると、素足にふわりと流れる毛の感触。視線を落とすと紫の猫又と目が合った。

    『どこに行くの?』

     頭の奥に声が響く。テレパシーだ。

    「別に。散歩」

     猫又がゆらりと二股の尻尾を揺らす。

    『駄菓子屋に行くんでしょう』

    「ちょっとシオン、あんたも来る気?」

    『わさび煎餅よろしくね』

     それだけ伝えると、猫又は返事も待たずにすたすたと先へ行ってしまった。
     わさび煎餅とか、エーフィのくせに渋すぎだろ。小さく呟いた文句は彼女の耳に届いただろうか。
     家の前に広がる田んぼでは、畑仕事を終えた農家のおじさんが一人煙草をふかしていた。

     たけみやと書かれた古ぼけた看板の下をくぐると、店の主がなあおと鳴いた。店内に人気はなく、一つきりの小さな電球が気まぐれぶりを発揮している。狭い通路を挟む陳列机にはありとあらゆる種類の駄菓子が並べられていて、四角く切った広告紙に「ボリボリくん 百円」とか、「チョロリチョコ 十円」、「ゆきみ熊春 二百八十円」等、黒いマジックででかでかと書かれている。
     それらを全部無視してまっすぐ向かうのはガラス扉の冷蔵庫。冷たい水色の瓶を何本か掴み取り、ビニール袋にしまいこむ。がさり。足元で音がした。緑色の包装のものをくわえた猫又がこちらを見ている。

    「……わかったわよ」

     どれだけ欲しいんだ。
     仕方なく受け取り、袋に入れた。
     まあ一枚だけならまだましだろう。箱ごと念力で押し付けられたときに比べれば。
     カウンターに招き猫のような格好で座っている化け猫ポケモンのとなりにお金を置くと、化け猫はごろごろと喉を鳴らして目を細め、カウンターから飛び降りた。なあお。見送りのつもりだろうか。店の出口の前で、また鳴いた。
     外はすでに暁に燃えていた。雲の隙間から黄金色の夕陽が煌めいた。
     足を進めたのが家とは反対の方向だったからか、シオンが怪訝そうに首を傾げた。

    『どこに行くの?』

    「いつものとこ」

     頭上では何羽かのスバメがくるくると舞っている。左手に下げた袋ががさがさと音をたてた。

    『じき雨が降ってくるのよ』

    「それまでには帰る」

     シオンが小さくため息をついた。

    『言い出したら聞かないんだから』

     もちろん私は聞かなかったふりをする。
     夏の田んぼは賑やかだ。遠目から見ればまるで草原のような稲たちが、夏の日差しをたっぷり浴びて競うように空を目指す。
     サイコソーダの蓋を開け、口をつけた。からん。冷たいものが一気に喉を下った。
     一人と一匹、のっぽの影が畦道を行く。
     やがてたどり着いたのは、木々に囲まれた石段。一段一段登っていくと、ところどころの塗装が剥げて赤茶けた古い鳥居が見えてきた。
     石段の真ん中にさしかかったところで腰を下ろした。となりでシオンがそわそわと足を踏みかえた。私はビニール袋から煎餅を取り出し、ぱきりと割ってから口を開け、落ち着きのない相方に差し出した。彼女はすぐさまかけらの一つをくわえると、ボリボリと不粋な音をたて始めた。おすまし顔が台無しだ。
     もう一度、ソーダを口に含んだ。ほどよい刺激が舌を包む。
     遠くの空で入道雲が鉛色に垂れ込んでいるのが見えた。
     ジーワジーワ。暑苦しい鳴き声も、一雨くれば少しは収まってくれるだろうか。

    「ブゥ」

     ふと何かおかしな声を聞きつけた。見ると、いつの間にやら足元に真っ赤なポケモンが二匹。ぶくぶくとマグマの泡のような頭をしたひょっとこ顔だ。
     シオンがぱたりと尻尾を振った。

    『珍しいのが来たわね』

    「何? これ」

    『ブビィ。炎ポケモンよ。この辺じゃあまり見ないわ。山から下りてきたのかしらね』

     シオンは手短に説明を済ませると、また煎餅の袋に顔を突っ込んだ。あまり関わる気はないらしい。
     それにしても。二匹とも、さっきから何か言いたげな熱い視線でこちらを見上げてくる。
    何か、嫌な予感。

    「ブゥ、ブゥブゥ!」

     二匹のブビィが両手を伸ばした。

    「は? 何」

    『サイコソーダが欲しいんだって』

    あぁ、やっぱりね。
     石段に置いたビニール袋を引き寄せる。
     見ず知らずのポケモンに餌付けするほど私はお人好しじゃない。

    「あっち行きな」

     しっしっと軽く手ではらった。まったく最近は甘ったれが多くて困る。
     少しは怯むかと思いきや、ブビィたちは互いにぶぅぶぅ言い合って何やら相談を始めてしまった。
     これ、結構粘られるパターンじゃないか?
     横目でちらりとシオンを見た。相も変わらず煎餅に夢中だ。
     ほほう。私には関係ない、と。いい度胸じゃん。

    「ブゥ!」

     片方が何かを差し出した。小さな手のひらに、小さな赤い実が握られている。

    「今度は何」

    『これと交換してくれ、って』

     となりの猫又と、目の前のひょっとこを見比べた。ひょっとこは、そうだと言うように一際大きくぶぅと鳴いた。
     ふーん、物々交換ってこと。ポケモンと。面白いじゃん。

    「……はい」

     木の実を受け取り、代わりに水色のガラス瓶を差し出した。ちゃんと蓋を開けておくサービス付き。ブビィたちは目をぱちぱちさせ、両手を伸ばして大事そうにそれを受け止めた。契約成立。さっそく二匹仲良く飲み始めた。ぶぉっ! 興奮した一匹が口から真っ赤な炎をもらす。よっぽどサイコソーダが気に入ったらしい。
     ただ、見ているこちらとしてはかなり危なっかしい。

    「ほら、用済んだんならどっか行きな」

     そう言ったにもかかわらず、ブビィたちがここから立ち去る気配はない。今度は中のガラス球に興味を持ってしまったようだ。一匹が瓶を掴み、乱暴に振った。からからから。球が陽気な音を鳴らす。二匹はうれしそうに跳ね回り、上機嫌に火を吹いた。もう一匹が瓶を奪い取った。中のものを取り出そうとしているらしい、飲み口に手を突っ込もうと奮闘している。中のガラス球が抵抗するようにくるくる回った。
     馬鹿か。そんなので取れるわけないだろ。

    「貸してみ」

     ひょっとこが驚いて目をあげた。

    「別に、盗りゃしないって」

     訝しそうに身をかがめていたブビィたちは、おずおずと水色の瓶を差し出した。受け取り、飲み口を覆う形で片手で掴む。き、と小さな音がして、口が外れた。ブビィたちが真剣な顔つきで私の手を見つめている。握られた手をそっと開く。透明なガラス球が転がった。たちまち歓声。

    「ほら。取れた」

     ブビィたちに返してやると、さっそく珍しそうに目から近づけたり遠ざけたり、珍しそうにいじり始めた。こうして見ていると人間の子供と全然変わらない。あんなものにそこまで夢中になれるなんてね。
     私にも、あったっけ。あんな風に小さな宝物に夢中になった頃が。空き瓶にたくさんガラス球を貯めて、ベッドの上に並べてお店屋さんごっこをして、真っ白な服を着たお母さんが、にこにこしながら、それを見てて――
     ああ、もう全部昔の話だ。何を今更、思い出してるんだろう。
     ふと何かが手を濡らした。今度は顔。上を見る。真っ暗だ。

    「やば」

     夕立だ。
     シオンがすばやく反応して石段を駆け上がる。私は散らばったごみを手当たり次第に袋につっこみ、猫又の後を追おうと立ち上がった。そこではっと気がつき振り返る。ひょっとこたちはまだのんきにガラス球をいじくっている。

    「ちょっと、あんたら!」

     二匹がきょとんとした顔でこちらを見た。

    「こっち来な」

     こいつら炎ポケモンのくせに無用心すぎるだろ。
     無理矢理二匹の手を掴みあげ、引きずるようにして石段を上った。先に上まで上りきったシオンが振り返り、尻尾を揺らした。古ぼけた神社の境内に身を滑りこませたすぐあとに、激しい雨粒がけたたましい音をたて始めた。
     間一髪、なんとか濡れずには済んだ。それはまあいいんだけれど。

    『これじゃあ帰れそうにないわね』

     シオンがぶるぶると身を振るった。

    『だから言ったのに』

    「うるさい」

     もっと早く帰るつもりだったんだ。言おうか少し迷ったが、結局声にしても何もならないのでやめにした。
     それにしてもすごい雨だ。たくさん雨が降る様子を「バケツをひっくり返したような」とか言うけれど、正直そんな安っぽいものでは収まらない。トージョウの滝もびっくりの猛烈な勢いだ。持ってきたビニール傘は、ところどころにセロテープのつぎはぎが見えるおんぼろ傘。この雨の中ではおそらく五秒ともたないだろう。
     ふと足元に目をやると、ブビィたちはまだガラス球をかざしていた。小さな手のひらで転がして、不思議そうに眺めてまた次の手へ。一つきりのガラス球を、宝物のように代わる代わる手に取り遊んでいる。

    「あんたら、そんなに気に入ったんだ」

     ため息混じりの声も、ほとんど雨音にかき消されてしまった。一歩足を踏み出せばたちまちびしょ濡れになってしまうような僅かな空間で、ブビィたちは無邪気に笑い、くるくると踊った。
     まったく、人の気も知らないで。
     私は小さく息を吐いて、袋の中の飲みかけの一本を取り出した。

    「あげるよ」

     差し出した手のひらで、ガラス球が肌色に透き通る。ブビィたちはきょとんとして私を見た。

    「いいよ。私これいらないし」

     片方がそっと手を伸ばした。二、三度瞬きを繰り返し、掴んだそれをじっと見つめた。もう片方が持っていたガラス球と並べてかざした。二匹の瞳が輝いた。喜びのあまり吹いた炎が大きく膨れた。驚いたシオンが飛びのき、尻尾を荒々しく振って見せた。

    『ちょっと。お行儀悪いわね』

     煎餅をぼろぼろこぼしながら食べていたポケモンが言えたことか。
     それでもブビィたちにはこちらの苦情はまったく耳に入らないらしい。ぶぅぶぅと楽しそうにはしゃいでいる。

    「ブゥブゥ!」

     ひょっとこたちが何やら詰め寄って来た。両手を一生懸命に動かして、何かを伝えようとしているらしい。

    「ブゥブゥブゥ! ブゥ、ブブブブゥ!」

     ごめん。さっぱり分からない。

    「何て言ってるの、コレ」

     私はシオンを見た。シオンは私を見た。

    『……よく、分からないけど』

     彼女は困ったように耳をぱたぱたさせ、ブビィたちの方を向いた。

    『何か、お礼に、家まで送ってくれるって……この子たちが』

    「は? 何言ってんの?」

     つい声が裏返る。
     今? この大雨の中を? このちっぽけな炎ポケモンたちが? 一体どうやって?
     シオンも分からないと肩をすくめて見せた。ブビィたちが服の裾を引っ張ってくる。

    「ちょっと、あんたら正気? 何考えてんだかさっぱり分からな――」

     私の言葉は最後まで続かなかった。ブビィたちが空に向かって一声鳴いたかと思うと、一瞬にして辺り一面が白熱した。光に目をやられ、何が起こったのか分からないまま立ち尽くした。そして、ふと気がつく。雨音が止んでいる。

    『なるほどね……日本晴れか』

    「日本晴れ?」

     先ほどとは打って変わって、じりじりと肌を刺すような強い日差し。上を見ると、手を伸ばせば届きそうなところで小さな太陽もどきが熱を発しているのが分かった。白い輝きが熱を伴って、辺り一面を照らしつけている。ふと周りを見回すと、裏手の林はまだひどい雨足に包まれているのが見えた。
     はは、なるほどね。私たちの周りだけ晴れているんだ。
     シオンがさんさんと光の照りつける石畳へと飛び出した。

    『ずいぶん強引な方法じゃない。誰から教わったの?』

     ブビィたちは得意そうに火を吹くと、太陽の下を駆け出した。
     シオンの言うとおり、なんともまあ強引な方法だ。どうも手馴れたようにも見えるし、炎ポケモンっていうのはみんなこういうものなのだろうか。
     私は苦い笑みを浮かべて、鳥居の下で急かすように手を振るひょっとこたちへと足を進めた。

    「ねぇシオン」

    『何?』

    「あんたも、日本晴れ使えなかったっけ?」

    『…………』

    まだまだ暑い夏は続きそうだ。




    ―――――――――――――――――
    はじめまして、サンと申します!

    とりあえず夏っぽい話を書きたかったのでがりがり。
    夏の夕暮れに田んぼに行くとものすごいノスタルジックで癒されます。

    エーフィって猫又だよね。にゃんこかわいいよにゃんこ。


    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】
    【でも嫁はサンダースなのよ】


      [No.1700] ファントムの日記より。一日目 投稿者:紀成   投稿日:2011/08/07(Sun) 11:13:39     19clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    8月3日

    書けと言われたので書いておく。

    紀成と一緒に北海道という場所へ行くことになった。3泊4日の旅行らしい。『帰ったらレポート出してね』と言われたので、とりあえず書こうと思う。
    午前3時起床。カーナビに手間取り出発したのは40分くらい。それから1時間くらいかけて空港近くのパーキングへと向かう。走るうちに空は白くなっていき、着いた頃には朝日が昇っていた。
    シャトルバスで空港へ到着し、搭乗手続きと荷物を預ける。私は特に財布くらいしか持っていなかったので無し。
    6時のフライトだったので少し朝食を摂る。フライト時間は75分。飛行機に乗っている間、前の子供が五月蝿くて紀成が露骨に嫌そうな顔をしていた。紀成は五月蝿い子供や生意気な子供が大嫌いだ。苦手ではなく、大嫌いだ。
    「やっぱさー、親なんだよね。環境うんぬんなんだよね」
    「自分のことは棚にあげるんだね…」
    「そこまで五月蝿くなかったってうちの親は言うけど」
    着いてもまだ8時前。レンタカーを借りてそのままサホロへ向かう。
    「バイクの方が似合うと思うんだけど、どう?」
    「免許持ってないから」
    北海道は広い。とにかく広い。隣町に着くのに1時間かかるのは当たり前だ。札幌から小樽までも高速でも1時間。
    夕張あたりで軽い食事を摂る。紀成はゆでとうもろこしの旨さに感激していた。祖父が作るよりずっと色が濃くて甘いらしい。
    「やばい、美味しい」
    「花より団子」
    「あ、たこ焼きも食べよ」
    正に花より団子。
    しばらく車に乗ってサホロリゾートに着いた。虫がすごい。蛾の多さが半端じゃない。今年は特に多いらしい。
    チェックインした後、カヌー体験に向かう。用意されたワゴンは勢いよく座ると埃が舞うくらい汚かった。
    近くのダムまで行ってライフジャケットを着る。またしても多い虫。特にバッタがすごい。そして暑い。
    カヌーは1つを2人で漕ぐ。オールの持ち方は横にして上にあげ、肘が両方直角になるような場所で持つ。
    右に行きたい時は左を漕ぐ人が漕ぎ、右を漕ぐ人はオールを水の中に入れたまま待っている。左に行きたい時はその反対。
    だが紀成はアウトドアよりインドア。ものすごく下手だ。
    「えっ、ちょっ、どうすりゃいいの」
    「…下手くそ」
    おまけに釣りをしている人達がいて大きく迂回しなくてはならない。私がフォローして最後の方は巧く漕げるようになった。
    終わった後、少し休んでから夕食を食べに行く。北海道限定チェーン店であろう焼き鳥屋へ。けっこう美味しかった。南瓜のコロッケをつついていたら、紀成がぽつりと言った。
    「ファントムが焼き鳥食べるシーンなんて考えたことも無かった」
    大きなお世話だ。私だって食べる時は食べる。
    さて、出た後紀成の両親が何故が蕎麦を食べたいと言い出した。サホロは蕎麦の花が沢山咲いていた。有名らしいが、ほとんどの店は5時になれば店を閉めてしまう。駅前は人も車も全くいない。店という店が全てシャッターを閉め、灯りも全く無い。正にゴーストタウン。
    「街灯が全然ついてない…」
    「何も見えないな」
    ちなみにこの時夜の7時くらい。そして紀成はツイッターを開いてフォローしている人達がいやに荒ぶっているのを見て、戻って慌ててテレビをつけたが、やっていないのかそれとも放送日が違うのか、目当ての番組はやっていなかったらしい。血涙を流しかけていた。
    「北海道に来たんだからそれくらい耐えろよ」
    「私はインドアなんだってば」
    「じゃあ何故来た」
    そんなこんなで1日目終了。


      [No.1699] ポケットモンスターReBURST ――ラジオ体操の唄―― 投稿者:久方小風夜ときとかげ   投稿日:2011/08/07(Sun) 08:33:45     164clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:コラボ作品】 【※ReBURSTはほとんど関係ないよ!】 【早朝テンション】 【ごめんなさい】 【ごめんなさい





    ※最初に謝っておきます。ごめんなさい。









    ※最初に謝っておきます。ごめんなさい。
















     ―― 新しい朝が来た 希望の朝だ ――





     夏休み。少年少女は早朝のラジオ体操のために目を覚ました。
     そこで歌われる歌のように、新しい朝を迎えるために。


     しかし――新しい朝は来なかった。




     太陽は暗く、上りきっているのに星がチラチラ見える。家の壁はひびだらけ、床は踏み抜く危険と隣り合わせ……。
     それは言わば、『古い朝』とでも言うべき光景だった。


     太陽が、消える。

     新しい朝は、来ない。この先、永遠に。



     そこでティーンエイジャーの少年少女の元にポケモンがやってきて言う。


    「太陽を取り戻せ、新しい朝を君たちの手で作るんだ」と……!






     そして始まる、長い長い一日。
     人の悪意から生まれた魔獣を退治するため、少年少女は立ちあがる。

     ポケモンと契約して手に入れた魂の力を使い、



     ――そう、バースト戦士として。




     立ちふさがる魔獣。


    「このピアノ伴奏……昨日の人と違う!」
    「何っ――今日はサックスだと……!?」


     目的不明の怪しい組織。


    「出席シートは1人1枚だけのはずだ……なぜ3枚も持っている」
    「夏休みが始まる前に、先生に3種類もらったんだ!」


     主人公と敵対する、謎の少年。


    「大きく身体をひねる運動で左右を間違えるとは……素人め」
    「くっ……何て気まずいんだ!」



     そして、裏切り。


    「ごめん、私……寝坊したの!」





    「判子が欲しいか? ならば――毎日来るがよい」
    「集めればいいんだな……やってやる」
    「よかろう。皆勤賞はノートだ。――鉛筆はやらんぞ」



    「深呼吸の1回目は手を広げるんじゃない! 降ろすだけだ!」
    「ちくしょう……ちょっと変わった動きのイメージ強すぎる……」
    「気をつけろ! ジャンプの2回目は開・閉・閉だ!」
    「ああ、わかった!」



    「首をひねる動き……だと……昨日はなかったはず……」
    「残念だな――首の運動はランダムだ」
    「それはどうかな?」
    「何っ……首をひねる動きを、見切っただと!?」
    「残念だね。僕は気付いたんだ――会場紹介の長さと、首をひねる動きの関係にね!」




    「何でだよ! みんなで……みんなで出席シートを全部埋めようって……約束したじゃないか!!」
    「それに、本当は私……みんなの体操派なの!」
    「みんなの体操なんか、ビデオにとればいいじゃないか……! こっちは出席シートがかかってるのに、なんで……」
    「うちの家、デジタル映らないのよ! おばさんのうちで見させてもらってるの!」
    「ごめん……知らなかった」
    「ううん、いいの。言わなかった私も悪いもの」
    「決めた! 今日から俺んちでみんなの体操をビデオにとる! それで、新しい朝がきたら……一緒にデジタルの映るテレビを買いに行こう!」

    「だがどうする? そいつの出席シートにはもう穴がある。パーフェクトは狙えまい」
    「俺たちは――俺たちは、諦めない!」

    「! は、8時40分! それは……再放送!!」






     果たして少年少女は、新しい朝を迎えることができるのか。






    「鍵を握るのは謎の唄……そう、【第弐】だ」





     「BURST!! 【腕を大きく回す運動】!!」  






            ポケットモンスターReBURST ――ラジオ体操の唄――


                   2011.8.32 ROADSHOW






       「――ラジオの声に、健やかな、胸を」



       「この薫る風に開けよ。それ……1、2――3」






    +++++

    朝6時過ぎのチャットでの早朝テンションの結果がこれだよ!
    途中から古い朝もポケモンもReBURSTも関係ない。

    ちなみに久方の方はReBURST嫌いじゃないよ!


      [No.1698] それでも僕はやっていない 投稿者:ワタル   投稿日:2011/08/07(Sun) 00:56:53     105clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     それでも僕はやっていない 〜 改造説を信じるあなたへ 〜


    目次

     序章 …… 潔白のチャンピオン 歩む正義の道筋

     ・生い立ちから滲む正義 〜竜の里の少年〜
     ・ポケモンとの絆 〜竜の里の試練〜
     ・チャンピオンへと至る道
     ・不正を許さぬ心 〜ロケット団残党排除へ〜

     第一章 …… 改造とは何か?

     ・ポケモンの生態 〜竜でもわかる携帯獣学〜
     ・ポケモンの進化レベル 〜低レベルでの進化〜
     ・ポケモンの技習得レベル 〜習得速度の相違〜
     ・ポケモンの特性 〜夢特性は改造じゃない〜

     第二章 …… 許されざる改造(チート)

     ・改造がポケモンに与える悪影響
     ・生態系へのダメージ 〜いかりのみずうみに見る〜
     ・そもそも改造っていう響きがよくない
     ・改造、ダメ、ゼッタイ

     第三章 …… チャンピオン・ワタルに改造は要らない

     ・チャンピオンの実力 〜百戦錬磨の竜使い〜
     ・進化は愛情の成せる奇跡 〜カイリューと歩む365日〜
     ・命に代えても守りたいもの 〜竜翼と黄金の壁〜
     ・改造の要らない理由 〜強さを求めて〜

     第四章 …… 徹底検証 改造説の盲点

     ・改造説と情報操作 〜ネット世界の動向〜
     ・ズバリ! 改造説のここがおかしい
     ・切断厨のほうがタチが悪い
     ・チャンピオンの見解 〜名誉職へ批判は付き物〜

     終章 …… それでも僕はやっていない


    序文

     僕は竜の里と名高きフスベシティに生まれ、幼い頃からドラゴンタイプのポケモンと触れ合って生きてきました。厳しい掟の下、竜族という扱いの難しいポケモン達との生活を続ける中で、感じられた自然との一体感、世界(ほし)の呼吸、そして生命の神秘――これらは筆舌に尽くしがたいものがあります。
     そして僕の最も憎むべき「改造(チート)」とは、それらを冒涜する立場にあります。自然界で培われてきた営みに手を加える行為は、とても許されるものではありません。以降何度も触れますが、かつてこの美しいカントー地方を根城に活動していた『ロケット団』という組織は、人間の持つ文明技術を悪用し、ポケモンの改造に手を染めていました。それにより、いくつもの地域で野生のポケモンの分布に悪影響が起こっています。特に彼らの解散後、残党が起こしたいかりのみずうみでの事件は有名でしょう。これについては、僕自身も、あの美しい湖がみすみすと汚されてゆくことに黙っていられず、自ら足を向けました(詳しくは第一章P43、不正を許さぬ心 〜ロケット団残党排除へ〜に書いたとおりです)。
     しかし、巷では僕の手持ちポケモンに対して「そのレベルで進化しているのは、不自然ではないか?」「なぜ、本来覚えない技を習得しているのか?」など、疑惑の声が上がっています。あまつさえ「チャンピオンでありながら、改造を行っている」などと心ないことを言われることもあります。
     考えてもみてください。
     僕は物心のつく前からドラゴンポケモンと共に暮らし、彼らの最も自然たる姿の雄大さをこの目で、この身体で、この心で感じ続けているのです。
     そして、チャンピオンというこの名誉職は、決して小手先の改造などで守り得るものではありません。幾度もの挫折と敗北を乗り越え、愛すべきポケモン達と傷を分かち合い、成長し、戦略を究めたからこそ、僕はこの地方の頂点を名乗ることができたのです。
     また、ポケモン世界にはまだ多くの謎が秘められています。トレーナーからの愛情を受けることで進化するポケモン、新たな技、種族、特性、既存のポケモンの新たなる進化形態――年を重ねるごと、ポケモンに関する発見は留まることを知りません。それは時に、奇跡としか形容し得ないような結果を残し、学会に波紋を起こすことも少なくありません。
     人は未知のものに触れるとき、おのずとそれを躊躇し、恐怖するでしょう。僕も一番最初にカイリューの背に跨ったときの、あの胃の腑の浮かぶような感覚は忘れられません。しかしそれらは、同時に強い好奇心を伴います。未知の存在に触れるという恐怖と期待、その表裏一体こそがこの話題を燻らせてやまない人々の深層心理なのではないか、と僕は考えます。
     ただ、一つだけ言わせて欲しい。
     それでも僕は、改造など、やっていないと。

     僕自身と、そして神聖な「チャンピオン」という肩書きにかけられた無実の汚名を晴らすため、こうして僕は慣れない筆を執ることとなりました。
     これを読んで、僕の考えるポケモンというものへの理想と情熱を、そして改造というタブーの絶対的無価値を感じ、考えていただければ幸いです。

     カントー・ジョウトポケモン連盟 チャンピオントレーナー ワタル


     1580円 


      [No.1697] 捜索願:攻撃技 投稿者:音色   投稿日:2011/08/06(Sat) 23:52:21     106clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     もふ地獄(いや好きな人にとっては天国だろうが正直すげぇ息苦しい)が終って気がついた。
     しかしまぁ、ポケモントレーナー薔薇色ライフの夢が断たれたと言え、もふパラと言えば人間→狐ポケモンという別の意味のポケモンライフが待っていることである。これはある意味でも貴重じゃん!?
     ポケダン世界でない以上、人間がポケモンになれるチャンスなんてやっぱ滅多にない(はずだ)。
     ところで、俺キツネになった割にはさっきからごろごろとのた打ち回っているんだが。なんというか、手も無い、足も無い。ついで言うと尻尾も無い。もふもふな毛皮も無い。
     なんかつるつるしてる。
     従って移動は転がった方が早い。


     
     おめでとう!       は ビリリダマに へんかした! ▼



     目の前に現れたウィンドウが文字を写しだした。
     ・・いやいや、全然おめでとうじゃないし。名前のところ空白だし!扱いがひでぇ。しかも進化じゃなくんて変化かよ。あってるけど。
     しかし何故ビリリダマ。狐のきの字どころかタイプすらあってない。ていうかもふもふどころか動物ですらねぇぇ!
     何故にアイテムと間違えて戦闘に突入するようなポケモンなのだ。どうせ爆発するなら進化形の方がはったりがきくじゃないか。
     ぼん、と尻尾の生えたウィンドウが消えた。水色とフツーのゾロアが共同で化けていたらしい・・妙なもんに化けんな。
     横で長老が爆笑している。あんたがやったんだろうがぁぁ!
    「ふふふ、すまんのう。お主、でこぼこが多かったからのう。丁寧に研磨してやったらそうなってしまったんじゃ」
     悪びれもせずにさらっと長老が言う。納得。研磨じゃしょうがない。
    「あの、俺変身とかイリュージョンって使え」
    「ビリリダマが何を言う」
     やっぱ無理ですか。
    「じゃあ俺化かしマスターには」
    「慣れるわけなかろう」
     この人(狐)なんで俺を研磨なんかしちゃったの。もふパラじゃねーよただのつるパラじゃねーか。自分で言って自分がハゲみたいだ。自爆!


     しかし なにも おこらない  ▼ 

    「ええええ」
    「あ、お主の使える技を教えてなかったのう」
     そう、長老が言って紙切れを見せた。

    『ビリリダマの おぼえている わざ
     テレポート じゅうでん あまごい いやなおと』
     さりげなく右上に『Lv,1』の表示まである。
     
     ・・・あの、これで一体どうしろと。

     つづけんたろす
    ―――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談 さてどーしませう

    【続いて欲しい?ならば拍手だ】
    【もう先の展開が分かるよねタブンネ】


      [No.1696] “リアジュウ”さんの災難 投稿者:マコ   投稿日:2011/08/06(Sat) 22:04:15     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ある所に、リアガワ ジュウゾウさん(38歳)、通称リアジュウさんがいました。
    この人、38歳にも関わらず、妻子どころか彼女も居らず、それはそれは寂しい毎日を過ごしていました。
    そして、そのうち、彼氏や彼女がいて満たされている人達、通称リア充のことが憎たらしくて仕方がなくなってしまいました。
    ある日、とうとうリアジュウさんは1つのモンスターボールをひっつかみ、リア充がわんさかいる真夏の海へと飛び出していってしまったのです……!


    真夏の海、そこは恋人達のランデブースポット。
    この日も夏休みの真っ最中だったからか、リア充がそこかしこに居るわけです。彼らのポケモン達もどうやら同じようで、特に水タイプのポケモン達はかなり元気です。
    しかし、その楽しそうな彼らの声は、ちょうどそこへ来た男の一声で崩壊するのです……。


    「お前らリア充だろう?俺はお前らが憎い!だから爆発しやがれ!」
    その声を発していたのは、何とリアジュウさんだったのです!
    たちまち海岸はパニックに包まれてしまいました。
    さらに、リアジュウさんがモンスターボールを放って出現させたポケモンを見た人達は、ギャアギャアと喚き回ってしまいました!
    それもそのはず、リアジュウさんが出したポケモンは、今にも爆発しようとしているマルマインだったからです!

    「マルマイン、大爆発!」
    リアジュウさんの指示に従って、体内に溜め込んだエネルギーをそこら中に撒き散らそうとするボールポケモン。
    カップル達はただ怯えるばかり。
    そして、爆発が起きかけたその時!

    客の一人がモンスターボールを放って、あるポケモンを出したのです!

    そのポケモンの登場で、マルマインの大爆発は……、

    「おいマルマイン、何で大爆発しねえんだよ!」

    止まってしまいました。
    リアジュウさんの怒鳴り声が響きます。
    そして、マルマインの大爆発を止めたのは、

    隠れ特性“しめりけ”を持った、ぬまうおポケモンのラグラージだったのです!
    傍らには、ラグラージのトレーナーと思われる女子大生。
    「おっさん最低」
    彼女は吐き捨てるように、しかし単刀直入に言いました。


    リアジュウさんは、こんな挑発らしき言葉に黙っていられるはずもありませんでした。
    「邪魔くさい!マルマイン、電磁浮遊からジャイロボールで気持ち悪いやつを弾け!」
    ボールポケモンは電磁力で浮き上がり、さらに高速回転しながらぬまうおポケモンにぶつかりました。
    しかし、ラグラージは種族的に力がとても強いポケモンです。難なくマルマインを受け止めてみせました。
    ラグラージのトレーナーの指示が飛びます。
    「ラグラージ、冷凍パンチ!」
    ボゴオッ、と激しい音が起き、マルマインはガチガチに凍ってしまいました。
    さらにラグラージは太い腕を振り上げて……、
    「とどめのー、」
    「やめてくれ、もうしないかr」
    「アームハンマー!!」

    ズッドォンッ!

    リアジュウさんの悲鳴なんてお構い無しに、ラグラージの必殺の打撃攻撃が炸裂し、リアジュウさんは相棒共々、吹き飛ばされたのでありました。


    こうして、真夏の海に平和が戻ったのでありました。

    めでたし、めでたし。




    マコです。
    夏です。リア充がわんさかできる季節です。
    リアジュウさんは名前のわりに全然リア充じゃないですね。
    あんなことされたら迷惑です。
    後でちょっとした後日譚でも書こうかと思います。
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【感想はお手柔らかにお願いします】


      [No.1695] Re: 少年の夏(前篇) 投稿者:CoCo   《URL》   投稿日:2011/08/06(Sat) 14:13:09     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
    >シャドーボクシングのような動きをしている霊
    >なぜか一生懸命懸垂をしている幽霊

    (*´ω`)

     タイトルにホイホイされて読ませていただきました。
     まず真っ先に ぼくのなつやすみ を思い出しました。実家のあの水と土の匂いが漂ってくるような気がします。田舎のおやつってどうして量が多いんだろう。
     アブソルラバーとしては彼の活躍も気になるところです。

     そしてさすがと言うべきか(?)、食べ物の描写が素敵!
     おにぎりのところなんか、さっき昼飯食べたばっかりなのに涎がじわじわ。


     それと、蛇足かもしれませんが誤字と思しきものを……。

    冒頭
    >以前の格好に通わずにすむこと
     学校の変換ミス?

    中ごろ
    >速度は速度は若干遅めなものの
     信用ならないバックスペース

     また最後のお婆ちゃんとの会話で一箇所、純くんが訛っているのは仕様でしょうか。


     久方さん×幽霊ということでとてもwktkしております。
     続きを楽しみにさせていただきますね。
     


      [No.1694] NOT もふパラ 投稿者:音色   投稿日:2011/08/05(Fri) 23:41:56     97clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     扉を開けたらそこは、普通の路地裏だった。
     ちっ。これで俺の家のリビングじゃないのか。握っているのは変わらずにカフェの扉。決してうちの冷蔵庫ではない。
     ・・裸足で歩きたくないのだが、そこはしょうがない。日陰のコンクリートが冷たい・・ちっちゃい石踏んだ。地味に痛い。
     マスターに頼んだら靴貸してくれるかなぁ。・・んなわけないか。ていうか店出てすぐ振り返ったらどれだけ即効アウトだよ。
     さすがにそれでいきなり霊界に連れていかれたくない。・・ていうか、俺何も悪いことしてないよ。本当。もしかして一時タワーオブヘブンでヒトモシ倒しまくったからそれでとか。いやいや、あくまでゲームの話です。
     倒しまくってた理由が『色違いのヒトモシ欲しぃぃ!』だからなぁ。途中で飽きたけど。
     ところで、路地に出たは良いんですがどこに行けばいいんですか。右ですか左ですか。
     ・・仮にどっちかに言って大通りに出たとしよう!その時の俺の格好はどうだ!部屋着だぞ!しかも裸足だぞ!
     おまけにあこがれのポケモンワールドとは言え、逆を言えば俺は住所不明国籍不明(当たり前だ、この世界の住人じゃないんだから)の不法侵入者として扱われませんか?可能性大。
     こちらの世界のジュンサーさんがどの程度のモノなのか、アニメ見る限りじゃ優秀なのかそうでないのか(大変失礼だが)よくわからん。
     いやしかし、もしも『コマンド』に出てきてしまう超絶美人警察のレンリさん(俺の認識上)いたらどうしようか。ここがイッシュ地方ライモンシティではないという可能性は捨てきれません一応。
     いやだって大通りといえばまずは華やかなライモンシティでしょう。・・あ、でもシンオウ地方かもしれないなぁ。妙にがっかり。
     まぁいいや。
     どうにかなるでしょう多分。

     以下俺の都合の良い妄想。
     仮に、仮にだ。住所不明国籍不明の不法侵入者と認識されたとしよう!しかし家族もいないしまともに考えればトレーナーカードらしき身分証明書も無い。
     となったら、どうなる?そう!こちらの世界での身分証明書っぽいモノをつくってもらえるかもしれないわけだ!こうなったら偽名を名乗ってしまおう。そしてポケモントレーナーとしての人生を歩んでしまうのも一興だ。
     いやだって、別に問題ないよね?俺のいた現実世界(いやここも現実と言えばそうだけど)でも時間が進んでいたら俺は失踪と言う形になるだろうが、俺が悪いんじゃない。全てはこの世界に繋がった冷蔵庫が悪い。うんうん。
     有名な博士達の誰かに巡り合えたりしたらいいじゃない。最初のポケモン何にしよー。いまからちょっとわくわくが止まらないぜちくしょー!パーティ構成とかも考えたいしな。
     こうして俺のバラ色の未来が目の前に広がろうとしていた・・・!

     ずごしゃ、っとなんか踏んだ。つんのめって前に倒れた。
    「いってぇぇ!?」
     なんだよ何踏んだんだ?ずっこけた元凶を見ようと、倒れたまま体を回転させて後ろを見た。
     あ。
     これって、あれですか。振り返った判定に入るんですか?

    「……振り返ってはいけませんと言ったのに、振り返ってしまいましたね」

     判定に入りました―――!
     やっちまった・・グッバイ、俺のバラ色の未来。マスターの声が響く。

    「ちょ、ちょい待ってください!」
    「ダメです」
    「たんま!」
    「だめです」
    「いや、だって俺、なんもしてないじゃないですか!」
     戻りの洞窟行ってないし別に人生に悲観しているわけじゃないしそんな運が悪すぎる人間じゃないしていうかポケモンもってないしトレーナーですらないしついでを言っちゃえばこの世界の人間でもないんどぅえしゅ。
     最後噛んだ。
     
     ヤバいやばいやばいやばいリアルな意味でマスターが怖いぃぃしかし良い男である。って、俺は本当に何処をみとるんだ!
     だって体格いいし、脚も長いし・・マスター足あるし。え、足あるしぃ!?

    「・・あんた誰です?」
    「ワシの尻尾を踏んでおいて言う事がそれかぃ?」

     尻尾ぉ・・、と言いかけたら、溢れるマスターの背後から金色の尻尾が1本2本・・ってちょっとまったぁぁ!

    「ここはもふパラじゃないはずだぁぁあ!」
    「ほぅ?お主、その言葉を知っておるのか?ならば話は早いのぅ、もふもふの刑じゃぁぁ!」
    「うそーーーん!?」

     こうして俺はマスターの忠告を守らなかったばっかりに、長老にもふパラに連行されることとなった。
     ちょ、ま、苦しい!ガチな意味でい・・息が・・・がくっ。


     つづけいこうお

    ―――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  もふりーんもふらーんもふろーん

    【カオス万歳】
    【さぁ、続きを書いて欲しいんなら遠慮なく拍手を(略】


      [No.1693] くろいめがね 投稿者:音色   投稿日:2011/08/05(Fri) 22:59:04     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     だん、少々鈍い音がして機嫌の悪い人物が足を踏み入れたその場所は、虚ろな願いを秘めた命が引かれる場所、『黄昏堂』とよばれるそこ。
     しかし、既に時間は黄昏を過ぎ、等に深い闇夜ですらも終る間際・・夜明けの本の隙間の時間。
     霊達は各自の用事を終え帰路に着こうかと迷い、鳥達は目覚める前の最後の眠りに落ちる。

    「今日は随分と騒がしいね」

     伸士にお嬢様に、そしてヤクザ。選り取り見取りだねぇ。マダム・トワイライトは小さくつぶやく。
     そんな言葉を聞き取ろうとしない・・もっとも“ヤクザ”の部分だけは聞き取ったらしい・・人物は激しい怒りと苛立ちを込めて、麗しき店主に向かって紙袋を投げつけた。

    「だぁれがヤクザじゃボケぇぇぇ!」
    「近所迷惑になる、静かにしてほしいね」

     ぱし、と軽い音がして、店主の横の黒い狐は何事もなかったかのようにそれを受け取り、恭しく主へと差し出す。
     御苦労さま、と労いの言葉をかける女性に向かって、どっかとその辺のソファに腰を下ろした男性は大きく息を吐いた。

    「ったく・・人に無茶な要求ばかりしやがって・・。近所なんか存在しないだろうが・・」

     黒いジャケットをはおり、無精髭を生やしたそれは、だるそうに足を反対側のソファまで投げだした。首元には店のランプの光が時々金色に反射する。
     夜中であるにも拘らず、かけている黒いサングラスまでそろえば、まともに見たら確かにその姿は・・一般的に言う“ヤクザ”のイメージに酷似していた。
     頭から爪の先までほとんど黒、その色で染め上げてしまったかの格好は、どこぞの火焔紳士を思わせる。
     ・・もっとも、彼の場合はその身を黒で染める理由が違うのであるが。
     かたり、飾られている品物が動く。

    「今日も子狐共を化け比べさせてんのか?・・んなことしたって、どうしようもないだろう」
    「ふふ、しかし退屈しのぎにはなりますもの。ところで、随分とかき集めたのね」

     紙袋の中からは、・・ごく普通の生活をしている限り一生お目にかかりそうにない・・彼曰く『頼まれた』物がずらりと取り出されていた。

     アルセウスのプレートが数枚。
     ズルズキンの脱皮後の皮。
     アゲハントの完全な片羽。
     ヒトモシの生き火。
     ジュゴンの角。
     コンパンの複眼。
     カゲボウズの布。

    「返り血も無しに、綺麗なものだね」
    「誰かさんが無茶苦茶なモノばかりをねだるもんだからな、一苦労どころじゃねぇよ」

     ぶすっとした表情で、しかし注がれた紅茶は遠慮なくがぶ飲みする。

    「あ、おかわり頂戴」

     丁寧に礼をしてゾロアークがポットに手をかける。

    「私を信用しない代わりに、彼の紅茶はえらくお気に入りのようだね」
    「その通りだよ。あんたは信用できない。が、そいつの紅茶は上手い」

     しゃあしゃあと言ってのける割には、ゆっくりと味を堪能しようとはしない。案外、ただ単に喉が渇いていただけなのかもしれないという疑いすら持ち上がる。

    「そうだね、今度はディアルガの胸の石が欲しいな」
    「はぁぁ!?」

     とんでもない要求だな、舌打ちして黒い硝子のこちら側から、男性は美貌の店主に鋭いまなざしを向ける。

    「砂時計をつくりたいんだ。それがあれば、ひっくり返している間は・・」
    「あっそ。まぁ、見つけたらくれてやる」

     彼女の理由を遮り・・否、初めから聞く様子の欠片も見せずに・・男性は立ち上がる。
     興味がないのだ。彼は頭からこの店の商品になど。

     それでも、マダムは目を細める。

    「望みは言わないのかい?」
    「言ったところであんたは叶えなかったじゃないか」

     寄越したのはこのサングラスだけだ。ぎろり、音がしそうなほど冷たい視線が店の中をめぐる。
     先に息を吐いたのは、やはり男だった。

    「・・一応、前言撤回だ。役に立っちゃいるよ、これは」

     ただ、俺の願いを叶えるようなもんじゃなかったってだけで。
     いくぞ、と自分の影に声をかけて男性は去る。とんとん、と足元の黒がそれについていく。

     男性とマニューラが去った後、黄昏堂の店主は誰に言うともなくつぶやいた。

    「全く、あれはこの店でも指折りの品なんだけどな」

     他者と炎が区別できない男、か。面白いモノを見る目つきだった。

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  いつの間にか新しい人ができていた。
    さてさて、こいつはどの辺で出てくるんだか・・。

    【何してもいいのよ】


      [No.1692] ケーキが食べたい 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/08/05(Fri) 09:41:49     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    586さんありがとうございます!

    > ノンストップコメディの勢い溢れる内容もさることながら、思わず昔読んだ小説のタイトルを思い出してしまいました(これ→
    > 昔通っていた学習塾で、課題図書として読んだものです。懐かしい。。。

    見てみると、え、まさかのチョコレート戦争。
    偶然です。本当に偶然です。

    > 以上、作品にほとんど関係ないコメントばかりで申し訳ありませんでした(´・ω・`)

    いえいえ!!
    こ、こんな内容で投稿していいのかしら…(汗  と思いながら投下したので、
    感想がいただけて本当にうれしいです/// ありがとうございました!


      [No.1691] in 冷蔵庫(嘘) 投稿者:音色   投稿日:2011/08/04(Thu) 23:56:40     100clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     目の前には残念ながら現実の珈琲。俺はブラック等ではなく砂糖もミルクもぶち込む甘党である。
     どこにあるのかなー、と考えかけた瞬間にすっと音も無く砂糖壷とミルクが差し出された。

    「どうぞ、御好きなようにお使いください」

     爽やかな笑みのマスター。・・リアルな意味では、格好良いが確かにこの格好はなかなか恐ろしいものが何処かにある。
     ・・が、今の俺には不気味の不の字の前に現状の「げ」を受け入れる準備ができていないんですが。
     とかいいながら手は容赦なくコーヒーにガンガン砂糖を入れかきまわしどんどんミルクを入れる。・・あれ、マスターの視線がどこか不安なものになっているような。
     もしやようやく俺がこの世界の住人ではなくうっかり開いた時空の歪みに巻き込まれたただの凡人であるという事に気付いたとか。

    「お客様、その、大変申し上げにくいのですが」

     申し上げにくい雰囲気でごめんなさいぃぃ。

    「ミルクの入れ過ぎで珈琲がカップから溢れておりますよ?」
    「え」

     手元を見ると確かに真っ白なミルクがブラックコーヒーを見事に薄めて・・薄めるどこか漂白剤ばりに強制的に真っ白になっている。ていうかコップどころか下のソーサーからもあふれカウンターまでミルク色に。
     ええと、これは舐めつくしてでも飲めというフラグか何かですか。違うか。

    「新しいものをおつぎいたしましょう」

     マスターはひとつも動じずさっとミルク溢れる珈琲(元)を回収し代わりのカップに新しいものを注ぎ、目の前に置いてくれた。なんか申し訳ない。
     今度こそ普通に飲もうと手元を見ながら砂糖を入れ、ミルクを入れる。うん、溢れない、溢れてない。
     ひとくち。

    「あ、うまい」
    「お口にあったのであればなにより」

     よかった、なんかほっとする。
     ・・うん、ホッとしている場合じゃないだが。

    「ええと、すいません」
    「はい、なんでございましょう?」

     冷蔵庫を開けたらここに来ちゃったんですけどどうやって帰ったらいいでしょう、なんて聞けるほど俺は図太くないし度胸も無い。
     ていうか、そんなこと聞かれたら普通の人は困るだろう。
     ・・・あぁ、マスターが普通の人ではないってことは知ってるんだけども。『これから隕石が落ちてきて地球が滅びます』と言っても『そうですか』と受け答えしてくれそうな空気はあるけども。
     さすがに冷蔵庫への帰り方は知らないと思う。

    「最近、面白いことありました?」

     いやいや一体何を聞いとるんだ俺は。

    「そうですねぇ、この間、常連のお方のお仕事がようやく一段落ついたそうですよ。なんでも、追い続けてきた犯人を捕えることができたそうですから」

     へーそいつはよかったですねー。適当な相槌。

    「刑事さんか何かですか?」
    「それに近いものだそうです。『時空を飛び越えた甲斐があった』とおっしゃっていましたよ」

     うん、どっかで聞いたことがあるかもしれない。ていうか、知ってるそれ。

    「もしかして部下の人たちって始終『Wii』の宣伝してたりして」
    「おや、よくお分かりになりましたね」

     そりゃプレイヤーですもの―あははー、なんて言えるか畜生。ポケダンは数回クリアしたからな。
     そういえば、俺から見たらまさにここは夢の世界なわけだ。

    「ところで他のお客さんが見当たらないような気がしますが」
    「平日のこの時間帯は皆様、あまりこちらには来られないのですよ」

     ちっ。ゴーストポケモンがみられると思ったのに。すっかりこの展開に慣れつつある俺。いやー、人間の適応能力ってすごいね。

    「あのところで」
    「はい」
    「金持ってないんですけど」
    「サービスですから」

     原作に忠実設定最高。よかった。しかし、俺、裸足なんだけど、よれよれの部屋着なんだけど。どうしよう。

    「それじゃあ、ごちそうさまでした。おいしかったです」

     ああぁぁどうやって帰ればいいんだろう。知るか。どうにかなる。

    「あぁ、御客様、お帰りになられる前に、一言だけ忠告を」

     フラグか。フラグなのか。これはきっとフラグだ。

    「お帰りになる際は、……決して後ろを振り返ってはいけませんよ」

     それはどこまでですか、マスター。冷蔵庫の扉はどこにあるんだ。マスターの親切に対して会釈をする。
     カフェの扉をあけた。

     
     つづけたぐり

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  さて、どうしよう。どうしよう。

    【御好きにどうぞ】
    【続きがみたけりゃ拍手く(殴】←これお決まりにしよう(笑


      [No.1690] 少年の夏(前篇) 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/08/04(Thu) 23:45:55     139clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:少年の夏】 【幽霊】 【視える人】 【この指】 【と〜まれっ♪

    ※毎度のことですが、今回はいつにもましてポケモン色が薄いです。特に前半。





     アキラ……水瀬 純が退院した頃には、すでに夏休みが始まっていた。
     純は二学期から転校することが決まっていたが、怪我の療養も兼ね、退院してすぐに母の田舎へと引っ越すことになった。


     大都会ではないとはいえ、それなりに町の中で生まれ育った純にとって、新しい住み家はとても人が住めそうな場所ではないように思われた。
     車1台がやっと通れる程度の、表面がひび割れた狭いアスファルトの道。高いビルなどの建物の代わりに盆地を囲む山ばかりが見え、他には幅が狭く水が異常なまでに澄んだ川と、テレビの中でしか見たことのなかった田畑と、ところどころに建つ古めかしい民家くらいしかない。
     家があるということは、人もいるということなのだろう。しかし、おおよそ娯楽らしい娯楽はないように思われた。
     純の母は元々実家の両親と折り合いが悪く、純がこの家に来るのは生まれて初めてだった。今回のことがなければ、もしかしたら純は一生、この家の敷居をまたぐことはなかったのかもしれない。
     これからずっと、ここで暮らすことになるのか。純は少なからず憂鬱な気持ちになった。

     しかしそれでも、以前の学校に通わずにすむこと、周囲には自分のことを知らない人間しかいないことを思うと、前よりはずっとましだ、と純には思われた。


     外の様子は大きく変わっても、家の中は純がこれまで過ごした場所と大差ないように思われた。
     照明は蛍光灯。床はフローリング。パソコンはないが、テレビやエアコンなどの家電もそろっている。違うのは、無駄に広いということくらいだろう。

     仏間と襖で区切られた、6畳ほどの和室が純の新しい部屋となった。
     コタツ兼用のちゃぶ台と、上にV字型のアンテナがついた小さなテレビ。置く場所がなかったのか、古びたエレクトーン。障子を開けると、縁側を兼ねた渡り廊下。外には山と田畑と植木が1本だけある庭が見える。

     がらがら、と引き戸が開く音がした。

    「あきちゃん、スイカ切ったけぇ食べんさい」

     純の祖母が黒いお盆に、切ったスイカを山のように盛ってやってきた。どう見ても半玉分はあるだろう。そんなに食えないよ、と純は思ったが、口には出さなかった。
     祖母はにこにこして、スイカのお盆を純に渡し、居間へと戻っていった。
     純は縁側に腰を下ろし、山の中から適当にひと切れつかんで、口に運んだ。甘い。採れたての作物はすごいな、と純は感心した。

     しゃくしゃくとスイカを咀嚼しながら、純はなぜ母は実家と折り合いが悪かったのかを考えた。都会志向で派手好きで新し物好きな母親は、農作物が美味いことくらいしか取り柄のないこのど田舎から逃げ出したかったのだろう。純はそう結論付けた。
     確かに純も、この町に来たばかりの時は、これまでの生活環境とのギャップで憂鬱な気分になった。特に、初めて聞く祖母の言葉の訛りは、聞き取りづらく田舎くさい上に、どことなく攻撃的な印象を受けてあまり好きになれなかった。もちろん、祖母の顔を見れば微塵も怒っていないことくらい分かるのだが。

     純は赤と白のボールを庭に放った。ぽん、と軽い音を立て、白い毛並みに包まれ、鎌のような角を頭につけたポケモン、アブソルが現れた。
     アブソルは純に頭をすりよせ甘い声で鳴き、純のTシャツの裾を咥え、遊びに行こうとでも言いたげに軽く引っ張った。
     純はアブソルにTシャツを放させ、だめだよ、と優しく頭を撫でた。

    「ごめんね。今はまだ激しい運動は出来ないんだ」

     純がそう言うと、アブソルはくうんと鼻を鳴らして、純の足もとに伏せた。


     純が黙々とスイカを食べていると、アブソルが頭を上げ、風のにおいをくんくんと嗅いだ。
     ぱたぱたと走り回る足音と、玄関の方から聞こえる大きな声。

    「ライコー、そがぁに急がんでもええじゃろぉが」
    「じゃけど、ちぃも早ぉ会いたいじゃろ?」

     純と同じくらいの年頃の、2人の少年の声がする。
     声が聴こえた瞬間、純は慌てて部屋の奥へ引っ込もうとした。

     しかし少年たちは、純が縁側から立ち上がるより早く、純の前に現れた。
     1人はやや背が高く、水色のTシャツに短パン、黒いゴムぞうりの少年。見るからに活発そうな印象で、大きな目をきらきらと光らせている。
     もう1人は小柄で、白いTシャツに長ズボン、黄色のゴムぞうりの少年。にこにこと穏やかな表情で線が細く、ちょっとなよなよした印象だ。
     2人は純と目が合うと、すぐにとびっきりの笑顔になって言った。

    「初めまして!」

     顔を合わせて、挨拶までされてしまっては、引っ込むに引っ込めない。純は黙ったまま、会釈で応じた。
     少年たち2人は、純の予想外のそっけない返しに、少し困惑したような表情を浮かべた。

    「通じんかったんかな?」
    「じゃけぇ、他所から来ちゃった人にゃあ標準語にしようで言うたじゃろぉが」
    「……別に通じるよ。というか今のは標準語だろ」

     純がそう言うと、少年たち2人はぱあっと明るい顔を見せた。

    「今日は朝からこっちの訛りを、疲れるくらいたっぷり聞かされたからね」
    「……じゃあ、できるだけ、標準語にしてみる」
    「一応、練習はしたから……テレビで」

     練習しなければしゃべれないものなのか。あからさまにたどたどしくなった少年たちの言葉を聞き、純はそう思った。


     アブソルがすっと立ち上がった。純は少し慌てた。
     彼の手持ちのこのアブソルは、純以外の人間にはほとんど懐かず、すぐに威嚇して吠えたてたり、ひどい時には攻撃したりする。
     初対面で、そのような問題が起こるのはさすがにまずい。

     アブソルは小柄なほうの少年のそばによると、そのにおいをふんふんと嗅いだ。
     そして少年の顔をじっと見つめると、まるで普段純にするように、頭を少年の足にすりよせ、甘えた声で鳴いた。
     純はぽかんとした。アブソルがそんなに簡単に他人に懐くのは初めての経験だった。
     背の高い少年が言った。

    「ちぃはポケモン持ってないけど、生き物に懐かれやすいけぇ」

     ちぃ、と呼ばれた少年は、アブソルの白い毛皮を両手でふわふわと撫でた。アブソルはキュウ、と嬉しそうに鳴いた。
     純はしばらくその様子を見ていたが、自分のポケモンが他人に懐いているのが少し悔しくなり、おいで、と声をかけた。アブソルはすぐ純の方へ向かった。
     やっぱり飼い主は違うなぁ、と背の高いほうの少年が感心したように言った。
     アブソルの頭を撫で、純は言った。

    「……スイカ、食べる?」


     少年たちは、純を挟むように縁側に座った。
     お盆から大きめのスイカをそれぞれ選び取り、

    「名前は?」

     純がそう言うと、背の高いほうの少年が、庭に落ちている枝を拾い、地面に文字を書いた。

    『半崎 頼光』

    「『ハンザキ・ヨリミツ』?」
    「そう。あだ名はライコー。お前は?」

     純は庭に落ちている枝を拾うと、地面に『水瀬 純』と書いた。

    「みず……せ……じゅん?」
    「……『ミナセ・アキラ』、だよ」
    「へー、アキラって読むんかぁ」
    「『ジュン』でいいよ。どうせ変な読み方だろ」
    「うーん、だけど、変わってるならちぃの方が変わってるよなぁ」

     そうだね、と言い、小柄な少年が枝を持って地面に名前を書いた。

    『柿ノ木畠 地鉱』

    「かきのきばたけ……じ……?」
    「僕は『カキノキバタケ・チヒロ』だよ」

     小柄な少年……地鉱は、そう言ってにっこりと笑った。
     何で『ヒ』にアクセントが付くんだ。いやそれよりも、と純は眉根を寄せた。

    「……これ、明らかに漢字間違えてるよね」
    「うん。父さんと母さんが、出生届出す時に間違えたんだって。本当は『智紘』って漢字にする予定だったらしいけど」
    「ひどいな」
    「でも、僕は結構気にいってるよ」

     地鉱は2切れ目のスイカに手を伸ばしながら言った。外見はややひ弱そうで、中性的な印象も受けるが、見た目以上によく食べる。そして頼光もよく食べる。
     しばらくすると、半玉分程もあったスイカは、皮と庭にばらまかれた種だけになっていた。

    「ジュンは4年生だよな?」
    「うん」
    「2学期から転校してくるんだよな?」
    「うん」

     どうやら、あだ名としては『ジュン』が定着したようだ、と純は思った。

    「じゃあ、2学期からは同じクラスだな!」
    「同じ学年だからって、クラスが同じとは限らないだろ?」
    「? 何で?」
    「?」
    「ジュン、うちの学校は1学年1クラスしかないよ」

     地鉱がにこにこしながら言った。
     カルチャーショックはもういいよ、と純はため息をついた。


     日暮らしの声が雨のように、山から降り注ぎ始めた。気付かない間に、随分と長く話をしていたようだ。
     また明日も来るからな、と言い残し、頼光と地鉱は家へ帰っていった。

     静かになった縁側で、純はひっそりとため息をついた。
     同年代の子たちとこんなに話をするのは、いつ以来のことだろう。


     ぽろん、とエレクトーンが鳴った。


     アブソルが頭を上げた。
     エレクトーンのふたは閉まり、埃っぽい布がかけられているままだった。

     純は振り返りもせず、言った。

    「驚かせようとしても無駄だよ。僕には部屋に入った時から君が見えてたから」

     ざわ、と無人の部屋の中がざわめいた。


     純は生まれついての、「見える」人間だった。
     物心ついた時にはすでに、普通の人と同じように幽霊が見えていた。あまりにもはっきりと見えるものだから、幼い頃は生きている人間と幽霊の区別がほとんどつかなかったほどだ。
     7つを過ぎた頃には本能的に区別がつくようになっていたが、それでも見える力は全く衰えることはなく、むしろ歳を重ねるごとに強くなっているようだった。
     触れることも、会話をすることも、純にとっては当たり前のことだった。

     そのせいで、純は周囲から浮いていた。
     人間という生き物は、自分と違うものを排除していくものなのだろうか。クラスメイトに、その親に、そして両親に。大人子供関係なく、純はコミュニティから除外されていった。
     気持ち悪いと逃げられた。嘘つきと無視された。病気だとヒステリックに騒がれた。
     そんな環境の中で、純に変わらず接してくれたのは、純にしか見えない幽霊たちだった。
     次第に純は、生きている人間より、幽霊の世界に浸るようになっていた。それがよくないことだとは何となくわかっていたのだけれども。

     深く入りすぎたんだ。その報いだったんだ。
     そう心の中で呟き、純は左胸を押さえた。

     頼光と地鉱。新しいクラスメイト。
     もし自分が『見える』ことを知ったら、きっと自分から離れていく。

    「だから、秘密」

     アブソルが純の足にすり寄り、キュウと鳴いた。




     朝早く、窓を叩く音がした。
     純がのっそりと起き上がると、朝霧の中、頼光と地鉱が自転車にまたがり、庭先に来ていた。

    「ジュン、おはよう!」
    「おはよう」
    「何だよ、こんな朝っぱらから」
    「決まってるだろ。ラジオ体操だよ、ラジオ体操」

     純は時計を確認した。午前6時10分。純の記憶が確かならば、ラジオ体操というものは6時半からの放送のはずだ。

    「早すぎないか?」
    「だってこれから、ラジオ体操の場所に行かなきゃならないもの」
    「歩いてすぐの場所じゃないのか?」
    「山道を1キロ半行った、ゴミ捨て場のある三叉路だよ」

     純は頭がくらくらした。何でこんな朝早くから、そんな遠くに行かなければならないのか。なるほどどうりで、2人とも自転車を装備してるわけだ。

    「……ごめん。僕、激しい運動ができないんだ。今はまだ医者に止められてて」
    「マジで? そうなのか」

     早く言ってくれよ、と2人は笑った。

    「じゃあ僕、明日は2人乗りできる自転車で来るよ」
    「お、いいなそれ」
    「……は?」
    「じゃ、俺たち今日は行くから。じゃーなー!」

     そう言い残し、2人は自転車をこいで朝霧の中に消えていった。
     純はその場に座り、さっき2人乗り出来る自転車に乗ってくると言っていたのは小柄な地鉱の方だったよな、と考えた。



     朝食を食べ、部屋で映りの悪いテレビを見ていると、窓ガラスを叩く音が聞こえた。
     縁側を見ると、案の定頼光と地鉱だった。

    「なあ、ジュンはどの位なら運動大丈夫なんだ?」

     窓を開けた第一声がそれだった。

    「歩くくらいなら大丈夫だよ。走るのはまだしんどいんだ」
    「そっか、じゃ、散歩行こうぜ! 町を案内してやるよ!」

     純が返事をする前に、玄関で待ってるからな、と2人は玄関の方へ走って行った。純は小さくため息をついた。


     頼光と地鉱に両側を固められる格好で、純は細い農道の真ん中を歩いた。
     案内といっても、小学生男子の足で行ける範囲など限られている。そしてその範囲にあるものと言えば、2人の家と、他数件の家と、田んぼと畑と川くらいだった。
     変わり映えのしない風景だったが、川の水のきれいさだけは純を驚かせた。引越しの時にちらりと見たが、やはり異常なほど水が澄んでいる。川底の砂は見えるものなのだということを純は初めて知った。

    「きれいな川だね」
    「そうか? 上流の方はもっときれいだぞ」
    「今日の午後、泳ぎに行こうか」

     地鉱がそう言ってきた。いいなぁ、と頼光も賛同した。
     しかし、純は顔を曇らせた。

    「……ううん、いい」

     頼光と地鉱は顔を見合わせて、わかった、と言った。




     翌朝。窓を叩く音がした。
     純は重い頭を何とか起こした。庭先には頼光と、昨日のマウンテンバイクではなく赤いママチャリに乗った地鉱が来ていた。

    「ジュン、おはよう!」
    「おはよう」
    「……今……何時だと……」

     時計は5時55分を指していた。昨日よりさらに15分早い。

    「2人乗りするから、普段より時間がかかるんだ」
    「……え、本当に地鉱がこぐの?」

     2人は何を驚いているのだ、とでも言いたげな顔をした。
     はっきり言って地鉱は小さい。多分、平均よりも小さい。そして見た目が何となく弱弱しい。何となく、女の子でもいけるんじゃないかと思えてくるくらいだ。
     しかし2人は何食わぬ顔で、大丈夫大丈夫、と笑った。

     仕方なく純は着替えて外に出た。サドルを一番低くしても足が地面に届いていない様子が更に純の不安を煽った。
     どうしても怖くなったら降ろしてもらおう。そう心に決めて、純は荷台にまたがった。

    「よし、行こうか!」

     しっかりつかまっててよ、と言い、地鉱はペダルを踏んだ。
     純は呆気にとられた。
     予想以上に安定している。速度は若干遅めなものの、ハンドルが全くぶれない。
     道はひたすら上り坂だ。地鉱は立ち漕ぎだが、純を乗せたまますいすいと登っていく。2人の隣を頼光がマウンテンバイクですいーっと追い抜いて行った。
     曲がりくねった上り坂を登り終えると、今度は下りになった。ペダルは一切踏まない。若干ブレーキをかけて勢いを調節しながら、上手くハンドルをとって坂を下って行く。たまにある小さな上り坂も、勢いをつけていればあまり漕がなくても登る。

     ゴミ収集所のある三叉路に着いた。頼光は先に着いていた。
     地鉱はけろりとした顔をしている。
     純は自転車から降り、大きなため息をついてその場にしゃがみこんだ。

    「人は見かけによらないってことがよくわかったよ……」
    「大丈夫? 気分悪い?」
    「いや、大丈夫。でも……」

     純はもう一度ため息をついた。

    「……明日からはアブソルに送ってもらうよ」

     肉体的には楽だったが、精神的には辛かったようだった。




     その日も、翌日も、その翌日も、毎日頼光と地鉱は純の所へ遊びにきた。
     3人は、散歩したり、釣りをしたり、畑に忍び込んで野菜を漁ったり(地鉱曰く、自分の家の畑だから大丈夫)、畑に忍び込んで野菜を漁ったり(頼光曰く、自分の家の畑だから大丈夫)、時にはゲームをしたり、テレビを見たりして過ごした。
     純の体調もだんだんよくなってきて、少しずつなら走れるようになってきた。

     時々、地鉱が来ないことがあった。
     頼光に尋ねると、「ちぃは野性児だから」と答えた。よくひとりで山に遊びに行っているのだ、と。

    「ちぃ、昔から石とか大好きなんだよ。だからよく何か掘り出しに行ってるんだ。俺はあんまり興味ないから行かないけど」
    「なるほど」
    「あいつあんな名前だからさ、石にとりつかれちゃったんじゃないかと思うね」
    「……なるほど」

     頼光の後ろでシャドーボクシングのような動きをしている霊をぼんやりと見ながら、純は相槌を打った。


    「ジュンはトレーナーなんだよな」
    「元、ね。僕のいたところは結構みんな早くからポケモン持ってたから」
    「いいなぁ。俺も早く、ちゃんとトレーナーとして独立したいよ」

     頼光の夢は、ポケモントレーナーになって旅をすることだった。
     旅を出て何をするのかと聞いたら、会いたいポケモンがいるのだという。

    「俺の名前の『頼光』って、昔いた武将の名前から取ったらしいんだ。そいつはすっげぇ強くて、鬼とか妖怪とかをいっぱい倒したヒーローなんだって。だから俺、自分の名前がすっげぇ好きなんだ」
    「ふーん」
    「で、俺のあだ名、『ライコー』だろ。おんなじ名前の『ライコウ』っていう伝説のポケモンがいるらしいんだ」
    「うん、名前は聞いたことある」
    「そいつに会ってみたいなぁって思ってるんだ。どんなポケモンか、すっげぇ気になる」

     頼光は目をキラキラと輝かせて言った。

     純が昔住んでいた町では、小さいころからポケモンを持って、子供同士でバトルさせて鍛えることが普通だった。学校では積極的にポケモンの授業をやっていたし、バトルの実践授業もあった。
     しかし、この地域では、それほどポケモンについて熱心ではないらしい。所有している子供は数人いるけれど、学校での授業は基本的にない。トレーナーとして旅に出る子供も、ほとんどいないというのが現状だった。

     純にとっての一番のカルチャーショックはそれだった。現に、地鉱はポケモンについてほとんど何も知らない状態だった。
     山にいればポケモンと出会うだろう、と純が言うと、いるだろうなあ、と頼光は答えた。

    「ほら、ちぃってさ、すっげぇ生き物に好かれる体質だから……襲われることがないんじゃない?」

     わけがわからない、と純は首を振った。
     ポケモンは危険だから、護身用にポケモンを持つ。それが普通のはず。
     変わった人間もいるものだ、と純は思ったが、頼光の後ろでなぜか一生懸命懸垂をしている幽霊を見て、そう言えば自分も変わった人間だったな、と思い直した。




     暑い日だった。照りつける太陽の日差しがじりじりと肌を焼いた。
     3人は釣竿を持って川へ出かけた。
     適当な岩の上に座って、糸を垂らす。しかし、3人ともさっぱりあたりはなかった。

    「釣れないなー……」
    「釣れないねぇ」
    「うん、釣れない」

     ぴくりともしない竿先を見ながら、3人はあくびをかみ殺した。

    「場所変えるか?」
    「そうだね」
    「賛成」

     釣り糸を回収し、3人は立ちあがった。

     その時、純は岩べりに生えていた藻を思い切り踏みつけた。靴底が滑り、純は川に落ちた。
     幸いにも、足がつく程度の深さだったため、純は溺れずに済んだ。しかし、全身ずぶぬれになった。

    「あーあ、大丈夫か?」
    「うへぇ……気持ち悪っ」
    「うわー、びしょびしょだね。服脱いで絞らなきゃ」

     地鉱の言葉に、純の顔が強ばった。

    「いや……いいよ、このままで」
    「なに言ってんだ、風邪引くぞ」
    「いいってば」

     純はTシャツを脱ぐことを頑なに拒否した。しかし、風邪をひいては大変と、頼光と地鉱は無理やりシャツを脱がせた。


     瞬間、空気が凍りついた。

     純の左胸、ちょうど心臓の上あたりに、20センチほどの痛々しい傷跡がついていた。


     純はびしょぬれのままのTシャツをひったくって着、アブソルをボールから出し、その背に乗ってその場から一目散に逃げた。
     残された頼光と地鉱は、茫然とその姿を見送っていた。




     その夜、純は夕食もとらずに、カーテンを閉め、襖を閉め、引き戸を閉め、部屋に閉じこもっていた。

     絶対、びっくりされた。怖がられたかもしれない。
     せっかく仲良くなったのに。
     初めてできた、友達だったのに。


     こんこん、と引き戸を叩く音が聞こえた。

    「あきちゃん、入るよ」

     純の祖母が、黒いお盆に大きなおにぎり2つとお茶とお菓子を乗せて持ってきた。
     祖母は純の前にお盆を置いて、にこにこと笑って正座した。

    「おなか空いたじゃろ。食べんちゃいな」

     祖母があまりにもにこにこと優しく笑うので、純はおにぎりに手を伸ばした。
     薄味だ。塩がついているのか否か怪しい程度の薄味だ。元より、塩むすびというのは表面にしか塩がついていないので、おにぎりが大きくなると塩味は減っていく。
     皿に添えてある梅干しを口に含んだ。非常に塩辛い。すっぱさより塩辛さが勝っている。田舎の自家製の梅干しというのはこんなものなのかと純はまた衝撃を受けた。
     お茶を飲んでも口の中が塩辛い。純はおにぎりをもう一口かじった。
     噛めば噛むほど米の甘さが出てきて、口の中の塩辛さと混ざり合い、絶妙に美味い。単なる塩むすびより、中に減塩の梅干しが入っているより、断然うまい。
     純は夢中でおにぎりを食べた。空腹だったので、美味さは更に2乗3乗だ。


     お茶を飲んでひと息ついていると、祖母が口を開いた。

    「あきちゃんは霊感がとびきり強いのに、守護霊様がちいと頼りないけぇねぇ」

     純は目が点になった。祖母は相変わらずにこにことしている。

    「あんたのお母さんはちいとも見えんかったけぇねぇ。ほいじゃけどあきちゃんは『見える』子じゃったんじゃねぇ」
    「ばあちゃん……ばあちゃんも、『見える』人なの?」

     純の祖母は、にこにこと笑ったままゆっくりうなずいた。

     純が『見える』のは、祖母からの隔世遺伝だったようだ。
     話によると、純の祖母も幼い頃からよく幽霊を見ていたらしい。しかし、娘、すなわち純の母は全く霊感がなかった。
     それで純の母は、祖母を気味悪がっていたらしい。幽霊なんかいるわけないと言い張り、家を出て、そのまま実家とは疎遠になってしまった。
     しかし、その息子の純は、祖母以上に『見える』人間だった。
     純の母はずっと否定していたものの、純が例の事件にあって以来、幽霊の存在を認めざるを得なくなり、祖母を頼ってきたのだという。

    「柿ノ木畠のちぃちゃんには、びっくりするほど強い守護霊様がついとるけぇねぇ。あのくらいのが、あきちゃんにもおったらよかったんじゃけどねぇ」

     祖母は純の頭を優しく撫でながら言った。
     純は泣きそうになるのをぐっとこらえた。自分のことを本当にわかってくれる人が、初めて現れた。

    「あきちゃん、友達にゃあちゃんと話さんといけんよ」
    「でも、どうせわかってくれないよ」
    「ばあちゃんだって、みんなにわかってもらうためにえっとえっと話したんよ。きっと大丈夫じゃけぇ、お話しんちゃい」

     祖母は優しくにこにこと笑って言った。純は小さくうなずいた。




    ++++++++++

    後半はまた後日。


      [No.1689] Re: チョコケーキ戦争 投稿者:586   《URL》   投稿日:2011/08/04(Thu) 23:35:08     24clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どうも、最近忙しくて('A`)の586です。
    仕事が多すぎるよ先生……(先生って誰?

    ノンストップコメディの勢い溢れる内容もさることながら、思わず昔読んだ小説のタイトルを思い出してしまいました(これ→
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A7%E3%82%B3%E3%83%AC ..... 6%E4%BA%89)。
    昔通っていた学習塾で、課題図書として読んだものです。懐かしい。。。

    以上、作品にほとんど関係ないコメントばかりで申し訳ありませんでした(´・ω・`)


      [No.1688] チョコケーキ戦争 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/08/04(Thu) 23:14:11     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ピンポーーン
     
     がちゃ。
    「はいー?」
    「お届けものですーー」


     玄関で交わされる、ごくごく日常的な会話。
     お届けものの受け取り主は、ダダダダダッと箱を抱えてリビングのテーブルまでひとっ走り。
     そぉっと、さっきの足取りとは打って変わってやさしくその物体をテーブルに置く。

    「ついにきたきたきたきたあぁ!!!」

     
     オルカの奇声が聞こえて、まあいつもの事だと思いながらシェノンは向かってみる。
     彼の主が小説や絵のしょうもないアイデアをひらめき、よく奇声を上げるところを見ることがあるのだ。
     見てみると、テーブルに置いた何か……紙箱を見つめて、にやけているオルカの姿があった。

    「オルカ? ……なんだそりゃ」
    「チョコケーキ♪」
    「すっげえいいにおいしてんなあ」
    「そりゃそうでしょ。なんたって予約して、来るのに半年かかるんだよ? 誰が人に渡すかと」
    (なるほど、情報通りだ……)

     オルカには分からなかったが、シェノンは口の端に微かな笑みを浮かべていた。

    「話は聞いたなおまえら!!!」
    「了解っ!」
    「!?」

    物陰から、待ち構えていたナイトとカゲマルが飛び出し、オルカを三匹で囲む。

    「オルカからそのチョコケーキをうばうんだーーー!!!」
    「な、なんでそんなに準備万端なのっ?」
     
     慌てふためくオルカ。

    「昨日、チャットできとらさんと話してるのを一匹見てたやつがいてな。」
    「影に隠れて見てたんだ。すっげーにやけてたよなあオルカ?そんなに評判なのかそのケーキ?」

     そう言ったのはナイトだった。

    「そのケーキは俺たちで三等分だ!! かかれぇ!」

     シェノンの掛け声とともに、二匹が飛び出し……なんと表現しようか、歴史ドラマの『盗賊に襲われる旅人(?)』のような雰囲気である。三匹がそれぞれ武者と騎士と忍者モチーフなので、いささか変な図だ。



    「ええい!!ヤケクソだあ『絶対零度』!!」

     シェノンには あたらなかった! ▼  ナイトには あたらなかった! ▼  カゲマルには あたらなかった! ▼

    「命中率どうかしてるだろおお!!」

     叫ぶオルカに、カゲマルが持ち前のスピードで接近し、抱えられていた箱をさっと奪う。

    「いただいたでござる!」
    「よし、目的達成! トドメを刺して逃げるぞ!」

     シェノンとナイトがオルカに向き直る。

    「食らえっ! ダブルメガホーン!!」

     見事な連携攻撃。左右からオルカは挟み打ちにされ、そのまま二匹の容赦ないトドメを刺された。大丈夫だろうか、と心配したそこのアナタ。結論から言うと、大丈夫だ。オルカはとてつもない、もしかしたらポケモン以上かも知れない生命力を持っている。それに、オルカがメガホーンを食らったりするのは、ここでは日常茶飯事なのだ。床は血の池状態だが、いつの間にか復活するだろう。

    「よし、復活する前にさっさと食べるか!」

     シェノンが箱の取っ手に器用に手を掛ける。
     ……と、その瞬間飛んできたのは、朱色の『気合球』と青白い『波動弾』。すさまじい爆音と共に、辺り一面に粉塵が舞い上がった。

    「リーダー!」
    「な、何事でござる!?」

     しかし、驚く二匹をよそに、粉塵の中から姿を現したシェノンはあわててもいない。いつの間に抜いたのか、アシガタナでさっきの攻撃をガードしていた。むしろ、予想通り、というような表情。
     舞い上がった粉塵の向こうから現れたのは、二匹のコジョンド。そして、奥にはウルガモスが六枚の羽を赤く輝かせ、今まさに『熱風』を繰り出そうとしていた。

    「お前ら、俺の後ろに隠れろ!!」

     彼が叫び、二匹が間一髪で隠れると同時に、熱風が吹いてくる。虫タイプの二匹が食らったらひとたまりもない威力のその風を、シェノンはすばやく抜いたもう一本のアシガタナを交差させ、真正面から受け止める。その表情には、明らかな余裕が見えていた。受け止めきり、口を開く。

    「ティラとレッセにナスカか。お前らも、これが目当てなんだろ?」
    「言うまでも無く、ね」

     二匹のコジョンドのうち、一匹がそう答える。声色は紛れも無くレッセのものだった。ティラたちゾロアークは幻影を操る種族。変装などたいしたことではない。人に化けて、買い物をする事もあるのだ。さらに、ティラは変声術を使う事ができ、鳴き声までそっくりに操る。これがかなり厄介なのを、旅を共にしたシェノンはよく理解していた。

    「そのケーキは私達がいただくわ」

     同じ仕草で、同じセリフを発する二匹。普段のバトルから鍛えられた二匹のコンビネージョンは半端ではない。決定的な違いが一つ、と言えば、それは二匹の技の種類。
    だが、それを見破るには猛スピードで動き回る二匹を目で追えるほどの動体視力が必要であり、しかも、彼女らが最も得意とするのは、『とんぼ返り』を使った入れ替わり戦法。これを見破る事のできる者は、かなり限られる。

    「いつもみたいに、決めるか?」

     シェノンの赤い目に、燃える闘志が揺らぐ。普段はなかなか見る事の無い、リーダーの貫禄ポケモンとしての威圧感がにじみ出る。それを見て、戦闘体勢をとる周りの五匹。
     ピン、と張られた緊張感がつかの間、音の無い空間を造りだした……。というか、ケーキ一つでこんな事態になるとは、オルカも予想していなかっただろう。いろいろな意味で凄いポケモンたちだ。七等分にする、という選択肢は無い。単に喧嘩好き、というのが一番の原因だろう。

    (久しいな、この感覚……。最近動いてなかったからな……)

     六匹が目を閉じ――ほぼ同時にカッと見開く。

    「いざ!三対三のケーキ争奪戦を始めるとするぞ!」

     ガキンッ。
     次の瞬間、レッセの『燕返し』がシェノンの目にも止まらぬ速さで振り上げたアシガタナに防御された。それでも傷一つ付かないアシガタナ。

    「おまえは、本物の方だな?」

     ニヤリ、とレッセ(本物)は笑みを浮かべる。そして、腕の体毛をムチのように使い、ものすごいスピードで連続の『燕返し』を繰り出し始める。
     それに合わせてアシガタナを操り、攻撃を受け流すシェノン。風のひゅうひゅうと鳴る音と、攻撃を受け止めるキン、ギャンという金属音のような音が響き始めた。そしてそのわきでは……
     ナイトとカゲマルが、ナスカとレッセの姿をしたティラに苦戦していた。
     彼らは虫タイプ、シュバルゴのナイトに至っては鋼も入っているため、もともと相性的に分が悪い。カゲマルが素早く動く事で、ナスカの得意とする『熱風』が出されるのは抑えていたが、ティラがその動きを妨害する。そのティラが動きを止めたところを、ナイトが『シザークロス』で狙う。お互いに決定打を打つことのできない、ぎりぎりの攻防だった。
     
    「熱風は打たせないでござる!」
    「相変わらず素早いわね、カゲマル」

     ナスカの羽は、さっきからずっと光り続けている。『熱風』は、いつでも繰り出すことが可能なのだ。二匹が同時に技の射程範囲に入ってしまえば、なすすべも無く焼き尽くされるだろう。
     ナイトとカゲマルは、お互いの位置がかぶらないよう常に考えて動いていた。
     突然、ティラがカゲマルの目の前に飛び出す。

    「ナイトバーストォ!!」
      
     ティラを中心にして、暗黒の衝撃波が発せられた。目の前にいたカゲマルはこの距離では完全に回避する事ができず、衝撃で後ろに吹き飛ばされる。

    「ぐあっ!?し、しまったでござるっ!」
    「カゲマル!」

     ナイトが素早く後ろに回りこみ、飛ばされたカゲマルの身体を空中で受け止め、かばった。しかし、二匹の身体がもろに重なり、

    「隙あり、ね」

     二匹同時に『熱風』の射程範囲に入った。

    「畜生っ!」
    「ここまででござるか……」

     覚悟を決めた二匹に向かって吹いてくる、灼熱の風。避けることもできない。
     しかし、二匹に命中する寸前、横からアシガタナが一本飛んで来、『熱風』を防いだ。シェノンが片方のアシガタナを投げて、床に突き刺したのだった。
     
     しつこいようだが、これは『ケーキ争奪戦』である。そして、戦っているのは、オルカの家のリビングなのである。当然床は傷だらけ。辺りは散々な状態である。そしていつの間にか生き返ったオルカは、その光景を眺めてため息をつくしかなかった。当然ながら止められる気なんて微塵もない。
     
     

     その騒ぎを見ていたのは、オルカだけではない。過去累計一番出番の少なかったドレディア、サワンと、くだらない争いには首を突っ込まない性格のペンドラー、ファルも戦争を見ていた。こんな喧嘩はよくある事、の一言で済ませることができるこの二匹。出番をもらえないのはその性格のせいかもしれない……。

    「あらら、刀が一本になっちゃったわね、お侍さん」
    「まだ一本残ってる、と言った方がいいんじゃないか?」

     そんな会話をしていても、二匹の攻撃はお互い止むことはない。『燕返し』は相手に必ず当たる攻撃なので、ガードしていなければあっという間に倒されてしまう。アシガタナが一本になったシェノンは、さっきと比べて少し劣勢にあった。風の音が止むことはない。しかし、受け止める金属音も、途絶えることは無かった。

    「リーダー、流石ですね。一本になっても受け止め続けるなんて」

     まるでテレビでバトルを観戦でもしているかのような、サワンの感想。

    「いい加減、止めないか? サワン」

     ファルはもはや呆れながらその一連の戦いを見ていた。
     少し目を逸らすと、シュバルゴとアギルダー、そしてウルガモスの脇で動き回る、変身も解けたゾロアークが見える。
     そのゾロアークはシュバルゴに接近するやいなや、

    「今日の夕飯はシチューよ〜!」
    「そんな挑発に乗るかよっ」

     どこかの名探偵のアニメのセリフを思わせる……。ちなみにサワンの声。
     本物の彼女はそれを見て、はぁとため息を吐いた。

    「今晩シチュー作ってやれば?」

     苦笑いしながら、ファルが言う。

    「止めないといけないみたいですね……」
     
     サワンはうなずくと、テーブルの上に置きっぱなしのケーキを持ってきた。
     すぐそこでは、戦争が展開しているのだが気にも止めないサワン。よほど慣れていることが仕草から分かる。そして、台所へ……。

     そして、サワンは六等分されたケーキを皿の上に載せ、戻ってきた。
     時計の針は午後三時。

    「おやつの時間です〜」

     ピタリと、戦争が止まる。
     
     シェノンは、しばらくサワンを見ていたが、やがて振り返ると率直に、食べるか? と五匹に聞いた。

    「はーいっ」
    「もちろんでござる」
    「腹減ったー」
    「賛成ね」
    「食べましょ食べましょ」

     緩む空気に、微笑むサワン。ファルも、安堵の表情を浮かべていた。

    「それじゃ、食べるか!」

    「いただきまーす!」



     いつもの事だったなー、とオルカは思う。 
     いつも通り。一回喧嘩して、誰か(大体の場合ファルかサワン)が、止める。そして一件落着。そんなこんなで、このメンバーは成り立ってきたのだ。
     ただ……おいしそうに食べる六匹を見ていると、やっぱり……。

    (……頼んだ私の分は……?)

     虚しく、アイスを舐めた。やっぱりチョコケーキは惜しい。命と比べたらまだ軽い方だったとは思うが。
     独り占めしようとしてたとはいえ、容赦無い。

    (今度、ポフィンとかポロックでも作ってみようかな)

     
     ……きっと、一個足りなくなる。



    ――――――
     
     やっとこさ完成しました、きとらさんからの無茶振り、『ケーキ争奪戦』です。
     ……次回はパーティメンバー以外のを書きますよ。そろそろまともなのも書かなければですので。
     ちなみにどうでもいいですが、ティラの「シチュー」のセリフの元ネタが分かった方は挙手を。
     あ、誤字脱字報告は見つけたら是非お願いします!

    【書いてもいいのよ】 【描いてもいいのよ】 【批評してもいいのよ】


      [No.1687] やさしいきいろとうつくしいくろ 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/08/04(Thu) 20:54:28     88clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     目の前に輝く黄色い光。
     ああ、これが俺の欲しかったもの、彼はそう思った。




     聞いたことがない妙な鳴き声が頭に広がって、彼は目を覚ました。目を覚ましたのはいいのだが、その鳴き声は妙に抑揚があって、聞いているとだんだん眠くなってくる。

    「おい、その眠たくなる変な鳴き声は止めろ」

     言って体を起こすと前にピカチュウがいた。
     そうだ、さっきまでこいつを追いかけていたのだ。彼は睨みつけるが、ピカチュウは怯む様子もない。するとどうだろう、今度は妙な動きで彼の周りを回った。それは今までに見たことがない動きで彼はだんだんクラクラしてきた。たまらず嘴から甲高い声が飛び出した。

    「おい、その頭のガンガンする妙な動きは止めろ」

     するとピカチュウはその場に立ち止まり、不満そうな声を上げた。

    「変な鳴き声じゃなくて「歌」です。それに、妙な動きじゃなくて「ダンス」です」
    「そんなことより何で逃げないんだ」

     すると今度は体中の痛みを彼が襲った。ひょっとしたらこの痛みを和らげるためにこのピカチュウは歌や踊りをしていたのだろうか、と彼は考えたがすぐに否定する。何といっても敵にそんなことをしてやる義理は無い筈だ。

    「そうですか? 私は逃げる必要は無いって、さっきわかりましたから」

     尻尾をピンと伸ばして堂々と言うピカチュウに彼は呆気にとられた。一体こいつは何なのだ。
     彼は光るものが大好きだった。来る日も来る日も光るものを求めてはヨーテリー達が見つけたお宝を横取りした。
     不意打ちや騙し討ちを外したことはなかったし、それを受けて歯向かってくる者はいなかった。ましてや返り討ちにする者などいなかったのだ。
     このピカチュウを除いては。


     いつものようにお宝を手に入れて巣に帰る途中、森の中で金色の光を見た。それは今まで見たどんなものより明るく輝いていて、美しかった。さぞや素晴らしいお宝に違いないと近づくとミルホッグが数匹逃げていく所で、その場所には一匹のピカチュウがいた。
     やつらお宝を奪いそこねたな、と思い慎重に上空から狙ってやろうと羽ばたいたところ、たまたま風向きからか彼の姿を見つけられてしまったのだった。
     すぐにピカチュウは逃げる。「お宝を寄越せ」と自慢の攻撃を繰り出すも、ピカチュウは上手く逃げ続ける。そして立ち止まったので観念したのかと急降下で止めを刺しに行ったところ、再びあの光を見て彼は昏倒した。


    「何だ、やっとお宝を寄越す気になったのか?」

     さっきまで伸びていたというのに、クールを気取ったセリフにピカチュウは溜息をつく。

    「飛行タイプが電気タイプにずいぶん強気ですね」

     そう言うと彼の前でそれを出した。
     金色の玉。その光は常に変化して輝きを変え、まるで生きているようだった。ピカチュウはハート型の尻尾を器用に使い、玉を包み込むように大事そうに磨く。

    「これはあげられませんよ。私の大切なものですから」
    「俺が大切にしてやるよ。だからそれを寄越せ」
    「あなたもわからない方ですね」

     毛を逆立て、四本の足で彼に向き合うと、頬の電気袋から稲光が迸った。

    「カァーッ!」

     空気も震えるその光に彼は仰天して悲鳴にも近い甲高い鳴き声を上げてしまった。それを見るとピカチュウは満足そうに警戒を解き、再び玉を磨き始めた。

    「この玉があると元気になるんです」
    「綺麗な上に、元気が出る玉なのか?!」
    「いえ、この玉はニンゲンに貰ったんです」
    「ににににニンゲンだってっ?!」

     そこ名前を聞いただけで、彼は飛び上がらん勢いで後ずさった。昔ニンゲンにちょっかいを出した時に酷い目にあったせいで、名前を聞くだけで震えてしまう。実は彼は根っからの臆病者だったのだ。

    「あのケチで恐ろしい奴らが、それを気前良くくれたっていうのかっ?!」

     ピカチュウは彼の様子を怪訝に思いながらも嬉しそうに頷いた。

    「私の住んでいた森ではニンゲンがお祭りをしていて、そこでは楽しい音楽や、綺麗な光や、美味しいもので溢れていたんですよ。さっきの歌や踊りもそこで教えてもらったんです。この玉もそこで貰って――」

     そんな素晴らしい所を想像し、彼は夢見心地になっていたが、ピカチュウの呼び声で正気に戻る。

    「あなた、ひょっとして、ひとりぼっちですか?」
    「ああ、そうだよ。一匹だけで何の苦労もねぇ」

     自慢の黒い羽を広げ、さも誇らしげに言う彼を見て、ピカチュウは笑うと球を差し出す。

    「これ、見せてあげます。あげませんよ! あげませんからね。見せてあげるだけですからね」

     そう言って、彼の前に玉を置いた。彼はそっとそれを拾い上げた。羽の先からピリピリと妙な力が伝わってくる。覗きこむ光はやはり動き続け、表面にうっすらと嘴と目が映っていた。

    「ありがとう」

     彼はあっさりとそれをピカチュウに返した。返した後に惜しいことをした気がして、何か気を紛らわせようと適当に喋り出す。

    「そんな大事なものを何で俺に見せてくれたんだ?」

     口に出してから、彼は自分で言ったことに頷きそうになった。
     どうしてだ? 自分を襲った奴に。そんな大事なものを見せてやることができるのか?

    「あなたもひとりぼっちなら、これで元気になったらいいな、と思って」

     照れくさそうに前足で耳を掻くピカチュウ。それを見て彼は鳴く。

    「カァッ!」

     ぎょっとするピカチュウを見て、彼は近づいて背中を見せる。

    「そんなものより俺はもっとすごいものを持ってる」
    「もっとすごいもの?」
    「乗れ。見せてやる」
    「えっと」

     自慢のヘアースタイルを綺麗に整えてから、ずいっと背中を押し付ける。

    「いいからグズグズするな」

     彼はそれまで背中に誰かを載せたことがなかったので、飛び立つのに随分時間が掛かった。飛んでいる時も辛そうにカァカァ鳴いていたが、やがて巨大な木にある彼の巣に着いた。

    「さぁ……どうだ……すごいだろ」

     息を切らしたまま、羽をバッと広げて誇らしげに示すそこには、様々な光るものがあった。それは金の玉だったり貴金属だったり、珍しいモンスターボールやガラクタだったりした。

    「凄いですね」

     ピカチュウは言った。しかし、それは彼の納得のいく言葉ではなかった。感想が伝わってこなかったし、無理やり彼に合わせて行ったことがバレバレだった。生涯を賭けて集めた品々を馬鹿にされたようで、彼は腹を立てた。

    「乗れ」
    「え?」
    「これは本の序の口だ。ずべこべ言わずにとっとと乗れ!」

     その剣幕に負け、黙って背に乗ると、再びヤミカラスはゆっくりと飛び立った。

    「あの、大丈夫ですか? ちょっと休憩した方が――」
    「黙ってろ。それでいいと言うまで目を閉じてろ」
    「わかりました……」

     目を閉じて感じる空は風が強い。そして彼の羽ばたきが頼りなく思えてピカチュウは何度も目を開けそうになるが、じっと堪えた。しばらくしてヤミカラスの鳴き声も聞こえなくなり、今度こそ不安で声をかけようとした時、
     突風が吹いた。
     強烈な風で飛ばされそうになりながら、ぎゅっと彼の黒い体に捕まる。すると体が突然軽くなる。

    「もういいぞ」

     そういう彼の声は先程までと違い、辛さを感じない軽快な声だった。風に乗っているので体力を消耗しなくなったのだ。

    「どうだ?」


     声に急かされて慌てて目を開くと、目の前には光が広がっていた。
     どんな木よりも大きく、山にも匹敵する程高い、黒い建物がいくつもいくつも天に向かってそびえ立っていた。その建物は彼の巣のお宝よりも何倍も煌めいていて、まるで地上にも星空が広がっているようだった。地面にはいくつもの機械がアイアントの様に行列を作って輝きながら動いていた。

    「凄い……。ほんとに……」

     それ以上何も言わないピカチュウに彼は言う。

    「ここから見えるものは全部俺のものなのさ。どうだ、俺のお宝は凄いだろ」
    「まるで」
    「ん?」
    「まるで貴方の羽みたいに黒く美しいですね」
    「お前の電気みたいに黄色く光ってるだろ」

     一面に広がる夜景を見ながら、彼は背中のピカチュウの顔が見れないことだけがひどく残念に思えてならなかった。

    「ニンゲンはケチだから、いつかこの景色も俺から奪うかもしれないから、せっせと綺麗に光るものを俺は集めるのさ。そうすればニンゲンがこれをなくしちまっても、俺は悲しくならないからな」
    「ありがとうございます。元気出ました」
    「そうだろ。俺のお宝は元気も出るんだよ」
    「凄いですね。あなたのお宝は」
    「だから、その玉は当分お前に預けといてやる」
    「これは私のですってば」

     ブラックシティを眼下に一羽と一匹は優雅に飛んでいた。
     気分が昂揚してピカチュウは歌いだす。それは何だか景色と気分にあっていて、見えないものでもキラキラ光っている気がして嬉しくなった。
     しかし彼の嘴から出る言葉は違った。彼は根っからのへそ曲がりなのだ。

    「ああ下手くそだ。下手くそ過ぎて、欠伸が出らぁ」

     怒りのあまりピカチュウの頬から電気が流れる。闇の夜空に一羽と一匹の悲鳴が響いた。


    ----------------------------------------

    8月3日はヤミカラスの日、ということで某所の企画に書いた話。
    今の時期に「うたうピカチュウ」も配っているのでコラボ。

    二匹は何らかの理由でイッシュにいるはぐれものみたいな感じで一つ。


    お読みいただきありがとうございました。

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】


      [No.1686] ブイズのイメージ 投稿者:akuro   投稿日:2011/08/04(Thu) 05:03:13     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    イーブイ=ラブリー ブースター=もこもこ シャワーズ=姉さん サンダース=とげとげ エーフィ=アイドル ブラッキー=神秘的 リーフィア=かわいい グレイシア=ツインテール
    こんな感じです。ちなみに一番強いのはシャワーズだと思う


      [No.1685] 冷蔵庫を開けるとそこは 投稿者:音色   投稿日:2011/08/03(Wed) 23:57:40     103clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     レクイエムだった。
     ・・え。
     ええ。
     えええええええ。

    「すいません間違えました」
    「お客様、何をお間違えになりましたか?」

     目の前にはヨノワールのコスプレ(?)をした店主が立っている。
     うん、間違いない。紅い文字でドアノブにかかっている看板はかの有名な『cafe requiem』のものだ。
     ・・。なして俺はこんなところにいるのだ?

     だって俺は、冷蔵庫のドアを開けたはずなんだぞ?

     さっきまでの行動を振りかえろう。
     俺は自分の部屋でベッドでゴロゴロしながらDSでブラックをだらだらとプレイしていたはずだ。
    「ちょ、急所ないだろ!」とか「暴風当たりすぎなんだよはずれろぉぉ!」とか叫びつつ、のどが渇いたなーと一旦閉じてリビングの冷蔵庫にお茶を取りに行ったんだ。
     そして冷蔵庫の扉に手をかけた。
     開けた。


     ・・だからどうして俺はこんなカフェに入ることになったのかまったく意味が分からないんだが。
     大体格好が部屋着だよ。Tシャツに半ズボンだよ。おまけに財布なんか持ってるはずがないよ。
     もちろん、裸足。だって、部屋のなかを靴で歩きまわるってここはアメリカではない。日本だ、俺の住んでるところは!


     だもんで、パニック。どうしようマジでどうしよう。
     いつの間にかカウンターに座ってるし目の前にはサービスで出された珈琲もあるし。
     これはあれか。
     飲めってか。
     ・・・飲めってことだよなぁ。

    「あ、私のことはマスターとお呼びください」

     ならばマスター。頼むから疑問に思ってくれ。
     こんなわけのわからない人間を速いところ投げ出してくれ。

     つづけ

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談 何処かで見たことあるノリだと気付いた貴方はうふふですよ。

    【久方様、ごめんなさいお借ります】
    【続いて欲しかったら拍手ちょうだ(殴】←冗談です


      [No.1684] お買い上げありがとうございます 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/08/03(Wed) 22:07:26     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    次回もよろしくお願い致します。



    >マコさん
    はじめまして!キトラです。ここに住み着いてます。よろしくお願いします。

    >> 破壊光線は人に撃っても大丈夫☆ 著ワタル 1980円
    >> 水攻め  文庫版  著カスミ 630円

    >見た瞬間に「え……」 と思ってしまいました。
    >破壊光線を人に撃ったら警察に行っちゃうんじゃないの!?
    >大丈夫ですか、それ!?
    >怖すぎます。
    金銀(リメイク含む)ロケット団はめっちゃ至近距離で撃たれてましたが、なにものだあいつというだけで終わってました。きっとこの経験からだと思います☆


    >そして水攻め。タイトルがなかなかに怖いです。
    >でも、実際にこの2冊、合計2610円支払って買う価値はあるでしょう。
    せめてせめてせめまくるのが私のポリシーよ!なカスミならではなのタイトル、だと思います。
    多分、内容は城を水で攻める時のポイントが書かれていたら、いいな


    >> あきらめましょう  グリーン

    >いや、諦めたらダメでしょう!
    >何を諦めるんですか!?
    >もしかしてレッドさんに追いつくのを諦めるんですか!?
    その通りです、人間あきらめも肝心です。きっと人にはその人にしか出来ない役割というものがあって、それはあなたとは違うんです!

    >いやあ、ツッコみたくなりましたね。
    >見た瞬間に爆笑してしまいました。
    ありがとうございます。思いついて一気に文章にしたものですが、そういっていただけると光栄です。


    >鳩さん
    >>それでも僕はやっていない 著ワタル 1580円

    >改造を。
    やってますよ思いっきり。バリアーはどうしたのですか、そのレベルでどうしてカイリューですか。
    ツッコミ待ちすぎるタイトルです。きっと言い訳がつらつら並んでるはず。

    >これがものすごくツボに入った。
    >嘘予告のタイトルこれでもよかったなぁw
    じゃあ次の嘘予告でもw

    >改造ダメ。ゼッタイ。
    とかいいつつ、知らぬが仏


    >オルカさん

    >>自分のポケモンから雑巾の匂いがしたら 著コトネ 1480円

    >某マリルちゃんですね、わかります。
    しまった、解ってしまっt

    >> 破壊光線は人に撃っても大丈夫☆ 著ワタル 1980円

    >…多分大丈夫ですよ、週に一度は手持ちにメガホーンで串刺しにされてる私オルカが言います(嘘
    メガホーンも痛そうです。今でこそ破壊光線が特殊ですが昔は物理ケッキングがげしげし撃って来たのです。
    えと、後は刺されないように教育せないと……

    >> おいかける    著ミナキ 1200円
    >> グラードン愛   著マツブサ 1500円
    >> カイオーガ愛   著アオギリ 1500円

    >一緒に愛を叫びましょう!あのポケモンに!!
    >特に下の二つにいろいろと突っ込みが追いつかない件。
    >でも一番読んでみたいのはここら辺。ポケモン愛いいわポケモン愛。
    一番ミナキがスイクンらぶらぶらぶはあはあだと思いますわ。
    多分、スイクンへの愛が溢れてます。
    グラードンとカイオーガへの愛は、どうでしょう。
    主人公に奪われてなければいいんですが・・・

    >> あきらめましょう  グリーン

    >なんかこれが一番意味深だった。マコさんのようにレッドさんとの実力のことなのか!?
    >それとも、レッドさんの消そk(
    実力のことをいってましたが、消息の方もありえますな!後ろ向き念仏のような歌だったらどうしよう・・・


    またのご来店をお待ちしております。


      [No.1683] なにこの魅力的過ぎる書店 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/08/03(Wed) 21:01:17     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 自分のポケモンから雑巾の匂いがしたら 著コトネ 1480円

    某マリルちゃんですね、わかります。

    > 破壊光線は人に撃っても大丈夫☆ 著ワタル 1980円

    …多分大丈夫ですよ、週に一度は手持ちにメガホーンで串刺しにされてる私オルカが言います(嘘

    > おいかける    著ミナキ 1200円
    > グラードン愛   著マツブサ 1500円
    > カイオーガ愛   著アオギリ 1500円

    一緒に愛を叫びましょう!あのポケモンに!!
    特に下の二つにいろいろと突っ込みが追いつかない件。
    でも一番読んでみたいのはここら辺。ポケモン愛いいわポケモン愛。

    > あきらめましょう  グリーン

    なんかこれが一番意味深だった。マコさんのようにレッドさんとの実力のことなのか!?
    それとも、レッドさんの消そk(

    以上、ありがとうございました〜


      [No.1682] チャンピオンの主張 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/08/03(Wed) 20:09:13     75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > それでも僕はやっていない 著ワタル 1580円

    改造を。

    これがものすごくツボに入った。
    嘘予告のタイトルこれでもよかったなぁw

    改造ダメ。ゼッタイ。


      [No.1681] この本屋はすごい! 投稿者:マコ   投稿日:2011/08/03(Wed) 11:34:50     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    初めまして。キトラさん。
    マコと申します。
    なかなかおもしろい本の紹介ですねえ、と思って見ていました。
    私が気になる本は……
    > 破壊光線は人に撃っても大丈夫☆ 著ワタル 1980円
    > 水攻め  文庫版  著カスミ 630円
    この2冊です。

    見た瞬間に「え……」 と思ってしまいました。
    破壊光線を人に撃ったら警察に行っちゃうんじゃないの!?
    大丈夫ですか、それ!?
    怖すぎます。
    そして水攻め。タイトルがなかなかに怖いです。
    でも、実際にこの2冊、合計2610円支払って買う価値はあるでしょう。


    本だけでなく、CDにも気になるものがありました。

    > あきらめましょう  グリーン

    いや、諦めたらダメでしょう!
    何を諦めるんですか!?
    もしかしてレッドさんに追いつくのを諦めるんですか!?


    いやあ、ツッコみたくなりましたね。
    見た瞬間に爆笑してしまいました。

    以上、ふつつかものですが、感想を述べさせていただきました。


      [No.1680] カントー屋 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/08/02(Tue) 20:58:49     91clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    夏の新作!様々な著書を入荷しました!

    8/1
    「ポケモン」とは   著オーキド 1580円
    シロガネ山の気候(初回限定、写真集つき) 著レッド 2100円
    新説シンオウ神話   著シロナ 3299円
    おとなりさん前編   著ユウキ 980円

    8/2
    コンテストを極める 著ナナミ 1050円
    美しきナナシマ   著カンナ 1480円
    自分のポケモンから雑巾の匂いがしたら 著コトネ 1480円
    カセキ掘るための約束10条 著ダイゴ 525円

    8/4
    それでも僕はやっていない 著ワタル 1580円
    破壊光線は人に撃っても大丈夫☆ 著ワタル 1980円
    水攻め  文庫版  著カスミ 630円
    石を求めて     著ダイゴ 2100円

    8/5
    草タイプの育て方 著エリカ 1680円
    おいかける    著ミナキ 1200円
    グラードン愛   著マツブサ 1500円
    カイオーガ愛   著アオギリ 1500円
    マフラー1枚で  著コウキ  1680円

    来週の情報をお楽しみに!


    CD情報はこちら!
    8/1
    あきらめましょう  グリーン

    8/2
    明日があるさ    マイク


    来週の情報お楽しみに!

    ーーーーーーーーーーー
    【石を投げないなら好きにしてください】


      [No.1679] 船に寄り添う三頭竜 投稿者:Teko   投稿日:2011/08/02(Tue) 20:41:37     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     

     木は腐り、所々に穴が開き、塩水ざばざば入ってら。
     帆は破れ、ぼろぼろすかすかそんなでも、風でしっかりたわんでら。

     光は天敵宿敵で、お月さんでもおんなじで。
     分厚い雲が空覆い、光遮る夜で且つ、濃霧の漂う海原に
     いきなり姿を現すは、それが我らの海賊船。疑うべきなき海賊船。

     凪をも波をもうち止めて、青い炎を灯しつつ、
     静かな海を滑るよう、音を経てずに近づいて
     いきなり背後に現るわ、それが我らの海賊船。逃げる術なき海賊船。
     
     鍛え抜かれた肉体と、巨岩のような体格の、
     我らが船長ヴァルディンは、情けのかけらもない方で
     どんな船でも見逃さず、標的にされれば逃れられず
     船は海へと沈むのだ。

     そして船から奪うのは、金銀宝石貴金属
     我らは食事をしないゆえ、奪うもの無く欲も無く、
     それを見かねた船長は「輝くものをばとってこい」
     我らはそれからそれ以降、せっせとそれらを運ぶのだ。

     我らの強さの要と言えや
     大砲、弓矢、火薬弾、さまざまあるとはいうけども、
     一番の要と言ったらば、それはアレしか述べられめぇ。

     強さにして、シンボルの
     三つの頭の黒飛竜

     帆にもよく似た六枚の、細い翼を夜に広げ
     音もたてずに浮かんでる

     鋭く尖ったその牙は多くの血を流し出し、血に触れ、血を吸い、血を啜り
     太く、長いその尾では、何人もの人間を薙ぎ払い、暗い海へと投げ落とし
     口から放つ地獄の業火は船を松明のごとく姿に変え
     恐ろしい鳴き声と共に発せられる波動を受け、無事だったものはなく

     月のない夜暗い夜
     鬼火とともに現れる壊れ朽ち果つ海賊船
     生を求める死者達が赤い炎を消さんとす。

     船に寄り添う三頭竜
     彼が生か、死なのかは、当の彼でも分からずに

     漁火見れば遠吠えし、船を見つけりゃ火を吐いて、何かいたなら倒すまで
     

     今宵は月の隠る夜
     水面を煙が滑るよう、白い濃霧が立ち込める。
     青い炎が風に揺れ、浮かび上がるは黒い影。見紛う事なき黒い影。

     


      [No.1678] 【百字】悪魔のささやき 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/08/02(Tue) 18:43:29     22clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     リズムがいい。語感がいい。表現がいい。
     なぜ私に無い物を持っている。なぜ感じ方が違う
     笑えない、ギャグが少ない、つまらない、そんな評価しかしない貴方には解らないだろうね
     貴方など、いなくなってしまえばいいのに。


    ーーーーーーーーーー
    友人とこうなる前にケリをつけましょう。
    【解らないとかいうお前の読解力が無い】


      [No.1677] トップシークレット 投稿者:紀成   投稿日:2011/08/02(Tue) 13:32:37     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    カクライが去って数時間後。ドス、という平穏のへの字も無い音が、扉を貫いた。あっという間にバラバラに切り裂かれる扉。銀色の刃が、ギラギラと光っている。
    「もう少し静かに入って来れないのか」
    「なんならドアごと燃やしてやっても良かったんだよ」
    ファントムはイラついているようだった。いつも冷たい目が今回は鋭さが増している。
    「ようやく火影を渡してくれる気になったのかい」
    「何度も言っているはずだ。これは私が扱うべき業物なんだ」
    マダムは火影を欲しがっていた。長年生きてきた彼女も、これほどまでに強い力を持つ妖刀は見たことが無かった。どんなに珍しい物と交換すると言っても、ファントムは聞かない。
    ゾロアークが紅茶を運んできた。ウイスキーをひとさじ。ファントムは警戒して手をつけないが、付いて来ていたカゲボウズが集まって飲んでいた。
    案の定、酔っ払うカゲボウズ達。
    「カゲボウズか…懐かしいな。ジュペッタはいるのか」
    「後ろにね」
    壁に掛けてある商品のサンプルを見ていたジュペッタが、ぎゃっという悲鳴をあげた。サンプルがいきなり牙を剥いたのだ。
    「全部ゾロアが化けた物か」
    「そうだよ。さて、今日は何用かな?」
    ファントムはポケットから古い布のような物を取り出した。
    「『れいかいのぬの』この前モルテが熱中症で倒れてね。その看病をしたら、御礼にと貰ったんだ。
    私は使う機会なんて無いし、あのまま放置してたら厄介事になりそうだったから。こういう物はプロに任せた方がいいんじゃないかと思って」
    マダムは手袋をした手で受け取り、まじまじと眺めた。滑らかな感触と、感じる霊気。これがサマヨールをヨノワールへと進化させる。
    不思議な力を秘めたアイテムだ。
    「最後に一つ、いいか」
    マダムは人差し指を出した。
    「ファントムの血を分けてくれないか」

    瞬間、マダムの顔を切り裂く火影。ゾロアークとゾロアがファントムを囲む。だがマダムは血の一滴も流さない。ぶくぶくという音と共に髪や目が復活する。
    「これで一回死亡」
    「死亡もアレも無いと思うけど」
    「私だって裂かれれば痛いんだけどな」
    マダムは小さなナイフを出した。ドラピオンの牙で造られた物だ。
    「何のために使うんだ」
    「トップシークレットということで。その代わり、ナイトメア・スカーフやるから」
    ナイトメア・スカーフ。ダークライの首から作られた黄昏堂の中でも最高ランクに入る商品。付けて眠れば、他人の夢を自在に操ることが出来る。悪夢を見せるも、淫夢を見せるも人次第だ。
    「一つのダークライの首から作れるのはたった一つ。しかも捕獲が難しいときた。
    簡単にあげていいのか?」
    「私には協力者が沢山いるからな」
    カクライ以外にも、な―

    ファントムの白い首筋から、一滴の赤い血が滴り落ちる。ポケモン達が固唾を呑んで見守る。だがファントムは痛そうな顔一つしない。
    ぽたり。ぽたり。レジアイスの体から作ったグラスに血が落ちていく。氷タイプから造ったはずなのに、全く溶けない。常温では溶けないくらいに芯まで凍り付いているのだ。
    「…よし、これくらいでいい。ほら、ラッキーのタマゴから作った絆創膏」
    剥がし、首に貼る。十秒数えてから剥がせば、もう血が止まるどころか傷口すら無くなっている。
    「便利だね」
    「その分費用も嵩むけどな…でも人形やぬいぐるみが増えるから」
    悲しげな表情をした人形とポケドールがずらりと並ぶ。幸せそうな顔をした物は、一つもない。
    「道を踏み外したトレーナーの成れの果て、か」

    明日から北へ向かう、という話をするとマダムは欲しい物があると言って来た。
    「雪の結晶が欲しいんだ。あの形のメカニズムを解明したい」
    「今は夏だ」
    「持ってきてくれれば、お前の血を何に使うのか教えてやる」
    まんまと吊られた気もするが、別に悪い気はしない。さて、どうしようか…

    ――――――――――――――
    書いてみました。カクライさん全然出てないけど…
    アイテムを考えるのは楽しいです。そしてファントムが北へ向かう、というのは実は本当だったりします。
    明日から三泊四日の北海道!帰ってきたら彼女にレポートを提出してもらいましょう。
    その時にマダムに頼まれた結晶も渡すとしましょうか。

    [何をしてもいいのよ]


      [No.1676] 黄昏時の贈り物 投稿者:音色   投稿日:2011/08/01(Mon) 23:34:00     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「マダム?いらっしゃいませんか?」

     夕暮れ時は魔の時間。妖どもが闊歩する、ほんの手前の隙間時間。そして人が最も惑う時間。
     他者の望みを謎を代償に叶える美しき御婦人は何処であらせられるか?

    「そんな気取ったセリフを吐かなくても私はここにいるよ」

     ゆったりとした椅子に座り、皮張りの机を一度だけなでて客人を眺めるその人こそ、ここ、黄昏堂店主、マダム・トワイライト。
     黒衣の男性に一瞥くれると、「例のものは?」あくまでも、商売人として姿勢を崩さずに問う。

    「少々手に入れるのに骨が折れましたが、この通りでございます、マダム」

     懐より頼まれた品を取りだそうとしたその男性・・しかし、ひょこりと顔を出した“それ”にトワイライトは一瞬だけ目を見開いた。

     めらー?
     どうやらコートの内側に潜んでいたらしいメラルバは、知らない匂いに誘われてあたりを見回している。
     その様子を見て、くすりと笑みをマダムはこぼす。

    「まさかその子かい?」
    「いいえ、メラルバ。いけませんよ」

     では改めまして、とふわりと花束を彼女に差し出す。優しげ儚い色をしたそれは、遠い異国の地で感謝の印に贈られるものとよく似ている。

    「シェイミの花、か。よくこれだけ集められたね」
    「彼彼女達は警戒は強いですか一度信頼を勝ち取れば無邪気な者たちですから」

     さらに、と差し出す蒼い炎。瓶に詰められたそれは白く淡く。

    「伝説の竜のモノかい?」
    「ええ、とはいっても300年ほど前の種火を分けていただいたものですが・・」

     品質の方はあまりよろしくない可能性がありますよ、とコートの人物は言う。
     かまわないさ、と貴婦人は答える。

    「今度はホウオウの羽が欲しいな。この前、一枚使ってしまったからね」

     御意、マダム。恭しく礼をして、火喰は去っていく。
     全く、何一つ変わらない紳士だよ。彼女の横にはもう机はない。長身の黒い狐が紅い眼差しでその後ろ姿を見ていた。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  マダム・トワイライトが色々欲しいと言っていたのでプレゼント。
    うちの火喰はあっちこっちに顔が利くんです多分。

    【ふふふなのよ】
    【何しても良いと思うのよ】


      [No.1675] りくとアラシ 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/08/01(Mon) 23:06:02     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「あにきあにきあにき!」
     早口で三回。必ずやつは俺をそう呼ぶ。
    「今日も見つけて来ましたぜ、青ボングリに白ボングリ、おまけに桃ボングリ!」
     大きな耳、紫色の毛並み。二股のしっぽ。
    「いやいやそう聞いてくださいよ!きんにくがついにイケメンエレブーを捕まえたらしいんでさあ」
    「解ったからその変な口調はやめろよ。なんで俺だけにそんなドロボウ集団の下っ端みたいな話し方するんだよ!」
     種族はエーフィ。大人しく見える外見と違って、こいつはかなりうるさい。そしてなんでか俺に懐いてる。
    「えー!仕方ないなあ、アラシの兄貴なら弟子入りさせてくれると思ったのに」
     いじけても俺には通じないぞ。お前の行動は筒抜けだ。エスパータイプのくせに炎タイプの俺に読まれてどうするんだか。


     実は俺たち、ヒバリっていうトレーナーのポケモン。ヒバリは俺が最初のポケモンだったらしくて、出会った頃はキャーキャーいってた。いまはさすがにないけれど。ヒノアラシだからアラシって言う名前も貰った。
     ヒバリは強くなりたいと家を旅立った。そして、仲間も増えていったんだ。メリープのアンペール、キャタピーのリンゴ。リンゴはあっという間に進化して、俺がヒノアラシでやっと電光石火を覚えたあたりでバタフリーになりやがった。成長が早くてうらやましいなあ、と思ってた。アンペールはまじでマイペースで、俺が煙幕しようが、火の粉巻こうが慌てず騒がず。
     そしてヒバリはタマゴを貰って来た。何のタマゴか解らなくて、孵化してみたらかわいいトゲピー。餌を食べる仕草にはみんなメロメロ。ヒバリなんかずっと世話にかかりきりだった。ちなみに名前はフェアリという。妖精らしいが、俺からしたら天使級のかわいさ。
     それからヒバリはフェアリの世話に集中してたから、新しいポケモンは中々捕獲しなかった。その時くわわったのが、興味本位で近づいて来たスリープ一匹である。ちなみにこいつはレムという。
    「へえ、あんたがこのメンバーの古株なんだ」
     レムは俺よりデカイんだよな。まだヒノアラシだった俺にとって、いつも見上げてたよ。それに頼りにしてたしな。俺にとってはようやく出来た「兄貴」だったわけなんだが。
     仲間も増えてわいわいやってた頃。ヒバリは俺たちを自然公園に連れてきてくれた。いいところだぜあそこ。風が違うんだよ風が。そして俺たちを全員ならべた後、一つのボールをかざした。
    「はい、実は今日からメンバーになりました子です!」
     そういってボールから出たのが、そいつ。その時はまだイーブイだった。落ち着きのない動きで俺たち全員の匂いをかいでる。その時すでにマグマラシだったし、アンペールはモココ。
    「名前はりく!女の子だからね」
     女の子同士なのか、アンペールはすぐに仲良くしていたし、リンゴはびくびくしながらも近づいていた。レムはその目を緩めてかわいいなあとデレデレ。フェアリは怖がって近づこうとしない。そしてりくは俺の前に来ると動きを止める。
    「マグマラシの兄貴!」
     第一声からそういったのだ。誰が教えたわけでもないのに、俺のことを古株、そしてリーダーと言いやがった。こいつは鼻がいいんだなきっと。レムの視線が痛いのだけど。
     寝ようって時も、ご飯食べる時もりくは俺の隣に来る。人懐っこくて、俺の他にもレムやアンペールと主に遊ぼうとするのだけど、俺の気配を察知するとすぐに寄ってくるんだ。ヒバリは進化したら少し落ち着くよって言ってたけれど、本当かよ。イーブイってさ、すっげー素早いやつに進化することもあるらしいじゃねえか。そんなのになったら俺が目まわる。なるべく遅いやつに進化しますように。できるなら同じ炎タイプだとめんどくさくないです、水タイプとか拷問です。
     
     そしてりくの進化のときがやってきた。それは朝日がきれいな日。ポケスロンに出るために早起きした朝のこと。すでにバクフーンだった俺と走り込みをしていたときだった。
     ヒバリは喜んだ。そして俺はりくを見て固まったのである。
     やんちゃなイーブイ娘が、こんなにきれいだったのかと。額にある赤い宝石が朝日を反射してきらりと輝いた。高い声で喉をならし、優雅な動きに気を取られた。
     のも本当につかの間だった。俺のトキメキ返せ。
    「あにきあにきあにき!エーフィに進化したんでさあ!」
     イーブイのときよりも悪化している。レムと同じエスパータイプだから頭の回転はよくなった。だからこそ次から次に言葉が出てくるのだ。俺にとって最悪の進化だったらしい。
    「レム兄がいなくなっちまったからな!アタシががんばるんだ!」
     そうそう、レムはヒバリよりちょっと下の子が熱烈に交換して欲しいって言って来ていた。ヒバリは最初は断っていたが、その熱意に負けて交換したのだ。少し寂しそうなヒバリだが、レムはけろっとしていた。
    「何も今生の別れじゃない。またここに来れば会えるさ」
     そうだよな。スリープだから俺たちが来ることなんて解るよな。
     そして代わりに来たのは、何とも肉体派のきんにく。種族?わかるだろ、ワンリキーだったよ。いまは力じゃ誰も敵わないカイリキーだけどな!
     ああ、そうそう。そのきんにくだが、かなりの面食い。最近知ったのだが、デンリュウとなったアンペールもかなりの面食い。ガールズトークは誰がかっこよかっただのイケメンだの。
     俺に興味なかったのかと聞いたら、友達にしか見えなかったと言われて傷ついた。どうせ俺は彼女いません。
     
     そして今日も俺のまわりをうろつくりく。ああ、そうして俺は保育係として定着していって、そのまま年取るんだろうな。はぁ・・・

    ーーーーーーーーーーーーーーー
    ハートゴールドの手持ちたち。
    りくはアラシが大好き。
    アラシはりくの保護者。
    そう思ってました。
    一度に出そうとおもったらぐちゃぐちゃ。
    レムは、ロリコンでs(省略されました

    【何してもいいのよ】


      [No.1674] マダム・トワイライトの欲しい物リスト 投稿者:紀成   投稿日:2011/08/01(Mon) 18:51:25     29clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ・ホウオウの尾羽
    ・フシデの牙
    ・ペンドラーの脚
    ・メガヤンマの目
    ・レントラーの♂の鬣
    ・キングラーの大きい方の鋏
    ・ディアルガの胸の石
    ・パルキアの肩の石
    ・ギラティナの羽と頭部分
    ・ルギアの羽
    ・コバルオンの髭
    ・テラキオンの鎧部分
    ・ビリジオンの角
    ・シェイミについている花
    ・ヒードランの爪と牙
    ・アルセウスのプレート全部、あとできれば腹の周りにある黄色いアーチみたいな物
    ・レシラムが吐いた青い炎
    ・ゼクロムが放った電気
    ・ジラーチの短冊一枚
    ・マナフィかフィオネのコア部分
    ・スイクンの頭の毛、エンティの牙、ライコウの爪
    ・ビクティニの爪
    エトセトラ、エトセトラ。

    黄昏堂に置いてある品は、ほとんどポケモンの体の一部を薬にした物だ。中には伝説のポケモンから採ってきた物もある。
    パズルが解けなかった場合、相手が実力者であればそれらを採って来てくれるよう頼む場合もある。一体どれが何に効果があるのか。それはマダム以外は分からない。


      [No.1673] Re: もう何もこわくない 投稿者:Teko   投稿日:2011/07/31(Sun) 21:47:45     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 『その六枚の〜』とは打って変わったイメージに思わずコメントを残そうと思いました。なにこれすごい

    へへへ ありがとうございます


    > 一瞬誰かと思ったが読んでみれば分かるネタ。しかし語呂が良すぎて笑う

    語呂は大事ですよね!(笑)
    アイアンはアリ大将、音痴です



    > > 「サザンドラえもん!」
    >
    > 語呂悪っ!(笑

    悪かった!(これってまあキングドラさんでもよくなってしまうのですがww


    > 本家と違ってそこらへんの知識はある主人公。まあ仕方ないね…ポケモンだからね…

    ポケモンだからね!

    >
    > > 「その前に物理攻撃は無理だよ……僕、命中率悪いもん」
    > > 「コンタクトいれればいいじゃないか」
    > > 「そういう問題じゃないよ!」
    >
    > わけがわからないよ!

    はりきり って正直かなりアレな特性ですよね……なまけと同じレベルで……
    あの、前髪隠れキャラ的な目の隠れ方には驚きました。


    >
    > > 「うーん、じゃあ『ほ の お の キ バ』」
    > > 「人生やり直せって言うのか!」
    > > 「あ、そっか。うーん……もうないや」
    > > 「もうないの!?」
    > > 「全く君というやつは……そんなことをしてる暇があったらさっさと宿題して、ジヘッドになったらどうだい」
    > > 「うっ……」
    >
    > 突っ込みに定評のある主人公。宿題すれば進化できるのか…ああ、経験値ってことか。
    > じゃあ脳みそ筋肉のサイホーンは大変ですね!

    サイホーンさあああぁぁぁん!!!
    ちなみにほのおのきばは遺伝技ですww


    >
    > > 「拙者……貴様に恨みはないが、ここであったが運の尽き。くらえ火炎放射!!」
    > > 「ぎゃあああああああああああああああ」
    >
    > 『ご臨終です』チーーン

    アイアンはこれしきのことではへこたれないんだぜ・・・…


    >
    > >  チャンピオンロードは今日も平和です。
    >
    > 平和すぎてヤバイ気がしますが。
    >

    ワーイワーイ!超平和です!

    > 育てるの大変ですが私も好きです!

    BW未プレイなのでどんなものだか実際にはわからないのですが……
    買ったら絶対に育てます!

    >
    > [もっと書いてもいいのよ]

    またなんかわいたら書きますw
    感想ありがとうございました!!


      [No.1672] キュウ! 投稿者:Teko   投稿日:2011/07/31(Sun) 21:38:46     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    返信遅れました。感想ありがとうございます。

    > サザンドラは見た目一匹狼な感じですが、仲間を求めているサザンドラからは哀愁を感じる。
    > 種族的なものから、仲間が出来たとしても仲良くやっていけるのだろうか。
    > むしろ ともg(省略されました

    そうですよね……さらに、進化するのがかなり遅く、進化するまでかなり弱いので相当個体数は少ないんじゃないかと思いました。
    凶暴だけど、さびしがりや。仲間がいてもうまくいくとは限らない。なんだかかわいそうですよね
    まぁ、たくさんいても、それはそれでダメな気がするのですがw

    > そういえば、サボテンも過酷な環境のために、周囲をからす毒を巻くようで。時には自分の子孫も殺すとか、自然は厳しいもの。


    そうなんですかΣ
    やっぱり、生存競争っていうのは激しいものですよね……

    > サザンドラが飛んできたら普通の人は何か来たわーーーーになるのだろうかなあ

    山から何か来たぞぉおおおおおおおおおおおお!!にもなりそうですし、
    起こしてはならない神として奉ってもいそうですね

    きとらさん、感想ありがとうございました!


      [No.1671] 左遷支社より感謝を込めて 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/07/31(Sun) 13:42:45     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ポナヤツングスカ支店はあまりのインパクトにプレイヤーの印象に残りますよね。

    いえいえ、とんでもないですー。お忙しかったようで一区切りついたようで何よりです。大きい生物の方、盛況になることを願っておりますー。
    こちらは半年以上も空いての勝手な書いてみたなので(笑)この場を借りての勝手の書いてみたご無礼お許しくださいねー。

    構想あるということでそれだけでも嬉しいです。気長にのんびり待ってます。
    No.017さんが焼き殺されては大変なので(笑)まずは長編やほかの作品頑張ってください!


      [No.1670] 反応に遅れること一ヶ月 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/07/31(Sun) 12:46:40     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ポ ナ ヤ ツ ン グ ス カ 支 店 きたこれ。
    ポケモン界ではもはや左遷の代名詞ですわな。

    そして入手方法がいかにもというかなんというか。
    そうかゲーム主人公はどこぞから拾ってきますが、一般人はこうやって入手していたのかー
    アングラだなー都市伝説だなー
    だがそれがいい。




    あー、すいません


    なんかインストールに返信がついとる!!
    と思って早一ヶ月(  反応遅れてマジすまんorz
    ごめんなさい。でかい生物と仕事等々ですっかり流してしもうた。orz

    個人的に頭の中に続きとかはあるんですが、
    散々に待たされた、九十九さんが「次は我の番だ! 書かなきゃ焼き殺す!」と息巻いてるので続きはいつになることやらという感じです。
    構想自体はあるんです(

    反応大変にありがとうございます。


      [No.1669] Re: 誤字報告 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/07/30(Sat) 13:00:18     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    訂正しておきました。ご指摘ありがとうございました。

    老々介護は大変なんです!


      [No.1668] 誤字報告 投稿者:No.017   投稿日:2011/07/30(Sat) 05:29:52     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どうも!
    校正板で、きとかげ先生に指摘されまくてた俺が1個指摘しちゃうぞー。


    >今度ヤマシタユウゾウの古典がタマムシシティで開かれるらしい。

    古典→個展


    それにしても介護ってなんかリアルですねぇ(


      [No.1667] このあいだはありがとうございました! 投稿者:moss   投稿日:2011/07/29(Fri) 08:05:03     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    > 面白かったです。最初の作品がこれだけ書ければもう、今後も期待大ですね。

    が、がんばりまする。ただネタが出ていてもそれを文章化するのに多大な時間を消費するので……。
    あまり期待なさってもよいことはきっとありませんぜw

    > ビアンカがディアになるくだりも、ポケモン世界ではひょっとしたらありえるんじゃないかと思いましたねー。人を食べると人になる、というのはいかにもポケモンに広まってそうな伝説で、この部分もすごく好きでした。

    どうしてもホラーじゃないけど変な話を書きたかったもので、とりあえずポケモンが人を食べるって設定はすごく好きなので、書いてる途中にピキーン!ときたわけですね、はい。

    このあいだは誤字やアドバイスありがとうございました! 一応修正はかけましたが、なんせ深夜に行ったものでまだ「あれ?」ってところがあるかもしれません。
    何かあればまたどうぞよろしくおねがいしますなのです。


      [No.1666] 【百字】託児所にて 投稿者:修業中の身   投稿日:2011/07/29(Fri) 00:29:39     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     小さな赤い龍。

     
     近づくと真っ黒な目が開いて、
     
     私の指を引っ掻いた。

     痛みに私は泣いてしまった。

     その子は私の傍に来てそっと傷口を舐めた。

     申し訳なさそうな顔をしたその子を見て

     私は思わず笑ってしまった。


      [No.1665] Re: わからないでもない 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/07/28(Thu) 21:36:43     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    感想来てホッとしつつ、嬉しくてたまらない、イケズキです。

    キトラさんが楽器をなさっていたのは以前からチャットで聞いていましたが、バリトンサックスでしたか。
    ……とは、言っても、自分は高校の頃、ジャズ研が吹いているのを聞いただけなんですが……。

    「上手くなっても仕方ない」というのは、ハッとされられる考え方でした……。
    この作品を書くにあたって、創作の姿勢についてはいろいろ考えてみたつもりなんですが、気付かなかったです。
    この話の中で、ドーブルと老人は、自分は絵が下手だと分かっていて、周りからも、誰より自分自身ですら自作が嫌いなのですが、それでも描きつづけます。
    その一番の理由は描くことが好きでしょうがないからなのですが、才能の無い彼らがいつか日の目を見るという淡い期待もあります。その為に、日々描いては修行をしているわけです。

    僕には「上手くなっても仕方ない」と考えた老人とドーブルを想像できませんでした。
    どれだけ年をとっても、周りから無視されても、いつかオーソリティを抜いてやりたいという野望があって当然だと思ってました。

    自分は剣道をしていたことがあるのですが、今思えば、上達をあまり意識していなかった気がしてます。
    たしかに負けると悔しいですし、後輩の女子に負けた時なんか、その後必死になって稽古したのを覚えていますが、それ以外の時には、友人と遊んでばっかりで、なんとな〜くでやってたかも。楽しくやれるんなら上手くなれなくてもいいやって思って、続けていたかもしれないです。

    キトラさんの場合はどうして楽器を続けてこられたのかが気になります……。


    > 私が勝手に全レスすると決めたのも、誰かが見ているから観客の目は気にせんで書き続けろという意味もこめて。
    > 残りの2割程度は、読んで思ったことを適当に書いている。それでも喜んでくれる人がいるなら、私は全レスをやめない。

    見ていただいた反応がハッキリ分かるレスは励みになりますし、毎回見ては有頂天になってますw (……レスサボり気味の自分が言うのも恥ずかしいのですがw

    最後に、感想いただきありがとうございました!


      [No.1664] わぉ 投稿者:イサリ   投稿日:2011/07/28(Thu) 20:58:31     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     絶賛 期末考査&レポート中でお返事が遅くなって申し訳ありません;;
     キトラさん、書いてくださりありがとうございます!!

     チルットのモデルは童話に出てくる「幸せの青い鳥」(……だと勝手に思っている。)
     ならば色違いの金色の鳥は……

     そんなことを考えながら読ませていただきました。

    > さあ、そのチルットを渡しなさい。

     この部分でナウシカのワンシーンが頭に浮かんでしまい、一層複雑な気持ちになりました。

     色違いとか、変わった外見や強い能力を持ったポケモンは、その逸話が長い間語り継がれるうちに、内容が誇張されたり、いつの間にかまるっきり変わってしまったり……ってあの世界ではよくありそうですね。(野の火の影響受けまくりですみません;;)

     それでは、キトラさん本当にありがとうございました!!


      [No.1663] いやなんか違うっ 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/28(Thu) 20:56:56     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どうみてもマグマッグ・・・なのは気のせいですk(

    からをやぶるを覚えるポケモン、役割を見直されてきてますね。
    そしてマグカルゴのライバルは多いので、活躍できる日はいつの日か


      [No.1662] 量にもよる 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/28(Thu) 20:09:52     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    家族分だと15分くらいまわすですよ。

    ただ、この場合は少ないみたい。あとヒメグマ洗濯の刑・・・
    手洗いしてあげて!


      [No.1661] コインは表裏を持っている  投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/28(Thu) 20:04:26     19clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    数字がかいてある方、絵が書いてある方。
    どちらもコイン。けれど同時には見れない。

    そんな世の中の真理です。
    けれどそれが解っていたら、きっと喧嘩はない。


      [No.1660] わからないでもない 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/28(Thu) 20:02:56     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    芸術というジャンルで、私は楽器をやっていたけれど、私は私自身の音が物凄く不快で嫌いだった。
    音楽は残らないというが、録音という事態でめっちゃ目立つのである。ソロなんてあろうもんならもうド派手。
    それでも最後まで自分の音と付き合って、これが自分の音だと主張していかなきゃならんのですよ。

    芸術的センスがないのに、よくもまあやってきたと思います。
    さらには、ドーブルのようではなく、聞いてもらえても、私自身の音がいいというわけではなく、メロディラインの方々の音が綺麗という感想しか来ないから。
    やっていたのはバリトンサックス、主に低音パートを担当しているから、目に見えて美しいとか上手いとかいうわけじゃないので、上手くなってもしかたねえやって思ってたのも事実。今もそう思っている。


    いやいや愚痴になってしもうた。


    私が勝手に全レスすると決めたのも、誰かが見ているから観客の目は気にせんで書き続けろという意味もこめて。
    残りの2割程度は、読んで思ったことを適当に書いている。それでも喜んでくれる人がいるなら、私は全レスをやめない。


      [No.1659] 実はSFだと思って読んでいた。 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/28(Thu) 19:44:27     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     記憶だけ出し入れして他人に成り代わっていくものだとおもって見てしまった。が、最後は違った。

    そして最後は媒体と本体が違ってしまっているように思えたのですが、それでいいのかな。
    恐ろしいファンタジーだよ、SFというのは。
    科学の力で人格すら変えてしまうし、記憶もいじりたい放題だから。

    でもこういうの好きである。


      [No.1658] ダークライの話 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/28(Thu) 19:39:43     23clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     本当は優しいダークライ。普通、自分が迷惑かけるなら出て行くことはないのだし、だから新月島に引きこもっていたんだし。
     それでも彼らの手を取りたいと思ったのは、誰かとつながっていたいのだということが伝わってきました。

     これから先、どのようにダークライが彼らに対してイメージを変えていくのが楽しみですね。


      [No.1657] サザンがキュウだよ 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/28(Thu) 19:36:34     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    そのさざんじゃないよ。

    サザンドラは見た目一匹狼な感じですが、仲間を求めているサザンドラからは哀愁を感じる。
    種族的なものから、仲間が出来たとしても仲良くやっていけるのだろうか。
    むしろ ともg(省略されました

    そういえば、サボテンも過酷な環境のために、周囲をからす毒を巻くようで。時には自分の子孫も殺すとか、自然は厳しいもの。

    サザンドラが飛んできたら普通の人は何か来たわーーーーになるのだろうかなあ


      [No.1656] 無邪気な残酷さがいい 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/07/28(Thu) 18:37:42     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    面白かったです。最初の作品がこれだけ書ければもう、今後も期待大ですね。

    改行でコンパクトにまとまってる雰囲気や最後の締め方から、外国の残酷な童話のような綺麗で残酷な独特の雰囲気が素敵でした。

    ビアンカがディアになるくだりも、ポケモン世界ではひょっとしたらありえるんじゃないかと思いましたねー。人を食べると人になる、というのはいかにもポケモンに広まってそうな伝説で、この部分もすごく好きでした。

    旅人が自分について語らなかったり、赤ずきんのやりとりや演劇的なセリフなど、旅人の謎めいたところもクライマックスに向けて話を一気に引き締めて、雰囲気を出すのに一役買ってたのかなと思います。

    次回作も楽しみにしてますー。


      [No.1655] 奇妙なカフェの一日 投稿者:紀成   投稿日:2011/07/28(Thu) 17:26:15     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「おはようございます、ユエさん!」
    「おはようございまーす」
    「…」

    「Ms,ユエ。今日もメラルバをよろしくお願いします」
    「…」

    「マスター!今からプール行くの!遊園地に巨大プールが出来たんだよ!」
    「…」

    「マスター聞いて聞いて!昨日のアニメでクラスタが大爆発したの!あとね、先輩の言ってた台詞の意味がやっと分かったの!」
    「…意味が分からないわよ」

    「あー、暑いな。ユエちゃん、キュレムゼクロム一つ」
    「俺はキュレムレシラムで」
    「…」

    「ユエ、なんか、変だ」
    「…」


    ユエが全く喋らない。たまに話すことがあっても、もにょもにょとしか喋らない。おかげで何度も聞き直すハメになる。
    おまけに落ち着きがない。少し頬を触ってみて顔をしかめ、ため息をつく時も鼻から。そして表情が暗い。
    そんなのが一日中続いていた。

    「あの…マスター、何かあったんですか?」
    「…」

    ユエがおもむろにカウンター下からメモ帳とペンを出した。サラサラと書く光景を皆がジッと見守る。てっきり筆談マスターにでもなるかと思いきや…
    「ん」
    ユエが見せたメモ帳に書かれた一文。

    『親知らず 抜いた直後で 喋れない』
    「…」

    今日もGEK1994は平和だった。

    ――――――――――
    前々から温めていたネタ。くだらねえww
    ちなみにクラスタ大爆発はツイッターで検索を。


      [No.1654] もう何もこわくない 投稿者:紀成   投稿日:2011/07/28(Thu) 17:16:28     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    『その六枚の〜』とは打って変わったイメージに思わずコメントを残そうと思いました。なにこれすごい


    > 「なんだいモノ太君、さっきから耳障りだよ騒がしい」
    > 「わあぁぁーーん!わあぁぁーん!」
    > 「一体何があったって言うんだい」
    > 「アイアンにいじめられたよぉ!」
    > 「あのアリさん? そんなのいつものことじゃないか」
    > 「わああぁーーーん!アイアンをぎゃふんと言わせられるような技を教えてよぉ!!」

    一瞬誰かと思ったが読んでみれば分かるネタ。しかし語呂が良すぎて笑う

    > 「サザンドラえもん!」

    語呂悪っ!(笑


    > 「じゃあ、やっぱりこれじゃない?『か み く だ く』」
    > 「考えてよサザえもん! 相手はアイアンだよ? あんな鋼の体に噛み付いたら僕の歯のほうが折れちゃうでしょ!? 結果的に僕がダメージ食らうよ!」

    本家と違ってそこらへんの知識はある主人公。まあ仕方ないね…ポケモンだからね…

    > 「その前に物理攻撃は無理だよ……僕、命中率悪いもん」
    > 「コンタクトいれればいいじゃないか」
    > 「そういう問題じゃないよ!」

    わけがわからないよ!

    > 「うーん、じゃあ『ほ の お の キ バ』」
    > 「人生やり直せって言うのか!」
    > 「あ、そっか。うーん……もうないや」
    > 「もうないの!?」
    > 「全く君というやつは……そんなことをしてる暇があったらさっさと宿題して、ジヘッドになったらどうだい」
    > 「うっ……」

    突っ込みに定評のある主人公。宿題すれば進化できるのか…ああ、経験値ってことか。
    じゃあ脳みそ筋肉のサイホーンは大変ですね!

    > 「拙者……貴様に恨みはないが、ここであったが運の尽き。くらえ火炎放射!!」
    > 「ぎゃあああああああああああああああ」

    『ご臨終です』チーーン

    >  チャンピオンロードは今日も平和です。

    平和すぎてヤバイ気がしますが。


    > なんだこれ 
    > 頭に蛆でもわいてるのか?夏だからか?
    > とりあえずはサザンちゃんブームです

    育てるの大変ですが私も好きです!

    [もっと書いてもいいのよ]


      [No.1653] サザンドラえもん 投稿者:Teko   投稿日:2011/07/28(Thu) 15:34:32     71clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     わあぁーーーん。
     一匹のモノズが大きな声で泣きながら、チャンピオンロードを駆けています。一体、何があったというのでしょう。


    「わあぁぁーーん! わぁぁあーーーん!」
    「なんだいモノ太君、さっきから耳障りだよ騒がしい」
    「わあぁぁーーん!わあぁぁーん!」
    「一体何があったって言うんだい」
    「アイアンにいじめられたよぉ!」
    「あのアリさん? そんなのいつものことじゃないか」
    「わああぁーーーん!アイアンをぎゃふんと言わせられるような技を教えてよぉ!!」



    「サザンドラえもん!」



    「じゃあ、やっぱりこれじゃない?『か み く だ く』」
    「考えてよサザえもん! 相手はアイアンだよ? あんな鋼の体に噛み付いたら僕の歯のほうが折れちゃうでしょ!? 結果的に僕がダメージ食らうよ!」
    「それはモノ太君が普段から歯を鍛えてないからだろう、まったく。いかりまんじゅう食べた後は、ちゃんとキシリトールガム噛んでるんだぞ一頭ずつ」
    「その前に物理攻撃は無理だよ……僕、命中率悪いもん」
    「コンタクトいれればいいじゃないか」
    「そういう問題じゃないよ!」
    「うーん、じゃあ『ほ の お の キ バ』」
    「人生やり直せって言うのか!」
    「あ、そっか。うーん……もうないや」
    「もうないの!?」
    「全く君というやつは……そんなことをしてる暇があったらさっさと宿題して、ジヘッドになったらどうだい」
    「うっ……」
    「そんなんだから、君はいつまでたってもママに怒られてばっかりなんだ」
    「なんだよ、サザえもんのバカ! もういかりまんじゅう買ってこないからな!」
    「ちょっ、分かったよ分かった! アイアンをぎゃふんといわせればいいんだろ 全くもう」
    「え」





    「お〜では アイア〜ント アリ大将〜」
    「拙者……貴様に恨みはないが、ここであったが運の尽き。くらえ火炎放射!!」
    「ぎゃあああああああああああああああ」





     チャンピオンロードは今日も平和です。



     終わり

    ーーーーーーーーーーーーーー

    なんだこれ 
    頭に蛆でもわいてるのか?夏だからか?
    とりあえずはサザンちゃんブームです


      [No.1652] その六枚の黒翼は 投稿者:てこ   投稿日:2011/07/28(Thu) 05:36:08     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     六枚の黒い翼と三つの頭をもつそれは、チャンピオンロードの奥の奥深くに眠っていた。
     彼は夢の中ですら考える。自分は――。


     彼の寿命は長く、人間の寿命とは比較できないほどの長さのものである。もちろん、龍族は人間だけでなくどのポケモンと比べても長い寿命を持っている。
     しかし、彼らの難点は寿命が長いがための成長速度の遅さである。非常にゆっくりと、長い時間をかけて彼らは成長する。当然、成長しきる前に死ぬ個体数も多い。自力で餌をとることが出来るまでに死ぬ個体数が大半である。餌をとることができるようになったとしても、強い力を持たず、僅かな環境の変化によって弱り死んでしまったり、時には他のポケモンに襲われて死んでしまうこともある。
     さらに言えば、彼らの生息できる場所は年々減少の一途を辿るばかりである。そして、彼らは卵を産み、あたため孵すまではするがその後、子供には全く関わらない。龍族の中でも凶暴なことで知られる彼らは偶然出会った同族が自分の子だと知らず、噛み殺してしまうケースも珍しくはない。
     そんなことで、今日サザンドラ一族の個体数は目に見えるように減っている。

     彼は幸運な固体だった。運良く、頭を一つ、二つと増やし、サザンドラへと成長することが出来た。サザンドラになってしまえば、餌の有無や他のポケモンのことなど気にする必要はない。その強い力でどんなものでも圧倒することが出来る。怖いものなど何一つないのだ。
     
     しかし、彼は不満だった。彼は仲間が欲しかった。しかし、サザンドラはこのチャンピオンロードに自分しかいないことはもう分かっていた。昔は数匹のサザンドラが生息していた。一時期は十数匹のサザンドラが同時に生息していたこともあったくらいだ。
     変り始めたのはいつからか。洞窟の中に道路のようなものが出来、人が大勢行き来するようになった。洞窟の生態系はそこで一気に変わった。彼ら一族はここにしか生息していなく、個体数も少ないせいもあり、人々は彼ら一族の多くを捕獲した。そこでさらに個体数が減った。捕獲した人間は、非常に敏感である彼ら一族を育てきれず殺してしまうか、その凶暴さに手がつけられず逃がしてしまった。逃げた先で環境になじめず命を落とした彼らが、やむを得ず射殺された彼らが、一体どれくらいいるのだろうか。
     新たなサザンドラ――彼の伴侶となるべくサザンドラが現れなければ、野生の同族は恐らく絶滅してしまうことだろう。

     いや、彼は伴侶となるものでなくともよかったのだ。幼き同族を求めていたわけでもない。彼はただ、仲間が欲しかったのだ。共に過ごしてくれる仲間が欲しかった。けれど、長く生きてきた彼はすでにとっくに気づいてはいたのだ。自分に近づいてくる者などいないということを。

     六本の翼はまるで熾天使のような美しいシルエットだ。けれど、黒く塗られた翼はそのイメージを一気に堕天使へと変える。口からのぞくその鋭い牙は何百もの生物を屠ってきた。太く、長い尾をゆらゆらと揺らし、空を泳ぐ姿に恐怖を抱かずして何を抱くであろうか。
     双頭であった頃にあれほど見たいと懇願したこの世界は、はっきりと見えるようになった今ではもう見たくもない世界に変わっていた。自分の姿を見た者の表情が怯えで強張る瞬間を誰が見たいと思うだろうか。近づけば、悲鳴を上げて去っていく後姿を誰が見たいと思うだろうか。

     彼は小さくため息をついた。
     壁にあいた穴に身体をすりこませ、洞窟の外へと出る。そのまま、チャンピオンロードを見下ろすかのように高い高い空へと上昇していく。
     満月の夜。星の煌く夜空溶け込むように彼は飛んだ。羽音も、声もたてず、ひっそりと。彼は上空から大地を見下ろして、もう一度ため息をついた。

     大地はこんなににも広いのに、自分と関わる者は一人もいないのか――。そう考えて彼は悲しくなった。



    「何してるの?」
     突然、彼の耳に飛び込んできたのは陽気な明るい声であった。もちろん、ここは空中。それもかなりの高度の場所。普通の鳥ポケモンがいて普通な場所ではない。彼は耳を疑った。
    「まだ、僕の姿見える?」
     声のしたほうへと彼は視線を向ける。もともと洞窟住まいで、目の隠れていた彼は、今でこそぱっちりと目は開いているがそこまで視力は良くない。目をこらして声のした方向をじっと見つめると、夜の闇に混じるように、そこにいたのは紫の影であった。
    「見えたか。よかった」
     影は笑った。
    「お前は――?」
    「僕?僕のことなんてどーでもいーじゃん。それより、どうしたの?ため息なんかついちゃってさ」
     彼は戸惑っていた。誰かと話すなんてほとんど初めての経験だったからだ。彼の左腕は思いっきり身体のほうによりきり、戸惑った表情を浮かべている。けれど、彼の右腕は震えつつも満面の笑みを浮かべていた。
     彼は確かに戸惑っていた。だが、それ以上に彼は嬉しかったのだ。誰かに話しかけられることが。自分を怖がっていない者が、この世界にいることが。
    「お前、俺が怖くないのか……?」
    「怖いよ」
     影ははっきりと言った。表情を変えることなく、笑顔のままで。そして、影は続けた。「だって、僕ゴーストタイプだもん」 牙は怖いんだよ、と。
    「なぁ、お前はどうしてこんな場所にいるんだ。何をしている」
    「旅だよ」
    「旅?」
     旅は人間のするものだ。旅をするポケモンなど、人間について回っているポケモンくらいしかいないだろう。野良のポケモンが旅をするメリットなど一つもない。環境に順応できなければポケモンは死ぬ。行く場所が安全とは限らないし、人間に捕まり駆除される可能性だって高い。 
     ポケモンとして、ただ毎日食べ、眠り、暮らしていけばいい――いい。

    「旅はいいよぉ。いろんな世界が見られる。いろんな世界を見て、全部見るのが僕の夢」
     まぁ、実際無理なんだけどね! と、影は照れくさそうに笑った。その笑顔がとても俺には眩しく見えた。毎日、ただ過ごしている俺と違って、毎日をきちんと生きている。そんな気がした。
    「君はここ以外の場所を知ってる?」
    「知らん。行ったことがない」
    「そんな、キレイで立派な翼を持ってるのにぃ? 宝の持ち腐れじゃん!」
     
     キレイだなんて言われたことなどなかった。自分を褒められたことのない彼にとっては、この影の言葉だけで人生で一番幸せとも思える感じであった。
     ずっと、一人で閉じこもっていた彼には衝撃的なことだった。

     自分を怖がらない者が世界にいるという発見。
     誰かと関わることができる嬉しさ。


    「旅に出ないの?世界は、ここだけじゃないよ」


     そして、広い世界があるということ。


     必要なのは、背中の翼で羽ばたき始めることだけ。



     夜の澄んだ空気を切り、彼は生まれ育った故郷へ背を向けた。そびえたつ荒々しい山が飛び立つ彼を見送っているように見えた。三対の翼が大きく羽ばたき、顔に風が当たる。その風にはかいだことのない、初めての香りが混じっていた。
     知らない土地へ、知らない者へ――。彼の顔は未だ不安に満ちている。けれどその下の双頭は、希望に満ち溢れた目をしていた。


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


    深夜に一時間で書き上げ。BWのポケモン書きたいなぁと、思ってサザンドラが書きたかっただけです。
    あと硬い文章練しゅry

    【批評してもいいのよ】【何をしてもいいのよ】
     


      [No.1651] 液体洗剤と愛の分量 投稿者:海星   投稿日:2011/07/27(Wed) 23:15:44     75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ガランガランという重い音と共に中身が回っている。
     
     数年前に親が購入したドラム式洗濯機の前で、俺は考えていた。

     自動ロックの窓ガラスに時折ぶつかるジャージのチャックが音を立てる。
     
     カシャーン、とガラスを引っ掻いてはまた見えなくなっていく……そんな繰り返しを眺めているとどうも不思議な気分になってくるのだ。

     チャックの音はジャージの悲鳴で、洗濯機の回転は衣服の拷問であり、それを虚ろに観察する俺は残酷な殺人……いや、殺衣者。
     
     いつも洗濯をするのは母親なので俺は“洗い”と“すすぎ”と“脱水”それぞれの時間なんてわからなくて適当に設定したらやたらと時間がかかるものである。

     後で母親に「洗いは一五分にしたよ」なんて言うと「馬鹿じゃないの、三分でいいのよ」とか言われそうだ。前にも言われた気がする。
     
     脱衣所の小さな引き戸が動く音がしたので振り向くと兄のドレディアがヒメグマのぬいぐるみを抱いてこちらを見ていた。

     どうしたんだと訊くとぬいぐるみを俺に渡そうとして来る。

     それから騒がしい洗濯機を指(葉)さして熱心に頷いて見せた。もしかしてこれを洗濯しろと意図しているのだろうか?
     
     ははん、ヒメグマを柔軟剤回転の刑にしろと。


    ―――――――――――――

    お久し振りです海星です。
    そしてこんばんは。
    勝手に洗濯機回してたら親に非難の眼差しを食らいました。
    どうやら洗いはもっと短くて良いみたいです。

    【何とでもしてください】


      [No.1650] ドーブルの筆で返信を。 投稿者:巳佑   投稿日:2011/07/27(Wed) 22:54:42     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    ドーブルの筆で返信を。 (画像サイズ: 343×498 58kB)

    遅れて申し訳ありません。コメントありがとうございます!

     
     ★やわらかいものさん

     そうですね、何事も続けることが大事だと思います。
     でも、続けることに疲れたり、
     辛くなったときには、
     その事から距離を離して休むことも、時には大事だと個人的には思っています。

     例えば、アーティストさんや芸能人さんが充電期間ということで、 
     休養などを取ったりするように、
     一旦、休んで、また好きなことに対して恋しくなってきたら、
     戻ってくればいいと思います。

     ……22の若造がこのような偉そうな意見を言ってしまい、すいません。(汗)
     一個人の意見として受け取って下さったら光栄です。




    ★風間さん

     過去絵キターーー( °∀°)ーーー!
     バトンを受け取って下さって、ありがとうございます!(ドキドキ)
     幼稚園の時に描かれた、ポケモンの絵ですか! 
     色々な種類のポケモンが描かれていますなぁ……私の場合、小学校の頃は殆ど、ピカチュウでしたです。(汗)


    > 写真に私の右手がうっかり写っていますが、なんという残念な指。マステをいじるせいで爪がはがれたりして、すごいことになってます。みなさん、マステをいじるときは気をつけましょう。

     そして、指の傷跡……マスキングテープでの作業、いつもお疲れ様です。
     風間さんのマスキングテープの絵、とても魅力的で素敵です!
     これからも楽しみにしております!(ドキドキ&個人的に一番気に入っているのは『桜咲く絵』です)
     
     
    > いつか、水彩画みたいな淡いマステ絵が描けたらいいなと思っています。
    > その前に、受験がんばります(^^;

     楽しみにしております!(ドキドキ)
     受験、ファイトです!(みすけの『てだすけ』!)




    ★イケズキさん

     是非、イケズキさんも絵を始めてみませんか?(ドキドキ)と勧誘しておきます☆


    > ロマンだなぁw 精霊さんのロマンを予感させる最後でした。  
    > 少女のロコン絵を期待してます!   …………違うかw

     ありがとうございます!(ドキドキ)
     
     そして、少女のロコン絵、描いてみましたよ!
     ……まぁ、具体的に言うと最後のシーンを想像してみて描いてみたのですが――。

     1・まずは少女とロコン、それとおばちゃんを描く。
     2・「……ん? 何か、物足りない感じがあるんだよな〜」と、ふと思う。
     3・もっとポケモンを描こうか! ということで色々と追加。
     4・結果、賑やかな公園になりましたとさ。(笑)

     個人的には、ここは少女とロコンとおばちゃんだけだよなと思いつつも、上記のような結果になりましたです。(笑)


    > 六冊! すげー!!

     いやいや、まだまだですよ。(汗)
     量の方は増えていくのはもちろんいいのですが、『質』の方が……!(汗)
     これからも楽しくイラスト描きつつ、精進していきたいと思います。



     
     それでは失礼しました!


      [No.1649] 褒められてたぶん育ちます 投稿者:moss   投稿日:2011/07/27(Wed) 17:31:50     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    > あの時HNがミスで「しじま」になってた「しじみ」です。

    あ、「しじま」さんって「しじみ」さんだったのね、気づかなかった。すいません。

    > 冒頭の砂漠の描写がとても好きです。

    褒められて(以下略 あああありがとうございます!砂漠の描写が一度してみたかったものでw

    > 展開はどんでん返しという手法もあり、読んでいてとても面白いのですが、
    > ビアンカ嬢の外見の描写がちょっと少なくてイメージしづらかったかな?と思いました。

    外見の描写は自分的にあまりいれたくないっていうのもあったんですよ。なんかこうどんでん返しをするためって言ったら変ですけどw  こう最後の最後でどーんとかばーんとかしてみたかったんですね、たぶんw


    これからもがんばって書くのでそのときはまたよろしくおねがいします!


      [No.1648] 処女作……? 投稿者:しじみ   投稿日:2011/07/27(Wed) 14:23:50     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    こんにちは、チャット以来ですね!
    あの時HNがミスで「しじま」になってた「しじみ」です。

    ええと。
    オルカさんも仰ってますがハイクオリティでびっくりしちゃいました。
    冒頭の砂漠の描写がとても好きです。

    展開はどんでん返しという手法もあり、読んでいてとても面白いのですが、
    ビアンカ嬢の外見の描写がちょっと少なくてイメージしづらかったかな?と思いました。

    これが処女作とか妬みます。
    ぜひぜひこれからも執筆してくださいませ!


      [No.1647] からをやぶる 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2011/07/27(Wed) 13:11:21     79clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    からをやぶる (画像サイズ: 640×480 24kB)

    副題:マグカルゴが本気を出したようです。

    孵化要因として、いつか来るはずであるバトルの舞台を待ち続けて早11年。遂にその能力を活かせる必殺技を手に入れることができました。タイプ、技は攻撃に向いているので、これからは今までとは比べ物にならないほど活躍の機会に恵まれることでしょう。そろそろ私も育ててみようかな?


      [No.1646] あ、ありがとうございますっ 投稿者:moss   投稿日:2011/07/27(Wed) 10:44:25     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > ついにmossさん書きましたか!!

    やっとですねー。これをルーズリーフに書き上げてからどのくらいたったんでしょうねー、もうわすれちゃいましたねー。


    「これが処女作とかどんだけクオリティ高いんだあ!!」

    高くないです!みなさんの処女作スレ見ればこんなの……(爆)
    とりあえずこんな感じが私の頭の中ですね。中二病ですね、はい。


    > 登場人物の心理描写がもう。読んでて展開が読めませんでした。
    > こういう『どんでん返し』的な?作品すっごく好きです。

    どんでん返しは自分も好きなので取り入れました。ていうかもう、最初の書き方と最後の書き方が変わってるやんって思いながら書き上げました(オイ





    とりあえず次のネタは頭の中にあるので、もしかしたらまた投稿するかもです。
    そのときはまたよろしくおねがいしますねーw


      [No.1645] ゴチミル怖えぇ 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/07/27(Wed) 10:11:41     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ついにmossさん書きましたか!!
    …で、一つ言わせてください。

    「これが処女作とかどんだけクオリティ高いんだあ!!」

    登場人物の心理描写がもう。読んでて展開が読めませんでした。
    こういう『どんでん返し』的な?作品すっごく好きです。

    首に爆弾は無いよお父様…。


    【これだけ書ける才能が自分も欲しい】
    【ぜひ次も書いてください】


      [No.1644] 処女作です 投稿者:moss   投稿日:2011/07/26(Tue) 22:24:12     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    処女作です。
    いいたいことはそれだけです、はい。





    中二病作なのでなまぬるい目で見ていただければ幸いです。


    だれか私をけなしてくれー。





    【批評してもいいのよというかしてください】  【褒められて伸びるタイプです】


      [No.1643] 愛、アイ、哀 投稿者:moss   投稿日:2011/07/26(Tue) 22:13:53     74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5





    ※そんなグロくないけど苦手なかたは注意報 
























     満点の星空にぽっかりと月が浮かぶ。冷えた砂漠の夜風はさらさらと砂を運んでは去っていく。
    その中にただ一人、辺りにそぐわない真っ白なコートを着込んだ旅人の姿があった。
    頭をすっぽりとフードで覆っているため性別はわからない。
     底の厚いくすんだ茶色い靴で柔らかな砂漠の地を踏みしめ歩く。
    その様子はまるで絵画のようで、幻想的な背景の中をゆっくりと進んでいく。
     砂の中に瓦礫が交ざってきたころ、不意に旅人は歩みを止める。
    前方には朽ち果てた古城。百年くらい前ならばオアシスにそびえたつ美しい城だったかもしれない。
    しかし今では砂嵐の影響か、壁は風化して崩れかけ、かろうじて残った建物の一部は
    やや左に傾いてしまっている。いつ崩れてもおかしくないような状況にあった。
     背後から気配を感じて旅人は振り返る。
    「 ……何かお困りかしら?必要であれば、休める場所に案内するわよ」
     白いフリルのついたかわいらしい膝丈の黒いミニドレス。
    そこから伸びる細く白い足。黒く艶やかな髪をなびかせる。
    背丈が旅人の半分程度しかない小柄な少女は偉そうな足取りで旅人の前までやってきた。
    手に持ったカンテラが揺れる。マリンブルーのぱっちりとした両目が旅人をとらえる。
    旅人は言った。
    「 ……近くに休める場所があれば、案内していただけると助かります」
     フード越しのくぐもった低い声。少女は目を細めると、ドレスの裾を翻して歩き出す。
    旅人も黙ってそれに続く。さくさくと砂の中を進んでいく。
     満月が強くまたたいた。




      ※



     
    少女は幸せ者であった。父は一国を統べる王。母はその妃にあたる。
    砂漠の中に存在し、国民の支持を多大に受けたまさにオアシスで呼べる国。かくして少女は
    皆の祝福の中、オアシスの王女として生を授かる。
    国王夫妻は“愛しい”という意味をこめて、ディアと名付けた。
     ディアはたくさんの期待と慈愛を受けて健やかに育っていった。
    三歳になる頃にはすでに言葉を喋り、毎日のように外で遊び回っており、そのせいで
    白い肌は鮮やかな小麦色に変化し活発な印象を与えていた。
    やんちゃで活発でよく笑い、よく泣いて、わがままですぐにすねる。子供らしい子供だった。
    そしてすぐに機嫌を直してまた遊びまわり、王宮で飼われているムーランドやらペルシアンなど
    ポケモンと戯れるのだ。ディアはポケモンが大好きだった。
     それを見かねた国王が、彼女の五歳の誕生日にポケモンをプレゼントとして贈る。
    箱に入れられ贈られたそれは、小さな黒い体に白いリボンをつけた生き物。
    首には黒い首輪がついている。
    「お父さんありがとう!」
     子供らしい無邪気な笑顔。ポケモンは無表情に目をぱちくりさせる。
    彼女はそれに、ビアンカと名付けた。



      ※


     
     少女に案内されたのは古城の中の一角。今にも崩れそうな壁が特徴的な、
    おせじにもきれいとはいえない部屋だった。一瞬こんなところでと不満を抱いたが、
    少女が「ちょっと待ってて」と部屋の奥に消えていったので安心する。
    横倒しになった、見るだけで貴族のものだとわかるような家具が部屋の
    あちらこちらにちらばっている。中でも目を引いたのはくすんだ色の、古びた大きなベッドだった。
    下ろされたレースカーテンにはいくつものくもの巣が張り巡らされている。
    かつて女の子の部屋だったのかと旅人は思案する。
    「となるとここが……?」
     旅人は少女が戻ってこないことを素早く確認すると、ごそごそとコートの中から
    青い手帳を取り出した。ぱらぱらとページを捲り一定のところで止める。
    「――さんの言っていた城っていうのはやっぱり……」
    「待たせたわね」
     背後からの燐とした声で旅人は目にも止まらぬ速さでそれをしまうと、くるりと振り返り「いえ、
    こちらこそ手間をかけさせてすみません」とさわやかに言い放つ。
    「さぁ案内するわよ。安心して。ここから先はまだきれいだから」
     皮肉のこもった口調で言い歩き出す。わずかに悪戯っぽく微笑んでいるたのを旅人は見過ごさず、
    罰の悪い顔をする。が、すぐに微笑んで
    「それはどうも、―――」
    「え?」
     少女はぴたりと足を止め振り返る。
    「何か言った?」
    「いえ」
     旅人は表情を変えない。
    「何も」
     少女は顔をしかめるが「 そう」とだけ言って、再び歩き出してしまう。
    かつかつとかかとが、ひび割れた黒い大理石のような床を打ち付ける。
     それを見て旅人は呟く。
    「全く、難儀なもんだね」




      ※




     ディアが十歳になるころには、彼女はおてんば王女として国中で有名になっていた。
    というのも五歳の誕生日を過ぎてからというもの、彼女は毎日のように
    相棒のビアンカと共に様々な場所へと遊びに出かけ、散々危険な目にあいつつも
    それをやめなかったからである。例えばスピアーの大群に喧嘩を売り追いかけられてみたり、
    ギャラドスのいる湖に石を投げ、怒り狂ったギャラドスの破壊光線をかわしながら逃げ帰ったりと
    巷では有名な話である。
     それに困った国王夫妻は、なんとか危険なことはやめさせようと努力はしたものの、
    幾多の修羅場をかいくぐってきたディアにとっては何の脅しにもならず、
    逆に彼女の闘争心を擽ったともいえよう。諦めた国王夫妻はビアンカに娘の安否を託し
    ついには何も言わなくなったという。わがままな娘をもつと大変である。
     そんな両親の心配などまるで知らない彼女は、懲りずに遊びに出かけては元気にもしくは
    ずたぼろになって帰ってくる。
     ある日のことだった。ディアはいつものようにビアンカを連れて、オアシスの外れに
    広がる広大な森林へと出かけた。ここには強くも弱くもないポケモンが生息しているため、
    母親には「 あの森には近づくんじゃありません」と強く言われていた。だが、しかし
    あの彼女が素直に言うことを聞くはずもなく、遊び場所としてちょくちょく訪れていた。
    あまり奥まで行くと戻れなくなることはわかっていたし、進もうとすればビアンカが服の裾を
    ひっぱり進むことを拒む。年の割には頭の良い子だったといえよう。
     頭の良い子だったので、彼女は森の入り口に立ったとき、何かがいつもと違うことに
    気がつけた。隣ではビアンカが無言で彼女を見上げている。黒い首輪がヤミカラスの濡れ羽のように
    てらりと光る。ディアは小声で呟いた。
    「何かが、いる?」
     遠くでかすかに音がする。それが人の声なのかポケモンの鳴き声なのかはわからなかった。
    一体何が起こっているのか。好奇心に負けたディアは静かにビアンカを連れ森へ入る。
    息を殺して物音を立てないようにしながら直感で草の中をそろそろと進んでいく。
    そのうちに音は、複数の男の話し声であることがわかり、ディアの中の緊張感が増すと同時に
    好奇心もまた増していた。どくんどくんと心臓の音がうるさく鼓動する。
     話し声は彼女たちがいつも遊んでいたちょっとした空間だった。そこだけ木が何本か切られており、
    人が座れるくらいの大きさの切り株が立っている。
    日ごろから空き缶が落ちていたりと彼女たち以外にも人の訪れていた様子はあったものの、
    実際そこに人がいるところを目撃したことはなかった。
     切り株には五人の男が座って、何やら神妙な顔つきで話し合っていた。彼女は見つかっては
    いけないと思い、丈の長い草の中に見を隠す。幸いそこにポケモンはいなかった。
     ディアはそっと聞き耳を立てる。そこで見るからに体格の良い男たちは急に声のトーンを落とした。
     ――「……く……は……考え……」
     ――「……つけよ。それを……だろう?」
     大事な部分が聞き取れない。ディアは決心して限界まで近づく。
    音を立てないように慎重に移動する。
     ――「明日だ。いよいよ明日決行する」
     ――「俺もこいつも早く国王を倒したくて仕方ねぇよ」
     ディアの目が大きく見開かれる。……パパ?!
     ――「あの親ばか夫婦め。子供にばかり気をとられて……」
     ――「もうあの国はだめだ。だからこうして俺たちが今ここに集まっている」
     ――「そのとおりだよ。……作戦は覚えているな?まずお前が最初に町で暴れる」
     ――「わかってらぁ。そんで奴らが俺に気をとられているうちにお前らが城へ侵入する」
     ――「で、俺が使用人どもの注意を引いてるうちにてめぇらが先に行くんだろ?」
     ――「そして協力して火をつける!」
     息を呑んだ。彼女は口の前に両手をあて、目を見開いたま小刻みに体を震わせている。
    それに追い討ちをかけるように男たちは言った。
    ―「「「「「国王の懺悔に、乾杯!!」」」」」
     グラスの触れ合う音の代わりに拳のぶつかった音が響く。
    ディアは耐え切れなくなって、そっとその場から逃げ出した。




      ※




     少し休ませてもらうだけなのに、すごいところに来たなと旅人は関心する。同時に
    あの城のなかにまだこんなきれいな場所があったのかと苦笑した。やっぱり見た目じゃ
    全てはわからない。
     再度少女に案内されたのは、なにやら豪華な造りの部屋だった。さすが城なだけあるなと
    いうような高級感あふれる家具が無造作に配置されている。床に敷かれた絨毯は何かのポケモンの
    毛皮で作られていて、少女はそれを土足で踏んづけていく。シャンデラのようなシャンデリアに
    明かりを灯すと少女は旅人に椅子を勧める。旅人は小さく会釈して座る。ギシッと椅子の軋む音。
     沈黙の中、ふと旅人は壁に掛けられた肖像がに気が付いた。
    「……もしかしてあの絵はあなたですか?」
     一瞬の間の後、少女は静かに答える。
    「そうよ。その絵はあたしの絵。絵の下に名前が彫ってあるでしょう?」
    「dear……ディア、さん?」 
     ディア。どこかで聞いたことのある名前だと言いそうになり口ごもる。ああ、この子が。
     少女――ディアは旅人の方へ来ると、近くのテーブルに持っていたカップを置いた。
    強く香ばしい香りからジャスミンティーだと仮定し、「ありがとうございます」とだけ言って手を付けない。
    ディアは何も言わずに近くに座り足を組む。優雅な動作でカップを口に付ける。
    「……あたしはかつてこの場所に存在していた国の王女にあたる存在。今は一人でここに住んでいるの」
     淡々と少女は自分の正体をあっさりと明かす。その様子がどこか自分に言い聞かせるようにして喋っているようで、少し違和感を抱えつつも旅人は相槌を打っていく。
    「一人?」
     旅人はフードで隠れた顔を上げた。ついでにカップにもようやく口を付けたが
    一口でまたもとの場所に戻してしまう。
    「こんなところに一人で、ですか?」
    「あら、心配してくれてるの?ありがとう、でも大丈夫よ。こうしてたまに人も来てくれるし
    食べ物だっていっぱいあるわ。それなりに充実したところよ、ここ」
    「そうですか……」
     旅人はどこか残念そうに言うと、すくっと立ち上がりコートの内側から拳銃を取り出し
    銃口を彼女の額に突きつける。
    「だったら死んでください」
     乾いた銃声が古城に響く。




      ※




     ついに“明日”はやってきて、朝から町は大騒ぎだった。一人の男がポケモンと共に町で
    暴れ周り、人々はパニックに陥っていた。あまりにも混乱しすぎていて国王もそれに対応できる
    はずがなく、またあちこちで国王に対するデモが起こりつつあった。
     国民の罵声から逃げるように、ディアとビアンカとその母親は国王の命令で、門から一番遠い
    子供部屋に身を隠していた。
    「……大丈夫よ大丈夫。わたくしたちは大丈夫……大丈夫……きっと彼が全部収めてくれるはず……」
     ぶつぶつと自分に言い聞かせる母親。艶やかな黒髪に両手をあてくしゃりと握り潰しながら必死の
    形相で呟き続ける。ビアンカはひたすら無言だった。外からは無理矢理門を開く音がして、人々の
    怒声がより一層耳に届く。それが怖くて、ディアはずっと目を瞑り両手で耳をふさいでいた。
     そのままどれくらいの時間がたったのか。遠くで国王らしき断末魔がかすかに聞こえた。
    「あなた!」
    「……! 行っちゃ駄目よ、ママ!!」
     ディアは必死で扉に駆け寄る母親をなだめる。しかし興奮状態の母親の耳にそれは届かず
    「な、何をするの!はなしなさいっ」
     と、部屋の隅まで突き飛ばされてしまう。
     母親は自分が娘を突き飛ばしてしまったことにひどく驚いたのか、奇声を発して勢いよく扉を開き、
    部屋の外へと消える。
    「だ、だめだよママ!死んじゃうよっ、だから行かないでよぉママぁ!」
     叫び声もむなしく、代わりに返ってきたのは鋭い銃声と二度目の断末魔。
    「……あ。こいつ、もしかして国王様の奥様じゃねぇか?あーあ、殺しちまったよ。……まあもう
    旦那さんも他界したし、向こうで仲良くやるんだな。さて、あとは火がこっち来る前にあいつらと合流して
    逃げるとするか」
     扉の向こうで聞こえた男の声。全て聞き終えぬうちに、ディアはビアンカを抱いて子供部屋のクローゼットにそろりそろりと閉じこもる。
    「ごめんなさいごめんなさぁい。パパもママも、あたしのせいで死んじゃったんだよねぇ。……うっひぐ。えぐ。どぉしたらいいのかなぁ、ねぇびあんかあああぁぁぁぁっ」
     狭い空間でぽたりぽたりと涙を落とす。
     抱きしめられたビアンカはただ何もいわずに見て――




     ※



     
     吹っ飛んだのはディアではなく、旅人のフードだった。ぱさりと灰色の髪が顔にかかる。
    長い前髪に隠れた深い紫色の瞳が鋭い眼光を帯びる。
    「あら。けっこういい顔してたのね!もっとおじさまかとおもったわ」
    「……。こんな至近距離で外したなんて認めたくないなぁ……」
     全く会話の成立していないこの物騒な状況の中、この期におよんで無邪気に笑う目の前の
    少女に旅人は少し畏怖を抱いていた。
     何故真っ直ぐ発砲した弾が自身の身につけていたものを吹き飛ばしたのか。
     考え込む旅人にディアは笑う。
    「一般人が銃なんか持ち歩いちゃっていいのぉ?時代は物騒になったわねぇ」
     お前が言うか。その言葉は発することなく、旅人はディアに首をつかまれ壁に打ち付けられた。
    少女とは思えないような力でギリギリと締め上げられる。
    「あっ……」
    「ここに来た本来の目的を言いなさい。あなたがずっとここに来たかったのは知ってるのよ。
    今日までの三日間あなたはずっとこの城を偵察してきたんだものね。あたし、ずっとなんだろうなぁって
    気になってたのよ」
     このままだと本気で喉を潰されると本能が察知し旅人は素直に答えた。
    「げほっ、……し、城の……調査……」
    「嘘。あなたはあたしを殺しに来た。そうでしょう?この間ここに来た男と格好がそっくりだもの。
    まあ顔はあなたのほうがいいけどね。でもその人はあたしが喰べちゃったけど」
     ぺろりと舌をだしてくすくすと嗤う。はたから見れば可愛らしい笑顔なのだが眼光は鋭く、
    ましてや首を絞められている旅人は悪魔の笑みとしか思えなかった。
     旅人は薄れゆく意識の中で、自分の前にここに来て少女に喰べられた同業者のことを哀れんだ。
    今はすっかり彼女の肉と化しているであろう彼を吹き飛ばしてしまうなんて。
    なんて私は残酷なヤツなんだろう、と。
     一方少女はあせっていた。こんなに力をこめているのに、何故コイツの目は一応恐れはあるものの、
    失望を感じさせないのは何故なのかしら。これから何をされるかわかっているはずなのに。
     少女は聞く。
    「さぁ。心の準備はいいかしら?死ぬ前に何か言いたいことがあれば今のうちよ」
     あくまでも自分が有利な立場にいることを示すために余裕をもって言う。
     このとき旅人はトイレに行かせてくださいと言おうと思ったのだが、あまりに幼稚な考えだと否定し、
    もっとまともな質問はないかと思考する。
     ひらめいた旅人は口を開いた。
    「何故、私を、ここに、連れ、て、来た、ん、で、す?」
     まるであかずきんちゃんのような台詞にディアは面を食らいつつも、彼女は狼になって答えてやる。
    「……それはお前を喰べるためさ!」
     かかった!旅人はわずかに残った意識で自身を賞賛した。彼が狙ったのは自分を食べようとする瞬間。
    つまり首から手が離れる一瞬。
     旅人は叫ぶ。
    「ゲン、ガー!シャドー、ボー、ル!!」
     刹那。ディアの背後で巨大な影が蠢いた。





      ※ 




     あたしは俗にいう奴隷ってヤツだった。汚らしい人間の住む汚らしい場所で生まれ、
    親なんて言葉も知らないまま奴隷市場で売りさばかれ、情のない腐ったトレーナーの手持ちに
    なっては、言う事を聞かないでおいたら捨てられた。
    能力だけで選んでいる人間の言うことなんて聞きたくないし、一緒にいたくもなかったので
    丁度いいっていったら丁度よかったけど。
     そのたびにあたしはまた奴隷市場に商品として並べられ高額で取引された。そんな毎日。
    だからよく隣に並んでいたあたしと同じ商品の奴らにもったいないと言われるのが不満だった。
    もったいない?ならあんたたちも買われてみなさいよ。
    どうせ買われてっていいことなんてないのに。だけどそう言うヤツに限ってトレーナーに見込まれる
    だけの能力がなかった。
     あたしは人間が嫌いだし、もっと嫌いなのはあたしの能力だけを利用しようとする奴ら。見てるだけで
    いらいらするのにそいつらなんかに利用されるなんてもってのほかだ。
     そんなある日のことだった。あたしはいつものようにトレーナーに逃がされ、
    奴隷市場に舞い戻ったところで少し不機嫌だった。
     見慣れた光景をまじまじとぎょうしポケモンらしく見ていたら、視界の隅で挙動不審な男を見つけた。
    そいつはあたりをきょろきょろとせわしく見回しながらこちらにやって来る。
    「すみませんっ。急いでるんですが、何かいいポケモンありませんか?」
     あたしは顔をしかめた。“いいポケモン”といわれると必ずと言ってもいいほどあたしを持ち出すから。
    それと理由はもう一つあった。何よりこの男自体が怪しいじゃないか。薄汚くぼろぼろのマントを纏い、
    フードを目深にかぶっているためはたから見ればとてもうさんくさい。
    けどあたしの特性にかかればフードなんてないもの同然。だからこそわかる。
    おんぼろマントでは隠し切れない高級感が。こことは違う清潔感が。フードの下はきれいに
    オールバックにしてあるし、顎には髭すら生えていない。この男は一体何者なんだろう?
     あたしがしばらく凝視して観察していると、隣に並んでいたモノズとかいうやつ(めんどくさいから
    通称;となり)がこっそり話しかけてきた。
    「おぉ。あれは間違いねぇ。あれは“上の世界”のヤツだぜ。しかも大層大物だな。ありゃ国王様か
    なんかじゃねえか?なぁんかどっかで見たことあるような感じがするんだよな」
     ちなみあたしに人間は喰べられるということを教えてくれたのもコイツだった。こんなところにいる
    わりにはまともなやつだったとあたしは思う。もしかしたらまともじゃなさすぎて逆にまともっぽく
    見えたのかもしれない。関係ないけど。
     “上の世界”のお偉いさんらしき男は予想通りあたしを買ってくれた。近くで見るとやっぱりとなりの
    予想は当たってるんじゃないかと思い、もしそうならばあたしはこれからすごいところに行くんじゃない
    かと、珍しく良い気分になれた。
     となりの予想は大当たりし、男は“上の世界”に出るなり、何やら大きくて豪華な建物に直行した。
    “下の世界”とは比べ物にならないくらいきれいで大きな部屋でマントを脱ぎ、国王らしき立派な服を
    他者に着せてもらう。
    ああいうお世話係みたいなのは確か使用人とかいうんだっけとか考えていると、急に黒い首輪みたい
    なのを付けられた。それにしてはずっしりと重い。
     そうだ。あたしはこれを知っている。爆弾だ。
     目を白黒させるあたしに対し、国王姿の男は冷たく言い放つ。
    「その首輪は爆弾だ。もし貴様が何かよからぬことをしでかせば、その瞬間に起爆させる」
     嘘でしょう?あたしは言葉を失った。国王のポケモンになれば、いつかどこかで聞いたおとぎばなし
    のように、愛し愛されて自由に暮らせると心のどこかで思っていた。けどそれは甘かったの?
    奴隷は結局どこへ行っても奴隷のまま、愛は与えられず自由なんて夢?
     そんなこと、奴隷のあたしが望んでいいことじゃないのに望んだあたしが結局は馬鹿だったってことね。
    もう一人のあたしがそう耳元で囁いた。
    「これからお前を娘に託す。もし娘に何かしたら……わかっているな?」
     そうしてあたしは少女、ディアと出会う。急に入っていた箱を開けられ眩しくて目をぱちぱちさせていた
    あたしを抱きしめ、警戒するあたしをやさしくなだめ、名前までくれた。
    「今日からあなたは“ビアンカ”だよ!」
     嬉しかった。このあたしがここまで喜ぶんだから相当なものだったと思う。
     守ってあげたい。遊んであげたい。愛してあげたい。
     それと同時に湧き上がる憤りの感情。
     あの子のせいであたしは首に爆弾を付けられた。あの幸せそうな表情が憎い。憎い。憎い。
    すぐに両親に泣きすがるのがあたしへの侮辱みたいで。
     いつからかこう思うようになった。

     「あの子がいるから自由になれない」



    「ごめんなさいごめんなさぁい。パパもママも、あたしのせいで死んじゃったんだよねぇ。……うっひぐ。
    えぐ。どぉしたらいいのかなぁ、ねぇびあんかあああぁぁぁぁっ」
     だからあたしはあんなことをしたのかもしれない。
     クローゼットの中であたしを抱いて泣き叫ぶディアを見て、何故か唐突にどうにかして楽にして
    あげたいと思ったのだ。
    ここまではよかったのに。
     かつてとなりの言っていた言葉を思い出す。
    「知ってるか?人間ってなぁ、お前みたいに小さい奴でも喰えるんだとよ。何、手順は簡単さ。まず――」
     あたしはそのままの姿勢でできるだけがんばって体を伸ばす。そして彼女の細く白い首筋に
    思いっきり噛み付いた。
    「え……あ。びあ……んか?」
     それが最後の言葉となった。あたしは特に何も考えずにとなりの言ったとおりの手順を思い出し
    ながらその通りの場所に噛み付いていく。何も聞こえない。何も見てない。ただ。ただ目の前のことに
    集中して。楽しかった思い出がよみがえったりしたけどそれでも。
     ごちそうさまのころに、あたしは皮肉にも進化した。今までどんなことがあっても進化しなかったのに。
     クローゼットから出て、前より高くなった身長で辺りを見まわす。部屋の外はきっと火の海になってる
    ことだろう。ドアノブにも触れられないと思う。
     窓が少しだけ開いてるのを発見する。あたしは迷わず大きく窓を開け、窓枠に足をかける。
     そのとき、また唐突にもとなりの言葉を思い出す。
    「喰らうっていうのはなぁ。相手を自分の中に取り込むってことだ。だからなぁ。喰えば喰らった人間の
    姿になれるんだと」
     決断は早かった。やり方なんて知らなかったけど、知らないうちに叫んでいたからどうにかできたんだと思う。
    「でぃああああああっごめんなさああああああいっ」
     ディアになったあたしは逃げるようにそこから飛び降りた。



     
      ※




     「げほっげほっ。あー、やっと息ができる。……あ、ゲンガー放さないでくださいね」
     ゲンガーはわかってると言うようにニタリと笑う。両手にはゴチミルが持ち上げられており、せめて
    もの反抗かのつもりか、しきりに電磁波バチバチと青い火花を散らせている。しかし、レベルの差か、
    ゲンガーは平然と立っている。
     旅人は白いコートの中から手帳を取り出してゴチミルを見る。
    「あー、あったあった。これだこれだ。元王女のポケモンゴチム……今はゴチミルか。が王女を喰べて、
    それから城に訪れた人間を襲っては喰ってるっていう……。本当ですか?」
     青白い稲光に照らされた表情はどこか自嘲的に笑っていた。そして静かにどこか一点を見つめたまま「そうよ」と言った。
    「一体何故?」
     旅人が素直にたずねる。
    「何故ですって?」
     カラカラと笑って言う。
    「ねたましかったのよ。あの子が」
    「そうですか……」
     旅人は目を伏せる。その様子にゴチミルはばつの悪そうな顔をする。
    「…………」
    「…………」
     自分が話さないと会話が成り立たないことに気が付いた彼女はぽつりぽつりと語りだす。
    「……ほんとうらやましかったわ。いい子だったし、何よりあたしに優しくしてくれた。
    ……でもね。同時に妬ましかったのよ」
     一呼吸置いて続ける。
    「あの子はあたしにないものを持っていた。家族や友達。恵まれた環境っていうのもあったわね。
    まぁそのせいであの子の両親はあの子のことを馬鹿みたいに可愛がっていたものね。
    あの子も二人が好きだったけど、娘のポケモンの首に爆弾付けるのもどうかと思うわよ。全く……」
     また一呼吸。
    「……あの時、あの子に抱かれたあの状況であんなことを思ったのはただ単にあの子を救いたいって
    いうのもあった。
    でも、一番はあの子になりたかったのかもしれない」
     旅人は黙って聞いていた。話が終わったのを感じ、目を閉じてからゆっくりと瞼を開き、
    キッとゴチミルを見つめる。
    そして床に落ちてる銃を右手で拾う。
    「そういえば、あなたは一体何者なのかしら?」
     カシャンと銃を振って弾が入っているのを確かめる。
    「私ですか。うーん、なんでしょうねぇ」
     腕をしっかりと伸ばして銃を構える。マシンガンのような小さな白銀の銃の銃口はしっかりと
    ゴチミルの左胸に向けられている。
    ゲンガーがケケケと怪しげに笑う。旅人の紫色の視線がゴチミルを刺す。
    「私はただの悪者退治を頼まれた一介の旅人ににすぎませんよ」
     引き金を引く。崩れ落ちるゴチミル。ゲンガーだけがケケケと笑う。
    「おやすみディア……いや、ビアンカ嬢。良い悪夢を」
     ゲンガーが大きな口を開けてゴチミルの死体を丸呑みにした。
     旅人は振り返ることなく進んでいく。その後をてけてけとゲンガーが追いかけていった。


      [No.1642] 私を置いていかないで 投稿者:レイニー   《URL》   投稿日:2011/07/26(Tue) 13:12:52     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     最愛のあなたが、この世から姿を消した。もう世の中全てが幻でいいと思った。
     泣き疲れて何も考えられなくなった私に触れる者がいた。

     あなただった。
     抜け殻となって今も生き続けるもう一人のあなたが、現実(ここ)に存(い)た。

    ※99字(ルビ含まず)


    MAXさんの「あいつに置いて行かれたから」の影響を受けた模様です。


      [No.1641] 別れの時 投稿者:レイニー   《URL》   投稿日:2011/07/26(Tue) 13:10:35     33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     体が光り輝き、進化が始まる。自分から自分が出て行く、そんな感覚だ。
     僕から抜け出して自由になったもう一人の自分に別れを告げる。もう彼は僕ではない。
     彼は空を舞う蝉として、残された僕は抜け殻として、生きる。

    ※100字


      [No.1640] ピンホールカメラ 投稿者:レイニー   《URL》   投稿日:2011/07/26(Tue) 13:09:47     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     俺の趣味と、じっとしてるのが苦手なこいつとは相性が悪い。それでも俺は小さな箱で、写らないこいつを撮り続ける。
     出来上がる写真に、いつもこいつはいない。でも確かにここにいる。撮影する俺だけにはわかってる。

    ※100字


      [No.1639] 【書いてみた】昔話 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/25(Mon) 21:50:06     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     それからね、金色の綿鳥は死者を呼ぶ不幸の鳥だと、うまれてから殺されてしまうようになったんだ。
     そして決して歌うことを覚えさせたまま殺してはいけないと。

    でもこの子は違うもん。死者を呼ぶ不幸の鳥なんかじゃないもん!

     そうかもしれないね。けれどここで生まれたチルットはそうする定め。さあ、そのチルットを渡しなさい。
     でなければ。
     一生呪われてしまうのだよ


      [No.1638] 何の脱出ゲーム 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/25(Mon) 21:43:59     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    脱出ゲーム。
    それは不思議な空間やら、人為的空間やらで密室から脱出するゲームのことである。

    このようなクイズがあったり、鍵あけたりして、読んでいるとプレイしているような気分でした。
    話の趣旨と違いますが、私はそう感じて最後まで見てました。

    関係ないですがうちの子が興味あるようです。


      [No.1637] トワイライト 投稿者:紀成   投稿日:2011/07/25(Mon) 21:12:34     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    −●さんが入室しました−
    ●:こんばんわー
    △:こんばんわー●さん 遅かったですね
    ●:すみません、ちょっと電話してて
    △:電話?
    ●:ええ。嘘にしてはちょっとマジっぽく話すもんだから
    △:?
    −燐さんが入室しました−
    ●:ばんわー
    △:こんばんわー燐さん
    燐:気になったから入ってみました 何の話ですか?
    ●:あれ ご存知ありませんかー 最近じゃ見たって人も多いんですけどね
    燐:??
    ●:友達がねー

    黄昏堂を見たって言うんですよー


    一人の少女が、泣きながら道を歩いている。目元は真っ赤に腫れ、また頬も腫れていることからかなり長い時間泣いているようだ。
    『二学期にはね、学校行けそうなんだ』
    『そう、良かったね』
    そう言って笑った後で、彼の母親から聞かされた、真実。
    『あの子…あと二ヶ月ちょっとしか生きられないのよ』
    寒気がして、吐きそうになった。どうして。どうして。あんなに元気だったじゃない。またポケモンバトルできるって喜んでたじゃない…
    そこで、少女はふと立ち止まった。嗚咽がスッと止まる。彼女の見る先に、一つの建物があった。
    「…」
    綺麗なレンガ造りの建物だった。煙突がついてて、煙を吐き出している。まだ夏なのに…
    違和感がある建物だが、不思議と目を逸らすことが出来なかった。夕方の光が建物を照らして、とても素敵な雰囲気に見える。まるでおとぎ話の世界のようだ。
    誘われていたのかどうかは、分からない。だが少女は誘われるかのように建物に近づいた。木で造られたドアには、こんな立て札が。

    『黄昏堂 お悩みのある人はお入りください お力になれると思います』

    変なキャッチコピーだ。まるで悪徳商法みたい。それでもボロボロになった彼女の心は、自然とドアノブに手をかけるように命令していた―

    店内は英国を思わせる造りになっていた。絨毯が敷かれ、可愛らしい小花模様の壁紙が張られている。壁にはガラスに入れられた商品が展示されている。
    サイドに置いてある白木の机には、人形やポケドールが所狭しと並べられている。かなり精巧な作りだ。まるで生きているかのように。
    「素敵…」
    「いらっしゃい」
    ハッとして前を見た。いつの間にか、一人の女性が小さなソファに座っている。黒くて長い髪、蝋のような白い肌。そしてスラリとした長身。細い指が、煙管を巧みに操る。
    「あの」
    「分かってるさ。アンタの悩みは。いい子じゃないか。不治の病にかかったボーイフレンドを助けたいなんて」
    「なっ…」
    顔が真っ赤になっていくのが、自分でも分かった。
    「彼はボーイフレンドじゃありません!只の幼馴染です!」
    「はいはい。でも治してやりたいことに変わりは無いんだろ?」
    図星だった。だがそれでも良かった。本当のことだから。また一緒にバトルをしたい。一緒にバトルサブウェイに挑戦したい。
    「さて、出す商品が間違わないように最初から詳しく話してくれないか?」
    「…はい」
    言われるがままに、私は話していた。

    彼と私は、幼稚園の頃からの幼馴染。いつもはしゃいでドジばかりする私に比べて、彼は先に考えて行動するタイプの人だった。小学校に入ってから、彼は成績優秀のいい子、私は万年ビリに近い駄目な子のレッテルを貼られるようになっていった。
    でもそんな私に彼は構わず接してくれた。勉強も教えてくれたし、十歳になってポケモン取り扱い免許を貰った時も色々教えてくれた。先生よりも分かりやすいくらいだった。
    おかげで成績も中の上くらいまでになって、皆喜んでくれてたんだけど…
    それは去年の春頃だった。中学入学式に彼が来ていなかった。家は近かったから、帰りに見に行ったんだけど誰もいなかった。隣の人に聞いたら、一週間前に救急車の音が聞こえて以来、戻って来たのはお母さんだけだって。
    不安になって病院に行ってみた。彼は特別病棟にいた。その時は面会できなかったけど、後で聞いたら一刻を争う容態だったんだって。
    やがてお母さんに聞いたら、突然倒れて入院することになったんだって。その時はあんまり大事とは思っていなかった。彼おろか、私も。
    だけど彼が学校に来ることは無かった。会いに行く度にやせ細っていくのが分かった。昨日は調子がいいから面会できたんだけど、お母さんから聞いた。
    彼、癌だったんだ。あやゆる手を尽くしたけど、病状は悪化するばかり。このままいけば、あと二ヶ月。何とかしてあげたい。出来るなら、私が代わりに苦しみを背負ってあげたい。
    でもどうにもならない。どうすればいいの…

    途中からまた泣いていた。彼女は煙を吐き出すと、いつの間にか用意していたテーブルをこっちに寄せた。そして側にあった革の椅子を私に促した。
    「座りな」
    私は座った。彼女が一冊の本を取り出す。古めかしい、アンティークみたい。
    「彼を助けたい。そのためなら自分が苦しんでも構わない。…その気持ちに、偽りは無いね?」
    「…はい」
    「分かった。ならチャンスをやろう」
    本を開いた。絵が動いている。ポケモンのようだ。古いタッチで分かり辛いけど、多分これは…シャワーズと、イーブイ二匹、それにポチエナだ。目の前にある川を渡ろうとしているようだ。
    「話だけなら聞いたことがあるかもしれないな。川渡りパズルだ。ここにある通り、シャワーズとイーブイの親子、そしてポチエナが川を渡ろうとしている。それで…」
    彼女が言うには、こんな内容だった。
    『ポチエナとイーブイは、自力じゃ川を渡れない。そこでシャワーズが、口に咥えて運ぶことにした。ただし一度に運べるのは一匹のみ。しかもシャワーズが一緒じゃないと、ポチエナはイーブイと喧嘩してしまう。
    さて、無事に渡り切るにはどうすればよいか?』
    私は頭を抱えた。友達にパズル好きがいるけど、こういうのは見たことが無い。悩んでいると、彼女が思い出したように言った。
    「あ、そうそう。日没までに解けなきゃりゃ、商品はやらないからな」
    「!!」
    落ち着け。落ち着くんだ私。えっと、多分ポチエナを最初に…

    二時間後。午後五時五十二分。私は彼女に声をかけた。
    「解けました」
    「ほう」
    私は解説した。
    「まず最初に、シャワーズがポチエナを向こう岸に連れて行く。そして何も咥えずに戻って来る。次にイーブイ一匹を咥えて連れて行く。そしてポチエナを咥えて戻って来る。そしてまたイーブイを連れて行く。何も咥えずに戻って来る。そして最後にポチエナを連れて来れば、完成」
    彼女が笑った。見る者を不安にさせる笑みだ。ゾクリとする。
    「正解だ。じゃあ、それに見合った品を渡してやろうか」
    彼女が指を鳴らした。途端に、手の上に薬のような物が現れる。不思議な色合いだ。
    「ホウオウの羽を煎じて作った、フェニックス・ドラッグ。万病に効くと言われている」
    「これで、彼は元気になるの?」
    「ただしあくまでこれは薬。使っても、彼の気持ち次第では全く反対の結果を生み出すかもしれない」
    私は話を聞いていなかった。お辞儀をした後、走って店を出た。そう。彼女が不適に笑うのを見ずに…


    「キリ!良い物が手に入っ…て」
    病室のドアを勢いよく開けた私の目に映った物は、誰もいないベッドだった。カーテンが夜風に揺れている。白いシーツは全く乱れていない。
    「キリ?」
    「何」
    「うわっ」
    後ろに彼が立っていた。相変わらずの無愛想な顔だ。パジャマ姿も見慣れている。
    「こんな時間にどうしたの」
    「あ、あのね、さっき綺麗な物を見つけたから、見せてあげようと…」
    キリの顔は青白かった。ふらふらとベッドに座り込む。
    「どうしたの…」
    「知ってたんだろ。僕がもう永くないってこと」
    「え」
    キリの目が鋭くなっていた。今まで見たことがないくらい、鋭い目。
    「さっき屋上に行ったんだ。風に当たろうと思ってね。そうしたら僕の母さんとお医者様がいた。僕の話をしていたよ。もうあと二ヶ月ちょっとだって。なんて可哀想な子。
    …君は知っていたんだな!?知っていながら、知らないふりをしていた」
    「だって、キリを悲しませたくなかったから」
    「もう嫌なんだ!ずっと白の世界を見ているのも、ポケモンバトルができない生活も!僕のポケモンはもう僕のことを忘れかけている。たとえ回復したとしても、もう二度と僕はバトルが出来ないんだ」
    「そんな!」
    キリが睨んだ。
    「…もういい。出て行ってくれ。奇跡でも起きない限り、僕はもう」
    私はだんだん腹が立ってきた。そして気がついた時には―

    パン

    「…え」
    「何よ、このヘタレ!どうして諦めようとするの!?貴方を思って泣いてくれている人がいるのに!
    …貴方を思ってくれている人がいるのに」
    私の手から、薬を入れたビンが落ちた。パリン、という音と共に薬が消えていく。
    「奇跡だって、あるんだから!」

    私は走った。もう黄昏堂は閉まっているかもしれない。でも奇跡が起きたら―
    「そんなに慌てなくても、店は逃げないよ」
    後ろから彼女の声がした。側に一匹のゾロアークが立っている。まるで執事のように。
    「あのボーイフレンドの目を覚ます方法」
    「ええ」
    戻れない。もう戻ることが出来ない。

    「私を犠牲にして、彼の病気を無かったことにしてくれる?」


    ●:その友人が言うには、自分には六年生から中一までの記憶が全く無いって言うんですー
    △:へー キオクソウシツとかじゃなくて?
    ●:ちがいますよー でも時々、何か大切なことを忘れている気がするって
    燐:どんなでしょうね
    ●:で、今日の帰り道にコンクリで造られた建物を見つけて、今まで無かったから入ってみたら、すごく変な感じがしたっていうんです
    燐:デジャビュみたいな?
    △:何かロマンチックー
    ●:そしたら中にいたすっげー綺麗なお姉さんが、『待ってたよ』って
    燐:キターーーーー
    △:運命の出会いっすか
    ●:まだまだ そのお姉さんが一つの人形を差し出して、『もらってやってくれ』って腕に押し付けたんだそうです
    燐:人形!?
    ●:友人曰く、『何か気になるからもらっとく』って言ってそのまま持ち帰って部屋に置いてるそうです
    燐:うかつに女の子部屋に呼べませんねww
    ●:ですねー でも何か捨てたり出来ない感じだって言ってましたね あ ちょっと落ちます
    −●さんが退室しました−
    燐:おつかれです
    △:では私も
    −△さんが退室しました−
    燐:あらら 一人になっちゃった


    ソファに座って、マダム・トワイライトはパソコンを見つめていた。藍色の画面に、白い文字が映える。
    「人の口に戸は立てられず…か」
    「いいんじゃないか?広まれば広まるだけ、コレクションも増えるだろ」
    ゾロアークが紅茶を運んできた。オボンの実を使った、五味の紅茶だ。
    「それにしても、ちょっと残念だ。彼を人形にした方が雰囲気に合った気がする」
    「はいはい」
    ドアが開いた。マダム・トワイライトが立ち上がる。
    「いらっしゃい」


    黄昏時に現れる不思議な店、『黄昏堂』。
    貴方の知力、そして時には肉体と引き換えに、貴方の願いを叶えてくれる―

    ―――――――――――――――――
    以前チャットで音色さんに話した物。カクライさんでも大歓迎ですよ!
    ただしファントムと鉢合わせすることもあるかもしれないので、その点は。
    [来てもいいのよ]
    [実は着ぐるみ話の続編になるのよ]


      [No.1636] 漫画なのです 投稿者:音色   投稿日:2011/07/24(Sun) 18:35:09     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    なんか弟の二コマ漫画にありました実はww

    見抜かれるとは鋭い!

    【3分じゃなくて3秒ね】


      [No.1635] 感激……! 投稿者:イサリ   投稿日:2011/07/23(Sat) 18:59:58     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ラクダさん! 感想ありがとうございます!!
     自分にはもったいない言葉をいただいてしまって、嬉しいやら、恐縮するやら……でも嬉しいです!!

     この作品を書くにあたって、鳥使いの少女とチルットとの絆をどう表現するか、長い間考えました。
    「歌」をキーワードにすることは最初から決めていたのですが、どうすれば最大限に活かすことができるのかと。
     最終的に、チルット・チルタリスが覚える技「ほろびのうた」を暗示するようなラストに繋がるように、ストーリーを組み立てることにしました。

     文章表現に関しては『<自分が>最も読みやすい文体』を心がけるように書いています。つまり完璧に自分の好みです(笑
     創作の経験には乏しいもので、何が良くて何が悪いか論理的に分析するような知識がないため、せめて自分で何度も読み返してみて、一番突っ掛らずに読めるような文章を書きたいなぁと考えております。
     簡潔で読みやすい文体と感じてくださり、何よりでございます……!


     主人公が息を引き取るシーンは作品中で最も力を注いだ箇所でした。

     死の間際の人間の心情というものは、(当たり前ですが)自ら経験したこともなく、『幸いなことに』今まで身近な人から聞く機会もありませんでした。
     ですので、創作でそれを描くことには多少緊張も致しました。軽々しい描写は、生命の軽視とも捉えられかねませんから……。
     自分の価値観、人生観、死生観……それらが偏っていることは承知の上で、今の自分の経験でもって、でき得る限りの表現をしようと推敲を重ねました。
     その表現が読んでくださった方の心に響いたならば、これほど嬉しいことはありません。


     重いテーマの話になりましたが、これを書けて良かったと心から思えます。
     この作品を書く機会を与えてくださったことに、ただただ感謝しています。

     ラクダさん、本当にありがとうございました!
     これからも、よろしくお願い致します!!


      [No.1634] 忍法 投稿者:音色   投稿日:2011/07/23(Sat) 15:04:39     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    見えません。ばれません。自信があります。この技術。
    「あれー、なんでこの橋通れないんだ?」
    通せんぼ、通せんぼ。絶対ここは通しません。
    「あ!カクレオン!」
    デボンスコープ使われたら、見えちゃいましたか。

    ※輝さまリク
    ※98字


      [No.1633] 廃人は昔からいる 投稿者:音色   投稿日:2011/07/23(Sat) 15:04:04     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    フロンティア、それは未開の荒野を指す。
    バトルフロンティア、そこはポケモンバトルに置いて未知なる世界をさす。
    「フロンティアブレーン三縦してやった。バトルタワーの方が良いや」
    世の中、そんなもんなくとも恐ろしい奴はいるけど。

    ※流月さまリク
    ※109字


      [No.1632] ♂もいます 投稿者:音色   投稿日:2011/07/23(Sat) 15:03:03     29clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    鮮やかな桜色。それは恋の色、愛の色。
    ママンボウ「見た目と名前で♀っぽいって言われるけど俺納得いかねぇ」
    ラブカス「つーか見た目がハートだからって恋が長続きするとか意味ワカランww。勝手に決めんなww」

    ※流月さまリク
    ※99字詐欺


      [No.1631] 格闘姉貴は御医者様 投稿者:音色   投稿日:2011/07/23(Sat) 10:26:55     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     15キロのバーベルを片手でぶん投げる姉貴がいる、というとたいてい爆笑される。
     いやこれマジだから。


     喧嘩になった理由はよく分からん。
     久々に実家にかえってうろうろしていたら姉貴の部屋のドアが開いていて、机の下になんかの雑誌が落ちてんのが目に入った。
     だらしねぇな、とか思いながら拾ってやったらそれが格闘系スポーツ雑誌だった。
     姉貴の意外な趣味にへーってなりながら、付箋の張ってあるページを見たら『レンブ特集』なるものだった。
     四天王のあれか。格闘タイプの。俺の知っている知識は以上。
     とりあえず机の上に置いといてやった。

     飯を食い終わった後、何気なく「姉貴格闘タイプ好きだっけ」と話題を振ったら真っ赤な顔になった後、自分の部屋に飛び込んだ。
     その直後、バーベルが飛んできて俺の真横の壁に食い込んだ。
     わけが分からん。俺なんか変なことしたか?


     三日後に同じ話題を振ったら30キロが飛んできて俺の部屋のドアを破壊した。
     パプリカ貸しだしたら1時間で機嫌治ったけど。


     やっぱ格闘タイプが好きらしい。
     見るからに悪タイプだろう、と言われる俺にはぼこぼこにされる運命しか存在しないのか。
    「パプリカ、お前も格闘だろ」
     鼻をこすっていたパプリカはそっぽを向く。
     悪タイプもあるから弱点か。かといってさといもの奴も格闘タイプが弱点だったりする。
     姉貴対策にエスパータイプが欲しい。

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  久々に100字以上書きました。最近100字の楽しさにどっぷりつかってたからね、リハビリです。
    実を言うと「もう俺ポケモン卒業かな」とか思ってました。書けなくて。書かなくて。ピクシブとかに浮気してました(全くポケモン関係ない方で)
    しかしやっぱ楽しいですねポケモン。アニメとか。やっぱ当分卒業しません。留年します。永遠に。

    【俺ってこういうくだらない作品書く方が向いてるかもしれないww】
    【何してもいいはずなのよ】


      [No.1630] 金色悲話 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/07/22(Fri) 23:56:40     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     チャットにてお話の概要(歌わない・冒頭に注意書きがつく・悲話であるetc)を聞かせていただいたときから、もう嬉しくて楽しみで、どんな物語なんだろうとわくわくしっぱなしでした。
     昨夜マサポケを覗いてイサリさんの新作を発見、キターーーーー! と心中で叫びながら、拝読開始。

     まずこれだけは言わせてください。本当に、本当に素晴らしかったです!!
     表現力と語彙が貧困なので、読了直後は「凄い。これは凄い」の文字が頭を回るばかりで感想が書けませんでした……。反応が遅くなってしまって申し訳ありません。

     前半の小瑠璃と琥珀の生い立ち、中盤の見初められた彼女が迷いながらも心を決めて嫁ぐ場面。すっきりと読める文体、細やかな描写にのめり込みました。
     イサリさんの他の作品にも共通する、簡潔でありながら世界をしっかり表現することの出来る技量に憧れます。
     そして、一番好きだったのが終盤のこの場面。 

    >  妻が不治の病に罹り先が長くない。もう跡継ぎが望めないのなら新しい妻を娶るしかない――それ自体は仕様のないことかもしれません。
    >  ですが、自分はまだ生きていて、病の熱と苦しみに耐え忍んでいるというのに、夫はあたかも自分の死を待ち望んでいるかのように……。
    >  小瑠璃の中の夫への思いは、生涯連れ添うと誓った時の愛と同じ重さの恨みに姿を変えました。

    >  病に罹った苦しみ。
    >  夫の裏切りに対する恨み。
    >  生きることへの渇望。
    >  生きている者への妬み。
    >  それらを感じるみじめさ。
    >  ひっそりと枯れるように死んで、忘れられてゆく恐怖。

     この表現の仕方に、心を鷲掴みにされました。もうなんと言ったらいいのか……己の語彙力の無さが悔しいです。
     直後の苦痛にのたうつ描写の迫力、放たれた琥珀が、生まれて初めて全力を振り絞って歌う死の悲痛……。読んでいて心が締め付けられるような、しかし目が離せない不思議な魅力がありました。


     未だ興奮状態が覚めやらず、なんだか滅茶苦茶な感想になってしまって申し訳ないです……。
     軽い気持ちで放り出したネタを、こんなに素晴らしい物語にしてくださったことに大感謝しております。ただただ、このお話が好きです! 出会えてよかった! と叫びたい気持ちでいっぱいです。
     
     本当に、ありがとうございました!


      [No.1629] 【間違い探し】烏龍姫 投稿者:イサリ   投稿日:2011/07/22(Fri) 23:46:36     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     てこさん! 感想ありがとうございます!!

     ウーロン姫ww その発想は無かったww でもチルタリスはドラゴンが入っているので、それはそれでアリだったかも知れない(ぇ

     久しぶりにガチな作品を書きました。どれくらいかというとコンテスト以来です(汗
     中国風と言われて、なんだか自分でも納得してしまいました。確かに中国の逸話にはこういうのありそうですね。薄命の佳人の伝説とか、ちょっと怖いのとか(笑
     時代考察は苦手中の苦手分野ですので、どうにか克服したいものです。
     よし、もっと和風の物とか幅広く読もう! さしあたり「赤いろうそくと人魚」が読みたくなった私でした。

     絶命のシーンは(引かれるかなと思いつつ)一番力を入れて書いたところですので、そう言っていただけて非常に嬉しいです。色々調べて書いた甲斐がありました!

     今回の作品は、コンテスト提出作と比べて、気持ち改行と段落分けを多くしてみました。
     どんな風にしたら、マサポケ掲示板で見やすいかな〜と色々やってみましたが、まだまだ探索中です。次に書くときはまた変わっているかもしれません。

     私の執筆歴はお粗末なものですので、実年齢はともかくマサポケに関してはてこさんの方が先輩です。 てこ先輩! 尊敬してますぜ!


     読んでくださり本当にありがとうございました!


      [No.1628] うおー!!! 投稿者:リナ   投稿日:2011/07/22(Fri) 23:43:47     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     ついに、ついにキター!!w

     感想遅れて申し訳ありません汗
     無茶ぶりに答えてくれた巳佑さん、本当にありがとうございます。

     さすがわらわっちや長老様の生みの親! 世界観の展開がとてつもない!


     1:同時並行でツイッター罰ゲーム生中継……だと? 臨場感☆☆☆

     2:エースが出てきた時は「やりおった……」と思いました汗 ふう、ただの海族かぶれだったかw

     3:フェモ――相変わらずw

     4:オチがすっきり! いやいや、ここでビキニ出てくるとは。

     5:白状すると、最初暗号が読み解けませんでした泣 犯人はやっぱこいつか。

     6:欲を言えば、スケベクチバシは最後殺ってもよかった (ちょ


     とにかく、感無量です。ありがとうございました!!


      [No.1627] 流石御神体。 投稿者:乃響じゅん。   投稿日:2011/07/22(Fri) 09:53:14     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ゴルーグのホワイト版図鑑を元に書かれたお話なのですね。
    ただただ取り返すためだけにやって来たような風なのに、しっかりと盗賊達に反省させたゴルーグ。
    その圧倒的な力、神様っぽいです。

    ブラック版では胸の封印を剥がすと力が暴走するとありますが、鉛が埋め込まれていたということは、それはやっぱり鉛のエネルギー?

    ロマンあふれるポケモンですよね、ゴルーグ。


      [No.1626] をぅ 投稿者:Teko   投稿日:2011/07/22(Fri) 03:03:24     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     ども、てこです。ぱっと見、ウーロン姫と読みかけてぶるわぅあぅあああってなりました。どもです。

     実を言えば、久々にマサポケの作品を読んだのですが、うぅむ、イサリさん、いややっぱりイサリ先輩だなうん。

     なんか、中国っぽい感じがしました!日本と言うよりかは中国系の説話にありそう。漢文とかになりそう。
     色違いのチルットはかわいくてよいですね。

     語彙力の豊富さもさることながら、息絶えるシーンはマジでやばいです。感情がストレートに伝わってきます……。こういうふうに感情を伝えるシーンで、私はやたらくどくやってしまいがちなのですが、くどくせず、しっかり伝わってくる……イサリ先輩!語り手視線というのも、なかなかいいなぁと思います。

     あと、一段落が割りと短めですよね。こんな書き方もあるんやなぁと、心に留めておきます。

     
     久々にしっかり読みました(みなさんすみません
     次を楽しみにしています。散文でごめんなさい><


      [No.1625] タイトル詐欺の可能性 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/07/21(Thu) 23:40:44     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     遅くなって申し訳ありません、感想ありがとうございます!

    > 欲をかきすぎて全て失う話は昔話には結構多いですね。
     
     そう、それを書きたかったんです。よくあるタイプの「欲張りすぎちゃいけないよ、酷い目に遭うよ」なお話が。自己犠牲は嫌いですが、自業自得は割合好きです(
     昔話はけっこうあからさまな(そして結構無茶な設定の)訓話が多い気がするのですが、鼻につくことなくさっくりと読める話が多いのは、あの独特の軽くて優しい語り口のお陰なのかなー、と。
     それを真似てみようとしましたが……なんだろう、何かが違う気がするorz

    > 何事もほどほどに・・・

     全くもってその通りです。

    > ジュペッタさんっぽかった

     そう、ジュペッタさんも出したかった、ゴーストポケ大集合で百鬼夜行したかった! のですが。第一世代のみ、という縛りを課していた為、残念ながら限られた面々しか使えなかったのでした。
     というか、元々はゲンガーさんが男を憑き殺す話、くらいにしか考えていなかったのに。気が付けば、彼女は子分を従えて恨み周遊の旅に出てしまいました……。この結末は自分でも予想外でした(笑) 
     根底には恐らく、017さんのサイトに展示されている「百鬼夜行」と、漫画「百鬼夜行抄」があったのものと思われます。

     改めまして、感想をどうもありがとうございました! 嬉しかったです!


      [No.1624] 鳥籠姫 投稿者:イサリ   投稿日:2011/07/21(Thu) 21:58:55     171clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    *注意* この話には、人によって不快に思われる描写(流血など)が使われています。苦手な方はご注意くださいませ。











     昔むかし、豊縁地方の山間の寒村に、小瑠璃(こるり)という少女がおりました。

     彼女の家は代々、鳥使いを生業としておりました。
     豊縁に棲む鳥の一種で、綿鳥(わたどり)と呼ばれるものがおります。青い羽毛と綿雲のような翼をもったその鳥は、人に良く懐き、美しい声で歌を歌います。
     綿鳥は幼鳥のころは愛玩用として、成鳥になれば人が空を渡るための手段として重宝されます。
     そのため雛のころから人に慣らされた綿鳥は、位の高い人々に高値で買い取ってもらえるのでした。


     ある年、小瑠璃の家に変わった綿鳥が生まれました。標準的な鳥達が空色の羽毛を持っていたのに対し、その鳥の羽毛は黄金色に輝いていたのです。
     長年綿鳥を扱ってきた小瑠璃の両親も、このような色の鳥は見たことも聞いたこともありません。
     両親は不思議に思いながらも、金色の綿鳥を愛玩用として育てることにしました。毛色の変わったその鳥に高い値をつける好事家もいるだろうと考えたのです。

     そして両親は小瑠璃に、金色の鳥の世話をするように言いました。綿鳥に歌を教えるためです。
     彼女の歌声は鈴を転がすように美しく、その歌声をまねて覚えた綿鳥は、愛鳥家にとても評判が良かったのです。
     小瑠璃は金色の綿鳥に琥珀(こはく)という名を付けて、ことさらに可愛がり歌を聞かせました。

     しかし、琥珀が成長するにつれ、とある問題が発生しました。
     琥珀と同時期に生まれた鳥たちはもうとっくに生来の囀り方を覚え、小瑠璃の歌を不器用ながらも真似するようになったのですが、彼だけは一声たりとも鳴かなかったのです。
     歌を教えるのは諦め、人を乗せて空を飛ぶのに耐えるための訓練をつけようともしましたが、こちらも思うようにいきません。他の鳥たちに体力的に明らかに劣り、長時間飛び続けることができないのです。
     周りの鳥たちが次々と進化してゆく中、彼だけはいつまで経っても幼鳥の姿のままでした。


     それでも稀に、琥珀を買いたいという者が現れることがありました。別段役に立たずとも、金色の鳥は縁起が良いので飾っておこうというのです。
     小瑠璃の父は満面の笑みでその取引に応じるのですが――どうしたことでありましょう。
     琥珀を買った客は数日も経たぬ内に、決まって返しに来るのです。
     理由を尋ねる父親に、ある客はしかめっ面で、こう怒鳴りつけました。

    「餌も食わぬ鳥を売りつけて一体どうするつもりか。これでは育つ訳がないだろう」

     そうなのです。琥珀と名づけられた金色の綿鳥は、小瑠璃の細い手からでなければ、決して餌を摂ろうとしないのでした。


    「これでは、いかに見目が良くても売り物にならん」

     小瑠璃の父は長い溜息を吐きました。

    「例え売り物にならなくても、私が最後までこの子を育てるわ」

     だから処分してしまうのはやめて、と小瑠璃は必死に訴えます。
     琥珀に一心に愛情を注ぐ娘の様子に、両親はとうとう売るのを諦めたようでした。

     琥珀は自ら歌を歌うことはありませんでしたが、誰かが歌うのを聴くのはとても好きなようでした。
     他の綿鳥たちが互いに軽やかな旋律を交し合っている時も、目を細めて嬉しそうに聴き入ります。
     囀りの歌は綿鳥たちの意思疎通。
     彼の血に眠る本能がそうさせるのだと、小瑠璃は感じ取っていました。




     月日は矢のように流れ、小瑠璃は愛らしい少女から、目の醒めるほど麗しい女性に成長しました。
     その美しさは人々の口に上り、山麓の町の領主の耳にも届きました。

     小瑠璃の家から何度か移動用の成鳥を買ったことのある領主は、気まぐれに噂の鳥使いの家を訪れ、垣間見た彼女の美しさを一目で気に入りました。
     そうして後日、ぜひ彼女を妻として迎えたいと使いを寄越したのです。

     貧しい鳥使いに過ぎない彼女の家には、信じられないような良縁でした。
     両親は大喜びし、すぐにささやかながらもでき得る限りの婚姻の用意を整えようと相談し始めました。

     まともに会ったこともない男の元へ嫁ぐことに対し、小瑠璃本人は複雑な思いでした。
     しかし、両親の喜びようを見ると、とても嫌とは言い出せません。
     豊かな山麓の町からの援助なしには立ち行かない寒村で、領主からの縁談を袖であしらったとなれば、後々家族がどのような憂き目に遭うか、彼女はよく理解していたのです。
     最初から、彼女に選択権は無いも同然でした。

     返事を促された小瑠璃は、一つだけ条件を付けました。

    「綿鳥の琥珀もお屋敷に連れて行ってよろしいのならば、その縁談を喜んでお受けいたしましょう」

     使いの者は笑って答えます。
    「綿鳥の一羽や二羽、飼うくらい造作もないことよ」


     そうして縁談はとんとん拍子でまとまり、小瑠璃は夫となる男性と対面することになりました。
     領主は八つ年上の長身の男で、武芸に優れると聞いていた通り、たくましい体躯をしています。
     いかめしい顔つきは、頼りになりそうだとも思えました。
     何より自分を愛してくれるこの男性に、小瑠璃は生涯尽くして行こうと心の中で誓いました。


     婚礼の宴は町をあげた華やかなものでした。
     貧しい鳥使いの家では一生着ることもない、豪華な着物に身を包んだ小瑠璃の姿に、両親は涙を流します。
     幸せそうに微笑む彼女の上を、金色の綿鳥がきらりきらりと輝きながら舞っていました。



     陽溜まりのように穏やかで暖かな日々でした。
     小瑠璃は夫を愛し、夫は小瑠璃を愛しました。
     後は跡継ぎさえ生まれれば、すべてがめでたくおさまるだろうと誰しもが思いました。

     しかし、その幸せな日々は儚くも終わりを告げることとなったのです。


     婚礼から一年がたった頃、小瑠璃は毎日続く咳と火照るような熱に悩まされるようになったのです。
     新しい屋敷での生活に気が張って疲れが出たのだろうと、初めは軽く捉えていた彼女ですが、咳は治るばかりか日増しに酷くなってゆきます。
     寝床から起き上がることさえ億劫になった彼女を見て、これはどうもおかしいと判断した夫は、腕の良いと評判の医者を呼びました。
     そうして明かされた事実は、彼らにとって受け入れ難いものでした。


     彼女を診察した医者は、最後に首を横に振り――その当時、不治の病と恐れられた疫病の名を告げたのです。


     高熱が続き、寝たきりになった小瑠璃を、夫は離れ屋の一室に閉じ込め、決して顔を合わせぬようになりました。
     表向きは床から起き上がることもままならない彼女を養生させるため、しかし実のところは疫病が自分に及ぶのを恐れたためでしょう。
     その部屋を訪れるのは日に二度の食事を運ぶ女中と、妻の病状を言いふらさぬよう金で口止めされた医者だけでした。
     大金を払って探し求めた、万病に効くという異国の薬草も効果を示しません。
     有効な治療法が存在しなかったその時代、不治の病に侵された小瑠璃は、ただただ鳥籠のような部屋の中で死を待つ他になかったのです。

    「琥珀は元気にしているかしら」離れに移って数日後、小瑠璃は女中に尋ねました。

    「鳥の世話なら大丈夫でございます。毎日朝晩、私が青菜を食べさせていますわ」

    「……琥珀は、私の手からでないと、餌を食べてくれないでしょう。今頃、やせ細っていないか心配で……。彼を、この部屋に置いてもらえないかしら」

    「いけませんわ、奥様」女中が、この時ばかりははっきりと言い放ちました。「羽毛が散って、お体に障ります」
     肺の病をお持ちなのに――と女中が憐れむように言いました。

     結局、琥珀の鳥籠は、離れの部屋の窓の外に置かれることになりました。
     小瑠璃の声が届く位置にはあるようですが、窓が高いところにあるために彼女がその姿を直接確認することはできません。
     琥珀は一声も鳴くことはありませんでしたが、時折、翼をはためかせる音だけが微かに響いてきます。
     小瑠璃は琥珀に話しかけ、体調の良い時には、彼の好きだった歌を歌って聴かせてやるのでした。



     小瑠璃が病の床に伏してから幾月か流れ、彼女は自分の命がもう幾ばくも残っていないことを感じていました。
     咳をするたびに喀出される痰には血の泡が混じります。全身を病魔に侵され、体の節々に感じる痛みは骨まで届きます。
     食事を受け付けない体は日に日にやせ衰えてゆきました。
     夕刻になると熱が上昇し、苦しみも増します。そんな時、彼女は朦朧とした意識の中で、遠くない死を思うのでした。

     それでも彼女は、夫のことを信じていました。疫病を患った妻など、しかも貧しい身の上の女など、すぐに離縁されて追い出されても文句は言えないご時世です。
     自分をここに居させてくれるのは、夫がまだ自分のことを愛しているからだと疑ってはいませんでした。



     そしてある日、遂に彼女は部屋の上部に取り付けられた窓から、使用人たちの話し声を聞いてしまったのでした。
     屋敷の主人が新しい妻を決めたらしい。既に迎える準備も始めたようだ――と。

     彼女の悔しさはどれ程のものだったでしょう。

     妻が不治の病に罹り先が長くない。もう跡継ぎが望めないのなら新しい妻を娶るしかない――それ自体は仕様のないことかもしれません。
     ですが、自分はまだ生きていて、病の熱と苦しみに耐え忍んでいるというのに、夫はあたかも自分の死を待ち望んでいるかのように……。
     小瑠璃の中の夫への思いは、生涯連れ添うと誓った時の愛と同じ重さの恨みに姿を変えました。


     小瑠璃は食事を運んできた女中に、琥珀の鳥籠をすぐに持ってくるよう命じました。
     お体に障りますので、と以前と同じ理由をつけて断ろうとする女中に、小瑠璃は食い下がりました。

    「自分がもう長くはないのはわかっています。だからせめて、この意識がしっかりしているうちに最後のお別れをしておきたいのです」
     あの人は、もうここへは来てくれないでしょうから、と続けた言葉は涙混じりになっていました。

     その言葉に心を打たれたのか、最期くらいはお好きなようにと思っただけなのか、女中はしぶしぶ鳥籠を小瑠璃の部屋へ運んで来てくれました。

    「ありがとう。……しばらく琥珀と二人にさせて」

     その言葉に女中は頷き、黙って部屋を出て行きました。


     数か月ぶりに見た琥珀は、彼女の恐れていた通り、枝のようにやせ細っていました。綿のような翼だけがふわふわと体を包んでいます。
     やはり、与えられた餌にほとんど口をつけていなかったのでしょう。 


    「ねぇ、琥珀。……私はもうすぐこの鳥籠から出ていくわ」

     ――死の神が私に寄り添って、連れ去ってしまうのよ。

    「だから、あなたももう自由になってもいいのよ」

     ――でも最後に、この歌を聴いて行って。


     小瑠璃は歌います。最期の歌を。歌うことが危険であると知りながら。

     病に罹った苦しみ。
     夫の裏切りに対する恨み。
     生きることへの渇望。
     生きている者への妬み。
     それらを感じるみじめさ。
     ひっそりと枯れるように死んで、忘れられてゆく恐怖。

     言葉で重ねきれぬ思念が脳裏を駆けめぐり、呪詛のように喉から発せられます。もはや悲鳴のようでした。


     歌が終わる刹那、喉に鮮血が溢れました。
     致命的な大喀血。血が気管に流れ込み、呼吸の出来ない苦しみに小瑠璃はのたうちまわりました。霞んでゆく意識の中で、彼女は最後の力を振り絞って鳥籠の蓋を開け、琥珀を解き放ちました。
     彼は倒れ伏した彼女の上を二度三度旋回し、上部の窓から夕暮れの空へ飛び立ってゆきました。

     異変に気づいた屋敷の者が、すぐさま医者を呼びにゆきました。しかし、駆け付けた医者にも、もう手の施しようがありません。
     領主が見たものは、すでに昏迷に陥った妻の姿でした。
     結局、小瑠璃は意識を取り戻すこともなく、病状は悪化の一途をたどり、翌日帰らぬ人となりました。
     彼女の遺体は荼毘に付され、手厚く葬られました。


     小瑠璃の死が告げられて以来、山麓の町には奇妙な噂が飛び交いました。
     黄昏の町の上空で、美しくも禍々しい歌を歌う者がいるというのです。
     泣くが如く、嘆くが如く、喉も裂けよと言わんばかりの悲痛な叫びを聞いた人々は、何とも表現しがたい恐怖に襲われ、あわてて自宅に逃げ込みます。
     領主の妻の亡霊が黄色い人魂となって墓地へ飛んでゆくのを見たと、まことしやかに話す者さえ現れました。人々が囁き合う不吉な噂は次第に誇張され、災いの気配に誰もが怯える程でありました。


     屋敷から飛び去った綿鳥は、夕暮れの町を飛び回りながら、生まれて初めて歌を歌いました。
     今際に小瑠璃から聞いたその歌――恨みと絶望と悲しみで織り込まれた死の歌を。
     もう何も食べることも、休むこともなく、血を吐くまで鳴き続けます。
     歌の終わる時が自らの命も尽きる時と、覚悟を決めているかのようでした。


     一月ほど後のこと。金色の綿鳥の成鳥が、道端に物言わぬ姿でうずくまっているのが見つかりました。
     真相を知った町の人々は、その鳥と、主であった女を憐れみ、その亡骸を彼女の墓の隣に葬ってやったということです。






    ---------------------------------------------------------------------


    よろず板の【読みたいネタを書くスレ】に投稿された、ラクダさんの「歌の下手なチルット」ちゃんをお借りいたしました。
    一目見た時から、いいなぁ、書いてみたいなぁと思っていたのですが、中々ストーリーが浮かばず悶々と。
    先日いきなり「これだ!」と思えるネタが浮かんだので、チャットにてラクダさんに許可をいただき書かせていただきました。

    でもチルットちゃん、「歌が下手」というより殆ど歌ってないのよね orz
    ほのぼのとしたお題だったにも拘らずこんな殺伐とした悲劇になったのはひとえに私のせいです本当にすみません;;
    そして憧れの豊縁昔語風の語り口にしようとして撃沈☆ 足元にも及びませんでした。鳩様ごめんなさい
    タイトルは、大好きな谷山浩子さんの楽曲よりお借りしました。


    ネタを提供してくださったラクダさんには感謝をしてもし尽くせません。
    お読みくださり、ありがとうございました!!



    【書いていいのよ】
    【描いていいのよ】
    【批評してもいいのよ】


      [No.1623] 同じ “好き” と違う “嫌い”  投稿者:ふにょん   投稿日:2011/07/21(Thu) 15:45:05     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     同じ世界 違う時間
     同じ物 違う物
     同じ気持ち 違う気持ち

     楽しい 悲しい うれしい さみしい
     受け取る気持ちは同じでも
     感じる重さはそれぞれ違う

     同じ好きだと言う気持ち
     違う好きだと言う気持ち
     同じ嫌いと言う気持ち
     違う嫌いと言う気持ち

     あなたは何が好きですか?

     かわいいところ? かっこいいところ?
     柔らかなところ? つやつやしたところ?
     炎のように熱いところ? 氷のように冷たいところ?
     草のように爽やかなところ? 水のように美しいところ?
     ただただ好き…………それもいい
     
     好きがあるなら嫌いもある
     自分は好きでも他人は違うかもしれない
     
     あなたはどんなところが嫌いですか?

     怖いところ? 弱いところ?
     ぬめぬめしてるところ? どろどろしてるところ?
     炎のように暑苦しいところ? 氷のように寒いところ?
     草のように青臭いところ? 水のように暗いところ?
     ただただ嫌い…………それもある

     同じ物でも 同じ生き物でも
     同じポケモンでも
     感じかたは人それぞれ

     “思い” と “想い”
     “喜び” と “悦び”
     “悲しみ” と “哀しみ”
     
     同じようで 同じでない
     同じでないようで 同じ
     

     “違い” の数だけ “同じ” があって
     “同じ” の数だけ “違い” がある
     
     “好き” の数だけ “嫌い” があって
     “嫌い” の数だけ “好き” がある
     ………でも “嫌い” だけで終わらせないで
     すこしでも “好き” な所を探してあげて……

     それが、今できる、最初の一歩だから
     すべてを “好き” になれと言っている訳じゃない
     “嫌い” なところがあってもいい
     ただ 全てを嫌わないでほしいだけ…………

     あなたはどんなところが “好き” ですか?








    ___________________________

     急に書きたくなって………
     それとなーく意味を理解してもらえれれば充分です
     最近何にも好きになれないやつがこんなこと書いてていいのか
     これは自分へのメッセージかもしれませんね

     では、こんな意味不明な文章読んでくれてありがとうございました



    [書いても描いてもいいですよ]
    [意味不明ですね]
    [スランプ中みたいです]


      [No.1622] クイタラン、どうして喰い足らん。 投稿者:音色   投稿日:2011/07/20(Wed) 23:48:43     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    クイタラン、喰い足らん。喰い足らない理由を考えた。
    クイタラン、喰い足らん。お腹が鳴って思考中断。
    クイタラン、喰い足らん。栄養がないと頭も回らん。
    クイタラン、喰い足らん。考えるために食い物探し。

    ※96字


      [No.1621] クイタラン、それでも喰い足らん。 投稿者:音色   投稿日:2011/07/20(Wed) 23:39:01     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    クイタラン、喰い足らん。果樹園一つ食い尽し。
    クイタラン、喰い足らん。町の食糧倉庫を食い尽し。
    クイタラン、喰い足らん。食えるものなら何でも食った。
    クイタラン、喰い足らん。それでも胸と腹はすっかすか。

    ※98字


      [No.1620] クイタラン、まだまだ喰い足らん。 投稿者:音色   投稿日:2011/07/20(Wed) 23:32:49     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    クイタラン、喰い足らん。洞窟出てから数カ月。
    クイタラン、喰い足らん。あれこれうろうろ食べ歩き。
    クイタラン、喰い足らん。それでもやっぱり喰い足らん。
    クイタラン、喰い足らん。満腹夢見て喰い歩く。

    ※95字


      [No.1619] クイタラン、やっぱり喰い足らん。 投稿者:音色   投稿日:2011/07/20(Wed) 23:28:55     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    クイタラン、喰い足らん。減らしたお腹はペッタンコ。
    クイタラン、喰い足らん。とうとう洞窟を出ていった。
    クイタラン、喰い足らん。鋼鉄蟻は喜んだ。
    クイタラン、喰い足らん。今日も何処かで喰い足らん。

    ※95字


      [No.1618] 【パスもらいました】 タロウ・ウラシマ(嘘にもう一つ嘘を) 投稿者:巳佑   投稿日:2011/07/20(Wed) 20:46:44     99clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――

     Sukebekutibashi@罰ゲーム

     今、ソルロックとの勝負で負けて、罰ゲームやっているなう。

     デボツイから  3時間前

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――

     Sukebekutibashi@罰ゲーム

     罰ゲームの内容:ビキニのおねえさんの水着をエスパーの力で脱がせ。そしてその状況を随時ツイッターで報告すること。

     デボツイから  3時間前

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

     Sukebekutibashi@罰ゲーム

     というわけなので、今、オレがやってることはあくまで罰ゲームであって、オレ自身の意志ではない! 断じてない! そこら辺は理解しておけよ!

     デボツイから  3時間前

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――

     SL6@傍観者 

     @Sukebekutibashi 説得力がないぞ、スケベクチバシ。

     デボツイから  3時間前

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――

     みろわろす@殿方と一緒☆ 

     @SL6 黙れ☆ 小僧☆ お前にスケベがすくえるか!? 

     デボツイから  3時間前

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――

     Sukebekutibashi@罰ゲーム

     @MIROWAROSU ちょ、それが言いたかっただけだろ!! それとスケベで止めるなぁ!  

     デボツイから  3時間前

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――

     SL6@傍観者

     @Sukebekutibashi いいから、集中しろよ。スケベ。

     デボツイから  3時間前

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

     Sukebekutibashi@罰ゲーム

     @SL6 黙れよ羅針盤。  

     デボツイから  3時間前

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

     Urashima@船

     @Sukebekutibashi @SL6 お前ら仲いいだろ?

     デボツイから 3時間前

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    【1】

     海は穏やかに何処までも続いている。
     波は荒ぶることなくたゆたっていて、見上げれば、空は澄み渡る青色が広がっていて、まばらに散っている雲が流されては様々な形に変わって、見る者を楽しませている。
     キャモメやペリッパーは気持ち良さそうに飛んでいて、海からは時々テッポウオがピョンピョンと小さい孤を描きながら、跳ね現われる。
     風はゆったりとした追い風で、ある一隻の船はゆっくりと進行していた。
     このゆっくりとした船旅、船内も落ち着いているかと問われると――。

    「ありったけの夢を〜♪ かき集め〜♪」
    「探し物を〜、探しに行くんだ〜☆」
     
     そうでもなかったよ!
     めちゃくちゃ楽しい雰囲気丸出しだよ!
     一人の男と一匹のミロカロスが甲板で楽しそうに歌ってるよ!
     そして、あまりの明るさに文体が変わっちゃったよ、どうしてくれる!? 
     
     それにしてもミロカロスの方はハキハキとしたいい声(多分、歌手デビューとかしたら即トップクラス入りすると思うなぁ)なんだけど……かたや、もう一人の男、なんか外しすぎているような気がする。二億人を敵に回しそうな外しっぷりだ。
     それでも、ミロカロスは楽しそうに歌い続けるし……まぁ、何事も楽しんだもん勝ちだよね☆

    「ねぇ、ウラ様〜。このままワタシ達で海賊王目指さない!?」
    「いや、遠慮しときます」
    「うぅ〜いけずなウラ様。でもそういう堅実なところも好きよ☆」

     堅実かどうか分からないのだけど……ウラ様と呼ばれたタロウ・ウラシマは困ったような顔をしているね。
     対して、ミロカロスのフェモニールはニコニコ明るい笑顔をウラシマに振り撒いてるよ!
     
     さて、そろそろよい子にも分かる(かどうか保証できないけど)事情説明の時間にしないとね☆  
     ある日、サングラスをかけたゼニガメのジョニーに漁師のウラシマは、強引に竜宮城に連れて行ってもらってね、そこでボスと呼ばれているミロカロスのフェモニールさん率いるポケモン達と宴をしたんだ……お酒を飲んだりしてうらやましいなぁ、じゅるり。
     その後ウラシマは帰り際に小さい玉手箱を受け取ってさぁ、家に帰って、玉手箱を空けたら……あら、ビックリ! 煙……じゃなくてモンスターボールが! 
     そしてそのモンスターボールを開けたら煙がモクモク! 
     そしてそしてウラシマはおじいちゃんになってめでたしめでたし……にはならず、ミロカロスのフェモニールが出てきたんだよね。
     フェモニールによると煙は演出だってさぁ。

     すっごい紛らわしいよね!(イラッ☆) 

     まぁ、そういうわけで宴を開いてくれたフェモニールをそのまま無下に帰すわけにもいかなくなったウラシマは暫く、フェモニールと暮らすことになったとさ!
     多分、一ヶ月ぐらい滞在するってフェモニールは言ってたなぁ。

     さてはウラシマを竜宮城にスカウトしようとしてんな!(キラッ☆)

     ささ、ある程度の説明は終わったし、ウラシマとフェモニールは今何をしているかというと……。
     ご覧の通り出航していて、漁をしているというわけ。
     網を仕掛けたポイントの所に向かって、獲物がかかっているかどうかを調べに行っているところだよ。

    「でも、ウラ様〜」
    「ん?」
    「ワタシ達なら、絶対、海賊王になれると思うんだけど……ネッ☆」
    「そんなにキラキラな目を見せても、やらないと言ったら、やらないです!」
    「だいじょ〜ぶ☆ ワタシ機械に強いから☆」
    「そっちの海賊ですか!! なおさら嫌ですわ!」

     ん〜この一人と一匹、中々似合いそうな感じがするのはきっと気のせいではないはず!
     とまぁ、ウラシマとフェモニールがピーチクパーチクと談話を交わしていると――。

     ドーーーーーーーン☆☆☆
     バシャーーーーーン☆☆☆
     
     何やら、発射された音がしたかと思いきや、次の瞬間には派手なスプラッシュが大きく空を待舞ったぞ!?
     今まで話に夢中になっていたウラシマとフェモニールが気付いたときには、前方100メートル先に佇む黒い船が一隻、ウラシマの船に進路を向けているのが分かったんだ。
       
    「逃げましょうか」
    「え? どうして〜?」
    「どうしてって! あの旗を見れば一目瞭然でしょ!?」

     ウラシマがそう叫びながら指で示した先の旗には、ドクロマークに白いシルクハットが描かれているけど……うん、これって俗にいう海賊だよね。
     このまま海賊に捕まってしまったら、間違いなくウラシマは身包みをはがされて海にぽぽぽぽーん!
     そしてフェモニールはもしかしたら娼館みたいなところに連れさらわれてしまうかも!? 
     確かにこれは逃げた方がいいに決まってる!
     ウラシマも職業柄、海賊で被害にあった漁師の話を聞いたことがあったみたいだけど、まさか自分に降りかかってくるとは思わなかったみたいで、歯をガチガチ鳴らし始めているよ。恐怖感が臨界点を突破しないか不安だね。
     さ〜て、さっさと逃げる為に行動を――。

    「……フェモニールさん」
    「ん〜? な〜に?」
    「どうして巻きついてくるんですか?」
    「え〜ウラ様、逃げちゃ駄目よ〜☆」

     こうして、動けないウラシマの船に、黒い海賊船が徐々に近づいていってきてるね。
     冷や汗垂らりなウラシマに対して、キラキラ笑顔を見せるフェモニール。
     ちなみに巻き付き方がエロイとか、そういうのは読者様の想像にお任せするね!

    「海賊に会いに行きましょっ☆」
    「い〜や〜だ〜〜〜〜!」

     ウラシマの悲痛な叫び声も虚しく、結局、海賊船はウラシマの船の隣までやって来ちゃったよ。
     果たして、ウラシマとフェモニールはどうなっちゃうんだろうね〜?
     あ〜んなことされたり、こ〜んなことされるバッドエンドにならなきゃいいんだけど。
     え? 他人事に聞こえる? 

     だって、ここで三人称の語り部交代だもん。
     
     だから、後のことは知らないんだよ。
     というわけで、後、よろしくね〜☆


    ―――――――――――――――――――――――――――――
     Sukebekutibashi@罰ゲーム

     とりあえず、手頃なビキニのおねえちゃん発見。とりあえずあの子をターゲットにすることにしたなう。

     デボツイから  2時間前

    ――――――――――――――――――――――――――――― 
     Sukebekutibashi@罰ゲーム

     あんまり騒ぎになってもアレだから、人の少ない孤島のビーチで都合のいい茂みに隠れているなう。

     デボツイから  2時間前

    ――――――――――――――――――――――――――――――
     原画@見守り中

     ターゲットの容姿とかを教えろや。それか画像うp! うp!!

     デボツイから  2時間前

    ―――――――――――――――――――――――――――――――
     Sukebekutibashi@罰ゲーム中

     @GenGa いや、画像は流石に肖像権とか引っかかりそうだから、オレの目から伝えるよ。 

     デボツイから   2時間前

    ―――――――――――――――――――――――――――――――
     Sukebekutibashi@罰ゲーム中

     身長は165センチメートルで高めかな? 胸はFカップ、ちょっと大きいメロンかな? ヒップも中々の美尻で、トップクラスのボン、キュッ、ボン! 赤い情熱的なビキニを着てるぜ。

     デボツイから   2時間前

    ――――――――――――――――――――――――――――――――
     SL6@傍観者

     もはや変態だよな。 RT@Sukebekutibashi オレの目から伝えるよ。

     デボツイから   2時間前

    ――――――――――――――――――――――――――――――――
     Sukebekutibashi@罰ゲーム中

     @SL6 黙れよ羅針盤。  

     デボツイから   2時間前

    ――――――――――――――――――――――――――――――――


    【2】

     さて……海賊船に捕まったウラシマの船はもちろん身動きが取れずじまいである。
     顔色が真っ青に塗られて気分が悪そうなウラシマと、こちらは楽しそうな笑顔を振り撒いているフェニモール。
     そして、その一人と一匹の前にぞろぞろと現れるのはもちろん海賊達で、一人一人、日に焼けているからか、その顔を褐色に染まらせている。
     悪い業を働いているからかどうかは不明だが、海賊達の目つきは怖いものである。
     その視線が複数に突き刺さってくるものだから、心臓に悪いとウラシマが思っているのに対し、興味津津に海賊達を見つめているフェニモールには恐怖という言葉はなかった。
     しかし、右目を黒い眼帯で隠しており、白いヒゲをたっぷりと生やしている男――船長のような者が現れれば、流石のフェモニールも戦々恐々に――。 

    「キャアー!! アレ、絶対に船長さんよん☆ マジでモノホンよね〜? キャアー! マジ素敵だわぁ☆」

     ……この者に怖いという感情はないでござるのか?

     あ……しまった、ここでも文体が変わってしまったでござるか。
     三人称の地の文を変えるほどとは、フェモニール殿、中々でござるな。
     まぁ、先程の語り部よりかはマシでござると思うから、しばしの間、お付き合い願うでござる。

    「ちょ、フェモニールさんっ! 相手の気分を害することは止めてください!」
    「え? ワタシ、なんかヤバイことでもした〜?」
    「見てくださいよ、あいつらが持ってるサーベル……! あいつらが怒ったら、あれで、フェモニールさんなんか刺身ですよ! 刺身!」
    「…………ミロカロスの刺身? なんかおいしそうじゃない☆」
    「ちょっと待ってください。誰がそうなると思っていて――」
    「あ、ゴメンね☆ 想像したらつい、よだれが垂れてきちゃったわ☆」
    「ちょ、それって、共食いっ」

     完璧に海賊達が置いていかれているでござるなぁ……。
     お前ら、何勝手に進めてんだ、コラ……といったような雰囲気はなく、なんか何も言えないといった感じで……とうとう、どうしようかという困惑な感じが顔に出ているでござる。

    「貴様ら……いい加減に話を――」
    「というより……刺身といったら、コイキングの方がおいしいに決まっているじゃないですか!」
    「え〜〜? コイキングって骨だらけって聞くわよぉ〜?」
    「あれは実はおいしいところがあるというのを知っている人が少ないんですよ」
    「流石、ウラ様ねぇ〜☆」

     まさかの船長殿でも駄目でござったか。
     ウラシマ殿もフェモニール殿のペースですっかり恐怖が飛んでいったようでござるなぁ……あの乙姫殿、やはり大物でござる。
     このままではウラシマ殿とフェモニール殿の戯れで日が暮れる上に物語が進まないのでござるが……いかがしたものか。

    「よぉ? なんか結構楽しそーじゃんかよ」

     ふと、海賊の群れの中から若者らしき声が聞こえてきたと思った――刹那、火炎の拳がいきなり飛ぶかのように――。

    「あら、ウラ様、あっぶない☆」
    「え?」

     いち早く 異変に気が付いたフェモニールが絡みついているウラシマを思いっきり甲板の上に倒したでござる。
     頭を強く打ったウラシマが小さく悲鳴を上げただけで命に別条はないようでござる。
     それにしても、傍目からだとフェモニール殿がウラシマ殿を襲っているような感じがするのは……うむ、気のせいでござるよな。
     
    「お、エース!」
    「エースの兄貴ぃ!」
    「エースさん!」
    「エース君!!」

     倒れているフェモニール殿とウラシマ殿の少し先に立っている男――エース殿がその拳に炎を宿しながら立っているでござる。
     エース殿はフェモニール殿とウラシマ殿を見下ろすと軽く口笛を鳴らしたでござるよ。

    「へぇ〜 オレ様の火拳を初見でかわせるなんて大したミロカロスじゃねぇか」
    「惚れたわ〜☆ 中々いいパンチをしているわねん☆」

     フェモニール殿が興味津津にエース殿の顔を覗くと――。

    「エビ様☆」
    「海老って言うんじゃねぇ!!」

     一見、カニパン……いや失礼でござった。
     一見、貝のような輪郭に、褐色の肌。そして紫色の服を着用していて、赤いパンチグローブを装備しているポケモン――エビワラーことエース殿がすかさずツッコミを入れたでござる。

    「じゃあ、えびぞう様っていうのはオッケーかしら☆」
    「それ、明らかに職業違うだろ!?」 
    「う〜ん、そ・れ・な・ら! えび天様とか、エビチリ様とか☆」
    「勝手に他ポケを料理にするんじゃねぇよ!」
    「wとか☆」
    「わら……って、ケンカ売ってんのか!? コラッ!」
     
     ここで強い海風が一つ吹き抜ける。

    「パンチラ様で☆」
    「ぜってぇ、嫌だ!!!」
    「じゃあ黒パン様☆」
    「そこまで言うなぁあああ!!」
     
     このフェモニール殿が作る流れは激しい海流の如く、誰も抵抗することができないのでござろうか……完璧にエース殿はフェモニール殿のペースに捕まってしまったようでござる。

    「いいから! オレ様の話を聞けぇ!」
    「何分かかりそうかしら?」
    「五分だけ……って、だぁぁぁぁああああ! 何言わしてるんだよ、てめぇはぁああ!」

     流石に憤慨したとばかりにエース殿の拳から炎が噴き上がると、ウラシマ殿は喉をゴクリと鳴らしたござる。
     恐らく、戦慄、というものを感じているのでござろうなぁ……何せエース殿の顔つきも怖いものでござるし。 
     だが……その、フェモニール殿の顔はどうしてこんなにもキラキラを保っていられるのでござろうか……本当に謎の乙姫様でござる。

    「いいからぁ! オレ様の話を聞かねぇと、てめぇら、オレ様の火拳で丸焼きにするぞ!」
     
     丸焼きにされるのも嫌だった……というのもあったのでござるが、このままでは物語は進まないしラチが明かないと判断したウラシマ殿はとりあえず、フェモニール殿に一度、口を閉じてもらうように頼んだでござる。
     すると、ようやくフェモニール殿もエース殿の話を聞く姿勢を見せると、エース殿の拳から炎がゆっくりと消えていったでござる。
    流石に声を張り過ぎた為か、エース殿は少々、肩でハァハァと息をしているでござる。

    「へ、変な奴らだぜ……ったく……」

     ここで異論を唱えるタイミングを逃したウラシマ殿は泣きたくなったようでござる。
     それには一切気付かず、エース殿は話を続けるでござるよ。

    「オレ様達は見ての通り、海賊だ。だが! 別にてめぇらをどうこうしにきたわけじゃねぇ……ちょいと協力して、もらいてぇんだよ」

     ここで初めて海賊らしい、笑みがエース殿から零れたでござる。
     さて……ここでまた語り部交代の時間でござるか……果たして、エース殿は何を求めているのか、それとフェモニール殿とウラシマ殿は無事に帰ることができるでござるか?
     いよいよ、佳境といったところでござるか……はてさて、どうなることやら、でござるなぁ。


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 
     Sukebekutibashi@罰ゲーム中

     目標は約150メートル先、タイミングをうかがっているなう。

     デボツイから1時間前

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
     ツノドリルではない、オニドリルである@見守り中

     すぐにはいけないのか? 先程からやけに時間ばかりが流れているような気がするが。

     デボツイから1時間前

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
     Sukebekutibashi@罰ゲーム中

     @Oni! いや、ここで慌てても仕方ねぇ……ここは自然にポロリとさせるようにサイコキネシスを駆使すべきだと俺は判断する!

     デボツイから1時間前

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
     SL6@傍観者

     @Sukebekutibashi やっぱ変態だと語ることが違うなぁ。

     デボツイから1時間前 

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
     Sukebekutibashi@罰ゲーム中

     @SL6 黙れよ羅針盤。

     デボツイから1時間前

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    【3】

     青い海を何処までも泳ぎ続ける二隻の船があった。
     前方を走る一隻は白く塗られた小型から中型にかけての船で、それに導かれるように後方を走る一隻は漆黒に塗られた大型の船で、マストに張られている旗からは海賊を主張するドクロマークがデカデカと描かれてあった。
     別に鬼事をしているというわけではなく、穏やかな(一見、追って追われているように見えても船旅がおかしくはなさそうだが)船旅がしばし続くと――。
     やがてお互いの船から見えてきたのは一つの孤島らしきものであった。

     港がなかったので、浜の近いところで錨を下ろして船を停泊させてから、青年――ウラシマとミロカロス――フェモニール、そしてエビワラーである――エース率いる海賊団が孤島に足を着けた。
     見事に誰かがいる雰囲気は一切なく、どうやらこの孤島は無人島であるという見解が一同の中でされた。
     さて、ウラシマとフェモニールは海賊団に絡まれて、今、この状況に至るのだが……ここで一旦、時を遡らせて、その一部始終を覗くことにしてみよう。

    「アンタ達にお願いがあるんだけどよ……この地図、見方分かるか?」

     そうエースがウラシマとフェモニールに見せたのは二枚の地図らしきもの。
     時がそれなりに経っているのか、紙はうっすらコゲが表れていた。
     そして、地図はというと……一枚目は海図のようなものであろうか、周辺の島々だけではなく、緯度線などもしっかりと描かれている。
     そして、もう一枚の方は恐らく、その孤島(形はやや楕円形)の拡大図であろうもので、孤島の真ん中にはバツ印が点けられていた……恐らく、ここにエース達の探しているお宝が眠っているのだろう。
     とりあえず、ウラシマとフェモニールは同行すると伝えると――。

    「サンキューな! やっぱり、本物の船人は違うぜ!」
    「え?」
    「いや、ここまでノリでなんとか来れたんだけど、やっぱり難しいんだな、海賊って」
    「あの……ノリって?」

     なんだか、嫌な予感しかしないウラシマにエースは笑顔で応えた。

    「いや〜、ちょっとな、とある漫画読んだら海賊やってみたくなって」
    「あぁ! あの麦わら帽子のやつでしょ☆」
    「おぉ!? アンタ分かるのか!?」
    「もっちろん☆ 全巻揃えてあるわよん☆ もしかして、エースっていう名前、狙ってたんでしょ☆」
    「あぁ! もちろん! いや〜あのキャラにはマジで熱くなったわ」
    「だよねだよね☆ もう、あの場面とか、その場面とか☆  それとあそこはマジで泣いたわぁ」
    「そうそう! あそこはオレ様もマジで!? って感じで……気付いたら涙腺崩壊してたっ」

     なんか、意気投合に語り合っておるのう!?
     いきなりのカミングアウトじゃし、目を丸くさせたままのウラシマに対してフェモニールはエースと語り合っておるしで……って。
     また地の文が変わってしまったじゃと!?
     なんじゃ、こやつらは!? 一体どんな技を繰り出せば、このようなことが可能なんじゃ!? おかしいじゃろ!? 訳ワカメじゃろ!?
     キャラが成せる業です、なんて一言で片づけされそうで怖いわ! ガクブルもんじゃ!
     というか、これ、怒られないのか!? 

     ……まぁ、変えられてしまった以上は仕方あるまい。
     元には戻せぬようじゃし、このままでいかせてもらうぞ。

     さて、フェモニールとエースが某漫画について語り合い(意気投合するとアレやコレという代名詞だけでも通じるとか、通じないとか)、更にはエースが引き連れていた者達も加わって、完全にウラシマ一人だけが放置プレイされること約一時間、ようやく再出発を果たした一行はこの孤島にたどり着いたというわけなのじゃ。
     孤島に到着する前、ウラシマはこんなことを呟いていた。

    「はぁ……知識もないのに、よくここまで来れたものかと……逆に小一時間ほど問いたいですねぇ」

     海は生き物だ。
     だから決してあなどってはいけないと昔、同じく漁師である父に言われたことのあるウラシマにとって、エース達がやっていることは海を甘く見て、馬鹿にしていることでもあったようじゃな。
     しかし、そんなウラシマの気持ちを知ってか知らずか、フェモニールはただニコリと笑うとこう言い放った。

    「影響力ってすごいよね☆」

     その一言で片づけられたウラシマから溜め息が漏れたのは言うまでもないぞ。


     
     さて……エース達が目的としていた孤島に到着し、一行は海図とは別の地図――この孤島の拡大図に記された目印に向かって、歩き始めたわけなのじゃが。
     行く先はジャングルのような獣道、足場は必ずしも安定しておるとは限らんし、あちこちに生えておる大木共が一行の足を遅くさせたり、木に自然と巻きついてあるツルかと思ったら、ポケモンによる『ツルのムチ』だったりでバトルが勃発したり、一筋縄では中々いかなかったのじゃ。
     しかし、一行の目の前に問題が降りかかってくる度に、エースの『ほのおのパンチ』が……。

    「火拳だっつうの!」
    「どこ向いて、喋ってるんですか、エースさん」

     と、とにかく、その火拳が全てを燃やして、目の前の道を切り開いていっていたのじゃ。(ったく、語り部にケチをつけるなんぞ……これだから最近の若者はブツブツ……)
     大木共はとにかく高く、薄暗い影の世界が一行を包んでいく。
     その世界で更に木霊していくペラップとヤミカラスの不気味な鳴き声の不協和音が一行の心を揺らして――。

    「えへへへ☆ なんかワクワクしてきたわよねぇ」

     ……例外もおるようじゃが。
     
     そして更に進んでいく矢先、列の後方で悲鳴があがった。
     ちなみに列の並びは先頭にウラシマ(地図が読めるから)隣にフェモニール(ウラ様好きだから)そしてその一人と一匹の後ろにエース(特に理由はない)後の者達は後ろに続いているといった感じじゃ。
     
    「どうした!?」
    「エースの兄貴、下っ端Aがポケモンのツルに!!」
    「え?」
    「あら? ウラ様?」

     直後にウラシマの悲鳴が木霊していくと、隠れていたポケモン――ウツボットがその姿を現した。
     その黄色に緑色のまだらを乗せた大きなツボ型の体の中には強力な酸が入っておるからのう……すぐに溶けることはないと思うが、あのツボの中に入ったらタダでは済まぬぞ。

    「ちっ、挟み撃ちかよっ!」

     列の一番前に一匹、列の一番後ろに一匹、ウツボットがツルをゆらゆらと獲物を定めるかのように動かしておる。
     そしてウラシマと下っ端Aは足首に力強くツルを巻かれ、ぶらんぶらんと頭が下向きの宙吊り状態に。 
     あ、そうそう、説明が遅れたのじゃが、例の海賊(の真似事)団のメンバーではポケモンはエビワラーであるエースしかおらんのじゃ……他の奴らは人間でのう、刃渡り十五センチの小型ナイフを各自所持しているのじゃが、そんな小物ではウツボットに対抗なんぞ到底できん。
    『ツルのムチ』で弾かれるのが目に見えるのう。
     それに……恐らく経験不足なんじゃろうな、可愛そうに足を震わせておる。

    「仲間に手ぇ出すんじゃねぇ!!」

     刹那、何かがへこむような音が辺りを振動させていった。
     人間を一人捕まえて余裕をかましていたウツボットの目が丸くなったと同時に、その目の色が恐怖に染まっていき――。   

    「焦げ落ちやがれ」

    『マッハパンチ』で一気に距離を詰めてからの、左拳から渾身の『ほのおのパンチ』を――。

    「火拳だっつうのぉおお!!」

     ……エースの叫びと共に轟炎をまとった火拳がウツボットの急所に入り、地響きを伴う爆発音を撒き散らかしおった。(ったくケチをつけるなんぞ、ブツブツ……) 
     ウツボットの断末魔が空へと木霊していく中、下っ端Aの足首を縛っていたツルが焼け落ち……無事に下っ端Aの救出に成功したようじゃな。
     ツルが焼け落ちて、地面に頭をぶつけたようじゃが、そんなに高さもなかったので、ケガはなさそうじゃった。
     さて、下っ端Aの方は大丈夫のようじゃが、一方のウラシマはどうなっているかというと――。

    「キャッ☆ ワタシったらやりすぎちゃった、てへ☆」   

     乙姫様による全力全開の『れいとうビーム』によって、ウツボット諸共、氷付けされているウラシマがそこにおった。 


     
     まぁ……なんとかピンチを切り抜け、更に獣道を進んでいくと、ようやく獣道を抜け、一行の前に湖が現れたんじゃ。
     例の孤島の拡大図によれば、この湖にバツ印がされておった……ということは、宝物はこの湖の中にあるということ――。

    「この湖が宝だったのさ……なんてね☆」

     これ! フェモニール、ここで物語が終わるようなフラグを立てるでない!
     悟ったような顔をするのも禁止じゃ!
     エースもそんなフェモニールの推測には不服のようじゃった。

    「この湖の中にきっと、宝があるはずだ! そうに違いねぇ! フェモニール! 湖に潜って宝を取って来い!」
    「え〜? 別にそれは構わないけど☆ でも、エースは一緒に行かないのん?」
    「そうですよ、折角ここまで来たのですし、お宝を自分の手で取りに行くというのも――」

     すると、エースは空に仰ぎ遠い眼差しをしながら応えた。

    「オレ様……カナヅチだからさ」
    「よく、海賊(ごっこ)が出来ましたよね。本当に」

     この後、エースが涙を流しながらウラシマに一撃を加えたことは言うまでもない。
     仕方なく、フェモニールが湖の中に潜入して探索することになったのじゃった。  

    「それじゃあ、フェモニール、いっきまーーす☆」

     キュートでチャーミーな(敵役ではない)ウィンクを一回、一同に向けると、フェモニールは湖の中にダイビングしていったのじゃった……フェモニールの奴、相変わらずの派手さはここでも発揮しておっていて、高く宙を綺麗な孤を描きながら飛び、入水していきおったわ。
     水しぶきが大きく舞い、太陽の光を浴びて淡い虹を描いておった。
     
     ブクブクと水泡が水中に舞う中、フェモニールの体は完全に湖の中に入る。
     そしてフェモニールは辺りの様子を伺おうと、視線を辺りにちらつかせた。
     水深は十メートル程とそれなりに深いのだが、透明度が比較的高い湖のようで、見渡しは良好であった。
     親子らしいウパーとヌオーが一緒に泳いでいたり、コイキングの群れが何やら泳ぎの速さを競っていたり、雌のゼニガメ達がガールズトークを交わしていたりと、先程のウツボットの件に比べたら嘘のような平和な湖の世界である。

     とりあえず、フェモニールは底の方に行き、這いながら宝を探してみることにしたようじゃ。
     フェモニールは自分の直感を信じて、底を這い進んでいき、ここだと思ったところ(ちなみに底は砂利のようなものが敷かれておった)を掘っていき――。 

    「見つけちゃった☆ 流石、ワタシ☆」

     この乙姫様はチートなのじゃろうか?
     フェモニールがまだ潜って、そんなに時は……十分も経っていないような気が……するのじゃが。
     普通、この場じゃったら、一つや二つぐらいの対立とかがあってもおかしくないじゃろう!?
     そのようなフラグが何本も林立しているはずじゃのに、あっさり、事を済ますとは……やはりこの乙姫様、チートじゃあ!

     ま、まぁ、ともかく、フェモニールは掘り当てた宝箱(大きさは二人の人間が担いで運べるような物で、材質は木製、開け閉めする所には金色の鍵穴付きの板が装着されておる)を自らの体で起用に巻き付け、そして、そのままウラシマ達の元へと戻る為に水面に向かって力強く泳ぎだしたのじゃ。
     そして勢いよく、湖から飛び出し、再びド派手に水しぶきが空に舞っていた。
     一瞬、予告なしのフェモニールの再登場に待機組は驚いていたようじゃが……フェモニールの尾が巻きついている宝箱の存在に気付くと、歓喜の声を上げた。
     フェモニールが無事に地面に着陸し、野郎共は我先にと宝箱の傍に寄って行った。

    「フェモニール、ただいま戻りましたぁ☆」
    「よくやったぜ! フェモニール!」
    「は、早く見つかったんですね」
    「えへへ、なんたってワタシだからね☆」

     何故、自信満々にそう語ることができるのじゃ!?

    「エースの旦那! これ、カギがかかってまっせ!」
    「だろうな……よし、ちょいと、針金持って来い」
    「へい! そうだろうと思って用意してましたぜ!」
    「よし! 早速、やってみるかぁ……!」

     部下から受け取った鈍色の細い針金を受け取ったエースは、鼻歌を交じあわせながら、宝箱の鍵穴に針金を通して――。

    「こうして、ああして、あっという間に出来上がりってな」

     鍵が開く音が響いた。
     うむ、このエビワラーのめざパは『あく』じゃと見た。間違いない。

    「エス様さすが!」
    「オレ様はSじゃねぇ!! 縮めると変になるだろ! ちゃんとエースって呼べよな!」
    「エースの兄貴って、受け? 攻め?」
    「攻めじゃね?」
    「受け……じゅるりっ」
    「てめぇら……どうやら丸焦げにされてぇらしいな……!?」
     

     無邪気な乙姫様と無謀知らずなパンチラ男(後、KYな下っ端数名)の茶番が続いては肝心の物語が進まぬと判断したウラシマは、他の皆に声をかけ、とりあえず宝箱に入っている物を引っ張り出しおった。
     すると、そこにあったのはのう――。


     犯られる前に殺れ! 一撃必殺技集(実用本)
     人魚姫はお転婆(少女漫画)
     はとむねクッション(家具)
     ミックミクにオレがしてやるよぉ!(CD、アーティスト:カモネギ)
     ロッシ写真集 〜マイ・アルトマーレ・デイズ〜(写真集)
     カイリューの郵便屋さん、僕の手紙、あの子に届けて。(絵本)
     ロッキー人形(ムサシもファンの人形……だったはず)
     スケベクチバシ・ドール(ストレス解消グッズ)
     ☆三つ(…………ヒトデマン………の化石。タブンネ)


    「…………」
    「…………」
    「…………」
    「…………」

    「……この実用書は――」
    「あ、それ、ウチの近所の古本屋の百円コーナーにありましたっす」
     下っ端Aが申し訳なさそうに言ったぞ。

    「……この少女漫画は――」
    「あぁ! どこかで見たことあると思ったら、妹が持っている漫画!」
     下っ端Bが思い出したかのように告げたのう。

    「……このクッション――」
    「これ、僕の知り合いに百個持っている人がいたなぁ……相当、はとむねが好きだったみたいだけど」
     下っ端Cがそう呟いたぞい。

    「……このCDは――」
    「ミリオン突破した曲ですけど……その、えっと、宝ってほどでは……握手権もないですし」
     下っ端Dが困ったかのように喋ったな。

    「……この写真集って――」
    「……知っている人は知っている有名人ですね」
     下っ端Eがよだれを垂らしながら言ったぞい。

    「……この絵本は――」
    「確か、自分の幼稚園にあったなぁ……懐かしいなぁ」
     ウラシマが懐かしむように呟いたぞい。

    「……この人形って――」
    「あぁ! それ! サンタさんからもらったことあるやつだぁ!」
     下っ端Fが興奮しながら言ったぞい。

    「……にゃろうっ」
     スケベクチバシ・ドールが悲鳴を上げたようじゃ。

    「せいぜい……この化石ぐらいか……?」
    「ちょっと……いいですか……? …………これ、あんまり値打ちのない化石みたいです」
     下っ端Gが何故か鑑定できたのじゃが。

    「…………」
    「…………」
    「…………」
    「…………」

     場の雰囲気に沈黙が舞い降りたぞ。
     うむ……まぁ、命を賭けた割にはそのあまり期待外れじゃったというか、なんというか……流石の乙姫様も――。

    「この漫画、中々いいわねん☆ めっちゃ甘酸っぱいわぁ〜☆」

     何事にも例外は付き物じゃが……まぁ、流石にこの例外ばかりには周りの者達も溜め息を禁じえなかったようじゃ。
     さて、途方に暮れてもおかしくない空気が漂っていく中――。

    「エースの旦那! まだ一つ何か入ってました!」
    「なんだと!?」

     下っ端Hがちらっと、宝箱を確認したところ、底の板から何やら、紅い何かがはみ出しているのを発見したようじゃ。
     とりあえず、第一発見者の下っ端Hが引っ張り出して見てみたところ……。
     真紅の紐に二等辺三角形の布が二枚繋がっていて……。

    「これ……ブラジャーってやつじゃ……」

     ここで強い風が一つ吹き抜ける。

    「あっ」

     強い風に引っ張られて、思わず下っ端Hがブラジャーを離してしまったようじゃ。
     風に吹かれて、ブラジャーは何処までも行く……ブラジャーは……ってなんか言ってて空しくなるのは気のせいじゃろうか。

    「あら☆ 黒いパンツが☆」
    「言うなぁああああ!」
    「まぁ、いいじゃないですか……その人にとっては、大事な宝物だったのでしょう」
    「さっすが! ウラ様☆」
    「そんなんで、納得できるかぁああああ!」
    「そう納得しないと、話終わらないというか、もう、やってられないじゃないですかぁああああ!」

     ブラジャーが風に乗って去りゆき、ウラシマの泣き言がその後に続いて空に去りて。
     …………。
     ……。
     うむ、有終の美な感じで締めようと思ったのじゃが、無理じゃったな。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――  
     Sukebekutibashi@罰ゲーム中

     サイコキネシスでビキニのおねえちゃんの水着を解く作業しながら、念力でツイッターするとか、マジ鬼畜。

     18分前  デボツイから
     
    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
     Sukebekutibashi@罰ゲーム中

     もうちょっと! 気付かれないように……あの紐をちょい……うおっ、いい感じにっ! うひょう! ひゃあ!

     15分前  デボツイから

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
     ガバイト@野次馬中

     @Sukebekutibashi おいおい、完全に本性丸出しwwwwwwwww 

     10分前 デボツイから

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 
     Sukebekutibashi@罰ゲーム中

     @GABA!! はっ! 違う、これは断じて、オレの意志じゃっ、あっぷ!?

     8分前 デボツイから

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
     Sukebekutibashi@罰ゲーム中 

     なんか紅いもんが顔に、かかって、うっぷ、くっそ、もうちょっとでビキニのおねいちゃんのメロンがぁああ!

     6分前 デボツイから

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
     SL6@傍観者

     よし、罰ゲーム完了で。
     これ、皆、拡散よろしく。
     これが変態の末路だ。 ××××××.jp/×××××/×××××

     4分前 デボツイから 

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
     Sukebekutibashi@罰ゲーム中

     @SL6 ちょ、おま! いつの間に撮ってるんだよぉおお!!

     2分前 デボツイから

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
     ガバイト@野次馬中

     @SL6 なにこれスケベすぎwwwwww 拡散完了なう

     1分前 デボツイから

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
     Sukebekutibashi@罰ゲーム中

     @GABA!! ちょ、やめろぉおおおおお! 肖像権! 肖像権!!

     30秒前 デボツイから

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
     SL6@傍観者

     @Sukebekutibashi もはやスケベに権利なんかない。それにしても本当に失念したよスケベ。

     10秒前 デボツイから

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
     Sukebekutibashi@罰ゲーム中

     @SL6 黙れよぉぉぉぉおお! 羅針盤!!!(泣)

     5秒前 デボツイから

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    【4】

     その日の夜、ウラシマの家にて、人間のウラシマとミロオカロスのフェモニールはくつろいでいました。
     色々ありすぎて、心底疲れたと顔に書いてあるウラシマ(まぁ、氷付けになったりしましたからねぇ)と、とても楽しかったといった感じで顔ツヤがツルツルピカピカなフェモニールがそこにいます。
     
     ん? 地の文がもう変わっている? ですか?
     はい、ワンパターンな展開はもういいかと思いまして、もうこの感じでいかせてもらいます。

     さて、例のエースさん達ですが、がっかりしながらもなんとか気を持って、一回故郷に向かって舵を取ることを決めたようです。
     まだ……海賊(ごっこ)を続けるのでしょうか。
     ハッキリ言って心配なのですが。

     さて、今日あったこと(事件と言っても過言ではないですよね)をギンギンに冷えたオリオンビールを片手にお互い話し合って(ほぼフェモニールさんのマシンガントークですが)いますと、何やら電子音が部屋に鳴りました。
     その発信源はウラシマ宅の固定電話機からで、何故かフェモニールさんが出ました。尾で器用に受話器を取り、そのまま顔に近づけさせました。
     そして、受話器を取る際、フェモニールさんが何やらボタンを押してしまい、電話相手の声がウラシマさんにも筒抜け状態に。

    「あ、ボスですか?」
    「あら☆ その声はジョニーじゃない! 元気にしてる!? 竜宮城の皆はしっかりしてるかしら☆」
     
     一応、もう一度説明しておきますと、ジョニー様とは乙姫様であるフェモニールさんに仕えている、サングラスをかけたヤクザ風のゼニガメのあんちゃんで、竜宮城では皆の兄貴分の存在です。(ジョニー様のファンですから、ここはしっかりと説明を)
     久しぶりに聞くその渋カッコイイ声にフェモニールさんのテンションは更に上昇し、勢いに任して、今日あったことをジョニー様に語りました。(電話を持っているジョニー様かっこいい、キャ☆)

    「え、その宝箱にはソレが入ってたんですね?」
    「えぇ、そうよぉ☆ 後でジョニーに写メ送るわねん☆」
    「…………」
    「あら? どうしたのぉ〜? ジョニー? もしも〜し、ジョニー?」 
    「…………あ、いや、ボス。あの宝箱、忘れたんで?」
    「え?」


    「あれ、ボスがヒンバスの頃にタイムカプセルしたいって言って埋めたやつでっせ」


     一瞬、場の空気は水を打ったかのように静まり返りました。
     ウラシマさんは信じられないものを見ているかのような顔になっていき、一方、フェモニールさんは大きく目を見開かせて――。

    「あぁ!! おっもいだしたわぁ☆ 確かに、ヒンバスの頃にやったわよねぇ☆ 懐かしいわぁ〜☆」
    「本当に懐かしいっすよね」
    「ジョニーが海図を描いてくれたんだっけ☆ で、最終的には遊び心で海図をビンに入れて流したわよねぇ〜☆」
    「そういえば、人間ものの紅いブラジャーも入れてましたっけ?」
    「そうそう☆ ワタシ、進化したら人間になるって信じてた頃があったわよねぇ〜☆ いや〜本当に懐かしいわぁ☆」

     フェモニールさんとジョニー様は昔話に花を咲かせていて、それはそれはものすごく楽しそうでした。
     一方、突然のカミングアウト、更には徐々に空気化の可能性が高まっているウラシマさんは、色々と抗議したいそうな顔つきになっていました。

    「本当にボス……あの頃から更に立派になられて」
    「乙姫様として、ワタシがやっていけているのは、アナタ達のおかげでもあるわよん☆ いつもありがとね☆ キャー☆ 改めて言うとこそばゆいわねぇ〜☆」
    「うぅ……ボス! 一生ついていきますぜ!」
    「ふふふ☆ これからもこの乙姫様にしっかりついてきてねぇー☆(ここでフェモちゃんウィンク一つ☆)」

     ここでようやくウラシマさんの喉から言葉が絞られて――。 

    「異議アリ!! これは――」
      
     あ、ごめんなさい、ウラシマさん、尺いっぱいだそうです。




    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    【プチおまけ1 後日ツイートA面】

     ロールちゃん

     @Sukebekutibashi えっちぃのは……いけないとおもいます……。

     5時間前 デボツイから  

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    【プチおまけ2】
     
     某罰ゲームを境に、スケベクチバシのフォロワー数が100万を突破したとか、してないとか。

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    【プチおまけ3 後日ツイートB面】

     Sukebekutibashi

     情報化社会だいきらい……。

     2時間前 デボツイから

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 





    【書いてみました】

     前置き:筆者はワンピースに詳しくありません。(アニメ版ではアラバスタ編までは観たのですが、それ以降はめっきり(汗))
         ちなみに、『二億人が敵に回る』という表現はワンピースの累計売上数2億冊以上から来てます。
         …………分かりづらくて、スイマセン。(汗)     


     ある日のチャットにて、スケベクチバシの話題が挙がった頃、リナさんからぜひ浦島太郎の続きを書いて欲しいというリクエストパスをもらいまして。(ドキドキ)
     当時、あの場にはもう一人いらっしゃったので、その人にパスしてみようかと、試みたのも今ではいい思い出です。
     …………。
     ……。
     だって、正直言って、あの面白い話にちゃんと続けられるかどうか自信なかったですもん!(汗&もちろんリクエストパスは嬉しかったですけど)
     ちゃんとキャラを書けているか、面白さが出ているか、めっちゃドキドキしています。(汗)
     
     そして、荒ぶる地の文の嵐の件。(汗)
     でも、それぐらいフェモニールさんの存在感ってインパクト大だったんだぜ! という個人的な想いが詰まっています。(笑)
     色々と不安なところも多々あるのですが、やっぱり書いてて楽しかった(パンチラ☆とか)です! ありがとうございました!
     
     それと、スケベクチバシさんには(色々な意味で)活躍してもらいました。
     なんだかんだ言いながら、彼は結構、変態さんだと個人的には思いまして、あのようなことに、愛ゆえに。(笑) 
     彼の人気が上がりますようにと願いながら。(笑)
     どなた様か、スケベクチバシbotとか作って欲しいと思っている今日この頃であります……需要はきっと、あるはず。(笑)
     
     改めて、リナさん、リクエストパスありがとうございました!
     遅くなってしまってすいません(汗)
     お気に召したら幸いです。(ドキドキ)

     

     それでは失礼しました。

     

     追伸:宝物リストには、ある仕掛けが……。(もうお気付きかと思われますが)




    【みんな大好きフェモニール☆】
    【みんな大好きスケベクチバシ☆】


      [No.1617] 創るということ 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/07/20(Wed) 15:40:17     108clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     なんて不快な絵だろう。今朝もまた「彼」は壁に絵を描いていた。
     しかし、それを落書きと呼ぶにはあまりに描き手の熱意が篭り過ぎていた。丁寧に線が引かれ、大きさにしてもアパートの壁にでかでかとある。それが人間の画家のものであれば、ひょっとしたら、その画家にとっての力作と呼ばれるくらいの作品かもしれない。けれど、どれだけその絵をじっくり見ても、ともすれば目を覆いたくなるほどの不快感しか感じない。べったりと白の壁を覆い尽くす、貧血状態の唇みたいな不健康な紫は、重なりつつも反発し、隣り合いながら戦争しているみたいだ。全くと言っていいほど、その絵には調和というものがない。
     ――ベタ、ベタ、ベタ。
     「彼」は今、一心不乱に描き続けている。
     ここから徒歩十分の所に地下鉄の駅があるので、アパートの前の道は結構人通りが多い。しかし、通り過ぎるどの人もポケモンも、皆顔をそむけて足早に通り過ぎていく。誰もこんな絵を見たいと思わないのだ。
     かわいそうだとは思ったが、私も一旦家に戻ることにした。これ以上は見ていられない。


     ドーブルとはなんと因果なポケモンだろうか。
     「好きこそものの上手なれ」とは言っても、あのドーブルに絵の上達は到底見込めない。加えてあの毒々しい紫。ドーブルの尻尾から分泌される色はドーブルごとに決まっていて、その色は日によって微妙に違っても、基本的な色合いは一生変わらないという。そう、つまりあのドーブルには生まれた時から才能が無い。
     つまり、彼は「ドーブル」であるばかりに絵が好きでたまらず、どれだけ描きつづけた所でそれは誰にも見向きすらされないのだ。――全く皮肉な話だ。
     私は彼――ドーブルがカンバスにしているアパートの大家をしている。何故かここに毎朝絵を描いていくドーブルのせいで、壁の掃除を日課にしている。いつまでもあんな絵を残していては見苦しくてしょうがない。
     それでも私がドーブルを追い払ったりしないのは、彼が不憫でならないからだ。
     私は若い頃、画家を目指して美術大学へ通っていた。親に大枚の借金を背負わせて入学したが、才能がない事はずっと分かっていた。成績は常にどん底で、周りの人間からは常々退学を薦められた。それでもなんとか卒業までこぎつけ、デザイン関係の事務所に勤めたこともあったが、半年もたたずにクビになった。それからはプロになることを諦め、再就職した広告代理店で金を貯め、一昨年このアパートを買った。できるものなら母をこのアパートに迎えたかった。父は5年前に亡くなっていた。しかし、到底無理な話だった。広告代理店に勤めると話した日、私は勘当を言い渡されていた。
     才能はこれっぽっちも無い。それどころか絵の為に人生をむちゃくちゃにしてしまった。
     それでも、だ。いつだって絵を描くことが好きでしょうがなかった。今だって好きだ。時々だが描くことだってある。描き終わったら、捨ててしまうが。
     描いて、描いて、描いて、それで出来上がったら、捨てる。油絵も水彩画も、風景画も人物画も、ビリビリに破いて捨てる。
     自分の絵が不快だった。学生の時分からどんな絵を描いても、完成を見ると虫唾が走る。さらに、その絵を描いたのが自分だという事実に憎しみのような感情を感じる。だから絵を破った。自分を破けないから、絵を破った。
     描きたくてしょうがない。それはきっとあのドーブルも同じ気持ちだろう。そして、描いた自分の絵が大嫌いという事もまた、きっと。

     以前、私がいつものように絵を消していた時の事。
     さすがに描いている途中から消すわけにいかないので、私はいつもあのドーブルがいなくなってから作業を始める。
     ――ゴシ、ゴシ、ゴシ。
     このアパートは直方体をしていて、道路から見て左の大きな面には、一階の部屋への入り口と二階へ上がる階段がついている。正面の小さい面と道路の間にはスペースがあり、その場所にドーブルは立っていつも絵を描く。私も同じ場所に立って作業する。
     今年60になる身で、モップを持ち上げての作業はしんどい。だが、まわりに手伝ってくれるような人はいない。店子ですら知らぬ顔して私一人に任せきりだ。
     ――ガウ、ガウ、ガウ!
     ふと作業を止めて休んでいると、右側のベランダからポケモンの吠える音がした。あれは103号室で一人暮らしのお婆さんが飼っているガーディだ。毎朝欠かさずにお婆さんはガーディを散歩に連れていく。この時間には出ているはずだが、何故か今日は部屋にいる。おかしい。どうしたのだろうか。もしやお婆さんに何かあったのでは――ガタンッ!
     あっ、と思った瞬間には遅かった。私は片足をバケツに突っ込んでしまっていた。
     チッ。
     小さく舌打ちをし、モップを壁に立てかけて服を着替えに行こうと振り返った。
     その時、通りの向かい側にあのドーブルが立っているのが見えた。私の背後では、さっき描いたばかりの彼の絵がごちゃまぜの色だけ残って垂れていた。
     私は少しの間、気まずい思いで立ち尽くしていた。これでも画家の端くれという意識がある。自分のアパートに描かれた物とはいえ他人の作品を、それも目の前で壊してしまった罪悪感で心が痛い。
     とうのドーブルと言えば、じっとこちらを見るだけだった。いつから見ていたのかも知れない。ドーブルはまっすぐこちらを見ていた。
     どうしてあのドーブルは、自分の絵が消されていっているというのに、何もせずに見ているのだろう。あれだけの力作だ。勝手に消されて腹が立っていてもおかしくない。
     私がそのままじっと立っていると、ドーブルは突然動き出した。人ごみの中をぴょんぴょん跳ねるようにして器用に素早く進んでやってくる。不思議なことに尻尾からでる絵の具の代わりの液体は一滴もこぼれなかった。
     私はサッと身構えた。ドーブルの様子を見る限り、怒っている風ではなかったが、いつどう変わるか分からない。
     とうとう足元までやって来た。正面から見るとなかなか愛嬌のある奴だ。ベレー帽のような頭に、筆替わりの尻尾を手に持って、こういうポケモン独特の「ハァハァ」という荒い息遣いをして私を見上げている。
    「な、何か用かな?」
     見た感じあまり強そうではなかったが、ついつい声が引きつってしまう。
     大学時代に、自分はポケモンの表情が分かると言う奴がいたが、私に今のドーブルの表情は分からない。そいつだってきっとホラを吹聴していただけに違いない。目立ちたがり屋の子供が、思い込みの才能を自慢していただけの事だ。
     ドーブルは一度足元から私を見上げると、倒れたバケツに近づいてそれを私の元へ持ってきた。
    「水を入れて来て欲しいのか?」
     確かに私がさっき倒してしまったので、今バケツの中に水はほとんど残っていない。しかし壁はまだまだ色が残っている。
    「いいのかい? これはお前が頑張って描いた絵だろう? もうだいぶ消えてしまっているが、それでも、消してしまっていいのかい?」
     ドーブルは私の問いかけにも、ぐいぐいとバケツを押し付けるだけだった。
     ――消して欲しいんだな。
     このドーブルは自分の絵を消したがっている。表情なんか分からなくたって、それ位分かる。きっと彼は自分の絵が嫌いなのだろう。
     そして、私がズボンを履きかえて水を汲んでくると、今度は彼自らモップを手に取り壁をこすり始めた。私がやるよ、と言ってブラシを取り上げようとすると、ブンブン尻尾を振ってその手を追い払った。どうやら自分で消したいらしい。
     頭上から再びガーディの吠える音がした。私はお婆さんの様子が気になっていた事を思いだした。目の前ではドーブルがゴシゴシ壁を擦って、自分の絵を消している。
     私は彼を置いてアパートへまた戻った。

     結局の所、お婆さんは寝坊していただけだった。前日の夜に仲間うちで飲み会をしたそうで、すっかり潰れていたのだ。その事を玄関先で真っ青な顔して話していた。いい年して元気なものだ。その元気の半分でも使って私の掃除を手伝ってくれたっていいものを。
     ドーブルは、私が戻った時には既にどこかへ行っしまっていた。バケツに入れた水は殆ど消えて、モップは無造作に転がされていたが、アパートの壁に散らかった色は跡形もなく洗い流されていた。

     それからドーブルは毎日自分の絵を自分で消すようになった。
     昼ごろに私がバケツとモップを持って現れると、たいてい彼の絵は完成している。以前なら私が彼がいなくなるのを待って、消し始めるのだが、ドーブルの方から私からバケツとモップを取っていって自分で消す。消した後は、きちんと道具をアパート奥にある物置に立てかけて置く。物置の鍵は私が持っているので、私は夕方ごろにそれらをしまいに行くだけでいい。
     本当は最初からそうしたかったのだと思う。しかし、ドーブルは私と関わるような事をしたくなかったのだろう。その気持ちは分からなくもない。毎日勝手に人の家に絵を描いて、その掃除を任せきりでいるのだ。普通の大家ならとっくに怒り心頭の所だ。今まで黙認されていたことは不可解に感じていただろうが、それでも、直接関わるのは気が引けたのだろう。ポケモンにしては今時の若い人間よりとっぽど立派な神経をしている。
     私にしてみればどうでもいい事だった。私が彼の絵を消しているのを見られたときは確かに少々気まずい思いだったが、自分で消すことについては勝手にすればいいと思った。むしろこっちの負担が減って有難いくらいだ。

     それから一年が経った。ドーブルは相変わらず毎日描きに来る。
     私の所には、母が来ることになった。

     父が死んでから、私は何度も一人暮らしの母をアパートに呼んでいた。しかし、母は一度として首を縦には振らなかった。
     それだけ私が両親から嫌われていたということだ。
     自業自得とはこのことだろう。
     子供のころ絵描きになると言ってから、親には「絵描き教室」に通わせてもらい、刺激を与える為と言っては何度も旅行へ連れて行ってもらった。所詮、子供の夢語りでいつ心変わりしてもおかしくないというのに、一生懸命に私の夢を叶えようとしてくれた。人並みどころか、感謝してもしつくせない程、私は父にも母にも世話になった。
     その結果が普通のサラリーマン。ふっ、勘当されて当然だ。

     それでも今回やっと折れて、私の所に来ることになったのは、訪問介護を頼めるほど余裕のない母が、いい加減一人暮らしが大変になったからだ。「勘当」では、役人に補助金を出させることはできない。


     ドーブルの絵に見かねた私が部屋に戻ると、母は一人で昼のニュースを見ていた。

    「母さん、今夜は何が食べたい?」
    「…………」
     母がこの同じ部屋に住むようになってから、一週間。一度も私は母と口を聞いていない。
     私はまた黙々と夕飯の構想に取り掛かった。昨日は和食だったから、今夜は中華にしよう。ラーメンはダメだ。麺類は七十後半の母には食べづらい。そうだ、麻婆豆腐にして、ご飯にかけよう。油と肉は控えめにして、豆腐は細かく切って。それなら母にも食べやすい。
     母が来ることが決まって以来、私は毎日料理の練習をしてきた。栄養バランス、食べやすさ、味、どれをとっても満足してもらえるように毎日勉強した。

     夕飯を作り終え、母と一緒に席に着いた。テレビは消してある。
    「どう? おいしいかい?」
    「…………」
     向かいに座った母に聞いてみたが、何も答えない。視線を合わせようとすらしない。私の声が空しく部屋に響く。
     母は一口だけ食べると、すぐにスプーンを置いてしまった。

    「もしかして……不味かった?」
    「…………」
     母は黙ったまま自室へ戻って行ってしまった。
     実のところ、母はこの家に来てから一度もまともに私のご飯を食べてくれていない。どれも一口食べるだけで終わってしまう。
     それは悲しくもあり、また心配なことでもあった。
     そこで私はスーパーで市販のミニケーキや焼き菓子を買ってリビングの机の上に常備しておくことにした。
     初めに置いた翌日から、ケーキと焼き菓子がいくつか消えていたので安心した。食欲がない訳ではないのだ。
     しかしいつまでもこんなお菓子ばかりでは体に悪い。出来ればきちんと私の料理を食べて欲しいのだが、母にその気はないようだ。
     ――仕方ないか……。
     私は翌日から、三食、母と別に取ることにした。
     食欲は確かにあるみたいだし、自分で言うのも何だが味だって悪くないはずだ。だから、問題は私だろう。私がいる所で、私と一緒に、私と同じ釜の飯を食べるのが、母にとって苦痛だからいけないのだ。だったら別々で食べるくらい大したことじゃない。
     食事が出来上がると私は毎回、リビングでぼんやり座って母が来るのを待つ。母が来たら食べ終わるのを待って、自室へ戻って行ったら自分も食べ始める。
     こんな調子で毎日が進んだ。

     母が来てしばらくたった頃、母が膝を悪くした。医者に見せたら「変形性膝関節症」だと診断された。今一つどんな病気なのか分からないが、年をとれば自然となってしまうもので、仕方のない病気らしい。それを聞いて私はホッとした。私の健康管理が悪かったせいではないのだ。
     母は翌日からリハビリに通うことになった。ろくすっぽ外に出ることのなかった母にとってその事自体は、むしろいい事だったかもしれない。
     ところが私は少し不安だった。あのドーブルの事だ。
     リハビリは週一回、毎回一時間する。どの時間になるかはまちまちで、朝からだったり夕方からだったりする。夕方からなら問題ないのだが、朝からだとどうしても母がドーブルを見かけることになる。
     初めてドーブルを見た時、母は一瞬立ち止まっただけだった。
     何を思ったかは知らないが、母があのドーブルが気になっているのは確かだ。それはあの絵が不快だったからなのか、「絵描き」そのものに対してだったのか分からないが、私はさらに母との関係が悪化する原因にならないかと不安だった。
     母が来てからも私は毎日彼の絵を消しに行っていた。と言っても、私は道具を用意するだけだけだが。
     私はドーブルを追い払うことを初めて真剣に考えた。


    「母さん……あのドーブルの事なんだけど……」
    「えっ……」

     その日の夜、母が食事を終えて部屋に戻ったのを追いかけて、扉の前で話しかけた。まだ、私はこの部屋に入ることを許されていない。

    「その……母さんはどう思っているのかなって思って……。その……もしかしてあんまり気分良くないかな……」
    「…………」

     黙ってしまった。初めはいい感じに話が出来そうだったのに、うまくいかないもんだ。

     次の日は朝からリハビリの予定が入っていた。
     母は今、珍しく朝刊を読んでいる。老眼の進んだ母に、新聞は相当見ずらいだろうにやたら熱心に読んでいる。
     私は朝食の準備をしながらその様子を見ていた。

    「母さん、ご飯できたよ」
    「…………そう」
     コクリと頷きながら小さく返事をしてきた。最近はやっとこれくらいの口は聞いてくれるようになった。
     私はいつものように食卓にやって来た母とすれ違うようにしてリビングへ入った。
     リビングの机の上にはさっき母が読んでいた新聞が置かれていた。
     ――何を読んでいたんだろう……?
     気になった私は折りたたまれていた新聞を広げ、ざっと斜め読みしてみた。
     どこかの国で紛争が始まったらしい。一面に人間とポケモンの兵士たちが市街に繰り出している写真が出ている。それに、この国の財政問題。ポケモンリーグの赤字がさらに膨れているそうだ。
     ペラペラと新聞をめくっていくと気になる記事を見つけた。

     ――カントー出身画家、ヤマシタユウゾウ氏の個展開催!

     今度ヤマシタユウゾウの個展がタマムシシティで開かれるらしい。
     ヤマシタユウゾウと言えば現代美術の“オーソリティ”だ。彼が描いたものであれば、落書きのような線画でさえ目玉の飛び出るような高額で取引される。間違いなく、世間から認められた最高の画家だ。

     ――悔しい……。

     どうして、こんな若造が認められて、私のような本当に絵に心血を注いできたものがただのサラリーマンなんだ。不公平だ。私にも才能があったらなぁ……。
     私はイライラと新聞を畳んだ。食卓の方を見るとすでに母は食べ終え、皿を片づけようとしていた。

    「あぁ、いいよいいよ。やるから、早く他の準備してきて」
     母の手を払いのけるようにして皿を奪った。
    「…………」
     今度は黙ったまま、母は行ってしまった。

     その日、私がこれからのことを思案しつつドーブルの所へ行くと、ちょっとした騒ぎが起きていた。

    「やだー! 僕はここにいるぅ!」
     子供の声がする。
     その様子を私は壁の横から見ていた。
    「ダメです。お母さんの言うことを聞きなさい! こんなところでいつまでもいたら周りの人の迷惑でしょ!」
    「いやだぁー。僕はもっとこの絵みたいんだよぉ……」
     子供の方は今にも泣きだしそうだ。
    「こんな気持ち悪い絵……」
    「気持ち悪くなんかないもん!」
     母親がぼそっと漏らした言葉に、子供が怒る。

     子供の年は7〜8歳と言ったところだろうか。学校の制服らしきもの着て、いかにも「お坊ちゃま」という感じがする。母親も母親で、ピッチリとした黒のスーツに派手なコサージュを着けて、さしずめ授業参観の帰りといった所だろうか。
     そんな親子のやり取りのそばで、ドーブルの様子が変なことに気付いた。絵はもうほとんど完成してる。
     なんだかそわそわしている。普段なら完成まで一心不乱に筆替わりの尻尾でペタペタ塗りたくっているというのに、どうしたことだろうか。

    「あら……」
     母親の方がこちらを向いている。やっと、私の事に気付いたようだ。
    「あなたはこの家の方で……?」
    「そうです。ここの大家をしている者です」
    「それは……お見苦しい所を見せてしまい、お恥ずかしい」
    「いえいえ……。お子様はこのドーブルの絵が、とても気に入っているようですね」
     ドーブルの絵が好きだと言うこの子供の事が気になっていた。
    「うん! 僕ドーブルの絵、大好き!」
     母親の横で子供が嬉々として言う。
    「こら! またこの子は。すみませんねぇ、うちの子、こんな変な絵が好きだって言って聞かないんですよ」
    「変じゃないもん!」
     子供が憤慨して言う。
    「ちょっと黙ってなさい」
     母親はにべもなく一喝する。
    「今から、この絵の掃除をするんですよね?」
     母親が私の持ったバケツとモップを見て言う。
     私がそれにコクリと頷くと、
    「ほら、このおじさんの邪魔になるでしょ。早くいきましょう」
    「おじさん、この絵、消しちゃうの……?」
     悲しそうに子供が聞く。
    「ほら、ぐずぐずしないの! 早く行くわよ」

     子供を半ば引きずるようにして、母親はまた道路の中へ戻って行った。
     連れて行かれた子供は、最後まで悲しげな目でドーブルの絵を見ていた。


     その日もドーブルはバケツとモップを取りに来た。
     あの親子が去ってから、数分の後に絵は完成し、直後にドーブルは私から道具を持って行った。

    「お前……」
     思わず近づいてきたドーブルに声をかけた。
     しかし、何と言ったら良いのかわからず、私は黙ってバケツとモップを渡した。
     黙々とモップを動かすドーブルを見て、私はその日初めて、彼の絵をとても惜しく感じた。
     部屋に戻る間、私の中で彼を追い払うなんて考えはサッパリなくなっていた。母と私の問題より、彼の絵が、私には惜しかった。


    「あのドーブル、どうかしたの?」
     母の声。夕飯の準備をしている時の事だった。

    「えっ……」
     まさか向こうから声をかけられるとは思わず驚いた。

    「いつもきれいに消えているのに、今日はあちこち色が残っていたから……」
     ここに来て初めて母から聞かれたことは、あのドーブルの事だった。
     母があのドーブルの事を気にかけていたこと。ドーブルが絵の掃除を怠っていたこと。私の頭はそれらの驚きで、思考停止してしまった。
     ――ジュウジュウ。
     あ、思った時には遅かった。フライパンの中の肉は焦げてしまっていた。
     私は慌ててコンロの火を消すと、エプロンを脱いだ。

    「母さん、ちょっとこっち来て」
     私は母をリビングまで連れ出して詳しい話を聞きたかった。
     しかし、
    「知らないならいいわよ」
     そそくさと行ってしまおうとする。
    「ちょっと待って」
    「何?」
     イライラとした口調で言う。
    「ドーブルの姿は見た? どんなふうだった?」
    「そんなこと知らない。分からないから聞いているんでしょ」
    「頼むから教えて。ドーブルはどんな感じだった?」
     何故か気になって仕方ない。人の家に勝手に絵を描いてポケモンの事なんて、私の知ったことではないはずなのに、どうしたことだろう。
     必死に頼み込む私に、母は渋々と言った様子で話し始めた。
    「私が帰ってきた時に、またドーブルが掃除していたのよ。見てたらなんかいつもと違うっていうか、モップを重そうにして動かしていたし。……今になって、声でもかけてあげたら良かったんじゃないかって思って……。もういい?」
     答えも聞かずに母は行ってしまった。


     その後、私は夕飯を食べながら考えていた。
     ――きっとドーブルはあの子供の事が気になっていたに違いない。
     私が見ているそばでも、ドーブルの様子は明らかにおかしかった。
     そして、あの時の彼の気持ちを、私は容易に想像できる。
     ――自分の作品を「好きだ」と言う人がいる事。
     これまでどれだけ絵を描いても、誰にも見向きすらされなかったドーブルにとって、それがどれだけ嬉しかったか。
     あの子供のような存在をどれだけ待ち焦がれていたか。
     私には分かる。私も待っているから。


    「ちょっと……いいかしら?」
     不意に声をかけられた。
    「どうしたの?」
     さっきまでと様子の違う母をいぶかしげに見た。
    「さっきの事なんだけど、もう一つ思い出したことがあるの」
     そう言って、テーブルの向かいに座った。
    「え、何?」
    「あの時ね、ドーブル泣いていたのよ」
    「えっ!」
    「泣きながら絵を消していたのよ……。でも、辛そうな感じじゃなかった。嬉しそうな顔していたの。……あ、母さんね、ポケモンの表情が分かるのよ」
     ちょっと得意げに付け足した。久しぶりに見る、穏やかな母の顔だった。
    「そうだったのか……。ところで、なんでその事を急に……?」
    「アンタ見て思い出したのよ。分かってる? アンタ今、泣いているのよ」

     言われてみて気が付いた。目の前のカレーは一口も手を付けられず、私の頬は濡れていた。
     何故泣いていたのか、理解するのにしばらく時間を要した。母は椅子に座ったままこちらを見ている。

     ――私も嬉しかったんだな……。

     あの皮肉な特性を持って生まれてきたドーブルに、やっと「見てくれる」人ができたこと。それがたまらなく嬉しかったんだ。
     私とドーブルは似ている。
     絵が好きで、でも才能はこれっぽちも無い。描くのが好きで、描いた絵は大っ嫌い。
     そんなドーブルに、私は自分自身を投影させていたのだ。だから、ドーブルの喜びが、まるで自分の事のように感じている。

     でも、私はドーブルじゃない。
     それに気づくと、私はいてもたってもいられず、話始めた。

    「母さん、僕の絵ってどうなのかな?」
    「どうって?」
    「その……なんていうかな……下手なのかな……」
     初めて私は、自分の絵の評価を親に聞いた。今まで、子供のころから私は一度も、自分から聞いたことは無かった。

     ――ドキドキドキ。

     心臓が破裂するのではないかと思うほど高鳴っている。同時に私は激しく後悔した。
     聞くんじゃなかった。馬鹿なことをした。答えなんて分かっているはずなのに、何てことを私は……。

    「下手ね」
     一言。あっさり、私の60年は否定された。

    「でも、好きよ」

    「へ……?」
     思わぬ続きに言葉を失った。

    「母さんも父さんも、あなたの絵が大好きだったのよ。まぁ……子供のころから、あんまり下手すぎてよく父さんとは苦笑してたんだけどね。鍛えればどうにかなるかと思ったけど、結局いつまでも下手クソだったわね」
     そういって、昔を思い出したのかニヤリと笑う。
    「父さんも母さんも分かっていたの……? 僕に才能が無いって……?」
    「当たり前でしょ。誰だって、アンタの下手な絵見てまともな画家になれるなんて思わないわよ」
    「じゃあどうしてあんなにいろいろ……大学まで……」
     私は混乱でどうにかなってしまいそうだった。体が震える。声も震える。
    「バカ者! アンタが、絵が好きだったからに決まってるでしょ!」
     何を聞いているんだと、いきなり母は怒った。
    「父さんも母さんもアンタの絵が好きで、何より絵を描いているアンタがどんな時より幸せそうだったから、ずっと応援してきのよ!
     それをアンタは……」
     どんどんヒートアップしていき、言葉につまってしまっている。
    「それをアンタは、『才能が無いので、まともな職に就きます』なんて、大バカ言って……!」
     それは私が勘当された日に、両親に言った言葉だった。
     父も母も、私の絵が好きで、それを諦めたことに激怒していたのだ。

    「そんな……そうだったのか……」
     私は頭を抱えた。全て私の誤解だった。
    「あの日どれだけ私達が悲しんだか……」
     母は泣いていた。
    「ごめんなさい……本当にごめんなさい……」
     私も泣いていた。

     それでも私は嬉しかった。やっと両親の思いが分かったこと。亡き父があの日どうしてあんなに怒っていたのかを、やっと知ることができたこと。
     そして何より、私の絵が好きだと言ってくれる人が、この世界にいる。
     その事がどうしようもなく嬉しかった。


     翌々日の朝、私は母を連れていつもより早く、あの壁の前に来ていた。
     手に持っているのは、バケツとモップじゃなく、さっき部屋から取ってきた絵筆とパレット。それに、絵の具の入った箱と水を入れた筆洗代わりのコップ。
     母は横で、シルバーカーに座って、ニヤニヤ笑っている。
     昨日から私たちは、今日の“イベント”のために計画を練ってきていた。

    「お、来た来た」
     私達が来て数分後、ドーブルが道路の向こうからやって来た。
    「ふっふっ。驚いてる、驚いてる」
     母がニヤニヤを一層強めて言う。
     ドーブルは、私達と壁の前に置かれた画材道具を見て、目を丸くしている。私にもそう見える。

    「なぁ、ドーブル」
     私はいろいろな道具を見て回るドーブルを呼びとめた。今日のイベントには彼の協力が必要不可欠なのだ。
    「今日の絵、あと少し待ってくれないか?」
     ドーブルは首を傾げてこっちを見ている。こちらの言葉が通じたのか、その場にペタンと座るとまたあの「ハァハァ」という息遣いをしている。これからの事を思うと、いっそうこの顔がかわいらしく感じる。

     この“イベント”は、私とドーブルが、ゲストの為だけに絵を描くものだ。カンバスにするのは、この壁。今日のゲストは母と、あともう一人。
     私は腕時計を見た。さっき見た時からまだ三分しか経っていなかった。


     今日は例の、ヤマシタユウゾウの個展開催の日だ。だから、通りにはいつもより多くの人たちが歩いている。
     でも、もう私はその様子を見ても、何とも思わない。
     ――私には私の絵を待つ人がいるから。

     まだかまだかと、もう一人のゲストの到着を待っていると、
    「あら! 珍しい! 親子おそろいでどうしましたの?」
     威勢のいい声がした。103号室のお婆さんだ。ガーディを連れている。
    「いや……ちょっとね」
     私はごにょごにょと、お茶を濁した。
     この人が関わると、計画が台無しになってしまう。今日ばかりは、「招かれざる客」は困るのだ。
     母と言えばご機嫌で、あたふたする私を面白げに見ている。――これからイベントだって分かっているのだろうか……
    「あ! これって!」
     お婆さんが画材道具を指差して叫ぶ。
    「大家さんこれから絵、描くの?」
     目をキラキラさせて聞く。いよいよ面倒くさくなりそうだ。
    「あ〜、おばあちゃん? ガーディの散歩はいいのかい?」
    「いいのいいの。それより大家さんの絵、一度見てみたいと思っていたのよ」
     昔“うっかり”彼女に絵を学んでいたことを話してしまったのがまずかった。
    「そんな……。私の絵なんかより、個展に行かれてはどうです? あのヤマシタユウゾウの個展が今日からやっていますよ」
     どうにか自分の絵から話題を逸らそうと頑張ってみた。
    「え〜、ヤマシタユウゾウ? 私、あの人の絵、好きじゃないのよねぇ。なんて言うの、主張が強すぎるっていうか、あの人の絵ケバケバしくない? 見てて疲れるのよねぇ」
     目の前で多くの人たちが、彼の絵を見に歩いているというのに、ずけずけと物を言う。
     私は内心ヒヤヒヤしつつ、こういう人もいるんだなぁ、と少し驚いた。
     “オーソリティ”を受け入れないたった一人が目の前にいた。
    「あはは……あんまりそういうこと大きな声で言っちゃだめですよ。あの人たち、みんな彼の絵を見に行く人たちなんですから」
    「そうなの……」
     おばあちゃんは少し寂しげに言った。
    「まぁまぁ。私の絵は、おばあちゃんが帰ってくるまでには出来上がっていると思いますから、先にガーディの散歩行ってやってくださいな」
     お婆さんは最後までぶつぶつ言っていたが、結局は散歩に出て行った。


     お婆さんが行ってから数分後、やっと待ち焦がれていた人物が現れた。ドーブルが急にそわそわしだす。

    「おお! やっと来たね。待っていたよ」
    「おはようございます!」
    「おはよう じゃ、君はそこのイスに座ってね」
     子供ならではの元気な挨拶に、思わず笑みを浮かべつつ、“客席”へ案内した。
    「このおばあちゃんは……?」
     案内されたイスの隣で座っている母を見て言う。
    「初めまして」
     母が挨拶した。
    「この人は、僕のお母さんだよ。君と同じ、今日のお客様だ」
     私がそう説明すると、パッと顔を輝かせ、
    「はじめまして、おばあちゃん。これから楽しみだね!」
    「えぇ、そうね」
     母も嬉しそうに答えた。
     この子は、あのドーブルの絵を好きだと言った子だ。昨日の夕方、学校帰りを見計らって、このイベントに招待した。

    「お母さんはよく許してくれたね」
    「うん。まぁ絵を見ることは別に悪い事じゃないし、休みの日に出かけるくらいの事良いってさ。それに、おじいちゃんは、いかにも『コーコーヤ』だからね!」
     恐らくは受け売りだろう、彼の言を葉聞いてクスクス笑いたくなるのを必死で堪えた。
    「ふふっ、それはよかった。じゃあ、お客さんもそろったことだし、始めますか!」


     右手に絵筆、左手にパレットを持つ。水の入った缶を作業しやすいようにセット。


    「ドーブル。それじゃ、私と一緒に描こうか!」
     ドーブルは一瞬目を細めて、
    「ドブッ!」
     パッと表情を輝かせて短く吠えた。
     イベントの始まりだ!


     ――ペタリ、ペタリ、ペタリ。
     ――シュッ、シュッ、シュッ。
     短い線、長い線。それぞれが入り乱れる。
     私は記憶の風景を描き、ドーブルのは、何か幾何学的な模様に見える。

     ――シュウ、シュウ、シュウ。
     ――ペタ、ペタ、ペタ。
     太い線、細い線、形の中に色が入る。
     風景のおおよそが出来上がって、ドーブルの方も、まとまりのある形が見えてきた。

     ――ベタリ、ベタリ、ベタリ。
     ――サラリ、サラリ、サラリ。
     曲線、直線、仕上げが進んでいく。
     海の見える街と、ペーズリーと六芒星が合体したような形が出来上がる。

     ――シュシュッ!
     ――ペタッ!
     最後に私はサインを、ドーブルは自分の足型を、絵の右下に残して完成。


     一人と一匹は、並び、一心不乱に描いた。
     自分の絵を好きだと言ってくれた、たった一人の為に描いた。
     道行く多くの人は彼らの絵に顔をそむけて通り過ぎたが、そんなこと彼らには関係ない。
     才能がなくたって、オーソリティでなくたって、彼らには自分の作品を好きだと言ってくれる人がいる。
     その大切な人だけで、彼らには十分だ。


    「あぁ、やっとできあがったな」
     私はドーブルと顔を見合わせた。ドーブルは笑っていた。
     大学時代のアイツの言葉が分かる気がする。
     ポケモンだって、こんな幸せな顔をするんだ。
     ――そりゃ嬉しいよな。
     私は、後ろを振り返った。

     ――自分の作品をこんなにも喜んでくれる人がいるんだから――




     イベントの絵はその日のうちに消された。
     もちろん、「見てくれる」人のできた彼らはもう、自分の絵が嫌いなんて思わない。
     しかし、彼らは何より、またその場所に描きたいと思ったのだ。

     描いては消し、描いては消し。
     時には“イベント”もして。
     描くことが好きで、それで――

     ――好きだよ――
     あの日の言葉が耳に残っている。


    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

    マイノリティが書いた、マイノリティへ送る、マイノリティの話。
    私はオーソリティにはなれないですから。


    自分の話を読んでいただけた方には本当に感謝しています。ありがとうございます。


    【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】【批評してもいいのよ】


      [No.1616] メモリーチップ 投稿者:紀成   投稿日:2011/07/19(Tue) 16:57:36     77clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    『ねえ、お父さん、どうしてこんなことをするの?』
    『そりゃあ、何年経ってもお前を忘れたくないからだよ』
    『これで撮ってたら忘れないの?』
    『ああ。壊さない限り、一生残るんだ。そしてお父さんが死んでも、それはお前の子供に受け継がれる。
    メモリーは消されない限り、ずっと後まで継ぐことが出来るんだ』
    『へえー』

    これが、五歳の時。

    『あ、お父さんまた引っ張りだして来たの?』
    『ああ。前のメモリーチップもきちんと残ってるぞ』
    『なんか恥ずかしいな。僕がまだ右も左も分からないような状態だった時のメモリーだろ?』
    『とんでもない。これは成長の記録となるんだ。さあ、質問に答えて』
    『はいはい』

    これが、十歳の時。

    『…今度はお袋かい』
    『お父さんがね、送ってきて欲しいんだって。貴方の声を聞きたいって』
    『電話があるじゃないか』
    『電話できないくらい忙しいのよ。今大きなプロジェクトに関わってるとかで、昼も夜も無いんですって』
    『なら尚更電話にした方がいいと思うけど…』
    『はいはい、えっとね、貴方が思う幸せとは何ですか?』

    五年毎、それぞれ一時間ちょっとの質問と答え。それが僕にされた両親からの問題だ。後で分かったことだけど、僕が産まれた時からそれは撮られていたらしい。…もっとも、ゼロ歳の時はただ姿を撮られているだけらしいけど。
    最初は父親の役目だった。僕が十歳の時に何処かの巨大なコーポレーションの研究室に抜擢されて単身赴任するまでは。あの後父親からの連絡は一度も来ていないが、手紙だけがたまに届く。
    五年後との僕の記録を送って欲しいらしい。
    「何だかな」
    仕方無いので僕は質問に答えていった。

    『最近嬉しかったこと?やっぱポケモンのタマゴを貰ったことかな』
    『つまらないことか… ポケモンが孵るまでは、退屈だろうね』
    『幸せ?その時によって違うと思うよ』
    『怒りや憎しみ?怒りは分かるけど、憎しみって何?』

    これが、五歳から十歳くらいの時。で、十五歳の時。

    『友達って何か?かなり分けられると思う。親友と仲間の間じゃない?』
    『愛って何か?…ちょっと、恥ずかしいこと言わせないでよ。誰かを守りたい、大切にしたい…かな』
    『哀しみって何か。誰かを失ったり、大切な人が死んだり』

    これを記録したチップは、母さんから父さんへと渡された。その後の行方は分からない。


    「対象者への挿入、完了しました」
    「よかろう。心拍は」
    「安定しています。…あの、これで本当に目覚めるのでしょうか」
    「今までどんな情景を挿入しても目覚めなかった。私達が考え付く術は、これしかない」

    何故俺を起こそうとする?俺は眠たいんだ。邪魔しないでくれ。
    俺はここで眠っていたいんだ。人の声は悲鳴ばかり。音は痛々しい物や、色は赤や黒、茶色と華がない。

    『ねえ、お父さん、どうしてこんなことをするの?』

    頭の奥で声が聞こえた。今までとは違う。優しい子供の声だ。歳は分からない。トーンからして…女か。
    また新しい記録が入ったのか…

    『最近嬉しかったこと?やっぱポケモンのタマゴを貰ったことかな』
    『つまらないことか… ポケモンが孵るまでは、退屈だろうね』
    『幸せ?その時によって違うと思うよ』
    『怒りや憎しみ?怒りは分かるけど、憎しみって何?』

    嬉しさ。怒り。憎しみ。幸せ。つまらない。彼女はこれらを知っているらしい。孵る?孵るって何だ?
    そんな情報はまだ入ったことが無い。

    『友達って何か?かなり分けられると思う。親友と仲間の間じゃない?』
    『愛って何か?…ちょっと、恥ずかしいこと言わせないでよ。誰かを守りたい、大切にしたい…かな』
    『哀しみって何か。誰かを失ったり、大切な人が死んだり』

    愛。哀しみ。友達。愛って何だ?誰かを守りたい、大切にしたい…
    よく分からないが、重要なことのように思える。今まで見てきた物とは正反対に感じる。

    男の声が聞こえた。

    『お前がどうしてここにいるのか。それは望まれているからだ。お前はお父さんとお母さんとの間に出来た、かけがえの無い命だ』

    いのち。俺もその中に入るのか… お父さんとお母さんとは、誰だ?俺は気がついたらここにいた。
    そんな存在が俺にもいるのか?

    『―だから、命。ミコトと名づけた』

    みこと。さっきの女の名前はミコトというのか。今入ったメモリーは、ミコトという女の記録なのか。

    「私の娘の十七年を撮ってきたんです。十歳からは妻に頼んで。彼のプログラミングに必要な情報を質問することで、彼にとっての答えを見つけ出そうとしたんです」

    ミコト。命という文字でミコト。綺麗な名前だ。もしかしたら、ミコトが俺のルーツなのかもしれない。
    会ってみたい。会いたい。どうすれば会える―


    何かが、動き出そうとしていた。ミコト本人の知らないところで、何かが。
    そしてそれが全てを揺るがすような大事件になるとは、本人はおろか、この『彼』すらも知らなかった。


      [No.1615] ダークライと 投稿者:春紀   投稿日:2011/07/19(Tue) 08:58:51     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ヒカリ、ヒカリ

    「貴方はこんなところにいたいわけじゃないんでしょう?」

    ヒカリ

    「だったら一緒に行こう。外へ」



    私は人々の闇をよく知っている。私は結局は、あの男の手のひらに踊らされただけだったのかもしれない。
    あの男によって招かれた少女と少年。
    彼らは

    光そのものだ。

    光があるところには闇がある。それは変えられない事実だ。光そのものが闇を照らし、闇は光があるから生まれる。
    ひどく惹かれた。
    だが、この身に宿る力を私は忘れてはならない。他の世界、外へとこの身を置いてはならない。
    皆が苦しむ。


    「なら私がずっとそばにいてあげる」
    「一緒に出ようよ、外へさ」

    少女が笑い、少年は手を差し出す。

    「貴方が悪いことなんて何一つない。だって悪夢は人間なら誰しもが見るんだから。自責の念に駆られる必要はないよ」

    少女も手を差し出した。


    手を



    とってしまった。





    せめて三日月の羽を持っておいてほしい。

    「君がそう言うのなら」

    少女は困ったように笑って私の申し出を受け入れてくれた。
    少女と少年と外へ出て、私は少女と共にいることにした。
    彼女の仲間達とボールの外で対面した時、正直な所拒絶されるだろうと思った。
    それは半分当たっていた。

    ボールから出た彼らは初め警戒していた。見たこともなく、感じたことのない力だったからだろう。
    しかし、ヒカリが私の事を紹介すると、直ぐにその警戒心は解かれた。彼らは笑顔で宜しくと私に言って来た。

    私に。

    戸惑った。知らないからそんな表情ができるのだと、その時思っていた。


      [No.1614] 繰り返す 投稿者:レイニー   《URL》   投稿日:2011/07/17(Sun) 21:38:54     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ついに最後の一匹、ユクシー発見! こいつを捕獲さえすれば俺の図鑑は完ぺ……

     ……あれ?俺、一体何してたんだ? ポケモン図鑑……? あ、最後の一匹を捕まえようとしてたんだっけ。よし!早速そいつを探しに行くぞ!


    ※99字


      [No.1613] Best Partner 投稿者:レイニー   《URL》   投稿日:2011/07/17(Sun) 21:38:15     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     長い間コイツと過ごしてきた。命を懸ける戦場から、バッジを懸ける戦場へ。環境や戦法は様変わりだ。でも、俺達の心は変わらない。心を一つにして相手を打ち負かす。それだけだ。

    「挑戦者が待ってる。行くか、相棒」


    ※100字


      [No.1612] オイラマルマイン 投稿者:レイニー   《URL》   投稿日:2011/07/17(Sun) 21:37:14     33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     オイラマルマイン。今日もアイテムボールのふりして、道行くトレーナーを驚かせてやる。

     ……今日も見てる奴は大勢いるのに、誰も騙されない。何で皆アイテム欲しさでこの柵乗り越えないんだよ!


     ――サファリゾーン前


    ※100字


      [No.1611] 運命の出会い 投稿者:レイニー   《URL》   投稿日:2011/07/17(Sun) 21:36:10     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     一目惚れだった。丸い頭に、開いてるんだかわからない細長い目。背中には勢い良く飛び出した炎。恐る恐る頭を撫でてみたらふかふかして、そして暖かかった。運命だと直感的に感じる。

    「博士!私、この子にします!」


    ※100字


      [No.1610] 百字で書いてみた 投稿者:レイニー   《URL》   投稿日:2011/07/17(Sun) 21:35:06     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    こんばんは。百字にハマりすぎて、謎のサイトまで建てかけてしまったレイニーです。(URL→企画)
    というわけで、以下書きためた百字小説からお気に入りの物をマルチポッポ。
    尚、全てスペースは字数に含みません。あしからず。


    【全て何をしてもいいのよ】


      [No.1609] ごめんなさい?! 投稿者:スズメ   投稿日:2011/07/16(Sat) 17:22:36     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    返事がものすごく遅くなってしまった・・・ありがとうございます。
    まさか書いてもらえるとは・・・サラダにすると、少々苦味があって好みの人はすごく癖になるとか。
    あとは炒め物にもよし、青汁もどきの材料にもよし。
    葉っぱを食べるだけで本体を食べるわけではない・・・と思います。
    なにやら育成農家さんがいそうだ・・・
    流月さん、キトラさん、ありがとうございました!


      [No.1608] コメントが2つもきている……だと… 投稿者:しじみ   投稿日:2011/07/15(Fri) 17:05:02     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    2つもコメントだなんて。
    これは七夕や、夏休みに浮かれる私への罠じゃないだろうか。


    ≫イサリさん
    はじめまして!
    素敵な文章に危うくパソコンの前で悲鳴をあげてぶっ倒れるところでした。
    ヨマワル、すてきです!
    わかりづらい設定にも関わらず、ノってくださってありがとうございます!

    ご指摘をいただいてみると、本当にそちらの方が詩的で、なおかつわかりやすいなと思いましたので、
    芸がないなとは思いつつも仰られた通りに直しました。
    本当にありがとうございました!



    ≫キトラさん
    特に何のポケモンかは決めてなかったのですが、
    言われてみるとそんな感じもしますね。
    ダークライは特に「死」とか「闇」のイメージも強いので……。
    そんな風に想像してもらえてうれしいです。



    ヨマワル河渡し設定で、また書こうかな……と思うしじみでした。


      [No.1607] こっそりオフレポ 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/07/14(Thu) 22:27:23     85clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    約2カ月遅れのオフレポをこっそりうp。


    http://www.geocities.jp/hisakata_so_ya/masapokeoff.htm



    オフ会楽しかったです。
    またいつか遊びましょう(´・ω・`)ノ


      [No.1606] ステンドグラスみたいだ 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/14(Thu) 21:14:56     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    教会のステンドグラスにありそうな一枚。
    ノアの箱船に救いを求めて。


      [No.1605] ジョウト昔話 人食い蝶 投稿者:紀成   投稿日:2011/07/14(Thu) 18:41:16     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    さっきから貴方達の話を聞いてると、随分女の子同士っていうのはいざこざが絶えないみたいね。ま、男同士みたいにサバサバしすぎても嫌なんだけども。彼らから見たら、女っていうのは厄介な生き物みたいよ?急に訳も分からず泣き出したり、すぐに気が変わるし。
    まあそれが女の魅力みたいな物なのかもしれないけど。小学校高学年から中学にかけてはそれは酷いものよ。貴方達ももうすぐ中学だから、わざわざ仲良し同士で私の話を聞いているんだと思うけどね。
    そう。女は嫉妬深く、その気になれば周りが見えなくなっても自を貫き通すっていう、こわーい生き物なの。
    今から話すのは、ジョウト地方、エンジュシティの昔話よ。

    貴方達、花街って知ってる?聞いたことくらいはあるでしょ?今で言うキャバクラみたいなもの…って言ったら本場の人達にすごく失礼ね。今じゃ何でもアリみたいなイメージがあるけど、当時の花街はもっとルールが厳しかったのよ。
    まず、そこで働いているのは各地から売られてきた女の子達。丁稚奉公っていうの。今じゃありえないけど、当時はお金を前払いしてもらう代わりに子供をその店で働かせることが多かったの。貴方達よりもずっと年下―四歳とか五歳の子供が親や兄弟を養うために働いてたのよ。
    そして下働きから上に、呼出し、座敷持、格子、太夫などがいたのよ。ちなみに太夫は後にいなくなって、散茶っていうのが一番上の花魁になったらしいわ。
    そしてカントー地方では当時花魁って呼ばれていたけど、ジョウトでは太夫の名前が一般的だったようね。

    で、もちろん遊ぶ方にも厳しいしきたり…今で言う暗黙のルールがあったのよね。
    花魁には、茶屋を通して取り次いでもらわないといけなかった。今で言う店に直接ってわけじゃないの。だから、茶屋で豪勢に遊び金を落とす必要があったみたい。
    それからも大変なのよ。 座敷では、花魁は上座に座り、客は常に下座に座っていた。花魁クラスの遊女は客よりも上位だったのである。今じゃあまり考えられないわよね。まあご指名ナンバーワンなら話は別かもしれないけど…
    一回目は話も出来ず、飲み食いもできなかった。この時花魁は相手の男を見て品定めをし、相応しいか否かを見極める。もし駄目だったら二度とその花魁には会うことを許されなかったのよ。二回目は多少近くには寄ってくれるけど、基本的には一回目と同じ。三回目にようやく馴染みになって、自分の名前の入ったお椀とお箸が渡されるの。この時、ご祝儀としてお金を払わないといけなかったみたい。
    そして馴染みになると、他の花魁を指名するのは浮気と見なされたらしい。もしそうなった場合、指名されていた花魁はお客を捕まえて、茶屋に苦情を言ったらしいわ。

    それは、ある晩のこと。一人の男が歌舞練場の近くを歩いていたの。そうしたら、どこからかシクシクと泣く声が聞こえた。周りを見渡すと、とても美しい女が着物の裾で涙を拭いながら泣いているのよ。男が尋ねると、その女はこう言った。
    『近くの川に大切な物を落としてしまったんです』
    男は彼女の美しさに見惚れて、自分が探すって言ったのよね。今ではもう埋められていて無くなっているけど、昔エンジュには川があった。焼けた塔の近くにあるあの池は、その名残らしいわ。
    で、男が川まで行って探していると、女が場所が違うと言う。また移動しても、違うと言う。
    じゃあ何処なんだと言うと、その女は―

    『お前の心臓が落し物さ』

    次の朝、その男は干からびた状態で見つかった。体液と言う体液を全て抜かれて、川に浮いていたそうよ。目撃者がいなかったから、事件は迷宮入りしかけたんだけど…
    また次の朝も遺体が見つかった。同じ状態で。あるエンジュに済んでいた一族の頭領が、変に思い殺された男たちのことを調べてみたの。そうしたら、二人ともある花魁の馴染みの客だった。
    頭領はその花魁に会って話をしてみたかったらしいけど、話が出来るのは最低でも三日経ってから。その間にまた犠牲者が出たら意味が無い。
    男は思い切って自分を犠牲にしてその花魁の正体を掴もうとしたの。

    男は被害者と同じように歌舞練場の周辺を歩いていた。案の定、一人の女が泣いている。その着物は黄色と赤と青が入り、金色の粉が塗られているような、それは美しい物だったらしい。
    男は女に近づき、たずねた。女は落し物をしたという。男は川まで行き、振り向いた。
    『お前は人間じゃないな。何者だ』
    女はニタリと笑い、そのまま着物を脱ぎ捨てた。どんどん姿が変貌し、巨大な羽を持ち、黒い丸まった口を持った蝶へと姿を変えた。
    『出やがったな!化け物め』
    男はあらかじめ近くに用意しておいた松明に持っていた乾いた棒を翳し、小さな松明を作った。どうやらあの巨大な蝶は丸まった口で獲物の体液を吸い尽くしていたらしい。
    口を伸ばしてきた頃を見計らい、男は松明を投げつけた。見事に口に命中し、細い口の先からみるみるうちに炎が移り、蝶に襲い掛かった。
    アッと言う間のことだった。蝶は悲鳴を上げながら燃え尽きた。

    何故巨大化したのかは分からないって。もう二百年以上前のことだから、詳しい記録も残っていない。私図書館で調べてみたから。え?何でこんなこと調べたのかって?いや、ね。常連さんの預かりポケモンが進化したら巨大な炎ポケモンになるっていうから。
    うちの看板息子も炎タイプだし。やっぱ虫タイプは炎で焼かれちゃ終わりなのかしらね…
    あ、最後に一つ。童謡の『ちょうちょ』ってあるでしょ?ほら、『ちょうちょ、ちょうちょ、なのはにとまれ』って。『なのは』は菜の花のことね。『なのはにあいたら さくらにとまれ』菜の花に飽きたら、桜にとまれ。
    桜の花から花へ。とまれよ遊べ、遊べよとまれ…
    遊び好きな男を、蜜を所構わず吸っていく蝶に喩えた歌なのよ。本当の話。


      [No.1604] みそか成長記〜太陽の接吻〜 投稿者:乃響じゅん。   投稿日:2011/07/14(Thu) 10:10:04     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     祥子はふわふわ中毒だった。
     それと言うのも、小さい頃に迷子だった祥子を助けてくれたシルクハットの青年が、大量のふわふわをプレゼントしてくれたのである。それ以来、祥子はふわふわが無いと生きていけない身体になってしまった。
      大学生になって光の街で一人暮らしを始める。初めて足を踏み入れた時には、ふわふわの少なさに愕然としたが、いざ暮らしてみると意外とそうでもないことが分かった。例えば、生協のエントランス。例えば、ビルの曲がり角。あちこちに散らばるふわふわを見つけては、それを拾って生活をしていた。
     そん な暮らしを続けて一年弱、雪の降らない街に鐘が鳴る。ぼーん、……。ぼーん、……。除夜の鐘の音だ。祥子の地元では、住職でなくても先着百七人(最後の一回は住職が突く)に突かせてもらえたが、この街ではどうだろう。少し買い出しに出かけただけだったが、それ以外に用事もなかったのでお寺の方へと足を運んだ。
     結局、鐘を突かせてもらうことはなく、ただ火を焚いて周りでわいわいとご近所さんが喋っているだけだった。奇麗、と火の粉の先に見とれていたが、ここにはふわふわがそれほど見当たらず、祥子はがっくりと肩を落とした。
     その帰り道、道端にふわふわが落ちていた。行きは見当たらなかったのに。ふわふわの塊は、てんてんと路地裏に続いていた。祥子は一つ一つ丁寧に拾いながら、跡を辿っていく。
     そして、祥子は溢れる笑みを両手でふさぐことになる。小さな段ボールの中から、信じられない量のふわふわが! 胸のどきどきが抑えきれず、逸る足を抑えきれず、祥子は一瞬でも早く段ボールの中を覗きたい衝動に駆られた。
     大量のふわふわに囲まれて、一つのタマゴが眠っていた。ただ生まれる一瞬の為に、ひたすら内へ内へとエネルギーを循環させるタマゴ。見た目は全く動かないが、掌から伝わる温もりが、実態を教えてくれた。
     段ボール箱の側面をよく見てみると、「拾ってください」と書いてあった。そう、それじゃあお言葉に甘えて。祥子はタマゴを抱えて、一直線に我が家へ向かった。

     家に着いた瞬間、タマゴは割れた。上部だけが割れて頭が飛び出す。その後、タマゴから手足が生えてきた。
      祥子はその生き物と目が合った。高い声で鳴いて、つぶらな瞳で見上げてくる。かわいいと思ったのと同時に、不思議な予感があった。この子にはきっと、ふわふわを呼び寄せ、生みだす資質がある。その根拠は、段ボールに溢れたふわふわだ。もしかして、あのふわふわの多くはこの子が生み出したのではないか。背中がぞくぞ くした。一人暮らしで何か生き物を飼うのも悪くない。
     トゲピー。それが、この子の種族の名前だ。大みそかの深夜に出会ったと言う事で、祥子はトゲピーをみそかと名付けた。
     トゲピーの育て方を調べる正月を送っているうちに、みそかはトゲチックに進化した。
     祥子は驚いた。ポケモンって、こんなに早く進化するものなのだろうか。赤ん坊から見違えて、一気に青年のような顔つきになったみそかは、祥子の目により可愛らしく映った。ただの赤ん坊よりも、智慧のある可愛らしさ。祥子の顔は自然とほころぶのであった。
     再び大学が始まり、祥子は謝りながら家にみそかを置いて出ていった。みそかをあまり一人ぼっちにしすぎるのも忍びなく、可能な限り早く帰ってくるようにした。遊んでやると、無条件に喜んだ。その顔を見ると、ふっと心が安らいだ。
     そんな生活も、夏が始まるときに終わりを告げた。みそかが行方知れずになってしまったのだ。
      七月、テスト間際。家に帰ってみると、みそかの姿がない。祥子はいてもたってもいられなくなって、ありとあらゆる物陰を探した。おかしい、今までこんなことはなかった。ベランダの鍵が空いている訳でもない。家の鍵もきちんと締まっていた。じゃあなんでいないの? 祥子は泣きたくなった。
     家を出て、辺りを走り回ってみたが、やはりみそかの姿らしきものはどこにもなかった。夜十二時を回ったところで足が重くなり、真っ暗な闇の中をとぼとぼと歩いて、ベッドに倒れ込んだ。
     テスト期間中、みそかのいない悲しみに暮れながら勉学に励んだ。暗い気持ちがうまいこと集中力に切り替わってくれたおかげで、無事テストを乗り切ることができた。優が九割、可が一割。
      夏休みが始まって、祥子はバイト三昧の日々を送った。稼ぎが無かった時期は、親に生活費を肩代わりしてもらっていた。その後れを取り戻さなければ。と言いつつ、それほど精神的に疲れ過ぎない仕事を選んだのは、ふわふわを探しに出かける時間が必要だったからだ。ふわふわを見つけるには、集中力が要る。こんなとき、みそかがいればもっとたくさんふわふわを見つけられたのだろうか。

     九月、再び学校が始まる直前。バイトが終わって自分のアパートに帰ると、今までずっと姿を消していたみそかが廊下に立っていた。
      祥子は十二メートル離れた位置からみそかの名前を呟いた。信じられず、喜びよりも先に本当にみそかなのかと言う疑いが先行した。みそかは祥子の声に振り向いた。それはとても慌てた様子で、翼を動かさず飛ぶ不思議な浮遊術を使って扉を開き、その中に逃げ込んで、扉を大きな音を立てて閉めた。祥子は締め出しを食らったような気分になったが、良く見るとその扉は祥子の家ではなく、一つ右隣の家だった。
     ドアノブを捻ってみようとしたが、既に鍵をかけられて、入ることは出来なかった。
     インターホンを鳴らそうと思ったが、今日はもう夜も更け、ためらわれた。安堵と疑問が混ざった不思議な気持ちで、眠りについた。
     次の日、再びみそかがいるはずの扉の前に来ると、表札に「みそか」の文字があった。小学生の女の子が、自分の部屋のドアに貼る名前のような、かわいらしいデザインで。
     みそかはここに住んでいるのだろうか。深呼吸ののち、思い切ってインターホンを鳴らしてみる。
     がちゃ、とは鳴るが、声は聞こえない。祥子は自分の名前を名乗って、みそかに出てきてもらうようお願いした。暫く無言のまま時間が流れ、やがてホンは切れた。
     もう少し待つと、ドアがそっと開いた。出てきたのは、みそかだった。本当なら祥子の腰ぐらいの身長しかないのに、浮いて祥子の胸ほどの目線となったみそかが、祥子を見上げている。
     入ってもいいかと聞くと、みそかはゆっくりと頷いた。
     中の様子を見れば、隣の住人がみそかを拾って飼っていたのではないか、という疑念はあっという間に吹き飛んだ。
     子供の遊び部屋のような空間だった。カラフルなスポンジのジグソーパズルのマット。木で組まれた漕げない三輪車。赤、青、緑のビビッドなボックスの引き出し。線路のミニチュアが散乱している。
     人の生活している家とはとても思えない。どちらかというと、楽しい遊園地のような感じさえする。どこに腰を下ろしていいか分からない祥子に、水入りのプラスチックのコップを手渡すみそか。マットの上に散乱した線路は、幾つかが繋げられていた。丁度、運動場のトラックのような円を描こうとしている。だが、それを無事一周させるには明らかにパーツが足りない。それを見るみそかの目が、妙に悩ましげなのが目についた。
     一体何をしようとしているのか気になったが、聞いたとしてもそれを教えてもらう術がない。それでもせめて、何かをしてあげたいと思った。祥子がみそかにできることはないかと考えたとき、ふとこの線路のパーツに見覚えがあることに気が付いた。小さいころ、遊んだ記憶がある。
     それからと言うもの、祥子は大学生活の合間を縫って、線路のパーツの売っている店を探した。祥子は近所のおもちゃ屋に走り、同じものがないかどうかを探した。しかし、それらしきものは見当たらない。何件も当たってみたものの、なかなか見つからなかった。
     インターホンを押せば、みそかは間違いなく応じてくれた。みそかのおもちゃ部屋は時々、レイアウトが少し変わっていたり、中のおもちゃが増えていたりしていた。どんどん増えていったせいで、十二月になる頃には既に物の置き場が完全に消滅していた。いくら増えても捨てるなんてことは、一切考えていないらしい。ようやく祥子も、線路のパーツを売っている店を見つけて、買ってくる事が出来た。

     そして大みそか。

     厳密には違うが、祥子はこの日をみそかの誕生日として祝ってあげたかった。ケーキを買って、ロウソクも一本だけつけた。みそかの家のチャイムを鳴らす。
     誕生日おめでとう、と言うと、みそかはとてつもない気持ちになって、狭い部屋じゅうを飛び回って喜んだ。祥子は穏やかに微笑んだ。
      クリームのケーキに、一本ロウソクを刺して、部屋の明かりを消そうとする。すると、みそかは首を振り、祥子を止めた。そして、完成したトラック上の線路の上に電車を走らせる。ジージーとモーターが回転する音が辺りを包み、子供の頃に返ったような気持ちになる。みそかはそれを二台、三台と等間隔に走らせた。みそかはこれでOKの合図を出す。
     線路の真ん中にケーキを置き、いよいよロウソクに灯を点ける。部屋の明かりを消して、たった一本のロウソクが部屋をぼんやりと照らした。
     祥子は不思議な現象に気がついた。ぽつ、ぽつと全方向の壁や床、天井をすり抜けて、ふわふわが部屋に集まってくる。そのたびにロウソクの灯は強さを増し、部屋に集まるふわふわの数は加速度的に増えていく。
     除夜の鐘が遠くで聞こえる。ぼーん、……。ぼーん、……。その音さえもこの部屋は渦をまいてエネルギーの一部にしてしまうような感じがした。
     そして。
     みそかはロウソクの灯を思いっきり吹き消した。
     ぶわぁっ、とエネルギーの渦が外へと広がっていく。部屋をあれほど埋め尽くしていたふわふわも、風になったエネルギーが吹き飛ばしてしまって、中心にはもうない。
      吹き荒れるエネルギーの中でふと気がつけば、線路で囲んだトラックの中は別の時空間と繋がっているようだった。覗いてみれば、海が見え、山が見え、街が見え。かなり高いところを、高速で飛んでいるようだった。右へ左へ、回転しながらランダムに方向を変えて。祥子はめまいがしそうだった。
     みそかは祥子の腕を掴んで、浮いた。そして、線路で囲んだ別の時空間の中へと、祥子を引っ張り込む。みそかのあまりの急降下に、祥子はためらう暇もなかった。

     みそかの腕を取りながら、祥子は地球のはるか三千メートル上から落下していく。
     空は淡い紫と桃色に染められ、雲がまばらに散らばっている。
     全身に風を受けながら、空の明るい方に顔を上げた。時間が飛んでいる。わたしは今、すごく高いところから日の出を見ようとしているんだ。
     不思議と怖くはなかった。みそかがしっかり掴んでいてくれるから。
     ふいに、上から叫び声が聞こえた気がした。ふわふわが空中に満ちてくる。祥子は仰向けになって、その声の正体を捉えようとした。
     何かが二人より遥かに早いスピードで落ちてくる。スーツを着た、若い男の人だった。彼の身体からは大量のふわふわが放出されていて、それがまるで彗星のように尾を引いている。
      彗星の彼は祥子と同じ高さになり、祥子の方を向いて笑った。風で何も音が聞こえないはずなのに、なぜか彼の声だけは鮮明に聞こえる。彼は、石を取るんだ、と言った。指差した下の方を見ると、ケーキが重力に負けて崩れていき、中から光り輝く石が現れる。祥子は必死に手を伸ばした。やがて追いついて、その石を手に取る。掌にすっぽりとおさまるサイズの、緑色と黄色の中間のような石。それをまじまじと見ていると、みそかが手にとって、それを丸のみにした。
      みそかの身体が、急に光り出す。その光が眩し過ぎて、祥子は腕で目を覆う。後ろに少し吹き飛ばされていたらしく、彗星の彼が祥子の身体を受け止める。祥子 は身体の中が熱く、柔らかくなるような感じを味わった。こんなこと、初めて。もしかして、彼はふわふわそのもの? 紅潮した顔は、彗星の尾のふわふわにうまく紛れた。
     みそかの身体は変化して、真っ白い鳥のような姿になった。トゲチックの進化系、トゲキッス。この空中を制するための身体だ、と祥子は思った。さあ、乗ろう、と彗星の彼は言う。祥子の身体を抱えて、少し下方で待つみそかの背中へ。
     身体が、ふうぅっと浮き上がるような感覚を味わう。ずっと落ちていたせいだ。みそかは地球と平行に、まっすぐ飛び続けている。朝日の方向に向かって飛び続け、穏やかな風を浴びる。
     日の出。最初の数秒は、目を凝らした。巨大なダイヤモンドの指輪が、地球の形に現れる。奇麗、と思ったと同時に、大量のふわふわが祥子の目に飛び込んだ。太陽が見えなくなるほどのふわふわが、まるで突風のように祥子たちの体を吹きつけた。
     すごい! 祥子は声を上げた。その様子はあまりにも美しく、祥子の目にはいつの間にか涙が溜まっていた。みそかと彗星の彼に、ありがとうとお礼を言った。
     暫く、三人は太陽の昇る様子を眺めていた。最初に口を開いたのは、彗星の彼だった。
     彼は、自分は流星中毒なのだと言った。満天の星空を流れる大量の流星を見てからと言うもの、今までずっとそうなのだという。ある日どこかで祥子とすれ違った時に、瞳に大量の流星を見て、忘れられない存在になったのだった。
     彼には人よりたくさんの流星が見えている。祥子と同じように。
     何だか分かり合えるような気がして、祥子は彼を見つめた。彗星の彼も、同じように見つめた。


     一月一日の朝日の中、トゲキッスに乗った中毒者たちは密やかなキスをする。



     おわり


    ――――

    季節は真逆ですが、お題が「陽」と言うことで。

    第三回ポケスコも楽しみにしております。

    【何をしてもいいのよ】


      [No.1603] 【書いてもいいのよ】天使サマ 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/07/13(Wed) 23:11:59     85clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    【書いてもいいのよ】天使サマ (画像サイズ: 300×800 196kB)

     天使サマ、天使サマ、

     手の届かない高みで、何を思っておられますか。


    〜〜〜〜〜
     なないろイラコン第六回(お題:天)に応募したもの。
     縦に長くてごめんなさい。
    【書いてもいいのよ】


      [No.1602] 色々ありそうですよね 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/07/13(Wed) 23:05:54     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    感想ありがとうございます。

    確かにPPも多く使ってしまってもおかしくないかもしれないですねー。

    この作品では一応、スピードスターの様な必中技以外は通常より当てづらいイメージで書きました。
    他にももっといいアイテムや、面白い戦略はありそうですよね。想像が膨らみます。


    そんな面白そうな漫画あったんですねー。書く前に読んでれば……(笑)
    そういうのって声は届かなくても、主人のことを走りながら感じたりするんじゃないかなと思いますよね。


      [No.1601] 【百字】親の七光り 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/13(Wed) 21:06:27     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    いいわよね、ジムリーダーの子供なんだから・・・いいわよね・・・・
     うるせえよ、オヤジと俺は関係ない。ポケモンだってオヤジからもらったことなんて一度もない。今ここで超えてやる。



    ーーーーーーーーーー
    ユウキはホウエン組だし好き。
    スターウォーズ的な展開でもおかしくないと思ってる。
    同じく、ヒョウタとトウガンとかも燃える。Nとゲーチスは・・・確定してからで。
    【何してもいいのよ】


      [No.1600] バニプッチはポケモンだしぃ、 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/13(Wed) 20:35:48     19clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    食べてもいいと思うんだけどなあ、形がアイスってだけで。
    とけるを覚えるけれど。

    風鈴が鳴ってそうな、涼しげな夏の風景が浮かびます。ああ、いいなあ。
    冷やしたスイカを食べたい。


      [No.1599] 巨神兵・・・ 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/13(Wed) 20:34:04     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ゴルーグもそのように作られたのか。だからゴーストタイプが入っているのか。
    空を飛ぶし、ゴーストだし、なんだこいつと思っていたが、こんな神話があったら納得。
    ホラーっぽいのだけど、そーだったのかと感心する面白い話。


      [No.1598] ニートなんて言わないで。 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/13(Wed) 20:28:23     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ごめんなさい、タイトルで言いたいことは全て言いきった。

    夏にしゅーしょくかつどーはしたくないですな、やはりあついし。


      [No.1597] ダークライ厳選ネタのように見えた 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/13(Wed) 20:27:07     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    なぜかダークライ配布の厳選に見えました。
    あれもリセットリセットリセット、できっと配達員の真っ暗な鞄に入ってるんじゃないかと。
    ヨマワルに渡してもらってるのはちょっと面白い。


      [No.1596] 外骨格について。 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/13(Wed) 20:25:15     26clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    外骨格は陸上限界があるので、ポケモンのはあり得ねえのですよ、生きていけねえですだ。
    虫タイプの定義が外骨格というならば、きっと虫ポケモンなんていない。
    きっと、他にあるのかもしれないが、昆虫の定義とはまた違うし、やはり虫ポケモンの定義は外骨格だと思ってる。
    しかし陸上限界が、と思うと不思議。


      [No.1595] 実はドヤ顔の意味が解ってない 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/13(Wed) 20:23:44     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    オタマロさんは、困り眉だと思ってる。
    水タイプで池がないといきていけないっぽいのに草むらから出てくるところが、もう困り顔だと思ってる。
    ガマゲロゲになっても困り顔の面影が残ってる


      [No.1594] なぜか風のシルフィード思い出した 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/13(Wed) 20:22:31     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    技つかいながら走るのは、大量のPPを使いそう。
    持ち物のベストは、きのみジュースが一番なんじゃないかとちょっと思った。

    最後のイダテンマルと叫ぶのは、タイトルのマンガでアラブ人かのおじさんが自分の馬の名前を叫び続けて応援するシーンを彷彿させた。
    そのおじさん、馬のことどうでもいいと思ってたのに、ケガしてもがんばる馬のために柵から身を乗り出して叫ぶのだが、そこがまた燃えるレースのシーンを描いているようでした。

    だから、そんな感じでイダテンマルは走っていたのではないだろうか


      [No.1593] 大流星群ってあるらしい 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/13(Wed) 20:17:16     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    地上に降りるまではきっと綺麗だろう
    天体観測してたら何も知らずに感動してそうだ。
    毎回、流星群を見てちょろちょろしかなくてがっかりしている身としては見てみたい。
    当たるのはちょっと(


      [No.1592] 【百字】あの子とアイス 投稿者:ピッチ   投稿日:2011/07/13(Wed) 20:14:50     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    アイスクリームを買って帰る。
    家で待ってるあの子のために。

    アイスクリームをあの子と食べる。
    アイスが二つなくなった。

    喜ぶこの子を見て思う。
    これって共食いなのかなあ。

    真夏の夕暮れ。
    アイスを食べるバニブッチ。



    ――――
    初期案のアイスはスイカバーでした。好きなんです。


      [No.1591] イッシュ神話 鉛の心臓 投稿者:紀成   投稿日:2011/07/12(Tue) 20:00:40     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    イッシュ地方、セッカシティに近い場所にリュウラセンの塔という巨大な塔が建っている。そこに生息するポケモンは、クリムガン、コジョフー、そしてゴビットだ。この話はゴビットと、その進化系であるゴルーグについての話。

    昔々、まだセッカシティという名前の街が無かった頃。人とポケモンは今と同じように仲良く暮らしていた。これを執筆する他の書物を漁ってみたが、今から数百年前には既にリュウラセンの塔はあったらしいのでこの話はそれより少し後のこととなる。
    二匹の神を崇めるために造った塔。外観も素晴らしいこの塔は、造られた当時からあること無いことの噂が広まるようになっていった。中に財宝があるとか、神に纏わる何かが奉られているとか。
    案の定、リュウラセンの塔は盗賊や遺跡荒しに狙われるようになっていった。周りの人間達はそれこそ彼らを追い払ったが、中には爆弾や刃物を持っている者もいてうかつには追い払うことが出来なくなった。

    そこで、彼らはこの塔を守ってくれるご神体を造ることにした。水と緑が豊かな土地の書物を参考に、泥で巨大な形を作り、顔を彫った。そして、心臓部分に当時は貴重だった鉛を入れた。
    『どうか、この塔を守ってください』
    そんな思いで彼らはいくつものご神体を作り、そして一番大きな物を塔の一番上に置いた。

    さて、そんな彼らの思いが届いたのかそのご神体は侵入者を追い払うようになった。動きもしないし、ましてや生きてもいない。だが、集団で入り口に立ち、今にも動き出しそうなくらい細かく造られた形は侵入者が不気味と思うのには十分だった。
    おかげで今まで追い払っていた人間達も仕事が楽になり、毎日のように彼らに供物を備えるようになった。
    だが。

    当時、イッシュ全体を震え上がらせていた盗賊団がいた。彼らは今で言う悪タイプポケモンの力を借り、各地の遺跡を襲っては金銀財宝を一つ残らず掻っ攫っていた。何しろ夜にしか動かずおまけに素早かったため、しとめることは至難の技だった。
    そんな彼らが次に目をつけたのが、リュウラセンの塔だった。噂話はあまり信じなかったが、その土地に住む者達がわざわざ人形まで造っているのだから、これはきっと何かあると思ったらしい。
    ある晩、彼らは塔に入り並んだ人形達を見つけた。下っ端の一人が人形を叩いた。
    『おかしら、これ、泥のようですぜ』
    『よくもまあこんな手の込んだ物を造ったな。まあいい。上に行くぞ』
    彼らは最上階まで上がり、一番大きなご神体に出くわした。今の単位で百九十近くある頭ですら、その全体を見るには見上げなくてはならないくらい、大きかった。

    彼らは最上階をくまなく探したが、何も無い。
    『ちくしょう、はずれだったのか。腹いせにこの人形を壊してやる』
    彼らは全ての人形を壊し、中にあった鉛の心臓を全て盗って行ってしまった。

    異変に気付いた土地の者達は塔へ行き、おかしなことに気付いた。
    ご神体がそっくり無くなっている。壊されたような跡も、破片も転がっていない。
    そして地面には、何かが集団で歩いて行ったような痕が残っていた。同じ大きさが幾つか、そして一回り大きいのが一つ。
    『一体どういうことだろう』
    彼らは首をかしげるばかりだった。

    さて、鉛の心臓を隠した盗賊たちは、夜遅くまで宴をしていた。飲めや歌えの騒ぎ。酒が足りないと下っ端の一人を倉庫へ行かせた。
    下っ端は酒を取りに行き、ふと倉庫全体が揺れているような感覚を覚えた。みしみしという音と共に、何かが近づいてきているような―
    驚いた下っ端は、酒を持って別の出口から頭達の元へ戻り、このことを知らせた。だが皆笑って、相手にしなかった。
    そして全員が酒で眠りこけた頃。

    どすん、どすんという地響きがした。隠れ家がみしみしと揺れ、上から物が落ちてくる。一人起き、二人が起きた。
    『何だ一体』
    めりめりという音と共に、隠れ家の屋根が取り除かれた。
    そこには…

    さっき壊したはずの人形が、表情の見えない顔で怯えた盗賊たちを見つめていた。

    盗賊達は一斉に逃げ出した。だが小さな人形達がその行く手を阻む。半泣き状態になった頭以外の盗賊たちは言った。
    『もう悪いことはしません。許してください』
    そこへ、眠りこけている頭を巨大な右手で掴んだ人形がやって来た。盗賊たちの中心へ放り投げると、彼らは再び泥の人形に戻っていった。
    そして心臓部分から落ちたのは、盗賊たちが奪ったはずの鉛の心臓だった。

    塔の者達は人形を再び塔の中へ戻し、供物を供えた。やがて時代が変わり、塔を建設した者達がいなくなっても、彼らは時々動いてはリュウラセンの塔を守っている。
    だが今の彼らに鉛の心臓があるかどうかは、定かではない。


      [No.1590] 【85字】夏の日の窓辺 投稿者:CoCo   《URL》   投稿日:2011/07/12(Tue) 17:59:36     134clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     

     仕事がみつからない。
     履歴書が埋まらない。
     資格を取るためのやる気が起きない。

     錆びたカーテンレールでカゲボウズが揺れている。
     夏の空が青い。
     今日も世界は平和だった。


    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】


      [No.1589] 冷静に考えてみると 投稿者:西条流月   投稿日:2011/07/11(Mon) 22:58:30     33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    「メラルバって幼虫じゃ……1,1メートルもあったら違うだろ?」
    「お前が思う幼虫ってどんなんだ?」
    「ちっこい」
    「バチュル?」
    「あとはキャタピーとかビードルとかな」
    「バチュルだって10センチだぞ」
    「……」



    ――――――――

    ポケモンをやってるとどうしても、あの単位に納得が行かないことが多い気がします
    食糧にするにはあの大きさはありだろうけど、リアルGだって5センチで大物判定してわめくのに、ポケモン世界のゴキブロスは1,7メートル……こんだけでかいともはや驚けないか

    【何をしてもいいのよ】


      [No.1588] Re: 【書いてみた】 投稿者:イサリ   投稿日:2011/07/11(Mon) 21:30:57     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     おやおや、また戻って来てしまったのだね。
     余計なお世話かも知れないが、何もあの主人にこだわる必要はないんじゃないのかい。

     あちらの世界は明るくて広いと聞くし、君のことを本当に大切にしてくれる人間もいるだろう。それに、野生で生きる道だってあるじゃあないか。
     自分探しもいいが、程々にしておきよ。終いには冥界にも居場所がなくなってしまう。

     ――この私のようにね。



     僕を舟から降ろしながら、一つ目の影がにたりと笑った。









     ――――――――――――――――――――


     初めまして、しじみさん! イサリと申します。よろしくお願いします。
     黄泉の河の設定がツボにはまりすぎたので思わず書いてしまいました;;
     河渡しのヨマワルが好きすぎます!!

     勝手に書いてしまったので、イメージと違っていたら本当にごめんなさい(汗)
     こちらも100文字でお返ししたかったのですが、技量不足でオーバーしてしまいました……。


    「川渡し」と「河渡し」が重なっていてすごく惜しいなあと思ったので、最初の方は「河渡り」、ヨマワルの方は「渡し守(わたしもり)」という表現に変えられてはいかがでしょう。ちょうど文字数は同じですので。
     差し出がましい指摘で申し訳ありません。

     素敵なお話をありがとうございました!
     
     


      [No.1587] 汗と涙 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/07/11(Mon) 16:42:05     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どうもはじめまして。感想ありがとうございます。

    楽しんで頂けたようで何よりです!

    褒めすぎだという程褒めていただいて、もう嬉しいです!
    情報詰め込み過ぎとか、独りよがりな設定じゃないかという不安もあったので、そういうもやもやが吹っ飛びます!

    私のせいで汗をかいたのはもうしわけないですが、ほら!手だけなら、ね(汗)

    暑い日が続くので、熱中症にならないよう気を付けてくださいね。
    節電が叫ばれてますが、健康のために扇風機やエアコンを使うのは無駄ではないので我慢をし過ぎず夏を乗り切りましょう!


      [No.1586] Re: 隔世遺伝 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/07/11(Mon) 16:35:47     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    焦りまくる夫に対して、呑気な奥さんに笑いました
    ポケモン世界じゃ、覚えるはずのない技(もしくは特性)が浮気のバレるパターンNo.1に違いない!


    今回の彼ら夫婦はどうだったかわかりませんが(おい
    キトラさんのおかげで分かりました!
    メロスは隔世遺伝だったんですね!
    これで池月はの疑いは晴れました。あーよかった、よかったw

    【メロスも隔世遺伝だったのよ】


      [No.1585] 【百字】黄泉の河 投稿者:しじみ   投稿日:2011/07/11(Mon) 11:24:24     88clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    見慣れた闇色の河。

    これで百回目の河渡り。
    渡し守はいつものヨマワル。
    悲しげな赤い瞳が光った。

    舟の上、貴方を思う。

    貴方の望む性格になるまで、
    体になるまで、
    貴方に愛されるまで…

    僕は何度でも、この河を渡ろう。






    【何してもいいのよ】

    *******************

    百字に便乗しました。
    思っていたより長く、「ん?」となり、
    しかし足りず、「もう削れないよ!」となり嘆き、
    苦労して作ったにもかかわらず、読み返すと全く伝わらない悲劇。

    一応廃人ネタとかになるのかしらん……。


    7,15 改訂しました。


      [No.1584] 汗、なにより手に汗 投稿者:しじみ   投稿日:2011/07/11(Mon) 11:09:19     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    はじめましてしじみです。

    猛暑のためすでに全身に汗をかいていたのですが、
    レースの展開によりいっそう手に汗をかきました!
    読ませる文才とスピード感があいまって、
    一気に読めるのに、読んだ後、息をついてしまうような充足感がありました。

    あまりのリアリティに、レースが実在しないのが不思議なくらいです。
    ここまで作りこめるのってすごいなあと思います。

    とにかくこの手の汗をどうにかしたい。


      [No.1583] ドヤ顔なんて言わないで 投稿者:西条流月   投稿日:2011/07/10(Sun) 22:15:55     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5





    人間は酷い。確かに対戦じゃパッとしない僕らだけれど、ミュージカルに出れるほどには可愛くはない僕らけれど、馬鹿にするなんてひどいじゃないか。僕らだって、僕らだって好きでこんな顔をしてるわけじゃないんだ!



    ――――――――

    ちょっとネタにされ過ぎると擁護したくなってきちゃうよね……ドヤ顔ですか、そうですね。すいません。
    しかし、ドヤ顔の下にはこんな感情が隠れているかもしれませんよ?

    【もっとオタマロで埋め尽くしたいのよ】
    【何をしてもいいのよ】


      [No.1582] ヌオーとぼんやりしたい 投稿者:小樽ミオ   《URL》   投稿日:2011/07/10(Sun) 19:35:47     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    キトラさん、ありがとうございました!

    > あれはのんびりしていて癒される。
    > 初めてみたときは何この癒される子!

    ウパーのときは純粋に可愛らしかったのですが、ヌオーになったらそこにポヤーっとした要素が加わってさらに可愛らしいことに。
    何を考えているのか分からない、思考の読めない感じがたまらないです!

    > ルビーでも使おうとがんばった。コロシアム買ったらヌオーだけは♀ねらってリセットだった
    > さてさて、現代でもそれはもう通じないのだけど
    > いいなーと思う。

    好きな子にはそれぐらいのことしたいですよね。
    私も一番最初に必死に色違いを探したのはヌオーだったかもしれないです!

    ヌオーのおはなしがもっと書けたらなぁと思っている今日この頃でしたー。


      [No.1581] 稲妻の道 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/07/10(Sun) 18:10:56     177clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     空はもうとっくに暗くなっていたが、そこにいる人達は昼以上に活発に動いていた。
     建物にはけばけばしい電飾が飾られ、様々な光を放っている。
     そこに吸い寄せられるように人が入り、出てくる。出てきた者の表情は笑顔だったり絶望だったりと十人十色だ。誰もがドレスやタキシードなど、見事に着飾っている。チップが積まれては崩され目まぐるしく動き、カクテルウェイトレスが熱中する客達に飲み物をサーブする。ディーラー達は殺しに掛かろうという強者達に涼し気な笑顔と鮮やかな手さばきで相手する。
     ここはローラーカジノ。
     元締が後暗い商売でもしているのか、長期の契約をできないのか、建物に車輪がついているものもある移動賭博場だ。サーカスのようにふらりとやってきては草原などに留まりギャンブルを提供する。
     一夜のビッグサクセスを夢見る者、単純にお祭り騒ぎが好きな者、様々な人間が集まってネオンより明るいエネルギーを振りまいている。
     カジノの客の中、少年がいた。大人たちの中で落ち着いた佇まいで歩いている。スリーピースのスーツを身に纏った姿は中々キマっていたが、眠たげな表情が、高くない背に合った歳相応のあどけなさを感じさせた。
     少年はフロアを見回す。スロットマシンやポーカーなどベーシックなカジノゲームがあり、ポケモンを使ったローラーカジノ独自のゲームもあった。
     巨大なルーレットが周り、プリンやピッピ、サンドやビリリダマなど丸いポケモンが弾かれて転がり紅白のマスに落ちてゆく。
     笑い声が聞こえるのはステージだ。ソーナンスとポケモンが向かい合っている。『ソーナンス・ソーナンス』というゲームは挑戦者が技を返されずに当てられるかというものだ。事前申告した技を予想し、オーディエンスもどちらが勝つかベットする。今ステージではモウカザルが『かえんほうしゃ』を『ミラーコート』で返され、トレーナー共々派手に吹っ飛んで笑いを産んでいた。
     確率は二分の一とわかりやすく、何より単純で盛り上がっているのがいい、と少年が参加しようかと近づいたとき、警備員に呼び止められる。

    「お客様、IDチェックをよろしいでしょうか」

     トレーナーカードを取り出そうと懐を探り始めたとき、それを見たスタッフが青い顔をして駆け寄ってきた。

    「お前! こちらの方はフロンティアブレーンの……」

     耳打ちすると、警備員もスタッフと同じ顔になる。

    「これはこれは大変失礼いたしましたネジキ様! カードのご提示は結構ですので! 存分に当カジノをお楽しみください!」
    「あ、気にしないでくださーい」

     さらりと言ってのけるネジキに、小太りのスタッフは口をパクパク開いて動けずにいた。ネジキとしては普段通り振舞っているつもりが、その表情や態度は機嫌を損ねたためだと勘違いさせていた。フロンティアブレーンという実力者を怒らせては大変と、スタッフは気が気でない。そのまま立ち去ろうとするネジキを見て、二人は慌て追いかけてくる。

    「お、お飲み物をお持ちしましょうかっ?!」
    「いらないですよ。ところで」

     ネジキはスタッフ達に背を向け、じっと一点を見ていた。

    「僕がチェックされたのって、子どもだからでしょうか?」
    「はい! あ、いえ!」
     
     いよいよ滝のような汗を流し始める二人を全く気にかけずに客の一人を指す。

    「あの子はチェックされないよねー。何で?」

     その客はネジキと同じ、明らかに子どもだとわかる身長の少年だった。衣装こそタキシードに蝶ネクタイと礼服だったが、大きめの肩掛けバッグはカジノでは少し浮いている。少年が歩くとすれ違うスタッフが軽く礼をするのは顔が知られているからだろう。

    「あちらの方は、これから開かれる競技の参加者でして――」
    「ああ! そうですとも! 間もなく始まりますからね! こちらのカジノでもそれはもう人気のゲームでございます! 遠方からはるばる楽しみにいらっしゃるお客様もおられるぐらいでございますから! ネジキ様もお楽しみ頂けること間違いなしでございますよ! すぐに素晴らしい席をご用意させていただきますので!」

     スタッフの半ば強引な案内でカジノを出ると、そこは草原だ。ただし、柵でかなりの広さの敷地が分けられてあり、そこを囲むように席がある。乱暴に作られたスタジアムになっていた。

    「おい、すぐに特等席を用意しろ。……は? 一つもか?! 何とかしろ! フロンティアブレーンをお迎えするんだぞ!」

     携帯に怒鳴るスタッフの様子から、席を準備するのに手間取りそうだった。ネジキは辺りを見て、それなりに空いてる場所を見つけると座ってスタッフに言った。

    「ここでいいよ」
    「いや、しかしそこは」
    「ここがいいんだけど、マズイかなー?」

     スタッフは少々考え込むと、ゼンマイ式のおもちゃのように首を振ると、怒涛のように喋り出す。
     ファンファーレが鳴り、合図とともに一斉にポケモンが走り出す。区切られた線の中、必死で進み、走り続ける。
     ネジキはめんどくさくなって、スタッフを適当にあしらうと、スタッフは「何かご用がおありの時はいつでもお呼びください!」と名刺を渡してやっと去っていった。
     やがて一匹がゲートに辿り着き通過する瞬間、歓声が一際大きく上がり、紙が宙に舞う。
     ローラカジノでも最大の金が動くと言われるポケモンダービーだ。様々なポケモンが速さを競い、それを当てるレース場である。
     一着のポニータは健闘を讃える声援や、富をもたらしてくれた感謝を受け、嬉しそうにいなないた。それを見て、ネジキも嬉しそうに頷く。

    「僕はギャンブルより、ポケモンを見るほうが合ってるな」

     ネジキはトレーナーとしては自分の実力に自信を持っていた。しかし、それでも足りないものがある、と感じている。
     自分はまだ子どもだ。知識はあってもポケモンと触れあった時間や経験は圧倒的に足りないと思う。自由になる時間を使っては様々な場所に貪欲に出かけて行っていた。その中である実力者と話す機会があった。彼はネジキにこのカジノを教えてくれた。勝負の勘をここで磨くのも悪くないだろうと言われて来てみたが、紹介されなければ一人で来ることなんてなかっただろう。そしてここにはポケモンがいる。何かを得ることはできそうだ、とネジキはワクワクしていた。
     次のレースのポニータ達が姿を現し競技場をゆっくり行進し始めた。
     最初のレースはスタッフとのやりとりもあり集中して見れなかったので、ネジキは手すりに身を乗り出しポニータを観察する。

    「そーいえば、レースなんて見るの初めてだな」

     少年はPDAを取り出し目当てのポニータを観察する。
     スキャンされたポケモンのデータが表示され、そこから何やら数値が計算され始める。それを見てネジキは呟く。

    「むー、そーだなー」

     おおよそのステータスは機械でわかった。金を賭けて獣券を買うわけではないが、勝利するポケモンの予想を始める。機械を通したステータスと見てわかるコンディションから一位になるポニータをピックアップする。

    「75パーセントってトコかな」

     ファンファーレが鳴り、ゲートが開き、ポニータ達が一斉にスタートした。歓声が上がると同時に砂煙が立ち上り、ゲート付近は見えなくなる。スタート地点付近は猛烈な踏み込みで草も生えていないからだ。
     ポニータ達は抜きつ抜かれつのデッドヒートを繰り広げる。長楕円のコースを駆け抜けるとほぼ固まった状態でゴール板を通過した。

     少年が目を付けたポニータは惜しくも三着の結果に終わった。

    「ワーオ」

     表情一つ変えずに言い放った後、PDAの数値を再確認する。

    「素早さは一番高そうだったのに。他に何が作用してるのか……」

     何か飲むものでも買ってきてゆっくり鑑賞しようと席を立ったネジキは先程の少年を見つけた。案外近い席に座っていたようだ。難しい顔をしているところを見ると、競技参加前に緊張しているのかもしれないな、とネジキは思う。

    「君、一人かい? 子どもが一人で珍しいね」
    「お前だって子どもじゃんか!」

     怒鳴る少年の良く日に焼けた顔は、誰が見ても怒っていた。

    「確かにその通り」

     ネジキは全く動じず、何事もなかったかのように話を続けた。
     少年は毒気を抜かれたようで、芝生のような短髪をボリボリ掻いた。

    「しかしまぁ、このポニータレースというのはよくわからないね」
    「わからないって? 単純じゃん。一番早くゴールすればいい」
    「確かにその通り」

     先ほどと全く同じ顔で同じ言葉を返すネジキに少年は馬鹿にされていると思ったのか、睨みつける。

    「でも素早さが一番高いポニータが一位になれてないみたいなんだよねー」

     その言葉に何か感じるものがあったのか、少年はネジキをジロジロ見回した。そして胸に手を当てて少々誇らしげに言う。
     
    「説明してやろうか? 俺、一応プロだし」

     鼻頭を指で掻くと、ネジキの返事を待った。
     耳に入った周りの客が怪訝そうな顔で少年を見ていたが、ネジキはあっさり言う。

    「それは心強い。是非ともお願いしたいものだねー。よろしく頼むよ。プロの解説なら間違いないね」

     やはり全く同じ顔で軽く頭を下げる。その答えは予想外だったようで、彼は眉尻を下げた。

    「お前ってさ……」
    「なんだい?」

     何でもないと溜息を付き、少年は席に付き、隣を叩く。ネジキもそれに応じて腰を下ろした。するとまもなく会場に地響きが聞こえた。

    「見ろよ、次のレースが始まった。ポニータレースの最終だ」
    「へぇ、結構スピードが違うもんなんだねー」

     ネジキが呟く。それは最も盛り上がるハズの最終レースが、今までのレースよりスピードが緩やかなことから自然と出た言葉だろう。

    「そりゃあ戦略が違うからな」
    「戦略? レースにもバトルと同じように戦略があるのかい?」
    「当たり前だよ!」

     声を荒らげた少年に対しこれは失礼、と相変わらずの顔で答えた。おかげでブリーダーは怒鳴ったことが恥ずかしくなり、顔を背けた。そして説明する。

    「バトルと同じようにって言ったけど、まさにそれ。このレースはただスピードを競うんじゃない。攻撃技を使ってもいい、技を撃ち合うレースなんだ」
    「バトルレースってことか」

     無表情の中にも視線の熱を感じた少年は、少し声を弾ませて続ける。

    「戦略ってのは、まず単純に育成傾向だね。スピードが早いのは当たり前として、体力とか。あとは攻撃や防御の重視でも変わる」
    「レースしながら技の応戦があるって言ってたからね。なるほどー」
    「あとは動きと技ね」
    「それを詳しく教えてもらえるかい?」
    「このレースなんか、確かにわかりやすい展開だね」

     最初のコーナーを先頭集団が抜けたところ、五頭分以上遅れて後続集団が追いかける。

    「簡単に分けると『逃げ切り』『追い上げ』に分けられるんだ」
    「それぐらいはなんとなく」

     字面からも、状況からもその作戦がわかる、とネジキは頷く。
     続けて少年は、その役割の傾向を詳しく説明してゆく。

    「逃げ切りは大抵オボンの実なんかを持つことが多いね」
    「全速力で走ってるから体力の減りも早い、と」
    「そうだね。あとは、先頭で走っていると攻撃の的になることも多いからね。体力が減りやすいから、一般的に逃げ切りの方が不利だと言われてる」

     先頭のポニータが尻を突き上げると背中のホルダーからオボンの実が宙を舞った。見事に口でキャッチする。だが、それを食べようとした時、

    「あー」

     先頭ポニータのやや後ろ、追いかけていたポニータが追いついたときに接触したのだ。当てられたポニータはコースを譲らず、その体ではじき返す。すると先頭だったポニータがみるみるうちの速度を下げてあっという間に最後尾まで下がってしまった。

    「木の実を食べる時が一番危ないんだよ」

     通常のバトルでは相手とそれなりに距離をとっていることがほとんどで、またアイテムでの回復中を狙うというのはフェアじゃないと忌避されることも多い。そのため木の実を食べること自体は何ら危険ではない。それに比べてレースは接触も多く、走りながら木の実を口まで運んで食べるというのは意外に難しい行為だ。

    「こういう状況では実を喉につまらせることもよくあるし、急所に当たったようなもんだよね。レースでは致命傷だよ。一度開いた差を縮めるのは簡単じゃないからね。精神的にも堪えるし」
    「木の実を出すとき目立つから、そこを狙ったわけかい?」

     その問いには少年は少しだけ考える。

    「どうかな。そういうこともテクニックのうちとはいえ、木の実をキャッチするときに大きくぶれたからね。あれは相手の所為じゃないと思うよ」

     最終カーブに差し掛かろうという所、3番手のポニータが大きく嘶いた。背中の炎が大きく膨れ上がり、前方のライバル目掛けてうねりながら広がった。

    「『ほのおのうず』だね。うまい。タイミングが良いし、出し所も完璧だ」
    「体力をじっくり減らそうってことか」
    「いや」

     カーブに入ったが、技を受けたポニータは渦に捕らわれうまく曲がれない。
     外周の柵にぶつかりはしなかったものの、外回りを余儀なくされて先頭を守ることはできない。
     結局ストレートでもあまり大きな動きは起きず、『ほのおのうず』を放ったポニータはあと一歩というところまで迫ったが、攻撃を続けても先頭に並こともできずにレースは終わった。

    「うん。君のおかげで少しわかったよ。レースだけどバトルだ」
    「そう。早けりゃいいってものじゃない」

     そう言って腕時計を見ると、彼は勢いよく席を立った。。

    「そろそろ行かなきゃ!」
    「行く?」
    「もうすぐレースなんだよ。まぁ、エントリーはとっくに終わってるからポケモンを渡すだけなんだけどな」
    「君のポケモンがレースにでるのかい?」
    「言っただろ、一応プロだって。ブリーダーでご飯食べてるんだよ」

     その言葉には揺らぎはない。そして先ほどの言葉は事実として受け入れたのに対し、その言葉は真実なんだなとネジキは同じ言葉に重みを感じて受け止めた。

    「もし時間があるならこのままレースを見るのを進めるよ。なんてったって、これから始まるのは、ポケモンレースの中でも一番手に汗握るゲームだからね」
    「一番……」
    「ジグザグマレースさ」

     ネジキは想像する。ジグザグマ達が一斉に走り出す姿を。それは確かに見どころのあるレースになるだろうなと思った。

    「新しいものに触れられそうだ。ここに来てよかったよ」
    「ん?」
    「もし暇があるのなら、是非そのレースの解説もお願いしたいね」

     ネジキの言葉を聞き、ブリーダーの少年はニッと歯を見せる。人懐っこい、笑顔を誘うような顔だ。

    「すぐ戻ってくるよ」




     しばらくすると、ブリーダーが両手にカップのドリンクを持って現れた。ネジキは一言礼を言うと、カップを受け取ってストローに口を付ける。
     ブリーダーは溜息を一つ、大きくついてネジキの横に腰を下ろした。

    「ジグザグマが走るのは見たことある?」
    「もちろん。あの走りでレースをするというのは目で追うのが大変そーだなー」
    「そこが一番面白いんだよ! 最後のデッドヒートなんてカメラ判定じゃないと一着がわからないぐらいだから!」

     興奮してブリーダーはペラペラ語りだすが、半分ぐらいは専門用語で分からない。しかし、熱意を持てることがあるのはいいことだ、とネジキは思った。

     やがて、ジグザグマレースの時間になった。レースに出場するジグザグマがフィールドに現れる。
     
    「君のジグザグマはどの子なんだい?」
    「ああ、黄色いリボンをつけたのだよ。イダテンマルっていうんだ」

     ネジキはイダテンマルを見るが、他のジグザグマとの違いはあまりわからなかった。外見での明らかな違いは無いようだ。ただ、その動きを見ていると元気がいいことはわかった。隣のブリーダーは今日のためにしっかりとコンディションを合わせてきたのだ。そして大衆の中でも緊張している様子はない。勝負慣れしているのだろう。
     そして、レース場に設置された巨大な電光掲示板に各ジグザグマの名前とオッズが表示された。イダテンマルの番号は5番。倍率は真ん中というところでなんとも言えない位置づけだった。

    「あの倍率ってのはどうしてあんなに分かれるんだい?」
    「レース前にはパドックってところで出場ポケモンの様子を見れる場所があるんだ。それを見て客は予想をするんだけど」
    「じゃあ、見ておけばよかったなー」
    「いや、あそこでわかる情報なんてほんとに少ないから。君はポニータのレースでステータスがなんとなくわかってたみたいだけど、それでも当てられなかっただろ?」
    「じゃあ他の人はどうやって予想してるんだい? そんなに偏るものなのかなー? 6番のオッズが相当低い。他より随分人気があるみたいだけど」

     ネジキの疑問に対し、ブリーダーは唇に拳をつけながら考え込んだ。

    「ここのレースは情報の公開はあまりされてないんだ。ステータスや技とか。持ち物はたまにオープンはあるみたいだけど。『純粋にポケモンから読み取って予想する』なんてのが名分みたいだけどね、一応」
    「むー」
    「でも、公開を禁止してるわけじゃない。多分情報戦は行われている。虚偽を織り交ぜたやつが」
    「そんなことしていいものなのかねー? それともギャンブルってのは普通なのかな?」
    「ただの推測だよ。どこかで得してる奴がいるんだと思う。でも……6番か」

     6番のジグザグマは緑のゼッケンをつけたジグエルメス。ゆっくりと、毅然とした態度で歩いている。他よりやや毛のボリュームがまとまっているためか小さく見えるというぐらいで、やはりネジキには特別なポケモンには見えなかった。

    「あの名前の下の太線は?」
    「ああ、普通はあそこにアイテムが表示されるんだよ。でもこういうレースでは表示が無い場合がほとんどだよ。普通のバトルだってそうだろ?」

     ポニータレースの時はベルトで身につけられたアイテムホルダーがあった。ジグザグマ達も付けてるはずだが、フサフサの毛に隠れて見えない。そして身に付けているのがわかるようなアイテムを所持しているものもいなかった。

    「頼むよ、イダテンマル」

     静かに呟き手を組み祈りを捧げるブリーダーを、ネジキはいつもと変わらぬ表情で見る。フィールドは違えどやることは皆同じなのか、という僅かな関心もあった。
    ファンファーレが鳴り、歓声が上がった。ジグザグマ達がゲートに入る。
     レースが開始された。
     大きな音と共にゲートが開き、ジグザグマ達が一斉にスタートを切る。左へ右へ忙しなく進む群れは何だか奇妙で笑ってしまいそうになるが、同時にネジキは感心する。

    「ずいぶん早いな。僕が知るジグザグマと全然違うなー」
    「レース用の走りだからね。野生のポケモンや、普通のバトルで見るのとはスピードは違うだろうね」

     ジグザグマは敵の攻撃を避けるためにジグザグに走るが、もう一つ代表的な特性を持っている。それが「ものひろい」だ。ジグザグマはアイテムを探すために鼻を地面に擦りつけるようにして走る。それが最もアイテムを見つけやすい走り方だからだ。それをブリーダーたちは一から矯正してスピードの出る走り方へと育てる。そのためスピードを早く感じたのだと彼はネジキに教えた。

    「イダテンマルは逃げ切りなんだね。前の方にいる」
    「うまく先頭集団に入れた。ちょっと外目だけど、まぁ攻撃も受けづらいし、最初はこんなもんだよ。ここからここから」

     戦略があるのかポケモンを信じているのか、その表情は数々のトレーナーを見てきたネジキにとってやはり見慣れたものだった。やっぱり同じなんだな、とネジキは思った。フィールドではその戦略が徐々に輪郭を帯びてくる。逃げ切りがトップを奪い合い前へ進む。そして追い上げがその後ろからターゲットを吟味しているように見えた。その中の一匹がネジキの目に留まった。

    「あの後ろの7番のヤツは? 追い上げとはいえ少し離れすぎてない?」
    「そうだね。少し不気味だ」

     スタートミスをしたものは一匹もいないように見えた。7番のジグザグマであるキタカゼゴーゴーは後ろで様子を伺うというよりは引き離されているように思えた。少しづつ後ろに下がっている様にも見えるが、わざわざ後続で下がる戦略というのは彼には思い当たらない。単純にスピードについていけないのだとしたら、運営の見込み違いのジグザグマが紛れていたことになり、それも絶対ではないがほぼ無いだろうとブリーダーは思った。
     そして7番の試みをすぐに知ることになる。
     出遅れていたキタカゼゴーゴーが鈍く光ったかと思うと、先頭を走る3番はがくんとスピードを落とす。そのスピードを奪ったかのように7番は加速する。

    「何だよおい?! 3番頑張れよ! チクショウ! 呪いでもかけたってのか?! ふざけんな!」

     観客の怒号が聞こえた。

    「『トリック』かー」

     気の抜けた声で鋭い答えが飛んだせいで、あっけにとられた顔で周りの客がネジキを見ていた。もちろん、ネジキにとってバトル技はどれも見慣れたもので分かって当然のものだ。注目されるようなことを言った自覚は全くない。
     トリックはポケモン同士の手持ちの道具を入れ替える技だ。相手の有利な道具を奪ったり不利なアイテムを押し付けるのに使われる。明確な戦略をもった技だ。

    「『トリック』でアイテムを入れ替えたんだ。『くろいてっきゅう』か『こうこうのしっぽ』とかを」

     それぞれが加速していく中で3番はみるみるうちに引き離されていく。勝利は絶望的だろう。すでに券を投げ捨てている客もいる。
     キタカゼゴーゴーの攻撃は続く。ふさふさした体をブルブル震わせたかと思うと、前に走っていたジグザグマ達の走りがおかしくなる。よく目を凝らすと、白いモヤのようなものが吹き出している。

    「『こごえるかぜ』だねー。へぇー」
    「そんな技をジグザグマが覚えられるの?!」

     ブリーダーが驚愕の声を上げた。周りの客もいつの間にかネジキの言葉に耳を傾けその続きを待っていた。
     こごえるかぜは広範囲を攻撃する技で、当たった相手を確実にスピードダウンさせる技だ。ジグザグマのレベルが上がっても覚える技ではない。

    「教え技で『こごえるかぜ』を覚えられる場所もあるからね。そう考えると普通の技だけど、通常のバトルでもあんまり教えるよーな組み合わせではないからねー。君のようなジグザグマのブリーダーが知らなくてもおかしくない」

     珍しーけどね、と呟く。
     ネジキもその知識はあったが、実際に見たのは初めてだった。

    「ふむ。レースねー、うん。バトルとは違うなー」

     頬杖を付きながらレースを見るネジキは、自らの体が熱くなっているのがわかった。
     7番は先頭集団からの遅れを完全に取り戻していた。追い上げ型としての作戦は完全に機能し、逃げ切りの一匹を潰し、集団との差を取り戻す。
     先頭は、3番が消えて繰り上がった4番がキープしていた。4番のカゼノマッハは『スピードスター』を撃って後続を牽制している。発射された煌めきは宙に流され確実に命中する。後ろに攻撃できる技というのは意外に少ない。しかし、二位との差はほとんどなく、それ以降も常に入れ替わるほどの混戦で、4番はターゲットを絞れずに『スピードスター』は拡散する。当然決め手にはならない。すぐに追いつかれて『どろかけ』や『きりさく』の応酬が始まった。
     最後のコーナーは近接技による乱戦が繰り広げられていた。バトルに耐えきれず、1番が先頭集団から脱落していった。
     さらに、2番も集団の後ろへと抜けてゆく。
     
    「実におもしろい。これがレース」 

     その言葉にブリーダーは横をチラリと見る。ネジキは相変わらずの寝惚け眼だったが、その左の口角が上がっている。悪戯をして、まだそれに自分しか気付いていないとでもいうような悪魔の微笑みにも見えた。その視線は2番に釘付けだ。走りが乱れてついて行けなくなった1番と違い、2番のデラサンダーは変わらぬ足取りで、一見攻撃からの退避で下がった様子見にも思えた。
     だが、その直後だ。

     何かが光った気がした。

     間髪入れず観客が叫び声を上げた。

    「バカがいやがった! あれは――」

     金色の光が2番の体を突き破って飛び出した。ほぼ同時に光の槍は先頭集団を襲う。
     客の叫び声は閃光と炸裂音にかき消されたが、辛うじて聞こえた音から浮かぶのは、

     『でんきのジュエル』

     2番の放った威力増大の『かみなり』。
     単体を狙う技だがジュエルにより威力も上がった最大級の攻撃、ダメージを与えたのは一匹に留まらなかったようだ。
     直撃を受けた8番は煙を上げてひっくり返っていた。
     運の悪いことに8番の近くを走っていた5番もいくらかダメージを受けていた。
     5番、つまり、イダテンマルだ。
     コーナーも終わり、ゴールの待つロングストレート。トップを争うのは二匹のジグザグマ。5番と6番だ。それを追いかるのは2番と7番。逃げ切りと追い上げがしっかりと分かれる形になった。

    「イダテンマル!」

     歓声にかき消されて聞こえるはずもないが、それでもブリーダーは自分のポケモンの名を叫んでいた。拳が血の気を失う程に、痛いぐらいに握り締められている。
     2番と7番はもう攻撃ができないようだった。キタカゼゴーゴーの『こごえるかぜ』は決め手にならず、スキを生むのでデラサンダーの『かみなり』を受けることになる。対してデラサンダーの『かみなり』も目立つ上に命中が高いくない技なので、奇襲でもなければ逃げ切りの二匹には当たるようには思えない。追い抜く実力や技を持っていなければ、もはや手詰まりだった。協力すれば一位も狙えたのかもしれないが、残念ながら相性が悪いのか牽制し合っていた。
     勝負は一騎打ちになっていた。
     相手もさすがは人気最高のジグザグマで見事な俊足だ。
     イダテンマルとジグエルメス、二匹の大きな違いは体力だった。ジグエルメスは『かみなり』のダメージは無い。

    「ゴールまで体力は持つはずだ! お前ならいける!」
    「さっき『かみなり』のあとに木の実を食べてたみたいだからHP切れはないと思うけど、相手も木の実を持ってるだろうから」
    「わかってるよそんなこと!」

     ジグエルメスはイダテンマルを潰しに来た。
     ジグエルメスの「きりさく」攻撃をイダテンマルは「でんこうせっか」で回避する。走る場所がずれるように高速で進んだイダテンマルの体。しかしそれに食らいつくように、相手のジグザグマが突撃してきた。電光石火よりもはるかに早い、高速を超えたスピードの攻撃だった。

    「イダテンマル!」
    「なんてこった、あの技は普通ジグザグマが覚えられる技じゃないぞ」

     ネジキも驚く技は「しんそく」だった。ウィンディなどが得意とする技で、ノーマルタイプの俊足技。単純に言ってしまえば「でんこうせっか」の強力版であるが、威力もスピード桁違いだ。
    『しんそく』は普通のジグザグマは覚えられない。しかしそれは存在した。『なみのり』を覚えたピカチュウなど、レベルや技マシン、教え技でも覚えられない技を身に付けたポケモンは見つかっているのだが、その方法は謎に包まれている。
     どこかで『しんそく』の情報が流れていたのだろう。そのためにジグエルメスは一番人気になっていたのだ。

     イダテンマルは応戦をすることに決めたようだった。何度も『きりさく』や『でんこうせっか』で果敢にアタックを始める。ジグエルメスはそれに対応し、確実に反撃を当てようとしていた。
     そしてジグエルメスが一瞬ぶれる。それに続いてイダテンマルも妙な挙動をして間を取った。

    「『ものひろい』か!」

     ジグエルメスが食べた回復の木の実。その食べかけをイダテンマルは狙っていたのだった。かじって捨てられた木の実を拾い、安全に食べるために距離を開けたのだ。特性を利用することによって、レース中で再度回復することに成功したのである。そしてイダテンマルは勝負に出た。おそらくトップスピードと思われる速度で無理やりわずかに前に出た。もちろんジグエルメスの後ろからの攻撃が待っている。だが、『しんそく』は万能ではないようだ。技の特性なのか使いこなせていないのか、攻撃が直線的で、距離もイダテンマルの「でんこうせっか」よりやや短いようだった。おかげで何度か攻撃を避けることができた。

    「イダテンマル!」

    しかし体力は確実に減っていく。

    「イダテンマル!!」

     我慢比べだった。もはや一着以外はいらぬとイダテンマルは茨の道を進む。星の数ほどバトルを見てきたネジキも、奥歯を噛み締めるような硬い意思に体が震えた。

    「イダテンマル!!」

     ブリーダーはその声が背中を押すと信じているように、絶叫に近い大きさで名前を呼び続ける。

    「止まるな!」

     ネジキが叫んでいた。

    「進め!」

     渾身の力で握られた拳が、振り上げられた。

    『勝て!』

     イダテンマルのスピードが上がった。
     『こうそくいどう』などの技ではない、純粋な前へ進む力。
     先ほどまでとは違う体勢、ひたすらに前へ前へ進むため真っ直ぐ体を伸ばしている。
     右へ左へ曲がる間隔が狭まり、先頭との間隔も広がってゆく。
     それが一瞬しなる。体を捻ったジグザグマは光に包まれた。
     そして変化は一気に表れる。
     引き絞った弦が弾かれるようにその身が跳ねると、放たれた矢の様に一直線に、白い輝きに包まれてゴールを貫いた。

    「ワーオ」

     ブリーダーが横を向くと、ネジキが目と口をまんまるく開けて突っ立っていた。
     なんだか珍しいものを見た気がして、それでいてネジキに似合い過ぎている気がして彼は声を上げて笑ってしまった。それは観客の声にかき消されてネジキの耳には届かない。最も、それが聞こえたからといってネジキは何も変わらないだろうと思うと、さらに笑えて涙が滲んだ。

     フィールドでは一番最初にゴールラインを駆け抜けたイダテンマルが、流線型の体でゆっくりとウイニングランを楽しんでいた。

    「進化だ!」
    「すげーっ!」
    「どうなるんだ?!」
    「あれってアリかよ?!」

     観客の声で会場がめまぐるしい音と感情に包まれていた。
     どれぐらい経ったか、残りのジグザグマが全て走り抜けたあと、ポーンと間抜けな音が城内に鳴り響いたあと、放送が流れた。

    『審議に入ります』





     ほとんど人がいなくなっている観客席を二人は歩いている。

    「むー」

     ネジキはずっと唸り声を上げていた。最後の失格の判定がどうしても気に入らないらしい。もらったスタッフの名刺に連絡しようか真剣に悩む程だった。対してブリーダーは少し顔を伏せているが、あまり感情を出さずにいつもの表情を保っていた。
     結局、イダテンマルは失格になってしまったのだ。レース中の進化ということで順位は最下位扱いとされた。

    「ジグザグマレースだからね。マッスグマになったら失格なのは仕方ないさ」
    「悔しーなー。僕は納得いかないなー。進化はしたけど、ゴールの瞬間まではジグザグマの体型を保っていたと思うし」

     何で録画しておかなかったんだとPDAを弄りながら、文句や後悔をブツブツ言っていたかと思うと、急に真っ直ぐ顔を向ける。

    「これからどうするんだい?」
    「どうするって……。まぁ、イダテンマルも進化しちゃったし、マッスグマレースの育成を始めるよ。それに別のジグザグマも育てるつもりだけど」

     また一から再スタートだね、と笑う。ネジキはその笑顔に清々しさを感じた。それを見てあるアイディアが浮かんだ。浮かんですぐさま口にする。

    「じゃあ、よかったら僕の依頼を受けて欲しいんだけど」
    「依頼?」
     
     二人は立ち止まり向き合った。

    「面白かったよ。それに僕は君や君の育てたジグザグマが好きになったんだよね。あー、今はもうマッスグマか。とにかく僕は君に頼みたいんだ」

     懐から名刺を取り出すと、ブリーダーに手渡す。彼は名前の上にある肩書きを見て目を丸くした。

    「ジグザグマとマッスグマ、僕の注文通りに育てて用意して欲しい。それでいて、みんなが好きになってくれるようないい子をね。報酬は――まー、結構な額を約束できると思うよ」
    「え、いや、そんな」
    「君もそんな顔をするのかい? もうその顔はこの場所では見飽きたよ。みんなそんな顔をする」
    「お前だって同じ顔をしてたじゃんか!」

     二人の笑い声が重なった。そしてどちらとなくその手を差し出すと、強く強く握りあった。





    「僕の負けですねー。あー、悔しーなー。悔しーけど新しい知識が増えたし君と勝負できてよかったよ」

     勝利の感動に震えるトレーナーに、いつも通り飄々とネジキが声をかけた。

    「でさー、レンタルしたポケモンのこと好きになった? なってくれるとファクトリーヘッドの僕としても嬉しーけど。じゃあ次はまた別のポケモンをレンタルしてよー!」

     ステージの奥に退場しながら、彼は相手のトレーナーの手持ちにいたマッスグマを見て、友人のとの出会いを思い出していた。そしてケータイを取り出すと相手が出るのを待つ。

    「やあ。久しぶり。そんなに嬉しそーな声を出さなくていいよ。今どこにいるんだいローラーカジノは? 今日はジグザグマレースはやってるかい? ついでに出場者のリストも送ってほしーなー」



    ------------------


    いかがだったでしょうか。レース展開など、ちょっとわかりづらい部分もあるかと思いましたが、私が考えるポケモンレースを書いてみました。楽しんで頂ければ幸いです。実は「とけないこおり」より先に書き始めた話だったんですが……(笑)

    フロンティアブレーンが好きで、今回ネジキを登場させましたが、原作のキャラって難しいですね。ブレーンはセリフも少ないですし。

    以前チャットでギャンブルのアイディアをいただいたんですが、「バリヤードのビリヤード」は書けませんでした(笑)
    面白いとは思うんですが、ギャンブルじゃないですよねビリヤードは(笑)
    ソーナンスの方は丸々使わせていただきました。アイディアをくれた方々、ありがとうございました。ローラーカジノやギャンブルは少ししか出てこないので、いつかメインの話も書いてみたいなーと思います。




    それでは最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

    【書いてもいいのよ】 【描いてもいいのよ】 【批評してもいいのよ】


      [No.1580] ドッペルゲンガーだけは怖くない人 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/07/10(Sun) 17:07:43     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    キトラさん、感想ありがとうございます! 感想マスターの称号を是非。

    ホラーきつい人だったのですか! それはごめんなさい。でも怖がってもらって嬉しいという矛盾したこの気持ち。ゴーストタイプってきっとこんな感じ。

    > 熱帯夜に涼しいという恐ろしい舞台装置が
    熱帯夜なのに涼しい、というのにそんな効果が!
    なるほど。指摘されてはじめて気付きました。

    > 何が怖いって、ドッペルゲンガーみてしまったらどうしようとか
    > トラックにひかれたくないとか
    ドッペルゲンガーは私怖くなくてあれなんですが(知人にドッペルゲンガー並に似てる方々がいるので信じる気になれない)
    トラックはガチで物理的に迫ってくるから別の恐怖があると思います。
    つまり恐怖を二種類味わえて美味しいのです(

    > 幽霊とかかなり怖い部類なので、ホラーきついです。なので増えないでください(願
    > 個人的な願いなので、出来る人は書けば良いと思う!
    同意ですノ
    そういえばこれを上げた後くらいからしょっちゅう金縛りに(


      [No.1579] 流れ星 投稿者:スウ   投稿日:2011/07/09(Sat) 23:36:52     27clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「コウちゃん、この場所でね、流れ星が通り過ぎる前にお願い事すると、それが本当に叶うんだって……」
     世界中の子供達が眠りについた頃、小高い丘の上で、ミニスカートのカナエが、幼なじみに寄り添いながら言った。
     とても良い雰囲気だった。
    「よし、そんなら一つ試してみるか。――フライライ!」
     幼なじみのコウちゃんがフライゴンに指示を送ると、天から無数の光が閃いて、それが下界の至る所を倒壊させた。
     カナエはコウちゃんの頭をぱしっ、と、はたいた。
    「流星群を降らせてどうする!」


      [No.1578] 【百字】愛してる 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/09(Sat) 19:58:20     24clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     聴力は完全にありません。絶望のような宣告。音楽家である彼は自分の奏でる音すら解らない。私の言葉も伝わらない。残された視力も使おうとしない。
     ポケモンたちが心配してる。泣き伏せて顔をあげたらそこには「I love you」のアンノーンがいた。



    ーーーーーーーー
    カウントしてないけど多分百字ちょい。
    【好きにしていいのよ】


      [No.1577] 隔世遺伝 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/09(Sat) 19:40:00     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    待ちに待った我が子、しかし我が子は催眠術を覚えていた。
    俺は覚えていないのに!
    い、いや確実にこの子は俺の子だ
    なのに!
    いやいや、冷静になれ
    確かに俺の種族は催眠術を覚える種族である
    しかも両親から貰わないといけないという条件で
    俺の親父は覚えていた。そして俺も子供の頃は覚えていた
    しかし今は全く覚えてないのに
    なぜこいつは覚えている!
    「ねぇー貴方、名前どうする?」
    その前に疑問に思わないのか、催眠術を覚えてるなんて!
    あああああ、お前そんなに笑顔で、どうしてどうして、俺の子だよな、それ本当に俺の子だよな!?


    ーーーーーーーーーーーーーーーー
    もうちょっとまじめに書けばよかった。
    修正する気になったらする。
    【好きにしていただきたい】


      [No.1576] 【百字】ムックルの歌 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/09(Sat) 16:29:27     24clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     春が来た。雲が空ににじんでいる。僕らの季節だ。歌おう。春が来たことを告げよう。雪が溶けて、その下からは新芽が待ってる。全ての生きものは僕らの歌を待っている。春風の訪れよりも何よりも。さあ、歌おう。




    ーーーーーーーー
    参考音源:リード作曲、アルメニアンダンスパート1より「ヤマウズラの歌」


    流星の方でも使っていた、ヤマウズラの歌はここから来ました。
    春先につがいで飛ぶ鳥みたいな暖かみを受けたので。
    【好きにしていいのよ】【百字増えたねー】【レスも増えたねー】【全て僕の計算通りさ】



    下からは完全余談。
    ちなみに本番で、入るべきパートが入らず、止まりかけた思い出の曲でもある。


      [No.1575] ではレジアイスは・・・ 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/09(Sat) 16:15:08     21clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    溶岩風呂にいるようなものなのかな

    体温1万あれば、きっと今の気温は屁でもないはず・・・はず。
    リザードンはしっぽだけ暑くない。はず。
    多分、タブンネ。


      [No.1574] 日常に! 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/09(Sat) 16:13:00     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    夏休み最後の日は、宿題を埋めるための日でございますな人にはちょっと解らないです!
    ですが、夏休みが終わってしまうあのなんともいえないがっかり感は解ります。
    大学の時に夏休みが2ヶ月あった時、次の授業がもう嫌になったのは毎年のこと。


      [No.1573] 【書いてみた?】吠える。 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/09(Sat) 16:11:32     22clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    そして、地球の70%が海という決着は、一体どこでついたのだろう。
    海のが深いので、やはり勝ったのだろうか。
    いやしかし。

    地球の表面が70という数値だけで、実際の質量からみたら陸や固まってない陸ばかりではないか。
    「めーんどくせ☆」
    緑の竜は考えることをやめて空へと飛んでいった。


      [No.1572] ・・・だいばくはつ 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/09(Sat) 16:07:45     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    みんなのコメントのサーナイト♀はリア充って・・・
    あの世界にもやはりそういう価値観が・・・それはそれで恐ろしい。
    というかそこじゃないだろ、リア充!

    小さなブラックホールを天の川に飛ばせば良かったのに・・・


      [No.1571] ヒトモシ・・・ 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/09(Sat) 16:05:55     21clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    暑いのか。ヒトモシ、その頭の上の炎の方が暑そうだ

    ヒトモシは俺の嫁ェェな方々。
    頼むから命あっての嫁だと認識してくだしあ。

    そしてキャスターの冷静なコメント、古館○郎さんならもっと冷静に熱くいってくれるはず!


    ヨノワールの疾走で、主治医とかの管理責任が問われるのですね解ります。


    氷タイプはおいしそうだ。
    私は雪女ことルージュラ(やり持ってない)に悪魔のキッスで眠らせて欲しい。そうすればこの暑い夏も寝れるはずなのに!


      [No.1570] 昔からホラーは・・・ 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/09(Sat) 16:02:11     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    熱帯夜に涼しいという恐ろしい舞台装置が
    そのおかげでそれだけで怖いです。そしてホラー苦手です。
    というか
    怖いです。

    何が怖いって、ドッペルゲンガーみてしまったらどうしようとか
    トラックにひかれたくないとか

    幽霊とかかなり怖い部類なので、ホラーきついです。なので増えないでください(願
    個人的な願いなので、出来る人は書けば良いと思う!


      [No.1569] 増えて増えてはぁはぁ 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/09(Sat) 15:59:04     19clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    百字はその人の世界が短いながらも解る手軽で楽しい文章ですね。
    しかし難しい。

    なぜかベルが言ってるような雰囲気を受けました。
    彼女も最初は反対されていたけれど、好きなことをみつけようってがんばってるし。


      [No.1568] 最近の気温についての会話 投稿者:西条流月   投稿日:2011/07/09(Sat) 13:07:28     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    「それにしても、最近暑くなってきましたね。このままでは蒸発しちゃいそうだ。そうは思いませんか、御主人」
    「自然の摂理だから仕方ないよ。ていうか――」
    「どうしました?」
    「体温一万度のお前もそう思うんだな」




    ―――――――――

    ポケモン界ではある意味有名なネタを使ってみた百字

    【好きにしていいのよ】


      [No.1567] 百文字は、返信が、早い……! 投稿者:スウ   投稿日:2011/07/09(Sat) 00:50:15     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ラクダさん、はじめまして。ありがとうございます。
    ほとんど一発ネタなんですが、それでももう嬉しい限りで……。
    百文字は執筆が早い分、読者の読了、反応がスピーディですね。
    作者のモチベーションを高めるには最高の方法かもしれません。


      [No.1566] ツボに入った 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/07/09(Sat) 00:34:21     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     こんばんは、初めましてです。

     旦那さんの軽妙な返しに吹きましたw 実にリアル! 「百文字ばかり」の作品の中で、これが一番好きです。
     楽しませていただきました!


      [No.1565] いきなりありがとうございます! 投稿者:スウ   投稿日:2011/07/09(Sat) 00:29:12     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    返信が多い気がしたので、よく見たら……
    クロトカゲさん、ありがとうございます! はじめまして、ですね。
    作ったやつの中ではこれが一番まともでしょうね。
    実際にありそうな光景だったりします。


      [No.1564] そういうことか! 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/07/09(Sat) 00:21:10     26clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >
    >  良いですよねこれーこういう可愛い曲好き。
    >
    >  ヒント:しりとり

     納得しました。しりとりをしつつ、不自然でない文章を組み立てる。流石ですね!

     釣り針飲み込むコイキング……w


      [No.1563] この曲知ってる! 投稿者:リナ   投稿日:2011/07/09(Sat) 00:16:15     23clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     良いですよねこれーこういう可愛い曲好き。

     ヒント:しりとり


      [No.1562] 投書 投稿者:スウ   投稿日:2011/07/09(Sat) 00:11:35     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    冷遇されている虫ポケモンにも
    もっと愛の手を!



    せっかく水技も使えるのに
    何であんなひどいことを!



    もうあんな無意味な進化をさせるのは
    絶対にやめてください!



         『ホウエン地方・アメモース復興委員会一同』


      [No.1561] 加速型 投稿者:スウ   投稿日:2011/07/09(Sat) 00:10:38     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    最近WiFiにこってる妻が憤慨してこう言った。
    「また負けたわ! 加速バシャーモってあれ絶対に反則よ!」
    彼女の旦那がそれに答えた。
    「いやあ、へそくりを隠すお前の早技と比べたら、まだまだどうって事ないよ」


      [No.1560] 抜け殻の彼 投稿者:音色   投稿日:2011/07/09(Sat) 00:10:17     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「ヌケニンって息してないって本当か?」「そうだよ」
    「じゃあ死んでるってことか?」「そうだよ」
    「だからゴーストタイプ?」「そうだよ」
    「でも腹は減るんだ?」「そうだよ」
    「矛盾してね?」「そうでもないよ」



    ※99字詐欺


      [No.1559] 以下無限ループ 投稿者:音色   投稿日:2011/07/09(Sat) 00:08:14     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ケーシィは寝ている時でさえ危険を感じるとテレポートすることができる。
    だから、
    ケーシィ(さて、今日はどこに来ちまったんだろう…?)
    よく迷子になっている。なので友達もできず、従って寝ていることが多い。



    ※98字詐欺


      [No.1558] ペン皇帝 投稿者:スウ   投稿日:2011/07/09(Sat) 00:08:02     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    強いぞボクらのペン皇帝!
    空をも揺るがす大皇帝!
    怒濤のアクアジェットストリーム!
    無敵のアイアンウィングパンチ!(パンチ?)
    飛び出せ集束冷凍光線!

    そして今だ!

    超必殺の!

    ハイドロカノンプレッシャーァァッッ!


      [No.1557] ヤドカリから宿をとる 投稿者:音色   投稿日:2011/07/09(Sat) 00:06:55     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ポケモン達はトレーナーに抱っこしてもらうのが大好き。
    「次イシズマイねー…、って、重ッ…」
    イシズマイ(がーん!)
    その夜  イシズマイ『俺ダイエットするんだ!』 フタチマル『とりあえず背中の石、おろせ』



    ※99字


      [No.1556] 俺のカビゴンも波乗りするんだぜ 投稿者:音色   投稿日:2011/07/09(Sat) 00:04:36     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「俺のピカチュウ空を飛ぶんだぜ」  「へーそう」
    「俺のドードリオ空を飛ぶんだぜ!」 「すげえぇぇ!」
    「俺のピカチュウ波乗りするんだぜ」 「へーそう」
    「俺のケンタロス波乗りするんだぜ」 「すげぇぇぇ!」



    ※100字


      [No.1555] クイタラン、まだ喰い足らん。 投稿者:音色   投稿日:2011/07/09(Sat) 00:02:21     30clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    クイタラン、喰い足らん。今日もお腹を空かせてる。
    クイタラン、喰い足らん。今日も蟻を食べにやってきた。
    クイタラン、喰い足らん。今日も今日とて帰り打ち。
    クイタラン、喰い足らん。今日も満腹ばかりを夢に見る。



    ※100字


      [No.1554] へんしん 投稿者:音色   投稿日:2011/07/09(Sat) 00:01:11     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    お腹を空かせたメタモンがお腹を空かせたマリルに会いました。
    マリルはメタモンに助けを求めました。
    メタモンは『へんしん』してマリルを食べてあげました。
    こうしてお腹の問題を解決したメタモンは去って行きました。



    ※101字詐欺


      [No.1553] 【百字】さあ、帰ろう。 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/07/09(Sat) 00:00:47     79clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    僕は相棒を窺う。相棒も僕を窺う。僕らは揃って溜息をつく。
    一緒に遊んだ夏休み、今日がとうとう最終日。
    ……まだ、絵日記終わってない。最後のページどうしよう。

    そうだ!

    最後に残った一ページ、困った顔の君と僕。



    ―――――――――――――――――――

    タイトルを合わせようとしたけど、内容と微妙に合ってないような気がする……。ま、いっか(

    【なにをしてもいいのよ】


      [No.1552] 十人十色 投稿者:音色   投稿日:2011/07/08(Fri) 23:57:58     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ある女性誌の女性達への質問 Q 好みのタイプの男性は?
    「やっぱりバトルに強い人が好き」
    「コンテストで華やかな人が好き」
    「上手にポケモンを育てられる人が好き」
    「その人がポケモンが好きなら、それでいい」



    ※100字


      [No.1551] Re: 断り書き 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/07/08(Fri) 23:57:08     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    なんだろうとスクロールしたら、これはやられた!

    こういういちげきひっさつ!なオチ、すごく好きです。


      [No.1550] あちぃ〜 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/07/08(Fri) 23:56:28     24clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    いやあ、私も今日は熱くて教室の中でばててましたよ。

    > 「マスター大変!ドレディアの顔が赤くなってる!おまけに何かそれっぽいポーズをしてる!」
    > 「水風呂をいれようか」

    サワン「今日は一段と…ばたんっ」
    ナイト「おい!?サワンしっかりしろ!!」
    ティラ「誰かリーダー連れてきて!!」

    > 草タイプ、炎タイプなども同様のようで、『草タイプは水風呂などに入れてあげてください』『炎タイプはなるべく扇風機などを使って、水分をよく摂らせてください』などのアドバイスがある。

    ナスカ「暑い…わね…どさ」
    レッセ「ナスカさんが墜落したぁ!?」
    シェノン「よし!ハイドロポンプ打つぞ!」
    ナイト「そういう意味じゃねえよリーダー!!」

    > 「あらら…マグマラシがヘタレになってる。いや、元々かしら」

    マグマラシさん涙目。

    > 「カクライさんのメラルバは大丈夫なの?」

    アポロン「ぼくはだいじょうぶじゃないよ…くらぁ」
    ファル「アポローーン!」

    > 「シャンデラは大丈夫?え?何も食べる気がしない?…ヒウンアイスが食べたい?その前にスタミナつく物を食べないと。…なんだその顔」
    > 『炎が変な色になって直らない。ヒウンアイス食べないと治らない』
    > 「ガキか!…暑いな」

    シェノン「オルカーサイコソーダくれぇー」
    オルカ「ガキか!!…あれ、なんか私もくらくらしてk」
    レッセ「そういやオルカってみず、こおりよね。」

    >『速報 道の真ん中でヨノワールが倒れているのが見つかる』

    シェノン「こちらは倒れてるやつが四名!!」
    ナイト「リーダーはやくれいとうビームとなみのりを!」
    ティラ「こっちも大変です!どうかみなさんお大事に!」


      [No.1549] 主人公 投稿者:スウ   投稿日:2011/07/08(Fri) 23:53:13     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    メタグロスとか
    ガブリアスとか
    ごついのはいっぱい見るけれど
    アニメの第一回から主人公だった彼のこと
    最近忘れちゃあいませんか?

    目指せ、タワーにサブウェイ百勝

    もう一度初心に返って
    今こそ集めよう、スーパー電気玉


      [No.1548] 断り書き 投稿者:スウ   投稿日:2011/07/08(Fri) 23:52:35     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ポケモントレーナーの皆様へ。
    ここより先、以下のポケモンの進入は固くお断りいたします。





    カイオーガ
    グラードン
    バンギラス
    ヒポポタス
    カバルドン
    ユキカブリ
    ユキノオー













                ――ナナシマ気象観測所


      [No.1547] 百文字ばかり 投稿者:スウ   投稿日:2011/07/08(Fri) 23:51:54     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    このところ百文字作品がブームらしいので便乗してみます。
    やってみるとかなりはまりますね。時間もそれほどかかりません。
    取りあえず、六作品を(話として成立しているかどうか非常に怪しい)。
    文字数はスペースを含めたものも合わせてどれも百文字です。

    →なぜか一作品だけがどうしても投稿できません……?
    使えない文字とかがあるのだろうか……。
    というわけですみません、六作品ではなく、五作品となりました。

    【以下の記事より百文字続く】
    【好きにしちゃってください】


      [No.1546] 本当に感謝であります 投稿者:スウ   投稿日:2011/07/08(Fri) 23:40:32     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    キトラさん、はじめまして。感想、ほんとにありがたいです。
    ヒメグマもいいですよね。GB金銀時代から付き合いが長いです。
    とはいうものの、ポケモン世界の熊系は、進化すると、いきなりいかつくなって、それがどうもいただけません。
    一度の進化でなぜにあのような戦闘民族に……いやこれ文句ではないですよ。ないのですが。
    キティちゃんもポケモンも、可愛がりたい衝動に突き動かされる根源は同じ、はず。
    ゲームの中のシロナさんだって、ヒメグマやクマシュンに一目惚れしてる、はず。
    その熱意がガブリアスなんかに傾くとチャンピオンとかにもなるんでしょうねきっと。
    もっとそういったシロナさん達が書きたい昨今です。

    ありがとうございました。


      [No.1545] リア充大爆発っ☆ 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/07/08(Fri) 23:39:11     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > (リアジュウ バクハ)容疑者(23)で、調べによりますと、「地球の自転を止めて七夕が来ないようにし、リア充どもを涙目にしてやろうと思った」

    『里亜住麦波』 …盛大に吹きました。

    > この事件に対し、ネット上では「サーナイトの♀持ってる時点で十分リア充だろ」「よくやってくれた!」「こいつ天才じゃね?」といった書き込みが相次いだということです。

    うん、天才だよ。まあコイツもリア充だ、と言う意見には私も賛成ですが(笑
    まことによくやってくれた。そしてサーナイトすげえ。
    サーナイトって信頼する人を命がけで守るそう。きっとこの主人のこと、信頼してたんでしょうね(違

    > 完全なるやっつけです。朝思いついて夜完成。クリスマスも書いてみたい。

    ぜひぜひお願いします。できれば、『夏の浜辺で男女混合はしゃぎ騒ぐ人たち』もお頼みしたいところですね。

    【リア充爆発しろ!】


      [No.1544] なんと。 投稿者:スウ   投稿日:2011/07/08(Fri) 23:39:06     66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    西条流月さん、はじめまして。
    骨にまでしみるくらい、感想、ありがたいです。
    これ書くためにクマシュンのことちょっと調べたら、波乗りなんかを覚えるようで驚いたりしてました。
    まさか秘伝要員に使えるとは気付かず、ゲーム中は通り過ぎて……けっこう損してたかもです。
    シロナさんは何をするにしても行動派な感じがしていたので、取りあえず色々と曲げて書いてみました。
    ナナミさんの方は意味もなく、もっとオリジナルからかけ離れていると思います。
    この二人はそもそもゲームの登場人物でもありますし、案外動かしやすいことに最近気付きました。
    それを踏まえて、この二人を主軸にあれこれ冒険するようなものを何とか模索してるのですが、どうも考えがまとまらず予定が先送りされている状況です。
    いつかお披露目したいとは考えているのですが。

    と、言ってるうちに、一行でも筆が進めばと怠けている他力本願な自分を叱咤して……
    それでは、ありがとうございました。


      [No.1543] あれ…? 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/07/08(Fri) 23:28:09     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    こんなネタ、どこかであったな…。

    あ、そうだ。どこぞの四コママンガで見た気がする。

    勘違いだったらすみません…。

    というかこれらの考えたのが三分とか

     す ご す ぎ る だ ろ 

    久方さんに続いて土下座。orz


      [No.1542] どっかの夕方のニュース 投稿者:紀成   投稿日:2011/07/08(Fri) 19:10:02     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    えーまず、本日のトピックです。

    [ヒトモシ大量発生 イッシュ・フキヨセシティ]
    全国への荷物配達で有名なフキヨセ・カーゴサービスがあるフキヨセシティにて、ヒトモシが大量発生したとの報告が入っております。
    皆様ご存知の通り、ヒトモシは人やポケモンの命を吸って頭の炎を燃やしているという、下手をすればバトルしなくともパーティが全滅しかねないとても危険なポケモンです。
    どうやらタワーオブヘブンの中があまりにも蒸し暑いため、耐えられなくなり外へ集団で出てきた模様です。
    VTRをどうぞ。

    ―VTRが流れる。大量のヒトモシが押し寄せてきてパニックになるフキヨセシティの人達。そこへ突っ込んでいく数人のトレーナー。『ヒトモシは俺の嫁ェェェェ!』という叫びと共に、ヒトモシの軍団に飲まれていなくなる。

    えー、どんなポケモンが大量発生したとしても、感じ方は人それぞれのようですね。では、次のニュース。

    [ポケモンセンターに運び込まれたヨノワール、失踪]
    昨日、熱中症のため倒れていたヨノワールを、シンオウ地方、コトブキシティのジョーイさんがセンターに運び治療をしました。しかし数時間後食事を届けにいくと、影も形も無くなっていたそうです。
    ジョーイさんは『あんな体で何処へ行ったんでしょうか…大丈夫かしら…』と、不安の色を隠せない様子でした。
    倒れていないといいですね。では、最後のニュース。

    [全国の氷タイプ、喰われかける]
    この暑さで発狂しかけた大型ポケモン達が、驚くべき行動にでています。本日未明、イッシュにお住まいのエリートトレーナーさんが、バイバニラを連れて歩いていたところ、いきなり後ろから荒い息遣いが聞こえ、振り向くと涎を垂らしたオノノクスがバイバニラを頭から齧ろうとしていたとのことです。
    その後、パニックになったバイバニラがふぶきを出し、オノノクスは凍りついたとのことです。これに対しライモン大学名誉教授のシンリさんは、『非常に珍しい行動だ。きっとあまりの暑さに頭がおかしくなってしまったのだろう。くれぐれも、皆さんは自分のポケモンがこうならないように体調を見てあげてください』というコメントを残しています。
    また、他にもいくつかの事例が報告されています。VTRをどうぞ。

    ―VTRが流れる。顔を隠した少女がインタビューに答えている。
    『ええ。いきなりのことでした。熱帯夜の時に夜食を買おうと思ってフリージオと一緒に夜道を歩いていたら、後ろからエモンガの大群が押し寄せてきて… 幸いにも齧られる寸前、フリージオは水蒸気になったので無事でしたが』
    『私のツンベアーがウォーグルに突かれたの!つららおとしで撃退したけど… しばらく嘴の痕が消えなくて可哀想だった』

    夏と言うことで、皆さんかなり荒ぶっているようですね。では、また明日、この時間で。


    「馬鹿だね。魂の回収の途中で熱中症で倒れるなんて。…ユキメノコ、タオル冷やして」
    『まさかここまで暑いとは思わなかったんだ』
    「毎年こんな感じだろ、夏って。ほら、冷たいタオル」
    『いつもすまないな…』
    「…」
    『…』
    「『それは言わない約束でしょ』…って言えばいいのかい」
    『よくわかったな』
    「分かった。タオル返せ。そんな無駄口叩けるくらい元気なら、仕事行きなよ」
    『も、もう少し。もう少しだけ』
    「…」

    どっかの路地裏でこんなことが起きていたとかいなかったとか。
    あー!暑いっ!


      [No.1541] 星夜の連れ歩き 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/07/08(Fri) 18:02:18     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     空を漂うジラーチを追いかけて、暗い山道を抜けてゆく。
     周りに明かりはないけれど、空に輝く星々を見ながら進む。
     後ろには相棒がついてくる。相棒の尻尾の火はまだ小さくて、道案内には頼りない。
     山道を抜け、麓にたどり着くとそこは海岸。浪の音しかしない、時間から取り残されたような海辺だ。
     水しぶきが反射して、海中の中の何かが煌めいて、天の川まで来てしまったのかもしれない、と一瞬思う。
     そうだ、ジラーチだ。
     夜空見上げると、瞳をとじたままのジラーチは海の向こうへと流れていく。

     ポケギアを見る。もう七夕は終わっていた。

    「そっか、ジラーチは起きなかったね」

     相棒に言うが、姿が見えない。探してみると、相棒はジャブジャブと海の中に足を入れて駆け回っていた。
     おいおいお前はヒトカゲじゃないか。海水は苦手なはずだろうに。
     やれやれと肩をすくめると、相棒を追いかける。
     僕が近づくと、ヒトカゲは誇らしげに右手を差し出す。
     黄色い欠片だ。そうか、これが光ってたのか。
     驚く僕を見た相棒は、満足そうに一鳴きすると、さらに奥に行こうとするので慌てて捕まえる。とっさに尻尾を握ってしまったせいで火傷をしかけて、両手を海水につけると今度は冷たくて、思わず声を上げてしまう。

    「ヒット、お前は砂浜にいろよ。すぐに拭いてやるから」

     ジラーチはもう見えない。

    「そういえば、願い事、何だったんだっけ?」

     僕の願いはジラーチに願いを叶えてもらうこと。
     あれ? おかしいぞ?
     ジラーチを追いかけるのに夢中になるうちに、目的を見失っていたみたいだ。
     また一年すれば、七夕が来る。その時までに願い事を見つけておこう。
     今年、願い忘れた分、他の人の願いが叶ってるかもしれないじゃないか。
     そんなくさいセリフを言って笑われようとしたら、相棒が大きな星と向かい合っていた。野生のヒトデマンにちょっかいを出したらしい。お前、ヒトカゲじゃないか。水タイプは苦手だろうに。

    「ヒット! お前が悪いんだから、早く逃げるぞ!」

     相棒が追いついてから僕も走り出す。
     星を撒いたら帰ろうか、夜空の果てから僕らの街へ。

    ------------------------
    七夕に乗りそびれたので、Tekoさんに倣って翌日の話。
    来年までさよなら七夕。

    しまった、ヒトデマンが現れるのは「うみのむこう」じゃないか(笑)


      [No.1540] 七月八日 投稿者:Teko   投稿日:2011/07/08(Fri) 13:12:09     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     今日は七月八日。今日は七月八日。今日は七月よう……八日?


     ……あっ。


     年をとると行事を忘れやすくなってしまう。子供の頃はあんなにも七夕七夕って騒いでたのに。町の笹にどきどきとしたものを感じて、短冊に願いと名前を書いて、それから七日の夜は晴れるようにっててるてる坊主作ったりしたっけ。
     それが今ではどうだ……こうだ!何もしないだけでなく、忘れて、翌日に思い出す始末。あぁ、もう年かな年かなぁもう……!ん。


     ……どうやら、遊び人が帰ってきたようだ。最近、どこにいってるかは知らんがやたら出歩く。といっても、気づいたらいなくなってるし、玄関のドアは閉まっているしで、この部屋は三階だというのに、どこから外に出ているかも謎である。飛べるのか?なんにせよ最近ちょっとさびし


     がたーん。

     遠くから響いてきた何かを思いっきり倒したような音。相当何かを派手に倒したに違いない。何しやがったあいつ。重い身体を起こし、音の方へと足を進める。そこに広がっていたのはぶっ倒れた洋服かけと青い、青々しいにおい。そこにいたのは、霊の、いや例の俺の相棒である。いや、待て、この青いにおいのもとはなんだコラ。

    「あのな、ジュペッタ……これは笹じゃない。竹だ」

     ジュペッタが不思議そうに俺を見上げている。どこも違わないじゃない、そんな視線で俺を見ても、これは竹だ。笹じゃない。よくこんな大きい竹抜いてきたなお前。さすが馬鹿力だけはあるなおい。根っこ残ってるぞ。……それからもう一個言う。短冊は枝に突き刺すんじゃない、かけるんだ。

     とは言うものの、多くの短冊が笹……じゃない竹に突き刺さっていた。色も様々。形も様々。文字も様々。実に個性豊かな短冊が笹につきささっていた。ジュペッタが文字を書けるはずはないし、こいつは裁縫以外の細かい作業はほぼ絶望的なほどに苦手なのだ。一体どうしたというのだろう、この短冊たちは。なんかトースト刺さってるし。

     しょうがないし、もったいないから、ベランダに立てておくことにした。意外と大きくて、物干し竿に縛り付けた。斜めに手すりにもたれかかってるそれは、若干情けないような感じもしたが、それはそれでまぁ、七夕っぽくもあるかと思った。もっとも、もう七夕は終わってしまっているのだけども。

     いや、それにしても人の願い事っていうのは様々だなぁ……うん。中にははっ倒したくなるような願い事もあれば、お前こんなこと書くなよ悲しすぎるだろなんて願い事もあったりして、読んでてちょっぴり面白い。
     

    『新しいスプーンが欲しい』

     スプーン……?

    『普通の女の子に好かれたい』

     どういうことだ。

    『にーさんの世間知らずがいい加減直りますように』

     にーさんおい。

     
    「む」
     一つだけ、真っ白な短冊が突き刺さっている。裏にも表にも何も書いていない真っ白な短冊。俺はそれをそっと竹の枝から引き抜いて、手にとった。……うーん、何を書くべきか。他人の短冊を見渡して、俺は考え込む。どの願いも個性的過ぎて俺のアレとは結びつきそうにない。うーん。そんな中、竹の下のほうにひっそりとある短冊があった。文字は小さくひかえめに、それでも、流れるような美しさのある文字だった。

    『彼氏ができますように』

     ふ。
     ちょっと、さびしくやないかい。そう思って少し、少しだけ笑ってしまった。

    「ま、俺も人のこと言えたもんじゃねぇか」

     机の上に転がっていた、鉛筆を手に取り、『彼女ができますように』そう書いて、さびしい短冊の隣にかけた。誰の短冊かはわからんが、こうしておけば、願いがかないそうな気がした。傷の舐めあいっつうわけじゃねぇけどさ。

     昨日の夜はあんなにも曇っていたのに、今日の天気は快晴快晴。
     天の川だって一日くらい残ってはいるだろう。7日だけしかないわけじゃねぇしさ。宇宙はもっと広い心を持ってるだろうさ。願いの一つや二つかなえてくれたっていいだろ。七夕たなぼたたなばた。


     
    ――――――――――

     最近忙しくて何もかけてないてこです。たなばたくらいはかこうと思っていたら、とっくにとおりすぎました。のでこうなりました。いぇーい。


    『ポケストのにぎやかさがいつまでも続きますよう』






     


      [No.1539] Re: 元ネタは残念ながら・・・ 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/07/08(Fri) 11:55:02     20clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    北海道や、青森でもローソクもらいの風習はあると聞きました。

    キトラさんのおっしゃる通り、今のローソクもらいは、子供(ほぼ小学生)が「ローソク一本頂戴な」といってお菓子を貰いに行くものです。(一部の地域では本当に、お菓子をくれないとイタズラするぞ、と言う所もあるそうで、確かにハロウィンそっくりですw)

    自分は一時期函館にいた時がありまして、年齢的にやったことはないのですが、浴衣姿の子供たちがお菓子を貰いにやって来たのを覚えています。

    一般にローソクもらいは8月7日にするそうなんですが、函館では7月7日の七夕にします。
    聞く所によると、これは昔、函館大火で孤児が親の供養のための蝋燭を恵んで貰ったことがきっかけだそうです。

    そんな逸話を思い出して書いてみました。

    子供の掛け声で「多いはイヤよ」の部分は、今「大いに祝おう」になってることが多いです。
    あえて古い方を書いたのは、昔の「多くはいりませんから、一本だけ恵んで下さい」という気持ちがよく出てると思ったからです。


      [No.1538] 深海より 投稿者:西条流月   投稿日:2011/07/08(Fri) 10:32:56     20clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    海底の奥底に眠る今、霧の只中にある思考に浮かぶのは海を干上がらせる赤い仇敵。ぶつかり合い、己が領土を広げんと相手の領土を呑みこまんとし続けた戦いの日々。もういちど、まみえるときがあるならば、次こそは。


    ――――――――

    今日も書いた百字

    しかし、百字を書くときに正式に文頭の空白のスペースを入れるのがいいのかどうか迷う日々

    【好きにしていいのよ】


      [No.1537] 暑い暑い熱帯夜 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/07/08(Fri) 02:18:58     84clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     暑い蒸し暑い。熱帯夜。耐え切れず窓を全開にした。体に染み入る夜風。アクセルを踏み込んだ。風が強くなった。
     真夜中の住宅街。軽自動車は身軽に直線道路をすっ飛んでいった。
     一定間隔で置かれた街灯でできた影が、リズムよく後ろから前へすっ飛んでいった。一つ過ぎる度に風が冷たくなる。

    「あれ?」

     思わず声を漏らす。道の真ん中にあれは何だあれは何だ――人の形をした棒が真ん中につっ立っていた。しかもその棒は俺と同じ背格好で俺と同じ服で俺と同じ顔

     ドッペルゲンガー?

     ありえないありえないありえない。

     気付いたら思い切りブレーキを踏みつけてハンドルを回していた。
     軽自動車は鼻先を逸らし、人影を避けて反対車線にはみ出した。
     さっと振り向いた斜め後ろ。誰もいない誰もいない。見間違いだ。
     俺と同じ背格好で俺と同じ服で俺と同じ顔なんて

     いた。目の前に。

     そいつは真っ赤に血走った目で俺を睨むと、ニタアと笑った。口が裂けて長い舌が出てきた。俺だったそいつの形が崩れて俺じゃない別のものに変質していく。そいつが真っ黒になって夜闇に紛れてすっかり消えてしまうまで、俺は身動きできなかった。


     冷たい夜気が頬に触れて、はっと我に返った。車体はすっかり対向車線にはみ出している。向こうから車が来ない内に、さっさと戻さないと。

     ギアをドライブに入れようとして、既に入っていることに気付いた。ブレーキからはすっかり足が浮いていた。車は地面に張り付いたように動かない。

     どういうことだ。寒気がした。俺はハンドルを回したり、ギアを変えたりしてみたが、車は溶けたガムみたいに地面にべったり張り付いて離れなかった。エンスト? オートマなのに。向こうから光が近付いてきた。どういうことだ。アクセルを踏む。動かない。光が近付いてくる。ギアをリバースに入れた。パーキングに入れてドライブに入れ直した。対向車。でかい。トラック。エンジンをかけ直した。アクセルを踏んだ。動かなかった。

     対向車のヘッドライトが辺りを照らした。目の前が真っ白になった。


     あっちこっちパトランプの赤い光で照らされている。
    「これじゃあ、何が原因だったか分かりそうにねえなあ。まあ十中八九エンジントラブルだろうが」
     刑事が事故現場を睨んでいる。

     住宅街のど真ん中で、トラックが軽自動車を踏み潰していた。ほとんど真っ向から衝突していて、軽自動車の前部座席まですっかりへしゃげていた。

    「しかし運がいいよ。両方とも命は助かったんだからな」
     刑事が俺を見た。俺はただすいませんと頭を下げた。


     あの時、俺はシートベルトを外して開きっぱなしの窓から外に出た。後ろで轟音がして、俺は思わず地面に這いつくばった。地面が揺れた。
     空気の震えがおさまって、俺はノロノロと体を起こした。

     目の前でゲンガーがうけけと笑って、真っ黒な影の中に消えていった。

     蒸し暑さが戻ってきた。熱帯夜だった。



    **

    ホラーっぽいのに挑戦。最近暑くって。

    【何してもいいのよ】
    【みんなもホラー書けばいいよ】
    【って言うところだけど私ホラー苦手だからみんな頑張って書かなくていいよ!】


      [No.1536] トーストさらさら  投稿者:小樽ミオ   《URL》   投稿日:2011/07/07(Thu) 23:59:20     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
    ※『風乗りサラリーマン』を先にご覧いただけると、より安全にお召し上がりいただけます(※トーストを)。



    ◇   ◇   ◇



    「七夕飾りなんて何年ぶりかなぁ」

     彼はさやさやと揺れる笹の葉の懐かしい音を聞きながら、短冊をそっとくくりつけた。
     その声に、奥さんはくすりと微笑む。笹の葉を見上げてなんだか幸せそうな顔をしていた旦那さんの顔。新婚のころ、遠くの街の七夕祭りを見に行ったときのあの顔と同じに見えた。

    『ささやかな幸せにみんなで感謝できますように』

     久しぶりの短冊には、幸せを願うわけでもないそんな慎ましい願いがさらりと記しつけられていた。
     あの七夕祭りで、ふたりこっそり笹飾りに短冊をくくりつけたことがある。『毎日仲のいい夫婦でありますように』、そんな夢のような願い事が、今こうして叶っているんだなとふと思う。
     笹の葉を揺らす風の中にいっしょになって踊るその短冊は、果たしてあのときのように天に願いを届けてくれるだろうか。





    「……で、ちるり、こんなところにトースト下げるのやめようか」


     短冊の合間、笹の香りよりもひときわ香ばしく芳醇な香りを放っているトースト。
     よく見れば彼の死角になる側には、何枚ものトースト、トースト、トースト。
     笹飾りの反対側に回って「うわっ」と引いている彼と対照的な、却ってすがすがしいまでのちるりのドヤ顔。どこかの歌合戦の歌姫のように大きく広げられた翼がドヤ顔を引き立てていて、もう何と言ったらよいのか。むしろ何と言えというのか。


    「ところで、何を書いたのか教えてくれよ」
     ぶら下げられたこんがりトーストを笹飾りから外し、ちるりのくちばしに差し出しながら彼は奥さんに問う。
     短冊代わりのトーストを取られたちるりは一瞬むっとした表情をしたようだったが、すぐにいつもどおりにさくさくと音を立ててトーストをかじり出した。


    「えへへ、ナイショ」
     桃色の短冊をそっと後ろ手に隠して、奥さんはいつものようににこやかに微笑んだ。
     いじわるだなー、とにやり笑った彼に、あなたが優しすぎるのよ、と奥さんは切り返して、もう一度自分の短冊をそっと見つめた。



    『感謝に満ちあふれた幸せな日々を みんなで過ごせますように』



     本当に、本当にささやかなお願いだけれどね。彼女はひとり微笑む。
     笹の葉を揺らす風に、ふたりと一匹の願いが真昼の天の川のせせらぎに向かってさらさらと流れた。



    ◇   ◇   ◇



     ヘーッドスライディーングっ!
     私も短冊を吊るさせていただいて退散させていただこうと思いますー。
     今年もみなさまにたくさんのしあわせがありますよう!

     『今年もみなさんの作品をたくさん拝読できますように』
     『たゆまぬ努力を続けられるようになれますように』



     ちなみにネタに走った感がありますが、本来彼らはこんな家族じゃない(笑)



    【どうしていただいても差し支えないのよ】
    【さくさくさくさくさくさくさくさく】


      [No.1535] 夏だから、 投稿者:音色   投稿日:2011/07/07(Thu) 23:56:37     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    夏だから、カキ氷でも食べようか。オニゴーリを呼んだ。溶けかけていた。
    夏だから、アイスでも食べようか。バイバニラ呼んだ。溶けかけてた。
    夏だから、みんなで涼もうか。チリ―ンを呼んだ。とても良い音色だった。



    ※100字


      [No.1534] 投稿者:音色   投稿日:2011/07/07(Thu) 23:54:37     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    伝説は走る。野を山を谷を川を。
    伝説は走る。街を砂漠を森を荒れ地を。
    走る理由はただ一つ。
    追いかけまわしてくるたった一人の人間からひたすらに逃げ回るため。
    黒い瞳、影を踏まれ、走れなくなると伝説は終わる。



    ※99字詐欺


      [No.1533] クイタラン、喰い足らん。 投稿者:音色   投稿日:2011/07/07(Thu) 23:50:56     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    クイタラン、喰い足らん。今日もお腹を空かせてる。
    クイタラン、喰い足らん。ご飯を探しにやってきた。
    クイタラン、喰い足らん。好物の蟻は地面を掘った。
    クイタラン、喰い足らん。返り打ちにあって帰っていった。



    ※99字詐欺


      [No.1532] 自然を大切に 投稿者:音色   投稿日:2011/07/07(Thu) 23:49:33     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    やせいの イシズマイが あらわれた! ▼
    「よーし、ミジュマル『みずでっぽう』だ!」「ミジュ―!」
    イシズマイのからは みずを はじいた! ▼
    「なんで!?・・あ、あいつプラスチックの殻かぶってやがる!」



    ※ゴミを捨てるとこういう事もあるかもよ
    99字詐欺


      [No.1531] 願いが叶う瞬間 投稿者:西条流月   投稿日:2011/07/07(Thu) 23:47:14     26clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     日付が変わる。僕はそわそわとしながら願ってくれた彼女に寄りそう。彼女は笑う。好きな時に寝て、好きな時に起きていいんだ。彼女と一緒に旅ができるんだ。その喜びを分かち合うように僕と彼女は星空を見上げた。


    ――――――――――――

    投稿したら、そろそろ七夕終わりそうだなぁと思ったら、思いついた100文字

    100文字は手軽だから、もっと増えればいいのよ

    【書いていいのよ】
    【描いていいのよ】
    【好きにしていいのよ】


      [No.1530] 「……俺は?」 投稿者:音色   投稿日:2011/07/07(Thu) 23:44:56     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「君達はどんなポケモンが好きかい?」
    「ボクはヤナップが良いなぁ」
    「わたしバオップが良い!」
    「俺はそうだな、ヒヤップが欲しい」
    「ははは、みんなお猿さんが好きだなぁ」  マンキー(・・・)オコリザル(・・・)



    ※100字


      [No.1529] 将来の夢はウルトラマンだった人って結構いるよね 投稿者:音色   投稿日:2011/07/07(Thu) 23:39:34     66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    とある深海での親子の会話。
    父「大きくなったら私みたいなハンテールになりたいかい?」
    母「それともお母さんみたいなサクラビスになりたいの?」
    子供「ぼくはね、大きくなったら格好良いパルシェンになりたい!」



    ※99字詐欺


      [No.1528] 想像は自由 投稿者:音色   投稿日:2011/07/07(Thu) 23:37:52     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    じっと虚空を見つめているネイティオに対する人々の意見。
    A「きっと未来を見つめているんだ」
    B「過去の回想に浸っているんだ」
    C「目を開けたまま寝ているんだ」
    ネイティオ(あのリンゴ落ちたら一番に食おう)



    ※99字でもなく98字詐欺


      [No.1527] 我慢はいらない 投稿者:音色   投稿日:2011/07/07(Thu) 23:32:49     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    動かない我慢大会を開催した。優勝候補へのインタビュー
    「優勝は俺だ」byソーナンス
    「私に耐えられないものはない」byコモル―
    結果発表   優勝者 ナマケロ
    優勝へのインタビュー  「いつもと同じだった」



    ※99字詐欺


      [No.1526] 最優先:食欲 投稿者:音色   投稿日:2011/07/07(Thu) 23:30:33     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「マッギョさん地面タイプですよね」   「そうだよ」
    「なんで住所が水中なんですか」     「問題あるかい?」
    「ありますよ、住みづらくないですか?」 「でも、電気技通用するから餌取る時マジ楽だし」
    「無双ですか」             「うん」



    ※100字


      [No.1525] 俺たち浮遊特性 投稿者:音色   投稿日:2011/07/07(Thu) 23:29:02     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    弟子入りを決めた。同じ電気タイプなのに、自由自在に空を泳ぐその姿に感動した。絶対にあの技術を物にしてやるんだ!
    「お願いします」「え、あの、ごめん、多分無理」
    エモンガに対してシビシラスは困惑していた。



    ※99字詐欺


      [No.1524] 舞台裏にて。 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/07/07(Thu) 22:33:18     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     返事が遅くなって申し訳ありません。感想を頂きまして、本当にありがとうございます!私の背後で、ラ・クーダ監督も喜びのあまり踊り狂っております! (うぜえ

     さて、最初に言わせていただきます。……巳佑さん、あなたの特性は「鋭い目」か「お見通し」ですか……!?
     感想・指摘が非常に的確で、読み込んでくださってるんだなぁと嬉しいやら、な、なんでバレてるんだ!? と慌てるやら。

    > 『序盤』
    >  いきなりヤル気ローテンションのルーク君で吹きました。(笑)
     
     すみません、物凄く態度の悪い奴で……。ただ、映画業界で『金の卵』として大事に(甘やかされて)育てられたという経緯がありますので。根は悪くない、素直で単純な奴なんです。……タブンネ。
     ポーの方は……スレきってますね(笑)
        
    >  美しいミミロップのラズベリーさんが登場して……ヤル気ローテンションだったルーク君の心境の変化がとても印象的でした。(ドキドキ)
    >  ヤル気になっただけではなくて……これはきっと恋に落ちているだろうと予想。(キラーン)  

     淡い恋心ってどうやって表現するんだあ! と慣れない作業に頭を悩ませていたので、読み取っていただけて嬉しかったです。

    >  そして、昔話で色々と気になるキーワード(例:有名だった親父の跡を継いで映画界デビューし、期待の星としてもてはやされいた時)が……。
    >  後篇の展開と何か絡むのかなぁ……とても気になっています。(間違っていたらスイマセン)

     ば、ばれてーら……! 実は、後編で父親について言及する場面など、あの「昔話」にいくつか伏線を張っておいた(つもり)でした。……まさかこんな所まで読み取ってくださっているとは! 恐るべし、巳佑さんの鋭い目……!


    > 『終盤』
    >  ポーさんの言葉で鳥肌が立ちました……だって、これ、絶対、後篇に何か起こるフラグじゃないですか!(ドキドキ)
    >  ラズベリーさんの欠点とは?
    >  その欠点から、どのような事態を招くことになってしまうのか?
    >  
    >  そして……ルーク君のあの取り乱れよう……何か過去(トラウマになりそうなことなど)にあったのでしょうか?(汗)
    >  

     巳佑さん、お見通し持ちですね(確定)。トラウマ、というべきか、後編で語らせるつもりの家族関係に関わってくる部分なのです。
     なんだかもう、こうも明快に展開が読まれると……嬉しくてたまらないですね(笑)
     ちなみに、第二回コンテスト作品に登場したメタモンの「わらわっち」。作者はどなただろう、後編にもメタモン出す予定だからなんだか親近感、なんて思っていたら。いざ、匿名の蓋を開けたら巳佑さん! 驚きました(笑)
     ついでに、改稿版ではヘルガーが出てくるなんて……! (別作品に登場予定でした)
     ポケモンの選択が見事に一致。正に、お見通し。恐るべし!

    > ★最後に。
    >  私の記憶間違えでなければ、【書いてもいいのよ】タグを付けたイラストの投稿で初めて来た物語です……!(ドキドキ)

     私の記憶違いでなければ、チャットにてこの絵のお話を構想していると仰った方がもう二人おられます。
     「    」さーん、「   」さーん! 先に投稿してしまいましたが、ご遠慮なさらずに投稿なさってくださいねー! というか、私が是非拝見したいのです! お待ちしております!

    >  ラクダさん、素敵な物語、ありがとうございます!
    >  後編も楽しみにしてます!
    >
    > 【ラ・クーダ監督最高!(キラーン)】

     ラ・クーダ監督が感動にむせんでおります! (ますますうぜえ
     素敵な物語、といって頂けて、もう嬉しいやら気恥ずかしいやら。後編もしっかり書く所存ですので(お待たせすること確実ですがorz)、またぜひお読みいただけたらと思います。
     どうもありがとうございました!


      [No.1523] 【リア充】七夕妨害事件【爆発しろ】 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/07/07(Thu) 22:02:24     73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    今日は七夕ですが、七夕に関連した興味深いニュースが入っています。

    本日午後2時25分頃、地球の自転を止めようとした男が現行犯逮捕されました。男は住所不定無職の里亜住麦波(リアジュウ バクハ)容疑者(23)で、調べによりますと、「地球の自転を止めて七夕が来ないようにし、リア充どもを涙目にしてやろうと思った」と容疑を認めているようです。

    警察によりますと、里亜住容疑者は本日午後2時10分頃、サーナイト♀に地球の自転を止めるように指示。サーナイトは小型のブラックホールを発生させられる力を持つため、自転は止まり、世界中で異常な現象が頻発しました。連絡を受けた警察が、自転を止めたエネルギー源を特定。現場に駆け付けると、歓喜している容疑者がいたということです。容疑者が「自転を止めて七夕の夜が来ないようにしてやる」と言ったところ、「自転を止めても天の川はなくならない」という言葉を聞き、がっくりとうなだれたそうです。

    この事件に対し、ネット上では「サーナイトの♀持ってる時点で十分リア充だろ」「よくやってくれた!」「こいつ天才じゃね?」といった書き込みが相次いだということです。

    以上、今日のニュースでした。



    完全なるやっつけです。朝思いついて夜完成。クリスマスも書いてみたい。


      [No.1522] すべりこみさらさら 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/07/07(Thu) 22:01:24     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    久方「『幸せになりたい』……と。よし書けた」
    ギラちゃん『短冊に書く内容なのかそれは?』
    久方「あのさー、年に1度しか会えないカップルが下界の人間どもの身勝手なお願い聞いてる暇あるかっつーの」
    ギラちゃん『身も蓋もない』
    久方「いいんだってこういうのは適当に『世界征服』とか書いとけば。自分は毎年こう書いてる」

    久方「ところでギラちゃんは書けたかね」
    ギラちゃん『まあ一応』
    久方「何々、『身辺の平和を保ちたい』。なかなかいいね。じゃあついでに、裏に『世界征服』って書いておいてやろう」
    ギラちゃん『やめんか!』

    久方「よし、じゃあこれは窓のサッシに吊るしておこう」
    ギラちゃん『笹は』
    久方「ひとり暮らしの大学生の家にそんなものあると思うかね」
    ギラちゃん『確かに』

    久方「……おや、先客がいるようだ。いつの間に」
    ギラちゃん『えーっと何々……』


    「今年もけがなく無事過ごせますように  地学マニア」
    「白米食いたい  ヤミラミ」
    「IE9爆発しろ  ポリゴン2」

    「今年こそ農作業手伝わなくてすみますように  黒塚義明」
    「いい加減名前をちゃんと呼んでもらえますように  玉藻」

    「焼き鳥(内臓)  塀の中出身の人」
    「親友がちゃんと定期的に顔出すようになりますように  塀の中出身の人の幼馴染」

    「研究の発展。それから周りの人たちが安らげるように  シアン」
    「ゼオ君といつまでも一緒にいられますように  マイカ」
    「マイカといつまでも一緒にいられますように  ゼオライト」

    「強い相手!  モミジムのジョウ」

    「みんな仲良くすごせたらいいな  幽霊が見える男の子」

    「生徒に何事もないことを願う  クールティーチャー」


    ギラちゃん『総出……だと……』
    久方「不法侵入甚だしいな」
    ギラちゃん『そこか!?』

    ギラちゃん『おい、何か大雨洪水警報出てるんだが』
    久方「いつものことだろ。大丈夫。天上のカップルは天の川の水があふれてもカササギが橋作ってくれるから」
    ギラちゃん『……お前意外とロマンチストだな』
    久方「頭千切るぞ」
    ギラちゃん『何でそうなる!?』


    七夕残り2時間ですがすべりこみ。


      [No.1521] しみじみ思う 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/07/07(Thu) 21:52:27     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     子供の愛らしい日記の一説、先生のクールな返事。ああ、いかにもポケモン界に有りそうだ……と微笑ましく思っていたら。

    > 先生の返事は冷淡ですね。同僚が言う。
    > 今年だけでも全国で数え切れないほど犠牲者が出た。私の教室でも何人が被害にあっただろう。
    >
    > 草むらに入るだけで命に関わる世の中だ。
    > いちいち温かい言葉などかけていられるか。

     ……心にぐさっときた。

     確かに、その辺にごろごろいる「野生のポケモン」にうっかり出会ってしまったら……襲われたら、小さな子供が適う訳無いんですよね。これはさぞかし死傷者も多いんだろうな、と。『塀の中』の女の子の件を思い出しました。
     十歳でポケモンを持つ=自衛手段を持て、って事なんだろうなあ、としみじみ納得しました。
     久方さんのこういうお話が大好きです。

     ちなみに、「 いちいち温かい言葉などかけていられるか」というのは、この位しょっちゅうあることだから、という意味なのか。
     ……それとも、いちいち情など移していられるか、という……意味ですか……?


      [No.1520] 炎すら倒れる猛暑! 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/07(Thu) 21:34:17     19clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    それより酷いと炎暑というらしい。最近知った。
    しかしヨノワールどこいったんだ
    まさかとけてしまったとk


      [No.1519] そうして見えた真実 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/07(Thu) 21:23:24     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     世界は変わってしまった。ポケモンは解放され、人と切り離された。僕のポケモンも例外ではない。初めてカノコタウンを出た時のポケモンも、旅のポケモンも。Nと戦い、僕は敗れた。僕が甘かったのだ。理想ばかり言う僕が。Nの堅く決意した真実の前には無力も等しかった。
     これはNの温情なのかもしれない。イッシュが見渡せるNの城の一番高いところ。そこに僕はいた。プラズマ団が見守る中、Nは宣言した。
    「英雄は誕生した!そして英雄に刃向かったものは処刑せねばならない!」
     ここから見えるイッシュはとても小さい。遠くに見えるあれはヒウンシティのビルかな。ハイルツリーも渦をまいたまま止まってしまった。強制的に椅子に座らせる間も、ずっとイッシュを見て。もう見えなくなる、うまれたこの大地。
    「それでは、逆賊よ、最後に言い残したことはないか?」
     Nは僕を見ていった。言葉を許される。まっすぐにNを見ていった。
    「まだ死にたくない。まだ・・・」
    「そうやって死んでいったポケモンたちはたくさんいた。君が直接手を下してないとしてもだ」
    「あいつらより先に死ぬわけにはいかないんだ」
     言いたいことはそれだけか、とゲーチスが笑った。けれど頭の中には、ムリヤリ解放してしまったポケモンたちのことしか浮かんで来なかった。Nが何か喋っているが聞き取れない。違うんだ、こんなところ早く出て、うまれたばかりのメラルバにご飯あげないと。水タイプのやつらに海水浴につれていってやらなければ。炎タイプはカロリー消費するからいつも餌を食べてないといけない。草タイプのやつらに水をやらなければ。こんなところ・・・


    ーーーーーーーーーー
    Nに負けたもう一つの未来。

    【百字の予定だった】【やっぱり百字じゃ足りない】【好きにしていいのよ】


      [No.1518] タイプの受難 投稿者:紀成   投稿日:2011/07/07(Thu) 21:14:16     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「ジョーイさん!助けてください!私のフリージオがただの水になってしまいました!」
    「まずいな…ユキメノコが夏バテで何も食べないよ」
    「マスター大変!ドレディアの顔が赤くなってる!おまけに何かそれっぽいポーズをしてる!」
    「水風呂をいれようか」

    イッシュ日報発 2011年 7月7日 夕刊 『ポケモンによる熱中症 各地で相次ぐ』

    本日のイッシュ地方は猛暑日となり、人だけでなく、ポケモン達まで熱中症で倒れ始めた。午後二時の時点でポケモンセンターに運ばれたポケモンはおよそ五十匹を超えるという。
    節電の影響でクーラーを使わずに過ごしたり、炎天下でむやみにバトルをさせたことが原因だと思われる。ポケモンセンターは、各地のトレーナーにポケモンにも水分補給と、こまめに休憩させることなどを呼びかけている。
    運ばれたポケモンのタイプで一番多いのは、氷タイプ。あるトレーナーのコメントは『暑いのでフリージオにふぶきを使わせようと思ったら、床で水になっていた』『マニューラが倒れた』『ウリムーがわけの分からない鳴き声をあげた後に目を回した』など。
    草タイプ、炎タイプなども同様のようで、『草タイプは水風呂などに入れてあげてください』『炎タイプはなるべく扇風機などを使って、水分をよく摂らせてください』などのアドバイスがある。

    「あらら…マグマラシがヘタレになってる。いや、元々かしら」
    「カクライさんのメラルバは大丈夫なの?」
    「そーいや今日来てないわね。ま、大丈夫でしょ。殺しても死なない気がするもの、彼」
    「いや、トレーナーじゃなくてね」

    「シャンデラは大丈夫?え?何も食べる気がしない?…ヒウンアイスが食べたい?その前にスタミナつく物を食べないと。…なんだその顔」
    『炎が変な色になって直らない。ヒウンアイス食べないと治らない』
    「ガキか!…暑いな」

    『速報 道の真ん中でヨノワールが倒れているのが見つかる』

    今日午後五時ごろ、シンオウ地方コトブキシティで一匹のヨノワールが倒れているのが見つかりました。すぐにポケモンセンターに運んだので、命に別状は無いということです。
    あ、たった今入って来た情報…え!?ポケモンセンターからいなくなった!?

    ――――――
    毎日暑いですね。


      [No.1517] はいじん! 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/07(Thu) 21:02:04     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ブラックホワイトになってから、ウルガモスさんが出たおかげでタマゴ孵化が楽になりましたよはい。

    マグマッグが空を飛ぶ覚えないかなーと思っていたところに来たんだから、やっほうというしかない


      [No.1516] 【百字】 ふか・ふか 【ネタ】 投稿者:MAX   《URL》   投稿日:2011/07/07(Thu) 20:50:52     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    私の傍ら、幾つもの命が産声を上げました。
    皆、余所の子です。いつか私の子を、とは遠い話でしょうか。

    きっと本日も、主に連れられ新たな命が……。

    おや、ウルガモスさん、どうなさいました?
    ……え、お役御免!?


    ―――――
     100字作品の流行に乗り、自分からもひとつ。
     文頭のスペースは文字数 調節のため入れてません。ご了承ください。

     さて、このポケモン…… 【だーれだ?】

    【なんでもアリでござんます】


      [No.1515] 間一髪 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/07(Thu) 20:41:21     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ピジョットに食われるコラッタの図。
    そういうのに関して、オタチとか群れで動くのは弱いものとして当然なのかな 

    最初のスピード感が好きです。


      [No.1514] えー!? 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/07(Thu) 20:29:03     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ユキワラシが、ってかあれ帽子だったのか
    夏の海は暑いのに、氷なのにとけない
    ユキワラシはとけないこおりで出来ていた事実


      [No.1513] 元ネタは残念ながら・・・ 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/07(Thu) 20:19:39     19clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    北海道では子供が近所にお菓子をくれと言いにいく、ハロウィーンみたいなイベントがあるらしい。
    人づてなので、確証はないけれど


      [No.1512] とけてる・・・って!? 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/07(Thu) 20:18:10     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    フリージオ とけてしまうとは なさけない!


    確かにあいつだけはとけてそのままいってしまいそうだ。
    バニプッチは、無事なのかな・・・


      [No.1511] 【その他】 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/07(Thu) 20:16:44     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ヌオーについて。
    あれはのんびりしていて癒される。
    初めてみたときは何この癒される子!
    ルビーでも使おうとがんばった。コロシアム買ったらヌオーだけは♀ねらってリセットだった

    さてさて、現代でもそれはもう通じないのだけど
    いいなーと思う。


      [No.1510] 3つの中で一番好き 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/07(Thu) 20:14:36     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    話は違いますが、ドラクエにて、幼い頃に別れたベビーパンサーが大きくなって再会するようなものを感じました。
    あれも、主人公がいきなりいなくなって、形見をもって待ってたわけですが、このポケモンもそのようにずっと待っていたように思いました。
    あいつは諦めずに待ってたわけですが、このポケモンはどーなんだろ
    いつ迎えにきてくれるのか、何年も待った後だったら切ない。


      [No.1509] 価値観の相違 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/07(Thu) 20:11:28     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    そういった、価値観の違うものが友達でいることが、人生の旅で醍醐味である。

    はず。


      [No.1508] ローソクもらい 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/07/07(Thu) 20:11:08     27clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    楽しげな子供たち。家々を練り歩く。
    世間にとってはジラーチの日。ここで輝くのはヒトモシの灯。
    嘗ての災いを忘れぬ為。失った命を忘れぬ為。
    声が聞こえる。

    「竹に短冊七夕祭り、多いはイヤよ、ローソク一本頂戴な」



    -------------------------------------------------------------------------------------------

    これの元ネタが分かる人いたら感激です!

    七夕ということでこんな話を書いてみました。

    【書いても描いてもいいのよ】【100文字】


      [No.1507] なんと一撃使いだったのか 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/07(Thu) 20:09:02     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    おらっ、書けげしげし効果ですね!(多分違う
    乱闘を書くのは結構難しいっす。けどすっごい楽しそうな乱闘ですね。
    オルカさん絶対零度使えるとは思ってなかった。


      [No.1506] あれは今でも感動できる 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/07(Thu) 20:05:47     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    時代がDSになってもラプラスが待ってるのは良かった。
    金曜になったら何が来るのかワクワクしてて、いってみたらラプラス!
    嬉しくてしばらくは通ったなあ


      [No.1505] 思い出と写真 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/07(Thu) 20:04:35     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    写真というものが嫌いなのですが、こういうときに使われるのかなあと思ってやはり友達のは少しくらいとっておこうって思いました。
    特にハートゴールドの中の写真は消せない


      [No.1504] 緊急は確かに家族がびっくり 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/07(Thu) 20:03:04     75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ポケモンは体の大きさで勝負諦めたりしませんからね。
    怖くないのかなあ、と思ったり攻撃力はどうなんだろうって思いますなあ。


      [No.1503] 踊り食い 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/07(Thu) 20:00:31     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ドレッシングは青じそで、たくさんのチュリネを用意して
    いただきまーす

    な、場面ですね、わかりm(


      [No.1502] 【百字】ある暑い日 投稿者:イサリ   投稿日:2011/07/07(Thu) 19:47:31     75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    五月頭にすげぇ暑ちぃ日があったじゃん。
    あんまり暑いんで学校帰りにコンビニ寄ってアイス買ったわけよ。
    やべぇ溶ける――つって急いで家に帰って。
    そしたらアイスは無事だったけど、俺のフリージオが溶けてたんだ。





    ――――――――――――――――――――



    100文字小説の味を占めて第二弾。
    前作はスペースがカウントに入ってて実質97字だった模様 orz
    ちょこっと修正致しました。

    フリージオでなくても溶けそうだー


    【好きにしていいのよ】


      [No.1501] 星に願いを 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/07(Thu) 19:19:25     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     大きな笹に短冊がところせましと吊るされてる。ヒカリはそれに興味を持ったらしい。なぜかとしきりに聞いてくるから、七夕なんだと教えてやった。知らなかったようで、織り姫と彦星にかわいそうかわいそうと言っていた。けれどヒカリ、俺としてはお前の方がかわいそうだよ。コウキのこと、好きなのに、あいつはそのことを知らない。ヒカリがそのことで何度も涙を流したのも知ってる。
     だからこそ、俺はペンを握った。そして今まで一番丁寧な字で書いてやった。一年に一度に会う、思い合う二人よりも、常に一緒にいるのに一方通行な思いをしているヒカリのために。
    「コウキに彼女が出来ますように」
     書いたものをヒカリに見られないように、ムクバードに頼んで高いところにつるしてもらった。それでもヒカリはまだ何を書くか迷っていた。たくさんありすぎて、何を書いていいか解らないんだろ。じっと見てたら、見ないでと顔を赤くして言ってた。後ろを向いたら、さっと書いたようで、手の届くところに吊るしていた。
    「一年に一回だけじゃなくて、ずっと会ってられますように」
     そういった、ヒカリの相手に寄り添う優しさが、俺は好きなんだ。



    ーーーーーーーーーーーー
    シンオウのライバルがこんな細やかな観察ができるわけないというツッコミはやーめーてー
    ホウエンはどうしても二人がラブラブに見えるけれど、シンオウはなぜか片思いに見える。
    イッシュは殴り合ってる関係に(
    それは受け取り方なのかな。シンオウは多分、シリーズで一番ライバルと仲良しだから、その分片思いに見えてしまうのかもしれない。

    【実は百字のつもりだった】【百字じゃ足りなかった】【好きにして良いのよ】【反論歓迎】


      [No.1500] 【百文字】 刹那 投稿者:クーウィ   投稿日:2011/07/07(Thu) 18:50:49     80clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    走れ走れ! 命懸けで走れ!
    現実から目を背けるな 運命に身を委ねるな
    お前は今も生きている 棒立ちしている暇があったら、脱兎の如く駆け走れ!

    藪に飛び込む小さなコラッタ。空に退く鷹の爪。


    ――誰かの声が聞こえたんだ


    ―――――――――

    第二弾。
    リナさんの街のコラッタに感銘を受けてやった。後悔は(ry)


    【お好きにどうぞです】


      [No.1499] 暈すのも一興ですね 投稿者:クーウィ   投稿日:2011/07/07(Thu) 18:47:41     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    きとらさん、西条流月さん、感想有難う御座います。・・折角コメントを頂いたと言うのに、お返事が遅れて申し訳ないです・・・(汗)


    > きとらさん

    キャンプは良いですよねぇ。・・・でも、実は自分は殆ど行った事無いっす(爆  汗)
    野宿の経験は結構あるのですが、テントや寝袋を持って泊まりを目的に出かけると言うのは、あんまり無い。 嫌いとかじゃなくて、純粋に機会が少なかったですね・・・(寂)

    昔は、周囲がそう言う経験を語る度に、羨ましいと思っていたクチです。・・・その反動か、漂泊の旅が大好きになりました(苦笑)
    ポケモンの世界観がすごく羨ましく見えてならんです。


    > 西条流月さん

    タイトルのとおり、余り多くを語らないのも良いかなぁと思いまして(苦笑) 
    百文字小説は、個人的に『詩』にも通じる所があるかなと思っとりますので、あえて俳句や短歌にも使われる表現を用いてみました。・・・頭空っぽなので、字数やリズムを合わせるのに苦労しましたが(苦笑)


    ではでは・・・!

    【この波は実に素晴らしいのよ】

    【鶏さん、流月さん、タテタさんに感謝!】


      [No.1498] 熱いですからね 投稿者:海星   投稿日:2011/07/07(Thu) 16:16:23     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    あんな頭巾かぶってたら、熱中症になりますよね。
    ん、その前に溶けるか。
    泳いでいる内に頭巾が波に流されて、気付いたら無かった! なんてことになったら可愛いですね。


      [No.1497] 雨の日も風の日も 投稿者:クーウィ   投稿日:2011/07/07(Thu) 15:37:25     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    やっぱり雨かぁ・・・  ・・まぁ、空の上は何時も晴れてるから、一年越しの再会が妨げられる事は無いと信じてるけどね。
    でも、天の川は見てみたかったところ。


    クーウィ
    表面には 『竜の舞の復活とバージョンアップが上手くいきますように』 裏には 『ちゃんとした就職が出来ますように』 ・・・うわぁ、世知辛ぇ(汗)

    ヨシ 『身元がバレない内にジム巡りが終わりますように』
    リムイ 『ラックルとサイ、それにスイやリン達が幸せでありますように』
    フィー 『イッシュのドラゴン相手に引けを取りませんように・・・!』
    テブリ 『みんなが早く帰ってきますように!』 

    ナガユキ 『仕事と野良試合の両立』
    シナド 『何も思いつかん』
    セイラン 『主人がまた旅に出る気になりますように・・・』

    イマムラ 『もう一度アイツと出会えますように』

    ピリマ 『後もう少しだけ、みなが幸せでありますように』
    ティルス 『躊躇わず前に進めるようになれますように』
    エヤム 『もっともっと暇になりますように』 (隣に) ブレイズ 『エヤムさんの脱走癖が少しでも抑えられますように・・・』

    鈍色一同 『とっととあの馬鹿が話を進めますように』



    まとめ 『もっと執筆が速くなりますように・・・』

    あらゆる問題は遅筆から発生しているような気がしてきた。 放置してる作品多いもんな(爆)
    では最後に、『もっともっとマサポケが発展して、面白い作品が読めるようになりますように!』


      [No.1496] 星に野望を 投稿者:風間深織   投稿日:2011/07/07(Thu) 13:18:28     88clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     今日は曇り。
     毎年思うのだけど、これは雲が「リア充爆発しろ」って思ってワザと曇りにしてるの?よくわからないけど…

    「ふゆーん(フユンテ)」
    「フユンテが風車に引っかかりますように(フユンテ少女)」
    「ディスタンスをどうにかしてほしい(葡萄)」

    では、私も…
    「マステの値段が下がりますように(深織)」

    ---+*---+*---+*---
    ちなみに、私の通う学校は毎年実際に笹をかざるのですが、学校の短冊には「世界人類が平和になりますように」って書きました。
    その笹には友人の書いた文字ででっかく「影…(事情により省略)」がかかっているのは言うまでもないですよねw


      [No.1495] 海で遊ぼう! 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2011/07/07(Thu) 09:35:07     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    海で遊ぼう! (画像サイズ: 640×480 31kB)

    色違いユキワラシがかわいいので描いてみました。あの頭巾は取り外しできるのでしょうか?できたらたぶんこんな感じなのでしょう。


      [No.1494] うわあ… 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/07/07(Thu) 06:31:34     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    朝起きて見たんだけど、

    こ れ は ひ ど い

    これがうわさに聞く、『夜クオリティ』か!!ん?違う?
    いくらなんでも無茶しすぎてたんだな…。眠かったし。
    あ、でもこれからも無茶して書いてきますし、
    もう少し筆力上がったら皆さんの無茶振りにも答えられるかと…

    ピンとこない人は、チャットを見てみるといいのよ。

    最近、流行の百字のおかげで投稿数がすごいですよね。
    よし!筆力上げるなら今のうちだ!(シュバッ


      [No.1493] コンサートホール 投稿者:風間深織   投稿日:2011/07/07(Thu) 03:11:04     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     毎週金曜あの時間、彼女はあそこに現れる。響き渡る空気の振動、少し切ないあのメロディ。波の上でひたすら歌うその姿は、まるで誰かを待っているようだった。


    たったひとりのコンサートホールに、ふさわしい観客を…


    -----+*-----+*-----+*-----+*-----
    百文字作品に便乗。多分百文字です…自信ない。こんなん作ってるくらいなら勉強しろよ自分…


      [No.1492] 七月七日 投稿者:レイニー   投稿日:2011/07/07(Thu) 02:40:09     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    『仕事が上手く行きますように』
     一枚目の短冊に迷わずこう書き、二枚目に。

    『彼氏ができますように』
     書きながらどうしても、つい最近彼氏ができたばかりの後輩のにやけ顔が頭に浮かぶ。その顔を思い出すと悔しくなってきて、つい筆ペンの筆圧も上がってしまう。……と、勢い余って書き損じ。
     細い先から丸く、そして下に行くにつれて広がるインク。どことなくてるてる坊主に似た真っ黒な書き損じは、私が負の感情を抱く度やってくる客人のシルエットにもどこか似ていて。


     私が幸せになっちゃったら、あいつら、もう来なくなっちゃうのかな……。

     彼氏ができることの方が何倍も幸せなはずなのに、引き替えにあの客人を失ってしまうことがなんだか寂しくて。
     来ない方が幸せなはずなのに。


     と、窓ガラスをノックする音が聞こえて、寂しさから現実に引き戻された。やってきたのはカゲボウズ……ではなかったものの、やはり常連の客人、ジュペッタ。
     室内に招き入れて、私はぽつりと呟く。

    「あなたは、私が幸せになっても、ここに来てくれる……?」

     言葉の意味をわかってるのかいないのか、ジュペッタは嬉しそうにしているだけだ。でもその顔を見たら、きっと来てくれるような気がして、なんだか安心して。


     私は再び筆ペンを手に取り、改めて書き始めた。

    『彼氏ができますように』


    -----------------------------

    【書いてみた】
    【やっぱりジュペッタさん無断拝借しています】
    【好きにしていいのよ】


      [No.1491] 【九十九字】Remember 投稿者:レイニー   投稿日:2011/07/07(Thu) 01:23:41     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ニュースを見て、とたんにあの子のことを思い出して、押入れを漁る。
     数年ぶりに会うあの子は、真っ黒な変わり果てた姿になっていた。

     変わり果てたあの子を、忘れてた分だけ、罪滅ぼしの気持ちと一緒に抱きしめた。

    ------------------------
    調子に乗ってさらに百文字……と思いきや、一文字足りなかった。

    【やっぱり好きにしていいのよ】


      [No.1490] 代理人でございます 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/07/07(Thu) 00:06:13     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    とりあえず、

    音色さんに 全 力 で 土 下 座 orz
    (※タイトル的な意味で)


      [No.1489] イエスマン 投稿者:音色   投稿日:2011/07/07(Thu) 00:02:32     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「そーなのそーなの?」「そーなんす」  ボクが聞いたらいつも肯定。
    「そーなのそーなの?」「そーなんす」  君は違うって、一回だって言ってくれたことがないもんね。
    「そーなの?」「そーなんす」
    ほら、ボクが正しい!


    ※100字


      [No.1488] 忍耐 投稿者:音色   投稿日:2011/07/07(Thu) 00:01:15     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    我慢じゃないのです。忍耐なのです。じっと耐えるのです。それしか取り柄がないのです。
    「ソーナンス!“カウンター”!」
    「そーぉなんっすぅぅ!」
    それが特技です。自慢です。誇りです。こればっかりは負けません。


    ※100字


      [No.1487] Q.ポケモン界で一番美味いのは? 投稿者:音色   投稿日:2011/07/06(Wed) 23:59:22     76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    アイスだアイスだ。アイスがこっちに飛んでくる。なんだよ、夏に出れば良いのに、どうしてこんな真冬に追いかけまわしてくるんだよ!
    「真夏に来てねー」叫んで粉雪から逃げた。浮いてるヒウンアイスは首をかしげた。


    ※100字


      [No.1486] 俺だって飛行タイプ 投稿者:音色   投稿日:2011/07/06(Wed) 23:57:49     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    そうだ、空を飛ぼうと思い立った。それにはまず飛ぶ練習をしなくては。鳥を観察するとみんな両の翼を上下に動かしている。真似をすれば飛べるはずだ。
    「それはやめとけ」冷静にギャラドスはマンタインを引き留めた。


    ※これは100字


      [No.1485] 明暗 投稿者:音色   投稿日:2011/07/06(Wed) 23:56:00     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    うっかり、昼間に目を覚ましてしまった。眩しい。こんなにも世界は明るいのか。この感動を他の奴等にも伝えなければと声をかけた。
    「馬鹿言うな。明るいとか暗いとかわかるわけないよ」ズバットはそっけなかった。


    ※これも99字詐欺


      [No.1484] レアポッポ 投稿者:音色   投稿日:2011/07/06(Wed) 23:53:44     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ひょいと目を覚ましてみればどうも調子がおかしい。気分は悪くない。いつもの朝の目覚めのはずなのだが。
    自分の姿を見て納得した。ポケモンになっていた。お腹が減ったのでその辺のポッポを食べた。おいしかった。


    ※99字詐欺


      [No.1483] 3秒思いついたシリーズ 投稿者:音色   投稿日:2011/07/06(Wed) 23:51:52     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    99字詐欺も混ざってますご注意ください



    ※タイトル&代理投稿:久方小風夜


      [No.1482] 今、俺はどんな気持ちでお前を待ってるか【100】 投稿者:海星   投稿日:2011/07/06(Wed) 23:47:34     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     思い出されるのは、息も荒く倒れた相棒の小さな足だ。
     傷だらけの血まみれだったのに、どうしてあんな足で踏ん張れたんだろう?
     俺が諦めてもあいつは激しく闘い続けた。そういう奴なのだ。

    手術中

     赤い点滅が胸苦しい。

    ―――――――――――――――

    はい便乗しました。

    100文字ってまとめきるの大変ですね…でも面白いです!

    もっと流行ればいいのに(^^)

    【何をしてもいいのよ】


      [No.1481] 「この味がいいね」と君が言ったから 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/07/06(Wed) 23:46:55     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    酢と塩とオリーブオイルと黒胡椒。割合は手が覚えてる。
    しっかり混ぜてサラダにかける。テーブルに出すと、彼は嬉しそうに手を叩く。

    フォークをつきたてようとすると、逃げだした。
    やっぱりチュリネじゃ駄目かしら?




    七月六日はサラダ記念日便乗100字。


      [No.1480] 食卓チュリネさんの恐怖 投稿者:西条流月   投稿日:2011/07/06(Wed) 23:31:48     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    笑顔でサラダ記念とか言いながら、バカップル空気でサラダつつくのはいいよ。爆発しろとか思うけど、まだ許すよ。全然いいよ。でも生の方が美味いからって、生で食べるのはやめて。突きだされるフォークが怖すぎる。

    ――――

    今日はサラダ記念日だそうで
    チャットで出たサラダ記念日の詩を見てたら、なぜかでてきたこの話。
    投稿しちゃうのよ

    【チュリネは天ぷらがおいしいと思うのよ】
    【書いていいのよ】
    【描いていいのよ】
    【食べていいのよ】

    【百文字はまだまだ推奨中】


      [No.1479] 傍観 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/07/06(Wed) 23:27:44     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    この部屋に朝日は差さない。それが心地いい。
    僕一匹、横になって何もしない。それも心地いい。
    誰にも着かない。ボールに入らない。泣かない。ピザも食べない。自分を諦観も達観もしない。

    傍観、それが一番心地いい。


    -----------------------------------------------------------------------------------------

    「達観」に続いてこれがラスト。

    待ちくたびれたポケモンは何も感じなくなったとさ。

    っていう終わり。

    ピザが出てくるのは、この間某ピザ屋の食べ放題に行ってきたからですw
    夜7時くらいだったのに自分と連れしかいなくて、なんだか異様な店内だった印象が残ってます。

    イメージ曲:リンキンパーク(LinkinPark) 「Numb」

    キトラさんに習い曲のイメージをつけてみましたw


      [No.1478] 振り向くと、そこは戦争だった… 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/07/06(Wed) 23:18:46     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    隣には、息子のアポロン。寝かしつけようと、絵本を読んでやっていた。
    しっかしナスカ遅いな。オルカたちと隣の部屋にいたはずだ。
    先に寝よう。そう思った矢先、

    『ドゴーン!』

    アポロンが飛び起きる。何なんだっ!?



    無数の花弁の渦が、こちらに向かってくる。
    冷凍ビームで凍らせ、威力を無くすと同時に飛んできたのは気合玉。
    すんでで避けると、それは部屋の壁にぶち当たり、煙をもうもうと上げた。
    視界を遮られて何も見えないところに響く、燕返しの音。



    熱風を打ってくるのはナスカ。ギリギリ避けられないところに、
    リーダーのアシガタナがのびて来、止める。
    互いの弱点をカバーしつつ戦っているが、四対二では流石に勝ち目は無い。
    おい、何でこいつら怒ってるんだ!?



    さっきまでチャットをしてたんだけど、無茶振りに定評が付いてしまった。
    次はどんなお話書こうかな、とか考えてたら部屋で戦争が起きてるし…。
    そろそろ寝たい。静かにしてくれないかな近所迷惑だし。

    「黙れ!!」



    カゲマルから、大体の事情を聞いた。偶然覗いてたらしい。
    シェノンとナイトがチャットをしてたのをメスどもに見られたと。
    それで四匹が怒ったらしい。なぜか?知らん。

    音が消えた。

    見ると、六匹が氷漬になっていた。



    寝ているオルカ。
    どうやら、コイツが『絶対零度』を使ったようだ。
    …要は怒らせると怖い、という事か。
    ともかく、平和な夜が戻ってきて、めでたし、めでたし。
    氷漬になったやつらは、明日になれば頭も冷えると思う。


    ――――
    無茶して書いてみたよ。多分六百文字。少しだけ、初バトル描写。
    もう無茶しすぎたので何がなんだか意味不明ですが、華麗にスルーして下さい。
    一、ファル視点  二、シェノン  三、ナイト  四、私  五、六、ファル

    【何をしてもいいのよ】


      [No.1477] 99字詐欺 投稿者:音色   投稿日:2011/07/06(Wed) 22:06:40     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     100字じゃないよ99字詐欺だよ

     って、チャットにコメントしたら拍手テロが起きた。

     キトラ様 コメントありがと―ございます。
     しかし残念。これはゴットバードではなく鋼の翼なんですね。
     おまけにラストは起死回生が決まった瞬間という脳内設定。
     100字で伝えたいこと伝える技術がない=ただの俺得小話ってことですはい。

    【何気に主人公しろあんという罠】


      [No.1476] 達観 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/07/06(Wed) 21:24:15     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    送りの言葉は「バカ」だった。
    コイツだけでもと彼は言った。はねのけて俺は出て行った。
    やれやれ、アイツは分かってない。
    一人旅にこそ、意味があるというのに。
    淋しい夜にトースターの音。焼けたピザは薄っぺらい。


    --------------------------------------------------------------------

    「諦観」に続く100文字物。あと一つ書く予定。

    なんだかむかつく奴になってしまった。

    俺と「アイツ」の関係は、Dr,HOUSEのハウスとウィルソンみたいな感じをイメージしてます。
    ・・・・・と言っても分かる人いるかなぁ。

    【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】【100文字物】


      [No.1475] Re: 足を入れ替えるやつ。 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/07/06(Wed) 21:23:02     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ハナダシティのヤドランとトレーナーは大好きですね。金銀になったら言うこと聞くようになってるのも時が経ったなーという感じでした。

    捕まえて一緒にいたりポケモンを使うだけではなく、自然のポケモンのあり方を生活に活かせたら素敵だと思うんですよ。
    何にせよ、その世界ではポケモンがいない生活は考えられないんでしょうね。


      [No.1474] Re: どちらをあきらめたか 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/07/06(Wed) 21:16:36     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    感想ありがとうございます!

    実はこれ自分でもあまり詳しく状況を設定していません。主人公と「アイツ」が友人同士であること、どちらもピザ好きであること、あのバカが約束をすっぽかしてしまったこと、ぐらいしか考えてないのです。

    100文字で話を作るということで、そいういう所をわざと省きました。(書けなかっただけかもw

    正直、キトラさんの感受性が乏しいとは、自分は微塵も思わないのですが・・・・・
    ここ最近の感想の量しかり・・・、自分の方こそ残念な状態・・・・けどもう諦めました。

    久しぶりに感想いただき本当にうれしかったです。ありがとうございました


      [No.1473] 【百字】 一本350円 投稿者:レイニー   投稿日:2011/07/06(Wed) 20:56:18     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     プルタブを開く音に気づき、僕は彼を期待して見上げた。そんな僕に彼が飲ませてくれたのは、僕の大好物。舌の上に踊る甘い果実とミルクの味。喉を通りぬける冷たさ。

     体力は80だけ回復したが、心の体力は満タンだ。

    ------------
    触発されてミックスオレで書いてみました。
    ミックスオレは大阪のミックスジュースのイメージですが、以前実際に発売されたときいちごオレでショックを受けた記憶が。

    【何をしてもいいのよ】


      [No.1472] 【百文字】夏の日の帰り道 投稿者:小樽ミオ   《URL》   投稿日:2011/07/06(Wed) 19:53:17     99clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     わたがし雲の浮く空を
     きみはぼんやり見上げてた

     買ったばかりのソーダバー
     早くしないととけちゃうよ
     きみはひとこと「ぬー」とだけ

     さあ 帰ろうか 帰ろうか
     陽炎ゆれるこの道を

     きみの湿ったあしあとは
     夏の日差しに消えてった



    ◇   ◇   ◇



     実は大好き、ヌオーくんのおはなしでした。
     ヌオーくんにはなんだか夏がよく似合うような気がします。
     どんな暑い日でも、どんな夕立の日でも、「ぬー」とぼんやり暮らしていそうで、それがたまらなくいとおしかったり。

     ※見た目以上に文字数がかさんでるなぁと思ったら、行頭下げのスペースが加算されていました(苦笑)



    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【その他いろいろいいのよ】


      [No.1471] 足を入れ替えるやつ。 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/06(Wed) 19:18:28     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    古くはハナダシティの前にヤドランとトレーナーががんばってたような。
    後は家に入るとポケモンが歩いてたり。
    ホーホーを時計かわりにしてるトレーナーはわんさかいそう。
    だって便利そうだし


      [No.1470] 【百字】 空行く時計 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/07/06(Wed) 19:09:52     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    風が吹く。

    あっ、おやつの時間だ。

    街の人は空を見上げて呟いた。

    ほぅ、そろそろ一息入れるか。

    その鳥は正確に時を刻む。街は鳥の羽ばたく音、舞う姿で時間を知る。
    今日も優雅に空の散歩。
    町は鳥によって動かされた。

    ―――――――――

    百字ブーム。楽しんでいるのでお礼も込めて作品投稿。
    ポケモンに寄り添った生活の町はたくさんありそうですよね。
    長編でうまく活かせなかったので100字投稿で。

    【お好きにどうぞ】


      [No.1469] 注意するポケモン・・・ 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/06(Wed) 18:22:41     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ポチエナ
    かみついてきます。近寄らないように。

    ストライク
    出会ったら素早いので、人間では逃げれません。生息地に近づかないようにしましょう。

    ドククラゲ
    さされて子供が犠牲になった事故があります。気をつけましょう。



    他にもありそうですね。絵つきで。


      [No.1468] 危険な世の中になったものだ…… 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/07/06(Wed) 18:19:09     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    いや、前からか。

    「無事で何より」の連発が心憎い。先生、返事が面倒みたいに見えます! 先生は先生なりにがんばっているんでしょうけど。

    「注意するポケモン」のプリントは一体どれだけの量があるのか……。
    でも、きっと子供らは先生が配ったプリントなんかちゃんと読んでないんだろうな〜。


      [No.1467] クールティーチャー 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/07/06(Wed) 18:10:46     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    コメントありがとうございます!

    > 夏休みの絵日記と、それを見た先生の赤ペンのコメントが浮かびました。
    まさにそんなイメージです。
    夏休みの宿題は日記が一番面倒だったけど一番好きでした。

    > プルリル・・・ではなくクラゲに刺されたことあるので、海はまじ危険。
    幸い刺されたことはないですが、ゴムボートにつかまって泳いでいて、足に「ぬるっ」っとしたものが当たったことならあります。
    海まじ危険。


      [No.1466] 続・日記の宿題 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/07/06(Wed) 18:06:57     174clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:だから】 【注意のプリントは】 【ちゃんと読んでおけって】 【言ったのに……】 【やれやれ

    ○月×日
    今日、草むらにモンスターボールがおちていました。
    ひろおうとすると、お兄ちゃんにだめと言われました。ざんねんです。

    先生から
    それは前に配った「注意するポケモン」の中のビリリダマです。無事で何より。

    +++

    ○月×日
    ○○ちゃんのうちから帰っていると、ろうそくがいました。
    かわいかったけど、夜ごはんの時間だから、おうちに帰りました。

    先生から
    それは前に配った「注意するポケモン」の中のヒトモシです。無事で何より。

    +++

    ○月×日
    どぶからへどろの手が出ているのを見つけました。
    とてもくさかったし、ふくがよごれそうだったので近づきませんでした。

    先生から
    それは前に配った「注意するポケモン」の中のベトベトンです。無事で何より。

    +++

    ○月×日
    今日はとてもあつかったです。赤いかたつむりをパパがおいはらったら少しすずしくなりました。
    でもやっぱりあついです。

    先生から
    それは前に配った「注意するポケモン」の中のマグカルゴです。無事で何より。

    +++

    ○月×日
    どうくつたんけんに行きました。
    くろいドラゴンがいました。かまれそうだったから、りんごをあげて食べてる間ににげました。

    先生から
    それは前に配った「注意するポケモン」の中のモノズです。無事で何より。

    +++

    ○月×日
    今日、ぬまの近くを歩いていると、ぺらぺらな魚がいました。
    間ちがえてふみつけそうになったのでとてもびっくりしました。

    先生から
    それは前に配った「注意するポケモン」の中のマッギョです。無事で何より。

    +++

    ○月×日
    外であそんでいると、大きなががいました。
    きれいな色だからつかまえようとしたけど、いもうとが泣いたからやめました。

    先生から
    それは前に配った「注意するポケモン」の中のドクケイルです。無事で何より。

    +++

    ○月×日
    すずしいと思ったら、こおりのおにがいました。
    さわったら気もちよさそうだったけど、かぜをひきそうだからやめました。

    先生から
    それは前に配った「注意するポケモン」の中のオニゴーリです。無事で何より。


    +++


    先生の返事は冷淡ですね。同僚が言う。
    今年だけでも全国で数え切れないほど犠牲者が出た。私の教室でも何人が被害にあっただろう。

    草むらに入るだけで命に関わる世の中だ。
    いちいち温かい言葉などかけていられるか。





    100+100×9 で合計1000字。

    【もちろん何してもいいのよ】


      [No.1465] 【百字】DRAGON DANCE 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/06(Wed) 18:06:50     27clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     この地に彼らは来た。我らの全てを奪い尽くしていった。女神の使い、鳥は歌う。2匹のドラゴンが踊る。いまこそその時。皆の者、武器を取り、我らの尊厳を取り戻そう。我らの住んだ大地を取り替えそう。我らが創造神、アルセウスのために!



    ーーーーーー
    たなばたを検索していたら、芋づる式に懐かしい曲たちを発見。
    参考音源:リバーダンス

    シンオウを実際の地理と歴史に当てはめて、の作品。
    タイトルは「りゅうのまい」英語バージョン
    【好きにしていいのよ】


      [No.1464] 慣性の法則 投稿者:リナ   投稿日:2011/07/06(Wed) 18:02:34     74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     を説明する時よく列車が使われますよね。列車の中でジャンプしても車内の後ろに吹っ飛ばないのは物体がその運動を維持しようとする力が働くからだとか。

     という話は置いといて、感想ありがとうございます。シンクロなんてそんなカッコいい技法を使ったわけではないんです汗 ただ、二人の目に入る景色は変化させたいとは思ってましたし、それに車内で展開されるお話とを絡めたいという願望はありました。そうやってとらえてくださって嬉しいです。
     気持ちって変わりやすいですよね。一分一秒で変化していく気がします。ただ作中のジーンの恋心は遠く離れた地に赴いても変わらずに続いています。景色が目まぐるしく変わっていっても、それに逆らうようにあの人への想いは変わらない――そんな意地の張った感じというか、一筋縄ではいかない感情を、果たして表現できたかしら?w

     なぜか長くなってしまいました汗 とにかく、感想ありがとうございます(^^)

     すみません、オリエント急行は初耳でした泣


      [No.1463] Re: 流行には乗るべき。 投稿者:moss   投稿日:2011/07/06(Wed) 18:01:49     24clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    コメントありがとうござます!流行には乗ってみるものですねww


    > そんな不思議な夜の風景が出ていていいなあと思いました。

    とりあえず百文字でどう書き表そうか試行錯誤したもので、
    とりあえず情景だけでも伝わってもらえたのなら幸いです、という投げやりな気持ちで
    投稿したので少し不安だったのですが(オイ

    なんにせよ流行はいいですねww


    【もっと広がれ百文字ブーム!】


      [No.1462] 忙しすぎるよ― 投稿者:リナ   投稿日:2011/07/06(Wed) 17:34:05     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     都会ではみんなひとりぼっち、それぞれの仕事で手いっぱい。コラッタ一匹死んだところで誰も驚かない。忙しくて関心なんて寄せてる暇がない。

     ネガティブ全開☆w

     キトラさん、コメントありがとうございます。ニャースがお腹を空かせてこちらを見ています。


      [No.1461] 仕掛けに気づかず飛び込んでみる 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/06(Wed) 17:25:59     22clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    そうだ、京都へ行こう。
    私もお気に入り。
    ニャースのひげについた雨粒が好き、プレゼントの茶色い包みが好き。
    ただの雑談ですが、URLから行けるバージョンのその曲が好きです。ジャズバージョンですが、かっこ良く仕上がってます。


      [No.1460] ヤグルマの森にて、休憩中。 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/07/06(Wed) 17:24:08     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    森の入り口に何か気配を感じて、レッセは木に寄りかかっていた身を起こした。
    小さな子供の人影が、日なたから森の木陰に入るに連れて黒い狐の姿に変わっていく。レッセはそれを見てから、その狐に話しかけた。

    (おつかいごくろうさん。おかえり、ティラ。)

    ティラと呼ばれたそのゾロアークは持っていた手提げ鞄を地面に置いた。と、

    (お〜そ〜い〜ぞ〜ティ〜ラ〜〜)

    レッセの目の前で木の下に寝そべっていたペンドラー、ファルが文句を言う。その巨体の割に、今の彼に迫力を微塵も感じないのは、きっと
    彼が暑さにこたえてバテているからであろう。隣に座っているナイトとカゲマル――シュバルゴとアギルダーからも、なんとなく活力を感じない。

    (うるさいわねぇ。私なんかが全速力で走ってきたら、せっかくのサイコソーダが振られて振られて蓋を開けた瞬間爆発よ?)

    炭酸飲料を走って持ってくると、飲むときにベタベタにされるのはもはやお約束である。

    (今ここで私がシェイクしてあげてもいいけど。)
    (はいはいありがとうござんしたおことわりします。)

    しかしこのペンドラー、子持ちの父親とは本当に思い難い。

    (ボールの中でシェイクされるのも炭酸飲料シェイクされるのもおことわりだー。)
    (早く飲みたいのでござるが。)

    虫タイプの三匹、炭酸飲料ではないが暑さで気を抜かれている。
    まあそう焦らずに、と言いながらレッセが手提げ鞄の中をまさぐる。ふと、彼女は不思議そうな顔になった。

    (あれ?全部で五本のはずなのに一本多いわよ?)

    確かに鞄には六本のサイコサーダが入っている。

    (ああそれね、駄菓子屋のおばさんがオマケしてくれたのよ。近くに駄菓子屋があって助かったわ。)

    ティラの話すところによると、ティラはいつも買い物などに行くときは、幼い子供に化けるのだそうだ。そして、店の人に買うものの書かれたメモと代金を渡す。喋れなくても成り立つ行為だ。

    (一人でおつかいえらいわね、って入れてくれたの。)

    小さな子供に化けたのはただ単に喋らなくても大人より自然なためか、あるいは…
    まあ一つ言える事実は、自動販売機ではめったにオマケなど出てこないということだろう。
    そこを突っ込める者は今はいなかった。ちなみに、

    (…一本残ったの、どうする?)

    レッセのこの問いかけは、

    (後でリーダーにでもやっとくか。)

    ナイトの一言で全てがまとまったのであった。

    (それではさっそく。いただきまーす。)

    プシ、というよく冷えた感じのいい音がした。

    (うまいでござるな。)
    (生き返るうぅー。)

    夏の一番暑い昼過ぎに飲むサイコソーダは格別だ。特に甘党のレッセとカゲマルは一気に飲み干してしまった。

    (そういえば気になってたんだが)

    ファルがサイコソーダを飲みながらティラにたずねる。

    (お前代金ってどうしてるんだ?)
    (…それも幻影よ。)

    一瞬、沈黙が広がり――

    (ええええええっ!?)
    (ちょ、おまえそれ泥棒じゃねぇか!!)
    (嘘に決まってるでしょ…。私、よく主人からおつかい頼まれるから、手提げの中にサイフとメモとペン常備してるの。)

    ティラのこの言葉に、一同は胸をなでおろしたのであった。しかし人間のようなゾロアークである。

    (じゃあファル、こっちからも聞くけど)
    (?)
    (アンタとナイトってどうやってソーダの栓開けてんのよ?)
    (…気にしたら負けだ。)


    ある夏の日の午後、ヤグルマの森は少し賑やかだった。


    ――某主人公宅――

    (ふぁっくし!)
    「あれ、シェノンも私の風邪うつった?」

    ティラたちの主人は夏風邪で寝ていたのであった。

    「みんなで遊びに行かせちゃったけど、楽しくやってるかなぁ…ゲホッゲホッ!!」
    (俺だけ主の看病とは…)

    シェノンがティラたちにその後、サイコソーダをもらうとは、主とシェノンはまだ知らない。




    前回出番の無かった彼ら、少なかった彼らをば。

    ?「あら?出番が少なかった?」
    ?「オルカ、何か忘れてませんか?」

    花びらと炎の舞、カンベンね!だって君らのリア充っぷりをどう出したらいいのかオルカ分かんなくt(ry
    機会があったらまた…あ、やめてやめてやめt(ry


    【描いてもいいのよ】【書いてもいいのよ】


      [No.1459] 私のお気に入り 《百字で》 投稿者:リナ   投稿日:2011/07/06(Wed) 17:19:42     33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     凛と佇むグレイシア、雨音にはしゃぐマリルリ、理科室で見たのはカブトの化石、黄色いお日様浴びるヒマナッツ、釣り針飲み込むコイキング、愚痴をこぼしてカゲボウズ、ずっと一緒のシェイミ。みんな私のお気に入り。

     ――――――――――

     【百字ブームに乗っかるのよ】
     【ちょっとした仕掛けがあるのよ】


      [No.1458] ホウジョウExpress 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/06(Wed) 17:09:07     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     駅のホームには足音が行きかい、大きなかばんをもった旅行者が行き来する。ビジネスバッグを提げたサラリーマンも忙しそうに携帯電話に向かってしゃべり続ける。そんな中、少女はいた。これからホウエン地方に引っ越すために駅にいる。ホウジョウ急行に乗るために。
    「コガネ発カナズミ行き・・・11:13か。」
     発車案内板を見てもわかるとおり、まだ電車は駅にいない。切符を握り締め、少女は待った。この不安と期待の、ほとんどが不安でできた心を落ち着かせるように。車輪が速度を早めて動く音、ドアが閉まる音、それらに耳を傾けて。
    「8番線、ヤマブキ行き発車します!」「早くしなさい!」「迷子のお知らせです・・・」「早く行きたいねー!!」
     発車案内板が更新される。次に発車するのが、これから乗るホウジョウ急行。7番線へと少女はゆっくりと近づいた。
    しばらくして入ってくる、風の抵抗をもろともしない流線型をした電車が入ってくる。それがホウジョウ急行だというのもすぐわかる。
    「電車が到着します。危険ですから黄色い線の内側に・・・。」
     車輪の速度は落ちていき、急行は停止線ぎりぎりで止まる。少女はドアが開くのを待っていた。指定席、窓側の真ん中あたりの席。その切符を握り締め、ドアが開いた瞬間に乗り込む。

     本当を言うと、引越しなんかしたくなかった。父親の仕事が変わるから仕方なしにホウエン地方へと行くだけ。友達とも離れたくなかったし、もちろんのこと、いくのを嫌がった。
    「あなた、顔色悪いんじゃない?」
     少女が窓の外の駅を見ていると、隣のおばあさんが話しかけていた。
    「いえ、そういうわけではないと思います。」
    「じゃあなんだい?」

    「ホウジョウ急行、カナズミ行き発車します!」

     発車のベルとともに、気づかないほど静かにドアは閉まる。いつの間にか景色が進行方向に動きはじめ、車掌のホイッスルが駅に広がる。エンジンとともに車輪がアクセルになっていた。揺れもほとんどない。それはどんどん早くなり、今までいた駅は全ていなくなっていた。

    「別に、ただ、行きたくないだけです。」
    「じゃあなぜ電車にのったね?電車は乗ったら最後、つくまで引き返せもしない。」
    「引っ越すから、引っ越さなきゃいけないから・・・。」

     さらに加速は続く。コガネシティのビルの合間をどんどん風を切って進む。見慣れた街は、どんどん遠くになっていった。

    「ホウエンに引っ越すんか?」
    「はい。お父さんの仕事の都合で。」
    「なんでやだね?」
    「友達と別れたくないからです。」

     アサギの港が遠くに見える。ホウジョウ急行はまっすぐそこにむかっていた。しかしアサギシティの駅には止まらない。途中、いくつか止まるところはあるものの、ひたすらホウエン地方、カナズミシティを目指して。

    「向こうでも友達いっぱい作ればよいね。」
    「そんなのできない。だからいきたくなかった。」

     アサギシティを通過し、やがて電車は広い平原にでる。線路のまわりはたんぼだらけで、野生のポケモンも中には混じっている。ピジョンが地上の獲物を狩る時、電車が汽笛を鳴らした。驚いてピジョンは再び空に帰り、獲物は逃げた。獲物を助けようとしたのではなく、ただそれは偶然が重なっただけであるけれども。


    「なんでできないね?」
    「話せないし、それにホウエンはジョウトとぜんぜん違うポケモンばっかりいる。」
    「そりゃそうだね。住むところが違えば、ポケモンだってぜんぜん違ってるね。」
    「そんなところに、ひっこしたくない。住みたくもない。」


     景色が一瞬暗くなる。最高速度でトンネルに突っ込んだ。耳がキーンと鳴る。普通なら風の抵抗が強いはずだが、ホウジョウ急行の車体はそれを最大に減らす形をしている。何も受け付けずに、再びトンネルから出てきた。


    「いきたくないならそれでもよいんじゃないかね。住まなくてもよいんじゃないかね。」
    「どうやって?」
    「若いもんにはやっとるね。ポケモントレーナーっていって、家にも帰らず根無し草ってやつね。」
    「でも、ポケモンなんて持ったこともないし。」
    「そりゃ誰だって最初はそうね。それになんであんたは言い訳ばかりするね。いきたくないならいかなくてよい方法も探さない、その方法もいやだっていってたって、状況は何一つかわらないね。」


     海流の激しい海が見える。海、といってもただの大きな湖がそう見えるだけ。ターコイズブルーの海面に白い波が浮き立つ。このあたりから生息しているキャモメが波に飲まれそうになっても必死で獲物を捕らえようとしている。


    「何かいやなら自分でなんとかせんといかんね。」

    「まもなく、モミジシティ駅に到着します。お降りの方は忘れ物のないよう、ご注意ください。ジョウハン線、トウコ線、ジョウサイ線はお乗換えです。」

    「あたしはもう降りるかんね、あんた少し考えた方がいい。なんたってまだ若いんだ、がんばれるね。」

     まだ早すぎるにもかかわらず、荷物をまとめ、客席を出ていった。一人取り残され、少女は何を考えるべきかすら混乱している。
    「私は・・・いきたくない。」
     思えば、引越す時にそういった。それでも、意見は聞き入れられずに引っ越すことになっていた。ホウエン地方で、新しい暮らしに慣れれば、ということで。そんなことあったとしてもずっと先。それなのに、なんでこんな楽観視できるのだろう。


     頭の中で回る思いを見上げると、すでに電車は駅を出発し、加速していた。ここで乗ってきた乗客がいつの間にか席に座っており、それぞれ思い思いの作業をしている。二つ隣のサラリーマンはノートパソコンを広げてたたいているし、その隣の人は旅行にいってきた帰りのようで、たくさんの紙袋を、棚にしまいきれずに足元においている。



    「おべんとうはいかがですか?」

     車内販売のワゴンがゆっくと移動してきていた。不安で緊張していた少女は自分の空腹に気づくと係員を呼び止めた。朝もほとんど食べていなかったせいで、お弁当の包み紙を開けた瞬間、今まで経験しなかったくらいの空腹に襲われた。そして振動で少しゆれる車内で、人目など気にせず、食べるに食べた。






     エネルギーが満たされ、食後のお茶を一口含んだ瞬間、少女は涙が出た。何かをするためのエネルギー、それが今の自分には足りなかった。何かも人のせいにして言い訳して流されたツケ、それが今の状態だと。隣の席が空席のために、誰一人として少女が泣いていたことに気づかなかった。

     今まで何一つしてこなかった。学校にいってもただ授業にでてノートを書いているだけで、それしか知らなかった。遊ぶときも失敗するたびに言い訳して他人のせいにして。

    「ポケモン、トレーナー・・・。」

     今の状態がいやなら、抜け出す方法があるなら、それを試すしかない。少女はそういった。窓からたまに見える野生のポケモンたち。彼らとともに歩むのがポケモントレーナー。

    「できるかな・・・。」

     誰だって最初はできるかどうかわからない。やってみなければ。さらなる不安が少女を覆う。


    「わぁ、ピカチュウだー。かわいいー!」
     野生のピカチュウは警戒することなく寄ってくる。そして腕に抱かれ、気持ちよさそうだ。そうしている間に、ゴマゾウやネイティ、ナゾノクサもよってくる。
    「わたし、ポケモントレーナーでよかったぁ。みんなと仲良くなって、強くなるから。」


     揺れる車内に起こされ、少女は窓の外を見つめた。さっきと景色が違う。あれは夢だった。
    「違う、夢じゃない・・・私・・・。」

     すでにホウエン地方に入っているようで、ここにしかいない野生のポケモンが多数見える。それはしがらみのない、自由な姿。
    「やるよ。ポケモントレーナー。なるよ。なるから。」

    「まもなくー、終点カナズミ駅〜カナズミ駅〜。」

     荷物をまとめ、いつでも降りられるように支度する。そして窓の外をみながら完全に止まるのを、すでに不安ではなく楽しみとして待っていた。これからこの地方で待つ、輝く未来が待っている。そう信じて疑わなかった。


    「終点カナズミ駅〜。この電車は折り返しコガネシティ駅に向けて出発します。」

     車内アナウンスを全て聞き終わるころにはすでに電車から降りていた。少女は迎えにきたはずの父親と母親との待ち合わせ場所に向かう。
    「パパ!ママ!」
     人ごみの中に二人を発見し、荷物をかかえたまま駆け寄る。大きな荷物は揺れるたびに振り回されそうだった。
    「お、一人でこれたな、えらいじゃないか。」
    「大丈夫!だって私これからポケモントレーナーになるんだから、これくら一人でできるよ!」
    「そうかそうか、よし、これから新しい家にいくぞ!そうしたらいろいろ整えよう!」
    「いくー!!!」
     嫌だという気持ちはすでにない。カナズミシティから遠く離れた田舎街、ミシロタウンについたころには、どこをどうやっていこうかと考えていた。新しい家の前につき、車を降りると、ふと視線を感じた。振り返ると、男の子がこちらを見ている。
    「あ、こんにちは。」
    「あ、こんにちは・・・って新しく引っ越してきたのって?」
    「あ、うん、初めまして。これからポケモントレーナーになろうかなって思ってるんだ。よろしくね。」
    「トレーナーになるならライバルだな。俺はユウキ、お前は?」
    「私?私はハルカ。ユウキ君もなら、私負けないよ!」



    ーーーーーーーーーーーー
    参考音源:スパーク作「オリエント急行」http://www.youtube.com/watch?v=3dNH4U73C24&feature=related
    音楽から話を作ろうとすると、リニアよりも長距離を行く列車のがいいかと思って。
    ポップスと違って、ピアノになるところが多いので、音量あげて見てみるのがいいかもしれません

    【鉄道大好き】【何しても良いのよ】【でもモデルは新幹線】【モミジムが見える】


      [No.1457] ファンファーレ 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/06(Wed) 16:57:09     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    序章のファンファーレのような、百字にこめられた力強さを感じます。
    そこからつながるメインテーマ、街の歌、悲しみの歌、魂の歌、戦いの歌などがどのように展開されるのか。
    それを期待させるワクワク感が出ています。


    【なにはともあれゴーゴー】


      [No.1456] メガニウムたん 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/06(Wed) 16:54:42     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ベイリーフは元気にする香りがあって、メガニウムは気持ちを落ち着ける香りがするとポケモン図鑑にはありますね。
    アロマセラピーも覚えるし、イメージとしてはキンモクセイの香りなのかなあ、と勝手に思ってます。
    メガニウムに癒されたい。


      [No.1455] どちらをあきらめたか 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/06(Wed) 16:53:08     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    なぜか、志願兵に行く元主人と友達、という構図が浮かびました。
    それをなぜそんなバカなことをするんだと引き止めたのに、引き止めきれずに行ってしまった元主人。
    預かったボールは数知れず、のような感じで。
    おそらく違うような感じもしますが、なんせ感受性が乏しいために、たくさんの百字だと足りなくて(
    1〜10まで説明していただかないと解らないタイプなので、百字の感想は難しい。

    【それでも百字楽しいのよ】【もっと流行ればいいのよ】


      [No.1454] 待ちぼうけみたいな話かと思ったら 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/06(Wed) 16:50:28     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    全く違う代物だった・・・
    欲をかきすぎて全て失う話は昔話には結構多いですね。
    何事もほどほどに・・・
    ジュペッタさんっぽかった


      [No.1453] イーブイイーブイイーブイ 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/06(Wed) 16:37:58     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    そういえばイーブイの進化って7匹いるんですね。
    そうしたら、毎日違うもふもふ!
    なんていうもふパラ!長老に見つからないうちに・・・


      [No.1452] むかしむかし、あるところに。 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/07/06(Wed) 16:16:29     132clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     昔々あるところに、怠け者の男が一人住んでおりました。

     村一番の怠け者と名高い彼は、毎日毎日、家でごろごろ寝てばかり。周りの人々がせっせと働くのをのんびりと眺めつつ、のらりくらりと日々を過ごしていました。
     時折、男の怠惰な態度に苦言を呈する者も居りましたが、そんなものはどこ吹く風。家の手入れもせず汚れれば汚れるまま、壊れれば壊れるまま。両親から継いだ田畑はほったらかしで草ぼうぼう、鋤を引く三つ尾の猛牛の世話もろくろくしません。あげく怒った猛牛が柵を壊して逃走すれば、やあ餌やりの手間が省けて助かった、と暢気に呟いて昼寝を続ける始末。村人達は呆れかえり、もう誰も男の事を相手にするものはいませんでした。
     
     そんな生活を続けて幾年月。とうとう、食べる物にも事欠くようになった男は、ようやく重い腰を上げました。もう男の家には何一つとて財産と呼べるものは残っていません。
     困ったなあ、まいったなあ、と全然困っていない顔で呟きながら、彼は辺りをぶらぶらと歩き回ります。しかし村人達は見てみぬふり。皆暮らしはかつかつで、働かない男にやる余分な食料など持ち合わせていないのです。
     誰も相手にしてくれないので、男はそのまま散歩を続けることにしました。ひょっとしたらどこかに大判小判でも落ちているかもしれない、などと都合のいい夢想をしながら、てくてくと村中を歩き回ります。
     そうこうしているうちに村の外れまで歩いてしまった彼は、疲れて道端の切り株に座り込んでしまいました。

    「やれやれ、親切な村人にも大判小判にも出会わないなんて、私はなんて運がないんだろう」

     ぼやく男を、夕暮れ時の強い風がびゅうびゅうと嬲ってゆきます。思わず身を縮めた男が、風の去った後に顔を上げると――村を囲む雑木林の中に、ぽっかりと口を開いた不思議な通路があるではありませんか。
     近付いてしげしげと眺めてみると、それは林の奥へ奥へと続く薄暗い小道でした。そういえば、確か村外れに小さな祠があると聞いたな。年に一度、村の外から坊主を呼んで祭礼をするとか言っていたか。乏しい記憶から情報を引っ張り出し、ふむふむと頷く男。そうだ、と突如手を打って、彼はにっこりと笑いました。
     つい最近、村長が祭礼をするから手伝えと言ってきたことがありました。もちろん面倒だったので断ったのですが、それがおそらくこの先の祠のお祭りだったのだろうと考えたのです。
     そういう行事にはお供えが付き物。まだ祀られたまま残っているかもしれない、それを頂戴して腹の足しにしようという罰当たりな事を思い立った男は、夕暮れの暗さも何のその、うきうきと林の中へ入ってゆきました。
     
     残念ながら、今まで碌に村に関わらなかったせいで、男の記憶はあやふやでした。同じ村外れでも、祭礼を行う祠は北の端。ここ南の端は禁域の森だということを、彼は全く知らなかったのです。



     
     細い小道の突き当たり、周囲より一段と暗く見える場所に、その石塚はありました。盛り上がった土の上に一抱えもある大きな石を、更に上に行くごとに順々に小さくなる石を幾つも積み上げたそれは、なんだか古い墓のようにも見えました。
     流石の男も、少しばかり気味が悪くなりました。想像していたものと全く違い、これはとても村人達に祭られるような代物ではないと気付いたのです。
     骨折り損のくたびれもうけ、こんな所からはとっとと退散するに限る。そんな事を考えながら、男が背を向けた瞬間。

    『もうし、そこの旦那様』

     突然、か細い女の声が聞こえたのです。どこにいるのかと見回してみても、男の他には誰もいません。不思議に思っていると、再び呼びかける声がしました。

    『そこの旦那様、わたくしはこの石塚の中に住まうものでございます。どうかお話を聞いては下さりますまいか』

     男はぎょっとして石塚に目を向けました。確かに、声はここから聞こえてくるようです。なんと気味の悪いことだ、と震え上がった彼の心を見透かしたように、女の声は悲痛な調子を帯びて語りかけます。

    『突然のご無礼をお許し下さい。誰も訪れることのない場所ゆえ、寂しくてたまらなかったのでございます。そこへ旦那様がいらしてくださったので、嬉しくて……つい身の程知らずな真似をいたしました』

     それを聞いて、男は少しばかり声の主が不憫になりました。怠け者でも根は優しい男は、ついつい石塚の声に情けをかけてしまったのです。
     あれこれと話をしていくうちに、石塚の主は百年の昔にこの地に葬られた娘であることが分かりました。幼い頃より不思議な力を持っていたせいで周りに忌み嫌われ、果てに殺されて埋められてしまったのだと彼女は語ります。この石塚は、バケモノとされた娘を封印するためのものなのだと。

    「それはまた、酷い話だねえ」

     憤る男に、女はお気遣いありがとうございます、と殊勝に答えます。次いで、こんなことを言い出しました。

    『ああ、久しぶりに話が出来て、随分と寂しさが紛れました。わたくしと話をしてくださった御礼に、旦那様の願いを一つ、叶えて差し上げましょう』

    「そんなことが出来るのかい?」

    『はい、造作もないことでございます。ただ』

     一旦言葉を切って、彼女はしばし沈黙しました。先が気になって仕方がない男を焦らすように間を置いてから、彼女はこう言いました。

    『残念ながら、わたくしは法力で封印された身。今はまだ大した願いは叶えられないのです。何か簡単なことを一つ、願ってみてくださいませんか?』

     簡単な願い、と言われた男は頭を捻りました。しばらくうんうん唸ってから、はたと当初の目的を思い出しました。

    「そうだ、私は食べる物を探しに来たんだった。何か、そういう物を用意できるかい?」

    『かしこまりました、旦那様。…………さあ、そろそろ家にお帰り下さい。家の中に、貴方様の求める物があるでしょう』

     半信半疑ながら、男は石塚の主に別れを告げて家路に着きました。
     暗い夜道をえっちらおっちら歩き、ようやく我が家にたどり着いた彼は、戸を引き開けて仰天しました。粗末な囲炉裏端に山と積まれた食料の数々。干魚に干果、山菜、真っ白な米、桶に詰まった味噌、醤油。その他にも色々と、一人では食べ切れないほどの量でした。
     男は狂喜し、存分に飲み食いした後は残りを床下に隠して、その晩は幸せな眠りに落ちました。翌日もいつも通りのらりくらりと過ごし、夕暮れ迫り闇鴉が鳴き交わす頃、男は家を出て例の石塚へと向かいます。
     相も変わらず薄暗い小道を通り抜け、突き当りの石積みまでやってくると、やはり女の声が語りかけてきました。

    『昨夜はご満足いただけたでしょうか?』

    「ああ、腹いっぱい食って満足だよ。ありがとう」

    『それは宜しゅうございました。……かわりに、と申すのも何ですが、旦那様に一つささやかなお願いがございます。聞いてくださいますか?』

    「いいとも。なんだい?」

     男の気安い返事を聞いた石塚の主は沈黙しました。周囲が一層暗くなったような気がしましたが、なあに完全に日が暮れただけさ、と楽天的に考えて、男は彼女の返事を待ちます。
     再び話し始めた女の声は、なんだかおもねるような響きを持っておりました。

    『本当にささやかな、簡単なお願いでございます。わたくしの上に置かれているこの石を一つ、取り除いてはくださいませんでしょうか?』

    「そんなことでいいのかい。よし、すぐにやってあげよう」
     
     あまりにも単純な願いに拍子抜けし、早速石塚に手を伸ばします。と、一番上の石に手をかけた瞬間、背中をぞわりと冷気が駆け抜けました。触った右手がびりりと痺れ、驚いた男は慌てて石を払い落としました。
     なんだい、やけに気持ちの悪い石だなあ。そう呟く男の耳に、女の歓喜の声が届きます。

    『ああ、軽くなった! ありがとうございます、旦那様。法力の縛りが緩んで楽になりました』

     続けて、彼女はこう持ちかけます。法力が緩むごとに彼女の力が戻り、願いを叶える力も増すのだと。毎日一つ石を落として貰えたら、かわりに男の願いを一つ、どんな願いでも叶えることができるようになるのだと。どうか、後生だから毎日通ってきてはくれまいか、と言うのです。
     それを聞いた男は、嬉々としてこの提案を受け入れました。双方共に得のある、良い話だと思ったのです。そこでふと、思いついたことを石塚の主に尋ねます。

    「どうせなら今、全ての石を落としてしまうというのはどうだろう? お前さんも楽になるし、私としても一気に願いを叶えてもらえると思うんだが」

    『それはなりませぬ。強い法力が込められた石ゆえ、一度に触れると貴方様のお体に障りが出ます。……それに、わたくしとしても少しずつ力を取り戻すほうが良いのです。一日に一つ、これを決まり事と致しましょう』

     そしてこう続けました。この場所の事は絶対に他言しないこと、誰にも見られないよう、日暮れの後に尋ねてくること、と。でないと妬んで邪魔をしてくる者がきっと現れるから、と言うのです。元より、困っている自分を助けてくれなかった村人達に教えるつもりなど無かったので、これも二つ返事で受け入れました。
     こうして、男と石塚の主の間に秘密の約束が交わされたのです。
     毎日毎日、男は石塚に通います。石を一つ落とし、願いをかけると、石塚の主は必ずやそれを叶えてくれました。すっかりみすぼらしくなった家を直して欲しい。謎草や未蕾が群れはびこる田畑を綺麗にして欲しい。良い着物が欲しい。米蔵をいっぱいにして欲しい。櫃いっぱいの黄金が欲しい。自分の代わりに働く人手が欲しい。
     あれよあれよと言う間に、男の家は栄えてゆきました。今では村一番の長者となった彼に、村人達は驚くやら怪しむやら。しかし何を聞いても笑ってはぐらかすばかりなので、誰も男の秘密を知ることは出来ませんでした。
     
     豊かになればなるほど、男の願いは大きくなってゆきました。叶えば叶うほど、男は傲慢になってゆきました。もっと、もっと沢山の願いを叶えたい。全てを自分の手の内に納めたい。
     願えば願うほど、石は減ってゆきました。一つ減り、二つ減り、三つ減り……とうとう、最後の一つを残すだけになりました。

     村人達が寝静まった夜中。男は小道を通り抜け、石塚へと急ぎます。いいえ、もう「石塚」ではありません。掠れて読めなくなった文字の書かれた、大きな石ころが置かれているに過ぎません。
     置石までたどり着くと、男は勇んでこう言いました。

    「今日は最後の願いにやってきた。この石をどかせば、私達の約束も終わりなんだろう?」

     以前と比べて、力強く……妖しげになった女の声が答えます。

    『はい。旦那様、よくぞここまで頑張ってくださいました。この一つでとうとう最後でございます』

    「そう、これで最後だ。だから、この願いはしっかりと考え抜いてきたんだ」

     言いながら、大きな石に手をかけます。触った瞬間の寒気も、体の力が抜けるような感覚も、今はもう慣れたもの。うんうん唸りながら石を押す男に、女の声は囁きかけました。

    『どのような願いをなさるのですか? これが最後、本当に最後でございますよ? もう後戻りは出来ないのです』

     ねっとりとした笑いを含んだ声に、押す力を弱めぬまま答えます。

    「後戻りなんざしないとも。今日の願いは……お前を嫁にすること、だ」

     言い終わった瞬間に、大きな石が転がり落ちました。辺りを支配する沈黙に構わず、男は意気揚々と続けます。

    「石が無くなってしまえば、お前との関係もそれで終わりだ。だが嫁にして手元に置いておけば、いつでもお前の力の恩恵に預かることが出来る。何、不自由はさせないさ、金なら唸るほどあるからな。さあ石塚の主よ、最後の願いを叶えてくれ!」

     女は答えません。果てしない沈黙に、どうしたのだろうかといぶかしむ男の周りで、突如哄笑が弾けました。足元の土盛から紫がかった霧が噴出し、ぎょっとする男を取り囲むように漂います。やがて一箇所に収束したそれは、歪な人の形を成しました。
     鮮血の様に赤い、大きな瞳。可笑しくて堪らないというように開かれた、裂けた様な口。ずんぐりした体にそのまま顔が張り付いているようなその姿を見て、男の脳裏には古い物語の一節がよぎります。

    “カゲビトには気をつけよ。人に似て非なるモノ、陰に潜み温もりを奪うモノ、闇夜に命を奪うモノなり。ひとたび狙われたなら逃れることかなわず、故に夜中出歩くべからず”

     今まで男が相手にしていたのは、不思議な力を持った人の娘などではなく、邪なる想いに染まった影人だったのです。
     響き渡る絶叫を聞きながら、影人は楽しげにけらけらと笑いました。ずいと男に近付き、恐怖に震えるその体を睨め回しながら、ゆっくりゆっくり言葉を吐き出します。

    『どうされました、旦那様? わたくしを、嫁にしてくださるのでしょう? ええ、ええ、もちろん側に居りましょう。貴方様の温もりをいただきながら!』

     言うが早いか、影人は男に覆いかぶさりました。靄のようなその体に包まれて必死にもがくも、その中から出ることは出来ません。体中を恐ろしいほどの冷気が駆け巡ります。体温が、鼓動が、全て吸い取られていくかのようです。思考の芯まで侵されるような寒さの中で、絶望した男はもがいて、もがいて、もがいて……。

     やがて、動かなくなりました。
     温もりを失った体を放り出し、影人はげらげらと笑います。

    『よくもまあ、わたくしを嫁にしようなどと言えたものよ。まあ、こういう欲深い輩がいるからこそ、わたくしも夜を謳歌できるわけだが』

     いつしか、彼女の周りには沢山の妖達が集まっておりました。ふわりと舞い飛ぶ紫煙の靄、はためく目無し蝙蝠に大口蝙蝠。赤い六尾の子狐と、金毛九尾の大狐、小さな小判猫と赤玉の化猫。
     爛々と輝く瞳を見回して、影人は満足そうに頷きました。

    『出迎えご苦労、夜の子ら。強力な力を持った人間に封じられて百年の屈辱を舐めたが、その封印を解いたのもまた同じ人間。人は衰えるもの、自由の身になったわたくしを止められるものは、今の世にはもうおるまい』

     同意するようにさざめく妖達。大きな口をにたりと歪ませ、影人は高らかに叫びます。 

    『さあ、愚かなる人間どもに、目に物見せてやろうぞ! 集え、闇に棲む者達よ! いざ行かん、百鬼夜行へ!』

     おどろおどろしい歓呼の声が轟きます。無数に膨れ上がった妖を連れて、彼女は封印の地を離れます。
     空を行く者、地を駆ける者、影を伝う者。全ての者が見つめる先には、一際禍々しい光を放つ影人の姿がありました。

     妖しき者ども、大地を巡る。

     永きに渡って語り継がれる、恐るべき闇の女王の復活でありました。




    ――――――――――――――――――――――――――――――――


     昔話を書きたいな、という思いと、ホラー書いてみたいな、という思いが一緒になった代物。なんだか中途半端な出来だと思いつつ、個人的にはお気に入りだったり。
     えぐい話が、結構好きです。
     古い昔話として書くために、ポケモンの名を漢字で表してみました。舞台はカントー、登場するのは第一世代に登場するポケモンのみに限定。
     
     三つ尾の猛牛・ケンタロス、闇鴉・ヤミカラス、謎草(なぞくさ)・ナゾノクサ、未蕾(いまだつぼみ)・マダツボミ、影人・ゲンガー、紫煙の靄・ゴース&ゴースト、目無し蝙蝠・ズバット、大口蝙蝠・ゴルバット、小判猫・ニャース、赤玉の化猫・ペルシアン、狐達は言うに及ばず。
    ……しまった、第二世代のヤミカラス入ってるorz ええと、カントーに帰化したということで(

     上記「妖」達の中でも、ゲンガーは特別な存在です。ゴーストポケの中で一番怖いものを挙げよ、と言われたら、ダントツでこのヒト。初めてポケモンをやって以来、その姿が、図鑑説明が、密かにトラウマでした……。
     マサポケで、達筆のパティシエゲンガーさんに出会ってからは恐怖も随分払拭されましたが(笑)
     
     思う存分、陰気な話がかけて満足しました。読んでくださった皆さん、どうもありがとうございます。

    【なにをしてもいいのよ】
    ※2011.12.28 行間及び漢字一部修正、小判猫・赤玉の化猫追加。


      [No.1451] Dear.My 133 投稿者:巳佑   投稿日:2011/07/06(Wed) 14:39:55     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     月曜は君と月見しよう。火曜は君ともふもふしよう。水曜は君とプールで遊ぼう。木曜は君と花を育てよう。金曜は君と縫物をしよう。土曜は君とアイスを食べよう。日曜は君と日光浴しよう。七色変化の一週間、始まる。



    【百文字で書いてみました Part.2】

     再び、百文字で書いてみました。(ドキドキ)
     
     ちなみに、前回の『エモンガの特等席』なんですが、すいません、最初の一字空けを含めちゃいました。(汗) 実質99文字でした。
     今回は一字空けを含まない100文字となっています。(汗) 
     一応、報告を。(汗)

     

     ありがとうございました。

    【何をしてもいいですよ♪】
    【マサポケに百文字ブーム到来中!】


      [No.1450] ふふふ、実は。 投稿者:巳佑   投稿日:2011/07/06(Wed) 13:42:58     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    キトラさん、コメントありがとうございます!


    > 短い中で、四季を感じさせる風流な文章に嫉妬。

     百文字という制限の中で描写がちゃんと伝わっているかぁ……。
     と、心配していましたが、無事伝わったようでなによりです。(ドキドキ)
     

    > 特に冬の雪。寒いけれど雪につく足跡は楽しい。大きくなった今でも好き。特に新雪のところ。

     私も雪が降ると、子供の頃に返ったのようにテンションが上がったりします。
     そして、雪を眺めながら『雪見大福』をパクリと食べるのが大好きです。(笑)

     
     ふふふ、実は……最後に『君』というのがあると思うのですが、これ、メブキジカのことだったりします。(キラーン&もう気付かれたかもですが)
     四季と共にメブキジカと戯れるエモンガといった感じで今回の百文字の物語が生まれました。


     それでは、失礼しました。


      [No.1449] さんさーら 投稿者:MAX   《URL》   投稿日:2011/07/06(Wed) 13:31:17     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     そっと自分も。


     短冊が吊るしてある……。

    「主人の夢がかなうことを願う。 イトウさん」
    「ご主人とずっと一緒にいたい。 ウサミさん」
    「平和な生活がいつまでも続いてほしい。 ハシバさん」

     ……? 裏に何か書いてある。

    「主人が人間の女性を好きになることを願う」
    「ハシバさんとも一緒にいたい」
    「ウサミさんが幸せでいられますように。」


     他の短冊を探そう。

    「ポケモンと一緒に強くなりたい。 ミズハ」
    「ポケモンドクターになる。
     不幸なポケモンたちが少しでも減ることを願う。 タダマサ」

     ……? 裏に何か書いてある。

    「もうしばらく今の日常を続けていたい。」
    「ここにある笹が盛大に燃え上がることを願う。」


     ……他の短冊を探そう。

    「色っぽくなりたい。 シラユキ」
    「たくましくなりたい。 アオキ」

     夫婦のものだろうか、同じ枝に並べて吊るしてある。
     ……? 裏に何か書いてある。

    「死ぬまで夫と仲良くありたい。」
    「死んでも妻を愛していたい。」


     名前の無い短冊がある。

    「イワパレスの趣味を理解できるようになりたい。」


     七夕の夜になれば笹の木は燃やされる。
     誰かの願いにあるように、盛大に燃え上がり、煙を天に昇らせるだろう。
     笹の枝の短冊を見るのなら、今のうち……。


      [No.1448] ここからホラー展開 投稿者:イサリ   投稿日:2011/07/05(Tue) 22:44:41     21clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    感想が来ていてドキドキ。すごく嬉しいです。わーい!
    キトラさん、お読みくださりありがとうございます!

    メタモンは漫画とかだとあの顔のままですが、ゲームだとほぼ完璧に化けますからねー


    > その中のポッポが一斉に鳴いたってなにしたって見分けはつかない
    > けれど、偽物がいるのは解る。
    > だって、うまれたポッポより多いからね。

    厳選で大量孵化したポッポの中に親のメタモンが混じっていて、主人トレーナーに一斉に襲い掛かる……というのを想像してしまいました(汗)

    悪夢になる前に目が醒めてヨカッタネ!


    それでは、感想ありがとうございましたー!


      [No.1447] 諦観 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/07/05(Tue) 22:34:45     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    黄昏が皿に残った最後のピザを照らし始めた。あのバカに残した最後の一切れだ。
    ポケットをまさぐる。預かったボールが手に触れる。
    この子が不憫で仕方ない。
    もうアイツの事は諦めよう。最後のピザを食べて店を出た。



    -------------------------------------------------------------------------------------------

    100文字で書いてみた

    努力報われず諦めた男とポケモンの話。

    【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】【その他もろもろお好きにどうぞ】


      [No.1446] 夏休み欲しいナカーマ 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/07/05(Tue) 22:29:12     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    投稿、見直し、ツリー表示へ、の間に感想が付いていてびっくらこきました。
    嬉しかったです、ありがとうございます!

    そう、夏と言えばもこもこの入道雲、真っ青な空、五月蝿いくらいの蝉の声は欠かせませんよね!
    ……それが揃ってても休みが無けりゃ完璧じゃないんだようー orz

    大人しく思い出に浸るだけで我慢しておきます……。


      [No.1445] Re: あれ、コダマにみえr( 投稿者:茶色   投稿日:2011/07/05(Tue) 22:18:58     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    感想いただき、ありがとうございます。

    >  もののけ姫のコダマです。あれも森の妖精だったか精霊だったか。

    精霊だったと思います。

    >  ブラックホワイトのコバルオン関連かなあと思ったけど、とても暖かいストーリーになっているなあと思いました。

    BWをまだやっていないので調べてみました。
    コバルオン、いつか使ってみたいです。

    >  けれど、今まで山火事になろうが雷落ちようが、全滅した森ってないんですよね

    森全滅というのは確かに大げさに書いています。山いくつ分あったんだ、という話しで。
    ただ、ある部分ではちょっとした元ネタはあります。
    「小火を消して大火を招いた」というのがその所で、これは実際にアメリカであったことだったりします。
    森丸ごと、とは言いませんが、それまでは森の一部が散発的に燃えていたのが、
    森の大部分が消失する大火事が多発することになりました。

    >  キモリがこれから森を育てていって、そして何年後かに立派な森に再生するのかと思うと、スケールの大きい話です。
    >  そう考えると、自然の豊かさを感じさせる話でした。

    人間の力では及ばないことって、多くあります。
    そのスケールをどうやって表現するか、今後挑戦していきたいです。

    > 【キモリかわいい】

    キモリをぎゅっとしたい!


    お読みいただき&感想をいただき、ありがとうございました!


      [No.1444] 【百字】残り香 投稿者:レイニー   投稿日:2011/07/05(Tue) 22:04:00     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     その香に触れたのは昨晩のほんのひととき。彼女のメガニウムが放つ穏やかな花の香り。そして、彼女から微かに匂う甘い香り。明け方の通り雨にすっかり消されてしまったはずなのに。

     僕はあの香りを忘れられずにいる。

    --------
    【お題:雨】

    百字が流行っていたので便乗してみた。


    【好きにしていいのよ】


      [No.1443] さらりさらさら 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/07/05(Tue) 22:02:25     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     たなばーた、たなばーた、たなぼーた♪

     一枚目。『アイディアを上手く形に出来ますように』

     二枚目。『もっとすらすら書けますように』

     三枚目。『肩こり・腰痛が良くなりますように』

     四枚目。ん……?



     …………天で、某カップルが「無理無理。」みたいな顔して手を振ってたような。側に控えてる牛が「欲張るなよこの家畜」みたいな顔で馬鹿にしてたような。
     
     くそう、リア充爆h (強制切断)


     最後に一枚。『ポケストが末永く続きますように』


      [No.1442] 七夕七夕たーのしーいなっ 投稿者:moss   投稿日:2011/07/05(Tue) 21:54:05     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     七夕なので、ねがってみましょう。かなうかな?

    1.短編が書けるようになりますよーに

    2.ネタが浮かびやすくなりますよーに

    3.文章力がつきますよーに

    4.パソコンほしーな

    5.スキャナー買ってもらって絵をかけるようになりたいな

    6.今までために溜めたアイデアをぜひとも形にしてさしあげたいな

    7.お金ほしいな


    実際あまり七夕は何もしないmossでしたー。願いすぎた。


      [No.1441] では願ってみましょう 投稿者:海星   投稿日:2011/07/05(Tue) 21:43:44     92clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    海星「DSiがネットに繋がりますように。
        受験上手くいきますように。
        ポケストにもっと来れますように。
        ジュカイン愛してる。         」


    ――――


     今年もまた星の上では、織姫と彦星が再開するのだろうか。
     
     まあ知ったこっちゃないが、なんて溜息をつきながらそっと指だけ動かしてヒトデマンを撫でた。

     赤いコアが嬉しそうに点滅し、不思議に柔らかい身体を擦り付けてくる。

     四角い窓に区切られた夜空はあまりにも小さい。

     だけど窓際に椅子を運んで、こうしてヒトデマンと戯れていたりなんかすると幸せだなあ。

     そういやヒトデマンって海の星なのかな。

     じゃあ私に届いた彦星からの流れ星かもね、なんちゃって。


    ――――

     決して、私の名前から書いた訳じゃないです。
     でも書いてる途中で意識したのは否定できません(どっちやねん

     追記:「織姫」が「乙姫」になっていましたので修正いたしました。
         海の中じゃないですよねあはは
         失礼しました;;
         ちなみに、シンオウ地方は快晴なので天の川が見れるそうです! >7月7日


      [No.1440] 思い浮かべる夏の風景 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/05(Tue) 21:43:30     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    入道雲、青い空、蝉の声。
    そんな一枚が、つまっているように感じました。
    そして飛び出す夏休みの思い出が出てくる。

    【夏休み欲しい同意】


      [No.1439] 【百字】さあ、行こう。 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/07/05(Tue) 21:40:17     106clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    僕は相棒を見る。相棒は僕を見る。僕らは顔を見合わせて、にやりと笑う。
    明日はとうとう夏休み。水遊びが得意な君と川へ行こう。かけっこが得意な僕と野原へ行こう。

    海へ山へ、知らない町へ。

    さあ、冒険の扉が開く。




    ―――――――――

    百字祭りを開催中との事、フライング夏休みを書いてみた。

    ……夏休み欲しいよう。

    【なにをしてもいいのよ】


      [No.1438] 流行には乗るべき。 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/05(Tue) 21:28:04     22clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    バンプだったかの「K」もそんな感じでしたね。ああいう動物ものは心が揺れます。
    ブラッキーの主人なのか、知り合いなのか。
    そんな不思議な夜の風景が出ていていいなあと思いました。


      [No.1437] whale song 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/05(Tue) 21:25:39     77clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ハルカは目を覚ました。夜中だというのに、なぜか目がさえて。船のエンジンは静かに動いているというのに。夜風に当たろうとハルカは甲板に出て行った。
    「うわぁ・・・。」
    満月の海。真っ黒の海の中に波間が見え、そこだけ白く照らしている。風はそんなに強くない。
    「きれい・・・。海ってこんなにきれいなんだ・・・。」

    ふぁーーーーーーーん

    「あれ?何かきこえ・・・。」
    船の横を大きなホエルオーが飛んだ。ホエルオーの鳴き声だ。黒い海を船とぶつかりもせず、遊ぶようにして飛んでいる。

    ふぁーーーーーーーーーーん

    さっきよりも長い鳴き声で、ハルカを呼んでいるようだ。
    「ホエルオー!?私と勝負するー!?」
    その言葉を理解したか、ホエルオーは海へと潜り、見えなくなった。
    「なんだ、勝負したいんじゃないのか・・・。野生のポケモンってみんな自分を大事にしてるんだな。」

    ふぁーーーーーーーーーーーーーーーん

    「まだいるの?いじめないから出ておいで!」
    再びホエルオーが顔を出す。今度は船尾の方に。ハルカはデッキを走る。
    「遊ぼう!夜の海くらい遊べるよー!」
    船の作る波を受け流し、ホエルオーは再び鳴く。深く、そして低い鳴き声。ユウキのホエルコを見せてもらった時とは違う、野生の鳴き声。闇に入ろうとして、手すりに足をかけた瞬間、ハルカは後ろから抱きかかえられた。
    「こら、ハルカちゃん、危ないじゃないか。」
    「あ・・・ダイゴさん・・・。」
    「夜の海に落ちたら、危ないんだよ。いいかい、まず見つからないから死んじゃうかこのへんのサメハダーに食べられちゃうかなんだ。」
    「・・・はーい。」

    ふぁーーーーーん

    「あ、まだいる・・・。」
    「ホエルオーかい?」
    「うん、そうみたい。さっきから1人で船のまわりにいるよ。」
    「・・・仲間を探してるんだね。」

    ふぁーーーん

    「仲間?」
    「そう、ホエルオーは群れで暮らすポケモンなのに、一匹だけ、船のまわりをまわってるなんておかしいだろ?」
    「あのホエルオー、1人なの?」

    ふぁあああああああん

    「そうかもしれないね。」
    ダイゴはホエルオーを見つめていった。
    「かわいそう・・・パパもママも、お姉ちゃんとかお兄ちゃんもいないのかな・・・。」
    「分からないな、野生だからね。」
    「寂しくないのかな・・・。」

    ふぁーーーーーーーーーん

    「寂しいと思うよ。だから、ああやって仲間を探してるんだ。」
    「友だち、船じゃなくて早く見つかればいいのに・・・。」
    夜風がハルカの髪をさらう。
    「そうだね。」
    「かわいそう・・・。」

    ふぁーーーーーん

    「ハルカちゃんは優しい子だね。」
    「え?なんで?」
    「他人の痛みが分かる、優しい子だよ。」
    「分からないよ。ホエルオーは・・・私と同じだから・・・。」
    「なぜ?」
    ホエルオーの声が遠くに行った。それでもまだ低い声は聞こえる。
    「私は・・・ずっと1人だから。」
    「なんで?お父さんは?ユウキ君は?」
    「ユウキ君は・・・違うの。お父さんも・・・ダイゴさん、あの・・・お父さんは、本当のお父さんじゃないの。」
    「え?それは本当なのかい?」
    「・・・・うん。この前、初めて知っちゃった。戸籍が必要でね、それで、お母さんに聞いたら、本当のパパとママは交通事故で死んじゃったって言ってた。それで知り合いだったパパが引き取ってくれて、でも、その時はまだトレーナーだったパパが子どもなんて養えるわけなくて、パパは家にいなかったよ。それでも私はパパとママの家族が好きだったの。」

    ふぁーーーーん


    「本当の家族だと思ってたの。でも、違うの。ダイゴさん、あのね、私ね、時々、この世で1人だと思うの。なんでか分からないけど、パパも、ママも、誰もいないように思うの。誰かに頼りたいのに、誰かが分からないの。仲間なんて・・・・いない気がして、なんでそう思うのか、最近わかって。ねえ、ダイゴさんは時々、自分が1人だけって思わないの?」
    「・・・思わないな。昔はそうだったかもしれない。でもね、ハルカちゃん。必ずどこかに孤独だと感じる人がいるなら、それをうめてくれる人っていうのはいるんだ。もうハルカちゃんは出会ってるかもしれない。まだ出会ってないかもしれない。誰だかは分からないよ?でもね、必ず会える。だから、会う時までは絶対に生きていなきゃいけないんだ。」
    自然とハルカを後ろから抱き締めていた。ここまで強気で張ってきた子。泣き顔を見られるのは、一番嫌がるだろうから。
    「ホエルオーのように、寂しいと言えば誰かきてくれるかもしれない。それでも、孤独を感じる度にその人が来てくれるとは限らない。」
    「うん・・・。」
    「・・・ハルカちゃんは強い子だね。」

    ふぁーーーーーーーん

    「・・・なんで?」
    「人間は野生の生き物のように孤独に耐えられないんだ。耐えられないから言葉で孤独にならないようにしてるんだ。だからずっと耐えてるハルカちゃんは、強い子だよ。」

    ふぁーーーーーん
    ふぁーーん

    トーンの違う二つの声。近くにホエルオーが2匹以上いる。ハルカは海を見た。
    「あ、ダイゴさん、ホエルオーが・・・。」
    「どうやら、仲間が迎えにきたようだね。」
    「・・・よかった・・・。」
    「ハルカちゃんも、もう迎えに来てくれた人がいるかもしれないね。」
    「え?いないよー。」
    「ほらまた。ハルカちゃんが思ってても、みんな思ってるかもしれないんだから。冷えるからね、もう戻ろうか。」
    「うん。」
    ふぁーーーーーーーーん


    ーーーーーーーーーーーー
    チャットで鳩さんの話を聞いてから、昔のをまた引っ張りだして来た。

    オーボエの素朴でどこか哀愁のあるソロと、ティンパニのクジラの鳴き声が合わさるwhale songを聞きながら。

    【お好きにどうぞ】【見た事ある?】【あるならその人と名前一緒よ】【昔のだからね!】
    参考音源:海の男たちの歌より「whale song」


      [No.1436] 月と花 投稿者:moss   投稿日:2011/07/05(Tue) 21:21:50     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     三日月の浮かぶ都の跡地。廃墟と化し瓦礫だらけの道を歩くは一匹の黒い猫。
    赤い花を口に銜え、光り輝く丸い文様が怪しく光る。
     ふと彼は立ち止まる。目の前には壊れた墓石。
     そっと花を置くと、音も無く立ち去り闇に消えた。




    ―――――――――――――――――
    今はやり(?)の百文字で挑戦。完敗。
    百文字に見せかけた実は超えちゃった系の駄作。
    削れない。


    【批評していただけたり……なんて】


      [No.1435] 夏の足音 プロローグ 投稿者:紀成   投稿日:2011/07/05(Tue) 21:12:05     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    私は三人を見た。一人は退屈そうに、一人は楽しそうに、また一人は笑っている。
    「準備はいい?」
    彼女らは思い思いのカバンを取り出した。中にはサイフだけ。

    「さあ、行っておいで」
    もうすぐ始まる。彼女達の日記がー

    [百文字?]


      [No.1434] どっちの図鑑だったか 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/05(Tue) 20:58:21     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ずらりと並んだカゲボウズを想像して怖くなった。
    恨みの感情を持ちすぎると軒下に集まるカゲボウズ。
    うん、あれが怖い。
    どんなに好きな人が萌えを語っても怖い。


      [No.1433] 神鳥! 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/05(Tue) 20:47:55     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    とてもゴッドバード的な描写に思わず。それが空を飛ぶでも、鋼の翼でもカマイタチでもなく、本当にゴッドバード。
    初代ではピジョットに覚えさせて突っ込ませてたほど、かっこいい技。けれど自分が文章にすると、とてもじゃないものしかできないし。
    いいものを見ました。そして燃えました。

    【その才能よこs(】


      [No.1432] 隻腕の意地 投稿者:音色   投稿日:2011/07/05(Tue) 20:44:42     138clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    風が棚引いた。
    空の袖を弄ぶ様に鋼鳥は宙を舞う。
    次の飛行で勝負を決めようと翼が光に包まれた。
    足を引き、構える。この勝負、堪え切らなければならない。
    突っ込んで来たそいつの一撃と引き換えに全てをぶつけた。

    ――――――――――――――――――――――――――
    余談 100字と思ったあなた、残念。
    まさかの99字です。そう言えば俺、コンテストも9999字だった。


      [No.1431] 感想 投稿者:西条流月   投稿日:2011/07/05(Tue) 20:43:12     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     100文字の話だと、難しい言葉を使った方が読後の余韻が残るなぁ、と思った。
     これだけ短い中に情景がよくでていて、いいなあ。
     そして、主人公に何があったんだと思わず問いただしたくなる、描写がニクイ


      [No.1430] うちのは「クロミ」という 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/05(Tue) 20:41:16     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    うちの飼っていた犬は黒かった。赤いところはないけど、腹が白い。そういう犬種らしい。
    そいつはとんでもなくバカ。犬のくせにキャベツの芯が好き。あとキュウリとか

    というわけで、そんな犬を思い出した、スイカ。

    スイカおいしいよ!うちでは誰も食べないから、一人で買って一人で食べてる。


      [No.1429] はなみずたらしたミズゴロウ? 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/05(Tue) 20:38:18     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    やべ、見てみたい

    シロナさん、同じ熊ポケモンのヒメグマも見てください。ヒメグマですよ、絶対かわいいですって!
    キティちゃんグッズで埋め尽くされてる大人の女の人に通じるものがありますね。
    いい大人がポケモンかよ!と言われても、キティちゃんは言われない不思議!
    クマシュンもいいけど、ヒメグマもいいのよ!絶対!


    【ヒメグマもいいのよっ!!!】


      [No.1428] 短冊書いてみる 投稿者:音色   投稿日:2011/07/05(Tue) 20:35:53     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    『今宵もまた、将来有望な少年少女たちが夢を望み叶えられますように』
     そして、と付け加えようかどうか、コートの人物はしばし考える。
    「ご自由にどうぞ」と七夕用の看板が掛っていた所に足を止め、これも一興だと思い足を止めたのだが。
    (なるほど…そういえば私には願いらしい願いがありませんねぇ)
     強いて言うなら捕食対象がより増加してくれるなら(自分の寿命的な問題で)有り難いが、人間から見たらその目的はあまりにも…残酷、と呼べるものかもしれない。
     もそもそと、コートの内側からメラルバが這い出る。初めて見る笹の葉の香りを嗅ぎ、物は試しとかじるその様子を見て火喰は苦笑した。
     それは食べ物ではありませんよ、たしなめながら彼女を片手で抱き上げ、付け加えるべき願いを思いついた。
    『レディ、お体にお気をつけください』 
     二重の意味を込めて、彼は立ち去った。
     


    『修学旅行でポケモンセンターに行く!絶対行く!ていうか行かせろ!寄れるルートにしやがれ学校!』
     自分の欲望たっぷり書き付けた水色の紙を眺めて満足そうなそいつを見て全員が呆れている。
     そんな視線を無視して堂々と笹のそいつを引っ掛けると、悠々とそいつは去って行った。


    『もうこれ以上ゴーストポケモンが増えませんように』
     あと、ゴーストホイホイ体質が治りますように、給料上がりますように、休みが取れますように、と書いていくうちにどんどん短冊は文字で埋め尽くされていく。
     そばでゴースが物珍しそうに眺めている。
     最後にもう一つ、紫色の配達服に身を包んだ人物はさっと付け加える。
    『うちのゴーストポケどもが騒動をこれ以上起こしませんように』
     たぶん無理だろうけど、と呟いて、仕事に戻って行った。


    『ガキの世話が                  』
     もっと楽になるようにしろ、と書こうとしてスキンヘッドは手が止まる。
     ガキの世話が楽になるって、ガキがいなくなるってことじゃね?
     勝手にいなくなったら楽と言えば楽だが、別の問題しか発生しねぇじゃん。
     やめやめ、今の願いなし。乱暴に書きかけた言葉を塗りつぶし、残ったわずかなスペースに書く。
    『もうちょっとマシな飯が作れるようになりますように』
     パプリカが笹に蹴りを入れている。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  なんか書いてみた 


      [No.1427] Re: 軒下で《百字で書いてみた》 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/07/05(Tue) 20:34:18     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    白と黒の綺麗なコントラストを想像しました。
    恨みを食べるカゲボウズや雨の風景のはずなのに、何だか晴天の様な爽やかな感じでいいですね。


      [No.1426] ひとと けっこんした ポケモンも いた 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/05(Tue) 20:32:02     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ポケモンと けっこん した ひとも いた

    シンオウ神話ですよ、オタマロさん。しんわ、ですよオタマロさん。
    一体、何を気に入ったのでしょう。もしかしたら初めてあった時に「マロマロ」と鳴き真似しませんでしたか。
    野生のポケモンは同じ鳴き声をするものはきっと・・・多分仲間だと思ってしまうんじゃないか。


    最後の方は「マ」がゲシュタルト崩壊してしまった。
    オタマコとオクマロ発見者でした。


      [No.1425] だめだこりゃw 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/07/05(Tue) 20:28:58     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    >鳩さん

    XDトゲチック「特性はりきりになりました」
    ホウエン狸「くいしんぼうに転職しました」
    今日進化したマリル「性別かわりました」
    ですねわかります。


    >キトラさん

    伝説のポケモンだって恋をするんだね☆

    ってちょっとスイクン! クリスタル版で主人公の前に現れたのはそういう意図からかいっ!
    思わず警察に通報したくなる素敵さです。にしても重力に逆らってる綺麗な御髪って、じわじわくるw そこ、萌えるポイントだったのかスイクンよ!

    そしてミミロップ。お前も「中々難しいのよー」とか言ってんじゃない、守備範囲広すぎ!w
    つっこみきれませんコイツらはw

    【書いてみた】ありがとうございました。
    こんな短い文なのにキャラがしっかり立っててすげー……


      [No.1424] じゃあ好きにします 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/05(Tue) 20:28:26     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     これからの季節、風強いですからね。深い森の中でキャンプしているような、何か楽しい場面しか思いつかない。
     寝袋の中でごそごそと自然の声を聞きながら楽しくて眠れないような感じです。
     小学校高学年〜中学生が夏休みで楽しんでいるような、夏の思い出。
     それを思い出してる大人の今が、クーウィさんの文章からにじみ出ているなあと思いました。


      [No.1423] あれ、コダマにみえr( 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/05(Tue) 20:21:55     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     もののけ姫のコダマです。あれも森の妖精だったか精霊だったか。

     ブラックホワイトのコバルオン関連かなあと思ったけど、とても暖かいストーリーになっているなあと思いました。
     キモリがこれから森を育てていって、そして何年後かに立派な森に再生するのかと思うと、スケールの大きい話です。
     けれど、今まで山火事になろうが雷落ちようが、全滅した森ってないんですよね
     そう考えると、自然の豊かさを感じさせる話でした。

    【キモリかわいい】


      [No.1422] 【百文字】 夜詠 投稿者:クーウィ   投稿日:2011/07/05(Tue) 20:19:59     86clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    目を閉じようとしてふと、風の唸りに惹き付けられた。横になるまでは耳に入らなかった、静かな夜の子守唄。星の光も届かない、草に枕す朔の山陰。影に潜んだ漆黒の相棒に見守られつつ、暫し在りし日の故郷を偲んだ。


    ―――――――――

    並んでるのを見るとやりたくなった。 後悔はしていない。
    実はタテタさんがリングマのを作られた時からウズウズしてたのは内緒()

    【お好きになすって下さい】


      [No.1421] 電車とかそういうのが好き 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/05(Tue) 20:16:35     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    新幹線とか、列車の旅が好きです。
    長い旅路になりますし、中で色々できるし。
    そんな旅が出来るのは列車だけ。船も出来るかもしれないけど、列車の旅ほど景色がぐるぐる変わるわけではないです。

    そんな中で、恋について語るということは、変わりゆく景色とシンクロさせているのかな、と思いました。
    恋も人の気持ちの一つだから、変わってしまうことなんて充分あり得るし。
    列車が未来に向かって走る中、恋も同じように未来に向かって変わっていってしまう。
    そのようなことを感じました。


    思いついた参考音源:オリエント急行


      [No.1420] どの説も面白い 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/07/05(Tue) 20:15:26     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どちらも自分は考えなかった説でした。どっちも面白いですね。

    ニドクインの巣は子どもをニドラン時代に生んでから進化するのかなーと思ったりします。

    確かに人の手ではタマゴが「見つかるだけ」ですもんね。これから色々分かればいいなーと思いますが、同時にわからないままでこう色々考えるのも面白いですよね。


      [No.1419] 【書いてみた】 投稿者:キトラ   《URL》   投稿日:2011/07/05(Tue) 20:10:05     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     アタシはミミロップ。いい男を探して旅してる。

     そしてアタシは今、物凄いイケメンに出会った。吹き渡る北風をイメージした体、美しい青、彪のような模様。

     そう、スイクン様!性別不明だけれども、その凛々しい顔からは良い男にしか見えない!早速メロメロをかけるわよん。
    「はーい、スイクンさまっ!アタシといいことし・な・い?」
     性別不明ってねえ、中々難しいのよー。それでも、アタシは諦めずにスイクン様にアタックした。 
    「悪いな、俺には心に決めた人がいるんだ」
     きゃーーー!言うこともしぶーい!もうアタシがメロメロ。スイクン様ぁっ!アタシを下僕にしてっ!
    「はっ、来たっ!クリスちゅゎん!!」
     は?何いったこの男。あの人間の女の子にクリスちゅゎんだと?しかもさっきまでの凛々しい顔が、鼻の下伸ばしてる顔に早変わり。
    「いゃーん!その膨らみかけのおっぱい、見えそうでみえないあんよ、重力に逆らってる綺麗な御髪、全部萌えー!!」
     バカスイは女の子を追いかけていってしまった。当然、女の子は逃げる逃げる。伝説のポケモンから逃げる人間、初めて見たわ



     アタシはミミロップ。どこかにいい男いないかな


      [No.1418] 良い性格してる 投稿者:西条流月   投稿日:2011/07/05(Tue) 20:01:29     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     初めまして、西条流月と申すものです

     自分の萌えに突っ走れるシロナさんに惹かれてきました
     いいよね、クマシュン。育てても対戦で強いわけでもないけど、自分はパーティに入れてました


     秘伝要因として


     秘伝技覚えまくってくれて助かってました


     そして、シロナさんを見たナナミさんの反応もいいですね
     こういうさりげないSキャラ好きなので後半のやり取りを楽しく、見させてもらいました
     ほのぼのした物語ってなかなか書けないので憧れます

     それでは

     


      [No.1417] 無関心、そして 投稿者:キトラ   投稿日:2011/07/05(Tue) 19:58:37     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     街中にも自然の掟と摂理はありますね。前に傷ついたウズラみたいな鳥がいましたが、カラスに持っていかれるのを見てました。
     そうして、何事もないように、信号は青になったので渡りました。
     強いものしか生き残れないように、なっているのでしょうね。
     きっとそのコラッタも、ニャースが(ry


      [No.1416] よし、エモンガそこを代われ 投稿者:キトラ   投稿日:2011/07/05(Tue) 19:51:49     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    短い中で、四季を感じさせる風流な文章に嫉妬。
    特に冬の雪。寒いけれど雪につく足跡は楽しい。大きくなった今でも好き。特に新雪のところ。


      [No.1415] 先生冷静すぎる 投稿者:キトラ   投稿日:2011/07/05(Tue) 19:49:24     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    夏休みの絵日記と、それを見た先生の赤ペンのコメントが浮かびました。
    プルリル・・・ではなくクラゲに刺されたことあるので、海はまじ危険。


      [No.1414] まさに間違い探し 投稿者:キトラ   投稿日:2011/07/05(Tue) 19:44:23     23clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    メタモンってゲームでは見分けつかないほどそっくりに変身するらしい。
    だから、きっと
    その中のポッポが一斉に鳴いたってなにしたって見分けはつかない
    けれど、偽物がいるのは解る。
    だって、うまれたポッポより多いからね。


    そんな書き出しが浮かんだ


      [No.1413] 【百字】もどかしさ 投稿者:イサリ   投稿日:2011/07/05(Tue) 19:37:11     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    目の前には餌を啄むポッポの群れがいる。でもその中に一匹だけメタモンが混じっている。
    私は何故だかそれを知っているのに、どうしても偽物を見分けることができなくて途方に暮れている。

    そんなもどかしい夢を見た。




    ――――――――――――――――――――


    100文字小説の流行に乗っかってみました。
    元々短文書きなのでイェェェーイ! と思いつつ、きっちり合わせるのは難しいです;;

    【百字が流行ればいいのよ】
    【好きにしていいのよ】


      [No.1412] 今でも様々な説を見かける 投稿者:キトラ   投稿日:2011/07/05(Tue) 19:17:15     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    1、最初に決めた相手以外とはタマゴを作らない
    2、人間の手では繁殖させることは出来ない


    ニドクインの説明では、子供を巣から守ると書いてあるので、いるはずなのですよね。
    金銀発売から今までの、ポケモンの七不思議です。


      [No.1411] 【書いてみた】 投稿者:キトラ   投稿日:2011/07/05(Tue) 19:14:37     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ポン、と弾ける音がして、豪快な泡が出る。サイコソーダの音がした。
     世間では、これが好物というポケモンがいるらしい。信じられない。俺の主人のツグミも好きらしい。
     
     俺が気に入らないのは二つ。1つとても飲みにくい。口に入れるとぱちぱちと痛む。2つ、最初に飲んだとき、思わず吹き出したのだが、その時に全身べとべとになってしまった。

     ツグミがサイコソーダを飲んでいる時に、俺はおいしい水を飲んでいた。もう夏も終わり。けれど熱気は収まることを知らず、俺の黒い毛並みを暑くする。木陰で涼みながら飲んでいたら、トレーナーにくっついてるダイケンキが、それをねだっていた。
     あんなのが飲めるなんて、やはり水タイプなのだろう。口の中に電気を通されたような刺激が俺は無理。
     買ってもらえたダイケンキは、喜んでトレーナーの後をくっついて行ってしまった。冷えてないとまずいんじゃないか?けれどトレーナーの顔は、お気に入りの場所をみつけたような、そんな感じだった。ツグミがこういった木陰を好むように、そのトレーナーも思い出の場所があるのだろう。
     俺はこうやって、ツグミの側で冷えたおいしい水を飲みながら、次のバトルの作戦を立てている時が、一番好きだ。


    ーーーーーーー
    夏休みといえば読書感想文です。
    なので、感想を書こうと思えば思うほど、書いてみたに近いので、【書いてみました】

    ツグミ=トレーナー、12才女子
    俺=ゾロア雄


      [No.1410] 【書いてみた?】チュリネ菜 投稿者:キトラ   投稿日:2011/07/05(Tue) 19:00:57     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    野菜好きとしては、ちょっと食べてみたい。
    苦い?炒め物だろうか、煮るのもいいだろうか。
    遠い国では、チュリネ菜で肉やソースを巻いて食べるのだとか。
    料理の本を見て、そう思った。


    【チンゲンサイみたいな味なのだろうか】


      [No.1409] なんていうか可愛い 投稿者:西条流月   投稿日:2011/07/05(Tue) 18:59:06     22clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    チュリネかわいいのに食べられるからなぁww とか思って読ませてもらいました

    擬音語、擬態語がうまく使われてて雨に喜ぶチュリネの様子が想像しやすくて好きです

    可愛いんだけど、やっぱり食べるんだよな、それでまたうまいから困りますww


      [No.1408] 1パーセントのひらめき 投稿者:キトラ   投稿日:2011/07/05(Tue) 18:58:44     18clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    天才はどこか才能が違いますね。
    私、この道10年程度やっているんですが、もっと歴の浅い方々の言葉の選び方、文章の構成力のすごさは、努力とか年数では追い抜けなくて、くそーって思ってばかりです。
    というか今も思ってます。
    某ギャップの人とか
    某昔話(嘘)の人とか
    某骨折仲間とか

    みんな才能あって、本当に


    【うらやましいのよ!!!】【すいません言いすぎましたのでその才能わけてください】【努力はしました多分しました】


      [No.1407] 野生のポケモン 投稿者:キトラ   投稿日:2011/07/05(Tue) 18:55:14     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    全身から平和ですオーラ全開の主人公と、2匹同時に出る草むらのポケモンが浮かびました。
    もっというと、ザングース2匹が襲いかかってくるような感じで。
    「平和ですオーラの人間め!」と言いながら向かってくるザングース。そんな感じを受けた百字でした。

    ごちそうさまです。

    【百字はやってるのよ】


      [No.1406] 願いというか目標というか 投稿者:西条流月   投稿日:2011/07/05(Tue) 18:37:24     81clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    速筆になりたい

    はやく書けるのは慣れらしいので頑張るのです

    キャラはあまりいないけど、自己主張が半端ないので割愛


      [No.1405] 雨と葉っぱ。 投稿者:スズメ   投稿日:2011/07/05(Tue) 18:33:17     81clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ぽたぽたと曲を奏で続ける雨に合わせて、葉っぱがチョコチョコと飛びはね、踊りだす。
    うれしそうにはしゃぐチュリネ達の葉っぱは明日収穫されたりするのだが、黙っておくことにした。
    かわいいだけになんだか不憫だ。


    ーーーーーーーーーーーーー
    百字です。布教参加中。
    今後もチュリネ印の苦い葉っぱをよろしくお願いします。(チュリネ菜の生産者より)

    【批評してもいいのよ】【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】【ご自由にどうぞ】


      [No.1404] 軒下で《百字で書いてみた》 投稿者:西条流月   投稿日:2011/07/05(Tue) 18:12:02     66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     僕は軒下が好き。だって近くに人間が、食料の感情をいっぱい持つ生き物がいるから。今日も今日とて、軒下に。そこにいたのは角のない真っ白な先客。満足そうに目を細めている見知らぬあなたは一体何を食べました?

    ――――
    今日も百字を布教する

    【もっと百字が流行ればいいのよ:】
    【好きにしていいのよ】


      [No.1403] 天の川見れたらいいなとか。 投稿者:スズメ   投稿日:2011/07/05(Tue) 18:06:00     90clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     笹を発見したのでさっそく・・・
    「テストで赤点取りませんように」
    なら勉強しろと言うのはおいておいて、前回がかなりぎりぎりだったので後がないというか・・・
     テスト終わったら、作りかけの粘土とか作ってしまいたいです。机の上ぐちゃぐちゃ・・・


     

     初夏なのか梅雨なのかよくわからない今年の七月、いきなり雨が降ったり、猛暑と化したり。
    降ったばかりの夕立でじめじめする道路を歩けば、太陽からの熱線攻撃が直撃。
    のたのたと植え込みの方へ向かうカラナクシも心なしか慌て気味。
    あっという間に水たまりも消えちゃうもんねなんて空を見れば、夕立の名残は薄れつつあった。

     最近家ではカタツムリを見かけることが減りました。
    引っ越してきた頃には駐車場の壁に10匹ぐらいはへばりついていたのに、見る影もなし。
    うわさによると、環境の変化に弱いとか。カラナクシは大丈夫なのかな?


      [No.1402] 【百字】夏の日のおつかい 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/07/05(Tue) 17:39:12     98clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    コンコン。どれが甘いかな。おいしいかな。おつかいを頼まれ、真剣に悩んでいた。
    と、君が僕の真似をしているのを見て、ふき出しそうになる。
    小さな前足で、丁寧に叩いてくれてて。
    よし、君が叩いてたこれにするよ。





    …西瓜です。スイカですよ。
    なぜこうも私の書く文は駄文で食べ物が出てくるのか…。
    きっかけは、今朝のニュースで『おいしいスイカの見分け方』をやってたのを突然思い出したから。
    ポケモンのポの字も出てこないww 前足で許してっ


      [No.1401] 【百字】テンガン山 投稿者:キトラ   投稿日:2011/07/05(Tue) 15:26:59     28clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     金色の光が目にしみ込む。凍えるような風がその身を叩いた。反転世界の暗黒が嘘のように消え去って、広がるのはシンオウの大地。全てのことが終わった。決着はついたのだ。戦い、争った魂を鎮めるかのように光は溢れて行く。



    ーーーーーーーー
    104文字
    参考音源:イーストコーストの風景より「Catskills」
    【お好きにどうぞ】


      [No.1400] 【百字】日記の宿題【小説?】 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/07/05(Tue) 14:10:10     101clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ふなゆうれいかと】 【思ったら】 【ユウレイクラゲだった】 【どっちにしろ】 【怖い

    〇月×日
    今日はお父さんとお母さんとぼくで海へ行きました。
    泳いでいると、ピンクのひらひらがひっぱってきてびっくりしました。

    先生から
    それは前に配った「注意するポケモン」の中のプルリルです。無事で何より。





    流れにのって100文字。


      [No.1399] ちょっと書いてみた 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/07/05(Tue) 12:37:03     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    「ポケモンリーグに出られますように ダルマ」

    ベタなお願い、結構。

    「ダルマに勝つ ゴロウ」

    主人公に勝てるかは微妙なところ。

    「世界中の探検をする ユミ」

    彼女の凶暴さなら大丈夫。

    「世界制服 サトウキビ」

    サトウキビさんは冗談が達者なようです。

    「大空を飛び回りたい タツベイ」

    一体いつになったら叶うのやら。

    「強くなりたい アッカ」

    頑張れアッカ、負けるなアッカ。

    「年内に、連載を後半戦にまで持ち込みたい あつあつおでん」

    今のペースならいけるか……?


      [No.1398] Re: ささのはさらさら… 投稿者:No.017   投稿日:2011/07/05(Tue) 12:12:14     89clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「仕事、夏コミともに無事終わってください」  No.017


    ガクッ


      [No.1397] 街 《百字で》 投稿者:リナ   投稿日:2011/07/05(Tue) 10:08:15     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     狭い路地裏で死んだコラッタを見た。表通りは気付きもせずに急ぎ足。広告塔は鼻高々に残業、街路樹は電飾を振り払おうと体を揺する。今夜も君は駅前でギターを鳴らす。死骸を見て見ぬふりをして、私もまた街に戻る。

     ――――――――――

    【百字で書いてみた】
    【後に続くのよ】


      [No.1396] 七夕のお願いと誕生日 投稿者:マコ   投稿日:2011/07/05(Tue) 09:35:16     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ポケリアのマイコちゃんのお話です。
    彼女のバースデーの日に、短冊を見ているところです。



    七夕。それは人々が短冊に願いを書いて飾る日。
    そして、恥ずかしながら、私の誕生日でもある。

    「いっぱい短冊が飾られてるね。ちょっと読んでみようか」
    私は笹に飾られている紙を見た。

    人のお願いは匿名にしてあるみたいなんだけど……。どれどれ、
    『マイコの料理の腕が上がりますように』
    ちょっ、待て!短冊に普通こんなこと書く!?
    『世界が平和になりますように』
    壮大だなあ……。
    『マイコにいい彼氏ができますように』
    余計なお世話!!仮にできたとしてもみんなの嫉妬が怖いから無理!


    ……人のお願いって怖いな。ほとんど私絡みじゃん。……ポケモン達の短冊はどうなんだろう?

    『はやく進化して、マスターの力をもっと高めたい チャオブー』
    ごめんチャオブー、私の努力不足で……。でもありがとう。
    『ボクの見た目で怖がる人を減らしたい ヌマクロー』
    これ……どうすればいいんだろう?進化?うーん……考えてもいい解決案が浮かばない。
    『よい予知夢が見られますように ムンナ』
    切実だね……。でも、予知夢だから、調節できるのかな?分かんないなあ……。


    その時、部屋が真っ暗になった。
    「え、何何何っ!?」
    私が驚いていると、みんなの声がして、
    「「「ハッピーバースデー、マイコ!!!」」」
    パンパンパーーーン!!!
    クラッカーがいっぱい発射された!ポケモン達もしれっと発射していた。
    「ありがとう……。でもすっごく煙たい……ゲフンゲフン」
    クラッカーの量がすごいから、火薬の臭いがきつい。若干煙も立ってたし。
    「ほら、ケーキ!頑張って作ってん!」
    「ちょっと不恰好やけど、おいしいはずやから!」
    形はちょっといびつだけど、折角作ってくれたんだ。食べよう。

    パクリ

    「あ、おいしい!!」

    サプライズバースデーも無事に終わり、大満足なマイコなのでした。


    マコです。
    七夕は私自身の誕生日でもあるので、勝手にバースデーストーリーをねじ込んでしまいました……。
    あ、私のお願いはですね……。
    『もっとポケストが発展できますように』
    ここも、ロングもですね。私も書き進めなくては。ポケリア+(プラス)!を。
    もう一つはリアルな話です。
    『今年こそは「不可」なしを!』
    大学の考査の話です。ほとんど単位はとっていますが、毎回のように1個は「不可」をもらってしまうので、何とか今回はせめて一番悪くても「可」で止めたいです。
    できる限り「秀」を目指します!(成績は秀が最も良く、次いで優、良、可、不可の順。)


      [No.1395] エモンガの特等席 投稿者:巳佑   投稿日:2011/07/05(Tue) 02:29:28     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ふわりとエモンガ春の旅、桜の中で木の実かぷり。ふわりとエモンガ夏の旅、緑葉の影で涼を取る。ふわりとエモンガ秋の旅、紅葉を静かに眺める。ふわりとエモンガ冬の旅、真白な枝に足跡ひとつ、ふたつ、君に捧ぐ。



    【百文字で書いてみました】

     私も百文字に挑戦してみました。(ドキドキ)
     端的に、でもしっかりと伝えることは難しいですね。(汗)


     ありがとうございました。



    【何をしてもいいですよ♪】
    【皆さんもぜひ、100文字を!】


      [No.1394] 《百文字で書いてみた》 投稿者:西条流月   投稿日:2011/07/05(Tue) 01:45:33     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     全身から平和ですオーラを漂わせたあいつらは俺らの居場所を奪いに来た。他のやつらに馬鹿にされるような安普請。それでも、俺らは気に入っていた。ぽっと出風情のあいつらに奪われるわけにいかない。さぁ戦おう。


    ――――

     なんとなく最少文字数で書いてみたかった。
    【もっと皆100文字で書けばいいのよ】
    【好きにしていいのよ】


      [No.1393] 初めて会った日 投稿者:キトラ   投稿日:2011/07/05(Tue) 00:42:25     29clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     緑芽吹く季節。ホウエンにも桜が咲き乱れていた。もちろん、ミシロタウンも例外なく。春の青空と桜の花が美しい景色を見せていた。
     その街で研究所を構えるオダマキ博士は、忙しそうに動いていた。研究ではない。今日は久しぶりに旧友が遊びに来る。お互い、所帯を持ってからは1日中遊ぶことがなかった。そんな状態だから、今日はとてもワクワクする。
     玄関のチャイムが鳴る。妻が応対した。続いてオダマキ博士も玄関に行く。気分はとても軽い。久しぶりに見る友人を迎えた。
    「センリ!良く来た!奥さんもどうぞ!」
    「貧乏トレーナー呼びつけたんだからな、たくさん食わせてもらうぞ」
    「はは、出世払いで返してもらうよ」
    質素な身なりでも、堅実そうな顔つきはごまかせない。その奥さんも同じようである。
    「ま、上がって。庭に火を起こしてるから、靴持ってきなよ」
    言われるまま庭に案内される。センリの子供も行儀よく挨拶して、靴を持ってきていた。
    「何歳になったんだっけ?」
    「ガーネットはもう4歳。近所の子たちがみんな幼稚園行ってるから昼間は遊び相手いなくてね」
    「そうか、うちのザフィールと一緒なんだな」
    「そういえば姿見えないけど、どうしたんだ?」
    「いや、それが…」
    言葉を濁す。妻が二階に行き、嫌がる声が聞こえてくる。それを何とかなだめ、階段を降りる音がした。
    「ほら、ザフィール、ちゃんと挨拶しなさい」
    深くフードをかぶり、下を向いて母親の影から出てこない。人見知りというより、人前に出るのを嫌がっている。
    「ザフィール、ちゃんとしなさい」
    父親がいっても小さく口を動かすだけ。センリが近づこうものなら逃げる。
    「すまん、ちょっと色々あって、それから他の人と喋らないんだ」
    センリが戻ると気づく。ガーネットがいない。足音の方を見ると、ガーネットがザフィールの前に立ち、そのフードに手をかけ、思いっきり引っ張る。怯えた表情のザフィールの顔がはっきりと見えるようになった。そして彼の白い髪も。
    「うわっ!」
    ザフィールは手で頭を覆う。大人たちはわかった。子供の髪の色ではない。不自然な色。それを知らない人間の目に触れさせ、好奇な視線を注がれて来たのだろう。そして笑われ、けなされて。その場から逃げ出そうとするザフィールの手をガーネットは掴んだ。
    「雪みたいにきれいな色なのに」
    ザフィールはガーネットを見た。彼女は手を離すと、笑顔で話し出した。
    「私、ガーネットっていうの。みんなネネちゃんって言うよ」
    「ネネちゃん?」
    「さいる君だよね!さーくんでいい?」
    つられたのかザフィールも笑っていた。名前が違って覚えられていたけど、そんなこと気にも止まらなかった。家族以外で初めて髪のことを認めてくれたから。

     子供というのは仲良くなるにも早いもので、たらふく食べた後は庭を走り回っている。時折火に気をつけろと注意されていた。二人とも仲良く返事をすると、屋内に上がっていく。庭の木を登ったり、草花を触ったりして泥だらけ。落ち着きのない二人にどこからともなく、ケーキ食べるかと声がかかる。すぐさま行儀よく外の椅子に座った。
    「あー!」
    大きな声を上げる。ザフィールがガーネットに食ってかかりそうな勢いで、男児特有の頭を突き抜けた黄色い声でまくしたてる。
    「おれのが少ない!」
    ケーキの隣のオレンジジュースに、ザフィールは文句をつけた。
    「同じくらいじゃん!」
    ガーネットも負けじと言い返している。大きなペットボトルをがんとして渡そうとしない。子供というのは変なところで意地を張る。
    「おれのが少ない!」
    ザフィールも主張を変えない。一度出した主張は変えられない。
    「うるさいよ!」
    ガーネットが持ったペットボトルが、握りつぶされ、形状を変える。それに臆することもなく、ザフィールは主張を続けた。
    「ネネちゃんずるい!」
    突き飛ばす。椅子からガーネットが落ちた。びっくりしたのか、ガーネットが泣き出す。それを聞いて、今まで黙ってみていたオダマキ博士がザフィールの前に立つ。
    「女の子泣かすとは何事だ!」
    子供の体重だし、大人の腕力には適わない。平手打ちで、ザフィールは尻餅をついた。余談ではあるけど、オダマキ博士がザフィールを本気で叩いたのはこれが最初である。いきなりの父親の体罰に驚いたのか、ザフィールも一緒になって泣いていた。


    「ザフィール謝りなさい」
    母親に抱っこされて、ザフィールは何も言わずガーネットを見ていた。頭を叩かれ、ザフィールは母親から離れてガーネットのそばに行く。
    「ネネちゃんごめんね」
    ガーネットがそっぽを向く。その様子を見て、センリが言った。
    「ほら、ガーネット。ちゃんとザフィール君は謝ってくれだんだから、ガーネットもちゃんとしなさい」
    注意され、仕方なしにガーネットがザフィールに言う。いいよ、と。
    「私もごめんね」
    何事もなかったのようにまた仲良く遊んでいる。子供だなぁと大人たちはそのまま宴会を続行した。
    子供たちは外に飽きたのか二階で遊んでいる。二階はザフィールの部屋があって、おもちゃの箱とぬいぐるみが一つあった。
    「これエネコって言うんだ!」
    ピンク色のネコ。ザフィールはそれが好きだと言っていた。ガーネットが触ろうとすると、大切なものを持っていかれそうな目で見ている。
    「かわいいね」
    「そうでしょ?もっと大きくなって、本物のエネコと一緒にポケモントレーナーになるんだ!そしたら、ネネちゃんにもポケモンあげるよ!」
    「本当?じゃあ私、ピッピがいい!」
    「いいよ、約束する」
    ガーネットが左手の小指を出してきた。ザフィールも同じように小指を絡める。
    「嘘ついたら針千本飲ます!指切った!」
    離れる手。針千本の意味も分かってなかったけど、約束するときの常套句。


    「今日はありがとう。また暇みつけたら遊びに行こう」
    帰り際、センリは言った。オダマキ博士も同じ。
    「早くホウエンに帰れるといいな!」
    「そうしたいがな、ジョウトでやっと見つけた仕事だからそうも行かん」
    センリに手をひかれ、ガーネットが振り返る。
    「バイバイ、さーくん!」
    ザフィールが手を降っていた。振り返す。約束を忘れないと言って。



    「良くも食べてくれたわね」
    ガーネットが恐ろしいオーラを身にまとって近付いて来る。ザフィールは思わず後ずさり。
    「だって、その、そんなテーブルにあったら食べていいのかと…」
    「あるわけないでしょ!ここのケーキ手に入れるのに何ヶ月前から予約すると思ってんのよ!」
    テレビに出ていた、人気の洋菓子店。そこのケーキを買っておいたら、ザフィールが勝手に食べた。しかもガーネットが一番楽しみにしていたゴスの実ケーキ。当然の怒りである。
    「いや、その、ごめん!食べていいものだと…」
    「バカ!」
    食べ物の恨みは恐ろしい。壁際に追い詰める。殺される。あまりの怖さに頭が床とくっつくのではないかというくらいに土下座する。
    「…謝ったから許してあげよう。そのかわり、今日の夕飯はザフィールのおごりで。そうそう、このあたりにおいしいお店あるんだよねえ、ちょっと高いんだけどー」
    そのときのガーネットの笑みは、悪魔の笑みに等しかった。ようやくザフィールが顔をあげ、立ち上がる。その瞬間、ガーネットの手にザフィールの頭が触れた。
    「…いいなあ」
    ため息をつく。白くてさらさらしていて、よく見れば艶も良い。色がついているライトを当てれば、天使の輪が出来るくらいに綺麗な髪。立ち上がったザフィールの髪をこれでもかというくらいに触る。
    「本当、新雪みたいで綺麗だよね」
    「うーん、前にも誰かに言われた気がするだがなあ、ハルちゃんじゃないし…」
    「誰でもいいんじゃない?私と感性が一緒ってなだけで」
    二人とも既に覚えていない。約束も、話したことも。そして立場が完全に逆になってることも。ポケモンを渡す約束など覚えてるはずもなかった。けれど二人は何となくだったのか、記憶の片隅にあったのか。ザフィールが選んだガーネットへのプレゼントはピッピのもの、そしてガーネットがザフィールに選んだ贈り物はエネコのもの。誰に言われたまでもなく、自然と手が伸びたのが、それだった。
     


    ーーーーーーーーーーーーーーー
    ケーキが食べたい。
    子供を描くのはとても苦手です。
    小さい頃のビデオがわんさか出てきましてね、それに映っていたワンシーンを文章化でございます。
    もちろん、覚えておりません。
    カイナシティって絶対においしい海鮮が食べれるところがたくさんあると信じてやまない。

    【すきにしていいのよ】


      [No.1392] 願ってみた 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/07/04(Mon) 23:41:08     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     ――今年も七夕かぁー。

     僕は目の前のおおきな笹を見上げておもった。
     ――てくてくてく。
     「てく」が来た。ま〜た僕がつまみ食いしてると思ったのかな。
     と、思ったらどうやら違うみたいだ。「てく」は短冊をもってた。小さい手で、ヒラヒラさせて。
     それにはお母さんのキレイな文字で、お願い事が書いてあった。中味を読んだ僕は恥ずかしくなってしまった。
     僕は自分の短冊を持って、そのまま「てく」のもいっしょに笹に着けた。

     「はやくつよいポケモントレーナーになれますように」
     という僕の短冊の影に隠れるように、コソコソと「てく」のも着けた

     「お兄ちゃんとずっと仲良しでいられますように」
     にこにこ。ぴょんぴょん。
     「てく」がなんだかとっても嬉しそうで、僕もちょこっと笑った。えへへ。


    「てく 〜いやしん坊ラルトスの話〜」より
      
    ---------------------

    なんだか池月のこと気にかけてもらってるみたいで、ありがたいです!
    ……え? ちがうの?


    池月「あの日の過ちが帳消しになりますように」  
    某診断メーカーより


      [No.1391] 書かぬなら 投稿者:紀成   投稿日:2011/07/04(Mon) 23:33:59     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    書いてみせよう 短冊を

    ユエ『カフェにお客が沢山来ますように。あとマスター早く帰ってきて』

    ミドリ『仕事がうまくいきますように。素敵な恋人が欲しいです』

    ミスミ『出番くれ。私の存在を知らない人が最近増えてる』

    ミコト『・・ノーコメントで』

    ファントム『何か面白い事件とか起こってよ』

    ヒナ『マスター出し抜きたい』

    ヒメ『何事もありませんように』

    マスター『平和でありますように』

    レイナ『どこの地方でもいいから、孤島の事件を解きたいわ』


    いちおー紀成も。

    『皆様の小説をもっと読みたい。あと成績表に一がつきませんように』


    願いよ叶え いつの日か
    そうなるように 生きていけ
    僕は僕に 君は君に
    拝み倒して 笑えばいい


      [No.1390] うちのこが、かきたいって 投稿者:キトラ   投稿日:2011/07/04(Mon) 23:15:33     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「池月が金を返して逃げ切れますように。旧友として   金柑」
    ピンク色の短冊を、ライチュウが器用にしっぽで吊るす。そして下にいるゾロアから青色の短冊を受け取って、違う所に吊るす。
    「振り向いてくれますように    黒蜜」
    何も言わず吊るす。最後に飼い主の短冊を笹に吊るした。
    「売り上げが伸びますように」
    名前かいてない。他にも女子たちの短冊を見ると、どれも「〜君が振り向いてくれますように☆」だったときは、ライチュウは何ともいえない気持ちになったもの。



    「強くなれますように   ゾロア」
    書いたんだーと、トレーナーのツグミが言う。ゾロアの代わりに笹に吊るす。すでに先客はたくさんいて、隙間がないほど。ゾロアは何を書いたのか聞いてくる。内緒だよ、とツグミは言うと、短冊を吊るした。
    「ゾロアの願いが叶いますように   ツグミ」


      [No.1389] ささのはさらさら… 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/07/04(Mon) 23:07:41     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    おや? オルカは 笹を 発見した。
    「七夕なのでたんざくつるしてみましょう。」

    では、後は願い事を書いてもらって…。
    私の手持ちからいきます。詳細はよろず板の、「名前をつける派?つけない派?」をご覧下さい。

    『サイコソーダがたくさんのみたい 非リア充脱出  シェノン』

    …なんか後者の文字から黒いオーラが…。

    『オルカがもうちょっとマトモな小説書けるようになりますように  ナイト』

    余計なお世話じゃあぁ!!

    『十字ボタンの操作をもうちょっとていねいにしてください  サワン』
    『出番増やして… 頭ぶつけただけとか悲しすぎる。  レッセ』
    『チャット意外にも出番をくれでござる  カゲマル』

    これは願いというか要望じゃ…

    『池月さんの浮気キャラが直りますように  ティラ』

    …ノーコメントで。

    『家内円満 夫と子供がいつまでも健康でありますように  ナスカ』
    『はやく おかあさんみたいな りっぱな ウルガモスに なりたいな!  アポロン』
    『子供にジト目をされませんように  ファル』

    やっと七夕らしいのが来た。と思ったらここで終了です。
    では最後に私オルカの願いを。
    『これからもポケモンを愛していけますように。 ポケストばんざい!  銀波オルカ』


    【たんざく 増やしてほしいのよ】


      [No.1388] 近くに居ても、その距離は遠すぎて 投稿者:西条流月   投稿日:2011/07/04(Mon) 01:09:04     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     天才は出来が違う。
     本当に人間なのかと思いたくなるぐらいだ。
     いつだって天才は迷わない。それがよくわかるぐらい、天才という存在は身近にあった。
     同い年のあいつにとって、自分がすべきことは明確で明瞭でそれをすることに躊躇いなんてしない、二の足なんて踏みはしない。
     間違えてるなんて考えもしない。
     凡人の理論を一発で覆すような閃きを当たり前のように捻り出す。
     凡人が苦労して作り上げた一つの理論を、唯の感覚で突き崩し、十の理論をくみ上げれば、一つの閃きで瓦解させ、百の理論を使おうが二つの閃きで勝ってしまう。
     才能というものがあるのだと、確信させられる存在。
     なんであそこでああいう風にできたのかを聞いても、きょとんとするだけ。お気に入りのぶかぶかパーカー、その袖をだらしなくプラプラさせながら、当たり前でしょ、と答えるだけ。確かに、何度見てもああするのが一番いいのだけれど、それは事実なのだけど、なぜそれができたのか。初見だったはずなのに、的確に判断できるのか。そこを聞きたいのに答えてはくれない。
     それはある意味で天才の天才である由縁なのだ。
     過程なんか存在しないと言わんばかりの態度。直感だけで判断して、それが全て的を射る。
     凡人なんかではわからない領域にいる。
     努力すれば、勝てるなんてよく言うが、努力程度で抜かれるやつは天才ではない。
     地べたをえいこら頑張って走っても、飛べるあいつに適うことなんてありはしなかった。
     いつだって眠そうな目をして、何を考えてるのか分からないような発言ばかりをしてるくせに、ポケモンを繰らせたら、右に……いや足元にだって及ぶやつなんて誰もいなかった。
     ポケモンリーグでもそれは変わらず、俺が一次予選で脱落する横で、当たり前のようにコマを進めて、トーナメントを勝ち抜いていった。
     ぼんやりとした顔のままで、相手の悔し涙なんて歯牙にもかけず、健闘を称えあう握手に無感動に応じていた。
     強くなりたい、チャンピオンになりたい。俺はずっとそう思って、努力して、負けても次を頑張ろうと手持ちのやつらと泣きながらも立ち上がってきた。
     だからこそ、勝てた時は嬉しかった。その嬉しさが原動力だった。
     迷っても、打ちひしがれても、立ち上がリ続けた。
     あいつはそういうことがあるのだろうか。いやないんだろうな。
     当たり前のようにバトルを始めたのは、おれと同じだけど、あいつが楽しそうにバトルを……いや楽しそうに何かをしているのなんて見たことない。いつだったか、あいつの母親が女の子なのにあんな無愛想なんて、と嘆いていた。笑えばかわいいに違いないのに、とも。
     後者の言い分はともかく、前者の言い分は確かに、と思わずにはいられない。
     眠そうに喋って、もそもそと食事をして、のそのそと歩くあいつは食欲のないゴクリンだ。
     何を考えているのかもわからない。ぼんやりとしたその瞳で見る世界はどんな色をしているのだろうか。少なくとも俺と同じ色はしていないだろう。
     勝利を目指すのではなく、結果として受け取る姿勢。あいつの対戦相手は対峙した瞬間、自分が負けるということを感じてしまうのか、どこか呆然と、あるいはポチエナが良く吠えるようにギラついた表情をしていた。
     あいつはやっぱりぼんやりとした表情で倒し続けていた。
     その中には、ポケモントレーナーなら誰でも知っているようなリーグの常連トレーナーもいたのだけど、あいつはそのことに気が付いていたのだろうか。
     いや、関係ないのか。
     空気を吸うように、あいつは勝ち続ける。眉すら顰めずに、相手を倒していく。ただ淡々と倒していく姿勢。
     あいつはどんなことをしても、遠くを見ている。物理的なものじゃなく、精神的な意味合いで遠い何かを。
     幼馴染という間柄である俺が隣に居ても、それは変わらない。返事はする。応じてはくれる。でも、それはあくまでも受動的。あっちからきてくれることはない。
     それがどこか寂しくて、前に一度だけ聞いたことがある。
     お前が欲しいものってなんなんだ、って。
     言ってから、これじゃプレゼントを送るときみたいだとは思ったけど、それ以上に相応しい言葉は……いや正直に言えば、言ってから恥ずかしくて固まっただけなのだが。
     あいつは俺の感情の機微なんて分からないのだろうけど、やはり固まっていた。珍しい。
     やっぱりいい、と訂正しようと思った。
     こんなことを聞くのは、俺らしくなかったと後悔する以上に、あいつがぼんやり以外の表情をしていたからだ。
     持て余したぶかぶかの袖で顔をぽりぽりと掻きながら、冷めた目。
     長い付き合いではあったけれど、それは初めて見た感情が感じ取れる目。
     今まで見せられなかった領域へ不用意に足を踏み入れたことが怖かったのだ。
     だから、そんな目をさせる答えを知りたくなかった。
     結論から言えば、それは大したことでも何でもなかった。

    「強い人が見たい。ワタシより強い人を」

     いつもみたいな無関心ではない。確かにそれに対しての欲望を持っている。探してる、求めているという言葉とは違う。いや、実際にはそうなのだけど、渇いているという表現が相応しいほどにそれを渇望している。そのくせ、あいつはそれが手に入らないことを知ってる。
     そんな目をしていた。
     別に欲しいものが手に入らなくても生きていけるけど、とぼそりと付け加えるとあいつはいつもの空虚な目に戻っていた。
     こっちの様子なんてどこ吹く風と空を見つめていた。
     あいつの認識はどこまでも正しかったのだろう。
     結局、その年のポケモンリーグであっさりと決勝へと進んでしまった。苦戦なんて起きもせずに。ただ、予定調和のように進み、あいつとあいつのポケモンは作業のようにバトルをしていた。
     初めてのポケモンリーグでそこまで進むのもやはり予定通りで、あいつは喜びもしていない。多くの夢を政治家の事業仕分けのように切り捨てたことに何の感傷も抱いていなかった。
     きっと決勝の相手もそんな風に切り捨てられるのだろう。
     決勝の相手も神童と呼ばれている同い年の相手のようだが、下馬評を見る限りじゃ、あいつの勝ちは確実みたい。俺と同じ予想。当然だ、あいつは天才。勝てるやつなんて、存在しない。当たり前のように勝ち抜いて、その先にいる四天王をなぎ倒して、淡々とチャンピオンになるに決まってる。
     正直、決勝は見るか悩んだ。準決勝の相手が前年度まで四天王をやってた人間という優勝候補ナンバーワンとのカードだったからだ。
     見劣りなんてものじゃ効かないほどにしょぼいカードに思えたのだ。
     確かに決勝ではあっても、あいつの勝ちは揺るがないだろうし、相手が強くても、ただの無名のトレーナー。この大会で頭角を現しただけにすぎない。
     けれど、ついでということでその試合を見ることにした。どうせなら、と軽い気持ちで見て、度肝を抜かれた。
     何分で倒すかということが賭けの対象になっていた消化試合。誰もが期待してないその試合であいつの見たことない姿が見れた。
     刹那の合間を縫って、指示を出す。ぶかぶかのパーカーを邪魔とばかりに取り払って、身振り手振り。今までの無意識のポーカーフェイスを崩して、獰猛に笑う。滝のような汗を拭わず、バトルに集中するあいつからもっとも遠いポケモンバトルの根源に感情、楽しいというものが感じられた。
     十の閃き、百の先読み、千の指示。それらが目まぐるしく飛び交う一進一退の攻防は観客全てを魅了した。
     時が止まり、いつまででも続くと思った。でも当たり前のようにそれは唐突に終わった。
     大方の予想通り、あいつの勝ちで。
     しかし、それは誰もが予想した、圧勝という形ではなかった。あいつの最後のポケモン、マニューラは小指で突かれただけで倒れそうなほどに消耗し、指示を出すあいつは息も絶え絶え。辛勝、僅差の勝利という言葉が似合っていた。
     それでもあいつは楽しそうだった。ぼんやりでも冷めている訳でもない、楽しくて楽しくて、しょうがないという目をしていた。
     そして、俺が何より驚いたのは、勝敗が声高らかに宣言された後、バトルフィールドを突っ切って、対戦相手に向かっていったことだった。
     体力を使い果たしたことと負けた悔しさでへたりこんでいた相手の方も相当面食らったらしく、何事かを話しかけるあいつに見入ってるだけだった。
     それでも、あいつが差し出した手を取って、立ち上がる。
     そして、二言三言言葉を交わし合った後、あいつは自分の控え室へと戻る。
     あいつが帰る途中、あいつの顔を見た俺の脳内では、おばさんの言葉を唐突に再生された。
     笑えば可愛いのにという親バカ全開な言葉だ。


      [No.1387] 恋愛ものです。間違いない 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/07/03(Sun) 22:38:42     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    乙女心とポケモンのとくせいは変わりやすいのです。
    振り向かないほどに燃える


      [No.1386] 一本300円 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/07/03(Sun) 18:18:57     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    高いビルの隙間から、曇天の空が見える。
    主の腰から見上げていると、俺が入っているボールの表面に、ぽつり、と水滴が当たった。

    「…雨?」

    とたんに主が駆け出し…
    『がんっ』
    俺はボールの壁にぶつかった…。
     
    『ごんっ』
    (へぶっ)
    どうやら隣のシュバルゴ、ナイトもぶつかったらしい。
     
    『びたんっ』
    (きゃっ!?)
    あ、今のはゾロアークのティラだな。
     
    主の腰が振動するたび、ボールも激しく揺れる。上下左右に揺れ動くボールの中で、俺たち手持ち六匹は自分の体を守るのに必死だった。
    (十字ボタン操作荒いんじゃああぁ!!)
    ボールの中だから主に聞こえるはずも無いが、一声吠えてみる。
     
    土砂降りになる寸是で間一髪、主はポケモンセンターに駆け込んだ。そのままソファーに疲れて座り込む。
    一方、振動地獄から開放されたボールの中では、それこそ六匹の苦情が雨のように降り注いでいた…。

    (頭打ったんだけど…)
    そう言うのはレッセ。コジョンドで、身のこなしも軽い彼女が頭を打つ位だから、相当な揺れだったのだろう。

    (マスター、人にぶつかってましたよね…)
    (ここヒウンシティだからかなり迷惑だったと思うんだけど。)
    ドレディアのサワンとウルガモスのナスカ。この二人、怒らせると辛口である。

    (リーダー、大丈夫だったの?)
    (…少し背中を打った。)
    (めずらしいわね。リーダーってああいう揺れには一番慣れてるんじゃない?ミジュマルの頃からの付き合いだし。)

    流石ナスカ、鋭い。俺があの揺れに対応できなかったのは、考え事をしていたからだ。
    俺はダイケンキのシェノン。

    (…その顔は、思い出を懐かしんでたって顔ね。)
    (どうやったらそこまで俺の気持ちが分かるんだよ。)

    ウルガモスであるナスカは、無表情、というか表情が顔に出ない。
    ハッキリ言って無表情で自分の感情を読まれると、とても恐ろしいのだが。

    (ま、どんな事かまでは干渉しないけど。)
    (…頼むからそこまでにしてくれ。)
    (リーダーの思い出かぁ、きっと初めてここに来たときのことだよね。)
    (ティラまで何なんだよ。)
    (だって、リーダーその時フタチマルだったわけでしょ?今よりずっと可愛かったのかな〜って。)
    (こら。)

    女って本当怖い。こういう話になるとどうしてそこまで敏感になるのか…。分からない…。
    ナイトも、少し理解の出来ない様子で何も言わずにこちらを見ている…。正直目線が痛い。

    (ヒウンシティっていうと、やっぱアイスとかの??)

    そしてなぜこうも推測が当たっているのか。アイスではないが。


    ビルの間の空を見ていると、進化したてだった頃の自分も、こう空を見ていたな、と思い出す。

    そして、自動販売機の前に立つ主。進化した祝いに買ってくれた『サイコソーダ』。

    確かスカイアローブリッジで、遠い入道雲を見ながら飲んだはずだ。

    このメンバーの中で知っているものはいない。恥ずかしいが、一つ大切に取っておいた思い出だ。

    当たってもう一本出てきて、喜んだりもしたっけか。

    そろそろ夏だな、と思っていたら、モンスターボールの振動地獄が来たのだった。
    今度、主に頼んで、またスカイアローブリッジの上で飲もうか。

    主が外に出ると、さっきの土砂降り嘘のように午後の金色の陽が降り注いでいた。
    ビルの表面の赤い文字の広告が目に映る。

    『しゅわしゅわはじけるサイコソーダ!お手持ちのポケモンちゃんといかがですか?』


    というわけで、俺の好物はサイコソーダなのだ。



    お題:雨

    書いてみましたあぁ初小説です。うん、いろんな意味でやばい。やばすぎる。素人ですのでお許し下さい。
    オルカ は 深海の 奥底に ひきこもって しまった…。イケズキさんごめんなさいティラの出番がっ

    【描いてもいいのよ】【書いてもいいのよ】
    【批評は超緩めにお願いします】


      [No.1385] 再掲です 投稿者:茶色   投稿日:2011/07/03(Sun) 15:50:52     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    こんにちは。茶色です。

    本作は昨年の5月にふと思いついて書いた掌編です。
    1年くらい前にログ消失に巻き込まれて消えてしまっていましたが、ふと思い立って再掲しました。

    先日書き上げたものと同じ題材だなぁ、と上げてみて気付きました。
    個人的には、今後しばらくは、もう少しエグい方向性で攻めていきたいです。
    そのためにどんなコントラストが必要か、ちょっぴり考えてみたり。

    それでは、読んでいただきありがとうございました。


      [No.1384] 跋渉 投稿者:茶色   投稿日:2011/07/03(Sun) 15:43:05     103clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

       跋渉


     歩く。
     飛ぶ。


     人が過ちを犯した森、黒こげの幹が残っていた。
     あたり一帯が焼け野原になっていた。
     この森を燃やした木の葉はもう残っていない。その木の葉をつける木は、一本も残っていない。

     愚かなことだ。森は少しずつ燃えるものだということも知らず、火がつく度に火を消した。
     たまりにたまった木の葉や枯れ木は一気に燃え上がった。そして森が消えた。

     これが愚かと言わずなんと言おう?
     森を殺したのは火ではなく、人なのだ。
     浅はかな考えで小火を消して、大火を招いた。


     木の葉の燃えカスが白のスニーカーを灰色に染める。
     ヂリヂリと燃えた木の葉は灰色になって、前と同じように地面を覆っている。私が踏んだ所だけ、私の足の跡がついた。
     木の燃えカスが灰色のスニーカーを黒く染める。
     パチパチと燃えた木は黒い炭になって、灰色の地面の上に転がっている。踏んでも感触すらない。踏んだ所だけが砕けた。

     屍臭がする。
     黒く焼け焦げた屍骸の群れ。
     火が消えて日が経とうというのに、足跡一つ残っていない。
     山から山を渡り歩き、かつての森を端から端まで歩き回っても、一つも残っていない。
     捕食者も被食者も、植物も動物も全ていなくなったのだ。いるとすれば、目には見えない、肉を腐す彼らだけなのだ。


     歩く。飛ぶ。

     丘を越えた。谷を越えた。東に向かった。西に向かった。
     続くのは空の青と白、大地の灰と黒。

     諦めがついた。もうこの森は死んだ。
     私は灰の混じった川に沿って歩き出す。もうここにはいたくない。

     ひょろろろろー

     空にいる彼が鳴いた。彼は何かを見つけたのか、一直線に丘を越えていった。
     私は彼を追いかける。
     丘を越えると、とりわけ大きな木の幹が見えた。炭となった木の幹があった。
     彼はその上空を回っている。ここだよ、と私に告げている。
     私は丘を降りて行った。初めは気付かなかったが川の方から緑色の何かがいくつか、その幹に近づこうとしている。

     キモリ?

     こちらに気付き、彼らは警戒の目を私と私の相棒に向けた。
     私は立ち止まる。何も残っていないこの森に何故彼らがいる?
     確かに川には魚がいる。食べられないことはない。だが、彼らはそもそも魚を食べるのだろうか。
     そして、どうしてジュカインやジュプトルがいない?

     ひょろろろろー

     相方がまた鳴いた。彼が言いたいのはキモリ達のことではないらしい。
     私はもう一度、木の幹を見る。
     黒く染まり、枝も葉っぱも焼け落ちた大木だ。この森で一番大きな木だったのかもしれない。
     じっくりと木を見る。

    「これは、」

     残った幹の根に、緑の双葉が生えていた。
     この木の子どもだろうか。寄り添うように生えている。害がないことをキモリに伝える。
     私は緑の前で膝をついた。トロピウスが降りて来る。それを見て、キモリ達もやって来た。

     キモリはこの子を守っているのだ。

     いつ生えたのかは分からない。でも、この子は生きている。
     木は樹になって、キモリはジュカインになる。
     樹は種を作り、ジュカインはキモリを産む。
     やがてそれは森になる。

     森は生きている。
     それをキモリ達は教えてくれている。


     『跋渉』おわり


    お題:樹
    【描いてもいいのよ】【書いてもいいのよ】


      [No.1383] とあるオタマロの混沌恋愛 投稿者:西条流月   投稿日:2011/07/03(Sun) 03:15:45     76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     タカミネさん家のカケルくんが目を覚ますとベッドの上でした。何故なんでしょうか。いまいち記憶にないのですが。うんうん唸って思い出そうとするところに、一人の女の子が話しかけました。
     ここ、シッポウシティに住むハトリ家の一人娘、キヨカちゃんです。カケルくんはキヨちゃんと呼んでいます。
     小麦色の肌に黒い髪とは対照的な白いワンピース。腰の部分と頭にアクセントとして、瞳と同じ色の明るい青色のリボンが使われていて、とても愛らしいです。
    「ジョーイさんが言ってたよ。今日も負けたんだって?」
     あぁ、なるほど。頭をぽりぽりと掻きながら、現状を把握。ここはポケモンセンターのようです。それもここ最近、手持ちが全滅するたびに運び込まれているシッポウシティのポケモンセンターです。
    「そういえば……ヤグルマの森に行ったんだっけ」
     カケルくんはもうシッポウシティのバッヂを手に入れているので次の町へと向かおうとして……
    「またオタマロにここまで運んでもらったんだって聞いたよ」
     そうです。カケルくんはここ最近、オタマロに手持ちを全滅させられてばっかりなのです。そして、目の前が真っ暗になったカケルくんを運ぶオタマロの姿は、地方新聞に取り上げられるほどに有名になっているのです。キヨちゃんと知り合ったきっかけもこの記事を読んだ彼女が面白がって話を聞きに来たことが最初でしたっけ。
    「通算何敗目?」
    「確か、八十八敗」
     言わなくとも分かるとは思いますが、これはオタマロに全滅させられた回数です。朝昼晩の三回、ヤグルマの森に行くのが日課となっているので、シッポウシティへの滞在日数はバッヂを手に入れてから、ほぼ一か月です。暑気は去りきって、イチョウが色づく季節となりました。
    「カケルって弱いんだね」
     ポケモンマスターが夢であるカケルくんにとって、弱いという言葉は心を刃で削るどころか、ダイナマイトで粉砕する勢いの口撃でした。
     子供はいつだって残酷です。躊躇や迷いなんてどこ吹く風。天真爛漫で無垢だから、オブラートに包むということをしてくれません。
     カケルくんだって子供なので、受け入れることなんて全然できません。
    「俺は弱くない」
    「でも、全滅してるんじゃない」
    「オタマロが強すぎるだけだ」
    「でもさー、カケルの手持ちってダイケンキ、ドリュウズ、ゼブライカじゃない。それもだいぶ強いってアロエさんが褒めてるぐらいよく育てられてるポケモンなのに。オタマロに全滅させられるっていうのはカケルが悪いとしか思えないんだけど」
     ぐうの音も出ないとはこのことですね。いや実際はお腹がすいてるのでいつ鳴りだしても、おかしくはないのですが比喩表現というやつです。
     そんな文学的主張はさておき、キヨちゃんの言うことは間違ってはいません。カケルくんの手持ちはジムリーダーに褒められるぐらいの強さを持っているのに、オタマロに全滅させられているのは事実です。オタマロが水タイプだから、ドリュウズは不得手としていますが、ゼブライカは電気タイプなので、絶好の相手ですから、まったくもってその通りなのです。この辺りに出るポケモンのレベルは低いですし、普通に戦えば負けるはずはないのですから、キヨちゃんの発言は全くもってその通りなのです。
    「カケルって才能ないんじゃない」
    「そんなことないから。ポケモン育てたのは俺だから」 
    「じゃあ、ブリーダーの才能はあるんだ」
     やっぱり黙るしかないカケルくん。仕方ありませんね、古来より口喧嘩で女性に勝てる男の人なんていないのですから。柳に風と受け流すのが一番いいのです。
     勝ってはいけない、勝たせないといけない勝負。それが女性との口喧嘩なのですから。
     事実しか言われてないから反論できないとかとはまったくもって関係ないのです。
    「絶対次の町に行って、強いってこと証明してやるから」
    「あはは、それはないでしょ」
    「いや、次こそは勝つから」
    「遠いところから応援だけはしておくよ」
     からかうように笑いながら、そう言うキヨちゃんにカケルくんができるのは憮然とその言葉を受け入れるだけでした。


     そんなやりとりをした数時間後、カケルくんの姿はヤグルマの森へと続くシッポウシティの出口にありました。当然、次の町へと行くためです。
     今、カケルくんの表情はポケモンリーグ決勝戦に出るトレーナーと同じぐらい張りつめています。町を出るだけなのにこんな表情をしなきゃいけないんでしょうか。
     それはカケルくんの目の前にいる一匹のオタマロが最大の原因です。
    「ンーフフフフ。ダーリン、こんにちは。とうとうあちしを引き取りにきてくれたのね〜ん」
     はい、こんなことをほざくオタマロさんが最大の原因なのです。
     ちなみにめちゃくちゃ流暢に喋ってます。微妙にお姉口調な気もしますが、ぺらぺらです。
     そう、このオタマロ(名前未定)こそがカケルくんを八十八回もの全滅に追いやっている張本人だったりします。
     なぜか喋れたりもするハイスペックなオタマロです。
     なぜ喋るかについてなんですが、よくわかりません。ただ、

     ◆ ◆ ◆

    「ていうか喋れるんだね」
    「オタマロのアルファベットで勉強したのよ〜ん」
     自信満々に胸……はないので体全体を心持ち反らすオタマロさん。顔は当然ドヤ顔です。
     なかなか向学心溢れるオタマロさん。そんなことどうでもいいことではありますが。
     それにしてもオタマロのアルファベットってなんなんですかね。もしや、オネエ口調の原因なんでしょうか。
    「貴方は私を愛さなければならないのA!」
     ちなみに、オタマロのセリフ”あなたは私を愛さなければならない”を英訳すると、”You must love me”となるのでどこにもAは使われてません。きっと超次元的にAが混入したんですね。

     ◆ ◆ ◆

     というようなやりとりがあったということだけをここには書いておきます。
     こんな些細なことなんてどうでもいいのです。
     今重要なのは、どうやってこのオタマロを回避して、次の町に行くかなのですから、別にいいのです。
    「誰か、他の人にお願いしてください。ちょっと急いでるんですから」
     とりあえずはいつも通り言葉で希望を伝えます。話し合いって重要ですよね。
    「逃げるのはダ☆メ☆よ」
     バチーンとウィンク飛ばして、甘ったるい口調でカケルくんへの警告。流し目は標準装備です。
     アウトです。このセリフはアウトです。女の子が言わなきゃ……オタマロさんは女の子でしたね。じゃあ、OKということにしておきましょう。
    「あなたがこの町を出れるのは、あちしをゲットしてからよん」
     その言葉を皮切りに、近くの石、木の陰といったありとあらゆる場所から、オタマロがあふれ出てきます。戦うたびに見ているのですっかり見慣れた光景です。しかし、見慣れたとはぞっとしますね。
     あまりの恐ろしさに思わずカケルくんは右の方を向きました。現実逃避ですね。
     しかし、逃避した先に広がっていたのは、より大きなカオスでした。
     なぜなら、そこには見渡す限り、
     オタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオクマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマコオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロが並んでいたからです。
     …………その数の多さは文字列にするとちょっとオタマロでゲシュタルト崩壊が起きそうなので逆方向へと視線を向けてみます。
     やっぱりそこには、
     オタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオサマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオラマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロオタマロが並んでいた。
     …………予想通りというか織り込み済みというか、オタマロゲシュタルト崩壊現象が起きそうな光景が広がってました。ここの生態系はどうなってるんでしょうね。オタマロ多すぎです。絶対亜種とか混じってます。
     後ろなんて怖くて見れません。同じような光景だと精神が崩壊しますけど、きっとそうでしょうし。
     目の前見ても悪夢というかカオスな光景には変わりありませんがね。
     そして、これがカケルくんがオタマロ相手に何度も全滅している理由です。
     レベルの低いオタマロと言えども、塵も積もれば山となると言えばいいのでしょうか。この数では流石に倒しきれないのです。今だって、この数を見れば、折れてしまいそうです。
    「んーフフフフ。あちしの彼氏になってくれる覚悟はできたようね」
     できてません。あと一億と二千年待ってもらっても多分無理です。やっぱり彼女は同種族がいいですよね。できれば、色気溢れる年上のお姉さんがベストです。
     カケルくんは頭が痛いを通り越して、脳みそがミキサーで磨り潰されてる感じがしています。主に常識が。
    「すいません。未来永劫あなたの彼氏になる気はありません」
    「んーフフフフ。あちしの伴侶になってくれる覚悟ができたようね」
     なんだか、段階が一段上がってますね。なんでなんですかね。トリックルームでも発動してるんでしょうか。カケルくんは確かに断ったんですがね。
    「何が起きても、あなたとこれいじょう距離は縮めるつもりはありませんのでそれでは」
     そうして、無視して通り過ぎようとします。いや、あれですよ? カケルくんも分かってるんです。オタマロを無視して進めないことぐらいはね、分かってるんです。世界の意思がオタマロを無視してはいけないと命じていることぐらいは八十八回もオタマロに全滅させられていたら、自ずと悟るものなのです。
     でも、無視したいじゃない。人間だもの。
    「ダーリン、私を置いて、どっかに行っちゃうなんてひどいじゃないの〜。そんなことゆるさないんだからね」
     もうツッコミが間に合いません。恐るべし、恋するオタマロ。
     カケルくんLOVEなオタマロから距離を取ろうと一歩後退するとそこには彼女の取り巻きのオタマロがいつの間にか回り込んでいました。というか、周りの地面がオタマロで足の踏み場もないぐらいです。
     その多さたるや……本気で精神が崩壊しそうなぐらいの数がいるので文字列に表わすのはやめましょうか。気持ち的には十万三千匹ぐらいいそうです。
     オタマロと言えど、流石に踏み潰そうとは思えません。逃げるのを諦めました。現実に向かい合います。現実は辛いよ。でも、それが現実なのです。
    「大体、あちしはお買い得よ〜ん、イッシュでは数少ない水タイプのポケモンだし」
    「ダイケンキがいるんで間に合ってます」
    「おしゃべり、ゆうわく、メロメロっていう普通のオタマロじゃありえない技構成してるし」
    「その技構成なら、普通の女の子がいいです」
     宇宙の真理ですよね。
    「もう、ダーリンのイ☆ケ☆ズ! わたしの 全身から 溢れる あなたへのLOVE を受け取りなさいよ」
    「ごめん、無理です」
     これもまた宇宙の真理ですよね。
    「今日こそは次の町へ向かって見せる」
     確かな意思を見せるカケルくん。それを見ていたオタマロは今までのドヤ顔から一転、どこか寂しさとむなしさを感じさせる表情へと変わると
     それは変わることのない強い意志。オタマロを手持ちに加えずして、次の町に行くという強い意志。腰にぶら下げたボールから相棒たちを呼び出せば、彼らはやる気満々。オタマロ大群に恐れてなんかいません。伊達に八十八回も全滅させられてません。意気揚々とオタマロの群れへと向かってきます。千切っては投げ、千切っては投げと彼らを倒していけます。そして――


     そして――気が付けば、ポケモンセンターです。どうやらカケルくんはまたもや倒しきれず、全滅してしまったようです。
     目を開ければ、そこにはキヨちゃんがいました。
    「ていうかさー、カケルはなんでオタマロに求婚されちゃってるの?」
    「それが分かれば苦労してないよ」
     本当になんでなのか。それさえわかれば、先に進めるのに。カケルくんは内心でそう思いながら、キヨちゃんに笑いかけました。思えば、彼女とは意外と長い付き合いになっています。
     ベッドに腰掛けた彼女はからからと笑っています。カケルくんが出れなくて困ってるというのに、いい気なものです。はやく次の町に行って、ジムリーダーと、まだ見ぬライバルたちと戦って、強くなりたいのに。こんなところで足踏みはできない。躓いてばかりじゃいられない。それが分かっているのに、オタマロに勝つことができない現実はカケルくんを悩ませます。
     いつになれば、カケルくんはここから抜け出せるのでしょうか。
    「まあまあ、焦んなくてもいいんじゃない?」
     表情に出ていたんでしょうか、キヨちゃんはそういうと、カケルくんの焦りを解すように頭を撫でました。
    「どこにいても、強くなることはできるかな」
    「そうそう」
     一生懸命に伸ばされるキヨちゃんの手で撫でられながら、しばらくはいいかと思ってしまうカケルくんなのでした。


    ――――
     
     間違いなく、マサポケ内で一番オタマロって書いた小説だと思う

    【オタマロなのよ】
    【カオス】
    【好きにしていいのよ】


      [No.1382] 春風に導かれ 投稿者:キトラ   投稿日:2011/07/03(Sun) 02:25:10     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     目を開けた。朝日が入って来ている。堅いソファの上。あちこちが痛い体を起こし、ユウキは軽くあくびをする。もう何日も研究室にこもりきり。風呂に入る余裕などなく、自分でも体臭が解る。べとつく髪をかきあげ、昨日から行なっている実験の観察にかかる。
     大学院。ポケモンのことを詳しく研究するために進学した。しかし学部生だった時の予想通り、時間がない。身分は学生だというのに、家に帰れない。今は就職活動もしなければいけない時期。だがユウキを救ってくれたのは昔のツテ。デボンコーポレーションという大きな会社にすでに決まっている。同じ研究室の同級生は彼をうらやましがり、裏ではコネをつかわないと入れないような小物とバカにしている。そして、その自分ではどうにもならない恨みを、ユウキ一人に実験を押し付けることで晴らしていた。
     教授も感知していない。あるのは、便利に動く院生のユウキ、というくらい。一流企業に就職が決まっていることを誇らしく思ってくれていることだけが幸い。そうして同級生と距離がどんどん出来ていてー


     実験が終わった。結果をメモしたレポートをメモリに移し替え、鞄に入れる。何日分かのゴミをまとめ、研究室にカギをかけると、やっと家路につく。
     昔はポケモンが好きだった。どんどん知識が増えて行くのが楽しかった。けれど今では、ポケモンの知識が増えていくごとに苦痛が伴ってくる。なぜこんな自分の生活を犠牲にしてもやらなければならないのか。就職活動という名目でなぜ代わりに実験を一人で請け負わないといけないのか。
     外に出ると、やわらかな春の風がユウキをなでる。もういつの間にか春一番が吹き、道路脇では小さな青い花が咲いている。もうすぐ桜の季節だ。昔から好きだった。次々と芽吹いてくる植物と、冬眠から覚めてくるポケモンたち。春を喜ぶように、いろんなものと出会えるから。ああ、少し寄り道していこうか、こんな春風の中、公園で寝ていくのも悪くない。道の途中にある河川敷の公園にユウキは立ち寄った。そして木陰のベンチに座ると、今までの疲れか、そのまま眠ってしまっていた。

     かさりと音がする。その音にユウキは目を開ける。そして目の前の人物は起こしちゃったね、と笑っていた。ユウキは寝ぼけているのかと目をこする。まぎれもなく本物だ。もう子供ではなく、大人の女の人。けれど面影だけは変わらない。子供の頃に一緒にホウエン地方を駆け回っていたハルカだった。
    「久しぶり! 元気してた?」
    「ハルカ!? ハルカだ!」
     思わぬ再開に、研究室での嫌な気分は吹き飛んでしまった。ハルカもユウキと会えたことが嬉しそう。そして実験がいいタイミングで終わったことに感謝する。
    「今、大学の近くで一人暮らししてんだ。散らかってるけど寄っていきなよ」
    「すごーい! ユウキって家事できなそうなのに」
    「ほっとけ」
     家までは後少し。それにしてもハルカはこの体臭なんとも思わないのか。ユウキは不安になってきた。こんなことならば、体を拭くくらいすればよかった。後悔しても遅い。玄関のカギを開けると、何日かぶりの自宅に入る。


     ハルカにお茶と適当なお菓子を出し、まず体を洗う。濡れてない風呂場が、どんどん湯気にそまっていく。久しぶりの水が伝わる感触は何とも言えず気持ちがいい。研究室にもシャワーくらいあればいいのだが、そんな施設はない。そもそも、研究室に泊まること事態が、学校側の許可が下りていないのだ。
     急いで着替え、今まできていたものは、全部洗濯機に放り込む。そしてバスタオルで髪を拭きながらハルカの前に出て行く。
    「はやいね。ちゃんと乾かさないと」
     座ってるユウキのバスタオルを取ると、その手で優しく頭を拭く。一緒にフエンタウンの温泉に行った時もこうしてもらっていた。そしてあの時は……
    「背伸びたね」
     ハルカも覚えてるのだろうか。まだ子供で、どうしていいか解らなかったあの感情。そして今、それが蘇ったようにユウキの心臓は鳴った。そのまま離ればなれになって、数年が経ったけれども。ハルカはバスタオルを取った。
    「はい、終わり」
     バスタオルをベランダにかけていた。そこまでしなくてもいいのに。戻ってきたハルカは気にするなとしかいわない。久しぶりに会って、ハルカもぎこちないような感じがあったのかもしれない。
    「ハルカ、ちょっといい?」
     手招きして自分の隣に引き寄せる。ハルカのいい香りが近づく。
    「どうしたの?」
     聞くまでもなかった。肩を抱き、懐に寄せる。慌てるハルカに、ユウキは冷静に言った。
    「ハルカ、覚えてる? 俺はあの時、ハルカが好きだった」
    「え、そ、そんな昔のこと……」
    「でも言えなかった。だから、今からでもいい。俺と……」
     ハルカは答えを言わなかった。そのかわり、ユウキの唇はやわらかいもので閉ざされる。長い歳月を超えた二人の想いが、そこにあった。ユウキの手に力が入る。ハルカを離さないように。
    「私も好きだよ、ユウキ」
     今度こそは間違いないように。気づかないフリをしないように。再び唇を重ねて、誓った。



     オダマキのやつ、彼女できたらしいぞ
     デボンだし、まじリア充だよな
     いいじゃねえか、あいつに全部任しておけばよ
     来たぞ、黙ってろ


     ユウキがホールに入る。今日は研究の発表の日。実験を代わりにやって、データをとって集計してやった同級生たちも発表する。自分の研究よりも時間がかかったやつもいた。ユウキは進行役。教授のお気に入りだから仕方ない。
    「それでは、研究発表を始めます。わたくしは司会、進行のオダマキ ユウキと申します。さて、発表してもらう前に、冊子をごらんください」
     聴衆が配られた冊子をめくる。何か訂正かと文字に釘付けだ。
    「この中に、いくつか間違ったものがあるのですが、それは各人で発表していただきます。各人が解れば、の話ですけど」
     人任せにしておいた分、隅々に目を通してるはずだ。そうでなければ、間違いを即座に訂正し、恥をかかせてやる。ユウキのただならぬ目つきに、同級生はうろたえた。まさかまじめなユウキが偽のデータを渡すわけはないとたかをくくっていたからだ。
    「では、順番通りに始めたいと思います」
     どこでユウキが訂正を入れるかなんて予想ができない。発表の順番が早く終われとみな願っていた。


     発表も終わり、テーブルや片付けをしている。担当教授からは、人のことまで解る素晴らしい院生だとユウキをほめたたえた。恥をかかされた院生たちは、気まずそうにしている。彼らをみて、なぜ院生で就職が決まらないかが少し解った気がした。そして自分がコネだけでなんとかなったわけでもないことに。
    「自分のことも自分で出来ないなんて、大人としてやっていけませんからね、俺はまじめにしますよ」
     思わずハルカに話した、学校での現状。それを聞いたハルカが泣き出してしまったのには驚いた。そして今の自分をやっと解ってくれる人に会えたのと、つられたのでユウキも泣き出す。涙が止まらないのに、ハルカを泣かせてしまったことを悔やんだ。二度と泣かせないよう、この現状を変えてやる。
     ユウキの決意は、ただならぬものだった。時にはデータをかえ、計算を一つ間違ってやったり、学部生との交流の際には、あちらの方が詳しいと自分に来ないようにしたり。それを面倒見のいい相談役だと思っていたのだから。今まで人にばかりやらせていた罰だと、心の中で思った。



     それから1年が過ぎた。卒業式の日で就職が決まっていたのは10人中4人。他にもいたのだけれど、あの発表の事件から学校をやめてしまったのが何人かいて、卒業する頃にはここまで減った。
    「じゃあ、連絡するから」
     就職してから住むところも決めていた。すでに移り住み、ユウキは家で待ってくれるハルカに伝える。わかったとハルカは言った。
    「研究室だもんね、最後の集まり?」
    「最後じゃないだろうけど、なんとか解ってくれた貴重なやつらだよ」
     あれから改心してまじめにやるようになった。そのおかげで、ユウキは何日も家に帰らないことなどない。毎日布団で寝て、ご飯も食べて。こんな当たり前のことが出来なかったのが不思議なくらい。
     ユウキは家を出る。式典と、かつての仲間に会うために。そして一つ、小さな箱を持って。見送ってくれるハルカに手を振った。
    「ハルカ!」
    「どうしたの!?」
    「ありがとう!」
     大学院の生活を変えてくれた人。愛しい人。愛すべき人。気づかなかったなんてもう言いたく無い。大切にしよう、これからも。ずっと。


     
     卒業式は学部生も院生も一緒だった。まだ若い学部生のノリというのが懐かしい。そんなに年をとったわけじゃないけれど、傍目でみるととても若いのだ。サークルでは胴上げしたり、騒いだり。昔はああだったなと、卒業証書を手に急ぐ。研究室のやつらはもう二度と会わないかもしれない。
    「オダマキ、これからどこか行かないか?」
     研究室の同級生が集まっていた。最後かもしれないけれど、ユウキは断る。問いただそうとする彼らより先に、ユウキは口を開く。
    「待ってるやつがいるんだよ」
     後ろからはリア充リア充とはやし立てる声がする。それは陰湿な言い方ではなく、むしろ祝福に近い言葉。ユウキは渡すものを確認すると、約束の場所へと行く。


     春の冷たい風が吹く。けれど植物は黄緑色の新芽を出し始めていた。ホウエンの田舎町、ミシロタウン。ユウキの実家がここにある。卒業式のこの日、実家で騒ごうということになっていた。もちろん、ハルカも一緒に。
    「卒業おめでとう。オダマキ博士Jr.だね」
     ハルカはそう言って大きな花束をくれた。父親はこれが世代交代というものか、と少し寂しそうだった。そんな父親を吹き飛ばすように、パーティは始まる。
    「父さん、母さん」
     乾杯の前に、ユウキは改まって止めた。どうした、と両親はユウキを見る。
    「俺が今日ここにハルカを呼んだのは、もう決めたんだ。結婚するって」
     ハルカは聞いてないという顔をしている。それもそのはず。渡すはずのものは、まだユウキの手の中。驚く両親を前に、ユウキはそれを渡す。銀色の婚約指輪。ハルカが寝てる間にサイズを計ったり、それはそれは意外なところで努力をして手に入れたもの。
    「ありがとう、ユウキ」
     ハルカの左手の薬指にぴったりとはまる。どんな美しい宝石よりも輝いて見えた。


    ーーーーーーーーーー
    チャットでの恋愛もののことで、書き始めたら予定と違うものができあがりましたすみません。
    予定のものは全く進んでおりません
    ので、忘れてないよという意味もこめて。

    【すきにしてください】【このリア充め】【ホウエン組ばかりうんざり?いいじゃねえか愛してる】


      [No.1381] ふがいない ものかきめ 投稿者:キトラ   投稿日:2011/07/02(Sat) 20:43:19     24clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ゲーチス「たしかに ポケモンは 未知の可能性を 秘めた 生き物です。
         全ての人々は ポケモンを 手放し ワタクシだけが ポケモンを使えればそれでいいのです
         ワタクシだけが 6Vを持っていればいいのです!」



    ーーーーーーーーーー
    ゲーチスは何やってもおかしくないと思うんです!


      [No.1380] きぐるみより愛を込めて 投稿者:紀成   投稿日:2011/07/02(Sat) 12:34:13     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    僕は俗世間で言うところの『草食男子』だ。小心者で、人の意見に振り回されて、大通りを歩くのは必ず大勢でないと歩けない― という感じだ。別に変えたいとは思っていないし、困ってもいない。
    そんな僕が決めたバイトは、ライモンにある遊園地のきぐるみだった。夏に近い季節、特に太陽が出てる時間帯はものすごく暑いけど、なるべく自分自身が目立たないようにしたい、という僕の希望はキッチリ叶えられている。…叶えられてるんだよね?
    風船を配ったり、子供に抱きつかれて一緒に写真を撮ったり、あと同じ子供でも蹴られたり(けっこう痛い)お客は様々だ。
    ある時はヤナップで尻尾を引っ張られ、またある時はタブンネでサブウェイ帰りであろうトレーナーに殴られたり(友人が殴っているのを見て『やめたげてよぉ!』と言いながら自分も殴っていた)、またある時はチラーミィで女性客に囲まれて写真を撮ったりした。悪い気はしない。
    何だかんだ言ってきぐるみの仕事は楽しかった。イベントステージに上がることはあまり無かったけど(きぐるみとしてのアクションが出来ないため)お客さんが喜んでくれるのは嬉しかった。

    「何でお前ばっか人気なんだ?」
    休憩時間で、配給されたサブウェイ弁当と近くのカフェのアイスティーを口に入れていた時のことだった。ドレディアの頭部を机に置いて、後ろのチャックを下げてもらっているバイト仲間が言った。
    「チラーミィ、ヤナップ、タブンネ…今日はズルッグ。皆子供や女受けするポケモンばっかじゃねえか」
    「…君だって、ドレディアだよ。女の人とか、好きじゃないの?そういうポケモン」
    僕が言うと、彼は分かってないな、というように首を振った。
    「可愛すぎるのもアレなんだよ。お前見たことないか?どでかいカメラ持って。他人の迷惑全く考えないで写真とりまくる奴ら」
    それなら僕も見たことがある。風船を配っている横で、いやにシャッターの音がしたから何かと思ったら、バイトの先輩が入っているツタージャが何人かの男に撮られていた(ツタージャはバランスが難しいので、慣れた人じゃないと入ることができない)
    「遊園地は皆の物だ。老若男女、子供、もちろん障害のある子だってな。
    だけどああいう奴らがいると、一気に嫌な気分になるんだよなー」
    「…そうだね」
    彼の言うことは最もだ。周りが見えない人が少しいるだけで、どれだけの人が嫌な気分になるのか。それも含めて、働いている僕らは知っていかなければならない。

    午後。あんまり日は出ていないけどきぐるみの中は蒸していた。そこまで汗っかきじゃない僕でもこの時ばかりは首にタオルを巻かないといけない。
    もし夢を与えるきぐるみに入っているのがこんな汗ダラダラの男だって分かったら、子供達はどんな顔をするだろう。
    …泣くだろうか。
    「わーズルッグだー」
    小学生くらいの男の子が走ってきた。後ろから母親らしき女性も歩いてくる。
    「お母さん、写真撮って」
    「はいはい」
    男の子がピースサインを出した。僕もやろうとしたが、生憎指を動かすことが出来ない。
    「バイバイ」
    親子が帰った後、近づいてくる影が一つ。黒い長い髪をした女の人。年は三十代後半くらいかな。化粧っ気がないけど綺麗な人だ。
    「あの、その風船一ついただいてもよろしいですか?」
    はい、と言いそうになって僕は慌てて口を閉じた。いくら相手が大人でも喋るわけにはいかない。僕は持っていた風船の束から青を一つ出して渡した。
    「ありがとうございます」
    女の人が戻っていった。その先には、車椅子に乗った女の子。ということはこの人は母親か。
    小学六年くらいか。ベリーショートの髪と、陸上でもしているのか肌がよく焼けている。でも今はしていないんだ、と人目で分かる。

    片足が、無かった。

    左足が無いのを隠すような動きは無い。時折回りから注がれる、刺すような視線も平気そうだった。退屈そうに、ジムの方を見ている。この遊園地には人気モデルのカミツレさんがリーダーをやっているポケモンジムがあって、トレーナーがよく訪れる。
    車椅子を押しているのはコジョンドだった。元・陸上娘(多分)と舞踏家。いい組み合わせだと思う。
    母親が風船を車椅子にくくりつけた。飛んでいくことなく空中にとどまる風船。

    次の日、その日は小学校の遠足で大勢の子供達が入って来た。風船を配る以前に子供達に囲まれて身動きがとれない。ちなみに今日のきぐるみはエモンガだ。
    「みんなー!先生の目が届くところで遊んでねー!」
    ずっと先生が言っているが、わんぱくな彼らは全く聞いていない。僕は僕で子供達(特に女子)に写真を撮られていた。
    やっと一息ついたとき、僕の方にやってくる影が―
    「ん」
    昨日の車椅子の子だった。まさか、今の子供達と同じ学校?
    「こんにちは」
    彼女が話しかけてきた。少し考えた後、きぐるみならではのパフォーマンスをする。すると彼女は右足でエモンガの体を蹴ってきた。
    「別にわざわざ手を振らなくていいのよ。私だって子供じゃないんだから。中に人が入ってることくらい、分かってる」
    冷めた子だ。仕方無いといえば、仕方無いのかもしれないけど…
    「ねえ、暇?」
    「へ」
    「コジョンドの代わりに、車椅子押してよ」
    昨日とは違う意志の入った目に見つめられて、僕は頷くしかなかった。

    周りの小学生やカップルが目を丸くしてこちらを見ている。別に恥ずかしくはないけど(恥ずかしがってたらきぐるみの仕事なんてできない)、どうしていいのか分からなかった。
    『お母さんは』
    「あの人は血は繋がってないわ。生みの親は私ガ十歳の時、しつけのなっていないバッフロンに体を突かれて死んだの。
    仕事が忙しくてあまり会えない父親が私のために再婚したんだけど―
    親じゃないもの」
    観覧車の前まで来た。カラフルなゴンドラが青い空に映える。虹のようだ。
    従業員の一人がこちらに気付いて手を振ってきた。僕もきぐるみの手を振り返す。
    「友達?」
    『バイト仲間だよ。メカに強くて、あそこで観覧車の操縦をしてる』
    「そう」
    『乗ってく?』
    彼女は上を見た。そしてひと言。
    「ジェットコースターの方がいい」

    ジムの中は暗い。イルミネーションを普通は使って照らすんだけど、節電ということで一部しか点いていない。カミツレさんに会うには、ジェットコースターに乗ってトレーナーと戦って、時々スイッチで道の切り替えをしなくてはならない。
    ここ最近はジムに挑戦してもほとんどの人が負けているようで、カミツレさんも退屈そうだ。
    「カミツレさんってモデルでジムリーダーなんでしょ」
    『そうだよ』
    「いいわね。神から二物も三物も与えられてるなんて」
    トゲのある言い方だった。恨みというより、妬みのように感じた。
    『何があったの』
    「足よ。天は二物も与えないっていうでしょ。私の場合、元々十だった物から二つも引かれたのよ」
    右足は車椅子の台に乗せられている。七部丈のパンツから綺麗に伸びた足は健康的に見えた。
    だがもう片方の場所からは足は出ていない。カーキ色の暗と肌色の明の対比は不思議と生を感じさせた。
    「今じゃあまり歩かないから肉がついちゃったけど、一年前はもっと綺麗だったのよ。引き締まって、地を走るドードリオみたいに」
    ドードリオほど足は細くなかったと思うけど、僕は黙っていた。彼女の声が急に低くなり、それはまるで二十代前後の女性のようだった。
    「私はその土地でトップのマラソンランナーだった。小学五年なのに速さは大学生に負けてない。毎年のようにアンカーに抜擢されてた。
    …皆天才だって言ったわ。ロードランナーって知ってる?アメリカのアニメでね、コヨーテよりずっと足が速いの。特急も簡単に抜かせるくらい。
    何とかして捕まえようとする彼を笑ってるのよ」
    僕は草食動物を捕まえようと必死で策を練る肉食獣を思い浮かべた。どれだけ知恵を絞っても勝てない。
    さぞ悔しいだろう。
    「だけど微妙に違ったのは、コヨーテが可愛げが無かったってことね」
    あるマラソンのアンカーに選ばれた帰り道。彼女は車にはねられた。後で分かったことだが、いつも二番手だった選手の母親が仕組んだことだった。
    右足はたいしたことは無かったが、左足の損傷が酷く、手術したとしても二度と走れなくなると言われたらしい。それなら、と彼女は自ら左足を切断することを望んだ。
    『どうして』
    「私の足は歩くためじゃなく、走るためにあるのよ。走れない足なんて、無駄なだけ」
    片足だけになった彼女はマラソンをやめた。ちなみに、事故を起こさせた犯人の娘もマラソンをやめたそうだ。彼女は元々ポケモンバトルを少しかじっている事もあり、今は車椅子のトレーナーを目指しているという。
    「昨日のコジョンドは、私が足を失くしたあとに自力で捕まえたの。元々はコジョフーだったけど」
    『今日はどうしたの』
    「部屋でトレーニングさせてる」
    パラ、という音がした。外を見ると、黒いような白いような雲が湧き上がってきている。音はやがて独奏から二重奏、三重奏、四重奏、最後にはオーケストラへと変わっていった。夕立だ。
    「傘持ってないわよ」
    『夕立だからすぐ止むと思うよ』
    ゴロゴロという音がした。風も出てきたようだ。植えられている木々が突風に煽られている。
    「…これ、夕立?」
    『えっと』
    僕は外に出て見た。お客さんは別のアトラクションの影やテントの下にいた。空の光が差している場所に、何かの影が見えた。
    (ポケモン…?)
    そいつは俺の方に気付いた後、そのまま風に巻かれて見えなくなってしまった。
    『…』
    俺はぼんやりと空を見つめていた。いつの間にか太陽が雲から顔を出していた。

    「今日はありがとう」
    遊園地のゲートに、僕達は立っていた。もう車椅子は押していない。
    「別に悲しいとか、そーいうんじゃないよ。ただどうしようもなく嫌な気分になった時に、誰も話を聞いてくれる人がいなかった」
    やっぱり根は素直な子だ。
    「ねえ、また来てもいい?」
    「もちろん」
    「そういう時はちゃんときぐるみらしくするのよ」
    僕は少し考えた後、ぴょんと跳ねて両手を振った。彼女は笑って手を振る。そのまま黄昏の光に消えていった。


    少女は回りに人がいないことを確かめると、ゆっくりと車椅子から立ち上がった。途端に車椅子がガシャンと音を立てて壊れる。先ほど機能していた車は、ぺしゃんこに潰れて見る影もない。
    少女は壁に手をつけながら一歩ずつ路地を歩いていく。周りに住み着いている悪タイプ達が影から見つけている。
    やがて、右足から長い爪が生え、そのまま前進に渡って灰色の毛が体を覆っていく。左足がしっかりと地面を踏みしめる。
    『俺らしくないことをしたな…』
    黄昏の光が少女―いや、ポケモンの体を照らす。土耳古玉の目がキュッと細くなる。
    『さあ、遅くならないうちに戻るか』

    一匹のゾロアークが、自慢の鬣をなびかせながら歩いていく。
    その行方は、誰も知らない。


    ―――――――――――――――
    [何をしてもいいのよ]


      [No.1379] 赤い糸は捨てました 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/07/02(Sat) 02:05:01     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     アタシはイケてるミミロップ。アタシの赤い糸すりかえメロメロで落ちなかった男は今まで一匹もいなかった。
     そう、今までは。
    「アタシのメロメロが効かない……!?」

     メロメロを食らったはずのドンメルはボケッと反撃してきた。なんなのよコイツ! アタシの方程式が崩されるなんて。しかもこんな間抜け面に!
     アタシの胸は予想外の事態にドキドキしてる。はっ、まさかコレが恋……!?

    「アナタはアタシの王子様よ! ドンメル様〜♪」
    「えっ?」
     メロメロが効かないなら、自力で落としてみせるわ。待っててね、王子様!


     それから女を磨いて一ヶ月経った。アタシはドンメル様に再戦を申し込んだ。ドンメル様はバクーダに進化していた。
    「今、アタシの気持ちを全部アナタにぶつける……! 食らえ、メロメロ!」
    「うへへ……ミミロップちゅわあぁぁん♪」
    「は!?」
     なにそれ鼻水垂らして近寄ってくんじゃないわよ変態! 前まではメロメロ食らっても超然としててカッコよかったのに。もうムカつく!

    「二度とアタシの前に現れないで!」
     メロメロが効いて下僕と化したソイツを怒りのままボッコボコにして、アタシはそこから立ち去った。

     あーあ、どっかにいい男いないかな。

    【何してもいいのよ】
    チャットで「恋愛もの」と言われたので。


      [No.1378] 熱中症には気をつけましょう 投稿者:西条流月   投稿日:2011/07/02(Sat) 00:16:43     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     夏は暑い。
     それは自然の摂理、宇宙の法則。
     異議を唱え、捻じ曲げようとすることは地球の自転を逆向きに、太陽を西から東に、重力を下から上に作用させようということに等しい。
     受け入れ、耐え忍ぶことこそが動物としての当り前。細やかな涼を得て、暮らすことこそが正しい姿。
     しかし、それも限度というものがある。連日連夜、三十度を超え、寝るのも困難になるほどの暑さ。いや熱さと言いたくなるほどの高い気温は、太陽が出ない夜間でさえ、寝るという生物にとって必要不可欠な休息の重大な障害に他ならない。
     そして、その障害に悩むポケモンがとあるマンションの一室に居た。
     
     ポピー(♂、六歳)である。

     ポピーは青山美登里さん(二十二歳、OL)に飼われているケーシィである。
     彼の一日のスケジュールは飼い主である美登里さんの抱き枕代わりにされながら朝を迎え、彼女を見送った後は日暮れまで留守番、そして彼女が帰る一時間前に持ち前のサイコパワーで部屋を整え、帰ってきた彼女に抱きしめられながら、一日を終える。
     現在午後二時、気温が最も高くなる時間でもある。
     ポピーは留守番の際の定位置、三十二インチプラズマテレビの目の前に陣取っている。
     部屋を侵食する熱気に動じることなくだらりと脱力して座り、目を瞑った様子は悟りを開いた僧である。
     さて、ここでひとつ特筆すべきはケーシィという種族は一日に十八時間を睡眠にあてる種族である。
     しかし、ここ最近の暑さはポピーの睡眠時間を削ぐためにここまでのものになっているのかと疑ってしまうぐらいに暑かった。
     そう、彼は暑さのせいで寝れていない。
     寝れていないのだ。
     睡眠とは活力の源。睡眠ができないこの天気、体力が回復どころか、どくどくでも食らったかのようにがりがりと削られていく。
     これでは彼の日課、部屋の掃除をするための英気がどこかへ消えてしまう。
     やらなくても困りはしない。しかし、それはポピーのペットとしての生き様に反するのだ。
     飼い主の役に立てないポケモンなど、ただのポケモンである。家族でも仲間でも、ましてや道具ですらない。それがポピーの持論である。
     寝ていても、この部屋の防犯は完璧だ。しかし、家事のような繊細な仕事は難しい。
     そのためにも今は寝なくてはいけない。
     実際のところは、目が覚めてる今のうちに家事をやればいいのだが、ポピーはそれに気づいていない。暑さが深刻なようだ。
     さらに言えば、寝れない主たる原因はこの高温のせいなので、エアコンでもつけて、室温を下げればいいのだが、一匹のケーシィは気づいていない。脳みそが小さいせいか。
     そんな細かい事情はさておき、彼はこの暑さに真正面から対抗して、寝ることに決めたようである。
     寝るということがこんなに重労働とはいままで考えもしなかったがいい経験だと彼は孤独な室内で思った。その重労働も飼い主の喜ぶ笑顔が見れれば、それでいいのだ。
     そう、今から目を瞑ろう。そうして、彼の努力が報われ、視界が真っ黒になっていく。とうとう安らかに眠れそうだ。


     その夜、いつもの時間に目を覚ませば、そこは見知らぬベッドの上で、隣には怒った顔をした美登里さんがいた。
     どうにも自分は熱中症になったらしく、自分の防衛本能そのままにポケモンセンターにテレポートしたらしい。
     こうなる前に適当に対策しなさいという美登里さんの説教に頬を掻いた。
     とりあえず、スポーツドリンクを常備しようか。



    ――――――――――――

    タイトルままに、最近の暑さは油断ならぬ敵ってかもうラスボスレベルなので、水分はこまめに。節電のためにとか言って、過度なエアコンの使わなさすぎはやめましょうって話です

    自分の体調を管理してからの節電ですねって話で


      [No.1377] あめあめふれふれいにー 投稿者:巳佑   投稿日:2011/07/01(Fri) 19:07:45     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    レイニーさん、コメントありがとうございます!

    > >  あめあめふれふれいにー、れいにー。
    > >  あめあめふれふれいにー、れいにー。
    > >  もっとふれいにー、れいにー。
    >
    > 呼ばれて飛び出て参上!
    > ……え? お呼びでない? そりゃ失礼。

    「計 画 通 り (・ω・☆)」
     ……というのは冗談です。(笑)
     ただ、当初、後書きのところに「ちなみに『あめふれいにー』はレイニーさんとは関係ありません。(笑)」と書こうと思ったのはここだけの話です。(笑)



    > ちなみに、私が「レイニー」名乗ってるのは、単に響きの綺麗さで決めたという理由だったり。
    > もちろん英語表記は「Rainy」です。

     おぉ、そのような由来があったのですか!
     ちなみに私の場合は巳年生まれから来ています。

     響きって、大事な要素の一つですよね。
    『わらわっち』という一人称も響きが可愛くて気に入りましたし。(笑)



    > ……ほとんど感想でなくて自己語りですみません。
    > でも呼ばれた気がしたから、不可抗力だったんだ!(爆)

    「ふふふ、計 画 通 り(・ω・☆)」 (笑) 


    > 可愛い作品、ありがとうございました!

     こちらこそ、ありがとうございました!


     それでは失礼しました。


      [No.1376] スクリーン前にて。 投稿者:巳佑   投稿日:2011/07/01(Fri) 19:02:18     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     おぉ……! あの時のチャットでお聞きした映画が今ここに……!(ドキドキ)
     監督ラ・クーダ氏、いいもの観させてもらいましたよ……! 
     本当に嬉しいです!
     ありがとうございます!

    『序幕』
     老人と美しいミミロップ……なんかロマンを感じますなぁ……とても画になります!(ドキドキ)


    『序盤』
     いきなりヤル気ローテンションのルーク君で吹きました。(笑)
     でもまぁ……確かに元のヒロインがドレディアだったからなぁ……ハードルが高いのも無理ないか。(汗)
     しかし、ルーク君……モロバレルも可愛いと私は思うよ?(キラーン&ゲームでの鳴き声が個人的には予想を反して可愛らしかった) 
     
     それと、相棒(?)のポーさんとのやり取りが絶妙で、とても興奮しました。
     この後、ポーさんが所々見せる鋭さには思わず鳥肌が立ちましたです。(汗) 
     このポワルン油断ならぬ。(汗)

     そして……来ました! ラ・クーダ監督!
     この方の映画は必ずヒットすると私は信じてます。(キラーン)
       
       
    『中盤』
     最初に言いたい……ラズベリーさんの演技に私も惚れました。(ドキドキ) 

     美しいミミロップのラズベリーさんが登場して……ヤル気ローテンションだったルーク君の心境の変化がとても印象的でした。(ドキドキ)
     ヤル気になっただけではなくて……これはきっと恋に落ちているだろうと予想。(キラーン)  
     そして、昔話で色々と気になるキーワード(例:有名だった親父の跡を継いで映画界デビューし、期待の星としてもてはやされいた時)が……。
     後篇の展開と何か絡むのかなぁ……とても気になっています。(間違っていたらスイマセン)
      
     それと……浮上してきた育て屋の深い事情。(汗)
     親父さんの熱くてまっすぐな心意気には胸を打たれました。
     ポケモンのことをしっかりと考えている人なのだろうなぁ……と。
     まぁ、それが玉に傷だったりしたようですが。(汗)


    『終盤』
     ポーさんの言葉で鳥肌が立ちました……だって、これ、絶対、後篇に何か起こるフラグじゃないですか!(ドキドキ)
     ラズベリーさんの欠点とは?
     その欠点から、どのような事態を招くことになってしまうのか?
     
     そして……ルーク君のあの取り乱れよう……何か過去(トラウマになりそうなことなど)にあったのでしょうか?(汗)
     


    ★最後に。
     私の記憶間違えでなければ、【書いてもいいのよ】タグを付けたイラストの投稿で初めて来た物語です……!(ドキドキ)
     一枚のイラストから展開されていく物語に、本当に嬉しくもあり、そのような視点から来ますか! といった(もちろん良い意味で)驚きもありました。
     ラクダさん、素敵な物語、ありがとうございます!
     後編も楽しみにしてます!




     それでは、失礼しました。



    【ラ・クーダ監督最高!(キラーン)】


      [No.1375] す、すみません…… 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/06/30(Thu) 21:32:58     33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    呼ばれた気がしました。
    ゲーチスも同じことしてるだろというツッコミをしたくなっちゃいました(ゲーチスのポケモンは6V)。


      [No.1374] ポケモンの解放! 投稿者:キトラ   投稿日:2011/06/30(Thu) 15:38:48     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「というところで、ワタクシ、ゲーチスの演説を終わらせていただきます。ご清聴、感謝いたします」
    マントの大きい男が壇上から去って行く。街の人はポケモンを解放するだのしないだの、その内容に混乱していた。今までやってきたポケモンへの接し方、扱い方。聴衆はどよめいた。


    「ふふふ、ワタクシの野望が達成される日は近い」
    ワタクシは上機嫌でプラズマ団を引き連れて歩く。そして前を行くプラズマ団が声を張り上げた。何かと思えばポケモントレーナーですか。あのようなポケモントレーナーからポケモンを引き離せば、ワタクシだけがポケモンを使える日は近い。そうなれば世界はワタクシのもの。ああ、考えただけでよだれが出て来そうですな。
    「そこのお前!ポケモンを解放するのだ!」
    持っていたのは、おやおや小さなポケモンですね。まだ初心者なのでしょうか。それならば余計に心に付け入りやすい。何事も信念を持たないものや未熟なものは言うことを聞かせやすいですからね。
    「ああ、さっきのやつらか。いいぜ、ポケモンを解放してやるよ!」
    随分と素直なトレーナーですね。何を企んで・・・
    「そんなゴミみたいな個体値のポケモンなんていくらでもいらねえしな!」
    自転車に乗ってどっか行ってしまいました。残されたのは解放されたポケモンなのですが、自転車の消えた方向をずっと見て鳴いてます。タマゴを何個も孵化させて一番いいやつを使う方法ですね。しかし・・・そのようなポケモンを喜んで手放すような人間がいるとは、ワタクシが言うのも何ですが・・・

    世も末ですな・・・。

    ーーーーーーーーーーー
    【かいていいのよ】【好きにしていいのよ】

    ゲーチスもびっくりの孵化廃人。
    絶対1人や2人はいたはず。


      [No.1373] せつない 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/06/28(Tue) 22:27:45     23clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    はじめまして、mindさん。きとかげと申します。

    切ないな、と思いました。語り手からは見えそうで見えない寂しさを抱えてる友人さん。語り手の言葉にはならないのがもどかしいです。
    ツイッターは気に入ったらしい、けれどポケモンに触れるのはやめない友人さん。そういう繋がりは、きっと友人さんの求める繋がりとどこか違うでしょう。友人さんが求める何かは海の向こうにもないのでしょう。友人さんの思うものと現実との細かな齟齬が、どうしようもなく切ないです。どうにも出来ないと分かるから。小さいけれど、当人にとっては大きい、そんな寂しさを感じました。

    では、雑文失礼しました。


      [No.1372] Re: 中華街 投稿者:渡邉健太   《URL》   投稿日:2011/06/28(Tue) 12:13:04     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    エビチリ食べたい。


      [No.1371] 【勝手に書いてみた】その夜に震えるしかない 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/06/28(Tue) 00:31:53     105clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     研究員はせわしなく、少々乱暴にキーボードを叩いていた。
     口元は歪み、眉間に皺をよせながら、ひたすらに指を動かす。しかし何度もタイプミスをおかし、乱暴にデリートキーを連打する。薬品で溶けてボロボロになった白衣の袖に手を包むと白い息を吐きかけた。

    「クソッ! おい!室温を上げろ!」
    「課長。これ以上エアコンやヒーターを稼動させると、館内の電力が維持できません!」
    「俺を課長と呼ぶな!」

     忌々しい、そう何度も呟きながら彼は作業を続けていた。

     シルフカンパニー、ポナヤツングスカ支店。
     ロシアに奥にあるその場所は、ポケモンの進化や変化を中心とした研究を行っていた。
     しかし、支社とは名ばかりのその場所は、十分な予算も回されず、設備は壊れかけを騙し騙し使っている。施設は朽ちて崩れかけ、地元では幽霊がでる廃屋との噂まで流れていた。

    「こんっなに広くてありがたいことだなーおい! ヒーター1台だけじゃ全く温まらねぇんだよ!」

     近くにあるパイプ椅子を蹴飛ばすと、ヒーターの前で両手を擦り合わせて無茶苦茶に体を動かし始めた。
     社員は以前4名いた。
     彼が転勤してきた当時はまだ予算も今ほど削られてはおらず、極寒の僻地から抜け出そうと様々な研究を続け、いつかは日本に戻る、それを目標に日夜稼動していた。
    しかし、発注した資材はいつまで経っても届かず、届けば種類や数が間違っているは当たり前。予算はみるみる削られ、本社からの連絡も全く無くなったころ、一人の研究員が飛び出していった。

    「本社のやつらに一泡吹かせてやる!」

     そう言った彼の衣服は乱れたまま、目は血走り防寒具も身につけずに吹雪の中飛び出していったが誰も止めるものもおらず、追いかけることもしなかった。訳の分からない呪文のような呟きをもう聞かされなくて済む安堵の気持ちもあったのかもしれない。三人は彼の気持ちが痛いほどわかっていたし、ひょっとしたら何か変わるかもしれないという期待もほんの少しあったかもしれない。
     しかし、ここは以前と何も変わらないままだ。

    「おう、今日もやってるのか。 どうだ一杯、あったまるぞ」

     重役出勤の支店長が酒臭い息を撒きながら瓶を突き出した。彼は首を横に振って応える。凍える体にはあまりに魅力的な提案だったが、その強烈な濃度のアルコールは確実に頭の回転を鈍らせるだろう。

    「ま、ほどほどにな」

     そのまま所長は瓶の中身をあおると机に突っ伏し、そのままずるずると床に崩れ落ちた。恨めしげに彼が瓶を眺めていると、しばらくして館内に大きないびきが響き始める。

    「冗談じゃない」

     課長なんて冗談じゃない、そう彼は思う。
     本社では常に出世街道を歩いてきた。コネではなく、常に実力で大きなプロジェクトに携わってきた。世界初の人工ポケモンである『ポリゴン』は、開発が停滞していたところを彼のプログラムを導入したことによって完成への軌道にのった。彼の名を知らぬものは社内はおろか、業界でもいなくなっていた。
     しかし研究に専念するあまり社内のパイプを強化してこなかった彼は出世や利権の派閥争いに巻き込まれ、そのどちらにも属すことを拒んだ挙句、いわれの無い罪を着せられ、遙か遠くのこの地に左遷されてしまったのだ。
     様々なアプローチを行い、開発を続けてきたが、時には失敗をし、時には他の支店に先を越されてしまい全く成果を上げられない。何といっても設備が、人手が、何より予算が足りなかった。
    そしてネームバリュー。僻地の支店の研究が多少優れていても、すでに似たようなものがあれば彼らの研究は無視され抹消された。
     支店長は勤務時間も気にせず酒に溺れるようになり、研究員の一人は何かに取り付かれたようにロケットがどうこう呟き続け誰も話しかけなくなり、ついにこの地を去った。
     唯一の部下である女研究員は、指示されたことはやるが、それ以外はただ机に座り天井を眺めて時が過ぎるのを待つようになった。必要以上の情熱は持たない。今日も言われた仕事を早々に終わらせた彼女は爪の手入れに余念がない。定時になったらまっ先に帰ってボーイフレンドでも探すのだろう。
     そして彼は、飛び出していった男とはまた違う狂気に取り付かれ、研究にのめり込んでいった。
     全てを手に入れ、そして失う原因となったポケモン、ポリゴンを使って会社に復讐する。




    「よし、これでポケセンと同条件の筈だ」

     装置にポリゴン2を入れる。作成したウイルスプログラムはポケモンセンターに感染させ、回復や交換を行ったポリゴン2に植え付けられる。そしてポリゴンがレベルアップや技を新しく覚えたときウイルスが発症する仕組みだ。

    「よし。やれ」

     彼の合図と共に部下は機会を作動させる。

    「どうだ?」
    「順調です。70パーセント、80パーセント読み込み完了――」

     その言葉を遮るようポリゴン2から光が発せられた。姿見えなくなる程に眩しい輝きが収まると、現れたポリゴン2の姿が変わっていた。
     首は外れてくるくる回転し、妙な痙攣のような挙動を繰り返す。
     そして、ポリゴンは鳴く。彼を見ながら。二度、三度と鳴く。

    「なんて姿だよ」

     呟くと同時に涙が溢れた。新たな姿となったポリゴンを抱き、次々と涙がこぼれ落ちる。腕の中のポリゴンは奇妙な挙動を見せ、彼と彼女を交互に見ている。

    「あれ、どうして? 何で――」

     驚く声に彼が振り向くと、部下がモニターを見て停止していた。

    「何だ?」
    「ポリゴンの防御と特防の値、条件を満たす前にすでに減少してます」
    「くそっ! 失敗かっ! 姿もこんなに変わっちまってチクショウ!」
    「それが、上昇しているステータスもありまして」

     すぐに彼はモニターに駆け寄り覗きこむ。

    「組み込んだのはレペルアップ時にステータスが下がるウイルスプログラムなんだぞ! 上がるやつがあるか!」
    「見てください。特攻が約22.2パーセント、素早さは約33.3パーセントも上昇しています!!」
    「そんな馬鹿な……」

     何がどう作用したのか、彼の作ったプログラムによってポリゴンは、姿を変えるだけでなく、能力が強化されていたのだった。

    「フォルムチェンジ。姿が固定されていれば進化といってもおかしくありません。強襲型といったところでしょうか。凄い発明ですよ! おめでとうございます!」
    「お、おめでたいことがあるかっ!」

     彼は怒気を含んだ大声を上げる。しかし部下は微笑みながら続ける。

    「よかったですね。課長」
    「何がいいものか!」
    「大事なポリゴンが無事で」
    「大事なことがあるか! これは道具だ! 俺が作った道具なんだ! こんな人工の、生きているか解らないポケモンに、俺は、俺は――」

     彼女は上司に駆け寄りハンカチを差し出す。

    「そんなの、どっちでもいいじゃないですか」

     拭かないと凍っちゃいますよと子どもにするように、上司の顔を拭く。彼はされるがまま動かない。

    「生きていようが、そうでなかろうが、魂があろうが無かろうが。それに愛着を持っても。そのポリゴンが大事でもいいじゃないですか」

     彼は動かない。

    「これを持っていけば本社に返り咲くこともできるかもしれませんよ。どうしますか? 課長?」

     落ち着いてきたのか、やっとかすれた声が聞こえた。

    「あいつが本社に使おうとしてたメールボム、残っていたな」
    「はい、まだあると思います。でもどうするんですか?」
    「どけ」

     彼は作成していたプログラムと現在のポリゴンのデータと見比べ、書き換え始める。そして完成したものをメールボムに組み込む。

    「あーあ、課長。それがバレたら解雇どころじゃすみませんよ」

     そういう部下の声は、心なしか彼には弾んで聞こえた。

    「見つかればな」
    「私知りませんよ」
    「あのプロテクトを突破してプログラムを解析できたとして、果たして奴らがみすみす俺達を手放せるかな? あとな」

     もし本社の人間が接触してきたとして、高い条件をつけるのと嘲笑って断るのとどっちが気持ちいいか考える。彼は嗤った。
    そうして最後の仕上げに彼は震える手でキーボードを、押す。

    「俺を課長と呼ぶな」

     席を立ち振り返る視界に入ってきたのは、胸元をヨダレで汚したまま、どこからか持ってきた高級酒とグラス五つを用意している赤ら顔の支店長だった。

    Program................ run
    /
    /
    /
    Complete









     ある晩ポリゴン2を育てているあなたの元に、見覚えのないアドレスからメールが届く。
     開けてみるとそれはどこにでもあるスパムメールだとわかる。普段なら迷わず削除するのだけれど、あなたはなんとなくマウスをスクロールし文や画像を見る。
     それは官能的な絵や謳い文句だったり、簡単に儲ける方法だったり、楽してみるみる痩せる方法だったりする。あなたにとって魅力的な内容だ。ただし、それにも増して胡散臭い、うますぎる内容だ。あなたはそれに呆れ、笑いながら目を通す。時に自分なら思いつくもっとそれっぽい文章を考えたり、誤って引っかかってしまう子どもや愚か者を妄想しながら、メールの最後に書かれているものを見つける。

     乱雑なアルファベットと数字と記号の羅列。ジャンプアドレス。

     アンチウイルスソフトがしっかり起動しているのを知っているあなたは、その内容を本気にしているわけではなく、利用しようと思っているわけでもないが軽い気持ちでカーソルを動かして、ポン、と指をマウスに振り下ろす。

     突然浮かび上がる無数のウィンドウ。

     みるみる上がっていくダウンロードバー。

     様々ところを手当り次第クリックし、出鱈目にキーボードを押してもみるがそれは止まらない。強制終了が頭を掠めたとき、画面にあるムービーが流れ出す。

     幼児が描いた様なヘタクソな絵のポリゴン2にフロッピーが重なる。そのポリゴン2がボールに入れられ、ケーブルを伝ってもう一つのモンスターボールと入れ替わる。そして、他人の手に渡ったポリゴン2は白く光ると、ポリゴン2に似たアニメキャラクターが力こぶを作りウィンクをする。

     ムービーに見入っていたあなたは突然流れる相当大きいファンファーレの音にびくっとする。画面にはcongratulationの文字が大きく表示され、やがて全てのウィンドウが消える。いつものデスクトップだ。一点だけ違うのは、patchと書かれたファイル。慌ててパソコンをスキャンするがそのファイルにもパソコンにもウイルスは見つからない。
     そこであなたはやっとあの噂を思い出す。友人や知人、もしくはインターネットで聞いた噂を。どこかで出回っているポリゴン2を進化させる「怪しいパッチ」の存在を。
     後ろを見ると、ポリゴン2がいる。あなたがじっと見つめているので呼ばれているのかと思い、嬉しそうに鳴きながら擦り寄ってくる。
     どうしよう、とあなたは言う。
     ハッキングを受けながらも何も起きていないパソコンを見て、このパッチはひょっとしたら、とあなたは考える。
     外から近所の住人から夜中の大音量を出す者への罵声や抗議の声が聞こえるかもしれないが、あなたはそれには反応しない。何度も画面とポリゴンを見返すあなたは、そのパッチを削除できない。かといって使おうとも思えない。時計の秒針の動く音がやたらに大きく聞こえ、途方に暮れながら夜は更けていく。

    ---------------------------------------------------

    今更ながら、書いてみました。
    インストールを読んでみて、じゃあ作った側はどんな人間なんだろうかと考えて書いてみました。
    「インストール」に書かれているシルフカンパニーの面々の、なんとも言えない緊張感となんともいえない他人事な緊張感のなさは現場な感じで凄く好きです。

    タグもなく、No.017さんの書く続きと内容の齟齬も生じるとは思ったのですが、リスペクト意味を込めて。

    たぶん続けたいということで、そのうち忘れた頃に続きを上げられる予定なんですよね?ね?(笑)
    私の書いたこちらの作品の内容はもう完全に無視して、インストールの続き、こっそりお待ちしてます。

    【勝手に書いてみた】【ごめんなさい】【続きお待ちしてます】


      [No.1370] 錆びたタッチペン 投稿者:もう一人のでぃえすあい使い   投稿日:2011/06/28(Tue) 00:02:53     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     でぃえすあい使い? ふにを読んだ?(呼んでねーよ
     ふにのタッチペンは錆びてます。入っ。
     何でもかって? 反れはふにのタッチペンが勤続製だからデスクトップ。
     チャットを指定るとよく誤返還してくれますよね。でぃえすあい。
     凝れはアラブ人るタッチペンなのか、アラブ人るでぃえすあいなのか、時々分からないなります。
     認定証がもっと頑張ってプログラミングして紅と。
     まぁ、形態ゲーム機ですので今小学校ないとは思っていますが。


     武道さんとマスカラーンさんと某さんも素敵です。かわいい。

     さて、そうこうしている内にも、でぃえすあいとタッチペンが手を組んで、アラブ人してるみたいですよ。
     20個もやってくれたみたいですね。これは酷い。












     答え:読んだ→呼んだ  入っ→はい   何でも→なんで  反れ→それ 
     勤続製→金属製  デスクトップ→です  指定る→している  誤返還→誤変換
     凝れは→これは  アラブ人→荒ぶ(2回)
     分からない→わからなく 認定証→任天堂   
     紅と→くれないと  形態ゲーム機→携帯ゲーム機  今小学校ない→いましかたがない
     武道さん→葡萄さん マスカラーンさん→マスカーンさん  某さん→棒さん


     最後のほうはワザとやりました。ごめんなさい。
     
     でぃえすあいと、これからもがんバッテリーください!

     ※でぃえすあい投稿なので上手にできてるかわかりませぬ


      [No.1369] 本日のシロナさん▼所によりナナミさん 投稿者:スウ   投稿日:2011/06/26(Sun) 21:39:48     81clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

       一

     クマシュンだった。
     果てしなくクマシュンだった。
     ただひたすらに、これでもかというほどに、クマシュンだった。
     部屋の至る所に転がる、幾種類ものクマシュンドール――サザナミタウンのとある別荘地に一人、シロナは至福の生活を送っていた。
     今日も朝からクマシュン達に囲まれて、早朝のクマシュン体操をした。
     これは、『おはポケスタ』というテレビ番組の中の、人気コーナーの一つなのだが、とある専門家によるとこの体操は医学的にも理に適っており、健康に良いとのことらしい。その事についてはどうでも良かったのだが、今のシロナにとって毎朝のクマシュン体操を欠かすことは耐えられないことだった。このクマシュン体操の後、クマシュンの絵柄入りカップでコーヒーを入れ、それからシロナの一日は始まるのである。

     ちょうど一年と三ヶ月ほど前だったろうか、イッシュ地方を訪れたシロナに運命とも呼べる出会いが待っていた。鼻の垂れ下がった一匹のクマシュンが彼女に与えた衝撃は、これまでの彼女のポケモン人生を根底から覆すものだった。
     シロナの一番のパートナーが強面のガブリアスであることは有名だが、といって、もちろん彼女がアイドル系のポケモンに興味が無いというわけではない。むしろシロナはその道の第一人者であり、ポケモン協会も認めるところの、カリスマ的存在だった。
     チャンピオンのチャンピオンたる所以は何か――それは一つに、他の誰よりも好きなことに対する熱意を持っていることだろうか。とすれば、シロナはその条件に見事に当てはまる人間だと言える。たとえそれが、異常だとか何だとか、病的だとか云々だとか、周囲がわめきたてようとも、趣味を持つ本人にとっては何の関わりもないことである。

     話を戻そう。
     結論から言うと、その頃のシロナは飽いていたのである。「新種発見!」と騒がれるたび、大仰な見出しとともに、新聞や雑誌に飾られるファンシー系のポケモン達。しかし、そこに、シロナの求めているものはなかった。
     これまで幾匹のそういったポケモン達を彼女は目にしてきたことだろう。
     確かにピッピやらピカチュウやらを始めとする正統派のファンシー系ポケモン達は可愛い。可愛いことには違いない。少し前までだったら、それでじゅうぶんに満足することができた。
     しかし、今の自分には、何かが物足りない――。
     そんな折りに、シロナの目の前に現れたのがクマシュンだった。
     奇跡の鼻水たらり系アイドル(?)――これこそがシロナの求めていた答えだった。
     いや、よく似た経験だったら、昔一度だけあっただろうか。
     シロナの母国では、国民的に有名なポケモン漫画、あれに登場するミズゴロウを初めて目にした時も、同じような感覚が背筋を貫いたものである(このミズゴロウも鼻水をたらりと流していた)。しかし、クマシュンを実際に目の当たりにした時と比べると、それさえもが小さな思い出でしかない。
     そう、このクマシュンとの出会いこそが、潜伏していたシロナの創造力を開眼させることになるのである。彼女の体内に眠っていたコスモが爆発的な燃焼を起こし、彼女は偉大なセブンセンシズに覚醒したのだった。
     このわずか一年と三ヶ月の間に、シロナが果たした偉業は、目を見張らされるものがある。

     絵本『不思議の森のクマシュン』、詩集『クマシュンと我が放浪』、エッセイ『クマシュンの大きなお鼻』、そして全四巻にもわたる超大作小説『レ・クマシュブル』を手掛け、世に知らしめたのはいずれもシロナ本人である。
     もちろん、作者がシロナであることは伏せている。
     ペンネームは、ロシーナ。
     どことなく異邦人のような、メルヘンチックな響き。しかも、そうでありながら、ちゃんとシロナ本人であることは暗に示しているのだ。要するに表向きの私生活を偽る程度の覆面作家だったのだが、この事がまた『謎の超新星登場!』との大見出しをつけて世間を賑わした。

     今やシロナにクマシュンのことを語らせたら歯止めがきかないほど、彼女はこのポケモンに入れ込んでいた。その事が窺えるのは、何も彼女が普段から使っている言葉の端々にだけではない(このところシロナはクマシュン語なるものの習得にも励んでいる)。
     身の回りをクマシュングッズで固めて、部屋中もクマシュンで固めて、おかげで別荘内部は輝かしいクマシュンの都、言い換えると、痛々しい千年王国だった。
     これは、あくまでシロナ個人のひそかな楽しみだった。別荘の主であるカトレアちゃんにもこの事は内緒だ。誰か知人が訪ねてくる時もクマシュングッズは全て片付けるようにしている(カトレアちゃんの所有するこの広い別荘内には隠し収納スペースなどいくらでもある)。
     人の別荘を私物化することに若干の抵抗がないでもない。が、そのような些細なことが一体何だというのだろう? シロナは常識という窮屈なものをえいやっ、と圏外に追いやり、自分の主張を押し通す。
     そう、ここはもう、わたしの聖域、世界なのよ。
     ――クマシュン・ザ・ワールド。

     さて、と。
     シロナは一度伸びをすると、この日も創作の作業にとりかかった。
     今、彼女が構想しているのは、ただただ純粋にクマシュンと一人の女の子が絆を深めていくという物語である。
     今度の作品には、小説『レ・クマシュブル』で示したような歴史的な意義はないだろうし、詩集『クマシュンと我が放浪』で書いたような細やかな象徴の連結も暗喩も見当たらない。
     しかしそんなものは最初から無駄な要素だったのではないか、と、シロナはこのところ疑い始めている。以前までの自分の作品には、小難しい、本来であればいらない余計な説明が多すぎたのではないか。
     迷いながらも、新たに再出発しようと決めたのが今回の作品だった。
     何があっても、クマシュンへの愛だけは変わらない。シロナの中で、それだけは唯一確かな事実だった。

     シロナは頭の中で妄想を逞しくする。
     登場人物を目の前に起こし、女の子とクマシュンのせりふを紡いでいく。
     最近ではポケモンのトレーニングよりも、このわずかな一時の方が、彼女にとっては楽しみだった。
     明日は、古くからの友人であるナナミが、サザナミタウンに到着する予定だ。
     ナナミは、カントーのマサラタウンに住むオーキド博士の孫にあたり、かの有名なグリーンくんの姉にあたる。
     そのナナミがここを訪ねてくる。部屋は今日中に片付けておかなければならない。
     たとえ古くから付き合いのあるナナミであっても、このクマシュンの秘密だけは断じて見つかるわけにはいかない。
     少々惜しいが、ガブリアスのガーブやルカリオのルウにも手伝ってもらって、今夜は早めに愛しのクマシュン達をしまってしまおう。
     しかしそれまでの間は、まだ創作にふけることができるのだ。
     シロナは世界でたった一匹の、一番お気に入りのクマシュンドールを手に抱えながら、ほんわかとする雪原を思い描いて、時空を超えた世界へと旅立った。
     こうして、小さな頃やったごっこ遊びをするように創作した方がいいものができる、というのがシロナの持論だった。そこには科学的な根拠が介在している可能性も多少はあるだろうが、やはり言い訳めいた無理が窺えることは否めない。実はシロナが本当にやりたい事というのはこのごっこ遊びの方だったりする。

     ダイニングからキッチンへ、キッチンからリビングへ、リビングを出ると階段を上がって、シロナは二階の部屋までも踏破する。今、カトレアちゃんの別荘はシロナとクマシュンだけの世界だった。時間の神も空間の神も、ついでに付け加えると、たぶん反転世界までもがシロナの思いのままだった。
     だから、先程から何度か叩かれている玄関扉のノック音に、彼女は全く気付くことができなかったのだ。
    「くましゅぅん。えへへー、今日は太陽がいっぱい当たって温かいねえ」
     痛烈にベタな展開だったが、もはや理想像にまで高められた一匹のクマシュンは、ちゃんと彼女に応えられるだけの生ける魂となっていた。
    『くぅぅ。すぴー』
    「キマワリの笑顔みたいだねえ」
    『くままぁ☆』
     童心に戻ったシロナは遠慮なく、その微笑ましさの虜になった。
     ――ああ、クマシュン! わたしの、わたしだけの! いい、やっぱりいいわ!
     話の結末がどのような展開になるのか、すでにシロナの目には映っていた。
     一度は行方不明になったクマシュンが、後年女の子の元に帰ってくるというストーリーだ。オリジナリティには少々欠けるだろう。いや、かなり欠けるだろう。いや、著しく、欠けまくっているだろう。
     が、それがどうした。
     シンオウの天才チャンピオン・シロナは怯むことなく、些細なことは一蹴する。
     大筋さえできれば、あとは細部を埋めていくだけだ。
    『くまぁ、ままぁ、くうまあ』
     シロナのクマシュンは彼女に甘えながら並んで歩く。
     こうして物語の第一部、女の子とクマシュンの過去が語られていく。その最後の方で、クマシュンが行方不明になるという事件が発生する。
     この劇的な物語は二部構成を予定していた。
     シロナはこのように想像を膨らませながら、物語を第一部と第二部に分けるのは、なかなかいい考えなのではないか、と思い始めていた。
     クマシュンがなぜ行方不明になったのか、まずは第一部の時点で謎を提示する。同時に伏線も張っておき、第二部へのつなぎとする。そして第二部は、第一部で設置しておいた謎の解答として、クマシュンが行方不明になった理由を与えてやれば、ミステリー仕立てにもなるのだ。これはいい。
     しかし最も重要なのは、やはり最後の場面だろう。ここが悪ければ、結局は全てが台無しになってしまう。
     シロナは無意識のうちに玄関付近にまで来ていた。
     途中に差し挟まれる各エピソードは後で考えることにして、シロナはほとんどの部分を間に合わせの場面で構築、あるいはすっ飛ばした。
     そうして物語の展開は飛躍に飛躍を重ねて、いよいよ最大のクライマックス、女の子とクマシュンが再会を果たすシーンにまで差し迫った。
    「……くましゅん」
     息を飲む、ヒロインの女の子(シロナ)。
    『くまぁ……』
     切なげに鳴く、帰ってきたクマシュン(やっぱりシロナ)。
     その時、別荘の玄関扉が、不意にがちゃりと開かれた。
     シロナはまだヒロインの女の子とクマシュンになりきっていた。
    「くましゅぅぅん、おかえりぃー☆」
    『くぅまあぁぁ☆』
     一人二役の超絶的な名演だった。
     開かれた玄関に、シロナの声だけが明瞭に響いた。



       二

     その日の朝方、ナナミはイッシュ地方の港町、サザナミタウンにたどり着いた。
     以前からシロナが「こっちに遊びに来たら」と言っていたので、その通り、飛行機とバスを利用して、遠路はるばるやって来た。
     ナナミの大まかな計算では、後一日だけ遅れてサザナミタウンに到着する予定だったのだが、旅程は意外なほどスムーズに進み、予定より一日も早く到着することができた。
     ナナミはシロナの別荘に電話をかけようかと一度は考えたが、いきなり顔を出して驚かせるのも悪くはないだろう、と殊勝なことを思い付いた。
     ここ一年間、ナナミは電話かメールのやり取りでしかシロナと交流していない。実際に顔を合わせるのは久しぶりのことである。
     生まれ育った地方は違えど、ナナミにとって、シロナは古くからの友人である。
     ナナミのひそかな楽しみ、あるいはライフワークに『シロナ観察記』というものがある。
     それによると、シロナという人間は、表面的にはクールに見えるのだが、一度思い込んだら一直線、という危なっかしい傾向を秘めているのだとか。
     一歩間違えれば狂気にも通じる、その類い希な精神を紐解くだけで、ナナミの人生は夢心地にも似た至福に包まれる。

     ポケモンセンターから歩いて二十分の所に、その別荘はあった。
     何やらイッシュ地方にいる四天王の一人とシロナが顔見知りだそうで、その友人にシロナは別荘を借りているという。ずっと前に、電話で「お屋敷みたい」と言っていたので、たいそう大きな建物なんだろう、と想像を膨らませていたら、それは本当に豪奢な佇まいだった。
     その屋敷の前で立ち止まって、ナナミはさっそくインターホンらしきものを押してみた。
     二十秒以上は待ったはずだが、反応が無かった。
     もう一度、押してみる。
     やはり反応はない。
     どこかに出かけているのだろうか、と、ナナミは考えたが、それにしては屋内に人の気配を感じるのは気のせいだろうか。
     ナナミは首を傾げた。
     二度押したインターホンの音は鳴らなかったのである。
     もしかしたら壊れているのかもしれない。
     ナナミは玄関扉にまで近寄って、軽くノックしてみた。
     誰も出てこない。
     今度はもう少し強く叩いてみる。
     やっぱり誰も出てこない。
     屋内から、かすかに物音がしていた。
     とすると、やはりシロナは家の中にいるのだろうか?
     数秒間、思考をめぐらせてから、ナナミは頭の計算機を止める。まさかとは思うが、シロナの留守中に空き巣でも入り込んだのだろうか。
     ナナミはドアノブを掴んでみた。少し力を加えると、それはゆっくりと回った。
     どうやら鍵はかかっていないようだ。
     その扉を、ナナミは一気に押し開いた。
    「くましゅぅぅん、おかえりぃー☆」
     ……とてもいい笑顔のシロナが出迎えてくれた。
    『くぅまあぁぁ☆』
     続いて発せられる、シロナの奇声。どちらも彼女の声とは思えない。いや、この世のものとさえ思われなかったが、それはやはりシロナの発したものに違いなかった。
     ――クマシュゥゥン、オカエリィー。
     ――クゥマアァァ。
     はて……? なんのことやら。
     新しい外来語の挨拶、いや、伝言遊びだろうか。残念ながらナナミは世の中の流行には疎い方だ。自らもそう自覚している。
     ナナミがはかりかねていると、シロナの目がにわかに正気を取り戻した。それはナナミの姿を捉えると、だんだん、ゆっくりと、凍りついていった。
    「な、なな? ナナナ、ナナ、ミ……さん……?」
     普段、シロナとナナミは『さん付け』で呼び合う関係ではない。ということは、この局面はシロナにとって、理性のダムさえ決壊しかねないほどのアクシデントなのだろうか。ナナミは推測の糸を伸ばすことを忘れない。
    「お久しぶりね、シロナ。相変わらずお元気そうで」
     ナナミは社交辞令にも聞こえる穏やかな挨拶を口にした。といっても、これはナナミにっては最上級の挨拶である。普段のシロナであればその事をわかってくれただろうが、今のシロナには無理そうだった。
    「あ、あの。あな、あなた、明日、来るとかって、言ってなかった……?」
    「予定が早まったのよ。道路が空いてたのがラッキーだったわね」
    「ふ、ふーん。そーなんだ……」
     ええ、ソーナンスよ。
     シロナと受け答えしながらもナナミの頭脳コンピュータは素早く計算を再開していた。
     突然のことにより理解が遅れてしまったが、この屋敷には何かおかしな空気、というより、おかしな妖気が流れている。
     不審点その一。シロナの格好について。
     いつもは黒一色のロングコートだが、今日は違う。温かな季節のせいもあるだろうが、今日の彼女は袖の短いラフな室内着だ。そう、室内着、と識別できるのだが、それでも見逃せない部分が一点。服の中央にアンノーン文字で配列されている、これは一体。

     『N・UYS・AM・UK』

     ナナミが、ふっとシロナの手元に目をやると、シロナは慌てたように、手に持っていた物を背中に隠した。ナナミの高速度カメラはすでにその映像を録画していた。おそらく、あれは、わたしの記憶に間違いがなければ、クマシュン、だろうか?
     そうだ、クマシュンだ。
     不審点その二。シロナはクマシュンのぬいぐるみを持っている。そのぬいぐるみを一体何に使用していたのか。
     それも一考にあたいすべきことだったが、ナナミがもっと興味を覚えたのは、シロナが自分の手を背中へ隠したそのスピードである。
     前にウィンディの『しんそく』を見たことがあるが、今のシロナの動きはそれと同等、あるいは部分的においてそれを超越していた。優先度+2以上の驚異的なスピード。そのスピードの源は、エネルギーは、一体どこからやって来るのか。
    「ねえ、ナナミ、さっきから何じろじろ見てるの……?」
     シロナがこわごわ尋ねる。ナナミは答えなかった。
     不審点その三。シロナの挙動。
     「疫病神がやって来た」と言わんばかりに、シロナはこちらの顔色を窺ってくる。
     さっ、と目ざとく動かした視線の先に、ナナミは奇妙な物を発見した。
     クマシュンが二匹戯れている水彩の絵画。カントーの市場価値に換算すると五〇万円はする代物だろうか。高額ではあるものの、チャンピオンという職業を勤めているシロナには決して無理な買い物ではない。
     ナナミが見ている物に気付くと、シロナは飛び上がってそちらに走り寄った。残念ながら、その絵は寸法が大きく、シロナの体では全てを隠しきれなかった。
     さっ、とナナミは次の不審物に目を止める。クマシュンの置物――市場価値一〇万円。
     シロナがそちらの方に動く、だがもう遅い。
     さっ、ナナミの目が廊下の奥を捉える。そこに大量に並んだクマシュンドール達。全て違うメーカーの製品に見える。非公式のものもありそうだ。
     シロナが仰天したように後ろを振り返る。
     さっ、ナナミの目はもう別の場所に移っている。下駄箱の近くに突き刺さっている高級そうなクマシュン柄パラソル。それが数点にものぼる。
     シロナが焦って遮ろうとする。
     さっ、足下にはクマシュンカーペット。シロナのスリッパはクマシュン。
     さっ、見たところ、玄関にそろえられている全ての靴もまたクマシュンであることを確認。
     近くにはデパートで見たことのあるクマシュンバッグがいくつも並べられている。
     さっ、さっ、さっ……どこを見回してもクマシュン、クマシュン、クマシュン、この屋敷の至る所クマシュンだらけだった。
     これら膨大な情報を加味した上で、先程の不可解なアンノーン文字およびシロナのせりふを再生してみる。
     ――くましゅぅぅん、おかえりぃー☆ くぅまあぁぁ☆
     これまで拾い集めてきたピースの一つ一つがナナミの中で組み合わさった。
    「なるほど」
     ナナミは顔をわずかに上向けると、シロナにも聞こえる声で呟いた。
    「なにが!?」
     シロナが度を失った叫びで聞き返した。
    「いえいえ、なるほど」
    「だからなにがっ!?」
     シロナはまだこの事態を隠蔽できるとでも考えているのか、仁王立ちしている。ここから先へは一歩も行かせないぞ、と言わんばかりだ。
     まだ完全ではないが、ナナミはほぼ理解した。
     今日は大変な収穫だ。今日のこのイベントだけで『シロナ観察記』をあと数百ページは増やさなければならない。
     それにしても迂闊だった。
     イッシュ地方に居着いたシロナの趣味がまさかクマシュンに傾いていたなんて。しかもこの傾き具合は普通ではない。
     てっきり、チラーミィやタブンネを始めとするスタンダード癒し系、あるいはシビルドンやウォーグルなどの強そうなポケモンのいずれかになびくと踏んでいたのだが、そうではなかったのだ。
     これまでかき集めてきた『シロナ観察記』の全データを今すぐ改めなければならない。幼い頃からそうだったが、シロナの思考パターンおよび行動パターンは、時折こちらの予測の遙か上をいくことがある。
    「ねえ、ナナミ」
     ついに痺れを切らしたのか、シロナが切り出した。
    「今日のあなた、とっても疲れてるのよ……だから、ね。ちょっと変な物、見てしまうのよ。一時間ほどポケモンセンターで休んでらっしゃい。そしたら、悪い夢は醒めるから」
    「……そう。悪い夢は、醒めるのね」
     ナナミはシロナの調子に合わせて、自分も深刻そうな声を出した。もう少しだけ、この友人の悪あがきに付き合ってやろうという魂胆である。
    「ええ、夢は、必ず醒めるわ」
     シロナは力強く頷く(振りをする)。
    「そう――」
     ナナミはふらりと立ち去ると見せかけて、こう続けた。
    「じゃあ、そこのクマシュンパラソル持っていっていいわね?」
    「ちょっ、あなた! それは駄目よ!」
     なんてこと言うんだこいつ! にわかに本性を表したシロナが一歩前に踏み出した。
    「あら、どうして? 夢なんだから別に問題ないでしょ」
     ふてぶてしく言い返してくるナナミに、シロナはたじろぐ。
     カラナクシの粘っこさに負けるとも劣らない、第二ラウンドのゴングはすでに打たれていた。
    「あの、でもねナナミ、たとえ夢であったとしても、それを持っていかれると、困ってしまう誰かさんもいるわけで、して……」
     くだんのクマシュンパラソルは実はシロナの特注だったりする。
    「ふうん、じゃあもったいないから写真だけでも撮っておこうかしら」
    「それも駄目っ!」
     ナナミが愛用の小型デジカメを取り出そうとすると、シロナが厳しく待ったをかける。
    「どうして? ……もしかして、証拠が残っちゃう?」
    「証拠!? 証拠って何の話!?」
     極めて局所的な単語にシロナは反応する。声が裏返っていた。
    「証拠っていうのは、証拠の話よ。犯罪の証拠。科学的証拠。ジバコイルUFOとかツボツボネッシーとか。あと、誰かさんが隠そうとしている超極秘の――」
    「ちょっとナナミ……!」
     がばっとナナミの肩を掴んで、シロナは声をひそめた。
    「あなたは何も見なかった……! ここで何も聞かなかった……! そう、これは全て幻なの一時の幻なのよ、全て幻、幻の都、ジラーチの幻なのよ、ナナミぃ!」
     シロナはナナミに催眠術でもかけようとしているのか、必死な形相で繰り返した。
    「そう……そうなの。いえ、そうかもしれないわね」
     ナナミはいったん、同調した素振りを見せる。
    「幻だったら、しかたないか」
    「ええ、そう、しかたない、しかたないわ!」
     ナナミの達したその結論にシロナは激しく同意、拍手を送る。ナナミはようやく、こちらの意志を汲んでくれた、と、ひそかに安堵した。
    「じゃあ……最後にもう一度だけ、あれ、やってくれないかしら」
    「え?」
     シロナは首を傾げた。何のことだか思い当たらない。だから聞き返した。
    「あれって?」
    「あれよ、あれ」
     ナナミは改まったように、こほん、と咳払いを一つした。
    「――くましゅぅぅん、おかえりぃー☆ く、ま」
     ナナミは最後まで言えなかった。シロナに襟首を抑えられたのだ。
    「ナナミ! アンタって子は……!」
     シロナはずいっとナナミに迫った。
    「なんていけない子なの! どうしてそんな悪さばっかりするの!」
     ぐわんぐわん、とナナミを揺さぶる両腕はまるでトルネロスの暴風だ。地獄車にさらされるようにナナミはぐるぐる振り回されていたが、動じたふうもなくぼそりとやり返した。
    「あなたには黙秘権がある」
    「おいちょっと!?」
     急角度からの反撃にシロナはぎょっとなった。
    「あなたには弁護士を呼ぶ権利がある」
    「なに言ってるの!」
    「大丈夫よ、シロナ。たとえわたしが『今日のことを誰かさんに喋ったとしても』あなたにはシラを切り通す権利があるんだから」
    「あなた、今日のこと全部誰かにばらすつもりね! ばらまくつもりね!」
    「わたしにはわたしの基本的人権が」
    「させない!」
     シロナはナナミに飛びかかる。ナナミはそれでも減らず口をやめなかった。こうしてシロナとナナミは、一年と三ヶ月ぶりの再会を果たしたのだった。
     イッシュ地方、サザナミタウンの陽気はますます輝かしく、たゆたう波路を照らしながら、遠くまで伝わっていった。


      [No.1368] 主人とたわし、アラブ人 投稿者:風間深織@PC   投稿日:2011/06/26(Sun) 18:25:39     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     最近、ご主人様はDSiのタッチペンを投げる。
     かじる。
     ……そして、投げる。





    「なんでこんな誤変換ばっかすんのよ! ふざけんな!」
     そう言って、今日も夜ご飯を食べ終えてDSiをいじっていたご主人様はおもむろにタッチペンを投げた。えれーこっちゃ、女子高生がそんな汚ぇ言葉使っちゃって。俺は悲しいですぜ、ご主人様よぉ。
    「ちょっと葡萄、タッチペン拾ってよ! これじゃあ文字がうてないじゃないのよ!」
    お前が投げたんだろ! 自分で取れや! ってツッコミを入れてやりたいんだが、俺の言葉はご主人様には通じねんだよなぁ。しょうがねぇから取ったるよ。ほらよ。
    「ありがと葡萄。愛してない」
    そんな照れるじゃないすかご主人ー……って愛してないんかい。突っ込みどころ多すぎだろご主人。しかも何その、その顔! 期待してんじゃねぇよみたいな顔! いつそんな顔覚えたの、この前まであんなに無邪気に「ぶどう氏ね(^^)」とか言ってたのに……ってこれも違ぇ! ぜんっぜん無邪気じゃねぇ! あのときの可愛いご主人はどこにいっちゃったの〜ん。の〜ん。
     自己紹介が遅れたなぁ。俺は、葡萄。ゴミのミノにつつまれた、ミノムッチの、ブドウだ。あ、ニックネームがブドウってことな、ご主人様のネーミングセンスにゃツッコんじゃいけねぇぞ?
     そんで、そこに佇んでるたんすは……うん、こいつはたんすだ。ただのたんす。たまーにしゃべったり倒れてきたりすっけど、ただのたんすってことにして……
    「葡萄よ、私は断じてただのたんすではない。スーパーグレイトなマスカーンだ。ポケモン的な意味で」
    くっそ、盛大にスルーしてやろうと思ったのに結局出てきやがった。このたんすは、デスカーンの、マスカーンだ。マスカーンはニックネーム、ちょっとわかりにくいから「たんす」って呼んでもいい。こいつは俺もこの前まで普通のたんすだと思ってたんだが、実はポケモンだったらしい。しゃべり方がだいぶウザイが、結構博識だ。いつからここにいるのかと聞いたら、ご主人が生まれる前からだそうだ。もともとご主人の母ちゃんのポケモンで、たまに「あのときのアッキーニャは可愛かったですなぁぐへへ」とか言ってたりする。ご主人の母ちゃんはどうやらアキナという名前らしい。まぁ、どうでもいいが。
     次に、ご主人。超思春期な恋するオ・ト・メ……ってわけでもない。名前は……え? プライバシーの侵害だって? 知るかよそんなん。でもまぁ、とりあえず伏せとくか、これ読んでるやっちゃ大体わかるだろ。そうだよ、「か」から始まって「り」で終わるアイツだよ。ちなみに母ちゃんの名前は風間明菜……ってこれもプライバシーの侵害じゃんかよ! そこ! 笑うなマスカーン! お前笑うとガタガタ動いて不気味なんだよ!
     ふぅ……すっげぇ話がそれたなぁ。とりあえずご主人は女子高生だ。かわいいもの大好き! マスキングテープ大スキ! 雑巾はダスキン! 机を拭くのは台拭き! みたいなテンションの、結構変わった人だ。変人ではない、変わった人だ。
     そんなご主人様は、DSiでチャットやツイッターをする。どういう仕組みなのかはわからないが、父ちゃんがパソコンのパスワードを変えてしまって、勝手にパソコンが使えないらしい。この前「どうせAV女優の名前かなんか適当に入れてきゃ当たるでしょ」とか言ってパスワードを適当に入力したところ見事に当たり、勝手に使っていたら怒られたと言っていた。父ちゃんやるなぁ、現役か?
     そして今、ご主人様はDSiのタッチペンに腹を立てている。どうも、タッチペンがいうことを聞いてくれないらしい。なんというか、誤変換祭なんだそうだ。「こんにちは」は「こんにゃく」、「こんばんは」は「コンバーター」、「お帰りなさい」は「お買い得です」と、これはひどい。さらにひどいのは「おやすみなさい」が「お安いです」に変換されることだとご主人が言っていた。何が安いんだよ、お買い得じゃねぇよ……と、いつもはボケ担当のご主人でさえツッコミをいれるほどだ、相当ひどいんだろ。
    「ちょっと葡萄! そろそろ寝るんだから電気消してよ。氏ねいね終われいますがれ!」
    ……ご主人、俺に八つ当たりしないでくんせぇ。しかもなんか最後の間違ってません? おかしくありません? ちょっとゴロがいいだけとちゃいますか?
    「正しくは、ありをりはべりいますがり、だ」
    そう、それだよマスカーン。お前本当に博識だなぁ。でも、今はとりあえず電気消すわ。このままだとブドウ酒にされかねない。
    「おやすみ葡萄。ホントは好きだよ」
    ……ご主人様も、素直になればこんなにかわいいのになぁ。





    「ごめん、今の嘘」
    嘘かよ!





     次の日、朝起きたときにはもうご主人はいなかった。学校に行ったんだろう、パジャマが脱ぎ捨ててある。
    「おい、マスカーン。起きてるか?」
    「早起きは三文の得だ」
    「意味わかんねえけどとりあえず起きてるなら丁度いいわ。聞きたいことがあんだけどさぁ」
     そう、俺はちょっと気になってることがあった。あのタッチペンのことだ。もしかして、あれもポケモンなんじゃないか? もしポケモンだとしたら、それはきっとご主人の母ちゃんの使っていたポケモンだ。
    「ご主人の母ちゃんの手持ちには、お前の他にどんなポケモンがいた?」
    「私の他の手持ち? それはプライバシーのしんが……」
    「別にそんなんどうでもいいから教えてくれよ」
    「了解した」
    タッチペンみたいなポケモン……俺にはちょっと思いつかなんだが、コイツは博識だし、なんかわかるかもしんねぇしな。とりあえず、ご主人の母ちゃんの手持ちを教えてもらって、本題はその後だ。
    「マスカーン、電球、傲慢だ、棒、焼き豚、あとラベンダー……だ」
    ……はぁ?
    「私を含めてこの6匹で旅をしていた。楽しかった……アッキーニャげふんげふん」
    ちょっと待て。焼き豚? そんなポケモンいるのか? いないだろ。普通に考えていないだろ。てか、傲慢だって何だよ。
    「おぉ、すまない。ニックネームで行ってもわからないのは当然だ。もう一度説明しよう。」
    なんだニックネームか……それにしてもこの親子、どういうネーミングセンスして……って、ツッコんじゃいけねんだった。あぶねぇあぶねぇ。
    「デスカーン、ランターン、ボーマンダ、アンノーン、エンブオー、エーフィだ」
    なんつーか、全部のポケモンに見事に「ー」がついてんのな。てか「傲慢だ」ってそりゃひどいだろう。俺も名前じゃいばれねぇけど……って、棒? アンノーンが棒?
    「あぁ、アンノーンにはたくさんの種類が存在する。その中でアッキーニャが使ってたのはビックリマーク!のアンノーンだったのだ」
    ……それだ!
    「あのタッチペン、きっとその棒だ!」
     俺はご主人のベッドの枕元に置いてあるDSiに駆け寄った。右側にあるタッチペンの収納できるスペースを見る。だがしかし、そこにタッチペンは……いなかった。
    「あんにゃろう、またタッチペン投げたな!」
    「ご主人らしくて良いではないか」
    「探す手間がかかんじゃねぇか! くっそ、どこだよタッチペン」
    「おーい、棒。どこだー(棒読み)」
    「棒読みで呼んでも意味ないだろうがっ!」
    「いや、棒を呼ぶには棒読みが一番だろう。棒だし」
    「知るかよ!てかお前狙いすぎだろ、逆に意味わかんねーよ!」
    なんか、ツッコミ入れてたら疲れたわ…。なんなんだこのたんす…。とりあえずまず棒さがさねぇと……
    「……てかさぁ、あんたら、何? コントの練習でもやってるわけー? とっとと探せよってゆーかー、ここにいるけどーww」
     聞き覚えのない、わりと可愛い声。ギャル系なしゃべり方。あたりを見回すと、たんすの……マスカーンの前にぷかぷか浮かぶタッチペンがいた。
    「久しぶりだな、棒。元気そうではないが、生きてたんだな。良かった良かった」
    「そっちこそ。てゆーかあんた、なんで壁のほう向いてるわけー?超ウケるーw」
    「私はたんすになったのだ。お前もタッチペンになった。境遇としては大体同じだろう」
    「まー、そうなんだけどー」
    なんだかわりと話が弾んでいる。俺の入る隙もねぇ。すると、何を思ったかタッチペンがこっちを向いた。
    「それでー、このピンクのたわし、何?」
    「俺はたわしじゃねぇ! 葡萄だ!」
    「どっちにしろ一緒だけどー」
    「一緒じゃないだろ! 大違いだ!」
    「しかし、よくよく考えてみれば……葡萄、お前葡萄よりも、たわしの方がビジュアル的に似てるぞ」
    「うるせぇな! 俺は食べられない葡萄なんだよ!」
    「理解不能」
    「……それでさ」
    タッチペンがじぃっとこっちを見た。
    「アタシに、何の用?」
    ……そうだ。俺はコイツに言いたい事があるんだった。そうだった。
    「お前、ポケモンで、そうやって動けるんだったら、投げられたとき自分で元の場所に戻ってくれよ。取りに行くのめんどくせんだよ」
    「えー……アタシも動くのめんどくさーいしーぃ」
    「まず、探すのに手間がかかんだよ。なんでよりによって色が黒なんだよ」
    「何が悪いって、あんたの主人がアタシを投げたりするのが悪いんじゃない! 実は結構痛いのよ! てゆーかー、アタシもマスカーンもポケモンだ、って認識されてないしぃ」
    「投げる前に、お前が誤変換したりするからだろぉ!?」
    「いいじゃない。わりと空気読んで誤変換してるわよ、アタシ。この前イケズキさんが買い取ってくれるとか言ってたしぃ。荒ぶるタッチペンって結構有名なのよ。アターシ、今日カラ、アラブ人ニナリマーァス。アラブ人は左に」
    マスカーンがふぅっとため息をついた。
    「ブドウよ、私が思うに、コイツには何を言っても意味がない」
    「……久しぶりに意見が合ったな。俺もそう思う」
    結局、なんかよくわかんねぇ部屋の住民が増えただけで、俺の労働は軽減されなかった。





    「ねぇ葡萄」
    その日の夜、ご主人様は俺をじっと見てこう言った。
    「アンタ、たわしに似てるわよね。ビジュアル的に」
    心臓が止まるかと思うほど驚いた。もしかして、この部屋にいるヤツって……みんなアラブ人なんじゃねぇの……?





     とあるのどかな一軒家、主人がペンを投げる中、哀れに叫ぶ葡萄が一匹。
    「だれでもいいから、アラブ人と俺のでぃすたんすを引き離してくれよぉ……」

    ーーーーー+*-----+*-----+*-----+*-----

     最近めっきり文章を書いてなかったので息抜きに書いてみました。「葡萄とたんす、マスカーン」の続編にあたる作品です。
     ちなみに、私の母はアキナではありません。ただ単に「アッキーニャ」が言わせたかっただけなんです。たんすのキャラが迷子なのは仕方がないと思ってください。多分、間違ってトイレに流しちゃったんだと思うです。
     あと、いつもチャットでタッチペンがあらぶっててごめんなさい。無意識です。あと、指を怪我しているのも原因だと思ってます。
     あ、あとイケズキさん。勝手に名前出してごめんなさい。全然反省してないですけど、ごめんなさい。

    【何してくれちゃってもいいのよ】


      [No.1367] 秋のリングマ 投稿者:渡邉健太   《URL》   投稿日:2011/06/26(Sun) 09:43:28     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     俺は秋のリングマを想像するのが好きだ。浅い川を上ってくる鮭を待ち構え、太い腕を振り下ろす。水しぶきを上げて鮭は打ち上げられ、リングマは満足そうに咥えて帰る。それはどこか縁日の金魚すくいのようでもある。
    __

    100文字のための習作。


      [No.1366] 最近、サンダーさん来ないね 投稿者:茶色   投稿日:2011/06/25(Sat) 19:05:34     101clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    フリーザー「最近、サンダーさん来ないね」

    ファイヤー「そうだね。すっかりぼくたちも忘れ去られたけど、友達から忘れられるのは悲しいね」
    フリーザー「そうだよね。忘れられたよね。昔は“こころのめ”と“ぜったいれいど”で引っ張りだこだったんだけど」
    ファイヤー「君はまだましだよ。ぼくなんてあんまり使ってもらえた記憶ないし、おうちを2回も勝手に変えられたし。その上忘れられるなんてさんざんだよ」
    フリーザー「君は最初から不遇だったよねぇ、」
    ファイヤー「みなま言うな。みなまで言うな。言いたまうな」
    フリーザー「でも、実際はぼくはフロンティアくらいでしか使われていないなぁ」
    ファイヤー「逆にぼくは“だいもんじ”や“ソーラービーム”とか覚えてさ」
    フリーザー「あれ? 何かぼくは最初が良いだけだ」
    ファイヤー「サポートが必要だからだろうね。上級者じゃないと中々扱いにくい」
    フリーザー「ヴィジュアルには自信あるんだけどなぁ」
    ファイヤー「スケッチすれば美しく、デフォルメすればかわいらしく。羨ましいよ」
    フリーザー「ファイヤー君、設定は温かくて良いと思うよ」
    ファイヤー「それってヴィジュアルはいまいちって言っているようなものじゃないかなぁ」
    フリーザー「そうじゃなくてさ、シンプルなんだよ。大型鳥ポケのベースって感じでさ、可愛いとかそういう評価は駄目だと思うんだ。唯一神なんだよ」
    ファイヤー「皮肉を言われている気がする。サンダーさんみたいにトゲトゲもしていないし、君みたいに雅でもないって言われているってことでしょ」

    フリーザー「まあでもサンダーさん来ないってことはさ、用事があるってことだよね。むじんはつでんしょが無くなったときはほんとに困ってたけど良いことだよね」
    ファイヤー「ぼくたちのおうちに泊めたりね。誰も知らない幕間劇だよね」
    フリーザー「うん。初代伝説同士、困ったときは助け合ってきたよね」
    ファイヤー「ぼくたちはほんとに良い友達だと思う」
    フリーザー「そうだね」
    ファイヤー「ポケモンでもさ、最近は『じゆう』が欲しいってやつがいるけど、それだけじゃ足りないかもしれないんだよね」
    フリーザー「難しいことは分からないけど、百獣の王だって一人で生きるのは難しい。それくらいは当たり前のことなんだ」
    ファイヤー「でもさ」
    フリーザー「ん?」
    ファイヤー「ぼくたちって割と気ままだよね」
    フリーザー「あははは、そうだね。こんなこと言っても説得力ないや」
    ファイヤー「こんな気ままでいられるのも暇だからだけどね」
    フリーザー「どうだろう。サンダーさんお仕事あっても気付いたら遊びに来てた」
    ファイヤー「あの頃はみんな忙しかったから。ぼくだって色んなところに行ったんだよ」
    フリーザー「忙しいから時間が経つのも早かったからってこと?」
    ファイヤー「そういうことだね」
    フリーザー「言われてみればそうかも。あの頃は毎日が矢の如しだった」
    ファイヤー「シンオウに行ったりホウエンに行ったり。でもまだイッシュには行っていないんだよなぁ」
    フリーザー「分かる分かる。遠いもんねー」
    ファイヤー「君はどこに行ったの?」
    フリーザー「ファイヤー君とそんなに変わらないよ。でもホウエンに行った時はちょっと参ったかなぁ。暑いし、だからといって雪山作るわけにもいかないし」
    ファイヤー「分かる分かる。ぼくもシンオウに行った時はいつもくたくただった。たとえば山登った時、雪を融かして雪崩れ起こすわけにもいかないしさ。気を遣った」
    フリーザー「ファイヤー君とぼくとが一緒にいれるのはカントーかジョウトくらいってことかぁ」
    ファイヤー「そうだね。気候もそうだし、気質もそうだよ」
    フリーザー「気質?」
    ファイヤー「ポケモンとか人とか、動植物とか色々」
    フリーザー「ふぅん。でも寒い所の方が君が来るのを待っているんだけどね」
    ファイヤー「それは承知しているんだけどね。喜んでくれてぼくも嬉しいんだけど、どうも、駄目なんだ」
    フリーザー「んー、ぼくも暑い所の気質ってのは不慣れなのはあるけど」
    ファイヤー「ホウエンの平地とかにさ、君がたまに来るとね、喜ぶんだよみんな」
    フリーザー「もちろん知っているよ。だから行くけどさ、ここはぼくの居場所じゃないって思う。ぼくは喜ばれて良いとは思っていない」
    ファイヤー「君は優しいよ。優しくていて、それでいてやっぱり怖いんだ。そういうことだよね」
    フリーザー「うん。ぼくは怖くちゃいけないんだよ。ファイヤー君もそうだよね」
    ファイヤー「ぼくの方はほら、エンテイ君がいるから」
    フリーザー「やっていることが違うでしょう。エンテイ君は噴火は起こすけど春は呼ばない」
    ファイヤー「ちぇ、君は厳しいな。冬のようだよ」
    フリーザー「冬だもん」
    ファイヤー「冬過ぎて春来るらし。ぼくを見習うべきだね」
    フリーザー「春過ぎて夏来るらし、でしょ」
    ファイヤー「春も夏も一緒だよ。ぼくが過ぎれば夏になる」
    フリーザー「春に動き始めて君が元気になれば夏になる。その間ぼくは休んで、君が疲れてきた頃にぼくがまた顔を出す。それで秋になり、やがて君が休んで冬になる」
    ファイヤー「うん。そうやってずっとやってきた」
    フリーザー「毎年やっているからね。みんなぼくたちのことは覚えている」
    ファイヤー「忘れたくてもじわじわ攻めるからね」
    フリーザー「あははは」

    ファイヤー「ぼくたちこれまでも、これからもこうあるんだよね」
    フリーザー「ぼくたち以外にもこういうことは色々あるけど」
    ファイヤー「うん」
    フリーザー「そういうのも含めて、ぼくたちのことを忘れてほんとに良いのか、ちょっと問いたいね」
    ファイヤー「どういう意味で?」
    フリーザー「色んな意味で」
    ファイヤー「色んな意味で、か。むつかしいね」
    フリーザー「どうして?」
    ファイヤー「忘れることだって、大事なことだから」
    フリーザー「世界は有限だから?」
    ファイヤー「世界は有限だから」
    フリーザー「有限だから良いこともあるんだけどね」
    ファイヤー「ジレンマだね」
    フリーザー「じゃあ、無限なものがあるとすれば何があるんだろう」
    ファイヤー「有限を突破するという意味で?」
    フリーザー「うん。無限にしなくても良い、有限を1から2に拡げるために」
    ファイヤー「想像、じゃないかな」
    フリーザー「想像、ね」
    ファイヤー「一番良い例は精神だよ。有限の精神も、その中にある無限の想像力でいくらでも拡げられる」
    フリーザー「でもそれってさ」
    ファイヤー「うん?」
    フリーザー「想像のベースが必要だよね」
    ファイヤー「時間と接触、興味と恐怖」
    フリーザー「そのあたり」
    ファイヤー「でも、やっぱり入るのかな、忘れることも」
    フリーザー「想像は無限でも頭は有限だからね」
    ファイヤー「参ったな」
    フリーザー「それに誰しも、“自分だけは”と心の奥底で思っている。誰しも災難には遭うし、誰しもその内、死ぬ」
    ファイヤー「全てが全てじゃないだろうけど、そうしないと精神を保てないから」
    フリーザー「純然たる事実を忘れることて保たれる精神。その精神で無限の想像を得る」
    ファイヤー「どんな結果が待っているかは、まあみんなその内分かることなんだよね」
    フリーザー「分かったときには大概、手遅れだけど」
    ファイヤー「手遅れだね」
    フリーザー「過信は破局を招く。破局を免れるためには破局を読み取って動くしかない。でも精神は、本質的にそれを嫌う」
    ファイヤー「想像が精神に依存することの最大の問題点ってわけだ」
    フリーザー「もちろん、するかしないかを別にすれば、想像することは出来るわけだけど」
    ファイヤー「それにしても、サンダーさん来ないね」

    フリーザー「来ないね。久しぶりに三鳥で飛び回りたいんだけどなぁ」
    ファイヤー「あの人のことだからどこかで良い雲を見つけて暴れているのかもしれないけど」
    フリーザー「ありうるね。大いにありうる」
    ファイヤー「雲を減らしておけば良かったかな」
    フリーザー「ちょっと暴れて来てもらうくらいが良いんだけどね。そうでないと、むじんはつでんしょが無くなってからあの人、びりびりしているから」
    ファイヤー「うん。こっちは鳥だっていうのにね」
    フリーザー「あの人も鳥だから、鳥が電気に弱いってちょっと認識が足りないんだよ」
    ファイヤー「君も氷で攻撃すれば良いのに」
    フリーザー「そりゃあ、ぼくとあの人じゃ相性で五分五分だけどさ」
    ファイヤー「うん?」
    フリーザー「ファイヤー君が仲裁に入っても、炎にはサンダーさんよりぼくの方が弱いんだから。ぼくが損するだけだよ」
    ファイヤー「それもそうか」
    フリーザー「喧嘩はあまりしたくないしね」
    ファイヤー「ドードーがどうしてそらをとべるのか、口喧嘩してからずっと喧嘩してないなぁ」
    フリーザー「何年前の話なんだろう」
    ファイヤー「“ねこにこばん”はどうしてお金が出るんだろうとかね」
    フリーザー「あったあった、そのお金は本当に使えるか試したいってサンダーさんが言っていた」
    ファイヤー「人間じゃなくて、鳥なのに」
    フリーザー「鳥なのにねぇ」
    ファイヤー「鳥、といえばさ」
    フリーザー「うん?」
    ファイヤー「最近、カントー飛んでると夜暗いよね」
    フリーザー「色々大変そうだよね」
    ファイヤー「うん」

    フリーザー「思うんだけどさ、どうしてぼくたちって忘れられたんだろう」
    ファイヤー「色んなポケモンがいるからだろうね」
    フリーザー「色んなポケモンがいるから、ね。その通りなんだろうけど、」
    ファイヤー「どうしたの?」
    フリーザー「何かを忘れて、何かを覚える。それは良いんだ」
    ファイヤー「その意味が何か、ってこと?」
    フリーザー「うん。忘れるのは自然なことだけど、何かを覚えることは選ぶことだ。どうしてぼくたちは選ばれなかったのか、その意味が何かなと思って」
    ファイヤー「新しい何かがぼくたちより優れていたんだろうね」
    フリーザー「でもどこまで優れていたんだろうかとは思う」
    ファイヤー「どういうこと?」
    フリーザー「大した意味はないんだ。でもね、選ぶことは独立していないといけないんだ。その判断に本当に必要なことだけを抽出して選び取らないといけないだ」
    ファイヤー「ぼくたちは、ぼくたちの評価だけで選ばれなかったわけではないってこと?」
    フリーザー「可能性としてはあるでしょう? ほんとのことをいえば、その評価さえも可変的なものだ。その上で、選ばれなかった意味はどこにあるんだろう、ってね」
    ファイヤー「ぼくには分からないなぁ」
    フリーザー「ぼくにも分からない。でもさっきからそればっかり考えている」
    ファイヤー「想像は無限だから」
    フリーザー「うん。時間だけはあるからね」
    ファイヤー「時間があると君も理屈っぽくなるんだね」
    フリーザー「どういう意味?」
    ファイヤー「君のヴィジュアルで哲学するなんて、聞いている方からすれば怖い先生に怒られているように見える」
    フリーザー「ひどいなぁ」
    ファイヤー「そんなんだから、ふたごじまから引っ越しせずにすんでいるのかもしれないけどね」
    フリーザー「ファイヤー君は、口車に乗りやすいから引っ越したの?」
    ファイヤー「少なくとも、そんな毒舌をはかないってことは間違いないなぁ」
    フリーザー「そうだったかなぁ」
    ファイヤー「そうだったよ」
    フリーザー「あ」
    ファイヤー「うん?」
    フリーザー「聞こえなかった?」
    ファイヤー「サンダーさん?」
    フリーザー「うん」
    ファイヤー「でもあの人、最近はぼくたちがびりびりしないように、先に1発雷落とすけど」
    フリーザー「それはないけど、聞こえたんだ」
    ファイヤー「聞こえなかったな」
    フリーザー「本当だよ」
    ファイヤー「……本当だね」

    フリーザー「サンダーさん、お久しぶり」
    ファイヤー「随分顔見せなかったね」
    サンダー「うん、久しぶり。ごめんね、ずっと来られなくて」
    フリーザー「今日はびりびりしないね」
    サンダー「電気使ってきたからね」
    ファイヤー「何かあったの?」
    サンダー「色々あったよ。で、今さっきまではつでんしょにいた」
    フリーザー「はつでんしょ? 昔のおうちのあったところの?」
    サンダー「うん、あの谷間のはつでんしょ」
    ファイヤー「分かった、また昔のすみかが恋しくなって、中へ入れないのに遊びに行ったんでしょ」
    サンダー「違う違う。来てくれって言われたんだ、人間に」
    フリーザー「えっと、またあそこを、むじんはつでんしょにするの?」
    サンダー「それが一番嬉しいんだけどね、違うんだ」
    ファイヤー「そうだよね、建て替えるから出て行けって言われたんだからそんなわけないよね」
    サンダー「うん。ずっとあそこで発電の手伝いをしていたのに、追い出されたからくらいだからそれはない」
    フリーザー「えっと、じゃあ何なの?」



    サンダー「電気が来なくなって足りないから、手伝って欲しい、だってさ」



     最近、サンダーさん来ないね 了

    【好きにしていいのよ】


      [No.1365] しんかのきせき後編 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/06/25(Sat) 09:28:21     33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     アッカはしばらくの間飛び続け、ヤグルマの森へやってきました。聞くところによれば、ビリジオンは思索の原という場所にいるそうです。早速いってみると、それらしいポケモンがいました。

    「……あら、なにかしらあなた」

    「あのー、あなたがしんかのきせきを持っていると聞いたのですが」

    「しんかのきせき?ああ、あの石のことね。ここにはないわよ」

    「ま、またですか」

    「またってことは、あなたコバルオンのとこにいったの?我輩なんて、変な言葉遣いでしょ?」

    「ええ、確かに。……あなたがビリジオンさんですか?」

    「正確にはビリジオン(78)ね。念のため繰り返すけど、これは年齢ではなくてレベルよ」

    「……あの、誰に向かって言ってるんですか?」

    「わからない?読者によ。『連載や普段の短編じゃメタ会話を書かないようにしているから、たまには良いよね?』って作者が言うものだから」

    「な、なるほど」

    「それで、さっきも言ったけど、しんかのきせきはもうここには無いの。せっかくあの弱いコバルオンが隠れてたところを探しだして手に入れたのに、ガチムチテラキオンに取られたわけ」

    「そうですか。そのテラキオンというのがどこにいるかわかりますか?」

    「あのガチムチなら、チャンピオンロードにいるわ。普段は自分のいる部屋の入り口をふさいでる引きこもりだから、すぐわかるわよ」

    「情報提供ありがとうございます。それではこれで……」

    「待ちなさい。手土産の1つもなしに引き上げるつもりかい?アタシはそんなに優しくないよ!」

    「ひ、ひいいいい!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんn(ry」

    「謝るのはいいからさ、アタシと勝負してよ。しんかのきせきを狙うからには、かなりのやり手なんでしょ?」

    「はあ、それなら大丈夫ですよ。ただ、お手柔らかに……」

     そんなこんなで、アッカとビリジオンの勝負が始まりました。ビリジオンはその速さとレベル差でアッカを圧倒します。アッカも負けじとネギを振り回しますが、いかんせん上手く当たりません。それもそのはず、ビリジオンの聖なる剣は遠くからでも遠隔操作できますが、アッカはネギを握っています。リーチが違いすぎるのです。

     ここでアッカは考えました。そして、とんでもない行動を取りました。なんと命の次に大事なネギを、ブーメランのように投げつけたのです。ネギブーメランはビリジオンの額に当たり、ビリジオンをひるませました。するとすかさずアッカは飛び上がりました。聖なる剣の攻撃をものともせずに空中のネギを掴み、そのまま一撃をたたき込んだのです。

    「ど、どうだ、アクロバットの威力は!」

    「あら、これは凄いわね……!」

     ビリジオンはこう叫ぶと、攻撃を止めました。

    「……どうして攻撃を止めるんですか?」

    「それはね、アタシが満足したから。いってらっしゃい、アタシとこれくらいやりあえれば引きこもりのガチムチなんて相手じゃないわ」

    「あ、ありがとうございます!それではいってきます!」

     こうしてアッカは、一路チャンピオンロードへと向かうのでした。





    「遂に俺様に挑む奴がやってきたか」

     イッシュ地方のチャンピオンロード、試練の室という部屋に、最後の相手はいました。アッカは武者震いをしながらも尋ねました。

    「あ、あなたがしんかのきせきの所持者、テラキオンさんですか?」

    「いかにも、俺様がテラキオン(97)だ。世界中を旅し、あらゆる経験を積んだ俺様には、お前のことが手に取るようにわかる。お前はカントー地方のカモネギ(79)だな?」

    「その通りです。僕はあなたのしんかのきせきを狙ってやってきました。」

    「ほう、ではビリジオンに会ったか。『ボクッ娘がいるならアタシって言う男がいても良いはずだ!』なんて騒いでたが、影響されてないよな?」

    「それは大丈夫です。それで、まずきせきを見せてもらえますか?」

    「大丈夫だ、問題ない。ほらよ」

     テラキオンは懐からしんかのきせきを取り出すと、アッカに見せ付けました。その淡い紫の石は、ともすれば宝石のようです。

    「こ、これが……!」

    「……やはり欲しいか。ならば俺様が最後の試練だ。見事勝ち取ってみせろ!」

     テラキオンはこう言うと、守りを捨てて近づいてきました。

    「くらいな、インファイト!」

    「ぐ、ぐわぁっ!」

     アッカは避けようとしますが、さすがにテラキオンも予測済みでした。テラキオンの立派な角がアッカの懐を襲います。

    「ふん、まずはこれくらい耐えてもらわねばな……ん?」

     テラキオンは、手応えが無いことを不思議に思いました。そこで自分の真上を見てみました。

    「なに、角の間にいるだと!」

    「ふう、危ない危ない。僕は体が小さいから、これだけ角と角の間が広ければ、そこにおさまることもできるんだよ」

    「なるほど、中々知恵のある奴だ」

    「今度はこっちからだ!」

     アッカは自慢の茎を振り下ろしながらテラキオンと距離を取りました。茎はテラキオンの左前足を斬り付けました。

    「少しはやるようだな。だが!」

     テラキオンは周りに響くくらいの声で吠えました。すると、アッカの足元から岩が突き出してきたではありませんか。しかしアッカは空を飛び、何とか避けます。

    「そこだ!」

     これを待っていたと言わんばかりに、テラキオンはアッカに岩を飛ばしました。アッカはこれに直撃し、地面に打ち落とされてしまいました。そこを先程の岩の刃が襲い掛かります。

    「うわあああ!」

    「ふふふ、どうだ俺の力は。ゲーム的には『うちおとすとかww』だが、小説的には非常に優秀な技だからな。そう簡単には負けないぜ」

    「く、くそ……」

    「というわけで、さっさとかたをつけるぜ。悪く思うなよ!」

     テラキオンが再びアッカに向かって走りだしました。ところが、アッカは動きません。ただただ、テラキオンが来るのを待っているかのようです。

    「勝負を捨てたか!これで俺の勝ちだ!」

     テラキオンは力いっぱい角をアッカに差し込みました。しかし、なんということでしょうか。攻撃したテラキオンがその場に沈んでしまったのです。

    「ぐ、一体何が起こったというのだ!?この俺が一撃でやられるとは……」

    「それはもちろん、弱者の切り札、カウンターのおかげだよ」

    「か、カウンターだと……」

    「僕はあまり能力に恵まれていないから、なるべく大きなダメージが入る技が必要なんだ。その結果がこれというわけ」

     アッカは胸を張って言いました。するとテラキオンは立ち上がり、大声で笑いだしました。

    「ぐはははは!こいつは一本取られたぜ!さて、俺に勝った証だ、こいつを持っていけ」

     テラキオンは、何やら小さい塊をアッカに渡しました。それは薄い紫色をしていて、光を反射してほんのり輝いてます。

    「こ、これがしんかのきせき!これで僕も強くなれるはず……」

    「……ところで、少し聞いても良いか?」

    「何ですか?」

    「お前は進化できるポケモンなのか?」

    「私ですか?いえ、カモネギという種族は進化しませんよ」

    「やはりか。……せっかくだから言っておくが、しんかのきせきで強くなるのは『進化できる系統でまだ進化しきっていないポケモン』だけだぞ。進化しないポケモンが持っても強くはならん」

     テラキオンの言葉を聞いたアッカは、思わずしんかのきせきを落としました。

    「そ、それ……本当ですか?」

    「そうだ。俺もこのことを知った時には愕然としたもんだ。まあ、せっかくだから大事に持っておけ」

    「……はい」














    「……結局、僕は強くなれなかったなあ」

     数日後、アッカはカントーの森に帰ってきました。行きはスワンナに乗りましたが、帰りは自分で飛んで帰ったのです。

    「あ、アッカ先輩じゃないっす……か……?」

    「ただいまドードリオ。そっちは何かあった?」

    「俺には何もないっすけど……それより先輩、どうしたんすか、こんなに強くなって!」

    「え?」

     アッカはドードリオの言ってることがよくわかりませんでした。するとドードリオは、血相を変えてこう言いました。

    「先輩、気付いてないんすか?先輩のレベル、100になってるっすよ!」

    「まさか、そんなはずが……ああ!」

     アッカは悲鳴を上げました。アッカ(24)はアッカ(100)になっていたのです。
    「こうしてはいるないっす。すぐにムクホーク先輩に知らせるっす!これならノーマル・飛行組が『鳥ポケモン・タイプ対抗大会』に優勝できるっす!」










     アッカはしんかのきせきの旅で、森の誰よりも強くなってたのです。今では、アッカを弱いというポケモンは誰もいません。しかし、アッカの腰の低さは昔と変わることはありませんでした。それゆえ、アッカは森で最も信頼されるポケモンになっていくのでした。


    おしまい



    ・あつあ通信特別号

    チャットで「カモネギにスポットライトを当ててほしい」という発言を受けて、書きかけを投稿しました。すると思ったよりは好評だったので、調子に乗って完全版を作ってみました。いかがでしたでしょうか。

    カモネギはポケモンスタジアム金銀でガラガラに並ぶお気に入りでして、いつかは活躍させたいと思っていました。こんな形で実現する日が来ようとは……夢にも思ってなかったです。

    とりあえず一言。カモネギさん早く進化してください。

    あつあ通信特別号、編者あつあつおでん


      [No.1364] しんかのきせき中編 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/06/25(Sat) 09:25:26     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     さて、そうとは知らずにアッカはイッシュ地方へと旅立ったのです。彼は1人で海を越えて飛んでいけるほど体力がなかったので、森にいたスワンナ(97)の背中を船がわりにして乗せていってもらいました。道中、スワンナはしみじみとアッカに話し掛けます。

    「中々久しぶりだよ、あの石を目指すポケモンがいるなんて」

    「そんなにすごいものをですか?もしかして、知ってるポケモンが少ないのですか?」

    「んー、少ないのもあるのだが、別の問題もある」

    「別の問題?」

    「そうさ。しんかのきせきは非常に効果が高いだけあり、奪い取ろうと思ったらかなりの力がいるわけだ。まあ、特殊な技でもあれば別だがな。すると、どんどん強いやつが奪い合うこととなり、今では強いポケモンの勲章みたいになっちまった。もう、俺が手に入れた頃とは比較にならないくらい強いやつが持っているだろうよ」

    「なるほど……あれ?スワンナさんは昔持っていたんですか?」

    「おう。これでもかつては、イッシュの伝説のポケモン達をまとめて足蹴にしていたこともあったさ。確か24代目の所持者だったよ。」

    「24代目……」

    「アッカ、これだけは言っておくぜ。弱いやつには弱いやつなりの戦い方がある。それを見つけるんだ。それと、決して泣くな。男が泣くのは、全てが終わった時だけだからな」

    「スワンナさん……いえ先生!」

    「ははは!先生はよかったな。さて、そろそろイッシュの玄関ホドモエシティだ。ここからは自分で飛んでいきな」

    「はい!先生……自分、なんとしてもしんかのきせきを持ち帰ります!」

    「おう、楽しみにしてるぜ!」

     こうしてアッカは、イッシュ地方の大地へと足を踏み入れるのでした。

    「……やはり言っておくべきだったか、『しんかのきせきは進化しないポケモンには効果がない』ことを。いや、あいつが本当に手に入れる頃には必要ないものだろうな」








     さて、イッシュ地方のホドモエシティに降り立ったアッカは、町中のポケモンから話を聞きました。慣れない土地で、しかもイッシュ地方では珍しいポケモンという立場からの聞き込みは大変でしたが、なんとか関係のありそうな話を聞きました。「フキヨセのほらあなにいる伝説のポケモンが持っている」、この話を聞いたアッカは、すぐに飛んでいきました。


     フキヨセのほらあなは真っ暗でした。アッカは壁伝いで進んでいきました。しばらくすると明るい場所に出て、大きなポケモンを見つけました。

    「むむ、何者だ貴様は」

    「僕はアッカ。あなたは?」

    「我輩はコバルオン、イッシュ地方の伝説のポケモンの1匹だ」

    「伝説のポケモン……!では、あなたがしんかのきせきの所持者ですか?」

    「しんかのきせき?我輩はもう持ってないぞ」

    「え」

    「少し前にな、同僚のビリジオンという野郎に持ってかれちまった。『リーフブレードが駄目でもインファイトなら!』なんて、かっこつけやがって。そりゃ俺がテラキやあいつと勝負したらどちらにも負けるのはわかるが、あの態度だけは……」

    「あ、あのー」

    「おっと失礼、つい愚痴をこぼしてしまった。とにかく、しんかのきせきならヤグルマの森にいるビリジオンが持っている。欲しけりゃいってみることだ」

    「あ、ありがとうございます。それではこれで……」

    「待ちな。その程度の力で挑むつもりか?やめておけ、やるだけ無駄だ」

    「な!やってみなければ……」

    「それがわかるのが賢くて強い我輩というやつの凄いところよ。とりあえず我輩くらいは倒してまろ、そうでなければやつとの挑戦など認めん」

    「はあ、強いポケモンにしては優しいですね」

    「まあ、女の子にもてるための言い回しがうっかり出ただけだ。別に心配などしとらんからな」

    「そうですか、それでは勝負!」

     こうして、アッカはコバルオン(42)に挑むのでありました。はじめ、アッカはコバルオンに近づくこともできないまま攻撃を受けていました。アッカのレベルが低く、素早さで明らかに劣っていたからです。これに気付くと、コバルオンはだんだんゆっくり動くようになり、アッカが攻撃しやすくなりました。アッカはお得意のネギ攻撃をくりだしますが、中々効きません。一方コバルオンは聖なる剣を取り出し、ネギに対抗します。初めこそコバルオンがアッカを追い詰めていましたが、徐々にアッカも押し返し、最後の頃には互角の戦いをしていました。




     こうした戦いが何日も続きました。コバルオンは日を追うごとに手加減をしなくなり、一月もする頃には全力でアッカの相手をするようになっていました。アッカもコバルオンに食い下がり、長い長い戦いをこなしました。そして……




    「我輩との勝負を最後まで戦い抜くとは……。しかも力のない種族でだ。アッカ、貴様の根性は本物のようだな」

    「コバルオン……けど僕はあなたに勝ってない。ビリジオンに挑戦するわけには……」

    「本当にそう思うのか?ならば自分のレベルを見てみることだ」

    「レベル?相変わらず24のままじゃ……こ、これは!」

     なんということでしょう。アッカ(24)はこの戦いを通して、アッカ(60)へと強烈な変貌をとげていたのです!すでにコバルオンのレベルを上回っているではありませんか。

    「どうだ、これでも自分が弱いと思うか?」

    「いや、確かにこれなら……」

    「これは我輩の考えだが、今のお前ならビリジオンの野郎に一撃を与えるくらいはできるだろうよ。いや、やってもらわねば困る。我輩が鍛えてやったのだからな」

    「は、はい!ありがとうコバルオン。それじゃ、そろそろいってくるよ」

    「おう、達者でな!」

     コバルオンに別れを告げると、アッカは次なる目的地、ヤグルマの森へと飛び立っていきました。


      [No.1363] しんかのきせき前編 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/06/25(Sat) 09:23:06     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     昔々、世界のどこかにあるというカントー地方に、鳥ポケモンがたくさん暮らす森がありました。いつでもひざしがさしこみ、おいしい水がながれているこの森は、それはそれはにぎやかだったそうです。これは、その森にすむ、1匹のポケモンのお話。




    「お、そこにいるのは……アッカ先輩じゃないっすかww」

    「う、なんだよドードリオ」

     ある日のおひるさがり、ドードリオ(31)とカモネギのアッカ(24)がばったり出会いました。アッカはドードリオの先輩でしたが、後輩より弱かったのです。

    「この前はこだわりスカーフ持ってても僕より遅かったっすけど、少しは速くなったっすかw?」

    「それが……僕は弱いから、勝てずに経験値がたまらず、レベルアップできないんだ」

    「そうっすかそうっすか、まあそんなことだろうと思ったっすけどねww」

     いつもはけんかばかりしているドードリオの3つの頭は、この時ばかりと揃って笑いころげます。このように、ドードリオはいつもアッカのことを笑っていたのです。

     そんな時、どこからともなく立派な鳥ポケモンがやってきました。この森をしきっている1匹のムクホーク(55)です。彼はアッカと同い年でした。

    「あ!先輩、どーも僕です」

    「アッカにドードリオか。またアッカをおちょくっていたのか?」

    「まさか!親愛なるアッカ先輩にそんな失礼なこと……」

     ドードリオは思わずツボをつつきました。知らず知らずに動きが速くなりました。

    「まあいい。アッカ、お前に話があるんだが」

    「話?いったいなんだい改まって」

    「それがな、湖にいるスワンナに聞いたのだが……イッシュ地方というところに、『しんかのきせき』と呼ばれる石があるらしい」

    「しんかのきせき?初めて聞く名前だね」

     アッカは首をかしげながら、目をキラキラさせました。カモネギというポケモンはかれこれ15年ほど前に見つかったのですが、いまだにしんかの兆しすらなかったのです。そんな彼にとって、「しんか」の響きはとても素敵なものでした。

    「どうやらそいつは、『しんかしていないポケモンの力を引き出す』ものみたいだ。お前はまだしんかしていないし、おあつらえ向きだろ?」

    「確かに……そんなものが手にはいれば、まちがいなく強くなれるね」

    「だろ?ものは試しというわけで、イッシュ地方まで行ってみたらどうだ?」

     ムクホークのことばに、アッカはなみだをながして答えました。

    「ありがとうムクホーク!僕のためにそんなすごい話を教えてくれるなんて。じゃあ僕、さっそく行ってみるよ!」

    「ああ、きをつけて行けよ」

     ムクホークがおわかれを言うと、アッカはすぐさま森をでていきました。

    「先輩、いいんですか?アッカ先輩なんかにそんなこと教えて」

    「だいじょうぶだ、もんだいない。しんかのきせきは『しんかしないポケモン』には意味がない。それに、もうすぐ『鳥ポケモン・タイプ対抗大会』がある。我々ノーマル・ひこう組にあのようなやつがいては困るからな」

    「なるほど、そりゃ名案っすね!」


    ポケモンの後ろにある数字はレベルです。ドードリオは31で進化するから(31)としているのです。指摘があったので追記しときます。


      [No.1362] Re: 主人公の条件、追加 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/06/24(Fri) 20:55:10     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    1つ 主人公はヒロインと両想いにならねばならない。

    1つ 主人公は必ず挫折を味わわねばならない。

    1つ 主人公は必ずバランスの良いパーティを構成しなければならない。

    1つ 主人公は他の登場人物と比べ、相対的によい子でなくてはならない。これによって空気になっても気にしない。



    ダルマ「はっくしょん!誰か俺のうわさでもしてるのかな……」


      [No.1361] 主人公の条件 投稿者:enjoy   投稿日:2011/06/23(Thu) 23:54:24     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    1つ 主人公は必ず片田舎出身でなくてはならない

    1つ 主人公は必ずその土地で有名な博士からポケモンをもらわなくてはならない

    1つ 主人公は必ずポケモン図鑑を持っていなければならない

    1つ 主人公は必ず同い年のライバルがいなければならない

    1つ 主人公は必ず悪の組織を潰さねばならない

    1つ 主人公は必ず神、もしくは伝説と呼ばれるポケモンと邂逅しなければならない

    1つ 主人公は必ずチャンピオンにならなければならない

    1つ 主人公は必ず若い少年、もしくは少女でなければならない

    1つ 主人公は必ず寡黙でなくてはならない

    1つ 主人公は必ずポケモンとの絆を大切にしなければならない


    1つ 主人公は 主人公の数だけ存在しなければならない

    【書いても良いのよ】 【批評しても良いのよ】


      [No.1360] 触れる 投稿者:mind   投稿日:2011/06/23(Thu) 23:36:52     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     すぐ人に飛びつく友人がいる
     甘え上手なのか、それとも甘え下手なのか、よく分からないが、隙あらば腕を取り抱きついてくる
     うしろからぽーんと肩にとびつかれることもある
    「やめろ」
    「あ、いやだったか?」
     断ればぱっと話す。そしてそのまま喋ったりして、別の奴を見つけるとそっちに飛びついていく
     なんなんだあれは


     理由を聞いてみた
    「いや別に特に理由はないけど」
     強いて言うなら、人のぬくもりに触れていたいって感じ?
     そんな友人の両手は、よく見るといつも傷だらけだった


     なんかねー、触れていると安心できるというか、繋がっていたいと感じるというか
     人だけじゃないよ、ポケモンだってそうだし
     笑ってはいるものの、素手で触れたらまずいポケモンだっているだろうに

     チャレンジ精神豊富、と通信簿に書かれていたと自慢する友人
     ただの無謀馬鹿なんじゃないのか、とあきれる


     『ほのおのからだ』の特性を持つポケモンを案の定素手で触って大火傷したとか
     『どくのとげ』だって見るからに分かるのにやっぱり素手で触ったりとか
     『のろわれボディ』にポケモンに素手で触ったら金縛りになったとか
     
     いい加減手袋しろ
     と、何が悲しくてデパートで友人用の手袋を選ばねばならんのだ

     抱きついてくる癖はかわらない

     ただ、その体がどんどんボロボロになっているのが分かるだけで

    「ヒトモシは命を吸い取るっていうけど別にどうともなかったー!」
    「あれだね、ベトベトンってダイブすると服もう駄目になるな」
    「マグマッグをぎゅ―ってするためにはどうすればいいのかいま真剣に悩んでるなう」

     ツイッタ―は割とすぐに気に入ったらしく、毎日どうでもいいコメントが飛び交う
     そこそこフォローもしてもらっているらしい
     ただ、自分は見る専なので、なにもしない。


     ぎゅってしてくれと、両手をあげてヤナップが見上げてきた
     抱きあげると、安心したのかそのままはなれようとしない
     小さいポケモンはトレーナーと触れているだけで安心するという

     じゃああいつはなんだろうな

     今度はまた別の地方に行ってポケモンに触れてくる、とメールをよこして消えた友人を案じてみた


    【書いても良いのよ】 【批評しても良いのよ】


      [No.1359] いつの間にやら 投稿者:紀成   投稿日:2011/06/23(Thu) 19:25:35     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    えーと…覚えてる範囲で書き出してみようか。

    1、昔からの一族の掟に従い、親殺しをして成長していく娘とその父親。
    2、ちょっとした言葉のナイフから友人を傷つけ、もう二度と戻れない関係を作ってしまった『私』
    3、我慢強くてひたすら病魔と闘ったレントラーと、その本人を励まし続けたご主人。
    4、やぶれたせかいに住み着いたお父さんと、居候と思いながらも追い出さない仕事中毒のギラティナ。
    5、仲間と里を救うため自ら身代わりになって悪ポケモン達を食い止めた『花の歌姫』
    6、あるひと言の意味を考えるゾロアと、賢くて優しいゾロアーク。
    7、お人よしで人助けをするために死んでいった兄と、残された姉弟。
    8、あるポケモンを愛して愛して、しまいには狂いかけた少女。
    9、スイクンと共にヴァイオリンを弾こうとする学生さん。
    10、ライモンにあるカフェのマスターと、その看板息子。他にキャラも登場。
    11、主人に先立たれて一人屋敷に住むゴチルゼルと、迷い込んだ少年。
    12、夢が叶った日に全て割れると信じる、硝子の置物を持つ少女。
    13、昔のポケモンの思い出を語る。
    14、コールコール キルキルキル
    15、カラカラカラ コロコロコロ
    16、自分達が生み出した人間達を滅ぼすひと言。
    17、わが子を眠りにつかせる、母親のおまじない。
    18、白い竜を目の前にした主人公と、仲間達に対する思い。
    19、別地方からの受け入れと、彼らの思い出。
    20、長年連れ添ったジャローダの幸せを願う男。
    21、一人じゃ何も出来なかった少女が、一匹のツタージャによって扉を開く。
    22、ホップステップで踊りましょう?
    23、世間の喧騒に飽きた少女の、少しずれた日々。
    24、『アルビノ』私は彼をそう呼んだ。
    25、ゴーストタイプを引き連れる少女と、魂の回収をする死神の出会い。
    26、僕の望んだ世界は、モノクロだった。
    27、雨の中での出会いは、運命でも何でもない、ただの偶然。
    28、プログラマーをしている女性の深夜の呟き。
    29、移り気な心は、まるで紫陽花。
    30、ファントムガールから、レディ・ファントムへ。
    31、カゲボウズが虫歯になっちゃった…?
    32、千年に七日間しか起きることの出来ないポケモンの、短い旅。
    33、暴君と恐れられる彼女も、恋はするんだ。
    34、向こう側には、こんなアイテムがあるらしいよ。
    35、デコボココンビになりそうな…予感。
    36、ポケモンは道具じゃないんだ。一歩踏み間違えれば、貴方も―
    37、『ここにいるよ』



    38、

    ねえ、知ってる?

    紀成がここに投稿し始めてから、

    一年が経ったんだよ。


    始まりは2010年6月13日。午前12時16分41秒。某ネットカフェからの投稿でした。
    皆様のコメントや拍手数、そして沢山の作品に刺激を受けて、大きくなりました。
    この一年、色々なことがありましたが、ここに来るたび元気をもらえました。

    『皆の作品とコメントが、私の執筆の糧です』

    まだまだルーキーの域を出ていませんが、これからもよろしくお願いします!


      [No.1358] たくさんのおもいで 投稿者:ふにょん   投稿日:2011/06/23(Thu) 04:01:27     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     みなさん、感想や[書いてみた]、ありがとうございます。
     PCが使えないので、細かい返信はできませんが。
     
     ……たくさんの思い出、たくさんのできごと、いっしょに歩いてきた道のりを、大切にしてあげてください。
     出会った日から、今に至るまで。
     そうすれば、あなたの大切なパートナーは、いつでもそばにいてくれるでしょう。
     あなたが忘れないかぎり、ずっと。

    「いままでありがとう」そして「これからもよろしくね」
     大切なパートナーに、心の奥で、お礼です。

     追記:たくさんの拍手もありがとう



    > [みなさんも思い出どうですか]
    [もう一度、つぶやいてみる?]


      [No.1357] カワラズ 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/06/23(Thu) 00:48:52     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     22番道路はニビシティに隣接する道で、様々なトレーナーが訪れる。駆け出しのトレーナーから、セキエイ高原に向かうベテラントレーナーまで様々だ。
    そんな中で、彼女は黙々とポケモンを追う。手のひらに収まる端末をポケモン一匹一匹に向けて、生息数を調査していた。

    「パパなんて大嫌い!」

     甲高い叫び声が聞こえて、草むらからポッポやオニスズメ達が飛び立った。
     声の方に進むとなんということはない、女の子が雌のニドランと一緒に野生のコラッタと戦っていた。

    「大嫌い!」

     叫びに後押しされ、というか無茶苦茶な勢いに急かされてニドランは攻撃を繰り出す。指示もなしに攻撃するのは意を汲んでるというよりは、ポケモン自身が考えて攻撃しているだけのようだ。具体的な指示を待っていてはサンドバックにされてしまうだろう。困ったような顔で技を受けやっつけられたコラッタは、これ以上付き合っていられない、もうたまらんと草むらに消えていった。

    「もう! パパのバカ! バカーッ!」

     怒りが爆発して背高い草をなぎ払ったり、地団駄を踏んだり、挙句金切り声を上げてと大忙しだ。遠くからマンキーが仲間でもいるのかと身を乗り出して様子を伺っているのも見えた。

    「どうしたの?」

     彼女は自然に声をかけていた。
     声をかけてきた女性に女の子ははっとして振り向いた。トレーナーになるにはまだ幼い。しかし、早期教育化が進む中でポケモンを扱い始める年齢も低くなっているのかもしれなかった。
     女の子は見知らぬ人にも物怖じせず、思いの丈をぶつける。

    「パパったらわからず屋だから! メグミのミミちゃんが進化しちゃダメだっていうの!」

     両の手をぎゅっと握りながら少女は叫んだ。
     二三目蓋を開け閉めすると、それだけじゃわからず気になって、観念したように微笑みながら彼女は質問をした。

    「よかったら、私にきちんと最初から教えて貰えるかな?」

     すると待ってましたとばかりに少女は話し始める。

    「ユウト君のニドマルはもうニドリーノになったの! こないだまでミミちゃんに一回も勝ったことなかったんだよ!」
    「ミミちゃんとメグミちゃん、強いんだ」
    「でも、ニドマルが進化してから勝てなくなっちゃって」

     だんだんとメグミの声が震え、目が潤み始める。

    「メグミとミミちゃんなんて弱っちい! 弱っちいって!」
    「だからミミちゃんを進化させたいのね」

     頷きながら目を擦るメグミの頭をポンポンと撫でるながら、彼女は続きの言葉を待った。

    「でもそのこと話したら」

     そこまで言うと、うつむいたまま何か彼女の目前に突き出した。その手に握られているのは小さな石だ。

    「そっか」

     彼女はしゃがみ込み、メグミと目線の高さを合わせると尋ねる。

    「パパは何でダメだって?」
    「パパは私がすること何でもダメダメっていうの! あれもダメこれもダメ! そのうち息を吸うのもダメって言いそう!」

     求めたような答えは返ってこなかったので、彼女は内心困っていた。ひょっとしたら怒っていたせいで父親の言葉を聞いていなかったのかもしれない。自分にもそういうことをした覚えがあった。そして、そういう時は何を言っても素直に聞けないこともわかっていた。

    「メグミちゃんはニドランが進化したら何になるか知ってる?」

     彼女は父親の話は止め、質問をする。すると元気な声で、ニドリーナ! と飛び上がりながらメグミは言った。

    「そう! よく知ってるねぇ」

     メグミはエヘヘと照れくさそうに手を背に組んだ。

    「じゃあニドリーナが進化したら」
    「ニドクイン!」

     言い終わる前にメグミが答える。

    「そうだね。じゃあ、ニドクインがどんなポケモンか知ってるかな?」
    「えーとね! えーと、えーと」

    「こーんな大きいの! それでー、すっごーく強いの! それで、月の石で進化するんだよ!」

     そうしていくつか知っていることを誇らしげに言う。そのうち月の石は食べさせればいいのかと疑問を口にして、ニドランに月の石って美味しいの? と聞き始める。

    「メグミちゃんはポケモン図鑑は読んだことある?」

     少し考え込むと、幼稚園の頃に読んだ、と言う。

    「今度お家にあるポケモン図鑑でミミちゃん達のことを調べてみたら? ニドランやその進化系についてもっとよく知ってたら、もっと強くなれるかもしれないよ」
    「うん! もっと知って、メグミもミミちゃんももーっと強くなる!」

     生え変わりの途中なのか、ニカッとすきっ歯を見せてメグミは笑った。

    「あっ! 早く帰んないと『ピィつけた!』が始まっちゃう!」

     振り向いて肩にかかる草をかき分けながら、メグミは走り出した。ニドランが慌てて後を追いかける。そして、一度振り向くと、跳ねながら何度も手を振った。

    「おねーちゃん、バイバイ!」

     手を振り返し、小さな二つの影が見えなくなるのを見届けると、彼女は思った。
     親というのは大変だ。
     まだ正式にトレーナーとして認められない、それ以上に人として余りにも幼い自分の子どもになんと説明するのか。見知らぬ女の子にはできたが自分の子どもだったらそれができたかというと自信がない、と首を振る。
     気づけばもう日が暮れていて、夜行性のポケモンも現れ始める時間だった。彼女はこのまましばらく調査を続けるか、それとも美味しいものでも食べに行こうか考える。


     翌日、調査の続きを行なっているとガサゴソと草むらを忙しなく動き回る音がした。ドードーでも走り回ってるのかと思うと見覚えのある顔が現れた。メグミだ。小さな顔に不安が浮かんでいた。

    「おねーちゃん」

     しゃがみこんで、ニドランを抱え込みながら言った。

    「おねえーちゃん、ミミちゃん進化するとタマゴ産めなくなっちゃうの……?」

     ニドランは腕の中でもぞもぞと動いている。くすぐったいのか窮屈なのか、抜け出そうと藻掻いている。

    「そうね」

     彼女は少しだけ小さな声で言った。

    「どうして?」
    「それはまだ誰も知らないのよ」
    「誰も?」
    「そう。偉い博士とか、頭のいい人がみんなで調べてるの。何でなんだろう? 不思議だなって、メグミちゃんみたいにみーんな思ってるのよ」
    「へーえ」

     ニドランを見ながらメグミは呟く。その表情は彼女からはよく見えない。

    「でも、男の子のニドランはタマゴ産めるんでしょ?」
    「そうね。男の子のニドランは、進化しても子どもを作れるわね」

     内心微笑ましく思いつつ細かい言い方には目を瞑って、彼女はメグミの言葉に頷く。

    「何で? それっとずるいよ男の子だけ! オーボーだよオーボー!」

     確かにもっともだ、と彼女も思った。
     ニドランはオスとメスで姿も違えば進化も異なる。それぞれ違った名前もつけられている。そんな中でも最大の違いは、メスが進化すると繁殖能力を失ってしまうことだ。長年研究されているが、未だに解明されない謎の一つとして、多くの研究者を悩ませている。

    「それで、メグミちゃんはどうする? ミミちゃんを進化させるの?」

     メグミは首を横に振った。

    「じゃあ、そのまま育てるの?」
    「でも、でもぉ……」

     子どもだから納得できず、また、上手く答えまで導き出せないのかもしれない。

    「じゃあさ」

     彼女はポケットに入っていた自分の石、かわらずの石をニドランに与えると、メグミの目を見ながら言った。

    「慌てて決めることはないんじゃないかな? 答えは今すぐださなくてもいいのよ。それに、進化させちゃったら元には戻せないから。進化させようって心の底から思った時に進化させればいいんじゃないかな? メグミちゃんとミミちゃんで相談して」
    「うん」
    「それに、ミミちゃんに好きな相手ができて、子どもを産んでママになってから進化させれば、進化もできるしタマゴも産めるよね」
    「うん! そうだね!」

     ニドランは石を両手で持っては滑り落とし、何度も何度も拾い直す。そんなニドランを愛おしそうに撫でると、メグミはすきっ歯を見せて満面の笑顔を見せた。
     最後に、彼女は人差し指を立ててメグミに言い聞かせる。

    「あと、パパにはちゃんとお話しなさい。もし喧嘩をしたままだったら、ちゃんと謝ること! いい?」

     はぁいとやや不満そうに言うメグミの足元で、ニドランはヒクヒク耳を動かして一鳴きした。




    「なんとまぁ、我ながら随分と偉そうなことを言ってしまったものね」

     昨日と同様、元気に駆け出すと振り向いて、両手を大きく振っていた。走り去るメグミをニドランが追いかけるのも一緒。しかし別れの挨拶は、再開を約束する言葉に変わっていた。
     彼女の研究は一日二日で終わるものではない。今日の調査が終わっても再びここ22番道路に来ることもあるだろう。
     その時は少し成長した姿が見れるかもしれない。ひょっとしたら、八つのバッジを誇らしげに見せて通り過ぎていく、なんてこともあるかもしれない。

    「それじゃあ、次にあったときに偉そうなのが言葉だけにならないように、お仕事お仕事、調査調査!」

     その鳴き声と草の揺れる音に耳を手向け、静かに緑へと足を進めた。




    「各地方でニドランの生息数の調査が続けられているが、××××年現在、各性別の生息数に目立つような大きな変化はない。またポケモン協会に、野生のニドラン♀の保護やトレーナーによるニドラン♀の進化系のライセンス制を求める声も上がっているが、実現に向けた動きは今のところ見られていない。」
                                                            『携帯獣現代進化生態論 第3章―進化による生と死―』より抜粋


    ------------------------------------------------------------------------
    ポケモン世界ではトレーナーになれる年齢が決まっているようですが、それより早くポケモンバトルを始める子ども、始めさせる親はいるんじゃないかと思います。ふたごちゃんだって相当幼いしですし。


    お読みいただきありがとうございました。
    【批評してもいいのよ】


      [No.1356] フェモニールもよろしくね☆ 投稿者:リナ   投稿日:2011/06/22(Wed) 23:22:19     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     忘れた頃を見計らって、この「パチモンシリーズ」は末永く続けていきます。どんなに非難を受けようとも。
     お読みいただいてありがとうございます!

     >イサリさん

     ミロさんのモデルリュウグウノツカイなんですか? だとしたらキャラデザイン担当の方相当デフォルメ頑張りましたねw 画像検索したら、しばらくお刺身が食べられなくなりそうにw
     私の周りにも優秀なコールクリエイターがたくさんいます。彼らのセンスには脱帽w あ、イッキ飲みはいけませんよ、良い子は真似しないでね☆
     ボールの中身を決めるのは、そう、ご覧になったあなたです(えっ 
     自由に続きを書いて下さいw 超展開歓迎☆

     >鳩様

     私はスケベクチバシが何気に可愛がられているのに嫉妬していますw 次は出してやらないんだから!w
     (嘘)とかつけてお目汚しして毎度すみません。事実これは本家への冒涜です。しかし書くときはいつも禁断症状なので仕方がないんです。
     次回はもと良いものをと、日々精進してまいりますw


     


      [No.1355] 自然の摂理 投稿者:megafeps   投稿日:2011/06/22(Wed) 22:47:33     91clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ぼくはようやくこのやみのせかいからぬけだすのだ

     ながいあいだせわになったこのからだにわかれをつげ

     ずっとあこがれていたひかりのせかいにこのはねをひろげるのだ

     いちどだけみあげたそとはあまりのもまぶしかったが

     きっといまのぼくにはだいじょうぶだろう

     なぜならちかのせかいにてきしたからだから

     おおぞらをとびまわるためのはねをてにいれたのだから

     ぼくのぶんしんよ ぼくがおいていくことをゆるしておくれ

     きみもぼくであることにはかわりはない

     ただ ぼくはきみをわすれない

     ぼくはこれからめいいっぱいぼくのいっsh


     ばきっ
     めしゃ
     もぐもぐ

     ごっくん

    ピジョン「あー進化したてのテッカニンうめぇ。早起きしてよかったー。 あ、そこにヌケニンもいる」

     
    【書いても良いのよ】 【批評しても良いのよ】


      [No.1354] 呼ばれた気がしたので 投稿者:レイニー   投稿日:2011/06/22(Wed) 00:19:08     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >  あめあめふれふれいにー、れいにー。
    >  あめあめふれふれいにー、れいにー。
    >  もっとふれいにー、れいにー。

    呼ばれて飛び出て参上!
    ……え? お呼びでない? そりゃ失礼。

    レイニーって響き、雨の憂鬱感を吹き飛ばす綺麗な響きだと思うのです!
    それがこの作品にもぴったりマッチしていて、なんだか嬉しいレイニーです(笑)

    ちなみに、私が「レイニー」名乗ってるのは、単に響きの綺麗さで決めたという理由だったり。
    もちろん英語表記は「Rainy」です。


    ……ほとんど感想でなくて自己語りですみません。
    でも呼ばれた気がしたから、不可抗力だったんだ!(爆)

    可愛い作品、ありがとうございました!


      [No.1353] 【かいてみた】 投稿者:キトラ   投稿日:2011/06/21(Tue) 22:31:59     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    もうお前のステータスは見れない。
    いやいや、性格は知ってるよ、きまぐれ。
    そのリボンの数だって覚えてる。
    けれどね、もうお前のコンディションは見れないんだ。

    適当に生まれたフシギダネ。ソーラービームの迫力に圧倒されてコンテストをいくつ勝ち抜いた?
    読みが外れてビリなんてこともあったね。

    けれどここにはヒスイの思う勝負はないんだ。
    解るかな、もう必要ないわけじゃない。
    活躍できないんだ。

    だから、君はそこにいて。
    シンオウのコンテストで輝いて。
    ルールは全く違って、思うように優勝できないかもしれないけど。

    ポフィンっていうんだっけ、あれもおいしいみたいだよ。
    全てのコンディションがマックスなお前には関係ないかな。


    私はそのつぼみが好きだからずっとそのままだけど
    ここでは咲かせるかい?
    フシギバナに


      [No.1352] ろくひきのこえ 投稿者:紀成   投稿日:2011/06/21(Tue) 20:49:15     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ろくひきのポケモンがいた。
    彼らは十年ちょっとの付き合いだった。主人とも、仲間達とも。
    主人は最初は弱かった。負けるのが怖くて、少しずつしか進まなかった。
    だんだん自信がついてきて、新作のソフトでも数日で一周目をクリアすることもあった。

    ドット世界の彼らは、レベルが上がる以外はあまり変わらない。
    電源をつければいつでも姿を見せてくれる。
    だが、主人は違った。
    最初は学校が終わればすぐ来てくれたのに、最近は一ヶ月姿を見せないこともしょっちゅうだ。
    戻ってくれば食事をして、パソコンに向かい、宿題をして、風呂に入り、寝る。
    現在の就寝時間は早くて十一時半。

    主人はどんどん大きくなっていく。それに比べ、彼らは年を取らない。
    主人の今の年は十七。あと三年もすれば、大人になる。
    就職して、仕事をして、きっとこれ以上に忙しくなるだろう。
    その時主人は、僕達のことを覚えてくれているだろうか。

    ご主人、僕らは貴方が一番大切だよ。ご主人が幸せなら、僕らも幸せだよ。
    所詮僕らはプログラムの中の存在。貴方が動かしてくれなきゃ、動けない。
    いつしか、初めて会った時の面影は何処にも無くなっちゃうのかな…

    ねえ、ご主人。たとえ貴方が大人になって、僕らよりずっと大切な人が出来て、僕らのことを忘れてしまったとしても―
    僕らは、



    『ここにいるよ』


    [書いてみた]


      [No.1351] マジカル☆レボリューション 投稿者:キトラ   投稿日:2011/06/21(Tue) 18:07:12     27clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     私は珠里。いつかアイドルになるって、小さい頃から思ってた!
     やっとデビューしたアイドルも、仕事はたくさんあって大変!
     雄一君に近づく女の子も後を絶たないし、負けられないんだから!!


    「クラスがえー!!」
    赤い髪をまとめているの女の子、珠里が叫ぶ。魔法の白いエネコ、ミルクが彼女の足元をうろついていた。人前では喋らないミルクは、エネコらしい鳴き声を一つあげる。目の前に映るのは、学校と新学期になったためのクラス割り。
    「雄一君と一緒かなあ、ドキドキするぅー!」
    「にゃあ」
    珠里の片思い中の男の子、雄一。学年で一番モテて、ラブレターもわんさか来てる。ライバルは一人や二人ではないからこそ、珠里はこれがチャンスだとばかりに狙っていた。一緒になれれば席も隣になったり。学園祭も体育祭も一緒になれたりしてー!珠里の妄想は続く。ミルクがそろそろいい加減にしろよ、と言うように鳴いた。
    「今歌ってる『スウィートスウィートハート』も雄一君聞いてくれるかなー!?」
    アイドルをしていることは学校に届けてあるけれど、まだそんなにメジャーではないからテレビに映ることは稀。そして歌っているものだってそうそう聞くものではない。どこかでその曲が届けばいいなと珠里は一人でテンションが上がっていた。
    「ちょっと見えないんだけど」
    珠里を押しのける女子。雄一を狙ってるライバルだ。
    「なによ!」
    「見えないっていってんのよ!見たらさっさとどきなさいよ!」
    「なんですってー!!!」
    ミルクが珠里の靴を引っ張る。喋れないとは随分辛い。彼女に引っ張られるようにしてクラス割りを見る。
    「えーっと、石田、石田珠里っと」
    上から名前を探す。珠里は自分の名前をみつけると同時に、雄一の名前も探す。彼の名字をすぐ下に見つけ、珠里は飛び跳ねる。
    「上杉雄一!!!なんていう偶然なのかしらぁっ!!」
    その様子を見て、ミルクはため息をついた。


     新学期早々から雄一と席が近くて飛び跳ねるどころの騒ぎではなかった。すぐ後ろが雄一の席だ。珠里が期待しすぎて集中できないのも無理はない。始業時間を過ぎようとも雄一は姿を見せなかった。新学期から欠席かと思われるが、先生まで来ない。教室がざわつき始める。
    「担任遅すぎじゃない?」
    「そうよねえ、上杉君も来てないし」
    「あ、あたし見てくるっ!」
    珠里は教室を飛び出していく。後をミルクがつけた。静まり返った廊下は、足音だけが響く。一体何が起きたのか、珠里にも解らない。職員室に駆け込むと、誰もいなかった。
    「えええええ!?前代未聞って感じ!」
    「珠里ちゃん、ちょっと大騒ぎしすぎよ。冷静に冷静に」
    「ああ、そうねそうね。落ち着かなきゃ私!」
    「どこかに学校が嫌いな子がいるね、それを探さないとさ」
    ミルクが瞑想する。ヒゲとしっぽがぴくぴく動いていた。それは敵を感知する時の動き。そしてミルクの目が開く。
    「いた、珠里ちゃん体育館だ!」
    「わかった、いくよミルク」
    珠里とミルクは走る。走り回ってついた先は、広々とした体育館。ミルクのヒゲがぴりぴりしている。
    「珠里ちゃん、注意して。敵が珠里ちゃんをみつけたよ」
    「わかった、私のジャマをするのは許さないんだから!」
    「はははは、女の子になにができるのさ!」
    体育館の天井に現れるそれ。マルマインのようなものが降ってくる。珠里の目の前に立ちはだかった。
    「学校は嫌いなんだ。行きたく無い。だから学校を爆発させるんだ!」
    「何よそれ!学校はつまんないけど、みんなと会えるから楽しいじゃない!」
    「だから嫌いなんだ。誰にも会いたくない、話したくない。でも行かなきゃいけないのに。君は運がいいね、仲間が他にいるんだ。ここは最後に爆発するよ」
    直後聞こえる爆発音。校門の方からだった。出口から塞ごうということらしい。
    「次はどこかなあ、君の友達も一緒に死ねるなんていいことだね」
    「よくない!雄一君と会える場所を破壊されてたまるか!ミルク!」
    「はいよ!マジカルジュリーキューティレボリューション!」
    ミルクが呪文のように唱えると、二人の体が光る。そしてアイドルらしい衣装の珠里が現われた。ミルクと合体したような、白い猫のような衣装。手にしたマイクに口を近づける。
    「歌って踊れて正義のアイドル!ジュリー参上!」
    体育館に響く。そしてジュリーは大きく息を吸い込むと歌いだした。
    「ころりのよーるねるねるニャーのおつきさまー」
    エネコに伝わる子守唄らしい。たいていの敵はそれで眠ってしまうのだが、マルマインは平然としている。それもそのはず、彼の特性が防音なのだ。そこまで忠実に再現されている。
    「しまった、歌が効かない!」
    「ジュリーちゃん!」
    ミルクが叫ぶ。二個目の爆発。衝撃が大きく、揺れに耐えられずジュリーは地に手をついた。
    「無駄だよ、止められないよ。無理に決まってるじゃん」
    「どうしよう、ミルク、私とめられないの!?もう、雄一君に会えなくなっちゃう!」
    三個目。今度はさらに大きかった。屋上が爆発させられる。次が校舎ではない保証はない。ミルクがささやく。こいつを止められるのはジュリーだけ、と。そのジュリー最大の武器の歌声も届かない。泣き出しそうになるのをこらえ、ジュリーは立ち上がる。
    「まだあったわ、私は正義のアイドル、ジュリーだもの!」
    再び息を吸い込むとマイクに声を通す。
    「わき上がるシークレットパワー!ほとばしるパッション!センセーショナルな太陽!」
    アップテンポな曲を歌った時の替え歌。不思議と歌詞は上がってきた。ミルクの技を発動させるための合い言葉。
    「私に力を!」
    地面がわき上がる。そしてマルマインを土が囲む。他の爆弾も同じように。エネコの秘密の力といったところか。全てのマルマインを包んだ。中には爆発してしまったものもあるが、土のバリアーのおかげで被害はなし。
    「やった、やったわミルク!私は正義のアイドル、ジュリーよ!」
    ミルクは魔法の力をジュリーから解放する。元の珠里に戻ると、無事かどうか学校を走った。

    「謎の爆弾、生徒を人質に、先生たちはどこに捕らえられていたのですか!?」
    「犯人の目星は!?」
    「また犯人を捕らえた人物に心当たりは!?」
    学校は記者たちに囲まれていた。生徒たちは裏から帰るように指導され、珠里も新学期どころではなかったので家路につく。
    「あーあ、結局雄一君に会えなかったなあ」
    「そういえば、雄一はマジメな生徒なのにね。どうして来なかったんだろう」
    「そうよねえ。せっかく明日はテレビで会えないから期待したのに」
    「え、明日テレビ収録!?」
    「そうよ。私の魅力を普段に映してもらうんだから!」
    「・・・映るのは珠里ちゃんじゃなくて、珠里ちゃんがレポートする物でしょ。売れないアイドルなんだからそれくらい覚悟してよ」
    ミルクの戯言も、珠里には聞こえない。明日のラーメンレポートの仕事にうきうきしていた。




    「えーっとさ」
    エンディング曲になった時、思い出したように話しかけた。
    「何が面白いの?これ」
    「お前、珠里たんの可愛さが解らないの!?萌えないの!?」
    「いや、全く・・・ってか変身ものなのかアイドルものなのか微妙だし・・・」
    「だから歌って戦える正義のアイドルが、珠里たんなの。だから声優だって本物のアイドルなの!歌までこなせるルビーたんバカにすんなよ」
    大きなお友達はまともな話が通じない。ため息をついて、女児向けアニメに夢中になる彼に背を向けた。


    ーーーーーーーーーーーーー
    意味がわからねえ!
    ロングの方で書いているキャラがアニオタで、それで今、みんなが萌えだといってるアニメと、完全にりぼん系のアイドル目指すとあるマンガを組み合わせ、遠い日の記憶を頼りに、こんな感じかなあと。セーラームーンもまじってるかもなあ

    ルビーというのは、友達がホウエンの話を書いた時に女の子がルビーで、芸能活動をしてる子というので、許可をいただき、書かせていただきました。でも完全に他人のキャラを扱えるほど上手いわけではないのですが。他サイトにあるのですが中々面白いので、読んでみる価値ありです。

    それにしても、中学男子の想像力(妄想力)半端ないことを表現したくて借りたのですが、あんまり表現できてなくて申し訳ない。

    【おすきにどうぞ】


      [No.1350] Re: あのとき つぶやいた ひとりごと 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/06/21(Tue) 17:38:16     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    感動覚めやらぬ、イケズキです。変なこと書いていたらすみませんw

    7年の歴史がグッと伝わってくる詩でした。

    何と言ったらいいのか舌足らずな自分がもどかしい所なのですが、とにかく良かったです。好きです!


    内容に全然触れていなくて申し訳ないのですが、とりあえずここまで……


      [No.1349] あのとき つぶやいた ひとりごと 投稿者:ふにょん   投稿日:2011/06/21(Tue) 17:06:45     100clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     あの日、あの時、あの場所で。
     初めて出会ったその時を。
     きみは今でも覚えてる?
     初めてさわったそのからだ。
     すべすべふわふわ不思議な毛。
     自分は今も覚えてる。

     あの日、あの時、あの場所で。
     初めて歌ったその歌を。
     きみは今でも歌えるかい?
     悲しさ、嬉しさ、楽しさを。
     ぜーんぶ込めた、その歌を。
     自分は今でも覚えてる。

     あの日、あの時、あの場所で。
     初めて歩いたその道を。
     きみは、今なら歩けるかい?
     大きな段差に阻まれて。
     小さなきみは、こまってた。
     自分は今まだ覚えてる。

     あの日、あの時、あの場所で。
     初めて負けた、あの勝負。
     きみは、今なら使えるかい?
     あの日、使えなかったあの技を。
     悔しくて、泣いてたその顔を。
     自分は今こそ覚えてる。

     あの日、あの時、つぶやいた。
     出会って今まで幾数年。
     これまでずっと、ありがとう。
     そして、これからいつまでも。
     ずっと一緒にいれるといいね。
     自分はずっと、覚えてく。

     
     今も昔もその先も。
     かわらずきみが、そばにいて。
     自分はとても、嬉しいよ。
     住んでる世界は、違っても。
     暮らしてる次元は、違っても。
     きみは、自分の大切な。
     一緒にいれる、パートナーだから。
     

     _______________________________
     〜後書き的な物体〜
     ポケモン出てない?
     いぁ…………勝負とか、技とか、毛とか…………ダメ? 
     30分で書きなぐった。いろいろと思い出しながら。
     7年一緒にいれば、そりゃあいろいろあるでしょう。
     そんなことを考えつつ、いや、思い起こしつつ、書かせてもらいました………
     
     モデル:自分と、7年一緒に居てくれてるブラッキー。

     以上、今日つぶやいた独り言!

    [書いても、描いてもいいのよ]
    [思い出はなににでもなのよ]
    [みなさんも思い出どうですか]


      [No.1348] 後書きでありんす。 投稿者:巳佑   投稿日:2011/06/21(Tue) 16:45:47     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     今回、『こちら鏡屋メタモンでありんす。』を読んで下さいまして、ありがとうございました。
     作者の巳佑でございます。
     最近はチャットで、『みーさん』『愛のもふ神様』『一級フラグ建築士』の他に『深夜の帝王』と名付けてもらいました者です。(笑)
     単に……夜更かしばかりしているだけなのですが、まぁ、ともかく! 今回はここで色々と『鏡屋メタモン』や改稿板について、書こうと思います。


    ★『こちら鏡屋メタモンでありんす。』について
     
     この物語は第二回コンテスト用にと、設定(メタモンが相手の望む物の姿を映す)だけは先に水面下で動かしていた作品でした。
    「第二回は絶対、出してやるんだから! …………まぁ、お題から外れてたら、うん、諦めてポケストの方に投下するかー」
     それで後に、お題が『鏡/タマゴ(選択制)』と知り、「よっしゃ! これで行けるべ!」と興奮したのを覚えています。(笑)
     
     とはいったものの、実はこの物語、最初『わらわっち』ではありませんでした。
     一本の草を口に(ドカベンの某キャラの如く)くわえ、そして、頭にねじり鉢巻きを付けたメタモンさんで、一人称も『おれっち』で、タイトルは『メタモンが語る!』みたいなものを最初は考えていました。
     それが、一体何が原因なのか自分でも把握できないのですが、一人称を『わらわっち』にして、ねじり鉢巻きを外して、草の代わりにキセルを持ったメタモンさんが現れました。
     多分、メタモンさんをもっと個性的にしたいなぁ……と考えたときに浮かんだものだと思われます……本当に把握できねぇ、どうなってるんだ一体。(汗)

     さて物語の方なのですが……今を写すという意味での鏡、過去を写すという意味での鏡、未来を写すという鏡……鏡には色々な性質があるよな……と考えた矢先に生まれたのが今回取ったオムニバス形式でありました。
     そして、書いている内に「メタモンだったら……タマゴも入れてみる?」と、そんな我がままが出てきて、メタモンさんの過去を写すという意味も込めて、過去編に『タマゴ』を入れました。
    『わらわっち』の説明も入れないと訳分からなくなってしまうかなぁ……なら、自己紹介みたいなところ(宣伝編)も入れちゃえ! と構想は色々と膨らんで「じゃあ、四つの話に分けて書いてみよう!」といざ執筆して、執筆していって、執筆……しっ……ぴつ……。
     あれ? 一万文字ってこんなに短かったっけ? と目が点に。(汗)
     宣伝編で1000文字以内。未来編、今編、過去編をそれぞれ3000文字以内という目標で書いていったのですが……見事に字数オーバーしてしまいました。(汗)
     ああでもない、こうでもないと迷いながらも削って、ようやく完成したのが今回の物語です。 
     オムニバス形式って新鮮でいいかもなぁ……色々な話で読者さんも楽しんでもらえそうかも……と思った反面、批評でも指摘があったのですが、やはり一つの話につき文字数が少ない為、やはり、いささか物足りない感が問題となってしまいました。
     まぁ、文字数が少なくても、物足りなさ感を払拭できるほどのインパクトがあればよいのですが……そこまでは力及ばずでした。(汗) 

     ちなみに、知っている方は知っている(感想にもありましたし)のですが……最初、今編での依頼ポケモンはルージュラでした。  
    『今編は乙女の悩みで行きましょう → そうと来たらルージュラさんでしょ!』と書いたのは良かったのですが……見直したときに、「ハッ。ルージュラってムチュールから進化してるんやん! これを書いている時代が初代だったのならいいけど、今の時代じゃ駄目でしょ! この今編は進化しないポケモンにスポットを当てなきゃいけなかったのに、何やってるんだ、私!?」
     というわけで……緊急で学校の行き帰りにて、「どうするか、こうするか、う〜ん……」と悩んだ結果――。
    「あれだよな……たらこ唇っぽいポケモンがいいよな。あそこの表現、自分でも好きだし…………そうだ、たらこ唇じゃないけど、膨らみのある唇――マッギョだ! マッギョにしよう!!」
     その日、マッギョは私の救世主となりました。(笑)

     

    ★一人称について。

     私や俺、僕やわし、色々な一人称がある中で「なんか他にも一人称ってないかな……今後の物語でなんか使えそうな一人称は……」と考えていった結果――。
    「『わらわ』と『わっち』を繋げて、『わらわっち』なんてどうよ?」という答えにたどり着きました。
     わらわっち………………わらわっち…………わらわっち……わらわっち、わらわっち!! と何回も呟いてみると、個人的には可愛い音だったので気に入り、今後の物語で使おう! と決めました。
     まさか、メタモンさんに使う日がやってくるとはあの時は思いもよりませんでしたが。(汗)

    『わっち』という言葉を使っている以上、花魁言葉もいれていかなければいけないなぁ……とやってみたりしました。
    『わっち』という言葉を初めて知った某狼作品の見よう見まねで、頑張ってみました。



    ★改稿版について。

     この度は様々な感想、批評、ありがとうございました。
     それぞれの話にピックアップしながら、今回の改稿版について書いていこうかと思います。

    【宣伝編】
     
    (Before) 
     お主はどのような姿を知りたいのじゃ? 
     未来かのう? 
     または過去かのう?
          ↓ 
    (After)
     お主は何が見たい?

     これは乃響じゅん。さんからの意見を元に変えた部分です。
     進化に関する姿だけではなく、色々な姿を見せるのが鏡屋メタモンさん……ということで、未来と過去では進化後と進化前だけに意味が限定してしまうのではないか? と思いまして、(After)通りの文にしました。
     ちなみに『何を』より『何が』の方が強く伝わるかなぁ……と思いまして、そこも変えてみました。

     後はでりでりさんが指摘してくださった『七色変化』のところは『自由自在』に変えておきました。


    【未来編】

     586さんからのアドバイスを元に、この未来編の最後で、ななるちゃんがエーフィに進化することを伝えるという形を取り、過去編への伏線をなくしました。
     あの未来編から過去編への伏線を気に入ってくれた方には申し訳ないのですが……未来編は未来編で決着(と言ったら大げさですが)をちゃんとつけるべきだと考えたのと、過去編を大幅に変えた結果、そうせざるを得なくなったというのもあります。(汗)


    【今編】

     セリフを一部分、削除しただけで、特に他にはあまり変わっていません。
     今編はいらないかも、という意見も頂いたのですが、個人的にも気に入っている話だということと、もう一つ、今回の話の流れなのですが……。
     【宣伝編】で始まるぞ〜! → 【未来編】でほのぼの → 【今編】でギャグ → 【過去編】でシリアス……と色々な話を見せたいというのもありますゆえ、消さないでおくことにしました。 


    【過去編】

     丸々、話を一から変えました。すいません。(汗)
     No.017さんと渡邊健太さんからの意見を元に、書いてみました。
     よく考えてみたら、この過去編はタマゴについてもありますが、メタモンさん自身を映すという意味もあったので……ならば……実体験でいきましょう。という結論に至りました。
     ちょっと表現が乱暴な部分とかあったと思いますが……いかがだったでしょうか。



    ★感想批評ありがとうございました!


    ●あつあつおでんさん

     確かに、過去編でのタマゴは欲張りでしたね。(汗)
     そして、改稿版でも【過去編】にはタマゴが出て来るという……やはりメタモンさんだけにタマゴは避けては通れない問題だよな……と思いながら、書いてみましたです。


    ●リナさん

     スターウォーズ……懐かしいですなぁ、と言っても私はエピソード1しか見ていないのですが。(汗)
     
     なるほど……そのような(それぞれが主人公)見解を……! 確かにメタモンさんは背中を押していただけですもんね。
     今回、そのメタモンさんのセリフにも色々と悩んだと思います。いかに、その主人公達の背中を押してやれるかと……いった感じに。(汗)

     ルージュラ版もお気に召してくれましたか! ありがとうございます! 


    ●レイニーさん

     やっぱり、我がままかもしれませんが色々な話を読者さんに提供したかったので、マッギョさんは外せませんでした。(笑)
     最終的には今編が宣伝編の次に文字数が少なかったのですが、個人的にはやって良かったと思っています。
     
     あう、脱帽とは……こ、光栄です!(ドキドキ)


    ●カレー屋さん

     好きなキャラでもメタモンさんへの告白、ありがとうございます!
     連載はその……い、いつか、ということで。すいません。(汗&苦笑)


    ●西条流月さん

     メタモンさんの言葉はちゃんと心に伝わるようにと、考えて書いてみましたです。
     
     そして確かに……メタモンさんの心理面ばかりでしたよね……すいません、今回の改稿版では力不足で掘り下げることが出来ませんでした。(汗)
     ですが、今後の参考にさせてもらいます。ありがとうございます。


    ●鶏さん
     
     最初は『わらわっち』大丈夫かなぁ……と(なんじゃ、この一人称は? とかいう意味などで)心配していましたが、意外と好評のようでなによりです。
     確かにななるちゃんでの伏線は「え? それだけ?」と言われてもおかしくない物足りなさがありましたよね。(汗)
     もうちょっと、ドラマテッィクな伏線を書けるようになりたい今日この頃です。

    ●名無しさん

     メタモンさんの魅力が伝わったようで……嬉しい限りです。(ドキドキ)
     オムニバス形式も気に入ってくれたようで……ありがとうございます!


    ●乃響じゅん。さん

     この感想を見た瞬間、いかに自分の頭が固かったということが分かりました。(汗) 
     何でも映せるんだから、例えば、思い出の品とか、ポケモンに限定することではないですよね。(汗)
     今後、この物語を書く機会がまたあったら、参考にさせてもらいます。ありがとうございました! 


    ●サトチさん
     
     マッギョのくだりで笑っていただけましたか! ふふふ、まさに計画通り。(・ω・◆)
     そうですね……青年とメタモンさんの話、一体どうい経緯でメタモンさんの心の傷が塞がったのか、というのは今後、鏡屋メタモンを書くとしたら、やりたい話の一つですね。


    ●音色さん

     十回も読んで下さったとは……! 自分なんか音読一発勝負でしたのに……その読み込みの深さにビックリしましたです。(汗)
     やはり、ななるちゃんの話はありきたりすぎましたか……もうちょっとななるちゃんの家族は実はワケありで……といった感じに料理できたら良かったかもしれませんね。う〜ん難しい。(汗)
      

    ●でりでりさん

     重複していた文の指摘、ありがとうございました! 読み直しが甘かったと反省。(汗)
     ……確かに、第一回ポケスコの時もでりでりさんの言葉を借りるとポケモンが擬人化しすぎのパターンで……振り返ってみれば、人間とポケモンの触れ合いが少ないのかもと思う今日この頃……今後の課題の一つかもしれませんね。(汗)
     

    ●渡邊健太さん

     おぉ……! パーソナリティを強調する演出で良かったですか……! ありがとうございます! 個性的なキャラクターを目指していただけにその言葉は嬉しかったです。
     そして、今回の過去編では……実体験で書かせてもらいました。さらっと書くというとあのような感じで良かったでしょうか?(汗) 

    ●No.017さん

     今回、過去編の大幅改稿のキッカケをくれました、もう一人のお方……ありがとうございました!
     そして……花魁ってそのような事情があったのですか! わっちという言葉と花魁という言葉を知っているだけで中身は知らなかったです……うぅ、勉強不足だ。(汗)
    『たまむすび』のときでもそうでしたが、No.017さんの発想力にはいつも脱帽します……! 


    ●クーウィさん

     ぐ、文体が安定してませんでしたか。(汗)
     それと確かに情景描写は少なかったですね……セリフなどに気を使いすぎていたみたいです。(汗)

     確かに、今回のオムニバス形式というのは、色々な話を読者に提供できるというメリットがある反面、やはり一万文字以内という条件の中では物足りなくなる可能性があるというデメリットがありました。
     ……可能性と表記したのは、短い話でもインパクト大に読者さんの心に伝えることが出来るからなんですが……今回の私の場合はそのデメリットの可能性にピシャリとはまってしまいました。(汗)  
     
    『書きたいや読ませたいが多すぎる』に関しては私の欲張りがたたった結果です……申し訳ないです。(汗)


    ●586さん

     全編全く関係ないオムニバスストーリーにしてみたらいかが? というアドバイスを元に今回の改稿版をやってみました。
     やはり、色々な話を読者さんに提供したいので……そのアドバイスを参考にさせてもらいましたです。ありがとうございました! 


     他にも、わらわっちが好きだと言ってくれました、久方さん、てこさん、名無しさん。
     マッギョとななるが好きだと言ってくれました門森輝さん。

     そして、この作品を読んで下さった皆様、ありがとうございました!



    ★最後に。

     今回の改稿版で評価が上がったかもしれませんし、逆に下がったかもしれませんし、変わらなかったかもしれません。
     皆様のアドバイスが活かすことができたか、ドキドキしてますが、とりあえず、今やれるだけのことはやってみました。
     ここで鏡屋メタモンの筆を置こうかと思っています。

     まぁ、いつか機会があれば、鏡屋メタモンで何か書くかもしれませんが。(汗)
     もし、その日が訪れたら、また鏡屋メタモンをよろしくお願いします。


     
     ありがとうございました!

     
     それでは、失礼しました。 


    【何をしてもいいですよ】


      [No.1347] 【改稿版】 こちら鏡屋メタモンでありんす。 投稿者:巳佑   投稿日:2011/06/21(Tue) 16:36:59     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     前置き:これは改稿版です。
          今編まではちょこちょこ変わっていますが、過去編では大幅に書き換えています。
          それと、過去編では暴力的な表現があるかもです。閲覧にはご注意を。(汗) 

     

     【宣伝編】
     
     この世には色々な生き物がおる。人間という生き物や、そして、わらわっちのようなポケモンという生き物もおる。ポケモンと言ってもその種類は一言で表すことはできぬ。紫色の柔らかい体を持つわらわっちはメタモンというポケモンじゃ。
     わらわっち、メタモンと呼ばれておる者はその身を自由自在に変えることができるのじゃ。そうじゃな……例えばピカチュウという電気ネズミのポケモンとか、化け猫ポケモンと呼ばれておるニャースなど、実に様々じゃ……不思議であろう? 一目見たものであれば、ほぼ完璧にそのものに『へんしん』することが可能なのじゃ。
     わらわっちはこの能力をもっと活かそうと、色々なところに旅をして、様々な経験を培って、あることを始めてみたのじゃ。カガミの森のわき道をまっすぐ進んでみよ。その先にある一本の大木の下にわらわっちがおる。
     
     お主は何が見たい? 
     
     お主が見たいものを申せば、わらわっちがどんなものでも見せてやろう。
     よいか? カガミの森のわき道をまっすぐ通って、一本の大木のところまで目指せ。そうすれば、紫色のゼリー状の体に、そうじゃな……手には昔もらった、キセル、という物……まぁ、とりあえず、何か持っている奴がおるから。
     それと、自分のことを『わらわっち』と呼んでおるし、これも特徴的よのう? 

     ん? 何故、自分のことを『わらわっち』と呼んでおるか,じゃと?

     旅をしているときにのう、艶やかな着物を着ている人間達が自分のことを『わらわ』や『わっち』と呼んでおる者がおってな、二つとも可愛かったから繋げてみたんじゃ。
     それで……ええぃ!! 話が長くなるぞ!? わらわっちのことはどうでもよいから! あっ、言い忘れておったが報酬を忘れぬように、じゃが……わらわっちは人間じゃないから、銅貨や銀貨や札束を持って来られても困るでありんす! 
     そうじゃな……食べ物じゃ。特にわらわっちは甘い物には目がないからのう! モモンの実とか……とにかく甘い物は大歓迎じゃ! 
     ……さて、話が長くなってしまったが、宣伝は今の言葉をお主にうまくまとめて欲しいのう。帰り道には気をつけてくりゃれ? 
     
     鏡屋メタモンは、お主が見たいものをなんでも映してやろう。


     【未来編】

    「ねぇねぇ! つぎはグレイシアにへんしんしてみてよ!」
    「しょうがないのう、ほれ!」
     カガミの森の奥にある大木の下で、わらわっちはグレイシアに『へんしん』した。紫色の体が水色に染まっていき、額に氷柱のような形をした、蒼い飾りをつけた四足歩行のポケモンになった。
    「わぁ〜! かわいいなぁ! ひゃう、つめたい!」
    「グレイシアは氷のポケモンじゃからな」
     グレイシアの姿に興奮した依頼者が面白そうにわらわっちに触っては、はしゃいでおる……うむ、童(わらべ)じゃし、お触りは大目に見といてやるでありんす。 
     
     ここは鏡屋メタモン。『へんしん』という技で、依頼者の見たい姿を映すといったものをやっておる。依頼はそうじゃなぁ、例えば自分が進化したときの姿を見せて欲しいというのがあるのう。
     今、目の前にいる、茶色の体にクリーム色の毛を首から生やしておるイーブイというポケモンもその一匹じゃった。
    「う〜ん、メタモンおばちゃんにぜんぶ、へんしんしてもらったけど……なやむなぁ……」
     イーブイが小さな前足で「う〜ん」と頭を抱えた。
     そう、今朝からわらわっちはイーブイに進化系を見せて来たわけなのじゃが……。
     
     額に赤い宝石みたいな物をつけているエスパーポケモン、エーフィ。
     漆黒の体に黄色の模様が映える、悪ポケモン、ブラッキー。
     オレンジの体にモコモコとした毛をつけた炎ポケモン、ブースター。
     毛が針のように逆立つこともある電気ポケモン、サンダース。
     頭の上からなびく葉っぱが魅力的な、草ポケモン、リーフィア。
     首回りのエラみたいなものが特徴的の水ポケモン、シャワーズ。
     
     そして、今のグレイシアに繋がったわけなのじゃが……御覧の通り、イーブイには進化系が豊富に分かれておるのじゃ。優柔不断になるほど、分岐がたくさんあるのは……ある意味うらやましいかものう。色々な可能性を秘めておるのがそこから目に見えるわけじゃからな。
     さて、イーブイの悩みの種でもある進化じゃが、今のところ、この世界のポケモンは進化後、進化前の姿に戻ることはできないそうじゃ。
     だから、わらわっちのところに来る者で、進化後の姿を見せてくれと頼みに来るのはそういうわけなのじゃ。

     進化後の姿はどうなのだろうか? 
     受け入れられるものなのか? 
     姿が変わって……その先の生活にはどのような影響が?

     それぞれ色々な悩みを持ちながら、わらわっちに自分の進化後の姿を見せてくれと頼みに来ておる。このイーブイも何かきっとワケありなのじゃろうが……誰だって訊かれたくないことの一つや二つ、あるじゃろう? 
     わらわっちはあくまでその者の見たい姿を映しているにすぎん。本当ならその後のことはその者の責任じゃが……まぁ、どうしても相談に乗って欲しいことがあるというのならば、してやってもよいがのう。
    「……メタモンおばちゃん。おねがいがあるんだけど」
     今まで小さな前足で頭を抱えていたイーブイが顔を上げて、わらわっちのことを見る。『おねがい』という言葉から察するに、わらわっちが相談役を買うかもしれんな、これは。
    「ひとばん、ここにとめてほしいんだ。もちろん、きのみをいっぱいメタモンおばちゃんにあげるから、おねがい!」
     まさかの『おねがい』にわらわっちも一瞬、困ったでありんす。しかし、帰れと言っても退かぬような眼差しがわらわっちに刺さって来る……負けた、これだから童は恐ろしいのじゃよ。
    「分かったでありんす……けど、おぬし、本当に木の実をそんなに持っておるのか?」
     お返しとばかりに意地悪な質問をわらわっちが投げかけてみると、イーブイは横に置いてあった無地のふろしきを引っ張って、わらわっちの前に示すと、結び目を解く。
    「だいじょうぶだよ! いっぱいあるから!」
     ふろしきからゴロゴロと可愛げな音を立てながら木の実が転がっていく。
     ……わらわっちの負けじゃな、これは。

     どこかでホーホーが鳴いとる夜空の下。大木の根元にわらわっちとイーブイが座っていた。イーブイからもらった木の実をたらふく食べて……う、動けん。
    「メタモンおばちゃん。ボクはなににしんかしたらいいのかな?」
     イーブイがふと声を上げた。まだ、悩んでおるようじゃな……まぁ、進化系が七つもあるから当然か。
     グレイシアに『へんしん』した後も、イーブイはわらわっちにもう一度、ブースターやサンダースに『へんしん』をして見せてくれと頼まれてしまってのう……かれこれ、日が沈むまで続いたわ。
    「……わらわっちはイーブイの見たいものにしか『へんしん』して見せることしかできん。あくまでわらわっちがしているのは、イーブイの背中をちょっとだけ押すようなものじゃ。この先、どうしたいかというのは、全て、お主次第じゃ」
     このイーブイもやがて大人になるじゃろう。今は恐らく、親元で暮らしていると思うが、巣立った後、自分のことは最終的に自分で決めていかねばならん。
    「そうか……むずかしいんだね。あ、そういえば、みんなはどんなことをかんがえて、しんかしたのかな……」
    「みんな?」
    「うん。ボクのかぞく」
     イーブイはどこか遠くを見つめるような眼をした……いかん、つい『みんな?』とオウム返ししてしまったわ。嫌なことを思い出させてしまったかもしれんな。
    「ボクね、もともとすてられていたみたいなの。たおれているボクをたすけてくれたのが、ようこママで、それからボクはそのかぞくにおせわになってるんだ」
     イーブイが語り始めた家族の話。
     ようこ、というのはエーフィのことらしい。確かにポケモンの中では自分に名前をつけて混乱しないようにしている者もおる。わらわっちはメタモンのままじゃがな。ようこの他にもイーブイが家族を語り続ける。
     
     優しくて、けれど時々ドジを踏む、父のブラッキー、ゲツヤ。
     大人の話を教えてくれる長男のブースター、コウタロウ。
     ケンカ腰だが、自分のことを守ってくれる二男のサンダース、ライガ。
     色々なことを知っていて、勉強してもらっている三男のリーフィア、ジュラ。 
     物腰が柔らかくて、品が良い長女のシャワーズ、みなも。
     恥ずかしがり屋だが、根はとても優しい二女のグレイシア、つらら。
     
     このような感じでイーブイの家族話は止まることを知らんかった。最初の『すてられた』という話以降、この家族の話でのイーブイの顔はとても活き活きとしておった。どうやら、幸せな暮らしを送っておるようじゃな。わらわっちは少しほっとしたでありんす。
     どれ、そんな童にもう少しだけ背中を押してやろうかのう。
    「……のう、イーブイ。お主は将来、何をしたい?」
    「え?」
    「さっき、お主自身で言ったではないか。家族の皆はどんなことを考えて進化したのかって。お主が将来やりたいこと……それに向けて選べばいいのではないかのう?」
     一度、進化をしてしまったら二度と元には戻れない。まぁ、人間が変な機械を作って、進化前の姿に戻れる装置やらなんやら作れば話は変わってくるのかもしれんが、仮にそんな物を作られても、わらわっちは嫌じゃな。
     自分の決めたことには、とことん進んでいって欲しいからのう。この道が嫌じゃったからこの道にしようの繰り返しでは、強くはなりんせん。自分の気持ちに嘘をついて欲しくはないんじゃ。
     自分と向き合って考えられるような機会を与える……それがこの鏡屋の真意だったりするのじゃ。
    「じぶんのやりたいこと……」
     イーブイは何かを考えるかのようにしばらく黙ってしまったが、このイーブイが今、自分とまっすぐ向き合っている証拠でもあった。このイーブイがどんな答えを出すのか、楽しみでありんす。
    「…………」
    「……ん? ほほ、どうやら考え過ぎて眠ってしまったようじゃな。お休み、イーブイ」
     そういえば、イーブイの名前を訊いてなかったのう。明日、訊いてみるとするか。
     わらわっちにも眠気が襲いかかって来たようなので、静かに目を閉じた。
     どうか、イーブイの選ぶ道に幸あれ、と願いながら。

     翌朝、目が覚めると、そこには昨日の悩み顔とは違って、明るい顔のイーブイがそこにいた。
     何か答えを出したかもしれんな。そんなイーブイの想いをくみ取れるかのような、底なしに明るい笑顔でありんす。
    「メタモンおばちゃん! ありがとう! ボク、決めたよ!」
    「ほう」
    「ボク、ママみたいにだれかをたすけてあげられるようなエーフィになりたい! ママみたいにあたたかいものをあげられるようなエーフィに!」
     イーブイはそこまで言うと、「じゃあ、またね!」と言いながら、きびすを返そうとした。
    「ちょっと待つのじゃ」
    「な〜に?」
    「お主はなんという名前なのじゃ?」
     イーブイがはにかみながら答える。
    「ななる、っていうの」
    「そうか、ななる、か。よい名じゃな。また来て、ぜひエーフィの姿を見せてくりゃれ?」
    「うん、もちろん! ほんとうにありがとう! メタモンおばちゃん! またね!」
     イーブイ――ななるが勢いよく走りだした。
     その姿は自分の進みたい道にとことん入っていくという意志が伝わって来た。尻尾が可愛げに揺れている、ななるの後ろ姿を見送りながら、わらわっちは呟いた。

    「ふふ、将来は素敵な、おなごになるんじゃろうな、きっと」


     【今編】

     本日も鏡屋メタモンは営業中なのじゃが……これまた、騒がしい客が来たもんじゃと、ため息が漏れそうでありんす。
    「ねぇ! わたくしは本当に進化しないんですの!? ねぇ! ねぇってば!」
    「だ〜か〜ら! 何度も言うようにお主に進化系はないと言うておるじゃろうが!」
     わらわっちに泣きながら訴えかけて来るのは、黄土色の平たい体に、黄色の尾ひれ、その背中にはビックリマークのような黄色の模様があるポケモン――マッギョじゃった。
     このマッギョ、かなり勢いのある性格でな、わらわっちを見るや否や、いきなり目の前まで跳ねて来よって、これでもか! というぐらいに思いっきり跳ねて顔を近づけながら、こう尋ねたのじゃ。

    「マッギョの進化系はありませんの!?」

     残念ながらマッギョの進化系はない。この世界を知るわらわっちが言うんじゃ。ないと言ったらないんじゃ。たまにいるんじゃよ……進化系のポケモンを見て、自分も進化したいと思っておるポケモンが。気持ちは分からんこともないがのう……。
    「うぅ……進化して美しくなっているポケモンがいますのに……! 幼なじみのミミロルちゃんとキルリアちゃんが進化できて! なんで! わたくしだけが進化できませんの!? 説明してちょうだいな!!」
     マッギョがまた跳ね上がって、わらわっちの顔すれすれに近づいて来た。膨らみのある唇が、イ、インパクト大なのじゃ……。
     それにしても、ミミロルの進化系はミミロップで、キルリアはサーナイトじゃったか……これはマッギョが嫉妬に燃えるのも仕方がないことかもしれんのう。
     じゃが――。
    「わらわっちは学者でもなんでもありんせん!」
    「そ、それなら……わたくしはどうすれば……! このままでは結婚も乗り遅れて……しまいには一生、生涯、独身で、孤独のままに……! う、うぅ……!」
     そこまで言った途端、マッギョが泣き崩れてしまった。確かに美しいとか可愛いとか、姿を示す言葉は大事かもしれんな。おなごも男も、皆。
     わらわっちはため息をつきながらも、このまま放っておくわけにもいかんので、『へんしん』を使った。姿はもちろんマッギョじゃ。
    「マッギョ、わらわっちを見てみろ」
    「……ぐっすん……な、なんですの?」
    「わらわっちのこの姿はなんじゃ?」
    「え? マッギョに決まっているじゃありませんの」
     当たり前だというようにマッギョが答えた。何を今更という感じがマッギョの声音から伝わって来るのう。確かにマッギョの答えは間違えておらん。じゃが……違うんじゃ。わらわっちが「違う」と言うと、目の前のマッギョが訝しげな表情を見せた。
    「答えはわらわっち……つまりメタモンじゃ」
    「……! そんなにわたくしのことをバカにしたいですの!?」
     おちょくられたと思ったのじゃろうな……マッギョが憤慨しそうな顔を向けて来た。
    「勘違いするでない。こんなときに冗談が言えるか、たわけ」
    「なら……なんだって言いますの?」
    「わらわっちはあくまで、お主の姿を映しただけでありんす。中身まで映すことは叶わん」
     わらわっちのメタモン特有である『へんしん』は確かに相手の姿になるだけではなく、相手の持っている技まで使うことができるのじゃが……残念ながら、性格といったようなものまで映すことはできん。
    「どんなに姿形を変えようとも、わらわっちはわらわっち。お主はお主なんじゃ……中身を変えること……それも進化の一つじゃないかのう?」
     鏡というのは表面を確認するだけのものではなく、内面も映しているということ、自分自身を見つめるものでもあると、わらわっちは思うておる。
     自分と同じ姿を見て、何かに気づくことができたのならば、鏡屋として嬉しい限りじゃ。
    「…………そうですわね。外見ばかりがこの世を決めているわけではありませんよね」
     少しばかり黙っていたマッギョが静かに声を上げた。涙はもう止まっていて、何かに気がついたような顔をしておった。
    「中身を変えていくこと……それも進化の一つ……素敵な言葉ですわ! そうですわよね! 外見ばかりを気にしていた自分が恥ずかしいですわ」
     マッギョがはにかみながら言った。もう大丈夫そうじゃな。よい笑顔をしておる。
    「そうと決まったら、早速、自分探しの旅に出て、自分を磨いてまいりますわ!」
     中々よい意気込みじゃが……このマッギョ、時々勢いがありすぎなような気もするのう。どこかで問題を起こさなければよいのじゃが。まぁ、仮に問題が起こったとしても、それはマッギョの内面が一つ磨かれる機会かもしれんしな。後はわらわっちがとやかく言うことではありんせん。
     またマッギョと逢えたとき、彼女がどのように進化したのかが楽しみじゃ。
    「ありがとうございました、メタモンさん!」
     跳ね去ろうとするマッギョに、わらわっちは慌てて声を上げた。
    「待て! お主、報酬は!?」
     やっぱりこのマッギョ、ちょっと心配じゃ。
    「あら! ごめんなさい、わたくしとしたことが。えっと……ありましたわ、これを!」
     マッギョの傍にあった木製のバスケットから顔を出したのは……なにやら、赤い液体が入っている謎の一本のビン。
    「それを飲みますと、美容に効果がありますのよ! それではごきげんよう!」
     マッギョは大きく尾ひれを振りながら去っていた。
     やれやれ……今回はかなり疲れたような気がするのう。あの勢いは類まれにみるものじゃったな。
     さて、マッギョがくれたこの謎のビン……どうやら飲み物のようじゃが、早速、頂くかのう。わらわっちはまだまだピチピチなのじゃが、まぁ、普段からのケアは大事だと言うしのう。どれ、ふたを開けて、と――。

     数秒後、わらわっちの口から『だいもんじ』が出おった。
     
     まるでマッギョの旅立ちを盛大に祝うかのような激しい炎じゃった――。

    「……って、そんなわけあるかい!」

     わらわっちのノリツッコミこそが、マッギョの背中を押すかのように響いていった。


     【過去編】
     
     水色の体に白い羽毛のポケモン――チルタリスの上に紫色のタマゴが一つ。
      
     ……今朝、散歩しておったら、紫色のタマゴが一つ落ちててのう、近くに親がいる様子はなく、捨てられた可能性が濃厚じゃった。
     とりあえず、そのままにしておくわけにもいかぬから、タマゴを例の大木に持ち帰って……タマゴは暖めさせるのが一番よいから、その役目に叶う羽毛たっぷりのチルタリスに『へんしん』して……今に至るわけなのじゃ。
     
     タマゴか……あの頃を思い出すのう。

     その昔、わらわっちがまだ旅を続けていた頃じゃった。
     空は雲一つない快晴、心地よい温かい風も吹いておって、まさに順風満帆な旅の途中であった。
     いきなりのう、後ろから誰かに襲われてな……あまりの唐突ぶりに流石のわらわっちも遅れを取って、そのまま口元に白い布を当てられ何かを嗅がわされて――意識を失ったのじゃ。
     
     次にわらわっちが目を覚めた場所はどこか建物の中じゃった。
     木製の板で造られた一室で、広さは五、六匹のカビゴンが余裕で寝転がれる程じゃった。物一つなく、窓もなかったが、隙間風が時折入ってきておった。
     ここは一体どこなのじゃ……わらわっち以外誰もおらんし……そう呟きながら辺りを見渡すと、部屋の出入り口であろう戸が思いっきり開かれ、そこから漆黒に染まったポケモン――ヘルガーが現れた。
    「よう、気分はどうだい? メタモンさんよ」
     ヘルガーが舌舐めずりしながら、わらわっちに近づいて来る。何か嫌な予感しかならない――と、わらわっちが身構えた瞬間じゃった。
    「ヒャッハァ!」
     刹那――ヘルガーが飛び出し、わらわっちを襲い、押し倒した。何をする――と開こうとした口にヘルガーの口が重なる。生臭い匂いがわらわっちの口の中に広がると同時に、わらわっちは違和感を覚えた。
     なんだか体が熱くて仕方ない、疼いて仕方ない――ヘルガーの口が離れたとき、わらわっちの吐息は甘いものを帯びておった。
    「へへへ。親分のビヤクが効いているみたいだな。よくとけた顔しやがって」
     媚薬、じゃと? もしかして意識を失っているときに一服盛られたのか? だ、駄目じゃ、体の自由が効かぬ……このヘルガー、一体これから、わらわっちに何を――。
    「さぁて、楽しませてもらおうか? ぐへ、ぐへへへ!」

     何度、声を上げては腰を振ってしまったのじゃろう。 
     嫌じゃのに、あのヘルガーに求める自分が惨めで情けなかった。
     しかし、その代わりと言ってはなんじゃが、行為の最中、調子に乗ったヘルガーが口走らせたおかげで今回の経緯を知った。
     
     なんでも、ここは雌のポケモンにたくさんのタマゴを産ませ、そして孵化した中で能力の高い者を高額で客に売りつける人間がおるらしい。
     その人間は雌ポケモンを捕まえる度、この部屋に監禁し、死ぬまで快楽漬けにさせながら、タマゴを産ませておって……この前、その雌ポケモンが死んだから、代わりの雌ポケモンを探しておって、わらわっちは運悪くそやつの目に止まったということじゃった。
     メタモンは相手のポケモンに合わした子を産むことが可能じゃからのう。極論を言えば、全てのポケモンの子を産むことが可能なんじゃ……その能力に目をつけられるのもおかしくなかった。 
    「お前はただ、快楽をむさぼって、タマゴ産んでりゃいいんだよ! 雌なんてのは、どうせそれぐらいしかできねぇだろ!? ハハハハハ!!」
     ヘルガーの下品な笑い声がわらわっちの心に刺さる中、また、わらわっちの中で胎動が起きた。
     お腹が苦しい……この苦しみから抜け出すには産む他ない――わらわっちは踏ん張って、お腹に力を込め、時間をかけて押し出すかのようにタマゴを産んだ。
     ポトリと透明な液体を被ったタマゴがわらわっちの中から転がり落ちると、ヘルガーはそれを尻尾で器用に巻きつけ、恐らく親分とやらの元に――ここで、いつもわらわっちは産卵後の半端ない脱力感で気を失い、そして間もなく起こされ、行為がまた再開された。

     一体、何個のタマゴを産まされたのじゃろうか?
     
     終わりが見えぬ快楽漬けとタマゴ産みの地獄にわらわっちの心も折れかけそうになった。
     しかし、あるときのことじゃった。初回以外、毎回行為の際、ヘルガーに飲まされていた媚薬の効果が弱かったときがあった。
     ヘルガーとの行為の際、なんとか快楽に歯を食いしばって反抗し、悪タイプのヘルガーが苦手とするコジョンドにわらわっちは『へんしん』すると、ヘルガーの腹に思いっきり一撃をお見舞いしてやった。
     効果は抜群で、ヘルガーが意識を失ったことを確認したわらわっちは部屋から脱出し、廊下のような場所に出て、適当に進んでみると、階段を見つけ、昇っていく。
     今までのヘルガーとの行為で体力を奪われていたわらわっちの歩みは少々おぼつかなかったが、立ち止まるわけにもいかぬ。
     また捕まったら……地獄の再来だけはごめんじゃった。
     長くて暗い階段を昇ると、また廊下に出た。とりあえず進んで行くと……襖が見えてきた。中からぼんやりと明かりらしきものと一つの声が漏れた。
    「また……低固体か……駄目じゃけんのう。コイツもいらんわい」
     その後、聞こえてくる何かが思いっきり刺される音にわらわっちは嫌な予感がし、すぐさま、その部屋に入った。

     そこには、大量の血を流して倒れておる何匹もの黒い子犬ポケモン――デルビルの姿と、太った人間の男がいた。
     その男の手にある血まみれの小刀、そして顔には返り血、それと恐らく致命傷を受けてしまったデルビル達――。
     
     あれが、わらわっちをあんな目に合わせた人間なんじゃな……?
     それと、あの子達は、わらわっちが産んだ子じゃよな? 
     確かに望まない子じゃったかもしれん。
     だが、あの子達は確かにわらわっちの中で芽吹いた確かな命のはずじゃ。
     その命を塵屑のように扱ったじゃと?
     何様のつもりじゃ?
     
     わらわっちの中で何かが切れた。

     刹那――驚きの顔を見せるその男の元へと、マルマインに『へんしん』したわらわっちは転がった。
     男からは鼻を塞ぎたくなるような獣の臭いが漂う。
    「ここまで、花を咲かせた人生を送ったのじゃろう? なら、派手に散るのもまた一興よのう?」
     怒りを込めた笑みをわらわっちは男に向けた刹那――。

     目の前が真っ白に染まった。 

     次にわらわっちが目覚めたときには、そこは焼け野原で、あのヘルガーも、あの男もいなかった……渾身の『だいばくはつ』をお見舞いしてやったのじゃ、恐らくは木端微塵に散ったのじゃと思う。
     それで、わらわっちが体力を使い切って動けずにいたところ、一人の青年が現れてのう――このわらわっちが今持っているキセルはその青年から親友の証としてもらったものなのじゃ。
     他者不信に陥っていたわらわっちを助けてくれた奴でな……それで……ん?

     かすかに羽毛にくるまってるタマゴが揺れた。
     
     少々、過去にひたりすぎておったかのう。
     ……大丈夫じゃ。お主はわらわっちが責任を持って育ててやるから。
     
     タマゴに詰まっておるその命に、わらわっちは微笑んだ。

    「力強く、生きてくりゃれ」

    (10000字 前置き除く)


      [No.1346] 【無修正版】 こちら鏡屋メタモンでありんす。 投稿者:巳佑   投稿日:2011/06/21(Tue) 16:23:43     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
    前置き:これはポケスコに出したもので、修正してません。

     

     【宣伝編】
     
     この世には色々な生き物がおる。人間という生き物や、そして、わらわっちのようなポケモンという生き物もおる。ポケモンと言ってもその種類は一言で表すことはできぬ。紫色の柔らかい体を持っているわらわっちはメタモンというポケモンじゃ。
     わらわっち、メタモンと呼ばれておる者はその身を七色変化に変えることができるのじゃ。そうじゃな……例えばピカチュウという電気ネズミのポケモンとか、化け猫ポケモンと呼ばれておるニャースなど、実に様々じゃ……不思議であろう? 一目見たものであれば、ほぼ完璧にそのものに『へんしん』することが可能なのじゃ。
     わらわっちはこの能力をもっと活かそうと、色々なところに旅をして、さまざまな経験を培って、あることを始めてみたのじゃ。カガミの森のわき道をまっすぐ進んでみよ。その先にある一本の大木の下にわらわっちがおる。
     
     お主はどのような姿を知りたいのじゃ? 
     未来かのう? 
     または過去かのう? 

     まぁ、お主の知りたい姿を申せば、わらわっちがどんなものでも見せてやろう。
     よいか? カガミの森のわき道をまっすぐ通って、一本の大木のところまで目指せ。そうすれば、紫色のゼリー状の体に、そうじゃな……手には昔もらった、キセル、という物……まぁ、とりあえず、何か持っている奴がおるから。
     それと、自分のことを『わらわっち』と呼んでおるし、これも特徴的よのう? 

     ん? 何故、自分のことを『わらわっち』と呼んでおるか,じゃと?

     旅をしているときにのう、艶やかな(あでやかな)着物を着ている人間達が自分のことを『わらわ』や『わっち』と呼んでおる者がおってな、二つとも可愛かったから繋げてみたんじゃ。
     それで……ええぃ!! 話が長くなるぞ!? わらわっちのことはどうでもよいから! あっ、言い忘れておったが報酬を忘れぬように、じゃが……わらわっちは人間じゃないから、銅貨や銀貨や札束を持って来られても困るでありんす! 
     そうじゃな……食べ物じゃ。特にわらわっちは甘い物には目がないからのう! モモンの実とか……とにかく甘い物は大歓迎じゃ! 
     ……さて、話が長くなってしまったが、宣伝は今の言葉をお主にうまくまとめて欲しいのう。帰り道には気をつけてくりゃれ? 
     
     鏡屋メタモンは、お主の見たいものをなんでも映してやろう。



     【未来編】

    「ねぇねぇ! つぎはグレイシアにへんしんしてみてよ!」
    「しょうがないのう、ほれ!」
     カガミの森の奥にある大木の下で、わらわっちはグレイシアに『へんしん』した。紫色の体が水色に染まっていき、額に氷柱のような形をした、蒼い飾りをつけた四足歩行のポケモンになった。
    「わぁ〜! かわいいなぁ! ひゃう、つめたい!」
    「グレイシアは氷のポケモンじゃからな」
     グレイシアの姿に興奮した依頼者が面白そうにわらわっちに触っては、はしゃいでおる……うむ、童(わらべ)じゃし、お触りは大目に見といてやるでありんす。 
     
     ここは鏡屋メタモン。望むものに『へんしん』をして、依頼者の見たい姿を映すといったものをやっておる。依頼はそうじゃなぁ、例えば自分が進化したときの姿を見せて欲しいというのがあるのう。
     今、目の前にいる、茶色の体にクリーム色の毛を首から生やしておるイーブイというポケモンもその一匹じゃった。
    「う〜ん、メタモンおばちゃんにぜんぶ、へんしんしてもらったけど……なやむなぁ……」
     イーブイが小さな前足で頭を抱えながら、う〜んと悩んでおる。
     そう、今朝からわらわっちはイーブイに進化系を見せて来たわけなのじゃが……。
     
     まずは、額に赤い宝石みたいな物をつけているエスパーポケモン、エーフィ。
     お次は、漆黒の体に黄色の模様が映える、悪ポケモン、ブラッキー。
     続いて、オレンジの体にモコモコとした毛をつけた炎ポケモン、ブースター。
     それから、毛が針のように逆立つこともある電気ポケモン、サンダース。
     更に、頭の上からなびく葉っぱが魅力的な、草ポケモン、リーフィア。
     その後は、首回りのエラみたいなものが特徴的の水ポケモン、シャワーズ。
     
     そして、今のグレイシアに繋がったわけなのじゃが……御覧の通り、イーブイには進化系が豊富に分かれておるのじゃ。優柔不断になるほど、分岐がたくさんあるのは……ある意味うらやましいかものう。色々な可能性を秘めておるのがそこから目に見えるわけじゃからな。
     さて、イーブイの悩みの種でもある進化じゃが、今のところ、この世界のポケモンは進化をした後、進化する前の姿に戻ることはできないそうじゃ。
     だから、わらわっちのところに来る者で、進化したときの姿を見せてくれと頼みに来るのはそういうわけなのじゃ。

     進化した後の姿はどうなのだろうか? 
     受け入れられるものなのか? 
     姿が変わって……その先の生活にはどのような影響がありそうなのか?

     それぞれ色々な悩みを持ちながら、わらわっちに自分の進化した後の姿を見せてくれと頼みに来ておる。このイーブイも何かきっとワケありなのじゃろうが……誰だって訊かれたくないことの一つや二つ、あるじゃろう? 
     わらわっちはあくまでその者の見たい姿を映しているにすぎん。本当ならその後のことはその者の責任じゃが……まぁ、どうしても相談に乗って欲しいことがあるというのならば、してやってもよいがのう。
    「……メタモンおばちゃん。おねがいがあるんだけど」
     今まで小さな前足で頭を抱えていたイーブイが顔を上げて、わらわっちのことを見る。『おねがい』という言葉から察するに、わらわっちが相談役を買うかもしれんな、これは。
    「ひとばん、ここにとめてほしいんだ。もちろん、きのみをいっぱいメタモンおばちゃんにあげるから、おねがい!」
     まさかの『おねがい』にわらわっちも一瞬、困ったでありんす。しかし、帰れと言っても退かぬような眼差しがわらわっちに刺さって来る……負けた、これだから童は恐ろしいのじゃよ。
    「分かったでありんす……けど、おぬし、本当に木の実をそんなに持っておるのか?」
     お返しとばかりに意地悪な質問をわらわっちが投げかけてみると、イーブイは横に置いてあった無地のふろしきを引っ張って、わらわっちの前に示すと、結び目を解く。
    「だいじょうぶだよ! いっぱいあるから!」
     ふろしきからゴロゴロと可愛げな音を立てながら木の実が転がっていく。
     ……わらわっちの負けじゃな、これは。

     どこかでホーホーが鳴いとる夜空の下。大木の根元にわらわっちとイーブイが座っていた。イーブイからもらった木の実をたらふく食べて……う、動けん。
    「メタモンおばちゃん。ボクはなににしんかしたらいいのかな?」
     イーブイがふと声を上げた。まだ、悩んでおるようじゃな……まぁ、進化系が七つもあったら、悩むのは必須じゃろうな。
     グレイシアに『へんしん』した後も、イーブイはわらわっちにもう一度、ブースターやサンダースに『へんしん』をして見せてくれと頼まれてしまってのう……かれこれ、日が沈むまで『へんしん』をされ続けられるはめになってしまったわ。
    「……わらわっちはイーブイの見たいものにしか『へんしん』して見せることしかできん。あくまでわらわっちがしているのは、イーブイの背中をちょっとだけ押すようなものじゃ。この先、どうしたいかというのは、全て、お主次第じゃ」
     このイーブイもやがて大人になるじゃろう。今は恐らく、親元で暮らしていると思うが、巣立った後、自分のことは最終的に自分で決めていかなければならん。
    「そうか……むずかしいんだね。あ、そういえば、みんなはどんなことをかんがえて、しんかしたのかな……」
    「みんな?」
    「うん。ボクのかぞく」
     イーブイはどこか遠くを見つめるような眼をした……いかん、つい『みんな?』とオウム返ししてしまったわ。嫌なことを思い出させてしまったかもしれんな。
    「ボクね、もともとすてられていたみたいなの。たおれているボクをたすけてくれたのが、ようこママで、それからボクはそのかぞくにおせわになってるんだ」
     イーブイが語り始めた家族の話。
     ようこ、というのはエーフィのことらしい。確かにポケモンの中では自分に名前をつけて混乱しないようにしている者もおる。わらわっちはメタモンのままじゃがな。ようこの他にもイーブイが家族を語り続ける。
     
     いつも優しくて、けれど時々ドジを踏む、父のブラッキー、ゲツヤ。
     いつも大人の話を教えてくれる長男のブースター、コウタロウ。
     いつもケンカ腰だが、自分のことを守ってくれる二男のサンダース、ライガ。
     色々なことを知っていて、勉強してもらっている三男のリーフィア、ジュラ。 
     物腰が柔らかくて、品が良い長女のシャワーズ、みなも。
     恥ずかしがり屋だが、根はとても優しい二女のグレイシア、つらら。

     このような感じでイーブイの家族話は止まることを知らんかった。最初の『すてられた』という話以降、この家族の話でのイーブイの顔はとても活き活きとしておった。どうやら、幸せな暮らしを送っておるようじゃな。わらわっちは少しほっとしたでありんす。
     どれ、そんな童にもう少しだけ背中を押してやろうかのう。
    「……のう、イーブイ。お主は将来、何をしたい?」
    「え?」
    「さっき、お主自身で言ったではないか。家族の皆はどんなことを考えて進化したのかって。お主が将来やりたいこと……それに向けて進化を選べばいいのではないかのう?」
     一度、進化をしてしまったら二度と元には戻れない。まぁ、人間の奴らが変な機械を作って、進化前の姿に戻れる装置やらなんやら作れば話は変わってくるのかもしれんが、仮にそんな物を作られても、わらわっちは嫌じゃな。
     自分の決めたことは、とことん進んでいって欲しいからのう。この道が嫌じゃったからこの道にしようの繰り返しでは、強くはなりんせん。自分の気持ちに嘘をついて欲しくはないんじゃ。
     自分と向き合って考えられるような機会を与える……それがこの鏡屋の真意だったりするのじゃ。
    「じぶんのやりたいこと……」
     イーブイは何かを考えるかのようにしばらく黙ってしまったが、このイーブイが今、自分とまっすぐ向き合っている証拠でもあった。このイーブイがどのような答えを出すのか、楽しみでありんす。
    「……………………」
    「……ん? ほほ、どうやら考え過ぎて眠ってしまったようじゃな。お休み、イーブイ」
     そういえば、イーブイの名前を訊いてなかったのう。明日、訊いてみるとするか。
     わらわっちにも眠気が襲いかかって来たようなので、静かに目を閉じた。
     どうか、イーブイの選ぶ道に幸あれ、と願いながら。

     翌朝、目が覚めると、そこには昨日の悩み顔とは違って、明るい顔のイーブイがそこにいた。
     何か答えを出したかもしれんな。そんなイーブイの想いをくみ取れるかのような、底なしに明るい笑顔でありんす。
    「メタモンおばちゃん! ありがとう! ボク、おもいついたよ!」
    「そうかそうか、それは良かった」
    「しんかしたら、またメタモンおばちゃんのところにくるね! それまではなににしんかするかはヒミツだよ!」
    「なんじゃ、今、教えてはくれんのか?」
    「うん! メタモンおばちゃんをビックリさせたいから!」
     イーブイはそう言うと、「またね!」と言いながら、きびすを返す。
    「ちょっと待つのじゃ」
    「な〜に?」
    「お主はなんという名前なのじゃ?」
     イーブイがはにかみながら答える。
    「ななる、っていうの」
    「そうか、ななる、か。よい名じゃな。また来てくりゃれ?」
    「うん、ありがとう! メタモンおばちゃん! またね!」
     イーブイ――ななるが勢いよく走りだした。
     その姿は自分の進みたい道にとことん入っていくという意志が伝わって来た。尻尾が可愛げに揺れている、ななるの後ろ姿を見送りながら、わらわっちは呟いた。

    「ふふ、将来は素敵な、おなごになるんじゃろうな、きっと」



     【今編】

     本日も鏡屋メタモンは営業中なのじゃが……これまた、騒がしい客が来たもんじゃと、ため息が漏れそうでありんす。
    「ねぇ! わたくしは本当に進化しないんですの!? ねぇ! ねぇってば!」
    「だ〜か〜ら! 何度も言うようにお主に進化系はないと言うておるじゃろうが!」
     わらわっちに泣きながら訴えかけて来るのは、黄土色の平たい体に、黄色の尾ひれ、その背中にはビックリマークのような黄色の模様があるポケモン――マッギョじゃった。
     このマッギョ、かなり勢いのある性格でな、わらわっちを見るや否や、いきなり目の前まで跳ねて来よって、これでもか! というぐらいに思いっきり跳ねて顔を近づけながら、こう尋ねたのじゃ。

    「マッギョの進化系はありませんの!?」

     残念ながらマッギョの進化系はない。この世界を知るわらわっちが言うんじゃ。ないと言ったらないんじゃ。たまにいるんじゃよ……進化系のポケモンを見て、自分も進化したいと思っておるポケモンが。気持ちは分からんこともないがのう……。
    「うぅ……進化して美しくなっているポケモンがいますのに……! 幼なじみのミミロルちゃんとキルリアちゃんが進化できて! なんで! わたくしだけが進化できませんの!? 説明してちょうだいな!!」
     マッギョがまた跳ね上がって、わらわっちの顔すれすれに近づいて来た。膨らみのある唇が、イ、インパクト大なのじゃ……。
     それにしても、ミミロルの進化系はミミロップで、キルリアはサーナイトじゃったか……これはマッギョが嫉妬に燃えるのも仕方がないことかもしれんのう。
     じゃが――。
    「わらわっちは学者でもなんでもありんせん!」
    「そ、それなら……わたくしはどうすれば……! このままでは結婚も乗り遅れて……しまいには一生、生涯、独身で、孤独のままに……! う、うぅ……!」
     そこまで言った途端、マッギョが泣き崩れてしまった。確かに美しいとか可愛いとか、姿を示す言葉は大事かもしれんな。おなごも男も、皆。
     わらわっちはため息をつきながらも、このまま放っておくわけにもいかんので、『へんしん』を使った。姿はもちろんマッギョじゃ。
    「マッギョ、わらわっちを見てみろ」
    「……ぐっすん……な、なんですの?」
    「わらわっちのこの姿はなんじゃ?」
    「え? マッギョに決まっているじゃありませんの」
     当たり前だというようにマッギョが答えた。何を今更という感じがマッギョの声音から伝わって来るのう。確かにマッギョの答えは間違えておらん。じゃが……違うんじゃ。わらわっちが「違う」と言うと、目の前のマッギョが訝しげな(いぶかしげな)表情を見せおった。
    「答えはわらわっち……つまりメタモンじゃ」
    「……! そんなにわたくしのことをバカにしたいですの!?」
     おちょくられたと思ったのじゃろうな……マッギョが憤慨しそうな顔を向けて来た。
    「勘違いするでない。こんなときに冗談が言えるか、たわけ」
    「なら……なんだって言いますの?」
    「わらわっちはあくまで、お主の姿を映しただけでありんす。中身まで映すことは叶わん」
     わらわっちのメタモン特有である『へんしん』は確かに相手の姿になるだけではなく、相手の持っている技まで使うことができるのじゃが……残念ながら、性格といったようなものまで映すことはできん。
    「どんなに姿形を変えようとも、わらわっちはわらわっち。お主はお主なんじゃ……中身を変えること……それも進化の一つじゃないかのう?」
     鏡というのは表面を確認するだけのものではなく、内面も映しているということ、自分自身を見つめるものでもあると、わらわっちは思うておる。
     自分と同じ姿を見て、何かに気づくことができたのならば、鏡屋として嬉しい限りじゃ。
    「…………そうですわね。外見ばかりがこの世を決めているわけではありませんよね」
     少しばかり黙っていたマッギョが静かに声を上げた。涙はもう止まっていて、何かに気がついたような顔をしておった。
    「中身を変えていくこと……それも進化の一つ……素敵な言葉ですわ! そうですわよね! 外見ばかりに目がいっていたわたくしが恥ずかしいですわ」
     マッギョがはにかみながら言った。もう大丈夫そうじゃな。よい笑顔をしておる。
    「そうと決まったら、早速、自分探しの旅に出て、自分を磨いてまいりますわ!」
     中々よい意気込みじゃが……このマッギョ、時々勢いがありすぎなような気もするのう。どこかで問題を起こさなければよいのじゃが。まぁ、仮に問題が起こったとしても、それはマッギョの内面が一つ磨かれる機会かもしれんしな。後はわらわっちがとやかく言うことではありんせん。
     またマッギョと逢えたとき、彼女がどのように進化したのかが楽しみじゃ。
    「ありがとうございました、メタモンさん!」
     跳ね去ろうとするマッギョに、わらわっちは慌てて声を上げた。
    「待て! お主、報酬は!?」
     やっぱりこのマッギョ、ちょっと心配じゃ。
    「あら! ごめんなさい、わたくしとしたことが。えっと……ありましたわ、これを!」
     マッギョの傍にあった木製のバスケットから顔を出したのは……なにやら、赤い液体が入っている謎の一本のビン。
    「それを飲みますと、美容に効果がありますのよ! それではわたくしはこれにて失礼させてもらいますわ! 早速、旅の準備をしなければいけませんので……ごきげんよう!」
     マッギョは大きく尾ひれを振りながら去っていた。
     やれやれ……今回はかなり疲れたような気がするのう。あの勢いは類まれにみるものじゃったな。
     さて、マッギョがくれたこの謎のビン……どうやら飲み物のようじゃが、飲んでみることにするかのう。わらわっちはまだまだピチピチなのじゃが、まぁ、普段からのケアは大事だと言うしのう。どれ、ふたを開けて、と――。

     数秒後、わらわっちの口から『だいもんじ』が出おった。
     
     まるでマッギョの旅立ちを盛大に祝うかのような激しい炎じゃった――。

    「……って、そんなわけあるかい!」

     わらわっちのノリツッコミこそが、マッギョの背中を押すかのように響いていった。



     【過去編】
     
     始まりはいつも突然なのじゃが、今回のは失礼な突然じゃった。
     カガミの森の奥にある一本の大木。わらわっちは普段はその木の上に乗って寝ておるのじゃが……ホーホーの鳴き声を音楽に、わらわっちが寝ておると、いきなり木が揺れて、わらわっちは地面へと強制的に落とされた。
     くっ……いきなりの訪問の上に真夜中、そして失礼すぎる呼ばれ方にわらわっちは顔をあげると、月明かりに照らされた張本人と思われる奴をにらんで、そして目を丸くした。
    「よう、おめぇが鏡屋メタモンか?」
     身の丈は百六十五センチメートルほど、髪は黒、耳には装飾品。
    「……人間がここに来るとはのう、久しぶりじゃな。確かに、わらわっちが鏡屋メタモンでありんす。それで……何用じゃ?」
    「へぇ〜。おめぇ、人間の言葉をしゃべれるんだな。まぁ、いいや。最近、ここにイーブイってポケモンが来なかったか?」
     人間にはいい奴もいれば、悪い奴もおる。わらわっちの言葉一つでそのイーブイに迷惑をかけてしまうかもしれん。最近のイーブイというと……ななるぐらいか。とりあえず、下手なことは言えんな。
    「それをどうしてわらわっちに訊いてくるのじゃ?」
    「最近、そのイーブイがここのメタモンに会ったって話を風のウワサでな」
    「そのイーブイとお主はどのような関係なのじゃ?」
    「いちいちうるせぇな。俺様が間違えて高個体のイーブイを捨てていなかったら、こんな変な場所になんか来なかったのによぉ、マジでかったりぃ」
     相手にものを頼むときの言葉使いがなっておらん……というのもあったのじゃが、それよりも引っかかる言葉がわらわっちの中にあった。
    「今まで、何十のタマゴを手に入れて、ようやく高個体のイーブイを手に入れたと思ったのによ……ちくしょう、絶対にアイツを拾ってみせるぜ」
     この人間の言葉からまだ推測段階なのじゃが、わらわっちの中では何かが煮えたぎるようなものが出て来た。この人間の言葉を整理すると、今まで手に入れたタマゴを孵して、高個体ではなかったポケモンはすぐ様その場に捨てる、そのような考えが出てもおかしくはなかった。
     
     タマゴ……それにはかけがえのない命が詰まっておる。
     わらわっちも遠い昔、旅をしていたとき、その命をもてあそぶかのような現場を見たことがある。
     あれは頻繁に戦があった頃じゃったかな、人間がポケモンに大量のタマゴを産ませていて、孵ったポケモンの中で役に立つと判断された者はそのまま育てられるのじゃが、役に立たないと判断された者は……その場で殺されておった。
     
     しかも、そこにおったのはわらわっちと同じポケモン、メタモンじゃった。
     
     メタモンは相手に合わせたポケモンのタマゴを産むことが可能なのじゃ。今日の人間達もその能力を便利そうに利用しているみたいじゃが……利用されているメタモンは大変じゃぞ。
     わらわっちは経験がないから、あくまで聞いた話なのじゃが、タマゴ一個を産むにはそれなりの体力が必要なようじゃ。新しい命を宿すのじゃからな、そりゃあ、体力も使うじゃろう。
     
     大量にタマゴを産まされて死んでしまったポケモンもおるらしい。
     
     当時、わらわっちはその利用されているメタモンを助けようとしたが止められた。もしも捕まったら、わらわっちもこの地獄を味わうことになるから、と……。

     何度もタマゴを産まされて、目の前で何匹も我が子が殺されるという地獄が――。

     そのメタモンと話をしている途中に、どうやら敵国らしいものの急襲が起こってな、その場は大爆発が起こって、辺り一面、焼け野原になった。
     そのメタモンがどうなったのか、わらわっちは気絶してたから知らぬ。
     騒ぎに乗じて逃げられたのか、それとも――。
     ちなみに、この一件でわらわっちが人間全員に対して嫌悪感を持っているわけではない。あの後も旅を続けて多種多様な人間を見て来たからな。まぁ、あの事件後のわらわっちは最初、人間不信に陥っていたが。
     この、わらわっちが持っとるキセルは当時、情緒不安定だったわらわっちに手を伸ばしてくれた人間から、親友の証としてもらった物なんじゃ。
     
     ポケモンにタマゴを産ませるということも断固反対というわけではありんせん。人間達が愛し合っている手持ちのポケモン達のことを察しているのかもしれんし。
     じゃが、その二匹の間から産まれたタマゴを孵す前に取るのはどうかとわらわっちは思う。そして、孵ったポケモンを役に立たないから捨てるなどとは言語道断じゃ。せめて、里親を探すとか、責任を持て。
     わらわっちが言えることはただ一つ。

     命を大事にして欲しい。
     ただ、それだけじゃ。

    「のう、お主。知っておるか?」
    「なんだよ、さっさと教えろって――」
     人間の目が丸くなっていく。当然じゃ。今、わらわっちはお主の姿になっておるからな。
    「捨てられたポケモンはな、成長すると、やがて捨てられた意味というものを知って、捨てた人間に復讐するのだそうじゃ」
     人間の顔が徐々に青ざめていく。
    「こんな風にのう」
     人間の姿を取っていたわらわっちは徐々にその体を溶かしていき、人間の皮膚がなくなると、中から血肉が現れ、やがて骨だけの存在になった。
    「あ、あ、あ、あぁぁぁあああ!! ごめんなさいぃぃいい!!!」
     人間は悲鳴を上げながらその場をさっさと去っていった。案外、怖がりじゃったな……あの人間。これで、少しは反省してくれるとよいのじゃが……はてさて。
     恐らくこの先、人間達はポケモンにタマゴを産ませることを止めないじゃろう。それを止めさせる権利は残念ながらわらわっちにはない。月夜を見上げ、ななるのことを思い浮かべながら、わらわっちは呟いた。
    「願わくば、あの子のように強く生きて欲しいでありんす」


     翌朝、木から降りると、一匹のポケモンがこっちに向かっているのが見えた。
     ほのかな紫色を身にまとい、額に赤い宝石をつけたポケモン――エーフィじゃった。
     先端のほうで二本に分かれとる尻尾を楽しそうに揺らしながら、わらわっちの前まで来た。
    「メタモンおばちゃん、おはよう! ひさしぶり!」
    「お主……ななる、か?」
    「うん! そうだよ!」
     ふふふ、この鏡屋をやっていて、いいことの一つには、再会した者の成長を見られることじゃ。
    「立派なエーフィじゃな」
    「うん! ボク、ママみたいにだれかをたすけてあげられるようなポケモンになりたかったから、ママみたいにあたたかいものをあげられるようなポケモンに!」
     ななるの笑顔が太陽を受けてキラキラと輝いておる。

     
     その笑顔は希望あふれる未来を映しておった。


    (10000字 前置き除く)


      [No.1345] キター! 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/06/21(Tue) 07:49:19     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 「やったー! じゃあフォローしとくね☆ そうそう、最近ルナトーンちゃんが『スケベクチバシ』ってあだ名付けられちゃってね、すっごく盛り上がったんだから! それと、この前チャットでリレー小説やってたらさぁ――」

    すいません。
    (嘘)って字を見たときから、正直期待してました。



    ミロワロス☆ ミロオワタ☆

    リナさんのギャグの才能に嫉妬の嵐だぜ……w


      [No.1344] 鳥さん、生のまま。 投稿者:スズメ   投稿日:2011/06/21(Tue) 00:32:46     101clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    いつだったか、家に帰ると飼っていたピジョンが親父に追っかけまわされていた。
     少しの間だからと油断して家においていったのは悪かったが、そんな心配をする必要があること自体、何かおかしい。
     そのピジョン、捕まえたばっかりで家に早くなれて欲しいのと、日光浴のつもりで
     よく日の当たる木の上で休ませていただけだった。
     その時も、親父は野生の焼き鳥とかいいながら人のポケモンを追っかけまわしていたっけな・・・。

     久し振りに家に帰ってきた俺の目の前で、鳥と格闘している親父はあの頃から何一つ学んでいない。
     当時と違うのは、「竹串」という武器を持っているところと、少し老けたってところか。
     野次馬に上手く紛れながら、あのポッポたちをどうしようか考える。
     まあ、逃がすのが正解なんだろうな・・・。
     あのピジョンも、親父に追っかけまわされてから親父恐怖症になって、ストレスのあまり羽を自分で抜いたりだとか
     パニック起こしたりだとかで結局逃がしたし・・・この家で鳥を飼うのは至難の技だ。
     そして、注目されずに実家に入れないとかどんなんだよ。

    「なあ?」とボールの中に入ったフシギソウに話しかけると、カタカタっとボールがゆれた。
     お前、話の内容わかってないだろ・・・一緒にいるようになってから実家に帰るのは初めてだもんな。
     以前はどのポケモンを捕まえてきても、親父に焼かれそうになるせいで、ポケモンを飼えなかったし
     そこまで遠くないくせにと言われながらも、わざわざ下宿を始めたかいがあるって物だ。
     ・・・ぼろいけどな、お化け出るし。 それでもポケモンは飼える。
     ついでに言えば、親父のことでからかわれることも無くなった。

     この後もそうかはわからないが・・・見物客の多さにため息をつく。
     あ、親父がポッポたちに勝利した。 そして警官が来た。
     親父も悪気があってやってるわけじゃないからな・・・それを知ってか、警官も苦笑いを浮かべている。
     見たことがあると思ったら・・・初老という風貌の警官さんは、親父がよくお世話になっていた人だった。
     こうやってポケモン追っかけまわすたびに説教されてるもんな・・・。
     幸い、ポケモンに怪我をさせたりとかはしたことが無いんで、何時も説教で済んでるみたいだ。
     警官さんと一緒に何処かへ歩いていく親父を見送りながら、わざわざ塀に囲まれた裏庭の方へ、進路を変えた。
     あの光景は久し振りに見た、なんか懐かしいな・・・もうみたくないけど。
     
     明るい日差しのなかで、見物者だらけの焼き鳥屋部分から繋がる実家の後ろに回りこんだ。
     目の前のブロック塀は、1メートルぐらいある。
     乗り越えるには老朽化していて危ないにしろ、こっちにはフシギソウという強い味方がいる。

     「よろしく」

     紅白のボールからポンッと現れたフシギソウは、待っていたとばかりにつるを伸ばし、俺を持ち上げた。
     役に立ってるんだぞと言いたげな顔は、おやつの報酬を期待していそうだ。
     悠々とブロック塀を越えて、フシギソウをボールに戻し、塀の中でもう一度ボールから出してやった。
     かばんからポロックケースを取り出し、ポロックを一粒フシギソウにあげた。
     かぷかぷと、幸せそうに味わっているフシギソウの横を通り抜けて、さっき親父に捕まっていたポッポのもとへ。

     脱出劇に失敗したポッポ2ひきは、金属製の鳥かごに入っていた。 かなり窮屈そう。
     人間が来たせいでかなりおびえているポッポにはかまわず、鳥かごの戸を開ける。
     呆然と見つめる鳥さんの前に、フシギソウの好物のポロックを数粒置いた。
     あっという間に嗅ぎつけたフシギソウが、ポロックを求めて走ってくる。
     その勢いにさらにおびえたポッポたちは、広い空へと逃げていった。
     本当は、あのポッポたちにポロックをやりたかったんだがな・・・。
     うれしそうにポロックを食べるフシギソウをみていると、まあいいかという気持ちになってしまうから不思議だ。
     どたどたと足音が聞こえてきた。
     足音の主は、親父。
     
     俺は、ポッポのことなんか知らないからな、お前も話を合わせろよ?
     そういってぽんぽんと叩いたフシギソウの顔は、にこっと笑っていた。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    食べられたか食べられなかったか不明な焼き鳥さん達の補足。
    > 【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】【突っ込んでもいいのよ】【批評してもいいのよ】


      [No.1343] 乙姫様にハートを射抜かれた 投稿者:イサリ   投稿日:2011/06/20(Mon) 22:53:30     66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >  現れたのは、全身ピカピカの鱗をまとったミロカロスでした。「ちっ、配役ポケモンか」と思ったウラシマですが、下手な女が現れるよりはよっぽど良いと思い、スレスレ第二関門もクリア。
     いやいやいや、何をおっしゃる! 最高じゃないですかー!w
     ミロカロスのモデルがリュウグウノツカイという噂をどこかで見て、ナルホドナーと思っていたところ、ググってみたら案外不気味な生き物でした(汗


     全文に散りばめられたネタの密度が素晴らしいのですが、 

    > 乙姫様は飲んだくれ♪ 
    > ミロワロス☆ 

     この一気コールで完全にやられました(笑)
     どうやら自分は言葉遊び系に弱いようです



     ギャグもシリアスも自在に書き分けられるリナさんに憧れます……!

     ボールの中に入っていたのはもちろん……?




     拙文失礼いたしました!


      [No.1342] 素敵ダグトリオ 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/06/20(Mon) 01:35:47     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    こんなに可愛いイラストが……!!!
    植木鉢に入ったダグトリオってこんなに可愛かったのか!と目から鱗です。インテリアにしたい。
    特に真ん中ダグ。目がつぶらで愛くるしいです。

    ダグトリオ鉢を挟んでの二人の会話が見えてくるようです。
    そして右側が! 右側が地味に気持ち悪い!(※褒め言葉です)

    素敵なイラスト、ありがとうございました!

    【この植木鉢はどこで売っていますか?】


      [No.1341] 浦島太郎(嘘) 投稿者:リナ   投稿日:2011/06/19(Sun) 23:46:18     102clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     今、なんとも古めかしい格好で浜辺を散歩している彼は、タロウ・ウラシマ。この海で漁師を営んでいます。なにか起こりそうなので、後を追ってみましょう。

    「見つめ合〜うとぉ〜、素直に〜、おしゃぁ〜べり〜、できぃ〜なぁ〜い〜♪」

     懐かしいナンバーですね。サザンオールスターズで「TSUNAMI」です。ダブルミリオンを達成した名曲なんですが、彼が歌うとその面影もありません。ちょっとモノマネしているのに全然似ていないのが非常にイタいです。正直言って下手です。音楽への冒涜です。

     そんな漁師にとって不謹慎な歌を口ずさんで浜辺を歩いていると、小さな岩に一匹のゼニガメが腰掛けていました。彼はサングラスをかけ、足を組み、じっと海を見つめています。そのあまりのシュールさに、ウラシマはぞっとしました。

    「――あの、いじめられてる設定じゃ?」

     設定云々は言ってはいけない約束なのですが。この状況ではいたしかたないでしょう。

    「いじめられっぱなしじゃいられねぇのが男ってもんよ」

    「いや、てかいじめられてすらいないですよね? そのサングラスも傷一つないし」

    「俺はジョニー。おめぇ名前は?」

    「そっか、あんたアホなんだね」

     話が全くかみ合いません。仕方なくウラシマは名を名乗り、ストーリーを強引に進めることにしました。

    「とりあえず、竜宮城に連れてけよ」

    「――ボスに何の用だ?」

    「あんたヤクザか。まあ見えなくもないけどさ。てか本当はそっちが連れてってくれる流れなんだから別に用なんてないんだけどさ」

    「仕方ねぇ、案内してやるか」

     マジ面倒臭ぇ。ウラシマボーイは思いました。ですがとにかく、ジョニーはウラシマを竜宮城へ案内してくれるようです。

    「よろ」

     ジョニーはてくてくと浜辺を歩き始めました。歩きながら「最近波に乗ってねぇな」とか「ちっ、葉巻切らしてんだった」とかぶつぶつ言っていましたが、ウラシマは全て無視しました。そして彼がいっこうに海に入ろうとしないことに突っ込むこともしませんでした。面倒だったからです。

    「さぁ、着いたぜ。竜宮城だ」

     案内されたのは、沖縄県の田舎に一般的に見られる形の家屋でした。玄関口にしっかりシーサーがふんぞり返り、災厄からこの家を守っています。

    「質問、いいですか?」

    「端的にな」

    「これのどの辺が竜宮城なんですか?」

    「良い質問だ。お前、昔沖縄がなんて呼ばれてか知ってるか?」

    「――琉球。え? まさか琉球→りゅうきゅう→りゅうぐう→竜宮とか言うつもりですか?」

    「お前、見た目に寄らず頭良いじゃねぇか。大学出てんのか?」

    「少なくともあなたの考える大学は出てません」

     そうだったのです! ウラシマの目の前にそびえる「城」は、まさしく竜宮城だったのです!(こんな感じで良い?)

    「ボスもきっと喜ぶぜ。宴の準備だなこりゃ」

     一体どんな「ボス」が出てくるのか、ウラシマは全く興味はありませんでしたが、万が一、億が一、「ボス」が美人だった時のことを考えて無理矢理モチベーションを上げ、ジョニーと共に「竜宮城」に入りました。

    「ボス! お客さんですぜ!」

     ジョニーがそう呼びかけると奥から「はいはぁーい」と、気の抜けた声が聴こえました。その声が女性だったので、第一関門はクリアです。

    「あら、人間のお客さんは久しぶりかも。ふふ、めんそーれ☆」

     現れたのは、全身ピカピカの鱗をまとったミロカロスでした。「ちっ、配役ポケモンか」と思ったウラシマですが、下手な女が現れるよりはよっぽど良いと思い、スレスレ第二関門もクリア。

    「宴の準備、しやすか?」ジョニーは多分、宴がしたいだけです。

    「もちろんじゃない! ほらほら、大急ぎでお願いね! 泡盛もよろしく☆」

     なんだか「ボス」と呼ばれるポケモンにしてはキャピキャピとギャルっぽい話し方をするミロカロスだと、ウラシマは思いました。実際のところポケモンなので年齢は不詳です。

     ウラシマは客間に通されました。名前を名乗ると、彼女も自己紹介してくれました。「フェモニール」と言うのでした。

    「それで? どちらからいらしたの?」

    「どちらからって言われても――わりと近所です」

    「そうなんだ〜じゃあいつでも会えるね☆」

     なんだか勘違いを起こさせるような言い回しですね。でも多分これが彼女のデフォルトなのです。

    「そうそうウラシマさんはツイッターやってる?」

    「はい、一応」

    「やったー! じゃあフォローしとくね☆ そうそう、最近ルナトーンちゃんが『スケベクチバシ』ってあだ名付けられちゃってね、すっごく盛り上がったんだから! それと、この前チャットでリレー小説やってたらさぁ――」

     それからは彼女の独壇場でした。ペラペラと良く動く口です。よっぽど話し相手に飢えてたんだなとウラシマは思いました。

    「――あらやだ〜なんかアタシばっかり話しちゃってる。ウラシマさんもなんか面白い話してよん☆」

    「む、無茶ぶりですね……」

     そこへちょうど料理の支度が整ったようで、客間には先程のジョニーの他様々な水タイプのポケモン達が食べ物を運んできました。オリオンビールと泡盛もありました。思いのほか豪華な食事に、ウラシマは完全にネタ扱いしていた「竜宮城」を少し見直しました。

    「とりあえず乾杯しましょ! さぁ皆の者! ウラシマさんの今後の人生の充実を祈願して――」

    「余計なお世話です」

    「かんぱーい☆」

     ――いまさらですが、ウラシマは亀を助けていないので、この竜宮城に歓迎される理由がありません。しかしギンギンに冷えたオリオンビールのせいで、そんなことはもうどうでもよくなってしまいました。
     どんちゃん騒ぎとはこのことかと、ウラシマは思いました。こいつらほとんど学生のノリで互いにコールをかけ合っているではありませんか。一番ウラシマのツボにハマったのが、

    「むかしむかし浦島は♪ 助けた亀に連れられて♪ 龍宮城へ来て見れば♪ 乙姫様は飲んだくれ♪ (ハイ! ※合いの手)ミロカロス☆ ミロワロス☆ ミロワロタ☆ ミロオワタ☆」

     こいつらもう駄目です。

     さて、宴もたけなわ、ウラシマはそろそろ帰る時間です。漁師の朝は早いのです。

    「すみません、私はこの辺で――」

    「えぇ〜!! もぉ帰っちゃうのぉ〜!!」飲んだくれことミロカロスのフェモニールは完全に出来上がっていました。一体彼女、四十度の泡盛を何杯飲んだんでしょう?

    「泊ってけばいいじゃない? ねっ☆」

    「『ねっ☆』ってそんな上目遣いされても駄目です。明日朝早いんですから」

    「ちくしょー、『フェモちゃん視線』が通用しないとは、ウラ様まさかかなりのプレイボーイ?」

    「違います」

    「そんなドライなところも素敵よ☆ しょうがないわねぇ、今お土産を用意させるから、それだけお持ちになって。ジョニー?! 例のものを」

    「へいっす!」

     さあついに来ましたね。大きな箱と小さな箱の、究極の二択。さてウラシマ! キミはどちらの玉手箱を選ぶんだ?! う〜ん、レッツチョイス!(今、カビラっぽく言ってみたんだけどどう? イケてた?)

    「持ってきやしたぜ」

     この辺りは通説に沿って、ちゃんと普通の玉手箱です。

    「さて、ウラ様が欲しいのは大きい箱? 小さい箱? ――それとも、ア・タ・シ? きゃあ〜言っちゃった☆」

    「『どちら』にするか迷いますけど、小さい箱ですね。大きいのは持てないですし」

     あくまで二択です。

    「連れないわねぇ、ウラ様は。またいつでも遊びに来て頂戴ね。ジョニー?! 送って差し上げて」

    「へいっ」

     ウラシマはフェモニールと他の水ポケモン達にお別れとお礼を言い、竜宮城を後にしました。
     すっかり外は夜、アルコールで火照った身体に海風がとても気持ちが良く、ウラシマは思わず深呼吸しました。

    「ウラシマさん、うちのボス、ぶっ飛んでるでしょう?」

     ジョニーがどことなく静かな口調で切り出しました。

    「そうですね、天真爛漫というか、なんというか」

    「正直ウザい。そう思ったでしょうや?」

    「――まあ、少し」

     ジョニーは暗闇の中に浮かぶお月さまを眺めながら言いました。

    「許してやって下せぇ。ボスはミロカロスになる前、それはもうみずほらしい姿で、だれからも相手にされず、一人ぼっちやったんでせ。だからボスは、誰よりも明るく、おしゃべりで、あんな大酒飲みになんたんでぇ――」

     姿かたちが醜くいのなら、せめて誰よりも元気に、明るく振る舞って、心だけは美しく光り輝いて生きたい。フェモニールはそんな思いであのような性格になったのでした。

    「そう、だったんですか」

    「ツイッターで、たくさんのポケモンと繋がっていられるのも、あの方のお人柄ひとつでせ。俺ら、みんなボスのことが大好きでせ。これからも、時々顔出してくだせぇ、ウラシマの旦那」

     そしてウラシマは、ジョニーと出会った小さな岩のところで別れを言いました。
     今頃乙姫様は、ぐでんぐでんに酔い潰れてポケモン達に介抱されているのかな――ウラシマそんな光景を思い浮かべて、微笑みました。愛されてこそ、「ボス」の役職は務まるのです。

     ウラシマはお土産の小さな玉手箱に気付きました。通説通りだと、これを開けてしまうとおじいさんになってしまいます――まあ、そんなことは「浦島太郎(嘘)」では起こり得ませんが。彼はその箱を開けました。
     そこにはモンスターボールが一個だけ入っていました。

     カタカタとモンスターボールが揺れました。なんだかあの末恐ろしい感覚が、ウラシマに戻ってきました。

    「――有り得ない話ではない。でもいつも間に……」ウラシマは呟きます。

     開けるか否かの選択は、ここからが勝負です。負けるな! ウラシマジャパン!(あ、間違えた! ついノリで「ジャパン」付けちゃった! てへ☆)



     ――――――――――


     ……ノーコメンツ!

     【好きにしていいのよ】


      [No.1340] 4月1日、開幕戦 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/06/19(Sun) 19:05:29     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    実況「プロポケモンリーグ開幕戦は、まもなく開始します。実況はわたくしスガノ、解説は元クチバダグトリオの選手だったアリーさんです。アリーさん、今日はよろしくお願いします」

    アリー「よろしくお願いします」

    スガノ「さて、今日私達が実況するのは、アリエネーリーグのクチバダグトリオ対アサギコイキングズです。アリーさんは今季の春キャンプでクチバダグトリオの臨時コーチをされたそうですが、状態はいかがでしたか?」

    アリー「そうですねー、昨季のワールドシリーズで宿敵ホドモエドリュウブラザーズに惜敗しましたので、選手は皆一生懸命練習していましたよ。これがまず大きいです。プロで向上心のある選手は中々いませんからね」

    スガノ「なるほど。他に、戦力として重要になるのは誰とお考えですか?」

    アリー「うーん、やはり抑えのダルマですかね。『激流ストッパー』として大ブレイクした昨シーズンよりますます成長しています。特にオーダイルは、アクアジェットを習得したそうなので、救援失敗がかなり減ると思います」

    スガノ「わかりました。一方対戦相手のアサギコイキングズですが、今年は大丈夫そうでしょうか?」

    アリー「それは……非常に難しいです。各々の選手が耐久型のポケモンにメドをつけたみたいですが、昨シーズンのような貧弱な決定力ではとても不利ですね。特にこういったルールですと」

    スガノ「確かにそうですね。念のため、視聴者の方々にルールのおさらいを。まず、1試合で3人の選手が出場します。各々2匹のポケモンの所持を義務づけられており、試合ではこのうちの1匹を使います。まず1人目がバトルをするのですが、任意のタイミングで2人目と交代できます。しかし、交代したら1人目はもう出られません。また、1人目のポケモンが瀕死になったら2人目に交代します。2人目も同様に交代しますが、こうして最終的に3人目のポケモンが先に瀕死になったチームが負けとなります」

    アリー「チームのことも言及しといたほうが良いのでは?」

    スガノ「そうですね。各チーム、1軍選手は17人まで、2軍は制限無しです。この人数から、一般的に1人1タイプの担当をすることになります。もちろん、タイプによる能力や優劣から、1人目になりやすいタイプや2人目以降になりやすいタイプが出てきます。例えば鋼タイプ担当の選手は、その耐性から1人目か3人目に起用されることが多いです」

    アリー「また、プロポケモンリーグは3リーグ制です。1リーグ5チームあり、各リーグの優勝チームと、『3リーグの中で最も勝率の高い2位のチーム』であるワイルドカードを決めます。そしてシーズンの最後にワールドシリーズをやるというわけです」

    スガノ「現在あるリーグのうち、今日の私達の実況は、ア・リーグことアリエネーリーグを担当します。他にはナ・リーグことナンジャコリャーリーグ、コ・リーグことコノヤローリーグがあります。昨季はコ・リーグのホドモエドリュウブラザーズが頂点に立ちました」

    アリー「ところで、昨季のオフはすごかったですねえ」

    スガノ「昨季というと、名将と名高いタダカツ監督がコイキングに移籍したことですか?」

    アリー「そりゃそうですよ。ドリュウズの監督として名声をほしいままにしていた時の電撃移籍。どのチームとも契約交渉ができるFA制度が監督やコーチに適用されたのが昨季オフからでしたが、その第1号が彼でした。しかもここ30年優勝から遠ざかっているコイキングズですから、彼の時代は終わったなんて言う評論家もいるほどですよ」

    スガノ「『交流戦で戦った時、可能性のある選手だらけに見えた。彼らと球界の頂点に立ちたい』と言ってました。タダカツ監督は昨季、あらゆるものを使って戦いました。果たして今季はどのような指揮を執るのか、注目です」

    アリー「さて、そろそろ試合が始まるようですね」

    スガノ「そうですね。プロポケモンリーグの試合時間は平均30分で、これを1日2試合します。これは他のプロスポーツと比べ短いですが、それでもスタジアムは大入り満員です。さあ、そのファンに見守られ、試合が始まります。勝つのは頂点を目指すクチバダグトリオか? それとも変革を目指すアサギコイキングズか! 視聴者の皆さん、どうぞ最後まで見てください」









    ・あつあ通信増刊号

    ポケモン世界を考察しているうちに「プロ野球みたいにプロポケモンリーグがあってもおかしくないはず」と考えた結果、このような作品を作りました。

    実を言うと、このプロポケモンリーグネタは、現在連載中のシリーズ第3部にあたる『大長編ポケットモンスター第3部(仮)』で使う予定なのです。多分ずっと後の公開なので、ネタを寝かすのももったいないな、ということで書いてみました。果たして私は第3部まで書けるでしょうか?

    【書いていいのよ】【描いていいのよ】

    あつあ通信増刊号、編者あつあつおでん


      [No.1339] Re: 君の長さは地下百キロ 投稿者:夏菜   《URL》   投稿日:2011/06/19(Sun) 14:53:56     87clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    Re: 君の長さは地下百キロ (画像サイズ: 320×180 18kB)

    植木鉢に入ったダグドリオがとてもかわいかったです!
    楽しい、かわいいお話ありがとうございました(*^^)

    右端見えづらいですが地下に体が生えたダグドリオです。
    汚いカメラ画像ですみません;;


      [No.1338] チャットをしてたら第二弾って言う話になって 投稿者:銀波オルカ   投稿日:2011/06/19(Sun) 10:42:46     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どうも、こちらでははじめましてです。チャットにたまに顔を出す者です。駄文ながら、第一、二弾共に参加させていただきました。

    しかし皆さんの執筆力には驚愕しました…なんであんな短時間でこんなクオリティ高い文を考えられるんでしょうか。
    ちなみに私銀波オルカは途中で寝落ちしてしまい、両方とも最後まで見届けることができませんでしたw
    今見てみたらなんかすごい事になってるじゃないですか。主人公ゾロアークだったし。なんかエリカさんキャラ崩壊してるし。ポケスペのイーブイネタ出したの誰ですかアレww

    最後に、こんな駄文魔を参加させていただき、ありがとうございました!
    (初めてですので、何か間違ってたりするかもですが、生温かい目で見ていただけると嬉しいです)

    【新参者ですのよ】
    【どんどん参加してほしいのよ】
    【チャットの力ってすげー!!】
    【どうぞよろしくなのよ】


      [No.1337] 【第二部】目が覚めると、そこは海が見える屋敷だった。 投稿者:チャット創作隊   投稿日:2011/06/19(Sun) 04:37:09     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    作者一覧(入室順・敬称略) きとら・流月・銀波オルカ・リナ・イケズキ・きとかげ・moss・朱雀・ラクダ・巳佑・小樽・スズメ
     
     ※全員分写したと思うのですが、お名前が抜けている方がおられたらお知らせ下さい。(筆記者・きとかげ)
     
     ルールは第一部といっしょ。今回期間は18〜19日です。
     あくまで「甲斐で判じ物」です。

    ―――――――――――――――――――――――――――

     遠くの海から日が昇る。

     あのあとどうしたんだっけ? ずきずきと痛む頭を抱えながら、あのあとのことを思い出そうとする。
     痛みで集中出来ない……。落ち着け自分……黄金色の太陽を見るうちに、心も静まってきた。

     ゆっくり、ゆっくり、記憶を辿る。葡萄畑、滴る汗、槍、金髪――お客はん? お客はんだ。確かに私はそう耳にした。昔京都へ修学旅行に行ったときに聴いたことのある方言。一体誰だったんだ? そしてここはどこだ?
     次第に記憶を取り戻してきた。そうだ。私はあの時迫ってきた「何者か」に廊下で襲われ、足が凍って動けなくなっていた。確かにそうだった。なのにどうして今、私はベッドで横になっているんだ?

     私はベッドから跳び上がり、右足を確認する。……大丈夫だ、凍っていない。窓の外には水平線から段々と昇りゆく太陽。……ええっと、甲斐に海はあったっけ?
     しばらく外を見ながら考える。甲斐に海は無かったはずだ。……じゃあこの窓の外に広がる水平線は一体なんだろう?

     とにかくここがどこなのかを確認しようと立ち上がるも、不意に力が抜けてその場に転んでしまう。
     そうか……まともに飲み食いしてなかったから、体に力が入らなくて当然だ。そう納得してから、ふと疑問が浮かぶ。あの廊下で(恐らく)気を失ってから、いったいどれくらいの時間が経ったのだろう?

     とりあえず水を。おぼつかない足取りで水道を探した。しかし、水道が見つからない。というより、馴染み深い電化製品が何一つ見つからない……どういうことだ?
    「お気づきになられたようですわね」
     突然、凛とした声が聴こえた。振り向くとふすまがいつの間にか開いており、鮮やかな紫の着物を着た女性がこちらを見て微笑んでいる。

     その女性はこちらをみて柔和な笑顔を浮かべている。穏やかな声だ。耳慣れないイントネーションに、逆にほっとする。――あっ! 突然ハッとして思い出した。このしゃべり方は聞いたことがあるぞ。そうだ。あれは修学旅行で行った町の、エリカというジムリーダーじゃなかっただろうか?

    「大丈夫ですか?」
     その女性はこちらに近づいてくるとゆっくり右手を差し伸べてくれた。私がその手を掴むとほんのりと暖かさが伝わってくる。

    「どうも、ありがとうございます」
     助けてもらいながら、倒れそうになっていた体を起こす。彼女の手の温もりにほっとした。ほっとした瞬間、私のお腹が盛大に鳴った。……これは恥ずかしい。
     もしかして昨日から何にも腹に入っていないんではないだろうか。空腹とは気付くと余計酷くなるものである。女性は私の空腹を察したのだろう。
    「どうぞこちらへ。食事を用意しております」
     柔和な笑みを浮かべ、私の手を取ったまま長い廊下を進む。

     手を引かれるなんて子供みたいだ。しかし、彼女の手の感触から離れることもできそうにない。恥ずかしさを誤魔化すように質問した。
    「あの、私――夢を見ていたのかもしれませんけど――なぜここに来たのか全く覚えていなくて。あなたが助けてくれたんですか?」
     声に出してから、あまりに子供っぽい訊き方になってしまい、私は余計に恥ずかしくなった。
    「ふふっ……、お気になさらずに」
     そう言って、彼女はどんどん行ってしまう。今の私は、まるでさっきルージュラに連れて行かれた時と同じだった。なにも知らないで振り回されてる。

     気がつけば女性と私の間に大きな間ができていた。ときおり彼女はこちらをふりむくものの、その歩みは変わらない。
    「すいません。もうすこしゆっくり……」
     女性が廊下の角に消えてしまうと、私はまたしても一人取り残されてしまった。慌てて彼女の後を追うも足が思うように動いてくれない。息切れしつつも何と角にたどり着いた時にはもう女性の姿はどこにも見当たらなかった。
     まだまだ廊下は続いている。なのに、彼女は煙のように消え失せてしまっていた。おかしい、あの速度で歩いていたなら姿は見えるはずなのに……。そう考えていると、後ろからぽんと肩を叩かれた。振り返ると、そこには。

    長い廊下。さっき曲がったはずの角がなくなり、私の前も後ろも延々と直線が続くのみとなっていた。さっき肩を叩いたはずの誰かも、いない。ふと寒気を感じた。

     ぴちゃりと一滴、ぽちゃりと二滴、ぴちゃっと三滴、ぽちゃっと四滴……寒気の原因となったものが私の目に映る。鉄のような匂い漂う、真紅の水溜り。

    「アナタ、サス、ヤクソク、シタ」

     ひとときの休息に葬ったはずの戦慄が舞い戻る。さあっと血の気が引いていくような感覚、――本当に血が抜けていっているなんてことは……? 停止しかけた思考に追い討ちをかけるように、黒々と煌く金属のような冷たさが頬に触れた。

     とっさのことだった。私は右手をポケットに差し込んだ。それは身体に染みついた、トレーナーの動き。何かまるい物が手に当たった。

    「ムダナアガキネ。ボーイ」
     ルージュラが私をあざ笑う。

     いやいやお前カードゲームの創始者だ。あまりの見事さにそう突っ込むことしかできない。ていうか、ポケモンなら普通に技を使えってんだ。舌打ちすら許してもらえなさそうな状況でできることはそれだけだった。

    〈無駄なあがき〉今は思い出せないが、ずっと昔どこかで聞いた言葉だ。腹が立って、突然全身がかぁーっと熱くなった。全身の細胞がその言葉に反発しているみたいだった。私は首元に迫る槍もお構いなしに、まるで初めから決まっていたことのように、その「丸いもの」を放り投げた。

     それは赤く熟したマトマのみであった。目にもとまらぬ剛速球。だてに586年生きている私ではない。あざ笑うルージュラの頬にべちゃりと音を立ててマトマのみが張り付いた。一瞬遅れて、光と共に相棒が出現。後ろを振り向けば、フライパンを持ったエリカさんっぽい人影がいた。

    「ニギャアァァァァァ」
     前方に、尻尾を踏まれたブニャットのような悲鳴を上げる槍ルージュラ。
    「そうそう、あなたの相棒をお預かりしていたのを、すっかり忘れていましたわ。何かお食事をお出ししようと思って、焦っておりましたのね」
     後方には、フライパン片手におっとりと微笑む彼女。私は彼女達に挟まれて、身動きならない状況だった。

     ドンッ。槍が床に刺さる。ルージュラは肌に付いたマトマの実を落とそうと躍起になっていた。
    「ハダガッ! ハダ、アレル!!」
     しかし、擦れば擦るほどマトマの果汁は広がり、ルージュラの肌に損害を与える。先の女性がフライパンを片手に微笑みながら
    「ご不浄はあちらですわよ」
     と天井を指さした。

     女性の指さす、天井から黄色い小さな蜘蛛みたいな者がルージュラの胸の上に降りてきた。
    「汚れを電気で浄化でちでち!!」
     刹那――電気の飛び跳ねる音が辺りを埋め尽くし……って、いた! イタタ!! イタタタタタタ! しびれるうううううう! ルージュラと彼女の間に入っていた私はとんだとばっちりを受けてしまった。

     飛び散ったマトマの鼻を突き刺すような辛い香りが、明滅する視界から私を引き戻す。ほとばしった電撃は味方と受け止めるべきかも分からない。女性はくすくすと笑い声を上げる。私は振り返りもせず、再びポケットに手を突っ込んだ。
     マトマの実は分かった。分かったから、このわけのわからない状況を打開することのできる何かが欲しい。無我夢中でポケットを探ると、なにやら「もふっ」としたものに触れた。まさか、そんな――

     それはポケットではなかった。触れたのは自分の“体毛”だった。ああ、やっとわかった。人間の恰好をしていながら、586という人間にあるまじき歳である訳も、あのルージュラの言葉が分かる訳も。それは俺がゾロアークだったからだ!

    「やっとお気づきになられましたね」
     女性は静かに微笑みながら、天井にぶら下がる電気蜘蛛を呼び寄せる。
    「草使いといえど、他のタイプも持っておりますのよ」

     正直に言って自分が聞きたいのは、そんな手持ち云々の些末事ではなく、自分を取り巻く環境全てに対しての説明をしてほしい。夢なら覚めてくれと思ってるこの荒唐無稽な状況全てに納得のいく説明を。目の前のジムリーダーにそう告げると、彼女はその質問を待っていたとでもいうように、華が咲いたような笑みを浮かべた。
    「ならば説明いたしましょう」
     女性は小さな電気蜘蛛を手の平に乗せ、こちらに向ける。
    「しかし、それはあなたに手錠をかけてからですわ! 覚悟なさい、怪盗モフリティー!」

     怪盗モフリティー? 聞き慣れない単語に俺が一瞬戸惑ったのが仇となった。彼女から命令を受けた黄色い蜘蛛が出す電気を帯びた糸に絡まって、身動きが取りづらくなると、たて続けに彼女が手錠をかける……あのぉ……なんでフライパンにムチなんか持ってるんですか、この人は。それと、いつの間にか、露出度の高い服になってるし。あぁ、俗にいう女王様っていうやつ――って!? 何をされるんだ!? 俺!?

     私は――いや、俺は怪盗モフリティー。そうだ、人間から食料を盗み、弱い立場のポケモン達に分け与える裏の世界の英雄、それが俺だ。やっと思い出した。しかし今は――
    「うふふ、このまま回復装置のスイッチを切れば、確実に息絶えますわ」
     いつの間にか彼女のそばには厳つい機械と、衰弱したイーブイ。
    「さて、あなたはわたくしの命令に従わなければならない。まずは――」
     彼女の口から、驚くべき単語が聴こえた。

    「五年前にアナタが会った、セレビィの事について教えてもらおうかしら。知らないとは言わせないわよ。アナタとセレビィの事は、ちゃんと裏がとれているんだから」
     そう言って彼女はさらにスイッチに手を近づける。

     待て……彼女は何を言っている? たしかにセレビィというポケモンは知っている。しかし、それはあくまでも知識としてだ。そんなポケモンに出会ったことなどない。知らないことなど答えられない。しかし、彼女は俺の沈黙をどう取ったのか、イーブイへ憐みの視線を向けると
    「残念です」
     そう一言だけつぶやくとスイッチへと手を伸ばす。
     やめろ、やめてくれ。言葉が出ない。拘束された手足は役立たず。そして――そして、気が付けば、エリカもイーブイも消えていた。あったのは私の体を柔らかく包む布団、そして

    「お客はん、気がつきなはれましたか」
     私の額へとタオルを載せてくれる喋るユキメノコだった。

    「えらいうなされてはりましたえ。大丈夫どすか?」
     彼女の表情の機微は分からないが、口調から心配してくれていると感じる。
    「大丈夫です」
     私は長く息を吐き、起き上がった。なにげなく目をやった窓の外に、水平線はない。
     試しに自分の頬をつねってみた――夢ではない。では……あれは夢だったのか……? そうだよな、アレは夢だよな。そう心の中で呟く私。だが、何故だろう、夢だったのならば安堵の息が一つぐらい漏れてもおかしくないのに。漏れている息は少し焦げているような気がした。

    「おきゃくはん、喉かわいてますやろ。ちょっと水を切らしてもうたので、持ってきますわ」
     ユキメノコはそう言って、一旦部屋を出ようと――
    「あ、そうそう……おきゃくはん。『アレ』は 夢やったと思うておると、痛い目見ますで?」
     何故だか背筋が凍った、ような気がした。

     訛りユキメノコが部屋を出ていく。外では太陽がギラギラと自己主張し、ジージーというテッカニンの合唱がとても耳障りだった。
    「夢――だろ、どう考えても」
     私はそう言葉にし、自分に言い聞かせた。大体ここに自分がいる経緯も理由も分からないのだ。あんな非現実的な話、夢にしておかないと頭が狂いそうだ――そう思った瞬間だった。

    「やれやれだね。連れてきた矢先、ぶっ倒れちまうなんて」
     振り返ると、そこには羽根と触角のついた、鮮やかな緑色をしたポケモンが退屈そうにふわふわと浮かんでいた。
    「まあ、時間をまたぐと初心者は大抵一度は気が違っちゃうからね。仕方ないか」
     そう言って彼はケラケラと笑った。

    「あっ!」
     思わず声を上げた。なんと言うことだ、目の前にセレビィがいる。あの伝説のポケモンが、当たり前のような顔して自分の目の前を飛んでいるではないか。それに“時をまたぐ”ってどういう意味だ。

    「そんな驚くことじゃないだろ。君、さっきあの人間から僕との事聞いただろ?」
     鈍い奴を相手にしていかにもかったるいという様子で言う。突如、私の目の前でセレビィが動きを止めた。そして、一つ大きなあくびをしてみせると、その吐息とともに驚きの話を続けた。

    「……五年前に僕と会ったってさ」


    ―――――――――――――――――――――――――――
    ここで第二部は終了です。第三部も無事開催できればよいですね。

    夢の中の出来事と、第三部の“判じ物”に関係が……!? と引っ張っておきます。

    【これが超次元チャットだ!】
    【書いていいのよ】
    【描いていいのよ】
    【参加して欲しいのよ】


      [No.1336] 列車に乗って 投稿者:リナ   投稿日:2011/06/19(Sun) 02:58:25     91clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     プラットホームには私たち以外誰もいなかった。塗装の剥がれた灰色のコンクリートに長く伸びた影は二つだけ。私の影と、それよりちょっとだけ背の低い、私の親友の影。

     地平線から顔を出したばかりの太陽は、今日も橙色の眩い光で世界を照らし出していた。毎日毎日、本当に早起きだよなあと思う。朝の弱い私は彼を見習うべきだろう。ホームの前を横切る古びた線路を挟んで向かい側に広がるのは、背の高い針葉樹の森。尖ったその丈夫な葉は冬でも枯れて落ちることはない。人工的にそこに植えられた彼らはちゃんと両手を広げて一定の距離をとり、等間隔に立ち並ぶ。時折風が通り抜け、ざわざわと葉が揺れる。
     森から聴こえるのは、鳥ポケモンたちによる即興ハーモニー。どれもオカリナのように透き通り、フルートのように芯のある歌声だった。日頃磨いた歌唱力を互いに競い合うかの如く披露する、森のコンサート会場。このプラットホームは申し分ない特等席だ。あっ、今のアルト、とっても綺麗。ピジョン――かな。

    「はっくしょいっ!」

     隣りで盛大なくしゃみの音がして、私は振り向いた。コンサートで咳やくしゃみが録音されてしまうことは、よくあること。この街クラムフーシュでは待ちに待った夏のバカンスがやってきたばかりだが、朝のこの時間帯に限ってはまだまだ肌寒かった。

    <上着着た方がいいよ、ジーン>

     私とジーンは、クラムフーシュの郊外に位置するこの駅で、二時間に一本の鈍行列車を待っていた。

    「そうだね――」

     ジーンはそう言ってボストンバッグのファスナーを開けた。屈んだ拍子に被っていた黒のストローハットが落ちそうになったのを、私は念力でそっと支えた。

     彼女の仕事は雑誌モデル。ジーンがずっと前からなりたかった仕事で、一昨年の春、その夢が叶った。その仕事が決まった時、ジーンは私のことを思いっきり抱きしめて喜んだ。私も、自分のことのように嬉しかった。でも最近は仕事先の人に怒られたり、撮影がすっごく長引いたりして、家に帰るとため息ばっかり。ジーンの一番の夢だったのに、なんだか変だなぁと思ったけど、人間ってそういうものなんだろうなとも思った。
     今日からジーンもお仕事が休みだから、列車に乗ってセント・ヴィズに帰る。私たちの故郷だ。
     一年前の春クラムフーシュに引っ越して来るまで、ここからずっと南の街、セント・ヴィズに私たちは住んでいた。私とジーンが出会った場所でもあるセント・ヴィズは、昔まだ戦争中だった頃、敵からの攻撃を防ぐために作られた「輪壁」と呼ばれる石の壁にぐるりと囲まれた街だ。今となってはところどころ崩れてしまっているけれど、その七割ほどは、レンガ造りが特徴的なその古い街の景観と共に残されている。
     そしてなんといってもセント・ヴィズの特徴は、街全体に「運河」が張り巡らされていることだ。
     川幅の大きな「大運河」から、小さなゴンドラしか通り抜けることができないような細い水路まで、まるで毛細血管のように張り巡らされた運河は、セント・ヴィズに住む人々の生活そのもの。自動車通勤ならぬ「ゴンドラ通勤」が当り前になっているくらい水運が発達し、客船や商船、水上タクシーなど様々な役割を持つゴンドラたちが赤茶色のレンガで組まれた家々と共に街の風景を彩っている。
     幼い頃のジーンはその迷路のような街を探検するのが好きだった。私は走るのが遅かったから、ジーンのことをしょっちゅう見失っていた気がする。そして気付いたら彼女は、運河に落っこちているのだった。念力を使い、やっとの思いで引き揚げたジーンは身体中びしょびしょのまま、また狭い路地目がけて走り出す。慌てて私は追いかける。
     ジーンはそんなことじゃ泣かない。初めて会ったジーンは泣いてばかりいたけど、私がキルリアになってしばらくたった頃から、めったに涙なんて見せなくなった。強くなったんだ、ジーンは。今でさえ毎日お仕事で辛そうにしてるし、時々弱音も吐くけど、でも、強いんだ。

     ジーンがTシャツの上からカーディガンを羽織り、ついでにポケットティシュで鼻をかんだ。
     そしてまた私たちは、まるで風景画の中に佇むように、静かに列車を待ち続けた。

     太陽はゆっくりと木々のてっぺんのあたりまで昇っていき、日差しも強くなってきた。
     プラットホームは一人、また一人と列車を待つ客が増えていった。コンクリートの床を大きなトランクがガラガラと音を立てる。高そうな革靴がコツリコツリと得意気に鳴り響く。切符をもぎる駅員はずっと事務所のイスに座っていたが、乗客が姿を見せ始めたのをしおに、改札窓口の前ちゃんと立っていることに決めたようだ。
     私は足元を見つめた。濃い茶色のペンキで塗られていた痕跡があったが、灰色のコンクリートが圧勝している。このクラムフーシュに引っ越してきた日もこのホームに降りたけど、あの時もこの床、塗り直さないのかなと思った記憶がある。でも駅員さんが眠たそうに老人の切符をもぎっているのを見て、あと五年くらいはほっとかれそうだなと思った。

     霧で霞んだ線路の北の果て。濃いグリーンの車体がゆらりと姿を現した。

     ゴトン、ゴトン。ゴトン、ゴトン。列車は音を立てて駅へと近づいてくる。初めて列車を見た時、私はもう本当にびっくりして、ジーンの脚に巻きつくようにして身を隠した。鉄どうしが軋む音はまるで悲鳴のように聞こえたし、車体はいつかどこかで見た凶悪ポケモンのように見えた。ジーンから列車についていろいろ説明されて、恐る恐るその中に乗ってコンパートメントに座ってからも、私はビクビクしてジーンに抱きついていた。そんな私を見てジーンとその家族は笑っていた。

     ギーッ。プシュー。列車は駅に到着した。

    「やっと来たぁ――もう待ちくたびれたよ」

    <うん>

     私たちは一番先頭のドアから列車に乗り込み、四人乗りのコンパートメントに向かい合って座った。ジーンが座席の横にドサリとボストンバッグを置く。乗客も少ないし、二人で陣取ってしまっても誰も文句は言わないだろう。混んできたら詰めればいいことだし、満席になるようなことがあれば、私がモンスターボールに戻ることもできる――それはちょっとさびしいけど。

     先頭車両には私たち二人と、大きなトランクを引っ張り上げて乗り込んできた初老の男の人だけしかいなかった。彼はトランクを荷棚によっこらせと乗せると、私たちの二つ後ろのコンパートメントに腰掛けて、目を閉じた。
     車内は静かだった。木々の揺れる音も、鳥ポケモンのオーケストラも、ここまでは届かない。私たちが座ったシートも車体と同じ濃いグリーン。ジーンの腰に着いている私のモンスターボールの赤とあいまって、私はクリスマスを思い出した。

    「あー、こっから長いんだよね。エコノミー症候群になったらどうしよう」

    <どのくらいかかるんだっけ?>

    「五、六時間はかかるかな。鈍行だから。特急に乗ればもっと早く着けるけど、お金もかかるしね」

     ジーンは両手を組んで、盛大に伸びをした。黒のストローハットを被りっぱなしだったことに気付き、ボストンバッグの上にそれを置いた。少しだけ、髪に帽子の跡が残っている。

    「そうだ、今度『イルミネ』の表紙、また載れることになったんだ」

     ジーン言う「イルミネ」とは、中学生から高校生くらいの女の子向けのファッション誌だ。前にも一度、ジーンが表紙を飾ったことがある。

    <すごいね、また表紙なんて>

    「ほら、あそこの編集長結構私のこと気に入ってくれててさ、やっぱり付き合いは大事だよねー。そう、それでね、編集長が今度はぜひレイも一緒に載らないかって」

    <私?>

    「うん。今の子たちの中でサーナイトってやっぱ結構人気みたい。しかもちょうど来月号は『ポケモンと街に繰り出そう!』っていう特集なんだってさ。だから『是非、レイチェルちゃんにも』って」

    <えー、どうしよう――>

     表紙に載るってことは、いっつもジーンがカメラに向かってやっているようにポーズをとったりするのかな。あんな風に綺麗に撮ってもらえるのなら、ちょっとやってみたい気もする。でも、やっぱりちょっと恥ずかしいな――

    「まあ休み明けだから、ゆっくり考えといてよ」

    <――分かった>

     ガコンと車体が揺れたかと思うと、スルスルと列車が動き出した。窓の外の針葉樹が後ろに流れていく。
     最初はとてもゆっくり。しだいに速度を上げていき、線路の繋ぎ目に当たるゴトン、ゴトンという音をリズムよく刻みはじめた。森はすぐに途切れ、広大な平原が現れた。太陽の日射しが一気に列車を照らし出した。ジーンは、目を細めて外の景色に目を向けた。

    「綺麗、原っぱが光ってる」

     長い長い列車の旅の、はじまりだ。



     ◇ ◇ ◇



    「うーん、朝コーヒー飲んじゃったから、寝るにも寝れないなー」

     駅を出発して間もなく、ジーンはそう言って退屈そうにした。

     列車は広い広い平原の真ん中をのんびりと横断していた。といっても線路の通っている周辺にはまだポツリポツリと民家が点在し、その周りに畑や果樹園が広がっている。みずほらしい顔をしたカカシをあざ笑うように、ヤミカラスがその麦わら帽子にとまって羽根の下を毛づくろいしていた。

    <コーヒーって、そんなに目が冴えるの?>

    「レイは全然飲まないもんね。まあカフェインが効く人と効かない人で差があるけど、私は一杯飲んだらもうギラギラ」

    <そうなんだ――でも、カフェインってどうして眠れなくなるの? なんで人によって効いたり効かなかったりするの?>

    「さあ……そこまで考えたことないな。とりあえず、カフェインはそういうものってこと」

    <――ふーん>

     ここ最近、くだらないことが異様に気になることが増えたような気がする。私はカフェインという、コーヒーに含まれる謎の成分がなぜか頭から離れなくなった。一体ナニモノなのだ? コーヒーが黒いのはカフェインの仕業なのか? どうしてカフェインは人を眠れなくする? どうして人によって効き方が違う? そもそもなんでコーヒーに入ってるんだ? そもそも――

    <ジーン、コーヒーってなに?>

    「は?」

    <いや、なんか、気になって――コーヒー豆からできてるってことは分かるんだけど>

     私は怪訝な目つきでこちらを見つめるジーンに作り笑いを浮かべた。

    「うーん、コーヒー豆が原料だってこと知ってたら、ポケモンとしては十分すぎるくらいだと思うけど」

     コーヒーは、コーヒー豆からできる。それは知っている。でも何だろう? このもやもやは。眠れなくなるカフェイン。カフェインはコーヒーの中。コーヒーは元コーヒー豆――

    <コーヒー豆は、コーヒーになるために現れたの?>

     ジーンは吹きだした。静かな車内で大笑い。初老の男性が閉じていた目を開け、不機嫌そうにチラリとこちらを見た。

    「あっははは! その発想はなかった! 『現れた』って――あんた天才!」

    <――馬鹿にしてるでしょ>

    「いやーごめんごめん。でも考えてみると不思議、人間がコーヒーを飲もうなんて思わなかったらコーヒー豆はただの豆だったのかなー」

    <どっちが良いんだろう? コーヒー豆と、ただの豆>

    「さあね、コーヒー豆の方が名前付きなだけ位が上な気がするけど。豆にそんなの気にする頭はないだろうけど」

    <――うん>

     名前が付くと、良いのか。
     私も一応、ただのサーナイトではなく、レイチェルっていう名前がある。ジーンが付けてくれた素敵な名前が。

     名前――大事だ。



     ◇ ◇ ◇



     列車の窓から眺める景色は好き。座っているだけで景色の方が動いてくれるから――なんて言うとぐうたらしてるみたいで嫌だけど、列車は世界の色んな顔を見せてくれるから。
     晴れ晴れとしたスカイブルーには雲ひとつなかった。太陽の光を受けて黄金色に輝く平原は、どこまでもどこまでも続いていた。ケンタロスの群れがその三本の尻尾をのんびり揺らしながら草を食んでいたり、穴ぼこがたくさんあると思ったらオオタチがひょいっと顔を出す。この広い広い世界で今日もみんな生きているのを見て、どことなく安心を覚える。野生のポケモン達も、トレーナーと生きる道を選んだポケモン達も、いつも通り、朝を迎えている。
     遠くにうっすらと山脈が見えてきた。百年よりももっともっと長い時間をかけて大陸が移動し、地面が盛り上がってできたのが山。それがいっぱい繋がったのが山脈。そうそう、山にも色々あって、火山は溶岩が地面から噴き出してできたらしい。吹き出したところがへこんで、雨が溜まって湖になることもあるんだって。それに、海の中にも山がある。実は陸よりも海底の方が山が多いらしい。海底でも噴火が起こったりする。
     まるで生き物みたいだ。人間やポケモンと同じで、毎日少しずつだけど、世界も動いてる。

     いくつか駅を経由し、ぱらぱらと旅行客が乗り込んできた。家族連れが先頭車両に乗り込んできた時は、小さな男の子が私の方をチラチラ見てくるので、少し居心地が悪くなった。

     ジーンの携帯電話のバイブが鳴った。ディスプレイを見たジーンの顔は、ほんの少しだけほころんだ気がした。

    「もしもし? おはおは――うん、今まだ乗って三十分くらい――多分昼過ぎかなー。着いたら連絡するよ――うん、はーい」

     短く会話をして電話を切ってからも、ジーンの顔は浮ついたままだ。

    <だれから?>

    「あ、うん。アルから」

    <わざわざ電話してくれたんだ、優しいね>

    「ホントにねー! もう、どうしよう――」

     ジーンは携帯電話をしまいながら、ヘラヘラと変な音程でそう言った。なんか、気持ち悪い。

     アルは、ジーンの元バイト仲間の男の子だ。ジーンがまだ学生の頃、セント・ヴィズで喫茶店のアルバイトをしていた。同い年ということもあり、二人は気があったみたいで、当時からすごく仲が良い。こっちに来てからも、時々連絡は取り合っていたみたい。
     でも、仲が良いって一口で言ってしまうには、二人の関係はちょっと違和感があった。
     最初は他愛ない話で笑いあったり、バイト上がりに一緒に帰っていたりしていた。でもいつからか、特に何かきっかけがあったわけでもなく、ジーンは目が合ってはすぐに逸らしたり、会話がぎこちなくなったりすることが多くなった。
     ジーンはアルからのメールに一喜一憂していた。ため息をついたかと思ったら、五分後には鼻歌を歌っていたり、そしてまたベットに突っ伏したり。四六時中「あー」とか「うー」とか唸って、正直面倒くさかった。あの時もジーンの口癖は「どうしよう」だったと記憶している。私はジーンがあんまり情緒不安定だから、なにか悪い病気になってしまったんじゃないかと本気で心配した。

     しかしそれは病気ではなく「恋」というものだということを知ったのは、こちらに引っ越してくるときの列車の中だった。

    「結局、伝えられなかったな」と、ジーンはその時窓から見える海の青を眺めながら呟いた。ポカンとする私に、「友達以上恋人未満」とか「告白」とか「遠距離恋愛」という用語を教えてくれた。ジーンは分かりやすく説明してくれたのだと思うけど、私は今でもそれらの言葉の持つ意味合いがよく分かっていない。

     恋って何だ?

    「一年ぶりか――なんだか緊張するな」

     青空をバックに悠々と旋回するムクホークを眺めながら、ジーンは言った。

    <ジーンは今でもアルに「恋」してるの?>

    「――うん、してる。ホントしょうもないと自分でも思うけど」

     好きなのに離れ離れなのは辛い。ならいっそ、「好き」を諦めた方がいい。そう言ったのもジーンだった。でも、結局ダメだったんだね――

    「仕事に忙しい時は忘れられたけど、時々友達として電話とかすると、すぐあの時の気持ちが戻ってきちゃう」

    <――「恋」ってそういうもの?>

    「うん、そういうもの。だから困るんだ、恋って」

     やっぱり不思議。人間って変。「好き」って気持ちは幸せなはずなのに、ジーンはアルのことが好きなせいで苦しいんだ。

    <アルの方はジーンのこと好きなの?>

    「はは、分かったら苦労しないよねー」

     列車はゆっくりと速度を落とし、クラムフーシュよりもひとまわり大きな駅に到着した。ここはクラムフーシュの隣り、リエパーヤ。ジャガイモが特産品の、のんびりとした田舎町だ。この駅は町の中心に位置し、先程まで点在していた民家がいつの間にか互いに身を寄せ、駅を囲んでいた。
     先頭車両には思っていたより多くの旅行客が乗り込んできた。空いていたコンパートメントが人と荷物で埋まっていく。静かだった車内も、だんだんと乗客の話し声が増えて、賑やかになってきた。
     そして、列車はまた駅を発つ。



     ◇ ◇ ◇



     リエパーヤを出発してから、列車からの景色は先程までと打って変わって山の中。車体すれすれのところまで生い茂っている木々の隙間を縫い、時々開けた眺めの良い場所からはうねるような深緑の絶景が見て取れた。

    <ジーン?>

    「ん?」

    <セント・ヴィズに帰ったら、アルに好きって言う?>
     
     ジーンは困ったように笑った。「言えたら、楽かもね。でも分からないや、私弱虫だもん」

     好きな人にその気持ちを伝えて、一緒にお出かけしたり、仲良くして下さいって頼むことを「告白」と言う。それは、すっごく勇気がいることらしい。ジーンは中学生の時、放課後の教室で好きな男の子に告白しながら緊張して泣きだしてしまったというエピソードを話してくれた。
     そこまでして「告白」する理由は簡単で、好きな人と一緒にいたいから。その人と時間を共にしたいから。だから傷つくのが怖くても、勇気を振り絞って言葉にする。

    <ジーンは弱虫なんかじゃないよ>

     私は「恋」について、人間ほどよく理解できていない。でも、今のジーンにとっては「恋」がすっごく大切で、幸せと繋がっているものだってことは分かる。

    <うまく言えないけど、応援してるから。ジーンの「恋」>

     親友にできることって言ったら、応援くらいだと思う。そのくらいしかできないから、全力で応援する。

    「レイに励まされるなんてね――ありがと。頑張ってみる」

     ジーンはライト・ブラウンの髪に手ぐしをかけながらにっこりとほほ笑んだ。こんなに可愛い顔してるんだもの、きっとうまくいく。

     列車に照りつける日差しのおかげで車内はぽかぽかしている。ジーンはカーディガンを脱ぎ、Tシャツ一枚になった。私は大きなあくびをした。

    <眠くなってきちゃった>

    「朝早かったもんね、眠っててもいいよ」

    <うん――お客さんも増えてきたし、ボールに戻ろうかな>

     セント・ヴィズまではあと四時間はかかるだろう。乗客もそのうち車内に溢れかえる。
     私はジーンに<後でね>と軽く手を振って、モンスターボールに吸い込まれた。



     ◇ ◇ ◇



     列車はもうじきクライスト・ノールという街に到着する。ちょうどこの旅の中間地点だ。
     ジーンはサングラスをかけ、少しだけ景色を眺めた後、腕を組んで目を閉じた。



     ――――――


     地味に過去作品「しんゆう」の続きです。何気にジーンとレイチェルのコンビ、気に入っていたりw
     レイちゃんはテレパシーで話している設定なので、傍から見るとジーンの独り言。これは痛いw


      [No.1335] あまやどり 投稿者:小樽ミオ   《URL》   投稿日:2011/06/18(Sat) 23:14:48     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     目が覚めたとき、ハクタイの町は雨でした。


     やわらかな草に体を預けて眠っていた時に、リーフィアは夢の中で森のさざめく声を聴きました。
     なにやらざあざあと、いつもとは違った声が聞こえます。今日は風さんと違う歌を歌っているのかな。そう思いつつも、リーフィアはさらさら流れてゆく歌を聴きながら眠り続けていました。

     ぴちゃん。ぱたたっ。冷たい指をしただれかがリーフィアをそっと起こしました。――雨です。
     重たい目をこすって空を見上げれば、眠る前には降っていなかった雨がいつの間にかざあざあと音を立てて降っていたのでした。
     背の高いハクタイのもりの木々は、茂らせた手のひらでたくさんのポケモンを雨の冷たさや雪の寒さから守ってくれます。けれど今はたくさんの雨粒が、初夏を迎えてみずみずしくきらめく緑の葉っぱからこぼれ落ちてきます。
     人間の言う「さみだれ」がまた降り始めたのだと気付きました。これだと、きっとハクタイの町は大雨なんだろうな。顔のしずくを前足でぬぐいながら、リーフィアは思いました。


     雨のときにだけ漂ういつもよりもかぐわしい森の香りに包まれながら、リーフィアは生い茂った木々の下をゆっくりと歩きます。
     薄暗い森にさしこむ木漏れ日も、今日は姿を隠したまま。森はいっそう薄暗くて元気がなさそうです。リーフィアには、灰色の空といっしょにこの森もさめざめと泣いているように見えました。

     こんな日はポケモンたちもみんな、姿を見せることなくひっそりとおやすみしています。萌黄色の前足が草むらをさわさわ揺らしても、今日は少しも野生のポケモンたちが飛び出てくることはありませんでした。みんなリーフィアと同じようにお日さまが恋しくて、ちょっぴり憂鬱な気分になっているのです。
     ハクタイのもりの大きな木々たちも、眠りっぱなしのお日さまが恋しそうに静かに揺れていました。


     古びた外国風のお屋敷の前で、ふとリーフィアは立ち止まりました。今日もその洋館は雨のしずくに飾られています。
     リーフィアには、決まって雨の日にすることがありました。このお屋敷の玄関で雨やどりをすることです。


     お屋敷は、森が空のなみだにリーフィアを濡らさないようにしてくれるのと同じように、森のなみだからもリーフィアを隠してくれました。お屋敷は声をかけても森のように返事をしたり歌を歌ってくれたりはしてくれません。けれどなにも言わず静かに自分を雨やどりさせてくれる、そんなお屋敷がリーフィアは大好きなのでした。
     それから、リーフィアは雨上がりのお屋敷が見せる顔も好きでした。いちばんのお気に入りは、雨のしずくをいっぱいにまとったクモの巣です。雨上がりの木漏れ日に照らされてきらりと輝くそれは、まるでダイヤモンドをちりばめたネックレスをわっかにして並べたかのようでした。
     このお屋敷が大好きで、雨の日にはいつもリーフィアはここで雨やどりをしながら、お日さまとあいさつできるのを待っています。





    「リーフィアーっ! リーフィア、あそびにきたよー!」





     ――そんなリーフィアにはもうひとつ、雨がずっと降っている日の楽しみがありました。
     雨の日になると決まって傘を持って遊びにやってくる「ミノリちゃん」という女の子の姿を見ることです。

     遠くから響いたリーフィアを呼ぶ高い声に、枝にとまっていた鳥たちがいっせいに飛び立ちます。
     ぱしゃぱしゃと水のしぶきを跳ね上げ、ぱたぱたと差した傘に雨粒の歌を奏でながら、ひとりの女の子が古びた洋館にたたずむリーフィアのもとへと駆け寄ってきました。――ミノリちゃんです。その姿を見たリーフィアは、濡れるのも構わず雨の森へと飛び出しました。

     ふわり、水玉もようの花びらが空に舞いました。
     ミノリちゃんはいつもの空と同じ色をした傘を投げ出して、飛び込んできたリーフィアをその胸にぎゅうっと抱きしめます。甘い香りがリーフィアをくすぐりました。



    「雨、やみそうもないね」

     傘を拾うのも忘れて、みのりちゃんははじめて出会ったときと同じ言葉を、抱きしめたリーフィアにささやきました。

     はじめてミノリちゃんに出会った日も、こうして六月の長い雨が降っていました。
     まだリーフィアは体のちいさなイーブイだったので、よくミノリちゃんの両手にだっこをしてもらいました。
     あの日見た木漏れ日は今よりも少しだけ近くにあったのを、リーフィアはよく覚えています。
     ミノリちゃんのちいさな手の大きさも、その手になでられるのが大好きなのも、今と昔で少しも変わりはありません。

     ふたりのわんぱくごころだって昔のままです。
     まっくらなお屋敷の中を探検したこと、人のいないはずのそこで聞こえた得体の知れない物音におびえたことは今でも忘れません。
     口にくわえたミノリちゃんの服の袖がふるふると震えるのを感じながら、絶対にミノリちゃんを守るんだ、この襟はなにがあっても放すもんか、そう誓ったときにちょっぴり大きくなれたような気がしたことも。



     遠い日の懐かしさに思いをはせながら、リーフィアは空を見つめていました。
     恋しいお日さまは、遠く灰色の雲の上。もう何日も顔を見せてくれません。
     いつもならやさしい木漏れ日の降り注ぐ木々の向こうにかすかに見える色は、何度見上げてもやっぱり同じ色です。
     木漏れ日のかわりに降り注いできた雨のしずくが、すうっとリーフィアの顔を濡らしていきました。

     ミノリちゃんは、そんなリーフィアの姿に見とれていました。
     森の木々の中にも凛として映える葉っぱに乗ったままの玉水は、薄い森の明かりの中にきらきらと光ります。
     なにか思いをめぐらせているかのようにミノリちゃんはぼうっとその様子を見つめていましたが、ハッと我に帰るとすっかり湿ってしまったカバンをごそごそとあさりながら、リーフィアに言いました。


    「あっ、ごめんねリーフィア、寒いよね」


     ミノリちゃんはカバンから傘と同じ青空の色をしたタオルを取り出して、リーフィアの顔をそっとぬぐってあげました。
     リーフィアの大好きなミノリちゃんの服と同じ花の香りが、やさしくリーフィアを包み込みます。
     タオルと、それ越しに伝わるミノリちゃんの手のひらの感触が心地よくて、リーフィアは思わずのどを鳴らします。


    「なかなか晴れないね。リーフィアも、お日さまが待ち遠しい?」


     放り出した傘の花をそっと握り、雨やどりのお屋敷へとそっと歩きながらミノリちゃんは言いました。
     お日さまが恋しいのはリーフィアも同じでした。晴れた日にはミノリちゃんといっしょに森のポケモンとバトルしたり、澄み渡る空の下でハクタイの町をお散歩したりしました。
     ぽかぽかあたたかい日は、草の上でなかよくお昼寝をしたこともあります。戦いにすっかり疲れきって、穏やかな風の中でふたりふららかな眠りに夢を見ていたら、「イーブイ! イーブイ、すごいよ! リーフィアになったんだね!」――いつの間にか自分の体にはたくさんの葉っぱが生えていて、ミノリちゃんが驚きながらもいっぱいの笑顔で喜んでくれたことだって。
     森にたくさんの光があふれた日にも、忘れられないたくさんの思い出があります。


     でも、もしお日さまが姿を現してくれなくても、リーフィアにはそれでもいいかなと思えました。
     雨やどりをするとなりに、お日さまのようなミノリちゃんの笑顔があるからです。


     ミノリちゃんの笑顔は、今までリーフィアがこの森やハクタイの町で見てきたどんな笑顔よりもまばゆくて、きらきらしていて、見ている自分をしあわせにしてくれます。
     雨やどりをするときはいつだって、灰色の雲が晴れゆくのよりも早く、お屋敷の玄関に光がぱあっとあふれるのです。


     ミノリちゃんは、きっとリーフィアの気持ちには気付いていないでしょう。
     けれどただなにも言わずにそのとなりにいられるのなら、そのぬくもりを感じることができるのなら、
     リーフィアはただそれだけでしあわせなのでした。





    「お日さまに会えたら、またいーっぱいあそぼうね。
     もしお日さまが出てこなかったら、……ずーっと、こうして雨やどりしてようね」





     ミノリちゃんはお屋敷の壁にそっともたれかかりながら、その胸にもう一度リーフィアをぎゅっと抱き寄せました。
     お日さまの恋しさを忘れさせてくれるその笑顔に、リーフィアも負けないくらいにぱあっと笑顔を咲かせて、そのほっぺたをすり寄せました。



     五月雨に、ふたり頬寄せ雨やどり。まだまだからりと澄み渡った青空は帰ってきそうにありません。
     けれどハクタイのもりには、ふたつの太陽がちいさく、それでもさんさんと輝いていたのでした。





    ◇   ◇   ◇

     ご覧下さりましてありがとうございました!
     夜になって「6月18日はリーフィアの日」ということを知り、「なら梅雨を交えてなにか書いてみよう!」と思い立った結果、珍しく一日で仕上がった作品です。

     リーフィアのシンオウずかんナンバーは169。6月18日は1月1日から数えて169日目だそうで、これが6月18日がリーフィアの日になった理由だそうです。
     ※企画元は多分こちら! http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=19128555

     やっぱりリーフィアかわいいですね!
     連載の方のリーフィアはすっかり書いてあげられていないので、そろそろ頑張って書き進めたいと思います……^^;

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】
    【タグ付け忘れてたのよ(汗)】


      [No.1334] ダグトリオのびよーん 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/06/18(Sat) 22:07:10     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 何より植木鉢の中のダグトリオにときめきを隠せない。

    だぐだぐ狭いぜだぐだぐ。

    > トリオだから3本もあるのか全長100kmの物体がwww

    ディグダの穴はさしずめ魔窟です。

    > ディグダの長さが気になる。

    ディグダは地下1mらへんで木の根をかじっているそうです。
    ということは地面の下の長さは1m……いやいや、じつは50kmほどある体を1m程地下に潜らせて木の根を食べているのかも……


    > ちなみに、大陸地殻は最も暑いヒマラヤ山脈のあたりでも最大で80kmあるかないかくらいだぜ! ダグトリオすげぇ。

    まじっすかw 80km……あったというべきかやっぱりなかったというべきか、どちらにしろダグトリオには勝てませんね。ダグトリオの神秘! ダグトリオ最長!
    ここで一句。

    チョモランマ 上から下まで ダグトリオ

    感想ありがとうございました。


      [No.1333] 世界最長の生物 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/06/17(Fri) 22:34:53     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    何より植木鉢の中のダグトリオにときめきを隠せない。

    全長100kmのダグトリオwww
    トリオだから3本もあるのか全長100kmの物体がwww
    ディグダの長さが気になる。


    ちなみに、大陸地殻は最も暑いヒマラヤ山脈のあたりでも最大で80kmあるかないかくらいだぜ! ダグトリオすげぇ。


      [No.1332] 感想ありがとうございます 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/06/17(Fri) 22:13:28     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    はじめまして、スウさん。

    > 想像力が刺激されてめちゃくちゃ面白いです。ダグトリオのことでこんなに考えたことは今までありませんでしたね。

    ダグトリオについて考えるきっかけになれば幸い……本当、あいつらの地面から下は永遠の謎です。

    > >「ハイスピードカメラで映しても、爪らしきもの影も形も見えない。テッカニンも真っ青のスピードだ」
    >
    > この箇所が一番傑作でした。

    おっ、そこですか! なにげなく書いてしまった箇所ですが……。
    携帯機のエフェクトでももちろん爪は見えないし、wiiとかのやつでも見えないし、本当にどうなっているんでしょうね?

    > こいつらのきりさくには、なにか、スピード以外の要因でもあるのでしょうか……?

    実は爪が気体と同じ屈折率だから見えないんだとか、気合で切り裂いてるから爪なんてないんだとか、色々考えられます。正解は……いつまでたっても土の中。

    感想ありがとうございました。


      [No.1331] Re: 君の長さは地下百キロ■感想です■ 投稿者:スウ   投稿日:2011/06/16(Thu) 23:32:42     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    はじめまして。想像力が刺激されてめちゃくちゃ面白いです。ダグトリオのことでこんなに考えたことは今までありませんでしたね。

    >「ハイスピードカメラで映しても、爪らしきもの影も形も見えない。テッカニンも真っ青のスピードだ」

    この箇所が一番傑作でした。
    こいつらのきりさくには、なにか、スピード以外の要因でもあるのでしょうか……?


      [No.1330] チャットを覗くと、そこは甲斐だった 投稿者:小樽ミオ   《URL》   投稿日:2011/06/16(Thu) 20:46:29     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ご参加のみなさま、創作お疲れ様でした!
    実は昨晩チャットを少しだけ覗いた際に、添付ファイルで冒頭8発言分(2周目?)くらいだけ拝読させていただいていました。
    昨日の時点では「ポケモン+甲斐」という異色のお題の理由に皆目見当がつかなかったのですが、今になってやっと理解しました(^^;

    とりあえず、「槍とルージュラ」の組み合わせが新感覚すぎておなかが痛かったですw
    「カッテナコト、シタラ、サス」 って至って簡潔でストレートな表現だと思うのですが、このストレートさが却ってクセになります。話者が槍を持ったルージュラだと思ったらなおさらw

    >一体誰があんなもの持たせたんだろう
    まったく誰があんなものを持たせたんだろう!(

    > 「おきゃくはん、なにをしてはりますの?」 
    「お客さん、なにをしてらっしゃるんですか?」の何倍も恐ろしい……!
    ここから一気にホラー一色……というわけではなさそうですけれど、ホラー小説でこの一節が出てきたらガクガクしちゃいます(汗)
    そしてここで第一部が終わっているとは……これはここで執筆陣に筆を置かせることで読者を焦らそうとする睡魔の陰謀か!

    それにしても、参加者のみなさまの執筆力の高さにはただただ頭が下がります……
    チャットの中でのリレー小説ということでかなり即興性が高いものだと存じますが、言われなければとてもチャットで回しながら書いたようには見えないくらい、繊細で作りこまれているなぁと感じます。
    ぜひとも、第二部のほうも拝読させていただきたいです! 葡萄でも食べながら首を長くしてお待ち申し上げておりますね、わくわく!(他力本願


      [No.1329] 目が覚めると、そこは甲斐だった。 投稿者:チャット創作隊   投稿日:2011/06/16(Thu) 03:33:40     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    作者一覧(入室順・敬称略) リナ・ラクダ・きとら・流月・きとかげ・オルカ・久方・イケズキ・朱雀・灯夢・クーウィ
     
     ※全員分写したと思うのですが、お名前が抜けている方がおられたらお知らせ下さい。(筆記者・ラクダ)
     
     15〜16日にかけて、チャットの誤字(ばんかい・判甲斐;リナさん作)を元にお話を作ろう! の会が発足されました。甲斐=東海道・現在の山梨県にあたる場所、判=判じ物(言葉遊び・なぞなぞ)、をキーワードに、チャット参加者が入れ替わり立ち替り、数行ずつの創作会。
     
     この物語が行き着く先はどこなのか……それは作者達にも分からないw
     それでは、スタート!
     


    ―――――――――――――――――――――――――――

     
     

     

     目が覚めると、そこは甲斐だった。
     
     目に入るは広々とした葡萄とその熟した香り。その馥郁たる香りを胸いっぱい吸い込んで…はたと気が付く。自分はどのようにしてここにきたのか。そのあたりの記憶がさっぱりと抜け落ちていることに。

     とりあえずポケモンセンターを探そう。そう思い辺りをうろついてみるが、行けども行けども葡萄畑……。葡萄畑を進むうちに、赤い屋根が見える。しかし近づいてみると、それは目当ての建物ではなかった。
     
     でもこんな家近所になかったよな。第一葡萄畑なんて昔果物狩りに山梨に行った時以来だ。けどなんだか、あの時見た畑とはちょっと雰囲気が違うような…。全体的に古めかしいというか、なんというか。前に見た葡萄畑はネットのようなもので囲われていたのに、目の前に広がるそれは石垣のようなもので囲われている。葡萄のつるは竹で出来ているらしい支柱に巻き付いている。それだけに、あの赤い屋根のおうちが葡萄畑から浮いて見えた。
     
     赤い屋根瓦が陽の光をはじいて光っている。その日差しを浴びるうちに気が付いた。『暑い』。
     額から汗が滴り落ちた。ひどくのどが渇いていた。目の前には葡萄畑。垂れ下がる薄紫色の房は一粒ひとつぶにはりがあり、とても瑞々しい。欲には勝てず、葡萄畑に近づくとますます甘い香りが刺激となる。
     この葡萄、この家の住人の所有物なのだろうか。漫画でよくあるシーンよろしく、この葡萄を口にした瞬間、雷親父がものすごい剣幕で竹刀を振りかざしてくるのだろうか。ああ、でも喉の渇きは耐え難いほどになっている。もういいや、竹刀だろうが真剣だろうがどんと来い! やぶれかぶれな気持ちで艶やかな葡萄に手を伸ばす。

     槍が突き付けられた。これ以上葡萄へと近づけると見事に突き刺さる位置にある槍。思わず間抜けな声が出た。

    『何奴!』

     凛々しい声が頭の中に響く。そろそろと視線を葡萄から槍の手元へと動かす。槍を構えていたのは……ルージュラだった。
     わけがわからなかった。何でルージュラなんだ。何で槍を持ってるんだ。何で人間の言葉しゃべってるんだ。
     
     「ブドウ……ダメ! アンタ、トル。 ワタシ、サスネ!」 

     驚きと同時に、その片言が放つさらなる迫力で、動けなくなってしまった。
     突き刺すようなルージュラの視線。こちらに向けられた矛先といい明らかに敵意を示していた。とにかく今はこれ以上このルージュラを刺激するわけにはいかないと必死に次に出す言葉を模索したが、結局飛び出してきたのはありきたりな台詞だった。  

    「ご……ごめんなさい。 私、喉が渇いて……つい」

    「喉?」

     ルージュラが目をぐりぐりと動かす。しばらくの間私を疑うように睨めつけると、何が彼女のお眼鏡に適ったのか、付いてこいという仕草をしてルージュラが葡萄畑の中を歩き出した。
     恐る恐る私は彼女の後についていった。甘酸っぱい香りが鼻をくすぐる。葡萄畑の中は数え切れないほどの房が実り、つるが絡まり合って複雑な螺旋をいくつも描いていた。ルージュラはどんどん畑の奥へと進んでゆく。
     
     うだるような暑さで頭がぼうっとする。前を歩くルージュラの姿が霞む。これは現実なのか幻なのか、だんだん分からなくなってきた。このまま目が覚めて夢オチならどんなにいいか。しかし、そうはならず、やがてルージュラと私は赤い屋根の屋敷へと足を踏み入れた。

     屋敷の中は想像より広かった。正面しか見ていなかったからきっと本当の大きさに気付かなかったのだろう。部屋のすみには小さな家具や人形が、小ぢんまりと置かれてかわいげな雰囲気を出している。ふと、かすかに葡萄の匂いがした。奥の廊下から漂ってきているようだ。いや、葡萄の匂いと言うには少し違う。なんていうか、もっと深みがあって、嗅ぎ過ぎると酔っぱらってしまいそうな、すえた香りがした。この匂い、どっかで嗅いだ事があるような、ないような……首をひねる私にはおかまいなしに、ルージュラは廊下の奥へと進んでいく。

     ぺたぺた、ぱたぱた。廊下を叩く足音二つ。進むほどに、不思議な匂いは強くなる。なんだろう、正体が喉元まで出掛かっているのに……思い出せない。その事実にもやもやとしたものを感じる。頭を抱えて唸りたいほどだ。しかし、それをしたら、ルージュラがなにをするか分からないので、彼女に黙ってついていくしかない。
     マズイ。暑さに加えて、このおかしな香りのせいで、頭がボンヤリしてきているようだ。香りが強くなる。足がふらつく。しかし、その間もルージュラは行く。一体この廊下はどこまで続いているんだ。 ところが、もう気を失うかと思ったその時、ルージュラが突然立ち止まった。
     
     金の髪がふわりと舞い上がり、ルージュラの顔が私の瞳に映る。

    「アナタ、ココデ、マッテル。カッテナコト、シタラ、サス」 

     その言葉に思わず私の喉が鳴る。それが飲み物に対しての欲求からか、それとも、ルージュラの言葉に反応したからかは、頭がボンヤリとして分からなかった。
     とは言ったものの、此処で倒れたら間違い無く日射病にかかるだろうことは必定である。 ……更に、ふら付くだけでも正直不味い。下手にしゃがんだり頭抱えたりした瞬間に、早まった人型ポケモンに串刺しにされてもかなわない。最悪、目覚めさせる為にでもアレを食らった日には……。
     
     完全に萎縮しきった私を置き去りに、ルージュラは槍を構えたまま奥へと消えていった。あんなに槍が様になるポケモンも珍しいものだ。一体誰があんなもの持たせたんだろう、こんな時代に――そんなことを考えていた私はやっと気付いた。今ならあの槍ポケモンから逃げることができる。葡萄はもう諦める。色々謎が残るが、とにかくこの恐怖から抜け出すことを第一に考えるべきだ。

     そろりと足を踏み換え、体勢を入れ替える。恐る恐る背後――槍ポケモンが消えた先を振り返るが、彼女の気配は無い。チャンスだ! 
     静まり返った屋敷の中を、抜き足差し足、できるだけ息を殺しながら歩く。潜めた呼吸さえ、脈打つ心臓の鼓動さえ、響きそうで怖い。それでもなんとか、廊下を半分ほど戻ったときだった。
     
     何かが、いる。
     
     肌が粟立つ。背筋が凍る。膝が震える。その威圧感たるや先ほどのルージュラの比ではない。その”何か”が放つ怒気は間違いなく彼の聖域に無断でいる無粋な侵入者――私のことだ――に向けられている。
     一瞬、冷気が自分の両足を通り抜けた気がして、下を見た。なんてことだ。逃げようとした右足が凍っている。このうだるような暑さの日に、なんて量の氷だ。動けない。

    ――ダメだ、やられる! 近づく激しい怒気に私はパニックに陥った。

    「おきゃくはん、なにをしてはりますの?」 

    混乱状態である私の頭に響き渡る凛とした声。その声も氷のように冷気を帯びているのか、一種の高熱のような混乱状態が徐々に冷めてきた……ガタガタブルブル……ガタガタブルブル……しかし、混乱状態は冷めてきたものの、体が震えてきた。これは寒さか? いや、混乱状態が解けてきている今なら分かる、これは――恐怖だ。肩で息をしている、これは――恐怖だ。背中から冷や汗が止まらない、これは――恐怖だ。私の元へと次に舞って来たのは混乱状態ではなく、恐怖による思考停止であった。



    「お客はん? お・きゃ・く・はん! 一体どないしはりましたん?」 

     ああ、まただ。またあの声である。 今にも背後から一突きにされるかと覚悟している私の耳朶を、良く分からないイントネーションの言語が打ち付けて来る。『オキャクハンナニシテハルン』とは、果たして一体……  

    ……『お客さん』?






    【第一部・完】

    ―――――――――――――――――――――――――――

    タイムアウトにつき(時間の経過と共に、参加者の睡魔攻防戦が敗色濃厚となってきた為)、ここで一旦終了とさせていただきます。参加者の皆さん、閲覧者の皆さん、どうもお疲れ様でした!

    楽しかったので、第二部以降も続くといいなー、と呟いてみる。続きが気になった方、ぜひ創作してみませんか?チャットの飛び入り参加大歓迎!もちろん、ポケストでの参加も大歓迎です!

    【書いていいのよ】

    【描いていいのよ】

    【参加して欲しいのよ】


      [No.1328] まぁこんなにたくさんお話が 投稿者:moss   投稿日:2011/06/14(Tue) 23:03:47     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    わああ、こんなにたくさん返信ありがとうございます!!
    こんな半愚痴りノベ(ノベルといえるのか)に……ポッ。

    >あつあつおでんさん
    そうです。あの問題の答えはリーフィアです。伝わってよかったです。
    わざわざ答えまでありがとうございます!優等生ですね!

      よくできましたっっ

    >紀成さん
    いえいえ、お世話になっているだなんて。
    期末まであと三週間ですか、がんばってください!ちなみに私はあさってです(なにしてんねん
    体育が苦手なのは私も同意ですっ!
    なのに体育祭で100メートル走と障害物走を両方走るはめになったというね。くじ運の悪さ。
    お目通しありがとうございましたっっ

    >キトラさん
    ぴ、ピカチュウがテストに出ただと!……なんとウラヤマさんな……。
    ちなみに乗法公式等の問題は中三の数学です。でも、理科のテストにピカチュウはでないのです、残念。
    わざわざ返信ありがとうございっっ



    まあ、結果的に、テスト勉強なんてしてられない。そんなふうなことが伝わっていただけたら嬉しいなと。
    つーか、ただの現実逃避なんですけどね。

    これを書いたのはテスト勉強中ですw


      [No.1327] 【書いてみた】生物@中学生 投稿者:キトラ   投稿日:2011/06/14(Tue) 22:30:11     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     意味が解らん。テキストの前でそうつぶやいた。

     受験も考えはじめた中学2年のこの日。一見まじめなヒゲの理科の先生は、教室を歩きながらテスト範囲について話していた。そして目にとまった、それ。バカな男子が習字の時間に半紙にピカチュウを書いて黒板前に張ったそれ。何のヒントを得たのか。一体なにが先生の心を動かしたのか。

    「よし、じゃあテスト範囲にピカチュウも出る」

    ブーイングである。そもそもピカチュウというのはキャラクターであり、なぜ理科の問題に出るのか。この日ばかりはその男子を恨んだ。


    ピカチュウとはなんだ、何が出るんだ。明日はテストだというのに!!!!


    植物のページをひらいて、もう寝る!
    光合成とか意味わからん!!!



    ーーーーーーーーーーー
    初めまして。
    テストとポケモンときいて、思い出しました。
    これ実話です。本当にピカチュウがテストに出ました。
    なので少し出してみました。


      [No.1326] [書いてみた]ミドリが勉強するようです 投稿者:紀成   投稿日:2011/06/14(Tue) 21:45:35     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「期末試験三週間前、ね」
    ミドリは問題集を開いた。本当はこの時間帯は撮り溜めしておいたドラマやアニメを見る時間帯なのだが… 成績は悪い方ではない。むしろいい方だ。体育を除けば。
    「えーと、第一問、現代文。この時の主人公の心情とパートナーの思いを答えよ」
    ミドリはテキストに視線を移した。内容を大雑把に言うと、廃人トレーナーに負けた主人公の、育成とは何か、そもそもポケモンの育て方に正解はあるのか、という葛藤の話だった。読んでてイラッとくる。
    「『自分の育て方は間違っていたのかという気持ち』『トレーナーを心配する気持ち』」
    スーツを着た外交官が眼鏡をかけた女性刑事と話している。この刑事、すごくヘタレっぽい。そういやこの刑事役は確か出ないけど、もうすぐ映画になるんだよね…

    ついでに漢字をやって、ひとまず現代文は終了。次は数学。晴明はレベルが高い。一般公立高校で二年がやる問題を、一年でやる。
    「内分点の座標…『2点A(−1)、B(5)を結ぶ線分ABを2:1に内文する点P、および中点Mの座標xを求めなさい』」
    うん、分かる。テレビはとっくに次の作品に移っていた。眼鏡をかけた小学生が、炎上するツインタワービルの片方へ壊れた連絡橋をスケボーを使って飛び移るシーンだ。本人は無事渡れたけど、スケボーは地面に落ちて、真っ二つ。
    「毎回ハラハラさせられるわね」
    一人なのを良い事に、好き放題感想を言う。こういう時って気楽だ。

    さて、最後は…何これ。
    『カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ、イッシュの全ジムリーダーとバッジ、使用するポケモンのタイプ、そしてバッジの名称を答えなさい』
    面倒臭い… 資料集めれば分かることだし、とりあえず休憩!さ、ドラマの続き観よう!

    ミドリの短所。
    一度厄介な壁にぶち当たると、ちょっと腰が引けてしまう。

    ―――――――――――――――
    紀成です。ピクシブではお世話になっております。ちなみに数学は高二の数学基礎でやってる問題です。
    期末かあ…あと三週間だな!まずいな!
    では!


      [No.1325] もしかして 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/06/14(Tue) 19:12:48     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    問題に出てくるポケモンはリーフィアではないですか?草タイプで、身長は1メートル、体重は25.5キログラムです。

    試験勉強は毎日の復習が肝心。毎日1ページ分の問題をやれば、塾に行かなくても進学校に行かなくてもかなりいいとこまでいけますよ。勉強頑張ってください。


      [No.1324] VSテスト勉強 投稿者:moss   投稿日:2011/06/14(Tue) 18:42:11     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    「だるいだるいだるいだるいだりぃ、まじクソかったりぃ」
     ボキっと音を立てて芯が折れる。
    十二回目のその音に、俺はもうだめだと呟きシャーペンを投げた。
    芯が回って書きやすいと評判だったそのシャーペンは、カツンと音を立てて床に転がる。
     机に突っ伏してから早三時間。
     ことの始まりは三時間前に、珍しくテスト勉強をしようという気になり数学の問題集を開いたことだった。
    乗法公式の計算がズラァっと並ぶ。さあ貴様に解けるかな?はっはっはー。
     そんな声が聞こえた気がして、やってやろうじゃねぇかとガリガリガリガリ書き綴る。
     途中で因数分解やらそいつらのミックスバージョンやら、わらわらと俺の前に立ちはだかったが
    そんなもの自称数学スーパーマンの俺にはへでもない。オラオラァ、てめえらまとめて解いたらぁ。
     そんな調子で計算問題を解いていったのである。変人じゃねぇかとかそんなの聞こえない聞こえない。
     そう、ここまではよかったのだ。
     が。
    「……なんだ、これ?」
     計算問題が終わり、その次には必ずその問題の利用。
    つまりは文章問題が出てくるのが常識である。
    かくいう俺もそんなことはわかっていた。わかっていたさ、それくらい。
    どんな問題が出ようがこの自称数学スーパー(以下略)がけちょんけちょんにしたらぁ、とページをめくり……

    撃沈した。

    「なんじゃこりゃぁー!」
     今がミッドナイトであることを忘れ、大声で叫んでしまった。マズイと口を押さえるが親には何も言われなかった。運いいな、俺。
     じゃなくて。もう一度問題を見直す。
    そこには

    “問い13 このポケモンについて、空欄をうめなさい。
     このポケモンは□といい、□タイプのポケモンです。身長は□cm程度で体重は――”

    「もはや数学関係ねえじゃねぇかっつーの!てかルビサファまでしか経験ねぇし。誰だよコイツっ」
     長ったらしい妙な文章の隣には、黄緑色の猫みたいな生き物のイラストが、ご丁寧にフルカラーで描かれていた。耳や尻尾が草みたいになってて、黒くつぶらな瞳が愛らしい……。
    「わかるわけねぇっつーのぉー!」
     最後にそう叫んで、俺は机の上に突っ伏した。
     妙にリアルなポケモンの絵が笑った気がしなくもない。


    おまけ
     朝起きるとそこは机の上で、ちゃんと問題集も開きっぱなしでおいてあった。
     けど。
    「あれ?俺、問題集進んでなくね?」
     

      「何してくれてもかまいませんのよ」
    ―――――――――――――――――――
    はじめましての人はじめまして。こんにちは。mossという度初心者です。
    テスト期間で勉強したくないよーって時に愚痴る気持ちで書きました。
    初心者でチキンな上に、つたない文章ですが、
    初短編ということで生ぬるい目で見たいただけたら幸いです。
    お目汚し、失礼いたしました。
    てか本当にこんな問題が出たらいいのに……。
     


      [No.1323] ちゃんと書いてみた。 投稿者:渡邉健太   《URL》   投稿日:2011/06/13(Mon) 23:35:00     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     近所のバーレストランでナシゴレンを食べ、一番安いバーボンを飲んでいる。ジーンズの尻ポケットから取り出した癖の付いた文庫本を開く。
     ふいに「好きだ」と彼女にメールをしたくなった。けれどもそれはもう手遅れのように感じられた。

     土曜日の午後八時過ぎ。元より暗い店内は、節電を謳って照明を落としていたせいで、俺はカウンターに辿り着くまでに二度躓いた。他に客はテーブル席に二組のカップルと、三人のグループがいた。酒の勢いでボリュームの壊れた女が所帯について愚痴を言い、あとの二人がぼそぼそとそれをなだめている。ひとりは妻帯者で、ひとりは妊娠中だった。声の大きな女がそう言っていた。そしてカウンターに男がひとり座っていた。どうやら常連のようで、店の女に馴れなれしく絡んでいる。
     腰かけたカウンターの目の前にサーバーがあり、その女は何度も俺の前を行き来した。それは動物園で見た、檻の入り口と世界の果ての壁の間を行ったり来たりするマレー産のヒメグマを思い起こさせた。七分袖の黒いカットソーを着たメスのクマは、丁寧にビールを注ぎ、とても上手に泡の蓋をした。彼女はカウンターで見守っている飼育員から「よその店よりずっと旨い」と褒められていた。最近のクマは愛想笑いも上手い。
     奥の厨房から料理を受け取ったり、カクテルを作るときには、彼女はカウンターに背を向けるように立った。ゆったりとしたスカートを履いていたが、それでも腰の下には健康そうな花柄の丘陵がくっきりと盛り上がっていた。何度かそれを眺めたあと、残りの酒を煽って、文庫本をまた尻ポケットに突っ込んだ。笑顔の女から釣り銭を受け取る。それは飼育員に見せたものよりは、ずっと素朴で好感の持てる笑顔だった。

     店を出ると細かい雨が降っていた。手を差し出してもさほど感じなかったが、歩道は少しずつ濃いグレーへと変わっていった。そして部屋へ戻るほんの二、三分の間に世界は完全な灰色に染まり、俺は引き返せない場所に追いやられていた。繰り返しだ。薄暗いアパートの入り口に立つ俺は、木登り遊具の下で雨に濡れ細った小さな黒いクマのように見えたかもしれない。



     夜が更けると雨は強くなり、少し開けた窓からシュウウウ……と車の走る音が聞こえた。俺はあの音が好きだ。どこか知らない場所へと連れ去ってくれる、ありとあらゆるしがらみから俺を解き放ってくれる魔法の音のような気がするのだ。ライク・ア・トリップ。けれども鳥の鳴き声とともに夜が明けると、昨日と何も変わっていないことに少しうんざりした。
     期待は幻想であり、幻滅もまた空想だ。身勝手な思い込みに過ぎない。

     日曜日の朝、数えるほどしか客のいない喫茶店でトーストを囓りながら思った。いや、発見したといった方が正確かもしれない。
     俺はもっと徹底的に傷付くべきだった。そして徹底的に傷付けるべきだった。命をひとつかふたつ失うくらいに。公園の蟻などではなく、野良猫か、ペットのコラッタか、或いは友だちか。それはプラモデルのパーツを切り損ねて、カッターナイフで指先に一日で塞がる程度の傷を付けるのとはまるで違うことだ。
     俺はずっと守られてきた。そして自分の足で十分に速く走れるようになってからは逃げてきた。他人を傷付けてしまう予感に襲われたときには、浴槽に身を隠してひたすらそれが過ぎ去るのを待った。だから俺は本当の痛みを知らない。ああ手遅れなんだと、ただ呆然とそれを眺めるような無力感や、頭が痺れて何も考えられないような混乱。ぼたぼたと音を立てて個体のごとき赤黒い血をおとすような深い傷が、俺の人生には欠けていた。
     知らないで済むのならその方がいいという人もいる。それもひとつの知恵だろう。けれども俺には必要だったのだ。より強く立ち上がるための、大いなる喪失が。



     記憶というのは古新聞をぐしゃぐしゃに丸めたようなものだ。例えば「赤」と脳に入力があると、皺を辿って台風で落ちた青森のリンゴの記事を見つけ出す。

     俺が初めて煙草を吸ったのは十七になる前の夏のことだ。そのころ付き合っていた一級上の女が咥えていたキャスターを毟り取って吸い、盛大に咳き込んだ。
    「私ね、ずっと神秘体験をしたいと思ってたの。空から天使の羽が生えたみたいに、ふわあって、何かが私に舞い降りてくるの。こんな風に。」
     そう言って彼女は、三階の窓から赤点の答案用紙を投げ捨てた。それが神秘体験とどう関係があるのかは分からなかったが、彼女は何人かの男とセックスをして、そのうちの子どもができた相手と結婚をした。
     どうしてこんなことを思い出したのか。たぶん、村上春樹を読んでいるせいだ。

     読書ほどままならないものはない。どんなに必死に読もうとしても、三行と進まないうちに流れが途切れる。かと思えば、時間が過ぎるのを忘れて読み耽ることもある。
     この週末は後者だった。俺は浴槽の中で、バーレストランで、喫茶店で快調にページをめくっている。そしてその一九九二年に刷られた定価二八〇円の文庫本は、他を圧倒するナイジェル・マンセルのウィリアムズ・ルノーと、高校時代の恋人を思い出させた。
     そう、記憶は古新聞みたいなものだ。

     俺は冷めた珈琲を飲み干し、最後のキャスターに火を点けた。さあ、これで最後だ。俺は十分に失ってきたじゃないか。それを認められずにいるだけだ。認めろ、と既に三分の一ほどが灰になった紙巻きが言う。お前が言うんじゃ仕方ないな。もう十七年の付き合いか。どうだい、俺は上手く踊ってこられたかい? キャスターは少し考えるように黙り、そして答えないまま燃え尽きた。
     さよなら。いままでありがとう。
    __

    加筆する気ないって言ってたわりに、なんかちゃんと校正とか増補してしまった。


      [No.1322] な、なんですと! 投稿者:キトラ   投稿日:2011/06/13(Mon) 20:19:21     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >  その身を黄金に染めた一匹の九尾狐がマトマをかじりながら、夜空を見上げていた。
    >  全国でも比較的、寒いこの地方の夜には散らばった星と月がよく映えている。
    >  マトマをかじり、真白の吐息が空を舞っていく。
    やっぱりマトマかじってるんですね、ここがかなりツボでした


    > 長老は一応、女です。 
    な、なんだってー!!(AA略
    ちょ、長老、どうかチャットで怒って、もふらないでください



    > 「もふもふは正義じゃから問題なしじゃ!」と言い返されそうですが。(汗)
    もふもふは正義です。問題なしです。



    >  他にも長老が言っていた一組の夫婦とは?(ちなみに夫婦の予想はディアルガとパルキア、そして戦争を止めたのがアルセウスと予想)
    ふふふ、そんな大層な伝説ポケモンは私には動かせません・・・


    >  例の六匹のポケモンの内、残り四匹は何のポケモンか。
    >  また、後三人は一体誰なのか。(ギンガ団の中に一、二人いたりして……そして後の一人は中立的な感じ? と予想)
    ほら、27才に見えない方がいらっしゃるじゃないですか


    > 「うむ。待っておるぞ(キラーン)」 
    もふらないでください、お願いします(

    こちらこそ、長老の出演許可をいただき、ありがとうございました


      [No.1321] あっそびましょっ! 投稿者:巳佑   投稿日:2011/06/13(Mon) 14:04:55     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     雨がぽつぽつ降ってきて、少女が一人、現れました。
     黄色のレインコートを身につけて「ぴっぴかちゅー」と可愛い声を上げてます。

     
     雨がぽつぽつ降ってきて、少年が一人、現れました。
     花咲くビニール傘の上では、ビリリダマが楽しそうに踊ってます。

     
     雨がぽつぽつ降ってきて、ロコンとヒトカゲが現れました。
     黒い一本の傘の下、寄り添い、目を閉じ、雨音を楽しんでます。

     
     雨がぽつぽつ降ってきて、ニョロモとオタマロ達が現れました。
     色彩豊かな紫陽花畑で、合唱会。その声はどこまでも響いています。

     
     雨がぽつぽつ降ってきて、少年少女達が現れました。
     赤色のレインコートでオクタンのまね。
     青色のレインコートでマリルのまね。
     黒色のレインコートでカゲボウズのまね。
     
     
     他にも各々、レインコートの色にあったポケモンのまねっこで楽しんでます。
     
     
     そして、先程の黄色のレインコートを身につけた少女と合流して、皆で輪を描き、踊ります。

     
     あめあめふれふれいにー、れいにー。
     あめあめふれふれいにー、れいにー。
     もっとふれいにー、れいにー。


     カイオーガさん、あっそびましょっ!



    【書いてみました】

     雨と聞くと、なんだか暗いイメージがあるなぁ、という方も少なからずいるはず。
     なので、今回の物語は雨で楽しんじゃえ! という感じにしてみました。
     雰囲気が出ていたら、幸いです。(汗)

     ちなみに『れいにー』はもちろんレイニー(Rainy)のことです。一応、書いておきますね。
     
     ありがとうございました。 


    【何をしてもいいですよ♪】


      [No.1320] あまつぶ 投稿者:巳佑   投稿日:2011/06/13(Mon) 12:44:41     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     あまつぶ ひーとつ のみこんだ
     なんだか ちから が わいてくる

     あまつぶ ふーたつ のみこんだ
     できなかったこと が できるよう に なった き が する

     あまつぶ みーっつ のみこんだ
     なんだか からだ が きゅうくつ に なって きた

     あまつぶ よーっつ のみこんだ
     きゅう に じぶん の からだ が  ひかり だして


    「あ! コラ、ハッスー!! また勝手に『ふしぎなアメ』を食べたでしょ!!」


     あたらしい すがた で すいすいっと にげました

     だけど さびしくなって すいすいっと もどってきて おこられました


    【書いてみました】

     お題『雨』にて、ポンっと思いついたものを書いてみましたが……あめはあめでも、『雨』じゃなく『飴』というオチに。(笑)
     
     ちなみに、ハッスーはハスボー(最後はハスブレロに進化してますが)のことです。
     そして、最後の一文の『すいすいっと』は特性の『すいすい』から来てます。(笑)


     
     ありがとうございました。


    【何をしてもいいですよ♪】
       


      [No.1319] 喪失について 投稿者:渡邉健太   《URL》   投稿日:2011/06/13(Mon) 03:14:29     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     夜にはよく雨が降って、少し開けた窓からシュウウウ……と車の走る音が聞こえた。俺はあの音が好きだ。どこか知らない場所へ連れ去ってくれる、ありとあらゆるしがらみから俺を解き放ってくれる魔法の音のような気がするのだ。ライク・ア・トリップ。そして鳥の鳴き声とともに夜が明けると、昨日と何も変わっていないことに少しうんざりする。
     期待は幻想であり、幻滅もまた空想だ。身勝手な思い込みに過ぎない。

     日曜日の朝、数えるほどしか客のいない喫茶店でトーストを囓りながら思った。いや、気が付いたといった方が正確だ。
     俺はもっと徹底的に傷付くべきだった。そして徹底的に傷付けるべきだった。命をひとつかふたつ失う程度に。公園の蟻などではなく、野良猫か、ポッポか、或いは友だち。それはプラモデルのパーツを切り損ねて、カッターナイフで指先に一日で塞がるような傷を付けるのとはまるで違うことだ。
     俺はずっと守られてきた。そして自分の足で十分に速く走れるようになってからは逃げてきた。他人を傷付けないように上手くやり過ごしてきた。だから本当の痛みを知らない。ああ手遅れなんだと、ただ呆然とそれを眺めるような無力感や、頭が痺れて何も考えられないような混乱。ぼたぼたと音を立てて個体のごとき赤黒い血を落とすような深い傷が、俺の人生には欠けていた。
     知らないで済むのならその方がいいという人もいる。それもひとつの知恵かもしれない。けれども俺には必要だったのだ。より高く立ち上がるための、大いなる喪失が。

     記憶というのは、古新聞をぐしゃぐしゃに丸めたようなものだ。例えば「赤」と脳に入力があると、皺を辿って台風で落ちた青森のリンゴの記事を見つけ出す。
     俺が初めて煙草を吸ったのは十七になる前の夏のことだ。そのころ付き合っていた一級上の女が咥えていたキャスターを毟り取って、盛大に咳き込んだ。どうしてそんなことを思い出したのか。たぶん、村上春樹を読んでいるせいだ。

     読書ほどままならないものもない。どんなに必死に読もうとしても、三行と過ぎないうちに流れが途切れる。かと思えば、時間が過ぎるのを忘れて読み耽ることもある。
     この週末は後者だった。俺は浴槽の中で、バーレストランで、喫茶店で快調にページをめくっている。そしてその1992年に刷られた定価280円の文庫本は、他を圧倒するナイジェル・マンセルのウィリアムズ・ルノーと、高校時代の恋人を思い出させた。

     そう、記憶は古新聞みたいなものだ。

     最後のキャスターに火を点ける。さあ、これで最後だ。俺は十分に失ってきた。それを認められずにいるだけだ。認めろ、ともう三分の一ほどが灰になった紙巻きが言う。お前が言うんじゃ仕方ないな。もう十七年の付き合いか。どうだい、俺は上手く踊ってこられたかい? キャスターは少し考えるように黙り、答えないまま燃え尽きた。
     さよなら。いままでありがとう。
    __

    完徹で寝ぼけながら、喫茶店で朝食を取ったときの話。

    「喪失と再生」っていう純文学のテーマへのアプローチとして。
    自問自答するテキストの試作として。
    台詞や改行の少ないテキストの試作として。


      [No.1318] 君の長さは地下百キロ 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/06/13(Mon) 02:56:59     104clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     ダグトリオ。それはポケモン界の神秘。
     ボールに入れるとポケットに入っちゃう不思議な不思議ないきものの中でも群を抜いて不思議な不思議ないきもの。ポケモン界の不思議プリンス、キング・オブ・不思議。

    「プリンスとキングどっちですか」
     植木鉢に入れたダグトリオをためつすがめつそんな話をしていたら、話し相手の後輩ちゃんにつっこまれた。後輩ちゃんは聞き上手のいい子だが、いささかツッコミの細かすぎるきらいがある。
    「大体、この子たち♀じゃないすか」
    「まあそれは言葉の綾として置いといてくれたまえ」
     私はコホン、と咳払いをする。後輩ちゃんのツッコミタイムを終わらせ、こっちの話を聞いてくれという合図。よくできた後輩ちゃんはコーヒーを持ってきてくれた。

    「まず、ダグトリオの不思議その一。下半身だ」
    「永遠の謎ですね」
     後輩ちゃんは合いの手を入れ、コーヒーをすする。私はコーヒーをすするのもそこそこに議論をおっ始める。

    「ダグトリオの下半身がどうなっているか。今まで数多の科学者たちが挑み、敗れ去ってきた。ダグトリオの穴を掘る! その為の体の機構はどうなっているのか? シャベルのような腕が付いているのか、それとも鋭い爪で土をえぐるのか?」
    「ディグダとダグトリオは“きりさく”覚えますね」
    「そうだ。だが彼らの爪を見たものは誰もいない」
     私はここでひと息入れて、コーヒーにフレッシュを入れる。
    「ハイスピードカメラで映しても、爪らしきもの影も形も見えない。テッカニンも真っ青のスピードだ」
    「そりゃすごいですね」
    「よっぽど見られたくないのか」
    「風船でも持たせたらどうですか」
    「やってみた。だが失敗した。あいつらめ、地面ごと貼っつけて飛んでいきやがった」
     後輩ちゃんが角砂糖をコーヒーに入れる。
    「さらに不思議その二」
    「その二」
    「奴らは地下百キロまで掘り進む」

     ここで私はファイルケースからおもむろにポケモン図鑑の内容のコピーを取り出す。そのプリントを見た後輩ちゃんはふむふむと頷き、紙ペラを私の方に押し返した。
    「でも、ポケモン図鑑の内容なんて信用できませんよ。伝説のポケモンのページなんて聞き伝えが書いてあるだけだと言いますし」
    「しかしね君、ダグトリオは地下百キロを掘り進んでいるのではないかという観測結果がいくつか報告されているのだよ」
    「計算ミスじゃないすか」
     取り付く島のない後輩ちゃんに、手の平を上げてこちらの意見の傾聴を求める。はいはい、と若干不満そうに言いながらも、後輩ちゃんは聞く姿勢に戻ってくれた。
    「とにかくダグトリオは地下百キロを掘り進むと仮定しよう。その場合、温度が問題になるはずだ」
    「温度と圧力ですね」
    「頼むから温度だけにしてくれ。私には分からんから。
     さて、地下へ掘り進むと、大体百メートル深くなるにつれ三度上昇するのだそうだ。ということは地下百キロまで掘り進むと……」
    「三千度」
    「でもダグトリオの特性って“耐熱”じゃないんだよ」
    「マグカルゴの体温が一万度って言いますからね。そのぐらい耐えられないとだめなんですよ」
    「君はそういう時だけポケモン図鑑の記述を持ち出すのかね」
     後輩ちゃんは笑いつつコーヒーに角砂糖を追加する。私は話を続けた。
    「とにかく、三千度に耐えながら穴を掘るダグトリオが、“火炎放射”なり“熱湯”なりでコロリとやられてしまうのが解せん」
    「“熱湯”は水タイプの技ですけどね」
    「地下百キロに適応できるこいつらが地上に出てくる理由も不明だし、地下百キロを好んで掘り進む理由も謎だ」
    「それには同意しますが」
    「そこでだ。私はある仮説を立てた」
     私はティースプーンでカップの淵をチャリンと叩く。

    「ダグトリオは地下百キロを掘り進んでいるのではない。ダグトリオの体が地下百キロまで伸びているのだよ」

     は? という侮蔑の声が聞こえた。後輩ちゃんは机の上のダグトリオに憐憫の眼差しを向ける。
    「どうしよう。あんたのご主人いよいよおかしくなってきたよ」
    「君の顔にその台詞がキッチリ書いてあるから、いちいち言わんでよろしい。
     ダグトリオの体高七十センチは地上に出ている分だし、下半身が地下に百キロ伸びているとすれば、彼らが地下深くを掘り進みながら地上生活にも適応していることの理由付けになる。それに、風船を持った時地面ごと浮くことも、ハイスピードカメラに映らないようこっそり素早く相手を切り裂くことだってできるはずだ!」
    「先輩」
     興に乗ってきて、拳を振り上げコーヒーカップを振り回す私に、後輩ちゃんが水を差した。
    「なんだ」
     精一杯の仏頂面をしてみせる。
     後輩ちゃんはダグトリオを指差した。

    「こいつら、植木鉢に入ってますが」



     ポケットモンスター、それは不思議な不思議ないきもの。ボールに入れるとポケットに入っちゃう……
    「っていうか、地下百キロまで掘ったらマントルにつっこみますよね」
     その中でもダグトリオは群を抜いて不思議な不思議ないきものである。




    【何してもいいのよ】

    ダグトリオについて真剣に考えてみた。
    文中の地学関係の台詞まちがってたらごめんなさい。


      [No.1317] 御礼 投稿者:渡邉健太   《URL》   投稿日:2011/06/13(Mon) 02:55:09     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    コメントいただいてありがとうございます。

    >クロトカゲさん
    そうですね、影響を受けているのは純文学だと思います。
    でもたくさん読んでいる訳でもなくて、ほとんど村上春樹かトルストイくらいのもんです。
    ライトノベルっていうと、中学〜高校生のころに『ロードス島戦記』を読んだくらいで。
    まだラノベなんていう言葉が広まる前のことですが(笑)。

    そういう意味では、ラノベのお約束や記号を見つけることはできなくて申し訳ないですね。
    表現にはそういった作者と読者の共通体験みたいなものが大きく影響するので。
    (例えばキャッチーな詞なんかは、固有名詞が上手く使ってあったりします。)
    まあ、もともとがポケモンの二次創作なので、すでに共通体験に乗っかってはいますが。

    純文学にせよライトノベルにせよ、いいテキストかそうでないかは同じなので、
    その点は目を見開いて粗探ししています(笑)。
    散文でも韻文でも、口に出してみるとテンポの悪さが露骨に表れるので、
    特に助詞の選び方だとか、そういう細かい部分に注意がいきますね。
    なにぶん、歌人なものですから。
    たぶん俳句や和歌をやってる人が、いちばん助詞にうるさいと思います(笑)。

    「キミノワスレモノ」なんかは純文学とかラノベとか言う前に、文章はダメだと思います。
    でもまた別なんですが、神話だとか、古い宗教書の逸話集なんかに似てるなと思ったんですね。
    それらは意図してではなく、長い年月でテキストが損なわれてしまって言葉足らずになるのですが、
    この作品はそういった雰囲気が出ていて、また翻訳文学的で面白いなと思ったのです。

    私は仕事でイベントディレクターをしているので、いろんな表現家を実際に観ています。
    そうした経験から、ジャンルという垣根が限りなく低い読み手であると思います。

    箇条書きみたいな返信ですみません。
    これはいい文体じゃないね(笑)。

    なんかヨイショしてもらっちゃってすいません。
    励みにがんばります。

    >あつあつおでんさん
    投稿おつかれさまでした。

    なんというか、寄席の「イロモノ」だなと。
    「イロモノ」として出演する人は、それを自覚して演じているんですよね。
    文章がとても良質だったものだから、ああ、この人は分かってやってるんだなと。
    自分をコントロールしてこれを書いてるんだなと思ったんです。

    注目を集めるのに、飛び道具的なものって有効ですからね。
    バンドのコンテストで、なんかお客さん煽ってステージに上げちゃうとか、
    どかーんと他のバンドにできないステージングを見せると印象に残りますから。

    そしてそういうバンドは、決してグランプリを取ることもできないのですが(笑)。

    大人な作者が垣間見られて、とても面白かったです。
    作品を通して作者と対峙できるというのは、優れた作品の証拠ですから、
    これからもひとつ筋を通したスタイルで取り組んでください。

    あれ、自分が批評してもらってたはずなのにな(笑)。
    今後とも、よろしくお願いします。


      [No.1316] 【おまけ】 うっかりや 投稿者:イサリ   投稿日:2011/06/12(Sun) 22:50:19     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ニョロトノ】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     自分はうっかりやで忘れっぽいのだと、ずっと思っていた。


     例えば、ガスの元栓を閉め忘れたと思って急いで家に引き返したら、元栓はきっちり閉まっていたり。
     読み散らかして寝てしまったはずのポケモンジャーナルが翌朝見ると本棚に戻っていたり。
     ニャースにあげようと取っておいたポロックの最後の一個が、いつの間にか無くなっていたり。



     自分でやったことをすっかり忘れているんだろう、という程度に思っていたが、シオンタウンからタマムシシティに引っ越してからは考えが変わった。

     新しいアパートでは何も起こらない。



     つけっぱなしの教えテレビの電源が知らないうちに切れていることも、飲みかけのミックスオレが減っていることもなく、風呂から上がったらラジオから「ポケモンマーチ」が流れてた――なんてこともない。
     鍵を掛け忘れて引き返すと玄関の鍵は必ず開いている。



     何故なんだろうと考えてみて、もしかしたら前の家には何かいたのかもしれないな、という結論に達した。



     まあ、どのみち自分がうっかりやで忘れっぽいのには、変わりがないのだけれど。






    ―――――――――――――――――――――――――




    つ か れ て た ん じ ゃ な い か な

    ホラーなお話に募集がかかってたのでちょっと書いてみたものの、短い上にポケモン色が薄く、おまけにそんなに怖くない(笑)ので単独投稿は憚られたもの。
    淡々と語る主人公が一番不気味。


    【こちらも好きにしていいのよ】


      [No.1315] あめふらし 投稿者:イサリ   投稿日:2011/06/12(Sun) 22:23:01     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ニョロトノ】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     雨降りガエル 旅をする
     雨雲連れて 旅をする
     ひでりの田畑に 雨降らせ
     恵みの雨と 拝まれる



     雨降りガエル 旅をする
     雨雲連れて 旅をする
     燃える野原に 雨降らせ
     神の使いと 祀られる



     雨降りガエル 街へ行く
     ビルや道路に 雨降らす
     道行くご婦人 呼び止めて
     雨降りガエルに こう言った


    “雨降りガエル あちらへお行き
     洗濯物が 乾かないから”


     雨降りガエル 旅をする
     雨雲連れて 旅をする





    ―――――――――――――――――――――――――



    コンテストの反省を踏まえてお題と真正面から向き合おうとした結果、小説ですらなくなった(汗)  100文字の壁ェ……
    隠れ特性「あめふらし」のニョロトノさんを題材にしました。
    トリト丼を期待した人には申し訳ない(笑)


    お題:【雨】


    【好きにしていいのよ】


      [No.1314] 長老の呟き。 投稿者:巳佑   投稿日:2011/06/12(Sun) 21:59:55     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     その身を黄金に染めた一匹の九尾狐がマトマをかじりながら、夜空を見上げていた。
     全国でも比較的、寒いこの地方の夜には散らばった星と月がよく映えている。
     マトマをかじり、真白の吐息が空を舞っていく。

    「コウキとジュン、か……ふふふ。あやつら、今頃、どの辺りまで辿り着いておるかのう」

     今日、出逢った二人組の少年とその会話を思い出していく九尾の狐。
     何でも知っている自分の言葉に何回も驚いていた少年達の顔が浮かぶと、思わず、笑みが零れてしまう。
     それと、いつでも相談役に乗ると宣言したことに「仕事が増えそうじゃな」と呟いていたが、その顔は楽しそうな顔だった。
     そして、少年達の言葉も――。

    『キュウコンのじいちゃん!』

     九尾の狐の頭に何かが引っかかった。

    『ありがとう、キュウコンのじいちゃん!』
    『キュウコンのじいちゃん!』
    『じいちゃん!』

    「あれか、そうか、これが俗にいうボーイッシュってやつなのか? そうか、そうか、男っぽく見えたのか、そうなのか……」

     しかし、九尾の狐は一回、目を閉じて……それから緋色の湖を開けて――。 

    「わしは女じゃーーーーーー!!!!」

     九尾の狐が泣きながら何かを訴えかけるような鳴き声を一つ、月夜に吼えたのであった。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

     前置き:長老は一応、女です。 

    ★長老の件 

     灯夢さんに引き続き、コラボありがとうございます!
     長老がすごい活躍してますね!(ドキドキ)
     色々なことを知っているのは流石の一言に尽きます。(ドキドキ)
     そして、平和主義者と言いながら、今日もチャットにて、人間をもふる長老がそこにいる。(笑)
    「もふもふは正義じゃから問題なしじゃ!」と言い返されそうですが。(汗)


    ★物語の件

     人がポケモンに姿を変えることができる設定、そしてその背景にあるものに……ドキドキしました。
     他にも長老が言っていた一組の夫婦とは?(ちなみに夫婦の予想はディアルガとパルキア、そして戦争を止めたのがアルセウスと予想)
     例の六匹のポケモンの内、残り四匹は何のポケモンか。
     また、後三人は一体誰なのか。(ギンガ団の中に一、二人いたりして……そして後の一人は中立的な感じ? と予想)
     
     色々と伏線が張られていて、この先がとても気になります!(ドキドキ)
     きっとお忙しい中(『流星を追い掛けて』もありますし)……難しいと思いますが、出来れば……機会があれば、続きを! 連載を!(キラーン)
     そして、また長老を出してあげて下さい。(ペコリ)
    「うむ。待っておるぞ(キラーン)」 
     
     それでは、失礼しました。


    【ジュン君、いい走りしてる!】


      [No.1313] Re: 本題:批評 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/06/12(Sun) 07:20:40     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    おはようございます。先日はコンテストの批評ありがとうございます。

    批評についてですが、私に限って言えば「なんで俺の頭の中のこと知ってるのwww」といった感じでした。指摘された通り、私は今回のコンテストで「面白さと少しばかりの皮肉」を目指していました。内容自体は陳腐なものでしたから酷評を予想していたのですが、あら不思議。

    私「私の狙いが読み取られている……だと?」

    といった感じでびっくり仰天。こうも的確に指摘されると、私が何に影響を受けているかばれるのではないかと思ってしまいます。

    まあそういうわけで、批評には何ら問題ないと思います。これからも機会があればまた批評よろしくお願いします。


      [No.1312] Re: 本題:批評 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/06/12(Sun) 04:04:12     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    コンテストに作品を出しておらず、こちらの投稿も少ないの日陰投稿者ですが、批評について思ったことを書いてみます。


    批評を読んでいて感じるのは、純文学が好きなんだなぁということです。
    今まで投稿された作品もかなり純文学でした。「何度目かの森」は、審査の方はライトノベルとして読まれて評価されていたように感じます。当時は私も同様の読み方をして評価しました。純文学を意識してと言われて読んでいれば、また少し違ったと結果になるかもと思います。(ご自身による表現の解説は過去ログで消えてしまったので、記憶違いだったらすみません)

    そのような、嗜好による評価のズレは起こりうるのかなと思います。第2回コンテストの「キミノワスレモノ」の点数の差が顕著なのはそういう部分もあるのかと思います。それが悪いという意味ではありません。念のため。
    マサポケではライトノベルに近い文章や表現を求めたり目指さしていると感じる作品も多くあり、その中で、ライトノベル的記号やお決まりを、文学表現と照らし合わせてばっさり切っていた部分もわずかにあった気もします。(具体的な部分が見つからず、提示することができません申し訳ないです)

    逆に、文学的表現をメインに置いた作品の批評はかなり正確で強いのではないかと感じます。
    全体的には比喩や表現などの細かな点を指摘されていますし。信頼に値する、文章の読み込みに裏打ちされた批評だと感じました。細かい部分も掘り下げてくれる批評だと思います。


    また、「偉そうなことを」という心配をされているのかもしれませんが、全く問題ないと思いますよー。
    言うに足る作品の読み込みも、知識や技術もお持ちのように思えますし。あと、審査員はこれぐらい言い切っても気持ちいいと思います。



    私自身、昔「お前の文章批評のやり方は間違ってる」と面と向かって言われた経験があるので批評技術は未熟で尻込みするほどなのですが、渡邉健太さんの試みを応援する意味を込めて、わからない人間なりに思ったことを書かせていただきました。具体的な指摘をあげられず感じたことばかりですみません。


    私は渡邉さんの批評好きですしどんどんやって欲しいです。(コンテストに一度も応募していない身で恐縮ですが)現在のスタイルの批評を貫いていただきたいと思います。


      [No.1311] 本題:批評 投稿者:渡邉健太   《URL》   投稿日:2011/06/12(Sun) 02:21:57     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    昨日は酔っぱらっていたのもあって、なんかお目汚しをしまして。
    でも本当のお目汚しはこれからだから(笑)。

    文芸には二種類の文章があって、それは作品と評論。
    どんな文芸誌を見ても掲載作の評論や、書評なんかが載っている。
    文芸に限らず、絵画や音楽でもそうだ。

    なぜ作家は、わざわざ他人の作品に難癖付けるのか。

    作品が書けるだけでは片手落ちだからだ。
    自身がどんな作品を読み、影響を受け、その作風に至ったのか。
    そして同時代の作家たちの中でどういう立ち位置なのか、どういう影響力を持っているのか。
    その作家の評価をするのは他者だが、その材料として評論が作品とで両輪になる。

    古い画家の研究はどうやって為されているか。
    よく誰かに当てた「手紙」、「書簡」が発見されたというニュースを見る。
    それによってその画家がどういう意図を持って、その時期の作品に取り組んでいたのかが分かるのだ。
    批評をしない、論争をしない作家は、歴史に残らない。
    どんなに優れた作品が残っていても、その画家の名前は一向に広まらない。

    「新しい資料が見つかって、評価が見直される」というのはそういうことだ。
    (「なんでも鑑定団」なんかで耳にしたことがあるだろう。)

    そんな訳で、批評。
    作品と同じく、そこにはいい評論やよくない評論がある。

    ポケストの作品には評が付くルールだが、批評に評は付かない。
    そうすると審査員は自分の批評力を向上させるチャンスがない。
    それが残念だなと思ったものだから、ここで誰かが乗っかってくれたらと思う。

    渡邉健太による批評記事について、ご意見ご感想ご批評をいただきたいのです。
    「この審査員、偉そうなことばっか言いやがって!」と日ごろの鬱憤を晴らしていただきたい(笑)。

    自作/他作問わず、私の批評記事について良/不良、気が付いたことをコメントください。
    どうしても人目に触れる形でコメントをすることがはばかられる方は、メールでも構いません。
    (なるべく掲示板に残した方が、ご自身の批評力向上のためにもいいかとは思います。)

    よろしくお願いします。

    渡邉健太
    uuonderground@gmail.com


      [No.1310] 朗読会・・だとっ・・ 投稿者:音色   投稿日:2011/06/11(Sat) 10:36:52     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 落語で思い出したんだけど、ポケストの出品作品の朗読会とかやりたいねえ。
    > たぶんさ、口に出して読んで/聞いてしたらさ、もっと何を描写しなきゃいけないか分かるような気がするんだよねえ。

     あ、それすげーやりたいです。いいなぁ、朗読会。
     師匠の作品とか物凄いことになりそうだけどww。

    > それはともかく、落語いいじゃないですか。
    > 落語って台本はないものだけど、仮にそういう文体で書いてみても面白いと思います。
    > そうしたら話し言葉に「 」はなくなるだろうし、逆に仕草を( )で入れたりね。

     他にも戯曲書いてみたいなぁ。ポケモンで。
     実際に舞台の上で立ち回りとか書きこんでみたい(笑
     しかし書けるようになるにはまず最低限の知識が必要だからなぁ・・。がむばろう、俺。

    > 制作過程がどんなものであれ、人の目に触れるのは完成した作品だから。
    > 結果として「鏡嫌い」はよかったんじゃないかと思いますよ。

     うーん、それならいいかもしれませんけども。
     色々な方のコメントを見ると『確かにそうじゃん!』ってなるところもいっぱいあるし。
     コンテストの批評のありがたさが身にしみまする。

    > なんかここの掲示板で、初めてたくさんお喋りできて嬉しかったです。
    > ありがとうございます。

     いえいえー。ここは気楽な場所(だと信じている)ので。

    【これからも精進していきます!】


      [No.1309] 口に出して読む 投稿者:渡邉健太   《URL》   投稿日:2011/06/10(Fri) 22:46:23     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    落語で思い出したんだけど、ポケストの出品作品の朗読会とかやりたいねえ。
    たぶんさ、口に出して読んで/聞いてしたらさ、もっと何を描写しなきゃいけないか分かるような気がするんだよねえ。

    それはともかく、落語いいじゃないですか。
    落語って台本はないものだけど、仮にそういう文体で書いてみても面白いと思います。
    そうしたら話し言葉に「 」はなくなるだろうし、逆に仕草を( )で入れたりね。
    __

    制作過程がどんなものであれ、人の目に触れるのは完成した作品だから。
    結果として「鏡嫌い」はよかったんじゃないかと思いますよ。

    なんかここの掲示板で、初めてたくさんお喋りできて嬉しかったです。
    ありがとうございます。


      [No.1308] Re: お題:雨 投稿者:渡邉健太   《URL》   投稿日:2011/06/10(Fri) 22:43:33     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    なんちゅーか、バーレストランの描写少ないよね。
    お店の雰囲気が分からん。
    時間帯とか、他のお客さんの雰囲気とか、お店の薄暗さとか。
    (……と、自分で難癖付けてみる。)


      [No.1307] お題:雨 投稿者:渡邉健太   《URL》   投稿日:2011/06/10(Fri) 22:25:36     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     近所のバーレストランでナシゴレンを食べ、一番安いバーボンを飲んでいる。ジーンズの尻ポケットから取り出した癖のついた文庫本を開く。
     ふいに「好きだ」と彼女にメールをしたくなった。けれどもそれは手遅れのような気がした。

     腰かけたカウンターの目の前にサーバーがあり、店員の女は何度も俺の前を行き来した。そう、動物園で見たマレー産のヒメグマのように勤勉に。
     その七分袖の黒いカットソーを着たメスのクマは、丁寧にビールを注ぎ、とても上手に泡の蓋をした。彼女は数席離れたカウンターに腰かけた飼育員から「よその店よりずっと旨い」と褒められていた。最近のクマは愛想笑いも上手い。

     奥の厨房から料理を受け取ったり、カクテルを作るために、彼女はカウンターに背を向けるように立った。ゆったりとしたスカートを履いていたが、それでも腰の下には健康そうな花柄の丘陵が見て取れた。
     何度かそれを眺めたあと、残りの酒を煽って、文庫本をまた尻ポケットに突っ込んだ。笑顔の女から釣り銭を受け取る。飼育員に見せたものよりは、ずっと素朴な笑顔だった。

     店を出ると細かい雨が降り出したところだった。手を差し出してもさほど感じないが、歩道は少しずつ濃いグレーへと変わっていった。
     俺は携帯電話を開き、彼女にメールを送った。
    __

    一杯飲んで来たら、雨が降り出したので。
    帰ってきて見たら、お題が雨だったので。

    なんかタグ、よく分かんなかったんだけど(笑)。
    俺は特に加筆とかする気ないんで、書いたり描いたり批評したりどうぞ。


      [No.1306] 踏み間違えて 投稿者:紀成   投稿日:2011/06/10(Fri) 21:07:43     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    誰のためでもない、ただ自分が生きるために―

    僕のご主人は、ポケモントレーナーです。僕達ポケモンを使って、バトルをします。ポケモンには色々な種類があり、水、草、炎、電気、エスパー、ゴーストなど数え切れないくらい沢山の種類に分かれています。
    中には複数持つ物もいます。姿形は例外を除けば、全て違います。例外というのは、進化する物のことです。前の姿を少し写したような外見です。
    まあ、力や使う技の威力は前とは比べ物になりませんが。
    今では進化した僕ですが、最初は本当に弱くて、せっかくバトルに出してもらってもすぐに負けてしまい、ご主人に迷惑をかけていました。勝ち誇ったような顔の相手を見て、何も出来ない自分を情けなく思いました。
    でもご主人はそんな僕に向かって、『また次頑張ればいい』と言って頭を撫でてくれたのです。失望するどことか、次に期待してくれているご主人の言葉がとても嬉しかったのを覚えています。
    ご主人を喜ばせたい一心で、僕は修行に励みました。何回倒されても、再び立ち向かっていく。強くなるには粘り強さも必要でした。そしてそれ以上に必要なのが、力を貪欲に求めることでした。
    欲しいと思って修行するほど、必ず力がつくのです。気がついた時には僕は進化していました。おかげでご主人の手持ちのトップを任されるくらいに強いポケモンとして認められました。
    バトルでも負けることは無くなりました。

    僕は変わりました。周りのポケモン達も、とても強くなっていました。進化すると性格も微妙に変わるような気がしました。臆病だった奴が少しだけ自分を見せようとするようになっています。
    ですが、変わったのは僕達だけではありませんでした。

    ご主人も変わりました。年を少し取り、少年から青年になりました。成長は喜ばしいことです。現に、僕らも強くなって嬉しいと感じています。
    ですが変わるということは、嬉しいことだけではありません。
    変わった…というより、変わり果ててしまったと言った方がいいでしょう。最初の優しいご主人は何処へやら、今ではすっかり勝つことだけを求めるようになってしまったのです。
    一度、捕まえたばかりのハーデリアを試しにバトルさせ、瀕死状態にさせてしまったことがありました。バトルには勝ちましたが、その後ご主人はハーデリアを回復させた後、ボールから出して言いました。
    『お前みたいな弱い奴はいらない』
    そう言って、追い払ってしまったのです。その時のハーデリアの目は哀しみと憎しみに満ちていました。ポケモンは生き物です。使い捨てして良い物ではありません。周りの彼を知るトレーナーは口々にそう言いました。
    ですがご主人は、全く彼らの言葉に耳を貸そうとしませんでした。それもそのはずです。その時、ご主人はイッシュの8つのリーグバッジを手に入れ、あと少しでポケモンリーグに挑戦できるという所でした。
    自分より実力が低いトレーナーの言葉など、聞く気にもなりません。
    ゲートでバッジを見せ、最後の修行の場、チャンピオンロードへ入ってからもトレーナーが沢山修行していました。これからの辛い戦いを乗り越えていけるかどうかを確かめるため、彼らはご主人に勝負をしかけてきました。ですが彼はやはり強く、トレーナー達をどんどん倒していきます。
    その中で、僕はご主人と相手トレーナー達の違いを見つけました。単に弱い、強いの問題ではなく、もっと重要なことです。
    彼らは、僕達と戦って傷ついたポケモンを優しく労わるのです。薬を与えて回復するだけではなく、
    『戦ってくれてありがとう』
    『また一緒に頑張ろうね』
    そんな単純なようで、深い慈愛の気持ちが込められた言葉を紡ぎだすのです。
    その光景を見ながら、僕達とご主人は最後のトレーナーと手合わせしました。そのトレーナーは女性で、ご主人よりどう見ても年下でした。小柄で細くて、僕が技を使わなくても簡単に骨を折ってしまいそうな―
    そんな体つきをしていました。
    彼女はポケモンに指示を出す時も、言葉をかける時も、必ずご主人の目を見ているように、僕は感じました。ただ見ているのではなく、何か深い意味があって見ているように思いました。
    そして―

    最後のポケモンが倒されました。そこに立っていたのは、相手の女性トレーナーでした。僕らは負けたのです。
    何が何だか分からないような目の色をしたご主人に、彼女は言いました。
    『貴方の戦い方は、どうも荒々しい。そして目の色がおかしい。勝利だけを求める、貪欲な目です。戦ってくれている彼らが気の毒なくらいに。
    ポケモンは道具ではありません。仲間であり、友達です。助け合い、励まし合って生きていくのです。それが出来ない、考えを理解出来ない限りは貴方はチャンピオンには決してなることができないでしょう。
    ―たとえ、私を倒せても』

    ポケモンセンターに戻った、というより戻されたご主人は、僕達を回復した後街から連れ出しました。
    ただ付いて来いという素振りを見せる彼の目は、変にぎらぎら光っていました。口から零れる言葉は、小さくて何を言っているのかよく分かりません。
    しばらく何か言った後、不意にご主人が立ち止まりました。もちろん、僕らも立ち止まります。
    彼は息を荒くして言いました。

    『俺は間違っていないんだ。育て方も、能力値も全て計算した上でお前達を育ててきた。完璧だったはずだ!
    …せいだ。…全部お前らのせいだ!あんな小娘に見下されて、今までの努力を全て水の泡にされた!この役立たず共めが!』

    こんな汚い言葉を投げつけられたにも関わらず、その時の僕らは不思議なことに…本当に不思議なことに、何も感じませんでした。
    ご主人に対する怒り、哀しみ、憐れみ。それらが一つも浮かんでこないのです。
    僕は一歩踏み出しました。黄昏の光が腕の刃を照らし、あやしく光ります。様子が変だということに気付いたご主人が、後ずさりをはじめました。
    『な、何をするつもりだ!』
    僕を止める物はいません。皆、後ろで何も言わずに立っています。何を考えていたのかは分かりませんが、おそらく僕と同じことでしょう。
    さっきまで散々罵っていたくせに、自分の身が危険にさらされると途端に命乞いをする。人間とは、そういう生き物なのでしょう。
    そんなご主人に対する僕らの感情は、ただ一つ。

    嘲り、でした。


    『やめろ!やめてくれ!』
    ご主人、最後に言わせてください。
    貴方は道を間違えてしまった。細い今にも崩れそうな石橋を綱渡りしていた状態だった。それが、今の言葉という嵐によって根元から崩れてしまった。
    その嵐を引き起こしたのは、紛れも無い、貴方です。
    もしその言葉を吐き出さなければ。
    もし自分の考えを改めていれば。
    こんなことには、ならなかったんですよ。

    僕が死ぬわけじゃない。でも、確かにその時僕の頭に走馬灯にように浮かんでくる光景があった。
    強さより、ただ楽しさを求めていた頃の幼きご主人。そして、まだ弱くて頼りなかった僕。
    色々辛いこともあったけど…あの頃が一番楽しかったな。

    ああ、楽しかったなあ!あの頃は!貴方もそうですよね、ご主人!

    腕の刃が振り下ろされた。刃の外側には、何も映ってはいなかった。

    刃についた血を、僕は振り払いました。周りのポケモン達は、一部始終を見た後、思い思いの方向へ去っていきました。
    僕もただの肉の塊となった人間を少し見た後、その場を去りました。

    その事件が報道されているのを、ある都会に行ってからテレビで見ました。相当の実力者として有名だったのでかなり騒がれていましたが、別に僕には関係の無いことです。
    今日もこの世界は普通に回ります。誰が死のうが、誰が負けようが、誰の夢が壊されようが、社会全体に支障はありません。
    それから僕は、大都会の路上に住み着きました。そこに住む同じ族のポケモン達を束ね、今ではそこの頭となっています。
    そこの頭になると決まった日、僕はある掟を自分に定めました。誰かに命令するということは、必ず誰かは嫌がる気持ちを抱くものです。かつてのご主人がその対象だったように。
    ですが、僕は彼のように愚かではありません。

    『決して、誰も信じるな』

    その掟を胸に、僕は今日も薄暗い路地裏から、全てを意味なく照らすネオンを見つめているのです。


    ―――――――――――
    ダークな話しが書きたいと思ったらこうなった。チャットの産物。
    [何をしてもいいのよ]


      [No.1305] 私をおいて行かないで 投稿者:キトラ   投稿日:2011/06/10(Fri) 20:01:40     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     もう要らないよってそんな

    2002年11月21日に貴方が速攻で帰って来てから出会った仲じゃないですか。貴方はそこで私に会った仲じゃないですか。
    一体なにが不満だというのですか?
    貴方は私に気に入った名前をつけて、ミズゴロウを手に入れて、それからずっと貴方とホウエン地方をまわってポケモンリーグチャンピオンにだってなった。
    バトルタワーだって挑戦しました。みてください、まだこの子たち50戦勝ち抜いたリボンを大切につけてるんですよ?
    それから貴方がホウエン地方の話を書きたいというから私だってがんばったじゃないですか。すごいハードだったの覚えてるんですよ、今でも。
    そのために一日に何匹も捕獲して、腕が疲れても貴方のためだと思ってがんばったのに。
    そして貴方が友達と対戦したいっていうから、私は一日のうちずっと自転車にのって走り回ってたくさんのタマゴを孵したじゃないですか。
    要らないものは全部逃がしましたし、今でも逃がしたばかりのウパーがロゼリアの餌食になった光景は覚えてます。
    それでも貴方の為に我慢しました。対戦で負けてやつあたりされて、私のポケナビがひび割れたのは今でもとってあります。
    私のファンが増えていくのを貴方はあんなに喜んでいたのに。
    コンテストがやりたいというから、私はベストなポケモンをボックスからずっと眺めて選びました。
    ほら、このフシギソウ覚えてますか?うつくしさコンテストで友達にも勝ちましたよね?

    なぜですか、シンオウ地方に行くからなのでしょうか。
    シンオウも行かないのですか?ああ、最新のモデルがないからなのですね。
    ではなぜ私など要らないというのですか。貴方のためにこんなに尽くした私を。
    尽くし方が足りないというのでしょうか。サーナイトのように命をなげうってでも貴方に尽くさねばいけなかったのでしょうか。
    知ってますか、最近、私のまわりの時間は止まりました。木の実を植えても芽が出ません。
    一時期、そのような時は近くの詳しい人に聞いて原因を探って色違いのジグザグマを連れてきたというのに。
    その前はジラーチを手に入れる為にお金だって出した。
    なぜですか、なぜそこまで心変わりしてしまったのですか?要らないなんて言わないでください。私が生まれてこのかた、ずっと貴方しかいないのに
    ずっと貴方の身代わりだったのに。


     電源が落とされて、意識はなくなった。ロムを抜くと、何の躊躇もせずにゴミ箱へ放り投げた。ルビーをイメージした赤いそれは、他のゴミと一緒に砕かれ、二度と冒険することはなかった。


    ーーーーーーーーーーーーー
    ルビーを最初からやり直してから思いついたネタ。
    発売日に買った主人公は今でも健在ですが、時間が止まってしまいました。
    木の実栽培が趣味だったので、それが出来なくて少し寂しいですが、シンオウで栽培することにしました。

    【なにしてもいいのよ】


      [No.1304] 後妻打ち研究 ―戦国時代の女とポケモン― 投稿者:レイニー   投稿日:2011/06/10(Fri) 00:59:42     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ポケモンがバトルに使われるようになったのは、戦国時代に端を発するとする説が有力だ。この頃からポケモンが畏れ敬われる存在ではなく、共に戦う近しい存在として扱われるようになった。もちろん、この時代に戦場で争いに身を投じたのは男であり、雄ポケモンであった。しかし、あまり知られてはいないが、女のポケモンと雌ポケモンたちも、彼女らだけの戦いを繰り広げていたのである。
     この時代、後妻打ちという風習があった。これは、前妻が予告した上で後妻の元を襲撃し、家財道具を破壊するというものだ。
     この風習には様々な不文律があった。まず、後妻打ちが行われる条件は、離婚してから1ヶ月以内に夫が再婚した場合に限られる。そして、前妻は予め後妻側に襲撃する日時を連絡しなければならない。
     後妻打ちが行われることになると、前妻側後妻側とも仲間集めに励むこととなる。これにも不文律があり、参加者は人間もポケモンも女のみ(ただし性別不明のポケモンを除く)とされていた。また、人間は刀を使ってはならなかったり、使用されるポケモンもレベルや大きさが決められていたりと、様々な決まりがあったとの見解がされている。流石にイワークのような巨大なポケモンを使っては、必要以上の破壊を起こしてしまう。慣習の中で適度な攻撃を行うこと、必要以上に相手を傷つけないというルールが生まれていたのである。ただし、今のようにポケモンのレベルを正確に測定する方法がなかったため、その基準は、ポケモンの様子を見てこのくらいだろうと慣習で決められていたようだ。
     決戦の日になると、前妻の軍勢は後妻の元へ押し掛ける。ところが、後妻側も容易に侵入を許すことはなく、ディグダやナックラーの落とし穴、スボミーの草結びなど、あらゆる手を使い侵入を拒む。前妻側はこのトラップを突破し、家へと突撃していく。この後妻打ちで使われた罠が現在地下通路用に市販されているトラップの元だと言う説もあるが、裏付けが乏しく決定力に欠けており、一部の学者が強引に主張しているだけだという見解が強い。
     前妻側は家への侵入が成功すると、家財道具を壊す。ただし家の中にもイトマルの蜘蛛の巣が仕掛けられていたり、家財道具が鏡と見せかけたドーミラー、さらには襲撃相手の後妻が、メタモンによるダミーだったという例もある。
     しかし、先妻側ももちろん後妻側の罠に易々とはまるものではない。ケーシィのテレポートで直接相手の元へ移動したり、ハネッコの痺れ粉で待ちかまえる相手を麻痺させたりと、様々な手段を使っている。特にアサナンはエスパー能力による罠探知、さらには攻撃とそのバリエーションのため重宝されていたという。中には、先ほどメタモンによるダミーの話をしたが、前妻後妻側共に相手がメタモンだったという珍例もあるようだ。
     こうして、戦いを繰り広げる女たちだったが、その裏には男たちに抑圧されてきた鬱憤を彼女らなりの方法で晴らすといった意図もあったようだ。慣習で必要以上の破壊を行わないようにしていたのもそのためだろう。
     なお、文献から統計を取ってみると、後妻打ちに最も使用されていたポケモンは、カゲボウズのようだ。女の恨みや妬み、さらには抑圧からの解放を求めているように、後妻打ちは負の感情を元に行われる物である。そのため、負の感情を求めるカゲボウズと、戦いの手が欲しい女たちの利害が一致して、カゲボウズが頻繁に後妻打ちに参加していたのだろう。
     このように行われてきた後妻打ちだったが、天下統一がなされ男による支配が完全になると、この風習は廃れていった。これ以降女がポケモンと戦いを共に行うのは、記録上は女性の権利が認められた戦後である。女性とポケモンバトルの歴史は近代からとされているが、現在のポケモンバトルとはまた違う形で、女性とポケモンが共に戦った歴史があるということを見ることは、女性史を見る中で重要なことであろう。


    --

    何気なく見ていた歴史物のテレビ番組で、「後妻打ち」の特集をやっていて、
    後妻打ちは女が溜めこんでいる恨みや妬みを晴らすために行うとかどうとか→カゲボウズ妄想→勢いだけで書いた。
    ぶっちゃけカゲボウズ云々の段落が書きたくて書いた(爆)
    レポート形式にもかかわらずひたすら勢いで書いたものなので、きっといろいろおかしいですが妄想の産物ということで大目に見てください(汗)


    【どうしてもいいのよ】
    【筆者は歴史が苦手なのよ】


      [No.1303] 投稿者:音色   投稿日:2011/06/09(Thu) 23:36:25     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     あたしとあいつは仲良く洞窟で雨宿りをする羽目になった。

    「ったく・・ついてねぇな」
    「そうだねぇ」
     せっかくの決闘日和だと思った空は、あれよあれよという間に真黒になり、降り頻る雨は雷鳴を呼んで、とてもじゃないけど続行は不可能だった。
     たまには場所を変えて、なんて提案をしなきゃ、すぐにでもお互いの村に帰れるいつもの場所からこんな遠くまで来なかったのに。
    「なんだよ、さっきまであんなに晴れたのにさ」
    「お前の日頃の行いでも悪いんじゃないのか?」
     からかうあいつがあたしを小突く。言ったなぁ、あんたこそどうなのよ。小突き返す。
     広くない洞窟。正直に言えば、ここで決闘の続きをやろうかな、とか少し考えた。
     でもここは明らかにあたしが不利だ。広けた場所であればあたしは速さを活かせてあいつを掻き回すことができるけど、こんな場所だと伸縮自在なあいつに敵わない。
     何より、お互いをこんな簡単に小突きあえるほど狭い場所、二匹で暴れ回ってごらんよ。きっとあっという間にぶち壊れちまう。
     雨が降るのがもう少し遅ければ、暴れ足りない体はまだ火照っている。
    「っくしゅ」
     となりで間の抜けたくしゃみ。
    「なんだよ、冷えたのか?」
    「うるせぇな」
     お前と違って毛皮なんて着てないんだよ。蛇だもんなぁ、そのまま冬眠するんじゃないよ?
     他愛もない会話。
     そいつを邪魔するのがやってきた。
     
     雨宿り代わりに飛び込んだ洞窟は、どうも先にお客がいたらしく、向けていた背に迫る殺気。
     ゴルバットの歯が喰いこむ前に同時にあいつとあたしは振り返った。

     普段ならもっと早くに気がつくはずなのに、どうしてあんな時に限ってあたしの勘は鈍ったのか。
     わからない。
     多分、あいつとの会話に気を取られ過ぎていたから、かもしれない。


     雨が上がる頃には、洞窟には、ちょっとした蝙蝠の山ができてた。
    「良い運動にはなったな」
    「まぁね」
     結局のところ、後から後からわらわらやってくるこいつらをあたしとあいつはぶちのめしてしまった。
     暴れ足りなくて不満があったあたしたちに勝負を挑む方が悪い。

    「ところで」
    「なに」
    「雨あがったぞ」
    「そうだね」

     顔を見合わせる。

    「続きと行くか?」
    「当たり前でしょ」

     これからが絶好の、決闘日和だとばかりにお日さまがのぞいていた。


    ―――――――――――――――――――――――――――――
    余談  いつだったか洞窟で雨宿りする二匹が書きたいとか言ったような記憶があるので。
    この二匹を覚えておられるお方がいるんだろうか。


    【なにしても良いよ】
    【何気ない感じで良いよね?】
    【御題:雨】


      [No.1302] 【再君臨】嵐の暴君 投稿者:音色   投稿日:2011/06/09(Thu) 22:55:05     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     お伴に嵐を引っ提げて、王者はその場に現れた。
     ちょうど僕は3人くらいのチンピラに囲まれて、蹴るなり殴るなりのサンドバック状態で。
     あたりが真っ暗になり急に雨が降り出すのと同時に、稲妻と一緒に颯爽とやってきた。
     鉄拳が飛んだのは三度きり。たったそれだけで僕をのしていた奴をやっつけた。
     ありがとうとお礼を言えば、僕に向かって鉄拳が飛んできた。
     

     
     そいつは自分は王者だと言った。
     名前を聞いたら、あまりのも長ったらしく偉そうでおまけに偽名くさかった。最初の方がアレクサンドラだったかアレクサンダーだったかなんだったか。
     気軽に陛下と呼ぶがよい。そんなことを言っていたけれど、アホらしい。とりあえずアレックと呼ぶことにした。
     一体どこの王様だ。
     全てだと答えが返ってきた。この世に存在する国は俺の国、俺の土地、そして俺の愛すべき愚民どもだ。
     ・・僕は見られないようにこっそりと、うんと手首を使って頭のところでくるくるぱーをしてやった。



     一応、助けられた恩もあるしと、村に案内するんじゃなかったと後悔した。
     愚かなる人民どもよ!咆哮に近い声が轟く。誰もが一斉にこちらを見た。僕はどこかに隠れたくなった。
     この村は古より俺様こと王者の統治下に置かれているものであるものである。よって人民どもよ、何か問題事等があれば遠慮なく俺様に異議申し立てをするがよい。快刀乱麻で解決してやろうぞ。
     今すぐしたいよ。この精神異常者を何とかしてくれって。



     成り行きなのかアレックは当たり前のように僕の家にやってきた。この自称大王はえらく僕を気に入ったらしく、この村の臣下一号だとほくほくしている。
     王者をもてなす料理はまだか。茶菓子の一つは出さないか。飛んでくる注文に腹を立てる。あんたは僕のなんなんだ。
     決まっているだろう。支配者である。呆れて何をする気にもなれなかった。



     とりあえず嵐が酷いからとその日は泊めはしたけれど、明日になったら出てってもらおう。
     しかしアレックは日の出とともに目を覚ましていたらしく、僕が起きたら何処にも姿が見えなかった。
     厄介払いができたと喜んだのは午前中まで。午後に村へ出かけたら王様は騒動しか起こしていなかった。
     店先で荷物をひっくり返し、子供を泣かせてしまうし、何故だか分からないけど僕があっちこっちで頭を下げる始末。
     精神だけへとへとになりながらなんとかこいつを家へ持って帰り、頼むから村から出て行ってくれと懇願してみる。
     王様はすこぶる機嫌が悪い。何故愚民どもは王者をないがしろにするのだ!?その怒りに付き合って僕は一睡もできず疲れもたまって倒れてしまう。



     目を覚ましたら寝床の中だった。額には冷たい布切れがかけられている。よく絞られていて気持ちが良い。
     あの変人は一体どうした?頭によぎった問題に対して答えはドアを開けて入ってきた。
     一昨日の雨に打たれながらボコられた時のダメージと昨日かけずり回った疲れだろうと、なにやらおいしそうな香りのする皿を持ってそいつは現れた。
     おそるおそる一口食べてのどに詰まった。う、うまい。めちゃくちゃうまい。空腹も手伝って料理をむさぼる。
     あんた本当は料理人じゃないの?
     王者たる者この程度のことができなくてなんとする。当たり前だとアレックは言った。
     



     僕がすっかり回復することには、村にすっかり王様は馴染んでいた。ただし、なんでもできる変わり者として。
     子供の薬をつくってくれた、屋根の修理をしてくれた、何をするのも失敗するのは最初の一回だけで、あとはすべてを上手くやった。
     どうしてそんなにうまくやれるんだ?
     答えはいつも同じだった。
     王者たるものこの程度のことができなくてなんとする。
     アレックにとっては全てができて当たり前のことだった。



     僕をぼこぼこにしたチンピラは、この辺に拠点を置く盗賊団の一味で、一カ月に一回この村を襲いに来る。
     その日が近づいてくるとなんとなくみんなそわそわしだして、王様はもちろん感づいた。
     どうも愚民どもの様子がおかしい。とうとう僕は問い詰められて白状した。
     しばらく考えて暴君は言った。
     そいつらは一体どこにいる?



     たった一人でそこに乗り込む気だとすぐに分かった。それはやめてくれと僕は頼んだ。いくらあんたでも無理だ。
     アレックは頑固だった。俺様の愚民を痛みつける奴は許さんと業を煮やしていた、
     今までだって対策を打たなかった訳じゃない。でも、あいつらの方がレベルも高いし場数を踏んでいて、何より烏合の衆のこちらなんかより抜群にチームワークが取れていた。
     それを一人で?絶対無理だ。どんなに説得してもダメだった。
     王者に不可能など無い。意気揚々とアレックは出て行った。



     嵐が近づいていた。
     三日たってもアレックは帰ってこない。
     僕は殴られた時の言葉を思い出した。抗う術を持っていながらそれを行使しないものは全ての命に対して無礼者である。
     村はますます静まりかえっていく。
     耐えられなくて僕は王様を迎えに行くことにした。



     壊滅的にやられていた。王様ではなく盗賊団が。
     降り出した雨は次第に強く、遠くで雷鳴が聞こえてきた。
     ピクリともしないそいつらの横を走りぬけて、奥へ奥へとかけていく。僕はどの辺で見つかったっけと考えながら。
     一番奥にはボスと思われるドサイドンがひっくり返っていた。明らかにこいつより華奢なアレックはどうやったんだろうか。
     他に誰の影も見えないので途方に暮れていたら、ほんの小さな泣き声が聞こえてきた。脇の方にちいさな抜け道がある。
     そちらを通り抜けると、プラスルとマイナンが泣いていた。そしてそばには巨石の下敷きになっている・・王様。
     こちらのお姫さま方を助けたらこうなった。さらりとアレックはそう言って、くれぐれも失礼の無いように送り届けろとのご命令。
     あんたはどうするんだ。無論、帰る。にやりと暴君の口元から言葉が漏れる。
     王者に不可能はない。
     



     雨風はますますひどくなっていく。村に帰ると二匹をひとまず僕の家に連れて帰った。
     なんでも、旅の途中で盗賊団に捕まり、身ぐるみ剥がされているところをアレックが発見したらしい。
     その時の王様の格好よさについて3時間以上語ってくれそうな勢いだったが、割愛してもらった。緩んでいた地盤の下敷きになった王様が気にかかった。




     アブソルが吠える。警戒せよ、今宵の嵐はそう簡単には過ぎ去りはしないと。
     彼らの警告通りだった。
     雪崩れた土砂は道を閉じた。




     過ぎた嵐の後には自然に弄ばれた命が残った。みんな、傷ついたものを助けあう。
     僕は盗賊たちの話をした。彼らも酷い状態であると。
     王様ならどうするだろ。奴等でさえも俺の愚民だと言いきるだろうか。
     そんな疑問にはいつだって考える前に答えが来てしまう。お姫様達が騒ぎ出した。
     凱旋だ、王者の。




     誰に対しても公明正大に天上天下唯我独尊を説いて回るそいつは、超暴力主義で、喧嘩作法万歳で、本名不明で住所不定で、職業自称大王という。
     それでもそのカリスマ性は本物で、頭の王冠も本物の銀細工で、あっという間に盗賊たちをまとめ上げ道に復旧作業に当てておまけに村に居場所まで作った。
     それでも時に悪の道に走りそうになる奴を鉄拳制裁で強制的に方向修正させていた。




     おいお前、と僕は呼びつけられた。王者は次なる愚民どもの元へ向かう事にする。なのでこの村はお前に任せる。
     さらりと言われて困惑する。アレックはここの王者じゃないの?
     馬鹿を言うな、馬鹿を見るような目で見られる。俺様はすべての土地の全ての村の町に住まうすべての愚民どもを統治する、それが王者。一つのところを贔屓ばかりにするわけにもいかん。
     一人でそれをするつもりなのか?
     あの時と同じように口元が笑う。王者に、不可能はない。




     王様が去る前にまた嵐がやってきた。お姫様達もついていくと喚いていたが、王様は丁寧に宥め賺していた。
     そして嵐ともに去って行った。



     嵐のような気性の名暴君は、今日も何処かで鉄拳を振るっているのだろう。

     おまけ   お姫様達もアレックが去るとあと追うようにいつの間にかいなくなっていた。


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談 御題【雨】って丁度いいのあるじゃん、と使いまわす。雨というより嵐だけど(爆
    こいつはなんというか、久々に思いつきで突っ走ったんだよね

    【こんなのが書けるあの頃に戻りたい】


      [No.1301] 【再投稿】執行人 投稿者:音色   投稿日:2011/06/09(Thu) 22:52:53     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     がじゃりと少しだけ派手な音がするように噛み砕く。しばらく口の中でそれを転がしてみるが、別に味に変化はない。このまま飲み込むには少し大きすぎるので、もう少しだけ口を動かてみる。
     小さくなったそれを飲み込み終えると、手の中に残っていたもう半分の塊を口に投げ込む。
     やっぱり、面倒くさがらずにきちんと研磨してから食えばよかったと後悔するころには、口の中は空っぽになっていた。

     
     暗闇の中で光る両目が近づいてきた。
     軽い足音がして、同僚がやってくる。
    「よぉ」
     小さく声をかけてきて、そいつは俺の隣に腰かけた。返事を返す前にそいつが出したのは、労いの言葉だった。
    「さっきはお疲れー」
    「あぁ」
    「しぶとかったんだって?根性あるよなー」
     出来れば、根性も体力もない奴がいいけど。
     腰に下げた袋に手を突っ込んで、握り拳程度の原石を引っ張りだす。爪を立てながら少しずつ削っていけば、やがて綺麗な水色が浮かび上がってきた。
    「ヨノワールが言ってたんだけどよ」
     削る音が止まる。
    「何を?」
    「あいつら、また過去に飛ぶ気らしいぜ」
     そのセリフは何度も聞いた、と返すべきなのか、それともため息をついて見せるべきなのか。
     無言を押し通すと、「あいつら馬鹿だよなー」と同僚はつぶやく。
    「過去を変えたら、未来は消える。そしたら俺たちも消える、あいつらも消える。こんな簡単なことがなんで分からないんだろうな」
    「分かっちゃいるだろうさ」
     不意に口から出た本音に、ちらりと疑心の目を向けられる。
     取り繕うように「あいつらは自分たちが消えても良いと思ってやってんだろ」
    「なんで?」
     ううんと唸って見せて、あいつらが死ぬ寸前まで必死に叫んでいた言葉を復唱する。
    「こんな暗黒の未来じゃなくて、本来の時間が流れる未来にする。そのためにはこの未来に繋がる過去を変える。本来のあるべき姿に戻すために、自分たちの命は惜しくない・・ってことだろ」
     けど、その理屈は、おかしい。
     ならば、この世界になってしまって、生まれ出た自分たちは、過去のどこかでこの世界に繋がる要因を取り除かなかったばっかりに、消えてしまう運命にあると言うのか?
     死にたくなど、無い。消えたくなど、さらにない。
     だから、ヨノワール・・メジストは神の意志の代行者を名乗った。


    「お前たちが消える必要はない。全ては過去の責任だ。我々が存在を歴史から消されてしまう事は阻止せねばならない!」


     綺麗に削り終わった宝玉は、暗闇の世には無い色を浮かびあがらせた。止まってしまった流水でさえ、これほど澄んだ蒼色はしていない。
    「そりゃ、あいつらが叫んでいることだって分からないわけじゃないんだ」
    「?」
     同僚が俺の言葉に疑問符を返す。
    「あいつらが思っていることは、少なからず、俺たちだって心の中で考えていることだからさ」
     それでも、死への恐怖が大きいものは、みな、ヨノワールの言葉に魅かれていった。
     こうして、この暗黒の世において、命は二つの勢力に分かれた。
     
     まぁ、なんだな。
    「過去を変えようとしているあいつらにとって、メジストや、ましてや俺達なんて、飛んでもない“悪”、なんだろうな」
     締めくくって、同僚は立ち上がる。食べ損ねた宝玉を袋に戻しながら同意する。
     確かにその通りなんだろう。
     

     死刑執行人、それが俺たちの肩書だ。


     この暗闇の世界で、幸か不幸か、ヤミラミという種族の俺は、最初は大して不便を感じなかった。
     喰らうものはそこらの鉱石で十分だったし、もともと日光なるものが苦手な種族らしい。もっとも、生まれてこのかた、そんなモノを拝んだ記憶はないのだが。
     だから、それ以外の種族がどんなふうに苦しんだかなんて、知りもしなかったし、この世界が異常と叫び続けるあいつらを冷めた目で見ていただけだった。
     当然のように、真っ先にメジストについていった。
     そして、この役職を与えられた。
     
     
     過去に飛ぼうとするあいつらを、神は察知し、ヨノワールが指示を出し、俺たちが捕える。
     そして、殺す。
     生かしておいても、何の意味もないから。
     両手の爪は、それはそれは鋭く相手の肉を抉り、少しでも長く苦痛が続くように嬲り殺す。
     あるポケモンは死に際に皮肉そうにこう言った。
    「死にたくないと願うお前たちは、今日も同じ願いを持つ者を殺しにかかるのか」
     俺はそれにこう言った。
    「過去を変えてこの“今”を消そうとするお前らが、命を捨てる気ではないと言うのか」
     止めを刺した。
     そいつは何も言わずに言切れた。


     特に神が敏感だったのは、時を超える力を持つとされるポケモンへの弾圧と排除だった。
     セレビィ。全てを殺害にかかるよう命令が下された。
     はじめて見た時、あれは本当にポケモンなのかと目を疑った。暗緑色しかない森に、生きた宝石が飛びまわる。
     淡い緑色のそいつらは、とてつもなくすばしこかった。逃げまどいながら奴等は歌う。
    「どうして色を取り戻さない。私の体と同じ色の、森や大地をみたくはないのかしら」
     そんな奴等を捕まえて、首元を切り裂きながら返事を返す。
    「鈍色の大地と空で十分だ。自分が消え去るよりはよっぽどな」
     綺麗な色をしたポケモンは驚くほど華奢でもろかった。

     
     根絶やしにしたと思っていたのに、まだわずかに勢力は残っているらしいと分かって、メジストは神経質そうに招集した俺たちを見回して指令を伝える。
    「ディアルガ様よりご命令だ。奴等の最後の生き残りが、過去へ飛ぼうとしているらしい」
     見つけ次第即刻排除せよ。何度聞いた命令だろうか。
     これが最後になるといいんだけどな、甘い考えを持ちながら、その場を離れた。

     
     一体どれほどの数の命を殺めてきたのだろう
     あと何回この腕を他人の血で染めあげれば終わるのだろう

     
     殺すたびに考えた
     答えはいつでも出なかった
     過去に望みを託すものは、俺達なんかよりも、たくさんいた
     死にたくないと思いながら この世界はおかしいと言い続けて 死んでいった
     それを見るたび考えた
     俺はいったい何をしているのかと問うてみた
     最終的にたどり着くのは 俺がやっていることは 少なくとも正義なんてものじゃないってことだ

     
     さっき殺した奴を思い出す。
     俺より少し若いくらいの、緑色のトカゲだった。
     捕えるまでに随分と抵抗したらしい、少し色の悪い体中に、無数の浅い傷が見て取れた。
     こいつがいったい何をしでかしたのか、聞かされていない。俺たちのところには、いつも命令と殺す対象がやってくるだけだから。
     分かっているのは、こいつは、この未来を変えようとしている奴等の、一人である。だからここに殺されに運ばれた。
     幼さの中に虚勢を張って、そいつは柱に縛りあげられながらも、俺を睨みつけていた。そうしていれば、自分が恐れを知らない強者であるかのよう見せられると信じているようだった。
     特に命令がなければ基本的に殺す方法は、執行人に一任される。
     中には殺し続けるうちに、自分の趣味をぶちこんで仕事を私刑化する奴もいたが、そんな殺害マニアになれるほど、俺は壊れちゃいなかった。
    「これから始まることは」俺はそいつに言ってやる。「拷問でもなければ公開処刑でもない。俺がお前を、殺す。それだけだ」
    「処刑には変わりないだろ」
     震えた、しかしどこか拗ねたような声だった。
    「お前たちは世界の命と自分たちの命を秤にかけて、自分たちを優先したんだ。この世界が死んでいく重大さなんて、考えもしないで!」
    「公開はしていないから公開処刑ではない、というつもりだったんだが」
     俺の言葉に、どこかそいつは一瞬、間の抜けた表情を見せた。そこかよ、と呟いて「ふざけるな!」激情した。
     ふざけたつもりなど毛頭ない。むしろ、真面目腐って答えたつもりだった。
    「早く殺せよ」
     急に声に覇気がなくなった。
     張り続けていた緊張が、どうやらさっきのセリフで消し飛んだらしい。随分もろいものだ。
    「悪いがその願いは叶えられない」否、叶えてはいけない。相手を楽にしてしまう。だから、苦しめて苦しめて、殺す。それは、執行人すべてに最初に叩きこまれた命令だからだ。
    「俺がお前を殺す間に、お前は生きる以外の全てができる。喚いてもいい、泣き叫んでもいい、助けを求めてもいい、何をしゃべるのも何を考えるのも勝手だ」
     ただし、何をしても生きること以外は絶対にできない。
     そう言って俺は静かに爪を研ぎ始める。
    「お前、変だな」
     予想外の言葉が飛び出す。
    「いまから命を一つ消すっていうのに、変も普通もへったくれもない」
    「そうじゃなくて、何も聞かないんだな」
     言葉の意味を取りかねてマジマジとそいつを見据える。
    「遺言を聞いても伝えてなんかやらないぞ」
    「そういう意味じゃない」
     じゃあなんだ。俺はこいつの相手をするのがだんだん面倒くさくなってきた。さっさと殺して黙らせたいが、しかしどうもこの先が気になってしまう。
    「もっと、仲間のいどころを吐けとか、そう言うの聞かないのかよ?」
    「聞いてほしいのか?」
     そうじゃないけど、と口ごもる。おかしな奴だ。
     これは拷問じゃない、故にお前が何をしゃべっても俺はそれを聞き流すだけだ。答え終ると同時に、俺の処刑道具が研ぎあがった。


     喉笛を切った感触はまだ残っている。闇色の肌は当の昔に赤黒い液体で塗り替えられた。元の色に戻ることはおそらく二度とあるまい。
     全ての色を黒で割ったような配色の世界を走る。
     探し出す対象がどこにいるのか、ましてやどんな種族なのか、情報一切よこさずに、見つけて殺せとのご命令、こんな無茶振りどうしろって言うんだ。
     途中でサボってやろうかと、足を止めて先ほど削った青色の宝玉を取り出そうとして、手が滑った。
     食い物として惜しいという気持ちはあまりなかったが、思わずそれを追いかけはじめる。
     するりと抜け落ちたそれは、灰色の大地を転がっていく。
     段々とそれに追いつくことばかりに集中し始めて、他のことが頭から抜けていく。
     あと少しで追い付く、とばかりに手をのばして、俺は地面が嫌に不安定なことに気がついた。しかしもう遅い。
     宝玉は空中へ転がり落ちて、俺はそれを掴みにかかる。
     そこで、ぶっつりと意識が途切れた。
     

     目が覚めるとそこは暗闇だった。両目に圧迫感があることで、目隠しがされていると判断する。
     両手は後ろ手に縛られていて、両足も動かせない。左足は何かに固定されているようで、少し動かすと痛みが走る。座らせられているのは分かるが・・
     一体何がどうなっている?
    「あぁ、起きたのか」
     知らない声が聞こえた。随分と落ち着いていて、穏やかな声だった。
     同僚にこんな声の奴はいない。いたとしても俺を拘束なんてしないだろう。とすると、声の持ち主は限られる。
    「おい、むやみに話しかけるな」
     別の声が諌める。冷静だが、どこか怒りを含んでいた。
     そりゃそうだろうな。目の前に憎むべき悪がいるんだから。
    「空から落ちてきたときは驚いたぞ。お前、空を飛べるんじゃないよな?」
     穏やかな声が冗談交じりに俺の方へ向けられる。諌めた声の内容など、耳に入っていないようだった。
     そんなわけはない、と返すと、「じゃあなんで崖から飛び降りる様な真似を?」 
     宝玉を追いかけていた。正直に答えると、笑われた。石ころを追いかけて片足折ったのか!
     どうやら、俺の足が使えない理由の一つが分かった。しかし、固定されているという事は・・手当てがなされている。
    「何故助けた?」
    「助けたくなんて無かったんだけどな」
     先ほどの諌めたほうの声が飛んでくる。どうやら穏やかな方とは違い、明確に俺に対して敵意を向けている。
     となると、穏やかな方が俺を助けた、という事か。頭の中で 冷静<穏やかという図解が出来上がる。
     助けた、という事は。
    「殺さないのか?」
    「殺してやりたいとも、だがな・・」
     感じた疑問を口に出すと、怒りを押し殺した声が答えた。では何故そうしない?
     すると、穏やかな声がこう言った。
    「だって、お前は悪くないから」
     ・・・。意味が分からない。
    「俺はたくさんのお前らの同胞を殺してきたし、お前らの敵だ。お前らにとって、俺は悪の象徴みたいなものだろう?」
     ディアルガが闇の神でメジストが悪の権化であるならば、死刑執行人である俺たちは、さしずめそんなものだろう。
     かなり昔にそんなことを喚いていた奴を殺した記憶がある。
    「いいや」
     声は否定する。
    「悪なのは、ボク達の方さ」
     だって
    「お前は何一つ間違っていないもの」
     穏やかな声は言う。
    「この世界を、何処かで歴史を踏み間違えた世界だと言い張るのはとても簡単だ。でも、それは真実であるかどうかなんて、分からない。この未来が、本来の歴史の姿だと言うのであれば、お前がやっていることは、至極真っ当なことなんだ」
     

     当惑を通り越して、何を感じていいのか分からなくなった。
     生まれて初めて、自分が悪ではないと言われた。 
     たくさんの奴が俺たちを否定しながら死んでいった。なのに、どうしてこいつはこんな簡単に俺たちを肯定してのける?
     
     
    「お前、なんなんだ?」
     絞り出すように出てきた疑問に、穏やかな声は答えた。
    「ボク?ボクは・・人間だよ」
     にんげん。
     そんなポケモンがこの世にいたのか?
    「人間は、牙もなければ爪もない、空も飛べなければ泳ぐことが得意なわけでもない、壁をすり抜けることもできないし走るのが早いわけでもない、植物を操るわけでも炎が吐けるわけでもない、電撃を放出することも、なにもできない。そんな、生き物さ」
     できるのは、生きることだけさ。
     声はそう言って、立ち上がる気配がした。
     じゃあ行こうか。
     殺していかないのか?
     別に、見られてるわけじゃないんだし。
     そんな会話が聞こえてきて、足音が去っていく。

     奴等は過去に行くんだろうか
     そこはココより綺麗なところなんだろうか
     過去とは、そんなに素晴らしいところなんだろうか
     
     握りしめている宝玉の色を思い出す
     この色の無い世界は 果して幸福なんだろうか


     数時間後、俺は同僚に発見された。
     他の奴らも結局取り逃がしたらしく、メジストは苛立ちのあまり俺たちに労いの言葉一つかけずに神のところへ向かったらしい。
     俺はあいつらのことを言わなかった
     相手がどこに行ったのかも、どんな姿をしているのかも分からないし、そんな情報が役にたつとも思えなかった


     足が使えない、という理由で、俺はしばらく仕事からはずされた。
     それをいいことに日々石を削る。
     色の悪い奴は口に投げ込んで、それ以外を寝床の隅に並べてみる。
     さまざまな色を眺めて、俺はそれに一応満足する。

     あいつらが過去で何をしているのか、もちろん、この未来を変えるためのことなんだろう。
     それが功を成し遂げて、この未来が変わるとすれば、俺たちは消えるんだろう。
     それはそれで、もう良いんじゃないだろうか。正義の味方のやることなら、それがきっと正義なのだろう。
     あいつらがいかに自らを悪だと称しても、俺達から見ればやはり悪なのは俺達なのだから。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  御題【悪】で趣味に突っ走った作品
    キモリ殺すシーンがなんか微妙な気もするけどもうどうでもいいやと投げた。
    久方様の作品に影響されて書きました。いやほんと。

    【好きにしていいのよ】
    【プレゼントフォー久方様(迷惑】


      [No.1300] 感謝感謝! 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/06/09(Thu) 21:30:17     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    感想ありがとうございます。

    初代のポケモンから、暴走族が「ポケモンが音に驚いて逃げるといけないから、実は自転車だ」とか、ヤンキー勢はなんだかツンデレのイメージでした。


    > 『何そのポケモン、 超かわいい!』
    >
    > これにやられました。いや、あなたがかわいいよ!と突っ込まずにはいられませんでしたw
    > あれだあれだ! 超可愛がってやるぜって言ったんだよ!、で更にニヤニヤ。

    まさに一押しのセリフに反応してもらえて嬉しい!

    こういうテーマの話も初めて書いたので、やや不安だっただけにお褒めの言葉をいただき感動もひとしおでした!

    また喜んでもらえる作品が書けるよう頑張りますっ! ありがとうございました。


      [No.1299] 異議なし! 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/06/08(Wed) 23:55:28     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    まさかスキンヘッズにときめくなんて…思ってもみなかったよ!

    冒頭で、外見と態度はアレだけど常識的な人(バトル云々)だなー、と感心していたら。

    『何そのポケモン、 超かわいい!』

    これにやられました。いや、あなたがかわいいよ!と突っ込まずにはいられませんでしたw
    あれだあれだ! 超可愛がってやるぜって言ったんだよ!、で更にニヤニヤ。

    ツンデレスキンヘッズという新しい境地を開いてくださったことに感謝します。おかげで、以後彼らをそういう目でしか見られなくなりましたw可愛いなスキンヘッズ!

    楽しませていただきました、次回作もお待ちしております!


      [No.1298] かわいいコとは旅をせよ 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/06/08(Wed) 01:34:25     118clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ――スキンヘッズと目が合った――


    おう、そこのアンタ。

    そう! アンタだよ。目が合ったよな?

    金?

    ああ、置いて行け。ただし、アンタがバトルに負けたらな。

    そうだよバトルだよ。あんたが買ったら俺が金を置いてく。当たり前だろうが。
    早く出せよ、ポケモンをよ。



    何そのポケモン、 超かわいい!



    ちげーよ! そんなこと言ってねーし! えーと、あっ! あれだあれだ! 超可愛がってやるぜって言ったんだよ!

    俺様のピィだって負けてねぇ! 負けてねぇからな!
    でもあれだな。見たことないけど珍しいポケモンなのか?

    普通に? そんなにいるわけ?!
    よし、じゃあこうしよう。俺が勝ったら金はいらねぇから、そいつをどこで捕まえられるのか教えろ!

    え? ウソ?! シンオウ地方にはいないのそのポケモン?!








    おう。また会ったな。元気してたか?

    バトル? ああ、バトルしてーならするけどな。

    ああ、礼を言っておこうと思ってな。
    確かにシンオウにも、他の地方にもまだまだ可愛いポケモンがいたよ。
    でも色々探したけど、こいつが一番だった。もう、運命だよ。運命感じるね。

    当ったり前だろうが。うちのブルーが一番可愛い。もう、絶対!

    よせよ。似てねぇって。こいつはすげー可愛いし。まぁ、ちょっとワイルドなところは俺に似てるかもな。
    ほら。見てみろよ。このスカジャン。うちの子の顔が入ってるんだぜ。いいだろ。

    おう! 世辞でも悪い気はしねぇな。

    他にもほら。ミミロルだろ、ヒメグマだろ、当然ピィもいるし。

    そうそう。こないだのポケモン、チラーミィだっけ?

    ほら。チラーミィのスカジャン。

    知らねーの? こういうのだよ。背中とかに見事な刺繍が入ってるジャンパー。
    ああ、その、なんだ。たまたま譲ってもらったんだけどよ。女モノだし、いらねーからアンタにやるよ。

    あー、どこでも売ってるだろ。いや、ほら、あれだ。あそこだ。……どこだっていいだろ!
    どこでも売ってるっつったら売ってるんだよ!

    おう、似合ってるじゃねーか。やっぱり女の子だからピンクだなピンク。

    え? 進化した?! じゃあえーと……。

    そうチラチーノ! チラチーノになったのか! 見せてくれ! おおーっ! いいなぁ! いい! すげーいい!

    そりゃあ、チラチーノのスカジャンも欲しくなるよな。
    探しといてやるよ。見つかったら俺が確保しておいてやるから。

    おいおい、そんなにすぐ作れねーよ!

    あ、いや、そんなにすぐに見つからねぇって意味だよ。それにほら、人気あるだろうし! 売り切れたらすぐには店には並ばねぇだろうし。そうだろ?! な?!

    え? 交換してくれるの?

    捕まえてきてくれたのか?!
    何でもいいのか? っつっても交換できる手持ちいねーし……。

    そうだ! 今そこらへんで適当な奴捕まえてくるから待ってろ! すぐ捕まえてくるからな! マッハで! だからそこを一歩も動くんじゃねーぞ! 絶対だからな!


    ------------------------------------------------------------------------
    シンオウのロストタワーにいるスキンヘッズがピィを出してくるせいで、スキンヘッズのイメージがツンデレになってます。
    ツンデレが過ぎて、ポケモン以外にまで愛が溢れ出てるとかそんな感じ。

    【異論は認める】


      [No.1297] 煮っ転がしのおまけ 投稿者:音色   投稿日:2011/06/07(Tue) 23:58:23     79clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     さといもと一緒に数々のいも料理のレシピがくっついてた。
     作ってみるが片っ端から壊滅。全部さといもに食わす。嬉しそうに食いやがるこいつ。
     上手いのか、と思ってパプリカにも喰わせてみるが一口でさといもに押し付けていた。やっぱ酷いか。


     さて、さといもを送り返そうかどうかで悩んでみた。
     俺のところにいても畑仕事しねぇし。
     パプリカは顔を合わせて真っ先に鼻面を蹴っていた。ズルックモグリュ―時代から挨拶。いや違うか。さといも涙目で押さえてるし。

     結論、切手代もったいないからやめた。


     後日、保育園もどきにつれていくと加減を考えずに遊んでいて逆にチビッ子がばてていた。
     丁度いいや、このまま置いておこう。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――
    おまけ   特に意味は無し
           ちょっと書いてみたくなっただけ(爆


      [No.1296] 俺のブラック螺旋な日記 ※始まる前の話 投稿者:音色   投稿日:2011/06/07(Tue) 23:51:10     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    『拙者、絶対に強くなるでござるよ!』
     初めて会った者同士の、ボールの中でホタチをぶんぶん振りまわしながら、ミジュマルは言っていた。
    『・・・えーと?』
    『えーと、じゃないでござるよ!』
    『ごめん、あんたのその口調と話しについていけないんだけど』
     理解が追い付いていないツタージャに代わって、ポカブが制す。
     やれやれといいたげにミジュマルが溜息をつく。
    『あのでござるなー、拙者たちがこれからどこに行くかお主たちも知ってるでござろう?』
    『そりゃ知ってるけど・・』
    『どこだっけ』
     ツタージャのコメントにボールの中でずっこける二匹。
    『いや、あんた・・・。施設で何も聞いてないのか?』
    『ん?ん―――』
     彼等はそれぞれ、専用の施設で育てられる。
     その目的は・・
    『拙者も爺さまから散々言って聞かされたでござる!立派な武士となってこれから出会うであろうご主人さまを一生お守りとおすでござる!』
    『その侍口調って何なんだよ・・』
    『拙者の育った場所の「テレビ」はみんなこんな感じで喋っていたでござるよ?』
    『え――っと』
     ポカブとミジュマルの会話を置いておいて、のんびりとしたツタージャが口を開く。
    『確か、日向ぼっこして、お昼寝して、ご飯食べて、毎日過ごして、なんでか此処にいる』
     なんでここにいるんだっけ、という言葉にポカブは痺れを切らした。
    『だぁぁぁもう!だーか―ら!おいらたちはこれから新人トレーナーのところにいくんだっつーの!』
     何度めの会話ループだろうか。飽きもせずにずっと繰り返される会話に、ポカブは溜息をついた。


     彼等のプレゼントボックスの中でされた会話など、誰も知る由はない。

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  ござる口調のミジュマルが書きたかっただけなんです以上

    【だんだんカオスとか言わない】


      [No.1295] 珈琲閑話 投稿者:音色   投稿日:2011/06/07(Tue) 23:22:21     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     悪いな、あんな舞台に引きずり出して。借り物の部屋のソファに腰かけて、コクト―は言った。
    「まさか、ついたその日にあんなイベントがあるとは思わなかったし」
     わたしが勝手に珈琲を注ぎ始めるのを見て、手を出すまいと思ったのか、申し訳なさそうな声はやんだ。


     指定されたホテルに着き、手紙を出した会社の人物との面会が済んだ直後に、妙な服装の男女に捕まったのがボール越しに見えた。
     あんみつはただ胡散臭そうにそいつらを見ていたが、外に出ようとしなかったのでそれに習う。
     小猿たちとかくざとうは部屋に入れているので心配はなかったが、ちらりとコクト―の顔に嫌悪の表情が走ったのを見た。


     結局、押し切られるような形で連れて来られたその場所は、どうも人とポケモンがやたらといた。
     部屋の隅でわたしのボールに手がかけられ、解放された。

    「しろあん、ちょっといいか?」

     話の内容は、まぁ、人に傷つけられたポケモンの見本、というものをしてくれと頼まれたらしい。
     俺は、お前を見せ物になんかしたくないんだけど。
     はっきりとそう言うコクト―は、それでもお人よしで、わたしの溜め息は一つで済んだ。


     人の視線が不快だ。
     そんなにわたしが面白いか。
     コクトーの言葉が会場に響く。
     あぁ、早いところこの場から立ち去りたい。


     そう感じた数分後、コクト―は小さな事件に会うのだが、まぁそれもすぐ解決し。


    「あの子、確か有名なデザイナーだったっけ?」
     片手で器用に草蛇の像を彫っている。あげてしまったストックの補充、といったところだろうか。
     
    「にしても、ダゲキとコーヒー飲み合いながら雑談するなんて、ちょっと思わなかったな」

     ぎち、と木製の右腕が音を立てる。
     初めて飲んだ時の苦い味を、今は至福の味と見るべきなのか。
     
     慣れてしまった舌は、どうともおもわない。

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  何書いてるんだ俺。
    意味不明すぎるけど、好きだからいいや。

    【しろあんの話はいつになったら書けるんだろう】


      [No.1294] 過去絵を持ってないのです…… 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/06/07(Tue) 20:24:30     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    巳佑さんと風間さんの過去絵を拝見しつつ、「例の曲」を聞いていたら泣きそうなった、イケズキです。 (笑


    好きなら続きますし、続けば上達する。やはり何事も上達には、そのものが好きだって事が大切なんですね。
    自分は今まで受け身でいるだけで、絵を含めて、これまで積み重ねてきたようなものが無いので、古くからの絵を持っている巳佑さんや風間さんがうらやましいです。


    ・巳佑さんへ
     
    >  ある日の放課後、一人の少女が膝にロコンを乗せて、公園のブランコで遊んでいた。
    >  
    > 「お譲ちゃん、絵を描くのは好きかい?」
    >
    >  縁が茶色の丸い眼鏡をかけ、ベレー帽をかぶったおばちゃんが微笑んでいた。

    ロマンだなぁw 精霊さんのロマンを予感させる最後でした。  
    少女のロコン絵を期待してます!   …………違うかw
     
    >  昔はスケッチブックとかに描いていたのですが、今は無地のノートに『落描き帳』と銘打って描き続けています。
    >  ポケモンだったり、オリジナルキャラだったり、その他、少し。(汗)
    >  あっという間に5冊溜まりました。
    >  ちなみにマサラのポケモン図書館に通い始めてからは更に刺激をもらい、ポケモン率が上がり、6冊目ももう少しで終わりそうです。(キラーン)

    六冊! すげー!!
     

    ・風間さんへ
      
    しかし……風間さん、幼稚園時代とは思えないウマさ! 自分が幼稚園の時……いや、小学校時代でもそれだけの絵は描けなかった自信がありますw


    > そして今。
    > 私はマスキングテープという色を使って絵を描く「マステ絵師(?)」というものになりました。
    > 写真に私の右手がうっかり写っていますが、なんという残念な指。マステをいじるせいで爪がはがれたりして、すごいことになってます。みなさん、マステをいじるときは気をつけましょう。

    指をお大事にしつつ、さらなる「マステ絵師」風間さんの作品を期待させていただきます!


    > いつか、水彩画みたいな淡いマステ絵が描けたらいいなと思っています。
    > その前に、受験がんばります(^^;

    受験も、いつかは水彩画も、頑張ってください!



    【好きこそ物の上手なれ!】【継続は力なり!】


      [No.1293] 夜明けの戦いへ 投稿者:キトラ   投稿日:2011/06/07(Tue) 20:21:56     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     日差しが日に延びていく。深く降り積もった雪も、空へともどっていくかのよう。新緑が土から顔を出し、残雪とまじった風景を見せるこの時期に。

    「捕まるわけないだろっ」
    一匹のプテラが飛んで行く。捕獲しようとトレーナーが頑張っているけれど、プテラは相手もせずに空へと舞い上がる。追い掛けるようにムクバードが来るが、雲の上まで飛ぶと追い掛けて来なくなった。プテラにとっても雲の上まで行くほど高いところは気圧の関係で目眩がしてくる。雲にまぎれるようにしてゆっくりと高度を下げた。
     そして誰にも深追いできない森へと急降下する。シンジ湖のほとり、深い森の中。翼でスピードを下げ、上手く地面に着地するとプテラは地上に置いたリュックを探り出す。服を引っぱりだすと、安心したかのようにその姿を変えた。人間の男の子。寒さもあって、着替える速度は早い。そして自分のポケモン、クロバットとミロカロスに帰ったことを告げる。
    「おかえり、コウキ」
    「どうだったコウキ?」
    「上々!思いっきり飛ぶのも悪くない」
    マサゴタウンに行くと告げる。ここからなら歩いてすぐにある。もう友達のジュンも戻っているはず。実力試しのような依頼の報酬を、あのナナカマドのじいさんに払ってもらわないといけない。いきなり表れ、テンガン山の頂上に行ってユキノオーを捕獲してこいだの、無茶を言うじいさんだった。しかも時間制限付きだ。これはコウキにしか達成不可能のはず。自力で空を飛べて、しかもゆっくりではなく素早い動きで、さらに強敵揃いのテンガン山に行けとなると、普通のトレーナーじゃ達成が難しい。
     201番道路に差し掛かると、フタバタウンからジュンが走ってくる。コウキの小さい頃からの友達で、脚力がすごい。蹴り技ならポケモンに負けてないんじゃないかってくらいに。晴れてる日や、夏が好きで、夏になるとやたら活発になる。ちょうど、今の季節は冬から春への移り変わり。冬に元気がないので、春はすごい活発だ。
    「コウキ!マサゴタウン行くのか?俺も行く!」
    「何も一緒に行かなくてもいいだろ、俺は俺であるんだよ」
    コウキの話を聞いていたのか、聞いてないのか、ジュンは既に走り去っていた。誘った意味がねえ。コウキはつぶやくとマサゴタウンに歩いて行く。草むらではムックルやビッパが顔を出すが、コウキの威圧感に負けたのかすぐに去って行く。昔は寄ってきたのに、薄情なやつらだ。
     何事もないようにマサゴタウンに着いた。大きな建物が目印だといっていたナナカマドのじいさん。確かに田舎町にふさわしくない立派な建物がある。漁業が盛んなところなのに、網や船が一つもないところ。確かに目立つ。コウキはそこに入って行く。すると全く世界が違うのかと錯覚するような作りの研究所が広がる。受付で名前を書くとコウキは奥へと案内される。そして連れて行かれた部屋は「所長室」と書かれた部屋。まさか、まさかなと言い聞かせるように頭の中で繰り返す。そのまさかが実現されるのはその数分後。
    「約束通りの時間とポケモンだな」
    白衣を着て、立派なヒゲを蓄えた所長。それがナナカマドのじいさんだった。むしろここではナナカマド博士と言った方がいいのか。コウキは驚いて声も出ない。それに構わず、ナナカマド博士はお金の入った封筒を取り出した。
    「そのお金の数倍は出す。もう一つ頼みを聞いてくれないか?」
    「これの倍以上?今度はどんなポケモンを・・・」
    「今度はポケモンではない。人間の救出だ」
    ナナカマド博士は真剣な顔で話し始めた。シンオウ地方に蔓延っている悪、ギンガ団に捕らえられている女の子を助けて欲しいのだという。その子は研究員の娘。世間にはポケモントレーナーになるために旅に出たと言ってあるが、本当は無理矢理連れ去られていったのだという。
    「なんでその子に執着する?警察に言った方がいいんじゃないか?」
    「それは君と同じような子だからだ。君は並のトレーナーが達成できないことをやってのけた。それは君がポケモンに変化するからだろう?」
    言葉に詰まる。誰にも見られていないはず。飛び立つ時も戻ってくる時も。ナナカマド博士がカマをかけているようには見えない。コウキは返事をすべきかすべきでないか迷っていた。そのことは誰にもばらしてはいけないと言われてきた。ポケモンとして人間に使われることを恐れた両親からは特に。しかし知られてしまった以上、隠し通す自信は無い。
    「何、別に脅そうというわけじゃない。なぜギンガ団にあの子のことがバレたのかは解らないが、あの子のことを理解してやれるのは君たちしかいないと思ってね、いろいろ調べさせてもらっただけだ」
    「君、たち?まさか」
    扉がノックされる。入って来たのは先に行ったはずのジュン。きっとまたマサゴタウンをふらふら見物に行って遅くなったのだろう。足が速いのもいいけれど、用事はちゃんと済ませないといけないと解ってるはず。
    「あ、コウキ!なんだコウキもナナカマドのじいさんに呼ばれたのか」
    「まさかの登場か・・・俺たちに女の子助けて欲しいってさ」
    フタバタウンにいる人たちでも知らないこと。コウキがプテラ、そしてジュンがメガニウムになること。それは家族以外は秘密だったが、この二人は何となく解ってしまった。他の人たちよりもポケモンに近くて、何よりポケモンの技のようなものが使える。自分と同じような人間が側にいたら解らないわけがない。
    「えええ、女の子!?それってどんな子なんだよ?」
    「最初から話そう。研究員の娘がギンガ団にさらわれた。君たちと同じような子だ、すぐに解ると思う」
    写真を持ってくる。黒くて長い髪の女の子。ただこれはかなり前のものだから、もしかしたら変装するために短くなっているかもしれないし、もっと違う顔をしているかもしれない。
    「博士、この子は何になるのかは知ってるのか?」
    コウキが訪ねる。シンオウにいないようなポケモンだったらすぐ解るし、何より普通のポケモンより頭が回る分、動きが全く違う。
    「それが解らない。ただ、空を飛んだり素早く走ったりできるとは言われてる」
    「言われてるって、なんでますますギンガ団がわかったのかわからないな。とりあえずわかった。ギンガ団から取り戻す」
    二人はナナカマド博士に宣言する。お金という部分もあったけれど、何より自分たちと同じような境遇の子をそうやって引きはがして平気な顔をしているギンガ団が許せない。たまに出会うこともあるが、全てのポケモンをよこせと脅してくる。そういうとき、クロバットが追い払ってくれる。特に町中では技を出すわけには行かない。

     最初はギンガ団の情報を集めるか。そう二人は判断した。ここは二手に別れて行こう。そう提案した。けれど言葉は横切る疾風に遮られ、届かない。海が近いから風が強いのだろう。コウキは飛んで行きそうな帽子を押さえた。風の行く方向を見る。もの言いたげなキュウコンがいた。その毛並みは美しく、コンテストで何度も優勝しててもおかしくない。きっとトレーナーのポケモンなのだろう。それにしても近くにトレーナーが見えないけれど。放し飼いにされているのか。
    「ほっほっほっほ、ギンガ団の情報が知りたいのじゃろう?」
    全てを悟ったようなキュウコンに、二人は黙ってうなずく。ついて来いと言われるまま、9つのしっぽを追い掛ける。軽やかな足取り、柔らかい身のこなし。ただ者ではない。そして敵でもなさそうだ。時々キュウコンが振り返ってこちらを見ている。けれどポケモンにだって負けてない。半分ポケモンなんだから。
     森の中を随分と入って行く。そして残雪が多い開けた場所に出た。たくさんのポケモンたちがこちらを見る。その中にキュウコンが入って行く。まわりのポケモンたちは口々に長老長老と敬っていた。ポケモンたちをなだめながら、長老はその中をかきわける。そして一番明るいところに出ると、長老は振り返った。
    「ふう、では何から話そうかの?」
    「え、ギンガ団のことだろ!?」
    「俺たちはナナカマド博士に頼まれたんだ!」
    長老は若者を笑い飛ばす。
    「そこまで急ぐな。ではリクエストにお答えしてギンガ団のことからにしようかのう。お前たちが探しているのはヒカリという娘じゃな」
    「そこまで知ってるのか!?」
    「何でも知っておる。その子はお前たちより強いんじゃ。だからギンガ団も狙っておる」
    「なんで狙っているんだ!?全く話が見えない」
    「ではギンガ団の目的を話そうかのう。ギンガ団の目的は、戦争のやり直しじゃ。このシンオウには昔、一組の夫婦のポケモンがいての。新しく入ってきた人間に対してどうするかでモメたのじゃ。その戦いはまさに戦争じゃ。他のポケモンたちはどちらかについて、争っての。それを見たシンオウの神様がテンガン山で東と西に分けて平和にしたんじゃ。けれど優勢だったのはどっちじゃったか、とにかく人間と共存する道を選んだ方じゃったよ。そのポケモンについていった人間とポケモンたちが今のシンオウを作ったんじゃな。ギンガ団はその戦争をやり直し、どちらが正しいかを再び選択しようとしておる」
    長老の語りは重みがあり、冗談や嘘で出来るとは思えなかった。二人とも声が出ない。
    「その時にそれぞれ夫婦についた6匹のポケモンが手足となって戦ったのが、現在のポケモンバトルに生かされているのう。まあそれはおいといて、その6匹のポケモンを人間に封じ込め、またの戦争に備えたのがお前たちじゃ。だからギンガ団はヒカリを欲しがったのじゃな」
    「なんだってー!!!!」
    二人は仰天。まさか自分たちの歴史に秘められたことを知らなかった。戦争の道具だとは。今まで人とは違うぜラッキーくらいに捉えてなかった。けれどそこにあったのは、深い怨恨のような歴史。
    「まあそういうことじゃ。わしはお前たちより何倍も生きてるでのう、何でも知っとるよ。もちろん、嘘でもなんでもないわい。で、ギンガ団の情報じゃが、巨大な船で移動しとる。おそらくどこからかギンガ団ごと移動しとるのじゃろう。陸のアジトと違って、船は狙いやすいからのう、つまりは」
    「つまり、今が奇襲を仕掛ける絶好のタイミングなんだな!」
    「そういうことじゃ。突然のことで上手く飲み込めないかもしれんが、わしはいつでもおまえたちの相談にのってやろう。若いもんはすぐに道を迷うでのう」
    「でもなんでキュウコンのじいちゃんが協力してくれるんだ?」
    「わしは平和主義でのう、やっと収まった戦争を掘り起こされてもこまるんじゃよ。さて、行かなくていいのかの?シンオウの海は寒いぞ、上着をやろう」
    長老から上着を一着ずつ。コウキは青、ジュンは緑色。着てみるととても暖かい。
    「ありがとう、キュウコンのじいちゃん!」
    「ほほ、金髪のはジュンと申すか。長老と呼ぶのがいいじゃろう。黒いのはコウキじゃな。お前たちが見事ギンガ団を止めてくれることを祈っておる」
    「わかった、いい報告できるようにするぜ!」
    コウキとジュンは教えられた通りに海に向かう。自分たちの役割を果たすために。


    ーーーーーーーーーーー
    長老がシンオウに来てくれるとな!
    書こうと思っているプラチナがこんな感じの始まりだったらいいなーと
    シンオウトリオは、ドラクエ2のトリオを彷彿させます

    とおもったら、白黒発売され、こちらの方がぴったりではないかと思われましたが、やはりアカギさんの最終目標はこうなのかなと推理する次第です。

    ロング向き?ロングは手一杯です。

    それよりも、長老が違ったらすいません。チャットに住まうもふもふを管理していると聞いたのですが、シンオウに来てくれるならこんな感じではないかと思いました。違うところあったら指摘ください。


      [No.1292] 6月6日に雨がざあざあ降ってきて 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/06/06(Mon) 23:13:58     166clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ところであれって】 【コックさんの】 【絵描き歌で】 【よかったん】 【だっけ?

     あの子と出会ったのは、今月の頭のことだった。

     去年や一昨年に比べて随分と蒸し暑い夕暮れ。日が沈むのもずいぶん遅くなった。
     家への道を歩いていると、どこからか声が聞こえてきた。


    「ぼうがいっぽんあったとさ はっぱかな」


     懐かしい絵描き歌が聞こえる。
     5、6歳くらいの子供がひとり、白墨を使って道路に絵を描いている。
     こんな時間に子供がひとりで、しかも今時白墨を使って道路にお絵描きなんて。珍しいなぁ。
     まあ、あんまり関わらない方がよさそう。そのまま通り過ぎようと思ったんだけど、その子がくりくりとした目でこちらをじっと見てくるものだから、負けた。かわいい。


    「はっぱじゃないよ かえるだよ」


     私が続きを歌ってあげると、その子はきゃっきゃと楽しそうに笑って、絵の続きを描きはじめた。


    「かえるじゃないよ あひるだよ」

    「6がつ6かに あめがざあざあふってきて」


     そこまで描くと、その子はこっちを見上げてきた。

    「6月6日は雨が降るの?」

     さあどうだろうね、と言うと、その子はまたかわいらしい目でこっちをじっと見てくる。ううん、南の方はもう梅雨入りしたっていうし。

    「多分、降るんじゃないかなぁ」

     そういうと、その子はまたきゃっきゃっと嬉しそうに笑った。

     気がつくと、いつの間にかその子はもうどこかに行っていた。
     塀の上で、ニャースが顔を洗っていた。


    +++


     翌日、友人の男の子に話をした。
     すると友人は何やら複雑そうな顔をしてきた。

    「どうしたの?」
    「いや……そいつ、人間じゃなかったんじゃないかなぁって」

     前に聞いたことがあるけど、友人は生まれた時から普通に幽霊が見える体質らしい。「幽霊なんてそこら辺にいる普通の人間と同じだよ」と常々言っていた。
     なるほど、幽霊。それならいつの間にかいなくなったのも、あんな時間にひとりでいたのも納得いく。

    「まあ多分大丈夫だろうけど、でも……」
    「あっ、やばい、午後の授業始まっちゃう」

     腕時計を見て、私は急いで講義室へ向かった。


    +++


     6月6日。
     朝からいい天気だった。6月にしてはものすごく蒸し暑い。

     夕焼けに染まる道を歩いていると、声が聞こえてきた。


    「ぼうがいっぽんあったとさ はっぱかな」


     この前と同じ子が、道路に白墨で絵描き歌を描いていた。


    「はっぱじゃないよ かえるだよ」

    「かえるじゃないよ あひるだよ」

    「6がつ6かに あめがざあざあふってきて」


     そこまで歌うと、その子は突然私の方を向いた。
     この前はくりくりしたかわいい目だと思ったけど、目が合った瞬間にぞうっとした。

    「6月6日、雨降らなかったね」

     その子はとても子供とは思えない、低い声でそう言った。
     怖くて、足が動かない。

    「雨、降らなかった」

     その子がゆっくりと近づいてきた。
     1歩踏み出すごとに、ぴちゃ、ぴちゃ、と水の音がする。

     その子が私の首に両手を伸ばしてきた。
     氷のように、冷たい感触。



    「やつめくん、『あまごい』!!」


     いきなり、土砂降りの雨が降り始めた。
     声のした先には、この路地では少し狭そうにしているミロカロスと、友人の男の子。

     子供は私の首から手を離して、嬉しそうに笑い、消えてしまった。
     友人はミロカロスをボールに戻した。雨はすぐに止んだ。

    「間一髪、だったな。よかったよかった」

     友人は、恐怖で動けない私の頭をぽふぽふと撫でてくれた。


    +++


     それから友人は、私を部屋に呼んで、いろいろと教えてくれた。
     幽霊は基本的に普通の人間と何も変わらないけど、まれによくない奴もいるらしい。
     私が出会ったのも、そういうののひとりだったんだろう、と。

     今回私が会ったのは、おそらく、雨の日に事故にあった子供なのだろう。
     ひとりでいるのが寂しくて、優しくしてくれる誰かを探しているのだと。
     雨が降れば、自分と同じところに来てくれる人がいるんじゃないか、と思っているのだと思う、とのことだった。

     友人はあんまり異性に見せるものじゃないけど、と言って、シャツをはだけて胸元を見せてくれた。
     ちょうど心臓の上あたりに、痛々しい古傷があった。その昔、よくない霊にやられたとか。
     時には洒落にならないこともあるから、気をつけろ、と友人は言った。



     テレビでは天気予報が流れている。
     明日もすっきりとした晴天だそうだ。




    ++++++++++The end

    年に一度の6月6日なことに気がついた午後4時過ぎ。
    せっかくなので即興で1本書いたよ!
    今日がすごく暑かったからぞわわっとするのを書いてみたかったけど、自分で書いてもちっともぞわわっとしない。
    突発的に書いたけど、それにしてもポケモン色薄い。

    【お好きにどうぞなのよ】
    【涼しい小説募集中】


      [No.1291] 迷いの森の育て屋さん 投稿者:キトラ   投稿日:2011/06/06(Mon) 21:59:13     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    迷いの森にいるお姉さんは、いらないポケモンを引き取ってくれるらしい。


     誰だそんな噂流したのは。おかげですみかにしているキャンピングカーには毎日のようにトレーナーといらないポケモン数十匹が来る。今日もえさの魚を取ろうと川に立ってたら、孵化させてはいらないポケモンを捨てているトレーナーが寄ってきた。
     ・・・今日のはバチュルか。電気蜘蛛の子供とはいえ、私は虫が嫌いだ。助手のメブキジカに任せるか。
     と思えば、昨日預けてきやがったメリープが森の草を食べにいって一匹もどらないと騒いでいる。別に森の中を散策するのは構わないが、かえって来れる範囲にしてほしい。さっきのバチュルが静電気を流しながらメブキジカを威嚇しているような音がしている。とりあえず無視してメリープを探す。


     そんなこんなで、今日も日が暮れた。ゆっくり寝たいが、そうもいかない。生まれたばかりの子供たちを引き取った本当の理由を実行しなければ。一人でいきていけるまで保護する。だからこれから増えたバチュルまで育てなければ。模擬戦闘を行い、強い技を確保すれば、当面は生きていけるはず。そこからどう生きていくかは私の知った範囲ではないが、できることならみんな幸せに生きてほしい。
     気付けば、近くの街の明かりも消される時間になっていた。さすがに今日も疲れた。育てなければいけないポケモンはまだまだいる。しかし、預けられるポケモンは増え続ける。このままでは私だけでは足りない。

     今日も魚を取ろうと近くの滝に行ってみた。魚はいくら取ってもいなくならない。魚はいったい、何匹いるのだろう。ちなみに、子供たちには結構不評だ。骨が多すぎるらしい。あまりに文句言うので、人間みたいに、魚を火炎放射で焼いてみたりした。熱があるとおいしいらしい。私にはどちらでもかまわない。

    「やぁ」

    人間の声だ。また噂を聞きつけてやってきたか、と振り返る。いたのは人間ではあるが、ポケモンを持ってない。何をしにきたのか、こんな森に。
    「君だよね、捨てられたポケモンを預かってるのは。」
    確認するまでもない。この森に人間に化けて住んでるのは私だけ。何日も探したが、私だけだった。
    「人はポケモンを傷つける。これ以上きずついたポケモンが増えて、人間は気付かない。この連鎖を断ち切った方がいいと思わないかい?」
    ずいぶん早口な男だ。他人と話す気がないのではないか。私の意思など確認するまでもなく、ただ話したいだけなのか。常軌を逸した目は孵化廃人と揶揄されたトレーナーよりも近づきたくない。
    「僕はポケモンを解放する。君もいずれポケモンをあずからなくて済む。」
    「なぜ?」
    「捨てることがなくなるからだよ」
    「・・・ポケモンを捨てる人間がいなくなっても、生きていくならば傷つくポケモンはいる。この子たちの中にも人間に捕獲されて、幸せそうなやつもいる。その子たちもひっくるめ、お前は不幸にしようとしている。お前は早口だ、私の言ってることなど分からないだろうが、お前はバカだ。」
    それ以上はそいつの話を聞かなかった。こいつに関わってるとこちらまでバカになりそうだ。あいつには、一つの現象が全てなのだろう。森を通り過ぎた、幸せそうなトレーナーとそのポケモンは存在しないらしい。というか、そんなこと捨てられた私ですら分かるのに、本当にバカだあいつ。


     魚を抱えてキャンピングカーに戻る。春の花を角にくっつけたメブキジカがバチュルに囲まれていた。やはり虫は嫌いだ。
    「おかえり。さっき誰と話してたの?ここまで聞こえたよ。」
    「聞こえてたか。なんか知らない男だ。目がイッちゃってる怪しい男だよ。」
    「そうなの?ポケモンかと思った。人間としゃべってるなんて。」
    そういえば。言葉がすらすら入ってくるし、こちらも喋って向こうが分かっていた。なぜ分かったのか、だから人間の前では黙っていたのに、あんなに言葉がすんなりと。
    「怪しい男だな。あまり関わらないようにしろ。それより魚焼くぞー。」
    メリープたちがちゃんと薪を拾ってきていたようだ。それに火をつけ、食事にする。全員を呼ぶと、当初の想像よりもたくさんのポケモン。そいつらを早く一人前にすることが、私のやることだ。


      [No.1290] 懐かしき過去絵 投稿者:風間深織@PC   投稿日:2011/06/05(Sun) 21:31:41     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    懐かしき過去絵 (画像サイズ: 640×480 16kB)

    今日、引き出しを整理していたときに出てきた一枚の絵。
    「本当に懐かしい、これは幼稚園のときに描いた絵だ」とすぐにわかりました。
    なにせ、ポケモンのアニメが始まったのが私が3歳のとき。小学校に入学したころにはもうサトシはジョウト地方を旅していました。そして、ジョウト地方を旅するサトシを見て、私はヒノアラシにひとめぼれし、小学校に入学してからはずっとヒノアラシばかり描いていたのです。

    そして今。
    私はマスキングテープという色を使って絵を描く「マステ絵師(?)」というものになりました。
    写真に私の右手がうっかり写っていますが、なんという残念な指。マステをいじるせいで爪がはがれたりして、すごいことになってます。みなさん、マステをいじるときは気をつけましょう。

    私は水彩画が描けません。挑戦したことは何度もありますが、失敗ばかりでした。
    今、マステという手段を見つけた今でも、私は水彩画が描けないのが悔しくて悔しくてたまりません。

    いつか、水彩画みたいな淡いマステ絵が描けたらいいなと思っています。
    その前に、受験がんばります(^^;

    【過去絵をさらしてもいいのよ】
    【みおりの バトンタッチ!】


      [No.1289] ポケモンジャーナル「ウソ八百」 投稿者:スズメ   投稿日:2011/06/05(Sun) 20:12:07     74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    ポケモンジャーナル「ウソ八百」 (画像サイズ: 798×1033 89kB)

    今月号から発行月を気が向いた月に変更します。
    【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】【批評してもいいのよ】【続刊募集中】


      [No.1288] 相棒 まだそれっぽくはない(仮) 投稿者:紀成   投稿日:2011/06/05(Sun) 14:29:40     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ミドリ:つまり、コラボというのはコラボさせてもらう相手の小説をよく読んで、おかしな場所が無いかきちんと確かめる必要があるんです。例えばカクライさんがいきなり彼女に会っちゃったり、コクトウさんがいやに血の気が多かったり、ライザくんが敬語だったら、おかしいでしょ?というかやらかしましたよね、一度。
    つまり事前によく打ち合わせして、ネタをよく練っておくということが重要なんです。分かりましたか?

    紀成:わかりませーん!

    …そんなこんなで、音色さんとのコラボ『相棒〜二人だけの(仮)』は始まったのでした。やれやれ…


    ――――――――――
    ミドリはデザイナーである。まだ高校生だが、両親の人脈を勝手に使って、デザイン会社などに知り合いを作り、ここまでのし上がってきたのだ。こう言うと何だか敵が多い気もするが、確かに敵は多い。学校に友人はあまりいないし、いたとしてもまた彼もちょっと変わり者なのだ。
    容姿はあまりよくないが、読書家で秀才で偏食でそして折り紙が大得意という、一風変わった個性の持ち主である。パートーナーはムーランドらしい。あまり話したことは無いが、眼鏡をかけると性格がガラリと変わるミドリのことは、同じ読書家として好いているとかいないとか。
    その日、ミドリはライモンシティの遊園地に来ていた。今回のパートナーはジャローダのみ。自分でデザインしたシルクのローブを着せていた。
    「このロゴのブローチがポイントなんだよね。ポケモンに着せるにはちょっと高いけど、多分冬になったらセレブがポケモンへのクリスマス・プレゼントとして買ってくれるでしょう。
    …ちょっと暑いけど、すぐだから我慢してね」
    『キュウウ…』
    ジャローダは草タイプ。寒いのにも弱いが、暑いのにも弱い。ミドリは今自分が着ている服を見た。比較的涼しいデザインにしてある。これも、自分でデザインした物だ。
    「…それにしても、まさかこんな時期にこんな物に出ることになるなんてね」
    ミドリは改めて、待合室と称されたテントの中に貼ってある、一枚のチラシを見た。

    ことの始まりは、一週間ほど前。『プラズマ団』と名乗る者から、手紙が届けられた。
    『貴方をポケモンと共存するデザイナーとして、私どもが主催するイベントにご招待します』
    最初は眉唾ものだった。だが本気になってきたのは、きちんと会場である遊園地の無料券が同封されていたからだ。騙すなら、ここまではしないだろう。
    『参加する場合は、三日以内にこの手紙に同封されている紙に出席するか否かを書いて出してください。住所は手紙に書いてある物をそのまま書いてください。いいお返事をお待ちしております』
    読み終わるかという前に、ミドリはボールペンを取り出した。ジャローダのデザインだ。尻尾をノックして、ペン先を出す。
    「イエス、と」
    そしてその足でギアステーション前のポストに投函してきた。
    返事が来たのは、次の日。『ご出席ありがとうございます。つきましては、貴方様がデザインした服を自ら着て臨んでいただきたいと思います。
    出来るならば、ポケモンにも一着をお願いします』


    そんなこんなで、今に至る。待合室には沢山の人とポケモンがいた。ミドリ・ソラミネの名はかなり知れ渡っているが、実物を見た者は関係者と、雑誌のカメラマンやライターくらいしかいない。ファンの人達はあまり知らないはずだ。
    ま、もし見たとしても信じない気もするけど…高校生だし。
    表のステージでは、同じような制服を着たプラズマ団の団員達が司会をしている。服のデザインはまあいいけど、ピッチリしたフードが気に入らない。あれじゃ男女の区別が遠くから見たらつかないじゃない。
    「不思議なことを考える人もいるものね…ポケモン解放なんて」
    近くでオーベムに餌をあげていた女性トレーナーが呟いた。考え方は人それぞれだろう。だが、その食い違いが時に救いようのない悲劇を生み出すこともある。
    祖父を警視長に、叔父を監査官長に持つミドリは、そのことをよく知っていた。

    『続いては、イッシュにその名を轟かせるデザイナー、ミドリ・ソラミネの登場です!』
    司会の声に、観客席がざわめいた。若い女の声が一番よく聞こえる。服は買ったことが無くても、名前は聞いたことがあるという人間がほとんどだろう。
    ジャローダが促した。眼鏡はそのまんま。目まで下げるのは、あるべき時だけでいい。
    ステージに上がる。驚きというか、落胆というか。そんな二つの声が混ざり合っている。司会がマイクを渡してきた。スピーチ?何も考えて無いよ。
    「こんな子供だと思い、落胆したでしょうか」
    ざわめきが止んだ。こんな言葉を吐くなら、眼鏡を下げていいよね…

    「ポケモンは道具ではありませんよ、皆さん。そこは百も承知でしょうが、一応お伝えしておきます。
    個体値が高ければいいという問題ではありません。本当にポケモンが好きならば、そのポケモンを一生懸命育てるべきではありませんか?
    トレーナーが自分勝手なら、ポケモンは簡単に離れていくでしょう。ボールという道具で縛っているだけで、結局はポケモンは人よりずっと強い存在です。その気になれば、このジャローダも私の息の根を止めることだって可能でしょう」
    ジャローダが驚いて首を振った。私は笑って彼の頭を撫でる。
    「ポケモンと人間が共存していく上で一番大切なのは、信頼です。この時代まで築き上げてきた関係を、これからも崩さないようにしていきたいと、私は思います」
    私は礼をした。数秒後、爆発するような拍手が起きた。

    その後は待合室から他の人を見ていた。私の次は…ポケモンの義手、義足を作っている人らしい。
    「コクトウです」
    若い男の人だった。片腕が義手のダゲキを連れている。
    「このダゲキは片腕がありません。トレーナーによってそうなってしまったのです。長いこと彼の義手の調整をしてきましたが、人がポケモンに与えた傷は簡単に治るものではありません。
    おそらくこのダゲキも、人間をよく思ってはいないでしょう」
    待合室から見たダゲキの目は、鋭かった。自分が大勢の人間に見られることを、必死で耐えているような目だ。
    「俺はこのダゲキに、お前の腕を失くした人間を許してやってくれとは言いません。ただ、そんな人間もいるけど、ポケモンを大切にするという心の持ち主が少なくとも一人はいるということを、知って欲しいのです。
    ここで話を聞いてくれている人達もそうであると、信じています。ありがとうございました」
    拍手が沸き起こった。私も気付かないうちに手を叩いていた。この人は、色んなポケモンを見てきたんだ―
    何となくそんな気がした。

    スピーチが終わってしまうと、何もすることが無い。丁度昼時だったので、屋台を見て回った。オクタン焼き、ポケモンを象ったカステラ、木の実を丸ごと飴に包んだ木の実飴。
    その中に見知った顔を見つけた。店の前にはレックウザも真っ青の長い列が並んでいる。店の主人は…
    「ユエさん」
    「あら、ミドリちゃん!さっきのスピーチ良かったわよ」
    GEK1994のユエさんだった。丁度お客にカップに入れたゼクロムを渡していたところだった。どうやら今回限定の商品があるらしい。
    「特製カレーパン、ください」
    「はい。手持ちポケモンのタイプは?」
    「水です」
    「はい、分かりました」
    後ろには大鍋。美味しそうなカレーがたっぷり入っている。そばにあった白パンにカレーを入れると、ユエさんは小さなボウルに入った青色のペーストを中に入れた。
    「それは?」
    「これはネコブの実とシーヤの実を混ぜ合わせてペーストにした物よ。連れているポケモンのタイプに合わせてカレーに入れるペーストが違うの」
    相変わらずのアイデア精神だ。マグマラシはいないみたいだけど…
    「あの子はメラルバと一緒よ。お金渡しておいたから、好きに食べてるわ」
    「今日も預けて行かれたんですか」
    「ま、これもサービスよね。帰りにゼクロム飲んで行ってくれるし」
    その時だった。

    「変な言いがかりつけてんじゃねえよ!この時計は俺のなんだよ!」

    ステージ近くから罵声が聞こえた。私も含むその場にいた人が一斉に向こうを見る。
    「何かしら」
    「ちょっと見てきますね」
    私はジャローダと一緒に騒ぎのする方へ行ってみた。二人の男が争っている。あれ、片方は…
    「だけど、その時計は俺の鞄についてて、ついさっき盗まれて」
    「これがアンタのだって証拠でもあんのかよ!名誉毀損で訴えるぞ!」
    片方はサーフィンでもやっているのだろうか。この時期にしてはかなり肌が焼けた男だった。もう片方はさっきステージに上がってた人だ。
    確か…コクトウさんだっけ?
    どちらにしろ、ここまで見てしまったら白黒はっきりつけたいところだ。私は眼鏡を再び目元まで下げた。
    「いい加減に…」
    「どうなされましたか」
    二人の視線がこっちを向いた。うん、こういうのって嫌いじゃない。それにしたって、このサーファーの顔どっかで見たような…
    「コイツが俺の時計取ったとかほざくんだよ」
    「待ってください。初めからお願いします。コクトウさん」
    「え…ああ」
    彼が話し始めた。

    コクトウさんは話し終わった後、とりあえず食事をしようと思い鞄を下げて人ごみの中を歩いていたらしい。めぼしい物が見つかって並ぼうとした時、ふと財布の中身はどうなっていたかが頭に浮かんだ。もし順番が来てお金が足りなかったらイミが無い。
    なので鞄のチャックを開けようと鞄を見たところ、いつも付けているはずの時計が無くなっていた。ご丁寧に鎖がペンチか何かで切られていたそうだ。
    慌てて辺りを見回すと、一人の男が自分が鞄に下げていたはずの時計を右手で宙に放り投げているのが見えた。それで声をかけて―
    今に至る、らしい。
    「なるほど」
    「鞄に付けているとはいえ、うちの工房は物を何処かに置き忘れることが出来ないくらい小さな場所なんだ。毎日見てる。だから遠目から見ても絶対間違うはずが無い」
    「ふざけんなよ。ったく、何でこんな場所まで来てこんな目に遭わなきゃならねえんだ」
    「ふむ…」
    ミドリは考える。憧れの名探偵ほどまではいかないけど、これくらいのいざこざなら一人で片付けたい。
    「貴方、マリンスポーツをしていますね」
    「は」
    「この時期にしては肌が黒い。それにその短い髪形。そして」
    ミドリは男の着ている服の袖を捲くった。手首より上は、白だ。
    「おそらくサーフィンでしょうねえ。ここまで独特な日焼けの跡は同じマリンスポーツでも限られてきますから。
    …おや、これは?」
    右と左の腕の日焼けを見比べる。右の方が、わずかに白い部分が多い。
    「ダイバーズウォッチの跡でしょうか。防水、水圧に耐えられるだけの丈夫さ。水中はもちろん、陸上でも普通に使うことができます。
    つまり貴方は、腕時計を愛用していた。ここまで日焼けの跡が残るということは、相当長い間使っていたのでしょう」
    「な、なんなんだよ」
    「腕時計を愛用しているのに、わざわざチェーン付きの時計を手に持つというのは、いささか妙な気もしますがねえ…」
    ミドリの独特な言い回しが癪に障ったらしい。男が吠えた。
    「ふざけんなよ!餓鬼だと思ってなめてんじゃねえぞ!」
    「もしペンチか何かで切ったとしても、盗られた本人が気付くまで少なくとも数分はかかっています。その間にペンチを捨てることは可能です。探そうにも、この人ごみから見つけることは骨が折れるでしょう。
    それだけでは証拠にはなりませんが…やっと思い出せました」
    「え」
    ミドリは男に向かって言った。

    「貴方、窃盗の容疑で指名手配されていますね。サーファーとして肌の色と髪形を変えたつもりでしょうが、その目の色は誤魔化せませんよ」

    男が走り出した。懐からナイフを出して振り回す。野次馬がちりぢりになる。
    「待ちなさい!」
    ミドリは走り出した。あまり走るのは得意ではない。だがそんなこと言ってる場合じゃない。
    「あっ」
    男が側にいた一人の女性を人質にとった。首にナイフを突きつけている。
    「来るな!来たらこの女を刺すぞ!」
    「馬鹿なマネはよしなさい!」
    ミドリが叫んだ。
    「ここで逃げおおせても、貴方の罪が増えるだけです。今はただ必死かもしれない。ですが、罪を重ねれば重ねるほど、貴方の背中にのしかかっていくんですよ。
    貴方はそんな人生を歩みたいんですか!自分の自制心すら失ってしまいましたかっ!」
    男が怯んだ。と、その時、ミドリはある違和感に気付いた。男に人質にされている女性の首が、下がったままなのだ。茶髪のポニーテール。どこかで見たことがあるような服装。
    あれ、この人ってもしかして…
    「ねえ?」
    ずっと黙っていた女が口を開いた。男が女の顔を見る。
    「ああ?」
    「今、貴方何処触ってるか分かってる?」
    ミドリは少し考えた後、後ろに立っているコクトウの元まで下がった。幸いにも男の周りに人はいない。これなら平気だろう。
    「何処って」
    男の左腕は、女の胸をぐるりと一周するような形で抱き寄せていた。

    「何処触ってんじゃおんどりゃああああああああああああああっ!」

    耳を劈くような声が響き渡った。怯んだ男が腕を放した隙に、女が抜け出す。そのまま右拳をみぞおちにヒットさせる。男の体は十メートル近く吹っ飛んだ。
    「え、あの、ちょ」
    「随分と好き勝手やってくれたじゃない。他人の物盗んどいて、いいがかりつけられた?ふざけんじゃないわよ!」
    声を聞きつけたマグマラシとメラルバが寄ってきた。ミドリがボソッと呟く。
    「ユエさん…落ち着いてください」
    「アンタなんて人間の風上にもおけないわ!ちょっと、誰か鉄パイプ持ってきて!」
    「いけません、ユエさん!そんなことしたら貴方も犯罪者になってしまいますよ!マスターの店を守るんでしょう!?」
    その場にいた常連客の一人が必死に叫んだ。ユエの動きが止まる。
    「マスター…」
    「貴方がいなくなったら、あの店はすぐに潰れてしまいますよ!それでいいんですか!?」
    しばらくの沈黙。ユエが深呼吸し、そして男ではなく地面に左拳を突き刺した。
    少しへこむコンクリ。
    「それは…困るわ」
    「マスターの珈琲の味を出せるのは、貴方だけなんですよ」
    「そうね…ごめんなさい、私が間違ってた」
    立ち上がるユエ。体を起き上がらせる男。そして―

    「やっぱムカつくけどね」

    バシン!という音と共に、男が気絶した。左頬を真っ赤に腫らせて。


    男のポケットから、鎖が切れた時計が見つかった。男は警察に連行されていった。
    「ありがとう」
    「礼にはおよびませんよ」
    ミドリが笑った。ずっと部屋に篭っていたからか、色々すっきりした気がする。
    「すごいな、君。細かいことに気付くんだ」
    「学校では疎まれていますがねえ。私の悪い癖」
    眼鏡を額に上げる。いつものスタイルだ。
    「じゃ、またね!貴方とは縁がありそう。またすぐに会える気がする」
    「なあ、最後にいいか」
    「え?」
    コクトウが鞄から木彫りのジャローダを出した。
    「助けてもらったお礼。君、ジャローダ持ってただろ。よかったら」
    「すごーい!ありがとう」
    ミドリが頬ずりをした。やはり高校生なのだろう。たとえデザイナーでも、眼鏡をかけることで人格が変わっても、探偵としての素質を供えていても―


    その後、二人はちょくちょく行く先々で遭遇することとなる。そしてデコボコの探偵コンビとして警察内にその名を知らしめることになるのは…
    まだ、先の話だ。

    ―――――――――――――――
    構想:二週間以上
    執筆:五時間ちょっと
    備考:土下座

    [書いてもいいのよ]
    [黄金コンビの誕生なのよ?]

    コクトウさんの口調がよく分からないとか…ドウスリャイイノ…


      [No.1287] 看板かけて 投稿者:音色   投稿日:2011/06/04(Sat) 23:52:30     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     戸締り良し、ガス良し、食料も大丈夫だな。あとは、工房に看板引っ掛ければオッケーか。
     んで、あんみつ良し、しろあん良し、小猿ども・・は、みんないるな。クーラーボックスの中のかくざとうも良し。
     それじゃあ、ライモン向けて出発しますか。


     事の始まりは一通の手紙。
     足を無くしたシキジカ用の義足の微調整が済んで、トレーナーの女の子ともども送り出してから三日もたたずに投函されていた。
     ダイレクトメールにしては随分と丁寧で、おまけに某有名デザイン会社からなので興味に負けた。

     しろあんが珈琲をついでくれた。
     小猿どもはめいめい好きなモノを飲み始める。
     庭であんみつはごろんと日向ぼっこ。かくざとうは冷蔵庫。


     中身は簡単にすると、イベントに参加してくれないかというものだった。
     3カ月にある、ライモンシティでのデザイナーズイベント。つまるところ、人間とポケモンのファッションショーみたいなもんだろう。
     ただ、今回のテーマが『ヒトとポケモンのあり方』・・なんか、最近騒がれてるプラズマ団みたいだな。
     人に傷つけられているポケモンが増える中、俺みたいなのを呼んで世間にもっと知ってもらおう、見たいなことらしい。
     そりゃ、イッシュに俺以外にポケモンの義手義足をつくってるモノ好きはいないからなぁ。
     何処で俺のうわさを知ったか知らないが、なんだか、悪い話ではなさそうだ。

     ただ、まぁ、行くとなると結構な長期滞在になる、という事が示唆されている。
     金は出るらしいけど、その間こいつらどうするべきか。
     あんみつやしろあんは連れて行くとして・・小猿たち。

     だって、なぁ。
     りょくちゃもアセロラもサイダーも、俺のポケモンじゃないんだから。


     まぁ、こっそり荷造りして猿たちは俺がいない間森に帰るよう説得するのに大騒動が起きたのは別の話なんだけど。

     結局のところ、猿たちも強引についてくることになって。


     そんなわけで、しばらくシッポウシティは留守にして。
     ライモンシティにいきますか。


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  紀成様コラボ用フラグ。
    いい加減にライモンに行かせないとコラボることもできそうにないので

    【さーて、どこまでいけるかな―(笑】


      [No.1286] 幸せな悪夢(前) 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/06/04(Sat) 21:36:26     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     新月の夜、それでもダークライには眼下の家の様子がはっきりと見えていた。
     四、五十坪程の土地に二階建ての一軒家と、よく手入れのされた庭。ガレージにはミニバンタイプの車が一台止まっている。俺達は散らかされた三輪車やらゴムボールやらを避けるようにして、庭に着陸した。すると、玄関の方からかすかにスパイシーな香りが漂ってきた。夕食はカレーだったようだ。
     その香りに混じった幸せの臭いを、俺はすぐに嗅ぎ取った。
     平凡で、何の変哲もない、最高の幸せ。

     ――気に入らない。
     俺は思い切り顔をしかめた。

     人間の幸せに、依頼者はたった今も犠牲となっているのだ。

     ダークライは、悪夢屋として多くの人間を見てきたが、それでも彼らを「悪」とは言わない。まだ言えないと言った方が正確かもしれない。
     しかし、悪夢屋の中には人間を「悪」として、彼らを懲らしめる為に仕事をする者が少なくない。ダークライに「悪夢屋」の仕事の全てを教えた先代悪夢屋もまた、そういった考えを持っていた。


     ――結局、人間は変わらなかったのさ――


     悪夢屋になる前、ダークライは人間に着いていた。ある大きな事故に巻き込まれ重傷を負ったダークライが、その人間に命を救われ、以来ずっと一緒にその者の仕事を手伝っていたのだ。

     その人間の仕事は「ポケモンハンター」という。

     ハンターにとって、ダークライというポケモンはとても便利な存在だ。その足の速さや暗闇を見通せる視力もさることながら、「ダークホール」の技がハンターには大きい。ダークライのみが使うことのできる技「ダークホール」は、かなりの高確率で対象を眠らせられる。
     ハンターにしてみればこれ程便利な技はない。眠らせてしまえば、「モノ」に傷をつけずに捕まえられる(売り物に傷がつけば値段が下がってしまう)。追っ手や同業者に遭っても、派手な勝負をすることなく、動きを止められる。
     ……もちろん、いざ売る事になっても高値がつけられるということもまた、ダークライの大きなメリットである。
     ダークライはそうやってハンターの仕事を手伝うことになんとも思わなかった。それどころか、命の恩人の為に働けることを喜んですらいた。
     しかし、ハンターが別のダークライを捕らえた時の事だ。ダークライは、捕らえられたダークライの世話を命令されていた。

    「私はクラウンだ」
     初めに挨拶をしたのは、捕えられたダークライ――「クラウン」――からだった。彼は檻の中で鎖に繋がれ、うなだれたまま話していた。
    「クラウン……色違い……だな」
     クラウンの肌の色は、普通のダークライとは違っていた。単純な紫よりも、もう少し明るいような、明け方の空のような色をしていた。どうりで主人が有頂天になっている訳だ。ダークライの、それも色違いともなれば、その値は天井知らず間違いないからだ。その主人は今、祝い酒とばかりに飲みまくっている最中だ。
    「そうだ。私は他のダークライとは違う。でも、違うのはそれだけじゃない。私は普通のダークライが絶対に知らない事を、たくさん知っている。例えば……『悪夢屋』というものを、君は知っているか?」
     初めてクラウンが顔を上げた。彼は笑っていた。

     それから、ダークライは多くの事をクラウンから聞いた。悪夢屋の事、人間の事、ポケモンの事。特に「悪夢屋の歴史」の話は、何度も何度も聞いた。ダークライも聞きたがったし、クラウンも話たがったからだ。

    「結局、人間は変わらなかったのさ。見てみろ」
     クラウンが顎で指した先にはハンターがいた。ハンターは今、一つの檻越しにバイヤーと商談中だ。檻の中では、アブソルが一匹、不安そうに鳴いて足に繋がれた鎖をガチャガチャとならしていた。
    「今でもポケモンは虐げられている。確かに大昔に比べれば、『多少』は、マシになったかもしれない。でも、人間どもは、根っこの所から『悪』だから、どれだけ表面を繕っても、いつの時代にもあのハンターのような奴が必ずいるんだ」
     うーん、と、ダークライは煮え切らない返事をして、お茶を濁した。
     正直ダークライにはクラウンの言うことが、いまいちピンときていなかった。
     クラウンが「悪」と呼ぶ自分の主人の姿は、あまりに見慣れたものだったし、なんといっても彼は命の恩人だからだ。
    「俺が悪夢屋をしているのは、人間どもに警告してやるためなんだ。あまり調子に乗ってるとポケモン達だって黙ってないぞってな!」
     吐き捨てるように言うと、クラウンに繋がれた鎖が大きな音を立てた。音に気付いた主人は一瞬ジロリとこちらを見たが、すぐに商談の続きを始めた。
    「落ち着け、クラウン。大きな音を立てるな」
      落ち着きを取戻したクラウンは、呼吸を整えて続けた。
    「それで……だ。お前も悪夢屋にならないか? 今のままでは、お前はあのハンターと同じ……いや、人間なんかに着いて協力するお前は、もっと酷い『悪』だ」苦々しげに言う。
    「仕事の事は全て私が教えてやる。有力なコネもつけてやる。だから、お前も悪夢屋になれ!
     悪夢屋になれば、お前は、“正しい”ポケモンに戻れるんだ。これ以上、人間なんかと一緒にいたら、お前まで……お前まで……おかしくなってしまう。
     お前が人間といるのは、間違っている!」
     最後の言葉には、鬼気せまるものがあった。
     しかし、俺はそこまで言われてもまだ迷っていた。
     理由は二つある。一つは、クラウンの言う通りにすれば必然的に彼を主人から逃がすことになるからだ。ハンターに迷惑をかけたくないから、などと言えば、クラウンに本末転倒だと笑われるだろうが、だとしても、主人を困らせるのは気が引けた。
     もう一つは、正直まだクラウンの事を信用できないのだ。彼が檻から出でた瞬間に自分を捨てて逃げる、なんてことが、あり得ないとは言い切れない。
     しかしそういった頭の理解とは別に、ダークライは激しく動揺していた。当然と言えば当然だ。
     ハンターは人間だ。クラウンはその人間を「悪」という。奇妙な説得力のあるクラウンに、ダークライは半ば同調し始めていた。
     商談をする主人を見慣れたダークライではあったが、捕まったポケモン達の悲鳴は何度聞いても、胸が締め付けられるような強い自己嫌悪にかられる。主人といっしょにポケモンを苦しめてる意識が常に心の奥底にある。
     自分は悪くないなどとはこれっぽっちも思わない。しかし、これまでの事が全て主人からの指示であり、彼が私欲の為にポケモンを苦しめていることは、まぎれもない事実だ。
     しかし、だ。
     確かに多くのポケモン達にとって、主人は悪人かもしれない。だが、ダークライにとっては、瀕死だった自分を救ってくれ今まで世話を(良心からとは言い難いが)見てくれた、命の恩人だ。
     命の恩人は、悪人なのか。

     ――分からない。
     とてもじゃないが今の自分には、それだけのことを判断出来ない。俺にはその為の知識がない。

    「分かった。俺も悪夢屋になる。ここから出してやるから、仕事をおしえてくれ」
     クラウンが捕まってからどれくらい経っていただろうか。ようやく決心がついた。
    「良かったよ。本当に良かった」満面の笑みを浮かべてクラウンが言った。

     悪夢屋になろうと思ったのは、ひとえに人間を知るためだった。世話になった主人とは別れがたいが、ここにいつまでもいては、主人以外の人間を知ることができない。悪夢屋にならなければ、人間を、命の恩人を、いつまでも理解できないと思ったのだ。
     それから五年くらいまで、クラウンには悪夢屋の仕事を叩き込んでもらい、ブローカー組織や運び屋などにも紹介してもらった。
     それが、六年目の春先の事だ。クラウンは突然姿を消した。
     しかし、その頃には仕事も板につき、安定して依頼を請け負えるようになっていたので、たいして気にしなかった。
     ダークライは、少しばかりクラウンが苦手だった。人間の事になるとすぐに興奮するし、そのくせ、ダークライが自分の仕事の話をしても決して嬉しそうにしない。「うん、うん」と頷くばかりで、ひどく悲しげな、時には泣き出すのではと思うくらいの顔をする。
     おかしな奴だと、ダークライは思った。自分の主張する勧善懲悪に協力してやっているのに、どうして悲しまれなければいけないのか。
     ダークライは、クラウンが消えてむしろ、仕事がやりやすくなったとすら感じていた。


     そして、悪夢屋になって二十年目の今。

     「久しぶりの仕事になるが、大丈夫か? ターゲットは子供だし……」ヨノワールが言う。
    「ハッ! 心配しているのか? ヨノワール」俺は笑ってやった。
    「そうだ。でも、お前の事じゃないぞ。お前が失敗すれば、ウチの評判が落ちるからだ」
    「なんだなんだ。ヨノワールのくせにツンデレかよ。気持ち悪い」ニヤニヤ顔でからかう。こんな会話でも、仕事前には緊張がほぐれて丁度いい。
    「ツンデレとはなんだ?」真面目な調子でヨノワールが聞く。
    「もういい」
     ……失笑。

     俺は早速仕事に取り掛かった。まずは、この家に忍び込まねばいけない。
     こういう時に便利なのが、ダークライの、影に溶け込む能力だ。俺はアスファルトに潜るように、身を沈めた。見上げると、ヨノワールの顔がある。あいつに見下ろされるのは、非常に不愉快なので、さっさとドアの隙間から家に入った。
     玄関に入り影から体を出した。中もやはりきれいに片付いている。
     正面には大きな油絵――風景画のようだ――が飾ってあり、下駄箱の上には置時計と、一輪挿し。さすがに花の色までは暗すぎてよく分からなかったが、シルエットだけでも、その簡素な美しさがよく分かった。それはこの家族にとてもふさわしい美しさで、俺の勘にさわった。
     ただ、靴だけは、子供たちのせいだろうか、大きな靴も小さな靴も皆、不揃いに広がっていた。
     俺は肺にいっぱい、深呼吸をすると、ターゲットの家に一歩を踏み出そうとした。
     ところが、
    「ダークライ。ちょっと、戻ってきてくれ。」さっきまでとはうって変わった、張り詰めたヨノワールの声がした。
     ダークライは仕事中に邪魔が入るのを、何より嫌う。たった今も、ただ事でない雰囲気を感じつつ、イライラを抑えきれなかった。
    「なんだ? お前、仕事の邪魔するのはゆるさねぇぞ」
    「緊急事態なんだ! 頼むから、早くもどってきてくれ」
     さすがに無視できそうにないので、仕方なく再び影に潜ると家をでた。
    「どういうつもりだ? 一体何があったんだ?」
     ヨノワールは、黙って宙を指差した。
     その先には、首周りの白い体毛が特徴の鳥ポケモン――ドンカラスが飛んでいた。
    「どうして……」
     俺は驚きのあまり、さっきまで怒っていたことも忘れて、ドンカラスの上に乗ったポケモンをぽかーんとして見た。ヨノワールが仕事中にも関わらず、自分を呼び戻した訳が分かった。

    「どうして、キリキザンがここに来るんだよ……」


     キリキザンは、ヨノワールの上司であり、ブローカー組織のボスだ。イッシュ地方から単身ここ、シンオウ地方までやってきて組織を一から作り上げた、知る者にとっては伝説的な男だが、不気味な噂も絶えない奴だ。
     普段キリキザンがわざわざ、現場に出てくることは決してない。今回突然やって来たのには、間違いなくとんでもない理由がある。それも、悪いことに違いない。
     ダークライがキリキザンに会ったのは、これまでにも一度しかない。クラウンに連れられて、組織と顔合わせをした時だ。
     あの時からキリキザンの事は嫌いだった。俺は特に何もせず、クラウンとキリキザンで、仕事のことや、関係のない昔話をしているだけだったのだが、とにかく気持ち悪かった。俺を見ると頬を引きつらせるようにして、クックッと笑うのだ。それを見ると初対面なのに、なんだか全部見透かされているような、すごく自分が無知なような、そんな気分にさせられるのだ。

     ドンカラス――つまり、キリキザンは俺達同様庭に着陸した。着陸するとき、激しい風がゴムボールを道路脇まで吹き飛ばした。
    「ボス……一体なぜ……」かすれた声で、ヨノワールが聞いた。
     明らかに動揺しているヨノワールを見、キリキザンは笑った。
    「いやいや、すみませんねぇ、ヨノワール。驚かせてしまったようで……。アナタが何かミスをしたとか、そういう訳ではないので安心してください」
    「では、何があったのですか?」
    「後でアナタにも話します。今は下がっていなさい」
    「でも……」なおも、ヨノワールは食い下がる。
    「邪魔です。下がっていなさい」突然笑みが失せ一喝した。関係の無い俺まで驚くような豹変だった。
     上司の命令にヨノワールは、すごすごと玄関先まで引いて行った。
    「俺に何か?」短くダークライが聞く。
    「そうなんですよ」いかにも疲れたという様子で言った。
     俺は何か、とてつもなく嫌な予感がした。

    「ダークライ。アナタに『良夢』を見せて欲しいのです」
     予感、みごとに的中。


    「いやぁ、すみません。ワタシも焦っているもので、ついつい飛ばし過ぎました。何か聞きたいことはありますか?」
     展開に追いつけず黙っている俺を見てキリキザンが言った。
    「何か、と言われても困る。俺には分からないことだらけだ。
     まず、『リョウム』とは何だ? どうして突然そんなことを俺に頼む? 俺にはこれから悪夢を見せる仕事があるんだぞ? お前は俺を担いでいるのか?」
     矢継ぎ早の質問に、キリキザンは両手で俺をいなした。いなしているだけのはずだが、奴の両手は手刀を切ってシュッシュッと音を立てた。
    「まぁまぁ、落ち着いて。ワタシにも答えられる質問と、答えられない質問があります。……もちろん、答える気のないものもね」笑って言う。
    「まず『良夢』とは、悪夢とは逆の夢、見た者を幸せにする夢の事です。
     いきなり、こんなことをアナタに頼むのは、これが緊急事態だからです。私としても、こんなお願いするのは非常に心苦しいところなのですよ。
     それと、悪夢屋の仕事は、今夜は無くなりました。というか、悪夢のターゲットだった人間達に、良夢を見せてください。
     あ、それと、決して担いでいるわけではないので、安心していいですよ」これでいいかというように、キリキザンは肩をすくめた。
    「まだよく分からない。どうして、いきなり良夢なんて言い出す? 緊急事態とは? 一体何があったんだ?」
    「それには答えられません。お察しを」相変わらず事もなげに言う。
    「ふざけるな!」とうとう俺はキレた。
    「何が何だかさっぱり分からないが、俺は手を引かせてもらう。だいたい良夢なんて俺の仕事じゃない」そう言い捨て、俺は帰るためにムクホークの元へ行った。
    「それなら、仕方ないですねぇ」背後からキリキザンの声がした。妙に引っかかる調子に、俺は足を止めた。
    「非常に残念ですが、別の悪夢屋さんにお願いするとしますか。
     しかし、そうなると……あー……こんな無理なお願いするわけですから……その方とは……何ですか……今後組織としても、えー……そのー……『深〜い』お付き合いになるでしょうがねぇ……」白々しくも、最後にはため息までついてみせる。
    「俺に仕事をまわさないって、脅しているのか?」悔しさのあまり歯ぎしりしつつ、こぼれだすように言った。
    「クックッ」
     あの笑い声。俺は背中に悪寒が走るのを感じた。
    「どうしますか? ダークライ」
    「噂通りのとんでもない奴だな、お前」
     それにしてもどうするか。
     ここで無理にでも帰れば、ブローカーからの仕事が来なくなるかもしれない。ただでさえ需要の減っている悪夢屋なのに、彼らのコネを失ったら間違いなく廃業だ。
     だが、デマカセの可能性がある。自慢じゃないが、俺は悪夢屋の中でもトップクラスの成績を上げている。そんじょそこらの奴が代わりになるほど、俺はヘボじゃない。キリキザンにしても、そうそう簡単に俺を切れないはずだ。
    「何を考えているかは分かっています。でも、自惚れないほうがいいですよ。アナタの代わりなんていくらでもいるんですから」余裕たっぷりに言う。
     ――見抜かれている。
     状況を考えれば、それほど難しい推測でないと分かっているもの、やはり不気味でしょうがなかった。
    「そもそも良夢なんて俺にはできない。俺は確かに夢の中身を弄れるが、それは悪夢だけだ。俺が近づけば、寝ている者は中身がどうあれ皆、悪夢を見てしまう。それが俺の特性だ。俺自身にもどうしようもないことなんだ」
    「『ナイトメア』のことなら大丈夫です。対策はしてあります。アナタにはいつも悪夢を見せるように、夢の中身を弄って、ターゲットの見たいと思っている夢を見せてほしいのです」
    「対策? なんだそれは?」
     ナイトメアの対策なんて俺でも思いつかない。
    「それを話す気はありません。で、やってくれるのですか?」
     とうとう、手詰まりだ。断りようもなくなってしまった。
    「分かった。だが、これからは一か月も次の仕事を待たせるようなこと絶対にするなよ」
    「もちろんですよ! こんなお願いをきいてもらえるんですからね。これから先、需要のある限り、アナタに優先的に仕事をまわすことを約束します」さも嬉しそうに笑う。

     諦めて再び家に入るダークライを確認すると、キリキザンはヨノワールを呼び出し、ダークライに伝えたものとは違う、さらに詳しい事情を話した。さらに、ドンカラスに預けていた一枚の羽根を渡し、帰って行った。
     
    「『需要のある限りは』……ね」
     クックッ。
     空から家を見下し楽しげに笑う声。


     ターゲットの家の玄関で、ダークライは怒りに震えていた。
     あまりに理不尽な要求だ。しかも、失敗すればどうなることやら。多少のミスは見逃しても、あのキリキザンの事だ、全て失敗なんてことになったら、わざとじゃないかと疑ってくるだろう。そうなれば、俺は奴に捨てられ、廃業だ。
     だいたい「良夢」だなんてどうしてそんな物を見せなければいけない?
     ここの人間達は、もとから最高の幸せの中で暮らしているはずだ。これ以上の幸せを、悪夢屋の俺が、どうしてやらなければいけないんだ。

     ――ガシャン!
     力任せに振り回した腕が、一輪挿しに当たり花瓶が割れた。ついさっきまでの簡素な美しさは、すでに影も形もない。

    「どうしたんだ? 大きな音を立てるなんてお前らしくもない。ターゲットが起きたらどうする?」ドアの向こうから、ヨノワールの声がした。
    「黙れ! こんなことになっていつも通りでいられるか!」
     後も、ヨノワールは何かゴチャゴチャ言っているのが聞こえたが、俺はさっさと奥へ向かった。

     二階の寝室。母親の横でぐっすりと眠っているのが、ターゲットだ。年齢も顔立ちも、ヨノワールから聞いていた特徴とあてはまる。
     もう一度俺は子供を見た。俺は今このガキに「良夢」を見せようとしている。まったく悪夢のようだ。
     嫌だった。自分の仕事と真逆だとか、キリキザンに利用されているとか、そういう事では無く、純粋にこのガキを喜ばすようなことがしたくなかった。嫉妬しているのかもしれない。

     ――バカラシイ、ヤッテラレナイ。
     自分の物とは思えない考えが湧いた。


    「もう終わったのか。さすがダークライだ」
     家を出ると、ヨノワールが早速言った。言葉は労っているが、一つ眼は細めている。
    「分かっているんだろ。俺は何もしていない。キリキザンには長い付き合いだったと言っといてくれ」
    「おいおい、本気か? お前が一旦引き受けた仕事を放り出すのか」ヨノワールは相当驚いている。
    「こんなのは俺の仕事じゃない」
    「でも、お前は引き受けた。それに、これからどうするつもりだ? 人間に着くつもりがないなら、お前は廃業だぞ」
    「余計なお世話だ。じゃあな」
     俺はまっすぐムクホークの方へ進んだ。
    「ちょっと待ってくれ」ヨノワールが慌てて引き留める。
    「どうしたらボスの頼み、引き受けてくれる?」
    「キリキザンの代わりに頭を下げるあたり、お前らしいな。
     なら、キリキザンが隠していること全て教えろ。奴の秘密を全部喋ったら引き受けてやる」
    「それは……」ヨノワールが口ごもる。
    「そりゃそうだろうな。お前がキリキザンの秘密を話すわけがない。
     お前は昔からそういう奴だ」
     ヨノワールは見たことない程、みじめで辛そうな顔をしていた。
    「残念だよ、ヨノワール」
     俺はムクホークの背に乗った。


    「分かった、話す」
     ムクホークが今にも飛び立とうとした瞬間だった。
    「話すからボスの頼み聞いてくれ」
    「本気か? お前がキリキザンを裏切るっていうのか? まさかな、信じられないな」
    「俺の話を信じようと信じまいとお前の勝手だ。だが、聞けば分かる。全て本当の事だ。それに、私の話を裏付ける証拠もここにある」ヨノワールは真剣だった。
    「証拠? 何だそれは?」
    「そのことについても話す。とにかく聞いてくれ」ヨノワールは半ば懇願するように言った。
    「いいだろう。話せ」俺はムクホークから降りた。
    「話したら、ボスの頼みを聞いてくれるんだな?」ヨノワールの方もこちらへやって来た。
    「……あぁ」
    「やってくれるんだな」ヨノワールが語気を強めてさらに言う。
    「分かった、分かった。約束する。お前の話を聞いたら、キリキザンの言う良夢、見せてきてやる」
     ヨノワール納得したように頷くと、話を始めた。

    「ボスが良夢を請け負うようになったのは、今からもう二十年程前のことだ」ヨノワールが話を始めた。
    「その頃から悪夢の依頼はゆっくりではあったが確実に減りだしていた。当時にボスは時代の変化に気付いた。これから悪夢屋は廃れるってな。だが、その時点で悪夢の依頼が完全に無くなった訳でもなかったから、ボスは徐々に良夢へ移行していく計画をたてた」
     ダークライは、「二十年」という歳月に、すうっと腹の奥がつめたくなるような感覚を覚えた。
     二十年前。それはつまり、ダークライが悪夢屋を始めた年だ。クラウンに誘われて始めたあの時から、悪夢屋は終わりに向かっていたということなのか。

     ――需要がある限り――
     さっきのキリキザンの言葉を思い出す。

    「い、いま、そっちに依頼はどのくらいいっているんだ?」焦りのあまり声が裏返る。
    「…………」ヨノワールは答えない。気まずそうに立ち尽くしている。
    「答えろっ!!」
    「……ない」ボソッと言う。
    「ない?」言っている事の意味が分からなかった。
    「最後に正式な悪夢の依頼が来たのは三年前が最後だった。今はもうない」
    「嘘をつくな! じゃあ、先月の依頼はなんだったんだよ!」
    「ウチで適当に選んだ、何も関係のない人間達だ」
    「関係のない?」声がかすれる。吐きそうだ。
    「ボスからの指示だ。あの人間達に依頼は来ていなかった」
    「あぁ……どうして……どうしてそんなことを……」涙が出る。がっくりとして地面に手をついた。俺は腹の奥から盛り上がってくるモノにこらえきれずその場に吐いた。
     これまで俺はたくさんの人間達に悪夢を見せてきた。生半可なものなど何一つない。クライアントの為、どこまでも恐ろしい悪夢を見せ続けてきた。
     人間達は覚めない悪夢の中で助けてくれと悲鳴を上げ、引きちぎらんとばかりに頬をつねっていた。中には「死にたい」と言って、何千何万というナイフの生えた谷へと飛び込んだり、毒を吐き火を噴く魑魅魍魎の中へと自ら消えていく者もいた。そういう奴らのほとんどが、その後も目を覚まさなかったと聞く。正気を失ったのだ。
     男も女も関係ない。子供も大人も区別しない。虐げられたポケモンの為、全力で悪夢を見せてきた。そのはずだった。依頼を全うされて喜ぶ誰かがいると、少なくともあの人間達は「悪」だと、信じていた。
     なのに、そうじゃなかった。少なくともこの三年、俺は憎まれていない、もしかしたら本当に無垢な人間に、悪夢を見せてきたのかもしれない。
     そう思うと、涙が、吐き気が止まらなかった。まさに悪夢だった。
    「お前が優秀だからだ。ボスは夢の扱いに優秀なお前がこれからも使えると思った。だが、クラウンと同じで頑固な所のあるお前だ。『悪夢屋』から『良夢屋』に転身しろと言っても、聞かなかったろう。それどころか、悪夢の依頼が減っていることを話したら、お前は悪夢屋を辞めていたに違いない。お前はそういう奴だからな」ヨノワールが困ったように嘆息する。
     当然だ。俺は悪夢屋であって他の何者でもない。人を知るためとは言っても、二十年この仕事を続けてきた自負がある。需要が無いからって、別の、それも真逆の仕事をする気など無い。
    「だから当面は、他の悪夢屋を使って良夢を請け負いつつ、依頼があるふりをしてお前をつなぎとめておくつもりだっだ。もちろん、ボスだっていつかは本当のことを話すつもりでいた。隠し通せるようなことでもないからな」
    「信じられない。信じたくもない!」憤慨して言う。
    「そんなこと急に言われても、とてもじゃないが鵜呑みにできない」
    「だから、ここに証拠がある」
     ハッ、として証拠のをことを思い出した。心底見たいはずなのに、俺は同時に逃げたくなった。
    「これだ」ヨノワールが手を差し出す。
     俺は起き上がってその、証拠を見た。彼の掌に収まるそれは、とても綺麗な一枚の羽根だった。
     俺はたくさんの意味がこもった、その羽根のために頭がどうにかなってしまいそうだった。
    「どうしてそんなものをお前が持っている?」
    「偽物じゃないぞ。まぁそんなこと、お前が一番分かっているだろうけどな」

     ――みかづきのはね。

     大昔、悪夢屋の起源より、それは悪夢、つまりダークライを退けるものとして伝わっている。それを模したアクセサリーや、本物と偽って売られているのはダークライもよく見知っていた。
     だが、目の前にあるそれは間違いなく、本物のみかづきのはねだった。

    「これはクレセリアさんからボスが直接いただいたものだ。
     ボスは移行計画のなかで、彼女を傘下に入れることを最大目標としていた。そして彼女は二週間前、正式にウチと契約を結んだ」
    「バカバカしい。あの女がキリキザンと手を組むはずがない」
    「しかしこれが証拠だ」これみよがしに羽根をふる。
    「正直私も驚いている。契約の事はついさっきボスから聞いたばかりなんだ。でも、間違いない。今、彼女は『良夢屋』だ」
     とても納得できる話ではない。が、どうやら本当の事らしい。
     ダークライという種族全般そうだが、クレセリアに対して大概良いイメージを持っていない。あの羽根のせいか、二匹の間にはなにか対局的なものがあって、“とりあえず”どのダークライも、クレセリアが嫌いだ。そして、それは恐らくクレセリアにしても同じだろう。
     実を言うと、俺はクレセリアに会ったことがない。それどころか見たことすらない。しかし、それでもあの女のことを聞くと何か不愉快な気分になるのはきっと、「ダークライ」である以上仕方のないことなのだろう。
     クレセリアについて、俺はその昔クラウンに聞いた以上の事をあまり知らない。そのクラウンはクレセリアを、「八方美人の世間知らず」、と呼んでいた。

     悪夢屋になる前、何度目かの「悪夢屋の歴史」の話を聞いていた時。
     「クレセリアって奴は、人間の次にタチが悪い」苦々しげに言う。人間の事以外でクラウンがこんな顔をするとは珍しい。
     「何も知らないくせに、ベラベラといらないこと吹聴して、あげく神様だなんて崇め奉られていい気になっている。おかげで昔っからダークライは『悪夢を見せる悪いポケモン』って評判が根付いてしまっている。
     こと、人間に対しては誰彼かまわずいい顔してるから、悪夢屋としてはやりづらくてしょうがない。あの羽根さえなんとかなればいいのだけど……」
     彼に聞くまで俺はクレセリアの存在すら知らなかったが、ダークライという種族の因果だろうか、なんとなくそいつが嫌な奴という事だけは、感覚的にハッキリ分かった。

     主観を抜きにしても、クレセリアがバリバリの「親人間派」であることは、神格化されていた史実やこれまで聞いた話からして間違いない。そんな奴がどうしてこれまでさんざん人間を苦しめてきたキリキザンと協力するのか、どんな心変わりがあったのか全く想像がつかない。
     だが、問題はそこじゃない。クレセリアはキリキザンの「良夢屋」になった。
     つまり、今、俺の立場はかなり危ない。
     クレセリアのことはあまり知らないが、キリキザンが計画の最大目標にするぐらいだし、仮にも昔は「夢の神様」と呼ばれていた奴だ。相当のやり手であることは間違いないだろう。
     クレセリアを傘下に入れた今、ブローカー組織は本格的に「良夢」へと切り替わるはずだ。そうなれば、ただのつなぎにも俺と手を組んでいる必要はない。
    「キリキザンめっ!」怒りのあまり脳みそが沸騰しているのかと思った。
     あの男は初めから俺を切るつもりだったのか。あたかも交換条件のようにして良夢を押し付け、「需要のあるかぎり」などと言って俺を騙しやがった。
    「俺はこうなると分かっていた。だから、お前に何度も忠告した。人間に着けって。なのにお前は一度として耳を貸そうとしなかった!」見上げるとヨノワールの顔の灰色がさらに白くなっているように見えた。
    「黙れっ! ヨノワール。キリキザンが何をしているか知っていて協力してきたお前も同じ悪党だろうが。今さら何言い訳してやがるっ!」 
    「そうだな……すまない……」
    「うるさい! 今さら謝っても遅いんだよ!」
    「……すまない」
     できることなら今すぐにもキリキザンを追いかけ、「ダークホール」に落として、いっそ死んでしまいたと思うくらいに悪夢を見せてやりたかった。俺から俺に送る最後の依頼だ。
    でも、まだだ。まだ、聞きたいことがある。
    「ヨノワール。最後に一つ聞きたいことがある」淡々と俺の口から言葉が出てくる。
    「……クラウンのことか……?」
     いろいろ抜けている所のある男だが、肝心な所では誰よりも察しがいい、それがヨノワールだ。これだからキリキザンの右腕としても勤まるのだろう。
    「クラウンは今、どこにいる?」
    「私は知らない」

     ――ドガーン!

     派手な音を立ててヨノワールの背後の鉢植えが爆発した。植えられていたチーゴの花が、無残に散って土に埋もれている。
    「もう一度聞く。クラウンはどこだ?」
     俺の手の中にはすでに次の「あくのはどう」が、まがまがしい光を放って渦巻いていた。
    「よせ、ダークライ。家の者たちが起きてしまう……」

     ――ドガーン!

     まず二階、そして一階の窓の一つに明かりが灯り、大きくえぐれたレンガ塀があらわになった。
     玄関から家の者が一人、しかめっ面で出てきた。イタズラとでも思っているらしい。寝間着姿の男は初めに俺達を見、次に庭の惨状に視線をやった。事態を飲み込んだ男は、慌てて家に戻ろうとした。自分のポケモンを連れてくるか、警察を呼ぶ気だろう。どちらにせよそんなことになれば、キリキザンの頼みどころではなくなってしまう。
     しかし、ヨノワールの対応は早かった。男がドアノブに手をかける前に「かなしばり」で動きを封じ、「あやしいひかり」で混乱させる。男は目をトロンとさせてその場に立ち尽くした。すでに記憶はむちゃくちゃになっていることだろう。
    「話が違うぞ、ダークライ」極めて落ち着いた口調だったが、その声は怒りに震えていた。
    「ボスの秘密を話したら頼みを聞くはずだ。今すぐあの者たちを眠らせて、ターゲットに良夢を見せてこい!」
    「やっぱりバカだな、お前」
    「なんだと?」ヨノワールが低く唸る。
    「キリキザンの頼みを聞いたところで廃業は避けられないと教えたのは、お前だぞ。まさか、そんな話を聞いた後に俺がまだ約束守ってあの男の頼み聞くと、本気で思っているのか?」俺は鼻で笑った。
    「思っている。お前はそういう奴だからな。一度引き受けた仕事は絶対に放棄しないし、約束は必ず守る、お前はそういう奴だ。それに、もう一ついいこと教えてやろう」
    「なんだ?」
    「俺は本当にクラウンの居所を知らない。だが、ボスは知っているはずだ。このまま良夢を見せてくれば、ボスが教えてくれるかもしれない」
    「だが、その保証はない」
    「そうだ。しかし、ボスの頼みを聞かなければ、絶対に教えてはもらえないぞ。お前がクラウンの居所を知る唯一の方法がなくなるわけだ」
    「うぅ……」
    「分かったら、早く仕事をはじめろ。他の人間達が出てきたらさらにやっかいな事になるぞ」
     悔しいがヨノワールの言う通りだ。ヨノワールがクラウンの事を知らないという以上(彼の言うことを信じればだが)他に奴の事を知っていそうなのはキリキザンくらいだ。今、キリキザンの頼みを放って帰ったら知りようがなくなってしまう。
    「クソッ、分かったよ。さっさとあの人間、上にやっとけ」
    「いいだろう」短くヨノワールが答えた。その顔は嬉しそうでも悲しそうでもなかった。


     目の前にいるガキは気持ちよさげにぐっすりと眠っていた。のんきなことだ。寝床の横に立つといつもそう思う。これから世にも恐ろしい悪夢を見ることになるというのに、これほどマヌケなことは無い。
     俺には悪夢にこだわりがある。細かい事を言えばたくさんあるのだが、最も大切なことは、夢の中にクライアント、もしくはそいつと同じ種族のポケモンを登場させることだ。
     これはクラウンもそうだった(彼は必ずクライアントを登場させるという所までこだわっていた)、いや、むしろこんなこだわりができたのにはクラウンの影響もある。――まぁ、こんなことにしつこくこだわっているから、ヨノワールにも頑固だと言われるのかもしれない。
     しかし、ポケモンを登場させることは非常に重要な悪夢の要素だ。俺はそのことをクラウンから教わった。

    「いいか。悪夢屋になるうえでまず一番に覚えておかないといけないことがある。それは私達の仕事が『警告』と『代理復讐』だってことだ」
     ハンターのもとを抜け出してまず最初に、クラウンから教わったことだ。
    「私が悪夢を見せるのは警告の為だって話は前にしたな。人間に対してこれ以上ポケモン傷つけるようなことしたら、ただじゃおかないぞって事を伝える為だって。
     けどな、同時に俺達の仕事は『代理復讐』でもある。クライアントの代わりに、恨みを晴らすのが悪夢屋だ。でもな、悪夢屋の俺が言うのもなんだが『復讐』ってのは、この世で最も恐ろしい『悪』だ。だから俺達はそれを何としても止めなければいけない。その意味が分かるか、ダークライ?」
     俺は黙って首を横に振った。俺にはその時全くクラウンの言葉が分からなかった。ただ唐突に始まった説教じみた話に少しばかりウンザリしていた。
    「なんだなんだ? つまらないって顔しているな。まぁしょうがない。でもな、これから話すことは大切なことだから、しっかり覚えておくんだ。
     『復讐』っていうのはな、あらゆる悪の根本にあるものだ。やられたらやりかえす、さらにまたやりかえす……。人間も、そういう点じゃポケモンもおんなじだ。しかしそれではキリが無くなってしまう。だからどっちかが我慢しないといけない。トラブルがあっても、人間同士なら他の人間が仲裁に入って止めるだろう。でも、人間とポケモンじゃいつだって私達の方が我慢する側だ。人間達はポケモンを扱う、上の存在だから、我慢っていうものを知らない。ポケモンに対してそんな必要なんて無いとすら思ってる連中だ。でもな、いろんな事情、例えば、程度の超えた行為によるものだったり、誰か大切な者のためだったり、……あとは、そいつが単に短気だったりすることもあるだろうが、とにかく、ポケモンだって我慢できないことがある。そういう時に使われるのが悪夢屋だ。
     悪夢屋はいつだって、自分と関係のない恨みに付き合っている。だからこの恨みが誰からのものであるかってことを明確に人間に伝えなきゃならない。そうしないと、どの悪夢も警告にならない。『復讐』を止める警告にはならないんだ。
     プロになれ、ダークライ! 目的を忘れるな。私達の仕事は『警告』と『代理復讐』なんだ!」
     クラウンは言った。

     二十年たった今でも、実はいまいちクラウンの言う「警告」と「代理復讐」の意味がよく分かっていない。結局は、復讐の連鎖を止めるために、きっちり恨みの由来を伝えろって言うことなのだろう。でも、悪夢を見せたぐらいで本当にその抑止力となるのだろうか。ハッキリ言って疑わしい。
     本音を言うと、俺が悪夢の中でポケモンを出すのは、人間がどんな反応をするかを見たいからだ。
     悪夢の中で(もちろんシチュエーションの影響もあるが)、ポケモンを見て安心する者、逆に怖がる者、何も反応を示さない者、さまざまだ。そいういう反応が人間を知る為の手がかりになる。

    「ハァ……バカバカしい。今さら俺は何を考えてるんだ……」思わず空しさが口をついて出た。

     何考えているんだ、俺。昔の事なんて思い出したりして。今さらクラウンから何を教わったかなんて、どうでもいい事なのに。
     ヨノワールはついさっき下へ戻った。不本意な仕事だが、仕事は仕事だ。職場に他の奴がいると気が散ってしまう。
     これから俺が見せるのは良夢。悪夢じゃない。悪夢屋としての心構えなんてなんにも役に立たない。これは「警告」でも「代理復讐」でもない。どこかの人間好きから来た注文、のんきな寝顔の相応しい、良夢だと言うのに。
     邪念を振り払いたくなって、俺はどんな夢が見たいか調べるのに早速ガキの精神に潜り込んだ。

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    果てしなく広がる緑の大地、世界の真ん中で白の少女は空を仰ぐ

     びゅうびゅう、びゅうびゅう

     青い空とはためくワンピース。

     風が強い、強すぎる。華奢な少女は今にも吹き飛ばされてしまいそうだった

     しかし、少女は身にせまる危険すらおかまいなしに空を見る

     ただただ空を見る。そこには何も無いというのに、飽きもせずに空を見る

     いや、違う

     空には空いがいのものがいる、少女はソレを見てる


     そうソレは……俺だ!

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

     ここまで見て俺は“外”へ出た。ガキの望みが分かった。


     外に出るとダークホールを用意した。寝ている者には基本的に効果のない技だが、これを事前にかけて置くことでより深い睡眠をもたらし、夢を見せている間に目を覚まされる心配がなくなる。
     ガキがダークホールにかかったのを確認すると、俺はまた精神に潜り込んだ。

     良夢、第一の仕事開始だ。

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

     さっきと同じ、どこまでも続く青い空、美しい世界。しかし、地上には誰もいない。少女は今、俺の背中に乗っている。
     俺はムクホークになっていた。
     少女の望みは、空を飛ぶこと。それも、ポケモンに乗って飛ぶことだった。
     望みの叶った少女は歓喜の声を上げ、俺の翼を持って右へ左へ縦横無尽に大空を飛びまわった。
     突然、雲一つなかった空にもくもくと大量の雲が出てきた。
     それは俺の“作った”チルットとチルタリスの群れだ。見上げても壮観な彼らの群れだが、こうして見下ろしてもなお、心震わせるものがある。
    「ねぇ、ムクホーク。すっごくきれいねっ!」満面の笑みを浮かべて少女が俺に話しかけてきた。
     なんと言ったらいいのだろう。俺は奇妙な気分になった。しかし言葉が出ない。口をパクパクさせてはいるもの、声が出ない。
    「ん? どうしたの? だいじょうぶ?」やわらかな声。彼女のやさしさが、その声にまでにじみ出ているようだった。
     その瞬間、喉のつっかえが取れたように感じた。今なら話せる。ずっと少女に言いたかった言葉。


    「落ちろ」


     真っ逆さまに落ちていく少女。
     世界が終った。

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


     第一の良夢、失敗。



    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

    お題「悪」

    以前だしていたものが消え、前半部だけ完成させてもう一度出しました

    え、キリキザンの役柄酷過ぎないかって?

    でも、私、イケズキはキリキザン大好きです! ええ、そりゃもう、心底!

    【描いてもいいのよ】【批評してもいいのよ】


      [No.1285] 幸せな悪夢(導入部) 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/06/04(Sat) 21:35:12     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     森の奥からやって来る黒い陰。「悪夢屋」ダークライに久しぶりの仕事が来たようだ。

     「悪夢屋」という稼業の歴史は長い。その起源は、ポケモンがまだ「魔獣」と呼ばれていた時代にまでさかのぼる。
     その頃の人間のポケモンに対する扱いは酷いものだった。捕えたポケモンは皆、鎖と鎧で拘束されえんえん人間にこき使われた。逃げようとすれば罰として拷問され、刃向えば殺された。不思議な力を持つポケモンのことを人間は便利に使いながらも恐れていたから、見せしめとしての拷問や殺戮は徹底して行われた。完全に抵抗の機会を奪われたポケモン達は、不満を持ちつつも長いこと人間の奴隷として服従を続けていた。
     ところがある日、一匹の悪夢を操るポケモン、つまりダークライが立ち上がった。そのダークライは同族の者を集め、報復として想像を絶する程恐ろしい悪夢を毎夜人間達に見せた。悪夢を見続けた人間達は次々と正気を失い、自ら命を絶つ者までいたそうだ。困り果てたある国の王様が三日月の島と呼ばれる場所で夢の神様、はっきり言ってしまえば、クレセリアにお伺いをたてたそうだ。するとクレセリアは、ポケモン達への行いを改めれば悪夢は無くなると教え、それから少しずつ人間達はポケモンとの関係を考え直すようになった。
     しかし、習慣というのはなかなか抜けないものだ。
     それからもポケモンは事あるごとに痛めつけられこき使われた。だが、そのたびにダークライ達は、その者が悔い改めるまで悪夢を見せ続けた。
     その繰り返しの結果、今に至る。
     歴史上のダークライ達は完全ボランティアで悪夢を見せていたが、今は「悪夢屋」というビジネスとしてある。
     現在の「悪夢屋」は憎んでいても表だって攻撃できないポケモンから依頼を受けて、「悪夢」を見せることで、代わりに人間に復讐する仕事だ。仕事自体は単純なものだが、実際はそんな簡単な話じゃない。仕事の中身が中身だけに日の目をみることもない。

     あの黒い陰、すなわちヨノワールは、ブローカーと呼ばれる類の連中だ。ブローカーは依頼を集めてそれを悪夢屋に持ち込んだり、仕事が円滑に進むよう悪夢屋の必要をそろえる。つまりは、パイプ役兼サポート役というわけだ。
     あのヨノワールは俺の専属のブローカーだ。悪夢屋の誰もが専属を持つわけではないが、俺はブローカー組織から一目置かれているおかげで、あのヨノワールをパートナーにできた。多少抜けた奴だが結構重宝している。

     ヨノワールは俺の元に来るなり、さっそく依頼の説明を始めた。
    「今夜のターゲットは三人だ」
    「ハァ、一か月も仕事を待って、たったの三人か……」
    「そういう時代だ。仕方ない。お前もさっさと隠居して、どこかの人間に着いたらどうだ? ダークライのお前なら引く手あまただろう」
    「そうだな。考えておこう」気のない声で、ダークライが答えた。
     ダークライに人間に着く気はサラサラ無い。彼が悪夢屋をするのは、その需要以上に重要な理由があるからだ。
     ヨノワールは、諦めたように首を振った。
    「私は確かに忠告したからな。後悔しても知らんぞ」
    「余計なお世話だ。ほら、さっさと行くぞ」そう言って先に行ってしまった。

    「すぐに思い知るさ。すぐにな」
     誰もいなくなった森の中、ぼそりとヨノワールが呟いた。

     森を抜けるとそこには二羽のムクホークがとまっていた。ダークライの住処は孤島なので、外に出る時はいつも、海を泳げるポケモンか空を飛べるポケモンが必要になる。仕事で出るときはいつも、このムクホークに乗っていく。飛んで行ったほうが断然早いし、海を渡った先でも移動に便利だからだ。それに、ダークライが船酔いしやすいというのも、理由としてある。
     余談になるが、ムクホーク達は悪夢屋とも、ブローカー組織とも全く関係のない、通称「運び屋」という所から来ている。移動の足は重要だ。悪夢屋・ブローカー組織、どちらか寄りの鳥ポケモンでは、仕事先で衝突があった時、動きを封じられてしまう可能性がある。それぞれで用意しようにも、ダークライはその辺の「コネ」を持っていない。しかも、そうすると用意したポケモンの間で、移動能力(速度やスタミナ)に差が出る可能性がある。それでは危険だということで、事前に「運び屋」をそれぞれの合意で決めておき、そこから移動用ポケモンに来てもらう。

     移動中、ダークライはずっと最初のターゲットの事を考えていた。
     ヨノワールによれば最初は、女の子供だ。
     子供相手は苦手だ。別に無垢な子供を傷つけるのが嫌なわけじゃない。そもそも、依頼が来ているという時点で無垢ですらない。
     子供の恐怖は不安定なのだ。
     悪夢屋はターゲットに悪夢を見せる前に、まず「恐怖のツボ」をさぐる。相手がどんな物事に恐れるか先に調べておき、効率よく悪夢を見せるためだ。ところが子供の場合、そのツボがなかなか安定しない。
     例えば、ゴーストポケモンを怖がる子供に、ヨマワルに追い回される夢を見せるとする。その子供は、初めは恐怖に泣き叫ぶのだが、だんだんと慣れていき、しまいにはヨマワルと仲良く遊んだ夢になってしまう。
     こういったことは普通、対象の誤解から起きる。つまり先ほどの場合なら、実はゴーストポケモンでなく、「ジュペッタ」だけが恐怖のツボだった、というような、ツボの取り間違いが原因だ。
     それが子供の場合、ツボの不安定さによることが多い。それまで怖がっていたのに突然平気になってしまう。子供とは案外、恐怖に対する免疫が強いものなのだ。
     ベテランの悪夢屋であるダークライも、子供相手は成功率が芳しくない。加えて久しぶりの仕事だ。彼は、いつも以上の緊張感を感じていた。

    「着いたぞ」
     そう声をかけられるまでムクホークが徐々に下降していることにすら気づかなかった。


      [No.1284] こんなの絶対おかしいよ 投稿者:音色   投稿日:2011/06/04(Sat) 20:33:07     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     な、何をいってるかよくわからんと思うがとにかくきいてくれ。気まぐれでスキンヘッドを題材にした駄文をポケスト版に投稿してみたんだわ。そしたら来たよ超大物から感想。まさしくポケスト審査員の渡邉健太様だったよ。恐れ多くも御返事を返したらさらにコメントが来てしまったんだ!それも二つも!俺はいったいどうすればいんだ――!

     こんなの絶対おかしいよ (狂喜乱舞してます)

     (ここからコメント返しです)

    > たぶんスキンヘッドの面倒臭さを知らない人が書いたのだろうなとは思いました(笑)。

     まさしくその通りでございます。実際にスキンヘッドの人に会ったことすらないっす(殴
     だってトレーナーにスキンヘッドとか出てくるし・・。それも結構かっこよかったし・・。出してくるポケモンがズルズキンってのにハマっちまいまして・・(おい

    > でも、結果的に悪くない繋がりになっていたので、こういうアイロニーは好きだなあと。

     アイロニーがなんなのか分からなくて辞書を引いた俺はまだまだですね。

    > スキンヘッドについて。
    > 毎日の髭剃りが頭全体になるのですから、とてつもない手間です。
    > 慣れないうちは切り傷だらけで、せっかくのスキンヘッドなのに帽子で隠して過ごす羽目になります。
    > 自分も取材しただけで実際にはやってませんが、帽子で隠すエピソードなんかは驚きと笑いを誘います。
    > 小説を書く際の、取材の重要さを分かってもらえるのではないかしらん。
    > (こんなところに書いても、音色さんしか読まないか。笑)

     ほぉぉ!なるほどそうなのですか!
     ・・となると若かりし頃のスキンヘッドはつねに傷だらけだったんだろうな・・。
     今はきっと手慣れてしまった、という設定を後付けしてみる(こら

    > 新作落語はどうなんでしょう。
    > 聴いた中ではメイド喫茶とか出てきたし、保育所の悲喜こもごもはいい題材じゃないかと。
    > ほかの職員さんや、モンスターペアレンツなんかが出てきたら落語にできそうじゃないですか?
    > あ、別に落語を書きたい訳じゃないですよね(笑)。

     ほうほう。メイド喫茶の出る落語・・最近はすげぇな。俺呑気に古典落語ばっかり読んでるからなぁ。
     あー生のを聞きに行きたい。

     ・・・ところで、渡邉様、何故俺が落語大好きだという事を見抜かれましたかな・・?
     ここまで言われたら書いてやる。ていうか書きたい。むしろ自分でやりたいポケモン落語。
     オフとかで披露してみたりしてみたいじゃない(超願望(爆

    > コンテストもおつかれさまでした。

     お疲れさまでした!いやー、渡邊様のコメントが的確でとても助かります(笑

    > 「鏡嫌い」を書き上げるのは、ものすごく根気が要ったと思います。
    > 言葉の表記も、一字空けも、なかなかできるもんじゃない。

     ・・あー、あれはその・・一回完全ゲーム調にしようと思って全部ひらがなカタカナオンリーにしたんですよね。
     で、一回猛烈に字数オーバーをしちまいまして(笑)漢字変換を地道にしていった結果あっちこっちぼろぼろ誤字脱字ができ始めて・・3回は読んだのにまだまだ駄目だな俺は・・。
     一応、半日で書いて半日で変換作業しまして(笑)春休みを盛大にぶっ潰し春課題を完全放棄してあれができました(爆

    > 児童文学が好きで、いまだに読んだりもするのだけれど、
    > あの平仮名ばかりの文面は大人になると読みにくい。

     子供向けの本って堂々と人前で読みづらいよな―とか思いながら図書館から大量に借りて読んだりしてます(爆
     なんか、自分で絵本作ったら分かるんですけど、単純な言葉でお話を紡ぐのって死ぬほど難しいんですよね・・。

    > だけど「鏡嫌い」では句読点の排除だとか、通常の散文のルールから逸脱して成功している。
    > その上、(なんだこれは)という驚きも生まれる。

     自分も読み返して「なんじゃこりゃ」となったくせに応募する俺って一体(爆)

    > これは普段、一字空けを好まない歌人だからなのかもしれませんが。
    > 自由律の詩を書いている人の意見も聞けたらいいですね。

     ・・ちなみに俺、俳句や短歌は気が向いたら読んだりしてますが(もちろんただの趣味)
     詩は一回も書いたことないっす。ホント。

     ・・なお、ここで白状致しますが・・『鏡嫌い』はあれその・・実は小説(の皮を被った駄文)のプロットなんすよね・・
     結構昔にノートに書き始めて微妙に進んでいないお話しのプロットをザーっとゲーム風味に書いてみただけ・・だったりします(殴
     よくそんな代物応募したな俺・・。
     タイトルも完全適当(殴)  思いつかなかったとか言い訳にできねぇぞ・・?おい・・
     本当は結構いろいろな書き方を試してみたんですがどれもこれもうやむやっとなってしまい・・最終的に「でぇぇいもうままよ!これでどうじゃぁぁぁ!」と書いてみて完成(?)したのがあれです
     もうあれ肉付けする気力ないぞ・・(爆

    > 自分はNo.017さんの個人的な友人で、たまたま面白そうだからとコメントを書いているだけです。
    > 特に文壇に業績とかもないし、小物なのでいろいろと恐縮です。
    > 「またあの審査員、偉そうなこと言いやがって」くらいの扱いで大丈夫です(笑)。

     渡邉様からコメントがくるという事は俺にとってどれだけの大事件に相当するんだろう・・
     コメント本当にありがとうございました!


      [No.1283] びっくりでした。ありがとうございます。 投稿者:スウ   投稿日:2011/06/04(Sat) 19:56:34     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    はじめまして、感想をありがとうございます。
    正直言うと、このような形で返信が来るとは予想してなかったので、驚きであり、嬉しいことです。
    しかも前回の作品を覚えててくれたのですね。指摘されるまで気付かなかったのですが、確かに消えているようです……。
    オーキドという存在はいつも不思議に思います。この博士の思惑にそってシナリオが進行しているような。
    せりふ一つで色々なことが可能のようですね。
    ポケモンの世界は仕掛けがいたるところにある迷宮みたいです。

    以前書いた短編集、ロングの方にまた投稿しておきました。
    ムテヒヌー・オスカー氏に関しては、また別の形で、何らかの話に登場させることができればと考えています。

    それでは本当にありがとうございました。
    またよろしくお願いします。


      [No.1282] そういえば、 投稿者:渡邉健太   《URL》   投稿日:2011/06/04(Sat) 19:14:32     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    コンテストもおつかれさまでした。

    「鏡嫌い」を書き上げるのは、ものすごく根気が要ったと思います。
    言葉の表記も、一字空けも、なかなかできるもんじゃない。

    児童文学が好きで、いまだに読んだりもするのだけれど、
    あの平仮名ばかりの文面は大人になると読みにくい。
    だけど「鏡嫌い」では句読点の排除だとか、通常の散文のルールから逸脱して成功している。
    その上、(なんだこれは)という驚きも生まれる。

    これは普段、一字空けを好まない歌人だからなのかもしれませんが。
    自由律の詩を書いている人の意見も聞けたらいいですね。

    今後も面白い作品を楽しみにしております。
    __

    あー。
    自分はNo.017さんの個人的な友人で、たまたま面白そうだからとコメントを書いているだけです。
    特に文壇に業績とかもないし、小物なのでいろいろと恐縮です。

    「またあの審査員、偉そうなこと言いやがって」くらいの扱いで大丈夫です(笑)。


      [No.1281] Re: うそん/ほんと 投稿者:渡邉健太   《URL》   投稿日:2011/06/04(Sat) 18:55:28     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どーも、こんばんは。

    たぶんスキンヘッドの面倒臭さを知らない人が書いたのだろうなとは思いました(笑)。
    でも、結果的に悪くない繋がりになっていたので、こういうアイロニーは好きだなあと。

    スキンヘッドについて。
    毎日の髭剃りが頭全体になるのですから、とてつもない手間です。
    慣れないうちは切り傷だらけで、せっかくのスキンヘッドなのに帽子で隠して過ごす羽目になります。

    自分も取材しただけで実際にはやってませんが、帽子で隠すエピソードなんかは驚きと笑いを誘います。
    小説を書く際の、取材の重要さを分かってもらえるのではないかしらん。
    (こんなところに書いても、音色さんしか読まないか。笑)


    新作落語はどうなんでしょう。
    聴いた中ではメイド喫茶とか出てきたし、保育所の悲喜こもごもはいい題材じゃないかと。
    ほかの職員さんや、モンスターペアレンツなんかが出てきたら落語にできそうじゃないですか?

    あ、別に落語を書きたい訳じゃないですよね(笑)。


      [No.1280] あちらの世界にありそうな物 投稿者:紀成   投稿日:2011/06/04(Sat) 17:44:29     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    まずはカフェ、ドリンク

    ・レシラム

    ご存知GEK1994でいうミルク。アイスミルクは『キュレムレシラム』ミルクコーヒーは『レシラムゼクロム』になる。ジョウトから産地直送のミルタンクのミルクらしい。

    ・ゼクロム

    GEK1994のブレンドコーヒー。苦いような酸っぱいようなの絶妙な味で人気。

    ・キュレム

    冷やすことを言う。関係ないけど時々名前が長すぎて注文しにくいというクレームがくる。

    ・サンダース

    ジンジャーエールのこと。一気に飲むと大変なことになる。

    ・シャワーズ

    サイダーのこと。迷いの森にある新鮮な水を使っているとかいないとか。

    ・イーブイ

    ココアのこと。カップの中心に巻かれたクリームが特徴。

    ・フリージオ氷

    そのままフリージオの形の氷。本人の前で噛み砕いてはいけない。

    他にもあるかもね


    食品1

    ・ダルマッカとヒヒダルマのパスタ

    マトマの実を使った激辛パスタ。ダイエットにいいということで、女性に人気。

    ・ノクタスサンド

    とにかくそれらしい物を…と考えた結果。緑色の木の実とオリーブを挟んである。

    ・ピカチュウのオムレツ

    そのまんま。目はオリーブ、ほっぺはケチャップ。中身を変えればオムライスになる。

    ・チュリネのサラダ

    苦い。とにかく苦い。だが体にいい。苦いのが好きなポケモン向け。

    ・サブウェイサンド

    裏メニュー。知る人ぞ知る商品。サブウェイマスターの噂を聞いたユエが試しに作ってみた。
    白はクリームチーズ、黒はブリーの実のジャム。

    まだあるけど忘れた(

    おやつ

    ・三猿棒アイス

    それぞれ抹茶、アセロラ、サイダー。音色さんすんません

    ・ランクルスゼリー

    夏季限定。ライムのゼリーとサイダーと中にグミとか。作っていただいたことがある。

    ・ビクティニチーズケーキ

    ネタをいただいた。注文する時に言えば+百円でアップルチーズケーキにしてくれる。

    ・サクラビス餅

    俗に言う桜餅。春季限定。ヒレ部分は紫の小花の砂糖漬け。長い。

    ・クッキー色々

    簡単な形の物なら大体ある。小さいポケモンとか。

    ・キャンディー類

    アーケオス、クリムガン、ミロカロスなど、カラフルなポケモンをモチーフにした棒キャンディー。
    色々増える予定。

    ・ユキカブリカキ氷

    宇治金時。今年出す予定の夏季限定商品。間違っても氷を服に入れてはいけない。

    ・ペンドラーパイ

    ベリー系のパイ。間違っても人に台ごと投げてはいけない。


    グッズとか

    ・レシラム・ゼクロムカップ

    白と黒のカップ。持ち手はそれぞれの羽の形になっている。飲み干すと底に『もえるーわ』『ばりばりだー』とプリントされている。

    ・キュレムタンブラー

    お冷とか出る時使う。『ただのタンブラーじゃん』と言ってはいけない。底に薄く『ひゅららら』とプリントされているが、気付く人があまりいないことが悲しい。

    ・ディアルガ・パルキアコースター

    ミドリがデザインしてくれた。彼らの胸部が元になっている。ひっくり返すと裏に『ぐぎゅぐばあっ』『ぱるぱるぅ』とプリントされている。
    彼女や彼氏と来る時にひっくり返してはならない。吹くから。

    ・製氷皿

    フリージオ氷を作るために必要不可欠。オーダーメイドのため失くすとユエにこれ以上無いってくらい怒られる。


    ネタグッズ

    ・シザリガー鋏

    ユエがエプロンのポケットに入れている。はっきり言って使いにくい。

    ・ジャローダボールペン

    ミドリ愛用。尻尾がノック部分になっている。本人曰く、『デザインはいいけど使いづらい』

    ・マメパトマウスパッド

    レイナさんが使っている。ハート部分は本物のマメパトの毛を使っているとかいないとか。もふもふ。

    ・クリムガンジャージ

    ミスミがよく着ている。色が色なので汚れが目立たなくていい。

    ・シェイミプランター

    マスターの部屋の窓際にある。ランドverとスカイverがある。


    もっとありそうですね!

    [書いてもいいのよ]
    [描いてもいいのよ]


      [No.1279] clumsy twosome(逆) 投稿者:でりでり   《URL》   投稿日:2011/06/04(Sat) 12:25:55     33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ※(逆)とありますが、ポケスコに出した作品とは無関係の内容となっております。


     あたしはあいつが嫌いだ。
     正確には、あたしはあいつが嫌いだった。
     中学校のときに違う市から越してきた、あの男。
     一見頼りないように見えるのに、案外物怖じすることもなくどこにあるのか知らないけれどもガッツをしっかり持っている。
     当時、ポケモンバトルの部活では群を抜いて一番強かったあたしに挑戦してきたあいつに対し、あたしは完膚なきまでに叩きのめしてやろうとした。それなのに。あいつはむしろ、そんなあたしの目論見を完膚なきまでに叩きのめした。
     結果は引き分けだった。あいつのゴルダックも、あたしのニューラも持てる力を出しきったが、二匹とも同時に力尽きたのだ。
     あたしは驚いた。この辺りであたしに敵うヤツなんて一人もいなかったから、自身の不動の地位が崩れることが怖かった。
     予想通り、たった一度の引き分けでポケモンバトルといえばあたしという方程式は崩れていった。
     悔しいし、憎かった。我が物にしていた自分の人気が半分とはいえ盗られることが。でも、バトルしてるときのあいつは普段のただのかっこつけからは想像もつかない真剣な眼差しで、なんというか、ちょっとかっこよかった。
     そのまま高校生になった。高校でもポケモンバトルの部活だったあたしたちは時折本気で戦った。大概は引き分けで、たまに勝ったり負けたりがあれども結局勝率は五分五分。憎いという感情は徐々に薄れ、互いに切磋琢磨し合うライバルになっていった。
     そして同じ大学に入学し、やはり同じポケモンバトルの部活に入った。
     ハイレベルで刺激的な環境に自身のレベルアップも感じたところで、たまたまあいつと練習試合をすることになった。死力を尽くして戦い続けたが、結果はまたしても引き分けだった。
     自分だけじゃなくあいつもレベルアップしてるかもしれないということは分かっていたが、自信があっただけにこの結果は不満足だった。
     半年が過ぎ、二回生になった春。次の団体戦に向けて勤しむ日々が続くある日、ミーティングの後にコーチに呼び出しをうけた。何も呼ばれる心当たりがない。何事かと思ってコーチの個室に入ると、そこにはコーチだけでなくあいつもいた。
    「さて、お前らに話があるんだが、由衣と悠二。お前らでマルチバトルやってみろ」
    「え! あたしと悠二がですか!?」
     あたしが急に大声を張り上げたからか、コーチと悠二の方が驚く。コーチは一つ咳払いを挟む。
    「嫌なのか?」
    「えっ、あっ、いやべべ別に嫌とかじゃあないです」
     そう聞かれて、本人の前で嫌なんてのは言いにくい。コーチはどっちつかずのあたしの回答に眉を潜めた。
    「なんだなんだ、分かりにくくてめんど屈斜路湖だぞ」
    「はぁ」
     真面目な話をあたしがリアクションを取ったために空気を壊したのは謝るが、コーチまで空気を壊さなくても。咳払いをしても誤魔化せない。
    「悠二はどうだ」
    「俺は問題ないです」
    「じゃあ決まりだな。それだけだ」
     コーチはそう言うと、あたしたちの間を通り抜けて部屋を出た。その後を追うようにあいつも部屋を出る。ただ一人だけあたしが部屋に残されて、二人がくぐった扉を見つめていた。
     どうしよう……。
     あたしにとってあいつは敵、打ち倒すべき存在であった。初めての引き分けという、勝敗が定まらずに悶々と苦しんだあの日からずっとそうだった。
     それがマルチバトルのパートナー。
     その日の夜、自宅に帰ってすぐベッドに転がり込んで、そのことを考えながらリングマドールを抱き締めたり、あるいは殴ったりとこのもどかしさをなんとかしようと必死だった。



     翌日、なんとなくあいつを避けてるあたしがいた。
     廊下ですれ違いそうになると人混みの中に紛れて気付かれないようにしたり、食堂でも出来るだけあいつから離れた席に座った。
     どうしてこんなかくれんぼみたいなことをしてるんだろう。もやもやした気持ちで受けた午後の講義は、これ以上ないほどに憂鬱だった。
    「春の団体戦まではもう少しだ、気を引き締めて行くぞ!」
    「はい!」
     春の団体戦は大学ポケモンバトルにおいては夏の大会と双璧を成す重要なものだけに、部員達の士気もとても高い。ただ、あたしだけは複雑だった。
    「由衣、悠二。とりあえずそこの一年ペアと練習試合だ」
     年が一個下の男同士の一年ペアは、もう数年に渡って組んでいる仲良しペアだ。とはいえまだこの部には入ってきたばかり、あくまで高校レベルの実力。
     実力? ……そうだ、良いことを思いついた!
     二人を相手にあたしが一人でぼこぼこにしちゃえば、きっとコーチもあたしをシングルで起用することを考えるはず。それがいい!
     今までやる気が沸かなかったのに、目標が決まると俄然その気になってくる。
    「審判は俺がやる。まああくまで練習だからそれぞれ一匹ずつだ。フリーグラウンドとはいえ天井や壁は壊すなよ」
     互いに立ち位置に立ち、使うポケモンをスタンバイする。そのとき隣のあいつが声をかけてきた。
    「なあ、由衣」
    「何よ。気が散るから話しかけないで!」
     ややきつめな口調で言うと、あいつはまだ何か言いたげだったが、口を閉じて前を向いた。せっかく人が、このバトルでどうパートナーのマニューラを動かすか思索することに集中してるのに、話しかけないで欲しい。
    「始めっ!」
     コーチの一言で四つのボールがグラウンドに放たれる。ボールが開ききる前に先に指示だ。
    「マニューラ、正面に猫だまし!」
     ボールから飛び出るように、真向かいに今現れたばかりのカイリキーにまずは一発決めつけた。あいつのポケモンはエルレイドで、相手のもう一方はアーケオス。相性は不利だ。とにかくカイリキーが怯んでいるうちに追撃をしなくては。
    「カイリキーに冷凍パンチ!」
    「よし、今だ、啄む!」
     ふらついているカイリキーにマニューラが振りかぶって一撃食らわそうとする。そこに、アーケオスが横からマニューラ目掛けて急降下してくる。思ってるよりもアーケオスが素早い、予想外の展開だ。
    「辻斬り!」
     そのアーケオスのさらに横からあいつのエルレイドが伸びる肘刀でアーケオスを弾き飛ばす。
    「油断するなよ!」
    「してないって!」
     図星だったからこそ、余計に今の一言が苛立ちを加速させる。勝手に動いてくれるの結構だけど、邪魔だけはしないで!
     あいつのせいで集中力を削がれているうちに、いつの間にかカイリキーの姿が消えていた。マニューラも辺りをきょろきょろしている。そしてアーケオスもようやく立ち上がって羽ばたこうとしている。そんなときだった。
    「エルレイド、マニューラにサイコカッター!」
    「えっ?」
     邪魔するなと思ったばかりにこの指示だ。頓狂な声を思わず上げたときには、すでに放たれた念波の刃がグラウンドを抉りながらマニューラの背中に向かって飛んできた。
     と思ったところ、突如マニューラの後ろの地中からカイリキーが現れた。サイコカッターはそのカイリキーにヒットし、痛手を負わす。
    「どうした。しっかりしろ、らしくないぞ!」
    「う、うるさい!」
     ら、らしくない? 一体あたしの何を知っててそう言うのよ。余計に腹が立ってくる。
    「マニューラ、アーケオスに氷のつぶて!」
     マニューラが飛び上がりのアーケオスを狙った渾身の一撃は、アーケオスに直撃した。と同時にアーケオスの姿がすっと消える。身代わりか。気づけば本体はすでに天井近くまで飛んでおり、そこからトレーナーの指示を受け、急降下してグラウンドを揺さぶる一撃、地均しを放つ。
     まともに喰らった三匹は揺れる足場に身動きが取れなくなる。そこに低空飛行でアーケオスがマニューラに突っ込んできた。
    「マニューラに鋼の翼!」
     翼を精一杯広げて飛び込んでくる。避けるのは厳しそう、どうせ喰らうならこっちも覚悟を。
    「アーケオスに不意打ち!」
     なんとか体を動かして死角に潜りこもうとしたマニューラに対し、アーケオスは広げた翼を折り畳み、守りの体制に入った。すぐそばでカイリキーはもうマニューラの間合いに踏み込んで右手を振りかざしている。格闘タイプに弱いマニューラがそれを受けたらとてもじゃないが一発だ。
     危機を感じたそのとき、アーケオスの背後に突如現れたエルレイドが、翼の合間を潜って左手で腹部にアッパーカートを食らわせて、右手で放ったサイコカッターがマニューラを弾き飛ばす。
     マニューラが弾き飛ばされたことでその奥にいたアーケオスがカイリキーの爆裂パンチを受けた。フェイント攻撃で守りの体勢を崩されたためにクリティカルヒットだろう。アーケオスはすぐに戦闘不能の判定を取られた。
    「ちょっと、あたしのマニューラに何するのよ!」
    「カイリキーのあれを喰らうよりは遥かにマシだろ!」
     確かにマニューラは悪タイプだから、サイコカッターを食らってもダメージを受けないけども、あんな風に自分の手持ちが攻撃を食らわされたんだから不快にならざるを得ない。
    「瓦割り!」
     そんなことを考える余裕もなく、カイリキーがマニューラに攻めようとする。
    「冷凍パンチ!」
    「馬鹿っ、向こうの方が早いぞ。くっ、マニューラを庇え!」
     カイリキーとマニューラの間に入ったエルレイドが背中で瓦割りを受ける。そして両腕を後ろに伸ばし、肘刀でがっちりカイリキーの動きを押さえつけた。そして動けなくなったところをマニューラが冷凍パンチを食らわす。トドメの一撃に、エルレイドの至近距離からのサイコカッターを受けてカイリキーは戦闘不能の判定を受ける。
    「とりあえずは勝ち、ってところだな……」
     あいつの言う通り、とりあえず勝ったのは勝った。でも興奮が冷めて落ち着いて考えたら、ずっとあたしがピンチを招いていて、あいつに全てフォローされている。一人でなんとかするどころか完全に足を引っ張っているだけじゃない。よりによって、あいつに助けられるなんて。負の感情が悶々と募り始めて急に気分が悪くなる。
     その後すぐに、コーチに体調が悪いと嘘を言ってスタジアムから、あたしを心配するようなあいつの視線から逃げるように出た。



     スタジアムの傍にある校舎の、非常階段の踊り場近くの段差に座って、一人こっそり膝を抱えてうずくまっていた。
     泣いてはいない。泣いてはいないけど……。
    「嫌になっちゃうな……」
     これまではせめてもの横に並んだ対等な関係が、助けられたことによって自分が下になる。今まで築き上げてきた信念と、抱えてきたプライドが、今まさに瓦解しようとしていた。
     それは身が引き裂かれる程の辛さで、このまま殻に閉じ籠りたいくらい。
     このまま消えちゃったらいっそ楽なのになぁ。
     現実から背を背けているのはわかっている。でも、そうでもしないとこの苦しみに押し潰されてしまいそうになる。
     顔をより膝に埋(うず)めたとき、背後から声がかかった。
    「やはりここにいたか」
     後ろを向き顔を上げると、上の段からあいつが降りてくる。そして図々しくも同じ段差の、あたしの右隣に座ってきたから若干左に体を動かし、再び抱えた膝に顔を埋める。
    「ひどい嫌われようだな」
     あいつは力なく笑ったが、それ以上あたしに近付こうとはしなかった。
    「……なんでここが分かったの?」
     目の前のアスファルトに自分の声がよく跳ね返る。自分で口にしながら、それを確認するかのようだ。
    「俺なら、ここに来たからな」
    「何よそれ」
     あたしのことならなんでも分かる、そんなことを言わんとするところが不愉快だった。勝手に理解したつもりでいて欲しくない。
    「実際分かるよ、お前のこと」
     そう言ってあいつは缶ジュースをポケットから取り出しあたしの手の届くところに置いた。
    「俺もお前も考えてることは一緒さ」
    「一緒って?」
     ようやく顔を上げたが、正面しか向かない。あいつの方を見たくなかった。
    「そうだな。俺だって中学のときに引っ越して来て、自慢のポケモンバトルで学校のてっぺんに立って良い顔したかったのに引き分けだ。俺すごい悔しかった」
     そんな話を聞くのは初めてだった。ポケモンバトルで周りからちやほやされたかったのに、引き分けて苦しんだ。確かに、あたしと一緒だ。ようやく隣のあいつを見ると、優しく微笑んでいるあいつの顔があった。どうしてか反射的にまた顔を膝に埋める。顔が火照って来たのは、日光によって熱せられたアスファルトが放つ熱気のせいだと信じたかった。
    「そこから努力して努力して、それでまたお前と戦っても決着つかなくて。それで、俺とお前は一緒だって気付いたんだ」
    「ど、どう一緒なのよ」
    「お互いに意地っ張りで良いかっこをしたがるとこが」
     そう言われたけどあいつが意地っ張りなどと言われてピンと来なかった。驚いてあいつの方を向いたけど、今度はちゃんと直視出来るようになった。そしてそこについてあたしが聞く前に、あいつから話を続ける。
    「そういう風に振る舞ってないだけで、本当は俺もそうなんだよ」
    「へ、へぇー」
    「いつまでも素直じゃない奴だな。まあいいや、せめてジュースくらいはぬくくないうちに飲んどけよ」
     あいつはあたしの手に無理やり缶ジュースを押し付けてきた。仕方ないから受け取ると、あいつは立ち上がる。
    「さっきのマルチバトルだって、俺もシングルで出たいからお前を出し抜くつもりだった。でも戦っててさ、マルチも悪くないと思ったよ」
    「どこが……」
    「ようやくお前にも良いかっこが出来たとこ」
    「なっ!」
    「嘘。いや、全くの嘘じゃないけどそんなに怒るなって。……楽しかったんだ。今まで向かい合うことしかなかった俺たちだったけど、隣同士にいるのがこんなに良いもんだって、出会ってもう何年も経った今、ようやくわかったんだ」
     黙ってあいつの言葉を聞いていた。その言葉は耳だけじゃなく、体の奥まで響くようで、なんだかくすぐったくて心地よかった。
     そこから少し、沈黙が続くと、あいつはあたしに背を向けた。
    「……一回だけだったけど、楽しかったよ。俺からコーチにダメだった、って伝えれるから」
     あいつは右手をすっと上げて、そのまま階段を降りようとする。そのとき、考える前に瞬間的に体が動いた。
    「待って!」
     あいつが振り返る。あいつもきっと驚いてるけど、それ以上に呼び止めたあたし自身が一番驚いている。心臓がいつもより早く鼓動を打って、指先まで熱くなる。
     でも、今を逃すときっとこのあと言えなくなる。そしてたぶんそのことに後悔する!
     あいつみたいに意地っ張りという殻を破って本当の気持ちを伝えなきゃ! そのチャンスはきっと今なんだ!
    「本当はさ!」
     遠くで聞こえた他の人の声、騒音が消えて、視界にはあいつしか映らなくなる。鼓動はさらにスピードを上げて、体も余計に熱を帯びる。心の奥から気管を通って口から気持ちが溢れそうになる。言っちゃえ! 言っちゃえ!
    「あたし、本当はさ!」
    「ど、どうしたの?」
     いよいよあいつが心配し始める。そして、今まで凝縮していた気持ちが弾けるときが来た。
    「マルチバトルで助けてもらって、嬉しかったし、なんていうか、その楽しかった。だからまたあたしと組んで!」
     頭の中が使いすぎたパソコンの電源が落ちたように、真っ黒になった。
     それでもあいつの笑った顔はしっかり捉えた。こんなにまじまじと見つめ合ってるのは初めてで、それが一瞬だったのかそれとも何分も続いたのかはわからない。
    「ああ、もちろんこちらこそだ!」
     ようやく現実に戻ったら、あたしの目の前にはあいつの右手が伸びていた。
     あたしは右手を握り返し、汗をかいた缶ジュースを左手でとって、二人並んで歩き始めた。
     いつか共に歩き続けた先で、今度こそ本当の気持ちを伝えれるときが来たら、いいな。



    ───
    【リア充爆発していいのよ】

     とりあえずこの作品や通常版についての自己反省とか

     これは通常版を書いた二三日後に書いた作品。そこから推敲してないので、今回の反省は全く活かしてません。これも大学生の必要ないですよね。
     で、通常版なんですが最後が急ぎ足になった点、主人公が大学生である必要がない点、インパクトがない点(笑)には書きながら思ってました。以下見苦しい言い訳です。
     一応二番目は、会長=あの夏の主人公っていうのを出したくて(手持ちがエレキブルとか)大学生になったんですが、題材のせいかあまりにも太一の精神年齢が低すぎて、終始迷ったんですが変えるのめんどくてまあいいかってなりました。
     一番目の急ぎ足は分かっていながら、「じゃあどうすればいいのよ」という問いから答えを導き出せず、諦め気味になりました。
     最後のインパクト無いに至ってはわたしの短編作品全てに言えることです。こればっかしは本当にどうしようもないです。
     つまり結局は自分で納得、満足のいく作品を出せてないってことなんですよね。そんな作品を見せてしまって本当に申し訳ありません。ただ反省文をうpるのも失礼かと思ってこれまた稚拙な作品とともに書かせていただいた次第です。
     最近のわたしはどうも「コンテストとかがあるから作品を書く」という傾向が強すぎて、自分が本当に書きたいものは何なのか。自分が満足いく作品とは何なのか。が全く見えていないのです。
     いわゆるスランプです。あ、長編のほうはスランプじゃないので。
     とりあえず短編につきましては、これでしばらく(期間的にはよく分かりませんがそれなりに時間を置くつもりです)筆を置かせていただきます。

     次にここで会えるときは、必ず自分で満足いく作品を皆様に披露したいと思うばかりです。


      [No.1278] ちょっとイレギュラーな出会いと顛末 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/06/04(Sat) 07:30:53     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    ※オリジナルの地名が出てきますが、読み進める上で問題はありません。
     問題ないはず、うん。



     祭りの熱気に浮かれるニシカの街を、首に空色のスカーフを巻いたイーブイが一匹で歩いていた。
     彼の名はアル。普段はパートナーの人間と共にあちこち旅をする身だが、今日は暇(いとま)を貰って彼一匹で来ている。パートナーの彼女曰く、「いつも私の近くにいる必要ないんだよ。たまには離れて散歩でもしといでよ」というわけで、アルは同胞たちとも別れ、一匹きりで街を歩いていた。
     ニシカにある大学が今日は学園祭だそうで、あっちこっち、構内から出て道の方にも模擬店の屋台が出ている。ソースの濃い匂いやら、リンゴ飴や綿あめの甘ったるい匂いやら、食べ物の匂いが目くるめく――鼻くるめく移っていって、ブラブラ街を歩くだけで楽しい。アルの目の高さに小物や飾り物、それにきのみなんかを置いてある店もあって、目の方も十二分に楽しめた。別に、パートナーや同胞たちといて息が詰まるということはない。けれど、こうして誰かの前や後ろを歩かず、一匹気ままに歩くのも、たまにはいいかもしれない。
     アルはそんなことを考えながら、でもやっぱり皆でわいわい騒ぎながら歩くのも恋しいかな、なんて思いながら、祭りに集まってきた喧騒をスイスイとくぐり抜けていた。人だかりが薄まる方へ行って、また小物や飾り物の置いてある店の前に出た。店の人は小さな石を連ねたブレスレットの商談にかかっていた。それを邪魔せぬように、アルはそっと人の隙間を通り抜けた。その隣、きのみの置いてある店の方から甘い匂いが漂ってくるのを感じて、アルは、そういえばお腹すいたな、と思った。
     太陽はまだ一番高いところまで昇りきっていない。お昼ご飯にはまだ少し早いかもしれない。でも、アルはずいぶん歩き回っていたのでお腹が減っていた。それに、お小遣いとして、パートナーからきのみの一つぐらい買えるお金は貰っている。どうしようかな。首元のスカーフと自前の襟巻きに引っかかるようにして、金臭いコインがぶら下がっている。太陽は明るく照っていて、これからぐんぐん暑くなりそうだ。
     よし決めた、とアルは呟いた。きのみには日除けがしてあるし、保存も効くらしいのだけれど、暑さにやられて味が悪くなる前に買って食べるに如くはない。そんなことを考えて、本当は一匹で買い物をするという経験を早くやってみたかっただけなのだけれど、とにかくアルは一歩前に出て、きのみの店の主が気付くよう、声を出そうとした。
     とそこで、店の隅の隅、きのみが籠ごとに分けられたその影で蠢いているそれを発見した。

     それは行儀悪く、体ごとモモンの実の籠に突っ込んで中身を漁っていた。柔らかいモモンは浅い籠に広げるようにして置いてあったから、それにも手が届いたのだろう。ぴちゃぴちゃとモモンの果汁が四方八方に飛び散り、甘ったるい匂いがそこから拡散して、アルの鼻は砂糖の霧に迷い込んだみたいに麻痺してしまった。
    「何やってんの?」
     アルが甘い匂いに目をショボショボさせながら、それに問うた。それは今取りかかっていたモモンの実から顔を上げ、アルの方を真っ直ぐ見た。
     茶色い体に白の襟巻き、狐のような大きな尻尾。特徴を見ればアルにそっくりだし、それはアルと同じ種族のイーブイであることは間違いなさそうだった。けれど、
    「……小さい」
     思わずアルはそう呟いていた。
     アルもイーブイとしては小柄な方で、平均の半分かそれぐらいしかない。しかし、目の前にいるイーブイはアルよりもっと小さかった。高々十センチかそこら、人間の手の平に軽々と乗っかりそうな大きさだ。
    「ノナゥは小さくてもいいんでしよ!」
     ぱっとそれが声を上げた。耳が痛いくらい高い声で、キャンキャン騒いでいた。
    「小さいからちょっとくらいつまみ食いしてもバレないじょ」
     そう言って、再び眼前のモモンの実を食らう作業に舞い戻る。
    「ちょっと、つまみ食いなんていけないだろ」
    「いいんでし。バレても“甘える”とか“嘘泣き”とかすれば誤魔化されるもんね」
    「ダメだったら! お店の物、勝手に食べちゃ!」
     アルが声を大きくした。それに気付いたのか、お店を出している人間がアルたちの方へやってきた。
    「ノナゥ、知ーらない」
     話し方からして恐らく一人称も名前も「ノナゥ」というらしい、小さなそれはモモンの籠の中でそっぽを向いた。明らかに現行犯である。人間もそれが分かったらしく、アルの方を一旦見てから、ノナゥを籠からつまみ上げた。
     それでもノナゥは肝が座っているというかいけ図々しいというか、人間の文字通り手の上にあって、焦りの顔も見せずそっくり返っていた。その余りの図々しさに、思わずアルが飛び出して「ごめんなさい」と言っていた。
    「こいつ、ちょっとルールとか分かってないみたいなんだ。オレが後でちゃんと教えとくから」
     ポケモンの言葉は人間には通じないけれど、アルは声を張り上げてそう伝えようとした。人間は気のない声でふん、と言った後、手の上のちびを指先で撫で始めた。
    「ごめんなさいでし。お腹がとっても空いてたんでしよ」
     何故だか人間の言葉を流暢に離すちびイーブイがそう言うと、人間は「仕方ないなあ」と言う代わりに顔を綻ばせていた。
     それを吉とばかり、ノナゥは小首を傾げて「悪いことをしたのは分かってるけど怒られたら困るなあ」みたいな顔を作ってみせた。目もちょっぴり潤んでいる。なるほど、先に言った通り“甘える”や“嘘泣き”で誤魔化すわけか。そうは問屋が卸さないはずが、あっさりと人間はノナゥを手の平から下ろし、「もう盗み食いするなよ」と言って放免してしまった。
    「分かったでし」
    「あと、これ」
     サービスだよ、と言って人間がモモンの実を一つノナゥに渡した。体ほどもあるきのみを受け取ってフラつきながら、ノナゥは「ありがとでし」を連呼していた。
    「ほら、君にも」
     人間が事の次第をずっと見ていたアルにも、モモンの実の餞別を寄こした。アルが首を横に振っても、「いいから」と譲らない。せめてもの埋め合わせに、スカーフに挟み込んであった硬貨を籠の中に落として、モモンの実を入れ替わりにスカーフに挟み込んだ。
    「モモンの実、ありがと……あ、こら、ちょっと!」
     事の発端になった癖に、平然とその場を後にするちびを追っかけて、アルも祭りの喧騒から離れる方へと駈け出していった。

    「なんで追いかけて来るんでしか?」
    「なんでって……」
     ノナゥはニシカの大学から外れた方、普段から人通りの少ない路地の端っこに座っていた。
     先程貰ったモモンの実はノナゥの口元と匂いにその痕跡を留めるのみになっていた。この小さな体のどこに入っているのやら。呆れながらもアルは用件を口にした。
    「あのさ、あんな風に他人の物を勝手に食べちゃいけないよ? 今回はたまたま許してくれたけど、いつだってそうとは限らないし、それに行儀が悪いよ」
    「ノナゥは誤魔化せるでしよ」
    「そうじゃなくてさ」
     アルの説教に飽きたらしく、ピコピコと歩き出したノナゥの横に並びながら、アルは言葉を続けた。
    「君さ、人間の言葉が上手だし、人のポケモンだと思うんだけど。やっぱり、だったらさ、いけないよ、盗み食いするのは。ノナゥは気にしないかもしれないけど、オレは、人のルールを守るのは大事だって思うよ。オレたち人の傍で生きてるわけだしさ」
     ノナゥの耳がパタパタ揺れた。聞いているのか、聞いていないのか、その丸くて黒々とした瞳からは判断が出来ない。
    「ノナゥがルールでし」
     ちびはそう言って、道の真ん中にぽんと飛び出した。そして、たまたま通りがかった女の子の気を“甘える”のと同じ要領で引いて、その手に持っていたモモンの実をぱっと取り上げ、すかさず飲み込んでしまった。
    「ちょっとノナゥ――」
    「何すんのよ、このチビ!」
     女の子というのは仮の姿で中に雷親父でも入っているのかと見紛う剣幕で、女の子はスカートがまくれ上がるのも構わずノナゥを踏み付けた。容赦のないスニーカーの平底がノナゥを襲い、その一撃でノナゥはきゅうとなった。
    「ああ、もうどうしよう!」
     ノナゥを踏み付けた女の子は、今度は真っ青になって細い路地の方へ入っていった。尋常ではない様子だった。
     気になったアルは、ひんし状態で道に転がっていたノナゥを口に加え、スカーフにモモンの実が挟まっているのを確認してから、女の子が消えた方へ、電光石火で駈け出していった。

     路地の奥の方には、たくさんのゴースと、一匹のムウマがいた。ムウマを心配そうに見つめる女の子の、遥か上の方にゴースがかたまっている。女の子もゴースたちも誰もが困り顔で、その渦中のムウマだけは、ただただ苦しそうに息を吸い、吐き、していた。顔色がおかしい。妙に赤紫がかっている。毒を食らっているのだ。
     ムウマたちに近付こうとしたアルの前に、ゴースたちが立ち塞がった。
    「やっつけに来たんじゃないよ」
     ノナゥを口から離して、アルはゴースたちにそう言った。ゴースたちは、普段は凄みがあるだろう三白眼を昼の光に所在なげに晒して、不安げな表情をした。しかし、アルを通さないことで事態が動くとも思えなかったのだろう、すぐに道を通してくれた。
    「ありがと」
     ゴースたちは野生らしい。この街の匂いがした。ずっとこの街にいて、街と匂いが同化してしまっているのだ。
     対して、毒を食らっているムウマの方は、ゴースたちよりも人間じみた匂いがした。今ムウマの傍にいる女の子とは、また別の香りだ。
    「捨てられた。ムウマ、子ども」
     アルの頭に浮かんだ疑問に答えるように、ゴースの中の一匹が口にした。
    「世話した、でも……」
     そこまで言って、目を伏せる。きっと、ゴーストタイプ同志のよしみでムウマの面倒を見てやろうとしたのだろう。しかし、何かの弾みでゴースの体の毒がムウマに回ってしまった。
    「これから気をつければいいよ」
     殊に落ち込んでいる一匹――恐らくムウマに毒を盛ってしまった張本人――に声を掛け、アルは路地の奥へ進んでいった。
     女の子は可哀想なほど取り乱していた。よく見てみれば、かなり幼い。小学校には入ったろうが、まだトレーナー免許を取れる歳にはなっていないと断言できる。
    「どうしよう」
     堪え切れなくなった涙が、一粒二粒、女の子の鼻先を伝ってムウマの頬に落ちた。ムウマが薄く目を開いて、口角を上げる。女の子はポケモンをゲットできる歳ではないし、ポケモンセンターはここから距離がある。動かすのはまずいからと女の子自らが走って買ってきたモモンの実は、さっきのアクシデントでなくなってしまった。八方塞がりだ。
    「どうしよう」
     もう一度呟いた女の子に鼻面を押し付けて、アルの方を向かせた。アルがスカーフの中に優しく挟んだそれを見て、女の子の顔に血の気が戻った。
    「それ、モモンの実だよね? もしかして、分けてもらえるの?」
     アルは了承の印に、モモンの実をスカーフから転がして出して、ついでに鼻先でムウマの方に押しやった。
    「よかった」
     女の子はモモンの見に飛び付いて、それを指で小分けにしようとしてグチャグチャにしながら、ムウマの口に運んだ。見る見るうちにムウマの顔色が元の、夜空みたいな青っぽい黒に戻り、ムウマが目を開く。まだ体力は戻っていないようだが、ムウマは元気そうにヘヘヘと笑ってみせた。
    「ありがとう、イーブイくん」
     お礼を言う女の子に尻尾を振って、アルは足早にその場を立ち去った。後は女の子とムウマとゴースたちの問題だと思ったのだ。
     路地の出口で不貞腐れていたノナゥをひょいとつまみ上げ、アルは路地を後にした。

    「ノナゥはちょっと悪いことしたでし」
     ポケモンセンターの道すがら、アルの背中に乗って揺られているノナゥがそう呟いた。ポケモンセンターでトレーナーが待っているらしい。ゴースたちがいたあの路地からポケモンセンターまで、遠いのは知っていたが、いざ歩いてみるとかなりの距離があった。当然、話す時間もたっぷりある。
    「しっかり反省して、もう盗み食いなんてやっちゃだめだよ」
     盗み食いより、ちゃんとしたご飯の方がきっと美味しい。
    「トレーナーさんがノナゥのご飯を用意して待ってるんだろ?」
    「用意してないかもしれないじょ」
     背中に乗っているノナゥが、顔を上げる気配があった。
    「でも、帰るんだ」
     ノナゥがコクリと頷いた。

     その日、お腹ペコペコの状態で戻ってきたアルの前に、豪勢な菓子折りが差し出された。なんでも、氷を被った小さな竜が運んできたとか。入っていたのはお菓子と、小さなメッセージカードが一枚。
    「何かいいことしたの、アル?」
    「後で話すよ」
     アルはお菓子を後回しにして、パートナーが用意したご飯にがっついた。
     パートナーの彼女はそんなアルを見て微笑みつつ、メッセージカードに目を通した。

    『空色のスカーフの騎士へ
     ご飯が美味しくなったお礼に』





    **あとがき

    いつかの閲覧チャットで頂いた「アルとノナゥ」というお題です。
    アル、というのは拙作「イーブイの空を飛ぶ!」にて主役を張っているイーブイの名前であります。不甲斐ないかな、肝心の本編が一話しか書けてない故、仲間の名前も全て伏字となっております。ニシカってどこだよと思った方、もう何も聞かないでください。

    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】
    【十年後にはニシカに着いてるといいなあ】


      [No.1277] ああ、梅雨だなぁ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/06/04(Sat) 00:02:20     73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    ああ、梅雨だなぁ (画像サイズ: 592×900 305kB)

    なんか見たことのあるタイトルが浮上してると思ったら、あまごいに感想がついているだと……
    そうか梅雨入りだったな……雨恋の季節だな。

    というか、ありがとうございます!!!
    雨恋は前から書きたいと思っていたモチーフではあったんですが、
    他の小説に比べると、個人的というかなんというのか、おもしろいのかこれというか。
    まぁ自分の小説だから大好きなんですが、ええ。

    ですからこんなに感想語っていただけるなんて
    おねえさんうれしくて、小躍りしちゃうぜ! イラスト添付しちゃうぜ!

    とにかくありがとうございます!!!


    あ、ちなみに
    つくもがみは九十九神、付喪神どっちでもいいらしいですね。




    添付イラストは5月に発行したイラスト集「Rainy Days」より〔 amagoi 〕です。
    「雨恋」をテーマに再構成して、若干のストーリーがついてます。
    小説とはストーリーが異なりますが、残念なイケメンキヨセ君とシャワーズは健在。


      [No.1276] MONK 投稿者:乃響じゅん。   投稿日:2011/06/03(Fri) 23:02:35     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     1

    「お、俺の負けだ、食い物ならいくらでもやる、だから許してくれぇ」
     私との勝負に敗れたリングマは、しりもちをつき慌てて逃げ出した。約束通り大小様々な木の実を大量に残して。
     だけど、許すも何も、負けたら持っている食べ物を差し出すという以外は何のルールもない。
    「慌てて逃げることもないのになぁ」
     私はそう呟いた。たまにそういう奴がいるのだ。特に、ガラの悪い奴。一撃で倒されてしまったことがそんなにショックだったのだろうか。
     脇で見ていた一匹のエーフィが、身体を躍らせながら私に寄ってくる。
    「いやーさすがライ先輩! 相変わらずお強いですねぇ」
     フィオーレと名乗るこのお調子者は私のことを褒めつつ、私より先に木の実をがっつき始めた。あんたは何もしていないだろうが。きっと睨んでみても、こいつは意にも介さない。エーフィは空気の流れを読めると聞いたが、こいつの図々しさを見ていると嘘なのではないかと疑いたくなる。
     リングマから勝ち取った木の実を近くの木まで運び、寄りかかったところでようやく一息ついて、木の実を口に放りこむ。運動をした後の木の実は、普段より格段に美味しい。
    「私が強いんじゃなくて、周りが弱すぎるんだよ」
     私はフィオーレに言い返す。
    「そんなことないですよ。あのリングマも結構やる方だったと思いますよ」
    「そうかなぁ」
     私は首を傾げた。あのリングマだって、多分に漏れず、一撃で倒れてしまったではないか。
    「それにしても、ライ先輩ってやっぱり有名なんですねぇ。この集落に入った時も、みんなすぐにライ先輩だって分かってたみたいですし。カントー、ジョウト辺りで知らない野生ポケモンのグループはいないんじゃないですかね。バトルで負けなし、最強と呼ばれた旅ライチュウのこと」
     ふん、と私は言ってやった。
     私は自分の力を試すべく、強い相手を求めて各地を旅している。相手のやる気を引き出すために、布に巻いて持ち運んでいるポロックと、相手方の食料を賭けて戦うのだ。今のところ、私は負けたことがない。どいつもこいつも弱すぎるのだ。考えてみれば、生きるだけでほぼ精一杯の野生界で競技としてのバトルなんか楽しんでいる余裕はない。
     ふと上に動くものがあったので、そっちに顔を向けた。何かと思えば、木の枝にしがみついていたコラッタが、一瞬脚を踏み外したらしい。急いで枝につかまり直し、両手両足に力を込めてこちらをじっと見つめる。非常に警戒している。私たちが彼らにとってどういう存在なのかを考えたらすぐに分かることだ。言わば、暴力的な力を持った侵略者。私たちが怖くて降りられない、と言うのは想像がつく。
     周りをよく見ると、コラッタだけではなかった。葉の陰から、木の陰から、私たちに視線が向けられている。このライチュウは、どんな危害を我々に加えるのか分からない。そういう疑いと恐怖の視線だ。
     私は小さな木の実を一つ選び、木の枝の上に投げて乗せた。
    「それ、あげるよ。怖がらなくていいよ」
     そう言って、私は立ち上がる。まだ木の実は沢山あったが、両手に一つずつ持つだけにして、私はその場を去る。
    「あれ、もう食べないんですか?」
     後ろからついてきたフィオーレが言う。
    「あんなに視線あったら、気まずくて食べてられないよ。もうお腹もいっぱいだし、これ以上はいらない」
     振り返らずに、私は答える。いくら勝ち取ったとは言え、こちらが貰い過ぎても、野生のポケモン達が困るだけだ。一介の旅ライチュウには、重すぎる。
    「まぁライさんの噂は『負けたらコミュニティ内の食べ物を全部盗られて、小さなポケモンもさらわれる』っていう広がり方までしてますからねぇ」
    「はぁ?」
     私は振り返った。そこまでしたことは一度たりともない。あってたまるか。
    「噂って怖いもんですよ」
     これじゃあ本当にただの暴君じゃないか。私はため息をつく。
     本当にこんな生活を続けていても、意味はあるのだろうか。ただただ悪名を広げて回るだけの旅で、私は何を得られると言うのか。私はここのところ、この旅路の先が見えなくなってきた。

     ジョウト地方からカントー地方へ、シロガネ山のふもとに沿って南下していく。そろそろ真南はトージョウの滝だろうか。日は沈みかけている。あっちは西。太陽を右手に、空を見上げた。
     太陽が沈み、山に隠れる。鳥ポケモンが頭上を飛び交い、私もフィオーレの姿も影に近くなる。人間の手の入っていない森の中には、電気は一切通っていない。日が落ちれば真っ暗だ。
     今日の旅はここまでだ。私たちは手頃な樹のそばで眠ることにした。
    「そう言えば、ライ先輩」
     フィオーレが口を開く。
    「何」
     私は目を閉じて言った。
    「ライ先輩って、どうして旅をしてるんですか」
     私は返答に困った。それだけは、思い出したくない嫌な思い出なのだ。
     フィオーレの言葉を聴こえなかったことにして、無視を決め込んだ。
    「ねぇ、ライ先輩」
    「私知りたいんですよ」
    「ねぇ、教えて下さいよ」
     フィオーレは一呼吸置きに言ってくる。うるさい。ここまで騒がれては、さすがに眠れない。何だかんだ言いつつ、私は結局このエーフィのわがままには逆らえないのかもしれない、と肩を落とした。
    「しょうがないなぁ。話すからさ、黙ってくれないかな」
     眠りの世界と現実の狭間で、私の頭はふらふらだった。眠い目を擦りながら、私は何から話そうか考える。
     フィオーレは、黙ってくれという言葉を忠実に守っていた。その調子の良さに、妙に腹が立つ。一つため息が漏れた。
    「私もね、元々は人のポケモンだったんだよ」
     私は一呼吸置いて、話し始めた。


     2

     私はトキワの森で生まれた、ごく普通の野生のピカチュウだった。
     元気にあちこちを走りまわるようになり、そろそろ自立しようかという時に、ヒトカゲを連れた人間と出会った。彼の名前を、レッドと言った。赤い帽子がトレードマークで、いつも深く被って、あまり自分の目や表情を見せない人だった。マサラタウンから来た、と彼は言う。
     つい最近旅に出たばかりで、これからポケモンリーグに挑戦するためにジムバッジを集めに行くそうだ。私はそのヒトカゲに次ぐ、二番目のパートナーとなった。
    「これからもよろしくな」
     入れられたボールから出されて、もう一度握手を求められた。ピカチュウは尻尾で握手する。私は尻尾を出して、彼につまませた。彼の顔は良く分からなかったが、口元の笑みを浮かべたのを見て、この人と一緒ならきっと楽しくなるだろう、と予感していた。
     仲間のしるしだ、と言って、レッドは小さな首飾りを私にかけてくれた。レッドの手持ちには、全て同じ首飾りがぶら下がっている。
     レッドは勝利に貪欲な男だった。と言うより、負けるのがとことん嫌いだった。
     彼の頭の中にはありとあらゆるポケモンの知識が入っていて、勝負の前には緻密な戦略を練り、考えられる全ての状況を考えてから戦いに挑む。そんな彼のやり方が功を奏し、一度たりとも負けることはなかった。
     レッドに鍛えられた手持ちの中で、とりわけバトルの腕を上げたのは、ヒトカゲと私だった。ヒトカゲは彼の最初のパートナーでもあり、レッドの考えをいち早く見抜いて忠実に実行することに長けていた。私は私で、戦闘や電撃の扱いのセンスがずば抜けていることに気付き、バッタバッタと相手をなぎ倒していった。
     やがて、私とヒトカゲ(二匹とも進化して、ライチュウとリザードンになった)の間にも、力の差が見えてくるようになった。リザードンが少しつまづくようなバトルでも、私は平気な顔して勝つことができた。強い敵と戦い勝つことが、私の喜びだった。身体を動かすことは好きだったし、何よりレッドが褒めてくれるから。「レッドと言うトレーナーに、ライチュウを使われたら勝ち目はない」。カントーのトレーナーの間に、そんな噂が流れ始めた。
     最後のジムに挑む頃だっただろうか。私はあるバトルのアイデアが浮かぶと同時に、ふと疑問に思った。ポケモンはトレーナーの指示に従い、自らを鍛え、戦う。――本当にそれでいいのだろうか。
     レッドのトレーナーとしてのやり方は、ポケモンの全てを管理しきっている。裏を返せば、ポケモンに自分で考える自由が与えられていない、と言うことにはならないだろうか。
     そう思った瞬間、私は何もかもが急に息苦しく感じられた。私は縛られている。このまま、彼の行く道を、黙ってついていくだけ。私が勝負に勝つんじゃない、レッドが勝負に勝つんだ。私でなくても、きっとレッドは勝利を掴むだろう。じゃあ、私って一体何なんだろう。急に全てが分からなくなった。
     一度、自分にバトルの全てを任せてほしい、と言ってみようと思ったが、すぐに諦めた。どうせ、彼は受け入れてくれないだろう。自分が全てを管理しなければ気が済まない。旅をしていくうちに、彼のそんな性質が浮き彫りになっていく。私にはそれが嫌で嫌でたまらなかった。
     出来る限り気付かれないように、バトルに影響しないように、私は隠し続けた。相変わらず、負ける事はなかった。
     カントー地方のナンバー1を決定する、ポケモンリーグ。チャンピオンロードを抜け、会場のセキエイ高原に辿り着いた。大会が始まって、会場が盛り上がっても、レッドも私たちもさほど緊張せずに一回戦をあっさりと勝ち抜いた。
     その晩、思い切って私はレッドに、自分の思いを打ち明けてみた。一度だけ、自分の考えた通りにバトルさせてくれないかな? そう、彼の神経を出来るだけ逆なでしないように言ったつもりだった。
    「俺が一度でも間違ってたことがあるのかよ」
     だけど、レッドは私を怒った。馬鹿なことを言うなと、ぴしゃりと言いつけられた。
     事実、彼は間違わない。彼の言う通りにしていれば、負けはしない。その正しさが、彼の強さであると言うことは、誰もが認めるところだった。しかしそれが、私の心を締め付ける。
     2回戦。3回戦。私はレッドの指示通りに行動し、相手のポケモンを翻弄し、撃墜していく。
     そのたびに、身体の底から苛立ちを感じた。違う、私がやりたいのはこんなことじゃない。こんな戦いじゃ、何にも楽しくない。倒れてモンスターボールに戻っていく相手のポケモンを見ながら、そんなことを考えた。戦いが終わり、控室に戻るたび、自分の思う通りにやらせてくれと、同じことを頼もうとして諦める。きっと何度頼んでも、同じなのだろう。一度でいいのに、一度でいいのに、一度でいいのに!
    「今日の動きは、粗っぽかったぞ。勝てたからよかったけど……もっと丁寧に動いてくれよ。分かったか?」
     レッドがこの一言を放った瞬間、私の中で怒りの糸が切れた。心の中がどうしようもない気持ちでいっぱいになり、行動を決意する。
     準決勝の前夜、全員が寝静まった頃、私はこっそりモンスターボールから抜け出し、ポケモンリーグから脱走した。かばんの中から取り出した、どこかで貰ったポロックケースを布に包んで。
     その後、レッドがどうなったのか、私は知らない。それから一切、彼と関わることもなく、思い出すことさえしなかった。


     3

    「……まぁ、こういういきさつで旅をしてるってわけ」
     意外と、細かいところまで思い出せてしまったことが、私は悔しかった。レッドの仏頂面を思い出すだけで、ポケモンリーグ前のあの怒りが甦ってくる。
     一人旅を始めてから、身の上話を聞いてくるポケモンなんて誰もいなかった。だから心にふたをすることは簡単だったし、毎日バトルのことだけ考えていれば良かった。
     あれから3年が経過している。今もし、レッドに会ったら何と言われるだろうか。想像しようとしたが、さっぱりだ。逆に、レッドに会ったら何と言ってやろうか。それを考えても、特に何も思いつかなかった。実際に会ったら、何か言うことが見えてくるのかもしれないが、会うなんてことは万が一つにもないだろう。
     そう言えば、途中からフィオーレの相槌は一切なくなった。私は彼女の方を向く。
    「ねぇ、聞いてる? って、寝てるし」
     横にいるフィオーレは、身体を丸めて完全に眠っていた。話に夢中になって、全然気付かなかった。いつから寝ていたのだろうか。もしかして、これは話し損か?
     仕方がない。暗い気持ちを晴らすためにも、私はさっさと寝てしまうことにした。

     次の日の朝、日の出と共に目が覚める。大きなあくびを一つして、フィオーレを踏み起こし、また歩き始めた。
    「あれ」
     ふいに、フィオーレが空を見上げて呟いた。私もそれにならう。
     雲の少ない青空に、大きな鳥が飛んでいる。その影は段々大きくなり、それは鳥ではないことに気付いた。鳥と言うより、竜に近い姿をしている。
    「リザードンですかね」
     本当だ。リザードンを野生で見る事は殆どない。あれはきっとトレーナーを乗せているのだろうと推測した。
     そんな様子を眺めているうちに、気付くことがあった。そのリザードンは、明らかにこちらに向かって飛んできている。顔の形でさえ判別できるほど近づいたところで、彼のぶら下げてる首飾りに気付いた。

     まさか、このリザードンの背中に乗っているのは。

     瞳孔を開き、全身の毛が逆立つ。全身を電気が走り、一瞬にして一触即発の身体になる。
     リザードンが私たちから数メートルのところに着陸すると、背中から一人の男が降りた。赤い帽子を深く被った、私の良く知る姿。
    「レッド」
     私は口から、彼の名前がこぼれた。彼はリザードンをボールに戻すと、私の方に一歩一歩近づいてきた。お互いの目が合う。私は彼を睨みつけた。
    「どうしてここが……ってか、今更何をしにきたのさ」
     強い口調で、私は言う。睨んでみても、彼はまるで応えない様子で、一歩一歩歩みを進めてくる。
    「昨日、連絡があった。お前がここにいるから、今すぐ来いって」
     記憶よりも、ずっと低い声でレッドは語りかける。心なしか、背も伸びている気がする。
    「誰から」
     私は威嚇の姿勢を崩さず、聞いた。レッドは、すっと指をこちらに向けた。いや、私のほうではない。私の隣にいる、フィオーレを指さしている。
    「フィオーレ」
    「はーい」
     彼は名前を呼び掛けた。手を開き、彼女を招き入れるポーズを取る。
    「こいつのこと、知ってるの?」
     フィオーレは、彼の呼び掛けに応えて、しっぽをぴんと立てながらレッドの元へ駆けよった。
    「そりゃあ、俺のポケモンだからな」
     レッドは不敵な笑みを浮かべてみせた。私は驚きを隠せなかった。レッドがエーフィを持っていたことなんて、これっぽっちも知らない。
    「お前がいなくなった後、仲間になった。テレパシーが使えるから、お前の居場所を調べてもらっていたんだよ」
    「幸いライ先輩の名前は広まっていましたから、探し出すのにはそれほど苦労しませんでしたよ」
     フィオーレはレッドの脚に頭をこすりつけた。
     道理で、こいつが私のことを先輩と呼ぶわけだ。私の話は、大体知ってると言うわけだ。
    「昨日ライ先輩のお話を聞いて、あなたがマスターの探しライチュウだって確信したんです。それで連絡させて頂きました」
     とどのつまり、私の口からレッドの名前が出るかどうかで、最後の確認をしたかったということだったのか。ぺらぺらと必要以上に喋ってしまって、恥ずかしい。
     問答をしているうちに、何だか怒りが冷めてしまった。それはとてもばかばかしいことのように感じてしまう。こいつらの策略にまんまとはまってしまったようだと、私は肩をすくめた。
     全身はち切れんばかりに溜まった電気は徐々に周囲に漏れて、逆立った毛並みも次第に元に戻っていた。
    「それで、私に何の用があって来たの」
     私は投げやりな口調で聞いた。もしまた仲間に戻れと言われたら、困る。レッドと一緒に居たら、また私は彼に媚び、辛い思いをする気がする。かと言って、この生活を続けていても、先は見えない。
     そんなことを考えて嫌な気分に浸っていたが、彼の答えは全く別のものだった。
    「ライ、俺とバトルしてくれないか」
     モンスターボールを一つ取り出して、彼はもう一度私に真剣な眼差しを向ける。

     私は彼を真っすぐ見つめ返して、頷いた。バトルなら、迷うことは何もない。


     4

    「全力を尽くすよ。持てる手段を全部使って、お前を倒す」
     レッドは宣言する。極度の負けず嫌い。そう言うガツガツしたところは、改めてやはり少し嫌な感じを受ける。だけれど、勝負を挑まれる立場になって、何となく分かった。バトルに一切手を抜かないことは、相手に対する最大の敬意なのだ。私は、全力で戦いたい。レッドの言葉は、私に高揚感を与えた。
    「……やってみなよ」
     私は口元にだけ、笑みを浮かべた。レッドを見据えて、一挙一動を見逃さない。
    「いくぞ」
     ずっとレッドの隣にいたフィオーレが先発かと思ったが、どうやら違うらしい。レッドはボールを投げ、一匹目のポケモンを出す。光がシルエットとなって、私より小さな黄色い姿が現れる。そこにいたのは、ピカチュウだった。首から、何やら黄色い石のかけらのようなものをぶら下げている。
    「初めまして、ライ先輩。ピカって言います」
     私の知らないうちに、レッドも新しい手持ちを増やしていたようだ。ピカは私に挨拶をして、不敵な笑みを浮かべた。
    「うん、初めまして。宜しく」
     私は笑った。頭の中で、戦いのゴングが鳴り響く。私は再び、全身を電気の力で満たす。
    「ピカ、かげぶんしん!」
     レッドが指示を出す。ピカの姿が二重にぶれ、三重にぶれていく。その数は加速度的に増え、三百六十度を同じ姿に囲まれた。レッドは指をさして、すかさず次の指示を送る。
    「ボルテッカー!」
     全てのピカチュウが、私に向かって突撃してくる。なるほど、何処から来るか悟らせない戦法か。電気エネルギーをまとったピカチュウに、黄色い光が見える。全ての方向をぐるりと見渡して、本物を見破るほどの時間はない。前方に迫り来る黄色いエネルギーの塊を見据えながら、後ろの空気を感じ取ろうとした。
     だが、何か様子がおかしい、と思った。たかだかピカチュウの身体で、ここまで強い電気を出せるものなのか? 全身に、悪い電流が走る。私は補助技、こうそくいどうを使う。感覚を研ぎ澄ませ、一時的に身体能力を強化する。強化された脚力でもって、近寄ってくるボルテッカーの輪を飛び越えた。勢い余って、草はらの上を転がった。
     私が避けたことで、包囲するための分身は消滅した。相手の姿は一つに戻る。ピカは振り返って、私とまた対峙する。
    「どうしてこんな強い電気を出せるかと、疑問に思ってるみたいですね。これですよ、これ」
     ピカは胸にぶら下げた黄色い石をを持って、前に出した。
    「でんきだま、って言って、ピカチュウの電気の力を二倍に増幅させる効果があるんですよ。これさえあれば、ライチュウの電撃にだって劣らない」
     ピカは自信満々に言って、にやりと笑む。なるほど、道理でエネルギーが多いわけだ。
     レッドが自分の手持ちに与える首飾りには、それぞれのポケモンの良さを増幅させる道具がつけられている。私の場合、状態異常を治すラムの実だったが、使う機会は少なかった。道具持ちは、相手にとって厄介なものとなるのが普通だが、私には関係ない。それ以上の力でねじ伏せる。
    「起き上がる隙を与えるな、ピカ! 追いかけ続けろ!」
     はいよっ、と答えると、ピカは再び私に向かって突進してくる。
     ピカがどう思ってるかは知らないが、彼の動きは私からすればそんなに早くない。私は前方に、ひかりのかべを張った。オレンジ色した半透明の板が、私の目の前に現れる。ピカは自信満々に叫ぶ。
    「ひかりのかべじゃ、僕の技は止まりませんよ!」
    「知ってるよ」
     私は答えた。
     ひかりのかべは、水や火や電気の進行を妨げるが、物理技などの固体は一切貫通する。ボルテッカーは物理技だから、身を守るにはミスマッチだ。だが、私の狙いはそこにはない。
     ひかりのかべは、一瞬のうちに長い槍状に変化した。生成された半透明の長い槍が、目の前に現れて、それを右手に巻きつける。自分の身体と密着させることに、意味がある。
     私はピカより速い速度で飛び込み、ひかりのかべの槍を強く振り抜いた。
     ピカの身体に触れた瞬間、ドン、と雷が落ちたような重たい音がする。通電。強い電撃を喰らわせた時に発生する音だ。
    「が……ッ!」
     ピカの動きが、空中で止まった。そのまま勢いを失い、地面に倒れる。草の上に落ちる音が、ひどく無抵抗に響く。ピカの方を見なくても私には分かった。戦闘不能だ。
    「戻れ、ピカ」
     ボールをかざし、レッドがピカを戻す。私はもう一度、軽く光の槍を振った。レッドは右腕を顎に当て、寸分の後に口を開いた。
    「……なるほどね。ひかりのかべは物体を貫通してエネルギーは貫通しない。だけど、エネルギー自体の伝導率は高い。だから、ひかりのかべに電気を流せば、相手の身体を貫いて身体の中から電撃を浴びせられる」
    「そういうこと」
     レッドの言葉に、私は笑みを浮かべながら頷いた。どんなに電気に耐性があるポケモンでも、身体の中から攻撃されてはたまらない。
     それに、電気技は強力なもので無ければ空気を伝って行かず、多くの場合近距離で攻撃するしかない。
     ひかりのかべを操れば、電気の弱点を二つも克服できるのだ。
     胸を張って言える。これこそが、私のやりたかった戦法。自分の感じたように作り上げた、私だけのバトル。
    「さぁ、次は誰を出してくるんだい?」
     私はレッドにひかりのかべの電気槍の矛先を向けた。

     カビゴンのゴンは相変わらずのんきに構えてのしかかってきたが、素早い動きでかわした。技は喰らわなかったものの、種族自慢の体力はすさまじかった。首から下げられたたべのこしの効力もあって、槍を四回振るわねば倒せなかった。
     フシギバナのフッシーは厄介で、あらゆる植物を操って、近接を妨げてくる。一発入れるのに何度転んだか分からない。フッシーもその巨体によく似合う耐久力の持ち主で、植えつけられたやどりぎのたねに体力を奪われながら、三度目の槍でようやくギブアップしてくれた。するりとやどりぎは解けてくれたものの、これでもまだ半分だ。先は長い。
     カメックスのメックスには、苦労した。殻にこもって身体を守られると、槍が折れてしまった。全ての技を防ぐ技、まもる。何度も槍を生成し直し、攻撃するもまた槍の方が甲羅に負けてしまう。本当のところ、この技を連続で成功させるには相当な技量が要るらしい。二連続成功すればいい方だ。それなのにメックスは連続六回も成功させてしまった。
     攻撃しているのはこっちなのに、相性でも勝っているはずなのに、逆に追い詰められているような気分になるのはどうしてだろう。痺れてひっくり返ったメックスの姿を前にしながら、心の中に焦りが生まれる。
     今までレッドと戦ってきたトレーナーは、こういう思いを味わってきたのか。攻撃にも防御にも、一片の隙も見せないレッド。かつて出会ってきた対戦相手の強さの槍は、彼にちょっと動かれただけでことごとくへし折られていく。私も、今多くのトレーナーと同じ脅威を感じている。
     レッドは最初に言った。持てる手段を全部使う、と。彼は、手持ちの六匹を全部使うつもりなのだろう。ならば、これは根競べだ。心がくじけた方が負けなのだ。

     ラスト二匹。先に出たのは、リザードンのリザだった。
    「よう、ライ。元気か」
    「君達みんなタフすぎて、そろそろバテて来ちゃったかもねー」
     私はおどけて言ってみた。リザはふっとため息をつくように笑った。事実、そろそろ身体から電気を作るのが辛くなってきた。同じ威力で、せいぜいあと一、二回が限界だろう。私は深く息を吸い、乱れた呼吸を整える。全身から溢れんばかりの熱を感じる。冷たい空気と肺の熱気が混ざり合うのを感じる。
    「飛べ、リザ!」
     レッドからの指示を受けると同時に、リザは羽ばたいて一気に空へと舞い上がった。
     空中に逃げれば手出しできないと踏んだか。かみなりのような巨大な電気を扱う技を使えば、遠く離れた相手にも電撃を当てることは出来ただろう。だが、あいにく私はそういう技を持ち合わせてはいない。電気技は10まんボルト一本だ。
    「だいもんじ!」
     レッドが空に向かって叫ぶ。リザは口を開く。喉の奥から光があふれ、弾けそうになったところで口から高音の火球を放った。火球は私の方へととんでもないスピードで迫ってくる。瞬きするほどの刹那、こうそくいどうで出来るだけ遠くに跳んだ私は何とか直撃は免れた。
     だが、だいもんじという技はこのままでは終わらない。二段階の攻撃。地面に触れた瞬間、炎は五方向に広がる。炎の腕の一つが迫りくる。私はもう一度跳び避けるが、転倒してしまう。炎は自分の背丈よりも遥かに高く激しく燃え盛る。起き上がってみたものの、炎の方は熱に目を開けていられない。長く残る炎は、大技ならではのもの。直撃していたらと思うとぞっとする。
     私は空を見上げてリザの姿を探した。空中を大きく旋回している。
     もう一度攻撃される前に、こっちから攻めるしかない。攻め手はある。
     私は右手から、ひかりのかべを糸のように細く、細く、生成した。ある程度のところまでは生成にとても神経を使うので、大きな隙が生まれてしまう。炎で自分の身体が隠れている今しかできないことだ。
     細い糸を自分の身長の半分ほどまで作ったところで、一気に生成は楽になる。人間の言葉で例えるなら、スピードの乗ってきた自転車だ。後は加速度的に伸びていく。
     このオレンジ色の光の糸は、完全に私の思い通りに動く。蛇のように伸縮自在の糸だ。
    「行け!」
     小さく叫んだ掛け声と共に、糸が空へと伸び飛んでいく。リザの飛ぶ方向へ、一直線だ。
    「リザ、何か来てる! 急降下しながらエアスラッシュ!」
     あともう少しのところで、レッドが叫ぶ。この糸の存在に初見で気付かれるなんて。今まで想定もしていなかったことに、軽いショックを覚える。すぐに気を取り直し、糸に集中する。
     リザは頭を地面に向けて、高度を強引に下げる。私は糸を操り、更に伸ばしながらリザの姿を追った。高度を充分下げたリザは私の姿を捉えたらしく、鋭い爪で空気を切り裂き、刃を放つ。
     糸を操るのは集中力を要するため、高速移動との併用は今の私には出来ない。かと言って、折角作った糸を解除する訳にはいかなかった。空気の刃が迫る中、私に閃きが生まれる。
     伸ばした糸は、今もなお空中に残り続けている。今まで伸ばした軌道が全て固定されているのだ。そして今リザは、最初に一直線に伸ばした糸の真下にいる。つまり、これ以上糸を伸ばす必要はない。
     私は、糸を全て下に落とした。その軌道上にいたリザに、糸が触れる。その瞬間、私は思いっきり糸に電流を流しこんだ。通電。パァン、と弾ける音が響いて、くるくるとリザは地面に落ちていく。私は素早く糸を解除し、高速移動でその場を離れた。空気の刃が、元いた場所の地面を切り裂く。
     リザが地面に触れる前に、レッドはリザをモンスターボールに戻した。戦闘不能だ。
    「あと一匹」
     私はひかりのかべを、再び槍の形に戻した。

     レッドは一切表情を変えなかった。まだ負けたとも、勝ったとも思ってはいない。そういう緊張感に溢れた顔をしていた。
     六匹目。ずっとレッドの足元にまとわりついていたフィオーレが、ついに前に出る。
    「フィオーレ。後は頼んだぜ」
     紫色のしなやかな体が、ゆったりとした動きで近づいてくる。
     ある程度の距離で、フィオーレは立ち止まって腰を下ろした。
     その距離は、公式試合のフィールドに描かれているモンスターボールの図形を思い出させる。

    「さすがライ先輩、本当にお強いですねぇ」
    「そういうの、いらないよ」
     フィオーレには申し訳ないけれど、ジョークに笑えるほどの余裕は無かった。フィオーレは普段のように飄々とした顔をして、私の方を見つめた。
     まっすぐに行こう。相手の技を一度も受けはしなかったものの、持久戦により体力はもうあとわずか。自分の体力の無さを恨みつつ、少ない選択肢の中で懸命にシミュレートする。
     次の一発に賭けるしかない。私の心が、信号を出す。
     息を吐いて、こうそくいどうを自分にかけた。二度その場で飛び跳ね、確かに感覚が研ぎ澄まされたのを感じる。そして三回目、私はフィオーレの方へと跳んだ。風を切り、フィオーレの方へと駆ける。疲れのせいか、彼女の姿を捉えようとしても大雑把なシルエットしか見えない。彼女の姿はその場から動かなかった。それだけを確認して、私は気にも留めなかった。
     自分の身長大に伸ばした槍を、思いっきりフィオーレに突き出す。
     しかし。槍はフィオーレの体をするっと通り抜けた。勢い余って足がもつれ、天地がひっくり返る。一瞬、何が起こったか理解できなかった。
     電気の弾ける音と衝撃がない。電気が、流れていない!?
     フィオーレはその場から一歩も動かず、ただ胸を張って私の槍をただ受け入れていた。あたかも、攻撃は失敗すると知っていたかのように。
    「今だ!」
     レッドの声が飛ぶ。いや、フィオーレの行動はそれよりも一歩早い。振り返って、紫色の目を光らせると、私の体は地面につくことなく、見えない大きな力で空に放り投げられる。無理やり加えられた加速度に体がついていかず、空気抵抗の洗礼を受けて自由を失う。
     視界は、虹色の光線が迫ってくるのを捉えた。しかし成す術無く、直撃してしまう。頭の中がぐるぐるとかき混ぜられて、脳が捻じ切れそうだ。ああ、目が回る。
     そして、自由落下。私は何の覚悟も出来ないままに、地面に叩き付けられた。ぐえっ、と今まであげたこともないような声が漏れる。
     あぁ、もう力が入らないや。ゆっくりと大の字になって、空を見上げた。形の崩れそうな綿雲が、目に見える速さで流れていく。
     戦闘不能。私の、負けだ。

     そのうち、レッドとフィオーレが駆けてくる。
    「大丈夫ですか」
     心配そうにフィオーレが尋ねる。
    「全身がすごく痛いや。やりすぎだよフィオーレ」
     私は文句のように言葉を投げた。
     だが、納得いくまで身体を動かせたせいか、やりたいことを全てやりきれたせいか、私の心は妙に満ち足りていた。
    「ポケモンセンターまで連れてくよ。立てるか」
     レッドが手を伸ばす。にっ、と口を上げて笑った。彼がこんな顔をするのも珍しい。何となく、昔より表情が豊かになっている気がした。私は右手を伸ばす。茶色い手はがっしりと掴まれて、力強く引き上げられた。


     5

     最寄りのポケモンセンターに着くまでに、途中何度も休憩を取った。川の水を飲んで、歩ける程度には回復した。リザもげんきのかけらで体力を戻してもらったものの、本調子ではなさそうだ。空に橙と青が混ざる頃、ようやく辿り着いた。
     レッドはモンスターボールを六個、トレーに乗せてカウンターに持っていく。
    「お願いします」
    「かしこまりました。そちらのライチュウはどうなさいますか? 随分疲れてるみたいですが」
     受付がレッドはこっちを向いて、聞いてくる。ポケモンの体調を一発で見抜くのは、プロなんだろうなぁとぼんやり考えた。
    「どうする?」
     私は首を振った。レッドに会えた今日だからこそ、話したいことがたくさんある。治療に当てるのは勿体ない気がした。
    「構わないみたいです。こいつと会うの、凄く久しぶりなんですよ」
     レッドはそう伝えた。
    「かしこまりました、それでは、こちらのモンスターボールだけお預かりしますね」
     そう言って、受付はトレーを持って裏手へと戻っていった。

    「これ、飲むか」
     レッドが、ミックスオレの缶を私に差し出した。私の好きな味だ。両手で受け取ると、ひんやりとした鉄の感触が懐かしい。飲むのは随分久しぶりになる。
     ラウンジのベンチに腰掛けて、私とレッドは並んでいた。レッドは手に持っている缶コーヒーのふたを開ける。私も、歯を上手に使ってプルタブを空ける。かこっ、という音を聞くと、何だか彼と一緒に旅をしていた時のことを思い出す。
    「やっぱりおいしいなぁ、これ」
     オレンジ色した甘いミルクの味が、口の中に広がる。タマムシシティの屋上で飲んで以来のお気に入りで、自販機を見つける度に同じものが売っていないかと期待していた。ポケモンセンター内ではよく見かけるが、道中では殆ど見ないということに気付いて、私はポケモンセンターに着くたびにレッドにせがんでいた。激しいバトルの後なら、必ず買ってくれた。
     しばらくの後、レッドはぼそりと呟いた。
    「強くなったな、ライ」
     私はレッドの顔を見たが、レッドの視線は前のままで、その続きを話す。
    「ひかりのかべと10まんボルトの複合技。それに、こうそくいどうによる身体強化。面白い戦い方を考えたな。俺じゃ絶対思いつかないし、仮に思いついたとしてもあそこまで完成度の高い技にはならなかっただろうなぁ」
     レッドは素直に感心しているようだった。私を見て、目を輝かせていた。でしょ、と私は胸を張る。
    「でも、負けちゃったけどね」
     と付け加えて、苦笑する。
    「そうだな。弱点はまだまだ沢山あるだろう」
     彼は私の言葉をくそまじめに解釈した。私がふてくされるよりも早く、レッドは言葉を続けた。
    「今回俺が弱点だと思ったのは、回数制限だな」
     そう言われて、フィオーレに技が決まらなかった時のことを思い出す。そういえば。
    「最後、フィオーレとバトルした時、私の技が上手く決まらないって分かってたの?」
     私自身、電気を放てるかどうか分からなかったと言うのに。レッドには確信があったのだろうか。私の疑問に、レッドは答える。
    「普段バトルって長丁場になるものじゃないからあまり気にならないんだけど、ポケモンの技には使える回数に限度がある。10まんボルトの攻撃回数はどのポケモンも十五回までなんだよ」
    「そうなの!?」
    「逆に言えば、自分の電気の力を十五等分するようなパワーで打つのが10まんボルトって言う技なわけ。本人の意識に関係なく、ね」
     私は驚きを隠せなかった。初耳だった。六連戦なんて初めてのことで、今まで気にも留めたことのないことだった。
     それで、守りを中心にした戦いをしていたのか。私に技をたくさん発動させる為に。
    「まさか、フィオーレと戦う時に十五回になるように調節してた訳じゃ……?」
    「それは流石に、まさかだよ」
     私の疑いに、レッドは笑った。
    「でも、技のエネルギーが消費された回数はしっかりカウントしていた。出来る限り早く技を十五回出させるようにはしたけれど、思ったよりお前の電撃が強かったから、全部使い切らせるのに五匹もかかった。正直間に合わないんじゃないかと、ヒヤヒヤしたよ」
     それでも、レッドは強い。彼のポケモンと戦略は難攻不落だと言う事を、相手にしてみて初めて実感した。

    「そう言えば、レッド。ポケモンリーグはどうなったの」
     私はふと思い立って、三年前のことを聞いてみた。私は準決勝前日に逃げ出したから、結末を知らない。あぁ、と思い出したようにレッドは言う。
    「準決勝で負けたよ。ドラゴン使いのワタルって奴に。ドラゴンタイプのポケモンの強さはケタ違いだったな。お前無しじゃ歯が立たない相手だった。打つ手なしさ」
     レッドは肩をすくめた。
    「あの時はライがいなくなったことがショックで、三位決定戦にも全く身が入らなかった。それも負けてしまったよ」
     そう言って、コーヒーをすする。
    「で、そのワタルをグリーンが倒して、グリーンがチャンピオンになった。でも、あいつはやりたいことが他にあるからってチャンピオンの座をワタルに譲ったのさ。それから三年間、ワタルがチャンピオンの座を守り続けているらしい」
     グリーンとは、レッドと同時期に旅に出たライバルだ。道中たまに勝負をしかけてきて、一度も私達に勝つことはなかったが、彼の中にはただならぬ強さを感じた覚えがある。話を聞いて、私は納得した。
    「それで、レッドは三年間何してたの?」
    「殆どシロガネ山に籠って修業してたな。俺のトレーナーとしてのやり方は、本当に正しかったのかが分からなくなって、さ」
     少し俯いた様子で、レッドは語る。レッドの戦いは、緻密に戦略を組み、それをポケモン達が忠実に実行するやり方だ。
    「本当はもっと、ポケモン達に判断を任せるべきじゃないのか。その方が、よっぽど楽に戦えるんじゃないのか。そう思い始めたら、止まらなくなった」
     レッドの迷いの原因は、間違いなく私にあるのだろう。確かに、彼のやり方が気に入らなかったのは事実だった。でも、立場のせいだろうか、今ならあの戦い方を認められる気がしていた。それだけに、話を聞いているととても後ろめたい気持ちになった。
    「俺は新しく、ピカとフィオーレを育てた。自由な発想を持って育ったポケモンが、バトルでどんな風に活躍してくれるのか。ピカは、あまり柔軟なタイプじゃなかったから途中で今までのやり方に戻したけど、フィオーレはまさに自由な発想をしたがるタイプだった。俺が指示を出さなくても、何をすればいいかは直感で分かってしまうらしい。だからこいつに関しては、具体的な指示をせずに自分で考えてもらうスタイルを取らせた」
     そう言えば私と戦った時も、レッドが出した指示はたった一言、「今だ!」だけだった。
    「それでも十分、フィオーレは強かった。その時初めて分かったんだよ。そう言う奴もいるってこと」
     レッドは私を見て微笑んだ。私は思わず、目を逸らしてしまう。

    「それから、結局俺はお前抜きだと何にもならない、ただのトレーナーだと言うことを思い知らされたよ。カントーとジョウトのバッジを全部集めたっていう男の子が来て、俺と勝負したんだけどさ、俺より年下なのに、かなり強くてな。ギリギリ、ラスト一匹の差で負けてしまった」
    「うそ!?」
     私は思わず叫んでしまった。ポケモンリーグのことならともかく、レッドが普通のトレーナーに負けるところが、いまひとつ想像出来ない。私からすれば、彼は非の打ちどころのない完璧なトレーナーなのだ。一体どんな男なのだろうか。私は想像したが、レッドと似たような姿しかイメージ出来なかった。
    「お前をもう一度探そうと思ったのは、それからさ。お前ともう一度会いたいと思って、フィオーレに探させた」
    「そうだったんだ」
     私は言った。ずっと一直線に進んできた彼を、私のわがまま勝手で迷わせ、ひどく傷つけてしまった。そう思うと、胸が痛い。
     会話はここで途切れ、知らない人達の絶え間ない話し声が混ざって流れるだけになった。
     その時、私は自分の気持ちをはっきり自覚した。私はレッドのことを好きとか嫌いとかいう言葉で語れないほど尊敬しているということ。そして、レッドに対する怒りが、実は私自身への怒りだったということ。

    「ねぇ」
     周囲の雑音の中、私は改まった。とても恥ずかしいけれど、言わなければいけないことがある。
    「何」
    「勝手に出て行って、ごめん」
     私は、言葉を噛みしめるように言った。
     言わなければ、いつまでもレッドに対して怒りを抱き、自分自身を許せないままになってしまうことが分かっていたから。きっとこれが、旅の途中で感じていた閉塞感の正体だろう。どんなに忘れようとしても、心の奥底で後ろめたさは消えていなかったのだ。
     一体、レッドに何を言われるのだろうか。どんな罵声だろうと、私は構わなかった。
     だけど、レッドの言葉はそうではなかった。親指を唇に当て、恥ずかしそうにしながら、
    「俺の方こそ、悪かったな」
     と言った。
    「お前がどれだけあのバトルをやりたかったか、今日手合わせして良く分かったよ。あの時、一度でもお前に任せたらよかった……いや」
     レッドは言葉を切って、少し考え込んだ。
    「きっと、あれは俺の手を離れる時だったんだ」
     その言葉に、後ろめたさは全くない。そうかもしれない、と私は思った。きっと、一度試したところで私は満足しなかっただろう。もっとやりたい、という欲を募らせて、同じことを繰り返していただろう。
     彼の手を離れて自立することが、私には必要だったんだ。
    「これでよかったんだよ。これで」
     彼は笑った。心の深い奥底にある栓が、ぽんと音を立てて抜けた。感情の流れが、一気に溢れ出しそうになる。私は俯いて、それを必死にこらえた。さすがにみっともなくて、レッドには見せられない。
    「これで、よかったのかな」
    「あぁ」
     レッドは頷いた。多分、私の声は震えていたかもしれない。だけど、レッドは見逃してくれた。
     ミックスオレの最後の一口は、特別甘い味がした。


     次の日の朝。ポケモンセンターで一泊し、出発の準備を整えて建物を出た。レッドはバッグからポロックケースを取り出して、お前にはこれが必要なんだろう、と大きな布に包んで渡してくれた。
    「そう言えば、ライ、お前はこれからどうするんだ?」
     レッドは尋ねた。目的地は決まっている。
    「最近知ったんだけど、ハナダの洞窟ってところに強いポケモンがいっぱい住んでるって聞いてさ。そこで力を試そうと思う。レッドは?」
    「俺は、そうだな……いっそこの地方を離れようかと思ってる。今行こうと思ってるのはシンオウ地方だな。そこで、イチからトレーナーとしてやり直す。今の手持ちも全部預けて、全く新しい仲間と一緒に旅をしたい」
     それを語るレッドの目は、輝いていた。朝日のせいかもしれない。そうだ、と、私の中に一つ閃きが生まれる。
    「全部預けるんだったらさ、フィオーレを貸してよ」
    「フィオーレを?」
     レッドは聞き返した。私はゆっくりと頷く。
    「うん。一人旅ってのも何だかさびしくってね。それに、いざって時は頼りになるかもしれないし。それに」
     言葉を切って、レッドを見上げ、いたずらっぽく笑う。
    「いつかまた、あんたと勝負したいから。テレパシーで居場所が分かるんなら、いつでも会いにこれるでしょ」
     レッドは少し驚きの表情を見せたあと、ぷっ、と噴き出し、大きく笑った。私もつられて、笑い声を上げた。
    「それもそうだな! よし分かった。こんな奴で良かったら、連れていけ」
     レッドはボールからフィオーレを出した。大きく伸びをする。
    「フィオーレ。ライと一緒に旅をしろ」
     フィオーレは急に言われた言葉に驚いた様子で、えぇ!? と言葉を漏らした。
    「今までずっとついて来たんだから、今更文句言うことでもないでしょ」
     と私は語気を強めて言ってみる。
    「分かりましたよう、お供しますとも」
     呆れたようにフィオーレは言った。そんな彼女を見て、私とレッドは笑っていた。

     旅の途中なのに、何だか新しく旅を始めるような気分だ。お互い、それほど急ぎの用事ではない。気楽なものだ。
     レッドはリザをボールから出した。
    「送って行こうか」
     レッドは聞く。私は首を振って答える。
    「いいよ。自分の足で歩きたいんだ」
    「そうか」
     レッドは言った。リザの背中に乗って、リザに羽ばたきを指示する。
    「それじゃ、またね」
     私が言うと、レッドは歯を見せて笑った。
    「次会う時は、三体だけでお前を倒す」
     言ったことは本当に実現してしまいそうなのが、この男の怖いところだ。
    「……やってみなよ」
     私はレッドと同じ顔をしてみせた。
     リザが一気に上空へと浮かび上がっていく。そして、青空の中へとゆっくりと消えていった。
     旅の先にはレッドがいる。その先にも、きっとたくさんの強者がいる。
     私は、まだまだ強くなりたい。いつかまた会うその日まで、光の槍を折る訳にはいかないのだ。




     おわり。



    ―――――――――――
    ポケスコではお世話になりました( ´▽`)乃響じゅん。です。こちらには初投稿なので、ドキドキしてます。
    http://www.youtube.com/watch?v=-tgkoLiQMcQ
    元ネタ楽曲、VivivenのMonkという曲です。この歌を聞いた時、ポケモンの話という解釈も出来るなぁと思い、書かせて頂いた話です。
    こんなに長いのを読んで頂き、ありがとうございました!

    【何をしてもいいのよ】
    【誰かの声を聞かなくちゃ歩けないのは嫌なのよ】
    【金銀のレッドは幽霊じゃないと信じたいのよ】


      [No.1275] 梅雨の季節には雨のお話を 投稿者:イサリ   投稿日:2011/06/03(Fri) 18:48:08     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     一年も前に投稿されたお話ですが愛を叫ばずにいられない!
     梅雨入り記念あげ。KYですがどうかご容赦ください。みんなで雨の小説を読もうぜ!

     この雨恋、No.017 さんが書かれた短編では私の中で一位を独走中です。
     あ、野の火は長編、豊縁昔語は連作短編ということで別腹なのでそこのところはよろしくお願いします(笑)



     私がこの作品が好きな理由は、構成の美しさです。

     正直なところ、読み始めたときはちょっと戸惑いました。
    「俺」の一人称の段落と、三人称で語られる「僕」の段落。「*」で区切られた区間で場面が切り変わっていたのはわかったのですが、つながりがわからない。
     いったい「俺」と「僕」の関係はどうなっているのか。

     スランプに陥り絵を描けない「俺」と、一枚の絵を完成に近づけてゆく「僕」の対比。
    「俺」を美術館に誘うシャワーズ、「僕」の隣で絵を見つめるイーブイ。
     夢の中でイーブイと出会う「俺」、シャワーズに恋焦がれ描こうとした「僕」。

     最後にはぴたりと重なり合う二つのお話。
     夢と現実の狭間を彷徨うような幻想的な雰囲気も、とても好みでした。


     一巡目を読み終わってすぐに二巡目に。
     ストーリーを理解してから読み込むと、あちらこちらに伏線が……!
     雨の街の描写も実に綺麗で、静かに物語に浸ることができました。



    「雨恋」の読み方が「あまごい」だと分かったのはそれから大分たってからなのですが(あめこい?と思ってました;;)、気が付いた瞬間「あっ」と声をあげそうになりました。
     そしてこっそりと登場している九十九神w 一般的な表記の「付喪神」ではないところにこだわりを感じます。……これも野の火への伏線なのか!?
    (余談ですが野の火の九十九様は色違いの銀色のキュウコン。「百」から「一」を取って「白」ってところがうまいなぁって思ってました)


     何を言いたいのか判らなくなって参りましたが(ポケスコでも冗長だと突っ込まれたw)、とにかく自分はこの作品が理想です。
     もし雨恋に出会えなかったら、多分私はポケモン二次小説を書いてなかったでしょう。それくらい好きです。
     素敵な作品を読む機会を与えてくださり、本当にありがとうございます。


     それでは、拙文失礼致しました。


      [No.1274] 月曜日、雨と憂鬱 投稿者:レイニー   投稿日:2011/06/03(Fri) 14:06:55     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     月曜日。また憂鬱な五日間が始まる。気分が重い。
     おまけに今日は雨降り。足下は悪いし、濡れるし、じめじめしてるし、憂鬱さ倍増。雨の日と月曜日の組み合わせ。なんて最悪。本当嫌になる。
     私は、いつもよりもさらに憂鬱な気持ちで学校へ向かう。
     教室についても、誰ともおはようという言葉を交わさず、荷物を置いたらすぐに文庫本を取り出して読みふける。こうして、無意味なお喋りで満たされる息苦しい空間から少しでも逃れようと、せめてもの抵抗を試みる。それが私の日常。

     間もなく先生が来て、授業が始まる。辛い空間には違いないが、授業という皆が受動的にやらなければいけない物がある分、ずっと楽な時間。授業に集中することで、私は憂鬱さに気を取られないようにする。こうすることによって、学年トップの成績という地位も守っていく。これで頭が悪かったら、私には何にもなくなるから。
     授業が終わり、休み時間はやはり読書や早弁で時間を稼ぐ。今日も私に話しかけてくる者はいない。
     同級生が私に話しかけてくるのは、決まってテスト前。ノートを貸して欲しいという頼み。私はその頼みを受けることによって、いじめのターゲットから外されている。私が成績を気にしているのは、このためだ。
     話しかけられて嫌な思いさせられたり、いじめる側の集団に強引に加えられるより、無視されて初めからいないことにされる方がよっぽど楽。私がクラスで誰とも接しようとしないのは、そういう理由だ。


     ようやく午前の授業が終わった。私はすぐさま教室を出る。向かうのは図書館と講堂がある別棟だ。
     図書館で読み終わった本を返し新たな本を借りると、私はそのまますぐ隣の講堂へ向かう。講堂の前のロビー、その窓辺にあるテーブルとイス。ここが私のお気に入りの場所。講堂は集会がある時以外人気がない。誰にも干渉されず、他人の目さえも気にする必要がなく、自分の世界に入りこめる。私には絶好の場所だ。
     ガラスに雨が伝う横で、雨音をBGMに私は本を読み始める。今回借りたのはファンタジーの話。魔法使いの少年が修行のために旅に出て、いろんな騒ぎを起こしたり、解決したりする話。自分の生活してる世界とは全く違う世界。
     本は私を、新しい世界につれていってくれる。ドキドキ、ワクワク、ハラハラ、いろいろな感情を引き出してくれる。時には登場人物に共感し、まるで自分の事のように思うときだってある。普段の息苦しい場所とは違う、楽しい世界で満ちている。だから私は本が大好きだ。
     時には、この世界に行けたらいいなと思う。小説のように、軽口を叩きながらも心から信頼しあい、助け合える友達が欲しいと思うことも。
     でも、そんなこと、現実には無理だろう。私はこの世界で友達を作ることを、もうすっかり諦めていた。


     私がこの私立の女子校に入ったのは、小学校で男子たちにいじめを受けたからだった。あいつらにこれ以上いじめられるのはごめんだ。あいつらのいない女子校に行ってやるんだ。幸い頭は良かったので、難なく受験は成功した。しかし、私はまだこのとき気づいていなかった。女子という生き物は、男子のいない場所では、男子以上に陰湿になることに。
     やはりこの学校でも、いじめは存在していた。だから私はそれに関わるまいと、同級生と関わらないことにした。そして、テスト前に貸しを作ることでいじめのターゲットから外れ、さらに、それ以外は人と関わらないことで、いじめの加害者の側にも回らないことにした。だから私は今、クラスのいじめの現状がどうなっているのか、全くわからない。何もクラスのことについては知らぬ存ぜぬを通すことで、安全を保とうとしているのだ。


     小説の中では、主役の少年はドワーフの少女と出会い、仲良くなり、一緒に食事をとっていた。私もあんな風に仲間と食事ができたら……。でも、あの中じゃきっとそれは叶わぬ事だろう。
     憂鬱な空間。憂鬱な日々。さらに外を見れば憂鬱な雨。
     叶わぬ夢を思い浮かべてしまったせいで、とたんに現実に引き戻され、憂鬱な気持ちがどんどん強くなってくる。

     どうして、こんな醜い世界に生まれてしまったのだろう。小説の中の楽しい世界に生まれればよかったのに……。気がつくと現実を呪い、この世界に生まれてしまったことを恨んでいた。
     そんな時。
     誰かに見られている。そんな気がした。
     せっかくの私だけの場所なのに、誰かに見つかってしまった……!? そうではない、ただの気のせいだ、と心の中で祈りにも似た感情を持ちながら顔を上げると。

     見たことがない生き物がいた。頭に角が生えた、真っ黒なてるてるぼうずといったところか。

     ……何これ。わたしはあまりのことに、しばらくぽかんとしてしまった。
     こんな明らかにフィクションの世界にしかいないような生物が突如として現れたのだ。無理もない。

    「夢、だよね……」

     私は、自分の頬をつねってみる。……痛い。
     次に、目の前の黒てるてるに手を伸ばしてみる。さらりとした感触。思ったよりなめらかな肌触りで、心地よい。
     どうなってるんだろう……。
     あまりに現実の世界が嫌だから、幻覚まで感じてしまっているのか。それとも、フィクションの世界に迷い込んでしまったのか。
     あわてて周囲を見てみるけど、その景色はいつもの見慣れたお気に入りの場所、そのままだ。

    「あなたは誰……? どこから来たの……?」

     思わず問いかけてみるけど、黒てるてるは、空中をただふわふわ浮いているだけだ。
     いったい、何者なんだろう……?

     しかし、この黒てるてるを見ているうちに、憂鬱だった私の心は、徐々に晴れて穏やかになってきていた。ただ、この時は、まだそのことに気がつく余裕はなかったけど。

     とりあえず、私に危害を加えることはなさそうだ。その敵意のない瞳に、気がつくと私は安心感を覚えていた。
     そんなことを他人に感じるのは、本当に久しぶり。

     そんな中、ふと、黒てるてるの視線の先に、私が手に持っている本があることに気がついた。
    「もしかして……、あなたも本好きなの?」
     黒てるてるはこくりとうなずいた。……ような気がした。

    「……読んであげようか?」
     黒てるてるは嬉しそうに揺れていた。……ような気がした。

     こうして私は、黒てるてると一緒に、また本の世界に入っていった。
     感情を共有できる誰かと一緒にいるということ。私は、その喜びを、久しぶりに味わっていた。

     どれだけの時間を、私は黒てるてると一緒に過ごしていたのだろうか。とても長かったような気もするし、ほんの一瞬だったような気もする。
     黒てるてると一緒に体感していた魔法使いの少年の世界は、いつもよりも輝いていた気がした。
     それが、この本の作者の力量によるものなのか。それとも、黒てるてるが側にいたからなのか。そんなことはどうでもよくなってしまうくらい、私たちは世界を楽しみ、そして幸せだった。



     そんな私を一気に現実に引き戻したのは、予鈴の音だった。
     その音に驚き、あわてて時計を見ると、午後の授業まで後五分。
    「いけない! もうこんな時間!」
     急いで教室に帰ろうとして、そのとき気がついた。
     黒てるてるが、いつの間にかいなくなっていることに。

    「消えた……?」
     あの黒てるてるは、忽然と姿を消していた。

     謎だらけだったが、授業に遅れるわけにはいかない。
     私は、速く教室に向かわねばと、走っては行けないとされている廊下を全力で走っていった。
     あまりに急いでいたので、私は憂鬱だった雨がやんで、青空が広がっていたことにも気がつかなかった。



     後になって知ったことだけど、あの黒てるてるは、ポケットモンスターというゲームに登場するモンスターの一匹、カゲボウズらしい。人間の恨みに引き寄せられる特性を持つモンスターだとか。
     もちろん、ポケモンがフィクションだということは私も知っている。だけど、なぜあそこで私が、ポケモンにそんなモンスターがいると言うことすら知らなかった、カゲボウズと出会ったのか。それは未だにわからない。
     本当に存在していたのか、ただの幻だったのか。それすらわからない。

     ただ。
     もし、また憂鬱な気持ちに満ちて、この世に生まれたことを恨んでしまった時。もしかしたらまた会えるんじゃないかなって。
     そして、また一緒に、フィクションの世界へ旅立てるんじゃないかって。

     私は密かに、そんなことを願っている。


    (3412文字)


    ---

    約一週間前のこと。
    夢の中で鳩さんに「テーマ『雨』、2週間以内に3500字以内で」という指令を受けました。
    夢の中の私は、「じゃあ本好きな女の子とカゲボウズの話を書こう」とぼんやり思いました。
    その結果がこれだよ!

    【どうしてもいいのよ】


    (6/5 微修正)


      [No.1273] アズキトギ 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2011/06/03(Fri) 02:27:31     102clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ――夜が怖い。
     ――夜が来るのが怖い。

     もう半月程、彼はぐっすり眠ることができずに悩んでいた。
     変な音が夜中、決まった時間に聞こえてくる。
     最初は少し気になる程度だったが、毎夜、誰もが寝静まった夜中にその音が聞こえて目が覚めるとだんだん不安になってきていた。
     彼の生まれた町では、夜は恐ろしいポケモンが出没するという言い伝えが語り継がれていた。もちろん、それを完全に信じる者がどれだけいるのかはとにかく、少なくとも日が落ちる頃には外に出歩く者はいない。そんなところで育った。今は故郷を離れ、夜に出歩くこともするようになったが、未だに夜は落ち着かない。そんな夜が苦手な彼が、さらに夜に何かが起これば、そのままでいられるはずもなかった。

     おかげで最近、彼の大学での講義の時間は散々なものとなっていた。やっと眠りにつく頃には朝日が昇り始めることもあったほどで、例えキャンパスから家が近くても、集中して講義を受けることができなくなっていた。講義中のざわめきもヒソヒソ声も、あんなに退屈でもう聴きたくないと思った教授の声も、大好きな科目も、全てが安らかで心地よく感じてどうしようもない。そんな彼を助けてくれていたのは一人の女性だった。遠くの地方から留学してきた彼女は、面倒見もよく、彼を心配してノートを自ら貸してくれたのだった。
     ただし、やはりそんなことが続くと疑問も出てくる。幸い彼は真面目な学生というイメージが浸透していたので愛想をつかされるということもなかったが、理由を説明しないわけにはいかなくなったのである。

    「で、それってどういう音なの?」
    「ああ、何というか、シャッシャッていうか、スッスッていうか」
    「よくわからないわねー。鳴き声とか? ポケモンの」
    「いや、生物的な鳴き声というよりは、何かこう、こすれるというか、ぶつかるというか……」
    「それってあれじゃない?」
    「あれ?」
    「伝説のポケモン、アズキトギ」



    「アズキトギ?」



    「ほら、君の家って河原の近くにあったでしょ? 私の故郷では夜、川で『アズキトギがアズキを洗う』って伝説があるのよ」
    「どんな、ポケモンなの……?」
    「さぁ? どんな姿だったかな? 何しろ伝説のポケモンだから見たことないし、そもそも見た人いるのかなぁ? とにかく、アズキを川で洗う謎のポケモンなのよ」
    「アズキって?」
    「えと、これぐらいの赤っぽい色で、アズキ色の豆」
    「アズキ色?」
    「あー、アズキ知らないんだもんね。何言ってんだろ私。アハハ」
    「凶暴なの?」
    「さぁ? 何しろ幻のポケモンだから」
    「何でそんなことするの?」
    「何でだろうねぇ。私も知りたい」

     結局彼女もその正体までははっきりと知らないらしい。
     そんなわけで余計な謎まで増えた挙句、彼女の話を聞いた所為で、日が暗くなっていくにつれて、彼の頭の中のアズキトギは形がはっきりし始め、次第に輪郭を帯びていのを止められない。




    「やっぱり今日も眠れないな」

     その夜、彼は音で目が覚めるどころか眠気すら訪れることなく、目をぱっちり開いたままベッドで天井を見ていた。昂った神経を落ち着かせる術を身に付けているわけもなく、何度も寝返りをうって、ぎゅっと目を閉じては目を開いてみたり薄目をしてみたり色々やっては繰り返す、そんなことしかできない。
    メリープを数え、モココを数え、モンメンやエルフーンも数えだし、頭の中の牧場がもこもこふわふわで一杯になり、挙句にメリープ達が残らずデンリュウに進化して、エルフーン達が痺れて動けなくなったところを「奴」がやってきた。ビリビリのモコモコを恐ろしい姿のポケモンが、血の色の豆と一緒にバクバク食べだした。デンリュウが逃げ出し最後の一匹に飛びかかろうとしたその時、例の音が聞こえてきた。

    「ひっ!」

     彼の情けない声が一瞬で闇に吸い込まれ、再び静寂。遠くにはあの音がずっと聞こえていた。すっかり引き戻された現実も、妄想同様、最悪のままだった。

    「ああ、もう!」

     彼は耐えられなくなり、適当に着替えると、ポケモンの入ったモンスターボールを身につけて家を飛び出した。
     進む先には川原があった。だんだん音も大きくなっていくようで、そこで間違いないようだった。川原は少し低くなっていて、向こう岸と繋ぐ、車も通れるような大きな橋があった。その下は明かりもなく暗くてよく見えない。近づくにつれて駆ける足は次第に遅くなり、ゆっくり歩くのがやっとになった。とにかく暗い。つまずきそうになって明りになるものも持っていないことに気付き、彼は自身を鼻で笑った。それを理由に探索を止めようとした時、暗がりに気配を感じた。

     ――何かがいる。

     キラリと光った。
     赤い色をしていた。

    「っ!」

     かろうじて声をあげなかった自分を彼は少しだけ褒めた。しかし彼の勇気はそこで使い果たしてしまったらしく、モンスターボールに手をかけた状態で固まった。
     恐怖と緊張のあまり動けなくなってしまったようだった。
     手も震え足も震え、このままではボールを落としてしまうとか、震えるあまり倒れてしまうだとか、周りの状況と全く関係ない情けない心配をし始めしたころ、謎の正体を目撃した。

     現れたのはコマタナ。野生でも見かける珍しくもなんともないポケモンだ。

    「なーんだ」

     そう口にした瞬間、体が自由を取り戻す。一気に汗が噴き出し、少しの疲れと眠気がやってきた。

    「コマタナだよ、コマタナ! どこにでもいるただのポケモンじゃないか。なんだなんてことはないビクビクしてバカみたいだハハハ」

     目が合う。
     野生の狩猟者の、射る様な視線だ。
     深夜の客を1匹はじっと見ていたが、敵ではないとわかったのか、取るに足りないと感じたのか作業を開始する。
     一定のスピードでその音が聞こえる。
     石に刃をこすり合わせ、何度も何度も動かす。その手の刃は欠けている。手だけではない。胴体、頭と体中の刃もぼろぼろだ。毎日聞こえる音は、コマタナが全身を治している音だった。



    「なんだぁ。コマタナかぁ」
    「そ。コマタナ」
    「幽霊の正体見たり、枯れ尾花ね」
    「カレオバナ?」
    「枯れたススキのことよ」
    「ススキ?」

     留学生に早速報告すると、すっきり冴えた意識で講義を受ける。睡眠時間が増えたわけでもないのに眠気はほとんどない。ただそれは河原を去った時から離れない茫洋とした感覚のせいかもしれない、と彼は思っていた。

    「ああいうのって普通のことなのかな」

     少し沈んだ声で言う彼の言葉に、彼女は手櫛で梳きながら言う。

    「ああいうのって?」
    「体中の刃が欠けたりして」
    「まぁ、一番槍を気取って頑張っちゃう子なのかもしれないわね」
    「要領が悪くてぼろぼろになるまで無理しちゃうとか」
    「うん。何にせよ、しがみついて狩りをするなら刃が折れたり欠けたりってのはいつものことなのかもね」

     教室に笑いが起きた。講義中の教授は、よく生徒をイジったり余談を挟んだりして学生の気を引く。難しい話が続いたときなど、生徒に一息入れるさせるための工夫だ。おかげで講義の人気も高い。

    「進化するのがさ、随分と遅いよね。コマタナって」
    「そう――ね。そういえばそうかも」

     講義は、サンヨウシティ近くの地下水脈に生息するポケモンの種の変化から、その現在の共生の仕組みに移ろうとしていた。
     彼はあのコマタナのことを考える。全身の刃は欠けに欠け、毎日体を研ぎ、来る日も来る日も狩りに明け暮れる日のことを。いつかは進化して、グループのリーダーとなる日が来る。ひょっとしたら来ないかもしれない。それでも毎日狩りに出るそんな日。

    「どうしてコマタナの進化は遅いのかな」

     彼の言葉への返事は予想していたよりはるかに大きく、低い声だった。

    『面白いこと話してるね。留学生さんとキミ』
    「え? ボクらですか?!」
    『うん。そう』

     講義をしていた教授が話に割り込んできたのだった。
     講堂というのは、大勢いても案外生徒が見えるものらしいが、まさか小声の会話まで聞こえているとは思いもよらず、彼は動揺した。マイクで拡声された教授の言葉によって学生の視線を一気に受けた彼は顔を真っ赤にした。
     私語を怒られるのかと思いきや、教授は二人に質問し始めた。

    『どうしてキリキザンの進化が遅いかわかるかい?』
    「え、あー、うーんと」

     彼は必死に、教科書のページをめくった。

    『乗ってないよ。正確なところはわかってないから。憶測でいいんだよ。どう考える?』
    「えー、どうなんでしょう?」

     彼の言葉に忍び笑いもちらほら聞こえた。

    「そーですねぇ、あんまりみんなが進化すると獲物がなくなっちゃうぐらい敵がいないとか、そういう感じじゃないかと思います」
    『ふむふむ。なるほどね」

     そういう考えもありだとメモをとった教授は、咳払いを一つして話しだす。

    『私はこう考えるね。あー、ノートとらなくていいからね。ただの余談だから』

     教授はニヤニヤしながら言った。

    『これは群れから脱落者を出さないためのシステムなんじゃないかな』

     後継者が現れないのでリーダーが長く君臨する。年寄りがずっと現役でいられることなんだと教授が笑った。
     そして長くいることによって固体の単純な強さや若さでなく、老練された技術というものも身につけ伝えることができる。そしてリーダーが戦えなくなる頃、やっと後継者が進化するのだという。

    『もちろんこれは理想の形。実際はもっと進化する者もあり、世代交代の戦いは頻繁に行われるけど、そこは野生の厳しさだね。強いものを維持する緊張感みたいなものはなくならないはずさ』

     そして自分が引退する頃には君らも一人前の教授になって僕の研究を引き継いでおくれよ、と結んで生息生理学の本筋に戻っていった。




     それから数日、彼は再びアズキトギの音が聞こえるのを毎晩待ったが、静かな夜が続いた。一週間も過ぎたころ、例の音が聞こえて彼は家を飛び出した。前と違うのは進む足が躊躇いのないこと。そして聞こえる音が間隔が短く忙しないことだった。
     橋の下に着くとやはりいた。今回は四匹で研いでいて、音の違いはその所為だった。
     走る人間の出現に驚いたようで、コマタナは慌てて逃げてゆく。しかし1匹だけは一瞬顔を向けただけで、すぐに作業に戻った。

    「あの時のお前なんだな」

     声を無視して刃を研ぐ体はボロボロで、以前より刃こぼれが増えているような気がした。

    「どうしてそんなに頑張るんだよ」

     答えはない。

    「虚しくないのか?」

     反応もない。

    「俺と一緒に行くか?」

     一歩踏み出したとき、やっとコマタナが反応する。右腕の刃を突き出し、彼を牽制していた。あともう一歩でも踏み出せば飛びかかってくるだろう、そういう音のない剣幕を感じて彼は立ち止まった。

    「俺と一緒にいれば、狩りもしなくてすむし、ボロボロになってもすぐにポケモンセンターに連れていって回復してやる」

     コマタナは動かない。先程から変わらず切っ先を向けて彼を睨みつけていた。

    「だから俺と――」

     言葉は途中で途切れる。モンスターボールをポーチから取り出したとき、砂利をける音がいくつか聞こえたからだ。先ほど逃げた三匹が、コマタナの後ろに立った。仲間のために戻ってきたのだろうか。

    「そっか」

     初めてあった日からまとわりついた、茫洋とした感覚は溶けるように消えていった。

    「それは俺の、人間の一方的な考えか」

     コマタナは相変わらず刃を突き出したまま、構えを崩さなかった。

    「だよな?」

     彼はモンスターボールをしまって、かわりに取り出したものを投げる。
     三日月よりも細くコマタナの刃が煌めいて、彼の投げたオボンの実はまっぷたつになって落ちていた。

    「なんだ、いい切れ味してるじゃん」

     アズキトギの音で彼が目を覚ますことは二度となかった。

    ------------------------------------------------------------------------
    お題「眠り」

    コマタナがお腹や頭の刃を研ごうとする姿って、苦戦してそうで想像するとなんか和みます。

    お読みいただきありがとうございました。

    【書いてもいいのよ】 【描いてもいいのよ】 【批評してもいいのよ】


      [No.1272] うそん 投稿者:音色   投稿日:2011/06/02(Thu) 23:42:38     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     某月某日コンテストの投票締め切り手前頃


      ( ゜д゜)    もーすぐコンテストの投票締め切りだなー
    _(__つ/ ̄ ̄ ̄/_ まぁ、あれだよ。自分の投票は終わったし昨日書いたスキンヘッドの感想でも
      \/    ./  チェックしてみようか。誰も来てないだろうけどww
         ̄ ̄ ̄   

      ( ゜д゜)    あ・・・管理人様からだ。嬉しいなー。
    _(__つ/ ̄ ̄ ̄/_ ギャップ萌えだなんてそんな―(笑
      \/    ./  あ、もう一つ感想ある。
         ̄ ̄ ̄   

      ( ゜д゜)     ・・・え、渡邉・・え?   
    _(__つ/ ̄ ̄ ̄/_なんでこんな超大物のお方が俺の奴にコメントくださってるの?
      \/    ./  しかもこの時間帯ってことはコンテスト投票終ったとかそんな時間じゃね?
         ̄ ̄ ̄

      ( ゜д゜ )     
    _(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
      \/    ./
         ̄ ̄ ̄

      ( ゜д゜)    
    _(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
      \/    ./
         ̄ ̄ ̄

      ( ゜д゜ )  
    _(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
      \/    ./
         ̄ ̄ ̄

     初っ端からごめんなさい。でも本当にこんな感じだったのです。
     だって渡邉様からコメントいただけるなんて夢にも思ってなかったんだもの! 


    > スキンヘッドは毎日の手入れが面倒だから、本当の面倒臭がり屋にはできない。
    > 彼は面倒だとは言っている割に、ガキの面倒を見られるほど繊細にできている。
    > とてもバランスの取れた内容だと思います。

     いやあのごめんなさい。
     そんなこと何も考えずに書いた駄文なのですよこれは・・(おい


    > なんだろう、このテンポのいい言い回し。
    > 新作落語みたいな感じかな。

     え、落語ってこんなのもありなんですか!?
     自分古典落語しか知らないからなぁ・・うむむ、勉強せねば!

     コメントありがとうございましたっ・・!


      [No.1271] もしもポケモンの世界にインターネットがあったら@嫁の飯がマズいスレ 投稿者:キトラ   投稿日:2011/06/02(Thu) 23:41:10     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    投稿者:名無しのゴンベ
    時間:9/12 7:18
    ID:uTa45AS
    なんだこれ、まずすぎる。
    嫁にそんなことを思ったら書くスレ。
    ここを見て嫁は批判、粘着、反論する暇あったら腕みがけ!
    テンプレ>>2


    [218]
    投稿者:ななし
    時間:10/11 19:34
    ID:yLe2rot

    良いだろうか?
    幼なじみと同棲→結婚って言うようになったんだが、そのときから飯がまずいというより汚い。
    なんていうか、みそ汁よそうにも具が椀のふちからはみ出ている。
    昨日は煮物だったが、原型とどめていない。
    でも味はそんなに悪くない。
    だから注意しようにも、形が悪いというと食べちゃえば一緒とかいってくる。
    どうしたらいいんだorz
    ちなみに部屋も汚い。だから掃除はこっちがやっているんだが


    [223]
    投稿者:ななし
    時間:10/14 12:13
    ID:5getKlii
    >>218
    見た目きれいな料理つくってやれよ。てか料理つくってくれんならまだマシだろ。
    共働き?

    [226]
    投稿者:ななし
    時間:10/15 14:26
    ID:6ejtqio
    >>223
    共働きというか、自営です。
    休みがなくて負担かけてるのは解ってるんですけど


    [256]
    投稿者:ななし
    時間:10/26 20:33
    ID:rEtm2lp

    俺の嫁も飯が変な味がする。
    それ指摘したら料理係が俺になりそうだった。
    だからがまんして食べてる。
    娘と息子が一人ずついるが、将来こいつらが変な味覚にならないかそれだけが心配だ。

    [289]
    投稿者:ななし
    時間:11/01 12:09
    ID:Buli98k

    嫁に飯マズいなんていったら俺ころされるwwwww
    飯マズいとかじゃないんだけど、俺ホウエン出身、嫁ジョウト出身ね。
    ジョウト人ってお好み焼きと白飯が一緒に出てくるっていってたけどあれマジ。
    帰ってきたらおかずお好み焼きだけ。それと白飯とみそ汁とか。
    それで喧嘩しておれが殺されかけた。
    それ以降、ご飯とお好み焼きは出て来なくなったし、俺も食べ物で文句言わなくなった

    [290]
    投稿者:ななし
    時間:11/01 15:29
    ID:Huer6m1
    >>289
    ジョウトディスってんじゃねえよホウエンの田舎者
    お好み焼きとご飯は定番だってことも知らねーのかよwwww

    [291]
    投稿者:ななし
    時間:11/01 18:11
    ID:6uHjwtj
    >>289
    ホウエンwwwwwwwww
    田舎者にはわかんねえよwwwwww

    [292]
    投稿者:ななし
    時間:11/01 19:29
    ID:rwjL81c
    お前らおちつけ。
    カントーだがお好み焼きとご飯は一緒に食わない。
    むしろ、お好み焼きは主食だろ。

    俺の嫁は別にいまんとこマズいわけじゃないが、食材が偏りすぎてつらい。
    日によって野菜にかたよったり肉に偏ったり魚に偏ったりする。
    あれなんだ、バランス感覚ないのかってくらいない。
    子供いるからか?
    ちなみに部屋はきれいだ。


    [295]
    投稿者:ななし
    時間:11/02 10:59
    ID:qUMn13j
    >>292
    子供関係ないだろう、うちも子供いるけどきれいにしようっていう気はない。
    なんでこんなのと結婚したのか自分で悩む


    [301]
    投稿者:ななし
    時間:11/03 16:02
    ID:uL2tilm
    >>226
    亀だが、自営なら仕方ない。
    目隠しして食べてみたらいいんじゃないか?



    返信フォーム
    名前
    アドレス
    本文


    ーーーーーーーーー
    本日二個目のネタ、すいません。昨日、某所に投稿したネタ。
    私が過去に書いた、主人公たちの将来の愚痴を想像してみました。過去を知らないと楽しめないわけではないと思って作ってます。
    いやさっきチャットでお好み焼きとごはんを一緒に食べる食べないの話が出たもので、思わず発掘しました。

    ちなみに、218は赤の主人公
    256が銀の主人公
    289がサファイアの主人公
    292が青の主人公

    です。
    どなたがお嫁さんかは、想像にお任せします。

    【なにしてもいいのよ】【ちょっと某掲示板風すぎたのよ】


      [No.1270] さといもと煮っ転がし 投稿者:音色   投稿日:2011/06/02(Thu) 23:11:48     87clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     実家が贔屓にしている農家のおっさんから食料が届いた。正直最近ろくに米粒も食っていなかったので感謝。
     パプリカが早く開けろとせっつくので開けた。イモ類ゴロゴロ。米はなかった。パプリカは入っていた。残念。
     芋以外に何か入っていないのかの掻き回すと手紙があった。米捜索をパプリカに任せ、開封。


    『親愛なるぼっちゃまへ』

     初っ端からこれか。やめろ、ぼっちゃまは。変わってねぇなと苦笑。
     あのじじぃ、達筆そうな字からまだまだ健在なのが分かる。
     
    『そちらはどうですか。都会の空気を吸って悪い病気などはやっていませんか。嫌な事があったらいつでもうちに来てください』

     確かに昔は親父に勘当されるたびにこのじいさまのところに転がりこんでいた。
     そこ意外に寝る場所なかったし。

    『うちではジャガイモもサツマイモもベニイモもナガイモもタネまきもみんな元気です』

     そりゃ元気だろう。どいつもこいつも俺とケンカした奴らばかり。
     ちなみにモグリュ―モグリュ―モグリュ―モグリュ―ヒトデマンだ。タネまきは強かった。あいつの高速スピンは俺もパプリカもぼこぼこにされたもんだ。
     苦い思い出が蘇った所で次。

    『みんな立派に大きくなって子供達も増えました』

     ・・・え、あいつらに♀いたの?マジで?知らなかった・・。
     つってもタネまきは性別ないはず、だよな・・。

    『何はともあれ、うちで作ったものをたくさん食べて体調を崩さないようにしてください。また遊びにおいで』

     それで終わりかよ。まぁ、どうでもいいことだらだら続けられるよりマシか。
     何だパプリカ、つっついて。米あった?ない?・・そっか。

     ・・で、その手に持ってるボールはなんだ?

     ぽん、と音がしてずしんとモグラが飛び出した。

    「どりゅーず!」

     ・・・。
     おまえ、なんでここにいるんだ?


    『追伸:さといもも元気です。よろしくお願いします』


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  スキンヘッドの手持ちに ドリュウズが加わりました。入れたかっただけす。趣味です。認めます。

    【ホントはもっといろいろ裏設定あるんだけどこんなもんだよね】


      [No.1269] 一羽500円です。 投稿者:スズメ   投稿日:2011/06/02(Thu) 22:55:01     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    感想ありがとうございます!
    焼き鳥屋さん、あの焼き鳥屋さん本当はポッポに倒されるつもりだったのですよ・・・なぜか勝ってるし。
    気づいたときにはすり替わっていました、焼き鳥屋さん強い・・・。
    誰か様のツイートで、焼き鳥屋をのぞき込む鳩さんの話が出ていたのが元になりました。
    焼き鳥屋さんから見たら、おいしそうに違いないと。
    途中から焼き鳥(生)に表記が変わっているのも気のせいです。
    本当にこんなことをしたら携帯獣なんやらかんたら法に引っかかりそうですが・・・。
    焼き鳥さん達がかわいく見えたのならよかったです!
    って・・・正体判明しました。
    読んでくださりありがとうございましたforラクダさん


      [No.1268] なんて美味しそうな話 投稿者:見学者   投稿日:2011/06/02(Thu) 22:07:53     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    閲覧仮想大会チャットにて、「正体が見破られたらリクエストを受けるべし」というルールに見事かかったスズメさん。いつも美味しそうな姿で現れるので、「焼き鳥でひとつよろしく」と投げっぱなしジャーマンを決めて退場したのが数日前。

    注文どおり、焼き鳥が出来上がってるよ…!


    > 「焼き鳥が一羽、焼き鳥が二羽・・・」

    この時点で吹きました。

    >  その日も焼き鳥屋さんは、電線にとまるポッポたちをそう数えていました。
    >  「あいつらが捕まえられたら、どんなに生きの良い焼き鳥になるか」

    職業病ですね、分かります。私もトリ類を見る度、ついつい肉付きを確認してしまうので……。焼き鳥屋さんに親近感が沸きました。
    でもお店の掃除はするべきだと思う(笑)

    その後の焼き鳥屋さんの言動、おバカで愛らしいポッポABC…じゃない、焼き鳥(生)達の行動に終止爆笑、特に『なにしろ、焼き鳥なだけにとり頭。』がツボに入りました。上手い……!こういうの大好きです!

    さて、焼き鳥屋さんのお眼鏡にかなってしまった哀れな焼き鳥(生)達の運命は…えっ、本当に焼かれた!?

    と思いきや、やれやれちゃんと脱走したのね……って、焼き鳥屋さんの腕の中にダイブしちゃいかんがな!
    えーと、計画は念入りに立てないとこの焼き鳥さん(生)達のようになってしまいますよ?ということは、つまり…。

    南無。そしていただきます。


    とりあえず突っ込ませていただきます。なんでスズメさんの書かれる生き物は皆愛らしいんだ……!素晴らしいじゃないかコンチクショウ!

    焼き鳥話を楽しませていただきました。リクエストを受けていただき、どうもありがとうございました!   見学者(の皮を被ったラクダ)


      [No.1267] (・∀・)フヒヒ 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/06/02(Thu) 22:03:20     76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    こうやって書いておいてなんですが、幼い頃の経験上、兵隊さんの幽霊は礼儀正しくて優しい人多いですよフヒヒ


    >クーウィさん

    >幾らなんでも早すぎるでしょう。 これは酷ぇ・・・(白目)
    >ツイッターで呟かれてたのを見たのが4時間前だというのに、帰ってきてみたらもう出来ていた罠。 しかも面白い・・・
    書き始めから書き終わりまで3時間、昼飯抜いて正味2時間強ってとこでしょうか。
    研究室で先輩の目を盗んで書いた甲斐がありました。
    勢いって大事ですね(・∀・)フヒヒ

    >最後の、この部分が結構意味深。
    >素直に読み飛ばして終われないのがまたミソ。
    (・∀・)ニヤリ


    >No.017さん

    >えーとつまりこれは兵隊さん悪霊化ということでおk?
    >兵隊さんは予感していたのかなー。
    (・∀・)ニヤニヤ

    >もしかしてその雨粒……色は赤だったりしないよね?
    >しないよね!!!
    さあどうでしょうね(・∀・)フヒヒ


    感想ありがとうございましたー。


    (URL? 何の話ですかな?)


      [No.1266] 迷いの森の育て屋さん 投稿者:キトラ   投稿日:2011/06/02(Thu) 21:48:24     77clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    いつまでメソメソ泣いてやがるこのガキ

    吠えた。森にこだまし、涙を流していたシキジカはピタリと止めた。
    「たかが親いねぇくらいで泣いて何になるんだよ!言ってみろ、説明してみろ!できねぇならメソメソしてんじゃねぇ!」
    全く種族が違うゾロアーク。その牙と威圧感にシキジカは完全に黙った。


    ゾロアークは知っている。このシキジカが生息地と全くかけ離れたところにいる理由、そして泣いてる理由。
    大人しくて草食。強いメブキジカを必要とされる人間から逃がされた。いらないから。
    だからこそ、ゾロアークは気に入らない。生まれた直後に親に会えないまま放り出され、途方にくれるのも仕方ない。
    が、そんなものは生きる上で必要ない。

    ゾロアークとその兄弟も、同じだった。捨てられ、人間を恨み、復讐を決意し、返り討ち。残ったのはそこまで人間に興味なかったゾロアークだけ。

    捨てたことを後悔させてやる。そのこと自体、「人間が好きでたまらない」と証明してることだ。

    捨てられた、ショックだ…騒ぐのは自由だが、これからどう生きていくかを考えないとならない。途中で死んでいった捨てられたポケモンたちは、いつまでも人間のことを考えていたから全滅した。



    「でも、でもぉ」
    まだ渋るシキジカにゾロアークは背を向ける
    「死にたいならいつまでもメソメソしてな。」
    「…待ってよぉ」
    シキジカが勝手についていく。ゾロアークは振り切ろうともせず、森の奥に歩いていく。シキジカには大きな段差を、ゾロアークは手伝ってやった。
    そうして、ゾロアークは自分の住まいについたのである。勝手に増えた住民と共に。



    「迷いの森にキャンピングカーがあるでしょ?お姉さん喋れないみたいなのよ」
    「それでもシキジカとはとても楽しそうだけど」



    ーーーーーーーーーーー
    以前、逃がされたポケモンの行方をテーマにしたSS投稿スレに投稿したものです。
    見直すと、携帯から書いたからか、とても軽い感じがしまくります。
    絶対にあのお姉さんは廃人を見てるはず!

    そのスレにあった、ヒウンでゾロアークが会社員として生きていく話とかもあって、平成たぬき合戦ぽんぽこを思い出した次第です。
    多摩の狐は全滅しました。だから化け学が使えるものだけこうして人間になって生きている
    イッシュにたぬきっぽいやつはいないですが、そんな背景があるような気がしました。

    【なにしてもいいのよ】


      [No.1265] ぽつりぽつりと雨粒が 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/06/02(Thu) 19:55:19     79clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    えーとつまりこれは兵隊さん悪霊化ということでおk?
    兵隊さんは予感していたのかなー。

    > 道端の色褪せた紫陽花に、ぽつりぽつりと雨粒が落ちはじめた。

    もしかしてその雨粒……色は赤だったりしないよね?
    しないよね!!!


      [No.1264] 帰ってきたらなんと言うことか・・・ 投稿者:クーウィ   投稿日:2011/06/02(Thu) 16:38:15     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    幾らなんでも早すぎるでしょう。 これは酷ぇ・・・(白目)

    ツイッターで呟かれてたのを見たのが4時間前だというのに、帰ってきてみたらもう出来ていた罠。 しかも面白い・・・


    紫陽花の使い方がいいです! 情景描写にはっきりとしたアクセント。  ついでに時間の流れの表現や雰囲気作りにも噛んでいる。
    繰り返し表現の良い例だなぁと感じましたです〜。


    >  兵隊さんの銃剣の先が、きらりと光った。

    最後の、この部分が結構意味深。
    素直に読み飛ばして終われないのがまたミソ。



    いいもん見せて頂きました!  


      [No.1263] 通学路の紫陽花 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/06/02(Thu) 13:54:28     236clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:紫陽花の】 【花弁に見える所って】 【花弁じゃなくてガクなんだぜ】 【ところで作者は】 【ガクアジサイが大好きです

     学校からの帰り道。
     ランドセルを背負って小道を歩いていると、今日も声をかけられる。

    「やあ、おかえり」
    「ただいま」
    「おかえりなさい」
    「ただいま」
    「お兄ちゃん、おかえり!」
    「ただいま」

     道の端に、真ん中に、今日も人が立っている。
     僕が通るたび、いつも声をかけてくれる。

    「おかえり。今日は何もなかったかい?」
    「ただいま。授業中に髪を引っ張ってくる奴がいたけど、特に何もないよ」
    「それはいけないな。気をつけるんだよ」
    「ありがとう」

     すれ違うおばさんたちが、こそこそと話す声が聞こえる。


    ――いやぁね、あの子、また壁に向かって話してるわ。

    ――毎日ああなんでしょ? 気持ち悪い子ね。


     おばさんたちはそう言って、僕に嫌な目線を向ける。

     どうやら、僕が毎日会って話しているこの人たちは、他の人たちには見えないらしい。
     家で、学校で、道で、公園で、僕にしか見えない人たちとたくさん出会う。
     中には髪の毛を引っ張ってきたり、転ばそうとしてきたり、驚かしてきたり、夜中に金縛りをかけてきたりする人もいるけれども、みんな大体は他の人間と変わりない。


     通学路でいつも真っ先に声をかけてくれるおじいちゃんは、いつも立っている目の前の家に住んでいた。
     道の真ん中に立っている、髪の長いお姉さんは、薬を飲みすぎてしまったらしい。
     小さな女の子は、車に轢かれたと言っていた。僕をお兄ちゃんと呼んで慕ってくれる。
     時々この道にやってくる、銃剣を背負った兵隊さんは、僕の身の回りのことをとても心配してくれる。

     みんな、とてもいい人たちだ。


     僕が仲良しなこの人たちを、幽霊、幽霊ってみんな怖がるけど。
     でも、元々はみんな、僕らと同じ人間なんだ。


     道端の紫陽花が、少しずつ花を開き始めていた。


    +++


     学校からの帰り道。
     ランドセルを背負って小道を歩いていると、今日も声をかけられる。

     と思ったのに、いつものおじいさんがいない。
     お姉さんもいない。みんな、いない。
     どこかにはいるみたいだけど、みんな姿を隠しているみたいだ。


     助けて、と叫び声がした。
     慌ててそこへ向かうと、見たことのない生き物がいた。

     大きな顔があるまあるい体に、バケツのような頭が乗っている。太い腕に大きな手。足はない。
     その生き物が、僕が毎日会うあの女の子を追いかけていた。

     その生き物は、大きな手で女の子をつかむと、おなかの口を大きく開いて、女の子をぱくりと飲み込んだ。
     女の子を食べた生き物はおなかをさすると、またどこかへとふよふよ飛んでいった。

     僕は怖くて、びっくりして、その場からぜんぜん動けなかった。


     その日から、女の子は僕の前からいなくなった。


     道端の紫陽花は、紫色の花をつけていた。


    +++


     学校からの帰り道。
     ランドセルを背負って小道を歩いていると、今日も声をかけられる。

    「やあ、おかえり」
    「ただいま」
    「おかえりなさい」
    「ただいま」

     いつものように返事を返す。
     女の子はいない。でも他の人たちはいつもと変わらない。

    「やあおかえり。今日は何もなかったかい?」
    「ただいま。大丈夫、何もないよ」
    「そうか、ならよかった。ところで、いつもの女の子を見ないんだが、知らないかい?」

     兵隊さんは辺りを見回しながら聞いてきた。
     僕は先日のことを兵隊さんに話した。兵隊さんはうーんそうか、といつも女の子が立っていたところを見た。

    「お迎えが来てしまったんだな」
    「兵隊さん、あれのこと知ってるの? あれは何なの?」

     兵隊さんはにっこりと笑って、どこか座れるところで話そうか、と言ってきた。


     空は曇り空。もうすぐ梅雨に入りそうだ。
     近くの公園のベンチに、兵隊さんと並んで座った。きっと兵隊さんは座らなくても平気だろうけど、僕は立ちっぱなしは辛いから、僕のことを思ってくれたんだろう。兵隊さんは優しい人だ。

    「君が見たのは、ヨノワールと言うポケモンだよ」
    「ポケモンなの?」
    「そう。ヨノワールは、私たちみたいなこの世から離れられない魂を運んでいるんだ」


     この世に対する思いが強すぎたり、理由はいろいろあるけれど、死んでもこの世から離れられない魂はたくさんいる。
     君はこれまでにたくさん、私のような人たちを見てきただろう。私たちは死んではいるけれども、元々君たちと同じ人間だ。この姿になっても、少し悪戯が出来る程度。
     だけど、この世にずっととどまり続けていると、この世の中の負の力を蓄え続けてしまうことがある。
     それが度を超えると、とんでもなく悪いことをする霊になってしまうこともあるんだよ。

     そうならないために、ヨノワールはこの世界に取り残された魂たちを、霊界に運んでいるんだ。


    「死んでからこの世に長くいるからね。次に会ったら、私も運んでもらおうと思っているよ」

     そう言って、兵隊さんは僕の頭をなでた。

     だけど、僕の耳には、兵隊さんの言葉はほとんど入ってこなかった。
     ポケモン。あれはポケモン。そのことばかり考えていた。


     道端の紫陽花は、風に吹かれてざわざわとゆれていた。


    +++


     学校からの帰り道。
     ランドセルを背負って小道を歩いていると、今日も声をかけられる。

     と思ったけど、みんなの姿が見えない。
     ああ、この前と同じだ。

     あいつがやってきたんだ。


     道を走って、あいつを見つけた。
     この前見たのと同じ、まんまるの体に大きな手。

     駆け寄ると、そいつは赤い一つ目をくるりと動かして僕を見た。

    「見つけたぞ。みんなを返せ」

     僕が言うと、ヨノワールはびっくりしたような顔をした。とは言っても、顔から表情は読めないから、雰囲気で察しただけだけど。
     ベルトに手をまわして、僕は言った。


    「お前にとってはいない方がいいのかもしれないけど、みんな、みんな、僕にとっては大切な人たちなんだ」

    「だって、みんな優しいんだ。優しい人たちなんだ。生きてる人間より、ずっと優しいんだ」

    「そりゃ、時々いたずらしてくる奴はいるけどさ、」


    「僕を指さして笑ったり、」

    「僕をみんなで無視したり、」

    「僕の靴に画びょうを入れたり、」

    「僕の教科書を水浸しにしたり、」

    「僕の机にマジックで落書きしたり、」

    「僕をロッカーに閉じ込めたり、」

    「僕を蹴ったり、殴ったり、」


    「そんなことしてくる人は、誰もいないもん」


     僕はベルトから外したボールを握りしめた。


    「馬鹿にされないように頑張ってポケモンを育てても、変わらなかった」

    「気持ち悪い、嘘つき、って。みんなそう言うんだ」

    「幽霊よりな、幽霊なんかよりな、」



    「生きてる人間の方が、よっぽど怖くて、汚いよ」



     放ったボールから、黒い鎌のような角を生やした、白いポケモンが現れた。
     慌てて逃げようとするヨノワールに向かって、僕は命じた。


    「『かみつく』!!」


     何とも言えない声を残して、ヨノワールは消えた。

     ああ、勝った。僕は勝ったんだ。
     これでまた、今までと変わらない生活が待ってるんだ。


     道端の紫陽花は、赤い色に変わっていた。


    +++


     学校からの帰り道。
     ランドセルを背負って小道を歩いていると、今日も声をかけられる。

    「やあ、おかえり」
    「ただいま」
    「おかえりなさい」
    「ただいま」

     道の端に、真ん中に、今日も人が立っている。
     僕が通るたび、いつも声をかけてくれる。

    「おかえり。今日は何もなかったかい?」
    「ただいま。うん、今日はとても平和だったよ」
    「そうか。それは、よかったね」



     兵隊さんの銃剣の先が、きらりと光った。



     道端の色褪せた紫陽花に、ぽつりぽつりと雨粒が落ちはじめた。





    ++++++++++The end


    「幽霊と仲良しな少年と浮遊霊回収に勤しむヨノワールの小話」という電波を、今日の昼前に突然受信した。

    ついでだから夏も近いしってことで、涼しくなる話を書こうと思った結果がこれだよ。

    電波の割にヨノワールの出番が少ないけど気のせいだよ。


    書き終わった途端に外で雷が鳴って、大雨が降り始めた。

    窓から見える紫陽花は、まだ咲いていない。


      [No.1262] 俺のブラック螺旋な日記 ※END後の一幕 投稿者:音色   投稿日:2011/06/01(Wed) 23:15:44     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ある時、Nが遊びに来て、こっそりボク達に耳打ちした。

    『君たちは彼女のどこが好き?』

    『手!俺はあいつの手が好きだ!』

     バトルに勝った時褒めてくれる手が好き。
     バトルに負けたとき慰めてくれる手が好き。

     真っ先に手を挙げたドリュウズ。

    『私は・・・主の背中だろうか』

     どんな逆境だろうとどんな苦しい戦いだろうと
     諦めず凛と前を見据え、全てを背負うその姿が。

     腕を組んでダゲキは語る。

    『わたしはそうね、あの人の足が好きよ』

     空を飛ぶわたしと違い、地を駆ける事が出来る人。
     いつでもいい、空以外でゆっくりと一緒に歩いてみたいもの。

     スワンナはどこか楽しそうに言った。

    『・・髪の匂い、かな』

     小さかった時抱きあげてもらって、ふわりとかおるお日さまの匂い。
     大きくなった今でも、時々顔を突っ込みたくなる衝動にかられる。

     一番付き合いの長いジャローダは、目を細めて。

    『え、え、えっと、全部!』
     
     だってどこが好きなんて、そんなの分かんないよぅ。
     でもでも、食べちゃいたいくらい大好きなのは負けないよ!

     ワルビアルの最後の一言に、全員の目付きが変わる。

    『え、ちょ、冗談だってばぁ〜〜!』

     その日、庭先でみんなに追いかけられるワルビアル。
     何の話をしていたのか、噂の本人だけは分からない。

    『けっ・・。リア獣さまさまで』

     ミルホッグは一人ごちながら、主人の顔をちらりと眺める。

    『・・ま、この笑顔がやっぱ一番だろうけどよ』

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  なんかチャットで恋愛どうのこうのって話になって
    「主人公が手持ち達に愛される話」みたいなのを突発的に思いついて書いてみた。


    【みんな可愛いよー】

     あ、ブラック日記は基本的に俺の黒の主人公ちゃんのレポートを元に俺の妄想が大爆発を起こしてお話が出来上がっていきます。80%フィクションで残りは俺のゲーム体験がもとになってます。
     びみょ―に続いて行く、かも


      [No.1261] Re: 博士 投稿者:SB   投稿日:2011/06/01(Wed) 22:55:35     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     はじめまして。久しぶりにこちらを覗かせてもらうと、どこかで見たことのある文体がトップにあったので、勢いで感想を書かせていただきました。

     ひそかに前の作品(短編集。ヌケニンのおはなし等)から気になってました。同じ方ですよね? 無くなってしまって確認できないもので・・・・・・。個人的にはムテヒヌー・オスカー氏がツボでした(最弱説・最強説)。なんとなく星新一のどんぐり民話館を思い出します。ストーリー的には全然違うんですが、イメージ的に似ているような。

     オーキド博士も世界のルールも、冷静に考えると変ですよね。でも、個人的には何よりも最後の一文「今日も最新型のポケモン図鑑が、翌朝食べるパンよりも早く、子供達の手に届く。」の余韻が好きです。
     次のお話も、楽しみにしています。

     拙文失礼しました。


      [No.1260] 博士 投稿者:スウ   投稿日:2011/05/31(Tue) 23:58:48     83clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     マサラタウンを旅立った主人公が最初に連れていたのはピカチュウであるが、そのピカチュウに最初に目を付けたのはオーキド博士である。
     オーキド博士の手回しの凄まじさは世界屈指と言ってもよいほどであり、予見者である彼の動きは、常に私達の想像力の先を行く。先を先を、どこまでも先を読んでいる。
     ジョウト地方のシロガネヤマに入るには、博士の許可を必要とするが、これはまた同時に、ロッククライムという技マシンの解禁をもともなっている。
     ごく普通に、常識的に考えれば、ロッククライムの使用を通じてしか高台に上れないというのはおかしな話だ。この問題は空を飛べる飛行ポケモンが一匹でもいれば事足りるからである。
     しかし世界の法則は、なぜか私達の行く手をはばむ。
     目の前の高台にはロッククライムを使わないと絶対に上れないし、オーキド博士がシロガネヤマへのゲート封鎖を解かない限り、私達は決して、その山の内部へと足を踏み入れることができない。
     それでも私達は疑うということを知らず、博士の差し出す新たな地図に想いを馳せる。そこに未知のポケモンや出会いがあることを信じて、容赦ない追求の手を引っ込めるのだ。

     オーキド博士に全国図鑑をもらう。
     するとなぜかジョウト中の生態系が狂い始める。
     ラジオで彼のポケモン講座に耳を傾けると、これまで一度もお目にかかれなかった他地方のポケモン達の大量発生だ。

     オーキド博士がレジェンドの噂話をする。
     するとなぜかシンオウ中で懐かしい鳥三羽が騒ぎ立て始める。
     一体いつの間に、ばらまいたのだろう。
     彼が全国図鑑を手渡す時間は、彼が柔和なせりふを口にした時間は、わずか数秒のそれにも満たないというのに。

     子供達のためにポケモン図鑑をやろう。夢をやろう。
     溢れてそれでも尽きぬものを、終わらぬものを、果てしないものを。

     彼はおそらく神への階段を一歩いっぽ上がっている。
     神は立ち止まらない、神は振り返らない。
     今日も最新型のポケモン図鑑が、翌朝食べるパンよりも早く、子供達の手に届く。


      [No.1259] 続けることの大切さ 投稿者:今はただの名無し   投稿日:2011/05/31(Tue) 23:02:40     66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     続けることの大切さ。
     何事も続けることが大事。
     たとえ、それが全部間違ってても、全部否定されても、
     諦めないでください。
     今までしてきた事は、きっと無駄にはならないから。

     ……と言っていた、みなさんの言葉がよくわかった気がします。 

     全部あきらめて深ーい谷間に落ちていたとき、
     励ましてくれたみなさん。
      
     この話と絵を見て、もう一度その意味を実感した気がします。 
     小説であっても、絵であっても、それ以外の事でも、
     続けること、好きなことを好きであること、それが、大事なのですね。




     最後に。
      
     たくさんの言葉を、励ましを、ありがとうです。
                  
                                byやわらかいもの


      [No.1258] 旅のお気に入りたち 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/05/31(Tue) 21:42:46     150clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    雨上がりのミノムッチ、ソノオシティに咲く花の香り

    洗いたてのこだわりスカーフ、かたいいしのひんやりとした肌触り

    モウカザルの尻尾に落ちる雪のカケラ

    これが僕のお気に入り



    月明かりのもとを飛ぶドクケイル、森から聞こえるポケモンの鳴き声

    ミナモシティに降りそそぐ太陽の光、深い海を泳ぐホエルコの群れ

    ツリーハウスの橋を駆けるやわらかな足の感覚

    これが僕のお気に入り



    ゆらゆら揺れるマダツボミの塔、すたすた歩くお坊さん

    朝に飲むモーモーミルク、アサギシティから見る夜明け

    虫取り大会が始まるファンファーレ

    これが僕のお気に入り



    夕陽へ向かうロイヤルイッシュ号、遊園地のジェットコースター

    楽しげに音を奏でる楽器たち、役目を終えた長い線路

    ポケモンリーグのてっぺんに響く大きな笑い声

    これが僕のお気に入り



    一番道路の草の匂い、とつぜん飛び出してくるポッポ

    ヤマブキシティの迫りくるようなビル群、路地裏に住んでるニャース

    あったかいお母さんのスープ

    これが僕のお気に入り



    旅がつらくたって、ふるさとが恋しくたって、お気に入りを思い出せば大丈夫

    また歩き出せるのさ



    -------------------------------------------------------------------------------------------------

    サウンドオブミュージック「My Favorite Things」をポケモンアレンジしてみました

    あの曲がお気に入りです


    【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】【批評してもいいのよ】【あなたのお気に入りも知りたいな】


      [No.1257] ポケットチキン 投稿者:スズメ   投稿日:2011/05/31(Tue) 19:22:01     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    感想ありがとうございます!
    コンビニで食べてきました、フライドチキン。
    一瞬ポケットチキン(脳内変換にてポケモンチキン)と見間違えてびっくりしました。

    個人的にフライドチキンはファミマが一番な気がします。
    読んでくださり、ありがとうございました!

    そしてもう一つ、焼き鳥屋さんは強かった。最初は焼き鳥屋さんが返り討ちにあって、ポケモンには
    生身なんかで向かっちゃいけませんってはなしにしようと思っていたのがなぜか、焼き鳥屋さん大勝利。
    ・・・あれー?


    後日談。
    焼き鳥(生)と格闘していた焼き鳥屋さんの動画がとあるサイトにアップされて注目されたとか。


      [No.1256] ドーブルの筆がくれたモノ。 投稿者:巳佑   投稿日:2011/05/31(Tue) 13:57:18     97clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    ドーブルの筆がくれたモノ。 (画像サイズ: 1032×2505 442kB)

    「坊やにコレをやろう」
     ある日の学校帰り、公園でクリーム色ベレー帽をかぶったおばちゃんが上着のポケットから取り出したのは一本のクリーム色の毛筆。
     これはな〜に? とオレが尋ねると、おばちゃんはニッコリと笑いながら答えた。
    「それはドーブルの筆、というものなんだよ。坊やは絵を描くのは好きかい?」
     まぁ、好きか嫌いかと言われたら、好きだけど。
     少なくともいい時間潰しにはなるかな。
    「そうかそうか。なら、このドーブルの筆を坊やにやろう。これはな、絵が上手に描けるようになる魔法の筆なんだよ」
     ん〜、まぁタダでもらえるんなら、もらおうかな。
     
     でも、おばちゃん、だれなの?
     
     オレの手に乗る一本のドーブルの筆を見やった後、オレはそう尋ねながら顔を上げると――。
     
     そのおばちゃんはどこにもいなかった。
     
     何事もなかったかのように風が吹き抜けていく。
     傍から見たら、きっと急な出来事にポカンと呆然しながら立ち尽くしているオレが一人。
     手に持っているのはおばちゃんからもらったドーブルの筆が一本。

     それにしても、あのおばちゃんの顔もとても印象的だったなぁ。
     縁が茶色で丸い眼鏡。

     あの微笑みは忘れられなかった。


     
     家に帰って二階にある自分の部屋に行くと、我が家のポケモンであるピカチュウがサッカーボールをポンポンと柔らかい音を立てながら、リフティングをしていた。
     頭にボールを跳ねさせてからの、尻尾でポーンって飛ばして、頭で受け止めて、今度は足でポンポンとボールを巧みに操る。
     相変わらず器用なやつだな。
     オレはビリリダマ柄のショルダーバックを適当に放り投げ、あのときから握り続けていたドーブルの筆を見た。

     ちょっと、ピカチュウでも描いてみるかな。

     窓側にある勉強机の上に散乱していた、学校からもらったが特段に必要のないプリントの何も書かれていない裏側にピカチュウを描き始めようとする。
     筆の先端を紙に当てて……そういえば、これ、このまま使って大丈夫なのかぁ……と心配していたが、スイスイと黒い線が描ける描ける。
     あ、間違えちゃった……消しゴムで消えるかな……おぉ、きれいに消えたぞ。
     使い心地は鉛筆みたいな感じかな……毛筆のはずなんだけど、とにかく不思議だった。
     よし、もう一回書いてみて……長い耳に、ほっぺたを……また間違えた、消し消し……と、もう一回書いて……更に……と。

     できた!

     オレはできあがった絵を眺めてみた。
     う〜ん……なんか全然上手いようには見えないんだけど、まぁ、ピカチュウに見せてみるか。
     お〜い、ピカチュウ、とオレは声をあげた。

    「ピカ?」

     ピカチュウが頭から跳ねたボールを手で止めて、床にボールを置くと、オレのところまでトコトコと寄って来た。
     お前を描いてみたんだけど、どうだ? と、オレはピカチュウにできあがった絵を見せてみた。ピカチュウの目が一瞬丸くなって…………あれ? なんか一瞬、ピカチュウの赤いほぺったが光ったような――。

    「ピ〜カ〜チュ〜!!」

     あで!
     あででで!!
     あでででででででで!!!
     し〜び〜れ〜るぅぅぅぅぅぅうう!!!! 

    「ピカッ」
     ピカチュウは鼻を鳴らしながら、オレのことを一回にらむと部屋を出て行ってしまった。
     ピカチュウの怒りの『10まんボルト』を受けたプリントは見事に消し炭になっていた。
     そしてオレはビリビリとマヒしちゃって、動けない。

     ……ピカチュウめ。
     プライドが許せなかったというのか。
     そりゃあ……下手だったことは認めるけどさ、だからって『10まんボルト』はねぇだろう、『10まんボルト』は。



     やっぱり、あのおばちゃん、ウソついてたのかな?
     しびれが抜けた頃、オレはベッドの上に寝転がっていた。
     その右手にあるドーブルの筆を眺めながら。
     
     ……確かに、下手だったのは下手だったけど、不思議とこのドーブルの筆に嫌みとか、憎いとかそういった負の感情はわいてこなかった。
     むしろなんか、もっと描いてみたいなぁ……って、あんな痛い目にあって、トラウマになってもおかしくなさそうなのに、もっと、もっと、描いてみたいなぁって。

     ………………。

     オレは勉強机に向かうと、そこに置いてあったポカブ型の貯金箱からいくらか取り出すと、そのまま部屋を出て行き、一階へと降りた。
     玄関に着くと、ちょうど、多分買い物と井戸端会議から帰って来た母ちゃんにばったり会う。
    「あら、けんた。どこ行くの?」

     ちょっと文房具屋さんまで。

     灰色のスニーカーをはいて、勢いよく玄関を飛び出した。
     なんだか、楽しくなってきているオレがそこにいた。


     その後、オレは購入した大きなスケッチブックに色々なものを描いた。
     ポケモンであったり、別ジャンルのアニメやゲーム、小説のキャラクターを描いてみたり、まぁ、オリジナルのものを描いてみたりした。
     好きな音楽のイメージ画っぽいものを描いてみたりもしたなぁ。
     ドーブルの筆を片手に描きたいものを描いてきた……そして、あれから十年以上経った今でも描き続けている。

     大して上手くないかもしれない。
     自分でもまだまだだと思っている。
    「またお絵かきしている」ってなんて馬鹿にされても、描き続ける。
     だって、描くのが大好きだから!

     ある日、描きながら、思う。
     あ、もしかして、あのおばちゃんがくれたものって――。

     そのときだった。
     オレの手元からドーブルの筆が光を放って、そして、消えていったのは。

     まだ、下手かもとは思う中でも、昔に比べたらちょっとは上手くなったと自分でも思える瞬間ってあると思うんだ。

     あのおばちゃんはウソなんかついてなかった。

     でも、おばちゃんがくれたものって、きっと、きっと――。

     ドーブルの筆とおばちゃんに感謝しながら、学校の授業で使っている水色のシャーペンを取り出した。
     さぁ、次は何を描こうかな?
     
     オレのシャーペンが楽しそうに踊り始めた。



     
     ある日の放課後、一人の少女が膝にロコンを乗せて、公園のブランコで遊んでいた。
     
    「お譲ちゃん、絵を描くのは好きかい?」

     縁が茶色の丸い眼鏡をかけ、ベレー帽をかぶったおばちゃんが微笑んでいた。
      



    【書いてみました&さらしてみました(笑)】

    ★イラスト話 

     というわけで、過去絵をさらしてみました。(笑&汗)
     上から順に歴史が流れています。(汗)

     一番上は恐らく、小学校の頃の絵です。
     今のところ、発掘できたなかで一番古いと思われるものです。(ドキドキ)
     ピカチュウにソーナンスに……後はなんだろう、この謎の生物は。(汗)
     多分、ラッキーか、ハピナスを描こうとしたのかもしれません。(汗)
     その後も色々と描いていき……オリジナルキャラとコラボってみたりとかしました。(汗)
     一番下の真ん中の子もオリジナルなのですが、某診断メーカーで思いついたイラストです。
     某診断メーカー恐るべし。(汗) 
     個人的にあのメーカー、インスピレーションを刺激してくれると思ってます。(汗)
     ちなみに一番最近の絵である、巫女さんと仲間達ですが……畳が変なことになっていると思われますが、ドンマイということで。(汗)

     私自身、絵画教室に通っていた時代がありまして……。
     そのときは水彩画を描いてました……ずっと下手っぴだった気がしますが、楽しかったです。
     今は色鉛筆中心ですが、機会があったら久しぶりに水彩画で一枚描こうかなぁ……と思っている今日この頃です。
     
     昔はスケッチブックとかに描いていたのですが、今は無地のノートに『落描き帳』と銘打って描き続けています。
     ポケモンだったり、オリジナルキャラだったり、その他、少し。(汗)
     あっという間に5冊溜まりました。
     ちなみにマサラのポケモン図書館に通い始めてからは更に刺激をもらい、ポケモン率が上がり、6冊目ももう少しで終わりそうです。(キラーン)
     


    ★今回の物語

     よく「どうして、そんなに上手いのですか?」という質問があると思われますが……。
     まぁ、私自身、そんなことを言われたことがないもの&まだまだですから、答えていいのか戸惑っているのですが、私自身としての答えは……。
     やっぱり『続けること』と、それと『大好き』であることが、ありきたりな答えかもしれませんが大事かなと思っています。

     下手でもいいんです。
     もちろん上手でもいいんです。

     要は趣味とどう付き合っていくか……それが大事だと思っています。

     もちろん積み重ねもね!(キラーン)

     ちなみに、あのおばちゃんは人間にふんした、ドーブルの精霊さんみたいな方です。(汗)



    ★最後に 
     
     処女小説もあったから、過去絵もいいかなぁ、と思って投稿してみました。
     さぁ、皆様もぜひ、過去絵を!(キラーン)
     
     ありがとうございました。


    【過去絵出しちゃってもいいのよ】
    【ドーブルの筆でバトンタッチ!】


      [No.1255] ありがとうございますっ 投稿者:しじみ   投稿日:2011/05/31(Tue) 12:19:42     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    はじめまして!
    紋面症は突発的に思いついたネタだったので、ほめていただき恐縮です。

    そうですねえ、多分エルルも付いてくるので、
    盛大なくしゃみをカントーでも繰り広げることになるでしょう…。

    感想ありがとうございました。
    泣くほどうれしいです!!


      [No.1253] 可愛い… 投稿者:しじみ   投稿日:2011/05/31(Tue) 11:51:32     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    はじめまして、しじみです。
    同じく初心者ではありますが、文才の違いに恐れおののいております。

    情景描写や、説明も丁寧で親切で読んでいておもしろかったです。
    何より3体のやりとりが微笑ましくて…。
    ラン君もヨル君もラキちゃんもかわいい…。
    お昼寝できるトオルくんがうらやましいですー…。

    ゴドラ対ウルガモスラ・アバゴメラの件に吹きました。


      [No.1252] フワライドが突き刺さっていた 投稿者:音色   投稿日:2011/05/30(Mon) 23:48:35     110clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     フワンテ事件はまだマジだった。大体私のゴーストホイホイ体質からしてこの流れでフワンテどもが寄ってこないと考えない方がおかしい。
     絡まることはなくなって、代わりにゴ―スを持ちかえったりお土産渡したりして風任せな関係を築いていれば害もない。
     ・・とか思ってたんだけどねー。

     ある日、自転車押してヨマワル連れてヌケニンおともにゴ―スinポケットで家に帰ってみれば。
     フワライドが突き刺さってました、物干し竿に。
     

     別にうちにある物干し竿はいたって普通の物干し竿で、好き好んでポケモンが突き刺さるような魅力的なフォルムはしてません。マジで。ただの竹竿だから。
     だのに紫風船は絡まり幽霊気球は突き刺さる。呪われてるのかこれは。清めの札を張るべきか、それともおニューの物に買い替えろという暗示か。
     私のゴーストホイホイ体質が絶好調なだけかもしれないが、全く持ってありがたくもなければ嬉しくもない。どうしろというんだ。
     とりあえず被害深刻なフワライド。あれですよ、下の方のいかにも穴があいてます、な空間からじゃなくて真横からどっすり刺さってます。貫通してないのは幸いなのかどうか。
     ヨマワルは卒倒しかけた。先に家に入ってなさい。ゴ―スはビビって縮こまっていた。ヌケニンは、無表情だった。
     なんというか、異常過ぎて逆にシュールだ。というか、どうやったらベランダに立てかけてある物干し竿にあそこまで深く刺されるんだろうか。謎だ、謎すぎる!
     とか謎を追っても仕方がないので、被害者(別に死んではないけども、いやその前にゴーストなんだけど)を救助しに向かう事にした。
     

     別に今日風が強いとかそんな日じゃなかったにもかかわらず、物干し竿ごと紫気球を取りこむ。誰か刺さるところもろに見た奴いる?いない?そう、いたとしても気絶するかなんかしてるかきっと。
     とりあえず抜いてみる。・・血とか出ないかな。いや、その前に突き刺さってるところから漏れてるの空気だけだから大丈夫か。(そうなのか?)
     せーの、ってあっさり抜けた。拍子抜けするくらい単純に。そのあとがヤバかった。
     派手な音が立てて残りの空気が全部抜けて部屋の中を気球がびゅんびゅん飛び回りながらしぼんでいく。
     お前はどこの漫画出身だぁぁあ!突っ込む気力も削がれるくらい見事にやらかしてくれました。あーぁ、他のゴーストポケモン共リアクション取れてないよ。唖然。何なの今日は。


     応急処置、でっかいバッテン印の絆創膏(もどき)で穴をふさぎます。なに?口が二個あるように見える?しょうがないだろ、こればっかりは。
     さて、問題はどうやって空気を入れよう。家にあるのは自転車用の空気入れだけなんだけどいくらなんでもあれじゃあねぇ・・。
     ヘリウムガス?そんなもん家にあるか。プロパンガス?おい、“ゆうばく”の威力を上げてどうするんだ、んなあぶないもん。ガスがつけば何でもいいと思うなよお前ら。
     ・・なにそれ、あぁ浮き輪とか膨らませる足で踏むタイプの空気入れか・・。うーん、それで何時間やれば大丈夫なんだろうね・・。あ、みんなそっぽ向いた。やりたくないのね。


     次の日、一日ほっといたら自動的に回復してました。要はあれか、穴さえふさげたら自分で膨らめるのか?ポケモンって不思議。
     もう刺さるな、とか言って送り出す。こればっかりはもうシュールすぎてやだ。


     後日、家の周りのあっちこっちの木々にフワライドが引っ掛かりまくっているのを発見した。

    「・・ブームかなんかなのか?」


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  意味不明だけどごめんね。こんなお話ばっかりなの。


    【次なんだっけ】
    【何しても問題ナッシング】
     
     


      [No.1251] 焼き鳥(生) 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/05/30(Mon) 22:22:25     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    知ってるか。
    鳥は見てかわいく、食っておいしいんだぜ?

    豆鳩ェ……
    豆鳩をまめぱとと一発読み出来た人はポケヲタ。

    あーファミリーマートのフライドチキン食いたいなぁ。


      [No.1250] 焼けてない。 投稿者:スズメ   投稿日:2011/05/30(Mon) 21:51:49     108clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「焼き鳥が一羽、焼き鳥が二羽・・・」

     その日も焼き鳥屋さんは、電線にとまるポッポたちをそう数えていました。
     焼き鳥屋さんから見れば、生のポッポ(野生のとも言い換えられる)も加工された鶏肉さんも同じだったのです。
     
     「あいつらが捕まえられたら、どんなに生きの良い焼き鳥になるか」

     窓の外を眺め、毎日同じ言葉を漏らします。
     はてさて、言動はともかくこの焼き鳥屋さん、何気に地元じゃ人気のある焼き鳥屋さんです。
     ちょっと年期の入った調理場はすすけて、なんだか居酒屋という雰囲気がしますが、ここは焼き鳥屋。
     別名居酒屋といっても差し支えのない親父さんお勧めのお店ですから、問題ナッシング。
     焼き鳥屋さん自身も鳥の鮮度や質にはめっぽううるさいものの、店の汚れに関しては興味を持たず汚れたまんま。
     お客さんの座るカウンターまですすけてたりしますが、焦げてたりするだけで汚れがつくというものでもなく、これも問題ナッシング。

     さてさて、こんなお店を電線の上からのぞく影がいくつか。 もちろん人間じゃありません。
     そんな焼き鳥さん・・・いえ、ポッポさん達の会話を聞いてみましょう。

     
     ポッポA「おい、始まったぞ」
     ポッポB「焼け始めた、いいにおいだ」
     ポッポA「あれがなんだか知ってるか?」
     ポッポB「さあ、でも焼き鳥と呼ばれていたらしいぞ」
     ポッポA「焼き鳥か、初めて聞くな。 よし、今日の夕飯はあれにしないか?」
     
     そんな会話の中に入り込んできた影もまた焼き鳥でした。

     ポッC「何の話をしてるんだ?」
     ポッA「あ、ポッポC。体調は治ったのか?」
     焼き鳥C「ああ、何とかな。それはそうと、さっき言っていた焼き鳥とは何のことだ?」
     焼き鳥B「あそこで毎日発生及び消滅する謎のおいしそうなものだ」

     ポッポBは、茶色のつばさをピンと伸ばして焼き鳥屋さんをつばさ指しました。
     ポッポAは勿体つけたように大きく息を吸い、頭の羽を揺らしながらこういいました。

     焼き鳥A「今日の夕飯はあれにしようと思うんだが、ポッポCも作戦に参加するか?」


     こいつらは何を食おうとしているんだという突っ込みはおいておいて、焼き鳥屋のメニューでも紹介してみましょう。
     まず始めに、今日の焼き鳥はニワトリのようですが、その日によって「豆鳩」や、「ぽっぽ」「スバメ」などの食材が店に並ぶ
     ということも、このお店のポイントです。 珍味として人気らしいですよ。


     さて、こちらは店を開けようとしている焼き鳥屋さん。腕まくりをしながら張り切っています。
     暑いから腕まくりをしているだけだったりもしますが、まあいいでしょう。
     いつもと違ったのはここから。
     昨日までは見ているだけだった焼き鳥(生)が、自らこちらに向かってくるではありませんか。

     「あいつらもとうとう焼かれに来たのか!」

     何かを勘違いしています。 正確に言うと焼かれるためではなくむしろ食べに来たのですが、そんなことは焼き鳥屋さんには関係ありませんでした。
     
     「いやっほー!」といいながら持ってきたのは、焼き鳥の串。 この人は何をする気なんでしょうか。

     焼き鳥(生)の進入してきた窓は真っ先に閉められ、退路はふさがれました。 
     焼き鳥屋さんの暴挙に焼き鳥(生)達はパニックを起こして逃げ回ります。もうおいしそうなものなんて頭から抜け落ちていました。
     なにしろ、焼き鳥なだけにとり頭。

     盛大な見世物バトルの末(野次馬が集まっている)つかまったポッポ3匹は焼き鳥屋さんに品定めをされています。
     
     「こいつ(焼き鳥A)は海沿いの出身か、羽がつやつやしているからな、健康状態もよさそうだ」
     
     そういって、焼き鳥屋さんは焼き鳥(生)Aをいけすならぬ鳥かご(大きい)に突っ込みました。

     次につかまったのは焼き鳥(生)C。

     慌ててつばさをばたばたさせる焼き鳥さんのけづやはいまいち。

     「こいつはあまり体調が良くなさそうだ、うちは鮮度と質を命にしているからな、いらん」

     そういわれ、ぽいっと外に捨てられた焼き鳥(不良品)Cはふらふらと逃げ出しました。
     やっぱりこいつの頭からも、他の焼き鳥(生)のことは忘れ去られています。

     最後につかまった焼き鳥(生)BはAよりも一回り大きく、立派な体格をしていました。
     風起こしをしようとするのもむなしく、つばさは風を切るばかりでつかめません。
     まあ、強かったなら焼き鳥以外にも食べ物が手に入るはずですし、良かったのは体格だけだったりしました。
     作戦の実行力は一番で、いつも危険な目にあうどじっこさんでもあったのです!
     
     そんな焼き鳥(生)Bは焼き鳥屋さんのお眼鏡にもかなってしまいました。まあ、おいしそうですよね。
     
     「こいつは山の出身か? いい物を食べて育っていそうだな、最近街に降りてきたばかりだろう、いいものが手に入った」

     そういわれて連れて行かれた焼き鳥さんは、本物の焼き鳥さんになってしまいましたとさ。
     

     ・・・というのはうそで、ちゃっかり脱走しました。
     焼き鳥屋さんの間違いは、AとBを同じ鳥かごに突っ込んでしまったことです。
     鳥頭と入っても、鳥さんってじつは、脳みその大きさの割りに賢いのです。

     つつくで鳥かごを壊して、焼き鳥屋さんの腕の中にダイブ!!


     計画は念入りに立てないとこの焼き鳥さん(生)達のようになってしまいますよ?

     おわり。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    チャットより転載しました。 以前の閲覧チャットのお題「焼き鳥」より。
    【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】【突っ込んでもいいのよ】【批評してもいいのよ】


      [No.1249] 心の多面鏡(別名 ココロさがし) 投稿者:スズメ   投稿日:2011/05/30(Mon) 00:13:15     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    鏡よ鏡よ、鏡さん?
    きれいなのはボク? それともキミ?

     見つめ合うのは二組の目。

     鏡のようにそっくりで、それなのに鏡じゃないんだ。


     ボクの目のまえには、赤いキミ。ふわふわの耳が、ちょこちょこゆれている。
    ボクらの家、街にちょっと近い森の中にある、ボクらの場所。
    ついさっき、通りがかったジグザグマさんがこう言った。

     まるで鏡のよう。

    ボクは、鏡じゃないから、キミが鏡?
    だけれどけれど、キミから見たら、ボクが鏡?
    自分は自分で見れないから、キミとボクの手を見比べてみよう。
    キミは赤。ボクは青。
    形はそっくり、違うのは色。
    あえて言うなら、ほっぺたの形も、手の大きさもちょっとずつ違ってはいるはずだけど。
    お互いに手のひらを合わせてみれば、ボクの手のほうがほんの少し大きいんだ。
    そっくりに見える、ボクらは二人。
    キミは鏡? ボクが鏡?
    だけれどけれど、手の色は違うんだ。大きさだって、少しだけでも、それでも違う。
    ちょっとずつ、違っているから、同じじゃないだろう?
    だからだから、ボクらはきっと違うんだ。
    「鏡のように」は、例えばの話なんだから。
    何でキミは、この話になるとそんなに神経質になるんだい?




     うつむく私の耳は赤。
    私達の家には、ふかふか落ち葉のじゅうたんが敷かれているの。
    じゅうたんの上に転がるのは、オレンのみ。
    ジグザグマさんが置いていった、木の実と言葉。

     気が付いたときには、一緒にいた。
    周りの人には「そっくりさんね」といわれてきたの。
    まるで鏡のようにって。
    生まれた場所は違うはずで、生まれたときも違うんでしょう?
    でもでも、確認するには遅すぎて。
    時の掃除屋さんがさっさと、何処かに片付けてしまった。
    私と君は家族の様なものだけれど、双子じゃないのでしょう?
    プラスルとマイナン。
    君は言ったよね、私がプラスルで君がマイナンだって、説明してくれた。
    君が人間の町に殴りこみに行った後、よく分からない資料を持って戻ってきたその時に。
    字は読めなくて、よく分からなかったけれど。
    違うんでしょう、そうでしょう?
    なら、何で……私と君は「鏡のように」そっくりなの?



    「ねえ、私と帽子を交換してみない?」
     
    「ボクらの帽子は取れないよ」

    「何とかして取替えっこできないの?」

    「……きっと、大切なものを失うよ」

    「なら、色を交換してみましょ?」

    「色を交換って、ボクらの服は脱げないよ」

    「ならなら、ペンキで色を変えてみましょ?」
     
    「ボクはあんなもの、大嫌いだし、街に行くなんて許さない。人間は怖いんだ」

    「つまらないの。ならなら、一緒に水たまりを覗き込んでみない?」

    「いいよそれなら。早く行こう? 」


     
     でもでも、水たまりに映ったのは私だけ。
    水の波紋が邪魔して君が見えないの。
    波紋だけじゃない、雲も葉っぱも風も。なんで君を隠しちゃうの?

      
     
     私は君の鏡じゃないの。そうでしょう?
    でも、君のそばに居たら私は鏡のまま?
    誰もが言うの「鏡に映ったみたいにそっくりな双子」って。
    私達は双子じゃないの、なら残るのは鏡だけ?
    わからない、鏡って何?
    水たまりは、鏡の代わりになっているの?
    君は青で、私は赤。
    でもでも、水たまりは君を映してくれなかった。
    私は、何を信じればいいの?
    鏡を探す? どうやって。
    風が、通り過ぎていった。風の中には、こことは違った香りが混じっていた。
    ここにないなら、探しに行けばいいよね?



      

     キミが居なくなった。
    ボクらは双子じゃない。なのに似ている。
    だから言われるんだ「鏡に映ったような」と。
    ボクは鏡? 違うだろう?
    キミは鏡じゃない。鏡は動かないだろう?
    何で分からないんだよ、「鏡」は例えなんだよ。
    ボクは「青」のマイナン。
    キミは「赤」のプラスル。
    「マイナス」と「プラス」は違うんだ。
    生まれも時もどっかに消えた。 在るのは今。
    君がいなくなったとたん、ラクライがボクらの家に押し入った。
    一人だけではどうしようもなくて、飛ばされて叩きつけられて。
    ボクもキミも、一人では非力なんだ。だけれど、二人だったら強くなれる。
    似ているけれど違う、そんな二人だから、一緒に居れば、強くなれるんだ。
    意地悪なラクライは、怪我をしたボクを見てにやりと笑った。
    ボク一人では、誰にも勝てないんだ。
    このまま、ボクらはこの場所……生きてきた場所を奪われるのか?
    キミは、それでいいの?
    ボクらはこの家を守って、そこで暮らしてきた。
    キミが居なくては、守れない場所。
    これ以上一人で戦ったとしても、ボクは壁に叩きつけられるだけ。
    キミは、どこにいる?



     
     私は言ったの「大嫌い」って。
    君は「青」、私は「赤」。でもでもそっくりなの、私は鏡?
    私は鏡じゃないなりたくない。そんな、知りもしないものになんかなりたくない。
    だから、君を突き放したの「大嫌い」って。君と一緒にいるから、私は鏡になっちゃうのでしょう?
    走るのは草むら、鏡を探して私を見つける。だから走るの。
    キミを突き放したのは夕方。おやすみお日さま、おはようお月さま。
    あすふぁるとという道は固くて、足が少し痛くなってきた。
    でもでも私は止まらないの、止まれないの。
    ねえねえお月さま。あなたはどこにでも居て、その場所からどこでも見ることができるのでしょう?
    鏡って何? 答えを頂戴、お月さま。
    あすふぁるとの横、がさがさ草むらが動いた。
    地面に転がる怠け者さん、あなたは誰の影?


     君は私が突き放した。鏡になりたくなくて。
    私を鏡にする君は「大嫌い」……ううん、違うの。
    私が嫌いなのは私自身。君だって、わざとじゃないはず。
    だから、八つ当たりなんかで、君を突き放すなんて事をしてしまった私が、嫌いなの。
    でもねでもね、私は私が大切なんだよ?
    なんだって、始まるのは自分から。
    私の世界は私が居なきゃ成り立たないの。 だから、だから。
    どうしても、自分以外のものに押し付けたくなる。大切な物を傷つけたくなんてないから。
    閃光が散って、目がくらんだ。何かが迫ってくるのはわかるのに、よけれない。
    柄の悪い「ライボルト」なんかに負けたことはなかったよ。
    いつも、追い返してやったよね。それは、君が居たから。
    私一人じゃ何も出来ない、何もさせてもらえない。
    さよなら地面、私は空を飛んだ。
    私は知ったよ。土の味はとってもまずいんだね。 
    ごめんね君。私が嫌いなのは君じゃなくて……
    ねえねえ君は、来てくれる?
    君は鏡を知っているの? 私を助けてくれる?
    虫がいいのはわかっているの。
    でもでも、君が居ないなんて考えたことがないの、考えられない。
    君もそうなんでしょ? ねえ、青い影となって現れ君。
    火花が散る、てだすけはいつもの通り、お願いね?
    バチバチ光って、電気は影の眠りを覚ましてやるの。
    そうすれば、どんな影だって起きて光ってあたりは明るくなるよ。
    「マイナス」の君、「プラス」の私。そろってはじめて強くなる。
    最初から、君に聞けばよかったんだ。君は、知っていたのでしょう?
     
     昔のこと、思い出したよ?
    君は以前、家出したよね。私を置いて、人間の町へ行っちゃった。
    怒ったよ私。君も今、怒っている? それとも呆れているの?
    君が街を嫌いになったのは、それからだよね。
    あの時も、ライボルトに吹っ飛ばされた。なんだか怒りたくなってきたよ。
    飛んでいったライボルトを、ラクライが数人追っかけていった。
    家に帰ろう、占領されているなら取り戻そう。話はそれから。


     結局、私は鏡を知らない。自分を写すなら、水も同じじゃないの?
    鏡を見るためだけに人間に近付くなんて、馬鹿らしいよね。
    わからないから、自分なりに考えてみた。私が納得できればそれでいい。だから、聞いて?


     私も君もそっくり鏡、そう考えた。
    でもでも、そっくりでも別の鏡なんだよ?
    何でも映す鏡には、いろんなことが映りすぎて何も見えなくなる。
    でもでも、その何処か、君の鏡には私が、私の鏡には君が一緒に映っていた。
    いっぱい邪魔されて見えなくなるときもあるけれど、近くにいる。
    誰だって……一緒に居れば、鏡のように映り込むんだ。
    私の中には君が写って、少し君に似てくるんだ。長く一緒に居れば居るほど。
    だけれどけれど、元の鏡は別のもの。ね
    ふしぎふしぎ、人の中に別の人。
    自分の中に、世界のあらゆる物が。そうでしょう?
    私は鏡、君も鏡。お互いを映す心の多面鏡。

      
     ボクも鏡でキミも鏡。
    キミは難しいことを考えるなあ。
    キミにはボクの中に、キミ自身を見ることが出来るのかい?
    答えは要らない、見つけてみせる。
    ボクに出来る精いっぱいの意地さ。

      

     鏡よ鏡よ鏡さん。
    きれいなのは私? それとも君?

     見つめ合うのは二組の目。
       
     シンクロして動く、二組の耳。
    形はそっくりだけれど、色が違う。

     赤いのが私。青いのが君。

     鏡のようにそっくりで、でもでも違うの。
    私の鏡のなか、やっと見つけた君の姿。そして私の姿。

     水たまりの中には空が映っている。
    お空の鏡には天気が映っている。

     だけれどだけど、私の心の鏡に映るのは君。

     でもでも、僕の心の鏡には君が映っている。

     私達は、あなた達のどんな部分に表れていますか?
      

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    コンテストに一度出させてもらったものです。
    【批評していいのよ】【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】【文句があったら遠慮なくどうぞ】

      
      
     
     


      
     
      


      [No.1248] 絵を描いていただいたので嬉しさのあまり投稿してみた。 投稿者:秋桜+   投稿日:2011/05/29(Sun) 23:56:36     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    絵を描いていただいたので嬉しさのあまり投稿してみた。 (画像サイズ: 665×924 120kB)

    絵を、描いていただきました。


      [No.1247] 天気が良いので死ぬことにした。 投稿者:秋桜+   投稿日:2011/05/29(Sun) 23:54:12     76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     冷たく乾いた冬空の下で彼女が戦っている。
     ここ最近雨が降っていないが、今日もまた天は崩れる予定は無いようだ。それを雄弁に語るかの如く雲一つ無い青空が見る者の心を圧倒するように広がっていた。
    「一〇万ボルト!」
     少女の声が大きく響く。忙しなく動き続ける二つの影へと視線を動かせば、次の瞬間に状況が変化した。
     少女の言下。影の一方である立派な黒い鬣(たてがみ)を靡(なび)かせた獣(ポケモン)が、その指示へと応える様に短く吠えた。そしてその逞しい四肢へと力を込めて地面を蹴る。
     牙を剥き、鋭い眼光を宿すレントラーの視線の先には『彼女』が。
     嗚呼、どうすれば良いのだろう。……指示を出せば良いのか。だとすれば何と?
     バチバチと爆ぜる電気を発しながら迫る雷獣。
     彼女と雷獣が肉薄した次瞬、閃光が瞬いた。
     思わぬ目眩まし(フラッシュ)。それをまともに喰らったのか苦悶の声を漏らす彼女。その発生源であるレントラーは大地を削りながらその靭(しな)やかな肢体を躍動させて、彼女の背後を取った。
     彼女はまだ気がついていない。
    「後ろ」
     だから。背に回りこんだ黒い雷獣が四肢を折り曲げて、力を込め跳びかかる為に静止したその刹那の間に、僕はそう声に出していた。
     それは彼女に届いたらしい。指示とは言えぬ僕の粗末な言葉を受けた次の瞬間には、細身の肢体が動き出す。
     赤と黄色の羽毛に覆われた彼女の両脚。見た目に反して強靭な脚力を有したそれの一本を軸にして旋回。
     鋭い風切音が響く。続いて鈍い打音。くぐもった獣の声。炎を宿した後ろ廻し蹴り(ブレイズキック)はレントラーの顔面を捉えていた。
     だが。
     閃光。次いでバチン、と音が大きく爆ぜる。一瞬痙攣するように身体を震わせ、蹴りを放った態勢のまま動きを止める彼女。
    「ナイス! 追撃! 雷の牙!」
     手を叩いて喜ぶ、という言葉が相応しい少女の声。しかし続く言葉に油断は感じない。
     顔の体毛を焦がしながらも、犬歯を剥き出して前傾姿勢を取る黒い獣の姿を見て理解する。痛打を喰らいながらもそれを耐え切り、至近距離からの電撃を彼女へと放ったのだと。
     ジムリーダーのポケモンでも防御の不得手な者だったら、一撃で沈めるだろう彼女の蹴りを真正面から喰らいながらも反撃するなんて、このレントラーは……強い。尤も、ジムリーダーなどとは戦ったこともないけれど。
     一歩も引かないこの雷獣はトレーナーである少女に愛されているのだろう。信頼されていて、信頼しているのだ。
     勝ち誇るかの様に咆哮するレントラーが、その牙に雷を宿し顎を大きく開いて肉薄する。
     ――嗚呼、けれど。
     その電撃を帯びた鋭い牙が彼女の細く引き締まった胴へと食い込むその直前。
     鳥の足の様に三叉に分かれた彼女の手。その手首から轟、と炎が噴出する。
     風を切りながら、ぐるりと身を翻す彼女。三本指の拳を覆う炎が火の粉を散らす。
     ガキン、とレントラーの顎が空を噛む。目を見開く雷獣。少女の息を飲む音も聞こえた気がする。
     そしてレントラーが次の動きに入る前に、振りかぶること無く放たれる炎を纏った彼女の拳。軽い所作とは裏腹に重い打音を響かせて振り抜かれる。
     横腹を殴られ呻き声を上げる雷獣。今度は攻撃を受けた刹那に反撃することは出来なかったようで、地面を転がる事はなかったが電撃が爆ぜる音も光も感じられない。
     そして彼女の攻撃は止まらない。
     態勢を整えたレントラーが向き直った。しかし、既に彼女の攻撃の初動は終わっている。
     流れるような挙動で、その長い足による蹴りが二度放たれる。
    「あッ――」
     少女の唖然とした声が耳に入る。しかし僕の視線は地面と水平に飛んでいくレントラーを追っている。
     否(いや)。それを追う、疾駆する彼女の姿を僕は見ているのだ。凛々しく、美しく、何より雄々しいその姿を。
     止めの追撃を繰りだそうと、雷獣を追う彼女に情けや容赦などない。勿論、それは戦闘(バトル)の間だけで普段は何かと世話好きな仔でもあるけれども。相手の力の全てを受け止め、どれだけの実力差があろうとも自身の力の全てを振るい戦うのが彼女なのだ。だから相手が強くても向かっていくし、弱くとも徹底的に圧倒する。
     手加減を加えることは彼女の中では悪らしい。僕としては、相手が圧倒的に弱い場合は少しは手心を加えて欲しい気もするが、まぁ仕方ない。
     色々な意味で僕とは正反対の彼女を眺める事は、憧憬と劣等感とが綯(な)い交(ま)ぜになった重苦しい感情を生じさせる。彼女は強い。その強い彼女のトレーナーが僕なのはとても誇らしい。けれど。
    「ッ――ワイルドボルト!!」
     思考は停止していなかったらしく呆然とはしていない。少女の叫びにも似た指示が飛ぶ。吹き飛ぶ雷獣はその声の直後身体を捻る。そして地面を削り土煙を巻き上げながら無理矢理に着地。次瞬には、その身を帯電させながら地面を蹴り走りだす。
     その先には彼女が。
     迎え撃つ意思を表すように更に加速するその姿は、燦爛(さんらん)と猛る炎で覆われて。
     万雷の如く猛々しい雷獣の咆哮。
     烈火の如き気迫を孕んだ彼女の咆哮。
     二つの哮り声が轟き混ざり、紫電と火の粉が軌跡を描いて空に散る。
     そして。
     途轍もなく重い衝撃音を響かせて一切の音は爆ぜて吹き飛んだ。
     朦々と土煙の舞う情景の中でゆっくりと崩れ落ちるように倒れていくその姿は。
    「ファング! ッ――」
     どさり、とその肢体が倒れ伏す。それを見た少女が悲痛そうな声を発して駆け出した。
     地面へと伏したレントラー――ファングという名なのだろうか――へと駆け寄る少女。
     倒れたのはレントラー。ならば立っているのは必然的に――
     膝をついて話しかけながら身体の様子を診ている少女のその隣で、悠然と立つ彼女を見る。
     凛とした空気を身に纏う細身の長身。雪のように白い頭を飾る長い羽。炎のように鮮烈な身体を包む赤い羽毛。先程までの燃え盛るような荒々しさは鳴りを潜め、穏やかに佇むその姿。
     それを見て僕は思う。嗚呼、彼女は勝った。彼女は強いのだ。
    「お疲れ様」
     そんな言葉をかけながら僕は歩き出す。
     近づく僕へとゆっくりと身体を向ける彼女。その硝子玉の様に澄んだ瞳が僕を捉えたその瞬間、ぞわりと肌が粟立った。
     一刹那後、足が動かなくなりそうになる。だが足を止めるわけにはいかない気がする。僕は彼女を恐怖しているわけでもないし、嫌悪しているわけでもないのだから。
     彼女の瞳を見てこうなることは別に今が初めてじゃない。ここ最近は常な気もする。だから、それを可能なかぎり表に出さないように抑えつけて僕は彼女へと近づいていく。自分の顔を見ることは出来ないが、多分引き攣らないで軽く笑みを浮かべて。
     怖くはない。嫌いでもない。では、それが何なのかと自問すれば、即答できる。こうなってから、散々悩んだのだから。
     ……わからない、のだ。
     改めて彼女へと視線を向ける。
     精悍とした顔つき。だが表情は読み取れない。人間のように笑む事も無ければ困ったように眉根を寄せたり、不機嫌に眉間へ皺を浮かべたりも無い。
     その無表情の中で確かに意思の宿ったその瞳。しかしそこに映る感情が何なのか、喜怒哀楽のどれかなのすら僕には読み取れない。
     彼女が何を考えているかわからない。それが、僕がこうなるその理由。
     どうにか不審な挙動を見せずにすんだと思う。僕は彼女の隣へと辿り着いた。二〇センチメートルは背丈の高い彼女を見上げながら、何処か痛む所は無いか問いかける。
     無表情に、小さく首を振る彼女。僕が見ても大きな怪我は無いように見える。しかし万が一という事もあるのでこの後行く予定のポケモンセンターでまた診てもらうことにして、次に僕は倒れた雷獣と少女へと視線を向ける。……これ以上彼女を視線を合わせられなかった。
     呻き声を漏らしながらぐったりと倒れるレントラーに喋りかけながら、手に持った噴霧器式の傷薬の中身を吹きつけている少女。丁度治療が終わったのか、顔を上げたその子と目が合った。
    「大丈夫?」
    「あ、うん。まだ動けそうにはないけどポケセンで休めば大丈夫だと思う。骨も折れてないし」
     僕のかけた言葉にそう答え、「すぐ休ませてあげるから我慢してね」とレントラーをボールへと戻す少女。
    「それにしても強いのね、貴方のバシャーモ。それだけ強いなら、バッジは何個持っているの?」
    「ああ、持っていないんだ。ジムには挑戦したことがないから」
    「嘘ッ!?」
     目を丸くして大声をあげられてしまった。
     各地方に八つあるジム。そこのトップであるジムリーダーに挑戦し、その実力が認められるとバッジという物が貰えるらしい。それを八つ全て集めるとポケモンバトルのメッカ、ポケモンリーグに無条件で挑戦が可能となる、らしい。あまり真面目にそういった話は聞いたことがないので詳しくはよく分からないけれど大体は合っているはず。
    「本当だよ。それに、僕のポケモンは彼女しか居ないんだ」
     だから、様々なポケモン達と時には連戦することになるジム戦はしない。そう答える僕に、少女は茶色く短い髪を弄りながらこう呟いた。
    「はぁ。そっかー、バッジ無くても強い人はいる。上には上が居るってことだねー。リーグチャンピオンの夢はまだまだ遠いー」
     両腕を空へと突き出して、天を仰ぐ少女。
    「――でも諦めないッ!!」
     少しして、そう叫ぶ。嗚呼、この子は凄いな。
    「君とレントラーも相当強かったけど、バッジは何個持っているの?」
    「え? えへへ、五個ッ。あと少しで今期のポケモンリーグに挑戦出来るの!」
    「ッ。凄いな。そして夢はチャンピオン?」
    「そう! もっともっと私も皆も強くなって絶対に叶えるのッ」
     そう、輝くような笑顔で力説してくれた。嗚呼、この子は凄い。夢がある。それを実現しようと行動し、その結果として目標が夢幻(ゆめまぼろし)のような届かないものではなくなりかけている。
     僕のように何の目標も目的も無く、只流れるように無意味な旅を続けるのではない少女の姿が眩しくて、僕は視線を逸らした。
    「君ならその夢、実現出来る気がするよ」
     面とは向かわずに僕が発した言葉を受けて「ありがとう」と嬉しそうにその子は応えると、腰の赤と白の球体から別のポケモンを繰り出した。
     閃光と共に飛び出た雄々しい大型の鳥ポケモンが、青い空を悠々と旋回する。
    「ウィング! 近くのポケセンまで連れてってッ!!」
     手を振りながらそう叫ぶ少女。その声を聞き届けたウィングという名らしいムクホークは、勢い良く滑空すると彼女の両肩をその逞しい両脚で掴み、そのままバサリと浮き上がる。
     小柄な体躯の少女でなければ肩にあの鋭い爪が食い込んで痛そうだ。などと僕が空を飛ぶその子と猛禽を見て思っていると、
    「じゃーねー! また逢えたらその時は負けないからッ!! じゃ、ウィング、よろしくね!」
     そう大きく手を振って空を行ってしまった。
    「さて、僕達も行こうか」
     ふぅ、と息を吐きながら彼女の方を向き、言う。
     やはり何を考えているか分からない無表情で、小さく頷く彼女。
     嗚呼。わからないわからないわからない。
     しかし、彼女と僕はポケモンセンターへと向かい並んで歩いて行く。
     ――彼女は強い。それこそ、僕なんて必要の無いくらい。

            ‡‡‡‡‡‡‡

     空が赤く色づいた頃に、僕達はポケモンセンターへと到着した。
     既に彼女の検査と治療を済ませたので、僕らは利用者共用のソファに並んで座り同じく共用の机で早めの夕食を摂っている。
     献立はセンターに併設されたレストランからテイクアウトしてきたカレーと水。彼女には、彼女お気に入りのポケモンフーズ。何やら騒々しい客が居たのがお気に召さなかったのか、彼女が中で食べる事を拒否した結果、このテーブルとソファを占拠することとなった。まぁ、偶然そういう客が居たのでそう推理したけれど、実際彼女が何を考え拒否したのかはわからない。
     此処で食べるのも、泊まる為の部屋が満室でセンター内の何処かで寝なければならないので、場所を取っておくという面もあるのだけれど。
    「ん? どうしたの?」
     カレーを頬張っていると、彼女の視線が突き刺さる。それが気になり、訊いてみる。
     訊かれた彼女はやはり何を考えてるか読み取れない無表情で、机の上に置かれたティッシュペーパーを三本指の手で器用に取り出す。そしてそのまま僕の方へとその手を伸ばすと、
    「わ、何ッ」
     口元を拭った。ゴシゴシと念入りに。
     ……そんなに口元を汚していたのだろうか。
    「……ありがと」
     なんだか子供扱いされた気になり釈然としないがお礼は言っておく。
     彼女は返事なのか呼吸音なのかわからないが小さく息を吐いて、汚れたティッシュを器用に畳みテーブルに置くと食事を再開してしまう。
     嗚呼、やはり何を思い、考えているかわからない。彼女とは僕が物心付く前からの付き合いだ。それこそ母のようでもあり、姉のようでもある近しい存在。嗚呼、しかし、何でこんなにもわからないのだろう。昔はもう少しわかっていたような気もするのに。
     そんな考えがループして、気分が落ち込む。好物のカレーを食べているのにあまり美味しく感じない。
     はぁ、と溜息が漏れる。
     それが聞こえたのか彼女の視線とクルル、という鳴き声が僕に向けられる。
    「ああ、大丈夫。なんでもないよ」
     だから、笑みを貼り付けてそう答えた。



     陽はとっぷりと落ちて、星や月が輝いているのが窓越しに見える。
     ソファとテーブルのあるスペースに置かれた大型のテレビが、何処かのポケモンバトルの大会の特集を流しているのを僕達は観ていた。
     別の大会の録画映像などを交えながら注目のポケモントレーナーやそのポケモン達の紹介や解説などがその内容。
     画面の中でトレーナーの指示が飛ぶ。言下それに応じたポケモンが縦横無尽に駆け巡る。ハイレベルなポケモンバトルの姿がそこにはあった。
     贔屓目無しで見ても、テレビの中のポケモン達と彼女の動きを比べて遜色は無い。むしろ優っているとも感じられることもあった。
     嗚呼。けれど。僕はどうなのだろう。
     否(いや)。考えるまでもなく、比べるまでもなく、劣っている。
     テレビの中で知った風な解説者が「この指示は良くなかった」「指示が遅れたのがこのバトルの勝敗を――」などとつらつら喋っている。
     ポケモンバトルはポケモンが強いだけでは駄目らしい。状況を把握し、流れを読み、それを活かす指示をトレーナーが出さなければならないのだ。
     それを、僕は出来ない。常に変わり続ける状況など掴めず、流れなどまず感じることすら出来ない。それは僕が幼い頃に友人とバトルをしていた頃からわかってる。見当はずれな指示を出して、まだ雛だった彼女を傷つけたのだ。
     今も未だ、バトルの時になんと指示を出せば良いのかわからない。だが、彼女は強くなった。それこそ、僕の指示など要らない位に。
     嗚呼、心が、寒い。



     ソファを枕に毛布に包まれている今の時刻は何時だろう。携帯電話(ポケギア)で確認するのも面倒くさい。多分、深夜。
     隣で彼女は毛布を被って寝息を立てている。その横で、僕は眠れないでいた。
     僕の方を向いて目を瞑る彼女を横目に見ながら、何故彼女は僕と一緒に居るのか考える。しかしわからない。トレーナーとしては欠陥がある。何か特技があるわけでもない。只何となく当ても無く理由すら無く各地を旅している、ただそれだけ。
     僕が故郷を旅立った理由は何だっただろうか。思い出せない程に些細な事だったような気もするし、しかし重大な事だったような気もする。
     旅に出る根本の理由は思い出せないが、その日に旅に出た理由が唐突だったことは覚えている。確か、雨が降っていた、とかそんな理由だ。暗雲から降り注ぐ雨雫を眺めていたら急に飛び出したくなった。……意味が分からない。
     しかしそれに彼女は付いて来た。
     嗚呼、屑みたいな僕に何故彼女は付いて来るのだろう。
     昼間の少女みたいにちゃんとしたトレーナーだったならば、僕も臆面なくチャンピオンが夢だと言えただろう。でも、違う。彼女ばかりに負担がかかるバトルしか僕はさせられない。だからそんなことは言えない。言いたくない。
     ポケモンを育てるブリーダーはどうだろう。否。無理だ。彼女以外のポケモンも、一緒に居る自分が全く想像できない。可愛いと思うし、格好良いと感じるけれども、他のポケモンも一緒に旅をするという気には何故かこれまでならなかった。だから、世話は出来るかもしれないが、愛情をもって接することは出来ない。それじゃあブリーダーとは言えない気がする。
     ならばポケモンの優美さを競うコンテストに出てみるのは……彼女がそういったのが苦手だから無理だ。
     ポケモンの関係の無い職に就く? 何をすればいい。わからないわからない。
     嗚呼、二〇年程生きてきて、僕は一体何がしたいのだろう。何が出来る? 何も出来ない。
     彼女は僕などと居て良いのだろうか。誰か優秀なトレーナーと一緒に居たほうが良いのじゃないか? それかいっそ野生に――
     頭の中が混濁していく。何故僕なんかが生きているのだろう。嗚呼、寒い。隣の彼女の高い体温で身体は冷えていないのに、心が冷たい。溶けない氷のように冷たく凍りついている。
     などと考えて居たら窓から覗く空が白ばんできた。夜が明けたらしい。
     今日も、自分が矮小に思える位に広々とした空が広がっている。雲一つない、青く広大な。
     嗚呼。天気がいい。快晴だ。
     だから。
     死ぬことにした。
     死のう。それが一番良い選択な気がする。だけど、この場で死ぬのは良くないな。センターの職員にも迷惑だ。
     うん。外に出よう。
     彼女を起こさないように静かに立ち上がる。屋根がある以外は野宿とそう変わらないので服装は直ぐ外に出れる格好だ。コートは畳んでソファに置いて枕にしていた。それを着る。
    「あれ、お出かけですか?」
     さぁ、出るか。と思った途端、小さな声で尋ねられた。
     夜勤の女医さんのようだ。「そのバシャーモは連れて行かないの?」と更に訊いてくる。
    「ああ、はい。ちょっと眠れなくて気分転換に散歩しようかと思ったので」
     今から死にに行こうかと。などと言ったら阻止されるだろうのでそう小声で返す。
    「あら、そうでしたか。寒いから気をつけてね」
    「はい。ありがとうございます。しばらくしたら戻るので、彼女は起こさないであげてくださいね」
     僕が彼女を指して言うと「ええ。わかりました」と返した後、ふぁ、と欠伸しながら歩いて行く女医さん。その姿が離れてから、僕は自動ドアから外へと出た。死ぬために。
     彼女が気がつく前に死ななければ。そうしなければ多分彼女は阻止しに来るだろうから。

            ‡‡‡‡‡‡‡

     どれほどの距離を僕は来たのだろう。人目につかない場所を探していたら、辿り着いた此処は何処か山の中。既に陽は沈み、冷たい闇が辺りを包んでいる。
     あれほどに、自分の小ささを思い知らされる広く澄んでいた空も、暗い色の雲に侵されて灰色の様相を見せている。嗚呼これはこれで、圧迫感や閉塞感を感じるので死ぬことを躊躇する必要は無い。だから、進む。
     いつからか、暗い灰色の空から吹きつけるように雪が降ってきていた。キシキシと積もった新雪を踏みながら、止まること無く歩き続ける僕。手袋をしていても手が冷たく悴んで、痛みすら発するようになってきた。歩き尽くめの両脚も、棒のようで動かしづらい。
     幸いなことに彼女が追ってくる様子は無く、僕はこのまま死ねるだろう。僕という欠陥のある人間と一緒にいるという、不幸な状況から彼女を開放することが出来るのだ。
     白い息を吐きながら、誰も居ない雪山の奥へ奥へと踏み入っていく。
     この、肺が爆ぜるように痛み、荒い呼吸によって喉が焼けつき、全身がバラバラになりそうな軋みをあげる、そんな心地良い疲労感。身体が凍りつきそうなこの寒さも、僕の氷のような心が生み出す寒さに比べれば何と心地の良いことか。
     さあ、このまま力尽きればそのまま僕は死ぬるだろう。
     だけども未だ、僕は力尽きないようだ。若干視界と意識は霞んできたが、未だ倒れこむ程じゃない。
    「……ん?」
     歩き続けるその最中(さなか)、視界の端で何かが動いた。そちらに視線を動かすが、雲に遮られて僅かに注ぐ月明かりによって出来た樹木の陰と長く伸びた僕の影しかない。
     気のせいか。
     また前を向き、歩く。ザクザクと雪を踏みしめて。それにしても、先ほどよりも寒さが増した気がする。僕が雪を踏み歩く音しか聞こえない。その孤独感が体感の温度を下げるのだろうか。
     そんな事を考え気が付く。よくよく考えてみたら彼女が傍に居ないというのは初めてのことかもしれない。僕が物心付いたばかりの幼い頃から、まだ小さな雛(アチャモ)だった彼女が常に傍に居た。旅に出てからも数えると当然だけれど、下手をすればその前でも両親よりも長い時間一緒だったかもしれない。
     一番の友人であり、家族。……等と僕なんかが言うのはおこがましいか。くく、と苦い笑いが凍えた唇から零れ出る。
     しばらく歩き続けたが、
    「――ッ」
     否(いや)、やはり何かが居る。音も、姿も無いけれど何かが僕を見ている気配が感ぜられる。
     何も居ないように見える中で、視線だけが在る。そのことに全身に廃油を被せられたような気味の悪さを覚え、身を切る寒さとは違う悪寒が生じた。
     視線の感じる背後へと勢い良く振り返る。
     しかし、やはり何も居ない。
     僕の影が白い地面へと長く伸びているだけで――
     ……影とは、笑うものだっただろうか。僕の記憶では、笑うどころか顔にあたる部分はのっぺりとした黒が顔の輪郭を映すだけだったような気もするのだけれど。
     けれどもしかし、目の前の僕の影は裂けるように口を開き、ニタリと笑っていた。
     それを見たまま動けないでいると、その笑う僕の影はケタケタと声まで出して笑い始める。
     そして次の瞬間には、ぬぅ、と浮かび上がる。二次元だった影が三次元の立体に。
     宙に浮かんで哄笑する僕の影。否(いや)、それは。
    「ああ、ゲンガーだったのか」
     宙に浮かぶ、ずんぐりとした身体で大きく口を歪めて笑うそれはゴーストタイプのポケモン、ゲンガーだった。山に迷った人の命を奪うなどと言われているポケモンだが、事実そうなのだろうか。
     ニタニタと粘ついた笑みを浮かべて僕を見据える亡霊に視線を向け続けていると、クスクスと笑い声が無音の銀世界に響き渡る。
     その声が聞こえた方へと視線を向けるとそこには振袖を着た童女のように小さな氷女が。
     嗚呼、こっちは凍てつく吐息を吹きかけて凍らせた獲物を何処かに飾っているなどと風説されるポケモン、ユキメノコ。
     そしてその隣には一ツ目の巨大な亡霊。ヨノワール。こいつも人を霊界に連れて行くなどと言われているゴーストポケモン。
     嗚呼。僕を獲物としたのだろうか。
     それならば、心の底から礼を言いたい。
    「ああ、ありがとう。さぁ、抵抗はしないから」
     早く死なせてくれ。と彼らに言う。
     寒い。冷たい。身体はとうに冷え切って震えが止まらない。けれどそんなことはどうでもいい。この、凍りついた心の冷たさから開放して欲しい。
     僕の言葉を受けた三匹は。
     影霊はゲラゲラと大笑し。
     氷霊はクスリ、と小さく微笑して。
     巨霊は無言のままその大きな両腕を前へと構えた。
     瞬いた刹那、眼前に現れたユキメノコの、ひゅう、と空気さえも凍らせる吐息が僕に纏わり付く。パキパキと、身体の芯まで凍りつくような感覚が僕を包み込んでいく。
     続いて、ゲンガーが軽薄に笑いながら僕の目を覗き込んだ。怪しく光るその瞳を見た次瞬には僕の意識は微睡んでいく。
     嗚呼、そして、霞んだ視界にヨノワールが大きな拳を振りかぶり、僕へと振り下ろそうとする姿が。
     嗚呼。これで死ねる。
     ……けれど何故だろう。凍てついた身体のそれよりも低い、氷のような心の冷たさが未だ消えないのは。
     しかしそんなことは関係なく、巨霊の拳は僕を――
    「――ッ?」
     刹那。赤い光の帯が巨霊を貫いた。僅かに遅れて知覚する焼けつくような熱。これは、オーバーヒート? 炎タイプ最高クラスの威力を誇る技が何故?
     ぐらりと傾く巨きな身体。
     次の刹那、火山の噴火にも匹敵する咆哮が轟いた。
     その方向へと目だけを向ければ、嗚呼、なんて事だろう。
     彼女が居た。
     手首どころか全身から劫火を噴き出しながら、無表情なその顔の、激情を湛えていることが一目で解る瞳でもってゴーストポケモン達を、そして僕を睨みつけてくる。
     嗚呼、来てしまったのか。
     僕の事なんて放っておいてくれて良いのに。彼女の姿を見て、心が一層重くなる。
     けれど、あんなに寒かったのに彼女の姿を見た途端、少し温かくなったのは何故だろうか。
     降り積もった雪を撒き散らし蒸発させながら、彼女が飛ぶように疾ってくる。
     仲間を討たれたからか、敵意を剥き出しで彼女が疾駆してくるからか、残る二体の亡霊が迎え撃つように向き直る。
     冷笑的な笑いを漏らしながらユキメノコがその小さな両腕をひらりと広げたその次瞬、幾多もの分身が出現。更に降り頻る雪が霰へと変化する。
     哄笑を響かせるゲンガーは、その短い両腕に闇よりも暗い影球を生み出し振りかぶる。
     速度を落とすこと無く、むしろ加速する勢いで駆けてくる彼女へ向かい放たれるシャドーボール。
     目にも留まらない速さで迫るそれを、僅かに身体を逸らし躱した彼女。刹那後、その周囲に何体ものユキメノコが優美な所作で両腕を広げ囲むように現れた。
     僅かにも乱れない挙動で全ての氷女が攻撃を放とうと、両手を彼女に向ける。小さな両手に集まる光。水タイプの攻撃。恐らくは、水の波動。
     だが、放たれることは無い。それよりも早く、炎を帯びた彼女の蹴りが数多のユキメノコの悉くを打ち砕いたから。
     鈍い破砕音と共に雪と氷の破片が霰に混じり空(くう)を舞う。暴力的で幻想的なそれを劫火で消し去って、止まること無く彼女は駈ける。
     その、背後。煌々と燃え盛る彼女の背へと回りこむように、巨(おお)きな影が延びていた。次瞬、地を舐めるように延びた影の一部が実体化。巨大な拳となって彼女を襲う。
     『影』を延ばして攻撃する機先を制す影打ちと、『影』が拳となって相手を殴る予測出来ない軌道のシャドーパンチ。それらが合わさる『影』の根へと視線を向ければ、倒れたヨノワールが臥したまま片腕を突き出しているのが見えた。
     しかし、その一撃すらも彼女には通用しない。迫る豪拳。姿勢を低く走り続ける彼女。影の拳が接触するその一刹那前に、振り返ることもなく跳び上がり、それを躱してしまう。
     亡霊達の攻撃をものともせず、只、僕を睨みつける様に見据えている彼女。
     だから、空(くう)を殴った『影』の拳が不気味に蠢いたことに彼女は気がつかない。
     立体だった影の拳がまた平面へと戻り、映像の逆再生のようにヨノワールへと巻き戻り始めるその最中(さなか)。夜を写した水面が波打つ様に、その影が、揺れる。
     まだ彼女は気がつかない。巨大な拳を避ける為高く跳んだ、劫火を纏った肢体が次第に地面へと近づいていく。
     それでも視線を逸らさない彼女は、それが故に気がつかない。
     だから、
    「影。ゲン、ガー……」
     身体の芯まで凍てついて、か細く震える小さな声で、指示とは言えないそんな言葉を搾り出す。
     吹き荒ぶ雪霰(ゆきあられ)の音に紛れてしまうようなその声を、なんと彼女は聞こえたらしい。僕の言葉に一切の疑いを感じさせない、淀みない動きで『影』へと向かい嘴を大きく開き、吹き荒れる雪霰を蒸気へと変えて吹き払う熱と風を放射する。
     倒れ臥す巨霊へと縮み戻る『影』から身体半分を覗かせていたゲンガー。強力な念動力を放とうと短い両腕を向けていたその影霊は、彼女の吐き出す熱風をまともにくらい吹き飛んだ。
     が、オーバーヒートを撃った疲労を残したその一撃は、ゲンガーを沈める事は出来ない。最初の様な元気は無いが、しかし笑みを浮かべてゲンガーは宙に浮かぶ。
     そして、倒された筈のユキメノコが雪霰の中に紛れるように、す、と姿を現した。彼女に砕かれた幾多のあれは、全て影分身か雪氷の像だったのだろうか。
     流石に走ることを止め、自身を襲う亡霊達へと視線を巡らす彼女。
     だが、それも一瞬。降り頻る雪霰の中に隠れる氷女へと向かい炎を纏って猛進する――
     その光景が最後。睡眠不足と極度の疲労、そしてゲンガーが僕を覗き込んできた時に放った妖しい光と催眠術によって、僕はもう意識を保って――

          ‡‡‡‡‡‡

     公園のベンチに腰掛けた僕の隣で彼女が鳴いた。
     「どうしたの?」と声をかける。視線を下げて向く僕の視界に入るのは、橙色の羽毛に包まれた、丸っこい小さな雛の彼女。黒目がちで円な瞳で僕を見つめながら、小さな足で何かを指す。何かを促すように、短い翼をパタパタと動かしながら。
     その方向へと視線を向ければ、そこには何人かの僕と同じくらいの歳の少年少女がポケモンと一緒に騒いでいた。何組かに分かれてそれぞれ自分のポケモンに何か身振り手振り叫んでいるところを見ると、多分、バトルの最中。
     何となく、彼女の言おうとしている事がわかった。
     「……バトル、したいの?」僕がそう問えば、円な瞳の輝きが増した気がする。座っていたベンチから勢いよく飛び降りる彼女。小さな嘴から火の粉を零しながらバトルが行われている方を向き、急かす様に短い翼を忙しなく羽ばたかせる。
     やる気満々の彼女を放っておくことも出来ないので、気乗りはしないが立ち上がる。
     それを見届けた彼女は、短い歩幅に似合わない速さでそちらへと駆けていってしまう。
     それを見て溜息を吐きながら、しかし置いて行かれるの嫌なので僕は追う為に走りだす。
     嗚呼、僕達はバトルがとても弱いのに。


     雨乞いによって一時的に降り頻る雨の中に僕と彼女は居た。
    「水鉄砲!!」
     今行なっているバトルの相手である、僕より少し年上の少年の指示が飛ぶ。言下、青と白の毛皮を纏った楕円の獣(ポケモン)が口元から水流を勢い良く撃ち出した。
     強力で強大な一撃とは程遠いその攻撃も、しかし狙われているのが小さな彼女(アチャモ)なら話は別だ。
     何て指示を出せば良いのだろう。避けろ? それで避けられたならば僕は悩まない。『避けろ』と言われなければ動かない意思の無い物ではないのだから、避けられるならば彼女は避けるだろう。でも躱すことが出来ない状態だから、僕は悩んでいる。どんな指示を出せば良い?
     何と、彼女に叫べば良い?
     長い耳を揺らし水流を放つ水兎。
     身動き一つ取れず立ち竦む彼女。
     結局、僕は何も言葉を発する事が出来ないままに、彼女がマリルリの放水に吹き飛ばされるのを眺める事しか出来なかった。
     微かな、けれど確かな苦悶の声。小さな身体をずぶ濡れにしながら地面を転がるその小さな雛を指して――
    「『転がる』だ!」
     ――少年は容赦なく、水流を放ち終えた水兎へと止めを刺すよう指示を出す。
     言下、とは言えない若干の間隔の後、長い耳を巻き楕円の身体を丸めてマリルリが転がりだした。
     ふらつきながらも立ち上がる彼女。それに迫る青い球。白い水飛沫を上げながら真っ直ぐと彼女へと向かってくる。
     彼女は、多分状況に気がついていない。
     だから。
    「――前ッ!!」
     そう、指示にならない言葉を僕は叫んでいた。
     それは、彼女に届いたらしい。
     ふらつきが収まり、マリルリが迫る前方を見据える彼女。
     しかし、何か行動を起こす前に勢い良く転がり進むマリルリの身体が、無慈悲に彼女を弾き飛ばした。



    「『転がれ』!!」
     ――青年は容赦なく、水流を放ち終えた巻貝状の殻を背負った軟体動物(ポケモン)へと止めを刺すよう指示を出す。
     言下、水色の触手を殻へと収め、オムスターが猛然と転がりだした。
     ハイドロポンプを受けて倒れた彼女がふらつきながらも立ち上がる。それに迫る乳白色の刺付きの球。ざりざりと地面を削りながら真っ直ぐと彼女へと向かってくる。
     彼女は、多分状況に気がついていない。
     だから。
    「前!」
     そう、指示にならない言葉を僕は彼女に向けて発していた。
     それは彼女に届いたらしい。
     ふるり、と首を左右に振った後にオムスターの迫る前方を見据える彼女。
     肉薄する鋭い突起の付いた殻。
     それを、彼女は受け止めた。
     雛(アチャモ)の頃よりも逞しくなった両腕に生えた爪を使って回転するオムスターの側方から抑えこみ、同じく頑健に成長した脚の片方で受け止めるワカシャモである彼女。
     火花が散るのではないかと思うような擦過音が響く。
     次第に弱まる回転に安堵した、その刹那。
    「水の波動!」
     焦りを微塵も感じさせない青年の指示が響いた。
     直ぐ様に回転している軟体生物は反応する。
     回転を止めぬままに青色の光を撃ち放つオムスター。
     爆ぜる閃光。彼女の苦悶の声。
     そして、至近距離から弱点である『みずタイプ』の攻撃を受けた彼女は崩れ落ちた。



    「『転がる』ッ!」
     ――吹き荒れる砂嵐の中で壮年の男性は容赦なく、巨岩を放ち終えた巨大な鋼の蛇へと追撃の指示を出す。
     言下、全長一〇メートル近い巨体を伸ばし、ハガネールは転がりだした。
     鋼蛇の放ったストーンエッジを砕き落とした彼女は、飛び散る破片と吹き荒ぶ砂に視界と聴力が邪魔されているようで、忙しなく首を動かし辺りを探っている。それに迫る鈍い銀色の巨体。辺りの木々を薙ぎ倒しながら彼女へと迫る。
     彼女は、多分気がついていない。
     だから。
    「前」
     そう、指示とは言えない粗末な言葉を僕は零した。
     びうびうと荒ぶ砂を纏った暴風。へし折られる木々。ハガネールの転がる轟音と地響き。そんな騒音に掻き消されるであろうその言葉を、なんと彼女は聞き取ったらしい。
     言下、忙しなく辺りを探っていたのが止まり、彼女が前方へと向く。
     そして、刹那の躊躇なく彼女は全身に炎を纏って駈けだした。
     圧倒的な圧力をもって転がるハガネール。その姿を捉えているのか、いないのかわからないが、燃え盛る彼女は速度を増し飛ぶように疾駆する。
     次瞬、鈍いが激しい衝突音。
     続きハガネールが苦悶の咆哮を発しながら鳴動する。
     呻き蠢く鋼の蛇。その巨体のすぐ近くに彼女は居た。
     フレアドライブによって赤熱したハガネールの身体。それを抱き抱えるように三本の爪を突き刺し、そのまま彼女は渾身の力を込めて自身の身体を捻り巨大な敵を空高く放り投げる。
    「――んなッ!?」
     宙へと放り投げられたハガネールを見て、トレーナーである男性が驚き叫び唖然とする。
     正直僕も驚く。彼女の『馬鹿力』が此処までのものだとは思っていなかった。
     そして勿論これで彼女は終わらない。
     馬鹿力によって全力以上の力を使った反動で疲弊した肉体を、ビルドアップによって一時的に強化し補った彼女。
     未だ宙に居る鋼の大蛇。落ちてくるその巨体に向かい全身のバネを駆使して彼女は跳ぶ。
    「――ッ。アイアンテールだ!」
     彼女が跳んだのを見て相手が叫ぶ。言下、不安定な空中に居ながらも姿勢を変えて、煌めく鋼の尾を迫る彼女へ向けて振り下ろすハガネール。
     空(くう)を舞う砂塵を吹き散らし迫るアイアンテール。次瞬には彼女と肉薄する。
     嗚呼、けれど。
     彼女には通用しない。
     風を砕きながら振り下ろされる鋼の尾。身体を捻って彼女は躱し、あまつさえその尾へ爪を穿ちそれを支点に更に上へと跳ね上がる。
     そうして、ハガネールの大きな顔の下顎まで辿り着くバシャーモである彼女。
     強面な鋼の蛇が迎撃しようと大口を開け下方の彼女へと顔を向ける。
     が、それよりも速く彼女が動く。
     渾身の、全霊の力を込めてしかし動作は最小限。見た目以上に重い音を轟かせ、彼女の拳が巨蛇の下顎を打ち抜いた。
     巨体に似合わない弱々しい鳴き声を零しながら落下する鋼の蛇。次瞬、轟音と砂煙をまき散らしながらハガネールは轟沈した。
     嗚呼、雛の頃とは比べものにならないほどに彼女は強くなった。
     でも、僕は?

          ‡‡‡‡‡‡

    「あー!! よかった見つかったんだッ」
     少し、聞き覚えのある声で目が覚めた。なんだかとても暖かくて心地良い。
    「ん……?」
     目を開ける。霞んだ視界に入ってくるのは――
    「わあッ!?」
     彼女の顔だった。びっくりする程のドアップで僕を覗き込んでいた。
     嗚呼、すると、この心地良い暖かさは彼女の体温か。
    「あはは。大丈夫? 直ぐポケセンに運ぶからね」
     そしてそう話しかけてくる少女の声。昨日の昼間に戦ったあの少女だろうか?
     何故此処に? と訊こうと声のした方へとと首を動かすが、しかし僕の口から声が発せられることはなかった。否(いや)、搾り出すような喘ぎ声なら出るには出たけれど。
     何故そんな事になったかというと、僕の体力が限界なのもあるけれどそれ以上に、彼女が僕の身体をへし折る勢いで抱きしめてきたから。
     痛い。みしみしと身体の骨が軋んでいるような気さえする。とてつもなく彼女は怒っているのだろうか。
     なんて考えていると、少女と目が合った。暖かそうなダウンコートを着込んだその隣には卵型の身体に頭と手足を生やした二足歩行の炎ポケモンが佇んでいる。
     その凶相のポケモン、ブーバーンも僕の視線に気がついたのか、その太い砲身のような腕で少女の肩を軽く叩く。
    「ん? フレイム、何?」
     一旦僕から視線を外し、フレイムと名前らしいブーバーンへと首だけ向けて問う少女。
     問われたずんぐり丸い炎人は炎のように揺れる肩先をいからせながら、顎で僕達の方を示した。
    「ああ、うん。私は平気だからあの人をもっと温めてあげて」
     頷くブーバーン。此方に向かって一歩目を踏み出したの同時、少女は「流石、気がきくねぇフレイムッ!」と破顔しながらアハハ、と声に出して笑う少女。その視線が再び僕へと向けられると、華が綻ぶようだったその表情は、す、と鳴りを潜めた。真剣な顔をして、睨みつけるような眼光の鋭さで僕を見据えてくる。
    「全く、そんなに懐いてる仔を置いてどっか行っちゃうなんて馬鹿なの貴方はッ。『何が何だかわからない』って感じでパニック起こしてたんだからねそのバシャーモちゃん!! しかも何でまたこんな山の中に!! 私のウェイブが居なかったら貴方の波動で足どりを探し出せなくてそのまま凍死かゴーストポケモンに殺されちゃうところだったのよ!!! 分かってるの!? 分かってなかったならこれで分かったでしょう! 分からないとか言ったらウイングに強制スカイダイブさせてスリーピィで押し潰すんだからね! 反省しなさい!!!!」
     彼女に抱きしめられたまま、少女の機関銃のように捲し立てられる説教を聞く。
     どうやら同じポケモンセンターに居たらしい少女が、手持ちであるルカリオ或いはリオルのウェイブとやらに僕を行方を探させたらしい。波動、とやらを使ってそんな事が出来るのは『リオル・ルカリオ種』か特殊な才能を持った人間だけなのでそう推察する。
     そうして此処へと辿り着いた彼女は僕を殺そうとしていたゴーストポケモンたちを蹴散らした、というわけか。
     視線を巡らせば、雪に沈む様に倒れ臥した三体の亡霊達の姿が確認できる。
     ぎゅ、と僕を抱きとめる彼女。へし折る様な勢いは無い。
     暖かい。人肌よりも高めの彼女の体温の、微睡(まどろ)みに誘うような心地良さにまた意識が白ばんでいく。
     暖かい。
     けれど、凍った心は未だに溶けきってはいないようで、微かに刺すような冷たさを発している。
     彼女は僕に様々なモノをくれるが、僕は彼女に何もあげる事が出来ない。嗚呼、僕が彼女に出来る事は何も無いのだろうか。
     混濁し始めた意識が次第に落ちていく。その最中、烟る視界にピクリとも動かない亡霊達が再び入ってきた。
    「ああ、そうだ――」
     説教を捲し立てる事に疲れたのか、少女は僕らの傍で降り積もった雪を溶かしながら立つブーバーンの隣まで来ていた。そちらに向かって僕は声をかける。
    「ん? なに?」
     まだ説教し足りないのか、少し険のある声で少女は返してきた。
    「お願いが、あるん、だ」
     そろそろ限界が近い。切れ切れに声を搾り出す様に続ける。
    「もし、も、――ル、が、――って、いた、ら――」
     嗚呼、自分の声まで遠くに聞こえる。少女には伝わっただろうか。僕はあれを持っていないから――
     感覚も、思考も、全て闇の中に落ちていく。

            ‡‡‡‡‡‡

     ふと、外を見れば雨が未だ降っていた。大きな窓硝子を殴りつけるような土砂降りだ。あのマリルリの雨乞いによって降ってきたものとは比べものにならない程の。
     ぼう、とそれを眺めつつ、ポケモンセンターのロビーでソファに腰掛けたまま僕は考える。
     彼女はそれはもう頑張ってくれている。しかし、僕はその頑張りに応えられない。そのせいで彼女は傷ついてしまう。嗚呼、彼女が傷つかないようにするには、僕はどうすればいい何をすればいい何を頑張ればいい。どうすれば彼女は負けない? 何をすれば彼女は勝てる?
     戦わないという選択肢は彼女には無いらしい。だから彼女のトレーナーである僕にもその選択肢は無い。
     なら、どうすれば。
     篠突く雨によって水煙をあげて烟る外。先の見通せないその光景は、今の僕の靄々とした心の有り様によく似ている気がする。
     嗚呼、ならば。
     降り頻るこの大降りの雨を抜けていけば何か分かるかもしれない。
     よし。そうしよう。
     座っていたソファから立ち上がる。そしてそのまま僕は外へと歩き出す。
     自動ドアを抜ければ、ざあ、と風雨が僕を打ちつけた。礫で打たれる様な痛みが全身を襲う。
     けれども、彼女の痛みに比べたら微々たるものだろう。この程度では彼女は音を上げない。円な瞳に猛火を宿して立ち上がる。
     激しく打ちつけてくる雨粒に目が開けられない。痛い。寒い。
     けれど歩き続ける。彼女に相応しいトレーナーならばこの程度の事で諦めな――
     等と考えているその最中。荒ぶ風と雨音の中に甲高い彼女の声が確かに聞こえた。
     鳴き声がした方を振り返ったその刹那、僕は地面を転がっていた。砲弾の如き勢いで駆けてきた小さく丸い橙色の彼女によって蹴り飛ばされたのだ。
     声も出せず、濡れた地面を転げる僕。
     仰向けに地面に転がった僕に容赦なく雨粒が打ちつける。恐らくは泥まみれ。けれど全身濡れ鼠な今、それはそれほど気にならない。
     では何が気になるか。それは――
    「ああ。なんで?」
     ――何故、彼女が此処に居て、僕を蹴り飛ばしたか。
     仰向けに倒れたまま目線を上に上げれば彼女が僕を見下ろしている。ボッと小さな嘴から零れた火の粉が豪雨に負けること無く瞬いた。
     しかし僕の問いに答えない。
     小さな身体で仁王立ち、僕を見下ろす彼女。嗚呼、感情の読み取れない、でも確かに激情の宿るその瞳。その小さな瞳に吸い込まれる様に視線を逸らせない。
     ざあざあという雨音だけが耳朶に触れる。
     その中で、本当にそれはもう小さな声で、彼女が鳴いた。長くはない。しかし一言だけという感じでもない、か細く呟いた様なそんな鳴き声。
    「私を置いて、何処に行く?」
     嗚呼、何故だろう。彼女の言葉は分からない。だけれどそんな風に僕には聞こえた。
    「わ!?」
     聞こえたような気がするだけなので、何と言葉を返せば良いのか分からず黙る僕の額を、彼女は嘴でコツン、と突っついた。
     それが何を意味するのかは分からない。けれど――
     激しい雨音の中、ぬかるんだ地面をバシャバシャと音を立てて何やら叫びながら近づいてくる気配。
     「アチャモ」と彼女の事、それと僕の名前を声を張り上げて呼んでいる。多分、ポケモンセンターの職員か何かだろう。
     それが段々と近づいてくるのを感じながら、
    「うん。ごめん。置いて行くつもりはなかったんだ」
     そう謝る。
     すると、僕を見据える彼女の瞳が満足そうな光を帯びた。そんな気がする。
     嗚呼、彼女と一緒に旅に出よう。そうすれば何か僕に出来る事が分かるかもしれないから。
     ――彼女の炎が僕の心に火を点けたかの如く、僕の心は燃えていた。
     
           ‡‡‡‡‡‡

     微睡んだままの頭を何かが掴んだ。そのまま勢い良く揺さぶられる。
    「――ッ!? な、何?!」
    「わぁ!? 何してるのバシャーモちゃんッ!」
     それによって僕の機能していなかった意識が無理やりに覚醒する。しかし、それでも頭のシェイクは終わらない。覚醒した意識が眠気とは別の何かで混濁していく。行っているのは、叫ぶ少女の声の内容からして『彼女』なのだろう。
    「あー、はいはい。痴話喧嘩はちょっと後にしてねー」
     また夢の中に旅立つその一歩手前で唐突に、そんな女性の声が此方に向けてかけられた。それによって『彼女』の揺さぶり攻撃はとりあえず中断される。
     頭が上下左右に動かされていたので全く見えていなかったけれど、落ち着いてようやく見えた天井や壁は白を基調とした清潔な物。そして横たえた僕の身体を支えているのは白い掛け布団の敷かれた寝台。微かに薬臭い空気。病院かポケモンセンターだろうか。そういえば、意識を失う前に少女が「ポケセンに連れて行く」等と言っていたのを思い出す。
     そして視線を戻せば、ベッドの上で仰向けに寝転がった僕に馬乗りになって顔を覗き込んでいる彼女が居た。
    「まぁ、分かってるかもしれないけど此処はポケモンセンター。で、君は低体温症であの子達に担ぎ込まれてきた。それで? 君は何がしたくてこうなったわけ?」
     彼女の青色の瞳に見据えられて、そこから視線を逸らせないでいる僕に向かい女性が訊いてくる。
     その言葉を受けて、ようやく視線を動かせた。声のした方へと顔を向ける。今更に気がついたけれど身体はまだ上手く動かないようだ。柔らかい枕に沈んだ頭を横に向けて声の主を視界に入れる。
     そこに立っていたのは背の高い女性だった。黒い短髪で白衣を着た、少し目付きの悪いきらいがあるけれど綺麗な人だ。その隣には、楕円の桃色の身体に卵を抱いたポケモンが同じく立っている。
     そのハピナスが小さな両手で支え持っている銀色の四角い盆の上には紅白の球が乗っていた。三つある。
     嗚呼、けれど、何故全て空なのだろう。
     ……。それよりも質問に答えなければ。何がしたくて、か。
     嗚呼それならば。
    「ああ、天気が良かったので死にに」
     僕の口から発せられたその言語に『彼女』も少女も女性も、ハピナスさえも言葉を失った様に黙ってしまう。否(いや)、白衣の女性は呆れて物も言えないというような顔だ。他の皆は唖然という言葉がピタリと当てはまるような顔をしているけれど。
     僕が何をしたかはこの説明で良いと思うのだけれど、しかし理解してもらうには色々と説明が足りないかもしれない。
     だから、情けなくて恥ずかしいけれど僕が死ぬことにした経緯を一から説明することにしよう。
     疲れきって鉛のように重く動かない身体の代わりに、僕の口は驚く程に滑らかに動く。彼女がどんなに強く、気高く、直向(ひたむ)きかを。僕がどうしようもなく弱く、情けなく、努力しようと何も実らない劣等者であるかを紡いでいく。
     一度語りだしてしまったらもう止まらなかった。ダムが決壊した様に今まで溜めてきた思いが鉄砲水の如く溢れ出す。
     それに比例して、語れば語るほどに僕の駄目さ加減を実感し、暖かい部屋の中だというのに心がどんどん冷たく凍っていく。
    「だから、死ぬことにしたんだ」
     どれほどの時間、喋っていただろう。誰も口をはさむ事無く僕の話を聞いてくれていた。そして語り終えた今も誰も僕へと言葉を発しない。少女は俯いて押し黙り、僕に馬乗りになったままの『彼女』はクルル、と低く唸りながら三本指の手を強く握り締めている。何時も揺らぐ事無く凛としたその眼の輝きは何故か常より弱々しい。
     ……否、一人、違った。
    「あ、そう。じゃ、この三匹はどうすればいいのかしら?」
     心底どうでも良さそうな表情と声で、僕に問うてくる白衣の女性。
    「この三匹? どの三匹ですか?」
     この女医さんの言っていることがイマイチ分からない。
     僕の返した問いに女性は、
    「だから、その娘(こ)が捕まえてきた、君を襲ったゴーストポケモンよ。ユキメノコ、ゲンガー、ヨノワール。この三匹」
     そう言いながら、ハピナスの持つトレイに乗った三つのモンスターボールを指して示す。
     嗚呼、そういうことか。どうやら僕が意識を失う前に少女に頼んだ事は伝わっていたらしい。
     僕があの山に死にに行かなければ、あの三匹も僕を殺そうとはしなかった訳で。なれば『彼女』に痛めつけられる事も無かった。だからせめて、ポケモンセンターで治療してもらおうと、少女にあの三匹を一旦で良いので捕まえて欲しいと、そう頼んだ。ボールがもしも余っていたならば、とも言った気がする。
     そのボールが三個、此処に在るということは、治療が終わって外に帰った? 否、そうするとこの女医さんが言っている質問の意図が分からない。
     ……嗚呼、治療で他の場所に居るからボールだけ此処にあるのか?
    「ああ。はい。治療が終わったら野生に帰してもらえれば。別の場所で治療中なのでしょう?」
    「ん? 治療が終わったから此処にボールが在るのだけれど? ちゃんと三匹とも中に居るし」
    「どうしたの? 三匹ともボールの中に居るよ?」
    「……え?」
     女医さんと少女の言葉の意味が分からない。しかし冗談を言って誂ってる風でもないし、そもそもそんなことをする理由もないだろう。
     もう一度、視線をボールに向ける。……やはり、空だ。何も入っていない。
    「え、でも――」
     それらは空ではないか、と言い返そうと口を開くその瞬息前。視界の端にこの白い空間の天井がちらと入る。僕を見下ろす彼女の背後。そこで何か黒い影がゆらゆらと揺らめいた。
    「――あ。後ろ」
     彼女も誰も気が付いていないそれが、ゲンガーだと気が付いた次瞬に僕の口はそう零していた。
    「ん? 後ろ?」
    「へ? なに?」
     白衣の女性と寝台の傍らの椅子に腰掛けた少女が疑問符を付けて返してくるが、彼女は違う。刹那も惑う事無く反転。背後でニタニタと笑っている影霊を視界に入れると、炎で包まれた拳を叩き込む。
     苦悶の声すら上げずに吹き飛ぶゲンガー。しかし僕はそれを最後まで見届ける事はない。
     ゲンガーが居たということは多分他の二匹も居るのだろう。未だ痛み軋む身体だけれど、どうにか首を枕から浮かせて辺りへと視線を巡らせる。
     ……居た。
    「その娘(こ)の足元。それとハピナスの隣」
     僕の呟く言葉を聞き取って、彼女は刹那の間も持たずに残りの二体を沈めてしまう。
     傍机やら花瓶やら、その他色々な物が埃や破砕音を上げて壊れたその中で、目を回して沈黙する三体の亡霊達。その光景を見て目を丸くしている僕と彼女を除いた面々。
     悠然と立つ細身ながらも引き締まった彼女の勇姿。それを見て、やはり彼女は僕なんかと居てはいけないと強く思う。もっと、もっと彼女の力を十全に引き出せる指示の出せる有能なトレーナーと一緒に居た方が――
    「なッ!? 何でこの三匹が外に? ボールのロックは掛けたはずなのに……」
     狼狽した白衣を着た女医さんとハピナスの声が、思考に沈んだ僕の意識を浮かび上がらせる。
    「多分、妖しい光や催眠術、悪夢とかナイトヘッドを上手く調整して惑わしたんじゃないでしょうか。僕もゲンガーに妖しい光と催眠術をかけられましたし」
     多分そんなところだろうと、そう答える僕。
    「あれ。それだと何で貴方はそれを見破れたの?」
    「ああ、多分起き抜けで半分以上寝ていたから催眠術が効かなくて、その後に頭をシェイクされて朦朧としてたからナイトヘッドとか妖しい光の効果が無かったんじゃない?」
     不思議そうに訊いてくる少女にそう答える。合ってるかは分からないけれど。
     頭をシェイク、という言葉を聞いて、倒れた三霊を睨んでいた『彼女』が此方を向き直る。相変わらず、何を考えているのか僕には読み取れないその青い瞳。それにすぅと吸い込まれるように視線を逸らせないでいると、
    「あははッ! そのバシャーモちゃんも強いけど、貴方も凄いんだねッ」
     そんな少女の笑い声が響いた。
    「どこが? 何にも出来ない駄目なトレーナーだよ僕は。技の指示すらまともに出来ないんだから」
     何をこの娘(こ)は言っているんだろう。『彼女』が凄いのは自明な事だけれど、それと同様に僕の無能さも事実だ。……嗚呼、僕の駄目さ加減が凄いという事だろうか。
    「え、だって信頼関係が凄まじいもん。バトルした時も思ったけど、技の指示が出せないのもバシャーモちゃんが最善の行動をするだろから、下手に指示を出しちゃいけないとか思ってるんじゃない?」
    「それは……」
     確かに、僕の下手な指示よりも彼女が選択する行動の方が明らかにその状況を打開しうるものだろう。だから何と指示を出せば良いのか分からなくなるのも、少なからずあるかもしれない。
    「その代わりにバシャーモちゃんが気がつかない死角からの攻撃は、さっきみたく必要な事だけ言ってるし。声は小さいけど」
    「あれは気がついていないみたいだけど、何と言ったら良いのか分からなくて思わず言ってるだけだから」
    「そうなのだとしても、それを聞き逃さないで尚且つ全然全く完全に疑うことをしないで直ぐ様に行動に移せるのって、それって凄い信頼じゃない?」
     そう、なのだろうか。彼女が何も出来ないこの僕に合わせてくれているように僕には思えるのだけれども。
    「でも――」
    「ふぅ。ぐじぐじと情けない。ポケモンとトレーナーの関わり方なんて千差万別でしょうが。ちょっと他とスタイルが違うからって何を思い悩んでいるの。ポケモンは道具だとかいう輩も居るんだから。君はそのバシャーモが好きなの? それとも嫌いなの?」
     何時の間にやら、立っていた場所を移動して倒れ臥した三匹のゴーストポケモン達を今度こそボールの中に収めながら女医さんが、少し咎める様に訊いてくる。
    「大好きです」
     思った以上に即答できた。彼女のことは大好きだ。
     だからこそ、僕は死ぬことにしたのだから。
    「ふふ。じゃあ貴女は?」
     僕の答えを聞いてにやりと笑う白衣の女医さん。次いで『彼女』へとそう問うた。
     問われた彼女は――
     何故か視線を僕にも誰にも合わせずに、そわそわとした雰囲気で両手を合わせてモジモジと三本指を忙しなく絡めては解き、絡めては解いている。
    「どうしたの?」
     何時もの彼女らしくないその姿に、思わずそう訊いてしまう。
     肩を震わせ固まる彼女。ふい、とそっぽを向いて僕と視線を合わせようとしない。
     嗚呼。彼女は僕を好いては――
    「あはッ。可愛い!」
     ――否、僕を嫌っているならば追いかけて来てなどくれないか。
     彼女の事を見た少女の笑い声が耳に入る。
     その彼女というと、満面の笑顔のハピナスに押されてよろけながらも僕の方へと向かい歩いて来ている。
     そして最後、僕の寝るベッドの傍へと辿り着くその一歩前で、彼女の長い脚が縺れてつんのめった。
    「わッ」
     彼女が僕に覆い被さるように倒れてくる。既の所で僕の顔が押し潰されることは無かったけれど、至近距離で彼女と向かい合うことになった。
     青空の様な彼女の瞳。それに落ちて行く様な、なんだか心地良い感覚。少しの間見つめ合う。
    「大丈夫?」
     そしてそう問うてみる。
     ハッとした感じで彼女が視線を逸らした。それを見て、嗚呼、彼女は照れている。そう何となく考える。
     ……あれ。彼女の事が分かった? 思い違いか。
     否、これは照れていると思う。
     じゃあ何故彼女はこうなったのだろう。こうなる前に何があっただろうか。
     ……。……嗚呼。「大好き」だと言った事だろうか。
     僕が彼女の事を大好きで、彼女がその事に照れているのならば、なれば彼女も僕を好いてくれていると思って良いのだろうか。
     そう考えたら、思わず彼女の顔に手を回して軽く抱きしめていた。
     ビク、と彼女がまた固まってしまう。これで拒絶されたら全て僕の勘違いだったのだろう。その時は――
     しかし、彼女は拒絶するどころか優しく僕の頭を抱いてくれた。彼女の高い体温が身体だけでなく心にも染み渡る。
     凍りついた心が溶け出して、それが涙となって出るほどに嬉しくて、そして勝手に死のうとしたことが申し訳ない。
    「ごめんね、『ちゃちゃ』。もう、二度と、勝手に居なくならないから。許してくれる? こんな僕だけれど、一緒にいてくれる?」
     震えるか細い声で心の底から謝罪する。
     彼女の答えは、まずは痛いくらいの抱擁。続いてクルルッと力強い一鳴きだった。
    「はいはい。感動の和解はちょっと置いといて、それでこの三匹はどうする? 野生には帰せないのだけれども」
     そんな僕達に淡白な女性の声が向けられる。
    「え、野生に帰せないってどういう事ですか?」
     発せられた女医さん言葉を受けて、『ちゃちゃ』が離れる。そうして女医さんへと向き直った僕はそう問い返した。
    「君を明確に殺そうとしたんでしょう? 縄張りを荒らした、とかそういう理由でもなく。そもそも、ゴーストポケモンが居る廃墟を壊そうとした、とかの理由が無ければそうそう襲ってくるものでもないし。悪戯はよく報告されてるけど」
    「はぁ。それが何か?」
    「野生に帰せばまた誰かを襲う可能性が高いポケモンを逃がせると思う? ポケモンセンターの職員が、よ」
    「ああ……なるほど。僕はどうすれば?」
    「別に? この危険なポケモンを手持ちに加えても別に止めないわよ。手持ちに加えた結果、君が何か責任を取ることもありうるけれど。それが嫌ならば、私達に任せなさい。こっちで処理するわ。結局『逃しました』とか最悪だから」
     嗚呼。どうしよう。こんな事ならば捕獲を頼まないほうが良かったのかもしれない。
     少女の方へと向いてみると、僕の視線に気が付いて、曖昧に笑って首を振る。それは、ポケモンセンターに任せてしまえ。ということなのだろうか。
     ……。僕も彼女――ちゃちゃ以外のポケモンを手持ちに加えるつもりも無い。
     嗚呼――
     その時、彼女が動いた。颯爽と女医さんの方へと向かい、ハピナスの持つ盆に乗った紅白の三つの球をむんずと掴む。
     そして、無造作に僕の方へと放り投げた。弧を描いて狙ったように僕の腹に落ちてくる3つのモンスターボール。少し痛い。
     彼女が取った行動の意味は。
     嗚呼、わかる。
    「ああ、うん。じゃあこの三匹は僕のポケモン。ということで」
     そう言うと、ちゃちゃは満足そうに頷いて。
    「ふうん。そ。じゃあ気をつけて。私の用事は終わったから行くわねー。あ、ハピナス、壊れた備品の掃除お願い」
     そう言い残してニヤリとした笑みを浮かべた女医さんは出て行った。ハピナスはニコリと微笑して応え手際よく掃除を始めている。
    「ホントにその三匹を連れて行くの?!」
     そして、僕の顔を覗き込むように少女が訊いてくる。
    「うん。まぁ、ちゃちゃの方が三匹まとめてよりも強いから何とかなると思う」
    「でも!!」
     どうにも食い下がってくる。
    「それに――」
     一旦ちゃちゃへと視線を移し、そしてまだ手持ちに加えるのは止めろと勧めるこの女の子へとまた戻し続ける。
    「弱いと言っても、そこらのポケモンよりよっぽど強いし。だから僕達もジム戦ってやつをやってみようかと思うんだ」
    「……へ? それって」
    「うん。ポケモンリーグ出場を目指す。良いかな? ちゃちゃ?」
     最後は『彼女』へと向かって。
     彼女へと目を向ければ、首肯してくれた。
     多分、この三匹のポケモンを彼女程に愛することは出来ないだろう。それくらいに『ちゃちゃ』は特別だから。
     でも、まあ、多分、僕はゲンガーもユキメノコもヨノワールも嫌いじゃないんだと思う。殺されそうになったけれど、それは僕が望んたことだ。別にこの三匹に出会わなくても僕は死にかけたし、或いは出会わなければもっと早く、ちゃちゃが間に合わない内に自死していたかもしれない。だから、まぁ何とかなるさ。普通の好き、位にはなるかもしれないし。
     彼女に相応しいトレーナーになるのではなくて、彼女と一緒に強くなる。信頼してくれているのならば、此方も絶対の信頼で応えよう。それが今後の目標ということでどうだろう。
     ……あ、この三匹とも一緒に。
    「……ふぅん。じゃあライバルね。負けないわよ?」
    「僕達も頑張って君に追いつくよ」
    「約束よ!」
    「うん」
    「じゃあ、こうしちゃいられないッ。私はもう行くね。お大事に。早く治して、ポケモンリーグで!」
    「ああ。ポケモンリーグでまた会おう」
     慌ただしく少女は出て行った。残ったのは掃除をしているハピナスと、何時の間にかベッドに腰掛けて此方を眺めている『ちゃちゃ』。後はボールに入った亡霊達。
     嗚呼、早く僕の体力は回復しないだろうか。
     これからの事を考える。どうなるかはわからない。もしかしたらまた挫折するかもしれないし、ちゃちゃとでも超えられない壁が現れるかもしれない。
     でも、これまでの寒く重かった心と違い、今の心は熱く、軽やかだ。もう、僕は二度と、死のう等とは考えない。
     優しい彼女の眼差しを見つめ返しているうちに、冷たく氷の様に凍りついた心が溶けて、熾火が如く燃えている。
     願わくば、ちゃちゃとユキメノコ、ゲンガーやヨノワールにもこの火が燃え移りますように。
     そうすれば、どんなことがあろうとも、僕の心が氷になることはもう無いだろうから。

    fin.




    もしも読んでくれた方が居たらありがとうございました。
    季節外れの冬のお話ですが……。

    【何をしてくださっても喜ぶのよ】


      [No.1246] Re: いたずらごころ→感想です 投稿者:スウ   投稿日:2011/05/29(Sun) 17:53:34     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    初めまして。
    紋綿症というのが非常に面白いですね。
    イッシュ地方では普通にありそうです。
    今回もまたエルルの邪魔が入って、残念。
    でも、カントーに行ったとしても
    エルルが近くにいたら、やっぱり紋綿症の脅威はまぬがれられないかも……。
    前途多難です。でもエルルが憎めない……。


      [No.1245] ただいまチャット中! 投稿者:サトチ   《URL》   投稿日:2011/05/29(Sun) 17:34:40     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    5時からやってますよ〜!


      [No.1244] チャット会開催中。 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/05/29(Sun) 17:34:38     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    鳩さんの代理人、チャットのログ司書(他称)久方です。
    チャット会開催中です。

    http://masapoke.chatx.whocares.jp/

    さあみんな、閲覧(ロム)ってないで殴りこみだ!!


      [No.1243] 短編2(ポリゴン・またまたヌケニンのお話) 投稿者:スウ   投稿日:2011/05/29(Sun) 16:49:47     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5







       ■ポリゴン

     ポリゴンの瞳は物事の本質をよく捉えている。傍目にはどこを見ているのかわからない事が多いが、何事においても実によく観察している。その瞳から得た情報を体内でデータ処理し、必要があらば書き換えてしまう。この機能をテクスチャーと呼ぶ。

     トレーナー達がこのテクスチャーを用いる例として、最もよく目にするのが、格闘タイプのポケモンと対峙した時だろうか。

     まず、ポリゴンにシャドーボールという技を覚えさせておく。これはゴーストタイプの技だ。ゴーストタイプの技は、このシャドーボール一つだけにしぼり、残りの技をノーマルタイプのものばかりで固める。
     こうしておけば、テクスチャーを使用した際、ポリゴンは失敗の心配なく、ゴーストタイプのポケモンに変化することができるのだ。相対した格闘タイプのポケモンはご自慢の格闘技の威力を振るえず、返り討ちにされるという寸法である。一時、この戦術はポリゴン好きの間で流行ったが、それも今は昔の話だ。

     今は、適応力を身に付けたポリゴンZが、その反則的な威力のトライアタックや破壊光線で、相手に行動の暇さえ許さず、一撃で黙らせてしまう。
     時代は変わってしまった。
     観察の必要が無くなり、テクスチャーで遊ぶことができなくなったポリゴンは、ただ単に、事務処理を行うだけの砲台と変わりないのではないだろうか。

     そびえ立つ塔がどんどん高くなり、地下鉄の線路がどんどん遠くまで伸びる昨今、ポケモンバトルというものは遊びの一環ではなく、もはやただの作業となりつつある。
     テクスチャーを奪われたポリゴンはよく知っている。





       ■またまたヌケニンのお話

     きっとこれまで幾人もの人間が、ヌケニンの背中の隙間を恐る恐る覗いてみたことだろう。
     そしてその後、彼らは内心冷や冷やとしながらも、自分の肉体がまだちゃんとある事に安堵して、こうほくそ笑んだことだろう。

    「いやあ、別になーんにも起こらなかったよ。やっぱり、あれは迷信だった。
                         だいじょーぶ。ぜんぜん平気へいき」

     で、彼のその声が、友人達やオーキド博士に届くことは、もう決して無かったりするのだ。


      [No.1242] [再投稿]タイム・リミット 投稿者:紀成   投稿日:2011/05/29(Sun) 09:58:33     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「本当ミコトって、恋愛とかしないよね」
    クラスメイトによく言われる言葉だ。そう言う彼女らは、しすぎだと思う。数ヶ月前に好きだった男は、今はクラスメイトというレッテルを貼られている。付き合ったと思ったら、別れている。『いい男がいない』は、常套句。
    「僕はポケモンさえいてくれれば、それでいいよ」
    これは本当の話。男に時間を取られるより、ポケモンに時間を取られる方が良い。というより、取られたい。
    「何でミコトってあんなごついポケモン選ぶの?」
    「好きな物は好き。それだけだよ」

    高校時代、ミスミ以外の子と話す内容はこんなだった。我ながら恥ずかしい。だが思い返そうとするだけ、マシな方なんだろう。
    「中学の時とか無かったの?」
    「さあね」
    ここで話のネタにされるくらいならば、ワルビアルに全て噛み砕いてもらおう。
    あの話を知るのは、当時の僕だけでいい。

    青すぎて、純粋すぎた女の、哀れな恋の話を。

    時は、丁度三年前に遡る。当時ミスミとはまだ知り合っていなかった僕は、普通の公立中にいた。成績も運動も並み。ただ力だけが異様に強くて、皆怖がって近づかなかった。元々バスケ部に入ってたけど、ダンクしただけでゴールネットのリングを破壊し、三日で退部した。
    先生すら、僕にプリントを渡す時は手が震えていた。自分が何故こんな力を持って生まれてきたのか。少し考えたこともあったが、結局今でも分かっていない。
    「恨むよ、神様…本当にいるならだけど」
    時々ベランダに出ては呟いていた。思春期ならではの行動といえよう。
    そしてもっと悪いのは、その感情を持ってしまったこと。彼はディベートの授業で相手の論を全て打ち返し、否定に持っていった。別にスポーツが出来るとか、イケメンとか、性格がいいとかじゃなかった。むしろ性格はかなり悪い。根拠の無い夢物語は真正面から打ち砕く。先生の話も何処かおかしければ一刀両断する。
    痛い話だけど、そんな彼を僕は好きになった。そしてそれはいつしか担任にばれていた(何故か))
    女性だったから…というのは理由にならない。でも時々職員室でインスタントコーヒーを淹れてくれたりした。
    「力が強いのは、砂神さんの個性。それを使って何が出来るのか考えてみたら?」
    綺麗にネイルされた爪を机に立てて、その人は笑った。
    「…本音を言っちゃうと、その力がいつか私に向けられそうで怖いだけなんだけどね」
    「僕は、怒ると周りが見えなくなるみたいなんです。親からも、小学校時代からのクラスメイトにも言われました。カッとなって意識が飛んで、気付いたら黒板が真っ二つに割れてて、掃除ロッカーを持ち上げていた―
    なんて話が実際に起きていたんです」
    まるで何処かの漫画みたいだが、本当の話だ。何年か経った今でもその異常な怪力は健在で、(やったことは無いけど)車をスクラップ状態に出来るような気がする。
    先生はそんな僕の話を面白そうに聞いていた。多分彼女なりに僕のストレス解消に付き合ってくれたのだろう。
    だから、その話を聞かされた時は、嫌でも信じてしまった。
    信じなくてはいけなかった。

    「彼は、二日後に転校するの」

    彼がクラスで苦手意識を持たれていることは、先生もよく知っていたらしい。だからいきなり皆の前で言うよりかは、彼を思っている僕に一番初めに聞かせた方が良いと思ったようだ。
    「親の仕事の都合だって。お母さんから電話があったの」
    「…そう、ですか」
    僕はコーヒーを飲みながら呟いた。少女漫画みたいな展開になってしまったと思いつつも、まだ言われたことの意味が掴めなかった。

    昼休みが終わる前に教室に戻ると、クラス委員の子が怯えた様子で話しかけてきた。プリントを持つ手が震えている。ここまで来ると、逆にこちらが被害者に見える気がした。
    「砂神さん、えっと、今度の生徒会選挙のことなんだけど」
    『えっと』や『その』が入ってて分かりにくかったけど、とりあえず内容は分かった。うなずいて終わらせようとした時、彼が入って来た。インテリ眼鏡がキュウコン目によく似合っている。
    「あの、七尾くん」
    彼の名前は七尾 千秋といった。眠そうだった。気持ちよく寝ていたところを予鈴に起こされたようだ。
    「今度の生徒会選挙の投票…」
    「皆同じだよ。口で綺麗事を言っている奴ほど、皮を剥けば馬鹿で何も考えて無い。誰かに二つ入れてもらって」
    「えっと…」
    相変わらずの毒舌だ。目が合ったが、いきなり逸らすのも変なのでしばらく窓の外を見つめる振りをしていた。

    帰り道、一人で歩いていると、コンビニ前から嫌な声がした。聞き覚えがあるが、誰かは分からない。
    横を見ると、二、三人のうちの男子生徒が七尾に絡んでいた。その三人の制服がぐちゃぐちゃに着崩されているのに対して、彼の方はシャツを第一ボタンまでしめ、セーターはベストタイプ、ズボンも何もつけていなかった。
    相手はこちらにまだ気付いていない。おおかた、コンビニ前でたむろしていた三人が、真面目な彼が通りかかった所に目をつけた、というところだろう。その気になれば走って逃げることだって出来ただろうに、彼は逃げなかった。
    相手を論破しようとしたのだろうか。どちらにしろ、危険な状態であることには違いない。
    「何してんの」
    四人がミコトを見た。男子の一人の目が恐怖の色に染まる。
    「お、おい、コイツ、砂神じゃねーか。俺達と同い年の」
    「女だろ。何ビビッてんだ」
    「お前しらねえのかよ!?コイツ、めちゃくちゃ怪力で、その気になればあそこにあるゴミ箱さえ片手で投げられるって―」
    いつの間にか噂に尾びれが付いていた。多分本気になれば投げるどころかスクラップにできる、とミコトは思ったが黙っていた。
    一番ガタイのいい男が前に出た。
    「面白れえ。ならオレが直接やってやらあ!」
    「…」
    話の状況が読めていない七尾は、ミコトと不良三人を交互に見つめていた。ミコトはため息をつくと、鞄を七尾に渡した。
    「え?」
    「持ってて」
    両手を胸の前で合わせる。深呼吸。ゆっくり吸い、吐く。
    「男が女に守られるのは素敵な響きなのに、男が女にやられるのは、どうして哀しいんだろうね?」


    数分後。
    ミコトはスカートの埃を払っていた。目の前で不良達が伸びている。七尾は目を丸くしていた。
    「鞄、ありがとう」
    「砂神さん、だよね」
    苗字を呼ばれた。微妙に嬉しい。
    「…ありがとう。僕、本当はポケモン持ってるんだけど、まだバトル慣れしてなくて。強いね」
    「…」
    どう返していいのか分からず、ミコトはベルトに付けたモンスターボールをギュッと握り締めた。そして慌てて離す。壊れたら大変だ。
    「ねえ、今度ポケモンの育て方教えてくれないかな。砂神さんなら、きっとポケモンも強いと思うんだけど」
    「…ごめん」
    ミコトは走り出した。後ろから七尾の声が追って来たが、気にする余裕が無い。恥ずかしいという思いと、嬉しいという思いがゴッチャになって、よく分からない鼓動を醸し出していた。
    「今更教えてって言われても…」
    彼はあと二日でいなくなる。その前に、何か進展があれば少しは気持ちの整理もつくだろうか。


    次の日。
    「…彼、休みかい?」
    学級委員の子は、ミコトを見た途端震えた。だがきちんと内容は話してくれた。
    「なんか、家の用事だって」
    「そう」
    荷造りでもしているのだろうか。いずれにしろ、今日は何も無いだろう。いや、何も出来ないの間違いだろうか。
    自分がこうして授業を受けている間にも、タイムリミットは刻一刻と迫っている。昨日、彼は自分のことをどう思ったか。怖いと思っただろうか。強いと思っただろうか。
    色々考えて頭がゴチャゴチャになったミコトは、放課後に職員室へ行った。
    「恋は盲目。砂神さんを見ていると、本当にその通りだと思うわ」
    「何か他の教科の先生から言われましたか」
    「うん、数学の時間にずっと机に突っ伏してるから、具合が悪いんじゃないかと思ったそうよ」
    すみません先生。多分貴方にとっては下らない病気です。でも僕にとっては重要です。…多分。
    「砂神さんのポケモン達って、今の貴方をどう思ってるのかしらね」
    三匹を思い浮かべた。(一匹を除いて)厳つい奴ら。頼りになるし、良いポケモン達だ。ただ最近はバトルには出していない。食事をあげる時、僕の表情の変化に気付いていたような気もするが、ポケモンが人の感情に入ることはまず無い。
    「…先生」
    「何?」
    「僕は、勉強もスポーツも並みの人間です。いやに怪力なことを除けば、普通の人間なんです。別に少女漫画のヒロインみたいな涙を誘うような考えも持ちません。
    …でも、何ででしょうね」

    僕、彼のこと、泣きたくなるほど好きなんだ。誰かが彼を悪く言ったとしても、彼が元々性格悪くても、それでも彼が好きなんだ。
    好きになった時から…晴れの日も雨の日も、僕は視界の隅で彼を見ていた。馬鹿らしいと頭を振って考えを否定しようとしても、それでも必ず最後はその感情が頭を支配していた。このままだと僕はおかしくなるかもしれない。そう考えたりした。
    「僕は…馬鹿ですかね」
    グダグダになった僕は、先生から見れば使い古した雑巾のようだっただろう。

    頭を抱えた僕は教室に戻った。教室には誰もいなかった。…一人を除いては。
    「…」
    七尾が何故が自分の席に座っていた。休みと言っていたのに、きちんといつもの通り制服を着ている。
    「休みじゃなかったの」
    「ちょっと用事があって」
    七尾は立ち上がった。僕は何故が足が竦んで動けない。
    彼は言った。

    「砂神さん、僕のこと―好きだよね」

    頭の中が真っ白になり、そこから否定とも肯定ともいえない言葉があふれ出してくる。多分パニックを自分なりに押えているんだろう。何だよこの少女漫画みたいな展開は。昔あったぞこんな話。僕はヒロインか。どっちかって言うと少年漫画のサブキャラにして欲しいんだけど。
    「…僕、砂神さんが好きだ」

    時が、止まった。



    「ずっと前から好きだった。ずっと僕は、特異な力に悩む君を見てた。皆に怖がられていても、君が影で誰にも相談できずに苦しんでいるのを知ってた。
    でもそんなことは関係無い。好きになった後だった。力を知ったのは。でも止めることなんて出来なくって―」
    駄目だ。もう聞いていられない。恥ずかしい。恥ずかしくて死にそうだ。黙ってくれ黙ってよ黙って黙れだまれダマレ―

    バキン、という音がした。右手の甲が赤く染まる。驚く七尾の顔が、僕の目に映っていた。
    「砂神さん!?」
    窓ガラスが飛び散る。そのまま教室を出た。畜生神様なんて大嫌いだ。何で僕の体にこんなオマケをつけたんだ。


    結局、僕はガラスを割ったことで三日の停学をくらった。校長はまたかという目で僕を見た。もう慣れっこだ。
    次の朝に、先生から電話があった。七尾の転校を皆に伝えたらしい。教室がざわめいたという。
    それが普通の反応なんだろう。

    で、夕方。

    ワルビアル達と一緒に散歩から戻ると、玄関で誰かが母親と話していた。
    「あ、ミコト。この子、アンタをたずねて来たのよ。表で話しておいで」

    七尾はうちの学校の生徒がいないところまで僕を連れ出した。不安になったのか、ポケモン達も付いてきた。
    「いきなりごめん。元はと言えば僕がいきなりあんな事言ったから」
    「いいよ。慣れてるし」
    「砂神さんの好みがよく分からなかったんだけど…」
    そう言って七尾が取り出したのは、紫と黒色のピン止めだった。そしてもう一つ。
    「これ、僕の引越し先の住所と電話番号。携帯はまだ持ってないんだ。高校に合格するまでって」
    「電話、すると思ってるの」
    「そう思ったから、渡したんだ」
    紙を受け取った。何故か破りたい衝動に駆られるが、耐える。
    「大丈夫だよ。砂神さん強いし。きっとこの先何があっても大丈夫だよ」
    「希望的観測かい?」
    「ううん」


    「確信してるんだ。だって、その目が少年漫画の主人公みたいだから。澄んでて、中が燃えてる。
    比喩表現を使うのはあんまり好きじゃないけど、本当にそう見えるんだ」


    彼はタイムリミットなしで、僕の本心を見抜いて行った。あれから何年も経つけど、連絡を取ったのは数えるだけだ。
    僕は青かった。そして寂しがりやだった。寂しがってちゃこの世界は生きてはいけない。
    それを知ったのは、皮肉にも本当に愛するべき者を知った後だった。

    僕は、愚かだろうか。


    だがそれは、きっと別の意味で愛になるのだろう。


      [No.1241] どうにかこうにか・・・ 投稿者:クーウィ   投稿日:2011/05/29(Sun) 06:03:34     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    漸く終了です。 お待たせして御免なさい・・・(涙)

    時間の関係でそこそこに切り詰めた結果、批評は総評除いて22600字ほど。 ・・・しかし、寝不足ゆえ相当雑になっている節があるので、もし失礼な発言が当っておられる方がおられましたら、もう今から謝っておきます(汗)  申し訳ない・・・
      
    ☆☆☆:8
    ☆☆:13
    ☆:11

    今回は、そこそこ緩めに付けました。 ・・・では、お休みなさいです。


      [No.1240] 結果速報 5月29日17:00〜 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/05/28(Sat) 16:30:46     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    結果速報ですが、5月29日17:00からはじめたいと思います。
    ちょっと早いような気もしますが、次の日が月曜日なのと
    前置きが長いからというのが主な理由です。
    上位の様子だけ知りたければ、18:00とか 19:00から入っても十分です。タブンネ。
    ちょっと当日の流れ次第です。

    ではよろしくお願い致します。


      [No.1239] それではわたしも…… 投稿者:でりでり   《URL》   投稿日:2011/05/27(Fri) 21:56:22     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    折角なのでわたしも。
    文章を抜粋して指摘したりするせいか、文字数が17000近くになってるのは御愛嬌ということで。

    先に言っておきますが、結構厳しめに言っております。
    しかし心を折るつもりではなく、たたけばたたくほどバネのように跳ね上がることを信じての愛の鞭! ということなのでご了承いただきたいです。悪意はありませんので(
    わたしの配点は

    ☆☆☆:迷わず土下座
    ☆☆:すごい
    ☆:問題点アリ

    となっております。チャットでの発表は参加出来るか分かりませんが、楽しみにしております。


      [No.1238] うみゅ〜。(もうちょっと) 投稿者:サトチ   《URL》   投稿日:2011/05/27(Fri) 21:46:50     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    早めに取り掛かっててよかった;; 35なんてなかなか終わんないっすよ;;
    とりあえず講評一通りつけて推敲中。タテタ氏には及ばないけど、ワタシにしちゃ9000文字は書いた方かも。
    配点&個数はおおむね・・・

    ☆☆☆ お見事!&コレ好き 7
    ☆☆ 合格点 18
    ☆ がんばりましょうorごめんなさい 10

    おそくなっても明日宵の口までには投票しますよ〜。>鳩さん
    チャットで発表、前回大変楽しかったので、今回も楽しみにしてます〜。


      [No.1237] Re: まさかこう来るとは……! 投稿者:でりでり   投稿日:2011/05/27(Fri) 19:38:09     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    最初はボツにしようとしたのですが、どうしてもネタがなかったので勢いで書いたらこうなりましたw
    無駄のない無駄、最後の最後で全てを潰す、わたしなりの挑戦でした。
    コメントありがとうございます!


      [No.1236] まさかこう来るとは……! 投稿者:サトチ   《URL》   投稿日:2011/05/27(Fri) 18:34:57     21clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ゲームのノベライズか、まっ正面からチャレンジしてなかなかいい感じ作品だなー……
    っと思ったら、最後の2行でひっくり返りそうになったがな!!!(@@;)
    もっとこの作品はクリックされるべき!


      [No.1235] うむ。(ロスタイム一週間) 投稿者:渡邉健太   《URL》   投稿日:2011/05/27(Fri) 00:25:46     73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >No.017さん

    いまから10作品……。
    まあ、ロスタイムが自分の時計だから、気楽にやればいいと思う。

    企画者は、企画という閉じた世界では神だから(笑)。

    またチャットで発表はやるのかな。
    日曜日は遅くなるかと思うけど、やってたら顔出します。

    ぜんぜんリハーサルできてないけど、雨のおかげでスタジオから割引きメール来た。
    久しぶりにギター弾いてくるぜー。(←本番前日)


      [No.1234] お疲れさまですー 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/05/26(Thu) 22:57:07     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ケンタさん、お疲れ様ですー。

    結構書いたなーと思って、未講評の作品の残り数えてみたら
    まだ10作品あって軽く絶望してます017です。
    35作品は伊達じゃなかった。

    これは何かの修行か、トレーニングなのか。
    文章を書く練習にはなってると思うので、自分の身となり肉となると信じたいところ(笑)。
    感想書く能力はトレーニングによって身につくというのが持論です。
    イラコン時代から感想つけていましたから、今があると(勝手に)思っています。

    作品によって相当、文字数等にバラつきがありますがそれは許してください。
    あと完成されてる作品はツッコミどころが少ないわけで、文字多ければいいってわけでもないのです。
    個人的に語ってしまったのもありますが(笑)。

    審査員の皆様、未投票の皆様もがんばってー


      [No.1233] うむ。(投票したよ。) 投稿者:渡邉健太   《URL》   投稿日:2011/05/26(Thu) 22:38:33     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    疲れた−。
    各作品への講評と総評、全部で一万九千字余りになったよ。

    ポケストに参加した執筆者諸氏は、三十五もの作品に目を通して、
    二作品分の講評を書いた審査員のみなさんに感謝せないかんよ。

    他の人の作品を読んで、講評を読んで、よく勉強せないかんよ。
    本当に小説が好きで上手くなりたいんならね。


      [No.1232] 一ミリ下さい(続) 投稿者:エイティ   投稿日:2011/05/25(Wed) 23:25:34     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    「ねえ」
    「何だよ」

     不意にラキは呟く。

    「あたしは心が広いから言っとくわ」
    「?」

     短い首を傾げるランに一旦立ち止まり、ラキは小さく吐き捨てた。

    「アンタはヨルと違って大して頭良くも強くもカッコ良くもないし、ダサくてバカでチビで弱っちい、もう直しようの無い拍子が何拍子も揃った三枚目なんだから、今更そんなこと気にする必要も無いでしょ」

     ラキの発射する言葉のとげキャノンが、ランの胸に容赦なく突き刺さる。ランはショックのあまり、真っ白な灰になっていた。

    「ラキ、それは流石に言いすぎだと」
    「それにね」

     ラキは不意に言葉を切る。

    「あのガキンチョがそんなこと気にする人間なら、アンタはそもそも飼われないんじゃないの」

     白一色だったランに、薄紫の体色が戻って来た。全く気付く様子も無くラキは続ける。

    「まあ?あたしはアンタの何処がいいのかなんてさっぱり分かんないけど?」

     不貞腐れ面のブラッキーが、振り返る。

    「……憐れみで一ミリ分位は願っといてあげるわ」

     それ以上はラキの舌が回らなかった。ラキは硬い腕の中に、がっちりホールドされていたからだ。

    「お前やっぱいい奴だあいでっ!」

     頬摺りをかますランに、ラキは全力で毛を逆立たせ噛み付いた。

    「触んないでよ気持ち悪い!あたしはアンタをけなしてんの!バカにしてんのよ!」
    「それでもいいいいい」
    「良くない!」

     黙ってさえいれば、ラキは可愛らしいブラッキーである。だがそれも危うくなってきた気がしてならない。気付いていないだろうが、ランに噛み付く時、鼻筋には皺が寄り、歯茎は剥き出しになりラキは修羅の如く凄惨な覇気を発しているのだ。その時の彼女は、ブラッキーというよりかは、裏切った仲間を処刑するヘルガーの親分と言った方が正しい表情をしていた。

    「ほら、せめてその辺にしてください。レディはそんな顔するものではないですよ」

     見かねたヨルはラキの首筋を摘み、ランからそっと引き離す。石のように硬い筈のランの皮膚に無数の歯形を残し、ラキは鼻息荒く着地した。ラキの歯形は、『かみつく』が『かみくだく』になる日が来るのではないか、そう思わせてしまう程の噛みっぷりを示している。

    「ったく、すぐ調子に乗るんだから」
    「乗ってねえよ」
    「乗ってる」
    「乗ってないって!」
    「ほら、二人共行きますよ。トオルが呼んでますから」

     歯形だらけのランとラキ、二匹をヨルがやんわり急かした。言い合いも喧嘩も日常茶飯事だ、何だかんだで収まるだろう。
     三匹が家に入ったその後で、流れ星が夜空を滑った。






    ―――――――

    初めまして、エイティと申します。パソコン環境が用意出来ないので携帯から失礼させて頂きます。

    ストーリーズ発足時から皆様の小説を楽しく読ませて頂いておりまして、一度でいいからと思い現実逃避の意味も込め投稿させて頂きました。拙宅の短文を投稿用に再編集したものです。一部設定等を変更し、至らぬ箇所も多々見受けられるとは思いますが、愛だけは込めさせて頂きました。


    登場キャラクター解説

    ラン……ニドキング♂。ニックネームはニドランから。

    ヨル……ヨノワール♂。

    ラキ……ブラッキー♀。好きなのに可愛くできなくてごめんなさい。

    トオル……ラン達のトレーナー。ポケモンスナップに同姓同名の人がいるのを書き上げてから知りましたが、関係はございません。すみません。

    なお、ポケモン達のニックネームはゲット時の種族名から取っています。ラン以外は紆余曲折ありトオルが引き取るという形で手持ちに入りましたが、此処では短編という形式上割愛させて頂きます。申し訳ございません。

    最後になりますが、これだけ叫ばせて下さい。

    私は、ニドキングが、大好きです。

    貴重な場を頂き、ありがとうございました。

    【何してもいいのよ】


    (追記)
    タイトル修正がうまく反映されないかもしれません、すみません;


      [No.1231] 一ミリ下さい 投稿者:エイティ   投稿日:2011/05/25(Wed) 23:24:10     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    『さあ、新チャンピオン就任の後は皆さんお待ちかね、新旧チャンピオンによる、デモンストレーションバトルです!』

     夜空に咲く炎の花、観客に埋め尽くされたスタジアム。ひでり並みのスポットライトで照らされるのは、中央にモンスターボールのマークが大きく描かれた、シンプルで広大なバトルフィールド。長方形のフィールドの両端に一人ずつ人影が現れると、数百匹のマルマインが一斉にだいばくはつしたかのような歓声が上がる。
     数年に一度あるか無いかのチャンピオン交代に伴うバトル。ポケモントレーナーの頂点、二人のチャンピオンとそのポケモンが技巧を凝らしあい、互いに全力でぶつかる対決は、見る者の心を揺さぶらぬ筈は無い。――例えそれが過去のもので、画面越しに見るビデオであっても。だが、今回の観客は違ったようだ。

    「なあ、他のビデオねえの?」

     木の温もり溢れるログハウスのリビングで、一人の少年がバトルビデオを見ていた。テーブルに数冊のノートを広げた少年の傍らには、一匹のニドキング。

    「ラン、眠かったら先に寝てていいよ」
    「お前が寝るまで寝ない」

     ランと呼ばれたニドキングは、如何にも怪獣を主張するような牙の生え揃った大口を開け、欠伸を一つ。
     ニドランの名残を残した大きな耳、薄紫色の皮膚に逞しく太い手足。手の先には鋭い爪が三本ずつ生え、長い尾は先に行くにつれ細くなっている。背丈は発育不良気味な少年と対して変わらない、図鑑に載る平均身長ギリギリだ。
     時計の針が両方真上を向き、ランは顎をテーブルに乗せる。かれこれ二時間に渡り延々と同じバトルビデオを再生され続け、眠気と傾いてきた機嫌でランの声は何処かぼんやり間延びしていた。

    「うー……トオル、明日にしねえ?」
    「ごめんね。このビデオ明日返さなきゃいけないし、もうちょっとだから」

     少年、トオルはノートから目を離さず言い、バトルビデオを一時停止しテーブルに置いてあった分厚いポケモン図鑑の冊子を広げる。ポケモン図鑑といえば電子辞書サイズの端末が想像されることが多いが、一般的なのはこの紙の図鑑である。端末であるポケモン図鑑を手に出来るのは、ポケモン研究者に才能を見出だされデータ収集を依頼された、ごく一部のトレーナーだけなのだ。
     バトルビデオと図鑑を交互に眺め、トオルは手元のノートにペンを走らせる。
     ランはトオルに気付かれないよう、細く息を吐き出した。大きな耳が気持ち萎れ、尾はゆっくり揺れる。トオルは勤勉であるのはいいのだが、集中し過ぎて時の経過を忘れてしまうのが玉に傷だ。いつも彼に就寝を促すのは彼の両親の役目であるが、生憎、トオルの両親は出張で家を空けている。つまり今日この家にいるのは、トオルの他はランを含めたトオルの手持ち三匹だけ。そろそろ就寝したいが、熱心なトオルを見ていると邪魔をする気が引けるのだ。
     他の手持ちであるブラッキーのラキはラン達から少し離れたリビングの床に寝そべっており、ヨノワールのヨルは彼女にブラシをかけていた。口には出さないものの、ラン同様、トオルが作業を終えるまで今日は付き合うつもりらしい。
     こういう時、言葉が通じないというのは不便なものだとランは思う。
     人間は、ポケモンの言葉を理解出来ない。鳴き声や唸りにしか聞こえないのだ。ポケモンは人間の言葉を理解出来るし、ポケモン同士会話が出来る。一部の力量が高いエスパーやゴーストタイプのポケモンは、テレパシーで人間と意志疎通が可能らしいが、ここにはその存在は無い。だが、生活を共にするうちに何となくではあるが、トレーナーは自分のポケモンが何をいいたいのか、表情や仕草でうっすら分かるようになるものだ。
     夜の帳が降りた町は静かだ。バトルビデオが一時停止されている現在、部屋には時計の秒針が進む音と子気味良いブラシの音、そしてトオルの捲る本とペンの音。そろそろランも眠気に負けそうになってきた時、空を見上げていたラキが呟いた。

    「あ、流れ星」
    「え?どこ?」

     耳を跳ね上げたランはガラスの引き戸に駆け寄り、夜空を見上げる。ランはラキのルビーにも似た紅い視線の先を辿るが、天駆ける星は見あたらない。
     黄色の輪模様に黒く艶やかな毛並み、ラグビーボール状の耳と尾をしたラキは、イーブイ進化系に共通した愛らしい外見に似合わぬ冷めた目と口調で床に伏せる。

    「もう行っちゃったわよ」
    「そんなあ」

     眠気を吹き飛ばしたランは、引き戸の鍵を開け外に出た。多くの技を使いこなす種族柄か、ニドキングであるランは爪が三本であるにも関わらず、手先が非常に器用だ。
     ひやりとした夜気がリビングに流れ込み、身震いしたラキが立ち上がる。

    「やめなさいよ、寒いじゃない」
    「一回来たんだろ?もう一回位来るって」
    「何よその根拠の無い自信」

     何だかんだでもう一度流れ星を見たいのか、ラキも伸びをしてランの後に続く。ブラシを腹の割れ目に放り込んだヨルが、壁をすり抜けた後、開け放された引き戸をゆっくり閉めた。

    「うおおお……」

     三匹は夜空を見上げ、感嘆の声を上げる。
     濃紺のヴェールが空を覆い、砕いたダイヤモンドと真珠をばらまいたかのように瞬く、一面の星。ぽっかり浮かぶ金色の満月は明るい。
     此処はズイタウン。テンガン山の東側に位置する、自然と小さな牧場の町だ。人工の明かりの少ない地理と、シンオウ地方の凛と澄んだ空気がよりこの空を引き立てている。

    「これは……凄いですね」

     ヨルが呟いた。月光を浴び、体の各所にある輪模様が淡く発光し始めるラキと同じく、ヨルも頭部と両腕、腹部の顔に似た模様が明滅する。楕円形の弾力ある巨体に丸太のように太い両手、頭頂部にアンテナのある灰色の顔面には横にスリットが走り、朱い一つ目が闇夜に浮かぶ人魂の如く浮かぶヨルは、おどろおどろしいヨノワールでありながら物腰も雰囲気も穏やかだ。
     ヨルの隣でランは拳を撃ち合わせ、期待の眼差しで夜空を見上げる。

    「よし来い!いつでも来やがれ流れ星!」
    「りゅうせいぐんでも当たればいいのに」
    「来い!来い来い来い来い来い!」
    「アンタ聞いてんの?」

     ランは引っ掛かる筈のラキの言葉も聞かない。苦虫を噛み潰したように顔をしかめ、ラキは暫し間を開けた後に口を開いた。

    「……ねえ」
    「ん?」
    「もし、もしよ。これはあくまでも仮定の話だからね」

     絵に描いた餅、とらぬジグザグマの皮算用を強調してから、ラキはランを見やる。口は相変わらずへの字だ。

    「流れ星がもう一回来たら、アンタは何お願いするの?」

     自分の願いは教えたくないが、他のポケモンの願いは気になるものである。ついでに言えば、先程からランは星を妙に真剣に見上げていた。

    「ヒミツだ、ヒミツ」
    「教えなさいよ」
    「教えたらヒミツじゃないだろ」

     隠せば隠す程、興味はそそられる。周りをグルグル回るラキから、ランはひたすら目を反らす。

    「そういえば……」

     いたちごっこを続ける二匹を見たヨルは、明後日の方向を向き、人間で言えば顎に位置するであろう部位をさすりながらどことなく呟く。

    「流れ星が通った後、お願いを叫ぶとそれが叶」
    「図鑑サイズになりたああああああいッッ!」
    「スケールちっさ!」
    「ちょっとラン!」

     ラキが思わず叫び、ヨルが灰色の大きな手で慌てて二匹の口を塞ぐ。辺りを見回し、ラン達は揃って後ろを振り返る。
     変わらずトオルはノートと格闘しているようで、三匹は内心胸を撫で下ろした。
     ヨルはそれを見計らってから手を放す。

    「今は夜中ですよ、近所迷惑になったらどうするんですか」
    「だってヨル、お前が叫べって言うから」
    「いや、まさか本当に叫ぶなんて」
    「何してんのよこのおバカ」
    「うっせえ!」

     ヨルの呆れに、ラキの容赦ない追い打ち。しかしランの願いには、独身が持つ結婚への渇望にも似た切実さがあった。危機感を一蹴されたランは、自らの種族における身長の重要性を訴える。

    「いいか、お前らは百四十センチと百三十九.八センチの差なんて分かんねえだろうけどな!他のニドキングなんか、二メートルもあるんだぞ!」

     ポケモン研究の権威・オーキド博士がかつて発表したニドキングの平均身長は百四十センチ。だが最近ニドキングは種族自体に巨大化傾向があるらしく、トレーナーが育成した個体は勿論、野生個体ですら二メートルを越える。かつてセキチクシティにあったサファリパークで飼育されていたニドキングは、最大で六メートル近くあったという記録すら残っていた。
     それに対して、ランの身長は図鑑平均ギリギリの百三十九.八センチ、子供のトレーナーサイズである。ランは相当に小柄なのだ。

    「俺だってなあ、毎朝モーモーミルク一瓶飲んでんだぞ!」

     そして、本人(?)の努力にも関わらず、その二ミリは一向に埋まる気配が無い。

    「見てろよお前ら!」

     ランは拳を握り締め、高らかに宣言しようとする。

    「お前らは俺のことチビチビ言うけど、いつか俺はコガネのラジオ搭位でかくなってだなあ……」
    「いいんですか?そんな巨大化して」
    「何が」

     腕を組んだヨルが、ランに水を注す。スリット奥の朱い一つ目がランを見下ろした。

    「あなたがゴドラ対ウルガモスラとかアバゴメラみたいな大怪獣になりたいと願うのは別に止めませんが」
    「お前懐かしい映画引っ張って来るな」
    「人の話は聞きなさい」

     ヨルは元々ポケモンでも大柄な部類に入るヨノワールだ。ヨノワールという種族は壁をすり抜けることが出来、体格差が大して意味を持たない。従って、この部類の悩みを持つ者の心情が理解し難いのだ。

    「とにかくですね」

     ヨルは言葉を切った。

    「あなた、そんな大きくなったらトオルとお昼寝出来ませんよ」
    「よしやっぱ図鑑サイズだ!」

     ランの実に速い変わり身と同時に、ラキは一歩後退る。

    「昼寝って」
    「いいだろ!」
    「威張ってどうすんのよ!」

     ラキは深く嘆息した。ランは確かにニドキングだ。だが進化しても中身はニドラン並みの単純お気楽思考で、その自覚に大きく欠けていた。

    「アンタね、あのガキンチョを毒まみれにしたい訳?それとも尻尾で叩いてミンチにしたいの?」
    「そんなに寝相悪くねえよ」
    「カーペットは涎まみれですけどね」
    「…………」

     ランは閉口する。

    「……じゃあ、ブースターに寄りかかってる人間はどうなんだよ?あいつら体温九百度あるってトオルが言ってたぞ」
    「アンタね」

     ラキは言葉を濁すランを真顔で見上げた。

    「自分のビジュアル見て出直してきたら?」
    「…………」

     ラキはあっさり答え、心底つまらさそうに背を向ける。
     ランはぐうの音も出ず黙り込んだ。頭も語彙も貧相なランは、それでも何とか反論を捻り出そうとした。此処で手を出せば、敗北も同然なのである。
     ランは目の前のブラッキーの背中を睨みながら鋭い牙の揃った頑丈な顎で歯軋りし、電柱もマッチ棒のようにへし折る尾を空回りさせ、頭を抱えて考えて。

    「ヨル!何かコイツに言ってやってくれ!」

     パンクした。

    「そこまで勿体つけたら自分で反論しましょう!?」
    「俺にそんだけの頭あると思うか?」
    「失礼しました」

     ヨルとランが話す間に、ラキはリビングを振り返る。ノートを畳み、目を擦りながらテレビを消すトオルの姿が見えた。ポケモン達がリビングにいないことに気付いたトオルは、引き戸を開けラン達を呼ぶ。

    「ラン、ヨル、ラキ、お待たせ。寝よう」
    「今いくぜ、トオルー!」
    「分かりました」
    「はいはい」

     三匹は各々返事を返し、少年のいる自宅に戻る。トオルは自室に本を片付けに行った。


      [No.1230] 螺旋の時間 投稿者:早蕨   投稿日:2011/05/25(Wed) 22:38:20     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     空に浮かぶ月が、皮肉ったらしい。
     そう思ったときには、鉄柵にかける両手が疲れ始め、も一度嫌味に光る月を仰ぎ、落ちる。落ちると床が冷たい。ヒンヤリなんて、生易しくない。ぶるりと一つ体を震わせ、くるりと後ろを向く。途端に、皮肉ったらしく見えた月が恋しくなった。また天上近くにある鉄柵に飛びつこうと思って、やめる。また皮肉ったらしいと感じてしまうのは嫌だ。薄暗い檻の中。ボクのためにつけられているはずのないランプの明りだけが、ボクらの命の灯火を表しているようだ。
    「飽きないな」
     通路を一つ隔てて、反対側の檻からの声。姿形はよく見えないけど、肌色で薄っすら丸い輪と、ボクをとって食べようとするかのような、嫌に光る目だけがよく見える。
    「少し寂しくなりますが、いいもんですよ」
    「月を見るのが、そんなに楽しいか?」
    「ええ、ここにいるよりはずっと」
    「……お前らしいや」
     フン、とリングマさんは鼻で笑ってそう言うと、何もない固い床へと寝転ぶ。ここからの光景が、テレビとかいう変な機械の画面と似ているような気がした。向こうからもそう見えるのかも。そう思うと、少しだけおかしかった。
    「リングマさん。もう、寝ちゃいました?」
    「ああ、寝た寝た」
    「お話し、しませんか?」
    「もう寝たって」
     今日のリングマさんは、意地悪だ。機嫌がいいときは、昔の話とかしてくれる。ボクはそのお話が好きで、もっともっと聞きたい。聞きたいけど、リングマさんは、それを話したがらないときがあるから、代わりにボクの話をしたりもする。そういうときは決まってリングマさんは、「……お前らしいや」って、台詞を残した。
    「おやすみなさい」
     無言の返答。返答と解釈するのは、ボクが勝手にそうしているだけ。リングマさんの横になった大きなシルエットが、ボクの就寝時間を告げる。ごろんと、横になる。ヒンヤリ。耳の中で、そう聞こえた気がした。

      朝。目が覚める。四角く、けど柵の形がくっきりした朝日が差し込む。ボクは、常に柵の外を見ているかのように、顔に柵の影を被るように寝ていた。皮肉ったらしいお月様、さようなら。太陽さん、いらっしゃい。ん、おはようございますかな、いや、おかえりなさい、か。むくりと起き上がり、目を擦る。リングマさんと草原を走るのは、気持ちよかった。あの人は草原を知らなくて、ボクだけが、知っていた。教えてあげられることが一杯で、なんだか凄く、楽しかった。軽くノスタルジー。そう思って、気付く。ああ、あれは夢だ。やけに鮮明に覚えていた夢が、夢であることをボクに理解させようとしている。意地悪だ。夢までも、ボクに意地悪をする。
    「ふぁあ」
     と、一つ欠伸をして、見上げる。柵の外は、太陽の光で溢れていた。差し込む太陽に向かって口を開ければ、味がする気がした。
    「何してるんだ? マグマラシ」
     後ろから声が聞こえて、口を開けたまま、ふり向く。
    「はいようのひはりを、はへへふんへふ」
    「太陽の光を食ってるのか」
     すごっ。理解されちゃった。つまらなそうに口を閉じるボクを見て、くだんないなあとでも言うように、リングマさんは「くあっ」と欠伸をした。
    「何でわかるんですか?」
    「お前の言いそうなことを推測しただけだよ」
    「へえ、そりゃ凄いや」
     ボクよりもずっと長く生き、ポケモンとしても進化して、凄く立派に見えるリングマさん。そんなリングマさんでも、ボクと同じように檻の中で住んでいる。ボクもあと一回の進化を残しているけれど、進化したところでリングマさんに追いつけるなんて思わない。
    この檻に連れられて早二週間。ボクがかろうじてこの場所でやっていけるのは、いやいやながらもボクに付き合ってくれる、リングマさんのおかげだ。
    「それより、少しは気合をいれてやれよ。お前、ここを出る前に死んじまうぞ」
    「ここ、出られるんですか?」
    「出た奴を、見たことあるだけだ」
    「へえ」
     言って、カツカツカツと、聞き覚えのある音がする。その音はゆっくりと近づき、やがてボク達を隔てる通路で止まる。ボクらのお話しの内容は、この人には理解出来ない。だからなのかなんなのか、いつもいつも空気を読まないでこの人はやってくる。またか、と嘆息する暇もなく、やせ細った意地悪そうな顔した男は言う。
    「さあ、スポーツの時間だ」


      ◆   ◆


      スポーツの時間。皮肉ったらしい月よりも、恨めしい太陽よりも、ずっとずっと嫌な時間。スポーツの時間。わけもわからずここに連れられてそう告げられたときは、食べ物かと思った。食べ物だったら良かったのだけど、それは、検討違い。スポーツの時間がボクに課したのは、目の前に立つ相手を倒すという事だけだった。
    「さ、いい勝負をして盛り上げてこい。お前に賭けているやつもいるんだからな」
     まるで大きな鳥かごのような、鉄柵の闘技場に、ヒョロヒョロの男はボクを押し込む。周りでは、大きな歓声が上がっていた。ボクに野次を飛ばす声や、応援する声。いろんな色の声がボクと、目の前に立つポケモン――二足歩行で、筋肉質。年中闘うことしか考えていなさそうなゴーリキー――に降り注ぐ。「いけー!」「殺せー!」
    「ぶっ殺せー!」そんな言葉が、ひたすらにボクの耳をつんざいた。ゴーリキーは、やる気まんまんにこちらを見ている。彼は、勝敗だけで全てを決めて、お金のために殴り合って、少しも気分がよくならないこんなことが、このスポーツという時間が好きなのだろうか。もしそうだとしたら、ボクにはその気持ちが少しも理解出来ない。
    それでも、一応はやるしかない。やらないと、後でひどい目に合う。
    「ファイト!」
     大きな合図が、ひしめく声達の中を突き抜けるのと同時に、さらに周りの歓声が上がる。
     スポーツの時間。ボクの、一番嫌な時間が始まった。
     あんなの、勝てる気がしないよ。


     ◆     ◆


    「いてて……」
     自分の檻に放りこまれたのは、すっかり日が落ちて、あの月ももうボクの檻からは見えないくらい登っていたころだった。気味の悪い灯りだけが檻の中を照らして、ボクの痛みはさらに気味悪く増す。四本の足で歩くのが辛く、口の中から血の味がする。ボクはそれを忘れたくて、すぐに床にゴロンと寝転んだ。
    「大丈夫か?」
     その言葉に、眠るというより半ば失いかけていたボクの意識、引きずり上げられる。
    「大丈夫じゃないですよ」
     ゴーリキーにボロ雑巾にされた後の、負けた罰、本気でやらない罰としてヒョロヒョロの男にむちでうたれた時の痛みを感じながら、寝転んだままリングマさんの方へ首を横に向ける。
    「お前、また本気でやらなかったんだろ」
    「だって、ボクあれ嫌いなんですよ」
     はあ、っと、リングマさんは大きい溜息をつく。
    「やらなきゃ痛いし、辛い目に合うってわかってんのに、どうして本気でやらないんだ? いい加減にしないと、死ぬぞ」
    「やりたくないんです」
    「辛い目に合うのにか?」
    「嫌なものは、嫌なんです。やりたくないものは、やりたくないんです。それじゃあ、駄目なんですか?」
    「しょうがないだろ」
     ……しょうがないって、なんだ。生きるためにはやらなくちゃ、ということか。やりたくないことをひたすらやらされ続けるだけで、それでも生きるってなんだ。
    「しょうがないって……なんですか」
    「綺麗ごとばかり言って格好つけるんだったら、持てる力で相手を倒して、俺は生き延びる。ここは他人のことなんか考えている余裕はない。そういうところだ」
     ボクよりもずっと長く生きて、大きくて強くて、なんでも知っているくせに、出せる答えがそれだけか。しょうがないって、なんなんだよ。それだったら、なんでもしょうがないだけで済んじゃうよ。悲しいことがある、しょうがない。辛いことがある、しょうがない。嬉しいことがあった、しょうがない。
     むかつくなあ、しょうがないって。
    「失望しましたよ、リングマさん」
    「したきゃ勝手にしてろ。ここから出るためには、闘技場で死ぬわけにはいかないんだ」
    「リングマさんは、あのスポーツの時間が好きなのですか?」
    「嫌いだね。あんなの、スポーツとは呼ばない」
    「じゃあ、スポーツって、一体何なのですか?」
    「俺達がやっていることを全部ひっくり返せば、スポーツだ」
    「難しいことを、言うんですね」
    「難しい考えた方をする奴に、言われたかないわ」
     リングマさんの考えていることに方が、よっぽど難しいよ。
     ボクはそう言いかけて、やめた。リングマさんとこれ以上言い合うのは、嫌だった。
    「何にしろ、死にたくなかったら潰せ。目の前に立った相手は、片っ端から潰すんだ」
    「そんなの、嫌です」
    「それじゃあお前、もたないぞ」
    「いいですよ、別に。リングマさんみたいに闘ってたって、出られることなどほとんどないのでしょう? だったら、ボクは闘わないで死にます。ボクは、それを貫く」
     リングマさんと喧嘩するのは、嫌だった。リングマさんの言う通り、きっとそれは見解の相違なだけであって、リングマさんは悪い人じゃない。むしろ、ボクにとったら感謝するべき人なんだ。
    「勝手にしろ」
     言って、リングマさんはボクからそっぽを向いてしまう。それを見て、半ば意地になってしまっていた自分に気付く。
     ごめんなさい、言い過ぎました。
     そう言いたかったけど、きまりが悪くて、言えなかった。口の中の血の味が、妙に濃く感じられた。


     ◆    ◆


      それから数日後。リングマさんの言っていた通り、一匹のポケモンが頭がオレンジ色の軍人さんのような格好の人とこの檻から出て行った。ライチュウ、という黄色の電気鼠ポケモンだ。ここの出方、リングマさんは知っていると言っていたが、そういえば聞いていなかった。いや、聞かなくてもわかる。ボク達が人の視線を浴びる場所など、あそこしかない。もしかしたら強いポケモンほど、あの場所でたくさん勝てば勝つほど出やすいのかも。だとすると、リングマさんはもう出ても良さそう。出れないということは、強いというだけが出れる条件ではない、のかな? 闘技場を見に来る人って皆恐そうな人たちばかりで強いポケモンを欲しがりそうだけど、そうでないとすれば、あとはかわいいポケモンか。ボクって、強くもないし、あまりかわいいわけでもないし、一番出にくいのかも。そう考えると、少し落ち込む。というか、そもそもこの闘技場はなんのためにあるんだろ。ボク達の試合にお金を賭けるという話は聞いた。だけど、こうやってたまに誰かが出れるということは、違うこともしているに違いない。
    「そろそろ入れ替えの時期だなあ。いらねえのはさっさと捨てねえと」
     ふと、そんな声が聞こえる。いつもボク達のところに来る、のっぽの男の声だ。今日も覚悟を決めないと、と一つ深呼吸して待ち構える。
    「さ、スポーツの時間だ」
     いつも通り。だけど、向けられる方向が違った。スポーツの時間は、リングマさん。抵抗が無駄だということをわかっているようで、素直に男のモンスターボールの中へと入り、闘技場へと向かっていく。ボクは、ボク自身が闘っているときしか知らないけれど、あんなに大きいリングマさんは、きっと凄く強いのだろう。
     あれから、ボクはリングマさんとは喋れてないし、謝れてもいない。何度も機会はあった、というよりこうやってずっと向かい側にいるのだから、機会なんていつでもあったけれど、気恥ずかしくて言えていない。闘わないことを貫くってそういう意味じゃないのに、自分が情けないばかりに自分で言った言葉の意味が、捻じ曲がってしまいそうだ。
    「帰ってきたら、言おう」
     うん、と自分に自分で頷いて、ボクは眠ることにした。

      ◆   ◆

      
      頭の中、ごめんなさいごめんなさいって謝る僕の姿。変わって、言い過ぎました、ってふ再び頭を下げる僕。続いてパっと暗転。目が覚める。目を明けていたほうが暗いって、なんだか常に眠っているような感覚に陥る。ぼうっと頭をからにしていると、カツカツカツ、って靴の音。あの男だと思ってのそりと動いて鉄柵から覗くと、やっぱりそうだった。僕、やっと帰ってきた、と少し緊張。男が鉄柵を開け、モンスターボールからリングマさんを出すのを待った。放り投げられたボールから光とともに、リングマさんのシルエットが浮かびあがる。
     ドサッ、という重苦しい音とともに、リングマさんは横たわった。
    「え? ちょ、どうしたんですか?」
     男はボクの鳴き声など気にもせず、いつものようにすぐにその場から立ち去る。
    「あの、リングマさん、どうしたんですか?」
     ボクの呼びかけに、リングマさんは無言の背中を見せる。薄暗くて、よく見えない。よっぽど大きな怪我をしているのか、ボクのことを嫌いになったのかわからないけれど、返答くらいして欲しい。
    「リングマさん!」
     呼びかけ空しく、ボクの声は霞んで消えた。
     何も返事がないと、余計に心配になる。うっすら見えるシルエットが、ボクの余計な心配が、負の権化としてリングマさんをボクに見せた。
    「どうしたんだよ……」
     ボクのことを無視しているとばかりに、その日は結局、返事がなかった。


      ◆   ◆


      翌日の昼間。やっとリングマさんは目を覚ました。
    「大丈夫ですか?」
     重そうに体を起こすと、体を引きずって壁によりかかり、「よお」と一声上げてこちらを向いた。
    「俺、どんくらい寝てた?」
    「……ご飯二回分くらいです」
     そうか、と言い、リングマさんは黙ってしまう。
     機嫌が悪いというわけでは、なさそう。声には、いつもの力強さや覇気がなかった。ボクの方を向いて喋ることはなく、ボウっと前を向いている姿、なんだかいつもより小さい。ときおり何かを呟いているが、ボクにはそれが何か聞こえなかった。
    「あの……リングマさん」
    「んー」
     やっと返事をしてくれた、と半ば緊張。さあ言おう、としたところで、ボクは一瞬言葉に詰まってしまう。
    「お前が言っていることだって、間違ってるわけじゃないんだよな」
    「え?」
     その一瞬の詰まりの隙を突くように、リングマさんは喋る。
    「俺、自分より一回りも二回りも小さい奴に、のされちまったよ。ガバイトっていうポケモンでな、ここいらでは珍しいんだけど、そいつがやけに強くてよお」
     ガバイト。ボクはそのポケモンがどんなポケモンか知らないが、リングマさんがこんなに言うほどだから、きっと途方もなく強いんだ。
    「何の迷いもなく殴りかかった俺を、嫌な目で見てたよ。俺と闘うのが、嫌だったらしい。あんなに嫌そうにしてたのにあれだけ強いんだから、多分お前の言うことは間違ってない」
     ボクではない誰かと、喋っているみたいだった。その言葉は、ボクに向けられていなかった。相槌を打っても、リングマさんはただひたすらにボソボソと、何も空間にリングマさんは喋り続ける。何かを思いつめるように、何かを考えるように。
    「いや、合ってるとか間違ってるとか、そういうことじゃないんだろうな。そんなの、全然関係なくて、俺だって間違っているわけじゃないんだろうし」
    「あ、あの、リングマさん?」
    「マグマラシ。俺ってこんなんだけど、意外と考えてるんだからな。安心しろよ」
     一方的にそう言って、リングマさんは呟くのをやめた。「どうしました?」って呼びかけても、リングマさんは答えてはくれない。無視しているのか、はたまたまた眠ってしまったのか。ボクにはわからない。リングマさんが何を言いたかったのかもわからない。ボクには、わからない。わからないわからないわからない。何もわかることなく、ボクのその一日は、終わってしまった。


       ◆  ◆


      闘技場って、闘わせるポケモンのレベルを考えていない。リングマさんが実力差のある奴と闘ったらしいから、多分そう。こうなると、リングマさんが言っていた通り、嫌でも闘わないと死んでしまうかも。抵抗したって勝てる気はしないけど、無防備で突っ立ってると死にかねない。
    「それでも、あんなところで闘うのは嫌だ」
     ボクは、呟く。あんな人達の言いなりになってひたすら闘うだけなんて、ボクは御免だ。闘って勝てれば確かに楽かもしれないけれど、それはどうしても嫌だった。綺麗事だけれど、それのどこがいけないんだ。ボクがボク自身の綺麗事を貫くことで、誰もこまったりしない。ボクは、自由だ。独りなんだ。
     もう何十回も痛めつけられて、今にも死んでしまいそうな体の悲鳴を無視して、ボクはそう思った。


      ◆   ◆


     それからしばらくの間、リングマさんは何度も闘技場へ連れていかれ、ボクも頻繁に連れていかれるようになった。今までは一日一回や二日に一度程度だったのが、一日に二度も三度も連れていかれるようになった。ボクもリングマさんも、断ることは出来ない。拒否したら最後、スクラップになっておしまいだ。そんなひどい状況の中、ボクがリングマさんに謝る暇や体力などなく、それにボクのちっぽけな度胸がリングマさんに謝りの一言を言わせてくれない。
    そんな風に過ごして、皮肉ったらしい月を何回か眺め、恨めしい太陽を数回拝んだ日の夜。こっぴどく痛めつけられ鉛のように重い体を檻の中へ放り込まれる。口の中で、血の味がする。その味が薄れ掛けていたボクの意識を呼び覚まし、首を横へ向かせる。リングマさんは、壁によりかかりながら前を向いているだけ。はっきりと見えるわけではないけれど、ただボクは、それが何も見ていないような気がした。あれ以来、リングマさんの相手はやはりレベルが高いようで、勝っても負けてもボロボロで帰ってきていた。ボクと同じように、喋る余裕もないらしい。喋りたくもない、のかもしれないけれど。
    「もう、疲れた」
     もう何度やられたかわからない。体のあちこちが軋んで、もう、限界だ。
    何も考えたくない。何もしたくない。眠りたい。もう、痛いのは嫌だ。助けて、誰か、助けて。ボクの綺麗事は、あっけなく崩れ去った。

      月も太陽も見る余裕なし。ふと目を覚ましたときには、もう見ていた夢を忘れてしまっていた。夢を見たような気がするだけで、見ていないのかもしれないけれど。
    「う……いたっ」
     まだ昨日の傷が痛い。今日もまた、闘技場へ連れていかれる。また、やられる。ボクは、闘わなくてはいけないのか。闘うことが、自分を守ることになるのか。もし、リングマさんの言う通りそういうことだったら、ボクはもう闘う。痛いのは、嫌だから。
    「さあ、スポーツの時間だ」
     いつの間にかボクの檻の前に立っていたヒョロヒョロの男が、そう告げる。もはや反応する気もおきなくて、ボクは、それを無視した。
    モンスターボールの中が、一番心地よかった。何と表現すればいいのかはわからないけれど、とにかく、今のボクはこの中が一番心地よい。そう思ったのもつかの間、ボクはその空間から出され、地獄へと降り立つ。いつも通りギャーギャーと騒ぐ観客の声が、ボクを苛立たせる。下品な顔で下品な声を出すのをやめろ。そう言いたいけど、伝わらない。まだ後ろ足は少し痛かったけれど、闘えないほどではない。やれる。今日相手を倒せれば、ボクは少しだけ楽になれる。いつもより痛い思いをしないで住む。座ったまま、ぼうっと対戦相手を待つ。いつもの通りなら、ボクと同じくらいか少し実力が上くらいの奴が現れる。前をだけを見据える。モンスターボールが投げられるのを見て、ゆっくりと立ち上がると、ボクは、腰を抜かした。
    「リ……リングマさん」
     今日のスポーツの相手は、リングマさんだった。


      ◆      ◆


      リングマさんの姿、こういう風にしっかりと見るのは初めて。大きくて、強そう。リングマさん、ボクの姿を凝視。ボクは、口をパクパクさせてその視線の海に溺れる。そうだ。今まで、考えたこともなかった。どうして考えなかったんだ。ボクとリングマさんが闘うことだって、あるかもしれないのに。
    「あ、あの、リングマさん」
     ボクの言葉に、答えはなかった。リングマさんは、鋭い視線でボクを睨みつける。闘わなきゃいけない。そんな気がした。やらなきゃやられる。この人に殴られたら、死ぬかもしれない。うん。そんな気がする。でも、やっぱりボクは気が進まなくて、リングマさんの視線の中で溺れ続ける。
     ファイト! って、合図の声。リングマさんは、動かない。こちらをただただ睨みつけて、恐い顔をしている。ボク、それを見て突っ込む勇気が尻すぼみになっていくのを感じる。でも、視線だけは逸らさない。突然唸って、リングマさんは、ボクに向かって大きく手を振り上げる。ただの引掻く。でも、ボクにとってそれは死ぬか死なないかの威力を持つかもしれない技。ギリギリのところで後ろに飛びのいて、かわす。空振りしたリングマさん、そのまま右腕を前に出す形となりながら、前につんのめる。それを見て、ボク、すかさず体当たり。体が一回りも二回りも小さいから、そのわき腹へと突っ込む。当たる! って思ったら、すでにリングマさんは前にいなくて、気付いたら、ボクの上空を飛んでた。あんな大きな体で、そういう動きが出来るなんてずるい。ボクは、地面につくとすかさずふり向く。リングマさん、口から何やら丸い球体を出していた。
    「そ、そんなのずるい」
     言っても、止まらない。リングマさん、輝く球体を光線にしてボクに発射。破壊光線。大層な技名なだけあって、多分食らったら死ぬ。
    「くるなー!」
     叫んで、ボクは火炎放射。破壊光線と、火炎放射。驚くことに、両者拮抗。力の限り押しているけど、リングマさんの破壊光線はビクともしない。多分、まだ余裕を持ってる。予想通り、少しずつ少しずつその威力が上がって、ボクは押される。元より威力の違う技。まともにぶつかって勝てるほうがおかしい。破壊光線は突然爆発的に威力が上がったかと思うと、一気に押され、ボクの火炎放射は消える。そのまま壁に挟まれ、破壊光線を受ける。光線が、ボクの体を潰す。鉄の檻と破壊光線に挟まれる。死にたいほど痛い。体が、はじけそう。終わると、重力に従って落下。受身もとれず、横になる。リングマさんは、ボクの方に容赦なく突っ込んでくる。最初のように、腕をふりあげながら。
    「や、やめろ。やめろよ」
     それでも止まらない。
     リングマさんは、長い爪を立てながらボクに突っ込んでくる。あの爪は、きっと痛い。ボクの体を肉から抉り取って、焼けるように痛むのだろう。
    「やめろって、言ってるだろーー!」
     人間にはわからない声で、叫ぶ。痛いの嫌で、ボクは、リングマさんの腕が振り下ろされる直前に、そのどてっ腹に突っ込む。今度は、体に炎を纏ったまま回転して体当たりをする、火炎車。カウンターとなり、リングマさんの体が後ろへと吹っ飛ぶ。自分でも、自分ではない気がした。ただ恐くて恐くて、突っ込んだだけ。
    「っはあ。っはあ」
     我にかえって、ボク、びっくり。リングマさんは、ゆっくりとそのまま後ろへと、倒れた。大きくズシンと重苦しい、あのときとはまた違う、本当にその生き物の体重を乗せた音が響いた。ボクのたった一発の火炎車で、リングマさんを倒してしまった。
    「あ、あれ……。たお、しちゃった」
     おそるおそる、リングマさんの横へと近づく。よく見るとリングマさん、すでに体がボロボロだった。いくつもの傷が、生々しく残ってる。ボク以上に、リングマさんはボロボロだった。満身創痍のまま、ボクと闘ったんだ。
    「通りで、あの破壊光線、弱かったわけだ」
     ボクよりずっとずっと前からここで闘って、そのガタが来ているのだろう。傷だらけの体に鞭を打って闘っていたんだ。自分の限界を知りながら、それでも、いつか抜け出せると信じて、ひたすら、ひたすらに。
     それでも一つわかることがある。リングマさんがどんなにボロボロだろうと、ボクごときが勝てるわけがない。さっきの破壊光線を受けて、ボクはそれがよくわかった。
     リングマさん、ボクが横にいることに気付いて、首をわずかに向ける。
    「これで……いいんだ」
     小声でそう言うと、ニカっと笑って、目を閉じた。
     馬鹿、って言いかけて、やめる。
     リングマさんの笑う顔を、初めて見たから。


      ◆   ◆

     ボクがリングマさんを見たのは、それが最後だった。
     ごめんなさいって、言えなかった。
     リングマさんは、間接的にボクが殺してしまった。

      ◆   ◆


      空に浮かぶ月が、皮肉ったらしい。きっと、あいつはそう思ってる。
     鉄柵にかける両手が疲れたらしい。も一度嫌味に光る月を仰ぎ、落ちる。落ちると床が冷たいはず。ヒンヤリなんて、生易しくない。ぶるりと一つ体を震わせ、くるりとこちらをふり向く。途端に、皮肉ったらしく見えた月が恋しくなっているだろう。また天上近くにある鉄柵に飛びつこうとしているが、やめていた。
    「飽きないな」
     言って思い出す。それは、ボクがリングマさんに言われていたこと。
     通路を一つ隔てて、反対側には小さいながらもパワフルなポケモン。リングマさんの進化前、ヒメグマがいる。姿形はよく見えないけど、きっとそれはリングマさんによく似ていると思う。
    「少し寂しくなりますが、いいもんですよ」
    「月を見るのが、そんなに楽しいか?」
    「ええ、ここにいるよりはずっと」
    「……だろうね」
     よっぽど暇に慣れていないのか、ヒメグマは頻繁にボクに喋りかけてくる。それこそ、昔のボクにひけをとらないくらいに。
     ボクは固い床に寝転んで、会話を終わらせる。今日は、眠いんだ。
    「バクフーンさん。もう、寝ちゃいました?」
    「ああ、寝た寝た」
    「お話し、しませんか?」
    「もう寝たって」
    「バクフーンさん今日は意地悪です」
     リングマさん。昔のボクも、こんな風だったんですね。
     今ならわかります。めちゃくちゃ心配になりますよ、この向かい側の新入り。
     そいつがあんな綺麗事ばかりを言っていたら、それはいろいろ言いたくはなりますよね。
    「ねえ、バクフーンさーん。お喋りしましょうよー」
    「じゃあ、一つ質問してやる」
    「なんですかー?」
    「スポーツの時間って、好きか?」
    「だいっきらいです」
    「ボクも、だいっきらいだ」


      [了]

    【何をしてもいいのよ】


      [No.1229] お姉さまェ 投稿者:No.017   投稿日:2011/05/25(Wed) 19:32:26     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    三十キロのバーベルを投げる姉貴強すぎです。
    お姉さまコワイデス。
    いろいろ吸い取りすぎです。


      [No.1228] 全てが君の力になる 投稿者:でりでり   《URL》   投稿日:2011/05/25(Wed) 18:24:39     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「ウソつきゲーチスめ。皆をたぶらかそうと必死に弁舌を振るっておる」
     僕の隣でこのイッシュ地方の頂点に立つポケモントレーナー、チャンピオンのアデクさんはそう毒づいた。
     僕たちの目の前では下っ端を従えたゲーチスがお得意の演説を披露しているところだ。
    「そうなのです!」
     ゲーチスはわざとらしく両手を横に広げ、民衆の注目を一挙に集める。
    「我らが王、N様は、伝説のポケモンと力を合わせ! 新しい理想の国を創ろうとなさっています! これこそイッシュに伝わる英雄の建国伝説の再現!」
     強い語調でそう言い切ると、興味本意で演説を聞きに来ていた街の人たちも驚きを隠せないようで、各々思ったことを口に出している。
    「え、英雄だって?」
    「ドラゴン!? そんなことが……」
    「伝説! す、すげっー!」
     そんな反応をゲーチスは見渡すと、体を九十度捻らせて二歩進む。アスファルトに鳴り響くゲーチスの靴の音は、硬いものを打ち付けるような、やけに大きい音がする。
    「ポケモンは人間とは異なり、未知の可能性を秘めた生き物なのです」
     演説の続きが始まれば、再び辺りが静まり、ゲーチスの声が計画的に並んだビル街に響き渡る。
     ほどなくしてまたゲーチスは体を捻らせ左に四歩歩く。この響く靴の音も、きっと注目を惹かせるための演出なのだろう。
    「ポケモンは我々が学ぶべきところを数多く持つ存在なのです」
     話の抑揚、強弱に合わせ、ゲーチスが歩く靴音の強さも上下する。その様相はまるで舞台の上で行われるショーだ。
    「その素晴らしさを認め、我々の支配から解放すべき存在なのです!」
     そこまで言って、ゲーチスは奇妙かつ大きな法衣から左手を出して突き上げる。二メートル近くもあるこの大男のその挙動は、見るものをすくませる威力がある。知り得ている。何をすれば人はどういう感情を取るかを。
    「か、解放だと?」
    「ポケモンを……?」
     ポケモンたちと共に長く暮らしていたはずの大人たちが、可哀想なくらいにも動揺している。僕だって何も知らなければ彼らと同じようなことになっていたかもしれない。
    「我々プラズマ団とともに新しい国を! ポケモンも人も皆が自由になれる新しい国を創るため、皆さんポケモンを解き放ってください。というところでワタクシ、ゲーチスの話を終わらせていただきます。ご清聴感謝致します」
     続けて街の人たちの不安を煽るだけ煽ると、ゲーチスは下っ端を引き連れて街の向こうに消えていった。
     残された聴衆は皆がみな、今の演説に戸惑っている。
    「そうか、わしらは……ポケモンを苦しめていたのか……」
    「うぐぐ……。プラズマ団の言う通り、ポケモンを解き放とうか……」
    「……そんなぁ。ポケモンがいないとあたし、寂しくてダメになっちゃう!」
     悲鳴に近い声を聞くたび、胸が苦しくなる。悲しそうな顔を見るたび、心が痛くなる。
     僕がそう思うくらいなんだ。隣にいるアデクさんもきっと同じことを思っているだろう。
     あいつらの言っていることは嘘っぱちだ! そう言いたかった。ただ、僕みたいな子供がそう確証ないことを言ったところで、大人の心さえ揺るがしてしまったゲーチスの演説に勝ることなど叶わない。
     人々が悲しげに普段の営みに戻っていく中、僕はただ拳を握りしめるしかなかった。
    「なんなのよう! 今のお話おかしーじゃん!」
     聴衆が立ち去った後、聞き覚えのある幼い声が耳に入る。声の方に目をやれば、そこには白髪の老人とその隣に立つアイリスがいた。彼女はヒウンシティで幼馴染みのベルのボディーガードをやっていたんだっけ。
     僕たちに気付かない老人は、アイリスをなだめるように声をかける。
    「……このイッシュは、ポケモンと人とが力を合わせ創りあげた。ポケモンが人との関係を望まぬというのであれば、自ら我々の元から去る……。たとえモンスターボールといえど、気持ちまで縛ることなど出来ぬ」
     しんみり語る老人の言葉に耳を傾けているとふと、右肩をアデクさんに叩かれた。
    「行こうかトウヤ」
     そう言って老人とアイリスの方に歩き出すアデクさんに僕は続いた。
    「久しいな。アイリスにシャガよ」
    「あっ! アデクのおじーちゃんにあのときのおにーちゃん!」
    「……どうした。ポケモンリーグを離れ、各地をさ迷うチャンピオンが一体何の用だ?」
     厳しく言い放つシャガと呼ばれた老人に対し、アデクさんは突然、迷うことなく頭を下げた。
    「ずばり! 伝説のドラゴンポケモンのこと教えてくれい!」
     頭を下げて頼み込むアデクさんに、シャガさんはいささか虚を突かれたようだ。
    「ゼクロムのこと? それともレシラム? どーしたの? いきなり」
    「先程の演説でゲーチスなる胡散臭い男が言っていたな。Nという人物がゼクロムを復活させたと……」
     とたんにアデクさんは頭をあげ、右手の拳で左手の平をぽんと叩く。
    「おうよ! そのNというトレーナーが、ここにいるトウヤにもう一匹のドラゴンポケモンを探せ! と言ったらしいのでな」
     アデクさんがそんなことを言ったがために、シャガさんが僕の方を見る。まるで品定めをされるような視線に、たまらずたじろぎそうになった。
     一通り僕を見るとまるで興味なさげに僕から目を離し、アデクさんに向き直る。
    「……解せぬな。自分の信念のため、二匹のドラゴンポケモンをあえて戦わせるつもりか、そのNとやらは……?」
     シャガさんがその疑念を口にすると、驚いたアイリスはその場で軽くジャンプして、大きな声を出す。
    「えっー! ドラゴンポケモンたちはもう仲良しなんだよー!」
    「そうだよなアイリス。ポケモンを戦わせるのはトレーナー同士……。そしてトレーナーとポケモンが理解しあうためだよ」
     慈愛に満ちた目でアイリスを見つめたアデクさんは、そっとアイリスの頭を撫でた。その姿はまるで本当の孫と爺だ。
    「さてと……」
     アイリスの頭から手を離したアデクさんは、僕の方を向く。
    「わしはポケモンリーグに向かう! いや、この場合は戻ると言うべきかな……?」
     今までアデクさんは僕が見ていた限り、いつも子供を見守るような優しい目をしていた。だけど今の彼は違う。誇り高き戦士の目だ。覚悟を持って戦う人間の目だ。
    「もちろんNに勝つ! トレーナーとポケモンが仲良く暮らしている今の世界の素晴らしさ、きゃつに教えてやるのだ!」
     僕の両肩に、アデクさんのごつごつした両手が乗る。
    「そしてトウヤ! チャンピオンとしてお前さんを待つとしよう! だからソウリュウのジムバッジを手に入れてリーグに来い。もっとも、ソウリュウのジムリーダーは手強いぞ!」
     ニッと少年のように笑うアデクさんに、僕もつられて顔がほころぶ。
    「じゃあな、頼んだぞシャガ、アイリス!」
     最後にそう言ってアデクさんは徒歩で街の向こうへ消えて行った。
    「……あーあ、おじーちゃん行っちゃった。大丈夫かなあ? なんだか怖い顔してたけど」
    「……アイリス、心配ないよ。彼はイッシュで一番強いポケモントレーナーだからね」
     不安がるアイリスに、シャガさんが優しく語りかける。アデクさんはゼクロムを連れたNと戦う覚悟を決めた。僕も、託されたホワイトストーンからゼクロムと対となると言われているドラゴンポケモン、レシラムを蘇らせて少しでも手助けをしなくてはいけない。まずは彼らからそのヒントをもらわなければ。
    「さて、トウヤと言ったか。私の家に来なさい。アデクの言う通り、伝説のドラゴンポケモンについて教えられることをお教えしよう。アイリスや、案内してあげるんだ」
     シャガさんが僕にそう言うと、一足先にヒウンシティ程ではないがビルの並び立つ街に消えていった。僕にドラゴンポケモンについて教えてくれることから察するに、どうやら僕のことを認めてはくれたようだ。ほっと胸を撫で下ろす。
    「ゼクロムとレシラム、二匹のお話! あたしたちが教えてあげる! ソウリュウなら案内出来るし! こっちだよ!」
     ズボンの裾を小動物のようにじゃれるアイリスに引っ張られる。その勢いでポケモンセンターの側の交差点を曲がると、その突き当たりにはとりわけ周囲よりも立派な建物が聳え立っている。またもや跳ねるようにはしゃぐアイリスにその入口まで引っ張られると、ここだよ! と言って建物の中に一足先に入っていく。
     追って建物に入ると、暗めの照明が点いている室内でシャガとアイリスが待っていた。
    「……では話そう。君が持っているのはライトストーンだな。ライトストーンから目覚めるだろうレシラム、既に目覚めたゼクロムは、元々一匹のポケモンだった――」
     シャガ、アイリスの口から語られたのは、イッシュに伝わる英雄伝説だった。
     僕が幼い頃に母から聞かされたことがある話よりも、より詳しく語られた。理想と真実。レシラムとゼクロム。そしてイッシュの、成り立ち。
    「……確かにポケモンはものを言わぬ。それゆえ人がポケモンに勝手な想いを重ね、辛い思いをさせるかもしれぬ」
     シャガさんの口調は徐々に重く、深く、そして強くなっていく。
    「だがそれでもだ! 我々ポケモンと人は、お互いを信じ必要とし、これからも生きていく……」
    「そーなのッ! だから、だからねっ。ポケモンとあたしたちを別れさせようとするプラズマ団なんか絶対許さないんだからッ!」
     そうだ。僕がここ、ソウリュウに来るまで歩んだ長い道のり。その中で人とポケモンは互いに足りないところを補いあい、笑顔で暮らしていた。その素晴らしい姿勢を見て、僕はより互いの存在が不可欠なものだと改めて気付かされた。
     プラズマ団はポケモンと人とを別れさせ、ポケモンを完全な存在にすると言った。そうではない。真の完全とは、互いに互いを支えあう、共存していく世界なんだ。それをなんとしてもNに伝えなければならない。
    「……すまない。最後、話が逸れてしまったが私たちが知っていることは以上だ。残念ながら伝説のドラゴンポケモンを目覚めさせる方法は分からぬ……」
     チャンピオンのアデクさんが頼るほど、ドラゴンタイプに精通しているはずのシャガさん達が分からないのであればもう八方塞がりか……。いや、それでももしNと戦うことになっても、僕と共に旅を続けてくれたポケモンが、仲間がいる。僕たちの未来のためにも負けない。負けられない!
    「……さて、アデクとの約束だったね。君はソウリュウポケモンジムのジムバッジを手に入れねばならない。ではトウヤ、ポケモンジムにて君の挑戦を待つ!」
     そうだ。まずは目の前に立ちはだかる試練を乗り越えなくてはならない。僕の横を通り過ぎ、先にジムに向かったシャガさん。まずはこのシャガさんに僕の、僕たちの力を見せつけてやらねばならない。
     ここまで歩いてきた僕たちの絆を、力を。



     ドリュウズの渾身のシザークロスを受け、オノノクスは大きい音をたてながら前に崩れていく。
     ジムの時が止まったかのような沈黙がしばし流れた。
     シャガさんは倒れたオノノクスをモンスターボールに戻すと、称賛の拍手を送る。僕もワンテンポ遅れてバトルが終わったことに気付き、最後の一匹となっても戦い抜いたドリュウズをボールに戻す。
    「素晴らしい。君と出会い戦えたこと、感謝する」
     僕の目の前までゆっくり歩いてきたシャガさんは、これがレジェンドバッジだ。と、竜の頭を象った細長いジムバッジを手渡す。最後の、八番目のジムバッジ。これで僕のバッジケースは全て埋まった。ついでにシャガさん曰くお気に入りのドラゴンテールのワザマシンも受け取った。
     礼を言おうと手元からシャガさんに視線を戻したが、そこにはらしからぬ暗い表情があって、思わず怯んだ僕は礼を言うタイミングを失っていた。
    「……君に頼みがある。アデクを追いかけてポケモンリーグに向かってほしい」
     そう言ったシャガさんの表情は弱々しく、先ほどまでいた屈強なドラゴン使いのトレーナーは目の前からいなくなり、ただの一人の老人がそこにいた。
    「ポケモンリーグはソウリュウから繋がる10番道路の先。チャンピオンロードを越えたところにある。アデクの強さは知っているが、Nという男の強さ、底知れぬのだ」
     そうか。Nはチャンピオン、アデクさんを倒すと言った。その過程でジムリーダーのシャガさんとも既に一戦交えていたのだ。
     ――Nという男の強さ、底知れぬのだ。
     今までの旅の中、僕とNは幾度となく戦って来た。確かに彼は強敵だった。とはいえ、シャガさんにギリギリで勝てた僕なのに、そこまで言わせたNともし戦うことになっても僕は勝てるのだろうか。……いや、僕が弱気になってどうするんだ。信じなきゃ。僕のポケモンと、僕の力を。
     そう思いながらジムを出たときだった。
    「……ハーイ。シャガさんはたくましかった?」
     聞きなれた明るい声。顔を上げれば正面にはアララギ博士がいた。
    「あっ、伝説のレシラムを復活させる方法についての報告に来たんだ。ライブキャスターで伝えるのもなんだか申し訳ないしね」
     Nのゼクロムに唯一対抗出来うると言われるレシラム。その復活方法の報告……。固唾を飲めば、ごくりと喉を通る音が聞こえた。
    「で、結論をいっちゃうと……。まだ解明出来ていないの。きっとポケモンが誰かを認めたときに目覚めるのね……」
     沈黙が流れる。僕もなんだか申し訳なく、顔を伏せる博士に何を言って良いのか分からない。
     すると博士は暗い話を止めようと、すぐさま笑顔になって口を開く。
    「それよりも凄いじゃない! イッシュのジムバッジを八個揃えたんでしょ、すごくたくましくなったよね! 自分では実感ないかもしれないけど、カノコを出たときとは大違い!」
     それは決して作り笑いやただの誉め言葉じゃなく、博士は本気でそう言ってくれたということが目で分かる。嬉しかった。ここずっとプラズマ団のことで必死だったから、そう言ってくれた博士の言葉がなおのこと優しく響く。
    「では、ポケモンジム巡りを終えたポケモントレーナーが次はどこへ向かうべきか、わたしが案内するわね」
     そう言ってジムから東に進むアララギ博士の後を追えば、ソウリュウ北のゲートまで案内された。ゲートの向こうにはチャンピオンロードと呼ばれる切り立った崖が挑戦者を拒むかのように聳え立っている。
    「あのゲートをくぐり、10番道路を抜ければバッジチェックゲート。その先にあるチャンピオンロードを越えてようやくポケモンリーグよ」
     この先には全てのトレーナーの目標がある。そう考えると、自然と目が乾き拳に力が入る。
    「カラクサのポケモンセンターを案内したこと、思い出しちゃった」
     僕たちが初めて生まれ故郷のカノコから隣のカラクサに着いたとき、博士は僕たちにポケモンセンターの使い方をレクチャーしてくれた。確かに、あのときと同じだ。
    「ねえトウヤ。ポケモンと一緒に旅立ったこと、後悔している?」
     そんなことはない! 僕はポケモンと旅が出来て、辛いこともあったけども楽しいこともいっぱいあった! 他にも伝えたいことがいっぱいありすぎて、うまく舌が回らない。とにかく首を強く横に振れば、博士の歓喜の声がする。
    「ありがとッ! 最高の返事よね! わたしも君たちにポケモンをプレゼント出来てすごく嬉しかったの! だって、また人とポケモンのステキな出会いが生まれたから! トウヤ、これ。プレゼントよ」
     アララギ博士から手渡されたのは、紫に輝く究極のモンスターボール、マスターボールだ。その存在自体は聞いたことがあるが、実物を見るのはこれが初めて。
    「そのマスターボールはどんなポケモンも絶対に捕まえられる最高のボール。こんな形でしか応援出来ないけれど……」
     そこまで言って、博士は言葉を区切る。
    「トウヤはトウヤ。どんなことがあっても迷わずにポケモンと進んでね!」
     博士はこれ以上ないくらいの笑顔でそう言った。きっと、本当は復元に関してなんかではなくこれを伝えに来たかったのかもしれない。お陰で張りつめていた緊張も、表情と共に自然とほぐれた気がする。
    「じゃーねー!」
     と去っていく博士の背中を見送ってから、僕は再び手元で妖しく輝くマスターボールを見つめる。
     ……博士には悪いけど、僕はこのマスターボールは使わない。もしもレシラムと戦うことになっても絶対に使いたくないんだ。マスターボールを使うっていうことは、マスターボールという道具の性能に頼るということだ。
     それじゃあダメだ。僕とレシラムの真剣勝負に水を刺すのと同等だ。互いに全力をぶつけあうことに本当の意味があると僕は思う。
     僕はソウリュウのポケモンセンターに戻り、マスターボールをダゲキに持たせてユニオンルームに入った。
     そこには、あらかじめ連絡をしておいた僕と同年齢の女性トレーナー、トウコがいる。僕は、この親愛なる彼女にこのマスターボールを託す。博士には悪いけども、僕じゃあこのマスターボールは扱えない。身に余る贈り物だ。彼女は僕より優秀なトレーナー、彼女の方がきっと有用に使ってくれる。ポケモン交換装置にモンスタ ーボールをセットすれば、マスターボールを持ったダゲキは彼女の元に。そして彼女のズルッグが僕の元に。
     交換が終わると彼女は満面の笑みでありがとう、と僕にだけ伝わるようにひっそりと言った。そして、お疲れ様。とも。


     ゲームの電源は消された。マスターボールを手放したトウヤのソフトの記録を消して、再び新たなトウヤの冒険が始まる。
     マスターボールを集め、それをトウコに渡す作業という名の冒険が今。

     最初から はじめる

    ───
    【最初からはじめていいのよ】
    【好きにしていいのよ】

    POKENOVEL春企画投稿作品。
    これのためだけにブラックを最初からプレイしました。プレイ時間9時間、執筆時間ほぼ3〜4時間。
    やりたいことはやった。

    余談ですがトウヤよりトウコの方が鬼畜イメージがあるのでトウコがマスボを回収していることにしてます。
    また、ゲームを最初からやり直してるときにシャガと戦ったんですが、ドリュウズの地震三回で終わりました。
    気付いていると思いますがほとんどのセリフはゲームより。トウヤが喋っていないのはこだわりです。


      [No.1227] うむ。(☆採点基準) 投稿者:渡邉健太   《URL》   投稿日:2011/05/25(Wed) 05:40:25     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    眠い。

    なんだか講評がさくさく書けるので徹夜してしまったよ。
    週末に手を付けられなかったので、今夜ようやく30番まで来ました。
    月曜にはちょっと諦めかけたんだけど、ちゃんと投票できそうです(笑)。

    ☆の数をどのぐらい「甘く」付けようかと前回の総評を見直しました。
    前回は文芸誌の新人賞を意識して、こんな目安で付けました。

    ☆☆☆:最終選考対象相当
    ☆☆:入選相当
    ☆:がんばりましょう

    結果として☆☆☆が四作、☆☆が五作、☆が十三作。
    うむ、前回は本当に甘く付けてたな(笑)。

    今回は全体のクオリティが底上げされているので、少し基準をシフトします。

    ☆☆☆:入選以上相当
    ☆☆:一次審査通過相当
    ☆:がんばりましょう

    でも傑出した作品がないので、いまのところ☆☆☆の数は前回より少ないです。
    三段階は難しいなあ。
    総評でまた細かく拾うしかないかな。


      [No.1226] Re: スキンヘッドと中華鍋 投稿者:渡邉健太   《URL》   投稿日:2011/05/25(Wed) 04:35:54     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    いい感じですね。

    スキンヘッドは毎日の手入れが面倒だから、本当の面倒臭がり屋にはできない。
    彼は面倒だとは言っている割に、ガキの面倒を見られるほど繊細にできている。
    とてもバランスの取れた内容だと思います。

    なんだろう、このテンポのいい言い回し。
    新作落語みたいな感じかな。


      [No.1225] ガキの行動 投稿者:音色   投稿日:2011/05/24(Tue) 23:24:35     85clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     なんか騒がしいと思ったらチビのイシズマイが家を取られて泣いていた。
     家、というか殻、というか、つーか岩?なんでもいいや、あの背負ってる奴。
     その横でチビのドッコラ―がはぎ取った岩をぶんまわしたりお手玉したりと遊んで、いや多分トレーニングのつもりなんだろうが危ないだろうがこのクソガキ。
     当たり前だが託児所の中で角材なんか持たせられるわけがないわけで、仮に持ったとしてもパプリカが速攻で叩き折るから同じことで、手持無沙汰だったチビ筋肉ダルマはそこらにいた漬物石を取ったかなんかしたんだろう。
     あーもう、俺が嫌いなのは群がるガキと泣きわめくチビだ。合わさったらなおムカつく。こら、まとわりつくなイシズマイ。いや今住んでないからイシ・・・なんだ?学がないと上手いことも言えねぇ。
     背負ってるものがないといつもは抱っこも躊躇するがさすがに軽い。つまんでやりたくなるがさらに激しく泣きそうだからやめた。
     とにかくおいこら、それ返せ。
     言う事聞かんかボケ。
     投げようとすんな、危ねぇ。あとイシズマイさらに泣くからやめろ。
     しょうがねぇ。
     パプリカ、実力行使。


     結果、ドッコラ―のガキにたんこぶができてイシズマイは泣きやんだ。
     しかしなんか手を打たないとどうせまた似たようなことするんだろう。ダンゴロでも投げられたら今度は別の意味で危ない。

     そんなわけで部屋に転がっていたバーベルを持ってきた。
     15キロ。姉貴とケンカしたとき、確か片手で俺に向かって投げてきた。あの時は死ぬかと思った。
     お、挑戦すんのか。
     ・・・ピクリともしてねぇな。まぁ頑張れ。仮に持ち上げられるようになったら今度は30キロの奴でも持ってこよう。あれも姉貴は片手で投げたから。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談   風呂で思いつくシーンはこんなのばっかりです

    【ギャップ萌え? そんなモノ狙ってないのよ】


      [No.1224] パプリカうまいよね 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/05/24(Tue) 12:53:39     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    これがウワサのギャップ萌えというやつなのか。


      [No.1223] Re: You can do! 投稿者:でりでり   投稿日:2011/05/24(Tue) 07:42:48     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    まさかわたし自身もこんな五千字も書くなんて思ってませんでした。
    それと最初はソーナンスの予定だったんですが、ソーナノにして良かったなあと重々思います。ソーナノ可愛いからまたいつの機会か出したいなぁ……。

    このシチュエーションは中々気に入ってます!
    わたしも甘いのは大好きなので、いつかもっと甘々でにやにやが止まらないのを書きたいなあ、なんて。

    本当はミラーコートの描写もきっちりしたかったんですがよく分からなかったので雑になっちゃいました。
    ソーナノの影踏みも完全に自己解釈の結果、こうなりました。
    ちなみに書いてるこちらも落ち着いて書けませんでしたw
    青春万歳!

    感想とお題提供ありがとうございました。


      [No.1222] Re: You can do! 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/05/23(Mon) 23:50:41     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    あわわわわ

    無茶振りみたいなお題をこんな形で昇華してくださってありがとうございます! まさか恋愛方面でくるとは……しかもソーナノの魅力に気付いてしまいましたよ。ソーナノ!

    一目惚れして体育の授業で組になってその上向こうから心配しながらやってくるなんてもう甘くて美味しいです。甘々で胸焼けしますが、それも味の内。こういう恋愛物だいすきです。甘いモノってほっとするんです。

    > 「ブビィ、今度こそ火の粉!」
    > 「ミラーコート」
    >  油断だらけだ。さっきから火の粉火の粉って言っていたら、こう対処すればいいだけ

    このバトル描写が好きです。サックリ攻略してる感じが好きです。

    >  どうやら上半身はある程度動くようなので、首を動かしてこいつ、ソーナノの方を見れば……予想通りだった。
    >  私の影を踏んでいやがる。

    ソーナノさんいい仕事をしてらっしゃる! 強引に告白させる流れにもってくソーナノさんに敬服せざるを得ません。
    こっから最後まで、こっちが恥ずかしくなって落ち着いて読めませんでした。でも、青春ばんざい。

    甘いのありがとうございました。


      [No.1221] スキンヘッドと中華鍋 投稿者:音色   投稿日:2011/05/23(Mon) 23:31:49     146clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     本気でポケモンとケンカしたことがある人間なんてどれくらいいるんだか知らないが、少なくとも俺は素手で格闘タイプのポケモンと遣り合ったことがある。
     結果、右手左脚骨折でろっ骨にひび、後の相棒となってしまうズルッグことパプリカもそろって入院した。
     あと頭もなんか怪我したかなんかで丸坊主にされた。馬鹿やった罰という事かも知れないが、8つも年上の姉貴は容赦しなかった。
     以下、俺は髪を延ばすことの方が面倒くさくなりずーっとスキンヘッドだ、文句あるか。

     俺の家は医者の家だった。
     で、俺は馬鹿だった。先に生まれた姉貴にすべてを吸い取られていた。模範的態度、頭の良さ、その他もろもろ。
     なので俺は家もどうせ姉が継ぐんだから好き放題やろうという事で好き放題やっていた。無論、怒られまくり勘当されまくりの挙句、最終的にどうにかまともになってくれと泣きつかれた。
     そりゃ一応出来が悪くても長男だから親父だってなんか考えるところがあったんだろう。
     結局のところ、適当なアパートと毎月どうにか食っていける最低限の“お小遣い”とやらを与えられて俺はしっかり実家の出入り禁止になった。


     目つきは悪いがガタイはいい。おまけにスキンヘッドときたら世間が見る俺は不良以外の何があるのか教えてもらいたい。
     大体スキンヘッド馬鹿にすんな。風呂上がりなんかマジ楽なんだぞ。とか言ってみても多分通用しねぇ。
     隣を歩くズルズキンとそっくりスタイル、すなわち腰パン、ワルビアルジャンパー、のしのし歩く様はまさにいっぱしのガキンチョ不良である。
     喧嘩が売られれば買い、売ったら買われた。ポケモンがバトルしている間にトレーナーに手を出すことなんてざらだ。
     それでもカツアゲとかはやらない主義を貫き通した。パプリカが嫌がるし、俺も嫌いだ。
     実家の金だけじゃとてもじゃ足りない。だから自分が食う分くらいの金の、一応稼ぎ口はある。


     だが世間から見たらきっと意外に思われる職業ナンバーワンについていることは間違いない。
     ポケモン用託児所にエプロンつけたスキンヘッドが子守ならぬポケ守してるなんて誰が思うか。俺だって思わなかったが面接行ったら受かってしまったんだから仕方がない。
     ポケモンなんてパプリカ以外はよく知らないのにタマゴから出て数週間なんてチビガキ、いやチビポケモン共の相手をするとかマジかったりぃ。しかし金のため食うため。
     夜中まで家を空けるのに家に小さいポケモン置くのが不安だ、なんて奴が増えているらしく、結構な数のガキポケモン共がいる。どいつもこいつも20センチ未満。あぶねぇ、うっかりすると踏みつぶす。
     パプリカはどうかと言えば喧嘩してる奴等を両方殴って泣かせていた。喧嘩両成敗、泣け泣け、そして我慢強くなるもんだ。ほっとく。
     抱っこしろ構え遊んでくれと上目づかいで俺を見るガキ(ポケモン)ども。分かったわかった、まとわりつくな蹴るぞおい。
     人間の子供なら俺の容姿でまず間違いなく泣きだすだろうが、ポケモンはその辺分かってるんだかいないんだか、かまわず甘えてくる。可愛くないと言えばうそになるがうっとおしい。
     頭に乗るなつってんだよ!足にしがみつくな!あーもう順番に肩車するから待て!ったく、おいこら、そこ、積み木独り占めすんな。
     何だ、腹減ったか。そうか、じゃあなんか作るか。
     パプリカ手伝え。こいつらの夜食作るぞ。


     正直に言えば俺の料理の才能は皆無だ。姉貴に吸い取られたものの一つ。
     しかしどうにか作れるものがある。野菜炒めだ。中華鍋に材料投げ込んで作れば食えるから。
     パプリカなんて野菜炒め作ってるときに材料眺めてつけた名前なんだが、進化してよりカラーがパプリカになった時はビビった。
     ガキの夜食に野菜炒め、なんて言うな。炒めれば何だって食えるんだ。
     

     ほらできた。木の実の野菜炒め。パプリカはもちろん入っている、俺の好物だ文句は言わせん。
     腹が減ってるときはなんだって美味く感じるのは人もポケモンも一緒だな。がつがつ食ってる間は大人しい。

     ノックの音がする。ぴくっと全員の耳が動く。
     さてと、誰の迎えだ?


     今日も深夜にガキどもが帰っていく。
     全部帰れば俺の仕事も終わり。
     パプリカ、帰るぞ。今日は給料日だからミックスオレでも飲んでくか。


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  なんか風呂で思いついたスキンヘッドさんのお話し。
    ズルズキンの不良っぽさが大好きです。

    【何してもいいのよ】


      [No.1220] B面【数え切れないほどの「嫌い」は、どうしたらいい?】 投稿者:リナ   投稿日:2011/05/23(Mon) 22:30:40     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    1.死ねばいい。音楽が好きな奴はコンプレッサーに潰されたベースラインと一緒に。酒が好きな奴は四十七度を一リットルふっかけて。女が好きな奴は卑猥な下着と聴くに堪えない壁越しの声にまみれて。ポケモンが好きな奴は――ああ、もう死んでるようなもんだ。


    2.アンテナはとうの昔に折れてる。違和感に気が付いたのは十年も前だったけど、全員が見て見ぬふりをした結果がほら、メルトダウンは目前だ。汚染されてるのは何もそこだけじゃない。ハナっから世界が泥だらけ。まあでも大丈夫だ。「直ちに健康に影響を及ぼす値ではない」からな。


    3.あの子みたいにスタイルがよくなれたらきっと視界が激変するわ。もしウチがあの子だったら、グラエナみたいに息荒く近寄ってくる男どもの鼻先から、欲しいものだけかすめ取ってカジノでベットしてやるの。


    4.歯車。ギシギシと耳障りな音を響かせてかろうじて噛み合って回ってる。この街の片隅の、ほとんどだれも見向きもしないボロアパートには歯車にさえなりきれなかった鉄屑がいると聞いた。ギアルの方が存在価値がある皮肉。


    5.もうバーチャルとリアルはイコールで結んで良い頃でしょう。ウェブ上の権限と現実の地位の境界線など、これからの時代、経済発展の妨げになるだけです。分からないんですか? イライラしますね、あなたと話していると。


    6.嫌い? アタシのこと。アタシじゃだめなの? ねぇ答えて――直すから、ちゃんとあなたが望んでる通りになるから。お願い――


    7.百五十一匹だったんだ、お父さんが子供の頃はね。どんどん新種が発見されてもうついていけないな。そうそう、おまえのタブンネ、昨日テレビで紹介されていたぞ。かなり人気の種類なんだな。たぶんね――なんちゃって、あ、おいおいそんな冷めた目で見ることないだろ―― 


    8.腹立つんだ。ボクを馬鹿にするやつは。みんなボクの凄さを分かってない。将来ボクは世紀の大発明をするんだ。転送装置なんて、時代遅れにしてやるんだ。教室の前でヘラヘラ笑ってるあいつらなんか一生たどり着けないレベルにボクは立つんだ。


    9.ははは!!! ポケモンマスターって本気かよ! この時代に? 冗談だろ?! 笑い死ぬ!! 大体そんな名前の職業あんのかよ。いや、悪い悪い。ないよな。免許皆伝ってことは、そうなった頃には仕事なんて選び放題だから、そんなの関係ないよな――はっははは!!!!


    10.そろそろ二足歩行に限界を感じてるんだが、おれだけか? そんなことないはずだ。朝起きて仕事のことが頭によぎった瞬間吐き気をもよおすようなら、残り少ないライフ使って精神科へ行け。


    11.なにコイツ、キモい。さっきから自分のくだらない自慢ばっかり。しゃべり方からして生理的に受け付けない――まあでもお金持ってるなら、寝てもいいけど。


    12.バトル――よく分からないんだ。人にポケモンを戦わせる権利がどこにある? 平気で技を指示する連中の気持ちが分からない。まるで「スポーツ」みたいに言ってるけど、傷つくのは君じゃないから言えるんだ。


    13.サッちゃんがね、いっしょにあそぶって言ってたのに、かえりの会おわったらすぐミチコちゃんとかえっちゃったの。やくそくはやぶっちゃいけないってお母さん、言ってたよね?


    14.もう何年も前になるかのう、わしのニョロモは車にひかれてこの世を去った。飲酒運転じゃったよ。今は感情など消えてしまったが、当時は怒り狂ったもんじゃ――


    15.嫌いなんだ。別に理由なんてない。















    ∞.私、気付いちゃったんです――その瞬間、ものすごく怖くなって、身震いがしました。おかしいんです、この世界。そうです、この、私たち人間と、ポケモンと、いろんな生き物が暮らしているこの世界です。 
     正直、知らない方が良かった。だって、こんなこと知りさえしなければ――

     あなたのことも嫌いにならずに済んだのに。
     もう、どうしようもありません。








     ◇ ◇ ◇









    ∞.私、気付いちゃったんです――その瞬間、ものすごく怖くなって、身震いがしました。おかしいんです、この世界。そうです、この、私たち人間と、ポケモンと、いろんな生き物が暮らしているこの世界です。 
     でも、知ることができたから、理解できたから――

     あなたのことも嫌いにならずに済みました。
     怖くて手も足もすくむけど、それ以上に、知ることは嬉しい。














    1.死のうとか考える前に、ちょっと思い出せよ。音楽が好きな奴はコンプレッサーに潰されたベースラインと一緒に。酒が好きな奴は四十七度を一リットルふっかけて。女が好きな奴は卑猥な下着と聴くに堪えない壁越しの声にまみれて。ポケモンが好きな奴は――もう一度、そいつの目、見てみろよ。おい、見えるか? 分かるか? 感じるか?





     ――――――――――


     病み過ぎ――と自分に突っ込む。

     【なにしてもいいのよ】


      [No.1219] A面【50個の「好き」を、次は絶対言葉にするから。】 投稿者:リナ   投稿日:2011/05/23(Mon) 22:28:37     82clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    1.毎朝遅刻ギリギリに教室に駆け込んで先生に叱られてたあなたは、そのたびにおかしな冗談でみんなの笑いをとって、先生を呆れさせていた。そんなあなたが好き。


    2.同じクラスなのに「おまえ、名前なんて言うんだっけ?」と、わたしに訊いたあなた。あの時は失礼な人だなと思ったけど、そのあと私の名前を「可愛い名前じゃん」褒めてくれたあなたが好き。


    3.部活ばっかりで勉強なんて全然してないんだろうなと思ってたら、理科の期末テストが学内五位だったあなた。目の下にクマを作っておきながら「直前に見てたところまんま出たんだよね」と笑うあなたが好き。


    4.いつも友達に囲まれてくだらない話で盛り上がってるあなたが好き。


    5.かと思ったら難しい顔して考え込むあなたの背中も好き。


    6.体育の時間、見学しているわたしに休憩時間のたび話しかけてくれたあなたが好き。


    7.だから体育の授業がある木曜日が好き。


    8.通学が億劫で、学校も嫌いだったけど、あなたがいる教室は好き。


    9.あなたのポケモンがビブラーバだったのは驚いた。この辺りでは珍しいポケモンだから。エドとなずけられたその子を大空へ放ち、あなたが眩しそうに見上げる。その顔が好き。


    10.わたしのゴマゾウ、パウがあなたにすごく懐いちゃった。モンスターボールから出すたびあなたに寄りそうパウに困った顔をしながらも、パウを優しく撫でるところが好き。


    11.階段を上り下りするわたしに、いつも肩をかしてくれたあなたが好き。


    12.「えりあし切り過ぎた!」と言いながらしきりに髪形を気にするあなた。でも、前の髪型も今の髪型も好き。


    13.喉にかかるその声が好き。


    14.奥二重のその瞳も好き。


    15.放課後の教室で、塾までの時間を潰していたわたしに声をかけてくれたあなた。宿題で分からなかった問題を説明してくれようとして、結局「ごめんやっぱおれも分かんない」とごまかし笑いをしたあなたも好き。


    16.その日の夜、「さっきのやつ答え分かった!」と電話をしてくれたあなたも好き。


    17.その電話の最後に花火大会に誘ってくれたあなたのちょっと緊張した声も好き。


    18.人混みの中、あなたを探していたわたしを後ろから脅かしたあなたのしたり顔も好き。


    19.その時初めてみたあなたの私服姿が好き。


    20.もちろん制服姿も好き。


    21.「自転車できたんだけどこんな人多いんじゃ意味ないな」って文句を言いながら、わたしの歩く速さに合わせてくれたあなたが好き。


    22.わたしの足もとをしきりに気にかけてくれたあなたが好き。


    23.「浴衣姿見たかったなあ」と、普段着で来たわたしに何度も言うあなたは、ちょっとしつこかったけど、好き。


    24.最後の特大花火が打ち上がった時、ふと見たあなたの真剣な顔が好き。


    25.人混みを離れて、わたしをベンチに座らせ、ゆっくりと話し始めたあなたの喉にかかる声は、やっぱり好き。


    26.告白された後、嬉しくて泣いてしまったわたしを優しく撫でてくれたあなたが好き。


    27.その日、帰りに家まで送ってくれたあなたが自転車をとてもゆっくり押して歩いてくれた。その優しさでまた泣きそうになるわたしに「もっとゆっくり歩いていいよ、その方が長く歩けるし」と言ったあなたが好き。


    28.ばいばいをした後、すぐによろしくメールをくれたあなたが好き。


    29.それからは、毎日が好き。


    30.遅刻ばかりだったあなたが、わたしの家の前まで迎えに来てくれる時は一回も遅れない。ありがとうを言うと、あくびをしながら「なんで?」と返すあなたが好き。


    31.「いつかエドがフライゴンになったら、おまえのこと一番に乗せてやるから」と、芝生でじゃれ合っているエドとパウをのんびり眺めながら言ってくれたあなたが好き。


    32.あなたは松葉杖を脇に抱えてわたしを自転車の後ろに乗せてくれた。けどバランスを崩してわたしが落っこちた。ちょっと悔しかったけど、あの時少しだけ感じたあなたの背中が好き。


    33.嫌いだった雨の日も、あなたと相々傘ができる日だから好き。


    34.嫌いだった勉強も、あなたが教えてくれるから好き。


    35.もともと好きだったカラオケは、あなたと行くから少し恥ずかしいけど、やっぱり好き。


    36.あなたが食べてくれると思うと、早起きしてお弁当を作るのも好き。


    37.内緒でトレーナーズスクールに通い、エドを鍛えていたあなたが好き。


    38.突然遊べなくなった日はすごく残念だったけど、決まってその日の夜に電話をくれるあなたが好き。


    39.電話を切る時に、恥ずかしそうに「好きだよ」って言ってくれるあなたが好き。


    40.気持ちを言葉にしてくれるあなたが好き。


    41.そして、お別れをなかなか切り出せなかったあなたは――ううん、変わらず好き。


    42.遠い地方に引っ越さなければならなくなったあなたは、一週間前になってそのことを告げた――好き。


    43.お父さんの仕事の都合で――好き。


    44.どうすればいいのかな、おれ――好き。


    45.大人じゃないから、ついて来いなんて言えないし――好き。


    46.ごめん――好き。


    47.お別れの日、あなたはフライゴンになったエドをわたしに見せた。「約束、したろ?」「――うん」「おれも一緒に乗っていい?」「乗って」――好き。


    48.あなたの背中であなたの匂いを感じたのは自転車の二人乗りに挑戦して失敗した時以来だった。ジェットコースターみたいにふわりと身体が浮いて、地面がみるみる離れていった。わたしはあなたの背中に力いっぱいしがみついた――好き。


    49.「おれ絶対エドに乗ってまた帰ってくるから――迎えに来るから!」あなたは震える声でそう言った――好き。


    50.待ってる。ずっと――大好き。








     ――――――――――


     甘ったるくて自分でも最後まで読めない…でも吐き出した【好き】。
     そして、B面は正反対ですw

     【なにしてもいいのよ】


      [No.1218] 夢のような。 投稿者:びすこ   投稿日:2011/05/22(Sun) 23:50:05     132clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ――

     今日もまた、空を見て彼女は呆けたようにぺたんと座り込んでいた。ピンクの寸胴に短い手足。下がった花弁のようにかわいらしく特徴的な耳をふわふわ躍らせて、彼女は暖房の前を陣取り、窓の奥を眺めている。ポケモン、タブンネ。わたしは彼女に「ミミ」と名付けた。安直だと笑わないでほしい。下手に格好つけたネーミングをするより、語呂がいいこの名前こそ、わたしの相棒に相応しいのだから。彼女はもともとおっとりひかえめで、そのくせおこりっぽい天邪鬼で天邪鬼な性格だけど、その変化には容易に気付かされた。半年間と遡らないであろうか。最近の彼女はどうにも落ち着きがない。今日だって、何かを想い耽るような遠い眼差しを雲の向こうへ送り、そうしたかと思えばうつむいてまぶたをおろし、そうして、なにやら微笑んでいるような、とても幸せそうな表情でうたた寝をする。わたしが隣へ座ると、「いつの間にわたしのそばにいたんだ」とでも言わんばかりに驚き跳ねる始末。「あんた最近ぼーっとして、なんかあったの?」わたしが笑いかけても彼女は、気にしないでと言わんばかりに、また眠りにつくのだった。
     ポケモンレンジャー。ポケモンの力を借りて人間たちの平和な世界を作り出すために、様々な地方のさまざまな街にレンジャー協会から派遣される、わたしはその一員だ。ここから遠く離れた南国から、イッシュ地方の田舎町、カラクサタウンへやってきて、今年でちょうど二回目の春を迎えた。ここでの主な業務を平たく言えば、管轄の地区の草木や、ポケモンと人間を守ること。時間があれば草むらへもぐり、きのみを育てたり、植林活動を行ったり、夜間の安全パトロールなどもしている。幼いころから、ポケモンレンジャーになることがわたしの夢だったから、こうしてこの職業に就いたことで、毎日やりがいのある日々を送っていた。ミミはイッシュに来てすぐできた新しい仲間だったから、そろそろ一緒にいて二年という月日が経つ。毎日の衣食住をともにしているし、心の通ったパートナーだとわたしは心から思っている、だのに。充実した毎日ゆえの忙しさに身を押し流され、彼女の些細な変化にわたしは気づいてあげられていないような気がして、いつも彼女の澄んだ、遠くへの視線を見るたびに、なんだか切ないような、悔しいような気持ちになっていた。

    「“ハイリンク”? ごめん、もう一回お願い」
    「だーかーらー。そこに宿る膨大で出所不明のエネルギーの中に、私の研究チームが開発した“ゲームシンク”っていうハイテクな機械で吸い取ったポケモンの夢を、ムシャーナたんの“ゆめのけむり”で吸い取ってぶち込むと、そのポケモンの夢が、その“ハイリンク”で現実になるの。私たち人間は“Cギア”っていうハイテクな機械でそこにワープすることができて、自分のポケモンが見た夢の中の世界へ行けるってわけ!」
     熱弁後、彼女――マコモは何かを取り戻したように煎茶をすする。「ショウロー、いかりまんじゅう足りなーい」と叫び、また一口。彼女の摂取した糖分は残らずすべてあの脳に吸収されるんだろうなと、彼女の細い体を見てしみじみ思う。同世代、同性ということもあり、彼女と会話をすると、なんだか「わたしもがんばらなきゃ」という気持ちになり、それはわたしにとってとてもいい刺激になっていた。会話の主導権は、だいたい彼女のほう。恋愛に対する持論の熱弁は特に、彼女の経験を交えながら話しものだから、とても勉強になった。少なくとも、わたしは彼女の“過去のオトコ”みたいな人には引っかかりたくないな、なんて、内心思ったりしている。そんな彼女はカラクサシティの隣町、サンヨウシティに住む若い研究家だ。彼女の研究に必要なムシャーナ捕獲の際に協力を要請されて知り合い、何かと頻繁にお互いがお互いの家に行っては話し込んでいる。今日は、ふとした流れから彼女の研究についてわかりやすく解説してもらっているのだが、具体的なイメージが浮かばず、片耳で聞いては片耳から抜け行くという感じで、さっきから同じことばかりを彼女に質問してばかりだ。
    「つまり、マコモの研究のおかげで、わたしがミミの夢のなかに行けるってこと? だよね?」
     彼女は、まあ。と、いかりまんじゅうを含んで膨らんだ彼女の口元を緩ませ、実験段階だけどね。と答える。もう実験する段階まで進んでいるんだね、呟いてわたしは、現代の科学技術に感心し、フル回転の脳に糖分を送り込むためにチョコレートをつまんだ。
    「だからね」マコモは続ける。「たくさんのポケモンの夢が“ハイリンク”の中に存在する。ポケモンたちはそれぞれ見る夢はもちろん違うから、“ハイリンク”の光景はそのポケモンの数だけ存在するの。基本的に、自分の眠らせたポケモンの夢の世界にしかワープすることはできないんだ。だけど、自分のポケモンの夢の世界の外れにある“せかいのかけはし”を渡ると、なんと! 自分のポケモンとは違う別のポケモンの夢に飛んでいけるの! だから、ポケモンの夢の中で、トレーナー同士の交流もできちゃうわけ」 
    この時のわたしの顔は、相当間抜けのようだったのだろう。マコモは顔を見て噴き出す。「ごめん、ちょっと熱くなりすぎちゃった」と言って、また続ける。
    「百聞は一見にしかず。よかったら、行ってみない?」
     ミミのことを、知りたい。いつも女子どうし、馬鹿のように間抜けな話しかしないわたし達だが、わたしのそんなささいな願望に、マコモは持論を繰り広げてくれた。そんなに気になるんだったら、ミミの夢を見て来なさい、というのだ。「あれこれうだうだ悩むより、さっさと解決してスッキリしたほうがいいのよ」彼女は最後のいかりまんじゅうを頬張り、恋愛もね。と無駄に一言付け足して、わたしにめがけて、なんだか憎めない、いつもの表情で笑った。

    「それじゃ、“Cギア”起動するわよ」
     それからひと月の歳月がたって、わたしはまたマコモの研究室にいる。今日の目的は、“ハイリンク”への転送実験だった。やはり実用段階へはまだ早いものの、実験はイッシュ全土で大々的に行われていて、わたしはその一人として参加することになったのだ。彼女の部屋の奥、特殊なベッド上の機械の上で、ミミは眠らされていた。すでにミミの夢は“ハイリンク”に送られているとのことで、今度は、わたしが彼女の夢へ飛び込む番だ。未知の世界。少し緊張するけれど、マコモの研究だ、成功例もたくさんあげられているという安心感と、好奇心がそれを上書きする。わかった、とわたしは返し、マコモと目を見合わせて笑って見せた。
    「行ってきます!」

    ――

     突風。
     巻き上がる砂埃と灰燼に思わず瞼でふさぎ、ぱっと開いた瞳の映したものは、薄暗く、ゴミの臭いが熱気で込み上げる狭い道と、見上げても果てが見えないほどのコンクリートの谷だった。そうして、とにかく暑い。羽織っていたカーディガンを脱いで、腕に装着してある、蒸れた“Cギア”をポケットにしまい、カットソーの袖を捲る。さて、ここがミミの夢なんだろうか? 足元に溜まる汚水に漂う水面。眼前に広がる光景があまりにリアルすぎて、怪訝にすら感じてしまうが、現実の季節が春先だったから、この天候はあり得ない。ここは、夢なんだろう。妙に納得したわたしは、立ち尽くしていた足を一歩踏み出す。その音に反応して、ぱちぱちとバチュルが隅のほうへ逃げていった。ここはどこだろう。見覚えはある。しかし。コツコツと地面を踏みしめる自分の音が聞こえ、遠くでは無数の人間の声とクラクションの喧騒と、間抜けな船の号笛が渦巻いていた。ああ、ふと思い出す。そうか、ここはヒウンシティか。ここに来たのは、そう、半年前。レンジャーの研修で初めて赴いて、それきり。初めて見る高層ビルに感動し、いろんなところを見て回って、ミミとはしゃいだ覚えがある。――そうだ、彼女は、ミミはどこにいるんだろう。これはミミの夢の中。だから、彼女の夢の中のわたしと一緒にいるのだろうか? もしかして広くてごみごみしたヒウンシティに紛れるミミを探し回らなければならないのだろうか。疲弊を感じて、額の汗を拭う。まあ、わたしがあの時彼女と歩いた道を辿ればいいだろう。とにかく、この路地を出なければ。吐息を腹から勢いよく吐き出して、「よし!」と声に出して、わたしは早足で歩きだす。
     その瞬間であった。わたしは背後にそれまで感じ得なかった気配を感じ、ぱっと振り返る。そこにいたのは、鋭い太陽光のシルエットで浮かび上がる、2体のポケモンの姿であった。1匹のポケモンの特徴的なあの角は、メブキジカであろうか。座り込んでじっとしている。1匹のポケモンは、ぼってりとした容姿と太い腕を見る限り、ヒヒダルマのようである。なんだか、どこかで見たような組み合わせ。そうして、満ちる殺気。ヒヒダルマの方は落ち着きがなく、ゆったりとした動きで辺りを見回して、手近あったゴミ袋の束を、ひょいと持ち上げては散らかして、どうやら彼らは遊んでいるようだ。中にはヤブクロンも紛れているらしく、それの断末魔が路地に響きわたった。ふと、ヒヒダルマが投げたヤブクロンがわたしへ飛んできた。それはわたしを見て驚き、小さい手足をぱたぱたさせて、闇に逃れていく。彼ら特有のひどい臭いが立ち込めて、わたしは狼狽した。瞬間、地響き。ぱっと視線を遠くへ送ると、ヒヒダルマの瞳を暗がりに確認できた。メブキジカも、すくっと立ち上がって、小さくその喉を鳴らし、頭部をゆらゆらとさせ――わたしを、見ている。
     
     瞬時、それは猛烈な勢いでわたしに突進してきた。はっと意識を戻されて、わたしは走り出だす。そうだ、“Cギア”で現実世界に帰ろう。ポケットから探って取り出す、瞬間、わたしはそれを地面に落としてしまった! ああ、まずい。拾おうとした直後、鋭い刃がわたしへ飛び散る。激痛と同時に“Cギア”画面が粉々に砕け、わたしの腕から血が滴った。はっと視線を正面へ送ると、メブキジカの角が光を放っているのが見える。逃げなければ、逃げなければまずい。日頃モンスターボールを入れているはずの場所を手で確認し、やはりないか、とわたしは落胆する。とにかく路地を抜けて広場に出よう。わたしは腕の傷をかばう余裕もなく、がむしゃらに疾走を続けた。次第に、口元から漏れ出す、嗚咽にも似た喘鳴が、恐怖で満ちた遁走で疲弊した体をさらに痛めつける。背後から感じ続ける殺気に、背中の鳥肌が止まらない。振り返れば、わたしを追うものがもう消え去っているんじゃないか、そんな期待を続けながらも。――やはり、期待はするものではない。その瞬時、わたしの頭上に規則正しく輪を描き、美しく空に描かれる、それは花びらの舞。見とれるも、つかの間、同時に感じる悍ましい程の熱気を帯びた炎の渦。繰り広げられるその熾烈な絢爛の競演は、路地を抜けた向こうへ一直線に逃げ抜くわたしの後ろ足元へ突き刺さった。その瞬時、一閃の如く、爆発音。強烈な熱風に歩幅が追いつかない! 足を取られ、吹き飛ばされたわたしの体は軽々と宙へ翻る。「うそっ」思わずつぶやいた言葉は空へ掻き消され、手を地面に着く余裕もなく、わたしは頭から叩きつけられた。まばたきよりも早く走る激痛。呼吸をする余裕もなく、わたしはその場から動くことを諦めざるを得ない。呼吸が苦しい。視線を落とす、湿ったコンクリートに、巨大な逆光のシルエットがじりじりと迫っている。脳裏に刻まれる恐怖との最悪のシチュエーションに耐え切れず、わたしはそこで視界を遮断した。
     遠くからやってくる、激しい追い風。それに乗って、ああ、聴覚の果てで、男声が聞こえた気がする。昼間だから、もしかしたら、夢の中の誰かが助けに来てくれるかも。いや、そんな都合のいい話はないだろうか。もう、諦めるしか。夢の中で死んだら、わたしは元の世界で行方不明扱いになるんだろうか。ミミの夢の中に、家族は、マコモはわたしを探しに来てくれるだろうか。つむった瞳に、何かを考える時間が残されていることにわたしは驚く。そうして、気づくのは、こつこつとこちらに向けて聞こえてくる足音だった。

    「キミ! しっかりするんだ!」
     耳元で確認できる、それはやはり男声。直後、肩を抱き起され、わたしは体を揺さぶられた。はっと意識が明瞭になった視界が男性の華奢なシルエットとその瞳をとらえて、思わず「あ……」なんて、間抜けに声が出てしまう。彼はわたしの意識があることを確認すると「よかった、間に合って」そう言って、視線を前方に向けた。やあ、はじめまして、と早口で彼はそう言うと、逆光で影になった口元に、やんちゃ、という言葉がピッタリの声で言う。「助けに来たよ」
     混乱するわたしを置いて「ギギギアル、放電だ!」と彼は鋭く叫ぶ。瞬間の、閃光と超音波のような破壊音。思わず瞼を閉じたわたしを、彼は舞い上がる粉塵と衝撃から庇うかのように、抱き寄せた。途端に、なんだか、胸の奥の奥がちくっとして、恥ずかしいような、むつかしいような感情が噴き出して、だのに、思わぬその力強さになんだか妙に安心してしまう。ポケモンに対する指示の度、相手との特殊攻撃のぶつかり合いによって生じる衝撃波がびりびりと押し寄せて、しかし彼は動じない。この人、よほどバトルに慣れているようだ。自分のポケモンの位置、次に相手の繰り出すのが物理的な攻撃か特殊攻撃か、など。トレーナーには今置かれている状況を瞬時に見分ける能力が求められるが、彼は的確にそれを見抜いているように見えた。この戦闘を掌握しているのは、間違いなく、彼だ。戦闘中にトレーナーの集中力を妨げてはいけないから、わたしはなるだけ彼のされるままに身を寄せる。ふと感じる、強大な熱風の勢い。よし、彼は呟いて、身をぐっと起こした。同時に、男性の鎖骨がわたしの頬に触れ、驚いて思わずするまばたきの隙間に、薄く血管の浮き出る首筋がちらついた。汗の匂いと、とくとくと響くお互いの心臓音。ああ、近い、近い! 恐怖とか、絶望とか、そんなのはもういつのまにか遠ざかって、わたしはただただ、男性との密着に、この状況に赤面していた。

     セントラルエリアと呼ばれるヒウンの中心にある大きな公園は、ジョギングや談笑を楽しむ人であふれている。そんな中、まるで満身創痍、砂と埃とでひどいありさまになったわたしは、ベンチにだらしなく座り込んで、夕暮れが近くなった空を仰いでいた。いつの間にか腕の傷からは出血が止まり、それと打ち付けた膝がヒリヒリ痛んだ。そういえば、Cギアを落としてそのままだったっけ。あれなしでわたしは帰れるんだろうか? そこから、ふとマコモの言葉が浮かぶ。
    「“ゲームシンク”は、そのポケモンがその時見ている夢を吸い取るだけじゃなくって、そのポケモンが今まで見た夢全部のデータを回収することができるの。だから、そのポケモンの見るどの夢に飛ぶことができるかはわからない。ただ、今までの結果上、そのポケモンがよく見る夢に飛んでくらしいわね」
    わたしは改めてこの世界を見渡してみた。半年前のこの日の出来事の夢を、彼女はよく見るんだろうか。ちょうど、ミミの様子に違和感を覚えた頃と重なるが、なぜだろう。初めての街だったからかな。
    「これ、飲む?」
     例の男性がわたしの隣に座って、自動販売機で買ったのだろう、冷たいミックスオレをわたしに差し出す。感謝の言葉と同時にそれを受け取って、喉を潤す。そういえば、のどが渇いていたんだっけな。ごくごくとのどを潤して、差し出された男性の手にボトルを渡す。「あの、ありがとうございます」改めてわたしは彼に感謝の言葉を述べ、自己紹介と、この世界に来た理由、自分の置かれた状況をそれに重ねて伝えた。男性は首を横に振って、「構わない」と一言。「ボクはネイバー。“ハイリンク”の住人さ」そう言ってほほ笑みながら、わたしが飲みかけたジュースを飲み干した。わあ、と思わず声が出るが、彼は「ん?」という表情でその容器をゴミ箱に投げ入れる。そうして、彼は語り始めた。
     ネイバーっていう名前は、ボクの仕事上での名前。“せかいのかけはし”で繋がっている、僕たちは隣人同士だっていう意味合いで、自分でそう名付けた。“ハイリンク”には研究家や企業がさまざま介入していて、マコモ達の研究はその1つ。ボクは“ハイリンク”内にある“せかいのかけはし”を渡って、各人のさまざまな不具合やミッションにフリーで対処して暮らしている。“せかいのかけはし”を渡って対岸、相手の世界へ行くと、ボクの姿は、その世界で相応しい姿かたちになるんだよ。キミのトモダチの夢は現実の世界に即した夢だから、普通の人間の姿をしているけど、モロバレルになってしまったこともあったし、ポリゴンの発するサイコキネシスになってしまったこともあったさ。――まあ、中にキミをこうして助けに来たのも、マコモ博士から依頼を受けたからなんだよ。
    「マコモが、あなたを呼んだの?」わたしが問うと、彼は頷く。「“Cギア”から異常電波が飛んできたから様子を見に行けと言われてね」一呼吸開けて続ける。「このキミのトモダチの夢の世界は、彼女のさまざまな夢が混ざり合ってできた世界だ。キミを襲ったあのポケモンはきっと、別の夢から入り込んできたように思う。ヒウンにはあんなに強い野生ポケモンは出てこないからね」
     その発言で、わたしはあのメブキジカとヒヒダルマに感じた既視感に納得した。たしか、ミミと出会って少し経った頃、業務中に対処した暴走族の手持ちがその2体だった。まだミミはレベルが低かったから、わたしは彼女でない、ほかの自分のポケモンでそれを伸した記憶がある。ミミは、それらへの恐怖を覚えていたのだ。
    「まあ、お互いにお互いのことはわかった。“Cギア”が壊れてしまっていても、この夢が終われば、キミは勝手に現実に引き戻される」
     だから、と彼は続ける。「キミの目的を達成しよう。キミのトモダチの気持ちを知りたいんだろう? 付いていくよ、ボクはお人良しだからね」

    ――

     夕暮れのヒウンシティを、ミミを探して歩き回る。回る場所は、半年前わたしがミミとその時間歩いた場所。それ以外モンスターボールから出していないから、その場所に彼女がいるのは明白だった。この日、ヒウンでは大規模な夏祭りがあって、イッシュ全土から人が押し寄せてごみごみとしているも、そんな中、ネイバーはずんずんと前へ進んでいく。わたしのことなんかお構いなしに、彼は思うままに歩いているようで、突然立ち止まったと思うと「よし、ヒワンアイスを食べよう」とか「元気かい?」とポケモンにいきなり話しかけたりとか、いきなりわたしへ振り返りって「キミ、何をそんなに楽しそうなんだい?」なんて無邪気に笑いかけたり。とにかく不思議で、それがわたしにとってはとても新鮮で。彼はもしかしてマコモの言う「ワガママで自己中心的な、だけどカワイイ典型的ダメ男」となのかもしれないなあ、なんて、ヒウンアイスを食べながら思った。
     この祭りは花火大会がある。レンジャーの研修の後にその花火を海辺まで見に行って、隣でミミははしゃいでいた記憶を引っ張り出して、その旨をネイバーに伝える。「その花火大会は何時からだった?」彼の問いに「18時過ぎ」と答える。彼が時計を確認し、もうすぐだ、それからどうした? と矢継ぎ早に更なる質問。そういえば、と思し出したわたしはその時の出来事を話した。花火の音にびっくりした野生や市民のポケモン暴れ出して、一緒にいたレンジャーと一緒にそれを静めたこと。そのあとはホテルに帰って、次の日はもうカラクサに帰る日だったために早く寝たから、彼女をモンスターボールから出したのはこの花火大会までだということ。なるほどね。とネイバーは答える。瞬間、視界の先の頭上、一発目の花火が空を彩り、始まったね、お互いそう言って視線を交わした。
    「あのさあ」ネイバーの話しかけてきたのに、ん? と答える。彼は続けて、「キミには、夢があるかい?」と問うてきた。ヤブカラボウに、なんて戸惑ったけど、彼の口調の穏やかさの奥に、真剣な鋭い響きも混ざっていた気がして、わたしは素直に「あるよ」とだけ言う。でも、なんだかその言葉に自信を持って言えない自分がいた。ポケモンレンジャーになることで、1つ夢は叶えた。では、その先は? きっと、何かあったはず――。夢ってなんだか、ぼんやりとある幻想のような気がして、いつしか目の前の業務に食らいつくだけの毎日だったこの2年間。パートナーの気持ちも汲んでやれない、未熟な自分。わたしは、なんのためにこうして生きているんだろう、なんて、馬鹿のように幼い考えがふっと頭よぎっては、それは夢のためじゃないかなんて思う。でも、その夢はいつの間にか、忘れてしまっていて――。ああ、こんなわたしに、夢を語る資格なんてない。だけど、それを認めたくなくって、わたしは強がってもう一度、「あるよ」と、わたし自身に言い聞かせるように呟いた。「そうか」と彼はなんだか満足そうな顔をして、それ以上の会話はない。

     ああ、耳の奥が捉える、甲高い女性の悲鳴。それに同じて広がるパニックの渦。花火大会も闌、この日一番大きい花火が空へ舞って、港へたどり着いたわたしたちを混乱が出迎えてくれた。ポケモン達の暴走が始まったのだろう。遠巻きからそれを確認し、その中心でポケモン達を伸すミミを探す。そこでは大小さまざまなポケモンが混乱を極めていた。火の粉や水鉄砲が行き交い、奥の方でヤブクロンとその進化系の集団が悪臭を放つ。空に咲く大輪の花はその輝きを掻き消され、むなしく宙に消えていった。ああ、なんてひどい光景なんだろう。そんなことを隅に思いながらも、わたしの目は彼女を探し続ける。タブンネという種類のポケモンは基本的に出現率が低いから特定しやすいものの、プリン族やピッピ族と体毛が似ているのでなかなかに探し出すのが難しい。――ふと、聴覚の先から聞きなれたビードロの音。これは! 「見つけた! 見つけた!!」わたしはネイバーの腕をつかんで、引き寄せる。ほんとうか、と彼はわたしの視線の先を見やって、「なかなか愛嬌があるタブンネ、と、トレーナーさんだね」と、ポケモンにメロメロ攻撃するミミと、黄色いビードロを吹いているわたしを見て言う。ほっとして、でもなんだか恥ずかしくて。わたしはしばらく、そのバトルを見守ることにした。
    「キミの戦い方はおもしろいね」彼は感心したように続ける。「メロメロで相手を油断させ、その隙にあくび。なかまづくりで相手と心を通わせている間、相手はうとうとと眠りにつく。キミはその間、様々なビードロを吹き、混乱状態に苛まれるポケモンの意識を戻す。文字通り、戦闘不能だ」そう言って、うん、と唸った。わたしは物理攻撃を自分のポケモンに指示することを極力避けている。ポケモン同士がトレーナーに従順に従い、トレーナーのために傷を作りあうポケモンバトルというものがあまり好きではなかったから。それらを最小限にし、催眠術や甘える、メロメロなどの、相手の能力を極限まで下げて戦闘不能にするのが方法がわたしの主流だ。それだから、タブンネというポケモンはわたしのそのスタイルに即していて、とても頼りにしていた。
    「キミの戦い方、すごく好きだ」そう言ってネイバーはわたしへほほ笑む。思わぬその感想がただ嬉しくて、「ありがとう」と返した。相手の能力や技をすべて無に返し、自分は、もちろん相手も何一つ傷つかないというこの戦法は、トレーナーによって好みが分かれる。潔くないだとか、つまらないだとか、お前のその地味な性格が表れてる、だとか。レンジャーの養成校でも散々言われてしまっていたけど、わたしも意地でこうしてこのスタイルを変えずにいたのだ。そんな今までが、その一言で、わたしはこのままでいいんだと、すべて報われた気がした。ふと記憶が、ネイバーがわたしに問うてきた「夢」の話へ遡る。わたしの夢はそう、ポケモンレンジャーになって、1体でも多く野生のポケモンを守ることだ。何かの拍子で混乱してしまったり、狂暴な力を抑えきれなくなった力の強い野生ポケモンは、正気に戻ることなく、大体がポケモンレンジャー駆除――そう、殺されてきた。人や家畜、畑などに危害を加える恐れがあるからと、それがまるで常識のようになっている。だけどそれはきっと、違う。ポケモンと人間は共生を現代まで続けてきたはず、だのにどうして、人間の利己的な判断で、その命を破壊してよいのだろうか? いや、そうじゃない。ビードロを使う理由もその考えの元にある。わたしの育った土地で作られるビードロという楽器は、それらの野生ポケモンを静めるのに非常に有効だったから。このビードロを全世界に広め、ポケモンと人間の共生を図ろうだなんて、大それた、それが私の夢。ぼんやりと頭を漂っていたそれが、はっきりとわたしに刻まれる。わたしは夢を達成するために毎日を繰り返しているじゃないか!
     戦闘と花火の打ち上げが終わって、落ち着きを取り戻した夜のヒウンシティは、足早に帰っていく人の波が四方へ去りゆき、歓楽街という本来の顔を徐々に取り戻してゆく。ミミは、夢の中のわたしと一緒にホテルへ帰っていった。さて、彼女の胸中はつかめないまま、この夢が終わるのだろうか。――いや、終わらせない。ミミはわたしの大事なパートナー。彼女のおかげで夢を実現するための道を歩めるのだから、彼女のことを知りたい。彼女の背中を見つめながら、考えをめぐらせ立ち尽くすわたしに、ネイバーは言う。
    「どうやら、やはり今の出来事がキミのトモダチのぼんやり、の原因だったみたいだね」え? と彼へ振り返るわたしに、彼は続けた。「まあ、もう少し様子を見て――。ほら、言ったそばから」彼の言葉の後の瞬間、急に目の前がぶれ、足元がうそのように、柔らかいような、弾むような、そんな感触になる。思わずよろめく体幹を支えるのがやっとだ。「何!?」焦って彼に救いを求めるも、やはり彼は動じない。むしろ、楽しんでいるようにも見えた。「ミミが夢の中の時間をすこし早送りにしてるんだ。きっと、この続きが早く見たいんだよ」そう言ったネイバーは、わたしの手をつかんで走り出す。「行こう! 彼女の心中の核心へ」

    ――まどろみのような視界がクリアになり、硬い地面に触れる。「ここだね」彼は立ち止まった。ここは、わたしが最初に送られてきた場所。「スリムストリートって呼ばれてるらしいね」彼はそう言って、キミを助けに来た場所だ、と付け足す。やはり、彼女の思いが一番こもっていた場所だから、ここに飛ばされて来たのだろう。その思いに引っ張られた別の夢も入り込んでしまい、あの時のこの場所は、混沌としたものになっていたのだろうと安易に想像できた。行こうか、と彼はそこへ一歩立ち入り、わたしもそれに続く。夜のその場所は、ネオンの明かりから逃れるようにひっそりとして、遠くで鳴るクラクションの音と声の塊がかすかに飛んでくる。先ほどまでの夜、とは違う、さらに深い丁夜の刻。夏の熱気を解かす湿った風が、私とネイバーの繋ぐ手と手の間を行き過ぎた。「男性の耐性がないのね」なんてマコモに馬鹿にされそうだけど、出会った時から、なんだか心のドキドキなんていうむつかしい感情が消えない。少し躊躇した指先に、少し力を込めてみた。骨ばった手の甲を感じて、少し、彼が握り返してくれるのを期待したけど、そうしてくれないの、わかってる。それでも、このまま二人、闇に飲み込まれて、深い夢と夢の狭間、揺蕩っていたいなんて、漠然にそんなたわごとが、ぽつぽつとわたしの中で浮かんでは、消えた。

    ――

     ミミは、路地の真ん中で、一人、迷い子のように天を仰いでいる。やがて、ぺたぺたとコンクリートを踏みしめ歩きだした彼女は、何かをさがすようにきょろきょろとあたりを見回した。わたしたちは、物陰に隠れて、その様子を見守る。タブンネという種族は聴覚に優れているから、なるべく遠巻きにそれを眺めていた。ポケモンは、1度モンスターボールに入ってしまうと、その内側からは外へ出ることはできない。よって、モンスターボールから抜け出して、この場所へ来ることは物理的に不可能だった。これは、完全に彼女の想像の世界であろう。少し前まで彼女のことを全て知りたいだなんて思っていたのに、彼女の頭の中の世界を、ああ、見てはいけないものを見てしまっているような気がしてわたしは、内心いい心地がしない。「なにか探してるようだね」ネイバーはお構いなしに身を乗り出して、彼女の様子を観察している。そういわれてわたしも、良心が許す限り彼女のことを注視した。すると、奥の方から別の足音。何か来た。彼とわたしは今以上に息をひそめる。ミミへ一直線に、徐々に浮かび上がる巨大なシルエット。同時に漂ってくる、ひどい臭い。それはポケモン、ダストダスだった。
     まさか、ミミが探していたのはこの、直接的な表現は憚れるが、それこそこのゴミのポケモンなんだろうか。驚いてわたしは、なぜだか笑ってしまった。ネイバーは口元だけ笑って言う「あのダストダス、花火の時、暴走していたうちの一体だね」なるほど、とわたしはそれだけ言って、彼女らの注視を続ける。
     見つめあう、ミミとダストダス。次第に近づき合う2体の距離は無いに等しくなり、やがてミミは彼の体にぴったりと頬をうずめ、そのままで瞳を閉じた。ダストダスがふと、左の腕をタブンネに添える。ミミとの少し距離を保ってそれは、自分の体をその腕で指示した。そこからは、糸が伸びているようで、その終点が長く垂れ下がっている。彼女はそれを見つめ、感情が溢れだしたのか、癒しの波動が彼女から放出され、辺りはそれで満ちていった。あれは、なんだろうか、彼に目で問うと、「“真っ赤な糸”みたいだね」そう言って、一度言葉を置いた。
    “真っ赤な糸”。メロメロ攻撃をした相手がその道具を持っていると、こちら側もメロメロ状態にさせられてしまう、不思議な道具。
    「ダストダスは周囲のゴミを自分に取り込むことができる。きっと中に“赤い糸”が紛れ込んでいたんだろう」
    「そうして、あの祭りのとき、彼にメロメロ攻撃をした時、ミミもそのポケモンにメロメロになってしまった……」
     ああ、すべてがつながった。彼女は、メロメロになってしまった相手を――恋をしてしまった相手を探しているのだ。赤い糸が導く、運命の相手を。
     目が覚めてからも、夜に夢の中までも、ミミは彼を想うんだろう。見つめ合い、頬を寄せ、きっとくすぐったいほどに純粋な愛のことばを囁き合い、そうして、また朝を迎えるのだろうか。そう考えると、ミミがなんだかいとおしく感じられ、同時に、彼女を連れまわし、結果として恋を引き離してしまったのだと考えると、トレーナーはなんと身勝手であるのか。なんとポケモンは従順なんだろうか! わたしは乗り出していた身を縮ませて座り込む。「わたしは、ミミの何もわかっていなかったわ」と、助けを求めるように、縋るようにネイバーへつぶやく。彼はそんなわたしの頭の上で、静かに言った。
    「ボクは一度、イッシュ全土を旅したことがあるんだ。今までに見たことがないさまざまな人やポケモン、考えや感情と出会って、ボクは確信した。“好き”という思いは、この世の中を作り出す数式ですら測ることができない、無限の可能性を秘めているってね」
    彼は続ける。「ミミはダストダスを好きでいるけど、それ以上に、もっとキミのことを好きだ。そして、キミもきっとそうだし、それでミミは満足だって思ってるよ。――お互いがお互いを、全て知ることなんて、不可能さ。それだけど、強く、誰にも何にも解けない、好き、という感情でつながっている絆をキミたちは持ってる。それさえあれば、充分なんだよ」
     彼の言葉の後、ふ、と感じるミミの視線。彼女はそっと頷いて、そうして、すっと、闇に溶ける。視線を泳がせ見上げた先、ネイバーは、いつのまにかわたしを見つめていて、その瞳は身をかがめて近づき、そうして、「何も泣くことはないじゃないか」と、溢れだした何にも言い尽くせない感情で、馬鹿みたいに泣きじゃくるわたしの髪を、ゆっくりなでてくれた。

     瞬間の、ゆらめき。先ほどの地面からくる感覚も、視界も、先ほどとは比にならないほどの衝撃に襲われる。やはり沈着なネイバーは言う。「“ゆめのけむり”で吸い取ったミミの夢が、終わりかけてるんだ。そろそろ、キミは現実世界へ強制的に連れ戻される」
     ネイバーとの別れは、一閃の光によって、刹那のうちに過ぎ去ってしまうようだ。劈くような耳鳴りに瞑った瞳。開いた光景は、白く濁って、宙に浮いているような、水に浮かんでいるような感覚に苛まれる。そのままだんだんと彼とわたしの距離は大きな川に流されるように引き離されてゆき、ああもっと、もっと一緒に話したい、もっとそばにいてほしいなんて、そんなこと、とても言えなくて、へたり腰が砕けたまま、わたしは涙で遮られた視線の先を仰ぐ。これが彼との永遠の別れみたいに、それこそ、この出来事が夢のように思われて、体の中、爆音で響く心臓の音の奥。
    「――!」白く薄れゆく視界の奥で、わたしの名を叫ぶ、彼の叫びが聞こえた。その声に、まどろんでいたような意識が引き戻され、彼の、わたしへ差し出す手のひらを、その先でとらえた。わたしもそれ目がけ、必死に指先まで手を、伸ばす――。
     さあ、指先が触れ合った。
     彼の指がわたしの指に絡まり、そのまま、また近づく距離。重なる視線。そこにいるのは、ああ、先ほどまでの男性とは違う、緑色、長髪の青年だった。「これが本当のボクの姿。キミのトモダチの夢が終わったから、戻ってしまったようだ」説明の後、びっくりしたかな? 彼が笑いかける。「少しね」涙を拭って、わたしもほほ笑んだ。そうして、「キミには夢があるといったね」そう言って、一呼吸。
    「その夢、叶えろ!」彼は馬鹿のようにまじめな顔で、力強くわたしに向け、はっと息をのむわたしへ、また続けた。「キミとミミなら、これから先、どんな困難にだって乗り越えられる。その夢をかなえた頃に、キミに会いに行く、だから、涙を拭いてさ」うん、うん、と、わたしは何度もうなづいて、「ありがとう」と、繰り返した。
    日々を迎え、送り。毎日に人生を変えるようなイベントがあるわけじゃなく、同じような積み重ねの中で、時間がすっと過ぎていく、流れていく。夢を追いかけて選んだ人生を歩んでいる、だのに、その目的である夢がいつのまにか日常の不安や焦燥に紛れ、忘れ去られてしまっていた。でもわたしは確実にそれを叶えるために行動をしていて、それを自覚できた今、夢を叶えろというたったのその一言で、ミミとの絆を確かめられたことで、黒い遮蔽の中で霞む思いも自信も、これからの道さえも、きっと見つけることができる。だなんて、そんな気がした。
     ネイバーはそんなわたしの考えを見透かしてかわからないけれど、少しの沈黙のあと、「きみならできるさ」と、風に揺蕩うような前髪をかき分けた。そんな彼の体が、だんだんと透け、白く濁ったような背景の色と同化する。もう、お別れのようだ。「それじゃ……」わたしから切り出す。ネイバーも、うなづいた。

     彼が、わたしが、指先を解く。ああ、遠ざかっていく、瞳。薄れる聴覚と意識の隙間に、彼の声が聞こえた気がした。
    「サヨナラ」


      [No.1217] 上野オフメモリアルアルバム 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/05/22(Sun) 22:17:56     137clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    上野オフメモリアルアルバム (画像サイズ: 1200×761 192kB)

    上野のおもひでをまとめてみました。
    科学博物館はミイラ以外は撮影できます。


      [No.1216] マサポケオフ2日目in上野 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/05/22(Sun) 20:21:58     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    マサポケオフ2日目in上野 ダイジェスト


    ●数日前
    鉱物マスター久方女史より国立科学博物館に行きたいというリクあり、じゃあ予備日に行こうぜという話になった。

    ●前日
    明日行く人ーとオフ参加メンバーから参加者を募ったら、久方さんとNo.017の2人しかいない。
    欠席理由は主に金欠と審査の関係。
    そこでチャットで呼びかけたところ茶色氏が23区内在住、と口を滑らせる。

    017「来なさい」
    茶色「じゃあ、流月さんにも来て貰います」
    017「おk、流月さんも参加ね」
    流月「ちょっと!? トイレに行ってる間に参加決まってるんだけどどういうことなの!?」

    流月さんはラージサイズの文字で不在を主張したが、それはチャットメンバーによって華麗にスルーされた。

    017「じゃあ、メール送るねー」

    こうして流月さんの強制参加が決まった。
    その頃、ツイッター上で運悪くツイートしていた本棚システム開発者Y氏。
    017にロックオンされ、参加させられることに。
    かくして彼らは上野駅公園改札にて集合の約束をした。


    参加者(敬称略):

    No.017
    久方
    茶色
    西条流月(強制参加)
    本棚システム開発者ことY氏

    こま(メール参加)
    てこ(電話参加)
    586(メール参加…?)
    きとかげ(チャット参加)
    音色(チャット参加)


    ●当日

    改札前で待っていると茶色氏がやってくる。
    そうして改札外で待ってた久方さんと合流する。

    017「ところで流月さん(強制参加)って茶色さんのお知り合いなんですか」
    茶色「いや全然」
    017「ちょwww」

    ここで明らかになる接点のなさ。

    586(メール参加)「(強制参加の話を聞いて)これぞマサポケクオリティwww」

    そのうちにY氏(紳士)と流月氏(強制参加)が到着する。
    一同は国立科学博物館へ。


    ●国立科学博物館

    国立科学博物館(こくりつかがくはくぶつかん、英称:National Museum of Nature and Science、略称:かはく、科博)は、独立行政法人国立科学博物館が運営する博物館施設。「自然史に関する科学その他の自然科学及びその応用に関する調査及び研究並びにこれらに関する資料の収集、保管(育成を含む)及び公衆への供覧等を行うことにより、自然科学及び社会教育の振興を図る」ことを目的とした博物館である。(wikipeddia より)
    そしてオフ参加メンバーを奇行に走らせる魔境である。

    オフメンバーの主な奇行

    ・ヒグマの剥製を見て「リングマだ!」と口走る
    ・シカの剥製を見て「オドシシだ!」と口走る
    ・ウサギの剥製を見て「ミミロップだ!」「ニドランだ!」と口走る
    ・ウサギの剥製のポーズに制作者の妙なこだわりを感じ取り「ポケモン世界にミミロップの剥製を作る職人がいたらセクシーポーズをとらせるに違いない」と妄想を膨らます
    ・カラスバトを見て「ブラックピジョンさんだ!」と口走る
    ・キジの標本を見て「ケンホロウがいる!」と興奮する
    ・雀の剥製を発見。「スズメさんがおる……」と呟く
    ・要石に鎮められたナマズの絵を見て「ナマズンがミカルゲさんにやられている」と解説する
    ・世界最大の蛾の標本の前で「ガーメイルだ! ガーメイルがいる!」と口走る
    ・アンモナイトの化石の前ではもちろん「オムナイトだ! オムスターだ!」と口走る
    ・大きなアンモナイトに皆で手を当て宇宙人との交信を始める
    ・古代人から現代人への進化の展示、男(おじさん)の顔の作りに妙なこだわりを感じ取る(女より明らかに気合いが入っている)
    ・茶色さんは縄文人と一緒にいる犬が気に入ったようだ
    ・現代人部分の展示は現代人自らが入り展示品となる仕様。Y氏が入り、撮影会に。Y氏は犠牲になったのだ……
    ・銅鐸を鑑賞。「テンガン山にはこれがいっぱい浮いてるのか……相当に銅鐸文化が発達していたようだ」と考察を述べる。
    ・日本各地の骸骨を観察。「586さんは縄文型だな……」とつぶやく
    ・葉っぱの化石を見て「リーフのいしだ!」と興奮する
    ・忠犬ハチ公は秋田犬なのででかい。映画は所詮柴犬サイズである
    ・魚の展示を見てお腹がすいてくる
    ・フタバスズキリュウを見て「リアルラプラスだ!」と叫ぶ
    ・首長竜はモノを喉に詰まらせて窒息死しないのか本気で心配する
    ・ウタツサウルス(魚竜)の顔が茶色さんに似ていると017が主張。目元が似てた
    ・料亭のおじさんが集めたという鉱石コレクションが壁一面の展示。久方さん大興奮。博物館にヤミラミを入れてはいけないとういう結論に達する
    ・数ある標本の中にひときわもふもふなアカギツネの剥製を発見。もふ神様を前に撮影会となる。隣にあるリングマの標本は華麗にスルーされる
    ・ミュージアムショップに並ぶ「かいのカセキ」「ひみつのこはく」に誘惑される

    奇行を繰り返した後に、お腹が減ったので昼ご飯を食べに行くことにする


    ●Y氏プロデュース、優雅なティータイム

    Y氏いわく近くに良い感じのカフェがあるという。
    公園まわりをぐりりと歩き、案内されたのはオサレなカフェ。

    こまさんからメールが来る「カフェレポよろしく」。
    紅茶の画像を見せつけるように送ったところ、「まさか!麺つゆ?」と返信される。

    017「ちげーよ!」
    こま「ちゲーチス!」
    017「だめだこいつはやくなんとかしないと」
    こま「これだけは自信を持って言える! 手遅れです」
    017「ここに病院を建てよう」
    こま「週末病棟ですね!! わかります」

    わけがわからないよ。
    とりあえずデザートの画像を見せつけるように送っておいた。

    てこさんから電話がかかってくる。
    順番に少しずつお話しする。
    かわいい声だった。襲いたい。

    しばしオサレな店で優雅なティータイムを満喫する。
    が、だんだん雲行きが怪しくなり雨が降り出してきた。


    ●雨が降るとユニクロが儲かる

    結論から言おう。
    我々が店から出たとき、雨ザーザーでやばかった。
    用意のいい男性勢は傘を取り出すが、女性勢は持っていない。
    先導するY氏を先頭にし、茶色+017、流月+久方で豪雨の中を進むこととなった。

    017「カイオーガがあらぶっているようだ。グラードンを頼む。レックウザでもいいよ」

    きとかげ(チャット)「それは雨ごいを覚えたカゲボウズが降らしているんですよ」

    なんということだ。
    留守番チャットに溜まる怨念を食って元気いっぱいのカゲボウズに住人らは雨乞いを覚えさせたらしい。
    なんという逆襲であろうか。
    皆が上野駅についた頃には傘から外れた半身、傘に入った半身で色が違っていたのだった。
    我々は悟った。オフの持ち物には折りたたみ傘(必須)の要項を設けるべきだと。

    レッスンの為、ここでY氏とはお別れをした。
    我々は次なる行動を健闘する。「何か食べるか、それとも服を買うか」
    とりあえず寒くてしょうがないので 我々はユニクロへと足を運んだ。

    ユニクロはネタTシャツ……じゃなくて企業ロゴTシャツの宝庫だった。
    「あかいきつね」「みどりのたぬき」「明治チョコレート」「亀田製菓」「エビスビール」……無駄に種類豊富である。
    茶色さんは「みどりのたぬき」を欲しがっていたがあいにく在庫切れだった為、「TOKYU HANDS」をチョイスし、久方さんは「共和の輪ゴムの箱柄(http://www.amazon.co.jp/gp/aw/d/B001CQYGME/ref=aw_d_iz_office-products?is=m)」をチョイスした。
    017はファスナーがついた長袖を買った。自分の小説キャラに着せてファスナーを下ろすというあらぬ妄想を展開していた為、久方さんに白い目で見られた。
    着替える。身体も温かくなったので我々は腹ごしらえをすることにした。


    ●バナナの天ぷら

    流月「あったかいものが食べたい」
    茶色「うどん食べたいですね」
    017「うん、うどん食べたい」

    我々は雨にうたれ暖かいうどんを所望していた。上野駅のレストラン案内を見る。
    すると都合の良いことにカレーうどん屋があるではないか! 我々は真っ先にそこへ向かった。

    「前会計になりまーす」

    お店のお姉さんにそう案内されて我々はメニューを見る。
    するとそこに妙なラインナップを発見した。

    「バナナ天カレーうどん \1250」

    017「……バ、ナナ?」

    ツッコミどころは\1250という値段ではない。もちろんバナナである。

    twitter
    --------------------------------------------
    pijyon No.017
    バナナ天カレーうどんとかわけがわからないよ

    586 586
    @pijyon kwsk
    --------------------------------------------

    これはオフレポの為に注文するしかない。身体を張るしかない。
    おもむろに注文をすると久方さんがチャットに報告をした。

    音色(チャット)「うまいのかそれ?」

    他のメンバーがきわめて平々凡々な……否、定番メニューを頼む中、私のもとにはカレーうどんと皿に乗ったてんぷらが運ばれてくる。
    しかしいつもと違うのは、てんぷらの中身がバナナだとうことである。
    一本丸々を衣で包み、揚げて、真ん中から切って 中身がバナナだということをこれでもかと主張している。
    ……まずはカレーうどん(単品)をいただくことにする。

    うまい。
    単価が高いでけあって クオリティが高い。
    麺には腰があってシコシコだし、カレーのスープもよい味だ。今なら雨補正もかかっている。
    問題はバナナである。
    箸でつかむ。カレーにてんぷらを浸し、パクリと一口。

    あ、以外とイケる。うまい。

    天ぷらの衣は文句なくサクっとしており、口に広がるバナナの甘み。それがカレーとほどよく合うのである。
    まーそりゃあ どこぞの登山カフェじゃあるまいし、合わなきゃメニューにしねぇよなぁ……
    しかし考えた人と通した人はすごいと思う。

    ありがたやー これも雨乞いカゲボウズのお導きに違いない、と 017はカゲボウズに感謝するのであった。
    (これをカゲボウズ教という)

    ポケモンの世界にはポケモンに雨を降らせて、傘を売って設けてる商人がぜったいにいると私は思う。

    店を出る。上野駅改札に移動。
    久方さんの新幹線の時間になったので、我々はここで別れることとなった。

    久方「あっ、うどん屋に帽子忘れた」

    この後、017がうどん屋に走って戻ったのはまた別の話である。



    上野オフダイジェスト 完



    ●余談

    茶色「どこまで行くの?」
    流月・017「山手線で○○まで」
    茶色「なんだ方向一緒じゃん」


    オフ会は帰るまでが オフ会です



    二日間、ありがとうございました。


      [No.1215] 【再掲】沈黙するブルー。あるいはマロニエの午後 投稿者:むぎごはん   投稿日:2011/05/22(Sun) 17:32:02     90clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5




    「わたしにはできないよ」

    私の一番好きなブルーを窓から差し込む柔らかな光にさらしながら、その祝福を全身で受け取るその姿の滑らかさといったら、この世を作りしたもう神に愛されているとしか思えぬほどの見事の曲線だ。彼ら、ヌオー達の美しく滑らかな曲線に魅せられた芸術家は多い。それ故に古今東西のありとあらゆる、水に関する芸術にはヌオーのモチーフが用いられてる。水と豊穣の証として。

    「わたしね、叔父さんに憧れて絵描きになったの」

    叔父さんは、あなたのお父さんヌオーのパートナーよ。
    黙したまま何も語らず、一本の樹木のように佇む後ろ姿をキャンバス越しに見つめる。まろやかな背に映った梢の陰に、スカイブルーが豊かな表情を見せてくれる。

    「叔父さんのブルーに憧れて、カスチョリーネのスカイブルーを愛して、ミケランジェロのコバルトブルーに恋をして、そうして私は画家になったのよ」

    梢と風のワルツに併せて、マリン、コバルト、プルシアン、セルリアン、ターコイズ、微妙に、しかし鮮やかに変化するヌオーの姿は美しい。美しいというしかない自分の語彙のなさが悲しくなるぐらい美しい。
    確かに彼らにはミロカロスのようなわかりやすい華やかな美しさはない。されども、彼らには調和の美しさがあった。躍動と静穏、二つの対立した物を併せ持った美しさ。彼らは不完成であり、また完成した生き物だ。

    「ねぇ、豊穣の子。躍動と静穏の器。神の作りしたもう生きた彫像。どうしたら、わたしだけの青が作れるのかしら」

    教えてよ、青の王。私はどうすれば良いの。
    揺れるマロニエの木立を、白い桟のフランス窓から見詰める彼は何も答えてはくれない。ただ、この世の何よりも尊いであろうブルーとしてそこに存在していた。あらゆる美を静かにまとって。
    その静けさに、キャンバスに幾度と無く塗り重ねたブルーがじわりと滲んだ。
    冷たい塩水で油絵の具は溶けないはずなのに。







    ―――――――――――――――――――――――

    ありがたいことに再掲希望のお声を頂きましたので、恥ずかしながら再掲させていただきました。
    ほんとうにありがとうございました。

    【なにしてもいいのよ】


      [No.1214] 俺のブラック螺旋な日記 ※唐突BAT END 投稿者:音色   投稿日:2011/05/22(Sun) 16:26:07     165clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     彼女は強かった。
     真実を求める白い英雄に選ばれた。そして理想の黒い英雄の僕と戦い、勝った。
     ただ彼女は選ばれたことを放棄した。
     英雄であることを拒んで、僕と戦った。


     ライトストーンから復活したレシラムをボールに収めた彼女は、一度だけ彼を外に解き放ち、一言二言レシラムに語りかけた。
     よくは聞こえなかった。ただ白いドラゴンの『承知した』と言う言葉だけが耳に残り、彼はボールに戻り、そして小さくなった。

    「どういうつもり?」

     ポケモンの入ったボールが小さくなる。その意味は、ボックスに入る、という事だ。
     つまり彼女は

    「レシラムは使わない」

     そう言って、彼女はただのトレーナーとして、ボクに勝負を仕掛けた。


     そして彼女は勝った。ボクが初めてゼクロムと会った塔の名前を持つトレーナーは、あくまでも英雄ではなく、自分の仲間たちと勝利をおさめた。
     元々無口な彼女は、勝利した後でもなにも語らない。
     
     
     そのあとのことは、嵐のように過ぎ去った。

     語られるゲーチスの野望、彼女とゲーチスのバトル、そして、

     崩れ落ちるラセン。


     彼女とゲーチスの最初のポケモンは奇遇にも同じデスカーンだった。
     ラセンのデスカーンはボクのゼクロムを倒す程のレベルではあったけれど、どくどくを喰らい、守りに入るゲーチスのデスカーンとシャドーボールの乱れ撃ちで会い打ちとなった。

     飛び出してきたバッフロンに対抗して彼女のダゲキはインファイトで吹き飛ばす。
     持ちこたえそうになった相手に素早くもう一発をお見舞いすると同時に、飛んできたワイルドボルトにはじかれ彼女は彼を素早く入れ替えた。

     戦闘時には普段のおっとりした様子が一変するワルビアルのダメ押しに、交代で出てきたサザンドラが波乗りで押し流す。
     相性もあって弱り切る彼を彼女は静かにボールに収め、スピードで勝るペンドラ―を繰り出した。

     ここまでは互角に近かった。むしろ、彼女がゲーチスを押し切っているようにさえも見えた。
     そして、螺旋が狂いだしたのは次の瞬間からだ。


     メガホーンで押し切ったはずのサザンドラは持ちこたえ、大文字に焼かれたメガムカデポケモンを彼女は戻すためにボールを取りだし動きが止まった。その瞬間をゲーチスは狙った。
     彼女を守るポケモンが場にいない中、ヘドロウェーブが無防備なラセンを襲う。
     毒の波をかぶって柱に叩きつけられる。チャンピンも、チェレンというトレーナーも、そしてボクも何もできなかった。

    「言ったはずですよ、邪魔なモノは排除すると」

     サザンドラの後ろに控えるガマゲロゲが笑っている。卑怯だと声が上がる中、彼女のボールから咆哮が上がった。
     残りの三匹が飛び出してくる。指示が出せない主人に代わって。

     サザンドラとガマゲロゲの双方から濁流と波乗りが合わさる。相性が一番悪いのを分かってか、ドリュウズは即座に穴を掘り回避に専念した。
     残り体力が危ういダゲキを庇うように彼女の最高の相棒がグラスミキサーを発動する。
     気付けば彼女は立ち上がっていた。ヘドロ塗れの体はそれでも彼等に指示を出す。

     全ての波が緑の渦に弾き飛ばされ、サザンドラにドリュウズの一撃。堕ちるドラゴンの後ろからキリキザンが飛びだす。
     辻斬りと切り裂くがぶつかり合う中、ジャローダのリーフブレードがラセンを襲った毒蛙にお見舞いされる。
     ダゲキのローキックがキリキザンの止めとなったその瞬間、彼はアクロバットで吹き飛ばされた。

     シビルドンが勝ち誇ったかのように電気をまき散らす。エースのプライドか、はたまた不意を突かれたのが悔しいのか、火炎放射を喰らい倒れてもなお立ち上がるジャローダ。
     特性のおかげで得意の地震が当てられない中、岩雪崩で会い打ちを狙って、火炎を喰らいドリュウズも倒れた。

     ここまでくれば、赤子にだって分かる。

     ポケモンが毒や火傷といった症状でも軽症で済むのはその強靭な肉体のお蔭であって、人が同じ物を受ければどうなるか。

     彼女は確かに並みのトレーナーよりも体力があった。しかし、それでもボクとの戦いにおいて消費しすぎていた。

     ジャローダが最後の力でシビルドンに抵抗するのと同時に、彼女はゆっくりと崩れ落ちた。


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  昨日ついうっかりでブラックをクリアしてからわき上がった妄想。

    ゲーチス「ワタクシはアナタの絶望する瞬間の顔がみたいのだ!」…のセリフで来た。色々と来た。「じゃあ主人公絶望させようか」となった。

    ゲーチスさんマジ最高。

     バトルの中身は半分本当です。
     にしてもラストバトルで手持ちにレシラムいないってどういう事(爆)

     ハイパー俺得です。スライディング土下座しておくね

    【主人公の名前はラセンです】
    【なにしてもいいのよ】


      [No.1213] おつかれさまでした 投稿者:586   《URL》   投稿日:2011/05/22(Sun) 10:26:59     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    おつかれさまでした (画像サイズ: 480×800 39kB)

    遅ればせながら、皆さんお疲れ様でした!

    書きたいことは山ほどあるのですが、とりあえずどこかのタイミングでとりまとめてアップしようと思います。備忘録代わりにダイジェストだけ掲載。

    ◆探検隊のような風貌で出現したイケメンのMAXさん
    ◆レイニーさん貫禄の重役出勤
    ◆10人中9人(購入者以外全員)に殴られたりつつかれたり「おら経験値よこせ!」と愛されるタブンネちゃん
    ◆586さんは「5さん」「8さん」「6さん」の3人グループで、今日訪れたのは8さん
    ◆いや586さんは586人いる! 調べ物係とかタイピング係とかチルチルちゃん係とかタブンネちゃん可愛いよ係とかがいるんだ! 今日来てない残りの585人は寮の部屋に詰め込まれているんだ!
    ◆キトラさん「やめたげてよお!」(タブンネちゃんを自らも殴りながら)
    ◆風間さんの持ってきたバチュルが尋常でない可愛さ
    ◆レイニーさん「ティロ・フィナーレ!」→一同「こんなの絶対おかしいよ」
    ◆小樽さんのあまりにも高すぎる歌唱力
    ◆ボカロとサンホラとアニソンが乱舞していたという鳩さん・久方さん・CoCoさんのいた部屋は「生贄部屋」と呼ばれていた
    ◆カラオケでニャースのうたをリクエストした直後にチャットへ乱入するニャースとペルシアン
    ◆「カゲボウズに乾杯!」
    ◆鳩さん「スズメさんおいしいよスズメさん」(鶏団子鍋を貪り食いながら連呼)
    ◆鳩さん「寝る間際によからぬ妄想をすることは良くあるよね!」→586「【定期post】マサポケはよい子も楽しめる優良サイトです」
    ◆風間さん「今友達に頼まれてQB作ってる」
    ◆CoCoさんと風間さんのいる高校のクオリティがすべてにおいてぶっ飛んでいる
    ◆勝利のご利益を一同に吸われていく朱雀さんのビクティニ


    とまああまりにいろいろありすぎてまとめきれないんですが、とりあえず楽しかったです!

    写真はチルチルちゃんにジャンクション(契約)したタブンネちゃんです。手前のネコはおまけ。


      [No.1212] フワンテが絡まってた 投稿者:音色   投稿日:2011/05/21(Sat) 23:52:34     106clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ホウエン地方からめでたく帰還。おまけもいっぱいで屋敷に帰ってきました。
     ゴ―スゴーストどもがわらわらお出迎え。ゲンガ―もぞろぞろやってきて、愕然としていた。
     そりゃあなぁ。
     数十匹の無表情な抜け殻、密航してまでついてきた穴掘り職人、こちらで珍味でも食おうかと思ったのか黒坊主どもに、実家から送られてきた段ボールに詰まっている黒ぬいぐるみ。
     あげく、こちらに来てまで新ルート開発する気満々の案内人ぷらすアフターケアサービス。

     ・・そりゃ同類でも唖然とするよなぁ。
     私だってどうしてこうなったんだかもう良く分からん。もー好きにしやがれお前ら。

     どたばたと一気に館が狭くなる。おいこら、掃除するんだ。居候する気ならお前ら手伝わんかい!
     ほらそこ、ハタキ持って。雑巾絞って!丁度いいや、古新聞あるから窓磨いてくれ。そっちは庭で草刈りよろしく。洗濯は私の特権だ、邪魔するな。手ぇ抜く奴は片っ端から掃除機で吸いこんでやるから覚悟しやがれぇぇ!
     こうして帰って来たその週末で全面掃除を終わらせた。いや―数がいると早く終わるね本当に。

     そんでもって日常で何か変わったかと言えば、かわらねー。びっくりするくらい変化がない。
     ヨマワルガイドがついてゴ―スがついて来てたまーにヌケニンがついて来てくれるレベル。うん、ホウエンと変わらん。
     ゴ―スを洗濯、ゴーストとのデート拒否、ゲンガ―と菓子作り、以下略、面倒になってきた。

     それでもゴースト人口は増える。解せぬ。・・ネタやってる場合じゃない。


     カゲボウズと一緒に洗濯もの取り込んでたら、物干し竿になんか引っ掛かってた。
     とゆーか絡まってた。
     紫風船・・フワンテかこれ。

    「ふゆーん」
    「ぷわわー」

     ・・・そんな情けない声でこっち見るなよ。なにがどうなったらお前ら人の家の物干し竿に器用にこぶ結びで絡まってられるんだ。
     仕方がなく、物干し竿と一緒に風船も取り込んだ。


     さて、こいつらをどうするか。両手が仲よく・・は、無さそうだけども細―い腕がゴチャッとなってる。
     興味津々なゴ―スども。まぁ、確かにこの辺はフワンテなんてあんまり飛んでこないしなぁ。
     ・・しかしこれを手でほどくとなると結構面倒くさそうなんだけども。
     あ、ゴースト何それ。ハサミ?あぁ、切っちゃえば簡単にほどけるっていう発想ね、ナイス。

     ・・・って、やめんかい、アホ。
     フワンテどもビビりまくってるじゃないの。ほら片付けた片付けた。

     そういえば知恵の輪苦手だったな私・・。ほどけねー。むしろさらに絡まった。どうしよう。
     おい誰か手がある奴で手先が器用な奴交代して。私無理。パス。


     結論、何匹か試行錯誤した結果どうにかほどけた・・。
    「ふゆーん」
    「ぷわわわー」
     ふゆ―んの方をフユンテ、ぷわわ―の方をぷわんてと呼ぶことにして見分ける。かわいいと言えばかわいいけども、正直言ってもう絡まるんじゃねーぞって言う気持ちの方がデカイ。
     あともうゴーストタイプ増えんな――!
     叫んでも無駄な気がする・・けどね。


     とりあえず外に返す。あっさり風に流されて飛んでった。


     後日、また絡まったのは言うまでもない。数が増えて。

    「だからどうしてこーなるんだ!」

    ―――――――――――――――――――――――――
    余談   ゴーストシリーズを根性で書いてみたらこうなった

    【これもう疲れてきた】


      [No.1211] 友曰く、「我が夢、潰えり」と。 投稿者:CoCo   《URL》   投稿日:2011/05/21(Sat) 08:58:17     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「wi-fiは現実を見る場所だよね」

     友人は言った。
     私は彼女の、熱もって喋り出すたび口の端からものをこぼす癖が嫌いである。

    「一度はあるじゃん、玉砕」
    「ああ」

     なつかしい。
     スーパートレイン解禁に浮かれ、まあちょっとやってみるだけ、だけならいいよねと、ストーリー攻略パーティで挑み、のっけからサザンドラに三タテされたあの日。

    「だからってマジさぁ、あたし相手にガチパはやめてよね」

     そう。彼女は手加減ない。容赦ない。
     こっちが道なりで育てたポケモンなのにいつもガチパで攻めてくる。するとこっちはタスキだのヌケニンだの、姑息な工夫をしなければ一匹たり落とせないのだ。

     彼女は要領を得ない顔をする。

    「じゃあそっちもガチパつくればいいじゃん」

     こういう高圧的なところも嫌いである。

    「やだよ、種族値とか知らんもん」
    「教えたげるよ。種族値っていうのは、ポケモンそれぞれの種族がもともと持ってるステータスの値のことで」
    「いやいやいや、いいよ、だいたい知ってるけどさ」

     かつては廃人を目指そうと(なんだかよくない表現だが)したこともあった。
     しかし断念した。私の好きなポケモンはみんな、いわゆる弱い、お払い箱の隅っこに固まったような子ばっかりだった。攻略サイトなんかを除いても、あいつはあれの劣化、使い道云々。これではNでなくとも城からアイキャンフライである。プラズマ団が解放運動をしたくなるのも分かる。

    「ガブリアスとかさぁ……なんていうの、強いポケモンは分かるけど。そしたら、好きなポケモンでやれないじゃん。だったらあたしは弱くても、好きなポケモンと旅してたいわ」

     強くなるだけが、全てじゃないしね。
     そういうと、彼女はぽかんとした。
     強くなることだけが大事じゃない。盲目の勝利の先に何があるというのだ。

    「違うよ」

     すると彼女は、しばし口元に残していた箸を置いて、真剣な目で言った。

    「うちだって玉砕したよ。好きなポケモンだけでさ。挑んで。厨ポケにフルボッコにされたよ。でも悔しいじゃん。勝ちたいじゃん。好きなポケモンで。大好きなパーティで勝ちたいじゃん。やっぱりポケモンはバトルなんだよ。他にもいろいろ増えたけど、初代からずっとさ、あるじゃん、やっぱりバトルがいちばん重いよ。だから勝ちたいの。だから必死に種族値だのVだの調べて、寝る間も惜しんで努力値振って、全部ノートに書いて計算して、戦略立てて、戦うんだよ」

     好きだから勝ちたいの。You know?
     ああ、こういう気取ったところも痛々しくて嫌いだ。

    「廃人やるのだって楽じゃないよ。計算ミスってアッーすることもあるし、完璧だと思った戦略がちょっとしたところから崩れたりとか、寝不足なったりとか、親指荒れたりとか。でもね聞いて、このあいだクリムガンで廃ガブぶっ潰したの」

     嬉々として状況を語る彼女はまた私のスカートに玉子焼きのぼろぼろしたのを飛ばしまくっている。
     まあ、いいか。鼻につくとこもある彼女だけども、私はその情熱が嫌いになれなくてこうして、一緒に弁当を囲んでいるわけなんだから。

     ちなみに、廃人に成りきれない私は今、色違いひでりロコンを求めて三番道路の主になっている。


    ***
    【描いてもいいのよ】
    【書いてもいいのよ】

     あれ? タグがついてないのに書かせていただいてしまいましたごめんなさい……
     ご迷惑だったら消します。
     友人がモデルですがいやなやつにしすぎた。ごめんなさい。
     廃人は自分が死ぬ気で育成したポケモンをどうしても見せびらかしたいんだよ、あんたが死ぬ気で書いた話を「みてみてーーー!!!」ってやるのと同じだよ、みたいなそんなことを言ってた従兄もおりました。
     たまにはwifi武勇伝など聞いてやって、すげーすげーと褒めてやってください。たぶんとても喜びます。
     とかそんな話でした。
     余計なお世話乙。

     やばい時間ない。支度してオフ会いってきます。


      [No.1210] 友人が提案して来た 投稿者:音色   投稿日:2011/05/20(Fri) 23:49:39     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「だいたい性格一致とか努力値とか6Vとか卑怯なんだよ」
    「は?」

     弁当食ってる横で何を言い出すんだこいつは。
     さっきまでは確かに昨日、バトル狂にぼこぼこにされたと嘆いていた友人が愚痴りだした。

    「いや、卑怯というかゲームのルールにのっとった戦略だろ」

     俺は興味ないからやらないけど。後、面倒くさいし手間かかるし。よく分からんし。

    「けどさ、ただの趣味が合うもん同士で慣れ合いバトルしようぜ―ってノリでガチパ連れてくるか普通!?」
    「対人戦ならそれ普通じゃないか?」

     つまるところ、適当に殿堂入りしたら満足な友人はバトルサブウェイを究めようとしている別の友人にガチパで来られたことが気に食わない、らしい。
     いや、だったら相手に調整してもらえばよかったんじゃ。

    「俺本気パーティで行くぜ―って言ったんだよ。そしたらそいつもじゃあ俺はいつもの、って」
    「それどんなの、本気って」
    「殿堂入りするときに使った奴」

     あぁぁすでにそれ会話噛み合ってないじゃん。廃人な奴の普通は通常プレイの三倍近くのステータスの奴ぶつけてくるって意味だろそれ。

    「負けるとムカつくんだよね」
    「それが勝負だろ」
    「しかも向こうのガチパに全く歯が立たないと余計ムカつくんだよね」
    「それも勝負だろ」

     早いところ話題興味変えてくれ。興味ないからバトル。俺はゲームの世界に乗っ取ってあれこれ妄想する方が趣味だから。
     この間のアニメ感想の話題に変えたい俺を盛大に無視して、無茶苦茶な事を言い出す友人。

    「あれだ、逆縛りバトルやろう」
    「ごめん、日本語が分からない」

     何だ逆縛りって。ていうか、個体値やら性格一致って別に縛りじゃないだろう。厳選だろあれ。

    「まず、使うポケモンに条件つけるだろ」
    「どんな」
    「性格不一致。VなしUもなし。努力値も狙って振らない。そんなポケモンだけでバトルする」

     つまり廃人狩りかなんかがしたいのかお前は。
     そんな条件でバトルしてどうするんだ。

    「だって性格一致とかのために時間かけるんなら、逆にむちゃくちゃ弱いポケモンだけでバトルしたほうが面白くね」
    「いやそれはどうか分かんないけど」

     時間はかからないかもな。ある意味で。しかし努力値のところに関してはどうしようもないような。
     ドングリの背比べよろしく面倒なバトルになりそうな気がする。ひたすら睨みつけるとかそんな感じの。

    「とにかくガチパを使ってくる奴にこ―ゆー縛りをぶつけてバトルしたいんだよ」
    「つまり自分が勝ちたいと」

     だからってそんな変なルール作るか普通。


    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  今日の昼休憩のマジ会話。一部欠けてます。
    努力値やら何やらが分からない自分には何が何でも勝ちに行くプレイヤーさんの楽しみが分からんのです。
    連勝にこだわらないもので(爆)  おかげで無理をしすぎて何回か野生ポケモン相手に全滅したこともある。
    ゲームの楽しみは人それぞれってことで。

    【しかし嫌みなほどガチパを使って傾向が違う人(べつにバトル狂でもなんでもない人)を叩き潰しに行くと嫌われやすくなりますよ多分】


      [No.1209] You can do! 投稿者:でりでり   《URL》   投稿日:2011/05/20(Fri) 19:57:50     140clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     きっかけはとある春の日の体育の授業だった。
     たまたま風邪をひいてて見学していた私は、アクティブさが微塵も感じられない女子のバレーから目を背けて、男子のサッカーを見つめていた。
     ……いや、気付けばいつの間にか私の目線は薄汚れたサッカーボールから一人の男子を捉えていた。
     走り回りながらも決してしんどそうな顔を見せず笑顔でグラウンドを軽い身のこなしで駆け抜け、チームの皆に指示を出すあの男子。
     確か大和っていう名前だったかな。中学二年生に上がったばかりだから、クラスメイトとはいえクラス替えしたばかりだし、そもそも異性の名前というものは覚えにくいものである。
     とにもかくにも不思議な引力が働いて、私は彼から目が離せないでいた。
     相手のディフェンスをフェイントでかわし、ゴールネットにボールを突き刺してはしゃぐ彼。私もつられてガッツポーズして、ちょっとしてから何やってるんだろうと思ったけれども、それは沸き立つ感情からしたら些細なものであって、咎める気にはならなかった。
     気付けば体育が終わってからのその日の授業も、黒板や見飽きた教師ではなく、斜め前の席に座る彼の後ろ姿ばかり眺めていた。
     学校が終わり日が暮れて、家に帰っても上の空。家族も訝しげな目で私を見ていたけど、どうも何にも身が入らない。心配する家族をよそに唯一じゃれてきた弟のニャースには、げんこつもといミニアームハンマーをしたらその日は寄ってこなくなった。
     もちろんこの上の空の理由は分かる。寝ようとベッドに転がりこんでも、昼の出来事……いや、彼の姿が頭から離れない。
     こういう気持ちは少女漫画とかドラマとかで知っている。
    「恋……ってやつなのかな」
     と自分に言い聞かせたつもりでぽつんと呟いたのだが、ベッドの隣でソーナノ! と私の唯一な手持ちが大声を出した。馬鹿にされてる気がして腹が立つ。手の届く範囲にあったぬいぐるみをなげつけると、小さな悲鳴があったがすぐに黙った。ほがらかポケモンなんだ。どうせまた笑顔をこちらに向けるに決まっている。



     翌日は朝からひどくブルーだった。
     今日は授業でポケモンバトルの実習がある。実習自体は好きだ。体力に差があるから男女別に分けられる体育と違って、男女合同でこの実習は行われる。私からしたらとろくさい女子と生ぬるいことをしなくていいし、……何より勉強が苦手だからこういう授業はおお助かりなのだ。
     が、そのポケモンを忘れて来てしまった。
     と私は右手にモンスターボールを持ちながら思った。
     これに入ってるあのバカソーナノはこれっぽっちもバトルに向かない。バカバカいいながらそれなりにきちんと可愛がっているのだが、ソーナノがする受身なバトルはせっかちな私には向きやしない。だから大概は喚く弟の頭をはたいてニャースを連行する。あのニャースは甘いものさえ与えればちゃんと言うことを聞いてくれるのだ。
     しかし上の空の弊害で、実習のことを思い出したのは登校してきてからだった。ああ、弱った。他にも頭の中でぐちゃぐちゃ考えていたけど、もちろんどうにもなりそうになかった。



     どうしようなんて答えのでない考えを放棄して、相変わらず大和君の背中を見ているとあっという間に授業は進み、三時間目に実習が入る。
     うちのクラス四十人がゾロゾロとグラウンドまで出ると、思い思いにポケモンをモンスターボールを繰り出す。イシツブテやらコロモリやらケムッソチョロネコマグマッグ……、あとソーナノ。
     このソーナノを実習どころか他のポケモンがこんなにいっぱいいるところで出したのは初めてで、ぴょこぴょこ飛び回りながらあちこち走り出す。
    「あ、ちょっと!」
     まだ子供のソーナノは、物珍しさからか他のいろんなポケモンの方へ駆け寄り様子を見てはまた別のポケモンを見る。それを追いかけていると、ソーナノは終いには他人のポケモンとぶつかってしまう。ぶつかられたバルキーも、ぶつかったソーナノも別にケガをするでもなかったが、迷惑なのは迷惑だ。ソーナノを抱き抱えてトレーナーに謝る。
    「うちのソーナノが迷惑かけてごめん!」
    「ん? 全然大丈夫だよ」
     テンパりながら謝ってから気付いた。バルキーのトレーナーは大和君だった。意識してしまったせいか、なおさら申し訳なくなる。
    「なかなか可愛いソーナノだね」
    「そっ、そうかな……」
     それに反応して、ソーナノ! と足元から声が聞こえてうるさい黙れ、いつも通りはたこうと右手を振り上げたが、ここは彼の手前、あははと誤魔化して右手で後頭部を撫でる。
    「えー、今日はマルチバトルをします。適当にペアを見つけて、他のペアと自由に対戦してください」
     やや年老いたおばさん教師がにこやかに言い放つと、他のクラスメイトたちは思い思いにペアを組み始める。どうしよう、そう思ったときすぐそこから声がかかる。
    「ねぇ、よかったら俺と組まない?」
    「えっ!? わっ、私でいいの?」
     大和君が声をかけてくれた。しかし彼は私が驚いたことが想定外だったのか、困惑した表情を作る。
    「ダメ……かな?」
    「ソーナノ!」
    「あんたうるさい! ……じゃなくて、むしろこちらこそ!」
    「良かった、それじゃあ行こうか」
     私と彼の優しげな目が合うと、なぜだかまっすぐ見ていられなくて視線を逃がし、彼の問いかけに対して自分で言ったか言っていないかわからないくらいでうんとしか答えれなかった。
     対戦相手は大和君とよく一緒にいる男子の友人ら二人組。対戦する前に、大和、女子と組んでるのかよーと冷やかされて、彼の評価に悪影響を与えたかと思い、うつむいてしまったが、彼はそんな友人の言葉を軽く流して私に頑張ろうな、と優しく声をかけてくれた。
     でもソーナノで頑張れるのだろうか。先行きの不安から、苦笑しつつうんとだけ返す。足を引っ張るのだけは避けよう。彼の面子のためにも、私自身のプライドのためにも。
     先生の合図によって一斉にマルチバトルがあちこちで始まる。私たちもそれに続き、早速声が飛び交った。私たちは無論ソーナノとバルキー。向こうはブビィとクルミル。上手い具合に物理攻撃も特殊攻撃も出来そうなコンビじゃないか。ただただ投げやりにカウンターかミラーコートを指示するだけじゃどうにもなりそうにない。だったら!
    「体当たりだクルミル」
    「ブビィ、睨み付ける!」
     来た! その指示を待っていた!
    「ソーナノ、ブビィにアンコール!」
     そして私は大和君の方を向いて、また目が合ってややドキリと心臓が大きく鐘を鳴らしたが、クルミルをお願い、と早口で伝えたいことが言えた。でもそれが上ずった声だったから、その声が自分の耳に入ったとき恥ずかしさから顔まで赤くなって、誤魔化そうと再びポケモンたちに視線を向けた。
     彼の指示と共にバルキーがクルミルに猫だましをしかけ、怯んで動けない横をソーナノがぴょこぴょこ跳ねて場を睨み付けるブビィの元に向かい、アンコールを仕掛ける。決まった、これでブビィは封じた!
     陽は高く影は伸びていないというのに、狙ったかそうでないかは知らないけどソーナノが良いポジションにいる。
    「ブビィ、火の粉だって! 睨み付けるじゃなくて!」
     あの男子は相当バカみたいだ。鼻でふんと笑って、ソーナノにそこから動かないでと指示する。するとこちらを向いてソーナノ? と首をかしげたもんだから、ああバカばっかりだと思う。なんとか足踏みするジェスチャーで伝えたら、ソーナノは頭を縦に振る。
    「バルキー、クルミルにバレットパンチだ!」
    「クルミル、後ろに下がって避けろ!」
     猫だましから続けて一撃喰らわそうと右手を振りかぶるバルキーの攻撃を避けようとする指示だろう。しかし、クルミルは動けない。バレットパンチを受けても動かないクルミルを、バルキーはぼこぼこにする。さすがに可哀想になってきた。
    「もういいよ、ソーナノ」
     トリックは簡単、特性影踏みは、影を踏んだ相手の動きを任意である程度は抑える効果。これでクルミルをサンドバッグにしたのだ。すっかり動けなくなったクルミルをボールに戻した男子をよそに、ブビィはようやく動けるようになったらしい。
    「ブビィ、今度こそ火の粉!」
    「ミラーコート」
     油断だらけだ。さっきから火の粉火の粉って言っていたら、こう対処すればいいだけで、ソーナノが受けたエネルギーの倍のエネルギーをそのまま返せばあっさりブビィは動けなくなった。
    「ふぅ……」
     ほっと胸を撫で下ろす。大和君の足を引っ張るとかそんなこともなく無事に勝てた。そうのんびり余韻にひたる間もなく、大和君がやったな! と声をかけてくれる。そして彼は右手を顔の横くらいに持ち上げる。それが何を意味してるか分からないでボンヤリしていると。
    「ハイタッチ」
     と彼に言われて慌てて右手を彼のと重ねる。
     パシィンと響かせて、彼の肌に触れたんだなぁと思うと、右手が感じる温もり以上に顔が熱くなって真っ赤になる。
     またまたうつむいてしまうと、大丈夫か? 保健室行く? と尋ねられて慌てて首を横に振る。
     あぁ、保健室の先生が恋の病とか直せたなら喜んで行ったのになぁ。



     それからと言うものの私の上の空具合は加速して、上の宇宙(そら)まで行ってしまった。
     当然他の授業に身が入ることもなく、なんと大和君の背中を見るだけで顔が赤くなる! これにはダルマッカもビックリ間違いない。
     なんとかしなくちゃいけない。このままではたぶんぼんやりしすぎて帰り道に事故にでも遭いそうだ。
     じゃあどうしろと。
     十歳年が離れていて去年結婚をした従兄弟は、恋愛は恐ろしいぞがははとこの前言っていた。恐ろしすぎてどうにかなりそうだった。
     そんなことを考えてる帰りの道中である。ついでなのでソーナノを連れながらぼんやり歩いていると、背後から私の名前を呼ぶ声がした。
     もしかしてと振り返れば、大和君が駆け足でこちらにやってきていた。
    「ど、どうしたの? そんなに慌てて!」
    「気になることがあってさ……」
    「気になる……こと?」
    「バトルの実習からずっとぼんやりしてたから、やっぱり何かあったのかなって思って……」
     貴方のせいだなんて言えない。
    「もしかして俺のせい? 何かしてたなら謝るから!」
     なんて急所に当たる一撃。て、適当に誤魔化して帰ろう!
     そう踵を返そうとしたら、足がコンクリートとひっついたかのように動かない! まさか。こいつめ!
     どうやら上半身はある程度動くようなので、首を動かしてこいつ、ソーナノの方を見れば……予想通りだった。
     私の影を踏んでいやがる。
     私に何を期待しているんだまったく!
    「と、とりあえずごめん!」
    「あ、謝らないで。何もないし、あったとしても私のせいだし」
     そう言った途端ビターン! と、かなり派手な音がした。発生源はまたもやソーナノ。恐る恐るソーナノを見れば、またもやしっぽを持ち上げてアスファルトに叩きつける。ビターン。ソーナノのこの習性は怒ったときにするものであって、つまりこいつは今絶賛お怒り中なのだ。大和君も呆気に取られている。
     私をこのタイミングで影踏みした挙げ句怒ってるとなると……。
    「ごめん、嘘ついた。実は大和君のせい」
     ほら止んだ。ソーナノは険しい表情からいつものようなニコニコ笑顔に戻った。
    「おっ、俺何かしたかな。責任取れるなら取るから!」
     こうなったらやけだやけ! 顔だけじゃなく、身体中まで熱くなって、今の私は茹で蛸と区別がつかないだろう。でもソーナノのせいでどうすることも出来なくて、ええいままよ! 大和君ごめんなさい!
    「大和君のことばっか考えちゃってて、いろんなことに身が入らないから……。だから、責任取って私と付き合って!」
     ふわりとした感覚とともに、下半身の自由が効くようになった。もう何言ってんだ私! このまま蒸発するかダッシュで逃げたい! ほら大和君だって戸惑って……あれ?
    「お、俺でいいなら……」
     うっそだー。まさかの展開に逃げることを忘れていると、脇からソーナノ! と聞き飽きた声がする。
     何であんたが返事すんのよ、それが可笑しくって笑い出すと、つられて彼も笑い出す。
     春の空に二つの笑い声がこだまする。


    ───
    【好きにしていいのよ】

    チャットでもらったネタ「影踏みとか黒いまなざしとかその辺で書け」というお題を消化。
    ただ普通にやるだけじゃつまらないので奇をてらしてみました。
    書いててソーナノ可愛いなとか思ってたんだけどこいつ60cmもあるんだって!
    でかい!!
    ちなみにこの一カ月の間にこんなイチャイチャものを三作書いてて非リアなわたしはめげそうです。


      [No.1208] いよいよ明日です 投稿者:No.017   投稿日:2011/05/20(Fri) 12:09:08     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    参加者は10人となりました。
    明日は何卒よろしくお願い致します。

    参加者(敬称略)10人:

    No.017(名ばかり幹事)
    CoCo
    久方小風夜
    風間深織
    キトラ
    朱雀
    586
    小樽ミオ
    MAX
    レイニー

    集合場所:
    5月21日(土) 11:00
    JR浜松町駅 北口 左に出て、横断歩道を渡るとある黄金の鳩像(http://ch07942.kitaguni.tv/e551002.html)前


      [No.1207] 飛雲の夜の夢 前編 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/05/20(Fri) 01:39:33     102clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     イッシュ地方の、さる映画館の入り口にて。一人の老人とその相棒が、眩い照明に照らされた一枚のポスターを眺めていた。有名な画家の手によるそれには、黄色い星の瞬く夜空を背景に、鬣を掴まれ困惑した表情のゾロアーク、そんな彼に向かって悪戯っ子のようなウインクを送るミミロップが活き活きと描かれている。よく見ると、チェッカー模様の敷石から伸びた街灯の影から、こっそりこちらを覗き見る一匹のポワルン。それを見つけた彼らは、視線を交わして微笑み合う。
     ステッキを持ち替え、空いた右手を差し出す老人。その手にそっと、自分の小さな左手を乗せる相棒――美しきミミロップ。一人と一匹は繋いだ手を緩やかに振りながら、最終上映の時間が迫る映画館の中へと静かに入っていった。




    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


     ぐわあ、と何度目かの大欠伸をする。すっかり俺のお目付け役と化しているポーが、これまた何度目になるのか、顔をしかめて小言を言った。
    「もうちょっとさあ、表面だけでも真面目な態度できないの? 見なよ、お姫様方がすっかり呆れてるじゃん」
    「うるせえな。真面目も何も、あれ見てりゃテンション下がるっての。ずーっとおんなじことの繰り返し、お前は飽きねえわけ?」
     俺がそう返すと、隣のポワルンは溜息を付いた。飽きるも何も、と呟く。
    「ぶっちゃけ、僕のパートナーじゃないから興味は無いんだけどね。誰が選ばれようと知ったこっちゃないんだけど」
    「えらい言い様だな」
    「……知ったこっちゃないけど、一応真面目にオーディションやってるんだからさ、こっちもそれなりの態度で観覧すべきじゃない? 相手に失礼じゃん。ルークの態度悪すぎ、一般ポケなら即刻退場レベルだよ。反省しな」
    「お前の口も悪すぎだろ。映画の主役勤めるゾロアーク様に対する態度か、それ」
    「その主役を務めるゾロアーク様の相方を決めようっていう審査なんだから、アンタが見てなくてどうすんのさ」
     いつも通りの悪口雑言の応酬。お互い本気じゃない、ちょっとしたじゃれあいみたいなもの。気心の知れた仲だからこそ、お互いに遠慮なく会話が出来る。この業界ではなかなか得難い関係だ。

     俺達がここでだらだら喋くってるのには訳がある。来年の秋に公開予定の娯楽映画、「飛雲の夜の夢」のメインキャストを決めるためのオーディションが開かれているからだ。といっても残るはヒロインの王女役だけ、集まっているのは一握りの候補達とその付き添い、うちのプロダクションの連中、主演の俺と脇役のポワルンくらいのものだから、いつもの規模より小さいといえるだろう。
     元々、この映画のキャストの募集・決定はとうの昔に終わっていた。が、お姫様役のドレディアが病気を理由に降板(実際は大手に引き抜かれたらしい)、急遽代役を決めなければならない羽目になり、俺にも関係あるんだからと引っ張り出されてきたものの。
    「見てたところで、結局決めるのは人間共だろ。ほれ、あのスポンサーとか監督だとか」
     俺が爪で指したほうを見やって、まあね、と頷くポー。
     
     会場の中程、審査員席と書かれた一群には、怪しげな人間たちがひしめいている。 筆頭は、黒サングラスに黄色い燕尾服、蝶ネクタイをしているメタボ気味の妙な小男。全身から怪しさ漲る、って感じのあれが今回の企画のスポンサーらしい。その隣でにたにた笑ってる締りの無さそうなのが、“新進気鋭の新人監督”ラ・クーダ氏だとか。うん、こいつが撮る映画は絶対コケるな。間違いない。
     そのまた隣では、俺の名目上の飼い主である、ポケモンタレント養成所――通称ポケタレの社長が、じっとりと陰湿な目でヒロイン候補達を睨め回している。ほらほらそこのお嬢さん方、ビビったら負けだぜ。役を手に入れたいなら、この業付く爺の視線くらい耐え抜けよ?
     まあ、正直役柄に相応しい候補なんていないんだけどな。二次選考に残った六匹のうち、どいつもこいつもいまいちパッとしない。所属事務所の威光で残った奴らだから、しょうがないのかもしれないけど。
     
    「でもさ、この中の選択肢しかないなら、ルークにも権利ある……というより、積極的に選ぶべきなんじゃないの? いつも言ってるでしょ、相性会わない相手と仕事したくないって」 
     心を読んだのか? こいつ。思わず鼻に皴を寄せた俺を無視して、ポーは右端の候補を指した。
    「あの子なんてどう? 可愛いじゃない」
    「あのマラカッチか? 駄目だね。今でさえ震えてるんだ、本番で演技なんか出来ないだろうよ」
    「じゃあ、あの子」
    「ルージュラか……いや、あんな高ビーそうな奴気に食わねえ」
    「あ、そ。こっちの子はどう?」
    「なんか毛艶が良くないな。それにチラチーノと俺とじゃ身長違いすぎる、物凄いでこぼこコンビになるぜ」
    「んー、何で候補に残ってんのかなあ。じゃ、そっちの子は?」
    「……確かに可愛いけど、おてんばなお姫様役に呪われボディのプルリルってどうよ? しかもあいつら毒で痺れさせて海底へ連れ込むんだぜ? 別物の映画になるぞ」
    「どう見てもホラーだね。……えっと、彼女は?」
    「いやいや、俺よりでかいヒロインて有りか? その前に、ガルーラ子持ちだろ? 姫君子持ちでいいのかよ!」
    「残るは……」
    「あり得ねえ!! モロバレルの姫なんて絶対認めねえからな!!」

     うっかり、全力で吼えてしまった。
     会場中から突き刺さる視線、視線、視線。特にモロバレルの恨みがましい目付きが……痛い。ホント悪かった、頼むからそんな目で見ないでくれ。俺は壁際の椅子で体を縮め、“小さくなる”を実行しようとした。この時ほど、自分がピッピかなんかに生まれなかったことを悔やんだことは無い。
     いや。いっそ小さくなるのは諦めて、隣で馬鹿だねーコイツなんてほざいているクソポワルンに、“八つ当たり”でもかましてやるべきか。
     そんな事を考えていると、どこか遠くでドアの軋む音が聞こえた。誰かが開けて、次いで閉める………や、あれは叩きつけるって表現するべきだな。続いて廊下を爆走、足音はどんどんこちらに近づいてくる。お陰様で、俺に注がれていた痛い視線は全てそちらに向けられた。誰か知らんがありがとう、助かったぜ。
     足音の主は急ブレーキをかけざま、両開きの扉を叩き開けながら遅くなってすみませんでしたぁー!!――――と、叫びながら転がり込んできた。まだ若い兄ちゃんだ。
     一瞬静まり返った会場に、ざわざわと不協和音の呟きが満ちる。突然の乱入者に不審の目を向ける審査員達に、兄ちゃんはつかつかと歩み寄るなり体を直角に曲げてお辞儀をした。その格好のまま、今度は機関銃のごとく何かをまくし立て始める。

    「あれか、審査中止になったポケプロって」
     納得顔で呟くポー。何のことを言ってるんだ?
    「ああ、ルークは会議サボってたから知らなかっただろうけど。本当は、二次選考の通過者は七匹だったんだ。でも、一箇所連絡の取れなくなったプロダクションがあってね、そこは切捨てってことになったんだけど」
     喋り続けている兄ちゃんを興味深々で見守りつつ、ご丁寧に教えてくれる。つーか、俺はサボってたんじゃなくて自分の時間を有意義に使ってただけなの。
    「……ふーん、初めてのイッシュで迷いに迷った挙句、携帯の充電切れて連絡できなかった、ね。よくある話だよねー」
    「まあ、言い訳としちゃ定番だよな。というか、あいつイッシュの出身じゃないわけ?」
    「うん。どこだっけ、シンオウ? そこからポケモン連れてくるって話だった」
    「そりゃまた遠いとこからご苦労なこった。んで? どんな奴?」
    「知らないよ。僕は一次の書類選考に参加してなかったし。無名のポケプロの新人、ぐらいの情報しかなかった」
     
    だべっている間に、兄ちゃんはどうにかこうにか事情を説明し終えたようだ。審査員達は未だ冷たい目を向けながらも、まあお情けで見てやろうか、ぐらいの気持ちに傾いてきているらしい。
     そこに出せ、という合図を受けて、兄ちゃんは安堵の表情で腰のモンスターボールに手を伸ばした。安心するのはまだ早いぜ、出した奴によってはけちょんけちょんに貶されるからな。他の候補のマネージャー達も、馬鹿にしたような顔で新たなライバルを眺めている。出遅れた奴のポケモンなんか大したことないってか。
     ベルトからボールを外し、じっと見つめた後。兄ちゃんはそれをゆっくりと投げる。頼んだぜ、と低く囁く声が俺の耳に聞こえた。

     眩い光と共に現れたのは、見たことのないポケモンだった。すらりとした体を覆うビロードのような茶色い毛皮、垂れた長い耳や脚先に生えるもこもこの白い毛。ルビーのような鮮烈な赤い瞳、そこには知性の煌めきが宿っていた。全身から漂う気品に、他のポケモンたちが霞んで見える。
     声も出ない審査員達に涼やかな眼差しを向け、彼女は優雅に一礼してみせた。
     そいつは見たことがないほど美しく、魅力的だった。
    「決まったね」
     隣でポワルンがぼそりと呟く。俺はただただ、頷くことしかできなかった。




     彼女と話が出来たのは、煩雑な事務処理が全て終わってからだった。すでに日はとっぷりと暮れている。今度は逃げられないように、と契約書でがんじがらめにしておいてから、上層部の連中はようやく彼女とそのマネージャーを解放した。疲れきった表情を浮かべながらも、会議室の外をうろつく俺の姿に気付いたマネージャーは、ちょっぴり笑って彼女に俺を指し示した。挨拶に行っておいで、とでも言ったんだろう。
     跳ねるような軽やかな足取りで部屋を出ると、彼女は俺のすぐ側までやって来た。澄んだ瞳でじっと見つめられて、俺の心臓は跳ね上がった。なんだよ、なんでこんなビビッてんだ。しっかりしろよ俺!
    「……あんた、なんてポケモンなんだ?見たことねぇんだけど」
     口からはこんな言葉しか出てこなかった。違うだろ、もっと言うべきこと色々あるだろ! 我ながら情けない。
     そんな俺ににこりと笑って(心臓がもう一跳ねした)、彼女は深々とお辞儀をした。
    「私はシンオウ地方出身のミミロップ、ラズベリーと申します。あなたが、ゾロアークのルークさんですね?」
    「……おう」
    「撮影の間、パートナー役を勤めさせていただきます。不束者ですが、どうぞよろしくお願いします」
     もう一度、丁寧に頭を下げる。つられて俺もぎこちなく首を曲げた。てか、こんな挨拶されたことないからどう対応したらいいか分かんねえ………。
     ミミロップのラズベリーは、首を傾げてこっちを見ている。俺が何か言うのを待っているらしい。
    「あー、ええと、よろしく。その……シンオウってのは、かなり遠いんだろ? 遥々ここまで、よく来たな」
     しどろもどろの適当な返事でも、歓迎と受け取ったらしい彼女は顔を輝かせた。
    「はい! ありがとうございます。ミオシティからの長い長い船旅でしたけれど、見たことのない景色を沢山見られて楽しかったです」
     言ってから、くすりと笑って付け加える。
    「でも、ヒウンシティはあまり見られませんでした。あの人が地図を無くしちゃって、街中を大急ぎで走り抜けただけなんです。もっとゆっくり、建物を見学したかったな……」
     優しい眼差しでマネージャーを振り返る。窓の向こうで、彼女のマネージャー氏は机に突っ伏して居眠りを始めていた。
    「あらあら、あんなところで眠ったら風邪をひいてしまうわ。ルークさん、すみませんが今日はこの辺で失礼します」
    「ああ、うん」
    「それでは、おやすみなさい」
     ふわりと微笑んで、ラズベリーは優美に身を翻すと会議室の中に入っていった。俺もまた、混乱した思いを抱えたまま、彼女達に背を向けてその場を立ち去った。



     翌日。朝早くから俺のマネージャーに叩き起こされ、問答無用で風呂に入れられて(あのシャンプー嫌いだって言ったのに!)磨きたてられた俺は、仏頂面で撮影スタジオに座り込んでいた。前で監督が撮影の心得とやらをくどくどしく話していたが、右から左へあっさり抜けていく。そんなもん、ゾロア時代から聞かされてるから知ってるっての。
     今日の予定は、まず宣伝用のポスターの元になる写真を撮り、その後時間の調整をつけながら出来る限り映画本編の撮影を進めるらしい。全体のスケジュールが押しているから、今後も結構きつい日程が組まれている。新人のお姫さん、大丈夫かね……?
     ちらりと隣の様子を窺う。ラズベリーは真剣に聞き入っているようだ。過密スケジュールもなんのその、やる気は十分らしい。実は今朝も声をかけようかと思ったけど……なんて言ったらいいかわからなくて、結局無難な挨拶だけに終わってしまった。なんでこんな調子が狂うんだろうな、ったく。
     場慣れしているポーの奴も、これと言って不満の表情を現していないようだ。というより、いつも笑ってるみたいな顔してるから判り辛いんだよ、こいつ。

     今回の映画は、人間が言うところの『恋愛冒険活劇』であるらしい。
     監督曰く、ストーリーは歴史ある大国の姫君が規律に縛られた自由のない暮らしを嘆くシーンから始まる。ある夜、とうとう我慢の限界に達した王女は、こっそり宮殿を抜け出て市街を探検する計画を立てる。ところが、それを実行しようとした矢先、王政の転覆を狙う過激な組織の連中に拉致され、人質としてアジトに監禁されてしまう。そこから逃げる決意を固めた王女は、世話係兼見張りのゾロアークを油断させる為に、わざと無邪気に振舞って夜の市内見物をねだる。ゾロアークもその思惑に気付いていながら、王女を扱いやすくする為に意向を聞き入れ、組織には黙って彼女を連れ出す。
     深夜、街が寝静まった頃。偽りの自由を楽しむ王女と、虜囚である彼女に振り回されるゾロアークとの間に奇妙な友情が芽生え始める。やがて、それは淡い恋愛感情に発展していき―――――。
     
     だぁーっ!! なんだこのこっ恥ずかしい展開は! 改めて聞くと全身にマメパト並の鳥肌が浮かぶ。ポーもラズベリーも、よくまあ真面目に監督の語りに付き合ってられるな。要するにあれだろ、暇を持て余したお姫さんと悪の組織の下っ端がいちゃいちゃしようとしてできずに別れる話だろ。
     一人しらける俺に構わず、さあいってみようかと陽気に話を進める監督。カメラマンが進み出て、俺達とマネージャーに指示をとばす。映画のワンシーンを再現するらしい。
     
     深夜の路上、悪戯心を起こした姫君がゾロアークの長い鬣を引っ張る。じゃれかかる姫を困ったように見下ろすゾロアーク、そんな二人を物陰から監視する組織の密偵ポワルン。
     
     背景は後で合成するから、と言って、カメラマンは俺とラズベリーを押しやった。ポーはさっさと定位置についてスタンバイしている。
     撮影用の白い壁を背に、俺は途方に暮れた。とりあえず横向きに――彼女に背を向ける感じで――立ってみたものの、さあそこから先はどうすればいい? 姫君の動き次第で、絵面が変わる。
     ラズベリーのマネージャーが、身振りで何かを示している。こくりと頷いて、彼女は俺の鬣に手をかけた。
    「ちょっと失礼しますね」
     囁いて……いきなり引っ張った! 思わず体勢を崩しかけた俺の肩に、ぽすんと柔らかいものがぶつかる感触。見下ろすと、そこには。
     肩に頭をもたせ掛け、片手で鬣の先を弄びながら、悪戯っぽく笑う小悪魔なミミロップがいた。俺と目が合った瞬間、ぱちりとウインク。
     …………完璧だ。
     カメラのフラッシュが光る。興奮気味のカメラマンが立て続けにシャッターを切るせいで、目がちかちかする。それより予想以上の可愛らしさを見せ付けられて、頭がくらくらする。
    「……あんた、演技上手いな」
     ようやく声を絞り出すと、おてんばな姫君は淑やかなミミロップに戻って、ありがとうございますと照れたように呟いた。



     

     この一件以来、俺とラズベリーの距離は急激に縮まった。まあ縮まったというか、向こうは最初から親しげに振舞ってくれてたんだけど、こっちが気恥ずかしくて話せなかったってだけなんだけどな。なんか妙に美人だし、清楚っていうの? 相手したことないタイプだったし。
     でも、相手も俺と同じ演技者だと分かったら、戸惑いもへったくれも吹っ飛んだ。世間を化かす、そんなことはこの世界に生まれてからずっとやってきた。同じような奴らに囲まれて育ち、似たような連中と一緒に暮らしてきた。この一見別世界そうなミミロップも俺の同類だと思うと、なんていうか……すごく嬉しかった。親近感が沸いた、ってのか。
     
     連日の撮影の合間に、俺達は色んなことを話した。故郷の事、名前の事、映画の事、過去の事。特に生まれ育ちに関しては、俺達は面白いくらいに対照的だった。
     俺が都会生まれ都会育ちだと言えば、ラズベリーはシンオウの雪深い山で生まれて野生として育ったという。俺がポケモンタレントの卵として仕込まれていた頃、彼女は兄弟達と野山を駆け巡っていた。
     有名だった親父の跡を継いで映画界にデビューし、期待の星ともてはやされていた時。
     好奇心のままに遊び歩いていたラズベリーは、他のポケモンに襲われて瀕死の傷を負った。逃げ延びたものの動けなくなっていた彼女を救ったのが、今のマネージャー氏だという。
    「あの人は、代々続く育て屋の家の息子なんです。実家の仕事を継ぐために帰ってきた時、倒れていた私を見つけて家に連れて帰ってくれました。今こうして生きていられるのも、あの人が親身になって看病してくれたからなんです」
     真っ赤な瞳を懐かしそうに細めて、ラズベリーは思い出を語る。
     
     傷が完治した後、マネージャー氏は彼女を山へ返そうとしたらしい。しかし、どうあっても残るという強固な意思に根負けし、彼女にラズベリー ――山を彩る赤い果実――の名を与え、家業の助手として側に置くことにした。晴れて手持ちとなったラズベリーは育て屋の仕事を手伝いつつ、彼に対する恩義から懐き進化を遂げてミミロップとなり、忙しいながらも充実した毎日を送っていた。
     が、しかし。
    「あの人のお父さんというのが、結構頑固な方なんです。ポケモンの扱いが悪かったり、強い子を選ぶために無理やり卵を産ませようとするトレーナーがどうしても許せないらしくて。そんな人が来た時は、怒鳴りつけて追い返したり、取っ組み合いの喧嘩になったり……そういう事を繰り返していたら、だんだんお客様が減ってしまって」
     あ、でも凄くいい人なんですよ、と慌てて肩を持つラズベリー。正直、その頑固親父真っ当過ぎて育て屋に向いてないんじゃないかと思ったが、口には出さずにおく。
     父親の意思を継いだ息子は、苦しい状況の中でも理想を追い続けたという。
     しかしとうとう資金繰りが切羽詰り、廃業の瀬戸際に追い込まれた彼は、一か八かの賭けに出た。一攫千金のチャンスを掴むために、唯一かつ最大の切り札であるラズベリーをポケモンタレントに仕立て上げ、北の果てシンオウから映画界のメッカであるイッシュに殴り込みをかけることにしたのだという。

    「それはちょっと無茶過ぎねぇ?」
     我慢できなくなって、ついツッコんでしまった。なんで一攫千金の手段がいきなり映画タレントに結びつくんだ、とか、ツテもコネも無いのにどうやってこの世界に入るつもりだったんだ、とか。他にも言いたい事は色々ある。そもそも有名イコール金持ち、ってのは素人の発想だ。ここはそんなに甘いもんじゃないぜ。
     そう言うと、ラズベリーは恥ずかしそうにしょげてしまった。ちょっと待て、条件反射で「すんません俺が悪かったです」って言いたくなるこの雰囲気はなんだ。俺は別に謝るようなことは言ってない、はずだ。くそう、やっぱり調子狂うな。
    「私もそう思ったんです。でも、うちに来てくださるお客様の中に、コンテストの審査員をされている方がいて。その方が、私には才能がある、発揮できる場を与えなければもったいないと強く勧めてくださって……つい、あの人と一緒にその気になってしまったんです」
     自惚れですね、と消え入りそうな声で呟いて、ラズベリーは垂れ耳を更に垂らしてうなだれた。いや、ちょっ、待てって。
    「あー、推薦者がいたのか。まあその……なんだ、ほら、結局はそいつの言ったこと正しかったんだから、別にいいんじゃないか? 駄目ならとっくに予選落ちだったろうし。二次審査じゃ他の奴ら蹴散らしてあっさり通ったろ? それに自惚れってか、お前ホントに演技の才能あるしさ。そこは自信持っていいぜ」
     
     ……何、この変わり身の早さとクサいセリフ。演技でもないのにあっさりこんな事言ってる自分が信じられねえ、しかもかなり本気で言ってるってのがよけいに信じられねえ。大丈夫か、俺。
     内心悶絶する俺の様子に気付かず、ラズベリーは上目遣いにこっちを見上げる。それやめてくれ、すっげえドキドキするから!
    「本当、ですか……?」
    「ああ、うん。俺、嘘は言わねえ主義なんだ」
    「そうそう。ルークってば馬鹿で正直だから、この言葉は信じていいと思うよ?」
     
     …………一気に気持ちが冷めた。どっから湧きやがった、このクソポワルン。ていうか『馬鹿で正直』ってなんだ、せめて『馬鹿正直』にしろよ……そっちも充分腹立つけどな!
    「何しに来たんだよ、ポー」
    「ご挨拶だねえ。お二人さん、いなくなって随分経つから皆探し回ってるよ? 特にお姫様のマネージャーさん、えらく心配してたね」
    「まあ、大変! 急いで戻らなくちゃ!」
     言うなり、腰掛けていたベンチからぴょこんと立ち上がった彼女は一目散に駆け出した。途中で振り返り、ルークさんも戻りましょう、きっと心配されてますよとかなんとか叫んでいる。微妙な気分のまま手を振って見送ってから、改めてポーに向き直る。
    「……んだよ、そのにやけ顔は」
    「べっつにー? ルークってばああいう清純派が好みなんだぁ、って思ってるだけ」
    「や、好みとかそんな風に思ってないし! 単に見たことない感じの奴だから面白いなってだけで」
    「ふぅん、それだけ?」
    「それだけって、お前……」
     そりゃちっとは可愛いなとか、いいコだよなとか思うけど……言ったら絶対からかわれるからやめておく。
     こういう時は逃げるが勝ち、とポーに背を向けたその時。
    「ねえ、ルーク」
     ひどく真面目な声を掛けられて、俺はついつい足を止めた。くそっ、こいつがマジ声出すときって大抵ろくでもない話題なんだよな。
     なんだよ、と返そうとした瞬間、聞こえてきた言葉に耳を疑う。
    「あの子にあんまり深入りしない方がいいよ。面倒事に関わりたくないならね」
     
     どういう、意味だ。咄嗟に振り返った俺の目に、やけに冷静なポーの視線がぶつかった。周囲にはへらへらした態度で通しているが、こいつの本性はこっち――冷静で計算高い、ポケタレ業界きっての切れ者だ。
     絶句する俺に、奴は淡々と言葉をかける。
    「ルークがいつも通りの付き合い方をするなら黙っておこうと思ってたけど……意外に気に入ってるみたいだから、ちょっと忠告しておこうと思ってね。彼女は危ないよ」
    「……危ないって、何が」
    「精神面が、さ。この世界で育ってスレちゃった僕らと違って、外から来た彼女は疑うことを知らない純粋な心を持ってる、これは普通ならとてもいい事だけど……ここじゃ、それが命取りになりかねない」

     ふわりと俺の鼻先まで漂ってきて、ひたと目を見据える。まるで黒い眼差しに絡め取られたかのように、動くことができなかった。聞きたくない、でも聞かずにいられない。
    「ああいうタイプはいずれ挫折する。精神的な脆さが致命傷になってね。君だって、薄々彼女の欠点には気付いてるんだろう?」
    「……るせえ」
    「もう一度言っておく、これは忠告だ。あの子に深入りしちゃいけない、君も巻き添えになる……」
    「うるせえ! 黙れ!!」
     本気で吼えた。ぴたりと口をつぐんだポーは、ガラス玉のような目を俺に向けている。
     視線を合わせていられなくて、頭を振り切るようにして目を逸らした俺は、今度こそ奴に背を向けて走り出した。いや、逃げ出した。
     考えたくない事から、自分の疑問から、友人の言葉から、逃げ出したかった。

     
     最悪の事態から、逃れたかった。







    ――――――――――――――――――

    (仮あとがき)

    (巳佑さんに快く許可を頂き、謎の小男氏にあっさり勧誘されて映画監督に挑戦させていただくことになりましたラクダです。……いえ、ラ・クーダ氏とは別人です。
     しかしまあ、恋愛にとんと疎い自分が、まさかそういう要素のある話を書くことになろうとは……我ながら唖然。ううむ、これぞ絵の魔力!

     ようやく前半が書き終わった! 絵を拝見してから、脳内で話が出来上がるまでは時間がかからなかったのに……超ド級の遅筆にて、前編だけで二ヶ月かかるという体たらく。おまけに酷く長々しい!
     本来なら全編出来上がってから上げるべきなのですが、(真に勝手ながら)己のモチベーション維持の為に前編のみ上げさせていただくことにしました。さあ、掲載させていただいたんだから後には引けんぞ、後半もちゃっちゃと仕上げようぜ私……!
     取り急ぎ、ここまで。巳佑さん、書かせていただいてありがとうございます!)


      [No.1206] うむ。 投稿者:渡辺タテタ   《URL》   投稿日:2011/05/19(Thu) 21:47:05     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    眠い。

    ↑って送信したら、メッセージが短いって怒られた。
    最近のB.B.S.は我が儘だな。

    みなさんがんばって35作品読んでますか−。
    こちらはようやく20番に到達です。

    でも眠いので、15〜20番くらいは講評がテキトーな可能性があります。
    すんません。
    ☆はちゃんとシビアに付けてるので、そこは大丈夫です。
    もちろん講評の方が大事ですよね。
    ホントすんません。

    前回は失礼を承知で「中学生の作文」と言いましたが、
    本当におまえら失礼だよという作品だらけで大変苦労しました。
    これは駄作なのか、俺の手には負えない傑作なのかと判定に困ったものです。

    今回はどうしたことでしょう、みなさん急に文章がお上手になって。
    おかげさまで、あっさり「凡作判定」ができて選考がサクサク進みます。
    とてもよく書けているので、問題点や改善点が「俺に注目してくれ」と出張ってきます。
    素晴らしい。

    正直たった一回でここまでドラスティックにクオリティが上がるとは思っていませんでした。
    いいっすね、やっぱり好きなことを一生懸命やるってのは。
    俺も好きでやってることなんで、一生懸命読ませていただきます。

    なんかまた投票締切と自分のライブがかぶったので、今週死ぬ気で読みます。

    久しぶりに顔見せてみました。
    では、またー。

    眠い。


      [No.1205] 風合瀬の宴  中 投稿者:クーウィ   投稿日:2011/05/19(Thu) 18:53:54     73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    戦闘不能となったメタグロスを引かせた男が繰り出したのは、またしてもリングマであった。
    対する少年の方も、それを見るや見切り良くチルタリスを手元に戻し、代わりに先程リングマと相対していたパチリスのテブリを、再び試合の場に送り出す。 ……先程見せたリングマのタフネス振りと、『雪なだれ』の威力とを考えれば、このままドラゴン・飛行タイプのチルタリスで戦う事は、危険であると判断したのだ。 
     
    その新たに仕切り直しとなった両者の対決は、先刻のそれとは打って変わって、じっと動かぬリングマの隙を、草むらに隠れたパチリスが虎視眈々と窺うと言う、持久戦の様相を呈する事となった。
    チルタリスのフィーとメタグロスとの戦闘により、草の海の一角がミステリーサークルの様に薙ぎ倒され、あまつさえその中央付近に至っては、炎によって生い茂っていた蔓草が焼け果てており、身を隠す場所が全く無かったからである。

    大熊はその開けた部分の真ん中に陣取っており、距離のある周囲の草むらの中からでは、『タネ爆弾』は届かない。 ……元より体の小さなテブリの攻撃射程は、普通のパチリスと比べてもかなり短く、距離を置いての遠隔戦闘は、全くの不得手であった。
    リングマの方もトレーナーの指示を受けたのか、先程までの激情とは打って変わった冷静な面持ちで、自らを狙う小柄な影を、五感を研ぎ澄ませて待ち受けている。 ……体が固まってしまわないように、時折体に小さく律動をくれている様が、場馴れしたその経歴を、無言のままに物語っていた。

    やがて息詰まる膠着状態が、永遠に続くかと思われた時――突然パチリスの方が、蔓草の茂みを真っ二つに割り、リングマに向けて背後から殺到した。  
    風向きが変わり、背後を探る聴覚と嗅覚が、乱される瞬間――その一瞬の揺らめきを当て込んでの、電撃戦法である。

    しかしリングマの方も、流石にそこは心得たもの。 トレーナーの指示を受けるまでも無く、振り向きながら繰り出された『シャドークロー』が、小柄な襲撃者の体を捉えるべく、地を舐めるような低い軌道で一閃した。
    ところがパチリスの体は、大熊の漆黒に染まる爪をその身に受けた途端、呆気なく真っ二つに裂け割れて、風に流れて消えていく。 ……『身代わり』を盾にした本体は直ぐ後ろに続いており、既に腕を振り切って体勢の流れかけているリングマに向け、帯電状態で殺到する。

    だがリングマ側も、それだけでは終わらない。
    自らの目をまんまと欺いて、真一文字に突っ込んで来る敵の姿――それを咄嗟に走らせた視線の先に確認するや、ニヤリと不気味な笑みを浮かべて、振り切っていた腕を逆手に返し、リスの背中に切り返しを見舞う。  
    必中の技・『燕返し』である。

    リングマの妙技に対し、パチリスのスピード。 ……しかし軍配は、やはりタイプ相性に分がある方へと上がる事となった。

    リングマの爪は、テブリの形の良い尻尾に届きはしたものの、飛行タイプの技なれば、やはり効果は今一つ。 自身のタイプがノーマルなのも相まって、その一撃は電気リスポケモンの尻尾に生えているふこふこの毛を、ただ一房削り取ったのみ。
    対するパチリスの方は、身軽に大熊の二の腕辺りに飛び乗ったと見るや、そのまま腕から肩を伝って、己を叩き潰すべく屈み込んだ相手の頭頂部まで、一気に駆け上がる。 ……その時には既に、やや形を崩した大きな尻尾は、白銀の輝きを帯びて日差しを弾き、躍動感溢れるその痩身は、相手の頭部を軽々と蹴って宙に浮くと、そのまま前方に向け、くるりと一回転する。

    ――大熊とそのトレーナーは、テブリの神出鬼没の戦い振りに翻弄される余り、戦っている相手であるパチリスの『型』を、完全に見誤っていた。 ……彼は決して、ヒット・アンド・アウェイを重視した、ランニングファイターなどではない。
    本来の彼―素早っこく、主人の帽子やスカーフを奪って、あちこちと逃げ回るのが大好きな悪戯小僧の正体は、素早い動きで相手の懐に飛び込み、見た目に合わない高火力で一気に片を付けに行く、生粋のインファイターなのである。

    宙返りした事により、天に向けて高々と差し上げられたテブリの尻尾は、そのまま遠心力と落下の勢いとを伴いつつ、鋼鉄の輝きを帯びて、リングマの脳天目掛けて振り下ろされる。
    ……如何に頑丈な頭骨を持ったリングマと言えども、頭頂部に直接叩き込まれた『アイアンテール』の衝撃を受け流す事は、不可能であった。

    目から火花を散らし、ゆらりとよろけた大熊の頭上で、更に間髪を入れずパチリスが、全身に溜め込んでいた電気エネルギーを、ここぞとばかりに解放する。
    一瞬にして天地を結んだ光の柱が、倒れ掛かるリングマの巨体をまともに貫いた時――見守っていたトレーナー達とポケモン達は、巌(いわお)の如き大熊の命運が、尽きた事を悟った。
     
     
    毛先をチリチリに焼かれたリングマがボールに戻ると、男の手持ちは残り二体。
    彼はその内一方が入っているボールを、頽勢著しい戦況もまるで眼中に無いかのように無造作に外し、揺らぎの無い表情のまま、フィールドに向けて放り投げた。
    尻尾に向かい傷のような爪痕を残しながらも、ますます意気盛んなパチリスの前に姿を現した男の四匹目は、ボールから出るや天地を轟かせて咆哮を上げ、待ち構えていた小さな相手を『威嚇』して、その矛先を鈍らせる。
    獰猛そうな面構えに、薄青色の体の背には、鋭角かつ直線的な形状の、一対の赤い翼。 男が待機させていた副将格は、豊縁の空の王者・ボーマンダだった。 

    だがしかし、豊縁竜が『威嚇』によって成果を上げられたのは、ホンの一瞬だけであった。 ……元々他の同族よりも体の小さなパチリスのテブリは、よく言われている『小男ほど大事を好む』と言う俗説そのままに、相手が大柄で威圧感に満ちているほど、反って反骨心を燃え立たせるのである。
    負けん気のテブリはそのまま真っ直ぐ、数あるドラゴン達の中でも最も破壊的な力を誇る目の前の竜に向けて、正面から戦いを挑んだ。
    ――主人の少年の方は、その姿勢を幾らか危ぶんでいる様であったが、突き進むパチリスのその双眸には闘争心が満ちており、既に飛礫の如き勢いで疾走し始めたその寄せ足を止めるような術は、何一つ有りはしない。

    ……もし仮に、ここで相手の竜がパチリスの俊敏な強襲を嫌(いと)うて空へと逃れたのなら、展開はまた違ったものとなったであろう。 空高くを旋回する大柄な飛翔物は、地対空雷撃(『かみなり』)の格好の標的となり得るからだ。

    しかし相手のボーマンダは、突っ込んでくるパチリスを正面から受け止め、迎え撃つ意思を示した。
    直線的でシャープな印象を与える両翼ははたとも動かず、代わりに鋭い爪を備えた太い腕が、小癪な挑戦者を叩き潰すべく活動を開始する。
    振り下ろされた右腕での『ドラゴンクロー』を、テブリの小さな体が上手く掻い潜る事に成功した時――その瞬間は誰もが、パチリス側が勝利を収めたものと、信じて疑わなかった。  

    しかし、軽捷に過ぎるその動きの程が、反ってテブリの命取りとなる。
    『ドラゴンクロー』の回避に成功した次の瞬間、相手に向けて飛び掛ろうと地を蹴ったパチリスの体は、予め動きを予測していたボーマンダの顎によって、がっちりと捕らえられてしまった。 
    次いでそのまま、小さな体は反撃する時間ももがく暇も無しに、灼熱の炎を纏った鋭い牙によって、情け容赦無く締め上げられる。 

    『炎の牙』自体は、決して威力の高い技ではない。 ……しかし、ボーマンダの高い攻撃力も相まって、打たれ弱い軽業師の体力を奪い尽くすには、これだけで十分であった。
    力尽きて後無造作に吐き捨てられたパチリスの体は、加減されて致命傷こそは免れているものの、焼け焦げた傷跡は痛々しく、最早首をもたげる余力すら残ってはいない。

    無策に対する悔恨に微かに口元を歪めつつ、少年がパチリスを手元に戻し終えると、勝者であるボーマンダは轟々たる咆え声で周囲を圧して、高々と勝鬨を上げた。
    ――俊敏な相手の機動力を、長き実戦経験によって練り上げられた『勘』によって一蹴した豊縁竜は、フィールドの真ん中に堂々と立ち、次なる相手を待ち構えている。
     
     
    少年がパチリスを回収したボールを、彼の入っているモンスターボールの隣にあるポイントに、ゆっくりと気遣いながらロックした時――不意にその向こう隣に位置するモンスターボールが、カタカタと揺れ出した。
    そこに入っているポケモンは、先程『火炎放射』でメタグロスを撃破した、チーム唯一の飛行要員―チルタリスのフィーである。

    フィーは普段からテブリとは仲が良く、悪戯三昧で遊び疲れたパチリスは、彼女の綿雲のような翼を借りて、のんびり昼寝をするのを日課としていた。
    チーム内でも指折りの実力者である彼女は、目の前でやられた親友の借りを返さんものと、俄然主人に対して直訴に出たのだ。 ……言うまでも無く、三次元の自在な機動を可能とする飛行ポケモンに対しては、自らもまた飛行能力を持ったハンターを送り出す事が、最も確実な手段となる。

    それを受けるや、彼らの主である少年トレーナーの方も、曇り勝ちだった思案顔を和らげるとニヤリと笑い、カタカタ揺れるそのモンスターボールを手に取った。 
    開閉スイッチを起動させたそれを、空高くに向け力一杯投げ上げつつ、解き放たれたポケモンに対して、力強い声で下命する。  
    「飛び方を教えてやれ」と言うその命に、ボールから飛び出したチルタリスが透き通った鳴き声で応じた時、対戦相手であるボーマンダの方も、その主人の指示によって翼をはためかせ、遮る物が何も無い新しいフィールド目掛け、一直線に翔け登る。

    長い忍従の末に翼を獲得したドラゴンポケモンは、相手方の思い上がった内容の指示に、反って闘争心を煽られたらしく、先に上空に位置して高度の優位を保った相手に対し、真一文字に挑みかかった。
    一直線に吐き出された『火炎放射』を見事な空中機動でかわした豊縁竜は、そのまま速度も落とさずに急上昇し、目の前に浮かんでいるチルタリスのどてっ腹に向け、『ドラゴンクロー』で反撃する。
    対してこれも身軽に、くるりと難なく身をかわしたハミングポケモンの回避行動を切っ掛けに、両者は互いに相手の後方に位置しようと、自らの飛翔能力の粋を尽くして、くんずほぐれつの空中サーカスを展開し始めた。

    何れもチーム唯一の飛行タイプである二匹のポケモンは、絶えずお互いの位置を首を曲げて確認しつつ、機動に殆ど制限を受けない中空を、所狭しと飛びまわる。
    両者が地上に近付くと、高速飛行が生み出す風圧が土煙を巻き上げ、たまには外れた『火炎放射』が、流れ弾となって飛んで来るにもかかわらず、地上に位置するギャラリー達は、そんな事にもまったく動じず、食い入るようにその様を眺める。
    最早両者の主人達も、彼らに余計な指示を与えようとはしない。 ……既に目の前の両者の対決は、彼らトレーナーの手を離れていた。

    仮に何か指示を下したところで、それが状況を好転させる材料になり得る事は、決して無かったに違いない。
    確かに少年にはまだ手持ちに余裕があったし、男の手元にも、最後の控えが残されていた。 ……だが、問題はそういう事ではないのだ。

    ――互いが互いを力で捻じ伏せ、己の方が上だと証明する為の、純粋な力比べ。 
    如何に主人とは言えども、当事者同士が全てを傾けて行っているそれに水を差す様な振る舞いは、そうそう許されるものではない。


    上空でもつれ合う両者の形勢は、争いが長引くに従って、徐々に変化し始めていた。  
    スピードで大きく上回るボーマンダが、小回りの利くチルタリスの俊敏な機動を制して、圧倒的に優位となる相手の後方位置に、喰らい付いたのである。

    火炎を吹き出して相手を狙い撃つアウトレンジのチルタリスに対し、ここまでボーマンダは終始反撃を試みず、相手を自らの手で直接叩き落せる位置に捉えようと、辛抱強く渡り合ってきた。
    今や豊縁竜は、とうとう相手の背面を勝ち取る事に成功し、何とか振り切ろうと懸命に飛び続けるチルタリスとの距離は、刻一刻と『ナイフとナイフでやり合える』ぐらいにまで、狭まりつつある。
    ――自らよりもずっと繊細な動きが可能な相手に対し、スッポンの様に喰らい付いたまま離れない彼の目には、幾多の相手との凌ぎ合いを制してきた、揺ぎ無い自負が窺えた。

    だが、しかし――ボーマンダは結局、最後のその瞬間まで、相手が何を企んでいたかを、見抜く事が出来なかったようだ。
    漸く相手を追い詰め終えたボーマンダが、満を持して攻撃機動に転じると共に、『ドラゴンクロー』を振り上げた次の瞬間……突然彼の視界は、不意に覆い被さって来た真っ白い羽毛に遮られ、全く機能しなくなってしまった。

    ――チルタリスと言うポケモンは、本来攻撃面に於いて、それほど優れた能力を持ち合わせているわけではない。 あくまでその本分は、多様な補助技を生かした搦め手であり、それは優れたバトルスキルを有したフィーと言えども、例外ではなかった。
    優れた攻撃能力を元々に持っているボーマンダには、その手の補助的とも言える戦法への執着は、それほど無い。 ……従って、対戦相手のそう言った要素にも、警戒感が希薄であった。

    十分に相手を引き付けたフィーは、ボーマンダが攻撃の態勢に入ったその瞬間、急激な右旋回を打って切り返すと同時に、相手の目と鼻の先に向け、『フェザーダンス』を繰り出した。
    両翼から吐き出された大量の羽毛(チャフ)は、追尾する豊縁竜の視界を完全に奪い去り、同時に体中に纏わり付いて、その攻撃力を大幅に低下させる。 
    後の先を打たれたドラゴンポケモンが、なす術も無く必殺の一撃を空振りさせられ、中空で顔を振り立ててもがいている内に、ハミングポケモンは真っ直ぐに上昇した後、漸く視界を確保した相手に向けて、逆落としに突っ込んで行く。
    トレーナーの警告を受けた彼は何とか正気には戻ったものの、残されていたその時間の程は、余りにも僅少に過ぎた。
    僅か0.2秒の後に激突して来たチルタリスの『ドラゴンダイブ』は、柔和なその見た目に似合わぬ圧倒的な破壊力で周囲の空気を震動させ、ターゲットであるボーマンダの意識を、一瞬で暗黒の彼方に消し飛ばす。
    『バーン!』と言う衝突音が鳴り響いた直後には、既に豊縁竜はダラリと首を垂れたまま地面に向けて落下しており、やがて土煙を上げて墜落したその上空では、密かに積んでいた『竜の舞』によってステータスを大きく向上させていたハミングポケモンが、悠然と旋回しつつ高らかに鳴いた。


    対戦相手の男の手持ちは、後一体。
    トリを努める最後のエースの正体に思いを馳せつつ、固唾を呑んで行方を見守っていたボールの中の彼は、その時不意に自分の視界が、伸ばされて来た主人の手指によって遮られるのを感じた。


    ―――――

    今更続きを放り込む。 ……sageのやり方が分からない(爆)
    くっそ古いものを上げてしまい、誠に申し訳ありませんでした……

    【誰か下げの方法を教えて欲しいのよ】

    【批評してもいいのよ】

    【描いてもいいのよ】

    【好きにしていただいて構わないのよ】


      [No.1204] いたずらごころ 投稿者:しじみ   投稿日:2011/05/19(Thu) 15:25:45     174clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5




    春。
    イッシュには花が咲き乱れ、風はあたたかい。
    遠い土地からやってきたスバメがしきりに巣作りに励んでいて、シッポウシティの人は皆それを温かく見守る。

    春。
    イッシュには雨が降り注ぎ、森はにぎやかだ。
    ありとあらゆる生命が、生まれ、育まれ、喜びに満ち溢れた季節。


    春。
    …私にとっては一番辛い季節。




    * * * * *



    「ぶえええっくし!!!!」

    私は本日何十回目かのくしゃみを盛大にやらかした。

    私の鼻腔、口蓋から放たれた音波は、壁を細かに振動させ、ドラゴンの骨格のあばらをすりぬけ、
    様々な模型に触れながら吹き抜けの2階にまで、私という人間の存在を知らしめた――

    ようするに、だ。
    私のくしゃみは、博物館内にめちゃくちゃ響いた。

    バクオングとまではいかないけれど、多分、ゴニョニョとタイマンはれるんじゃないかと思った。
    今のくしゃみはおそらく「ハイパーボイス」と「ふきとばし」を兼ねているんじゃないか。
    その証拠に、私が必死こいて展示物の詳細を記していたはずのメモのページが白く眩しい。

    あちこちから突き刺さる視線に、私は小さく頭を下げた。
    気の毒そうな顔もいれば、明らかに私を見て笑いをこらえている人もいる。

    ちなみに斜め前方にいる、彼氏は前者で、彼氏の足元にいる、彼の手持ちポケモンは後者だった。

    彼のポケモン…通称エルルに軽く舌をつきだしてから、
    再び展示物に目をやり、メモをとるふりをして顔を隠した。

    こっちだってねえ、好きでくしゃみしてるんじゃないんだから。



    * * * * *


    こうなったのは1年前の春だった。

    朝からひっきりなしにくしゃみが続き、あげく鼻水はクマシュン顔負け。
    クマシュンなら鼻水たらしてても「かわいいねえへへ」となるところ、大の大人である私が鼻水たらしてたら「帰れ。」となるのである。

    差別だ。ポケモンと人間の差別だ。

    私がもし、大学の専攻が近代史やら社会学だったら、ポケモンと人間の差別についてレポートを書きあげるところだったのだが。
    あいにく、私の専攻は地学である。


    私の通う学校はここから遠く離れた、ソウリュウシティの近辺にある。
    今回のレポートづくりのために、実家のあるシッポウシティに帰郷したという訳だ。

    そうでもなければ私はこんな町まで来ない。
    少なくとも、春には、絶対に!!!!


    なぜか?


    母さんが嫌い?
    違う。

    父さんが嫌い?
    それも違う。




    私が嫌いなのは、ヤグルマの森。

    というか………モンメンだ!!!!!!





    どうやら私は、通称「紋綿症」にかかっているらしい。


    紋綿症というのは、その名の通りモンメンにまつわる病気である。
    かなり簡単に説明すると、モンメンの綿毛が一種のアレルギー反応をおこし、
    粘膜に触れると体が拒絶反応を起こすというものだ。

    私の場合はくしゃみがひどい。
    目もかゆいし、鼻水もしきりに出る。
    それこそ滝のように出るのである。


    草木の花粉が、アレルギー反応を起こす人たちは、カントーやジョウト地方だと多いらしい。
    しかし、イッシュにはあまりそのようなことはなかった。

    カントー地方の天気予報には、季節によっては

    「それでは、今日の花粉状況です!」

    と言って、その日がいかにくしゃみ、涙が辛いか警戒度を示すらしい。


    信じられない話だ。
    昔は笑っていたが、今は笑えない。

    今すぐにでも遅くない、イッシュにも「それでは、今日のモンメン状況です!」と予報する天気予報を作るべきだ。


    しかしながらこの症状、あまり広まっておらず、
    なかなか理解されないものなのである。

    「紋綿症?なにそれ、おいしいの?」

    とかのたまう奴らが世間の大半だ。



    そこにいる私の彼氏もその一人。

    幼馴染からとんとんで恋人に昇格した。
    大学は離れてしまい、今は遠距離恋愛だ。

    少々おせっかいなところがタマにキズ…もといビリリダマにキズだが、…まあ、優しいと言えばやさしい。

    今回も私が家に「考古学のレポートを書くから、明日辺りそっちに行く」と連絡をつけたら、
    次の瞬間ライブキャスターで、
    「じゃあ俺のムクホークで迎えにいくよ」
    と、本人はキメ顔、実際には満面のどや顔で言われた。

    別に悪いヤツじゃないんだけど、…紋綿症には理解度が低い。



    * * * * *


    「ぶえくし!」

    彼の悪いところ。
    おせっかいなところ。

    「ぶえっくし!」

    彼の悪いところ。
    私より料理がうまいところ。

    「ぶええっくし!」

    彼の最大の悪いところ。
    ……手持ちポケモン。



    少し離れたところにいる、彼と、ニヤニヤしているエルフーンを手招きした。

    「ちょっと。」
    「何?わからないところがある?どれどれ」
    「違うって。あのね、お願い。室内にいるときだけでいいからさ、エルル戻してくれない?」

    エルルはいやいや、というように首をふった。
    とても見目愛らしい彼女(エルルはメスだからね、)がこのようなしぐさをすることは、とても和む光景なのだが、

    「ぶぇえええっくし!!!!!!」

    私には見える。
    エルルが動くたびに、ぽわぽわしたオーラが空気中に飛散し私の体内を侵略しに来るのが!!!

    モンメンの綿毛もだめなら、エルフーンの綿毛もだめなのである。
    むしろエルフーンのほうが綿の面積が広くて私にとっては害悪ポケモンだ。

    彼はしぶしぶ。といった感じでエルルをボールに戻した。
    全く。

    紋綿症の患者の半径10m以内に、モンメンおよびその進化形を近付けるなと何回言っても通じない。

    「エルル、ごめんな。」

    カタカタと揺れて抗議しているようだ。
    エルフーン自体に罪はないので、エルルがしゅんとしているなら私も罪悪感を感じただろう。

    しかしボールの中であからさまに私に威嚇してきたので、
    私もちょっと睨みつけてやった。


    私の最初のポケモンはチュリネ、リリア。
    エルルとリリアは、私たちが5歳の時、一緒に捕まえたポケモンだった。

    エルルは小柄で、最初の内は慣れない環境で元気がなかったので、
    つきっきりで彼に看病されていた。
    その甲斐あってか、エルルは今や非常に(彼曰く)わんぱくな性格で、彼になつきまくっているのだ。

    …そのくせ私には生意気な一面しか見せず、
    リリアに対してもライバル視しているところがあり、ちょっと憎たらしいヤツだった。

    あいつに何度、彼氏とのデートを邪魔されただろうか。
    あいつに何度、リリアの髪の毛みたいなはっぱをくるくる巻きにされただろうか。

    「いたずらごころ」の名はだてではない。
    かわいい顔して悪魔のようなやつである。

    エルルがたとえ綿毛を発さないポケモンだとしても、私は仲良くなれないだろう…。


    うっかり「害悪ポケモン」と書いてしまったところをぐしゃぐしゃ消して、
    私は再びレポートのためのメモ書きを始めた。


    * * * * *



    薫風香る5月。
    ヤグルマの森から新鮮な空気が流れ込み、シッポウシティの春風は、
    私たちに命の喜びと、綿毛を運んでくる。

    (綿毛さえなければ。)

    これがもう少し経てば、しっとりと湿り気を含んで、また違った風になるのだろう。
    雨上がりの土の香りも、洗い流したような空の色も、町にもたらしてくれるだろう。
    シッポウシティは本当に美しい所だと思う。

    (モンメンさえいなければ。)

    …紋綿症は非常に精神的にもじわじわと攻め込んでくる。



    博物館を出ると空はもう夕暮れだった。
    やわらかな風が吹いてくる。

    私たちは風の中で伸びをした。
    後ろから風がきもちーなーとか、彼が言っているのが聞こえる。

    先ほど、博物館で戻されてしまったことがご立腹なエルルも、
    しばらく風とたわむれたらすっかり機嫌を直して一人で遊んでいた。

    博物館内では出さなかったリリアも、私は出してやった。
    彼女も故郷の風に吹かれて楽しそうだ。



    「ユリ。」

    振り向くと、彼氏が何やら真剣な面持ちで立ち止まった。
    私もつられて姿勢を正す。

    「あの、さ」
    「何?」

    少し、風が強い。
    彼はそのせいか語気を強めた。

    「お前、モンメン病…だろ?」
    「うん。」

    正確にいえば「症」だが、まあいい。

    「っていうことはさ、カントーとか、ジョウトに住めばさ、」
    「大丈夫なんじゃない?」
    「だよな?だよな、だったらさ」

    ざあ、とひと際強い風が吹く。
    彼の瞳に、夕時の朱色と意志の光が宿っていた。

    …もしかしたら?

    リリアは空気をよんで、どこかへ立ち去った。
    エルルも、エルルにしては珍しく気を回したようで、どこか離れたところにいるようだ。

    「お前が大学卒業して、俺もひと段落ついたらさ、」

    そこで何故か急に照れ出す彼氏。
    …言い忘れていたが、こいつはシッポウきっての草食系男子といわれていた。

    いつもならこういうとき、私が言葉をひきとってフォローするのだが…。
    大人しく言葉を待つ。

    「俺と一緒に、カントーの…そうだな、マサラとか。
     そういう静かなところで、一緒に暮らさないか。」

    返事はゆっくりで、いいから。
    その声は高鳴る風に、かき消されそうで、彼は吐き捨てるように、
    しかし私の目をしっかりと見て言いきった。


    「それって…。もしかして、」

    私の声は震えていなかっただろうか。
    鼻声でなかっただろうか。

    鼻水でなく今なら涙があふれそうだ。
    恋人になって、この言葉がまだかまだかと待ち続けた3年間。


    「……ユリ!」


    名前を呼ばれて頷いた。
    先ほどから止まない風が、また一層強くなる。

    彼はそれに負けない声で、
    力強く言った。


    「――――――俺と、結婚しt「ぶぇええええええっくしっ!!!!!」



    風が強く、吹いていた。












    ……その後。

    ひたすら、自身の体をわさわさ揺らしながら「ぼうふう」を起こしていたエルルは。
    そして、つかつかとエルルに歩み寄る私を見守っていた彼は。

    未だかつて、前代未聞、史上最強、歴史初の、

    私とリリアの「本気怒りモード」を見ることになるのであった。


















    終わって





    * * * * *

    ここまで読んで下さり、ありがとうございました…!!!

    はじめまして、しじみです。
    初投稿にこのような起承転結のないギャグなのかよくわからんものを送ってしまって…(滝汗)

    しかも、花粉症にしては、時期ずれてるよねっていう…本当に…謎の作品になりました。



    一週間程前に、ここの存在を知ってからというもの、入り浸っている暇人でございます。
    ここ最近、ずっとあとちょっと…ここの存在を知るのが早かったら…!!!と悔やんでいます。

    これからもちょぼちょぼ投稿していくかもしれません。
    よろしくお願いします。


    感想など書いておりましたら、かまってやってくださいませ。
    だらだらと失礼しました。


      [No.1203] 再会【ver1.1】 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/05/19(Thu) 00:22:12     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5




     広く、荒野を渡る風の音。

     見渡す限り、土が面(おもて)を見せ、雑草の一本さえ生えていない。

     少年がひとり、銀色の棒を杖がわりに、不毛の地を歩んでゆく。

     標なき大地に、少年の足跡が道となって続いていく。

     彼が顔を上げ、微笑むその先には、白レンガを積み上げた有史の街の跡が、悠然と存在している。


     風が吹き、一枚の紙が、誘われるように壊れた窓から身を踊らせた。




     少年は、時折手に持った金属の棒を振り回しながら、まっすぐ、できるだけまっすぐ街へ進んでいた。
     レンガで区切られた外側に、緑はない。
     天然に存在し得ない、ベンゼン環や多価元素の組み合わせが、大地に萌ゆる命を枯らしたのだと、少年は聞いていた。

     この荒れ果てた大地も、壊れた市壁も、先の戦争の負の産物だと、少年は聞いている。
     金属探知機を杖がわりに進みながら、少年は、そんなことは関係なく、ただ目前の遺跡がかつてどれだけ美しかっただろうかと考えている。

     戦争の最中(さなか)、岐路に立つ度に、この街は戦場となったのだという。

     かつては、市壁が遥か大地の向こう側まで伸びゆき、天から見るとひとつの象形を成したという。
     五芒星であったとも、神格の鳥獣であったとも言われるが、それを確かめる術はない。
     一番内側の一枚を遺して、大戦の時に全てが崩落してしまった。
     そして人は、壊れた壁を見上げるしかない。


     少年は、ひとつの街で、三度夜を明かすことを習わしとしていた。
     そう決めたわけではなく、街に着き、街を見て回り、眠り、次の日は午後まで寝過ごしてから街を見、そうして最後の日に出立の準備をして眠ると、自然と前を向き、歩き出す心が整うからだった。
     だから、少年はこの街でも三夜過ごすつもりだった。
     まず、一日目は街を見て回る。見て回りながら、連泊のための宿を確保する。
     その心づもりをした少年が、杖を置き、一旦腕を休めてから、再び歩き出そうとした時、何かが風に誘われてヒラリと舞い飛んだ。

     何だろうか。
     少年の上向けた目に、青空と、ヒラリ、真白な紙が見えた。
     ふと誘われて数歩進み、紙を手に取ると、その真白の面に黒い模様があるのを、少年は見て取った。
     円を基調とした模様に、わずかに凹凸がある。円の中にもうひとつ、黒が掠れて小さな円の形を示していた。
     凹凸のある方を上に見て、小さな円を肉球だと考えれば、これは獣の足跡に見えなくもなかった。さりとて、何の足跡かと問われれば、少年には分からなかった。
     けれど、それを郷里の土産にと、畳んでいくつもある内ポケットに仕舞い、細かな探索は明日にしようと、まずは宿を探し始めた。


     最後に市壁を壊したのは、人間らしい。多量の爆弾を降らし、大地を荒れさせたらしいが、その頃はもうこの街に人はいなかったはずで、何の為にそうした行動に出たのか、大きな謎のひとつだった。
     ただ、その為に美しい景色がひとつ失われたことを、少年は悲しんでいた。


     次の日、少年は相変わらず金属探知機を握りながら、街の中を巡っていた。服屋に機械屋、旧時代の店には色々と面白いものがある。
     少年が選んだのは、過去、デパートメントストアと呼ばれていた建物だった。戦争が起こる前、人はここに行けば、お金を出すことで何でも手に入れられたという。果たして、それは嘘か真か。少年は、いくらなんでも季節でない食べ物は手に入らないだろう、嘘だと思っていた。

     少年は壊れて動かないエスカレーターを登り、二階へ向かう。
     この地域の文字で、食べ物と書かれている看板を目印に、内部を巡った。
     やはり、食べ物の売られていた場所には、何もなかった。
     通路を作るように置かれた区切りのある棚が、かつての、食べ物が並んでいた時代の盛況を匂わせた。

     少年は三階に上がろうとして、フロアの片隅に置かれたゴミに目を止めた。
     一見、丸い、枯れた木の実のようなそれは、何かでコーティングされ、ただ中身を抜かれ捨てられたのではないことを匂わせた。
     力を込めると開いて、しかし中空の木の実である。
     そこに捨てていこうかと考えて、いや、けれど、先人が壊れないように大事にしていたものだからと、少年はたくさんの内ポケットのひとつに木の実を入れた。

     三階、四階と服屋と機械屋を見て回って、五階に辿り着くと、少し変わった風景が広がっていた。
     服屋とも機械屋とも、食べ物屋とも違う、虹の色で彩られた壁。
     ポケモン、と書かれた昔の文字が見える。
     かつて、ポケモンと人が共に在りし時代、人はポケモンの為に買い物をしたのだという事実が、少年の胸に波紋を起こした。

     そこでさらに、少年は奇妙な物を見つけた。
     ポケモン用の食料品なのだが、幾箱か残り、しかもそのいくつかが開いている。
     人の手でない、何かで乱暴に開けられた跡で、中を見ると、綺麗に食べ尽くされているか、腐って残っているかだった。

     少年は、箱の周りにさらに何かないか、調べてみた。
     綺麗に拭き掃除されていただろう床は白く、汚れがないのに、その箱の周りだけ黒ずみ、あちこち黒点が散っていた。

     少年は、点々の後を追った。
     床のそこここに残る黒は、よく見ると先日の紙の模様に似ている。
     ポケットから紙を出して検めると、大きさから形までそっくりであることが分かった。
     少年は紙を仕舞い、このイタズラの主が誰なのか、見極めようと先へ急いだ。

     少年は、バルコニーへ出た。
     なぜそこに足跡があるのか分からなかったが、確かにここに、模様は続いていた。
     少年は、何か手がかりがないかと周囲を見回す。
     見ると、バルコニーの隅で、小さなプランターに名の知れぬ木が植わってあった。
     名の知れぬ木は実をつけ、その実も名の知れぬものだったが、どこか少年の食べ物と同じ姿形をしていた。
     プランターの周りには、さっきと同じ模様があった。
     結局その日は足跡の主を見つけられず、少年は宿に戻った。


     戦争が始まった頃は、ポケモンと人間が手を組んでいたらしい。
     ならば、何と戦っていたのかと思われるが、少年はうーんと唸って、何かと、と答えるしかない。
     何か諍いがあって市壁を壊したらしい。
     その時はポケモンと人間が協力したのだろうが、少年に委細を知る術はない。


     少年はバッグの中身を改めていた。
     折良く宿とした家にあった保存食料を頂き、如何に保存が効くのかは知らなかったが、バッグに入れるところだった。
     内地の、少年の郷里に近い街ならば、何かしら買い足し、整理、破棄などできるが、無人のこの街では何もやることがなかった。
     外には雨が降りこめ、雨漏りのないこの家に閉じこもるしかない。
     少年はため息をつくと、内ポケットから、先日の紙を取り出し、これは置いていこうか、破棄しようかと考えていた。

     くー、と小さな声がした。
     少年はハッとして顔を上げた。
     雨が降りこめる中、聞き違いかと思った矢先、もう一度くーと声がする。

     少年は立ち上がり、壊れた蝶番に揺れるドアを弾き飛ばし、くーと音のする方向へ走った。
     二階から一階へ、一階からエントランスへ駆け抜け、音の記憶を頼りに扉を開くと、外は土砂降りの雨で、視界も何も効かなかった。

     諦めて部屋に戻る少年の目に、昨日と同じ模様が、今度は水で床に描かれているのが入った。
     もう一日、ここにいよう。
     少年は雨の向こうに消えた、見えない隣人を探すことに決めた。


     二度目の市壁の破壊は、はっきりと歴史に残っている。
     ポケモンが、ポケモンたちだけで、市壁を破壊したのだ。
     それが、この街が岐路にありきと言われる由縁。
     その日から、その時から、戦争は人とポケモンのものになった。
     原因は人がポケモンに撃ちこんだ兵器とも、ポケモンを裏切った人間ともその逆とも言われているが、本当のことは何も分からない。
     ただ、ポケモンたちは人の元から去り、人もまたポケモンたちの元から去った。
     後に壊れた市壁だけが残った。


     空はカラリと晴れ、あちこちに水たまりが残っていたが、石畳で作られた道に、昨日の隣人の足跡は残っていなかった。
     少年は金属探知機を宿に置いて行き、街に辿り着いた日に模様のある紙を手に入れた、あの場所まで来ていた。

     少年は空に手をかざし、待った。
     またあの紙が現れるのではないかと、窓のひとつから隣人が手を振るのではないかと、空(くう)を探りながら、待っていたのだ。

     白レンガの街並みと、窓の並びが沈黙を守り、風が静寂(しじま)を縫って吹き抜けた時、空はひたすら空っぽで、日は早くも沈み始め、少年も、明日にはここを発たねばならないかと思っていた、その時。

     いくつもの風が、空が、いくらもある紙を舞い遊ばせていた。
     少年の求める模様のある紙が、いくつもいくつも、赤と紺の空から降ってきた。
     ある一点、壊れた窓からその紙が舞い飛ぶのを見た少年は、一目散、その建物のその場所へと駆け抜けていった。

     階段を上がり、かつてドアのあった場所から中を覗くと、そこには、一束の紙と、そして今は誰も使っていないインク。
     あの戦争の前、あるいはポケモンと人が分かたれる前、誰かがそこにいて、今は誰も使わなくなった言葉を、一枚一枚の紙にインクで書き記していた。
     その面影に、誰がいたずらしたのか、文字を知らぬ彼か彼女は、言葉の代わりに足跡を、紙に書き記していたらしい。
     床に広がった紙に、ぞんざいに歩きの跡が付され、それらは風に乗って、壊れた窓から外へと羽ばたき出す。
     事の始終を見た少年は、もうここには用はないと、背を向け、出口へ向かった。
     隣人には会えなかった。
     それもまた一興、と思い決め歩き出す。
     部屋を出て、階段を下り、建物の外へ、その目の前に、フラリ、獣が姿を現した。

     犬に似て、犬ではない。
     中型犬ほどの大きさで、顔にはヒゲに似た毛を多く蓄えている。
     背には紺の毛を羽織り、それはマントのように、首元から尻尾の先までの部位を覆っている。
     かつて、人にハーデリアと呼ばれ、人を支え、人と共に生きていたポケモン。少年は、そのことを知らなかった。
     ただ、その者の喜びを感じた。

     その者はワン、とひと声鳴いた。
     少年が、まるで決められていたことのように内ポケットから木の実を出すと、その者は鼻先でそれに触れ、吸い込まれ、そしてまた何事もなかったように木の実の中から姿を現した。
     それが、ポケットモンスターと呼ばれる生き物たちの特徴であることを、少年は知らなかった。
     しかし、木の実を掲げ、隣人が歓喜の遠吠えを上げれば、これからかの者と築くべき関係が、自ずと見えた気がした。


     夕焼け時に挨拶を交わし、次の朝日に共に発つ。
     少年の隣には、新たな隣人の姿があった。


     荒野を風と渡る。

     標なき不毛の大地に、少年とポケモンの足跡が、新たな道を描いて地の果てまで続いていく。



    ○後書き
     どうしたもんかとすったもんだした結果、コンテストとあまり変わらない形で投稿することにしました。
     改正に向けて数々のアドバイスをくださったサトチさんには、ある意味“未完成”のまま改稿を終えることの謝罪と、何かにつけて言葉の拙い私に丁寧に助言してくださったことへの感謝を申し上げます。

     言い訳開始。これ以上、「再会」に構う気力が起きませんでした。もらった批評・感想はこの「再会」という作品にこれ以上活かすことはありません。その代わり、別の、新しい作品で活かします。言い訳終わり。

     では、この作品を読んでくださった皆様、ありがとうございました。


      [No.1202] あの名作がちらついて… 投稿者:リナ   投稿日:2011/05/18(Wed) 06:45:25     76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     お読みいただいてありがとうございます。

     「リナさんはぶっ飛んだ話が真骨頂」と言われるのを密かに夢見て、なぜかグロに走るピエロです。

     そうですね、テネは自分自身人間であることは自覚有です。ただもはや人間に対してゆがんだ見方しかできなくなっていて、将来もごく限られた人間しかそばに置きません。ポケモンには囲まれているようですが――。まあ、そんな感じの設定です。


     分かりますグラエナの群れ。そう、このグラエナの群れなにかと被る――と思ったら、『もののけ姫』に出てくる山犬たちでしたw そしたらほら、テネがサンに見えてくる。

     テネ「人間なんて大っ嫌いだー!!!」


      [No.1201] まさかの14番目(?)降臨 投稿者:レイニー   投稿日:2011/05/18(Wed) 02:01:30     77clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    HDD整理してたら、2003年に書いたものが出てきたので。
    どこかに投稿する度胸もなく、お蔵入りになったもの、まさかの本邦初公開です。

    ポケスペ第3章の話です。ワタル→イエローのカップリング注意。
    完全に妄想の産物。


    タイトル「海に浮かぶ想い」

    ------------------


    ここは、うずまき列島。
    一番南のその島に、彼は、いた。
    彼の名は、カントー中に知れ渡っている。
    そして、ジョウトにも知っている人は、大勢いるだろう。
    彼のことが、テレビニュースで、大々的に放送されてもおかしくはない。
    なぜなら、一年前、ポケモン達の理想郷を造るため、
    カントー全土を造り替えようとした、四天王の一人だからだ。
    「竜」の使い手、と言えば皆さん御分かりでしょう。
    彼の名は、ワタル。

    彼は、いつものようにポケモンと共に過ごしていた。
    と、波の音に変化が起きた。
    ラジオを聴いてみる。この辺りに、巨大な渦潮が発生したらしい。
    「ルギア」が目覚めたな、と彼は思った。
    1年前、俺が手に入れようとした、「力」が、だ。
    最もあの時は、イエローの奴に邪魔されて、失敗に終わったが。
    だが、彼のおかげで、「人とポケモンとの共存」ということにも目が向くようになったのも事実だ。
    今は、理想郷計画が実現しなかったことに、未練はない。
    それはイエローのおかげなのかもしれない。

    そんな事を考えていると、この瀧の裏の洞窟に、何かが入り込んできたようだ。
    人を近付けたくないと言うワタルの思いが通じたかのように出来た渦潮に、
    何かが、巻き込まれたような音がする。
    彼は、ハクリューに、何が巻き込まれたのか、見てくるように言った。
    時々、この辺りに住んでいるポケモンが紛れ込んでくるのだ。
    だが、ハクリューが連れてきたのは、ポケモンでは無かった。
    黄色い長い髪を、一つに縛った、少女だった。

    少女は、冷え切っていて、完全に気を失っていた。
    彼は、カイリューに、少し弱めの大文字を命じた。
    その火で、少女を、暖めた。
    彼は、その時、自分の心臓が高鳴っているのを感じた。
    そして、なぜか緊張している自分に気が付いた。
    何故こんなにも、この少女のことを、ここまで世話するのか、不思議だった。
    普段なら、人が入り込んできた時は、ハクリューに近くの町まで運ばせるだけなのに。

    そう思っていた、その時だった。
    とたんに、渦潮が収まり、瀧が割れた。
    彼は、なぜかその時、カイリューで、少女の体を隠していた。
    彼女と一緒にいる所を、他の人に、見られたくなかった。

    「戻りました。」
    シルバーの声だった。
    ここに入って来られるまでに、成長したらしい。
    彼は、そのまま少女を隠し、シルバーと、話をした。
    まだ、彼の心臓は高鳴っていたが、それを顔に出さないよう努めた。
    が、彼の顔は、赤らんでいた。
    シルバーはその事に気づいたが、あえて何も言わなかった。
    彼はシルバーの話を聞き、セキエイに行くように命じた。

    シルバーが、「奥の間」から出て行くと、彼は内心ほっとしていた。
    少女を見付けてしまうのではないかと、内心びくびくしていた。
    彼女の体は、温かくなっていた。しかし、一向に目を覚まさなかった。
    不安になり、少女の側に近づいた。
    彼は、彼女が寝息を立てているのに、気が付いた。
    どうやら、眠ってしまったらしい。

    彼は、彼女とずっと一緒にいたかった。
    しかし、彼の立場が、それを咎めた。
    自分は、四天王のワタルだと。
    彼女が起き、自分を見たらその事に気づくかもしれない。
    その上、彼は、温かくなった彼女の体から、かすかに「故郷」の香りを感じた。
    カントー出身で有るなら、ますます、彼女は怯えてしまうだろう。
    それが、恐かった。
    彼女に怖がられてしまうなら、この事は、自分の胸の中だけにしまっておこう、
    彼はそう考えた。

    彼は、少女をカイリューに乗せた。
    彼女に触れるたび、胸の鼓動は高まる。
    彼女を何処に降ろすか考えていたら、中年の男が、浜辺で倒れていた。
    よく見てみると釣り人らしき男は、浜に打ち揚げられたようだった。
    恐らく、荒波にのまれ、ここにたどり着いたのだろう。
    彼は、男のとなりに、少女を降ろした。
    そして大声で叫んだ。
    「大変だー!!人が倒れているぞー!!」
    そして、カイリューに乗り、上空に上がった。
    村の人が次々にやってくる。
    彼はそれを見届けると、元居た場所へ帰って行った。

    彼は、気づかなかった。
    釣り人の男が、黄色い麦藁帽子を持っていたことに。


    -------------------

    今見ると恥ずかしすぎて泣けてくる。

    【どんどん爆発すればいいのよ】


    追記:余談ですが、サトチさんの影響をバリバリ受けまくった代物です(爆)


      [No.1200] 予備日は上野で 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/05/17(Tue) 22:59:47     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    鉱物マスターの希望により
    予備日の22日は国立科学博物館(上野)に行くことと相成りました。


      [No.1199] 【即興】ゴミ捨て場【チャットで書いた奴】 投稿者:音色   投稿日:2011/05/17(Tue) 22:23:49     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     俺は正直ボロ雑巾だった。
     そりゃまぁ、なぁ。40後半になって養う家族の一つもいなけりゃ些細なミスを積み重ねればいつかはクビにだってなるだろうけども、この年で浮浪者なんかになるとは思わないって。

     慣れない公園ぐらしは街の清掃員に追い出された。まったく、ここは外ばかりはキラキラとネオンで飾り立てるが裏を返せばそれだけ隠したいものがいっぱいあるってことだ。
     たとえば路地裏のスクラップ置き場。異臭を放つここには可燃不燃プラスチック缶瓶粗大ごみなんだって投げ込まれる。
     人間のゴミもここであってんのか? 笑えないことを考えながら、足元に転がった缶を派手に蹴り飛ばした。

    「やぁーぶ!」
     暗がりの中で蹴飛ばした缶を追いかけるゴミ袋を見つけた。

     なんじゃありゃ。真っ暗な闇の中、ヘドロみたいな緑色をした生き物があるいてきた。ゴミが凝り固まったみたいな手に持っているのは、俺が蹴飛ばし少しへこんだアルミ缶。

     ボロボロのズボンを持っていない方の手でばしばし叩く。よごれるからやめろ、と言いたいがすでにズタボロなんだからこれ以上ボロくさくなってもいいか、と諦める。
     どうやら俺に向かって何やら怒っているらしい。ただ俺はれっきとした人間だ。おまけにピュアでもイノセントでもないもんだからこいつの言っていることが分からない。

     ぐいっと一回ズボンをひっぱって、歩き出す。
     しばらく歩いてこっちを見上げた。どことなく咎める様に見てくるってことはついてこいってことなのか?
     職はないが時間はある。面白半分でついて行った。

     ついた先は、コンビニだった。

     そしてそいつは何をしたと思う?

     俺の目の前で、コンビニの前に置いてある缶のゴミ箱に俺が蹴飛ばした缶を捨てやがった。しかもちゃんと、『アルミ缶』って書いてある方に。
     そうした後に俺を見上げ、ばしばしと今度はゴミ箱を叩く。
     『ちゃんとごみはゴミ箱に捨てなさい』と説教されている気分になった。
     そのあとに笑いがこみ上げる。ゴミみたいに落ちぶれた人間が、ゴミ袋にごみの捨て方を説教されるなんて、傑作じゃないか!

     ひとしきり笑ったあと、きょとんとしているヤブクロンに謝る。俺が悪かったよ。
     満足したのか、ヤブクロンがくるっと踵を返して路地に帰っていく。

     好奇心か、きまぐれか、俺はそいつについて行ってみた。
     ヤブクロンはごそごそと器用にさっきのスクラップの山の中に帰っていく。真似してガラガラ音を立てながら入ってみると、驚いた。

     だってそいつ、何やってたと思う?

     スクラップ置き場は可燃不燃プラスチック缶瓶粗大ごみが投げ込まれてる。
     そしてそいつは、可燃ごみ、不燃ごみ、プラスチックに缶、ビン、挙句粗大ゴミ。全部、分別してやがった。

     奥の方はチラチーノ顔負け並みに整然とゴミが綺麗に分別されている。表の方のはきっとまだ手が回ってない奴なんだろう。
     見たところ、他にこいつ以外にヤブクロンはおろか、ダストダスだっていない。
     じゃあ、こいつ全部これ一人でやったのか!?
     なんとゆー根性。あぁ、でも、ポケモンってやることなさげだもんな。俺なんかそのやることすらまともにできないから会社クビになったんだけど。

     がらん、動いた拍子に積まれていたなんかのゴミが落ちた。派手な音にヤブクロンが振り向く。
     えーと、なんて言い訳すればいいんだ?
     困った俺はとりあえず、手直にあった燃えないゴミをヤブクロン流に分類されてるところに持っていく。

     置こうとしたら、止められた。え?違うの?あっち?指された方に持っていく。ヤブクロンが嬉しそうに撥ねた。
     あーー…、俺はどうせ、社会のゴミみたいなものだからなぁ。ここでゴミ分別やるのも、面白いかもなぁ。

    「なぁ、俺しばらくここに捨てられてもいいか?」
     冗談みたいに言ってみた。ヤブクロンがしばらく考える。そしてばしばしと俺を殴った。なんだよもう。
    「分かったわかった、捨てるんじゃなくて、しばらくここでお前を手伝うってことなら?」
     ・・それならいいのね。どうやらこのヤブクロン、捨てる、という言葉に反応するみたいだ。

     深夜の街角でがらんがらんと音がする。
     とあるスクラップ置き場は、今日も無限のゴミを分別している。

    缶  じゃない


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  朱雀様に捧げまするリクエスト(でもないか)
    『適当な名前で入って正体がばれたらリクエストを受ける』チャットで見事に正体がばれてその場で書いたようなもんです。

    【ほぼまんまなのよ】
    【なにしてくれてもいいのよ】


      [No.1198] P@SSION☆プリカちゃん 投稿者:586   《URL》   投稿日:2011/05/17(Tue) 21:30:48     276clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     「きぃぃぃぃーっ! あんの泥棒猫ぉ〜っ!」

    かたかたと歯を震わせながら、プリカちゃんがおもむろに口走りました。トレードマークである桃色のふわふわボディを目いっぱい膨らませつつ、全身でもって昂ぶる感情をアピールしています。

    プリカちゃんは今、身を焦がすような猛烈な怒りと嫉妬に燃えていました。

     「何とかして、マリカちゃんからあの泥棒猫を引き離さなきゃ……!」

    すっかり伸びきったハンカチを噛み締めながら、プリカちゃんは誓いを新たにするのでした。






    プリカちゃん。ちょっと大人っぽい黒いリボンがチャームポイントの、おしゃまさんのプリンです。得意技はもちろん「うたう」。相手を眠らせるための「技」としても得意だし、そうでなく普通に歌うことも大得意です。むしろ、綺麗な歌声を披露することのほうが多いくらいです。

    マリカちゃんはプリカちゃんの親で、プリカちゃんがタマゴの頃から面倒を見てきてくれた大切な存在です。普段からモンスターボールに入れたりせず、大切なパートナーとして心を深く通わせています。

    そんなマリカちゃんとプリカちゃんの大好きなこと、それは。

     「プリカちゃん、歌うよ!」
     「うんっ!」

    もちろん、歌うことです。正確には、マリカちゃんが楽器を演奏して、プリカちゃんが歌うという構図になります。マリカちゃんはどんな楽器でも弾きこなし、一度聴いた曲はすべてのパートを完璧にコピーできる天才少女でした。そこへ、小さな頃(具体的にはププリンの頃から)から地道に歌う練習を積み重ねてきたプリカちゃんが美声を重ねる。これぞ、最高の組み合わせです。

    小さな頃から特訓してきたので、プリカちゃんは普通に人間の言葉を話すことができます。それもかなり流暢だったりします。言葉の意味やつながりもしっかり理解していて、マリカちゃんと正確に意思疎通ができるほどです。おかげで、プリカちゃんはマリカちゃんの家族からも「家族の一員」として認識されていました。

    二人は町内の催し物や小さなイベントに出ては、美しい演奏技術と歌声、そこから紡ぎだされる絶妙なコンビネーションを披露していました。プリカちゃんはそれが楽しくて仕方ありませんでした。浴びせられる歓声、鳴り止まない拍手、そして何よりマリカちゃんと一緒に歌えること。そのすべてがプリカちゃんの喜びでした。

     「ねーねープリカちゃん! わたしまた新しい曲作ったよ! 一緒に歌おうよ!」
     「もちろん! あたし全力で歌うわ!」

    二人をつなぐKEY WORD。それが歌でした。マリカちゃんと一緒に思いっきり歌を歌う、楽しい毎日がずっと続く。マリカちゃんのパートナーを努められるのは、自分一人だけ――プリカちゃんは、そう信じて疑いませんでした。






    ――おかしくなったのは、マリカちゃんとプリカちゃんの元に、一人の女の子がやってきてからです。

     「マリカちゃん……その人、誰?」

    日課の散歩から帰ってきたプリカちゃんの目の前には、マリカちゃんより一回り背の高い、ミニスカートの女の子が立っていました。マリカちゃんは女の子に親しげに寄り添って、いつもプリカちゃんに見せるような満面の笑みを浮かべています。一体、誰なんでしょうか。

    戸惑いつつも、プリカちゃんは問題の女の子の特徴を整理し始めました。さっきも言いましたが、背は高いようです。少なくとも、マリカちゃんより一回りは高いです。髪型はかなり独特です。先端から二手に分かれて、地面に付きそうなほど長く伸びています。例えるなら――そう、ミミロップに似ています。カラーリングをミントグリーンにすれば、ほぼ完璧です。髪留めはひし形のダークピンク。耳にヘッドセットを付けているのも確認できました。

    左腕には、液晶パネルのようなデバイスが装備されています。スペクトラム・アナライザー(スペアナ)でしょうか? そこから上へ辿ると、素肌に「01」という印字が見えます。衣装自体はノースリーブで、デバイスを装着するために黒いアームカバーを着用しています。中央には髪の色と同色の長いネクタイ。黒いタイピン二つで留めているのが分かります。足回りはブラックのロングブーツで武装。生地は薄いようです。見た目から得られる情報は、大方こんなところです。

     「えへへっ♪ びっくりしたでしょ! すっごい人気で、うちに来てもらうまで大変だったんだよ〜」
     「初めまして! 貴方が、マスターのパートナーのプリカさんですね!」
     「ち、ちょっと……あたしの名前、知ってるの?!」
     「わたしが教えてあげたんだよ! これから、一緒に歌うパートナーになってくれるからね!」
     「なんですと?!」

    プリカちゃんがカッと目を見開きました。前方に身を乗り出して、マリカちゃんと謎の女の子に目を向けます。二人はプリカちゃんの様子が変貌したことに気付かぬまま、仲睦まじげに会話を続けます。

     「今までできなかった曲も、これでできるようになるよ〜♪」
     「あわわわわわ……」
     「はいっ! マスターのために、私、頑張ります!」
     「はわわわわわ……」
     「うん! わたしもうんといい曲を作って、いっぱい歌わせてあげるからね!」

    うんといい曲を作って、いっぱい歌わせてあげる。この言葉に、プリカちゃんはガチで石化しました。一体どういうことだ? マリカちゃんがこのぽっと出のどこの馬の骨とも皮とも知れない正体不明のミミロップ似の女の子と歌う? しかも曲を作ってあげる? どういうことなんだ? と。

    プリカちゃんが石化している間に、マリカちゃんとミミロップ似の女の子が楽しげに話しながらリビングを発ちます。

     「じゃ、早速練習しよっか! 今から大丈夫?」
     「もちろんです! 歌わせてください!」
     「――ち、ちょっと……」

    マリカちゃんの自室に向かう二人を、プリカちゃんはただ見つめ続けることしかできませんでした。

     「……………………」

    ばたん。マリカちゃんの部屋のドアが閉まってしまいました。プリカちゃんは口を半開きにしたまま、右腕を中途半端に前に突き出した状態で固まっています。呆然とした表情のまま、閉じてしまった部屋のドアをしばし凝視します。

    プリカちゃんはおよそ二十秒ほど同じ体勢で硬直した後、ようやく動き出しました。

     「な、な、な……な、なんなの〜! あいつ、一体なんなのよ〜っ?!」

    ――これが、プリカちゃんの苦悩の始まりでした。






     「落ち着こうよあたし……焦っても仕方ないわ。あんなぽっと出のヘンなヤツに、マリカちゃんがパートナーを任せるはずないもの……」

    ぶつぶつ呟くプリカちゃん。口では余裕を装っていますが、態度・口調・表情に余裕はちっとも感じられません。自分の部屋で――プリカちゃんには専用の部屋があてがわれています――うろうろうろうろ落ち着きなく動きながら、次にどう動くべきかを懸命に思案していました。

     「Yo! プリカ、Do-したんDai?」
     「あ、ゲロッパじゃない」

    懊悩するプリカちゃんの前に、ゲロッパと呼ばれたポリゴン2が現れました。丸いサングラスをきらりと光らせ、ボリューム満点のアフロヘアーを揺らしながら、ふわふわとプリカちゃんに近づきます。どちらもゲロッパの趣味です。

    ゲロッパはマリカちゃんと一緒に作曲を担当していて、マリカちゃんが愛用するキーボードタイプのシンセサイザーの調整を主な仕事にしています。他にも、マリカちゃんの楽曲にリアルタイムでリバーヴ・コーラスなどのエフェクトを付加したり、内蔵された音源を駆使して別パート(主にドラムパート)を担当することもあります。彼の位置付けは、マリカちゃん・プリカちゃんに続く三人目のメンバーといったところですね。ですから、プリカちゃんとの関係も深いんです。

     「どうしたもこうしたもないわよ。見た? あのミミロップみたいなよく分かんない女の子」
     「見たYo! なかなかイカしたCuteな娘だと思うZE!」
     「ちょっとゲロッパ、それ本気で言ってんの?! 冗談じゃないわ! このままじゃ、あたしが歌えなくなっちゃうじゃない!」

    プリカちゃんの危惧はそこにありました。例のミミロップ似の女の子が自分に成り代わってボーカルを担当して、自分がお払い箱にされること。それだけはなんとしても避けなければなりません。プリカちゃんの切実な思いが、そこにありました。

     「So-So。さっきマリカChanの部屋で二人がTrainingしてる最中の風景を撮影してきたZE!」
     「練習風景を? ねえゲロッパ、あたしにも見せて!」
     「いいYo! Let's Play!」

    ゲロッパはプリカちゃんの依頼を受けて、フラッシュメモリに記録した二人の練習風景を収めた動画を、目から壁に向けて投影し始めた。

     「よーし! じゃ、まずは肩慣らしにこの曲から! 行くよ〜! せーのっ!」
     「さーいーたー♪ さーいーたー♪ ちゅーりっぷーのー はーなーがー♪」
     「ふ、ふん! た……ただ、ただのど、どどっ、童謡じゃないっ!」
     「あの娘は童謡、プリカは動揺ってKANJIだけどNEー」
     「う、うるさいっ! とにかく、あたしがパートナーなのは変わらないもん! あんなの、す、すぐにお払い箱だわ!」

    マリカちゃんの唯一人のPrivate Service。それがプリカちゃんの誇りでありアイデンティティです。そう簡単にパートナーのポジションを取られるわけがない。いやいや取られてなるものか。プリカちゃんにだって意地があります。

     「すぐに……すぐに元通りになるわ……!」

    腕組みをしながら言うプリカちゃんですが――やっぱり、どことなく余裕が感じられませんでした。






    ――マリカちゃんとミミロップ似の女の子が行う練習は、その後も続いています。

     「いい感じっ! その調子っ!」
     「サイコパワーを 心に 秘めて♪ はてしない道を 走る♪」
     「ぐぬぬぬぬぬぬぬ……!」

    思いのほか上手にたたかうアイドルの曲を歌いこなすミミロップ似の女の子と、とても楽しそうなマリカちゃんの声。こっそり部屋の中を覗き込みながら、プリカちゃんはしきりに歯噛みしていました。単刀直入に言うとすごい悔しい。そんな状態です。

     「くっ……! 焦っちゃダメ! すぐになんとかして見せるんだから!」

    自室に戻ると、ベッドの上で寝転がっていたミミロップ人形(原寸大)をさっと拾い上げ、怨念をこめて握り締めます。ぎりぎりと首を締め上げながら、プリカちゃんが呪詛の言葉を口にします。

     「すぐに分かるわ! マリカちゃんには、あたししかいないってことが!!」

    ぎゅっ、と手に力をこめると、ミミロップ人形(原寸大)の体が歪んで、変わらないはずの表情が心なしかちょっと苦しそうになった――ような気がしました。

     「ここにいても仕方ないわ……外で対策を考えなきゃ」

    ミミロップ人形(原寸大)をベッドに放り投げると、プリカちゃんは部屋から出て行きました。






    さて、外に出たプリカちゃんでしたが、これといってあのミミロップ似の女の子を追い払う名案が思いつくわけでもなく、ただ難しい顔をして歩くばかりでした。プリカちゃんは今、近くにある商店街にいます。

     「どうすればいいかしら……」

    実力行使に打って出るか、はたまた搦め手を駆使して頭脳プレーで追い出すか。いろいろと考えをめぐらせるものの、焦りと苛立ちが先に立ってしまい、うまく考えがまとまりません。こんな状態で何かアクションを起こしても、きっと失敗するだろう――プリカちゃんは自分にそう言い聞かせるのが精一杯でした。

    晴れぬもやもやを胸の中で弄繰り回しながら、プリカちゃんがぽてぽて歩いていた時のこと。

     「ねえ、ユンゲラーさん! スプーン曲げ見せてーっ!」
     「ぼくも見せてーっ!」

    通りがかりの紳士、もといユンゲラーさんが、子供のナゾノクサちゃんとサンドくんにせがまれて、得意技の「スプーンまげ」を披露しようとしていました。その様子を見かけたプリカちゃんが、すっとその場に立ち止まります。

     「よかろう。私のサイコパワーを君たちに見せてあげよう」

    ユンゲラーさんが「サイコパワー」という単語を口にした瞬間、プリカちゃんの脳裏に、あのミミロップ風の女の子の姿がふつふつとよみがえってきました。マリカちゃんと楽しそうに練習する光景も、合わせて一緒に。

     「……………………!」

    プリカちゃんの行動は、別の意味で迅速でした。

     「サイコパワーですってぇ?」
     「……なぬ?!」

    スプーン曲げを披露しようとしていたユンゲラーさんからスプーンをひったくると、プリカちゃんがユンゲラーさんに思いっきりメンチを切りました。スプーンをひったくった手がかたかた震えています。ユンゲラーさんと取り巻きの子供達が、何事かとプリカちゃんを見つめました。

     「見せてあげるわ……腕力(ハンドパワー)>超能力(サイコパワー)ってことを!」
     「ち、ちょっと……」

    両手でスプーンを持つと、プリカちゃんはありったけの力を込めて――

     「ぜりゃああぁあっ!!」
     「わぁ?! スプーンが半分に折り畳まれちゃった?!」

    スプーンを豪快に二つに折り畳んでしまいました。ビビるくらい半分に折り畳まれています。見ていた子供達が、目を真ん丸くします。

     「ぜーはーぜーはー……い、いつか、あいつもこんな風に折り畳んでやるんだから……!」

    鉄クズと化したスプーンを放り投げ、息を切らせたプリカちゃんがその場から立ち去りました。

     「すごいすごい! スプーンが折り紙みたいになっちゃった!」
     「す、スプーンが……」

    プリカちゃんの馬鹿力に興奮する子供達を尻目に、大切なスプーンを使い物にならない状態にされたユンゲラーさんがその場で絶望していました。






    ――プリカちゃんの悩ましい日々は、まだ続いているようです。マリカちゃんの部屋では、女の子が楽しそうに歌っています。

     「GO MY WAY♪ GO 前へ♪ 頑張って ゆきましょう♪ 一番 大好きな……」
     「タワシにでもなってなさいよぉおおぉぉおーっ!!」

    ミミロップ人形(原寸大)にハイタッチという名前のウェスタンラリアットをぶちかましながら、プリカちゃんが部屋でキレていました。ハイタッチ(ウェスタンラリアット)を食らったミミロップ人形(原寸大)が壁に叩きつけられて、ぐったりとその場に崩れ落ちました。

    ぶっ飛ばされたミミロップ人形(原寸大)を見つめながら、プリカちゃんがぜーぜーと肩(?)で息をしています。プリカちゃんの肩はどこって? それは聞かないお約束です。

     「はー、はー……いけないわ、このままじゃおかしくなっちゃう……」

    ここのところ、プリカちゃんはこんなことばかり繰り返しています。ぶんぶんと頭を振って、一旦気を取り直します。プリカちゃんの頭はどこって? それも聞かないお約束です。

     「上手上手! この調子で頑張ってね!」
     「はいっ! プロデューサーさんっ!」
     「いつの間にかマスターからプロデューサーにクラスチェンジしてんじゃないわよーっ!!」

    怒ったプリカちゃんが風船のような体を膨らませて、ベッドの上でぽよんぽよん跳ねています。燃え上がる感情はBurn on to Karie。燃え滾るような思いが身を包みます。

    と、そこへ。

     「あっ、プリカちゃん! トランポリン遊び? わたしも混ぜて〜!」
     「せっかくですから、私も一緒にっ!」
     「だぁーっ!! 違うわよーっ!!」

    プリカちゃんの部屋へやってきたマリカちゃんと女の子が、同じようにベッドの上でバインバインと跳ね始めました。

     「プリカちゃん! これ楽しいですね!」
     「あたしは楽しくなーいっ!!」

    全体的に有耶無耶にされたまま、結局三人でトランポリン遊びを続けたのでした。

     「ちくしょーっ! 二月と三月のバカヤローっ!!」

    陰暦の二月は如月(きさらぎ)、三月は弥生(やよい)と言います。覚えておいてくださいネ☆






    プリカちゃんの、とほほな毎日は続きます――。

     「私 ついて行くよ♪ どんな辛い♪ 世界の 闇の 中でさえ♪ きっと あなたは 輝いて♪」
     「あたしの苦しみはエンドレスなのよぉおおっ!!」

    こんな日もあれば、

     「曖昧3センチ♪ そりゃぷにってコトかい? ちょっ!」
     「あんたにあげるニーソックスはないわーっ!!」

    こんな日もありますし、

     「ワンダーランド! ようこそ君には♪ フェアリーランド! 愛の魔法なの♪」
     「なんで飛ぶのおおおぉぉん!!」

    こんな日もありました。

     「うぬぬぬ……気が変になりそうだわ……」

    プリカちゃんの気が休まることは、しばらく無さそうです。






    ――それから、また少し後のこと。

     「うがーっ! ハイパーテキストテンプレート(※拡張子が「.HTT」のファイル。昔のWindowsで使われていました)がなんだってのよーっ!!」

    開幕早々、プリカちゃんは怒っています。切れ方がだんだんマニアックになってきました。ゴーゴーマニアック!

    例によって、あの女の子とマリカちゃんが楽しそうに練習している光景を見たプリカちゃんは、顔を思いっきり膨れさせて外へと飛び出してしまいました。二人が何を歌っていたかは、多分想像が付くことでしょう。ええ、皆さんの予想通りです。ちなみに、今日のプリカちゃんのお昼ご飯はカキフライでした。

    近くの青と白のストライプが目印のコンビニで買ったペットボトル入りの紅茶を握り締めながら――プリカちゃんはとても賢いので、自分で買い物もできます――、プリカちゃんは公園を闊歩しています。

     (いったい、どうすればいいのよ……)

    心はふわふわFloated Calm。風船のように安定しません。あっちへ行ったりこっちへ行ったり、気が散って仕方ないのです。

     「生麦生唯生あずにゃん、生律生澪生あずにゃん……」

    そんな情緒不安定気味のプリカちゃんが若干、いや相当壊れた早口言葉を無意識のうちに呟きながら、公園を歩いていたときのことでした。

     「……ぷわわ〜♪」

    ベンチに座……失礼、座っていなくて浮いていますが、とりあえずベンチでくつろいでいるフワンテさんが一人。ホッチキスで止められたような「バッテン」の口と、紐に結び付けられたハートマークが特徴です。

    フワンテさんの傍らには、プリカちゃんと同じペットボトル入りの紅茶が置かれています。ついでに、筆ペンとボールペンの入った透明なペンケースも。多分どこかの学校で講義を終えて、一人で放課後のティータイムを楽しんでいるのでしょう。とてもへいおん! な光景と言えるでしょう。

     「……………………」

    くつろぎモードのフワンテさんの声を聞いたプリカちゃんが、うつろな目でフワンテさんを見つめます。

    プリカちゃんの目に見えたもの、それは――ゆったりとしたふわふわな時間を過ごすフワンテさん・ホッチキスで止められたバッテン・汚れの無いピュアなハートマーク・放課後のティータイム・そして筆ペンにボールペン――まるで狙い済ましたかのようなアイテム群です。

     「……!!」

    プリカちゃんは、大方の予想通り速攻でブチ切れました。

     「ふわふわしてんじゃないわよーっ!!」
     「ぷわ?!」

    突然叫ばれたフワンテさんが、とてもビックリした表情でプリカちゃんを見つめます。プリカちゃんはずかずかとフワンテさんに近づくと、しっかとそのヒモを握り締めました。

     「なぁにが『ふうせんポケモン』ですってぇ?! なんなのよその分類は! 風船なのかポケモンなのかハッキリしなさいよ!! あぁん?!」

    ※プリカちゃんもふうせんポケモンです。

     「ぷわわー!」

    突然因縁をつけられてあわてたフワンテさんが、その場から飛び立とうとします。すると、思いのほかあっさり空に浮いてしまいました。プリカちゃんは体重が軽いので、フワンテさんでも簡単に持ち上げられたようです。

     「ち、ちょっと! 待ちなさいよーっ!!」
     「ぷわわー!」
     「あたしをどこに連れて行く気なのよおおおおぉぉっ!!」

    プリカちゃんはノーサンキュー! とばかりに体を振って抗議しますが、それも空しく、フワンテさんは順調にぐんぐん上昇して、空高く浮いていきます。

     「ぷわわー!」
     「ウボァー!」
     「ぷわわー!!」
     「ウボァー!!」

    そしてそのまま、プリカちゃんはフワンテさんに天高く空の果て(※一般的に「あの世」と呼ばれている場所です)まで連れて行かれてしまいました。きっと、そこから戻ってくることはないでしょう。

    めでたし、めでたし。






    ――さて、その後死に物狂いであの世から舞い戻ってきたプリカちゃんですが……。

     「いいよー♪ 子供っぽさと大人っぽさがうまく出てて、すごく可愛いよ〜♪」
     「まだまだ! 芸能界はそんなに甘くありませんから!」

    マリカちゃんと女の子の楽しい練習は、まだ続いているようです。ご覧の通り、二人は毎日とても楽しそうに練習をしているのですが、一方でプリカちゃんはと言うと。

     「あたしは世界一不幸なポケモンだぁああぁーっ!!」

    ミミロップ人形(原寸大)に怒りのメガトンパンチを何度も叩き込みながら、自分は世界一不幸だと嘆いていました。どう考えてもプリカちゃんに意味なく絡まれたユンゲラーさんやフワンテさんの方が不幸だと思うのですが、今のプリカちゃんにそれを言っても無意味でしょう。

     「きぃぃぃいいいぃっ! ココにいるのはおジャ魔虫だってのよぉぉおおおぉっ!!」

    全力メガトンパンチを三十発ほど叩き込んだプリカちゃんがミミロップ人形(原寸大)を投げ捨て、ベッドにぽふっと腰掛けます。ミミロップ人形(原寸大)が壁にバシっと叩きつけられ、首からぐったりと下へ落ちていきました。無惨です。

     「マジョリカマジョリカ……落ち着くのよ。あたしだって歌えるんだから……きっと、必ず元に戻るわ……!」

    不安を振り払うかのように体を震わせて、プリカちゃんが呟きます。とはいえ、何か根拠があるわけではありません。振り払っても振り払っても、不安は募る一方です。

     「Hey! プリカ、さっきミミロップDollが吹っ飛んできたけど、何があったんDai? いつものプリカじゃNAIみたいだNEー」
     「ゲロッパじゃない。どこ行ってたの?」
     「HAHAHA! どこって、マリカChanのところSA! SynthesizerのTuningを終わらせてきたところだZE!」
     「うぐぐぐぐ……」

    ゲロッパは自分で歌を歌うわけではないので、今も変わらず出番があるようです。そんなゲロッパをうらやましげに見つめながら、プリカちゃんはしきりに歯噛みしました。

     「いいわね、ゲロッパは。あたしはもうどうにかなっちゃいそうよ」
     「So気にすんなTTE! またすぐにマリカChanと一緒にCoolでCuteなMagical Stageに上がれるSA!」

    相棒のゲロッパから励まされますが、プリカちゃんはいまいち元気が出ないようです。

     「はぁ……あたし、ちょっと出掛けてくるわ」
     「OK! たまにはEscapeすることもTAISETSUだZE!」

    ハンカチを振るゲロッパに見送られ、プリカちゃんはいつものように出かけていきました。






    ――で、プリカちゃんは今日どこにやってきたかと言うと、近くにある小さな池でした。

     「よーし、今日は歩く練習だぞ! お父さんの後に付いてきなさい」
     「はーいっ!」

    池の周りでは、お父さんのニョロトノに連れられた、子供のニョロモが歩いています。仲睦まじい親子の、微笑ましいふれあいの様子ですね。

     「ニョロモね……」

    そんなニョロモの姿を、プリカちゃんがじっと見つめています。

     「……………………」

    ところで皆さん、「♪」マークを良く見てみてください。下の丸い部分がニョロモの体、残りの旗の部分がニョロモの尻尾に見えませんか? ニョロモはおたまポケモンです。ゲームや映像作品でも、オタマジャクシが「♪」マークの暗喩や比喩として使われることは多いですよね。

    さて、お父さんのニョロトノの後ろについてよちよち歩く、まるで「♪」マークのようなニョロモを見ていたプリカちゃんが、虚ろな表情でぼそっと呟きました。

     「……カエルになっちゃえばいいのに」

    ※なります(ニョロゾに進化させた後おうじゃのしるしを持たせて通信交換)。

    ぶつぶつと呪文、じゃなくて呪詛の言葉を吐きながら、プリカちゃんは池を後にしました。






    ――プリカちゃんの受難は、まだまだ続きます。

     「交わした 約・束 忘れ・ないよ♪ 目・を・閉じ 確かめる♪ 押し寄せ・た闇 振り払って・進むよ♪」
     「そう! 悲壮感の中に力強さを! 気高さの中に心細さを!」

    練習を重ねるマリカちゃんと女の子。二人はまさしくin a merry mood。とってもいい雰囲気です。楽しい中にも真面目さが垣間見える、そんな親しい二人の関係が伺えます。

    で、我らがプリカちゃんはというと。

     「あんたなんかもう何も痛くも怖くもないのよぉぉぉぉおっ!!」

    体をいっぱいに膨らませ、ミミロップ人形(原寸大)の頭に大口を開けて噛み付いていました。クチートちゃんもびっくりの噛み付きっぷり。ミミロップ人形(原寸大)の首から上がすっぽりプリカちゃんの口の中に納まっています。どえらい光景です。

     「カット……カットカットカットカットカットカットカットカットカットォ!!」

    がぶがぶがぶがぶ繰り返し繰り返し頭に噛み付くプリカちゃん。その様子はまさにワ……なんでしたっけ? とにかくワなんとかの夜そのものです。何かこう根本的に取り違えているような気がしてなりませんが、ここは敢えて気にせず進みましょう。

     「うぬぬぬぬ……! 血だまりでスケッチでもしたい気分だわ……!」

    噛み付いていたミミロップ人形(原寸大)をペッと文字通り吐き捨て、腕組みをして考え込み始めました。なんとかして二人の関係に亀裂を入れたいのですが、そうそう上手くいくものでもありません。

    困ったプリカちゃんは――






     「……考えるのよ。あいつとマリカちゃんの関係を終わらせる方法を……!」

    ――いつもどおり、散歩に出かけました。困ったことがあると散歩に出かける。これはプリカちゃんの癖でした。今日も今日とて、あの女の子を追い払う方法を考えます。

    けれどもやっぱり、そう簡単には思いつきません。マリカちゃんの楽しそうな様子を思うと、あまり無茶なことはできない。プリカちゃんはプリカちゃんなりに、そこまで考えていました。

     「時間は待ってはくれない……握り締めても、開いたと同時に離れていく……!」

    眉間に皺を寄せ、どこかの魔女さんのような台詞を吐きながら歩くプリカちゃん。おもむろに時間圧縮でもおっぱじめなければいいのですが。

    と、そんな彼女の前に。

     「はぁ〜あ……」
     「……あら、タブンネちゃんじゃない。どうしたのよ」
     「あっ、プリカちゃん……」

    プリカちゃんの親友の、タブンネちゃんが現れました。何やらお悩みの様子です。悩んでいるのはプリカちゃんも同じですが、ここは先輩のプリカちゃん。後輩の悩みを聞いてあげるのもお仕事でしょう。

    というわけで、プリカちゃんが早速タブンネちゃんに尋ねます。

     「何かあったの? 元気ないみたいだけど」
     「うん……最近、いろんなトレーナーさんに狙われるようになっちゃって……」
     「そういえば、タブンネちゃんって『経験値』が多いのよね」

    タブンネちゃんをやっつけると、何故だかやっつけたポケモンがいつもよりぐーんと成長すると言われています。なので、ポケモンを連れ歩いているトレーナーたちに付けねらわれて、困っているとか。

     「ふぅーん。そうね……あっ、いい考えがあるわ」

    これを聞いたプリカちゃん。何か閃いたようです。

     「そういうときは、相手を撃退すればいいのよ」
     「でも、私攻撃技覚えてないし……」
     「心配いらないわ。今流行の撃退法を教えてあげるから」
     「撃退法?」

    首をかしげるタブンネちゃんに、プリカちゃんがレクチャーします。

     「まずは、目の色を赤に変えてみてくれる?」
     「うん、それならできるよ」

    プリカちゃんの指示通りに、タブンネちゃんが自分の顔にお化粧をしていきます。

    ――で、数分後。

     「僕と契約して、魔法少女になってよ! ……これでいいのかな?」
     「かーんぺきっ! 出会った瞬間にそれを言えば、そこらのトレーナーならさっさと逃げ出すはずよ」

    そこには、色白で血のように赤い円らな目をした、可愛いけれど無表情なタブンネちゃんがいました。何を吹き込んだのかは分かりません、というか、言うまでもありません。これぞまさしくMask of Guilty。みんな逃げ出すこと間違い無しです。丸くカールした耳毛? がとてもそれっぽいです。

    こんなの絶対おかしいよ。

     「他の友達にも教えてあげるといいわ。必ず上手くいくと思うから」
     「うん。プリカちゃん、どうもありがとう!」

    何だかんだでタブンネちゃんも喜んでいるようです。走り去っていくタブンネちゃんを見送って、プリカちゃんが一息つきます。

     「はぁ……あたしも早く何とかしなきゃ」

    自分自身の問題も解決しなければと、プリカちゃんは再び歩き始めました。

    ちなみにこの後、各地でタブンネちゃんをやっつけようとしたトレーナーが、タブンネちゃんの姿を見て恐慌状態を起こしたり、揺れた草むらからタブンネちゃんが飛び出してきた瞬間に泣いて謝罪するトレーナーが続出したり、挙句の果てに心臓発作を起こすトレーナーまで現れたりしたそうです。おかげで、タブンネちゃんの生息数はうなぎのぼりとか。よかったですネ☆

    わけがわからないよ。






    とまあ、タブンネちゃんの問題を解決したプリカちゃん。

     「小さい 頃は♪ 神様が いて♪ 毎日 夢を♪ 届けて くれた♪」
     「明るい曲も上達してきたね! すっごいよ!」

    おちこんだりもしたけれど……

     「があああぁぁあぁーっ!! にしん(鰊)ーっ!!」

    あまり元気ではなさそうです(別の意味では元気そうですが)。

    ミミロップ人形(原寸大)におうふくビンタを炸裂させ、今日も今日とてプリカちゃんが行き場の無い恨みをぶつけます。これだけ恨みが鬱積していれば、カゲボウズくんの一匹や二匹やってきてもよさそうなものですが、プリカちゃんがあまりに恐ろしいせいか、全然近寄ってくる気配がありません。ま、カゲボウズくんだって命が大事ですよネ☆

     「はぁーっ、はぁーっ……おのれミミロップ娘……ただじゃ置かないわ……」

    くたくたになったミミロップ人形(原寸大)を放り投げて、プリカちゃんが息も絶え絶え呟きます。これはもうよっぽど怒っているようです。うつぶせに倒れたミミロップ人形(原寸大)が哀愁を誘います。

     「こうなったら……実力行使よ!!」

    今まで我慢していたプリカちゃんですが、ついに動くようです。何故か部屋に立てかけておいたデッキブラシを手に取り、臨戦態勢に移ります。デッキブラシ装備! そんな装備で大丈夫か? 大丈夫だ、問題ない。

    さあ、死闘は凛然なりて。例の女の子と直接対決に打って出るようです。プリカちゃんの怒りは膨らむばかりでFABLED METABOLISM。いよいよ限界です。武器のデッキブラシ片手に、プリカちゃんが部屋を出ようとします。すると……

     「あ、プリカちゃん! お掃除するの?」
     「えっ?!」

    偶然前を通りがかったマリカちゃんが、プリカちゃんに声を掛けます。傍らには、あのにっくきミミロップ風の女の子の姿も。

     「ちょうどいいよー♪ わたしもお掃除しようって思ってたところ!」
     「いや、あの、これは……」
     「それなら、私も手伝います! マスター、お手伝いさせてください!」
     「うん♪ みんなでやれば早く終わるよね♪」
     「ち、ちょっと……違うんだけど……」

    マリカちゃんがどこからともなく掃除機を持ってくると、女の子の方も三角巾にマスク、ついでにゴム手袋まで装備して、お掃除の準備を万端整えてしまいました。

     「レッツ・お掃除ターイムっ!」
     「はいっ! 任せてください!」
     「ち、違うよ! これは……!」

    結局また有耶無耶にされて、プリカちゃんはマリカちゃん・女の子と共にお掃除をする羽目になってしまうのでした。

     「違うって言ってるのにーっ!!」

    プリカちゃんの叫びは、楽しくお掃除をする二人の前に空しくかき消されてしまうのでした。






    すっかりピカピカになった家で、マリカちゃんと女の子はなおも練習を続けます。

     「だんご♪ だんご♪ だんご♪ だんご♪ だんご・だ・い・か・ぞ・く♪」
     「うんうん♪ いい感じいい感じ! 子供の歌みたいに歌うといいと思うよ!」

    いい曲ですね。とても和みます。暖かい気持ちになれます。家族、いやひいては「人生」をテーマにしたあの作品に相応しい、優しさと大らかさに溢れた曲といえるでしょう。

    一方、プリカちゃんは。

     「ヒトデライズドーっ!!」

    和みも暖かさも優しさも大らかさもへったくれもなく、いつものようにミミロップ人形(原寸大)に情け容赦なく連続キックを打ち込みまくっていました。目指せ64HITコンボ! 顔面が変形するほどの破壊力です。

     「ぜーはーぜーはー……い、一体どうすればいいのよ……マリカちゃん、あたしのこと忘れちゃってるんじゃ……」

    ミミロップ人形(原寸大)の顔面をむんずと踏みつけながら、プリカちゃんが息を切らしています。相当追い詰められているようです。この前いっしょに家のお掃除をしたので、忘れられているということはないはずですが。

    とはいえ、こんな毎日が続くとプリカちゃんも参ってきます。お気に入りのマイクもサイン用のマジックも、最近はすっかりご無沙汰。気分が浮かないのも無理はありません。

     「……出かけようっと」

    なんだかいつものパターンの繰り返しですが、とにかくプリカちゃんは出かけることにしたのでした。






    ぽてぽて歩くプリカちゃんですが、その心中はもちろん穏やかではありません。ざーざー五月蝿いBlue Noiseが、プリカちゃんの心に溢れています。ため息をひとつ吐くたびに、プリカちゃんの憂鬱は深まります。

    なんとかしてあのにっくきミミロップ娘を追い払って、もう一度マリカちゃんと一緒に歌いたい――そのためのプランを懸命に練ってみますが、やっぱり妙案は浮かんできません。できるのは、頭の中であの娘をぎったぎたのぼっこぼこにすることくらいです。ミミロップ人形(原寸大)にしていることと同じように。怖すぎですネ☆

     「くっ、ホントになんとかならないわけ……?」

    行き交う人やポケモンでにぎわう商店街を、プリカちゃんが一人寂しく歩んでいたときのことでした。

     「お父さーんっ! 待って待ってー!」
     「あたしも置いてかないでーっ!」
     「はっはっはっ。心配しなくても、すぐに追いつけるさ」
     「あらあら。二人とも、そんなに焦らなくてもいいのに」

    六人連れの家族のタマタマ一家が、楽しそうに歩いて(?)いるのが見えました。そんなタマタマ一家を目撃したプリカちゃん、つい反射的にこう一言。

     「だんご……」

    ※タマタマはたまごポケモンです。

     「いけないわ……幻覚が見え始めてる……」

    タマタマがだんごに見え始めたプリカちゃん。いよいよ本格的にヤバくなってきたようです。とりあえず、幻覚が見えているのはマズいでしょうね。

     「落ち着くのよ……見えているものに惑わされちゃダメなんだから……」

    そう自分に言い聞かせて、プリカちゃんは再び歩き始めました。

    その後、海でくつろいでいたヒトデマンさんを見て「ヒトデ」と呟いたり(※合っています)、プラスルちゃんとマイナンちゃんの姉妹を見て「双子」と呟いたり(※合っています)、うしおのおこうをもらって嬉しそうにしているマリルリさんを見て「うしお」と呟いたり(※合っています)、お昼寝をしていたウリムーくんを見て「ボタン」と呟いたり(※合っています)しつつ、プリカちゃんは家に帰るのでした。

    タマタマ以外全部合っているのは気のせいですヨ☆






    身も心もちょっとずつ蝕まれてきているプリカちゃんですが、そんな彼女の家では相変わらずマリカちゃんと女の子が、明るく楽しく元気よく練習を続けています。

     「消える飛行機雲♪ 僕たちは見送った♪ 眩しくて逃げた♪ いつだって 弱くて♪」
     「いいよいいよ〜♪ これが歌えるようになったら、本番も大安心だよっ!」

    切れ味のいいマリカちゃんのシンセサイザーの演奏と共に、女の子がとっても美しい歌声を披露します。二人とも絶好調です。で、その声はもちろん、お隣のプリカちゃんの部屋にも聞こえているわけで……。

     「死ねヘンタイゆうかいまッ!!!」

    大方の予想通り、プリカちゃんはミミロップ人形(原寸大)のみぞおちにメガトンキックをぶち込んでいました。まあ、マリカちゃんをさらった「誘拐魔」という見方は、無理をすればできなくもありません。かなり無理やりですけど。

    ベッドに打ち上げられたヘンタイゆうかいま(ミミロップ人形(原寸大))を虚ろな目で見つめながら、プリカちゃんが大きな大きなため息をつきました。相当悩んでいるようです。

     「あれはあたしの持ち歌なのにっ……!」

    ぎりぎりと歯を食いしばるプリカちゃん。今まで女の子が練習に使っていたほとんどの曲は、もともとプリカちゃんの持ち歌でした。それをあの女の子が歌っているというだけで、もうハラワタが煮えくり返りそうです。今なら口からだいもんじも撃てます。対鋼用のサブウェポンです。

    何も上手くいかない現実に、プリカちゃんは頬を膨らませて怒るのでした。






    ――とまあ、ストレスを溜め込んだときのプリカちゃんの行動なんて、皆さんご存知のように一種類しかないわけで。

     「はぁ〜あ……マリカちゃんと歌いたいなぁ……」

    今日は海辺に足を運んだようです。傍らに紙パック入りのジュースを置いて、海を飛んでいくキャモメくんやペリッパーさんをぼーっと眺めながら、プリカちゃんは物思いに耽ります。プリカちゃんだって歌いたい。けれども、マリカちゃんという大切なNavigator無しじゃ歌えない。プリカちゃんの悩みは募る一方です。

    プリカちゃんが砂浜に座り込んで何の気なしに「の」の字を書きながら、あれこれととりとめもない考えをこねくり回していたときのことでした。

     「ママ! そこで待っててね!」
     「いいわよ。さあチルチルちゃん、ママのところまで飛んでらっしゃい」

    砂浜の右手に、近くに住んでいるエアームドさんと、チルットのチルチルちゃんの姿がありました。チルチルちゃんはエアームドさんの子供です。どうやら、これからチルチルちゃんが空を飛ぶ練習を始めるみたいですね。

    ふわふわ羽をぱたぱた動かして、チルチルちゃんがゆっくり空へと浮かびます。

     「ママ、いくよ! それーっ!」
     「そうよ! チルチルちゃん、こっちこっち!」

    よろよろとふらついていますが、チルチルちゃんは確かに宙へ浮いて、ちょっとずつエアームドさんの元へ近づいていきます。エアームドさんは前へ踏み出したい気持ちを抑えて、チルチルちゃんが自分のところまで来てくれるのを心待ちにしています。

     「その調子よ! チルチルちゃん! ちゃんと飛べてるわ!」
     「ママ! ボク、ママのところまで飛ぶよ! ママがゴールだからね!」

    懸命にふわふわ羽を動かして空を飛ぶチルチルちゃん。そんな健気で可愛いチルチルちゃんと、愛に溢れたエアームドさんの様子を、プリカちゃんはじーっと見つめています。

     「よいしょっ、よいしょっ……!」
     「あと少し、あと少しよチルチルちゃん! さあ、ママのところへいらっしゃい!」

    大きなはがねのつばさを広げ、エアームドさんがチルチルちゃんを出迎えます。チルチルちゃんは必死に羽ばたいて、ママであるエアームドさんのところへ飛んでいきます。

    あと三メートル、二メートル、一メートル……

    ……そして!

     「ゴールっ……!」

    チルチルちゃんは、「ゴール」である大好きなママの胸へと飛び込みました。エアームドさんがチルチルちゃんをしっかり抱きしめて、愛しげに頬ずりします。

     「ママ! ボク、ママのところまで飛べたよ! ちゃんと飛べたよ!」
     「えらいわチルチルちゃん……! もう、こんなに飛べるようになったのね……!」

    エアームドさんもチルチルちゃんも、とってもうれしそうです。血のつながりのない二人ですが、その姿はもう親子そのもの。チルチルちゃんのママはエアームドさん以外、考えられません。

     「がんばったわね、チルチルちゃん。ほら、ごほうびのきのみジュースよ」
     「ありがとう! ママも一緒に飲もうね!」
     「うふふ。チルチルちゃんったら、甘えん坊さんなんだから」

    二人は、れっきとした親子なのです。

     「みすずーっ!!」

    親子愛に溢れるチルチルちゃんとエアームドさんの様子を見て、プリカちゃんは隣に置いてあった紙パック入りのジュースを盛大に握りつぶしながら、感動の声を上げるのでした。

    どんな叫び声やねん(関西弁)。






    プリカちゃんの憂鬱は、いよいよもって深いものになっていきます。

     「あ・き・ら・めずに♪ 消えるあ・し・ば・に・挑戦するけどす・ぐ・に・し・たに落ちるよー♪」
     「ミミロップ娘が倒せないーっ!!」

    プリカちゃんの動揺――。

     「キラキラー♪ ダイヤモンドー♪ 輝くー♪ 星のようにー♪」
     「バーカバーカ! バーカバーカ!!」

    プリカちゃんの憤慨――。

     「わら人形に♪ わら人形に♪ わら人形に♪」
     「ごっすんごっすん五寸釘ーッ!!」

    プリカちゃんの暴走――。

     「どうにかしなきゃ……このままじゃ、ホントにあたしがお払い箱になっちゃうわ……」

    このまま、プリカちゃんは消失してしまうのか……危機感だけが強くなっていく日々が続きます。






    ――さて、今日も今日とて女の子は練習を重ねるのですが、ちょっといつもと違う調子の曲を練習しているようです。

     「Estuans interius ira vehementi(激しい怒りと苦い思いを胸に秘め)」
     「Estuans interius ira vehementi(激しい怒りと苦い思いを胸に秘め)」

    エストゥアンス・インテリウス・イラ・ヴェーヘメティ、エストゥアンス・インテリウス・イラ・ヴェーヘメティ……

     「田代ース!!(田代ース!!)」

    女の子の歌うあまりにも有名なラテン語歌詞の歌に、同じくとっても有名な替え歌の歌詞を重ねながら、プリカちゃんが釘バット(模造品)を装備してミミロップ人形(原寸大)を撲殺していました。とても生々しいです。

    ぐったりして動かなくなったミミロップ人形(原寸大)を見下ろしながら、プリカちゃんがよろよろとよろめきます。

     「いけないわ……その内本当に手を出しちゃいそう……」

    最近のプリカちゃんの悩みっぷりはホンモノでした。この間なんて、マイクが包丁に、油性マジックが注射器に見えたほどです。「中に誰もいないじゃないですか」。最近のプリカちゃんの口癖です。そろそろここに病院を建てたほうがいいかも知れませんネ☆ 誰かそろそろ彼女にQuender Oui!

     「くぅーっ……! なんであたしがこんな目に遭わなきゃいけないのよ! 世の中間違ってるわ!」

    とりあえず物騒な釘バット(模造品)を立てかけて、握りこぶしを作ってわなわな震わせます。本当にどうにかしないといけない。何とかして、マリカちゃんのパートナーの地位を取り戻さなければ!

    プリカちゃんは肩を落としながら、部屋を後にしました。






    例によっていつも通り散歩に出かけたプリカちゃんが本日やってまいりましたのは、町外れにある小さな教会です。普段は訪れる人も少なくひっそりした場所なのですが、発した声がとても美しく響くので、プリカちゃんは一人で練習する目的で、ときどきここを訪れていました。

    プリカちゃんが教会に足を運んでみると、中から声が聞こえてきます。どうやら先客がいるようです。

     「誰かいるのかしら?」

    扉を押し開いて、プリカちゃんが教会内部へ進入します。すると……

     「〜♪」

    いつの間にか教会内部に設けられた小さな花畑の中央で、キレイハナちゃんが一人祈りをささげていました。何故内部に花畑があるのかは分かりませんが、美しい光景であることは間違いありません。

    プリカちゃんの目には、教会の花畑で祈りをささげるキレイハナちゃんの姿が映ります。なんかもうアレですね。狙い済ました構図とは多分このことなんですね。タブンネ☆

     「約束の地よぉぉぉぉーっ!」
     「あっ、プリカちゃん!」

    大ジャンプから刀を真下に突き立てながら落下していく例の技の台詞を発しながら、プリカちゃんがキレイハナちゃんにのしかかりを敢行しました。キレイハナちゃんはプリカちゃんの声で存在に気付いたようで、さっと後ろへ振り返ります。

     「遊びに来てくれたんだね、プリカちゃん!」
     「きいぃいーっ! あいつに絶望を送ってやるぅーっ!」

    会話が成立していません。キレイハナちゃんはプリカちゃんがじゃれてきたものと思い込んで、彼女を空中でキャッチしました。プリカちゃんは軽いから仕方ありませんね。

     「プリカちゃん、今日は英雄さんになりきるお遊び? 楽しそう!」
     「あたしは神になるんだからーっ!!」

    でもキレイハナちゃんは楽しそうなので、問題は無いでしょう。

     「アクアブレス!」
     「きゃっ♪ プリカちゃん冷たーい♪」

    ※バブルこうせんです。

    こうして、プリカちゃんはただ単にストレスで暴れているだけとも知らず、キレイハナちゃんはプリカちゃんが英雄さんごっこをしていると誤解したまま楽しく遊ぶのでした。微笑ましいですネ☆

     「あたしは思い出になんかならないわーっ!」

    ちなみに、今のプリカちゃんの切実な主張でもあったりします。






    何だかんだでキレイハナちゃんと遊んだ(プリカちゃんは暴れていただけですけど)後の、帰り道のことです。

     「はぁ……」

    ため息交じりのプリカちゃんが歩いていると、何やら前からやってくる影が。

     「〜♪」

    長いネギを携え、鼻歌交じりに川原を闊歩するのは、カモネギくんでした。カモネギくんは武器兼非常食として、いつもネギを一本持ち歩いています。ご機嫌な様子を見ると、今日は活きのいいネギが手に入ったようです。

    プリカちゃんの目に、ネギを持って歩くカモネギくんが映ります。

     「ネ、ネギ……!」

    カモネギくんにとっては、今プリカちゃんに会ってしまったのは不幸以外の何者でもありませんでした。だってプリカちゃんは今、ネギを見ただけであの女の子を思い出す状態になってしまっているからです。

    ちょっと前に、マリカちゃんが女の子のためにと、模造品の長ネギを作ってあげていました。なんでも、その女の子のイメージアイテムだとか。マリカちゃんが手作りしたネギをうれしそうにかざす女の子を見て、プリカちゃんは一際ジェラシーを燃やしたものです。

     「いやー、やっぱりネギは新鮮なのに限るなァ!」
     「……!!」

    歩いてくる不幸なカモネギくんと、あの女の子の姿がピッタリ重なるのは、時間の問題だったのでした。

     「ネギがどうしたってぇ?!」
     「……え?」

    いつぞやの時と同じように、プリカちゃんはカモネギくんのネギをぱしっとひったくりました。カモネギくんは目を点にして、突然の暴挙に打って出たプリカちゃんの目を見つめます。

    ……で。

     「ちっくしょーっ!! お前なんかぁああああーっ!!」
     「う、うわぁーっ!! ボクの採りたてがぁーっ!!」
     「あたしは生のネギでも構わず食っちまうんだぜーっ!!」

    速攻で怒り心頭に発したプリカちゃん、カモネギくんのネギをガジガジと食べ始めてしまいました。ガジガジグシャグシャガリガリ。すっごい食べっぷりです。

     「うおりゃああぁああっ!」

    半分ほど食べた後、プリカちゃんはネギの残った部分を地面に叩きつけました。カモネギくんは突然の凶行に、ただあんぐりと口を開けて見ていることしかできませんでした。

     「はぁ、はぁ……い、いつか本当に食ってやるんだから……」

    プリカちゃんは口元を拭うと、すたすたとその場から歩いて立ち去ってしまいました。

     「ボ、ボクのネギが……! い、一体ボクが何をしたのさ……」

    あとに残された災難なカモネギくんが、半分だけになってしまったネギをとても悲しそうな目で見つめていました。

    どう見てもやつあたり(威力102)です。本当にありがとうございました☆






    ――とまあ、プリカちゃんはプリカちゃんなりに、現状を打破しようとしていたのですが。

     「どうすれば、いいんだろ……」

    くたびれたミミロップ人形を相手に一人きりの大立ち回りを繰り広げたのも、ミミロップ似の女の子があのラテン語の楽曲を練習していた日が、最後でした。

     「……………………」

    マリカちゃんはあれからずっと、女の子と練習を続けています。こんなどうにもならない現実を前に、プリカちゃんはすっかり気が滅入ってしまったようでした。

     「あたし……いらなくなっちゃったのかな……」

    本当に――マリカちゃんは、自分のことを必要としなくなってしまったのではないか。

    プリカちゃんの心は、折れる寸前に達していました。






    外はあいにくの雨模様。今日のプリカちゃんは壁に寄り添って、生気の抜けた表情を見せています。

     「……はぁ」

    マリカちゃんはあの女の子に付きっ切りで、プリカちゃんが入る余地もありません。ずっと練習を続けているようです。プリカちゃんはどうすればいいのか分からず、ただ力なく壁にもたれるしかありませんでした。

     「さあ、始めるよ……! 今日のが終われば、一つの区切りだからね!」
     「……はいっ!」

    そんな彼女の思いも露知らず、マリカちゃんと女の子の練習は、何やらいよいよ大詰めを迎えつつあるようです。

    本日の楽曲は――。

     「――今 動き始めた――加速する奇跡――」
     「そう……その調子。その調子だよ……」
     「ナゼか ナミダが 止まらナい……」
     「あなたの”ココロ”、マイクに、リズムに、曲に重ねて!!」

    これまでと少し毛色の違う、ドラマティックで詩的な楽曲でした。プリカちゃんは隣の部屋で、女の子の声に導かれて描き出される楽曲の世界に、ふわふわ漂っていました。

    それはあたかも、風船のように。

    聞き覚えのある楽曲でした。少し前にマリカちゃんがインターネットの動画投稿サイトで見つけて、即座にプリカちゃんと一緒に練習を始めた記憶がよみがえります。

     「ナぜ 私――震える? 加速する鼓動――」

    とてもいい曲だったことも、一緒に思い出しました。胸が熱くなって、鼓動が高鳴ります。

    よみがえる記憶――。

     (プリカちゃん! 柔らかいだけじゃ足りないよ! 芯の強さを見せて!)
     (大丈夫! プリカちゃんならきっとできるよ! わたし、信じてるから!)

    あの時マリカちゃんに言葉をかけてもらっていたのは自分。

     「まだ! 少しピッチを上げて! 気持ちを伝えるには、もっと強さがいるよ! きっとできる! だから頑張って!」
     「これが大詰め! これを歌い切れたら、新しい世界が見えるよ!!」

    けれども、今そこにいるのはあのミミロップ似の女の子。

    女の子の自信に満ちた声と、プリカちゃんの消え入りそうな声が、一つにシンクロします。別の色の声のはずなのに――それは、不思議と一つに交わってゆきました。

     『フシギ ココロ ココロ フシギ』
     『私は知った 喜ぶことを』

    歌を通して、プリカちゃんは喜びを知り――

     『フシギ ココロ ココロ フシギ』
     『私は知った 悲しむことを』

    ――そして今、歌によって悲しみを味わっています。

     『フシギ ココロ ココロ ムゲン』
     『なんて深く 切ない……』

    堰き止め難い切なさに、プリカちゃんはただ翻弄されるばかりでした。

    (あたしの隣に……マリカちゃんがいない……)

    プリカちゃんは生まれてからずっとマリカちゃんと一緒で、ひとときも離れたことはありません。マリカちゃんが、プリカちゃんの誕生に立ち会ったのですから――プリカちゃんは、マリカちゃんに生んでもらったといっても過言ではありません。

    今になって、プリカちゃんはやっと気が付きました。

    自分は、マリカちゃんと一緒に歌うために生まれてきたんだ、と。

     『今 気付き始めた 生まれた理由を』

    だから、プリカちゃんはマリカちゃんに放っておかれて、独りになるなんて考えたこともありませんでした。

    そんなことはありえないと、決めて掛かっていたのです。

    独りぼっちがこんなにも寂しいなんて、今まで全然知らなかったのです。

     『きっと 独りは 寂しい』

    生まれてすぐ、プリカちゃんは「うたう」ことに目覚めました。マリカちゃんの演奏するおもちゃのピアノに、プリカちゃんが拙いけれど綺麗な声を重ねる。たったこれだけのことが、プリカちゃんには本当に楽しかったのです。

    マリカちゃんがエレクトーンを買ってもらって、自分でお小遣いを溜めてシンセサイザーを買って――プリカちゃんはマリカちゃんの奏でる曲に合わせて声を重ねて、歌を紡いで。

    歌と音と声に彩られた無数の記憶が、プリカちゃんの心を流れていきます。

     『そう、あの日、あの時 全ての記憶に』

    プリカちゃんが心の宝箱にしまっておいた、大切な記憶に。

    マリカちゃんと歌った、すべての記憶に――。

     『宿る「ココロ」が 溢れ出す――』

    歌うことへの喜びと幸せ。あたたかい心の欠片が、一つ一つ宿っていました。

     「……………………っ!」

    壁にもたれかかった、プリカちゃんの青く丸い瞳に、大粒の涙が溢れます。

     「今 言える 本当の言葉――」
     「――捧げる あなたに」

    もう、プリカちゃんは歌うことができませんでした。揺れた小さな体を伝って、涙がカーペットへと落ちていきました。

     「マリカちゃん……ごめんね。あたしじゃダメだったんだよね。歌えない曲があったんだよね。あの女の子の方が、歌、上手だもんね。ごめんね、ごめんね……」
     「でもね……」






     「でもね、あたし……感謝してるよ。ここに、あたしを生んでくれたことを」
     「一緒に歌った曲、一緒に過ごした時間……マリカちゃんがあたしにくれたもの、みんなずっと大切にしてるから」
     「あたし、ずっと……独りになっても、歌うよ……マリカちゃんが、あたしに教えてくれたから……」
     「マリカちゃん、ありがとう……」






    ぽつぽつ呟きながら――プリカちゃんが顔を伏せました。涙がぽろぽろこぼれて、前が見えなくなってしまいました。

    脳裏によみがえるのは、マリカちゃんと過ごした楽しい日々の記憶ばかり。そのすべてが美しくて、今も色あせぬ輝きを持っていました。

    ――それはもう戻ってこないのだと理解しているつもりでも、プリカちゃんは思い出さずにはいられませんでした。






     「……………………」

    ……無言のまま、歌詞を幾度となくリフレインさせながら、プリカちゃんが独りで泣いていたときのことでした。

     「Yeahhhhhh! KOKOROに響くDramaticでImpressiveでFantasticなMusicだったZE! SOREGASHIも思わずExe先輩のことを思い出してNAMIDAが出そうになったYo!」

    一仕事終えてきたばかりのゲロッパが、扉をすり抜けて現れました。沈んだ様子のプリカちゃんに声をかけます。

     「Hey! プリカ! 今日はやけにSilentだNE! Do-したんDai?」
     「ゲロッパ……」

    すっかりおなじみになったアフロヘアーにサングラスが、今日はやけに輝いて見えます。ゲロッパのいつものノリのいい声が、プリカちゃんには眩しく映りました。

     「向こうはもういいの? まだ、練習あるんじゃないの?」
     「HA-HA-HA! それならもう済んだところだZE! What? プリカ、泣いてたのKai? OnionならKitchenで刻みなYo!」
     「馬鹿言わないでよ……タマネギの涙だったら、もうとっくに止まってるはずだわ……」
     「Oh-Oh、なんだかプリカらしくNaiじゃNai! いつものプリカだったら、ここで『あんたにPatchを当ててゲロッパZにしてあげよっか? それとも火事のHouseに投げ込んであげるのがいい? 注射器型Missileで追いかけられるのも選べるけど?』って言いながらSOREGASHIの首をSIME上げてるところだZE!」

    明るいゲロッパの調子に、プリカちゃんはいまいちついていけません。酷く沈んだ気持ちを抱えたまま、プリカちゃんは弱弱しく頭を振るのがやっとでした。

     「今はそんな気分じゃないの……お願い、放っておいて」
     「No-No-No! そういうわけにはいかないZE! 何せ、SOREGASHIにはプリカをマリカChanのところまで連れていくっていうMissionがあるからYo!」
     「あたしを……? どういうことなの?」

    ゲロッパはプリカちゃんの手を取ると、隣のマリカちゃんの部屋まで連れていきます。プリカちゃんは、マリカちゃんやゲロッパが何をしたがっているのか、よく分かりませんでした。

    連れられるまま、プリカちゃんがマリカちゃんの部屋まで入りました。

     「Yeah! Mission Complete! カワイコChan達! Main Heroineをお連れしたZE!」
     「来てくれたね! 待ってたよ! プリカちゃん!!」
     「マリカちゃん……」
     「待ってました! 来てくれてありがとうございます!」
     「……………………」

    歓迎ムード一色のこの雰囲気に、プリカちゃんは戸惑いを隠しきれません。なんとなく、プリカちゃんの考えていた光景とは違って見えます。どういうことなのでしょうか。

    それでも疑いを晴らせないプリカちゃんが、思わず声を上げます。

     「ど、どうしたの……? これから、あたしの引退セレモニーでもしてくれるの?」
     「HA-HA-HA! Jokeがキツいぜプリカ! これから、新しいCoolなUnitの立ち上げだってのにYo!」
     「新しいユニット……?」
     「そうだよ、プリカちゃん! プリカちゃんがリーダーの、新しいユニットだよ!!」
     「なんですと?!」

    一番最初とまったく同じ驚きの声を、プリカちゃんが上げました。ぐっと前に身を乗り出し、けろっと言ってのけたマリカちゃんの目をまじまじと見つめます。

     「い、いいい一体、どういうことなの?! あ、あたし、全然分かんないんだけど?!」
     「ふふふっ。プリカちゃんには言ってなかったからね。ゲロッパ! 見せてあげてよ!」
     「OK! Let's Play!」
     「……!」

    以前と同じようにゲロッパが壁に映像を投影すると、そこには俄には信じられない光景が映っていました。

     「いい調子だよ! 順調順調っ!」
     「はい! でも、プリカちゃんにはまだ及びません! もっと練習させてください!」
     「もちろん! 二人で一緒に歌うためには、たくさん練習しなきゃね! じゃ、行くよ!」

    女の子とマリカちゃんの練習風景。そこで交わされていた会話に、プリカちゃんは目をまん丸くしました。

     「プリカちゃん、デュオの曲が歌いたいみたいなんだ。でも、わたし楽器は弾けても歌はヘタだから……」
     「任せてください! プリカさんとマスターが好きな曲を思いっきり楽しめるように、私、お手伝いします!」
     「頼もしいよ! プリカちゃんも、きっとすっごく喜んでくれるよ!」

    大きな瞳をパチパチと瞬かせて、プリカちゃんが映像と二人を交互に見やります。

     「じゃあ、プリカちゃんの持ち歌で練習しよっか! プリカちゃんの声はわたしがいっちばんよく知ってるから、それに合うカタチを目指すよ!」
     「分かりました、マスター! どんな声でも歌ってみせます!」
     「うん! でも、無理をさせるつもりはないよ! 二人がお互いに、フルパワーで歌えるようにするからね!!」

    プリカちゃんの前で繰り広げられる、マリカちゃんと女の子のやり取り。「<プリカちゃん>の声に合うようなカタチを目指して」女の子に指示を出すマリカちゃんと、「<プリカさん>が思いっきり楽しめるように」練習を重ねる女の子。

    二人の目的はただ一つ。「プリカちゃんと一緒に歌うこと」でした。

    女の子の持つポテンシャルを生かしつつ、プリカちゃんの声と合うように調律していく――自分の才能を存分に発揮して、マリカちゃんは素晴らしい歌声を生み出しました。

     「……これ、ホントなの……?」
     「Yes! That's True! Cut編集以外、SOREGASHIは手を加えてないZE!」
     「じゃあ……まさか、二人とも……」
     「そうだよ! プリカちゃんが新しい曲を歌えるように、ずっと練習してたんだよ♪」
     「はい! 私、プリカちゃんと一緒に歌いたくて、たくさん練習してきました!」
     「あたしの……ために……!」

    プリカちゃんの中で、抱いていたわだかまりがすーっと解けて、風に舞って空へと消えてゆきました。マリカちゃんが女の子と付きっ切りで練習していたのも、女の子がひたすら歌う練習を続けてきたのも――

    すべては、プリカちゃんのためだったのでした。

     (そういえば……すごく、声がシンクロしてたような……)

    先ほど、部屋にいたときのことを思い出します。プリカちゃんが、聞こえてきたあの楽曲に対して無意識のうちに合わせた声は、女の子の声と驚くほどシンクロしていました。それが引き金になって、プリカちゃんの心をより強く衝き動かしたのです。

    それこそ、大粒の涙を流して泣いてしまうほどに。

     「よかっ、た……あたし、もう、お払い箱になっちゃうんじゃないか、って、思って……」
     「ごめんね、プリカちゃん。ビックリさせてあげようと思って、ずっと黙ってたんだよ」

    プリカちゃんの目に、また涙が溢れました。けれども、それはさっきの涙とは、全然、全然違います。

    まったく――違うものです。

     「マリカちゃん……あたし、また歌っていいの……?」
     「もちろん! プリカちゃんがいなきゃ、始まらないよ!」

    マリカちゃんの力強い言葉が、プリカちゃんの気持ちを空飛ぶJETの如く、一気に高く高く引き上げます。Take me Higher! もう何も恐れることなどありません!

    みんな、プリカちゃんのことを待っていたんですから。

     「プリカさん!」

    そして――あの女の子が、プリカちゃんの前に立ちます。プリカちゃんが彼女の目を見つめます。そこには、戸惑いも敵意も、怒りも悲しみも微塵もありません。

    あるのはただ――






     「一緒に――一緒に、歌わせてください!」
     「……分かったわ! あたし、全力で歌う! 一緒に歌いましょ!」
     「はいっ!!」






    ――一緒に歌えることの、喜びばかりです。

     「Hey! プリカ! SOREGASHIも忘れてもらっちゃ困るZE!」
     「分かってるわよ! あんたがいなきゃ、音に厚みが出ないもの!」

    プリカちゃんはさっと涙を拭うと、お気に入りの黒いリボンを結びなおして、張りのある声で言いました。

     「Yahoooo! Castは揃ったZE! ここらでそろそろ、Unitの結成式と行こうじゃないかYo!」
     「そう来なくっちゃ! わたし、もう名前も考えてあるんだよ!!」
     「何々?! 聞かせて聞かせて!」
     「私も教えてくださいっ、マスター!」

    得意げに胸を張るマリカちゃんが、すっ、と息を吸い込んで――

     「わたしたち四人で作る、楽しくて素敵なステージ――だから!」






     「――わたしたちは、『Stage 4』<ステージ・フォー>! 『Stage 4』だよっ!!」






     「四人で作るステージ、だから『Stage 4』……それしかないっ! それしかないよマリカちゃん! あたし、すっごく気に入った!!」
     「マスターと、プリカさんと、ゲロッパさんと、私で作るステージ……! 最高です! 最高に素敵です!!」
     「So Cooooooool!! マリカChanのセンスにはDATSUBOUだZEEEEEEE! SOREGASHIもExcitingなStageに一役買わせてもらうYo!!」

    マリカちゃん、プリカちゃん、ゲロッパ、そして女の子。みんなが揃えば、きっと素晴らしいステージを描けることでしょう。

     「みんなーっ! すっごく楽しいステージにするよーっ!!」
     『おーっ!!』

    決意も新たに――「Stage 4」が今ここに誕生しました。

    こうして、プリカちゃんは新しい仲間を得て、今までよりももっと楽しく歌を歌えるようになりましたとさ。

    めでたし、めでたし。




































     「とほほ……あれ、すごく気に入ってたのになァ……」
     「そこのカモネギ君、何かお探し物ですかな?」
     「あれ? ユンゲラーさん。いやァ、いいネギが見つかったんですけど、食べられてしまって……」
     「ほうほう、それはまた災難だ。私もお手伝いしましょう」
     「あっ、ありがとうございます! 助かりますよ……おやァ? ユンゲラーさん、その鉄クズはなんです?」
     「いや、これはね……いざこざがあって、折り畳まれてしまったんですよ」
     「もしかして……スプーンですか?」
     「察しの通りですよ。とほほ……」

    ――その代償は、ちょっと高くついたようですけどネ☆






     「……ぷわわー」
     「僕と契約して、魔法……あっ、フワンテさんだったんだね。ごめんごめん。トレーナーさんかと思ったよ」






    閑話☆休題。


      [No.1197] かなり好みだわ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/05/17(Tue) 20:29:12     88clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    いやー、うまく言えないけどよかった!

    コンテストのほうに自分をポケモンだと信じてる女の子の話がありましたが、
    なんかそれの行き過ぎちゃったバージョンというか究極系な感じ?
    (ただテネの場合は自分の種族は自覚してる感があるのでちょっと違うかな?)

    かなり好みのテイストでしたわ。
    グロいけど(笑)。

    グラエナの集団はロマン!(意味不明


      [No.1196] 不幸論-樹海に住む語り部の一節- 投稿者:リナ   投稿日:2011/05/17(Tue) 02:35:34     177clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     ※この文章には一部暴力的・残酷的・性的な描写が含まれています。苦手な方はご注意ください。
























     ――よくここが分かったね、人間。

     こん樹海の奥深くまで辿り着くなんてよっぽど腕のあるトレーナーなんだね。歓迎するよ。と言っても、何もないけどね。
     最近は人間の感情の起伏も自然の逆襲もすごく平べったいものになってしまったから、ボクとしてはすごく暇なんだ。ちょうどいい、ボクの話に付き合ってよ。見かけによらず、ボクは君たちの何倍も生きてるんだ。きっと面白い話ができると思うよ。



     そうだな、このところ思うことがあるんだ。

     人間はそもそも好きじゃないけど、その中でもボクが特に嫌悪を感じる部類の人間はよくこう言うんだ。「不幸とは身近にある幸せに気付けない、可愛そうな性格のことだ」とね。ずいぶんと利口な思考法じゃないか。「不幸」という目に見えないものをそう定義することによってその対極にある「幸福」を見出しやすくする。今日もまた太陽が地球を照らしてくれているだけで、親しい友人がいるだけで、もっと究極的に、生きているだけで、奴さんは幸せなんだ。足元に幸福はあったんだね。この言い方じゃあ「誰も生まれながらにして不幸なわけではない」ってことだね。さすがは頭の切れる人間様だ。素晴らしい定義だよ。

     虚像だね。そんなもの。

     見てきたさ、ボクは。生まれながらにして不幸のどん底、決して自力では這い上がることのできない蟻地獄の中に生まれてしまった人間の子をね。それはもう数え切れないほど目の当たりにした。最初は信じられなかったけど、今じゃあんまり多すぎて慣れっこになってしまったくらいなんだ。

     特にあれだ。なんだっけ? そう、戦争。あれは酷かった。

     もう一瞬さ。轟音が響いて、砂煙が立ち昇って家が崩れるんだ。さっきまで産声が聴こえてたのに、次の瞬間には戦闘機のエンジン音が遠のいていくんだ。そうやって死んでいった赤ん坊には「幸福」とか「不幸」とか、そんなものが頭に思い浮かぶこともなかったんだろうね。
     戦争中はレイプも横行した。もう手当たり次第さ。狂ってた。見たくもないのにボクが見てしまったその現場は女一人に男が六人も群がってた。散々辱められた末に、最後に突っ込まれたのは銃口だったよ。
     ポケモン共も酷いもんさ、同じポケモンとして見ててイライラする。人間に手なずけられちまって、目の前にあるものを手当たり次第焼き払ってるリザードン。完全に破壊衝動が抑えられなくなって、もはや壊すのが気持ちよくなっちゃってる中毒状態のバンギラスやギャラドス。催眠術で味方同士戦わせて楽しんでやがるエスパータイプの奴ら。挙げればきりがない。あいつらの犠牲になった人間は本当にお気の毒だね。

     分かったろ? 彼らや彼女らが自力で「不幸」から抜け出せたと思うかい?
     幸せな奴らが不幸を語るなんて愚かしい。なあ止めてくれよ、形而上だけで話進めんのはさ。

     戦争が終わって、家族と再会した人間は確かに「幸せ」そうだったな。生き残ったんだ、そのくらいの権利はある――そう言ってるよ、顔が。

     あんまり話すとボク、嫌われちゃいそうだね? まあ慣れてるから良いんだけどさ。別に災いなんて呼んだ覚えがないんだけどね。

     そうだ、ボクが見てきた人間の中で、ちょっと他とは違う物語を持った少女がいるんだ。その子の話をするよ。
     あれはまだ戦争が起きる前、あの忌々しい制度が根を張ってた頃さ。人間ってホント、バカだよ。

     ――え? その子もまた「不幸」なのかって? 良い質問だ。

     それはもう、最上級の「不幸」さ。



     ◇ ◇ ◇



     そう、その時代は人が商品だった。

     奴隷制度がまだ残ってたんだよ。人身売買ってやつだ。ある人間のなかでもましなやつがやっとその異常さに気付いて「奴隷解放宣言」ってのを出すまでは、「人」は「人」を買うことができたんだ。労働力として、召使いとして、そして性欲の捌け口として、高値で取引されていた。高く売れるもんだから、よほど治安の良い街じゃない限り、人々は毎日「人攫い」に脅える生活をしてた。小さな女の子のいる家は大変だよ、幼女は一番高く売れるからね。
     ボクは一時期、まさに「人間の卸売市場」みたいな町に住みついてたんだ。なんて町かは忘れちゃったけど、名前なんてどうでもいいさ。とにかく、その街に渦巻く「不幸」の感情は尋常じゃなかった。どのくらい尋常じゃなかったかって「災いポケモン」が身震いするくらいさ。

     そうそう、ボクがわりと嫌いじゃない人間もいてね。その人は言ったんだ。「皆、望まれて生まれてきた命」だと。

     ただ、ボクがこれから話すその少女にはこれが当てはまらなかった。残念ながらね。
     ああ――あまり話したくないな、このくだりは。なんたってボクですらこの事実を知った時、酷く落ち込んだんだ。覚悟してよ。

     例を上げるよ。ラブカスってポケモン、いるだろ? あいつらの鱗って「ハートの鱗」って言って、結構な値段になるんだ。当然たくさん集めたいと思う輩が増えるわけさ。でもラブカスってそう簡単に捕獲できない。めったに網にかかんないんだ。それで人間は頭が良かったからさ、残念ながら、頭が良かったから――
     養殖することにした。とらえたラブカスの雄と雌(どっちかがメタモンの時もあったな、まあ同じことさ)を無理矢理配合させて、たくさん卵を産ませる。生まれたラブカスをイケスで育てて、良い具合に育ったら鱗を捕るんだ。

     言いたいことはそういうことさ。

     彼女は「養殖」された子の一人だった。母親は奴隷で、相当な美女だった。生涯その母親が何人の子を「産まされた」のかなんて考えたくもない。普通じゃないだろ? でもそんなことが公然と行われていた時代だったんだ。相対的に見れば、今の時代に生まれた時点でかなり「幸せ」さ。

     だから彼女は望まれて生まれてきてなどいない。むしろ逆だよ。「産まれないでっ!」って叫ばれながら、産まれたんだ。何も知らずにね。まあ商人たちからすれば「望まれた」と言えるかもしれないが、とんでもないね。そこについては論を得ないだろう?

     さて、彼女は「テネ」と名付けられ、売られるために育てられることになった。「人身養殖」なんて始めたイカレたその商会の会員のうち、下っ端の下っ端、そのまた末端の「グラン」という男が扶養係にされ、テネの面倒を四六時中見ることになったんだ。

     あーあ、厄介な仕事引き受けちまったよ畜生――グランは思ったさ。なんせ〇歳の赤ん坊を健康な状態で一二歳まで育て上げる大仕事だ。病気をさせてはいけないし、痩せ細ってしまってもいけない。そして気を抜けば、他の商会の「人攫い」に奪われてしまうから、まるでボディーガードのようにテネについていなければならないんだ。

     もうすぐ三十の大台を迎えようとしていたグランは冴えない男だった。嫁を貰うこともできず、ほとんどスラム化した町の外れの集落に一人孤独に住み着いている。まるで古い遺跡を程よく崩したみたいな集落で、ボクが当時ねぐらにしていた洞窟の方がまだ住みやすいんじゃなかったかな。グランのやつ、頭を抱えてた。家は今にも崩れ落ちそうな乾いたレンガで組み上げられた質素なもので、一人でだって狭くてしょうがないと嘆いていたのに、そこへ赤ん坊がやってくるんだからね。衛生上、お世辞にも良好とはいえない環境。当時は流行っていた疫病にでもかかったら、赤ん坊などひとたまりもないだろうな。うちの商会は考えなしで困ると、グランは舌打ちした。

     黄ばんだ薄い布切れに包まれて、真っ白な肌の赤ん坊をおざなりに手渡された時、さすがにグランは少し複雑な気持ちになった。人を売ることを生業としているのだから、いくら冴えない男と言ってもそれなりに非情な面を、グランという男はしっかりと持ち合わせている。それでもやっぱり何も知らない赤ん坊の無邪気な笑顔は、良心に訴えかけるものがあるだろうな――だからグランは赤ん坊をできるだけ見ないように、抱き上げるその手に体温ができるだけ伝わらないように、この子の未来のことなど間違っても頭によぎらないように、細心の注意を払って帰宅した。そして良心は縄で縛りあげて物置の奥底に放り投げた。

     ボクはこの男と赤ん坊を見ていて、そう簡単に事が運ばないと思ったね。良心は、気付かれないようにちゃんとグランの中に居座ってたんだと思う。
     なんたってグランはその日の夜、自宅のベッドに赤ん坊のテネを寝かしつけ、自分は冷たい床で寝たんだ。大事な資金源だと思って割り切ったのか、はたまた、彼の人間的な部分が良い方向に出たのか、実際のところ、それは分からないけどね。

     こうして下っ端商人と売られる身の少女の、おかしな共同生活が始まったんだ。



     ある天才的な理論物理学者はこう言った。「常識とは、二十歳までに身に付けた偏見のコレクション」だと。
     見たところ、キミはまだ若い。彼からすると、まだまだ偏見を捨てて、物事を見る目を養うことができる可能性があるということさ。

     ボクはもう何年生きてるかなんて興味がなくなってしまっているくらい生きてるから、常識とか偏見とか、そもそも何を定義するのかよく分からない。人間の定義で言うと、少なくとも、常識なんてものは時代を超えないし、全く偏見せずに物事を見ることができた人間なんていままで一人もいなかった。結局人と人のやり取りなんてものは「言語ゲーム」にすぎないのかもしれないね。過去にそう言った哲学者がいたろ。



     少し話がそれたけど、グランという男もまた常識に囲まれて、偏見に縛られて、生きていた。
     彼が住んでいたスラム街は治安も最悪。窃盗、強奪、殺人、誘拐、強姦――なんでもありさ。そしてそれを人は見て見ぬふりをしていた。自分に降りかからなければそれでいい。巻き込まれた奴は、運がなかった。それだけのこと。それが当時の「常識」ってやつさ。
     権力にしろ財力にしろ暴力にしろ、力のある奴には逆らえない。弱者はひれ伏して従うか、逃げおおせるだけ。今で考えると不条理極まりないけど、これも当時の「常識」。

     グランは、正直言って中途半端な位置にぶら下がってた。我が物顔で悪事を働くほど力はなかったけど、黙って被害を受けるほど弱者でもなかった。それだけに、鼻に着く人間だったみたいだけどね。



     ◇ ◇ ◇



    「おい! ギャーギャーうるせえぞ! 早く泣きやませろ!」

     そう叫んだのはグランの家の隣人だ。そいつの名前? 忘れたよ。そういちいち覚えちゃいられない。とりあえず覚えているのは、グランの住む辺りは皆商会の下っ端の人間で、同業者だってことだ。商人って儲かると思ってたろ? 末端はみんなこんなもんさ。

    「泣くもんは仕方ねぇだろ! ガキなんだ!」グランは泣き叫ぶテネを前にどうしていいか分からず、途方に暮れていた。

    「ぶん殴ってでも泣きやませればいいだろ! このヘタレ野郎が!」

    「こんなガキぶん殴ったら死んじまうだろうが! それに傷ものにはできねぇんだ!」

     まあこんな感じで、品のない罵り合いが、毎晩のように繰り広げられていた。

     グランの「子育て」の話はその集落でまたたく間に話題になった。それはいわゆる声をひそめて伝達されるようなよからぬ噂の姿ではなくで、退屈な日常にもたらされた「笑い話」として、大声で広まった。グランの数少ない友人たちはそのことを知ると、両手を叩いて大爆笑した。時にはわざわざ家の前まで来て「ようパピー、元気か?」とか「おい、そろそろおっぱいの時間だぞ?」と、口々にからかった。そのたびにグランはそのやかましい蚊たちを追い払うために怒鳴り声を上げなければならなかったし、それに驚いたテネはいつも大泣きした。

     なんでおれがこんなことしなきゃならないんだ――毎日彼は思っていただろうね。でも、彼にはテネのことをほっぽり投げて商会からずらかる勇気なんてなかったし、赤ん坊をこんな場所に放置していくほど非常になりきれない。今の生活は最低だけど、最低以下にならないためにしがみついていたんだよ。
     バカかおれは。こいつはいずれ売られていく身なんだ。家畜と同じだ。余計な感情など入れ込んでたまるかよ、畜生――そんな風に自分に言い聞かせながらも、冷たい床で眠るのが常だった。可愛い男だね、意外と。

     幸いにも、テネは大きな病気一つせず、健やかに育っていった。商会からの援助金は毎月支給されていたが、それも微々たるもので、結局グラン自身の生活を切り詰めていかなけらばならなかった。
     ったくこき使いやがって。この仕事の報酬と育児にかかる金考えたら、実際、収支とんとんだ。下っ端は所詮どこまでも下っ端のままか。畜生――彼はいつも憤慨していた。



    「――ぱぱ」

    「は?」

     それはテネが初めて口にした言葉だった。突然そう言われてグランはたいそう驚いたが、恐らくあの悪友が彼のことを「パパ」と呼んで馬鹿にしていたのを聴いて覚えたのだろう。そう考え付いて彼はため息をついた。

    「――おれはお前の父親じゃねえ。ただ金のために育ててるだけだ」

    「ぱぱ、ぱぱ」

     テネは小さな両手を振り回しながら繰り返した。分かるはずないか。まいったな。こいつこのままおれが父親だと思いながら成長していくのか。全く、嫁さんもいないのに父親の役割だけ課せられるなんぞごめんだ。大体父親として何をしていいのか分からない。

    「おじさんとでも呼べ。とにかく、パパじゃない」

    「――ぱぱ」

     ――無理か。ガキはこれだから面倒だ、畜生。



     テネが「パパ」という言葉を一番最初に覚えたのは偶然だよ。でも、一番最初に覚えるべき言葉でもあったんだとボクは思う。テネにとってはまぎれもなくグランがお父さんだったからね。たとえ彼女が売られる身であっても、グランは単なる商人でたまたま扶養係にさせられただけであっても、二人は父と娘だったんだよ。その時はね。
     可愛そうな子さ。本当に。

     ――いわゆるここまでは予備知識ってやつかな。さあ、一気に時計を先へ進めるよ。



     ◇ ◇ ◇



    「遊びに行ってくる!」

     グランとテネが出会ってから、十年が過ぎた。

     テネは明るくて、可愛くて、それはもう元気いっぱいの女の子に育った。テネは毎日毎日、集落にいる同年代の子供を集めては、自分たちで開発したなんとか遊びに日が暮れるまで興じているようだ。どうやらテネはこの辺りの少年少女たちのリーダー格らしい。全くおれが十何年も下っ端をやってるってのに、癪に障る奴だ――しかし、おれみたいな男に育てられてどうしてあんなに活発な子供になったのか、不思議でしょうがない――グランは頭をひねってた。

    「お前調子に乗ってると『人攫い』に狙われるぞ。知らねえからな、連れ去られちまっても」

    「大丈夫だよ! あたし一回も遭ったことないな、人攫いに」

     テネはグランに満面の笑みで返した。ブロンドにパーマのかかった髪が揺れる。服装こそみずほらしく、履物も知り合いからのお古だが、そんなもの気にならないくらい可愛らしい顔つきをしていた。狙っている商人がいても、少しも不思議じゃない。

    「そう言って余裕こいてる馬鹿が餌食になんだよ。用心しろ。あと、ポケモンにもだ。最近この辺りの野生が狂暴でしょうがねぇからな」

    「ポケモン――うん、分かった。でもねでもね」テネは戸口の方からグランの方へ走り寄ってきた。「ポケモンは優しい気持ちで話しかければ、絶対乱暴しないし、ちゃんと言うこと聞いてくれるんだよ」

     正直グランにはテネの表情から何も読み取れなかった。どんな生物とも仲良くなれるなんていうくだらない幻想を描く、ただただ無邪気な子供にも映ったし、全部分かりきってるような、悟りきったような、そんな表情にも映った。きっとテネが本当の娘だったなら、はっきりとこの子の表情を汲み取れるんだろうなと彼は思った。

    「――狂暴なもんは狂暴だ。襲われちまったら戦うか、逃げるか、諦めるかの世の中なんだよ。相手がポケモンでも人間でもな。とにかく気をつけろ。一人っきりでは遊ぶんじゃねえぞ」

    「そっか、わかった」テネはまた戸口の方へ駆けていった。「でもお父さん、心配しすぎだよ。あたし友達たくさんいるから平気だもん」

    「心配なんかしてねえよ馬鹿野郎。お前がどうなろうと知ったこっちゃねえ。それにおれは父親じゃねえって何度言ったら分かる?」

     テネはグランの言うことには耳をかさず、きゃははと笑いながら家を出ていってしまった。本当に、能天気なもんだ。



     グランはこの十年間ずっと「自分は本当の父親じゃない。お前の両親が死んじまったから、遠い親戚だったおれが面倒見てやってんだ」と、言い方の調子もそっくりそのままに、テネに言い続けていた。しかしテネはそれを飲みこんでいるはずなのにずっとグランのことを「お父さん」と呼んだ。止めろと言ってもまるで聞く耳を持たない。

     こんな人間の片隅にも置けないような商売している男が「お父さん」と呼ばれる資格など、持っていないことは自覚している。おれはその「お父さん」から子供を奪って金に変えている商会にぶら下がっているのだから。娘と仲睦まじく幸せに暮らすなど、最初から望めない。望んでなどいない。望んでなどいないはずだった。
     我が子を攫われる親の心情を今まで一度も考えたこともなかったと言ったら嘘になる。身を切り裂かれるような苦しみなのだろう。それは、テネを預かるまで、この腐った脳みそで想像するしかなかった。所詮、鉄でできた頑丈な柵の向こうで全うな生き方をしている「彼ら」の身にのみ起こり得ることだった。
     それが、今は鮮明に思い描くことができてしまう。テネを商会に引き渡さなければならないその時、おれはきっと身を切り裂かれるのだ。

     自分の運命を知ったテネは、一体おれにどんな顔を見せるのだろう。



     二人の生活は極貧そのものだった。集落の一角にやっとスペースを切り取った、男一人が住むのにも狭い石造りの部屋に、薄い布切れを敷いただけのベッド。商会からの援助金と、時々友人の伝手で舞い込んでくる日雇いの仕事で稼いだ金を合わせても、グランにはこの生活の維持と、一日二食、最低限の食事をテネに与えるだけで精一杯だった。この十年間で、テネをどこかに連れて行ってやったりしたこともないし、祝い事もすることはなかった。そもそもテネの誕生日がいつなのか、グランは知らない。
     そんな生活でも、テネは文句ひとつ言わなかった。それどころか水汲みや洗濯などの家事を進んで手伝おうとした。そのうち三日に一回くらいの割合で、夕飯はテネが作るようになった。

     そうやってテネが献身的になればなるほど、グランは心に何か鋭いものが刺さった気がした。

     夜、グランはテネの寝息を聞きながら、冷たい床の上で考えた。
     おれは何してる? ガキ一人育てて売るだけの単純作業だったはずだ。少なくともそう思ってこの仕事をもらってきた。実入りはお世辞にも良いとは言えないが、おれのような下っ端には仕事を選んでられなかった。そう、これは仕事だ。感情の入り込む隙がないくらい、忙しいのだ。この娘をあと二年、育てて商会に引き渡す――簡単だろう? 簡単だ――








    「おいグラン、聞いたかよ? 先週の事件」

     ある日、いつも仕事を紹介してくれる同業者の友人が、ぶらりとグランを訪ねてきて言った。何やら興奮した面持ちだ。

    「先週? なんかあったのか?」

    「なんだお前なにも聞いてないのか? なんでも最近この辺りを荒らし回ってた『人攫い』の奴らがよ――」その友人は一呼吸おいて続けた。「みんな喰われちまったんだよ、ポケモン共に」

     友人の仕入れた情報だと、先週町の郊外で四、五人の男が、見るも無残な姿で倒れているのが発見された。その遺体についていた歯型や争った跡から推測するに、どうやらポケモンの群れに襲われたらしいということだった。

    「――運がなかったんだな」グランはぼそりと呟いた。

    「なんだよ、もっと驚くと思ったのになあ」

     ポケモンがこの辺りで狂暴化し始めたのは最近のことではない。随分前から旅の人間が襲われたり、この集落でもその群れを見たという話は囁かれていた。「人攫い」なんて罰当たりな奴らは犠牲になったってなにも不思議ではない。まあ、罰当たりなのはおれもこの友人も変わりはないのだが。

    「別に驚かねえよ。むしろ良かったじゃないか、この辺りの連中にしてみれば」

    「まあな。でも子供にとってはその狂暴化したポケモンも危ねえったらねえな。お前んとこの、気をつけろよ。金に変わる前に喰われちゃ世話ねえぜ」

    「声がでけえよ」

     グランはそう言って友人を睨みつけ、その場はお開きとなった。



     テネを心配するのは、己の食いぶちを案じているからに他ならない。決して感情的な、父が娘を想うそれのような理由で心配しているわけではない。断じて――グランは性懲りもなく自分に言い聞かせていたけど、ほとんど意味をなさなかった。十年という長い年月が、グランの心を熟させたんだよ。
     愛していたんだ、テネを。それはもちろん邪な気持ちからではなくて、同心円の中心から柔らかく身体全体に広がる、正真正銘の愛だ。彼が絶対に抱いてはいけなかったそれが、今やグランを支配していたんだよ。
     哀しいよね。男は娘を愛してはいけなかった。



     ◇ ◇ ◇



     グラエナの群れが、今度は子供たちを喰い殺した。

    「お父さんっ!」

     テネは悲痛な面持ちで、転がるようにして集落へ帰ってきた。
     騒然とする住人たちは、怪訝そうな表情を浮かべてテネとグランの方へ集まってきた。「何事だ? おい――」

     テネはいつものように同年代の子供と集落にほど近い川辺で遊んでいたという。そこへ腹を空かせた奴らがやってきて、次々にテネの友達に襲いかかった。ゴム人形のように噛みつかれ、振り回される友達が目に焼き付いて、足が動かなくなった。必死にそれを引き剥がし、辛くも一人、集落へと逃げ帰った。

    「お父さんお願い! 助けて! みんなが! みんな死んじゃうよっ!」

    「テネ――」

     事態を飲み込んだ集落の連中は顔をこわばらせた。しかしすぐに動きだし、戦える男たちはすぐに準備に取りかかった。遊びに出かけていた子の母親らしい女は、その場で泣き崩れた。

    「お父さん、助かるよね? サラちゃんも、ユグくんも――」

     武器を持った住人が討伐に向かったが、子供たちは恐らく生き残ってはいまい。グラエナはこの辺りでは特に危険なポケモンで、顎の力も群を抜く。子供が噛みつかれてしまったら、応急手当てを施したとしても生存率は微々たるものだ。テネが無傷で帰ってこれたのは奇跡に近かった。

    「お前――」

     そう、奇跡だった。グランはテネの赤く腫れたまぶたを見た。生きていてくれて、心から良かったと思った。死んだのがテネじゃなくて良かったと。死んだのが他の子で良かったと――そこまで思ってしまうほど、目の前の少女が愛おしくなった。
     グランは何も言えず、ただただテネを抱きしめた。暖かい体温と、子供の匂いを体いっぱいに感じた。
     この子だけがいればいいんだ。

    「お父さん? ねぇ、お父さんってば!」

     許されないのか? 今おれはたった一人だけ、たった一人の少女を解放してやりたいと思ってんだ。今まで奪うことしかしてこなかったおれには、それさえも許されないのか?

    「すまん――すまん、テネ。おれはなんにもできねぇんだ――なんにも」

     この子の未来は、決まってしまっている。グラエナに喰い殺されてしまった方がまだましだったのかもしれないと、そんなことまで考えてしまう――どちらにせよ、グランには何も出来ない。泣いたって、わめいたって、無意味だ。



     その日から、テネには遊び相手がいなくなった。

     それでもテネはいつものように遊びに出かけようとする。一人ぼっちでも、出かけようとする。「川に行けば、みんないるもん」と言うテネを見て、グランは悲しくなった。まだあの惨事を受け止めきれていないのだ。
     グランは事件があって以来、テネにはできるだけ家の中で遊ばせた。つまらなそうに一人遊びに興じるテネを見るのは忍びなかったが、みすみすテネを奴らの餌にするつもりはない。
     おれには何も出来ない。けど、守りてぇんだ。テネが失っちまったものは、取り返せない。テネがこれから奪われるものも、守ってやれない。だからせめて、今の、目の前のテネだけは全力で守りてぇんだ。良いだろ? それくらいおれにもさせてくれよ。



     ある西洋の有名な音楽家は言った。「新しい喜びは、新しい苦痛をもたらす」とね。
     彼にとってテネは疑いようもなく喜びだった。彼女を守るというその目的のためにすることは、例外なく喜びだった。彼はその喜びを享受していった。充たされていった。
     だけどその喜びは、後の避けられない苦痛への階段だった。登れば登るほど、堕ちた時に彼を襲う衝撃は計り知れないものとなる。打ち所が悪いと、命にも関わるだろうな。
     物語は、いよいよ終盤を迎える。



     ◇ ◇ ◇



     ある蒸し暑い夜だった。
     
     ゴンゴン、という乱暴なノックの音が部屋に響いた。グランの顔から血の気が引いた。

    「――お客さんかなぁ?」テネは何も知らずに首を傾げ、グランを見る。

     テネはとうとう十二歳になる年を迎えた。グランとテネが出会ってから十二年が経った――契約期間終了の年。
     ゴンゴン。先ほどよりも強い力で扉が叩かれる。同時に「おいグラン! いるんだろ? 開けやがれ!」という怒声が聞こえた。
     テネは途端に不安げな目でグランを見つめた。分かってる、そんな目で見るな――大丈夫だから。

     グランは戸口の方へ歩いていき、扉を開けた。テネはベッドに腰掛けたまま、目でグランを追う。
     そこには男が五人いた。皆似たような気取った洋服を着てやがる。一番前にいる、見覚えのあるようなないような奴は太り過ぎでボタンが弾け飛びそうだ。

     グランはこの瞬間で決めるつもりだった。
     商会のお偉いさんを拝んでひれ伏すしかない腐った根性が、この瞬間にもまだ残っていたら、テネを渡す。しかし、こいつらを目の前にして、それ以上に怒りがこみ上げたら――その怒りに従うつもりだった。

    「元気にしてたか? グランパパよお! 契約終了のお知らせだ。御苦労さんだったなー大変だったろ、ガキのお守は――」

     目の前の太った男が口髭を撫でながら言った。

    「――そうだな。途中で何度も放り投げたくなった。面倒なことこの上ないな」

    「はは! 違えねぇ。さて――」男は持っていたカバンからロープを取り出した。「そこにいる品物を逃げ出さんように縛っとけ。買い手は決まってる。傷ものにはすんなよ」

    「――ああ」

     グランはロープを受け取った。そのロープは麻を乱暴により合わせただけの安物で、ささくれ立った表面は触るとチクチク痛い。裏返すと、何箇所か血が染み込んでいた。

    「お父さん? 何、どういうことなの?」テネがグランのすぐ後ろまで、恐る恐るやってきた。「『品物』って? それ――あたし、なの?」

     当然、グランは後ろを振り向くことはできない。ロープを見つめて俯くだけ。

    「お前、お父さんなんて呼ばせてんのか?! いい年して親子ごっこかよ、愉快な奴だ」

     後ろにいた、ねずみ見たいな顔をした男が罵った。テネが震える手でグランの服の裾を掴んだ。
     太った男が苛立ちを露骨に滲ませて言った。

    「おら、ささっとしろ。後がつっかえてんだ――」

     決まった。

     グランはそのロープの両端を持つ――



     ――それを男の贅肉で覆われた首に回した。

    「うぐっ?!」

    「テネ! 全力で逃げろ! できるだけ遠くへ行け!」

     両手に渾身の力を込める。テネはただただ唖然と立ち尽くしている。他の男たちがグランの腕を掴み、顔を殴り、首を絞めようとした――合計六人の男はもみ合いながら、外の路地へと飛び出した。

    「――が、ガキだけは絶対逃がすんじゃねえ!」

     最初の太った男がロープから解放され、指示を叫ぶ。ねずみ顔の男がテネに掴みかかった。

    「きゃっ!」

     聞きたくない。テネの悲鳴なんて――

    「止めやがれ!」グランは覆いかぶさる男を二人殴り飛ばし、テネの口を塞いでいたねずみに凄まじい剣幕で飛びかかった。

     ねずみはとっさに顔を庇ったが、無意味だった。グランは真横に張り倒すようにして拳をねじ込み、ねずみ野郎は上半身が百八十度ねじれて地面に突っ伏した。
     よし、テネの逃げ道が確保できた。そこから西へ走れば――追手はおれがねじ伏せてやる。

    「早く行けテネ! 奴隷になんかなりたくねえだろ?! さあ――」

     そう叫んでグランは西をの暗闇を指差した。その時だ、暗闇にうごめく影を見たのは。
     グランは目を疑った。

    「な――」

     暗闇の中、こちらへ駆けてくるのはグラエナの群れだった。砂埃を巻き上げて、舌を出し、飢えた野犬は真っ直ぐグランたち目がけて向かってくる。
     商会の男どもは突然の襲来に慌てふためく。「クソっ! こんなときに! ――早くガキを捕まえろ! ずらかるぞ!」 

    「テネ! お前家に入ってろ! 絶対出てくんじゃねえぞ!」

     グランは怒鳴った。テネだけは喰わせねぇ。テネだけは絶対に救ってやる。商会の男どもの手とグラエナの牙が迫っていた。
     しかし、テネはその場を動かない。

    「なに突っ立ってんだ! 早く中に――」

    「どうして?」

    「どうしてもこうしてもあるか! お前喰われ――」

     テネが振り返った――グランは言葉を失った。



     その顔は、笑っていた。

     グラエナの群れは戸口まで達すると、足を止めた。群れの中で一番大きなグラエナが、テネの方へゆっくりと向かう。
     テネはそのグラエナの頭を優しく撫でた。

    「――どうして? どうして逃げるの?」

     グランは戸口に座り込んだまま立つことができなかった。商会の男どもは腰を抜かして、後ずさりしている。
     テネはもう一度グランに向かって微笑んだ。

    「言ったでしょ? ポケモンは優しい気持ちで話しかければ、絶対乱暴しないし、ちゃんと言うこと聞いてくれるんだって」

     グランは何も答えることができなかった。首が動かない。だらしなく開いた口も、閉じることができない。
     それは、自分の頭の中で結び付いた事実を、そのとんでもない予感を、グラン自身飲み込みきれないからだった。

     二年前だったはずだ。人攫いの集団がグラエナの群れに襲われたのは。テネはその頃、毎日のように外へ遊びに出かけていた。
     子供たちが襲われたのは、そのほんの数ヵ月後だったか。あの時は、テネだけが生き残った。
     少女の足で、グラエナを振り切れるはずがない。

     そもそもグラエナが狂暴化したのは、いつからだった?

     グランは自身の確信に近い予感に身震いした。憶測であってほしい。しかし、繋がってしまう。

    「テネ、お前――」

    「悪い人ばっかりなんだ、この世界。だからね、私たちが少しずつ消してかなきゃならないの」

     テネはグランを無視し、頬笑みは浮かべたまま傍らの野犬のを愛おしそうに撫でた。
     おい、何する気だ――?

    「食べていいよ」

     テネのその言葉を待ち構えていたように、大人しくしていたグラエナたちがいっせいに商会の男たちに襲いかかった。
     耳をつんざく悲鳴、野犬の息使い、鮮血――途中からグランは目を伏せないでいられなかった。

     ものの五分で路地には肉片が散らばった。

     ゾッとした。グラエナが泣き叫ぶ太った男を前足で抑えつけ、喉笛からかじりつき、引きちぎるのを、テネは笑って眺めていた。まるで我が子が元気よく夕食にありつくのを見つめる母親のように。

    「テネ――」かろうじて喉から絞り出した声はカラカラに乾いていた。「どういうこと、なんだ?」

     テネはその笑顔をグランに向けた。ブロンドにパーマのかかった髪が揺れる。

    「知ってたよー、全部」両手を背中に回し、スキップするように大股でグランに近づく。「あたしがそのうち奴隷として売られる運命だったことも、あたしはもともと売り物として生まれたってことも。全部知ってた。あたし、盗み聴きは得意なんだよ。それに、なんにも知らないフリをしてるのも得意」

     テネはまるで今夜の星について語っているかのように、夜空を見上げながら続けた。

    「あの子たちはあたしの親友。言ったでしょ? あたしには友達がたくさんいるって。『人攫い』が襲ってきた時にあたしを守ってくれたし、あたしのこと『奴隷の子』って馬鹿にしたサラやユグに仕返ししてくれたんだ。みんな良い子だよ。人間と違って、ね」

     グランは自分の手が震えているのを感じた。愛おしく思っていたはずのテネの笑顔が、人の皮を被った化け物に見えた。夜の闇に溶け込んで、不気味にケタケタと笑う、悪魔。
     テネはもう一度グランに向き直った。まだ笑顔だった。

    「あたし行くね。今までありがとう――グランさん」

     テネは肉を引っ張り合って喧嘩している二匹のグラエナの方へ歩き、そっと呟いた。

    「あれも食べて良いよ」

     グランが最後に見たテネの顔は、やはり笑顔だった。



     ◇ ◇ ◇



     この「テネ」という少女は後にこの名前を捨てて、いつからか「ジャンヌ・キルディック」と名乗り始めたんだ。彼女は敬虔レトミア教の信者でね、このお話から十三年後に起きる宗教戦争では大勢の人間とポケモンを率いて、対立する宗派と争った。そこでまた大勢の不幸な人間が生み出されるのは、最初に話した通りさ。そうやって繰り返すものなんだよ、歴史は。

     ジャンヌ・キルディックは今や歴史に名を残すほどの大物だ。彼女もひとつ、言葉を残しているよ。

    「わたしが従うのは、ただ、神の意思だけです。啓示に関する、いかなる人の判断も否定します」

     彼女の言う「神」とはポケモンとほぼイコールであるという見方が大多数だし、実際にそうだったと思う。彼女はポケモンしか信じられなくなって、いつもポケモンの心の声を聞こうとしていたんだ。
     実際に聞くことができたのかな? 聞いた上での、戦争という選択肢だったのかな? ――それは分からないけど。

     ――ふう、久しぶりにこんなに話したよ。長い時間口を挟まず聴いてくれてありがとう人間。君はボクの人間ランクのなかでかなり上位にいるよ。ほとんどの人間は口ばっかりで話に耳を傾けてくれないんだ。
     じゃあ、気をつけてお帰りよ。



     あーそうだ、最後にひとつ。最初ボクがこの少女の話をする前に、彼女は「最上級」の不幸者だって言ったよね。そして多分君は話を聞いて思ったはずだ、結局彼女は奴隷にならずに自由を手に入れたんだから、「最上級」の不幸とまで言えないんじゃないかと。図星だろ?
     じゃあ一つ質問しよう。



     人を殺した人間が、その先幸せに生きれると思うかい?






     ――――――――――――――――――――――――――――――


     書いてて気分が暗くなりました。原因不明の頭痛に悩まされてしまうほど――
     今まで書いてきたお話の中ではダントツにブラック。

     まあでも暴露しますと、グロとかはわりと平気なほうですw


     【書いても・描いてもいいのよ(いや、かかないだろw)】
     【批評歓迎なのよ】


      [No.1195] どうぞどうぞ 投稿者:紀成   投稿日:2011/05/16(Mon) 22:36:13     27clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > うちのマスターとファントム嬢のコラボキタ―――――(゜∀゜)―――――ッ!!

    構想二週間、執筆四時間です。キャラが分からなくて迷いました。
    挙句の果てに久方様のサイトを覗いて確認する始末…

    >
    > 紀成さんの文章から漂うおしゃれな感じがたまりません……なにこれ素敵すぎる。
    > コーヒーに蜂蜜とかバラの花入りロシアンティーとかおしゃれるぎるうあああああ!!

    一度ロシアンティーは出してみたかったのですよ
    女性客限定ということでどうでしょう(

    > そしてやだこのマスターカッコいい……自宅にいる時の軽く数千倍は輝いている……! ハアハア(*´Д`)

    ここらが限界です もっとかっこよく書きたい

    > こちら、自宅にお持ち帰りしてもよろしいでしょうかっ!

    [何をしてもいいのよ]

    > ではでは、ありがとうございました!
    > こっちもじわじわ頑張ります―

    よろしくお願いします!では。


      [No.1194] 進捗報告 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/05/16(Mon) 12:48:09     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    現在の参加予定人数 <9>です。


    参加者(敬称略):

    No.017(名ばかり幹事)
    CoCo
    久方小風夜
    風間深織
    キトラ
    朱雀
    586
    小樽ミオ
    MAX


    参加希望の方は、pijyon@fk.schoolbus.jpに

    ・ハンドルネーム
    ・携帯メールアドレス
    ・携帯電話番号(可能なら)
    ・年齢(高校生、大学生、社会人程度で可)

    にてご連絡ください。
    折り返しNo.017の連絡先をお伝え致します。

    集合場所:
    5月21日(土) 11:00
    JR浜松町駅 北口 左に出て、横断歩道を渡るとある黄金の鳩像(http://ch07942.kitaguni.tv/e551002.html)前

    遅れる場合、途中参加の場合はNo.017の携帯メールにお知らせください。


      [No.1193] シロナさん素敵!と叫ばずにいられない 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/05/15(Sun) 22:06:36     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    まさか、チャット時の「リクエスト…じゃあ四天王で」「縛りはそれだけで?」「ならハーフパンツもw」「了解です」「マジですか!?」が、マジになるなんて……なんと素晴らしい!

    しょっぱな、『ポケモン協会には服装規定がある。しかし、この規定は協会に属するチャンピオンや四天王には適用されることがない。』でまず笑ってしまいました。確かにぶっ飛んだ格好の人多いよなぁ、と。でもまあ、それ言ったらシロナさんまともな人だし、その人がハーフパンツ履いたところでそんなに変では無いはず……。

    変ではなかった、変では無いが違和感ありまくりだった!
    同じ場に居合わせた、ポケモンリーグ協会の皆様に激しく同情しました(笑)これはツッコミたい、でもそんなことできないよ…!

    四天王の二人登場で解決されるかと思いきや。彼らの逃げっぷりと職員達の悶々ぶりに爆笑。その緊迫の最中、元凶のシロナさんがヒメグマTシャツ&ハーフパンツ姿で、暢気に天ぷら蕎麦待ちながらポケフーズを選んでいる姿を想像して……ww

    先鋒のリョウさんに相当同情しつつ(仰け反った!)、シロナさんの「貰い物を一度は着てみようと思って」という返答に脱力しつつ。
    似合ってなかった?に「「「「「「似合ってますけど!」」」」」と、とうとうツッコんでしまった皆さんに激しく同意しつつ。
    ……某アフロさんの出番がカットされた理由に思いを馳せてニヤリとしつつ。

    存分に楽しませていただきました。リクエストを受けてくださり、本当にありがとうございました!



    追伸;きとかげさんが描いてくださっている…!これは破壊力抜群だwwwシロナさん本当に素敵過ぎる……!!


      [No.1192] 感涙なり…! 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/05/15(Sun) 21:34:32     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    返信が遅くなってすみません。
    再掲を希望してくださった上に愛まで叫んでいただくなんて、本当にありがとうございます!
    ログが消えたときには、正直(自作に限り)ラッキー、ぐらいの気持ちだったのですが、こうしてコメントを頂けると再掲して良かった…!としみじみ思います。
    喜びのあまり下駄履いて踊りだしそうです(落ち着け

    うおお、こんな馬鹿話を読み込んでくださっている…!

    > マメパトやぁい……このあと、ハトーボー、ケンホロウとつながっていったのがたまらないです。最後は♂♀の姿の違うケンホロウが番で現れる。このかちりとハマって幸福感がじんわり漂ってくるのが大好きなんです。

    当初、「どこにでもいるポケモン」という枠で、登場するのは ポッポのはずでした…が、よく考えたらイッシュではこっちが外来種だったので、急遽マメパトに変更した次第です。気が付けば、どんどん進化した上に美味しいとこ(大トリ)持ってっちゃったよ!なハト一族。
    やったねハト一族!大好きって言ってもらっちゃったよ!

    > > 「うむ。ここまでくる途中、民家があってな」
    > > 「吹き飛ばしたのか」
    >
    > このやり取り、本当にいいなあ……

    実はBWやっていないので、外見以外どんな奴らなのか分からず、ニコニコ大百科さんのポケモン図鑑にお世話になったという……。そこで読んだ図鑑説明が元です。
    ホント迷惑な奴だな!というのが第一印象でした(笑)

    > 遭難のくだりもよく読み込んで書かれたことが分かって、いやはや脱帽です。
    > 実は、遭難の話を書いているとき、風神雷神の役目というものにさっぱり思い至らず……(ですからあんなにフルボッコにしたわけでして)この話を読んで、ああ! と合点がいきました。目から鱗です。

    実は私も役目なんて考えてませんでしたw
    遭難こそが風神雷神の本家である、という認識ですので、何度も読み返して楽しませていただきました。特にバトル場面はじっくり拝見し、皆さんなんて格好いいんだ…と感慨に浸っていたら、クーウィさんのトレーナー氏(というかクーウィさん)の発言の中に、『雨は万物の精であり、風は新たな命を旅へと誘う。 天から轟き落ち、地に伏す者を撃ち貫く稲妻でさえも、地に生きる者に刺激を与え、恵みを齎す事があるのだから』という一文がありまして。なるほど!と目からパールルが落ちたくらいの衝撃を受けました。

    ただ、これは“人間”視点なので、“ポケモン本人”ならばどうだろう、と。ウィキで調べた結果、雷神=田に雨をもたらす豊穣神として崇められる、とのことなので、そういう役割になってもらいました。果たしてイッシュに稲作文化があるのかは分かりませんが…。え、豊穣神は他にいるって?ナンノコトデショウ?
    ちなみに、風神(風人)=黄色い息を吐きかけて人の体調不良を引き起こす妖怪、というのが一番に出てきて爆笑したのは秘密。

    > 【もうアーカイブ入りしちゃえばいいと思うのよ】
     
     【それだけは勘弁して欲しいのよ】
    面白がって書いた代物に過ぎませんので、本家と同じところに掲載されるのはあまりに面汚しで恥ずかしいです。それに、元がチャットネタなので、分からない方には全くの意味不明かと……。
    でも、そう言って頂けた事はとても嬉しいです!


    改めて、愛を叫んでいただきましてありがとうございます!


      [No.1191] コラボ! コラボ! 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/05/15(Sun) 20:54:36     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    うちのマスターとファントム嬢のコラボキタ―――――(゜∀゜)―――――ッ!!


    紀成さんの文章から漂うおしゃれな感じがたまりません……なにこれ素敵すぎる。
    コーヒーに蜂蜜とかバラの花入りロシアンティーとかおしゃれるぎるうあああああ!!
    そしてやだこのマスターカッコいい……自宅にいる時の軽く数千倍は輝いている……! ハアハア(*´Д`)

    こちら、自宅にお持ち帰りしてもよろしいでしょうかっ!


    ではでは、ありがとうございました!
    こっちもじわじわ頑張ります―


      [No.1190] わたしと けいやくして ヒロインに なってよ! 投稿者:紀成   投稿日:2011/05/15(Sun) 17:30:24     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    紀成はポケスト!の執筆者の一人である。もうじき処女作を投稿してから一年になるが、それは置いておこう。
    最初、これと言ったキャラはいなかった。思いついた話を投稿していき、しまいにはネタが尽きるくらいだった。だが、これで終わっては執筆者の名が廃る。
    今まで書いてきた小説の中から、キャラクターを引っ張りだしてくるのだ。芸能界で言う、契約のような物である。この子にはこのシナリオを、また別の子には別のシナリオを。
    そこでちょっと彼女達に話を聞いてみた。最初にかける台詞は勿論―

    紀成:わたしと けいやくして ヒロインに なってよ!
    ユエ:アンタさあ、私の最初ってポケダン小説のクレセリアの擬人化からだったんでしょ?中二病の末期よね、これ。おまけに最初の長編で拳銃で撃たれるし、マグマラシに最初の出番取られるし。

    紀成:わたしと けいやくして ヒロインに なってよ!
    ミドリ:元々私ってただのサブキャラだったんですよね。いつの間にか名前がついてました。
    それはそうと相棒の無い半年間が辛すぎて発狂しそうなんですが。
    紀成:ジャローダ、ミドリとめたげてよぉ!

    紀成:わたしと けいやくして ヒロインに なってよ!
    ミスミ:男運と出番よこせ。さもなくばダストダスに生ゴミ塗れにさせるわよ
    紀成:ほわぁぁぁぁ!やめさせてよぉ!

    紀成:わたしと けいやくして ヒロインに なってよ!
    ミコト:僕ってヒロインじゃないって、前自分で言ってたよね。あと脳内妄想でそれっぽい展開にさせるのやめてくれない?あと何でランクルスいんの
    ランクルスの じばく!(注:覚えません

    紀成:わたしと けいやくして ヒロインに なっ(
    ファントム:随分とチャットで変なこと話してくれるね。私シリアスキャラのはずなんだけど。あとたまにはゴーストタイプ以外も使いたい
    紀成:ちょww

    紀成:わたしと けいやくして ヒロインに(
    ヒナ:ちょっと跳んでみなさいよ。やっぱ持ってるじゃない
    ヒメ:今日の夕食代にはなりそうですね
    紀成:カツアゲするヒロインとか嫌だ

    何でこんなに女性キャラ多いんだろう… ついでだからマスターにも聞いてみるか。
    マスターマスターねえマスター!
    「…何だ」
    わたしと けいやくして ヒロインに なってよ!
    「だが断る」


    何だかんだ言って皆のコスチューム考えてる私はもう駄目かもしれない


    [皆も契約していいのよ]
    [チョロネコ娘さんと契約したいのよ]


      [No.1189] 鎮魂歌と幻影 投稿者:紀成   投稿日:2011/05/15(Sun) 16:56:31     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「五月だというのに、息が白い」
    ファントムは白い手袋をした手に吐息を吹きかけた。息は白い毛糸玉のようにふわりと舞い、一瞬で消えた。
    とある煉瓦造りの建物の前で、ファントムは傘を畳んだ。ミドリ・ソラミネの新作で、黒地に白い装飾が施されている物だ。何だかんだ言って、ミドリの作る作品は気に入っている。このコートも彼女自ら手がけた物だ。
    「Cafe Requiem、か… 何となくここだけ空気が冷たい気がするんだよね」
    黒い看板に書かれた文字は、一般人が見れば素敵な雰囲気を醸し出すのに役立っている。もっとも、こんな辺鄙な場所に人が来るかどうかは不明だが。
    ファントムは傘に付いた雫と、コートに纏わり付いて熱を奪っていく霧雨に顔をしかめながら、扉を開けた。

    薄暗い。だが暗くもなく、丁度いい照明が灯っている。扉を閉めると同時に、外の世界とこの空間が切り離されたような錯覚に陥る。いや、錯覚…では無いのかもしれない。ただ、怯えてここで出ることはしなかった。
    色彩と古びたレコードがとても良いイメージを作り出している。傘立てが無かったので、ファントムは側にいたゴビットに傘を預けた。一礼して下がるポケモン達。
    そんなに広くない。目の前のカウンターの向こうで、一人の男がファントムに微笑みかけた。
    「いらっしゃいませ」
    「…どうも」
    いつもならこんな言葉は返さない。だが、今のファントムはそれを搾り出すのが精一杯だった。その男の雰囲気が何とも言い難い…本当に何と言ったらいいのか分からなかった。何かモヤモヤするような、不快感。
    「コーヒーでよろしいですか、レディ・ファントム」
    「!」
    「いえ、ここにいらっしゃるお客様に、貴方のことを知っている方がいるものですから。勿論、プライバシーの保護で誰とは言いませんよ。ああ、私のことはできればマスターと呼んでください」
    「…」
    何だか釈然としない気分で、ファントムは椅子に腰掛けた。白いカップに注がれたコーヒー。
    「外は雨のようですね。雨はお嫌いですか」
    「火は雨が嫌いだよ。でも私はそうでもない。自分の存在を消してくれる気がするから」
    コーヒーを一口啜る。砂糖とは別の甘さが口の中に残り、ファントムは首を傾げた。
    「…これ、砂糖じゃないよね」
    「よく分かりましたね」
    カップを磨きながら、マスターが言った。
    「シンオウ地方に生息するミツハニーが取った蜂蜜を入れてみました」
    とろりとした甘い感触が舌に溜まる。何となく不快感を感じてファントムはコーヒーで流し込んだ。
    「おや、お客様が来たようですね」
    「!」
    いつの間にか、隣にはヨノワールが座っていた。モルテ…ではない。彼はもっと雰囲気が穏やかだ。彼の注文を聞いた後、マスターが笑って言った。
    「かしこまりました」
    今度は紅茶をいれている。今回も砂糖は入れずに…ジャムを入れた。ロシアンティーだ。二つのカップに入れる。仕上げにバラの花びらを散らす。
    マスターはヨノワールと…ファントムの前にそれを置いた。
    「頼んでないんだけど」
    「あちらのお客様からでございます。お体が冷えては風邪を引く、と」
    ヨノワールがお辞儀をした。側にいたムウマが頬を染めて騒ぐ。やはり♀ポケモンでもこういう事にときめく物なのか、と思いながらファントムは紅茶を啜った。
    さっきのコーヒーよりかは甘くない。いつの間にか濡れていたコートも乾いていた。


    帰りかげにヨノワールは一本の白いバラをファントムに渡して帰って行った。マスター曰く、『くれぐれも、そのバラが赤く染まらないように』と言っていたそうだ。
    「モルテと同業者かな」
    バラはマスターが用意してくれた水の入ったグラスの中で、静かに寝息をたてている。
    「モルテ、とは?」
    「私の友人。ヨノワールで、今は魂の回収をしてる。ギラティナに焦がれていた私を止めた」
    「ほう。何とおっしゃったのですか?」
    「…」
    ファントムは少し躊躇った後、言った。

    「お前が夢を叶える代わりに死ぬことなんて、誰も望んでいない」

    しばらくの沈黙。レコードが新しい音楽を奏で始めた。モーツァルトの、『鎮魂歌』だ。
    「優しいお方ですね」
    「同情で言われた気はしなかった。本気の目だった。…一つ目の本気ってどんなか分からないだろうけど」
    外はまだ雨が降っているらしい。音楽が途切れるごとに、雨音がしみこんでくる。
    「そろそろ帰るよ。ありがとう」
    「またいつでもどうぞ。レディ・ファントム。…いえ、火宮香織嬢」
    ぴたり、と帰りがけの足が止まった。カゲボウズ達が騒ぎ出す。
    「そのバラ、預けとくよ。いつかモルテがここに来たら、あげてくれ。ファントムからの贈り物だと」
    「かしこまりました」
    もう振り返らない。ファントムはゆっくりと雨の中へ出て行った。


    「彼女が、あの死神が愛する者ですか」
    誰もいない店内で、マスターは楽しげに笑った。

    雨はまだ、止みそうにない。

    ――――――――――――――――
    オワタ(色んな意味で)とりあえず今言っておく。
    書いてて楽しかった!久方さん、ありがとうございました!


      [No.1188] エチュード『憧れの翅の色』【1120文字小説】 投稿者:小樽ミオ   《URL》   投稿日:2011/05/15(Sun) 13:59:58     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     憧れの姿は、ずっと揺るがないものだった。

     私とパートナーのドクケイルとは、学校のみんながうらやむくらいに息の合ったパートナー同士。
     「女の子なのに?」って驚かれることもあるけれど、私はドクケイルが大好き。
     「見た目が怖い」? 「だって虫だもん」? そんな先入観でびくびくしてるなんて、みんな曇った目をしてる。
     見て、この目がいっぱい集まったみたいなドクケイルの瞳! 分かるでしょ、曇りひとつない。覗き込めば覗き込むほど、たくさんの瞳に私の姿が、……ここまで言うと、たいていの人はもう呆れた顔をしてる。
     でもみんなから呆れられるくらい、それくらい私はこの子のことが大好きなんだ。





    (この赤い幼虫を育てたら、いつか綺麗な翅が生えるんだよ)

     ――その言葉を疑うことなく、ケムッソを育てるのに明け暮れたのはいつのことだっけ。
     憧れの姿に手が届くんだ! そう信じてやまなかった。

     女の子たちには、毛虫のような姿のケムッソを育てるのを嫌がる子も多かった。
     本当のことを言うと、私も虫はちょっぴり苦手なの。出会ったばかりのころはケムッソに触れなかったくらい。
     だけどそんなのは幻だった、誰もがそう思うくらいに、私とこの子とはべったりくっつき合いながらここまで一緒に生きてきた。

     私は出会った昔から決めていたから。「この子に綺麗な翅をあげるのは、この私だから!」って。





     ――本当はね、ドクケイルなんて大っきらいだった。
     だって見た目は毒々しいし、両目もちょっぴり怖いし。小さいころ森で私を追い掛け回したのもドクケイルだった気がする。
     私の憧れの姿はずっとアゲハントだった。くるりと巻いた触角、お洒落な紋様の翅。そんなとっても綺麗で愛くるしい蝶が、私はずっと欲しかった。
     ずっと抱いてきた憧れに、ずっと忘れなかったあの言葉に、私はこの赤い色の毛虫を、そして淡色の繭を育ててきたの。あのきらめく蝶を夢見て。
     だからしゅるりとほどけた繭から蝶じゃなくて蛾が飛び出してきたとき、……あのサイケデリックな色味と瞳のような紋様を見た私は本当に驚いた。






    「ドク……ケイル……」

     驚いた。驚いたけれど、――私はドクケイルを抱きしめた。ぎゅっと、翅がくしゃりとこわれるくらいに。
     だって、この子とは何日も何日も同じ時間を過ごして、進化への未来を夢見たもの同士だもの。
     
     毒々しく見えていた翅色、それを嫌っていた遠い日。生まれるのは蝶ではないとも知らず、苦楽をともにしてきた思い出は今、ぜんぶ私の腕の中。
     とたんにその翅の色味は美しい新緑のそれに見えた。薄気味悪いはずだった私を見つめる瞳は、たくさんの鏡のよう。



     えへへ、とってもかわいいね。とっても、蝶のお姫さまよりも、ずっと。



     ――憧れの姿は、ときおり移ろうものなのかもしれない。



    <おわり>



    ◇   ◇   ◇



    お読みいただきありがとうございました。
    「好きなのを書こうとすると取りとめがなくなるから、まずは短めのを書いたらいいんじゃない?」ということで生まれた1120文字小説、第一作目です。
    今回は起承転結を意識したエチュードとしてみました。できてるかなぁ。

    絶対にカラサリスとマユルドの違いを知らなくて、アゲハントを夢見て育て続けた女の子は多いと思うんですよね、ゲームの外でも中でも!
    そんなことを思いながら筆を走らせてみました。でもこの女の子はドクケイルを溺愛しています(笑)



    「1120」という数字は、ツイッターで書く小説、通称「ついのべ」の規定文字数140文字を基にしています。
    起承転結でそれぞれ140文字ずつの予定でしたが、圧倒的に足りなかったので各280文字ずつにした結果としての1120文字です。
    五段分の空行があるところが起承転結の境目で、各280文字ずつとしてみました。

     補記:1120文字にスペース・空行は加算されない模様です。カウンター次第では1120文字を超えるかも。


      [No.1187] 【閲覧超注意】チャンピオンのシロナが勝負をしかけてきた!【超閲覧注意】 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/05/14(Sat) 22:23:56     166clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    【閲覧超注意】チャンピオンのシロナが勝負をしかけてきた!【超閲覧注意】 (画像サイズ: 322×470 74kB)


    チャンピオンのシロナが 勝負をしかけてきた!▼

    ガブ「あ゛? じろじろ見てんじゃないわよ」


    言い訳をしよう。四方八方から「描け〜描け〜」と怪電波が飛んできて描かざるを得なかったんだ。

    【だから閲覧注意って言ったでしょ!】
    【色々ごめんなさい】


      [No.1186] うひょー(^^;) 投稿者:サトチ   《URL》   投稿日:2011/05/14(Sat) 20:28:18     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ごらんではなかったんですね〜(^^;)
    いやー、ついデキゴコロでー(笑)というか、ウケ狙いで出してしまったので、
    他の方との対戦もあることですしどうぞご無理なさらず。
    音色さんのリアクションが見れたのでとりあえず満足ですのでー(笑)

    >ガードの固いさくらちゃん(笑
    >のわりになんでメロメロ習得してるんですか(爆
    攻撃は最大の防御です(謎


      [No.1185] ちょwwそりゃねーよww 投稿者:音色   投稿日:2011/05/14(Sat) 18:47:16     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     フルバトルにまさかのツボちゃんが応募されていただとっ・・!?
     そのログを拝見する前に掲示板ログ吹っ飛び事件が発生したため存在を知らなかった・・

     ってかそこまでしてツボちゃんVSあんみつの怪獣大決戦見たいんですか(笑
     しかし全長10mのペンドラ―はともかく、30mのツボちゃんが入るバトル場があるんでしょーか。
     なに?外でやればいい?地盤が心配だよいろんな意味で!

     ガードの固いさくらちゃん(笑
     のわりになんでメロメロ習得してるんですか(爆

     Bボタンが嫌いなヒノアラシ君。
     がんばれ!火炎放射を覚えたら君は真っ先にご主人にぶっかけるんだ!

     花子ぉぉぉ!?
     ちょ、おま、もしやズイ農園の!?ってそりゃこはる様の作品だ。
     あれですね、遭難パーティに登場したあの子たちですね。

     マスターランクリボン所持者のピカ様!
     ・・しかし攻撃技が電光石火しかないのに大丈夫か・・。

     う―ぬかけるかどうかものすっっっっ(中略)っっっっっごく不安です。
     しかしやれるだけやってみましょう。

    【気が向いたら、ですが】


      [No.1184] お気楽パーティ参上! 投稿者:サトチ   《URL》   投稿日:2011/05/14(Sat) 10:06:55     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「ごめんくださーい! こちらに、すっごく大きな虫ポケモンがいて、バトル相手募集してるって聞いてきました!
     ・・・えーと、手持ちが6ぴきいないとダメって聞いて、ご近所で借りてきた子もいるんだけど、大丈夫ですかー?」

     トレーナー
     【名前】トモコ
     【性別】♀・ようき
     【備考】12歳、女の子版短パン小僧。バトルは楽しいのが一番! でもコンテストもいいなー。
         実は虫ポケモンのオナカはどちらかというと苦手(笑)なので最初はおっかなびっくりだと思いますが、
         好奇心が強いので、きっとツンツンしてるうちに慣れちゃって乗っかりたがるかも。

     【種族/ニックネーム】マダツボミ/ツボちゃん
     【性別/性格】♂/のんき
     【特性】ようりょくそ
     【使用技】つるのムチ こうごうせい あまいかおり にほんばれ
     【備考】全長約30m。にほんばれはふとん干し用。せいちょう&粉系の技は近所迷惑なので忘れさせたようです(笑)

     【種族/ニックネーム】ゴーリキー/さくら
     【性別/性格】♀/むじゃき
     【特性】こんじょう(ガードは固いのvvv)
     【使用技】おんがえし あなをほる かわらわり メロメロ
     【備考】お肌ツヤツヤ、筋肉ムキムキ夢見る乙女。

     【種族/ニックネーム】ヒノアラシ/ヒノまる
     【性別/性格】♂/まじめ
     【特性】もうか
     【使用技】えんまく でんこうせっか かえんぐるま スピードスター
     【備考】Bボタンが嫌いです……。

     【種族/ニックネーム】ミルタンク/花子
     【性別/性格】♀/おっとり
     【特性】あついしぼう
     【使用技】ミルクのみ ふみつけ まるくなる ころがる

     【種族/ニックネーム】ポワルン/てるてる
     【性別/性格】♂/おとなしい
     【特性】てんきや
     【使用技】にほんばれ みずでっぽう ひのこ こなゆき

     【種族/ニックネーム】ピカチュウ/ピチュカ
     【性別/性格】♀/ひかえめ
     【特性】せいでんき
     【使用技】てんしのキッス あまえる フラフラダンス でんこうせっか
     【備考】かわいさ・うつくしさ・けづやMAX。ホウエンかわいさコンテストマスターランク優勝リボン所持。


    あんみつたん最高だ!(≧▽≦)
    てなことで、こないだ応募させていただいたのがふっとんじゃったので(^^;)、
    失礼ながらこっちにくっつけさせていただきます。いやー、やっぱり大怪獣対決はロマンですよね?(笑) 

    コンセプトは冒頭のセリフどおり。6匹ということだったので、あちこちの話のモブの子までひっぱってきました(笑)
    最後の子(実在)以外、技や性格は登場した話のイメージで適当に決めました。全然性能とか考えてませーん(笑)

    お話の展開に合わせデータを変更するも良し、構想に合わなければ使わず却下も良し。
    とりあえずウケ狙いで出してみました〜。(^^)

    【煮ても焼いてもご自由にどうぞなのよ】


      [No.1183] 竜頭蛇尾な昼下がり 投稿者:西条流月   投稿日:2011/05/14(Sat) 02:15:11     132clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    ※注、四天王及びチャンピオン、その他ポケモンに関するイメージを崩したくない人はブラウザバックをすることを推奨します。この作品を読んで気分を害したなどの健康上の被害を受けても当方は責任を取れません
    ※タイトルが全てな話なので悪しからず














































     ポケモン協会には服装規定がある。
     しかし、この規定は協会に属するチャンピオンや四天王には適用されることがない。
     ポケモン協会のルールには、このように部外者から見れば、疑問符無しではいられないようなものがいくつかある。
     そして、平等が叫ばれるようになって久しいというのにこのあからさまな差別に、異議を唱える人間は何故だかいない。
     それには、四天王がその地方で五指に入るポケモントレーナーだからという事情が大いに関係しているのだろう。
     ポケモンという大量破壊兵器に成りうる隣人が闊歩する世の中で強いポケモントレーナーというのは、金で買えない資源である。
     だから、ナルシストであろうが、言動が気に障ろうが、人間に破壊光線を打とう
    が、気にしてはいけない。
     相手は雲上人だ、こちらに理解できない理由の末にそうやってるのだと思わないといけない。
     そう、変な服を着ていようがそれは凡人に理解できない流行の最先端。あるいは新しい訓練方法だ。そうに違いない。

    「すいませ〜ん。天ぷら蕎麦一つ」

     その日、食堂にきたシンオウのポケモンリーグチャンピオン、シロナを見た協会職員一同はそう思うことにした。
     そう思わないとやっていけない程にシロナの服装はなんというか……あれだった。
     上はヒメグマプリントのTシャツ。ヒメグマの顔が意外にある膨らみのせいで歪んでいる。
     下。下はなぜかハーフパンツだ。いつもの黒のロングスカートではない。
     ここがカントーで季節が夏ならば、普通だろう。
     ヒメグマプリントが子供っぽいなんてハーフパンツから見える健康的な太股の前では全く意味を成さない。
     むしろそのギャップがいいのである。美人が着るならOKだ。
     しかし、今は夏だがここはシンオウだ。
     シンオウはその最北端にある常冬のキッサキを始めとして基本的に寒い。
     当然のようにポケモン協会シンオウ支部も寒い。冬なんてニャルマーどころかガーディだって丸くなる。
     今日だって、風が吹けば涼しいを通り越して寒いし、冷房が使われることはありえない。
     薄手のカーディガンを羽織るぐらいが丁度いい寒さ。だというのにハーフパンツ。ハーフパンツだ。
     寒いだろう、間違いなく。
     雲上人と言えど、人間である。寒さを感じないはずはない。他の地方のチャンピオンならそういう人間がいるかもしれないがチャンピオン界の誇る常識人、シンオウのシロナは真っ当な人間だ。
     間違いなく常識の外、超常現象。
     平和な食堂が地雷源の真っ只中に変わった瞬間だった。


     しかし、直ちに逃げることは困難だ。協会の立地上、食堂で昼を取る人間が多いこと、さらに今は昼休みであるため、食堂には多くの人間がいたからだ。
     ここで逃げればどうなるか? 答えは簡単、狂騒だ。
     我を忘れた逃走は混乱を呼び、混乱は判断を狂わせ、地雷の爆発を誘発してしまう。
     かといって、冷静に対処できるなら可能かと言えばそうではない。
     食堂から退避するには食器を返却しなければならない。そして、その返却口があるのはシロナの近くだということを踏まえると彼女に気づかれないで行くことは不可能である。
     それらの事情によって逃げることは不可能だ。
     優秀な大人であるポケモン協会職員たちはそれを理解した。
     しかし、職員たちは、優秀であるがためにこれが時間稼ぎに過ぎないことも知っていた。シロナは気さくな人間だ。常日頃、食事時は適当な人間と相席をすると、話を花を咲かせている。
     あれがシロナ本人なら――ことここに至っても信じたくないが――今日も誰かに相席を求めるはずだ。そして、話をしたならば誰しもが服装について聞かずにはいられない。むしろ、聞かないとか拷問である。
     仮にそれが着るものがなかったなんて平凡な答えならばいい。可愛らしいとも言えよう。しかし、チャンピオンともあろうものが着るものがないなんてことがあるだろうか? シロナの私服にはチャンピオンとしての正装でもある黒いコートがあるのだ。着るものがなければ、羽織ればいいのに着ていない。
     必然的にそういった類の理由ではない。ならば、どんな理由があるというのか。想像するだに恐ろしい。
     しかし、幸いにしてシロナが頼んだのは天ぷら蕎麦。
     注文が入ってから揚げるという調理人の拘りが反映された珠玉の一品。
     食堂において、値段は3位の550円、調理時間は2位の15分、人気は1位の天ぷら蕎麦だ。
     時間は短いながらも対策を立てる時間はあった。
     しかし、どうすればいい? 逃げるのは不可能。今から距離を取ろうとするのは不自然。かといって自らが特攻した場合の危険性は未知数。
     それらの考えから導き出された結論は食堂の入り口に目線を向けることだった。
     次に来る人間に特攻させるのである。
     卑怯だろうが最善策を躊躇なく選択する。それが大人である。
     そして、優秀な大人である協会職員は躊躇わず選んだ。
     壁にかかった『イジメ! ダメゼッタイ!』のフレーズが目に痛いなんて錯覚である。
     救世主(という名のスケープゴート)の登場を今か今かと待ちわびている食堂は異様な雰囲気に包まれているが、それを気にする者はいない。
     その元凶は天ぷら蕎麦の完成を待ちながら、サイドメニューにあるポケモンフーズを選んでいるし、その被害者たちからすれば巻き込まれた時から異次元に足を踏み入れているようなものだから。
     そんな緊迫感を感じとったのかはたまた偶然か、なかなか人は来なかった。
     天ぷらが順調に揚がっていけば、反比例的に猶予は無くなっていく。
     それは同時に誰かが爆心地に手を突っ込まねばならないということだ。それだけは避けねばならない。
     来いという念は一層強くなるが誰かが来る気配はない。
     かくなる上は、と先程――シロナに気付かれないのが困難であるため――断念した食器の返却をするべきだろうか。悲壮感すら漂よわせ、立ち上がろうとするものさえいる中、とうとう救世主はやってきた。
     シンオウが誇る四天王、ゴヨウとキクノである。
     入口に立った彼らは部屋の異様な空気を感じ取ったのか、一瞬歩みを止めるとその元凶を探るように視線だけで食堂内を見渡すとシロナの姿を発見。ゴヨウは震える指でメガネを直し、キクノは調子を整えるように咳き込んだ。
     しかし、それだけ。逃げることもなく、食堂に踏み込んだ。

     助かった!

     全員がそう思った瞬間だった。冷静にバトルを運ぶ青年と多くを経験した老婆ならば、爆弾の解除できるに違いない。その確信が確かにあったからだ
     期待に満ちた視線を受け取った彼らは堂々とした足取りで食堂に入る。
     当然、次はチャンピオンのいる配膳場所だ。
     現在シロナしかいない場所に行けば、会話が生まれるのは当然。服装の話題になるのは必然。その結果として、爆弾は処理される。
     異様な緊張感を齎した珍事は終焉を迎える。
     ようやく見えた終わりへのビジョンに職員一同が安堵の意気を吐こうとして――
    「ゴヨウ。私は席を取っておくから私の食事も買ってきてはくれないかね?」
    「いえいえ、場所取りなんてマネ、年配の方に任せるなんて心苦しいです。是非、私にお任せを」
    「何、年齢のことなど気にするな、私は疲れたのでな。少し料理を運んできてほしい。その代わりに席を取っておくということなのだからな」
    「ふむ、しかし午前中のバトルで疲れているのはこちらも同じなのですが……私はインドア派ですので、指示を出すだけで体力を消耗してしまうのですよ」
    「目上の人間を休ませるという考えはないのかい?」
    「おや、先ほど年齢を気にするなと言ったのはそちらではないですか? もしや痴呆症になってしまわれたのですか?」
     吐けなかった。
     彼らも事態を呑みこんだうえで踏み込んできた。しかし、それは高みの見物のため。あの服装が何なのかについては知りたいが、自らが爆発はさせたくないということらしい。
     念の入りようは只事ではなく、席を選べるという後から来た者の特権を全力で行使してシロナから一番離れている席を取ろうとしている。
     どっちか行けよ、と念じている周りの質量すら感じる視線は、流石歴戦の強者と言ったところか、完全に受け流している。今、二人の間ではどうやって相手を行かせるかについて、高度な駆け引きが行われている。
     異様な集中のせいか、にこやかに舌戦を展開する二人の声が職員の耳に届く。これが元凶に聞こえてないことを切に願う。
     ていうか早く終わらせろ。
    「そうかもねぇ。これじゃあ、注文を取りに行っても忘れちゃうねぇ」
     バトル中にどんな指示を出したかを思い出して、反省点を見出しているって雑誌で取り上げられてましたよね?
    「いえいえ、痴呆症の改善には脳を積極的に使うことが重要って本で読んだことありますよ」
     それホントですか?
    「いやいや、私に二人分の食事を持ってこさせるなんて何を言ってるんだい? 腕がぽきっと折れちまうよ」
     気絶したヌオーを(何故か)背負って回復マシンまで連れてきた老婆が何を言っているのか。
    「すいません、今どうしても読みたい本がありまして」
     あとにしとけよ。
     てか、二人で行けばいいじゃん。それでチャンピオンに絡んで来いよとかは、表に出せない職員の本音である。
     内心のツッコミとシロナが動き出すリミットという二つの限界が迫りつつある今、全員が望んでいた。
     新たなスケープゴートの登場を。
     誰かいないのか、誰でもいいからこの袋小路を打開する人間は――

    「何してるんですか、ゴヨウさんにキクノさん?」

     来た。
     虫フェチ、もとい四天王のリョウである。
     彼には虫の知らせが来なかったようで、この食堂にむざむざ足を踏み入れてきたようである。
    「おや、これはリョウ。あなたも昼食ですか?」
    「え……えぇ、まぁそうですけど」
    「そうだ、一つ頼まれてはくれないかい?」
    「あ、あのやけに怖いんですけど……」
     ゴヨウとキクノの二人に肩をがっしりと掴まれた彼の姿は、ウツボットに捕食される虫ポケモンそのものだ。
    「おや、老人を捕まえてそんなことを言うのかい?」
    「むしろ僕が捕まえられてるんですが?」
    「リョウ、目上の方に対する礼儀というものがあるでしょう? それではいけませんねぇ?」
     さっきまでのあんたが何を言うとかは気にしてはいけない。仕方ない事情があった。そういうことなのである。
    「はぁ、ものすごく怖いんですが……僕は何をすればいいんですか?」
    「何、ただあそこにあってシロナさんの服装について聞いて来ればいいんですよ」
    「なんで今日に限って聞く気になったんですか? いつも同じ服装じゃないですか?」
     いまいち要領を得ていないリョウの首を強引にシロナの方へ方向転換。首から変な音が出ると同時にリョウの顔も奇妙に歪んだ。シロナの服装の異様さに驚愕したのだろう。痛みとかそんなのはないのである。
    「……………………………………なんであんな恰好してるんですか、イメチェン?」
    「それを聞くのがあなたの仕事です」
    「僕の仕事はポケモンバトルだったと思います」
    「これもある種の戦いじゃ」
    「いや、お二人も同じ四天王なんだから、ご一緒してくださいよ」
    「「リョウは先鋒だから」」
     妙に納得のいく説明にリョウはうなだれるとシロナの方へと進む。この思い切りの良さは先鋒らしいというべきか。
    「あの……シロナさん」
    「あら、リョウもこれからご飯なの?」
     こちらを向いたシロナを見て、リョウは仰け反った。やはり間近で見るとインパクトも凄いのだろうか?
    「えぇ、まぁそんなところです。少し、聞きたいことがあるんですが」
    「別にいいけど?」
     ごくりと生唾を呑みこむ音が食堂内に反響する。
     質問する本人だけではない。食堂内の人間全員(シロナ除く)が引き攣る喉を懸命に動かし、嚥下していた。
     とうとうゴールが見えているのだから、しかたがない。
     リョウは震える声で問うた。
    「あの、その服装どうしちゃったんですか?」
     それを聞かれたシロナを自分の服装を矯めつ眇めつ呟いた。
    「あぁ、これ? この間、イッシュのカミツレさんから送られてきたんだよね」
    「はぁ…………でもなんで着てるんですか?」
    「まぁ、貰い物だし。一度は着ないと勿体無いかなぁって。今日はまだ暖かいし」
    「別に、ここに来てまで着る必要性はないと思うんですが……」
    「あれ、もしかして似合ってない?」

    「「「「似合ってますけど!」」」」

     思わず食堂にいた全員で突っ込むことはできたとしても。
     そういうことじゃないんだよね。
     とは流石に誰も言えはしなかった。


    ―――

    あれは大体四日前のチャットで閲覧で入ろう祭りが開催されてた時に正体を当てられたら、リクエスト聞きますとか言ったら、ラクダさんに見事言い当てられたのでラクダさんから貰ったリクエスト「四天王とハーフパンツ」で書いてみた話です

    四天王分少ないとか禁句です(笑)
    オーバいないは言っていいですが

    ラクダさん、リクエストありがとうございました

    【好きにしていいのよ】


      [No.1182] 【脳内バックアップ】うちの怪獣事情 投稿者:音色   投稿日:2011/05/13(Fri) 23:56:11     116clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     うちのペンドラ―はでかい。
     どのくらいでかいかというと、かなりでかい。
     数字で言っちゃうと、10メートル強。普通の奴の約三倍。
     行きずりのトレーナーと戦えば「ドーピングか廃人!」と罵られ
     友人に相棒として見せてみれば「何を食わせたらこうなるんだ」と怪しまれ
     家族に写メを送って見せたら「おおきくなったねー」と感心され

     つまり うちのペンドラ―はでかい
     けど昔からこんなに大きかったわけでもない


     俺の家はヤグルマの森のすぐそばで、よく庭に野生ポケモンが入り込むことがよくあった。
     ある日の夏休みのラジオ体操から帰ってみれば、観察日記用のアサガオを食いつぶしているボロボッロのフシデを発見した。
     ご丁寧に鉢植えのそこの方から根こそぎ食ってくれていて、一から育てなおそうかという俺の気力さえも根こそぎ潰してくれた。
     てめーこのヤローとばかりに蹴っ飛ばした拍子に毒の棘が刺さったのはなかなか嫌な思い出だ。

     瀕死に近い野生のポケモンに八つ当たりなんかしようものなら世間の非難の目は俺に向かうこと間違いないし、しょうがないからアサガオのかわりにこいつを観察してやることにした。
     なんか『ポケモンの回復日記』なんて格好つけた名前にして、観察開始。
     とりあえずポケモンフーズと傷薬与えようと近づいたら足に噛みついて全力で俺を拒否。
     なんだよ、あれか、そんなに上から目線が嫌なのか。だったら匍匐前進してやったら問題ないんだろうなえぇ?
     はいつくばってじりじり近づいてやった逃げるのはやめた。相変わらず触角震わせて威嚇しまくってるけど。
     ポケモンフーズを口元に投げてやっても一向に食う気配がない。あれか、俺が食べて見せないと食わないってか。
     だが俺は食って見せた。さもうまそうに食って見せた。くそ不味かったけど笑顔で食って見せたさ!
     そしたらあいつは・・よっしゃくったぁぁあ! なにこれものすごい嬉しい。あのときの快感に近い喜びは今でも覚えている。


     ・・つまり、その時は普通のフシデよりも小さかったってことが言いたいんだ。


     夏が終わることにはすっかりフシデは俺に懐いてしまい、家族公認でゲットが許された。
     何か名前をつけないのか、と言われてその場で食っていた『あんみつ』と命名。
    『ペンドラ―にあんみつ!?』とかなりの確率で驚かれる。
     いや、別にあんみつって名前可愛くねぇ?あんみつ本人は多分気に入ってる、と思う。
     名前呼ぶたびに尻尾振って喜んでるからそう思ってるだけかもしれないけど。

     別にホイーガ時代もでかいという事はなかった。きっと普通だった。
     ・・・。
     わからん、何故こいつがあんみつがここまででかくなったのかがさっぱり分からん。
     

     うちのペンドラ―はでかい。
     だが何故か恐ろしく素早い。
     あの図体で先制ハードローラーは反則だ、なんて何回言われたことか。


     うちのペンドラ―はでかい。
     細長くてスタイルが良い。そこ、太いなんて言ったら殺す。
     あんみつは女の子なのでそこは言葉に気をつける。

     
     うちのペンドラ―はでかい。
     しかし気は優しくて力持ちだったりする。
     俺なんかひょいと持ち上げて背中に乗せてくれたりする。


     うちのペンドラ―はでかい。
     ずしんずしんとあるかない。
     かろやかにのしん、のしんと揺れる。


     ・・そう言えば、昔、小猿どもがフシデだったころのあんみつにのって楽しそうに走り回ってたなぁ。
     お前、大きくなって俺も乗せてくれよ、そんなことを言ったような気もする。
     ・・・。
     まさか、なぁ。

     あんみつの背中は ひろくて 温かい。

     うちのペンドラ―はでかい。とにかくでかい。何もかも包みこんでくれそうなくらい、でかい。


    おまけ  テレビで30メートルという驚異のでかさを誇るマダツボミが映っていた。
          あんみつはわりと可愛らしい部類なのかもしれない


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談   脳内バックアップとは。ログが飛んでしまっておまけに自分の頭の中にしかバックアップがないものを書き起こすことを指す。
    書く側は大変な労力とうろ覚えの記憶でそれっぽいものを空気を変えずに書かねばならず、結構きつい作業である

    【こんな感じだったよね】
    【なにしてくれてもいいのよ】


      [No.1181] 【貼ってみた】拡大版 投稿者:風間深織@PC   投稿日:2011/05/12(Thu) 17:37:53     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
     【貼ってみた】拡大版 (画像サイズ: 640×480 15kB)

    画像がちょっと小さい気がしたので、再投稿です。
    立体ポケモン、作るのは楽しいのですが、たまに置き場に困ります(笑)
    誰かもらってくださいw


      [No.1180] Re: 諸君、私はゴーヤロックが好きだ 投稿者:586   《URL》   投稿日:2011/05/11(Wed) 21:33:55     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    |ω`)←必殺の半分ドヤ顔

    レイニーさんの作品の読み込みぶりに頭が下がります……!
    ピンのダグトリオの本名とか今まで忘れてました(懺悔

    今にして思うと、全然統一感ない作品を書いてきたなーと実感します。
    これからも継続して「586(ゴーヤロック)らしくない作品」を手掛けることで「586(ゴーヤロック)らしさ」を出していこうと思います(`・ω・´)

    本当にありがとうございました!


      [No.1179] ち、チルチルちゃん……! 投稿者:586   《URL》   投稿日:2011/05/11(Wed) 21:14:00     87clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    すげええええええええええええええええ!!(絶叫
    あまりにも我が脳内のコットンガードチルチルちゃんと一致していて目を疑いました! すごすぎですよこれは!!
    立体チルチルちゃん可愛すぎだろこれ!! 速攻でお持ち帰りですわええ!!

    ――喜び方が異常すぎて引かれること間違いなしですが(ツイッターのフォロワーの数を不安げに確認しながら)、素晴らしい力作です!
    いやもうホントに速攻で保存しました! ありがとうございます!

    こちらをじーっと見つめてくるふわふわチルチルちゃん……今日はよく眠れそうです(´ω`)

    本当に、ありがとうございました!


      [No.1178] 【貼ってみた】立体コットンガード 投稿者:風間深織@PC   投稿日:2011/05/11(Wed) 20:54:59     136clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    【貼ってみた】立体コットンガード (画像サイズ: 240×320 20kB)

    チルチルちゃんのつもりです。
    綿をつける過程で、どうしてもチルチルちゃんが某元小泉総(ryに見えて…いえなんでもありません


      [No.1177] 昨日のリアル状態だったりするのです。 投稿者:ふにょん   投稿日:2011/05/11(Wed) 17:08:30     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > こんばんは。そしてお久しぶりです。マコです。
     お久しぶりです!

    > マヨネーズしか食べられなかった(飲めなかった)ガーディが可哀想過ぎます……。
    > 主食副菜のない状態からのマヨネーズはきついでしょう。ベタベタしますし。しかも冷蔵庫には到底そのままで食べられそうにないものばかりで……。
     直飲みはさすがに出来ませんw 
     健康的にも、味覚的にも、きついものがあります。
     あ、でもワサビなら直飲みしたことありますy(ry


    > ちなみに、こんなことを言っている私はマヨネーズを食べられません。
    > もしそんなことになったら親や友人に頼んで三日間何とかしてもらう自信があります。
     三日間何も食べないという手もあr(ry
     
     実はこの話、実話から出来たお話なのです。
     昨日の夜、夕飯食べようと冷蔵庫開けると、

     異様な存在感を放ちつつ、ド真ん中に一つだけ置いてあるものが。

     それこそ、『マヨネーズ』だったのである。
     
     それ以外は何も入っていない。
     どうしろって言うんだっー!

     感想、ありがとうございます。
     ポケリアのほうも、引き続き応援しておりますよ〜!


      [No.1176] しがない物書きとアラハバキ 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/05/11(Wed) 08:22:16     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     私はしがない物書きだ。どのくらいしがないかって言うと、カーテン開けるとカゲボウズがぞろーっ。冷蔵庫は電源抜いてるからただの箱。中に入ってるサイコソーダは炭酸が抜けてただの砂糖水。ってかいつのだよ、これ。

     その位しがないんで、ネタが浮かばない時は近所の公園へ散歩に行く。ってか普通に家の中より外の方が涼しいしな。「おーいアム行くよー」と声掛けしてモンスターボールを一個手荷物に外へ。いやあモンボって便利だね。この中に入れとけばポケモンお腹すいたりしないからね。その分エサ代とか浮くしね。便利便利。

    「かがくのちからってすげー」と呟きながら近所の公園に到着。公園のベンチに座ってからアムを外に出す。理由は分かるな? 分かるな、そういうことだ。
     久しぶり(ほんとに久しぶり)に外に出たアムは、嬉しそうに尻尾をふりふり、隅にある砂場へと一直線に駆けていった。あーかわいー。長い耳とか大きい尻尾とか、けもけもしてて尚且つもふもふしてるとことかまじかわいー。襟巻きもふもふできるし肉球ぷにぷにできるし、三十センチと手頃な大きさで六キロ半って抱くのにはちょっと重たいが愛があればそんなことは気にならない。呼べば振り向き、つぶらな瞳でこちらを見る。破壊力ばつぐんのメロメロ。ついでにアムはこの種族では珍しい女の子。性別で見た目が変わる種族じゃないけど、女の子だと思って見るとまたかわいいんだこれが。

     目の保養がてらアムを眺めた後は、(ずっと目の保養してたいなあ……あ、カゲボウズ)イッツシンキングタイム。小説のネターネターと念じつつ目を閉じる。ネタ。ネタ降ってこないかなあ。
     しかしネタどころかネタのネの字すら、このところ大絶賛晴天中の空からの雨粒よろしく、私の頭からは降り出してこない。ええいいつから絞りっかすになったんだよこの頭は。振っても投げても何も出てこねえ。
    「おーい、ネタ降ってこーい」
     困った時の神頼み。私は天を仰いでネタを所望した。完全不審者だけど気にしない。だってこの公園他に人いないし。主に私の所為だけどなっ!


     ひゅーっ、どごーん。

     ありがちな音を立てて、ネタが降ってきた。いやネタというかこれは、
    「アラハバキ?」
    「ネンドールと言え、ネンドールと」
     降ってきたネタ……自称ネンドールは、離れた手をばしゅっばしゅっと何もない空間に向けて打ったり戻したりしながら、私に抗弁した。目がなんかやたらめったらいっぱいあるが、その半分はめんどくさそうに閉じられている。じゃあそんなにいらんだろ、目。
    「いやだってどっからどう見てもアラハバキじゃん。似てるよ激似だよあんた」
    「ネンドールと言え、ネンドールと。他のゲームのキャラ持ってくんな」
    「別にいいじゃん別に。ところでそのゲームってめ」
    「あああああああああ」
    「……がみてんせいのこと?」
    「伏字の意味がなかった」
    「別にいいじゃん」
    「まずくね?」
    「伝承が元ネタって言えばいいよ」
     私がそう主張するとアラハバキはふうっとため息を付いた。見るからに土偶です、という感じのフォルム。その割には足が短い気がするけどさ。ところでどうやって息してるんだろう。
    「ねーアラハバキー」
    「俺の名前それで決定かい」
    「アラハバキはなんで空から降ってきたの?」
    「無視かい。お前が『おーい、ネタ降ってこーい』とか言った所為だぞ、マジレスすると」
    「嘘、じゃああんたネタなの?」
    「かもな」
    「じゃあネタと呼ぼう」
    「マジで」
    「アラハバキの方がよかった?」
    「それは少し考えさせてもらおう」

     アラハバキは丸い土笛みたいな両手を組んで考えるポーズをとった。いや組めてない。組めてないよ。でもネタは必死で腕を組んでいる振りをしていた。

    「……なあ、お前」
    「なんだいネタ」
    「俺の名前それで決定かい。いや、ちょっとコアルヒーのことを考えててな」
    「何故そこでコアルヒー」
    「まあ聞け。コアルヒーは似てると思わないか……その、あれに」
    「あれ? ああ、似てるかもしんないね。なにせモデルが一緒だし」
    「そうだ、そして……ドナルドというのは一介の男性名のはずだ」
    「そうですね」
    「そしてダックというのは普通名詞のはずだ」
    「ですね」
    「何故つなげると存亡の危機に関わるのだろう」
    「知らないよそんなこと」
     何考えてんのアラハバキ。いやネタ。
    「いや俺アラハバキって名乗っていいのかなって思って」
     迷ってたんだ。
    「ところでお前のイーブイ、誘拐されたよ」
    「えっうそっ」
     喉が裏返ったかのような不快な悲鳴を上げて、私は砂場を見た。アムがいない! 本当にアムいないし!
    「いやー、さっき別の目で見たら黒ずくめの三人組が無理矢理押さえて連れてってさ」
    「あんたそれすぐ言えよ!」
    「ごめん、ちょっと著作権について考えてた」
    「ああもう!」
     ネタを放っておいて、私はアムが連れ去られたと思しき方向へ走りだす。暴れた跡っていうか、ポケモンバトルの跡みたいのがばっちり残ってるからね。それを辿ればよし。
    「おーい、俺(ネタ)を置いていく気か!」
    「んなもん、アムが帰ってくるまで用無しだあ!」
     アムなしで執筆というか生命活動できるかこのやろおおお! って叫んだけど、後ろ振り返ったらアラハバキがばっちり付いて来てた。



     アムが暴れた跡を追ってくと廃工場に着いた。何と言うか、RPGゲームの序盤から中盤あたりに出てくる微妙に強いけど考えがセコくていつまでも三下扱いされる敵がアジトにしてて主人公たちが町の人の頼みで乗り込むような、いかにも! な廃工場。
    「さて、どうする?」
    「乗り込むしかないっしょ」
     アムがいるのに二も三も躊躇いもない。廃工場を取り囲む草茫々の地面に足を踏み入れる。工場の扉は蝶番が錆びて外れかけていて、誰でもいらっしゃいませ状態。
     私は迷わず中に踏み込む。埃がぶ厚い絨毯のようになってたり、蜘蛛の巣が張ってたりということは特になく、剥がれた天井の欠片が邪魔くさそうに廊下の隅に寄せられてるぐらい。誰かいるんだなー、と確信。捨てられた建物にしては綺麗すぎる。まあそれにしたってやっぱり汚い。こんな所にアムを連れ込みやがって、犯人ども見つけたらただじゃおかねえ。
     焼き物の先っぽみたいなのが私の背中の真ん中をくすぐった。
    「ちょっ、くすぐったいからやめて」
    「あそこだ」
     くすぐった張本人アラハバキは私の反応を見事にスルーして、ドアがなくなった一室を指差す。そこにアムがいるらしい。そろーりそろーり、足音を忍ばせて部屋の入り口に近付いた。
    「なんだかスパイアクションっぽくてくすぐられるね、冒険心が」
    「ばれるから黙ってろって」
     折角さっきの“くすぐったい”とかけたのに、文筆家心の分からんアラハバキめ。
     まあそれはそれとして部屋の中を覗くと、そこには黒ずくめのベビーカーとその中でぐずるこれまた黒ずくめの赤ん坊と

    「キモクナーイ」

     そう言っていないいないばあをする……ラグラージの姿があった。

    「キモクナーイ」

     赤ん坊の反応がないと見えて、もう一度いないいないばあをするラグラージ。今度は反応があった。耳に突き刺さるような泣き声。

     赤ちゃんに泣かれてしまって、ラグラージは目に見えてオロオロしだした。助けを求めるような視線の先には、これまた黒ずくめの男女が、ベビーカーから離れるようにしてつっ立っている。
     黒ずくめの男女は互いに顔を見合わせて頷くと、腕の中のものをラグラージに手渡した。
    「アム!」
     飛び出そうとした私を、ネタの念力が押し留める。
    「何してくれてんの! アムが……」
    「あれを見てみろ」
     アラハバキがそっと顎で示し……分からんわ。あんたの顎どこだよ。とにかく私は室内をイライラしながら黙って覗くことにした。

     黒ずくめの男女はじたばたするアムをラグラージに押し付けた。ラグラージは心得た風で小さなアムを手の平に乗せるように抱きかかえると、そっとベビーカーの中の人にアムの顔を見せた。その途端。さっきまで工場を倒壊させんとばかりにわんわん響いていた赤ん坊の泣き声が、止んだ。
    「どうやら、赤ん坊を泣き止ませるためにイーブイを誘拐したらしいな」
    「む、誰だ!?」
     したり顔で解説したネタに、当然のごとく黒ずくめのツッコミが入る。
    「怪しい奴め!」
    「お前らの方が怪しいわ!」
    「それは言わないでもらおう!」
     そこまで言うと、黒ずくめの男は一つ、黒ずくめの女は二つ、計三つのモンスターボールを取り出し、投げた。
    「我々の崇高な目論見をガン見するとは……見逃すわけにはいかないな! 永久に黙っててもらおう。行け、ヒューイ!」
    「あなたたちも手伝いなさい。デューイ、ルーイ」
     ボールから飛び出したのは、揃いも揃って同じマヌケ面を披露したコアルヒー。
    「やれ」
     三羽のコアルヒーが私とアラハバキに飛びかかってきた。
    「危ない!」
     ここでネタが機敏な動きを見せた。さっと私の前に回ると、リフレクターを繰り出してコアルヒーたちの燕返しを受け止めたのだ。
    「やるねぇアラハバキ。じゃなくてネタ」
    「だろ? これからはアラハバキって呼んでくれ!」
     ネタ改めアラハバキとコアルヒー三匹が距離を取った。アラハバキがコアルヒーたちから見て後ろ側の目で私に目配せする。
    「あのコアルヒー、只者じゃないぞ」
    「そうかなあ?」
    「名前的に」
     そっちかい、とツッコム間もなく、次のターンが始まる。バタバタと飛び回るコアルヒーたちに、ネタがサイケ光線を連打する。しかし、的が小さくちょこまか動き回るから中々当たらない。
    「もう、何やってんの。水飛行だからジオやりなさい、ジオ」
    「だからゲーム違う」
     そう言いながらサイケ光線をチャージビームに切り替えるネタ。ノリいいじゃないか。

     なんだかんだ言いながらジオでデューイとヒューイとルーイを撃破。
    「さて、アムを誘拐した罪、どうあがなってもらおうか……」
     黒服の男女は正座して俯いている。いかにも反省してますというポーズ。隣でラグラージもなるたけ小さくなってた。その奥のベビーカーでは赤ちゃん安眠中。
    「ところでアラハバキ。黒ずくめの三人組って言ったけど」
    「うん、三人組だろ」
     男と、女と、
    「赤ちゃんも入れたら三人」
     まあ、何も言うまい。
     アムは私の足元で毛づくろいなんかしてる。もうこの場面でもかわいいなあこいつは。後足をほいって上げて耳をカショカショ掻いてんだよもうかわいい以外何も言えねえ。こんなにかわいいアムを砂埃まみれにしてくれた罰。
    「砂埃まみれなのはそいつが砂場で遊んでたから」
     抗弁しかけた黒男を一睨み。それで男は黙る。
    「いや、こいつの方が一理あると」
    「アラハバキは黙って」
     さあ、どうしてくれようか。
    「まず、なんでアムを誘拐したか、その理由は」
     私の声にビビったのか、男の肩がビクリとなる。ついでにいくらか萎んだみたいだ。全くこのくらいで、情けない。
    「実は……」
     同じく小さくなっているラグラージを横目で見てから、話し出す。
    「あの子の世話をラグラージに任せているんですが、ラグラージにあやされても全然、泣き止まなくなって」
     うん、そりゃ、赤ん坊泣くわな。目の前に怪獣が迫ってきたらな。
    「夜泣きも酷くなってきて……妻とどうしようか、対策を話し合ったんです」
     男が黒女を見、彼女が話を引き取った。
    「ラグラージはちょっと強面だから赤ん坊には刺激が強すぎるんじゃないか、イーブイみたいなかわいいポケモンがあやしてくれれば、夜泣きも治るんじゃないかって……」
    「ちょっと待て」
     急にアラハバキが話を遮った。土笛に似た手を落ち着かなげにばしゅんばしゅん虚空に飛ばしている。
     アラハバキはいくつもある目をカッと見開いて、夫婦(だろう)黒ずくめに向かって言った。
    「ラグラージがさっきからどうこうって、お前らのガキだろ? お前らがいないいないばあすればそれで収まるんじゃね?」
     夫婦は黙り込んだ。アラハバキの手が撃ち出されるぱしゅっという音だけが廃工場の内側に反響していた。

    「だって……」
     気不味い沈黙を破ったのは、黒ずくめの男だった。

    「うちの子は! うちの子は闇の帝王なんだよ! ポケモンに囲まれて育って、人間の干渉は受けないんだ! そうやって特殊な生い立ちで人の同情買ってゆくゆくは世界を背負って立たせようって魂胆なんだ! どうだ参ったかパンピーには真似できまい血の気が引くだろうあっはっはっはっは」
     どん引きです。
    「というわけで! うちの子には人様が近付いちゃいけねぇんだよ!」
     某Nさんもびっくりな子育て法ですね。
     男が急に立ち上がった。目が妙に情熱的で純粋に恐い。その手には青と白のボールがあった。
    「俺様たちの崇高な計画を邪魔されてたまるかあ!」
     男がボールを投げる。光に包まれて姿を現したのはスワンナ。
    「いけ、ドナルド! 奴らを追い払え!」
     ドナルドの癖に白鳥かよ。
     廃工場の狭い一室の中を、暴風が荒れ狂う。アムを庇いながら後ろに下がる。承知した、とばかりにアラハバキが進み出た。
    「頼むよ。一番いいジオをお願い」
    「チャージビームだ」
     アラハバキはそう言って、雨と風の嵐の中へ突っ込んでいった。私の方に向けてた目が、心なしか笑ってるように見えた。



    (死闘が展開されております。しばらくお待ちください)



     もうもうとバトルでモロモロになった建材のくずが立ち込める。汚い霧が晴れた時、立っていたのは

    「アラハバキ!」
     私はダッシュ&ジャンプでアラハバキに飛び付いた。土偶ポケモンはいくつもある目を細めて、勝負に勝てた喜びを示した。ああ、もうボロボロじゃないか。でもよく頑張ったね、アラハバキ。
     と思ってたらアラハバキの体がガクンと傾いた。
    「くそっ、俺ももう限界みたいだ」
     無駄に多い目を細めてあはは、と笑うアラハバキ。くそっそんなこと言うなよ死亡フラグじゃねえか。
     こん、とアムがズボンの裾におでこを当てた。何? と言いかけてハッとする。
     ズボンのポケットに入れたままの……
    「アラハバキ! サイコソーダだよ。ほら、これで体力回復して」
    「そりゃありがたい。ごきゅごきゅ……って何だこりゃ! ただの砂糖水じゃねえか!」
     ガン、とサイコソーダを投げ捨てるアラハバキ。体力は回復しませんでした。
    「アラハバキ……」
    「こんな時に不味いもん飲ませやがって……」
     甘いもの嫌いでしたか、ごめんなさい。
    「まあいい」とアラハバキは言った。その顔はスワンナに向けられていた。
     訂正。その顔は三百六十度全方向に向けられていた。
    「お前とのバトル、楽しかったぜ。……最初はヒューイデューイルーイときてドナ(事情により印字できません)ックじゃねえのかよ白鳥かよなんて思ったけどな……」
     アラハバキの体が淡い光に包まれる。私の脳裏にアラハバキの言葉が蘇る。
     ――ドナルドというのは一介の男性名、そしてダックというのは普通名詞のはずだ。
     ――何故つなげると存亡の危機に関わるのだろう?
    「消えんな、アラハバキ!」
     私は必死に叫んだ。
    「消えんな、根性出せよ! うっかりドナなんとかアヒルとか言った所為で消えるなんて、そんなの格好悪すぎだろ!」
    「悪いな、俺の特性は浮遊なんだ」
    「笑えないよ」
    「なあ、物書きよ」
     アラハバキのたくさんある目が私を見る。ああ、こいつってこんな優しい目をしてたんだ。
    「短い間だったが、楽しかった……俺はお前のネタになれたか?」
     涙を堪えながら、私はアラハバキの手を握る。あっ取れた。
     私は首を振った。
    「アラハバキは……ネタなんかじゃない。私の大事な――」
     光に包まれて、消えた。
    「アラハバキ!」
     アムが足元で、きゅう、と鳴いた。
     手の中に土笛みたいなあいつの手が残った。



     廃工場の外の方から、パトカーのサイレンの音が聞こえる。
     ふらふらと立ち上がりながら「警察が来た。もう逃げられないぞ」とお定まりの台詞を吐く。
    「ちくしょう!」
     男はスワンナが入ったボールを床に叩きつけ、罵詈雑言をいくつか叫んだ。そして、私に飛びかかってきた。
    「危ない!」
     コアルヒーの時のように、私を庇ってくれたアラハバキはもういない。しかし、その時とは別の影が私と男の間に立ちふさがった。
     それは、あの黒ずくめ女だった。
    「あなた、もうやめて!」
     女のありがちな台詞が放たれると同時に、男が拳を振り上げた格好のまま固まる。女は頭を振ると、後を続けた。
    「こんなこと、やっぱり間違ってるのよ……あの子をポケモンの子として育てようなんて。あの子は人間よ、私たちの子よ! 私たちが愛して育てるのが一番なのよ! それがパセリのためよ!」
    「え、パセリ?」
    「そうだな。俺が間違っていた」
    「ちょっと待てパセリってなんだ」
    「あなたなら分かってくれると思ってたわ……! そう、あなたは本当は優しい人だもの」
    「パセリって赤ちゃんの名前ですか」
    「そうと決まったら心を入れ替えて、パセリを育てていこう。俺と君とで……」
    「あなた……!」
     ひしと抱き合う黒ずくめ共。あーあ、今日は暑いな。
    「帰るか」
     アムを抱いて帰ろうとした矢先、警察の人と鉢合わせする。
    「使われていない工場で何やら騒いでいると通報がありました。事情をお聞かせ願えますか」
     活劇のヒーローじゃあるまいし、現実なんてこんなもんである。はい、と警察手帳に頭を垂れて、いそいそと取り調べに向かいました。



    「あーあ、今日一日疲れたね、アム」
     警察署を出ると、もう夕日が差していた。アムはそんなことはお構いなく、ボールの外に出られるのが嬉しいみたいで、尻尾をハチャメチャに振っている。
    「アムったら」
     口の端に笑みを浮かべつつ、もう一匹、今頃ここに一緒にいたはずのポケモンのことを考える。
     ポケットに手をやる。大きめの土笛が入っている。
    「あ、目にゴミが」
     わざとらしくそう言いながら目をこする。違う今のは本当に目にゴミが入ったんだ嘘じゃないよ。
    「アラハバキ……」
     夕焼け空を仰いだ。もう蒼くなり始めている。
    「あんな消え方しやがって……もっぺん降ってこい、ネタ」

     ひゅーっ、どごーん。

     ありがちな音を立てて、降ってきた。
    「えっ」
    「えっ、じゃねえよ。手ェ返せ手」
     片方の手がないネンドールが、残った手をビシビシ夕焼け空に撃っている。私がポケットから大きめの土笛を出すと「そうこれこれ」と言って肩に装着した。どこだよ肩。
    「あの、なんで戻ってきたの?」
    「もっぺん降ってこいって言ったじゃん」
    「だからって本当に降ってくるか!? しかもこんなに早く!?」
    「まー、それは言いっこなしで」
     アラハバキもといネタはケタケタと笑う。アムがビビってるよ尻尾下がってるよちょっと。
    「あ、そういえば」とアラハバキが言った。
    「何?」
    「お前さあ、あの時なんて言おうとしたの?」
    「どの時?」
    「俺が消えそうになった時」
     そこまで言われて、はたと思い当たる。あの時、私はアラハバキの手を握りながら、
    (私の大事な――)

    「ええい知るかそんなこと! 忘れた!」
    「まあそう言うなよ。私の大事な――何?」
    「だから知らねえって!」
     意味のない言い争いを続けながら、当たり前のように同じ道を辿って帰る。
    「でもさあ、あの時半泣きで」
    「ああもう、タネ!」
    「タネ?」
    「そ」
     私はいくらか走って、アラハバキとの距離を開けた。そして振り返り、
    「形になりそうな、大事な話のタネだって言おうとしたの!」
     私は走り出す。アムも一緒に。そんでもって振り返ったら、アラハバキがばっちり付いて来てた。



     後日、『パセリの冒険』というポケモンに育てられた黒ずくめの男の子がネンドールをお供に闇の帝王(実は父親)をやっつけに行く話を書き上げたが、それはまた別のお話。


     おわりっ!

    【何してもいいのよ】


      [No.1175] \愛を叫びます/ 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/05/11(Wed) 01:04:39     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    再掲ありがとうございます!

    「いつか感想を……」と思いつつ流れ流れ。再掲されたとなればこれがチャンスとばかりに遠慮無く愛を叫ばしていただきます! 好きです!

    >  『伝説』と呼ばれるポケモン。それらは各地方ごとに存在する、特別なる者達である。
    >  カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ、そしてここイッシュにも――――――。

    風神雷神を親父にしようという試みの前置きに、この格好いい書き出し。惚れました。

    >  盛大なクシャミ一つで、更なる強風が巻き起こる。目の前にそびえ立っていた大木がしなり、気の毒なマメパトが一羽、甲高い悲鳴と共に遠くの空へと吹き飛ばされていった。

    マメパトやぁい……このあと、ハトーボー、ケンホロウとつながっていったのがたまらないです。最後は♂♀の姿の違うケンホロウが番で現れる。このかちりとハマって幸福感がじんわり漂ってくるのが大好きなんです。

    >  頭には捻った細い布を巻き、逞しい肩から上半身を覆う青い布を引っ掛け、腹には縦に筋の入った平たい布地を着けている。いつも通り尊大に組んだ腕の中には、良く分からない凹凸のある木片が抱え込まれていた。

    うわあ、まじで親父になりやがった……と笑いました。そのあとのやり取りで追加の抱腹絶倒。もう本当、読んでて楽しいです。

    > 「うむ。ここまでくる途中、民家があってな」
    > 「吹き飛ばしたのか」

    このやり取り、本当にいいなあ……

    > 「………無礼千万な人間どもと戦ったことを、だ」
    >  ああ、と呟いて、トルネロスは苦虫を噛み潰したような顔をした。
    >  忘れられる訳が無い。

    ここで遭難のくだりきた!
    ドテラを羽織りながらもこの話を、雰囲気を壊さず、むしろ素敵に味付けしていく……もう言葉が出てきません。ドテラという外見に惑わされず、格好いい風神雷神を書かれていて、楽しい嬉しい感動のトリプルインパクトです。
    遭難のくだりもよく読み込んで書かれたことが分かって、いやはや脱帽です。

    > 「我等は人間とポケモンの間に結ばれる“絆”とやらに負けたのだ、風神よ」
    > 「絆、とな。雷神よ」

    格好ええ……
    ドテラと健康サンダルの次にこんな会話をさらりと持ってこれるとは……


    > 「実は同じ事を考えていたのだ、雷神よ」
    > 「ほう、奇遇だな。一緒に親父になるか、風神よ」

    吹いたw

    > 「どうすると言われてもな。今まで通り、各地を巡り飛び回ることしか考えておらん。我が役目は訪れた地に雷雨をもたらし、大地を潤すこと。お前とて似たようなものだろう」
    > 「ああ、我の役目は強風で辺りを吹き払い、古きを除き新しきを運ぶ事。今まで通り振舞う以外、何が出来ようか」

    実は、遭難の話を書いているとき、風神雷神の役目というものにさっぱり思い至らず……(ですからあんなにフルボッコにしたわけでして)この話を読んで、ああ! と合点がいきました。目から鱗です。

    思えばBW発売後から「コピペロスww」などと揶揄され、さんざんネタにされてきた風神雷神。格好良く、神様らしい彼らをはじめて見た気がします。

    乱文失礼しました。

    【もうアーカイブ入りしちゃえばいいと思うのよ】


      [No.1174] えげつない! 投稿者:マコ   投稿日:2011/05/10(Tue) 23:13:36     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    こんばんは。そしてお久しぶりです。マコです。
    マヨネーズしか食べられなかった(飲めなかった)ガーディが可哀想過ぎます……。
    主食副菜のない状態からのマヨネーズはきついでしょう。ベタベタしますし。しかも冷蔵庫には到底そのままで食べられそうにないものばかりで……。


    ちなみに、こんなことを言っている私はマヨネーズを食べられません。
    もしそんなことになったら親や友人に頼んで三日間何とかしてもらう自信があります。


      [No.1173] 【再掲】新緑讃歌 投稿者:イサリ   投稿日:2011/05/10(Tue) 22:07:24     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ※注意 この話には、ゲーム内の登場人物に関する過去の捏造等が含まれております。
     苦手な方はご注意ください。








     これは、あたしがまだコトブキのトレーナーズスクールに通っていた頃の話。
     あたしはハクタイ郊外の、花に囲まれた小さな家に住んでいた。

     あたしの家族はみんなお花や草ポケモンが大好きだった。
     父さんのドダイトスは、いつもお庭で昼寝をしていて、甲羅から生えた樹の枝には時々ムックルが止まりに来た。
     母さんのチェリムは、とても恥ずかしがり屋で、普段は顔を隠していたけれど、良く晴れた日には桃色の花びらを広げて嬉しそうに踊った。

     あたしにとってはお花や草ポケモンを育てることは、朝起きて『おはよう』と言うくらいに当たり前のことだった。
     ポケモンについてノートと鉛筆で勉強するだけだった頃から、自分も将来は両親と同じように草タイプのポケモンの専門家になるのだろうな、と漠然と信じていた。

     そしてあたしは、一つの鉢植えを育てていた。


     その鉢植えに花は咲いてない。それどころか葉っぱもない。枝もない。――外見上、それは土の入った植木鉢だ。
     種を植えてまだ芽が出ていないのだから当然とも言えた。

     種を植えたのが秋の終わり。順調にいけば春の訪れとともに芽を出すはずだ。
     自分の腕でも持ちあげられる小さな植木鉢に種を播き、土をかぶせた翌日から、あたしはその日を待っていた。



      ◇

     

     両親の他にもう一人、あたしの草ポケモン好きに影響を与えた人がいる。
     ソノオタウンに離れて暮らす祖父だった。街中の喧騒を嫌い、さびれた田舎町の、花と緑に囲まれた赤い屋根と白い壁のおしゃれな家で、彼は暮らしていた。
     ――私の生きている間にソノオの町を花でいっぱいにするんだよ。……このロズレイドと一緒に、ね。
     長年連れ添ってきたパートナーの隣で、彼は口癖のように呟いていた。
     
     ドダイトスもチェリムももちろん好きだが、祖父のロズレイドがあたしは一番好きだ。
     ラジオから流れるワルツに乗って、色取り取りの花びらを散らせ舞い踊る、その優美な様は言葉では言い表せないほど素晴らしかった。
     あたしも大きくなったらロズレイドと仲良くなりたい。自分が初めて扱うポケモンは、進化前のスボミーがいい。……そう、強く願っていた。



      ◇



     朝起きるたびに外に出て、玄関脇の宝物の様子を確認する。
     鉢植えから芽が出るのは今日かもしれない。今日がだめなら明日かもしれない。今週は寒くなると言っていたから……暖かくなったら、きっと……!
     毎日毎日、変化する様子のない植木鉢を観察した。水のやりすぎは良くないと知ってからは、コダックじょうろで大雨を降らしたりはしなくなった。



      ◇



     何時だったか、トレーナーズスクールの先生が、黒板を指しながら教えてくれた事を思い出した。

     ――みんな、いいかしら? ポケモンは皆、タマゴから生まれるのよ。
     ――鳥型や魚型、ドラゴンの姿をしたポケモンはもちろん、獣の形のポケモンも。

     ――植物の姿をしたポケモンさえも。

    「ポケモンの誕生の瞬間は神秘に包まれているの。タマゴを持っているポケモンを見た人はいても、ポケモンがタマゴを生むところを見た人はいないわ。
     そして、ポケモンがタマゴ以外から生まれるところも、まだ誰も見たことがないのよ」


     あたしが育てているのは咲かない種だと人は言う。
     待つ甲斐無いと皆笑う。
     ――ブーケポケモンの腕から落ちた種子を拾って、いつかはスボミーになると信じているの? ポケモンはタマゴからしか生まれないのよ――

     

      ◇



     ――春よ来い、早く来い。
     地面に映る自分の影が最も短くなる時間帯にも関わらず、薄く煙をかぶせた様に白い空を見上げていると、無意識の内に口遊んでしまう。
     シンオウの冬は深い。
     


      ◇



     あたしにはわかっている。ロズレイドの花から落ちた小さな種子からスボミーは生まれないことを。……少なくとも、人の目の前で生まれる確率が限りなくゼロに近いことを。

     けれども草ポケモンの落とした種子は、死んでいる訳じゃない。いずれ芽を出すその時まで、じっと眠っているだけだ。それらは花になり、樹になり、生き物を取り巻く森になる。

     ずっと見てきたからこそわかる。

     鬱蒼と茂るハクタイの森を育ててきたのは草ポケモン達だ。
     種を植え、樹を育て、子供たちを守る揺り籠。
     ポケモンから森へ、森からポケモンへ。
     不思議な、不思議な、生命の輪が廻る――。
     


      ◇



     瞼を閉じて静かに想像する。
     秋に播かれた小さな種が、冬を耐え、やがて土を押し上げ双葉を開くその日を。
     


     春よ来い、早く来い。
     雪と氷に閉ざされた、長く暗い眠りの季節が今、明ける。




     若葉の萌ゆる春はもう、


     目の前だ。









    -----------------------------------

    再掲載。
    ジムリーダー、眠り、タマゴ という3つのお題を勝手に取り入れて書いたものです。
    うっかり改行のおかしいバージョンを保存してしまっていたので、時間がかかってしまい申し訳ありません。

    読んでくださり、ありがとうございました!!



    【書いていいのよ】
    【描いていいのよ】
    【批評してもいいのよ】


      [No.1172] 千年星の七日 投稿者:紀成   投稿日:2011/05/10(Tue) 22:05:53     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    あるところに 千年彗星という 千年に一度だけ現れる巨大な流星がありました
    その力を受け 千年に一度目覚める 不思議なポケモンがおりました
    そのポケモンは 星の力を授かり 人々の願いを叶える力を持つといいます

    さて 千年に一度といいますが 正確には 千年に一度 『七日間だけ』 目を覚ますのです
    何度かの目覚めの期間に 彼は思いました
    自分が寝ている間にも 宇宙は在り続けている この千年の間に どれだけ変わったのだろう

    ポケモンは彗星に乗って様々な星を回る旅に出ました 七日だけですから 全ての星を回ることは出来ません
    でも なるべく多くの星を回ろうと思っていました 自分が眠っている間にどんなことがあったのか
    教えてもらおうと思ったのです

    まず最初に来たのは 真っ赤に燃え滾る星でした 地表は熱い炎で覆われ 陽炎で遠くは見えません
    地に降り立てばあっという間に熔けてしまうでしょう
    ポケモンはなるべく地から離れて移動しました すると 大きな岩の上に 一人の少女が座っているのが見えました 右目に仮面をつけています
    少女は何もせず 黙ってその燃え滾る星を見つめていました
    「こんにちは」とポケモンは言いました
    「こんにちは」と少女も言いました
    「ここは何の星なの?」「星?」「だって銀河に浮かんでいるじゃないか」
    少女はクックッと可笑しそうに笑いました
    「そうだね 星かもしれないね ここは太陽に近い とても熱い場所なんだ 分かる?
    太陽に愛されない者は冷たく凍りつき 反対に狂うほど愛されている者はこうなるんだ」
    フレアが少女に襲いかかりました ですが 少女には傷一つつきません
    「どうして君は火傷しないの」
    「炎に対するくらい 冷たい何かに守られているからだよ この炎は私に触れることすら出来ない」

    次にポケモンがやって来たのは クリーム色の星でした そこには一人の女性がいました
    「あら 久々のお客様」とその女性は言いました
    「話し相手がいなくて 寂しかったの 少しだけ相手になってくれる?」
    「いいよ」とポケモンは応じました
    「ここにはかつて 私を入れて三人が住んでいた でもある事から 別の場所に移っていったの」
    「君は追いかけなかったの?」
    「彼らが望む場所は 私の望む場所じゃなかった 身体を壊したりして迷惑をかけたくなかった
    ただそれだけよ」
    女性は儚く笑いました それは美しくも在り そうしか出来なかった自分への嘲笑のようでもありました
    「貴方は何処へ向かうの ここもすぐに朽ちてしまうわよ」
    「こんなに綺麗な星だけど」
    「幼い時からの癖なの なんとなく ね」

    次にポケモンがやって来たのは 美しい緑色の星でした そこには可愛らしい少女がいました
    「僕は千年眠っていたんだ その間にあったことを話してよ」
    「千年…ですか」と少女はオドオドしながら言いました「私がここに来たのは三百年前なんです」
    「その前は?」
    「遥か銀河の彼方にある 大きな星に住んでいました でもそれも二百年前に 滅んでしまいました」
    「どうして?」
    「皆が皆 同じ考え方だったからです 生物の誕生にもあるように 単純な構造は いつか破滅を招きます」
    「そうなの」
    少女は抱いていた草蛇のぬいぐるみを抱きしめました
    「ここに一人でいて 寂しくない?」
    「いいえ… と言えば 嘘になります 食べ物も水も空気もあります 住むには申し分無い環境です
    でも 友達がいません」
    「じゃあ 僕が友達になってあげるよ 千年待ってくれる?」
    「はい ずっとお待ちしています」
    ポケモンと少女は握手を交わしました

    四番目の星は 少し変わっていました 紫色の星でした
    「おいしそうだね君 残念だよ 満腹じゃなかったら食べてあげたんだけど」
    赤い目の女性が 大量の骨の上に座っていました
    「僕は鋼だから美味しくないよ」
    「そう でも多少の足しにはなりそうだね」
    女性は側にあった白い骨を齧りました
    「僕はね 他人が嫌いなんだ 愚かで脆弱な奴らなんて この骨と同じくらいどうでもいい物
    この骨を砕こうが 折ろうが 踏み潰そうが 僕の心は揺るぎもしないよ」
    「どうして嫌いなの?」
    「好き嫌いに理由も無いさ 僕が愛してるのは たった一つだけ」
    女性はポケモンの小さな手を取って自分の胸に当てました
    「聞こえる?この中に もう一つ生き物がいるんだ 孕んだわけじゃない ただ 彼は追われていた 僕は彼を守ると決めた 僕と彼は歪んだ愛で結ばれてる この身体を引き裂けば 彼は怒り狂って裂いた相手を殺すだろう
    それでいいんだよ」
    ポケモンは寒気がしましたが 不思議と嫌悪は感じませんでした

    五番目に来た時 ポケモンは疲れていました
    「長旅ご苦労様 何も無いが 休んで行ってくれ」
    一人の男が岩で出来た椅子に座っていました ポケモンはその側にあった小さな椅子に座りました
    「君はここに一人で暮らしてるの?」
    「いや あと二人いる だが今は留守だ」
    「どんな人?」
    「ひと言では言い表せないな …性格は歪み無いな 多分」
    男は疲れているようでした ポケモンよりも ずっと
    「何かあったの」
    「悪い夢を見たんだ あまり思い出したくないし 言いたくない」
    それを聞いて ポケモンは何も言いませんでした
    「君は何処から来たんだ」
    「何処からって訳じゃないんだ ずっと銀河を旅してきた」
    「いつからかな」
    「千年」
    男は驚いた顔をしましたが 冗談には聞こえなかったようです
    「長いな」
    「ねえ この千年の間に 何かあった?」
    「私はあまり時間については詳しくない …別の人に聞きなさい」

    六番目に来た時 ポケモンは既にあと二日で眠りにつく頃でした
    その星は何処か奇妙でした 白と黒が混ざり合った マーブル模様のようです
    「おや 久々のお客様だ」
    男がステッキを持って立っていました 時折顔のビジョンがぼやけて 幾つなのか分かりません
    「ねえ 君はいつからここにいるの」
    「さて いつからでしょう あまり時間にはこだわらないので」
    「どうして?」
    男はシルクハットを被りなおしました
    「世界の何処にいても 時間は平等に流れます 時差があっても かならずその日はやって来る
    千年 一万年 一億年経っても それはきっと変わりないでしょう
    勿論 星に住む者達がいなくなったとしても」
    ポケモンは銀河を見つめました 色々な星が輝いています
    彼らも 悠久の時を歩んで来たのです
    「貴方は これからどうするのですか」
    「もう一つ行って見るよ」
    「そうですか お気をつけて」

    最後の星に着いた時 ポケモンはあと一時間で眠りにつかなければなりませんでした
    綺麗な黒い星には 銀色の髪をした美しい女性が星達を眺めていました
    「はじめまして ここに住んでるの?」
    「はじめまして? ううん 君と私は初対面じゃないよ」
    そう言ってポケモンの顔を見た女性は 右目に仮面を付けていました
    「あ」
    「一番目の星で会ったね 千年彗星の王子様」
    彼女は美しく成長していました 最初に会った時の面影は僅かです
    「どうして君が」
    「私にも分からない ただ これが未来の私なんだろうね 長い長い宇宙を旅するうちに 時間の感覚がおかしくなってしまったみたいだ」
    ふと彼女がポケモンを見ると ポケモンは欠伸をしていました
    「もう眠るのかい」
    「うん ごめんね あんまり話せなくて」
    ポケモンの身体が光に包まれます
    「じゃあ 私の願い 聞いてくれるかな」

    彼女はポケモンの短冊にそっと キスをしました

    「君が千年経っても 一人ぼっちじゃないように」

    眠り繭の状態になったポケモンは 彗星と共に 暗い宇宙に消えていきました
    「おやすみ 良い夢を」

    何処かで 彼は旅を続けています
    また千年後 誰かにめぐり合えるように

    ――――――――――――
    [描いてもいいのよ]


      [No.1171] 今日の夕飯はマヨネーズ     投稿者:ふにょん   投稿日:2011/05/10(Tue) 21:40:50     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     家。
     午後七時。
     
     そろそろ夕飯の時間だ。
     今日の夕飯はなんだろう?

     あー……お腹減ったなぁ……
     そろそろご主人様に催促しに行くとしようかな。

     とたたたた
     階段を下りて台所へ。
     ご主人様はいるでしょうか?


     あ、いたいた。ご主人様ー ごはんまだですかー?


    「お、ガーディ。どうした? もう腹減ったのか?」

     こくこくこく。
     お腹すきました。ご飯ください。

    「よし、わかった。今作ってやるから、待ってろな。」
     
     こくこくこく。
     わかりました。待ってます。 
     できれば早く作ってください。

     いつも、ご主人様は、『レイゾウコ』とか言う白い箱から材料を取り出してご飯を作る。
     あの中はどうなってるんだろう?
     中を見てみたいけど、鍵が掛かってるんだ。
     扉を閉めると自動で鍵がかかる仕組みらしい。
     人間の科学力ってすごいなー。

    「ガーディ。ちょっとこっちに来て。」

     はい? 
     なんでしょうか? ご主人様。

    「今日の夕飯は、コレです。」

     たん。

     軽い音を立てて机に置かれた物。
     
     チューブのような物に入れられた白いようで黄色いような……クリーム色をした体。
     プラスチックで作られた赤い帽子のような……頭。
    裏面には、ジュペッタ印と書いてある。 
     怪しすぎる……

    「これがなんだかわかるかい?」

     うーん……わかりません。
     なんですか? それは。

    「これはな、油と卵と酢から、できてる。わかるか?」

     油って、あのべたべたした奴ですよね。
     卵は……割ると中から黄色と透明なプルプルした物が出てくる奴だよね。
     酢は、酸っぱい味のするあれかな?
     
     で、結局、それはなんなんですか?

    「どうだ? わかったか?」

     ふるふるふる。
     わかりません。油と卵と酢を混ぜると何ができるかなんて想像もできません。

    「よし、じゃあ教えてやろう。これはだな……」




    「マヨネーズ。」
     
     へぇ〜。
     初めて知りました。
     マヨネーズって言うんですね。これ。

     で、このほかに何か食べるものはあるのですか?


    「残念ながら、今日の晩御飯はこれだけになります。」

     え? 

    「レイゾウコの中にはこれしかありませんでした。」

     え? え?

    「炊飯器の中は空っぽ、冷凍食品もない、レトルト食品もありません。」

     え? え? え?

    「サイフの中は空っぽなので次の収入まで買い物にも行けません。」

     え? え? え? え?

    「なので、しばらくはこれだけで我慢してください。」

     え〜!?

     ま、まぁ……ご主人様がそう言うなら仕方がありません。
     で、どうやって食べるのですか?

    「こうやって、大きく口あけて……ちゅるちゅるちゅるちゅる」

     ご主人様が口の中に……うぅ
     なんかにゅるにゅるしてて気持ち悪いです……
     食べるって言うか、のんでます。
     
    「ぷはー。やっぱりジュペッタ印のマヨネーズはいい。巷でゴーストな味がするという噂がたっただけはあるな。 」

     ゴーストな味!?
     どんな味ですか!?
     余計怖いですよ…… 

    「ほら、お前も飲めよー結構旨いぞー」

     ふるふるふる。
     やっぱり、遠慮しておきます。
     僕にはそんな勇気はありません。
     
    「ほら、口あけろって……」

     ふるふるふるっ!
     い、いや、いいですっ!
     お断りしますぅー!

    「ほらー! グイッとな! ちゅるるるるー」

     うーーーーーーあーーーーーー
     にゅるるるるるるるるるるるるるーーーーーー

    「どうだ? 結構旨いだろー?」

     口の中がべたべたするよぅ……
     なんか……どよーっとした味がします……
     これがゴーストな味、ってやつですか……?
     それに……なんか気持ち悪くなってきました……


    「お? 旨すぎて声も出ないか? ならもっと飲めよ〜! まだあと三本あるぜ?」

     ふるふるふるふるっ!
     勘弁して下さい! 普通のご飯ください!
     こんなの毎日飲んでたら、体壊れちゃいますよー!

    「あと三日我慢すれば、給料日だから! それまで我慢してくれ! な!」

     後三日も!?
     ごめんなさい。 僕三日耐えれる自信ありません。
      
    「あ、そうそう。お金ないからさ、節水ね。お水は飲まないようにしてよ?」

     びくっ!
     お水でお口の中に残ってる味を消そうと思ったのに……
     うー
     べたべたするよぅ……

    「さて、仕事仕事。マヨネーズならまだいっぱいあるから、好きに飲んでいいよ。」

     飲みませんから!
     ご主人様……もっとまともな物ください…… 
     
    「引き出しの中にワサビとカラシと一味唐辛子ならあるぞー」      

     全部そのまま食べるものじゃないですよ……ね。 
     ああ、お腹すいたなぁ……

     



     おしまい。





     ―――――――――――――――――――――――――――――――― 

     続きを先に考えろやシリーズその2。
     
     冷蔵庫の中にマヨネーズしかなかったんだ。
     想像してみてください。マヨネーズしかない冷蔵庫を。
     おとなしく買い物に行きましょう。

     チャットで誰かさんが、
    『マヨネーズは飲み物DA☆』的なことを言っていたのを思い出して、勢いで書いた。
     
     あ な た は 三 日 マ ヨ ネ − ズ で 生 活 で き ま す か ?

    【書いても描いてもいいのよ】
    【批評していいですとも】
    【マヨネーズは飲み物】
    【あなたもマヨネーズを飲んでみてください】
    【そこのポケモンさんも遠慮なくお飲みください】
    【ジュペッタ印のマヨネーズ、一本500グラム399円(税込)近日発売予定(嘘】


      [No.1170] 【再掲】俺の彼女はコスプレイヤー 投稿者:ピッチ   投稿日:2011/05/10(Tue) 20:43:32     93clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     俺の彼女は昔から、ポケモンになりきるのが好きだった。いわゆるコスプレという奴だ。俺が覚えている限りだと、確かもう幼稚園に通っていた頃からだったように思う。
     一番最初の記憶は、敬礼するみたいに片手を少し上げて、ソーナンスの鳴き真似をしていたことだったと思う。なんとなくそれが面白くて、周りの園児達も巻き込んでしばらくソーナンスの真似が挨拶代わりになっていた。
     それにみんな飽き始めた辺りで、あいつは今度は手も足も使わずに、床をくねくね這っていた。聞いてみればアーボの真似だそうで、それはまた俺達の間だけで大ヒットしたが確か床が汚いだとかで幼稚園の先生に止められた。

     始まりはそんな、鳴き真似とか動作の真似とか、そんなことだった。
     それが少しだけ変わったのは、あいつがうちにあった紫色のカーテンをぐるりと身体に巻き付けていた時だ。一体何をしているのかと聞いたら、にっこり笑ってこう言った。

    「わたし、いまカゲボウズになってるの!」

     突然そんなことを言い出すものだから、悪ガキだった俺はそれにしてはツノが無いだのカゲボウズなら飛んでみろだの、あれこれと無理難題を押しつけた。そのたびあいつはパーティ用の三角帽子を被ってきたり、その場でぴょんぴょん跳ねてみせたりして必死の努力をしていた。今考えると、お互い子供だったんだなあということをひしひしと感じる。
     俺はそれがたまたまの思いつきで、その場限りのことだろうとばかり思っていたのだが、しかしあいつの努力はまったくそれに留まらなかった。なんというか、年々レベルが上がっていくのである。それこそ、ポケモンの成長のごとく。
     大きな葉っぱを頭と首に貼り付けて黄色い服を着てベイリーフになっていたかと思えば、次はどこで買ってきたのかディグダ型の帽子を被って、机の陰からそこだけを上に出してじっとしていたりした。
     幼稚園や小学校の低学年あたりまでなら、まだそれで済んでいた。おそらく小学校の中学年にさしかかる辺りで、あいつのコスプレ癖は一段階進化したと思う。


     その要因は――ひとつに、家庭科という授業である。


     最初はハンカチを縫ってみることから始まった授業は、ミシンを使ってエプロンを自作することで終わった。
     キットに布から糸から全部セットで入っていて、自分で布を切って縫い付ければ完成するようなものを使っていて、俺にとっては糸が通らないわミシンを壊すわで最悪の授業だったとしか言えなかったのだが、あいつは全くの正反対だったらしい。
     その証拠に、布を切る時、糸を通す時のあいつの真剣な表情は、完成品を目の前に持ち上げた時のあいつの満面の笑みは、十年近く経った今ですら、俺の頭の中に忘れようがないくらいに焼き付いている。
     ついでに、あいつがその完成品のエプロンのポケットに小さなぬいぐるみを入れて、ガルーラの真似をしながら学校内を歩き回り、ぬいぐるみを没収されて大泣きしていたことも。

     そしてその年代は、同時にポケモンにより接し始める期間でもあった。
     十歳頃といえば、新米トレーナーとして初めてのポケモンを持ち、希望すれば生まれ育った街を離れて修行の旅に出ることのできる年代である。
     俺とあいつはどちらも旅立ったりはしなかったけれど、ポケモンを持たないなんて選択はしなかった。
     それこそ幼稚園時代あたりの、初めてのポケモンを持ったらお互いに見せ合いしよう、という小さな約束を守り通した。

     そうして見せ合ったポケモンを見て、俺達はお互いに大笑いした。
     あいつは、俺がまったく予想通りのポケモンを連れてきたことに対して。俺が選んだのは、親戚がいつも連れていたサーナイトの子供の、ラルトスだった。

    「だって、おじさんが来るたびにサーナイトの話をしてたじゃない。絶対ラルトスが最初に違いないって思ってたの!」

     そう言うあいつの連れてきたポケモンは、俺の予想をまったく外れていた。
     真新しいモンスターボールが開いて出てきたポケモンは、玉が連なったような身体に大きな白いツノ、そして赤い鼻。あいつみたいな女の子はあんまり好きじゃなさそうな、小さなビードルだった。
     あっけにとられている俺を見て、あいつがまた笑った。しかし俺はしばらく考えて、あいつがビードルを選んだ理由をばっちり思い付いたのである。

    「おまえ、家庭科好きだもんなー! だからかぁ!」
    「……えっ、どういうこと?」
    「えっ違うのかよ? ほら、針と糸じゃんか! 毒だけど!」
    「あー、そっかー! 違うんだけど、なんかそれいいかもね!」

     じゃあ今度この子に手伝ってもらおうかな、と言って笑う顔は、あのエプロンが完成した時の笑顔にそっくりだった。



     そしてお互い中学校に上がる頃になると、部活動やら何やらが重なって、だんだんあいつと会う時間も減っていった。
     俺はポケモンバトル部に入ったはいいものの、先輩の厳しさや勝てない悔しさでだんだん部活に出ることも少なくなり、それでも諦められずに野生のポケモンを相手に特訓していることが多くなった。
     あいつは相変わらずのコスプレ意欲を手芸部で消化し続け、裁縫技術はさらなるレベルアップを続けていた。たまに会えば、進化したキルリアをじっと眺めて、手元のスケッチブックみたいなものに延々と書き込んでいたりもした。
     何をしているのかと聞けば、今度の衣装のネタが欲しいなどと言われる。確かにキルリアは人に近い形だからやりやすそうだと思ったし、俺のキルリアを元にしてこいつがどんな衣装を作るのか気になったので、完成したら見せてくれよ、なんて軽い気持ちで頼んでおいた。
     そうしたら僅か一週間程度の後で、衣装に留まらず緑色に赤いツノの生えたカツラまでご丁寧に用意して見せてくれた。まさかここまでやってくるとは全くの予想外で、ぽかんとしている俺を見て、あいつはちょっと自慢げに笑った。

    「何? あんまりにも完璧すぎて見とれちゃった?」
    「いや、えーと、そうじゃないんだけど……」
    「その答えもひどいんじゃない?」

     ……実を言うと、俺がろくに言葉も上げられなかったのはその衣装や小物類の凝りようのせいだけではなかった。なんというか、気になるのである。発育が。
     スカートで隠れているとはいえ、下半身は緑のタイツのようなものである。それにまあ、上半身も決して着込んでいるのではないわけで。
     そうなればこの年代の、いいや年代に限らず男の見るところなんて限定されるものである。もちろんその後、早々にバレてスピアーの針に追いかけ回される羽目になったわけだが。









     そんなことがあったにも関わらず、彼女のコスプレ癖とそれを見せられる俺の関係は何年も経った今でも続いている。しかもなんとなく、エスカレートした上で。
     そのエスカレートぶりは、説明するまでもなく今日の彼女の服装で思い知れると思う。


    「…………なぁ」
    「どうしたの?」
    「いや、どうしたの、じゃなくてさ。……流石にその恰好だと、目の遣り場に困る」

     今日の彼女が着込むのは、深紅の生地に金色で胸の円形を縁取ったドレス。
     どう見ても作品を売って金が取れるレベルにまで進化した彼女の裁縫技術によって生み出された衣装の綺麗さは、もうそこらの衣装ショップのハンガーにかけてある服が吹き飛びそうなくらいにまで達している。
     染めた地毛にエクステを足したらしい背中を過ぎそうな長さの金髪に、唇を強調した化粧。それに彼女自身の、とても発育のいい身体が加わるわけだ。ついでにそんなに胸を寄せたポーズ取るな、ただでさえ大きいんだから。
     彼女が少しむくれたのは、そちらを見ていない俺には声の調子でしか分からない。

    「せっかく作ったんだから見てよね」
    「せめて着て見せられるもの作ってくれないか」
    「えっ、何それ酷い! 私、ちゃんと人に見せられるもの作ってるよ!?」
    「足りないなら『俺以外にも』ってのを付け足してくれ」
    「ついてる! 最初からついてるから!」
    「冗談だろ……」

     彼女から逸らしていた目が時計を捉える。一時五十分。
     座っていたソファから立ち上がって、テーブルに置いてあったモンスターボールを手に取り、腰のベルトにつけておく。

    「……それじゃ、俺、もう時間だから」
    「え、もう? 早くない?」
    「早くないから。……それじゃ、また」

     足早にドアの方まで進む自分を、俺自身ですら彼女から逃げているみたいだと思った。ドアを開けて、その奥に滑り込んで、またドアを閉める。彼女の方を振り向く勇気は、最後までなかった。





    「……って訳なんだけどさ、どうすりゃいいんだ俺」
    「どうするもこうするもねーよ、このリア充め。さっさと爆発しろ」
    「いや、俺は本気で悩んでんだけどさ」
    「あんなに可愛くてスタイルまで良い彼女が居て何を悩むことがある。ちょっと趣味が変なことくらい懐深く受け入れてやれよ」
    「変だとは思ってないけどな、行き過ぎだと思ってるだけで」
    「だいたい同じじゃねーか」
    「違うっつの」

     そんな俺のいつもの相談相手は、サークルでもダブルバトルのコンビを組んでいる親友だ。何かあるたびに何だかんだと文句を言いながらも付き合ってくれるこいつこそ懐が深いと思うが、何故かこいつには浮いた話をさっぱり聞いたことがない。
     本人にも自覚があるらしく、相談すると返ってくる第一声はだいたい「爆発しろリア充め」かそれに近い言葉である。
     そんないつものやりとりをひとしきり言い合った後、神妙な顔になって相手が言う。

    「それ、なんか最近会うたびに言ってるけどさ。結構付き合い長いんだよな? その彼女さんとは」
    「そうだな。幼なじみだし、幼稚園くらいからあの趣味あったぞ」
    「幼稚園とかそんな早くからかよ。付き合い長ぇなオ・マ・セ・さ・ん」
    「やめろキモい」

     大の男が甘ったるい声を作って上げるくらい気持ちの悪いことは他になかなかないと思う。
     視線を逸らしてみれば、こいつの手持ちのエルフーンですらちょっと引いている。おいやめろ手持ちに見放されるぞ。

    「なあ、そいつまで引いてんぞ」
    「うわああ悪かったフータ! もうやらないから、な!?」

     慌ててエルフーンの方を向いて謝るこいつの顔はかなり必死である。元から何か見放される要因でもあったのかお前は。そんなエルフーンとトレーナーの間に俺のドレディアが割り込んで、エルフーンを何やら宥めている。
     こうやってこいつのポケモンにはそこそこ浮いた話があるんだが、いかんぜんトレーナーのこいつ自身はそういうものにさっぱり無縁である。謎だ。
     ドレディアにはこちらから何も言うことはなく、俺が声をかけたのはトレーナーの方だった。

    「……で、俺は確かに幼稚園の時からあいつと友達だったし、その頃からあいつのコスプレ癖はあったけどさ。後そいつはリリに任せとけ」
    「ああ、悪い悪い。ホントリリちゃん頼りになるよなーこういう時。……でさ、お前がポケモン始めたのっていつ頃?」
    「なんか関係あんのかそれ? ……普通に十歳だけど」

     質問の意図がいまいち読めない俺を置いて、こいつは一人でうんうん唸って考え込んでいる。しばらくして顔を上げると、さらに質問を重ねてきた。

    「いや、トレーナーとしてじゃなくてさ。普通にポケモンが好きだったのとか」
    「訊き方悪いだろそれ。……あー、それならその、幼稚園くらいの時からかな。ナナの親のサーナイトに会ったのとかその頃だし」
    「それだ!」

     急に声を張り上げられて、思わず椅子ごと後ろに退くところだった。さっきのエルフーンどころか俺のドレディアまで、一体こいつは何なんだと言いたげな視線でこちらを見上げている。
     こういうこと続けてるからこいつに浮いた話がないのか。きっとそうに違いない。
     そんな俺の内心をまったく無視して、こいつは一人で話を続ける。


    「お前の彼女さんがポケモンの恰好すんのもさ、お前にポケモンじゃなくて自分の方見て欲しいってことなんじゃないのか!? お前のポケモンにさ、嫉妬してるんだよ!」


     一瞬言われた意味がさっぱり分からなかった。俺は確かにこうやって未だにサークルでバトルを続けてて、ポケモンとよく関わってはいるんだけれど、それで彼女のことをおろそかにしたような自覚は、さっぱりなかった。
     それに彼女自身は、服装とか以外についてはそれほどポケモンに、特にバトルに興味があるようには見えなかった。強いて言うなら、スピアーから始まりアゲハントやメラルバを手持ちとして迎えた時に、虫ばかりの意外な趣味に驚いたくらいだ。

    「……それはないだろ」
    「いや、あるって。その証拠にお前の手持ち見てみろ」
    「手持ち? …………ああ」
    「サーナイトにドレディアにミミロップ、しかも全員♀じゃねーか。彼女さんが妙な勘違いしても全然おかしくねーって。というかもうその手持ちだけで変態とか罵られたりしても変じゃない。……もしかしてお前それを期待して」
    「アホかッ!」
    「冗談くらい分かれよ……でも本当に、色々思われても仕方無いと思うぞ? お前、サークルの練習とか大会とか全然休まないしな。彼女さんと過ごす時間もろくにないだろ、そんなんじゃ」

     発言がいちいち胸に刺さる。
     今日だって結局は彼女を置いてこっちに来たわけだし、そう言われれば確かに彼女よりもポケモンを構っている感じは、する。
     俺は確かにポケモンも大事にしてるけど、決してあいつをその次にしたいわけじゃないのに。
     そんな図星の表情が出ていたのか、友人はなんとなく勝ち誇った顔でこっちを見てきた。ああ無性にイライラする。

    「どうだ? 当たってたろ」
    「そうだな。ついでに今ここでお前を殴り飛ばしておきたい」
    「それは勘弁しろ。……まあ、昔っからポケモンの真似してきたって彼女なんだろ? お前がそうやってポケモンばっか見てるから、色々意識するトコもあるんじゃねーのかな」
    「……そう、かな。……ありがとな色々。参考になった」
    「礼言うくらいなら、俺に彼女さんの友達の一人でも紹介してくれや」

     そんな普段と変わらない軽口を返してくれた友人に、今は心の底から、感謝する。
     未だにエルフーンとじゃれていたドレディアを呼び戻して部屋から出ながら、俺は考えていた。彼女にこの気持ちを伝えるには、何と言えばいいかを。










    「あ、おかえり。今日はちょっと早いんだね」

     帰り着いて見た彼女は、もうあの紅いドレスは着ていなかった。染めた金髪は肩を過ぎる辺りまで短くなっていたし、化粧も薄めのものに戻っていた。
     肩口まで出したあの服装は少し寒そうだったし、普段着の彼女を見ているとなんとなく安心したのだけれど、俺の心中にはもう一つ心配があったのでそれもあまり救いにはならなかった。
     きっと今の俺は、傍目に見ても明らかにそわそわしているんだろうと思う。自分ですら挙動不審なのが分かるような状態で、何を隠せるわけもない。彼女もそれに気付いたらしくて、言った後にもう一度こっちを見て、ちょっと変な顔をした。

    「どうしたの? なんか変だよ、いつもと違う感じ」
    「い、いや。……えーと」
    「絶対いいや、じゃないでしょ! なんか隠してる!」

     この通りである。言い逃れできるような状況でもない。突然切り出すのには合わない話だと自分でも思いながら、それでもそれ以外に話す内容なんてなかった。


    「……お、俺さ、お前のことちゃんと好きだから」


     彼女が目を丸くしてこちらを見た。当然だ。何の前置きもなくされる話じゃない。何事かと言いたげに彼女が口を開く前に、こちらからさらに続ける。
     まるで告白してるみたいだ。いや、確かに告白なんだけど。前は彼女からだった、なんて思い出して、彼女もきっとこんな気恥ずかしさとか息苦しさとか不安を感じながら言ってくれたんだと思うと、緊張でがちがちに固まっている身体が少しだけほぐれた、気がした。
     今度は俺が、返す番なんだ。
     マジックコートでもカウンターでもミラーコートでも足りない。三倍にも四倍にもして伝えよう。


    「いっつもポケモンばっかり見てるように見えるかもしれないけどさ、お前のことも、ちゃんと見てるから。だから、……無理な恰好とか、しなくていいんだぞ」


     彼女にとっては本当に、あのドレスも「無理な恰好」ではないのかもしれないけれど。そこまで俺は推し量ってやれないダメな彼氏だけれど。
     それでも受け止めてやることくらいはできると信じたい。あの、懐の深くてシングルで行動の突然な友人に比べればまだまだかもしれないけれど。
     こうやって一歩を踏み出して、その身体を抱き締めてやることくらいはできるんだ。思った以上に小さくて細い身体は、俺の腕の中にすっかり収まってしまった。固まったままの彼女は、とても暖かい。


    「俺はさ、……ポケモンになってるお前ももちろん好きだけど、素のままのお前も、大好きだ」


     頭の足りない俺が、あの友達と別れた後の数時間を使って必死に考えた台詞だった。
     本当はもっといろいろ、「ポケモンよりバトルよりずっとずっとお前が大事だ」とか、「俺の手持ちよりもずっとお前の方が可愛いんだから」とかがつくはずだったんだけれど、実際に彼女を前にしてみればそんなお飾りは全部吹っ飛んだ。
     そういうものをなくしたこれが、一番シンプルな俺の気持ちだった。
     しばらく固まっていた彼女が、ぶるぶると俺の腕の中で震え出す。ゆっくり上がったその顔を見れば、彼女の頬に――涙が、伝っていた。

    「本当? 本当に本当?」
    「こんなところで嘘つくはずないだろ、……本当に決まってる」

     返した言葉を聞けば、彼女はついに、泣き崩れた。
     俺の胸にすがるみたいにして、それでも泣きながら、細く声を上げていた。


    「ずっと、……ずっと待ってたの、……ずっとそう、言われたかったの…………!」


     気付いてあげられないまま、俺は一体彼女を何年待たせていたんだろう?
     それを詫びる手段は、今はただ、その頭や背をゆっくりと撫でてやるくらいだった。


















     そうしてようやく収まったかと思えた彼女のコスプレ癖は、なんと未だに続いている。もちろん、それを見せられる俺も一緒だ。
     馴染みのあった俺の手持ちまで巻き込んで、彼女は今日も元気にやりたいことをやっている。

    「はいナナちゃん、一緒にポーズ取ってー!」
    「ナナもなかなか様になってきたなぁ。バトルが無い時はコンテストでも出てみるか?」

     見る先では、俺のサーナイトとサーナイトに扮した彼女が共にポーズを取っている。この状態でコンテストやミュージカルに出ようものならさぞかし圧巻だろうと口に出した呟きは、しかしあっさり彼女に遮られる。

    「私のポケモンと出る予定のなら、コンテスト用の衣装はもう作ってあるの。アピスとお揃いのは難しかったけど、アゲトとお揃いのはすっごく綺麗にできたんだから!」
    「そりゃあ、スピアーよりはアゲハントの方がコンテスト映えはするだろうな。……そういやお前、メラルバはどうしたんだ」
    「ちょっと悩んでる。スルガ、全然さなぎになってくれないんだもの」
    「あのな……メラルバはさなぎポケモンにならずに直接進化するんだよ。コンパンとモルフォンみたいなモンだ。しかも相当鍛えないと進化は厳しいぞ?」
    「えっ、嘘!? 道理で進化しないわけだわ、メラルバのままどんどん大きくなるんだもの、あの子」
    「メラルバの平均体長は1.1メートルだ。そこらのさなぎよりよっぽど大きくなるさ」

     変わらぬ日常を生きる彼女は、今日も眩しくて、とても愛しい。




    ――――
    原題「俺の彼女がルージュラのコスプレし始めた」

    4/3〜4/4にかけてのチャットでのこと。
    小樽ミオさんの「三割五分が男性で十六割五分が女性」発言から私がざかざかと荒くルージュラコスのお姉さんを書いたことに始まり、巳佑さんが台詞を考案し、イケズキさんからほぼ全員が「エクステとハイヒールを平和に着けられる方にお願いします!」とノベライズ希望が回り、あれよあれよと言う間に完成してしまいました。
    御三方、ありがとうございました。まあこんなものでよろしければお納め下さい。6時頃からのやっつけ仕事。(帰れ

    しかし慣れないものを書くものではないですね。ラブシーンなんてとてもとてもぐふぉっ(吐血
    何かひっかかってそうで気が気ではありません(放送コード的な意味で)

    あと、毒男さんの容態が心配です。


    Q:絵は?
    A:力尽きました。

    お題【自由題】
    【とりあえず好きにして下さい】【輸血希望(A)】



    (再掲時追記)
    再掲希望ありがとうございます。たぶん来るならこれだろうと予測はしておりましたが(
    最後付近の告白シーンを書き直してもいいなと思ったのですが、そのまま再掲にしました。
    今でも3時間でこれが書けてしまった事が信じられません。げに恐ろしきはチャットの魔力。

    【リクエストありがとうございました】
    【虫マニアは三割五分の分】


      [No.1169] 私もゴーヤロックが好きだ 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/05/10(Tue) 19:49:10     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    あれっ自分いつの間に少佐になってたんだろう(


    いろんな作品のネタが織り込まれていて最初から最後まで爆笑でしたwww
    特に「ピンのダグトリオの本名が(長いので割愛)」のくだりがwww

    これはよい。他の人でのネタも見てみたくなりましたwww



    【自分も586さん愛してるのよ】


      [No.1168] とりあえず叫ぶぜ! 投稿者:レイニー   投稿日:2011/05/10(Tue) 11:32:04     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    というわけで、再掲ラッシュの中、私も叫ばせていただきます。


    ・ピッチさん『俺の彼女はコスプレイヤー』
    チャットの産物らしいですが、カオスチャットを全く感じさせない高クオリティ。そこに痺れる、憧れる!
    是非是非あの温かな恋愛物をもう一度……!


    ・てこさん『たべたい』
    ジュペッタ可愛いよジュペッタ。俺の嫁にしたい。


    ・151ちゃんねる、最強幼馴染の安価スレ
    タイトル&作者名失念で申し訳ない……orz
    しかしながら、あのノリとオチには大爆笑でしたwwwww


    ・むぎごはんさん『トリト丼つくってみた』
    トリト丼発起人として、ぜひ再掲お願いします(土下座)


    いろいろ愛が多すぎて、叫び足りてませんが、とりあえず。
    思いつき次第また叫ぶよ!きっと!


      [No.1166] 膨らむ閲覧 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/05/09(Mon) 23:28:43     106clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:<●><●>】 【<●><●>】 【<●><●>】 【<●><●>】 【<●><●>

     見られている。



     見られている。

     誰にか知らないけど、見られている。



    『ずっとパソコンしてるな……何か変化ないかな』



     こうやってキーボードを叩いている間も。

     そっと辺りを見回してみたけれど、誰もいない。

     コーヒーを淹れるために立ち上がった時もずっと、視線を感じる。


    『立った!』
    『コーヒー淹れるだけかよ、つまんねぇwww』


     狭い研究室の中。

     先輩はパソコンに向かっている。

     同級生はみんな帰った。

     それなのに、見られている。


    『つまらねー何かしろよー』
    『まあまあ、じっくり待とうではないか、同志よ』
    『ってかこいつサボってるwww 研究しろwwwww』


     わずかな指の動きまで。

     そっとずらした視線まで。

     全て、見られている。










    『さてと、次はどう動くかな?www』
    『あっ こっち見た   ばれたかな?』
    『ばれてないばれてない。大丈夫』
    『何かツイートしてるな』
    『誰かツイッターのぞける同志は』
    『確認した。『誰かに見られてる気がする』だそうだ』
    『気づいてはいるのかwwwww』
    『そりゃこれだけ見てれば気付くだろwwwww』
    『頭かきむしってるwwww』
    『やあ』
    『よく来た、同志よ』
    『イライラしてきたみたいwwwww』
    『マジwwwwwウケるwwwwwうぇwwwwwww』
    『あぁ目が血走ってきてるwwwwwwそろそろ限界の予感wwwwww』










     やめてくれ。もう見ないでくれ。

     どうして見てるんだよ、そこの閲覧者。


     どこにいるんだ。

     どこにいるんだ。

     どこだ。

     どこだ。





     どこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだど

    こだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだ

    どこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこ

    だどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだど

    こだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだどこだ












    『あっ、飛び降りた』
    『飛び降りたねー』
    『飛んだ飛んだ』
    『2階だからねー。死んではいないみたいだねー』
    『やりすぎたかなぁ』
    『戻ってくるまで別の獲物探さないといけないねぇ』
    『そうだねー』
    『面倒だなぁ』
    『あー、お腹いっぱい』



    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』
    『ごちそうさま』





     とある大学の窓際に、黒いてるてる坊主たちが風にあおられてはためいていた。



    ++++++++++

    何かチャットで書けって言われたから書いた。
    コピペは自重しなかった。

    【だーかーらー連載は無理ッス】


      [No.1165] 諸君、私はゴーヤロックが好きだ 投稿者:レイニー   投稿日:2011/05/09(Mon) 23:19:06     242clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    (注:この文章には、586氏の代表作のネタバレを含みます)









    諸君 私はゴーヤロックが好きだ
    諸君 私はゴーヤロックが好きだ
    諸君 私はゴーヤロックが大好きだ

    UNKNOWNが好きだ
    ダグトリオがいっぱいが好きだ
    プレゼントが好きだ
    七八〇の墓標が好きだ
    オブジェクト指向的携帯獣論が好きだ
    blindnessが好きだ
    弾けたホウセンカが好きだ
    コットンガードが好きだ
    物知りミツハニーはJavaScriptの夢を見るか?が好きだ

    カントーで ジョウトで
    ホウエンで シンオウで
    イッシュで オーレで
    フィオレで アルミアで
    オブリビアで オレンジ諸島で

    このWWW上で行われる ありとあらゆるゴーヤロック作品が大好きだ


    真ん中のダグトリオの錆びついたマシンガンが 轟音と共に今を打ち抜くのが好きだ
    ピンのダグトリオの本名が 「ヨーデル・ブリュンスタッド・カーマン・バーンシュタイン・フラメントナーゲル・シュトロハイム・パブロ・レオポルド・ラングレー・フォン・ククルコルテアダムスチーヨ・ビビジランテ・ソンテネグロ・ホメストーニ・カルマンドーレ・ポポス」だった時など心がおどる

    「エアロブラスト」を使う野生のドーブルが 平然と主人公を撃破しようとするのが好きだ
    揃ってこちらに目を向けて 「E」が二匹で「D」「O」「N」「I」「C」「G」がそれぞれ一匹ずつ踊るのを
    その意味が判明した時など胸がすくような気持ちだった

    色の薄くなった紅葉の浴衣を着た恭子ちゃんが 紅茶飴をプレゼントするのが好きだ
    時渡り状態の彼方君が メリッサとオタチを抱え 何度も何度もトリップしている様など感動すら覚える

    アンノーンを鍵や釣り針と間違える患者達を休めと追い返す様などはもうたまらない
    憂鬱に手鏡を見つめる医者が Yのアンノーンとともに
    冷静な看護師に 隣町の病院に行けと言い放たれるのも最高だ


    フーベルト・ディンバー教授が 両手にスプーンを持って講義してきたのを
    ある一人の聞き手が 長い問答の末に指摘した時など絶頂すら覚える

    ジャージちゃんが輝く女性を紅白まんじゅうに例えるのが好きだ
    レールの上で大爆破されるはずだったラジオ塔が無意味に破壊され 紅白まんじゅうさんが弾けていく様は とてもとても哀しいものだ

    クヌギダマに押し潰されてチルチルちゃんの羽が硬くなるのが好きだ

    ミツハニーにJavaScriptの説明をされ 訳がわからず地べたを這い回るのは屈辱の極みだ


    諸君 私はゴーヤロックを 天国の様なゴーヤロックを望んでいる
    諸君 私に付き従う大隊読者諸君
    君達は一体 何を望んでいる?

    更なるゴーヤロックを望むか?
    情け容赦のない 神の様なゴーヤロックを望むか?
    鉄風雷火の限りを尽くし 三千世界の読者を唸らす 嵐の様な文章を望むか?


     (ガガガガ ガガガガッ と手を上げた読者達が口々に)

    「ゴーヤロック!!ゴーヤロック!!ゴーヤロック!!」


     (読者達の反応を見るように少し間を置いて)

    よろしい  ならばゴーヤロックだ

    我々は満身の力をこめて今まさに振り下ろさんとする鉛筆だ
    だがこの暗い闇の底で半世紀もの間 堪え続けてきた我々に ただのゴーヤロックでは もはや足りない!!

    大ゴーヤロックを!! 一心不乱の大ゴーヤロックを!!

    我らはわずかに一個大隊 千人に満たぬ敗文章書にすぎない

    だが諸君は 一騎当千の読強者だと私は信仰している
    ならば我らは 諸君と私で総兵力100万と1人の軍集団となる

    我々を忘却の彼方へと追いやり 眠りこけている連中を叩き起こそう
    髪の毛をつかんで引きずり降ろし 眼を開けさせ思い出させよう
    連中に活字の味を思い出させてやる
    連中に我々の執筆の音を思い出させてやる

    天と地のはざまには 奴らの創作では思いもよらない事があることを思い出させてやる

    一千人の物書のマサポケ住人団で
    世界を書き尽くしてやる


    「最後の大隊 大隊指揮官より全執筆艦隊へ」

    第二次ポケモンストーリーコンテスト作戦 状況を開始せよ

    征くぞ 諸君



    ----


    【どのようにしてもいいのよ】

    (※ゴーヤロック:ある日のチャットで発生した586氏の新たなニックネーム)


    突発的に思いついたものを形にしてみた。
    いろいろ文章がおかしいのはご愛敬。


    【586さん愛してます】


      [No.1164] 風のつよい日には 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/05/09(Mon) 22:02:45     94clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     風のつよい日には


     母さんのワガママにはまったく困らされる。
     父さんも父さんだ。自分の通勤が大変になるって分かってたはずなのに、どうしてこんな所に住むのを許しちゃうんだ。
     おかげで俺は毎朝、五時起きして学校に通わないといけない。
     今じゃもう寝不足には慣れたけど、舟を使えない日の苦労は到底「慣れ」なんてもので片づけられそうにない。

     引っ越しは今年でもう三度目になる。
     今度の家は、シンジ湖のほとりにある。
     それも、入口から対岸の方にあるから、学校のあるフタバタウンまでは湖を越えてい行かないとならない。普段なら、父さんが買ってきた舟に一緒に乗って行けるのだけど、風が強かったりして波の高い日にはぐるっと回っていかないとならなくなる。
     もちろん歩いて行ったのじゃ、とても間に合わないから、あのデカい炎ポケモンに乗って行くことになるのだけど、アイツに乗るのはホントこりごりだ。
     いくら炎ポケモンだからって、風のつよい日にああも全速力で走られては凍えてしまう。しかもガクンガクン揺れるせいで乗り物酔いが絶えない。時々、腹の底から盛り上がってくるモノにこらえきれず、オエッってことも……。当然そんな日には授業なんてサッパリ頭に入らない。
     朝起きて、ドアの向こうに舟があるかアイツがいるか。これは今や、俺にとって死活問題とすら言えるのだ。


     ――シンジ湖周辺、明日の天気は……北東の風14m……。
     うぅ……結構強い……。こりゃ明日はアイツに乗って行くことになりそうだ。

     毎夜毎夜、七時のゴールデンタイムにバラエティ番組でなく、陰気くさい公共放送の天気予報を聞くようになったのも、こんな所に来てからだ。
     予報を見たって天気が変わるわけでない事はもちろん分かってるけど、風邪を引いた子供が何度も熱を測りたくなるのと同じで、気にし出したら止まらない。
     明日の事を思うとさっそく気分が重いがいろいろ準備をしなければ。
     一通り授業道具をそろえると、まずは、ウインドブレーカーをとってきてハンガーにかけて置いた。こんなんじゃ全然足りないんだけど、あまり厚着をすると湖から先を汗だくになって学校に行くことになる。アイツに乗って行く日は個人的な寒暖の差が激しくなるのが悩ましい。
     次に、ボールからカゲボウズを出してカーテンの桟にちょこんとくっつけた。
     前はちゃんとてるてる坊主を作っていたんだけど、ゴミばっか増えるって、母さんが代わりに一匹くれた。別にわざわざ用意してくれなくて良かったんだけど、まぁ結構おもしろい奴だしよかったのかな。

     ――かげかげぼうず〜カゲボウズ〜あ〜したてんきにしておくれ〜。
     もちろん、実際には喋らないよ。恥ずかしいし。心の中で呟くだけ。
     どうせ効果なんてないんだけど、げんかつぎ、げんかつぎ。


     目が覚めた。ベッドから起きる。カーテンは開けない。まだ希望を持っていたいから。
     窓がガタガタいってる気がするけど、まだ分からない。もしかしたらまだ舟でいけるくらいの風かもしれない。
     リビングには誰もいなかった。父さんはもう出たみたい。母さんはまだ寝ているのだろう。

     顔を洗い、歯を磨き、軽く朝食をとって、もう六時。そろそろ出ないと。

     運命の時。ドアを開けた先に、舟が泊まっているか、アイツがいるか。

     緊張の瞬間…………。

     どうだ!!









     「あぁ……今日はウインディ……」

     10歳の秋、空はどんよりと曇っていた。


    ---------------------------------------------------------

    すみません、ダジャレです。風がつよいとWindy(ウインディ)で……

    この間、きとらさんに炎の石をいただき自分所のガーディが進化して、ウインディで一つ書きたくなった結果ですww

    この話の中でウインディは少々、嫌な日の象徴みたいになってしまってますが、私、イケズキはウインディが大好きです。えぇ、そりゃもう、心底。

    あと、この話の主人公は「手に入れるということ」の、ぼんぼんです。やたら贅沢なのは、彼ら家族がメチャクチャ金持ちだからですw


    【書いてもいいっす】【描いてもいいっす】


      [No.1163] 月明かり 投稿者:紀成   投稿日:2011/05/09(Mon) 21:37:17     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    幼い頃、いつも幻想の世界を夢見ていた。

    満月が煌々と彼女を照らしている。彼女は裸足でバルコニーから光が照らす海を眺めていた。数時間前の夕日が照らす海も見事だったが、自分は静かなこちらの方が好きだった。
    いつも自分に連れ添っているポケモン達は、後ろの部屋にある思い思いの場所で寝息を立てている。また増えたようだ、と思う。自分が移動すればするだけ、その場所にいる彼らは私についてくる。理由は分からない。この力のせいなのか、はたまた別物なのか…
    『ファントム』
    ゆっくりと、彼女に近づく影。青い身体に、土偶を思わせる外見。
    「珍しいね、君が話しかけてくるなんて」
    『本当はゴルーグも話したいんだ。でも僕達は大きすぎる。そして重過ぎる』
    ゴビットだった。顔から表情を読み取ることは難しい。だが、彼らにも喜怒哀楽はある。ファントムも、あまり話さなくてもそれはよく分かっていた。
    「重くてもいいと思うよ。軽すぎたら風に飛ばされそうだし。…君たちは空を飛べるんだよね」
    『うん』
    「小さい時、よくポケモンに乗らずに自分で空を飛ぶ方法は無いかって考えた事があるんだ。おかしいよね。今だってやっと機械とポケモンに助けられて飛べるようになったばかりだっていうのに」
    『僕達も、ファントムを乗せて飛べる』
    「じゃあ今度頼もうかな。流石にデスカーンに頼ってばかりじゃ気の毒だからね」
    ベッドの横で棺桶の状態になっていたデスカーンがわずかに飛び跳ねた。クシャミでもしたのだろうか。
    「…君たちは、親はいるの」
    『分からない。でも、僕にはゴルーグが一緒だ。そしてファントムも』
    「そう」

    空をずっと飛んでいけば、天国にも届くんじゃないか―
    火宮の家に来て、真っ先に考えたのがそれだった。それくらい、追い詰められていた。
    死にたいという気持ちと、何とか切り開けないのかという気持ちが混ざり合っていた。
    それは、両親の訃報を聞いた時に、前者に大きく傾いた。

    こんな場所、もう嫌だ。死にたい。死んで、また二人と一緒にいたい。

    だが、彼らが見えるようになってから、今度は後者に傾き始めた。
    死んだら、それこそこの家の思う壺だ。生きる。生き延びて、両親の敵を討つ。
    出来るならば、何か生きるための当てを見つけたい。そう、何でもいいから、生きる当てを―

    「そして見つけたのが、ギラティナに会うこと。でもモルテの言葉でそれは砕け散った。私が死ぬことを誰も望んでいないと。
    どうしたことかと考えていた時に、奴…カクライに会った」

    喰い損ねた炎が、何なのか―

    …奴の前では口が裂けても言わないけど、私は奴を恐れている。嫌いとかじゃなく…苦手なんだ。
    どんな手を使っても勝てる気がしない。いや、そもそも戦う相手として見ていない気がする。でも、このまま突き進めば、いつかは―

    『ファントム?』
    「…」

    怖くて怖くて堪らないんだよ!その場を考えるだけで叫びだしそうになる。奴の実力がどんな物か。火宮の分家の血は何をもたらしたのか。
    何ももたらさないだろう。勝利、敗北…何もかも。
    でも誰にも手を伸ばさない。これは私の問題なんだ。ポケモン達も、これだけは何も手出しできない。
    だって、忌々しいあの家の血を継いでいるのは、私なんだから…

    「…天国って、遠いよね」
    『…』

    何でこんなに、遠いんだろうね…


      [No.1162] [再掲載?]カゲボウズが虫歯になったようです。 投稿者:紀成   投稿日:2011/05/09(Mon) 20:19:43     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「はい、あーん」
    『…』
    ファントムが外見にそぐわない声を出した。右手に歯医者が使うような小さな鏡を持っている。
    「口開けて」
    ブンブンと首を振るカゲボウズ。何が何でも口を開けまいとしている。だが、その理由は一目瞭然。諺で言えば頭隠して尻隠さず。頬の下部分が赤く腫れている。
    虫歯になっていることは誰が見ても分かることだった。
    ことの始まりは、久々に甘味の店を見つけたのでカゲボウズ達に食べさせてやろうかと思ったこと。カゲボウズは甘い味が大好きらしく、感情だけでなく人間が食べる物もそれは変わりないようだった。
    だが、一匹だけがそっぽを向いて食べようとしない。ファントム自らアイスを目の前に差し出しても、ちょっと横目で見て(涎を垂らさんばかりの表情で)ハッとしたようにそっぽを向くだけだった。
    「…」
    不審に思ったファントムがふと彼の身体を掴み、真正面に向けた。カゲボウズはしまった、という表情をしたが、主人には何も出来ない。
    「これって」
    ファントムの言葉に、周りのポケモン達全てが覗き込んだ。全体が紺色の彼の下頬が、赤く腫れている。
    「虫歯、だよね」

    で、今に至る。既に二十分が経過している。彼の性格は『頑固』だろうか。
    「デスカーン」
    『何だ』
    痺れを切らしたファントムが呟いた。
    「こじ開けろ」
    『了解!』
    四本の黒い腕がデスカーンの後ろから飛び出した。そのままカゲボウズの口の端にヒットする。力を入れる。だが小さなカゲボウズも負けていない。必死に口を踏ん張っている。本人達からすれば大切なことなのだが、傍から見ればただのギャグにしか見えない。
    「シュールだね」
    そんな彼女の声も耳に届かないようだった。周りのポケモン達は、ある軍艦の艦長と名探偵の助手がテーブルを挟んで、テーブルクロスを引っ張り合っているシーンを思い浮かべた。

    数分後。力尽きたデスカーンと、誇らしげな顔をしたカゲボウズが立っていた。その姿を見たファントムはため息をついた。だが、これで終わらせるようでは彼女ではない。
    ファントムが言った。
    「総攻撃」
    途端に彼女の周りで状況を見守っていたポケモン達が飛び掛った。ゴース、ゴースト、ゲンガー、ムウマ、ムウマージ、ヨマワル、サマヨール、ジュペッタと当の本人を除くカゲボウズ達。
    全てのゴーストタイプが、たった一匹のカゲボウズの口をこじ開けるために凄まじい攻防を繰り広げている。
    力尽きたデスカーンが、ファントムの元に寄ってきた。
    『俺を行かせた意味はあったのか』
    「見れば分かるだろ。こういうこと」
    『ただの当てポニータか』
    「さあね」
    もうもうとする砂埃の中に、彼らの手足、はたまた触角のような物が見える。まるで一昔前の漫画に使われていた表現のようだ。
    ファントムは、砂埃が目と口に入らないように細心の注意を払った。

    「あー、やっぱりなってる」
    さらに数分後、二体のサマヨールに口をこじ開けられたカゲボウズが耐えていた。そしてその口の中に、ファントムが鏡を入れる。
    微妙に黒い穴が出来ていた。しかも結構深い。放っておいたら大変なことになっていただろう。
    「こんなになるまでよく耐えたね。進化したら、ジュペッタには珍しい長期戦タイプになるんじゃない?」
    『冗談言っている場合じゃありません、マスター。このままでは彼は歯が無くなってしまいますわ』
    ♀のプルリルが焦ったように問いかけた。ファントムは帽子を被りなおす。
    「分かってるよ。流石に歯が無いなんて気の毒だからね。
    …とりあえず、カゲボウズを診てくれる歯医者を探そうか」


    ―――――――――――――
    cocoさんのコールに応えて(?)再アップしました。ただ、前の原稿が無かったので覚えてる限りで書きました。ところどころ違うかもしれませんが、どうぞ。

    [治してあげて欲しいのよ]
    [書いてもいいのよ]


      [No.1161] 【重要?】ぜったいにあげてほしい【求む!】 投稿者:CoCo   《URL》   投稿日:2011/05/09(Mon) 18:18:18     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     スレ上げもかねて。

     紀成さん!
     カゲボウズが歯医者に行く話を!
     再うpしてください! お願いします! 後生です一生のお願いです!
     額をタライにこすりつけてお願いしたい!
     手元にログが残っておられましたらぜひお願いします!

     


      [No.1160] 【再掲】 雷親父と風邪親父 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/05/08(Sun) 21:51:38     84clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     『伝説』と呼ばれるポケモン。それらは各地方ごとに存在する、特別なる者達である。
     カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ、そしてここイッシュにも――――――。




    「ぶえっくしっ!!」
     盛大なクシャミ一つで、更なる強風が巻き起こる。目の前にそびえ立っていた大木がしなり、気の毒なマメパトが一羽、甲高い悲鳴と共に遠くの空へと吹き飛ばされていった。
     鼻をすする音。不機嫌な唸り声に反応して、辺りを吹き荒れる突風が激しさを増す。気分によって周囲に与える被害の程度を変えるという旋風ポケモン――トルネロスの機嫌は、かつて無いくらいに最悪だった。
     頭が重く、体の節々が痺れるように痛む。背中を這い回る悪寒に加えて、胸の奥が妙に重苦しく呼吸がし辛い。そんな不調を抱えた苛立ちが、辺りの天候を更に悪化させている。
     森の生き物達は皆、息を潜めてこの気まぐれで無慈悲なる猛者が鎮まる事を一心に願っていた。

     残念ながら、その願いは聞き入れられなかったようである。
     突如北の空が光ったかと思うと、雷鳴を引き連れた黒雲が物凄い速さでこちらに接近してくる。通る道筋に小さな稲妻を落としては、無数の焼け焦げを作り出すというその迷惑極まりない物体は、不機嫌なトルネロスの目前まで来ると最大限の雷鳴を響かせて弾け飛んだ。黒雲の中から現れた、彼に良く似た姿が問いかける。
    「どうした風神、調子でも悪いのか」
    「ああ、少しばかり風邪を引いたらしい。……どうした雷神」
     トルネロスは目を疑った。雲を割って飛び出したのは、彼に良く似た姿……のはずだった。

     視線の高さで浮遊するそれは、見慣れたボルトロスの姿とはかけ離れていた。
     頭には捻った細い布を巻き、逞しい肩から上半身を覆う青い布を引っ掛け、腹には縦に筋の入った平たい布地を着けている。いつも通り尊大に組んだ腕の中には、良く分からない凹凸のある木片が抱え込まれていた。
     うむ、と一つ頷いて、まじまじと己を凝視するトルネロスに説明を始めるボルトロス。

    「よいか、頭のこれはネジリハチマキ、この覆いはドテラ、腹のこれはハラマキというらしい。そしてこれはゲタだ」
    「いや、そんなことは聞いておらん」
    「ドテラというのはなかなかに高機能だという。初めて試してみたが、確かに快適だ」
    「それも聞いておらん」
    「全てを用意すれば、これ即ち“親父セット”と呼ぶらしい。どうだ、似合うだろう」
    「聞いておらん」
     そうか、とどことなく残念そうに頷くボルトロスに、トルネロスは重ねて問いかける。
    「なぜそんな格好をしているのだ」
    「うむ。ここまでくる途中、民家があってな」
    「吹き飛ばしたのか」
    「お前ではあるまいし。その軒先に、これらが干されていたのだ。だからちょっと取って来た」
    「盗ってきたのか」
     うむ、と頷いて、肩をそびやかすボルトロス。そういえばこいつには妙な収集癖があったな、と思い出すトルネロス。迷惑なことこの上ない趣味である。

    「なぜまた、人間の住処などに近づいたのだ」
     問えば、ううむと唸って真顔になった。
    「覚えているか、風神」
    「何をだ、雷神」
    「………無礼千万な人間どもと戦ったことを、だ」
     ああ、と呟いて、トルネロスは苦虫を噛み潰したような顔をした。
     忘れられる訳が無い。
     
     

     
     彼らは所在を持たず、イッシュ中を勝手気ままに飛び回っては雷雨を降らし突風を起こし、顔を合わせるたびに激しく争う事を常としていた。稀にやりすぎて豊穣神ランドロスの逆鱗に触れ、怒りの鉄槌を食らうこともあるが、そもそもかの存在は豊穣の社から滅多に出てこない。そのランドロスを除けば、彼ら暴風雨コンビに逆らえる者などいないのだ。
     あの日も、豊穣神の沈黙をいい事に嬉々として山中を暴れ廻っていた。互いに力をぶつけ合い、暴風で山肌を削り雷を落として地面を穿ち、雷鳴と豪雨とを撒き散らす。
     ふと眼下を見下ろせば、ちっぽけな人間が数人、その配下の飼い慣らされたポケモン達と共に右往左往しているのが目に入った。賭けをしよう、と言い出したのはどちらだったか。
    「あそこにいる人間どもを、もう少しばかり驚かせてやろう。尻尾を巻いて逃げるか、泣いて許しを請うか。絶対に逃げる、我の勝ちだ」
    「それは面白そうだ。では許しを請う方に賭けよう、我が勝つ。……手始めに、あいつからだ」
     離れた場所に一人だけ、ぽつんと立つ小さな人影があった。彼らは互いににんまりと笑いあうと、紅い髪の人間の元へと急降下して行った。
     
     目算が違った、とはこういうことを言うのだろう。
     怯えきった盲目の少女に殺気を送って威圧すれば、彼女は巨大な赤竜を繰り出してきた。生意気な、と風の塊をぶつけてやったら、怒り狂った竜の尾がもろに彼らの体を捕らえ、遥か彼方に吹き飛ばした。
     飛ばされた先で出会った人間に挑発され、遊んでやるつもりがつい本気になった。女と男、それぞれに狙いを定め潰してやるつもりだったのだが。

    「まさか負けた上に、あのような情けをかけられるとは」
     ぐるるるる、と喉の奥で不満の呟きを漏らすボルトロス。滑稽な格好だけに、妙な迫力が加わっている。ああ、確かに無様だったな―――という言葉を、トルネロスは口に出すことなく飲み込んだ。あの時は自分も負けないくらいの醜態を晒していたからだ。
     
     黒髪に赤いメッシュを入れた女を追ったボルトロスは、圧倒的優位に立ちながらも自身の油断と予想外の抵抗の前にあっけなく敗北した。女を狙うあまり、化け狐と小さな電気蜘蛛の動向に気を配れなかったのが敗因だった。
     糸で地面に縛りつけられたまま、己を倒した手持ちを労う女の声を聞かされるとは、なんという屈辱だっただろう。
     挙句、殺し損ねた相手に助けられ、木の実と穏やかな説教とを貰って解放されたなど。

     精悍な顔つきの男を狙ったトルネロスは、数こそ多いものの動揺して能力を出し切れないポケモン達を相手にするだけ……のはずだった。
     実際は、即席ながら見事なコンビネーションを見せた寄せ集め集団に嬲られ、渾身の大技の発動を止められた挙句、情けなくも背を向けて逃走する羽目になった。
     更に怒りを募らせながら向かった先で、頼りなさそうな若造と意識の無い少年を庇って動きの取れない年長の男とを見つけ、溜まった鬱憤を晴らしてやろうとしたのだが。
     若造の策略に絡みとられ、挟み撃ちの形でまたもやいい様に扱われてしまった。一瞬の気の緩みをついて呪縛を払い、小癪な若造を叩き潰してやろうと腕を振り上げたものの……件の赤竜が炎を纏って突っ込んできたせいで、目的を果たす事なく倒れ伏した。
     トルネロスもまた、自身を瀕死に追い込んだ男から慈悲を受け、トロピウスの果実と少々悪役めいた説教を食らって放免されたのだった。




    「……それで、あの事がその格好とどう関係するというのだ」
    「うむ。あの日、我は人間というものに興味を持ってな」
    「ふむ、…っくしょぉい! ううむ、あれ以来妙に不調だ」
    「おう、豪風でハトーボーが見事に飛んでいったぞ。そうだこれを貸してやろう、羽織ってみろ」
    「ドテラ、というやつか………ふうむ、なるほど暖かい」
    「ついでにこれもやる。健康サンダル、とかいうものだ」
    「なんだ、このイボイボのついた板は。気持ちが悪いな」
    「うむ。これはだな、人間が足のツボを刺激するための……」
    「ちょっと待て。正直それはどうでもいい」

     話し続けようとするボルトロスを遮って、トルネロスは話の筋を元に戻そうと努力した。渋々説明を止めた雷神曰く、ちっぽけで無力な存在だと馬鹿にしていた人間に惨敗した後、体力の完全回復を待ちながら、じっくりとっくりと考えてみたのだという。
     なぜ、神と呼ばれるほどの力を持つ自分が、ひ弱な人間に負けを喫したのか。人間単体は勿論、連れていた配下のポケモン個々の能力で言っても遥かに凌駕する実力を持つ自分が、なぜ。
     答えは一つしかなかった。

    「我等は人間とポケモンの間に結ばれる“絆”とやらに負けたのだ、風神よ」
    「絆、とな。雷神よ」
     うむ、と力強く頷いて、ボルトロスは苦々しげに―――しかしどこか楽しげに言葉を続けた。
    「力一つを取れば、断然こちらに分があった。しかし奴等の互いを思う心は、格上の我等を超えてあまりある程の力を生み出した。人間との関わりなど枷にしかならぬと思っていたが……実際はどうだ、その枷をつけた連中に見事してやられたではないか」
    「ふむ、確かに。奴等の結束は強かったな」
    「その要となったのが、あの人間共だ。己自身は脆弱なくせに、他を纏め、能力を引き出す事に関してはずば抜けている。特に、あの場にいた連中は並の手並みではなかったようだな」
     もしあれがもっと未熟な連中だったなら―――言いかけて、ボルトロスはにやりと笑った。今そんな事を考えても仕方がない。負けは負け、だ。
    「まあ、つまりだな。ああいうのがごろごろしているのならば、人間というのもなかなか面白い生き物だと思うようになったのだ」

     ふうむ、と呟きつつ。トルネロスは兄弟神をしげしげと眺めた。暫く会わなかった内に、その心境には随分な変化があったと見える。以前の、他者に対する傲慢なほどの無関心さは影を潜め、かわりに生来の好奇心が大きくなっているようだ。わざわざ人間の住処に行き、親父セットなるものを持ってきたのも、悪戯心の成せるものなのだろう。
     そういえばこいつは昔から奇抜な行動に走りがちだったな、とトルネロスは思い出した。
     だがまあ、しかし。
    「実は同じ事を考えていたのだ、雷神よ」
    「ほう、奇遇だな。一緒に親父になるか、風神よ」
    「それは断る。そうではなくて、人間が面白いという話だ」
    「ほほう。……さては、お前も何か言われたな」
    「お前も、ということは、お前もなのか」
     互いに顔を見合わせ、にたりと笑いあう。
    「我と戦って悩みが吹き飛んだ、と感謝されたのだ」
    「恨みがあったがどうでもよくなった、己が務めを果たして生きろ、とな」
     言ってから、どちらともなく、なんと不思議な生き物だと呟いた。自分を殺そうとした者に、これほど寛容になれるとは………全くもって理解し難い。
     二柱の神の沈黙に反応して、荒れ狂う暴風雨が少しばかり勢いを弱めた。


    「……それで、お前はこれからどうするのだ」
     しばしの後。トルネロスの問いに、ボルトロスは少しばかり困った顔になった。
    「どうすると言われてもな。今まで通り、各地を巡り飛び回ることしか考えておらん。我が役目は訪れた地に雷雨をもたらし、大地を潤すこと。お前とて似たようなものだろう」
    「ああ、我の役目は強風で辺りを吹き払い、古きを除き新しきを運ぶ事。今まで通り振舞う以外、何が出来ようか」
     ただ、と一旦言葉を切る。
    「あの日、小癪な人間に一つ貸しを作られた。今後も我が無闇に暴れまわるようなら、奴が成敗しに来るらしい。………なんと生意気な小僧だと思ったが、それについて言い返せなんだ自分がどうにも情けないわ」
    「何たること! 我も女から同じ事を言われているぞ。兄弟揃って、なんとまあ嘆かわしいことだ!」
     言葉に反し呵呵大笑するボルトロスにつられて、トルネロスの相好も崩れた。あの日以来胸の底にわだかまっていた苛立ちが、笑いの形でもって溢れ出ようとしている。構うものか、存分に垂れ流してやれ!
     両者が腹を抱えて笑い転げると、収まりつつあった風雨が一気に強まった。逃げ込んだ藪からそっと様子を窺っていたケンホロウが、凄まじい稲光に照らされて慌てて顔を引っ込める。まだ暫く、安心は出来そうにないらしい。

     ひとしきり笑ってから、やれやれと吐息をついて空を見上げる。
    「一方的ではあるが、約束は約束だ。守らねば誇りに関わるからな。今後は、人間の近くで荒ぶるのは止めるとしよう」
    「そうだな。神たるもの、人間ごときの約束一つ守れぬようでは名が廃る。………だがもし、我等に自ら挑んでくるような人間がいたならば。その時は」

     今度こそ、返り討ちにしてくれようぞ。
     
     双方は凄みのある笑みを浮かべ、喉の奥で低く唸った。闘いこそ、彼らの性。一度牙を折られたからといって、己を鍛え強者を捻じ伏せる事こそが最大の喜びと感じる心は失われていない。むしろ更に煽られたというべきか。イッシュの闘神という矜持にかけて、次は無様に負ける訳にはいかないのだ。

     
    「おお、思わぬ長居をしてしまった。そろそろ次の土地を巡らねばならん。さらばだ、風神よ」
     突如、一際響く雷鳴を轟かせたボルトロスは、現れたときと同じくその身を雲で包み込み、猛烈な速さで飛び去っていった。あっという間に小さくなったその姿を見送って、ふんと鼻を鳴らすトルネロス。相変わらず唐突な奴めと呟くその顔は、妙に晴れ晴れとした表情に変わっている。
     いつの間にやら、不調はすっかり治まっていた。恐らく、圧し掛かっていた『敗北』という名の重しを、あっけらかんと笑い飛ばしてしまったせいだろう。これぞ病は気から、というものだったのか。
     ふと、ボルトロスはこの為に己の所までやってきたのではないか、という考えが頭を過ぎった。例え離れていても、互いに対になる存在として何がしかの繋がりは持っている。ひょっとしたら、片割れの不調を感じ取り、救うために現れたのではないか――――――。

     いやそれは無い、とトルネロスは己の考えを一蹴した。あれはそういう心遣いとは無縁の奴だと、昔から知っている。とはいえ、トルネロスの方もそんな気遣いなどした事が無いからお互い様である。今回は偶々、手に入れた人間の物を見せに来ただけなのだろう……ああ、そういえば。
    「あやつめ、ドテラとサンダルを忘れて行きおった………」
     
     まあいい、いずれまた会う機会もあろう。それまで借りておくのも悪くない。
     一人ごちて、ふわりと空に舞い上がる。雷を欠いて随分大人しくなった風雨の中を、青いドテラを着た姿が悠々と進んでいく。遠く、遠く、新たな地を目指して。
     彼らが去った後、吹き清められ潤った大地の上には、隠れ潜んでいた生き物達がぞくぞくと湧き出てきた。
     あのケンホロウも再び藪から顔を出し、周囲の安全を確認すると、優しい声で背後の雌に呼びかけた。揃って窮屈な隠れ家から飛び出して、陽光を浴びながら満足げに伸びをする。二、三度大きく翼を打ち振るうと、番は鳴き交わしながら森の奥深くへと消えていった。
     ようやく、森はいつもの平和な静けさを取り戻したのだった。
     
     
     
     風の神トルネロスと雷の神ボルトロス。暴れ者、破壊を司る者と見られがちな彼らにも、イッシュに於いてはそれぞれに存在の意義がある。あの山中での衝突は、人間、ポケモン共に互いの認識を改めさせる機会となった。
     両者が己の分を守り付き合うのならば、例え言葉が通じなくとも分かり合う事は出来るだろう。理解の果てに、絆を結ぶ事が出来るかどうかは―――――その者の資質次第。
     風神と雷神は、今日もまたイッシュの地を巡っている。





     ちなみに。各地を放浪していた際、偶然登山客のカメラが捻り鉢巻腹巻姿のボルトロスと、半纏姿で健康サンダルを手にしたトルネロスとを写真に収め、新聞に【新種発見!? 親父ポケモン現る! 】という記事として書き立てられる事など………彼らは知る由も無いのであった。







    ――――――――――――――――

     
     ログ消滅に乗じて封印してしまおうと思っていたのですが、ありがたくも再掲希望のお声を頂いてしまったのでここに復活。嬉し恥ずかし。

     いつぞやのチャットにお邪魔していたときの事。
     何故か『下駄を履いて舞踏会で踊り狂うお姫様』の話になって、そこから『下駄履くなら腹巻とかドテラとか』→『どこの親父だ!』→『親父といえば風神・雷神』→『似合いすぎて困る』→『(遭難パーティを救出せよ!で)相手がそんなだったら嫌だ、絶対負けたくない』という流れになり、ついつい書き上げたのがこれです。

     正直、「伝説ポケを馬鹿にしとんのかい」というご意見を頂いてもおかしくないなー、と内心ヒヤヒヤしていました。伝説ファンの方、本当にごめんなさい。
     悪ふざけながらも本人大真面目(なのか?)で書いております。こいつ阿呆だろ!というノリで見ていただければ幸いです。

     ともあれ、再掲を望んでくださった皆様、及びお読みくださった皆様に最大級の感謝を込めて。
     ありがとうございました!

     【なにをしてもいいのよ】


      [No.1159] 未開見たいテレポート 投稿者:早蕨   投稿日:2011/05/08(Sun) 20:25:03     92clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    【一】
      人間ってえのはえてしてポケモンの邪魔にしかならねえ。あいつらは俺達をふるさとから強引に引っぺがし、わけのわかんねえ球にぶち込んで連れ去っちまう。そんでもってひたすらこき使ってあっちこっち連れ回すってんだからそら邪魔でしかねえだろう。ふざけんじゃねえってんだこんにゃろう。
     というのもよ、いつもこの辺の森に餌を取りに来るもんで仲良くなったヤミカラスってえのが最近来なくなったもんだから、どうしたもんかと同じ場所に住んでいるピカチュウっていうのに聞いてみると、人間に捕まったってえ話じゃねえか。正直言うと、俺は恐い。その突然襲いかかってくる人間ってえのがもの凄く恐い。ああああ情けねえ。あんなひょろっこい人間をびびるなんて情けねえ。けどよ、あいつらの連れて歩くポケモンってえのがめっぽう強い。そらあもう闘うお人形のように、人間達の言う事を聞いて攻撃してくんだ。というと恐いのは人間じゃなくてポケモンだろう? なんてことを言われるかもしれねえが、それは違う。そのめっぽう強いポケモンに命令できる人間の力ってえのが、きっと一番おっそろしい。歯向かえば絶対に倒せるのに、あのめっぽう強いポケモン共は、人間を攻撃しやがらねえ。それどころかはいほいと言うことを聞いて、俺達をぼかすかと攻撃してきやがる。こりゃあ一体どういうこった。
    「あ、ケーシイいた!」
     そんな風にボンヤリ考えながら森の中をブラブラしていると、俺の前にのこのこと現れやがった奴がいた。黒い短髪頭のそのガキは、俺を見つけたことにあたふたしながらも、腰についたあのいまいましい球を俺の前に投げやがる。
    「お願い、スリープ!」
     中から出てきたのは、何考えてんだかよくわかんねえ、鼻のなげえ二足歩行のエスパーポケモン。っへ。俺の敵じゃないさ。今まで幾度となく人間に攻められながら、一度たりとも捕まってねえどころか、一度たりとも攻撃を受けていない。そんな俺を捕まえようなんざ百年はええ。なんたって俺には、伝家の宝刀テレポートっちゅう技がある。それがある限り、一生人間なんかに捕まるわけがねえ。はは、残念だったな。この間抜けそうなスリープは捕まえられても、この俺は捕まえられないぜ!
    「ようし、スリープ! 金縛りだ!」
     ん? んん? あれれ? や、やべえやべえ、テレポートが出来ねえよ。ああ、やべえやべえ。逃げられないんじゃ俺には勝ち目なんてねえ。実を言うと、生まれてこの方バトルなんてほとんどしてねえ。誰かと喋ってるか、寝てるか、飯食ってるかだけだ。だから、本当は連戦無敗なだけであって、連戦連勝なわけじゃねえ。
    「今度ははたくだよ!」
     スリープは、またも人間の言いなりになってとことこ向かってきやがる。でもやべえ、俺ったら逃げられねえ。おたおたしているうちに、そのまま俺はスリープにはたかれる。ああ、いってえ。こんにゃろ、思いっきりやりやがって。
    「おいおいおい! いてえじゃねえか!」
    「そらあバトルなんだから当たり前ですわ」
     ……なんだよ、その語尾。
    「なんだっててめえは俺を殴ってきやがる。何か恨みでもあんのかい!」
    「恨みなんかないですわ。ただ、うちのご主人がそう命令するんで」
    「あんなのに従っていて楽しいか? 俺にゃあまったくわかんねえ」
    「じゃあ、あんたもどうだい? 同じような力を持つ者同士一緒に旅をするっていうのも中々いいんでないかい? 外に出りゃ楽しいし、楽しい理由がわかるってもんですわ。それに、こんな森ん中にずっといるんじゃ、頭がくさっちまいますわ」
    「スリープ! もう一度はたくだよ!」
    「俺はこの森が好きでここにいるんでえ。お前らなんかと一緒にいけ、ぶぁ! お前こんにゃろ、話し合ってる途中なんだから叩くんじゃねえやい! 舌かんじまっただろ!」
    「いやあ、ご主人からの指示だったもんで。ほんで、なんだっけ? 嫌だって話だっけ? なら、一度一緒に来てみっといいですわ。うちの主人は、他の人間とはちっと違うんですわ」
    「どこが違うんでえ! あのいまいましいボールをこっちに投げて無理やり押し込むだけだろう!」
    「ほう、あんたはあれが気に入らんのかい。じゃあ、ちょっと待ってな」
     何か妙なことを言い出したスリープは、俺に背を向けボウズの方へ何か身振り手振りバタバタし出した。自分のポケモンが何やってんだかまったくわかんねえ様子のボウズだったが、スリープがモンスターボールを指差すとどうやら気付いたらしく、それを手にとって「これ?」なんて言いだしやがる。こいつ、本当に俺を捕まえる気があるのか。
    「え? モンスターボールはだめってこと?」
     スリープは何度も首を縦に振り、再び俺の方へ振り返る。へへ、と得意げな顔をしてその間抜け面をこっちに向けやがった。
    「ほうら、後はあんた次第だ。一度旅っつうのを経験してみるのもいい。気に入らなかったら勝手に逃げちまえばいいさ。どうだ? 来るかい?」
     森は好きだ。生まれた場所だから好きだ。当たり前だ。ただ、俺にだって外の世界がどうなってんのかくらい、見てみてえ気持ちも少しはある。少しだ。ほんの少し。だからって一人で行くのは危ねえし、人間に従うってえのも癪だし、あのボールも嫌だ。
    「うちの主人、前からあんたのこと気に入っていて、一緒に旅がしたいってうるせえんだ。ここはこっちの顔を立てると思って、一つ乗ってみないかい? 気にらなかったら逃げていいし、逃げるんだったら協力しますわ。それに、あんたにとったら外は未開の地だろう? ぼくらと一緒にそこを探検するっていうのも悪くない話かもしれんですわ」
     へ。間抜け面しやがって、中々口は達者でやがる。この俺の心を揺り動かすたあなかなかやるじゃあねえか。ちっとボウズの方を見てみると、目をキラキラさせてこっちを見ていやがる。ボールはもう腰にしまっちまって、それを投げてくる様子もねえ。人間は嫌いだ。ついていくポケモンだって嫌いだ。俺はこの森が好きだ。ここにいる奴らが好きだ。りんごが好きだ。でも。
    「し、しっかたねえ、このケーシィが、ちっとだけ、ちっとだけお前のそのまったく面白そうでもなんでもねえ提案に乗ってやろうじゃねえか!」
     スリープは、不気味に笑みを浮かべながらボウズの方に二人で向かい合うように並んできて、俺の肩に手を回してくる。なんでえ、気持ち悪い。
    「まあ、よろしく頼ますわ」
    「ちっとだけだぞ、ちっとだ」
     俺とスリープとのやり取りをわかっていないながらも、それを了承と理解したらしいボウズが、すぐさま走ってきて俺を抱き上げやがった。ぐお、苦しい。この、こうなったらテレポート! って、そうだ、金縛りがまだ効いてる……。
    「うわあ、かわいい! よろしくね、ケーシィ!」
     人間のくせに、なんてえ奴だ。痛くない抱擁なんかしやがって。まったく、わけのわかんねえ奴らだ。

    【二】
      俺はこの世界の中の砂粒のほどの存在、いてもいなくてもそれほど変わらない小さなものだってえことに気付いたのは、ぐるぐるといろんな場所を旅した後たどり着いた、とんでもねえ数の人間がうじゃうじゃしてやがる、ポケモンリーグセキエイ大会でのことだった。人間達がポケモンを戦わせ始め、やれハイドロポンプだの雷だのとんでもねえ技を繰り出しながら喧嘩を始める。人間の言いなりになっているだけのくせして、誰も彼もが俺より強い。なんだってあいつらはあんなに強いんだ。
    「いやあ、強いねえどっちも。あんたはどっちが勝つと思う?」
     俺がボウズの膝の上で我慢してやっているというのに、のうのうと席一つ分を使って座るスリープは、その野太い声でたずねてきた。
    「知らねえやい。俺には全く興味がねえ」
    「これ決勝ですぜ。見なきゃそんですわ。この試合が、最高のポケモンと人間を決めるっていうのに」
    「この世界の頂点の人間だろう。あのポケモンはお人形だ」
    「はあ、でもきっとあの連中はトレーナーについていきたくてついて行ってるんでしょうよ。じゃなきゃあそこまで強くなれませんわ」
     いんや。と、俺が反論してみると、スリープの興味はすでに再び動きだしたバトルへと移っていた。こんにゃろう、相変わらずマイペースな奴だ。
     バトルを見てみっと、カメックスというでっけえ亀がちっこい電気野朗のピカチュウにやられ、交代するところだった。やっぱり興味ねえやい、と居眠りでも始めようとすると、カメックスを出していた方、元世界の頂点、そして次期トキワシティジムリーダー候補らしいグリーンとやらが、フーディンを出しやがった。その姿は、俺がいつかそうなるかもしれねえ姿だ。
    「あんたもやっぱりトップレベルの同属とあれば、見ずにはいられんでしょう」
     スリープの声を無視した。俺はあのもの凄く厳かな、誰が何をしても動かないような、どっしりと直立した姿に目を奪われていた。
     強いだろうな。
     俺がそう思った瞬間、奴はまったく目に追えない速度で移動し、ピカチュウの目の前まで迫りやがる。そのまま一瞬の動作でピカチュウをスプーンで殴り飛ばし、宙に浮いたそいつはそのまま静止した。あれは、サイコキネシスだ。俺がずっと小さいとき、おやじ(フーディン)が俺を人間から守るときに使っていた技で、初めてみたときそれは驚いた。自分も似たような力を使えるってえのに、そのあまりの力の差を不思議に思った。きっと、あのレベルのサイコキネシスに捕まっちまうと、指一本も動かねえだろう。その通り、ピカチュウは先ほどのあのカメックスとのバトルの消耗もあってか、体をピクリとも動かせないままさらに宙に放られ、そのまま地面に落下させられる。あの勢いで受身もとれず落下したとなればもう無理だ。フーディンはサイコキネシスを解くが、やはりピカチュウは動けなかった。
    「わあっ、あのフーディン強い!」
    「おほっ。すんげえ力だ」
     ボウズとスリープが感嘆の声を上げていた。無理もないぜこりゃ。くそ。なんだって人間に従っているだけのくせしてあんなに強いんだ。
    「……むかつく。なんで、あんなに強いんだ」
     思わずボソっと漏れた俺の言葉を聞いていたのか、スリープがニヤっと笑った。こいつ後でシメる。
    「ケーシイもあんな風になれたら格好いいね!」
    「…………」
     なんだかしらんがチクっとした。

      その夜、興奮気味なボウズと、ケツいたいですわあの椅子かたいですわと呟くスリープと、トキワポケモンセンターの宿舎へ戻ってきた。夜寝るときはモンスターボールの中がいいんですわ、とスリープは自分からあの狭っくるしそうなボールの中に入っていき、俺はいつも通りベッドの上、ボウズの横で寝ることとなる。しかしいつも通りには眠れねえ。くそ。何か今日はむしゃくしゃする。どうしたってんだこの野朗。スリープに言われた言葉やボウズに言われた言葉が妙に頭にはっついて離れない。なんだよ。俺が間違っているっていうのか? お人形じゃなくて、本当にあいつらはあのトレーナーにくっついてるっていうのか? ああ、むかつく。むかつく。こんなこと、あの森にいたときにはなかった。だらしなくいつも寝てやがるピカチュウや、ピタピタと地面に絵を書くことが好きなドーブル。えさをとりに来てはやれあそこのニドランがあっちのニドランとくっついたとか、そんなくだらないことを喋ってやがったヤミカラス。ああ、森が懐かしい。帰りてえ、そろそろ帰りてえ。
    「んん、むにゃ」
     めちゃくちゃ気持ち良さそうに眠っている坊主を見て、俺はむくりと起き上がる。
    「……ちょっと散歩してくるだけでえ」
     その顔から目を背け、俺はテレポートした。

    【三】
      夜の町をふわふわと浮かんでいると、ジムやトレーナーハウスといった、強い奴らが集まるらしい建物が見える。ぼんやりそれらを何も考えずに見ていると、トキワシティには凄く強いトレーナーがたくさんいるんだって! といつかボウズが言っていたのを思い出した。……俺もあんなところに入って頑張ってみれば、なんてことが一瞬だけ頭がよぎっちまって、ぶるぶると顔を横に振ってそれをかき消す。俺はバトルなんて嫌いだ。それに、あのボウズもスリープも、申し訳程度にしかバトルなんてやったことがねえ。あいつらは本当にただ世界を見て周ることが目的らしく、ジムにだって入ったことがなければなるったけバトルは断ってきた。それを馬鹿した奴もいた。笑った奴もいた。それはいいねと言った奴もいた。頑張れよと言った奴もいた。いろんな人間が、いた。俺が思った以上に人間っていうのはいろんな種類がいて、俺の思った以上にいろんなポケモンもいた。タマムシシティにゃ、イーブイとかいう巷じゃ人気らしいが、やたらと性格の悪いポケモンがいた。サイクリングロード(自転車とやらは貸し出しだった)に入ろうとしたところにでーんと寝ていたカビゴン。ありゃあ、すげえ。今まで見た中じゃ一番でかいポケモンだった。セキチクシティのサファリパークで見たウツボットの群れに近づいちまったときは、死ぬかと思った。ああ、そういやあそこには歯のない人間もいたな。
    「……なんだ。俺、何考えてんだ」
     とんでもねえことを考えている気がして、俺は戻ることにした。

    【四】
    「おや、ケーシイさんじゃないですか。こんなところで会うなんて、こりゃ驚きました」
     テレポートを使わずだらだら飛んでセンターへ戻ろうとしていると、突然横から声をかけられた。
    「……お? お前、ヤミカラスか?」
    「ええ、そうです、ヤミカラスですよ。覚えていますか? 久しぶりですねえ。ああ、懐かしい。あの森でよく喋りましたよねえ」
    「本当久しぶりだなあ。お前、今何やってるんだ?」
     そういやこいつも人間についていったんだった。つーことはこいつ、バトルやって、ジム行って、もしかして、そうとう強いのか。うわっ、森にいたときはただの軟弱やろうだったのにそれはむかつく。でも、懐かしい。久しぶりに森の仲間に会えてうれしい。森での生活を思い出す。ああ、もの凄くのんびりしてたよなあ。
    「私ですか? 私はあのクズトレーナーに捨てられたんで、森に戻ろうかと思ってるんです」
    「……捨てられたあ?」
     思わず、素っ頓狂な声を出しちまった。ヤミカラスの言葉は、俺の頭ん中を驚き一色に染めあげるには十分だった。
    「私のような弱くて格好悪いポケモンは、いらないそうですよ。最初しぶいとか言われて気に入られたのをいいことに、調子に乗った私も悪いんですけどねえ。ニューラとかいうやたらキザな野朗を仲間にしてから、私なんてもうクズ扱いですよ。でもだからってすぐ抜けては癪なんで、私も嫌嫌ここまでついてきたんですけど、とうとうお払い箱になっちゃいました。ああ、本当人間ってクズですよねえ。こんなに連れまわしておいて、お前は弱いからいらないだって。ああ、本当にゴミ。ありゃあ世界のゴミですよ……」
     ヤミカラスは最後はもう、顔をしかめながらゴニョゴニョと恨み言を呟いていた。
    「……後悔は?」
    「なんのですか? ……ああ、ついていったことにですか? しているに決まってるじゃないですか。バトルばかりさせられて、あちこち連れまわされて、まあ無駄に力はつきましたが、それだけですよ」
    「……そうか」
     ヤミカラスのトレーナと、ボウズを重ねる。そんなことを考えたとき、俺は自分に驚いた。不思議と、きっと怒ったり恨んだりしねえなあ、と思った。いや、むしろ――。
    「ねえケーシイさん。あなたもトレーナーに捕まってここまで来たんでしょう? だったら、この辺でそんなのやめにして森へ帰りましょうよ。どうせ人間なんて私らのことをバトルの道具としか思ってませんって。ちょっと好みが変わったり強いのが手に入ると、途端に態度が変わるんですから」
     人間はクズ。ヤミカラスの言葉が、俺の頭をつんざくように刺さってきた。ボウズと旅した記憶が、切り取られた絵のように頭にたくさん浮かんだ。ボウズは笑っていた。いつでも楽しそうに、笑っていやがった。スリープもそんなボウズを見るのが好きらしく、ニヤっと間抜け面を歪めて笑っていた。……じゃあ、俺は? 俺は?  ――俺は?
    「何ぼうっとしてるんですか。もしかして、人間についていくなんて言うんじゃないでしょうね。あんなのについていっても損するだけですって。ケーシイさん、いつもそう言っていたじゃないですか」
    「あ、ああ。わかってる」
    「うーん、じゃあ明日の昼、朝は眠いんで昼です。北の森の前で待ってますから、来てくださいね。……ああ、ケーシイさんと話していたら、早く戻りたくなっちゃいましたよ」
     そう言って、ヤミカラスはパタパタと去っていった。今日は、トキワの森の木にでもとまって眠るつもりだろう。
    「明日、ねえ」
     小さくなっていくヤミカラスを見ていると、考えるのが億劫だった。

    【五】
      翌日。太陽の光を浴びながら、一睡もできなかったようなダルさを覚える体を起こす。ボウズは、すうすうと寝息を立てて眠っている。スリープも、多分起きない。それが何故かとても残念なことのように感じる。……だめだだめだ。俺はもう、帰るんだから。
    「じゃあなボウズ。ついでに、スリープも」
     ボウズの顔をもう一度見ておこうと思ったが、それをやってはいけない気がして、それをやったら何かがどうにかなる気がして、俺はすぐテレポートした。
     俺のテレポート範囲なんてたかが知れている。案の定森まで一気に移ることは出来ず、森から大分離れたところに移り、そのままふわふわと浮かんで森へと移動する。だんだんと、森が鮮明になってくる。森への入り口となる木の上に立つ、ヤミカラスが見える。ああ、俺は帰るのか。なんとなく躊躇する自分がいる。このまま、このまま行っていいのか? 結構な期間、俺をひたすら仲間だと信じたあいつらと一緒に旅をしてきたその終わりが、これでいいのか? なあ、おい。俺。どうなんだよ。そんなんでいいわけ? あいつら、クズだったか? 外の世界の探検は、つまらなかったか? 足りなくはないのか?
    「あ」
     もう、森に着いてしまった。ヤミカラスは、まだ木の上で眠っていた。あいつらが寝ているうちに飛び出してくるのはいいが、くそ、昼までは少し時間がありすぎる。
    「……仕方ねえ。こいつ元々夜行性だし、今は寝かしておいてやるか」

    【六】
    「あんな馬鹿な奴らの顔を一生拝まないで済むなんて、本当せいせいしますよね」
      ヤミカラスが起きるのを待とうと木に寄りかかっているといつの間にか寝てしまったらしく、昼近くになって起きだしたヤミカラスが俺を起こしにきた。なんだかやたら元気に、嬉しそうにしていた。
    「……一生会えない、か」
    「なにぼそぼそ言ってるんですか。さ、行きましょう」
    「ああ」
     ヤミカラスはぱたぱたと空へ羽ばたき、俺も一緒に浮かび上がる。
    「ああ、本当楽しみだ。皆、僕らのこと覚えてますかねえ」
     ヤミカラスの後ろについていきながら、ちらっと後ろをふり向くと、トキワシティがどんどん遠くなっていく。
     おい俺。どうなんだよ俺。探検は、つまらなかったか? ディグダの穴、面白かっただろう? ポケモンタワー、恐かっただろう? ヤマブキシティ、凄かっただろう? リニアモーなんとかってやつ、乗りたいだろう? まだ行ってないところがたくさんあるよなあ。まだ面白いポケモンがきっといるよなあ。あいつらと一緒に、まだ、旅したいよなあ。今まで旅をしてきて、楽しかったよなあ。あいつらのこと、好きだよなあ。なあ、俺。どうなんだよ。
    「……ケーシイさん?」
     突然止まった俺に気付いて振り返ったヤミカラスは、怪訝そうにこっちを見た。
    「何、やってんですか? 早く行きましょうよ」
    「…… なあ、ヤミカラス。知ってるか? この世界にゃさ、いろんな人間がいて、いろんなポケモンがいる。中にはクズみてえな奴もいるし、とびっきり楽しい奴だっているんだ。いつも間抜け面してるくせに変なところ鋭い奴や、いつもにこにこしてて世界を探検するのが大好きな奴とか。そいつら、本当に本気で俺のこと信用してやがってよ、隣にいる俺がなぜかいっつも悪者みてえなんだ。その間抜けの奴なんか、最初の条件なんかぜってえ忘れてるぜ」
    「へ? 何、言ってるんですか?」
    「悪い。俺、森は好きだけど、あいつらのことも好きだ」
     まだ、探検したりねえよ。まだ見てないことばっかりだ。なあ、俺。
    「なに言ってんですかケーシイさん! そんなのやめたほうがいいですって! 無駄ですって!」
    「無駄じゃねえよ。楽しいぜ、探検。森以外に、こんな楽しい場所があるなんて、俺、知らなかったもんな。俺にとっちゃ、この世界はまだまだ未開の地ばかりだ。まだまだ足らねえよ」
    「な、なにを……なにを馬鹿なこと言ってんですか!」
    「馬鹿か。俺も、昔はこんなことする奴は馬鹿だと思ってたけど、でもさあ、馬鹿でいいじゃん。馬鹿、楽しいぜ」
    「なっ!」
    「悪いヤミカラス。先、戻っててくれよ」
     わーわーと反論するヤミカラスに背を向け、俺は、すぐにテレポートをした。体が軽い。ああ、俺のくせして、なんてざまだ。あんな奴らが大好きなんて、本当、どうかしてるぜ。

    【七】
      人間ってえのはえてしてポケモンの邪魔にしかならねえ。修正。人間ってえのはポケモンの邪魔にも人間自身の邪魔にもなる。そう確信したのはいつごろだったか、もう、大分前だったように思える。でも、それを再確認したのは、たった今だった。俺が急いでトキワへ戻るとすでにポケモンセンターにはおらず、一体どこに行ったかと思えば、そのまま次の目的地のマサラへ向かおうと南下していた。南下していて、柄の悪い頭がおっ立ったトレーナーに絡まれていた。セキエイ大会一回戦でグリーンとかいうあのアホみたいに強い奴に負けたことにまだむしゃくしゃしていて、ボウズで憂さ晴らしなんつうアホな真似をするつもりらしく、そんな様子を上空から見ていた俺は、バトルなんかからっきしなくせして、迷わずボウズの盾になるスリープの隣に突っ込んだ。迷うはずがなかった。
    「あ、ケ、ケーシイ! どこ行ってたんだよ! 探したんだぞ!」
     震えた声で騒ぐボウズにすまんと一鳴き入れ、俺はすぐさまスリープの横に並び、へらへらと笑いながらモンスターボールを構えるトレーナーとにらみ合う。ああ、俺達、もうちょっと強くなったほうがいいよなあ。旅とか探検っつっても、ボウズを守れなきゃ話になんねえ。洞窟とか山でいつもいつも逃げてるばかりじゃまずいよなあ。こりゃあやっぱり、あのグリーンとかいう奴のとこ乗り込んでみた方がいいかもなあ。
    「お、もういいんかい? ヤミカラスとのお話は済んだんかい?」
    俺が戻って来たのがまるで当たりめえかのように、スリープは俺の方を一つも見ずに喋りだした。
    「……なんだよ、おめえ、知ってたのかよ」
    「ぼかぁ、ゆめくいが使えるんですわ」
    「……朝やたら体が重かったのって、もしかして寝不足じゃなくておめえのせいか」
    「へっへへ。まあ、硬いこといいっこなしですぜ。今は、こいつをどうにかしないと」
     そういえば、いつの間にかこいつの変な語尾も気にならなくなってる。
    「一つだけ、提案してやる。俺をもう一度入れてくれるってなら、俺がこの場をどうにかしてもいい」
     俺のその提案に、くつくつとスリープは笑った。いつも通りの展開。俺達の自然体。探検仲間の自然体。ああ、いい。こいつら、やっぱり好きだ。
    スリープは、今度はちゃんとこっちをふり向いて、口を開く。
    「ま、一つよろしく頼んますわ。いつもの通り、やって頂戴」
    「がってんしょうち!」
     相手はライチュウ。どうひっくり返っても勝てっこねえ。というわけで、いつもの通りやってやらあ!
     選択肢は、未だ一つ。スリープの手をとり後ろへ逃走。そのままボウズの手をとって、あらよと発動伝家の宝刀テレポート!

    [了]


    【何をしてもいいのよ】


      [No.1158] 物知りミツハニーはJavaScriptの夢を見るか? 投稿者:586   《URL》   投稿日:2011/05/08(Sun) 15:49:41     111clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ある晴れた日のことです。一匹のミツハニーが、巣にあまいミツを持ち帰っている途中のことでした。

     「今日も大変だね、センターくん」
     「だよねー。これでもう十六往復目だよ。ライトくんは?」
     「ボクも疲れたよ〜。でも、帰ったらまた出かけなきゃいけないんだよね〜」

    ミツハニーは一つの巣に何百匹も集まって、一緒に暮らします。その巣を統率しているのが、女王様のビークインです。彼らは女王様のために、あちこちからミツを集めてきています。

     「僕たちって、ずっとこうやって働き続けるのかな?」
     「タブンネ、じゃなくて多分ね。他のミツハニーたちもそう思ってるはずだし」
     「分かってるけど、何だかやるせないね〜」

    てきぱきと働いているミツハニーですが、やっぱり時々こんなことも考えるようです。そうですよね、働いてばかりの人(?)生なんて、ちょっと寂しいですよね。人(?)生にもう少し彩りがあってもいいんじゃないか、そう思っても仕方ないですよね。

     「何かいいことがあればいいんだけどな……」
     「そうだね。少しくらい、楽しいことがあってもいいと思うんだけど……」
     「う〜ん……あっ、そうだ! ボク、一つ思い出したことがあるよ!」
     「何々、何を思い出したの?」
     「ライトくん、教えてよ!」

    右にいるライトくんが、何かを思い出したようです。左のレフトくんと真ん中のセンターくんが、ライトくんに期待のまなざしを寄せます。

     「えっと、難しい話になるんだけど……」
     「大丈夫だよ。難しいことは、語り部さんがやわらかくして書いてくれるからさ」
     「そうそう。細かいことは語り部さんに任せちゃえばいいんだよ」

    586<3282(み・つ・は・にー)。数値の大きさは絶対なのでした。

     「コンピュータの『スクリプト言語』(※1)に、『JavaScript』(※2)って言語があるんだ」
     「それは知ってるよ。新しく窓を開いたり、画像にカーソルを当てるとズームさせたりするようにできるんだよね」
     「そうそう。『Webページ』(※3)を『動的に表現』(※4)するために使われるんだ」

    最初から説明・注釈が必要な単語やら表現を連発しやがってからに!

     「それで、JavaScriptっていう言語なんだけど、これがちょっと変わった言語なんだ」
     「へぇー。どういう『仕様』(※5)なの?」
     「スクリプト言語だから、『コンパイル』(※6)はいらないよね」

    どこでこんな知識を仕入れたのでしょうか、レフトくん・センターくん・ライトくんの会話はぴったりかみ合っています。全然ミツハニーらしさがありませんね。

     「それもそうだけど、それよりもっとすごいんだよ。なんたってJavaScriptは、『プロトタイプベース』(※7)の『オブジェクト指向プログラミング言語』(※8)なんだから!」
     「それって、普通の『クラスベース』(※9)のオブジェクト指向プログラミング言語と、どう違うのさ?」
     「名前からすると、『C言語』(※10)とかの『プロトタイプ宣言(関数プロトタイプ)』(※11)みたいに聞こえるけど……」

    先生! これはポケモン二次創作小説ですか? いいえ、ケフィアです。

     「ちょっと違うよ。プロトタイプベースのオブジェクト指向プログラミング言語は、クラスベースのオブジェクト指向プログラミング言語と違って、『オブジェクト』(※12)や『インスタンス』(※13)を『後から拡張できる』(※14)性質があるんだ!」
     「えっ?! オブジェクトやインスタンスを後から拡張できるの?!」
     「普通の言語だと、そんなこと絶対できないよね……」

    ライトくんの言葉を驚きを持って迎えるセンターくんとライトくん。確かにこれは驚きですね。多分ね。

     「そっか……スクリプト言語でも、後から拡張が出来るものがあるんだ……」
     「そう! だから僕たちも、頑張ればいつかもっとすごくなれるはずだよ! JavaScriptのオブジェクトみたいに!」
     「JavaScriptのオブジェクトが後から拡張できるんだったら、ぼくたちミツハニーがすごくなれない道理がないよね!」

    いやその発想はおかしい。どう考えてもおかしい。天地がひっくりかえってもおかしい。

     「よーし! 僕たちもいつかJavaScriptのオブジェクトみたいに、後から拡張してもらうぞー!」
     「みんな、頑張ろーっ!」
     『おーっ!!!』

    何もかも間違えたまま、ミツハニーは今日もあまいミツを頑張って巣に持ち帰るのでした。このミツハニーがビッグになれる日は、果たしてやってくるのでしょうか(※15)。






    おしまい(※16)。
























    ※1【スクリプト言語】
    コンピュータに処理を行わせるために人間が書くプログラムのうち、基本的に「プログラムを書く」だけで動くようになる言語のこと。JavaScriptや、掲示板等のCGIプログラムで頻繁に使われるPerl・PHPなどが該当する。


    ※2【JavaScript】
    90年代初頭にかけて大きなシェアを誇ったWebブラウザの「Netscape」(ネットスケープ)が搭載した、Webページ向けのスクリプト言語。当初は「LiveScript」(ライブスクリプト)という名称だったが、同じ時期にサン・マイクロシステムズ(現在はオラクルに買収)が開発したプログラム言語である「Java」が注目されていたことと、Netscapeの開発元であるNetscape社とサンが業務提携していたことが重なり、マーケティング上の理由から「JavaScript」に名称が変更された。ただし、実際には「Java」と「JavaScript」は、基本的な文法に類似点はあれど異なる設計思想を持ち、まったく違う言語であることに注意を要する。


    ※3【Webページ】
    Webブラウザに表示される文書。一般的に「ホームページ」と呼ばれるものは、実際には「Webページ」または「Webサイト」を指すことがほとんど。「ホームページ」は本来、Webブラウザの起動時もしくは「ホーム」ボタンを押した際に表示されるWebページのみを指す。「Webサイト」は、特定のドメインまたはディレクトリの配下にあるWebページを統括して指すための呼称。日本国内では「ホームページ」という単語が「Webページ」「Webサイト」「(本来の意味の)ホームページ」をまとめて指すことが多いが、実際には正しい用法ではない。


    ※4【動的に表現】
    特定の条件(時間やユーザの操作)をきっかけとして、何らかの「動き」を見せること。マウスを画像に当てると拡大したり、時間になると画面の色が変わるなど。インターネット上でこの言い方がされる場合、ページの遷移(移動や更新)を伴わず、そのページ内で処理されることを指す場合も多い。


    ※5【仕様】
    動作や挙動について定めたもの。「仕様書」「プログラム仕様」などの文脈で使う。インターネット上では、ソフトウェアの不可解な挙動や明らかなバグを開発者やメーカーが「仕様」と言い張ることを揶揄してネタにすることが多いが、実際には「仕様」という言葉自体にネガティブな意味合いは存在しない。あくまでも、対象となるものの動作や挙動について定めたものに過ぎない。


    ※6【コンパイル】
    ユーザが書いたプログラムを、コンピュータが処理できる形式に変換すること。この作業が必要なプログラム言語を、スクリプト言語の対義語としての意味合いもこめて「コンパイル言語」と呼称することがある。縦横にスライムのような何かを四つ以上並べて消すパズルゲームの開発元の名前は、この単語から取られていると言われている。


    ※7【プロトタイプベース】
    既に存在するオブジェクトを「プロトタイプ」(仮組み)と考え、仮組みに新しい機能を追加したりしてオブジェクトを作るプログラム言語の考え方。メジャーな言語ではJavaScriptがこれに当たる。クラスベースのオブジェクト指向プログラミング言語に比べて、生成されるオブジェクトを後付で拡張して機能を持たせられることが大きな違いとして挙げられる。


    ※8【オブジェクト指向プログラミング言語】
    オブジェクトを生成し、オブジェクト同士を通信させながらプログラミングを行うことを「オブジェクト指向プログラミング」、オブジェクト指向プログラミングを効率的かつ合理的に行う仕組みを言語仕様に備えた言語を「オブジェクト指向プログラミング言語」と呼ぶ。オブジェクト指向プログラミング言語を使わずとも、「オブジェクト指向プログラミング」は可能だが、オブジェクト指向プログラミング言語を用いたほうが良いことは言うまでもない。


    ※9【クラスベース】
    あらかじめ、オブジェクトの「ひな形」になる存在(クラスと呼ぶ)を定義しておき、プログラムの実行時にクラスから実体(インスタンスと呼ぶ)を生成すると言うオブジェクト指向プログラミングの考え方。メジャーな言語では、C++・Java・C#などが該当。一般的に「オブジェクト指向プログラミング言語」と呼んだ場合、こちらのタイプを指すことがほとんど。


    ※10【C言語】
    1970年代に開発されたプログラミング言語。「言語」の付かない「C」と呼ばれることも。あまりにもメジャーな手続き型言語で、情報系の大学や専門学校では「とりあえずC言語から入る」というカリキュラムが今でも組まれている。C言語から派生した言語も多く、C言語の基礎を押さえていれば他の言語の習得も早い、と言われることがある。ハードウェアに近いオペレーティングシステムやデバイスドライバの開発に使用されることが多い。


    ※11【プロトタイプ宣言】
    プログラムから呼び出す「関数」(処理のカタマリのこと)の情報を前もって最初のほうで定義しておき、関数の本体が現れるまでにその関数が呼び出されたとしても、コンパイルを行う「コンパイラ」(Compiler・コンパイルを行うプログラムのこと)が混乱しないようにすること。上記の「プロトタイプベース」とはまるっきり意味が異なるが、あらかじめ「仮組み」を用意しておく、という考え方だけは一致しているので余計にややこしい。


    ※12【オブジェクト】
    やや乱暴に言うと「処理(振る舞い)とデータ(情報)をひとまとめにした」存在。スプーンを持った携帯獣電子工学を専門とする山吹大学の客員教授が挙げた例を引用すると、『ボールペンは「ペン先で書く」「ペン先を出す」「ペン先をしまう」といった処理を持ち、「色は黒」「材質はプラスチック」「インクの残量は半分ほど」といったデータを持っている』というような言い方ができる。振る舞いと情報で、あらゆる物を表現できるという考え方が根底にある。


    ※13【インスタンス】
    クラスベースのオブジェクト指向プログラミング言語で、ひな形であるクラスから作り出された実体のある存在。クラスベースのオブジェクト指向プログラミング言語のプログラミングにおいては、生成したインスタンスをあれこれ操作して処理を行う。クラスが「たい焼きの型」、インスタンスが「たい焼き」と考えると分かりやすい。うぐぅ。


    ※14【後から拡張できる】
    プロトタイプベースのオブジェクト指向プログラミング言語の最大の特徴。クラスベースのオブジェクト指向プログラミング言語では、生成元のクラスに定義されている機能だけが備わっており、後から拡張することはできないが、プロトタイプベースのオブジェクト指向プログラミング言語は、プロトタイプから作り出したオブジェクトに後から別の機能を追加することができる。この概念が、クラスベースとプロトタイプベースという二つのオブジェクト指向プログラミング言語を分けている。


    ※15【このミツハニーがビッグになれる日は、果たしてやってくるのでしょうか】
    ちなみに言い忘れていたが、彼らの性別は♂。


    ※16【おしまい】
    オチてない。






    ---------------------------------------------------------------------------------

    この産業廃棄物が誕生するに至った経緯は、5/7のチャットで火野さんが



     「58さん(原文ママ)が ミ ツ ハ ニ ー と J a v a ス ク リ プ ト で小説書いてくれるんだって!」



    などという常軌を逸した無茶振りをしてきたからです。お問い合わせは火野さんまでお願いします(放置プレイ決め込みモード

    あと、大方の予想通り本文より注釈のほうが長い。


      [No.1157] 和菓子屋本舗幻想黒狐 投稿者:キトラ   投稿日:2011/05/08(Sun) 01:25:02     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     しっぽをふりふり、人通りの多い街へ行く。飼ってくれている人間からのおつかい。首に唐草模様の風呂敷が巻いてある。その中にお金と品物が書いてあって、指定のところまで行けばいい。
     その名はゾロア。自慢ではないが、人間の他の手持ちの雌にモテモテ。というのも、ライバルとなる雄が水中にいるようなやつだったり、飛んでるやつだったりして、モテるというより、陸上を住処にしている雄がゾロアともう一匹だけのこと。
     今日もゾロアは指定されたお店にやってきた。老舗和菓子屋で、ゾロアが来ると見るとお店の人は唐草模様を取り、代金と手紙を読んだ。店の奥へ行くと、品物をゾロアに結びつけてくれる。そうしてゾロアは人間の元に帰って行く。
    「あら、今日は灯夢ちゃんも来たのね」
    ゾロアと入れ替わるようにロコンがやってきた。今までの雌とは違う、洗練された大和撫子。ゾロアは足をとめて釘付けになった。ロコンが品物を持って店を出る。その瞬間を逃さず、ゾロアは声をかける。
    「な、なあ、俺と付き合わないか!」
    大和撫子が振り向いた。狭い世界の雌だったけど、全員がゾロアの誘いに乗っていたし、今回も絶対行けると思っている。それだけの自信がゾロアにはあった。
    「ウチ?」
    独特の言葉のイントネーション。品のある言い方はあそこの雌にはない!ゾロアは確信した。
    「ウチは今、彼氏は募集してへんで?」
    ほな、またなとロコンは歩いて行く。その後ろ姿を信じられないという目でゾロアは見送った。


    「うわーーーーん、初めて振られたんだぁ!!!!」
    その夜。兄貴分のライチュウにゾロアは今日あったことを全部話した。大和撫子なロコン、そしてふられたこと。ふられた今もなお、全く忘れられない。オレンスカッシュを冷蔵庫から勝手に持ち出して暴れていた。
    「・・・ゾロア、そうやって男は成長するんだ。まだ若いんだから他に女はいくらでもいるさ」
    「いねえよぉ、俺にはあの子しかいねえよぉ!!!!」
    ライチュウはモモンネクターを飲んでいる。恋の病は時間で落ち着く場合と、落ち着かない場合がある。
    「そうか、ゾロア、忘れられない時はとことんアタックしてとことん振られろ」
    「でもどうやって!初めてみるロコンだったんだぜ!」
    「和菓子屋で会ったんだろ。もしかしてそのロコンは和菓子が好きなのかもしれない。買ってた種類は?」
    「みたらし団子三つ」
    「毎日、みたらし団子を渡してプレゼント攻撃するのも良い手かもしれんぞ」
    「そうか!」
    落ち込んでいたのが嘘のよう。いきなり起き上がり、目を輝かせる。
    「俺がみたらし団子を作ればいいんだ!でもどうやって作るんだろう」
    「・・・調べてみるか?」
    ライチュウは器用に人間のノートパソコンを開く。唯一、文字が読めるし人間と会話も出来ている。どこで知ったのかは謎である。
    「えーと、料理ブログでトップのきとかげクッキングファイルによれば、『白玉粉、とかで団子をつくって、お湯に入れて浮いてきたらすくい上げる。たれはみりん・醤油に砂糖、お水。でもって水溶き片栗粉を入れてとろーりと仕上げる』だって」
    「え!?それだけ!?」
    「あと読めない。人間に読んでもらおうぜ」
    ライチュウはブックマークに入れると、パソコンの電源を切る。
    「焦るなよ。恋は焦ってもいいことない。また明日な」
    サッサと寝床にはいるライチュウ。文字が読めないことをうらめしく思った。
    「そうだ、人間と話せるようにならなきゃ。バイリンガルになるんだ」
    寝床につく。隣では言いよってくる雌たちがいるが、ゾロアの目には入らない。あの大和撫子ロコンのみ。
    「名前、そういえば灯夢ちゃん、とかおばちゃん呼んでたなあ、あの子の名前なのかなあ」
    中々寝付けない。何度も寝返りを打ってるうちに、いつの間にか眠った。

     次の朝。人間はいきなりライチュウとゾロアに正面から頼み事をされた。惚れたロコンのためにそこまでしたいというゾロアの希望と、なんて書いてあるか解らないというライチュウの要望。
    「まずゾロア。みたらし団子つくっても、会えなかったらどうするんだ?そしてライチュウ、人のパソコンを使ってもいいけど、書き込むなよ」
    なんと朝、料理ブログの管理人からメールが届いていたという。
    「これはチャンスだと考えるんだ、毎日みたらしを作って、その内『ゾロアくんのみたらしでないと食べられへんわぁ♪』と言わせるんだ!っていうメールが来てたぞ。覚えのないメールは緊張するから、書き込むなら一言いってくれ」
    その後、ぶつぶつ人間は言っていたが、ゾロアの耳にはよく解らない。その間もずっとどう渡そうか考えていた。そして昨日のことを思い出しているうちに、あることを思い出す。
    「ライチュウ、ライチュウ。俺も団子作って売ればいいんだよ!そしたら会いに行かなくても来てくれるじゃないか!」
    この突飛なアイディアにライチュウはあきれたが、一応人間には伝えた。もちろん、人間はダメだという。
    「そもそも、お前は四足歩行。料理を作るには手が最低2本ないといけない。その手はいつも清潔でなければ営業はだめなの」
    じゃあこうすればいい、とゾロアはイリュージョンを使って目の前の人間そっくりになる。
    「だからイリュージョンつかっても、結局は四足歩行してるでしょ。歩かないで商売できるのか!」
    少し考えた後、ゾロアは後ろ足で立つ。そして、前足をテーブルに置き、後ろ足で移動できる範囲で移動して、前足は常に清潔、と訴える。それには人間も考えた。
    「・・・まあそこまでやりたいなら止めない。けど、人間の世界は毛が入ってただけで大騒ぎだからな、気をつけろよ」

     宣伝、呼び込み、団子の焼ける匂い、みたらしの香り。やれることはなんでもやった。ゾロアは奥の厨房で団子を作っている。店頭が見えるようにガラス張りで。
    「お、ここが新規開店の団子屋さんかあ、一個もらおうかな」
    「まいど!90円になります!」
    人件費はほぼゼロ。人間が手伝ってくれるおかげで、計算とか会話をパスできる。ポケモンたちも手伝ってくれるために料金の内訳は材料費が主。
    「おひとつくださいな」
    その声は!厨房の奥からゾロアが飛び出した。清楚な声、輝く見た目のロコン。
    「灯夢、さん!」
    「どちらさん・・・ああ、あんさんあのときの」
    「ど、どうです!?灯夢さんのために、みたらし団子を・・・」
    「ウチのために?ウチはみたらしには厳しいで?」
    灯夢の目が光ったように思えた。それすらも今のゾロアには嬉しすぎる反応だった。そして灯夢はできたてのみたらし団子を一口いれた。
    「んむ、焦げ加減が甘い、みたらしの甘さが足りん……55点やな。もっと修行が必要やなあ」
    そのまま灯夢は店を後にする。少し歩いたところで、振り返った。
    「そもそも、店の名前がないのでは、評価もしようがありまへんなあ」
    そして振り向かずに灯夢は人ごみにまぎれる。彼女に言われたことがこだまして心に刺さる。この味は人間は中々といってくれた。ライチュウもよくわからないと言いつつ良いと言った。けれど灯夢の満足レベルが高すぎる。唖然と、消えていく灯夢の後ろ姿をいつまでも追い続けた。

     初日にしてはそこそこの売り上げを記録し、人間はほめてくれた。しかしゾロアは厳しい評価をされたことが納得できず、しかも店の名前がないことが気になる。そもそも、ちゃんとした個ポケモンの名前がない!
    「なあなあ、俺たちにもちゃんと名前つけてよ!それで店の名前かえようぜ!」
    ゾロアが訴えると、人間は解らないという顔をしていた。
    「団子屋、じゃダメなの?」
    「だめー!もっとインパクトあって、記憶に残るような・・・」
    ふと人間、ライチュウの視線がゾロアに集まる。それに気付いて、どうした、と後ずさり。
    「和菓子屋本舗幻想黒狐、だな。言い出しっぺの名前をつける法則」
    ただの特性とゾロアを漢字にしただけの名前。ライチュウはそれでいいそれで、と大喜び。
    「んで、ゾロアはクロミツ、ライチュウは金柑とでも名乗っとけ。嫌ならそのままでよし」
    こうして、和菓子屋本舗幻想黒狐は団子一筋の和菓子屋として始まった。


    ーーーーーーーーーー
    チャットで話していたログを元に構成されました。
    ネタとくださった皆様、ありがとうございます。
    最後に、お名前をお借りしたきとかげさん、灯夢さんを使わせていただいた巳祐さん、ありがとうございました

    【なにしてもいいのよ】


      [No.1156] Re: 第二回ストコンの投票期間について質問 投稿者:No.017   投稿日:2011/05/07(Sat) 12:18:35     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    おっしゃるとおりです。
    土曜日まで募集をし、日曜日中にせっせと投票準備をし、日曜日夜くらいから投票って感じです。
    理由は月曜日が仕事なので、日曜の深夜に投票準備を始めると、死ぬからです。

    日曜日に準備してる間に滑り込み応募が来た場合は受け付けます。
    (いわゆるロスタイム)

    ただ管理人の都合で延びることはありえます。(オイ
    (ただし今度は延びても1日くらいです)



    追伸、
    というか 8日(土)って誤表記にしてたのね(
    すいませーん


      [No.1155] 【標準語】モミジム三連戦! 1/3【翻訳】 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/05/07(Sat) 07:51:32     120clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:翻訳して】 【違和感を感じたら】 【広島人

    ※こちらは「モミジム三連戦! 1/3」の標準語翻訳版です。
     広島弁が読めなかった方は、ぜひこちらもご覧ください



    「たのもーっ!」

     おぉ、元気のいい声だなぁ。キセルをふかしながら俺はぼんやりとそう思った。
     挑戦者か。随分と久しぶりだなぁ。しばらく誰も来ていなかったから、何か懐かしいなぁ。

     ベンチに寝転んだままぼんやりしていると、頭を叩かれた。何するんだ、と俺は後ろにいた男……ケンタに言った。

    「挑戦者が来ているよ。ちょっとは動いたらどうだい?」
    「わかってるよ。ちょっとぼけっとしてただけだろ」
    「また飲んでたの? ほどほどにしておかないと、体に良くないよ?」

     枕元にある白牡丹の一升瓶(空になっている)を拾い上げた女……セトナはため息をついた。

    「それは昨日の夜の分だ。さすがに今日はまだ飲んでないさ」
    「それじゃあこっちのまだ開いてない方は?」
    「そっちは今日の分だよ。いいだろ別に」
    「もういいから、早く起きなよ。一番手だろ」
    「ああごめんごめん。今行くよ」

     キセルの灰を落として、賀茂鶴の瓶を片手に、俺は起き上がった。



     挑戦者を見て、俺はちょっと驚いた。

    「何だ、挑戦者が3人いるのか」

     ジムに来ていたのは、男が2人と女が1人。3人で旅をしているらしい。
     それにしても3人旅。仲のいいことだなぁ。


     このジムはジムリーダーが俺、ケンタ、セトナの3人。
     挑戦者は、俺たち3人を全員勝ち抜きで攻略しないと、このジムのジムバッジ、メイプルバッジは渡せない。
     俺たちは1人2匹使っているから、まあ普通のトレーナー1人を相手にするのと数は変わらないんだけどな。

     にしても、どうしようかなぁ。
     何と言っても今日は5月5日。鯉のぼりの日。俺たちモミジシティ人の愛する野球チーム、モミジ東洋マジカープの日だからなぁ。ちょっとぐらいサービスしてあげてもいいと思うんだけどなぁ。

     ……あ、いいこと思いついた。
     俺は3人の挑戦者に向かって言った。

    「そうだなぁ、本当は3人抜きしないといけないんだけど、せっかく3人で来てくれたんだから、1人ずつ相手してやるよ」
    「えっ」
    「おいおい、勝手に決めるなよ。酔ってるのか?」
    「酔ってねえよ。いいじゃないか。今日は祝いの日だぜ。それに、そのくらいの方が面白いだろ?」

     私は別にいけど、ってセトナが言って、ケンタもしょうがないなぁって言ってため息。
     とは言っても、この中で一番バトルが好きなのはアイツってことは、俺はよく知ってるけど。

    「勝負は2対2の勝ち抜き。回復禁止。誰か1人でも俺たちに勝てたら、君たちがバッジを持って行きなよ。いいか?」
    「は、はい」
    「じゃ、俺が最初に行くよ。君たちは誰から来るんだ?」

     俺が言うと、挑戦者は何か話し合って、女が前に出てきた。

    「ふーん、君か。それじゃ、早く来なよ」
    「あ、あの……怒ってます?」
    「怒ってないよ。だから早く来な」
    「ううっ……絶対怒ってる……」
    「いいから早く来いって!」

     ひぃっ、すみませんっ! って言って女は走ってきた。
     名前は? って聞いたら『アキ』って言ってきた。

    「そうか。俺は『ジョウ』。使うのは草タイプだ。ま、よろしくな」



     手持ちの中から2匹選び、更にボールを1つ選んだ。
     それじゃあやろうか、と言うと、アキはお願いします、と頭を下げた。

    「行くよ、ウルガモス!」
    「おぉ、最初っから容赦ないなあ。それじゃあ、頼むぞ、えいちゃん!」

     俺はヤナッキーのえいちゃんを出した。名前はもちろん、あの谷沢永一(通称永ちゃん)からだ。
     セトナが、もう、本当にどうしようもないねぇ、とため息をついた。

    「アンタ、本当にそのネーミングセンスどうにかしなさいよ」
    「いいだろ別に」

     あのー、始めてもいいですかー? ってアキが言ってきた。ああごめんごめん、勝負に戻らないとな。


    「ウルガモス、『ぎんいろのかぜ』!」
    「ひゃあ、怖い怖い。えいちゃん、『かげぶんしん』!」

     何とか避けられた。あー怖い怖い。
     こっちが『ふるいたてる』を出したら、あっちも『ちょうのまい』。
     ふぅ、さて、どう来るかな……ん?

    「! えいちゃん、跳べっ!」
    「ウルガモス、『ねっぷう』!」

     跳んでかわしたんだけど、かすってしまった。だけどそれでも相当なダメージ。すごく強いなぁ。
     えいちゃんはマゴのみを取り出して食べた。うーん、かすっただけでこれとは。本当にむごいな。
     アキはそれ見ろ、とでも言いたそうな顔でこっちを見ている。

    「相性最悪ね。私が負ける要素が全然ないわ」
    「……俺は小理屈を言う奴は好きじゃない。最後までやらないとわからないだろ?」
    「ジョウ、何拗ねてるの?」
    「拗ねてねぇよ。ちょっと待ってろ」

     キセルをもう1回くわえ直す。1回大きく吸い込んで言った。

    「『アクロバット』!」

     持ち物がなくなって軽くなったえいちゃんは高く高く跳び上がった。それで体をひねってウルガモスに蹴り。
     頭と体の付け根に直撃した蹴りは、そりゃぁものすごくよく効いたようで、ウルガモスは力尽きた。
     アキはなんてこったい、といった顔でぽかんとしていた。
     煙を吐き出して俺は言った。

    「俺たちはな、リーグの前の最後の砦なんだ。そんなに簡単に越えられたら困るんだよ」
    「一……撃……」

     ぽかんとしていたアキは息を吐いて、頭を下げた。

    「……すみません。モミジジムなめてました」
    「ん、わかればいいさ。俺は強い奴が好きだからな。ま、張り切って来いよ!」

     俺が言うと、アキはしっかりとうなずいた。


    「お願い、ジュペッタ!」

     アキが投げたボールから、ジュペッタが出てくる。なるほど、いい目をしているな。
     俺はえいちゃんにもう1回『ふるいたてる』を命じた。

    「ジュペッタ、『シャドークロー』!」

     黒い爪がえいちゃんをひっかく。へぇ、こりゃあ、よくやるなぁ。

    「えいちゃんっ!」
    「ジュペッタ、『トリック』っ!」

     跳び上がったえいちゃんが、地面に落ちた。えいちゃんが持っていたはずのない、黒い玉が背中に縛り付けられている。
     くろいてっきゅう、か。素早さと身軽さが第一のえいちゃんにはきついな。

    「ジュペッタ、『ダストシュート』!」

     えいちゃんが手こずっている間に、ジュペッタの技が決まった。
     ふうやれやれ、参ったなぁ。強い強い。

    「……よくやったな、えいちゃん。休んでなよ」
    「私も、負けるわけにはいきません。あなたたちに勝って、リーグに行きます!」
    「そうか……そうだな、俺たちジムリーダーは乗り越えられるためにいるようなもんだからな」

     俺はボールを取り出す。もう1回キセルをふかして、言った。

    「……だけど、俺もそんなに簡単には負けるわけにはいかないからなあ。行け、アスベスト!」

     そうだ。俺は、そんなに簡単には負けられない。
     俺は昔知り合いにもらった、エルフーンのアスベストを場に出した。

    「……本当に、アンタ、そのネーミングセンスどうにかしなさいよ。本当に」
    「知るか。俺にこいつをくれた奴に言ってくれよ」

     俺だったら、『タツさん』(もちろん由来はかの名(迷)キャッチャーの『竜川影男』)ってつけるな。ちなみに。


    「ジュペッタ、『ふいうち』……」
    「アスベスト! 『コットンガード』!」

     あっという間に、アスベストはもふふっと綿に包まれる。あれにダイブするのが本当に本当にたまらないんだよなぁうんうん。
     ジュペッタの攻撃はモフモフの綿に阻まれて身体に届かない。アキは気を取り直して言った。

    「ジュペッタ、『シャドークロー』……」
    「アスベスト! 『おいかぜ』!」

     部わっと風が起こる。アスベストは風にのってふわふわと漂っている。まあただ単に漂っているわけじゃなくて、自分で起こした風だから自分の思うところに飛んで行けるんだけど。
     アスベストはけけけっとからかうように笑った。さすが『いたずらごころ』だなぁ。

    「アスベスト、『やどりぎのタネ』!」
    「ジュペッタ、『ダストシュート』!」

     ひゅう、攻めるなぁ、と俺はつぶやいた。
     相手は『やどりぎのタネ』でじわじわと体力を削られている。だけどまあ決定打にはならない。
     だけど、ジュペッタの攻撃もあまり効かない。

    「泥沼ですけど……絶対、勝ちます!」
    「俺も……負けるわけにはいかないな」

     俺はちらっと後ろを見た。ケンタとセトナと眼があった。

     そうだ。俺がここにいるのはこいつらのおかげ。
     こんなところで、この先の勝負を終わらせるわけにはいかない。




     モミジシティの北のはずれ、何もない田舎が俺の家。

     子供の時に、父親の都合で、モミジシティの外へ出た。
     だけどそれからは、毎日が地獄だった。


     しゃべると怖いと言われ、話しかけると怒ってるのかと言われ。

     何も出来ない、何も言えない、鬱積ばかりがたまる日々。


     あの時もそうだった。怒ってないのに怒ってると言われ、普通にしゃべってるのに怖いと言われ。


     ぶちのめしたら、すっきりした。


     だから、毎日毎日、癇に障る奴を懲らしめて回っていた。
     最初の時、たまたま近くにあった盆灯篭をぶん回していたから、いつの間にかそれがトレードマークになっていた。
     まあ、あの時の俺は、本当にどうしようもないクズだった。


     そんな俺のところに、あの2人はやってきた。


    「あんたが『盆灯篭のジョウ』って奴か?」
    「あ? 誰だてめぇら」

     カリッ、という小さな音が聞こえて。
     声をかけられるなり、俺は男の方……ケンタに頭を殴られた。

    「何すんだテメェ!!」
    「何してんだはこっちのセリフだ貴様! この馬鹿が! 盆灯篭はご先祖様をリスペクトするもので人を殴るためのものじゃねぇぞ!!」
    「怒るところおかしくないか!?」
    「まあまあ、ケンタもジョウ君も、そのへんにしておきなさいよ」

     そう言って、女の方……セトナが割り込んできた。

    「噂で聞いたんだけど、ジョウ君、ポケモンバトル強いんでしょ?」
    「ん……まあ、な」
    「じゃあいいじゃない。ねえケンタ」
    「そうだな。ま、ちゃんと戦って、ちゃんと見てみなきゃわからないけどな」

     よくわからない俺に、2人は言ってきた。

    「僕たちはモミジシティジム・ジムリーダー。君、僕たちの仲間にならないか?」




    「……どうしようもないクズ人間だった俺を、こいつらが拾ってくれたんだ。こんなところで、このバトルを終わらせるわけにはいかないな」

     口に出して、気合を入れ直した。

    「アンタ、そんな恥ずかしいことよく言えるわね」
    「まぁ言い辛いけど君は確かに残念な馬鹿だったよ」
    「悪いな……だけど、今日はちゃんと守り通すぜ、ここを」

     さて、バトルに集中しないとな


     じわじわと体力が削られて、アスベストも相手のジュペッタもだいぶ疲れてきていた。ヤドリギはかなり成長しているし、綿もだいぶ少なくなってきている。
     これは、もうひと押しだな。

     先に動いたのは、アキの方だった。

    「ジュペッタ、よーく狙って……『ダストシュート』っ!!」


     ……だけど、動かない。

     ぽかんとしているアキに、俺は言った。

    「君、『サイジョウ』っていう場所を知ってる?」

     アキは知らない、というように首を横に振った。
     俺は傍らの賀茂鶴の酒瓶を掲げて見せた。

    「『サイジョウ』はな、アサギの『ナダ』、エンジュの『フシミ』と並んで、この国の三大銘醸地って言われている場所だ。なぜか知らないけど、知名度は低いんだけどな。賀茂鶴、白牡丹、福美人……俺は日本酒が好きだからたくさん飲んでるよ」
    「日本酒……」
    「ところで……君のところのジュペッタ、性格は……『ゆうかん』、かな?」
    「……! まさか!」

     ジュペッタの手から、マゴのみの破片が転がり落ちていたのに、アキはようやく気がついた。
     まるで酔っているように、あっちへこっちへ、ふらふらしている。かと思ったら、自分の頭をぽかぽかと殴り始めた。
     どう見ても、混乱している。

    「いつの間に……! 『トリック』!?」
    「よくわかってるじゃないか」
    「で、でも、確かあの時もうヤナッキーはマゴのみを使って……」

     アキが、はっとしたようにこっちを見た。

    「……『リサイクル』……」

     正解、と言って俺は笑った。

    「アスベストは耐久はあるんだけど、決定力に欠けてな……ぎりぎりまで削らせてもらわないと、なかなか倒せないんだ」
    「そ、それにしても、相手にマゴの実が効くかなんて、トリック使うかなんて、完全に運じゃない……」
    「そうだなぁ。だけど、残念ながら、俺は結構博打うちでな。当然、他の手も考えてはあるけどな」

     アキは首を振った。こんなに低確率の賭けに負けたのなら、勝てない、と言って。
     それじゃ、終わらせようか、と俺は言った。

    「アスベスト、『ぼうふう』!!」

     バトル場に、突風が吹き荒れた。




    「ジョウ、また控用のベンチが壊れたよ。アンタのだからいいけど、直しておきなさいよ」
    「参ったなぁ。もう少し狙いを絞れたら相手への威力も上がると思うんだけどなぁ」
    「だから、まだまだ詰めが甘いんだよ君は」
    「はっはっは、悪いな」

     アキががっくり肩を落として仲間のところに戻るのを見て、俺も賀茂鶴の瓶を抱えてベンチがあったところに座った。
     酒を猪口に注ぎ、キセルをくわえ、ケンタに言った。


    「それじゃあ、後は任せたぜ、ケンタ」




    ++++++++++++++++++++

    翻訳してみました。
    広島弁でどの程度ニュアンスが伝わりましたでしょうか……?


      [No.1154] コットンガード 投稿者:586   《URL》   投稿日:2011/05/07(Sat) 00:35:09     130clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    あるところに、チルットのチルチルちゃんがいました。

     「よしよし、チルチルちゃん。すっかり綺麗になったわ」
     「ママ、ありがとう!」

    チルチルちゃんはママに毛づくろいをしてもらって、とてもうれしそうです。ふわふわの羽をパタパタさせて、すごく喜んでいます。

     「チルチルちゃん、いい子いい子」
     「えへへっ」

    毛づくろいが終わるまでおとなしくしていたチルチルちゃんを、チルチルちゃんのママが翼でなでてあげます。

     「ママの羽、すごく硬いね!」
     「そうよ。ママの羽は『はがね』でできてるから」

    よく見ると、チルチルちゃんとチルチルちゃんのママは、色も形もぜんぜん違います。チルチルちゃんは水色でふわふわな羽を持っていて、チルチルちゃんのママは銀色で、とても硬そうな羽を持っています。

    実は、チルチルちゃんのママは、チルチルちゃんの「ホントの」ママではありません。ママはチルチルちゃんの入っていたタマゴが落ちていたのを拾って、いなくなってしまったチルチルちゃんの「ホントの」ママの代わりに育ててあげているんです。

     「ママ、いつも撫でてくれてありがとう!」
     「いいのよ。チルチルちゃんのためだもの」

    でも、チルチルちゃんにとってママは「ママ」以外の何者でもありません。チルチルちゃんのママも、チルチルちゃんをホントの子供のように思っています。ですからチルチルちゃんもママも、血のつながりとか、そういうことは全然気にしていません。

    大事なのは、心がつながっていること。チルチルちゃんもママも、それをよく分かっていました。






     「ねえ、ママ」
     「どうしたの? チルチルちゃん」

    ママのきれいな翼でふわふわ羽をといてもらいながら、チルチルちゃんがママに尋ねました。

     「ボクも大きくなったら、ママみたいに硬い羽になるの?」

    チルチルちゃんからこう訊かれて、ママはちょっと難しい顔をしました。

     「たぶん、チルチルちゃんの羽は、ずっとふわふわなままよ」
     「じゃあ、ボクはママみたいに硬くならないの?」
     「そうね……でも、ママはチルチルちゃんのふわふわな羽も、素敵だと思うわ」

    ふわふわ羽をなでながら、ママがチルチルちゃんに言いました。

     (そっか……ボク、ママみたいにはなれないんだ)

    チルチルちゃんは、ママのような硬い羽にならないと聞いて、少ししょんぼりした顔を見せています。今はふわふわの羽も、大きくなればママみたいに硬くなる――チルチルちゃんはそう思っていましたが、どうやら違ったようです。

     「ごめんね、チルチルちゃん。ママ、何もしてあげられなくて……」
     「ううん。ボク、ママがそばにいてくれるだけでいいよ」

    顔を寄せるママにチルチルちゃんは目を細めて、ずずいずずいとママの硬い体に何度も頬ずりしました。






    それからチルチルちゃんは、どうすればママのようになれるか考える日が多くなりました。

     「ボクがママみたいになるには、どうすればいいんだろう?」

    ふわふわ羽をぱたぱたさせてみますが、チルチルちゃんの羽はやっぱりふわふわのままです。ママのような、がっちりした硬い羽にはなりそうにありません。

     「うーん……」

    難しい顔をしながら歩くチルチルちゃん。考え事に夢中で、周りの様子が見えていないようです。

    ……と、そこへ。

     「あっ、危ないっ!」
     「えっ?!」

    突然、木の上から声が飛んできました。はっと見上げてみると、上から何かが落ちてくるではありませんか。

     「うわぁっ?!」

    チルチルちゃんはどうすればいいのか分からなくなって、あわててふわふわ羽で自分の体を覆いました。けれども、ふわふわ羽は見た目どおりふわふわで柔らかい羽です。上から落ちてきたものを防ぐことなんて、できるはずがありません。

    ああ、小さなチルチルちゃん。可哀想なチルチルちゃん。上から落ちてきたもので、ぺちゃんこになっちゃう。そこにいたみんなが、そう思っていました。

    ――ところが。

     (ぽーん)

    何やら軽い音がして、上から落ちてきたものが大きく跳ねていきました。チルチルちゃんはまだふわふわ羽で体を覆ったままです。

     「……あれ?」

    チルチルちゃんが恐る恐る目を開けてみると、チルチルちゃんはぺちゃんこになるどころか、ケガ一つしていませんでした。ふわふわ羽に葉っぱのかけらがついただけで、チルチルちゃんは無傷でした。

     「おーい、大丈夫だったか?」
     「あっ、クヌギダマさん!」

    上から声を掛けてきたのは、木にぶら下がっていたクヌギダマさんでした。チルチルちゃんが顔を上げると、クヌギダマさんが心配そうにチルチルちゃんを見つめています。

     「一匹重くなりすぎたみたいで、糸がちぎれちまったんだな。怪我がなくてよかったよ」
     「そっか、落ちてきたの、クヌギダマさんだったんだ」

    チルチルちゃんが隣に目を向けると、少しミノの壊れたクヌギダマさんが一匹、地面に転がっていました。あれこれミノに付けたおかげで、重くなりすぎてしまったようです。

     「しかし、すごいなあ」
     「え?」

    ぶら下がったクヌギダマさんに「すごい」と言われて、チルチルちゃんはきょとんと首をかしげました。

     「あの重たいのに降ってこられて無傷だったなんて、その羽、よっぽど硬いみたいだなあ」
     「ボクの羽……?」

    ふと、チルチルちゃんが少し前のことを思い出します。上からクヌギダマさんが降ってきて、あわててふわふわ羽で全身を覆ったこと。けれどもそのおかげで、重くなったクヌギダマさんに潰されずに、無傷で助かったこと。

    順繰りに思い返しているうちに、チルチルちゃんははっとひらめきました。

     「……そうだ! ボク、こうすればよかったんだ!」

    さっきまでとは打って変わって、チルチルちゃんはとても嬉しそうな様子を見せて、飛び跳ねるように歩いていきました。






     「ママーっ!」
     「あらあら、どうしたのチルチルちゃん。そんなに急いで」

    チルチルちゃんはすごく興奮した様子で、巣で待っていたママに飛びつきました。ママははがねの翼でチルチルちゃんを抱きとめると、優しく地面に下ろしてあげました。

     「あのね! ボク、ママみたいになる方法を見つけたんだよ!」
     「えっ? チルチルちゃんが?」
     「うん! 見てて!」

    そう言うと、チルチルちゃんはさっきクヌギダマさんが落ちてきたときと同じように、ふわふわ羽で体を覆いました。もこもこの羽で覆われたチルチルちゃんは、まるで綿あめみたいです。

     「ほら! これでボク、すごく硬くなるんだよ!」
     「……本当だわ。ふわふわ羽が、とっても硬くなってるのね」

    ママがはがねの翼で触れてみると、確かにチルチルちゃんの羽はとても硬くなっていました。ママのビックリしている顔を見て、チルチルちゃんが得意げに笑ってみせます。

     「ママ! ボク、これでママみたいになれるよ!」
     「そうね! チルチルちゃん、本当にすごいわ!」

    綿あめのようにもこもこになったチルチルちゃんを、ママがぎゅっと抱きしめます。チルチルちゃんの幸せそうな顔といったら、もうたまりません。とっても嬉しそうです。

     「チルチルちゃん、いい子いい子」
     「えへへ……♪」

    ママに抱かれながら、チルチルちゃんは顔を綻ばせるのでした。






    こうして、チルチルちゃんは大好きなママのようになる方法を見つけることができたのでした。

    めでたし、めでたし。








    ------------------------------------------------------------------------------------

    朝にネタ探しでポケモンwikiを眺めてたら「コットンガード」なる素敵技を見つけたのでさくっと。
    チルチルちゃんは将来ママと一緒に立派な物理受けになってくれることでしょう(´ω`)



    【586だってたまにはこんなの書きたくなるのよ】
    【エアームドだって好きなのよ】


      [No.1152] 月光蝶 投稿者:MAX   投稿日:2011/05/06(Fri) 01:05:40     66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     旅の男の言うとこじゃ 言うとこじゃ



     月夜の森のさまよう折に ぐるりひらける土地を見た
     月の夜空のまぶしきことよ のぞむ月輪 望月か


     ひらり
     しゃらり

     月夜にあってまたたく星や
     見れば月夜に蝶が舞い 四方に八方にと蝶の舞


     ひらり 舞うなりしろがねの
     しゃらり 舞い散るしろがねの

     月夜にあってまたたく星の
     蝶の羽より銀の風 四方に八方にと銀の風

     舞い散る星の輝きや 飛び交う蝶のうるわしや


     げにうつくしき げにうつくしき



     月の野原のさまよう蝶に ひらり舞い飛ぶ羽を見た
     色のまだらの妖しきことか 舞うは鱗粉 毒虫か


     ひらり ひらり
     しゃらり しゃらり

     月夜にあってまたたく星や
     見れば毒虫 月に舞い 四方に八方にと蝶の舞


     ひらり 舞うなりドクケイル
     しゃらり 舞い散るモルフォンの

     月夜にあってまたたく星の
     毒虫 踊る銀の風 四方に八方にと銀の風

     舞い散る銀の輝きや 飛び交う毒のうるわしや


     げにおそろしき げにおそろしき




     旅の男の言うとこじゃ 言うとこじゃ


     毒虫舞い飛ぶ 月夜の森に
     舞い散る銀のうつくしさ

     されど 毒虫おそろしき
     なれど 銀星うつくしき


     男 倒れて さもありなんか
     毒に倒れて それみたことか

     男 つぶやく 月夜の晩に
     舞い散る銀のうつくしさ

     されど 毒虫おそろしき
     なれど 銀星うつくしき




     月見てはねる 蝶の舞う
     銀の風ふく ほろびの歌う
     男 語るは月夜の森の
     男 月夜に息を引き取る




    ――――――――――
    【批評していいのよ】【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】


      [No.1150] 【再投稿】空 投稿者:音色   投稿日:2011/05/05(Thu) 23:51:12     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     俺に世界を教えたのは空を知っているおっさんだった。


    『本件の作戦は三日後の深夜に決行する』


     あいつと何十回目かの決闘の時、揉み合いながら流されてだいぶ下流まで行っちまったことがある。
     もちろん川の中でもあいつは暴れて爪を振り回してくるが、水中戦は俺の方が得意なもんだから大抵こうなったら俺の方が勝っちまう。
     だのにその日に限ってあいつはやたらと動きがよくて、途中で思いっきり俺の頭を川底に踏みつけて沈めてきやがった。
     気が付いたらあいつはすでに川をあがっちまい、俺だけが流されるという無様な負け方をしていた。
     くそっ。最悪だ。ずぶ濡れの体を岸に押し上げて息を整える。
     あいつめ、やりやがったな。つぶやいたときに、上から笑い声が降ってきた。


     見上げると真黒なでかいカラスがこっちを見降ろしていた。小さなカラスなら何回か見たことあるが、あんなでかいのは初めて見た。
    「なんだあんた、ずぶ濡れになってる蛇がそんなに面白いか?」
     威嚇がてら伸びあがるように見上げると、そいつはなおも笑いながら、いや失礼と言ってきた。失礼と思うんならせめて笑いを止めやがれ。
    「いやいや・・、飛んでいたらなかなか激しい戦いだったものでね。つい一部始終を眺めさせてもらったんだが・・くくっ」
    「だから笑うのをやめろ!」
     そんなに俺が負けたことがおかしいかよ。それともそんなに爆笑されるほどの負け方をしたのか?
     一人でショックを受けていると、そいつは取り繕うようにこう言った。
    「あんまりにも・・坊主とお嬢ちゃんが楽しそうだったんでな。ついつい見惚れてしまってたんだ」
     ・・はぁ?


     おっさんはドンカラスとか言う種族らしい。あっちこっち飛んで回るのが趣味で今日もたまたこの辺を飛んだだけとか。
     楽しそうと言われて俺はそれを全否定した。
     冗談じゃない、決闘が傍から見られて楽しそうって、なんだよそれ。
     真剣勝負なんだ、あんたの主観でものを言わないでくれ。
    「坊主は頭が固いな」
     そう言いながら、おっさんはとくとくと語りだした。
     今まで見た数々の戦い。人間同士が戦わせるもの。竜の決闘。小さなものが大きなものに打ち勝つ。
     舞台は空だったり崖地だったり、海なんてものもでてきた。
     海って何だ?俺は聞いた。おっさんは答えた。空を同じくらい広い水だと。
     全ての川の流れの先にそれがあるという。信じられないな。俺が言うと、ならば見に行くかとおっさんは羽ばたいた。
     

     先へ先へと飛んで行くおっさんを俺は必死で追いかける。おい、足があるならともかく俺は走るのは苦手なんだよ!
     そういや水中では俺の方が有利だが、スピード勝負となるとあいつには敵わないことを思い出す。
     一度だけ頼みこまれて駆け比べをしたことがあるが、その時のあいつときたら風だった。飛んでもなく速かった。
     あいつならおっさんの速度にもついていけるんだろうな、とか考えている間に、急に山の大地が開ける様に目の前に空が現れた。
     これが海だ、おっさんが言った。俺には揺れる空にしか見えなかった。


    『ターゲットは山岳地帯のふもと付近にまとまって生息しているため、上空より眠り粉を散布する』


     夜中になる前に俺は村に帰りついた。
     決闘で遅くなることはしょっちゅうなので別にとがめられなかったが、今日が少し勝手が違った。
     なんか、村が少しざわざわしている。姉貴に何があったのか聞いてみると、どうやら爺さんが一人ずっと帰ってこないらしい。
     結構な歳だからどっかで行き倒れてるんじゃないかとか話が持ち上がってきて、何人かが探しに行くことになった。
     次の日の朝、川辺でザングースと一緒に死んでるのが見つかったらしい。親父が向こうと話をつけると言ったので、俺もついていくことにした。
     結構な人数でそこに行くと、ザングースの奴らもやってきていて、あいつもその中にいた。目が合うと、逸らされた。なんだ?
     死体はどこもかしこもズタボロで、何十年を刻みつけられた傷なのだと分かる。知り尽くした決闘場所で死を迎えた。
     ・・こんな死に方をするんだろうな。俺もあいつも。
     ちらりとそんなことを考えた。


     その日は決闘じゃなくて散歩をしようとあいつが言いだした。
     死んだのはあいつの爺様らしく、どうもいつもの元気がない。
     やっぱりあいつもあんな死に方で一生を終えるのが望みなんだろうか。
     さっきの考えが復活する。
     俺はどうなんだ?海と呼ばれる空を思い出す。あそこを越えた先にも世界はあるんだ。おっさんの言葉だ。
    「坊主の知っている世界はきっとちっぽけだ。証拠に海を知らなかったろ?けど、坊主は今、海を知った」
     世界が広いことを忘れるな、おっさんはそういって飛び立った。
     自分が知りつくした場所以外の・・・知らない世界。
     そんなところにも行きたいよな。俺はそんな意味の言葉をもらした。
     あいつは、大きく目を見開いた。
     大声でそんなことをするんじゃないと言いだして、あんまりにもそれが必死なもので、思わず笑みがこぼれてしまう。
     軽くあいつを小突いてやった。
     当たり前だろ?俺がお前を置いてどっかにいくかよ。
     その時、あいつは見たこともないような安心した顔つきになって、はじめて笑みを見せた。


     その日からも山のようにあいつと決闘をした。
     いつも同じ場所。読めてくる動き。あそこで死んだあいつの爺さまは、一体何を考えていた?
     思い出すのは海ばかり。あそこの向こうには何がある?世界ってのはどうしてこう広いんだ?
     憧れが募るのと同時にあいつの顔が浮かぶ。行くんじゃないとあいつは叫んだ。ぎりりと、胸がよじれる。
     どうすりゃいい?一体どうすりゃいいんだよ?
     おっさんに聞いてみたい。おっさんならどうする?何か教えてくれ。すがりつくものがなくて、やたらと眠くなってきて、俺は夢に潜って行く。


    「坊主、あのお嬢ちゃんに惚れてるだろう?」
     決闘が楽しそうだと抜かしたおっさんはそんなことを言ってのけた。
     俺は盛大に爆笑してやった。俺があいつにホの字?冗談じゃない!俺とあいつはそんな関係じゃないっての。
     なんだ違うのか、おっさんはつまらなさそうだった。お生憎さま、あいつと俺はライバルだ。
     すがすがしく言い切るな、おっさんは笑うと、こう言った。
    「だったら一緒に来いとか言える関係じゃないな」  
     ・・・。
     おい、おっさんそれどういう意味だ!?
     
     
     深いまどろみの中で考える。
     つまり、俺は世界が見たい。あいつは俺と決闘できなくなるのが嫌だ。
     じゃあ、あいつも連れて行くしかない。
     どうする?どうやって連れて行く?あいつになんて言えば良い? 
     ・・・・・。
     あぁもう面倒くせぇ!
     俺と一緒に外の世界に来い!
     たったそれだけでいいんだろ!?おっさん!
     明日の決闘に俺はわざと少し遅れて行ってやる。
     あいつはきっと怒っているだろう。
     俺はあいつに言ってやる。
     俺は今から楽しみだ。
     俺の言葉にあいつがどんな表情を見せてくれるのか。
      
     
     ふと、気づいた。
     俺はあいつに、海を見せてやりたいんだな。  
     満足して、俺は暗い眠りに落ちた。


    『作戦成功、これより突入いたします』

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  自分ではあんまり良い出来じゃないと思う奴。
    でもハブネーク大好き


      [No.1149] あの夏をもう一度・再 投稿者:でりでり   《URL》   投稿日:2011/05/05(Thu) 17:55:14     71clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     そびえ立つ入道雲に向かって白色の小さな軽自動車が田舎道を直進していく。
     去年免許を取った後に買った軽自動車は、ちょっとした振動でもすぐに伝わるから怖いがそれでも大事な相棒だ。
     この田舎道は前も、そして右も左も田園風景。飽き飽きしているのは運転手のおれだけでなく隣の助手席にいるエレキブルもだろう。
     狭苦しそうにしているエレキブルをボールに戻しても良かったが、久しぶりの帰郷なので風景を楽しんでもらいたかった。しかしどうやらそうもいかないようで。
     誰がみてもかなりの年期の入った日本家屋の前で車を止める。エレキブルを強く締め付けていたシートベルトを外してやってドアを開けると逃げるように車から出、少し放電しながら大きくのびをしていた。
    「おぉ、お帰り。思ったより早う着いたやんか」
     エレキブルに遅れて車を降りると、麦わら帽子を被り、首には真っ白のタオルをかけた親父が声をかけてくる。
    「高速が以外と空いてたからね。おかげでまだまだ明るいうちに着いたよ」
    「今回はいつまでいるんや」
    「十日はいるつもり」
    「そうかい。まあ疲れただろうから麦茶飲みぃな」
    「そうするよ。家(うち)には母さんも淳もいるんだろ?」
    「淳はまだ畑やね。兄ちゃんが帰ってくるから自分で作った美味しい夏野菜食べさせたる言うてまだ畑おるき」
     こんなに早く帰って来たせいで、家に残って農作業をすることを決めた弟にはすまないことをしたなと思った。
     それからちょっと喋って父さんと一緒に家の中に入ったが、父さんにエレキブルの腕を叩きながら逞(たくま)しくなったなと言われて照れてるエレキブルが印象的だった。
     居間でお茶を飲んで、母さんと少し喋ってから特に荷物も持たずに家を出た。



     帰省する度に欠かさずやっていることがある。
     それは家からすぐ行くとある山に探検しに行くことだ。と言っても山登りをするわけではなく山の途中辺りまで行って特に何もせずに帰ってくるだけで、何の意味もないように思われるかもしれない。しかしおれとエレキブルには大事な用である。
     なぜならそこの山でこのエレキブルと、当時はエレキッドだったが初めて出会った場所なのだ。
     初心に帰って気を引き締めるにはこれ以上ない。しかし今回はそれ以外にも目標がある。
     大学ではポケモンバトルのサークルに入っている。そこでプロの有名ポケモントレーナーと交流試合をして負けたとき、センスはある。と言われたおれだが、最近はさっぱり白星がない。どれも僅差で負けてしまう。しかも前まで勝ち続けていた相手にもだ。何がダメなのか、きちんとそれを見つけたかった。
     久しぶりに入った山は昔と微塵も変わっておらず安心した。向かいの村では開発の手が加わっていたりと田舎も安心出来ない近頃なのでもしかしたらここも、と思っていたがまだ大丈夫のようである。
     木と木を渡り歩くエイパム、その頭上には数多くの鳥ポケモンと足元には草、虫ポケモンたちが毎度変わらず跋扈している。
     あぁ、やっぱりここはいいな。エレキブルも同じく悦びを全身で感じている。
     そんなときふと、この山に来る前父と交わした会話を思い出す。
    『そういえばまたあの山行くんかい?』
    『うん』
    『お前もそろそろセレビィと会えたらええね』
    『セレビィ? あの時渡りの』
    『そうやぁ。昔はそれなりに見かけることもあったんやけどねぇ。あの山何度も入ってるんやったら祠かなんか見たことくらいあるやろ、あれはセレビィ祀っとぅもんや。困ってるんやったらなんか頼んどき』
     そういう類の話を聞いたのは初めてのような気がする。バトルは神頼みでどうにかなるものではないが、縁起ものだ。祠の場所なんて覚えてないけど適当に歩いていればあるだろう。おまけ程度に考えておく。
     山を行く歩みを続けているとリングマが前方からやって来た。このリングマとはこの山で何度も戦った戦友だ。何度か仲間にスカウトしたが首を横に降って拒否を意する雄叫びをあげられた。
     今回もおれたちと勝負をしたいのだろうか、いつでも来いと言わんばかりに構えている。
     周りのこの山に住む野生ポケモンも様子を見るかのように円になってこちらの様子を見ている。ならばやるしかないな。エレキブルの後ろに立ってリングマと視線を合わす。このリングマと戦う最適な戦法は整えてある。そしてワザそ仕掛けるタイミングはここだ。
    「エレキブル、まずは雷パンチ!」






     木と木の狭間から太陽の光が零れて丁度いい心地よさを醸し出している。太陽が沈むにはまだまだ時間がかかるようだ。
     草と土のベッドはいい匂いはしないが気持ち良かった。
    「すまんなエレキブル」
     おれの隣で同じように大の字になっているエレキブルに語りかける。エレキブルは悔しそうに唸り声をあげた。
    「リングマ、また強くなってる」
     まったくだ、と言いたげにエレキブルは鼻を鳴らす。
     おれたちの攻撃はことごとくかわされ、そう。一手先を読むという言葉がこれ以上ないほどに当てはまる程だった。
     ワザが当たらなければダメージは与えられない。いい感じのカウンター攻撃を何度か食らってエレキブルはノックアウト、リングマはまだ物足りなそうに帰って行った。
     正直ショックだった。
     リングマには何度も負けたことがあるが、ここのところは勝ち続けていて、しかもこの一年おれたちはワザの鍛練、効率の最良な作戦をひたすら考えてきた。だがそれで他のトレーナーに負けるならまだしも、いくら戦友とはいえ野生のポケモンだ。リングマに負けるのは今までになく悔しかった。
     なにより、それをただ後ろから見ることしか出来なかったということに。
     そんなことを考えていたためエレキブルが気を取り戻すまでちょっと涙目になっていた。
    「っ、よいしょ!」
     転がしていた体を起こして髪や服についた砂を払う。しかしこれは帰ったら洗濯だな。……そういえば昔はよく泥んこになって遊んだっけ。何故かそんなことを思い出す。
     エレキブルも体を起こすと背中の毛についたものを払ってやる。ときたま体毛から電気が流れるが、それくらいなんともなかった。
     気づけば偶然か、すぐそばに小さな祠があった。これがセレビィのものかどうか分からないが、念のために御参りしておく。
     バトルの調子が良くなりますように、と。しかし祈ってから気づく。セレビィは時を渡るだけであって願い事を叶える神様じゃないんだよね。
    「……帰るか」
     リングマとのバトルで負けたのはもちろん、セレビィまでにこんなことを祈るなんて、と思うと更に惨めになった。本当に何がダメなんだ? 分からない。思考は出口を探して往々するだけだ。
     いや、思考だけではなく、山からも抜けれないようだ。辺りはすっかり暗くなっていた。しかし久しぶりとはいえこの山に来ているからここは庭のようなもの。迷うわけがない。おそらくは夜にやってくるゴーストタイプのいたずらか。ゲンガーの入ったモンスターボールに手を伸ばし、いたずら者を仕留めてもらおう。そう思ったとき子供の声がどこからか聞こえた。
     木の陰に隠れて声の主を見ると、間違いない。そこには子供のときのおれがいた。どういうことだ、ゴーストタイプのいたずらでここまで可能なのか。とりあえず様子見だ。エレキブルには戦闘準備をしてもらって控えてもらう。
     一方の子供のおれの目の前にはあのリングマがいた。今よりもまだほっそりしているイメージがあるが、それでもなお一般的なリングマより力があった。
     そして子供のおれの隣にはまだ小さかったエレキッド。
     当時のおれは誕生日に買ってもらったモンスターボールを持ってエレキッドと共に山に入り、そのころから既に山の暴君として有名だったリングマを捕まえようとしていた。
     エレキッドは仲良くなってから捕まえたポケモンであるから捕獲に難を感じてなかったため、調子に乗って攻撃を一切せずにリングマにモンスターボールを投げたのだ。もちろんその時のおれに弱らせた方が捕まえやすいなんてことは一切頭にないだろう。
     しかしリングマはそのモンスターボールを右手で軽々しく弾く。それにムキになった子供のおれは持ってたボールを全て投げたがどれも弾かれ使い物にならなくなってしまった。
     怒ったリングマが今度はこちらの番と攻撃をしかけた。腕を高く振り上げてのアームハンマーだ。
     それを見ていたおれもエレキブルも危ないと思ったが、意外にも子供のおれとエレキッドは二人して懐に入ってパンチを繰り出した。まだ威力は対したことはないのだが不意を衝かれたリングマには効き目バッチリだ、そのまま体のバランスを崩して尻餅を打つ。
     あぁ、このとき初めてバトルが好きになったんだ。そして好きで好きでしょうがなかったんだ。あのドキドキと臨場感に惹かれたんだ。
     子供のおれたちがリングマに追撃しようとしたとき、リングマは尻餅をついた体勢のまま地面にアームハンマーを放つ。その衝撃で辺りは揺れ、子供のおれとエレキッドは転ぶ。そしてリングマは立ち上がると、そのおれたちに背を向けて山奥へ歩き出した。
     そうだ、今のおれに無いのはこういう野性的なモノと根性だ。いつの間にか勝つことだけにこだわるようになっていたため、勝負をより安定に勝つことを求めるようになっていたから本来の自分が出せなかったんだ!
     そこで唐突におれの視界がぐにゃりと歪んだ。子供のおれも、エレキッドも、山に戻るリングマも、そして山も歪んで潰れて消えて行く。
     代わりに目の前に現れたのはさっきエレキブルと横になっていた場所だ。幻は解けた感覚を何故か持っている。さっきのはなんだったのかを反芻しているとエレキブルに肩を叩かれた。
     その焦りようから何かあったのかと心配していると、エレキブルはしきりにどこかを指差している。その先を目線で追うと緑の影。その影はすぐに木々に命を与えながら姿を消して行った。
     まさか、聞いていたがこんなことがあるなんて。
    「セレビィ……」
     おれはその影の主の名前を呟いたまま、伝説のポケモンと出会えたことへの喜びや、あのときの興奮、そしてそれを思い出させてくれたことなどへの感謝などという感情がしばらく込み上げてきて動けなかった。



     翌日朝からご飯を食べるとそのまま身支度だけ整えてエレキブルと共に再び山に向かった。するとまるでそれが分かっているかのように、山に入ってすぐリングマが現れる。
    「さあ勝負だ!」
     この言葉が合図となり勝負が始まる。リングマ先制のアームハンマーに対し、おれとエレキブルは目で合図してリングマの懐に潜り込み共に強烈なパンチを浴びせてやった。

    ───
    【いろいろしていいのよ】

    希望があったので再掲載いたしました。


      [No.1148] モミジム三連戦  3/3 投稿者:音色   投稿日:2011/05/05(Thu) 15:40:10     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「ほいじゃあ、ラストはうちじゃけん。 好きなところからかかってきんさい」

     ジョウ、ケンタのバトルが終了し、最後の挑戦者がバトルフィールドの前に来た。うーん、えぇ目しとるなぁ。
    「あんた、名前は?」
    「えっと・・コウジです! よろしくおねがいします!」
    「うちはセトナゆうんよ。 使うのは『水』じゃ」

     貴方に勝ってジムバッチをもらいます、とまぁえらい自信たっぷりに宣言しょうるなぁ。
     ま、ええわ。その自信、片っ端からしばきあげたろう。

    「ジョウ! ちょいこのままじゃとうちバトルするのいたしぃけぇ、いつものに変えてくれんかねぇ?」
    「お? おぉ、ええでぇー。 ちょい待っときぃな」
    「?」

     すでにボール持ってスタンバイしょうたコウジ君にはわりぃけど、うち、海べたの方がやる気出るんよねぇ。
     ガコン ゆぅ派手な音がしてバトルフィールドの半分が割れた。潮の香りがぎょーさん流れ込む。
     瀬戸内海直通の海のフィールドのいっちょ上がりじゃ。

    「じゃ、始めよか。  フカまる、気張ってきんさい!」

     うちがボールを投げる。先方のフカまるは今日もちょーしーようじゃねぇ。

    「ちょ、ちょっと待ってください!」
    「どしたん?」

     なんなん、これからバトルするっちゅーに向こうがストップかけてきようた。

    「ふ・・“フカマル”って、それサメハダ―じゃないですか!?」
    「ほじゃけぇ、“フカ”じゃって。 なにがおかしぃん?」

     なんかすべったころんだようるけど、早くそっちのポケモンだしんさいや。
     追い打ちかけたら、ようやくボール投げよった。うちはどんがめみたいなんは嫌いなんじゃけどなぁ。

    「・・まぁいいや、メガニウム、頼んだ! 『マジカルリーフ』!」

     初っ端からきついのぶつけてくるの。出だしがいきなり必中技かい。
     ま、いつもいつもベンチめげさすアスベストの『ぼうふう』よりゃマシかねぇ。

    「フカまる、『こうそくいどう』じゃ」
    「連続で『マジカルリーフ』!」
    「もぐりんさい」

     飛沫を立てて水の中に影が沈む。標的を見失った葉っぱはばらけて沈んだ。
     おんなじ手をくりかえしゃあこっちだって対抗策考えるのを分からんのかねぇ?
     水の中ならこっちの物、さ、どう出るん?

    「『にほんばれ』だ」

     日差しがきつくなる。ほう、おもろいことするねぇ。意外とおぞいんじゃのう。
     ここから考えられる手は2つじゃが・・ま、まずは仕掛けてみますか。

    「ほいじゃあ・・『アクアジェット』」

     水中から出てきたフカまるに向かって飛んできた指示は。

    「『ソーラービーム』を叩きこめ!」

     ほらきた。おひさんを強くしたおうちゃくもんが撃ってくるでぇ。

    「フカまる、そのまま突っ込みんさい」
    「え!?」

     トレーナーの反応はポケモンの反応。ほらほら、呆然としとったらおおごとになるでぇ?
     ソーラービームが貫いた水流の中身が砕け散る。
     メガニウムの真下からフカまるが飛びあがった。

    「『こおりのきば』じゃ!」

     喉笛に喰らいつく。そのまま大輪の花を咲かせたポケモンはぶっ飛んだ。
     たぶん、目ぇまわしとるでぇ。

    「いつの間に『みがわり』なんて・・」
    「なにを言うとるん? 指示を出さんでもうちのやりたいことを分かってもらわなぁ」

     ほい、次のポケモンだしんさいや。促されてだしとったら遅いでぇ。
     お、ボール投げた。なにが出てくるじゃろ?

    「エレキブル、よろしく頼む!」

     うあちゃー、本気で相性でしばきに来るんかこの子。ほんま、挑戦者ってのはそういうのばぁじゃなぁ。 
     こちとら、それを覆してなんぼじゃけぇなぁ。手加減はせんでぇ。

    「フカまる、『こうそくいどう』」
    「エレキブル、『でんじは』!」

     いけんなぁ、麻痺させられおった。速度を上げてもこいつはきついなぁ。
     けどもこの程度で速度を封じたとは思わせんで。

    「『アクアジェット』じゃ!」
    「『ほうでん』!」

     突っ込むフカまるに電撃が飛ぶ。けど、一撃でやられるような奴じゃ・・。
     って、目ぇまわしとる!

    「生憎と、『ソクノの実』は『どろぼう』で取っておきましたよ」
    「やられたの。  こが―にやられたんは久々よぉ」

     さっきのお返しってわけかい。いつのまにがめられたんじゃろう?これじゃけぇ、バトルはおもろいわ。
     けども、負けるわけにはいかんけぇな。ここでやられたらジョウとケンタの分まで駄目にしてしまうわ。
     そ、れ、に、この程度の子に切り札を出すようなものでもなかろうに。

    「フカまる、お疲れさん。  さて、次の子じゃけど・・、あんたにだすんはもったいないわ」
    「へ?」
    「気ぃ変わった。今日は切り札じゃのうてこっちの子で勝負したるわ。出といで、ビンゴ」

     出てきたポケモンに本日二度目の呆然顔。なんや、ごーいる子じゃねぇ。
     あ、それともうちが海の方じゃのうて陸の方に出したからほうけとるんか?

    「おいセトナ―、せわーないんか―?」
    「ラフィの方出さんでいいんか?」
    「心配いらんって。 任せとき」

     ケンタもジョウも、そんなにミズゴロウじゃと不安なんかねぇ?

    「・・ふざけてるんですか?」
    「なにがぁ」
    「切り札じゃないってことは、本気じゃないってことでしょ!?」
    「るさーなぁ・・。 なんじゃかんじゃ言うとる暇があったらちぃとは戦ってから言いんさい!」
    「・・っ!  わかりました。 エレキブル、『ほうでん』だ!」
    「『どろあそび』じゃ」

     電気技が来ることは端っから分かっとるちゅーに。
     ま、それが分からんゆーことは相当頭に血がのぼっとるなぁ。そんなんじゃリーグバッチはまだまだ渡せんねぇ。

    「『れいとうビーム』」
    「『でんじは』で動きを止めろ!」

     なんじゃい、またか。地味に嫌じゃな、麻痺。

    「とどめの『かみなりパンチ』!」

     おー、強力なのぶちかましに来たなぁ。

    「ほじゃけど、それが決定打になるんはうちの方じゃ」
    「え!?」
    「ビンゴ、盛大にしごぉしちゃれ!『カウンター』!」

     返し技は向こうが与えたダメージがでかけりゃでかいほど、こっちの規模もでかい。
     となれば・・、決まったの。

    「それみぃ、うちの勝ちじゃ」

     ぶっ飛ばしたエレキブルの上で、ビンゴが楽しげにはねとらぁ。

     

    「「「ありがとうございましたー・・」」」

     あーあぁ、全員項垂れとらぁ。ちょいやりすぎたかいねぇ?

    「まぁまぁ、そんな顔せんの。いつでもいいけ、またきんさいや」
    「ワシらはいつでもここにおるけぇの」
    「そうそう、と言っても、次来た時は全員で三連戦だから覚悟しておいてね?」

     あ、三人ともいびしぃ顔した。

    「あの、一つ聞いてもいいですか?」
    「なんなん? えーっと、・・アキちゃん」
    「ラフィ、ってなんのポケモンなんです? 切り札、って言ってましたけど」
    「あ、俺もそれ気になります」

     顔を合わせて苦笑する。あの状況でラフィを出したら、完全な虐めになってしまうじゃろうけぇビンゴの方をあえて出したんよなぁ。

    「ラグラージなんよ」

     あのエレキブル、確か電気技しか攻撃技をもっとらんかったよなぁ?




     とある5月5日の、モミジシティ、モミジムの話。
    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談  お二人は事前に書いてあっただろうにたった一人だけその日のうちに書きあげるという暴挙。
    執筆時間やく2時間半です。 はい、ハイパー低クオリティでごめんなさい。
    なお、実際にこっちのほうでは『サメ=フカ』ですんで、標準訳したら『フカまる』は『サメまる』君ってことだよ。なんか文句あるゆうじゃったらぶち回すけぇ覚悟しときぃや? うそです。

    あとミズゴロウは完全俺の趣味です。あしからず(笑

    【これにてモミジム三連戦終了です!】


      [No.1147] 第二回ストコンの投票期間について質問 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/05/05(Thu) 13:15:04     33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    お世話になっております、はる○です。
    コンテストのページを見ていてふと気になったことがあったので質問させていただきます。
    (コンテストの専用スレッドも消えてしまったようなので、新規スレッドで失礼致します)
    ポケモンストーリーコンテストのスケージュール欄に、

    投票期間:2011年05月08日(土)〜2011年05月28日(土)

    とありますが、5月8日は日曜日ですよね。
    応募期間が5月7日土曜日までということですし、
    投票期間は5月8日日曜日〜5月28日土曜日まで、という認識で良いのでしょうか?
    お手隙の時にでも回答頂ければ幸いです。


      [No.1146] 紫陽花心 投稿者:紀成   投稿日:2011/05/05(Thu) 13:03:16     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「ごめん、他に好きな人が出来たから!」
    吐き出した言葉は、私にとっては軽く、相手にとっては重くて痛い楔だったのかもしれない。

    「はあ!?また別れたの!?」
    混雑している食堂に、友人の声が響き渡った。皆が一斉にこちらを見る。
    「ちょっと、そんな声で言わなくてもいいじゃない」
    「だって…アンタ、まだ付き合って一週間も経ってないわよ」
    私はコホンと咳払いをした。
    「確かに、前の男の子は顔も体も、そして何より性格も良かったわ。彼氏にするには申し分ない人だった」
    「じゃあなんで」
    私はニッと笑った。
    「今度の人は、顔と体と性格に加えて、財力もあるの!どっかの社長の一人息子なんだって」
    「…はあー」
    友人がテーブルに突っ伏した。コーヒーが入った紙コップが揺れる。
    「アンタねえ、そんなポンポン彼氏変えて良いと思ってるの?自分が大学にいるほとんどの女から何て言われてるか分かってる?」
    「八方美人?」
    「微妙に合ってるけど、違う。チョロネコ被り、尻軽女。相当恨まれてるわよ」
    「だって男の子は皆私の味方をしてくれるもの。どうせ老けてヨボヨボのお婆ちゃんになっちゃうなら、若いうちにいっぱい遊んでいた方がいいじゃない!」
    「…」

    小学校、中学校、高校、そして大学。私の学校生活はほとんどが恋愛で埋め尽くされている。今までを振り返ってみても女友達より男友達の方が圧倒的に多い。今話していた子は、数少ない小学校からの友人だ。
    どんなに良い男がいても、それ以上に良い男がいれば、今付き合っていた人とは速攻でサヨナラ。私が別れ話を切り出しても、大抵の人は涙を流しながらも承諾してくれる。そして新しい人に告白すると、やれやれという顔をしながらも応えてくれる。
    今までで付き合った男の数は…ザッと五百人くらい?でもほとんどが一週間続いた試しが無い。何故かは分からないけど、小さい頃から私の周りは良い男が沢山いた。そして自分で言うのもアレだけど、私は美人だ。こればかりは譲らない。
    とにかく、チョロネコ被りと言われようが、尻軽女と言われようが、私はこのままモテ道を突っ走っていくだけ!

    大学と自宅は遠いため、私は近くの小さなマンションで一人暮らしをしている。家賃もそれほど高くない、女の一人暮らしには持ってこいの賃貸だ。
    私の部屋は三階。エレベーターはついていない。そこがキツイけど、あまり文句は言えない。教育費以外にお金をかけさせないことも、親孝行の一つだと思うのよね。
    いつも通りに分かれ道で彼氏と別れて、マンションへ向かって、階段を昇って、部屋のドアを…
    あれ?
    私は目を丸くした。茶とも黒とも言えないタイルが敷かれた地面に、青紫の花が積まれていた。メロンパンのような形に、同じ大きさの小花が沢山集まっている。
    紫陽花だ。
    「すごーい」
    私は思わず感嘆の声をあげていた。まだ五月とあって、紫陽花はあまり見ない。ここまで見事な物は、きっと今の時期は花屋にしか売っていないだろう。花って意外と高いんだよね…
    こんなサプライズで素敵な贈り物をしてくれる人は、一人しかいない。
    今日付き合い始めたばかりの彼氏だ。お金持ちと言うからには、こういうことをしそうだし。
    「明日お礼をしなくちゃね」
    生憎まだメアド交換はしていない。メールよりも直接言った方が相手も喜ぶだろう。私は花を抱えて部屋のドアを開けた。
    その姿を廊下の影から見つめる何かがいることも知らずに…


    次の日。大学へ来た私は、真っ先に彼の所属する文学部へ向かった。彼は部屋の片隅で本を読んでいた。『豊縁昔語』…よく分からない。自慢じゃないけど勉強は大嫌いだ。本も読む気がしない。
    「おっはよー」
    私が覗き込むと、彼はかけていた黒縁眼鏡を外した。
    「おはよう」
    「ね、昨日のアレってサプライズプレゼントだよね!?」
    「…はぁ?」
    「あんな大きな紫陽花、高かったでしょ?ありがとー!」
    「…何を言ってるんだ」
    「え?」
    …話がかみ合わない。私は昨日のことを話した。
    「知らないよ。僕じゃない」
    「えー、貴方じゃなかったら誰がするの」
    「他の男じゃないのか。君、過去に何人も付き合ってるんだろ」
    ムッとした。何となくトゲのある言い方だ。
    「知らないもん。もう前に付き合ってた人とは関係ないもん」
    「どちらにしろ、君が尻軽だということは噂に聞いていた。試しに付き合ってみたんだが…昔のことを引っ張る女はごめんだ。厄介事は嫌いだからね」
    「ちょ、どういう意味」
    「さよなら。やっぱり僕には恋愛なんて向いてなかったみたいだ」
    それだけ言うと、彼は本を棚に戻して部屋を出て行った。呆然とする私をあざ笑うかのように、始業のチャイムが鳴り響いた。

    「へー…アンタが振られた」
    昼休み、私は昨日の友人と一緒にキャンバスでお昼を食べていた。昨日と今朝の出来事を話すと、友人はしばらくの沈黙の後、この言葉を吐き出した。
    「意外や意外。男運も尽きたんじゃない?あら、頭からタマゲタケが生えてるわよ。…いや、モロバレルかしら」
    「うるさいっ」
    でも本当に生えているような気がする。久々に落ち込む。相手に振られるのは初めての経験だ。こっちから振ることは数え切れないくらいあったけど。
    「酷くない?あんな言い方」
    「でも、その紫陽花を贈ったのは彼じゃなかったんでしょ。嫌がらせじゃないの」
    「今まで何も無かったのに」
    「ある日突然…ってことも考えられるわ。人の心理って、銀河の誕生並みに奥が深いのよ。
    …あら、これ美味しい」
    その時、私達の頭上に細長い影が一つ。見上げると、男が立っていた。知らない男だ。
    「振られたんだってね」
    「何よ、文句あるの」
    「あんなインテリ止めておきなよ。女心をちっとも分かってない」
    二人掛けのベンチにどっかりと座る。狭い。顔は良い方だ。
    「僕なら君を満足してあげられると思うんだけどな」
    「…」
    もうこの際どうでも良かった。前の男のことは早く忘れたい。
    「付き合ってあげてもいいわよ」
    「本当かい!?」
    「ちょっと、また変えるの?」
    友人が焦ってるけど、知らない。こんなモヤモヤした気持ちは早く消したかった。
    「男なんて腐るほどいるんだもの。たった一人の男と付き合うなんて、バカバカしくって」
    そう。私は八歩美人で尻軽でチョロネコ被り。悪いかしら?

    ムシャクシャした気分で部屋に戻った私を待っていたのは、また紫陽花だった。ただし今度は状態が悪い。ピンク色で、水をあまりやっていないのか保存状態が悪い。かなり萎れている。
    「…何よ」
    紫陽花が私を笑っているような気がして、私は花を踏み潰した。そして携帯を取り出して三つの番号を押す。
    「もしもし、ストーカー被害に遭ってるの。犯人を捕まえてくれないかしら」

    数分後、パトカーに乗って来た警官二人はすぐに私に話を聞いてきた。話が広がることを恐れて、私は彼氏をとっかえひっかえしているという話はしなかった。一部を隠した話を聞いた彼らは、パトカーの中から網を持って来た。これで犯人を待ち伏せして、捕まえるという。警察のストーカー事件に対する姿勢が良く分かった。
    とりあえず私は部屋に入った。特に荒らされた形跡は無い。ただ精神攻撃をするのが目的なんだろうか。考えてても仕方無いので、いつもの通り食事を取って、風呂に入って、表にいる警官二人にカイロを渡して(結構夜は冷えるから)布団に入った。
    数時間後。
    部屋にある電話が鳴った。眼を擦って出る。相手は表で見張っていた警官の一人だった。
    犯人らしき影が大量の紫陽花を持って現れ、それに網を被せた。確かに感触はあった。
    だが懐中電灯で照らしてみると、そこには誰もいなかった。ピンク色の紫陽花だけが萎れた状態で転がっていた―
    彼の報告は、実にシンプルだった。


    「マスター、お酒頂戴」
    「生憎カフェにはお酒は無いわよ。っていうか貴方未成年でしょ」
    もう大学なんて行く気にならなくて、今日はサボった。ギアステーション前にあるカフェ『GEK1994』でコーヒーをヤケ飲み。トイレに行きたくなるかもしれないけど、この際どうでも良い。
    「だって飲まないとやってらんない」
    「おじさんみたいなこと言うのね。華のキャンパスライフはどうしたの」
    「ストーカーに壊された。もうマジ最悪」
    チョロネコを被っている余裕なんて無い。泣きたいけど泣けない。何だか情けない気がする。
    マスターがレコードを変えた。
    「失恋でショックを受けてる貴方に。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲、オペラ『コジ・ファン・トゥッテ』より。『ドラベッラのアリア』」
    甲高い女性の声が溢れ出す。横文字音楽は全く分からない。ここのマスターは知性と美に溢れている。
    「で、どうしたの。何かただ事じゃない雰囲気だけど」
    「聞いてくれるの」
    「まあ、一応ね。私が解決できるかどうかは分からないけど」
    マスターが床で寝ていたマグマラシを抱き上げた。ここの看板息子で、マスターの相棒だ。
    「実は…」

    たっぷり十分。されども十分。マスターは私の話を聞いていた。時折質問されることはあっても、それでも頷くだけで何か考えているようだ。
    「…ってわけなの」
    「紫陽花か。私は向日葵の方が好きだな」
    「あの、話聞いてる?」
    「うん。大体分かった」
    マスターが立ち上がった。カウンターに戻る。
    「紫陽花って、見て分かる通り二色あるの。青紫と、ピンクね。どうやって色を変えるか知ってる?」
    「ううん」
    「土の性質から。アルカリ性か酸性かでね。アルカリなら青、酸ならピンクに変わるわ。その不思議な性質から、紫陽花は移り気な人に喩えられることが多いの。つまり、浮かれ女である人に喩えて、犯人は紫陽花を毎日運んでたのね。
    こう言っちゃ何だけど…思い当たること、あるんじゃない?」
    他に聞こえないようにそっと、でもハッキリした声に私はハッとした。責められてる気はしない。なんていうか…諭されてる?
    「犯人分かる?」
    「その前にちょっと付き合って欲しい所があるのよね。丁度GWだし。
    貴方もどう?植物園」
    「えっ?」


    次の日。私は指定されたギアステーションにいた。『植物園に行けば、ほとんど分かったも同然』と言われて同行する気になったんだけど…
    「お待たせ。さ、行きましょうか」
    相変わらずマスターはスタイルがいい。足も長いし、何より胸がある。男達が彼女をチラチラ見ていくのが傍観者である私には良く分かった。
    「あの、本当に分かるの」
    「この近郊にある植物園は、ここだけよね」
    …聞いていない。不安な気持ちを抱えながらも、彼女の真剣な瞳に任せることにした。

    ギアステーションから約二十分。電車は山に面した駅に着いた。地図を片手に植物園に向かう。長い休みの最終日とあって、駅前は家族やカップルで混雑していた。
    「直通のバスが出てる。こっち」
    「あ、はい」

    バスに揺られて更に三十分。ガラス張りの巨大な植物園に私達は辿りついた。他地方の珍しい木の実や、中には草タイプのポケモンが放し飼いにされている場所もあった。
    「おお、ルンパッパ!こういうテンション高いポケモン、嫌いじゃないわ」
    「ミツキがダーテングと友達になったって言ってたわね」
    「ロズレイドかー…草タイプオンリーなら一匹欲しいかな」
    「トロピウスの首の木の実、一度食べてみたいわ」
    私が側にいることをすっかり忘れて楽しんでいるマスター。何となく友人の気持ちが分かった気がした。
    「何しに来たんですか」
    「あ、ごめんごめん。えっと、紫陽花は何処にあるのかしら」
    「何でここに来てまで紫陽花なんですか」
    「キーだからよ。木の実じゃないわよ。鍵」

    紫陽花は見事に咲いていた。青もピンクも両方。まだ五月なのに…
    「六月の気候に合わせてるのね。…枝が折られた形跡は無し」
    「どういうことですか」
    「これでいいのよ。さ、戻るわよ」
    「え?」
    訳が分からないまま、私はマスターに手を引かれて植物園を出た。

    「…ここは」
    ライモンに戻って来て、再び歩くこと五分。私は自分の通う大学近くの花屋の目の前にいた。
    「すみませーん」
    マスターが入る。私も後を追う。
    「はい」
    若い男が出てきた。茶色いエプロンと、花束を作っていたのだろうか、赤いリボンを片手に持っている。
    「ここに紫陽花ってありますか?」
    「紫陽花、ですか。ええ。三日前に入荷したばかりですよ」
    「なるほどねえ…。あら、どうしたの」
    私は目の前の男の顔から目が離せなくなっていた。何処かで見たことがあると思ったら…
    「君は…」
    「…」

    この人、うちの大学の生徒だ。しかも私と付き合ったことがある。ごく最近。

    「元彼ね。これで全て繋がったわ」
    「あの、何か」
    「もう一つ。貴方、エスパータイプ持ってない?テレポート使える子」
    「ああ、それなら。おーい、ディー!お客さんだぞー」
    男が向こうの部屋に向かって呼びかけた。と、いきなり男の隣に現れる影。
    「え」
    「…流石に予想外」
    マスターも驚いていた。
    「俺の手持ちでエスパー、しかもテレポートを使えるのは、このフーディンだけです」

    そこにいたのは、赤いリボンをつけたスプーンを持った、フーディンだった。いやに睫が長いことから、♀だろう。無駄に可愛い…気がする。
    「てっきりキルリアとかサーナイトかと思ってた」
    「コイツはカントー時代からの相棒なんです」
    フーディンの視線は私に向いていた。睨まれている…というより、ものすごい悪意を感じる。今にもカゲボウズが集まってきそうだ。
    「ディーがどうかしたんですか」
    「…この子、貴方のこと大好きみたいね」
    「え?」
    マスターが腕を組んだ。

    「だって、振られたご主人を思って、その振った相手の部屋の前に紫陽花をバラ撒くくらいだもの」

    マスターの言葉に、フーディンが下を向いた。
    「さて―」

    「ます、私が考えたのは何故バラ撒く花が紫陽花でなくてはいけなかったのかってことよ。別に花で無くてもいいじゃない。単純に恨んでいたのなら、それこそヤブクロンとかダストダスとかをどーんと」
    マスター、今その二匹のトレーナーを全員敵に回したと思う。
    「でもあえて花、しかも紫陽花をチョイスした。紫陽花は変わり身の象徴。これを知らなきゃ、わざわざ男と別れたその日に前日とは違う色の紫陽花をバラ撒いたりしないわよ。
    で、もう一つは警官ね。網を被せて、確かに感触はあったはずなのに、影も形も無かった。これはテレポートを使ったのよ。相手に恐怖心を与えるために、紫陽花は置いて行ったけどね。
    で、この推理が確定するにはある事が必要だった」
    「…?」
    「この近くの花屋はここだけ。駅前にもあるけど、まだ紫陽花は入荷してないわ。私昨日帰りに見てきたから。で、近郊で紫陽花がある場所は今朝行った植物園のみ。でもそこの紫陽花は見事に咲いてたけど、変に切られたりしてなかった。だから、ここかなー…って思ったの。お金さえ入れておけば、別に花を盗んだことにはならないものね。Quod Erat Demonstrandum。略してQ.E.D」
    その場にいた私達(フーディンも含む)全員が呆然としていた。マスターが私に向かって言った。
    「フーディンは振られたご主人を気の毒に思って、変わり身の早い貴方を戒めていたのね。全く、いつの時代も女の嫉妬は怖いわねぇ…
    あら、♀ポケモンでもそうなるのかしら」

    私は絶句していた。ポケモンが主人のためにまさかこんなことをするなんて。いや、それ以前にマスターの頭はどうなっているんだろう。
    「あの」
    「ごめん」
    私が何か言う前に、男が頭を下げた。フーディンが驚いて主人を見る。
    「うちのディーが変なことして」
    「え、あの、えっと…」
    私は声を振り絞った。
    「謝るのは私よ。私、やっと周りの人達の気持ちが分かった気がする。恋愛は楽しいことだけじゃない。振られた方は、すごく悲しいんだって…
    やっと分かった…と、思う」
    まだ十分ではない。でも、確かにその時私は、何か成長したと思う。多分。


    「恋、か」
    お客が少ない時間帯のカフェ。カウンターを拭いていたユエは、ふと呟いた。
    「高校の時は色々忙しくてそんな浮かれた事なんてしなかったな」
    「おや、意外ですね」
    目の前でコーヒーを飲んでいたカクライが言った。
    「ちなみに、どのようなことを?」
    「剣道部、あと晴明学園との抗争とか。いや、そんな昔の漫画みたいな感じじゃないよ。
    ただ…本当に色々あったなあ」
    「Ms,ユエの周りは退屈という言葉など、存在していないような気がしますよ」
    その言葉に少し取っ掛かりを感じながらも、ユエはいつも通りの業務に励むのだった。


    ――――――――――――
    久々に長い物を書いた気がする。以上。


      [No.1145] 【再掲】幸福の姿 投稿者:イサリ   投稿日:2011/05/05(Thu) 12:47:56     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     今日もまた、代り映えのしない灰色の朝日が昇る。
     海に臨む街のコンテスト会場に向かう道の途中で、手の中のポロックケースをぼんやりと見つめた。




     私はかつてトレーナーとして生まれた町を旅立ち、自らの限界を悟ってリーグを目指すことを諦めた。どうやら私にはバトルの才能は皆目無かったらしい。旅の道中は連戦連敗、町から町へと移動することもままならない。
     ならばと始めたポケモンコンテストでも成績は思わしくない。パートナー達は頑張ってくれているのだが、どうにも審査では他の参加者たちに一歩後れをとってしまう。
     長い年月を研究と鍛錬に費やしたにも関わらず、未だに中堅、二流の域を出ない。
     上を見上げれば切りがない。もがいて足掻いて距離を縮めようとしても、ライバル達はさらなる早足でその先に進んで行ってしまう。
     先のことを思うと、底の見えない、生温かい沼地に自分だけが囚われているような不快な気分になった。


     ある日、コンテスト会場のロビーの一角、ポロックを作る機械の周りに黒山の人だかりが出来ていた。
     何だろう、と近づいて見ると、どうやら一人の老紳士が他の二、三人の客とともにポロックを作っているようだった。
     ポロックとはポケモン用に作られるお菓子で、食べさせることによりポケモンのかっこよさや美しさ、賢さといったコンディションが上がる。コンテストで上位を目指すなら、ポロックを上手に作れることは必須の条件と言えた。
     そして、私はこの老紳士には見覚えがあった。以前にテレビで紹介されることもある、伝説のポロック名人だ。どこに住んでいるのか、また、何者なのかも詳しくはわからないが、彼の作るポロックは最高の出来栄えなのだという。コンテストを勝ち抜こうとする者なら誰しも彼とともにポロックを作りたがり、あわよくば彼のテクニックを見て盗もうとする。もちろん私も例外ではない。
     彼とポロックを作ろうと、順番待ちをしている人々の列に私も加わった。

     二十分、いや三十分は経っただろうか。ようやく私の番が巡ってきた。
    「それでは、次は苦いポロックを作りましょうか」名人は私を含めた三人の客に話しかけた。異論などあるはずもない。私は、自分の持っている中で最も苦い味のする木の実をブレンダーに投入した。
     
     彼は目にもとまらぬ速さでボタンを押し、ブレンダーはぐんぐんとその回転速度を増した。自分の出る幕ではないことがすぐに分かった。
     噂に違わぬ実力だ。

     出来あがったのは、今まで見たこともないほど濃い色をした緑色のポロックだ。
     このポロックを食べさせたら、私のキルリアはどれほど賢くなるのだろう。期待に胸が高まった。

     ――だが。

     このポロックを食べさせてしまったら、奇跡の術はそれで終わりだ。伝説の老紳士に次にいつ出会えるかもわからない状況下では、再びこのような味の濃いポロックを手に入れられる保証はない。後悔することのないように、しかるべき時が来るのを待って慎重に使うべきではないのか。
     良いポロックを私自身が作れるようになるまでは――。

     そこでふと、一番の解決策は、今ここで私が老紳士に教えを請うことではないかと気がついた。
     もしかしたら、この行き詰まった状況を打破するきっかけになるかもしれない。万に一つの可能性があるのなら、それに賭けてみたい気分だった。

    「あの、こんにちは」コンテスト会場から出ようとしていた老紳士に、努めてにこやかに話しかけた。
    「おや、貴方は。先ほどご一緒にポロックを作った方ですね。何か御用でしょうか」
    「覚えていただけていたとは光栄です。実は、どうすれば貴方のようなポロックが作れるようになるのか、もしもコツのようなものがあるのでしたら教えていただきたいのです」
    「そうですか」
     老紳士はしばし考え込んだ後、値踏みするようにこちらを見つめてくる。緊張で背中を汗が伝った。
     やがて彼はにやりと口元を歪めて言った。
    「いいでしょう。良いポロックを作る方法をお教えしますよ」
    「本当ですか」
    「ええ、もちろん。……そうですね。この場で立ち話もなんですから、いかがです、この近くにコーヒーの美味しい喫茶店があるのですが」
    「は……はい、お願いします」
     ――やった。
     名人のお眼鏡にかなったのだ。夢ではないか、と思った。



     運ばれてきたコーヒーに口をつけつつ、老紳士は話し始めた。
    「私の知っている、ポロックを上手に作る方法とはそう難しいものではありません」
     彼はそこで一旦言葉を区切り、低い声で続けた。
    「いいですか。大切なのは『感情』なのです」
    「……えっ。何ですって」
    「ブレンダーを回転させるときに、負の感情を強く心に浮かべれば良いのです。赤いポロックを作りたいなら怒りを、青いポロックを作りたいなら悲しみを。試しているうちにコツがつかめてくるでしょう」
    「はあ……」
     私は、曖昧に相槌を打った。この男は何を言っているのだろう。要は、気の持ちようだということなのか。 そんなことでポロックの味が良くなるなら苦労はしない。
     疑念が顔に現れていたのか、彼はふっと口元を歪めて笑った。

    「なに、そう警戒なさることはありません。もし貴方に合わないようなら、無理して続けることもないのです。これは、ただのお呪(まじな)い、ジンクスのようなものですよ。信じる、信じないも貴方の自由」

     私はようやく、この男が自分をからかっているだけなのだと気付いた。ポロックの作り方が一朝一夕にうまくなる方法など有りはしない。そういうことだろう。
     自分から声を掛けたにも関わらず、底意地の悪い老紳士に対する苛立ちが募った。表情に出さないように抑え込むのに苦労した。

     彼はなおも続けた。

    「ただし、桃色のポロックだけはこの方法で作るのをお勧めいたしません。理由は……まあ、作ってみれば、わかります……それでは。」
     立ち上がり、革の財布から紙幣を一枚取り出すと彼はテーブルの上に黙って置いた。二人の飲んだコーヒーの御代を支払って何倍もお釣のくる高額紙幣だ。
    「ここは私に……」驚いて言いかけた台詞を遮り、有無を言わさぬ口調で彼は告げた。
    「さようなら、未来の『伝説』よ。この術は既に貴方のものだ。……もう出会うことも無いでしょう」
     その言葉通り、コンテスト会場で老紳士の姿を見かけることは二度となかった。



     喫茶店から出たその足で私は再びコンテスト会場に向かった。
     彼の言ったことを完全に信じた訳ではないが、駄目で元々。元手がかかることもなく、余計なリスクを背負い込むことになるとも思えない。やってみようではないか、と考えた。
     青い木の実を一つ適当に選び、ブレンダーを回転させ、意識を集中した。

     ……悲しみ。
     まず思い浮かぶのは、死に別れた最初のパートナーのこと。
     かつてポケモントレーナーを目指して旅立つ日に出会い、戦い、傷つき、やがては腕の中で呼吸を止めた哀れな相棒。苦渋の選択、涙の別れ。己の未熟さが招いた結末。
     普段省みられることはなく、さりとて忘れられることもない、無意識の底の小箱にしまいこんで鍵をかけた古い記憶だった。

     出来上がったポロックの味は、数値の上では選んだ木の実の質に相応のもの。
    だが、それだけではない。何かが違う。長年培われた直感が告げていた。
     半透明のポロックの内側に、暗い海底を覗くような悲しみが見えた。



     感情に浸りすぎれば、ブレンダーを回す手がおろそかになる。かといって中途半端な感情では普通のポロックと大して変わらない。何度も試行と失敗を繰り返すうち、ブレンダーの速度は落とさずに無駄なく感情を注ぎ込むコツをつかんできた。
     
     また、ある辛い経験に基づいて再びポロックを作ろうとすると、最初に作ったときと比べて味は悪く、薄くなることを知った。私は次第に、材料とする記憶の枯渇(こかつ)に悩むようになった。
     順風満帆な半生とはいえないが、やはり心を絞めつける負の感情ともなればその数は限られてくるようだ。

     だが、程なくして私は最善の方法を見つけた。
     すなわち、素材となる感情はなにも私個人の経験に基づいたものでなくてもいいということだった。例えば、主人公に成りきって小説を読み、その感情をポロックへと溶かし込む。想像上の痛みではあるが、想像だからこそ無限の可能性があった。
     後悔、嫉妬、裏切り、激昂、絶望、死の間際の苦しみまでも……およそ人間が一生のうちに経験し尽くせない情動が、虚構の世界には書きこまれている。
     私は古今東西、あらゆる本を読み、歌を聞き、映画を見、時には劇を鑑賞した。
     使うことのできる時間の大半をそれらに費やしたが、それに見合っただけの知識も得た。

     そのようにして作られたポロックを相棒達に与えることに抵抗がなかったといえば嘘になる。だが、耐え難い苦しみを心に描いて作るほどにポロックの味は良くなり、ポケモン達も喜んで食べるのだ。
     何も毒薬を混入している訳ではない、と私は心の安定をはかった。
     そうとも。これはノロイではない、ただのマジナイ、ジンクスだ。
     苦悩、葛藤。それさえもまた、良いポロックを作る材料になった。



     万事うまくいっていた。
     コンテストの成績は飛躍的に伸び、私の名声は高まった。『彼と作るポロックの味は一級品』と噂が流れ、コンテスト会場では誰もが私とともにポロックを作りたがった。
     質の良いポロックは高値で売れた。もう日々の生活に困ることもない。

     しかし一つだけ、喜ばしくない噂も聞こえ始めた。

    『彼の作るポロックは最高だが、甘いポロックだけは誰が頼んでも作ってくれない。おそらく、まずいポロックしか作ることができないのではないか』と。

     作ることのできない味のポロックがあると言われるのは、自分の中では我慢のならないことだった。甘いポロックは作れないのではなく、作ったことがないだけだ。
     いや、正確には、あの老紳士の教えを受け、コツをつかんできた頃に何度か試したことはあった。その時出来た桃色ポロックは、味も滑らかさも普通のポロックとまるで違いが見あたらなかったのだ。思うに、幸福感という甘い感情は、他の苦く痛ましい感情に比べて、そのままでは共感されることが少ないために、ポロックにも味が乗りにくいのではないか、とその当時は解釈していた。

     だが、今なら違う。この胸のうちに溢れてくるのは限りない喜び、幸福感、甘い甘い感情だ。混じりけのないこの感情を今再び木の実に溶かし込み、ポロックを作ろうではないか。
     そうだ。今なら表現できる。甘い感情、満ち溢れる歓喜、幸福のすべて。
     最高の味の桃色ポロックが出来上がるだろう。
     なぜなら私の経験の中に残されているのは今のこの幸福感だけなのだから――。




     最後にコンテストに出場して以来、どれほどの年月が流れたことだろう。
     私は時折気まぐれに会場を徘徊し、居合わせた人々とブレンダーを回し、できたポロックを配分するだけの日常に浸っていた。全ての色の褪せた灰色の毎日だ。
     自ら終止符を打とうにも、『何か』がそれを引き留める。するべきことを全て果たすまでは許さないとでもいうかのように。だが、今や空っぽの自分に何を成せるとも思わない。
     コンテストやポロック作りには最早何の感慨も興味も無いというのに、私はどうして会場に足を運んでしまうのだろう。呪縛か、それともただの惰性か。気付かない内に自嘲的な笑みを浮かべていた。

     ある日、コンテスト会場を出ようとした時に誰かに呼びとめられた。
     振り返ると、スーツ姿の男が立っていた。どこかで見覚えがある。さては、先ほどポロックを作った客の一人か。

     男は不自然にひきつった笑みを浮かべ、顔色をうかがうようにこちらに話しかけてきた。
    「貴方は実に素晴らしいポロックをお作りになります。どうすればあのようなポロックが作れるのか、よろしければ、ご教授願いたいのです」
     久しく忘れていた感情――最後の歓喜――が、胸の内にひたひたと満ち溢れてくるのを感じた。

     ――そうか。自分はこのために。

     私は次の『伝説』となるはずの男をまじまじと見た。打算的な期待と少しの怯えの混じった笑顔を浮かべた冴えない男。まるであの時の自分のようだ。ここらあたりで秘術を譲り渡すのには最適な相手に思えた。
    「いいでしょう」貴方にならば。「……良いポロックを作る方法を、お教えしますよ」




    ___________________________________________________________

     【悪】のお題で投稿させていただいたもの。

     描写力ではポケスト常連の方々に遠く及ばず、かといってネタ欠乏症のため中々良いストーリーも浮かばず、たまに書いたらこんな話です。こんにちは、イサリと申します……。
     ショートショート風に書こうとしたら、いつの間にやら長くなってしまいました。
     読んでくださった方々、本当にありがとうございました……!

     元ネタ:エメラルドで殿堂入り後に現れるポロック名人。わかるわけないのよ(


    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】

     P.S. 新緑の方はログはあるのですが再投稿に少し時間がかかりそうです。
        愛を叫んでくださったラクダさんとクーウィ先生に感謝を込めて、必ず再投稿させていただきます。
        もうしばらくお待ちくださいませ。


      [No.1144] モミジム三連戦! 2/3 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2011/05/05(Thu) 12:31:54     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    「次の相手は誰かな?」

     1人目のバトルが終わり、2人目のバトルが始まろうとしていた。ジムリーダー2番手のケンタは立ち位置に移動し、次の相手を心待ちにしている。

    「俺が相手だ!」

     そこに、なにやら威勢のいい少年が出てきた。少年は3人の挑戦者の1人であるが、仲間の敗北はまるで気にしていない様子である。

    「お、チャレン君が相手か。」

    「そうだ。あんたには悪いが、踏み台になってもらうぜ」

    「そうかい。ならこちらも全力でいくよ!」

     そう言うと、ケンタは左胸ポケットから何かの葉っぱみたいなものを取り出した。

    「あの、それナニ?」

    「これかい?これはチュリネの頭の葉っぱだよ」

     笑いながら質問に答えるケンタに、チャレンは目を丸くした。

    「おいおい……あんたまさか、メスしかいないチュリネに手をかけたのか?お前人間じゃねえっ!」

    「それは何とも人聞きが悪いな。僕はチュリネを家で育ててるんだけど、人間と同じで葉っぱが伸びるわけ。だから少しだけ手入れして、葉っぱの切れ端を乾燥させただけさ」

    「し、信用できねえ。こんな怪しいやつには負けられないな」

     ケンタの発言に、改めて勝ちを意識したチャレンであった。

    「よし、それじゃあ……」

     ふと、ケンタは「チュリネの葉っぱ」と称するものを口に含んだ。初め苦虫を噛んだような表情をしていたが、次第に別の様子を見せるようになった。柔和な顔は姿を消し、目つきの鋭い、厳しい面構えに変化している。

    「ふふふふふ、力がみなきってきたのう……」

    「な、なんだあの変貌ぶりは!別人ってレベルじゃねーぞ!」

     チャレンはケンタの変化にうろたえた。これはチャレン側の2人も同様である。

    「ぁあん?つべこべうるせーぞわれ。まあいい……さあ、闇のゲームの始まりじゃ!」

     ケンタはそう言い放ち、勢いよくボールを放り投げた。それに釣られてチャレンもボールを投げる。

    「チッ、いきなりブルンゲルかよ、ついてないのう」

    「まずはゴウカザルが相手か、有利とはいえ油断は禁物だな。……持ち主があんな状態だし」

     お互いの先発は、ケンタがゴウカザル、チャレンがブルンゲルである。ブルンゲルはモモンの色をしているメスだ。

    「そっちからこないならこっちからいくけぇの、つるぎのまいじゃ!」

    「させるな、熱湯攻撃だ!」

     チャレンのブルンゲルはゴウカザルの腹目がけて煮え湯を放った。ゴウカザルは右足に熱湯を受けるもののなんとか避けた。そのままどこからか剣を取り出し、振り回しだした。

    「ほう、炎タイプに熱さで挑むとは、いい度胸じゃの!ゴウカザル、ストーンエッジ!」

     次に動いたのはゴウカザルだ。ゴウカザルが雄叫びをあげると、突如としてブルンゲルの足元から岩の刃が突き上げてきた。突然の攻撃に為す術なく、ブルンゲルは直撃を受けた。土煙が舞い上がり、ブルンゲルの姿は隠れた。

    「おらおら、もうおしまいかわれ?やはりわしこそが最強じゃの……」

     ケンタが自分に酔いしれていると、土煙の中から黒い塊がとんできた。ゴウカザルは油断していたのか、今度は手痛い一発をもらった。元々ゴウカザルはタフなポケモンではない。起き上がることなく、そのまま気絶してしまった。

    「よし、良い判断だブルンゲル!」

    「チッ、あじな真似をしてくれるのう。ならば……出てくるんじゃ、ファルコーン!」

     1匹目を倒して勢いに乗るチャレンの前に、ケンタは次のポケモンを投入した。赤とベージュのカラーリング、2つに分かれた長い髪、手首から吹き出す炎が特徴的である。

    「あれはバシャーモか。あれを倒せばポケモンリーグ……!」

     最後のポケモンを前にして、ブルンゲルとチャレンは思わず武者震いをした。

    「ふん、寝言は寝て言いんさい。まあいい、ブルンゲルにトドメじゃ、ファルコーン!」

     チャレンの様子に目を向けることもせず、ケンタは指示を出した。ファルコンと呼ばれたバシャーモは稲妻を発した右拳をブルンゲルに叩きつけた。ブルンゲルは勢いでジムの壁まで飛ばされ、倒れた。

    「ブルンゲル!」

    「フハハハハハ!どうしたさっきまでの威勢は。わしはまだまだ腹の虫が収まらんけぇのう……もっとわしを楽しませてくれんとのう」

    「ま、まだまだ!勝負だ、ギャラドス!」

     チャレンは怖じ気つきながらも、次のポケモンを繰り出した。彼の運命を握るのはギャラドスである。ギャラドスは出てきて早々バシャーモを威嚇した。

    「よし、これでこっちが受けるダメージは減るぞ」

    「チッ、下らねえことはよく知ってのうあんた。なら、つるぎのまい!」

     バシャーモは激しい戦いの舞いを始めた。

    「こちらも竜の舞いだ!」

    「なんだと……!」

     ここで、ギャラドスがいきなりコイキングの如く跳ねた。その光景は、ともすれば笑いを誘いかねないものである。

    「これでバシャーモより速く攻撃ができる。俺の勝ちだ!」

    「ほぅ、そいつは驚いたのう……まあ落ち着いてこいつを見んさい」

    「え?……ぁ、ああああああ!」

     チャレンは思わず絶句した。バシャーモが徐々に素早くなっていたのだ。バシャーモの特性は加速だったのである。その動きにギャラドスはついていけてない。

    「いくけぇの、ファルコーン!雷パンチ!」

    「う、うわー……なーんちゃって」

     バシャーモの拳は再び電気を帯び、ギャラドスのあごにクリーンヒットした。その刹那、ギャラドスの懐から何かが光り、電撃が幾分逸れてしまった。

    「どうだ、ソクノの実の力は!」

    「チッ、小賢しい真似してくれるのわれ!」

    「次は無いぞ、電磁波だ!」

     ギャラドスはがら空きになっているバシャーモの胴体に弱い電撃を放った。バシャーモは体が痺れたのか、片膝をついた。

    「……ふん」

     ところがここで誤算が起こった。バシャーモは頭の髪をまさぐると、緑色の木の実を取り出した。そしてそれを喉で飲み込むと、両手首から火炎が吹き出し、再び立ち上がった。

    「フハハハハハ、フハハハハハ!トラップ発動、ラムの実!」

    「ら、ラムの実だって……?」

     チャレンは現在の状況に希望を失ったのか、膝をがっくりと落とした。これにギャラドスも続く。

    「遊びは終わりじゃけん、ファルコーン!」

     最後までケンタは攻撃の手を緩めない。バシャーモはますます素早くギャラドスに接近し、雷パンチで引導を渡した。

    「ふん、口程にもないやつらじゃのう」

     決着はついた。ケンタはチャレンを眺めながら、悠々とバシャーモをボールに戻した。

    「……とても素晴らしいバトルだったよ、チャレン君。あと少しだったね」

    「あ、あれ……元に戻ってる」

    「ん、どうしたんだい?」

    「いえ……あの調子じゃ、何も覚えてないな。まったく、なんなんだよこのジムは!」







    ・あつあ通信vol.X

    モミジム企画2人目。チュリネの葉っぱを食べて豹変するのはポパイ、口調はバクラさんを元ネタとして引っ張りだしました。その結果こんな流れに……。ちなみに、ジムリーダーのケンタは剣玉から取っているので、剣の舞を主軸とした戦法を採用しました。炎技なんて使ってないなんて聞こえませんよ。

    あと、翻訳は正確なものとするため、全面的に翻訳サイトに頼りました。上手くいかない部分は私が補ったので、違和感があるかもしれません。

    さて、最後は音色さんを残すのみ。皆さん、どうか最後まで楽しんでください。


      [No.1143] モミジム三連戦! 1/3 投稿者:久方小風夜   《URL》   投稿日:2011/05/05(Thu) 12:00:05     159clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:広島人たちの】 【広島人たちによる】 【広島人(と他所の人)たちのための】 【コラボ作品】 【モミジム

     豊かな自然と歴史、温かな人柄で名を知られるチューゴク地方。
     その中で、穏やかな気候と豊富な資源を持ち、物流の拠点、政治・経済の中心、信仰と歴史の舞台として最も繁栄してきた街、モミジシティ。
     ポケモンリーグに向かうトレーナーたちにとっての、最後の関門がこの場所にある。

     モミジシティポケモンジム、通称モミジム。

     場を守るのは3人のジムリーダー。
     モミジシティの全てを表す草・炎・水の使い手。

     山と自然の「草」、『ジョウ』。
     人と歴史の「炎」、『ケンタ』。
     海と信仰の「水」、『セトナ』。

     これはそんなモミジムの、ある日のお話である。





    ※※※ 以下、この話はジムリーダー視点で進められていきます ※※※





    「たのもーっ!」

     おぉ、元気のええ声じゃのぉ。キセルをふかしながらワシはぼんやりとそう思ぉた。
     挑戦者か、えらい久しぶりじゃのぉ。しばらくだぁれも来とらんかったけぇ、何か懐かしいわ。

     ベンチに寝転んだまんまぼんやりしとると、頭をぶたれた。何すんじゃ、とワシは後ろにおった男……ケンタにゆぅた。

    「挑戦者が来ているよ。ちょっとは動いたらどうだい?」
    「わぁーっとるわ。ちぃとぼけっとしとっただけじゃろぉが」
    「また飲んどったん? ほどほどにしとかんと、体によぉないよ?」

     枕元にある白牡丹の一升瓶(みてとる)を拾い上げてた女……セトナはため息をついた。

    「そりゃあ昨日の夜の分じゃ。さすがに今日はまだ飲んどらんわ」
    「ほいじゃあこっちのまだ開いとらん方は?」
    「そっちゃあ今日の分じゃ。ええじゃろ別に」
    「もういいから、早く起きなよ。一番手だろ」
    「あぁすまんすまん。今行くわ」

     キセルの灰を落として、賀茂鶴の瓶を片手に、ワシは起き上がった。



     挑戦者を見て、ワシはちぃと驚いた。

    「何じゃぁ、挑戦者が3人おるんか」

     ジムに来とったんは、男が2人と女が1人。3人で旅をしとるらしい。
     それにしても3人旅。まぁ仲のええことじゃ。


     このジムはジムリーダーがワシ、ケンタ、セトナの3人。
     挑戦者は、ワシら3人を全員勝ち抜きで攻略せんと、このジムのジムバッジ、メイプルバッジは渡せん。
     ワシらは1人2匹使ぅとるけぇ、まぁ普通のトレーナー1人相手にするんと数は変わらんのんじゃけどな。

     にしても、どがぁしようかのぉ。
     何とゆうても今日は5月5日。鯉のぼりの日。ワシらモミジシティ人の愛する野球チーム、モミジ東洋マジカープの日じゃけぇのぉ。ちぃとぐらいはサービスしちゃってもええと思うんじゃけどのぉ。

     ……あ、ええこと思いついた。
     ワシは3人の挑戦者に向かってゆぅた。

    「そうじゃのぉ、ほんまは3人抜きせんにゃあいけんのんじゃけど、せっかく3人で来てくれたんじゃけぇ、1人ずつ相手しちゃるわ」
    「えっ」
    「おいおい、勝手に決めるなよ。酔ってるのか?」
    「酔ぉとらんわ。ええじゃろぉが。今日は祝いの日で。それに、そんくらいの方が面白いじゃろ?」

     うちは別にええけど、ってセトナがゆぅて、ケンタもしょうがないのぉゆぅてため息。
     とはゆぅても、こん中でいっちゃんバトルが好きなんはアイツってこたぁ、ワシゃぁよぉ知っとるけど。

    「勝負は2対2の勝ち抜き。回復禁止。誰か1人でもワシらに勝てりゃあ、あんたらぁがバッジを持っていきんさい。ええか?」
    「は、はい」
    「じゃ、ワシが最初に行くわ。アンタらぁは誰から来るんじゃ?」

     ワシがゆぅと、挑戦者は何か話し合うて、女が前に出てきた。

    「ふーん、アンタか。ほいじゃあ、早ぉ来んさい」
    「あ、あの……怒ってます?」
    「怒っとらんよ。じゃけぇ早ぉ来んさい」
    「ううっ……絶対怒ってる……」
    「ええから早ぉ来ぃやぁ!」

     ひぃっ、すみませんっ! ゆぅて女は走ってきた。
     名前は? って聞いたら『アキ』ってゆぅてきた。

    「ほぉか。ワシは『ジョウ』。使うのは草タイプじゃ。ま、よろしゅうな」



     手持ちん中から2匹選び、更にボールを1つ選んだ。
     ほいじゃやろぉか、とゆぅと、アキはお願いします、と頭を下げた。

    「行くよ、ウルガモス!」
    「おぉ、最初っから容赦ないのぉ。ほいじゃあ、頼むで、えいちゃん!」

     ワシはヤナッキーのえいちゃんを出した。名前はもちろん、あの谷沢永一(通称永ちゃん)からじゃ。
     セトナが、まーほんまやれんねー、とため息をついた。

    「あんたぁ、ほんまにそのネーミングセンスどうにかしんちゃいや」
    「ええじゃろぉが別に」

     あのー、初めてもいいですかー? ってアキがゆぅてきた。ああすまんすまん、勝負に戻らんとのぉ。


    「ウルガモス、『ぎんいろのかぜ』!」
    「ひゃあ、いびせぇいびせぇ。えいちゃん、『かげぶんしん』!」

     何とかよけれた。あーいびせぇいびせぇ。
     こっちが『ふるいたてる』を出したら、あっちも『ちょうのまい』。
     ふぅ、さて、どう来るかのぉ……ん?

    「! えいちゃん、跳びんさいっ!」
    「ウルガモス、『ねっぷう』!」

     跳んでかわしたんじゃけど、かすってしもぉた。じゃけどそれでも相当なダメージ。いやぁさすが、ぶち強いのぉ。
     えいちゃんはマゴのみを取り出して食べた。うーん、かすっただけでこれとは、ほんまひでーひでー。
     アキはそれ見ぃ、とでも言いたげな顔でこっちを見とる。

    「相性最悪ね。私が負ける要素が全然ないわ」
    「……わしゃーこーしゃくたれーは好かん。最後までやらんとーわからんじゃろ?」
    「ジョウ、なにはぶてとるん?」
    「はぶてとらんわ。ちぃと待っとりんさい」

     キセルをもっかいくわえ直す。いっぺん大きゅう吸い込んで言うた。

    「『アクロバット』!」

     持ち物がないなって軽ぅなったえいちゃんは高ぉ高ぉに跳び上がった。ほいで体をひねってウルガモスに蹴り。
     頭と体の付け根に直撃した蹴りは、そりゃあばちよぉ効いたようで、ウルガモスはへたった。
     アキはなんとのー、いうた顔でぽかんとしとった。
     煙を吐き出してワシぁゆぅた。

    「ワシらぁのぉ、リーグん前ん最後の砦なんで。そがぁに簡単に越えられちゃー困るんじゃ」
    「一……撃……」

     ぽかんとしとったアキは息を吐いて、頭を下げた。

    「……すみません。モミジジムなめてました」
    「ん、わかりゃええよ。ワシゃぁ強いもんが好きじゃけぇのぉ。ま、きばってきんさいや!」

     ワシがゆぅと、アキはしっかりとうなずいた。


    「お願い、ジュペッタ!」

     アキの放ったボールから、ジュペッタが出てくる。なるほど、ええ目をしとるわ。
     ワシはえいちゃんにもう1回『ふるいたてる』を命じた。

    「ジュペッタ、『シャドークロー』!」

     黒い爪がえいちゃんをかぐる。はぁ、こりゃ、よぉやるわ。

    「えいちゃんっ!」
    「ジュペッタ、『トリック』っ!」

     跳び上がったえいちゃんが、地面に落ちた。えいちゃんが持っとったはずのない、黒い玉が背中に縛り付けられとる。
     くろいてっきゅう、かぁ。素早さと身軽さが第一のえいちゃんにはきついのぉ。

    「ジュペッタ、『ダストシュート』!」

     えいちゃんがあずっとる間に、ジュペッタの技が決まった。
     ふぅやれやれ、やれんのぉ。強い強い。

    「……よぉやったのぉ、えいちゃん。たばこにしときーやぁ」 
    「私も、負けるわけにはいきません。あなたたちに勝って、リーグに行きます!」
    「ほぉか……ほじゃね、ワシらぁジムリーダーは乗り越えられるためにおるようなもんじゃけぇのぉ」

     ワシはボールを取り出す。もっかいキセルをふかして、ゆぅた。

    「……じゃけど、ワシもそがぁに簡単にゃあ負けるわけにゃあいかんけぇのぉ。行きんさい! アスベスト!」

     ほうじゃ。ワシゃあ、そがぁに簡単には負けられん。
     ワシは昔知り合いにもろぉた、エルフーンのアスベストを場に出した。

    「……ほんまに、アンタぁそのネーミングセンスどうにかしんちゃいや。ほんまに」
    「知らんわ。ワシにこいつぅくれた奴にゆうてくれぇや」

     ワシじゃったら、『タツさん』(もちろん由来はかの名(迷)キャッチャーの『竜川影男』)ってつけるのぉ。ちなみに。


    「ジュペッタ、『ふいうち』……」
    「アスベスト! 『コットンガード』!」

     あっちゅーまに、アスベストをもふふっと綿に包まれる。あれにダイブするのがほんまたまらんのんよねぇうんうん。
     ジュペッタの攻撃はもふもふの綿に阻まれて身体にたわん。アキは気を取り直してゆぅた。

    「ジュペッタ、『シャドークロー』……」
    「アスベスト! 『おいかぜ』!」

     ぶわっと風が起こる。アスベストは風にのってふわふわと漂っとる。まぁただ単に漂っとるわけじゃのぉて、自分で起こした風じゃけぇ自分の思うところに飛んで行けるんじゃけど。
     アスベストはけけけっとまぁおちょくっとるように笑ぉた。さすが『いたずらごころ』じゃのぉ。

    「アスベスト、『やどりぎのタネ』!」
    「ジュペッタ、『ダストシュート』!」

     ひゅう、攻めるのぉ、とワシはつぶやいた。
     相手は『やどりぎのタネ』でじわじわと体力を削られよる。じゃけどまぁ決定打にゃあならん。
     じゃけど、ジュペッタの攻撃もよぉ効かん。

    「泥沼ですけど……絶対、勝ちます!」
    「ワシも……負けるわけにゃあいかんのぉ」

     ワシはちらっと後ろを見た。ケンタとセトナと眼が合うた。

     そうじゃ。ワシがここにおるんはこいつらのおかげ。
     こんなところで、この先の勝負を終わらせるわけにゃあいかん。




     モミジシティの北のはずれ、何もない田舎がわがた。

     ガキん時に、親父の都合で、モミジシティの外へ出た。
     じゃけどそれからは、毎日が地獄じゃった。


     しゃべりゃあいびせぇゆわれ、話しかけりゃあ怒っとるんかゆわれ、

     何も出来ん、何も言えん、鬱積ばかりがたまる日々。


     あん時もそうじゃった。怒っとらんのに怒っとるゆわれ、普通にしゃべっとるのにいびせぇゆわれ。


     しごーしたら、すっきりした。


     ほいじゃけぇ、毎日毎日、ごーがにえる奴をしばきあげてまわっとった。
     最初ん時、たまたま近ぉにあった盆灯篭をぶん回しよったけぇ、いつの間にかそれがトレードマークになっとった。
     まぁ、あん頃のワシは、ほんまにどうしようもないクズじゃった。


     そんなワシんところに、あの2人はやってきた。


    「あんたが『盆灯篭のジョウ』ゆー奴か?」
    「あ? 誰じゃワレら」

     カリッ、っちゅうこまい音が聞こえて。
     声をかけられるなり、ワシは男の方……ケンタに頭をぶちまわされた。

    「何すんじゃワレぇ!!」
    「何しょーるんやはこっちのセリフじゃワレ!! このパープーが! 盆灯篭はご先祖様をリスペクトするもんで人を殴るためにあるんじゃなぁで!!」
    「怒るとこおかしゅうないか!?」
    「まあまあ、ケンタもジョウ君も、そのへんにしときんちゃいや」

     そういって、女の方……セトナが割り込んできた。

    「噂で聞いたんじゃけど、ジョウ君、ポケモンバトル強いんじゃろ?」
    「ん……まあ、の」
    「じゃあええじゃん。ねえケンタ」
    「ほうじゃのぉ。ま、ちゃんと戦うて、ちゃんと見てみんにゃあわからんけどのぉ」

     よぉわからんワシに、2人は言うてきた。

    「わしらはモミジシティジム・ジムリーダー。アンタ、わしらの仲間にならんか?」




    「……どーしょーもないクズ人間だったワシを、こいつらぁが拾ぉてくれたんじゃ。こんなところで、このバトルを終わらせるわけにゃあいかんのぉ」

     口に出して、気合を入れ直した。

    「アンタぁ、そがぁに恥ずかしいことよぉゆえるのぉ」
    「まぁ言い辛いけど君は確かにパープーだったよ」
    「悪ぃのぉ……じゃけど、今日はちゃんと守りとおすで、ここを」

     さて、バトルに集中せんとの。


     じわじわと体力が削られて、アスベストも相手のジュペッタもだいぶへばってきとった。やどりぎはかなり成長しとるし、綿もだいぶ少のぉなってきとる。
     こりゃあ、もうひと押しじゃのぉ。

     先に動いたんは、アキの方じゃった。

    「ジュペッタ、よーく狙って……『ダストシュート』っ!!」


     ……じゃけど、動かん。

     ぽかんとしとるアキに、ワシはゆぅた。

    「アンタぁ、『サイジョウ』ゆう場所を知っとるか?」

     アキは知らん、ゆうように首を横に振った。
     ワシは傍らの賀茂鶴の酒瓶を掲げて見せた。

    「『サイジョウ』はのぉ、アサギの『ナダ』、エンジュの『フシミ』と並んで、この国の三大銘醸地いわれとる場所じゃ。何でか知らんが、知名度は低いんじゃけどのぉ。賀茂鶴、白牡丹、福美人……ワシゃあ日本酒が好きじゃけぇえっと飲んどるわ」
    「日本酒……」
    「ところで……アンタんところのジュペッタ、性格は……『ゆうかん』、か?」
    「……! まさか!」

     ジュペッタの手から、マゴのみの破片が転がり落ちよったのに、アキはようやっと気がついた。
     まるで酔ぉとるように、あっちゃぁこっちゃぁ、ふらふらとしとる。かと思うたら、自分の頭をぽかぽかとぶちまわし始めた。
     どう見ても、混乱しとる。

    「いつの間に……! 『トリック』!?」
    「よぉわかっとるじゃないか」
    「で、でも、確かあの時もうヤナッキーはマゴのみを使って……」

     アキが、はっとしたよぉにこっちを見た。

    「……『リサイクル』……」

     正解、っちゅーてワシは笑ぉた。
     
    「アスベストは耐久はあるんじゃけど、決定力にかけてのぉ……ぎりぎりまで削らせてもらわんと、なかなか倒せんのんじゃ」
    「そ、それにしても、相手にマゴのみが効くかなんて、トリック使うかなんて、完全に運じゃない……」
    「そうじゃのぉ。じゃけど、残念ながら、ワシゃぁ結構な博打うちでのぉ。当然、他の手も考えてはあるけどのぉ」

     アキは首を振った。こがぁに低確率の賭けに負けたんなら、勝てん、って言うて。
     ほいじゃあ、終わらしょーか、ってワシはゆうた。

    「アスベスト、『ぼうふう』!!」

     バトル場に、突風が吹き荒れた。




    「ジョウ、また控用のベンチめげたでー。アンタんじゃけぇええけど、直しときんちゃいよー」
    「やれんのぉ。もちぃと狙いをしぼれりゃあ相手への威力も上がると思うんじゃけどのぉ」
    「だから、まだまだ詰めが甘いんだよ君は」
    「はっはっは、すまんのぉ」

     アキががっくり肩を落として仲間んとこに戻るんを見て、ワシも賀茂鶴の瓶を抱えてベンチがあったとこに座った。
     酒を猪口に注ぎ、キセルをくわえ、ケンタにゆぅた。


    「ほいじゃあ、後は任せたで、ケンタ」




    Next battle → VS Kenta

    ++++++++++++++++++++


    ある日のチャットに現れた面子のうち、3人が広島人だったという奇跡から始まったこの話。
    しょっぱなはワタクシ久方小風夜が務めさせていただきました。

    まぁ自分がしたことと言えば、合作を言いだしたことと、3人のビジュアルを妄想してたことくらいです。
    当方、バトルはからっきしなので残るお2人にお任せします。

    念のため言っておきますが盆灯篭は全力で笑うところです。


    ……広島出てから長いので、広島弁がわからなくなりつつある。゜(ノД`)゜。
    では、次の作者はあつあつおでんさん! よろしくお願いしまーす!



    【気が向いたら翻訳ver.も作るかも】




    【詰まらんこぉ読めりゃあアンタも仲間じゃ】


      [No.1142] [再投稿]最後の花束 投稿者:一刀流   投稿日:2011/05/05(Thu) 11:25:00     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     あれから一年が経とうとしていた。
     第三次世界大戦、徴兵令が発令され、私の恋人は遠い戦地へと赴いた。
    「大丈夫。きっと帰ってくるよ。だからそれまで待っていてほしい」
     そう言い残して。
     
     三日前に世界大戦は終わった。勝利を手にしたのは、私たちの国が所属しているホウエン、ジョウト、カントー連合だ。
     もし、もしも彼が生きていれば今日、列車に乗って帰ってくるはずだ。
     重い不安と、強い期待を胸に、私はよそ行きのワンピースを着た。彼はお腹をすかしているかもしれないと、お握りを鞄に二つ放り込んだ。服が汚れているかもしれないと、洗った彼の服も持っていった。

     籍は入れていなかった。同居こそしていたものの、まだ籍は入れていない。
     籍を入れる手続きをしようと思っていたその日に、赤紙が届いたのだ。
      
     大勢の人がたくさんの荷物を持って駅のホームに並んでいた。子供連れの婦人が半分ほどの割合を占めている。子どもが「お父さんの乗ったポッポーまだ?」と言う声が耳を掠めた。一瞬、ポッポに乗って帰って来るのかと思ったが、すぐにそれが列車の比喩だということに気が付き、私は頬を赤らめた。
     
     皆が期待で胸を弾ませている中、歓声と共に列車がホームを貫いた。窓から顔を出したり腕を伸ばしている大勢の男の人たちを見て、きっとあの人も帰ってきていると確信した。あんなにたくさんの人がいるんだもの。あの人だけがいないわけがない。
     列車が停車すると中からあふれ出るように人が湧き出し、押し出すように人が殺到した。抱き合う人、赤ん坊を抱え込む人、恋人と思われる女性とキスする人。再会の喜び方は様々だった。
     そんな人たちを横目に見つつも、私は常にあの人を探していた。
     そして私が見たのは、土で汚れ、軍服のあちこちで穴が顔を出し、少し日焼けしたあの人だった。
     
     涙が頬を伝った。
     
     彼の視線は自分の胸に付けたペンダントと民衆を往復していた。戦地に赴く前に私が彼にプレゼントしたペンダントだ。中には私の写真が入れてある。
     私は感慨にふけっていて、彼の元に行くことなど忘れていた。しかし、彼がこちらを向いた瞬間に私は我に返った。彼はどういう反応をしたらいいかわからない様子で、それでもにっこりとほほ笑んだ。私は涙を流しながら彼のもとに駆け寄り、抱きついた。
     そして彼はそっと、私の耳元で囁いた。
     そして彼はもう一度ほほ笑んだ。
     そして彼は、消えた。

     





     空気を伝わる砲撃の衝撃音が森を揺るがした。葉と葉が身を寄せ合うたびに乾いた音を発する。
     森の中で、二人の男が茂みに身をゆだねていた。一人はペンダントを胸に、一人は銃を腕に。敵に見つかりにくい緑と茶色の軍用服をつけ、体中を土に塗(まみ)れさせていた。
     森にはたくさんの地雷が仕掛けてある。もし敵が突入してきた時でも、敵の戦力を減らせるように。地雷が仕掛けられた箇所は地図に記入されている。
    「全く、俺たちも運がないな。よりによって突入部隊に入れられちまうなんて」
     銃を腕に抱えている男が言った。ペンダントを胸に付けた男が相槌をうつ。
    「だけど死ぬわけにはいかない。だろ?」
     ペンダントを揺らし、時折息を切らしながら言った。肺も喉も、体中が悲鳴をあげていた。
     ──そう。死ぬわけにはいかないんだ。故郷で待つ最愛の人のことを思い、胸に下げた希望を腕で強く握りしめた。

     刹那、男に降りかかったのは血の雨。隣の男が撃たれたのだ。
    「くそっ!」
     男は走った。このままでは自分にも流れ弾が当たる恐れがあったし、すでに自分の位置を知られているかもしれない。少なくとも、ここを離れるのが得策だと考えた。
     走る。背を曲げ、見つからないように細心の注意を払いながら、一心不乱に。撃たれた仲間が頭を過ぎる。その考えも置き去りにして男は走る。今まで見てきた幾数もの死んだ仲間たちが、過去から追いかけてくる。一層早く、男は走る。そして気がつく。

     ──地雷っ!!

     本当に僅かに盛り上がり、なおかつ土を掘り返された後がある。反射的に身体にブレーキを掛けた。
     息を弾ませながら、失った単調なリズムを取り戻そうと男は立ち止まる。
     
     ふと草の擦れる乾いた音が心臓を凍らせた。敵兵か。それとも味方か。あるいは風の悪戯か。次第に音は大きくなっていく。いつでも走りだせるよう、戦えるよう、男は身構える。
     
     現れたのは、黒い狐だった。とても小さな。恐らく先ほどの銃撃音を聞きつけ逃げてきたのだと考えた。
     安堵の息を漏らし、そして男に緊張が走った。
     黒い狐が真っ直ぐ、地雷の方向へと走って行ったから。





     気がつくと男はボロボロになっていた。辺りには置いて行かれた黒煙が空へと登れずに留まっている。
     
     不思議と痛みはなかった。

     黒煙の中から黒い狐がおぼつかない足取りで近寄ってきた。その口にはきらきらと光る希望が咥えられている。走り出した時にでも外れたのだろう。
     男は狐が持ってきた希望の中から覗く天使を見て、呻いた。
    「君にもう一度会う事が出来たなら。どんな形でもいい。もう一度君に会う事が出来たなら」
     言い終わると少しずつ眠たくなってきた。世界が黒くかすんでいく。
     遠い世界に行く旅の途中、男は彼女へ送る花束として最後にこう言った。





     希望を咥えた黒い狐は走った。
     お母さんもお父さんも、お婆ちゃんもお爺ちゃんもみんな口をそろえて言っていたから。
     恩をいただいたら恩で返すのだと。
     希望を抱いた黒い狐は走った。男の残した最後の花束を彼女に届けるために。





    「愛してるよ」



    ───────────────

    一部保存していなかったため少し文章がかわっています。

    最近全くアイディアが出ない。。。気分転換に初めからBWやろうかな。


      [No.1141] あげ。 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/05/05(Thu) 10:34:18     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    あげ。

    今回のログ消失事件を機に、
    (取得してたはずのログがうまく取得できてなかったこともあり)
    586さんにログ取得プログラムを組んでもらいました。

    次に似たようなことになっても復旧率は高くできる……はず。

    ごめんなさい(


      [No.1140] 縫い逢わせる。 投稿者:巳佑   投稿日:2011/05/05(Thu) 05:51:37     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ある西洋風の都はずれにある高原には、空家が一軒あった。
     私はその高原で散歩をしているとき、いきなりの通り雨にあって、その空家に雨宿りさせてもらうことにした。
     中に入ってみると……ほこりが溜まっているのが分かる、というか、家具とかはそのままだったのか。
     居間の方に入ってみるとほこりが積もっていて若干、白く染まった机が目に入った。
     ……この空家、いつからの物だろうか?
     私がこの都に来たのはつい最近だ。
     事情を知っているはずがない。

     とりあえず、この家が空家だということは高原を散歩しているときに知った……だが、知っているのはそれだけで、後のことは知らなかった。

    「ねぇ、おじさん……裁縫できる?」

     ――刹那、そんな声が耳に届いて、私はとっさに振り返った。
     そこには、黒い人形みたいなものがふよふよと浮いていた。
     赤い瞳に金色ファスナーの口……確か、本で見たことがある、ジュペッタというポケモンだ。
     名前を知っているのだが、後のことは覚えていない。
     ジュペッタという名前と姿、後はぬいぐるみポケモンとしか分からない、生憎、私は物知りではないものでな。

    「裁縫……?」
    「……うん、ここにボロボロになっちゃった人形が四つあるんだけど、縫い直して欲しいんだ。道具はここにあるし、指定とかも僕がするから」

     うむ……雨宿りをしてもらっている身としては断れない。
     私は引き受けることにした――いや、引き受けざるを得ないといったところかもしれないが。
     
    「だが……私は人形師でもなんでもない。裁縫は人並み程度だが、大丈夫なのか?」
    「大丈夫だよ。ありがとう」

     ジュペッタが早速、その四つある人形のところに案内してくれた。
     居間の入り口側にある机ではなく、奥の方の窓が近くにある小机の上にその人形は置いてあった。
     確かに一つ一つがボロボロだ。綿とかむき出しになっているのが分かる。辛うじて……人型というのだけは分かったが。
     ジュペッタが早速、木製の裁縫箱を持ってきてくれた……中には糸や、針がそろっている。
     毎日手入れされているのだろうか、この裁縫箱の外見も中の物もほこりがあまりかぶってなかった。
     まぁ、とりあえず、雨宿りのお礼に一縫いしてみるか。

     まずは一つ目。
     人の下半身部分に青い布の注文が入る。恐らくジーパンみたいなものなのだろう。
     それを縫い終えると、次は上半身、白い布の注文が入る。無地のTシャツといったところか。
     後は靴の部分と思われるところは黒、そして、肌色の注文で人の皮の部分を縫っていく。
     髪にも黒の指定。
     目は黒のボタンの指定が入った。
     あ、もちろん、綿もしっかりと詰めている。
     ……これは、大人の男、か? とにかく体つきが良さそうな男ができた。

     次に二つ目。
     下半身は緑の布が注文に、更にロングスカートみたいにしてという注文が入る。
     上半身は黒色の布の注文の後、桃色の注文が入った。エプロンをつけて欲しいのことだった。
     靴の部分は赤色、肌の部分は茶色が入った……褐色系だったのか。
     髪は白色が指定された、人間で言うとももの辺りまで白い布が伸びていく……長髪なのだろう。
     目には青いボタンを入れて……もちろん綿を入れるのも忘れずに。
     完成したのは……言うまでもなく女性だろう。
     一つ目とそんなに大きさは変わってないから大人の女性だろう……とても優しいそうな女性ができた。

     更に三つ目。
     下半身は桃色の布が注文に、更にミニスカートみたいにしてという注文が入る。
     上半身は赤色の布で、長袖の服を縫っていく。
     靴の部分は白色、肌の部分は茶色が入った……この子も褐色系のようだ。
     髪は灰色が指定された。ツインテールみたいにしてという注文がここで入る。
     目には青いボタンを入れて、綿も繰り返しになるが、忘れずに、と。
     完成したのは……先程の二つよりも小さいことから……恐らく、子供。
     可愛らしくて、なんだか恥ずかしそうな少女ができたような気がする。

     最後に四つ目。
     下半身は青色の布が注文に、更に短パンみたいにしてという注文が入る。
     上半身は黄色の布で、半袖の服を縫っていく。
     靴の部分は緑色、肌の部分は再び肌色に戻った。
     髪は黒で、目には黒色のボタンが取り付けられた。
     完成したのは……これも最初の二つ同様小さいことから……子供だろう。
     活発そうでやんちゃそうな少年ができた。  

     これで、全て終わった。
     専門的な技術は持っていないので、できあがり具合はそれ程でもないが、まぁ、とりあえず人に見えるし、大丈夫だろう。
     振り返ってジュペッタを見ようとした。
     だが、近くに浮いていたはずのジュペッタがいない。
     はて、どこに行ったものかと辺りを見渡してみると、すぐそこの床にジュペッタはたたずんでいた。
     どうしたものかと尋ねようとして、ジュペッタを見ると、ジュペッタは体を重たそうにしていた。

     自分の涙で自分を重くしていたのだろうか。  

     ジュペッタの体は何かに――涙が染みこんでいるような感じだった。

    「ごめんね……僕を抱いて、もう一回、人形を見せてくれる……?」

     言われた通り、ジュペッタを抱き上げた。
     肌に濡れた物があたる。
     ジュペッタは四つの人形の方を見つめていた。

    「ありがとう……パパもママも……妹も……そして僕もいる……やっと家族がそろったんだ……ありが、とう。おじ、さん……もう、だいじょうぶ、みたい。僕は……独り、じゃ、なかったんだね」
     
     嗚咽(おえつ)をだしながらもそこまで言うと、ジュペッタは徐々に光っていき――。

    「本当に、ありがとう、おじさん」

     跡形もなく消えていった。
     最後には涙を見せながらも微笑んでいたのが心に残った。




     この摩訶不思議な出来事の後、私はこの家の者について調べさせてもらった。
     あの家には四人の家族が住んでいたらしい。
     豪快な父親に、物腰の柔らかい母親に、恥ずかしがり屋な娘に、元気活発な息子。
     今から約七年前のある日、どうやら、その息子が悪戯をした罰として家に留守番をさせられていたという。
     その息子の父と母、そして妹の三人はその日、息子を置いて出かけたのだという……しかし、その三人は道中、不慮の事故で亡くなってしまった。
     そして、何も知らない息子は、帰りが遅くてイライラしていたのだろう、勢いよく家を飛び出して、やがて、事故に巻き込まれて、死んでしまったという。

     その日は皮肉にも息子の誕生日だった。
     その息子の父と母と妹が握っていたというものが――。

     あの家族の人形という誕生日プレゼントだった。

     その事故に心を痛めた一人がせめて人形だけでも、ということでその四つの人形は家に置かれたらしい。
     
     恐らく、年月が経っていく度にボロがでてしまったのだろう。
     家のカギは開いていたから、恐らく、野生のポケモンが私と同じく雨宿りで家に入り込み、人形に手を出してしまったのかもしれない。



     散歩コースに定めた高原を歩きながら、私は青空を見上げる。
     ……あのジュペッタは無事、家族に再会できただろうか?
     いや、大丈夫だろう。
     何故なら――。


     あの家族の人形はいい笑顔をしていたのだから。




    【書いてみました】

     GW中は昨日で終わりかと思っていたら、まだGWマジックは終わっていませんでした。(汗)
     まさかのGWマジック三連発。(汗)
     今年のGWは充実しましたです。
     
     深夜チャット中に色々と話に花が咲き、色々と路線が爆発したりした中、(笑)
     カゲボウズやジュペッタの話が盛り上がったときに産まれた物語です。
     恐るべしチャット、そしてカゲボウズやジュペッタの魅力に更にドキドキしました。

     チャットではお世話になりました。
     あの場に居合わせた方々に、この場を借りまして……ありがとうございました!

     
     今回の物語のイメージカラーは個人的にセピア色……。
     皆様にどうか温かいものと、ジュペッタの魅力が伝わりますように。




     ありがとうございました。


    【何をしてもいいですよ】
     
     


      [No.1139] 【再掲】狐日和番外編〜遠方から来た狐難の相 投稿者:巳佑・きとかげ・久方小風夜   投稿日:2011/05/05(Thu) 00:34:23     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:例によって】 【深夜の】 【チャットによる】 【テンションの】 【産物

    作者と担当
    巳佑:治斗、灯夢
    きとかげ:うにゃんs、マサキ
    久方小風夜:玉藻、ギラちゃん

    編集:久方小風夜



    (ナレーション:クーウィ)

    今日、ひむちゃんはお出かけのようです。
    おや、何やら雑誌を読んでいますね。甘味の雑誌でしょうか。

    抹茶パフェ、白玉パフェ……カステラパフェ。

    某ロコン「抹茶パフェもおいしそうやな……うん、こんど治斗に作ってもらうか」
         まぁ、みたらし団子が一番好きやけどな。他にも茶菓子やったら大歓迎やで!」


     一方その頃、治斗の家では……


    ゾロアたち「うにゃんうにゃん(高級猫缶よこせ)」
    玉藻「そんなことより稲荷寿司はないのか?」
    治斗「……どうすんだよ。俺、パフェなんか作ったこと、まぁ、稲荷寿司くらいなら……って、猫缶なんて持ってねえぞ!(汗)
       っていうか、なんで俺の周りには狐が集まって来るんだよ!?(汗)」
       それぞれの主人や友人はどうした!? こんなに面倒見切れねぇぞ!(泣)あとちらし寿司しかない」


    玉藻「なん……だと……?」


     おや……? 玉藻様の様子が……?

    治斗「暴れるなら、外で頼むぞ、頼むから!(汗)」
    うにゃんs「うにゃんうにゃーん」(追い出された)
    玉藻「世にも稀な美女が来たというのに、失礼な男だな全く」


     自分で言うかw流石まりも様だ。
     ってか、それ化けた姿ですがな!

    玉藻「マリモって言うな!」


    治斗「くっ……絶対に追わねーからな……くっ……!」
       もう化けられるってやつはアイツでこりごりっていうか、うん。とりあえず、マリモだっけ? 稲荷寿司は作っといてやったから暴れるなよ?」
    玉藻「マリモじゃない玉藻だ! だが稲荷寿司はいただく!(バッ」

    その頃のうにゃんs「よし、僕はスリッパに化けよう」「じゃあ私は包丁」「俺は蛍光灯」
    治斗「……なぁ、流石の俺も馬鹿じゃねぇぞ? そこと、あそこと、ここ! 尻尾出てるぞ
       とりあえず、おかわり用意しといたからな〜、マリモ」
    玉藻「ふゃはははひほひゃひゃひ!!(だからマリモじゃない!)」もぎゅもぎゅ

    「うにゃーん!!! かくなる上は最終手段!全員でうそなきだあ!」

    治斗「……なぁ、これって俺が折れないとダメ?
       とは言っても、他に今、あるのは……稲荷寿司はマリモが占拠しちゃってるし……残りはみたらし団子か……食べるか?」

     それは戦争になる……!

    治斗「なぁ〜に、アイツのだけど、今、アイツは出かけているみたいだし、すぐに買い直せば、大丈夫、大丈夫」

    玉藻「もぎゅもぎゅごっくん。 ……ふう、なかなかだったな。何か礼をしてやろう。何でも言うがいい。あと茶をくれ」
    治斗「とりあえず、せん茶か、ほうじ茶があるが……礼か……う〜ん、まりもっこりキーホルダーが欲しいな、マリモ」
    玉藻「玉藻だ。煎茶で頼む。まりもっこり? 何だそれは」
    治斗「(雑誌を取り出して)この緑のキャラクターがそうなんだけど、なんか欲しくなってな……ほい、煎茶」
    玉藻「うむ。……これがか? 何というか、変わった趣味だな貴様」ずずずず……
    治斗「なんかな……コイツを見てると……癒される気が。アイツにくらった、みぞの痛みも忘れてくれそうだ」
    玉藻「なるほど、癒し効果があるのか。それにしては卑猥な顔をしているが」
    治斗「なんか、その顔を見てると……悩んでることが馬鹿馬鹿しくなってきてな、スッキリするんだよ」
    玉藻「……まあ、趣味に口出しはするまい」

     うにゃんsはみたらし団子を食べつくした……そして昼寝を始めた
     なぜライモンからタマムシまで来たし

    治斗「それにしても……寝顔は可愛……いかんいかん! 甘やかしては! っていうか、主人はどうした、主人は!?(汗)」
    マサキ「ちょっと転送装置が事故ってん」

     オマエかーい!?

    マサキ「というわけで、転送装置の動作保証の為にダークストーンとライトストーンを持ってきてや」
    治斗「ちょっと待て、いつの間にか、客が増えてるし! ダークストーンとライトストーン? どこにあるんだ、それは」
    イーブイ「うにゃん(混ざってみた)」
    治斗「って、またなんか増えてるし! なんだ! 今日は厄日か!?(汗)」
    玉藻「なるほど、癒しを求めるほど貴様は忙しいのだな。狐の世話やら、だあく何とかを探すやら」
    治斗「落ちた抜け毛の掃除とか大変なんだよ!
       ……しかたねぇ、お願い変更だマリモ。とりあえず、ダークストーンとライトストーンをマサキだっけ? そいつにくれてやってくれよ
       まずは問題解決が先だぁ! ちくしょう! さらばだ、まりもっこり!(泣)」

     まりもっこりとストーンを天秤にかけるのか!

    玉藻「だあくすとおんとらいとすとおんだな。よし、知り合いに聞いてみるとしよう
       おい貴様、起きているか」


    ギラちゃん「小説の枠を超えるのはやめてくれ」


     なんか、すごいのが現れました!?


     かくかくしかじか……

    玉藻「というわけで、まりもっこりとやらを探しておるのだ。まりもっこり」
    治斗「おい? マリモ。なんか違ってねぇか?(汗)」
    ギラちゃん「……何かよくわからんが、ダークストーンとライトストーンならさっきゾロアのどれかが持ってたぞ」
    治斗「……ゾロア達! 全員集合!!」


     うにゃんsは、全員イーブイに化けた!


    治斗「おまえらぁ!! こんなときに人間を化かそうとするなぁ! 協力しろぉ!(涙)」
    ゾロアたち「うにゃん……(うそなき)」
    治斗「しかたねぇ……とりあえず、まずはコイツらをなんとかしねぇと……
       というわけで、ここは同じ狐のマリモに任す!」
    ゾロアたち「う、うにゃ……」
    治斗「まだ、材料は残ってたよな……よし。稲荷寿司、作っといてやるから、後、ヨロシク!」
    玉藻「玉藻だと何度言えば(ry
      ……おい子狐たち、よく聞け。ここでこの男に協力すれば、

      高  級  猫  缶  を  山  ほ  ど  買  っ  て  く  れ  る  そ  う  だ  」


    治斗「ちょ!?(汗)」

     うにゃんsは ライトストーン もしくは ダークストーンに 化けた!!!

    うにゃんs「どや」
    治斗「……どうすんだよ、これ」

     ……プルプル。
     ……プルプルプルプル。

    治斗「……分かった分かった! 高級猫缶ぐらい何缶でも買ってやらぁ!(涙)」

    「うにゃん♪」

     1匹のうにゃんが 石を差し出した!
     うにゃんsは 何かを期待している……

    治斗「えっと……ダークストーンだけ? …………(サイフと相談中)分かった! 高級猫缶30缶でどうだ!?(涙)」
    うにゃんs「うにゃんうにゃん(30缶!30缶!いえーい!)」
    治斗「はぁ……まりもっこりは暫く買えんな。(涙) 今買ってくるからちょっと待ってろ、その内にお前らも帰れるようになるだろ」
    マサキ「ちっ、ダークストーンだけか……ベル様の計画が(ry}

     治斗君のお財布以外には平和が・・・訪れてなかった!?(汗)

    玉藻「ふん、よかったな。ではこれはギラちゃんが置いて行ったので貴様にくれてやる」

     つ【ヒロシマ限定まりもっこり】

    治斗「……マサキ? なんか、言ったか? まぁ、いいや。俺、これから高級猫缶を買いに
       ……って、マリモ!? マジか! ひゃっほい! なんか今までの苦労が全て水の泡♪」
    マサキ「お、まりもっこりや。これでベル様の計画が
        くっ、ダークストーンなどいらん! そのまりもっこりをよこせ!」

    巳佑:「へへへ、サンキューな。マリモ! 早速、これをサイフに取り付けて……って、いきなり何すんだ、マサキ!?」
    偽マサキ「ふっ、俺はマサキではない! ポケモンコロシアムの最後で主人公のレオに化けていたシャドー団員だ!
         というわけで、まりもっこりは頂いていく」
    治斗「……なんで、俺はこう化かされてばかり……ってサイフごと持ってくな!!(汗)」
    偽マサキ「このまりもっこりをベル様に届ければ……!!」

    玉藻「何で貴様らはこの卑猥な顔の人形に執心してるんだ? 理解できん」
    うにゃーん(猫缶から逃げる気かあ!)


     思わずヘッドスライディングかましそうな超 展 開!(笑)
     どーしてそーなったのかは分からんが、兎に角犀が投げられたのは間違いない()


    治斗「逃げるも何もサイフ取られちゃ、猫缶も何も……
       そうだ、ゾロア達、アイツからまりもっこりをうばいかえしてくれねぇか? 報酬はさっきのプラス20缶の猫缶」

     うにゃんsは がぜん はりきっている!(03:52)

    治斗「マリモも頼むよ。とりあえず報酬は高級稲荷30個」
    玉藻「財布と相談した意味がなくなったな。だがとりあえず 稲 荷 寿 司 は 4 0 だ 」
    治斗「……35個………………ダメ?」
    玉藻「38。これ以上はまけん」
    治斗「分かった。(涙) 頼んだよ。(涙涙)」

     うにゃん1のさしおさえ! 偽マサキは財布を使えなくなった!
     うにゃん2のこわいかお! 偽マサキのすばやさががくっとさがった!
     うにゃん3のおいうち! うにゃん4のおしおき! うにゃん5の ナ イ ト バ ー ス ト !!!

    玉藻「ふむ、子狐の割にはできる奴らじゃないか。 まあいいだろう。鬼火ならぬ狐火!」

    偽マサキ「熱い熱いまじごめんなさい」
    治斗「真っ黒こげで、よく意識保ってんなぁ……(汗)」
    偽マサキ「財布は返します……
         だからせめて、まりもっこりだけでも……!」
    治斗「はいよ……とりあえず、受け取った……ふ〜ん、 ジュンサーさん呼んじゃうけど、いいの?」
    偽マサキ「まじごめんなさいまりもっこり返します」
    玉藻「狐火の追加が必要なようだな」
    偽マサキ「いやあああ! まりもっこりを渡してベル様のハートをゲットする計画がああ!!!」

     ……そんな命知らずな真似は絶対止めた方がいいと思うぞ(汗)

    治斗「はいよ、確かに……キター! 俺に癒しが来たー!! じゃあな、偽マサキ!」
    偽マサキ「くっ……えーい、こうなったらモミジンジャに行って恋愛成就を祈願してやるううう!!!」
    玉藻「何だその中の人が怒りだしそうな名前の神社は」

     偽マサキは逃げ出した! ▼
     ある意味ライムよりも危ねぇ恋路だ偽マサキ 命懸ってるぞ・・・


    ライム@刑務所「へックション……誰かが僕の噂をしたのかな? ふ……きっとレンリが僕のことを忘れられずに(ry}

    どっから来るんだその自信(笑)

    ライム@刑務所「それはもちろん、墨で塗りつぶされても負けじと輝くラブを注ぎ込んだ手紙をせっせと送っているからさ……!!」



    玉藻「……まあ良かったな、治斗とやら」
    うにゃんs「うにゃんうにゃん♪」
    治斗「おぉ! サンキューな! 皆! これでめでたし、めでたし……?」

    「うにゃん(猫缶)」

    治斗「……………………こっちからはゾロア達の視線が。(汗)」

    玉藻「稲荷寿司」

    「あっちからは…………マリモの視線が(汗)」




    玉藻「む? どうしたそこのロコン娘。何、みたらし? 先程そこの男がゾロアに与えておったぞ」







     数時間後……



    治斗「とりあえず、これはゾロア達の高級猫缶な。それと……これはマリモの高級稲荷寿司な……って、ゲッ!!」


    「おんどれ……ウチのみたらし団子……!」


    治斗「ちょ、ちょっと、待て!? 話せば分かる! なんか俺ら、世界を守ったみたいでさぁ……見逃してくれるよな?」

    灯夢「なぁ、ウチは今、一本一本の尻尾に曲がったスプーンを入れられる分だけ入れてんねん」
    治斗「(ガクブル)」
    灯夢「おんどれのみぞに思いっ切り『じんつうりき』をぶっ放してやるで……!」
    治斗「悪かったって……頼むから……! ってゾロア達はもう帰れって!(涙)」
    灯夢「問答無用じゃ! このたわけがーー!!!」


    「うにゃん♪」ばくばくばく……
    「うにゃん♪(こっちの稲荷も美味いぞ)」ばくばくばく……
    「うにゃん(イッシュまで帰るのめんどいし、ここでいいや!)」

    玉藻「若いっていいなぁ……。まあガンバレ」もぎゅもぎゅごっくん



     その後、ゾロアたちはなんか帰れました


    レンリ「こらお前ら、その石は博物館に返しに行け。高級猫缶? 贅沢言うな。もっぺん言ったら外に放り出す」

    満身創痍の治斗「頼むから、もう高級猫缶目当てで来るなよ?(涙)」



     玉藻もいつのも神社に戻りました。

    義明「おい、どぉしたんやマリモ。幸せそうな顔してからに。え? 高級稲荷寿司? そりゃぁよかったのぉ
       ……ところで、わしのヒロシマ限定まりもっこり、知らんか?」



     こうして治斗はまりもっこりを手に入れたのです……が。



    灯夢「あ、それなら、ウチが売って、みたらし団子の足しにしといたで〜
       マニアに高く売れたで♪」


    黒ベル「くっ、ヒロシマ限定まりもっこりの値段が1000円!しかしもう一声!絶対競り落としてみせる!」




     こうして世界の平和は守られましたが、治斗の平和はまだまだ遠いようです。 


    満身創痍の治斗「結局、俺は狐にたぶらかされて終わったのさ(棒読み)」





    チャットにて再掲依頼をいただいたので再掲。

    【これが深夜テンションの力なのよ】


      [No.1138] 【再投稿】鞄 投稿者:音色   投稿日:2011/05/04(Wed) 23:39:07     97clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    『巷の大ブーム!最新流行トレンド〜!今日は、今年の流行を真っ先にお伝えしちゃうよ!今年のキーポイントはズバリ、『ワイルド』!』


     物心ついたときから、あたしは豪傑一家に囲まれて育った。
    「いいか!体の傷は勲章だ!多ければ多いほどいいことに越したことはない!」
     親父はいつもそう言って、頭をくしゃくしゃになるまでなでてくれた。
    「爪を研ぐことは忘れないこと。でないとすぐに切れ味が悪くなって使い物にならなくなるよ!」
     母さんはそう言って自慢げに両手を天にかざした。
    「良いライバルを見つけろよ。そいつとは一生をかけて闘い続けると誓えるようなやつをな」
    「最後も、その人と闘いながら死ぬのが、最高の幸福なのよ」
     爺ちゃんはそう言って、婆ちゃんもそう言った。
     周りの大人はみんな傷だらけで、幸せいっぱいだ。
     だって、あたしの一族には永遠のライバルがるから。
     種族丸ごと好敵手。ハブネークの奴等と闘う事は、あたしがザングースとして生まれてくる前から、決まってたことだった。


    『まずはメリープの羊毛で編まれたあったかいセーターやマフラーなどをご紹介します!とってもふわふわだけど、静電気がたまりやすいから、無意識のうちに髪型がボンバー!なんてことにもなって目立つこと間違いナシ!』


     けど、小さい時はハブネークってのがどんな奴だか全く見当がつかなかった。
     決闘に連れて行ってくれって何回か頼んでみたんだけど、兄ちゃんも親父も、もちろん爺ちゃんも『男同士のバトルの邪魔をするな!』と一括された。
     母さんや婆ちゃんは『あんたも大きくなったらきっと、良い好敵手に会えるよ』としか言ってくれない。
     長年のライバルだって言うのに、里にはハブネークを表す戦利品は一つもなかったから、余計にどんな奴だか気になった。
     大きな牙をもっているんだろうか。どんな体格何だろうか。もしかしたら空を飛べるんだろうか。不思議な技を使ってくるんだろうか。
     気になって気になって、仕方なくなったから、あたしはこっそり里を抜け出して、ハブネークって言うのがどんなのなのか、見に行くことにした。


    『こちらはお店のお勧めの小物はオコリザルがつけているものと全く同じ重さのリストバンドです!体力をつけたいあなた、いかがですか?』


     大きな河に阻まれて、あたしは途方に暮れていた。向こう岸から、ハブネークがやってくるんだって、親父が言っているのをこっそり聞いたのに。
     橋なんてものはなくて、岩は両側から突き出して途中から途切れていた。飛びこえればどうにか届きそうだけど、まだまだ体の小さなあたしに、それはとてもじゃないけど不可能だった。
     やっぱり、もっと大きくならないと駄目なのかな。がっかりしたあたしは、少しで良いから向こうの奥が見えないかと、岩の上から身を乗り出した。
     その時、ふいに風が吹いてきて、たまらずあたしはバランスを崩した。まっさかさまに川に落ちる!
     そのとき、あたしの体はぴたりと宙に浮いて止まった。何が起こったのかさっぱり分からない。そのままぶん投げられるように、あたしは草むらに頭から突っこんだ。
     大丈夫か?
     なんとかね。
     相手を見ずに返事を返して、どうにか頭をひっこ抜く。くるりと振り返って向こう岸をみると、そこにはあたしよりも大きくて長い、ポケモンがいた。
     見た瞬間に、びりりと分かった。
     こいつがハブネークだ。鋭い眼、牙、尻尾!その姿、全てがあたしのなかのハブネーク像にかちりと刻みつけられた。
     同時に確信した。
     あたしのライバルは、こいつだ!


    『小物ばかりではなく今度は食べ物路線で行きましょう!キマワリの花弁を使った紅茶は、こちらのお店の一番の目玉商品だそうです』


     そいつはとっても気さくだった。なんであたしを助けたのかと聞いたら
    「そんなこと考えなかったな・・。誰かが落ちそうになってるのを見て、危ない!・・って思ったら、体が動いたんだ」
     体格はあたしの二倍はあるのに、歳はそんなに変わらないと聞いて、驚いた。
     ここに来た目的もあたしとほとんど一緒。好敵手と言われているザングースを一目見ようとここに来たらしい。
     自分も村ではまだまだ若造扱いで、決闘に連れて行ってもらえないとこぼしたのを聞いて、思わず共感してしまった。
    「俺たち、なんか似てるな?」
     そう言うと、お互い爆笑した。夕日が沈むまで、そこでそいつと話した。家族のこと、村のこと、そして、将来のこと。
     種族同志の因縁について、どう思っているのか聞いてみたら
    「正直に言っちまうと、多分、いがみ合いがあったのはものすごい大昔なんだと思うぜ」
     けど、世代を超えるうちに、そんなことはどうでもよくなってきた。
    「お互いを殺し合うんじゃない、お互いを認めて、礼儀として決闘をするんだ」
     でも、どうせ決闘なら・・。勝ちたい。その気持ちが、種族を動かしているんじゃないかとそいつは言った。
     別れる時に、あたしは決闘を申し込んだ。そいつはもちろん承諾した。
    「俺、分かったぜ。俺はあんたときっと闘う」
     最初の決闘の日取り、3年後の今日、月が天辺に昇った時。
     お互いに、幼く不敵に笑って見せて、同時に背中を向けあった。 


    『わ、これとってもおいしいですね!』
    『当店自慢の、ポフィンケーキです。人間にもポケモンにも食べていただけるように工夫を凝らしたものなんですよ』
    『なるほどなるほど。隠し味はなんですか?』
    『トロピウスの首の房をパウダーにして練りこんであるんです』


     決闘の日はあっという間にやってきた。私は一回り大きくなって大人と変わらなくなってきた、爪もしっかり研いできた。親父や兄貴にいっぱいぶつかってきた。
     でも、あいつと、ハブネークと遣り合うなんて、本当にこの時は初めてだったから、あたしは緊張と興奮がまぜこぜになって、何度も空を見上げて月が早く昇らないかとじれったかった。
     真上にようやく月が現れて、あたりの空気が凍る時間帯。
     あたしの目の前に、あいつはやってきた。
     3年前より、牙も尻尾も、何より溢れだす気迫が、これは本物の決闘なんだと思い知る。
     今宵、先に相手の体に勲章を刻みつけるのはどちらが先か。
     あたしとあいつは睨み合って、飛び出した。


    『っと、ここでニュースです。さきほど、以前から指名手配されていた密猟のグループが捕まったそうです。捕まった場所は・・』


     爺ちゃんが死んだ。一番幸せな死にかただった。爺ちゃんは、決闘で死んだ。相手は、もちろん、爺ちゃんのライバルだった。
     日暮れから次の日の朝にかけて爺ちゃんが帰ってこなくて、兄貴と婆ちゃんが探しに行ったら、少し広めの川沿いで、爺ちゃんと、その相手が絡み合って死んでいた。
     あたしたちが駆け付けるのと同時に、向こう側からハブネークもぞろぞろやってきた。あいつもその中にいた。
     いつも自慢していた爺ちゃんの鋭い爪は、相手の腹に突き刺してあって、爺ちゃんのライバルは爺ちゃんの喉笛に噛みついて絶命していた。
     お互いの最後の一撃が決定打になったんだと思った。
     親父は相手のハブネークの代表みたいなのと何か喋っていた。多分、墓をどうするかって話。
     好敵手と一緒に決闘場所に葬るか、片方ずつ持って帰って里に埋葬するか。
     あたしは里の中で墓を見たことがない。
     爺ちゃんはこの場所で眠ることになった。


    『この密猟グループは今までまったく正体がつかめていなかったのですが、とあるカメラマンが密猟現場跡を偶然撮影してから調査が始まったものでして・・』


     爺ちゃんが死んでからも、あたしとあいつは何度も決闘した。勲章は増える一方で、黒星も白星も数えるのが面倒くさくなるくらいやり合った。
     二人仲良く川に落っこちたことは何度もあったし、たまには決闘じゃなくてぼんやり散歩することもあった、
     もっと広い世界が見たいとか、いろんなポケモンとも決闘してみたいとか、そんなことを取り留めもなく話した。
    「やっぱり、自分が知りつくした場所じゃなくて、知らない場所に行きたいよな」
     不意にあいつがそんなことを言った。その声がどうに爽やかで、あたしにはあいつが急に何処か遠くに行ってしまいそうで、二度と会えない予感がちらりとかすめた。
    「そんなことするなよ!」
     急に大声を出したあたしを見て、あいつはきょとんとした。
    「いいか、お前はあたしのライバルなんだ!あたしを殺すのお前でお前を殺すのはあたしだ。だから、あたしを殺さずにどっかにいくなんていう事したら・・」
     殺してやるから、と続けそうになって、自分の言ってることの矛盾に頭がこんがらがった。
     あいつはそんなあたしを見て、くすくす笑った後、当たり前だろとあたしを小突いた。
     

    『詳しい情報は手に入り次第、お伝えします。では、次のお勧め商品に参りましょう!今度は大人気のバックの新商品です・・』


     あいつが決闘の約束をすっぽかしたことに、あたしは今までで一番腹を立てた。
     一回だって遅刻したこともなければ、約束を破るようなことをしなかったあいつが来なかったことの不安を、あたしは怒りで抑え込んで、勢いに任せてあいつのところに行くことにした。
     一度も飛び越えたことのなかった川を渡り、あいつが今まで踏みしめてきた道をたどる。
     少し森の先でひらけた空間が見えたから、あたしはそこにあいつをはじめとするハブネークが住んでいるんだと思ったのに。
     そこには、なんにもなかった。
     地面には無数の知らない足跡があった。今まで見たことのない足跡が、地面いっぱいに残っていた。
     

    『さて、メグロコの革をなめして作ったこちらのバック、いかかでしょう?』
    『非常に凝ったデザインですね。しかしこれよりもお勧め商品があるのです』


     あたしは泣いた。
     親父に殴られても兄貴とケンカしても母さんに怒られても婆ちゃんが倒れても爺ちゃんが死んでもあいつにボコボコにやられたって泣いたこと無かったのに。
     返せ!あたしは何かに叫ぶ。
     あたしの親友を返せ
     あたしのライバルを返せ
     あたしの一番大切なモノを返せ
     あたしの  あたしたちの生きがいを返せ

     あいつをどこにやっちまったんだ
     あいつを あいつを 返せよう

     ひらけたちいさなそのばしょは しらないあしあとと しらないにおいしかなかった
     

    『気になる次の新商品は、CMの後で!』

     
     生きがいを失ったあたしの里は、みんな魂が抜けたようになっちまった。
     誰も爪を研ごうとしない。誰も稽古をしようとしない。
     婆ちゃんだけが、いつも爺ちゃんの墓参りに行ってただけだった。
    「爺ちゃんは、本当に、幸せ者だね」
     そう言った次の日、婆ちゃんは、爺ちゃんの墓の前で冷たくなっていた。
     親父と母さんは婆ちゃんを里に持って帰って埋めた。里の中に初めてお墓ができた。
     
     あたしはいつもあの場所に行った。
     知らない足跡をいつも眺めた。日に日に薄くなっていく匂いを、とにかく覚えようと必死だった。
     ある日、大雨が降って、足跡も匂いもきれいさっぱり消えたけど、あたしはあの日をちっとも忘れられなかった。
     
     ・・そうだ、あいつは言ってたじゃないか。
     もっと世界が見たいって、いろんなポケモンと決闘がしたいって。
     あいつはきっと、ここからほんの少し遠くに行っただけなんだ。
     だったら、探せばいいじゃないか。
     こんな簡単なことに気がつかないなんて、あたしはどれだけ馬鹿なんだろう。
     あたしはあいつを探すことに決めた。
      

    『こちらが今回の目玉商品になるバックでございます』
    『これはなんのポケモンの革なんでしょうか?』
    『ハブネークの革なのです。ハブネークはご存じのとおり、ザングースと常に敵対関係にあるため、たくさんの戦いをこなし、非常に強靭な体を持っています』
    『しかし、大きな傷がありませんか?』
    『そこが大きな特徴です。あえて傷のある革を使用するんです。何故ならそこが一番丈夫だからです』
    『なるほど!ワイルドさもアピールできますね!』

     
     あたしはこれからも生きることに決めた。
     あたしはあいつを見つけ出し、あの日の決闘を申し込む。
     あたしはあいつを殺しにかかる。あいつもあたしを殺しにかかる。
     あいつの腹をあたしは切り裂いて、あいつはあたしの喉笛を喰いちぎる。
     それがあたしの夢なんだ。
     それが、一番幸せなんだ。

     今日もあたしはあいつを探している。


    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    余談   どうにか残っていた作品のログ。
    師匠がどうしても! ・・とのお言葉を頂いたのでここに残しまする
    いちおー、これのお題は【足跡】です
    まともに考えたらこれが俺がここの正式な初投稿作品なんだよなぁ


      [No.1137] チャットの魔力は 以下略 投稿者:黒ふにょん   投稿日:2011/05/04(Wed) 23:08:07     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ふにょん(Win/IE8)さんが入室しました。(23:00)


     ポケスト覗いたら変な物(      ではなくすごいものが。
     流石。さすが。ながれいし。
     勢いで大量に拍手してしまつた。
     ある日のチャット風景のようですな。 


     チャット形式……新しいですわぁ!(23:02)
     



    > 【書いてみました】
     ふにょん:お疲れ様です。 (23:03)


    >  GWマジック展開中でございます。(汗)
    >  恐らく、GWでの最後の作品……今年のGWは色々と作品が書くことができて良かったです。(ホッ)
      ふにょん:書いたら勝ち。
            楽しめたら勝ち。
            さて、誰のセリフだったかしら。(23:04)
      

    >  もふ神様など、チャットネタを盛り込んでみましたが、いかがだったでしょうか?
    >  ……というか、使っても大丈夫だったでしょうか?(汗)
    >  チャット形式の物語。読みづらい点があると思いますが、楽しんでいただけたら幸いです。
      ふにょん:もふ神様……初出は誰だっけ……ってふにょんか。
            そうだよね!? 確かそうだよね!?
      
            こういう突発的な話は素敵なのです。
            流行にのって みたいな。(23:05)


    >  はてさて、謎の急激な地球高温化現象に立ち向かう5人(?)の運命はいかに!?
    >  ……とご想像にお任せします。すいません。(汗&笑) 
      ふにょん:その後、5人の姿を見た者はいなかった……(23:06)


    >  ありがとうございました。
      ふにょん:☆Thank you☆ (23:07)
     
      
      ふにょん(Win/IE8)さんは行方不明になりました。(23:09)


      [No.1136] 20××年 4月某日 投稿者:巳佑   投稿日:2011/05/04(Wed) 22:12:35     75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    20××年 4月某日 (画像サイズ: 647×438 75kB)

    前置き:本来ならチャットは下からだと思われますが、今回は上からで。(汗)
    
    
    
    入室:5(黒蛇 C2 マトマ 偽者N ・∀・) 閲覧:7
    
    
    お知らせ:黒蛇(Debon/P7)さんが入室しました。(13:00)
    
    
    黒蛇:とりあえず一番かな。あいつらも学校終わったはずだけど。(13:01)
    黒蛇:っていうか、今日もめっちゃ暑くねぇか!?(13:02)
    
    
    お知らせ:C2(Debon/P7)さんが入室しました。(13:05)
    
    
    C2:遅くなってごめんね。先生、授業オーバーしすぎ。(13:07)
    黒蛇:ったく、授業時間はジャストで終わらせろよな、先公め。(13:08)
    
    
    
    お知らせ:マトマ(SHILF/R4)さんが入室しました。(13:10)
    お知らせ:偽者N(PLAZMA/P6)さんが入室しました。(13:10)
    お知らせ:・∀・(Debon/P7)さんが入室しました。(13:10) 
    
    
    
    マトマ:こんちは〜、今日暑くないっすか?(13:12)
    偽者N:やばいですよね、本当に。今日、何度でした?(13:13)
    ・∀・:全国平均37度ね。(13:13)
    黒蛇:どおりで暑いと思ったら……! (13:14)
    C2:とりあえず、メンバーは皆、そろったね。 (13:15)
    
    
    
    ・∀・:こんなのがワタシの家に届いたのよ。つ 添付ファイル【image/jpeg,49.9KB】(13:18)
    偽者N:グレイシアは僕の嫁!(13:19)
    マトマ:ピカチュウがいじられてるっすwww(13:20)
    C2:グレイシア の わるだくみ! (13:21)
    黒蛇:ちょ、お前ら、突っ込むところ違うだろう! 今、何月だ!?(13:22)
    マトマ:4月っすよね?
    偽者N:暑中見舞いって普通、8月ぐらいですよね? それより、グレイシアを抱き抱きしたいです。(13:23)
    ・∀・:確かに、夏は一家に一匹グレイシアよね。(13:24)
    マトマ:グレイシアは全身の体毛を凍らせて針のように鋭くとがらせて、敵から身を守る手段を持つっす。(13:26)
    マトマ:自分、汗かきなんで、抱き締めたら、スプラッタが起こるっす;(13:27)
    ・∀・:wwwwwwwwww(13:27)
    C2:ドンマイwwwwwwwww(13:27)
    偽者N:トモダチはそんなことしない! ……はずです。(汗)(13:28)
    黒蛇:お前ら、ツッコミから脱線するなよ。 それとマトマっち、ドンマイw(13:29)
    
    
    
    黒蛇:4月なんだぞ、4月! この暑さは異常だろ、オイ。(13:31)
    ・∀・:確かに37度は異常だわね……。(13:32)
    マトマ:つ====マトマ マトマ マトマ マトマ(13:33)
    マトマ:スイマセンッス。暑さでつい;(13:34)
    偽者N:大丈夫ですか!?(汗)(13:34)
    C2:あ、辛さで温度計が39度に上昇したけど。 > マトマ(13:35)
    マトマ:大丈夫っす。冷えピタ張ってるんで、なんとか; > 偽者Nさん(13:35)
    黒蛇:だぁぁ!! 最近暑すぎて、頭がおかしくなりそうだぜ!(13:36)
    ・∀・:地球高温化かしらね、これは。(13:37)
    偽者N:温暖化のことですよね?(13:38)
    ・∀・:温暖とは本来、気温がほどよく温かくて、過ごしやすいという意味があるのよ。(13:39)
    ・∀・:だから、温暖化ではなく、高温化と呼んでいる。とまぁ、ラジオのCMの受け入りよ。(13:40)
    偽者N:僕も今日からそう言わせてもらいます!(キラーン)(13:41) 
    C2:タメになりますなぁ〜。(13:41)
    マトマ:これはC2さんが原因じゃないっすか? >高温化(13:42)
    C2:え、どうして?(汗)(13:42)
    マトマ:炭素だからっす。(13:43)
    ・∀・:Cだけにね。(13:43)
    C2:ちょっと! これは炭素じゃなくて水素! それと、私の大好きな漫画名なの!(13:44)
    黒蛇:おま! おい、理系! 水素はHだろ! しかも、その漫画名のHの意味は水素じゃねぇ!(13:45)
    ・∀・:ちょw 理系wwwwwwwwwwwww(13:46)
    マトマ:wwwwwwwwwwwww(13:46)
    偽者N:ど、ドンマイです。(汗) > C2さん(13:47)
    
    
    
    
    マトマ:それにしても、温暖化、じゃなくて高温化って言っても急過ぎじゃないっすか?;(13:49)
    ・∀・:そうねぇ……ここんとこ一週間猛暑日が続いているわよね。(13:50)
    偽者N:その前は何度でしたっけ?(13:51)
    ・∀・:ごめん、暑さで覚えてないわね。(13:52)
    C2:最高でも20度前後だったよ。(13:53)> 偽者Nさん
    偽者N:ありがとうございます。> C2さん だ、大丈夫ですか!? >・∀・さん(13:55)
    マトマ:こういうときはこれっす! つ【マトマ】(13:56)
    ・∀・:蒸発するわ!!www(13:56)
    C2:あ、でも、炎ポケモンは暑い日、火炎放射で体温調節をしているみたいだよ? >・∀・さん(13:57)
    マトマ:wwwwwwwww(13:58)
    黒蛇:ちょwwwww(13:58)
    偽者N:そ、それは……。(汗&笑)(13:59)
    ・∀・:ワタシゃ、ポケモンじゃないわよ!www(13:59)
    C2:・∀・さん、ポケモン疑惑。(14:00)
    マトマ:キュウコンっすかね?(14:01)
    黒蛇:案外マンムーかもな。(14:02)
    ・∀・:ちょ、あらぬ尾ひれがついてるわ! ってか、マンムーって。なんでよ!?(14:03)
    黒蛇:学校の授業でな、昔の人間にとって化ける動物と言うと、狐の他に猪があるんだってよ。(14:04)
    黒蛇:猪つったら、ウリムーとかイノムー、まぁ・∀・っちは大きいからマンムー。(14:05)
    偽者N:勉強になります!(14:06)
    黒蛇:大学でたまたま民俗学を履修したんだけど、中々、面白いぜ。個人的にはオススメだな。(14:07)
    ・∀・:そりゃあ、ワタシは175ある女の子だし、って何を言わせてるのよ!?(汗)(14:08)
    黒蛇:・∀・っちがマンムーだと思う人は挙手な。(14:09)
    黒蛇:ノ(14:10)
    マトマ:ノ(14:10)
    C2:ノ(14:10)
    偽者N:自分も一票です。(笑)ノ(14:10)
    ・∀・:あんたら……後で覚えておきなさいよ!(キリッ)(14:11)
    
    
    
    ・∀・:それよりも、問題はこの高温化は何なのて話でしょ!?(汗)(14:13)
    マトマ:もう、それはC2さんっすよね?(14:14)
    黒蛇:いや、C2にそんな力はねぇww(14:15)
    C2:悔しいような……なんなのか……w(14:16)
    偽者N:もしかして、グラードンっていうポケモンじゃないですかね?(汗)(14:19)
    マトマ:グラードンというと、あの『ひでり』が使える伝ポケっすよね?(14:20)
    ・∀・:なるほどね。確かにグラードンが目覚めたんなら、話が分かるわ。(14:22)
    黒蛇:だが、お前ら、ニュースで知ってると思うが、(14:25)
    黒蛇:マグマ団によるグラードン覚醒計画は阻止され、グラードンは再び眠りについた。(14:27)
    黒蛇:マグマ団は逃してしまったリーダーと幹部以外、全員逮捕。(14:29)
    黒蛇:グラードンが再び覚醒しないように対策をするっていう話だ。(14:31)
    偽者N:つまり、グラードンの線は低いということですか……。(14:32)
    黒蛇:まぁ、そうだな。っていうか、グラードンが覚醒したら、普通に緊急ニュースだろ。(14:34)
    ・∀・:あら、ワタシとしたことが盲点だったわ;(14:37)
    ・∀・:てっきり、人間に怒ったグラードンが起きたのかと思ったのよ。(14:39)
    C2:怒ったと言うと?(14:41)
    ・∀・:カイオーガが大好きだぁー! 誰かが叫んだばかりに。(14:43)
    マトマ:wwwwwww すいませんっす、ついwwww(14:44)
    C2:wwwwwwww(14:44)
    偽者N:自分はてっきり、環境破壊をしている人間にグラードンが怒ったのかと思いましたよ。(汗)(14:47)
    黒蛇:まぁ、人間の行いに神ポケや伝ポケが切れる話はありそうで怖いよな。(14:49)
    黒蛇:実際、人間の行いにブチ切れて戦いを起こしたポケモンがいるからなぁ。(14:51)
    マトマ:テラキオンにコバルオンにビリジオンっすね。(14:54)
    ・∀・:創造神とも言われるアルセウスが怒ったら、人類滅亡ね。(14:56)
    C2:ポケモンは?(14:58)
    ・∀・:アルセウスもポケモンだからね、多分、ポケモンはちゃんと生かしておくんじゃないかしら。(15:00)
    偽者N:ポケモンだけの世界、ですか……。(15:02)
    
    
    
    ・∀・:じゃあ、グラードンじゃなきゃ、なんだって言うのよ?(15:04)
    マトマ:これは、もしかしたら、キュウコンの仕業かもしれないっすね。(15:07)
    偽者N:キュウコン、ですか?(15:08)
    マトマ:キュウコンの中には『ひでり』の力を持っている者もいるらしいんすよ。(15:10)
    黒蛇:キュウコンならありえるかもな。少なくともグラードンみたいに伝ポケじゃねぇし。(15:12)
    黒蛇:狐は人間に化けたりするからな、簡単に隠れる事ができる奴らだ。意外と黒かもしれねぇな。(15:14)
    偽者N:でも、そうだとしたら、どうして、そんなことをキュウコンがしたんですかね?(15:17)
    C2:これはあくまで、風の噂で聞いたものなんだけど、もふ神様って知ってる?(15:19)
    黒蛇:知らない人は挙手。(15:20)
    黒蛇:ノ(15:21)
    マトマ:ノ(15:21)
    ・∀・:ノ(15:21)
    偽者N:あ、僕は聞いたことがあります。(15:22)
    マトマ:マジっすか。(汗)(15:23)
    偽者N:あ、はい。なんでも人をさらってはゾロアやロコンなどの狐ポケモンにしているんです。(15:25)
    ・∀・:ふむふむ。(15:27)
    偽者N:そのもふ神様は狐だけの世界にしようかという目論見があるそうです。(15:29)
    偽者N:チャットのときも行方不明って、ありますよね?(15:31)
    偽者N:なんでも、もふ神様がその人をさらって、狐にしているかもしれないということです。(15:34)
    C2:まぁ、都市伝説みたいなものだし、そんなに気にする事もないと思うけど。(15:36)
    
    お知らせ:・∀・(Debon/P7)さんは行方不明になりました。(15:37)
    
    偽者N:!!!(15:38)
    マトマ:ちょ;(15:38)
    C2:言ってる傍から!?;;(15:38)
    黒蛇:あのなぁ……都市伝説って馬鹿にしていると痛い目見るぜ? > C2(15:38)
    C2:え!? 私のせい!?(15:39)
    黒蛇:狐だけの世界、まぁ、狐による世界征服なんてなさそうでありうる話じゃねぇか。(15:40)
    黒蛇:キュウコンは伝記によると人間をポケモンに変化させる力を持っているようだしな。(15:41)
    偽者N:あの! そのもふ神様はマトマの実が大好きなようで、(15:42)
    偽者N:マトマと呟いていれば、回避できるという話も聞きました。(15:43)
    マトマ:つ===マトマ マトマ マトマ マトマ マトマ マトマ マトマ(15:46)
    C2:マトママトママトママトママトマ(15:47)
    偽者N:まとま まとま まとま まとま まとま(15:48)
    黒蛇:お前ら、温度上がるから止めろw それとマトマっちは投げすぎだw(15:50)
    
    お知らせ:C2(Debon/P7)さんは行方不明になりました。(15:52)
    
    偽者N:マトマの実が足りなかったのですかね!?(汗)(15:54)
    マトマ:つ====マトマ マトマ マトマ マトマ マトマ マトマ マトマ マトマ マトマ マトマ(15:56)
    黒蛇:ちょw もふ神様の食欲、どんだけだよ!w(15:58)
    
    お知らせ:C2(Debon/P7)さんが入室しました。(16:00)
    お知らせ:・∀・(Debon/P7)さんが入室しました。(16:00) 
    
    偽者N:大丈夫でしたか!? > C2さん、・∀・さん(16:02)
    マトマ:ま、まさか……ロコンか、ゾロアとかに……っすか?;;(16:03)
    C2:大丈夫ですよ。かなりの暑さでサーバーがちょっといかれただけでした;;(16:05)
    ・∀・:ねぇ、ワタシ、マジで狐にされたんだけど、どうしようかしら?;;;(16:07)
    偽者N:!!!!(16:09)
    マトマ:マジっすか!?(16:11)
    C2:四月馬鹿は過ぎてますよ、・∀・さん。(16:12)
    黒蛇:なんか証拠画像をうpしろ、・∀・っち。(16:13)
    ・∀・:ちょっと待ってね。今、携帯でやってみるわぁ。(16:15)
    ・∀・:っていうか、マジで狐になっちゃったんだから!!! > C2ちゃん、マトマちゃん(16:16)
    黒蛇:というか、・∀・っち。適応力ありすぎだろ。(16:18)
    C2:確かにwwwww(16:19)
    マトマ:さすが、・∀・さんっす!!www(16:20)
    偽者N:狐といえば、ロコンですかね? それともゾロアですかね?(16:22)
    C2:ロコンやキュウコンだったら、手持ちに入れてもいいですか? 炎ポケモンいないので。>・∀・さん(16:24)
    マトマ:じゃあ、悪タイプがいない自分はゾロアやゾロアークだったら、持ち帰るっす。>・∀・さん(16:26)
    偽者N:あ、あのリオルやルカリオも狐でいいですかね?(16:28)
    黒蛇:まぁ狐か狼だよな、タブンネ。> ルカリオ、リオル(16:31)
    C2:私は狐派! > ルカリオ、リオル(16:32)
    マトマ:同じくっす > ルカリオ、リオルは狐(16:32)
    黒蛇:っていうか、お前ら、・∀・っちを誘拐するんかいwww(16:34)
    
    ・∀・:お待たせ、獣足でキーボードとかってムズイわぁ; つ 添付ファイル【image/jpeg,92.9KB】(16:36)
    黒蛇:その割には仕事が早い気がするのは俺だけか?:(16:37)
    マトマ:……これはマジもんっすかね?;;;(16:40)
    C2:拾い物のネタ画像じゃないですよね?;;(16:41)
    偽者N:行方不明になったとき、どんな感じだったんですか? > ・∀・さん(16:43)
    ・∀・:えっとね、まず行方不明になるでしょ?(16:45)
    ・∀・:肩をポンポンされたから振り向いたら、キュウコンがいたのよね。(16:46)
    ・∀・:ワタシに向かってね、キュウコン「お主も狐にしてやろう」って言ったのよ。(16:48)
    ・∀・:あの妖しい微笑みと声にウットリしちゃって、気がついたら、尻尾でもふもふされていたわ。(16:50)
    C2:そして、ロコンになったと……とりあえず、マジで私の手持ちになってください。(16:52)
    黒蛇:キュウコンにメロメロをされたんだな。・∀・っち。> ウットリ(16:54)
    ・∀・:ちょ!? あのキュウコン、メスぽかったわよ!?;;;(16:56)
    ・∀・:それとC2ちゃん、まずワタシを元に戻す方法を探してよぉ。(16:57)
    C2:探す代わりに、私の手持ちになってください。(16:57)
    黒蛇:このときのC2は本気だから、諦めろ・∀・っち。(16:59)
    偽者N:同姓をもメロメロにさせる、メロメロではないですかね?(汗)> キュウコン(17:01)
    マトマ:最強のメロメロっすね!!www(17:02)
    
    
    
    ・∀・:元に戻るまでC2ちゃんにお世話になることに決心がついたわ。(17:05)
    C2:よっしゃ! たっぷり可愛がってあげますよ!(17:06)
    黒蛇:お〜い、・∀・っち。C2は『きょうせいギブス』で育てるタイプって知ってるだろ?(17:07)
    偽者N:愛のムチっていうやつですね。(汗)(17:09)
    マトマ:w(17:10)
    ・∀・:マジでお手柔らかにね!? > C2ちゃん(17:12)
    
    
    
    黒蛇:まぁ、とにかく、・∀・っちを元に戻すとして、この暑さの原因の話だが。(17:15)
    偽者N:結局、もふ神様が世界征服をする為に『ひでり』を使って人間の体力を奪いに来たということですかね?(17:17)
    マトマ:バテバテになったところを、軽くもふもふっすか;;(17:18)
    ・∀・:効率的だわね;;(17:19)
    C2:とりあえず、そのもふ神様を捕まえればいいんですかね?(17:21)
    黒蛇:倒すんじゃなくて?(17:22)
    C2:捕まえて、更正させてみせる!(17:23)
    黒蛇:駄目だ。マジでもう誰もC2を止められねぇ。(17:25)
    黒蛇:まぁ、俺もこのまま黙っちゃいられねぇがな。(17:26)
    マトマ:もふ神様にバトルを挑みに行くんすね!?(17:27)
    黒蛇:だが、まずはこの暑さをなんとかしねぇとな……キュレムに頼み込んでみるか?(17:29)
    ・∀・:まぁ、確かにこの暑さのままじゃあ、ワタシ達が不利だわね;(17:31)
    偽者N:学校とかどうするんですか?(汗)(17:33)
    黒蛇:休学届けを出せば大丈夫だ。(17:34)
    黒蛇:というか、この異常な暑さだからな、そろそろ学校の方も休校になるんじゃねぇか?(17:37)
    マトマ:確かにそうっすね。> 休校(17:39)
    C2:調べたよ! キュレムはジャイアントホールっていう場所に住んでいるって。(17:42)
    偽者N:速いですね!?(汗)(17:43)
    黒蛇:仕事が早いのがC2なんだよなぁ。(17:44)
    ・∀・:とにかくキュレムちゃんにお願いしなきゃだわね。(17:46)
    ・∀・:この暑さをなんとかしてくださいな! と勢いで!(17:48)
    黒蛇:伝ポケにも、ちゃん付けしてる・∀・っちがいればなんとかなるだろw(17:50)
    偽者N:あ、そうでしたよね、どんなポケモンとも仲良くなれるなんてうらやましいです。>・∀・さん(17:52)
    ・∀・:もてすぎて、体が追いついていけないこともしばしばあるけどね;;(17:54)
    マトマ:マジでうらやましいっす。自分、汗っかきなんで;;(17:55)
    C2:とりあえず、・∀・さんはメンバー入りするとして他は入れそう?(17:57)
    C2:黒蛇は絶対参加だから。まぁ、もちろん私もだけど。(17:59)
    黒蛇:ちょw 絶対参加なのかよw(18:00)
    C2:リーダーシップ一番あるんだから。(18:02)
    マトマ:\黒蛇さん/\黒蛇さん/\黒蛇さん/(18:03) 
    偽者N:\黒蛇さん/\黒蛇さん/\黒蛇さん/(18:03)
    ・∀・:\黒蛇ちゃん/\黒蛇ちゃん/ って、ワタシも勝手に!? まぁ、いいけどね★(18:04)
    黒蛇:ちょw おまえらww まぁ、元々やるつもりだったし、いいけどな。(18:06)
    黒蛇:それと、・∀・っち。今更だけど、ロコンになったのになんかノリノリじゃねぇか?(18:08)
    C2:まさか・∀・さん黒幕説;;(18:09)
    黒蛇:・∀・っちが黒幕だと思う奴は挙手な。(18:10)
    C2:ノ(18:11)
    マトマ:ノ(18:11)
    黒蛇:ノ(18:11)
    偽者N:いや……僕は・∀・さんを信じています!(18:12)
    ・∀・:偽者Nちゃん、優しい……!(涙) ってか、他の三人!ワタシが黒幕ってどういうこと!?;;(18:14)
    ・∀・:そりゃあ、ロコンになったのはビックリしたけど、なんかもう慣れちゃったわ。(18:16)
    黒蛇:・∀・っちの適応力、マジでパネェ。(18:18)
    マトマ:感服っす;;;(18:20)
    偽者N:僕も見習いたいです。> ・∀・さんの適応力(18:21)
    C2:本当に そこだけ はいいんだから。(18:22)
    黒蛇:www(18:22)
    ・∀・:ちょ! そこだけっていうのが強調されてるし!(18:24)
    
    
    
    黒蛇:さて、俺とC2,それと・∀・っちは行くとして、マトマっちと偽者Nっちはどうする?(18:27)
    黒蛇:まぁ、多分学校は休校になるだろうしな、まぁ無理強いはしないが。(18:29)
    マトマ:自分は全然平気っす! こんなときに休めないっすよ!(18:31)
    偽者N:僕も行きます! もふ神様を一目、見てみたいです!(18:32)
    黒蛇:よし、全員参加ってことで。さて、問題は集合場所だな。(18:34)
    ・∀・:まぁ、ワタシとC2ちゃん、黒蛇ちゃんは近くに住んでいるからいいけど。後の二人ね。(18:36)
    ・∀・:確かマトマちゃんがカントー地方で、偽者Nちゃんがイッシュ地方だったわね。(18:37)
    マトマ:そうっすね。(18:38)
    偽者N:はい、そうですよ。>・∀・さん(18:38)
    黒蛇:この前、オフ会みたいなことやったから、お互い顔を知っているとして、さぁ待ち合わせだが。(18:40)
    C2:ジャイアントホールはカノコタウンが近いみたいだから、カノコタウンで集合ってことでいいんじゃないかな。(18:43)
    ・∀・:なるほどね。それなら分かりやすいし、いいんじゃないかしらん。(18:45)
    マトマ:一応、マトマの実をたっぷり持っていくっすよ!(18:47)
    偽者N:流石、マトマさん!(18:48)
    ・∀・:まさに名前通りね!(18:48)
    
    
    黒蛇:じゃあ早速でわりぃが、三日後、カノコタウンに集合な。(18:52)
    C2:ジャイアントホールは寒そうだから、防寒具を忘れないように。(18:54)
    ・∀・:ワタシはロコンだから、きっと大丈夫よね。(18:55)
    マトマ:このクソ暑い中、防寒具っすか……これも世界を救う為の試練っすね!(18:57)
    偽者N:世界を守るため……責任重大ですね。(汗)(18:59)
    C2:な〜に、もふ神様もポケモンなんだから、こっちもポケモンで挑めば大丈夫!(19:01)
    ・∀・:絶対に捕まえて元に戻してもらうんだから!(19:03)
    C2:もう・∀・さんはずっと私の手持ちのままでいいような気がするなぁ。(19:05)
    ・∀・:んなわけあるかい!!(19:06)
    黒蛇:お前ら、油断するなよ? 相手はキュウコンっつっても、チート的な奴っぽいからな。(19:08)
    
    
    
    お知らせ:黒蛇(Debon/P7)さんは行方不明になりました。(19:10)
    お知らせ:C2(Debon/P7)さんは行方不明になりました。(19:10)
    お知らせ:マトマ(SHILF/R4)さんは行方不明になりました。(19:10)
    お知らせ:偽者N(PLAZMA/P6)さんは行方不明になりました。(19:10)
    
    
    
    ・∀・:ちょ!?;;; まさか皆いっせいにもふ神様に!? ねぇ、皆、早く帰ってきてよぉ!(19:13)
    
    ・∀・:……お〜い、皆? ちょ、マジで、もふ神様にもふられた?;; これ本当にやばいじゃないかしら;;(19:33)
    
    ・∀・:……これって、あれよね、徐々に人がいなくなって、(19:35)
    ・∀・:そして、誰もいなくなったっていう話に似てるわよね!?(19:36)
    ・∀・:あ、でも。ワタシはもうロコンにされたし、大丈夫よね。うん、大丈夫、大丈夫!(19:37)
    
    
    
    お知らせ:・∀・(Debon/P7)さんは行方不明になりました(19:38)
    
    
    
    
    
    
    
    【書いてみました】
    
     GWマジック展開中でございます。(汗)
     恐らく、GWでの最後の作品……今年のGWは色々と作品が書くことができて良かったです。(ホッ)
    
     もふ神様など、チャットネタを盛り込んでみましたが、いかがだったでしょうか?
     ……というか、使っても大丈夫だったでしょうか?(汗)
     チャット形式の物語。読みづらい点があると思いますが、楽しんでいただけたら幸いです。
     
     はてさて、謎の急激な地球高温化現象に立ち向かう5人(?)の運命はいかに!?
     ……とご想像にお任せします。すいません。(汗&笑) 
    
    
     ありがとうございました。
    
    
    【何をしてもいいですよ】
     


      [No.1135] wameke!! 投稿者:クーウィ   投稿日:2011/05/04(Wed) 14:46:16     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    素晴らしいスレに有難ウパー。
    最早ほざき斃すより他は無い。覚悟しやがれぃ。


    個人的に確定だった紀成さんの『アルビノ』と豆兎さんの『カミサマと人間の話』、喬川琴花さんの『砂礫の君主』は生存してたので(良かった!)、取りあえず残りを闇雲に…! 
    ……何気に『砂礫の君主』は、勝手にバックアップ取ってた罠(オイ) 大好きだったのでやった。後悔以前に自分の作品をバックしろと独り突っ込むハメとなったが(苦笑)

    また、真っ先に書こうとしていたイケズキさんのラルトス・てくのお話は、迅速に復活させていただいていて、とても嬉しかったです! この場を借りて、お礼の言葉を――有難う御座いました!


    *きとかげさんの『狐の子』
    サイトに行けば読めることは分かっています。良く分かっている心算です。
    ……でも、やっぱりすぐに思い立った所で読みたい名作の一つ。最後の行の破壊力は、最早チートだと思うんだ。


    *でりでりさんの『あの夏をもう一度』
    素朴な過去を綴った名作。おっちゃんと化しつつある自分には、余りにも利いた(苦笑)
    ポケノベさんやでりでりさんのサイトに行けば読めるんだけど、やっぱり惜しいんだよなぁ……


    *CoCoさんの『もりのこのぬいぐるみ』
    いわずと知れたハートフルストーリー。サイトをお尋ねすれば読めるのは、上記二作と同じ。
    ……だからと言って、「まぁ良いか」では到底済ませられないような名作だったのは間違いなし。再投稿は熱望ナリ(オイ) 


    *ラクダさんの『雷親父と風邪親父』
    初めて投稿された作品でこのレベルかよ!? と突っ込んだ一作。 個人的に、外伝として正式に救助スレにアーカイブ入りしても良いと思う(笑)


    *スズメさんの『ステイシリーズ』、『ガーディのアラタが出るヤツ(題名失念……御免なさい)』
    ポケストでも最も続きが読みたかったシリーズの一つ。ステイェ……(涙)
    青年とガーディの再出発も気になって仕方がなかったし…… ログが残っておられるならば幸いなのですが……(溜息)


    *音色さんのシリーズもの
    ログの大半が消失されたと聞いたので、もうちょっとこれに関しては、言うべき言葉を持ちませぬ……(涙) 
    余力があらば、と言う程度で…… 気を落とされておられましょうが、これからも書ける範囲で創作活動を続けていただければ嬉しいですとだけ……
    ……後、『鞄』と『空』はもう個人的に渇望の対象と言っても良いレベルですので、出来れば是非お願いします……!


    *リナさんの『レモンの輪切りにガーゼを一枚』、『イソップ童話(嘘)』、『森ガールシリーズ』
    CoCoさんやラクダさんが仰ってるので、まぁここは触れる程度に(汗) ……取りあえず、大好きです!


    *イサリさんの『幸福の姿』、『新緑賛歌』
    これもラクダさんが仰っておりますねぇ(笑) どちらも独特の描写や世界観、作品内の主張性があって、よく読み返させて頂いておりました。 
    再投稿は熱望で……!(オイ)


    *一刀流さんの『最後の花束』
    シンプルな構成と内容だったけれども、インパクトのあった作品。
    こう言う内容の作品は余り多くありませんが、個人的には避けては通れ無い作品携帯だとも思っています。 出来るならば復活希望で……!


    番外

    *海星さんの『ぼくの奮闘記』
    これまた続きが気になってる一作。消えては無いけど、この際だから愛を叫ぶ!(笑)
    海星さんも大変な状況でしょうから、無理は言いません。……何時までも待ってますから、またお帰り願えればこれに過ぐる事はありませんです。



    多分他にも増えます。 これだけは言って置く()


    最後に、自作品についてなのですが…… CoCoさん、ラクダさん、御免なさい。
    風間さんのイラストに投稿させて頂いた書いてみた(『流れ行くもの』)は、湧きあがったイメージそのままに書き上げた物で、もうログは自分の手元には残っていないのです……
    ですので、これについてはもう復活はほぼ不可能です…… 申し訳ない……(涙)

    『アウトロー』については幸い原型が残っておりましたので、またその内『竜の舞』や『雪の降る夜』と一緒に、連載の方に放り込んでおこうかと思っておりまする。……『竜の舞』の再構築や企画の締め切りもありますので、申し訳ありませんが今しばらくの御猶予を……(汗)

    四月馬鹿二作については、もう正直詰まりに詰まってた所なので、このまま闇に葬る心算であったのですが……(爆) 「読みかけ」と言われたら読書家として同じ境遇に至った時の空虚感は想像できるし、うーん……と言ったところ…(汗)
    これについては、ちょっと保留に(汗) 申し訳ないですが……
    ログは残ってますので、落ち着いた折に進むようなら、また中途でも上げさせていただきまする。 ……書き掛けを溜める習性もいい加減どうにかせねば…(爆)


      [No.1134] 俺達の住んでいる世界はポリゴンが造った箱庭で、俺達はその真実を一生知らない。 投稿者:巳佑   投稿日:2011/05/04(Wed) 05:32:09     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     2×××年、俺は日本のT都に生まれた。
     全てが電子化で便利な世の中になっていた。
     お金の支払いも、物流も、移動手段も、全て電子の力を借りて一発で解決できる。
     ポリゴン、というポケモンを大量発生させたこの時代だからこそ可能な技術だった。
     歴史を紐解くと、車とか電車とかが走っている絵などを教科書や博物館で見受けられるが、この時代に そんなものは一つもない。
     本当に全ては電子で解決されているのだ。
     
     学校の授業も、会社への出勤も、各家に置いてある専用のトランスポーターに乗り込めば、始まりまで後十秒だろうが余裕で間に合うことができる。
     繰り返しなるが全ては人間達が大量発生させたポリゴン達による力のおかげなのだ。
     それと今の時代、皆、必ず手持ちに一匹はポリゴンを持っていて、データの管理とかを頼んでいたりする。

     この世界は便利だ。

     だが、なんか俺は怖い気がしてならなかった。

     全ては電子という目に見えないものが全てを決めている。

     それって、何か不安じゃねぇか?

     自分の目で確認できないものは信じられないという言葉があるのだが……その言葉の意味が分かるような気がする。
     電子は触ることもできなければ、肉眼では見ることもできない。
     匂いもなければ、これといった色も分からない。
     なんだろうな、なんだか電子に動かされている……見えない何かに動かされているような気がして、怖いんだよな。
     
     多分、そんな、人間の不安をなくす為に電子を視覚化させ、安心させる為に造られたのがポリゴン、というポケモンなんだろうな。

     でも、ポケモンって生き物だろ? そこには感情があるはずだ。
     ポリゴンはどんなことを思って、この世界の発展に貢献したのか。
     俺の手持ちのポリゴンを見てみる。
     でもポリゴンは何も答えない。
     けど、その目はなんだか心なしか、悲しそうな目をしているような気がする。

     なぁ、ポリゴン、この世界って――。





    「けんちゃーん、そろそろご飯よ〜!」
    「は〜い!」
    「ゲームを終わらして早くきなさ〜い!」
    「分かってるよぉ」

     少年に乱暴そうに床に置かれた一台の携帯ゲーム機。
     電源を切られたゲーム機は何も答えない。何も語らない。

    『全て』が電子化。

     それは命も含んでいるのではないか?

     
     俺達が今、生きているこの世界はもしかしたら――。






    【書いてみました】

     Special thanks:久方さん 

     深夜のチャット中、電子という言葉を出した時、浮かんだ物語です。
     お金やら、なんやら電子化が進んでいく今の世界。
     もしかしたら、本当に硬貨とか紙幣がこの世から消えるのかなぁ、と思うと不安になる今日この頃です。
     なんか、お金の重みとかを表す為にも硬貨や紙幣があるんだと個人的には思っていて、
     電子化になったら、お金の重みとか全くとはいかないと思うのですが、ちょっと分からなくなってしまうかなぁ……と心配してしまったわけなのです。
     
     まぁ、便利な世の中になるのは嬉しい限りですが、便利すぎても考え物かな、と思った次第でございます。

     深夜での会話で、ぽぽぽぽーんとこの物語が出てきたキッカケの一つとも言ってもいい久方さんに感謝です。 




     ありがとうございました。 


      [No.1133] 沢山ありすぎて声が枯れそうだ(追加版) 投稿者:ラクダ   投稿日:2011/05/04(Wed) 00:38:40     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ポケストの中心で、全力で愛を叫ばせていただきます。
     ……と言いつつ、コンテストの進捗状況に気を取られたり()、作品・作者さんのお名前を思い出せずにいたため、全力を出せていませんでした。
     改めて、叫ばせていただきます!
     
     ・クーウィさん

     「アウトロー」「四月馬鹿ェ1,2」
     ツリー表示にないことに気付いて、真剣に悲鳴を上げました。特に読みかけだった四月馬鹿……。
     「流れ行く者」はログがないとのこと、残念です……。でもアウトロー残存に狂喜!四月馬鹿に関しては、いつまででもお待ちしております(笑)

     ・イサリさん

     「新緑賛歌」「幸福の姿」
     新緑賛歌の語り口が好きです。淡々としていながら優しげで。ちょっぴり頑固そうなナタネさんに惚れ惚れ……。
     幸福、再掲ありがとうございます!新緑も楽しみにお待ちしております。
     
     ・リナさん

     「森ガール」「イソップ童話(嘘)」「セラピスト」「レモンの輪切りとガーゼが一枚」
     レモン書き抜かってたとは何たるミス!長編の方は無事で、心からほっとしました。
     作品集の再掲、ありがとうございました!そしてイソップ寓話が大嘘に進化しているという予想外の喜び。スケベクチバシと羅針盤、大好きですw

     ・小樽さん

     「風乗りサラリーマン」「もふパラ(書いてみた)」
     焼きたてトースト用意したら、ちるりさんは戻ってきてくれるでしょうか……?池月さんは…マトマの実?
     
     ・むぎごはんさん

     申し訳ありません、作品のタイトルを失念しました……。
     ヌオーと青の描写の巧みさ・表現力の豊かさに感動しました。ぜひ再掲をお願いしたいです。

     ・てこさん

     「シンデレラン・シャンデレーゼ」「コイル・コイル・コイル」(タイトル失念、マッギョの足跡探しの旅)
     チャットにてしつこく再掲をお願いしておりましたが(笑)、シャンデレーゼをぜひに!とお願いしたいです。ストロベリーブロンドの彼女に、メロメロです。

     ・久方さん

     第一回コンテストの続編を再掲希望しております。同郷の友人との久しぶりの再会、共に昔を懐古するというシチュエーションもさることながら、居酒屋での焼き鳥描写にうっとりしました。ヨダレの出る小説、と脳内にインプットされています(笑)

     ・スズメさん

     なぜか、作品はロング版の方に掲載されているから大丈夫、という妙な勘違いをしておりました。
     作品集の再掲に感謝いたします。やった、新作も混じってる……! 
     
     絵師の方々にも、ラブコールをば。
     風間深織さんのマステ絵作品集、サトチさんの雛壇・さくらちゃんのバニーガール及びライコウさん。ページを開いたときの感動と衝撃が忘れられません。
     まだ他にもおられたはずだ……!

     再投稿してくださった方々にも、大感謝をば。
     作品を読み返すたび、しみじみと喜びを噛み締めています。マサポケ復興万歳!
     
     今後も皆様の再投稿、及び新作の投稿をお待ちしております。まだまだ書き足りない気もしますが、ひとまずこの辺で。


      [No.1132] 【再掲】夢魔語り 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/05/04(Wed) 00:10:29     76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     紫の帽子に紫のケープ。赤いパラソルを差したムウマージ、リリ・マードックはアルバイトの為、駅前のカフェに向かっていた。リリは肩からパラソルを浮かせてくるりと回し、再び肩に乗せる。彼女は心持ち暗い、裏通りと言える道を選んでいた。しかし、それでもこのライモンシティは明るい。眠れない程に。

     白く眩い光は砂糖菓子、暖かな橙の光はカラメル。曲がりくねったネオンの文字が色とりどりの飴細工なら、向こうに見える観覧車は何かしら? カラースプレーのたっぷりかかったホールケーキ。黒っぽいチョコレートに覆われて、柔いスポンジが眠っている。
     観覧車は様々な色に光りながら、ゆっくり回転していた。様々な色、様々なパターン。観覧車は目まぐるしく衣替えして、まるでそこだけ季節が早回しで過ぎていくみたいだ。
     あの観覧車は夜中じゅうずっと回っている。観覧車だけではない、この町では多くのものが――不休を売り文句にする店や、娯楽施設、誰かが働いているビル、家までもが――夜遅くまで起きている。丑三つ時、草木が眠ってしまってもこの街は起きている。

     必然、夢を見る時間も、少なくなる。

     なら、この街の人たちは現(うつつ)を生きているのかしら、とリリ・マードックは呟いてから、古い呪文を口ずさみ始めた。



     昔々、百年以上前のことだ。リリ・マードックはイッシュ地方から海を越えた遥か向こうの、とある深い森で生を受けた。その頃はまだ、リリでもマードックでもなかった。

     彼女たちの一族は、少し変わっていた。普通のムウマよりも、夢に対する造詣が深い、とでも言おうか。夢魔としての属性を強く持ち、人やポケモンに夢を見せることを慣わしとしていた。悪夢に迷い込ませて、その恐怖を自らの生きる糧とする者もいれば、わざと明るく楽しい夢を見せて、夢から覚める時の一瞬の寂寥を捕らえて食す者もいた。

     どんな夢を見せ、いかに心を負の側へ、虚軸の上へ触れさせるか。彼女の一族はそういうことばかり研究していた。
     そんな彼女らの中で、リリは特に変わっていた。夢を追う一族の中で、彼女だけは現を追い求めた。彼女だけが故郷の森を離れ、旅に出た。旅に出て、色々なものを見聞きすれば、自分の見せる夢は色彩豊かで豊潤なものになると考えたのだ。

     そうして、世界中を回って、五十年後に戻ってきた時。故郷の森は消え、一族の血脈はほぼ絶えていた。生き残った数少ない仲間は四散し、深く暗かった森は明るく、すぐ傍まで人家が迫っていた。もう、リリを知る者もいなかった。

     そして、リリは再び旅に出た。
     各地を回り、人やポケモンの夢の中に入り込んで、様々な夢を見せた。リリの作る夢は好評だった。まるで旅行に行ったみたいだ、と喜ばれもした。いつか、夢で見た景色を現実に見に行きたいとも。一方、そうした明るい希望の裏側に去来する寂寥は、この上なく美味であった。
     彼らの中には思い通りに行かない現実に嫌気が差して、リリが作る夢の中に逃げ込んだ者もいた。ただ、自分の記憶にないものを夢に見るのはエネルギーを浪費するし、リリもひと所に留まることはなかったので、彼らの逃避はすぐに終わりを迎えてしまったのだが。

     そうやって、長いこと、夢を見せて回っていた。リリはムウマージに進化し、いつの間にか、夢を見せることも少なくなっていた。

     夢魔――リリスの末裔と言われる彼女たちの存在を知る者が減っていったこともあるかもしれない。けれど、それ以上に、世の中がバトル主流になっていったことが影響していたように、リリには思えた。
     ムウマやムウマージはもう、夢に入り込んだり、人の寂しさ切なさを食らうポケモンではなく――バトルで使われうるポケモンの一匹、トリッキーな技で相手を撹乱したり、そこそこの火力で相手を攻撃するポケモン。ポケモンを摩訶不思議な隣人として捉える人もいたが、それでもリリの一族のみならず、ポケモン全体への見方がどこか変わっていくのは、逆らえない時代の流れのように感じられた。


     だからだろうか。

     リリは明るすぎる、街の明かりに目を凝らす。
     ネオンサインが、ミュージカルホールの英文字綴りを蒼い夜に描き出す。戦うでもなく、競うでもなく、ただ軽やかな音楽に乗って拙い舞を舞うだけのポケモンミュージカルにひと時の安らぎを覚えた。惹かれるようにここに居着いた。

     それに、この街は明るいから、とリリは小さく呟いた。

    「光が強ければ強い程、影も深くなる」
     この言葉は、古い言葉で呟いた。古より続く理。



     カフェGEK1994に着くと、真っ先にカウンターの上で客の寵愛を独り占めにしている小さなポケモンが視界に入った。
     白い体に、赤い角が五つ生えたポケモン。太陽の子どもとも称されるメラルバだと、すぐに思い当たった。ただ、このメラルバは平均サイズより遥かに小さい。恐らく生まれたてだろう。カフェの看板息子であるマグマラシの体温が心地いいのか、しきりに彼に擦り寄っている。
     けれど、とリリは首を傾げる。
     このカフェにメラルバはいなかったけれど、どこから来たのかしら?

     オーダーを受ける合間を縫って、カフェのマスター兼オーナーであるユエに話しかけた。
    「ああ、あのメラルバはカクライさんのよ」
     いつもと変わらず、屈託のない笑顔で客をさばいていく彼女に、リリは剣呑さを隠した声音で質問を重ねる。
    「カクライさん、とおっしゃいまして?」
    「うん」
     そこで会話は終わった。

     短い十分休憩の間に、リリはメラルバの持ち主の「カクライ」について考えた。
     マスターは「カクライさん」を「コーヒーが似合う人」だと言っていた。……ということは、少なくとも彼女には――いや、普通の人間には「カクライ」は「人」に見えるらしい。
     しかし、カクライと呼ばれる家は、もう血が絶えていたはずだ。数十年前の、火事によって。
     ならば、このカフェに来た「カクライ」は、何者だろう。幽霊だろうか。

    「まあ、実際に会ってみたら分かることですわ」
     休憩を終え、リリは再びカフェの表側に出た。注文を取りながらテーブルを回っていると、カウンターにいるマグマラシに呼び止められた。
    「どうなさいました?」
     マグマラシは無言で、自分に身を摺り寄せる小さな子どもを見下ろした。
     さっきのメラルバだ。マグマラシに背をさすられながら、しきりに泣きじゃくっていた。

    「急に寂しくなったみたいでさ」
     母親であろうウルガモスに体温が近い、という理由で子守を任されたマグマラシは、対処に困っているようだった。
    「失礼」
     マグマラシの腕の中にそっと手を伸ばし、メラルバの額に手を近付ける。
     そして、古い呪文を使ってメラルバを眠らせると、片目だけ閉じてメラルバの夢を覗き込んだ。


     メラルバの夢の中には、淡く輪郭のぼやけた色彩と、ムウマージのリリには暑いくらいの熱が存在していた。
     狭い夢の世界の中心に、形をなさない意識がひとつ。言葉にはなっていないが、寂しさを感じているらしい。リリは胸の宝玉を光らせ、メラルバの寂しさを吸い取ると、小さなメラルバの見る夢の世界を軽く探った。
     幼さゆえ自我も、それ以外の認知もはっきりしていない。しかし、嗅覚は大体のポケモンで発達している。リリはメラルバが好ましく感じている匂いを二つ、記憶の中から引き出して、メラルバの夢の中に満たした。と同時に、夢の中心にいる意識が少し、安堵したようだ。
     リリは目を開けた――


     しばらくメラルバに手を近づけていたリリは、そっとその手を離し、マグマラシに向かってとりあえずは大丈夫だと頷いた。

     リリはまた給仕の仕事に戻った。
     しばらくして起き上がったメラルバは、先程と変りなくマグマラシとじゃれ合っているように見える。
     リリはその様子を横目で見ながら、先程覗き込んだメラルバの夢の意味を考えていた。
     認知の乏しい、ぼやけた夢の世界であっても、見方を知っているリリにははっきりと意味をなすものになる。それに、リリはそれなりにキャリアもある。夢に入り込めば、直結する記憶の領域にアクセスすることなど、朝飯前なのである。
     それによると、メラルバはバトルトレインで生まれ、主のカクライの所用の為にカフェに一時預かりされたらしい。所用、の内容が気になるところだ。リリは空いたテーブルを拭き上げて、入り口を見た。
    「ありがとうございました」
     まだカクライの姿は見えない。


     それから二人程の客を見送って、夜の客の波が収まった時――
     やっとリリのお目当ての人物が現れた。
     マグマラシが小さなメラルバを抱き上げ、その足元に走る。
     彼はこのカフェの常連らしく、ユエもリラックスした笑顔を向けていた。
    「リリちゃん、こっち来て! ――こちら、うちの常連のカクライさん。メラルバの人よ」
    「はじめまして。リリ・マードックと申します」
     リリはいつものようにカーテシーの仕草をしながら、じっとカクライを見る。そう、そういうことですか。
    「カクライと申します。こちらこそ、以後お見知りおきを」
     魅力的な笑顔を浮かべ、リリに挨拶する男性。
     彼は、人によっては歳若い青年にも、年老いた翁にも見えるのだろう。けれど、リリはその奥の、儚い炎でしかない彼の姿をはっきり見てとっていた。

     リリはえくぼを浮かべた。
    「こちらこそ、よろしくお願いしますわ」
     小さなメラルバを受け取った彼の隣で、シャンデラがクルクル回る。
     二三、言葉を交わして、カクライは店を出た。

     あの姿では、到底夢は見られまい。
     その背中を見送って、リリは残った仕事を片付け始めた。


     飽きる程に明るい街に、今宵も砂糖の光が灯る。リリ・マードックは赤いパラソルを差し、薄明かりのライモンの裏路地を通る。
     リリの一族しか知り得なかった古い言葉で呪い(まじない)を紡ぎながら、進む。
     旭はずっと遠いのに、この街は目を開いている。
    「このくらいの明るさがちょうど良いわ。なんとなく、眠れないくらいの方が」
     と、リリは小さく呟いた。


     それにしても、とリリは独りごちる。カクライのあの状態を維持するのは、少々骨折りのはずだ。恐らく他人の命を食らっているのだろうが、昨今の失踪事件と、何か関係があるのだろうか。
     まあ、それはそれ、とリリは思う。カミヤやカクライの家につくことにも毛程の興味も覚えないし、もうしばらくは傍観者でいようか。誰かリリの大事な人が傷付けられる段になったら腰を上げるだろうが、カミヤにしろカクライにしろ、GEK1994の若いマスターに危害を加えるようなことはあるまい。今まで通り、カフェの仕事と夢魔としての仕事を続けていけばいい。

     帰り着いたアパートの、薄いカーテンの向こうから日が差し込む。リリはひと息にカーテンを引くと、明るい太陽の光を浴びて、思いっ切り伸びをした。
    「光が強ければ強い程、影も深くなる」
     古の言葉で呟きながら、いつまでも眩い陽光を見つめていた。



    【何してもいいのよ】
    【ムウマージは催眠術覚えないとか言っちゃいやなのよ】
    【お題:眠りと偶然合ってたのよ】

    リリさんはこんなポケモンに違いないと書いてみた。眠たくなった。


      [No.1131] 【再掲】コーヒーはブラックで 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/05/04(Wed) 00:08:57     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     コンコン。ノックの音に応じて女性が顔を上げた。
    「はい、どうぞ」
    「失礼します」
     女性――カフェGEK1994のオーナー兼マスターであるユエの呼びかけに応じて、面接室のドアが開かなかった。そして、バイト希望者が室内に入り、ユエに向けて一礼した。

     現れたのは紫の大きなウィッチハットを被り、紫のケープに紅玉のネックレスを身に付けたお嬢様。ユエが向かいの椅子に手の平を向けてから、彼女は椅子に腰掛けた。ケープの下に体がないとか、ドアをすり抜けて部屋に入ったとか、そもそも彼女はムウマージだとかつっこむのは野暮というものである。

    「はじめまして。お電話差し上げましたリリ・マードックと申します。お目にかかれて光栄ですわ」
     リリと名乗る女性、もといムウマージ♀は、面接室の机に肘(ひらひらしていて詳細不明だが、曲がっているのだから肘)を付け、手を顎の下にやって、無邪気そうな笑顔を見せた。そしてハッと何かに気付いたような表情をしてから、大判の茶封筒を取り出した。どこから? ケープの下からである。
     カフェのオーナーの女性は、つとめて笑みを返しながら茶封筒の中身を取り出した。封筒はリリに返した。当たり前のように、リリは封筒をケープの中に戻した。
     封筒の中にあったのは、ありふれた履歴書だった。
    「わたくし、写真うつりがとても悪いんですの」
     ユエの視線が写真に向けられる前に、リリは素早くそう言った。
     その言葉で、ユエは履歴書の写真をとっくり眺めてみる気になった。写真には、どこかのスピード写真の箱の内側だろう、薄汚れた味気ない白い壁が写っていた。よく見てみると、中心と外側で白の色合いが違う。内側の、薄紫の混じった白い影をじっと見つめていると、それが目の前の面接に来たムウマージに見えてくる……気もしないではない。
     フラッシュがだめで、と言うムウマージの言葉を遮って、ユエが質問をした。
    「まず、ここで働きたいと思った理由を聞いてもよいですか?」
     ムウマージは笑みを深くした。そうすると右頬にえくぼらしきものが出来る。中々チャーミングな娘さんである。
    「わたくし、ほんの何週間か前に、この町に流れ着いたのですけれど……」
     ムウマージの話ぶりに気を配りつつ、履歴書にも目を走らせる。名前――リリ・マードック。住所はライモンシティの某所。携帯電話の番号が書かれてある。携帯電話をどこにしまっているかは考えないでおこう。学歴――千九百年頃、師○○に教えを乞う。ユエは年月日をもう一度見直す。やはり学歴欄は二十世紀初頭から始まっている。
     このお嬢様、否、ご婦人はずいぶん色んな場所を旅して、様々な人・ポケモンと親交を深めてきたらしい。そして、二千××年、シンオウの某所で進化、とある。
    「素晴らしい町ですわね。わたくし、ミュージカルにすっかり夢中になってしまって」
     趣味――ポケモンミュージカル、映画鑑賞、ポケモンバトル。特技――シャドーボール。
    「ずっと流浪の旅をしてきたんですけれど、ここに腰を落ち着ける気になったんですわ。それで、このカフェーを見つけて……ひと目ぼれしてしまったのです」
    「ひと目ぼれ?」
     リリはこっくり頷いた。「なんと言ったらよろしいのでしょうね」と、数刻目を宙にやった。
    「にぎやかで、コーヒーが美味しくて。お洒落で、かわいらしくて。それでいて、いつでも誰でも、静かに受け入れてくれるような。たとえ、悪い噂のあるゴーストポケモンでも」
     リリはそこまで話すと、照れくさそうに笑って「今のは忘れてくださいまし」と言った。
    「こんな素敵なカフェーで働きたいと、かねがね思っていたのですわ」
     さっきの言葉を打ち消すように、リリは声を張り上げた。
     そうしてにっこり笑った。えくぼが浮かんだが、なんだか寂しそうな笑みだった。
     勤務時間の希望を聞くと、「お日様ががんばっている時間帯は好みじゃありませんの」それから、「日焼けしますもの」そう付け足した。

     それからまた少し話をしてから、面接は終了となった。リリは、給仕でもレジでも何でもやる、と述べた。
    「決まったら、こちらから連絡します」
     リリはひらひらした紫の裾をつまんで、カーテシーのような仕草をした。そして、来た時と同じようにドアをすり抜けて帰っていった。

     日はまだ照っていた。
     リリはケープの中から赤いパラソルを出した。黄金色の、煮詰めた蜜のような甘い黄昏時。ネオンがパチパチと点滅して、灯る。カラフルな飴のような明かり。この町の夜が目を覚まし出す。
    「甘い夢の後には、とびっきり苦いコーヒーがいいわ」
     ムウマージは誰に言うともなくそう呟くと、薄暗い路地の向こうへ溶け込んでいった。

     カフェの看板息子がその後ろ姿を見送って、店内に戻ってきた。
    「あのポケモン、雇うかな?」
    「さあ、どうだろう」
     常連のピカチュウと数語交わし、奥へ進む。話し相手を探すポケモンがいないかどうか、店内の様子に気を配る。窓の外にムウマージが見えた気がした。ガラスに映った自分だった。

    「あ−、次のバイト志望者の面接まであと五分しかない! ライザくん、三番テーブル片付けて!」
     ユエは従業員たちにテキパキと指示を出しながら、厨房に回る。仕込みを手伝い、時間を見て再び面接へ。今度のバイト志望者はドアを開けて入ってきた。面接を終え、「忙しい」と口走りながら店に出る。
     カフェ『GEK1994』は今日もにぎわっている。


    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【本文は大丈夫だけどタグと後書きは再現できないのよ】


      [No.1130] 大好きだったあの作品へ叫ぶ 投稿者:CoCo   《URL》   投稿日:2011/05/03(Tue) 23:59:00     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     

    *リナさんの「レモンの輪切りにガーゼを一枚」
     タイトル間違えていましたらごめんなさい。
     長編板のスタンドアップキャンパスもそうですが、リナさんの作品が大好きです。この際告白(ry
     生活感に溢れたような、あったかいような、だけどリアルに切り込んでくるというか(感想苦手
     あの文章が好きです。ぜひ再掲載を……!

    →掲載ありがとうございました!

    *クーウィさんの春のやつ
     タイトルorzごめんなさい
     深織さんのイラストに描いてみたとして投稿されていた作品です。
     あれは素敵だった……思わず声に出して読んだ……。
     あのクーウィさんの描写はとても味わい深いというか何と言うか……。
     うまいこと言葉にならんのですがこの際告白(ry

    →も……戻ってこない……だと……orz

    *紀成さんのファントムシリーズ
     楽しく読ませていただいております。
     この際全作品の長編板委託を心から希望。

    *てこさんの「呪われた宝石」
     Pixivに行けば読めると知っても……!
     自分がてこさんのローランを確信した作品でもあり、またお話も大好きな作品です。
     ヤミラミとミシェルをかけてくるとは。
     再掲載熱望。



     削除キーを入れたので、読みたくなって「ない……!」と思ったら更新致します。
     来ればいつでも読める、と思って油断しているといけませんね。
     今度から気に入った作品は保存して印刷して手元に置いておこうと思います。
     


      [No.1129] ・・・ぽかーん。 投稿者:スズメ   投稿日:2011/05/03(Tue) 23:14:47     28clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    たまたまチャットのときに書いた即席物体が、こんな立派なものになるとは・・・
    ありがとうございます!!
    未だに、開いた口がふさがらずぽかーん・・・
    え、グレイシアかわいい。こんなにかわいい子だったとは・・・。
    リーフィアもかわいい、二匹ともいつの間にこんなに・・・。
    ほんとうにありがとうございました!
    感謝してもしきれないです、ありがとうございました!!


      [No.1128] 【書いてみました】 溶けたものは――。 投稿者:巳佑   投稿日:2011/05/03(Tue) 22:15:06     93clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    【書いてみました】 溶けたものは――。 (画像サイズ: 800×600 218kB)

     
     前置き:この素敵イラストはスズメさん作です。


     それは静かな森。
     人が立ち入ることもなく、ポケモン達が暮らしているその森は土地柄か、草ポケモンや虫ポケモンばかりが住んでいました。
     その草ポケモンや虫ポケモンだけの森に一際目立つ青色が一つ。
     その青色は歩く度に色々なポケモンから視線をもらっていた。

     また、あいつだ。
     なんで、この森にいるんだろう。
     氷タイプはどこかに行って欲しいよな。

     そんな呟きの中、その青色は歩き続けていく。
     もう言われ慣れているし、そもそも相手にするだけ無駄なことだ。
     周りの呟きは聞かなかったことにして、その青色は目的の場所に向かうことにした。

    「あ、グレイシア! こっちこっち〜!」
     木々を抜けて、開けた場所にたどりついたその青色――グレイシアの目に止まったのは頭に葉っぱをつけたポケモン。
    「……リーフィア」
    「ん? な〜に? グレイシア」
    「勝手にくっつかないで、って何度言えば分かりますの?」
    「だって〜、グレイシアって冷たくて気持ちいいんだもん、特にこの暑い時期はね〜」
     頭に葉っぱをつけたポケモン――リーフィアは迷惑そうな顔をしているグレイシアにお構いなく抱いてくる。
     最初に出逢ったときはすぐに離れるということもあったのだが、最近はもう諦めて、されるがままにされていた。
     まぁ、悪い奴ではないし、どっちかというといい奴だ。
     この森で初めて自分に人懐っこく接してきてくれ、そして唯一の相手と言ってもおかしくなかった。
     
     グレイシアがこの森に来たのはかれこれ数ヶ月も前のことだった。
     グレイシアは生まれつき体が悪く、体調を崩すことが多かった。
     これ以上は一緒に連れて行けないと悟った、グレイシアの主人はこの森にグレイシアを逃がした。
     そう、グレイシアは主人――人間と共に旅をしてきたのだ。
     主人はいつもグレイシアの体調を気遣っていたから、森の入り口に自分を捨てたのではなくて、解放してくれたのだとグレイシアは想っている。
     あのとき主人が見せてくれた眼は寂しそうで、苦しそうで。
     最後は「ごめんな」と泣きながら言ってくれた。
     グレイシアは人間の言葉が使えるのなら「ありがとう」と言いたかった。
     自分のことをよく考えてくれた末の答えなのだから、大好きな主人が悩む顔を見ないで、済む。主人もきっと明るくなれるはずだと想った。

     それから、グレイシアの森での生活が始まったのだが……住みやすそうな森とはいえ、見知らぬ土地。
     おまけに周りのポケモン達は新しく入ってきた、そのグレイシアに警戒していた。
     特に氷タイプに弱い草ポケモンや虫ポケモンはその警戒心が強かった。
     …………しかし、森に住む全ポケモンがグレイシアに警戒心を向けてくる中、一匹だけ、森のポケモン達に言わされば物好きなポケモンがいた。
     それが、リーフィア、だった。
     このリーフィアはもう何と言っていいのやら……初めて会った瞬間、いきなりグレイシア抱きついてきたのだ。
     いきなりの抱きつきにも驚いたが、もう一つ、この森で初めて自分に触れてくるポケモンの存在にも驚いていた。
     グレイシアは氷、リーフィアは草。
     どう考えても自分には嫌悪感を抱いてもおかしくないのに、どうして、あのリーフィアは自分のことをそんなに触れてくるのか?
     不思議に思いながらも、グレイシアはリーフィアのことをちょっとずつ信じるようになっていた。
     今はリーフィアのおかげで森での食べ物も困らないし、なにより、リーフィアに会ってからは自分では分からないのだが何故か体の調子が良いのだ。風邪になることも全然なくなっていた。
     

     
     しかし、ある日のこと。 
    「ねぇ、グレイシア! こっちに行こうよ! こっちにいっぱいリンゴの木があるからさ!」
    「…………」
    「グレイシア?」
    「あ、な……なんでもないわ。それで何の話ですの?」
    「えっとね、こっちにいっぱいリンゴの木があるから行こうっていう話!」

     どきん。
     
     まただ。
     また、この音が自分の胸から聴こえてくる。
     グレイシアは最近、この胸のことで悩んでいた。
     なんだか最近、リーフィアに触れる度に胸が内側から自分をグーで叩いているかのような感覚を覚えるのだ。
     くすぐったいような、熱くなるような、そんなうずきみたいなものが胸を叩かれる度にグレイシアの体中に広がっていた。
     一体、これは何なのか?
     もしかして、何かの病気にまた自分はかかってしまったのだろうか?
     掴みどころがないところがまたグレイシアを余計に苦しめた。

    「……大丈夫? グレイシア? なんか、ちょっと顔が赤いよ?」
     グレイシアの異変に気がついたリーフィアが駆け寄って来て、顔を覗きこんできて――。

     どきん!

     グレイシアはとっさに後ろに飛んでリーフィアから距離を取った。
     その顔は若干、赤く染まっていたような気がした。
    「グレイシア? どうしたの?」
    「な、なんでもありませんわ! きょ、今日は私は帰りますわ」
    「え、でもグレイシ……」
    「いいですから!! あ……ごめんなさい。帰りますわ」
     思わず、怒鳴ってしまったこと――イライラをぶつけてしまったことに舌打ちしながらグレイシアはその場を去っていった。
     なるべくリーフィアから距離を離したいと主張するかのようにグレイシアの足が素早く動いていく。
     とにかく、リーフィアから離れないと。
     体がなんだか熱くてたまらない。
     この先、木々を抜けたところに川があったはずだと駆けて行く。
     木々を抜けると、そこには小川が流れていた。
     せせらぎの音が耳に入ってきて、少しずつ落ち着いてくるがそれだけでは熱は下がりきらない。
    「はぁ……はぁ、はぁ……はぁ、はぁ……だめですわ……このままでは」
     急いで、小川の水面に顔を近づけ、水を飲む。
     ちょっとずつ熱は冷めていき、グレイシアは顔を水面から話した。
    「……本当に、だめですわよね、このままだと……」
     最近リーフィアに触れる度に、体が熱くなっていく謎の現象。
     何がなんだか分からない、けど……一つだけ分かっていたことがあった。
     このままでは体が溶けてなくなってしまうのではないだろうかと。
     自分はグレイシア、氷、氷は熱くなればやがて溶ける。
     きっと、自分もこのままだと溶けてしまう。
     …………もう、リーフィアから離れよう。そんなことをグレイシアは思った。
     リーフィアのことが嫌いなわけではない。本来なら敵対心を向けてもおかしくない自分にあそこまで接してくれるのだから。
     だが、このまま溶けて水だけになってしまったら、それをさせてしまったリーフィアに罪悪感なんて残したくなかった。
     思いっきり嫌われるような別れ方をしてリーフィアの心から自分を消してしまおうとグレイシアは考えた。
     未練を残さないように自分にも厳しくなって、明日は別れてやるとグレイシアは心にそう決心した。


     翌日、いつもの集合場所にグレイシアが赴くと、そこにはリーフィが日光浴して待っていた。
     グレイシアが歩み寄っていくと、リーフィアが気がついて抱きついてこようとする前にグレイシアの口が開いた。
    「リーフィア! 私は今日、お別れのあいさつに来ただけでございますの」
    「え?」
     思わず、リーフィアの足が止まる。
     グレイシアはそのまま言葉を続けていく。昨日した自らの決心に従って。
    「私はもうこの森を出て行きますわ!」
    「え? ど、どうしてなの?」
    「リーフィアのことが、大嫌いですからっ!」
     ここまで言ってグレイシアの口が一旦、止まった。
     リーフィアの目が悲しそうな光を放っていたからだ。
     グレイシアの胸の辺りがチクリと針が刺さったかのような感覚が芽生えた。
     お願いだから、そんな顔を向けないで欲しい。そんなリーフィアを振り落とすかのようにグレイシアは言葉を乱暴に吐き出す。
    「アナタのことなんて、見たくもありませんし! 一緒にいたくもありませんわ! もうアナタといるだけで疲れていますの! もうアナタとは会いたくもありませんわ!!」
    「…………」
    「なっ!? ちょ、ちょっとリーフィア、私の話を――」
    「嘘、でしょ? グレイシア」
    「な……!?」
    「だって、そんなこと言うなら、どうして最初に逢ったときに同じようなことを言わなかったの? なんで――」
     リーフィアからグレイシアの近くまで歩み寄ってきた。

    「泣いてるの?」

     グレイシアは驚いた。全く、涙なんて流していなかったはずだと思っていたからだ。
     けれど、グレイシアは下を向いた。
     
     そこには、我慢できなかった感情が一つ、二つ、三つ、地面を濡らしていた。

    「何があったの? 昨日からなんか変だよ? ねぇ、グレイシア。話してほしいよ」
     グレイシアの我慢の枷が音を立てて壊れていった。
    「私、最近変ですの! アナタに触れる度に、胸が、ドキドキ、して! 体が、熱く、なって! このまま、じゃ、私! 溶けていなくなって、しまいますわ! アナタに! そんなこと! させたく――」

     そのとき、グレイシアの体に温かいものが当たった。 

    「……ほら、大丈夫。溶けないよ」

     ぎゅっと、リーフィアがグレイシアを抱き締めた。

    「リーフィア……! 何をやって……! このままでは、溶けて……!」
    「グレイシアは確かにここにいるよ。溶けてなんかないよ、生きてるんだよ」 
    「!! …………なんで……どう、して……こんな、風に……抱いて、くるですの……!?」

     リーフィアが微笑みながら言った。

    「グレイシアのことが大好きだから」
     
     温かな風が一つ吹き抜けていった。
     抱き締めてくれているリーフィアの体から漂う優しい草の香り。
     そして、リーフィアの言葉から、グレイシアは全てを理解した。

    「あう、ううあん、あう、う、う、う、リーフィアぁああ!!!」
      
     抱き締めてくれるリーフィアに身を委ね、グレイシアは大きく泣いた。
     これでもかというぐらい泣いた。

     溶けたのは体ではなく心だった。
     
     


     その後、グレイシアとリーフィアは夫婦になり、森の中では有名な仲の良い夫婦となった。
     リーフィアと愛し合ってからは、グレイシアは自分から森のポケモン達と接し始めた。
     自分から勝手に壁を作ってばかりではいけないのかな、とグレイシアなりに考えたのである。
     その結果、森のポケモン達とも仲良く付き合えるようになった。
     
     そして、グレイシアは体調を崩すことがなくなった。
     グレイシア曰く、リーフィアが抱き締めてくれたから、らしい。
     
    「グレイシア!」
    「もう、リーフィアったら」
    「だって、グレイシアのことが大好きだから」
    「ふふふ、私も大好きよ」

     お互い、自分の前足をお互いの腰に回して抱き締めあう。
     リーフィアから優しい草木の香りが漂い、そして温かい体温がグレイシアを包み込む。
     
     心が溶けたグレイシアの顔はとても幸せそうな笑顔だった。

     
      

    【書いてみました】

     4月某日のチャットにて、スズメさんが見せてくださった、
     甘えん坊なリーフィアとツンデレそうなグレイシアのイラストを見たとき、
     この甘々(ですかね?)な物語を思いつきました。

     とにかくですね、スズメさんのリーフィアとグレイシアがとても可愛いかったのですよ。
     そして、和ませただけではなくて、見事に私の脳の引き金まで引いてくれました。(キラーン)

     快く快諾してくださったスズメさん、ありがとうございます!
     お気に召したら嬉しい限りです。

     

     それでは、失礼しました。


     ありがとうございました。


      [No.1127] 【再投稿希望はこちらに】ポケストの中心で愛を叫ぶスレ 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/05/03(Tue) 20:11:21     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    難しいこと抜きで、

    ・再投稿されてない作品に愛を叫んだり
    ・再投稿してくれと愛を叫んだり

    するスレです。

    対象はログ消失分だと思うんですが、この際だから何にでも告白すればいいと思うよ。

    なお、このスレに希望が上がったからといって、作者様に再投稿を強要するものではありません。そのあたりはご了承の程を。あしからず、ってね。

    あと、再投稿する際は鳩氏が作ったルールに準じてください。(http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?no=1114&reno= ..... de=msgview)このスレに返信ではないのです。



    このスレは

    ・再投稿されてない作品に愛を叫んだり
    ・再投稿してくれと愛を叫んだり

    ・とりあえず愛を叫ぶスレであって

    ・作者様に再投稿を強要するスレではありません。あくまで“してほしいな”と希望を述べるスレです。
    っていうかのんびり再投稿してくださる方もいるし、ログ消えて傷心の方もいらっしゃるし、そんな焦らず、がっつかずに。

    ・愛が過ぎてログを保存してたぜ! って方も是非その愛を叫んでください。

    ・要するに愛を叫ぶスレです。
    ・愛を叫ぶスレです。
    ・愛を叫ぶスレです。

    大事なことなので二、三回言いました。

    それでは愛を叫びたい皆さん、どうぞ。


      [No.1126] 春夏秋冬の事情。 投稿者:巳佑   投稿日:2011/05/03(Tue) 06:18:46     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     
     夏はどうして暑いの?
     ルナトーンが答えました。
    「太陽のソルロックさんが……仕事時間が増えたとかでイライラしていてですね? ……そのやつあたりの結果、気温が上昇して夏は暑いものになってしまったんですよ……昔から短気な……方ですから、ちょっとしたことで……カッとなるんですよ……ハァ」


     
     冬はどうして寒いの?
     ソルロックが答えました。
    「月のルナトーンがよ、仕事時間が増えて、『あ〜やだやだ』って鬱(うつ)になってさぁ、その結果、温度もテンションを下げちまって、冬は寒いものになちまったんだよ。むかーしから弱気な奴でさぁ、んたく、もうちっとしっかりしろっつうんだよ」


     
     春と秋はどうして穏やかなの?
     ルナトーンとソルロックが答えました。
    「それはですね……お互いの……仕事時間がだいたい平等ですから……僕もソルロックさんも……機嫌がいいんです」
    「まぁな。春夏秋冬、この調子でいきたかったんだけどよ。やっぱり、力を使う為には多く休みを取らなきゃいけないときってあるんだよ。それがたまたま夏と冬だったわけ」
    「まぁ、そのですね……やっぱし、その」
    「あぁ、そうだな」

    「仕事時間が増えるのは……イヤなんです……」「仕事時間が増えるのはイライラするんだよ」


     

     気分でこんなにも変わってしまう春夏秋冬の世界。
     でも、だからこそ、この世界は感情豊かに巡り回り続けるのだろう。





    【書いてみました】

     special thanks : てこさん 

     チャットにて、てこさんとお話していて、
     てこさんの「外があかるくなりつつある」という発言から思いついた物語です。
     夏が暑い理由と冬が寒い理由を思い浮かべながら、楽しく書かせてもらいましたです。

     てこさん、ありがとうございます。あの言葉はまさしく引き金でしたです!(キラーン) 


     久しぶりに短いお話でしたが、面白かったら幸いです。


     ありがとうございました! 
     
     
    【何をしてもいいですよ】


      [No.1125] ■マサポケオフ 5月21日(土)開催 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/05/02(Mon) 23:57:17     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    オフ会用スレッドです。


      [No.1124] 海岸線 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/05/02(Mon) 23:44:50     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     寄せては返す波。
     耳に響くその音色。
     私は歩く。伝承の地の海岸線を。
     そこにつく足跡は一人分だけ。

    「ほうら、みなさいよ。やっぱり私に相棒なんていなかったんだわ」
     それを見て、振り返った私は言った。
     波に攫われ消えていく足跡。
     消えていくのも一人分だけ。




    ●海岸線




     初心者用ポケモンは、だいたい草、炎、水という相場が決まっている。
     昔は地方によって貰える種類が違ったらしいのだけど、最近はいろんな地方の十五匹くらいから選べるようになっている。草の五匹、炎の五匹、水の五匹っていう寸法だ。彼らは非公式な言い方で「御三家」と言われていたこともあったけれど、今じゃすっかり死語になってしまった。
     カタログというと言い方が悪いけれど、ポケモンの姿と特徴が書いてある冊子を事前に渡されていた。ようするに結婚式や葬式のお礼に渡されるあれと一緒だ。この中から好きなのを選べって奴。

    「ねーねー、最初のポケモンもう決めた?」
     私と同じ年頃の子達は男の子も女の子もそんな話でもちきりだった。
     ある一定の年齢になるとポケモンを所有することを許され、子ども達は旅立ってゆく。
     私はずっとずっと後になって知ることになるのだけれど、実はこれには地域差があって、わが子を旅立たせることに積極的な町とそうでない町があるらしい。とりあえず私の生まれ育った町は間違いなく前者のほうだった。 
    「私、チコリータ!」
     と、一人が言った。
    「僕はアチャモにする!」
    「俺はミジュマル! なんたって進化系がイカすよな」
     彼らはカタログを広げて次々と自分の相棒になるポケモンを指差した。正直そんな話題を聞くのにウンザリしていたし、ウザかった。
     みんなは相棒と出会える日を楽しみにしていた。この町を旅立つ日を今か今かと心待ちにしていた。そんな彼らに比べると、私のテンションはすこぶる低かったと言っていい。
     カタログの一番後ろのページには、キリトリ線のついた希望票がある。欲しいポケモンに丸をつけるのだ。これを町の博士に提出するのだけど、私は触ってもいなかった。
    「ミミ君、初心者用ポケモンなんだけど、決めてないのキミだけなんだってね」
     可愛い子には旅をさせよ主義のママの差し金だろうか。
     今日の授業と帰りの会が終わって、教室から出ようとした時、担任にそう言われた。
    「先生には関係のないことです」
     私はそう返すと教室を出た。
     廊下に出ていた下級生が、私の顔を見てすっと道を開けた。



    「ミミちゃん、おかえりなさい」
     庭に伸びるテラスで、ママがリザードンの尻尾の炎をコンロ代わりにしてフライパンを操っていた。
     私のママは今でこそ専業主婦だが、結婚前はやり手のトレーナーでブイブイ言わせていたらしい。弱小トレーナーだったパパ情報によると"火竜使いのミオ"としてリーグでは恐れられる存在だったんだとか。そんなママだからして、次の一言は決まっていた。
    「で、ミミちゃん、最初のポケモンは決まっ……」
    「いい加減にして! 私、旅には出ない! 最初のポケモンもいらない!」
     昼間のイライラが頂点に達して、ここで爆発した。
     私はママの言葉を遮るとドカドカと階段を上り、二階の自室に駆け込んだ。
     ドアを閉める。鞄を部屋の中に投げ出すと、私はベッドに潜り込んだ。
     そうして誰にも聞こえない布団の中にくるまって呟いた。
    「放っておいてよ。どうせ仲良くなれやしないんだから……」

     私はママやパパとは違う。
     トレーナーにならずに進級して、ポケモンとは縁のない、そういう人生を送るのよ。
     目を閉じた。頭の中で何度も何度も、同じ言葉を繰り返した。



     一ヶ月くらい前だった。
     学校のポケモン学科、その体験授業にこの町から旅だったというトレーナーさんがやってきた。
     トレーナーさんはいろいろなポケモンを見せてくれた。
     他の地方の変わったポケモン、地を駆けるたくましい獣ポケモンや、空を舞う優雅な鳥ポケモン、そして、はじめて手に入れたポケモンの、その最終進化の姿。
    「うわー!」
     私達は歓声を上げた。私もみんなもポケモン達を前にしてすごく興奮していた。わくわくしていた。
     体験授業では模擬バトルが行われた。
     具体的にはポケモンとクラスメートを二組に分けて、トレーナーの連れてきたポケモンに命令をして技を出してもらうというものだった。
     鍛えられたポケモン達が繰り出す華麗な技。大技もあったし、美しい技もあった。
     自分の思い通りの技を出してもらってみんな喜んでいた。一回技を出すごとに次の子に交代していく。
     ドキドキした。早く私の番が回ってこないかなって。
     あと三人、あと二人、あと一人……そうしてとうとう私の番になった。

     だけど――


     汗だらけになってハッと私は目を覚した。
     いつの間にか眠っていた。思い出したくもない嫌な夢だった。
    「ミミちゃーん、ゴハンよ。降りてらっしゃーい」
     不意に下の階からママの声が聞こえた。



     そんな我が家の夕食はいたって静かだった。
     箸やスプーンが容器に触れる音がするだけで、目立った会話はない。さっき私が怒鳴り散らしたせいだろうか、ママは何も言わなかった。いつの間にか帰ってきていたパパもそういう空気を察したのか、ただ口の中に食べ物をかきこむだけだった。
     なんだか気まずいなとは思ったけれど、どうにもならない。私はさっさと食事を切り上げて部屋に戻るつもりだった。
     けれど、私が皿に乗った料理をすべて口に運ぶその前に、そんな静寂は突如として破られることになった。
     ピンポーンと、玄関のインターホンが鳴ったのだ。
     私はドキリとした。
     町の博士が未提出の希望票を回収しにきたのではないか。そう思ったからだ。
     けれどそれは玄関に立ったママの声ですぐにいらない心配だとわかった。
    「ミキヒサじゃないの! もー、来るんだったら連絡くらいよこしなさいよ!」
     という、ママの嬉しそうな声が聞こえたからだった。
     おじさんだ! 私はママの声につられて玄関に駆け出した。

    「いやーミミちゃんひさしぶりだねえ。すっかり大きくなって。元気にしてた?」
     テラスの席で出されたビールを飲むおじさんは上機嫌だった。
     ミキヒサおじさんはママの弟だ。ママとは歳がだいぶ離れていて、まだだいぶ若くって、現役のトレーナー。だから私にとっては大きいお兄さんみたいな感じで、ちょっと憧れだった。もっともママに言わせると、トレーナーとしての腕前は大したことないらしいのだけど。
    「はい、おみやげ」
    「うわー、ありがとう」
     おじさんは紙袋に入ったお土産を手渡して、旅先の話をしてくれた。なんでもこの近くの町でコンテストのようなものがあって、それで寄ったということだった。私とおじさんはしばし旅の談義に花を咲かせた。
     そのうちにパパは明日も仕事があるからと寝室に上がっていって、ママは布団を敷いて来るわと言ってやはり同じように上がっていった。
     次第に会話の勢いも落ちてきて、二人でお菓子をつまみながらなんとなくテレビを見る。そんな展開になった。
     画面が切り替わって、フレンドリィショップのキャンペーンCMが流れる。モンスターボール十個で一個オマケ! もれなくプレミアボールプレゼント! すっかりおなじみのフレーズだ。
     お菓子の中からポップコーンを何個か掴んで口に運ぶ。お菓子の皿の横には土産袋から顔を覗かせたネイティオこけしが立っていた。その木彫り念鳥と目があったその時、不意におじさんが言った。
    「そういえばミミちゃんそろそろ十歳なんじゃない?」
     がりっと奥歯が何かを噛んだ。さっき口に入れたポップコーンの中に硬いのが混じっていたからだ。その歯ざわりを口に残したまま私は硬直した。
     悲しいかなトレーナーの性。
     やはり「年頃」の子どもにはこういうことを聞かずにはいれないらしい。
     が、硬まった私の様子を察したのだろうか。
    「ん? もしかして俺、まずいこと聞いちゃった……? …………ごめん」
     と、おじさんはとっさに謝ったのだった。
    「え? あ、あの……」
    「いやいや、いーんだ! 俺もその、ミミちゃんは姉ちゃんの子だからそういう思い込みがあったってゆうか。いやそういう人生もあるさ。ポケモン連れて旅立つばかりが人生じゃないって」
    「え! あ、ああ! そ、そうだよね」
     むしろおじさんのうろたえぶりに、こっちが慌ててしまった。
     ママもパパも先生も、回りの大人の人はみんな、子どもは十歳になったらはじめてのポケモンを貰って旅立つのが当然って態度だったから。
     けど、おじさんはそのどの人達とも違った。だから私も素直になれたんだと思う。
    「そっかー。でもミミちゃんはポケモンが嫌いなようには見えないけどなぁ。なんかあったの?」
     だからおじさんがこう聞いてきた時に、私は初めて一ヶ月前のことを白状したのだ。


     一ヶ月くらい前。ポケモン学科の模擬バトル。
     トレーナーさんの連れてきたポケモンは、ちっとも私の言うことを聞いてくれなかったのだ。ほかのクラスメートの言うことは素直に聞いたのに、だ。「おや」のトレーナーがいさめても、他のポケモンに替えてみてもぜんぜんダメだった。
    「気にしないでいいよ。ポケモンの機嫌とか相性もあるし、よくあることなんだよ」
     そう言って、先生もトレーナーさんも慰めてくれた。
     ポケモンではよくあること。それは些細なこととして受け取られた。
     けれど、私はすっかり自信をなくしてしまった。
     だって私だけ。私だけだったのだ。
     きっと私はポケモンに嫌われる体質なんだ。こんなんじゃ、はじめてのポケモンを貰ったってうまくやっていけるわけがない。
     ママはかつてのリーグ上位経験者だ。とてもそんな事が理由とは言えなかった。もちろんパパにも言えなかった。


    「なるほどねー。それは落ち込んじゃうよねー」
     おじさんは私の話をうん、うん、と一通り聞いて、そう言った。
    「でもねミミちゃん、世の中いろんな性格な人がいるように、君と仲良くなれるポケモンだってきっといるよ」
    「……そうかなぁ」
     私は半ば涙ぐんで答えた。カタログで選べるポケモンは十五もいるけれど、そのどのポケモンとも仲良くなれるとは思えなかったから。
     訓練されたポケモンでさえ、ろくに言うことも聞いてもらえなかった私。そんな私がポケモンを貰ったって……。
     私はうつむいて黙ってしまった。
     するとおじさんが思いがけないことを言った。
    「ミミちゃん、ムスビ海岸に行ってみたらどう?」





     ……私が思うに、たぶんおじさんは女の子は占いが好きだって思ってるんじゃないだろうか。それはある種の女の子達にとっては真実だけれど、私はあんまり信じていない。きっとママに似てリアリストなんだと思う。
     けれどなんだか話を聞いてくれたおじさんに悪い気がして、次の日は土曜日だったこともあって私は出かけることにした。
     タタン、タタンと音を立てて、列車が線路の上を軽快に走っている。
     街を抜けて、何かの工場地帯を抜けて、移り変わっていく窓の外には時折海が見えた。
     最初の駅で電車に乗ってから、もう三時間が経過していた。まったく私も物好きだよなって思う。
     でも「最初のポケモンはまだか」の喧騒から離れられたのは結構ありがたかった。なのでおじさんにはどっちかっと言えば感謝してる。
     ただし、おじさんの語ったムスビ海岸とやらの言われ自体は結構眉唾モノだよなって私は思った。
     おじさんいわくムスビ海岸の言われはこうだ。


     昔むかし、小さな国を統べる領主の息子がいた。彼は十歳になった時、自分のポケモンを選ぶことになった。すると城下のポケモン使い達が自慢のポケモンをこぞって献上しようとしたらしい。領主の最初のポケモンに選ばれることは大変な栄誉だったからだ。自分の家から領主のポケモンが選ばれたとあれば箔がつく。自分の育てたポケモンを高く買ってもらえるし、商売繁盛ってわけだ。
     しかし困ってしまったのは当の本人だ。あまりに数が多すぎた。困った領主の息子は神様にお伺いをたてることにした。
     自分に相応しいのはどのポケモンか。そのお伺いを立てたのがムスビ海岸にある小さな社であるらしい。

    「きっとその息子さんとやらも、私と同じだったんだわ」
     海の喧騒を聞きながら私は呟いた。あんまりにも周りがうるさくてうるさくて、だから離れたかったに違いない。きっと庶民だろうと、領主の息子だろうと世間のわずらわしさからは逃れられないのだ。
     社は砂浜を一キロほど歩いたその先にあるとのことだった。ザクッ、ザクッと砂を踏むと足にその感触が伝わってくる。私は寄せては返す波をよけながら、砂浜に足跡をつけながら歩いてゆく。
     静かな海だ。シーズンオフだからか、駅を離れてしまったら人の姿は見られなかった。
     たぷんと波が寄せて、私の足跡を攫ってゆく。

     そうして、領主の息子はムスビ様にお伺いを立てた。
     どうか私に相応しいポケモンを教えてください、と。
     このお話のキモは、彼が参拝を終えて帰るその時のことだ。

     砂浜を一キロほど歩くとそこそこ大きい松の木が生える小高い丘がある。松の下にその社はあった。
     祀られているのはムスビ様。おじさんいわくラルトスの姿をしているとかしていないとか。話には聞いていたけれど、ラルトスなら寝泊りできそうな程度の、本当に小さな社だった。
     誰かが定期的に手入れしているのだろうか、こぎれいにしてある。私はおじさんに持たせてもらったオレンの実を置いて、五円玉を賽銭箱に入れた。
     ぱんぱん、と手を叩く。
    「ムスビ様、ムスビ様、どうか私に相応しい相棒を教えてください」
     手と手を合わせ、しばしの沈黙。一礼して私は社を後にした。

     参拝を終えて領主の息子は社を後にした。神託はいつになるだろうと思いながら。そうしてそれは思いがけない形で現れたという。
     不意に彼は名を呼ばれた気がして、元の道を振り返った。そうして自分の歩いてきた砂浜を見て驚いた。
     そこには自分以外の何者かの足跡が、自分の足跡のとなりに歩くようについていたのだ。それは間違いなくポケモンの足跡だった。
     里に帰った領主の息子はさっそくその足跡の主を探した。
     そうして見つけた。それは粗末な格好の若者が差し出したポケモンの足跡だった。
     領主の息子はそのポケモンを受けとり、その若者を傍付に取り立てたのだそうだ。
     ポケモンは有事にあたっては領主を守り、若者は領主を支える重鎮となった。領主の息子は名君と呼ばれるようになり、国は大いに栄えたという。

     五百メートルほど歩いただろうか。私は後ろを振り返った。そして、自分の足跡の、そのとなりを確かめた。

     何も無かった。


    「ほうら、みなさいよ。やっぱり私に相棒なんていなかったんだわ」
     と、私は言った。
     別に信じちゃいなかった。期待なんてしていなかった。
     だって、普通に考えて足跡なんてつくわけないもの……。
     だから、眉唾だって最初から疑ってかかっていたじゃないの。
     バカね、私ったら。何を期待してたっていうのよ。最初から期待なんてしていなかった。期待なんか、していなかったんだから……。
     私のとなりに足跡はつかなかった。ポケモンの足跡はつかなかった。
     すぐに波がやってきて、私の足跡を攫った。そうして海岸は元通りになった。
     おじさんもおじさんだわ、と私は思う。
     そうよ、当たり前じゃない。最初から決まっていたことじゃないの。結果なんか見えていたじゃないの。私にこんなことさせてどうするつもりだったのかしら……。
    「帰ろう」
     私は呟いた。
     寒くなりそうだったから駅への道を急いだ。

     帰ろう。帰ってちゃんと私の意思を伝えよう。私はポケモントレーナーにはならないって。
     私は旅に出ることはない。進級して、ママやパパとは違う道を歩むんだって。

     そんな風に私が決心を固めたその時だった。
     不意に二つの影が私の横を通り過ぎた。





     参拝から帰ってきた私を見て、ママとパパ、そしておじさんは目を丸くした。
     私が両手に奇妙なものを抱えていたからだ。
    「ミミちゃん、それどうしたの?」
     ママが聞いた。
    「ムスビ海岸で、その、ちょっと……」
     私はもじもじと答えた。


     帰ろうとしていた時、不意に二つの影が私の横を通り過ぎた。二匹のポケモンだった。
     一匹は一つ目の銀色に光るポケモンで、磁石の腕をキリキリと回して電撃を放っていた。そうしてその磁石腕に追いかけられるポケモンがもう一匹。紫色の小さなポケモンだった。
     二匹は私の横を瞬く間に通り過ぎると、しばらくしてまた戻ってきた。
     一方的な展開だった。
     銀色のポケモンが電撃を放って、紫のポケモンが懸命にそれを避けている。反撃はしない。ひたすら逃げ回っているだけだ。私はポケモン学科で学んだ知識を総動員する。思うに相性が悪い。紫のポケモンが打って出たところで、銀のポケモンに大したダメージは与えられない。それが私の出した結論だった。
     もうとっくに勝負などついているだろうに銀色の一つ目はしつこかった。
     バリバリッ、と電撃が放たれる。紫のポケモンがよけきれず、痺れた。銀色がとどめとばかりに両腕を構える。
     いつのまにか私は、海岸の砂を一握り、掴んでいた。
    「いい加減にしなさい!」
     私は砂の塊を磁石ポケモン『コイル』に向かって投げた。そこまで正確に狙っていたわけではないのだけど、いい感じに塩水を吸っていた海岸の砂は、べちゃ、とコイルの一つ目に直撃した。コイルはしばらく磁石腕をぶんぶんと振り回した後、あわててどこかに退散していった。
    「大丈夫?」
     紫のポケモンに私は声をかける。
     すると球体にでこぼこをつけたようなそのポケモンは振り返り、私を見たのだった。



    「ママ、私、最初のポケモン、この子にする! この子とだったらうまくいく気がするの」
     そんな経緯を話し終わった頃の私には、1ヶ月前に失った勢いが戻ってきていた。
     両腕にむんずと掴んだポケモンを「どや!」と前に突き出して私は言ったのだった。
    「え、ええ。ミミちゃんがいいならママは何も言わないけど……」
     少し困惑した様子でママは言った。パパも最近の子の好みはわからないなぁって顔でこっちを見てる。でもおじさんはニコニコしていた。
    「やったあ! これからよろしくね」
     そう言って私は紫色のポケモンを手から放した。ポケモンはぷわーっと浮かび上がって回転した。腹に描かれたドクロマークがくるくると回った。
     ドガース、毒ガスポケモン。
     そんなわけで私のはじめてのポケモンは炎でも草でもなく水でもなかった。


    「そういえばミミちゃん、海岸の足跡どうだった?」
     私がドガースと戯れているとおじさんが聞いてきた。
    「足跡? あれ、ぜんぜんだめだったよ。私の足跡しかついてなかった」
     私は答える。するとおじさんが笑って言った。
    「そうかぁ、じゃあ神託は当たったんだね」
    「え?」
    「だってさ、ドガースって宙に浮いてるから足跡なんてつかないじゃない」
    「…………、……………………」
     ドガースを抱きかかえた私はなんだかわるぎつねポケモンにつままれた気分になった。
     ……いやいやたぶん偶然でしょ? そんなことを思いながら。

     でもいいや。
     今はそういうことにしておいてあげる。





     ねえ、知ってる?
     海岸の向こうにある小さな神社にお参りするとね、神様があなたの相棒を教えてくれるの。
     砂浜を歩いていると、相棒の足跡があなたの足跡のとなりにつくんですって。
     でも、もしも足跡がつかなくてもがっかりしないでね。
     あなたにぴったりの相棒はきっとどこかであなたを待っているって、私はそう思うの。



     寄せては返す波。
     耳に響くその音色。
     私は歩く。伝承の地の海岸線を。
     そこにつく足跡は一人分だけ。

     けれど今、私のとなりにはこの子がいる。


      [No.1123] 【再掲】Poooooooon!! 投稿者:久方小風夜   投稿日:2011/05/02(Mon) 23:00:34     417clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:てこさん超リスペクツ】 【たのしい】 【なかまが】 【ぽぽぽぽ〜ん!】 【……自分、何やってるんだろう
    【再掲】Poooooooon!!  (画像サイズ: 2340×800 120kB)

    ぜんぶでけた。
    途中で冷静にならないように必死だった。
    (自分、何やってんだろ……」とか思い始めそうだったから)

    ポーズは最後の全員集合したところのものではないのであしからず。
    全体的にひどいけどとりあえずウツドンの格好が謎だ。
    そしてやっぱりウパーがキモい。マッギョもきもい。
    背景は力尽きました。

    描いてる間に何回テレビで「ぽぽぽぽ〜ん」って言ってただろう。
    60秒ver.には遭遇しませんでしたが。

    ぴくしぶ投稿したら2011年3月20日付のイラストデイリーランキング488位に入りました。笑。


      [No.1122] 【再投稿】てく 〜いやしん坊ラルトスの話〜 投稿者:イケズキ   投稿日:2011/05/02(Mon) 22:48:43     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     僕のウチは、ラルトスを一匹飼っている。
     名前は「てく」。てくてく歩くから、てく。「てく」が大きな頭を揺らして歩く姿は、まるで本当の人間の子供みたいだった。
     僕のウチじゃ、みんな「てく」が大好き。お兄ちゃんも、お母さんも、お父さんも、もちろん僕だって、「てく」のことを家族同然に思っている。
     でも、僕には一つだけ心配なことがある。
     「てく」はとてもいやしん坊なんだ。

    「あ〜、おなかへったな〜」
     前に、僕が一人で留守番をしていた時のこと。
     お父さんは仕事に出ていて、お母さんとお兄ちゃんは、一緒にスーパーに買い物へ行っていたんだ。
     ちょっとお腹の空いていた僕は、今ならつまみ食いができる、なんて思って、冷蔵庫を覗いていた。そしたら、
     ――てくてくてく。
     冷蔵庫の扉の下から、「てく」の顔が見えた。
     まただ。
     「てく」はいつも僕が冷蔵庫に近づくとついてくるんだ。冷蔵庫なんかなーんにも関係無い時だって、横を通るだけで、短い脚を引きずるみたいにして歩いてくる。
     僕は気にも留めなかった。だっていつものことだから。「てく」はお腹が空いていたって、いなくたって関係ない。何か食べられると思ったら、とりあえず歩いてくる。てくてく。
     僕は箱に入ったシュークリームを一つほおばると扉を閉めた。もぐもぐ。
     シュークリームならいくつかあるしきっとバレないだろう。
     「てく」がじーっと僕を見ているのは分かっていたけど、大丈夫。だってポケモンは喋らないから。

     また別の時、一人で留守番していた。
     あの時僕はとにかくヒマだった。なんにもすることがないし、テレビもつまらない。
    「あ、そういや……」
     そういえばお兄ちゃんがこの間、友達から「ポケモン図鑑」を借りてきていたんだ。
     そうそう、お兄ちゃんはポケモンの事となるとすこしおかしくなる。
     二時間も三時間もえんえん話が止まらなくなるし、ポケモンにまつわる物ならなんだって欲しがるんだ。
     だからお兄ちゃんの机には、カラのモンスターボールやら使いさしのきずぐすりやらがいっぱいある。そりゃもう見たらみんな仰天しちゃうくらい、山ほどあるんだ。それくらいポケモンが好きならポケモントレーナーになればいいのにって思うんだけど、お兄ちゃんは、あぁいうのは見ているだけの方が楽しいんだ、なんて言って旅に出なかった。
     お兄ちゃんは好きだけど、そういうところ僕は変だと思う。
     でも、もちろんなんだってもらえるわけじゃないから、時々トレーナーの友達から借りてくることもある。それがこの「ポケモン図鑑」だ。ポケモントレーナーにとってとっても大事な物だけど、お兄ちゃんはここ二週間くらい毎日毎日、久しぶりに帰ってきた友達の所に通いつめて、やっと借りてきたんだ。わざわざ借りてこなくても友達の所で見せてもらえばいいのに、どうしても手元に置いてみたかったみたい。やっぱりお兄ちゃんはちょっと変だ。
     お兄ちゃんといっしょで僕もポケモンが好きだ。「てく」を飼おうと初めに言ったのも僕だったし、僕はポケモントレーナーになる。だから前から一度「ポケモン図鑑」を触ってみたかったんだ。

     山の一角、きれいにならされた場所にポケモン図鑑がまるでそこに安置してあるみたいに置いてあった。そこがお兄ちゃんの聖域みたい。わくわく。
     お兄ちゃんは触っちゃいけないなんて一言も言ってなかった。だいたい誰にでも持っていけるようなところに置くお兄ちゃんがいけないんだ。
     ぶつぶつ、そんな事を心で呟いて、僕は初めて図鑑を手に取った。ひやひや。
     キレイな赤。それ程重くなく、でも、ズッシリと僕の手に落ち着く。フタを開いてみた。中には大きな液晶画面とボタンがいくつか。ぼつぼつ。
     ――てくてくてく。
     「てく」が来た。一匹でいるのがさみしかったのか、僕がまた一人で何か食べていると思ったのか、部屋まで歩いてきた。てくてく。
     ――使ってみたい。
     やっぱり、と言ってしまったら、その通りなんだけど、僕はどうしてもポケモン図鑑を使ってみたくなってしまった。
     ピコーン、という電子音がして、ラルトスの解説が始まった。
    「ラルトス、きもちポケモン。あたまのつのでひとのきもちをかんじとる。トレーナーがあかる――」
    「ただいまー!」お兄ちゃんの声。
     あ、マズイ。
     慌てて図鑑を上着の下に隠すと、不吉な音。ピキッ、て鋭い音。
    「おぅ、何やってんだ? あ、『てく』も。 こんなところで」
     隠すのとほとんど一緒に、お兄ちゃんが部屋に入ってきた。
    「い、いや、なんでもないよ。また何か新しい道具でもないかな〜って思って、ちょっと見ていたんだ」慌てて声が裏返る。
     「てく」も僕の焦った気持ちを感じてか、妙に落ち着きがない。そわそわ。
    「ふーん、ならいいけど。でも、ポケモン図鑑は触っちゃだめだぞ、壊れたりなんかしたら大変だからな」
    「そんなこと言われなくても分かってるよ!」ついつい怒鳴ってしまった。
     なんで今さらそんなこと言うんだよ、お兄ちゃん。
    「何怒ってるんだよ? まぁ、図鑑以外なら後でちゃんと返してくれればいいから、なんでもいじっていいぞ」そう言って部屋を出て行った。

     危なかったぁ。
     「てく」と僕がいっしょに、ため息。ふぅー。
     まさか急に帰ってくるなんて思わなかったんだもの。
     お兄ちゃんがまた急に戻ってこないか一度確かめて、上着から図鑑を取り出した。
     べろーん。
     あっちゃー、どうしよう。
     図鑑自体には何ともないけど、蓋の蝶番にヒビが入っている。そのせいで、フタがちゃんと閉まらない。しまらない、フタ。べろーんって。
     このことがお兄ちゃんに知れたら、すっごく怒るだろうなぁ。
     僕は困って眉間にしわを寄せた。やっぱり「てく」もいっしょに。あぁ、どうしよう。
     「あ、そうだ」
     いい事……、じゃなくて、わるい事思いついた。わるい事だけど、これで僕は大丈夫。
     「てく」を見た。僕はニヤニヤ、なのに「てく」はビクビク。この時ばかりは僕と「てく」、いっしょじゃなかった。
     そうだ、ぜーんぶ「てく」のせいにしちゃおう。
     今までだって「てく」は不安定な念力でものを壊すことがよくあった。だから、これもそういうことにしちゃおう。
     それに「てく」のせいとなれば、お兄ちゃんだって諦めるだろう。
     そんな打算が僕の中にあった。

     「あぁー!!」
     僕はリビングで、テレビを見つつ、ドキドキしながらその時を待っていた。
     ――ドタドタドタ!
     「てく」のとはぜんぜん違う、重い、けど早い足音。
     「ポケモン図鑑、どうしたんだよ!」
     うそだった。僕、ホントはテレビなんて見ていない。僕の目の焦点は、テレビ画面のちょっと手前で止まっていた。
     「その……あれはさっき、『てく』が……僕が気づいた時にはもう……、……ごめんなさい……」
     喉はカラカラ。心臓バクバク。体ブルブル。

     ――ゴツン!!
     鈍くて、冷たい、痛い音。お兄ちゃんが頭をたたいた。
     「てく」の頭を。

     「あぁもう、何してくれるんだ、『てく』! どうしよう、あぁ……どうしよう」
     お兄ちゃんはすっかり慌てている。

     実はお兄ちゃんの事なんか、僕はどうでもよかった。
     僕には「てく」しか見えなかった。
     「てく」は今、頭を抱えて痛がっている。きっと自分でもどうして頭が痛いのか分かっていないに違いない。突然痛くなった頭を、すりすり、すりすり。
     でも、「てく」は泣かない。もともと「てく」はめったなことじゃ泣かない。ポケモンだから、泣き方を知らないのかもしれない。
     とっても、とーっても、痛かったろうに、それでも「てく」は泣かないんだ。

     ――うわーん!
     泣いたのは僕の方だった。
     こんなはずじゃなかったのに……。

     僕のかわりにたたかれた「てく」が頭を抱える。すりすり、すりすり。
     泣けない「てく」のかわりに僕が泣く。えーん、えーん。
     僕と「てく」の気持ちが、またいっしょになる。

    「お、おい、どうしたんだよ急に……? なんで泣いているんだよ?」わけが分からず困ったお兄ちゃん。
     言えない、言えない。だって、僕は泣いているから。「てく」はポケモンだから。
     なんだかいっそうみじめになってきて、もっともっと泣いた。心なしか「てく」もさらに強く頭をさすっているような気がする。

     えーん、えーん。すりすり、すりすり。
     僕らのきもち、ぼろぼろ、ぼろぼろ。


     「あ〜、おなかへったな〜」
     いろいろ思い出していたら、おなか減ってきた。
     今日も僕はひとり。だから今なら、つまみ食いができる。
     ――てくてくてく。
     分かっている。きっと来るだろうって思っていた。だって、いつもの事だから。
     冷蔵庫の中には、おいしそうなもの何もなかった。シュークリームはこの間全部食べちゃったし、アイスは残り一本しかない。一本しかないのを食べたら絶対にバレてしまう。
     ガタッ。
     冷蔵庫の扉が揺れた。「てく」が念力で揺らしているのだ。けど、そんなのは無視無視。気にしないもんね。
     ――よーぐると!
     ドキッ。
     扉のしたを覗いた瞬間、「てく」が一瞬本当の人間に見えた。人間の子供が、「ヨーグルト」を欲しがっている。
     そんなわけないのに、僕は少し怖くなってしまった。
     いつか「てく」が本当に人間の言葉を話したら……。あの時のポケモン図鑑のことも、今までのつまみ食いもぜんぶしゃべっちゃうかもしれない。
     ありえないのにね。
     僕は笑った。
     例え「てく」がしゃべるようになっても、きっとそんなことしないって、分かっているのに。何考えているんだろう、僕。
     ――あぁ、僕は「てく」にわるいことしちゃったんだなぁ。
     「てく」だってウチの家族なのに、僕はひどいことしてしまったんだ。だから、僕は今心が苦しくなっている。ちくちく。
     僕はヨーグルトを手に取った。500mlのおおきなやつ。
     「てく」がうれしさで飛び跳ねる。にこにこ。ぴょんぴょん。
     僕はヨーグルト好きじゃないんだけどね……。
     「これあげるから、今までのこと黙っておいてくれよ」
     ぱくぱく、ごっくん。ぱくぱく、ごっくん。
     「てく」は何も聞いていないみたいだった。


      [No.1120] 【再掲】弾けたホウセンカ 投稿者:586   《URL》   投稿日:2011/05/02(Mon) 22:42:57     135clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    漆黒の夜闇の下で、彼女は輝いていた。

    それはあたかも、光が人の姿を借りて歩いているかのようだった。

    恒星を思わせる輝きを、彼女は放っていた。






    部活終わりの帰り道。途中にある公園の前で、あたしは足を止めていた。右の肩に提げたバッグのベルトが引っかかるのも忘れて、あたしは一点に視線を送り続けていた。

     「……そこのジャージちゃん。私に見惚れちゃった、かな?」

    呼びかけられるまで、そこに立ち止まっていたことにすら気付かなかった。馬鹿正直に真正面からぼーっと見つめていたから、立っていることはあっさりバレた。一瞬体が動いたけど、バレた後に動くことほど間抜けなことも無い。諦めて素直に前へ出ることにした。

     「目の保養なら向かないよ。私は、刺激が強すぎるから」
     「そういうのじゃ……っていうか、あたし女だし」
     「ふ、ふ、ふ。目と口が矛盾してるよ。目は口ほどにモノを言う、ってね」

    公園の電灯。その下に、不思議な女の人が立っていた。あたしより二つか三つくらい年上で――ちなみに、あたしは高校二年生だ――、真っ白なブラウスに、対照的な真紅のロングスカート。夜空に溶けるような黒髪が、背中にまで届いているのが分かる。

    それだけでも結構不思議だった。けれども、女の人を不思議たらしめていたのは――全身が、ぼんやりと光っていたことだった。

     「ジャージちゃんが見惚れちゃっても、仕方ないかな。珍しいから、私」
     「見惚れてなんかないです。っていうか、あたしジャージちゃんじゃないし」

    ジャージちゃん。そう呼ばれるのも分かる。あたしは上下ともジャージで、髪は後ろで束ねている。方や女の人はシンプルだけど清楚な装いで、見た目はお嬢様のようにも見えなくも無い。体育会系丸出しのあたしとは正反対だ。

     「じゃあ、名前を教えてくれる? 名前を教えてくれたら、もう少し私を見ててもいいよ。あ、でも、触っちゃダメだけどね」
     「いりません。っていうか、触る気なんか無いし。あたし帰ります」

    踵を返して、その場からさっさと立ち去ろうとする。

     「帰っちゃうの?」

    また足が止まる。女の人の「帰っちゃうの?」という言葉に、あたしは身動きが取れなくなった。疑問に残念さを混ぜ込んだ、やや気弱な声色。足を止めるには十分な威力だ。

    正直な話、このまま帰るのはちょっと気が引けた。女の人のことが気にならないと言えば、嘘になる。もうしばらく付き合ってもいいかな。あたしはそう考えた。

     「……早乙女睦美。日和田市立新開高校の二年生」
     「わお、自己紹介までつけてくれたんだね、ジャージちゃん。それなら、私もサービスしないといけないかな」
     「別にいいです。っていうか、『ジャージちゃん』のままだと名前を聞いた意味ないし」
     「ジャージちゃんは素直じゃないね。でも、それがきっとジャージちゃんの魅力なんだね、きっと」

    女の人と再び目を合わせた。ふんわりした、少しだけ悪戯っぽい瞳。全身がぼんやり光って見えるのは……気のせいじゃない。本当に光っている。少なくとも、あたしの目にはそう見える。自慢じゃないけど視力は両目とも一.五だ。だから合ってる、たぶん。

    とりあえず、会話してみよう。向こうは話をしたいみたいだから。

     「こんなところで、何やってるんですか」
     「うーん。電灯の下に立ってる、って言ったら、怒る?」
     「怒りませんけど、はぁ? って言います。っていうか、今言うし。はぁ?」
     「がーん。ショックだよ。私、衝撃に弱いのに。ジャージちゃんは容赦ないね」
     「容赦する義理が無いです。っていうか、衝撃に弱いとか知らないし」

    本当にマイペースな人だ。そもそも、あたしを「ジャージちゃん」と呼ぶ時点でマイペース過ぎる。名前を聞いておいてこれなんだから、どうしようもない。日和田には前から変わった人が多いって聞いてたし、あたしの周りにも実際変人が多いけど、この人はその中でもずば抜けている。

     「帰り道で、不思議で神秘的で浮世離れした人に会う。壮大な物語の始まりって感じ、しない?」
     「しますけど今の状況は違います。っていうか、浮世離れ以外合ってないし」
     「ひどいよ、ジャージちゃん。私のヒットポイント、そろそろゼロになっちゃうよ?」

    あたしは体力減少中らしい女の人の目の前まで近づいて、改めてその姿を瞳に映し出した。何回見てみても、やっぱり輝いている。イメージとかそういうのじゃなくて、ぼんやり体が光っている。わからん。どういう理屈なんだろ?

    良くは分からない。けど……今は、これくらい意味の分からないヘンなモノに触れていたほうが、気が楽だ。

     「名前、なんていうんですか」
     「私の名前? それとも、この電灯さんの名前?」
     「どう考えても前者です。っていうか、電灯に名前とか付けないし」
     「私は、カトリーヌちゃんって呼んでるけどね」

    女の子なのか。

     「呼びません。名前、教えてください」
     「ふ、ふ、ふ。だんだん私のペースがつかめてきたみたいだね、ジャージちゃん。私の名前は――」






     「――ジャージちゃんの好きに決めてくれちゃっていいよ」






     「……はぁ?」
     「物事を自分で選択できることって、素晴らしいことじゃないかな?」
     「普通はそうですけど今は違います。っていうか、名前くらい普通に名乗れるはずだし」

    なんなんだ、この人は。名前も普通に名乗れないんかいっ。ここまでマイペースだと、普段付き合っている人はさぞかし大変なことだろう。あたしはまだ会って十分ほどしか経っていないのに、既にペースに飲み込まれつつある。

    気を取り直して。名前を自由につけていいって言うなら、とびっきりヘンな名前を付けてやる。

     「素敵な名前、つけてほしいな」
     「わかりました。じゃあ――」
     「『紅白まんじゅうさん』って呼びます」

    どや! このセンスゼロの名前! 上が白いブラウスで下が紅いスカートだから紅白まんじゅう。この圧倒的なセンスの無さ! 紅白まんじゅうさんを大いに戸惑わせること間違いなし!

     「わお、丸くて甘くておいしそうな名前だね。私にぴったりだよ」

    こうはくまんじゅうは へいきなかおを している!

    ざんねん! わたしの こうげきは これで おわってしまった!

     「……嫌じゃないんですか」
     「ぜーんぜん。紅白まんじゅうちゃん、いい名前だね。私、宝物にしちゃうよ」
     「しないでください。っていうか、冗談のつもりだったし」
     「ふ、ふ、ふ。冗談を言えるようになるなんて、ジャージちゃんも慣れてきたみたいだね」

    しょうがないから、ここからは女の人を宣言どおり「紅白まんじゅうさん」と呼ぶことにする。ここまでつかみどころのない人、初めてだ。

    なんだかんだで名前の交換も終わったところで、あたしは前々から聞こうとしていた一番の疑問点を、迷わずぶつけた。

     「あの、紅白まんじゅうさん」
     「何かな、ジャージちゃん」

    今更ながら、悪い意味ですごい会話だ。

     「紅白まんじゅうさんって……どうして、光ってるんですか」

    暗闇の中で自己主張を続ける、絶えることの無い紅白まんじゅうさんの輝き。服が光っているわけでも、光に照らされているわけでもない。紅白まんじゅうさん自体が、ぼんやりと光っている。その理由が知りたかった。

    だって、普通じゃそんなことはあり得ないから。

     「それ、体が光ってますよね」
     「うん、ぼやーっとね。意識しなくても、外に出てきちゃうんだよ」
     「それって、どう考えても普通じゃない気がします」
     「だって、私は普通じゃないもん。生まれつき、こういう体質だからね」

    紅白まんじゅうさんはあたしを見つめたまま、少しだけ儚げな表情を見せた。

     「生まれつきだよ。最初から、ずっとこんな風だもん」
     「信じられません」
     「ふ、ふ、ふ。そうだよね。私が、ヘンだからね」

    長い黒髪を一撫でして。

     「ねえ、ジャージちゃん」






     「私って、おかしいかな? 生きてるの、間違ってるかな?」






     「えっ?」
     「どうかな、ジャージちゃん。ジャージちゃんの、素直な意見が聞きたいな」

    ……やばい。いきなりハードな質問だ。

     (おかしいか、生きているのが間違っているか……)

    紅白まんじゅうさんは超マイペースで、確かにちょっと不思議なところはある。ヘンか普通か二択で選べと言われたら、あたしは間違いなく脊髄反射でヘンを選ぶ。それくらいの不思議さはある。

    けど、おかしいというほどでもない。ましてや生きているのが間違ってるなんて、簡単に言っていいわけがない。

     「ちょっと変だと思いますけど……別に、生きててもいいと思います」
     「本当に? 本当にそう思う?」
     「あたし、嘘は嫌いです。っていうか、今は嘘とか言うシチュエーションじゃないし」
     「ありがとう、ジャージちゃん。そういう風に言ってもらえたの、ジャージちゃんが初めてだよ」

    悪戯っぽさの抜けた、純粋な笑顔――今のあたしには、到底できそうにない――を向けられた。こんなにうれしそうな表情ができるのか。

    紅白まんじゅうさんの笑顔の前に、あたしはあっさり毒気を抜かれてしまった。

     「からかったみたいでごめんね。ジャージちゃんと話すの、楽しかったから」
     「あたしは……あ、あんまり楽しくないです。……っていうか、た、楽しくなんか無いし」
     「どーんなーにじょーうずにかっくっしってもー、かわいいほーんねがみーえてるよー♪」
     「本音じゃないですっ。っていうか、本音じゃないし」
     「ふ、ふ、ふ。ジャージちゃんが男の子だったら、私、一緒に駆け落ちしちゃいそうだよ。ジャージちゃんは真っ直ぐだね」

    調子のよさというか、マイペースっぷりはちっとも変わらない。それでも――初めに比べると、紅白まんじゅうさんが何を考えているかは分かってきた、ような気がする。

    公園にたたずむ風変わりな女の人。何の気なしに見つめていたら声を掛けられて、知らない間にたくさんの言葉を交わしていた。暗闇を照らす電灯の下、白いブラウスに真紅のスカートの紅白まんじゅうさんと、上下ジャージにバッグを提げているあたし。そんな二人が、珍妙な会話を繰り広げている。

    可笑しな光景。自分で笑いたくなった。

     「とにかく、紅白まんじゅうさんが光ってようが火を噴いてようが何してようが、別に生きてていいと思います」
     「さすがに、炎は吐けないよ。そんな機能は付いてないからね。ちょっと欲しかったけど」

    欲しいんかい。

     「……だって、あたしみたいな才能の無い人間が生きてるんだから」
     「ジャージちゃん? どうしたの?」
     「……何でもないです。ただ、自分が才能無いってのが嫌なだけです」
     「気になっちゃうなー。気になることがあるなら、思い切って訊いちゃおう!」
     「別に、何も無いって……」

    ……呟くんじゃなかった。少し楽しい気分になりかけてたのに、また、ここに来るまでの鬱屈した気分に逆戻りしてしまう。紅白まんじゅうさんには、適当言ってごまかさなきゃ――

     「ジャージちゃんって、花は好き?」
     「全然関係ないし!!」

    まったく脈絡のない質問が飛んできた。マイペースを通り越して……ダメだ、まともな表現が思いつかない。こりゃマジでどうしようもないと思った。良くも悪くも、すべては紅白まんじゅうさん次第だ。

     「ねえ、ジャージちゃん。花は好き? 好きなら、その中でも特に好きな花はある?」
     「花……そんなに無茶苦茶好きって訳じゃないですけど、桜の花が好きです」
     「桜の花、か。いいね。私も好きだよ」

    日和田は春になると、街路樹として植えられた桜がいっせいに花を開く。それを眺めながら学校へ行くのが、毎年の恒例だった。あのそわそわした感じは、嫌いじゃない。

     「桜の花咲く季節は、出会いと別れの交わる季節。だから、桜の花は出会いと別れの花とも言える。そうだよね?」
     「そうとも……言えると思います」
     「風流で素敵だね。今の私の気分そのもの。さくら・ひとひら・ひらひらと。情景が目に浮かぶよ」

    あたしの答えに満足したのか、紅白まんじゅうさんがしきりに頷く。それから不意にすっ、とスカートのポケットに手を差し入れた。何かを取り出した様子が見えた。

     「うん。私は、確かに桜の花も好きだけど……でも、一番は、これかな」
     「手に持っているの、なんですか」

    質問を受けて、紅白まんじゅうさんが瞳を輝かせる。

     「『ホウセンカ』だよ。私、ホウセンカが好きだから」

    手にしていたのは、紫色と桃色の中間色のような配色の、小さなホウセンカだった。白い手袋をはめた親指と人差し指の腹で茎を掴んで、愛しげに眺め回している。

     「好き――というよりも、私にそっくりだからかな」
     「あんまり似てる要素は無いと思います。ホウセンカは光ったりしません。っていうか、とりあえず色は全然違うし」
     「ふ、ふ、ふ。ジャージちゃんも言うようになったね。立派立派。私ももっと、ホウセンカみたいな服が着られたら良かったんだけどね」

    よく分からない言い回しは続く。どう見ても、その服装は趣味だろう。別におかしいって訳でもないけど、ホウセンカの真似がしたいなら手段はいくらでもあると思った。

     「ホウセンカは私。私はホウセンカ。ホウセンカの花言葉は……」
     「『心を開く』だったと思います」
     「――そう。そんな花言葉もあったね」

    手袋をはめた手で電灯にホウセンカをかざしながら、紅白まんじゅうさんが呟いた。

     「服装のことですけど、その手袋はなんですか」
     「これ? ファッションだよ。好きじゃないけどね」

    いやいやちょっと待て。好きじゃないものを身に着けるのは、ファッションじゃないと思うぞ。

     「全然意味分かんないです。服と同じで、好きじゃないなら着なきゃいいじゃないですか」
     「ジャージちゃんの制服みたいなものだよ。ジャージちゃんも、ずっとジャージを着てるわけじゃないよね?」
     「……それは、そうですけど」
     「制服。そう、『制服』だよ。制服は――『制度で決められた服装』であると同時に、『制限された服装』でもある。この服は、私の制服なんだよ」
     「……………………」
     「これを着けてないと、私、何も触れないんだ」

    制服? なんだろう、どこかのお嬢様系の学校なら、紅白まんじゅうさんのような服が制服でもおかしくは無い気がする。でも、制服にしてはシンプルすぎるぞ。なんかこう、もうちょっと装飾とかあるんじゃないか。

    紅白まんじゅうさんの「制服」が「制度で決められた服装」と「制限された服装」のダブルミーニングという言葉は、あたしもちょっと共感する。制服が好きって人もいるけど、あたしはそこまで好きじゃないし。

     「ところで――ジャージちゃん」
     「なんですか」
     「ジャージちゃんって、何部?」

    ……少し言葉が詰まる。言うべきか、言わないべきか。悩む。

     (……いいや、言っちゃえ)

    飄々とした紅白まんじゅうさんになら、言ってもいいような気がした。

     「……陸上部です。短距離を走ってます」
     「わお、奇遇だね。私も走るのは大得意だよ」

    その恰好で言われても、なんとなく説得力がない。っていうか、ホントかどうかも分からない。けど……今までの流れから言って、紅白まんじゅうさんが嘘をついているとは思えない。言動は飄々としてるけど、嘘は言わない。それが紅白まんじゅうさんだ。

     「私ね、生まれつき走るのが速いんだよ。誰にも負けないくらいね」
     「……それって、才能ですか」
     「うん。才能、とも言えるかもね。生まれつき、最初からあったものだからね」

    紅白まんじゅうさんの言葉に、あたしはうなだれる。そうか、紅白まんじゅうさんにも走る才能があったのか。なんだか、急にむなしくなってきた。この感情をどう処理したらいいのか、分からない。

     「どれくらい速いかは知らないですけど……そうだとしたら、羨ましいです」
     「羨ましい? 生まれつき速く走れることが?」
     「……そうです。そういうことです」
     「ジャージちゃんは、自分に才能ないと思ってる?」
     「…………思ってます」

    あたしの中で、箍が、外れた。

    言葉が、押し寄せて来る。

     「……あたし、小学生のときから走ってたんです」
     「うん」
     「走るのが好きで、ただ走ってるだけでも楽しくて」
     「うん、うん」
     「それで……もっと速く走りたくて」
     「陸上部に入った。そうだよね? ジャージちゃん」

    そうだ、その通りだ。それ以外に、何も言うことは無い。

     「でも、そこで……」
     「才能のある子がいた?」
     「部長は……あたしよりずっと、走るのが速くて」
     「ジャージちゃんじゃ敵わなかった?」
     「どれだけ努力しても、グラウンドの距離も、精神の距離も縮まらなくて」
     「走っても走っても、どんどん遠くに行っちゃう。そうだよね? ジャージちゃん」

    何をやっても無駄だった。やれることはみんなやった自信がある。それでも、距離を縮められない。埋めがたい距離を埋めようともがけばもがくほど、地の底に飲み込まれていくような感触がした。

    これは才能のせいだ。生まれつきの能力で、あたしは部長に勝てない。あたしには才能が無くて、部長にはあった。どれだけ走っても走っても、走り続けても……あるのはただ、終わりの無い無限の絶望だけ。

    最初から決まっていることをひっくり返すことなんて、無理だ。あたしが高校で二年半走り続けて得た答えは、ただそれだけだった。

     「部長さんは才能型で、ジャージちゃんは努力型だった」
     「……そうです」
     「血のにじむような努力を集めても、才能の一振りに消し飛ばされてしまう」
     「……………………」
     「ジャージちゃんは、ずっとそんな思いをしてきたんだ」

    すべては紅白まんじゅうさんの言葉通りだった。努力では才能に勝てない。生まれ持ったものを、後付でひっくり返すことなんて、できはしない。そういうことだ。

     「……なるほどね。ジャージちゃんが渋柿みたいな顔をしてた理由、私にも分かったよ」
     「渋柿みたいな顔はしてないです。っていうか、どんな顔か分かんないし」
     「分かんないか。じゃ、干し柿みたいな顔、ってのはどうかな?」

    あたしはおばあちゃんか。

     「余計にしないです。っていうか、あたしまだ高校生だし」
     「ふ、ふ、ふ。そうだよね。ジャージちゃんには……まだ、たくさんの可能性があるからね」
     「可能性って……そんな言葉、軽々しく使わないでください!!」

    可能性とか希望とか、今一番聞きたくない言葉だ。吐き気がする。金槌で叩き壊して、焼却炉で焼いて灰にして、ヘドロの浮かぶ汚い海に投げ込んでやりたくなる。可能性なんて言葉は、才能の無い人間を無間地獄に縛り付けておくための、聞こえのいい鎖以外の何者でもない。

    何かを成し遂げられるかどうかは、生まれた瞬間に決まっているんだ。最初から最後まで、何もかもすべて決まっている。決められたレールに沿って進んで、自分で成し遂げたように思い込まされるだけ。

    分かったんだ。あたしは。

     「可能性なんて……あるわけないし!!」

    それが――人生ってものだって。

     「そっか。それが、ジャージちゃんの答えなんだね」
     「……………………」
     「可能性なんてない。そういう答えが出ちゃったんだ。それは、とてもよく分かるよ」
     「……才能さえあったら。才能があれば……あたしは、もっと速く走れたのに」

    みんな言い終えて、どっと疲れが出る。ここに来る三十分くらい前まで、あたしはグラウンドで走っていた。分かっていても、体が止められない。ありもしない可能性にすがって、まだあがき続けている。

    そんなあたしに、紅白まんじゅうさんが呟いた。

     「才能って、なんだろうね」

    紅白まんじゅうさんの言葉に、あたしは無意識のうちにこう答えていた。

     「……生まれつきの、能力だと思います」

    そうじゃなかったら、なんなんだろう。才能は生まれつき備えている能力だから才能。それ以外に、どんな解釈がある? あたしには思いつかない。

     「そう。初めから持ってるものだよね、才能って。それを、好きになれれば一番。幸せになれること間違いなし。でも……」
     「……でも?」
     「好きになれないことだって、あるんじゃないかな」

    ぼーっと光る紅白まんじゅうさんが、電灯から手を離して、その場に立ち止まった。

     「生まれつきの能力、それが才能。努力では絶対には入れない領域に足を踏み入れた、そんな能力」
     「……………………」
     「普通は、才能に気付いたら、その才能を生かす道へ進む。そうだよね?」
     「……そうに決まってます」

    あたしがそう答えると、紅白まんじゅうさんは二回ほど頷いた。

     「でも、それって――才能に、束縛されてるんじゃないかな」
     「えっ?」
     「生まれつき、知らない間に持っていた能力が、自分の道を決めている。そういう形に見えないかな?」
     「でも、才能を生かせる道なら、別に不幸せなことじゃ……」
     「それが、迷惑な才能だったら、ジャージちゃんはどうする?」

    迷惑な……才能? なんだろう、泥棒とかそういうのかな……

     「それは……えっと……」
     「ふ、ふ、ふ。意地悪な質問しちゃったね。ごめんね、ジャージちゃん。私、才能というか、生まれつきの能力のおかげで、ずっと束縛されてたから」
     「……………………」
     「最初から最期まで、ずっと決められたレールの上を進んでいく。それが私の人生。なんだか、電車みたいだね」

    張り詰めた空気が漂う。紅白まんじゅうさんの表情や言葉遣いはまったく変わらなかったけれど、紅白まんじゅうさんを取り巻く空気が、明らかに変わった。

     「才能がなかったら、別の道だって選べたのにね。すごく迷惑で、怖い才能の持ち主。それが私」

    ……怖い才能? どういう意味?

     「なんだかね、空しかったから――ちょっとだけ反抗したんだ。脱線事故を起こしてやるー、ってね」
     「脱線……したら、どうなったんですか」
     「ジャージちゃんにぶつかって、止まっちゃった。ジャージちゃんの怪力で、電車が止まっちゃったんだよ」
     「あたし、怪力じゃないです。っていうか、電車なんか止めたりしてないです」

    例え話と分かっていても、突っ込まずにはいられない。

     「でも、脱線した電車は、いつかレールの上に戻される。脱線しても、そこから外を走っていくなんてできない」
     「紅白まんじゅうさんが、元のいやな毎日に戻るって事ですか」
     「そうとも言えるけど、そうとは言えないかもね。少なくとも、『毎日』には戻らないよ」

    謎掛けのような言葉。意味は分からない。だけど……紅白まんじゅうさんは、明らかに何かを隠している。いや、どちらかというと背負っている。情報が足りなくて、ピースはぜんぜん揃わないけど、何か得体の知れないものを抱えているのは間違いないと思った。

     「紅白まんじゅうさん、普通じゃないです。一体、何者なんですか?」
     「私? ホウセンカにそっくりの、普通のお嬢様だよ」

    紅白まんじゅうさんが、手にしたホウセンカをかざす。

     「それ、絶対嘘です」
     「ふ、ふ、ふ。ジャージちゃんも鋭くなったね。でも、その答えは禁則事項。だって――」






     「悪〜い人たちが、こわ〜い『爆弾』を作ってるなんて――言っちゃダメ、だからね」






    背筋が凍った。何を言われたのか、理解するのに三秒ほど掛かった。

     「爆弾……? 爆弾って、どういうことなんですか?!」
     「自分で目標を定めて、自分でゴールまで歩いて、自分でどかん」
     「それって……それって!!」
     「便利だよね。わざわざ置きに行かなくてもいいし、証拠は残らないし、使う人はすごく安全だし。何から何まで理想的。夢みたいだよね。でもね、もう試作品があったりするんだよ」

    まさか――

     「それが、私」

    ――そんな。

     「よく思いついたよ。人と『バクダンボール』をがっちゃんこしちゃうなんて。かっこよすぎるよ」

    何を言ってるんだ。この人は、一体何を言ってるんだ。

     「世の中、どんどん便利になってくね。乗り物も道具も食べ物も、ついでに――ふ、ふ、ふ」
     「紅白まんじゅうさん……」

    ついでに……何が便利になるんだ。教えて。ついでに、何が便利になるのかを。

    ……いや、もう分かってるんだ。あたしには分かってる。紅白まんじゅうさんが教えてくれたことを全部つなぎ合わせれば……答えは、見えてるんだ。

    言葉が出ない。いろいろな感情が一気に押し寄せて、出口を塞いでしまっている。誰も彼もが一斉に出ようとして、誰も出られなくなっている。そんな状態だった。

     「――ジャージちゃん」

    紅白まんじゅうさんは、一瞬見せたあの儚げな笑みを浮かべて、あたしに告げた。

     「私はホウセンカ。ホウセンカは私」
     「ホウセンカの実は触れられるとパチンと弾けて、形をなくす」
     「ホウセンカのもう一つの花言葉、それは――」






     「『私に触れないで』」






    私に触れないで――

     「触れちゃったら……どかん。君の体に十万ボルト☆」

    ――私に、触れないで。

     「紅白まんじゅうさん……」
     「ふ、ふ、ふ。紅白まんじゅうさん――本当に、私にぴったりの名前だよ。赤と白で、おまんじゅうみたいな形。私、そのものだよ」

    こんなことってあるのか。こんなことがあるのか。こんなこと、あっていいのか。

    紅白まんじゅうさんは……爆弾、だっていうのか。

     「ジャージちゃん、ごめんね。ショックだったかな?」
     「……まだ、信じられないです」
     「そうだよね。嘘みたいなお話。本当に嘘だったら、ジャージちゃんを思いっきり抱きしめて『冗談だよ☆』って言ってあげられるのに」

    ――そうできないことが、紅白まんじゅうさんの言葉が真実であることの証明だった。

     「……………………」

    だめだ、言葉が出ない。紅白まんじゅうさんはあまりにも儚すぎて、あたしの言葉では……包み込めない。

    包み込めば、たちまち弾けてしまいそうだから。

     「ふ、ふ、ふ。そろそろ、お別れの時間かな。呼び止めたりして、ごめんね」
     「紅白まんじゅうさん……」
     「ジャージちゃん、ありがとうね。私、すごく楽しかったよ。こんなにおしゃべりしたの、生まれて初めて」
     「どうしても……行かなきゃいけないんですか」
     「――そうだね。だって……どこへ行っても、私はもう、普通にはなれないから」

    手袋を嵌めた手で、ホウセンカを掲げて見せた。

    ……そうか。紅白まんじゅうさんは、手袋を嵌めないとホウセンカを掴むことさえできない。普通にはなれない。その意味を、あたしは目の前の光景で思い知る。

    紅白まんじゅうさんとの、人一人分くらいの距離が――果てしなく、遠い。

     「じゃ、これでおしまい。ジャージちゃん。今日のこと、私絶対忘れないからね」
     「……紅白まんじゅうさん……」
     「ふ、ふ、ふ。お付き合いしてくれたお礼に、はい。これ、ジャージちゃんへのプレゼント」

    紅白まんじゅうさんは、持っていた小さなホウセンカを、あたしに手渡した。受け取ったホウセンカを胸に抱く。紅白まんじゅうさんを抱きしめられない代わりに、ホウセンカにあたしの思いをこめる。紅白まんじゅうさんも、あたしの気持ちを理解したみたいだった。

     「知ってる? ジャージちゃん。ホウセンカは弾けるときに、種を一緒に飛ばすんだよ」
     「……………………」
     「その種は風に乗って、新しい場所を目指して飛んでいく」
     「……………………」
     「私にも、種があったらよかったのにね。私が弾けても、また、新しい花を咲かせられるから」

    訥々とつぶやきながら、紅白まんじゅうさんは手袋を外した。

     「可能性って言葉、ジャージちゃんは嫌いだったよね。でもね、お世辞じゃなくて、ジャージちゃんには、まだまだいっぱい可能性があるよ」
     「……………………」
     「才能が無いって自覚してるのに、才能のある部長に食らいついていけるくらいの力がある、頑張り屋さん。それだけで、私はジャージちゃんがすごくかっこよく見えるよ」
     「……………………」
     「ジャージちゃんは、これからも自分の意思で道を選んでいける。頑張り屋さんで一生懸命なジャージちゃんなら、きっと、生まれつきの能力に飲み込まれずに、自分の人生にも一生懸命になれる。私はそう信じてるよ」
     「……………………」
     「だからね、私もジャージちゃんを見習うよ。最後の最後で、決められたレールを脱線してやるんだ。決めたよ、私。ジャージちゃんのおかげで、決心が付いた。約束するよ、絶対絶対」

    紅白まんじゅうさんの言葉の一つ一つがあまりにも重くて、説得力がありすぎる。

    自分の人生に一生懸命になれる。当たり前のことが、紅白まんじゅうさんにはとてつもない高嶺にある花だった。自分の人生に一生懸命になる権利さえ、紅白まんじゅうさんには無かったんだ。

    作られた、存在だから。

     「カトリーヌちゃん、ごめんね。明日になったら、公園の人が直してくれるはずだから」

    そう言って、紅白まんじゅうさんは――。






     (ばちちち……ばんっ!!)






    電灯――カトリーヌちゃん――に触れた瞬間、それは無機質な悲鳴を上げて、火花を散らせた。あたしが一歩身を引くと、暗闇の中でぼんやり光る紅白まんじゅうさんの姿が、うっすらと見えていた。

     「バイバイ、睦美ちゃん。次に会えたら、目いっぱい睦美ちゃんを抱きしめられるといいな」

    その直後、風のような速さで――紅白まんじゅうさんは、どこかへと走り去っていった。

     (ああ、本当に速かったんだ。やっぱり、嘘じゃなかった)

    最後の最後まで、紅白まんじゅうさんに、嘘はなかった。

     「……紅白まんじゅうさん……」

    バチバチと火花を散らす壊れた電灯の下で、あたしは受け取ったホウセンカの花を掴んだまま、ただ、うなだれるしかなかった。






    紅白まんじゅうさんは、爆弾だった。全身にエネルギーを溜め込んだ、危険な爆弾だった。

    今思うと、全部辻褄が合っていた。体が光っている理由も、手袋を嵌めていた理由も、走るのが速い理由も、触れただけで電灯がショートした理由も、そして……

    ホウセンカの花を、自分に例えていたことも。






    ――そして。

     「……………………」

    濛々と煙を上げる窓を、あたしは呆然と見つめる。周囲には、無数の人だかりができていた。その一段の形成に、あたしも一翼を担う。

    休日の小金市は、騒然としていた。集まった人々は、一点を指差しながら口々に声を上げる。けれどもその何一つとして、あたしの耳には届かない。耳に入ってはすり抜け、頭に残ることは無い。

     「紅白まんじゅうさん……」

    見上げた先には、大きな風穴の開いたラジオ塔があった。

    土曜日の十四時ごろ、小金市のラジオ塔に不審な人物が入り込み、その十分後に一角で大きな爆発が起きた。爆発の衝撃はすさまじく、ラジオ塔の一角が吹き飛ぶほどだった。

    ……ただ。

     「聞いたか?! あんなにすごい爆発だってのに、誰も怪我とかしなかったらしいぞ!」
     「奇跡だよな……これだけの惨事で、犠牲者が出なかったなんて」
     「ああ、奇跡以外の何もでもないさ」

    ……そういうこと、らしい。

    分かってる。これは、奇跡なんかじゃない。断じて、奇跡なんかじゃないんだ。

     「脱線、したんだね……」

    すべてを束縛されて、ただ一人ラジオ塔を上っていった紅白まんじゅうさん。多分、簡単な仕組みで爆発できるようになってたんだと思う。それを逆手にとって、紅白まんじゅうさんは――

    ――誰もいない倉庫の一角で、人知れず力を解き放った。

     「約束……守ってくれたんだね……」

    本当の目的は、こんな無意味な破壊ではなかったはずだ。もっと多くの人を巻き込んで、もっとたくさんの被害を出す。それが、紅白まんじゅうさんをラジオ塔に送り込んだ人の目的だったはずだ。

    紅白まんじゅうさんは、最期の瞬間に「脱線」して、レールから外れてやった。その結果が、今あたしの目の前で繰り広げられている光景だ。

     (最後の最後で、決められたレールを脱線してやるんだ。決めたよ、私。ジャージちゃんのおかげで、決心が付いた。約束するよ、絶対絶対)

    どんな思いで、紅白まんじゅうさんは最期のときを迎えたんだろう。あたしとの約束を果たして、一体どれくらい、満足できただろう。与えられた「才能」と、決められた「レール」に最後の最後で抗って、ほんの少しでも、浮かばれただろうか。

    今となっては、何も分からない。すべては、粉々に砕け散ってしまったから。

     「……!!」

    目頭が熱い。胸が詰まる。息が苦しい。瞼が濡れる――荒ぶる感情の高すぎるうねりを止める方法なんて、一つも持ち合わせていなかった。

    偶然出会って、一時間足らずの間言葉を交わしただけ。あたしとのそのわずかな時間を、一滴も零さず胸に抱いて、紅白まんじゅうさんは弾け飛んだ。

    ホウセンカの実が、種子を飛ばすかのように――。

     (知ってる? ジャージちゃん。ホウセンカは弾けるときに、種を一緒に飛ばすんだよ)
     (私にも、種があったらよかったのにね。私が弾けても、また、新しい花を咲かせられるから)

    ――種子を、飛ばすかのように。

     「……っ!!」






     「紅白まんじゅうさんっ!!」
     「あたしが……あたしが紅白まんじゅうさんの『種』になるからっ!!」
     「こんなことっ、あたしが終わらせるからっ!!」
     「あたしには可能性があるんだよねっ!!」
     「だから、悪いやつを懲らしめる道に進むことだってできるっ!! そうだよねっ!!」
     「紅白まんじゅうさんの撒いた『種』っ、あたしが咲かせるから!!」






    ホウセンカの花言葉――「私に触れないで」。

    その由来は、触れると弾けてしまう実にあるという。

    ホウセンカの実は弾け飛んで、種を残す。

    ――次の時代に、美しい花を咲かせるために。






     「だから……だからっ……!」

    ……跪いた道路に、小さな水滴が零れ落ちるのが見えた。


      [No.1119] 【再募集】映画監督になってみませんか? 投稿者:巳佑   投稿日:2011/05/02(Mon) 22:42:09     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    【再募集】映画監督になってみませんか? (画像サイズ: 400×568 86kB)

    黄色の燕尾服、蝶ネクタイに、漆黒のサングラスをかけたメタボの小柄な男が言いました。

    「今、そこのポスターを見ているそこのアナタ! そう、アナタネ! 映画監督になってみないでアルカ? この子達をどうメイキングするのも、アナタの自由ネ! さっさ! こんなところで立ち話でもなんだし、ちょっと近くの喫茶店でワタシとお話するネ! 逃がさないでアルヨ!!」


    というわけで、映画監督になったアナタはどんな物語を紡ぐのか!
    メガホンを片手に目指せ! アカデミー賞ならぬポケデミー賞!!!


    【書いてもいいのよ】 


      [No.1118] 机の中にゾロアがいたら【再投稿】 投稿者:キトラ   投稿日:2011/05/02(Mon) 22:36:32     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「生きて帰れよ」
    黒い影が月明かりの草むらを過ぎて行く。自らの目的を果たすため、気の遠くなる道のりを一歩ずつ。


    空は暁、早起きな人間が体操やマラソンの時間。
    やがて、何時間もしないうちに目覚ましが鳴った。夏休みに入り、サマータイムと称した朝型生活で、いつもより起きることがつらい。
    「ツグミ!起きてるの!?起きたら早く勉強しなさい!」
    今年は受験生。だからこの教育ママも気合いが入っている。朝からドリルやら漢字、昼になれば塾へ行く。

    教育ママに逆らうでもなく、ツグミは大人しく勉強していた。勉強が出来ないわけではなかったし、できることが楽しいから苦ではなかった。
    ただ、一つだけツグミがママに不満があった。それは自分のポケモンを持ってはいけないこと。

    「大人になってからでもポケモンは飼えるでしょ、それより今、勉強しないで受験に失敗したら、大人になってポケモン飼う余裕ない生活になるわよ」

    それがママの口癖。そうは言われても、クラスの友達がポケモンの話をしていると、嫉妬と羨望まじりの視線を送るだけ。

    本来なら塾なのだが、今日は休み。そのかわり学校の図書室へ行って勉強する。3年前に買ってもらった赤い肩掛けカバンに、鋭い鉛筆が入った筆箱を詰めて、ツグミは家を出た。

    学校に着くと、誰もいない教室に入る。荷物は何もないけれど、ちょっと寄ってみたくなったから。最後に大掃除したっきり、何一つ変わってない。換気しない部屋の空気は立てこもる一方だった。
    少しの間だから、と自分の机に触る。前から2番目の席。教師もツグミを出来る子と見ていて、あまり関わらない。残りの出来ない子を指導するからだ。それがツグミには「先生にも相手にされないつまらない自分」と受け止めている節がある。
    勉強が出来る、大人しくて良い子。優等生。でも存在薄くて消えても気付かないかも。本当に消えてしまったら…
    椅子に座り、うつむいた。しかし、そこで思考が止まる。違う生物と目が合っている。しかも机の引き出しから覗いている二つの目。しばらく黒い狐のような生物と黙って見つめ合う。
    「人間、だよな?」
    驚くべきことに、黒い子狐は小さな男の子のような声で喋る。有り得ないことなのに、突然過ぎてツグミも真面目に答える。
    「うん。あなた誰?」
    「おっと、用事がある方から名乗らないのは非常識だって父上が言ってたな。オレはゾロアってんだ!」
    身のこなしは軽く、ツグミの机の上に音もなく着地する。黒い毛皮に赤いたてがみのような毛が、引き出しに入っていたにしては豊かに整っていた。
    「オレがここにきたのは頼みを聞いて欲しいからだ。」
    「頼み?私でよければ。」
    ゾロアの表情は喜んだように見える。やわらかそうなしっぽをゆっくり振る。
    「オレの父上は群れ
    の中でも最も強いゾロアークだ。しかも強いだけじゃなくて、一番正しいかったんだ。だけど、あいつらがオレの父上を…」
    ゾロアの足が震え、目から涙が溢れる。怖いのか悔しいのか、違いは解らない。ただ、ツグミにも父親がどうなったのかは想像がつく。
    「すまない、あの鳥のような竜みたいな大きなヤツらが、父上を殺した。そのことに抗議した母上もやつらは笑いながら殺した!オレは仇を取りたいんだ!でもオレは強くない。人間の元で修行したら強くなれると聞いた。お前は人間だろう?オレを強くしてくれ!そしてオレと一緒に仇をとってくれ!」
    「えっ…」
    今の生活や受験のこと、何よりママのことが引っかかる。ツグミは言葉が出なくなった。
    「それに誰でも良いってもんじゃない。ムクホークの占いで、この建物にいて、最初に会った人間こそ、最適な人間だと言われた。頼む、力を貸して欲しい。」
    「ごめん、私ね、受験だから勉強しなきゃいけないし。それに仇討ちなんて危ないよ。」
    ゾロアは世界中の絶望を集めたような顔した。小さく、どうしてもダメか、と言ったがツグミの耳には入らない。
    「…わかった。では他をあたる」
    ゾロアは机から降りて教室の入り口に行く。もの惜しげにツグミを見つめると、外に出た。
    「うわっ、なんだ?ポケモン?」
    夏休みだというのに学校に来るのは他にもいたらしい。クラスで一番、ポケモンが強い男子だ。今日も取り巻きを連れて何しにきたのか。3人の男子に進路を塞がれ、ゾロアは教室内に押し戻される。
    「これお前の?マジで?ポケモン持ってたのかよ。じゃあ勝負しようぜ」
    「ゾロアは私のじゃなくて…」
    男子によりゾロアがポケモンだと気付いたのだが、さらにそのポケモンが喋ったことは何と説明しよう。上手く説明できず、黙っている。業を煮やした男子がツグミの腕をつかんだ。
    「結局、お前のポケモンなんだろ?なんでもいいから俺が一番ってこと教えてやるよ!」
    「いたいっ、放してよ!」
    ツグミの腕を引っ張り出す。抗議の声をあげると、それまで黙っていたゾロアが男子に飛びかかる。顔に張り付かれ、ひるんでツグミの腕を放した。
    「なんだってんだよ!」
    ツグミの前に立ち、威嚇のうなり声を上げるゾロア。怒り狂った男子は、クラスで一番とされるポケモンを出した。モンスターボールから飛び出したのは、精神的な力を操るポケモン。黄色く、人間のような容姿を持つのは確かユンゲラーと言った。
    「あんな狐、サイコキネシスでやっちまえ!」
    ユンゲラーのまわりの空間が七色のオーラに包まれ、それが全てゾロアへ向かった。ツグミも見たことがないわけではない。この攻撃を食らったポケモンたちがどうなるのか。
    「ゾロア!」
    足はふらつき、息もまともに出来ず、そのまま死んでしまったポケモンもいた。ゾロアもそうなるのではないかと、ツグミは見た。
    ところが、ゾロアはふらつくどころか、全く変化がない。うろたえる男子を後目に、後ろ足でユンゲラーに飛びかかり、鋭そうな牙で噛みついた。ゾロアの体格も力もそんなに強い方ではなかった。しかし、今までダメージというものを食らったことがなかったため、ユンゲラーが酷く混乱し、男子の言うことなど聞かなくなっていた。そして、ゾロアは追い討ちをかけるように低い声で吠える。ユンゲラーは消えるように逃げ出した。もちろん取り巻きも。

    「ゾロアって強いんだね」
    おそるおそる声をかける。振り向いたゾロアは先ほどとは違っていた。その目は怒っている。
    「お前、いつもああやっていじめられてるのか?」
    ツグミの心臓が止まりそうになる。たいして暑くもないのに、汗が止まらない。
    「いじめられて、それでもやめろって言えなくて、ただ黙って、それでいいのか!変えたいと思わないのか。受験だってなんだって自分がやるんじゃないのかよ!」
    意味が解らん、とゾロアは廊下に出て行く。ふさふさのしっぽが見えなくなった。
    「ゾロア!」
    ツグミはすぐに追いかけた。黒い影は振り向き、足を止める。
    「ゾロアの言う通りだよ。いじめられてるけど、言い返す勇気も、変える努力もしなかった。」
    「だろうな」
    「ゾロア行こう。私も強くなる。一緒に仇を討とう。」
    「いいのか?いつ終わるか解らないし、父上よりずっと強くなるには何年単位かかるかもしれん。」
    ツグミは大丈夫、とだけ言った。カバンを取り、家に帰る。ママはいなかった。


    「ママへ。ゾロアと一緒に旅に出ます。強くなって帰ってきます。心配しないでください。」

    服を着替え、家を飛び出す。足元にはゾロアがついていった。


      [No.1117] 【再掲】携帯獣師少女ハルカ☆マギカ 投稿者:レイニー   投稿日:2011/05/02(Mon) 22:34:54     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ホウエン地方に単身赴任している父親の元に、母親と共に引っ越すことになったハルカ。
    夢見ていた家族3人でのありふれた日常がついにやってくる。――そのはずだった。

    ハルカはホウエン地方に向かうトラックの中で、希望に満ちた平穏な日常を想像しているうちに、うたた寝してしまう。
    そこで見た夢は、見たことのない犬型のポケモンに襲われるおじさん、そしてやはり見たことのない水色のポケモンの姿であった。

    そして、ミシロタウンに到着したハルカを待ち受けていたのは、犬型のポケモンに襲われるおじさんという、見覚えのある光景。
    おじさんに、モンスターボールからポケモンを出して助けてくれといわれたハルカは、言われたとおりポケモンを出す。
    そこに現れたのは、夢で見たあの水色のポケモンだった。
    そして、そのポケモンはハルカにこう語りかける。
    「僕と契約して、ポケモントレーナーになってよ!」

    そしてハルカはこの後、ホウエン地方全土を揺るがす、非日常的な大事件に巻き込まれることになるのである――



    ※タイトルは「トレーナーしょうじょ」と読んでください。


    ポケスト再掲作品の頭がこれなんて、こんなの絶対おかしいよ!


    【どうしてもいいのよ】
    【もう何も怖くな……ログ消失怖い】


      [No.1116] 【校正版】 旅ポケ『ドーブル』の見聞録 投稿者:巳佑   投稿日:2011/05/02(Mon) 21:35:16     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     この世には世界中のポケモンに出逢いたいと、旅をしている人間がいる。
     俗に言うポケモントレーナーという者の他には
     世界中のポケモンと出逢いたいと、旅をしているポケモンだっている。

     ベレー帽のような頭で、
     長い尻尾の先端は絵筆のような形をしており、
     そこから文字や絵の産声が上がる。
     彼の名はドーブル。
     世界中のポケモンと出逢う為に世界中に足跡を残して来たポケモンだ。

     
     
     がさこそと震えるような音は多分、誰かを誘っているかのような音。
     ボクはその音の源に逢おうと、件の茂みをかき分け――。
    「ねぇ! 君、見たこともないポケモンだね!」
    「あ……はい。え……と?」
    「ボクの名前はドーブルって言うんだ! 君の名前はなんて言うの?」
    「わ、わたしですか……?」
    「うんうん! 君の名前、教えてよ!」
    「は、はい……わたしはタブンネといいます……」
    「タブンネさんかぁ……あぁ、それで早速、頼みごとがあるんだけど、いい?」
    「……なんでしょうか?」


    「君の足跡、取らしてくれない?」

     
     用意した紙にタブンネさんの右足が静かに乗る。
     可愛らしい音が一瞬した後、紙の上に現れて来たのは一つのハートだった。
    「ごめんね。いきなり頼みごとなんかしちゃって。あぁ、そうそう。
     そのインクは本当に水で簡単に落とせるから心配しないでね」
    「では……ちよっと洗ってきますね……」
     恥ずかしそうにタブンネさんは微笑むと、ゆっくりと立ち上がって川の方へと向かって行った。
     タブンネさんのふわふわんな尻尾が小刻みに踊っていて、とても可愛い。
     それにしても……タブンネさんかぁ。
     ハート形の足跡かぁ……とても可愛らしいなぁ。
     紙に映ったタブンネさんの足跡を改めて眺めながら、ボクは尻尾を揺らしていた。
     恐らく、今のボクの顔は生き生きしているに違いない。
    「ただいま……戻ってきました……」 
     どうやら嬉しさあまり、時の流れを忘れていたらしい。
     川から戻って来たタブンネさんがいつの間にか、ボクの隣に座っていた。
    「あ、タブンネさん。本当にありがとね! おかげでいい足跡がまた増えたよ!」
    「いいえ……そんな、わたしはただ……その白いモノに、足跡を残しただけですよ……」
     両腕を後ろに回して、もじもじさせながらタブンネさんが答えてくれた。
     瞬きの数も忙しそうに、さっきから増えているような気がするんだけど。
    「……あ、あのドーブルさん。一つだけ、聞かしてくれませんか?」
    「うん? 質問ってこと? なんでも聞いていいよ? さっきのお礼は後で渡しておこうかな」
     お礼にとびっきりおいしいモモンの実を出そうとしてボクは手を止めた。
     そしてタブンネさんの小さな唇が動いた。
    「ドーブルさんは……旅をしているかたで……。
     そして、足跡を、集めているみたい……ですが、どうしてなのですか……?」
    「それって、ボクの旅の理由ってことでいいよね?」 
     誤解防止の為にボクは確認する意味を込めてタブンネさんに尋ねてみると、
     彼女は首を縦に振ってくれた。
    「ボクたちポケモンってさぁ、ポケモンという同じ名前なのに一匹一匹の姿形が違うじゃない?
     なんか、それにロマンを感じたというか、なんというか…………」
     
     ボクは産まれたとき、この世界のポケモンってボクと同じ姿をしたモノしかいないのではないかって思っていた。
     けど、そうじゃなかった。
     巣から外へ出てみるとボク以外の生き物がいた。
     ボクと同じポケモンと呼ばれているのに、その子は丸くて桃色の体をしていた。
     歌がうまかったから今でも鮮明に覚えているよ。
     心地よくて思わず寝てしまったら、思いっきり『おうふくビンタ』をされたことも、
     「ワタシの歌をさいごまで聞きなさ〜い!!!」っていう言葉を浴びせられたのも覚えているよ。

    「そしたらさ、世界中のポケモンってボク以外にはどんなヤツがいるんだろうって気になって
     気が付いたら旅に出てたんだ。そして……足跡はそのポケモンと出逢ったという、変わらない証として集めているんだ」

     ちなみにボクが足跡を押してもらう為に使っている紙は親切な人間からもらったものだ。
     人間は悪いヤツだから近づくなって母さんから耳にオクタンができるほど言われたけど、
     いざ出逢ってみたらイイ人もいたんだ。ポケモンと同じで人にも色々な人がいて、
     ボクの世界観がどれだけ小さかったことか、教えられている気がするなぁ、この旅は。

    「大変……だったのでは、ないですか……? いろいろと……その…………」

     確かに色々と大変だった……って現在進行中だけど。
     心配そうにボクの顔をのぞき込んでくるタブンネさんの不安を晴らすかのようにボクは笑った。
     実際、旅は大変だけど苦しいことだけに限定されたわけではないしね。
     
    「こうやって可愛らしいタブンネさんに出逢ったっていう嬉しいことだってあるんだから」
     タブンネさんの顔が若干、赤くなったような気がした……多分ね。

     ボクたちドーブルには不思議な技があるんだよ。
     『スケッチ』っていう技でね、相手のポケモンの技を自分のモノにできる技なんだ。
     それで、色々な技を自分のモノにしては自分の旅ができる範囲を広げていって…………。
     例えば……。
     
     ラプラスさんから『なみのり』や『ダイビング』などを『スケッチ』させてもらって、海にいるポケモン達に出逢ったりした。
     紙を使っている関係上、その場で足跡は取れなかったけど、代わりに鱗をもらったなぁ……。
     川辺付近のポケモンからは陸から上がってもらい、足跡をもらっていたりした。
     それにしても、あのラプラスさんは元気にしているかな。
     とても口笛が上手くて、思わず昔のことを思い出しちゃってさ……ちょっと涙が出てきたの覚えているよ。
     
     カモネギさんから『いあいぎり』を『スケッチ』させてもらって、細い木々を倒しては道を開いていったこともあるよ。
    「いいかあぁぁぁあ!! いあいぎりぃ、とは! 侍の心を持ってぇええ!! 切り込むのだぞぉぉおお!!」
     ……協力してくれたカモネギさんはいつもテンションが高いお方……いや、かなりの熱いハートを持っている師匠で、 
     カモネギさん曰く、弟子入りの為の鍛練というものに合格しないと『いあいぎり』を『スケッチ』させてくれなかったんだ。
    「侍のぉおお! 心をっ! 持たぬやつにぃいい! 中途半端なやつにぃいい!! この技はぁああ! 教えんっ!!!」
     …………恐らく師匠のおかげで根性という言葉が体の芯まで染みついたと思う。

     ゴーリキーさんから『かいりき』や『ロッククライム』などを『スケッチ』させてもらって、山や谷などにいるポケモン達に出逢ったりした
     ウリムーさん達の案内で雪山の温泉に赴いたこともあったなぁ…………。
     雪山だったから、そこで出逢ったポケモン達と雪合戦をしたりとかしたんだ。
     そして寒い寒いと身を震わせながら再び温泉へ……本来は疲れを取る為の温泉だったのに、
     雪合戦と温泉の鬼ごっこで逆に疲れちゃった……けど、なぜだか心地よい疲れだったのを覚えているよ。
     ……また、皆と雪合戦したいなぁ…… 

     ピジョンさんから『そらをとぶ』を『スケッチ』させてもらって、空にいるポケモン達に出逢ったりした。
    空を飛ぶ感覚って、まるで自分が雲になったかのようで摩訶不思議なんだよね。
     そして空を飛んでいるポケモンたちには悪いんだけど、
     足跡を取らしてもらう為に地上まで降りてもらったこともあったなぁ……。
     あっ、そうそうボクは普段は歩いて旅をしているんだけど、
     ある程度、足跡を映してもらった、または絵を描いたりした紙がたまると、一回、自分の巣に戻っているんだ。
     荷物がかさばるといけないしね。
     その巣に戻る際に『そらをとぶ』が結構活躍するんだよな、これが。

    「……あの、いつも空を飛んで移動すれば……いいのでは……ないでしょうか……?」
     ボクの冒険談を聞いていたタブンネさんからもっともな質問が飛び出てきた。
     確かに、普段から『そらをとぶ』を使えば楽かもしれないけど……。
    「う〜ん……それなら空を飛んでいるポケモンには簡単に出会えるけど、
     逆に地上にいるポケモンたちには会いにくくなるから、いつも……というわけにはいかないんだ。
     それに、ボクは空を飛んでいるより、こうやって地上を歩いて行くほうが性に合うしね」
    「……ふ、ふくざつな事情があったの、ですね…………」
     心配そうな顔を見せるタブンネさんを安心させるかのようにボクは微笑んだ。
    「そんな深刻な問題じゃないから大丈夫だよ。要は適材適所ってやつ……って言って、分かるかな?」
     タブンネさんの頭の上から疑問符が浮かび上がったかと錯覚したぐらい、タブンネさんの青い瞳はきょとんとしていた。
     それがとても可愛らしいものだったから、悪いと思いつつもボクはつい笑ってしまった。
    「それと言い忘れてたけど、ボクは歩く方が好きだからさ」
    「歩くのが……大好き、なんですか……?」
     
    「うん、大好き」
     ボクは自分の足を示しながら答えた。
     
    「歩くとさぁ、地面に足跡が残るでしょ? ……ボクはその足跡が大好きでね。
     なんか……自分の物語を残してきた感じがして、ボクにとっては自分の足跡を見ることで、
     生きている……っていう想いと感覚がすごくするんだよ。
     色々とある、生きている、という絵を描くということの一つに、
     きっと足跡があるんだって思った瞬間に、すっごいロマンを感じてね。
     ……それ以来かな、歩くことが大好きなったのは」

    「なんか……カッコイイですね、ドーブルさんって…………」
     ボクの話を聞いたタブンネさんが感心したかのようにボクを見つめてくる。
     うわ、わわわっ。
     女の子からそんなに見つめられるとボク、困るんだけどなぁ……と言いたげにボクの尻尾は揺れていることだろう。
     
     あ、ちなみに誤解がないように補足説明をさせてもらうと……。
     足跡がないヤツは駄目なヤツ、というわけではなく、
     本当に、ただ単純にボクが足跡大好きポケモンというだけの話で、
     出逢ったポケモンに足跡を取らしてもらっているのはボクの大好物が足跡、というのと、
     それと、もう一つ、この方法の方が相手に時間をあんまり取らせなくていいかな、と思ったからである。
     ……ボクは一応、絵描きができるけど、早く描くというのが苦手というか、
     ついつい凝っちゃって、時間がかかってしまうんだよね。
     納得いかない! って感じに。
     ……足跡を持たないポケモンに関しては鱗などをもらう他に、その姿を描かしてもらうことがあるんだけど、
     時間をかけすぎないようにしなきゃ! って、いつも意識して描くようにしているから大変なときもあるんだ。

    「……ドーブルさんは……とても絵が上手なんですね……」 
     ボクがトートバックから出した、今まで初めて出逢ったポケモンに足跡を取らしてもらった紙と、
     ボクが描いたポケモンの絵をタブンネさんはまじまじと見ていた。
     ちなみにボクが使っているトートバックは森を連想させる深い緑色で、
     その身には誇りという名の汚れとボロをまとっていた。
     これも親切な人間からゆずり受けた物である。
    「あの……よろしければ、わ、わたしの絵も描いてくれません……か?」
     いきなりのタブンネさんの提案を映したボクの目は丸くなった。
     今まで、自分からボクに描いて欲しいと言ってきたポケモンが少なかったからである。
    「す、すいませんっ。……だ、だめでしたら……」
     しゅん、とうなだれそうになるタブンネさんにボクが慌てて声をかける。
    「い、いや! 突然の提案で驚いただけで、もちろん、大歓迎だよ!」
     その言葉を聞いたタブンネさんの顔色が明るくなったような気がした。
     ……タブンネさんって分かりやすいところもあって、本当に可愛いなぁ。
     「じゃあ、描かせてもらうね」

     
     真白の紙の上で踊り続けてくれたボクの尻尾は、
     可愛らしい桃色、独特な柔らかい肌色、ふわふわで甘い白色、そして癒されそうな青色を紡ぎ、
     一匹のタブンネさんを描いた。
    「あ、ありがとう、ございます……! こ、これ、ほんとうに、もらってもいいんですか……?」
     タブンネさんが大事そうにボクが描いた絵を優しく抱きしめるように持ちながら尋ねてきた。
    「もちろん。こっちも喜んでもらって嬉しいよ」
     さて、タブンネさんも喜んでもらっていることだし、これでめでたしめでたし……という頃には、
     もう月が昇り始めていた……って今夜はどこで泊まろうかな……と迷い始める。
    「あ、あの今夜は、ぜひ、わたしのところで休んでいって……ください……」 
    「え? いいの?」
    「は、はい……狭い場所かも……しれませんが……」
     折角のタブンネさんのご好意を無駄にしたらいけないし、
     それと正直言って、こんな可愛い子と一緒に寝られる機会なんて……そうそうないしねって言ったら怒られるかな?
     とりあえずボクはタブンネさんの住みかに案内してもらうことにした。
     

     タブンネさんの案内でボクがたどり着いたのは一本の大きな木。
     その大きな木の幹には穴が開いていて、その中の空間は二匹ぐらい入っても大丈夫そうであった。
     更に暖かそうなワラがしきつめられていて、くつろげそうな雰囲気がそこにはあった。
     夕食の時間、ボクは渡そうと思っていたモモンの実を『ひのこ』で少しあぶり、タブンネさんにごちそうした。
     程よく熱が通ったモモンの実から……とろけるような甘い蜜が口の中に広がる。
     タブンネさんも青い目を一気にキラキラと輝かせるほどの衝撃を受けたらしく、大絶賛してくれた。
    「……ドーブルさん、ちょっと、いいですか…………?」
     夕食を食べ終わると、後はもう寝るだけかなと思っていたところに、タブンネさんの顔がボクに近づいてきた。
     タブンネさんから先程のモモンの実とは違う、甘い香りがしたような気がした。
     なぜだかボクの心拍数が速度を上げているような感覚が……。
    「ちょっと……失礼しますね……」
    「え?」
     戸惑っているボクをよそにタブンネさんは耳から垂れている、先端が可愛らしく、ぐるっと曲がっているモノをボクの体に当てた。
     そのままタブンネさんは目を閉じて…………しばらくすると、ゆっくりと目を開けた。
    「…………少し、疲れ気味、のようですね……少しばかり、ここで、休まれていっては……いかがですか?」
    「……………………」
     タブンネさんの真剣な青い眼差しを受けて、ボクは、もしかして…………と思った。
    「す、すいません。いきなり、
     そ、その……わたしたち、タブンネはこの耳の触覚で、相手の体調を……調べる……ことができるんです……」

     …………。
     
     ……これは、多分、ばれたかも。

     う〜ん、今まで秘密にしてきたことなんだけど……実は…………。


     ボクの命はもう数年ぐらいしかないらしいんだ。


     あれは……数ヶ月前、ハピナスさんに出逢ったときのことかな。
     足跡を取らしてもらったとき、ボクはどこか、体調がだるかった。
     心配をかけさせないように、ボクはポーカーフェイスを顔に描いたつもり……だったんだけど、
     それを見抜いていたんだろうね、きっと……ハピナスさんは。
     すぐにボクの体を調べると言って、診査をしてくれた結果――。

     ……ボクの命は、もって、後、三、四年らしい。


     そう、ハピナスさんが告げたのだった。


    「ごめんね、心配かけさせちゃって。でも、ボクは明日の朝には出発するよ」
    「えっ!?」
     タブンネさんの青い目に驚きの色がにじみ出ていた。
     ……これはもうカンペキに、タブンネさんは知ってしまったとみて、間違いなさそうだった。
     タブンネさん自身、なんて言えばいいのか分からないのかもしれない。
     気まずい沈黙の間が降り注いでくる前に、ボクは自分の意思を言うことにした。
    「これまで……色々なポケモンに出逢ってきたけれど……タブンネさんは伝説と呼ばれるポケモンを知っているかい?」
    「でんせつ……ですか?」
    「うん。人間たちやポケモンたちの間で語り継がれているだけで、
     実際に姿を見たものがあまりいないポケモンのことなんだけど……。
     そのポケモンについての有力な情報を手に入れてね、それを元に、これから、そのポケモンがいるって言われているところへ行くんだ」
     ポケモンの中でも伝説とも言われているポケモン。
     真の姿は分からないものの、その伝説という言葉だけで新たなロマンを感じさせてくれるポケモン。
     一体どういうポケモンなのか、
     手足を持っているとしたらどんな足跡なのか、
     それを見ないまま、死ぬのはごめんだった。
     ……まぁ、ご覧の通り、ボクは最期まで新たなポケモンを求めて、新たな足跡を求めて旅を続けることだろう。
     それが使命とか、宿命とか、そういう堅いものじゃなくて、
     ……まぁ、もちろん、世界には色々なポケモンがいるということを知ってもらいたいという気持ちは少なからずあるけど。
     ボクみたいにさ、自分の世界を広げていってほしいなっていう想いもある。
     
     だけど、一番の理由は――

     大好きなこと、だからかな。

     そうじゃなかったら、今まで、ここまで、足跡をこの世界につけてこなかったと思うんだ。


    「……あの、ドーブル、さん」
     ボクを見ていたタブンネさんの青い瞳が若干、うるんでいた。
    「……そ、その、『スケッチ』と、いう、わざは、まだ……つかえ、ます、か?」
     今にも泣きそうなタブンネさんだったが、必死に青い湖からあふれ出そうな雫を押さえ込んでいた。
    「うん……まだ二、三回使えるはずだよ」
     自分のだいたいの感覚から数値を出したボクに、タブンネさんが微笑みを努めようとした。
    「よ、よろしけ、れば……わたし、の……『リフレッシュ』と、いうわざを『スケッチ』して、くだ、さい……」
     タブンネさんが声を上げて泣くことはなかった、しかし、その青い湖から数粒が空中へと羽ばたいた。
    「きっと……くるしく、なった、とき、に……やくに、たつ……と、おもい、ます、から……」
     
    「ありがとう……タブンネさん」

     ボクは感謝の気持ちを込めてタブンネさんを抱き締めた。



     
     翌朝、青い空が大きく広がっている中、彼――ドーブルさんは新しい足跡を一歩一歩つけながら出発しました。
     わたしは迷いました。
     ……あのとき――ドーブルさんを初めて見たとき、とても嫌な予感がしました。
     そして、その嫌な予感は当たってしまいました。
     わたしはドーブルさんを止めたほうがいいのではないかと思いました。
     これ以上、自分の体を傷つけて欲しくなかったから……単なる、わたしのわがままだった想いかもしれませんが。
     しかし、わたしは迷いました。
     ドーブルさんの足跡を止めるようなことをしてもいいのだろうかと。
     彼の言う生きている証や想いを消してしまってもいいのだろうかと。
     ………………結局、ドーブルさんの意思が強かった。
     わたしなんかでは、止めることができなかった。
     
     ………………。
     
     わたしは、ドーブルさんに出あえて、誇りに思っています。

     どうか、彼が一つでも多くの、足跡を残せるように。


     


     この世には世界中のポケモンに出逢いたいと、旅をしている人間がいる。
     俗に言うポケモントレーナーという者の他には
     世界中のポケモンと出逢いたいと、旅をしているポケモンだっている。

     ベレー帽のような頭で、
     長い尻尾の先端は絵筆のような形をしており、
     そこから文字や絵の産声が上がる。
     彼の名はドーブル。
     世界中のポケモンと出逢う為に、世界中に足跡を残して来たポケモンだ。
     
     今、私たちが様々なポケモンを知っているのは、
     旅ポケ『ドーブル』が残してくれた足跡が起こした、キセキなのかもしれない。









    【ちょっと手直しをしました】

    ●今回の経緯など。

    誤字発見マスターのサトチさんからのアドバイスを元にちょっと手直しをしました。
    No.017さんから恐れ多くも、今回のコンテスト作品とともにこの作品もアーカイブ掲載しませんか? と誘っていただき、
    ちょっとした改稿版を書く次第になりました。

    今回の物語は、最初の文にも書いてあるとおり、
    ポケモンに出逢う為に旅をしている人間がいるのなら、
    ポケモンに出逢う為に旅をしているポケモンもいるのではないか? という考えから生まれた物語です。

    テーマとしては『足跡=旅=生きるということ』な感じで書いていったのですが、
    終盤の方で、どうやって、話を結ぼうかと迷いました。
    ドーブルとタブンネさんがラブラブになって一緒に旅をして…………。
    子孫がドーブルの旅を受け継ぐ=足跡は受け継がれていく=生は繋がっている、という感じにしようかと思いましたが、
    それだと、詰め込み過ぎなってしまうかなぁ……と感じて、断念しました。

    タイトル名はドーブルの今までの旅を示せるように、シリーズものな感じにしてみました。
    実は旅人にしようか、旅ポケにしようか、どちらにしようかと迷いましたが、
    旅人にしたら、ポケモントレーナーになってしまうのでは? と思って、旅ポケの方に決めました。

    書くときに注意したのは、
    タブンネさんのセリフで、あのキュートな雰囲気を壊さないように気をつけたのと、
    泣くときのセリフでは、どこに句点が入るのか? と考えながら書いたところです。 

    ちなみに最後のキセキは奇跡と軌跡の両方の意味を含みます。



    感想 & 批評をくださった方々ありがとうございました!

    それでは失礼しました。




          


      [No.1115] ■第一回コンテスト校正スレッド 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/05/02(Mon) 21:18:42     28clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    第一回コンテストを校正いただいた方で再投稿をしていただける方はこちらのスレッドにてお願い致します。
    お手間を取らせまして大変申し訳ありません。


      [No.1114] ■重要■ 再投稿ルール0502版 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/05/02(Mon) 21:13:00     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    <再投稿ルール>

    大変勝手ながら取り急ぎ再投稿いただける際のルールをまとめさせていただきました。
    再投稿がいただける、という方は大変お手数ですが読んでくださいますと幸いです。



    ■■以下の作品を再投稿いただける際は
     ロングポケモンストーリーズ(http://masapoke.sakura.ne.jp/rensai/wforum.cgi)に移動の上、再投稿願います。

    ●洗濯日和シリーズ
    勝手ながらスレッドを立てさせていただきました。
    http://masapoke.sakura.ne.jp/rensai/wforum.cgi?no=320&reno=no ..... de=msgview
    アーカイヴ(http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/kagebouzu/index.html)に掲載しているもの以降で再投稿をいただける場合はぜひお願い致します。

    ●もふパラシリーズ
    巳祐さんが立ててくれました
    http://masapoke.sakura.ne.jp/rensai/wforum.cgi?no=332&reno=no ..... de=msgview

    ●書いてみた、描いてみた等、感想以外のレスポンスがが2個以上あった短編



    ■■短編の作品を再投稿いただける場合


    ●3個以上の作品を再投稿いただける場合
    →ロングポケモンストーリーズ(http://masapoke.sakura.ne.jp/rensai/wforum.cgi)に【作品集】のスレを立て、連載形式で再投稿をお願い致します
    12月30日以前の作品を一緒にまとめてくださっても構わないです。

    【見本】
    http://masapoke.sakura.ne.jp/rensai/wforum.cgi?no=321&reno=no ..... de=msgview
    この機会に同一キャラ等が出てくるシリーズ物をまとめてみてはいかがでしょうか。


    ●2個以下で再投稿いただける場合
    →通常通りポケストでの再投稿にてお願い致します



    ■コンテスト校正作品

    ・専用スレッドにお願い致します
    http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?no=1115&reno= ..... de=msgview


    ■新規投稿

    ・通常通りにてお願い致します



    尚、再投稿はこれを強制するものではありません。
    この度は誠に申し訳ありませんでした。


      [No.1113] ■ログ消失のお詫び 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2011/05/02(Mon) 20:40:22     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    本日、コンテスト更新をしようとしたところ、
    操作を誤って、ポケストのログを消失する結果となってしまいました。
    作品が消えてしまった方々にはお詫びを申しあげます。

    ログの消えた範囲:
    2010年12月31日〜2011年5月2日迄投稿分

    復旧を試みましたが、ログの保存に失敗があり、2010年12月30日までしか戻すことが出来ませんでした。

    再投稿に関しましてはルールを整備中ですのでまたお知らせ致します。


    この度の失態は
    管理人の管理不足と技術不足によるところです。
    誠に申し訳ございませんでした。


      [No.1111] ギョラー? 投稿者:こはる   投稿日:2010/12/30(Thu) 20:07:33     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    彼らですね。
    平べったくって、茶色くって、黄色くって、初めて遭遇した瞬間「なんだこのワケわかんねーのは?」と思わせた彼ら。

    >  汝のその遺伝子は何処でその道を踏み外した。汝の遺伝子はどう間違えて彼らを生み出したのか。

    遺伝子が道を踏み外して、あの彼らが生まれたとは!
    そうと考えねば、彼らのあの独特な姿の説明は……いえ、なんでも。

    >  魚の片側に両方の目がある、というのだろう。身体の構造的にはマンタインに近いものがあるかもしれない。(彼らの目は側面についているが)だが、そんなことを言ってはマンタインに失礼な気もする。茶色く平たい身体。薄いというわけではない。百科事典を二、三重ねたくらいだろうか。愛嬌のあるとはお世辞にも言えない目。その間に、上向きの口。何故か、分からないが尾びれだけはアクセントカラーのように黄色い。背中にも同じ色の黄色の点が存在している。

    この説明を見ればもはや、彼らであることは明白。ここまで彼らを見事説明できるとはオドロキ桃の木山椒の木。


    > 彼らのことを馬鹿にしてると思われそうですが、とんでもない。
    > 愛しています。

    あの説明を読めば、並大抵の愛ではないと信じられます。さては、マギョラーですかや?

    最後になってしまいましたが……

    >―日

    の部分ですが、ダッシュでは少し分かりづらいです。ふつうに1日と読んでしまいます。――日とか……日と二マス分お使いになってはいかがでしょう?
    って、言える立場ではないのですが(殴


      [No.1110] 幻影鎮魂歌 投稿者:紀成   投稿日:2010/12/30(Thu) 19:42:12     27clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ただ一人、道を行く
    小さき者に、灯りを。

    (影猫弥恭 著 『幻影人 』より)


    原稿が進まない時は、散歩をする・・ってことは、前にも言った気がする。
    バシャーモとダストダスを連れて、ひたすら街を歩く。
    その日は締切前だったけど、部屋に篭ってネタが出ないのでは、しょうがない。
    深夜零時近かったけど、私は家を出た。真冬の冷たい風が、体に吹き付けてくる。私は着ていたコートのチャック首まで上げた。
    冬休みに入ってからは、火宮の家のことはあまり調べていない。というのも、年末ということで、ある雑誌に書いているコラムの締切に追われているのだ。
    寝る間も惜しんで、とは正にこのことだ。おかげでクリスマスもケーキを食べるだけで、夜景すら見られなかった。ちょっと悲しかったが、作家として書き続けることが大切だと考え、耐える。
    「恋人いなくても、出かけられなくても、私はクリスマス楽しいわよ・・」
    「・・」
    同じ境遇にあるミコトに言ったら、冷たい目で見られ、こう言われた。
    「僕、クリスマスは家族と過ごす物だと思ってるから。恋人やプレゼントなんて、この国だけだよ」
    そういうミコトも、そのサバサバしすぎた性格のせいで、この前彼氏いない歴十六年を更新した。
    本人は全く気にせず、平気でこんなことを言う。
    「将来は、鰐ポケモンに囲まれて暮らしたいな」
    唯一のエスパータイプ、ランクルスの立場はどうなるのだろうか。


    ブーッ ブーッ

    「!」
    ジャンパースカートのポケットに入れた携帯が鳴っている。夜の闇に白いディスプレイが映える。
    ミドリちゃんからだった。こんな時間に何だろう。
    「はい」
    『・・ミスミ先輩』
    どことなく落ち着きが無い。ミドリちゃんらしくない。
    「どーしたのよ」
    『火宮先輩の、』

    続く言葉に、私は携帯を落としそうになった。

    『火宮の家が、燃えてるんです』

    バシャーモにおぶってもらい、火宮さんの家に向かった。近付くにつれて、何かが焼けるような異臭いがしてくる。
    あの後、一時停止した私に、ミドリちゃんが一気にまくし立てた。
    『さっき、夜食の買い出しに行った帰りに火宮先輩の家の近くを通ったんです。って言っても、遠目からだったんですけど。
    ・・そしたら』

    午後九時くらいといえば、とっくに夕日は沈み、星が瞬き出している頃だ。
    寒がりのツタージャをジャケットの中に入れ、夜道を歩いていたミドリの目の横に、何か赤っぽい物が映った。
    不思議に思ってよくよく見てみると、

    空が紅色に染まっていた。まるで世界の終わりの情景のように。

    「ミドリちゃん!?」
    現場は既に野次馬と消防団、警察でざわついていた。誰もが炎に包まれた館を興奮した目で見つめている。
    野次馬の中からミドリを見つけると、ミスミは駆け寄った。
    「先輩」
    「ここが火宮の家って・・知ってたの?」
    ミドリは頷いた。
    「この前誕生日を祝ってもらったんです。この家で」
    ミスミはあのカオリが他人の誕生日を祝っているシーンを頭に浮かべようとしたが、無理だった。いや、それ以前にミドリの誕生日すら知らなかった。
    「どんな感じだったの」
    「え、普通に・・。ケーキ作ったって言ってて、凄く美味しかったですよ」
    彼女が料理をするのだろうか。疑いの目を向けたかったが、ミドリは嘘をつくような人間じゃない。
    「別に変わったことはありませんでしたがねぇ」
    「いや、それ以前に」
    カオリが脱出できているのか。
    知りたいことは、それだけだ。


    数時間前ー

    「モルテ、私の話を少し聞いてもらえるかな」
    いつもの黒いフリルが付いたワンピースではなく、 チェーンがついた黒いパンツと、同じく黒のジャケットに着替えたカオリが言った。
    「私の両親は、私が火宮に養子に入ってから五年後に亡くなった。理由は聞かされてないけど・・心労だと思う」
    話が続いている。
    「火宮にいた頃はポケモン・・デスカーン達が側にいたり、夢を叶えたい、欲しいなんて考えたことも無かった。家柄が家柄だったし、何より自分が生きるので精一杯だったから」
    カオリがジャケットのポケットを探り、硝子の破片を取り出した。鋭い方をモルテに向け、そのまま弾く。
    もちろん、簡単に避けるモルテ。しかしー
    破片はブーメランのように戻って来て、モルテの手に当たる部分を少し切り裂いた。
    破片は真っ直ぐカオリの元へ着地する。
    『・・見事な物だな』
    「火宮の家には、本倉庫があったんだ。西洋、東洋、ジャンルも沢山あったよ。
    こういう、隠し武器による暗殺術もね。そこから学んだんだ」
    『ふつうにたたかえば、カオリはキライなやつをこらしめることだってできたんだー』
    『できたんだー』
    カゲボウズ達がまくし立てる。
    「でも、しなかった。流石に当時家が無いのは苦しい物があったからね」
    淡々と、でもハッキリ語る。その胸中が、モルテには分からなかった。
    何となく分かった気になっていた、の方がいいかもしれない。同じようなポジションの人間。
    そうとしか思っていなかったのが事実だ。
    「その日をクリスマスイヴの日にしたのには、何も理由は無いよ。ただやるならこの日かと思って」
    火宮。火の宮。
    代々伝えられてきた呪いの通りに、家に火を放った。
    それが、最初で最後の火宮家への復讐だ。

    「私は何にも縛られない。火宮の名前を捨てて、ただの『カオリ』という一人の旅人になる」
    『どうするつもりだ』
    「ついて来たいなら、ついて来ればいい」
    デスカーン達がカオリの周りに集まった。
    『私達はついて行く。カオリが望むなら、地獄まで』
    「死んだ後に行く場所は地獄オンリーじゃないんだけどね」
    暖炉にはもう火は入っていない。

    「一年前と同じだ。全てを灰にしろ」


    火は約二時間で消えた。これから警察が現場検証をするらしい。
    「この状態じゃ、元々ここに人が住んでいたかどうかも分からないかもしれませんね」
    「そうね」
    「火宮先輩・・」
    家は辛うじて形が残っている状態だった。どうやったらここまで強く燃やせるんだろう。
    (どんなことに巻き込まれても死なないような気がする・・)
    彼女がどんな気持ちで今まで生きていたのかは、分からない。
    ただ、火宮の人間として生きなくてはならなかった悔しさ、人生の十年以上を自分で決められなかった腹立たしさは分かる気がする。
    もし、その気持ちのためにこれを自ら起こしたとしたら・・。
    「・・火宮さんは、もうここには戻って来ないんじゃないかな」
    「へ?」
    「まだ分からないけどね」
    黒く焦げた家は、主がいなくなった寂しい雰囲気を醸し出していた。


    『学校には私から連絡しておこう。ちょっとした騒ぎになるかもしれないが、顔は割れていない。
    ・・特に問題は無いだろう』
    「ありがとう」
    カオリは手に持った白い仮面を見た。これだけは燃やさずに、持って来たのだ。
    『これからどうするつもりだ』
    「・・行く当ても無い旅をするよ。ここには戻って来ない」
    『そうか』
    朝日が昇って来た。冬の時期特有の、遅い朝日だ。
    「でも、またいつかモルテとは会ってしまうんだろうね」
    『嫌か?』
    「・・」
    遠い目で道の向こうを見た。
    「それが、運命なのかもしれない。火の宮の跡を継ぐ者として生まれて、幻として生きなくてはならなくなった者のー」


    ファントムガール、塀の上。
    ファントムガール、落っこちた。

    王様も、お妃様も、捨てられたぬいぐるみも、誰も彼女を戻そうとしない。

    彼等も一緒に、落っこちた。

    ーーーーーーー
    『ファントムレクイエム』


      [No.1109] 序文 投稿者:てこ   投稿日:2010/12/30(Thu) 19:05:23     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    (※本編とは関係ありません)



     あぁ、Mewよ。全てのポケモンの祖なる者、Mewよ。

     汝のその遺伝子は何処でその道を踏み外した。汝の遺伝子はどう間違えて彼らを生み出したのか。

     あぁ、Mewよ。愚かな私にその答えを――。


     (ページが破りとられている)


     ――彼らは未知の地にある湿地の中にその姿を隠していた。私は最初に彼らを見たとき、思わず言葉を失った。これは、本当にポケモンなのか、と。どこかの誰かが勝手に作った置物かと思った。

     彼らの姿は言葉にし難かった。

     魚の片側に両方の目がある、というのだろう。身体の構造的にはマンタインに近いものがあるかもしれない。(彼らの目は側面についているが)だが、そんなことを言ってはマンタインに失礼な気もする。茶色く平たい身体。薄いというわけではない。百科事典を二、三重ねたくらいだろうか。愛嬌のあるとはお世辞にも言えない目。その間に、上向きの口。何故か、分からないが尾びれだけはアクセントカラーのように黄色い。背中にも同じ色の黄色の点が存在している。一体、何の為に……。

     ――日
     
     今日、湿地の調査中に私の同僚が彼らを踏んだ。彼いわく、踏んだ瞬間、びりりとしたらしいがそれ以外は何もなかったのだそうだ。噛み付いたり、暴れたりもせず、動かなかったらしい。皮膚は以外にも硬く、丈夫なのだそうだ。彼らは凶悪ではない。

     ――日

     彼らは一応魚らしいが、水が苦手らしい。何故、湿地に住んでいるのだろう。
     
     ――日

     今日、私達は彼らに名前をつけることにした。泥の魚。彼らの名前は――(水でインクがにじみ、読み取れない)


     (最後のページ)


     ――あぁ、私達は愚かだった。光陰矢の如し。後悔したときには既に遅く、もうあの日には戻れない。
     Mewよ。何故、彼らはこの世界に生まれたのだろう。何故、彼らを生んだのだろう。

     Mewよ。何故、何故私は彼らを――。





    ――――

    意味不明でごめんなさい。分かった方はありがとう。

    本編を少しお待ちください。(序文と本編に関係はありません)
    連載にもなりません。

    彼らのことを馬鹿にしてると思われそうですが、とんでもない。
    愛しています。


      [No.1108] Re: 横レス:「ロスタイム」に関して 投稿者:小樽ミオ   投稿日:2010/12/30(Thu) 18:47:28     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    お二方とも、ご教示くださりありがとうございました。
    『洗濯日和』は3分で書かれた作品だったのですね!
    そ、速筆の域を出たペース、遅筆の私にはうらやましい限りです……><


      [No.1107] Re: 旅ポケ『ドーブル』の見聞録 投稿者:イケズキ   投稿日:2010/12/30(Thu) 15:36:32     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    巳佑さんの作品に出てくるかわいらしいキャラクターが、お気に入りのイケズキです。ドーブルいいです!タブンネいいです!

    コンテスト作品として読めなかったのは惜しいところでしたが、こうしてポケストで読めて良かったです。

    旅の途中で触れ合ったさまざまなポケモン達、たくさんの経験。ドーブルの思い出がとてもきれいでした。

    >  ……協力してくれたカモネギさんはいつもテンションが高いお方……いや、かなりの熱いハートを持っている師匠で、 
    >  カモネギさん曰く、弟子入りの為の鍛練というものに合格しないと『いあいぎり』を『スケッチ』させてくれなかったんだ。

    なんかカモネギには師匠のイメージがあるんですよねぇ。「おしょう」のせいかもしれませんが。

    次回が‘‘タブン’’あるそうなので、次のコンテスト作品を勝手に期待しています。


      [No.1106] 溺れるように  投稿者:クーウィ   投稿日:2010/12/30(Thu) 05:18:40     22clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    時間もタイミングも選ばずに湧く生き物。 習性です。 

    ……キラン君、ギャグキャラとしてしか見て無かったよ…済まなんだ(汗)
    彼らにこんな過去があったとはねぇ…… 撃沈したとは聞いてたんだが…予想外に重かった……

    上司とウィリデにちょっかい出されまくってる苦労人という印象から、一気に主要人物らしい貫禄と意味を持つに至ったキラン君。 …上司のレンリさん共々、この先に待ち受けているであろうものに対し、どうぶつかって行くのでしょうか…?

    …まーた楽しめそうな雰囲気に……!()


    >  机の上に置かれたバチュルは、心なしか痩せ細って見える。

    あの小さな体ですもんねぇ…そりゃきつい。 ……ベーはコンセントに張り付いて電気を吸い上げたりはしないし、本当に良く出来た子だなぁ。


    >  大型の鳥ポケモンのように、翼を広げ風を受けるような真似はしない。
    >  墜落を恐れているかのように、必死に羽をばたつかせている。
    >  ポッチャマ一族の泳ぎを“飛ぶように”と比喩するならば、さしずめあちらは“溺れるように飛ぶ”といった感じか。

    ここ好きです。 …結構唸らされました……(汗)
    ポケモンの世界ならではの比喩表現。 こう言うのって、結構見落としがちでもありますが…やはり上手く使われているのを見ると、思わず唸っちゃうんですよねぇ(笑)

    こう言うの、とても好きです。


    > 「あと、お前、シビシラスとヒトモシを連れてたな」
    >  仕事内容を伝える電話の最後で、彼女は急にそんなことを聞いてきた。
    > 「はい、ルーメンとテネブラエですよ」

    地味に印象に残った部分。 ……キラン君…結構ガチ構成だな!?(爆  オイオイ)

    まだまだ進化前で頼りないけど、無事に力を付けた暁には、それ相応のものを背負って立てるトレーナーになる……そんな感じで、なんか嬉しい部分もあって。
    …背中を追っているキャラクターの成長を描くのも、結構感慨深いんですよねぇ。 …難しいけど……(苦笑  爆)


    >  黒い髪は枕に向けてさらさらと流れている。長く伸ばせばもっと綺麗になるだろう。メッシュを入れない方が綺麗なのに、勿体無いと思う。

    …恥ずかしい事にここに至って、漸く彼女の髪が何を意味していたのかを悟りました……(汗  爆)  何度も接した情報だったんだが…まだまだだなぁ……(爆)

    読解力を、もっと磨かないと…な……(遠い目)


    > 「一度、乗ってみたかったんだ」
    >  そんなことを言うと、普通の女の子に見えた。
    > 「ゾロアークに化けさせれば良かったじゃないですか」
    >  キランがそう言うと、レンリは口を尖らせてこう言った。
    > 「それじゃ、つまらないし、有難味が薄れると言うか。兎に角つまらないだろ」

    ここはちょっと驚いた(笑) …パーティーではああだったが……意外と、そう言う面も持ち合わせておりゃしたか。

    …これをキラン君にチャンスがあると受け止めるか、それとも一過性の風の悪戯と見るべきか――  …まぁ、答えは自ら導き出すのがオトコか(苦笑)
    頑張れ、苦労人!(笑)


    >  結局、要するに、自分にレンリの恋人なんて無理で、釣り合わなくて、彼女を支えることなんて出来ないのだ、とキランは思った。
    >  それに、今は彼女の過去を受け止める自信がなかった。
    >  病院のベッドで垣間見ただけのそれにさえ、キランは身動き出来なかった。
    >  もっと強くならないと。
    >  ルーメンがシビルドンに、テネブラエがシャンデラに進化した時になれば、あるいは。

    闇を照らすには、たった一つのともし火でも十分なものです。  ……それが、より大きな松明のようなものであるならば、次は道を指し示すことも出来るでしょう。
    …例え彼が、今は受け止め、迎え入れられる様な存在ではなかろうとも――己が抱くともし火をより大きく、強く輝けるべく成し得るのであらば、何れは自然と、次のステップへと進める筈ですよ。

    …闇の中を行く孤独な旅人には、何時かは必ず、身を休めるべき場所が必要となるものですから――


    >  何も変わらないまま、今日も一日が始まる。

    …ここでふわもこウィリデの事を思い浮かべてしまう自分は、まさに空気読まず……(爆  汗)

    隠喩に託されたものを感じつつも、どうしてもそっち方面に頭が行ってしまうんだよなぁ。  …うーん……ゴメンナサイ!(爆)



    …では。  長々と、失礼致しました……


      [No.1105] 一夜の夢の思い出 投稿者:クーウィ   投稿日:2010/12/28(Tue) 16:15:40     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    年末は一番忙しい時期。  …しかし、余暇の手は緩めない(笑)

    きとかげさん、管理人さん、感想ありがとう御座いますです。
    …御返事が遅れて、まことに申し訳ありませぬ……(爆)


    >きとかげさん


    >字数オーバーとは……しかし、その分読み応えが非常にありまして、楽しませていただきました。

    字数オーバーですね(苦笑)
    …兎に角、短く纏めるのが苦手でして…(汗) 気がつけば、相当書きたい事抑えた筈なのに、この体たらく……(爆)

    取りあえず、暇潰し位にはなっているのなら幸いです。  …やたら長いので、単なる時間殺しになった場合はかなり…ね……(汗)

    主人公は、お察しの通りアイツです。  …昔死にかけたくせに、またああやって崖から落っこちてるんですから、相当悪運が強いのでしょう。
    もうちょっと危機管理面で進歩しような、と(苦笑)


    >まずこの一文に惚れました。
    こういう、世界が伝わってくるというか、上手く言えてませんが、そんな描写で、引き込まれてしまいました。

    俗に言う『マタギ文学』と言うヤツを、時たま読みますので…… その辺りから引っ張ってきた描写方法ですね。
    山の民俗や習慣に関する書籍も好きですから、そう言う所から妄想を膨らませて書きました。

    ああ言うのは面白いですので、結構お勧めです(笑)


    >過去から培ってきた知恵には素晴らしいものがあるのに、それら全てを切り捨てる時代に進んでしまう。
    もう戻れないのは自明ですが、改めて言われると、考えてしまいますね。
    >分業を進めて、システム的には優れているはずなのに、何かおかしい。捨てたものの中に、捨ててはいけなかったものがあるんじゃないか。そう思いました。

    『捨てる』と『変わる』――これが、この文の中で取り上げてみたかった、キーワードです。

    …自分は普段、店舗で廃棄なんかにも携わるパートで働いておりますが…毎日毎日ドシャドシャと捨てられていく期限切れ商品や、製品化の過程での端材を眺めていると、どうしてこれだけ無為に廃棄出来るのかと、何時も空恐ろしく思うんです。
    それに以前、TVで国が貯蔵していた余剰米を、大量に海に投棄してたりしてるのも見たりして…… 農作業もやってますから、ここでも大ショック。
    食べたくとも食べられない立場の者が如何に多いかを考えると、本当にえげつない……

    それらを生み出す際に下敷きにされている存在が如何に無為に見られているかを、元虫取り少年としては、どうしても書いてみたかったのです。

    …後、以前あちこちを回っていた頃、偶々訪れた所でお世話になったアイヌの方に、ダムについての御意見を伺った時の心情も、この作品を書く上での、大きな指針となりました。
    その方は、ダム建設の強引な理屈を指して、こう仰いました。
    「水害の防止の為にダムが要るといわれたって、我々にはそうは思えない。 …元々アイヌは、洪水になる様な所には住まないんだから」――と。
    長く住んでいた場所を強引に追われたりして、結果的にそんなものを必要とさせている現状を考え直してもらう方が大切だと、その方は仰いました。

    …変えないと、生きていけないような世代――そんな時代に生まれた人間の自己矛盾と苦悩、それにその理不尽さについてを、一度書いてみたいと思った訳ですね。  上手く行きませんでしたが……(大爆)


    >そうだといいですねえ……

    ですねぇ……(遠い目)
    …まぁ、この先の事はこの先の者が決める事ですから、まだ望みはありますよ、きっと――

    ミミロルも何れ大人になって、自分の与えて貰った物を精一杯の愛情として、次の世代に伝えていくでしょう。  …あの節には、そんな隠喩をかけています。


    >No.017さん


    > ちょwwww
    > それはあれですか中の人が( いやなんでもない。
    > あとたまに表示が暴走しますが、たぶんリロードすれば直ります。

    いえいえ…!? 決してそんな心算では!?(汗)

    単純に、二つ窓開いて作業してた所――片方が一段落したので、「さぁポケスト覗くか!」と画面を見た所で、ミカルゲさんがですね……
    『ポケモンストーリーコンテスト!  お題は足跡!――』……という呟きで、ツイッターの中身を埋め尽くしていたのです(爆)

    これは祟りでは無いだろーかと驚き恐れ、慌ててスマヌスマヌとメモ帳を立ち上げて書き殴ったのが、このお話という訳ですな(苦笑)

    クオリティが高く見えるのは完全に気のせいです。  …お疲れなんですよ、激務で――
    御自愛なすってください……


    > さ、さすが各自中毒を辞任するだけはある、これがちゃんとした考証に裏打ちされたhsどqwshふじあq;そj

    活字中毒はすごいぞー  なんせ、パクれるネタや表現が幾らでもあるからなっ!(笑  オイコラ)


    > 字数オーバーでコンテストに掲載できないのが惜しいorz

    こんなのより、他の方の未発表作の方がずっと惜しいですよー……
    審査する側としては大変だけど、そう言った作品を一つでも多く読みたかったです……(寂)

    ここに投稿して頂け無いかなぁ…巳佑さんみたく……  …あれも実に惜しかった……


    > どうでしょう。
    > ちょうど、ロスタイムに間に合わなかった足跡もあることだし、
    > コンテストが終わってアーカイヴ掲載になる際には一緒に掲載する形では。

    自分は別に構いませぬが……(汗)
    …こんなもんで良ければ、どうぞお納め下さいませ〜(平伏)

    取りあえず、アーカイヴ掲載と言う事で、少しでも未発表作品で日が当るものが増えたら嬉しいなぁ……


    …では。  どうもありがとう御座いました…!


      [No.1104] Re: ぬおおおおおっ…… 投稿者:巳佑   投稿日:2010/12/28(Tue) 01:02:18     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    > あ、あと匿名で掲示板に置いて、事情書いてくれれば、掲載だけしてあとで本人確認とかも出来たかも……など、と。
    > とりあえずそういう時はコンテストスレで相談です。

    …………その手がありましたね。(汗)
    あぁ! 頭が固い自分が恥ずかしいですっ。(汗)
    PCメールが本当に超が付くほどの初心者なので、
    ……恐らく、次回、お世話になると思います。
    そのときはよろしくお願いします。



    > 次回がありましたなら、ぜひ。

    今、考えている物語の中で一つだけ、
    「次のお題を予想してみよう!!」
    ということでコンテスト用に
    暖めている作品が一つ、水面下で動いています。
    果たして、予想が当たるかどうか、今から楽しみにしてます。(汗)



    > 追記
    > どうでしょう。
    > ちょうど、字数オーバーで応募できなかった足跡もあることだし、
    > コンテストが終わってアーカイヴ掲載になる際には一緒に掲載する形では。

    え!?
    いいんですか!?
    もちろん、私はOKですよ。

    本当に色々と……ありがとうございます!


    それでは失礼しました。    


      [No.1103] ■投票はじまりました 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/12/27(Mon) 20:55:33     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    http://masapoke.sakura.ne.jp/pokemonstory-contest.html

    皆様、大変お待たせ致しました。
    ポケモンストーリーコンテスト、投票がはじまりました。
    投票の方法をよく読んで、投票をお願い致します。

    期限は1月14日までです。
    でも集計大変だから早いとありがたいよ(笑)。

    感想に関しては審査員がいるのであまり無理はなさらないでくださいネ。
    一言とかでもいいですよ。


    今ちょっとずつ感想、批評を書いているところです。
    ☆は振り終わりました。

    ☆   ……12作品(自作品含む)
    ☆☆  ……6作品
    ☆☆☆ ……4作品

    と言ったところです。
    調整するかもしれないけれど。

    総評に書きましたが、全体レベルは非常に高いと個人的には思っております。
    参加点☆のみの作品が結構ありますが、別に0点とかそういうわけじゃないです。
    高評価を出したい作品がいくつかありましたので、差別化の意味で3段階に振り分けております。
    相対評価という風に解釈いただければと思います。
    また評価にあたっては、お題「足跡」の解釈、料理の仕方を重視しておりますので、純粋に作品のおもしろさ・出来ということであれば多少順位が変わるかもしれません。



    というのはあくまで私の個人のつけかたなので、
    皆さんがどうするかはおまかせします。
    参考になれば。


      [No.1102] クオリティ高すぎ吹いた 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/12/27(Mon) 20:09:25     23clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > ……何かツイッターの台詞が暴走していた、ミカルゲ鈴木氏に捧ぐ―― (爆  笑)

    ちょwwww
    それはあれですか中の人が( いやなんでもない。
    あとたまに表示が暴走しますが、たぶんリロードすれば直ります。


    クオリティ高すぎて吹いた。

    さ、さすが各自中毒を辞任するだけはある、これがちゃんとした考証に裏打ちされたhsどqwshふじあq;そj
    字数オーバーでコンテストに掲載できないのが惜しいorz
    これは売れるレベル。


    どうでしょう。
    ちょうど、ロスタイムに間に合わなかった足跡もあることだし、
    コンテストが終わってアーカイヴ掲載になる際には一緒に掲載する形では。


      [No.1101] お狐様の御利益 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/12/27(Mon) 15:34:09     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 「グヒヒヒ」
    >
    > あっ、ゾロア。
    > お前、今、笑ったな?
    > もふもふの刑にしてやろうか……。
    > …………。
    > ……。
    > ゾロアって狐だよな。
    > こいつと出逢ったのって確か神社だったよな。
    >
    > 二礼二拍一礼。
    >
    > 「ガウッ?」
    >
    > あぁ、ゾロア。気にしなくていいぞ。
    > なんとなくそういう気分だったから。

    く、くそ!
    なんとなく読んでいたのに、ここで萌えたぜ! こまったときの神頼み! いやゾロア頼み!
    もふもふの刑私もやりたわぁ。
    出会いが神社いいなぁ。

    コイルの流し目は無駄にプレッシャーがかかりそうです。
    ハックション。


      [No.1100] ぬおおおおおっ…… 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/12/27(Mon) 14:03:47     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    うああああああああ、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!
    そんなことならメールフォーム置いてけばよかったorz

    あ、あと匿名で掲示板に置いて、事情書いてくれれば、掲載だけしてあとで本人確認とかも出来たかも……など、と。
    とりあえずそういう時はコンテストスレで相談です。

    次回がありましたなら、ぜひ。

    次回はあると思いますよ。タブンネ。



    追記
    どうでしょう。
    ちょうど、字数オーバーで応募できなかった足跡もあることだし、
    コンテストが終わってアーカイヴ掲載になる際には一緒に掲載する形では。


      [No.1099] 幻影幻想曲 投稿者:紀成   投稿日:2010/12/27(Mon) 14:02:45     33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    真冬、しかも聖夜の闇の中に映し出される家。
    紅い炎に綺麗に包まれていく。
    (今までありがとう、なんて)

    全く思いもしなかった。早く消えて無くなってしまえばいいと思った。


    カオリの部屋には、等身大の鏡がある。時々そこに立って、目を凝らすのだ。
    やぶれたせかいへの、扉が開かないかと。
    「あっちの世界は、どんな生き物が住んでいるんだろうね」
    カーテンを開けると、冬独特の日差しが部屋に入って来て、暫く窓を明けていないことを思い出す。
    そして、ヨノワールのことも。
    彼とは二ヶ月近く会っていない。冷たく凍りつくような寒波のせいで、魂の回収が間に合っていないのだろうか。
    貧富の差が激しいこの世界。自分はおそらく富のポジションだったのだろう。火宮の家は広く、数年住んだ自分でも分からない部屋が沢山あった。
    御祖父様、御祖母様、自分の母となった叔母様。その他にも沢山の人間が住んでいたが、思い出せない。
    いや、覚えていないの間違いかもしれない。だって、あの晩に自分以外全て一緒くたになったから。

    ただの、醜い物に。

    『とんでもない事を考えているな』
    後ろから肩を叩かれて、カオリは我に返った。
    「あの日にああしなければ、逆に自分が危なかった」
    『重すぎたか』
    「全く。逆に軽いくらい」
    デスカーンは心の中で思い返していた。
    あれから、一年近く経つ。ただの失火と警察では判断されたが、本当は・・
    「私は自分の夢を叶えたかっただけなんだ。それなのに皆邪魔した」
    夢は人を盲目にさせる。
    「だから、全部一緒くたにした」

    私達とカオリがやったことだ。
    当初、警察も少しはカオリに疑いの目を向けたが四方向から同じ時間に火を出すことは時限爆弾でもないと限りなく不可能に近いため、結局失火による火事にまとめられた。
    「そろそろ進展がある気がする」
    『何がだ』
    「ギラティナに会うシナリオが、始まる」


    『・・その通りだ』


    後ろから突然声がして、カオリは振り返った。気配を感じなかった。ゴーストタイプか。
    カオリが、その名前を呼んだ。
    「ヨノワール」
    『今は、モルテと呼んでくれ』
    モルテは柄に合わない態度だった。何か言わなくてはならないような、でも言いたくないような事を閉じ込めている感じだ。
    「久しぶりだね」
    『ああ。二ヶ月ぶりくらいか』
    「自ら私の家に来るって無かったよね」
    『・・・』
    背後にいたデスカーン達は嫌な予感がしていた。いざとなったらモルテを攻撃するつもりで、戦闘態勢になっていた。
    「で、用件は?」
    『カオリ・・』

    いつかは話さなくてはならないと思っていた。そうしなくては、カオリ自身も自分自身も両方報われない結末が待っていることになるからだ。
    だが。

    『私は・・』

    言ったとしても、どちらかにはバッドエンドが訪れるのは決まっていた。

    『ギラティナの、使いだ』

    一分。ニ分。三分。普通なら短い時間だろう。だが後ろにいるデスカーン達と、返事を待つモルテには永遠に続くように思えるくらい長い時間だった。
    「・・で?」
    『は?』
    カオリは肩を竦めた。
    「質問してるのはこっちなんだけど」
    『分かった。もう一つ付け加える』

    考えれば分かることだ。
    ギラティナは魂を冥界に送る仕事をしている。
    その存在に会うということは、

    『ギラティナに会うには・・死ぬ方法しか無いんだ』


    ・・今、こいつは何と言った?
    死ぬしか無い?
    夢を叶えるために、カオリは死ぬのか?

    『ふざけるなっ!』
    デスカーンが叫んだ。カオリの鼓膜がビリビリと震える。
    『死ぬことで叶える夢なんて夢なんかじゃない!
    ただの自己満足』
    「黙れよ」
    カオリが口を開いた。冷たい、凍てつくような声が全員の神経を震わせた。
    「モルテ、それを私に言いに来たってことは・・
    連れて行ってくれるんだよね?」
    大きな手を取る。
    「ねぇ?」
    有無を言わさない口調。自分の死よりも、夢を叶えることを選ぶ・・
    そういう意思が見て取れた。
    『カオリ、私はお前を連れていくことは出来ない』
    「・・どういうこと」
    モルテの手がカオリの両肩を抱いた。
    『死んで欲しく無いんだ』

    暫くの沈黙。カオリはキョトンとしている。
    不意に。
    「・・はは」
    カオリが笑い出した。
    「モルテも私の夢を壊すつもりなんだね・・」
    『さっきデスカーンが言った通りだ。死を持ってしてまで叶える夢なんて、夢じゃない』
    「知らないよ」
    冷たく言い放つ。モルテに抱きついた。
    「この物語に幸せな終わりなんて誰も望んでないんだ。私の夢を壊すことが幸せな終わりになるの?」
    『・・』
    「答えてよ」

    まるで駄々っ子だ、とモルテは思った。大人びているかと思いきや、玩具を奪われた子供の如く振る舞う。
    カオリにとって、夢を叶えることは自分の存在意義だったのだろう。だからモルテに対して挑発的な態度を取っている。
    (所詮はまだ子供、か)
    そんな彼女を愛おしく思ったのもまた事実だ。そして、死んで欲しく無いと思ったのも、事実だ。
    『夢を叶えられれば、死んでも構わないというんだな』
    「そうだよ」
    『では、反対に聞く』


    『お前は何故・・震えている?』

    モルテの胴体に抱きついたままのカオリの体は、震えていた。
    「武者震いだよ」
    『こんな状況で震えるのは武者震いとは言わない。
    ただの拒絶反応だ』
    カオリの体がピクッと反応した。そっと体から引き離す。
    両目に、涙が溜まっていた。
    「何だよ、」
    『誰も幸せな終わりを望んでいないと言ったな。私からも言わせてもらう。


    お前が夢を叶える代わりに死ぬことなんて、誰も望んでいない』

    カオリは目尻に涙を溜めていたが、流しはしなかった。
    幻影は泣かない。
    あの日、家を燃やしてからずっと定めていた掟だ。
    戻らない。戻れない。
    それでも姓を火宮のままにしたのには、まだ甘かったのかもしれない。
    自ら死にたいなんて思ったことは無かった。火宮の人間のことはどうでもよかった。ただ、両親の分まで生きようと思った。
    「・・」
    私が夢を叶えるために死んだら、あの二人はどんな顔をするだろうか。
    見たくはない。
    ただ、火宮の人間が生きていたら、見てみたい気もする。
    醜く歪んだ、鬼の顔。

    そこでまた、私はあの時と同じことをしただろう。
    皆、同じ塊に・・

    『カオリ』
    『マスター』
    後ろでゴーストタイプ達の声がする。焦っている様子は感じられない。
    「モルテ」
    『・・』


    「私は、私の道を行く」



    また、静かな夜がやってこようとしていた。
    ただ、かつての静けさとは少し違った。
    念、怨み、妬み、復讐。
    そんな物はどこにもなく。

    ただ、希望と絶望の色が半分ずつ混ざり合った。
    そんな夜だった。

    ーーーーーーー
    『ファントムファンタジア』


      [No.1098] 旅ポケ『ドーブル』の見聞録 投稿者:巳佑   投稿日:2010/12/27(Mon) 12:08:50     91clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     この世には世界中のポケモンに出逢いたいと、旅をしている人間がいる。
     俗に言うポケモントレーナーという者の他には
     世界中のポケモンと出逢いたいと、旅をしているポケモンだっている。

     ベレー帽のような頭をしており、
     長い尻尾の先端は絵筆のような形をしており、
     そこから文字や絵の産声が上がる。
     彼の名はドーブル。
     世界中のポケモンと出逢う為に世界中に足跡を残して来たポケモンだ。

     
     
     がさこそと震えるような音は多分、誰かを誘うかのような音。
     ボクはその音の源に逢おうと、件の茂みをかき分け――。
    「ねぇ! 君、見たこともないポケモンだね!」
    「あ……はい。え……と?」
    「ボクの名前はドーブルって言うんだ! 君の名前はなんて言うの?」
    「わ、わたしですか……?」
    「うんうん! 君の名前、教えてよ!」
    「は、はい……わたしはタブンネといいます……」
    「タブンネさんかぁ……あぁ、それで早速、頼みごとがあるんだけど、いい?」
    「……なんでしょうか?」


    「君の足跡、取らしてくれない?」

     
     用意した紙にタブンネさんの右足が静かに乗る。
     可愛らしい音が一瞬した後、紙の上に現れて来たのは一つのハートだった。
    「ごめんね。いきなり頼みごとなんかしちゃって。あぁ、そうそう。
     そのインクは本当に水で簡単に落とせるから心配しないでね」
    「では……ちよっと洗ってきますね……」
     恥ずかしそうにタブンネさんは微笑むと、ゆっくりと立ち上がって川の方へと向かって行った。
     タブンネさんのふわふわんな尻尾が小刻みに踊っていて、とても可愛い。
     それにしても……タブンネさんかぁ。
     ハート形の足跡かぁ……とても可愛らしいなぁ。
     紙に映ったタブンネさんの足跡を改めて眺めながらボクは尻尾を揺らしていた。
     恐らく、今のボクの顔は生き生きしているに違いない。
    「ただいま……戻ってきました……」 
     どうやら嬉しいという感情に時の流れを忘れさられてしまったらしい。
     川から戻って来たタブンネさんがいつの間にか、ボクの隣に座っていた。
    「あ、タブンネさん。本当にありがとね! おかげでいい足跡がまた増えたよ!」
    「いいえ……そんな、私はただ……その白いモノに、足跡を残しただけですよ……」
     両腕を後ろに回して、もじもじさせながらタブンネさんが答えてくれた。
     瞬きの数も忙しそうにさっきから増えているような気がするんだけど。
    「……あ、あのドーブルさん。一つだけ、聞かしてくれませんか?」
    「うん? 質問ってこと? なんでも聞いていいよ? さっきのお礼は後で渡しておこうかな」
     お礼にとびっきりおいしいモモンの実を出そうとしてボクは手を止めた。
     そしてタブンネさんの小さな唇が動いた。
    「ドーブルさんは……旅をしているかたで……。
     そして、足跡を、集めているみたい……ですが、どうしてなのですか……?」
    「それってボクの旅の理由ってことでいいよね?」 
     誤解防止の為にボクは確認する意味を込めてタブンネさんに尋ねてみると、
     彼女は首を縦に振ってくれた。
    「ボクたちポケモンってさぁ、ポケモンという同じ名前なのに一匹一匹の姿形が違うじゃない?
     なんか、それにロマンを感じたというかなんというか…………」
     
     ボクは産まれたとき、この世界のポケモンってボクと同じ姿をしたモノしかいないのではないかって思っていた。
     けど、そうじゃなかった。
     巣から外へ出てみるとボク以外の生き物がいた。
     ボクと同じポケモンと呼ばれているのに、その子は丸くて桃色の体をしていた。
     歌がうまかったから今でも鮮明に覚えているよ。
     心地よくて思わず寝てしまったら、思いっきり『おうふくビンタ』をされたことも、
     「ワタシの歌をさいごまで聞きなさ〜い!!!」っていう言葉を浴びせられたのも覚えているよ。

    「そしたらさ、世界中のポケモンってボク以外にはどんなヤツがいるんだろうって気になって
     気が付いたら旅に出てたんだ。そして……足跡はそのポケモンと出逢ったという変わらない証として集めているんだ」

     ちなみにボクが足跡を押してもらう為に使っている紙は親切な人間からもらったものだ。
     人間は悪いヤツだから近づくなって母さんから耳にオクタンができるほど言われたけど、
     いざ出逢ってみたらイイ人もいたんだ。ポケモンと同じで人にも色々な人がいて、
     ボクの世界観がどれだけ小さかったことか教えられている気がするなぁ、この旅は。

    「大変……だったのでは、ないですか……? いろいろと……その…………」

     確かに色々と大変だった……って現在進行中だけど。
     心配そうにボクの顔をのぞき込んでくるタブンネさんの不安を晴らすかのようにボクは笑った。
     実際、旅は大変だけど苦しいに限定されたわけではないしね。
     
    「こうやって可愛らしいタブンネさんに出逢ったっていう嬉しいことだってあるんだから」
     タブンネさんの顔が若干、赤くなったような気がした……多分ね。

     ボクたちドーブルには不思議な技があるんだよ。
     『スケッチ』っていう技でね、相手のポケモンの技を自分の物にできる技なんだ。
     それで、色々な技を自分の物にしては自分の旅ができる範囲を広げていって…………。
     例えば……。
     
     ラプラスさんから『なみのり』や『ダイビング』などを『スケッチ』させてもらって、海にいるポケモン達に出逢ったりした。
     紙を使っている関係上、その場で足跡は取れなかったけど、代わりに鱗をもらったなぁ……。
     川辺付近のポケモンからは陸から上がってもらって足跡をもらっていたりした。
     それにしても、あのラプラスさんは元気にしているかな。
     とても口笛が上手くて、思わず昔のことを思い出しちゃってさ……ちょっと涙が出てきたの覚えているよ。
     
     カモネギさんから『いあいぎり』を『スケッチ』させてもらって、細い木々を倒しては道を開いていったこともあるよ。
    「いいかあぁぁぁあ!! いあいぎりぃ、とは! 侍の心を持ってぇええ!! 切り込むのだぞぉぉおお!!」
     ……協力してくれたカモネギさんはいつもテンションが高いお方……いや、かなりの熱いハートを持っている師匠で、 
     カモネギさん曰く、弟子入りの為の鍛練というものに合格しないと『いあいぎり』を『スケッチ』させてくれなかったんだ。
    「侍のぉおお! 心をっ! 持たぬやつにぃいい! 中途半端なやつにぃいい!! この技はぁああ! 教えんっ!!!」
     …………恐らく師匠のおかげで根性という言葉が体の芯まで染みついたと思う。

     ゴーリキーさんから『かいりき』や『ロッククライム』などを『スケッチ』させてもらって、山や谷などにいるポケモン達に出逢ったりした
     ウリムーさん達の案内で雪山の温泉に赴いたこともあったなぁ…………。
     雪山だったから、そこで出逢ったポケモン達と雪合戦をしたりとかしたんだ。
     そして寒い寒いと身を震わせながら再び温泉へ……本来は疲れを取る為の温泉だったのに、
     雪合戦と温泉の鬼ごっこで逆に疲れちゃった……けど、なぜだか心地よい疲れだったのを覚えているよ。
     ……また、皆と雪合戦したいなぁ…… 

     ピジョンさんから『そらをとぶ』を『スケッチ』させてもらって空にいるポケモン達に出逢ったりした。
    空を飛ぶ感覚って、まるで自分が雲になったかのようで摩訶不思議なんだよね。
     そして空を飛んでいるポケモンたちには悪いんだけど、
     足跡を取らしてもらう為に地上まで降りてもらったこともあったなぁ……。
     あっ、そうそうボクは普段は歩いて旅をしているんだけど、
     ある程度、紙がたまると、一回、自分の巣に戻っているんだ。
     荷物がかさばるといけないしね。
     その巣に戻る際に『そらをとぶ』が結構活躍するんだよな、これが。

    「……あの、いつも空を飛んで移動すれば……いいのでは……ないでしょうか……?」
     ボクの冒険談を聞いていたタブンネさんからもっともな質問が飛び出てきた。
     確かに、普段から『そらをとぶ』を使えば楽かもしれないけど……。
    「う〜ん……それなら空を飛んでいるポケモンには簡単に出会えるけど、
     逆に地上にいるポケモンたちに会いにくくなるから、いつも……というわけにはいかないんだ。
     それに、ボクは空を飛んでいるより、こうやって地上を歩いて行くほうが性に合うしね」
    「……ふ、ふくざつな事情があったの、ですね…………」
     心配そうな顔を見せるタブンネさんを安心させるかのようにボクは微笑んだ。
    「そんな深刻な問題じゃないから大丈夫だよ。要は適材適所ってやつ……って言って分かるかな?」
     タブンネさんの頭の上から疑問符が浮かび上がったかと錯覚したぐらい、タブンネさんの青い瞳はきょとんとしていた。
     それがとても可愛らしいものだったから、悪いと思いつつもボクはつい笑ってしまった。
    「それと言い忘れてたけど、ボクは歩く方が好きだからさ」
    「歩くのが……大好き、なんですか……?」
     
    「うん、大好き」
     ボクは自分の足を示しながら答えた。
     
    「歩くとさぁ、地面に足跡が残るでしょ? ……ボクはその足跡が大好きでね。
     なんか……自分の物語を残してきた感じがして、ボクにとっては自分の足跡を見ることで、
     生きている……っていう想いと感覚がすごくするんだよ。
     色々とある、生きている、という絵を描くということの一つに、
     きっと足跡があるんだって思った瞬間に、すっごいロマンを感じてね。
     ……それ以来かな、歩くことが大好きなったのは」

    「なんか……カッコイイですね、ドーブルさんって…………」
     ボクの話を聞いたタブンネさんが感心したかのようにボクを見つめてくる。
     うわ、わわわっ。
     女の子からそんなに見つめられるとボク、困るんだけどな……と言いたげにボクの尻尾は揺れていることだろう。
     
     あ、ちなみに誤解がないように補足説明をさせてもらうと……。
     足跡がないヤツは駄目なヤツ、というわけではなく、
     本当に、ただ単純にボクが足跡大好きポケモンなだけの話で、
     出逢ったポケモンに足跡を取らしてもらっているのはボクの大好物が足跡、というのと、
     それと、もう一つ、この方法の方が相手に時間をあんまり取らせなくていいかな、と思ったからである。
     ……ボクは一応、絵描きができるけど、早く描くというのが苦手というか、
     ついつい凝っちゃって、時間がかかってしまうんだよね。
     納得いかない! って感じに。
     ……足跡を持たないポケモンに関しては鱗などをもらうとか以外に、その姿を描かしてもらうことがあるんだけど、
     時間をかけすぎないようにしなきゃ! って、いつも意識して描くようにしているから大変なときもあるんだ。

    「……ドーブルさんは……とても絵が上手なんですね……」 
     ボクがトートバックから出した、今までに初めて出逢ったポケモンに足跡を取らしてもらった紙と、
     ボクが描いたポケモンの絵をタブンネさんはまじまじと見ていた。
    「あの……よろしければ、わ、わたしの絵も描いてくれません……か?」
     いきなりのタブンネさんの提案を映したボクの目は丸くなった。
     今まで、自分からボクに描いて欲しいと言ってきたポケモンが少なかったからである。
    「す、すいませんっ。……だ、だめでしたら……」
     しゅん、とうなだれそうになるタブンネさんにボクが慌てて声を出す。
    「い、いや! 突然の提案で驚いただけで、もちろん、大歓迎だよ!」
     その言葉を聞いたタブンネさんの顔色が明るくなったような気がした。
     ……タブンネさんって分かりやすいところもあって、本当に可愛いなぁ。
     「じゃあ、描かせてもらうね」

     
     真白の紙の上で踊り続けてくれたボクの尻尾は、
     可愛らしい桃色、独特な柔らかい肌色、ふわふわで甘い白色、そして癒されそうな青色を紡ぎ、
     一匹のタブンネさんを描いた。
    「あ、ありがとう、ございます……! こ、これ、ほんとうに、もらってもいいんですか……?」
     タブンネさんが大事そうにボクが描いた絵を優しく抱きしめるように持ちながら尋ねてきた。
    「もちろん。こっちも喜んでもらって嬉しいよ」
     さて、タブンネさんも喜んでもらっていることだし、これでめでたしめでたし……という頃には、
     もう月が昇り始めていた……って今夜はどこで泊まろうかな……と迷い始める。
    「あ、あの今夜は、ぜひ、わたしのところで休んでいって……ください……」 
    「え? いいの?」
    「は、はい……狭い場所かも……しれませんが……」
     折角のタブンネさんのご好意を無駄にしたらいけないし、
     それと正直言って、こんな可愛い子と一緒に寝られる機会なんて……そうそうないしねって言ったら怒られるかな?
     とりあえずボクはタブンネさんの住みかに案内してもらうことにした。
     

     タブンネさんの案内でボクがたどり着いたのは一本の大きな木。
     その大きな木の幹には穴が開いていて、その中の空間は二匹ぐらい入っても大丈夫そうであった。
     ボクは夕食に渡そうと思っていたモモンの実を『ひのこ』で少しあぶり、タブンネさんにごちそうした。
     程よく熱が通ったモモンの実から……とろけるような甘い蜜が口の中に広がる。
     タブンネさんも青い目を一気にキラキラと輝かせるほどの衝撃を受けたらしく、大絶賛してくれた。
    「……ドーブルさん、ちょっと、いいですか…………?」
     夕食を食べ終わると、後はもう寝るだけかなと思っていたところに、タブンネさんの顔がボクに近づいてきた。
     タブンネさんから先程のモモンの実とは違う、甘い香りがしたような気がした。
     なぜだかボクの心拍数が速度を上げているような感覚が……。
    「ちょっと……失礼しますね……」
    「え?」
     戸惑っているボクをよそにタブンネさんは耳から垂れている、先端が可愛らしく、ぐるっと曲がっているモノをボクの体に当てた。
     そのままタブンネさんは目を閉じて…………しばらくすると、ゆっくりと目を開けた。
    「…………少し、疲れ気味、のようですね……少しばかり、ここで休まれていっては……どうですか?」
    「……………………」
     タブンネさんの真剣な青い眼差しを受けて、ボクは、もしかして…………と思った。
    「す、すいません。いきなり、
     そ、その……わたしたち、タブンネはこの耳の触覚で、相手の体調を……調べる……ことができるんです……」

     …………。
     
     ……これは、多分、ばれたかも。

     う〜ん、今まで秘密にしてきたことなんだけど……実は…………。


     ボクの命はもう数年ぐらいしかないらしいんだ。


     あれは……数ヶ月前、ハピナスさんに出逢ったときのことかな。
     足跡を取らしてもらったとき、ボクはどこか、体調がだるかった。
     心配をかけさせないように、ボクはポーカーフェイスを顔に描いたつもり……だったんだけど、
     それを見抜いていたんだろうね、きっと……ハピナスさんは。
     すぐにボクの体を調べると言って、診査をしてくれた結果――。

     ……ボクの命は、もって、後、三、四年らしい。


     そう、ハピナスさんが告げたのだった。


    「ごめんね、心配かけさせちゃって。でも、ボクは明日の朝には出発するよ」
    「えっ!?」
     タブンネさんの青い目に驚きの色がにじみ出ていた。
     ……これはもうカンペキに、タブンネさんは知ってしまったとみて、間違いなさそうだった。
     タブンネさん自身、なんて言えばいいのか分からないのかもしれない。
     気まずい沈黙の間が降り注いでくる前に、ボクは自分の意思を言うことにした。
    「これまで……色々なポケモンに出逢ってきたけれど……タブンネさんは伝説と呼ばれるポケモンを知っているかい?」
    「でんせつ……ですか?」
    「うん。人間たちやポケモンたちの間での語り継がれているだけで、
     実際に姿を見たものがあまりいないポケモンのことなんだけど……。
     そのポケモンについての有力な情報を手に入れてね、それを元に、これから、そのポケモンがいるって言われているところへ行くんだ」
     ポケモンの中でも伝説とも言われているポケモン。
     真の姿は分からないものの、その伝説という言葉だけで新たなロマンを感じさせてくれるポケモン。
     一体どういうポケモンなのか、
     手足を持っているとしたらどんな足跡なのか、
     それを見ないまま死ぬのはごめんだった。
     ……まぁ、ご覧の通り、ボクは最期まで新たなポケモンを求めて、新たな足跡を求めて旅を続けることだろう。
     それが使命とか、宿命とか、そういう堅いものじゃなくて、
     ……まぁ、もちろん、世界には色々なポケモンがいるということを知ってもらいたいという気持ちは少なからずあるけど。
     ボクみたいにさ、自分の世界を広げていってほしいなっていう想いもある。
     
     だけど、一番の理由は――

     大好きなこと、だからかな。

     そうじゃなかったら、今まで、ここまで、足跡をこの世界につけてこなかったと思うんだ。


    「……あの、ドーブル、さん」
     ボクを見ていたタブンネさんの青い瞳が若干、うるんでいた。
    「……そ、その、『スケッチ』と、いう、わざは、まだ……つかえ、ます、か?」
     今にも泣きそうなタブンネさんだったが、必死に青い湖からあふれ出しそうな雫を押さえ込んでいた。
    「うん……まだ二、三回使えるはずだよ」
     自分のだいたいの感覚から数値を出したボクにタブンネさんが微笑みを努めようとした。
    「よ、よろしけ、れば……わたし、の……『リフレッシュ』と、いうわざを『スケッチ』して、くだ、さい……」
     タブンネさんが声を上げて泣くことはなかった、しかし、その青い湖から数粒が空中へと羽ばたいた。
    「きっと……苦しく、なった、とき、に……役に、立つ……と、思い、ます、から……」
     
    「ありがとう……タブンネさん」

     ボクは感謝の気持ちを込めてタブンネさんを抱き締めた。



     
     翌朝、青い空が大きく広がっている中、彼――ドーブルさんは新しい足跡を一歩一歩つけながら出発しました。
     わたしは迷いました。
     ……あのとき――ドーブルさんを初めて見たとき、とても嫌な予感がしました。
     そして、その嫌な予感は当たってしまいました。
     わたしはドーブルさんを止めたほうがいいのではないかと思いました。
     これ以上、自分の体を傷つけて欲しくなかったから……単なるわたしのわがままだった想いかもしれませんが。
     しかし、わたしは迷いました。
     ドーブルさんの足跡を止めるようなことをしてもいいのだろうかと。
     彼の言う生きている証や想いを消してしまってもいいのだろうかと。
     ………………結局、ドーブルさんの意思が強かった。
     わたしなんかでは、止めることができなかった。
     
     ………………。
     
     わたしは、ドーブルさんに出あえて、誇りに思っています。

     どうか彼が一つでも多くの足跡を残せるように。


     


     この世には世界中のポケモンに出逢いたいと、旅をしている人間がいる。
     俗に言うポケモントレーナーという者の他には
     世界中のポケモンと出逢いたいと、旅をしているポケモンだっている。

     ベレー帽のような頭をしており、
     長い尻尾の先端は絵筆のような形をしており、
     そこから文字や絵の産声が上がる。
     彼の名はドーブル。
     世界中のポケモンと出逢う為に、世界中に足跡を残して来たポケモンだ。
     
     今、私たちが様々なポケモンを知っているのは、
     旅ポケ『ドーブル』が残してくれた足跡が起こした、キセキなのかもしれない。






    【足跡を書いてみました & 間に合いませんでした(汗)】

    ポケモンストーリーコンテストに挑戦してみよう! と書いたところまでは良かったのですが、
    メールという段階で見事につまずきました。
    家からのPCメールは初めてで……出来れば、家からのPCで送るぞ! とあれやこれや試みてみましたが失敗。(汗)
    方向音痴ならぬ、メール音痴状態が続き……
    「しょうがない……こうなったら最終手段として残しておいた、学校のパソコンの力を借りて……!!」
    まだロスタイムもあるし、間に合う……かもしれないと思いました(汗)

    ……そして、現在に至ります。(汗)
    自分の考えが甘かったです、すいません。(汗)

    間に合わなかったのですが、せっかく書いたのだし、
    コンテストにはもちろん参加出来ないけど、
    ポケスト! に投下しようということでここに置いておきます。

    うぅ、次こそは家からのPCメールを操れるようになれたらいいなぁ(汗)……と願いながら。 




    ありがとうございました。


      [No.1097] 彼らの 投稿者:てこ   投稿日:2010/12/27(Mon) 01:50:21     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     声が飛び交っている。その声が悲鳴でも怒声でもなく、喜びの声であり笑い声であることを俺はとても嬉しく思う。
    「あ……」
     鼻をすする。目の前の景色がぐにゃりと歪む。慌てて俺は真上を向いた。眩しい光が目を射る。太陽の光がこんなにもありがたいものだとは思わなかった。眩しさに幾度か瞬きをすると頬の上を水滴が転がる感覚がした。くそっ。涙腺が弱いってのは……不便なものだな!
    「あの……」
     小さな声と共に右腕の袖を掴まれ、ごしごしと目を拭い振り向くとそこに立っていたのは、木の実を分け与えてくれた少女だった。先ほどまではぱんぱんに膨れ上がっていた背中のリュックは、すっかり中身がなくなり小さくなっていた。もう、木の実は十分に行き渡ったのだろう。身の丈に不釣合いな鞄を背負っていたから重くないかと心配していたが、ほっとした。
    「手当てしますよ」
    「ん……手当て?」
     手当て? はて、どこだったか。と考え込む。そのとき、少女が顔を自分の顔のほうに近づけてきたので驚いた。少女は目を閉じたまま、幾度か息を吸った。さらに驚いて、女性に対して極端に免疫の無い俺の身体はそこで硬直した。視線だけを彷徨わすと、少し離れた場所でムウマージとフーディンがあきれたようなじと目で俺を見ていた。違うんだぞ、お前ら……これは、アレだよ! アレ!
     少女が一歩下がり、ふわりと長い髪が軽やかに踊る。「ちょっと、座ってくださいね」いわれるがままに座り込むと、彼女がリュックを背中から下ろし中をあさる。少しして、中から出てきたのは、包帯や消毒液。
    「強い、まだ新しい血の匂いがしていたものですから……きっと、目の上らへんですよ、ね?」
    「あ、あぁ」
     少女の手がそっと額に触れる。そういえば目の上切ってたっけかとかと思い出すと同時に、彼女が盲目であったことを思い出した。あぁ、だから匂いか。そう、匂い。
     ――お前ら! 匂いだぞ! 匂い! 匂いだからだぞ! 何も、やましいことなんて考えてないぞ! 近くて、どきどきしたとかないからな!
     目で離れた場所から俺を見ているムウマージとフーディンに訴える。もとから細められていたムウマージの目がさらに細くなる。おい!
    「いていて」
    「すみません、消毒液染みますよね……。ちょっとだけた」
    「いや、違うんです……あ、いや、大丈夫です!」
     傷跡に消毒液が染みる。でも、それ以上に痛い。奴らの視線が痛い!
     ぷいっ。ムウマージは顔を背け、ふよふよとどこかに行ってしまった。えっ、どうする? みたいな顔でフーディンがムウマージと俺とを何度か交互に見比べ、彼女の後にのそのそついていった。何か言って挽回しろよお前! 上空を旋回するドンカラスが、何やらギャーギャー喚いている。どいつもこいつも……。俺はがっくりと肩を落とした。
     
    「あの子は、何か悪さをしませんでしたか?」
     俺は何を言うものか分からずただ固まっていると、少女はやわらかな声で言った。額に器用に包帯が巻きつけられてゆく。彼女の指の腹が俺の肌に触れるたびに身体はいちいち硬直する。やきもち妬きなムウマージのせいだ。ここまで、女性慣れしてないのは。自分に言い聞かせるように、頭の中で繰りかえす。
    「あの子?」
    「あ、リザードンのことです。暴れん坊の」
     あぁ。あの、リザードン。この子のポケモン……だったのか。
    「いやー、助けられましたよ。あいつがいなきゃ、俺たちゃ今頃全身血まみれだったかもしれないですよ」
     風神の暴風が吹き荒れた時、俺のポケモンたちももう一人のレンジャーのポケモン達も相当なダメージを負った。あの状態から、風神を倒すのは恐らく無理だっただろう。彼女のリザードンが現れ、猛烈なたいあたりをかましてくれたおかげで、風神を倒すことが出来たのである。
    「よかった……。本当によかっ」
     彼女の言葉を遮る大きな音。その方向へ視線を向けると炎の線が空へと一直線に伸びている。耳を澄ませば、リザードンの吼える声も。
    「もうっ!あの子ったら!」
     俺はつい笑ってしまった。はっと息をのんだ色白な彼女の顔が下の方から真っ赤に染まってゆく。恥ずかしさからか、彼女は指をてきぱきと動かし、少しきつめに包帯の端と端とを結びつけた。その結び目を自分でも少し整えると、俺は立ちあがった。体の節々が悲鳴を上げている。特に腰。最近、歳を感じるようになった。そんなに歳はとっていないはずなんだが。
     少女がもう一つの包帯を出したところで俺はそれを遮るために、少女の美しい赤の頭に手を置いて撫でる。「あ、あの?」困惑したように少女は俺を見上げる。俺は頭だけを下げ、礼を述べる。そして、最後に一言。
    「次お会いしたときには、一戦願いたい」
     正直、見てみたい。彼女が成長して、あのリザードンとエーフィとどのような関係を築けているのか。彼女と彼らの間にある絆の太さはどう変わっているのか。――俺みたいな端くれをとっくに凌駕して、はるか上にいるんじゃなかろうか。それは、彼女がポケモントレーナーとして修行をしても、しなくても変わらない――そう。修行したって手に入らないようなものをすでに彼女は手に入れているような気がしたから。
    「――じゃあ」
     彼女の頭から手を離し、背を向けて歩き出す。奴らの始末を話しあうため、彼らが待っている。彼女もまた、後からやってくるだろう。指笛を吹く。高い音が響き、肩にドンカラスが舞い降りてくる。先でムウマージが不機嫌なまま、フーディンがにやにやしたまま、俺を待っている。彼らのもとまで走り、フーディンの頭に一発拳骨を落とし、俺は振り返った。エーフィとリザードンを従え、また手当てに向かう彼女の後ろ姿があった。

    ―――――――――
      
     さて。
     あの、やんややらかしてくれたあいつらをどうしようかという話し合いである。
    「ゲットする、……というのはどうでしょう? 皆さん程のレベルなら、彼らも認めると思うんですが」
     一人が言う。うん。名案。ただ、やっぱり、それは――。
    「私は遠慮するよ」
     俺が言葉を発する前に、彼女は毅然と言い放った。彼女に向けた俺の言葉は行き場を失う。えーっと、
    「そういえば、体の具合、大丈夫なんですか?」
     ……我ながら何たる付け足し。警官らしいその女性は、思いのほかすまなそうな顔をして「そちらこそ、怪我は? 私が未熟なせいで、迷惑をかけた」なんて言うので、俺はまた言葉に詰まってしまい
    「いやあ、元気、元気。ピンピンしてますよ!」
     ガッツポーズをしてみせる。ドンカラスがギャーギャー鳴いたが、俺を馬鹿にしてるのは丸見えだった。ちくしょう。
     ふうとため息をついた彼女の横顔に、以前の張り詰めた空気のようなものはすっかり消えていた。そういえば、彼女はなぜここに現れたんだか聞いていなかったなぁなんて思うけれど、少しだけ笑みを浮かべゾロアークを撫でる彼女を見て、どうでもよくなった。何であれ、マイナスでなければいいのだ。ものってのは。

     青年が現れたのはそれから少し経ってからであった。彼は到着するなり、頭を下げた。そして、謝罪の言葉を口に――する前に俺はそれを遮った。謝罪の言葉なんていいんだ。むしろ、こっちから言わせて欲しいくらいだ。
    「これからどうするんですか」
     アブソルを連れたレンジャーが彼に問う。彼も俺もこの後は通常任務に戻るだけ。無線なんて便利なものが発達すると、報告しに戻ります! なんてのが極力少なくなるのが、便利なゆえに不便なところである。
    「取りあえずは、一番近いジムにでも、足を運んでみます。……実は当初は、そんな気なんか無かったんですけど……気が変わりました。 あなた方みたいなレベルの方達がレンジャーや警察官をやっておられるのでしたら、この地方のジムは相当楽しめそうですから」
     嬉しいことを言ってくれる。その時、ふと、警察である彼女をみると、ふいと顔を背けていた。心なしか顔が少し赤いような――気のせいか。気のせいだよな。
     彼もまた最初に見たときよりも、どこか清々しい表情だった。なにか、憑き物が落ちたかのように、澄み切っている。土砂に覆われる寸前に垣間見た彼の表情にあった不完全燃焼のような感情は、あの雨でどこかへ流れてしまったに違いない。風神と雷神、彼らの残したものはけっしてプラスではないが、完全にマイナスでもない。彼にも、彼女にも、新たな旅立ちと気持ちを与えてくれたのではないだろうか。

    ―――――――――

    「さあ、風神。貴様をどうしてやろうか」
     先ほどの場所に戻ると風神はまだ、そこに蹲っていた。そりゃ、あのリザードンのたいあたりをくらえばダメージは大きいだろう。風神を頼むと言われてしまったのだが、もう一人のレンジャーである彼は無線の呼び出しが入り、次の仕事へ向かってしまった。俺の手の中には、その際彼がこれ、お礼にもならないですけど、すっごいうまいんで!と言って放り投げてくれたトロピウスのバナナのような果物の房がある。
    「お前にはさんざんなことをされたからなぁ……こらしめてやろうかねぇ……はっはっは」
     と、悪役らしく高らかに笑……俺は悪役じゃねぇ。そういえば。風神はただ俺を睨みつけている。俺は風神に近づき、息を吸い、覚悟を決め――

     ――果物を二本彼の手元に置いた。

    「お前のおかげっちゃなんだけど、俺もう一回バトルをしてみようかななんて思ったわ。それから、お前たちと戦ったおかげで、あの人たちの悩みも吹き飛ばされちゃったみたいだし……感謝するよ。それが一本」
     俺のポケモン達も彼のまわりに集まった。ムウマージが傷ついた彼を癒す。彼は驚いたらしく、わずかに目を見開いた。
    「ただーっし、風だの吹かせて暴れられちゃ困る。そこでもう一本。貸し。貸しを作っとくから。だから、お前がまたどこかで暴れたら俺が行くから」
     我ながらきたないやり方だ。相手に無理やり、貸しを作らせるなんて。

    「じゃ」
     俺は歩きながら、振り向かずに手を振った。彼が後ろで立ち上がる音がする。もしかしたら、このまま後ろから殺されるかも。なんて思うと背筋が冷えた。だけど、振り返らない。
    「また、どこかで会ったら、お手合わせ願んますよ」
     落ち葉にかかとを沈め、歩く。後ろで彼の唸る声がする。

     風が吹いた。強く大きな風の塊のようなものが後ろからぶつかってきて、倒れそうになるところをこらえる。その風は落ち葉や枝を巻き込んで森のどこかへ駆け抜けていった。
     その風の音に混じって、かすかに聞こえた低い音。

    『――良かろう――』


    「ったく。普通に言えっての!」
     今はもうここにいない風神さんに向かって俺は叫んだ。なぜか笑いがこみ上げてきて、俺は一人で笑い続けた。笑いつかれて、落ち葉の上に横たわる。吹き付ける風は冬のそれ。秋の嵐が過ぎ去れば、冬の冷気がやって来る。季節の変化はめまぐるしいほどにはやく、あっという間に過ぎていく。雪をつかさどるは、誰だ。雪王か、雪女か、鬼氷か、冷鳥か。

     ムウマージとドンカラスをボールになおす。お前ら、じっくり休めるのはまだ先になりそうだ。晴れ渡った空を見上げる。思い切り息を吸い込む。心にあるのは少しの不安と、少しの楽しみ。それらをしっかり携えて、俺はフーディンの持つスプーンを握る。次の仕事はどこにある?
    「さあ、行くぞ!」
     冷風の吹きぬける中、フーディンの金色の長い髭が得意げに揺れている――。





    ―――



     思い起こせばあれは十月の末。ふとパソコンを眺めれば、弱った少年と助けを待つトレーナーとレンジャー。それを助けにいこうと立ち上がったのはこともあろうにあのフーディンの彼であります。(正式にどうといったつながりはございませんが)そして、その彼が彼らを助け、文末には「――の空には晴れ間がかいま見えていた」そう書かなかった――いえ、書けなかったのは何故でしょう。それは、それは――






     ドラエモンの道具だって故障しなけりゃ、映画のあの尺は実現しないし、ジャイアンだっていい奴にならんやい! とそんな心境だったからな気がいたします。さあ、崖を切り崩し、彼は助かり、あれよあれよと話は進み、これはただの嵐ではなく神々の戦いなのだ。となったとき、そこで一気に路線は変更。 救助から、倒すべき敵 へと目的は大きく変わったのであります。


     迷いを抱えた青年トレーナー。あなたのおかげで彼は崖から落っこちることが出来ました。いなかったら、単に落ちてたから! ホウエン出身の陽気なレンジャー。レンジャー一人では荷が重すぎた! でも、二人だったから荷が重過ぎなかった!(何の理由 狐を従えたクールな女性警官。クールすぎた!命救われた!今後の活躍に大期待!盲目の赤い少女。最後はちょっぴり変態臭が漂いました。美人さん。慰安旅行の方々(w いろいろお世話になりましたw


     恐ろしいほどに(w 個性豊かな役者が揃い、そして彼らも動いていく。あやまりのないようにその役者を書こうと文章文章をじっくり読むと、普段は見落としてしまいそうな細かな情報もふと手に入れることが出来たりして、そんなところに人のこだわりのようなものを感じることができました。うん!


     そして、季節は過ぎ去り、十二月の末。二ヶ月に及ぶ激闘の末、嵐は無事に収まったのであります。




     ――さあ、次はどんなお話が広がるのだろうか。



     まあ、ひとつ言いたいのは



     彼に携わってくれて、ありがとう!言い尽くせないくらい、ありがとう!
     読んでくださった方も、拍手してくださった方も、ありがとうございます!


     またこんな流れになってたら、また彼は出てくるかもしれません! まあ、相棒のテレポートの調子次第なのは言うまでもございません!それでは!


      [No.1096] <クリスマスのカントー日報社会面より、小ネタめいた二つの記事> 投稿者:ピッチ   投稿日:2010/12/26(Sun) 22:42:57     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ・トレーニング……?

     26日未明、手持ちのルカリオに迷惑行為を続けさせていたとしてポケモントレーナーの11歳の少年が軽犯罪防止条例及びポケモン愛護条例違反で警察に補導された。
     少年はたびたびルカリオに「ピンポンダッシュ」を実行させており、被害件数は50件近くに上るとみられている。ルカリオが実行した際、被害宅のウインディが逃げるルカリオを「しんそく」で追いかけ、トレーナーの存在を捕捉したために今回の補導に至った。
     警察の調べに対し、少年は「ルカリオにしんそくを覚えさせたかったため、トレーニングとして行わせていた」と供述している。警察は少年を補導した後、正規のポケモントレーニング施設の紹介を行う方針だという。


    ・クリスマスの珍事?

     クリスマスイブの24日、カントー地方タマムシシティの歓楽街にカゲボウズが大量発生するという珍事が起きた。カントー地方では通常見かけない珍しいポケモンだけに、周囲は一時騒然となった。カゲボウズは警察部隊により捕獲され、本来の生息区域であるホウエン地方に送り返されるとともに一部は研究用としてタマムシ大学に寄贈されるという。
     カゲボウズは「恨みを食べるポケモン」として知られており、その詳しいメカニズムは解明されていないが今回の大量発生がこれに関連することは間違いないと専門家はコメントしている。
     歓楽街の客のひとりによると、「飲み屋で友人と酒を飲んでいた最中、『カップルなんてくそくらえだ!』『リア充爆発しろ!』などの言葉を叫んだ瞬間に店の窓やドア、壁などから現れた大量のカゲボウズに囲まれた」という。タマムシ大学心理学部からはゴーストポケモンへのPTSD(心的外傷後ストレス障害)の緩和のため、こうした被害者達に心療内科の受診を勧めている。


    ――――
    チャット、レス等において要望が寄せられましたので。
    社会面の左下すみっこあたりにこういうネタ記事がよくありまして、そこから読み始めています。


      [No.1095] ■お知らせ「突発チャット開催」 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/12/26(Sun) 20:39:37     24clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    突発チャットを開催なう。
    コンテストの話題などで盛り上がりませんか?
    投票準備などしながらまったりとやろうと思います。

    http://masapoke.chatx.whocares.jp/


      [No.1094] これおもしろいですね! 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/12/26(Sun) 20:39:15     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    これおもしろいですね。
    いろいろつくれそうだ。

    誰かクリスマス中止のお知らせ系で!(もう期限切れ?w


      [No.1093] <クリスマスのカントー日報社会面より、3つの新聞記事> 投稿者:ピッチ   投稿日:2010/12/26(Sun) 18:45:55     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ・これもポケモンへの『愛』?

     23日夜、ポケモン販売ショップから出てきた男性が出会い頭に、待ち構えていた自称ポケモンNPO職員の女に傘で頭を殴りつけられるという事件があった。女は傷害容疑で現行犯逮捕され、男性は転倒し頭を強打して救急車で病院に搬送された。
     男性と女に面識はなく、女は警察に対して「ポケモンを『クリスマスプレゼント』として利用することが許せなかった」と語っているという。
     このポケモン販売ショップではポケモンのクリスマスセールを行っており、男性はクリスマスイブの息子へのプレゼントとしてピカチュウを購入した帰りだった。


    ・暖かなハートは絶滅寸前?

     警察は、大規模ポケモン乱獲組織「ルート」の構成員22人を逮捕したと発表した。
     「ルート」はドンファンの牙、ペルシアンの毛皮や宝石といったポケモンの身体部分の利用のための乱獲組織として知られているが、今回の逮捕はそれにあてはまらなかった。
     「ルート」構成員はホウエン地方キナギ海域において機械操業によるラブカスの乱獲を行い、付近のホエルコの生育にも大きな影響を及ぼしていたという。
     ラブカスはクリスマスにかけてのこの時期にカップルが愛を確かめ合うための贈答用として需要が急増するため、組織の資金源とされていたのではないかとみられている。また、野生のラブカスがまれに持っている「ハートのウロコ」は愛好者のみならず一般のポケモントレーナーにも需要が高く、警察はこうした裏ルートを利用した購入を行わないよう呼びかけている。


    ・ホワイトクリスマス、実は……
     ジョウト地方コガネシティ近辺において、局地的な大雪によりリニアモーターカーの運行が停止するという事件があった。
     ジョウト地方においてこの時期の積雪は珍しく、鉄道関係者が原因を調べたところ、コガネシティのデートスポット「恋人岬」において複数匹のユキノオーが戦闘しているのを発見し、トレーナーを探し出すと同時ポケモン管理不行き届きで警察へと通報した。
     ユキノオー達のトレーナー4人は警察の調べに対し、「彼女とのデートの際にどうしても雪を降らせたく、ユキノオーを物陰に放していた」と述べている。警察は放されていたユキノオーがトレーナーのいないまま戦闘を始め、技によってさらに冷気が強まったことが局地的な大雪の原因であると結論づけた。
     ユキノオーはバンギラスなどと同じく、周囲の天候を変えてしまうその特性の存在から第一種管理指定ポケモンに指定されており、ジムバッジ7個以上を持つ高位のトレーナーでなければ所有、戦闘使用が許されない。警察はトレーナー達がその基準を満たしているかどうかにおいても調べを進めている。



    ――――
    きっと「悪」はタイプだけじゃない。悪の組織だけのものであるはずがない。
    ポケモンの世界においても、おそらくはこんな小さな「悪」がたくさんあるのでしょう。

    【お題:悪】
    【描いてもいいのよ】【書いてもいいのよ】【お話作っていいのよ】【好きにしていいのよ】


      [No.1092] 待っていた! 投稿者:こはる   投稿日:2010/12/26(Sun) 18:21:28     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ぎゃあああああッ! カゲボウズがメリクリしてるゼ!?

    カゲボウズらがかわいい会話をしてて、もう爆笑。たえらんなーい((´I `*)) 二、三匹かっさらっていきたい!
    しっかし、やはり毒男は聖夜も関係なかったですか。同志だ。

    【続きを激しく希望するのよん!】


      [No.1091] Re: 一応… 投稿者:実家の017   投稿日:2010/12/26(Sun) 15:17:01     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    届いています。
    ノープロブレム。
    (さっさと戻りなさい


      [No.1090] 一応… 投稿者:海星   投稿日:2010/12/26(Sun) 15:13:39     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    本文をメールにくっつけて送信したのですが返信待ちです。
    実は送り方が良くわからなくなってしまい、ちゃんと届いたか心配でotz
    しかも件名とか指定された文ではないもので送ってしまってotz
    届いていますでしょうか?
    No.017 さんが御実家なうということなので、夜までパソコンを見張ってます<○><○>


      [No.1089] ■現状報告 投稿者:実家の017   投稿日:2010/12/26(Sun) 14:07:40     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    実家のパソコンのメールサーバーから確認。
    とりあえず新規の応募を2つ確認。
    応募数22は確実な情勢です。

    そろそろ実家からお暇します。
    電車の中で野の火の続きでも書きながら帰ろうかと。
    夕方が楽しみです。


      [No.1088] Re: 横レス:「ロスタイム」に関して 投稿者:実家の017   投稿日:2010/12/26(Sun) 13:31:57     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    はいどうも。
    実家の017です。名前のとおり今実家なうです。
    会社でもらったクリスマスケーキを届けに昨日は実家に帰っておりました故、まだ最新の更新ができておりませぬ。
    投票がはじまるぎりぎりまでは応募を受け付けます故、われこそはという猛者は勢いで応募するがよい。

    みんな、知ってるか!
    ポケストではもはや伝説となった「洗濯日和」は3分で書かれたということを!
    どうせ帰るの夕方だからまだなんとかなるぞw
    がんばって渡邉タテタさんの喉を枯らそう!(おい

    実家にて


      [No.1087] 爆笑したwwwww 投稿者:実家の017   投稿日:2010/12/26(Sun) 13:27:38     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    待っていたぞおおおおお!
    黒いクリスマスプレゼント!!
    だめだ、はしばしに今までの小さいネタが反映されてて、いちいち選ぶ言葉が適切すぎて爆笑しっぱなしだったwwww
    クリスマスプレゼントをありがとうございます!
    続き希望・・・・・・!

    書いてくれないと恨んじゃうんだからね!
    (逆効果?)


      [No.1086] 続き希望! 投稿者:サトチ   投稿日:2010/12/26(Sun) 11:18:34     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ステキだぜ、カゲボウズどもー!!!P(≧▽≦)q
    インテリボウズにぷちボウズいい味だしてるわ可愛いわ、最高っす(笑)ぜひ早急に毒男パートを拝読したく!

    ・・・ところでシャペッツって何?(^^;)

    誤植一件:「はなぢ」が「はなじ」になっております〜。


      [No.1085] 横レス:「ロスタイム」に関して 投稿者:サトチ   投稿日:2010/12/26(Sun) 11:10:51     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    鳩さんが原稿受付に忙しい?ようなので、横から失礼いたします。
    「投票はじまるまでロスタイム」となっている件ですが、こういうことです。
    原稿受付は本来、昨日の夜12時で締め切りですが、投票の準備が出来る前までならギリギリ滑り込みは受け付けますよ、と。
    昔のマサポケ同人誌企画でも、数時間のロスタイムで見事書き上げ滑り込んだ豪傑がいたようですよ(笑)


      [No.1084] 世界観が好き 投稿者:   《URL》   投稿日:2010/12/26(Sun) 05:19:28     27clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    字数オーバーとは……しかし、その分読み応えが非常にありまして、楽しませていただきました。
    彼ですね? フーテン呼ばわりされていた彼ですね?
    過去話は好きです。“他の話を読んだ人にはそれと分かるけれど、読んでなくても楽しめる”のが、ただ凄いと思っております。

    > 一目で獣の皮で作られたとわかる防寒具を身に纏い、腰の絞め帯に鞘入りの山刀を差している彼は、雪に埋もれないよう体重の掛け方を工夫しつつ、皮の長靴を履いた足をしっかりと踏み出しては、手に持ったコースキ(雪シャベル)を杖代わりに使いながら、足早に歩を進めていく。

    まずこの一文に惚れました。
    こういう、世界が伝わってくるというか、上手く言えてませんが、そんな描写で、引き込まれてしまいました。

    > ……大体、彼自身ノウハウなどと言う物を語るにはまだ若過ぎたし、それを聞いて来る彼ら大人達の方が、自分なんかより遥かに詳しく、ポケモン達について学んでいるのだ。

    > 祖母の語ってくれる物語の世界は彼方に過ぎ去り、本来隣同士に位置している筈のポケモンとニンゲン達との溝は、意識的にも無意識的にも、ただ深まっていくばかり。
    > それがこの時代に生を受けた少年には、如何にも残念な事であったし……また同時に、堪らなく寂しかった。

    > ……自分が感じているその感触は、丁度二つの世界の狭間で苦悶している、彼自身の立場の投影であった。

    過去から培ってきた知恵には素晴らしいものがあるのに、それら全てを切り捨てる時代に進んでしまう。
    もう戻れないのは自明ですが、改めて言われると、考えてしまいますね。
    分業を進めて、システム的には優れているはずなのに、何かおかしい。捨てたものの中に、捨ててはいけなかったものがあるんじゃないか。そう思いました。
    私自身は山野に放り出されたら真っ先に野垂れ死にますが。

    あと、文章の端々に現れる狩りに関する描写、多すぎて挙げられませんが、全部好きです。
    狩人の心中が垣間見えたような気がします。気だけ。気だけです。

    > ――時は全てを押し流すが、それは何時も悪い事とは限らない。 

    そうだといいですねえ……


      [No.1083] 飛行訓練 投稿者:   《URL》   投稿日:2010/12/26(Sun) 05:17:29     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     五月十四日。

     ライモンシティの中心部から外れた閑静な住宅街、その上空を、遠目にも色鮮やかな鳥が翼を打ち振るって飛んでいた。
     鳥の背中には人影。おそらく、自身のトレーナーを乗せて飛んで

     バランスを崩した。


     トレーナーが体勢を立て直すよう指示するが、空中で左に傾いてしまった体は元の姿勢に戻る術を知らず、更に大きく傾き、首を下に向け、きりもみ回転を始めた。
     そうなると、体勢の戻しようがない。
     一組のトレーナーとポケモンはそのまま重力に従って、住宅街の固い地面にぶつかるものと思われた。

     しかし、ひとりと一匹の体は、空と地面の途中で透明な網に受け止められた。
     網はひとりと一匹分の運動量を受け取り、網が伸び切る限界、地面すれすれの、高さニアリーイコールゼロの地点まで伸びると、伸びた分を弾性力に変えて、今度は上昇を始めた。
     上昇し、最高点に着くと、今度は下降を始める。暫くそれを繰り返して、網の動きが微小な振動へと収束した時、空から落ちてきたポケモンとそのトレーナーは地面に降り立った。


     トレーナーの方は女性で黒いコートを着ており、真っ黒な髪の中に一房、紅色に染めた髪をいじっている。
     続いて降り立った、青黄の原色の羽に飾られた爬虫類と鳥の狭間のような姿をしたポケモンが、気難しそうに髪を触る女性を見上げて、謝るように鳴いた。

    「中々上手くはいかないもんだな、ロー」

     落下のショックを吐き出すように、女性は胸に手を当て、長い息をついた。そしてすぐ笑顔になると、

    「今日は随分長く飛べたな。どんどん上達してるよ」

     そう言って、原色のポケモンの、鱗に覆われた長い首を撫でた。
     ポケモンは嬉しそうな、けれどやはり申し訳なさそうな眼差しで女性を見た。

     女性の目の中には、隠し切れない、空への希求が輝いていた。



     五月十五日。

    「……どうしたんですか、その怪我」
    「落ちた」
    「ええっ!?」

     職場に出勤した女性は、後輩兼部下の質問に、必要最小限の言葉で答えつつ、自分のデスクについた。
     額と右頬には大きめの白い布が当てられている。色白で、他者から常々「美人だ」と評される顔に傷が付いているらしい。
     彼女はそんなことを爪の先ほども気にせず、左手の指先で左頬を掻く。
     そちらの手は無傷だが、右手の方は指の付け根まで包帯に覆われている。
     服の下もきっと傷だらけに違いない。
    「どこから落ちたんですか」
     と呆れた調子で部下が質問した。

    「ロー……アーケオスの背中からだ」
    「また落ちたんですか」

     いつものように淡々と、静かな声で答えた上司に、部下はやるせないという風にため息をついた。
     またですかと言うべきか、気を付けてくださいよと言うべきか、そもそもアーケオスに乗るのが危ないと言うべきか、部下が迷っていると、彼女の方が先に口を開いた。

    「安全対策はばっちりだったんだが、肝心の網が切れた」

     ばっちりじゃないですよね、と部下が嫌味を込めて言うが、彼女はどこ吹く風といった様子で、部下の言葉を丸ごと流した。
     彼女は肩の上に左手を伸ばすと、そこからポケモンを取り出してきて机の上に置いた。
     肩に乗るサイズの、小さなポケモンの代名詞であるバチュルが、酷く疲れた様子で彼女を見上げていた。

     通常、ポケモンの飛行訓練をする時は、テレキネシス――体を浮かせる技――を使えるポケモンを用意するか、下に安全ネットを張っておく。
     そのネットには丈夫で弾力性に富む虫ポケモンの糸を使うことが多いのだが。

     机の上に置かれたバチュルは、心なしか痩せ細って見える。

    「酷使するからですよ」
    「かもな」
     本当にそう思っているのかどうか、推し量り辛い調子で部下の言葉に答える上司。
     その彼女はデスク上に置かれたパソコンをいじっていたが、急にマウスを投げると、部下に顔を向けた。

     顔を輝かせ、いつになくはしゃいだ様子で上司は言った。
    「そうだ! ノクティスも空を飛べるだろう? ちょっと訓練に付き合ってくれ、キラン!」
    「ええ!? なんでですか、それより仕事してくださいよ!」
    「ローが飛べるようになったら、いくらでもやるからさ」

     彼女は有無を言わさず、一度は脱いだコートを手に取ると、バチュルを手に持って、部屋から職場に隣接した青空道場へと駆けて行く。
     その速いことといったら、特性の早足が発動したグラエナのようだ。

    「もう、レンリさんは全くもう……」
     部屋に残されたキランも、仕方なく自分の上着とモンスターボールを持って、道場へ向かった。


     アーケオス、さいこどりポケモン。
     大昔に生きていたとされる始祖鳥のポケモンで、地を駆ける恐竜から、いざ飛び立たんとする鳥へ進化する、その途中の行程を保存したような姿をしている。
     前脚の翼は鳥のそれだが、現代に生きる鳥や鳥ポケモンの姿とは異なって、大胸筋は未発達であり、代わりに地を駆ける恐竜の名残である後脚が発達している。
     太い腕の筋肉で翼を動かしていたと考えられるが、原生の鳥たちと比べればその羽ばたきは力強いとは言えない。
     羽ばたきで積極的に上昇することはせず、後脚が生み出す優れた初速を利用して飛んでいるのだろう。
     翼の力が弱く、旋回や速度調整は不得手なので、低く直線的に飛ぶのが彼らアーケオスである。


     にも関わらず。
     ライモンシティにある警察署の上空を高々と、アーケオスがひとりの女性を乗せて飛んでいる。
     大型の鳥ポケモンのように、翼を広げ風を受けるような真似はしない。
     墜落を恐れているかのように、必死に羽をばたつかせている。
     ポッチャマ一族の泳ぎを“飛ぶように”と比喩するならば、さしずめあちらは“溺れるように飛ぶ”といった感じか。
     道場の地面からアーケオスと女性を見上げる山吹色の髪の青年は、ハラハラしながら、青い顔で彼女に呼びかけている。

    「だーかーらぁー! 危ないですってレンリさん! 頼むからもうちょっと低い場所を飛んでください!」

     そう叫ぶ部下の近くで、同じく青い顔で、ハート型の鼻の蝙蝠が心配気に空を見上げている。
     ココロモリは元から青い顔だが、その顔がさらに青くなっている。

     レンリはそんな地上の部下の様子など毛ほども気にせず、空を飛んで楽しそうに笑っている。
    「大丈夫だよ、キラン。ほら、こっから遊園地が見える」
    「高く飛び過ぎですよ!」
     早く降りてください、と震える声で言うキランに笑いかけ、レンリはアーケオスに「そろそろ降りるか」と伝えた。
     色鮮やかな原色の始祖鳥は翼を更に激しくばたつかせ、道場の敷地の端をなぞるように旋回する。

     そして、旋回で傾いた姿勢を地面と平行な位置に戻せないまま更に傾いて、向きも方向も無茶苦茶になりながらアーケオスの体は地面に向かった。

    「レンリさ……ノ、ノクティス!」
     キランは傍らのココロモリに呼びかけた。
     ココロモリは頷くと、滞空位置からアーケオスと地面を結ぶ線分上へと鼻先を向ける。
    「テレキネシス!」
     ココロモリの鼻から出た桃色の念波が、アーケオスとその背に掴まる女性に当たった。
     彼女たちに働く重力だけが消え失せたかのように、ひとりと一匹の落下速度が弱まって見えた。
     そのまま下向きの速度は落ちていき、彼女とアーケオスの体は人間が走るぐらいの速度で地面にぶつかった。
     始祖鳥はすぐに立ち上がったが、レンリの方は暫く地面に突っ伏していた。

    「……レンリさん?」
     青年は恐る恐る、地面に倒れたままの上司に近付いた。アーケオスが翼のある前足でレンリに触れた。
     と同時にレンリは起き上がると、額のガーゼに手を当てた。
     それを力任せに剥がす。傷口が開いていた。

    「まあ、また練習だな」
     レンリが無事でほっとしたのか、アーケオスが嬉しそうに鳴いた。



     五月十八日、雨。

     上司は寂しそうに外を見ながら、時折パソコンをいじっていた。
     部下の青年は、ほっとした様子でそれを眺めている。
     昨日、一昨日とレンリの無茶な飛行訓練に付き合わされ、ココロモリの青い顔は更に青くなり、キランの寿命は十年分ほど縮んだ。
     テレキネシスやバチュルの糸の安全装置があるので、墜落してもポケモンの方は大事に至らない。
     乗っている人間は生傷が絶えないが。

     レンリは肩に乗せたバチュルにポケモン用の駄菓子を与えながら、左手でマウスをカチカチ鳴らしていた。
     パソコンのモニタにはイッシュ地方の地図と天気図が映されている。

     キランは上司が座っている椅子の後ろまで行くと、
    「仕事してくださいよ」
     と声をかけた。
     彼女は残念そうに地図と天気図を閉じて、文書編集プログラムを起動した。

     高性能低速度のプログラムが起動するまでの時間、レンリは髪の紅く染めた部分をいじっていた。
     右手の包帯は取れたが、左手に包帯が巻かれている。
     アーケオスの体力が減って弱気になるまで止めないので、付き合わされるキランとココロモリは散々だった。
     そもそも、羽ばたきと念力で空を飛ぶココロモリに、飛び方の全く違うアーケオスの指導なんて出来ないのだ。
     長時間の訓練で集中力は落ちて、テレキネシスの発動タイミングは遅れ、正確性は落ちる。
     しかし、ココロモリのノクティスが何度も彼女たちを受け止め損ねて怪我をしても、彼女は自分が納得するまで訓練を止めない。

     何故そこまで執着するのか。

    「レンリさん」
    「なんだ?」
     やっと開いた文書ファイルから目を離して、レンリが後ろを向いた。
     キランは手近な空席に座って、肩のバチュルがこちらを睨んでいるのを気にしながら、レンリに話し始めた。

    「どうしてそこまで、空を飛ぶことに執着するんですか?
     町へ移動するだけなら真っ直ぐ飛べば十分だし、大体、アーケオスは空を飛ぶのが苦手なんだから、別のポケモンを育てるっていうのも……」
    「それは駄目だ。ローが飛ぶのが苦手だからって、鞍替えするような真似は出来ない。何匹も面倒見る程器用じゃないし」
    「でも」

     でも、危ないですよ、と言おうとして、止めた。
     キランが言ったところで、レンリが止める筈がない。
     頑固で、思い込んだらまず聞かない。彼女はそういう人物だ。

    「空を飛べば、速く移動できる」
     レンリが呟いた。苦しそうに目を伏せて。

     レンリが手を組んだ。
    「私が警察になったきっかけは、話したっけな」
     キランは不器用に頷いた。
     正確に言えば、レンリが話したわけではない。何となく、噂になっているのを聞いてしまったのだ。
     彼女のパートナーのゾロアーク、その母親がポケモンの密売組織に誘拐されてしまった。
     レンリはゾロアークの母親を探すために、警察になったらしい。

    「あの時」
     レンリは寂しそうにため息をつく。
    「母さんが誘拐された時、追いつくことが出来ていたら、ってさ」
     誘拐された当初、当然警察が動き、犯人を追跡した。
     しかし、突如として怒った大嵐とそれによる土砂災害で、道は閉ざされ、犯人には逃げられてしまった……らしい。

    「それに、高い所から探せば、きっと見つかる。そう思うんだ。子供っぽいな」
     レンリは自嘲気味に笑うとくるりとパソコンの方を向いて、文書の編纂作業を始めた。
     左手が時々髪を触った。
     まだ、レンリは全てを話していない気がした。
     けれど、キランにそれを聞き出すことは出来なかった。


     外ではまだ雨が降っている。今日は一日、降り続くらしかった。


    「あ、そうだ、キラン」
     パソコンから目を離さずに彼女が言った。
    「次の二十四日が誕生日だったな。何か渡すよ。訓練にも付き合ってもらったし」
     別にいいですよ、と答えて、キランも仕事に戻った。



     五月二十一日。

     レンリは警察署には来ていない。
     アーケオスの飛行訓練が一段落し、後脚の羽と長い尾を利用しての安定した旋回が出来るようになったところで、彼女は数日間の休みをとった。
     どうやら、ホドモエやフキヨセの辺りに行ったらしい。
     これでキランも羽を伸ばせる、と思いきや、彼女はやるべき仕事をメールと電話とファックスでキランに指示してきた。

    「あと、お前、シビシラスとヒトモシを連れてたな」
     仕事内容を伝える電話の最後で、彼女は急にそんなことを聞いてきた。
    「はい、ルーメンとテネブラエですよ」
    「そうだな。分かった」
    「あの、レンリさん」

     何が分かったなのか。疑問に思ったが口には出さず、キランはもっと聞きたかった別のことを聞く。

    「レンリさんって誕生日いつですか?」
    「誕生日? 親がいないからな。知らない」
    「すいません」
    「いいよ。記憶にも残ってないんだから」
     レンリは明るくそう言って、電話を切った。

     せめて直に会って聞けば良かった。
     キランは後悔した。



     五月二十三日。

     レンリはまだホドモエかフキヨセの方にいる。
     キランが仕方なく今日も慣れないパソコンに向き合っていると、机に置いていた携帯電話が鳴った。

    「はい、カシワギです」
     反射的に電話に出て、ついでに離席して窓の側へ行き、ブラインドを開けた。
     外は晴れている。

    「はい、職場の上司ですけど。え? はい、すぐ行きます」

     電話の向こうの人の言葉を聞き終えたキランは、すぐさま上着とモンスターボールを手に取り、外へと走り出した。


     フキヨセシティに着くと、キランはここまで飛んできたココロモリにお礼を言ってボールに戻した。
     柔らかい、春の雨が降っていた。
     キランは濡れるのも構わず、目的の白い建物を見つけると、一直線にそこへ走っていった。

     フキヨセ総合病院。

     キランは開け放たれた扉を躊躇なく潜ると、曲がったパイプで作られた四つの簡易ベッドの内、一番奥に寝かされた女性へと近付いた。
     点滴のパックを取り替えていた看護師の女性が、キランの姿を見ると一礼して、慌てた様子で部屋を出て行った。
     それから一分も経たない内に、別の看護師がやって来た。さっきの人よりも少し年配に見えた。

    「カシワギキランです」
     キランは看護師が来るまでの間、レンリが眠っているベッドの横にしゃがみこんでいたが、看護師が来ると立ち上がって頭を下げた。

    「手持ちのポケモンに乗っていて転落したそうです」
     開口一番、レンリの状態の説明を始めた看護師に、一寸どきりとしながら、キランは一言一句も漏らすまいと必死に耳を傾けていた。
    「幸い、手と膝の擦り傷だけで済みましたが、軽い栄養失調も起こしていて」
     看護師は点滴のパックを確かめるように手に取って見た。
    「それから、ずっとあんな調子なんです」
     キランは眠っているレンリを見た。

     まるでお伽話の眠り姫のようだ、とキランは思った。
     色白で、綺麗で。切れ長の目は今は閉じられているが、それでもその双眸の美しさは隠せない。
     黒い髪は枕に向けてさらさらと流れている。長く伸ばせばもっと綺麗になるだろう。メッシュを入れない方が綺麗なのに、勿体無いと思う。
     点滴の針が刺さった左腕は細く長く、その先にある手の指もほっそりとしている。
     薄い掛け布団に大方覆われている痩身は力強いのに、儚げだ。
     控えめに形作られた唇から、苦しそうな悲鳴を漏らしていなければ、彼女が生きている人間だなんて忘れてしまうかもしれない。

     レンリはうなされていた。

     看護師はキランに彼女の家族の連絡先を聞き、キランが首を横に振ると、残念そうに出て行った。
     なんだよ、とキランは思った。
     レンリのことを大切に思っているのに、自分では駄目なのか。
     ただの異性の部下ではなくて、せめて恋人の位置まで上らないと、好きな人を見舞うことも出来ないのか。

     キランは点滴の管に気を付けながら、レンリの左手を握った。
     こんなの、ずるいけど、と思いながら。

    「母さん……」

     レンリの口から、求めて止まない幼子のような声が漏れた。
     苦しそうに、震える声で。まるで雨の中に置いていかれたみたいに。

    「母さん……母さん……」
     それしか言葉を知らないみたいに、そればかり繰り返す。
     記憶にないはずの母親を探しているのだろうか。
     怪我自体は軽くても、アーケオスから落ちて少しの間は雨に降られていたに違いない。
     凍えた体が記憶を引き戻したのだろうか。

     レンリの左手が、キランの右手を強く掴んだ。
     はっとする。
     いつの間にか目を開き、紅色の濁った瞳が見えていた。

     レンリさん、と呼びかけようとした。

     握っていた筈の右手が乱暴に振り払われた。点滴の針が外れて、振り子みたいにこっちからあっちへ放物線を描いた。
     レンリはキランに背を向けて、体を叩きつけるようにベッドに横になると、簡易ベッドの薄いシーツをきつく固く握り締めた。

    「かあ、さ、……」

     言葉はどんどん切れ切れの切れっ端になり、それでも母親を求める声だと察しが付いてしまった。
     声を邪魔するのは、レンリ自身の喉に吹き込む呼吸だった。
     空気を遮断されたかのように息を呑むのが、かえって苦しみを増すのだが彼女の意志ではそれを止められない。

     暫くそれを馬鹿みたいに棒立ちになって眺めていて、やっとのことでナースコールの存在を思い出して、キランはベッドの頭側に取り付けられたボタンに手を伸ばした。
     その手を色白の指が掴んでいた。

    「平気だ」
     まるで亡霊のように虚ろな目。でも半分だけ現実に戻って来ていた。

     レンリが瞬きして、掴んでいた手を離す。
    「すまないな。大丈夫だ。ちょっと夢見が悪かっただけだから」
     首を横に傾げて笑うレンリの仕草に、思いも掛けずキランは胸を突かれた。
     レンリはそんなキランの様子には気付かず、ベッドから立ち上がった。
     ベッド横のパイプ椅子に置かれたコートを手に取って、
    「帰るぞ」
     とキランに声を掛けた。もうすっかりいつものレンリだった。


     彼女のアーケオスはレンリを背中に乗せると、後脚でフキヨセの滑走路を蹴って速度を上げ、ある瞬間、翼の向きと地を蹴る角度を変え、勢い良く空へと飛び出した。
     相変わらず羽ばたきは激しく、溺れているようにしか見えないが、フキヨセからライモンへの航路を取る時は翼を真っ直ぐ広げ、後脚の羽を立て、尾を円運動の外側に振って体勢を整えた。
     そのまま大きめの円を描いて旋回すると、再び羽ばたきを始めてライモンへ向かう。
     空の上で、レンリの顔が綻んでいた。



     五月二十四日。

     あの後、ライモンシティには戻ったものの、レンリは職場に顔を出していない。

     アーケオスの飛行は上手かった。
     きっと昨日は、フキヨセの風に驚いて離陸を失敗してしまったのだろう。
     そこに栄養失調で貧血気味だったのが重なって、気を失ってしまったのだ。

    「それだけなら、良かったんだけど」
     キランは終わらない文書の打ち込みを諦め、パソコンに背を向けて、背もたれに顎を乗せていた。
     もう日は暮れてしまっている。夜の中で、部屋の明かりだけが煌々と部屋の中を明るく照らしていた。

     レンリは母親と、どういう別れ方をしたのだろうか。
     その上ゾロアークの母親まで奪われ、パートナーにも寂しい思いをさせ、贖罪の思いを抱いたのかもしれない。
     そして、彼女の空への希求は、そのまま母親を探すことに繋がるのだ。

    「だからって、あんな無茶な訓練に付き合わされちゃ、こっちはたまんないよ」
     キランは回転椅子を回しながら、空いた椅子に座って丸くなっているココロモリに同意を求めた。
     その時、机の上の携帯電話が鳴った。

     メールを確認し終えると、キランは上着を取り上げた。
    「行こうか、ノクティス」
     椅子の上の青蝙蝠は、嬉しそうに鳴いてキランを先導した。


     ライモンシティは広い。
     キランは町の西にある警察署から、横方向にライモンシティを突っ切って飛んで来た。
     町の東、存在を主張するかのようにチカチカ光るゲートの手前でココロモリをボールに戻そうとすると、ココロモリが鼻先をキランに押し付けてきた。

     まるで、頑張れとでも言うように。
    「ありがと、ノクティス」
     鼻がハート型の蝙蝠をボールに戻すと、キランはゲートを潜った。

     途端に、辺りは異世界に迷い込んだかのように一変し、騒々しく、光り輝く世界へと変貌する。
     売り子たちがかしましく叫ぶポップコーンやアイスクリームの売り文句の間を通り抜けて、キランはある場所へと向かう。

     それは、規則正しい動きでもって、人間たちを空高くまで運ぶ乗り物だった。

     その付近にいたレンリに、手を上げて自分の位置を知らせた。
    「呼びつけてしまったな」
    「いいですよ、別に」
     どうせ仕事しないですし、と言ったキランの腕を、レンリが引っ張った。
     そのまま目的の建物、観覧車へ向かって行く。

    「一度、乗ってみたかったんだ」
     そんなことを言うと、普通の女の子に見えた。
    「ゾロアークに化けさせれば良かったじゃないですか」
     キランがそう言うと、レンリは口を尖らせてこう言った。
    「それじゃ、つまらないし、有難味が薄れると言うか。兎に角つまらないだろ」
     円形の枠組みの最下点に来た丸いゴンドラに乗り込む。
     作り付けの低い椅子に、レンリが長い脚を邪魔そうに折り曲げて座った。

     キランはその向かいに座った。
     そういう作りだから、仕方がないのだけれど。
     真正面から目が合うと、レンリは照れ臭そうに笑った。


    「これ、誕生日プレゼント」
     そう言ってレンリが両手に余るぐらいの大きさの箱を差し出したのは、ゴンドラが四十五度ほど上がった時、全行程の四分の一が終わったところだった。

     受け取った箱は飾り気の無い白の紙箱だった。
    「開けてもいいですか?」
    「いいよ」
     のやり取りの後、キランはテープで簡単に止められただけの蓋を上げる。

     中には薄緑色をした、透き通った石。
     石の中心を通るように、黄色い稲妻模様が描かれている。

    「雷の石? あ、ありがとうございます」
     イッシュ地方では、進化の石は手に入れ難い。
     法外な値段で売られているところもあるが、それ以外では、各地にある洞窟で探すしかない。

     胸が詰まって何も言えないキランに、レンリはお道化た調子で「気に入らなかったか?」と問う。
     やっとのことで首を横に振る。
     レンリの表情を見られなかった。

    「キラン」
     彼女は窓の外を指差した。
    「意外と綺麗だ」

     キランが窓の外を見ると、そこには限り無く広がる光の海があった。
     街の灯りが視界を埋めていた。
     東の方を見ると、ぽっかり穴を空けた暗い空間の向こうに、立派な橋が見えた。
     キランがその橋をずっと眺めていると、不意にレンリと目が合った。

    「こうやって、高い所から探せば、母親も見つかると思っていた」

     寂しげな表情をしたレンリに、何か言おうとしたが、言葉が見つからなかった。

     キランが黙っているのを見て、レンリは話を続けた。


    「流石に、もうあの時からじゃ遅すぎるか。でも、これからは何が起こってもそこへ飛んでいける」
     困ったらいつでも呼べよ、と言うレンリにキランは「あの」と切り出した。
     急に改まったキランに驚いたのか、レンリは目を丸くして、けれど姿勢はそのままで。

    「僕は、レンリさんのことが好きです」

     その後に、気の利いたことを言う筈が、脳みそが熱にやられて動かなくなったみたいだった。

    「付き合ってくれませんか?」

     それだけ言うのが精一杯だった。

     下げてしまった顔を上げる。
     窓の外では夜景が移ろう。
     光の群れを見つめるレンリの顔が、窓ガラスに映っていた。

     間があって、レンリが口を開く。

    「ゾロアークに育てられた人間がいた」

     目を動かさないまま、言葉だけが動いた。

    「そいつは、自分のことをゾロアの仲間だと思い込んでいたらしい。
     お前はそんな奴の相手は嫌だろう。私も願い下げだな」
     そこまで言って、レンリは笑みを作った。いつものように、不敵で、有無を言わせない笑みを。
     そして真顔に戻った。
    「すまないな、キラン」

     キランに出来たのは、「いえ」と小さく呟いて首を振ることだけだった。

     観覧車は、落ちて行く方向に向かっていた。



     結局、要するに、自分にレンリの恋人なんて無理で、釣り合わなくて、彼女を支えることなんて出来ないのだ、とキランは思った。
     一緒に観覧車に乗って、夜景を見て、浮かれた自分の行動を恨みたかった。軽率だったと思った。
     せめてあの時、もっと何か言えれば良かったのに。
     しかし、どんなに後悔しても、逃した好機は帰って来ない。

     それに、今は彼女の過去を受け止める自信がなかった。
     病院のベッドで垣間見ただけのそれにさえ、キランは身動き出来なかった。
     もっと強くならないと。
     ルーメンがシビルドンに、テネブラエがシャンデラに進化した時になれば、あるいは。

     キランは扉を開けた。

     五月二十五日。

    「お早う、キラン」
    「お早うございます」

     何も変わらないまま、今日も一日が始まる。

     キランはデスクにつき、鞄の中の物を机の上に置いた。
     コトリと何かが当たる音がした。バサバサと羽音がして、青蝙蝠が机の上に飛び乗った。

     ノクティスが薄緑色の綺麗な石に鼻先をくっ付けていた。




    【煮てもいいのよ】
    【焼いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】

    クリスマス小説を書いたんですが、ポケモン成分少ないのでサイトに置きました。
    でも折角のクリスマスなのだしと思い、もっとポケモンが出てきて、キランくんが誕生日プレゼントもらって幸せになる話を書こうとした結果がこれです。
    一日遅れですが、メリークリスマス……あ、でも、クリスマスって中止でしたっけね。


      [No.1082] ホワイトシャペッツクリスマス 投稿者:CoCo   投稿日:2010/12/25(Sat) 23:59:19     106clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
    ※先に〔http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/kagebouzu/index.html〕をお読みいただくとまだ安全にたのしめます



     カゲボウズたちは本来夜行性である。夜更けの町をひゅるりらと彷徨い、床につくにもつけぬような恨みつらみを吐き出す人間の家の軒下でその染み出した怨念をいただく。
     その本質は、宿憑きのカゲボウズであっても変わらない。
     集合住宅だというのにカゲボウズたちが騒ぎ出すのは決まって夜中であった。ささやくような衣擦れが部屋中いたるところからするというだけでも十分な安眠妨害だろうが、それに加えてこのボウズどもは、人間の道具で遊ぶのだ。カーテンレールをかしゃんかしゃんやったり、電灯の笠の上に乗っかって埃の雪を降らせたり。テレビをつけると興味を示し寄ってくる数匹のカゲボウズで半分近く占領されるわ、ストーブにあつまってきて熱風を遮るわ、ろくなことがない。

    「おいカゲボウズども!」
     ある夜、ついに宿主の男が切れた。
    「明日が何の日だか知ってんのか、え、知ってんのか? クリスマスだよクリスマス! どっかの聖なる神様の誕生日で神聖な日なんだってよ!」
     投げやりに言う男の口の端から妬みの念が零れ落ちるのを見逃さず、カーテンの裏からタンスの中からカゲボウズが集まってくる。
    「お前ら静かにしてねえと、サンタクロースに浄化されんぞ!」

     とたん、黒坊主たちに衝撃が走った。
     わさわさ わさわさわさ

    (じょうか……だと……)
    (じょうかってなに)
    (うらみのねんをけされて まっしろになることだ)
    (くいあらためてしまうことだ)
    (なん……だと)
    (そんならおれら しろぼうずにされちまうわけか)
    (うわあ)
    (しょぼい)
    (ごーすとぽけもんの そんげんにかかわるな)
    (やばいな)
    (やばすぎる)
    (どくおーたすけてくれー)

     いっせいに黒い波が青年に押し寄せたが、慣れているのか微動だにもしない。
    「せいぜい赤い服着た白髭の爺さん警戒してろ!」
     25日のシフトを彼女持ちの同僚に交換され、「――さんなら代わってくれると思ってました(笑)」とまで言われた恨みをポケモンにまでやつあたりするしがない男は煎餅布団にもぐりこみ、立て付けの悪い雨戸の隙間風に震えながら眠りにつく。
     その悪い夢のおこぼれを肴に、カゲボウズたちはずっとさざなみのごとくさわさわしていた。

    (あかいふくにしろいひげ とな)
    (さんたくろーすとは なんだ?)
    (あぶないものなのか)
    (どくおのくちょうと さらにそのにくしみぐあいからさっするに そうとうきょうあくなそんざいらしいな)
    (きっとぼくらをじょうかする きょうふのだんざいしゃだぜ)

     震えるカゲボウズの一部からティッシュを裂いたような悲鳴があがる。

    (おいおい おくそくでことをかたるのはやめたまえ)

     そこへ現れたのは、賢そうな目つきの一匹。

    (うわさとそうぞうにおどらされると しんじつがくもる。たいせつなのは おおくのじょうほうをえて それをえらび ときにはきりすて そしてかんがえることではないのかね?)
    (やいやいなんだおまえ)
    (くりすます おそるるにたらず。わたしはさんたくろーすのしょうたいにつながるじょうほうのいちぶをにぎっている)
    (おおおっ)

     四畳半がざわめいた。

    (さんたくろーすとは かみさまのつかいでな。よいおこないをしたものに しあわせをはこぶそんざいなのだというぞ)
    (なんてこった)
    (しあわせとな それはちょうきてきにみれば われわれにはまいなすですぞ)
    (いやいや そもそもここいらにすんでいるにんげんが よいおこないをしていたためしがありますか)
    (あるあ……ねーな)
    (どくおはこのあいだ じぶんのあらっているさーないとのあえぎごえで はなぢをながしていたぞ)
    (なんたるふらちな)
    (おんりょうのぽけもんによくにたあのおとこは またみょうなことばかりやっているしな)
    (あっし、あのおとこになべでにこまれたことがありやす)
    (な、なんだってー!)
    (くわれたのか どうだった)
    (へい、それがとんでもなく きれいさっぱり よのなかのしがらみをあらいがなしてしまい うらみぶそくでとべなくなるところでした)
    (じょうか……か)
    (ひいいいいいいい)
    (しかしここまであくぎょうをくりかえしたとすれば さんたくろーすはまず こないとみてよいだろう)
    (なるほど)

     一同、ふう、と一息。

    (とかく くりすますのまちからはうらみがあふれているぞ)
    (なんだと それどこじょうほうだ)
    (はんかがい いくか)
    (おれたるいからどくおでいいや)
    (おれも)
    (さいきん どくおのとりまきふえたな)
    (おまえらゆるんでるぞ そんなんじゃいまにほどけてただのぬのだ)
    (おっさんげんきだなあ)
    (じだいかねえ)

     イブの夜は沈み。
     やがて朝が来る。それはクリスマス、大仰な名前のついたただの平日だ。そう思っている人は意外と多い。
     はしゃぎまわるのは枕元にプレゼントを見つける子供か、記念日にかこつけてデートのタイミングを見つける子供か。

     そんなように世間様を呪ってはカゲボウズのおやつにされる男の部屋へ、朝、少しだけ雪が降った。
    「さむ」
     男は作業着の上にダウンジャケットやらなんやらを着込み、悪態をつきながら出かけていった。

     カゲボウズたちはたいがい眠っていたが、何匹か、夜更かしの常連がそわそわしていた。
     勝手にストーブのスイッチを入れ、火にあぶられるものがあれば、せっせとお湯の栓を捻り暖まろうとするものがいる。

     その中で、ひときわ小さな一匹が、なぜか暖かさとは対極の、結露した冷たい色の窓に向かっていた。
     雨戸の隙間に張られた新聞紙をやぶいて外へ飛び出す。さむい。はあ、と吐き出した小さな吐息が白く染まる。曇天でまるで朝を覆い隠し、見下ろす街灯が点滅しているぐらいだ。隣では自動販売機がじーっと稼動音を鳴らしながら佇んでいる。

     小さなカゲボウズは寒さに震えながら、軒下にくっついた。
     ぷらぷら揺れながら、道路を通りすがる車なんかをみつめている。

     やがてコートを着込んだ女性がひとり、通りかかった。
     茶色の手袋をしたままポケットから財布を取り出して、小銭を取り出す。
     が、指を滑らせたのか、きゃっと一瞬の悲鳴と金属音。コインはコンクリートの地面で跳ねて、自動販売機の下に転がっていってしまった。
     女性はもうおろおろしてしまって、何度も何度も自販機の奈落を覗き込もうと試みていたが、さすがに這いつくばるのは気が引けるようで、そのまま手を突っ込むわけにもいかず、だいぶ難儀していた。

     ぷちボウズが雪とともに舞い降りる。
     女性は神妙な面持ちで突然現れたゴーストを見つめていたが、そいつがごそごそと自販機の底へもぐりこみ、うんとこしょよっこいせと何か引っ張ってくるのを見て、感づいたらしい。じっと見守る。

     やがて五百円玉を咥えたカゲボウズは、重たそうにしながらもふよふよと女性の手元まで浮いてきた。
    「ありがとう」
     女性はにっこりわらった。しかし坊主は首をかしげるばかりである。
     そしてなぜか、もう一度自販機の下まで降りてくると、今度は百円玉をもってきた。
     次は女性が首を捻る。
    「これは私のじゃないから」
     それだけ言って、五百円玉を穴に落とし、コーンポタージュを買うとすたすたと去っていった。

     ぷちボウズは百円玉をみつめている。



     その頃、部屋はちょっとした騒ぎであった。
     なぜなら突然、換気扇から見たことのないポケモンが煙のように侵入してきたからである。
     赤い服に白い髭、黄色い嘴にふくらんだ大きな袋。

    (さんたくろーすだ!)

     カゲボウズたちはいっせいにカーテンの裏へタンスの上へパソコンの後ろへ隠れると、さんたくろーすにプレッシャーの視線を送った。
     いっぽうのさんたくろーすは、部屋の影という影から三角形の光がみつめているというのに気にも留めず、我が物顔で部屋を歩き回る。

    (どうする、さんたくろーすがきちまったぞ)
    (ひがいじょうきょうを かくにん! こちらでんきのうえ、おーるくりあ! ほかで じょうかされたものは?)
    (こちらカーテン! ひがいなし! カゲのすけとカゲよがことさらにいちゃついております!)
    (よし、すみやかにひきはがせ! つぎ!)
    (こちらタンス! いじょうありません! でもいささかかずがおおすぎておっこちそうです!)
    (たえろ! つぎ!)
    (こちらあったかいきかいのうしろ! えまーじぇんしー! なんびきか かたいひもに ひっかかって みうごきがとれません!)
    (なんとかしろ!)

     わいきゃあやってるあいだにも、ぽてっぽてっと歩きつめるさんたくろーすはもう部屋の真ん中です。
     しかも、ごそごそと袋をあさりはじめました。

    (おい、さんたくろーすは なにをはじめようとしているんだ?)
    (おそらく、ぷれぜんとをとりだすのかと)
    (ぷれぜんと……だと……)
    (ひさしくきかなかった ひびきだぜ)
    (もしや どくおをねぎらうつもりなのかもしれません)
    (なんだとぅー)
    (それはまずい)
    (きょうのどくおはことさらにどくどくしくかえってくるんじゃないかとみんながきたいしていたさなか、さんたくろーすの手によってしあわせがもたらされてしまい、おうどうてきかたるしすがはっせい、うらみつらみがうさんむしょうというわけか)
    (なんだあいつ わけわからんことばをつかうぞ)
    (にんげんのざっしをよみすぎたな)
    (わかることばでおk)
    (ともかくあのぷれぜんとをそしせねば)
    (そういん! じゅんびはいいか!)

     掛け声にあちこちから念派があふれる。
     それでようやくさんたくろーすも部屋の異常さに気がついて、あわててきょろきょろしはじめた。

    (かかれぇー!)

     どくおのへやは くろいはどうを つかった!

     と表現しても差し支えないほどの黒いかたまりが、壁から影から隙間からひゅんひゅん飛んできて赤白のポケモンにぶつかった。そいつは翼のような前足で頭をおさえてひたすら耐える。が、ついに脳天に一匹が命中し、ふらふらと倒れこんでしまった。

    (どや!)

     カゲボウズたちは部屋を守った自分たちの栄光にどっと沸いた。

     が、さんたくろーすはしぶとく起き上がった。
     白い羽毛を散らしながら、ぴょこたんと畳の上に立ち上がり、首を振ってくえくえ言う。

    (全く、活きのいいカゲボウズなんてはじめてみたぜ。やっぱり洗濯ってやつの影響かね)

     カゲボウズたちはひっしにおばけのふりをした。
     たちされー、たちされー

    (そんなに頑張らなくてもこいつを置いたらすぐに次の家に行くさ)
     と、さんたくろーすが取り出したのは、小さなプレゼント箱。
    (こいつは、この部屋の主に綺麗にしてもらったポケモンたちの感謝のかたまりなんだ。こいつを置いて帰らないことには運び屋ポケモンの名が廃るってもんでね)

     カゲボウズたちはゆらゆらした。

    (しかしお前らの執念には驚いた。この俺を出し抜いてみせたほうびに、何かお前らにもプレゼントをやりたいところだが、お前らの幸福は主の不幸か。さてどうしたもんかね)

    (べつにどくおはねんじゅうふこうだからいいよ)
     どいつかが言った。

    (じゃあ後のことはなんとやら、とりあえずプレゼントだけ置いてさっさと退散するとしよう。じゃあな小さな悪意ども、メリークリスマス)

     さんたくろーすは窓の隙間に飛び込んで、煙か霧のようにしゅるりと消えてしまった。
     ぽつねんと残ったのは、赤いリボンのプレゼントボックス。



     さて、小さなカゲボウズはというと、冷たい道端で百円玉を必死に持ち上げ、自販機の穴に放り込もうとやっきになっていた。
     よいしょよいしょっと必死に持ち上げ、たまには押しつぶされそうになりながらも顔を真っ赤にして持ち上げて――ついに、がしゃこん。
     押し込めた達成感もままならないまま、ボタンに突撃する。
     さっきの女性が押したのと同じボタン、思いきり押してみたが何もおこらない。本当ならおおきな音がして下の取り出し口にこの透明な壁のむこうのものとおなじものが出てくるはずなのだが。
     なんどもなんどもぶつかるが、いっこうに出てくる気配はない。
     それもそのはず、コーンポタージュは百五十円なのだった。

     あんまりぶつかりすぎて、あたまのさきっぽが折れてしまうかと思われたそのとき。
     突然、ぴろりろぴろりろと音がして、自販機が眩しく光った。
     あまりの眩さにカゲボウズがぎゅっと目を閉じ、そろそろと瞼を持ち上げてみると。
     取り出し口にコーンポタージュが落ちていた。

     きゃいきゃいうれしそうにするちびボウズの後ろを、一羽のデリバードがぽてぽて歩きながら、調子のはずれたクリスマスキャロルをくちずさんでいた。




     つつく

    ***
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】

     なんとも言えない感じですがメリークリスマス。
     最後に毒男サイドを付け足していたらクリスマス中に投稿できなさそうだったので一部完(おい)!

     ぎりぎりなのよー


      [No.1081] 私信・「ロスタイム」に関して 投稿者:小樽ミオ   投稿日:2010/12/25(Sat) 23:47:02     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    掲示板が再編されていて、『野の火』のありかが分からなくなって一瞬だけ焦りましたが、すぐに見つかりました。またありがたく拝読させていただいております。
    ひとつのテーマ、(現時点で)20の作品。年末&新年早々、素敵な作品を拝読できるなんてしあわせでございます^^

    あと、恐縮ですが、マサポケトップのポケスト・締切欄の「ロスタイム」の意味するところについてご教示いただきたいです。
    わざわざロスタイムと表現されているのにこんなことをお聞きして恐縮です(汗


      [No.1079] Re: そろそろお題変えようか 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/12/25(Sat) 12:24:36     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    みなさんありがとうございますー
    今回は「悪」にさせて貰いました。


      [No.1078] お久しぶりです! 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/12/25(Sat) 12:16:41     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    うおおおおおっ お久しぶりです!
    いつぞやは感想ありがとうございます。
    ただいま応募作品が20になったところです。
    読むのが少々大変ですが、ぜひぜひ投票をお願い致しますっ……!

    もちろん応募してもいいんだぜ(


      [No.1077] Re: ついさっきもう一作品増えてしまいました 投稿者:小樽ミオ   投稿日:2010/12/25(Sat) 10:38:24     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ご無沙汰しております。m(_ _m)
    たった半日で作品がこんなにたくさん……!
    投票までに読みきれるか、不安になっちゃいます^^;


      [No.1076] ついさっきもう一作品増えてしまいました 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/12/25(Sat) 03:28:38     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    すいませんが、ついさっきもう一作品増えてしまいました。
    予想だけどあと1,2作くらい来る気がする。
    くるといいな♪


      [No.1075] すげー増えてる。そのに 投稿者:渡辺タテタ   《URL》   投稿日:2010/12/25(Sat) 03:08:46     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ……十七作品とかマジで?!

    俺、晦日と来年12日にも自分のライブがあるのに、
    14日までに全部読んで審査とか死んでしまう!

    むう、作者のみなさんの熱意に負けては申し訳ない。
    いまからコツコツ読まなくちゃ……。


      [No.1074] Re: そろそろお題変えようか 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2010/12/25(Sat) 02:12:06     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「悪」なんていかがでしょうか。

    あくタイプ、悪役なんでもござれって感じで。


      [No.1073] クリスマスイブだった 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/12/25(Sat) 01:55:37     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    今年もクリスマスイブは一人きり。
    仕事して家に帰ったらストコン応募が2つきていた。

    ミニストップでクリスマスケーキ(上司に買わされたw)を受け取って、サイゼリアで野の火の続き書きにいって、ノーパソの充電切れたので帰ってきたら、また2つ来ていた。

    な、なにをいってるかよくわからねーと思うが(ry


    とりあえずサンタさんからのプレゼントだと思うことにした。



    (意訳:応募ありがとう! このまま20作品くらい行ってしまえ)


      [No.1072] Re: そろそろお題変えようか 投稿者:クーウィ   投稿日:2010/12/24(Fri) 23:56:35     74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    皆さんのクリスマスプレゼントのお陰で、今夜は充実してます(笑) どうもありがとう御座いました…!



    …で、御題の方なんですが…何故か頭の中に、歴代のバッジ確認シーンが兆して来ましたので……(汗)

    取りあえず自分は、『門』か『ゲート』辺りを〜


      [No.1071] 図鑑っぽくしてみた 投稿者:こはる   投稿日:2010/12/24(Fri) 22:46:22     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    デリバード はこびやポケモン

    いつも背負っている白いふくろには、いろいろなものが詰まっている。あぶないので、よい子は触らない方がいいだろう。中身はどこから集めてきたのか、わからない。

    12月の終わり頃になると大量に発生する。
    デリバードの生息地域周辺では、犯人不明の窃盗事件が多発していることを忘れてはならない。

    数少ない目撃者の証言では「赤い鳥のようなものが白いなにかを背負って目の前を横切ったと思ったら、腕をつつかれていた。鳥は鋭い眼でこちらを睨んで、せっせと走り去った」とのことだ。

    ◇◆◇◆◇◆

    100文字規定でしたよね。239字あるから大丈夫かしら?

    【悔しかったら書いてみやがれ!(笑)】とのこと。
    悔しかったので書いてみました(笑) お目汚し、すみません(^^;)


      [No.1070] いやー 投稿者:サトチ   投稿日:2010/12/24(Fri) 22:39:52     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どうせ変えるなら、一度技から離れましょうよー(笑)
    「タマゴ」にしちゃいかがですか?


      [No.1068] メリークリスマス![ネタ投下] 投稿者:サトチ   投稿日:2010/12/24(Fri) 21:34:21     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    メリークリスマス![ネタ投下] (画像サイズ: 400×400 14kB)

    ということでネタを投下!(笑)
    ローストチキンでもヤンキー座りのバシャーモでもなく、怖すぎると蝶・不評だったリアルタイプデリバードです(^^;)
    挑戦者求む!

    【悔しかったら書いてみやがれ!(笑)】
    【とりあえず何のネタにしてもいいのよ】


      [No.1067] Re: くわっ!? 投稿者:イケズキ   投稿日:2010/12/24(Fri) 20:58:27     33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >  困るコマタナが目に浮かぶ。……美容院に行ってきた母(変化無し)の変化を見つけるぐらい、大変なんですよね。師匠の変わったところを見つけるのってww

    その通り。師匠のオシャレを見つけるのは、ふつう無理です。ストライクはきっと、長年の勘と、師匠へのリスペクトで発見したのでしょう。

    > >  「でも、いつもの白ネギの、青い所少し切ったって、あまり変わらないと思うけどなぁ。」
    >  師匠、それはさすがに気づかないかと……クワァッ!! すみません、素振りしてきます。

    もちろん素振りの掛け声は、「クワァッ」だぞbyカモネギ師匠

    >  感想にもなってない気がしますが、ここはメリクリで許してください><

     いえいえ、むしろ楽しいツッコミありがとうございました。


      [No.1066] Re: 幻影十四行詩 投稿者:スズメ   投稿日:2010/12/24(Fri) 20:16:20     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

      

     これは・・・掟みたいなものなんでしょうか?
     それとも・・・?

     十一、幻影は過去にも未来にも縛られてはいけない

      過去にも未来にもってことは、一人の人物としてではなく幻影として存在するということ・・・?

    三、幻影が何故希望と絶望を両方与えたがる

     この部分は自問自答にも見える気が・・・幻影は一人じゃなくてたくさん集まって幻影と化しているということ・・・?

     簡潔なのに、深い意味とかがこめてある話だと感じられます・・・


      [No.1065] Re: そろそろお題変えようか 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2010/12/24(Fri) 19:58:11     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    タマゴ技、技マシンと来たら、教え技はどうでしょう?


      [No.1064] くわっ!? 投稿者:こはる   投稿日:2010/12/24(Fri) 19:45:02     30clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     お待ちしておりました、師匠。クリスマスということで、カモな――ごほん、七面鳥をご用意しております。

    >  「えー、そのー、あ、そう言えば、羽の艶がいつもと違うような・・同じなような・・。あ、師匠の顔がいつもより赤い!」
    >  突然自信満々に、コマタナが叫んだ。
     困るコマタナが目に浮かぶ。……美容院に行ってきた母(変化無し)の変化を見つけるぐらい、大変なんですよね。師匠の変わったところを見つけるのってww

    >  「素振り1500回。今すぐやって来い!!」
    >  カモネギ師匠が爆発した。
      やはり、ここでもクワァッ!! でしょうね。

    >  「でも、いつもの白ネギの、青い所少し切ったって、あまり変わらないと思うけどなぁ。」
     師匠、それはさすがに気づかないかと……クワァッ!! すみません、素振りしてきます。

     感想にもなってない気がしますが、ここはメリクリで許してください><


      [No.1063] 師匠の「白い」クリスマス 投稿者:イケズキ   投稿日:2010/12/24(Fri) 15:57:04     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     ここは、カモネギ師匠の「いあいぎり道場」。今日は、クリスマス・イブ。道場も今日ばかりは、厳しい修行はナシ。楽しげな笑い声と、美しいイルミネーションの明かりで包まれている。
     そんな道場に一匹、コマタナが、困った顔をしてカモネギ師匠を見ていた。
     師匠には、クリスマスなど関係ないらしい。今日も、昨日と同じように、ネギの素振り1000回をきっちりこなして、顔が赤く火照らせていた。
     
     コマタナの浮かない様子に気付いた、ストライク。ストライクは、クリスマスを楽しむ気満々で、すでにサンタの衣装に着替えていた。
     「どうしたんだ?コマタナ。せっかくのクリスマスに、そんな顔をして。」
     ストライクが尋ねる。
     「ストライク兄さん・・。いや・・何でもありません。」
     「何でもない事無いだろう。それとも、この兄弟子に言えないようなことなのかな?」
     ストライクは意地の悪い切り替えしをする。
     「そんなことじゃないです!その・・、師匠のことなんですが・・・」
     言いづらそうに、コマタナがどもる。
     「師匠は、何というか・・・あの・・衣装のような・・せめて『オシャレ』みたいなことは、しないのでしょうか?クリスマスだというのに、朝からずっと修行ばかりして、全く楽しまれていない。」

     コマタナの、話を聞いたストライクは、盛大に吹き出した。
     「ハハハッ!何を心配しているのかと思ったら、そんなことか。」
     「兄さん、そんな笑わないでくださいよ。僕は結構真剣に困っているんですから。」
     コマタナは、少しむっとした様子で言った。
     「すまん、すまん。だけど、大丈夫だ。師匠は万事心得ていらっしゃる。ちゃんと、夜のパーティには参加なさるし、『オシャレ』だってしている。」
     「えっ!どこがですか?」
     「それはな・・・」
     と、言いかけてストライクが口をつぐんだ。なぜか、その顔はニヤニヤ笑っている。
     「兄さん、どうしたんですか?」
     「コマタナ!」
     コマタナの背後から、カモネギ師匠の声がした。

     「師匠!その・・これは・・・。」
     ストライクに突っ込まれた時の、100倍コマタナは焦っている。
     「黙りなさい。」
     師匠が言った途端、コマタナは石になったかのように硬直した。
     「私を見て、何か違うと思わないのか?」
     「えー、そのー、あ、そう言えば、羽の艶がいつもと違うような・・同じなような・・。あ、師匠の顔がいつもより赤い!」
     突然自信満々に、コマタナが叫んだ。
     「コマタナ」
     怖いほど、穏やかな声で、カモネギ師匠が言った。
     
     「素振り1500回。今すぐやって来い!!」
     カモネギ師匠が爆発した。


     

     「師匠、いくらなんでも、無理があるんじゃないですか?」
     ストライクが、カモネギ師匠に言った。コマタナが、泣きそうになりながら素振りをする音が聞こえる。
     「無理なんかあるものか。コマタナの見る目がまだまだ育っていないだけだ。」
     師匠は事もなげに言う。
     「でも、いつもの白ネギの、青い所少し切ったって、あまり変わらないと思うけどなぁ。」
     「ストライク、お前も素振りしてくるか?」
     
     ストライクは突然パーティの準備をしなければ、と言ってどこかへ消えていきました。
     
    ---------------------------------------------------------

    「ザ・プロフェッショナル」カモネギ師匠と、クリスマスを合わせてみました。

    もともと、カモネギでひとつ書いてくれと言われたものに、自分の過去作と、クリスマスを足しただけですが・・・

    師匠ならきっと、クリスマスといったら、ホワイトクリスマス。ホワイトなら、白。白いのは白ネギ、くらいの発想をしてそうと思ったもので。

    【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】【批評してもいいのよ】【白ければいいのよ】
     
     
     
     


      [No.1062] 三つのクリスマスの物語 投稿者:紀成   投稿日:2010/12/24(Fri) 12:23:18     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    一、ユエの場合


    「やっと終わった・・」
    ユエは、お客がいなくなった店内を見回して安堵のため息をついた。
    今日はクリスマス・イヴ。このカフェでも稼ぎ時ということで、何かそれに相応しいことを出来ないかと考えたのだ。
    で、行ったのが。
    「まさかあんなに来るなんてね」
    表に出していた小さな黒板を中に入れ、文字を見る。

    『クリスマス・バイキング
    イヴの夜限定、バイキング・ディナーはいかかですか?
    九十分で二千円から。素敵な料理をご用意しております』

    この看板を出した時から、カフェの中を覗く人が増えてはいるなと思っていたのだ。大体は若いカップル。その次に女性グループ。
    高校生くらいの女の子もいたが、今日は来ていなかったようだ。まあ、その年では家族や彼氏と過ごすのが無難だろう。
    ディナータイムは午後五時半から。それまでに、従業員達と一緒に準備をする。
    料理をのせるテーブルを磨き、その料理を作り・・。
    店を開けた時には、既に十組以上が並んでいた。


    『すごかったわね』
    エンペルトが呟いた。手にはコーヒーカップを持っている。
    『まあな。元々コーヒーだけでなくアイデア料理の店で売り出したんだ。興味持って来る人は多いと思うぞ』
    マグマラシは今日出した料理のリストを見ていた。サラダ、メイン、デザート・・。全てがユエのアイデアだ。
    『ダルマッカとヒヒダルマの激辛パスタ、フリージオのコールドサラダ、クリムガンの温野菜サラダ、コジョフーのガーリックトースト・・』
    『デザートに、ゴチルゼルのデコレーションケーキ、ヒトモシカップケーキ、ツンベアーのアイスクリーム・・』
    よくもまあ、ここまで考えたものだ。
    「皆、今日は手伝ってくれてありがと」
    話していると、ユエがやってきた。
    「皆のことも凄く評判だったわ。ポケモンが給仕してるのが可愛いって」
    マグマラシの顔がボッと赤くなる。エンペルトがクスクス笑った。
    「というわけで、これ。私からのクリスマス・プレゼント」
    可愛い包み。あけて見ると、ポフィンとポロックの詰め合わせだった。


    「オーナー、小包が届いてます」
    一通り片付けが終わった後、皆にコーヒーを振舞っていたユエの元に、ダンボール箱が届いた。
    差出人は、無し。
    「え、誰だろう・・」
    少々警戒しながら開けてみる。エアバックに包まれた・・ミニタンス?
    手紙も入っていた。
    「どれどれ・・」

    ユエさん

    店を任せてしまってすまない。まだ帰れそうもない。こちらは凄く楽しくてね。
    風の噂では楽しくやっているそうだから、安心しているよ。
    戻ったときおいしいコーヒーを飲ませてくれ。では。


    「マスター・・せめて住所くらい書いてくださいよ!」


    二、ミドリの場合

    クリスマス。クラスメイト達はカップルで過ごす者が多いらしく、独り身のミドリはあまり街に出ることが出来ない。遭遇したくないからだ。
    だが、そんなミドリでも今日は街に出た。昨日公開されたばかりの映画を観に来たのだ。
    『キュウウウ!』
    つれて来たツタージャが震えている。ジャケットの中に入れているが、草タイプにはこれでも寒いらしい。
    「映画館に入れば、あったかいから」
    わめくツタージャをなだめ、ミドリは中に入っていった。

    「あれ」
    チケットを買い、ツタージャにポップコーンを買い与えていると、後ろから声がした。
    「ミドリちゃん」
    「・・ミスミさん、ミコトさん」
    自分の先輩が立っていた。私服なので、一瞬誰だか分からなかった。
    「どうしたんですか」
    「映画観に来たの。ミコトは付き添い」
    「何でこの年でアニメ映画観ないといけないんだ」
    「・・」
    アニメ、と聞いて思いつくものは一つしか無かったが、あえて言わないでおこう。
    「ミドリちゃんは何を観るの?」
    「・・推理ものです。ファンなんです」
    「っていうか、また眼鏡に替えたんだね」
    元々、ミドリは目が悪かった。ステンドグラスの本を読むようになってから、ますますひどくなり、中二の二学期からコンタクトにしたのだ。
    だが、今は金縁のインテリのような眼鏡をかけている。
    「好きな役者がこれなんです」
    「で、その私服も?」
    「父親が置いて行ったのを仕立て直してもらったんです」
    ネクタイ、帽子、コート。いかにもそれっぽい。
    「じゃあ、そろそろ行きますね。では」
    「あ、うん」

    「『絶対的な正義がこの世にあると思ってるの?』かあ・・」
    ミドリは帰り道、先ほど観た映画の台詞を口に出し、フウと息を吐いた。


    三、カオリの場合

    「insolt boy!
    slave of fashion
    basking in your glory!」

    『懐かしいな。『オペラ座の怪人』のファントムの最初の台詞か』
    デスカーンが言った。聞こえているのかいないのか、カオリは右顔につけた仮面を外す。
    「丁度・・この時期だった」
    『皆怯えていた。カオリの存在感と、演技力に』
    「演じている側は分からないよ」
    外は雪が降りそうな雰囲気だ。ホワイトクリスマスになるだろうか。
    「クリスマスの舞台に、それをするなんて、あの学校も変わってたよね」


    数年前の話である。
    当時カオリは、まだ火宮の家にいた。といっても、その数日後には全て灰になってしまったため、カウントダウンをしてもいいくらいだった。
    中学のクリスマス会のようなもので、クラス対抗で舞台をやることになったのだ。
    「私のクラスは、オペラ座の怪人をすることになったんだ」
    もちろん、カオリは脇役を取った。下手に目立ちたくなかったからだ。女子は皆、そのクラスで一番人気のあった男子をラウルにし、自分がクリスティーヌをやりたがった。
    そして、嫌われ者の男子をファントムにした。

    稽古が始まったが、カオリの目から見れば、皆下手だった。
    『カゲボウズ達が喜んでいたが・・。ファントム役の男子をいじめる感情が食べられると』
    「幻影役の感情なんてそうそう食べられるものじゃないしね」
    だが、その虐めもかなり酷かった。元々がそういうポジションだったため、台詞を聞こえないと言ったり、わざと転ばしたり・・。
    見ていて目が腐りそうだった。

    『それ以前に、カオリは許せなかったんだろう』
    「何が?」
    『ファントムを侮辱されるのが。推した人間にも、それを引き受けた人間にも、お前は負の感情を持っていた』
    「・・・」

    だから、公演前日、ファントム役の男子を呼び出した。

    『私にあの人の役をやらせて欲しい』と。

    当日、カオリは脇役を演じる振りをして舞台から抜け出した。そして、体育館の舞台上に登った。仮面をつけ、衣装を着て。
    そして、男のような低い声で言った。

    『insolt boy!
    slave of fashion
    basking in your glory!』

    (私の宝物に手を出す奴、無礼な若造め!)

    『皆が一瞬硬直した。会場が静まり返った。舞台に登場した時、誰もお前だと思っていなかった』
    「最後の方の仮面をはがすシーンでばれたけどね」
    中学生ともなると、さすがに仮面をしていても男女の区別はつく。
    だがカオリは低い声を出し、しかもファントム役は男子がやっているという・・先入観により、女だとは思わなかったのだ。

    『特殊メイクをしていたのだろう』
    「火傷の痕を作ったんだ。あのヒロインの怯えた顔がおかしかったよ」

    会場が本当にパニックになる前に、カオリは自らメイクをしていたマスクを破った。
    女だと分かった瞬間、皆の顔が驚きの色に変わった。

    『カオリ、あのときのカオリはすごくかっこよかったー』
    『よかったー』
    カゲボウズ達が集まってくる。
    「あの時の仮面が・・これだ」

    ファントムになりたかったわけではなかった。
    ただ、侮辱されたくなかった。
    それだけだ。

    「さあ、街のツリーでも見に行こうか」

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    紀成です。クリスマスイヴだということを忘れかけていました。
    年々物忘れが酷くなっている気がします。
    幻影シリーズもそろそろ佳境な気がするので、どうか見守ってやってください。

    では、merry christmas!


      [No.1061] それなら 投稿者:イケズキ   投稿日:2010/12/24(Fri) 09:52:11     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    スズメさんつながりで、タマゴ技はどうでしょう?

    とっても便利で、めんどくさいタマゴ技。


    正式名称タマゴ技だったか、自信がないのですが・・・


      [No.1060] ひと息ついて 投稿者:   《URL》   投稿日:2010/12/24(Fri) 04:19:35     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     瞼の向こうに、朝の日差しを感じた。

     もう朝か、と女性は思った。
     布団の中が暖かい。
     もう少し寝ていたい。
     女性が寝返りを打とうとして、腕の中にポケモンがいることに気付く。
     またゾロアか、チラチーノあたりが布団に入り込んだのか、と思う。
     それにしては、何だか平べっちゃくて……

     何だか細いものを掴んだ。

    「ぷぎゅぇっ!?」と腕の中の物体が声を上げた。慌てて女性は掴んだ手を離して、起き上がった。

    「あら!? ちょっと、お姉さん起きはったで!」
     彼女の姿を見た知らないおばさんが、嬉しそうに声を上げ、周囲に伝える。
     体の上には見覚えの無い毛布と、ヒノアラシ。
     さっき彼女が鼻先を掴んでしまったのだろう。ヒノアラシは頬を膨らませて怒っている。

    「悪かった、謝るよ」

     ヒノアラシを膝から下ろし、自力で立ち上がると、女性警官は周囲の状況を確認した。

     付近に、風神、雷神と思われるポケモンの影はない。
     さっきまでのバトルが夢のようだった。
     観光客と覚しき賑やかな一団が、毛布やモーモーミルクを配給している。
     雷神と戦う前はトロピウスの背に乗せられて、具合悪そうにしていた少年は、今は毛布を重ねた地面の上に寝かされていて、その周りに人だかりができている。顔色が随分良くなっていた。
     遠くには平和そのものといった顔で巨体を揺らす、マダツボミの姿。
     ぬかるんだ地面と、ところどころで倒れている木があることを除けば、あの大嵐の爪痕など見るべくもない。


     晴れていた。


     空は青く、風神雷神が呼んだはずの、重たげな黒雲は取り払われ、薄い白い雲が少し残っているだけ。
     いつの間にやって来たのか、誰かのポワルンが赤く小さな太陽の姿で飛んでいる。

     とにかく、バトルは終わったのだ。

     彼女は毛布を綺麗に畳み、その上にヒノアラシを置いておばさんに託し、それから近くで彼女を見守っていた三匹のポケモンに労いの言葉をかけた。
     そして、雨に濡れて重くなったコートを脱いで相棒のゾロアークに持たせた。
     ゾロアークは心配そうに顔を覗きこんでくる。
    「大丈夫だよ」
     バチュルをいつも通り肩に乗せると、彼女はそう言って笑った。
     少し麻痺の残る体をおして、人だかりの方へ歩き出す。


     仮にこさえられた木製の物干し場に、誰かの上下服がはためいていた。
     その下では、ヒトカゲが安らかな寝息を立てている。おそらく、毛布の上で眠っている少年の服だろう。
     彼女は人の群れから離れてた位置で休んでいる、自身の手持ちの三匹を見つけ、そちらに近寄った。

     三匹は配給されたらしいきのみを食べ終え、体力を回復させたところだった。
     彼女らのうちの一匹、ドレディアだけが物欲しそうに、次のきのみをねだった。
     体力は十分なのに。彼女は手渡されたきのみをドレディアの手から奪った。

    「ナン、体力が回復したのにねだるな、はしたない。……すいません」
     そう言って元の持ち主にきのみを返すと、持ち主の女性はいいえと微笑んで、彼女の手にきのみを押し付けた。
    「まだたくさんありますから、遠慮しないでください」
     そう言う彼女の瞼は閉じられている。どうやら目が見えないらしい。
    「じゃあ、……ありがとうございます」
     好意に甘えてドレディアにきのみを渡し、お礼を言うように促すと、ナンは他の二匹から離れた位置に移動し、きのみを持ったまま踊り始めた。

     彼女の目は見えないのに、と思ったが口には出さなかった。
     横を見ると、紅い髪に白いワンピースの彼女は、踊り出したドレディアの方を向いて穏やかに笑っていた。
     視覚以外の感覚が優れているのかもしれない、と思ったが、野暮だと感じて口には出さなかった。

     歩いて二匹のポケモン、コジョンドとチラチーノの間まで行き、そこに腰を降ろした。
     きのみをもらった二匹はすっかり元気になっていた。
     どうやら今回のバトルでは自分が一番ダメージを負ったらしい、と思い苦笑する。
     眠たげに瞼を落としてボールをつついて来たコジョンドをボールに入れ、チラチーノを膝の上に乗せて、暫くの間、ナンの舞を見ていた。

     彼女の近くに、紫の猫又が駆けてきて、続いて橙の火竜が飛んできた。
     おそらく、誰かを暖めたりする手伝いをしていたのだろう。二匹のポケモンに、彼女は労いの言葉をかけていた。

    「そのエーフィ」
     彼女は猫又の背を撫でる手を止めて、女性警官の方を見る。
    「えっと……世話になったよ。ありがとう」
     アーケオスだけでは土砂崩れを防げなかっただろう。
     それから、彼女のミスでバトルの場から弾き飛ばされた後、エーフィはその場に残ってサポートをしてくれたに違いない。
     雨の中を走り回ったであろう猫又の体は、まだ少し泥で汚れている。

     ふと、大事なことを思い出す。
    「風神と雷神はどうなった……?」
    「どっちも“ひんし”状態ですよ。風神の方はまだ近くに転がってるはずです」
     答えたのは盲目の彼女ではなく、最初にここに着いた時に目にしたレンジャー二人のうち、アブソルとウツボットとトロピウスを連れた若い方のレンジャーだった。
     彼はレンジャーたちの装備なのであろう、小型の通信機を取り出しながら、
    「俺は遭難者の保護に必死でした。皆さんのお陰ですよ」と言った。その皆さんの内のひとり、先輩レンジャーがドンカラスに掴まって、額に包帯を巻いた状態で姿を見せた。
    「こっちは問題ない。二次災害の心配なしだ」
    「こっちも見回り終わりました。大丈夫みたいですね。帰り道も確保されてます」
     嵐の爪痕を見回り、無事を確認した二人のレンジャーは、嵐の後の詳しい地理情報をレンジャー本部に伝えている。
    「あと、嵐の原因となったポケモンですが、彼が懲らしめました」と少年レンジャーがおどけた調子で付け加えると、
    「俺だけじゃ無理でした。他の人たちとポケモンの協力あってのものですよ」と先輩レンジャーが訂正する。
     その“他の人たち”の内、彼女と少しの間共闘した、あの青年はここに姿を見せていない。
     通信を終えた二人は、女性警官と盲目の彼女の方を向き、
    「さて、あのポケモンたち、どうしましょうか」
     どちらともなく、そう言った。

     中々結論は出なかった。
    「警察の方ですよね。逮捕とか出来ません?」
    「野生のポケモンを逮捕する法体系はない」
    「ですよねー」
     いつ自分の身分がバレたのだろう。仮にも休職中の身であるから、こんな所に出歩いていることがバレたら不味いことになる。
    「それより、レンジャーたちの方でどうにか出来ないのか? 保護するとか」
    「どうでしょう。伝説に出てくるポケモンを保護したなんて前例、聞きませんし……」
    「あの……」
     今まで黙っていた紅い髪の女性が、声を出した。
    「ゲットする、……というのはどうでしょう? 皆さん程のレベルなら、彼らも認めると思うんですが」
     今まで話を続けていた三人が黙った。
     ゲットする。トレーナーとしてこんなに基本的なことを、どうして思い付かなかったのだろう。
    「私は遠慮するよ」
     他の三人の顔がこちらを向いて、何か言う前に女性警官はそう言った。
    「自分を殺す気で技を出してきた奴を手持ちに入れる程、心が広くないんでね」
    「そういえば、体の具合、大丈夫なんですか?」
     心配そうに声をかけたレンジャーの額には、中央が赤く染まった白い包帯が巻かれている。
    「そちらこそ、怪我は? 私が未熟なせいで、迷惑をかけた」
     申し訳ない思いでそう口にした彼女に、
    「いやあ、元気、元気。ピンピンしてますよ!」
     とレンジャーは快活に笑って答えた。その隣でドンカラスが血気盛んな風で、大きな声で鳴いた。
    「どちらにしろ、あの青年の意見も聞かないと決められませんね」
     若いレンジャーがそう口にした。

     ずっと踊り続けていたドレディアが、気が済んだらしく、一礼した後、身を翻して森の中へ飛び込んでいった。
     入れ替わりに件の青年が、リュックを背負った状態で姿を現した。
     簡単な挨拶を交わし、今回の事の次第に言葉少なに触れて厚い謝辞を述べた後、青年は先に抜ける意を伝えた。
     その彼に、レンジャーの二人が、先程までの議題であった風神雷神の処遇について問いかける。
    「どう思う?」と尋ねた彼女に、彼は苦笑しながら、
    「どう思うと言われても、ヘマした俺には発言権無いですよ。耳と尻尾はあなたのものです」
     そう軽い口調で答え、「ただ」と付け足した。

    「俺の故郷にはこんな言葉があります。
     『天から下ろされたものに、役目の無いものは何一つ無い』、と。
     ……少なくとも俺自身は、ガキの頃からそう言い聞かされて育ちましたし、それが間違ってると思った事もありません」

     そう言い残して、彼は体の向きを変え、頭を下げた。
    「後の事は宜しくお願いします。縁が会ったら、またお会いしましょう」
     そう言って、彼は足早にその場を去って行く。
     青年の背中を見送ったその後は、またさっきの議題に逆戻りした。

    「どうします? やっぱりゲットしますか。耳と尻尾はあなたのものだそうですよ」
    「耳と尻尾だけゲットしてもなあ」
     そう言ってから考え込んだ彼女に、
    「でも、雷神を打ち破ったのはあなたなわけだから」
     そう意見が述べられた。

     彼女は少し考えて、結論を出した。ゾロアークからリザードンの尻尾の炎で乾かしたコートを受け取り、膝の上のチラチーノをボールに戻すと、その場に残った三人に向けて、こう告げた。
    「風神の処遇はあなた方に任せる。……片を付けたのはあなた方なわけだし……。私は、雷神の方の始末を付けるよ」
     了解しました、と答えたレンジャーたちを残して、彼女はアーケオスに乗ろうとした。

     その時。

    「あのポケモン……」
     一番早く気付いたのは、目の見えない彼女だった。
     彼女が示すその先には、青と黒の小さな獣人、リオル。
    「あの子、彼のポケモンですよね」
     女性警官は静かに頷いた。青年と共同戦線を張った時にもいた、あのリオルだ。
    「確か、ラックル、だったか」
     現場を心配して戻って来たのか、しかしトレーナーである青年の姿は見えない。

     リオルは自分を見つめる四人に、大丈夫だと言う風に頷いて見せて、今は助太刀に来た人々に囲まれている少年の方へ視線を向けた。
     ふと、バトル中、ラックルが少年のヒトカゲと懇意にしていたことを思い出す。

     彼女の考えに、紅い髪の女性も気付いたようで、
    「彼らと一緒に行くことを選んだのかもしれませんね」
     そう呟いた。その後ろでリザードンと、そして何故かドンカラスが勇ましく鳴いた。未来の好敵手を思っているのかもしれない。
     ラックルを迎え入れるかどうかは、少年たち次第だが、仮に断られてもあの青年のリオルなら問題あるまい。
     そう判断した彼女は、待っていた原色の始祖鳥の背に腰を落ち着かせ、森の中へ駆けて行った。


     辿り着いたのは、もう二度とごめんだと思っていた場所。
     森が拓かれた、天然のバトルフィールド。例の雷神の目の前だ。
     ドレディアのナンは先に来ていて、待ちくたびれたように彼女を見上げた。

     彼女はアーケオスから降り、相棒のゾロアークが付いて来ていることを確認すると、バトルフィールドの中央にある、不自然な白い糸の塊に近付いた。
     中にいるであろう雷神は、今は静かにしていた。
    「ベー」
     静かにバチュルの名を呼ぶと、肩に乗った黄色蜘蛛は、心得たとばかり彼女から飛び降りて、雷神を包む糸を切り始めた。
     大方切り終わると、雷神は自分で糸を払って這い出してきた。
     その目にさっきのバトルで見せた覇気はない。バチュルの糸に電気を吸われたらしく、フラフラしている。
     雷神はどうにでもせい、と言わんばかりに、残った力と生意気さでもって彼女を睨めつけた。

    「ナン」
     花人の手から体力回復のきのみを受け取ると、それを雷神の方に差し出した。
     驚いた表情で、きのみを断った雷神に向けて、彼女はこう言った。

    「さっき言われた。……どんな生命にも役割があるらしい。お前たちにも、役目があるんだろう。……私には分からないが。
     ただ、少なくともそれは、ところ構わず暴風雨をまき散らして、民家や畑を壊すことじゃない。人を遭難させるなんて、論外だ。
     そんなことをしたら、私はもう一度お前たちを倒しに行く」

     そして、雷神にきのみを押し付けて、こう付け加えた。

    「それ以外は、勝手にしろ」

     きのみを齧りながら、雷神は彼女を不思議そうに眺めていた。
    「個人的に恨みがあったが、それももうどうでもよくなった」
     と正直に答える。相棒の母親の問題はまだ彼女の心に深く根をはっていたが、それとこの雷神とは、最早無関係な別問題だ。

    「……何か言うことはないか、スー」
     水を向けた相棒は、ゆっくり頭を振って彼女に寄り添った。
     相棒のたてがみを撫でる、その目の前で、雷神が離陸した。

    「お別れだ。もう会うこともない」
     彼女は静かに呟く。
     その声が聞こえたのか、雷神は力強く頷いてから、遠くへ飛び去って行った。

     もう、すっかり日は落ちている。

    「とりあえず……地均しであの大穴を直して、……それから、お礼を言いに行くか。ひとりで息巻いて来たが、随分助けられたよ」
     そう言うと、夜目にも鮮やかな原色の始祖鳥の背に乗って、彼女は元来た道をゆっくり戻り始めた。




    【風神のほうは任せたのよ】
    【あともうひと息っぽいのよ】

     とりあえず雷神は厳重注意の後、釈放となりました。
     クーウィさんとこの青年と、Cocoさんちのレンジャーさんと、てこさんちのレンジャーと、海星さんとこの女性をお借りしました。
     サトチさんとこのツボちゃんと、お人好しそうなおばちゃんも。
     今回会話シーン多いですが、【変なところあったら指摘して欲しいのよ】

     クーウィさん、てこさん、風神討伐お疲れ様でした! この指とまれと補助技を最大限利用する戦いも、相手の風を利用してこちらの攻撃を強化する戦いも、読んでいて非常に心踊るものでした。
     そして海星さん、女性からきのみを大量に頂きました。ナンがあんなんですいません。
     サトチさんからは毛布とヒノアラシを、ありがとうございます。
     まさに「ひとりで息巻いてやって来て、たくさんの人に助けられた」状態。
     そんな迷惑千万な彼女も、そろそろ退場です。地均しぐらいはするかもしれませんが。
     そうだ!みんなでキャンプファイアーすればいいよ(謎

     というわけで、
     きとかげ は 逃げ出した! ▼

    12.25 微修正
    バチュルはあげません。


      [No.1059] Re: そろそろお題変えようか 投稿者:スズメ   投稿日:2010/12/23(Thu) 22:28:58     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


      秘伝技だったので、技つながりで技マシンなんてどうでしょうか?


      [No.1058] そろそろお題変えようか 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/12/23(Thu) 22:25:56     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    コンテストに夢中ですっかり忘れてたんだけど、そろそろポケストお題変えようか。
    誰か面白いの考えてくださいw


      [No.1057] 黒いクリスマス 投稿者:スズメ   投稿日:2010/12/23(Thu) 22:25:13     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


      それは、空から降ってきた。
      ふわふわ・・・そしてひらひら。


      天気予報では曇りだって言っていたのにな。
      まあ、外れてくれてうれしいかもしれない。
      何年ぶりだろうか。 


      白い聖夜 通称、ホワイトクリスマス 




      
       窓から見上げる空は、灰色の雲が覆っている。 
      その上には明るいお日さまと空があるって事は理解している・・・が、
      理解するのと信じるのは別だと思う。 こんな曇りの日に雲の上だけはさんさんと
      いいお天気だなんて・・・うらやましすぎる。

       ピュウと通った風に身をすくませてみれば、その風はもう一回とばかりに追い討ちをかけてきた。
      せめて晴れだったら、日差しぐらいはあったかいだろうに。
      まったく、これでは風邪をひいてしまうとぐちを言いつつ洗濯物をベランダの手すりに引っ掛けて、
      寒い寒いと言いながら戻った部屋には丸まった背中が見え隠れしていた。
      もぞもぞとうごめいている。

     「あ・・・こらー盗み食い禁止! さっきご飯食べたばかりだろーが!」

       丸い背中をポケモンフードの袋から引っこ抜くと、しまったとばかりに細い目をさらに細くして
      そいつは手足をばたばたさせていた。

       そいつ=ヒノアラシ。 一般的に野生のものは珍しいらしい・・・が。
      学校でも街中でもちらほら見かける有名な種族である。
      どれもこれも、ジョウト地方の初心者用ポケモンのせい。
      珍しいはずのこいつらは初心者用として大量発生しているうえに、ポケモンリーグやその辺の大会でも
      よく見かけられる。
      ついでに、捨てヒノアラシや捨てチコリータなど馬鹿に出来ない事態も発生しつつある。
      面倒見れないやつはトレーナーになるなと言いたいが、そういう奴に限って
      最初は面倒見れるつもりだったとか、捨てるつもりなんかなかったと言い出す有様。
      こいつも、保護センターにボランティア活動とかに行ったときに引き取ってきた奴だ。
      そういえば、ボランティアの保護センター清掃活動に参加しようと誘ってきた本人、ユウトは
      誰かを連れ帰ったのだろうか?
      ここしばらく講義を欠席していたがので確認ついでに連絡してみたら、 
     「今日講義なんか聞いてたら住む場所が消える」とか、
     「荷物が瓦礫の下に埋まって燃やされる」やら言われた。
      ポケモンもっていないくせに詳しいから、ヒノアラシのことを聞こうと思ったのに。
      というか、なんでボランティアだけ参加しているんだよあいつ。

     「ヒノヒノー」

       しまった、もがいているこいつのことを忘れていた。
      とりあえず、床におろしてみるとわたわたと部屋の隅っこに逃げていった。

     「まいったな。」

       昨日引き取ってきたばかりなのであたりまえだが、信頼関係はゼロ。
      何をあげればいいのかわからなくて昨日はご飯抜き。
      今日の朝ホームセンターで徳用のポケモンフードを買ってきてあげてみたら必死に食べていた。
      まあ、おなかがすいているのは分かるが・・・二キロのポケモンフードを半分以上食べるとは
      思わなかった。 というか、確実によくない。
      閑話休題。 話がすり替わっている気がする。
      まあとにかく、部屋の隅にうずくまっているこいつをどうにかしたい。
      
     「えーっと・・・」

       名前を呼ぼうとして気づく。 こいつ、名前がない。
      種族名で呼ぶのもなんだし・・・考えるか。
      えーっと、ヒノアラシ、 火の嵐・・・灯の荒しなんだこりゃ。
      安直過ぎるのも考え物だしな・・・茶でも飲むか。
     
       台所に行ってコップに水を入れてレンチン。 それにティーパックを入れれば完成。
      ついでにせんべいを持って部屋に戻る。

       隅っこのやつがせんべいに反応した。
      こいつ・・・くいしんぼうだな。
      食べ物の誘惑に逆らおうとしているが、視線はせんべいに釘付け。
      うーん。 クイタランなんてどうかな・・・同じ名前のポケモンがいた気がする。
      なら、ヒノアラシと食いしん坊でヒノ坊なんて・・・だめか。
      我ながらネームセンスのかけらもないな。 
      そういえば・・・こいつを引き取ってきた日は天皇誕生日だったな。
      今日はクリスマスイブか、まったくどいつもこいつも浮かれやがって。
      デートだかお出かけだか知らないが不景気だというのに財布の紐がゆるすぎる。
      後で金を貸せなんていわれても貸す金なんてないんだぞ?
      なにせ、貧乏だからな。 いや、また話がすり替わっている。
      えーっと、名前だ名前。
      
       部屋の隅を見てみれば、誘惑と戦うヒノアラシ。
      
       そういえば、アンズの花言葉が誘惑だった気がする。
      アンズは、臆病な愛とか、慎み深さって意味もあるけど。
      
       部屋のすみから壁伝いに忍び寄ってくる影が一つ。
      立ったままなのもどうかと思うので、コタツに入る。 あったかい。
      私が動いてびっくりしたのかうしろに飛びずさった影が一つ。
      ズザザザーって。 1mぐらいさがったところで壁に背中をぶつけた。
      なんだこいつ。 ちょっとかわいい。
      
       名前か・・・うーん。
      私ネーミングセンスゼロなんだよなー。
      まあ、安直じゃなかったらいいんじゃね?
      アンズとクリスマスイブでアンイなんてどうか?
      いや、安易と間違えそうだ。 というか、絶対間違える。
      だったら、アンリは? まて、こいつが男の子だったらどうする。
      ・・・まあ、いっか。 今時変わった名前のやつなんてごろごろいそうだしな。  
     
     「アンリ、ほらっ。 ありがたく貰っとけ。」

       そういいながら、さっきと同じ壁からほふく前進をしてくる
      ヒノアラシに向かってせんべいを一枚投げた。 
      

       警戒とはいってもまあ、近寄ってこないだけ。
      実際、ポケモンフードは食べているし、その際噛み付かれてもいない。
      さっきだって、首の根っこをつかんでも炎で攻撃をされてはいないわけだし。
      前に捨てられているわけだから、警戒するのも当たり前だろう。
      だが、見ている限りアンリは誘惑に負けたらしい。
      せんべいにかじりついている。

       私が手をのばしても無反応。
      やっぱり、こいつも人に飼われていたんだなと感じる。
      野生なら、食事中だろうがいきなり触られて反応しないわけがないだろう。
      ものすごいスピードでがりがり削られたせんべいは姿を消し視線は私の手に持っている
      せんべいに狙いを付けている。 

     「アンリ、欲しいのか?」

       アンリという名前にぴくっと反応した。
      一応認知してくれたらしい。

     「ほら、やるからこっちこい。」

       視線はせんべいに釘付けのまま。
      せんべいを振ればふらりふらりと歩いてきた。
      目の前に来たところでほら。 と差し出すと、バキ。 という音と共にせんべいをとられた。
      餌付け・・・成功なのだろうか?
      バキバキバキという音と共にせんべいの粉が飛びちる。
      掃除するしかないか・・・めんどうだな。






     「で、どんなのがおすすめなんだ?」

       私たちは買い物をしていた。
      クリスマスイブだというのに、居るのはショッピングセンター。
      理想とは程遠い場所で、昨日か、もっと前からはしゃいでいた友人の姿が脳裏に浮かんだ。
      クリスマスと、その前のイブにはね! と話す友人が非常に恨めしい。
      
     「・・・そんな顔なんかしているとカゲボウズに引っ付かれるぞ。」

       小型ポケモン用の食器を手に取りながらユウトは物騒なことを言った。
      そういえばこいつ、「あの」幽霊屋敷に住んでいるんだっけ。

     「なんか、失礼なこと考えているだろ。・・・こいつなんか、手ごろな値段だぞ。」

       どうだ? と見せてきたのは、ちょっと深めで大きめの皿。
      
     「アンリには大きすぎない?」

       アンリの顔以上の皿は必要ないんじゃないだろうか。

     「いや、ヒノアラシって顔が長いだろ?」

       なるほど。 と頷いて皿を買い物かごにつっこむ。
      ユウトを呼び出して正解だったな。 
      知り合いの中ではこいつが一番詳しいし。 

     「あとは、水飲み機か。 炎タイプだし、わりと器用なやつらだからボトルタイプがいいだろ。」

       そういって、次の売り場に向かうユウトには迷いがない。
      どうやら、このホームセンターのどこに何があるかを熟知しているようだ。
      ユウトの後を追っている時、珍しいものを見つけた。
      ゴーストグッズなる怪しい品々。
      怨念飴や延命砂糖、悲鳴クラッカーおまけに補修用影綿。
      ご丁寧に、商品のパッケージにはそのグッズに反応するポケモンが描かれている。
      お値段はさほどでもないか・・・そうだ!
      幽霊屋敷のかたがたにプレゼントしてみようではないか。
      安めのものをいくつかかごに入れて、水飲み機売り場へ急いでいった。










      「・・・は? 幽霊屋敷に用がある?」

      「ちょっと実験をしようと思ってね。 アンリ、お店でたから出てきていいよ。」

        ポンという音と共にアンリが姿を現した。
       眠そうに目をこすっていることから、さっきまで寝ていたらしい。

      「ユキナがポケモンを持つようになるとはびっくりだな。」

        からかい混じりの口調で茶化してくるユウト。
       まあ、ポケモンには基本おびえられるのが常の私だからなー。
       べつに、野生のこを捕まえてまで飼おうとは思わないだけ。
       なつかれると面倒だからさっさとあっち行けってやってただけなんだが。
       その威嚇も、キミのところのお化けには通用しなかったけど。

      「そういえば、ユウトはポケモン引き取ったのか?」

        まあなと言いながら、赤と白のボールをつかんだ。
       ポンっとでてきたのは・・・つぼみを背負った緑のポケモン。
       そういえば、こいつらの種族も初心者用だったっけな。

      「フシギソウの、ダンドだ。 曇華って花の名前からとった。」

        またまた、珍しい名前を出してきたもんだとおもう。
       読み方はダンドクだったか。

      「こいつさ・・・気性が荒くて、お化けのやつらに喧嘩売るから大変なんだよ。」
      
        はあ・・・とため息の音が聞こえる。
       お化けのやつらに喧嘩、か。 たいへんだな。
       
      「本当はポケモンを引き取るつもりはなかったんだけどな。
       ご飯代かかるし、お金ないし。 でも、引き取り手がなかったら・・・なんて
       言われちゃうと・・・なあ。」

        理由は私と同じか。
       私もこいつもお人よしなのか、それとも捨てる人が非情なのか。

        そうこういっているうちに屋敷が見えてきた。
       道一本はいっただけでこうも薄暗くなるもんだから驚きだ。
       相変わらず屋敷はボロくてお化け屋敷のようだ。 家賃は安(過ぎる)とはいえ
       ここに住むこいつの気が知れない。 お化けは別にいいが隙間風やカビが問題だ。

      「ちょっと新しくなっただろ?」

      「別に変わった様には見えない・・・ツタが取り払われて割れたガラスが消えたな。」

        だからといって、知らない人が見たらお化け屋敷だ。
       あ、雑草もなくなったかもしれない。 ここ、池なんてあったんだな。

      「改装されたんだよ。 一応」

      「それでしばらく休んでいたのか。」

       確かに、ここの家主が本当にユウトから聞くような人なら、ユウトの気持ちも分からないでもない。
      おおかた、荷物ごと部屋を崩されそうになったんだろう。
      そうゆうハチャメチャな思考の人ならうちの親戚にもいる。
      お正月のときなんか人様の家(私の祖父の家)でどんど焼きをしようとして火事を起こしかけた。
      (母のシャワーズが大活躍だった)
      そういえば、あの人もゴーストポケモンが集まってくるやら何やら言っていたっけ。

      「まあ、お化けたちならその辺にいるから・・・実験するならみんなも呼ぶか?」
      
        携帯電話を片手に門をギギギ・・・(門も変えればいいのに)と開けたユウトが
       提案してきた・・・が、みんなお楽しみ中なのだ。 まったく、恨めしいことこの上ない。

      「リカもカナタもみーんなお出かけだと。」
     
        私の一言にユウトが固まった。

      「な、なんだって・・・。」

        あ、カゲボウズがよってきた。
       前より数が増えている気がする。 ついでに他のお化けも出てきた。

       お日さまは傾いて、もうすぐ闇に包まれる。
       帰りはネイティにテレポートで送ってもらうから心配ない。

      
        それより・・・実験実験。 オカルトグッズを試してみよう。
       青春をエンジョイしているやつを見返せるぐらい面白い実験にしてやる!!
       この時、私の後ろでアンリがお化けにおびえていたらしい。
      

      
        まずは「怨念飴」・・・包みをはがしたとたんカゲボウズに持っていかれた。
       あ、すごい。 黒い塊になって喧嘩をしている。
      
      「どこで買ってきたんだその飴は。」

      「さっきのホームセンター。」

        あれ、本当に効くのかよ・・・とユウトが目を丸くしている。
       なんか、原材料名が気になるな。
       見てみた。 原材料、水あめ 砂糖 カラメル色素 怨念
       見なければ良かった。


      「次、延命砂糖。 ヒトモシに使えるらしい」 

      「ヒトモシって命を吸い取るらしいぞ。 まあ、俺の部屋にはお化けは入ってこないし(偶にしか)
       鼠とかがいるせいか、今のところなんともないけどな。」

        なんかちょっと怖いポケモンだな・・・かわいいのに。
       とりあえず、包みをはがしたら・・・はらはらと粉が舞った。
       ヒトモシがわらわらよってきて、粉を浴びている。
       炎が心なしか緑に見える。
       原材料は・・・見るのが怖い。

      「以上、実験終了。 あんまし面白くなかったな。」

      「いや・・・すごい騒ぎになっているんだけど。」

        ユウトの言うとおり、庭はすごい騒ぎになっていた。
       屋敷の庭では黒い塊がぶつかってはばらばらになって、緑の炎が揺らめいて・・・
       幻想的ともいえなくないが、暗い中でそれを見るとかなり恐ろしい。

        ポフッとユウトの頭にネイティが着地した。
       そのまま、じーっと庭の騒ぎを見つめている。
       そういえば、これも買ったんだっけ?
       袋のそこに残っていた黒い飴みたいなのを放り投げてみた。
       説明も何もないし・・・あれ?
       これ、買った覚えなかったんだが。

      「・・・ぇ?」
     
        隣でユウトが間抜けな声を漏らした。
       からかおうとして前を向くと、

      「・・・は。」

        庭に穴。 もしくはダークホール、ブラックホールでもいい。
       お化けたちがいっせいに避難してきた。
       ゴゴゴ・・・と、音はないけれどそんな感じに影が姿をあらわ・・・さなかった。
       途中で消えた。 なんだったんだ。
       ただ、庭の雑草(刈っても根元は残っている)が、そこだけぽっかりと消えた。
       まさか・・・ね。

        私たちが呆けている時、 それは、空から降ってきた。
       ふわふわ・・・そしてひらひら。


        天気予報では曇りだって言っていたのにな。
       まあ、外れてくれてうれしいかもしれない。
       何年ぶりだろうか。 


       白い聖夜 通称、ホワイトクリスマス 

        ならば、黒い聖夜は何なのか。
      
       まあ、もう二度と経験したくはないが。

       ゆーきあるものよ、無謀な挑戦はやめろ。 

       あれはだめだ、出て来なかったから助かったけど、たまったもんじゃない。
       とにかく、クリスマスの夜に黒い飴みたいなピカピカしたやつ、しかも身に覚えのないやつを
       見つけたらてをださないで、そっとしておくべきだ。
      

        じゃないと、投げた場所に影の足跡が残るからな。
       

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
     珍しく、長めの物です。 
     ここまでよんでくださりありがとうございました。
     お化け記念日の方を読むと屋敷の様子が分かりやすいかもです。
    【批評していいのよ】【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】


      [No.1055] 作品が掲載されていない方はご連絡ください 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/12/23(Thu) 09:25:18     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    おかげさまで現在11作品の応募をいただいております。
    応募メールが届いた方には必ず返信をしておりますのでご確認ください。
    メール返信がない場合は、何らかの手違いでメールが届いていないことになります。
    当掲示板やpixiv(http://www.pixiv.net/member.php?id=76645)のメッセージなのでお問い合わせください。

    メール:
    pijyon★fk.schoolbus.jp
    ★→@


      [No.1054] Re: なんでぇぇ!? 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/12/23(Thu) 08:43:28     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > アドレス通りに送ったのにコンテストの欄に出てません・・
    > メアドの星マークのところには@が入るんですよね・・?
    > 月曜日に送ったのに・・

    届いていません。
    もう一回送ってみてください。
    一時的にメルアド載せてもらえればこっちから一度メールをお送りします。

    あと@は半角にしましたか? 全角になってません?
    @じゃなくて@ね。

    pixivにもメッセージ送っておきますね。


      [No.1053] なんでぇぇ!? 投稿者:紀成   投稿日:2010/12/23(Thu) 08:36:56     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    アドレス通りに送ったのにコンテストの欄に出てません・・
    メアドの星マークのところには@が入るんですよね・・?
    月曜日に送ったのに・・


      [No.1052] にゃんだと!? 投稿者:豆兎   投稿日:2010/12/21(Tue) 23:21:50     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    感想がこらっしゃっただと!?
    わーいわーい。ちょっとこ踊りしてきます。


    > 現代の生命倫理問題とうまくポケモンをからませた、とても面白い話でした。
    > 「カミサマ」がそもそも人工的なものだと考えると、「ツー」さんの悩みも吹き飛んでしまいそうですね。

    ポケモンの世界ってちょっといびつな感じがしたんですよ。
    違和感みたいなものがありまして、それを表現してみました。

    なんでも覚えることができる「あの子」は始まりだと思ったんです。
    でも、完全なものって作らない限りないなあって思ったらこうなりました。



    > 僕も「あの子」は腹黒と心の底から信じています。アニメじゃきっと、かわいらしい声して、とんでもないこと言ってますよ。

    同じことを思ってくださる人がここにもいた!
    かわいらしい格好をして毒舌ってなんかいいですよね。
    映画で吹っ飛ばされた時はすっごい事言ってそうですね。


    > 楽しいお話ありがとうございました。

    こちらこそ楽しんでいただきありがとうございます。


      [No.1051] 幻影十四行詩 投稿者:紀成   投稿日:2010/12/21(Tue) 19:41:43     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    一、光が強い場所では、幻影もその存在をより濃くする

    ニ、光なき場所に追われた幻影は、自らが流す血で熔けて消えるか

    三、幻影が何故希望と絶望を両方与えたがる

    四、幻影だって表舞台に出ずに生きられるわけじゃない

    五、光の中にいたとしても、影という自分の本当の姿を知ることなど不可能に近いこと

    六、幻として人前に出た瞬間が相手に希望を与えることもある

    七、幻として表舞台に出る状況を見極めないと、一生光の中に出ることが出来なくなる

    八、幻影が愛する薔薇は敵に焦がされるか

    九、自分の愛を守るために幻影は剣を取れるか

    十、仮面を剥がされた幻影は何も言わずに自ら死を選ぶ

    十一、幻影は過去にも未来にも縛られてはいけない

    十二、幻影は人前で涙を流さず、また泣いてもいけない

    十三、幻は幻のままであることを願う


    十四、幻影は人を愛することはできない


    ーーーーーーー
    『ファントムソネット』


      [No.1050] My Hometown  【無理矢理進めてみた(オイ)】 投稿者:クーウィ   投稿日:2010/12/21(Tue) 04:04:50     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    台風一過とは、よく言ったもの。  


    良く晴れ渡った青空の下、急ごしらえの物干しの上で、一揃いの上下はさっぱりと乾き、遠ざかる千切れ雲を運んでいく風に抱かれて、緩やかに揺れていた。
    ……突き立てた木の枝の根元には、乾燥作業に一役買ったとかげポケモンが、尻尾の炎をそよ風になびかせながらもたれ掛かって、静かに目を閉じている。


    そんな場の空気を乱さぬよう注意しつつ、青年は静かに木の枝を組んで作った物干しに歩み寄ると、すっかり乾いたシャツに上着、それにズボンを取り外して、元の持ち主の所へと運んでいく。
    ……その道に心得のある人間ならではの、気配をも殺した忍び足。 身に付けていたその技芸により、彼はすやすやと寝息を立てているヒトカゲを起す事無く、当面の目的を遂行し終える。

    横になっている救助者の周りには、大勢のトレーナーが集まっていた。
    彼らは青年が近付くと、好意的な態度と共に脇にどいて、道を空けてくれる。

    道を空けてくれた人々に対し、軽く頭を下げて謝意を示した彼は、やがて横になっている少年の脇へと辿り着くと、しゃがみ込んで容態を見守ってくれている一組のコンビに、運んで来た衣類を差し出して、黒髪を指で掻きつつ頭を下げる。
    ――着替えさせてやって欲しいと言う、彼の些か一方的な頼み事にも、少女とゴーリキーは嫌な顔一つせずに、笑顔で頷いてくれた。

    早速受け取った上下を、気を失っている救助者にあてがっている怪力ポケモンを眺めつつ、青年はその器用な手付きに、彼女の仕事が生花園の手伝いであるという話を、ボンヤリと思い出す。
    ……救助者の面倒を見て欲しいと頼み込み、何とか地面に下ろして貰った時は、正直ホッとしたものであったが――他人の振りをしていたルカリオに天誅を下し、ちりぢりになっていた全員の無事を確認し終えた今では、甲斐甲斐しく少年の世話をしている命の恩人に対し、このまま何の返礼もしないまま立ち去るのは、如何にも非礼な事のように思えてきた。

    そこで彼は、その場に放り出してあった自分のリュックを無造作に掴み上げると、暫く中を漁った後、赤く輝く親指の頭ほどの欠片を取り出して、ゴーリキーに向けて差し出した。
    ……少し戸惑ったようにこちらを見返してくる相手に対し、手の内に包み込ませるように握らせたそれには、故郷の守り神である、ヨルノズクの彫刻が施されている。
    次いで、更にもう一つ。 今度はハクリューの姿を刻み込んだものを引っ張り出して、それは傍らの少女に手渡した。
    ――偶々拾った星の欠片に、暇を見つけては趣味の彫刻を施してきただけの代物ではあったが、何もしないよりはマシだろう。

    貰ってもいいのかと尋ね返してくる相手に対し、「命の恩にしては、安過ぎるけどね」、と苦笑してから、彼は改めてリュックを背負い、別れの挨拶を述べる。
    ……もう先の目途も立った事であるし、これ以上ここに留まる必要性は、無さそうだった。
     
    「もう行くのか」と聞き返してくる周囲の人間に、重ねて礼を述べた後――彼は次いで、残りのメンバーに別れの挨拶をして置くべく、少し離れたもう一つのグループに向け、ゆっくりと足を運んでいく。
    ……行く手の道際には、今回行を共にした三人のトレーナー達と、視力が不自由ながら様々なサポートを与えてくれていたらしい一人の少女が、それぞれのポケモン達を引き連れ、思い思いに身を休めていた。
     

     
    荷を背負った青年が近寄っていくと、彼らはみな、彼の意図を察したらしい。
    口々に簡単な挨拶を交わして行くだけではあったが、あんな事があった後であるならば、今はもうそれだけで十分、言葉は足りた。

    「救助者の意識が回復するまで待たないのか」とも聞かれはしたが、彼は苦笑いしつつ、手を振って断りを入れる。
    ……自分に出来る事が無くなった今、この場に留まった所で、青年には何の甲斐もありはしなかったからだ。
    彼は寧ろ、こう言ったごたごたの後に訪れるであろう一連の後始末から逃れる為に、早急にこの場を離れる事を望んでいた。

    口を聞く彼の方を見えない目で見据えつつ、少し寂しそうな表情を浮かべた少女に対し、青年は改めて手を差し伸べると、打って変わった丁寧な口調で、リザードンとエーフィを派遣してくれた礼を言う。  ……更に、尚も何か言いたそうな彼女に対し、こう付け足した。

    「若葉もやがて、大樹になるだろうから。  ……あのチビ助が、君のリザードン見たいになった時――その時に縁があったなら、また会うさ。 何せ俺達は、トレーナーだからね」

    『礼は実力で示して貰うのが礼儀だから』と結んだ青年は、最後に、「こんな奴にはなって欲しくないけどね」と、自らを揶揄してにやりと笑う。
    少女の表情が再び和らぎ、エーフィがその背をそっとフォローするのを見届けると、彼は握手を終えた手を外して、次の方角を向く。


    視線を向けた先で目が合った二人のレンジャーに対し、彼は開口一番に、先に抜ける事への謝罪の意を述べた。  ……次いで自分の不手際を謝罪し、更に無責任さに言及しようとした所で、謝罪先である両者から、ストップが掛かる。

    「最初に彼を発見したのは、あなたでしょう?」

    「当初の応急処置やったのも、応援呼び来んだのも君。 そう一々、遜りなさんな。  ……寧ろ、こっちはレンジャーじゃないと知らされて、仰天させられたわ」

    それに、お陰で久しぶりに楽しめたしな――そう口にしたベテランレンジャーの隣で、うずうずと何処か落ち着かない様子だったドンカラスが、翼を差し上げ誇らしげに啼く。
    額に包帯を巻かれながらも、何か忘れていたものを取り戻したような、満足げな彼の笑みを見ているうち、青年もこれ以上無粋な言葉を続ける事の愚を悟って、苦笑いしつつ首を振り、大人しく言を収めた。
    その周囲に控えるフーディンとムウマージも、激しかったであろう戦闘の片鱗も見せない健在ぶりで、彼らのチームワークの強かさを、無言の内に示している。

    「これからどうするんですか?」

    そう質問してきたのは、傍らにアブソルとウツボットを引き連れた、豊縁出身のレンジャー隊員だった。  

    「取りあえずは、一番近いジムにでも、足を運んでみます。  ……実は当初は、そんな気なんか無かったんですけど……気が変わりました。 あなた方みたいなレベルの方達がレンジャーや警察官をやっておられるのでしたら、この地方のジムは相当楽しめそうですから」

    自らの胸の内を、答えと共に包み隠さず告げながら――彼は自らの気の持ち様が、この短い期間の間に180度変わってしまった事に、内心驚いていた。
    ――故郷・新奥での苦い経験から、もう二度と人目に付くような真似はやるまいと、固く心に決めていたのだが……どうやら今回の出来事は、自身の抱いていたその手のトラウマに対し、相当に効用があったようである。

    本来助ける側に身を置いていた筈である自分が、終わってみれば様々な面で、反って助けられている。  ……考えるだに、情け無い話ではあったが――それは決して、不愉快なものでもなかった。
    それにもし、今回の出来事が無ければ、彼は結局、来年の春に知り合いが帰って来るその日まで、延々人気の無い山の中を、散策するだけに終わっていただろう――  そう思うにつけ、彼はこの短い間に起こった数々の出来事が、避けられなかったにも拘らず、とても掛け替えの無いものであったと、今更ながらに思い返す。 
     
     
    やがて、それらの応答が一段落した後――彼は不意にその場の一同から、ある質問を投げかけられる。
    ――どうやら彼ら四人は、今回の騒動の元凶である二匹のポケモン達の処遇について、相談していた所らしい。

    「お前はどう思う?」

    そう聞いてきたのは、一同の中で一番多くの手持ちに囲まれている、精悍な顔付きの女性警官であった。
    この場所に運ばれてきた時は、消耗とダメージに意識も定かではなかったにも拘らず、早くも自力で身を起こして、強い意志を帯びた眼差しを取り戻している彼女に対し、彼はまたしても苦笑をこらえられずに、軽い溜め息と共に言葉を返す。

    「どう思うと言われても、ヘマした俺には発言権無いですよ。 耳と尻尾はあなたのものです」

    そう、軽い口調で流しつつも――続いて彼は、これだけは言って置こうかと言った感じで、ただ一言だけ、自分の意見を付け加える。
    ……雨は万物の精であり、風は新たな命を旅へと誘う。 天から轟き落ち、地に伏す者を撃ち貫く稲妻でさえも、地に生きる者に刺激を与え、恵みを齎す事があるのだから――

    「……ただ、俺の故郷にはこんな言葉があります。  ――『天から下ろされたものに、役目の無いものは何一つ無い』、と。  ……少なくとも俺自身は、ガキの頃からそう言い聞かされて育ちましたし、それが間違ってると思った事もありません」

    そして、それだけ言い終えるや否や――青年は唐突にくるりと踵を返し、半身だけを後ろに向けてぺこりと頭を下げながら、「じゃあ、後の事は宜しくお願いします」と言い添え、「縁が会ったら、またお会いしましょう」と続けると、そのまま後は振り返る様子も無しに、スタスタと山道に続く斜面の方へと、出発を開始する。


    ……勿論内心では、まだまだ名残惜しくもあったが――これ以上居座って結局出られなくなる事だけは、避けて置きたかったのだ――



    最初に降下してきた、急峻な崖――今は蔓状の植物で覆われている、その際まで辿り着いた所で、青年はすぐさま集まってきた手持ちのポケモン達の殆どを、再びモンスターボールの中に収容した。 
    彼らの入ったボールを、いつも通り腰の定位置にセットした後、彼は残ったチルタリスの背中に自分のリュックを置いて、中からややくすんだマフラーと、使い古されたバンダナを引っ張り出す。  ……常々身につけているそれらは、嵐が来ると同時に急いで仕舞い込んだお陰で、ややジメついたままの着衣とは違い、まだほんのりと日向の匂いを留めている。
    家に代々伝わって来た紋を刺繍したバンダナを頭に頂き、何代目かはもう忘れてしまった、緊急時の包帯代わりも兼ねたマフラーを軽く首に巻きつけると、彼はそこでもう一度、リュックを背負い上げながら、後を託した人々に頭を下げる。 それらが済んだ後に、彼はチルタリスの背中に跨った。

    そして更に、飛び立つ前に――彼は未だボールに収容していないもう一匹のポケモンに向け、そのポケモンのボールを手に取りながら、身を屈めて語りかける。

    「……お前は、好きにしな。 そろそろ、自分で自分の歩む道を決めてもいい頃だしな」

    自らを見つめるリオルにそう告げると、彼はリオルの入っていたモンスターボールを、ポケットから出した万能ナイフの柄尻の部分で、一打ちに打ち割った。
    ……プラスチックの破片はその場に捨てず、バックパックのサイドポケットに放り込むと、少し戸惑っている様子のリオルに対し、もう一度言葉をかける。

    「まだこっちに未練があるのなら、後から追いかけて来てもいい。 野に出て自由に生きるのもいいし、受け入れて貰える相手が居たのなら、そこで厄介になってみてもいい。  ……兎に角、一度自分自身で、自分の生き方を決めてみな」

    青年が言葉を終えると、リオルは改めて元の主人の顔を真っ直ぐに見つめ返し、次いで頼もしげな表情を浮かべると、こくりと一つ、頷いて見せた。
    ――それを受けた青年の方も、限られた期間とは言え直接手を取って技前の程を仕込んできた相手に対し、優しく名残惜しげな微笑みを浮かべると共に、片腕を差し伸ばす。

    一人前のポケモンとなった相手の頭を、最後に柔らかく撫でさすってやった後――彼はリオルの父親であるルカリオが入った半透明のボールを軽く叩いてから、チルタリスのフィーに合図を送り、短い間とは言え多くの感慨に彩られた、狭い谷地を後にした。
    ……背中を見送ってくれているであろうリオルの、その壮健を祈りつつ―― 一際目立つ存在である、巨大なマダツボミに手を振りながら、彼は一番近い町に向け、風を切って進路を取る。



    ――故郷の新奥から、嘗ての好敵手でもある知り合いの女性が帰ってくるまでは、後半年足らず。  ……彼女が携えて来てくれる予定の帰りの航空券を、果たしてその時、素直に受け取れるのかどうか――?

    その答えは、漸く傾き始めた太陽の光を褐色の肌に反射させ、各地の風に染め上げられたバンダナとマフラーを風になぶらせている彼自身にも、まだ分からない事であった――


    ―――――


    …相当無理矢理な形での進行に、先ずはお詫びを……(何度目やねん)
    後上げ下げの方法が分からないので、かなーり下の方から上げちゃいました……(汗  済みません……)

    例によって沢山の方のキャラクターとポケモンさんをお借りしましたが……済みません! 今回はコイツを退場させる為に飛ばしちゃったので、描写はまさに散々です……(爆  お許しを〜〜)


    ちょっと詰まっていた感もあったので、勝手に進行させちゃいましたが(汗)  ……取りあえず、いきなりどっか飛んでっちゃって御免なさい(爆)
    後始末もせずに逃亡してしまったアイツに関しては、呪いの練習台にでも……  ……マジすんません(汗)


    放置しちゃったリオルについては…まぁアレです。 お好きになさってください()
    拾ってやって頂いても結構ですし、野に帰しても後を追わせてもOKです。  ……あのバカモノの主義で、タマゴからの子は一度はこうやって、『親離れ』させるんですね(爆)
    取りあえず、もう『親』としての関係は、一度断たれてますので……単に、野生の個体として扱っていただければ(オイ)


    う〜む……  …で、では……!(汗)


    【書き逃げで御免なさいなのよ……】

    【風神雷神の後始末に困っちゃったのよ(爆)】

    【あともう一息かもなのよ】


      [No.1049] 久し振りの馳走でした〜 投稿者:クーウィ   投稿日:2010/12/20(Mon) 04:28:12     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    初めましてです。  
    ・・実は、最も好物なのはギャグだったりする生き物です。 クーウィと申しまする・・・

    一見ちょっと地味な(失礼・・・)タイトルに、何かを感じて読み進めてみたら・・・大当たりでした!(笑)
    ちょっと最近この手の成分が足りてなかったので、とても嬉しい一発でした・・! ありがとう御座いますです〜

    主人公が物理的に強かったらどうかとかは、偶に考えますが・・・確かに、こう言うシーンもありますよね。  ・・・寧ろ、暴走族なんかはすごく律儀だと思う(笑)
    イッシュのモデルがモデルですし、プラズマ団がペストル出して来たらどうすんねん・・・とか言う妄想は、常に頭の中にあったりします・・・(爆  コラ)


    >……しょうがねぇ。オレも大人だ、一応な。

    だったら、子供のしかも女子相手に、背後から殴りかかんなよ・・・  
     
     
     
    >次の瞬間、

    何かがめり込むような鈍くて重い音が鳴り響いていて、

    そして倒れていたのは

    オレだった。

    ・・しかもやられとるし・・・切腹させるぞぉ!?(オイ)

    足技はナンだったのか・・・ どうせなら、カカトオトシかろーりんぐそばっとでも呉れてやったら良かったのに(笑)  
    ・・いや、死ぬか。


    >無論、そのプラズマ団したっぱの財布が少しだけ寒くなったのは言うまでもない。

    お約束です。  これで生活している可能性も考えれば、トレーナーとはげに恐ろしき職業よ・・・
     
     
     
    個人的に、今回はNの存在やストーリーも相まって、最初は孵化作業に入るのが非常に躊躇われたんですが・・・  ・・気がついたら、何の違和感もなく実行している自分がいる・・・(爆)

    ・・・ある意味、本当に恐ろしいのはそこなのかもしれないと、読み終えて勝手に思いました。  本気で関係ないですけども(汗  爆)


    それでは・・!  失礼致しました・・・


      [No.1048] 幻影夜想曲 投稿者:紀成   投稿日:2010/12/19(Sun) 08:38:14     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    期末試験の時、私はずっと勉強以外のことを考えていた。
    勿論、ちゃんと勉強はしていたけど。残り時間、ずっとあることを考えていた。
    そっと後ろを見てみると、彼女は机に突っ伏して寝ていた。
    成績はわからないけど、きっと真面目な方なのだろう。


    図書館で勉強するついでに調べた、カミヤの姓に関する歴史。
    かなり古く、二百年前くらいから続く家柄だと言う。それぞれの時代に合った商売と振る舞いをしてきたおかげで、今では五本指に入るほどの財力を持っているらしい。
    だが、それが書いてあった本は十年前の物。
    それにあった住所の本家に行ってみたが、既に広々とした空き地になっていた。
    近くにいた同年代の人間に聞いてみたが、何も教えてはくれなかった。
    ・・まるで、なにかに怯えているかのように。

    私は近くにあった交番のお巡りさんに聞いてみた。カミヤの本家は何処に移動したのか、と。
    だが返ってきたのは意外な答えだった。
    「カミヤの家?あそこは火事で焼けちゃったんですよー」
    「え!?」
    お巡りさんは辺りを見回しながら、私にボソッと言った。
    「実は、ここだけの話なんですけどね」


    カミヤ。漢字で書くと、火の宮。
    この家は、二百年以上続く歴史が古い家だという。
    最初、火宮の家はこことは違う、地方の広い土地にあったそうだ。様々な商売と動きで瞬く間に大財閥にのし上がったらしい。
    だが、家を建てようとした土地には、祠があった。それよりずっと昔、この土地が飢饉に見舞われた時に、何処からともなく現れて村人達を救ってくれた、魔獣を奉った祠が。
    当然、そこに住んでいた人々は猛反対したが、火宮の頭領はその土地全体を治める者に大金を送り、祠を壊させるように言ったという。
    そうして、人々の反対も虚しく、祠は壊され火宮の屋敷が建てられた。
    火宮財閥はそれを皮切りにますます大きくなっていったのだが・・

    それは、家が出来てから三年ほど建った時だった。
    深夜、突然ドーンという音がした。驚いた人々が表に出てみると、火宮の家の方が赤く染まっている。
    火事だ。
    近づいて見れば、屋敷が赤い炎に包まれて瞬く間に燃え尽きていくのが見えた。
    「魔獣の祟りじゃ」
    一人が、そう言った。祠を壊したせいで、魔獣が怒ったのだと。
    結局、その火事で当時の火宮の頭領が亡くなった。頭領を失った火宮の生き残りは、その土地から出ていくことを余儀なくされた。
    だが、これだけでは終わらなかった。

    別の土地に家を建てた後も、再び火事で家と頭領を失い、次もまた・・
    それの繰り返しだった。いつしか、火宮は『火の呪いの一族』と呼ばれるようになる。

    「ここに来てからは、そんなことは無くなったらしいんですけどね・・」
    「というと?」
    お巡りさんは真っさらの土地の方を見た。
    「また、出たんですよ。祟りが」

    ・・それは、今から一年前のクリスマス前日だった。
    家族と過ごしていたそのお巡りさんは、外が騒がしいことに気付いて表に出た。
    そこには、煙と何か焦げるような嫌な臭いが充満していた。
    そして、煙が漂って来る方向に・・
    火宮の屋敷が、燃えていたのだ。

    (小説家の端くれとして、そういう祟りみたいな物に興味はあるけど、流石に現代にはなぁ・・)
    学校からの帰り道。期末試験が終わったということで皆浮足立っているが、私には喜べなかった。
    話し掛けてくる友達をあしらって、そのまま市立図書館に向かう。
    平日の午前中とあって、あまり人はいなかった。近くの机に座って、本を数冊取ってくる。
    お巡りさんの最後の言葉が、脳裏に浮かんだ。

    「燃え盛る屋敷に行った時には、既に消防隊が消化活動を行っていました。その時、聞こえたんですよ」
    「何が?」
    「歌ですよ、歌。確か・・」

    『幻影の蝋燭は人の命を吸い
    青い灯を燈していく

    幻影の人形は人に捨てられ
    捨てた相手を探しさ迷い歩く

    幻影の仮面は醜い姿に変わり果て
    過去を思って血涙を流す

    幻影の坊主は妬みを食らいつくし
    また新しい妬みを求めていく

    人も同じなのです』

    童謡集を調べてみたけど、そんな歌は載っていなかった。
    おそらく、オリジナルだろう。誰が歌ったのかは分からないけど、その火事に重要な何かな気がする。
    私はメモを取ると、その図書館を後にした。


    冬は日が暮れるのが早い。
    私は家への道を急ぐ。息を切らせて走って、角を曲がって・・

    ドンッ

    「きゃっ」

    何かにぶつかった。尻餅をつかないで済んで良かった。
    「す、すみませ・・」
    「カゲネコミスミさん」
    聞き覚えのある声がした。顔を上げる。
    焦げ茶色のセミロングに、細いとも丸いとも言えない目。
    「カミヤさん!?」
    そこには、アンティークのように古めかしいデザインのランプを持った火宮さんが立っていた。

    「・・そう、図書館の帰りなんだ」
    結局その後は立ち話になった。ランプの火がユラユラと揺れる。
    「ちょっと調べたいことがあったから」
    「何を?」
    言っていいのだろうか。
    「あのね、」

    隣町で一年前に起きた、火事の事件。

    「・・そう」
    火宮さんの表情は何も変わらない。怯えることも、驚くことも。
    「どうして調べてるの」
    「えっ」
    冷たい風が吹き付ける。彼女の視線も冷たい気がする。何か、咎められてるわけじゃないんだけど、何もかも見透かされてるような気が。
    「しょ、小説の資料にならないかなぁと」
    「ふぅん」
    また沈黙。気まずい。
    「実際に」
    「へ」
    「実際にあった事件をモデルに小説を書くのは、その事件の被害者や遺族に失礼だと思うよ」
    きっぱり綺麗に言われて、私はしばらくフリーズしていた。まさか火宮さんに言われるとは思わなかった。
    おかげで反応が少し遅れた。気付いた時には既に彼女の姿は夕闇に紛れて見えなくなっていた。
    私は何だか心細くなり、走って家に帰った。


    深夜。私は今日写して来た歌を見ていた。かなり意味深だと自分でも思う。幻影という単語が何回も出て来て、不気味な感じもするし。
    第一、これかどういう歌なのかが分からない。悪魔の手鞠歌じゃあるまいし。
    「・・」
    気のせいか、外に吹く北風が強くなってきた気がする。雲一つなく、綺麗な三日月なのに・・


    「潮時、かな」
    カオリの言葉に、デスカーン達が凍りついた。♀のプルリルが落ち着きなく動きはじめる。ジュペッタは焦り顔になった。
    『何があった』
    デスカーンが言った。カオリが部屋の壁を見る。白い半分だけのマスク。オペラ、『オペラ座の怪人』でファントムが付けていた物と同じデザインだ。
    「・・クラスメイトで小説家の子が、隣町で起きた一年前の火事を調べてる」
    『また家を替えるつもりか』
    白い仮面を手に取り、右目に付ける。不気味な雰囲気が醸し出される。
    「ずっと表舞台には出なかった。噂だけで人を震えさせる、そうやって火宮のことを調べさせないようにしていた」
    仮面を外し、床に置く。
    「いつか、火宮の真相が分かる時が来る」
    『カオリがファントムだとしたら、私達のポジションが無くなるぞ』
    「私はヒロインの歌姫じゃない。勿論、ラルフでもない。表舞台にはいざという時しか出て来ない、ファントム」
    影とか幻影という意味だ。裏の世界で動く者。
    「デスカーン達はこれ。右目の仮面。私の正体を隠してくれるから」


    あれは、静かな夜だった。
    こっそり部屋を出て、私服に着替えて家の門から道に出た。
    ゆっくり深呼吸し、吐く。
    パチン、と指を鳴らした。
    一瞬の間を置いてー

    四方向から一斉に、赤い炎が上がった。

    確かに、静かな夜だった。
    全てを無に返した、焼き尽くした夜だった。
    ーーーーーーー
    『ファントムノクターン』


      [No.1047] とある寸劇。 投稿者:巳佑   投稿日:2010/12/18(Sat) 21:40:56     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    [ミッション前にて]

    よう! オレの名前は『プラズマ団のしたっぱ』だ!
    『プラズマ団のしたっぱ』以外、何者でもないからな!!

    …………………。
    ……………。
    ……。

    しょうがないだろ!?
    だって組織の一員なんだぜ!? 
    簡単に名前なんか教えられるわけねぇじゃねぇか!

    …………オレだってカッコイイ名前があるのによ。
    ……それを言えなくてプチブルーなんだぜ?

    ……。

    ま、まぁ、それはさておきだなっ!
    今回はオレは大事な仕事を任されてるんだよ。
    実はな……最近、我がプラズマ団の邪魔をしているヤツがいてよ、
    そいつの資料を見せてもらったんだけど……。

    白い半そでにシャツ黒いノースリーブのベストをかけていて、
    あれってホットパンツっていうのか? まぁ、なんか短いジーパンをはいてて、
    つばの部分が赤みかかったピンク色をした帽子に、
    ポーニーテールで少しウェーブがかかっている髪を持っている、

    …………少女。

    ……って!
    コイツ、まだガキじゃねぇか!
    なんだよ、こんな弱そうなヤツが我がプラズマ団の脅威だっていうのかよ!?

    そう!
    オレの仕事とはコイツに痛い目を合わせること……なんだけど、
    本当にコイツが……!? というくらいオレには信じられねぇぞ!
    ……しょうがねぇ。オレも大人だ、一応な。
    まずはターゲットの情報をもう少しだけ得ようと、
    オレはターゲットと戦ったことのあるやつから話を聞いてみることにした。


    それから数時間後……とりあえず結果報告するとな…………。
    ポケモンとのコンビネーションが抜群すぎて強いかもしれないということが分かったぞ。
    ……このオレが負けるわけないはずなのだが、うーん、どうやってターゲットと戦えば効率よく……。

    ポケモンとのコンビネーション…………それだ!!

    オレはターゲットに接触するために準備を始めた。

    後輩を一人、連れていくか…………。



    [ミッションにて]

    電気石の洞穴にて、オレのミッションがスタートした。
    ターゲットが現れた……がオレはまだ隠れている。
    そしてオレの後輩がターゲットとポケモンバトルを始めた。
    そのバトルの様子を眺めながらタイミングを…………。

    ……………………今だ!

    実はオレの後輩の真の役割は囮(おとり)なのだ!
    オレのミッションはターゲットに痛い目を合わせ二度とプラズマ団の邪魔をさせないようにするのであるから、
    ターゲットを――あのガキに直接攻撃をすればいいのだ!
    このオレの拳でな!!

    オレは後ろからターゲットに迫る。
    静かに、抜き足、差し足、忍び足で距離を縮めていく。
    よーし、ターゲットは依然、バトルに集中しているなぁ……このまま!!

    「せんぱーい! 今です! やっちゃってくださーい!!」
    「あっ!!?? このバカ!!」

    相手は気が付くこともできずにオレの拳に殴られる予定だったのに……!!
    あのバカのおかげでターゲットが気付いちまったじゃねーか!!
    ターゲットが急いで振り返るが、まぁいい、オレの拳はもうお前に向かって――。

    次の瞬間、

    何かがめり込むような鈍くて重い音が鳴り響いていて、

    そして倒れていたのは

    オレだった。



    「……卵ふ化作業で鍛えた足を甘く見ないでよっ!」



    ……どうやら、オレはこのガキの足技で一撃必殺をくらっちまったらしい。


    プラズマ団したっぱの目の前がまっくらになった。

    無論、そのプラズマ団したっぱの財布が少しだけ寒くなったのは言うまでもない。



    教訓:卵ふ化作業で生まれた足腰の力は半端(はんぱ)ない。




    【書いてみました】
    一つのボックスをゾロアで埋めてみよう!
    という作業中に、ふと思ったこと……

    『卵ふ化作業をかなりしているトレーナーの足腰はもしかして強いかも!?』

    『すると、足技なんか強そうかも!?』

    という考えから、今回の寸劇(ギャグともいう?)を書いてみました。

    ……四コマで使われそうなネタかな……? と個人的に思いながら。


    ありがとうございました。


      [No.1046] Re: カミサマと人間のお話 投稿者:イケズキ   投稿日:2010/12/18(Sat) 19:48:06     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    あー、たのしー


    すみません
    久々に、ポケモン世界観の深いところの話を読めて嬉しかったもので。

    現代の生命倫理問題とうまくポケモンをからませた、とても面白い話でした。
    「カミサマ」がそもそも人工的なものだと考えると、「ツー」さんの悩みも吹き飛んでしまいそうですね。


    僕も「あの子」は腹黒と心の底から信じています。アニメじゃきっと、かわいらしい声して、とんでもないこと言ってますよ。

    楽しいお話ありがとうございました。


      [No.1045] Re: いい親父さんだ 投稿者:スズメ   投稿日:2010/12/17(Fri) 14:05:28     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     紀成さん

     感想ありがとうございます!
     これ、普通の職場でやったらすぐにクビですよね・・・
     この息子の将来はアブソルオタクだったりして・・・
     家に帰ったらアブソルだらけなんていう。 

     プレゼントって、あげたものでも貰ったものでもいろんな思いが詰まっていると思います。
     今までずっと忘れていたものでも、実物を見れば思い出す記憶っておおいですよね。 ・・・それで部屋が片付かないのか。
     それはともかく、このお父さんはアブソルを見て何を思っているのか
    そういえば、私もハムスターをクリスマスプレゼントに頼んだことがありました。 そのこは朝起きた時ちゃっかりとケージの中に入っていましたよ。


      [No.1044] いい親父さんだ 投稿者:紀成   投稿日:2010/12/17(Fri) 08:46:30     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    いいですね、息子のために鑑定を頼まれたポケモンをあげるなんて。
    こんな親父さん、今時いませんよ。


    プレゼントという物は、貰ったその度ドラマが生まれます。
    息子さんも大きくなったら、アブソルを見て思い出すことでしょう。


      [No.1043] こわいい! 投稿者:イサリ   投稿日:2010/12/16(Thu) 22:24:53     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    こんにちは、イサリです。


    記事を開いた瞬間、縦書きの文字が見えて「!?」となり、赤い花が見えて「おおおおお!!」となりました。
    燃えるような妖しい美しさ……まさに ゴースト/ほのお タイp(略
    寂しそうに佇んでいる和服の女の子が素敵です。毬の色使いが綺麗ですね。
    そして、小さなヒトモシ!! かわいい!! こわいい!!


    書いてくださった部分は、ヒトモシの説明と久方さんの小説を読んで感じた切なさ、寂しさを表わそうと思って頑張ったところだったので、すごく嬉しかったです。
    縦書きの文字かっこいい……。自分には絶対こんなの書けないです。

    嬉しすぎて、今ならヒトモシに魂を燃やされてもい……いや、やっぱりちょっと怖いです(笑)



    >この歌が歌われている農村に行きたい。
    タワーオブヘブンの近くの野菜スープをくれる辺り、というのを後付けで考えてみたのですが、民家がぽつんとあるだけでした。村じゃない。すみません。
    イッシュ地方のモデルが外国だというのを失念していて、完全に方向性を間違えたと思ったのですが、問題ないと言っていただけて良かったです。



    それでは、素敵な小説を読ませていただいた上に、絵まで描いてくださり、本当にありがとうございました!


      [No.1042] クリスマスプレゼント 投稿者:スズメ   投稿日:2010/12/16(Thu) 22:07:13     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5




    (注意!)この小説にはδ種のポケモンが出て来ます。
      


      δ-デルタ種 (デルタしゅ) はポケモンカードゲームにおけるポケモンの種類。
     概要

     まぼろしの森を抜けると存在する地域。
     特殊な磁場に覆われた地域で名前をホロンという。
     その地域を研究するため村が出来た。(名称不明)
     村周辺に生息するポケモンが磁場の影響を受けてタイプ違いになる。
     そのポケモンをδ-デルタ種という。


     ポケモンWikiより。










      クリスマスプレゼント


     
      もうすぐクリスマス。クリスマスといえば・・・そうだ。 
     クリスマスプレゼント

      去年はなんだったか。 お菓子だったか、本だったか?
     まあ、それはいい。 問題は今年のプレゼントだった。
     息子も今年で9歳。 いや、10歳か。
     もうそろそろポケモンを持っていてもおかしくはない年齢だろう。
     たしかにそうなんだが・・・まさか。

     「クリスマスプレゼントにポケモン・・・か。」

      希望するポケモンはアブソル。
     まったく・・・どこで聞いてきたんだか・・・ 
     部屋にホウエンの資料が広がっていたのはそのせいだろう。 アブソル・・・か。
     わざわざ見つけにくいポケモンを選ぶあたり憎らしいやつだ。
     実際、見つかっていないわけだしな。


     
      あたりは長い草むらに覆われている。 
     そのせいで周りの様子は見難いし動きにくい。 
     おまけに、時々鋭い葉っぱを持つ草が生えていてちくちくする。
     ホウエンといえども冬は寒い。 まあ、雪はほとんど降らないが。
     おまけに、降ったり止んだりの雨、ぬかるんだ道。
     アブソルの生息地域は人の手のはいらない山奥、この地元のあたりでは
     災いを呼ぶといううわさが抜けていないらしく目撃情報を聞くわけにはいかない。
     なぜって・・・宿に泊まれなくなってはこまるだろう。
     もうこれ以上仕事を休むわけにはいかないし、時間もない。
     このあたりに張り付いて数週間。 いい加減仕事のたまり具合もすごいことになってきた。
     おまけに、クリスマスは明後日だ。 帰らないとやばい。
     友人に頼むか、プレゼントをあきらめてもらうか。

      しかし、アブソルをつれている友人はいない。
     だが、今は帰る途中だ。 荷物もまとめた。
     しかし、いまだにサンタを信じているらしい息子にあきらめろというのもな・・・







     「室長、どうしたんですか? 居眠りなんかして」

      目を開けると、若い女性がこちらをのぞきこんでいた。
     手にはポットを抱えている。 目のまえにはお茶。
     どうも気を利かせてくれたらしい。

     「いきなり蒸発して・・・こっちのことも考えてくださいよ。 はい、この子の鑑定お願いします。」

      目の前に置かれたのは赤と白に彩られたボール、通称モンスターボール。
     また、新しいδ種が見つかったのか。 
     同じ種類のポケモンでもごく稀に違うタイプを持っていたりするから、鑑定が大変なんだ。
     そもそも、何でこんな現象が起きるのか分かっていないしな。

      眠い目をこすりながら手に取ったボールには、アブソルが入っていた。




     
     
      クリスマスの朝、聞こえてきたのは喜びの声だった。
     さっそくニックネームを考えているらしい。 
     イザヨイが候補に挙がっているとか。 まあ、喜んでくれたならよかった。
     はあ、職場に行きたくない・・・決めた、今日は休みだ。 二度ねする。




     この後、上司からこっぴとくしかられた挙句減給されたとかされなかったとか。


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    【描いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】【批評していいのよ】

     もうすぐクリスマスということで、それっぽい話。
     ポケモンがほとんどでてこないという・・・
     ここまで読んでくださりありがとうございました!


      [No.1041] 嬉しすぎる…… 投稿者:   《URL》   投稿日:2010/12/15(Wed) 23:48:55     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    
    二枚目だって!? これは夢か? 現実なのか?
    どうしようもう嬉しすぎて何と言えばいいのか。
    うわああ、ありがとうございます!
    
    > 何かいろいろあった勢いで描いてしまいましたスミマセン。
    むしろ描いてみろとか書いてしまった私が謝りますすいません。
    姉さんが可愛い、可愛いよ。ドレスが素敵。しかもちょっと色っぽい。
    うがっとやってるゾロア勇ましい。これならライムも倒せる!
    あと、例によってモニタの前で不審者と化しています。2828。
    
    【描いてしまいました大歓迎なのよ】
     
    > レンリ姉さんマジかっこいい。
    マジまで付けてもらってかっこいいと言ってもらえて光栄です。
    
    > ゾロアは靴に化けていたんですかね?
    > ずっと踏まれてたゾロア……うらやまs……じゃなかった、お疲れ様です。
    「ウラヤマさんもびっくりだなあ」と言おうとしたんですよね。
    イリュージョンを使ってスニーカーをハイヒールに見せかけていただけで、靴に化けて踏まれていたわけではありません。
    ウラヤマもびっくりではありませんでした。
    
    では、ありがとうございました。


      [No.1040] 幻影交響曲 投稿者:紀成   投稿日:2010/12/15(Wed) 23:04:33     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    青菜のおひたしを箸でつまみ、唇まで持っていく。ピリリ、としたような感触でカオリは箸を置いた。
    「お嬢様、お気召しませんでしたか?」
    お手伝いさんが不安そうに聞いてくる。この人は知らないのだろう。
    これに、毒が入っていることを。
    「・・すまないけど、他の野菜の付け合わせをもらえる?」
    「は、はい!失礼しました」
    部屋を出て行ったのを確認して、私は緊張の糸を解いた。この家にいるとどうしても気を抜くことが出来ない。特に、他人といると。
    (笑顔を見せたら、付け込まれる)
    この家に来てから私は笑わなくなった。学校でもひたすら無表情だ。家柄のことで何か言われても、殴られても。何をされても。
    「・・」
    私は近くにあった鏡を覗きこんだ。首に細い、赤い跡が残っている。痛くて苦しかった。叫ぶこともできなくて、ひたすら足を動かした。暗い時だったため、誰かは分からない。
    今までだってそうだ。街に出れば事故に遭いかけ、食事をすれば毒が入り、寝ている時は首を絞められる。
    よく生き延びて来たものだ、と自分でも感心する。ずっと続いてきたせいか、毒には耐性がつき、車をかわすために運動神経が異常に上がった。
    ただ、首を絞められるのだけは何も得ていない。感覚がちょっと鋭くなったけど、あんまり意味はない。
    一つだけ分かっていることは・・
    この家では、自分以外の全てが敵ってことだ。


    小学生になってから、時々聞き耳を立てるようになった。お手伝いさんの噂話によれば、私が引き取られた理由は、一つだけ。
    跡取りが必要だったのだ。
    カミヤの血を途絶えさせないための、跡取りが。

    その日の1時間目は、図工だった。小学五年にもなってくると、好きな子同士で固まって席を作る。私は常に一番後ろの席で作業をしていた。
    版画ということで、彫刻刀で木の板を削る。お題は、『好きなポケモン』
    私は一度もポケモンを持ったことがない。それどころか、カミヤは代々ポケモンを毛嫌いしていたようで、その手のテレビや小説は一切見せない。
    言ってはいけないかもしれないけど、私はポケモンと一緒に旅をするのが夢だ。世間では十歳になったら旅をしていいらしいけど、カミヤの家はそれを絶対許さない。理由は分からないけど。
    木の板の上に、資料として配られた絵を写して描いていく。ペンでなぞって削っていく。私の描いたのはゴーストタイプばかりだ。
    「うわ、ゴーストタイプだ」
    後ろからけなすような声がして、私は変な方向に彫刻刀を動かしてしまった。嫌な感触の後、鋭い痛みが体を走る。
    ボタリ、と赤い雫が机の上に落ちた。
    「カミヤさん!?」
    耳をつん裂くような声と共に、先生がすっ飛んできた。後ろにいた生徒の一人を睨むと、私の左手を取った。
    「酷い傷・・保健室へ行かないと」
    「大丈夫です。一人で行けますから」
    「でも」
    「大丈夫です」
    まだ血が流れる片手をおさえ、私は席を立った。何かが付いて来るのが気配で分かった。

    保健室には行かずに、私は水道で血を流した。けっこう深い傷だ。跡になるかもしれないが、別にいい。
    そう、そんなことは今はどうでもいい。さっきから、私の後ろに纏わり付いてくる、何か。
    「気配は分かってるの。出て来て欲しいな」
    独り言のように呟いた。反応はない。私は振り向いた。
    ・・誰もいない。
    「見えてないだけなのか、それとも消えたのか・・」
    その時だった。

    『ふしぎなにんげん』
    『ふしぎなおんな』

    聞こえた。
    何かの声。冷たくて、体の底からはい上がってくるような。でも聞いていたい、変な感じ。
    急に窓に打ち付ける風が強かった。静かな空間に、水道から流れる水の音と、何かの笑い声が響く。

    ざわざわざわ
    『クスクス』
    『わらわないんだ』
    『おどろかないんだ』

    (見える・・)
    私は廊下のすみっこで固まっているポケモン達を見た。紺色のてるてる坊主が沢山と、黒っぽいぬいぐるみも少し。
    一度図書館で写真を見たことがある。カゲボウズと、ジュペッタだ。負の感情を食べるという。
    私の影から一本の腕が出て来た。何かを掴もうとしていたので私は怪我をしている手でそっと握ってやった。黒い手だ。不気味なはずなのに、温かくて、不思議な感じがした。
    血がまた流れ出して、黒い手が赤く染まった。そのまま引っ張り上げると、一匹のポケモンが出て来た。
    金色の顔の仮面に、泣き腫らしたような赤い目。そして血涙のように目の下にある模様。
    その目が、じっと私を見ていた。
    「何で影から出て来たの」
    驚かない。驚こうにも、怠くて神経が働かない。
    『元々あの家にいたんだ』
    「カミヤの?」
    『誰も気付かなかったから、皆を見てた。食事に毒を入れたのも、首を絞めようとしたのも、交通事故に遭わせようとしたのも、・・カオリの叔母がやったこと』
    感づいていたことだ。今更驚きはしない。
    『傷、大丈夫?』
    『大丈夫。そのうち止まるから』
    ダメだ。眠い・・


    次に起きた時、私は自分の部屋で寝ていた。左手が痛い。やはり夢とかそういうものじゃ無かったらしい。
    『おきたおきた』
    『しにぞこないだー』
    嫌な台詞が聞こえて、私は上を見た。カゲボウズが沢山。ゴーストタイプが見えるようになったのも夢じゃ無かったようだ。
    「死んで欲しかった?」
    左手には包帯が巻かれていた。まだ血が滲んでいる。
    『しんでもらっちゃこまる。エサがなくなる』
    「エサ?」
    『カオリをにくむおんなのねんだー』
    思い出した。カゲボウズは負の感情を食べるんだ。この家はいいエサ場になるだろう。
    「そういえば、さっきの・・」
    『いるよ』
    部屋の隅から声がした。
    『あの後、人間の一人がカオリを見つけた。血は止まりかけていたから、家に運んだんだ』
    「よく殺されなかったな、私」
    『流石に教師が心配している前では殺さないさ』
    白い布団が目に眩しい。そこで、ふと思いついたことを口に出してみる。
    「貴方達、ずっとこの家にいるの?」


    話を聞き終えて、私は納得した。
    「なるほどね。叔母さまは私の母さんを憎んでいたってわけか」
    『だからもともとここはエサがないときのばしょだったんだ』
    『ここにはいつもエサがあるからなー』
    カゲボウズ達の声を無視して、私は赤目にたずねる。
    「ところで、貴方の名前は?」
    『デスマス』
    不思議な名前だ。
    『カオリ、どうする気だ?』
    「どういうこと」
    『カオリの叔母はカオリを憎んでる。現に殺そうとしてる』
    「・・」
    『僕達に出来ることならなんだってする』

    最初は、何をどうしたいって気持ちはこれっぽっちもなかった。叔母のように犯罪の芽を育てるつもりもなかった。
    ただ。

    「両親と私を引き離したことは・・許せないんだ」
    記憶の片隅に残る優しい声。眠る時聴かせてくれた子守唄。
    父さんもよく休日には何処かに連れていってくれたっけ・・
    「私がこの家に来ないといけない理由の中には、私のことを考えてなんて一つもなかった。ただ、跡取りがいなかっただけ。
    両親が私を手放したこともちょっと恨みたいけど・・やっぱり恨めない。
    産みの親であり、短くても育ての親だから」

    そう。たとえどんな理由があったとしても、私は両親を恨めない。
    恨めるはずがないんだ・・!

    カゲボウズ達がユラユラと揺れている。デスマスの赤い目が輝いたように見えた。
    鏡を見る。自分が映っているはずなのに、別の何かが映っているように見えた。

    「奴らを許すな」
    「奴らの好きにはさせない」
    「奴らは鬼だ」
    「奴らは私を殺そうとしている」

    「だったら」

    目が赤い。まるで流した血のようだ。

    「殺られる前に、殺ってやる」



    カオリは、目を覚ました。夢を見ていた。長い夢を。
    「・・」
    『おはようカオリ』
    『おはよー』

    カゲボウズ達が天蓋ベッドのカーテンを開けて入って来る。一言返すと、カオリは黒いフリルのついたワンピースをクロゼットから取り出した。
    そして、暖炉の側に置いてある厚い本を取り、読みはじめた。

    ーーーーーーーー
    『ファントムシンフォニー』


      [No.1039] すげー増えてる。 投稿者:渡辺タテタ   《URL》   投稿日:2010/12/15(Wed) 06:12:37     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    のど飴が足りん(笑)。


      [No.1038] 姉さんかっこいいです 投稿者:久方小風夜   《URL》   投稿日:2010/12/14(Tue) 23:50:31     83clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    姉さんかっこいいです (画像サイズ: 395×508 69kB)

    >スカートの中からゾロア! がやりたかっただけです。
    >【描けるもんなら描いてみろ】という方向性で。
    >でもどうせ中はハーフパ(強制終了)
    
    何かいろいろあった勢いで描いてしまいましたスミマセン。
    いろいろおかしいような気がせんでもないですが、ツッコミはなしという方向でお願いします(´・ω・`)
    
    
    レンリ姉さんマジかっこいい。
    たくさんのゾロアにバチュル……さては姉さん、モフモフ大好きだな!?
    
    >  パン、と指を鳴らす。ドレスが揺れた。
    > 
    >  黒い子狐が矢のように飛び出し、ライムの足に突撃した。
    >  ライムは体勢を崩しながらも、銃口をレンリに向けた。
    >  引き金に手をかけるより速く、レンリがその手を蹴った。いつの間にか、履き物がスニーカーにすり替わっている。
    
    ここで完全にキュンときました。かっこいいです姉さん。
    前のほうの
    
    >  レンリは個室に入ると、スニーカーに履き替えた。
    >  そして少し考えて、レンリは欠伸をしているゾロアの額をつついた。
    > 
    >  会場に戻ったレンリを、ライムの笑顔が出迎えた。
    >  彼の目が、素早く探るように足元を見る。
    >  そして、がっかりした顔を浮かべた。レンリはスニーカーを履いていなかった。
    
    ここから察するに、ゾロアは靴に化けていたんですかね?
    ずっと踏まれてたゾロア……うらやまs……じゃなかった、お疲れ様です。
    
    ではではこの辺で。


      [No.1037] 新ジャンル・こわいい 投稿者:久方小風夜   《URL》   投稿日:2010/12/14(Tue) 23:29:26     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    新ジャンル・こわいい (画像サイズ: 244×624 28kB)

    イサリさん、初めまして。久方小風夜です。
    感想ありがとうございます!


    >もしも自分がポケモンの世界にいたとしたら、きっとシアン君寄りの考え方だろうな……と思ってしまいました。
    >家族や友人には、例えポケモンとの仲を引き裂いてでも生きていてほしい。
    >でもその一方で、本人の価値観も大切にしてあげたい。
    >『これ』といった正解のない難しい問題ですよね…… 

    難しいこと考えさせてしまってすみません^^;
    答えのない問題だからこそ、価値観は合わないし、だからこそ仲良くもなるし、衝突もする。
    心っていうものは難しいなと常々思います。



    >……やっちゃっていいのですか?(待て
    つ【どんどんやっちゃっていいのよ】

    参考文献素敵です!
    曼珠沙華、雰囲気にあっていてとてもいいですね。
    この歌が歌われている農村に行きたい。

    >書いた後でイッシュ地方には稲作より小麦だろうと気がついたのは秘密です←
    イッシュは異文化ごちゃ混ぜだそうなので問題無しです!
    むしろこの和風な雰囲気がいいと思います。

    自分もついやっちゃいました(^^;)
    自分でわかってるので字が下手というセリフはそっと胸にしまっておいてください(笑)


    それでは、感想ありがとうございましたー!


      [No.1036] Re: 私信 投稿者:クーウィ   投稿日:2010/12/14(Tue) 14:28:47     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 【私信】クーウィさん
    > 例のメンバーにカウントしても、大丈夫か?
    > 最終意思確認のためメールもらえるとありがたいです。
    > pijyon☆fk.schoolbus.jp(☆→@)までお願いしまっす。


    OKですよ〜

    と言うことで、送信いたしましたが……名前入れるの忘れてました(爆)

    発信者不明のヤフメ来てたら、多分自分のっす
    ……文面から、推察はして頂けるとは思いまするが、一応御詫びと共に……(汗)


    御返事遅れて御免なさいです……


      [No.1035] カミサマと人間のお話 投稿者:豆兎   投稿日:2010/12/14(Tue) 00:41:57     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「君に面白い話をしてあげよう」

    桃髪の女性はそういって華やかに笑った。



    カミサマと人間のお話(創造+混合=人間?)



    人間には実は2つの意味があるんだよ。
    正確に言うと、昔の人間と今の人間っていうのはちょっと違うんだよ。
    昔っていうのは本当にすごく昔。世界が一度滅んだ時よりも前の話。
    ああ、あまり深く考えなくていいよ。あくまでお話だと思えばいいから。
    今ってさ結構変わってると思わない?
    リニアとか電車があるじゃない?あれって便利なのになんで普及してないんだと思う?
    1都市と1都市をつなぐだけじゃなくて全部の都市を繋いでしまえば便利になると思わない?
    電車やリニアが発明されたのは結構前。
    なのに普及してないのは何故?
    答えは簡単。それが破滅への道であると経験したから。


    昔ね、人間は高度な文明を発展させた。急速に、多くのモノを犠牲にしてね。
    犠牲は破滅へと繋がっていくと彼らは分かっていた。
    でもね、発展することをやめなかったの。

    だって便利なことを知ってしまったら不便な頃には戻りたくないじゃない?
    そして、そのまま更なる犠牲のもとに発展を続けていったの。
    そうしたら、100年ももたずに生物達は絶滅していき、人間もかなり減ってしまった。
    今まで溜めこんだツケが返ってきたの。
    大地も荒廃して…滅んだと言っても差し支えない状態だったみたいよ。
    愚かしい人間はね、世界をも巻き込んで自滅しようとしたのよ。

    彼らは焦ったわ。生きたかったもの。
    でも、自分たちの力ではどうすることもできなかったの。
    だからね、造ったの。


    世界を直してくれるカミサマを……。


    え?そんなことができるのかって?
    今だって似たようなことしてるじゃない。品種改良とかも新しい種の生成でしょ?

    ま、そういうわけで完全無欠かどうか知らないけど、創造することができるカミサマを造ったわけ。
    それで、カミサマは荒廃した大地を戻すために人間の記憶の植物や動物を元にして、新しい世界でも生きていけるように手間を加えて新しい生物をたくさん創造したの。

    ポケモン達ってその時にできた新しい生物が祖先なんだってさ。
    昔は火を吹いたり、水を吐いたりする生物なんて神話くらいにしかいなかったんだよ?

    で、そうやってカミサマはこのひろーーい世界を作り直していったの。
    だったんだけど……ある時気付くわけよ。
    自分が創った生物は沢山増えたけど、今度は人間がすっごく少なくなってたわけね。
    絶滅危惧種くらいの数かなあ?まあ、それくらいやばかった。

    それに気付いたカミサマは焦ったの。
    まあ、人間は愚かしいから滅んだ方が世界の為かもしれないとか考えてたらしいけど。

    なら何故焦ったのかって?

    カミサマを造ったのは人間でしょ。つまり、カミサマにとって人間って自分の存在理由なのよ。
    人間がいなくなったらカミサマは居る意味がなくなっちゃうわけ。
    カミサマを望む人間がいなくなっちゃうから。
    だーかーら、人間を増やすことにしたわけよ。でもね、人間って1度に何人も生まれないし、産むまでに1年くらいかかっちゃうでしょ?
    そんなすぐには増えないわけよ。
    そういうわけで、カミサマは考えたの。
    人間と新しい生物の間で新しい人間を誕生させようってね。

    ほら、昔話でもあるじゃない。
    人間とポケモンは同じだった、結婚しているのも普通だったって。
    あれってここから来てるのかもねぇ?

    で、これは成功して人間は増えていきました〜。
    でもね、純血の人間はいなくなっちゃったの。新しい種の血をいっぱい受け継いで、どんどん薄れていった。
    だから、今の人間ってね、人間の皮を被った全く違う生物なの。
    実は人間の形をしただけの化け物なのかもねぇ?

    で、それは今の君達。人間っていうわけ。

    だから人間には2つの意味があるの。
    昔の純血の人間。
    今の人間の形はしてるけど、全く違う新しい種。

    その2つがあるっていうお・は・な・し。



    ……どう?少しは暇つぶしになった?

    え?今の話が本当かって?

    さあ?だってそういうのはその時生きてた人か、もしくは……カミサマくらいしか知らないじゃない?
    だから真実なんて誰にもわからないよ。




    あ、ボクは用事があるからこれで失礼させてもらうね。
    じゃあね〜


    君は今の話を聞いて何を思うのかな?


    ********


    桃髪の女性が喧騒の中で空を見上げていた。

    「まあ、昔より今の人間のほうが自然を大事にはしてるかなあ。愚かしい所はあんまり変わってないけど」

    くすくすと青い瞳を細めて笑う。

    「ミウ」

    男の声が女性を呼んだ。
    振り返れば、肌の白い、紫髪の長身の男性が佇んでいた。

    「なあに?ツー」
    「溜まった仕事を片付けろ」
    「えー、めんどくさいよ」
    「人間に紛れこむと決めたならきちんとしろ」

    ぺちりと頭を叩かれた。

    「わかったよ。面白いことのためにはめんどくさいこともしなくちゃねー」


    笑いあいながら、男性と女性は人ごみの中に消えていった……。





    造られたカミサマって桃色の身体に青い目をしてたらしいよ?









    ―――――――――――――――――――――――――――――――
    初めましてでございます。豆兎と申します。
    大バカ者でございますが、生ぬるい目で見ていてください。
    今まで見る専門だったんですが友達に出してみたいなあといった所。

    「YOUやっちゃいなよ!」

    的な事を言われましたので、勇気を振り絞ってみました。

    ポケモンがまったく出てない話ですみません。
    幻のポケモンって言われてるあの子が主役です。
    あの子は腹黒だって私信じてる!


    「好き勝手していいのよ」
    「感想くれたら踊ったりするのよ」


      [No.1034] 一挙3作品追加 + 私信 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/12/13(Mon) 23:05:08     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    一挙3作品追加です。
    よろしくお願いします。


    【私信】クーウィさん
    例のメンバーにカウントしても、大丈夫か?
    最終意思確認のためメールもらえるとありがたいです。
    pijyon☆fk.schoolbus.jp(☆→@)までお願いしまっす。


      [No.1033] B´s Will〜『B』達の意思〜 投稿者:イケズキ   投稿日:2010/12/13(Mon) 20:44:29     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    B´s Will〜『B』の意思〜

     「あいつ」は五日前の朝、何の前触れもなく、突然現れた。
     宙に浮かんだ「あいつ」の体は黄土色していて、そのやけにでかい頭には奇妙な模様を描くように、いくつかの線が入っている。
     「あいつ」は話かけてこないし、なにも答えない。あんまりにも訳のわからない奴なので、俺は結構本気で、「あいつ」がこのリゾートデザートの砂に乗り移った、バケモノだと思っている。
     しかし、俺はあまり気にしてはいない。それどころか、「あいつ」の事など、どうでもいいとすら思っている。
     「あいつ」が宇宙人だろうが、砂のバケモノだろうが、はたまた新種のポケモンだろうが、俺には関係の無いことだ。この砂漠にいるのは、俺と、俺じゃない「何か」だけ。その事実に変わりはない。
     ただ、気味が悪いし、「あいつ」が時々俺の一人を邪魔するのだけは気に入らないが。


     朝が来た。今はまだ寒いが、じきに太陽の熱で、砂漠は灼熱の暑さに包まれることだろう。

     俺は自問し始めた。

     『俺はいつから、この砂漠にいるのか。
     ――ずいぶん昔からだ。正確な年月はもう忘れた。

     俺はどうして、この砂漠にいるのか。
     ――いるからいるのだ。理由なんて必要ない。

     俺はいつまで、この砂漠にいるのか。
     ――俺がこの砂漠を出るまでだ。追い出されることも、引き止められることもなく、純粋な俺の意思によってそれは決められる。

     俺は誰だ。
     ――俺はブーバーン』

     これで朝の儀式終了。
     砂と、砂に埋もれた城しかない、リゾートデザートに長い間いると、時々自分を見失いかける。まるで、大きな岩が、風雨に曝されて細かな砂になるように、「自分」が風化してしまうのだ。だから、俺は毎朝呪文のように同じ内容の自問自答をして、自分を確かめる。

     今朝の空を見上げた。砂漠は珍しく凪いでいた。
    「悪くない。」
     こんな朝は、悪くない。
     俺は感性豊か、というわけではないが、そんな俺でも、自然と感嘆の言葉をあげられる。
     今日の朝は、そんな朝だった。

     今はまだ、俺しかいないこのリゾートデザートだが、昼を過ぎると「獲物」がやってくることがある。それまでは、ゆっくり朝を過ごせる、はずだった。

     ――またいる。

     青い空の下を漂う砂の固まりが、一匹。
     ここのところしょっちゅうだ。やつは何をするでもなく、プカプカと浮いているだけなのだが、せっかくの朝を邪魔されるのは迷惑だ。
     俺はいつものように、奴に向けて腕を構えると、軽く火の玉を発射した。無論、当てはしない。青い朝に、どぎつい赤の炎が吸い込まれていった。摂氏1500度にも満たない火遊び程度の火力だが、邪魔者を追い払う分には、十分に事足りる。
     案の定奴は、すぐにどこかの砂山に紛れ込んでいった。
     俺は、奴と炎が視界から消えたのを確認すると、その場に腰をおろし、一人の朝を満喫し始めた。

     獲物が来たのは、砂漠が、最も砂漠らしくなる時間帯のことだった。
     一人のバックパッカーが、大きな荷物を背負い、暑さと砂嵐の中をやってきた。今日なんかは比較的涼しいほうだと思うのだが、やはりこの時間帯、夏の砂漠は人間にきつ過ぎるのだろう。
     そもそも「リゾートデザート」なんていう名前が悪い。
     俺は、ふらふらと今にも倒れてしまいそうな人間を見て、そう思った。
     ここの一体ドコが「リゾート」なのだ。昼は灼熱、夜は極寒、年中砂嵐が吹き荒れている。俺は昔、俺のトレーナーだった人間と、シンオウを旅したことがある。その時、リゾートと呼ばれる所に行ったが、ここは間違いなく、「リゾート」という表現の対極に位置する場所だろう。
     にもかかわらず、だ。
     人間たちはヒウンシティから次の、ライモンシティに向かうためと、危険をおかしてリゾートデザートを通っていく。
     どう考えても、みんなこの名前に騙されているとしか思えない。この間なんて、まだトレーナーになったばかりであろう、若い少年少女が、信じられないような軽装で通っていった。
     おかげで獲物が手に入る俺としては、なんとも言い難いところではあるが。
     ここで断っておくが、「獲物」といっても、人間捕まえてなんとやら……という訳では決して無い。砂漠で道に迷った人間を見つけては、彼らが持っている食糧のうち、その日俺が食べる分だけ失敬するのだ。もちろん、全て奪うことは無いし、その「獲物」が残りの旅に必要な分を考慮して、何もとらずにおくことだってある。誤解されることが多いようだが、ブーバーンは結構少食なのだ。

     ――そろそろだ。

     あの人間は既に限界のようだ。
     俺が見つけて5分もしないうちに、へなへなと座り込んでしまった。こうなると普通なら、あとは野垂れ死にするだけだ。
     砂漠で迷えば、死ぬ。それこそ、火を見るより明らかだ。
     と、ブーバーンの俺が思って、自分で笑った。

     だが、あの人間は運がいい。
     俺はいつも、迷って体力を切らした人間を獲物にする。その方が圧倒的に楽だからだ。下手に抵抗されれば、相手を傷つけてしまうかもしれないし、体力を切らしていれば、逃げられる心配もない。
     そして俺は、そんな人間から食べ物を失敬する代わりに、助けてやることにしている。俺が、俺じゃない「何か」に、そこまで律儀になる必要はないと思うが、そこはやはり、一度は人間の世話になった身。なかなか無下にできるものでもない。かつて人間に捨てられ、この不毛の土地で一匹生きてきた俺でも、その程度の自尊心は保っている。いやむしろ、今の俺はそれだけで生きている。
     とにかくあの人間は、砂漠で迷ったにも関わらず、生きて次の町へ行けるのだ。
     これ程運の良いことが、他にあるだろうか。

     俺は獲物に近づくとまず、相手の状態を確認した。獲物の方は、もう意識がはっきりしないのか、ぼーっと俺を見つめている。

     ――んー、マズイな。

     俺は一目みて、この獲物がかなり危ない状態だと分かった。長く同じことを繰り返しているうちに、相手が単にくたびれているのか、半分死にかけているのか、すぐ分かるようになったのだ。こういう場合、俺はさっさとカバンだけを貰って、人間は諦める。こんな所で死にかけられても、専門家でない俺にはなにもできないからだ。
     ところが、今日は何となく、このバックパッカーを助けてやりたい気分だった。不思議な気分だ。いつもなら、何の未練もなく切り捨てられるのに。
     仕方ないので俺は、カバンを開ける前に獲物を「古代の城」まで連れていくことにした。

     プカプカと浮いている人間を見ていると、「あいつ」を思い出して気分が悪くなる。
     担いで運べないこともないのだが、俺の特性上、直接触れるわけにいかないので、サイコキネシスをかけて浮かばせている。
     俺はまた、バックパッカーを、見た。
     今度は、このバックパッカーに嫌気がさした。
     俺は、根性論とか精神論とかを、むやみやたらと振りかざす奴をあまり好かない。
     別に俺が、理屈屋のお固い野郎だから、ということではない。むしろ、根性無しは大嫌いだ。
     だが、「考え無し」の奴はもっと嫌いだ。
     このバックパッカーは、本当ならもっと早く倒れていておかしく無かったはずだ。その時に体を休めていれば、ここまで深刻な状態にはならなかっただろう。だのにコイツはそれを無視して、こんな所まで迷って来た。
     全く馬鹿な奴だ。
     理性を持って行動していれば、情けない姿で、ポケモンに助けられることなんて無かったろうに。
     俺のトレーナーだった人間は、良くも悪くも真逆の性格だったから、余計にこの人間の行動が無謀に感じて、腹がたつ。

     やっと、城のすぐ近くまで来た。
     この辺りには、人間を休ませる時だけに来る。俺が普段いる所からは大分離れているし、ここらは野生のポケモンがよく出てくるからだ。実際、ここに来るまでにも何体か出てきて、うち一匹は攻撃してきたので、そいつには文字通り「焼き」を入れてやった。

    「あぁ……」
     思わず嘆息が漏れた。
     城の前、入口を塞ぐように「あいつ」が浮かんでいたからだ。

     ――めんどくさい。

     この緊急事態に、「あいつ」はまた俺の邪魔になる。
     俺は今朝と同じように片手を構え、火球を放った。少しイラついていたので、1500度は越えていただろうが。
     ところが「あいつ」は消えない。一瞬、いつもと違う反応を訝しく思ったが、すぐに俺は、バックパッカーの危険な状態を思い出し焦った。
     焦って頭に血の昇った俺は、さらに2、3発放った。だが、それでも「あいつ」は消えない。「あいつ」は、プカプカと浮き続けるだけで、入口の前から消える気配がない。
     いよいよあいつが憎くなった俺は、バックパッカーを地面に降ろし、というか落とし、再び腕に力を込めた。今度は、確実に「あいつ」を倒すために。
     ――あいつは、俺の邪魔を意図してやっている。
     全身を白熱させて、攻撃の準備をしているうち、少しだけバックパッカーのことが心配になった。俺に限らず、ブーバーンは本気になると白熱する。その時、全身がかなりの高温になる。それこそ、人間なんかには近づくのも危険な温度だ。

     ――ま、いいか。

     結局のところ、「あいつ」は、俺が全力を込めた「だいもんじ」を放つ前に、しぶしぶといった様子で去っていった。
     ――一体、何だったのだろう。
     何故「あいつ」がいきなり、これまでの態度を変えて、俺に直接干渉するような真似をしたのか分からなかった。

     落としたバックパッカーを拾い、俺達はようやく、「古代の城」の中に入った。
     ここは、人間たちにもまだ知られていない、ポケモンだけの空間だ。「古代の城」という名前も、俺の便宜上勝手に付けただけの名前だ。大昔には、沢山の人間が出入りしていたのだろうが、今はすっかり忘れ去られ、砂に埋もれ、朽ちている。だから、ここは好きじゃない。嫌でも、自分の境遇と重ねてしまう。しかし、「リゾートデザート」でここより、死にかけた人間を介抱するのに、適した場所はない。ただ、普段は邪魔な野性ポケモン達がいるのだが、運よくそれも今日はほとんど見かけない。
     運がいいと言えば、このバックパッカー。なんと、奇跡的に無傷だったのだ。どうやら、サイコキネシスを解いて砂の上に落ちた時、体が少し転がったらしい。そのおかげで、俺との間に距離ができて、火傷せずに済んだのだろう。少し砂で汚れてはいるもの、さっきと変わらない様子でいる。今のバックパッカーだけを見れば、まさかついさっき生命の危険に曝されたとは、誰も思わないだろう。
     俺は急に怖くなった。
     俺は、コイツが嫌いだ。それでも、助けてやるつもりだ。何故なら、いつだってそうしてきたからだ。そうすることでしか、風化し続ける「自尊心」を保てないからだ。
     だのに、俺はさっきコイツを殺しかけた。
     頭に血が上っていたとはいえ、危険過ぎる行動だった。もしも、コイツに何かあったら、俺はどうなっていたのか。
     俺はさっき、俺を殺しかけたのだ。

     バックパッカーを手頃な場所に寝かすと、俺は早速準備を始めた。
     幸いバックの中には、水分と食糧が少し残っていた。さらにバックから、こいつの上着を一着とタオルをとった。
     自慢じゃないが、俺はそこらのポケモンより、ちょっとばかり頭がいい。今ここでこの人間にしてやれることは、最低限分かっているつもりだ。だが、それはあくまでも「最低限」だ。砂漠の真ん中で、こいつにしてやれることは、人間の医者でもそうはないだろう。だから、「最低限」のことをしたあとは、こいつの気力とか、生命力とか、あとは……、そう、「運」に懸かってくる。

     ――だから、こいつは絶対に助かる。

     まずは、水筒に入っている水をホウロウのコップにあける。サイコキネシスでのこういった細かい作業は、何度やっても慣れない。エスパータイプのポケモンなら、手でするより器用にやってみせるのだが、バトルで相手の弱点をつく為だけに仕込まれた俺のサイコキネシスでは、どうにも加減が難しい。大量の貴重な水を無駄にしてしまった。
     次にタオルを小さく焼きちぎり――炎の加減なら任せてくれ――それを水の入ったコップに突っ込んで、タオルにたっぷり水を含ませる。これで水分補給の準備は整った。次は飲む方の準備だ。今こいつは気を失っている。まずは、目を覚ましてもらわないといけない。
     いきなり、「マッハパンチ」というのもアリだが、寝ている奴に不意打ちするようで気分が悪い。「10まんボルト」を使えばコイツを殺してしまいかねない。

     ――あー、めんどくさい。

     面倒くさいが仕方ない。10ボルト位からゆっくり上げていこう。俺はエスパータイプでないが、でんきタイプでもない。これまたあの男に、にわか仕込みされた「10まんボルト」を、体から溢れ出しそうなまでのストレスを感じつつ、加減しないといけない。
     「あー、めんどくさい。」
     同じことを何度呟いたか。やっとバックパッカーが目を覚ました。覚ましてはいるもの、疲労困憊に合わせて、脱水症状まであるとあっては、喋るどころか、起き上がることも出来ない。焦点の定まらない視線をこちらに向けて、今にもまた気を失ってしまいそうだ。早く、こいつを座らせないと。自力では姿勢を保てないので、上半身を上手く壁にもたれかけさせる必要がある。寝かした状態からでも、水をやることはできるが、それをやるとかなりの確率でこいつは肺炎になる。ここで、こいつの運をもう一度計ってやってもいいが、それは無駄なリスクというものだ。座らせている間に気を失ったら、また起こす。いくら急いでも、肺炎で死なれては、元も子も無い。

     そして、ここからが一番難しい。タオルをサイコキネシスでゆっくりバックパッカーの口元に持って行き、少しずつ滴を垂らしていく。これが本当に難しい。力を抜きすぎれば、タオルを取り落としそうになるし、逆に入れすぎれば、あらぬ方向へ飛んで行ってしまう。そうやって、コイツの口めがけて滴を垂らしていく。さしずめ、クレーンゲームの要領だ。
     俺はバックパッカーの、顔面から胸をびしょびしょにして、水分補給を終えた。口の中には数滴しか入っていないが、これでいい。いきなり沢山やるべきでないのは、経験から知っている。
     あとはコイツの体温が下がらないよう、上着をかけておく。焚火は、俺がいればいらないだろう。俺、燃えているし。

     ここまでが、「最低限」。

     疲れたので、寝る。


     俺が、ようやくウトウトしてきた時。ゴソッという物音がして、目が覚めた。あのバックパッカーが、直立の姿勢をとっていた。物音の原因は、直立したバックパッカーから上着の落ちる音だった。立ち上がる前に上着を横にやればいいものを、と、思うところだが、それはできなかったろう。バックパッカーの意識は、回復していないのだから。では、なぜ直立しているのか。それは、全身にサイコキネシスをかけられて、体の自由を奪われているからだ。ちょうど俺が、ここまでバックパッカーを連れて来た時のように。だが、今俺は何もしていない。さっきまで、この上なくリラックスした状態で、安眠していたのだ。
     サイコキネシスをかけていたのは、「あいつ」だった。

     ――ボッ、ボッ、ボッ。

     弾かれたように立ち上がると、俺は火球を3発、正確にあいつを狙い放った。
     バックパッカーの様子を見る限りでは、「あいつ」が何をしたのか、もしくは、するはずだったのか分からない。だが、さっきから「あいつ」の行動は不審過ぎる。これ以上妙なことされる前に、一度“黙らさ”なければいけない。
     それに、「あいつ」はサイコキネシスを使っていた。そのことは言わずもがな、「あいつ」がポケモンであることを意味している。砂に乗り移ったバケモノならともかく、ポケモンなら勝負して倒せる。

    「おい! 何が目的だ? 何がしたい? どうして俺につきまとう?」
     「あいつ」に尋ねながらも、俺は攻撃の手を緩めない。
     明らかに、「あいつ」は、俺に気づかれて慌てている。サイコキネシスを止め、襲い掛かる火の玉を、一つは回避し、一つは手で払い除けたが、一つは「あいつ」の頭に直撃した。しかし、意外とダメージは少なかったらしく、大きな頭をブルッと一回震わせると、「あいつ」はついに行動を起こした。
     両手を広げ、「あいつ」の手の平にある、鮮やかな赤と黄と緑の突起が、輝きはじめた。その輝きはあっという間に強さを増し、俺、バックパッカー、遂には城をまるごと包み込んだ。
     俺は、あまりの眩しさに目を覆った。

     再び目を開いた時、「あいつ」は既にどこかへ消えていた。
     さっきの技は、多分「フラッシュ」だろう。
     が、それだけではない。
     「あいつ」の手の平が光った瞬間、何か分からないが、技を使っていた。それは確かなのだが、何の技かわからない。

     ――気に入らない。

     「あいつ」が何なのか。どうして突然つきまとうようになったのか。何をする為にきて、何をしていったのか。分からないことだらけで、気に入らない。
     俺はもうほとんど死んでいるようなバックパッカーに目をやった。
     この人間に何かあることは間違いないだろう。俺がこの人間を拾ってからだ、「あいつ」が付きまといだしたのは。

     ――さぁ、コイツをどうする?

     面倒は嫌いだ。俺はまだこの砂漠を出る気はないし、これから先、「あいつ」がまた来たら勝負は避けられない。

     ――あー、めんどくさい

     こんなことに頭を使うことすら、面倒だ。不必要だ。考えるまでもない。

     ――コイツは、俺が次の町に送る。

     俺は、迷った人間を拾う。拾った人間は、助ける。助けた人間は、送り届ける。
     余計なことを考えて迷うのは、それこそ、このバックパッカーのような「考え無し」のすることだ。俺は、そんな馬鹿なことしない。
     俺は純粋な、俺の意思によって行動する。

     それからは一時間おきに、バックパッカーの様子を確かめ、それ以外の時はあいつが来ないか見張り続けた。
     バックパッカーの容態は、なかなか良くならなかった。上手くいけば、翌朝までには回復すると思っていたが、この分だと本当に危ないかもしれない。

     俺は無理をした訳ではない。確かに、最初は拾うのが躊躇われるほど悪かったが、拾った以上は助けるつもりだったし、助かるとも思った。実際、バックパッカーは今も生きている。
     しかし、一向に回復しない。
     最低限のことはした。それでダメなら仕方ない。
     俺は、諦める時はすぐに諦める。いつまでも問題を宙ぶらりんにしているのは、疲れるだけで意味が無い。
     だが、今俺は迷っている。
     コイツを拾った時から感じていたが、何か俺を、捨て置かせない物をコイツは持っている。
     なにより、悔しい。
     これまでに拾ってきた人間は、全て無事にライモンシティへ届けてきた。それは、何も俺の能力が凄いという訳ではない。ただ、俺が今まで、助かる奴だけを拾ってきただけのことだ。
     死ぬ奴は、死ぬ。
     死ぬ奴を拾ったことはない。俺はどいつの時も、助かる見込みを持っている。無理はしない。
     俺はこのバックパッカーとは、違う。

     こんな「考え無し」とは、違う。


     そうなると問題は、今のこの状態をどう抜け出すかだ。
     俺は、バックパッカーの額に浮かぶ、不気味な脂汗をタオルで拭ってやった。
     水分補給をさせ、適度な気温と湿度の中で十分休ませた。限られた最低限のことしかしていないが、これでバックパッカーは回復するはずだった。
     ――どうすれば、バックパッカーを助けられる?

     実を言うと、原因はわかっている。

     回復もせず、だからといって、悪くもならない状態。

     ポケモンが使う技で、全く同じ症状を引き起こす物がある。

    『かいふくふうじ』

     バトル中に相手ポケモンの「じこさいせい」や、「ねむる」といった再生技を使えなくし、「ギガドレイン」のような、相手の体力を吸い取る技の効果まで無くす技だ。
     結果、使われた相手は、体力を回復できなくなる。
     さっき「あいつ」が最後に使った技は、「かいふくふうじ」で間違いないだろう。人間に使って、どれだけ効果のあるものか知らないが、バックパッカーを見る限り、事態は深刻だ。

     だが、どう対応すればいいか分からない。このままでは、バックパッカーは、死ぬ。状態が悪化しなくても、体力が持たない。

     いまさら気づいた自分の無知にイライラする。
     考えてみれば、なんともマヌケな思い込みだ。砂漠で自分一匹暮らしてきて、自分一匹で頭が良いと思ってきた。それが今、ポケモンの技の対応一つ分からずに追い込まれている。
     奢っていた、ずっと。

     ――こんなだから、俺は捨てられたのだ。

     今回のこととは、関係無いと分かっていても、そんな思いが頭の中で、まるでガンのように増殖していた。

     俺が捨てられる原因になったあのバトル。今でも、忘れたいのにハッキリと覚えている。
     あれは、「あの男」のイッシュ地方8個目のバッヂを賭けたジム戦だった。


     あれは、完全に俺のミスだった。
     俺が犯したミスは致命的な物だった。結果俺達は負けた。
     「あの男」が、負けた。
     「あの男」にとって、初の敗戦だったと思う。タマゴから育てられた俺だが、あの男が負けたところは見たことがなかった。

    「――――」

     最後にあの男は、俺のことを呼んだ。
     その時の顔は、まるで頭の中に写真が残っているかのように、鮮明に覚えている。

     怒り、悔しさ、悲しみ、俺への失望。

     そして、俺は捨てられた。

     そのことについて、初めは「あの男」が恨めしかった。「あの男」のことを思い出す度に、悔しくて涙がでた。だが今はもうなんとも思わない。きっと慣れたのだろう。随分昔、この砂漠に来てからは、「あの男」も所詮、俺以外の「何か」だったと諦めている。だから、何も感じない。


     感じなくても、反省はする。同じ失敗を繰り返す気はない。
     確かに俺は馬鹿だ。それについて、今はどうしようもない。いつか、バックパッカーを助け終わったら、ポケモンの技を勉強し直そう。
     しかし、今そんな余裕はない。一刻を争う、という程ではないが、こんな状態が続けば、いずれバックパッカーの体は持たなくなる。
     こうなると、残された手段は多くない。
     バックパッカーをライモンか、ヒウンの、医者の所まで運ぶのは無理だ。あの不安定なサイコキネシスで、そんな遠くまでコイツを運ぶ体力が俺にないし、バックパッカーの体力も持たない。運ぶ途中にまた「あいつ」が現れれば、さらに時間を取られるだろう。
     俺だけで町へ行って、医者を連れて来られればいいのだが、それも難しい。ポケモンの俺は人間に対して言葉を持たない。さらに、往復でかかる時間を考えるとやはり、バックパッカーの体力が危ない。
     数少ない手段がさらに減っていく。俺に思いつく手段は残り一つだけ。
    「あいつ」と直接勝負する。
     話をして解決するなんて期待もしない。「あいつ」には、バックパッカーを消そうとする確かな意思を感じるからだ。
     これだけは避けたかった。「あいつ」がポケモンだと分かったのはいいが、今だに「あいつ」には得体のしれない恐怖を感じている。何より「あいつ」は強い。俺の火球を受けて、平気でいられる奴は少ない。普通のポケモンバトルなら、強い相手はむしろ大歓迎だ。だが今からするのは、絶対に勝たなければいけないバトル。相手がどんなポケモンか、タイプすら分からない。さっきサイコキネシスを使っていたからエスパータイプかもしれないが、使う技のタイプと自分のタイプが対応しないのはよく知っている。俺がまさにいい例だ。運が良ければ、有利な相性かもしれないが、苦手なタイプかもしれない。もしかしたら、伝説と呼ばれるポケモン位強いのかもしれない。
     それ対して、向こうがどれくらい俺のことを知っているのかも、未知数だ。タイプは確実に分かっているだろう。もしかすると、それ以上にたくさん知っているのかもしれない。
     考えれば考えるほど情報が少ない。「あいつ」が怖い。もう二度と会いたくない。バトルなんてもっての他だ。こんなバトルをするのは、よほどの「考え無し」しかいない。

     それでも、しなければいけない。吐き気がするほど嫌だが、しなければバックパッカーは死ぬ。
     それは、許されない。俺の意思がそれを許さない。
     俺は城を出た。




     全身を真っ白に燃え上がらせたブーバーンが、出口を目指し歩いていく。
     黒く焼けた足跡だけが、その「意思」を照らし、ポツリポツリと続いていた。
















     ――きれいな朝。

     砂漠は珍しく晴れていた。近頃の、最悪の毎日を考えれば、似合わない朝だ。
     きちんと覚えてきたはずの地図が、間違っていたのが始まりだった。おかげで、一日でライモンに着くつもりが、一週間も砂漠で迷い続けることになった。さらに、遅れを取り戻そうと焦るあまり無理をし、あげく熱射病で死にかけた。
     慣れとは怖いものだ。一年も旅をしてきた自信が、地図を忘れるというミスを引き起こした。覚えてきたはずの道のりさえ、間違っていた。これでは、10歳の私が親に言われたことそのまんまだ。

     ――考え無し。

     あの時の父の言葉がよみがえる。危険の程を十分に理解していない、お前は考え無しだ、と父は言った。

     バックパッカーとして旅に出たのは、去年のことだ。理由は、大学にいる間にすこしでも外の経験を積んでおこう、と思ったのと、親への反発。10歳の時、女だからという理由でポケモントレーナーになることを親から許されず、大学に入るまで家の中で勉強ばかりさせられた。そのことについて、私自身の意思を無視した親にはもちろん、あの時自分の意思を大切にできなかった自分にも腹が立つ。だからこそ、大学では猛勉強した。今では、いつか自分の研究所を建てて、新米のトレーナー、特にかつての自分のような者を応援するのが目標だ。それには、外の経験が必ず必要になる。
     そう思って旅してきた結果が、これだ。

     別に砂漠を舐めていた訳ではない。きちんとルートを確認し、十分に計画を練ってきたつもりだった。それでも私は、「考え無し」なのか。

     私は、再び遺跡の中へと戻った。体に感じる気温が、一気に上がる。朝の砂漠が寒かったのもあるが、それ以上に、あのポケモンがいることが大きい。

     ――ブーバーン。

     イッシュには生息しないポケモンだ。普通の人ならまず知らないポケモンだろう。野生で見つかるなんて話は、イッシュどころか、他の地方でもなかなか聞かない。どういった経緯で、こんなところにいるのか。どうして全身ボロボロの状態で、遺跡の前に倒れていたのか。研究者として興味深くもあり、得体のしれない怖さも感じる。
     不思議なのは、このブーバーンだけではない。私が倒れる前日、なんとリゾートデザートにオーベムまで出てきた。オーベムはまだ発見されてから、40年も経っていないポケモンだ。その生態についてはまだまだ謎が多く、その生息地と言われるところでも発見された数は多くない。特に、最近指摘されだしたオーベムの「ブレインコントロール」の能力については、私も気になっていたところだ。
     ついでに言うと、私が今生きているのも不思議だ。熱射病で体力を完全に切らし、動けなくなっていたはずだった。それも近所の公園での話じゃない。砂漠の真ん中で、だ。生きたいと思うほうが、間違っている。実際、私が座り込んだその時、本気で死を覚悟した。
     なのに、今私は生きている。気が付いたらこの中にいた。横に投げ出された私のコップやタオル、水の少し残った水筒を見れば、誰かが私を看病してくれていたのは分かる。しかし、気が付いた時には誰もいなかった。
     まぁ、それも助かった以上、気にすることもないのだが。できれば、お礼が言いたかった。

     昨日はずっとこのブーバーンの看病をして過ごした。本当なら、すぐにも次の町へ向かいたい所なのだが、満身創痍のポケモンを見てはそうもいかない。それ位、このブーバーンは酷い状態だった。一体、何をしたらここまでボロボロになれるものなのか。昨日の朝見つけた時は、正直助からないかと思った。
     そう考えると、このブーバーンは運がいい。
     あそこまで傷を負えば、それも砂漠の中で、普通は死んでしまう。私が、たまたまここにいて、なおかつ携帯獣学を専攻する学生で、さらに臨床携帯獣学の講義を毎回真面目に受けていたからこそ、今あのブーバーンは生きている。

     ブーバーンの傷は、すでにほとんど癒えている。初め見た時は動くこともできず、城の中へ入れるのに苦労したが、今はもう大分元気になった。ところが何故か、私と常に距離を置いたまま、顔すら合わせようとしない。
     失礼なポケモンだ。
     ポケモンに礼儀を求めるなんておかしな話だとは思うが、このブーバーンは、命の恩人に対する態度を考えなおすべきだと思う。

    「ちょっと、あなた!」
     ブーバーンに声をかけた。

    「何むすっとしてるのよ。せっかく助かったのに、もう少し嬉しそうにできないの?」

    「…………」
     反応無し。相変わらず、座ったまま、あらぬほうを見つめている。

    「はぁ、まったく。何をしたのか知らないけど、とにかくこれからは、無茶しないこと。自分のすることについて、やる前によく考えることね。そうしないと、次は助からないかもよ。」
     ポケモンに説教なんてバカらしい、と思ったが、これが案外効いたようで、ブーバーンがさっとこちらを振り向いた。

     ――もしかして、怒ってる?

     ブーバーンの体が、強く燃え上がり、気温がさらに2・3度上がったようだ。表情もなぜだか、険しく見える。

     ――説教されて、逆ギレするなんて。

     呆れて何も言う気がなくなってしまった。


     ――人の気も知らないで。
     私は、最後に一度だけため息を吐き、次の町へ向かう準備を始めた。













     ――人の気も知らない。

     人間の使う慣用句で表すなら、ここまでピッタリな状況はないだろう。
     まさかあのバックパッカーに、「考え無し」扱いを受けるとは。不本意も不本意。酷い侮辱だ。
     俺が、どれだけ苦労してバックパッカーを助けたのか。
     分かってもらおうなんて、カケラも期待しないが、あそこまで言われる筋合いはない。

     自分が、バックパッカーを助けたことを、傘に着る気はないし、助けてもらったことは純粋に感謝している。
     ただ今は、久しぶりに楽しいバトルができた、その余韻に浸っていたかったのだ。

     「あいつ」との勝負は、熾烈を極めた。バトルをして恐らく分かったのは、「あいつ」がエスパータイプということ、「あいつ」もまた捨てられたポケモンということ。
     エスパータイプと言うのは、「サイコキネシス」を主体で攻撃してくるバトルスタイルと、俺の「マッハパンチ」が殆ど効かないことから、予測がつく。「あいつ」が捨てられたポケモンということは、そのレベルが野性クラスのそれを圧倒的に凌駕していることや、戦い方に今だ、人間といた時の名残を感じたからだ。
     同時に、その名残を振り払いたいという意思も伝わった。
     俺そっくりだった。

     結局バトルは俺が勝ち、「あいつ」は消えた。確信はないが、もうリゾートデザートにはいないだろう。根拠はない。戦った者の勘だ。
     バックパッカーもついさっき、ここを出た。案内するつもりだったが、道を知っている者に、案内はいらないだろう。
     これで、また俺は砂漠に一匹。元通りだ。
     俺は立ち上がり、大きく深呼吸をした。












     外に出た。砂漠は珍しく凪いでいた。
     俺は、自問を始めた。


     
    『俺はいつから、この砂漠にいるのか。
     ――ずいぶん昔からだ。正確な年月はもう忘れた。
     
     俺はどうして、この砂漠にいるのか。
     ――いるからいるのだ。理由なんて必要ない。
     
     俺はいつまで、この砂漠にいるのか。
     ――俺がこの砂漠を出るまでだ。追い出されることも、引き止められることもなく、純粋な俺の意思によってそれは決められる。


     俺は誰だ。
     ――俺は……。』

     ――俺は誰だ?

     ――ブーバーン?

     そう確かに俺はブーバーン。でも、それだけか。何か違う気がする。いや、そのことに違いはないのだが、正しくもない。
     気が付けば、その場に座り込み、当たり前のことを疑うのに必死になっていた。


     分かっていても、やめられない。自分の記憶をひたすら手繰っていく。何かを思い出せそうで、思い出せない。

     どれだけ必死に記憶を手繰っても、結局行き着くのは「あの日」のこと。「あの男」が負けた日のこと。
     俺のミスで「あの男」は負け、最後に俺のことを呼んだ。忘れもしない、あの顔。そして、俺は捨てられた。

     手繰っても、手繰っても、手繰っても、思いだすのは、あの顔。



     ――…………心配?

     違う、違う。あの顔は確かに、俺に失望してた。心配なんかしていなかった。



     ――…………労い?

     何故だ! 違う。俺は「あの男」を勝たせられなかった。俺への労いなんかあるはずがない。


     ――…………………はっ!!


     思い出した。「あの日」のこと。バトルの後の、あの表情。あの顔は、俺のことを心配して、励ましてくれていた。
     忘れていた。「あの男」がどれだけ、俺のことを心配してくれていたか。自分だって、冷静でいられないほど悔しかったはずなのに。俺の失敗が原因なのに。一切批難するような顔せず、自分のポケモン達が負けたことで傷ついていないかだけを心配していた。それを俺は誤解して、「あの男」から逃げ出した。捨てられたんじゃない。俺が、「あの男」を、裏切ってしまったのだ。


     そして、俺には名があった。「あの日」、最後に呼ばれた俺の名前。今までずっと忘れてきたが、今やっと思い出した。ブーバーンなんてどこかの学者が付けた名前じゃない。「あの男」がくれた、俺の、俺だけの、たった一つの名前。

     ――もう一度、その名で呼ばれたい。もう一度、「あの男」と旅がしたい。一緒にバトルがしたい。


     俺は今日、砂漠を出ることにした。純粋な、俺の「意思」によって。

    ----------------------------------------------------------
    またまた、やたら時間がかかってしまった。
    こんなブーバーンを書いてみたかっただけです。

    Bとは、Boobarn・Backpacker・o-Bem のBです。もともと、タイトルは別のものを考えていましたが、BWに掛けてみたくなり変更、これが失敗でないことを祈ってます。

    あと、これの時代設定は今のBWより約10年昔で、バックパッカーはアララギ博士のつもりです。念のため。


    【書いてもいいのよ】【批評してもいいのよ】【描いてくれたら嬉しいなぁ】


      [No.1032] 幻影序曲 投稿者:紀成   投稿日:2010/12/13(Mon) 20:27:01     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    昔、一組の幸せな家族がおりました。
    父親と母親、それに娘が一人。
    小さな家ながらも、慎ましく幸せに暮らしていました。

    ところが、ある日のことです。
    母親の方の両親がいきなり訪ねて来ました。母親の実家は古くから伝わる由緒正しい家柄で、彼女が結婚する時も大反対されていました。
    結局、結婚させてくれなければ縁を切ると言われ、渋々承諾したのですが。
    両親はまだ幼い娘を部屋に入れ、ここにいるようにと言いました。
    娘は四人の話の内容が分かりませんでした。まだ幼かったためなのか、それとも理解したくなかったのか。
    いずれにしろ、両親が娘を出しに来た時には、全てが決まっていたのです。
    悲しそうな顔で、両親は娘にこう言いました。

    「お前は、今日から御祖父様達の家で暮らすんだ」

    後で彼女自身が聞いたことですが、その彼女の母親には、姉がいました。叔母にあたる存在です。
    その叔母は妹より先に結婚したのですが、子供を産めない体でした。
    だから、妹の子である彼女を迎え入れようと、祖父母は考えたのです。
    まだ幼かった彼女には、事情など分かりません。考える暇もないまま、車に乗せられたのです。
    外で手を振る両親を見て、彼女は直感しました。

    「おとうさんと、おかあさんには、もうにどとあえないんだ」

    やがて、車は立派な門の前で止まりました。
    和風のとても大きな家です。
    驚く彼女に、祖父は言いました。
    「今日からここが、お前の家だ」

    家には沢山の人がいました。皆整った顔立ちをしています。お母さんに似ている人もいます。
    「この人達が、今日からお前の家族だよ」
    一人一人の顔を見つめていると、その中にこちらをじっと見ている女の人がいました。
    ピンク色の綺麗な着物を着て、撫子の簪をしています。
    女の人は、彼女を冷たい目で見ていました。怖い、と彼女は思いました。
    「この女の人が、お前のお母さんになるんだよ」

    おかあさん。
    ということは、答えは一つしかありません。
    この人が、叔母にあたる人なのです。

    自分の部屋に案内してもらう時、叔母さんは彼女とすれ違い様に言いました。
    とても小さい声だったので、普通の人には聞き取れなかったでしょう。
    それでも、彼女には聞こえました。はっきりと。
    「私に子供さえ産めれば、このカミヤの恥の妹の子を・・あんたを引き取らなくても済んだのに!」

    次の日から、厳しい毎日が始まりました。
    朝は五時に起きて、水を汲みに行きます。それが終わったら雑巾かけです。長い廊下は、まだ幼い彼女にとっては苦しい物でした。
    それが終わったら、召し使いに髪を梳かしてもらいます。その後で朝食。
    お母さんにもお父さんにも会えないばかりか、外へ出ることも許されませんでした。
    毎日長い廊下を雑巾がけしていましたから、運動不足にはなりませんでしたが。
    それだけなら耐えられたでしょう。ですが、彼女にとって一番苦しかったことは、両親に会えないことだけではありませんでした。
    何者かが、彼女を殺そうとしてくるのです。食事に薬品を入れたり、夜中に首を締めようとしたり。
    いつしか彼女は、信じる者は自分だけになっていきました。
    誰かと一緒にいることを嫌い、食事も個室で取ります。時折薬品が入っていたりしましたが、少しずつ口にしていきました。
    耐性を付けていったのです。


    小学生になった彼女は、ある時『ポケモン』の話を聞きました。
    彼らは不思議な生き物で、何十種類、タイプに分かれています。人間の友達はいらないと思っていた彼女ですが、ポケモンがいたら良いと思っていたのは事実でした。
    ですが、カミヤはポケモンを嫌っていました。
    彼女は反論したら今まで以上に危険な目に遭うと思い、何も口に出しませんでした。


    やがて、小学校に入って少しは楽になると思いましたが・・
    どうやら『カミヤ』の姓はこの辺りには絶大な影響力を持っているらしく、クラスメイトは彼女をお嬢様扱いして、陰口を叩いたりするのです。
    彼女は、だんだん他人を信じないだけでなく、嫌うようになっていきました。


    そして、ある日彼女の運命を大きく変える出来事が起きるのです。
    それが彼女にとって幸せなことなのかは分かりません。
    ですが、彼女はそれを受け入れました。

    『それ』を見ていた者は口を揃えてこう言うのです。

    「彼女は正に、亡霊の子だ」と。

    全ては、

    あの日から始まったのでした・・

    ーーーーーーー
    『ファントムプレリュード』


      [No.1031] こわかわいい 投稿者:イサリ   投稿日:2010/12/12(Sun) 23:10:06     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    感想を書くのは初めてなのでドキドキです。
    こんにちは、イサリと申します。よろしくお願いします。


    人間と他の種族との在り方について深く考えさせられるお話でした。

    もしも自分がポケモンの世界にいたとしたら、きっとシアン君寄りの考え方だろうな……と思ってしまいました。
    家族や友人には、例えポケモンとの仲を引き裂いてでも生きていてほしい。
    でもその一方で、本人の価値観も大切にしてあげたい。

    『これ』といった正解のない難しい問題ですよね…… 






    > 【書いてもいいのよ】
    > 【何してもいいのよ】


    ……やっちゃっていいのですか?(待て




      ◇◇◇





    【参考文献】


    13) 然る村にて歌い継がるる童歌




      行くも帰るも 惑いて見れば
      揺れる火の影 導きて

      暗い炎は 遠くの炎
      戻らぬ道を 照らします



      待てど暮らせど 来ぬ朝明けを
      焦がれ怖れて 歩きます

      蒼い炎は 生命の炎
      霞む山の端 偽の月



      闇に凪ぐ海 実らぬ稲の
      畦に咲く花 燃え果てつ

      淡い炎は 我が身の炎
      今宵ぞ家に 帰ります





    解説)農業を営む老婦人より伝え聞きて記す。
       子供が灯火について行かぬよう戒めたものか。




      ◇◇◇




    ヒトモシの設定が怖いながらも切なすぎたのでついやってしまいました……!
    童歌の中の花は、曼珠沙華とも呼ばれるあの花のイメージでした。
    書いた後でイッシュ地方には稲作より小麦だろうと気がついたのは秘密です←


    それでは失礼しましたっ。




    【やっちゃったのよ】
    【ヒトモシこわかわいいのよ】


      [No.1030] 幸薄荘娘の帰省 投稿者:ピッチ   投稿日:2010/12/12(Sun) 22:38:07     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    (お読みになる前に、こちらを前話としてお読みになることをお勧めいたします。
    http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?no=523&reno=3 ..... de=msgview  「幸薄荘トーホク支店」)







     帰省の季節である。
     結局あの後ストーブを焚いたことによりコートはお役御免となったが、しかし箪笥の中はカゲボウズ達の天国と化していて既にコートの帰る場所がない。しかもあのカゲボウズ達はわたしがそれで困っているのをどうも餌にしているらしいのだ。人を困らせて喜ぶとは小学生のようなやつらめ。でも進化前だから案外小学生くらいの年代なのかもしれない。可愛いかも。ジュペッタは呪いのエネルギーをきちんと蓄えているというから、イタズラを卒業した大人なのだろう。進化による精神的な成長が窺える、いい話の題材になりそうなものである。
     などとそんなことを話している場合でもない。もう一度言う。帰省の季節である。
     この季節、下宿というのは寂しくなるらしい。私立コトブキ大学で八年間を過ごした父が「正月三が日に一度帰らなかったことがあった。下宿が静かすぎて本当に寂しかった」と哀愁漂う顔で実体験を話していたのだから、時代の差はあれどそうであるのに違いない。作り話にしては実感がこもりすぎていた。その時代はもう30年ほど前なのだが。
     そしてわたしも下宿を一旦空けてシンオウの実家へと戻ることにしたのだが、困ったのはこの大量のカゲボウズ達の処遇である。
     置いておいたら帰ってきた時に部屋が恐ろしいことになっていてもおかしくないのだが、まさかこの寒空に放り出すわけにもいかない。帰ってきたら以前のように冷凍カゲボウズがわたしの部屋の窓外に鈴なりになっていたというのは、それはそれで恐ろしいことである。しかも最近カゲボウズの数が最初より増えたような気がしているので、恐らく鈴なりでは済まずに窓一面に張り付いているとかそんな状態になるのだろう。テレビでそんなシーンを見たことがある。あの場面で窓を埋め尽くしていたのは、窓に塗られたミノマダムのフェロモン成分に引き寄せられてきたガーメイルだったが。あれを見た後しばらくガーメイルを目にするのが怖かった。
     というかカゲボウズが増えているというのはおそらくわたしが彼らのエサとして恰好だということの確かな証拠なのであろう。そりゃあ最近寒さに負けて一限の数学の講義のボイコットを始めて単位が絶望的になっていたりするが。外国語を英語にしなかったせいで毎週のテストも絶望的だが。サンタさんに単位をお願いしても持ってきてくれませんでした。
     とにかく単位も含め今回の帰省で何かと言い訳を講じておかなければいけない訳である。実家にも成績表は送られているらしく、しかも前期のそれが無駄に良かったせいでやたらに期待をかけられてもいることだし。入学時のやる気というのは恐ろしいものである。それが続くかどうかはまた別の問題だが。

     そんなわたしの思い巡りを何ら気にかけず、目の前をカゲボウズが一匹通り過ぎる。その後を続いて、少し小さい個体が二、三匹その後に続く。先程のカゲボウズ小学生説に基づいて考えれば、小学生のお兄ちゃんに幼稚園児がついていっているような感じなのかもしれない。やだ可愛い。
     しかし探すべき個体は彼ではない。いるのだ。このカゲボウズ達の中に、この部屋の命令系統の頂点に立つ首領(と書いてドンと読め)が。
     彼に交渉すれば、帰省の間この部屋を荒らさないという契約を結ぶことだって何とかなるに違いない。
     善は急げと部屋を見回してみる。カゲボウズはどれもこれも同じように見えるが意外と個性があり、部屋の中の物干し竿にぶら下がって動かないままのものぐさ屋から常に部屋の中を行き来している体力自慢、机の棚の中が気に入っているものや空っぽのゴミ箱に収まるのが好きなもの、果てはわたしが積んだままの本を勝手に読破しているものまでいる。そんな中で探している首領は、やはり他のカゲボウズ達の振る舞いを諫めている場面の多い奴だった。
     そんな場面を部屋の中に探してみれば、案の定見つかった。わたしの買い置きのお菓子を勝手に食べているものに、何やらいかめしげな顔で注意をしている。いいぞもっとやれ。ところでその顔は自分も欲しいからなのか。しかし恨みやねたみを食べるカゲボウズがそれこそねたんでいる様は、一種珍しいものでもある。
     そちらに近づいていけば、食いしん坊の方はさっさと逃げていった。首領がこちらを見上げて、ふよふよと身体をはためかせて目線を合わせてくる。何か言いたいことでもあるのか、と言いたげに。カゲボウズはエスパータイプではないはずだが、読心だとやるなこのカゲボウズ。
     まあそんな冗談は置いておいて、きっとこうしたこともリーダーとして必要な資質のひとつなのだろう。人間だろうとカゲボウズだろうと、上に立つものが求められるのは同じことなのだ。きっと。

    「ねえ、わたし、28日から年明けの6日までこの部屋を空けようと思うんだけど」

     言うと、目の前の首領は少しだけ驚いた顔をした。突然のことだったし、驚かれるのはまあ無理もない。それでも首領はまだ何も言わないまま、無言で先を促す。

    「だから、わたしが居ない間部屋がめちゃくちゃにならないように、部屋のみんなに一言言っておいてほしいの。いつも注意してくれてるのあなたでしょ?」

     首領が、任せろ、とばかりに胸を張る。自信に満ちあふれたその顔はとても信用できそうな感じだ。何しろ彼にはいつもの実績があるのだから。

    「それじゃ、よろしく」

     契約成立。
     これで大手を振って実家に帰れる。










    「ただいまー!」
    「おかえり、トーホクと比べて寒かったでしょう?」
    「ホントホント、だってあそこって12月でも雨が降るんだよ信じられない」

     キッサキシティ、実家。その名の通り身を切るような寒さがしみる。これこそ冬である。トーホクの外気はたまに生ぬるく感じる辺り、わたしもまだまだシンオウ人の、いやキッサキ人の気概を失ってはいないと思う。
     慌ただしく大掃除にあたる手を止めて、母は荷物運びを手伝ってくれた。その髪には大分白髪が増えたような気がする。老いた母の軽さで泣けて、背負ったまま三歩も歩けなかったという句を詠んだのは確か通っている大学の輩出した偉人だったろうか。母を背負うなど夢にも思えないほど力のないわたしだが、だからこそ背負えるようになってしまっただけで泣けてしまうだろう。その気持ちが、とても素直に解せた。

    「ここが極端すぎるだけだよ、半年以上雪が降っているなんて。カントーやジョウトはもっと暖かくて雪もそんなに降らないのに」
    「だってわたしここしか知らないもの、ここが基準だもん」
    「大学にいるうちにあちこち行ってみたら?社会に出たらそういう機会めったにないよ」
    「お金ちょうだい」
    「バイトでもして自分で稼ぎなさいっ」

     短く響く笑い声は、時間が経つにつれてきっと聞く機会も少なくなるのだろう。去年は毎日聞けていたこの声も、今や一年に聞けるのは夏休みと正月の二回だけだ。そしてこれからは、きっともっと少なくなる。

    「……ああ、そうそう。掃除のついでにちょっと模様替えでもしようと思ってね」

     少し唐突に話を切り替える母。この辺りは親子共通らしく、わたしが大学の友人と話していても「話の切り替えが突然すぎる」とか「切り替えたはずの話を唐突に思い出してきたりする」と言われる。容姿だけでなく性格も遺伝するものらしいと妙に納得した覚えがあった。
     軽い相槌を打てば、母は楽しげに話を進める。

    「この前、綺麗なカーテンを見つけてつい買っちゃったんだ。紫色にピンクの縁取りがついてるの。赤いきらきらした飾りなんかも付いててね」
    「うちの部屋に合わせるにはちょっと派手すぎない?」
    「いいのいいの。今洗って干してるから、見てみてよ」

     言われるまま二階に上がる。キッサキのもの干し場は基本的に屋内であり、屋外に干せるのは短い、一ヶ月ほどの夏の間だけだ。だから外干しなどわたしもほとんどしたことがなく、その結果うっかり雨に降られたり洗濯物が凍りかけたりしたのは一度や二度ではない。恥ずかしいことに。
     そうして二階の扉を開けて、目に入った「紫でピンクの縁取りがあるカーテン」を見て、軽くどころでなく絶句した。
     カーテンは普通、真っ直ぐな長方形の布であって、それ以外についている部位と言えばフックをかける部分くらいのものだろう。これはカーテンにしては無駄な部位がつきすぎていないか。その長方形の布をきゅっとギャザーのようにまとめる、赤色の石の複数ついた辺りだとか、その上に鎮座したギザギザの口のある顔だとか、さらにその上の魔女の三角帽みたいな部分だとか。何よりカーテンというのはこんな感じでニヤニヤ笑ったりなどしない。
     部屋の入り口に立ったままのわたしに、後ろから母が声をかける。

    「あらどうしたの、カーテンが綺麗でぴっくりしちゃった?」
    「びっくりってレベルじゃないよ!! どっちかというと心配になるよ! わたしが居ない間に何があったの!? もしかしてこれ噂の若年性アルツハイマー!?」
    「何言ってるの失礼な、これでも健康診断はコレステロール以外ひっかかってないんだから」
    「言いたくもなるよ!! カーテンって言ってたアレ、どう見たってムウマージでしょ!?」
    「カーテンだよ、ムウマージ型とは書いてあったけど流石に本物な訳ないじゃない」
    「いや本物でしょ!? アレどう見ても本物でしょ!?」

     問答していてもらちがあかない。もう一度カーテンもといムウマージの方を振り向けば、奴は口を閉じて大人しくぶら下がっていた。擬態にしては無茶すぎないか。
     部屋を見回してみると、何か黒いものがベッドの枕元に増えていた。黒いぬいぐるみのようなそれが抱えた金色のマスクには白い美顔マスクが張り付いている。マスクの上にマスクとは大分ホラーだ。

    「……これは?」
    「新型の美顔マスク置きなんだって、ちゃんと剥がしたら使えるのよ」
    「いやデスマスの仮面美顔しても意味ないでしょ! これどうなってんの!?」

     仮面から美顔マスクを引っぺがすと、その下からやたらときらめく黄金マスクが姿を現す。図鑑のものより綺麗なのは言うまでもない。当のデスマスは「羨ましいでしょホホッ」みたいな表情をしてこちらを見上げている。こいつ♀か。そうに違いない。

    「……どうしたのこんなの」
    「最近できたゴーストタイプのポケモングッズの専門店があって。ゴーストポケモン用のポケモンフーズとかを売ってるのかと思ったら、こういう可愛いインテリアも売ってるって聞いてね。行ってよかった」

     洗脳されてる。母さん、多分洗脳されてるよ。何か新興宗教みたいなものなんじゃないのかなその店。ゴーストポケモンってオカルトぶりからそういうことに使われる例がたまにあるって聞いた気がするんだ。

    「他にもいろいろ買ったのよ、気になるなら見てきたら?」

     他にもあるのか。
     もはや突っ込む気にもならない。しかし見ないことには心配すぎる。主に母さんの頭の具合が。







    「…………なァんじゃこりゃ―――――ッ!!」

     家の中をひとしきり見て回った後。
     気付けば一部屋に一匹は「グッズ」扱いされたゴーストポケモン達が居たのだった。先程のカーテンムウマージと美顔デスマスに始まり、玄関にはさっきまで居なかったはずのシャンデラが逆さ吊りになってうちの玄関をやたら陰気に紫に照らし上げていたし、仏壇にはヒトモシが二匹仲良く座っていた。食べたらしいお供えのお歳暮返せ。
     キッチンではサマヨールがブラックホールを出現させて生ゴミを片っ端から飲み込んでいたし、わたしの使っていた部屋には何故か「貯金箱」と称してゴルーグが鎮座していた。どれだけ入れればいっぱいになるのか気が遠くなる大きさであった。
     この家の惨状を見れば、絶叫の一つも上げたくなるというものである。

    「うるせーぞ姉ちゃん、音聞こえねーじゃん。けらけら動画の邪魔すんなよなー」
    「お前は少しパソコンから離れろ!」

     弟ついでに、弟がネットゲームの景品で得たというポリゴンが顔を出すパソコンにもついでに怒鳴っておく。八つ当たりって言うなその通りだ。すまん弟よ。こうでもしないと姉ちゃんはやっていられない。
     しかしポリゴンは顔を引っ込めない。それどころか――

    「……あっ、やめろX13号! それすっげー電気食うんだぞっ!」

     ポリゴンの口元らしき尖りに収束した光が一直線にわたしを打ち抜く。シグナルビーム。効果は抜群でもないが、ポケモンの技を人間が受ければどうなるかなどわかりきったことである。
     倒れたわたしは薄れ行く意識の中で思った。弟よ、お前のネーミングセンスはなんとかならないのかと。











    「……はっ」

     布団の中だということを把握するのにしばらくかかった。冷や汗で濡れた寝間着が気持ち悪い。それ以上に、布団に纏わり付きまくっているカゲボウズ達は気味が悪い。ここは悪夢の続きか。もはや何かカゲボウズにくるまって寝ている気分だ。悪夢見そう。もう見たのか。
     カゲボウズ達はけらけらと笑っている。そういや出てきたなあ、けらけら動画。
     しかしそれも一瞬で吹っ飛んだ。悪夢の原因がよくわかって。

    「お前らのせいか――――――ッ!!」











     追伸。
     どうやらわたしはとんでもない時間に起きていたらしく、朝の早い隣人からすら件の絶叫に際して苦情が来た。



    ――――
    お題:自由題(もしくは、カゲボウズ。洗濯されてません。)


    ゴースト達が好きすぎてやった。あまり反省していない。
    トーホク幸薄荘娘の帰省。今回の影子さん(仮)はアグレッシブですね。書いている私ですらテンションと一人語りについていけなくなりかけました。
    だいたい私小説。どこからどこまでが実話かはご想像にお任せ致します。
    一つだけ明かしておくと、弟の「X13」は実在します。リザ―ドンですが。

    【描いてもいいのよ】
    【好きにしていいのよ】
    【本当はちゃんとカゲボウズ洗濯する予定だったのよ】


      [No.1029] Re: 白黒円舞曲 投稿者:スズメ   投稿日:2010/12/11(Sat) 21:20:38     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    Re: 白黒円舞曲 (画像サイズ: 487×449 74kB)

    投稿してみました。


      [No.1028] 晩秋の案内者 投稿者:   《URL》   投稿日:2010/12/11(Sat) 20:12:13     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5




     男がいた。
     男は晩秋の、枯葉も土に消える、茶色の濃淡ばかり続く道を歩いていた。

     その目の前を、紫炎の蝋燭が先導するように歩んでいた。


     † short story

     † 晩秋の案内者


     男は老けて見えた。
     細かい皺が畳まれた口元に、かつての力強さはない。
     黒い髪の中には白髪が交じり、男の髪を灰色に見せていた。
     男の腰には古びたモンスターボールベルト。
     男はリュックも背負わず、身ひとつで眠りゆく森の中を歩いていた。

     男には何もなかった。
     二親を随分前に亡くし、伴侶もいなかった。
     帰る家もなく、あちこちを転々とするだけ。
     親しい、と言える程の友人もいない。
     ただ、あちこちを旅して回るだけ。

     それでも、そんな生活が楽しかったのは、ポケモンがいたからだ。
     男には、生涯の友と言える、六匹のポケモンがいた。


     男は、六匹目のポケモンを弔ってきたところだった。
     タワーオブヘブン。
     天国に最も近いと言われる白色の塔に、男は最後のポケモンの亡骸を収め、そして、

     この森に入り込んだ。

     冬に近い秋の森は、男を拒むでもなく、歓迎するでもなく、ただそこに存在していた。
     地元の人々も入らない、虚ろな表情をする森に、男は引き寄せられるように、ふらふらと入り込んだ。

     茶色の、変わらぬ景色ばかり続く森は、少し深く分け入れば、もう自分がどこにいるか分からない。
     地元民さえ入らぬ訳がそこにあるのだ、と思いながら歩く男の目の前に、一匹のポケモンが姿を現した。

     蝋で出来た体に、ひとつ灯る紫苑の妖し火。

     ヒトモシ、と男が呟くと、その声に反応したかしないか、霊蝋はくるりと回って男を誘うように森の奥へ歩き始めた。
     男がその場に立ち止まっていると、振り返って、早く来いとばかり、小さな手を振り回した。

     男はふっと緩んだ口元に笑みを浮かべ、その後に付いて行った。
     ヒトモシ、火に呪を宿すゴーストポケモン。
     その灯火につられ、ヒトモシの道案内を受けた旅人は、いずれその命を吸い尽くされ、死に至るという。

     男は、分かっていてヒトモシの後を追った。
     どうせ何も持たぬ命、最期にこの小さなヒトモシにくれてやっても構うまいと思ったのだ。

     枯れ葉が混じる土の道、その先に揺らめく炎に、男はかつての友の面影を重ねた。


     男は、遠くカントーの地で生を受けた。
     その地の習いに従い、男はある一定の年齢になると、同郷の友人たちと共に、ポケモンを授かって旅に出た。

     困難な旅だった。
     まだ旅のいろはも諳んじ得ない最初の内は、余計に。
     しかし辛くはなかった。
     長い道中で、森で、山で、川で、何度相棒の名を呼んだことだろう。
     尾先に炎を灯した相棒は、彼が名を呼ぶ度に、嬉しそうに振り返り、時には男に駆け寄って抱きついた。

     その蜜月も終わり、相棒が一度目の進化を遂げ、彼が二匹目の仲間と出会った時、男はある壁にぶつかった。
     強さ、という壁。
     ある時はジムリーダー、ある時は同年代のライバルトレーナーという形で、その壁は事ある毎に男の前に立ちはだかってきた。

     その度に、男は知恵と仲間の力といくらかの偶然で、その壁を乗り切ってきた。
     その過程で、新たな仲間も出来た。
     六匹の仲間と八つのバッジを揃えた時、彼はトレーナーたちの祝宴の場である、ポケモンリーグに挑んだ。
     結果は惨敗だった。
     男は更なる高みを目指し、リーグ大会が開催される各地方を巡った。
     幾度も入賞者に名を連ね、たった一度だけだが、優勝もした。
     男はポケモンたちと何度も泣き、笑い、ずっと同じ時を過ごしてきた。

     ずっと同じ時を。


     気が付くと、ヒトモシが男を咎めるような目で見ていた。
     ごめん、と笑い、男は止まっていた足を動かす。
     ヒトモシはその様子を見て、満足気に頷き、再び歩み始めた。
     男は、思わずまた歩みを止めそうになって、けれど、歩き続けた。
     相変わらず茶色一色の景色の中に、鮮やかな、明るく懐かしい記憶が呼び覚まされたのだ。

     あの仕草は、男の二番目の仲間、はじめて自分の手でゲットした、あのポケモンに似ていた。

     そのポケモンは小さななりで、しかしその中に、大きな心と根性を秘めていた。
     彼はいつも自分より大きな相手に立ち向かって行き、強力な顎と前歯を使った一撃で、強固な殻も、鋼の装甲も、等しく削った。
     彼の前歯に、幾度世話になっただろう。
     彼は幾度と無くバトルの突破口を示し、道を示した。それは、男との旅路にも変わりなく。

     せっかちで、負けず嫌いで、誰よりも強さを求める事を是としながら、彼は彼より遅い男の歩みを、足を止めて待ってくれていた。
     男が追い付くと、嬉しそうに頷きながら、また歩き出すのだ。

     彼と同じ歩調で歩めていたら、あるいは、もっと高みへ昇れただろうか。

     最初に逝ったのは、彼だった。
     元より、長命な種族ではなかった。人より早く逝く者が多い事も、男は聞いて知っていた。
     それでも、心構えをしていても、別れは辛いものだった。
     最期の数日を、彼と共に故郷の草むらの近くで過ごした。
     彼が満足のいく最期を過ごせたかどうか、男は今もって自信がなかった。

     彼が逝った。
     と同時に、男は旅の道標も失った。

     彼を失った年、ポケモンリーグに出場した男の成績は惨憺たるものだった。
     かつての栄華はどこへ消えたのか。
     彼は敗北に敗北を重ね、いつしか日の当たる舞台から退場していった。

     それでもポケモンリーグに出場している間は幸せだった。
     戦いの中、ポケモンたちとひとつに合わさる呼吸。下層でも、リーグ参加者の中に自分の名が記される実在感。

     本当の艱難辛苦は、彼が二度目にポケモンを失った時――手持ちポケモン五匹以上という、リーグ出場の最低条件を満たせなくなった、その時に訪れた。


     ――なあ、ヒトモシ。
     男は前を歩くヒトモシに話し掛けた。
     いや、実際には声になっていなかったかもしれない。
     男は心の中で、男自身にその言葉を投げ掛けたのかもしれない。
     ――笑えるだろう。情けないだろう。俺は、戦えなくなって、はじめて、俺に何も無い事に気付いたんだ。


     ――俺には、何も無い。

     男には戦う事以外、何も無かった。
     今まで、戦う事を目標に、次の戦いに備えて強くなる事を目標に生きてきた。

     戦う事を除けば、男には何も無かった。
     家族も、友人も、帰る家も、何も。
     戦い、その高みに昇る事を目標に生きてきた男に、戦う事以外、生きる手立ても無かった。
     しかし男はチャンピオンでも、四天王でもなかった。ジムリーダーでもなかった。
     男は自分が何者でも無い事を知った。

     男は荒れた。
     今まで苦楽を共にしてきたポケモンたちに当たり、時には酷い言葉も投げ掛けた。
     男は嘆き悲しんだ。
     短くて半日、長くて一週間、男はひたすら嘆き悲しんで、泊まり込んだ宿の一室から出ようともしなかった。

     男が変わったのは、冷たい風の吹く朝、希求するように空を見上げる相棒の姿を見たからだった。
     姿が変わり、空を泳ぐ羽を手に入れた相棒は、何よりも空を飛ぶ事を喜びとしていた。

     ――そうだ、俺には何も無いが、ポケモンたちがいる。

     男はそっと相棒の肩に手をかけ、その背に乗った。
     相棒と共に高い空に飛び立ち、それから、旅の為の旅を始めたのだった。


     それからの年月は早かった。
     各地を飛び回りながら、その土地の景色を見、そしてまた飛び立つ事の繰り返し。
     飽きる事はなく、ただ、男が優勝者として名を輝かせる年が、ひとつ、またひとつと遠くなる事に年月の流れを感じた。
     もう一度、あの華やかな舞台に立つ事を夢見ながら、男はもう、新たにポケモンを育てる気力を無くしていた。
     最初に経験した彼との別れが、そうさせたのかもしれない。
     行きずりのバトルに会っても、もう、いつかのように、強さを追い求める事は無くなっていた。
     穏やかに、しかし早く、年月は流れていった。
     一匹、また一匹と、ポケモンたちは男の手の届かぬ所へ旅立って行った。
     最後に残ったポケモンとの別れが近い事を悟った彼は、流れ着いたイッシュ地方の、鎮魂の塔に程近い、フキヨセシティに仮の住まいを定めた。


     フキヨセは良い風が吹く町だった。
     空を飛ぶのが好きな相棒は、体調が許す限り、風に身を乗せて空を飛んだ。
     相棒は男をその背に乗せたがったが、相棒の身体を案じた男はそれを断り続けた。
     相棒が空を飛ぶ日が、一日置き、二日置きになると、男は相棒が好きな秋色の花を集めながら、郷里の風の匂いを花の中に探した。
     いつか来る定めの時に恐怖と警戒を抱きながら、相棒が空を飛ぶ日が、二日置き、一日置きと日を増していくと、男は束の間花を集める手を休め、相棒と過ごす時間を選ぶのだった。


     相棒の墓に、色褪せた秋色の花を手向けた時、男は何を思ったか。
     天に一番近いタワーオブヘブンの最上階に相棒を収め、全てを無くした男は、地元の人さえ入らない、塔近くの森に入り込んだ。


     その森には、ヒトモシがいるという。
     森に迷い込んだ人を、迷わせ、惑わし、その命を吸い込んで己の灯火とするという。


     男は、ヒトモシが揺らす紫炎を見つめていた。
     日を失くし、黒を強めていく景色の中で、その紫は明るく、優しく、懐かしささえ感じさせた。


     あのヒトモシは、男の二匹目のポケモンに似ている。
     ヒトモシはあの彼のように、男に先立って、男を待って、歩いていた。
     あのヒトモシは、男の最初の相棒に似ている。
     ヒトモシのあの火は、相棒が揺らしていたあの火と同じ高さにあるではないか。

     男は目を閉じた。
     目を閉じていても、自分が秋の最後の夜の、茶色の道の中を歩いている事が分かる。
     それは、ヒトモシの灯火が、男の瞼の裏を照らすからだ。
     いつしか、ヒトモシの紫炎は、優しい相棒の橙色の炎に変わり、男は白に変わっていく景色の中、相棒の尻尾の火を追いかけていた。



     男は目を開いた。
     森は消え、視界は開け、草原の中に白い塔がひとつ、藍色の天を指して建っていた。
     藍の天からは細かな白の結晶が現れ、それに触れた男の肌に、まだ柔い冷たさを記して溶け消えた。

     鐘が鳴る。
     相棒が眠る塔の上方で、誰かが蒼色のレクイエムを奏でていた。
     男は小さな白と紫炎の姿を探す。
     男の前に、あのヒトモシはいなかった。


     男は鐘の音と、反対の方角へ進む。
     フキヨセに着いた男は、仮住まいをさらうと、町の西方、田畑の中を通る長い滑走路の近傍にある、巨大な建築物へ向かう。
     扉を開き、一番最初に目に入った、空色の制服を着こなす青年に歩み寄り、口を開く。

     ――今からでも、空を目指す事は出来ますか。





    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【ヒトモシかわいいのよ】


      [No.1027] 雪の降る夜  【御題・足跡】 投稿者:クーウィ   投稿日:2010/12/11(Sat) 16:30:12     95clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    注意:このお話にはポケモンを食べてしまったり、出血を伴ったりと言った表現が使われています。
       それらに抵抗を覚えられる方は、予めこの作品をご覧になられる事は、御遠慮ください……







    『ポケモンが好きか?』

    ――そう聞かれた事が、少年には何度もあった。
    幼い頃から、同世代にはほぼ確実に。  顔も知らない年長者や、大きく歳の離れた大人達からも、折に触れて聞かれる事があった。

    そして勿論、彼の答えは決まっていた。

    「好きだ」、と。

    何時も本心からそう答えていたし、その気持ちに偽りが伴った事など、一度たりともありはしない。


    ――しかし、それを聞いた相手の方は、誰でも必ず、こう切り返すのだ。

    『ならば何故お前は、ポケモンを殺すのか……?』と――
     
     
     


    赤く燃える空の下、雪雲が去ったばかりの山道に、一組の足跡が続いていた。

    薄赤く焼け始めた東の空に向け、点々と続く雪上の痕跡。
    その先に位置する者の正体を、十分な経験を積んだ狩人などは、ただそれだけの痕跡で、的確に言い当てる事が出来る。
    ――種族、凡その年齢、体の重さなどは勿論の事。 性別や食事の有無、その時の対象の心理状態に至るまで、彼らがそこから知り得る内容は、素人からすれば信じられないほどに、多彩なものである。

    この世の中には、足跡から感情を読み取る『足跡博士』なる人物の存在さえ、確認されていると言う。
    それほどまでに、熟練者から見た足跡と言う奴は、様々な情報に富んでいるものなのだ。


    ……しかし、例えどれだけ多くの事が読み取れたとしても――そこに印されているものだけでは窺い知れないものだって、当然ある。
    降り積もる雪に覆い隠され無くとも、読み取る事の叶わないもの。  ……その意義を悟った時――その時人は一体、何を思うのだろうか――



    雪の降る夜

     
     
    奥山に向けて続く足跡の先端には、一人の少年がいた。  

    まだ幼さの残る顔付きとは裏腹に、それには到底不釣合いな、年不相応とも言うべき鋭い光を放つ、二つの目。
    一目で獣の皮で作られたとわかる防寒具を身に纏い、腰の絞め帯に鞘入りの山刀を差している彼は、雪に埋もれないよう体重の掛け方を工夫しつつ、皮の長靴を履いた足をしっかりと踏み出しては、手に持ったコースキ(雪シャベル)を杖代わりに使いながら、足早に歩を進めていく。

    そして、時折立ち止まって後ろを振り返っては、後ろに付いて来ている相手が立ち往生していないかどうかを確認し、合わせて励ましの声を掛けていた。

    しかし、それを受け取る当のポケモンの方は、そんな彼には全く反応を示さないまま、ただ黙々と短い足を動かして、先に続いている少年の足跡を避けるようにしながら、淡々と近付いて来るのみである。
    少年の声かけを無視するミミロルのその足跡は、片足分が奇妙な楕円形をしており、一見するとどんなポケモンの足跡なのか、全く分からない。 
    ……ミミロルの短い片足は、足首の辺りから途切れたように失われており、代わりに切り株のような形状の金属棒が、その代用を務めていた。

    反応の芳しくないミミロルの様子を確認し終えると、少年は再び背中を向けて、前方に向け歩き出した。
    空模様をチラリと見やり、天候変化の兆候が現れていない事を確かめつつ、昨夜に降り積もった雪に覆われた斜面の道を、ミミロルの小さな足でも進めそうな進路取りで、じわじわと進む。

    彼は祖父から、今年の冬が厳しいものになるであろう事を、予め聞かされていた。
    「今年は森の獣達が騒がしいから、雪が多く降るだろう」――  そう口にした祖父の見立てが外れた事は、彼の経験上、まだ一度も無い。

    向かっている場所は、この辺りでも最も雪が浅くなる、山の南側手に位置した、林の中である。
    彼らが今住んでいる住居からは遠かったが、付いて来ているミミロルの背負っているハンディキャップの事も考え、彼はワザワザ歩きやすいように遠回りしつつ、そこへ向かっている。

    今後ろに付いて来ているうさぎポケモンを、住み慣れた故郷に送り返すために――




    彼の家は、小さな地方の田舎町である双葉の、そのまた外れに位置していた。
    しかもその上、彼がまだ幼かった頃は、両親は共働きであった為、少年は物心ついた時から、更にずっと山際の、心事湖の向かい側にある祖父母の家で育てられた。
    ――『距離があった』と言う理由により、保育園にも幼稚園にも行かなかった彼は、代わりに猟師である祖父の元で、人生の土台となるべき幼年時代を過ごす事となったのだ。

    他の同年代の子供達が、大勢で集まって遊戯や楽器の演奏などを楽しんでいた頃、彼は祖父から狩りの方法や山野での生活術を学んだり、囲炉裏端で祖母から聞かされる、昔話に親しんだりしていた。

    ユキノオーに山刀一本で腕比べを挑む英雄の話。 
    陸鮫一族と水竜一族との寓話。 
    人に嫁いだアブソルやハクリューの伝説。 
    身を以って戦を鎮め、風になった巫の物語など――祖母が物語ってくれる言い伝えの数々は、未だ幼い彼の手を引いて奥山に分け入る祖父の教えと同じぐらい、彼に大きな影響を及ぼした。  

    そして、そんな中――同時に彼は、腕の良い猟師である祖父によって、山野を駆ける獣達―ポケモン達を捕らえる術を、極自然な形で、身に付けさせられて行ったのだ。
     



    黙々と付いてきていたミミロルが、不意に尻餅を付いた。
    健全な方の短い足を窪みに取られ、切り株のような義足では上手くバランスが取り切れないままに、よろけてひっくり返ったのである。

    気がついた少年は素早く振り返ると、これも短い両手を雪に突っ込み、立ち上がろうとしているうさぎポケモンに、「大丈夫か」と声をかける。
    ――しかし、彼は言葉の調子とは裏腹に、ミミロルにゆっくりと歩み寄って行くのみで、駆け寄って手を差し伸べるような雰囲気はない。

    実際ミミロルの方も、彼が近寄ってくる前に短い四肢を踏ん張って、器用に雪の中から足を引き抜き、立ち上がった。  ……微かに引き結ばれた口元が、本来温和な筈のミミロルに似合わぬ頑なさで、近寄ってきた相手の助けと気遣いを、無言の内に拒んでいる。
    そんな相手に対し、少年はただ一言だけ、「無理はするなよ?」、といたわりの言葉をかけてから、再び前を向いて、ゆっくりと歩き出す。
    むっつりと押し黙ったうさぎポケモンの方も、そんな相手の背中を見つめつつ、依然相手の足跡を避けるようにしながらも、雪を掻いて進みだす。

    少年の足取りを避ける余り、嵌らずとも良い穴に嵌り込んでしまったにも拘らず、彼女は一切の妥協を拒み続けるかのように、前を行く相手から軸をずらして歩むのを、止めようとはしない。
    その為にペースが上がらず、行程は全く捗らないままであったが、少年の方はそんな事は一切気にせずに、背後のポケモンがしたいようにするのに任せておいた。

    それでも、別に構わなかった。
    ……彼女が自分を拒む事で、前に進む事が出来るのであれば。
     
     
     
     
    少年が初めて狩人として獲物を仕留めたのは、まだまだろくろく雪の山道も踏破できない、6歳の頃であった。

    祖父に教えられた待機場所で、息を殺して2時間粘った末。 
    風向きの関係もあってか、ふらふらと無警戒に茂みから歩み出てきた一匹のビッパを、引き始めて間もない、小さな半弓で射止めたのである。
    無論急所には当たらず、ビッパは慌てて逃げ出したが、伝統に則って濃く煮詰められ、松脂によって固定された数種の矢毒が、丸ねずみポケモンの自由を奪った。

    動けなくなったビッパに止めを刺す際に、まだ幼い少年の手が震えたのは確かである。
    しかし、逡巡して相手の苦痛を長引かせる事が、対象への最大の非礼であると教えられていた彼には、躊躇い続ける事は許されなかった。
    彼はビッパに不器用な手つきで引導を渡すと、続いて覚束無い足取りで準備を整え、相手の魂を送り返す祝詞を唱えた。

    内容の方は、彼自身ももう覚えてはいない。
    余りにもお粗末だったし、年齢的にも、言葉を選ぶなどと言う真似が、出来る訳は無かった。
    ……しかし、間違いなく心の底から思いを込めて語りかけた事だけは、今でもはっきり覚えている。
     
    その丸ねずみポケモンが、呼ばれてきた祖父によって解体され、その日の夕食の膳に据えられる事になった時、かの老人もまた万感の思いを込めて、鍋の中の客人に対し、謝礼の言葉を言上した。 
    夏毛であった故に毛皮は使い物にならなかったものの、今でも山刀の釣り帯として名残を止めているあのビッパについて、少年がはっきりと記憶しているのは、その二つであった。
     
     
    しかし――その忘れられない経験はまた、彼が周囲から孤立する決定的な要因にも、同時に発展する。

    その頃は既に、彼も小学生になっており、遅蒔きながらも周りの同世代と一緒になって、義務教育の洗礼を受けていた。
    長期休暇を終えた後、その間の体験談で持ちきりのクラスメート達が、普段は殆ど話しかける事も無い彼に対して質問した時から、少年は自らが周囲とは異なった価値観を抱いている事を、否応無しに思い知らされる。

    『ビッパ(ポケモン)を毒矢で射止めた  ……そしてあまつさえ、止めを刺してバラバラに解体し、鍋で煮込んで食べてしまった』――

    その様な行為を夢にも思い描いた事が無かった周囲の人間にとっては、彼が言葉少なに語ったその体験談は、カニバリズム(食人行為)の告白にすら、等しかったのであろう。 

    執拗な嫌がらせの末にワザとらしく絡んできた、町中育ちの体が大きいだけのガキ大将を、山歩きで鍛えられた腕っ節でなんらの問題もなく叩き伏せた所で、彼の周囲からの評価は、確実なものとなった。
    不気味な危険物として、同級生は意識して彼から距離を置き、複数の教員も、ある種の精神的な『発達障害児』として、職員会議で話題に上げる始末。
    少数の友人や、親身になってくれた一部の教師などと言った例外はあったが、基本的に少年は家族以外からは疎外され、様々な陰口や、偶に受け取る面と向かった不愉快な質問の中で、黙々と歳を重ねていった。


    ……しかし、それでも彼は、自分の意見や考え方を、揺るがせる事は無かった。
    少年は周囲からどう言われようとも、自らの考え方や行いを恥じる事無く、ただひたすらに、狩りの修練に勤しみ続ける。

    確かに彼には、生まれつき頑固な所があった。
    祖父の事も大好きであったし、何かと陰でひそひそとやる、周囲に対する反発もあった。
    ――しかし、ただ単にそれだけで意地を張っていたのかと言うと、断じてそんな訳ではなかった。
    彼は彼なりに思う所があったから、安易に周囲に靡いて自分の持っているものを手放す気には、到底なれなかったのである。




    やがて雪原を横切り続けていた彼らは、目指す南側の斜面に抜ける尾根の付近で、一本の倒木が、道を塞いでいるのに出くわした。
    少年の両手では2抱え半以上もある松の大木は、物言わぬままに雪を被って、狭い獣道を跨ぐ様に横たわっており、乗り越えるには少しばかり、難儀な代物であった。

    しかし、ボンヤリとしてもいられない。  
    ……既に、雪が積もりだしたこの季節――余りトロトロと時間を使っていると、忍び寄って来る夜の帳が下りる前に、家に帰り着く事が出来なくなってしまうだろう。

    そう考えた少年は、藪漕ぎで時間の取られる迂回を諦め、コースキを大木の側の雪の中に突き刺すと、それを足場にして、身軽に倒木の上によじ登った。
    次いで、後に続くミミロルに対し、声をかけると同時に体をそちらに乗り出して、片手を差し伸べる。

    ミミロルはそれでも、尚も直ぐには動こうとはしなかったが……やがて黙然と近付いて来ると、彼とは視線を合わせないようにしながら、背を伸ばしてその短い片腕を、少年の褐色に近い利き腕に、無造作に委ねた。
    力を込めて引っ張ってやると、ミミロルの方も残りの腕と短い足を凍りついた樹皮に押し当てて踏ん張り、なるだけ早く事が済むように、雪を掻き分け這い上がる。
    ――あくまでも心を開こうとはしないミミロルに対し、それでも少年は一切、嫌な顔はしなかった。

    ……彼には彼なりに、この目の前のポケモンに対し、負い目を感じる理由があった。  ――彼女の片足を切り落としたのは、他ならぬ彼自身だったのだから。

    それをボンヤリと反芻しつつ、少年はそっぽを向き続けて雪を払うミミロルの横顔を、陰鬱な思いで見守った。
    ――如何に彼女がそれを望んだのだとしても、厳冬を間近に控えるこの時期に、家族もいない独りきりのポケモンを送り出す事は、同じ北国育ちの彼にしてみれば、到底肯んじ得ない行為である。

    ……しかし、もうこのポケモンが次の春まで待とうとする気が無いのは、誰よりも彼自身が、十分過ぎる程に承知していた。
     



    現実として、例え周囲がどう言おうとも――少年は同世代の誰よりも、ポケモン達と近しかった。

    彼の行いを非であるとし、『可愛いポケモンの命』を声高に叫ぶクラスメート達は皆、野生のポケモンと最も近くまで歩み寄って、時には直接触れ合う事も出来る彼の行為を、真似する事は出来なかった。
    彼らは野生のポケモンに近寄る事を恐れるか、もしくは近寄ろうとした時に威嚇され、その場で竦んで足を止めるかのどちらかであって、言葉少なながらもゆっくりと近寄り、相手の警戒心を解きつつ対応出来る少年の姿を、不可思議なものでも見るように、目を丸くして見詰めるばかりであった。


    こんな事もあった。

    その日彼は、何時も通りに祖父母の家に向け、双葉北郊外の田舎道で、帰途についていた。
    道連れも居らず一人きりで、カバン代わりのボロリュックを背負い、時々空を横切る飛行ポケモン達を、横目で追いつつ歩いていく内――ふと少年は行く手の先に、一塊の人だかりが出来ているのに出くわした。
    ――徐々に近寄っていくに連れ、その人だかりの正体と、それを惹き付けている対象の姿が、はっきりと目に飛び込んで来る。

    そこでは、彼と同じぐらいの年齢の一人の少女が、片手にスプレー式の傷薬を持って、地上に降り立ったムクバードに向け、懸命に話しかけている最中であった。
    ムクバードは片翼を折り曲げており、どうやら飛ぶ事が出来ない模様で、鋭い鳴き声を上げながら全身の羽毛を膨らませ、目の前で自分に向けて声を掛けてくる少女を、盛んに威嚇している。
    ……ポケモンの周囲には、投げ与えられたと見られる幾つかのオレンの実が転がっていたが、必死になって身を竦めているムクバードには、それに手を付けるような余裕など、到底無いのだろう。

    様子を見ながら近付いていった彼が、漸くそこまで行き着いた時――遂に少女が意を決したように前に歩み出て、張り裂けるような鳴き声を上げ続けている椋鳥ポケモンに向け、ゆっくりと手を差し伸べた。
    しかし次の瞬間、伸びてくる手に合わせて身を引き、縮こまる一方だったムクバードの首が、突然バネ仕掛けの玩具か何かの様に前に向けて突き出され、差し出された少女の掌に、鋭い一撃を加える。

    周りに出来た3人ばかりの友人達の垣根からは悲鳴が漏れ、火傷したように手を引き、傷薬を落として傷口を押さえた少女の指の間からは、赤い雫が一つ二つと、乾いた未舗装の路上に滴り落ちた。
    少女は尚も、自分を傷つけた椋鳥ポケモンを何とか宥めようと、懸命に言葉をかけてはいるが――やはり、先程の反撃で足が竦んでしまったらしく、ムクバードの手前に転がっている傷薬に手を伸ばす事さえ、出来かねる様子だった。

    そこまで見た所で、少年はゆっくりと前に進み、怪我をした少女に歩み寄ると、無言で相手の前に出てから、口元を引き結んだままで、下がっているように目で合図をした。
    次いで、言葉も無く自分を見つめている相手から目を逸らすと、後ろに溜まっている他の連中にも、少し離れた所にある立ち木の辺りまで下がるように、声を掛ける。
    全員が下がったのを確認すると、彼は改めてムクバードに向き直り、先ずは目一杯に姿勢を低くしてから、相手の方に向け、ゆっくりと近寄って行った。

    それでもやはりムクバードは、当初は依然として甲高い声で鳴きながら、威嚇の構えを解こうとはしなかったが……それでも今度は、近寄ってくる相手に合わせて竦むような事は無く、やがて耳を突く鳴き声の程も、徐々にではあるが尻すぼみに衰えていき、彼が接近するのを止めたのを境に、ふっつりと途絶えた。
    既に、手が届くか届かないかの距離にまで近付いていた少年は、続いてその辺りに転がっていたオレンの木の実を二つ拾うと、片方を自分で齧りながら、ゆっくりとした動作でもう一つの方を掌の上に乗せて、ムクバードの方へと突き出してやる。
    ……無論椋鳥ポケモンの方も、直ぐには手を付けようとはしなかったものの――やがて彼がついと顔を背け、尚も明後日の方向を見つめながら待ってやると、遂にムクバードは、ここへ来て初めて自分から前に出てきて、彼の手に乗ったオレンの実を、静かに啄ばんで食べ始めた。

    余りの成り行きに、離れて見ていた少女ら4人が、呆気に取られて眺めている中……少年は木の実を食べ終わったムクバードに対して改めて向き直ると、ゆっくりとした動作で転がっていたスプレー式の傷薬を拾って、体力を取り戻した相手に向け、再びにじり寄って行く。
    ――そしてそのまま、落ち着きを取り戻して嘘の様に大人しくなった椋鳥ポケモンの手当てを完了すると、自分をじっと見つめている相手の頭を3本の指の先で掻いてやってから、そこで漸く立ち上がった。

    少年が立ち上がるのと同時に、傷の癒えたポケモンの方も翼をはためかせて空へと飛び上がり、手当てしてくれた相手の頭上を二度三度と旋回してから、近くの森に向けて消えていく。
    ムクバードの姿が見えなくなり、彼が背中から下ろしていたリュックを拾って、もう一度背負い直した時、離れて成り行きを見守っていた少女が、友人達の輪からゆっくりと抜け出して、彼に対して礼を言って来た。
    彼は適当に返事を返すと共に、同時に自らの不備を尋ねて来た相手に対して、椋鳥ポケモンがどうして彼女を受け入れようとしなかったのかを、簡単に説明してやった。

    ――ポケモンに限らず、鳥という生き物は全般的に、自分よりも高い位置に存在する者に対し、強い警戒心を抱くものである。  ……しかも、元より生き物と言うものは皆、自分よりも大きな体格の相手に、本能的な恐怖を感じるものだ。
    オマケにあのムクバードは、本来群れで行動するポケモンであるにも拘らず、たった一匹で孤立して、自分よりもずっと大きな人間に、周囲を囲まれていたのである。
    ……これでは、幾ら感情を込めて呼び掛けた所で、怯えきった椋鳥ポケモンの恐怖心を和らげる事など、出来よう筈も無い。

    それに、ただでさえ体力的に弱っている野生のポケモンにとって、明らかに自分より大きな相手にじっと見つめられる事は、大変な恐怖なのだ。
    獣達は皆、相手の挙動には非常に敏感である。  ……彼らは常に、相手の様子を良く窺っており、危急の際は自らに注意を向けられているだけでも、極端な程にそれを嫌がる。

    だから少年は、出来るだけ姿勢を低くしてムクバードに近付いた後、オレンの実を自分でも齧りつつ、別の奴を相手に差し出してから、ワザとに視線を外してやった。
    ……こうする事で、彼は自らが空腹では無く、獲物を必要とはしていない事を相手に向けて分からせつつ、臆病な椋鳥ポケモンが安心して木の実に手を付けられる様、敵意が無い事を直接的に、証明して見せたのだ。

    ――これらは全て、彼が実際に彼らポケモン達と直接触れ合いながら、肌で感じ取り、身に付けて来た知識に基づいたものである。
    一方でその頃の彼は、自分にとっては日常的とも言えるこの手の知識を、何故周囲の連中がこうも理解出来ていないのかと、何時も疑問に思ってもいた。

    周囲はやたらと彼の事を不思議がり、時には立派な大人のトレーナー達が、そのノウハウを訪ね掛けて来たりもしたが、彼に言わせれば、そんな事に一々驚かれる事自体が甚だ奇妙で、また不可解極まりない事であった。
    ……大体、彼自身ノウハウなどと言う物を語るにはまだ若過ぎたし、それを聞いて来る彼ら大人達の方が、自分なんかより遥かに詳しく、ポケモン達について学んでいるのだ。


    彼はただ、野生のポケモン達との間に『適正な距離』を置いて、付き合っているだけである。
    ――単純に、ポケモン達と諍いを起こさないよう気をつけながら接しているだけの事であって、自らに特別な才能や能力が備わっているとは、毛頭思っていない。

    祖母が話してくれる聖伝の英雄達の様に、野生のポケモンに認められるような飛び抜けた実力は持っておらず、伝承の中で活躍する巫達の様に、彼らと会話が出来る訳でも無い。
    ただ単に、普通に『隣人』として適正な距離と気配り、そして意思表示を欠かさないようにしながら、自分の持っている知識の範囲内で、最も適切と思われる振る舞いを、こなしているだけの話なのである。

    ……元々野に生きる獣達は、自らの負担を最小限に止めて置く為に、無意味な争いや騒動事は、起さない様にしているものだ。
    普段は食う・食われるの関係にあるムクホークとポッポでも、ムクホークが満腹の状態であるならば同じ木に止まって羽を休めるし、小さなポッポが同じ岩の上で好物の虫を探して啄ばむ事だって、別に躊躇わない。
    ――例え相手が危険な捕食者だったり、主食としている小動物であったりしても、その必要が無ければ無闇に警戒したり騒ぎ立てたりしないのが自然界の常であり、掟である。

    少年は単に日頃から、それに則って自らの振る舞いの程を、彼らポケモン達のそれに、出来る限り合わせているだけなのである。
    ……寧ろ彼は、自らが極自然な形で身につけたその感覚を、周囲に暮らす誰もが全く理解しようともしていない事に、常々驚きを隠せなかった。


    町に暮らしていた人々の目には、山中で彼らと血を分け合って生きて来た自分とは、また違った風に、ポケモン達が見えている――彼は常々幼い頭で、そう思わざるを得なかった。
     



    雪に覆われた倒木の上から、行く手に広がる残りの行程を見渡しつつ――少年は、傍らで口をへの字に結んで、自らの足に括り付けられた金属製の義足の結び目を直しているミミロルとの出会いを、何時とは無しに思い出していた。
    ――今でこそ、こうして自ら義足の調整もこなし、彼が隣に位置を占めても、暴れだそうとはしなくなったものの……これまで過ごしてきた二年間の経緯は、決して平坦なものではなかった。
     
     
    彼らが初めて出会ったのは、少年が9歳の頃――丁度今時分、雪が降り始めた前後の出来事であった。

    その日、彼は自力で山に入れない時期に差し掛かる前に、もう一度猟場にしている辺りを一巡りしておこうと、今日の様に積もりかけた雪の獣道に足跡を残しながら、ゆっくりと山の南側にある林に向け、弓を背負って歩いていた。
    時刻はまだ早朝であり、照り返しによって目を眩ませない様に慎重に歩を進めていた彼は、やがて林の入り口辺りで、一匹のポケモンが倒れているのに出くわす。
    ……倒れ込んでいたのは、美しい毛並みを朝の日差しに輝かせている、立派な大人のミミロップであった。

    彼が音を立てないように弓を取り、しっかりつがえつつ近寄ってみると、倒れているミミロップは既に力尽きており、今しがた息を引き取ったばかりであるらしく、まだ体温が残っている状態であった。
    ――思わぬ収穫に、彼が喜んだのは言うまでも無い。

    早速この獲物を我が手にすべく、その場で近くの枯れ枝を雪の中から掘り出したり、自分の道具を引っ張り出して並べたりして、手早くも厳粛に、死者の魂を送り出す祝詞を上げた後――さてこそはと山刀の鞘を払って、物言わぬ骸に刃を入れた所で、それは起こった。
    冬に備える為の、新しい防寒具に使えるだろう上等の毛皮を確保できた事に、内心躍り上がらんばかりであった少年は、刃を滑らせ始めた獲物の下側から、突然くぐもった鳴き声が聞こえて来たのに、文字通り飛び上がらんばかりに驚いた。

    慌てて山刀を構え直し、恐る恐る冷たくなりつつあるポケモンの体を、反対側の手で押し転がして見た所――彼はそこに見たものに、思わず寸時の間固まって、同時に言葉を失ってしまった。

    そこには、片足をワイヤーで作られた輪によって締め上げられ、身動きの取れなくなってしまったまだ幼いミミロルが、小さな体を精一杯に縮めて横たわっており、恐怖と悲しみに縁取られた円らな瞳を、真っ直ぐ彼に向けて来ていた。
    ……血に濡れた刃を構えた狩人を、涙を溜めた目で見上げつつ、瘧の発作の様に震えているその小さな体には、彼によって流された母親の血が、赤黒い染みを形作っている。

    うさぎポケモンの置かれている有様を、ショックに打ちひしがれた頭で、何とか理解した時――少年はそこで漸く、手に持った山刀を取り落とすように雪の上に転がして、母親ミミロップの体を脇に押しのけ、ミミロルの脇にひざま付いた。
    怯えて暴れるミミロルの、強烈な両耳による一撃を警戒しつつ――鋼鉄の輪に噛み付かれたその足の状態を調べながら、彼は何故ミミロップがそこで力尽きていたのかを悟って、暗澹たる思いに表情を歪ませる。
    ――彼女は、その場から動けなくなった自分の娘を、容赦の無い寒波から守る為にそこに留まり続け、結局自然の猛威に抗い切れぬままに、命を落としてしまったのだ。
    足に絡んだ罠を外そうにも、ミミロップやミミロルは『不器用』な種族であり、それは叶わなかったのだろう。  ……また鋼鉄製のワイヤーは、頑丈な顎や鋭い牙を持ち合わせていない彼女らには、引き千切るには余りにも手強過ぎた。

    この手の『括り罠』と言う奴は、現在は固く禁じられている手法であり、仕掛けて行った人物は、間違いなく余所からやって来た、密猟者であった。
    ……身を捩じらせて泣き喚くミミロルを押さえ付けつつ、完全に変色してしまっている、うさぎポケモンのその足先に絶望しながら、少年は顔も知らない相手に対し、激しい憤りを覚えていた。

    ――そして、やがてその双眸が、逃れられぬ現実を悟って光を失い……次いで、再び生気の戻って来たそれが、覚悟と決意を秘めて、鋼の如き冷徹な光を帯びた時――うさぎポケモンの体を押さえていた利き腕が、脇に転がっていた血染めの刃物をしっかりと探り当て、握り締めた。
     
     


    「何故ポケモンを殺すのか?」――この質問を受け取る度、何時も彼は、同じ言葉を返した。  ……即ち、「食べる為」であると。
    ――同時にこの答えは、彼が常に抱いていた疑念に対する、痛烈な皮肉でもあった。


    彼は何時も、疑問に思っていた。
    町の食料品を扱っている店舗には、何時も様々な種類の肉や魚が、所狭しと並べられていた。  ……それらは皆、決まった期間が過ぎると『ゴミ』として廃棄され、透明なビニール袋に放り込まれて一顧だにされぬまま、他の塵芥や汚物などと一緒に、処分されていく。

    そこでは、嘗て生きていた筈の者達に対する尊厳が、完全に失われていた。
    値札を付けられたそれらは、既に単なる『モノ』でしかなく、付けられた数字に見合う条件を失った時点で、その価値を失ってしまう。
    ゴミとして処分されていく彼らには、最早誰も関心を示そうとはしない。

    直接手を下す立場を経験していた少年にとっては、正直実体も定かではない数字上の価値だけで、まだまだ利用可能なそれらが『モノ』から『ゴミ』へ変化する論理が、どうしても受け入れ難かった。
    弔われる事も無く、顧みられる事すらないそれらの存在を、周囲は全く拘泥しようともしないし、それを指摘する彼に対しては、一様に眉を顰めるのみで、突っ込んだ議論もなそうとはせず、その場を離れる。

    ……必要に応じて命を奪う事が理不尽な罪であるならば、何故最初から『モノ』として捉え、嘗て生きていたと言う事実に対して目を背ける事が、正当だと見做されるのか?


    確かに、そこにあるのは『モノ』であった。
    商品として陳列されているそれらには、最早生命は宿っておらず、魂の抜けた抜け殻が『モノ』としか受け取れない事実は、彼もその経験上、良く分かっていた。

    しかし、その一方で――同時に彼は、彼らが『モノ』に変わるその瞬間をも、非常に良く理解してもいた。
    ――生きている者が『モノ』に変わる瞬間は、『命』に対する厳粛な感情や観念とは裏腹に、余りにも短く、呆気ないものである。

    命を絶つまでに味わう苦悩と痛苦は、獲物を目前にして高揚する勝利の喜びを以ってしても、到底拭い難いほどに重く、深い。
    けれども、いざ止めを刺した後に訪れる対象への意識の冷却は、場馴れした少年ですらその都度戸惑わずには居られないほどに、急激なものだ。

    実際に己の手を血で汚し、仕留めた相手の鼓動が止まる様を見届けた経験があるのであらば、その急変に対しても、心を流される事は無いであろう。
    事実、彼は仕留めた相手への気遣いを失った事はなかったし、それ故にどんな時でも、そこから得られる物を、無駄にしたりはしなかった。

    解体の方法を教わった時も、常時ならば体調をも崩しかねない凄惨な有様の中、動ずる事もなしに手順を覚える事が出来たし、自分がそれを実践する時も、ヘマをしたりはしなかった。
    仕来たりは忠実に守り、撃ち止めた時には必ず相手を送る言葉を添えたし、無事に解体を終えた後には、同じ森に住んでいる他の者達の為にも、幾許かの取り分を残して行く事を忘れなかった。


    全ては、自らが日々行わなければならぬ業をしっかりと認識し、それを贖わざる事を固く戒めた、祖父の言葉によるものだった。

    彼を連れて山野に分け入る時、常にその理を言い聞かせてきた老人は、木の実を拾う時も樹木に挨拶をしたし、取ってきた魚を調理するにも、先ずは俎板に据えられたそれに対して来訪の謝意を述べ、礼を尽くした。
    獣を取った時と同様、収穫から幾分かの分け前を残していくのは礼儀であったし、何の関係も無い小さな虫や蔓草についても、無闇に踏み潰したりはしない。  ……老人の感覚では、彼らは獲物も含めて全て隣人であり、それに適った礼を用いるのが、彼らと共に生きていく上での、最低限の節度であると言う。
    ――それは同時に、彼がまたその祖父や父から、代々受け継いできた生き方でもあった。

    それ故にか祖父は、腕利きの猟師であるにも拘らず、弓矢や猟銃を持たずに山に分け入った時には、不思議なほどに獣達―ポケモン達からは、警戒されなかった。
    陽気の穏やかな春であれば、歩く側からビッパやコロボーシらが様子を窺いに来たし、夏場に木陰に入れば、離れた岩場にはアブソルが姿を見せた。
    実りの秋には、木の実を拾う彼らの側で、ムックルやパチリス達がせっせと冬に備えていたし、冬の雪道では、好奇心旺盛なユキカブリ達が、物珍しさに寄り集まってくる。

    獣達同士と同じ様な感覚で、互いに距離を保ちながら存在を受け入れあっている祖父の傍ら、少年は極自然な形で、彼らと適正な距離を保つ感覚を、独りでに身に付けていった。
    ……知らず知らずの内に、周囲の世界と自らとの間に、大きな溝を育んでいっているのにも、全く気が付かないままに――


    そう――自ら対象の命を奪う事で、初めてそこから得られる心の揺らめきと心情の変化とを、知る事が出来ると言うのなら。 命を奪い、生きて行く事それ自体が、彼らとの距離を離す直接的な原因ではないと、悟る機会がなかったのであらば―― 
    それならばもしも、最初から――彼らが『モノ』の状態であったのならば、どうなるだろう……?





    敗血症を防ぐ為、既に使い物にならなくなっていた片足を切り落としたミミロルを、彼は山の反対側にある祖父の狩小屋まで運んで行き、それから更に容態を落ち着かせてから、祖父母の家に連れ帰った。

    連れ帰った当初は、ミミロルは全く食物を受け付けず、最早生きる事を拒否しているかのように、頑なな姿勢を崩そうとはしなかったが――少年がある言葉を与えた事を切っ掛けに、少しずつではあるが、出された木の実に手を付けるようになっていった。
    ……彼はミミロルに対し、ただ一言、「母親の思いを無駄にする気か」と、無表情で呟いたのだ。

    そうなると、ポケモンの生命力は非常に強く、切り口を包み込めるよう、骨が短くなるように切った彼の手腕も相まって、一月もしない内に、彼女は体調を常の状態にまで回復させる事が出来た。
    うさぎポケモンが、もう何の支障も無く、彼に向かって技を繰り出せるぐらいにまで回復した時。  ……次いで彼は、敵意を隠そうとはしない彼女の足に、ずっと製作に当たっていた、一個の棒切れを括り付ける。

    ――それから二年間、彼は決して心を開こうとしないミミロルに対し、敢えて徹底的な形で、様々な訓練を施していった。
    当初は歩く練習から始まったそれは、次いで走る訓練を経て、跳躍の鍛錬となり――やがて最後に、最も種族的に困難な作業である、義足の『自作訓練』へと、繋がって行く。

    ミミロルは、進化系のミミロップ共々、非常に『不器用』な種族なのである。  ……しかしその一方、もし野外に自立した暁には、破損や磨耗、それに進化による体形の変化などで、使っている義足が使用不可能になる可能性は、常に付き纏う事となる。
    ――彼を含め、凡そ人には一切心を許そうとはしない彼女の生涯を全うさせるには、その生まれ持っての特性を克服してでも、自らの必要とする物を自力で生み出す術を、身に付けさせてやら無ければならなかった。

    「これを覚える事が出来たら、お前は故郷に帰れる」――少年のその言葉を受けたミミロルの方も、決して彼に対して、態度を変えようとはしなかったものの、与えられた課題をこなす為に、歯を食いしばって努力し続けた。
    そしてその甲斐あって、遂にここ最近に至り――ミミロルの製作能力は、どうやら自力で自らの体の一部を削り出せるぐらいにまで、漕ぎ着ける事が出来た。
     
     
    ……彼がその様に振舞った背景には、彼自身が抱いていたうさぎポケモンへの負い目以外に、自らも含めてニンゲン全てが、彼ら野に生きる獣達―ポケモン達の隣人足り得なくなっていく事への、堪え切れぬ贖罪の思いがあった。

    共に同じ森で営みを送っているにも拘らず、ただ一方的に搾取を繰り返すばかりで、隣人としての礼を逸し、互いを思い遣る心を忘れようとしている自分達。
    祖父達が代々受け継いで来た信頼関係を、呆気なく飽食と利得のシステムの中に埋没させ、失っていく事への面目無さ――

    祖母の語ってくれる物語の世界は彼方に過ぎ去り、本来隣同士に位置している筈のポケモンとニンゲン達との溝は、意識的にも無意識的にも、ただ深まっていくばかり。
    それがこの時代に生を受けた少年には、如何にも残念な事であったし……また同時に、堪らなく寂しかった。
     
     
     
     
    不意に頭の付近に感じた震動と物音に、少年はビクッとして目を見開き、淡い境目を彷徨っていた己の意識を、赤く染まりつつある、夕暮れの雪山に覚醒させた。
    ……枝から崩れ落ちて来た雪の塊が発したそれにより、彼は自分が束の間の間、疲れと消耗からまどろんでいた事を悟る。

    意識がはっきりしてくるに従い、体が既に冷え切って、石の様に重くなって来ている事と、それにも拘らず焼けるような痛みの感覚は、全く衰えていない事も自覚する。
    体を起そうとしつつも果たせず、復活した痛みの信号に小さく呻いた彼は、上半身を起こす事を諦めて、体の上にかけてある雨除け布を凍えた利き手で少しはぐり、自らの自由を奪っている苦痛の根源を、もう一度己の目で確認した。
    ――そこには、冷え切った流血に赤黒く塗れ、立ち枯れた若木の株によって太腿の辺りを串刺しにされた、無残な有様の彼の右足が、ぞっとするような悪寒と非現実的な感触を伴って、横たわっていた。

    「痛い……」

    そう一言呟くと、再び少年は持ち上げていた首を落として、既に足早に暮れかかっている紅の空を、乱れつつもゆっくりとした呼吸を繰り返しながら、虚ろに見上げる。 ホンの一時間程前までは綺麗に安定していた空模様は、彼が朦朧とした意識の中で過去を廻っている内に怪しく変化し、山の向こうから黒い雲の塊が徐々に広がって、茜色の虚空を占領し始めていた。

    ……彼は知っていた。 痛みを感じると言う事は、まだ自分が死ぬまでには、相応の時間が残されていると言う事を。
    しかしその一方で、このまま行けば先ず間違いなく天候が崩れ、彼は生きたまま孤独に耐えつつ、やがては降り注ぐ雪の中で、力尽きてしまうだろうと言う事をも。

    それを理解している少年は、もう一度何とか体を起そうと努力してみたが、やはりそれは、徒労に終わった。
    体は冷え切って力が入らず、串刺しになっている足の傷口は、突き刺さった株に肉が巻き付いており、痛みに耐えながら懸命に動かそうとしても、ビクともしない。
    ……仮に抜けた所で、出血多量によって力尽きるだろう事を十分に弁えている彼は、程なくして体力を消耗するだけに終わるその悪足掻きを、小さな溜息と共に切り上げた。

    同時に、既に感じ始めていた耐え難い喉の渇きを癒す為、手元の雪を一掴み掴み取ると、手の内で圧縮するように握り固め、密度の高い氷状にしてから、一口二口と口に運ぶ。  ……雪をそのまま口にするだけでは、得られる水分が奪われる熱量と到底引き合わず、ただ体力を消耗するのみに終わってしまうからだ。


    次いで雪片を捨てた後、力なく視線を向けたその先には、彼の持ち物の山刀が、半分雪に埋もれたままで、釣り帯をこちらに向けて転がっている。
    ――手が届きさえすれば、少なくとも心理的には、まだ幾らか楽になれる所なのだが、残念ながら此方に向けて伸びている釣り帯の先端部分ですら、彼が指先まで最大限に伸ばした所で、まだ腕一本分程届かなかった。

    やがて手を伸ばす事を諦め、オレンジ色に光を反射している雪の上に横たわっているそれを、じっと見つめている内――ふと少年は、痛みによって歪んでいる表情を微かに緩めて、こんなにも近い位置にあるにも拘らず、どうしても手が届かないそれに向け、穏やかな口調で語りかけ始めた。

    「……悪いなぁ……  ……どうやら俺、ここで死ぬかも知れないよ」

    口を閉じた彼の目には、痛みを通り越したその先にある物が、しっかりと浮かび上がっていた。 
    ――初めて射止めた、丸ねずみポケモンの面影。 それを瞼の裏に思い描きつつ、少年は静かに息を吐いて、遠い思い出を振り返る。
     
     
    少年が慣れない手つきで、ビッパの遺してくれた物を裂いては繋ぎ、それを完成させた翌日――彼は祖父に小さな船を出して貰って、綺麗に磨いた丸ねずみポケモンの骨を、早朝の鏡の様に凪いだ心事湖の真ん中に、手厚く葬った。
    『捕まえたポケモンを食べた後の骨を綺麗にして、丁寧に水の中へと弔う。  ……そうすると、ポケモンはやがて再び肉体を付けて、この世界へと戻ってくる』――  ……それが、彼が祖父から教えて貰った伝承と、正しい弔いの方法だった。

    青い蒼い水の底に向け、一晩かかって磨き上げた客人の名残が、ゆっくりと沈んでいくのを見守った時――彼はまだ幼かった心の内で、湖に還したポケモンに恥じぬような狩人になる事を、固く誓った。
     

    それを改めて反芻した時、彼はもう一度目の前の相手に向けて、小さく謝罪の言葉を述べた。
    ……遠い日の誓いを果たせぬままに、こうして雪の山道で動けなくなっている自分の運命を、ただ呪うでも嘆くでもなく、不思議な思いで見つめながら……

    決して、恐ろしくない訳ではなかった。
    苦悩もあったし、悲しさや人恋しさ、未練や後悔だって、少なからずあった。

    けれども不思議と、彼は冷静だった。 『このままでは死ぬだろう』――そう理解しているにも拘らず、何処か自嘲にも似た、不可思議な笑みが零れそうにすらなっていた。
    ……何故そう感じられるのかは、自分でも良く分からないままに――彼の意識は、ここに転がり落ちてきた当初の光景を、何時とも無しに振り返る。
     
     
     

    大体あれは、2時間程前であろうか……?
     
    普段使っていた森の中の獣道が、樹上からなだれ落ちた雪に埋もれて使えなかったのが、そもそもの発端だった。
    急遽進路を変更して選んだその切通しは、崖際に続く一本の隘路であり、その辺りの風の通り道にもなっている事から、厳冬期でも比較的積雪が少なく、一年を通して通行が可能な場所であった。

    けれども無論、問題が無い訳では、断じてない。 
    切所ゆえに道幅が狭いのは勿論の事、積雪が少ないと言う事柄に関しても、それはあくまで、他の場所に比べたらの話。 ……歩くのに支障が出ない程度とは言え、やはり足元は雪に覆われており、しかも崖際ならではの危険な要素も、当然あった。 

    その内最も恐ろしいものが、崖際に生じる雪の張り出し―雪庇である。
    雪庇は風によって飛ばされた降雪が、崖際に吹き付けられて出来る天然のトラップであり、本来の道の端に偽りの大地を形作る、大自然が織り成す幻影だった。 ……一見すると雪に覆われた地面と見分けが付かないが、一度足を乗せれば立ち所に崩れ落ち、犠牲者はあっという間に平衡を失って、雪煙と共に谷底へと転げ落ちる事となる。
    雪の状態によっては、それを切っ掛けに雪崩が起きる事もあり、うっかり踏み抜いてしまったら最後、例え人間だろうがポケモンであろうが、命の保障は無きに等しかった。

    ――今から思えば、それは予め予想して然るべきだったであろう。
    狭い隘路を慎重に吟味しつつ、嘗て歩んだ秋口の記憶を頼りに、用心深く進み行く内――不意に後ろを歩いていたミミロルが、雪に隠された道際から足を踏み外し、木枯らしと牡丹雪(ぼたゆき)によって築かれていた、厚い雪庇を踏み抜いたのだ。 ……恐らく、血の通っていない義足では、小石が多くて不安定なガレ場の地面の感触が、上手く掴めてはいなかったのだろう。
    うさぎポケモンの驚いたような鳴き声に、彼は慌てて振り向いて――彼女の体が大きく傾いているのを見た瞬間、どうした事か自然に体が動いて、勢い良く後ろに向けて踏み出すと同時に、ミミロルを突き飛ばすようにして道側に押し戻し、代わりに自らもまた雪で出来た天然の罠に足を取られて、体勢を立て直す暇も無いままに、遥か下にあるこの場所まで、一気に転げ落ちた。

    幾度もバウンドして地面に叩き付けられ、遂に下の端にまで達した時、恐ろしい衝撃を右の太腿に感じると共に、強烈な異物感と喪失感が、彼の理性の中枢を狂わせる。
    次いで襲って来た火の様な感覚と、自らの目に映った、信じ難い光景。  ……太腿を貫かれているのを見た瞬間、その一瞬彼は、現実への拒絶感から、激しいパニックに襲われた。

    呼吸が異常に苦しくなり、鼓動が早まって、どこかに闇雲に駆け出したくなるような衝動が、体の奥底から突き上がって来る。  ……しかし現実には、彼は一本の枯れ木によってしっかりと地面に縫い付けられており、駆け狂う事は愚か、立ち上がる事すら出来なかった。
    ……結局彼は、「はひっ、はひっ……」と発作のような息遣いを繰り返しながら体を起し、手元の雪をガーディが穴を掘る時の様に掻き散らし、荒い息遣いの合間に顔を横向け、雪の中に突っ込んでは、冷たく手応えの無いそれを力一杯噛み裂いて、奥歯を砕けるほどに噛み鳴らすしかなかった。

    どれくらいの間、それを繰り返していただろうか……?
    やがて彼は、必死に荒れ狂うその最中、不意に目の前に何かが現れた事に気がついて、血走っていたであろう両の目を、恐ろしい形相と共にそれに向ける。
    ――そこには、先程彼が転落するまで、ずっと後ろに付いて来ていた、ミミロルの姿があった。

    彼女の姿と、その顔に浮かんでいる表情を見た、その瞬間――彼は狂ったようにもがき回るのも忘れて、じっと佇んでいるうさぎポケモンのその顔を、唖然として見守った。
    ……その時のミミロルの顔には、今まで彼には見せた事の無い明確な感情の揺らめきが、はっきりと滲み出ていたのだ。
    ホンの短い間、少年とポケモンはお互いの目と目を合わせたままで、まるで凍り付いたかのように、一切の動きを止めていた。

    やがて少年の方が、再び込み上げて来た火の様な疼痛に、再び天を仰いだ時――ミミロルは再び表情を元の様に戻すと、静かに彼に背中を向けて、無機質な片足を機械的に動かし、その場から離れていった。
    彼女は一度だけ後ろを振り向き、歯を食い縛った少年の苦痛に歪んだ顔をチラリと見やったが、直ぐに前を向き直すと、最後まで何一つ声を発しないままに、雪に覆われた木立の中へと消える。
    ――彼が何とか波を乗り越えて、もう一度視線を向けた時。 その時は既に、うさぎポケモンの姿は視界の内には無く、雪の上に続いている足跡だけが、その足取りを指し示しているだけであった。

    ミミロルが目の前から姿を消して、もう一度独り取り残された時――彼は不意にある種の安堵に似た感情を覚えて、そのまま起した体を雪の上に横たえて、大きく一つ、溜息を吐いた。
    これで取りあえずは、当初の目的は果たした――  ……そんな場違いとも言える感慨が、何とも奇妙なタイミングで、彼の心を満たす。

    目的地だった林の入り口までは、もう残り僅かな距離であった。 ……後は、如何に片足が不自由な彼女と言えども、他のポケモンに襲われたりしなければ、無事に目的地まで辿り着ける事だろう。
    そう思うと、何故か襲って来ている現実が非常に希薄なものとなり、彼は一先ず体を休めようと、肩に斜めにかけている布袋の中から、ビーダルの毛皮を表側に張った、一枚の雨避け布を取り出した。
    ……兎に角、酷く疲れていた。 雨除け布を保温を目的として体にかけると、彼は背負った弓矢と、手から離れて飛んでいる山刀の位置を確認してから、大きく一度深呼吸して、目を閉じた――
     
     
     
     
    一通り、回想が終わった所で――少年は、何故自分がこれほど冷静でいられるのかが、何と無く理解出来ていた。
    ……どうやら自分は、今の所は生に執着するほどの未練と言うものを、持ち合わせてはいなかったらしい。
    それを理解した時、彼は改めて自らの無責任さに、はっきりとした自嘲の笑みを浮かべた。


    彼は何時も、心のどこかで孤独を感じていた。  

    周囲の同級生達からは言うに及ばず、山に住んでいるポケモン達に対しても、自らが祖父とは違って、そこに完全に溶け込めてはいないと言う感触を、常に持っていた。
    ……自分が感じているその感触は、丁度二つの世界の狭間で苦悶している、彼自身の立場の投影であった。
    彼は『今』と言う時代に生きているにも拘らず、参加しているコミュニティの中では異星人も同然であったし、なまじ祖父達とは違って町中での暮らしも経験していたが為に、野に住まうポケモン達の世界にも、完全には溶け込んで行けなかった。

    彼はポケモン達を心の底から好いていたが、彼らをボールに入れて行を共にするポケモントレーナーにはならなかったし、またなろうと思った事も無かった。
    同様に、山野に伏して狩りを続けながらも、どうしても彼らの中に溶け込んでいると言う実感が持てず、祖父が何時も話してくれるような、野生のポケモン達との一体感も、持てた試しは無かった。
    ……何時だって彼は、自らが信じて疑わないと思い込んでいるその生き方の中心に、冷たく明確な形を保った、後ろめたさを感じ続けていたから。

    それは、いわば『偽善感』とでも言うべきものであった。
    彼はこの森の一員として振舞う祖父の傍らで育ちながらも、自らの中に一抹の異物感を、常に抱き続けてきた。
    ……祖父と同じ様に振舞い、教えられた作法や仕来たりを、きちんと守りながらも――彼はポケモン達との最後の距離を、縮める事が出来なかった。

    彼は祖父程には謙虚な姿勢を持ち続ける事は出来なかったし、仕来たりや作法の要所要所で、自らの内に立ち上ってくる疑念や徒労感と、戦わねばならなかった。
    祖父が受ける事の無かったその手の教育や豊富な知識が、彼の心の純粋な部分を曇らせ、それは折に触れて疑念や打算と言った形を取って、自己嫌悪の情を煽り立てていく。

    一心不乱に自分の信じる所を貫いている心算でも、実の所はただ見当違いの場所にすがり付いて、届かない物を目の前にあると、錯覚しているだけではないのか?  ……自分の行いと信念は、単に自らの内にある穢れた物を覆い隠そうとしている、パフォーマンスに過ぎないのであろうか……?
    そう思う事が、特にここ数年の間は、非常に多くなって来ていた。  ……彼がミミロルを自分の手元に置いて、生きて行く為に必要な知識や技術を教え込んだのは、この何処にも持って行きようの無い思いを、整理する為であった。
    ――もしもあれが祖父であったなら、一思いにミミロルの命を絶って、彼女の魂が無事にもう一度この世に還って来れるようにと、心を込めて送ってやった事であろう。

    ……だがしかし、彼にはそれが出来なかった。 
    そして結局、彼はこの件についても人知れず悩み抜き、また自らが場違いな愚行を演じたのではないかと、ずっと苦しみ続けてきたのだ。


    そう――どうやら自分は、そう言った種々のイタチゴッコに、飽きてしまったらしい。
    答えの得られない悩みに始終脅かされ、中途半端な立場に日々苦悶して生きていくよりは、一度楽になって穢れを落とし、他者の生の一助として役立った方が、いっそ良いのではないだろうか――?  ……祖父が話してくれた死生観と、自らの知識である自然界の循環機構をつき合わせた結果、彼はそう思ったのだ。

    少なくとも今は、抱えていた責務を一つ果たし終えたばかりであり、気持ちに余裕もあった。  ……しかも現実として、死は文字通り身近にまで差し迫った問題であり、寧ろそれを避ける方が、難しい有様である。
    ――今なら、笑って死んで行けそうな気がした。
    自ら生を否定する事は、確かに今まで犠牲となってくれた数々の命に対して、余りにも非礼な事ではあった。  ……しかし彼は同時に、この先も同じ様に犠牲を強いて重ねていく事の方が、よっぽど罪深い事だと思い始めていた。


    そこで彼は、取りあえずは成り行きに任せる事にして、傷の痛みに反発する余り足の付け根を思いっきり抓った後、仰向けに寝転んだままの体勢で、道具を入れた袋の中から干し肉を引っ張り出して、口に運んで噛み始めた。
    ……疼痛が酷くなる度、口の中の食物を力一杯に噛み締めて、それを堪えていく内に――不意に彼は表情を変えると、硬い干し肉を噛むのも中断して、近くに広がる木立の下生えの辺りに目を向け、じっと息を殺す。

    するとやがて間も無く、彼の視線の先の茂みが唐突に割れ、余り大きくは無い四足歩行のポケモンが、その姿を現した。
    冷たい雪の中、常に知られている姿よりは少し長めの、ふさ付いた冬毛を身に纏ったそのポケモンは、彼と目が合うや否や、白地に水色のストライプをあしらったその体をびくりと硬直させて、やや怯えた目付きで、少年の方をじっと見つめる。

    「心配するな。  ……何もしやしないよ」

    そう彼が声を掛けると、そのパチリスは口振りと声の調子から、危険は無いと判断したのだろう。 尚も警戒しながらも、茂みの中からゆっくりと全身を抜き出して、彼に向かって数歩だけ、近付いてきた。
    ……しかしその動きは、彼の背中に見える弓矢と、彼の足に染み付いた生々しい血痕を目にした途端に、またもや雷にでも打たれたかのように、ピタリと止まる。  ……どうやら風上から現れた為に、彼がどういう状態でそこに転がっているのかについて、まだ理解出来ていないようだった。
    そんなパチリスの懸念に答えてやる為、少年はゆっくりと矢だけに手をかけ、引き抜いた三本のそれを脇に投げ出すと、両手を電気リスポケモンの目にはっきりと見える場所に置いて、苦笑交じりに口を開く。

    「これでいいか?  ……まぁ、見ての通りの有様でな。 動こうにも動けないから、お前を撃とうとする理由だって無いのさ」

    語り終えると目を瞑り、微かに顔を俯け、彼はゆっくりと首を振って、自らの情け無い様を、自嘲気味に鼻で笑って見せる。
    ……しかし、直後に唐突に襲って来た痛みの波が、そんな彼の余裕を木っ端微塵に打ち砕くと、束の間の苦悶と呻き声とを、暮れかかった雪の原に晒させた。

    やがて痛みの波が引き、荒い息を吐いた彼が視線を戻すと、件のパチリスはまだその場所にじっとしており、心なしか哀れげな目付きで、少年の方をじっと見つめている。
    そんな相手に対し、彼は強いて穏やかに苦笑して見せると、ふと思いついたように道具入れに手を入れて、中から幾つかの萎びた塊を、その手の内に掴み取った。
    苦痛を無視して、ほぼ痩せ我慢と意地だけで上半身を起し終えると、戸惑っているパチリスに向けて、手の内のそれをゆっくりと差し出す。

    「食べてみな? 結構いけるぞ」

    そう口にすると、自らもまた手の内にあるそれを一つ頬張り、片手の肘で半身を支えたまま、ゆっくりと咀嚼してみせる。  ……口の中に優しい甘みを運んできたそれは、オボンの実を甘い蜜で煮込んで作った、彼ら狩人が重宝して使っている、携帯菓子である。

    恐る恐る寄って来て、それを受け取って齧ってみたそのパチリスにも、この伝統的な保存食は、好ましい味がしたのであろう。 
    目に見えて緊張が解れたらしい電気リスは、やがて彼の直ぐ傍まで近寄ってくると、枯れ木に貫かれた彼の右足を一頻り眺めた後、小さな顔を彼の方へと真っ直ぐに向けて、痛々しげな表情を浮かべた。
    そんな相手に対して、彼は尚も笑いかけて見せた後、もう直ぐ日が暮れるから、早く帰った方がいいと言い添える。
    ……一方のパチリスは、「お前はどうするんだ」と言わんばかりの表情で、不安そうに顔を曇らせていたが――やがて彼の再三の勧めに諦めたように、もと来た茂みに向けてくるりと向き直り、二三度振り返りつつも、黄昏時を前にした林の奥へと去っていった。

    パチリスの背中を見送った後、彼は改めて干し肉を引っ張り出すと、再びそれを齧りながら、時折襲ってくるズキズキと脈打つ痛苦を紛らわしつつ、時が過ぎるのを待ち始めた。
    既に空模様は、はっきりと天候が崩れる事を示唆しており、黄昏時を迎えた空は急速に光を失って、夜の帳を張り巡らせ始める。


    そして更に、夜の闇が近付いた頃――今度は大きな羽音が頭上に響いて、ウトウトしていた彼の冷え切った意識を、現実の世界に引っ張り戻した。

    すると同時に、頭上を通過しかかっていた羽音の主が、急に向かっていた方角を転換して、やがて彼の直ぐ近くの雪の上に、騒がしい音を立てて着地する。
    ……闇が迫る白い大地に降り立ったそれは、真っ黒い体色に白い胸元の鮮やかな、立派な体格の鳥ポケモンだった。
    相手の姿を確認できた時、彼は今度ばかりは、背筋に冷たいものが走ると同時に、素早く上半身を持ち上げ、身構えた。  ……目の前に翼を畳んで佇んでいるポケモンは、この森でも生息数はそう多くは無い大ボスポケモン―ヤミカラスの進化系である、ドンカラスである。

    少年は確かに、現在観念に近い感情を抱いて、訪れる運命がどの様なものであれ、受け入れる心算であったのだが……その大烏の姿を目にした途端に、そんな殊勝な大悟の情などは、文字通り跡形も無く吹き飛んでしまっていた。
    ――ドンカラスは好戦的な種族であると同時に、その一声で数え切れないほどのヤミカラスを呼び集める事が出来る、深夜の森の支配者である。 ……しかも彼らは雑食性であると同時に、相手が弱っていたり抵抗出来ない場合、腹の空き具合によっては、そのまま数に任せて『料理』する事さえある。

    流石に幾ら少年でも、生きたまま無数の烏共に突き殺されて喰われる様な最後は、断じて願い下げであった。
    そこで彼は、油断無く抵抗出来るよう頭の中にイメージを描きつつ、目の前で黙って彼を見つめている鳥ポケモンに向け、静かな口調で切り出した。

    「……もし腹が減ってるんなら、もう少し待って貰いたい。  ……どうせ俺は、明日の朝まで持たないだろうから……それまでは、何とかこれだけで我慢しておいて欲しい」

    そう口にすると、彼は道具の袋から干し肉をありったけ取り出して、目の前の大烏に対して差し出した。  ……更に、他にも仕舞い込んでいた食べられる物は、全て洗いざらい引っ張り出して、相手に向けて示した後に、手を目一杯に伸ばした先に並べていく。

    「これで全部だ。  ……もしこれで満足出来ないと言うのなら、もうこっちとしてもどうにもなら無いよ」

    全く身じろぎもしない相手に対し、彼は静かにそう締めくくると、いざと言う時に備えて背中の弓を構える心積もりをしておきながら、黙りこくっている相手の瞳を、正面から見返した。

    ……するとドンカラスは、彼が自分を真っ直ぐに見据えたと見るや、ゆっくりと雪の上に足跡を残しつつ、翼を使わず足だけで重い体を運んで、彼の方に向け歩み寄ってきた。
    今までそんな動きを見た事が無かった少年が、呆気に取られて眺めている内――ドンカラスは無事に彼の隣まで辿り着くと、足元に散らばる干し肉を嘴で拾い、それを少年の手の内に、そっと落とす。

    思わず言葉を失って、相手の両の目を覗き込んだ彼は、目の前の大烏の瞳の中に、敵意が無い事を見て取った。
    更に、その鋭い大ボスポケモンの双眸に、ある種の予想もしていなかった輝きを、彼が見出したその時――不意にドンカラスは片翼を高く差し上げると、闇の中へと良く響く声で、力強く啼いた。

    少しの間は、何事も無かった。
    ……しかし、やがて夥しい羽音があらゆる方向から立ち上って来ると、更にホンの数分の後には、その辺りは呼び出されたヤミカラスの群れで、一杯になってしまった。
    集まってきた烏達は、整然とそこ等中に羽を休めると、逐次呼び出した大烏の指示に従って、倒れ込んでいる少年の体を覆うようにして、翼を広げて蹲ってゆく。

    彼らが何をしようとしているのかを理解した少年が、傍らに位置しているドンカラスの姿を、信じられない思いで見つめ直した時――大烏が横を向いた拍子に、首の横にある古い傷跡が、唐突に目に飛び込んできた。
    それを目にした瞬間、彼の脳裏に古い記憶が、まるで昨夜の出来事の様に、鮮明に浮かび上がってきた。


    ……もう、4年も前の事であろうか? 

    彼はその時、久方振りで手に入った獲物を解体し終えて荷造りし、祖父の狩小屋に向けて、家路を辿っていた最中であった。
    肩に食い込む荷物の重みを堪えつつ、帰心矢の如しの言葉のままに山を下っていたまだ幼い彼は、その途上で、一匹のヤミカラスと出会った。
    ――力無く岩陰に翼を休め、彼が近寄っても逃げる気配も無い暗闇ポケモンの首筋には、恐らく同族と争った際に付いたものだと思われる、深い傷があった。

    既に諦めきったような表情で、黙って彼を見つめていたヤミカラスに対し、彼は持っていた干し果実を与えると共に、ありあわせの道具で出来る限りの手当てを施し、背負っていたその日の収穫を、そっくりそのまま、暗闇ポケモンに向けて差し出したのだ。

    ……それは別に、特別な事ではなかった。 同じ森に住んでいる者同士として当たり前の気遣いを、彼は行っていたに過ぎない。
    背負っていた戦利品に関しても、まだ幼い彼は全て背負い切れた訳ではなかったので、下ろした側からもう一度現場に戻って、取り置いて来た分を背負い直せば良かった。

    彼がもう一度山道を登り直し、再びしこたま荷物を背負ってそこを通る頃には、もう既に件のヤミカラスは姿を消しており、数枚の濡れ羽色の羽根と、食べ切れなかったのであろう幾つかの肉の塊が、置き忘れたように転がっているきりだった。


    「お前、あの時の……」

    そう口にした少年に向け、ドンカラスはくるりと向きを変えて彼の方を見やると、その鋭い目付きを僅かに和らげて、確かに束の間の間、微笑んだかのように見えた。
    ……しかしすぐに、大ボスポケモンは別の方向を向き直し、先程の揺らめきがまるで目の錯覚であったかのように、再び翼と啼き声を駆使し、尚も集まってくるヤミカラス達に指図をするばかりで、再び彼の方を振り返ろうとする事は、もう無かった。

    そして更に、それから直ぐ――不意に群れの端の方に位置していたヤミカラス達が、何かに驚いたように騒ぎ立て始め、次いでそちらの方で、ざわざわと多くのポケモンが動き回るような気配が、漆黒の翼に包まれた少年に、伝わってくる。
    何事かと顔を動かした彼の目に、群れ集っている烏達の隙間から、幾匹かの電気リス達が円陣を作るようにして、集まっている暗闇ポケモン達に相対している姿が、飛び込んできた。

    それを見た彼は、思わず声を上げると共に、群れに対して指示を出そうとしていたドンカラスに向けて、攻撃を差し止めて貰えるように訴える。
    一瞬此方を向いた後、改めて向き直った大烏が一声啼くと、ヤミカラス達は一斉に左右に分かれ、その合間を通ってパチリス達が、彼の方へと集まってきた。
    ……彼の隣にずらりと並んだリス達は、手に手にオボンの実やオレンの実などの様々な木の実を持っており、彼の周りにそれを置いては、その大きな尻尾を彼の体に乗せ掛けて、烏達の間に場所を見つけて、蹲っていく。

    ドンカラスが最後にもう一度啼くと、分かれていたヤミカラス達は再び一塊になり、パチリス達ごと少年の周りを覆い尽くして、崖際の雪の原を、漆黒の翼で一杯にした。


    ゆっくりと降り始めた雪片が、群れ集まる烏達の濡れ羽色の翼を、白い綿毛の様に覆っていく中――少年の瞳は何時しか、込み上げて来た思いで一杯になっていた。

    瞬きする度に零れ落ちる、熱い雫の感触を自覚しつつ、彼は今まで自分が感じてきたものが、単なる妄念であった事を噛み締めていた。
    ――そう……別に彼は、異端な存在では無かったのだ。

    彼が勝手に独り、そう思っていただけで――彼の周囲に息づいていた者達は、時折この森で命を交錯をさせる一人の少年を、疾うに受け入れてくれていた。



    ……自分達に最も近い位置に住んでいる、一人の『隣人』として――
     
     
     
     
     
     
     
     
     
    月並みなやり取りと共に家を出てから、早二月が過ぎようとしていた。


    道端で手持ちのポケモン達と昼食を取りつつ、少年は時折空を見上げながら、次は一体何処に向けて歩こうかと、雲行きを見定めつつ思案する。

    ……彼の隣では、ポッタイシが木の実を持ち逃げしたパチリス目掛けて猛進しており、それを眠そうな目で見つめているイーブイの背中で、こちらは楽しそうな表情を浮かべたチルットが、走り回る二匹のポケモン達に向け、盛んに美しい啼き声で声援を送っている。  
    少し離れた場所では、世話好きのビーダルがまめな手つきで、仲間達が使い終わった自然の食器類を、せっせと穴を掘って埋めていた。

    抜けるような青空に、天候変化の兆しが無いことを確信した少年は、ふと何かを思い出したように、自分の右足の太腿の辺りに手を触れて、次いで遠く離れた故郷の方を、眩しそうに振り返る。
    ……既に13になっていた彼には、同年輩の友人達に比べたら、些か遅すぎた出発ではあったが――それでも今はまだ、出て来たばかりの故郷を思う気持ちが、折に触れて自然な形で、炙り絵の様に滲み出てくるものだった。
     
     
     
     
    ――あの雪の降る夜から、既に二年。

    あの後、彼はそのまま深い眠りに落ち、翌日の朝になってから、漸く目を覚ましたものの――既に周囲には誰一人として残って居らず、ただ幾つかの痕跡が、溶けかけて形を崩した雪の上に、置き忘れられているきりだった。
    狐に抓まれた様になっていた彼は、それから直ぐに迎えに来た祖父によって応急処置を受け、何があったのかを察した老人から、事の次第を告げられる。


    ……何でも昨日の夜遅く、彼と共に出て行った筈のミミロルがものすごい剣幕で狩小屋の戸を叩き、呆気に取られている老人達を尻目に、その節くれだった手を自ら掴んで、まるで何処かへ引っ張り出そうとするかのように、闇の中へと誘ったのだと言う――
    急いで支度をして、雪の降る中出発した老人に対し、彼女はまるでその歩みの遅さが苛立たしいとでも言うかのように、進んでは待ち、待っては進みを繰り返して、全く落ち着こうとはしなかったらしい。

    そして、漸く明け方―何時しか降りしきっていた雪も止み、行く手の東の空が澄み切って、赤く燃え立ち始めた頃――ミミロルは急にスピードを上げて、老人の視界内から消え失せてしまい、足跡を追って進む老人の遥か前方で、夥しい数の黒い翼が、まるでその役目を終えた花弁か何かの様に、空に向けて散っていくのが見えたのだとか。


    祖父の言葉を聞きながら、少年は改めて周りを見渡して、彼らが残していった痕跡―あの幻のようだった一夜の出来事が、夢ではなかったと証明するもの―を、夢から覚めたような目付きで、静かに瞼に焼き付けた。

    ……そこには、様々な物が残っていた。
    例えそこに、一匹のポケモンの姿も残っていなくとも、彼らが残していった痕跡は、此処かしこに散らばっていた。  

    無数の濡れ羽色の羽根に、様々な種類の、食べ切れなかった木の実。  ……昨日彼が道具袋から取り出した食料は、ただ干し果実の蜂蜜煮だけが、まるで夢を見させて貰った代償ででもあるかのように、そっくり消えてなくなっている。

    そして更に、何よりはっきりと残っているのは、そこ等中至る所に記された、種類も大きさも様々な、無数の足跡だった。  ……それらは互いに重なり合い、もみ合いもたれ合って、まるで全体が一つの絵画であるかの様に、白く穢れの無い雪の大地に、揺ぎ無い存在感を示していた。

    昇りつつある旭日に照らされるそれらの痕跡は、小さな個々の印しを数える事がまるで無意味な事ででもあるかのように、孤独から解放された少年の眼前一面に、物言わぬまま広がっている。  ……それは同時に、様々な命が互いに隣り合い、共に寄り集まって暮らしている、この小さな山の縮図でもあった。 
    ――小さくとも掛け替えの無い、彼のもう一つの故郷。  ……その内懐へと続いている一塊の足跡達は、帰って行くに従って徐々に分かれ、再び個々の存在へと立ち返って、それぞれの日常に戻るべく、林の奥へと散っていった――
     
     
      
     
    昼食を終えた少年の一行は、彼が手早く荷物を纏めるとそれぞれの居場所に戻り、再び前に向けて進み出した。
    ……歩き続けながら少年は、あの時最後にチラリと見た、うさぎポケモンの小さな茶色い背中を、湧き上がる郷愁にも浸りながら、懐かしく思い出す。


    あの時、祖父に背負われて家路に着いた道すがら、雪の上に残された彼女の足跡を辿りつつ、彼はいつか再び両者が見える日が来る事を願いながら、黙したままで淡々と、彼女との思い出に心を馳せていた。

    ――新たに雪の降り積もった山道からは、彼が行きの際付けて来た足跡は、勿論の事……後について来ていた彼女の足跡もまた、跡形も無く消え失せていた。  ……そこに残っているのはただ、倒れた彼の居場所を教える為に、ここまで不自由な足を懸命に伸ばし、助けを呼んで来てくれた際に残された、一筋の痕跡のみ。 

    それを見つめている内に、不覚にもまた少年は、こみ上げて来たものに耐え切れないまま、老人の逞しい背に、静かに自分の顔を埋める。 上気しているその体を、ひんやり冷たく感じたのは、熱が出てきているのだろうか。  
    ……彼の脳裏には、彼らが初めて出会った時の光景と、こんな別れ方をしなければならなかった事への、やり切れない思いが渦巻いていた。


    一体どうすれば、次に出会った時――彼らは互いに余計な障壁を抱く事無しに、歩み寄る事が出来るのだろうか?  ……そう思った時、唐突に彼の脳裏に、今まで考えようとはしなかった生き方が、もう一度明確な形を伴って、浮かび上がって来た。

    ポケモンと共に歩む事それ自体を、己が天職と心得る生き方。
    ……今年の初め、機会があったにも拘らず見向きもせずに、次々と旅立っていく仲間達を見送った彼。 その彼が改めてその世界に身を投じ、住み慣れた故郷を離れてみる気になったのは、その瞬間であった。
     
     
     
    ――時は全てを押し流すが、それは何時も悪い事とは限らない。 
    彼女も何時かは母親となり、凍える我が子を優しく包み込んで、共に夜空を仰ぐのだろう――

    ……そしてその時彼は、果たしてどうしているのだろうか――?
     
     
    取り止めの無い思いを振り払うと、少年は改めて前を見据えて、空に浮かぶ見えない標識を見定め、意識して胸を張り、足取りを速めた。
    ……彼女や、その他の多くの隣人達に与えて貰った、もう暫くの猶予――今はそれを、少しでも有効に使うことこそが、彼の全てだったから。


    今も昔も、彼は独りでは無い――それだけで、彼には十分であった。




    参考書籍:『熊を殺すと雨が降る』
           『アイヌの昔話』
    ――――――――――


    御題・【足跡】


    字数大幅超過により、此方に記載。

    ……何かツイッターの台詞が暴走していた、ミカルゲ鈴木氏に捧ぐ―― (爆  笑)


    追記:

    機会があり次第に、ちょこちょこと加筆・修正中。  
    ……改めて読み直してみると、珍しく自分から期限切って強引に進めていた為、そっこら中にミスや不手際が頻発している(爆)

    書きたかった事も随分すっ飛ばかした為、普通にお話の筋が読み取れない。  ……矛盾と説明不足の嵐に、我が能力の範囲での、突貫工事の危うさを悟る。
    ……ミジュクナリ。


    精進出来るように頑張ろう……


    【お好きになさってくださって構いませんです】

    …タグつけんの忘れてた……


      [No.1026] ふと気づいてみれば一カ月が過ぎている…。 投稿者:砂糖水   投稿日:2010/12/11(Sat) 02:22:10     24clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ようやくパソコンを起動させてみれば一カ月が過ぎていました。
    こんばんは砂糖水です。
    時間が過ぎるのはあっという間ですね……。


    >レイコさん
    本当はレイコさんのようにリズムのいい文章を書きたかったのですが、あえなく撃沈しました…。
    ああいう文章には憧れちゃいます。
    子ラプラスにどうにか旅をされてあげたいなって思ったらああなりました。
    こちらこそありがとうございました。


    >クーウィさん
    はじめましてー、クーウィさん。感想ありがとうございます。
    実は書き始めたのは11月3日の夜中だったりします。
    いざ投稿しようとした時にクーウィさんの感想を見て先を越された!?とびっくりしました。
    勘違いでしたが(笑)。


    > ……時代が変わっても、変わらないものがある――

    正直そこまで深く考えて書いたわけではないのでなんというかこそばゆいです。

    > 主格となる二者の種族を超えた絆の深さが〜

    言われて初めて気付きました。自分確かにそんなにばっかり書いてました…。
    そして今考えてる話もそんなんばっかだったり…。
    案外自分のことって分かってなかったりしますね。


    お褒めにあずかり光栄ですが、私はやっぱりクーウィさんの方が凄いと思うんですよ。
    だってバトルの描写とかは難しくて、とてもじゃないですが普通の人は中々書けないですから。
    とまあこう思うんですが、こういうのって自分が持ってないから余計にそう思うものなんでしょうね。
    ないものねだりってわけじゃないんですけど。


    > ドン引き通り越して自己埋葬しかかって

    大丈夫です。私も埋葬したくなってます。特に黒歴史スレに書き込んだあの夜を。
    書いた後にやっちゃったなあ、とは思ってたんですよね。
    でもさすがに読みたいっていう人いないと思って油断してました。
    まさかまさかの事態に恐れおののいてます。
    でもやらせていただきます。リクエストいただいちゃいましたから。


    そんなこんなで感想ありがとうございましたー。
    長々と失礼しました。


      [No.1025] 散歩中にて 投稿者:紀成   投稿日:2010/12/10(Fri) 22:14:17     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    小説のネタが詰まると、私はよく二匹を連れて散歩に出かけた。休日なら、たとえ朝だろうが昼だろうが、深夜だろうが、とにかく歩くのだ。
    スラリと長い二本脚を持つバシャーモと違い、脚が無いと言っていい(こんなこと言ったら持ってる人に殺されそうだ)ダストダスは、私達の後を転がるようについて行く。
    まるで運動会の大玉転がしだ。


    歩きながら私はとにかく話す。この前ミコトがワニ二匹を引き連れて他校の不良男子生徒をカツアゲして、先生に怒られたとか。
    あと・・カオリちゃんがなんか最近変だとか。元々不思議な子だったんだけど、最近それが増してるとか。
    後輩のミドリちゃんのこともよく話す。前に聞いた話では、眼鏡だったのを中二になってからコンタクトに変えたらしい。
    まあ、学校のことばかりじゃないんだけどさ。
    たとえば。


    「この世界には、人の手で造られたポケモンがいるらしいの。悪人が金儲けのために、色々なポケモンの細胞を組み替えて作ったんだって」
    前読んだ本に書いてあったことだ。ショックと同時に、体が震えた。
    「本当はポケモンの方が私達より強いはずなのにね・・」

    私の頭に入っているプロットは、ザッと分けて四種類くらいある。
    一つは、前にカオリちゃんに言われたギラティナの話。
    二つは、面白い本を求めて全国を旅する少年の話。
    三つは、ストレートに恋愛もの。苦手だからこそ、練習しないとね。
    で、四つは・・


    「人工のポケモンが、傷ついたまま逃亡して、どこかの廃墟に身を隠していたところへ、主人公が来て・・」


    私の頭の中にプロローグみたいな台詞が浮かんでくる。


    『それを愛したことが罪ですか

    それに愛されたことが罪ですか

    それとも

    私達が出会ったことが罪だったのですか』


    「って感じなの!どう!?」
    「勝手にしなよ」
    「恋愛、恋愛っていうけど相手が人間とは限らないわよね」
    「何で僕に同意を求めるの」
    「氷漬けにされたミコトに聞くのが手っ取り早いかと」
    「今すぐワルビアルがカラカラにしに行くから」


    ミスミ。
    小説を書くにあたり、素晴らしい才能を持つ。

    ただし、暴走すると話が百八十度回転するという・・

    ーーーーーーーー
    [モエルーワ]byミスミ
    [ババリバリッシュ]byミコト


    明日のチャット楽しみです。


      [No.1024] 語り狐 投稿者:巳佑   投稿日:2010/12/10(Fri) 12:21:45     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    語り狐 (画像サイズ: 710×1014 154kB)

    今までいくつの物語を歩んで来たのだろう?
    今までいくつの物語を覗いて来たのだろう?
    
    例えば初々しい恋愛の話。
    
    例えば鳥肌が立つ怖い話。
    
    例えば熱い熱い友情の話。
    
    例えば腹を抱えてしまうほどの楽しい話。
    
    数え出したらキリがない物語達。
    
    時が流れていくと
    いつの間にか目の前の言葉たちが消えていくというのも珍しくなかった。
    
    「だが、その者の心には映り続けていくことだろう。
     そして、そこから新しい物語が産声をあげてくれるかもしれない」
    
    満月と星々をその身に飾った漆黒の空の下で、
    金色に塗られた九つの尾を静かに揺らしながら一匹の狐は笑った。
    
    「物語は残すものではなく、未来へと繋げるものなのだ……きっとな」
    
    おびたただしい時の中を泳いできたからか、
    一匹の狐の足元にあった、一冊の本が疲れ切ったかのように
    ぼろをまとっていた。
    一匹の狐がその本に触れると、
    それは静かに砂のように崩れ落ち、
    そして流砂のような音を優しく奏でながら空へと舞っていった。
    淡い光を放ちながら。
    
    「物語が消えることは決して悲しみだけではない、希望を繋げてくれるものなのだ……きっとな」
    
    一匹の狐はその光の背中を見送ると、
    傍で眠っていた一匹の赤茶色のキツネのほうに振り返った。
    夢の中で楽しく遊んでいるからか、六本の尾がときどき可愛げに揺れている。
    
    「我の千年の物語も、そなたに希望を与えられるものであることを……願っておる」
    
    一匹の狐が一匹のキツネの頭を、
    温かく、なでながら微笑んでいた。
    
    その体に
    
    淡い光を放ちながら。
    
    
    
    
    【書いてみました&描いてみました】
    
    『投稿記事の最大保持件数は 1000件で、それを超えると古い記事から削除されます』
    
    
    ポケストの留意事項に書かれてありましたこの文から 今回の物語とイラストを考えてみました。
    キュウコンが出てきたのは、1000という数字に一番似合いそうだったからで……。
    でも実は「データ関連でもあるからポリゴンでもいいかなぁ……」と迷ったのはここだけの話です。(汗)
    
    ちなみに、念の為に書いておきますと、
    お世話になっています小説掲示板での、あのロコンとは関係ありません。(汗)
    
    
    ありがとうございました。
    
    
    【1000件突破おめでとうございます!】


      [No.1023] 今度こそ! 投稿者:久方小風夜   《URL》   投稿日:2010/12/09(Thu) 00:43:52     28clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    今度こそパソコンで参加したい! ですね!
    この後何事もなければ参加可能だと思います。

    ……何事もないといいなぁ(´・ω・`)


      [No.1022] 灯火。 投稿者:久方小風夜   《URL》   投稿日:2010/12/09(Thu) 00:39:36     112clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ともしび。】 【死ネタ】 【とりあえず】 【ヒトモシ抱きしめたい

     ポケモンと人間の関係。
     この頃、それについて考えることが多くなった。


     マイカは俺の双子の妹だ。
     どっちかって言うと冷めてるけど社交性のある俺とは反対で、マイカは優しいけど極端に人見知りをする奴だった。
     カノコの同い年は俺たちとチェレン、ベルだけだったけど、マイカはその2人ともあまり面識がなかった。 まあ、ほとんど家から出ないし、俺と母さん以外とは話をすることも皆無だったけど。

     さすがによろしくないと思ったのか、母さんはアララギ博士と相談して、マイカを旅に出すことにしたそうだ。ポケモンと一緒に冒険すれば、極端な人見知りも恥ずかしがりやな性格もよくなるんじゃないか、と。
     でも、マイカは筋金入りの内向的性格だから、俺の予想通り旅に出ることを拒否した。もちろん母さんたちもそれは予想していたらしく、旅立たせるためにいろいろ案を練ったらしい。
     それで、俺も旅に出ることになった。チェレンとベルも一緒だ。
     もちろん全員が常に一緒に行動するわけじゃないんだけど(ベルはともかく、負けず嫌いのチェレンは絶対俺より先に行きたがるだろうし)、それでも同じ町の同い年の子が一緒なら少しは安心だろう、と。
     母さんたちはそう思ったらしいけど、俺はそれでもマイカは旅になんか出ないだろうな、と思っていた。そして予想通り、マイカは頑なに旅立ちを拒否した。ポケモンは怖い、その上知らない人ばかりのところなんか恥ずかしくてとても行けない、とマイカは顔を真っ赤にして泣きながら言った。
     正直、俺は旅とかどうでもよかったし、マイカの性格も、ちょっと度は過ぎてると思うけどそんなに頑張って直すことでもないと思っていた。だから、マイカが旅に出ないなら俺が旅に出る積極的な理由もないし、旅には行かないつもりだった。

     のだけれど。

    「ねえ、シアン君。やっぱり旅に出ない?」

     誘ってきたのはアララギ博士だった。
     マイカと一緒に、とか言うんじゃないですよね、と聞くと、マイカさんは無理にとは言わないわよ、と言ってきた。

    「シアン君がポケモン達と仲良く旅をしているのを見れば、きっとマイカさんも旅をしてみたいって思うと思うの」
    「どうですかね。博士もご存知でしょう。あいつの対人恐怖症は異常です。ポケモンに対してだって多分同じですよ」
    「あら、そうかしら? わたしはそうは思わないわよ」
    「?」
    「ポケモンと付き合うことで、人は必ず変わるわ。その逆も然り。ま、ポケモンと触れ合うだけじゃなくて、ポケモン達と一緒にいろんなところへ行くのが何よりでしょうけどね」
    「……」

     もちろん、そうか、とすぐに納得は出来なかったけど、俺はまだポケモンを手にしたことはないから反論はしなかった。
     ついでにこれも作ってほしいな、とポケモン図鑑まで渡されてしまったので、断るに断れなくなった。


     俺が旅に出る、と言うと、マイカは泣いて引き止めた。マイカの狭いコミュニティの中から、誰より一番繋がりの深かった人間がいなくなるのだから、寂しかったのだろう。旅立つその日まで、行かないで、と何度も言いに来た。
     そんなに寂しいなら他に友達でも作れ、と言いたくなったが、それが出来ないからこうなっているんだ、と思い直してやめた。
     マイカだって友達を作りたくないわけじゃない。作れないだけなんだ。

     旅立ちの朝には、俺がライブキャスターを持っていることを何百回と確認して、絶対に毎日連絡してね、と涙目で念を押した。これが彼女なら多少なりときめくところだが、残念ながら双子の妹なのでそんなことはない。
     こっちからかけなくても、多分毎日マイカからかけてくるだろうな、と考えていた。




     博士からのプレゼントボックスを開けてから、数カ月が経った。
     俺は久々にカノコタウンに戻ってきた。いつものパーティーと、もうひとつ余分にモンスターボールを持って。

     家に帰ると、早速マイカが出迎えてくれた。何ヶ月か直接顔を合わせていないだけなのに、ずいぶん変わったような気がした。旅に出る前はずっと一緒だったからだろうか。
     毎日ライブキャスターで連絡は取っていたけれど、 それでも積もる話は山ほどあった。旅に出ると、この小さな田舎町では絶対に体験できないことばかりだった。
     海にかかる巨大な橋と、天に届きそうなほど高いビルが並ぶ都会。
     迷子になりかけた大きな森。
     砂漠。博物館。跳ね橋。遊園地。
     そして何より、奇妙奇天烈で面白い、たくさんのポケモン達との出会い。

     俺が話すことを、マイカは目を輝かせて聞いていた。こいつは極端に内気なだけで、興味がないわけじゃないらしい。

    「すごいね、本で見たものがいろいろあるんだ!」
    「本で見た以外のものも山ほどあるぞ」
    「シアンはどのくらいたくさんのポケモンと出会ったの? アララギ博士さんからもらったパイロープはまだ一緒?」
    「もちろん。もうチャオブーに進化したよ」
    「姿が変わっちゃったの? すごいなあ。ポケモンって面白いねぇ」

     楽しそうに話すマイカを見て、俺は持ってきたモンスターボールを取り出した。
     ボールを放ると、中からは頭に赤い花を付けた緑色のポケモンが現れた。突然現れた見知らぬ姿に、マイカは驚き怯えて机の下に隠れた。
     全然怖いことなんかないぞ、と俺はマイカに声をかけた。

    「ドレディアのドレライト。マイカがポケモンに興味を持ったら貸そうと思ってたんだ」

     俺はドレライトの頭をそっとなでた。
     一応、俺なりにいろいろ考えて選んだ。爪や牙があったらマイカは怖がるだろう。小型のポケモンもいいけど、万が一、もし万が一マイカが旅に出るなんてことになったら、むしろ人に近い姿のポケモンのほうがやりやすいんじゃないだろうか。影に隠れられるし。まあドレディアじゃちょっと小さすぎるだろうけど。
     こいつなら性格も穏やかだし、マイカにはちょうどいいんじゃないか。何よりかわいいし。そう思って選んだ。
     マイカはテーブルクロスの端からちょこっと顔を出した。が、ドレライトと目が合って、顔を真っ赤にしてまた引っ込めた。しまった、人に近い姿だと余計に緊張するか、と少しだけ後悔した。
     しばらくすると、マイカがまた顔を出した。ドレライトはのんびりとしている。マイカが恐る恐るスカート(のような部分)に手を伸ばしても、全くお構いなしといった様子だった。
     マイカがようやく机の下から出てきた。

    「かわいい……絵本のお姫様みたい……」

     そう言って、マイカはぎこちない様子でドレライトの頭を撫でて、笑った。



     万が一、もし万が一、のことが起こった。
     マイカが旅に出ると言い出した。
     旅に出る前の心配事のひとつだったポケモンへの不安怖が多少なり緩和されたからか、それとも俺の話からの好奇心が外へ出る恐怖に打ち勝ったのか。
     いずれにせよ、旅立つ前にアララギ博士に言われた通りになった。

     マイカが旅に出ると聞いて、母さんはそれこそ嬉しさで倒れるんじゃないかってくらい興奮した。泣くほど喜んで、旅立ちに備えて買ったらしいかばんやら俺とお揃いの帽子やらを取り出した。元トレーナーらしく、冒険に必要なものは全て揃っていた。
     念のためマイカに、俺は一緒には行かないぞ、と言っておいた。
     最初は興味なかったけど、だんだんと楽しくなってきたジム制覇をはじめとして、旅をする中で、博士に頼まれた図鑑以外にもやることがたくさんできてしまった。
     それに何より、俺の冒険は進みすぎていて、マイカにはとても着いていけないだろう。

     そう言うとマイカは、少し不安そうな顔をしながらも、大丈夫、ひとりで行くよ、と言って笑って見せた。
     俺の知らない間に、少し成長したみたいで、正直びっくりした。




     マイカが旅に出て、また少し時が流れた。
     ライブキャスターでの連絡は、相変わらずマイカが俺にかけてくる形で毎日続いていた。俺と違って特に仕事も目的もない旅をするマイカは、時に泣きそうな顔で連絡を入れてきた。
     ポケモンを強くするつもりもないし、リーグに挑戦するつもりもない。大人しくて優しい性格だから、バトルが出来ない。それでもポケモンを連れていると、無条件でバトルを挑まれる。いつどこで決まったルールなのか、トレーナーとしてポケモンを連れていればバトルをしなければならない。それに草むらに入れば否応なしにバトルしなければならない。
     幸い、渡したドレライトはかなり強いので、マイカが何も出来なくても大概は何とかしてくれる(もちろん、その意味も込めて選んだのだが)。
     それでも、戦うポケモンを見ると辛い気持ちになるのだそうだ。

    「ねえシアン、どうしてポケモンはむちゃな戦いでも嫌がらずにやるの?」
    「そりゃ、捕まえたポケモンなら言うことを聞いてくれるさ」
    「どうして?」
    「どうしてって……」

     チェレンやベルや博士は、ポケモンと人間の間には絆があるから、と言っていたが、きっとマイカは納得しないだろう。
     あいつは優しい奴だから、自分が一切傷つかないバトルなんて辛すぎるんだろう。
     ちなみに俺はというと、ポケモンは元々強い闘争本能を持っていて、ボールに入れる、すなわち人間の支配下になれば、より効率よく、より高い確率で勝てるからじゃないか……なんて、他の奴らが聞いたら怒り出すか呆れるようなことを考えていたが。




     またしばらくして、マイカからボールがひとつ送られてきた。旅立つ前に渡した、あのドレライトだった。
     俺は驚いてマイカに連絡をとった。ポケモンがいないと辛いんじゃないか、ドレライトがいなくて大丈夫なのか、と。
     するとマイカは、びっくりするほど、本当にびっくりするほどいい笑顔で、これまで見たことないほどの満開の笑顔で、俺に言った。

    「大好きな、とっても仲良しなポケモンが出来たの!!」

     こんなにかわいい顔が出来たのか、って思った。
     双子の妹だけど、ちょっとだけときめいた。

     それにしても、あの天然記念物級に内向的なマイカと仲良くなるとは、一体どんなポケモンなんだろうか。


     それからというもの、マイカからの連絡が不定期になった。それほど、仲良くなったポケモンと一緒にいるのが楽しいのだろう。
     こっちから連絡を入れれば出るけど、旅に出る前に泣いてお願いしてきた毎日の連絡が来ない。
     初めは少し心配したけど、それでも連絡を入れると必ず輝くような笑顔で出るから、次第に慣れた。

     ただ気になるのは、連絡のたび、マイカがせき込んでいるような様子を見せることだった。

     初めは風邪でも引いたのか、と思った。でも、どれだけたってもよくならない。むしろ悪化しているような気がする。顔色もどことなく悪い。
     とにかく会ってみよう、と思って、俺はライモン遊園地の観覧車にマイカを誘った。人目を気にするマイカと話すには、狭い個室が一番いいことは経験からわかっている。


     観覧車の前で待っていると、遠くにマイカの姿が見えた。まだ30センチくらいの人影を見て、俺は慌てて駆け寄った。
     足元がふらふらとおぼつかない様子だった。額から脂汗が流れていて、顔色も青く、息切れもしている。
     明らかに普通の様子じゃない。
     それでも、マイカは俺を見るとかわいらしい笑顔を浮かべた。
     傍らには、小さなろうそく……ヒトモシがいた。

     2人乗り限定の観覧車に乗ると、マイカは楽しそうにこれまでのことをしゃべり始めた。
     タワーオブヘブンの片隅で、マイカの傍らにいるヒトモシ(ゼオライトというらしい)と出会ったこと。
     いつも人目を避けるようにしているマイカと似て、塔の隅っこで震えていたとか。
     お互いに何か通じるものがあったのか、すぐに仲良くなったらしい。一目ぼれ……とでも言うのだろうか。こういうのを。
     そんなことを、溢れんばかりの笑顔で、時々せき込みながらマイカは語った。

     何か引っかかることがあったのだけれど、マイカがあまりにも楽しそうにしゃべるから、何も言えなかった。



     マイカと別れて、俺はヒトモシについて調べ始めた。
     図鑑やら何やらを調べていくうちに、俺は身体の震えが止まらなくなっていた。

     ヒトモシは、人やポケモンの生命力を吸い取る。
     頭に灯る炎は、その吸い取った生命力を燃やしているもの。

     あくまでも言い伝え、とは書いてあったけど、マイカの様子を見ると、それが作り話だ、とは言えなかった。
     マイカは明らかに弱っている。
     俺はすぐ、マイカに連絡を取った。


     マイカは、俺と会った時より更に弱っている様子だった。それでも、俺と通信する時は笑顔を見せた。
     でも、その笑顔も、以前よりずっと弱弱しくなっているのがわかった。

    「どうしたの? シアン」
    「マイカ、お前のヒトモシなんだが……」
    「ぜ、ゼオ君がどうしたの?」

     ほんの一瞬、マイカの表情がこわばった。それでわかった。
     マイカは、自分が弱っている原因をわかってる。

    「マイカ、ヒトモシをボールに入れたほうがいい」

     そう言った瞬間、マイカの顔が凍りついた。

    「お前もわかってるだろ? そのままずっとそばに置いとくと、命に関わるぞ」
    「……んで……」
    「ん?」

     ライブキャスターの中のマイカが、キッとこっちをにらんできた。生まれついての内気で穏やかなマイカの怒った顔を、生まれた時から一緒の俺も初めて見た。

    「何でそんなこと言うの? 私はゼオ君と一緒にいたいのに、何でわかってくれないの?」
    「な、何言ってるんだ? ボールに入れてても、お前……」
    「違うよ! 全然違う!! 私はゼオ君を戦わせたりしない! 閉じ込めたりしない! ひとりにしたりしない!!」

     呆気に取られていると、マイカは両目からぼろぼろ涙を流しながら叫んだ。

    「シアンなんて、大っ嫌い!!」

     ぶつっ、と乱暴な音を立てて、通信が切断された。



     それがマイカの、俺に向けた最期の言葉になった。



     俺はすぐにマイカを探してイッシュ中を飛び回った。


     2日後、タワーオブヘブンの頂上で、冷たくなったマイカを見つけた。


     傍らには、火の消えた小さなヒトモシが転がっていた。




    +++




     アララギは楽屋で新聞を読んでいた。
     一面のトップには、若い研究者の写された大きな写真付きの記事。大きな白抜き文字の見出しが躍っていた。


    『最年少での受賞が決定 〜ニシノモリ賞 驚きと称賛の嵐〜

     今年度のニシノモリ賞に、イッシュ地方出身のオブシディアン・バサルト・スミス博士(27)が選ばれた。
     ポケモン研究で最も権威ある賞として名高い同賞の受賞者の歴史で最年少となる、27歳4カ月での受賞となった。
     博士号を取得して間もない快挙に、各地で驚きと称賛の声が…………』


     昔、自分自身も獲得したことのある賞だ。この地方出身の受賞者はそれ以来のことだ。
     思い返すと、自分が受賞した時も相当に若かった。そして今回の受賞。他の地方からはイッシュは優れた若い研究者が多いようだと称賛されているようだ。
     アララギは何度もその記事を読み返しては、幸せそうに微笑んだ。

     こんこん、とノックの音が聞こえた。アララギは新聞を畳んで机の上に置き、立ちあがった。
     黒いスーツに、真っ白な白衣。新聞の一面に載っていた写真の中にいたのと同じ顔。

    「受賞おめでとうございます、スミス博士」
    「ありがとうございます、アララギ博士」

     アララギが差し出した右手を、若い研究者は両手で握る。
     ふふっ、と笑って、アララギは言った。

    「さて……堅苦しいのはここまでにしましょうか。ねえ、シアン君?」

     オブシディアン……シアンは笑ってうなずいた。


    「本当に感慨深いわ。あのシアン君がこんな大舞台に立つなんて」
    「自分でもびっくりしてます」
    「受賞記念の講演会、緊張してるんじゃない? 私なんかガッチガチだったわよ」
    「……不思議と、落ち着いてるんです」
    「あら、大物ね」

     アララギは紅茶を差し出した。いただきます、とシアンは頭を下げた。

    「びっくりしたわよ。突然『ポケモンの研究者になりたい』なんて言い出すんだもの」
    「博士のおかげです。旅に出なければ、こんなこと考えることなんて絶対にありませんでした」
    「そうね。シアン君も旅に出て随分変わったもの」
    「そうですか。少しはかわいげのある人間になっていたらいいんですが」

     うーん、あんまりかわいくはないかな? とアララギは笑った。シアンも笑った。

    「『生物学的観点におけるゴーストポケモンの分類』だったっけ? 受賞した研究」
    「ええ、そうです」
    「今日の講演会はその話をしてくれるのかしら?」
    「いえ……今日は違う話をします。一般の方もたくさんいますし、難しい話はしません」

     へえ、と言ってアララギは目を細めた。
     トレーナーとして旅立ち、この地方の頂点に立つかというほどの実力を備えていた。そんな少年が、突然故郷へ戻ってきて「研究者になりたい」と言い出したのは、もう13年も前のことだっただろうか。
     元々頭はいい子供だったものの、どこか冷めている、ある種の悟りでも開いているかのようなところがあった。礼儀はいいし、妹と違ってコミュニケーションの力はあったものの、他人と深く関わりを持とうとはしない。子供らしくない、ドライな関係を好む子だった。
     旅に出てほしいと思ったのは、この子のためでもあったのだ。旅を通してポケモンと触れ合うことで、少しでも相手の心に踏み込める人間になってほしい。そんな願いがあった。
     アララギもかつてはバックパッカーとして各地を旅し、今は研究者としてポケモンと関わる身。ポケモンと一緒にいることでどれだけ影響を与えられるか、自分自身でよくわかっている。

     そんな彼が、自分と同じ研究者の道を選び、遠い地の大学へと進み、大学院を卒業するなりこの快挙。どれほど嬉しかったことだろう。
     アララギはまた微笑んで、紅茶のカップを机に置いた。

    「……妹さんには、もう報告したの?」
    「はい。もちろん真っ先に。ここにいられるのはマイカのおかげですから」

     シアンは懐から、写真を1枚取り出した。まだ幼かったころの、シアンとマイカが写っていた。
     マイカが旅に出る直前に2人で撮ったんです、とシアンは言った。


    「最初は、悲しみと同じくらい憤りを感じていました。僕の言う通りにしていれば、ボールに納めていれば、マイカは絶対に死なずに済んだ。それなのに、あんなに頑なにボールに入れるのを拒否するなんて、馬鹿げているとしか思えませんでした」

     だけど、と言って言葉を切り、シアンは紅茶をすすった。

    「……どんなに気持ちが繋がっていると主張しようとも、ボールの介在によって半ば強制的に支配・被支配の構図は出来上がります。いかに人間同士の『友達』に近い関係になろうとも、直接触れ合えるのは人間がポケモンをボールから出した時だけです」
    「マイカさんは……それを嫌がったのね?」
    「はい。ただ単にバトルが嫌い、というだけでなく、マイカはポケモンと対等な関係になりたかったんです。彼女にとってのポケモンとは、優劣のない、ごく自然に付き合える相手」
    「町を出る前の、シアン君のような相手ね」

     そうですね、と言い、シアンはうつむいた。
     その両目尻にキラキラと光るものを見て、アララギはシアンの頭をそっとなでた。
     もう子供じゃありませんよ、とシアンは苦笑いを浮かべて言った。

    「シアン君とマイカさんのお母さんも、もちろん私も、人間ポケモン関係なく、マイカさんにそんな相手ができることを望んでいたわ。そしてその願いどおり、マイカさんは『一目惚れ』した相手を見つけた」
    「そうです。……ただ残念だった、とにかく残念だったのは……マイカの望む付き合い方では、ふたりが共に生きることは絶対に出来なかったことです」
    「本当に……そうね」

     それはただ単に、ヒトモシに限ったことではない。
     マグマと同じ体温を持つもの。氷点下の冷気を身にまとったもの。体の表面に猛毒を持つもの。ポケモンには様々な理由で、人と直接触れ合えないものがいる。
     暴れ出すと手に負えないもの。国ひとつを滅ぼす力を持っているもの。力が強すぎて、対等な付き合いが困難なポケモンもいる。
     そんなポケモンたちと人間が今こうやって仲良く暮らしているのは、間違いなくモンスターボールというものの存在があるからだろう。
     ポケモンをボールに入れることに抵抗を覚える人は意外と多い。バトルを嫌う人はもっと多い。ボールを手にすると、誰もが少なからず、ポケモンを隷属させている気分になる。

     しかし、そばにいれば体が燃える、手をつなげば全身が凍る、抱きしめれば猛毒に冒されるとわかっていながら、それを実践できるだろうか。
     愛があれば大丈夫、と言う人もいるが、それで命を捨てて、本当に満足できるだろうか。相手が喜ぶだろうか。

     アララギはシアンの頭から手を離した。すみません、とシアンは少し照れたような表情で言った。

    「幼かったんです。僕も、マイカも。マイカはそのことを理解しようとしなかったし、僕はマイカの気持ちを頑なに理解しようとしなかった。マイカはあまりにも情熱的すぎて、僕はあまりにも冷めすぎていた」
    「でも……今の世論では、あなたの意見の方が優先じゃないかしら?」
    「……ヒトモシ……」

     シアンは小さな声でつぶやいた。

    「マイカのそばに、火の消えたヒトモシがいたんです。ゼオライト、ってマイカは呼んでいました。臆病な性格で……マイカに似ていました」
    「一緒に……亡くなったの?」
    「はい。マイカの顔のすぐそばで、本当に寄りそうように。生き物のいないタワーオブヘブンの頂上じゃ、生命力を吸えないヒトモシは長くは生きられない。ボールに入れているわけでもないから、どこでも自由に行ける。タワーの中へ行くなり、人里へ行くなり、方法はいくらでもあった」
    「それなのに……その子はそこにいた」
    「はい。僕はポケモンの言葉はわかりませんし、考えていることもわかりません。だけどそのヒトモシは、マイカのことが大好きだった。マイカのことを愛していた。僕は……そう思います」
    「……そうね……」

     互いへの依存だったのだろうか。
     それとも幼い恋心、だったのだろうか。
     今となってはもうわからないが、はっきりしていることはあった。


     お互いには、お互いが必要だった。

     必要だったからこそ、共に生きられなかった。



     掛け時計が鳴った。
     時間ですね、と言ってシアンは立ちあがった。

     いってらっしゃい、とアララギは若い研究者に手を振った。





    ++++++++++The end





    自宅のブラック主人公とホワイト主人公をモデルにしつつ。
    ……って言うと主人公ズに後ろから刺されそうな気がする。

    ヒトモシの図鑑説明が怖いながらも切ない。
    大好きなトレーナーとずっと一緒にいることはできないんだな、と思うと。

    それにしてもヒトモシかわいいよヒトモシ。




    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【何してもいいのよ】
    【ヒトモシ抱きしめたいのよ】
    【タイトル変えるかも】


      [No.1021] ともしび。 投稿者:久方小風夜   《URL》   投稿日:2010/12/09(Thu) 00:36:40     133clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ともしび。】 【灯火】 【友死日】 【共死日】 【死ネタ






    ※結構な暗い話につき注意。











    ヒトモシ(No.113<イッシュ>/607<全国>)

    ろうそくポケモン
    高さ:0.3m
    重さ:3.1kg
    タイプ:ゴースト/炎

    ヒトモシの灯す明かりは
    人やポケモンの生命力を
    吸い取って燃えているのだ。(B)

    明かりを灯して
    道案内をするように見せかけながら
    生命力を吸い取っている。(W)



    +++



     本当は、知っていたよ。
     ボクが元気になるほど、キミが弱っていってるってこと。

     だけどボクにはどうすることも出来なかった。
     ボクは生きている限り(ゴーストだから生きるって言うのはおかしいのかな?)頭の火を燃やしていなければならない。
     これは周りの生き物から命をいただいている証拠だから。



     ねえ、キミは覚えてるかな。キミとボクが初めて出会った時のこと。
     ボクはとっても臆病で、同じ塔にいた他の子たちとお話も出来なかった。

     だからキミを見た時、最初は怖くてたまらなかったんだ。

     でも、すぐにわかったよ。
     キミとボクは似てるって。

     キミもボクと同じだったんだよね。

     キミも、寂しかったんだよね。



     一緒にいられて、ボクはどれだけ嬉しかったことだろう。
     キミは本当に優しくて、優しくて、優しくて。優しすぎるくらい優しくて。

     どんなに苦しくても、どんなに辛くても、ひとことも責めないで。
     ボクのせいじゃないんだよって、いつも笑ってくれて。

     ボクのせいだってわかってるのに。
     苦しいのも、辛いのも、全部ボクのせいだって知ってるのに。

     それなのに、キミはたくさん笑ってくれた。



     そして、とうとう。

     キミは、動かなくなった。



     星影がきらめく暗い空に、キミが最期に鳴らした鐘の音が響く。

     どうしてここを選んだのかな。
     ここがお墓だから?
     魂を安らげる鐘があるから?

     それとも、ボクと出会った場所だから?



     キミとボクはこの場所で出会って、たくさんのところに行ったよね。

     深い森で迷子になったり。
     大きな街でアイスクリームを食べたり。
     一緒に観覧車にも乗ったよね。

     暗い道ではボクが照らして。
     寒い夜は抱きしめあって。

     ボクはずっと君に甘えていたね。
     キミの体を傷つけてるってわかってたのに。

     それでも、ボクはキミと一緒にいたかった。
     ワガママだけど。

     キミと一緒にいたかったんだ。



     ごめんね。

     ごめんね。

     ワガママで、ごめんね。



     ずっと一緒にいてくれて、ありがとう。



     だいすき。



     ……あれ、どうしてだろう。
     輪郭がぼやけてきた。
     キミの顔をしっかり見ていたいのに、キミの顔が見えない。



     あれ、おかしいな、おかしいな。

     どんどん、暗くなってきた。

     暗い夜道は、ボクが、照らさなきゃ、いけないのに。



     …… あれ、 おか、 し、  な



     な、  にも、    み、    え な 





     ど、   して、  こ、   な、    く ら     ……









     ……………………












    ++++++++++


    灯火。友死日。共死日。


      [No.1020] アッー 投稿者:紀成   投稿日:2010/12/08(Wed) 23:09:19     24clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ああ・・何故毎回テストと重なるのだろうか。
    しかも今回は真っ最中、だと・・?
    でも行きます。絶対行きます。ちょっとお伝えしたいこともありますので。
    年末に言って良いものか分からない内容ではありますが。

    夏に新潟、冬も新潟。
    美術部合宿の話です。行きたいけど定員割れしそうで怖い。
    冬の祭典の前日が最終日らしく、体力が試されます。


    [勉強しろ]


      [No.1019] チャット会 12月11日(土)20時〜 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/12/08(Wed) 22:33:55     28clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    12月11日 夜20時くらいからひさびさにチャット会やろうと思います。
    ストーリーコンテストの締め切りも近いので、まぁなにかきっかけめいたものが作れれば。

    あと、これ(http://twitvideo.jp/044Oj)に参加しているのだけど
    今週末に公開らしいですね。
    うまくすればチャットしながら鑑賞できるかも。

    ポケモン好きボカロPとポケモン絵師の総力を結集した
    「イッシュ地方のポケモン言えるのか!」
    よろしく!


      [No.1018] ―fascinate 投稿者:海星   投稿日:2010/12/07(Tue) 22:46:45     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     もうどうにでもなれ、と思った。
     それくらい、ステージは滅茶苦茶だったから。
     広い会場の壁のあちこちに大きな切り傷が刻まれているのは、シュンがかまいたちを放ちまくった証拠。
     磨き上げられた床が安いスケートリンクみたいにガチガチに凍っているのは、ルナがれいとうビームをぶちまけた結果。
     審査員の溜息が聞こえる。
     会場は不満げにざわめいている。
     司会は顔を強張らせて一言も喋らない。

     ――こんなの、美しくない。私が求めてるのはこんな演技じゃない。

     困った様子でシュンとルナが振り返ってきた。
     仕方ない、今回も退場のブザーを待つしか道はなさそうだ。



     
     トップコーディネーター。
     私は、旅立つときには既にそれを夢としていた。
     小さなキモリをシュンと名付け、隣に連れて、コンテストの開催を耳にしてはすっ飛んで行く。
     その繰り返し。
     いつしか仲間も増え、一次審査を突破できるようになり、そしていくつかのリボンを手にし―――。
     一体いつからだろう。
     ぱったりと良い演技ができなくなったのは。
     これがいわゆる「スランプ」というやつなのだ、と納得するまでに時間が必要だった。
     仲間と心が通じ合えていないのを痛いほどに感じることが何度もあった。
     それを認めたくなくて、でも絶対的な現実が私を押し潰していって。
     以前では有り得ない量の練習をスケジュールに詰め込み、無理してまで連続してコンテストに出場した。
     それでも、一次審査さえまともにアピールできなくて……。
     私は自分の笑顔が無くなってしまっているのに気が付かなかった。
     そして、それをパートナー達が心配しているのにも。
     どんどん無理なパフォーマンスを求めてしまっているのにも。

     ……そうだ――そういえば、今思えば、切っ掛けはあのときかもしれない。
     リオンを新しく仲間にしたとき。
     彼女は出会ったときから自分の殻に閉じこもりがちだった。
     私はそれを、ただ恥ずかしがり屋なだけだと思っていたが、実はそれだけでは無かった。
     しかし、そのとき私はそれに気付いてあげられなかった。
     どんどんリオンは閉じこもり、ついには顔を見ることの方が少なくなって。
     理由がわからない――いくつかのリボンを手にしていた私には多少なりともプライドがあり、リオンが心を開いてくれないことでそれはじわじわと引き裂かれていく。
     コーディネーターとしての自信が欠けていき、演技にも焦りが滲み出てしまうようになった。
     そうだ、それだ。
     次第に私はリオンに触れる事が怖くなっていった。
     私のことを拒絶されそうで。
     私のステージを否定されそうで。
     一番責めていたのは私だったのに――リオンを苦しめていたのは、紛れもない私自身だったのに。
     その海のように澄んだ蒼の殻を、蔑むように見たのは私だったというのに。
     気が付いたら、ご飯を与える際にしかボールから出さなくなっていた。
     リオンはずっと、何も言わずに大人しくボールの中にいた。
     そのまま時は過ぎる……。
     手放そうか、とも考えた。
     そうすれば私は元に戻れると思ったのだ。
     完全に、スランプをリオンに押し付けて。
     そんなときだった。
     ひとりの少年が私にポケモン交換を申し込んできたのは。
     俺、みずタイプのカッコいいポケモンが欲しいんだ。と彼は言った。
     私は即座にリオンの名を口にした。
     それを申し訳ないとも思わずに。
     彼は喜んでそれを受け入れると、早速ポケモンセンターに駆け出し、私を手招きして呼ぶ。
     私は――私は、解き放たれる思いだった――。
     すぐに自動ドアに駆け込み、ラッキー達が忙しく働く奥にある、大きな転送機械の片方の窪みにリオンのモンスターボールを乗せた。
     一度も言葉をかけないで。
     少年は一度ボールからケムッソを出して何やら言っていたが。
     数分後には、私の手元にはリオンはいない。
     代わりにこちらを見つめてきたのは、殻を持たない、大きな毛虫ポケモンだった。
     進化したら、美しい蝶か怪しい蛾になるという。
     どちらにしてもコンテスト向きだ……ぼうっとした頭で思った。
     少年が早速ボールからリオンを出そうとする。
     私はちらりとそれを確認すると、逃げるように走ってポケモンセンターを後にした。
     リオンが私のポケモンだったということは無かったことにしよう。
     これからは、ケムッソ。
     ケムッソが私のポケモン。
     ケムッソがリオンの代わり。
     リオン――リオン!
     結局、普段あまり運動をしない私の体力はすぐに尽き、近くの茂みに座り込む。
     呼吸を整えようとして、深呼吸を繰り返す。
     不意にリオンとの思い出が私の頭に流れ出した。
     違う!
     リオンはケムッソ。
     ケムッソなの!
     両手で頭を抱えて思い込もうとする。
     そこに、ドタドタと騒がしい足音が聞こえてきた。
     茂みから顔を覗かせたのは、さっきの少年だった。
     「おい! 言ってたポケモンじゃないじゃないか! 俺のポケモン返してよ!」
     少年がモンスターボールを突き出してくる。
     つい、私が勢いのまま受け取ると、少年は私が抱えていたケムッソを乱暴に引っ張り、ケムッソのボールを探し当て、引っ手繰って、行ってしまった。
     「え、ちょっと!」
     叫んでも届かない。
     恐怖が帰ってきた――しかし、少年が言っていたことはどういうことだろう?
     私は彼に確かに「パールル」と告げたのに。
     恐る恐る、私はボールを開いた。
     そして出てきたのは。




     今、私はステージに乗っている。
     二次審査、それもファイナル、決勝戦。
     まだまだグランドフェスティバルには遠いけれど、今の私には自信がある。
     相手のトレーナーは、ドンメルとジュペッタを繰り出してきた。
     最近、ここホウエンのコンテストでも、ボールに特別なシールを貼ったカプセルを被せる、「ボールカプセル」が流行っている。
     シンオウが発信源らしいが、それにより、ポケモンは登場時に様々な効果を浴びてアピールをすることができるようになった。
     実際、ダブルパフォーマンスが増えたのもシンオウの影響だろう。
     今も、バトルでいうと「ダブルバトル」の形式で、決勝戦が始まろうとしている。
     ドンメルはカラフルな炎を纏い、ジュペッタは弾ける雷を飛ばしながら、ステージに降りた。
     さあ、今だ。
     私のポケモンを一番輝かせる方法を散々に考えてきた。
     それを今!
     「Let’s fascinate! ルナ、リオン!」
     ルナ――ポワルンが、白い煙と小さな星に包まれて登場する。
     回転しながら空中に留まると、煙は溶けるように消え、星は弾けた。
     そして、リオン――サクラビスは、昔の殻の色のような蒼の泡を渦巻かせながら空に飛び出し、身体をくねらせて泡を自在に操った。
     会場の盛り上がりを感じる。
     そう、そう、この感じ!
     決戦の始まりの合図が出される。
     司会の声が高々に響く。
     相手のポケモンが動き出す。
     「ルナ、あまごい! リオン、ルナの下まで移動、うずしお!」
     ルナがふわりと浮きあがり、身体を震わせた。
     そしてその下へとリオンが滑り込んでくる。
     空にいるルナへの攻撃は後回し、と考えたのか、相手の攻撃はリオンに向けての集中攻撃だったが、リオンはそれをするりと美しく避けた。
     相手のポイントが下がる音がする。
     雨粒が、ぽたり、ぽたりと降ってきた。
     そしてリオンが首を持ち上げ、ルナに向けてうずしおを起こし始める。
     回転しながら徐々に大きくなるうずしおは、すぐにルナを巻き込んだ。
     司会を中心に、疑問の声が聞こえる。
     しかし、これが新しい私達の技。
     焦りを露わにしながら、ドンメルのかえんほうしゃやジュペッタのシャドーボールがうずしおに飛んでくるが、圧倒的な水の威力に掻き消されてしまう。
     いや、寧ろ、取り込むように巻き込んでしまう。
     これも狙いの内だった。
     うずしおが雨を吸い込む。
     巨大化を始める。
     「今よ! リオン、うずしおを放って! ルナ、回転しながられいとうビーム!」
     リオンがいっぱいに溜めたうずしおを力に任せて解き放った。
     そして、その中で、何やらクリアブルーの物体が動いたと思うと、高速回転をし始め、気圧で鋭く尖り始めるうずしおの最先端部分に向けてれいとうビームを発射した。
     ルナだ。
     雨の姿になっている今、ルナはみずタイプであり、うずしおの中でも目が見える。
     高速回転することでうずしおの動きを調整しつつ、れいとうビームで凍っていく反動を生かして外に脱出した。
     今や、うずしおは巨大な弾だ。
     鋭い氷の弾。
     しかもうずしおは、ルナが水中に残してきた回転の力で更に尖っていく。
     「行っけー!!」
     力の限り叫ぶ。
     勿論、これで倒れなかったときの為の技の構成も考え済みだ。
     しかし大技が決まらなければ、今までの練習の成果が無い。
     練習よりも、一段と大きく綺麗な出来だった。
     渦氷の銃弾は真っ直ぐにドンメルとジュペッタに衝突した――!
     白い煙が辺り一面に広がり、事態がわからなくなる。
     それでも、不思議と、私にはルナとリオンの居場所と気持ちがわかる気がした。
     やりきった感じだ。
     まあ、終わってはいないのだが。
     さあっと煙が晴れた時、雨の中で、ドンメルとジュペッタが目を回して倒れていた。
     「ドンメル、ジュペッタ、共にバトルオフ!」
     司会が叫ぶように伝える。
     バトルオフ――勝った、私は勝ったのだ。
     ルナとリオンが抱きついてくる。
     久しぶりに感じる確かな感触。
     勝利の快感。
     喜び――。
     抱き合いながら、きゃあきゃあと燥ぐ。
     歓声が私達を包む。
     二か月後のグランドフェスティバルまで、リボンは、あと四つ。



    ――――

     コンテストものを書きたくて…ただ、それだけなんですorz
     「fascinate」とは、魅せる、魅了する、魔法をかける、のような意味があるそうです

      シュン→ジュプトル
      ルナ →ポワルン
      リオン→サクラビス

     多分続きます。
     でも多分です;

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】


      [No.1017] 審査方法決定 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/12/07(Tue) 22:12:06     92clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    審査員審査方法について決定したのでご説明致します。


    ■審査方法(一般投票、審査員投票共通)

    投票期間になったら投票フォームを設置致します。
    すべての作品を読んでくださっていれば、参加条件は特にありません。
    小説執筆経験などの有無にかかわらずあなたの感覚で審査をしてください。

    ・点数評価
    ☆、☆☆、☆☆☆ の三段階評価。
    ☆が多いほど評価が高い。参加点という形で必ず☆1個はつく形になります。

    ※応募作品の中に自分の作品がある場合、自作品への評価は☆としてください。
    (事実上、参加点のみ受け取る形になります)

    ・感想/批評(審査員のみ強制、一般投票は書いても書かなくてもいい)
    ☆をつけた理由、ツッコミどころ、よかったとこ、お前○○だろw、愛の告白(笑)その他なんでも
    審査員の方は最低100文字は書いてください。上限はありません。フォームが許す限り好きなだけ。

    ・記名
    自由。伏せても出してもよい。
    審査員はそれっぽく出すのを推奨します。

    ・投票フォームとは別に自由感想フォームを用意する予定
    <こんなときにご使用ください>
    全部は読めなかったけど1個にだけ感想を送りたいような場合
    あるいは後で感想書きたくなったような場合


    ■審査員募集!

    応募作品に対して、規定の方法で審査、100文字以上の感想(あるいは批評)を書いてくださる方を募集しております。小説の執筆経験は問いません。興味のある方は pijyon★fk.schoolbus.jp まで。

    <審査員制導入の狙い>
    個人的な見解ですが、ポケモンというジャンルにおいてビジュアルに訴えるイラスト等に比べると、小説は感想の機会があまり得られることがないように思います。当コンテストでは「応募すれば必ず感想(批評)がつく」ということを応募メリットのひとつとして提供できればと考えております。







    審査員は自分の作品は評価せず、参加点の☆1個のみ与えるに決まった経緯

    ■相談

    ―――です。一つだけお願いが。
    今回私自身が「―――」の筆者でもあるので、
    構図として「筆者が自作作品を評価する」という形になってしまいます。
    これは取り様によっては公平性を損なうと思われる可能性があるので、
    ◆「コンテスト投稿者の名前が明らかになるまで、評価者(―――)の名前は伏せる」
    ◆「コンテスト投稿者の名前が明かされた段階で、評価者(―――)の名前も公表する」
    ◆「『―――』には評価/点数を付けない(理由として『評価者が当該作品の筆者のため』と明記)」
    という形にできないでしょうか?


    ■それに対する返事

    No.017です。

    > ◆「コンテスト投稿者の名前が明らかになるまで、評価者(―――)の名前は伏せる」
    > ◆「コンテスト投稿者の名前が明かされた段階で、評価者(―――)の名前も公表する」

    この2点はクリアできるかと思います。

    > ◆「『―――』には評価/点数を付けない(理由として『評価者が当該作品の筆者のため』と明記)」

    問題はここですね。
    個人的には、自分の作品が一番いいと思ったら素直に☆☆☆つけていいと私は思うのですけど
    不公平感を感じる人がいるだろうなというのはいなめないですね。
    投票人数が20人くらいいれば関係ないと思うのですが
    はじめての開催だと人数が読めませんし、投票数が少なかった場合(最悪、審査員票だけだった場合)
    自分の作品が1,2位僅差で、自作品評価が決め手になるとしたらたしかにイヤだなぁというのはわかります。
    自分の作品に関しては不利になるの覚悟で、審査員が自分の作品を評価するときはみんな☆(最低評価)にする方向でいかがでしょうか?
    (審査員なのでルール上こうなります、と明記の上)
    1つの作品に対する投票の数がおかしくなってしまう為、なしというのはやめたいです。
    幸い最大☆2個分しか差はつかないわけですし、いい作品ならば一般投票や他審査票でひっくり返せるレベルだろうと思いますので。
    審査員のみなさんいかがでしょうか?
    ご意見ありましたらよろしくお願い致します。


    ■意見その1

    自作は審査対象外で、☆ゼロが常識かと思います。
    そもそも自分が真剣に賞をほしいと思うなら、そのコンペの審査員をやっちゃいかんです(笑)。
    ただ、今回は参加賞として☆1は割り振るという方針を確認しているので、
    「配点:☆/理由:参加点/評価:自作のため評価なし」
    ……こんな具合で問題ないかと思います。


    ■意見その2

    しょうがないでしょうねぇ
    でも気持ちとして文言は「最低評価にする」ではなく
    「評価をつけない(参加点のみとする)」でお願いしたいです。


    とのことでしたので、
    審査員は自分の作品は評価せず、参加点の☆1個のみ与える という方向でいきたいと思います。




    ちなみに審査員まだまだ募集中です。
    応募メリットとしてできるだけ感想の数を保証したいからです。
    小説の執筆経験は問いません。感想書いてくれればOKです。

    やってもいいよーという方は pijyon★fk.schoolbus.jp(★→@) か
    掲示板書き込みにてお願い致します。


      [No.1016] サイト改装 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/12/05(Sun) 22:43:07     82clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    http://masapoke.sakura.ne.jp/pokemonstory-contest.html

    殺風景だったのでサイトももう少し企画らしい装いにしてみました。
    解釈によっては物騒ですが(笑)

    生命力燃やされても読みたいほどの小説が来ればいいな!wwww
    との思いを込めています(笑)

    そんなわけだから皆さん応募してください。
    お願いします(笑)!
    審査員も募集してます。

    やりたい人はメール(pijyon★fk.schoolbus.jp)ください。


      [No.1014] ミスミのカミヤカオリ観察日記 投稿者:紀成   投稿日:2010/12/05(Sun) 10:40:12     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ミスミが変な物をつけはじめた。byミコト

    某月某日 晴れ

    次の小説のネタにするため、ある人物を観察することにした。
    その名はカミヤカオリ。私のクラスメイトで、ミステリアスな雰囲気を持つ。
    別に美人とかそういう問題ではない。個性的な物は全て私の小説のエサになるのだ。
    常に集団から一歩離れたポジションで、静かに皆を見ている。寂しいという雰囲気は全く感じられない。むしろけなしている気がする。
    私が知りたいことは、ただ一つ。
    彼女に危害を加えようとした者が、どういう風になるのか。
    噂では、病院通いになるほどのダメージを受けるらしいが・・
    取材に危険はつきものである。


    某月某日 曇り

    早速朝からの彼女の行動を書いてみる。
    遅刻ギリギリで教室に入ってくる。別に寝坊をしたわけじゃなさそうだ。ちゃんと髪が梳かされている。
    一時間目は音楽。歌のテストだったので、個室で受ける。先生に質問してみると、彼女は歌が上手いらしい。
    「オペラ歌手志望?」と聞いたら、そっけなく「いえ」と言われたそうだ。
    二時間目は英語。彼女は予習ノートを見せた後はずっと外を見ていた。時々髪の毛が引っ張られたりしているが、何も言わない。
    ってか、誰も引っ張ってないのに・・
    三時間目は数学・・だったんだけど、突然後ろの子が倒れた。酸欠と痙攣。すぐに保健室に運ばれたけど、なんで酸欠・・
    彼女はずっと欠伸をしていた。
    四時間目は国語。シンオウ地方の神話をやった。この時はちゃんと起きていた。なんか雰囲気がいつもと違う気がしたが、気のせいだろうか。
    昼食の時、彼女は教室を出て行った。後を追いかけようとしたら、転んだ。何も突っ掛かる物なんて無いんだけどなぁ。
    あと、右足を掴まれた気がする。
    五、六時間目は体育でバスケットボール。ドリブル練習をしていたら、どこからともなくボールが飛んで来て、私の頭にぶつかった。痛い。
    彼女には協調性が無いため、試合ではひたすら突き進む。でも妨害しようとした相手は必ず派手に転ぶ。

    放課後、彼女の姿が見えなくなったため捜しに行ったら、案の定今日転んだ子に睨まれていた。
    もしかして私は今、とんでもない現場に遭遇してるんじゃないのだろうか・・
    彼女を叩こうとした瞬間、その子の動きが止まった。いや、固まったの方がいいかもしれない。
    何か黒っぽい青色のオーラがその子を包み、そのまま崩れ落ちた。
    私は怖くなって、そのまま逃げ帰ってきた。

    某月某日 雨

    昨日、彼女に危害を加えようとした子は休みだった。当分来れないらしい。
    ふと彼女と目が合った。視線をそらすことが出来ない。
    その時、私は見た。彼女の影の中から四本の黒い腕が出てくるのを。


    「本当なの?」
    僕は机に倒れているミスミに言った。
    「うん。流石に怖かった」
    「後輩にも聞いたんだろ」
    美術部の中二の子。名前は空峰 緑。ソラミネ ミドリ だ。
    「同じ境遇でも無いって。一つだけ教えてくれたけど」
    「どんな?」
    ミスミは周りを見た後、徐にダストダスを出した。指示を出す。
    「変な雰囲気とか、しない?」
    ダストダスはキョロキョロと見渡した後、首を振った。
    「あのね」

    『カミヤの血が流れていると言えば・・大丈夫でしょうか』


    「カミヤ?」
    「そ。私も調べてみたの。漢字だと火宮。そして分かったの。
    あの子は・・」

    言う前にガラッという音がした。
    「・・・」
    噂をすれば、とは正にこのこと。
    カミヤカオリが立っていた。
    「昨日から五月蝿いんだけど。雰囲気でバレバレだよ」
    「な、何のことでしょうか」
    ミスミがテンパっている。敬語を使うなんて、相当動揺している証拠だ。
    「私のことを調べてるんでしょ。別に良いけど、何にも面白くないから」
    それだけ言うと、彼女は教室を出て行った。
    それだけなら気にしなかったかもしれない。

    でも。
    僕達は見た。

    彼女の影を。

    一つしかない彼女の影に、何か沢山の影が繋がっているのを。


      [No.1013] Re: 歌に誘われて… 投稿者:   投稿日:2010/12/05(Sun) 00:10:21     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    セピア様、感想ありがとうございます!

    >感想ですが、悲しい別れの中に少女とラプラスの温もりを感じられる作品でした。
    最初の出会いから、別れの時までが一定のリズムで書かれ、
    その後は季節の移り変わりで時間の流れを速く見せているところも良かったです。
    特に語り口調ならではの最後の“オチ”の部分が秀逸でした。

    な、何と……! ほめていただいて幸いです。
    何というか、物語風に書いてみたいなぁ、と思ったので。
    季節の移り変わる場面は自分でも少し淡々とし過ぎてるかもしれないなぁ、と思ってみたりもしたのですが、気に入ってもらえて何よりです^^

    >なぜラプラスの声が再び聞けるようになったのか。
    ラプラスが一度洞窟から去って、再び戻って来たのか。それとも全く別のラプラスの声なのか。
    続きを考えたくなりますね^^

    そう言ってもらえて何よりです。
    あ、自分も続きが書きたくなってきた……(うずうず

    >アドバイスとしては、少女の心中の台詞の上下で行間が空いていると読み易かったかもしれません。
    『()』ではなく『――――』を使ってみては如何でしょうか?
    ありきたりなアドバイスで申し訳ないのですが…

    た、確かに……後から見直してみると我ながら見づらいですね(汗
    修正してきます、アドバイスありがとうございました!

    それでは、感想ありがとうございました!

    PS
    そういえば、昨日これを投稿しようとしていたらミスをして全部消滅したんですよね……。泣きながら直しました。
    くそ、自分の馬鹿、何で上書き保存してなかったんだよぉお!!(←
    ふと叫んでみたくなりました(爆


      [No.1012] 歌に誘われて… 投稿者:セピア   投稿日:2010/12/04(Sat) 15:50:35     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ラプラスが決まった曜日に来るのは、少女に会うためだったのか…!


    どうも、ラプラスと聞いて飛んできました。セピアと申します。


    感想ですが、悲しい別れの中に少女とラプラスの温もりを感じられる作品でした。
    最初の出会いから、別れの時までが一定のリズムで書かれ、
    その後は季節の移り変わりで時間の流れを速く見せているところも良かったです。
    特に語り口調ならではの最後の“オチ”の部分が秀逸でした。
    なぜラプラスの声が再び聞けるようになったのか。
    ラプラスが一度洞窟から去って、再び戻って来たのか。それとも全く別のラプラスの声なのか。
    続きを考えたくなりますね^^

    アドバイスとしては、少女の心中の台詞の上下で行間が空いていると読み易かったかもしれません。
    『()』ではなく『――――』を使ってみては如何でしょうか?
    ありきたりなアドバイスで申し訳ないのですが…


    それでは、素敵なお話ありがとうございました。


      [No.1011] 感想ありがとうございます! 投稿者:セピア   投稿日:2010/12/04(Sat) 15:22:46     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    おおっと、感想が付いてる…!?早速返信をば…


    >キトカゲ様

    >まずノクタスに惚れました。なんてかっこいいノクタス!
    >喋り方がいちいち洒落ていて格好良い。ノクタスの声が聞こえてくるようでした。
    実は当初の予定では渋いノクタスを書くつもりだったのですが、途中から愉快なキャラになっていました(笑
    まあ結果オーライということですね←

    >演技とはいえ少女を脅したり、と思えば次の場面では必死に命乞いしたりして、憎めない。
    >妙に人間臭い陽気なノクタスとお転婆少女。二人の掛け合いも楽しくてなりません。
    ノクタスは悪タイプですが、どうにも憎めない容姿ですよね!
    楽しんで頂けたようで何よりです!

    >愉快な出会いのひとコマ、楽しませていただきました。
    こちらこそ、ご感想ありがとうございました^^


    >久方小風夜様

    >ちょうどコンテスト用に似た題材の話を練り練りしていたので、タイトル見た瞬間リアルに飛び上がりました。
    そうでしたか。久方様のお話も楽しみにしております!

    >何て素敵なノクタス。
    >このお茶目さん! その上特技がくさぶえなんて素敵すぎる!
    思いのほかノクタスのキャラは好評のようですね、ありがたいことでございます。
    特技の“くさぶえ”はサボネアのタマゴ技から考えました。
    後付け設定だったのですが、それが功を奏したようですね^^

    >きっとうまくやればあっさり倒せるはずなのに(草4倍だし)逆に倒されてるノクタスかわいい。
    ゴロちゃんの“アームハンマー”が急所に当たったようです(笑)

    >ニヤニヤさせていただきました。
    こちらこそ、ご感想ありがとうございました^^


      [No.1010] ひとつ買います 投稿者:海星   投稿日:2010/12/04(Sat) 12:37:12     66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 魂守り 販売中!

     www
     とりあえずひとつ買います
     
    > 家のミカルゲは庭に埋まっていたんですよ。

     埋まw
     想像してみると何とも可愛らしいwww
     掘り起こしたいですよっこらせ

     コメントありがとうございました!
     怖い…だなんて恐縮ですorz
     ケタケタケタ(゜∀゜) 


      [No.1009] おめでとうございます 投稿者:久方小風夜   投稿日:2010/12/04(Sat) 12:13:16     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     あれ? 何だろう。目から汗が……。

     カオリさんめ、かわいいところあるじゃないか。胸がキュンとしてしまいました。
     ミドリの家庭の事情と誕生日を知っているカオリ。数少ない携帯の登録にカオリが入っているミドリ。
     2人がどんなきっかけで知り合ったのか。気になるところですね。

     どんどん繋がっていく紀成さんの小説の世界。今後の展開も楽しみにしております。


     そしてお誕生日おめでとうございます!
     16か……若いな……って、このセリフ多すぎますね。
     今後ともよろしくお願いします。


    【エジプト行きたいのよ】


      [No.1008] ノクタスかわいい 投稿者:久方小風夜   投稿日:2010/12/04(Sat) 11:23:51     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ちょうどコンテスト用に似た題材の話を練り練りしていたので、タイトル見た瞬間リアルに飛び上がりました。
     こんにちは、久方と申すものです。

     何て素敵なノクタス。
     このお茶目さん! その上特技がくさぶえなんて素敵すぎる!
     きっとうまくやればあっさり倒せるはずなのに(草4倍だし)逆に倒されてるノクタスかわいい。

     ニヤニヤさせていただきました。


      [No.1007] 特別な日 投稿者:   《URL》   投稿日:2010/12/04(Sat) 10:35:13     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ハッピーバースデー、ミドリさん、紀成さん。
    十六……若いなあ。
    誕生日が嬉しい嬉しくないに関わらず、祝ってくれる人がいるのは良いものです。


    グローバルだな!とそれはさておき。

    カオリさんとミドリさんに接点があったとは……
    シリーズものならではのこういう関係性は好きです。
    あとカオリさんの意外な一面を見れたことも。
    彼女の方期待してますよ。

    では、これからの一年が実り多いものでありますよう。


      [No.1006] コメントありがとうございます! 投稿者:紀成   投稿日:2010/12/04(Sat) 07:06:47     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    クーウィさんのコメントを読んでいたら、大貫妙子さんの『we miss you 〜愛のテーマ〜』の最後のフレーズが浮かんできました。

    『ただ一人道を行く 小さき者に 明かりを』

    カオリとミドリは、同じ小さき者なのかもしれません。
    でも、進む道も今までの道も全く違う。
    『会おうと思えば親に会える』ミドリと、『どう足掻いても親には会えない』カオリ。
    ミドリの理由は書けたので、今度はカオリの方にご期待ください←

    また一つ年を取りました。
    もう喜びとか感じなくなりました(笑)
    これが精神的に成長したと言えるのだろうか・・

    ありがとうございます!


    追伸。

    六日に私のクラスメイトがエジプトに旅立つそうです。
    親の転勤で、三年間帰って来ないそうです。
    グローバルだな!と突っ込んでやってください。

    では。


      [No.1005] 一年に一度は十人十色 投稿者:クーウィ   投稿日:2010/12/04(Sat) 04:02:24     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    深夜徘徊は一種の習慣。  …ならばこそ、時々思いもかけないものに出会うもんです……

    まさか、あの両作品が繋がるとは思わなかったなぁ…(汗)
    どんどん広がるグラス&ゴーストワールドが何処に行き着くのかが、新しく今後の楽しみに加わりました(笑)

    …この掲示板(ここ)は、本当に巡回するに期待を裏切らないから、嬉しい限りだわぁ……(嬉々)


    >小さな館で知り合ったツタージャは、最近では私の家で一緒に過ごすようになっていた。

    どんどんと距離が縮まってますねー  …良い事だ!

    ツタの介の今後が非常に気になるところですが…特に、カオリさんとゴーストポケモン御一行に彼が出会った時、果たしてどの様に感じ、また反応するのでしょうか……?
    既に別れというものを経験した事のあるツタージャと、デスカーンらとの接触が、両者にどの様な印象を与えるのかが、個人的に興味深い所です。


    >携帯電話にはメールも着信も入っていない。両親が外国に行くときに買ってくれた物だ。ほとんど登録していないけど。

    そこに何故、校内でもトップクラスの異色株の登録がなされてるのか!?
    …こやつ、なかなかやりおるわ……!(笑  褒めてますよ〜)

     
    >「喜んでくれるといいんだけど」
    カオリの手には、小さなステンドグラスがあった。
    端っこの方に名前が書かれている。
    『MIDORI』
    と。

    ワザワザ用意したというのか……
    確かに変わり者は、何時も爪弾きされるものですが――ある意味では、そこで同時に、ヒトとしての器を試されているのかも知れませんね。

    HAPPY BIRTHDAY !
     
     
     
    16年目ですかぁ……  ふむ、お若い…!(笑  爆)

    自らのその頃と比べると、度合いが違い過ぎて最早比較するのも情け無い限りですが……取りあえず、このままのペースでお進みください…!
    これだけのペースで、これだけの内容の物語がどんどん紡げるのであらば、やはり合っておられるのだと思いますよ。  これからも頑張ってくださいね!


    …今まで過ごされた15年間は、紛れも無く、紀成さんだけの物です。  
    その間に得る事が出来た物の重みは、年を経て落ち着いていくに従って、自然と深みを増していくものですから…今はただ、やってみたいと思われる事を、精一杯にやってみてください。

    それがきっと、紀成さんの望まれておられる道を、様々な形で助けてくれる筈ですから――   …などと、オジンは語ってみたりした(苦笑  爆) 


    それでは。  ……最後にもう一度、おめでとう御座います。

    行きがかりの赤の他人では御座いますが…次の16年目が、紀成さんにとって幸多きものとなりますように――


      [No.1004] 硝子が生まれた日 投稿者:紀成   投稿日:2010/12/04(Sat) 00:00:13     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    幼い記憶―

    母さんは料理ベタだった。チキンを焼けば脂っこくなり、ケーキのクリームはいつも甘すぎた。
    それでも、欲張って食べていた。たとえ次の日の朝、胸やけで起きることになろうとも・・
    父さんは毎日仕事が遅くて、帰ってくる時間は大体日付を過ぎてからなんだけど、その日だけは六時くらいに帰って来てくれた。
    大きな荷物を抱えて。


    中学に入るまでは、毎年そうだった。
    でも、今は違う。家族が一つの場所に集まるなんて、絶対無い。
    なぜって、母さんも父さんも外国にいるから。いつもスケジュールがパンパンだから。
    特にこの時期は年末のため、休みを取るなんて不可能に近いこと。
    だから、時々他の月の子が羨ましくなるんだ。

    寒さを感じて、私は目を覚ました。ベッドの上でツタージャが丸くなっている。
    どうやら、ステンドグラスの歴史の本を読んでいてそのまま寝てしまったらしい。窓が開いている。
    私は窓を閉めると、暖房を入れた。続いてツタージャに毛布をかけてやる。こんな時期に何もかけないで寝たら、風邪を引いてしまう。
    「・・」
    窓の外を見る。闇に包まれた空に、星が少し。
    空がいやに遠く見えた。

    小さな館で知り合ったツタージャは、最近では私の家で一緒に過ごすようになっていた。
    私もそれが嬉しかった。一人は流石に寂しかった。誰にも言ったことはなかったけど、話し相手がいないことは、なかなか辛いものがある。
    今日学校であった出来事も、嬉しいことも悲しいことも誰とも分かち合うことが出来ないのだから。
    でも、ツタージャに出会ってからはすごく楽になった。寂しくないし、温かいし。
    何より、話し相手がいるのが幸せだった。

    携帯電話にはメールも着信も入っていない。両親が外国に行くときに買ってくれた物だ。ほとんど登録していないけど。
    そんなディスプレイを見つめていた時だった。
    「!?」
    手の中で携帯電話が震えた。着信だ。メロディは、チャイコフスキーの『弦楽セレナード』。
    ディスプレイに出された文字は、六つ。

    『カミヤ カオリ』

    カミヤカオリ。漢字で書くと『火宮香織』うちの私立学校の高等部一年生だ。私は中二なので先輩に当たる。
    とにかくミステリアスな人で、意味深なことを言っては周りの人を疑問の渦に叩き込む。だけど悪い噂も多い。彼女に悪意を持って接した人は、必ず学校を去るらしいのだ。
    「はい」
    冷静な声が聞こえてきた。
    「ハロー。元気?突然なんだけど、今から家の前に来てくれないかな」
    カミヤ先輩の家は、この街の外れにある。知る人は少ないが、大きなお屋敷だ。
    「今から、ですか?」
    「寂しいならポケモン連れて来てもいいよ」
    この時間に一人で行くなんて無理がある。電話を切った後、私はツタージャを起こした。
    そして鍵をかけ、家を出た。


    「デスカーン、ヒトモシ達を呼んで来て」
    カオリは電話を切った後、指示を出した。側に置いてある袋には大量のクラッカーが入っている。
    『人を呼ぶなんて初めてじゃないのか』
    「普通なら呼ばないよ。でも、何か放っておけなくて。親がいないのは同じだし」


    一人で寂しくそれを向かえる点が、共通していた。
    共通していないのは、ゴーストタイプを扱えることと・・

    親に会おうと思えば会えることだろうか。

    「喜んでくれるといいんだけど」
    カオリの手には、小さなステンドグラスがあった。
    端っこの方に名前が書かれている。
    『MIDORI』
    と。

    ミドリがカオリの家に来るまであと一時間。
    ミドリがカオリの家のドアを開けるまであと五十分。
    カオリがミドリをクラッカーで迎え入れるまであと四十分。

    ミドリの驚く顔が笑顔になるまで、あと・・

    [HAPPY BIRTHDAY MIDORI!]

    ーーーーーーーー
    12月4日。
    ミドリの誕生日のついでに、紀成の16年目の歴史も祝ってやって下さい。


      [No.1003] んん? あの季節? 投稿者:CoCo   投稿日:2010/12/03(Fri) 23:20:23     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
    毒男「何言ってるんだ大丈夫か、今日は十一月三十三日だぞ。それに今日カントー地方じゃ日中は気温が20度を超えたらしいぜ。心も身体も寒い季節は遠いなあっはっは」


     あの季節ですね。
     とりあえずhttp://www.nicovideo.jp/watch/nm9167769でも聴きながら書き殴ろうかと思います。

     彼周辺で書きたいことが二、三溜まってきたので、今度は連載板にスレ立てするかもしれません。
     そうすれば細切れで連投する罪悪感がないので、二月十四日にも安心して対応でk(ry


      [No.1002] 呼び歌 投稿者:   投稿日:2010/12/03(Fri) 14:19:30     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    遙か昔のこと。
    西の地の南端に、山に囲まれた村がありました。村はひどく貧しく、人々は木々を木炭にする仕事で生計を立てていました。ある日、村の東にある洞窟を、1人の少女が背にかごを背負い、片手で松明を掲げ帰路を急いでいました。
    少女は村の北にある町で木炭を売り、その金で木の実や野菜を買って帰る途中でした。
    少女は寒さで身震いしました。少女の着ている服は薄手でひどく汚れ、おまけにそこかしこに穴が開いていました。
    着物の隙間や穴から冷気が潜り込み、時折洞窟の天井から滴り落ちる水滴が、むき出しの腕にひどく冷たい感触を残します。
    少女が両手をこすり、掌に白い息を吐きかけた時でした。
    何か音が聞こえた気がして、少女は立ち止まりました。洞窟の風鳴りとは違うようでした。
    どちらかといえば生き物の声のようです。
    しかしよく洞窟にいる蝙蝠や鼠の鳴き声ともまた違った感じです。
    それに、聞く者の心をかき乱すような悲しい声でした。
    少女の脳裏を腹をすかして自分の帰りを待つ家族の姿がよぎりました。しかし素通りするのにも何やら気が引けて、ためらった末に少女は音の聞こえてくる方へ向かいました。音が聞こえてくるのは細い岩の割れ目でした。少女は岩の割れ目に身体を潜り込ませました。


    ……どれほど闇の中を歩いたでしょうか。不意に目の前が開けました。
    少女は思わず歓声を上げました。目の前には岩に囲まれた地底湖が横たわっていたのです。
    手に持った松明の光が黒々とした水面に反射し、ゆらゆらと波打っています。
    好奇心に駆られ、驚くほど透き通った冷たい水に手を差し入れ、少女は1口飲み……慌てて吐き出しました。塩水だったのです。

    ―――――この湖、海と繋がっているのかな。

    そう思って立ち上がった時、またあの音が聞こえてきました。しかも今度ははっきりと。
    それは旋律でした。この世のものとは思えないほど美しく、そして悲しみに満ちた声。
    少女は音の聞こえてくる岩陰からそっと顔を出し、目を見張りました。
    背に甲羅を背負い、4つのひれを持つ1頭の海獣が水際に横たわっていたのです。
    あの旋律は、この獣が出していたのです。しかし、海獣が苦しげに喘いで歌はふっつりと途切れました。
    よく見ると首筋に傷があります。血が流れていました。あの歌声は、仲間に助けを求めてのものだったのでしょう。
    少女は憐みの念に駆られて岩陰から出ました。その途端、海獣は恐ろしいうなり声を上げ始め、少女を睨みつけました。

    ――――食べられる……。

    一瞬そんな事を思い、少女は足をすくませましたが、獣の唸り声はゆっくりと小さくなっていき、遂には力尽きたように身体を岩床に横たえてしまいました。少女は慌ててその傍に駆け寄りました。首筋の傷は深くはなかったようでしたが、ひどく出血しています。このままでは命に関わるかもしれません。その時、ふと少女は思いついて背中のかごから1つの木の実を取り出しました。黄色く、真中がくびれた木の実です。この木の実は獣の治療に使われる薬の元となるものでした。少女は木の実を片手に一瞬迷いました。この木の実は効き目が強い分なかなか見つけにくく、貴重品として重宝されていました。その薬を今ここでこの獣に与えてしまっていいのかと。
    しかし、少女が次に顔を上げた時、もうその顔に迷いの色はありませんでした。


    「おはよう、元気だった?」
    聞きなれた声に、海獣は喉を鳴らして答えました。甘えるように身体をこすりつけてくる海獣の首に、少女が嬉しそうに抱きつきました。
    獣の首の傷はかさぶたのようになっていて、もうほとんど治りかけていることが分かります。
    少女をこの不思議な獣が出会ってから4カ月が過ぎようとしていました。7日に1回怪我の具合を見に来る少女に最初の内は警戒心をあらわにしていた獣も、徐々に心を開いていき、今では心が通い合う仲となっていました。
    少女は水際に腰掛けて、裸足で水面を蹴りながらいつものように最近起こった出来事を話し始めました。
    「この前ね、村に旅芸人が来たんだ。ほら、この前の祭りの時。それでさ、その一行の中に歌い手がいたんだけど、その歌がすごくきれいだったんだ!」
    少女は無邪気に笑いながら語る姿を、獣は目を細めて見ています。
    「でも、歌い手っていいよね。あぁ、あたしも大きくなったら歌い手になりたいなぁ。それで、国中旅して、歌って回るんだ」
    そう言った時の少女の笑顔に、陰りはありませんでした。幼い子供が叶わない夢だとは分からずに夢を語る時の晴れやかな表情でした。
    海獣は何も言わずにその横顔をじっと見つめていました。
    その時、少女が獣に顔をむけ、あのね、と少し恥ずかしそうに切り出しました。
    「それで、もしあたしが歌い手になったら一緒に行こうよ。2人で、歌ってさ」
    海獣は少し瞬きした後、こっくりとうなずくように首を振りました。それを見て少女が弾けるような笑顔になりました。
    「本当?! じゃあ、約束だよ!」


    ―――――しかし、別れは突然でした。
    その年の秋、国中をひどい飢饉が襲いました。
    あちこちの村で凶作が相次ぎ、米は病で黒く腐り、道のあちこちに骨と皮だけになった死骸が転がるようになりました。
    やがて家族を養うことすらできなくなった大人達の中に、自分の家の娘を売るものが次々に現れ始めました。
    あの少女も例外ではありませんでした。


    少女がいつも洞窟に来る日が来ました。
    海獣は日がな一日ずっと待っていました。少女の姿は見えません。声もなかなか聞こえてきません。待っていれば来ると思ったのでしょう、
    いつもならその日の内に湖を抜けて自分の暮らす海へ戻るはずの獣は、岩床に身を横たえて眠りにつきました。


    海獣はひどくやせ細っていました。もうどれほどの時間が経ったのでしょうか。水苔や、小魚を食べて命をつなぐにも限界が来ていました。
    しかし獣は動こうとしませんでした。
    澄んだ瞳から、涙がこぼれおちていきます。
    『約束だよ』
    海獣は横たえていた身体を起こし、首をもたげると美しい声で歌い始めました。
    哀惜を帯びた旋律が大気を震わせ、こだまします。
    その日、歌声はいつまでも止みませんでした。


    冬が去り、春が来ました。歌声は止みません。
    夏が過ぎ、次第に秋に近づいてきました。歌声は続いています。
    冬が終わりに近づいたころ、ぱったりと歌声は止みました。
    やがて春が来て、鳥達がさえずっても、洞窟から歌声は聞こえてきませんでした。


    あれからどれほどの歳月が過ぎ去ったでしょうか。人は変わり、山も、村も変わりました。
    あぁそうそう、いつからかは分かりませんが、再びあの洞窟から決まった日に美しい歌声が聞こえてきているそうですよ。


    ―――――ほら、耳を澄ますと聞こえませんか?


    ―――――――――――――――――
    お久しぶりです、柊です。今回はつながりの洞窟の裏話を妄s……ゲフンゲフン。想像で書いてみました。
    決まった曜日になると鳴くのは何故かな、ということで。ちなみに海獣というのはもちろんラプラスです。分かりづらいかもしれませんが(汗

    PS:一部修正しました。セピア様、アドバイスありがとうございました!

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】
    【アドバイスくれたら嬉しいのよ】


      [No.1001] ぞろぞろあだと!! 投稿者:   《URL》   投稿日:2010/12/03(Fri) 12:31:52     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    ぞろぞろあだと!! (画像サイズ: 432×502 126kB)

    (12月12日 私も一応描いたんでこっそり上げときます)
    
    かわいい! リアルうにゃんうにゃんが絵になったよ!
    もうモニタの前でにやけっぱなしです。今日から不審者になれそうなくらい2828してます。バチュルもしっかり描かれててもう何かわいいこれ何これ。
    
    > 一枚目
    ゾロア!ゾロア!
    もうこんだけいれば満ぷ……いやいやお腹いっぱい……いやはや。
    ゾロアが構って構って、ってしてる。かわいい。髪の毛はそんな感じで大丈夫ですよ〜。
    
    > 二枚目
    そう来たか!
    次から次へとゾロアがドレスの中からどんどん出てきそうです。ドレスの中に頭だけつっこんでるゾロアとかいる。何やってんのかわいい。
    さっきからかわいいしか言ってませんが。
    一匹一匹がもう、かわいい!
    
    
    > 仕事をクールにこなすレンリさんがカッコよかったです! ほれました!
    ほれましたか! カッコイイ女性を書くのが好きなので、そう言ってもらえて幸いです。
    
    > 「そこ代われ」がお断りなら……私もゾロアになって……!! では駄目ですか?(笑)
    なるほど、その手がありましたね。
    ただし、不必要にドレスの中に入ろうとすると蹴り出されるので、そこはご注意ください(笑)
    
    > 恋する人は時にして怖い――ライム君の狂いぶり(嫉妬心が爆発したということでしょうか?)も印象的でした。(汗)
    「狂いぶりが印象的」とは、褒め言葉です。嬉しいです。
    「何よっ! 私よりその肩に乗せてるピカチュウの方が大事なの!」……みたいな嫉妬の小爆発は、今日も世界のあちこちで起こってるんだろうな、なんて考えて書きました。
    
    
    素敵絵と感想と、ありがとうございました。


      [No.1000] そろそろあの季節だな… 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/12/03(Fri) 07:46:47     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    12月に入りましたよ。毒男さん。

    ふと思ったのですが、
    もちろん「クリ○マス中止のお知らせ」はやるんですよね?w


      [No.999] ゾロアがぞろぞろあー 【絵に化けてみました】 投稿者:巳佑   投稿日:2010/12/02(Thu) 12:11:49     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    ゾロアがぞろぞろあー 【絵に化けてみました】 (画像サイズ: 607×1003 115kB)

     
    ★絵の説明
    
    『ゾロアがぞろぞろあー』に乗じて描いてみました。(汗)
    おぉ……マウスを持つ手がバチュルのように震えています。(汗)
    少し、絵が見えづらいかもしれません……すいません。
    
    一枚目はレンリさんがゾロア達の『かまって攻撃』に押されている感じを。
    いっぱいゾロアを描いてみましたが、『黒い団子の中に埋もれた』だから、
    多分ゾロアの数は足りていません。(汗)
    後、紅のメッシュという描写があったのですが、
    ……髪の毛はあの感じで大丈夫だったでしょうか……?(汗)
    
    
    二枚目は赤いドレスの中から『ゾロアがぞろぞろあー』を。(汗)
    ……明らかに、ドレスの中の制限匹数をオーバーしてしまった感がありましたが、
    楽しく描かせてもらいました。
    
    
    
    
    ★感想
    
    『紅色と黒狐』、面白かったです!
    
    仕事をクールにこなすレンリさんがカッコよかったです! ほれました!
    
    それとレンリさんとゾロア達とバチュルのべーとのやり取りが微笑ましくて……。
    「そこ代われ」がお断りなら……私もゾロアになって……!! では駄目ですか?(笑)
    
    そして手に汗を握った『当日』の場面では……。
    
    >  ライムが手を振りながら走って来る。
    > 
    > 「もう犯人を捕まえちゃったのか。流石レンリだ」
    > 
    >  そして彼女に銃口を向けた。
    
    この五行で緊張感が最高潮になりました。
    心の中で戦慄が走って、思わず息を飲み込み……
    レンリさんとライム君のやり取りからものすごい緊迫感が伝わってきました。
    恋する人は時にして怖い――ライム君の狂いぶり(嫉妬心が爆発したということでしょうか?)も印象的でした。(汗) 
    
    
    ★最後に……。
    
    【描いてもいいのよ】美味しくいただきました。
    ありがとうございました。


      [No.998] ぞろあぞろあ 投稿者:   《URL》   投稿日:2010/11/30(Tue) 19:59:47     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    > 部下のキラン君とエルフーンのウィリデが大好きだけど、上司の過去も勿論興味津々。
    大好きと言ってもらえてキラン君もさぞや嬉しいことでしょう。
    気になりますか、彼女の過去。迂闊に触れると火傷しますよw

    > ぺすとるには『差し押さえ』で、首締めには肘の付け根を掴んで対抗するんだ!
    なるほど、参考になります! さっそく実せ
    > 実際には、自らの経験から言わせて貰うと、首が絞まった時に冷静に相手の急所なんぞ、狙ってられるもんじゃありません。 はい。
    ……何があったんですかクーウィさん。



    考察、非常に参考になりました。自分の浅学さが恥ずかしい限り。カモネギを鴨鍋にする場合バレットパンチで落とせなかったらどうしよう、とそればっかり考えてたんです、すいません。

    > 結論から言えば……自分は、例えポケモンが存在していようとも、銃器の進歩が止まるとは、とても思えません。
    ふむふむ。
    これ以上発展した武器なんて考えられませんが、ポケモンに通用させようとするとそうなりますかね……ううむ。

    > そして更に、視点を変えて見てみると――ポケモンを主戦力として仮定・考察した場合、そこには常に、『信頼性』の不足という問題が、付き纏う事になります。
    ポケモンレンジャーの方では「ポケモンを強制的に操る道具」が出てきますので、ポケモンを主戦力にする場合はそれを使うのだろうと考えてます。
    アルセウスが出てくる映画でも、同じような効果の鎧があったかと。

    > ……少なくとも、人間自らが『技』を使うなどと言った事態に、なら無い限りは。
    それもまた小説の題材に。

    しっかり全文読んで次の物語に生かしたいと思います。ありがとうございました。


    > うにゃんうにゃんとか…本気で和むわ……  やみろ、オイを和ませ殺す気か!?
    →はい
     いいえ
    ゾロア1「うにゃんうにゃん(おい、パーティーに行った奴は“たあきい”を食べたらしいぞ)」
    ゾロア2「うにゃんうにゃん(何だって!? そいつぁ贅沢だ!)」
    ゾロア3「うにゃんうにゃん(許すまじ)」
    ゾロア4「うにゃんうにゃん(おいらたち留守番だったのに)」
    全ゾロア「うにゃんうにゃんうにゃんうにゃ(えいこら、おいこら、贅沢だこら、乗っかってやる、乗ってやるー!)」


      [No.997] 素敵な案山子 投稿者:   《URL》   投稿日:2010/11/30(Tue) 19:54:26     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    まずノクタスに惚れました。なんてかっこいいノクタス!
    喋り方がいちいち洒落ていて格好良い。ノクタスの声が聞こえてくるようでした。
    演技とはいえ少女を脅したり、と思えば次の場面では必死に命乞いしたりして、憎めない。
    妙に人間臭い陽気なノクタスとお転婆少女。二人の掛け合いも楽しくてなりません。

    愉快な出会いのひとコマ、楽しませていただきました。


      [No.996] 兵器とは不信と言う名の憎悪  不信とは覚める事の無い悪夢  悪夢は進歩と共に勝利を齎し、やがては国家という名の城郭を築く 投稿者:クーウィ   投稿日:2010/11/29(Mon) 05:54:17     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    聞かせて下さい昔の話

    ……何気に、このシリーズが楽しみになり始めてる今日この頃。  …書き込みが遅いとかは、言っちゃ駄目(爆)
    部下のキラン君とエルフーンのウィリデが大好きだけど、上司の過去も勿論興味津々。

    こう言う事があった訳か……


    なんか世界観が明らかになるにつれて、急速に物語の進展を望む気持ちが、高まり続けて仕方なし。

    上司の本名も割れちゃった事ですし……もう後は、いよいよ固めた設定やフラグを回収しに行きませんか‥!?(笑  コラ)
    何気に知りたかったパチュルどんのニックネームも、さり気無く明かされてたのも嬉しい所(笑)  


    シリアス路線をとってる筈なのに、同時に随所にちりばめられたゾロア達や同僚の柔らかいタッチのお陰で、程よくガス抜きされたのには、とにかく驚きの一言……(汗)

    硬軟取り混ぜた描写というヤツは、自分にはそれこそレベル不足で全く縁が無い次元の技術ですので、様々な方の作品でお目にかかる度に、自らの未熟さに泣きそうになるわ……(爆)

    >本来だます方である自分たちがだまされたことに不服な子狐たちは、うにゃんうにゃんと鳴いてレンリにのしかかった。

    特にここが好きです(笑)
    うにゃんうにゃんとか…本気で和むわ……  やみろ、オイを和ませ殺す気か!?


    ぺすとるには『差し押さえ』で、首締めには肘の付け根を掴んで対抗するんだ!  ……とか、世迷い事を言ってみたりする(爆)
    実際には、自らの経験から言わせて貰うと、首が絞まった時に冷静に相手の急所なんぞ、狙ってられるもんじゃありません。 はい。

    護身術も逮捕術も、打たれ弱い人の子の事なれば、一重に先手必勝ですね。 やっぱ……
     
     

    >【考察していいのよ】

    ……これをまともに始めると、それこそ際限無しに駄文長文混迷文を、引っ切り無しに垂れ流す破目になりましょうから…取あえずは、ここは適当に(汗)


    結論から言えば……自分は、例えポケモンが存在していようとも、銃器の進歩が止まるとは、とても思えません。
    ……寧ろ、『ポケモン』と言う強固な目標にも通用させる為に、その進歩は加速・促進するものだろうと考えます。

    『戦争とは、人類に取り付いた最悪の病魔』だとは、良く言われますが、それと同じくそれを支える兵器類の進歩というのも、絶対に止まる事の無い要素でしょう。
    ……何故なら、これらは表裏一体の関係であるのと同時に、共に元々我々の中に備わっている、いわゆる本能に基づく欲求行動であるからです。
    兵器と言うヤツは、その存在自体が紛う事無く本能によって後押しされているものですから、食料供給技術と並び、人類に於いて最も先鋭的な進歩を、何時の時代にも遂げ続けてきました。

    ですから、もしポケモンと言う存在があったのならば、人間用としては不必要なまでの破壊力や貫通力を加味されて、銃器類の危険度は、寧ろ更に高まるものと推察されます。 (具体的には、より鋭敏な『マッシュルーミング(体内変形)』を起す弾頭の開発や、対人炸裂弾等の非人道的兵器の使用禁止を謳った国際条約の破棄・若しくは形骸化など……)

    当然戦争などの場でもポケモンが使われましょうから、戦力の基本である個人携行の銃器類が、それらの戦力や脅威に対して抗する事が出来るレベルにまで高められる事は、先ず間違いありません。  ……これは、戦車の登場によるバズーカ砲の開発、飛行機の万能化やヘリコプターの登場に対する個人携行対空ミサイルの発展等によっても、十分に裏付けが出来ると思われます。

    現実にも、本来は全く必要の無い物の筈である大型ハンティングライフルの類が、単なるレジャー目的の狩猟用に考案されたぐらいですから……戦争ともなれば必ず必要になると思われる、ポケモンに対抗出来る銃火器・弾薬の類は、必ず早い段階で、研究・開発される事になると思います。


    そして更に、視点を変えて見てみると――ポケモンを主戦力として仮定・考察した場合、そこには常に、『信頼性』の不足という問題が、付き纏う事になります。

    ポケモンは、確かに非常に優れた能力を有してはいますが……彼らはあくまで、自らの意思を有した、独立した生き物です。
    如何に携行性に富み、強力な戦闘力を持ってはいても、心がある限りは躊躇もするし、恐れをなして戦力としての用を為さない事だって、必ずあります。

    ……そもそも、扱う側の人間自体が、この『信頼性』を向上させる為に、個を無理矢理押し殺す事を目的として、『訓練』と言う過程をみっちりと仕込まれているのですから、この上ポケモンと言う不確定要素を二重に重ねる事は、用兵側としては非常に不都合であると、言わざるを得ません。 (訓練には、指揮する側から見た『駒』としての兵士達の動き―信頼性を、確実なものとする為、『個々の頭で考えるよりも先に、反射や命令に従って動くよう、慣らしてしまおう』と言う目的が、含まれています)

    『信頼性』とは、その言葉通り兵器としてのその物の、作動の確実性を指しています。
    ……これは、実際に前に出て使用する側にとっては、その物の戦力如何などよりも、遥かに重大且つ死活的な問題を抱える、決定的な要素となり得るものです。

    言うまでもありませんが…実際に自分が命を懸けて持たされるのであれば、3回に1回は故障する最新式のライフルよりも、確実に引き金を引けば弾が飛び出す旧式銃の方が、マシであるに決まっています。
    ポケモンの対戦で例えても、命中不安な『雷』よりは、多少頼りなくとも『10万ボルト』を使う方が、普通は誰しも望ましいと思うものでしょう。

    それ故、やはりこの面に於いても、より動作の確実な戦力である銃器や火器類の進歩が停滞するような事は、自分が考えられる範疇では、先ず無いものと思われます。
    ……少なくとも、人間自らが『技』を使うなどと言った事態に、なら無い限りは。


    ちょっと、アレな内容ですね……申し訳ありません。

    ……個人的にも、『ポケモン』と言う世界観に、こんな現実に基づいたドロドロの思考や考察を用いるのは、非常に抵抗があるのですが……残念ながら、文明や兵器の発達してきた歴史と方向性を考えるにつけ、こう言った結論に達せざるを得ないのは、悲しいですが事実ですね……

    …自分も幾度か、戦時を舞台にした物語を手掛けようとして、こう言った方向に思索を漂わせた経験がありましたので……
     
     

    では、これ以上ダラダラと長引く前に、この辺で……
    長文及び迷惑文、大変に失礼致しました……(汗)
     
     
    もし続編の構想が出来上がっておられるのでしたら、また是非とも拝見したいと、切に願っております…!

    >ぞろあがぞろぞろあー。  

    …やっぱこのノリが、一番ですよね……! 何事も…… 


      [No.995] ファントムガールと死神の対話 投稿者:紀成   投稿日:2010/11/28(Sun) 15:14:55     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    しばらく前,私は一人の人間と出会った。魂の回収をしていたら,あちらから話しかけてきたのだ。
    彼女は,私が見えていた。見えていた上で,驚きもせず,怯えもせず,私に話しかけてきた。
    驚く私に,彼女は言った。

    『私,見えるんだよね。それだけじゃなく,懐かれるの』
    その言葉の通り,彼女の背後には沢山のゴーストタイプが集まっていた。

    それから数ヶ月経って,私は海辺の街へ仕儀とに来ていた。高台にあり,歩いて数分すれば海岸にたどり着く。
    別に都会ではないから少量の魂だったが,それでも人ある場所に迷う魂はある。人がいなくならない限り,魂が無くなることはない。
    そこへ行ったのは,ほとんどの魂を回収し終わった後だった。海上で命を落とした者の魂が無いかどうか調べるためだ。そんなに海岸自体は広くなく,人もいなかった。
    ただ一人を除いては。

    異様な雰囲気を漂わせていた。普通の人間には分からないだろう。だが,霊感が強ければ分かるはずだ。彼女の周りに纏わりつく,沢山のゴーストタイプの気配が。
    だが,それも見ることはできない。見えるのは,おそらく・・
    私とその主人のギラティナ,そしてやぶれたせかいのレントラーだけだろう。
    彼女は砂浜に座って海を見つめていた。かなり海の方に近いため,履いているスニーカーが白波に濡れているが,全く気にしていない。
    不意に。彼女の後ろで砂をいじっていたジュペッタがこちらを見た。赤い目が大きく見開かれる。彼女の着ているセーターを引っ張る。
    「どうしたの」
    ジュペッタの指す方向を見た彼女の目が驚きの色に変わった。丸い目がさらに丸くなる。
    が,それも一瞬だった。すぐに落ち着きを取り戻した彼女は,私に言った。

    「また会ったね」と。

    ゴーストタイプが波打ち際で遊んでいる間,彼女・・カオリは私と砂浜に立っていた。塩辛く冷たい風が吹き付けても,彼女は表情一つ変えなかった。
    「ちょっと驚いたよ。いきなり後ろにいるんだもん」
    「私の気配なら分かるんじゃないのか?」
    彼女は首を横に振った。
    「集中してる時とか,夢中になっている時は後ろまで気が回らない。特に本を読んでいると,なおさら」
    カオリはジーンズのポケットから棒つきキャンディを二つ取り出した。片方を私に持ってくる。
    「食べる?」
    「いや,いい」
    私が食べるとなると,少々むごい姿になる。何せ,私の口は腹にあるのだから。
    「キャンディは嫌いってこと」
    「そういうわけではない」
    行き場所を失ったキャンディを見て,一匹のムウマージが飛んできた。片方を口にくわえて,また波打ち際に飛んでいく。
    「あの子,甘いものが好きなんだ。チョコレートとか食べてると,必ず寄ってくる」
    「区別がつくのか」
    「うん。同じ種類でも個性はあるから。カゲボウズとかも全く違うし」
    確かに,同じでも性格は全く違う場合が多い。そしてそれによって伸びやすい能力や伸びにくい能力の差が出てくる。
    「それで,ゴーストタイプ達と一緒にいればそれで良かったんだけど・・」
    またポケットを探る。薄いようで厚い,キラキラ光る何か。
    それはどう見ても,硝子の破片だった。
    「それがどうしたんだ」
    「鏡にして,毎晩話しかけてるの」
    鏡。その言葉を聞いた途端ゾクッとした。彼女のしていることの意味が,分かりかけている。
    「・・何故」
    「会いたいポケモンがいるから」

    確信した。
    彼女は。カオリは。
    「何に会いたいんだ」

    「やぶれたせかいの王,ギラティナ」

    時間が,止まった。

    「何故会いたい」
    声が震えないようにして話す。
    「ゴーストタイプで伝説って,あんまりいないでしょ。別に手持ちにしたいわけじゃない。彼は王様なんだから。人間が従えていいものじゃないでしょ」
    硝子の破片を太陽に翳す。反射して,虹が砂の上に出来る。
    「私は,彼とトモダチになりたいの」

    「共通に近い目的を持った子を,この前図書館で見つけた。そのこはルギアを探していた。アルジェント・・銀って名前を付けて,そう呼んでた。どうして会いたいのかって言ったら,こう言われた」

    『私,彼を愛してるの』

    「アルを見つけるためなら,何だってするって感じだった。馬鹿にする人は皆,手持ちのポケモンで氷漬けにしてきたって。
    ・・歪んだ愛って,こういうことを言うんだよね。きっと」
    どことなく冷めた口調だ。自分が思うことの意味を分かっているのだろうか。
    「私は歪んだ愛を捧げるつもりはないよ。人間なんだから。ならせめて,トモダチってポジションにいるくらいはいいよねって思うの」
    カオリの言葉に,嘘も何も無かった。本音を言っていた。
    私は,どう答えればいいのだろうか。

    「・・会えると思う」
    「いつか?」
    「いつか,のいつかは永遠に来ない。ただこの場合は,いつかと言った方がいいのだろう」
    「そうだね」
    カオリは満足げに笑った。やはり,嘘ではなかった。

    「私,そろそろ帰るね」
    夕日が海を照らしかけた頃,カオリは言った。既にポケモン達は集まっている。今日は特に増えてはいないようだ。
    「きっとまた会うんだろうね。何処かで」
    「・・そうだな」
    カオリが背を向けた。ポケモン達も続こうとして・・止まった。
    「彼女に何故ついて行く」
    全てのゴーストポケモンがこちらを見ている。さっきも言った通りの面子,ゲンガー,カゲボウズ,ヨマワル,サマヨール,プルリル,ブルンゲル。etc,etc。
    そして,彼女のパートナーのデスカーンが言った。テレパシーのような物で。

    『お前にはカオリの気持ちなんて分からない。二つの壁に押されて,潰されかけたカオリの苦しみなんて分かりはしない』

    二つの壁。その言葉が引っかかった・
    「どういう意味だ」

    『その壁を壊すためなら,俺たちはどんなことでもする。
    ・・たとえ,人間に危害を加えることになろうとも』

    そのまま,ポケモン達はカオリの後に付いて言った。その姿が,夕闇に包まれて溶けていくように,私には見えた。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーー

    [ツイッター始めたんだぞ]
    [kinari73なんだぞ]


      [No.994] とけないこおり 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2010/11/28(Sun) 08:51:02     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「今日はちょっと調子が悪かったんだもん」

     私の呟きはその部屋に響き、消えた。

    「テスト勉強や家の手伝いで、バトルの練習できなかったし」

     言葉は誰も聞くことなく消えていく。震えているのは雪の降る中歩いてきたからだ。それだけだ。
    この部屋には私以外誰もおらず、外へは風の音でかき消されるはずだ。誰にも聞こえない。
     私は泣きそうな時、この山の室にやってくる。
     昔、冷蔵庫がなかった時代の夏、偉い殿様に運ぶ氷を保存しておくのに使われていたらしい。その洞窟は今は何にも使われておらず、人が来ることはほとんどない。


    そんなに弱っちいんじゃ、トレーナーの旅なんていつまでも無理だな!


     今日もバトルに負け、情けない姿を誰にも見られたくなくて、山にあるここに来ていた。
     ポケモンは出さない。
    手持ちのポケモン達はきっと慰めてくれるだろう。だけどそんな優しいポケモンに勝利を与えることができない私はもっと情けなくなってしまう。悲しくて悲しくて泣いてしまうかもしれない。
     だからポケモンは出さない。

    膝を抱え、目を閉じた私は、どれぐらいそうしていたのかはわからない。なんとなく気になって顔を上げたのは、風のせいだった。唸るような音がするその風は、外から吹き込んでくるものじゃない。
    それじゃあ――

    そこには今まで来た時には気づかなかったものがある。
    穴、と呼ぶにはちょっと綺麗過ぎる。切り抜いたかのような通路。
    いや、ひょっとしてずっとあった?
     そう錯覚してしまう程に静かに、その道はあった。

    「……」

     誘われるように、知らず知らずのうちに足を進めていた。
     不気味な風と私の足音を聞きながら、奥へ奥へと進んでいく。
     石の壁が、少しづつ色を変え、音を変え温度を変えていく。次第にはっきりと氷の壁へと変わっていく。
     やっぱり変だ。
    室は初めて来たときに隅から隅まで見てまわったはずだ。
    見つけられないはずはなかった。でも昨日今日作ったにしては深い。
     何なんだろう。
     引き返そうかと思ったけれど、どうしても足は止まらない。
     普段歩き慣れた雪道とは違い、気を抜くと滑ってしまいそうな氷の床を進んでいく。

     たどり着いた部屋、そこには、

    「すごい……」

     巨大な氷が宝石のようにきらめいていた。

     テレビで見たことがある宝石よりもずっときれいな氷。大きなものから小さなものまで静かに光っている。言葉も出ない。しばらく動けなかった。
     どれぐらいの間そうしていたのだろうか、やっと動いたのは私ではなかった。大きな氷が揺れ、それに付いていた小さな結晶が落ちて割れた。

    「うそ……でしょ……」

     氷の柱の一つだと思っていたものがゆっくりと動き出したのだ。よく見ると人の形をしたそれが、先の尖った足を床に突き立て、前に1歩、2歩と進んできた。
     さらに、柱の表面には数個の丸い模様が浮かび上がり、チカチカ点滅した。

    「ポケモン……?」

     詳しくは覚えてないが、本で読んだことがある。どこかの地方の伝説のポケモンだ。
     そんなポケモンが何で?
     いや、そんなことはどうでもいい。
     二度と起きないこのチャンス、絶対にものにしなくちゃ!
     伝説のポケモンを捕まえるのだ!
     私は腰のポーチに入っていたモンスターボールに手を伸ばすと――

    そんなに弱っちいんじゃ、トレーナーの旅なんていつまでも無理だな!

     ボールを握った右手が凍ったように動かない。ピクリともしない。
     私には無理だ。でんせつのポケモンと戦うなんて無理だ。
     動けない
     目に入ったのは氷のポケモンの右腕。そこには大きな亀裂が入っていた。

    「怪我……してるの?」

    ポケモンは動かない。
     
    「傷薬とか効くのかしら?」

     そもそも、そんな伝説なんていわれるポケモンは普通のポケモンと同じなんだろうか。どうしていいかわからない私は、とりあえず手持ちの回復アイテムを使うことにした。が、たいしたアイテムを持っていない。

    「効果があればいいんだけど」

    持っていたいい傷薬を三つ、普通の傷薬を五つ使いきった。木の実も何個か持っていたがどこが口なのかもわからない。そもそも木の実を食べるのだろうか?
    ポケモンはされるがままだった。時が止まったように動かない。

    「ごめんね、元気の塊とか持ってたらよかったんだけど」

     残念ながら私はまだ子どもだ。それに弱い。お小遣いだって少ないし、バトルで賞金を稼ぐこともできない。普段持ち歩くことはおろか、買いに行くことすらできやしない。


     図書室で調べてみると、意外にあっさりと見つかった。
     レジアイス 氷山ポケモン
     ホウエン地方の伝説のポケモンだという。
     そんな遠くに伝わるポケモンが何故いるんだろうか?
     結局その本にも、他の本にも私の知りたい情報はない。

     それからレジアイスに会いに行くのが私の日課になった。別に何をするわけでもない。ただレジアイスを見て、そばにいるだけだ。あいかわらず右腕は直らない。

    「ねぇ、触っていい?」

     レジアイスも模様が優しく光り、消えた。
     それが肯定なのか否定なのか確かめようはない。ましてや私の言葉に反応したのかさえわからない。
     私はレジアイスの前に立ち、そっと手のひらを氷の体に当てた。
     
     
     ――それはとにかく冷たくて――
     

     レジアイスに抱きつくように両手を広げ、体を預ける。
     
    「やっぱり冷たいのね。ちょっと痛いかも。でも――」

     私を包んでくれるような、そんな優しさを感じる、と思うのは感傷的なんだろうか。

    「ねえ、あなたはどこから来たの?」

    「どうしてここに来たの?」

    「何を考えているの?」

    「      」

     突然の出来事に私はすぐにレジアイスから離れた。
     模様が突然強く光りはじめたのだ。
     ぱらぱらと氷りの粒が天井から落ちて、私の体に乗った。
     次の瞬間、私は氷の床に滑って倒れた。
     まるでポケギアの振動のように、私の周りの空気ごと、体がブルブル震えて立っていられない。

     妙な震えはすぐに納まり、体を起こすと前にレジアイスが立っている。しかし、今まで見慣れた氷のポケモンとは様子が違う気がした。

     機械みたいな、壊れたラジオのような妙な音が鳴り、レジアイスのひび割れた腕がこちらに向けられた。
     驚いて身動きのできない私を見つめながら、その腕の前に光と風が集まり始める。
     室に入っていったときのように、私はそこに吸い寄せられて、目を話すことが出来ない。

    (れいとうビーム?! れいとうパンチ?! こごえるかぜ?!)

     私の脳裏に最悪の光景が広がった。




     その日、私は風邪を引いた。


    「まったく、あんなに吹雪いてるのにずっと外にいて。風邪を引くにきまってるじゃないの」
    「ん〜〜……」
    「それ食べたら早く寝るのよ」
    「ん〜〜……」

     レジアイスと別れてから四日経った。信じられないぐらい熱が出て、一日寝込んだままだった。二日目・三日目も熱は引かず、だるさが続き、食欲も全然なかった。今日はやっとだるさも少し和らいで何とかお粥をお腹に収めているが風邪は治らない。
     曇りガラスを拭いてみても外はどうなっているかわからない。とにかく真っ白だ。レジアイスはどうしているのだろう。

    「全く、あんな吹雪の日に何してたのよ。山にはなんにもないでしょ」
    「危ないから雪が降ってる日は山に行くのはやめなさい」

    私、伝説のポケモン見つけたのよ。

    父さんは笑うかしら。母さんは熱がひどくなったと心配するかもしれない。きっと信じてはくれないだろう。絶対。
     それに私はあの後のことをよく覚えていないのだ。光った腕。それしか覚えていない。そのあと自分の足で山を降り、家まで帰ったのはなんとなく覚えている。それだけだ。

    「わたし、ねる。おやすみ」
    「暖かくするのよ」

    ベッドに潜り込むと私は目を閉じる。ドアの向こうから二人の話し声が聞こえる。

    「じゃあ誰かに会ってるのかしら?」
    「彼氏か? 父さんは許さんぞ」
    「じゃあ本人に聞いてみたら? 彼氏はいるのかって」
    「別に俺は気にならん。だからお母さんが聞きなさい」
    「まあ」

     そして窓を叩く風の音で、話し声は聞こえなくなった。
     吹雪は続いている。
     一向におさまる気配がない。

     次の日、空はどこまでも一面の青。晴れ渡る空を見たのはずいぶん久しぶりな気がした。
    氷の室は閉ざされていた。
     解け始めた雪が落ちてきたようで入り口は塞がっていた。

    一週間もすると、続いた陽気で雪が解け始めた。山の銀世界も狭くなり、やがて緑の姿を取り戻すのだろう。
     そしてあの室を塞ぐ雪も解けていた。

    「あんれまぁ、こんなところに何かようかよぉ?」
    「あ、はい。ちょっと」

     室の管理のおじさんが、なにやら作業をしていたので、私はその場を離れようとした。

    「ちょっとまってけろ。おめぇさん、冬の間ここで何かやってただろ?」
    「ええ、ちょっと」

     勝手に出入りして起こられるのかと思い、私は曖昧な返事しかできなかったが、そういうことではなかったらしい。
    ヒゲ面を笑顔に変えておじさんは言った。

    「別に汚してたわけでねぇし、だぁいじょうぶだで。それより忘れ物取りに来たんでねぇのか?」

     忘れ物? いったい何のことだろう?

    「あぁ、ワシ、でりかしーっちゅうもんがねえから。ごめんな」
    「いえ、別に。ところで」
    「ん?」
    「ここって奥に続く道というか、奥に洞窟とかありませんでしたっけ?」
    「んなもんねぇよ。ワシャ40年以上ここ使っとるが、んなもん見たことねぇなぁ」

     じゃあ、あの部屋は何だったんだろうか。熱が見せた幻?

    「ほれ、まだこん中は冷えてるから溶けてなかったよ。これ作ってたんだろ?器用な娘っこだなぁ、おめは」

    おじさんが差し出したのは氷。人型にも見えるそれをおじさんは私が作ったと勘違いしたのだ。

    「ありがとう」
    「んじゃ気いつけてなぁ」

     私はその氷はレジアイスが作ったのだと思った。あの光はきっとこれを作るため。あの空気の揺れは不思議な力で私の型でも取っていたのかもしれない。

    「それともあの時本当に――」

     ――レジアイスはどこに行ったのかしら?

     本格的に春が訪れたら私は旅に出よう。それでレジアイスを探しに行くのだ。旅をしながらあの腕を直す方法も探そう。

     ――レジアイスは今何をしているのかしら?
               
     ひんやりした氷は太陽に照らされても溶ける様子がない。だから、きっとあのレジアイスが作ったに違いないのだ。
     
     私は何度も読んで、もう覚えてしまったそれを、歌みたいに詩を読むように口に出した。ホウエン地方の伝説のポケモンについて書かれた石盤の一文だ。 


    わたしたちはこのあなでぽけもんとくらしせいかつし、そしていきてきた。
    すべてはぽけもんのおかげだ。だがわたしたちはぽけもんをとじこめた。
    こわかったのだ。ゆーきあるものよきぼうにみちたものよ。
    とびらをあけよ。そこにえいえんのぽけもんがいる。


     風が吹いた。もうすっかり暖かくなったはずなのに、北風のように冷たい風が。

    「寒いな」

     私はさっきまで氷を持って冷え切った手に息を吐きかけ、擦り合わせた。
     そして体をぎゅっと抱きしめる。
     震えはしばらく止まらなかった。 


    ------------------------------------------------------------------------ 

    【書いてもいいのよ】 【描いてもいいのよ】 【批評してもいいのよ】


      [No.993] 小説作品は小説の辞書 投稿者:渡辺タテタ   《URL》   投稿日:2010/11/25(Thu) 03:06:38     84clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    こんばんは。
    先日は校正について書きましたが、何を手本にしたらいいのかということを。

    手っ取り早く言えば、ご自分の好きな小説を真似てください。
    著名な作家のものでなくても構いません。
    少なくとも出版社を経由した作品は、編集者が赤を入れているはずなので、文体が整っています。
    例えば改行のタイミングや、句読点の位置、記号の用い方など、お気に入りの作品を辞書代わりに書かれるといいでしょう。

    締切りまで一ヶ月。
    みなさん作品を書いている最中かと思いますが、ご参考になればと思います。


      [No.992] Re: 夜に溶けて 投稿者:スズメ   投稿日:2010/11/24(Wed) 20:43:51     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



      魂守り 販売中!

      歩き回る怨霊からあなたを守ります。(きっと)
      守られている その安心感があなたを守る(はず)

     雰囲気壊してごめんなさい。
     ミカルゲ! 強そうなミカルゲだ・・・
     家のミカルゲは庭に埋まっていたんですよ。
     ええ、もうそれは、見事に。
     同じ種族でも、こんなに変わるものなんですね。
     

     小さな手形・・・怪しい影、ケタケタケタ・・・こ、怖い。
     特に、ケタケタケタという部分が。
     
     
     


      [No.991] カゲ充みちづれしろ+ややおまけ 投稿者:CoCo   投稿日:2010/11/24(Wed) 19:44:46     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     みなさんお読みいただき本当にありがとうございます。
     41拍手を見た瞬間なにかの空目かと思って五度見ぐらいしてしまいましたありがとうございます。

    >久方小風夜さん
     全力で笑っていただいてウヒヒ! という感じです。ありがとうございます。
     リアボウズ爆発すればい……くそうあんな可愛い生命体に爆発なんて! うおおおおおおおおジレンマ
     自分は小枝派です。

    > ついに人間以外にまでストライクゾーンが広がってしまったか毒男さん。
     人間と過ごすよりポケモン(とくにカゲボウズ)と過ごす時間のほうが長いことが原因かと思われます。

    > 1冊ください。
    御影「創刊号とフヨウ特集号は普段用、保存用、書き込み用、応募用、予備用まで揃えてあるよ。二倍の値段で良ければ譲るけど」

    > サラダ味のちゅうをしてるカゲボウズに胸がキュンキュンした。
    > 大丈夫だ毒男! 11月11日は「ポッキー&プリッツの日」だから!

    カゲボウズ「ふゆーん」

     カゲボウズが プリッツゲームを いどんできた!▼
     どうする どうするよ おれ!

    【妥協】
    【挑戦】
    【男のプライド】

    →続きはWEBで


    >No.017さん
     常時笑っていただきまったく嬉しい限りです。感想ありがとうございます。

    > とりあえず週刊「GHOST」のバックナンバーどこで買えますか。
    > カゲボウズ特集号が欲しいのですが。
     御影先輩によればカゲボウズ特集号はカゲボウズ達にとられてしまったそうです。グラビアでもあったんでしょうか。

    >カゲボウズ・オン・ザ・プリッツ、それは禁じられた遊び……ブラッククロニクルwww
     ブラック☆ロリコン

    > うちの誰かさんといいカゲボウズトークが出来そうです。
     あの量を洗うのは彼でも大変でしょうね。


    >てこさん
     静電気さえ止まらないロマンティックに変えてしまう、それがリア充の真髄。とりあえず静電気がゴースに引火して爆発しろ。
     楽しんで読んでいただいてありがとうございます。

    > 週刊ghostも非常に気になりますが、カゲボウズ、カゲボウズ……。なんだろう、なんか愛したいのに憎らしいみたいな微妙な気持ちで一杯です!
     きっとその微妙な気持ちを糧に彼らは生きていくのです。

    > え?ポッキーゲーム?いやいや、僕はいつも魔獣の役でしたようふふ(混乱中
     うえたけもののような……ということですk(ry なるほd(ry



    ややおまけ


    > というか、なんか見たことのある名前がいるんだけど。 いるんだけどwww
    > 次の活躍が楽しみだな〜♪




     朝一番の仕事。
     笑顔で出迎えた俺の前に、眼鏡の女性がムーランドを連れてきた。

    「しばらく遠出していたので汚れてしまって……家だときちんとケアもできないですから、うちのハナちゃん、痒がっちゃって。あとちょっとここらへんが伸びてきてるので、カットもお願いしたいんですが……」

     まず大きい。
     図鑑では1.2mと書かれていたのでまあ小学生ぐらいの大きさかなと踏んでいたのだが一回り大きい。俺が想像していた小学生が三人ぐらい背中に乗れそうだ。
     あとネットで出回ってた写真より体毛が長い。とかく長い。めっちゃ長い。腹あたりのふさ毛はマルマインも目をまんまるにしかねない爆発を引き起こしており、背から伸びる毛ももっふもふ、床をセルフで掃除している。髭の部分はもう引き摺るとかいうレベルじゃない。コイキングがギャラドスを目指してひた昇ると言われる登竜門の滝を思わせる。しかもただ冗長に長いわけではない、毛並みがものすごくいい。切り取ったあと業者に売れそうな感じ。立派だ。立派すぎる。まさに威風堂々。

     しかし飼い主さん、その「ずいぶん伸びちゃって……」って触ってる尻尾の毛より、もっとカットするべき部分たくさんあると思うんですが。

     果たして俺はこの質量を、洗えるのか。というか本体どこだ。地肌どこだよ地肌。実は掻き分けても毛しかなかったとかいうオチじゃないだろうな?

    「それじゃ、よろしくお願いしますー」
     そして俺は一人、洗い台の前に残された。
     台の上には実家のおじいちゃんみたいな目をしたムーランド。下には収まりきらない彼女の体毛が流れ落ちている。

     どうすんの?  どうすんの、俺!?


    →続きはWEB(ry


      [No.990] 夜に溶けて 投稿者:海星   投稿日:2010/11/23(Tue) 17:53:32     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


       





       ※ちょっとした、本当にちょっとしたホラーです。いや、ホラーもどきです。何しろ私の腕なのであまり怖くないと思いますが、極端に無理という方はご遠慮ください。でも本当に怖くないです。この注意書きは一応つけています。












     ―――… 喉が痛い。夜の冷たく吹き付けてくる空っ風が、喉の中に直接入り込んでくるからだろう。ぐったりとしたリナを腕に抱き締め、必死になって走る。ポケモンセンターの屋根に付いているモンスターボールのマークを探すが、見つからない。見つからない見つからない。段々速くなる鼓動と共に、焦りが大きくなっていく。腕の中のリナが冷たくなっていく気がする。どうしようどうしよう。いつの間にか、路地裏に入っていた。背の高い塀で、視界が狭まれる。振り返る。壁。前を見る。壁。何処も彼処も壁。壁。壁。リナの首がかくん、と傾いた。慌てて額に手を当てる。体温が急速に下がっているのが素人の私にもはっきりと伝わった。どうしようどうしよう。どうしよう! リナが死んじゃった。死んじゃった。死んじゃった。此処は何処? 私は何をしているの? 何で? 如何して? 何故私のリナは死んじゃったの? 如何して、如何して、如何して!! …―――



     ―――… ぺたり、と、何かが張り付いたような音が自動ドアの方で、した。哺乳瓶を持ったまま振り返る。が、何も見えない。外が暗いからだろう。手元でまだ赤子のルリリがミルクを催促して泣き出した。ミルクをあげなきゃ。しかし、外も気になる。彼女は一瞬迷ったが、隣で包帯を片付けていたラッキーにルリリの世話を頼んでドアに向かうことにした。パートナーのラッキーは優しく彼女の頼みを受けてくれた。哺乳瓶をそっと渡す。すぐに慣れた手つきでゆっくりと、ラッキーはルリリの口元に哺乳瓶のゴムの部分を当てた。するとルリリはすぐに泣き止んで、嬉しそうに表情を和ませミルクを飲み始める。ほっとして、彼女はドアに近付いて行った。すぐ近くにまで着くと、滑らかな機械音と共に自動ドアが開く。しかしそこには誰もいなかった。顔だけ外に出して辺りを確認したが、気配すらない。空耳かしら…戻ろうと視線を戻した時、自動ドアにはっきりと手形が付いているのに気が付いた。小さな手形が。 …―――



     ―――… 今日は今年一番の冷え込みだ、と今朝のニュースで聞いたが、本当らしいな。コートの襟元をきゅっと狭めて速足で歩く。如何してこんな日に限って、いつもは無い残業があるのだろう。田舎では無いが都会でも無いこの町の電車の本数は少ない。夕方の終電はとっくに通り過ぎていた。つるつるに凍った水溜りに足を滑らせそうになり、慌ててバランスをとる。転ばなくて済んだが、もうこんな歳だ…腰が痛んだ。手を背中に当てて歯を食いしばる。ぎっくり腰を経験したこともあるし、最近は少しでも衝撃があると腰が悲鳴を上げる。そして、そんな時は、こうやって手を当ててじっとしていると大抵の場合は痛みが引いていく。ふと、腰の痛みの原因である氷に映る、苦悶の表情の自分の顔が目に入った。皺だらけだ。いつの間にこんなに歳をとったのだろう。若い時だったら、滑って転んだってどこも痛くなかったのに。むしろはしゃぎ回って転んでばかりいた。そういえば、今の家内にプロポーズした時も転んだな。結局承諾してくれて今の夫婦になっている訳だけれど、確かその時の台詞は「貴方ひとりだと心配だから」だったな。恥ずかしい、苦い思い出である。氷に向かって笑ってみた。痛みに引きつった笑いであったが。その時、ふと、影が入ってきて氷に何も映らなくなった。おや、と顔を上げると、何も無いのにすっと影だけが落ちている。きょろきょろと影の落とし主を探したが、気付いたら影も消えていた。気味が悪いな…と、もう一度氷に向かって顔をしかめて見せた時、腰の痛みが無くなっているのにはっとした。 …―――



     ―――… 夜風が髪の毛を乱す。ケタケタケタ。冷たく体温を奪ってゆく。ケタケタケタ。さあ怖いなら泣けば良い。ケタケタケタ。さあ泣きながら叫ぶが良い。ケタケタケタ。何処からか笑い声が聞こえてくる。それと共に、何かを誘うような甘い声も。でも、私はちっとも怖くなんかなかった。何故なら、私にはリナがいたから。ぴくりとも動かないけれど、でも、肉体は私の腕の中にあるんだもの。ケタケタケタ。ケタケタケタケタ…。ああ、煩いな。今私はリナと二人きりなのに。邪魔されてる気分。私も気持ちも知らないで、こんなに悲しいのに…。リナが死んじゃった。私の唯一のトモダチが、死んじゃった。悲しい。苦しい。私も一緒に死んでしまいたい。ケタケタケタ。お前からは悲しみの感情が出ていない。ケタケタケタ。偽って言葉を操るのは止めときな。ケタケタケタ。お前から溢れ出ているその感情は、言葉にするなら、喜びだな。ケタケタケタ。ふざけないでよ、私から喜びの感情が出ている? そんな訳無いじゃない。今も胸がいっぱいなのよ。涙を堪えるので精一杯。リナが死んじゃった。リナが死んじゃった。悲しい以外の感情が出ているはず無いわ。ケタケタケタ。人間ってのは良く分からん奴だばかりだな。ケタケタケタ。お前みたいなのは初めてだ。ケタケタケタ。俺を怖がらないのは勿論のこと、死んだ相棒を見下ろしながら喜んでる。ケタケタケタ。お前はきっと俺の仲間だ。ケタケタケタ。仲間? 私は誰にも所有されて無いの。私は誰にも分かってもらえる訳がないの。ていうか、貴方誰? 知らない変なひとに仲間呼ばわりされる程嫌なことも無いわねえ。ケタケタケタ。良い根性してる。ケタケタケタ。そんなに言うなら、見せてやろう俺の姿を。ケタケタケタ…ケタケタケタ…。 …―――



     ―――… 気が付くともう外は真っ暗だった。夢中でパソコンを操作していると時が経つのを忘れる。画面の左上の一時保存のアイコンをダブルクリックし、身体を伸ばす。目が随分疲れている…冷蔵庫に閉まってある目薬を取りに行こうと椅子から立ち上がり、部屋の中も真っ暗だということに気が付いた。照明をつけようと手を伸ばすが、カーテンの方が近いと思い、先にカーテンを閉める事にする。留めてあるボタンを外し、ギンガムチェックの斜光カーテンを手繰り寄せる。シャっと気持ち良い音と共にきっちりと閉めてから、改めて照明のスイッチに目を向けた。不意に光が横切る…いや、横切った気がして、目で追うと、そこにはツインテールの小さな女の子みたいな形が光っていた。何だこれは。確かにさっきまではネットサーフィンしていて、こんな感じの幻想的かつ可愛らしい幼女の絵を見た気もするが。驚いて瞬きをする。目を開けると、もうそこには何も無かった。きっと本当に目が疲れているんだろう、ということにして、今度こそ部屋を明るくする。パチン、と照明が輝きだし、眩しい。オレ、霊感なんて無いんだけどなあ。 …―――



     ―――… もういいから! 叫んで、一方的に電話を切る。ツー、ツー。携帯から鳴り響いてくるそのお決まりの音に無性に腹が立つ。結局、もう会うことは無いだろうなと思うと一瞬寂しく思ったが、すぐにそんなことない、と考える。付き合い始めた切っ掛けは、同じ電車に乗ったことだった。たまたま隣り合わせて座っていて、ふと彼の鞄に付いているキーホルダーが目に付いて。それは、私の大好きなバンドのファン会員限定のキーホルダー。勿論私も携帯に付けている。それで声をかけて、意気投合して。はにかんだような彼の笑顔に胸がどきどき波打った。しかもその時丁度電車は混んでいて、距離が近くて、これが運命なのだろうかと本気で思った。共通の趣味を持つ人同士が仲良くなるのは早い、と言うけれど、私達はその典型的な例で、恋人同士になるにはさほどの時間はかからず、ライブを一緒に見に行ったり、普通にデートしたり。…仲良くやってたんだけどな。最近、突然彼からの連絡が途絶えた。それでやっと電話が繋がったのかついさっき。彼は、別れたいと言ってきた。理由を聞いても謝るばかりで何も言わない。ごめん、ごめんね、怒んないで…。ついにぶちギレて電話を切ったけれど…。いつの間にか、手汗で手の平がべたべたしている。無意識に握り締めていた携帯電話のキーホルダー――出会いの切っ掛けの今や憎らしいキーホルダー――が揺れた。その時、すぐ近くで泣き声のような、か細い声が聞こえた。驚いて短く悲鳴を上げる。振り向いても何もない。あるのは、ざっくりと深い心の傷跡だけ。 …―――



     ―――… もういいだろ。ケタケタケタ。笑い声が徐々に近付いて来る。でも、私は動かない。耳を澄ませて、声の聞こえる方をじっと見据える。ちらりと薄紫色が闇から垣間見えた。ケタケタケタ。そんなに注目するなよォ。ケタケタケタ。そして、ふわりと、闇が溶けるように消え、私の目の前には怪しい緑色の玉を幾つか浮かべた、にやにや笑う生き物が現れた。玉と同じ色の瞳で私を見てくる。ケタケタケタ。俺は魂が集まってできている。ケタケタケタ。だけどねェ、自由に動けないんだな。ケタケタケタ。見えるかい、俺の足元が。ケタケタケタ。昔、このちっぽけな石に繋がれちまってね。ケタケタケタ。きっと睨み返し、私はリナを更に強く抱き締める。だから、何。私に何をしろって言いたいの? あんたから滲み出てくるその感情を言葉にするなら、お腹が空いた、かしら。ケタケタケタ。そんなんじゃぁない。ケタケタケタ。俺はもう封印された身、腹なんて空かない…いや、元々腹という部分が無い。ケタケタケタ。何よそれ。ジョークのつもり? 変ね、あんた。おかしい。狂ってる。ケタケタケタ。お前の方が狂ってるよ? ケタケタケタ。きっと、仲間の魂がやってくる。ケタケタケタ。何の話をしてるのあんたは。魂がやってくる? リナの魂が? ケタケタケタ。魂はすぐそこに来てる。ケタケタケタ。魂は悲しみの感情で溢れてるなァ。ケタケタケタ。俺は魂で出来ているって言っただろ。ケタケタケタ。さあもう来た。ケタケタケタケタ。そんなに怯えた目をするな。ケタケタケタ。さっきまでの勢いはどうしたんだ? ケタケタケタ。じゃあ始めようか、俺の言いたいこと、それは、タマシイガホシイホシイホシイホシイホシイホシイホシイ! …―――


     
     ―――… テレビのニュースキャスターって最近可愛い子ばっかりだよな。そう思いながら画面を見つめる。報道していたのは、失踪事件の話だった。ここのところ、この話題ばかりだ。何でも、新米トレーナーの女の子が消えたらしい。いや、正確に言えば、町の一番目立たない路地裏まで掠れた足跡が続いていて、しかしそれが行き止まりのところでぱったりと消え、そこに、その女の子の手持ちだと思われるキルリアのすっかり冷たくなった身体が横たわり、その横には女の子の血痕が数滴落ちていた、とか。全く、物騒な世の中だ。女の子には親も親戚もいなくて、キルリアの弔いは警察が行ったらしい。 …―――



     ―――… キィキィ叫ぶ小さな光を、薄紫色の封印ポケモン――俺は微かに笑んで見つめる。何でも、トレーナーである女の子が数日前に突然いなくなったらしい。その時、光である彼女は肉体から離れている状態…死んでしまった状態で、自分の肉体とトレーナーを探して彷徨ったようだが、肉体を見つけたときには既にトレーナーの姿は無く、代わりに残っていたのは血痕だった、とか。そうかそうか、と適当に相槌を打ちながら、舌なめずりをする。こいつはあまり力になりそうにない。今度はもっと大きな力の魂を取り入れなければ。あの女の子も弱かった。死に憑りつかれている人間の魂が欲しい。欲しい。欲しい。もっと力を蓄えれば、この要石も壊れるはず。自由になりたい。俺を動けなくした人間達の魂を吸い取ってやりたい。ああ、力が欲しい、欲しい。ちらり、と光を見、光が自分を見て喋るのを止めたのを確認すると、にやりと笑って見せた。こんなに小さく弱いお前の魂でも、俺に吸い込まれればいずれ大きくなれる。感謝しろ。瞬間的に、光を身体に取り込む。甘い、蜜のような濃厚な味。もっと欲しい、欲しい。欲しい。欲しい。ホシイ …―――





    ―――――

     如何してこうなってるんだ!
     もっとふぁんたじー書くつもりだったんですけど、如何して私の指は「死」とかタイピングしてるの!

     あんまり怖くないと思いますが、これが海星の限界だと思って下さいorz

     うぅ…ボキャブラリーが欲しい…です…


    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評…は…えっと…その…お手柔らかに…】


      [No.989] 配給してみた 投稿者:海星   投稿日:2010/11/22(Mon) 21:32:09     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     潮のにおいと血のにおいが混じった変なにおいが充満していた。ザザザ、と波が引いていく。そしてまた、引き返してくる。その繰り返し。

    ここに戻ってくるまでの道の途中で、何だか賑やかな声がたくさん聞こえたが、こんなところに観光客だろうか。危ないなぁと思ったけれど、本音を言えばほっとした。非力なくせに出しゃばっている気がして不安になっていた気持ちを温かくしてくれた。

    しかし、相変わらず雨は降り続いている。風神と雷神がどうなったのか、その詳細はまだ知らない。だけど自然に分かる気がする。だって、傷を手当している声や勝利に歓喜する声ばかりが聞こえるから。

    濡れた草を踏みしめた時、頭上でリザードンが力強く吠えた。血のにおいに反応したのか、私を置いて飛んで行ったのだが、どうやら無事にここまで辿り着いていたらしい。少しでも役に立っていたら良いのだが。

     女の子にしては大き目なリュックサックを肩から下してきのみを出していると、すっと足にすり寄ってくるものがあった。少しの時間だったのに随分と会っていないような気がして、何故か胸が痛んだ。

    「…エーフィ。そうなのね?」

     いつもより小さくか細い鳴き声が私の声に答えた。しゃがみ込んで、手探りでパートナーを探し、抱き寄せる。

    「本当にありがとう。貴方が映像を送ってくれてなかったら、私、きっと諦めてた」

     雨で冷えた毛並の揃っていない身体からは、土や血のにおいがした。それでも気にせず抱き締めた。エーフィは優しく私の頬を舐めた。

    「…あ、ごめん。回復が先だよね。ほら、オボンの実」

     ふと気付き、慌てて鞄の中に手を突っ込む。特徴的な…人間でいうくびれみたいな形を確かめると、手に取り、差し出す。そっと地面に置いてから、空に声をかけた。

    「リザードン、オボンの実…」

    「ガァアアアアア!!」

     どうやら必要無いようだ。十分に元気な叫び声が響いてきた。苦笑してからエーフィの方に顔を向けると、もう食事は終わっていた。

    「もう一個要る?」

     首を横に振っているのが空気の流れで分る。もう一度、私はエーフィの頭を撫でると、リュックサックを背負い直して声をかける。

    「さぁ、まだ仕事は残ってるわ。行こう」

     立ち上がる。それから口のまわりに手のひらを添えて、慣れない大きな声で叫んだ。

    「きのみがありまーす! 必要な人は、声をかけて下さい! 今から歩き回ります!」

     更に、足元のエーフィに指示する。

    「貴方は“あさのひざし”で、できるだけ多くの人を回復させてあげて。天候は優れないけど、少しでも良いから」

     すぐにエーフィは駆けて行った。そうそう、と、頭上にも叫ぶ。

    「リザードン、雨で冷えてる人がたくさんいるから、炎で温めてあげて! あ、火傷を負わせては駄目よ! 加減してね!」

     了解という意味なのか、更に元気な遠吠えと炎を吹き出す音が聞こえる。本当に加減できるだろうか…多少、いや、かなり心配だ。あの子はすぐ調子に乗るから。ため息をついていると、近くで「おぉい」と声がした。返事をして駆け寄る。

    「すまないが、ヒメリの実があったら分けてくれないか」

     静かだが太くて優しい声。そんな風に思いながら、鞄から長い葉っぱを掴んでヒメリの実を2つ取り出し、手渡した。

    「どうぞ…あの、回復のきのみは要りませんか?」

    「ああ、いや、手持ちに“じこさいせい”ができる奴がおるんだが、使用上限を超えたんだ」

     成程。頷いて、私はもう一個ヒメリの実を取り出して渡した。“あさのひざし”もだが“じこさいせい”など回復系の技は使用回数が僅かしかない。風格からしてベテランの彼はきっと手持ちがまだいるはずだ。PP回復の実はたくさんあったほうが良いだろう。ありがとう、と言う声がじんわりと心に沁みていく。嬉しい、素直にそう思った。

    「まだあるので、いつでも声をかけて下さい」

     優しい口調を心掛けて言ったその時、強い日差しを感じたような気がして空を見上げた。雨の粒が当たってこない。

    「晴れた!」

     あちこちで声があがる。また、「あのポワルンだ!」という声も聞こえた。ポワルン――天気ポケモン。一体誰のポケモンだろう。歓声と共に、ざわざわと騒ぐ声が近づいてきた。思い出す…これは、ここまでの道のりで聞いたあの賑やかな人達?

    「えー、誰か、このおねえちゃん回復してくれへん!?」

     強い訛りで叫ばれる。急いで声のする方に向かうと、いつの間にかエーフィがいた。晴れている今、“あさのひざし”の回復力は体力の半分を癒す程の威力を持つ。緊急に回復を必要としているこちらに向かうのを優先したようだ。こっちこっち、と背中を押されて人込みの中に入ると、足元で「フィ…」と柔らかい鳴き声が聞こえた。きっと怪我人のポケモンだろう。

    「エーフィ、“あさのひざし”!」

     太陽が近くなったような暑さを一瞬感じる。見えなくても眩しい。すぐに光は収まる。しかし反応は無い。気を失っているようで、微かな息遣いは聞こえるものの、それ以外の動きは感じられなかった。もう一度指示しようと口を開けた時、別の方向で声が上がった。

    「こっちのおにいさんもお願いできますか?」

     女の子の声と、背の高いポケモンの息遣いが近づいてきた。どうやら、怪我人を運んできたらしい。

    「さっき崖から落ちてきて。でも、このさくらちゃんが大活躍してくれたんだけどね! ねっ、ツボちゃん」

     周りで歓声が上がる。知り合いなのだろうか。『さくらちゃん』『ツボちゃん』と何度もコールされていた。とにかく、大活躍、の中身は知れないが、崖から落ちてきただなんてどんな大怪我だろう。恐る恐る近づくと、不意に、「あのぅ」と男性の声が聞こえた。

    「そろそろ…降ろしてもらっていいかな」

     何故か「いやいや」をするような、甘えた鳴き声がする。どっと笑いが巻き起こったが。



    ――――――――――――



     うわああああ
     
     てこさん家のベテランレンジャー様、サトチさんの商店街のトモコちゃんをはじめまして、夢見るオトメさくらちゃんやツボちゃんやポワルンちゃん、たくさんの皆様をお借りしました。

     リザードン! リザードンが戦場にいる!
     興奮してつい書いてしまいましたww

     関西弁とかの訛りに滅法自信が御座いません、変な口調でしたらすみませんorz

     とりあえず回復係に回ります^^\

    【あれ、風神雷神どこ行ったの? ハイ気にしない】


      [No.988] 白黒終末・裏話 投稿者:紀成   投稿日:2010/11/22(Mon) 20:47:34     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    彼女の物語は面白い。僕と同い年なのに、既に出版までされるほどの実力を持っている。
    うちのクラスにもファンは多い。すごいと思う。

    思うんだけど・・


    僕の名前はミコト。え?どっかで聞いたことがある?そりゃそうだよ。多分その子は、最期は氷づけにされたんじゃないかな。
    合ってるなら、話は早い。その物語を書いたのは、僕の親友なんだ。で、その主人公のモデルを僕にした。
    こちらはいい迷惑だよ。『氷づけ女』って呼ばれるようになったんだから。別にこの世界をモノクロにしたいなんて思ってないよ。退屈なのは分からないでもないけどさ。

    「ミコトならそう思うかと」
    「自分をモデルにすればいいのに」
    「嫌よ。気が引けて書く気が失せちゃうから」
    彼女・・ミスミは美人だ。キリリとした目と、寸分の狂いもない顔のパーツが見事だ。成績も申し分ないし、先生からの受けもいい。
    ただ、性格はひどい。友達をモデルにしたキャラを氷づけにしたり、世界をモノクロにするようにしたり。書いている本人はあっけらかんとした表情だが、その小説のせいで僕のオーダイルはれいとうビームが出せなくなってしまった。
    「自分が出したら僕が凍るんじゃないかって思うらしい。凍らないよ、僕は」
    「っていうか、ミコトって何でワニを二匹も持ってるのよ。あんな厳ついの一匹でいいじゃない」
    「かっこいいからだよ。ワルビアルにオーダイル、オマケとしてランクルス」
    「あーあ、ランクルスが可哀相。あんな厳つい二匹に囲まれて」
    僕のポケモンは今言った通り、この三匹。何故ランクルスがいるのかはよく聞かれるけど、ミスミだってバシャーモとダストダスという異様な組み合わせを持っている。
    「君だってダストダスは入れる必要無かったんじゃないの」
    「失礼ね。あの子良いところ沢山あるのよ。人混みを掻き分けてくれるし」
    「それってただ単に臭くて人がどいていくだけじゃないの」
    最初ミスミのポケモンを見た時、ポケモンにもこんなに差があるのかと悲しくなった。だって、そう思ってしまうくらうバシャーモの隣にいたダストダスは惨めに見えたんだから。
    「確かに、毒タイプは苦手って人は多いわ。ファンレターを送ってくる人も時々言ってくるから」
    ここで仕事の話に持ってくるのも、ミスミらしいといえばミスミらしい。
    「でもね」と彼女は付け加えた。
    「好きな人は好きなのよ。ミコトの手持ちが苦手な人や、ゴーストタイプが苦手な人も絶対いる」
    そこまで言ったところで、僕とミコトの間にある机がガタッと揺れた。人は通っていない。ポルターガイスト?
    ・・そういえば、霊感が強い子が言ってたな。この曲教室の隅っこに、何かが沢山いるって。そしてそれを従えるような人がいるって。
    「それでも、ゴーストタイプが好きな子はいる。私だって、ダストダスが大切だから」
    ここまで愛される毒タイプも珍しい。まあ、僕も三匹が大切だし、悪いことを言うつもりはない。
    いや、それとは別に。

    「僕をモデルにするのはいいとして、挙げ句の果てに氷づけにするの、やめてよ」
    「じゃあ何が良かった?白竜に燃やされるとか、黒竜に焦がされるとか」
    「君ってホント黒いよね。色んな意味で」

    無駄な言い争いをしていると、後ろの方で笑う声がした。ミスミが立ち上がる。
    「何がおかしいの?」
    後ろの子が読んでいた本を閉じる。
    「凍らされるとか、燃やされるとか、焦がされるとか・・。面白いと思って」
    「え?」
    面白い?この表現が?
    「褒め言葉として受け取っていいのかしら」
    「うん。でも、ゴーストタイプの悪口はやめてほしいな」
    「ゴーストタイプが好きなの?」
    「無駄の無い動きって良いよね。だから好き」
    彼女は立ち上がった。空気が動いた気がする。何かがうごめくような。
    「ギラティナのことも書いてほしいな」
    そう言い残し彼女は教室を出て行った。うごめく何かも一緒に。
    「ギラティナ、か・・」
    ミスミがニヤリと笑った。こういう時の表情は、だいたい新作のネタを思いついた時だ。


    次の日から、ミスミは昨日の彼女の観察を始めた。
    一度興味を持った以上、彼女が追求をやめることはない。


      [No.987] 愛したいのに憎らしい 投稿者:てこ   投稿日:2010/11/22(Mon) 04:10:00     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    >しかしいやに楽しげにポッキー交換しやがって畜生ポッキー前歯の間に挟んで歯ぁかち割って歯周病で氏ね!

    てっきり自分の心境かと思いました。
    ちくしょう、ちくしょう……!静電気仕事しろ!

    週刊ghostも非常に気になりますが、カゲボウズ、カゲボウズ……。なんだろう、なんか愛したいのに憎らしいみたいな微妙な気持ちで一杯です!

    え?ポッキーゲーム?いやいや、僕はいつも魔獣の役でしたようふふ(混乱中

    楽しんで読ませていただきました。


      [No.986] いざ風神!!(11/23 書き加え 投稿者:てこ   投稿日:2010/11/22(Mon) 03:23:10     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     座り込んで大きくため息をついた。体は泥だらけ。おまけに濡れているので、うーん、体が冷える冷える。相棒のフーディンはじこさいせいですっかり体力を回復させ、座り込んで寝こけていた。そのフーディンのでっかい頭の上でムウマージもすやすや寝ている。
    「大変なことになると思いましたよ……」
    「まあ、なんとかなってよかったじゃないですか」
     アブソルの頭をなでながら、笑顔で相槌をうったのは、一人のレンジャーだった。山での活動によく慣れているのだろうか。彼が非常に早く崖をすべり降りてきたのを見た時はこんな状況ながらも、感心して見とれてしまった。反対に俺はかっこ悪く滑り落ちたのだが。彼はレンジャーの中でもかなりの技術の持ち主だろう。
     彼の隣に座っているトロピウスの背中の上には一人の小さな少年がいる。今回の仕事はこの土砂崩れに巻き込まれた少年を助けることだったはずなのだが、予想外に大変な仕事になってしまった。俺もこんな仕事をするのは始めての経験かもしれない。最も、土管に顔のつまったリザードンを助けるなんて仕事もなかなかに大変なことには大変だったが。
     少年の目は開かないが、息は荒いながらも続いている。ウツボットが大きな葉を彼の上にかざし、少年の体に雨が当たるのを防いでいた。少年の様態の経過を見る限り、命に別状はなさそうに見えてきた。ただ、意識がはっきりとしないところが問題である。

     彼の話によると、この嵐の原因はこの地方に住む風神と雷神なる二匹のポケモンの喧嘩なのだそうだ。迷惑なやつらである。喧嘩は人のいないところでしてほしいものである。まったく。
     先程会った赤い女性は彼らに何か用があるようである。あーんな感じで、人の助けはいらん。みたいな人は、人の助けを必要にするんじゃねーかなぁ、なんて漫画みたいなステレオタイプな考えをする俺は結構バカなような気がする。ただ、あーいう風にこう強い気持ちを持ってる、いや持ちすぎてると、ふとしたときに足を何かにとられたりするんじゃねーかなぁ。まぁ、これも単純すぎる考えか。
     そして、それに加担するように後を追っていったのは、青年のトレーナーである。六匹ものポケモンに同時に指示が出せるなんて普通のトレーナーのなせる業ではない。かなりの腕前と見た。持ってるポケモンも相当レベルは高そうであった。
     いくら強いポケモンと言えど、あの二人と十二匹にかなうのはそうそういないんじゃないだろうか。二人とも、戦いの中でやってきたような強い目をしていた。平々凡々なレンジャーの俺はここらでレンジャーのきっちりこなすくらいが精一杯だ。戦いを好むような性質でもない。……いや。
    「お前は戦いを好む奴だったな……」
     俺の腰についている三つのモンスターボール。一つはフーディン、一つはムウマージ、そして揺れに揺れている最後の一つは――。
     外に出してやろうかとも考えたが、やっぱりやめた。非常に好戦的で血の気が多すぎる。奴を出すと丸く収まりかけていたものもおじゃんになる。出すとややこっしいことになる。出来れば、めんどくさいときは出したくない。そんな奴、である。

     少し離れた空に雷がはぜる。あの空の下でどんな激闘が繰り広げられているのだろう。何にせよ平凡レンジャーである俺に出来るのは戦いに加担することではなく、人を助けることである。盾になることは出来ても、矛になることはできない。

    「大丈夫……ですかね」

     レンジャーが不安げに呟く。ないとは思うが、万が一あの二人が倒されたものならこっちに来る可能性が無いことは無い。いや、高い。俺は戦い慣れをしていないし、何よりここに残ったポケモン達は雷にも飛行にもあまり相性がいいとは言えない。しかし、だからと言って下手に動けるものでもない。雨は弱まらない。風はさらに勢いを増している。八方塞がりとでも言うべきか。

     遠くから何かのうなる声がする。大地を揺らし、気持ちを不安にさせる声が、する。


    ―――――――――


     ち。

     小さく舌打ちをする。遠くではぜていた雷が止み、ほっと安堵していたときに、ものすごい突風が吹きアブソルが吠えた。安堵して、構え、安堵して、構え。どうやら、今回一筋縄どころか二筋輪でもうまくいきそうになさそうだ。

     ――来るのは、風。どう、戦う。


     突風が吹く。顔を腕で庇い、少し顔を上げる。

    「っ!?」

     すぐ目の前に雲があった。大きな体を雲に乗せ悠々と俺たちを見下しているのは、風神。だいぶ、ダメージを受けているらしいが、俺達を一通り見ると鋭い牙をのぞかせた。笑っている、のだ。
     ――あちらさんにとっては、余裕に見える、か。
    「ムウマージ!」
     ムウマージの瞳が妖しく輝く。俺は腰につけていた最後のモンスターボールを放り投げた。放たれた赤い光が徐々に形を作っていく。
    「あなたがたは、向こうへ!挟み込む形に!」
     アブソルのレンジャーに叫ぶ。レンジャーは驚くほどの身軽さで山の斜面を駆け、風神を挟んで向こう側に立った。トロピウスの背中に乗せていた少年を下ろし、彼は少年を背負い、何歩か後退した。彼の前に壁のように立ちはだかるウツボットとトロピウス。苦手なタイプの相手だと言うのに、その彼らの様子におびえなんてものは微塵も感じられない。
     ただ強い意志を持ち、風神を見ていた。
    「いくぞ!」
     ボールから出た赤い光は風神の後ろから先制攻撃をかます。宙を飛ぶ風神にふいうちをかましたのは同じ飛行タイプの――ドンカラス。俺の最後の手持ちである。風神が起こした強い風がドンカラスに襲いかかる。だが、そこは強靭な羽ですぐに体制を整える。さすがそれでこそ、ドンカラス。得意げにげぇあぁ!と鳴いて見せた。あいつ、自信過剰ではない、はずだよなぁ。血の気が少し多いだけなはずなんだが。
     悔しそうに顔をゆがめた風神に、次の攻撃。
    「うわぁ……」
     敵のことながら、つい声を漏らしてしまう。勢いよく風神の顔面にぶつかったのは紫色の液体。ウツボットのヘドロばくだん。怒り狂った風神は、向こう側のレンジャーの方に突撃し



    ――はしない。否、できない。

    「フーディンはムウマージのサポートを」
     フーディンがムウマージの目の前に立ち、自分の身代わりを作った。そこですかさず、減った体力をスプーンを曲げて回復。ムウマージの瞳は妖しく輝き続けている。風神はムウマージを憎憎しげに睨みつけていた。くろいまなざし。ムウマージが倒れたりしない限り、風神は動くことはできない。これで、向こうのレンジャー側に攻撃が行くことはないだろう。向こうは三体のうち、二体が草タイプ。風神の攻撃を受けて、長く持つことが出来るとは思えない。その点、この方法ならば、こちらにしか攻撃は向かない。
     そして、もう一つの理由。それは――。
     突風が吹き、近くにあった木にしがみつく。足が、後ろに動く。風の力は強く、つかまっていても飛ばされそうなほど。だが、そのとき、またもや風神が悔しげに顔をゆがめ、唸り声を上げた。

     そう。風神が俺たちの方を攻撃しようと風を起こせば、風神の後ろ――すなわちレンジャー側から攻撃すれば、その攻撃は風にのり、強く、威力を増して、風神を傷めつける。風に乗ったヘドロばくだんが後頭部に直撃したんなら、風神でなくともご立腹だろう。俺でも怒る。つまり、風神が俺たちをお得意の風で攻撃すればするほど、風神が受けるダメージも大きくなる、ということ。

     風神が膝立ちのような体勢を変え、どっかりと雲の上に座り込んだ。何かにつかまっていなければ立っていられないような風が、木を揺らす程度のそれに変わる。

     トロピウスが大きく息を吐いた。あまいかおり。風神の動きが一瞬鈍くなったところに、アブソルが飛び掛り大きく鎌を振るった。大きく風神はのけぞり、腕を振り回す。その腕が勢いよくほっそりとしたアブソルの身体に叩きつけられる。しかし、アブソルの身体はそこで霧のように消え、風神は視線を彷徨わせた。遅い。そのとき、アブソルは風神の真上。落ちてきたアブソルが風神の身体にとがった爪をたてた。風神が大きく鳴いた。相手でつめをといで自分の能力を上げるなんて、すごいというか、なんというか怖い。
     ドンカラスが俺たちの前に舞い降り大きく羽ばたいて、あまいかおりを風神側へと押し流し、風神のまわりをあまいかおりで満たす。これで、風神の動きは若干鈍くなるはずだ。これで、なんとかなってくれればいいが。
     
     風の使えない風神はなんとか、抵抗しようとするが、その威力は風の攻撃に比べればなんてこともなかった。すでに体力をある程度消耗していたし、おまけにあまり自由に動けないとなっては、もう勝負は見えていた。





    「なんだかなぁ……」
     抵抗できないポケモンをたこ殴りにしているような気がしないでもない。この状況ではしょうがないことなんだろうけど。
     さまざまな補助技を使い、自分を有利にするというよりかは、相手を不利にするような戦法。木綿で首を絞めるように、じっくりと。これが、俺の得意な戦い方だった。だから、バトルは苦手だった。小手先のテクニックに頼りすぎだと、正々堂々戦えと何度言われたことだろうか。強い技と強い技がぶつかりあい、そしてお互い、気持ちよく試合を終えられるバトルをしろと言われるたびに俺は、何と言っていただろうか。
    『勝てばいいじゃないですか、勝てば』
     道端のトレーナー百人に勝てても、ジムリーダー一人にすら勝てない。試合に勝っても、試合に負けても、相手からは睨みつけられる。勝負とは、勝てばいいものじゃない。それが分からなかった俺は、バトルトレーナーの道をあきらめ、レンジャーになった。

     レンジャーの仕事は俺にあっていたのだと思う。
     例えば『かぜおこし』。バトルの場面では風を相手にぶつけてダメージを与える技だが、砂を巻き込み相手にぶつければ目潰しにもなる。ポケモンの花粉を巻き込めば、目潰しと同時に相手に状態異常の効果を付加することが出来る。『サイコキネシス』も『みがわり』もたくさんの使い方がある技だ。そして、それも相手にダメージを与えるだけじゃない、別の使い方がある。一つの技を、たくさんの技に化けさせる。それが、俺にとってはとても楽しかった。

     そして、今。レンジャーの経験を生かしつつ、俺はバトルをしている。こんなに、本格的にやったのはいつぶりだろう。風神に勝てるだろうかという不安の中に、どこかどきどきわくわくとした気持ちがあった。

     ドンカラスが赤い光を纏いつつ、風神に突撃する。あんまり、タフじゃないんだからゴッドバードやらギガインパクトやらするもんじゃないと思うのだが、彼の十八番がそれであるからにはしょうがない。あくのはどうでもふいうちでもなく、それなのである。ドンカラスがげきりんを覚えられるようになったら、彼はまっさきにげきりんをマスターするに違いない。
     ゴッドバードやギガインパクトは発動する直前や、発動した直後は動けなくなってしまう。つまり、その技の前後に隙を作ってしまうし、その隙に倒されてしまう可能性も高い。だが、その分、一発のダメージは大きい。まさに運任せ。ギャンブルみたいなものである。
     ただ、このスタイルをずっと貫いていられると言うことは、このスタイルでもそれなりに結果を出せているということである。

     ……単なる強運な気もするが。


     アブソルとドンカラス。あく同士通じ合うものがあるのか抜群のコンビネーションで風神に交互にダメージを与えている。トロピウスはあまいかおりで風神の動きを鈍くし、ウツボッドはグラスミキサーで風神の視界を妨げている。フーディンはムウマージをサポートしつつ、サイコキネシスでその場の状況を有利に変えていた。 


     いける。そう、思った。そう誰もが思っていた。


     
     弱りかけていた風神の目がかっと開いた。鬼の眼だった。その場の空気が一瞬で変わる。
    「ムウマージ……?」
     今まで冷静だったムウマージの身体が、がたがたと震えていた。呼びかけても反応がない。もっと、ムウマージに近づこう。そう思って、一歩踏み出した。

     その時、突如凄まじい突風が風神の身体から放射線状に周囲に吹き出された。その強い風が直でムウマージの小さな身体に襲い掛かる。ムウマージは吹き飛ばされ、離れた場所にあった木に突っ込み、気を失った。
    「なん、しようとや!!フーディン!フーデ……」
     ふと気づく。さっきまであったはずのフーディンの身体もそこにはもう無かった。みがわりをしていたはず、だった。

     ――みがわりを一発で剥ぎ取り、吹き飛ばしたってことか?

     強い風が吹き荒れる。俺は飛ばされそうになりつつ近くの木につかまり、伏せた。向こう側でも、ウツボットとトロピウスの姿が見えない。吹き飛ばされたのだろう。レンジャーは俺と同じように地面にうずくまり、少年を暴風から庇っていた。
     熱い。目の上が熱い。触ってみるとぬるりとした感触がした。手が真っ赤に染まっていた。風の刃か、飛んできた枝か何かか。まぶたの上が切れている、らしい。
    「ドンカラス!」
     ドンカラスは暴風の中、まるで紙切れのようにあっちにふらふら、こっちにふらふら。おかしい。どんな風でも耐えられるとは言わないが、あんなふうになるわけがない。声をかけても、全く聞こえていない。聞いていない、まるで無視でもしているくらいに。そして、空中でもがいている。落ち着かない。――混乱。

     風神は弱りつつも、俺を笑顔で見下していた。腹のたつ奴。俺は眉間にしわをよせて思いっきり睨みつけてやった。こういうところは気迫がものを言うのだ。もし、俺がポケモンだったら直接かみついてやりたい。
    「やばい、な」 
     もうポケモンがいない。ポケモンのいないトレーナーなんて、絹ごし豆腐よりもろいなんて有名な話じゃないか。唇をかみ締める。風神が、ゆっくりと俺に近づいてくる。 生暖かい液体が頬をつたって、地面に落ちる。
    「ここ、までか」
                                          アームハンマー 
     風神が顔を緩ませたまま、腕を振り上げる。なるほどね。直接、手を下してくれるなんて、光栄なこった。

     ――安堵して、構えて、安堵して、構えたんだ。次にくるのは安堵。それしかない。

     風神の太い腕が落ちてくる。俺は目を閉じ、息を吸った。


     風神が鳴いた。しかし、それは喜びの声ではなく、苦しみの断末魔だった。
     赤い、赤い竜が全身に炎を身に纏い、風神の身体を強く山の斜面に押し付けていた。地面が揺れた。
    「リザードン、か?」
     救援のポケモンだろうか。なんにしろ、俺はあのポケモンに命を救われたのだな。
     風神が苦しそうに、悶え鳴いている。飛行の風神に炎は効果が抜群。全身に炎を纏ったリザードンは、憤怒の表情で風神を見た。風神がおびえたように動きを止めた。風神を鋭い爪で斜面に押し付けたまま、リザードンは炎を纏った牙で風神の首元に噛み付いた。風神が力なく苦しげに呻く。あの太い腕も、リザードンの体を払いのけることは出来ない。それほど、あのリザードンは、強いのだろう。
     風神が完全に身動きしなくなると、リザードンは大きな翼をはためかせ、斜面から離れる。そうして、山の下の方へ体をくねらせ、飛んでいった。長い尻尾の先にともった炎は風に揺らぎつつも、煌々と赤く、強く、燃えていた。


     すっかり抵抗しなくなった風神が斜面を転がり落ちて、やがて、動きを止めた。苦しそうに、腹だけが上下していた。
     


     空から、羽をボロボロにしたドンカラスが舞い降りてきた。リザードンの炎に巻き込まれたかと一瞬考えたが、そのときにはどうやら混乱は解けていたらしい。向こうで、フーディンが驚いたように身体を起こしキョロキョロと辺りを見渡していた。吹き飛ばされたこと、分かってないかもしれないな。落ち葉に埋もれかけているムウマージを抱きかかえ、頭を撫でてやる。おつかれさま。本当に、おつかれさま。
     向こう側ではウツボットとトロピウスがレンジャーの元に駆け寄り、きのみか何かをもぐもぐと食べている。少年は無事だったようだ。レンジャーの隣にはアブソルが横たわっている。おそらく、あの暴風を一番近くで受けたのではないだろうか。だが、真っ赤な眼はきっと開かれ、強い力を持っていた。怪我はひどいが、命に別状はなさそうである。アブソルを撫でていたレンジャーと目が合う。彼は握りこぶしを前に出して笑って見せると、上空を指差した。




     ――青空、だった。
     まわりは雲に覆われているのに、風神を倒したところだけ、台風の目のようにぽっかりと穴が開いている。そこから、丸い青い空が少しだけのぞいていた。まぶしい。久しぶりに見た光。太陽の光が、筋のように雲の隙間から差し込んできていた。先ほどとは打って変わって穏やかな風が、草木を揺らしている。木の葉についた水滴が、葉の擦れ合う音と共にぱらぱらと降ってくる。


     気を失っていたムウマージが、目を覚ましたのか体を摺り寄せて、きう と鳴いた。腕のなかで、傷だらけの彼女は穏やかに笑っていた。
     ほっと、した。目の奥が熱くなって泣きそうになった。涙を拭おうとしてぬるりとした感触を感じたとき、力が抜けた。膝から座り込み、地面の上に横たわった。もう、体を起こしていられなかった。どこか、遠くで数人の人々の喜ぶ声と足音が聞こえた。聞き覚えのある声も、あった。

    「少し、眠い……な」
     青空を背景に、俺のポケモン達が笑顔で俺を見つめている。
     もう、目を開けていられなかった。意識が、ゆっくりと消えた――。






    ――――――――――――――――――


    【バトルシーンが苦手でごめんなさいなのよ】
    【勝手に終わらせていいのか不安なのですよ】
    【どうしてくれてもいいのよ】
    【むしろ、この続きが大事なのよ】


    CoCoさんのレンジャーさんとそのポケモンたち、ヘドロばくだんごめんなさい。ウツボットの技で草以外だとヘドロばくだんしか思い浮かびませんでした。
    海星さんのリザードン使わせていただきました。ちょっと、あまり書けなくてすみません。(強すぎた

    クーウィさん、きとかげさん のようなかっこいいバトルシーン書けなくてすみません。彼自身もそこは分かっているのでなんとか許してやってくださいませ。

    風神、雷神 最初は架空のポケモンかと思っていましたが BWに出てらしたんですね!「風神 ポケモン」でグーグル先生でぐぐったときまさか出るとは……。

    もちろん、アーカイブには賛成ですが
    こんだけ長い量がアーカイブとなるからには自分のはちゃめちゃな文章書き直し!しなきゃなんて思ったり!


    読んでくださったかた、ありがとうございます。
    まだ、つたない文章ですが、今後精進いたしますゆえ……!

    11,23 01:00 少し、書き直しました……。


      [No.985] 少女と案山子 投稿者:セピア   投稿日:2010/11/21(Sun) 21:10:02     101clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    ■ 少女と案山子



    ハジシゲタウンで開催されるというポケモンコンテスト。
    このコンテストに出場するために、私はキンセツシティからハジシゲタウンへの道を旅していた。

    111番道路に到着した辺りで一息ついていた私は、ポケナビで現在地を確認していた。

    ――― どうやら111番道路から113番道路へ行くには二つの道があるらしい。

    一つはこの先にある煙突山の洞窟、通称「炎の抜け道」を通って行く道。
    そしてもう一つは、今私の右手に見える砂漠を通ることで、「炎の抜け道」をショートカットして113番道路へと続く道。

    どちらの道が距離が短いのかは明白だ。それに「炎の抜け道」の出入り口に行くためにはこの先の急な坂を登らなければならない。
    一方で砂漠を通れば、距離が短いうえに道も平坦だ。

    悩むことなく、私は砂漠を通る道を選択した。



    この日の天気は雲一つない快晴だった。さらに運のいい事に ― 後で聞いた話だとこの砂漠は普段は砂嵐が酷いのだそうだが ― 砂嵐もピタリと止んでいた。

    ――― まるで私のコンテスト出場を祝ってくれているかのようね。

    そんな調子のいい事を考えながら、私は意気揚々と見渡す限り砂一面の大地を歩いていた。


    しかし、程無くして事態は急転した。
    もう歩いて何時間と経っているにもかかわらず、なかなか砂漠から抜けられない。遠くまで見渡しても砂丘ばかりなのだ。
    さっきまで暖かかったはずの日差しは、いつの間にかジリジリと辺り一帯を照りつけていた。
    進む方向が気付かない間にずれていたのだろうか。もしそうだとすれば、おそらく今の私は“迷子”といって差し支えないだろう。

    ――― だけど、問題ないわ。私にはポケナビがあるもの。

    私は懐から片手に収まる程度の小型の電子機器を取り出した。そして「タウンマップ」を開き現在地を確認しようと、電源を入れた。
    ところが、ポケナビの画面にはメニュー画面が表示されなかった。代わりに表示されたのは―――


    ――― 「充電切れ」


    「………」


    予想外の表示に思わず絶句してしまった。

    しばらく画面を見つめた後、私はポケナビをテレビと同じ要領で叩いてみたり、あらゆる方角に向けてみたりした。
    それでもポケナビの画面には一向にメニューが表示される気配がなかった。額からは気温とは関係のない嫌な汗が噴き出してきていた。

    「なんとかこの砂漠を抜けなないと……」

    自分に対して警告するかのように、私はそう呟いた。



    その後もしばらく歩いてはみたものの、事態は好転しなかった。
    視界に広がっているのは相変わらず砂丘ばかり。後ろを向くと自分の足跡が延々と続いていること以外は、全く変わらない光景だった。
    幸いなことに、水だけには困らなかった。私の相棒が“水鉄砲”で空の水筒を満たしてくれるからだ。
    もちろんその水が衛生的なのかどうかはわからないが、少なくとも喉の渇きで倒れるよりかはマシというものだ。

    「ありがとう、戻って休んでて」

    私は相棒をボールに戻すと、重たい脚を引きずりながら再び歩き始めた。
    もうじき夜になるのだろうか、太陽は柔らかな紅色の光を帯びて砂漠の地平線に沈もうとしている。

    ―――暗くなれば、無闇やたらには歩けなくなるわね。

    私はそう考えて、一先ず一夜を明かせるような場所を探すことにした。
    …といってもここは砂漠なので、どこで寝ようとあまり変わらないのだが。

    辺りを見回していると遠くに何かを捉えた。遠目から見た感じでは、洞窟のようだ。
    とりあえず、あの洞窟の中なら多少は風雨を凌げるだろう。いや、この場合は砂嵐だろうか。
    そんなことを考えながら、私は進路を洞窟へと向けてゆっくりと歩き出した。徐々に洞窟の姿が大きくなってきた。
    疲労感のせいか、両足だけは機械的に動くものの意識がボンヤリとしている。



    だから―――私は気付けなかったのだ。足音を消して背後に近付いてくる気配に。

    不意に首の裏に強い衝撃を受け、私の視界は暗転した………











    ―――――パチッ、パチッ


    火の爆ぜる様な音で私は目を覚ました。ぼやけた視界に映るのは、三日月と星が輝いている夜空だ。
    私は目を擦りながら、ゆっくりと起き上がった。

    ―――なぜ、こんなところで横になっていたんだろう…?

    疑問に思うと同時に深いゆったりとした口調の声が聞こえた。

    「おう、目ぇ覚めたかい」

    声のした方を向くと、「誰か」が猫背になって座り込んでいた。こちらに背を向けているので顔は見えない。
    しかし先程聞こえたのは火の爆ぜる音で間違いなさそうだ。座り込んでいる彼の目の前で、焚き火が煌々と辺りを照らしている。

    私はその声の主が続きの言葉を発するのを待った。しかし、彼は再び喋り出すことはなかった。
    黙って火に薪ではなく細い枝をくべている。その態度を奇妙に思いながらも、私は立ち上がって火のそばへ近寄った。

    焚き火を挟んで彼の向かいに腰を降ろし、とりあえず何か言おうとした。

    「あのー……」

    あなたは誰ですか、どうして私はこんなところで寝てたんですか、今何時ごろですか。
    尋ねたいことはいくつかあったものの、それらの疑問は、しかし私の口から発せられることはなかった。

    なぜなら―――私が彼の姿を見てしまったからだ。

    最初に目に飛び込んできたのは全身の肌の色だった。白でも黒でも、もちろん肌色でもないその色は見紛う事無き「黄緑色」。
    菱形の緑色の棘のようなものが全身から浮き出てている様は、とてもじゃないが人間とは思えない。
    私が絶句しているのが面白いのだろうか、目深にかぶったとんがり帽子で表情こそわからないものの、かろうじて見える口元が不敵な笑みを湛えていた。

    「そんなに驚かなくとも…化け物を見た人間みたいじゃないか」

    黄緑色の案山子のような生物は先程と同じゆったりとした声で言った。
    その言葉で私は我に返ったものの、依然として混乱は続いていた。初めて見るポケモンだ。しかも流暢に喋っている。
    ホウエン地方は広いと分かってはいたが、こんな辺境の地に人の言葉を使うポケモンがいるとは。
    それと「みたい」じゃなくて、その通り。そのように突っ込もうとすると、いきなり彼の自己紹介が始まった。

    「俺の名はノクタス。特技は“草笛”だ。この砂漠には昔から住んでいる。何故喋れるのかは訊くなよ、面倒だから。」

    一気にそう捲し立てると、彼は「何か質問は?」と問いかけてきた。えーっと…
    まだ私が混乱していると感じたのか、そのノクタスは再び話し始めた。

    「嬢ちゃんには謝らなきゃなんねぇ。理由はさっき“ふいうち”をしちまったことだ」

    それを言われて私は思い出した。そうか、気絶していたのはそのせいか。
    首の裏はまだひりひりとしていて、やんわりと撫でると少々痛い。途端に怒りが沸点に達した。

    「そうよ!あんた一体どうして、あんな…」

    私が不満を言い終わらないうちに、「だけどな」とノクタスが遮った。

    「俺が気絶させなきゃ、嬢ちゃんは今頃ナックラーの腹の中だ」

    その言葉に思わず口をつぐむと、彼はこう続けた。

    「あの辺りはナックラーたちの生息地なんだ。迂闊に近づいたら奴らの“ありじごく”に捕まって生きては帰れない。
     文句はあるかも知れんが、本来なら嬢ちゃんは例を言うべきなんだぜ」

    それを聞いて私は若干不本意ながらもお礼の言葉を述べた。ただしせめてもの反抗として努めて平坦な声で。

    「…助けてくれてありがとう」

    「…棒読みかよ、まぁお互い様だがな」

    ノクタスはやれやれと手を広げて首を横に振った。何か腹が立つ。
    しかし、ふと疑問に思ったことがあったので、私はそれを聞いてみることにした。

    「お互い様ってどういうこと?」

    ノクタスはそれを聞くと、私のことををまっすぐに見つめてにんまりと笑った。
    その笑顔を見た私の背筋には、正体不明の悪寒が走った。

    「ああ、それはなぁ……」

    そこで一端台詞を切ると、不意に下を向いて黙り込んだ。
    そしてひっそりとこう続けた。


    「嬢ちゃんを…、食べるためさ」



    私は反射的に立ち上がり、この場から逃げようと―――して、躓いた。
    もう一度立ち上がろうとすると、突然体が重くなったように感じた。

    「逃げようとしても無駄さ、“わたほうし”で嬢ちゃんの動きを鈍くさせてもらった」

    さっきまで焚き火の向こうにいたはずのノクタスが、いつの間にか転んだ私の横に立っていた。
    私を見つめるその両眼は、まさに捕食者のそれだ。瞳の奥が爛々と輝いている。

    「人間ってーのは脂が乗っていて実に旨い。特に女子供はな。この辺りには食糧が少ないもんだから、嬢ちゃんは貴重な栄養さ」

    ノクタスが喋っている間に、私はなんとか腰につけているモンスターボールに手を伸ばした。
    しかしいくら腰のあたりを探っても、一向に何かを触れる様子はない。

    「ちょっと!私のモンスターボールどこにやったの!?」

    私の鬼気迫る大声のせいか、はたまた話を遮られたせいか、ノクタスは顔をしかめた。

    「嬢ちゃんのボールなら、勝手に火の傍に置かせてもらったぜ。獲物に抵抗されると厄介なんでな」

    この角度からでは見えないが、おそらくそうなのだろう。しかし相棒のあの子がいないのでは打つ手がない。

    「万事休す…、ね」

    悔し紛れにそう呟いた。なんとか逃げようとするも、身体は少ししか動かない。

    「そのようだ」

    ノクタスはその言葉に同意すると大きく片腕を振り上げた。

    「人間だろうとポケモンだろうと、今まで俺の“ニードルアーム”を受けて無事だった奴はいねぇ。悪いな」

    それと同時に振り上げた腕が急降下して私の首に迫ってくる。私は攻撃に耐えるため反射的にぎゅっと目を瞑った。

















    ……………あ、れ?

    かなりの衝撃を覚悟していたが、いつまでたってもその瞬間が来ない。
    ゆっくりと瞼を持ちあげると、ノクタスは腕を振り下ろし、あとわずかで私の首に当たるかという寸でのところで固まっていた。
    気のせいだろうか、肩が小刻みに震えているように見える。

    「クックックッ…アッハッハッハッハ!」

    突然の大笑いに私は吃驚した。一体何事か。
    しばらくゲラゲラと笑っていたノクタスは、その後ぜいぜいと息を切らしながらこう言った。

    「いやー、いやいや。すまねぇなぁ、譲ちゃん。あんまり譲ちゃんが可愛いから、ククッ、つい調子に乗りすぎちまった」

    そして不意に私の傍を離れると、さっきまで腰を下ろしていた場所に戻ると再びどっかりと座り込んだ。

    「譲ちゃんも、こっち来て座んな。…心配しなくても取って食ったりしねえよ」

    どう聞いてもさっきまでの行動とそぐわない陽気な口調だった、ただし相変わらずゆったりとした声ではあるが。
    私はその言葉を疑いながらも、ボールを取り返すために焚き火のそばへ向かった。
    腰を下ろした私に向かってノクタスはニヤニヤ笑いながら続けた。

    「いやー、俺の趣味は冗談でよぉ。今みたいに人やポケモンを脅かすのがたまらなく好きなんだ」

    「さっきのアレは、ちょっとした演技ってやつだ。少しやり過ぎた感はあるがな。どうだ?吃驚したか?」

    そう言ってから、ノクタスはまたゲラゲラと笑った。
    一方私はといえば、何も言わずにただ黙って俯いていた。
    そして火の傍にあったボールを無言で掴むと、ノクタスから距離をとるため素早く焚き火の傍を離れた。

    「…何やってんだ?」

    ノクタスはまだニヤニヤしている。今の状況が分かっていないようだ。

    「…なんでもないわ」

    私はにっこりと――極めてにっこりと微笑んだ。そして空高くボールを中に放り上げた。

    「出てきて…ゴロちゃん」

    鋭い雄叫びと共に、私の相棒 ――― ラグラージが姿を現す。
    どっしりと構えたその風貌は今まで数多くのトレーナーたちを圧倒し、力強い瞳は一睨みで彼らのポケモンを射竦めてきた。
    それはそのノクタスにも同じことだったようで、今度こそ彼の顔からは笑いが消し飛んだ。

    「…何、する気だ?」

    さっきまでの陽気な声はどこへやら、ノクタスの声はがたがたと震えていた。
    やはり野生のポケモンというだけあって、自分と相手の格の違いを一目で見抜いたようだ。
    代わりに私が微笑みながら、質問に答える。


    「えーっとねぇ…仕返し、かな」

    「…へぇ、そ、そうかい。譲ちゃん中々お転婆だねぇ…」

    余裕ぶっているつもりかもしれないが、声が震えている。視線も定まっていない。

    「命乞いするなら許してあげてもいいけど…?」

    私がそう言うと、ノクタスは居住まいを正し器用に正座すると、頭を擦り付ける様にして土下座した。

    「い、命だけは取らないでくれ!いや、下さい!」

    悲鳴に近い懇願だった。私はゴロちゃんに訊ねる。

    「どうする?命が惜しいみたいだから、ここは見逃してあげようか?」

    最近コンテスト続きで体が訛っていたのか、ゴロちゃんは不満そうに鼻を鳴らした。
    ノクタスは嬉しそうにしながら頭を上げた。

    「譲ちゃん、ありが―――」

    しかし彼はお礼を言いきれなかった。なぜなら―――


    「ゴロちゃん!アームハンマーーー!!」


    私の指示にその台詞をかき消されたからだ。
    顔面にゴロちゃんのアームハンマーを受けたノクタスは、力無く崩れ落ちピクリとも動かなくなった。



    ――― 翌朝。



    「嬢ちゃん、俺そろそろ限界なんだけど…」

    私を背負っているノクタスは疲れ果てた声でそう言った。私は勿論聞こえないふりをする。






    あの後、朝になってもノクタスは目を覚まさなかった。仕方がないので私はゴロちゃんに“ハイドロポンプ”をしてもらう。
    ずぶ濡れになったノクタスは、顔を手で抑えてふらふらしながら起き上がった。

    「お、俺は一体…?」

    その姿は昨晩気絶から目覚めた私に良く似ている。

    「おはよう。御気分は如何かしら?」

    「じょ、譲ちゃん!!頼むから命だけは!!」

    どうやら昨晩のトラウマが残っていたらしい。恐怖からか、あるいはずぶ濡れになった寒さからか、ブルブルと震えている。
    私は腕組みをして溜息交じりに言った。

    「…もうその話は良いわ。許してあげる」

    「ホントですか!?」

    さっきとは打って変わって、ノクタスは涙を流して喜んでいる。

    「た・だ・し!条件があるわ」

    私は彼を黙らせるため、大きな声を出した後こう付け加えた。

    「あなた、この辺りに昔から住んでるのよね。…ということはこの辺りの地理にも詳しいはずよね」

    「あ、ああ…」

    ノクタスはコックリと頷いた。

    「私、この砂漠で道に迷っちゃって…道案内を頼みたいんだけど?」

    それを聞いたノクタスはたちまち憤慨した。

    「冗談じゃねぇ!瀕死にされかけた相手にどうして親切なんか―――」

    私は彼の声を遮って残念そうに呟いた。そしておもむろにゴロちゃんの方を向く。

    「あらそう、残念。…ゴロちゃん出番よ。冷凍パ―――」

    「謹んでお役目引き受けさせていただきます!!」

    指示を出しきる前にノクタスは土下座して案内役を買って出た。

    「…ありがとう」

    私は彼を見下ろして、微笑みながらそう言った。





    「なぁ、頼むから自分の足で歩いてくれよ…」

    ノクタスには昨晩のような元気はない、当然だ。
    ゴロちゃんのアームハンマーをモロに受けたのだから。むしろこうして、歩いているだけでも奇跡的だと思う。
    私は仕方なく、彼の背から降りて地面に着地した。どうして彼が私を背負っていたのかというと、さっき口答えをした罰を受けていたからだ。

    「あ!」

    ノクタスが嬉しそうに声を上げる。私も彼が向いている方を見た。遠くに森が見える。砂漠から抜けられるみたいだ。

    「なぁ、この辺りで俺はお役御免で良いかい?」

    「そうね、もうここでいいわ。今日はありがとう」

    今度は私も、心から感謝の言葉を述べた。ノクタスは満更でもなさそうに頭を掻きながら、

    「いいってことよ」

    と言って照れくさそうに笑った。その後しばらくの間をおいて―――


    「それじゃあな」


    それを別れの挨拶にして、私に背を向け今まで来た道の方を振り返った。
    ゆっくりと歩き出し、私のもとから遠ざかって行く。

    「じゃあね!」

    私が声をかけると、ノクタスは振り向かずに片手を振っていた。
    もう片方の手は、こちらからは何をしているのかわからないが、口元に当てているようだ。

    しかし程無くして、彼が何をしていたのか分かった―――“草笛”が聞こえてきたのだ。


    「綺麗な音色…」


    私はその姿を見送りながら呟いた後、再び振り返って遠くの森を見た。そして第一歩を踏み出し、113番道路へ歩いて行った。




    その日砂漠には、陽気な案山子の草笛が響いていたという。



    -fin-




    ********************************************************


    あとがき

    初めましての方には初めまして。お久しぶりの方にはお久しぶりです。セピアと申します。
    しばらく読み専になっていましたが、久々に作品を書いてみました。
    タイトルが安直過ぎるのはお気になさらず(笑)
    …そうなんです、気のきいたタイトルが思い付かないんですorz

    気を取り直して…
    この作品を気に入っていただければ幸いです。それではまたお会いしましょうノシ


      [No.983] 白黒終末 投稿者:紀成   投稿日:2010/11/21(Sun) 18:53:30     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    暖炉がパチパチと音を立てている。明かりになる物は、それだけだ。
    カオリはシャンデラに照らしてもらおうかと思ったが、やめた。
    鬼火で本が燃えてしまうと思ったからだ。
    本を開いて、暖炉の側に寝そべる。服は既にパジャマに着替えている。
    ポケモン達が集まってきた。
    カオリは表紙を読み上げた。

    「『モノクロワルツ』」


    『昔々、あるところにミコトという少女がいました。
    可愛い子でしたが、少し欠点がありました。
    それは、全てに退屈していたということです。何もかもがつまらない。この世はつまらない舞台の筋書き。
    退屈な登場人物、退屈なシナリオ。
    そんな時間が、死ぬまで続く。

    ある時、ミコトは思いつきました。
    この世界が変わらないから、退屈なんだ。世界を反転してしまえばいい。

    世界から色を、消してしまえばいい。

    ミコトは自分の願いを叶えてくれる力を持ったポケモンを探しました。
    ダークライというポケモンを。
    見つけた時、彼女ははっきり言いました。

    「この世界をモノクロにしてよ」


    こうして、世界はモノクロになりました。朝も昼も夜の区別もつかない、白黒写真が現実になったような世界。

    でも、ミコトは退屈そうでした。
    だってせっかくモノクロにしたのに、気付く人は自分とダークライ以外いないのですから。
    退屈さを紛らわすため、ミコトは世界を回ることにしました。
    ダークライも一緒に。

    北に行きました。
    南に行きました。
    西に行きました。
    東に行きました。
    でも、何処も同じ。人は何も気付かない。
    世界から色が無くなったことも、異常が起きているということも。

    「僕が望んだことは、この世界をモノクロにすることだよね?」
    『ああ』
    「君は願いを聞いてくれた。世界はモノクロになった」
    『ああ』

    「じゃあ何で、僕はこんなに退屈なんだろう」

    疲れ果てたミコトは、ある巨大な洞窟に迷い込みました。
    手探りで進み、外に出ました。
    だけど、そこは。

    一面の銀世界でした。

    モノクロになった世界で、その銀世界だけは美しく光り輝いていました。
    ミコトは歩を進めます。目の前にある物が信じられないと思いながら。
    そして、一つの洞窟の入口にたどり着きました。

    中に入ると、凄まじい冷気がミコトを襲いました。
    どうにか目を開けたミコトが見た物、それは−

    体の半分以上が凍り付いた龍でした。

    『お前がこの世界から色を無くしたのか』
    龍は言いました。
    「そうだよ」
    『何のために』
    「退屈だったから。人が驚いて慌てる様子を見たかったんだ」
    ダークライがミコトの隣に立ちました。
    「でも無駄だった。皆気付かない」
    フゥとため息をついた、その時。

    ピキピキピキ

    ミコトの足が地面に凍り付いていました。
    引っ張っても砕けません。

    「何のつもり?」
    『お前は少々神の領域に足を踏み入れ過ぎた。これ以上余計なことをされても困る』
    「僕を殺すのかい?」
    『氷漬けにするだけだ。その中でお前が望んだ世界の終わりを見るがいい』
    既にミコトの太股までは冷たく固まっています。
    騒ぎも喚きもせず、ミコトはずっと立っていました。

    「ダークライ」
    ミコトが振り向かずに言いました。
    「君がこの世界にした。でも、望んだのは僕だ」
    『何が言いたい』

    「君が死ぬ必要はない」

    とうとう掌までが凍り付いてしまいました。
    流石に冷たくなって来たと思った、その時。

    ダークライが、凍り付こうとしているミコトの腕を掴みました。

    「何の真似?」
    『お前を見殺しにして生き延びても、私には行くべき場所などない。
    私もここで氷漬けになる』

    ダークライの手も凍り付きました。
    そのまま腕の方まで浸蝕していきます。

    龍が言いました。

    『この状況になっても、相手を思う心は凍らず、か。
    言いたいことはないか』

    首が動かせません。ミコトは目の前の龍を見ながら、ハッキリと言いました。

    「僕が死んでも、世界は何も変わらない。
    人が一人いなくなっただけじゃ、何も変わりはしないんだ・・」

    それが最後でした。
    ミコトはもう二度と、言葉を発することはありませんでした。


    ミコトとダークライがいなくなった後も、世界は色が無くなったことに気付かず、ずっと忙しそうに働きつづけているのです。』


    暖炉の火は消えていた。
    カオリは本を閉じると、目を擦ってそのまま眠ってしまった。
    デスカーンが四本の腕でカオリを抱き上げ、側のベッドに寝かせる。
    ブルンゲル二匹が布団をそっとかけ、ゲンガーがベッドのカーテンを閉めた。

    『モノクロエンド』


    [書いてもいいんだぞ]


      [No.981] お久しぶりです。 投稿者:レイコ   投稿日:2010/11/21(Sun) 17:42:03     24clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    こんばんは。私なんぞを覚えていてくださって光栄です。
    BWは波乗りで次の街へ行く必要がなかったので、少し寂しくなったのが切っ掛けでした。
    お言葉に甘えてちょくちょくお邪魔すると思うので、どうぞ宜しくお願いします。
    世間はBWですが時代は今もDPtと信じて違わないレイコでした。


      [No.980] これは新しい 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/11/21(Sun) 11:13:49     19clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    CD化ときたか……!
    誰か、誰か作曲できる人はおらんのか!

    まー自分も小説の曲作っちゃったりしてますけど、
    いかんせん自分のが手一杯だ……orz

    【もうボカロ買って自分で作っちゃいなYO】


      [No.979] The songs :”LatiS” 投稿者:巳佑   投稿日:2010/11/21(Sun) 03:02:32     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    The songs :”LatiS” (画像サイズ: 774×334 79kB)

    [Track.1  紺碧の雫の祈り]
    
    アナタといた日々が何よりの幸せだった。
    無邪気に飛び回る赤い夢に、
    手を焼く日もあったけれど。
    唯一無二の紅玉の笑顔が
    とてもアナタに似合っていた。
    
    だから――
    
    ただ祈るよ。
    ……祈る事しか叶わないけれど。
    アナタの笑顔を見れないのは寂しいから。
    僕も、そして、アナタの心も。
    ただ祈るよ。
    ……祈る事しか叶わないけれど。
    一緒に過ごした日々を思い出す時、
    アナタが笑顔になる事を。
    唯一無二の紅玉の笑顔を
    また見せて欲しい。
    
    
    赤色と青色で紡いで来た日常。
    アナタにとって『これから』の日常に
    青色が途切れたかもしれないけれど。
    僕はそっと、アナタの日常に添えるよ。
    青色の音色をアナタの隣に。
    
    だから――
    
    ただ祈るよ。
    ……祈る事しか叶わないけれど。
    アナタの笑顔が咲いていると幸せだから。
    『これまで』も、そして『これから』も。
    ただ祈るよ。
    ……祈る事しか叶わないけれど。
    『これまで』の幸せは嘘ではないから。
    どうか『これから』の幸せを。
    アナタの心から零れてゆく雫の光が
    幸せでありますように。
    
    
    もう、アナタを抱きしめる事も
    もう、アナタに触れる事も
    もう、アナタと話す事も
    もう、アナタと遊ぶ事も
    
    叶わない
    この体だけれども。
    
    見守る事は出来るから。
    
    祈る事は出来るから。
    
    アナタの幸せを
    
    祈る事しか叶わないけれども。
    
    
    ただ祈るよ。
    ……祈る事しか叶わないけれど。
    一緒に過ごした日々を思い出す時、
    アナタが零す涙の雫が
    どうか、悲しみに埋もれないで欲しい。
    ただ祈るよ。
    ……祈る事しか叶わないけれど。
    一緒に過ごした日々を思い出す時、
    アナタが笑顔になる事を。
    唯一無二の紅玉の笑顔を
    また見せて欲しい。
    
    アナタの心の雫が紅玉の笑顔で溢れますように。
    
    
    
    
    [Track.2  ルビー・スマイル]
    
    あなたが握ってくれた手の平からもらった
    たくさんの物語が夢写しのように思い出されていく。
    いつも傍にいて勇気をくれた。
    キミと初めて出逢った、あの青空の下は
    今も私の心に元気をくれる。
    
    数え切れないほどのあなたとの笑顔が
    今の私に育ててくれた。
    キミが引っ張ってくれた手の繋ぎが
    私に新しい熱を教えてくれた。
    
    あなたが守ってくれたこの笑顔も。
    キミが守ってくれたこの笑顔も。
    抱きしめて、
    私は力強く明日に向かって羽ばたいていくよ。
    
    あなたが守ってくれたこの想いも。
    キミが守ってくれたこの願いも。
    「ありがとう」と
    青空に向かって歌い続けていくから。
    
    
    
    あなたと一緒に遊んでいたブランコの
    古びた傷が温かく胸に沁みこんでいく。
    いつも私のわがままに笑っていてくれた。
    キミとあの日、遊んだ、この庭には、
    今も明るい風が吹いてくれてるよ。
    
    あなたが描いてくれた心からの手紙は
    今もこの手にしっかりと握っているよ。
    キミの帽子の温もりを思い出すと、
    こんなにも笑顔がこぼれてくる。
    
    あなたが守ってくれたこの笑顔も。
    キミが守ってくれたこの笑顔も。
    抱きしめて、
    私はこの青空の下で前を向いて生きているよ。
    
    あなたが渡してくれたこの温もりも。
    キミが教えてくれたこの勇気も。
    忘れないよ。
    受け止めた幸せからの雫を受け取りながら。
    
    
    
    キミは今、どんな空の下で足跡を残しているのかな。
    また、一緒に手を取って笑いあえる日を楽しみしているよ。
    
    あなたにはもしかしたら心配をかけているかもしれない。
    けどね、怖がりな自分とは『さよなら』したから。
    私の背中を見守っていて欲しいんだ。
    あなたが守ってくれたこの街に生きれて、
    ……幸せだよ。
    
    「……ありがとう」
    
    
    あなたが守ってくれたこの笑顔も。
    キミが守ってくれたこの笑顔も。
    抱きしめて、
    私は力強く明日に向かって羽ばたいていくよ。
    
    あなたが守ってくれたこの心を。
    キミが守ってくれたこの心を。
    離さないよ。
    悲しい涙に手を振って、
    新しく見えて来た日々を羽ばたいていくから。
    
    青空に響け、この笑顔。
    
    
    
    
    
    【歌ってみました】
    
    念の為、読み方を書いておきますね。
    
    紺碧……こんぺき
    紅玉……こうぎょく
    零れてゆく……こぼれてゆく
    沁みこんでいく……しみこんでいく
    
    
    とりあえず、なんのポケモンの歌かと言いますと……。
    ポケモンの劇場版の第五弾である『水の都の守り神 ラティアスとラティオス』の
    ラティアスとラティオスです。
    映画の話のその後の二匹のそれぞれの想いを考えてみて
    そして歌ってみました。
    表題の"LatiS"(ラティズと呼びます)は
    もちろんラティアスとラティオスを示してます。
    
    紺碧の雫の祈りはバラード調に
    ルビー・スマイルはアップテンポ調となっております。
    ちなみに、『ルビー・スマイル』での
    『あなた』はラティオスで、
    『キミ』はサトシを表してます。
    
    個人的にラティアスとラティオスの映画が一番好きで、
    クライマックスの津波のシーンは見る度に涙腺が熱くなります。
    兄妹の絆に感動しました。
    BGMも素敵過ぎます……!!
    
    後、今回、初めてイラストを載せてみました……。(汗)
    CDのパッケージみたいに描こうと試みてみました……緊張してます。(汗)
    
    
    
    ありがとうございました。


      [No.978] ぼくの奮闘記(上) 投稿者:海星   投稿日:2010/11/19(Fri) 23:52:22     26clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     一匹のジグザグマが岩の陰で丸くなっていた。暗く、じめじめと湿った気持ち悪い場所。普段なら日向ぼっこを好む彼がこんなところにいるのは非常に珍しい。ロコンは不思議そうに首を傾け、そうっとジグザグマに近付いた。

    「…誰?」

     前足を伸ばせば触れられそうな距離まで来たとき、不意にジグザグマが警戒した低い声で呟いた。ロコンはぎょっとして飛び退く。

    「今、ぼく、体調が悪いんだ。だからねむって体力を回復してる。起こさないでくれるかな」

    「うっうん。体調…ってどこが悪いの? 痛かったりする? 薬草でも探してこようか」

    「君はロコン君だね。起こさないでって言ったのにすぐにおしゃべり。優しいんだかおせっかいなんだか」

    「えっあっごめん」

     慌てて必死に言葉を取り繕うロコンに背を向け続けながらため息をつき、ジグザグマは呆れた声を出す。

    「薬草なんか要らないよ。言葉だけ受け取っておく。じゃ、悪いけど帰ってもらえる?」

     冷たい響きが隠された言葉に、ロコンはしょ気る。それに雰囲気で気付いたのか、ジグザグマは少しロコンが可哀そうになって、仕方なくさっきから欲しいなと思っていたものを口に出すことにした。

    「強いて言うなら…“キノコのほうし”が欲しい」

    「“キノコのほうし”? なに、それ」

    「絶対安眠の薬だよ。でも、どこでも売ってない。手に入れるなら、キノガッサに頼まなきゃ無理なんだ」

     落ち着いた調子でジグザグマは喋ったつもりでいたが、どうやらロコンはそれを、本当に欲しくて堪らないのに手に入らなくて悲しんでる、様に受け取ったらしく、鼻息を荒くした。

    「ぼっぼく、その薬もらってくる。大丈夫、すぐに戻ってくるから!」

    「え、ちょっと…」

    「キノガッサだね? 待ってて、今“ヒノコのほうし”を持ってくるからね!」

     いや、ヒノコじゃなくてキノコ…言い掛けた時には既に、ロコンの軽やかな足音は遠ざかっていった。ジグザグマは急に不安になる。あんなおっちょこちょいにこんなこと頼んで良かったのだろうか。この先の森の奥に、キノガッサは住んでいる。しかし、その森には色々なトラップが仕掛けられているのだ。

    「はぁ…あいつが無事に戻ってくるまでは寝れないなぁ」

     とりあえず楽な姿勢を探して丸くなる。浅くても良い、眠るために、ジグザグマは目を閉じた。





     ロコンは、森の前までは来れたものの、そこからどう行けば良いのか分からずにうろうろしていた。元々カントー生まれカントー育ちなので、ここの土地には慣れていない。勿論この森も入ったことが無い。そっと入口から覗くと、茂った葉が誘うようにゆらゆら揺れていた。ジグザグマの寂しそうな背中を思い出す。そうだ、あいつは今風に言うとツンデレって言うか、普通に言うと天邪鬼っていうか。とにかく、痛くても何も言わないし、大抵のことは自分でカタを付けてしまう。ほっとけない奴だ。

    「よ…ようし、行くか」

     勇気を出すための独りごとは虚しく消えていく。ロコンの隣を、虫取り網を持った少年が楽しそうに歩いて行った。そうか…土地に慣れていなくても、今の少年がどんな存在なのかは知っている。奴は俗に言う『虫取り少年』だ。三度の飯より虫ポケモン。きっと彼の姿に変化すれば、森の中でも虫ポケモンに攻撃されることはないだろう。ロコンはキレの良い自分の頭を誇らしく思いながら、弾みをつけて宙返りを一回した。途中でバランスを崩して尻を地面に強か打ったが、そんなに痛くなかった。おお、人間の身体はまるでクッションのようにできている。坊主頭を恐る恐る触ってみると、思っていたよりゾリゾリしていた。そういえば、虫取り少年には必需品の虫取り網を持っていない。ロコン少年は辺りを見回したが、良いものは無かった。仕方なく近くに落ちていた木の枝を掴む。ジグザグマのために早くしなければ。慣れない2足歩行でよちよちと、ロコン少年は森に入っていった。





    「おい」

     上から降りかかってきた声にはっとして目を開けると、長い髪の毛を無造作に縛り上げた主人が岩の上から視線を落としていた。どうやら自分は眠っていたらしい、とジグザグマは内心驚く。

    「もうそろそろジムに行きたいんだけど。傷、治りそう?」

     お前のせいで自分は怪我したんだ、と唸りたくなるが、止めておく。主人は、今風に言うとツンデレと言うか、普通に言えば天邪鬼と言うか。それを一番良くわかっているのは自分なのだから。ジグザグマは、痛くても何も言わないし、大抵のことは自分でカタを付けてしまう主人を見上げ、フンと鼻を鳴らした。

    「んん、随分生意気になったじゃないか」

     人間からすると、膝ほどまでしかない小さな岩だ。主人はパっと飛び降りると、ジグザグマの横に寝そべった。

    「うっわ湿ってる。お前良くこんなとこで寝てられるな」

     誰だっけ、小さい頃にジョーイさんに本気の告白して振られて、それがトラウマになってポケモンセンター入れなくなっちゃった悲しいトレーナー。それでポケセンの回復システムを利用できず、怪我したら自力で回復しなきゃならないパートナーって。あれ、あれれ、誰だったかな。

    「まー良いや。お前意外とふかふかしてるのな」

     主人が腕を伸ばしてジグザグマの腹に頭を乗せてきた。うぐっ傷口の真上だった。刹那、爆音と悲鳴が町中に響いたのは言うまでもない。





    ―――――――

    海星 が 這い出て きた! ▼


     【描いてもいいのよ】
     【書いてもいいのよ】
     【批評してもいいのよ】


      [No.977] 紅色と黒狐 投稿者:   《URL》   投稿日:2010/11/19(Fri) 05:50:12     100clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     I.一週間前


     女性の膝にゾロアが乗っかった。肩にも腕にも頭にも。
     目の前でそれを見ている男性は、ポカンと口を開けている。
     六畳一間の狭いアパートの一室のどこに、これほどのゾロアが隠れていたのだろう。
     見ると、小さな棚の上にあったモビールがない。陶器で出来たタブンネがない。ポカブの貯金箱もない。サイドボードに三つ置かれていた目覚まし時計もなくなっていた。通路に作られたキッチンを見れば、やかんがない。洗いかごにあったお玉もない。洗いかご自体なくなっていた。

     次から次へと現れるゾロアに押し合いへし合いされて、女性の姿は黒い団子の中に埋もれていた。
     女性は胸や頭に乗ったゾロアを引き剥がし、やっとのことで起き上がると、はにかんだような、優しい笑みを浮かべた。



     II.一日前


     湯呑みが落ちた。
     渋い灰色に赤い模様のそれは、床に触れても何の音も立てず、コロコロと転がった。

     パソコンをいじっていた女性は、床に転がった湯呑みを見てため息をついた。
     風も傾斜もないのにコロコロとひとりでに動くそれは「パソコンやめて、かまって、遊んで」と訴えかけているようだった。

     女性は時計を見た。
     午前十一時十五分。
     昼休みまではまだ小半刻ほどある。
     女性はキーボードと、その横に積まれた紙の資料の山を見比べ、これからやらればならない仕事の量の多さを思った。
     資料の上に乗ったバチュルが「フィー?」と声を上げる。

     バチュルは資料の端まで行くと、青く大きな目で下を覗きこんだ。
     そして、「取ろうか?」と言うように女性を見る。

    「いや、いい。放っておけ」

     女性は淡白にそう言って、パソコンに向き合った。
     肩ほどまである黒髪を耳にかける。そうすると視界の端に揺れ続ける湯呑みが映った。

     ふう、と息を吐いた。
     傍らにある紙の山から一枚をバチュルの下から引っ張り出し、睨みつける。
     紙のレポートを電子化するだけの単純作業。
     暇つぶしにはいいかもしれないが、このところお呼びのかかる事件もなく、持ち前の手腕を発揮できないのは彼女にとって苦痛でしかなかった。
     不謹慎は承知で、事件か何か起こればいいと考える。それも大きな事件がいい。
     こう何もなくて平穏で、頭を使うのが、我侭なゾロアたちをどうやって宥めすかすかだけというのは……

     不意に頬に温かいものが触れた。
     机を蹴って回転椅子に加速度を付け、後ろを向く。
     馴染みの同僚であるスミレが、赤い模様の湯呑みを持って笑っていた。
    「はい、これ」と差し出された湯呑みにお茶は入っていない。どうやらただ拾ってくれただけらしい、と判断して湯呑みを机の上に戻す。湯呑みがカタカタ揺れた。

    「ねえ、レンリちゃん」
     湯呑みを拾っただけでは物足りないのか、同僚はレンリに話しかけてくる。
     彼女の中ではもう休憩時間が始まっているらしい。もっとも、事件のない警察なんて開店休業しているようなものだ。
     レンリもそれに付き合うことにして、パソコンの電源を落とした。

     液晶が名残惜しそうにノロノロとシャットダウンの準備をしているのをレンリの横から眺めながら、スミレは話を続けた。
    「ライム君と別れたって、本当?」
    「本当だ」
    「え、なんでなんで? 彼氏が浮気してたとか?」
    「いや。向こうがふったんだ」
     えー、うっそーと大仰な感嘆を上げる同僚を、彼女はあくまで冷静に見つめた。
     その大声に対抗するようにカタカタ鳴り始めた湯呑みを押さえ、「騒ぐことか」と静かに問いかけた。

     にも関わらず、と言うべきか。
     スミレは「騒ぐことよっ!」とレンリの問いの声量の、何倍もの音量で答えた。
    「だってさあ、文武両道美人薄命で有名なレンリちゃんが、ひょろ長のっぽで顔しか取り柄がない気障野郎と付き合ったのよ?
     でもってふられたのよ? 騒ぐしかないじゃない! なんでふられたの? っていうかなんでそもそも付き合ったのよ!」
    「人を勝手に殺すな」
     女はゴシップ好き、とはよく言うが、女であるはずのレンリにはその辺りがとんと分からない。
     メッシュを入れたばかりの髪をいじりながら、ふられた理由は分からんが、と言葉少なに答えた。

     心当たりがないわけではない。
     先週、家に彼が来た。
     その折、彼がクッションに化けたゾロアの上に座って、尻をかまれたのである。
     それだけの理由、という気がする。
     けれど、告白してきたライムが自分より背が高いからという理由で付き合った、その程度の始まりでは終わりもそんなものか。
     小柄なスミレには背の高さ云々を気にする意味は分からないだろうから、話していないが。

     スミレが宙を見て、あ、と声を上げた。
     今が休憩時間であることに気付いたのか、と思いきやそうではなかった。
    「美人で思い出したんだけどさ、事件なのよ。レンリちゃんに行ってほしいのよね。君の好きな潜入捜査」
     レンリが椅子をガタンと倒して立ち上がった。



     III.当日


     レンリはライモンシティの自宅で、あぐらをかいて座っていた。
     正しくは、家にいるゾロアたちと我慢比べをしていた。
     貯金箱、小物、食器類。思い思いの姿に化けた彼らの内、何割かは限界が来ているのか、細かく震えている。

     なぜこんなことをしているのか。
     それは昨日、同僚が持ち込んだ仕事に起因していた。



    「王国? そんなものが今もあるのか」
     そう問いかけたレンリに、スミレは、そうよと笑って答えた。
    「……で」
     レンリは彼女が持って来た資料に目を落とす。
    「歓迎パーティーとやらを催すわけだな。血税を使って」
    「外交だからね?」
     しかし、そこに脅迫状が届いたらしい。
    「なんて?」
    「王女を殺す」
     ありがちな脅し文句だ、と思う。
     レンリは少しだけ形の良い眉をしかめて、資料をめくった。

     パーティーの段取りでは、使節団と我が国のお偉いさんが食事をしながら語らう。
     見取り図に机はいくつも描かれているが、椅子は壁際に数脚だ。立食パーティーをやる気らしい。
     その後の日程はライモンのミュージカルホールやセッカにあるリュウラセンの塔など。
     実質、お姫様の物見遊山ではないだろうか。
     レンリは指でパーティーの段取りを細かくなぞった。
     王女はパーティーに出ずっぱりではなく、挨拶の時間をとって、その時だけ公衆の面前に現れる。

    「でも、凶器はどうするつもりだ? パーティー用のステーキナイフで刺すわけじゃあるまい」
    「ああ、それね。ポケモンは持ち込み禁止なんだけど、ね」
     スミレが背伸びしてレンリの腕の中に手を伸ばし、資料を奪った。
     資料をめくり、ページを探している。
     レンリは思考を巡らし、検査を誤魔化してポケモンを数匹持ち込む方法を考えていた。テロリスト相手に手持ちが一匹では心許ない。

     同僚がページの一点を指し示した。

     銃。



     レンリは指を口に当てたまま、自室の中のゾロアたちの様子を伺った。
     ゾロアたちは見られていることが気になるのか、時折細かく震えている。

    「……そろそろ、いいかな」
     レンリの言葉に、数匹が変化を解いて、子狐の姿に戻る。
     それを見たレンリは意地悪そうに笑って、
    「はい引っかかった」
     と両手を上げた。

     ずるいずるいと言いたげに騒ぎ出したゾロアを適当にあしらう。
    「一番長く変化したやつをパーティーに連れて行く、って言ったろ? 約束は約束だ」
     本来だます方である自分たちがだまされたことに不服な子狐たちは、うにゃんうにゃんと鳴いてレンリにのしかかった。
     だめ、約束は約束、と言ってレンリがゾロアを引き剥がしているところにチャイムが鳴った。

     ゾロアを蹴散らしてドアを開く。スミレが背丈の半分ほどもある大きな紙袋を持って立っていた。



    「なんだこの格好は!?」
     ライモンの自室で大量のゾロアに囲まれたまま、レンリは珍しく声を荒らげた。
     いつものパンツスーツ姿ではなく、ふわりとした赤いドレスに、紅のメッシュを隠すように付けられたドレスと同じ色の髪飾り。
     スミレが着替えろとしつこいので仕方なく着替えたが、着替え終わったところでとうとうレンリの我慢が切れた。
    「警備だろ! なんでドレスなんだ!」
     だってパーティーじゃなあい、と間延びした声で答えるスミレ。
     ゾロアたちが地面に転がって大笑いしている。
    「いいじゃない、似合うわよ」
     スミレは笑いながら紙袋を手際よく畳む。その紙袋に「レンタルドレスサービス」の文字がなかったら、ドレスを引き裂いて脱ぎ捨てるところだ。
     そんなレンリに、スミレは至極機嫌良さそうに問いかける。
    「なんでドレス嫌なの?」
    「…………犯人を追いかける時に不便じゃないか」
    「それだけ?」
    「犯人を蹴る時も困る」
     レンリの返答にただ満面の笑みを浮かべながら、スミレは「行きましょうか」と静かに呟いた。
    「何事もなければ、純粋にパーティーを楽しめばいいんだし」と少し申し訳なさそうに付け足す。

    「ああ、あと、応援ひとり呼んであるから」
     家を出て、スミレの車に乗り込んだレンリに声をかける。レンリは返事をしなかった。

     黒の小型車は、渋滞にも引っかからずスイスイ進んで、程無くして会場の前に辿り着いた。
     車から降りようとしたレンリの前に、ついとハイヒールの靴が差し出される。
    「……なんで」
    「ドレスにスニーカーじゃ、おかしいでしょう?」
     渋々といった様子でハイヒールを履き、差し出された袋にスニーカーを入れ、鞄に押し込んだ。
     その場で試すように足踏みしてから、車の中に手を伸ばす。黄色蜘蛛がぴょん、とその手に飛び乗った。

     その奥からさらにもうひとり、人間の男性が出てきた。
     車の中にはずいぶん余裕があるのに、妙に狭そうにして出てくる。
     車から出て手足を伸ばすと、男性はレンリに向かっていたずらっ子のようなおどけた笑みを浮かべた。
    「……尻尾を出すなよ」
     レンリの小さな声に、男性は黙って頷いた。

     もうほとんどの参加者は会場に着いているらしく、入り口付近は静かで閑散としている。
     レンリは駐車場に泊められた車の群れをもの珍しげに見ながら、入り口へ向かった。

     入り口には、持ち物検査用のゲートと警備員と、よく知った人影があった。

     なんでここにこいつが、とレンリが咎める前に、スミレは「頑張ってね」と激励の言葉を置いて遠ざかって行った。

     不機嫌を顔に貼り付けて振り向いたレンリに、見知った人影が声をかける。
    「……ライム」
    「君が来るっていうんで、僕も応援にね」
     見知った顔がずい、と前に進んでレンリを見つめた。
    「すごいな。何て言ったらいいのか……想像以上に綺麗だ」

     レンリはそっぽを向いた。招待状の提示を求める警備員に、面倒くさそうに封蝋の付いたそれを見せた。一介の警備員にまで今回の脅迫状の件は知らされていないのだ。
     彼も同じように招待状を見せる。警備員が「お連れ様は」と言い淀んだ。

     レンリが半身を、車の中から付いて来た男性に向けた。
     あごで会場とは逆の方をしゃくる。
     男性は肩をすくめると、夜闇に紛れるように駐車場に姿を消した。

     ライムが怪訝そうな顔をレンリに近付けた。
    「……いいのかい? あれ、スーだよね」
     耳元に息がかかった。
     反射的に男の頬を打って、レンリは距離を取った。

     叩かれたライムの方は、ヘラヘラと笑っていた。
    「相変わらず。暴れても美しさが崩れないなんて君くらいだよ」
    「無駄口を叩きに来たんなら帰れ、ライム」

     ぴしゃり、と叩きつけるように言い放って、レンリは警備員に鞄を押し付けた。
    「やだなあ。君を見に来たんだよ。それは冗談として、元々僕が手に入れたネタだからね」
     ライムがレンリの後ろで肩をすくめている。

     鞄はベルトコンベアーに乗り、中身の画像を晒しながら通過した。

     いいですよ、の声にライムがごく小さな鞄を警備員に渡した。
     ごく小さな鞄だ。鞄というよりポーチに近い。画像にはよく分からない物体が映っているだけだ。
    「何を入れてるんだ?」
    「入り用なものだよ」
     ライムは微笑みを浮かべながらポーチを受け取った。
     相変わらず、ヘラヘラと笑いだけは絶えない男だ。
     いつも柔和そうに笑っているが、その分何を考えているか分からず、ミステリアスと言えば聞こえはいいが、ふとするとただの気味の悪い男に成り下がった。
     今も何やら理解出来ない笑みを浮かべている。

     なんで私はこいつと付き合ったんだろうな。そうレンリは疑問に思う。

     レンリは、自分の後ろで彼がどんな表情をしているか、全く見ていなかった。
     ライムがレンリの、ドレスのデザイン上むき出しになっている肩を叩いて進もうと促す。いつもはバチュルが乗っている場所だ。
     会場への短い道のりの合間に、ライムが呟く。
    「モンスターボールだけ見てたみたい。ほら、着いたよ」
     レンリがその言葉の真意を問う前に、ライムは笑ってさっと道を譲った。

     開け放たれた観音開きの扉の向こうに、淡い赤の絨毯と白いテーブルクロスがいくつも見えた。
     吹き抜けの上方、本来の二階部分には張り出した廊下と豪勢なシャンデリア。
     男性陣の黒白のスーツの中に、華やかな赤黄緑のドレス。
     孔雀の飾り羽のような、大仰な飾りを付けた者もいる。

    「君が一番綺麗だ、勿論ね」
     さあ、とライムが腰を曲げて手を奥に伸ばす。
     気障な奴だ、と会場への入り際に呟いて、そのままレンリは奥に進む。

     レンリはチラチラと食べ物を見て、何を食べようか迷っているような振りをしながら、人混みの中に紛れた。
     左右に目を走らせ、誰も彼女に注意を払っていないのを確認してから、ドレスの裾をはたいた。

     ヒョイと狐が鼻先をドレスの中から突き出し、次いで顔を出した。
     そして嬉しそうにシシッと笑うと、ドレスの中から静かに素早く飛び出して、テーブルクロスの下に入り込んだ。
     本当はもう少し別の擬態を考えるつもりだったが、時間がなかったので、この際だからとドレスを利用したのだ。
     居心地悪そうにバチュルが顔を出し、そして顔を引っ込める。

    「すごいね。流石はゾロア使いのレンリだ」
     いつの間にか、ライムが彼女の真後ろに立っていた。
     彼女は後ろを見もせずに、答える。
    「変な仇名を付けるな」
    「ほめてるんだよ。家にもあれだけゾロアがいるしね」
    「その話はもういいだろう」

     にべもなく言い放って、レンリは男から離れる。

     その時、レンリが振り返って一目でも彼を見ていたら、そうしたら、彼のヘラヘラした笑い以外の表情を見られただろう。

     しかし、彼女はライムを一切見ずに、その場を離れた。


     華やかなパーティーは続く。
     レンリは壁際に並べられた椅子に腰かけて休憩をとっていた。
     そこに、ライムが性懲りも無くやって来た。
    「このジュース、美味しいよ」と言って差し出された緑の液体を、彼女は無下に断った。
     帰ってきたゾロアが再びドレスの中に入り込んだ。

     そのまま、レンリが立ち上がった。
     喧騒を離れて扉を出ようとするレンリを、ライムが追いかけた。
    「どこ行くの?」
    「化粧室。慣れない靴で疲れた」
     ドレスを掴み、少しだけ引き上げる。ストッキングの踵の部分が、無残にも血で汚れていた。
    「スニーカーに履き替える気? やめなよ。おかしいよ?」
    「これだけ丈の長いスカートなんだ。誰も見やしないさ」
     見るよ、おかしいよと口を尖らせたライムを置き去りにして、レンリは化粧室を目指した。

     化粧室は広く、橙色の暖かな照明で明るく隅まで照らされている。トイレと洗面台だけでなく、化粧専用のスペースも設けている。

     レンリは個室に入ると、スニーカーに履き替えた。
     そして少し考えて、レンリは欠伸をしているゾロアの額をつついた。

     会場に戻ったレンリを、ライムの笑顔が出迎えた。
     彼の目が、素早く探るように足元を見る。
     そして、がっかりした顔を浮かべた。レンリはスニーカーを履いていなかった。

     ライムの落胆した顔を見て、レンリは笑みを浮かべた。いたずらっ子のような、それ。

     ライムは気を取り直すように頭を振って、レンリに話しかけた。
     レンリの方は、手に乗せたバチュルに小声で指示を出している。

     小さな蜘蛛は大広間の上方に張り出した廊下の手すりにひとっ飛びした。
     そこからさらに天井を伝って、シャンデリアの上側に隠れる。

    「何を……?」
     問いかけるライムに、レンリは唇に指を当てる仕草で答えた。
     作戦の子細を他人に話すのは彼女の趣味ではない。それが同僚であってもだ。

     ライムは不服そうに肩をすくめてから、「さっきの話だけど」とレンリに再度話しかけた。
     レンリはまばたきして、ライムを見た。
    「すまない。全く聞いていなかった」

     ライムは大仰にため息をついた。
     いつもはいじられてもヘラヘラしているだけのライムが珍しい、とレンリは思った。

     彼はレンリに一、二歩近付くと、内緒話をするように顔を近付けた。
    「脅迫状を送った奴は、ポケモンを使うと思うかい?」
     レンリは静かに首を横に振った。
    「……銃だと思う?」
     今度は、首を縦に振った。

     競技用ライフルなどの一部を除いて、この地方で銃を持つことは誰にも許可されていない。たとえ、警察であってもだ。他の地方でもそうだろう。
     ポケモントレーナー全盛の今、狩猟や犯人の捕縛が目的だとしても銃は使えない。
     それに、銃はポケモンには大した威力を発揮しない。命中精度も、ライフルを除けば悪い。
     利点は、モンスターボールからポケモンが現れるより速く弾が発射されることぐらいか。
     近距離で、人間に向けられたら困るものではあるが。

     そんなものが持ち込まれていて、しかもそれがテロに使われるときた。
     テロリストはよほど銃の腕前に自信があるのか、それとも、
    「銃を作っているか、ばらまいている連中はその銃によっぽど自信があるらしいね。
     紛争地域にばらまくだけじゃ飽き足らず、平和なイッシュにまで出てくるなんて」
     レンリが思っていたことを、ライムが引き継いで声に出した。

     根拠はほぼ、ライムが持ち込んだネタしかないが……しかし、銃が使われる。レンリにはそんな予感がした。
     確信に近い予感だった。


     人々の他愛ない会話が徐々に静まっていき、人の群れの向きが一方向に定まっていく。
     二階の渡り廊下の一部、衝立で両側を仕切られた部分に繋がる扉が開いた。

    「只今より、皆様のお時間を頂戴いたしまして」
     歓迎パーティーのために雇われた誰かが、声を張り上げた。
     それを合図に、会場はしんと静まった。
    「遠方より来訪して下さった、栄え有る王家の姫様がお言葉を賜ります」

     レンリは誰かの尊敬語を聞くのもそこそこに、周囲を素早く見回した。
     誰かが銃を持っている。
     この中の、誰かが。

     光をキラキラと反射するドレスに身を包んだ王女が姿を現した。
     警備兵のポケモンが前方を守り、世話役然とした女性が横側を守るように歩いている。

     銃を撃ったとして、これではポケモンに阻まれて王女には届かないだろう。
     銃が使われるとして、その理由に一瞬疑念が浮かんだ。

     王女が進み出た。
     廊下の手すりへ近付く。しかし、手すりに届くほどには前へ出ない。

     王女が所定の位置で立ち止まり、口を開こうとした時。
     静かな水面に水滴が落ちたかのように、ある人物を中心点に人の群れが揺れた。


     鉄鎚で鉄を強く打ったような音が響いた。
     天井のシャンデリアが砕け、細片が会場に降り注いだ。

     誰かが悲鳴を上げた。それは連鎖して、すぐに判別のつかない大きな音となった。
    「皆さん! 早く避難してください!」
     ライムが大声で怒鳴った。それさえも飲み込んで、人の群れは一気に出口へ移動し始めた。
     我先に、と手を伸ばしながら顔を歪めて走る人々。
     姫とそのお付きが扉の向こうへ姿を消した。

     レンリは丸テーブルの、人が丁度通らない点に身を収めた。
     水流が杭を避けるように、人々がレンリを避けていく。
     ライムは兎にも角にも声を上げ、人々を必死に誘導していた。

     天井のシャンデリアを見る。
     端の一箇所が無残にも壊れている。その場所から、彼女の電気蜘蛛が顔を見せている。

     そこから伸びる透明な糸。
     それは下方にいる、男の右腕を縛り上げていた。
     その手の中には、禍々しい、黒い造形。

     天井からなら、会場にいる人の動きがよく見える。
     小さなバチュルは男の動きをいち早く察知し、その銃口が姫に向かないよう、糸で腕を縛り上げてその方向を変えたのだ。

    「よくやったな、ベー」
     レンリは臆せず犯人の男に近付くと、その手から拳銃を奪い取った。
     そして顔色を変えず、床に向かって五発、銃弾を撃ち込んだ。

    「銃の仕組みはあまり知らないんでな」
     しれっとそう言って、空になった拳銃を床に投げ捨てた。
     男の左手を取って後ろに回し、空いた手で手早くバチュルの糸を掴んで手首を縛る。

     そして力を少し入れて男を床に転がすと、バチュルに戻るよう指示を出し、会場の出入り口の方を向いた。

     ライムが手を振りながら走って来る。

    「もう犯人を捕まえちゃったのか。流石レンリだ」

     そして彼女に銃口を向けた。



     IV.当日(2)


     彼は会場の中央付近に立つレンリに、大股に歩み寄った。
     その手には、黒光りする拳銃が握られている。

    「……ベーは離れててくれるかな。後ろに。そう」
     体の小さな電気蜘蛛では、主人を弾丸の脅威から守れない。名指しを受けた電気蜘蛛は、すごすごと後方の壁まで下がった。
     ライムがバチュルとレンリを結んだ直線上に来るよう体の位置を変えた。
     これでは、電気蜘蛛はレンリを巻き込まずに技を出すことが出来ない。

     ライムが拳銃を握り直す。手が汗ばんでいるのだろうか。
    「驚いたかい、レンリ」
     妙にぎらついた目がレンリを見る。
     こいつのこんな表情を見たのははじめてだ、とレンリは思う。

    「まあね」
     レンリは静かに答える。

     予感はあった。奇妙なポーチのこと。今回の事件のことも、前日に持ち込まれたネタのわりには詳細が分かっていた。銃のこともあった。

     けれど、本当にそうだとは、実際にこうして銃を向けられるまで確信が持てなかった。

    「いつから、こんなスパイ紛いのことをやっていた? 銃を作ってる連中と……」
     今度はレンリが質問した。
     ライムは嬉しそうに笑った。こんな時に、嬉しそうに。

    「残念。僕は警察をスパイしに来たんでね。銃のことは漏らしすぎたけど……まあ、そんなことはどうでもいいんだ」
     突然、銃を真っ直ぐレンリの顔に向けた。
     そして、ほとんど言葉を叩きつけるようにして吐き出した。
    「組織に上手く事件の算段を話して、こうやって銃を持ち出すほうが大変だったよ。
     道化の男もよくやってくれた。レンリの注意を引き付けてくれて」

     本来の目的は失敗したけど、僕の方は達成できる。
     そう言ってライムは笑った。嘲笑。

    「何か、言い残すことはないかい? これから、君を殺すんだけど」

     またライムが笑った。いつものヘラヘラ笑いだった。


     レンリは素早く考えを巡らせた。
     あと少し、時間を稼げば。そして距離をもう少しだけ縮めたら。
     何か、彼の気を引く話題はないか。

    「なんで私と付き合った」
     ライムは答えない。
    「最初から殺すつもりだったのか」
     ライムが距離を詰める。もう少し。

    「本当に付き合うつもりだったさ」

     でも、とライムは続ける。

    「絶望した。ああ、絶望を味わったね! 君が僕を家に呼んだ時に」

     ゾロアが僕に噛み付いたのは構わなかったさ。ライムが目を剥いて唾を吐く。
     でもさ。

    「君は……笑ってたね。ゾロアに向かって。僕はあんな笑顔をはじめて見た! 一度も、一度もだ! それをゾロアに向かって!」

     ライムが怒りのままに話す。言葉が次第に散り散りになり、意味の分からない罵声になっていく。
     銃口がレンリから逸れた。

     パン、と指を鳴らす。ドレスが揺れた。

     黒い子狐が矢のように飛び出し、ライムの足に突撃した。
     ライムは体勢を崩しながらも、銃口をレンリに向けた。
     引き金に手をかけるより速く、レンリがその手を蹴った。いつの間にか、履き物がスニーカーにすり替わっている。

     ライムの手を離れた銃が、遠くの床に落ちる。

     得物を無くした手が、今度はレンリに掴みかかった。強く首を掴まれ、床に倒される。

     声が、声にならない。
     手を引き剥がそうとしても、まるで首に張り付いたように離れない。
     小さな黒と黄色がぼんやり見えた。
     ライムがぶつぶつ言っている。ただ一言、「好き」だけ聞き取れた。

     空気を求めてもがく腕の力が弱くなっていく。
     レンリは目を閉じた。
     冷たい液体が流れ落ちた。


     ライムの体が跳ね飛んだ。
     視界が元に戻り、真っ先に映ったのは赤髪の獣人。

    「スー!」

     後先考えず、飛び付く。
     暖かく慣れ親しんだ獣の匂いが彼女を包んだ。



     V.その後


     来るのが遅かったと、まるでデートの待ち合わせをしていた男女みたいに一方的な喧嘩を繰り広げるレンリとスーを、呪うような恐ろしい目付きで睨みながらライムは警察車両に乗せられて行ったと、後に同僚が話した。
     彼女はあの後もずっと駐車場にいて、スーとどこかに他の出入口がないか探したり、警備員の目を誤魔化す方法を考えたりしていたらしい。
     それでスーが来るのが遅れたのだが、事件が解決さえすればレンリにはどうでもいいことだった。
     王女自身が狙われる理由もごまんとあるらしく、王女の歓迎パーティーの件は不問になったようだ。
     銃の密売組織は最近勢力を広げていて、取り締まりを強化していると別の課からの情報が後になって入ってきた。
     最初に銃を撃った男は、最近調理場に雇われた男だったそうだ。
     一応、事件は解決したように思えた。

    「ただ、なんでライムが私を殺そうとしたか、分からないんだ」

     事件のない、開店休業中の警察署内で、レンリとスミレが話す。
     時間はいつものように、昼休みの小半刻前だ。
     レンリは灰色に赤の湯呑みを撫でていた。

    「私は普通に付き合ってたつもりなのに」

     肩に乗るバチュルがフィー、と鳴いた。手の中の湯呑みがカタカタ揺れる。
     そんなレンリを見て、スミレは優しく笑う。

    「じゃあ、分かんなくていいんだよ。レンリちゃんにも、いつか分かればいいなあって思うけどね」

     陽光が暖かく室内を照らす。
     お茶を入れようか、とスミレが言うと、レンリの手の中の湯呑みが子狐の姿に戻る。
     化けるのがまだまだ下手なんだ、と言ってレンリが笑う。
     少し長めの昼休みが続いている。



    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】


    ぞろあがぞろぞろあー。……すいません。

    スカートの中からゾロア! がやりたかっただけです。
    【描けるもんなら描いてみろ】という方向性で。
    でもどうせ中はハーフパ(強制終了)

    バレットパンチという技があるくらいだから、銃はあるんだろうと思います。
    しかしバレットパンチにしろなんにしろ、強力な技を受けても平気なポケモンに銃を撃って効くかなあ、とも思います。
    きっと、ポケモン世界の人々はポケモンを中心に狩りをしていたんだ! 弓矢とか剣とかは補助的に使ってたんだ! とか考えています。
    銃も、ポケモンがいるからあんまり発展してなくて、威力も命中精度も良くないだろうなあ、とか。
    でも人間相手なら致命傷を与えられるから、戦争には使われるかな、とか。

    【考察していいのよ】

    ゾロアにバチュルそこ代われは諸事情によりお断りします。

    ……ああ、彼女ですか。多分彼女だと思いますよ。


      [No.976] ネットでも少しは 投稿者:久方小風夜   投稿日:2010/11/19(Fri) 02:17:57     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    いよっしゃあポケトレで色違いロコン♂♀ゲットだぜ! これでようやく寝られる!
    こんばんは。ちょっと研究で海外に1週間ほど行ってきます久方です。


    >これは、狐面を3、4枚所持してる私が感想を書かぬわけにわいかないっ!

    狐面カッコイイですよね。口先のしゅっとしたラインがいいですよね。


    >というか主人公怖いモノ知らずすぎる。
    >ポチとかマリモとかひでえwwwww
    >しかし、久方さんのその手の悪ノリが私は大好きです。

    お褒めにあずかり大変恐縮です。自分もNo.017さんが大好(ry
    正直玉藻よりマリモのほうが言いやすいよなぁ、とは今でもこっそり思ってます。


    >悪狐がいかにも着ぐるみで吹いたのはここだけの話。

    だがそこがいい。


    >私が読んだ時点で地味に40clapもついてて嫉妬したんで、
    >私も自分の悪狐伝(笑)のほうがんばりますよw

    あまりの拍手数に軽く戦慄を覚えております。
    なにこれこわい。飛行機墜落して死ぬんじゃなかろうか。
    野の火の続きも非常に楽しみにしております!


    >動画見たんですが、地元の伝統芸能とかうらやましすぎる(
    >何これどこ行けば見れるんですか(
    >ゆめタウンで検索したら何か出ますか(

    ゆめタウンはショッピングセンターの名前なので多分出ません(^^;)
    広島の北部〜島根の方に行けば、見られる時には見られます。

    ついでなので。
    神楽についての情報サイト。でも演目の説明はリンク先の各神楽団のHPのほうが詳しいです。
    動画もあります。ネットなので画質やや悪いですが。
    tp://www.npo-kagura.jp/
    ちなみにDVDも売ってます。値段は少々お高め。
    あ、自分は決して業者のまわし者ではないので(笑)
    tp://www.kagurajp.com/


    ではでは、感想ありがとうございました!


      [No.975] これが今流行のリアボウズか… 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/11/19(Fri) 00:39:51     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    1週間くらい前に読んでたくせに感想サボってましたスイマセン。

    もうね、感想が久方さんとほぼ同じなので割愛しますが(オイ)
    とりあえず週刊「GHOST」のバックナンバーどこで買えますか。
    カゲボウズ特集号が欲しいのですが。

    CoCoさんの文章が秀逸すぎて常時笑いながら読んでいた。
    カゲボウズ・オン・ザ・プリッツ、それは禁じられた遊び……ブラッククロニクルwww
    ついに雌雄の判別がつくようになってしまった毒男さん。
    確実に憑かれています。
    うちの誰かさんといいカゲボウズトークが出来そうです。

    というか、なんか見たことのある名前がいるんだけど。 いるんだけどwww
    次の活躍が楽しみだな〜♪


    【URL貼っていいのよ】
    【むしろ貼りまくれ】


      [No.974] どこに行ったら見れますか 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/11/19(Fri) 00:04:28     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

      <○><○>   ジー

    これは、狐面を3、4枚所持してる私が感想を書かぬわけにわいかないっ!
    そう思って書き込みをしている!


    >「……何だ夢か」
    >『こら、勝手に夢にするな小僧』

    クソフイタwwww
    思考回路が野の火の誰かさんと同じで萌えたw
    というか主人公怖いモノ知らずすぎる。
    ポチとかマリモとかひでえwwwww
    しかし、久方さんのその手の悪ノリが私は大好きです。


    >『八岐大蛇』やら『酒呑童子』、『土蜘蛛』等と言えば、わかる人にはわかるだろうか。

    はい! 全部わかります先生!
    豊縁昔語はじめてからその手の本をいろいろ読み始めて、
    ここ1年くらいで無駄に知識がつきましたw
    ふふふ、話題を共有できる人がいるっていいなぁw

    いやぁもうね、終始ニヤニヤしっぱなしでしたよ。
    お稲荷さん食いながら観劇とかね、もうね
    いいよね!

    で、
    動画見たんですが、地元の伝統芸能とかうらやましすぎる(
    何これどこ行けば見れるんですか(
    ゆめタウンで検索したら何か出ますか(

    悪狐がいかにも着ぐるみで吹いたのはここだけの話。


    とりとめのない感想ですが、
    なんかいろいろ楽しそうだった。
    いいなぁ。

    私が読んだ時点で地味に40clapもついてて嫉妬したんで、
    私も自分の悪狐伝(笑)のほうがんばりますよw


      [No.973] Re: たまむすび 投稿者:巳佑   投稿日:2010/11/18(Thu) 20:29:28     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    感想ありがとうございます!

    [No.017さんへ]
    > ところで、青い光はお母さんの魂ということでok?

    はい! あの青い光は娘のお母さんの魂ですよ。
    ちなみに、今回の物語に出てくる『おまじない』は
    民俗学の授業で教えてもらった『人魂を見たときのおまじない』を基にしてます。
    書物によると……。
    おまじないの呪文を三回唱えた後、
    男性の場合は身に付けている着物の左側の裾(すそ)を結んで、
    女性の場合は身に付けている着物の右側の裾を結び、
    三日後に結び目を解く……だそうです。

    この物語では袖を結んでいるだけですが。(汗)
    『結び』という言葉は改めて考えてみると不思議な言葉ですよね。
    今、思いついた例えだと……『縁結びの神社』とか。


    > あえていうと
    > お母さんに貰ったのを結婚式に使う着物にするとよかったかもしれません。
    > 玉を結んだ着物を着れなくなり、大きくなったらともらった着物に着るモノが変わるとき、それがまじないの効果が切れる時だって感じが出せたかも……
    > あと別パターンとして、お母さんが娘を心配していつまでも成仏してくれないので、
    > 玉結びの相反するなんかの儀式をしてあの世に返しちゃうってパターンもおもしろいかもなどと、ひねくれた私は考えるのでした(おい

    ……そこまで、考え付きませんでした。(汗)
    すごいです。
    別の展開が複数、出てくるとは……。(汗)
    しかも、ドラマティックになりそうで、しびれました。

    それと結婚式はウエディングドレスだけではありませんよね。(汗)

    今後、物語を書く際に是非、参考にしたいです!!




    それでは失礼しました。


      [No.972] Re: たまむすび 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/11/18(Thu) 18:57:38     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    某民俗学系の書物によれば、紐を結ぶことには特別な呪力があるそうです。
    (この場合は袖だけど)
    袖を結んだ時に出来る玉とゴースの形が一致しててなんかいいなぁ、と。
    同時に死者をこの世に結びつけておく効果もあるのかもしれませんね。
    ところで、青い光はお母さんの魂ということでok?

    あえていうと
    お母さんに貰ったのを結婚式に使う着物にするとよかったかもしれません。
    玉を結んだ着物を着れなくなり、大きくなったらともらった着物に着るモノが変わるとき、それがまじないの効果が切れる時だって感じが出せたかも……
    まぁあくまで私の好みですw

    あと別パターンとして、お母さんが娘を心配していつまでも成仏してくれないので、
    玉結びの相反するなんかの儀式をしてあの世に返しちゃうってパターンもおもしろいかもなどと、ひねくれた私は考えるのでした(おい


    では


      [No.971] たまむすび 投稿者:巳佑   投稿日:2010/11/17(Wed) 19:32:43     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「いい? 
     明日の夜以降に、もし青い光のようなものに出会ったら、
     上着の右の袖(そで)を結びなさい」
    「えっ、お母さん。どうして?」
    「そうねぇ……多分いいことがあると思うから。約束できる?」
    「うん、分かった!」
    満月がよく映える夜。
    とある和室の一室で一人の母と一人の娘が指きりげんまんをしていました。
    指から指に届け合う二人の温もりの手紙はこれが最後でした。
    翌日、
    白い雲が一切ない青空の下、
    一人の娘の母は天国へと旅立たれました。


    娘の母は幼い頃から体が弱い体質で、
    一か月前に発症した病が元で帰らぬ人となってしまったのです。
    娘は一人っきりになってしましました。
    庭で一人泣いていました。
    しかし、その泣き声は
    ただただ青空に消えていってしまうばかりでした。
    そのときでした。
    娘の前に何かが現れたのです。
    気配に気づいた娘が顔を上げてみると……。
    そこには青い光のようなモノが浮かんでいるではありませんか。
    娘はすぐに母との約束を思い出し、上着の右袖(長袖)を器用に結びました。
    すると不思議な青い光のモノはその場に何事もなかったかのように消えていきました。


    その翌日でした。
    娘の前に一匹のポケモンが現れたのです。
    不思議なガスを身にまとったポケモン…………。
    ゴースでした。
    朝に目が覚めた瞬間にいきなり顔をのぞき込んでくるゴースに娘はビックリ仰天(ぎょうてん)。
    その姿にゴースはケラケラと玉を転がすように笑ってました。


    そのゴースは人懐こい性格のようで、すぐに娘と打ち解けた関係になりました。
    母以外身寄りのなかった娘にとってゴースと一緒に過ごす時間はかけがえのないものでした。
    一人で住むには少々広い母の実家ですが、
    ゴースが一緒にいてくれる娘の心はもう空っぽではありませんでした。
    母がいなくなってしまって一人身になってしまった今、
    娘には泣いている暇はありませんでした。
    一人で生きていくために色々と行動を起こさなければいけません。
    ですが、娘は徐々に前向きに元気になっていきます。
    ゴースが娘の心を支えてくれたからです。
    もうひとりぼっちではないのです。


    当時、母を亡くしたときは十代前半だった娘はすくすくと成長していきます。


    体が成長しました
    「ねぇ! 見て見てゴース! この浴衣、似合うようになったでしょ!?
     お母さんが大きくなったらあげるって言ってくれたんだけど、ようやく着れるようになったよ!」
    娘の着ている浴衣は不思議な群青色の中にサクラビスのマークが所々、散りばめられていて、
    まるで夜桜をその身にまとった艶やかな(あでやかな)ものでした。
    腰まで伸びた髪をお玉にして頭の上に止めました。
    娘の浴衣姿がとても似合っていたからか、
    ゴースはほほ笑むと大きくうなずき、娘の顔に一舐め(ひとなめ)しました。
    「えへへ! ありがと、ゴース。それじゃ、お祭りに行こうよ!
     トロピウスのチョコバナナとか買って食べようね!」
    「ごすごーす!!」


    心が成長しました。
    「ねぇ、ゴース。私、今日も失敗しちゃったね」
    「ごす」
    「ささいなことでケンカしちゃってさ。
     ……あのときは私は悪くない! なんて思ってたけど……。
     違うよね。お互いの本音を聞けたから、誰が悪いなんてことないのにね」
    「ごすごす」
    泣きそうな顔の娘の顔にゴースが目を閉じながら一舐めしました。
    娘はくすぐったくて一瞬、笑いましたが、
    その後、ぽろぽろとビー玉のように涙がこぼれ落ちました。
    「彼の、気持ちが分かったから、ごめんって、ありがとうって、言わなきゃね。
     メールじゃなくて、今、から、彼の家に、行って、口、から、直接にね」
    「ごーす」
    ゴースは微笑みながら娘の涙の粒を舐めました。
    娘は泣いていましたがその顔は強い笑顔に変わっていました。


    それから、その数年後、娘はその彼と結婚することになりました。


    結婚式前夜。
    娘は白いウエディング姿の写真を母のお仏壇にお供えしてました。
    「おかあさん。私ね、明日、ついに結婚するんだよ」
    娘はお仏壇の中にある母の写真に微笑みながら言いました。

    「おめでとう」

    不意に娘の後ろから声が聴こえました。
    娘の目が大きく見開かれます。
    なぜなら、その優しくて、いつも温かい声は娘の聞き覚えのあるものでした。

    「……ゴース?」

    けれど、振り返ってみても娘の瞳に映るのはゴースのみ。

    『うふふ、娘のウエディング姿をこの目で見れて、かあさん、幸せよ』

    ゴースは微笑みながら娘に言いました。
    けれど娘はどういうことだか分かりませんでした。
    姿はゴース、けれど声は間違いなく自分の母。

    『…………あの日、かあさんと約束したこと覚えてる?』

    娘はとりあえず首を縦に振りました。
    青い光のようなものに出逢ったら、上着の右袖を結ぶ約束。
    今でも娘は鮮明に覚えています。

    『あれね、ちょっとした、おまじないみたいなものでね。
     あの約束をしっかり守ってくれたから、
     かあさんはゴースとしてアナタのそばにいれたのよ』

    驚きの顔の娘を見ながら、娘の母は続けました。

    『それにしても、アナタが立派に生きてきて、本当に嬉しいわ。
     昔から泣き虫やさんだったから、心配もしたけど…………。
     もう、心配をしなくてもよさそうね。
     もう、アナタは強くなったのだから。
     今まで、そばにいさせてくれて、ありがとう。
     もう、時間みたいでね……。
     本当は孫の顔とか見てみたかったんだけどなぁ……。
     あっ、でもお盆のときとかに見れるかもしれないわね』

    ゴースの姿が少しずつ消えていくのを娘の瞳は捉えました。
    光の粒子が少しずつ天に上っていきます。

    『これからも、嫌なことがあるかもしれないけど』

    娘の涙腺が熱くなっていきます。
    これは本当に自分の母がゴースになって今までずっとそばにいてくれたと、信じたのです。

    『けれど、生きていれば、きっといいことだってあるから』

    学校のテスト勉強に夜遅くまで付き合ってくれたこと。
    自分の手作り料理をいつも味見してくれたこと。
    夜の帰り道ではガードマンみたいなことをしてくれたこと。
    眠れない夜では、おしゃべりに付き合ってくれたこと。
    面白すぎるテレビ番組で笑いすぎて、翌日、お互い声が枯れ気味になったこと。
    百面相で笑わしてくれた日もあった。

    『そして、アナタは、もう一人じゃないから』

    色々な想い出のグラデーションが娘の頭の中に描かれていきます。
    そばに……。
    ポケモンになっても、
    そばにいてくれて……。
    自分に愛をくれた。

    『だから、これからも強く、生きなさい。いいわね?』

    娘は泣きそうになりながらもちゃんと顔はゴースの方に。

    「おかあ……さん……」

    『ん? なに?』

    「産んで……くれて……そばに、いてくれ、て……」

    幸せをしっかりと受け取った笑顔。

    「ありがとう……!!」

    娘の瞳に一瞬ですが、娘の母の姿が映りました。
    その顔は優しい微笑みに満ちていました。

    「お……かあ……さん……!!」

    娘の声とともに光の粒子は消えてしまいました。
    その光を最後まで見送った後、
    娘は泣きました。
    しかし、その涙は悲しみではなく、
    感謝の気持ちが詰まった温かい雫でした。




    「ねぇ、ママ。なんかポケモンのおはなしをしてよ〜!」

    「分かった分かった。
     そうねぇ……『ミミロルとコータス』は昨日、お話しちゃったし……。
     …………あっ、そうだ!」
     
    「なになに!?」

    「とあるゴースのお話をしてあげる!」

    「……えっ、こわい、おはなし、なの?」

    「もう、今にも泣きそうな顔をしないのっ!
     ……泣き虫なところは私似かしら、やっぱり」

    「ママ……?」

    「ともかく、これは怖い話じゃないわよ」

    「じゃあ、どんな、おはなしなの?」

    「これはね……ありがとうと幸せが詰まったお話よ」




    【書いてみました】

    「人間がポケモンになっちゃった!?」というフレーズで
    有名なポケモン不思議なダンジョンからの影響で、
    親子の絆が伝わりますようにと願いながら、
    この物語を書いてみました。

    それにしても幽霊ポケモンって、
    例えば、死んでしまった人やポケモンから誕生したポケモンなのかな……と
    謎が深まっていくばかりの今日この頃です。




    ありがとうございました。


      [No.970] 13爆目、しめりけなにそれおいしいの? 投稿者:海星   投稿日:2010/11/17(Wed) 18:19:22     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ポケ小説を書き始めたのが最近なので、探すのに手間は要りませんでしたが、出すという勇気が出て来ず、今に至ります。

    なんか長編書こうとしてて、でも結局飽きたっていうやつですねw
    主人公はポケモンにトラウマみたいなのを持っていて、でも初心者トレーナーになってジョウトを旅し始めて、途中でライバル的存在も見つけたり、コンテストに覚醒したりする話――の予定――だったんですね。

    第一話晒してみよー

    ――――――――――――――――――――――――――――

    「いあぁあぁぁぁっ!!」

     ノエルは顔を真っ青にして飛び退き――思い切り転んだ。
     幸い周りは草むらだったので頭は打たなくて済んだが、草むらをかき分けてくるゴソゴソという音に彼は震えた。
     急いでポケットのあたりを探り、モンスターボールを掴もうとするが、こういう時に限ってベルトに引っかかったりする。
     やっとの思いで手に取ると、真ん中のボタンを押し、空中に勢い良く投げた。

    「ブ、ブ、ブ、ブ、ブビィ! 出て来ォいっ!」

     モンスターボールが開くのと同時に中から白い光が出て、元気良くブビィが登場した――が、命令するはずの主人の声が聞こえないので不思議そうに振り向き、泡を吹いて気絶しているノエルを発見した。
     二度見したが、やはり彼の魂はどこかへ飛んでいっているようで、ブビィは焦った。
     (主人がっっいつも3回くらいおかわりする、運動は大得意だけど逆上がりだけできない、情にあつくて涙もろい、あの元気だけが取り柄の主人が倒れているっっっ!!!)

    「ブビィィイ!! ブゥウビィ!!!」

     必死にノエルの頬を殴るが、一向に目を覚まさない。

    「ブビィ……」

     どうしようかと悩むのと同時に怒りを感じたブビィは、ノエル腹に乗って飛び跳ねようかと足をかけ、そこで後ろに気配を感じた。
     振り向く。
     そこには、恐ろしい形相のリングマがいた……。
     流石のブビィもこれには失神しかけた。
     が、歯を食いしばってリングマを睨み付ける。
     弱い主人を守らなければいけない、という少々上目線な考えの為だった。
     リングマの視線が逸らされ、ノエルを見た、そのとき。
     ブビィは“えんまく”攻撃を繰り出した。
     口から真っ黒い煙をリングマの顔目がけて吐き出す。

    「ガァア!」

     リングマは頭にきたようで、唸り声を上げ、爪をブビィに向けようとしたらしく、暴れ回った。
     リングマにはブビィが見えていないのだ。
     しかし、そこら中に広がる煙のせいで、ブビィにもリングマが見えていない。
     しゅっ、しゅっ、と空を切る鋭い音の気配から逃れるべく、自分なりに行動しながら、ブビィは(もう少し考えて“えんまく”をするんだった)と後悔した。

    「……ウガァア!!」

     なかなか思うように攻撃ができないのでイライラし、リングマの怒りは更に高ぶる。
     ブビィの肩に爪がかすった!

    「ちょっと、リングマったらどこに行……凄い煙! また小さいポケモン驚かしてたの!?」

     そのとき、突然女の子の声がして、リングマが甘えたように鳴いた。
     ブビィは何が起こったのか良く理解できないでいたが、とりあえず危険は終わったのだ、とほぅっと胸を撫で下ろした。
     が。

    「まぁ! ブビィじゃない!! かぁわぁいぃ!! 次のコンテストにすぐ出られる可愛さだわ……! ゲットしちゃうー!」

    「ブッブビィイ!!?」

     急に抱き上げられ、慌てるブビィ。
     そして、女の子に踏みつけられて目を覚ましたノエルであった……。


    ――――――――――――――――――――――――――――

    HAHAHA、気にするな。

    このモンスターボールは自爆製でな、投げるとすぐに爆発するんだ。

    おぅ、待て待て。

    落ち着きたまえ。

    勿論落としたって爆発するさ……そう、押してもね。

    だから十分に注意して扱ってくれたまえ。

    ん?

    中身?

    ボールにシール貼ってあるだろ、そう、『海星』って。



    【爆逃げするのよ】

    【さぁ後に続けー!! (て下さいー)】


      [No.969] 乗れない波もある 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/11/17(Wed) 12:29:49     22clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    > 「わしらに乗れん波があるとすれば、それは時代の波じゃよ」

    だ、誰がうまいこと言えと!w

    橋がなかったころのおじいちゃんは人をなみのりで向こう岸に渡したりしていたのかしらん?
    橋が出来てお役ご免になってしまって寂しいのかもしれませんね。
    こういう「なみのり」の表現もありじゃないかなぁ。



    と、いうわけでお久しぶりです! レイコさん!
    私ははじめましてではありません(笑)
    結構反応遅くなってしまいましたが、
    ポケスト!でレイコさんの名前を見て「おおおおおお!」となった人です、ハイ。

    気が向いたらまたちょくちょく投稿していってくださいね。
    ありがとうございました!

    世間はBWですが書く小説はホウエン、時代の波には見事に乗れていないNo.017でした。
    リアル九州の地図みながら妄想中です。


      [No.968] Re: ファントムガール 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/11/17(Wed) 12:11:30     19clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 「誰かにこうしてもらいたかった」

    わりとこのセリフが切実、だと私は思う。


    どうもゴースト使いは、ニンゲン嫌い多い気がするね。
    うちのカゲボウズ男含め。


      [No.967] 愛する者と求める者 投稿者:紀成   投稿日:2010/11/15(Mon) 17:54:27     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    気付かないうちに、堕ちていく。
    周りに止めてくれる人がいないから。

    それでもはい上がろうとしないのは、

    それが、生きる意味だから。


    カオリは学校の図書館にいた。授業の宿題で、各地方の伝承を調べているのだ。
    カオリは本棚まで来ると、迷わずシンオウ地方を選ぶ。まさか学校で個人的にギラティナのことを調べられる日が来るなんて、思ってもいなかった。
    隣にいたブルンゲル二匹の手の上に本を数冊置く。ふよふよ浮きながら端っこの机に移動していく。
    全て持たせるのは悪いと思い、あとの数冊は自分で抱えることにする。持ち上げたその時、威嚇するような声がした。
    足元を見ると、一匹のブラッキーがカオリに向かって牙を剥き出しにしていた。
    カケボウズ達がブラッキーの周りに集まる。口を大きく開ける。
    「ストップ」
    カオリが言うと、カケボウズ達はこちらを見た。
    「ダメだよ、図書館で暴れたら。守ろうとしてくれたのは嬉しいけど」
    「ココア!」
    別の声が遠くから聞こえた。女だ。カオリと同じ背丈の、同い年くらいの。
    「ごめんねー。急にボールから出てきちゃって」
    「・・別に」
    カオリは戸惑う。人と話したことがあまり無いからだ。
    「私も伝承を調べに来たの。ジョウト地方」
    「ジョウト?」
    「そ。二匹の鳥ポケモン」
    カオリより数センチ低いと思われるその人物は、ブラッキーを抱えて言った。
    「ライ。よろしくね」


    それからのライの話を、カオリは興味深く聞いていた。人の話にここまで夢中になるのは初めてだ。
    「私は彼のことをアルって呼ぶの。アルジェントのアル。銀色って意味。
    私だけが多分そう呼んでる。銀色の翼を持つ鳥ポケモンなの。
    聞いたことないかな、ジョウトに伝わる伝説の話。あれに出てくるうちのポケモンの一匹。
    私は、それを探してるの。
    初めて見たのは十年くらい前。凍りついた海の上を飛んでいくのが、私にとっては・・
    神様に見えた。


    「それからずっと彼を探してる。何回もジョウトの海に潜ったりした。でも見つからなかった」
    ライの話が続いている。カオリはそれを聞きながら、ギラティナのことを考えていた。
    自分はギラティナとトモダチになりたいと思う。では、同じような立場のライはどうなんだろう。
    「ライ・・」
    「?」
    「ライは、アルに会って何がしたいの?」
    しばらくの沈黙。ライがぼそっと言った。

    「会いたい」
    「!?」
    「会いたい。会いたいの。話してみたい。幼い時最初に見てから記憶の真ん中にアルはずっといた。だから、」

    「私はアルに・・ルギアに会いに行く」

    目の色は変わっていない。何かが変貌したわけではない。
    それでも、カオリには分かった。

    同じだ、と。
    自分と同じだと。
    ギラティナという存在を求めている自分と、アルという存在を求めているライ。

    「私も、そういう存在がいる」
    ライがカオリを見る。
    「何処にいるかは分かってる。でも会えない」
    「どんな?」
    「ギラティナっていうの。ゴーストタイプのポケモン」
    「それを調べてるの?」
    頷くカオリ。
    二人はしばらく図書館の椅子に並んで座っていた。


    「不思議な話」
    暖炉の側でカオリは今日借りてきた本を読み漁っていた。
    シンオウの始まりの話、湖に住む伝説のポケモン、そして、やぶれたせかい。
    別れる時、ライはこう言った。

    『今まで、アルを見つけたいって宣言した人はカオリしかいないわ。
    だって、普通の人に少し伏線を貼った話をしても笑われるんだもの。
    まぁ、そう言った人達は皆・・」
    ライがボールを取り出した。よく見えないが、かなり大きい。
    「この子が凍り付けにしちゃったから」
    ライは冷たく笑った。
    「私がここまでしてアルを探してる理由、分かる?」
    何となく分かったが、あえて首を横に振る。

    「私、彼を愛してるから」


    カオリは硝子の破片を見つめた。
    もし、ギラティナ側からこちらが見えていたとしたら。

    ギラティナは、どんな思いでカオリ達のことを見ているのだろう。

    ファントムガール、塀の上。
    ファントムガール、座ってる。

    ファントムガール、まだ落ちない。


      [No.966] 後書き 投稿者:MAX   投稿日:2010/11/14(Sun) 04:24:01     23clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    【批評その他何でもお願いします】

     この場では3度目、MAXです。
     お題の「ひでんわざ」にならい、最初の自力で覚えるひでんわざ「そらをとぶ」について書きました。
     自分の記憶が正しければ、最初はボーマンダのLv50「そらをとぶ」だったはず。あとはレックウザの「そらをとぶ」。
     え、たきのぼり? なにぃ、聞こえんなぁ! あれは初代じゃ普通の技でしたから。

     今回は五七調を意識した、会話だけの文でやってみました。五七調は読むのが楽しいので好きです。しかし書いてみると言葉を足したり削ったり、はたまた使えなかったりと、けっこう難しいもんですね。
     とりあえずボーマンダだけではネタに困るので、相方として同じく2段進化で、飛べない身からドラゴンになるフライゴンを使いました。
     飛べない同士のやりとりと、片方ばかり飛べるようになってのやりとりと、お互い飛べるようになってからのやりとり。そして書いてみて思いました。
     「 男 同 士 の 友 情 モ ノ も ア リ ね ! 」と。
     書いてる間ヤジキタ的なものがイメージされるばかりで、どうも自分の性癖を疑うときがありました。いや、男としては至ってノーマルのはずです、自分は。
     実際、そういうのが好きな方々はどういうのがアリなんでしょうね。恐いんで調べたくないですが。

     後で調べたらコモルーって進化するまでほとんど食べないんですって!
     まぁ、これのボーマンダは構わず食ってましたが、そのせいで重くなって飛べなかった、と言うことで……。

     さて、おつきあいいただきありがとうございました。以上、MAXでした。


      [No.965] 空飛ぶ夢のその先は 投稿者:MAX   投稿日:2010/11/14(Sun) 04:20:06     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    「おおぅい、おおぅい、コモルーさんや! コモルーさんはおらんかな!」

    「うぅん、こいつはいったい何事か。声だけ聞くにはビブラーバ君か。しかしこの場は険しい山で、どうして君の声がしよう」

    「この声は! やぁ、この声はコモルーさん!
     して、あんたはいったい何者か」

    「そういう君こそ何者か。
     緑の身体のそこの君。その背の翼で空を舞い、長い身体をくねらせる。そんな知り合い、記憶にない」

    「やや、ひとつ名乗りが遅れたか。あっしはかつて、ビブラーバだったものでさぁ。
     砂漠のすり鉢を古巣とし、砂上を走って幾星霜。走った跳ねたを繰り返しては、飛べない翼に悶えたものよ。
     しかしそいつも昔の話。今のあっしはフライゴン。羽の数こそ減ってはおれど、こうして空を舞えまする」

    「あぁ、なんだ。やはり君がビブラーバ君か、いやフライゴン君か。
     すでに気づいているだろうが、こちらもきちんと名乗ろうか。
     自分はかつてコモルーだったもの。空飛ぶ身体になるためと、食うや眠るや身投げをするや、やはり気づけばこの通り。
     今の自分はボーマンダ。身体を包む甲羅は消えて、この背に真っ赤な翼も生えて、飛ぼうと思えば飛べる身だ」

    「おぉ、おぉ、なんと! やはりあなたがコモルーさんか。いやさ、今ならボーマンダさんか。
     いやはや、知らない間に翼も生えて、なんと立派な翼なことか。それほど立派な翼なら、空の果てまで飛べましょう。
     しかしてどうだ。あんたの顔は不機嫌だ。何か事情があるのなら、不肖、あっしが相談などと」

    「態度に出るほど不機嫌か。いや、不機嫌なのは本当だ。
     言うならば、背中の翼は立派だが、どういうわけだか空まで飛べず。
     立派な翼は無闇に風を起こすだけ、ということなのだ」

    「なんと、そいつは面妖な。
     やはり身体が重いのか? はたまた飛び方がわからないだけか。
     あっしなら、進化してすぐ飛べたものだが。はて、羽ばたき方を知ってたからか。
     どれ、ボーマンダさんや。あっしに羽ばたき、見せてくれ」

    「そういうことなら見てもらおうか。
     それ。やぁ、やぁ、やぁ!」

    「おぉぅ、こりゃまた力強い。
     あぁ、しかし、上から下へ動かすだけじゃ、ちょいと空へは飛べませんぜ」

    「……あぁ、ダメか。なかなかどうして難しい。念願かなって手にした翼、こうしただけでは持ち腐れか。
     なぁ、フライゴン君。ひとつ、頼まれてくれないか」

    「どうすりゃ飛べるか教えてほしい。と言うつもりなら、おやすいご用でさ」

    「あぁ、察していたなら話は早い。2枚の翼を持つもの同士、君の羽ばたき、見せてくれ」

    「ほいさ、わかった、頼まれた。
     あっしが羽ばたき見せやすんで、ちょいと真似してみなんせぇ。
     まずは地面に足を着け、ほい、ほい、ほい、と。
     翼の動きは根本から、縮めて上げて、広げて下ろす。風を真下にぶつけるように」

    「翼をしならせ、やぁ、やぁ、やぁ、と。こんな具合か?
     うむ、なにやら身体が軽くなる。持ち上がってる気がするぞ」

    「おぉ、存外うまくやりやすな。もともと筋は良かったか。
     そんな感じでいきやしょう。下ろすときには力の限り、上げるときには焦らず急ぐ。
     ほい、あっしもそろそろ飛び立ちやすぜ」

    「自分もだんだん浮かんできたぞ。これなら空も飛べそうだ。
     しかしこれでは上に向かって浮くばかり。このままどうして空を飛ぶ?」

    「こっから少しコツがいる。ほい、首としっぽをまっすぐ伸ばし、軽く地面を蹴るんでさ」

    「羽ばたいたまま、地面を蹴って進むのか。
     では、やぁ、やぁ、ややや!?」

    「ありゃ!? ひっくり返って落ちるとは! 地面を蹴るのが強すぎた!
     こいつはとんだ一大事! 落ちるにゃ慣れてはいましょうが、いつも無事とは言えますまい!」

    「あぁ! あぁ! 落ちる! この期に及んでまだ落ちる!
     ひっくり返って羽ばたけない! このまま地面に落ちるのか!」

    「そうは問屋が卸さない! しっぽをつかんで持ち上げよう!
     むむ、こいつはとんだ重量級! 持って耐えるが精一杯!」

    「おぉ、おぉ、これは宙ぶらりん。ゆっくり落ちてはいるものの、このまま落ちればケガもない」

    「あまり長くはもちませぬ! ひと度放せば真っ逆さまだ! はやく自分で飛びなせぇ!!」

    「やや、それはなんとも恐ろしい。そうなる前に羽ばたこう。
     やぁ、ちょっと身体をくねらせて、体勢なおして やぁ、やぁ、やぁ」

    「おぉ、おぉ、おぉう! 暴れてくれると手が滑る!」

    「ほんの少しの辛抱だ! もう少しだけ耐えてくれ!
     やぁ、やぁ、やぁ、やあやあやあ!!」

    「おぉ、これは! まっすぐ飛んではいやせんか!」

    「やぁ、飛んだ! 飛んでいる! やっと自分が飛んでいる!
     こんなに遠く、見渡せたとは! まだまだ雲は遠かれど、やけに地面が遠いじゃないか!
     いやしかし、こうして飛ぶのは疲れるな。地面もどんどん遠ざかる」

    「まだまだまっすぐ飛ぶだけなれど、そこまでできりゃぁまずまずだ。
     しかして、羽ばたくだけが飛ぶにはあらず。今度は翼を広げて風に乗ろう。そして右に左に飛び回ろう」

    「やや、羽ばたかずとも飛べるのか? いや、飛び立つために羽ばたくのだな。
     そういえば、空飛ぶ鳥は羽ばたくが、いつもそうとは限らんな」

    「そうそう、鳥がお手本さぁ。こうして身体をまっすぐ伸ばし、翼を大きく広げたならば、ゆっくり空を飛べますぜ」

    「少々怖いが、やぁ、こんな具合か。
     なるほどな、これならなかなか疲れない。だがしかし、なにやら落ちてる気がするが?」

    「や、羽ばたかなければ落ちるもの、そいつは仕方がないですぜ。上がりたかったら羽ばたきやしょう。疲れりゃもっかい、こうすりゃいい」

    「そういうことか。上がって下りてを繰り返し、こうして空を飛ぶんだな。
     あぁ、だんだんコツがつかめてきたぞ」

    「そうそう、そんな具合でさ。あとはゆっくり慣れればいい。
     身体を傾け上下左右、翼を広げて風に乗り、翼を縮めて風を切る。やるこたいろいろありやすが、急いで覚えることもない。
     まぁ、ちょいと手本を見せやしょう」

    「やや、フライゴン君。離れて寄って、それが左右の動きかね」

    「だいたいそんな感じでさ。あとは、身体を傾けて、翼を縮めて急降下!」

    「おぉ、フライゴン君! どこへ行く!」

    「翼を広げて風を受け、首を持ち上げ急上昇! ちょいと羽ばたき姿勢制御。まぁ、これぐらいならそのうちコツも掴めやしょう。
     お? 野を越え山越え森を越え、そろそろ海が見えてきた」

    「海? おぉ、あれが! 山に棲み、木々に囲まれ生きてきて、こうして空から眺めることになろうとは!
     あぁ、すごい! これが雲の目線というわけか!」

    「馴染みの砂漠も彼方にあるか。
     いつかどこかへ旅立ちたいと、願うことなどあるにはあるが。まさかここまで飛ぼうとは、正直夢にも思わなかった」

    「ははは、いやまったくだ。自分もまさか、念願かなって手にした翼、ここまで飛ぶとは思いも寄らず、だ!
     あぁ、そうだ。これが感動だ! 自分は今、心の底から感動している!!」

    「おぉ、おぉ、威勢の良い炎だ。
     さて、ボーマンダさん。そろそろねぐらに戻りやしょう。あんまり飛んでも疲れるさ」

    「そうなのか。いや、自分はそれほど疲れてないが。
     できればこのまま海を行こう、と自分は思っちゃいたのだが」

    「しかしまだまだ飛ぶのは不慣れ。海は広いし降りれない。疲れりゃどこで休めやす? 水に落ちたらどうしやす?
     あっしらまだまだ未熟さね。海の向こうはまだ遠く、もっと上手く、もっと長く、飛べればいずれ目指せやしょう」

    「もっと上手く、もっと長くか。君はどうかな、フライゴン君。なかなか上手に飛んでるが」

    「あっしもまだまだ未熟でさ。空飛ぶ翼が生えたのも、ついこの間のことでさぁ」

    「なるほどそうか。君もまだまだ若いのか。
     しかしこうして翼が生えて、念願かなったところだが、まだまだ夢は広がるな」

    「えぇ、そうでしょう。海の向こうはまだ遠く、雲の向こうは尚遠く、目指すは彼方のそのまた向こう。
     いやはや、茨の道というものか。退屈せずにすみそうだ」

    「目指すは彼方、なるほどな。そういうことなら引き返そう。
     落ちるばかりの日々は終わった。今日から空を舞う日々だ。目指すは雲と海の向こう。
     今は下積み、その先に」

    「夢は終わらず、良いことで。
     あっしも彼方を見てみたい。こうしてきたのも腐れ縁。行けるとこまで付き合いやしょう、ボーマンダさん」

    「行けるとこまで行こうじゃないか、フライゴン君」

    「さぁ、そうと決まりゃぁ特訓だ。特訓特訓また特訓」

    「自分と君とで特訓だ。彼方を目指して特訓だ。
     彼方は遠く、まだ遠く。遙か遠くにあるのだから……」


      [No.964] 飛べない翼が地を駆ける 投稿者:MAX   投稿日:2010/11/14(Sun) 03:44:49     29clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    「やぁやぁ、ナックラー君、ナックラー君や。砂漠にきたのに姿が見えず、君はいったいどこなのか」

    「うぅん? こいつは以前のタツベイさんか? あっしの耳は貧弱なれど、聞いたお声は覚えてる。
     はてさて、あんたは何者か」

    「おぉ、こいつは覚えのある声だ。しかしてあなたは誰ですか?
     いやさ、こいつは失敬したか。まずは名乗るが筋だろう。
     自分はタツベイだった者。ひとつ進化をしてみれば、御覧の姿のコモルーだ」

    「なんと、あなたがタツベイさんか。あいや、今ならコモルーさんか。
     しからばあっしも名乗りましょう。似ても似つかぬものですが、あっしもナックラーだったものでさぁ。今はビブラーバってぇもんです」

    「なるほど、ビブラーバ君か。
     いやはやしかし、ずいぶん変わったものだねぇ。手足は伸びて、羽まで生えて、代わりに口は小さくなって。
     もはや巣穴に収まらないか。だから穴から出てたのか」

    「仰る通りでございやす。ついこの間のことですが、大きな獲物が取れやして。
     すりばち暮らしもこれまでと、そしてどうしたもんだろかと、途方にくれてたところでさぁ」

    「おやまぁ、そいつは面妖な。途方にくれるた何事か。
     すりばち暮らしも卒業で、ヨチヨチ歩きも卒業だ。もっと何かと無いのかい」

    「いやさ、大目に見てくだせぇ。
     伸びた手足の良い事よ、獲物を追いかけ砂漠を駆けて。念願かなったと喜んだところ、意外や意外の問題が。
     獲物を追いかけ走ったところ、これが意外に疲れない。どころか腹も減らんときた。
     食うだけ食ってはみたものの、ほとんど残っておりまする。
     これでは獲物が浮かばれぬ。この食いかけをどうしたものか」

    「ははぁ、走ったところで疲れない、と。そいつはきっと、ビブラーバ君が強くなった証拠だろう。
     強くもなれば、大きなこともできるもの。此処は素直に喜ぼう。
     しかして獲物のことだけど、とったは良いけど食い切れず、残ったそれはどこにある?」

    「興味がおありでござんすか? しからば少々お時間を。
     ……すりばち暮らしは卒業なれど、すりばちだけは残ってまして。残ったものはその中に放っておいたところでさぁ。
     やや、こいつはちぃと傷んでいる。こんなん見つけてどうします?」

    「残り物には何とやら。このまま腐るはちと惜しい。
     食べるに決まっているでしょう」

    「ややや、そういうことならこいつをどうぞ。あっしはごめんでございます」

    「なんの、自分がいただこう。
     …………うん、食えないものではないようだ。
     さて、自分もひとつ話そうか。君ほど大きなものではないが、自分も暮らしが変わってね。
     ご覧の通りのノロマな姿、こいつがまたまた重くって。お腹が空いて仕方ない」

    「ははぁ、こいつはそういうことか。
     腹が減るなら思う存分食いやんせ。そうすりゃきっと進化する」

    「んむ、突然なにを言い出すか」

    「腹が減ったとあんたは言うが、そいつはきっと予兆だよ。
     あっしもこうなる前の頃、そりゃぁなかなか大食いだった。そいつがいまや、さっきのとおりの小食だ。
     たくさん食ったらその分だけ、血肉で身体が進化する。あっしはそう思いやすぜ」

    「なるほどそうか。確かに君は変貌したな。変わり果てたと言うべきか」

    「変わり果てたと申すかい。いやさ、面影もないとはあっしも思いやすがね。あんたがそれを言いますか」

    「うんまぁ、それは、そうなんだがな。
     こいつは自分の話だが。空にあこがれ何度となしに、崖からその身を躍らせて、跳ぶや落ちるや痛いのなんの。
     傷の治療に食うだけ食って、眠ればいずれ治るだろう、と気づけば御覧のこの通り」

    「見ての通りの丸太ん棒。そういうわけでありやすか」

    「丸太ん棒とはカチンとくるな。
     いやしかし、そういうことならこの食欲も納得だ。水面に映った我が身を見るや、サナギのようだと思ったものよ。
     いつかこの背に翼が生える。君のように羽ばたける。そう、自分は信じて良いわけだ。
     ところでどうだい、空の具合は? 飛べるようにはなっただろう」

    「あぁいや、こいつが変なんですが……」

    「うんむ?」

    「またまたどうして、飛べないもんです。
     飛んだところでそうそうもたず、空を自由になんとやら、といくにゃぁまだまだ、力が足りないみたいでさ。
     飛べるにゃ飛べるが半端なもんで、もどかしいやら恨めしいやら、意地でも飛びたくなりやした」

    「ははぁなるほど。世の中うまくできてるもんだ。
     いずれは君も、立派な翼になるんじゃないか? ひとつ信じてみるといい」

    「そうは言ってもこの小食じゃ、大きくなれるか怪しいもんで」

    「なに、肥え太っては飛ぶには重い。今の程度が良いのだろう。
     さて、自分はまだまだ食い足りない。ひとつ、獲物を求めてさまようか」

    「やぁやぁ、そういうことならこの辺で。
     あっしもひとつ、食事運動健やかに、大きな夢でも見ますかね」


      [No.963] 空を夢見て空へ跳ぶ 投稿者:MAX   《URL》   投稿日:2010/11/14(Sun) 03:38:52     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    「もし、もし、そこのナックラー君、ナックラー君や」

    「やぁやぁ、すりばちをのぞき込むとは物好きな。
     いったい誰かと思ったら、タツベイさんじゃぁありゃせんか。
     今日も砂漠はカンカン照りよ。いったいなんのご用です?」

    「いやなに、大した用ではないさ。ちょっと悩みを聞いてほしい。さして深刻なものでなし、身構えなくても結構さ」

    「ほうほうほほう。深刻でなしときたものか。そうは見えねぇもんですが、悩みたいったいなんですか」

    「うぅん、いつも思うんだがね、ナックラー君。
     君はいつも穴から空を見てばかり、ひとつ、お空に憧れるなど、1度や2度ではないんじゃないか?」

    「こいつは異なことを言う。あっしの手足をご存じで?
     頭に比べて短い手足、ヨチヨチ歩きが関の山。見上げるお空に憧れたとて、どころか走ることさえままなりませぬ。
     ときたま何か、お空を通り過ぎてきますが、これほど空しいことも、ございませんってもんでさぁ」

    「あぁあぁ、悪いことを聞いた。そう気を悪くしないでおくれ。
     聞いた理由は他でもない、自分が空に憧れるからだ。
     空を見上げて、どう思う? おもしろいとは思わないか?
     夜明けの藍に昼の青。夕暮れ時の紫に、夜には星がちりばめられて、毎日毎日繰り返し。しかし時には雲に隠れて、見上げる自分に雨落とす。
     そこで自分は思ったんだ。
     雲の向こうを見てみたい。
     星を、日を、雲が隠すは何ゆえか。ひとつ、あばいてみせたいと」

    「ははぁ、そいつは立派な夢でして。
     しかし翼もなしに、なんとして?」

    「そうそうそれが問題だ。
     翼は自分の背にあらず。遠いお空を見上げたものの、頭が重くて転ぶだけ。
     悩みはつまり、それなんだ」

    「おやまぁそりゃまた、厳しいもんだ。
     できなきゃつまり、諦めろとしかございません。
     飛ぶもできなきゃ走るもできず、そんなあっしは穴の中。あっしに他はございません。
     それでも空を目指すなら、いっそ誰ぞに運んでもらえと、言い捨てるほかありゃぁせん」

    「あぁそうか。やはりそうかと思ってた。
     しかし何とて誰かを求めるか。できれば自分で飛びたいものよ」

    「翼も無しになんとしますか。
     それでも飛びたい言うのなら、いっそ未来を信じましょう。
     いずれ翼が出てこよう。その背の翼で空を飛ぼう。信じて今は待ちなせぇ」

    「信じて待つか。そうなるか。ならば自分は急がない。
     いずれ来る日とひた信じ、自分は空を見続けよう。空へと向かって跳んでみよう。
     いやはやしかし、ありがとう。おかげで先が明るくなった」

    「お役に立てれりゃぁなによりでさぁ。せいぜいご無理はなさらんように。
     しからば、あっしは獲物を待って、ひとつ昼寝としゃれ込もう」

    「そういうことなら長居は邪魔か。ここらで自分も失礼しよう」


      [No.962] コメントありがとうござます 投稿者:MAX   投稿日:2010/11/14(Sun) 03:33:27     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >No.017様
    コメントありがとうごじます。
    伝承系は考えて楽しく書いて楽しく、人様のを読んでまた考えて楽しく、と自分も気に入ってます。
    ギラティナに限らずレジギガスとかレックウザとかBWの3匹目(名前出して良いのか?)とか、増えてくれると良いですね。

    ありがとうございました。


      [No.960] 勝手に一部救助してみた 投稿者:サトチ   投稿日:2010/11/12(Fri) 22:00:26     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    激しかった雷の勢いが弱まり、暗い空はわずかに明るさを取り戻していた。
    しかし依然として雨の止む気配は無く、冷たい雨は無情に降り続いて黒に紅のメッシュの髪を彼女の肌に張り付かせ、体温を奪う。

    なんとか雷神は捕らえたものの、予想以上のダメージを食らってしまっていたようだ。
    動きの取れぬまま不安げなポケモン達に寄り添われ、消えかかる意識を必死に繋ぎ止めようとしていた彼女の耳に、
    突如、場違いなほどににぎやかな人声が飛び込んできた。

    「あそこに誰かいるぞ!」
    「さっきの兄ちゃんの言ってた、警察の人じゃないか?!」

    またたくまに何人もの人やポケモンが駆け寄ってきて、彼女たちをわっと取り囲む。

    「大丈夫ですか、怪我はありませんか?」
    「体を温めなきゃ! ……おい、誰かヒノアラシ持ってたよな! あと炎ポケモン持ってるやついないか」
    「暖かいお茶ありまっせ! このタオルも使ってください。いやー、大荷物かついで来た甲斐があったわー」
    「この人のポケモンも大分疲っちゃ様子だない。こういう時ゃ、モーモーミルクが一番だぁ。花子、頼んだべ!」
    「あら〜、可愛らしポケモンいてはるわぁ。ちょ、そこの黄色いクモちゃん、あんたアメちゃん食べる?」
    「フィ?」
    「こらこら! ヒトさまのポケモンに、勝手にふしぎなアメちゃんあげたらあかんていつも言うとるやろ!」

    極限まで張り詰めていた緊張が緩む。彼女は安堵とともにゆっくりと目を閉じ、気を失った。





    【緊張感ゼロでごめんなさいなのよ】
    【風神だれかよろしくなのよ】



    いやもう、構成の妙といい描写の迫力といい、展開されるバトルが本当に素晴らしい。みなさま凄すぎです!
    そしてワタシのギャグに傾く体質を誰かなんとかしてくださいー(^^;)<コラ

    >きとかげさん
    美人警察官さん雷神制圧おめでとうございます! バチュルたん良くやった!くれ!(笑)(≧▽≦)
    とりあえずこちらは一段落したと見て勝手に救助しちゃいました。すんません。

    >クーウィさん
    その手があったか!(笑)>商店街の慰安旅行
    ・・・じゃなくてー!!(笑)

    >……さくらちゃんの腕の中に落っこったのは確信犯です(爆)
    >ナオキさんじゃなくて、ワケの分からない変人で御免なさい〜〜

    さくら(目の中を少女マンガの星でいっぱいにしつつ)「ナオキさんごめんなさい! あたし、運命の人に出会っちゃったの!」(笑)
    空からイケメンが落ちてきたら、そりゃパズーじゃなくとも力いっぱい受け止めちゃいますがな(笑)

    次の方、よろしく!

    おっといけねえ、アーカイブ楽しみにしてます〜vvv


      [No.959] 十二番目、逝ってみよー 投稿者:   《URL》   投稿日:2010/11/12(Fri) 21:16:40     79clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    書いた作品の内、投稿しなかったものはほぼ消してしまっているので、私の黒歴史は消失しました!

    と思ったら日記に小説の一部が残ってました。
    ただそれも、日記自体を紛失したため、四、五年前からのしかありませんが。

    書いた時期→三年前の大学入試の数日前

    書いた理由→ストレスが溜まってたんでしょう

    それまでの遍歴→演劇脚本1本、オリジナルの漫画1本は完結。その他書き散らしたオリジナル漫画は完結せず。
    ポケモン長編小説に手をつけたけどろくに書いてない。
    オリトレの冒険譚とか考えましたが、旅に出た次の日ぐらいで投げ。
    ポケダンのニューバージョンとか考えましたが、主人公がギルド行ってチーム結成したら投げ。

    というわけで、浪人時代に書いたものの第一話を晒します。
    自分でも何の話の第一話か分からないんですが。(上のオリトレのでもポケダンのでもない……何これ)

    タイトルは『二匹で怪盗を』

    〜〜〜

     昔々、この大陸にポケモンの一団がやって来て、ここをポケモンの楽園にしようと決めた。
     人間が入って来られないように、何匹かのポケモンがこの大陸全体に結界をはった。
     そうしてここは、ポケモン達だけの大陸に――楽園になった。

     この大陸にはそんな言い伝えがある。
     嘘だ、という者もいるし、本当だ、という者もいる。
     ただ、この大陸に人間が入って来れないのは本当のことだったし、それが結界のせいであることも確かだった。
     だから、言い伝えは本当だという者の方が多かった。
     ただ、その言い伝えが、本当は何を意味するのかまで考える者は……


     クレイヴは思いっきり羽を伸ばすと、そのまま羽を振り下ろして、近くの街灯まで飛び上がった。
     様々に入り組んだ道を、様々なポケモンが行きかっている。

     その光景は、確かに“楽園”にふさわしい、穏やかそうな光景だった。


     クレイヴはぐるりとあたりを見回す。誰かの家の窓ガラスに自分の姿が映る。
     見慣れた山高帽のような頭、大きな嘴を持つ黒い鳥が映っている。
     あの窓の向こうで、誰が、どんな風に暮らしているのだろうかと考えながら、その下の階、そのまた下の階と視線を下ろしていく。

     そこで、一匹のグレイシアに気付いた。目が止まった、と言うべきかもしれない。
     ただ、そのグレイシアは見たことがあるような気がしたのだ。
     クレイヴはじっと、その姿を目で追う。

     雪と氷の力を授かったイーブイは、路地裏へと消える。
     A.M.8:00。
     クレイヴはそこで自分が出勤中だったことに気付き、慌てて飛び去る。

     A.M.8:15頃。グレイシアはある光景を目にする。
     それは、何の変哲もない、珍しくない光景だった。
     だから、このグレイシアが気にも止めず、通り過ぎて行ったとしても、何の不思議もなかった。
     もし、グレイシアがそうしていたら、このまま何も起こらず、物語はここで終わっていただろう。
     だが、そうはしなかった。
     そして、何もかもが変わった。

     道端で、小柄なポケモン2匹が何匹かの図体のデカいポケモン達に囲まれている、
     この楽園と呼ばれる場所で、残念なことに珍しくない風景であった。

     4匹のポケモン――ゴローン、エルレイド、ハッサム、ニョロトノ――が小さなポケモン2匹に難癖をつけていた。こういう場面ではいつも、難癖をつけている方が悪い奴で、その悪い奴が勝つと決まっている。道理ではないが、とにかくそうなっている。
     グレイシアはその光景をじっと見つめる。ただ、何となく見ている。

    「ここいら俺たちのシマなわけ。分かる? 縄張り。領地。テリトリー。分かる?」
     不自然に語尾を上げて喋っているのはエルレイドというポケモンだ。一般にエルレイドは礼儀正しいポケモンらしいが、天地が引っくり返っても、このエルレイドは礼儀正しくないと言える。
    「入って来ちゃだめなの。分かる?」
    「それとも迷子でちゅか〜、おチビちゃんたち」
     エルレイドに続いて、不自然な赤ちゃん言葉で話し出したのはニョロトノだ。トノというのもおこがましい。
    「ここは入って来ちゃいけないんだよ?」
     粘り着くような声で話すのは、ゴローンだ。
    「入って来るような悪い子は、罰を受けなきゃねぇ……」
     そう言って、4匹全員が1歩進む。

    「うっせーな」
     輪の中心から、声がした。その場にいた全員――4匹の悪い奴らと、グレイシアを含めたやじ馬たち――が驚いた。
     この場で下手な事を言ったら、あの世への切符が簡単に手に入る。そんな状況なのだ。
     にも関わらず、さらに声は続ける。
    「俺たちがどこいよーとどこ行こーと俺たちの勝手だろうが。大体ここ道だろ。公有地じゃねえのか?
     公・有・地!」
     4匹が輪をくずしかけて、囲まれているポケモンがグレイシアに見えた。
     ピカチュウと、リオルだ。正直、勝ち目はなさそうだな、とグレイシアは思う。
     彼ら2匹は幼かった。ただいきがっているだけに見えた。その時は。

     ピカチュウが「文句あんのかこらあ!」と叫び、「お前も何か言ってやれよ」とリオルをけしかけた。
     ただ、リオルは「普通に謝って通してもらった方がいいんじゃないですか?」と言っている。
    「そうだよ、嬢ちゃんはよく分かってるじゃないか」
     勢いを取り戻したゴローンがそう言った。
    「いや、だめだ」ピカチュウが言った。「こういう輩は大人しくするとつけ上がるからな」
     リオルが、困ったような表情をした。4匹がさらに詰め寄る。

     リオルは半ば困ったような、半ば諦めたよな口調で喋り出した。
    「でも……」
     その言葉の後にこんな言葉が続くと、この状況で誰が想像しただろうか。

    「正直今、バトルするの面倒くさいです」

     場が凍りついた。


    〜〜〜


    設定を書き散らすのが趣味だったので、無駄に設定が多かったりします。
    むしろ本編がなくて設定集だけあったりしてね。
    設定集のために設定を考えてね。それも厨二病な設定をね。

    きとかげ は だいばくはつ を くりだした!


    【長編書くのに大風呂敷広げるのは若気の至り】
    【みんなも恥ずかしい長編小説の設定を晒せばいいのよ】

    オリトレの話は、何か主人公がポケモンと喋れる設定でした。
    しかし手持ちの中に喋るポケモンがいました。なんという無駄。
    ポケダンの方は主人公のチーム以外にも三つ四つチームがありましたが、全部話に絡んできませんでした。
    あと、十人分くらいポケモントレーナーの設定を考えて、考えただけで終わりました。

    なんだろう、綿胞子で首がしまるようなこの感じ。

    【小説を読んでもらうためには本編を書くべきだ、と気付くのに六年かかりました】


      [No.958] ふと見てみれば続きが出来ている…!?   投稿者:クーウィ   投稿日:2010/11/12(Fri) 04:49:56     23clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ボサっと入って見てみたら、なんとあの物語に続きが……!

    初めましてです、砂糖水さん。 
    個人的にも嬉しい内容のお話に、先ずはお礼を言わせてくださいです。


    いやいや……テンポの良い言葉のリズムと言い、自分好みな老人の慨嘆と言い、実に嬉しい作品でしたので、思わず続きが読みたいなどとほざいてしまいましたが……(汗) 
    願ってみるもんだなぁ…これは…!(笑)

    子ラプラスと少女。 互いに求め合う者同士が出会う事によって、老人が見ていた世界とはまた違う未来が、彼らの先に開けた事を嬉しく思います。
    何時の時代も、新しい波は若者が起こすものですが……それが常に、古いものを否定する形を取るとは限らないものですよね。  
    ……時代が変わっても、変わらないものがある――  老ラプラスの心にそれが届いたのならば、それを後悔させないような生き方を示す事を、まだ若い両者に期待したいものです(オジンかぃ)


    しかし……流石はこう言った『触れ合い』を描く作品を手がけておられる砂糖水さんだけあって、原作の世界観を全く歪ませる事も無しに、見事に纏められましたな……

    個人的に、最も苦手な分野は『感情描写』ですので、原作者のレイコさんもそうですが、こう言った物をスラスラと書ける方は、実に羨ましいっす(笑)

    『臆病過ぎた思い』や『幸福の隣』、処女作だといわれる『名前を呼んで』にしても、主格となる二者の種族を超えた絆の深さが露わに表現されており、とても印象深かったです。
    …個人的には、三つの中では『名前を呼んで』が一番好きかな…?  実際にありそうな一コマ一コマが、主人公のポチエナの悲しみをはっきりとした形で浮き彫りにしており、実に切なくなりました……
    現実も、まぁそう言うもんですしね……(寂)

    …なんか、何故か最後に名前を出されちゃってましたが……(汗) あんな厨二病全開の妄想話なんかよりは、砂糖水さんがお書きになられている作品の方がずっと深いし、訴えかけるものがあるんですから、もっと自信を持ってくださいな(笑)
    …寧ろ自分は、自分だけ余りにも厨二病全開な作風なのに、ドン引き通り越して自己埋葬しかかってますに……(爆)


    …後更に、これ以上ここでこれを書くのも、どうかなとは思いますが……(汗) 個人的には、端書きとして記されていた長編の方も、是非とも読んでみたいと思ってますね(笑)
    ミュウツーというポケモンは、映画でもそうでしたが、とかくその手の描写が際立つポケモンですので……これはやはり活字中毒者であらば、興味を持つなと言う方が無理だ()

    もし宜しければ、また掲載の方、考えていただければ幸いです(オイ)


    では。  …ふと見てみれば続きが出来ていたのを良い事に、なんかそれこそあっちこっちと書いてしまった気がする……(爆)
    …関係無い方にも長々と引っ張ってしまい、申し訳ありませんでした……(汗)


      [No.957] 風神に飛ばされてみた(オイ……) 投稿者:クーウィ   投稿日:2010/11/12(Fri) 04:00:46     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    一瞬の隙を突かれたと言って良かった。


    ポケモン達へ指示を下す際の言動から、どうやら警官のようであるらしいと、察しが付いた女性。 
    その女性トレーナーより、彼が陽動開始の指示を受け終わった、その直後――突然雷神と風神が、見事なチームワークで彼女の体を吹き飛ばし、『雷』と『竜巻』が穿った大穴の中へと、落とし込んだのである。

    しかも、雷神の方が間髪を入れず女性トレーナーの方へと追撃を試みたのに対し、風神の方は『追い風』によって雷神を送り出した後、強烈な『暴風』を繰り出して進路を塞ぎ、彼女と青年達との横の連絡を、完全に断ち切ってしまったのだ。
    ……女性トレーナーは何とか立ち直ると共にアーケオスを繰り出して、雷神に死命を制される事だけは避けられたものの、手持ちポケモンの半数と切り離されてしまった彼女が、非常に『不味い』状況にあるのだけは、疑いようが無かった。

    「くそっ…!」

    一言だけ小さく悪態を吐くも、青年はすぐに目線を戻して、今や自らの一身に課せられる事になってしまった当面の課題と、真っ直ぐに向き合う。  ……視線の先では、不敵な笑みを浮かべた風神が『追い風』に乗りつつ、自らの獲物となるべき人間とポケモン達の一群を、自信たっぷりに見下ろしている。


    ――状況は、お世辞にも良いとは言えない。

    彼らは確かに頭数には不足は無いものの、彼女の残りの手持ちである三匹は、突如として指揮官を失って動揺を隠せない有様だし、彼が連れている三匹の方も、ヒトカゲは今同行し始めたばかりで持ち技すら定かではなく、残りの二匹はこの地方に来てから相前後して手持ちに加わった新米であり、新奥で活躍した主力はみんな、救助現場に置いて来てしまっていた。
    元々彼は、女性トレーナーの『獲物』を横取りするような真似は頭から考えておらず、純然たる勢子働き―獲物を討ち手が仕留めやすい位置まで追い立てる、サポート役に徹する心算で、ここに足を運んで来ていたのである。  ……つまりは完全に彼女の戦力を当てにしていた訳で、自力で神と呼ばれるほどの相手と雌雄を決するだけの戦力は、持ち合わせていなかった。

    一言で言えば、彼らはただの烏合の衆―単なる寄せ集めの集団に過ぎなかったのである。

    そんな彼らを前に、風神はまるで、逃げるのは今の内だぞとでも言うかのように、余裕の表情で風の刃を生み出した。  ……瞬く間に彼らの人数の倍以上の数に達した『エアカッター』は、そのまままるで無力な相手を追い立てるかのように、そこ等中に向けて解き放たれる。
    全員が慌てて逃げ惑う中、風神は更に猛烈な突風を吹き荒れさせて、その場にいた全員を、激しく煽り立てた。

    難を逃れるべく、素早く木陰に飛び込んだ青年の目の前で、懸命に付いて来ていたヒトカゲの小さな体が、風にあおられて宙に浮く。 
    間一髪のところで、リオルのラックルがその小さな手を捉まえると、そのまま痩せた体に似合わない腕力で引っ張り寄せ、自分の背中にヒトカゲを背負い込んだ。
    咄嗟の処置を青年が褒めるまでも無く、それを当然の反応と心得ている小さな波紋ポケモンは、続いて隣の木の陰に飛び込んだ後、新しく出来た友達を背負ったままの状態で主人の方に顔を向け、頼もしげな笑みを浮かべる。

    そんな不敵な表情を目の当たりにさせられれば、不肖なりとは言え主人としては当然、答えてやるより他にない。 
    リオルとヒトカゲに向けてニヤリと笑い返してやると、気を取り直した青年はゆっくりと腰のボールに手をやって、中のポケモンに指示を伝えるべく、素早く二本の指で数回表面を叩いて、合図を送る。

    彼が隠れ場所を飛び出して、腰のボールの開閉スイッチを操作するのと、ヒトカゲを背負ったリオルが疾風の如く駆け出して、片手を空に向けて掲げたのは、ほぼ同時であった。 


    三者が隠れ場所から飛び出して来た丁度その時、風神は主人と分断されて孤軍となった三匹を追い詰めて、止めを刺そうとしている最中であった。

    ――幾らレベルが高くとも、コジョンドとドレディアは飛行タイプとはすこぶる相性が悪く、残る一匹のチラチーノにしても、独力で伝説クラスのポケモンと渡り合えるほどに、強力な技を持ち合わせている訳ではない。
    常にはトレーナーが連携を組み立て、指示を与えて彼らの力を最大限に引き出しているのだが、今はその優れた指揮官もおらず、互いの連携は的確さを欠き、チグハグに動くばかりで、決定打を与えられるチャンスを作り出せないでいた。
    三匹は果敢に技を繰り出すが、『追い風』で機動力の上がっている風神は軽快に身をかわして『ストーンエッジ』を避け、『ロックブラスト』をすかす。 ……『蝶の舞』で威力の上がっている『花びらの舞』も、常に逆風の状態であるならば、相手に届きさえせず、ただ吹き散らされるばかり。

    やがてPPが尽き、岩を飛ばせなくなった二匹のポケモンを、『蝶の舞』によって防御力の上がったドレディアが庇うようにして、何とか持ち堪えていたところ――急に仕上げとなる大技を暖めていた風神の注意が、後ろに逸れた。
    次いで勢い良く振り返った風神は、折角追い詰めた三匹に対して止めも刺さずに、新たに目に付いたターゲットに向けて、真一文字に突っ込んでいく。
    ――その視線の先には、片手を空に向けて高々と挙げて、ヒトカゲを背負ったまま不敵な表情で佇んでいる、リオルの姿があった。

    相手の注意を『この指止まれ』で惹き付けたラックルは、無事に三匹から風神の矛先(ターゲット)を引き継いだ事を確認するや否や、くるりと向きを変えて、脱兎の如く逃げ出した。
    ――20キロを超える体重を支え、一晩で幾つもの山谷を越える事の出来るリオルの足腰は、短時間であるならば、背中に6キロほどのヒトカゲが乗っかったところで、ビクともするものではない。

    リオルが時間を稼いでいる間に、青年は素早く三匹の元へと駆け寄ると、予め用意していた木の実を、彼らに対して投げ渡す。  ……宙を飛んで彼らの元に届いたのは、PPを回復する効果のある、『ヒメリの実』だ。

    「好きにしてくれ。 こっちの味方に当たらなきゃ、何をしてくれても構わない。」

    与える指示は簡潔無比。  ……元々ポケモン達に対して、細かい指示を飛ばして行動させるのは彼の主義では無いし、それが今回の様に他人の手持ちポケモンであったのならば、尚更の事である。

    人が知識を駆使して作戦を立てるのと同様、ポケモン達は生まれもって携えている本能によって、己が為すべき事柄とそのタイミングとを、的確に読み取る事が出来るものだ。  
    ――基本的な戦略や戦術は自らが組み立てるも、行動すべき秋(とき)は、各々の判断によって決定させる。  ……それが、彼が常に自らの手持ちポケモン達に課している、行動の原則だった。 

    次いで彼は、拍子抜けするような指示に呆気に取られている三匹はそのままに、自らの腰にあるボールを取り外して、ぽいと放り投げた。
    中から出てきたポケモンには、先刻既に、指示を出し終えている。  ……解き放たれて直ぐに、自らに与えられた指令を的確に実行し始めた最後の一匹を尻目に、彼はじっと動かず、リオルが消えて行った林の奥を見つめる。    

    真剣な表情で立ち尽くすその隣に、先程の『エアカッター』を壁技で凌いだエーフィがゆっくりと近付いてくると、目を閉じて意識を集中し、逃げ回っている二匹のポケモンと、離れて戦っているであろう女性トレーナーの様子を感じ取ろうと、静かに身を振るわせ始めた。
     
     

    木々を縫うようにして全速で走るラックルを、これまた全力で追いすがっている風神は、なかなか捕まえる事が出来なかった。
    小柄なリオルは、ヒトカゲを背負ってはいるものの尚まだ小さく、風神が通れないような狭い隙間を巧みに選び、茂みを潜り木の幹を蹴って、予測もつかない軌道を描く。
    対する風神は空中から追いかけているものの、密生した木々は飛行している追跡者側にすこぶる不利であり、しかも今まで自らの動きをサポートしていた『追い風』は、狭い場所ではスピードが出過ぎて小回りが利かず、ともすれば立ち木に激突するような事態を、招きかねない有様であった。
    風の力で纏めて薙ぎ払おうにも、密生する草木の抵抗力はまさに天然の要害そのものであり、放たれた『エアスラッシュ』や『エアカッター』と言った技は、全く以って相手の背中に届く気配は無い。

    余りに思う様に任せない追跡に苛立って、猛り狂う風神が少しでも精密な機動を確保する為、自らを後押ししていた『追い風』を解除した途端、今度はリオルの背中に位置するヒトカゲが、後ろに向けて『煙幕』を放った。
    本来なら未然に吹き払ってくれる『追い風』のサポートが無いところに、ただでさえ機敏な反応が求められる木立の中で、視界を遮られてしまったから堪らない。
    あっという間に立ち木に激突し、顔を樹皮にくっ付けたまま動きを止めた風神を尻目に、リオルのラックルは素早く反転すると、足取り軽く傍らをすり抜けて、元来た道を引き返す。  ……波導を感じ取る能力を持つ彼には、濃密な『煙幕』による視界の不良も、全く苦にはならない。

    漸く立ち直った風神が、赫怒して走り抜けて行ったリオルを追いかける頃には、既に身軽な波紋ポケモンは、己の仲間達と合流していた。
     


    無事に飛び込んだ茂みから戻って来たリオルの姿に、迎えた青年は会心の笑みを浮かべた。
    ――そんな彼の背後には、残っていた最後のボールに入っていたポケモンが、これまた活躍の時を待ち焦がれているかのように、うずうずしながら出番を待っている。

    青年の背後に立っているのは、戻って来たリオルそっくりそのままな姿の、特徴的な顔をした波紋ポケモンであった。
    ヒトカゲを背負って戻って来たラックルと違う点は、まるで子供の悪戯書きのように縦線と横線で構成された、単純な形状の両の目と口。  ……残念ながらまだ彼は、表情まで完璧に相手を模(かたど)るまでには、経験を積めてはいなかった。

    「良くやった、お前達。  ……さーて、じゃあ戻ったばかりで悪いが、早速歓迎の準備に掛かってくれ。 配置はラックル達は東の茂み、ガロは道を挟んで反対側だ。  ……お客さんには、彼らが心を込めて御馳走してくれるだろうから、お前らも心置きなく舞って見せてやれ。」

    彼のそんな指示に対し、二匹のリオルが同時にコクリと頷くと、それぞれが指示された場所へと、素早く身を伏せる。 
    既にチラチーノら三匹も、新たに指示を下している臨時の指揮官に従う意思を示しており、馳走云々と彼が口にした時には、意向返しが出来る瞬間を待ちかねているかのように、思い思いの反応を見せる。
    次いで彼は、残ったエーフィに対してもそっと手を差し伸べると、雨に濡れた柔らかい毛並みを乱さぬようにそっと背を撫で、声をかける。

    「お前さんには、全体のサポートに当たって貰いたい。  ……守備が出来る要員は貴重だから、期待させて貰うぞ?」

    微笑んだ彼に対し、猫叉は柔らかい声で鳴くと、直ぐに近くの茂みの方へと歩み寄って、他のポケモン達に習って身を隠す。

    そして――やがてそれから幾らも経たない内に、彼らの客人である怒り狂った風の神が、生い茂った木々の間から、張り巡らされた罠の中へと、勢い良く踊り込んで来た。
     
     
     
    飛び出して来た風の神に最初に技を仕掛けたのは、予め最も近い位置に伏せていた、ドレディアのナンであった。

    憤怒の形相で茂みを飛び出し、手当たり次第に攻撃せんものと、既に技の準備を整えていた風神に対し、ドレディアは出てきたばかりのそれにおっ被せる様に、各種の『粉』を撒き散らした。
    様々な状態異常をもたらす花粉が、木立を抜ける為に『追い風』を解除していた無防備な風神を包み込み、大技を解き放とうとしていたその出鼻を挫いて、最初の一撃(ファースト・インパクト)を未然に防ぐ。
    次いで、同じく周辺に待機していたチラチーノのグンとコジョンドのユンが攻撃を開始し、花粉の攻勢に体勢を崩した風神の体を、岩石の礫で滅多打ちにする。  ……既に動揺から立ち直っている彼らの攻撃は、レベル通りの破壊力を持って、風神の体に幾つもの傷や打撲を作り出す。

    怒りと苦痛の唸り声を上げた風神は、すぐさま自らを襲っている花粉の霧を吹き飛ばすべく、自らの尾を弾くようにして、『追い風』を繰り出した。
    ――『追い風』は、自らのスピードを大幅に高めるフィールド変化技。 これさえ発動させてしまえば、『粉』や『煙幕』のような類の技は完全にシャットアウト出来る上に、劇的に高まった機動力によって、戦況は圧倒的に優位になる。

    ……だがしかし――事態の推移は、風神の思惑とは、全く反対の方向へと進んでいく。 

    風神が『追い風』を使って、周囲を取り巻く三匹に向け、降りかかる粉を吹き戻そうとしたその刹那、突然横合いから現れたエーフィが、『神秘の守り』でその場のポケモン達一同を、状態異常の危険から解放する。 そして更に、別の茂みから顔を覗かせた二匹のリオルが、風神が『追い風』発動させるや否や、同時に『まねっこ』を繰り出したのだ。
    これによって、その場のポケモン達全員の機動力は著しく上昇し、風神側のアドバンテージは、全く無に帰した。  ……しかも、もし風神側が『追い風』を中断したり、何か大技を仕掛ける為に一時的に風の勢いを弱めたりしようものなら、立ち所にスピードの上がっている周囲のポケモン達から、滅多打ちにされる事になるだろう、というオマケ付きである。

    『追い風』の利点を解消され、大技と言う牙を抜かれた風神を更に苦境に追い込んだのは、それから直ぐに二匹のリオルが使い始めた、延滞戦術であった。
    小癪なポケモン達の連携に、怒り心頭に達した風の神は、こうなったら一匹ずつでもと、手近にいたドレディアに向け、『エアスラッシュ』を放とうとしたのだが……いざ技を繰り出す直前となって、不意に彼の体は本人の意思とは無関係に別の方向を振り向き、狙っていた花人に攻撃を仕掛ける事が、どうしても叶わない。

    その向き直らされた視線の先では、先程彼を立ち木に正面から激突させた、あのヒトカゲを背負ったリオルが、片手を天に向けて差し上げて、不敵な面構えで此方を見つめていた。
    好き放題にやられた上に、今また再び、神である自分の行いを邪魔する小童――  沸きあがってきた新たな憤怒に、風神は自らの身を打つ岩礫の存在も忘れて、遮二無二小さな波紋ポケモンの方へと、突き進み始める。

    ――だが、執拗に攻撃を受けつつも、漸く逃げ回るリオルに追いついて、いざ一撃を叩き込もうと、身構えた瞬間――またしても彼の体は、唐突に別の方角を振り向かされる。 
    今度はヒトカゲを背負っていない方のリオルが、馬鹿にしたような間の抜けた表情で、片手を高々と差し上げ、余裕の表情で取り澄ましていた。
    向きを変えさせられた彼の背中に、先程まで追い回していたリオルが『まねっこ』で放った『ストーンエッジ』が、次々と食い込んで来る中――風神に出来た事は、ただ新しく出現したターゲットに向けて、真一文字に突っ込んで行く事だけであった。
     

    青年の取った戦術は、単純極まりないものであった。
    正面から相手と戦える戦力を持ち合わせていない彼は、それならばと自らの最も勝っている点を、相手に向けて押し付ける事に決めたのである。
    ――その最も勝っている点とは、『数』であった。

    個々の戦力から言えば、彼らの集団は全くと言って良いほど、神たる風神には敵わない。
    相手の火力、耐久力、攻撃範囲、突破力と、どれを取っても青年側のポケモン達とは桁違いであり、更に『天候』と言う本来なら中立であってしかるべき要素までが、相手側の味方と来ているのだから、普通に総力を挙げて正面からぶつかった所で、勝ち目なぞはある筈が無かった。

    だがしかし――如何に能力が高かろうとも、所詮相手となるポケモンの数は、一体こっ切りである。
    攻撃範囲が広く、火力も高いのは厄介だったが、攻撃基点自体は一つ切りであり、それさえ無力化し続けていれば、此方に損害が及ぶような事態を、完全にシャットアウトする事が出来るのだ。
    ――ならば、後はそれが可能なところに、相手を落とし込んでやれば良いだけの話である。

    単体攻撃技のみであるなら、リオルを二匹にして『この指止まれ』でリレーしてやれば、何の問題もなく完封出来る。
    突破力を抑制するには、相手のアドバンテージである天候やフィールド変化効果を、ある程度まで打ち消してやればよい。
    後は広範囲に影響が及ぶ大技であるが、そういった技は大体少なからず『溜め』の要素が必要であるので、それを許さない状況を作り出せれば完璧であった。

    そして今、己の誇れる力を頼みに猛進して来た風の神は、彼が思い描いたとおりの渦の中に、完全に嵌まり込んでしまっていた。
    ……仮に相手が、自らの力に驕る事無く、もう少し用心深く行動していたならば、こうも簡単に泥沼に落とし込まれるような事は、決して無かったであろう。
    あるいは、同じ姿を持った兄弟と力を合わせて戦っていた場合でも、同様である。

    如何に能力が高かろうとも、その勝れるところを無力化されてしまえば、立ち所にその優位性は崩れ去る―― 各地を廻って様々な経験を積んできた青年には、力に恵まれた強大な神には思いも至らぬその道理が、良く理解出来ていた。
    ――力で劣る小さな者達の存在を顧みず、我にのみ従って縁(えにし)を分けた兄弟で争い、己の力に依って立って驕り高ぶった結末が、この事態であった。


    翻弄される風神の体力は、更に時間が経過するに連れ、確実に――そして、急激に消耗していった。

    『ロックブラスト』も『ストーンエッジ』もタイプ上の弱点である上に、エーフィにしても二匹のリオルにしても、自らの役割が空いている時には、決して手を拱いてはいなかった。
    やがて十分にダメージが蓄積し、風神の動きが目に見えて鈍って来たのを見て取った青年は、そろそろこの戦いを終わりにするべく、最後の一撃の準備に取り掛かった。

    腰のボールを手に取ると、リオルの内の一匹に向けて差し向けて、合図と共に手元に戻す。
    漸く鼬の走るように縦横に閃きつつ舞っていた、素早っこい舞い手達の陽動合戦から解放された風神が、傷だらけで力無く漂いつつ、彼の方を振り向く。

    そんな軽くグロッキーになりかかった風の神に向け、青年は真剣な表情で真っ直ぐに視線を向けつつ、声高に呼び掛けた。  ……一応降伏勧告だけは、形式的にでもしておく心算である。

    「我は北西の果て、新奥は双葉の地に生を受けし者なり。 彼の地より海を越えて来たりし謡い人が末裔が、汝この地方を統べし風の神に問う。 我等が望み、汝に選択を求めし事柄は、次の二つなり。  一つには、我等が願いの程を聞き入れ、今後この様な諍いを収めて穏やかに振舞うと誓い、この風雨を天に返してこの場を去るか。 もしくは、このまま我等と矛を交えて決着をつけ、以って力によって、己が運命を定めるか。  我ら汝自らに、その選択を委ねん――」  

    ……正直、我ながら陳腐な呼び掛けだなと内心苦笑しながらも、青年は故郷で祖父に教えられた仕来たり通りに、目の前のポケモンに向け、真面目な表情で言葉を紡ぐ。
    一応彼の祖父の先祖達は、『神』が過ちを犯した時には、反省を促して強く抗議した後に、「かくあるべし」と語りかけた――と、言うのだが……残念ながら彼には、こんな儀礼的な言葉や説得ぐらいで目の前のポケモンが行いを改めようとは、とても思えなかった。
    大体この相手を見る限り、彼の故郷で実際に『神』と呼ばれている幾匹かのポケモン達とは、性質も性格の程も、まるで違っているのだから――


    案の定、彼の御大層な勧告を聞き終えるや否や、既に消耗し切っていたように見えた風神は、まるで「生意気千万」とでも言うかのように再び唸り声を上げて、輪になった尻尾を鋭く弾き、新たに戦う意思を示し始めた。  ……それと同時に風の唸りや雨脚の方も、弱まるどころか尚一層に、その激しさを増すばかり。
    ――やはりこの手の連中は、祖父の血を引いた格式張った説得よりも、あの女性警官の方式に則り、大分前に始終対峙させられた宇宙人モドキ達と同様、すっぱりド突き倒してしまった方が、手っ取り早いようである。

    新たに戦闘態勢に入った風神に対して、エーフィが素早く『サイコキネシス』を繰り出し、その動きの程を、強引に封じ込めようとする。
    念力の波に捕まり、風神の動きが止まった所に、女性警官の手持ちポケモンである三匹が、手控えていた攻撃を再開して、風の神に対して引導を渡そうと試みる。

    それに対して風神の方は、最早一気に勝負をかける魂胆であるらしく、重なる打撃にも直接の反撃はせずに、自らの持てる破壊力を最大限に引き出すべく、その特徴的な尻尾に、刻一刻とエネルギーを蓄えていく。
    ――光り輝く尻尾に凝縮されたエネルギーが解き放たれた時が、恐らくこの場に集っている青年達の、タイムリミットとなるであろう。

    無論それを理解している青年の方には、それを待つような心算は毛頭無い。

    彼はすぐさま、ボールに戻したポケモンをもう一度その場に解き放つと、中から現れた紫色のポケモンに、『変身』する対象を指し示す。
    即座に形を変え始めるメタモンをそのままに、彼は次いで、この対決でフィニッシュワークを受け持つべき立場のポケモンに向け、力強い声で指示を飛ばした。
    此方に顔を向け、今か今かと指示を待ち焦がれているヒトカゲに対し、彼はニヤリと笑い掛けてから、こう叫ぶ。

    「出番だぞチビ助! 一発、思いっきりお見舞いしてやれ!」

    それを聞き、待ってましたと言わんばかりの表情で、ヒトカゲが大きく頷いた。
    次いで彼は、思いっきり息を吸い込んだ後、キッと宙に浮く風神を睨み付けると、尻尾の炎を激しく燃え上がらせながら、紅蓮の『火炎放射』を、真っ直ぐ相手に向けて吹き付ける。
    ――程なくしてそのオレンジ色の火炎の帯は、ヒトカゲ自身の激情を体現して、尻尾の炎と共に美しい蒼炎へと、その姿を変える。

    更に丁度、ヒトカゲが炎を吹き出したそのタイミングで、メタモンのガロは『変身』を完了した。
    新たに戦線に加わった二匹目のヒトカゲが繰り出した技も、当然『火炎放射』。
    空中で斜めに交じり合った二色の炎は、互いに螺旋状の渦を巻きながら、風神目掛けて殺到していく。

    ――現在の天候は、依然として暴風雨。  一筋の『火炎放射』では雨に消え、二筋の炎では風に負ける。  
    ……しかし、その炎が三本であるならば。

    二色の『火炎放射』を追いかけるようにして、三本目の炎の帯が、既にチャージを完了しつつある風神に向けて、槍の穂先の様に伸びていく。
    三番手を務めたリオルが繰り出した『まねっこ』により、更に勢いを増した火炎の塊は、素早く飛び退いた四匹のポケモン達を赤々と照らし出しながら、力を蓄えた風神の体を、情け容赦無く包み込む。
    神と呼ばれるポケモンが凄まじい唸り声を上げて、技への集中力を途切れさせた、まさにその瞬間――突然溜まっていたエネルギーが突風となって、辺り一帯を激しく薙ぎ払った。
     
    周囲に存在していた者達の体が、その凄まじい風圧に煽られて軽々と宙を舞い、そこ等中に吹き飛ばされる中――青年は自身も空中に投げ出されながら、件の伝説のポケモンが尚もしぶとく、藪の中に切り開かれた道を、一目散に逃走して行く姿を見た。


    ……後に残して来たレンジャー達と、救助した少年が存在している、その方角へと――
      
     
    しかし当の彼が、それが意味している所を、おぼろげながらも認識し始めている内に――宙を舞う彼の体は、生い茂った木々の間を綺麗にすり抜け、崩れた斜面の遥か下の方へと、まるで冗談か何かの様に、音も無く落下し始めていた。
    不意に現実に立ち返り、自らの身に迫る危機に、彼が愕然とした時――その時にはもう既に、彼の体はずっと下の方に見えている泥土の地肌へと、まっしぐらに突っ込み始めていた。

    そんな僅かな間に彼に出来た事は、闇に染まりかけている遥か地表との距離を勘で割り当て、無駄な足掻きとは悟りつつも、幼少時から体に叩き込んでいた受身の態勢に、自らの意識を持っていくことだけ。


    だがしかし――地上に叩き付けられる筈の彼の体は、唐突にまだ地上に達するには早い段階で、何者かによって受け止められた。

    体に衝撃が走った瞬間、無意識の内に片手を受身の要領で振り下ろした彼は、土砂や泥濘(ぬかるみ)の代わりに、何か固くて暖かいものを、力強く掌で叩き付ける。

    「ナイスキャッチ、さくらちゃん!!  ツボちゃんも良くやったよ! ありがとう!」

    次いで耳に入って来たその声に、青年はハッと我に返って周囲を見回し、自分の身に一体何が起こったのかを、己が目で確認する。
    ……しかしその現実は、彼にはとても直ぐには、飲み込む事が出来ないような代物であった。

    「マダ…ツボミ……?」

    辛うじてそう呟いた彼の体が存在していたのは、地面からずっと高い所に位置している、巨大なマダツボミの片腕代わりの葉っぱの上に立った、ゴーリキーの腕の中であった。
    逞しい怪力ポケモンの腕の中に抱かれながら、尚も間一髪の所で一命を救われた青年は、自らの顔をじっと覗き込んでいるゴーリキーの双眸を、ただただ唖然とした表情で、言葉も無く見つめ返す。 
     
     
    ――結局、彼が何とか正気を取り戻し、その場に駆けつけてくれていた大勢の一般トレーナーの有志達に、救助対象者である少年らの位置と、分断された女性警官が向かった先を指し示す事が出来たのは、それから少し経ってからの事であった。
    彼と同じく海の向こうから、近所の商店街の慰安旅行でやって来ていたと言うその集団は、青年の言葉を聞くや直ちに二手に分かれて、それぞれの元へと急行し始める。

    巨大なマダツボミ―どうやら、『ツボちゃん』と言うらしい―と、そのトレーナーである少女とを先頭に押し立てたチームに同行する事になった青年は、自らの不始末が生んだ事態がどの様な進展を見せるか、気が気ではなかった。
    依然ゴーリキーにお姫様抱っこされたままの状態で、彼は激しい焦燥感に駆られつつ、未だに雨の止む気配の無い暗い空を、もどかしげに見上げる。

    ――気のせいか、空を切り裂いていた稲妻の輝きが、幾分遠ざかったようにも思えたものの……少年やレンジャー隊員達、それにあの女性警官の安否を確認するまでは、とても我一人だけ、まんじりとして居られるものではない。
    一緒に戦っていたポケモン達の安否の方も、気にならない訳ではなかったが――どうやら一匹も姿を見せに来ない所から、それぞれ思い思いに風神を追いかけたり、女性警官の安否の程を、確認しに行ったものだと思われた。


    そして、更にその時――そんな彼の心配を、まるで裏付けるかの如きタイミングで、一行が向かっている方角のずっと先の方から、あの聞き慣れたアブソルの警告を意味する遠吠えが、雷鳴の衰えた曇り空を切り裂き、はっきりと聞こえて来た。
     
     
     
     
     
    ―――――


    最早謝ってばかりの状況ですが、今回も先ずは謝罪しとかねぇと不味いだろ……ってぇなワケで……  済みませんでしたぁ!!(土下座)
    ……好き勝手やっておいて、普通に風神様取り逃がしちゃいました(爆)

    ここまで引っ張っておいて、まさかのスルーパスならぬトンネルエラー。 しかも、結局何一つ解決していないと言うグダグダっぷり。  ……お 前 は 何 を や っ て る ん だ
    きとかげさんとこの女性警官は、半数の手持ちで雷神を捕らえたと言うのに、うちのフーテンは倍の兵力を動員して、見事大失敗…!  ……これが、責任ある立場にいるかいないかの違いか。
    この失態の責任、果たしてこの後どうやって取るべきか……?(汗)


    途中でなにやら何を書きたいのか分からなくなったり、何時もにも増して内容の混乱振りも一入の出来。  ……誰かこの面でもお助けくd(爆)


    後またしても、大勢の方のキャラクターさん達をお借りいたしました。

    きとかげさんの所のチラチーノどんにコジョンドさん、それにドレディアどん。 
    海星さんの所のエーフィさんに、兎翔さんの所のヒトカゲ君。
    それにサトチさんが送って下さった大勢の一般トレーナーの有志の方々と、どうしても使いたくなってしまう例のポケモンさん達(笑)

    相も変わらずの筆致ですので、御期待に沿えるような描写は到底出来てはおりませんでしょうが…取りあえず、突っ込みどころがあらばお願い致しますね……(汗)


    ……さくらちゃんの腕の中に落っこったのは確信犯です(爆)
    ナオキさんじゃなくて、ワケの分からない変人で御免なさい〜〜

    彼らのこの場での存在理由については、適当にでっち上げちゃいました(汗) 
    商店街の慰安旅行―個人的には、団体さんを転送する際に用いる、切り札その一です(爆)



    【風神取り逃がしちゃったのよ……】

    【取りあえずは増援の道案内役に回るのよ】

    【離散したアイツのポケモン達は、必要でしたらお使いください】

    【楽しんでた割には役に立っていないのは内緒ですのよ】


    あとこの場を借りて


    きとかげさんのバトルシーンの秀逸さに圧倒されました……(汗)
    バルーニングが出てきたところなんかは、まさに発想の勝利の一言。
    蜘蛛が空を飛ぶのって、初めて知ったときは驚いたんだよなぁ・・・(しみじみ) 

    てこさんの土砂崩れを止めようとするシーンも、レンジャー氏の体に掛かっている負担が容易に想像出来て臨場感が半端無かったですし、海星さんとこのリザードンやエーフィも、なかなか機敏に動き回ってくれてみてて楽しいです(笑)


    こちらは引っ掻き回してばかりで御免なさい…(爆)
    悪い癖なんだよなぁ…二転三転させちゃうの……


    ……では。


      [No.956] リア充爆発すればいいのに 投稿者:久方小風夜   《URL》   投稿日:2010/11/12(Fri) 03:29:18     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >しかしいやに楽しげにポッキー交換しやがって畜生ポッキー前歯の間に挟んで歯ぁかち割って歯周病で氏ね!
    全力で笑った。

    >しかしこのカゲボウズとの出会いには、痺れた。
    >彼女は黒くひらひらした一介のカゲボウズだった。
    >しかし、優しげな目元、溌剌としたひらひら具合、ゴーストタイプらしからぬ涼しげな雰囲気を纏っている。
    >デフォルメしたら目もとにぱっちりまつげでもついていそうな。
    ついに人間以外にまでストライクゾーンが広がってしまったか毒男さん。

    >「週間GHOST」というセクシーなヨノワールが印象的な表紙のグラビア雑誌
    1冊ください。

    サラダ味のちゅうをしてるカゲボウズに胸がキュンキュンした。
    大丈夫だ毒男! 11月11日は「ポッキー&プリッツの日」だから!

    【ちなみに自分はトッポ派】


      [No.955] ヨノさんはきっとぷにぷに 投稿者:久方小風夜   投稿日:2010/11/12(Fri) 03:03:56     18clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    とりあえず一言。
    カオリさん、そこ代わってくださいお願いします。

    それはともかく。
    カオリさんシリーズ、不思議な雰囲気が漂っていますね。
    何故カオリさんがそれほど人間を嫌うようになったのか、そこのところを詳しく聞きたいものです。


    あとそれから、カオリさんそこ代わってくださ(略
    大事なことなので2回(略


      [No.954] 宮の狐と悪狐伝 投稿者:久方小風夜   投稿日:2010/11/12(Fri) 02:46:11     190clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:申し訳ない】 【現在】 【リメイク進行度】 【8%くらい

    ※諸事情により過去ログ行きになる前に消去。
    いずれ修正版を自サイトあたりにでも乗せる予定。


      [No.953] ポッキー日和 投稿者:CoCo   投稿日:2010/11/11(Thu) 23:51:12     98clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     ※お先にこちら(http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/kagebouzu/index.html)をどうぞ






     職場とアパートの間は自転車で往復できるのだが、一本路地へ入るとコンビニがある。
     普段は上がって帰る時間にここへ来て煙草とコーヒーを買うのが俺の一般的な利用方法だ。
     しかし、今日は煙草値上げされてっからそろそろ禁煙しようかなァなんてのんきが言えない雰囲気があった。

     まず、路地に入って見えるコンビニ前の申し訳程度の駐車場。
     で、バイクに寄りかかって、お互いの口にポッキーを差し出し会うアベック。
     男は頭髪をやや金に染めている。秋の新色ミミロップカラーのマフラーだと……? 女々しいもんつけやがって。女のほうは眼がぱっちりしていて可愛……いや! こういう目鼻立ちくっきりした女はなんか性格がキツかったりして長続きしないもんなんだ。やーいやーい。どうせお前らなんかクリスマスまでもたねえよなんか顔の相性が悪そうだもん。白と黒で色違いペアルックだと? ザングースとハブネークで犬猿の仲ってことだろ常識的に考えて。しかしいやに楽しげにポッキー交換しやがって畜生ポッキー前歯の間に挟んで歯ぁかち割って歯周病で氏ね!
     コンビニに飛び込むと、近所の高校生とおぼしき男女二人組みが楽しそうに楽しそうにとても幸せそうに季節限定ポッキーを吟味していた。
     このやろうポッキーの箱取ろうとして手が当っちゃって「あ……」みたいな顔見合わせてちょっと赤くなったりするの止めろよ! 静電気仕事しろ!
     しょうがないのでそっと手を伸ばして一段下にあったプリッツを買って帰りました。

     アパートに帰る途中ですでに背中に気配を感じたので振り向くと案の定。そこには、カゲボウズがいた。
     五匹ほどがふらふらついてくる。
     なんだかうれしそうである。
     しあわせそうである。
     にこにことしている。
     そりゃあそうか。

     部屋に入る。驚いた。清純派の白いカーテンが真っ黒になっていた。
     カゲボウズである。
     カゲボウズがびっしりとへばりついている。
     俺は迷わず蛍光灯をつけた。

     とりあえずパソコンの電源を入れて、立ち上がるのを待ちながら今日の仕事のことを思い出す。
     俺の勤め先はポケモン・トリミングセンター。ポケモンを洗うのだ。まだ歴史の浅い業界なので資格などはいらないようだが、実技試験はある。俺はカゲボウズを洗って切り抜けた。専門技術は習うより慣れろの厳しい世界ながら、達成感はある。とくに炎ポケモンを初めて無傷で洗い切ったときの感動といったら。
     明日は、俺の知識にはないポケモンが予約に入っている。ニックネームはハナちゃん、ムーランドというポケモンらしい。どんなポケモンなんだろうか。あとで調べておかなくては。

     しかしデスクトップが出てきたところで、突然視界上方からプリッツが出現した。
     見ればカゲボウズが二匹がかりでプリッツを持ち上げて、ちらつかせているのだ。
     今日の日付けを思い出す。11月11日、誰が呼んだかポッキーの日。1111を折れたポッキーにでも見立てたのだろうか? ポッキーというよりこれじゃ小枝だろう。
     コンビニの風景を思い出す。
     なぜだ。たかが菓子の名前のついただけの普通の日じゃないか。いつもどおりの木曜じゃないか。なんであんな特別な日みたいな顔でポッキー買うんだよ。俺なんてカゲボウズ・オン・ザ・プリッツだぞ。しかもサラダ味。

     カゲボウズたちはにやにやしている。
     頭で俺の頬をつついてくるものもある。
     こいつら、こいつらは……俺を食い物にする気満々じゃねえかッ!
     俺はもう散々世間に食い物にされてきたっていうのに! まだ俺から何かを貪ろうってのか! もう逆さに振っても洗剤ぐらいしか出ねえよ!

     とか心の中で叫んでみてもさらに幸せそうな顔をされるばかりである。

    「てめえら……」
     俺はプリッツに手を伸ばした。
     ああ。いいじゃねえか。上等だよ。ポッキーの日にプリッツ。食い尽くしてやろうじゃねえかッ!

     カゲボウズたちからプリッツをひったくり、豪快にあけぐちを無視して頭っからびりびりに引きちぎってプリッツの箱を開ける。普通に開けるより時間がかかった。
     中から飛び出した銀の袋を、勢いのまま引き裂く。引っかかって変な風に開いてしまい、木の枝みたいな細いプリッツが畳に散らばってしまった。へりに入ったりして地味に面倒臭い。何本かカゲボウズに取られた。
     五本ぐらい一気食いしてみる。しょっぱくて単純な青春の味が口の中に広がった。
     うおおお思い出すな俺! こみ上げてくるな黒歴史(ブラッククロニクル)! 高校時代のパシられたり秘めたる思いを寄せていたあの子が友人に告白したりしていたしょっぱい思い出なんて思い返さなくていい! これ以上惨めになってどうするんだァ!

     カゲボウズは満足げであった。

     プリッツを一袋開けると、なんだか気だるい疲労感が残った。どうやら俺の衝動はあらかた喰い尽くされてしまったらしい。なんだか虚しくなってきた。二袋目を冷静にパーティ開きすると、カゲボウズはそろそろ寄ってきて、プリッツをじいっと睨みつけ、ふよふよ宙に浮かべたかと思うと、ぱくりとかぶりついてむしゃむしゃ食べてしまうのだ。なんだか可愛かったのでひとつプリッツを持ち上げて空中で振っていると、カゲボウズが釣れた。端からむしゃむしゃむしゃむしゃ食いつくし、最後に俺の親指と人差し指までむしゃむしゃしていった。いじきたない。

     と、そこへ一匹の勇者が現れた。
     プリッツを一本、持ち上げてから口に咥えて、ぴゅうと真っ直ぐ、カーテン付近に居た別のカゲボウズの元へ向かう、そいつも小柄なカゲボウズ。
     俺は何だろうと思ってカーテンを見た。
     群れていたカゲボウズが、まるで示し合わせたかのようにさっと散る。
     カーテンの前に一匹、ぽつんと残ったのは、一匹のカゲボウズ。
     そいつを見た瞬間、俺は愕然とした。

     このアパート――幸薄荘に住んでからもうしばらく経つ。こことカゲボウズは切っても切れない関係らしいので、俺とカゲボウズたちとの付き合いもしばらくということになる。さらになぜか俺は最近カゲボウズを洗う機会が多いので、自然と観察してしまう。そろそろ性別もなんとなく判別がつくようになってきた。
     しかしこのカゲボウズとの出会いには、痺れた。

     彼女は黒くひらひらした一介のカゲボウズだった。
     しかし、優しげな目元、溌剌としたひらひら具合、ゴーストタイプらしからぬ涼しげな雰囲気を纏っている。
     デフォルメしたら目もとにぱっちりまつげでもついていそうな。
     俺はとっさに、いつか御影先輩の部屋で見つけた「週間GHOST」というセクシーなヨノワールが印象的な表紙のグラビア雑誌で見た、どこぞの地方のゴーストタイプを使う四天王だという女性の特集記事を思い出した。
     なんというカゲボウズ。

     そんなアイドルボウズの前に、プリッツを一本加えたカゲボウズが漂っている。
     冴えない空気を抱えたそいつが、なにか訴えたげな目で、必死にアイドルボウズを見つめている。
     周囲ですこし引いて見守る他大勢のカゲボウズたちもなんだかそわそわしているようだ。
     もしや。これはもしや。俺の脳裏に一つの予想が浮かび上がる。
     彼は――彼女に、ポッキーゲームを挑もうとしているのではないか?

     ポッキーゲーム。
     それは禁じられた遊び。
     二人の人間が、チョコレートを塗りたくられたスティック菓子の端を口に咥え、貪るたび近づく距離感にどこまで耐えうるかとう究極の忍耐を問われる闇の遊戯。
     その余りの厳しさに、多くの人間が精神に異常をきたして慟哭したり、逆に浮き足立ったりしてしまうため数年前からあちこちの独り身によって封印されたはずの技術。

     それをまさに今、カゲボウズが行おうとしている。
     しかも、プリッツで。

     はやしたてるように揺れる観衆のカゲボウズたち。
     アイドルボウズはゆらゆらしている。
     カゲボウズはプリッツを咥えたまま、ぷるぷる震えて必死に身体のバランスを空中へ保っていた。

     やがて、不意のいきおいでぱくり、とアイドルボウズがプリッツの先にかみついた。
     おお、と俺が息を飲むのと同時に他のカゲボウズも揺らぐ。
     かじかじ。
     プリッツの粉を俺の部屋の畳に振りまきながら、二匹のカゲボウズの影がだんだんと、近づいていく。
     そして。

     ちゅ。
     プリッツが消えた。

     わーっ、と周囲のカゲボウズが沸く。ふらふらと仕掛けたほうのカゲボウズが落ちた。仲間がそれを支えに行く。よくやったぞとでも言いたげに持ち上げられたカゲボウズはまるで鍋の具にでもされてしまったかのようにふぬけになっていしまっている。ただのハンカチのようだ。アイドルボウズはきゅっと一瞬小さくなったかと思うと、カーテンに突進していった。それも女友達と見られるカゲボウズが追いかけていく。つつかれているようにも見える。サラダ味の恋が実った瞬間だった。
     おいなんだこれ。俺の部屋の中で既に物語がひとつ出来上がってるじゃねえか。どういうことだよ。

     ぽん、と肩を叩くように、見覚えのある数匹のカゲボウズらが俺の背中に現れた。
     にっこりとしている。

     俺がこいつらのおやつを抜けられる日は遠い。



     おわってやれよ


    ***

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】

     洗濯日和を上げると邪魔そうだったので、かつ洗濯しないので分けました。アーカイブ勝手にリンクしてしまって申し訳ありません。
     カゲボウズとプリッツ食べたい。


    【ポッキーしてもいいじゃない】


      [No.952] コイル・ゲーム 投稿者:巳佑   投稿日:2010/11/11(Thu) 21:40:11     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ある午後の昼下がり。
    とある並木道の中を、
    狐ポケモンのゾロアと散歩している青年がいた。
    天気も良好で青年の足元ではゾロアが無邪気に走り回っていて、
    近くに飛んでいたハネッコ達を夢中になって追いかけ始めた。
    「おーい、ゾロア! 転ばないように気を……」
    「ガウッ!?」
    小さいつまずき音からコロコロと可愛げな音へと発展して、
    「ガウァ!!」
    大きな木からの激突音が寸劇(すんげき)を締めた。
    「言わんこっちゃないんだから……もう」

    並木道を通り抜け、
    やがて青年とゾロアの目の前に現れたのは一軒のゲーム屋。
    新品はもちろんのこと、中古品も扱っている店だった。
    「ちょっと、のぞいていこうかな、いいよね? ゾロア」
    「ガウッ」
    ゾロアの了承を得た青年はそのまま店の中に入って行った。
     
    店の中を進んでいくと、
    青年とゾロアの前に面白そうなゲーム機があった。
    テレビゲームとかのゲーム機ではなく、
    そのゲームに勝つと景品がもらえる、プライズ系のゲームであった。
    「……これ、本物のコイル、なのかな……? まさかね……」
    そのゲーム機の中には
    一本の鉄の棒。
    そして小さなコイル達がコースを作っているようで、
    筒のようにぐるっと下から上まで小さなコイル達が並べられていた。
    なんか、懐かしさを感じさせる。
    青年はルールを読んでみた。

    ・まずは欲しい景品を選んでね★

    ・このゲーム機は自動で回転ドラム式に動いて行くよ★

    ・プレイヤーはレバー操作で鉄の棒を上下に動かせるよ★

    ・コースを作ってくれているコイル達に触れないように
     鉄の棒がゴールまで到達したらゲームクリアだよ★

    「うーん、これなら俺にも出来るかも……?」
    こういうゲームにあまり勝った試しがない青年だったが、
    景品の中にあった、一つの欲しかったゲームがその瞳に映ると、
    そんな悩みなんか、
    フワンテのようにどこかへ飛んで行ってしまったのであった。
    『チリーンッ★』
    可愛い電子音が鳴った。


    [1回目]
    よし、欲しい景品を選んで……と。
    これでスタート!
    おぉ、自動で動いていく……って鉄の棒に集中しないと……。
    コイル達に触れないように、落ち着いて……と。

    バチッ★
    火花とともに失敗を告げるBGM。

    ……まぁ、最初はこんなモンだよね。


    [5回目]
    ……だいぶ慣れてきた感じはするんだけど。
    このゲーム、コイルの視線が刺さってくる感があるんだけど……!
    ぐるぐる回るから、見方によってはコイルからの流し目が……!!

    バチッ★
    火花とともに失敗を告げるBGM。 

    ……お前らぁぁ!! 
    いつの間に『プレッシャー』なんか特性を身に付けたんだぁぁぁぁ!!??


    [15回目]
    コイルのプレッシャーになんか負けてたまるかっ!
    ……というより、あそこの細い道が一番、難しいんだよな。
    傾斜は約30度ぐらい。
    おまけに距離が若干あって、
    遅く入ってはもちろん駄目だし。
    ちょうど入るっていうのも駄目なんだよな……
    あの細い道から出る前にどうしてもコイルにぶつかっちゃうんだよな……。

    バチッ★
    火花とともに失敗を告げるBGM。

    「グヒヒヒ」

    あっ、ゾロア。
    お前、今、笑ったな?
    もふもふの刑にしてやろうか……。
    …………。
    ……。
    ゾロアって狐だよな。
    こいつと出逢ったのって確か神社だったよな。

    二礼二拍一礼。

    「ガウッ?」

    あぁ、ゾロア。気にしなくていいぞ。
    なんとなくそういう気分だったから。


    [20回目]
    多分、俺のPPもこれが限界かもな……って冗談はよして。
    あの細い道に早めに、
    でも早くしすぎて、入口でコイルにぶつからないようにしなきゃ……!!
    ココだ!!
    ……………………。
    …………。
    ……。

    クリアを告げるめでたいBGM。

    えっ、ウソ?
    ま、マジで!?
    あ、けいひん景品っと……。
    や……やったぜ、新作ゲーム、ゲットだぜ!!

    「ガウガウ♪」

    ゾロア、お前、ポーズまで決めちゃって、ノリいいな。



    青年はバックの中に景品を丁寧に入れるときびすを返した。
    「そんじゃあ、帰るか、ゾロア」
    「ガウッ!!」
    心の中でルンルンとステップ気分で店を後にしようとする青年とゾロア。

    『……アノ ヒト。
     アノ ゲーム テニイレチャッタネ』

    『ゲーム イッカイ 100エン デ
     20カイ ッテコトハ……』

    『ドウ ケイサン シテミテモ
     チュウコ カラ モ シンピン カラ モ 
     プラス ナ ケッカ ダヨネ』

    『…………』

    『…………』

    『『『『ナンカ ツマンナーーーーイ!!』』』』

    急に立ち止まって例のゲーム機の方に振り返った青年。
    「ガウッ?」
    「いや、今、なんか言われたような……?
     ……ッくしゅん! ッくしゅん!!
     げ、二回連続でクシャミをしちゃったよ」
    「ガウウッ?」
    「ん? あぁ、クシャミは一回だと誰かからほめられていて、
     三回連続だと誰かが自分に気があって、
     四回以上の連続は……多分風邪か、もしくは花粉症」
    青年はゾロアから例のゲーム機へと視線を戻す。

    「二回連続は……確か、悪口みたいなものだったかな?」

    しかし、ゲーム機からは何の声も聞こえて来なかった。

    「まぁ、気のせいだよね。
     よし、ゾロア。帰ろうか。
     お腹もすいたし、このゲームも気になるしね」
    「ガウッ♪」
     
    『『『『オニイサン ノ バカァァァーーーー!!』』』』

    その日、青年の二回連続のクシャミは何回か繰り返されたという。





    【実話を基に書いてみました】
    実際にコイルではありませんでしたが(汗)
    イライラ棒(と言われても分からない人がいましたらごめんなさい)みたいなゲームに勝ちました。
    20回(一回100円)ぐらいだったはずなので、
    中古からも新品からも差し引いてもプラスな結果になりました。

    ちなみに、当時、くしゃみはしてません。念の為。(笑)

    そして、なんか自慢話的な物語で、すいませんでした。(汗)

    とりあえず、この看板を……。

    【2010年10月31日
     ブラックのポケモントレーナー、始めました。】



    ありがとうございました。


      [No.951] ありがとうございます。 投稿者:レイコ   投稿日:2010/11/11(Thu) 21:02:30     23clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    はじめまして。こんばんは。返信が遅れて申し訳ありません。

    >クーウィさん
    シードラゴン! 懐かしいですね。私もラプラス大好きです。
    普段からぎこちない表現になりがちなのですが、リズムが良いと言って頂けて嬉しいです。
    そして続きが気になるとは……ありがたいお言葉です。
    まだまだ未熟者ですが、どうぞ宜しくお願いします。

    >砂糖水さん
    か、感激です! まさか続きを書いて頂けるとは……大変驚きました。
    私自身、子ラプラスは将来どうなるのかなと思いながら書いたものなので。人間の視点を盛り込むとこうも見方が変わって楽しいとは。そしてとても心温まる続きにして下さってとても嬉しいです。

    コメントありがとうございました。それでは。


      [No.950] 硝子と傷 投稿者:紀成   投稿日:2010/11/10(Wed) 19:15:24     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    日常生活において、こういう力は不便に近いのだろう。
    彼等は私の言うことしか聞かない。
    それは、嬉しくもあり、悲しくもある。

    もし、私が

    『あの子を傷つけて』
    なんて言ったら、

    彼等は

    そうするのだろうか。


    カオリは教室で本を読んでいた。速読という特技を持つ彼女の目は、すばやく細かい文字を追っていく。
    それは、愛する者のために犯罪者になる男の話だった。
    どうして愛なんかのために自分を犠牲にするのか、とカオリは思う。自分は人を愛したことはあるのか。
    忘れてしまった。これが物語の世界で良かったと思う。リアルにあったとしたら、きっと呑気に読むことはしないだろう。
    「現実を物語にするのは・・」
    カオリの影が動いた。一本の手が伸びて来る。それをそっと握る。
    「現実に痛い目を見た人に、失礼だよね」

    人は脆い。
    特に今まで挫折を味わったことがない人は脆い。
    今まで完璧な人が、社会に出た途端、価値観の相違という壁に当たって砕け散るのだ。

    パリン
    ガシャン

    砕け散る、という単語を考えた瞬間、その音が聞こえた。
    一瞬空耳かと思ったが、廊下の方が騒がしいのでとりあえず読みかけの本を片手に出てみる。
    ドアを開けた途端、落胆や罵声に近い声が耳に飛び込んできた。
    『またやったよ』
    『昨日は蛍光灯、今日はガラスかよー』
    その台詞に間違いは無かった。昨日の昼休み、男子数人がボール遊びをしている時、誤って天井の蛍光灯に当てて落としてしまったのだ。
    もちろん、それは粉々に割れた。
    そして、今もガラスが割れた。
    粉々に。

    カオリは集まった人の中をくぐり抜けた。誰も気付かない。
    破片が飛び散っている。掃除をしているのか、破片同士が当たる音が聞こえた。
    カオリは、そのうちの一枚を拾う。自分の姿が映った。
    こっそり、ブレザーのポケットに入れた。


    「ぎーらてぃーなさん」
    ガラスの破片に向かってカオリは話しかけた。破片が話すわけない。それは百も承知だ。
    ゴーストタイプの伝説のポケモン、ギラティナ。
    その存在を知ってから、カオリは情報を集めていた。
    そして、ギラティナは『やぶれたせかい』という場所にいることを知った。この世界を支える軸として存在している場所。
    鏡から、それは見えるらしい。つまり、何かを映す物ならいいというわけだ。
    そのことを知って以来、カオリは鏡に向かって話しかけるようになる。
    洗面所で、お手洗いで。風呂場で。
    そして、ガラスの破片に。
    「そっちはどんな世界ですか」
    破片には自分の姿が映るだけだ。
    それでも、カオリは望んでいた。
    ギラティナという存在に、会える日が来ることを。


    カオリは、元々ゴーストタイプが見えるわけでも、懐かれやすいわけでもない。
    全ての始まりは、


    「痛」

    十歳の時に、親指の付け根を切った時からだ。

    当時、カオリは彫刻刀で木を彫っていた。何も無い日常に嫌気が差して来た時だった。

    「痛っ」

    左手の、親指の付け根。
    かなり深い傷だった。

    その日からだ。
    カオリの周りにゴーストタイプが集まり、カオリもそれが見えるようになったのは。

    「ギラティナ」
    傷を見つめる。もう目立たない。

    「必ず、会いに行くよ」


    [批評してもいいんだぞ]


      [No.949] 11番目は巳佑をくり出して来た!! 投稿者:巳佑   投稿日:2010/11/10(Wed) 12:28:22     83clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    ★前置き:「行け!! 巳佑!! 『だいばくはつ』だ!!」

    というわけで、
    皆様の勇姿に続いて私も、
    赤裸々(せきらら)に書いてみます!!(汗)

    とりあえず今までの小説歴は……。

    今まで書いたものは個人的に二種類に分けているのですが……。

    『Another story』
    これは、自分の好きになったアニメやゲームなどを
    パロディ(例えばこの作品のキャラクターで学園生活を書いてみよう的な)
    にしてみたりなどした物語で、
    今まで長いのから短いのまで六本ぐらい完結させました。

    『Original story』
    これは自分でキャラクターや世界観を考えて書いてみた物語で
    今まで長編(だと思う)一本と短編一本を完結させました。
    (長編の方は所要時間5、6年。
     それを書いている間に、あれもこれも書いてみたい!
     といった感じに別の物語をやってしまい、後回しにしてたのですが、
     大学合格を機に一気に完成させました。
     今年の三月中旬ぐらいです。)

    ちなみに(上記のとは別に)初めて物語を書くという体験をしたのは
    恐らく、小学校6年生の時の授業で、
    何か物語を書いてみようというものでした。
    ……たしか私が書いたのは当時の干支の辰(龍)が四季を旅して、
    次の干支の巳にバトンタッチするといった物語だったはず……です。
    記憶が間違えてなければ。(汗)

    そしてポケモンの物語ですが長編の方はまだ完結作はありません。(汗)
    一つはポケモン救助隊をベースにした物語。
    もう一つは連載版の方でお世話になっている狐日和です。
    (今は狐日和の方を進めています。)

    ちなみにAnother storyでは
    『ロス・タイム・ライフ』という物語(ドラマで放送されてました)を元にしたモノもあるのですが。
    (『ロス・タイム・ライフ』とはオムニバス形式の物語で、
     ある人が死ぬ時に何故かサッカーの審判団が現れるんです。
     そして、その審判団が持っている電光掲示板には制限時間が表示されていて、
     その時間は、その人が今までの人生の中で無駄にしてきた時間みたいで、
     その残された時間の中での、その人の最期の物語……だったはずです。
     間違えてたらごめんなさい。)
    それをポケモンの世界で
    『ロス・タイム・ライフ ポケモンレンジャー編』とやってみたのが
    初めて完結させた(別作品とのコラボですが)ポケモンの物語だと思います。

    ……それを投下してみても大丈夫でしょうか?
    とりあえず、投下してみますね。(汗)


    ちなみに、その物語を書いていたのは2009年の五月頃です。
    えへへ……私、馬鹿でして。(汗)
    『浪人生活二年目』の中、
    勉強の傍らでボチボチとノートに書き上げてました。(汗)


    (ここまでのことも含んで)49KBもあるので、
    少々、長いですが……。
    そして、ツッコミどころがたくさんあると思いますが……。
    それでは、どうぞ!!


    ―――――――――――――――――――――――――

    「最後まで諦めるな!!」
    その言葉はまさしくそうだと俺から見たら、そう思うぜ。
    だってよ最後までやってみなきゃ分からねぇだろ?
    それに動かなきゃ何も起こらないだろ?
    サッカーはボールを蹴らなきゃ始まらないし、
    一人一人のプレイヤーが動かなきゃ攻撃も守備も始まらないだろ?
    だから、オレも最後までこの戦いを諦めねぇ。

    ―――――――――――――――――――――――――

    「ふぅ〜。疲れた疲れた。今回もお疲れ様、ピカチュウ」
    「ピカッ」
    とあるポケモンレンジャー施設。
    ここは日頃、ポケモン関係の事件……。
    例えばトレーナーがポケモンを盗難されたり、
    ポケモンが災害にあったり、
    他にも色々……。
    そういった事件を解決する為に東西南北に奔走する組織の施設。
    ポケモンレンジャーと呼ばれる、
    まぁ、ポケモンを助ける奴等が集まる場所だという事だ、ここは。
    かくいうオレもポケモンレンジャーでまだ4年目のこれからっていうヤツだ。
    「ピカピカッ」
    俺の肩に乗っているのは俺の唯一のポケモンでパートナーのピカチュウ。
    オレが10歳の時、初めて出逢ったポケモンで、
    パートナー以上に親友だ。だから気持ちも伝わる。
    「メシ食いに行こうぜ。お前もハラが減っただろ?」
    「ピカッ」
    オレとピカチュウの絆は誰にも負けない自信がある。
    ピカチュウの笑った顔を見ると
    何故かそんな気持ちがオレの中に広がっていた。

    ――――――――――――――――――――――――――

    場所は変わってレンジャー施設の食堂。
    任務でヘトヘトに疲れきったポケモンレンジャー達の憩いの場でもあり、
    かっこうのサボり場……おっと、今のは聞かなかった事にしてくれ。
    食堂業界歴30年というベテランのおばちゃんから
    Bランチ定食と特製ポケモンフーズを受け取って、
    オレは適当な場所を見つけて座った。
    「はいよピカチュウ。お待たせさん」
    「ピカッ★」
    オレから特製ポケモンフーズを受け取ったピカチュウは早速、食べ始めた。
    むしゃむしゃ食う。
    ガツガツ食う。
    もうどうにも止まらないって感じ。
    あはは。相当、腹減ってたみたいだな。
    さ〜てオレもエコに貢献のMy箸(はし)を手にいざ食事……。
    「冷たっ!?」
    しかし、何か冷たい物を当てられて、
    オレは飯(めし)を食うのを妨害されたぁ!!
    「ハロ〜♪ 今回もお疲れ様、ゴウ♪ ピカチュウ♪♪」
    「やっぱりお前か……! ラン……!」
    「ピカッ♪」
    ピカチュウの頭を撫でた後、ランはオレの隣に断りもなく座って来た。
    彼女はラン。
    ショートカットの亜麻色の髪。
    背は小柄。
    だけど性格は大胆。
    見ての通り、相手に断りもなく隣に座ってくるのが証拠だ。
    ランともポケモンレンジャーなのだがオレみたいにロードワークではなく、
    主に情報などを取り扱うデスクワークの仕事を担当としている。
    後、ロードワークのポケモンレンジャーのサポート役としても活躍していて。
    ちなみにオレはランのサポートを受けている。
    ……まぁ、つまりオレとランは相棒だという事だ。
    「それよりも……んぐぐ……ゴウ……モグモグ……んぐ……」
    口の中にモノを入れながらピーチク、パーチクしゃべってはいけません。
    「何だよ」
    「んぐ……ふう〜。あっそうそう。今度の休日ってゴウの予定、空いてる?」
    ポケモンレンジャーにも戦いの間、束の間(つかのま)の休みがある。
    まぁ、万が一の大事件が起こった場合は返上になっちまうけど。
    「まぁ……一応、空いているけど……」
    おあいにくさま、オレには彼女がいないし。
    休日の大体を暇人野郎として過ごしている。
    ……ごめん。
    する事が他にないだけで、
    本当の事を言うとピカチュウとトレーニングをしたりしている。
    「じゃあさ、今度の買い物に付き合ってよ〜! バーゲンで欲しい服があってさ」
    「オレはお前の戦闘兵かっつうの!」
    「どうせ暇なんでしょ?」
    「……はい、そうです」
    否定出来ません。
    メチャクチャ悔しいったらありゃしねぇ。
    ランの目が笑っていて笑っていない。
    「じゃあ、ヨロシクね★」
    結局、表現出来ない、ランの殺気に屈してしまったオレであった。

    ―――――――――――――――――――――――――――

    小さな頃。
    「夢は何ですか?」とよく聞かれた事が誰にもあると思う。
    オレも大人に訊かれて、ものスゴク迷った。
    夢ってなんだ?
    夢って何をするものなんだ??
    そんな悩みがあった、お年頃の昔のオレはある日の事、
    (実は)幼なじみだったランのおつかいに付き合わされていた。
    そして、その店先で。
    「全員、動くじゃねぇ!!」
    マスクを被った黒ずくめの男達。
    その手には銃を持っていた。
    The 強盗事件。
    逆らえば殺される――。
    その時、その場にいた人達はそう思っただろう、
    言われたとおりに皆、一歩も、眉一本も動かさなかった。
    泣く子も黙るという言葉を体現しているかのように
    オレもランもその場で止まっていた。
    その15分ぐらいの頃だった。
    「おわっ!?」
    「きゃっ!?」
    いきなり後ろから抱き抱えられて店の外へ。
    そして、そのまま車の中へ。
    そこにはあのマスク野郎達。
    そして頭に突きつけられたのは銃口。
    「動いたら、頭、アイちゃうから気をつけなよ? おチビちゃん?」
    泣く子も黙る恐怖がガキなりにもオレの中で伝わった。
    いわゆる人質というやつだと気付くのに時間はかからなかった。
    このまま死んでしまうのか、オレ。
    まだ今日のアニメも見ていないのに――。
    ランもきっと絶望を感じていただろう、泣きそうな顔をしていた。
    なんだよ、神様。
    オレとランはおつかいに来ただけなのに!
    ランなんか、明日、誕生日なのに!!
    そんな行き場のない怒りと悔しさが溢れていた。
    『犯人に告ぐぞ〜!! 
     今スグ、馬鹿な鬼の真似はやめて、素直に降伏しろぉ〜!!』
    そんな時だった。
    一人の男の声が電波に乗って聞こえて来た。
    「オイッ、やべぇぞ!! 
     男一人がドードリオに乗って追いかけて来てるゾ!!」
    仲間の一人が慌てたような口調で指を指していた。
    『ったく……しょうがねぇな。
     五秒やるから降伏しろよなぁー!!』
    「五秒って短くねぇかぁ!?」
    ……確かに。
    この時ばかりはオレも心の中で、そうツッコンでしまっていた。
    『5・4・3・2・1・0。
     はい、時間切れ〜!!
     これから強制施行に入るから、そのつもりでな!』 
    そう、言葉が届き終わったや否や、急に場の空気が止まった感覚が体に走る。
    「おい! どうした!?」
    「く、車が動かなくなっちまったぁ!!」
    時が止まった感じがしたのはソレが原因だった。
    走っていた車は何故だか、何時の間に止まっていた。
    オレだけではなくランも目を丸くしていた。
    「クソ……!! こうなったら……!! おい、テメェら!!!」
    車を止められて黒ずくめのマスク野郎達が逃げる術(すべ)をなくしたかと
    オレは思っていたんだが……まだ実はあった事を数十秒後、知る事になる。
    「おい!! 動くんじゃねぇぞ! 
     じゃなきゃ、このガキ達の命はねぇぜ!?」
    唯一の方法。
    それは人質。
    オレとランを抱き抱えながら車から出た4人の黒ずくめ野郎達。
    もちろん、オレとランの頭には銃口が当てられていた。
    当然、セーフティーは外されている。
    引き金が引かれたら、その先は地獄だ。
    地……獄……なのに……。
    「ったく。子供を人質にするなんてよ……
     お前等、卑劣の中の卑劣だよな〜」
    この人、全く犯人の言う事、聞いてませんよ!?
    馬耳東風ですよ!!??
    ドードリオで追いついた謎の男は静かにこちらへと歩み寄って来た。
    「お、おいヒトのハナシを聞いてんのカ!? 本当に撃つゾ!?」
    「お前等の言う事を聞く事自体なぁ……嫌なんだよ、コッチはな」
    逆撫で(さかなで)するような言葉で
    黒ずくめのマスク野郎達から
    プチッと何かが切れる音が聞こえて来た。
    ……まさか、理性がブッ飛んだってヤツじゃねぇ……よな……?
    「だ……ダマれ! ダマれ!!
     本当にこのガキ達の頭を穴アキにするゾ!!??」
    ……マジでマジ切れする5秒前?
    「撃てるもんなら撃ってみろよ」
    衝撃の一言。
    「腰抜けなお前等に出来るならな」
    プチッ
    トドメの一言。
    ……って、え?
    「言ったナ!! 言いやがったナ!!!!
     こんなガキ達、すぐさま、あの世にいかしてやるヨォ!!!!!」
    死を覚悟……という前に、
    恐怖で何も考えられなかった。
    思わず目をつむった。
    ………………。
    …………。
    ……。
    アレッ?
    「な、なんで撃てねェンダ!?」
    「セーフティーも外しているハズだゼェ!!?? って、うわァ!?」
    「は〜い、ちょっと失礼するよ」
    おそるおそるオレは目を開けてみた。
    すると視界には例のおじさんが現れて来た。
    「ちょっとじっとしててくれよ。スグに終わるからさ」
    オレ達を安心させるかのように、おじさんは笑ってそう言うと、きびすを返した。
    「お前等がなんで撃てなかったのか、教えてやるよ。サーナイト!」
    おじさんが誰もいない方に叫んだかと思うと、急に光が現れて、そこからサーナイトが現れた。
    まるで天使が舞い下りたかのようであった。
    「サイコキネシス。ヨロシク!」
    おじさんがそう一言、言った。
    刹那――。
    「ぐわぁっ!!」「動かネェ!?」「どわぁっ!?」「ギャアッ!?」
    四方向から悲鳴があがった。
    「いいか。まず一つにサーナイトをあらかじめ出しておき」
    おじさんは黒ずくめのマスク野郎達に近づきながら、何処(どこ)からかロープを出した。
    「お前等に気付かれないように隠れて」
    一人目。
    「お前等に気付かれないようにサイコキネシスを」
    二人目。
    「お前等の銃の引き金にかけておいて撃てなくしといたんだ」
    三人目。
    「引き金が引かれなきゃ、銃は撃てねぇもんだからな」
    四人目。
    「サーナイト、ご苦労様。ありがとな」
    手慣れた手つきで黒ずくめのマスク野郎達をロープでぐるぐる巻きにしたおじさんが
    サーナイトとハイタッチを交わすと、サーナイトと一緒にオレ達の方へと歩み寄った。
    「すまなかったな。敵を騙すにはまず味方から、とは言うが、怖がらせちまって」
    おじさんが静かに微笑むと今まで怖かったモノがせりあがって来ていたのか、ランは泣き出してしまった。
    サーナイトが優しく、ランを抱き締めてくれた。
    大丈夫だよ。
    もう恐いモノなんかないよ。
    と慰めてくれているかのようだった。
    「だが、まぁ、もう大丈夫だ。ジュンサーさんも来てくれたようだしな」
    気が付けばパトカーが辺りを囲んでいて、
    黒ずくめのマスク野郎達はその場で現行犯逮捕、御用となった。
    「よく頑張ったな、お前達。カッコ良かったぞ!」
    おじさんが勇ましく白い歯を見せて笑ってくれた。
    その時、俺の中で何かが吹っきれた。
    そして心の中で何かが産まれた。
    まだ、オレが幼かった頃、ポケモンレンジャーに命を助けてもらった時の事だった。

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    ……とまぁ、こんな事件を通じて、
    オレは人やポケモンなどを助ける仕事がしたいという夢を持って、
    今、現在に至るという事だ。
    ランも同じだった
    「よぉ〜。相変わらず仲つむまじき夫婦だなぁ、お二人さん」
    そう言いながら、オレの隣に座ったのは中年のおじさん。
    昔の事を考えていたオレにとっては少し不意打ち気味で少しビックリしたけど。
    「アハハ! 隊長ったら、そんなワケないですよ!!」
    大笑いをして隊長の冗談をツッコむラン。
    ……なんだろう。
    冗談の話題なのに涙が出そうになるんだけど。
    気のせいという事にしておこう。
    「全くビックリさせないで下さいよ、隊長」
    「まぁ、そう言うなよ。ちょっとしたオチャメ・ジョークじゃねぇか」
    ……どの年がそう言う!?
    と、オレが心の中でツッコミを入れた相手の隊長とはその名の通りで、
    ここのポケモンレンジャー施設のリーダー的存在の一人である。
    そして、ここだけの話……。
    「それに飯は一緒に食った方が楽しいだろ?」
    この隊長こそ、
    この人こそが、
    昔、オレとランを強盗犯から助けてくれた張本人である。
    本名はダイチ・サトウ。
    40歳一歩手前、妻子持ちである。
    「それにしても、昔と比べて任務をこなすのがサマになって来たよな。お前等」
    「い、いきなりどうしたんですか、隊長」
    会話の急展開というのも隊長の特徴の一つである。
    「昔は任務が終わらなくて、飯が食えないよ〜って泣いていたよな〜」
    「そうなんですよ〜。ゴウが本当に要領が悪くて悪くて」
    ……ぐっ、確かに昔はよく失敗しては昼飯を食いそこねて、
    結局、相棒であるランも連帯責任というヤツで昼飯にありつけず、
    最終的に最終責任という事で決して多くない給料で
    よくオレがランにおごっているというのがお決まりのパターンであった。
    「……言い返す権力は滅相(めっそう)もございません」
    「ハハハッ。素直が一番いいってな♪」
    ……あまりの恥ずかしさで体が燃えちゃいそうだぜ……!!
    そんな赤面あり、イジりありの昼飯が続く……。
    『各、ポケモンレンジャーに伝えます!
     各ポケモンレンジャーに伝えます!!』
    刹那――。
    その放送案内の声と共に少なくとも食堂にいた人達全員に緊張が走ったと思う。
    ……今のこの放送案内は間違いなく、緊急の時の放送音だったからな。
    オレも生つばをゴクリッと喉(のど)で飲みこんでいた。
    『ディレエン地方のバルバの森で大規模な大火事が発生!!
     至急、各ポケモンレンジャー達は現地に赴いて指示に従ってください!!!』
    告げられた言葉が終わるか終わらないかの所でピカチュウがオレの肩に乗って来た。
    そのヤル気に満ちた目にオレも熱いモノを心に感じて来る。
    「行くぞ! ゴウ!! ラン!!」
    「ウィッス!」
    「はい!!」
    ポケモンレンジャー総動員の戦いが始まった。

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    ポケモンレンジャー施設から急いで出発して約10分。
    オレや隊長を含むポケモンレンジャー達はディレエン地方のバルバの森に着いた。
    バルバの森は山のような起伏があり、そして、そこには今……。
    「……スッゲー燃えさかってるじゃねぇか……!!」
    「……ピカッ」
    大きな炎に包まれているバルバの森があった。
    ……さしずめ炎の森という感じが第一印象だ。
    消防団も駆けつけており、なんとか消火に努めているが、
    予想以上のボヤに手を焼いているようだった。
    「よ〜し、全員そろってるな! 時間ねぇから手短に説明すっぞ!!」
    隊長が大声で説明し始める。
    「今回、俺達のやるべき事は、
     恐らくバルバの森に取り残されたと思われるポケモン達や人の救助!!
     それと……」
    隊長が険しい顔をして続ける。
    「……目撃者の証言などから、
     今回、このボヤ騒ぎを起こした張本人がバルバの森にいるかもしれない事が判明した」
    全員の心に緊張が走った。
    天候とかではなく、この大火事を起こした、
    いわば犯罪者がいるという事に衝撃が走ったと思われる。
    ……オレもピカチュウも同じ心境だ。
    「今回は救助と共に、そのホシの追跡、出来れば現行犯逮捕を頼む。
     ホシの特徴は身長170センチメートル前後、茶髪に、黒サングラス、黒のコートに青のジーンズ。
     そして……鼻ピアスをしているという事だ」
    犯人の特徴も言い終わり、
    後は出発するだけの時、隊長は咳ばらいを一つ。
    「行く前に一つ、お前等に言っとくぞ」
    これは大きな任務に行く前に隊長がやる恒例の儀式、喝入れみたいなもんだ。
    「いいか、炎を甘く見るな! 煙をあまり吸うな!
     ……これだけの大火事だ。何が起こるか分からねぇ、いいか?
     絶対に無茶をしない事、そして絶対に死ぬな! 分かったな!?」
    いつも隊長がくれる言葉は裏表がない一直線な力があって、
    不思議と勇気が湧いて(わいて)来る。
    ……よし。
    心も体も準備万たんだぜ!!
    「よし! それじゃあ……」
    その一声で皆、身構え、
    「全員、出動!!」
    任務開始の声と共に走り出した。
    「ピカチュウ、行くぜ!!」
    「ピカッ!!」
    オレとピカチュウも燃えさかるバルバの森へと走り出した。
    絶対に助ける!! 
    その気持ちを心にしっかりと刻み込みながら。

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――

    一人一人、別行動となった救助活動。
    「スッゲー熱いな! 大丈夫か!? ピカチュウ!?」
    「ピカ!!」
    「よし、このまま突っ切るぜ!!」
    バルバの森に入った瞬間、そこはもう別次元の世界だった。
    炎があっちこっちで燃えさかっているし、温度だって桁違いに暑くなっている。
    けど、だからこそ長居は無用だし、立ち止まっている暇はない。
    早く取り残されたポケモン達を助けなきゃな!
    『ゴウ、聞こえる? ゴウ、聞こえる?』
    走っている途中、耳につけた通信機から声が聞こえ始めた。
    間違いなくランの声だ。
    「ああ、ランか。大丈夫だ。よ〜く聞こえてるよ」
    『マイクテスト中、マイクテスト中』
    「聞こえているって言ってるだろうが!」
    ……ったく、こんな時にでも冗談を出すとは。
    『ごめんごめん。まぁ、これで緊張も取れたでしょう?』
    ……まぁ。ランらしいと言えばランらしいかな。
    ……良く言えばの話だが。
    「まぁ、とりあえず今のところ無事だぜ」
    『その声を聞けて安心したわ。
     適宜、連絡するから、ゴウの方も何かあったら、スグに連絡しなさいよね!!』
    今回の火事の規模を聞かされて、心配しているかもしれないな。
    だからオレは安心させる一言を言ってやった。
    「……帰ったら、買い物、付き合ってやるから、サポート頼むぜ!」
    そう一言、言うと、通信を一回切った。
    「……ピカッ」
    ピカチュウがなんか照れているようにこっちを見ている。
    ……そんなクサイセリフだったかな……。
    ……ってなんだか緊張が解けたのはいいが解けすぎて、
    これじゃあ……緊張感がなさすぎだ!
    ……って隊長に怒られそうだな。
    「……き、気を取り直して行くぞ!!」
    一言、気合いを自分にピカチュウに入れ、走るスピードをあげていった。

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――

    バルバの森に入って約20分経過頃。
    「……だいぶ奥地に入ったな……」
    燃えさかる炎は更に勢いを増し、辺りはその名の通り、炎の海となっていた。
    オレとピカチュウは走る足を一旦止め、辺りを確認するように歩く。
    「……ここには逃げ遅れたポケモンとかいなそうだな」
    オレは一息、安堵(あんど)の息をつく。
    ここにはいないという事は、
    ここにいるポケモンの殆ど(ほとんど)が避難する事が出来た可能性があるしな。
    それに地面にはポケモンらしき足跡が所々に森の外に向かって残っていた。
    「……ピカッ!」
    さて、次に行こうかと思った、そんな折だった。
    ピカチュウが何かに気付いたような声を上げた。
    「どうした、ピカチュウ?」
    「ピカ、ピカチュッ!」
    ピカチュウが必死で指を指している方向を見てみると。
    ……可愛らしい容姿に、頭の上には左右に花。そしてスカートのように伸びる葉。
    …………あれって、キレイハナか?
    「……って、大変じゃねぇか!! 行くぜピカチュウ!!」
    「ピカッ!!」
    オレとピカチュウは一緒に走り始めた。
    キレイハナは周りが炎の海の状況に、もしかしたら仲間とはぐれてしまったかもしれない。
    すごい困った顔を浮かべていた。
    ……キレイハナは草タイプのポケモンだ。炎には弱い。
    それもキレイハナの足を止めさせている理由の一つかもしれない。
    とにもかくにも早くキレイハナを助けなきゃ……!!
    「……ピカッ!!」
    「……あっ!!」
    後10メートルぐらいのところで、
    なんと燃えさかっていた一本の木が支えをなくしてしまったらしく、倒れて来た。
    ……しかもキレイハナに向かって!
    「間に合えぇ!!!」
    「ピカッ!!!」
    とっさにオレとピカチュウは同時に
    ヘッドスライディングの用法でキレイハナに向かって飛び込んでいった!
    トンッ……!
    わずかの差でオレとピカチュウの手はキレイハナの体を強めに押した。
    軽い音と共にキレイハナの体は後ろへと飛び、キレイハナはなんとか無事。
    問題はオレとピカチュウだが、
    なんとか倒れこむ木を避ける事が出来て……。
    「なっ……!?」
    「ピカッ!?」
    倒れこむ一本の木をなんとかキレイハナを助けながらすり抜けたと思ったんだが……。
    いつのまにか、
    もう一本の燃えさかる木がオレとピカチュウの方へと倒れこんで来た!
    すり抜けた先に、
    もう一本、木が倒れこんでくるなんて……!!
    「うわぁぁぁ!!!」
    「ピカァァァ!!!」
    耳をふさぎたくなるほどの悲鳴を残してオレとピカチュウは……。

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    ……死んじまったのか? オレは。
    暗い意識の中でオレはそう心の中で呟いていた。
    まだ、助けていないポケモンとかいるのに……!
    ……ランとの約束もまだ交わせていないのに……!!
    ……ピカチュウは無事だろうか……?
    『ピィ――――!!』
    様々な悔しさや悲しさやらで頭がごちゃごちゃになっていた、その時だった。
    甲高く鋭い笛の音が響き渡った。
    ……って笛の音?
    しかも、何処かで聞いた事があるような……ないような……。
    ……ていうか、オレ、生きているのか?
    そんな、いちるの想いを胸に秘めながらオレは目を開けて……。
    「……誰?」
    そこにいたのは何処から現れたのか!?
    ……の謎の男4人組が2組。
    「……なんで、サッカーの審判団?」
    ……その容姿はまさしくサッカーの主審らしき人と副審らしき人に時間係(?)の人。
    そして時間係が持っていた電光掲示板には
    『2:35』
    と示されており、もう一人の時間係が持っていた電光掲示板にも
    『2:35』
    と示されていた。
    「……ピカッ?」
    「お、ピカチュウ、大丈夫……」
    最後の「か?」という声はオレの喉から出る事はなかった。
    オレは夢でも見ているのか?
    そう思うのも無理はなかった。
    ……だって、オレとピカチュウにめがけて倒れて来たハズの大木が
    空中で止まっていたから!!
    ……これってなんだ?
    周りの様子を見ても、この倒れて来た大木が
    どこかにつっかかった様子もなく、
    文字通り、
    大木は空中で止まっていた。
    オレは物理とかよく分からないからアレだけど……。
    これ、重力とか運動の方向とか無視してんだろ!!……というぐらいは分かった。
    いったい……ぜんたい……どうなってん……
    『ピッ!!』
    不可解な状況に軽くパニックを起こしそうになった矢先に
    オレの耳に響いた笛の音。
    「あっ」
    そういえば、こいつらの事、忘れてた。
    謎のサッカー審判団。
    『ピッピピッ!!』
    笛の音に導かれるようにオレとピカチュウは立ち上がった。
    「アンタたちは一体、何者なんだ?」
    とりあえず最初の一言はこうでなきゃな。
    『ピ……! ピピ!!』
    ……けれど返って来たのは笛の音のみ。
    一瞬、ふざけてるのか!? とツッコミを入れようとした寸前で、
    オレはハッと何かを思いつき、何とかツッコミの言葉を止めた。
    「……もしかして、しゃべる事が出来ねぇとか……?」
    『ピッ』
    首を縦に振る謎のサッカー審判団。
    なる程な。……どうりで最初の質問の時に審判団達の顔が曇ったと思ったぜ。
    今日のオレ、もしかしたら、いつにもまして冴えてるかも?
    『ピッピ!! ピッ!』
    「ん?」
    さて、どうやってこの審判団から正体やら何やら掴もう(つかもう)かと考えていたら、
    再び、笛の音が鳴り響いた。
    「ピカッ」
    「ピカチュウ」
    そして同時にピカチュウが俺の肩に乗って来た。
    『ピッ!!』
    四度目の笛の音が鳴ったと思いきや、
    審判団が何やら意味深のダンスを始めやがった!
    手を動かしたり、指をオレ達の方に指したり……って、
    これって、もしかして……。
    「ジェスチャーかっ!?」
    審判団から首を縦に振るという肯定の答えをもらった。
    「よし、分かった。とりあえず、それで説明ヨロシク!!」
    本当は……早くミッションの方に戻りたかったのだが、
    今はこの状況を理解するのが先決だ。
    ……そう、オレの体が語っているように思えたからだ。
    『ピッ!!』
    任された! と言わんばかりに審判団の笛が響く。
    よし! こいっ。ジェスチャーは実は自信があったりするぜ。
    というのも、ピカチュウが何かを伝えようする時は
    よくジェスチャーや色々な百面相をしてくれる時があり、
    それ当てっこしたりして、遊んでいる時もあるという、
    カッコ良く言うと裏付けされた経験による自信という事だ。

    指をまずオレとピカチュウの方に向ける謎のサッカー審判団。
    ふむふむ、オレとピカチュウが。

    謎のサッカー審判団の指は続いて空中で止まっている大木の方へ。
    え〜と、その大木が……じゃなくて「に」かな?

    そして大木に向けられた指は胸の方にバッテンを示して、
    そして一本の人指し指は

    ……空へ……?

    …………。

    ……そして、もしかしてバッテンの印は。

    ………………停止?

    ……そして、そして、もしかして一本の人差し指が向けられている空は。

    ……………………………………………………天国?

    ………………これって、もしかして、オレとピカチュウは。

    ……………………………………………………………………………………。

    …………死んだ、のか?

    ……信じられねぇ……嘘だろ……?

    ピカチュウもオレと同じ答えにたどり着いたのだろう、瞳がこわばっていた。
    信じられねぇ……まじで、信じられねぇよ……。
    でも……。
    「つまり……」
    言い出せずにはいられなかった。
    「オレとピカチュウは、あの大木によって死んだけど、
     アンタ達のおかげで、今、生きている……」
    例の電光掲示板の方に目のやり場を移す。
    「ただし、時間制限あり」

    『2:25』

    「時間になったら、オレとピカチュウは本当に死ぬ……てコトか?」

    言い終えた。
    ……心臓の高鳴りが夢じゃない事を伝えている。
    『ピッ』
    審判団の首は縦に振られた。
    それは、すなわち殉職(じゅんしょく)を意味し、
    そして、
    オレとピカチュウの死が真実だという揺るぎない答えだった。

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    『ゴウ、聞こえる!? ゴウ、応答して!!』

    「あぁ、充分、聞こえてんぞ、ラン」

    『……やっと出た。
     ちょっと、ゴウ!! アンタ、大丈夫!?
     何かあった!? ケガとかしてんじゃないでしょうね!!』

    「……あぁ、なんとかな。どうかしたのか?」

    『どうかしたか、じゃないわよ!!
     さっき、通信しようとしたけど、つながんなかったのよ!』

    「多分、電波が悪かったんだろ。それより、なんかあったのか?」

    『あぁ! そうよ。その事で通信したのよ』

    「何が起こったんだ?」

    『えぇ、さっき、他のレンジャーが今回の山火事の犯人と接触したらしいのよ』

    「まじか!?」

    『マジよ。それでその接触の際にGPSを犯人に付けたの。 
     それで、その犯人の位置が今一番、ゴウに近いの!」

    「なる程な……。オレがそのホシを追う役になったっていうわけだな」

    『……ゴウにしては珍しく冴えているじゃないの』

    「珍しいっていうな! 流石って言えよ!!」

    『まぁ、それぐらいの元気があるって事は無事ってことよね。安心したわ』

    「……ハメやがったな」

    『ま、ともかく、誘導していくから指示をよく聞いてよね!』

    「あぁ、分かった! …………んで、あのさ、ラン」

    『何よ?』

    「…………」

    『……ちょっと、ゴウ?』

    「ヘマするなよ!」

    『……アンタにだけは言われたくはないわ!!
     確認があるから、一回切るけど、スグにまた連絡入れるからね!!』

    ……ここで一旦、通信が切れた。
    オレはピカチュウと一緒に燃えさかる山の中を走っていた。
    近くには謎の審判団もいる。
    ……正直、自分が死ぬなんて信じられなくて、
    受け入れろ、といっても、
    言葉では簡単でも、実際には難しい。
    だけど、これは幻でもなければ、夢でもねぇ。
    おまけに生きていられる時間は残り………………。
    『1:30』
    2時間を切っていた。
    だったらオレは今を最後まで走り切る。
    最後の0時間0分0秒になるまで、この任務を務めてやる!!
    それが、オレが出来る唯一の事だと思ったからだ。
    ピカチュウも同じ気持ちで、一緒にこうやって最期の根性を見せていた。
    ランから連絡があったのはキレイハナを救出し、安全な所へと逃がして、
    再び、燃えさかる山の中、バルバの森の中を走り駆けめぐっていた時の事だった。
    ……オレが死んだって事、ランは知らないんだよな……。
    ………………。
    けど、いまはソレで任務に支障をきたしたらマズイし、
    オレとピカチュウは、もう、残り時間が少ない。
    犯人を捕まえる為の時間は限られているんだ。
    今、オレとピカチュウにしか出来ない事を最期に成し遂げたい。

    オレの為にも。
    人の為にも。
    ポケモンの為にも。
    ピカチュウの為にも。

    ……ランの為にも。

    負けるわけにはいかねぇんだ。

    「もしもし、ランか?」
    プルルと無機質な機械音が響く通信機を手に取る。
    『準備は整ったわ。それじゃ……行くわよ?』
    「合点、しょうちのすけのラジャー!!」
    「ピカチュッ!!」
    ランの誘導と共にオレとピカチュウは走り始めた。

    諦めねぇ!

    その言葉と共に。

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    「大丈夫か? ピカチュウ?」
    「ピ……ピカ……」
    「無理するなって。ホラ、酸素を吸っとけ」
    ランの誘導でバルバの森の更に奥地まで来たオレとピカチュウは小休止をとっていた。
    奥地の燃えさかり度は入り口のと比べて、ハンパじゃなく、
    もう、そこは一面、火の海と言っても過言ではなかった。
    火の海の中では酸素がいちじるしく濃度が低くなっていく。
    それを示すかのようにピカチュウが苦しそうな顔を見せていたが、
    小型の酸素ボンベで新鮮な酸素を送ると、少しだけだが、顔色が良くなった。
    ……後ろの方では例の審判団がオレ達の事を見守っていた。
    ……苦しくねぇのかな?
    ……肩で息をしているけど。
    ……走り疲れしただけっていうような感じだし。
    ……ますます、謎の奴(やつ)達だな。
    かっこうも何故かサッカーの審判団だし。
    『0:45』
    オレとピカチュウの残りの命とも言える、
    2つの制限時間をチラリと見た。
    ……残り45分か。
    まさしく、サッカーの後半戦ってトコだな。
    ……って問題はソコじゃなくて。
    ……残り45分。
    なんとか体がもってくれればいいんだけど、と心配しているのは
    実は酸素ボンベが今のピカチュウに使っている分で最後だったのだ。
    ……オレは約1時間前に使って、それっきりであった。
    ……って弱音を吐いている場合じゃねぇよな。
    最後まで諦めねぇ!
    ……そう決めたんだからな。
    「ピカ……」
    「もう、大丈夫みたいだな。行けるか? ピカチュウ」
    「ピカ! ……ピカ」
    一回ヤル気満々の顔を見せてくれたピカチュウだが、
    その次は申し訳なそうな顔を見せていた。
    「……もしかして、最後の酸素ボンベを使って、ごめん……とか?」
    「ピカッ」
    こくりとうなずくピカチュウ。
    いつもは明るいヤツなんだが、責任感の強いところもあるからな、ピカチュウは。
    「水くさい事、言うなよ。仲間は支えあうもんだろ?
     オレ達、親友だろ? オレの事、信じてくれよ。
     オレもピカチュウを信じてるんだからさ」
    「……ピカ!」
    オレの言葉はピカチュウの心に届いたようで、ピカチュウは笑顔で答えた。
    そうさ、オレとピカチュウは小さい頃から一緒に笑ったり泣いたりして来たんだ。
    親友なんだ。
    ……だからピカチュウが困っている時は助けてやりたい。
    力になってやりたい。
    『ゴウ、ピカチュウ! 大丈夫?
     もうすぐ、犯人と接触するわ!
     ……犯人はナイフを持っているみたいだから、気を付けてよね!!』
    「あぁ、分かった! ……それじゃ、行くか、ピカチュウ!!」
    「ピカッ!!」
    オレとピカチュウは再び走り始めた。
    ……心配しなくても大丈夫だぜ、ラン。
    オレとピカチュウの絆は誰よりも強いんだから。

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    「……いた! アイツか!!」
    「ピカッ!!」
    再び、ランの誘導を頼りに走り続ける事、約5分。
    中年おじさんの雰囲気を漂わせる背中が一つ見えた。
    「おいっ!! 待て、てめぇ!!」
    叫び声、むなしく響いただけで、男の足を止める力とはならなかった。
    にゃろう……聞こえてるハズだよな……!?
    だが、ここでキレたら三流だ。
    ……という隊長の受け入りを心に唱えて、
    オレは周りを見渡した。
    燃えさかる炎に包まれている木々、といった風景が続く。
    ……少しずつ犯人との差は詰めていっているが、このままじゃキリがねぇ。
    逃げ道さえ、塞げば(ふさげば)、一気に追い詰める事が……。
    そこまで思ったオレの頭に一寸の電光が走った。
    しめた! 木々をうまく使えばいいじゃねぇか!
    「ピカチュウ! アイツがいる所から5本先の木に10万ボルトを打てるか!?」
    「ピカッ!?」
    「木を倒してアイツの逃げ道を塞いでいくんだ!!」
    「ピカ!!」
    一瞬、オレの突拍子もない意見に驚くピカチュウだったが、
    オレの意図が分かると、
    任せて! と言わんばかりの顔をした。
    ソレを見たオレはこれ以上は何も言わなかった。
    それだけピカチュウの事を信じていたからだ。
    「ピーカ……」
    ピカチュウの赤いほっぺた――電気袋からほとばしる電撃。
    「チュッ!!」
    ピカチュウのタイミングで放たれた電光は真っすぐに伸びてゆき――。
    ドカッ!! と見事、矢で射抜いたように雷は犯人から5本先の木に命中。
    「うわっ!!」
    そのまま木は支えをなくして転倒した。
    轟音(ごうおん)が響き渡って、犯人がビクついて、一回、立ち止まった。
    「待ちやがれっつってんだろ!!」
    「ピカッ!!」
    「ヒぃっ!! く、来るなぁぁ!!」
    オレとピカチュウが声を荒げると、犯人は明らかに驚き、ビビりまくっていた。
    しかし、その恐怖は犯人の防衛本能、
    捕まりたくない! という気持ちを促進させてしまったらしく、
    犯人はすぐに他の道を見つけると再び逃走を図った。
    「くそっ! まだ逃げる気か!!」
    思いっきり舌打ちをしたオレであったが、
    ピカチュウが足止めしてくれた時間の差は、
    結構、オレ達と犯人の間を詰める事が出来た結果となった。
    つまり、歯を喰いしばって、もう一段階スピードをアップさせれば……。
    「ま・ち・や・が……」
    手を伸ばして犯人の肩を掴む、3秒前……。
    「ク……クるなァッ!!」
    1秒前に見たのは赤い液体が横一閃に飛び散る様。
    「痛っ!!」
    犯人が捕まる寸前にナイフをオレに切りつけてきたというのは
    鋭い光を見て、スグに分かった。
    そういえば、犯人はナイフを持ってるってランが言ってたな……。
    犯人が持っているナイフは刃渡り30センチメートルのサバイバルナイフ。
    見た限り、切れ味の良さそうな鋭利な光を帯びているエモノだ。
    「ピカッ!!」
    「あぁ、大丈夫だ、ピカチュウ。それよりも……」
    心配そうな顔で駆け寄ってくるピカチュウにオレは安心させるかのように笑顔を見せる。
    まぁ、実際に切りつけられた右腕からは血が少し流れ出ているが、深い傷ではない。
    ……少し、痛いけどな、やっぱり。
    まぁ、今、大事な問題は、こっちじゃなくて……。
    「テメェが、今回の放火魔って事で……いいよな?」
    オレは睨み(にらみ)付けて、犯人に問いかけた。
    中肉中背の風貌(ふうぼう)、
    印象的な無精ヒゲ、
    そして鼻ピアス。
    犯人はもう逃げても無駄だと分かったのか、
    立ち止まって、オレとピカチュウの方に面(つら)を向かわせているが、
    代わりに、例のサバイバルナイフを両手で持って構えていた。
    「ア……アンタ、何モンだ!!?」
    「オレ? オレはポケモンレンジャーをやっているモンだけど?」
    オレが一歩、前へと進むと犯人の手の震えが大きくなっていく。
    しかし、ナイフを向ける方向はオレに向いたままだった。
    「さてと、テメェの質問に答えてやったんだ。
     今度はテメェがオレの質問に答えてやる、番だよな?」
    もう一歩、オレが前へと進むと、犯人の手の震えは更に大きくなっていく。
    「テメェが今回の放火魔だよな?」
    更にもう一歩、オレが足を前へと踏み出す――。
    「わぁァァァァ!!!!」
    犯人の恐怖感が臨界点を突破したらしい。
    けど、オレは慌てなかった。
    もう少しで犯人の真意が聞けそうだったからだ。

    「ア、アイツらが悪リィんだァ!!
     おれに仕事を辞めさせやがってよォ!!!」

    …………。
    ……………………。

    オレ、怒りで理性が吹っ飛びそうなんだけど。

    「……テメェ……それだけで、
     たった、そんだけの事で、この森に火をつけた、つうのか?」
    「あぁ! そうダヨ!! なんか、文句でもあんのかぁ!!」
    炎の中に消えていくのは身勝手な犯人の意見。
    「ピカ……?」
    「……んだと……?」
    オレと、そして恐らくピカチュウも
    心の中で沸々(ふつふつ)と怒りをこみ上げていた。
    犯人がどんな経緯で仕事を辞めさせられたのかは分からねぇ。
    理不尽な理由かもしれねぇし。
    犯人の勤務態度が悪かったかもしれねぇ。
    ……けどな。
    だからって、その怒りをそういう風に――森を火事にするっていうぶつけ方……が
    一番、理不尽じゃねぇか!?
    「……テメェ……」
    森には多くのポケモン達が住んでいるし、
    多くのトレーナーが通り道に使っているかもしれねぇ。
    ……この火事で、もしかしたら、
    最悪な結果を迎えた奴がいるかもしれねぇ。
    犯人は最悪な事をした。
    「ふざけるのも、たいがいにしやがれぇ!!!」
    仕事を辞めさせられたという怒りを
    放火という殺人で晴らしているも同然だったからだ。
    「ひぃっ!!」
    オレが走りだしたのに反応して思いっきりナイフを振りまくって来た。
    色々な方向に軌道を描くナイフの刃。
    デタラメな、むちゃくちゃな武器の扱いだが、
    それ故に動きが読みにくい。
    だが、それ故にスキが生まれやすい。
    「あめぇんだよ!」
    相手がナイフを思いっきり振る。
    直後にスキが生まれる。
    オレはソコに目をつけて犯人の懐(ふところ)に入って一発ストレートを……。
    「!?」
    しかし、パンチが届く直前にオレの体がぐらついた。
    ……なんだ、体の自由が、今、きかなかったぞ!?
    まるで、貧血を起こして、目まいをさせたかのような感覚だ……。
    …………。
    もしかして……酸素が足りなくなったのか!?
    1時間以上火の中にいて、酸素ボンベを吸わなかった事。
    それが、今、仇(あだ)となって、オレの体を襲って来たのか!?
    「ピカッ!!」
    ピカチュウの叫び声と共に、鳴り響いたのは何かを切る音。
    『ズシャッ!!』
    オレの左腕を深く切られた音だった。
    ……危なかっ……た……!!
    ピカチュウの叫び声に気付いていなかったら、
    間違いなく胸を切られる所だった……!!
    なんとかギリギリの所で致命傷を防いだが、一難去ってまた一難。
    犯人のナイフの切っ先は間違いなく、
    今度はオレの心臓に向かっていた!
    おまけにオレは意識がもうろうとしていて、かわしきる事が出来ない……!
    ピカチュウが駆け寄って来る音と共に。
    犯人のナイフがオレの心臓に向かって――。

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    「隊長……!! これ以上は危険ですって!!!」
    「いいから、もう少し待ってろ。もうすぐ、助けが来る」
    かつての救助活動。
    その矢先に起こった事故。
    ゴウの体は宙に浮いていた。
    隊長の手はゴウの手を繋いでいた。
    一歩間違えば、死を招く、断崖絶壁。
    「隊長……」
    「なんだ、ゴウ?」
    ゴクリと響く唾(つば)を飲み込む音。
    「その手を放して下さい」
    諦めの言葉。
    そして、
    道連れを防ぐ言葉。
    「いやだね」
    きっぱりと断りの言葉。
    「ですけど……隊長! これ以上は……!!」
    説得の言葉。
    「るっせぇ!! 最後まで諦めんじゃねぇ!!」
    喝の言葉。
    「最後までやらなきゃ、まだ分からんだろうが!!」
    それは救いの言葉となる。
    「いいか、ゴウ! 
     運命っていうのは、
     ソイツの頑張りで変える事が出来るんだ!」
    そして放った言葉は
    この先
    ゴウの熱血な性格を更に熱くする事になる。
    「最初っから、もう、負けを認めんじゃねぇ!」

    「最後まで諦めるな!! 
     それが生き様っていうもんだろうが!!!!」

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    『ズシャッ!!!』
    今度の音は何かを貫通させた音。

    「なっ……!?」
    「へへ……捕まえたぜ」
    ナイフが手のひらから、そして手の甲へと貫通させた音。
    そしてその音と同時にナイフが貫通しているオレの左手は
    犯人の柄(つか)を握る手を掴んでいた。
    「は、離せ……! 離しやがれェ!!!」
    ジタバタする犯人。
    けど、無駄だ……オレの握力をナメんなよ。
    「ピカチュウ! オレの体ごとで構わねぇ! そのまま『でんじは』だ!」
    「ピカッ!!」
    分かった! と言わんばかりのピカチュウの鳴き声の後。
    「ピ〜カ〜……」
    ほとばしる電気の音。
    「チュッ!!」
    そして『でんじは』がオレの体を襲い、
    「ウ……うわァァぁァァ!!!!」
    『掴んだ手』経由で犯人の体にも『でんじは』が流れ込む!
    電撃の音が鳴り止むと、オレは犯人が貫通させたナイフから引き抜く。
    血が一瞬、引き抜かれた動きに飛び散る。
    オレは唇を血がにじむ程、噛みしめて、
    痛みと体のシビれに耐え、
    そのまま一歩、二歩、ステップを後ろから前へと体ごと動かし、
    「オレは最後まで諦めねぇぜ!!」
    叫び声と共にケガをしていない右の拳を
    「グぼわぁぁ!!!」
    体重を乗せて、犯人の顔面に直撃させた。
    犯人の顔から骨が軋む(きしむ)音がハッキリと聞こえる程、
    力強く。
    「ピカッ!!」
    犯人が倒れると同時にオレも倒れた。
    ピカチュウが急いで駆け寄って来てくれた。
    「あぁ、大丈夫だ。ピカチュウ。悪リィな、心配かけさせちまって」
    体のシビれ、そして手の痛みが残っているものの、
    オレはなんとか立ち上がってピカチュウに笑顔を見せた。
    一方、犯人の方は完全にノビているようで、
    今の所、目を覚ます気配はなかった。
    ……勝負アリってとこだな。
    『0:37』
    ……そして確実にオレとピカチュウの終わりが近づいていた。

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

    『0:27』
    だいぶ消火が進んだ場所にオレとピカチュウがいた。
    そう、オレとピカチュウが本来、死んだ場所だ。
    例の空中で止まっている大木が夢のように。
    けれど、手に走る痛みが嘘ではない事を告げていた。
    「ピカ……」
    「戻って来たんだな……ココに」
    辺りから焦げくさいにおいが漂う中、
    オレとピカチュウはゆっくりと自分達が死んだ場所へと歩いていた。
    そう、本来、死んだ場所へ……だ。
    「いつつ!! ……あっ、ワリィ。ありがとな」
    さっきの犯人との戦いでダメージを受けていたオレは足元をよろめいてしまうが、
    あの例の審判団が肩を貸してくれた。
    ……優しい奴ら……なんだな……多分。
    あっ、そうそう。
    犯人の奴は近くにいたらしいポケモンレンジャーに
    ランが連絡を取って確保してもらった。
    オレの方はピカチュウと一緒に一回戻ると言って、
    先に行かせた。
    そして、今。
    オレとピカチュウはこの場所にいる。
    『プルル……』
    さて、死んだ場所に向かおうとした時、
    通信音が静かに鳴り響いた。
    ……最期ぐらい、我がまま言ってもいいよな……?
    そう、オレが目で語ると審判団は『どうぞ』といった感じで手の平ををさし出した。
    オレはその言葉に甘えさせてもらった。
    「……もしもし、ランか?」
    オレとランの最後の会話が始まった。

    『ちょっと、ゴウ! あんた、今ドコにいるの!? 連絡はくれないし……!』

    「あぁ、ワリィ。多分、森を下っていると思うから……そろそろ……かな」

    『それなら、いいんだけど……。
     でも! あんたの通信機に備えつけてあったGPSが反応しなくなるし……。
     なんか、あったんじゃないのかな……って』

    「多分、犯人とやり合っている時に、
     どこかヘンな所にぶつけたからかもしんねぇな」

    『……もし壊れていたら、弁償だから。覚悟しなさいよね』

    「……まじか?
     ……なんとかなんねぇかな。
     ホラ! 犯人も捕まえてたんだからさ!!」

    『それと、これとは話は別!!』

    「やべぇ……!
     もし、弁償だったら、払えねぇかも……給料前だし……!!」

    『全く、貯金していないのがワルイんでしょ!』

    「……厳しいな……おい」

    『まぁ……今回は頑張ってくれたし、アタシからも払ってあげるわよ』

    「今回は、じゃなくて、今回も! だろ。
     ……っていうか、ソレでまた昼メシおごって〜
     ……とか言うんじゃねぇだろうな……?」

    『そうだけど、いけない事かしら?』

    「……いや、喜んで、おごらせてもらいます……」

    『分かれば、よろしい』

    ……そんな、いつもと同じような、
    ランが上でオレが下の会話が続いた。
    だが、もう、こう会話とも
    そしてランとも、
    別れる……と思うと、なんか胸が熱くなって来た。
    話してて、今更ながら気付いた。
    ……そういえば、もう死ぬのに、この先の事を話してたな……。
    正直に言うと、もちろん……もっと生きたかった。
    ……この先もポケモンレンジャーとして、
    たくさんのポケモンや人を助けたかった……。
    でも、もう、この死は回避出来ねぇ、死だ。
    ……この通信が最期に告げられる言葉なんだな……。
    オレは意を決して言葉を出した。

    「なぁ、ラン。
     ……一言、言っておかなきゃいけねぇんだけどよ……」

    『なによ、改まった感じだけど?』

    「この前の約束、買い物に付き合うっつう約束……守れなさそうになった」

    『まぁ……約束は約束だし。
     とまでは、流石のワタシも言わないわよ』

    「……そうじゃなくてよ」

    『なによ?』

    「ラン……オレは……オレとピカチュウはもう……」


    『プツンッ!!』


    「え?」

    「死んだんだ」と言う前に通信がなんと切れてしまった。
    ……なんで切れたんだ? と一瞬、疑問が出て来たんだが、スグに分かった。
    ……例の審判団が勝手に通信を切ったのだ。
    「なに勝手に……!!」
    『ピッ!!』
    オレは怒った。
    最期に告げる言葉だったのに!
    もう、ランと話す最後のチャンスだったのに!!
    『ピッピピ!!!』
    オレの怒りと共に笛の音が鳴り響き、
    そして、指でつくったバツ印をオレの前にいきなり指し出された。
    オレはそれを見て、(というより審判団の勢いに押されて)
    その意味を悟った。
    ……。
    …………どうやら我がままが過ぎたらしい。
    「……ピカ」
    「気にすんな、ピカチュウ……どうやらオレが悪かったみてぇだから」
    心配そうに見上げるピカチュウをオレは静かになだめた。
    この制限時間付きの最期の時間は他言無用の約束らしい。
    「……あっ、そうだ」
    もう最後の言葉を
    このまま歯切り悪くさせてしまっていいのだろうか? と。
    オレがそう諦めかけた時、
    一瞬、頭の中で何かが閃いた(ひらめいた)。
    「なぁ……最後に、
     どうしても、アイツに……ランに伝えたい言葉があるんだ。
     ……言葉を録音して残すじゃ……ダメか?」
    『ピッ……』
    「もちろん、お前達の事とか、
     この時間についても言わねぇって約束する!」
    オレがそう言うと、
    審判団が何やら相談しあって、やがて――。
    『ピッ』
    首を縦に振った。
    「ありがとな! 恩に着るぜ!」
    オレはこの最後の機会をくれた感謝の意味も込めて礼を言った。
    「ピカチュウ。ちょっと来てくれ。
     これからちょっと言葉を残すからさ」
    ピカチュウを呼びながらオレは再び通信機を取り出した。
    この通信機は通信機能だけではなく、
    伝言を残しておける録音機能もあるのだ。
    オレとピカチュウは静かに――。

    『それではピーッという音の後に伝言を残して下さい』

    最後の言葉を告げた。

    ―――――――――――――――――――――――――――

    『0:03』

    「残り3分か。なぁ、ピカチュウ」
    「ピカ……」
    残りの時間も後わずかになり、
    オレとピカチュウは審判団に先導されて、
    あの時、
    約2時間30分前と同じ、
    倒木につぶされた時と同じかっこうで、
    オレとピカチュウは横たわっていた。

    『0:02』

    「ピカチュウ……」
    「ピカ?」
    「死ぬ前に一言、
     言っておかなきゃいけねぇコトがあるんだけどよ……」
    ……もう、あとは死を待つ身なんだが……。
    どうしても最期にピカチュウに言いたかった事があった。
    ……いや、ピカチュウと一緒に話したかったというのもあるが。
    「……今まで、オレと一緒に頑張って来てくれて、ありがとな。
     お前と一緒だったから、乗り越えられた問題もあったし。
     ……それと、ごめんな……オレのせいで……」
    今回、オレだけではなく、ピカチュウをも巻き込んだのは
    間違いなくオレのせい……とオレは思った。
    あの時、もっとオレがしっかりしてれば……。
    「ピカッ!」
    「痛ッ! な、なにすんだよ、ピカチュウ!?」
    オレが後悔の念を引いていた時、
    突然、
    ピカチュウがオレの指を噛んで来た。
    小さいけど、それでも鋭い牙は見事にオレの指にささっていた。
    「ピカ! ピカピカ! ピカ! ピカチュッ!!」
    オレの指から口を離したピカチュウは何やら勢いよく訴えかけて来た。
    ……なんか、怒ってる感100パーセントなんですけど……。
    「ピカッ! ピカチュ!! ピカピカ!」

    ピカチュウはちっちゃな手で
    オレを指し、
    自分も指し、
    そして、
    心臓の所に自分の手を当てた。

    ……何年もピカチュウと一緒にいたんだ。
    ……分からねぇ事はない。
    だから、
    ピカチュウが何を伝えたいのかが分かった瞬間、
    オレは泣きそうになった。

    「……オレとピカチュウは親友、だから、いつも一緒。
     ……オレのせいじゃねぇって言いたいんだな?」

    ……自分一人のせいにして……。
    ピカチュウと一緒にいるっていう事を忘れてた。
    ピカチュウは本気で思っている。
    だから噛みついて来た。
    心から、と言わんばかり、叫んだ。
    オレのせいじゃない。
    オレとピカチュウが頑張った、
    その結果、
    運悪く死んでしまった。
    だから、
    オレ一人で抱え込むな。
    ……そうピカチュウは言いたかったのだ。
    「ピカ……」
    ピカチュウは静かに微笑むと、
    オレの噛まれた跡の指を静かに舐めてくれた。

    『やっと……分かってくれたね。
     ……ボクはいつでも、ゴウの親友……なんだから』

    一瞬、そんな言葉がピカチュウから聞こえた気がしたが、

    今は、ただ、一言、こう言いたかった。

    「ありがとな……ピカチュウ」

    ―――――――――――――――――――――――――――――

    『0:01』

    時間というのは、
    あっという間に過ぎるもんで……。
    未だに、オレとピカチュウが死んだ事を信じる事が出来ねぇが……。
    犯人とのやり合いで出来たダメージの痛み。
    ピカチュウに噛まれた指の痛み。
    それらが夢でない事を告げていた。
    「……なぁ、ピカチュウ」
    「ピカ……?」
    「オレ達、死んだ後、どうなんだろうな?」
    正直、この後、どうなるのか分からねぇ。
    ……そういったところ、恐いけど。
    「ピカッ、ピカチュッ」
    ピカチュウは静かに頭を横に振った。
    そして小さな手をオレの手に繋いで来た。
    「……分からないけど……一人じゃねぇ。
     ずっと一緒だ……か?」
    ピカチュウが静かに微笑んで、うなずいた。
    「へへ、そうだよな」
    オレは笑って、そう答えると、
    ピカチュウの手をゆっくりと握った。
    オレ達は今までずっと一緒だった。
    だから、
    きっと、
    これからもずっと一緒だ。
    この想いだって諦めなきゃ、絶対に叶う!
    そう信じている。
    ……だって、
    諦めない事が物語を始めさせるんだからな。

    「ピカチュウ、ずっと、オレ達、親友だぜ!!」
    「ピカ!」

    『0:00』

    『ピッピッピ――!!』

    終了のホイッスルが森の中に響き渡った。
    少年と電気鼠(でんきねずみ)は最期まで手を繋いでいた。
    二人の絆を表すかのような
    綺麗な
    そして熱い
    手と手の繋ぎだった。
    少年と電気鼠を包み込む風は
    とても優しかった。

    一人と一匹の絆が輝いているかのように。

    一人と一匹の絆が離れないように。

    ゴウとピカチュウの親友の証が
    死してもなお、
    そこに、
    輝き続けていた。

    ――――――――――――――――――――――――――

    ピーッと鳴り響くのは開始の音色。


    『ラン聞こえるか? オレだ、ゴウだ』

    『ピカッ! ピカッチュッ!!』

    『悪リィな、時間があまりなさそうだから……手短に話すな』

    『ピカチュッ』

    『そのさ……今まで、その、えっとぉ……』

    『ピカッ!!』

    『分かってるってピカチュウ!
     ……あ、え〜と。
     今まで、その、サポートしてくれて、ありがとな』

    『ピカッピカッピカチュッ!』

    『お前はいい女だからな。
     後は中身を磨いていくように』

    『ピカ……?』

    『いいんだよ、ピカチュウ。
     こういうのは、本当の事を言った方がいいもんだ』

    『ピカ』

    『ま、それは置いといてだな、ラン。
     後、一言だけ言いたい事があるんだけどよ』

    『ピカッピカ』

    『この先、
     色々と大変な事があるかもしんねぇけど、
     絶対、諦めるなよ!』

    『ピカチュッ!!』

    『隊長にも
     今までありがとうございましたって言っといてくれ。
     ……最後までオレ達は諦めなかった。
     という一言もヨロシク頼む』

    『ピカチュッ!! ピカチュ……』

    『……もう時間みたいだな。
     もう一言だけ、最後に言っとくぜ』

    『ピカッ』

    『……おめぇの事、
     ランの事……好きだぜ』

    『ピカチュッ!!』

    『それじゃあな、元気でな、ラン』

    『ピカッ!!』


    ピーッと鳴り響くのは終わりを告げる音色。


    『以上、午後4時35分に残った伝言です』


    通信機が伝える再生終了の案内。


    一部屋に置かれていた
    ゴウとピカチュウが残した言葉。
    ランは静かにソレを聞いた後、
    ゆっくり、立ち上がった。
    「……今日も諦めないで、頑張るわよ〜!!」
    ランは立ち上がると、
    写真一枚、
    ポケットの中から取り出した。
    「ゴウ、ピカチュウ……アタシも……
     あんた達の事、大好きなんだから……見守っていてよね」
    そこに映っていたのは
    ゴウとランとピカチュウが笑顔で写っている写真。
    ……あのバルバの森での放火事件から約半年後。
    悲しみはまだ心に残っている。
    けれど、
    ランはゴウとピカチュウの意志をもらった。
    だから、
    負けていられない。
    そして、
    だからこそ、
    頑張る事が出来る。
    「さて、今日もゴウやピカチュウに笑われないように、
     しっかりしなきゃね!」
    そう言葉を出すランは前へと歩き始めた。

    ゴウとピカチュウの想いと共に。

    諦めない心と共に。

    ―――――――――――――――――――――――――――


    【『だいばくはつ』しながら書いてみました】


    この物語を書いたノートから若干、直していたりしますが
    (漢字の間違いとかなど)
    当時成分95%は含まれていると思います。
    改めて、読み返しながらパソコンに打っていると、
    「ここは……展開的に無理があるんじゃ……?」と
    ……読み返す事の大事さが伝わって来た今日この頃です。

    ロス・タイム・ライフから
    ポケモンレンジャーの熱血な物語を書いてみた結果がこれでした。(汗)
    とりあえず改めて、自分の我がままに付き合ってくれた
    この物語に「ありがとう」と言っておきます。

    そして、ここまで読んで下さった方、
    本当にありがとうございました!


    それでは失礼しました。


    【『だいばくはつ』を恐れないで!!】


      [No.948] 歪んだ少女 投稿者:紀成   投稿日:2010/11/09(Tue) 22:27:25     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    時には異質な者が生き残ることもある。
    他人には無い何かを持っていることで、あらゆる状況の中で生きることができるのだ。


    そう、ゴーストタイプに懐かれるカオリのように。

    カオリは絵本を読んでいた。小さな本だが、外見から高価な物だと判断できる。
    赤色の皮のカバーが鮮やかに浮かび上がる。
    カオリの周りにはいつものようにゴーストタイプ達が集まっている。
    カオリは本を読み始めた。


    『おはよう』
    『こんにちは』
    『こんばんは』

    『はじめまして』
    『さようなら』
    『またあいましょう』

    たった一本の糸が、彼の声を届ける。
    毎日、毎日。
    相手は隣の少女。引っ切り無しに話しかける。

    「きょうはなにをしたの」
    「きょうはだれといたの」

    少女は、答えない。

    ある時、一度の返事があった。

    「わたし、とおくへいくの。さよなら」

    だが、今も話し続けている少年には届かない。
    少女がいなくなったことすら、気付かない。

    「おはよう」
    「こんにちは」
    「こんばんは」

    「へんじをください」

    部屋からは声だけが聞こえている。

    そして、ある日。

    「だいすき」
    「あいしてる」

    糸電話の糸が、プツリと切れた。そのまま地面に落ちる。
    それ以来、少年の声はおろか、声を聞いた者はいない。


    それでも、

    「だいすき、あいしてる、きょうはだれといたの」

    落ちた糸くずから、勝手に少年の声が飛び出してくるという。


    カオリは本を投げた。厚い本はベシッと壁に当たり、そのまま床に落ちる。
    「つまらないな」
    ゲンガーがケタケタ笑った。ゴース、ゴーストもくるくる回っている。
    「一度でいいから、命懸けの何かをしてみたいな」
    そして思いついたように手を叩く。
    「ねぇ、知ってる?シンオウ地方って場所には、ギラティナっていうゴーストタイプの伝説のポケモンがいるんだって」
    カオリは部屋の真ん中まで来ると、両手を広げた。
    「私、その子とトモダチになりたいな」


    人を愛するより、ゴーストタイプを愛する少女。
    彼女の無邪気さが、自分自身の運命を大きく狂わせていく・・

    それは、不幸か。
    歪んだ幸せか。

    カオリにしか、分からない。


      [No.947] なんて無謀な! 投稿者:こはる   投稿日:2010/11/09(Tue) 20:07:23     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    無謀である。まさに無謀である。しかし、ここで逝かねば女がすたる。
    というわけで、ノートをあさって、ヘルガーを見つけて、難解文字を解読してテキストに起こしてみた。処女作って、たぶんコレじゃなかったはずだけど、一番古いノートだったから。

    普通の小説書く→ポケモン金銀にはまる→ポケモン小説を書く。そして、これ↓ 長いのはホント長いから、一番短かったコレ↓を。

    【コーラみたいな夜ってなんなのよ(爆死)】
    【皆さん、上手すぎるのよ!!】

    ◇◆◇◆◇◆

     コーラみたいな夜だった。
     夜食を買いに出た帰り、近道をしようと公園を通った。両手に持ったビニール袋が指に食い込んできて痛かった。
     夏はまだ居座っていた。
     ねっとりとして肌にからみついてくる空気は蒸し暑い。炭酸の抜けたコーラみたいに、蒸し暑い夜は街を包んでいる。
     公園ももれなくコーラ蒸しだった。買ったジュースがぬるくならないようにと、歩くのを早めた。
     ぐうぐるるとなにかが唸った。はっとして立ち止まったボクを、草むらからなにかが見ている。このあたりで出没している群れの一頭だろうか。
     黒い影は草むらにうずくまっていた。ぐうぐるると何度も唸って、ボクを見上げるのは、たしかヘルガー。
     すらりとした黒い体と白いつのがざわざわ草むらをはい出してきた。いかにも凶暴そうなヘルガーに、ボクは数歩だけ後ろに下がった。
     ぐうぐるる。ぐうぐるる。なんどもなんどもぐうぐるると唸る。
     腰が抜けて動けないボクをにらみつけて、なんども唸った。逃げもしないし、おそってもこない。なのに、ヘルガーは唸りつづける。
     ポケモンは持っていない。だから、逃げるのが一番だ。でも、腰が抜けて動けない。ヘルガーがおそってきたらどうしよう。
     ヘルガーのかげから、もっとちいさな影が出てきた。デルビルだ。唸っていたヘルガーがあわてたようにデルビルを押し返そうとした。それでもデルビルは出てこようとする。
     ちいさなデルビルはなにかおかしい。後ろ足をひきずってるみたいだ。ヘルガーはデルビルを押し返して、もういちどボクを振り返ってぐうぐるると唸る。
    「ケガしてるのか?」
     ボクが近づくと、ヘルガーは少しだけ前に出てきた。腰が抜けていたのも忘れて、ボクがあとずさる。すると、ヘルガーはもとの位置にもどる。
     ヘルガーは、ケガしたデルビルを守っているみたいだ。
    「おまえ、意外と優しいんだな」
     コーラみたいな夜は、ほの甘い。ヘルガーもほの甘い優しさを持っていた。


      [No.946] わたし、9人目だと思うから・・・(?) 投稿者:サトチ   投稿日:2010/11/09(Tue) 19:45:53     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    高校時代のリレー小説とかはン十年の昔だし、HPに乗っけた文章は妄想はいりまくりと化したプレイ日記が先なんだけど、
    そのへんはぜ〜んぶ置いといて、とりあえずHPに小説としてのっけた最初の作品を出してみます。
    まあ、処女作とはいえないとしても10年前の作品(2001年アップ)なので勘弁してくださいな。

    とりあえずポケスペ4〜7巻準拠の話です。


    ********************************************************

    「お気に入りの場所」


     そこは、少年のお気に入りの場所だった。

     その泉は、トキワの森にほんの少し入ったところにあった。町からほど近いところだったが、少しくぼ地になっていたことと、ちょうど生い茂った木立に隠されていたために、ほとんど人の目にふれることはなかった。ふとしたことからその泉を見つけた彼は、そこを自分の秘密の場所と決めたのだった。

     その小さな泉には、一年中、透きとおった水がこんこんと底の砂を揺らしながら湧き出していた。 昔は水源として使われたこともあったらしく、壊れかけた水口の石組みが残っていたが、それも今はすっかり草木に覆われていた。

     春には、水晶のような泡をつけた緑色の水草が、白い小さな花を咲かせ、夏には、ガラスと宝石でできたヘアピンのような糸蜻蛉(いととんぼ)たちが、深い緑の葉陰を映す水面を踊るようにつつきながら、波紋を描き出していた。

     泉の岸に釣り糸をたれながら、静かに腰を下ろして、どこまでも続く緑の木陰と、かすかな小鳥の声と、こずえに吹くそよ風が葉をそよがせる音に包まれていると、彼はいつも、自分が森の一部になったように感じるのだった。

     釣り糸をたれる、といっても、特になにかを釣り上げようというわけではなかった。そこには少年の友達が住んでいたのだ。

     糸の先についたボールを、ぽんと水面に投げると、その波を感じて、水の底からゆったりと大きなコイキングが浮かび上がってきた。彼が1かけのパンを投げると、コイキングはかっぷりと飲み込み、そのまま悠然と泳ぎつづけた。

     ほんの1かけ、コイキングにとっては1口にも足りない量だが、たくさんの餌をほうりこめば、水は濁ってしまうだろうし、コイキングは餌がほしくてやってきているわけではない。彼もそれは知っている。 いわば、それは、敬意を表するための儀式のようなものだった。

     この泉にはもう1ぴき、小さなミニリュウが棲んでいた。 近くの道を他人が通る気配がすると、敏感に気づいて泉の中に逃げ込んでしまうのだったが、彼がいつもの場所に腰をおろしてしばらくすると、どこからともなく現れて、なめらかな身体をすりつけるのだった。

     彼は、時間のあるときにはここに来て、ポケモンたちと楽しいひとときを過ごすのを常としていた。いつも一緒にいたいとは思ってはいたが、年のわりには大人びているとはいえ、彼はまだ、ポケモンを堂々と連れて歩ける年齢にはもう少々あったから、うっかり外に連れ出して、他人にゲットされる危険はおかしたくはなかったのだ。

     ある日のことだった。 いつものように泉のほとりに腰を下ろしてポケモンたちが来るのを待っていると、ふと、草ずれの音とともに、視界の端になにか黄色いものが動いた。

    「あいつかな?」

     彼には心あたりがあった。 何日か前に、うっかり置き忘れた昼食の残りに味をしめたらしく、1匹のピカチュウが、ここしばらく、まわりをうろちょろしていたのだ。

     餌付けするのは簡単だっただろうが、彼はピカチュウをゲットするつもりはなかったし、もし人間の食べ物に味をしめてしまえば、好奇心の強いピカチュウのことだ。 森を出て、人間の住処を荒らして餌をあさるようになりかねない。 そして、そんなことになってしまえば、ひどい目にあうのは、そのポケモン自身なのだ。

     彼は、数年前に食料を荒らして捕らえられた、年老いたラッタのことを思い出した。誰か、ちゃんとしたトレーナーがひきとるというなら、助けられたかもしれなかったが、彼はまだその時は幼く、・・・結局、そのラッタがどうなったかは、どの大人も教えてくれなかった。

     まあ、それに何より、お昼ごはんが減るのはありがたくない。 ここは1つ、脅かしてやるにかぎる。 彼は、その音がすぐ後ろまで近づくのをじっと待ち、ふりむきざまにどなりつけた。

    「こら!いたずらでんきねずみ!!」

     ところが、彼の後ろにちょこんと立っていたのは・・・・

     黄色いオーバーオールの、よちよち歩きの子供だった。

     その子はびっくりしてしりもちをつき、そのままわんわんと泣き出してしまった。

    「な、なんで、こんな小さい子がこんなところにいるんだ?!」

     彼はあわててその子をあやそうとしたが、その子はますます泣きじゃくるばかりだった。手を変え品を変えあやしてはみたものの、どうしても泣きやませることができずに、彼が頭をかかえていると、・・・ふと、泣き声がやんだ。

     その子が、黒目がちの瞳を見張って見つめていたのは・・

    (コイコイ、コイコイコイコイコイ;;;) ・・・浅瀬でピチピチはねているコイキングと、草むらからそうっと這い出してきたミニリュウだった。

     いつのまにか、ポケモンたちは2人のすぐそばまで近寄ってきていたのだ。 コイキングもともかくだが、いつもなら、知らない人間が来たら、すぐに隠れてしまうミニリュウが・・・と、彼は驚いたが、子どもは大喜びで、きゃっきゃっと笑い声をあげながら遊びだした。

    30分後。
     しばらくご機嫌で2匹といっしょに遊んでいたその子は、遊びつかれたのか、すやすやと眠ってしまっていた。

    「やれやれ。お前たちのおかげで、助かったよ。ありがとう。」
     コイキングは、また、池の深みでゆったりとした回遊を始め、ミニリュウは、枕にされていた尻尾を、そうっとはずして、草むらにもぐりこんだ。

     それにしても、なんだか自分の秘密の場所がとられてしまったようで、なにやら面白くないが・・、まぁ、こんな小さい子相手に、そんなことを考えるのも大人げない話だ、と考えていた彼は、遠くのほうで、だれかが呼んでいるような声を聞きつけた。

    「・・・・! ・・・・イエロー!」

     若い女の人の声のようだ。 きっと、この子の母親が捜しているのに違いない。 秘密の場所まで来られては大変、と、彼はあわてて、ぐっすり眠ったその子を抱き上げると、声の方めざして急いで歩きだした。

     子どもをだっこしたままでは、藪のなかを抜けるいつもの近道を使うわけにもいかず、大まわりをして道まで出てみると、ちょうど、つば広の白い帽子に薄緑のワンピースの、若い女の人が、心配げに名前を呼びながら角を曲がって来るところだった。

     細く柔らかそうな金髪と、黒目がちの瞳は、この子にそっくりで、母親に間違いなさそうだ。心配げに曇った顔が、少年にだっこされた子どもが目に入った瞬間、まるで雲間から日が射したように明るく輝く。

    「 ・・・あなたが見つけてくれたのね!ありがとう!」

    「ママ!」目をさました子どもをそっと地面に降ろしてやると、子どもは転がるように駆けていって、小走りに駆けて来た母親に抱き着いた。

    「ああ、よかった・・・! どこにでもトコトコいっちゃうんだから。また、どこかのポケモンについて行っちゃったのね。心配したのよ、ほんとにもう!」

     口で怒りながらも、やさしく抱きしめる様子を見て、立ちすくむ少年の胸のどこかがかすかにちくり、と痛んだ。

    「あのね、おタカナがね、コイコイって。  みみりゅーちゃんも、いたの。」
    「?  ああ、お兄ちゃんのポケモンに、遊んでもらったのね。 ・・・じゃ、お兄ちゃんにお礼をいおうね。・・・・あら?」

     彼女が見たのは、いっさんに走り去ってゆく少年の後ろ姿だった。

    「照れ屋さんな子ねえ??
     ・・・うちのイエローを連れてきてくれて、ありがとうー!」
    「おにいちゃん、ばいばいー!」

     手を振る母子を背に、少年が逃げるように走り帰ったのは、かすかな胸の苦しさからではなく、・・・・

    「あー、・・・しまった! やられたぁ!!」

     ・・・昼食のバスケットを無防備に置いてきてしまったことに気がついたからだった。

     バスケットの掛け金ははずされ、中身はきれいに持ち去られていた。ラッタやコラッタなら、自慢の前歯で豪快にかじり開けるだろうから、たぶん、例のピカチュウのしわざだろう。ピカチュウは知能が高く、前足も器用だ。この程度の掛け金をはずすのは、朝飯前だったろう。 持ち主がいなくなったのをいいことに、ごちそうにありついたにちがいない。

    「やれやれ・・・」

     今日は出直すとするか、と、彼は苦笑しながらバスケットをひろいあげると、「また来る!」とポケモンたちに一声かけて、家路についた。

     また明日来ればいい。 秘密の場所もポケモン達も、いつでも待っていてくれるさ。

     

    ・・・・そこはずっと、少年のお気に入りの場所だった。

     ある日突然、大規模な土木工事が始まり、木々は切り倒され、泉があった場所は無残にえぐりとられて、ぬかるみの中に息も絶え絶えに横たわるミニリュウ達をかきいだいて、彼−ワタルが、復讐を誓った、そのときまで・・・。

     

     「お気に入りの場所」 [ワタル編] 完


    【ついでに宣伝するのよ<をい】

    続編(イエロー編)を見てみたい物好きな方はこちらへ↓

    http://www2u.biglobe.ne.jp/~endo-c/pokemon/yelowfun/wataru2.htm


      [No.945] 皆さんに続いてみた。 投稿者:スズメ   投稿日:2010/11/09(Tue) 01:59:25     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     処女作といえば・・・・この、ポケストで書かせていただいたものです。
     書いたのは、今年だったりします。
     一年遅れの厨二病・・・・・。いつになったら直るのか・・・
     
     ちなみに、処女作であるこの短編、何度見直しても何がしたかったのか分からないという大物でございます。
     あまりのはずかしさに削除したものだったり。
     とりあえず、すべてが厨二。おまけに読みづらさMAX。



    特にやることも無いので取り合えず、目の前で繰り広げられる戦いを眺めた。

     特に珍しいことじゃない。 この二人が喧嘩まがいのバトルをするのは。

     喧嘩まがいというよりソヨカが一方的に吹っかけてるんだけど・・・。

     アブソル(イザヨイという)に向かってキレイハナ・・・(なーちゃんというらしい)
     
     が勇猛果敢に突進していく。

     まあ、なんというか、無謀だなって感じの風景だ。

     対格差的にもそうだし、近づけば近づくほど頭についている鎌の餌食になりやすいのだ。

     とりあえず、早く終わんないかな〜と空を見上げた。

     ・・・・ソヨカいわくメジロの為なんだよっ!! らしいが、俺から見るとなんというか。

     「いらないお世話・・・なんだよな・・・」

     芝生にむかって背中から倒れこんだ。と、同時に肩に乗ってたルットが飛び立ち、腹の上へと

     移動した。ちなみにルットとは俺のチルットのことだ。 

     チラッと見た限り、ソラメはいつもの迷惑そうな顔。

     対するソヨカは、見なくても分かる。

     だって・・・さ。

     「っていうかあんたって何なのよ!! なんか言うといっつも・・なーちゃん!しびれごな」

     ソラメへの罵倒が聞こえてるし。にしても器用だよね、罵倒と文句を同時にするなんて。

     なんか知らないんだけど、ソラメは目の敵にされてるんだよな。

     ソラメも言い返せばいいのに・・あ、一応言ってるか。

     「知らんな」 って。
     
     ソラメももう少し友好的だったら友達も増えるしいらない反感も買わないだろうになー。

     と・も・か・く

     「あーあーもうさっさと終われー!!」

     頭を抱えてルットも巻き込み丸まってみた。

     「その元凶がなにをいってるんですか。」

     そんなことを言いながら、コウ がサイコソーダをもって現れた。

     そういえばこいつ、ジュース買いに行ってたんだっけ。

     「元凶って何だよ、・・・俺も一口」

     見てみると、コウは、ぽっぽを頭の上からどけて、ぼさぼさになった黒い髪を直しているところだった。

     なおし終わったや否や、かばんから入れ物を取り出し、サイダーを注いでポッポに差し出す。

     ・・・お前それ、いつも持ち歩いてるのか?!

     「なにいってるんですか。 このソーダは、ぽっぽとケーシィにあげるぶんです。」

     ケーシィの分を注ぎながら、当たり前だとでも言うように答えた。

     「自分の分はどうしたんだ。」

     そう聞くと、待ってましたとばかりにかばんから2本のサイコソーダを取り出した。

     ・・・2本?

     「ここにありますよ、メジロもどうぞ。 160円になりまーす。」

     「サンキュ・・・って金取るのかよ! 」

     「あたりまえじゃないですか。 よければ宅配サービスってことで20円上乗せしますか? 」

     「やめてくれ・・払うから。」

     仕方が無いのでしぶしぶコウに160円渡す。

     あったときからだが、コウってよく分かんないんだよな。

     いきなり学校に編入してきたし、先生いわく他の世界に住んでたとかトリップしたとか。

     ポケモンもって無かったくせにやけに詳しいし。(最近何匹か捕まえたらしいが。)

     ソーダの栓を開け、のどに流し込んだ。

     冷たさと一緒にシュワシュワッとした爽快感を感じる。

     それにしても・・・とコウがぼそぼそ話し始めた。

     「本当に、目の前の戦いを見てるとソーダの冷たさが吹き飛んでしまいますね。」

     「そりゃあな・・わざわざこんな暑い日に日本晴れなんかしなくてもいいのにな」

     局地的に猛暑となったバトル場からは、もうもうと湯気のようなものが立ち上っている。

     とうぜん暑いわけで、そうするよう命令したソヨカは汗だくだく。

     対するソラメは、なぜか変わらず普通に立っている。

     あ、なーちゃんのソーラービームだ。

     イザヨイはかわしたっぽい。 あ、あられだ。 イザヨイかな?

     「なんで、アブソルがあられなんか使うんですか?」

     まわりの気温は一気に下がり、肌寒いくらいだ。

     「ああ、δ(デルタ)種だからな。」

     「ポケモンカードでしたっけ? ホロンの何やらってやつですか。」

     なるほどとうなずくコウ。 ・・・・って?!

     「お前、知ってるのか?! ・・・というかなんだ。 ポケモン何たらとは」

     「もといた世界の遊びですよ。 ただのカードです。」

      なんてことはなさそうに、コウは答えた。

     「どういうことだ? ・・・とにかく、何で知ってる?」

     「だから、ポケモンカードです。 そんなに知ってるの、珍しいんですか?」

     「もちろんっていうか・・・知ってる人なんて研究者ぐらいだろ。 正式には発表されてないんだから。」

     「へー、初めて知りました〜・・・イザヨイって何タイプですか?」

     だから、ポケモンカードって何だよという質問を無理やり飲み込む。

     また、異世界だか、ゲームだか言われるだけだろうし・・・よく分からん。

     「ああ、たしか氷とゴーストだったはずだけど。」

     見た目普通のアブソルだからなー、 変な研究者が追っかけてきたりとかして
     
     すごい事件に巻き込まれたのも・・・いい思い出だな。(良くない)

     「やっぱり、あくタイプは持ってないんですか。 あ、決着がついたみたいですよ。」

     バトル場を見ると、確かに試合は終わってた。

     何の感慨も無くたっているソラメに対し、ソヨカはツインテールを揺らしながら

     ワーワーギャーギャー負け惜しみを言っている。

     「結果は何時も通りみたいですよ。」

     「ま、そう簡単には変わらないだろうな。」

     ソラメを迎えにバトル場へと降りていく。

     それを見たソヨカは、ひときわ大きい声で叫んだ。

     「覚えてなさい! メジロはあんたなんか怪しい奴にはわたさないんだから! 」・・・と。

     言い終わったと同時にくるっと背を向け、走り去っていく。

     いつもの通り、小さくなって行く背中を見ると毎回思う。

     「渡すとかなんとか・・幼なじみじゃあるまいし。 むしろ幼なじみはソラメなんだけど。
      ましてやソラメは男なんだし、恋敵にはなりえないんだけどなあ。」

     「何ででしょうね。」

     「どちらにしても、迷惑するのは俺だ。」

     「そうなんだよな・・・なんでソラメなんだ?」

     「勘違いじゃないですか?」
     
     コウがそう言うものの・・・

     「それは無いだろ。」

     「あの時のですよ。 ちょうど3ヶ月ぐらい前の」

     3ヶ月・・・? もしかもして・・

     「あれを本気にするか? 直後に冗談だと言った筈なんだけど。」

     「思いつくのはそれぐらいですし。」

     うわ・・・本気で頭を抱え込みたくなった。

     「どちらにしても」

     今まで黙ってたソラメが口を開いて、

     「迷惑するのは俺なんだか。」

     そう、迷惑極まりなさそうにつぶやいた。

     いいかげんに、ソヨカにわけを聞かないとな。
     



     【批評は受け付けれないのよ・・・】

     ここで一言。
     みなさん、レベルが高すぎです。

     


      [No.944] 7番手。砂糖水、逝っきまーす! 投稿者:砂糖水   投稿日:2010/11/09(Tue) 00:04:05     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    処女作、という言葉の定義に悩みました。
    というのも、初めて書いたポケモン小説は誰にも見せることなくお蔵入りしたので…。
    ちなみに長編(中編?)で完結済み。人生で唯一完結させた長編です。
    とりあえず、データになっている初投稿作を晒すことにします。

    以下、軽くデータ。

    それまでのストーリー創作歴:
    中学時代にオリジナルの長編を書こうとして挫折。
    高校に入ってからは短編をちらほら。

    ちなみにポケモン小説の存在自体は中学から知っていましたが、書こうと思ったのは高校入ってから。
    『ウバメの森の図書館』様を発見してから書きたいと思うようになりました。
    でも間もなく受験生になったので、投稿は先送り。
    あと投稿できそうなものもなかったし。
    とか言いつつ、お蔵入り作はこの頃に書いてました(笑)

    書いた時期:大学1年初夏? うろ覚え…

    執筆の背景:
    大学に入ったし、何か書こう! と思い立って2週間くらいで仕上げたもの。
    最初に考えたネタが頓挫(継続中)し、何かないかなと思いつきで書いた。
    ノーパソの前でうんうん唸りながら下書きなしでぽちぽち打ってました。
    なお、この時のあまりの書きづらさにこれ以後は紙に下書きするようになった。


    まあ、大体こんな感じです。
    ということで本文逝きます。
    ちなみに文の最後に「。」がないのは仕様。



    −−−−−−−−−−−−−−−−−



    気づくと、君の声が聞こえた
    ぼくの名を呼ぶ声
    ねえ、ぼくはさっきまで夢を、見ていたんだ
    とても、幸せな夢だよ
    君とぼくが出会った時の夢
    ねえ、覚えてる?あの時のこと


    名前を呼んで


    ぼくが君と出会う前、ぼくは人間が大嫌いだった
    いまでもあんまり好きじゃない
    君にそんなこと言ったらなんて顔、するのかな?
    悲しそうな顔?
    だろうなぁ、きっと
    君は優しいから
    でも、ぼくと君は話せない
    君は人間で、ぼくはポケモンのグラエナ
    もし話すことができたらどんなにいいだろうね?
    そうしたらぼくは君にありがとうって言えるのに
    君は特別なんだ。だって君は
    大丈夫って言ってくれたから
    手を差し伸べてくれたから
    抱きしめてくれたから
    だから

    冷たい都会の路地の隅っこで
    ぼくは一匹のポチエナとして生まれた
    親なんて記憶の片隅にしか存在しない
    覚えているのはぼくを護ろうとしている汚れた背中
    泥やいろんなものがこびりついて
    何色なのか表現できない、その背中
    兄弟もいたはずなのにぼくは気づいたら一人ぼっち
    ぼくはたった一匹であそこにいたんだ

    あの頃ぼくは人間に傷つけられてばかりいた
    ぼくは動くものにすぐ噛み付いてしまうから
    それがたとえ人間であっても
    だからよく人間に敵視されてはいた
    でもそれがだんだんエスカレートしていった
    ぼくは無闇に噛み付かないようになっていったのに
    人間はぼくを攻撃するようになった
    ぼくが何もしなくてもぼくを見つけると
    ぼくを攻撃するんだ
    足で蹴られたり踏まれたり棒で叩かれたり
    ポケモンをけしかけられることもあった
    笑いながら、楽しそうに
    ぼくはいつも傷だらけだった
    最初は抵抗していたんだ
    でも、諦めたんだ
    反抗してももっと傷つくだけ
    逃げてもまた捕まって余計痛い思いをするだけ
    だからやがてぼくはされるがままになって
    泣きもせず、逃げることもせず、ただなすがまま
    でもね、本当は
    痛かった、苦しかった、つらかった
    心はずっと悲鳴を上げていたんだ
    助けてってずっとずっと叫んでいたんだ
    あの時、そうあの時、君が現れるまでずっと

    あの頃はもう、人間なんて信じていなかった
    人間なんて皆同じ。ぼくを傷つけるもの
    そう思っていたんだ
    だから君に攻撃したんだ
    せっかく手を差し伸べてくれたのに
    優しさなんて信じられなかったんだ
    本当はずっと救いを求めていたくせに
    誰よりも心から
    なのにぼくはその手に噛み付いてしまった
    あの時君は「大丈夫?」って声をかけてくれたのに

    ぼくはその時薄汚れた路地で怪我をして動けなくなっていた
    通り過ぎる人間はぼくに気づかないか
    薄汚いものを見るように目を背けるだけで
    誰一人、ぼくを気にかけてくれやしなかった
    君の声は優しい声だったけど、ぼくは攻撃されるって思ったんだ
    すごく怖かった
    君は絶対そんなことしないのにね
    体が弱ってて力なんてほとんど入ってなかったけど
    ぼくは君の手に噛み付いた
    君は驚いて手を引っ込めた
    ぼくは君がいなくなると思った
    もうぼくに近づかないと思った
    もしかしたら本当に心配していてくれたのかもしれない
    そう後悔したけど、でも人間は敵だからこれでいいんだって
    自分に言い聞かせて、それで終わりだって思った
    だけど君は「大丈夫だよ」って言いながら手を伸ばした
    ぼくはもう一度噛み付こうとしたけど、できなかった
    だってぼくは動けなかったから
    その手に縋りたいと願ったから
    でも、一度拒んだものを受け入れるのは難しい
    君にすべてを預けることも、逃げることもできずに
    素直になればいいのに、ぼくは動けなかった
    君はぼくのそんな気持ちを見抜いていたの?
    差し伸べられた手を取りたいと望みながら
    その手を取れない臆病なぼく
    それら全部を掬い上げるように君はぼくを抱きしめてくれた
    君の腕の中は痛いくらいに暖かで、ぼくは泣いた
    嬉しくて悲しくてぼくは泣いた
    「つらかったんだね、苦しかったんだね
    分かるよ、わたしもそうだったから
    痛いよね、悲しいよね
    でも、もう大丈夫。わたしがいるから
    だからもう」
    そう言っている君は悲しそうで
    今にも泣きそうで
    「泣かないで」
    そう言っている君のほうこそ泣きそうなのに

    君は優しいから、いっぱいつらい思いをしたんだね
    君がぼくの心を救ってくれたように護ってくれたように
    今度はぼくが君を護る、そう誓ったんだ
    君がぼくに名前をつけてくれた時に


    黒い刃、黒牙(くろは)


    それがぼくの名前
    ぼくがどんなに嬉しかったか言葉に表せないくらい
    本当に嬉しかった
    誰もぼくをぼくとして認めてくれなかった
    誰一人、ぼくを生きていて心があるって認めてくれなかった
    でも君はぼくをぼくとして認めてくれた
    ぼくを生きている、心があるって認めてくれた
    その証に名前をつけてくれた
    名前を呼ばれる度に嬉しいんだ
    それだけなのに幸せなんだ
    ずっとずっとつらかったけど君に逢えて本当に幸せだよ

    ああ、君の声が近づいてきた
    何度も何度もぼくの名を呼んでいる
    でもぼくは聞こえない振りをする
    しばらくして君はぼくを見つけた
    「どこいってたの?心配したでしょ」
    ぼくは今起きたと言う風に目を開けた
    口では怒っているように言ってるけど
    本当は安心したように笑っている君が見える
    「行こう?」
    君がぼくの頭をなでる
    ぼくはあの頃と違って大きくなったし
    毛並みもずっと良くなって君に褒めてもらえるくらいになった
    でも君はあの頃と変わらないままの笑顔でぼくの名前を呼ぶ
    「黒牙」


    君を護るよ
    あの時の誓いは変わらないまま
    でもたった一つだけ願いを言わせて
    それだけでいい、それだけで幸せだから
    だから、

    名前を呼んで




    −−−−−−−−−−−−−−−−−


    これは酷い厨二。
    特に名前。それに読みづらい。

    内容は進歩してないし。いまだに似たようなの書いてるっていうね。

    ちなみにこの後トレーナー視点と、ちらりとも出てこないもう一匹の仲間の話を書きました。
    いつかリメイクしてここに投稿予定。



    それから冒頭書いたお蔵入り長編はミュウツーの話。
    もし読みたいっていう奇特な人がいたら晒そうかな…。
    もう絶対書かないんで。




    【みんな晒せばいいと思うのよ】



    最後に一言。
    クーウィさん処女作なのにレベル高すぎ。





    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



    (以下12月12日追記分)


    げに恐ろしきは夜中のテンション……。
    勢いで晒すって書いたはいいものの、改めて読み返してその黒歴史っぷりにへこみました。
    すごい勢いで後悔したものの、まさか誰も読みたいだなんて言うと思っていなかったから半分安心してたんですが……。
    まさかまさかのご要望をいただいちゃいました。
    なんというかこのスレも埋もれかかっているんですが、晒します。



    高三のころに書きました。第一志望? 落ちましたが何か。




    なお、この話はミュウツーの逆襲に追加エピソードがあったことも、続編があったことも知らずに書きました。
    そのあたりを頭に入れてお読みください。





    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――






     自己と他者、夢と現の区別もつかないまま一体どれだけの時が過ぎていったのだろう? 私と仲間たちはただそこにあるだけだった。
     やがて一人、また一人と仲間は脱落していった。力の大きさに耐え切れずにしんでいくもの、自らの体が崩壊していくもの、失敗作とみなされて消されるものと様々だった。
     見たわけではない。感じたのだ。

     私が初めて見たものは人の顔。顔はどれも緑がかっていて歪んでいた。私が『水槽』の中にいたせいだ。緑色の液体とともに私はいた。
     私はまた、周囲の音を聞き言葉を覚えていった。

    「ミュウ」「実験」「成功」「失敗作」「できそこない」

     そんな言葉がよく交わされていた。誰に教えられるわけでもなく私は言葉の意味を理解していった。
     やがて私は何のために作られたのかを知った。そのころには仲間の数はかなり少なくなっており、そして私ほど明瞭な意志をもつものはいなかった。
     だが、おそらく人間たちは私のような存在を予想していなかったに違いない。奴らが欲しかったのは従順な人形だったからだ。


     私は一体何のために生まれてきたのだ。


     軍事目的。兵器として私は生まれた。それは分かっていた。だが私は、私は違うと言いたかった。


     絶対に違う! 私はそんなことのために生まれたんじゃない。
     私は、私は……。


     どんなに否定しても事実は変わらないのに私は違うと思い続けた。我々に植え付けられた殺意は微睡みと共に私の中にもあったというのに。
     だがしかし、仲間たちは私のように思い悩むことはなかった。彼らは人間の操り人形でしかなかった。



     人の声が聞こえた。

    「『ミュウ・チャイルド』ちゃん達〜。もうすぐ、お目覚めですよ〜」

     こういう声をなんというか私は知っている。別の人間が言っていたから。『甘ったるい猫なで声』だ。
     こういう声を聞くだけで気分が悪くなってくる。『イライラする』とでも言うのだろうか?

    「ねぇ」

     我々ではなく、他の人間に話しかけたようだ。

    「『ミュウ・チャイルド』って長くない? 呼びかけづらいんだけど〜」

    「ああ、それならもう決定しているぞ」

     一体、どんな名前だというのだろう? 生物兵器に着ける名前というのは。

    「ミュウツー、だ」
    「『何それ〜。ずいぶん安直じゃあない?」

     『ミュウツー』、第二のミュウ。

    「物事というのは得てして、単純なものの方がいい。それに分かりやすいだろう?」

     相手を馬鹿にするような言い方だ。きっと心の中ではもっと馬鹿にしているに違いない。ここの人間は皆そうだ。

    「それに私が決めたのではないのだから、私に言っても無駄だ」

     先ほどの馬鹿にした言い方は『ぷらいど』を傷つけられたからのようだった。
     その後、人間達は別の場所に行ってしまい、話は聞けなかった。


     我々は第二のミュウ。


     そう、我々はミュウの遺伝子を基に造られた。そして同時に人間の遺伝子をも組み込まれた。
     人間のこういった話は嫌でも耳に入ってきた。だから私は知っていた。
     我々は第二のミュウだ。扱いやすく、戦闘能力を強化されたミュウミュウの代わりであり、生物兵器だ。
     毎日考えてきた、だがしかし、考えたくないことを突き付けられた。

     私は一体どうすればいいのだろう?

     悩んでいる暇はあまりないようだった。間もなく我々は目覚めさせられる。その前に行動を起こさなければならない。
     そして、その時。私の中で微睡んでいた獣が目覚めた。



     殺せ……、殺すんだ……。全て壊してしまえ……。



     私は、その獣の言うままに行動した。








     気付くと辺りは炎に包まれ、血と何かが焦げるような臭いがした。生きているものはなく、ただ火のはぜる音がした。
     私がやったのだ。この目の前の惨状は。



      ――残酷表現につきカット――


     施設内のすべての生き物と機械を破壊した後、私は我に返った。しばらく呆然としていたが、徐々に自分のやったことを理解した。
     私は自分のやったことに恐怖を感じ、逃げ出した。




     燃えさかるそこを抜け出し私はただ当てもなく彷徨った。
     何も考えたくなかった。己のした行為に、自らの力に怯えていた。だが私が最も怯えたのは自分自身だった。
     自分の中に潜む獣に身を任せ、すべてを破壊する時、私は楽しんではいなかっただろうか? 命を奪うことに喜びを感じてはいなかっただろうか?
     私はこんな、命を奪うような生物兵器として生まれてきたのだ。そのことを突き付けられ、私はただ自分自身に怯えた。





    ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



    その後
    疲れ果てたミュウツーは洞窟で眠りに就く。長い長い眠りから覚めたミュウツーは声なき声に導かれ山奥のとある施設にたどり着く。
    そこにいたのはミュウツー同様に遺伝子をいじられ生み出された生き物たち。
    実はミュウツーが破壊した研究施設に残ったわずかな資料から生み出された存在だった。
    そのことに責任を感じるミュウツー。
    彼らはミュウツーにその施設の破壊を頼む。そして同時に人間にしか見えない、けれどミュウツー同様に生み出された少女を連れ出してほしいと頼んだ。
    迷うミュウツー。けれどこれ以上の悲劇を生みださないために施設の破壊を決意する。

    で、まあ最終的にはどこぞに隠れ住む。みたいな内容でした。


    少女の役どころが正直自分にも分らない。女の子出したかっただけです。
    ただ、アイツーは無関係です。



    精根尽き果てました。
    クーウィさんに捧げます。


      [No.943] 【書いてみた】橋の上から 投稿者:砂糖水   投稿日:2010/11/08(Mon) 23:10:16     28clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ちゃぷん、ばしゃん。そして、ざぶんという音。
    川のせせらぎとは違う音。

    なんだろう?
    不思議に思って音の聞こえた方へ歩く。
    橋の上からなら見えるかな?

    とんとんとん。橋を歩く音。
    無駄に大きな橋の真ん中に着いたけど、それらしきものは見えない。

    ちぇ、残念。
    橋にもたれかかる。
    あーあ、ポケモンほしいな。
    でもみんな危ないって言ってわたしには触らせてもくれない。

    おばあちゃんが昔言ってた。
    若いころはラプラスの背に乗って遠くまで旅をしたって。
    そのラプラスはもう旅をやめたときに逃がしたからもういない。

    うらやましい。わたしもラプラスの背中に乗りたい。
    何でダメなんだろう……。
    わたしだって……!

    「ラプラスー! わたしを背中に乗っけてー!」
    意味もなく叫んだ。ラプラスが聞いてくれてたらいいのに。
    いたらいいのになあ、ラプラス。
    友達になろうよ。そしてわたしを乗せてよ。
    本当はさ、叫んだって無駄ってことくらいわかってるよ。でもさ、
    「乗りたいなあ……」
    願うことくらいは許してよ。


    ざぶん。
    え、と思って川を見た。何?
    「ラ、プラス……?」
    夢にまで見たラプラスがそこにいた。
    見つめ合うわたしたち。……これは夢?

    ざぶん。
    もう一度音がした。そうしたら、もう一匹のラプラス。
    最初のラプラスと違ってなんだろう、お年寄り?
    お年寄りラプラスはわたしをにらみつけるともう一匹のラプラスに向かって鳴いた。
    子どものラプラスは嫌々をするように首を横に振る。

    どうしたものか。
    きっとおじいちゃん(おばあちゃん?)に怒られてる。これは多分わたしのせい。
    困ったな。
    ぼんやりとしているうちにそれは激しくなって。

    ええい、ままよ!

    ざっぱーん。派手な音と水しぶき。
    水が冷たい。それに思ったよりも深い。
    思わず近くにいた子どもラプラスにしがみつく。
    またもや合う目。以心伝心?

    さて、とわたしは途方に暮れる。
    なんでって、何をするかなんて考えもせずに飛び込んだから。
    とりあえずにらまれたからにらみ返しておいた。
    子どもラプラスはおろおろしている。
    もし、攻撃されたらどうしよう。わたしは人間だからひとたまりもない。

    「わ、たしは」
    何かしなくちゃ。何か言わなくちゃ。
    「わたしは、ラプラスの背中に乗りたい。そして、遠くまで行きたい」
    何を突然言い出しているんだろう、という自覚はあった。
    だけど、今のわたしにはこうやって自分の素直な気持ちを言うしか方法が思いつかない。
    「ひどいことなんてしない。一緒に旅がしたいだけ」
    自分で言っていて、途中であれ? と思う。
    いつの間にか一緒に行くことになってる。
    本人(本ポケ?)に了解も得ていないのに。
    「橋なんか渡るより、ラプラスの背中に乗りたい!」
    こうなったらやけだ。ダメならダメでいいや。
    失うものは何もない。あ、命だけは困るな。

    お年寄りラプラスはわたしを見つめた後、深い深いため息をついた。
    なんだろう……?

    そして……。
    よろしく、と言われた気がした。

    え、と思ってまばたきをしたらもうそこには、誰もいなかった。
    残ったのはわたしと、子どものラプラスだけだった。

    「えーと、よろしく?」
    疑問形で言えば、ラプラスは嬉しそうにきゅーと鳴いた。
    目と目が合って、笑い合う。
    「じゃあ、とりあえず……背中に乗っけて!」



    水面を滑るように進むその乗り心地は想像以上に最高だった。







    ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――




    感想を練っていたらストーリーを練っていました。
    初めまして、砂糖水といいます。


    言葉のリズムがとても心地いい作品だと思いました。
    あんまりにもいいな、いいなと思っていたらこんな話が出来ちゃいました。
    急いで書いたので少々荒い部分もあります…。
    後で修正するかもしれないです。

    こんなんでよければどうぞお納めください。



    【書いちゃったのよ】
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】


    タイトル修正しました。
    寝不足だとしても酷かった…。


      [No.942] 何だか浮いている6本目行きます 投稿者:久方小風夜   《URL》   投稿日:2010/11/08(Mon) 22:38:12     109clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:誰か】 【いっそ】 【殺せ】 【orz

    ●流れ

    初めてポケモンの小説(のような物)を書く(多分小3くらい)

    GBA買えなくて一時期ポケモンから離れる

    GBA買ってポケモン熱再燃(中2の後半かそこらだったと思う)
    ルビサファを舞台とした小説書く

    サイト開く(2004年12月30日)
    長編とその付属の短編ばかり書いていた

    この辺りで数本短編を書く(高校生)←←←☆

    長編を書きなおしてみる(受験終わってから大学2年くらいまでの間)
    ついでに短編の構想をいろいろと考えてみる

    ちゃんと真面目に短編を書いてみる
    マサポケ初投稿(大学1年4月)

    現在


    以上の流れで、どこを処女作とするか……と思ったんですが、昔書いた小説なんて全然覚えてないし、長編は個人的な意向でサイト外ではあまり出したくないし。
    ってなわけで、現存している中で一番昔の、上で☆マークがついてる時に書いた奴を。
    その後ちょこっと改訂しましたが、……改訂奴の前を持ってきました。

    ただひとつ言えるのは、何だかんだ言って自分全然成長してねぇなってことですね! 残念!


    というか、昔の作品であるってこととはまた違う恥ずかしさなんだよな畜生。



    【厳密には処女作じゃないのよ】
    【長編はサイトに行けば読めるのよ】
    【リア充爆発しろ】





    +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++





     気付かないほうが、幸せだったかもしれないのに。
     知らなければ、苦しまずに済んだのに。
     抱いてはいけない、想いだったのに。

     遠い遠い昔の、物語。




    FOLKLORE
    ―Myth of Ocean and Ground―




     今から、何万年も昔のこと。
     陸と海を、それぞれ司る者がいた。
     大地の化身、グラードン。
     大海の化身、カイオーガ。

     海と陸は、常に繋がっていながら、決して混ざり合うことはない。
     片や大地。片や海。互いに相反する者同士だから。

     グラードンとカイオーガは、出会ったその時から、互いを憎みあい、争いを始めた。
     その実に流れる血が求める、本能という名の宿命だった。


     争いは、何百年、何千年と続いた。
     『殺せ!』と命じる互いの本能と、そして。

     出会った時に生まれた、わけのわからぬ感情を整理するために。


     そのわけのわからぬ想いの正体がわからず、グラードンとカイオーガはますます荒れた。


     相手が憎く。殺したいほど憎く。

     それなのに……強く、抱き締めたい。

     争うのが、辛くて。
     会えるのが、嬉しくて。
     でも、争うことはやめられなくて。
     顔をあわせれば、憎くてしょうがなくて。


     長い長い時の中で、2匹はようやく、その気持ちの正体を知った。


     ……ああ、そうか。
     これは……『恋』なんだ。


     天を司る者がいる。
     天空の神、レックウザ。

     グラードンとカイオーガは彼にそれぞれ、涙ながらに、自らの心の内を語った。


    「辛いんだ。レックウザ。」

    「辛いんです。レックウザ。」

    「初めて会った時から、憎い憎いと思いながらも……ひどく艶やかで、美しいと思ってしまった。今もそれは消えるどころか、ますます強くなるばかりだ。」

    「真夏の太陽に、やられてしまった時に似てるんです。鋭く強いあの瞳が、ずっと頭から離れないんです。憎い相手のはずなのに、時々無性にすがりつきたくなるんです。」

    「抱いちゃいけない想いだとはわかってる。」

    「叶わぬ想いとは、わかってるんです。」


     それでも……愛しい。


    「顔をあわせる度、本能が叫ぶんだ。『殺せ!殺せ!!』って。でも……俺にはどうしてもそれが出来ない。」

    「彼を殺すことなんて出来ません。でも、本能には逆らえない。ずっと、苦しいんです。葛藤が、治まらない。」

    「愛しいのに、本能が邪魔をする。」

    「傷つけても、つけなくても、苦しくてたまらない。」


     だから……レックウザ……。


    「争いを終わらせることは……出来ないのか?」

    「もうこれ以上……苦しみたくないんです。」


     レックウザは初めて、2匹の心の内を知った。
     互いに愛し合っていること。
     まだ、互いの想いを知らないこと。
     そして、争いを終わらせたいと願っていること。

     レックウザは、2匹それぞれに、全く同じ答えを告げた。


    「……無理だ。」


     陸と海は、決して混ざり合わない。
     互いを消しあい、互いを削りあい。
     どちらかが増えればどちらかが減り、どちらかが減ればどちらかが増える。
     互いの争いは、この世の定め。
     この世が出来た時、既に決められていたこと。
     どちらかが無くなるまで、争いが終わることはない。


     争いは、なおも続いた。
     自らの想いを心の底へ押し込め、相手の想いに、互いが気付くこともないまま。

     一進一退の争いは、どちらが勝るということもなく、ただ互いの体力を削りあうだけだった。
     大地は荒れ、海は啼き、世界は燃え盛る炎と吹き荒れる嵐に包まれた。


     レックウザは悲しかった。
     想いあう者同士が争うことが。
     己が、何も出来ないことが。

     宿命を、恨んだ。


     レックウザは悲しんで、両の目から、涙を一粒ずつこぼした。
     地上に落ちたその涙は、紅色と藍色の、光り輝く2つの宝珠になった。
     その宝珠の放つ光は、傷付き疲れたグラードンとカイオーガを、労わるように包み込み。


     2つの神は、眠りについた。


     グラードンは地の奥深くで。
     カイオーガは深海の奥底で。

     もう二度と、目覚めることのないことを、
     もう、憎みあわずに済むことを、
     長い長い夢の中で、相手を抱き締めていられることを、
     祈りながら。


     ―――……あれから、どれほどの月日が流れただろう。
     レックウザはずっと、心にわだかまっていることがあった。


     今の状態も、一時しのぎに他ならない。
     いつ解けるかわからない封印。
     次目覚めたら、彼らはまた戦いを始めるだろう。
     また、同じように苦しむことになる。


    「……なるほど。確かに、ね。」

     レックウザと話しているのは、桃色の、小さなポケモン。名前は、ミュウ。
     ミュウは小さな手で、自らの長いしっぽを弄びながら、レックウザに言った。

    「……でも、僕は……海と陸が戦わなきゃならないとは思わないけど。」

     驚くレックウザに、ミュウは語った。


     豪雨が続けば大地は削られ、海は増えるけれど、削られた大地は波に運ばれ、海の底に降り積もり、再び大地となる。
     日照りが続けば海は干上がり、大地は増えるけれど、蒸発した海は雲となり、雨となって降り注ぎ、再び海となる。
     海と大地は、争っているんじゃない。
     互いに削りあい、互いに消しあいながら、バランスを取り合い、常に、共存している。


    「争いは、確かに宿命かもしれない。だけど僕は、きっと他に道があると思う。」
    「だが……俺たちは、宿命を変えられない。」

     うなだれたレックウザに、ミュウはクスッと笑って言った。

    「ねえ、君はめったに地上に下りないから、知らないかもしれないけど。地上には、人間っていうとっても面白い生き物がいてね……。」



       ―――その昔。
       陸と海は互いに憎みあっていた。

       宿命に逆らえず、しかし、互いに想いあいながら。

       天は悲しんだ。
       宿命を、そして、何も出来ない己を、恨んだ。

       海は叫び、陸は吼え、天は泣いた。

       そして、最後の争いから、長い年月が流れたのだった―――



     遠い未来
     語られることになるだろう、こんな『民話<Folklore>』には
     彼らのことは何と書かれるのだろう。

     この先、ずっと未来
     幸せであって欲しい、と
     ただ、願う




    ―――再び目覚めたグラードンとカイオーガが、ある人間の子供によって救われることになるのは、もう少し、後の話だ。






    The end


      [No.941] ファントムガール 投稿者:紀成   投稿日:2010/11/08(Mon) 19:25:34     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    魂とは、生きる者の源。
    誰かと誰かによって生み出され、その魂はその誰かと誰かの子となる。

    そう、その魂は望まれて生まれて来た。
    全ての魂がそうであって欲しい。
    だが、

    そうではないから、私は今日も街をさ迷い歩くのだろう。
    そして、その街で彼女と出会ったことは

    偶然か 必然か
    それとも・・

    私の名前はモルテ。ギラティナにさ迷う魂を送り届ける仕事をしている。
    近頃の人間はメンタル面が弱く、少し街に行くだけで魂が十個は見つかる。
    感情はそれぞれ。泣く、怒る、無表情。中には笑っている物もあったが、それはごく僅かだ。
    大抵この世に未練は無いため、仕事は簡単だ。

    そう、彼女に出会ったことを除いては。


    彼女は魂ではなかった。肉体はちゃんとあったし、歩くことも表情も分かった。
    ただ違ったのは、私が見えたということか。
    魂とならなければ、私の姿は見えない。霊感の強い者ならば、気配は分かるかもしれないが、姿は分からない。
    そんな私を彼女は、

    「こんにちは。新入り?」

    新入りと言ったのは他でも無い。彼女の周りには、ゴーストタイプのポケモン達が彼女を守るように集まっていたのだ。
    ゴース、ゴースト、ゲンガー、ムウマ、ムウマージ、カゲボウズ、ジュペッタ、そして私の進化前であるヨマワル、サマヨールなど。
    彼女は隣にいるデスカーンの手を握っていた。
    それはもう、友人と言っていいくらいに。
    私が驚いていると、彼女がニッコリ笑った。

    「私さ、見えるんだよね。そういうの。それだけじゃなく、懐かれるの」


    私を見ると、さ迷う魂が怯えたように逃げていく。
    私は彼女と一緒に歩いていた。道を通る度、散歩中のポケモン達が怯えたように後ずさる。
    「私さ、人間のトモダチいないんだ。この子達だけ。最初は戸惑ったけど、今はむしろ嬉しいの」
    「何故」
    「だって、他の人には見えない者と話したり、遊んだり出来るんだよ」
    無邪気に笑う。偽りでは無い、本気で言っている。
    「それに、」
    スッと笑顔が消えた。後ろを振り返る。途端にゴーストタイプ達が直立不動になった。
    「私じゃ出来ないこと、してくれるんだよね」


    広い湖の前まで来ていた。彼女が近付いた途端、プルリルとブルンゲルが♂♀両方現れる。
    「驚いた。本当に懐かれているんだな」
    「現に、貴方だって来たじゃない」
    四匹が加わった。柵に腰掛ける。ポケットを探り、棒キャンディを取り出した。
    「デスカーン達の好物なの」
    湖を見つめ、呟く。
    「私、この子達と付き合って分かったの。人間は何も進化しない。失敗しても学ばないし、また過ちを繰り返していく」
    その言葉が胸に刺さった。
    「だから、私は人と付き合うことをやめたの」
    彼女は笑う。冷たく笑う。

    「ねぇ、これと言ってはなんだけど・・
    抱きしめさせてもらってもいいかな」
    唐突なお願いに私はひっくり返りそうになった。それを見て彼女がちょっと残念そうに笑う。
    「やっぱダメか」
    「いや」
    私は彼女を抱きしめた。生きている鼓動が伝わってくる。生きた人間に触れるのは久しぶりだ。
    「あったかい・・」
    彼女の目から、雫が一つ、また一つと流れていく。
    「誰かにこうしてもらいたかった」
    彼女が、微笑んだ。さっきの笑いとは違う、純粋に綺麗な笑顔だった。
    「私、カオリっていうの。多分貴方は私とは来れないだろうけど、何処かでまた会いましょ」
    そう言うと、カオリは私に背を向け、ゴーストタイプ達の中に消えてしまった。


    私はしばらく、そこに留まっていた。


      [No.940] 風合瀬の宴  上 投稿者:クーウィ   投稿日:2010/11/08(Mon) 16:38:02     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    主人が小ぢんまりとした定食屋に入っていった時、彼は何時も通り、腰に付けられたモンスターボールの中で、静かに外の景色を眺めていた。
    外の強い日差しに慣れた目に、やや薄暗い建物内部の年季の入った内壁が、実際以上に古ぼけた印象を伴って飛び込んで来る。

    ――彼の入っているモンスターボールは特別製で、ボールの中に収まっている時でも、周囲の様子を広範囲に見渡すことが出来た。  
    何でも主人が話してくれた事には、まだ卵だった彼を譲り受けた時、彼を託した相手の望みを受け入れた結果が、こんな特製のボールを使っている理由なのだと言う。

    「お前に『色々な世界を見せてやってくれ』って、頼まれたからな」 

    その話を聞いた時、彼の主はそう語りながら、とても懐かしそうな表情を浮かべていたのを、今でも鮮明に覚えている。
    普段余り他人(よそびと)について語ろうとはしない主人が、家族や幼馴染でも無いあかの他人に対してそんな反応を示したのが、珍しかったから――

     
    定食屋の中は、何時も通り空いていた。  ……確かにここで出される料理は中々の物だったけれども、入店資格者を厳しく制限しているらしく、常に客の入り自体は非常に悪い。
     
    しかし最近の彼の主人は、日に一度は必ずと言って良いほど、ここに足を運ぶのだ。  ……何でも、ここはその筋では中々有名な穴場の一つで、古馴染みの実力者達と顔を合わせるには、ピッタリの場所なのだとか。

    そう話してくれた時の主人の愉しげな表情を、彼は店内に落ち着いた視線をめぐらせながら、脳裏にボンヤリと思い浮かべる。
    ――主人があれ程表情を輝かせるのは、そう無いことだ。
      
     
    普段から一風変わった所のある彼の主人が、最も幸せそうな表情を見せる時―― 

    それは、人里離れた森や山の奥で静かにくつろいだり、川のせせらぎや風の音に耳を傾けながら、何か美味しい物を食べている時。 
    夜半満点の星空を、彼ら旅の仲間達と一緒に、ただ無心に見上げている時や、うららかな陽気の下、柔らかい草むらや暖かい大岩の上で、昼寝をしている時。  

    ――それにもう一つは、全力を出し尽くす事が出来る凌ぎ合いに、巡り会えた時だ。
     
    卵の時からずっと今の主人と共に生きて来た彼には、主人が何時も抱えている心の疲れや悩み、孤独――それに温和な心根の奥底に潜ませている、人並み外れた野生と荒々しい闘争心の蠢く様までが、手に取るように分かった。
    ……まぁ、それについては彼の種族がルカリオだったと言うのも、大きいのだけれど。

    ――生まれた時から旅の空の下で、食事も宿りも殆ど野外。 ……例え何処かに落ち着いた所で、二週間と持たない。 
    移ろう季節がダイレクトに身に染みる、漂泊の日々。 旅から旅のポケ勤めと、合間に挟まる厳しい修行。
    故郷にろくに帰ろうともしない主人の下、生みの親の顔すら知らない彼は、そうやってずっと生きて来た。
      
     
    ……しかし、それを辛いと思った事は、一度としてない。

    主人はその言葉通り、彼に色々な世界を見せてくれたし、様々な経験も積ませてくれた。
    修行も他の手持ちポケモン達に任せ切りにはせず、時には自らの身を以って彼に『手』を教えてくれたし、終わった時には出来る限りの思いやりを持って、手当てをしてくれた。
    身に付けさせて貰った知恵の類は数知れず、考え方や心構えの程も、『師』と呼ぶに相応しい薫陶を、未だ若い身であるにもかかわらず、彼に対して与えてくれた。

    そして何より、何時も心の底から、彼ら手持ちのポケモン達に、『仲間』として接してくれた。  ……彼らを使う『主人』ではなく、同じ空の下で共に生きている、『仲間』として。

    ――卵の殻を突き破って、この広い世界を始めて知った時……一番最初に出会った相手が、今の主人だったと言う事。
    それを幸せに感じた事は幾度もあったが、今の生き方を辛いと思ったり、変えたいと念じたりした事は、未だに一度たりともありはしなかった。
      
     
    そしてそんな彼の主人は、今日も誰か、見知った顔を見つけたらしい。

    ボールの中からでもはっきりと感じ取れるほどに、ぱっと喜びの感情を開花させた少年トレーナーは、そのまま早足に店の奥にあるカウンター席まで進んで行って、そこに座っていた人物に対し、控えめながらも丁寧な口調で、声をかける。
    彼の入ったモンスターボールは少年の腰の辺りに位置している為、彼は直接は、相手トレーナーの姿を見ることは出来ない。
    ……しかし、どうやら相当の手練であるらしい事だけは、主人の雰囲気やその余裕のある受け答えの程からも、十分に窺い知る事が出来た。

    やがて、程なく弾んでいた話も纏まったらしく、彼の視界はぐるりと180度反転して、主人の少年はもと来た道を踏み辿り、店の外へと歩み出て行く。
    それを受け、店に来ていた他の客達も、数こそ少ないものの一様に注文した品物を置いて席を立ち、これから始まる出来事に対する興味も露わに、出て行く両者に付いて来る。 

    ――いよいよ、今日も始まるのだ。  ここ数日、一日一度はお約束の様にやってくる、鍛え上げられた精鋭同士のぶつかり合い――真剣勝負の幕開けである。 
     
     
     
     
    店の裏に設けられている、小さな食堂には似つかわしく無いような、しっかりした造りの試合場に着いた時――そこで初めて彼は、相手トレーナーの姿を目にする事が出来た。
    特徴的な帽子を目深に被った男で、何やら怪しげな雰囲気を纏った、奇妙な人物であった。
    しかしその一方、その人物に同時に見て取れたのは、傍目にも自信の程が窺える物腰と、対戦相手を真っ直ぐに見つめている、静かな瞳。  ……やはり非凡な相手である事だけは、確かなようである。

    試合が始まる前に、先ず彼の主人が腰のボールの一つに手を触れると、いたわる様に声をかけた。

    「ルパー。 悪いけど今回は、控えに回っててくれ。」

    それを聞くや、少年の指が保持しているモンスターボールが、無念そうにかたりと揺れる。  ……どうやら今回の試合形式は、5on5であるらしい。  
    6匹の仲間達の中から、控えに選ばれたポケモン―ビーダルのルパーが浮かべているだろう表情を思い、彼は心の中で軽く苦笑した。  ……彼にも、その気持ちは痛いほどに良く分かるからだ。

    主人と相手トレーナーとが改めて向かい合い、寸時お互いの表情を確認しあった両者が、判定役を買って出た、食堂の老店主の宣言に合わせて同時にボールを投げ合った所で、試合が始まった。
     
     
     
    最初に主人が場に繰り出したのは、黄緑色の四足獣―常にチームの先発を務める、リーフィアのコナムであった。
    対する相手が送り出して来たのは、真っ白い体に黒い爪と顔、それに三日月を思わせる、鋭利な形状の角を備えた獣―悪タイプの災いポケモン、アブソルである。

    互いに似たような姿勢で疾駆し、鋭い斬撃を得手とする二匹のポケモンは、それぞれの姿を確認するや否や、剥き出しの闘志も露わに、逸り立ちつつ主人の指示を待つ。
    ――タイプの相性は、現状況ではトントン。 故に双方とも、今は引く気配を見せていない。
    主人である少年の指示も、交代ではなくGo指令。  ――寸刻を置いて命を受け終わった両者は、間髪を入れず行動に移る。

    最初に動いたのは、リーフィアの方。  ……普段は争いを好まぬ大人しい彼女だが、あの主人から特に見込まれて『栄えある先鋒』を任せられているだけあって、こう言った場では一転して激しい気迫を見せ、大体何時でも先手を取って、自らの手で戦端を開く。
    無数に放たれた『タネマシンガン』が、一帯を激しく掃射しながら、アブソルに襲い掛かった。

    対するアブソルの方は、踊るような身のこなしでそれに対応。 雨注される小さく硬い植物のタネを、かわせる物はかわし、避け切れぬ物は身に受けつつも堪えながら、徐々にその動きの程に、凄愴な凄みを加えていく。
    ボールの中で様子を見ている彼にも、一種の戦慄が走るほどまでに戦意が高まった、次の瞬間――アブソルは放たれた矢の様な勢いで、真っ直ぐにタネを発射し続けているリーフィアに向けて、疾走を開始した。
    不気味に光る鋭い鎌状の角が、体に似合わぬ強靭な重みを伴って、リーフィアの体に振り下ろされる。  ……『剣の舞』で強化された『辻斬り』の一太刀は、生半可な小細工ぐらいは平気で跳ね飛ばすほどの、凄まじい威力を秘めている。

    しかし、それを敢えて正面から迎え撃ったコナムの方は、素早く『タネマシンガン』を中断するや、自らの体をくるりと反転させ、流れる様な動きで己の尻尾を打ち振るい、相手の斬撃をからりと受けた。
    正面から受け止めるのではなく、横様に当てて勢いを流し、角の軌道をずらしてやり過ごすと、そのまますれ違う雪獅子の背中に向け、追撃の種礫を再開させる。  ……『居合い切り』の妙技に攻撃を外されたアブソルの体が、更に重なった立て続けの被弾に対し、ヨロリと揺らめいた。

    だがそれでも、先鋒の意地をかけた一対一の勝負は、そう簡単には終わらない。  
    素早く立ち直ったアブソルは、力押しが通じないと見るや、今度は反転すると猛烈に加速して、飛び来るタネを物ともせずに、リーフィアに体ごとぶつかっていく。
    流石のコナムも『電光石火』には反応し切れず、そのまま一撃をまともに受けて、草一本生えていない乾いた土のフィールドに、強かに叩き付けられた。  ……普段なら軽いはずのその一撃も、攻撃力が大きく上昇している今では、十分な威力が伴っている。
    ふら付く彼女に立ち上がる隙も与えないまま、アブソルが角を閃かせ、目にも止まらぬスピードは維持したままで、真っ直ぐ止めを刺しに殺到して来る。  ――そこで、勝負(けり)は付いた。

    突っ込んで来るアブソルの動きが、突然足元から伸びて来た無数の蔓に引っ掛かって、つんのめる様にして止まる。 そのまま黒い足元は、伸びる蔓に絡め取られて、全く身動きが取れなくなる。
    そこら中から生えて来た蔓状植物の『草結び』を、アブソルは必死になって頭部の鎌で切り払おうとするが、後から後からフィールド一面に蔓延って来る緑の洪水に、最早抗う術は無い。
    ――それを見て、対戦相手のトレーナーが状況不利と察したらしく、アブソルを手元に返して交代させようとするが、完全に蔓草に巻きつかれ、地面に縛り付けられた状態のポケモンを手持ちに戻す事は、不可能であった。

    対してこちらは悠々と立ち上がったコナムは、指示を受け取ると改めて体勢を整えたと見るや、今度は初めて自分から、相手に向けて突っ込んでいく。
    相手トレーナーの警告に、蔓にかかりきりになっていたアブソルが慌てて姿勢を戻し、間髪を入れずに頭部の鎌を光らせて反撃に出るも、最早何の意味も成しはしない。
    リーフィアの両前足に突き出た短い葉っぱが鋭く輝き、軽やかに踏み込みつつ『サイコカッター』をかわしたその体はタンと地面を蹴ると、飛び違え様に鋭い一撃を、動けぬアブソルの胴体に刻み込む。

    為す術も無く急所に『シザークロス』を打ち込まれた雪獅子の体が、戦う力を失って崩折れた時――漸く振り向いたリーフィアの意思によって、蔓草の戒めが解き放たれた。
    それを受け、倒れたアブソルをボールに戻した対戦相手が、次のポケモンを繰り出す。
    勝負の場に姿を現したリングマが、善戦空しく討ち取られた仲間の仇を取らんものと眦を決し、怒りに満ちた戦いの雄叫びで、蔓草に覆われたフィールドを揺るがした。
     
     
    しかし既に、地の利は完全にリーフィアのものである。
      
    新たに現れた大熊もまた、それこそ相手に対して身構える暇すら与えられないままに、フィールドを埋め尽くした蔓草によっての、『草結び』の洗礼を受ける。
    ――最初に乱射した『タネマシンガン』による場作りからの、『草結び』による一方的なイニシアチブの掌握。  ……地に芽吹くものの心を知り、その力を最大限に引き出すべく修行を重ねて来たコナムの、必勝パターンである。

    パワーを生かして荒れ狂う大熊の爪が、足元を覆い尽くす蔓を苦も無く『切り裂く』も、その都度放たれるリーフィアの『タネマシンガン』によって随時蔓草の海は強化され、リングマの動きは自由になるどころか、ますます雁字搦めとなっていく。
    やがて重なるダメージもあってか、リングマの動きが目に見えて鈍り、完全に蔓の中に膝を屈するに及んで、再びリーフィアは『タネマシンガン』を中止すると、先程と同じように『シザークロス』をお見舞いすべく、動けぬ大熊に向かって地面を蹴る。
    リングマの体はやはり完全にロックされており、交代しようにもボールに戻す事は叶わない。  ……それを理解しているのか、今回は相手のトレーナーもモンスターボールを構えようとはせず、ただ冷静な目付きで、黙って成り行きを見守っているのみだ。

    ――しかし場を見守るその表情には、焦りや無力感の類は、全く感じられはしない。  ……それに気が付いた事により、主人の腰のボールの中から戦いの様子を見つめていた彼は、微かな不安を覚える。

    案の定、今回は先程の様にはいかなかった。
    リーフィアが攻撃軌道に移った瞬間、突如としてリングマが、蔓草を引き千切って立ち上がったのだ。

    『シザークロス』の構えで飛び掛かるリーフィアを、リングマの逞しい腕がまともに捉え、情け容赦無く自分の足元に叩き落すと、続いて天に向けて雄叫びを上げ、生み出した大量の雪の塊を、立ち上がろうとするリーフィアに向け、勢い良く叩き付ける。
    怨み骨髄に達したと言わんばかりの、カウンター効果を乗せた強烈な『雪なだれ』が収まった後には、弱点を突かれて耐え切れず、力なく横たわるコナムの姿。
    倒れた彼女をボールに戻し、心からの労いの言葉を掛けた少年トレーナーは、続いて次のポケモンを、勝負の場に向け解き放つ。
    ……相手がノーマルタイプのリングマだったので、彼は内心自分が選ばれるのでは無いかと思っていたのだが、主人の手指は彼のではなく、別のボールを掴んでフィールドに投げた。
     
     
    ますます猛り狂うリングマに立ち向かう少年の二番手は、小さな白い体に水色のストライプが鮮やかな、大きな尻尾の電気リスだ。
    普通のパチリスよりも更に一回りは小さいかと見えるそのポケモンは、今度こそは自分が先手を取ろうと、大柄な体格に似合わぬスピードで殺到するリングマを確認するや否や、素早く生い茂る草の海に飛び込んで、姿を暗ます。

    そして直ぐに別の場所から顔を出すと、虚しくシャドークローを空振りし、草むらを薙ぎ払うだけに終わった大熊の背中に向け、膨らんだ頬袋の中身を、勢い良く吹き出した。
    『タネ爆弾』が背中に炸裂し、ダメージの分凶暴性を増したリングマが勢い良く振り返って、その血走った目を向ける頃には、既にパチリスは草のフィールドの中に首を引っ込めており、影も形も無い。

    そのまま更に幾度かに渡り、パチリスのテブリは必死に相手を探すリングマを嘲笑うかのように、あっちに顔を出し、こっちに姿を見せては、相手を翻弄しつつダメージを稼いでいく。
    ……チームで一番小柄で迫力に乏しく、傍目には悪戯好きの小リスにしか見えないテブリだが、実は仲間内では二番目の古株で、戦い慣れたその敏捷な身のこなしの程は、波導使いである彼を以ってしても、容易に捉える事が出来ないほどのもの。 
    見通しの悪い草むらの中で、縦横無尽に走り回る彼を捕まえる事など、敏捷さに欠けるリングマには、到底無理な相談であった。
     
     
    やがて相手のトレーナーも、このままでは埒が明かないことを悟ったらしい。
    反対側の手にもう一個のモンスターボールを素早く掴むと、リングマの巨体を手元に戻し様に、一瞬で控えポケモンと入れ替える。
    手負いのリングマに代わって場に現れたのは、巨大な四本足の鋼鉄獣、メタグロスであった。

    すぐさまテブリは、新たに現れたこの重厚な雰囲気の怪物に対しても、狙い済ました『タネ爆弾』の一撃を御見舞いする。
    しかし、鋼タイプな上に極めて強固な防御力で知られているメタグロスには、そんな程度の攻撃は、蚊が刺したようなもの。
    逆に繰り出された、反撃の『アームハンマー』に追い立てられ、草地の中を逃げ惑う破目になったパチリスを、少年はすかさず手元に戻して、次のポケモンを送り出す。

    フィールド上を走り回っていたパチリスが戻されると、メタグロスは次に繰り出されたポケモンの姿を確認もせずに、鋼鉄の爪が付いた太い腕を振りかぶって、現れた相手に向け一撃を放つ。
    草原を横様に薙ぎ払うようにして繰り出された『コメットパンチ』は、完全に点ではなく面での制圧を意識しており、如何に身が軽くとも回避は困難。 加えてその威力の程も、元より強力な技の破壊力に遠心力も相まって、生半可な力のポケモンでは、到底受け切れる物ではない。

    しかし新たに場に現れたポケモンは、防御・回避共に困難なその攻撃を、空中に飛び立つことで、難なく無効化した。
    次いで綿雲の様な美しい翼を羽ばたかせる彼女は、開いた口から紅蓮の炎を噴き出して、全てを跳ね返す強固な鋼の装甲を、熱の力で簡単に打ち破る。

    チルタリスの『火炎放射』がメタグロスを包み込み、その重量感溢れる体を地響きと共に地に横たえさせた事で、対戦相手の男の手持ちは、残り三体となった。

    男の表情がチラリと動き、賞賛を意味する淡い微笑が面上を走る。  ……対する少年の浅黒い顔には、全力を傾注して戦っている時にのみ現れる、精気に満ちた不敵な笑み。 
    ―― 一瞬の空白の間に、互いが求め合う物を交錯させた両者は、周囲の感嘆も歓声も耳に入らぬまま、再び盤面の形勢へと、己の意識を戻して行く。


     
     
    流れ行く者同士の競宴も、そろそろ酣(たけなわ)――

    交わった風は旋風(つむじ)を巻いて、互いに持てる限りの力を振るう。
    得られた機会を決して逃さず、勝負師は自らの意地と誇りを掛けて、周囲を巻き込み火花を散らす――
     
     
     
     
    ―――――

    我がメモ帳にのたくられし妄想、其の二。

    内容は、まぁ見ての通りです(爆)
    ……ただ、メインテーマはガチバトルではなく、ルカリオさんの個人(?)的な出来事です。  ……ほんとだよ?
    書いてる間に、流す心算だったバトルが膨らんじゃったのは否定しませんが……(汗)


    取りあえず、未だ書き終わっては無いのですが…一応出来た所まで上げておいても構わないかしら? と思い、ぶち込んでみました。  ……異論があられましたら御免なさい(汗)


    そいでは……


    【批評してもいいのよ】

    【描いてもいいのよ】

    【もち、好きに書いちゃってもいいのよ】


      [No.939] 特攻指令に殉じて5番機突入 投稿者:クーウィ   投稿日:2010/11/08(Mon) 16:26:50     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    爆弾スレッドに引きつつも、勇者の方々を見守るだけではオトコが廃る・・・

    突っ込みましょうか・・!  ポケモンストーリー千代に八千代に、爆滅玉砕万歳的思考回路で(爆)


    書いた時期:2009年7月
    当時の年齢:既に大学卒業済み   大学では『環境政策学科』に所属していた為、これまた文学とは全く縁が無かった

    それまでのストーリー創作歴:
    皆無。  強いて上げれば、中学の時国語のテストで『さんちき』のその後を書いたのと、高校の現文の授業で『羅生門』のその後のストーリーを創作したぐらい・・・(爆)

    執筆の背景、及び備考:
    当時は、二次創作の世界にすら全く縁がなかった。
    偶々『ポケモン不思議のダンジョン 空の救助隊』で、クリア後に一撃必殺により遭難し、掲示板に救助依頼を乗せた後、救助までの暇潰しに同掲示板の二次創作欄を覗いて見て、この世界(笑)を知る。

    救助要請の返答に2週間かかった為、その間に軽い気持ちで書き込んでみたのが運の尽き。

    内容については、ずっと組み立てていた『初代脳内妄想』(未だに活字化は成せていない・・・)の登場人物や設定を叩き台に、消滅した彼らのその後を描いたパラレルワールド的外伝。
    気まぐれの一発ネタであった為、題名は存在しない。

    世界観はポケダン空。  ……元々の登場人物達の意思が、別の世界のアルさん(創造神のお父様)に招かれ、新たにポケダンの世界に転生するというファンタジー要素MAXな繋ぎで、武器は使うわオリジナル要素が絶えないわと、内容の方も中々に世紀末。
    ――全体的にライトノベル路線を取っており、当時読んでいた上橋菜穂子さんの『守人シリーズ』や『狐笛のかなた』、白土三平の漫画・『カムイ伝』及び『カムイ外伝』の影響を色濃く受けていた事が窺える。


    ……尚、この後色々あった事により、改めてこの一発ネタは、ストーリーを二日で再編・でっち上げられて、一月後に連載へと姿を変える破目となる。

    現在は同掲示板にて、33話を終えた状態で絶賛擱座中(核爆)  ……これが書き手としてのトラウマである事は、論を待たない。
     
     
     
    ――――― 


    息切れがようやく収まった頃、突如として視界が開けた。

    「うわぁ・・・」
    そこは広いホールのようになっている空間であった。 壁のあちこちには光を発する石がはまり込んでおり、地面は主に平らな岩で構成されている。 

    「・・・(まるで誰かが作ったようなところ・・・!?)」
    そう思っていたそのとき、ピリマは部屋の奥のほうに細かい砂が敷いてあるのに気がついた。 と同時に、何者かが・・・余り大きくは無いが、それでいて腹の底から薄気味悪くなる感触が這い上がってくるような、そんな何かが闇の中に凝然とうずくまっていることにも・・・ 隣にいたティルスも、どうやらそれに気がついたようだった。
    ティルスが口を開く前に、それは音も無く立ち上がり、低い声で告げた。 

    「来たか・・・ 久々に来たものだな・・・ わしの名はソウカク。 この洞窟の・・・まぁ、番人といった所か・・・」

    「番人? それにソウカクって・・・ どこかで聞いたような・・・あ!!!」
    ティルスが思い当たったらしい。 同時にすくむ気配も伝わってくる。 

    「(これが・・・剣聖ソウカク・・・?)」
    実を言うと、ピリマは影が立ち上がる辺りからもう心臓をつかまれたかの様な感覚に襲われていた。 ソウカクから・・・かつて剣聖と呼ばれていたはずのポケモンから押し寄せてくるそれは、ゾッとするほどに不明瞭な・・・正確に言えば計りかねるほどつかみ所の無い気配だった。 それには闘気もあれば、殺気も混じっているのだろう。 だが、温かみのあるものは全く感じられなかった。 

    「ここに踏み込んだからにはそれなりの技量を持つ者だろう。 と同時にそれほどの者なら、例え修行者、探検隊、それに盗賊の類だろうとも、必要とされていることは分かってるはずだ・・・ ・・・そうすくみあがらずとも良い・・・仕掛けあうだけの覚悟が無いのなら、何もとって食おうとは言わぬて・・・」
    自分達が何故ここに来たのかを、ソウカクが知らないわけが無かった。 あるいは本音なのかもしれないが、どちらにしろ、今の自分達には無用の申し出だった。

    「なにを! そうはいかないぞ! こっちも後には引けないんだ!! みんなが待ってる・・・みんなが必死に戦ってるんだ! 僕らはどうしてもこの先に行くぞ!」
    ティルスの返答を聞いて、ソウカクはわずかに口元を緩めた・・・様に見えた。 無論、それが彼にまともな感情が残っている証なのか、それとも単に闘えることへの満足をあらわしたものなのかは伺えるものではなかったが・・・

    「では相手をして進ぜようか・・・ 久しぶりに剣戟の分かる輩と遣り合えるとはうれしいかぎりよ・・・」
    同時に、ソウカクから押し寄せてきていた不明瞭な気配が一変した。 あまりの豹変振りに、ピリマは一歩も動けぬまま、懸命にあえぎをこらえていた。

    「(立ち姿だけで読まれてる・・・ 勝てるの・・かな・・・?)」
    事実、勝てる気は毛ほども湧いてこなかった。 こんな洞窟の奥にまでわずかに吹き込んできている風から、逃げるようにと懸命に語りかけられているのを感じながら、ピリマは隣のティルスがどうなっているのかも感じられていなかった。 そのとき、唐突にティルスの声が耳に入ってきた。

    「物凄いね・・・ でも、負けられない!! がんばろう、ピリマ!」
    少し間をおいてピリマがうなずいた。 そして、うなずいたときにはもうおびえの色は見えなかった。 そう、いつだって・・・ いつだってティルスはこうやって自分を引っ張ってくれているのだ。 いつもティルスは、「僕はピリマがいるから・・・」と、そういって自分がいかにピリマに頼っているかを口にする。 けれども、自分もいつもティルスに支えられているのだ。 たまたまいつもティルスが先に弱気を口にしているだけなのだから・・・

    うなずきあった二人が前に出た時、戦いは始まった。

    ソウカクが無言で前に出てきた。 同時にティルスは左に走り、ピリマも竜角を腰に差しつつ後を追う。 二人に対して体を向けるのみのソウカクに対し、ティルスが先制の火炎放射を吹きかける。

    「・・・・」
    無言で身をかわすソウカクに対し、今度はピリマが仕掛ける。 

    「ティルス!」
    合図と共に打ち出されたのは火炎放射、それに間髪をいれずティルスが火炎放射を合わせる。 交錯する火炎放射は、お互いの熱によって不規則な軌道を描きながらソウカクに向かった。

    「まねっこか・・・ 当たるも八卦・・・ん!?」
    難なくかわしたソウカクの目の前に、火炎放射によって気配を隠されたピリマが切りかかった。 構えはすでに、得意とするいつもの型になっている。 火炎放射から間髪をいれずに、水平切りが一閃した。 
    「・・・・」 
    が、ソウカクはわずかに身をよじるだけで難なく外し、次に向かってきているティルスに向き直った。 

    「しまった!?」
    ピリマに恐慌が走った。 ソウカクは慌てて体勢を立て直すピリマには見向きもせず、まっすぐ突っ込んできたティルスを余裕を持って迎え撃つ。 

    キャーン!! と甲高い音を立てて、ティルスの手から鉄角が跳ね飛ぶ。 同時にソウカクは体を回し、無理な体勢から打ちかかってきたピリマの剣を難なく巻き落した。慌てて飛び下がる二人に対し、それぞれの得物を蹴り返しながらソウカクは無表情に言う。

    「もう一回だけだ。 次はない・・・」
    くぐもった声でソウカクがつぶやくのを聞きながら、再び間合いを取りつつ、ピリマは必死に次の手を考えていた。 もしソウカクがその気なら、今の攻防で確実に二人ともやられていただろう。 ティルスの方を見ると、ティルスも青ざめた顔をしていながらも、必死に次の手を考えているらしい。 ピリマの方を見ると、自分の手を見てからにやりと笑った。 これで十分だ。 ピリマも次で決める覚悟を決めた。 

    ピリマは竜角を拾うと目を閉じた。 出来るだけ静かに呼吸を抑え、自分の存在を周囲の大気に同化させていく。 体の中から様々なものが流れ出ていくような、いつもの感触がやってきた。

    「(もっとだ・・・もっと完全に・・・)」
    今回はあの時とは違うのだ。 今度の相手は本物の剣客である。 あの時は、追い詰められていたとはいえ、ディアルガは所詮剣の心得の無い素人である。 今度の相手は剣聖なのだ・・・ やがてゆっくりと目を開いたピリマは、やはりゆっくりとパートナーの方に視線を合わせてうなずいた。 ティルスも、すでに別人のように気配を変えている相棒にうなずき返す。 準備は整った。 二人が振り返ると、身じろぎ一つせず待っていた剣聖は静かに構えを変えた。 

    又も最初に仕掛けたのはティルスだった。 ただし、今度は直接ソウカクを狙うのではなく、ソウカクの周りを中心に、あてどもなく火炎放射を吹きつける。 一方のピリマは、ティルスの方に注意を払うでもなく、少しずつソウカクににじり寄っていく。 ピリマがその歩みを止めたとき、ティルスも火炎放射をやめた。

    「(どういうつもりか・・・)」
    ただでたらめに火炎放射を吹いているヒトカゲには目もくれずに、ソウカクはもう一方のリオルから目を離さなかった。 こちらは先ほどとは気配がまるで違う。 闘志こそ感じるものの、存在自体、いうなれば、気配や心理、それに足音すら、鍛え上げたその聴覚を持ってしても、聞き取れなくなっているのだ。 かつて同じような業を持った弟子がいたのを記憶の片隅に感じたそのとき、突然ヒトカゲが視界から消えた。
     
     
    ヒトカゲが視界内より消えたと同時にリオルの方が前に走り始めた。 このときになって、ソウカクは完全に相手への認識を改めるに至った。 リオルの動きは予想を超えて掴み難かった。 姿こそ見えるものの、気配を追うことが出来ない。 視覚だけに存在する像は、まるで蜃気楼にも似ていた。 
    「蜃気楼?・・・!」
    そのとき、剣聖の脳裏には、次に予想される戦法がどのようなものか電光のように閃いた。

    ピリマは竜角を握り締め、飛ぶように走った。 ソウカクの撃尺に入るまでは3呼吸ほどの間もない。 その間合いに踏み入る刹那、ピリマは後ろに跳んだ。 繰り出す技はまねっこ・・・!

    リオルが後ろに跳ぶと同時に、激烈な温度の火炎放射が繰り出され、ソウカクを襲った。 まねっこであることが理解できると同時に、その温度が予想を遥かに超えて高温である事に驚き、尚且つあなをほっているヒトカゲが予め地中で火炎放射を繰り出していたことへの読みが当たったことに満足した。 が、それをかわして、着地時の追撃に移ろうとした次の瞬間には、それは驚愕へと変わった。 

    ピリマが宙を跳んだ直後、ティルスがあなから飛び出した。 後ろに跳んだピリマは、まねっこを繰り出した後、間髪をいれずにティルスを蹴り、刃を構えてソウカクへと突っ込んでいく。 燃え盛る炎の力を借りた灼熱の火炎放射、その熱によって3体に増えたピリマはまっすぐに、出足をくじかれて体制を崩したソウカクへと殺到した。 

    突っ込んでくるリオルを迎撃する時間的な余裕は、ソウカク以外のポケモンには存在し得なかっただろう。 しかし、幾多のポケモンをして剣聖と言わしめた彼には、それでも十分な時間だった。 迫り来る3つの影に対して、彼は真空波をも伴った、高速の水平切りを放った。 3つの「かまいたち」は、狙い過たず3匹のリオルを両断する。 が、しかし、そのいずれにも手ごたえはない。 一呼吸あるかないかの内に、これだけの情報に接した剣聖は、反射的に・・・むしろ本能的に・・・何も見えていない空間に対して、己が胸の辺りで防御を構えた。 

    突っ込んだピリマ・・・姿を光の屈折によって紛れ込ませていたピリマは、ソウカクの信じられないほど的確な防御に対し、防がれたその刃によって、突っ込んだ勢いでわが身を斬らぬようかわすので精一杯だった。 着地直後には追撃を掛けられないと判断するや否や、彼女は一番近い壁に向けて跳んだ。 ピリマのでんこうせっかをかわしたソウカクに対し、ピリマによって蹴りだされたティルスは、まだ少し遠い距離にもかかわらず、すでに攻撃の態勢に入っている。 自らの吐いた炎の横に立った彼は、満身の力を込め、気合と共にシャドークローを繰り出した。

    明らかに射程外であるヒトカゲのシャドークローは、自らの吹きだした炎をくぐることにより、巨大な威力を持つであろう炎のツメとなってソウカクを襲った。 と同時に、後ろから壁を蹴ったリオルが、再度襲撃を仕掛ける。 しかし、同士討ちを恐れて微妙に時間差の有る攻撃は、ソウカクにとっては余りにも大きすぎる、愚劣極まる行動であった。 

    ファイアークローを出し終えたときティルスが目にしたのは、自分に向けて突っ込んでくる剣聖の姿だった。 目の端に攻撃を捨て置きにかわされ、慌ててフォローに入ろうとするピリマの姿を捉えつつ、ティルスは今の自分に出来うる限りの速さで、シャドークローを剣聖目掛けて繰り出した。 

    至近距離に踏み込んだソウカクは、難なくヒトカゲのシャドークローをかわすと、いあいぎりでヒトカゲを逆袈裟に斬り上げる。 
    「が・・・!!くぅ・・・」 
    力なく呻いて倒れるヒトカゲに背を向け、彼は後ろから駆けつけるリオルに向き直った。

    目の前で・・・目の前でティルスが斬られた。 
    「ティルスゥゥ!!」 
    叫びながら打ち込んだ一撃は、既に向きを変えていたソウカクによって呆気なく弾き返された。 続いて頬をかすめた一撃に、思わず跳びのいたピリマに向けて、彼は無感動に言い放つ。 
    「急所は外した・・・血脈は皮一枚だ・・・ 暫くは手当てすれば間に合うだろう・・・保障する。 ならば、お前が次に取るべき行動はなんだ・・・」

    跳びのいたピリマは、ソウカクの言葉を聞くと体勢を立て直した。 
    「(そうだ・・・なら、自分が勝たなければ・・・勝たなければティルスは・・・)」 
    心を落ち着けた。 
    「力は意志から生まれる。 そして、感情に流されすぎると聞こえないものも有る。 意志の力とは何か・・・その境目を見極めることもまた、修行の眼目だ・・・」とは、師であるエヤムの言葉だった。 幸い、相手は待ってくれるようである。 ピリマは呼吸を沈め、「境地」の状態を存続することに意識を集中した。 

    やがてピリマが目を開くと、ソウカクがまた無言で構えを改めた。 
    「(・・・こっ・・・これは師匠の・・・)」 
    ソウカクが取った構えは、手に持った得物を水平に構える、師であるエヤムが鍛錬を付けてくれるときに好んで用いていた構えだった。 ピリマの脳裏に、今更ながら目の前のポケモンが自分の師匠の師であることが痛感される。 
    「(でも、付け入る隙は必ず有るはず・・・)」 
    しかし、実を言うと、師との鍛錬でも、ピリマにはこの構えを破れたと実感したことはなかった。 
    師はいった。「この構えは、攻勢に出るときは一度振り上げる動作が必要になるため、攻めるには全然向いていないと言ってもいいかもしれない。 だが、一方でこの構えは、常に無理なくまもるの状態に自分をおくことも出来る。 破るなら、後の先を取る他はないだろう」

    「(後の先・・・)」 この相手にそれが可能なのかは、正直ピリマ自身にも自信はない。 だがしかし、今自分は、現在出来うる限り最高の状態にあった。 同時に、相手もそれなりに消耗しているのが見て取れた。 心を落ち着けてみれば、先ほどからの攻防で、ソウカクの体のあちこちが焼け焦げているのが分かった。 恐らく、守りの構えを取ってはいるものの、早期に決着をつける腹心算であることは疑いないだろう。

    動かぬリオルの目を覗き込みつつ、ソウカクは次の攻防を頭の中で探っていた。 先ほどのヒトカゲとの攻防で、全身に多少の火傷を負っている。 少し重く感じる体の感触を味わいつつ、ともすれば笑みがこぼれそうになるのに多少の不快感を感じながら、彼は長い経験と、自分の持ち手をすり合わせていた。 全く誰が予想しただろうか? たった2匹の、まだ年端も行かぬようなヒヨッ子に、ここまでのことをやってのけられるとは・・・ が、ふと、今自分が抱いている感情に考えが及んだとき、唐突に彼の表情は、再び能面のような凍りついたものに立ち返っていた。

    ソウカクの気配が一変したのを感じた直後、、ピリマは再び地を蹴った。 一直線にソウカクに向けて走りつつ、繰り出す技に備えて、ピリマは足に力をこめた。 

    リオルが動き出した。 今回は一直線に距離を詰めてくる。 撃尺の間合いに入る直前、その姿は掻き消えるように彼の視覚から逃れ去る。 気配が読めずとも、長い経験から、彼は自分がとるべき受けの構えへと体勢を変えた。 が、一瞬の後に訪れるはずの衝撃はなく、代わりに彼の視界の隅・・・それも至近距離に、姿勢を低く保ったリオルの姿が飛び込んできた。  

    でんこうせっか後の勢いをそのままに、ピリマは下段から斬り上げの太刀を使った。 弾かれるや否や、今度はそれを斬り下ろす。 刀身が普通の剣より短い竜角は、素早い動きが可能なものが扱えば、至近距離ではどんな大業物にも勝る強みを発揮する。 続く2度の斬撃も、受けられはしたものの、依然攻勢の主導権はピリマの側にあった。 5度目の攻撃を受けたとき、ソウカクの体勢が変わった。 距離をとろうとする引き足に遅れず付いてきたピリマに対し、ソウカクのいあいぎりが一閃する。 かわした直後に撃ちかかろうとしたピリマに、ソウカクの太刀が懸河の勢いで落ちかかってきた。 かわしたその体に、下からスピードの倍加した一撃が跳ね上がってくる。「(つばめがえし・・・!)」 
    とっさにかわそうとしたがかわしきれず、反撃のためにおいてあった太刀で受ける。 
    「くっ・・・!」 
    手から得物を弾き飛ばされかねないほどの強烈な衝撃に、ピリマは軽く呻いてバランスを崩した。 

    体勢を崩したリオルに対し、ソウカクは振り上げた位置からそのままに片手切りを繰り出す。 副えの手で押し離した瞬速の剣を、崩れかけた体勢で有るにもかかわらず、リオルは一髪の差でかわした。 が、かわされた剣は、既に次の一撃に移っている。

    凄まじい勢いの切り下ろしをかわしたピリマに、間髪をいれず片手突きが襲い掛かった。 それが明らかに入念に編み出された、必殺の連続技で有ることを感じつつ、ピリマはそれを今度も一髪の差で・・・軽く顔をひねるだけ・・・でかわした。 「さながら水中に漂う一本の毛のごとく・・・ 己の存在を極小化し、周りの波紋・・・空気の流れに身をまかせる。 力によってかわすのではなく、力に自然と押しのけられるように・・・」 それが「境地」の太刀筋の基本だった。 突きをかわしたことによって生じた、ほんのわずかな隙に対して、ピリマは渾身の一撃を放った。 が、その瞬間、凄まじい衝撃が体の中心に沿って炸裂した。


    倒れたまま、傷ついた体をよじって、二匹の激しい攻防を見ていたティルスの目に映ったものは、ソウカクの懐に飛び込んだピリマが、ソウカクの強烈な翼での一撃に吹き飛ばされる光景だった。 その瞬間、ティルスは、自分の負っている傷のことも忘れて叫んでいた。

    衝撃を受けてからしばらく宙を飛んだ様に感じた後、ピリマは地面に叩きつけられた。 激しくバウンドした後に止まったが、最早体は動かなかった。 
    「オッ・・・かはっ・・・」 
    呼吸が苦しくなると同時に、口から血があふれ出してきた。 ティルスが自分の名前を叫んでいるのがぼんやりと聞こえる中、ピリマは必死に体を動かそうと・・・立ち上がろうともがいていた。 やがてソウカクの声がぼんやりと聞こえだした。 
    「お前は十分に闘った・・・ ・・・最後に名を聞こうと思っていたが、あちらの小僧が教えてくれたようだな・・・」 
    ソウカクがゆっくりと剣を振り上げる中、ティルスは自分の傷口が開くのにも構わず、必死にピリマの名を呼び続けた・・・

    ソウカクがピリマの体めがけて得物を振り下ろした瞬間、突然部屋の中の気配が一変した。 と同時に、奇妙な光がピリマを包むように現れ、ソウカクの剣は、その光・・・正確には、光が持っていると思われるものに受け止められた。 ソウカクは、最初の一瞬は驚愕した・・・が、一瞬の後には素早く3歩引き退き、もう平常の無感動な表情に戻っていた。 何故なら、それは余りにも身近だった・・・このような身の上になっても、未だに己の中でしっかりと刻み込まれている気配だったからだ。 やがて光がしっかりとしたポケモンの形をとり終わったとき、彼はうずくまっているポケモンに声を掛けた。 
    「久しぶりだな・・・」 
    ポケモンも答えた。 
    「お久しぶりです・・・師匠」

    ティルスは呆気に取られて成り行きを見ていた。 突然現れてピリマとソウカクの間に入った光から出てきたのは、自分達の師匠、エヤムだったからだ。 自分の方へちらりとエヤムが視線を移したのを受けて我に返った彼は、ピリマが無事なのを確認すると急に目眩を感じ、頭を地に落としてしまった。 

    「愚問だが・・・何を求めてきた?」 
    ソウカクの問いに対して、エヤムは落ち着いた口調で答えた。 ティルスもピリマも、今のところはまだ大丈夫そうだった。 
    「勿論、一手教えていただきに参上仕りました。 本当は我々三羽烏一同が揃ってお目見えしたかったのですが・・・ 何分今現在、我々の方も取り込んでおりましてね・・・ 声で久闊を交わすのみならば、今からでもできますよ。 なぁ、レイド?」 
    エヤムに答えるようにして、エヤムの手の内から声が聞こえた。 
    「レイドです。 ご無沙汰しております・・・師匠。 声音のみであいさつを言上する無礼、お許し下さい」 
    レイドのあいさつが終わると、ソウカクは少し表情を緩めたが、再び元の表情に戻って、エヤムにたずねた。 
    「それはどういうカラクリになっているのかな?」 
    「テレポートの結晶です」
    エヤムが答えた。 
    「師匠がここにいる、というのは、恐らく私の弟子達と貴方が闘い始めてだと思いますが・・・ついさっき知れたのです。 ですから、私達3匹は至急に会って相談し、ネイティオのメタカムと申す御仁とレイドとでこのテレポートの結晶を作り上げ、私が我ら3匹を代表してここに飛んだ・・・というわけです」 

    師のエヤムが口を閉じると、ピリマの耳に聞き慣れたメタカムの声が聞こえてきた。 「無茶をされるばかりで困る・・・ ・・・テレポートが完全に完了しないうちに動くなんて・・・ ・・・おまけに、座標位置を勝手にずらしおって・・・ ・・・大体、今すぐテレポートの結晶を作れという要請自体が・・・」
    「全くだ。 もしメタカムさんが協力してくれていなかったら、私だけでテレポートを制御できたかは疑わしい。 もし制御に失敗していれば、貴殿は壁に生き埋めになるか・・・最悪五体バラバラになって取り返しのつかないことになっていたんだぞ」 
    レイドの声もメカタムのそれに加勢している。 
    「まぁまぁ、それについては謝るから・・・ それに、やらなきゃ結局取り返しのつかないことになってたんじゃねぇのかい?ってね」 
    エヤムの反論に、2匹は沈黙した・・・少なくとも、沈黙した気配は伝わってきた。 
    次に聞こえてきたのはスキッパーの声だった。 
    「いいから黙れお前ら! 師匠の前で失礼だろうが。 エヤムもとっととやることやらんかい!! ・・・失礼しました、師匠・・・ 挨拶が遅れて申し訳ありません」 
    「全くそれもそうだ・・・ 師匠、お見苦しい所をお見せして・・・」 
    エヤムが詫びを入れると共に、彼は改めてソウカクに向き直った。

    「皆息災のようであるな・・・フフフ フム・・・やはりこの者らはお主のか・・・ ・・・では、久しぶりに一つ手合わせさせてもらうとするか・・・ この分なら、久しぶりに楽しめようて・・・」 
    ソウカクが小気味よさそうに笑う。 が、言葉とは裏腹に、彼が放つ気配や雰囲気は、相も変わらず全く温かみのないそれのままである。 そうした師に対し、これも全く動揺を見せずにエヤムが声を掛ける。 
    「再会を祝って・・・と言ってはなんですが・・・ 暫時時をいただけませんか? 弟子の手当てぐらいはしてやりたく思うのですが・・・」 
    「無論だとも・・・ せっかくの機会だと言うのに、お主がしがらみに気を取られたのでは困るて・・・」 
    エヤムの懇願を、ソウカクはあっさりと聞き入れた。

    うつ伏せになったまま体を起こせないピリマを、エヤムが気遣いつつ仰向けにした。
    「・・・これは先に多少なりとも傷を癒すのが先だな・・・ おっと、無理に喋るな。 もう少し楽になってから運んでやる。 はがねの翼だなこれは・・・ 肋骨がつぶれてワヤになってやがる・・・」 
    口を開こうとしたピリマを制し、エヤムは立ち上がると両の目を閉じた。 殆ど間をおかず、彼の周りに空気が渦を捲き始めた。 それは次第に輝きを帯び、やがて広い洞窟の部屋の中に心地よいそよ風となって吹きそよぎ始めた。 

    やさしげな輝きを帯びた風が、心地よい感触を伴って体を包み込んでゆくなか、ピリマは体を縛り付けていた重みが溶けゆくように消え、楽になってゆくのを感じていた。 強張っていた手の力が抜け、少しずつではあるが気力が戻ってくる。 と、いきなり背中の下に何かが差し込まれ、体が宙に浮いた。 驚いているまもなく、エヤムの語りかけてくる声が聞こえる。 
    「よく生きててくれたな・・・礼を言うぞ。 オレも教え込んだ甲斐があったってもんだ・・・」 
    そう言うと、師はピリマの体を少し押さえた。 一瞬鋭い痛みが走ったが、何とか顔をしかめるだけでやり過ごせたようだ。 
    「悪い、肋骨が酷かったんでな・・・ まぁ、これで大丈夫だろう。 ・・・それに、よくぞコイツを取り落とさずに耐えたものだな。 コイツのお蔭で、何とかお前達の間に入れたのよ・・・」 
    師の手が、竜角をしっかり握り締めた、ピリマの右手を支え上げていた。 
    お前さんの意志の力が、お前さんら二匹の命を救ったのだ、と言う師の言葉に対し、ピリマは気恥ずかしさと共に、何故師が自分を救うことが出来たのか・・・遠くにありながら、正確に情勢を把握し、自分の身を庇いえたのか・・・を理解した。 
    そう、エヤムならそれができる・・・竜角は元々彼の父親の形見だったのだから・・・ 

    ティルスの元にピリマを横たえると、エヤムはもう一匹の弟子の容態を確認した。
    「(こちらはこのままでも大丈夫だな・・・ 塞栓を起こさなかったのが救いだった・・・)」 
    既に傷が塞がり、出血も止まっているのを確認し、エヤムはほっと息をついた。 起き上がろうとするピリマを今度は捨て置き、彼は再び目を閉じる。 部屋全体に満ちていた淡いやわらかな光が、今度は彼を中心に収束しつつやさしく渦をまき、柱のような形となった。 立ち上がったピリマに対し、エヤムが言った。 
    「こいつを維持しててくれ。 お前さんなら、やり方は教えなくても判るだろう。 ティルスはちょっと血を流しすぎてる。 もう少し時間を掛けた方がいい」 
    そう言うと、おぼつかなげにうなずいたピリマに対し、一変して厳しい口調で告げた。
    「手出しは無用だ。 どの道、お前さんらでは間には入れん。 後、よく見ておくがいい。 これからお前に、境地の太刀筋の真髄を見せることになるだろうから・・・ これが、オレがお前さんに教える極意の最後の部分だ」

    静かに前に歩み出てきた弟子に対し、ソウカクが口を開いた。 
    「癒しの風か・・・ 珍しい業だが、確かにお主ならばな・・・ 一応礼を言わせて貰うぞ。 久方ぶりに外の気を嗅いだ・・・」 
    すでに、ソウカクの体も癒えていた。 謝意を述べるソウカクに、エヤムは静かに微笑む。 
    「しがらみにはとらわれたくありませんからね・・・お互いに・・・ それに、あの連中が火を使いすぎたせいで、私にとっては少々息苦しかったですし・・・」 
    エヤムの「癒しの風」は、燃え盛る炎によって生まれたよどんだ洞窟内の空気を、ピリマ達にとっても懐かしい、明るい日差しを連想させる澄んだ空気へと変えていた。


    正対したエヤムが一呼吸つくや否や、唐突に戦いは始まった。

    両者の気配は又も一変し、ソウカクが最初に見せた構えで突っ込んでゆくのに対し、弟子の方は得物を鞘ぐるみに腰の後ろに回し、柄の部分を握ったまま体を沈め、すべるような足使いで前に出て来た。 見る見る間合いが縮まっていく中、エヤムの姿が突然掻き消える。 これに対し、ソウカクは勢いを緩め、重心を片足に預けつつ、それを軸に体を急激に傾けた。 瞬間、電光の様な一撃がソウカクの胴を薙ぐ。 それは、体の前で垂直に保持されている彼の得物に阻まれはしたものの、完全に受け切れるほど生易しいものでもなかった。 が、彼は全く躊躇もせず、受け終わった剣の背を支えている左翼で己が得物を押し出し、反撃の動作に入った。 

    恐ろしい速度ですれ違ったにも拘らず、ソウカクの剣はすれ違うエヤムの背中に襲い掛かった。 傾けた体をそのまま回しつつ、左翼によって押し出された剣による神速の車切りを放ったのだ。 が、エヤムもそれは予期していた結果であった。 得物を振り切った左手は、既に背中に対する斬撃に備えて背後に回っている。 
    ガッ!! という鋭い音と共に、彼は背中に鋭い痛みを覚えた。 
    「(まぁ、この姿勢じゃ深手にならないようにするのが精一杯か・・・)」
    そんな考えが頭の隅をよぎる暇も有らばこそ、彼は腕を前に戻す時間を稼ぐため、出来うる限りのスピードで前に出た。

    振向きざまの一撃が相手の背に傷を負わせたことに考えが及ぶ間も無く、ソウカクは相手の死命を制すべく追撃に移っていた。 車切りの余勢によって体が流れる時間をカバーする為に真空波を放つと、彼は猛然と相手を追った。 

    真空波がまさにエヤムの背に達しようとしたその時、彼は背中の翼を強く羽ばたかせた。 ポケモン界最速の飛行スピードを生み出すそれは、たやすくソウカクの真空波を打ち消す。 同時に向き直った彼は、既に身に及ばんとするソウカクの一撃を何とか受け止めた。 が、体勢を整える暇を与えられぬまま、彼は凄まじい勢いで繰り出される怒涛の攻撃を何とか凌がねばならなかった。 
    「(もう少し・・・)」 
    慌てないように自分に言い聞かせながら、彼は反撃の為の余力を少しずつ蓄えていった。

    最速で追いすがったにも拘らず、ソウカクの一撃をエヤムは受け止めた。 
    「(高速移動か・・・)」 
    続いて打ち込んだ連続技を受けられたとき、かつて相手が、その大柄な体格にも拘らず得意とした戦法に、彼は唐突に思い当たった。 が、次の瞬間には、彼は既にそれを破るための方策を思いついていた。 反撃の隙を与えぬよう「攻」の型を最大限に生かしつつ、彼は攻勢の要所要所に、その「方策」の種をまいていく。

    息もつかずに展開される両者の攻防を、ピリマは息を詰め、食い入る様に見つめていた。 ソウカクが繰り出すめまぐるしいまでの連続攻撃を、エヤムは一撃一撃確実に受け止めていた。 最初は手一杯に見えたその受け口が、受け続けるに従い、次第に滑らかで余裕のあるものに変わっていく。 
    「凄い・・・」 
    ティルスが半ば上の空で上げた声に、ピリマははっとして振り返った。 いつの間にだろうか? 彼は起き上がり、ピリマの隣まで歩み寄っていたのだ。 ピリマによって向けられた視線を感じ取り、ティルスは振向くと、気恥ずかしそうに笑った。 
    「ゴメン・・・ もういいよ。 大丈夫だから。 心配かけてほんとにごめん」 
    ティルスに「もういい」と言われて、ピリマは自分がエヤムの「癒しの風」を持続させていることに思い当たった。 いつの間にか意識しなくなっていた、技への集中力を解放する。 と、気持ちが一気に楽になると同時に、自分の体力・気力が共に、すっかり回復しているのに気が付いた。 

    ピリマが技を終わらせたのを見届け、ティルスは再び勝負に目を移した。 目を離している間に、両者の戦いは新しい局面に入っていた。 先ず、ソウカクの攻めが、先ほどよりも遥かに精妙なものとなっていた。 今や、ソウカクは決まりきった「構え」を持っていなかった。 その姿勢はめまぐるしく変化し、攻めと守りの境を読むことは全く不可能だった。 これに対しエヤムも又、当初の姿勢とは打って変わった戦いぶりを見せている。 受けに回っていた当初に見せていたぎこちなさは最早全く見られず、激しい攻撃をものともせずに切り返し、反撃を加えている。 が、目が慣れてくると、両者共に手傷こそ負っているが、やはり傷の具合はエヤムの方が重いらしい。 しかもその内やがて、エヤムの勢いが急に衰えだした。

    攻防のさ中、ソウカクの鋭い反撃で副えの手を軽く突かれた時から、エヤムは傷に強い違和感を感じていた。 やがてその傷口の違和感が体力を奪い始めるに及んで、彼は打ち合いの圏外に素早く引き退いた。 追撃を行わなかった師に対し、彼は何食わぬ顔で語りかける。 
    「毒突きですか・・・ こいつは迂闊でしたね・・・」 
    実際、迂闊だった。 高速移動は、使用者の動きを速めて激しい動きも可能にする反面、毒を受けた場合、その巡りをも速めてしまう。 強力ないあいぎりやつばめ返しを警戒する余り、毒突きの存在を見逃してしまっていたのだ。 語りかけてきたエヤムに対し、ソウカクは無言で視線を向けていたが、やがて構えを改め、殺気も新たに殺到してきた。

    動きの鈍ったエヤムにソウカクが殺到するのを、ピリマとティルスは祈るような思いで見つめていた。 案の定、動きの鈍ったエヤムの受けは精彩を欠き、打ち込まれる斬撃を完全に凌げるものではなかった。 傷口が増え、足元の砂地に滴り落ちた血が染み込み始めるのを見るに及んで、ティルスはじっと見ているのが耐えられなくなってきた。 ピリマの方も、これ以上は我慢できないと思い始めた時、ふと、あることに気付いた。 師であるエヤムの構えが、戦いが始まったときとから変わっていないのだ。  猛烈な勢いで攻め込まれ、急速に生命の危機が迫ってきているというのに、エヤムは、構えを守りを第一義とした「守」の構えに変えようとしていなかった。 彼は依然、剣を自分の腰の後ろに預ける、機動を最重要視した構えのままであったのだ。 動きの鈍ってしまった今、この構えをとり続ける意味は一つしかなかった。 更に、その当のエヤムの気は、全く衰える気配がなかった。 むしろ、追い詰められればられるほど強くなり、今や輝きを放つかのようにすら感じられる。 それらの意味をピリマが悟り始めたとき、エヤムの気配が急速に変化し始めた。

    相手の気配が徐々に薄れていくことにソウカクが気付いたとき、対戦相手である弟子は、すでに傷だらけの状態であった。 最初、ソウカクはそれが・・・ 相手がいわゆる「境地」の状態へと入っていくのが信じられなかった。 昔の弟子本人・・・エヤムにしても、先ほどのリオルにしても、あの状態に入るには、それなりの時間・・・精神の統一に掛かる時間が必要だったからだ。 ましてや、今の相手は毒に犯されており、精神の集中は並大抵のことではない・・・事実上は不可能・・・であるはずだった。 が、相手は今紛れもなく、急速に気配を隠しつつあった。 更にそれに伴い、今まで鈍ってゆく一方だった相手の動きが、すべるように滑らかな・・・かつて唯一、他ならぬ彼自身を持ってして全力を傾けるに足るほどの見事な進退・・・を取り戻しつつあった。 更に8合ほどを打ち合う内、ソウカクは、全く相手の気配を読むことが出来なくなった。 同時に今では、相手は既に一合交えるごとに、己が剣を元の鞘に仕舞い込むだけの余裕を持っているのを見て取った。  

    体がいうことを利かなくなり始めたとき、エヤムは最後の手段・・・むしろ、この勝負における唯一の希望と言うべきか・・・を使うべき時が来たのを感じた。 依然、激しい攻撃が続く中、彼は「境地」の状態に自らの身を置くべく、心を研ぎ澄ませ始めた。
    本来のやり方ならば、このような切迫した状況の中から、境地の状態に自らを導くことは不可能であっただろう。 何故なら、自分の存在を周囲に溶け込ます際に障害となる、いわば「壁」を乗り越えるだけの精神の集中が、この状態からでは到底望めないからに他ならない。 しかし、今の彼には、既に外界とつながる出口が・・・いわば「穴」が、無数に開いていた。 そう、望まれぬ形で穿たれ、彼の命を脅かしている「穴」が・・・ 

    全身を覆う傷から流れ出していく自分の命・・・その流れに、エヤムは己の意識を集中した。 と同時に己の意識から、余計な雑念・・・「恐れ」・・・「焦り」・・・「敵意」・・・といった、個の念より生まれるそれを、一つ一つ消してゆく。 そしてそれにつれて、己の体を、一時的に・・・意思とは別のもの・・・にゆだねていった。 それは決して特別なものではなかった。 むしろ、ありふれたもの・・・命あるものならば、必ず所有している衝動・・・そう、生存本能と言われているものである。 とどまらぬ攻撃による苦痛の増加と、加速的に体を蝕む猛毒・・・本来精神の統一を妨げるそれが、ここではその試みをどんどん加速させていく。 少しずつ・・・やがては加速的に、彼の状態は変化していった。 体中の傷から流れ出ていた命の流れは、彼自身の気が周囲のそれと同化するに連れて、やがてその動きを止めた。 その身を蝕んでいた毒も、周囲の波と同化した彼の体内から、まるで塗料が水に溶け出すように抜けていった。 そして、体に感じていた重みが全て消え去った時、彼は再び自らの意志の元に、自らの動きを掌握していた。 紛れもない、「境地」の状態に至った状態で・・・

    目の前の相手が境地の状態に至った以上、迂闊に動くことはできない。 ソウカクはそう結論付けた。 しかしその一方、未だに彼は微塵もゆらいではいなかった。 気配も読めず、驚くべき回避術を可能とする境地の太刀筋と言えど、彼とエヤムの器の差を埋めるには、未だに不足であることが分かっていたからだ。 ゆっくりと構えを改めた後、再び剣聖は、目の前の相手に対して攻勢に入った。


    「まだ押してる・・・」 
    ティルスがつぶやく様に口にした言葉に、ピリマは今の自分が抱いている驚きと同じものを見出していた。 信じられないことに、戦いは未だにソウカクが主導権を握った状態で推移していた。 エヤムは余裕を持ってソウカクの打ち込みをさばき、時折鋭い反撃を加えるまでになっていたが、ようやくお互いの動きに慣れてきた目には、彼が攻めあぐねているのがよく判った。 一見してみれば、ソウカクの打ち込みをほぼ確実に見切れているエヤムが有利とも思えたが、一度刃を交えたピリマには、ソウカクが何を目論んで攻めているのかは十分予測できた。 
    両者が負っている傷に考えが及び、時が、果たしてどちらに味方するのかと思い至っていた丁度その時、ピリマは、エヤムの周囲の空気・・・彼の傷を覆い隠すように流れているそれ・・・が、変化を起こし始めていることに気付いた。 

    相対している弟子の気配が消えた後、ソウカクは慎重な攻め口に徹しつつ、全神経を集中し、相手の動きを注視していた。 と同時に、彼自身は自覚していなかったが、最初に二匹のポケモンと戦い始めたときの、ぼやけた様になっていた己の記憶が、すでに鮮明な色合いを帯びて、彼の中によみがえっていた。 かつて共に研鑽していた時、彼は幾度かこの術を用いられ、その度に打ち破ってきた。 過去、いずれの場合でも、ソウカクは彼・・・境地の状態に立ち入った、エヤムの気配を読み取ることは出来なかった。 しかし、同時にエヤムにも、ソウカクを攻めきることは全く不可能だったのだ。 彼は何時でもあらゆる攻め手を退け、その裏を読んで勝ちを収めてきた。 
    そんな彼にとって、戦っている相手の気配に生じた新たな変化は、驚愕すべきものであった。 当初彼は、突然に出現し始めた気配を、相手の消耗によるほころびかと疑った。 が、しかし、その気配が徐々に大きくなるにつれ、相手の攻撃が驚くべき鋭さを帯びていくに及び、そんな考えは跡形もなく霧消した。 エヤムの気・・・鋼の様な強靭さを感じさせる闘志・・・は更に膨らみ、既に彼の周り全体を覆いつつあった。 しかも、鋭さを増し、どんどん激しくなる攻撃とは裏腹に、反撃の糸口・・・具体的に言えば、弟子自身の個の気配を、はっきりと読み取ることは、全く不可能なままだったのだ。 
    まるで疾風に吹き寄せられるかのような強い圧力を感じる中、ソウカクは初めて、自分が守勢に立ったことを悟った。

    ティルスが大きく膨れ上がっていくエヤムの気に圧倒されていく中、ピリマは、エヤムの周囲を覆っている様々なものから発せられている波・・・波動が、彼に共鳴していくのを感じていた。 既に周囲と同化しきっているかのようなエヤムの気・・・その淡い境目から、エヤムの思いが、辺りを覆っている様々なそれに伝わっていく。 そして、まるでそれに呼応するかのように、彼の周りを取り巻いているあらゆるものが、一つの意思・・・それを感じることの出来るものならば受け取ることが出来る「声」・・・の下にまとまっていった。 何処までも広がっていくかのような、その強い力の流れを目の当たりにしつつ、ピリマは、かつて師が自分に向けていっていた言葉の意味を悟っていた。
    「助ける、という事は、助けられている、という事。 守っている、という事は、守られている、という事。 そういうもんだぞ、何事もな・・・」 
    「あんまり自分ひとりで抱え込まんことだ。 一人で生きているものなんぞ、この世界には存在し得ないのだから・・・」 
    ・・・そして、どんなに多くの「声」に耳を傾ける能力が自分に備わっていようとも・・・例え、どんな思いが自分に向けて差し伸べられていようとも・・・結局自分は、いつも一人だけで戦っていた・・・戦おうとしていた・・・という事実をも。 

    絶え間なく膨らんでいくかのような相手の気配の前に、ソウカクは一挙に決着をつける決意を固めていた。 激しい居合いの打ち込みの間隙を見計らって彼は、己自身も、その辿り着いた極みへと達するため、素早く二度、大きく退いた。 決着をつけるべき潮を感じた対戦相手が、一歩もその場を動かずにその準備を始めたのを感じつつ、彼は己の心から、一切の感情を廃しにかかった。 

    ソウカクの周りに立ち込めていた瀟殺の気が、まるで潮が引いていくかように薄れていくのを感じながら、エヤムは己の心と最後の葛藤をしていた。 迷いを残すわけにはいかなかった。 迷いは技を鈍らせ、更にはこの闘いの意味自体をも失わせるかもしれなかった。 心に消えては浮かぶ葛藤に苦戦するうち、唐突に彼の脳裏に、かつて師と論じた内容が、鮮やかな光景を伴って浮かんできた。 
    「(やはり、師はどう転んでも師と呼ぶにふさわしい人だな・・・)」 
    迷いをなかなか断ち切れない己の意志の「弱さ」に苦笑することで、彼はようやく、次に繰り出すべき技に向けて、己の全てを研ぎ澄ます準備を終えた。

    両者の気配が一点に集束し、辺りが張り詰めた弦の様な息詰まる空気に満たされた直後、両者はまるで申し合わせたかのように、お互いをさして走り寄った。 次にピリマとティルスが見たものは、二つの影が瞬時に加速し、二筋の線となって交差する光景であった。

    静かにそよぎ始めた流れに身を任せながら、エヤムは残心の構えのまま、背後に師の背中を感じていた。 先ほどまで両者を包んでいた強い波動は最早跡形もなく、両者の姿は、岩壁から放たれる淡い光の中に、おぼろげに浮かんでいるに過ぎない。
    静かに・・・その場の空気を乱すことすらも望まぬかのように穏やかに、彼は口を開いた。 
    「器の量・・・でしたよね・・・? そのものの技量は、遂に持って生まれた器の大きさを超えることは出来ない、と・・・」 
    その問いかけを耳にしたとたん、ソウカクの脳裏に、かつての光景・・・もう二度と省みるまいと誓ったはずの、数々の光景が溢れ出した。


    「何故あの方の弟子入りを断られたのですか?」 
    黄昏の中に消えていく背を気遣わしげに見つめながら、まだ幼さの残るミニリュウが訪ねた。 同じくその背を見つめていたカモネギが、ミニリュウに対し、おもむろに答える。 
    「あの者は器が小さすぎる。 例え門下としても、やがてはその身を己が剣では支えきれず、反って身を滅ぼすだろう。」 
    「器とは・・・?」 
    更に問うミニリュウに、カモネギは再び答える。 
    「器とは、その者の生まれつきの限界のようなものだ。 例えるならば、カメールが撃つ事の出来る水鉄砲は、どれほど研鑽しようとも、遂にはギャラドスのそれには及ぶまい。 剣の才にも、これと同じ理がある」 
    「しかし、あの方は私に勝ちました。 それに、力量さえ高ければ、例えカメールでもギャラドスの力に打ち勝つことは可能なはずです!」 
    反論するミニリュウに、彼は微笑みながら穏やかに答えた。 
    「それはその者の経験がまさったときの話だ。 個の力は器、経験、心胆より決まる。 例え器が大きくとも、経験という水が不足していてはどうにもなるまい。 又、心胆がしっかり鍛えられていれば、同じ水の量でも、無駄に費やす量を減らすことが出来る。 しかし、元よりの器の量は、いかにしてもかさを増やすことは出来ない・・・」


    「そうだ・・・ 全てのものは己の器に縛られる定め・・・その器以上の技量に達することはできぬ・・・」 
    これも静かに答えながら、ソウカクは続けた。 
    「ならば何故・・・」  手に持った剣が二つに折れた。 
    「何故わしが敗れるのか・・・」  両翼から力が抜け、手にした剣を取り落としつつ、彼は問うた。 
    「己の器に囚われていたのであれば・・・」 
    神速の後の構えをなおも解かず、穏やかな調子でエヤムは答える。 
    「こうはならなかったでしょう・・・」 
    その答えは、両の翼をだらりと垂れ下がらせたソウカクへと、辛うじて届いた。


    「お主は毎日、そこで何をしておる?」 
    道場としている岩屋から少し離れた茂みに向かって、額から汗を滴らせたカモネギが声を掛けた。 
    「え・・・とと、・・・」 
    声に答えて一匹の小柄なハクリューが、多少うろたえながら茂みから顔を出す。 清らかな朝の日差しの中で、夢から覚めたような顔をしているハクリューに向かって、カモネギは強い調子で声を掛けた。 
    「そんな所でサボるというのは感心せんぞ。 皆はもう・・・」 
    ふと、ハクリューの尻尾の先が、わずかにおかしな形になっているのに気付いて、カモネギは口をつぐんだ。 師の叱責が途切れたのを機に、ハクリューが慌てて答える。 
    「心の鍛錬をしておりました。 この藪は・・・え〜と・・・」 
    もとより嘘をつくのが下手な弟子は、すぐに言葉に詰まってしまい、やがて促しもせずとも自ら答えを改めた。 
    「済みません・・・ 本当は日当たりやそよ風を楽しんでおりました・・・ 昨夜の疲れがとれ切れませんでしたので・・・」 
    「ふむ・・・ 所で、その尻尾の先はどうしたのか?」 
    神妙に謝る弟子を遮り、好奇心を押さえかねてカモネギは訪ねた。 一層小さくなって、ハクリューは答える。 
    「これは蚊に食われた跡です・・・ 体中を刺されていては堪らないので・・・ せめて尻尾の先にしてくれるよう願いまして、それで・・・」 
    ハクリューが最後まで言い切らぬうちに、カモネギは精悍な顔を崩して笑い出した。 道場の方から他の弟子が呼ぶ声に答えた後、カモネギは再び問うた。 
    「なるほどな。 頼み込んだわけか・・・ ところで、そうやって蚊に食われながら日和見なぞして、本当に疲れはとれるのかな?」 
    この問いに対し、ハクリューはパッと嬉しそうな顔になって答えた。 
    「はい、大丈夫です。 気持ちを楽にして、受ける風に疲れを流してもらうようにすれば、すぐに楽になります。 元気が出ないときも、日に当たっていれば、そこから分けてもらえます・・・」


    「なるほどな・・・」 
    何がどうなったかを理解して、剣聖は満足げな声音で応じた。 
    「器を溢れさせた訳か・・・」 
    そう、エヤムは、己が器のみで戦っていたのではなかったのだ。 森羅万象と意志を通じることの出来る彼は、境地の太刀筋によってそれと同調し、一体となることにより、己が持てる器量の範囲を超えて力を発揮したのである。 
    「(そう・・・己は良く知っていたはずではないか・・・ あの時・・・そう、あの時から・・・)」 
    傷口が開き始めていた。 瞬時に絶命するような部位ではなかったが、それでも傷は十分過ぎるほど深かった。 自らの選んだ道の敗北を悟ると同時に、ソウカクの脳裏に、彼らを分かつ元となった時のことが鮮明に映し出された。


    「それまで!」 
    衰え始めた日差しが差し込む岩屋の内に、鋭い声が響き渡った。 同時に、それまで相対していた二匹、エルレイドとカイリューが、それぞれの得物を仕舞い、一礼する。 カイリューが引き下がり、続いてザングースがエルレイドの前へと歩み寄る中、彼はカイリューに声を掛けた。 
    「エヤム、ちょっとわしのところへ来い」 
    エヤムと呼ばれた小柄なカイリュー、そう、エヤムだ・・・は、一呼吸した後に瞑目していたが、名を呼ばれると立ち上がって、こちらに歩み寄ってきた。 後からついてくる弟子を岩屋の外へ導きながら、彼はその時、弟子に言い聞かせねばならない要点について考えていた。 岩屋のそばにある、修行にも使われている木の陰に、既に傾き始めた日差しを避けて場所を占めた彼は、弟子が一礼してそばに腰を下ろすと、開口一番に言い放った。 
    「何故打たなかったのか?」 
    この問いにに対し、既に心の一部では息子のように感じるまでになっていた、この小柄なカイリュー・・・厳しい修行による余りにも早い進化に、体が成長しきれずにカイリューになってしまった弟子は、多少ためらいながらも答えた。 
    「少し無理がありましたので・・・」 
    実際は問うまでもなく、その理由はわかっていた。 対戦相手であるエルレイド・・・レイドの攻め口を受け損ね、無理な姿勢からの、加減が出来ない反撃を行う事を拒んだのだ。 既に業を磨き上げて久しく、独自の境地へと足を踏み入れつつあった・・・にもかかわらず、未だに躊躇という大きすぎる弱さを抱える目の前のポケモンに対し、彼はその時、こう言った。 
    「迷いを捨てられぬならば、心を閉じることもまたやむなし」 と・・・ 
    彼は続けた。 「勝負とはその根本からして非情なものであり、迷いを残すことは直接死につながるものだ・・・ 如何なる時にも迷わざる心を会得するには、己が心を殺すこともまた一つの境地となり得るだろう。 無念無想の太刀筋こそ、剣技が最後にたどり着く境地だとすれば、心の弱さこそは、著しく剣士としての力を殺ぐ毒となる」
    それが、当時、己もまた一つの壁、心の「迷い」に突き当たっていた、ソウカクの答えだった。 
    が、しかし、エヤムは、そうした師の考えに反論した。 
    「お言葉ですが・・・それは心を閉ざしているだけに過ぎないと思います。 剣術の真髄とは心を鍛えることにある、と師もおっしゃっていたではありませんか。 閉ざすこととは、即ち逃げることに他ならないと思います・・・」 と・・・ 
    弟子との会話を終えたとき、彼は再び修行の旅にでることを決意していた。 己の過去に、「あの時」に・・・そして、その時、己の手で守り抜いた、一匹のポケモンへの思いとに・・・決着をつける、その決心を固められぬまま・・・


    そして・・・遠い過去、まさしくこの場所であった出来事から、ずっとずっと引きずっていた心の迷い・・・ 一心に研鑽し、同時に弟子を育て続ける中で、いつしか忘れかけていたその思いは、かつて共に歩んだ道を彼にたどらせ、その終末を迎えたこの洞窟に、彼を導いたのだ。 
    「(そして・・・そう、この場所に踏み込んだ時・・・自分は・・・自らの剣士としての矜持を守るべく、自らの心を閉ざすことを決意したのだ・・・ その先に広がる闇に、己の心をゆだねるままに・・・ そしてその代償に、自分は無明の太刀筋を得た・・・)」

    体の力が抜けていくままに抗わず、ソウカクはかくりと膝を突いた。 
    「フフフ、随分と道草を食ってしまったものだ・・・」 
    それでも、その口から出た言葉には、諦観と共に、紛れもない温かみが感じられた。
    それと同時に、背後でじっと動かずにいたエヤムも、自らの得物を静かに鞘に戻し、ゆっくりと師の方に向きなおった。 嵐が通り過ぎた後のごとき、穏やかな気配を背後にはっきりと感じつつ、彼は弟子に向かって静かに語りかける。 
    「結局、何も使わなかったではないか・・・」 
    疑問系であるにも拘らず、いぶかしげな響きは殆どない師の指摘に、弟子はすぐさま答えた。 
    「貴方だって、使える技を全て出し尽くしたわけではないでしょう? ・・・それに最初に言ったはずです。 私は、一手教えていただきに参りました、と・・・」 
    そうであった・・・と、ソウカクは穏やかに苦笑した。 彼は、自分と戦いに来たわけではなかったのだ・・・ 彼は、かつての自分の師と、純粋に剣による「試合」を行う為に、ここまでやってきたのだ。 その事実の中に、彼が抱いている思いを感じ取り、ソウカクは今度こそ、皮肉のこもっていない、心からの笑みを浮かべていた。 
    他人の思い・・・それを感じるのは何年ぶりだろうか? そんな考えを反芻しつつ、彼は弟子に対し、穏やかに懇請した。 
    「では・・・悪いが、頼む・・・」 と・・・ 

    その言葉が師の口から出たとき、エヤムは恐れていた迷い・・・躊躇いを、何とか克服することが出来ていた。 彼はゆっくりと自分の得物・・・彼自身の角から削り上げた無銘の剣・・・に、静かに手をかけた。 
    「あいつは・・・まだ待っていてくれているのだろうか・・・?」 
    ポツリと呟いた師に対し、彼は何とか感情をコントロールしながら答える。 
    「えぇ・・・間違いなく。 ・・・私は[師]を間違えるようなへまはしません。 それは、貴方にしても同じはずですよ・・・」 

    その言葉を聞いたとき、ソウカクの心の中に組み上げられていた、最後の障壁が取り払われた。 と同時に、懐かしい声・・・かつて別れの為に共に歩み・・・図らずも心を通わせることになった、サーナイトの声・・・が、その思い出と共に、まるで奔流のように、彼の心に流れ込んできた。 
    「(そうだ・・・自分は・・・自分はこれから逃げだそうとしていたのだ・・・ この思いを忘れようと、この迷いを断ち切ろうと・・・)」 
    彼女・・・ウタキという名のサーナイト・・・が、他ならぬこの場所・・・この世界の大穴で封印の儀によって消滅したそのときから、彼は空虚な哀しみが、心の中に動かしがたい位置を占めたことを悟っていた。 そして最後の旅にでて、惹かれるようにここに来たその時、彼は己の迷いを断つ代償に・・・心の奥底から湧き上がってくる哀しみから逃れる、ただそれだけの為に・・・己の一番大事な記憶を、この闇の中に封印したのだ・・・ それが、どれだけ自分にとって大切なものかに思いが及ばぬまま・・・

    ソウカクの「思い」が解放された瞬間、まるで暗闇に光が差したように、彼の周りを覆っていた、強いもう一つの「思い」が鮮明になった。 
    漆黒の暗闇の中で、ただ黙然と立っていただけのソウカク・・・その体を支え、心を闇に投げ捨ててもなお、操られるだけの人形へと成り下がることを防ぎ続けてきていたそれを、己の剣の師が十分に感じ取れたのを確認して、エヤムは剣を・・・先ほどの、多くのものに支えられた思いの力・・・が未だに込められ、強い輝きを帯びている太刀を振るった。 

    離れて見ていた二人の目に映ったものは、ソウカクの体を取り巻く強い「思い」が淡い輝きを放っていたこと、そして、その輝きに包まれていたソウカクを、彼らの師が振るった小太刀が、一刀のもとに両断した光景だった。 

    エヤムの小太刀によって両断されたされたソウカクの体は、彼の意識が途切れる瞬間、まるで砂の山が崩れるように、明るく輝く光の帯となった。 そして、元はソウカクであった光の帯と、彼を取り巻いていた光・・・ウタキの思い・・・とは一つに解け合い、やがて砂が風に遊ばれていくように、洞窟の中に解けていった。 
    二つの光が溶け合い、その中に、かつて自分の師であった二匹のポケモン達の思いを感じ取りながら、エヤムは鞘に収めた小太刀の柄に手を置いたまま、静かに感情の波に身を任せていた。 やるせない、それでいてほっとしたような、安堵の気持ちが頬を濡らす中、彼は自分の心を抑えられないことに対し、やり場のない気持ちでこう思っていた。 
    「(いつになっても、自分の心は、この壁だけは越えられないな・・・)」 と・・・


    光が・・・ピリマはもちろん、ティルスにも感じることの出来るほど強い思いを放っていた光が洞窟の中に散っていった後、エヤムの手の中から、聞き慣れたレイドの声がぽつんと響いた。
     
    レイド「終わったな・・・」 
    エヤム「あぁ・・・」 
    その声に答えたのが合図だったかのように、彼らの師は、こちらに向けて歩み寄ってきた。 と、突然表情を変え、うろたえたようにして、洞窟の床面を見渡し始めた。

    ピリマ「それですか・・・?」
    ピリマが目ざとく・・・と言っても、両者が闘っている間にはすでに気付いていたのだが・・・発見していたトレジャーバッグを指差すと、彼はほっとした表情でバッグを拾い、多少重い足取りでこちらにやってきた。 その時になってピリマは、彼がまだ、体中に傷を負ったままであることに気付いた。

    慌てて駆け寄ろうとする二匹を制して、エヤムは急ぎ足に彼らに近づいた。 気遣わしげな二匹に対し、彼は柔らかく笑って見せる。
    エヤム「心配するなって。 これぐらいじゃ死にゃあしないから。 どうせ帰る時は、こいつがあるんだしな」 
    テレポートの結晶を前に出しつつ、彼は気楽な口調で告げた。 そして、表情を改め、口調も新たに彼らに礼を言った。
    エヤム「ありがとう。 お前さんらのおかげで、無事に師匠を送ることが出来た。 本当なら、おれ達弟子共が自力で何とかしなけりゃならなかったんだが・・・ 知っての通り、ここには容易なことでは入れないんでな・・・」
    が、礼を言うや否や、彼の口調はまた、いつもの調子に戻ってしまった。
    エヤム「まぁ、でも感謝もしてもらえるぞ? こいつを持ってきてやったんだからな」
    片手に持っている古びたトレジャーバッグを差し上げながら、彼はにやりと笑って見せた。
    ティルス「何が入ってるんですか?」
    ティルスの問いに、エヤムは答える。
    エヤム「必需品だよ。 オレンの実にいやしの種・・・ピーピーマックスにふっかつの種、それに各種の玉なんかだな。 お前さんら、スパーキィ達に道具を全部渡しちまったんだろ? どうせそんなトコだろうと思って、不足してる中から何とか見繕ってきたのさ・・・ まぁ、でもあんまり多くは入ってないけどな・・・」

    ずっと気になっていたことをエヤムが口にするに及んで、ピリマは慌てて尋ねた。
    ピリマ「スパーキィとエイクさんは、どうなったか知りませんか?」
    ピリマに続いて、声を合わせて尋ねるティルスの二人に対し、エヤムが答える。
    エヤム「それは、こいつらに聞いてくれ。 お前さんたちが別れた後、もう随分経つからな・・・ そろそろ何らかの報告が入ってる頃だ」

    エヤムが突き出したテレポートの結晶から、メタカムの声が聞こえてきた。
    メタカム「残念ながら今のところは情報がない・・・ まぁ、大丈夫だろう・・・エイクがついているのだから・・・ それに道中の敵は、お前達が進んでいる内にあらかた倒してしまったはずだろう? まぁ、情報が入り次第そちらに伝えるから、今は心を安くして待て・・・そうだな・・・ついでに各地からの状況報告も入れておくぞ。 先ほどの定時連絡は、ごたごたのせいで流れてしまったからな・・・」

    メタカムの声が途切れると、代わって聞き覚えのある声が、次々に耳に入ってきた。 最初に聞こえてきたのは、最早耳について離れないギルドのサブリーダー、パロの声だった。
    パロ「こちらはゼロの島北部だ。 おい、お前達、大丈夫か? もう中に入って三日ほどたっているが・・・ そっちで怪我人が出たとかいううわさもあるし・・・」
    稀にしか聞けない、それでいて気遣ってくれているのが痛いほどに分かる彼の心配そうな声に、ティルスがあえて平気を装って返答する。
    ティルス「ありがとう。 こっちは大丈夫だよ。 危なかったけど何とかなったから・・・ みんなは? そっちは大丈夫なの?」
    パロ「今のところはギルドのメンバーに異常はない。 ・・・だが、北部にも既に敵の攻撃が始まっている。 敵が東部に上陸して制圧してしまったのだ・・・ そろそろ、ギルドのメンバーも防衛に乗り出さねばならん雲行きになっている。 お前達、速いトコしっかりやるんだぞ」
    異常がないと見るや、しっかり尻を叩かれたことに苦笑しながら、ティルスが答えた。
    ティルス「がんばるよ。 パロも気をつけてね・・・」
    パロ「ワタシは不死身だ♪ 心配するな」
    これも聞き慣れた返答を最後に、次の声が代わった。

    バーンズ「こちらは西部。 バーンズだ。 何とか無事なようだな、お前ら! マキシムの野郎が、オレが連結を見てやってんだ、心配すんな・・・とか抜かしてやがったが、ちっとは役に立ってるか?」
    相変わらず荒々しい鍛冶屋の声を聞き、一緒に聞いているエヤムが相好を崩し始めた。 序盤の激しい戦いで役に立ったとはいえ、既に消耗しつくし、連結技は一つも残っていない。 が、そんなことはおくびにも出さず、ティルスが答える。
    ティルス「うん、すごく心強いってマキシムさんに伝えてくれる? とても役に立ったって」
    実際、もし技を一切連結していなかったら、自分達は最初の戦いでやられていただろう。 そんなことを考えながらピリマは、自分達の責任と、周りのみんなが支えてくれる心強さを、今更ながらに強くかみ締めていた。 そんな中、バーンズの豪快な声は、いつまでもウジウジと考え込みがちなピリマの気持ちを吹き飛ばすかのように、とうとうとエヤムの手のひらから流れ出していく。
    バーンズ「西部は今現在、東部の撤退援護で手一杯だ・・・ まぁ、安心しろ。 俺達マイスターがいる限り、そうやすやすとここは落とさせはせんからよ。 じゃあな! 頑張れよ!!」 

    続いて聞こえてきたのは、チーム「フレイム」のバクーダ、キープの声だ。
    キープ「南部です。 貴方達、頑張ってるみたいね。 こっちは東部からの挟撃も受けてるけど・・・ 今のところは大したことにはなってないわ。 リーダー達の考えた縦深陣地が思った以上に効果を上げてて、こっちの被害は最小限に食い止められているし・・・ ・・・リーダーったら、ここに来てからは人が変わったように勇敢になってるの・・・ これも貴方達のおかげね。 私達も感謝してるわ。 気をつけてね!」

    南部の状況も比較的安定しているらしかった。 が、続いて入ってきた情報は、かなり厳しいものだった。 声の主は、神秘の森に住んでいる、イーブイたちの内の一匹、リーフィアのコナムだ。
    コナム「コナムです。 東部ですが・・・すみません、突破されてしまいました・・・ 突然大勢の敵ポケモンが大挙して上陸してきて・・・ 私達は踏みとどまれず、ぢりぢりになって他の地区に逃げ込まざるを得ませんでした・・・」
    容易ならざる情報に、ピリマは思わず聞き返していた。
    ピリマ「大丈夫ですか!? 他のみんなは・・・? ブイさんやシルフイさん達は?」
    コナム「私達は大丈夫です・・・ ・・・と言うのも、私達が囲まれて危なかった時、ドクローズの皆さんが敵に向かっていって・・・大爆発で囲みを破ってくださったんです・・・ リーダーのスメルチさんが重体です・・・ 私達がもっとしっかりしていれば・・・」
    ティルス「ドクローズが!?」
    コナムの辛そうな言葉もほとんど耳に入らないほど、ティルスと同様、ピリマも驚きを隠せなかった。 と同時に、彼らが出発前に、自分達に別れの挨拶を送りに現れたことも思い出していた。 「お前らばかりにいい格好されてたんじゃぁなぁ・・・」 例によっての散々な嫌味と共に浴びせられたセリフに、これほどの決意が込められていようとは、正直、ピリマには全く予想がつかなかった。 隣で聞いていたティルスも、自分同様目頭が熱くなってきているらしいのを感じている内、唐突に今度は、つい最近まで聞かされていた声が飛び込んできた。

    エイク「こちらはエイク・・・ こちらはエイク・・・ オレだ。 ピリマ、ティルス、聞こえてるか?」
    かつて自分達が初めて捕まえたお尋ね者の声・・・変わっていると言えば、これほど数奇な運命で結ばれた仲もないであろう、と思われるポケモンの声は、二人の意識を、一瞬で現実に引き戻した。 
    ティルス「エイク? エイク!! 無事だったんだね!」
    嬉しそうに叫ぶティルスに対し、声の主のスリープは、多少当惑気味の声音で答えた。
    エイク「そう怒鳴るなって・・・ また不眠がひどくなっちまうよ。 ・・・フフフ、無事に決まっているだろ? 約束したんだからな・・・無事に守り抜いてみせるって・・・ これでようやく貸し借り無しだな」
    ティルス「じゃあ、スパーキィも?」
    エイク「ああ、無事だ。 今、迎えにきてくれたフロンティアの連中が見てくれてる。 間違っても命に別状はないから安心しろ。 ・・・さて・・・これでオレのパートは終了だな。 後は、お前達の約束が残っているだけだ・・・」

    エイクの声を聞きつつ、ピリマは決意を新たにしていた。 そうだ、後は自分達次第なのだ・・・ この先に待ち受けているものがどのようなものであれ、それは自分にしかどうすることも出来ないものなのだから。 もう一人の自分・・・二つに分かれた、己の魂の片割れ・・・ それに自分がたどり着いたとき、一体そこで何が起こるのか・・・ 恐れる気持ちがないとは、口が裂けてもいえたものではないが、これだけはハッキリしていた。 自分を今まで支えてくれた多くのポケモン達・・・突然現れた、記憶もない自分を受け入れてくれた身近なもの達から、見ず知らずの自分を助けてくれた遠くの仲間達・・・ そして、己の全てを捧げてまでこの世界を救おうとした未来のポケモン達まで・・・ 余りにも多くのものを背負っている重圧に、幾度となく潰されそうになってきた。 しかし、いつだって自分は潰されずにやってこれたのだ。 ティルスを始め、多くの・・・多すぎるほどの仲間たちに支えられて・・・ そして、今までは気付かなかった力・・・感じていたにもかかわらず、その真意を理解することが出来なかった助力をも・・・師によってさとされもした。 これだけのものを受けていながら、自分を疑うなどという事が、できるはずもなかった。 それは、これまで支えてきてくれた、全てのものに対する不信と、全く同義語なのだから・・・

    エヤム「とりあえず、まぁ、そういうことだ」 
    出発の為の準備が全て整った後、エヤムはそう言った。 
    エヤム「できればこのまま、お前さん達の手助けがしたいんだが・・・」
    何かを期待するように、彼が沈黙する。 が、少しすると、レイドの不機嫌そうな声が、彼に容赦なく発破をかけた。
    レイド「生憎だが、貴殿にはすぐにでも帰ってきてもらわないと困る。 敵は既に東部を完全に掌握し、西部も席巻されつつある。 大火力の技を豊富に持つ貴殿には、即刻働いてもらわねばならない。 もう既に、スキッパーは西部正面の自分のチームに合流してしまったぞ。 貴殿も速く帰れ」
    エヤム「オイオイ、怪我人だぞ、オレは・・・ ・・・まぁいいか。 ひたすら痛めつけられてばっかりというのもナンだし、ここは一つ、久しぶりに派手に暴れさせてもらうとしようか・・・」 
    レイド「・・・貴殿、師匠が亡くなられたばかりなのだから、少しは神妙な態度が取れんのか?」
    エヤム「まぁ、そう言われると辛いんだが・・・ 肩の荷が下りた・・・と言うのも偽らざる心境なんでな・・・」
    一通りやり取りが終わった後、師は、テレポートの体勢に入った。 メタカムの声に答えた後、彼は二人の顔を交互に見、誇らしそうに微笑む。 そして何も言わずに、来たときと同様、唐突に彼は光の塊となり、二人の視界から消えた。

    師を見送った後、それほど時間を空けずに、ティルスもピリマに声を掛けた。
    ティルス「僕たちも行こうか」

    ピリマはティルスの方を向き、無言で、しかし、力強くうなずくと、いつも通り、先にたって歩き始めた。 ソウカクがたたずんでいたその後ろ・・・明らかにここまで進んで来た世界とは異質の、暗い闇に向かって・・・
       
        
       
       
        かつやくのあと

         エヤムが、師匠であるソウカクの魂を解放した!              ▼

    ―――――

    【恥ずかしいにも程があるのよ】

    PS.
    【微妙に宣伝臭いことにも気がついたのよ(爆)】


      [No.938] 当時の自分を笑うための4本目 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2010/11/08(Mon) 08:59:11     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    昔は色々書いてみたのですが、原稿を紛失しちゃったので、あらすじだけでも載せておきます。


    ホウエンのチャンピオンの話(仮)

    (仮)なのは、じつはタイトルをつけてなかったから適当につけたためです。

    あらすじは、ホウエンチャンピオンになったルビーサファイアの男主人公が、またしてもホウエンの旅にでかけるというもの。主人公にとっての新鮮味が少ないうえに、当の主人公がチャンピオンなのに手持ちポケモンがいなかったり、ジムリーダーに苦戦したりと、散々な出来でした。これでも60話以上書いて完結させたんだよ……?


    スパイ物語(仮)

    (仮)というのは、じつはタイトルをつけていなかったので、適当につけたためです。大事なことなので(ry

    あらすじは、仮題通りスパイもの。ジョウトで暗躍するロケット団を倒せ!というものなのですが、そのスパイがいけなかった。バトルも仕事も素人の少年が、素性を知られては困るにも関わらず博士の研究所にポケモンをもらいに行く辺り、厨二病の勢いだけで書いたと思われます。これが今の連載の原型になろうとは……。


    【見てみぬふりをするのよ】


      [No.937] 三本目の厨房は高校生 投稿者:紀成   投稿日:2010/11/08(Mon) 07:53:27     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    原稿書いたノートを探したが見つからなかった。
    全部で十冊以上あったはずなんだが・・

    とりあえずシナリオ設定だけでも。

    ・DP学園推理部

    うわ、中一の頃の作品だ。お世辞にも小説として成り立ってはいない。
    ちなみに友人とそれぞれのキャラ視点で書いていたが三学期に色々あって今現在ノートを持っているのは私だけである。
    余談だが、その友人の一人は『友情メモリー・ブロークン』のあーちゃんのモデルである。

    ・ハイスクール・クリスタル

    上の作品の高校編。中二、三の時期に書いたためすっげーマジで闇歴史。
    そして主人公の口調が一話とニ話目で違いすぎ。
    最終的には性別変わっとるし。
    まあ多分この辺りから同人という単語と意味を知ったからなんだろうな。

    ・ポケダン バレーノ編

    時探小説。中三くらい。『バレーノ』とは『アルコバレーノ』から。
    ちなみにDP学園の主人公とかキャラがちゃっかりレギュラーキャラとして登場してたりする。

    必ず出てくるのは『ナミ』という名前。主人公の名前です。

    [突っ込まないで欲しいんだぞ]
    [若気の至りと思って長い目で見て欲しいんだぞ]


      [No.936] 君がいたから 投稿者:海星   投稿日:2010/11/07(Sun) 22:50:18     27clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    あるとても寒い山の奥で、小さな電気鼠は凍えていました。
    吐息は淡く曇り、消えてしまいます。
    身体は静かに、カタカタ震えています。
    仲間はついさっき、ぱったり倒れて動かなくなりました。
    寒さに強いはずの甲羅にはうっすらと氷が張り始めています。
    電気鼠はすっかり冷たくなった小さな手で、横になっている仲間の甲羅を撫でました。
    いつもは感じた温もりが感じられませんでした。
    電気鼠はこのまま、ここでじっとしていたいと思いました。
    勿論わかっています……このままでは自分も仲間のようになってしまうと。
    しかし独りぼっちになった今、考えられることは、仲間に寄り添うことだけでした。
    悪戯のように吹く、凍りかけの風。
    氷から響いてくる、自分たちの名前を呼ぶ声。
    そしてそれと共に耳に入るのは、激しい怒りを露わにした罵声。
    もうすぐ彼らはここまで来るだろう、と電気鼠は悟りました。
    彼らが自分たちを見つけ次第、何らかの形で自分たちを傷つけるのはわかっています。
    このままここにいては、いけない……ここに来るまでに何度も、仲間とお互いに励まし合ってきたことを思い出しました。
    電気鼠はゆっくりと、足元に置いておいた革の袋からオレンの実を取り出しました。
    これが、最後の食糧でした。
    数秒間愛おしそうにその実を眺めると、電気鼠は決心したように微かに頷き、実を齧りました。
    口の中に、何とも言えない味が広がります。
    それから、悴んだ指で実を千切り、その欠片を仲間の口元に当てました。
    もう動かないその口は――励まし合い、笑い合い、ときには喧嘩の悪口を言った、その口は、実を拒むようにきゅっと結ばれています。
    電気鼠が手を離すと、欠片は引力に従ってぽとりと落ちました。
    もう一度、欠片を拾い上げ、仲間の口元まで運びます。
    しかし、仲間は実を受け入れてくれません。
    また実が冷たい地面に落ちました。
    電気鼠はそれを拾い、仲間の口元に当てました。
    実は、落ちました――。
    もう一度……電気鼠が実に手を伸ばしたとき、その腕に温かい何かが落ちて、弾けました。
    これは何だろう、電気鼠は不思議に思いましたが、それは止むばかりか、次々と落ちてきます。
    顔を上げると、表面のつるつるした氷に、涙をぼろぼろ零している自分の顔が映りました。
    どうして自分は泣いているのだろう、電気鼠は良くわからなくなって、困りました。
    答えを聞こうと仲間を見ます、しかし、仲間の瞳にかつての活気と知性は無く、ただ固く横たわっています。
    電気鼠は辺りを見回しました。
    冷たい氷や氷柱と動かない仲間の身体と齧りかけと欠片のオレンの実の他、何もありません。
    必死に耳を立てました。
    自分たちを責める重い言葉しか聞こえません。
    電気鼠は本当に困り果てました。
    自分にはもう何も無いことに気付いたのです。
    何だか、脳が正常に機能してくれなくなってきました。
    ぼうっとして、身体も怠く重くなって、急速に眠気が襲ってきます。
    このまま、仲間と同じようになるのだな、と思いました。
    電気鼠はゆっくりと仲間の甲羅を撫でながら、その上に顎を乗せました。
    瞼を閉じました……。
    何故か寒さと心細さを感じられなかった瞬間がありました――そう感じたときには既に、電気鼠の身体は仲間の身体と共に冷えていました。


    ―――――

    ポケダン、青の救助隊で、逃げている途中に寒い山に登ったときです。
    一応書いておきます。
    電気鼠→ピカチュウ
    仲間→ゼニガメ、です。

    青の救助隊しかやったことないんですけどね;
    ゲームでは途中で倒れると少し前に戻ってしまいますが、リアルに考えると……という発想で書いてみましたが、悲しい感じが伝われば幸いです。

    【書いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】
    【描いてもいいのよ】


      [No.935] この2投目に私の全てを曝し出す 投稿者:CoCo   投稿日:2010/11/07(Sun) 22:36:08     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     

    *処女作
     Pocket story だかなんとかとかいうタイトル
     内容は 十歳でミズゴロウ貰ったけどなんとなく自信なくてずっとミシロ〜コトキあたりをうろちょろしながら修行してた女の子が、進化したヌマクローで通りすがりのジムリーダー候補生のアスナさんとのバトルに勝利したのをキッカケに幼馴染の男の子と旅に出る。 かくかくしかじかのなりゆきで男の子がハギ老人ちの娘さんのキャモメを連れ盗んだ水上バイクで走り出していた頃、女の子はトウカの森でピカチュウにいじめられている研究員の少女と一緒にアクア団をタコ殴りにしていた。たまにミツルも出る。そんな話。

     当時中学三年生(笑)
     創作はおやつ程度に
     確かどこかのポケモン小説掲示板に投稿してたんですが探しても見当たりませんでした。
     しょうがないので同時期に初めてマサポケに投下した話(!)を発掘してきた。

     ↓



    境界線は、いらない




     頭上を行く風が、ふっと前髪を撫でていった。

     そこは野草の香りが心地良い草原で、けれど視界に入るのは青い空ばかり。

     何故ここが草原だと解ったのかよく解らなかったが、

     そんな下らない疑問は風がすっとばしてくれた。

     この青い空に比べたら、ちょっと疑念や何かは、どうでもいいものなんだ――。

     満足な感想だった。さあ、もう一眠り。


     今なら、流れる風の姿が見えそうな気がする。

     さらさら、さらさら。

     まるで川底から、水面を眺めているようだ。


     ……、と。


     そんな素晴らしい沈黙を破る、大声。


    「イズマ!」


     何語だ、イズマって。

     ……いや、固有名詞か。

     
    「イズマぁ!」


     うるさい。うるさいうるさい。

     遠吠えの練習なら、他所でやってくれ。


     すると、視界の端に、人影が映った。

     長い前髪を振り乱す、男。

     背が高く見えるのは、俺が寝転がっているからか。


    「何だ、イズマ、ここにいたのか」


     そいつは言った。全力疾走に疲れた笑顔で、俺に向かって。


    「大丈夫か? 死んでないよな?」


     そう、俺に向かって――。


    「え……っと」


     俺は起き上がった。

     随分寝ていたのか、くらくらする。


    「どちらさま、ですか?」


     途端に、男の笑顔が凍りついた。


     そして、無表情におれをじろじろ観察すると、


    「……貴様ぁーっ!」


     激怒の鬼へと表情を変えて、うなりをきかせてぶん殴った。

     俺を。


    「――っ」


     痛い。手加減無しの痛みだ。

     ちょっと口を切った。


     非常事態を知らせるベルの音が、俺の頭の中で鳴り響く。

     何が起きた?

     脳ミソの処理速度が一気にダウンした。訳が解らん。


    「お前……、約束したじゃないか!

    何を忘れても親友の顔は忘れんと!」


     男は顔を真っ赤にして怒っている。


    「ったく、こっちがどれだけ必死に探したと思ってんだ!

    『殿堂入り』ぐらいどうってことないと言ったのはそっちだぞ?」


     ……ちょ、ちょっと待ってくれ。

     そんな言葉も、驚きや何かで全然声にならない。


     何を言ってるんだ、こいつは?


    「あの、」俺は言った。「人違いじゃないですか?」


    「……何だと?」


     男はまだ怒っていたが、半ば呆れているようにも見えた。


    「お前、確かに言ったよな?死んでも忘れんと――」



     男は、ぱっと何かを取り出した。

     それは、金属製のボール。おめでたい紅白カラーだ。

     天高く、投げる。


     すると、眩い光と共に、現れた。

     大きな、橙色の竜が。


     もう、俺の頭じゃ処理しきれない現象だ。
     

     その竜の鼻腔からは呼吸の度炎がこぼれ、

     太く雄雄しい凶悪な尻尾の先にも、炎が宿っている。


    「リザードン! 火炎放射!」


     まさか、炎を。


     竜が炎球を口腔に溜めているこの光景は、

     全て悪夢だと思い込むには、ちょっとリアルすぎた。

     だって、熱い――。


     訳も解らないまま死ぬのは、嫌だ、嫌だ、嫌だ!


     心ってのは案外と素晴らしいシロモノで、

     心の叫びは救世主やら奇跡やらを、

     拍子抜けするぐらい簡単に運んできてくれるものらしい。


     俺と迫る炎の間に、強力な水の大噴射が割って入ってきた。



     物凄い水蒸気の勢いで、俺が思いっきり後頭部を大地に打ちつけたってのは、

     まあちょっと余分な話。


    --------------------------------------------------------------------------------


    「待ちなさいよ、ソウ!」


     痛む頭を撫で撫で振り向くと、阿修羅の表情を浮かべた少女が仁王立ちしていた。

     そんなに背が高いわけではないのに、威圧感で随分大きな存在に見える。


    「忘れちゃってて当然でしょう? 全く、どうしてそこで逆切れするのよ!」


     少女はぎろりと男を睨んだ。

     睨まれているのは自分じゃないのに、怖い。


    「だが、イズマは……」


    「うるさい、解からず屋の頭でっかち!

    ここは『殿堂入り』に挑戦したことを称えるべきで、

    不可抗力で忘れちゃったのを責めるのは場違いなの!」


     一方的に捲くし立てる少女に、男もたじたじ。

     さっきはあんなに恐ろしかった男が、とても小さく見える。


     と、少女はこっちを振り向いた。

     さっきとは打って変わって、最高の笑顔。

     一瞬前の表情が信じられない。

     女って怖いなぁ。


    「……えっと、イズマ、ごめんね?」


     少女は、遠慮がちにそう言った。


    「あ……」言葉が見つからない。状況が読めない。


    「君たちは……誰?」


     俺の何気ない一言に、少女はしゅんと沈んでしまった。


     あれ?俺、何かまずいこと、言ったか?


    「……本当に……覚えて無いんだ……」


     それでも、彼女は気丈に笑っている。


    「……何だか、信じらんない」


     少し、見えてきた。

     話が解らない訳だ。

     ――どうやら、こいつらは、俺を誰かと勘違いしているらしい。

     それで、忘れられたと思っている。

     よっぽど顔が似ているのか。


     とにかく、今は、誤解を解かなければ。

     勘違いで焼き殺されたんじゃあ、堪らない。


    「あの……さ、」


     少女の真剣な表情を前にすると、話しづらい。


    「俺、本当に、君たちのこと知らないから。

    人違いじゃ、ない、かなぁ……?」


     何より自分自身の頼りない態度に、一番いらいらする。


    「馬鹿言え!」


     ふと、後ろで放心していた男が叫んだ。


     そして、こっちへずかずか歩み寄ると、俺の胸倉を掴み上げる。


    「お前、『殿堂入り』に挑戦したんだぞ?

    ミスったら記憶を失う、あの『殿堂入り』に!

    そんでもって、お前は忘却したんだ!」


     ……は、

     何の、話だ。


    「じゃあお前、何で自分がこの草原に倒れてたか、解るか?思い出せるか?」


     俺が、ここへ来た、理由。

     俺が、ここに来るまで、何をしていたか。


     …………。


     あ、れ。


     フリーズしている。

     真っ白だった。草原で目覚めるまでの時間が。『過去』が。


     思い出せない――

     覚えていない――

     忘れてしまった――


     忘却して――?


    「どういうことだっ」


     覚えてないって、どういうことだよ!


     本来他人に問うことではない、自分のこと。

     しかし、全然思い出せないのだ。

     本当に、名前すら、何一つ。


     空白、そして未知というのは、いつだって恐怖の対象でしかない。


     だが、こいつらは、多分、『俺』のことを知っているのだ。


    「……代償なの」


     少女は、辛うじてそう呟いた。

     今にも、涙が決壊しそうな横顔。



     俺は残念ながら、それ以上追求できるほどの残酷さは持ち合わせていなかった。


    --------------------------------------------------------------------------------


    「……あんたは、あたしとソウの友達だったの」


     俺は草原に正座して、彼女の話を聞くこととなった。

     草原に正座、何だか寂しく場違いな感覚だが、事は重大そうである。


     何より、俺という人間の存在がかかっているのだから。


    「違う!……親友と言ってくれ」


     片膝を立てて座る男は、そんな的外れな相槌を入れて少女に睨まれた。


    「ええっと……そう、出身地が同じで、同じ町に生まれて、ずっと小さいころから一緒だったのよ」


    「幼馴染ってヤツだな」


     俺は、二人の顔を見比べた。


     知らない人間。知らない過去。

     だから、二人の話にも俺は何の反応もできなかった。

     どうしても、他人事に思えてならない。


    「それで、アンガルリーグを目指して、三人で旅に出て……」


    「アンガルリーグ?」


     俺は疑問部で話を止めた。


    「何だ、それ」


     少女は男と顔を見合わせる。


    「ここ、アンガル地方で行われるポケモンリーグのことよ」


    「ぽけ……ポケモン?」


    「ポケモンも忘れたのか!」


     男は突如だんっと立ち上がった。

     驚いて飛びのいてしまったが、その顔は怒っているというより、呆れているようだった。


    「ポケモンっていうのは……」


     少女の目が宙を彷徨った。

     そんなに説明しにくいのか。


    「こいつみたいなヤツらのことだ!」


     男が誇るように俺に見せたのは、さっきの橙色の竜。

     ぶほっと黒煙を吐き出すそれは、確かに俺の常識外。


    「そう、まあ、そんな感じだけど」


     少女は咳払った。


    「実質は、人間外で電波式分解できる細胞を持つ動物のことなの」


     デ、デンパシキ?

     サイボウ?


    「そんな説明で解るわけないだろ」


     男は不満げに言う。


    「やっぱり、感覚で解ってもらうのが一番だ」


    「そういえば、イズマ、ポケモンは?」


     少女はくるっとこっちを見た。

     ポケモン……いったい何を指しているのかがまず解らない。


    「ああ、説明することが多すぎる!」


     少女はとうとう音を上げた。


    「今度ばかりはソウに賛成。ま、感覚で解ってもらえばいいのよね、感覚で」


     感覚……って、ちょっと待てよ、おい。

     本当に解らないんだぞ?


     異次元にでも取り残されたような気分。


    「とにかく、名前ぐらいは覚えろよ。オレはソウ。そっちはアキナ」


    「……えっと、何ていえばいいのかな、その……よろしく、ね?」


     知っている人間、それも幼馴染に『よろしくね』と言うのはどういう気分なんだろう。

     しかし、まず良く考えればそれが俺だというハッキリした確証もないわけだし、

     必ずしも俺が彼らの探す人物だとは言えないのだ。

     何より、俺の納得がいかない。


     きっと曇天よりも暗い顔をしていただろう俺に、しかし彼女――アキナは、

     困惑を振り払い、明るい笑顔で言ってくれたのだ。


    「あんたの名前は、『イズマ』よ」


     ああ、俺は『イズマ』なのか。

     どうせ、どうせ解らないのならば、

     暫くは、『イズマ』でもいいかもしれない。


     少し、ほんの少し、心が揺れた。



     ――俺、誰?

     見下した自分の両手からは、返事は返ってこなかった。



    --------------------------------------------------------------------------------



    「リザードン! ドラゴンクロー!」


     その男に付き従う、橙色の竜――名称『リザードン』は、振りかざした爪を煌かせ、大きな翼の鳥を一閃した。

     ギャッ、と緑色になびく地面へ叩きつけられ、悶絶する巨鳥。


     男の背後に俺と少女、そして大きな白いテントがある辺りで、

     もう彼が何故にして戦っているのかは想像がつくけれど、

     やはりそれは心苦しい光景だった。


     男――ソウの表情は、決死。

     それを見守る少女――アキナの表情は、必死。


     俺は、……ただ口をぽかんと開けて、阿呆みたいにそれを見つめていた。


    「イズマ、解る?」


     突然何の前触れも無しにそんなことを言われても、困る。


    「……何が?」


     暫し、沈黙。

     風の声をBGMに、決闘するソウと二匹の背中だけが、鮮明に目に焼きつく。


     不意に、アキナさんはこっちを振り向いた。


    「リザードンは、炎タイプなの」


    「……ホノオタイプ?」


    「そう。タイプっていうのは、ええっと……」アキナさんは、言葉を探している。


    「……そう、性質のことよ」


     性質。

     解らないことは、解っている人間に尋ねるしかない。


    「ポケモンにはいくつかの種類のタイプがあって、それぞれに相性があるの。

    例えば、火は水で消えるから、炎タイプは水タイプに弱いとか、そんな。」


     そこまで言って、彼女は堪えきれずに苦笑する。


    「まさか、イズマにポケモンのこと教える羽目になるとはね。

    私にポケモン教えてくれたの、イズマだったのに」


     はあ。

     と言うことは、俺はその『ポケモン』とやらのことを良く知っていた、そういうことか。


     ソウが戦っているのを見る限りでは、『ポケモン』というのは人間に従僕し、戦わせたりするものらしい。

     炎タイプ、水タイプ、種類があるからには、『ポケモン』だって多種類いるのだろう。


     何より、アキナやソウの態度から、

     ここで『ポケモン』なるものがどんなに重要な存在か伺える。


    「あのさ、結局のところ、『ポケモン』って何なんだ?」


     言ってしまってから、敬語のほうが良かったか、と一人で気まずくなったが、

     良く考えれば彼女は俺のことを随分前から知っているのだ。

     彼女は気兼ねなく答えてくれた。


    「ポケモンは……人間と一緒に生きる、何だろう……? 友達、仲間、そんなものかなぁ。

    ポケモンバトルっていって、戦わせたりもするし」


     ふと見れば、ソウはリザードンに命令を下している。


    「いけっ、そこで翼で打て!」


     リザードンは旋回し、巨鳥に突撃した。


     友達。仲間。

     友達や仲間を戦わせるのか。

     何か矛盾しているような、欠落しているような気がする。


     気のせいだろうか。

     それとも、それがここの常識なのだろうか――


     そんな疑念を抱き始めた矢先、視界の隅にかっと光るものが映った。

     何かと振り向くと、さっきの巨鳥の身体が輝いている。


     ぴひょお、と頭のがんがんするような高音で鳴いて、鳥はリザードンに猛突進した。


    「あれは……まさか……」


     隣から漏れた驚愕の声にアキナの顔を見ると、

     その視線は鳥に釘づけになっていた。


    「リ、リザードン! こ……こうなったら一気に行け!」


     ソウの指示が飛ぶ。


    「ブラストバァーンッ!」


     リザードンは、只でさえ大きな口を裂けたように開き、

     俺に見せたのとは違う、赤々とした炎を溜め込み、そして、


     吐き出した。


     光る翼で流星の如く突っ込んできた鳥は、案の定その炎に巻き込まれ、

     黒焦げになって、ぱさりと落ちた。


    「ふう、どうにかなったか」

    「大丈夫、ソウ?」

    「ああ。そっちに被害はないか?」

    「大丈夫よ。ところで、気になることが……」


     俺は、ずっと黒い塊を見ていた。

     彼らが何事も無いようにそれを済ますのは、

     それが『ポケモンバトル』であって、常識だからなのか。


     思わず、俺はその鳥の傍に駆け寄っていた。



     解らないことばかりの世界でも、

     良心の赴くまま行動しちゃいけない規則なんかあってたまるか。



    --------------------------------------------------------------------------------



     羽毛が焦げていたけれど、そいつはまだ生きていた。

     死んでない。まだ生きてる。


    「こいつ、光ったぞ」


     いつの間にか、ソウもアキナも傍に居た。


    「……このピジョット、ゴッドバードを使った……

    野生じゃない。トレーナーが居るんだわ」


     深刻そうに呟くアキナ。

     けれど、二人の心配は、俺には理解し得ない。


     だから、俺は俺の心配を口にした。


    「なあ……こいつ、助けられないのか?」


     暫く、二人の目はきょとんとしていた。

     ああ、タイミングを誤ったか。顔から火が出そうだ。

     それでも、今言わなければいけないような気がした。それだけの話。


    「……あっはっはっはっは!」


     いきなり、ソウが笑い出した。


    「イズマ、お前変わんないな!やっぱりイズマは死んでもイズマだ!

    そのうち、また『お前はトレーナー失格だ!』とか言いながら殴りかかってくるぞ!」


     何、何、何だよ、何だってんだ。


    「イズマ、そういう人だったんだよ」


     アキナも笑う。

     ああ、でも、ちょっと、自信が持てたような。


    「そっか……俺って、『イズマ』なのかぁ」


    「はっはっはっは!」ソウは俺の呟きにさらに大笑いした。

    「当たり前だろ!お前は俺達の『イズマ』だよ。

    忘れても忘れられない、お人よしの『イズマ』だ!」


     そして、俺の背中を豪快に叩く。


    「何だ、実感なかったの?記憶喪失ってそういうものなんだ」


     アキナの笑い方は独特だ。

     含むような、堪えるような。


    「大丈夫、あんたは『イズマ』だから。

    あんたが知らなくても、あたし達が覚えてる。

    あんたはあたし達の親友だよ」


     ああ、今やっと解った。

     思い出したのか、学んだのかは解らないけれど。


     友達って、こういうものか。


    「……さあ!じゃあ、お人よしイズマ君の要望にお答えして、

    ポケモンセンター直伝のアキナ流火傷治療、見せてあげる!」


    「イズマ、テント入れよ。

    お前の寝袋、捨ててないからな」


     招かれたテントの暖かさと懐かしさは、

     記憶の断片?それとも既視感?



     人間、一人で生きてはいかれないけれど、誰かが居ればどうにでも生きていける。

     必要なのは、信念ぐらいだ。――あと、食料と水な。



    --------------------------------------------------------------------------------



     優しさと甘さをイコールで繋げることには、俺は賛成できない。

     優しさと愚かさを同じものと考えることも、俺にはできない。

     けれど、そういう考え方をするやつが存在するのも、解る。解るよ。

     時代なんて薄情なもので、恩は仇で三倍返しが基本なのだ。


     アキナの適切な処置と自身の生命力によりあっという間に回復し、

     俺の手から元気に大空へと飛び立っていった鳥――驚くことに、こいつもポケモンだった――は、

     数時間後、俺達のテントの元へ戻ってきた。

     凶悪そうな面をした、空の愉快な仲間達を無数に引き連れて。


    「――逃げろ!」


     ソウがテントを畳むスピードは、目にも留まらぬほどだった。

     そうして俺達三人は今、無我夢中で草原を駆け抜けている。

     立ち止まったら命の保障はない。

     黄昏に染まる空を黒々と覆い隠すほどの翼が、全速力で追っかけてきているのだから。


    「お前のせいだぞ、このお人よしがぁ!」


     テントを背負ったソウが、振り向いて叫んだ。

     この大きさのものを背負い、これだけの速さで走っていながら、よくもそんな大きな声で叫べるものだ。


    「イズマは……人として……正しいことをしたまでよっ」


     俺の代わりに弁明しようと試みるアキナは既に限界気味で、

     気を抜いたら倒れてしまいそうな必死な目をしている。


     俺は……喋ったらぶっ倒れる。


     足はぎしぎしと悲鳴を上げていた。

     時間と距離が軽く三倍ぐらいに引き伸ばされているような感覚。

     顔が、手が、燃えるように熱い。

     どんどん暗くなる足元を見つめながら、

     世界の果てまで走ったような気がした。


     飛び込んだのは、森だった。

     鬱蒼と……なんて言うほどではない。木々に透けて、町の灯りが見え隠れしている。

     木陰に立ち止まって暫くは、誰も物を言えなかった。


    「まさか……群れで戻ってくるとはなぁ……」


     それでも笑っていられるソウに乾杯。


    「ひどいよね、治療用のチーゴの実が勿体無かった」


     ため息をつくアキナの傍らで、俺は夕闇にぼんやり浮かび上がり始めた灯を眺めた。

     ふと、考える。

     あれは未知じゃない。あれは街灯、知っている。

     今、大樹の根元に投げ出されているこれは?――足。

     今、湿った土の上に放り出されているこれは?――手。

     そんなことは解るけれど、友人だったらしい人間は解らない。

     そんなことは解るけれど、肝心の『ポケモン』のことは解らない。

     理不尽。余りにも理不尽な話だ。

     何で?

     何で俺は思い出せないんだ?


    《お前、『殿堂入り』に挑戦したんだぞ?

    ミスったら記憶を失う、あの『殿堂入り』に!》

     ソウの言葉。

    《代償なの……》

     アキナの言葉。



    『殿堂入り』の『代償』。



     ぞっとした。

     触れてはならない何かに触れて、警報が鳴らされたような。

     入ってはならない場所に足を踏み入れてしまったような。

      ――考えてはいけない。

     本能が警告していた。

     ――考えなければならない。

     理性が告げていた。

     一体どうしろってんだ、全く。



    「おい、イズマ? 聞いてるか?」


     思考はソウの言葉によって遮られた。


    「今日は宿屋でいいよな? イズマ」


     尋ねられても、記憶という名の盾を持たない俺みたいな無防備な人間が、選択できるわけがない。


    「ここ、トルネイタウンじゃない?」


     アキナは小手を翳して街を観察している。


    「トウモロコシのポタージュが美味しいのよ」


    「んじゃ!」ソウは立ち上がった。大きな大きなテントを抱えて、何と逞しい。「行きますかぁ!」


     ――俺は、街へ行く。

     多分、幾度目かにして最初の『街』へ。



    情けは人の為ならず、また己の為にもあらず。




    以下つづく


    ***

     なんだこれ。いたいさすが厨房の自分いたい。
     今ならだいばくはつを使える気がする。
     耐え切れなくなったら本当に爆発するかもしれません つ削除キー


    【みんな自爆すればいいのよ】
    【しめりけなんて野暮なのよ】


      [No.934] 1本目いきますっ! 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/11/07(Sun) 22:05:47     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    いいだしっぺなので晒します。
    ただ後に改訂を行っていたと思うので完全に処女とは言えないかもしれません。
    変更部分は言い回し等で、ストーリー大筋は変わってないです。


    ●参考データ

    書いた時期:2003年12月
    当時の年齢:大学2年生程度

    それまでのストーリー創作歴:
    オリジナルでマンガとか(完結したためしがない)
    演劇脚本2本(一応完結/高校演劇)
    小説は執筆経験無し、これが初

    執筆の背景:
    実は当時、とある事情からドン凹みしてた。
    そんな時よくわからない衝動に突き動かされて書いた結果がコレだよ!
    正直怖くて読み返す気になれない。
    ただ、たまに好きだと言われるので引っ込めるに引っ込められない。


    【みんなも晒すのよ】

    ----------------------------------------------------







     雲が森の上空全体を覆って月は見えなかった。
     ただ、それがあるはずの場所だけがぼうっと光って……
     その下に広がる森の木々の間は行き先の見えない真っ黒なトンネルのようで……

     黒い森の中に地面を蹴る音とその動作に伴う呼吸音が聞こえる。
     少年は森の中をひたすら走っていた。
     真っ黒なトンネルを何度も何度もくぐりぬけて、行き先の見えない道をひたすら走りつづけた。

     黒い森の中のあるというその場所を目指して。




    ●砂時計




     どれくらい走ったのだろうか。ドサッという音と同時に地面を蹴る音がやんで、速いペースのそれでいて乱れた呼吸音だけが残った。

     ほんとうに……本当にあるのだろうか。

     ふと上を見上げると黒い葉と枝の間からわずかばかり空が見える。月はあいかわらず雲の上にあってその下にある雲がぼうっと不気味に光っていた。
     この黒い森にある唯一のあかり。

    ふと我に返る。

     こんなことをしている場合ではない!
     行かなければ。


     黒いトンネルの中で倒れていた小さな影はよろめきながらも立ち上がり走り出した。少しだけおちつきを取り戻した呼吸音の中に地面を蹴る音がふたたび加わった。その音たちを生む動作が再開されると同時に自分が知ったわずかばかりの情報が再び頭の中をぐるぐるぐるぐると走り回った。
     出所もわからない。真偽もたしかではない。その情報の名は、風の噂。

     黒い森の中にあるらしいその場所は、月の見えない夜、その存在を信じて森の中を走り続けた者が辿り着けるという。
     昼間に森の中をくまなくさがしまわったこともあったがついに見つけることはできなかった。
     誰かが言っていた。きっと森の主が願いを叶えたい意思がどれほどのものか試しているのだろうと。



     どれくらいの時間がたったのだろうか。

     風の噂は何十回何百回と頭の中をめぐって、黒い森の中で何十回何百回と黒いトンネルをくぐって音を生み出す力もあとわずか。
     けれども、目指すその場所をいまだ黒いトンネルの先に見出すことができずにいる。
     地面を蹴る音は勢いをすでに失い、それを生み出していた2本の足がささえているものが重くてとてもうっとうしいものに思えた。

     限界だ。
     もう音を生み出す力も、それの存在を信じる力も…

    信じていたわけじゃなかったんだ…でも…

     地面を蹴る音はすでに聞こえなかった。
     残された苦しそうな呼吸音の中、わずかに残された力でふたたび空を見上げる。あいかわらず月は見えなくて、それを隠す雲が不気味に光っていた。

     こうすればあきらめもつくだろうって…

     瞬間、視界から空が消えた。






     ……

     夜のすこしひんやりとした風がくさむらをざわめかせている。
     視界にふたたび映し出されたのは空ではなく密に生えた草のベッドであった。
     無意識に手を伸ばしてそれをつかみその感触を確かめる。


     ……。

     そうだ、森の中で倒れたのではなかったのか。


     ここはどこだ、と頭の中で叫ぶより早く体が反応した。すっくと立ち上がり、目の前の光景をその目に焼き付ける。ひたすら走ってボロボロのはずなのに不思議と痛みや疲れといったものは感じなかった。

     視界に黒い森の中とは異なる光景がに広がった。小高い丘で密に生えた草むらがつづく。虫の鳴く声が聞こえる。
     さらにその先に目をやるとさっきまで走っていた黒い森が見えた。どうやらここから森を見下ろせるらしい。
     月はあいかわらず雲の上にあったけれど光を覆い隠すものがない森の中よりは明るかった。

    「!」

     そして気がついた。
     自分の背後にある巨大な存在に。

     それは幹のふくらみ一つとっても、自分の知っている木というものの幹の太さがあった。それは付け根のほうの枝一本とっても自分の知っていた木というものの幹の太さを持っていた。それは木一本という単位でなく、丘とか、森一つとかそういう単位と等価のものであった。

     巨大な一本の木…

     その巨木は丘の上に根を下ろして、今日まできっと人の身には想像もつかぬ長い長い時間、あの黒い森を見守り続けていたに違いない。

     そして確信した。
     こここそが捜し求めていた場所そのものであると。

     同時にその根元に建てられた巨木とは対照的に小さな祠が目にとまった。

     そのときだった。それのすぐ上で光が溢れた。
     その光ははじめはただぼうっと光っていたが、だんだんと集って、光を増して何かの形をつくりはじめた。

     彼はそれが何を形作っているのかそれが何であるのかすでに確信していたようだった。
     彼の口から迷うことなく反射的に言葉が出た。

    「会いたかった…セレビィ」

     光はますます強く、ますますその形をはっきりとつくってぱっと光が消えたかと思うと、形作られたものが祠の上に降り立った。

     探し求めていた場所の、捜し求めていた者であった。







     月はあいかわらず雲の上に隠されていた。ただ、その下にある雲だけがぼうっと不気味に光って見えるだけだった。
     その下に広がる小高い丘の上に根を下ろす巨大な木の下で、小さな影とそれより少しばかり大きい影、ふたつの影が向き合っていた。

     ほんとうだったんだ…

     少しばかり大きい影が第声を発するより少し早く対峙している影のほうが言葉を発した。いや、言葉を発するといってもそれは口を開いて発せられる音声ではなく、頭の中にひびく類のものであったが。

    『めずらしい人もいるものね。今どきの子がこんな言い伝えを信じてやってくるなんて』

    『最後の来客から何回の冬を越したかしら?』

     その口ぶりはもう何年も、いやもしかしたら何十年もの間ここに人が足を踏み入れてはいないらしいということを語っていた。

    『あんな言い伝えもう絶えてしまったのかと思っていたのに』

     今度はもう一方の影が口を開いた。

    「叶えて欲しい願いがあるんだ」

     それに対峙する小さな影がひさしく聞いていなかった言葉だった。
     何年ぶりだろうか? それとも何十年ぶりだろうか? すでに記憶はさだかでない。
     もう一方の影はさらにつづけた。

    「変えたい過去があるんだ」

     そしてすがるように、それでいて必死に、他の誰にも頼むことができないかった願いを言葉にした。

    「お願いします。どうかぼくを”ときわたり”であの日に連れて行ってください」

     なぜだろう。
     暗くてよくわからなかったけれど小さな影の表情が少し曇ったように見えた。

     つの影の間に沈黙がつづいた。
     月はあいかわらず雲の上にあって、その下にある雲だけがぼうっと不気味に光って見えるだけだった。
     風がくさむらをゆする音と虫の音が聞こえた。

     しばらくして少し大きな影が沈黙を破った。

    「ぼくは…あの日にとりかえしのつかない誤りをおかしました。なぜあんなことをしてしまったのか…とても後悔しています。あんなことさえなければと考えると毎日つらくてつらくて、苦しくて苦しくて… 考えないようにしても湧き上がってくるんです」

     言葉をつむぎ出すたびにあの日のことが思い出される。
     胸が苦しくなった。

    「そんなとき風の噂を耳にしました。黒い森の主に頼めば過去を変えられるって、黒い森の主は時を渡る力があるんだって…」

     そこまでごく小さな震えた声でなく語ると胸がいっぱいになった。
     黙ったと思った瞬間、叫んだ。

    「過去を変えたいんです!」

     また沈黙が訪れた。
     何度かつの影の間を風が走り抜けたのち、小さな影は語り始めた。

    『かつてまだこの言い伝えを信じる人々がたくさんいた時代……私の元には過去を変えたいと願う人がたくさん訪れました』

    それは遠い昔を懐かしむような口調であった。

    『私は…その人たちが幸せになれるならと何度も何度も時を渡ったものです。たくさんの人間が時を渡って自らの過去を変えました』

     小さな影はそう言うと、しばらくの間黙って対峙する影に問うた。

    『……過去を変えたすべての人間が幸せになれたと思いますか?』

     突然、大きな風が吹き抜けて草むらとその上に根を下ろした巨木の葉たちがざわっと騒いだ。
     まるで小さな影にあわせるかのように。

    「でも…」
    『私にあるのは時を渡る力だけであって過去を変える力も、人を幸せにする力もないのです』

     暗くてよくは見えなかった。
     けれどその小さな影の表情がとても暗い影を落としているように見えた。

    『人間は過去に干渉するようにはつくられていません。たいていの生物はそうですが…。今になって考えれば、そうつくられていない生物が本来ではないことをしてうまくいく道理はなかったのです』
    「でも、可能性があるなら…!」

     なんとか願いを叶えてもらおうと必死だった。頭の中にあるのはあの日のことばかりだ。あのことさえ、あのことさえなければ……
     だが、相手方の返事は快いものではなかった。

    『私はもう疲れました。もう、時を渡るのはやめようと思った。同時に時が流れ、気がつくと言い伝えを信じる人はいなくなりました。はからずともここには誰も来なくなったのです』

     それはそのことに安堵していたかのようにも聞こえたが、また寂しそうにも聞こえたのだった。

    『けれど、あなたが現れた』

     小さな影がそう言うとそれに対峙する影の目の前に光が溢れた。ちょうど小さな影が、セレビィが現れたときのように。
     その光は集まってだんだんと形をつくると、ぱっと消えて少し大きな影の、少年の手のひらの上に落ちた。

    『あなたの願いを叶えることはできない。そのかわりそれをもっていきなさい』

     手のひらの上に落ちたものを見る。
     手のひらの上にあったのは砂時計だった。







    手のひらの上におちた砂時計を持ち上げると
    最初の一粒が落ちるのが見えた。

    セレビィがつづけた。

    『人は生まれたときから、砂を落とし始めます。生きるほどにその砂は積もってゆくのです。時に人は積もった中のたった一粒が気になってそれをどうにかしたいと悩みます。でも人は砂を落とすことはできても積もった砂を取り除くことはできません』

     そう、過ぎ去ってしまった過去には干渉できない。
     過去を変える方法はたったひとつ。

    『だから私の力を借りて、砂時計を逆さにしようと考えるのです』

     セレビィは少年の手から砂時計を取り上げると、
     それを逆さにして、ふたたび少年の手へと戻した。

    『砂時計を逆にすると砂が逆流します。でも逆さにしたとき最初に逆流するのは最後に落ちた砂とは限らない』

     そう言って、もう一度同じ動作を繰り返した。

    『もう一度砂時計を逆にすると、また砂は落ち始めます。しかしそれは前に落ちた砂と同じというわけにはいかないでしょう』
     
     そして強い口調で一気につづけた。

    『積もった砂の一粒、それもどれも同じように見える砂粒の一つをどうにかするために砂時計を逆にする。逆流するのは取り除きたかった砂だけではありません。たった一粒を積もった砂の山からなくそうとすると、中に積もり続けたあらゆる砂を巻き込んで逆流するのです。砂はどんどん混じって、ついにはわけがわからなくなって、でも二度と元には戻らない』

     そしてこう言い聞かせた。

    『過去を変えるとはそういうことなのです』

     いままでで一番重い口調。
    セレビィに”ときわたり”の意思がないのは明白だった。唯一見えていた道が、見えなくなった。出口のない森の中で迷子になってしまったように。

    「わからない……言ってること全然わからないよ」

     もう過去を変えることはできないのだろうか。
     少年はうつむいていた。すがるように砂時計をぎゅっと握り締めて。目から砂時計の砂のように涙が落ちた。

    「やっとの思いでここまでたどり着いたのに… 願いを叶える気がないのならどうしてぼくの前に現れたりした?」

     セレビィは黙っていた。
     まだ、言い伝えが信じられていた時代、自分を頼ってたくさんの人間がここに訪れた。それが嬉しかった。

    「答えてよ!」

     けれど過去を変えてすべての人が幸せになったわけではなかった。それが悲しかった。

    「どうしたらいい? これからどうしたら…?」

    やがて時は移って言い伝えを信じる人間はいなくなった。それが寂しかった。

     ここは丘の上のはずなのに、あの行き先の見えない真っ暗な森の中にいるような気分だった。
     月はあいかわらず雲の上にあって、その下にある雲がぼうっと光っていた。先が見えない、どうすればいいのかもわからない。
     できることといったら悲しみにまかせてあたりちらすくらいで。

    「…もういい、消えてくれよ」

     まだ、言い伝えが信じられていた時代、自分を頼ってたくさんの人間がここに訪れた。それが嬉しかった。
     けれど過去を変えてすべての人が幸せになったわけではなかった。それが悲しかった。
     やがて時は移って言い伝えを信じる人間はいなくなった。それが寂しかった。

    「消えてくれよ! ぼくの目の前から!!」

     セレビィの体が光り始めた。現れたときとは逆に光の輪郭が崩れ始めた。
     少年の目の前から消えかけながらセレビィは最後にこう言った。

    『その砂時計が計る時間は一年。すべての砂が落ちるのに一年かかります。もし、すべての砂が落ちたとき、それでもあなたの願いがかわらなかったら、もう一度ここへいらっしゃい』

     輪郭は完全に崩れて、光は消えかかっていた。

    『そのときはあなたのその願い、叶えましょう』

     できることなら一年の間に過去を乗り越えて欲しい。
     けれどそれでも行き先が見えなくて、どうしていいのかわからないのなら、その願いを叶えましょう。
     もう信じるものなどいないと思っていた。けれどあなたは来てくれたから ――

     わずかにのこっていた最後の光も消滅した。目の前は涙のためかよく見えなかった。ただ風の吹き抜ける音と虫の音だけが耳に残った。


     そのあと、どうやって家路についたのか…覚えていない。







    ――あれからちょうど一年が過ぎた。


     黒い森の中に地面を蹴る音とその動作に伴う呼吸音が聞こえる。あのときの少年は森の中を走っていた。
     その歩幅は階段を一段抜かしで上がるかのように大股で、あのときより長く太くなった腕をぶんぶん振り回していた。森の木々がつくるトンネルを何度も何度もくぐりぬけてひたすら走り続けた。
     不思議と行き先がわかる。迷わなかった。一度行ったことがあるからだろうか? あのとき貰った砂時計を持っているからか? そんな考えが脳裏をよぎったがそんなことはどうでもいいことであった。
     あのときの少年は走り続けた。

     約束のあの場所を目指して。


     どれくらい走っただろうか。
     一年前のあのころならここらへんで息を切らしていただろうか。
     あれからずいぶんと体も大きくなって体力もついた。地面を蹴る音も呼吸音もほとんど乱れない。
     そんなことを考えながら、黒い森の主の元へと走り続ける。

     ガッと音と同時に突然地面を蹴る音が止まる。どうやら木の根に足をつかまれたらしい。勢いよく前方に体が倒れていく。

     だめだ、そのまま地面たたきつけられる!

     そう思って思わず目を閉じた。
    ドサッという音と共に体に地面が転がった。 …が、さほどダメージは受けなかった。まるで何に包みこまれたかのようだ。
     そして気がついた。自分が起き上がろうとして掴んだそれは森の中の落ち葉ではなく、あの時、あの場所で気がついたときに握った草の感触であるということに。

     再びたどり着いた…

     一年前のあの場所。約束の場所に。

     一面の密の生えた草むら。背後を見るとそこには巨木が根を下ろしていた。
     あの時と同じ…いや、この木にとってみれば一年なんてものすごく短い期間なのかもしれない。だから外見的に見てもわからない。
     そしてその根元に建てられた祠を見た。祠は木で作られているように思われたがどちらかというと緑とか黒とかそういう色が多くて、それをつつむ苔がその歳月を思わせた。あのときは暗くてよくわからなかったけど…ずいぶん古いものだったのだなぁ、そう思った。

     祠のすぐ上で光があふれた。光はだんだんと集まって形をつくってその輪郭がはっきりしてきたかと思うと、ぱっと消えて、作られた形が祠の上に降り立った。

     ――セレビィ。

     少年は最後の一粒が落ちた砂時計をかざしてこう言った。

    「すべての砂が落ちました。どうかぼくの願いを叶えてください」

     セレビィは最後の一粒が落ちた砂時計を見てこう答えた。

    『すべての砂は落ちました。あなたの願いを叶えましょう』

     小高い丘の上に根を下ろす巨木の下で対峙したつの影はお互いに覚悟したような表情であった。
     その表情は険しいというよりも、むしろ笑っているようにすら見えた。

    『あなたの願いを叶えましょう。ただし、過去を変えたすべての人間が幸せになれるとはかぎらない。砂時計を逆流させるとあらゆる砂が逆流するから』

    風が通り抜けて草むらと巨木の葉たちがざわっとさわいだ。

    『…覚悟はいいですね?』

     セレビィの頭の中にまた記憶がめぐった。

     まだ、言い伝えが信じられていた時代、自分を頼ってたくさんの人間がここに訪れた。それが嬉しかった。
     けれど過去を変えてすべての人が幸せになったわけではなかった。それが悲しかった。
     やがて時は移って言い伝えを信じる人間はいなくなった。それが寂しかった。

     だが、セレビィにもう迷いはなかった。彼が幸せになれるかどうかはわからない。しかし、これが自分にできる唯一のことなのだと。

     が、少年の答えは予想に反するものだった。

    「いいえ、ぼくは過去を変えにきたわけではありません」

     驚いた。

    『では…何を叶えに?』

    「もう一度あなたに会いたかった。そして謝りたかった。一年前、ぼくはあなたにひどいことを言いました」

     ああ、そういえば一年前、不本意な別れ方をした。

    「…ごめんなさい」

     少年はそう言って、つづけた。

    「あなたの言っていた砂時計の意味、少しだけわかったような気がします。あれから一年、砂を落とし続けました。たくさんの砂を。もしあのときにあの砂が落ちていなかったら、落とすことはできなかったかもしれない砂です」

    「あらゆる砂が落ちています。悲しいことも、けれど嬉しいことも。いろんな砂が積もりました。だから、まきこみたくない。もうこの砂を逆流させたくないんです。今なら、こんな自分も悪くないって思えるから」

    「過去が人をつくります。ぼくの砂時計は逆さにしません」

     少年の表情に迷いはなかった。それはとてもすがすがしいものだった。
     あの時と違って月明かりでお互いの表情がよく見えた。

     ――月明かり?
     ふと、つの影は巨木の葉の間から見える空を見上げた。

     月が見える。
     あの時は雲に隠されてずっと見えなかったのに。
     今日は雲ひとつない。
     光をさえぎるものはない。
     満月だ。

     ああ、そうか。
     ここまでの道に迷わなかったのも、
     あのときより祠がよく見えたのも、
     お互いの顔がよく見えたのも、

     こんなに気持ちが晴れやかなのも。


     月を隠すものは何もない。
     その光をさえぎるものはない。

     道は、月明かりが照らしてくれる。



     ――もう、迷わない。






    -fin-


      [No.933] Re: こう言う感じの短編が好き 投稿者:海星   投稿日:2010/11/07(Sun) 21:50:41     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    感想ありがとうございます^^*
    カツノリちゃんについては、特性が『メロメロボディ』だということしか判明していません(待
    ひでんわざの中でもなみのりが特に好きなので、そういえばミオシティってなみのりしなきゃ行けなかったっけ…と書かせていただきました。
    題名から「こう言う感じの短編が好き」だなんて、もう、嬉しすぎて眩暈しちゃったじゃないですか!(


      [No.932] 【黒歴史】処女作を晒すスレ【降臨】 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/11/07(Sun) 21:49:52     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    はじめて書いたポケモン小説を晒してみませんか。
    もうファイルが残ってなかったら手元にある最古のものでも可。
    (連載なら1話目オンリーとか)

    かの人いわく
    「処女作なんて、数年後に読んで笑うためのものなのだよ。 」

    さあ、勇気を持って投稿しよう……。
    小説歴とその時の具体的なエピソード付だと尚、可。




    【恥ずかしがらなくていいのよ】


      [No.931] まどろみ症候群 投稿者:紀成   投稿日:2010/11/07(Sun) 14:59:23     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    人生を歩いて行く上で、大切なことは何か。
    そんな哲学的なこと、アンタは考えたことある?
    私?うん、あると言っていいかもしれない。答えも出した。ただ、大抵それはまどろみの最中だから、絶対というほど忘れてしまう。
    それは朝のバスの中だったり、午後の授業だったり、はたまた夜眠る時だったりする。
    そんな時、彼はいつも四本の腕・・腕って言っていいのかな・・で、頭を撫でてくる。
    これじゃあどちらが主人か分からないじゃない。


    ヘッドフォンをしているため、街の音が入って来ない休日の午後、私は一人でショッピングモールに来ていた。
    昼食を済ませ、好きなアイスクリームを買って外のベンチに座る。隣は二十代の女の人。煙草を吸っているから煙が流れてくる。
    休日だからだろう、家族連れが多かった。私の両親はいつも仕事だ。幼い記憶でも何処かに連れて行ってもらったことなんて一度も無い。
    でも平気だった。私にはポケモンがいるから。彼を見ると皆怖がるけど、私にとってはトモダチなんだ。
    かけがえのない、トモダチ。


    アイスクリームはミックスだったため、舐めていくうちにマーブル模様になっていく。
    ぐるぐる、ぐるぐると。
    冷たくて味が分からないため、私は気にせずコーンをかじった。
    遠くで子供が泣いている。私は子供が苦手だ。私だってあんな時があったに、他人はどうしても許せないのだ。
    「この世界の人間がさ」
    私は隣にいるトモダチに話し掛けた。
    「みんな、感情が無かったら良かったのにね」
    『それは無理な話だ』
    即答された。私は手の平に残っていた紙をビリビリに破く。
    「冗談だよ。感情の無い人間なんてつまらない」
    『じゃあ何故言った』
    「んー」
    四本の腕が伸びてきた。そのうちの一本を掴む。

    「ポケモンのアンタなら、どういう反応するかと思ったんだ」


    二本、三本、そして四本。
    腕は私の両手を握った。
    『お前は不思議な人間だ』
    「何で」
    『まどろみの中で、』
    世界がぐにゃぐにゃ歪む。

    『これだけまともに過ごせるんだからな』

    「アンタも私もちゃんと存在しているでしょ」
    『まどろみで夢を見る人間は多い。現に、今お前はそうしている』
    「・・」
    『だが、夢の中で自由自在に動ける人間は珍しいだろう』


    気が付けば、私はベッドの上で座っていた。目がしょぼしょぼしているから、やはり眠ってしまったのだろう。
    右手には好きなライトノベル。最近アニメ化もした話題作だ。
    「非日常、か」
    私もこうなりたいと思った。そうしたら、夢の中で生活出来るようになった。
    楽しい。

    だけど、

    いつか、それが普通になり、一生こちらに戻る事が出来なくなるんじゃないかと・・
    そう思うのだ。

    怖い、と感じる。
    その感情が無くなれば、私は夢の世界の住人になるんだろう。

    デスカーンも、一緒に。

    黄昏時の色が、部屋を染めて行った。

    ーーーーーー
    [書いてもいいんだぞ]
    [批評してもいいんだぞ]


      [No.930] 続編でーす 投稿者:   《URL》   投稿日:2010/11/07(Sun) 11:21:41     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 何度も読み返した

    照れます。照れますから。

    > 取りあえず、今回も大いに楽しませて頂きました・・・!
    > 落ちの『電話番号』は、最後のシーンまで気が付きませんでした・・・  不覚ナリ・・・

    引っ掛かってくれると作者冥利につきます。

    > これだけ登場人物のキャラクターがしっかりしてる所は、恐ろしい限りっすね・・・

    実は、別に考えている話からキャラを引っ張ってきてたりします。部下の彼が上司に告白して撃沈したというのは秘密。

    >『悪の組織はこう、奥まった部屋にでかい扉をつけてロックをかけて、重要なブツを保存するのが好きなんだろうか』 とか、メタに近いこの手の表現は、読む傍から自然と笑いが込み上げてきて、個人的に大好きです。

    私もメタが好きなもので、そう言っていただけると幸い。
    なんでボスは最上階にいるんだろうと訝しがりながら、今日も階段を登っていきます。

    > 言葉を喋れないにもかかわらず、毎度主人公をそっと精神崩壊から救ってくれるエルフーンさんは、まさに得難きパートナー。

    上司のいびりがないときは、エルフーンが彼にイタズラします。

    > ・・そう言や、俺は何時になったらヒウンアイスを買えるんだろ・・・(爆)

    バニリッチを代りに……


      [No.929] 雷神と戦ってみた 投稿者:   《URL》   投稿日:2010/11/07(Sun) 04:49:36     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     一歩、二歩、アーケオスが均した地面から離れ、木々が折れ飛び、けもの道のようになった場所を進む。
     さっきのレンジャーたちの誰かが、道として切り開いたのだろうか。
     彼女は先の青年たちの顔を思い浮かべながら、有り難く使わせてもらうよ、と呟いた。
     風神雷神をあの場所から引き離すのに、使えるかもしれない。
     途中からは森に入ることになるだろうが、それも策のうちだ。

     そこまで考えて、彼女は雨で額に張り付いた髪をかき上げた。
     ……少し、調子が悪い。
     気のせいと思いたかったが、それは事実だった。
     伝説に謳われる風神と雷神。
     この機を逃せば、十中八九、次はない。
     怪我なんかで寝ている場合ではないのだ、と自分自身に喝を入れる。

     近くで雷が落ちた。風が乱れ、右から左から、不規則に吹いては彼女の体を揺らした。

     顔を上げ、ゾロアークの視線の先を探るが、人間である彼女には暗闇と雨以外何も見えない。

     不意に、雨の中に明かりが灯った。
     相棒のゾロアークの様子を窺うが、彼は明かりの方に興味を示していない。
     危険ではないらしい、と判断する間にその正体が知れた。

     彼女は顔をしかめた。
     さっき岩棚の所にいた青年が、何を思ったか、リオルとヒトカゲを連れて、ここに来ていたのだ。

     戻って、救助でも待ったらどうだ。彼女がそう口にする前に、青年が口を開いた。
    「助太刀に来ました……と言っても貴女は断るでしょうが、俺も手伝わせてもらいますよ」
     青年が連れて来たリオルとヒトカゲが、彼女の足元まで来て、やる気満々だよという風に彼女を見上げた。

     青年は、どこか底の知れない瞳で彼女を見ていた。
     トレーナーとして、長い間修行してきたのだろう。
     隠そうとしても隠しきれない、彼の強さと闘いを求める心がその奥にあった。

     彼女には分かった。彼は、帰れと言っても絶対に帰らない。自分もそうだから他人のことをとやかく言えないが。
    「勝手にしろ。ただし、技に巻き込まれて瀕死になろうが、知らないからな」
    「じゃあ、勝手にしますよ」
     そう言って、不敵な笑みを浮かべる。
     青年の腰に付けられたモンスターボールが、カタカタ揺れた。
     彼の体全体から、一挙一投足から、彼の戦士としての技量、隙の無さが見えた。

     青年の、意味ありげな視線が自分に向けられているのを感じて、体の向きを変えた。
     無意識に鳩尾を庇っていた手を外した。
     治りかけた傷が、どうなっているか……だが、倒れるとしたら、奴らを負かした後だ。

     リオルとヒトカゲに手で戻るよう促すと、二匹は青年の近くへ寄っていった。
     その様子を見て、とりあえず邪魔になることはなさそうだと判断する。

     肩に乗せたバチュルが、細い笛に似た音を出し続けている。
     ゾロアークのスーが、視線を固定させて、低く唸っている。
     他のポケモンたちも、それぞれのやり方で、トレーナーの彼女に近づく危険を知らせていた。
     いつの間に現れたのか、先程土砂崩れを防いだエーフィが、雨の中、彼らを見上げていた。
     エーフィがひと声鳴くと、スーが応えるように鳴いた。

     スーが彼女のコートの裾を、軽く引っ張った。
     数メートル下がると、黒狐は肯定するように鳴いて、彼女の斜め前に回った。

     エーフィが彼らに背を向け、耳と尻尾を、ピンと立てた。
     リオルは静かにトレーナーの隣で待機し、ヒトカゲは自分を奮い立たせるように小さく鳴きながら、尻尾の炎を爆ぜさせた。

    「……来るか」

     右手を上げ、バチュルの視界を遮ると、小さな電気蜘蛛はピタリと鳴くのを止めた。
     他のポケモンたちが、動作を止めて、彼女を見上げる。

    「いつもやっている通りだ」
     息を吸う。雨が口の中に入り込む。
     ちょっと危ない奴を逮捕する時と同じだ、と言って笑う。

    「スー、先導を頼む。グンとユンは陽動。ナンは、」
     灰鼠と紫オコジョが片手を上げる。
     彼女がドレディアに目を向けると、特性がマイペースの彼女は、気が早いのか呑気なのか、離れた場所で蝶の舞を踊っていた。
    「……それでいい」


     雨と、風と、雷鳴。
     ひたすらにうるさいのに、妙に静かに感じた。
     音が消え、冷たさが消え、この時間がずっと続くのではないかと思われた、その時。


     時間が目に見えるなら、壊れて弾けた。


     頭を打ち割る大音響と、目が潰れそうな眩い一閃。
     何もかも白くなって、たったの数秒が引き伸ばされて、延々と白の景色を見ていた気がした。


     視界が戻り、雨風が場を支配する。
     さっきの閃光で大きさの狂った瞳孔はすぐには戻らないが、そこに何がいるかは、見ずとも分かる。

     風神と、雷神。

     ……危なかった。エーフィとゾロアークに言われて下がっていなかったら、さっきの白光が彼女の命を奪っていただろう。

     青年を押しのけて、前に出る。
    「ここじゃ、また土砂崩れが起こったらフォローできない。まずはここから引き離す」
     ぎりぎり雨に消されない大きさの声で、青年に伝える。
     了解です、とこの状況にしては軽い調子で青年が答えた。


     雨の中で、二つの影が動いていた。

     ひとつは地面で、腕を支えに起き上がろうとしている姿。
     もうひとつは、地面に這いつくばる兄弟を嘲るように、中空を旋回していた。
     地面に落ちていた方が、体を起こし、宙に浮かび上がった。

     二つの影は、よく似た形をしていた。
     どこか人間に似ているが、雲を支えに空を飛び、一本の輪のような尻尾を持っている。
     互いが互いに、似ている。
     だから争うのだろうか。

     右手を半端にバチュルの前に持っていく。
     バチュルは彼女の意図を察したように、小さく鳴いた。

     紫を多分に含んだ虹色の光が、兄弟神の間を割くように飛ぶ。
     争いの邪魔をされた兄弟神が、光の出所を睨んだ。

     空気が変わった。
     気まぐれな雨が、風が、雷が、彼らの眷属であるというように、意志を持って彼女たちに敵対していた。
     
    「風神と雷神だな」

     静かに発した彼女の声を、黙って聞いているのは、神の気まぐれか、憐れみか。

    「お前たちがところ構わず暴風雨を撒き散らすせいで、迷惑してる」

     片方が、クックッと笑った。
     何がおかしいのか。

     彼女は静かに、人差し指を向ける。

    「だから、成敗させてもらう」

     人間ごときが。そんな声が聞こえた気がした。
     怒りを含んだ空気が膨れ上がる。
     神が、雷鳴、豪風に似た雄叫びを上げた。



     彼らが攻撃の予備動作に入る前にさらに数歩下がり、三匹のポケモンの名を呼んだ。
     すべきことを弁えている三匹は、彼女が名前を呼び終わるより先に、攻撃を繰り出した。

     チラチーノが小さな手にエネルギーを込め、無数の岩を撃ち出す。
     ゾロアークが闇色の刃を撃ち、その行く末を見極めたコジョンドが風神との距離を一瞬で詰め、眉間に腕の体毛の一撃を加えた。

    「下がれ、スー。グン、ロックブラスト。ユン、ストーンエッジ」
    「ラックル、まねっこ」

     黒狐が大きく跳躍して切り開かれた道に降りた。
     数歩下がり、チラチーノたちを道の奥に少しずつ移動させる。
     青年のリオルが、コジョンドを真似てストーンエッジを撃ち出す。
     ヒトカゲとエーフィも、自分で技を選んで彼らに放つ。
     尖った岩と炎が飛び交い、大量の礫に全身を打ち据えられながら、なお風神雷神は泰然自若と笑っていた。

     雷神と風神は顔を歪めて笑うと、尾を光らせ始めた。
     神の力を見せてやろう。
     そう言いたげに雷神が雷鳴と、風神が豪風と同じ声を上げた。

     二体が輪のような尾をしならせ、弾いた――と同時に雷竜が天に昇り、弧を描いて地面への走路を選ぶと、道の後方で大口を開けた、竜のようなような竜巻に迷わず突っ込んだ。
     後方の道の部分でで爆発音が起こり、細かい砂が雨に混じってバラバラと降ってきた。
     ゾロアークの安全を確認しようと後ろを振り向くと、そこにはすり鉢状にえぐれ焦げた地面だけがあった。

     スーの姿が見えない。地面に倒れていなければ、あいつは無事だ。
     前に向き直ると、勝ち誇ったような笑みを浮かべる雷神と風神の姿があった。

     しかしなおも、ポケモンたちは負けじと攻撃を続けていた。
     彼女たちも足場を確認しながら、後ろに下がっていく。

     えぐれた地面の縁まで来て、彼女は足を止めた。
     場所ではない。音だ。
     雨の中を、こぉーん、と高い声が通ってくる。彼女のゾロアークは仕事をひとつ済ませたようだ。
     土砂崩れで消えているかと思ったが、目を付けていた天然のバトルフィールドはしっかり存在しているようだ。

     傍らの青年を肘でつついた。
    「何ですか」と青年が答える。
     その横顔にふと安心感を覚えた気がして、慌ててそんなことはないと心の中で否定する。

    「場所、変えるぞ」
    「いいですけど、どこに?」
     こぉーん、と雨の中、かすかに聞こえる遠吠え。
     その音の方向を黙って指し示す。青年は静かに頷いた。
     ポケモンたちに陽動の指示を出そうと、口を聞く。

    「グン、ユン、こっちに……」

     突然、鳩尾に鉛の大玉を入れられたような感覚に襲われ、喉も、声も、体の動きも機能しなくなった。
     倒れかけた彼女に、風神が強風を撃ち出す。
     技でも何でもないただ強いだけの風だが、彼女を吹き飛ばすには十分だった。

     棒のようになった彼女の体が、すり鉢状にえぐれた地面の底へ転落した。

     すり鉢の底に着いた彼女は、すぐさま痛みをおして立ち上がった。
     そして、状況が如何に悪いかを知った。

     豪雨で泥と変じた地面は、ただえぐれただけでなく、即席の蟻地獄の巣のように彼女の足を絡めとっていた。
     今の彼女では、ここから出られない。
     ボールからアーケオスを呼び出し、その背に乗る。
     色鮮やかな始祖鳥は、彼女を乗せるや否や、鳴き声を上げる間も惜しんで蟻地獄から駆け出した。

     ――青年がいる方向とは逆向きに。

    「ロー、何やってる!?」

     不可解な動きをした始祖鳥に少しの間戸惑った彼女だが、後ろを向いてようやく事態を把握した。

     雷神が体に余るほどの雷を身にまとい、憤怒の形相で追ってきている。
     奴が、彼女と青年を引き離すよう動いたのだ。その上、道を塞ぐように暴風で出来た壁が出現していた。
     最初からこれが狙いだったのか。
     ポケモンのいないポケモントレーナーなど、魚の卵より簡単に潰せると踏んだのか。
     神の名を冠するとはいえ、一介の野生ポケモンが彼女だけをあの集団から引き離そうとした。高らかに成敗すると宣言した彼女を狙って……悪いことばかり考えても仕方ない。

    「ロー、スーの声だ。あいつの声を追え!」

     飛ぶよりも走るのが速い始祖鳥は、僅かに余裕が出来たのか、クエッとひと声鳴いた。
     狐の声を頼りに、身を翻し、道から外れて脇の山林に飛び込む。
     雨でぬかるんだ地面を蹴り、風で倒れた木々を越えて、アーケオスはひたすらに走り続ける。
     後ろから、低い雷の音が聞こえる。
     至近距離で雷が落ちた。
     アーケオスに立ち止まって技を出す余裕など、ない。しかし。

     雷の音に消されそうなスーの鳴き声を拾いながら、彼女は人差し指を立てて、肩のバチュルの前で軽く振った。
     小さな蜘蛛は、心得た、と彼女の背中側に回り、技を繰り出した。

     パチパチ、と雷に比べると可愛らしいぐらいの電気を込めて、特別な糸で編んだ網を、追いかける雷神に向けて広げた。

     大きな唸り声を上げて、雷神が網に突っ込んだ。
     粘着力と電力両方を備えた糸を払いながら、なおも彼女を追いかけてくる。

     スーの声が、近い。

     木々をかき分け、彼女は相棒の示す場所へ、一目散に飛び出していった。
     森の中でそこだけ、自然に開けた広場となっていた。ポケモンバトルにはおあつらえ向きだ。

     合流を果たした彼女に、おかえりと言うようにゾロアークが鳴いた。
     ここまで駆け抜けた始祖鳥に、奥の山林に隠れるよう指示を出す。アーケオスはすぐさま木々の中に飛び込んだ。
     雷の音を聞きつけた化け狐は、指示を仰ぐまでもなく、彼女の姿を真似た。

     広場に、雷神が姿を現す。
     人間の女の姿を探していた雷神は、探す姿が二つに増殖して、面食らったと見えた。しかし、それから雷神が次の決断をするまでの間は短かった。

     雷神の考えとはつまり――二人いるなら、両方攻撃すればいい。

     さっきとは比べ物にならない程太い黄竜が、広場の中央を穿った。
     彼女とゾロアークは慌てて左右に分かれて飛び退く。
     雷の直撃は免れた。しかし、その余波で撒き散らされた電気は、人間の彼女には耐え難かった。
     体勢を崩し、その場に倒れ込んだ彼女の上に、追い打ちをかけるように雨が降ってきた。

    「ガウゥッ!」

     ゾロアークが焦燥の声を上げた。
     自ら尻尾を出してしまった狐をギロリと睨みつけると、雷神は、地に転がって動けない彼女に、尾を突きつけた。
     今までに、見せつけるように地をえぐる雷撃を撃ち出した、その銃口の部分が、ピタリと彼女に向けられた。

     雷神の持つエネルギーが、肥大化していく。
     その全てを銃である輪っか状の尾に溜め、その先には彼女がいる。

     雷神が勝利を確信し、雷と同じ声を上げて笑った。
     エネルギーが尾の先に収束していく。
     尾の先が放電を始める。

     尻尾の先が下方に揺れ、いよいよだと彼女に突きつけられ、尾の先が眩く輝いた。


     と思うや否や、尾の輝きが消えていく。
     雷に変換されたのではない。
     尾に蓄えられていたはずのエネルギーが、どこかに消失したのだ。

     尾の先には、彼女と――雷神に取り付いたバチュル。

    「フィィィッ!」

     笛のような音を上げて、雷神が尾を地面に打ち据えるより先に、バチュルが雷神から吸い取ったエネルギーを、元の持ち主へ打ち放った。
     かつて雷神のものであったそれは、今は雷神を襲うものとして、光を放った。

     尻尾が地面に当たり、小さな蜘蛛が跳ね返って飛んだ。
     再び雷神がエネルギーをチャージする。

    「ロー、原始の力!」

     体の痺れを振り払って、叫ぶ。
     緑の中から原色の鳥が跳躍し、翼を振るって白い光体を打ち出した。
     白の発光体が、雷神に直撃した。ぐう、と雷神が唸った。効いている! コジョンドたちの攻撃が、ここまで来て功を成した。
     始祖鳥はすかさず、第二、第三の原始の力を撃つ。
     負けじ、と雷神が雷を放つ。
     初撃を避けたローだったが、二撃目は避け切れず、右の翼を麻痺させた。
     バチュルが飛び出し、弱気になりかけたローにすかさず胃液を使った。
     気を取り直したローは地を駆けながら、残った左の翼を打ち振って原始の力を使う。
     雷神の放つ雷が、地面に焦げ跡を作っていく。
     太い光の柱のような雷撃の間を潜り抜け、地を駆ける始祖鳥は確実に雷神の体力を削っていた。

     焦れた雷神は咆哮を上げると、鳩尾を庇い、未だ立ち上がれない彼女に向かって突き進んだ。

     アーケオスが彼女と雷神の間に立った。
     繰り出された雷撃がアーケオスを直撃した。
     雨に打たれ、雷に打たれ、それでも倒れない始祖鳥を見て、雷神が口角を上げ、尾に溢れるほどのエネルギーを充填した。

    「ロー、撃ち落せ!」

     漆黒の尖った岩が、雷神が背にした山林から、銃弾のように飛び出した。
     岩が背骨の中央をしたたかに突いたのに耐えきれず、雷神が高度を下げる。

     雷神の目の前にいた鳥が、ニヤリと笑った。
     輪郭が歪み、元の姿を現す。
     騙し合いを楽しむそれは、化け狐のもの。
     ゾロアークは残った力を振り絞り、雷神に向けて草結びを発動した。急成長した蔦が、雷神の尾に絡みつき、離陸を阻む。

    「今だ。ロー、地ならし!」

     始祖鳥は、雷神と至近距離にいる彼女を困惑の眼差しで見た。
     しかし、このチャンスを逃すことは出来ない。
     黒狐が彼女を守るように抱きしめると、ローに向けて叱咤するように鳴いた。

     ローが不満げに鳴き、両の翼を地面に叩きつけた。

     大地に叩きつけられたエネルギーが、衝撃となって地に接するもの全てを襲った。

     彼女を守るように立っていた黒狐が、苦悶の声を上げる。
     腹の古傷を強く、何度も強く殴られたような衝撃が走った。
     意識を手放すまいと、黒狐の腕を探り、強く握りしめた。

     そしてそれは、地に伏した雷神とて例外なく襲った。
     地面の衝撃が収まり、真っ赤な目で狐と、その向こうにいる彼女を睨みつける雷神は、轟雷の声を三度上げ、いざ飛び立たんとした。

    「フィ、フィッ!」

     突然の、高い声。
     見れば、上空に、一本の糸を頼りに風に遊ばれる、黄蜘蛛の姿があった。
     バルーニング。通常は旅立ちのために使われるその手段で、黄蜘蛛は空に飛び、地ならしを逃れたのだ。
     黄蜘蛛は風に吹かれるまま、雷神に向けて多量の糸を吐いた。
     空で幾何学的多角形を描いたそれは、雷神に被さると、雷神の体を地に縛り付けた。

     蜘蛛の糸で白い団子状になった雷神に、バチュルはさらにもうひと山ほどの糸を吐いた。
     糸の奥から、雷神の怒声が聞こえる。
     雷神は雷を使うだろうが、電気蜘蛛一族の網は、電気ごときで焼け溶ける代物ではない。

     バチュルは勝ち鬨を上げると、始祖鳥と共にトレーナーの元へ駆け寄った。
     彼女はゾロアークにもたれかかっていた。
     小さな蜘蛛は彼女の名前を呼ぶように何度も鳴いた。
     始祖鳥はそんな蜘蛛の様子を見て、申し訳なさそうに項垂れた。

    「大丈夫。……大丈夫だ」
     何とか声に出し、意識を繋ぎ止める。
     雨はまだ降り続いていた。



    〜〜〜

    ここぞとばかりバトルシーンに挑戦してみたきとかげです。
    クーウィさんとこのトレーナーさんとラックルくんと、兎翔さんとこのヒトカゲくんと、海星さんとこのエーフィさんをお借りしました。
    でもなんか、活躍できてなくて申し訳ない。だって皆さんいたら容易く倒せちゃうから、とまあ言い訳です。

    風神は……任せた!

    【風神誰か懲らしめてなのよ】
    【っていうか遭難寸前でごめんなさい】

    あと、
    【アーカイブ賛成なのよ】

    この場を借りて。
    ちょっと曲者な彼女を使ってくださってありがとうございます。なんか、美人になって帰ってきました。
    てこさんへ。
    むしろイメージ通りです。 ありがとうございます!

    海星さんへ。
    >  黒髪美人のおねえさん
     美 人 だ と !

    クーウィさんへ
    加勢! 百人力なのですよ!


      [No.928] 続編、続編じゃいやぃ! 投稿者:クーウィ   投稿日:2010/11/07(Sun) 03:21:33     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    まさかの続編が到来・・・何と言う嬉しい展開か・・!?(笑)

    何度も読み返したけど、最初に読んでからは大分経ってるのは内緒。  ・・・色々あったのよ(爆)


    夜分遅く・・つーか未明ですけど今晩はです。
    前作がとても好きでしたので、またシリーズとして続編が来たのが凄く嬉しい深夜徘徊魔です。

    『瓢箪から駒』が現実になったようなお話なのに、これだけ登場人物のキャラクターがしっかりしてる所は、恐ろしい限りっすね・・・


    取りあえず、今回も大いに楽しませて頂きました・・・!
    落ちの『電話番号』は、最後のシーンまで気が付きませんでした・・・  不覚ナリ・・・

    前作もそうですが、主人公の所々に見え隠れする本音と愚痴が、兎に角楽しくてしょうがない(笑)
    『悪の組織はこう、奥まった部屋にでかい扉をつけてロックをかけて、重要なブツを保存するのが好きなんだろうか』 とか、メタに近いこの手の表現は、読む傍から自然と笑いが込み上げてきて、個人的に大好きです。

    『色々とどす黒い念のこもった台詞を吐きつつ』 ・・ま、人生そう言う事ほど良くあるもんさ――()


    しっかしあの上司・・ハッキングも出来るのか・・・
    それでどうして主人公が、毎回こんな目に合うのかと言えば・・・まぁ、そう言う間柄だからですね(爆  ナンマイダ・・・)

    言葉を喋れないにもかかわらず、毎度主人公をそっと精神崩壊から救ってくれるエルフーンさんは、まさに得難きパートナー。
    大事にしてあげて下さいです・・・


    ・・そう言や、俺は何時になったらヒウンアイスを買えるんだろ・・・(爆)


    では。  失礼致しました・・・


      [No.927] こう言う感じの短編が好き 投稿者:クーウィ   投稿日:2010/11/07(Sun) 02:54:33     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    いきなり湧くヤツ

    どうも初めましてです。 
    深夜徘徊魔です(爆)


    兎に角情景が頭に引っ切り無しに思い浮かんで、とても楽しかったですー(笑)

    普段主人公が何気無しに行ってる『波乗り』ですが、大勢の一般のトレーナー達がやってる光景を想像すると、確かに面白いですね。
    長編のページでCoCoさんがお書きになっている、『一般流通が無くて弟子入りが必要』と言う設定も好きですが、こう言う風に一般人が使用している風景も、それぞれの個性が出てきて捨て難い風物詩。  ・・・難しい所だなぁ(苦笑)

    通り道を横から覗いている、と言うシチュエーションが、なかなか臨場感を伴っていていい感じでした。


    こんな感じの短編を拝見させて頂いてると、個人的にまた色々頭の中に刺激が入ってありがたいです(笑)


    ・・個人的に、『カツノリちゃん』なる人物がパッと頭の中に出てこず、ちょっと気になるかも知れぬ・・・(爆)



    では・・失礼致しました。


      [No.926] 心の中に描ける流れ 投稿者:クーウィ   投稿日:2010/11/07(Sun) 02:40:27     26clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ラプラス好きだなぁ・・・  
    『シードラゴンと 呼ばれる 海の王者です』  ・・・思い返せば懐かしい。


    どうも、初めましてです。 クーウィと申します・・・

    読んでいて、とても懐かしい気分になれました。
    言葉の選び方にリズムが心地良くて、それでいて少し寂しい、ノスタルジックな感じが何とも言えません。

    時は過ぎても、変わらない物はある・・・ そう信じて、子ラプラスに小さくとも暖かい思い出が残るような未来が来ることを、願いたいものです――


    ちょっと、続きを見てみたいような感じも致しました(笑)

    では。 失礼致しますです・・・


      [No.925] 桜糖 投稿者:紀成   投稿日:2010/11/07(Sun) 00:03:46     29clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    淡いピンク色・・この場合は桃色と言った方がいいかもしれない・・小さな塊を私はまじまじと見つめた。
    エデラが様子がおかしい私を心配そうに見つめる。大丈夫、私は変になってないから。
    『桜味』と書かれた文字をちらっと横目で見つめ、私はそれを口の中に入れた。途端に溶け出し、何とも言えない風味が鼻に抜けていく。
    「桜味って程桜じゃない気がする」
    『桜の味って何ですか』
    「んー」
    私は花見を思い出す。今時、花見に桜餅を持って行くような者はいるのだろうか。いや、否定している訳ではない。
    ただ、少々ベタな季節の楽しみ方だな、と思う。
    「ちょっとしょっぱくて甘いかな」
    『その発想は何処から?』
    「桜餅の葉っぱの塩漬け」
    桜餅にあれは欠かせない。東でも西でも、それは同じだ。
    「だから、やっぱこの砂糖の塊は人工的な味、なんだろうな」
    『後輩さんに悪いじゃありませんか。誕生日プレゼントのお返しなんでしょう?』
    「だから、否定はしてないってば」
    わざわざクラスに来てまで渡してくれたのだ。味わって食べなくてはならない。
    私は二つ目を口に入れようとした。
    『ご主人』
    「?」
    「僕にも一つ」
    その言葉が終わらないうちに、袋から一つ出して口に入れてやる。エデラはしばらく口を閉じていたが、やがて言葉を出した。
    『なんか、ほんのり幸せの味がします』
    「詩人かい」


    パッケージが可愛かったので、写真に撮ってから開封した。
    後輩は抹茶を食べたらしいが、いやに薄味だったらしい。
    今度そちらも試したい所だ。


      [No.924] 岩漿と蒼海の理 投稿者:巳佑   投稿日:2010/11/04(Thu) 21:17:50     66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    むかしむかし、あるところに
    雨が大好きな青いハクリューがいました。
    「雨粒の一粒一粒はとても美しくて、そして愛おしい」

    むかしむかし、あるところに
    晴れが大好きな赤いハクリューがいました。
    「太陽の光に抱かれている感覚は何度味わっても気持ちいいぜ」

    ハクリューは天候を操ることができるポケモンでした。
    青いハクリューは大好きな雨を降らし続け、
    赤いハクリューは空を大好きな晴れにさせ続けていました。

    ある日のことでした。
    ひょんな偶然から
    青いハクリューと赤いハクリューが出逢いました。

    「雨はとても美しいと思わないかい?」
    「晴れはとても気持ちいいと思うだろ?」

    二匹はお互いの価値観のズレから
    最初は小言から始まり、
    徐々にお互いをののしり合う勢いが増していき、
    そして
    青いハクリューと赤いハクリューの間に
    うごめいていた摩擦が爆発を起こしてしまいました。

    「この世に必要なのは晴れではなく雨だ!!」
    青いハクリューが強く主張すると、
    その気迫に乗せられてか雨が力強く降り注ぎ始めます。

    「この世に必要なのは雨じゃなくて晴れなんだよ!!」
    赤いハクリューが強く主張すると、
    一瞬の内に雨は止み、見事な快晴が顔をのぞかせました。

    「晴れなど必要ない!!」
    「雨なんか必要ねぇ!!」
    対立しあう二つの言葉が重なるのを合図に、
    青いハクリューと赤いハクリューが決闘を始めました。

    決闘の際に

    青いハクリューは友達の蒼海から力を借りました。
    赤いハクリューは友達の岩漿から力を借りました。

    しかし、力を取り込み過ぎた為か
    青いハクリューの姿が変わりました。

    こちらも、力を取り込み過ぎた為か
    赤いハクリューの姿が変わりました。


    一方は後にカイオーガという雨の詩として、

    もう一方は後にグラードンという晴れの詩として、

    この世界に詠い紡がれていったのです。

    あの頃からなのです。

    『天気』という言葉が生まれたのは。



    [書いてみました]

    念の為、読み方を書いておきますね。

    岩漿……がんしょう(マグマのことです)
    蒼海……そうかい
    理……ことわり
    愛おしい……いとおしい
    後に……のちに
    詩……うた
    詠い……うたい


    「ハクリューって確か天候を操ることが出来たんだっけ?」と考えてみてから、
    …………まさか、あの二匹って…………。
    と推測してみた結果、この物語が誕生しました。


    ありがとうございました。


      [No.923] 218 投稿者:海星   投稿日:2010/11/04(Thu) 20:54:34     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    また今日も、釣り糸をのんびりと垂らしていたらたくさんの人が通り過ぎて行った。



    ひとり、何故か『祭り』法被姿のおじさんがビーダルに乗って渡っていった。
      茶色いもこもこが途中で何度も沈みそうになっていた。成人男性は重いのね。


    またひとり…いやふたり? おかっぱ頭の双子ちゃんが仲良くフローゼルの背中に座って渡っていった。
      流石救助を手伝っているとかのポケモンは違う。凄い安定感ね。


    更にひとり、ホスト風のお兄さんがエンペルトの角を掴んで渡っていった。
      あれって掴んでいいのかしらん。はがねタイプの角ってやっぱり固いのね。


    そしてひとり、あら…あれはこの地方では見ないポケモンみたい。
    丸くて青いボールのような頭が水面から出ている。そしてその上には作業服姿の若いトレーナー。
    赤いヘルメットと黒縁メガネが日光に反射してきらりと光る。
    …ありゃ、あれはヒョウタさん。
    ホウエンのみずタイプ、ホエルコに手を出したりして、浮気よん。
     ってよく見れば、青い頭はラムパルド。ズガイトスが進化したのね。
     いわタイプが『なみのり』覚えるだなんてっ不覚だわん! ていうか大丈夫!? 頭の先しか出てないけど呼吸できるのっ!?
     


    あーそっか。
    この先のミオに、お父さんいるんだっけ。


    ここは218番道路。
     たくさんの人が様々な種類のポケモンで『なみのり』をして、ミオシティに向かう。
     目的は図書館だったり、ミオジムだったり、忘れオヤジだったり…。
     そして今日ものんびり釣り糸を垂らして通行人を眺める、丸坊主で女腰、カツノリちゃんだったり。



    ――――――

     お題「ひでんわざ」だったり。

     【書いてもいいのよ】
     【いじってもいいのよ】
     


      [No.922] 理想と現実(挿絵) 投稿者:イケズキ   投稿日:2010/11/03(Wed) 19:21:30     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    理想と現実(挿絵) (画像サイズ: 600×450 74kB)


    友人のじゃぽいより、挿絵を描いてもらいました。僕は描けません。
    [06:00]の窓からの景色です。


      [No.921] 橋の下 投稿者:レイコ   投稿日:2010/11/03(Wed) 15:45:57     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    川のせせらぎとは少し違う。
    ちゃぷん、と跳ねる水の音。ばしゃん、と起きる波の音。
    退屈そうにひれで水面に絵を描いている、ラプラスの子。


    ゆらりと浮かぶ影。とぷんと現れる家族の顔。
    「これ、用もないのに陸に上がるな」
    「じいちゃんっ」
    せっかく作った綺麗な波紋を消されてしまい、子ラプラスは咎めるような目で祖父を見た。
    孫に睨まれた老ラプラスは、顔の皺数をくしゃっと増やし。
    「なんじゃ。とにかく陸は危ないと言ったじゃろ」
    「……はぁい」


    やっぱりまだまだ敵わない。子ラプラスは拗ねたように、ざぶんと飛び込んだ。
    きらきら光る白い川底。きりきり差し込む眩しい日差し。青くて、澄み切った世界。
    ああ。なんてつまらない場所なのだろう。


    老ラプラスのゆったりした動きを追い越し、くるりと先回り。
    辺りがしんと暗くなる。ここは川の端から端まで覆う、長くて広い橋の下。
    「あ、足音だ。誰かが橋を渡ってるよ。きっと人間だ!」
    「しっ。これ静かにせんか」
    あれも駄目。これも駄目。子ラプラスは頬を膨らませ、鼻の穴からぷくぷく息を漏らした。
    「じいちゃん。どうして人間に見つかっちゃいけないの?」
    「前にも言うたじゃろ」
    老ラプラスはごぼごぼと咳をしてから、何か言いたげな幼い孫の顔をじっと見つめる。


    「人間はいい奴ばかりとは限らん。姿を見せんに越したことはない」
    「でもばあちゃんは、若い頃人間と旅して楽しかったって。僕もいつか、いい人間を乗せてあげたいな」
    川面を見上げる子ラプラス。頭の上を、ひゅうひゅう流れるぎざぎざの葉っぱ。
    川砂を見下ろす老ラプラス。目の前を、ころころ転がる角の取れた小石。


    「少なくとも、今時わしらの背に乗って旅したがる人間なんぞおらん。こいつのせいでな」
    「橋? 橋のどこがいけないの?」

    「わしらに乗れん波があるとすれば、それは時代の波じゃよ」


    老ラプラスはゆっくり泳ぎ出す。子ラプラスは首を傾げ、その年老いた背を追った。







    おわり





    ------------------------------

    はじめまして、こんにちは。レイコと申します。
    随分昔にマサポケさんで書かせて頂いたこともありますが、おそらく記憶にない方が大半のはず……
    と言うわけで、改めてよろしくお願いします。

    今回お題の秘伝技、その一つの「波乗り」に挑戦のつもりが、力不足なためか今一つ活かせきれませんでした。
    またちょくちょく投稿させて頂くかもしれません。それでは。

    【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】【批評していいのよ】


      [No.920] 戦機は熟して 投稿者:クーウィ   投稿日:2010/11/03(Wed) 15:30:52     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    増援――二人目のレンジャー隊員が現場に到着したのは、一人目の若い人物が現場に現れてから、幾らも経たない内にであった。
    ・・・どうやらこの地方のポケモンレンジャーと言うやつは、彼の故郷の同職達より更に優秀で、訓練も行き届いているらしい。

    しかも彼は、現れ方こそ少々アレではあったものの、相当経験を積んだベテランであるらしく、到着するや否や少年に応急処置を施し、容態を安定状態にまで持っていくことに成功したのだ。
    ――流石は、プロの仕事である。

    今まで殆どバトルの経験ばかり積んできた青年には、『痛み分け』にあのような活用法があろう事など、考えた事すらなかった。
    まさにポケモンの技の活用法は、トレーナー次第で何処まででも広がるものである事を、彼は改めて認識させられた。

    今や少年の頬は、ちゃんと血の通った生者のそれにますます近付いて来たし、呼吸の程も安定し、意識を取り戻す見込みすら見えて来ている。
    そこで彼は、再び岩陰に薪を積み上げると、何とかもう一度焚き火を作ることが出来ないかと、吹き込んでくる雨粒を顔から拭いつつ、試行錯誤してみた。
    そんな彼の隣では、ビーダルのルパーが器用な手つきで、せっせと雨水でアルミの小鍋を洗っている。  ・・・冷え切った体を手っ取り早く温めるには、やはり熱い汁物が一番である。

    救助対象者の容態が安定した事への安心感から、彼と若いレンジャーは思わず頬を緩めて、それぞれの作業を続けながらも、軽く無駄口を叩き始める。
    ――何でも彼は、自分と同じく海の向こうの出身で、故郷の豊縁地方から遙々と、この地方まで研修に来ているらしい。

    同じ海を越えて来た身の上でも、知り合いの人物が渡海したついでに、気楽な思いで金魚のフンを演じただけの彼にとっては、なんとも耳の痛い話であった。
    何のかんのと理由を付け、未だに当ても無い根無し草の身分で通している青年には、まだまだ若いにもかかわらず、自らの夢に向かって一途に走る駆け出しレンジャー氏のその姿は、正視するのも戸惑われるほどに、純粋で眩しい。

    しかしそんな中でも、件のベテランレンジャーは、一人神経を張り詰めたままで、気を緩めかけた両者に対して、鋭い声で注意を呼びかける。

    そして、そんな彼の言葉と心配のほどは、遠からずして現実のものとなったのだ。
     
     
    漸く小さな炎が生まれ出で、更に遠くの空に雲の切れ目を確認出来た、まさにその時――
    突然蹲っていたアブソルが立ち上がって、天に向けて咆えた。
    続いて間を置かずに、足元の地面が不気味に揺らぎ、目の前のガレ場の上部が溶けて流れるアイスか何かの様に、形を崩してずり落ち始める。

    「えぃ、くそったれ・・!」

    今度ばかりは思った言葉がそのまま、口をついて出た。  ・・・そして、罵り声を上げる暇も有らばこそ。
    滑落し始めた土の塊は、そのまま最も崖際に位置していたベテランレンジャー氏と手持ちポケモンのフーディンに、まっしぐらに迫ってきた。

    例え瞬時に状況を把握して反応したところで、到底手当てが間に合うタイミングではなかった。  ・・・そんな中彼に出来た事は、ルカリオのリムイにヒトカゲを託す事と、チルタリスのフィーに、トロピウスが救助者共々飛び立てるよう、『追い風』の支援を命じる事。
    ――それに、土砂崩れに巻き込まれた時にどのように体を動かせば良いかを、頭の隅で微かに、反芻する事ぐらいであった。 
     
     
    だがしかし、どう見ても絶望的であったレンジャーとフーディンのコンビは、突然自らを襲ったこの突発的な災害に、見事なまでの反応を見せる。
    倒れ掛かったフーディンをレンジャーが支えると、間髪を入れず腰のボールからムウマージが飛び出して、諸共に後ろにのめろうとしていた両者を、サイコキネシスで受け止める。
    更に支えられたフーディン自体は、強烈なサイコキネシスで流れ出した土砂の波を単身食い止め、一時的にではあろうとも、この緊急事態を押さえ込み、時を稼ぐ態勢を確立してのけたのである。

    目の前のその一連の出来事に、押し寄せる泥土の波を、如何にして乗り切るかにのみ考えが集中していた彼は、一瞬だけ息を詰めて、視線の先で人柱になっている、三者の姿を凝視した。
    ・・・今ならまだ、何か手を打てる筈だ。 彼の腰のボールには、まだ最後の一匹の手持ちポケモンが、出番を求めて待機している。  

    けれども件のレンジャーが彼に向けて発したのは、助力を求める救援の叫びではなく、人命に責任を負っている、プロとしての指示であった。

    「行ってくれ! はやく、ここから逃げてくれ!」

    それを耳にした瞬間、彼は己の拳を反射的に握り締めて、そのまま食い入るような視線を、相手に向けて注ぎかける。
    ――己の生業に誇りを持っている者にのみ可能な、確固たる意志の表示。  ・・・この場に彼を置いていくことは、情に於いて決して、肯んじ得るものではない。

    しかし、ここで情に流されてもたつく内に、全員が諸共に全滅してしまえば、彼のこのプロとしての行いが、全て無為に帰してしまう事になる。
    ――結局彼は、相手の必死な視線に背中を押されるようにして、理に従った。

    身を翻して仲間達の方向へと取って返すと、既に行動に出ている若いレンジャーとウツボットに手を貸して、迅速に後退出来る退路を確保すべく、アブソルの先導に従って手持ちを動かす。
    ・・・背後では、自身と共に身を以って盾と為している手持ちポケモン達への、ベテランレンジャーの激励の叫びが、吹きすさぶ風と雷鳴を圧し、聞こえてくる。
    見捨てることだけは忍びない――今は兎に角一刻も早く退路を確保し、彼らに救援の手を差し伸べられるよう、努力しなくてはならない。
     
     

    ――しかし、彼らにも限界はあった。  

    遂に何とか避難経路を切り開き、全員が崩落の範囲外まで、達し終わった頃・・・振り返った彼と若いレンジャー隊員との目に、再び動き始めた泥土の流れが飛び込んでくる。

    間に合わなかった――そんな思いが、奥底から湧き上がって来る怒りとなって、彼の心を満たす。
    ・・・ずっと各地を回って修行を重ねて来たと言うのに、こんな大事な時に何の手も打てなかった自分の無力さ加減が、腹立たしいほどに情けなかった。

    だがその時、同じく唇を噛んでいた傍らの若者が、不意に声を上げた。
    それに反応してハッと顔を上げた青年の目にも、流れ落ちる土砂が再び何かにつっかえた様に動きを止める様が、はっきりと映る。

    「行ってみましょう・・!」

    そう声をかけて来た豊縁出身のレンジャーに頷き返すと、彼らは急いで、元来た道を引き返す。

    驚くべきことに、現場に戻った頃にはすっかり泥土の崩落が収まっており、静まり返った土くれの海は、何かに均されたが如く、平らに押し固められている。

    「これは『地均し』・・・  あっ・・!」

    信じられない光景に唖然とする彼の隣で、その有様から使われた技を的確に見て取った若いレンジャー隊員が、泥にまみれた件のレンジャー隊員とポケモン達を、やや下降した位置に見つけ出す。  ・・・その傍らには、また新しく一匹のエーフィが、二股の尻尾を風になぶらせ、額の宝石のような赤い輝きを稲光の中に煌かせながら、静かに佇んでいた。
    エーフィの所属が誰のものであるかは分からないにせよ、あのポケモンがレンジャー隊員の命を救ったことは、確かな様である。
    そして更に、その直後――突然彼らの目の前に、一人のトレーナーが、ポケモンと共に降って来た。

    驚いて立ち止まる彼らに気付くと、その人物 ― ゾロアークを連れ、肩にパチュルを乗せた黒髪の女性トレーナーは、一瞬感情の揺らめきをその面上に走らせたものの、直ぐに元の冷徹な風貌を取り戻して、彼ら一行を静かに見回す。
    傍らの若者の質問にも、素っ気無い返答を返すのみの彼女は、次いで泥だらけのベテランレンジャー隊員の元に走り寄り、介抱を始めた彼らに背を向けて、3匹のポケモンを解き放ちながら、自らの用件を簡潔に口にした。

    「野暮用だ。 この雨を降らす奴らに用があってな。」

    その言葉を聞いた途端、青年の脳裏に、先程思い浮かべた伝説の内容が、改めて蘇って来る。  ・・・同時にそれは、普段は彼の心の奥底に息を潜めているある感覚を、唐突なタイミングで目覚めさせていた。

    「風神と雷神か」

    突然低くなった彼の声音にも全く動じずに、彼女は背を向けたまま遠ざかりつつ、言葉を返した。

    「・・・さあな。 私が遭難しても、助けに来なくていいぞ、レンジャー」

    いずれもこの地方で初めて目にする事になった彼女の手持ちポケモン達は、みな一様にトレーナーである彼女に対して強い信頼感を持っているらしく、何処か超然としたその言動と共に、彼女の実力の程をはっきりと物語っている。

    5匹のポケモンを引き連れて離れていくその背中を見つめながら、彼は遂に堪えきれず、ある決心をして、傍らで同じくその背中を見送っている二人のポケモンレンジャーに向け、用件を切り出す。

    彼の郷里では、『神』もまた一個の命――天と地の間に生きる、兄弟の一人として扱われる。  ――よって、『神』は敬われる一方で、それに値する振る舞いをも、同時に求められる事となっていた。
    だがしかし、今日この場で起きている『神』の振る舞いの程は、彼が幼少時より親しんで来たその価値観からは、大きくかけ離れているものだった。  ――彼の郷里ではそんな時、人間達はその怒りを鎮める為に祈るのではなく、憤りと反省を促す意味を込めて、強い調子で抗議する事を旨としていた。

    ・・・そう――つまりは、そう言う事だ。


    「済みませんが、しばしこの場をお任せしても宜しいでしょうか?」

    そう口にした彼に対し、両者は既に彼の目論見を悟っていたらしく、一瞬彼の方を見つめて口ごもったが、やがてどちらからとも無く頷いてくれた。

    「任せてください! これでも俺だって、レンジャーの端くれですよ!  なぁ、ウツボット! アブソル!」

    若者のその言葉に、手持ちのポケモン達も一様に力強い反応を示して、主人の決意を後押しする。

    「こっちも大丈夫だ。 ・・・彼の意識が戻ったなら、ついでに加勢もさせて貰うさ。」

    フーディンとムウマージに代わる代わる手当てを受けているベテラン隊員の方も、体調の回復もあってか余裕を持って、彼の願いを受け入れてくれた。
    そしてその言葉を首肯するかのように、腰に付けているモンスターボールの一つが、ガタガタと揺れる。  ・・・どうやら、ここにも一匹、頼りになる暴れ者がいるようである。

    彼は念の為、その場にルカリオとビーダル、それにチルタリスの三匹を残して行く事にすると、更に残りの手持ちの内の一匹であるリーフィアに、付近の斜面を補強することを命じる。
    そんな彼に向け、泥だらけのベテラン隊員の方が、急に改まった口調になって、こう指摘する。

    「さっきの女性(ひと)なんだが・・・ 助けは要らないとか言ってたけど、どうも見たところでは、体調が万全とは思えなかったんだ。  ・・・後を追うのなら、その辺も心得ておいて欲しい。」

    「えぇ、分かってます。  ・・・そっちこそ助太刀は有難いですが、無理してまで追っかけて来ないで下さいよ?  ・・・命の恩人にもしもの事があったら、俺はこの地方に足向けて寝られなくなっちゃうんですから。 そんなのは、真っ平ご免ですよ。」

    ――流石は本職だ。 彼自身はルカリオに諭されたその事実を、この人物は既にあの時目にした後姿だけで、しっかりと見抜いている。
    内心は舌を巻きながらも、敢えて彼は軽い調子で言葉を返して、相手の懸念と心配の程に対し、余裕を持って受け答えする。

    「じゃ、後は宜しくお願いします。 ・・・どうせ加勢は断られるでしょうから、勢子としてでも使ってもらって来ますよ。  ちょっとばかりして片付いたら、またちゃんと戻って来ます。」

    「約束はちゃんと守ってくれないと困るぞ?  これ以上あんな目に合わされるのは、俺達だってもう御免だからな。」

    お決まりとも言える去り際の一言に、笑顔で答える泥だらけのベテラン隊員。
    あんな出来事の後でも、すぐに気持ちを切り替え軽口を合わせて来た相手の態度に、彼は改めてレンジャーと言う職種に対し、強い敬意の念を抱いた。
    ・・・もし無事にこの事態を乗り切って、更に何時の日か、漂泊の生活に終止符を打つ決心が付いたなら――その時は自らもまた、この道に足を踏み入れられるよう、挑戦してみるのも悪くはないだろう。

    ――まぁしかし、無論それが何時になるかは、皆目分かったものではなかったが。


    その一方で、指示を受けたリーフィアが動き出し、崖際や斜面に苗床となる『タネマシンガン』を撃ち込み始めると、救助者を背負ったトロピウスの側から離れようとしなかったヒトカゲが、不意にここに至って、青年の下へと歩み寄ってきた。
    何事かとヒトカゲに視線を集める一同の前で、そのポケモンは真っ直ぐに彼を見つめて、三本指の小さな拳を握り締め、降り注ぐ雨を物ともせずに、よく響く声で鳴く。
    ――倒れた主人の背中を怯えた表情で揺すっていたその目が、今は自らが為すべき行いを見つけ、力強い決意に満ちている。

    そんなヒトカゲと、共に付き添って駆けつけて来たリオルとを交互に見つめる内、ふと青年の剃り跡の濃い、浅黒く精悍な面上に、誇らしげな微笑が浮かぶ。

    「お前も来るか。 ・・よし、なら存分に暴な!」

    しゃがみ込んでヒトカゲの頭を軽く掴んで揺すぶってやると、彼はチラリと主人である少年の様子を確認してから、立ち上がった。  ・・・少年の容態は安定し、意識を取り戻すのも遠くはなさそうであったが、今のところはまだ、泥のような夢の世界から帰還してはいない。
    目が覚めていれば、この頼もしい相棒の『名前(ニックネーム)』を、聞いて置きたい所であったが――今は残念ながら、それは叶わないようだ。
     
     
    リオルとヒトカゲを引き連れ、彼が闇の中に溶け込んだ女性トレーナーの背中を追いかけて、出発した直後――突然背後の崖の方で、再び雷鳴と風の唸りが激しさを増し、アブソルが一際高々と、天に向けて咆えた。
    傍らに位置していたエーフィは俯いて神経を集中し、待機していたルカリオが、何かの波導を感じているのか、崖の方へと気遣わしげな視線を向ける。

    「お出ましか・・・」

    そうポツリと呟いた彼の表情は、つい先刻までとは打って変わり、相手を求めて各地を流離い、自らを研ぎ澄ますべく僻地に分け入る、ポケモントレーナー本来のそれに立ち返っている。  ・・・元々周りからどう見られようと、例え異端視されて疎外されようとも、自分の考え方・スタイルを靡かせないのが、彼の選択した生き方だ。
    稲光をよく光る眼に反射させ、風にはためいた上着の内側には、海の向こうで手に入れた、幾つかのバッジが垣間見える。
    他人を忌避する訳でなく、かと言って合わせる訳でもない孤独な根無し草の動向は、その場その場の成り行きと、『狩人』としての天性の本能で決まる。

    背後で見送ってくれるレンジャー達の生き様に憧れながらも、彼らの世界に素直に溶け込む事を拒むそれは、押さえ切れない闘争心と言う形で、常に彼の生き方を制限して来た。
    ――しかしそれは同時に、ここまでずっと彼の命とトレーナーとしての人生を支えてくれた、最良の守護神でもある。

    「借りを返さないとな。 ・・・一発お見舞いしてやって――」

    そう口にして、ニヤッと愉しそうに笑う彼に答えるように、腰に付けている最後のモンスターボールがガタリと動き、リオルとヒトカゲが前方に佇む三匹のポケモン達の影に向けて、勢い良く走り出し始めた。
     
     
     
     
     
     
    ―――――
     
     
    長いしひたすら無理矢理気味な展開・・・  しかも止めに、全く進んでいない!!(爆)

    とにかく、好き勝手やりたい放題に流してしまいました・・(汗) 
    大勢の方々のキャラクターをお借りしましたが、果たして彼らのイメージを崩壊させていないかが、何処までも心配な今日この頃。  ・・・お叱りがあり次第修正いたしますので、突込み所があらばどうぞお願いします(汗)

    特に兎翔さんのヒトカゲ君を連れ去ったことについては、今一際の謝罪の程を・・・  すまん、少年・・・瀕死にさせたりしないように気を付けさせる故、勘弁してけれ・・・(爆)

    結論として、進展はしておりません・・!(爆)
    この後に海星さんがお膳立てしてくれたバトルシーンが控えておりますが、どなたか勇士の方、どうぞ一筆!(オイ)

    仮にやられちゃっても、個人的には後続のツボちゃんやさくらちゃん辺りが何とかしてくれると信じてますので、かなりお気楽な感じですね(笑)


    では・・・取りあえずは、これにて逃げちゃいます――


    【戦力に不足は無いのよ】

    【煮るなり焼くなりお好きに為されたし】

    【少年も起きて参加しちゃったらどうかなと思うのよ】


    PS.アーカイブは皆さんの御意見にお任せしますです。  ・・・取りあえずは賛成票も投じられているので、自分もそちらに加担しまs(チキンめ・・・)


      [No.919] Re: 音読……だと!? 投稿者:渡辺タテタ   《URL》   投稿日:2010/11/03(Wed) 13:46:42     73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    6,000字超を声出して読むと、なかなかしんどいよ(笑)。

    審査の方法/方針ですが、とりあえず……

    1.)ポイントを入れたか入れないか
    2.)その理由について最低限のコメント
    3.)その他、作品の批評記事(もちろん記名)

    こんな感じで参加できればと思います。
    批評記事の記名は本名(渡邉健太)にしようか悩んだのですが、
    今回は文学創作の企画なので、歌号の方で行うことにしました。
    少なくとも批評を匿名で行うというのは「ありえない」ので、そこは筋を通します。

    小説の評価ということなので、ストーリーはもちろん文体や独自の語法などを審査します。
    何が芸術であるかという議論は難しいところですが、「美」の概念が専門分野なので、そういうコメントを残せたらと思います。
    「美」の概念について、私の個人的研究/見解はブログの「美学」カテゴリをご覧ください。

    こんなところですかね。


      [No.918] Re: クワァッ!! 投稿者:イケズキ   投稿日:2010/11/03(Wed) 08:51:39     20clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >  この時点ですでに、固定観念は捨て去った。ストライク=師匠、カモネギ=弟子ではないのね。

    そうです。僕としては、やっぱり「いあいぎり」と言うと、初代イメージが強く、「おしょう」が一番だったのです。

    >  クワァッ!! か、すべてはクワァッ!!で終わっていたのか!
    > いや、それよりも目を見開くカモネギ師匠がクワァッ!!と叫んでいるのですが、どう対処すれば。

    「名人伝」のなかでも、「ハッ」と言った瞬間射ぬかれている、というよなシーンがあるそうです。それをカモネギ師匠がすれば、やっぱり「クワァッ」だと思ったのです。

    >  ストライクもクワァッ!!と叫ぶようになるのか……。ストライク弟子が達人の帯を貰うまでが見たくなってきた。

    ストライクがクワァッ!!。彼の師匠に対する尊敬の深さ考えれば、あるかもしれませ・・・・・・ないか。

    楽しんでいただけたようでよかったです。
    ストライクが達人の帯を貰うまでの話書いてみようかと思います。
    ですが、僕もまだまだ小説は修行の身。製作ペースはかなりのスローペースなので、かなり時間がかかりますので、すいません。

    僕も、いつかは「クワッァ!!」と言うだけで、思った作品をかけるぐらいになりたいものです。

    無理か。


      [No.917] 音読……だと!? 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/11/03(Wed) 08:41:58     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    うおおっ、さすがはライブ歌人……!
    公正の件、アドバイスありがとうございます!

    みんな、もれなくタテタ氏の音読と批評付きだぞ!
    気合いを入れて応募してくれ!
    みんなでタテタ氏の喉をガラガラに!(笑

    あと、こういうところを見て欲しいとか
    こんな審査項目盛り込んで欲しい、私はこんな観点から審査するぜ!
    なんてありましたらぜひご意見ください。


    せっかくなのでお知らせ。
    審査員たぶん5人くらい集まりそうです。

    (メンバー予定)
    ときどきポケストに投稿してる方あの人
    ミカルゲ氏が信者宣言してるあの人
    ライブハウスで短歌を詠んで活動してるタテタ氏
    活字中毒者でアニメを語らせたらとまらない某女史
    私←

    など私が言うのもなんですがわりとくせ者が揃ったと思いまする。
    私が知る限り、このメンバーならかなり真剣に審査すると思いますので
    (マジな)批評が欲しい方はゼヒ。

    あ、もちろん一般投票もありますので(審査員票と比重同じ)
    ここを読んでらっしゃるみなさんもガンガン審査して感想送ってあげてくださいネ。



    【審査員継続募集中】
    【メンバーは名乗りを上げていいのよ】


    わりとガチになってきたので
    今回やってみて審査員の批評がすさまじかったら次回から比重上げることも考えようかと思ってる(笑)。


      [No.916] 作品投稿の前に 投稿者:渡辺タテタ   《URL》   投稿日:2010/11/03(Wed) 05:04:07     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    はじめまして。
    No.017さんの呼びかけに応じまして、審査員を務めます渡辺タテタと申します。

    これまでに投稿されました三作品、拝読いたしました。
    きちんと声に出して読みました。(喉がカラカラです。)

    ぜひ投稿の前に、いま一度「校正」を行ってください。
    誤字脱字はもちろんですが、送り仮名や、同意の接続詞の不一致など気になる点が多々あります。
    (ex.てる、してる、ている、している)
    (ex.けど、だけど、けれど、だけれど、けれども、だけれども)
    口に出して読むと違和感があるので、音読されることをお勧めします。

    一応文学部の出身で専門は哲学(美学)、論文は「散文と韻文の差異」について書きました。
    私自身は歌人として活動をしているので、専門は詩歌ですが、言葉を扱うという点では同じだと考えています。
    みなさんの作品と真剣に向かい合って審査いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
    (全作品の審査終了時には、喉がガラガラに進化していることでしょう。笑)


      [No.915] 早くも応募3作品目。 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/11/03(Wed) 02:37:17     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    三作目の応募作を公開しました。
    これは絵師さんでpixiv公開してる人はドキっとするんじゃないのかなぁ。

    URL:
    http://masapoke.sakura.ne.jp/pokemonstory-contest-01-003.html


      [No.914] コマンド・リターンズ 投稿者:   《URL》   投稿日:2010/11/03(Wed) 01:43:35     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     目の前には、侵入者を拒む、重厚で隙間のない扉。
     その横にはキーボードとモニタがあり、パスワードを入力せよと待ち構えている。
     前にもこんなことがあった気がする。
     悪の組織はこう、奥まった部屋にでかい扉をつけてロックをかけて、重要なブツを保存するのが好きなんだろうか。

    「でも、まあ、今回は大丈夫だよね」
     例によって紙を貼っていない障子なみに穴だらけの警備を潜り抜けた僕は、抱きかかえていたパートナーのエルフーンを降ろして、ポケットから一枚の紙を取り出した。
     組織の構成員の誰かが、お間抜けにもパスワードを書いた紙を机の上に置きっ放しにしていてくれたのだ。
     今回はいつかのように半日も草むらの中に座る羽目にもならなかったし、すこぶる好調だ。
     悪い連中を一網打尽にするための証拠その他を手に入れて、さっさとオサラバしよう。

     手の中の紙切れと、キーボードを見比べる。数字が十一個並んだパスワード。
    「楽勝、楽勝」
     そう言ってキーボードに手を触れようとした時、携帯のバイブが鳴った。

     なんだよこんな時に、と悪態をついて携帯を開く。
     ……上司からだ。
     内容は、


    『ロック ↑↓↑↓←→←→LR』


     僕は黙って携帯を閉じた。

     なんだろう、あの人は。僕をカモかなんかだと思っているのだろうか。
    「僕だって、騙されてばっかりじゃないぞ」
     キーボードに手を伸ばす。
     慎重に、紙切れに書かれた、十一個の数字の並びを入力していく。
     最初にゼロ、次にハチ、次はまたゼロ……
     ゆっくり、確実にテンキーを押していく。

     そして、深呼吸してから、エンターキーを押し込んだ。


    『侵入者ハッケン! 侵入者ハッケン! タダチニ撃退セヨ!』
    「えええええっ!」

     いつぞやと同じくるくる回る赤ランプが辺りを照らし出し、悪の組織の皆さんが続々と到着する。
     次々にモンスターボールを投げ、ザコ敵の嵐。

    「やってられるかあっ! カリュブス、ドリルライナー!」

     色々とどす黒い念のこもった台詞を吐きつつ、ボールから出したドリュウズに技の指示。
     壁をぶち抜いて逃げようとしたが、いっぱい人が追っかけてくるので、技の指示を飛ばしながら、全力で撒いた。



     驚かないぞ。この人とこんな所で会っても、絶対に驚かないぞ。
    「遅かったなあ、キラン。鬼ごっこでもしてたか?」
     なんで上司がここにいるんだよ……。

     僕の憂いなんかどこ吹く風、彼女は呑気にヒウンアイスを食べている。

     僕は横を向いて、ため息をついた。
    「また失敗したんだな。それで落ち込んでるのか」
    「失敗はしましたが……それで落ち込んでるんじゃありません」
    「やっぱりあのパスワードは不味かったか」

     そうですよ、と言おうとしたが、何故か自然にため息が出た。
     僕の幸せいくつ逃げたんだろう、と切ない思いに囚われた。

    「折角ハッキングして、パスワード変えといたのにな」
    「そうですか」
    「まあ、警報装置を作動させて大暴れしてくれてたから、その隙に証拠は押さえたけど」

     そうですか、とため息をつく。
     今回は、素直にあのコマンドを入力しとけばよかったのか。
     何もかも虚しくなって、僕はポケットから紙切れを取り出し、風に乗せた。


    「ゴミを捨てるなよ、キラン」
     上司が紙切れを拾って、僕に差し出した。
     いいです、と片手を上げて断ったが、なおも上司は食いついてくる。

    「良くないよ。これ、誰かの電話番号だろ」
     そう言って僕の胸に紙切れと、どさくさに紛れてヒウンアイスのカップを押し付けると、さっさとアーケオスを呼び出して飛んでいってしまった。

     紙切れには、080で始まる十一桁の数字。

     僕は呆けたみたいに、アイスのカップを持ったまま紙切れを見つめてつっ立っていた。
     ウィリデが僕を突っついて、いつの間に取り出したのか、メール着信のライトが付いた携帯を差し出した。

    『証拠の提出、代わりにやっといてくれ』

     アイスのカップの底がパカっと取れて、中から小さなデータカードが出てきた。
     データカードを手の平に移すと、なぜだろう、泣きたいのに笑いたい気分になってきた。

    「……帰ろうか、ウィリデ」
     フワモコパートナーと手をつないで、僕はゆっくり歩き出した。





    【書いてもいいのよ】
    【タグ付け忘れてたのよ】
    【↑↓↑↓←→←→LRなのよ】
    【携帯番号をそこらに置きっ放しにしちゃ駄目なのよ】

    お題 すれ違い


      [No.913] お化け記念日 おまけ 投稿者:スズメ   投稿日:2010/11/02(Tue) 21:18:09     71clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    11月2日  曇り


     今日は朝から、屋敷の改装を始めた。
     とりあえず、屋根と二階の床をピジョット(手持ち)にふきとばしてもらった。

     「んじゃ、ヒトモシ軍団、そこの瓦礫を燃やしちゃって。」

     今は空っぽの畑の上に積み重なった瓦礫の山に
     ヒトモシ(ランプラー・シャンデラ含む)たちが集まっていく。
     とりあえず、屋根に関してはこれでいいか。


     「な・・・なにやってるんですか!」

     あ、サボリ学生。 今日もサボっているのか。
     見ているんだったら手伝え。

     「じょうだんじゃねーよ・・・。(自分の部屋が壊されそうなのに学校なんか行ってられるか)」

     役に立たないな。(サボリ学生に決定だな)
     あ、そこのロトム。草刈機に入って庭の雑草を刈れ。
     そっちのロトムは洗濯機に入って瓦礫が燃えたころに消火しろ。

     よっぽどお化け記念日に期待しているのか。
     集まったゴーストポケモン達(さらに増えている)は文句も言わずに作業をしている。
     それにしても、何でこんなにお化けばかり集まるのか。
     ボロイからなのか? 屋敷がボロいからなのか・・・?

     
     ギュイーンと騒音を立てながら進むロトムのうしろを追っかけてみると、小さな池を発見。
     へ〜。 うちって池なんかあったんだな。

     「あったんだなって・・・自分の家だろ。」

     ぶつくさ言いながらサボリ学生が後ろについてくる。
     自分の家って言ったって、住み始めたときにはすでにこの状態だったし。

     「・・・・・・。(前の持ち主は誰だったんだよ)」

     
     ぷか

     ・・・?
     池に気泡が・・・魚か?
     魚だったら捕まえて今日の夕飯のおかずにしてしまおうか。


     ぷくくぷか〜バシャ

     「うわああああ?!」

     サボリ学生(めんどいから学生でいいや。・・・本名なんだっけ?)が腰を抜かした。
     なんなんだ・・・ああ。

     また増えたのか。



     池から出てきたのは、プルリルなる船幽霊?みたいなお化け。
     

     ザバア

     あ、なんかでかいのも出てきた。
     進化形だろうか。
     まあ、どっちでもいいか。

     「そこの、あっちで消火を手伝って来い」

     そう言って、瓦礫の方向を指差した。
     ロトムだけだとパワー不足かもしれないし、ちょうど良かった。

     
     どごーん という音がして、地面が揺れた。
     今度は何だ。

     「今度はロボットみたいな奴ですね。」

     あ、学生。 復活したのか、早いな。
     そのロボットみたいな奴って・・・最近発見された奴か?
     ゴーレムっぽいの間違いだろ。

     
     「待っててください、今調べていますから。」

     どこに持っていたんだ、その大きな辞書は。
     あ、なんか飛んでくるぞ。

     
     どかーん。
     こんどは、屋敷の壁の一部が剥がれ落ちた。

     
     「えーーっと・・・たぶんこいつです。 ゴビット?」

     タイプは・・・ゴーストと岩か。 またかよ。
     まあ、力ありそうだし。

     「そこのやつ、そのゴビット、とりあえずお前が崩した壁を直すのを手伝え。」

     ついでに、そこのゴビットのしんかけいみたいなやつもな。
     そういえば、おまえらさっき空を飛んでいたよな・・・よし。
     学生、お前学校まで歩くのがどーたらこーたら言っていただろ。
     こいつに乗っていけば解決だ。

     「は? え・・・こいつ空飛ぶんですか?」

     さっき飛んでたぞ。
     あとで捕まえてみたらどうだ。
     ネイティ、壁を持ち上げるの手伝ってくれ。









     なんだかんだ言いつつも、一応作業は進んでいる。
     ポケモンの力は偉大だな。
     後は雨さえ降らなければ完ぺきだ。
     てるてる坊主でも作ってみるか? ・・・晴れても困るか。


     「・・・こんなんで本当に大丈夫なんですか?」


     まあ、多分なんとかなるだろ。
     心配なのは、新しい木材が足らないということだけだ。
     まあ、一部(大部分)流用すれば何とかなるだろ。
     設計図は一応、知り合い(自称専門家)に書いてもらったし。
     後で本人に来てもらうし(役に立つかはべつとして)。
     
     









     11月 31日  曇りのち晴れ。



     なんか、すごく早く改装(改築)が終わった。


     結果。

     おんぼろぼろお化け屋敷がぼろお化け屋敷になった。
     とりあえず、ましになったというか、雨漏りは無くなった。
     ただし、木材を流用したら、ボロくなってしまった。


     お化け記念日(改装記念日)ということでパーティーを開いたら、
     なぜかミカルゲが増えていた。
     ミカルゲは庭から掘り起こされたらしい。
     
     ミカルゲなんか、どうやったら埋まるんだよ。
     


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

     おまけみたいなもの、その後?
     閑話として・・・
     主人公(?)になっている管理人ですが、なんで管理人なんかやっているのかと聞いたところ、
    寝ててもお金が入るからと答えたそうです。
    生活費で足りないところは畑の作物(お化けが作った)売って何とかしたとか・・・おい。

     ここまで読んでくださり、ありがとうございました!


    タグを付け忘れていました・・・
    【批評していいのよ】【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】【住んでもいいのよ】


      [No.912] ちょこっと裏話的な? 投稿者:巳佑   投稿日:2010/11/02(Tue) 20:43:45     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    1.『何かイベント的なモノ(クリスマスとかハロウィンなど)でポケモンの話を書いてみたいなぁ』

    ちょうど時季だったのでハロウィンに決定しました。

    2.『ハロウィンと言えばTrick or Treatだよね』
     
     『Trick or Treatはお菓子かイタズラだから……ポケモンの技のプレゼントの中身がTrick or Treatっていうのも面白そうかも』
     
     『プレゼントと言えば……』

    ここでハロウィンの日にプレゼントでお菓子とイタズラを渡しまくっているデリバードさんが登場しました。
    確かに久方小風夜さんの仰る通り、ハロウィン・デリバードさんは自分でも
    不思議な感じがしました。
    働き者のデリバードさんです。(笑)

    3.『よし! このTrick or Treatを使って、読者様にも遊んでいただこう!』

    ここでゲンガー箱とヨノワール箱の分岐ルートが誕生しました。
    どちらも結びが『夢の中へ』ですいません。(汗)

    4.『よし、無事に完成したぞ。投稿……いや、せっかくのハロウィン話なんだから、10月31日に出そう!』

    物語をハロウィンの二日前に完成させ、
    ハロウィンの日の約30分前からポケストのページで待機してました。(笑)
    10月31日0:00
    無事に投稿が完了しました。
    …………。
    ……物語を開くと投稿した時間が秒数まで入ることを改めて知りました。(汗)
    14秒オーバーはフライング防止に慎重になりすぎた結果です。(笑)


    以上、今回の物語を投稿するまでの経緯でした。
    長々とすいません。

    No.017さん。
    久方小風夜さん。
    楽しんでいただけたようで嬉しい限りです。
    感想ありがとうございました!

    それでは失礼しました。


      [No.911] Re: ここが楽園か 投稿者:スズメ   投稿日:2010/11/02(Tue) 20:09:15     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

      

     感想ありがとうございました。

     >砂糖水@携帯さん

     >【批評していいのよ】タグが二つありましたが、私では力不足なので感想だけにしておきます。

     あわわわわわ、ごめんなさい、手違いでした。
     ご指摘ありがとうございます。
     力不足なんてとんでもないです!
     よろしければ、シャンデラでもなんでもお持ち帰りしちゃってください!


     >こはるさん

     >そのまま、シャンデリアでいてもらいましょう。ここは。

     そのままだと、上から鬼火やらはじける炎やら、危ないものが降ってきそうですね・・・。見栄えはしますが。

     >そういえば、うちの大学にもカボチャのランタンが転がってるよ。……あれは、あつまるとかなり異様な風景になります。はい。

     あのかぼちゃたち、一個だけだったら怖いというよりかわいいですよ。
    でも、三つ以上集まるとその場の感じが変わるというか。
    この話では普通にスルーしていますが・・・

     >[ここに住んじゃうのよ?]

     ?! ありがとうございます!
     よろしければ、どうぞどうぞ。
     ただし、(カビと)雨漏りはすごいですが・・・
     ついでに、ゴーストたちもどうぞ! 


     >CoCoさん

     どうぞどうぞ、住んじゃってください!
     ゴーストたちも好きにしちゃってください!
     ただし、くりかえしになってしまいますが、(カビと)雨漏りだけはご勘弁ください・・・。


     >久方小風夜 さん

     >これは!!
    何という理想郷!!
    すみません自分もその家住みたいんですけどっ!!
    家賃ならいくらでも払う!!

     な?! ぼろぼろ屋敷ですよ? とても人に貸せるような代物でもないですよ? (ちゃっかり歓迎しますが)
    家賃は、ただ同然です。
    調度品は使い物にならないところにも注意してください・・・
    ヒトモシとヨノワールさんは、かぼちゃとセットでどうぞ!
    野生ですから、何の問題もありません(反撃に注意)

    >一般的にはジャックランタンかジャック・オ・ランタンですかね。
    でも自分もそんなに詳しくはない(´・ω・`)

    これも、人によって答えがかわったりするんですよね・・・
    ウィキペディアによれば、ジャック・オ・ランターンらしいですよ。
     

     感想ありがとうございました!

     ちゃっかりと・・・【入居者募集中】
     


      [No.910] 急いで書きますからその手にあるボングリを置いてください; 投稿者:リョウナ   投稿日:2010/11/02(Tue) 18:48:38     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    ポケストをのぞいてみたら自分の小説に感想が!?
    しかもNo.017さんから!!Σ(°Д°;)

    あわわ、はじめましてリョウナです!ご感想ありがとうございます!
    グダグダな小説ですが気に入って頂けたようでなによりです(^∀^)

    そ、それはなんという偶然……(°Д°;)
    しかも同じことを思っていらっしゃったとは!
    やっぱポケモンの世界に陰陽師がいたとしたら式神はポケモンですよねー。

    「カマキリ」の表記についてですが、漢字のほうの「蟷螂」は思っていたより難しい漢字だったのでカタカナにしました。
    というか単に私が読めないというだけですがorz

    琥珀丸君を主人公にしたおかげでとても書きやすくて助かってます(こっちはいい迷惑だよ by琥珀丸
    実は霧彦さんも琥珀丸君が一番面白いと思っていたり。
    さーて、次回はどうなるのかなぁー?( ̄∀ ̄)ふっふっふ。

    さて、次回は琥珀丸と霧彦以外に梅姫ともう一人新しい登場人物が出てきます。
    私は学生なのであまり書く時間がありませんがなるべく早く投稿できるように頑張ります。
    だからボングリ投げないでぇー!!((´Д`;))ヒィィ

    でわこれにて失礼します。



    PS.
    投稿してから気づいたのですが、霧彦さんの式神初ゲット歴がなぜか「一年」から「四カ月」になってました(爆
    いやああああああああああああああああああ!!何これええええええええええええええええええええ!!(; Д )     ° °
    マジすいませんorzちょっと頭にボングリ食らってきます。


      [No.909] クワァッ!! 投稿者:こはる   投稿日:2010/11/02(Tue) 18:22:06     25clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >  若いストライクの師匠、カモネギが答える。
     この時点ですでに、固定観念は捨て去った。ストライク=師匠、カモネギ=弟子ではないのね。

    >  「クワァッ!!」
    >  道場全体にカモネギ師匠の気迫のこもった掛け声が響いた。閉じられていた両目はカッと見開かれ、さっきまでの穏やかな表情は面影すらなく、鬼気迫る形相で木を睨みつけている。
     そしてここで吹いた。
     クワァッ!! か、すべてはクワァッ!!で終わっていたのか!
    いや、それよりも目を見開くカモネギ師匠がクワァッ!!と叫んでいるのですが、どう対処すれば。

    >  その「原因」を見てからストライクは、カモネギ師匠に「達人の帯」を貰う日まで、ただの一言も文句を言わず修業を続けたそうだ。
     ストライクもクワァッ!!と叫ぶようになるのか……。ストライク弟子が達人の帯を貰うまでが見たくなってきた。
     クワァッ!!が出来るようになるまで、カモネギ師匠のもとで修行してみるのよ。クワァッ、クワァッ!! ……って、すでに感想でもない。


      [No.908] ザ・プロフェッショナル 投稿者:イケズキ   投稿日:2010/11/02(Tue) 08:33:43     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     「師匠、どうして俺を認めてくださらないのです?」
     一匹の若いストライクが尋ねる。

     「馬鹿なことをいうな。お前なんぞにこの『達人の帯』は、100年はやいわ。」
     若いストライクの師匠、カモネギが答える。

     『いあいぎり』の達人として高名なこのカモネギが、ストライクを弟子にとったのはつい3年程前のことだ。カモネギは、いつか自分の認める「いあいぎり」の使い手になれたら、免許皆伝の証に『達人の帯』を渡すことをストライクに約束している。

     「俺は確かに師匠の弟子になってからまだ日は浅いです。でも、今の俺は師匠にも負けない『いあいぎり』の使い手です。」
     ストライクがムキになってカモネギに詰め寄る。

     実を言うと、確かにストライクの言うとおりなのだ。
     このストライク、師匠のカモネギに弟子入りしてからというもの、まるで渇いたスポンジが水を吸うかのように、あらゆる「いあいぎり」の極意を完璧に吸収してきたのだ。
     その腕前はもはやカモネギ師匠にもひけをとらないと、もっぱら噂されている。

     「青二才が調子にのるな。まだまだお前なんか、ひよっこも同然。私のレベルには程とおいわ。」
     言葉は荒いが、普段と同じ穏やかな顔でカモネギが言う。

     「それなら師匠!」
     まるで相手にされていないことがわかって、ストライクがさらにムキになる。

     「俺と『いあいぎり』で勝負しましょう!もし俺が勝ったら、あの『達人の帯』をください。」
     ストライクは堰をきったように、一気にここまで言い切った。

     「いいだろう。たが、お前が負けたら、これからもしっかり修業を続けるのだぞ。」
     カモネギ師匠はこれっぽっちも負けるとは思っていないらしい。余裕の笑みを浮かべている。

     ストライクはそれが全く気に入らない。
     緑の頬にさっと紅がさしたかと思うと、道場まで来てくださいといってさっさと行ってしまった。


     「一つ目の勝負は、速抜き勝負です。」
     ストライクが言った。

     速抜き勝負とは、帯刀から如何に速く刀を構え対象を切るかの勝負だ。

     「始めの合図と、判定はコマタナにやらせます。」

     ここで、道場の角で正座していた一匹のコマタナが立ち上がり、ペコリとお辞儀した。

     道場はカモネギの弟子達と、どこから話を聞いてきたのか、見物にきた近所の野次馬でいっぱいになっている。
     長い事どっちが上かと噂されてきた師弟だけに、みんなこの勝負の結果が気になるのだ。

     今ストライクが、道場の丁度真ん中に立った。その前には、細い木が一本立っている。
     ちなみにこの道場は『いあいぎり』の修業のため、板敷きの床に40cm四方くらいの穴がだいたい1m間隔ずつ空いていて、そこから俗に言う「きれそうな木」が生えてくるようになっている。練習でどれだけ切っても、次の日にはまた昨日と同じ高さまで成長しているという何とも不思議な木だ。

     「ふぅー」
     ストライクが呼吸を整え、精神を集中させる。
     両手のカマの根本を、それぞれ腰に当てると準備完了。

     「始めっ!」

     と、言うコマタナの掛け声が言い切るより前に、ストライクは全ての動作を終えていた。

     目にも止まらないスピードでカマが動き、「きれそうな木」は真っ二つに切られた。
     興味本位で集まった野次馬にはおろか、勉強させて貰うつもりの弟子達にすら、ストライクの太刀裁きは、微かな残像しか見えなかったことだろう。

     「師匠どうです?俺はもうあなたにだって負けない太刀裁きができるんです。」
     ストライクは自信満々にそう言った。

     カモネギ師匠は相変わらず笑みを絶やさない。

     「なかなか成長したようだな。しかし、まだまだ達人の域には達していない。」
     「強がりはいいですから、次は師匠の番です。位置に着いてください。」
     ストライクは自分のベストパフォーマンスをあっさり流され、ふて腐れてしまっている。

     カモネギ師匠はもう一本の「きれそうな木」の前に立った。その横にはさっきストライクが切った「きれそうな木」の切り株が、まるでのこぎりで切った跡のような美しい木目を残している。

     突然、道場全体にどよめきが起きた。
     それもそのはず、なんと位置についたカモネギ師匠が、羽に挟んでいた「ながネギ」を床に置いてしまったのだ。
     これでカモネギ師匠は完全に丸腰。木を切ろうにも、どうしようもない状態だ。

     「師匠、どういうつもりです?これは、試合放棄ですか?」
     ストライクが聞いた。
     しかし、カモネギ師匠は反応しようとしない。目を閉じて、木の前で立ち続けている。

     「ストライク兄さん、これはどういうことなのでしょう・・・・」
     困ったコマタナが、ストライクに聞く。
     「分からない。」
     同じく困ったストライクが応える。
     「それじゃ勝負の方は、師匠の戦意喪失で、兄さんの勝ちということで・・・・」
     「ダメだ。勝負はこのまま続行する。」
     コマタナの言葉が言い切らないうちに、ストライクが言った。
     「勝負は続行だ。コマタナは始めの合図を出せ。もし、それでも師匠が動かなければ、その時こそ俺の勝ちだ。」

     コマタナは了解したというように、またペコリと頭を下げると元の場所に戻っていった。

     「えー、それじゃ、始めっ!」
     コマタナが気を取り直し、合図を出した。

     「クワァッ!!」
     道場全体にカモネギ師匠の気迫のこもった掛け声が響いた。閉じられていた両目はカッと見開かれ、さっきまでの穏やかな表情は面影すらなく、鬼気迫る形相で木を睨みつけている。

     しかし、何も起こらない。

     「師匠!なぜ、俺と勝負してくれないのですか?」
     ストライクが聞いた。
     道場に集まった他の者達も訳が分からず、口々に疑問の声をあげている。なかには、露骨にカモネギ師匠を非難する者までいる。

     「だから、お前はまだまだひよっこだと言うのだ。」
     ここにきて、ようやくカモネギ師匠が反応をみせた。

     「私は今、確かにこの木を切った。ただ、まだこの木は自らが切られたことに気づいていないというだけのこと。」
     「気づいていない?師匠、おっしゃることの意味が、よく分からないのですが・・・」 ストライクは、師匠が本気なのか、自分がかつがれているのか分からなかった。
     「そのことが分かる日が来れば、お前に『達人の帯』を渡そう。それまでは、しっかり修業することだ。」

     それだけ言うと、カモネギ師匠はながネギを拾い道場を出ていった。

     「師匠、まだ決着はついていません。待ってください。」
     ストライクがカモネギ師匠を追いかけようとしたその時、本日2回目となる道場全体のどよめきが起こった。

     ストライクが何事かと振り返ると、すぐにどよめきの原因がわかった。



     その「原因」を見てからストライクは、カモネギ師匠に「達人の帯」を貰う日まで、ただの一言も文句を言わず修業を続けたそうだ。
     そして、ストライクのカモネギ師匠に対する深い尊敬は、彼の一生を通して貫かれたらしい。





    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

    お題が秘伝技ということで、ポケモン世界で「秘伝」を伝える様子を想像してみました。中島敦「名人伝」という話を参考にしています。ただ、実際の名人伝は弓の話ですし、話に聞いただけで僕はまだ名人伝を読んでいないので、恐らく原形を留めていないかと・・・・すいません。

    必要ないかもしれませんが、最後カモネギ師匠の木は切れています。
    カモネギ師匠によると、どうやって切ったのかは、修業しないと理解できないそうです。


    【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】【批評してもいいのよ】【修業してもいいのよ】


      [No.907] ここが楽園か 投稿者:久方小風夜   《URL》   投稿日:2010/11/01(Mon) 22:58:43     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    これは!!
    何という理想郷!!
    すみません自分もその家住みたいんですけどっ!!
    家賃ならいくらでも払う!!

    かわいすぎますゴーストポケモンたち。
    とりあえずかぼちゃの中のヒトモシとヨノワールさんはもらった!


    > 俗に言う、ジャックオウランタン?
    > ジャックオアランタンだったかもしれない。

    一般的にはジャックランタンかジャック・オ・ランタンですかね。
    でも自分もそんなに詳しくはない(´・ω・`)


      [No.906] 住みたい。 投稿者:CoCo   投稿日:2010/11/01(Mon) 22:47:55     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    >  リビングに着いた。 ジャックオウランタンの中に、ジュペッタが居た。
     一緒に入りたい。

    >  冷蔵庫を空けたら、ロトムが出てきた。
     おいしくいただきたい。

    >  カーテンを開けたら、ほこりと一緒にゴースがへやを舞った。
     一緒に舞いたい。

    >  一緒にカゲボウズもカーテンから落ちて、宙に浮いた。
     洗濯したい。

    >  電球の変わりにランプラーが付いていた。
     燃やされたい。

    >  いきなり、ゴーストに腕をつかまれた。
     つかまれたい。

    >  影の中からゲンガーが出てきた。 
     私の影に入ってほしい。

    >  ムウマに顔をなめられた。 少ししびれた。
     しびれたい。

    >  壁からヨマワルが出て来た。文句を言われた。
     言われたい。

    >  廊下に出たら、電球がやけに豪華になってると思いきや、シャンデラだった。
     見上げたい。

    >  ヨノワールとサマヨールに吸い込まれそうになった。
     吸い込まれたい。

    >  一緒にフワンテも吸い込まれそうになっていた。
     吸い込みたい。

    >  フワライドは、じっとそれを見ていた。 助けろよ!!
     突っ込みたい。

    >  ユキメノコがろうかの一角を氷の世界にしていた。
     凍らされたい。

    >  ヤミラミは、壁に穴を開けていた。
     壁になりたい。

    >  ムウマージに、呪文をかけられそうになった。
     かけられたい。



    > 小雨の中、ぼろ屋敷(無駄にでかい)を改装中。
     住みたい。


      [No.905] ヨノワール箱をよこせ! 投稿者:久方小風夜   《URL》   投稿日:2010/11/01(Mon) 22:45:44     22clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    箱だけでもいいから!!

    ……本音はともかく。こんにちは久方というヨノワール狂です。
    クリスマスのイメージが強いデリバードがハロウィンのプレゼントを運んできてくれるのが斬新ですね。
    絵本で読みたいかわいらしさです。


      [No.904] こういうお化け屋敷ならOk 投稿者:こはる   投稿日:2010/11/01(Mon) 21:33:44     30clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    なんてかわゆいお化けたち!! 
    >  冷蔵庫を空けたら、ロトムが出てきた。〜ムウマージに、呪文をかけられそうになった。
     このあたりでもう、オバケ屋敷に住みたいですな感じ。でも引越資金がないゆえ、薄幸荘に住んでますけども!

    > 廊下に出たら、電球がやけに豪華になってると思いきや、シャンデラだった。
     そのまま、シャンデリアでいてもらいましょう。ここは。

    > 一緒にフワンテも吸い込まれそうになっていた。
     フワンテ!ぷわわーって吸い込まれるフワンテをぜひ、ください!

    そういえば、うちの大学にもカボチャのランタンが転がってるよ。……あれは、あつまるとかなり異様な風景になります。はい。

    書き忘れたけども、意外と本気で怖がりです。

    [ここに住んじゃうのよ?]


      [No.903] なんというお化け屋敷 投稿者:砂糖水@携帯   投稿日:2010/11/01(Mon) 20:20:16     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    びっくりするほどゴーストタイプのポケモンがいて、某お方が喜びそうだと真っ先に思いました。
    ちょっと怖そうだけど、住んでみたくなります。


    >  リビングに着いた。 ジャックオウランタンの中に、ジュペッタが居た。
    >  冷蔵庫を空けたら、ロトムが出てきた。
    >  カーテンを開けたら、ほこりと一緒にゴースがへやを舞った。
    >  一緒にカゲボウズもカーテンから落ちて、宙に浮いた。
    >  電球の変わりにランプラーが付いていた。
    >  電球は冷蔵庫の中から出てきた。

    (中略)

    >  廊下に出たら、電球がやけに豪華になってると思いきや、シャンデラだった。
    >  電球は、電子レンジのなかにあった。


    思わず一つ一つ想像して笑ってしまいました。
    特にランプラーとシャンデラについては電球のあった場所も含めて。
    電子レンジは危ないです…。


    とにかくポケモン達が可愛いです。
    道具と種を渡しただけで畑作っちゃったり、パーティしてくれないからって部屋中かぼちゃだらけにしちゃったり…。
    一匹ください。



    【批評していいのよ】タグが二つありましたが、私では力不足なので感想だけにしておきます。
    素敵なお話ありがとうございました。
    和みました。


      [No.902] アルビノ 投稿者:紀成   投稿日:2010/11/01(Mon) 19:58:18     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    一度だけ、色違いに出会ったことがある。ホウエン地方でのことだ。炎の抜け道を抜けた草原。
    青の模様に茶色のドンメル。出てきた瞬間、それはキラキラと光った。
    捕まえてからよく見てみると、体のあちこちに火傷の痕があった。同族から受けたのだろうか。
    自分達とは違う者を外したくなるのは、人もポケモンも変わらない。
    「色違いなんて初めて見た」
    火傷の痕を撫でると、彼はフンと鼻息を出した。

    アルビノ、と私は名前を付けた。『異質な者』という意味を込めたのだ。もし彼以外に色違いに出会ったらどうするつもりだったのか。それは分からないし、彼と出会って以降は色違いに遭遇することは無かったのだから、それでいい。
    コンテストに出たらどうなるのかと思い、出場してみた。案の定会場がざわついたが、特に何も変わったことは無く優勝した。
    「やるじゃん」
    アルビノはリボンを珍しそうに見ていた。別に悪い気はしないらしい。


    当時私は様々な地方を巡っていた。ホウエンに来たのはある調査のためだった。豊かな水と緑に囲まれ、特に問題も無い場所だったのだが、最近異常気象が続いているというので、数ヶ月滞在して様子を見ることにしたのだ。
    そこで私は幻のポケモンを見た。一生に見れるか見られないかの光景だった。彼等は火口に水が溜まった場所で戦っていたのだ。私はカメラを持っていたのにもかかわらず、シャッターを押すのも忘れてそれを見ていた。

    始まりから終わりまで夢の中にいるような滞在だった。
    それから私はすぐにシンオウ地方へ行くことになり、アルビノを友人に預けた。彼は私との別れの時、不思議そうな顔をしていた。
    『何処へ行くのか』
    そういう表情だ。私は彼の頭を撫でて、『じゃあね』と言って背を向けた。


    シンオウのヨスガにマンションを借りてから数ヶ月経ったある日、一通の手紙が届いた。差出人はアルビノを預かってくれていたホウエンの友人で、アルビノが亡くなったと書かれていた。彼は突然変異で生まれたためか、体が弱かったらしい。
    冬に風邪を拗らせ、それが元で。
    それからすぐに小さな包みが届いた。手の平サイズの箱には、一個のボールが入っていた。一目でアルビノのボールだと分かった。
    そして私は少し泣いた。彼は生きていて良かったとか、悪かったとか思ったことはあるのだろうか。ポケモンだから、そういうことは分からないかもしれない。
    それでも、彼には生きていて良かったと思って欲しいのだ。


    あれから数年。私は今、全く未知の土地、イッシュにいる。まるで全ての環境が一つにまとまったような場所だ。生息するポケモンも見たことがない者ばかりだ。
    ここら辺にもアルビノのような者達が少ないながらもいるらしい。


    変わる季節の風を感じると、アルビノという独特の色合いが脳裏を駆けていくのが見えた。


      [No.901] お化け記念日 投稿者:スズメ   投稿日:2010/11/01(Mon) 14:13:51     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5






     11月1日 天気不明。

     朝、目が覚めると部屋中にかぼちゃが転がっていた。




     何故に?
     しかも、転がっているうちのいくつかは顔がくりぬいてある。
     俗に言う、ジャックオウランタン?
     ジャックオアランタンだったかもしれない。
     生臭いなって思ったら、部屋のすみにくりぬいたかぼちゃの中身らしきものの
     山が出来上がっていた。
     かぼちゃって生臭いんだ。
     ・・・。



     とりあえず、着替えよう。

     ・・・・・・・クローゼットが開かない。
     よくみたら、大きめのかぼちゃがいくつも居座っていた。
     クローゼットの前にはかぼちゃの行列。
     ご丁寧に、魔女の帽子をかぶっていた。
     あ、ひとつだけサンタクロースの帽子をかぶった奴が居る。
     まぬけなかぼちゃだ。


     せっかくならこのかぼちゃたちも顔をくりぬいてやればいいのに。
     そう思いつつかぼちゃをどけ・・・・おもっ?!
     見た目以上に重い。 
     くりぬかなかった理由が分かった気がする。
     仕方ないので、足でけってどけた。
     ・・・足が痛い。

     
     クローゼットを開けて、かぼちゃを・・・
     は? かぼちゃ?
     服だと思ってつかんだものは、服を(むりやり)着たかぼちゃ。
     ・・・服がのびてしまっている。
     まあ、いいか。
     
     「イタッ」

     上から、かぼちゃが降ってきた。
     ごろごろごろ〜。
     
     「イタッいった・・・なんだこのかぼちゃ?!」

     降ってきたかぼちゃを壁に向かって投げつけた。
     ゴシャ・・・
     かぼちゃは壁に穴を開けた!!

     ・・・。
     やめておけばよかった。

     ゴン。

     最後の1個と思われるかぼちゃが降ってきた。
     天罰かもしれない。




     
     とりあえす、服は着れたのでリビングに行ってご飯を食べよう。
     これだけかぼちゃがあるんだから、かぼちゃづくめにしてやろう。
     ・・・・いや、飾りのは食べれないかもしれない。
     あ、でもさっき上から降ってきたかぼちゃは食用だったし。
     ・・・ドアが開かない。

     なにか、重いものが向こう側に置かれているようだ。
     ・・・たぶん。 また、かぼちゃかもしれない。

     
     外出用のかばんから、家の鍵を出す。
     窓を開けて・・・じゃーんぷ!!
     ・・・カーテンからほこりの玉が現れた(かなり大量)。

     空からはさんさんと太陽がふりそそいで・・・なかった。 
     曇り、少し小雨。

     時計を見ると、気温 15度  11時35分 と表示された。
     さむいうえに、朝ではなく昼だったらしい。
     

     庭には、またかぼちゃ。
     かぼちゃを蹴っ飛ばした。
     痛いけど、素足よりはましだった。 スリッパはいてきて正解だったね。

     そういえば、何でかぼちゃがこんなにあるんだ?
     犯人は・・・思い当たる節がありすぎるが。
     これだけの規模でいたずらってことは、また数が増えたのだろうか?


     
     「あっ! おばけやしきだ!! あれ? 人がいるよ?」
     「めっ、そんなことをいってはいけません。」


     確実に家のことを言っているであろう親子が、前の道を通り過ぎていった。
     失礼な。 家にはかぼちゃ畑だってあるんだぞ・・・あ。
     かぼちゃの出所はそこか。
     そちらをみると、案の定オレンジカーペットは消え去っていた。
     まあ、あいつらが勝手に畑を作ったんだけど。
     種と苗とスコップその他を渡しただけなんだけどな。

     でも、お化け屋敷は酷い気が・・・しなかった。
     たしかに、お化け屋敷かもしれない。

     屋根の塗装ははげ、壁にはつた類が繁殖している。
     庭は広い上に雑草だらけ。
     ところどころ、植えた記憶の無い木が自生していた。
     あいつら、この庭を開拓したのか。
     いがいと、やるなあ・・・まて、太陽の光は天敵じゃないのか?

     
     玄関の鍵を開けて、家に入ると、ネイティが頭のうえに乗っかった。
     ・・・おもいから、せめて肩にしてくれ。
     そう言ったら、文句を言いつつ肩にとまりなおした。

     テレパシーって便利だね。


     部屋の中も、かぼちゃが居座っていた。
     うちはかぼちゃやしきか。
     まったく、片付けのことも考えてくれ。
     というか、何でかぼちゃなんだ。

     ぶつぶつ文句を言っていたら、ネイティが解説を始めた。
     ・・・あ。
     確かに、昨日はハロウィンだったかもしれない。
     ・・・忘れてた。
     トリック オア トリートってことか。
     あめ(パーティ)をくれなかったからいたずらしてやると。
     まあ、お化けが主役のお祭りはほとんど無いしね・・・
     それにしても、たいしたものだ。

     
     リビングに着いた。 ジャックオウランタンの中に、ジュペッタが居た。
     冷蔵庫を空けたら、ロトムが出てきた。
     カーテンを開けたら、ほこりと一緒にゴースがへやを舞った。
     一緒にカゲボウズもカーテンから落ちて、宙に浮いた。
     電球の変わりにランプラーが付いていた。
     電球は冷蔵庫の中から出てきた。
     いきなり、ゴーストに腕をつかまれた。
     影の中からゲンガーが出てきた。 いつの間に入り込んだんだ。
     ムウマに顔をなめられた。 少ししびれた。
     壁からヨマワルが出て来た。文句を言われた。
     廊下に出たら、電球がやけに豪華になってると思いきや、シャンデラだった。
     電球は、電子レンジのなかにあった。
     ヨノワールとサマヨールに吸い込まれそうになった。
     一緒にフワンテも吸い込まれそうになっていた。
     フワライドは、じっとそれを見ていた。 助けろよ!!
     ユキメノコがろうかの一角を氷の世界にしていた。
     ヤミラミは、壁に穴を開けていた。
     ムウマージに、呪文をかけられそうになった。
     
     ・・・前より数が増えている。

     
     自室の前には、やはり、どでかいかぼちゃが。
     中身はくりぬいてあるみたいだけど、大きさが尋常じゃない。
     ちらちらと青白い炎がのぞいている。
     ヒトモシであろう炎は、少し暗い色をしていた。


     

     じゃまなので、けってどかした。



     
     けられたかぼちゃはごろごろと転がり、壁に激突した。
     家が揺れた。 ・・・いい加減建て替えないと、地震とか危ないかもしれない。


     
     あっ ヒトモシがとびだしてきた!



     ・・・・出すの忘れていた。
     やっぱり怒っている。
     ネイティがまもるを使った。

     うしろに置いてあった花瓶が割れた。
     ・・・たたりめ。
     威力は低めだけど、人間に使うような技ではない。
     どこかには、十万ボルトをくらっても平気な人間も居るらしい。
     だからといって、すべての人間が平気だとは思わないでほしいものだ。
     そもそも、科学的に言えば・・・・・・難しいことを私に聞くな!!


     ・・・いつの間にか口に出ていたらしく、お化けがみんな、こっちを向いた。
     そんな目で見るな。
     
     
     「おい、なにやってるんだ。」

     同居人が起きて来た。
     
     「うわっ、なんだよこれ。」

     そういって指したのは、かぼちゃの山。
     彼曰く、彼の部屋には何も置かれていなかったとか。
     これはあれか、差別というやつか?

     「そういや、俺の部屋、雨漏りが酷いんですよ。」

     にっこり笑ったまま、目だけが笑っていない。
     つまりは、なんとかしろと・・・。

     「この、ぼろ屋敷を何とかしろとは言いませんから。」

      家賃も安いですしね。

     そう言い残して、自分の部屋に戻っていった。
     ・・・お前、学生じゃなかったのか?
     もう、昼なんだが・・・学校はどうした。

     しかし、雨漏りか・・・
     とりあえずは、二階に上がれるようにしなくては。
     (現在、床板が腐っていて、二階に上がろうものなら床を突き抜けて一階に落ちる)

     「おい、そこ」

     指差したるは、お化けたち。
     
     「なんか、お化け記念でも作ってやるから、改築を手伝え。」



     




     本日、11月1日なり。
     小雨の中、ぼろ屋敷(無駄にでかい)を改装中。
     とりあえず、改装が終わったらその日をお化け記念(改装記念)にしようと思う。

     

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

     せっかくハロウィンなので、それっぽい話を。
     書いていたらどんどん話がそれていったという・・・・

     いまさらながら。
     チャット会のぞきにいこうと思っていたのに・・・忘れていた。
     一週間勘違いしていました。
     ・・・・・・後悔先に立たず。
     

    【批評していいのよ】【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】


      [No.900] Re: 語り部九尾 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/31(Sun) 21:49:26     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    No.017でっす!
    語り部九尾読ませていただきました。
    思えば歴史の語り手としてこれほど適したポケモンもいないかもしれませんね。

    欲を言うとやはりポケモン小説だからポケモンの出番が欲しいかなぁ。
    たとえば伊能忠敬とか松尾芭蕉にして、測量してたり旅してたりしてたらポケモンが襲ってきた! さあ大変! とか。
    ペリーが見たことのないポケモンを連れてきた、とか。
    キュウコンが物語中に乱入する回とかあってもおもしろいかもしれませんね。
    まだロコンだったころ、宮廷でエロ小説(笑)書いてた女官がいたとか。
    あるいは空海の乗ってた船で一緒に海を渡ってきた、とか。
    (九尾の狐は天竺→中国→日本 と移動してたハズ)

    あくまで一案ですが。

    では!


      [No.899] No.025の陰謀 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/31(Sun) 21:45:06     23clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ピ、ピカチュウってかいりき使えたのか(

    わああごめんなさいっ
    知らなかったのかよ! とかつっこまないで!!
    固定観念ってコワイネ。
    しかしマッチョな体型のピカチュウを想像してしまうなぁ(笑

    あんまりピカチュウがひでんを覚えると
    「ひでんマスター」のビーダルさんとかが泣いちゃうから、
    ピカチュウはそれくらいでいいんだよ! たぶん(笑






    > 追伸:ちなみにハンドルネームの読み方に質問がありましたので
    > ここで書かせてもらいますと、
    > 私の『巳佑』は『みすけ』と読みます。
    > これからもよろしくお願いします。

    ありがとうございます!
    これからもよろしくお願いします。


      [No.898] ヨノワール箱だ、それ以外無いッ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/31(Sun) 20:28:48     19clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    Trick or Treat ☆
    こんばんはNo.017です。
    デリバードさん、デリバードさん、とりあえずヨノワール箱くださいッ!
    モンスターボール構えておきますので!!

    さー出ておいで! 愛しのピジョンさん!!





    この後吹き飛ばしで地平線の彼方にぶっ飛ぶ017の姿が!


      [No.897] 続きを書かないとぼんぐりを投げます(いいえ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/31(Sun) 20:24:40     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     <○><○> ジー


     <○><○> …… ……



    リョウナさんはじめまして!
    ポケストの中の人、No.017と申します。
    デビュー作、しかと読ませていただきました!

    ちょうど神保町古本祭から帰ってきたところでして、
    「陰陽師の本」なるものを購入しまして、
    ポケモン世界の陰陽師の式神ってやっぱポケモンなんだろうなーなんて
    そんな妄想をしていたら、していたら!

    ナンカ トウコウ サレテター!

    なんというタイミング!


    漢字表記のポケモンはすぐにどれだかわかりましたですよ!
    どうせならカマキリもどうせなら漢字(螳螂)にとも思ったんですが、
    ただ表記がむずかしいのでどっちがいいとも言えないですね。

    琥珀丸くんのうろたえぶりがなんともわかりやすい(笑
    いやーこれはね霧彦兄貴のS心を刺激しちゃいますよね。
    反応がわかりやすい人はいじりがいがありますもの。

    とりあえず続編待ってますから!
    続編書かないとぼんぐり投げつけちゃうぞ  つ○(構えつつ

    琥珀丸君の最初の式神はあれですかね。
    やはり竜鯉のこと考えると雷獣系かしら。
    電気鼠かあるいは羊か……。

    予想しつつこれにて。


      [No.896] 【とりあえず展開を進めようとしたのよ】 投稿者:海星   投稿日:2010/10/31(Sun) 17:16:44     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     娘は、生い茂る草むらの前で座り込んでいた。
     この――血生臭い殺気は、明らかにこの草むらの奥で発生している。
     力の無いただの盲目の女である自分を強く恨めしく思った。
     もしも、私の目が見えたら……力強い男であったら、力強い仲間が手元にいたら……。
     そんなことを今更思ったところで何も無いのはわかっている。
     しかし、娘はただ震える手を握り締め、見えない目で草むらを睨み付けるばかりだった。
     何度も勇気を奮いだして立ち上がろうとした、そして、何度も恐怖に打ち負けて再び座り込んだ。
     もう泣きそうだった……娘は、ここに来れば、災害の元凶を見れば、なんとかなると考えていたのだ。
     誰かが行かなければ、災害は酷くなるばかり。
     そう考えて飛び出してきたまでは良かったのだが。
     やはり、自分はそんな大事を成し遂げる器じゃない……娘は引き返そうかと思った。
     あの海辺の崖まで戻ってエーフィと合流し、家に帰ろうか。
     ここまで来たのに。
     そのときだった。
     不意に鋭い頭痛が娘に届いた。
     娘は涙を流さぬ為にぎゅっと強く閉じていた瞳を開けた。
     頭を手で押さえようとし、気付く。
     目の前の景色が違う。
     いや、目が見えている!
     目の前で、崖がぼろぼろと崩れ落ちていた。
     慌てて腕で身体を庇おうとする。
     しかし、瞬間的に薄い紫色の壁が土砂の前に現れ、押さえつける。
     これは……リフレクター。
     振り返ってエーフィを探す。
     しかし、後ろは真っ黒だった。
     ふと気付く……崖の景色は、まるで映像のように、映し出されている。
     目線からして、これは、もしかしたらエーフィの額の宝玉が見ている景色かもしれない。
     そして、エーフィは、エスパーの能力で私にそれを見せている……。
     娘は映像に見入った。
     リフレクターは固く強く土砂を押さえていたが、一枚の壁では無理がある。
     すぐに鈍い音がして、壁が消えかけた。
     その瞬間、地面が大きく揺れ、壁諸共土砂がならされた。
     もしも揺れていなかったら、エーフィは今頃土の中だっただろう。
     振り返ったように、画面が横にスライドする。
     そこには色鮮やかで目に眩しい原色の始祖鳥が飛んでいた。
     そしてその下、始祖鳥に指示を与えていたのは、黒髪に紅色のメッシュの、すらりと背の高い美女だった。
     女性は切れ長の瞳でちらりとエーフィを見ると、目を逸らし、そのまま始祖鳥にじならしを命じた。
     エーフィも察したようで、リフレクターを繰り返し、始祖鳥を降ってくる波からカバーしながら土砂をしずめる。
     ある程度静まったところで、女性は別の方向を向いた。
     そこでは、一人の大柄な男性が土砂にのみこまれそうになっていた。
     サイコキネシスだろう、淡い色のサイコパワーが男性を包み込み、辛うじて土砂から離している。
     良く見ると、男性は、濃い紫のゆらゆらした身体に紅い玉を散らせた妖獣――ムウマージに背中を押さえられており、立派な髭をこしらえ銀のスプーンを握り締めた黄色の超獣――フーディンを太い腕で支えていた。
     サイコキネシスはムウマージとフーディンが繰り出しているのだろう。
     しかし、サイコパワーは今にも弱々しく消えそうになっている。
     もしも今途切れたら……男性は仲間と共に土砂に巻き込まれ、もしかしたら還らぬ人となってしまうかもしれない。
     画面――エーフィは男性の近くに飛び出して、超能力を発揮した。
     咄嗟の判断だ。
     ギリギリのところで、エーフィのサイコキネシスは男性に届き、間に合った。
     零れ落ちてきた少しの土砂も共に、サイコキネシスはゆっくりと男性とその仲間を少しは安全な地に寝かせ、消えた。
     エーフィはそのままの勢いで、崩れかけた土砂に向き合い、リフレクターやサイコキネシスを放つ。
     女性の始祖鳥もじならしを繰り出して、どうにか、そこもおさまった。
     「――休んでおけ、ロー」
     静かに優しく女性がモンスターボールの閉開スイッチを押し、始祖鳥をもどす。
     目を覚ましたらしい男性と仲間の歓喜の声が近くで聞こえる。
     そして、その奥で、アブソルの悲鳴のような叫び声も……。
     女性の表情が瞬間的に引き締まる。
     エーフィは女性がどこかへ歩き出したのを確認し、軽調に駆け出した。
     視界に吠えるアブソルが入ってくる。
     まるで、怯えているように見えた。
     アブソルは災害を頭の鎌のような部分で予知といわれている。
     きっと、大きな災害をその身体で感じ――怯えているのだろう。
     エーフィはしなやかにアブソルの隣に飛び移ると、俯いた――画面の向きが若干下向きになる。
     神経を集中させているのだろう、空気から伝わってくる力を感じる。
     空気を必死になって読もうとしているのだ。
     命をどうにか落とさなかったあの男性に、若いレンジャーたちが駆け寄っている。
     女性が髪の毛を風に靡かせ、何かを決心したように前を見据えている。
     動き始めた未来、崩れ始めた未来。
     過去は変えられないが、未来は変えられる。
     エーフィの鼓動を感じられなくなり、映像がぷつりと消えた……。
     ……娘は覚悟していた。
     こんなにも多くの人たちが、協力し合い、命を危険にさらしてまで救助活動をしている。
     そして、私は、災害の源の一番傍にいる。
     エーフィさえも頑張っているというのに、帰ろうと一瞬でも考えた自分が恥ずかしい。
     娘は今度こそ力強く立ち上がり、手の平を強く握り締めると、草むらに足を踏み入れた。
     争いの悲鳴が耳に突き刺さってくる。
     恐怖が襲ってくる。
     だが、今災害を止められるのは私だけだ――。
     草むらが開けたのを、当たってくる空気の流れで感じた。
     ふっと風が止む。
     雨が止む。
     雷の音が聞こえなくなる。
     何かに凝視されているような嫌な感じが娘を取り巻く。
     これが、伝説の風神と雷神の威圧感。
     娘に、神々の争いを止める力など無かった。
     それは一番娘自身がわかっていた。
     今私にできること――娘は必死になった。
     風神と雷神の争いを止める神を呼ぶこともできない。
     ならば、神々を移動させるしかない!
     あの女性は神々を受け止める力と意志を持っていたように思う。
     だから――!
     娘は首から下げていたペンダントの先端にくっ付いていたモンスターボールを握り締め、鎖からはずすと宙に投げた。
     ぽん、と軽い音が頭上で響く。
     そしてそれと同時に威嚇するような叫び声も辺りを震わせた。
     「お願い、言うことをきいて、リザードン! あなたが私を認めていないのはわかってる、だけど今頼れるのはあなただけなの! 風神と雷神をエーフィのところまで弾き飛ばして! ドラゴンテールっ!!」
     リザードンの火の混じった熱い息の音がする。
     「お願い――」
     次の瞬間に巻き起こった突風に娘は飛ばされて、何かに頭を強く打ちつけた。
     あまりの痛さに意識の糸が切れそうになる。
     どうやら、この風はリザードンのものではないらしく、すぐ近くで、リザードンの苦しそうな鳴き声が聞こえた。
     何もなかったかのように、再び争いの音がし、激しい嵐が荒れ狂う。
     駄目だったのか、と娘が諦めたとき、突然熱風が巻き起こった。
     「リガァアア!!」
     奮い立たせるようなリザードンの叫び声。
     続いて、地面を震わせる攻撃。
     娘は地面に伏せて揺れがおさまるのを待った。
     あまりの恐怖に心臓が飛び出そうだった。
     やがて揺れが静かになり、辺りに静寂が戻った時……。
     雨は降っていなかった。
     雷は落ちていなかった。
     風は少しも吹いていなかった。
     そして、争いの声も聞こえなかった。
     「……!」
     信じられない。
     フゥ、とため息をつく音が隣でする。
     その、安堵と「どや!」感。
     娘はリザードンに思いっきり抱きついた。
     風神と雷神は弾き飛ばされ――アブソルの悲鳴が轟く海辺に急降下していった。



     ――――――――――

     まず、すいませんでしたぁああ!!
     なんか急展開にしてしまいましたorz
     あとはよろしくおねがいしますすいませんでした……。
     黒髪美人のおねえさんと始祖鳥をはじめ、たくさんのレンジャーさんやアブソルさんをお借り致しました。
     
     【とりあえず飛ばしてみたのよ】
     【ドラゴンテールでそこまで飛ばないとか言わないで欲しいのよ】
     【エーフィ扱使ってくださいなのよ】

     うん、後は任せたぜ!(待


      [No.895] Re: おまえらときたら… 投稿者:こはる   投稿日:2010/10/31(Sun) 16:46:10     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    豪雨の日は読み手に徹するに限る精神発動なので、読み手に徹する。……つもりなのに、気づけば書いてしまう自分がいる。でも、載せないけどね。こんな楽しい流れを止めるなんてもったいないじゃないか!(←ハッピーエンドまっしぐら主義なので


    > だれか〔書いてみた〕で救出するんだ!(待
    > 【うまいこといった暁にはアーカイヴ掲載で、大丈夫か?】
     そう、すべてはこの一言から始まったのですよ。なので、できればしっかりとまとめていただきたい。
     と、読み手が言ってもよろしいですか?
    【アーカイヴ賛成に一票なのよ】


      [No.894] 語り部九尾 其ノ三「青年剣士」 投稿者:NOAH   投稿日:2010/10/31(Sun) 15:11:50     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    おやおや、よくきてくれたねぇ。
    我の語りが気に入ってくれたかね?それは良かった。

    ならばまた話そう、これはある青年の話だ。

    今からだいたい250ほど前の時であったな。
    城都はエンジュのある宿屋で、大きな事件が起こった。

    その事件とは、当時の政を気に喰わず、王族の者を誘拐したのち、政の中心となる人物を暗殺せんとする者たちの討伐であった。

    それを聞きつけた、当時は警察と言ってもよい組織の者たちは、刀を片手にその宿屋へ赴き、そこに巣くう悪しき輩共を討伐、もしくは捕縛しようと派手に乗り込んだ事件でなぁ。

    きなくさい風に乗って血の臭いが僅かにしたので行って見てみれば、騒然としておった。

    宿屋の中に4人ほど乗り込んだ者がおり、その中の1人はとても鮮やかな剣技であった。

    そやつは見目が18〜20程青年でな、なかなかの美青年であった。
    暗殺などを企む輩どもが血の海に溺れ、縄で身動きできずにいるなか、その青年に異変が起きよった。

    そう、突然血を吐き、胸を抱え込むように倒れたのだよ。
    その前に1人、返り血を眼球に浴びてしまい、離脱した者が1人おったので、そやつが抜けたことによっていったん不利になったものの、1人の男が仲間を連れて加勢したために、その事件は事がより肥大する前に解決したのじゃ。

    しかしその青年は、それ以来刀を握れなくなったのじゃ。
    原因はその当時、不治の病とされていた「結核」でのぉ、その者はのこりの余生を仲間と隔離されて過ごしておった。

    我はその姿に寂しさを感じておったよ。
    ついこの間まで剣を振るい、悪しき心を持つものをその刀を持って切り捨てた阿修羅の如き姿の見る影もなかった。

    そしてそれから半年したのち、そやつは若くして死を迎えた。
    短くも立派に生きたという。

    その青年だがな、剣の腕はなかなかではあったが、色恋沙汰ではなかなか純情なところかあったようだ。

    街医者の娘と親しい関係にあったとされるが、やはり病気のこともあってか、結局は実らずに終わったという。

    なんとも切ない話であったわ、せめてその者とは結ばれてほしいという願いもあったよ。

    さて、若くして病で死を迎えた青年剣士の名を教えよう。
    そやつの名は「沖田総司」、新撰組と呼ばれる部隊で1、2を争う剣豪であったよ。

    +あとがき+

    さて、今回は新撰組隊士の沖田総司の史実を脚色しましたぁ。
    ちなみにサブタイトル適当です、すんません(泣)

    しかしこはるさんの書く外伝のような「語り部九狐」がまぁおもしろくって、にやにやしっぱなしですよ。
    うふふ〜♪

    ではでは、次も頑張って書いていきますよっと。

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】
    【告白してもいいのよ】


      [No.893] 前 陰陽師と式神 投稿者:リョウナ   投稿日:2010/10/31(Sun) 15:04:41     81clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


           陰陽師と式神






     遠い昔、城都(ジョウト)と呼ばれる国に縁寿(エンジュ)という都があった。

     虹色の翼をもつ神鳥を祭る「鈴の塔」、銀色の翼をもつ神鳥を祭る「鐘の塔」の二つの塔がそびえ立ち、
    気品あふれる美しい都であったが、ここに住まう人々を困らせているものがあった。




     それは「妖(あやかし)」、または「妖怪」と呼ばれる存在である。
    妖は他の動物のように大人しくて、こちらから手を出さなければ何もしてこず、家畜や愛玩動物のように飼われているものもいる。

     しかし、中には後ろから髪の毛を引っ張ったり、夜の暗闇の中で突然奇声を上げたりなどの悪戯をするものもいれば、
    畑で実った作物を食い荒らすもの。
    極めて凶暴で人に襲いかかったりするものなど、様々な形で住民の暮らしを脅かしているのである。




     その様な妖から人々を守り、妖を鎮める「陰陽師」という者たちがいた。
    妖術に似て全く異なる陰陽術を用いり、強い力を持つ妖とも対等に戦うことができるそうだ。
    更にはボングリという木の実から作られた玉状の器の中に一匹の妖を封じることにより、その妖を己の僕として操ることができるという。
    陰陽師たちは他の妖と区別をつけるため、僕となった妖を「式神」と総称している。
    この式神の術を身につけることで半人前、そして六匹の式神を従わせられるようになって初めて一人前の陰陽師とされるらしい。



     縁寿の都のある一角に凄腕の陰陽師が暮らす屋敷があり、多くの者が弟子入りし、そこで修行を行っていた。
    そんな立派な陰陽師となることを夢見る「琥珀丸」という一人の少年も、見習いとしてその屋敷に身を寄せていた。

     琥珀丸は陰陽師になりたくて弟子入りをし、陰陽術の修行をするためにやってきたが、屋敷に身を置いてから修行どころか勉強の一つもさせてもらえず、
    それどころか毎日掃除や兄弟子たちの衣服の洗濯、食事の準備などの家事ばかりやらされることに不満を抱いていた。

     一体いつになれば修行をさせてもらえるのか師匠本人に訊こうとしたが、忙しいと理由をつけられ会うことはできなかった。
    ならば兄弟子に訊こうとしたが、まともな答えをもらえず、終いには馬鹿にされる始末。
    どうすればいいのか思考を巡らし、来る日も来る日も考え続けたが結局答えは見つけられなかった。
    こんな所に来るのではなかったと後悔し、逃げ出そうと考えたこともあったが、それではまるで自分が負け犬になってしまうような気がして断念した。
    夕暮れ時に飛んでくる妖の一種である闇鴉たちの鳴き声が「アホー」と聞こえ、妖にさえ馬鹿にされたように感じ、何だか虚しい気分になる。


    「僕は、僕は陰陽師に向いてないのか……?」


     屋敷内の広い庭にあるこれまた広い池に住み着いている、小さくて大人しい水の妖たちに琥珀丸はしゃがみこんで話しかけていた。
    玉のように丸い体をもつ青い水鼠と、腹にある渦巻き模様が特徴的なお玉じゃくしの妖たちは水面から顔をのぞかせ、困ったような表情でお互いの顔を見合わせた。
    そんなことを言われても自分たちにはどうしようもないといった様子である。
    言葉の通じない妖に言っても仕方のないことだとは分かってはいたが、こうして困ったような顔をされると流石にしょげる。
    何とも間抜けそうな顔をして悠々と池の中を泳ぎまわる赤い鯉の妖が時折恨めしくなる。
    こいつ等に聞くんじゃなかったと軽く後悔しながら、そろそろ屋敷へ戻って残りの仕事を片付けようかと立ち上がろうとした。

     が。




        ゴツッ。




     鈍い音が聞こえたと同時に琥珀丸の頭に衝撃が走った。
    いきなりのことで軽く困惑し、それが何であるか脳が理解する前に衝撃が起きた部分から強い痛みが生じる。
    それと同時に、どぼん、と何かが池の中に落ちた音が聞こえた。

     頭に何かをぶつけられた。そう思った時にはもう遅かった。


    「いいいぃぃぃぃったああああぁぁぁぁぁ!!?」


     ぶつけられた所を両手で押さえながらうずくまっていると、後ろからいかにも楽しげな男の笑い声が聞こえてきた。
    涙のにじんだ目で後ろを振り返ると、そこには両腕が切れ味鋭い鎌になっているカマキリの妖を従えた青年が、
    右手に白いボングリをもって馬鹿笑いしながら立っていた。
    青年の姿を見たとき、琥珀丸はこの青年が自分にボングリをぶつけたのだと思い、またやられたと思った。
    そして、池に視線を移すと、案の定青年が持っていたのと同じ色のボングリがぷかぷか浮いており、先ほどの水鼠とお玉じゃくしが状況が把握できず唖然としていた。


    「霧彦さん……」
    「あっははははは、まさかまた当たるとは思わなかったぜ琥珀ぅ。お前本っ当鈍いなぁ。何回も同じ目に遭うなんてな! ぶっははははははははは!」
    「笑わないで下さい! もういい加減にしてくださいよ! これで何回目だと思っているんですか!」
    「丁度二十回目だ♪」
    「……なんで楽しそうに言うんですか」
    「楽しいからさ」


     何の迷いもなくかえってきた返事に琥珀丸は深くため息をつく。
    この悪戯小僧のような霧彦と呼ばれた青年は琥珀丸の兄弟子の一人である。


     霧彦は、若いながらも才能あふれる優秀な人物であり、一番弟子とまではいかないが、師匠も期待と信頼を寄せている。
    聞いた話によれば弟子入りをしてわずか一年目にしてカマキリの式神を手に入れ、そして妖の中でも厄介とされる九尾の狐を封じるなどの功績を残している。
    現在では五匹の式神を従え、多くの妖を退治するほど陰陽師としての頭角を現している。
    人柄も良く天才と称されても謙虚に振る舞い、弟弟子にも気さくに接して面倒も見てくれる。
    琥珀丸自身も世話になっており、霧彦のことを本当の兄のように慕っている。

     だが、そんな彼に一つ困らされていることがある。
    先ほどのボングリをぶつけてきたなどの悪戯をしてくるのだ。
    普段はとても優しく気軽に振る舞ってくれ、相談にものってくれるのだが、琥珀丸を含めた弟弟子をからかったり悪戯したりするのが好きらしい。


     琥珀丸にやったようにボングリなどの物を投げつける。(流石に石など硬い物は危険なので投げない)


     池に突き落とす。


     食事にとても辛い木の実や酸っぱい木の実の汁をこっそり混ぜる。


     せっかく洗った洗濯物を汚す。


     掃除したばかりの部屋や庭を散らかす。


     挙句の果てには自分の式神を使って水をかけてずぶ濡れにしたり電撃で痺れさせたりするなど、
    ここまで来るともはや可愛いからかい程度のものではない。軽い悪意のようなものを感じる。
    本人曰く、「これが俺なりの愛情表現!」らしいが、悪戯されている側にしてみればいい迷惑である。
    こっちの身にもなっていい加減止めて欲しいと弟弟子たちは思ってはいるが、
    この人のことだ。言っても素直に応じてくれるはずがないと誰もが諦めている。
    もちろん、琥珀丸も例外ではない。


    「霧彦さんもういい歳なんだからこんな子供っぽいことしないで下さいよ。こんなこと毎度毎度されたら僕の身が持ちませんよ……」
    「だーいじょうぶさ。立派な陰陽師になりたいんだろ? これも修行だと思えばいい。
    第一、こんなことでへこたれてるようじゃ陰陽師にゃなれねーぜ。俺は手加減しているからまだいいが、妖は情けをかけちゃくれねぇぞ」
    「話を別の方向へ持っていかないで下さい! それに、僕が言いたいのはそういうことじゃないです!」
    「そりゃしっつれい♪」
    「……っ!」


     反省? 謝罪? なにそれおいしいの? とでも言わんばかりの満面の笑みと共に出てきた反省の色が全くない言葉に、何やら殺意や憎悪に似たものが込み上げてきた。
    自然に握りしめた両手の拳に指が食い込んで血が滲み出そうなくらいありったけの力が込められ、いつでもこの青年のアホ面に向けて殴りにかかる出撃準備が整う。

     だが相手は仮にもお世話になっている兄弟子であり、自分なんかと比べ物にならないくらい陰陽師としての実力を持つ人だ。
    そんな人を殴る訳にもいかず、第一そんな事をしたら彼の一番の相棒である鋭い刃を持つカマキリに何をされるか分からない。
    あのカマキリは主人である霧彦には絶対服従で、主に何かあれば只じゃすまないだろう。
    それに、こんなことをしても悪戯が止むことはないし、それで気分が晴れるのはその時だけ。
    どうせ何回も同じ目に遭うのだから、殴っても仕方がない。
    おまけに以前に霧彦の悪戯に堪忍袋の緒が切れた奴が彼を池に突き落としたら、お師匠様にこれ以上ないくらい叱られ、まるまる二日食事抜きといった罰を受けたという話を聞いた。
    池に落とすくらいならずぶ濡れ程度で済むが、殴りかかって怪我なんてさせてみろ。二日飯が食えない程度じゃ済まないかもしれない。

     そんなことを自分に言い聞かせながら冷静さを取り戻し、拳に込めた力を少しずつ抜いていく。


    「僕はこれで失礼させてもらいますよ。まだ仕事が山ほど残っているので」
    「おいおいおいおい、そりゃねーだろ冷て〜なぁ」
    「これ以上貴方といたら時間を無駄にするだけですからね」
    「そんなこと言うなよ。今からこの俺が兄弟子としてありがた〜い助言を授けてやろうとしてるんだ。聞きたくないのかね琥珀君?」


     琥珀丸は少し驚き、思わず霧彦の顔を見た。そこにはもうふざけた笑顔ではなく本当に自分のことを心配をしてくれている親のような微笑みがあった。
    悪戯好きでよくからかってくる霧彦だが、こんな時は血の繋がった兄のように親身になって心配をしてくれる優しい人物なのだ。
    恐らくは薄々自分が悩んでいることを察していたのかもしれない。だから元気づけようとからかったのかもしれない。

     だがしかし、そう簡単に悪戯を許せる琥珀丸ではない。


    「お気持ちだけで結構です。それに先程の行為は弟弟子に助言をしようとする態度には見えなかったので」
    「ははは、悪かったよそりゃ。でもさっきのお前の後ろ姿は悩んでますよ〜って感じだったぜ」
    「それは……、まあ、否定はしませんが……」
    「だろ? だろ? だからさ、ここは兄弟子として何か手助けをしなければと思ってだな」
    「手助けしようとしてボングリを投げたと?」
    「わりぃ。ついな」
    「ほう。つい、ですか」
    「琥珀お前……、結構根に持つな」
    「それは何度も痛い思いをしている訳ですからねぇ。ええ」
    「こんな時お前が執念深い九尾の狐じゃなくて良かったと思うぜ。俺、千年呪われるのは御免だし」


     彼はまあまあとなだめる様に両手を前に出し、とりあえず俺の話を聞いてくれと困った表情をする。
    まあ、折角天才と称される陰陽師に助言をしてもらえるのだ。話は聞いておこう。


    「お前さ、陰陽師の勉強させてもらえなくて苛立ってんだって? んまあ俺もその気持ちはよ〜く分かる。何を隠そうこの俺も弟子入りした頃はそうだったのさ」
    「え? 霧彦さんが?」


     意外だった。てっきり彼は最初から師匠から陰陽師の手解きを受けているものだとばかり思っていたからである。


    「そ。んじゃなぜ俺がここに入って一年で式神を捕まえたか分かるか? 俺も兄弟子からある陰陽術を教えてもらったからさ!」


     霧彦の話によれば、その兄弟子からなんと式神を捕まえる術を彼に話したらしい。兄弟子は毎日修行をさせてもらえない可哀そうな弟弟子を慰めるために教えたようだ。
    方法を教わってもその術を使えるようになるには最低でも三年はかかる。使えるようになれば師匠もきっと認めてくれるだろうと話してくれた。
    しかし、まさか話してからわずか四カ月以内に式神を手にするとは思ってもいなかっただろう。


    「可笑しかったぜぇ、あの人や師匠様の唖然とした顔! お前にも見せたかったよ」
    「…………き、霧彦、さん」
    「ん?」
    「も、も、もしか、して、ぼ、僕に、僕に式神の術を……」
    「ああ、教えてやるよ」


     琥珀丸はあまりの嬉しさに飛び上がりそうになった。もう感激で天に召されてしまってもいい気分だ!
    良かった良かったああ本当に良かった! 神様はちゃんと自分を見ていてくれていたのだ! きっと毎日汗水流して頑張って来たご褒美なのだろうこれは。
    天才陰陽師と呼ばれる兄弟子から、しかもいきなり式神の術を教わることになろうとは! 幸せすぎて何だか怖い!
    霧彦のように早く習得するのはまず無理だろう。しかし、もしこの術を使って己の力で式神を手に入れることができれば、きっと師匠は陰陽師の勉強や修行をさせてくれるに違いない。
    そしたらいずれ夢だった立派な陰陽師になれる日は近い。今まで心配をかけてきた故郷の両親にいい知らせができそうだ。

     色々と妄想が頭の中に膨らんで、しばしの間現実から離れてしまっている弟弟子を霧彦はあきれた目で見つめ、軽く咳払いをして妄想から引き戻そうとする。
    はっ! としてしばらく現実離れをしていた自分が急に恥ずかしくなり、感激の興奮を少し残したまま慌てて兄弟子へ顔を向ける。


    「だが、その前に話しておくことがある」


     へ? と間抜けな声を漏らしてしまう。舞い上がりそうなまでにあった喜びはプシューと音を立てて一気にしぼんでしまった。
    はて話とはなんだろうかと話を聞く体制を整える。今この時は自分と彼は兄弟弟子ではなく教師と生徒の関係なのだ。失礼があってはならない。




    「唐突だが、琥珀。お前さ、梅姫のこと好きか?」
    「………………へ? え? ほにぇっ!?」




     一瞬言葉の意味が理解できなかった。だがすぐにその意味を理解してしまい思わず奇声をあげてしまう。
    何故か顔の温度がどんどん熱くなっていくのを感じ、無意識のうちに両手で顔を覆い隠した。何やっているんだ自分はこれじゃまるで女の子じゃないか!!


    「な、なななな何を聞くんですかいきなりぃ!!」
    「へぇー。そんなに取り乱れるってことは、やっぱ好きなのかぁ? 姫のこと」
    「ちょ、ちょ、ちょっとまってくりゃひゃいよああもうなにきくんれふかにりふぃこひゃんろうろつにひょひょろあありまふようみぇひめがふきなんれひょんなうあああああああやみぇれくりゃひゃいあああああああああああありぇんりぇんひょんにゃこひょありましぇんかりゃあああああああああああああ」
    「……うん。琥珀。とりあえず落ち着け。取り乱れすぎ。そうか。ここまで混乱するほど好きなのか。そうかそうか」
    「にゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


     頭が混乱しすぎてうまく舌が回らず、自分でも何を言っているのか分からない。あれおかしいな、自分は確か日本語しか喋れないはずなのにいつの間にこんな奇妙な言葉を覚えたんだ?
    ああもう止めてええええええええええええええ!! それ以上追及しないでお願いだからああああああああああああああああああああああ!!



     さて、この少年をここまで混乱させている梅姫とはいったい誰なのかというと、実は琥珀丸がひそかに思いを寄せている美しい姫君のことである。

     梅姫はその名の通り桜よりも先にその白くて可愛らしい花を咲かせ、春の訪れを告げる梅の花がよく似合う可憐な少女であり、祖父に上流貴族を持ち、その祖父が琥珀丸たちの師匠と古い友人なのだそうだ。
    前に一度祖父とこの屋敷へ訪れた際、琥珀丸は一目でその麗しき少女に心を奪われてしまった。
    運がいい事にあるきっかけで琥珀丸は梅代姫と話すことができた。実際に言葉を交わしてみると、やはり貴族の娘らしく淑やかで上品な人だと思った。
    気品ある言葉遣いに優雅な立ち振る舞い。そして桃色の唇から発せられるその声は鈴の音を思われる透き通った綺麗な声はより一層彼女を美しくさせていた。
    梅の花が刺繍されている薄紅色の着物が良く似合っていると言ったら、普通の女の子のように頬を少し赤らめ、嬉しそうだけど少し照れくさそうに微笑んだ。あの微笑みはまさに梅の化身。または花の精と呼ぶにふさわしい可愛らしさだ。
    こんなに愛くるしい笑顔をされたらまず惚れない男はいないだろうと本気で思ったくらい見惚れてしまった。可愛すぎるにも程がある。
    そして彼女はとても優しくて思いやりのある性格で、今飼っている妖の小判猫のサクラは、傷を負って自宅である屋敷の前に倒れていたのだという。
    祖父や屋敷の使用人たちは妖であるという理由で陰陽師に処分してもらおうとしたが、梅代姫がそれを泣きながら止め、自分が世話をして面倒をみるという条件で愛玩動物として屋敷で飼うことを許されたのだという。
    なんて優しい人なのだろう。もし彼女が貴族でなかったとしても、きっと将来この人の伴侶となれた男は幸せな生活を送れるに違いない。

     それから幾度か話していくうちに梅姫と琥珀丸は親しき友人の中となり、月に一度お互いに文を送りあっている。他の弟子たちは琥珀丸をよく羨ましがる。
    しかし、琥珀丸は淡い思いを募らせる一方で未だに自分のその思いを伝えられずにいた。
    どんなに思い焦がれていても相手は貴族の娘。平民である自分。例え気持ちが伝わっても梅姫と結ばれることは永遠にない。そう思うと胸が苦しくなり、ならばいっその事友人のままでいる方がいいと考えていた。
    陰陽師の勉強もさせてもらえない駄目な自分と結ばれるより、もっとカッコ良くて素敵な男と結ばれた方が梅姫にとっても幸せなことだ。



    「とにかく落ち着け。深呼吸しろ深呼吸」


     そう霧彦に促され、ゆっくり空気をたくさん吸い込み、そしてゆっくり吐き出す。またゆっくり吸いこみ、ゆっくり吐き出す。そうした呼吸を何度か繰り返すうち、次第に冷静さを取り戻す。


    「はい……、とりあえずおちつきました……」
    「うむ。よろしい。ではさっきのことは置いといて本題に入る。確か梅姫は三月後が誕生日だったよな?」
    「はい……」
    「よし、俺が聞いた情報では梅姫はその誕生日に丁子の村に出かけるらしい」


     丁子の村。その名を聞いた瞬間、琥珀丸は心の臓が止まりそうになり冬の風にあおられたような寒気に襲われた。


    「ちょ、丁子の村!? あの怒りの湖のある!?」
    「そうだ。梅姫は怒りの湖を見たいらしいぞ」
    「そ、そんな……。だって、あそこは水妖の中でも凶悪で一度暴れ始めたら惨事は免れないと言われる竜鯉が棲んでいるんじゃ!」


     竜鯉とは、この屋敷の池にもいる赤い鯉の妖が一転、青い竜へと姿を変えた妖であり、鯉であったときは跳ねることしかできない最も弱い妖だったが、それとは正反対にその怒りに触れたら最後、村や町の一つを消滅させてしまうといわれるほどの強大な力を持つ妖である。
    丁子の村の北にある「怒りの湖」は、その竜鯉が暴れまわって生まれた湖であるとの言い伝えがあり、別名「竜鯉湖」と呼ばれる。


    「ああ。性格は極めて凶暴で俺ら人間が戦を始めると姿を現し、辺り一面を焼け野原へと変えてしまう最強の水妖。竜鯉。おっかない奴さ。でも滅多に人前に現れないから気を付けてさえいれば大丈夫だと師匠が判断したみたいだぜ」


     この時初めて琥珀丸は師匠を呪った。
    そんな判断をするなぁ!! 何を考えているんだあの爺さん!! 滅多に現れないってもし現れたら危険すぎるだろうがあああ!!


    「んまぁ、一応念のために何人か陰陽師をお供っていうか護衛につけるってさ。実は俺もその護衛の一人だったり♪」
    「それはだいたい予想してました。というより、お師匠様何勝手にそんな判断してんですかぁ! 姫の身に何かあったらどうするつもりですかぁー!!」


     大切な人が危険な場所に旅行気分で行く。そんなことを聞いて冷静にいられる人物がいたらぜひお目にかかりたい。
    これで何度目になるだろうか。再び頭に血が上って、思わず霧彦に当たり散らしてしまう。
    もっと怒鳴りつけるつもりで口を開きかけていたが、彼の隣のカマキリが両腕の刃を構えてこちらを鬼の形相で睨んできたので、あまりの気迫に恐怖を感じ、口を閉じる。そしてそのことに霧彦は全く気付いていない。


    「俺に言われてもだぜそりゃ。ん、んんっ。話を戻す。で、師匠は俺を含めた優秀な弟子だけをつけようとしたが、心して聞け。実は、梅姫がさ、お前も一緒は駄目かって師匠に聞いたんだってよ!」
    「へぇ、そうですか。でもお師匠様は僕を入れることなんてなさらないでしょうね。だって僕はまだ………………」


     カマキリの事に気を取られていたので反応が遅れてしまった。そして言いかけてからはっ! と気づく。
    え、何この人今何て言ったの。


    「え? き、霧彦さん? 今、なんて仰いました? 姫が、梅姫が、僕を? じょ、冗談や、止めてくださいよ!! いい加減にして下さいからかうのは!!」
    「冗談言ってねーしからかってもねーよ。マジな話だぜ」


     頭の中が瞬く間に何も見えないほど濃い霧の中へと迷い込んでしまったかのように白一色に塗りつぶされていく。それとは反対に顔だけでなく頭の温度がどんどん上昇していく。きっと自分の頭から湯気が出ているに違いないと思ったくらい頭が暑かった。
    それはつまり、梅姫は琥珀丸とともに丁子の村へ行きたいということなのだろう。


    「そんな、姫が、僕を、う、わ、どうしよぉ……」
    「良かったなぁ琥珀。梅姫直々のご指名だぜ。羨ましいぜあんな美人と名高い姫君に気に入られててさ!」
    「止めてください!!」


     もう付き合っちまえばという霧彦のからかいにますます顔が暑くなってくる。いい加減にしてもう本当に。
    琥珀丸の頭の中は照れ臭さと恥ずかしさでいっぱいだった。今まで梅姫とあっていたのはこの屋敷の敷地内だけで、外に出かけることなんて殆どなかった。姫と一緒に旅行ができるなんてまるで夢のような話。心の臓の鼓動が大きく動いているのが分かるくらい嬉しかった。

     しかし、その喜びを断ち切るように霧彦は淡々と話しを再開する。


    「でさ、また話し戻すけどさ、このボングリやるからもし一緒に丁子に行けることになったらお前姫の護衛ついでに妖を一匹捕まえてこい」
    「はいぃ!?」


     意味が全く分からなかった。


    「待ってください。ちょっと待ってください。とりあえず、今言ったことを分かりやすく、かつ正確にきちんと僕に理解できるよう説明してくださいお願いですから」
    「説明って今言っただろ」
    「だぁーかぁーらぁ!!」


     なんか今日はこの人に振り回されっぱなしだ。そう思いつつもこうして霧彦に式神の術を教わることになった琥珀丸であった。





         ◇  後 書  ◇


    はじめましてリョウナというものです。

    初投稿なんですか、なんか色々とすみませんorz
    こうして小説を長々と書くのも投稿するのもはじめてなものでして、なんか結構グダグダ文になってしまって申し訳ないです(T_T)
    やっぱり素晴らしい小説を書いてらっしゃる管理人様や他の皆様方には敵いませんね(^^ゞ
    でも自分なりに一生懸命書きましたし、誤字脱字さらにはなんじゃこりゃwとかいみふwな訳分からん所があっても皆様の広くて温かい心で許しt(殴

    さて、ここで登場した妖がどのポケモンなのか分かりやすいようにちょっと補足を入れます。
     闇鴉=ヤミカラス  そのままです(爆
     水鼠=マリル
     お玉じゃくし=オタマr……すいません嘘ですニョロモですごめんなさい。
     赤い鯉=コイキング
     カマキリ=ストライク
     小判猫=ニャース  これまたそのままでs(いい加減にしろ
     竜鯉=ギャラドス  中国の伝説の生き物だそうです。読みは「りょうり」です。料理ではありません。

    陰陽師とかそういうのが大好きで、そういえばポケモントレーナーとポケモンって日本の陰陽師と式神みたいだなと思って書いてみました。
    エンジュシティは京都がモデルなので舞台はジョウトなのですが、できればBWの新ポケモンも出したかったです(´Д`;)
    でも調べてみたらなんとイッシュ地方はまさかのアメリカニューヨーク州がモデルという衝撃の事実。
    他の地域からやってきた旅人がイッシュのポケモンを連れているという設定にしようかと思ってたのに、遠すぎるということで断念しましたorz

    また近いうちに続きを載せようと思っています。兄弟子の霧彦さんに振り回されっぱなしの琥珀丸君は次回で一体どうなってしまうのでしょうか。
    ここまで読んで下さって本当に感謝しています! ありがとうございました!(^∀^)ノシ




    【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】【評価していいのよ】


      [No.892] すべてはその一言から 投稿者:兎翔   投稿日:2010/10/31(Sun) 07:16:27     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    毎日伸びていくスレに驚きが隠せない当事者です。

    もし鳩さんがその一言をコメントして下さっていなかったら、きっとこんなことにはなっていなかったでしょうね(笑)
    書いてみたの書き手様含め、本当にありがとうございます!

    まさか私も書いたときにはこんなことになろうとは思ってもみませんでした。
    毎日のように馳せ参じてくれる救助隊の皆様を、すごくワクワクしながら読ませていただいてますw

    これは是非私も何かストーリーに参加を……。
    いずれ、書き手の方お一人ずつ返信をさせていただきますね。

    とりあえず、私は
    【大丈夫だ、問題ない】
    【一番いいアーカイヴを頼む】
    →私の意見だけじゃなく、書き手様方の意見もお聞きしたいです。

    【もっとかき乱していいのよ】
    【もっと救助してもいいのよ】


      [No.891] 進まない【どろどろ】 投稿者:てこ   投稿日:2010/10/31(Sun) 02:21:47     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     崖が崩れはじめる。俺よりも上の方にいたフーディンが、足を取られ、転ぶのが見えた。
    「だああぁぁぁっ!」
     渾身の力を振り絞りフーディンの体を受け止める。重いなぁぁぁ!!ちくしょううぅぅ!!この頭でっかちいぃぃ!足を泥に沈ませ、何とか転ばずに耐える。つもりだった。
     かかとがわに草か何かがまきつき、重心が一気に後ろに傾くのを感じた。視界が上へと向いた。空が見えた。
    「うぐっ!」
     そのときだった。背中が弓なりに反る。人生で一番、背骨が反ったとか思った。その背骨の反った形のまま、俺の体は静止した。きうぅ。小さな声がした。俺の背中を後ろからぎゅうぎゅう押しているのは、いつの間に出てきていたムウマージだった。サイコキネシスの光が、ゆっくりと俺とフーディンを包み込む。指の先、足の先までが紫の光に包まれている。
     けれど、いつもより、弱い。普段の彼女ならもっと強い力を出せるはずだが、体力のない今、長くは持たない。
     時間はない。目の前には、フーディンの頭がある。――やるしかない。俺たちがどうなろうとも、これをやるほか、ない。大きく深呼吸をして、唾を飲み込む。フーディンの耳に届くよう、わずかに顔の向きを変え、俺は言った。
     
    「フーディン……頼む!」


     ――黄金色に輝く二本のスプーンが、大きく折れ曲がった。


     土砂は崩れない。木も倒れない。その場所で止まってしまっている。否、止められている。時間が止まってしまったかのように、泥も木も動かない。
     突然の状況に戸惑っている彼らに俺は傾いた姿勢のまま叫んだ。フーディンのサイコキネシスの力で、土砂や木々の動きを止めている。
    「行ってくれ!はやく、ここから逃げてくれ!」
     俺とムウマージがフーディンを支え続けなければ、あっという間に土砂は流れ出すだろう。だから、俺は逃げられない。
     ――フーディンの力が切れたら?
     考えたくもない。

     トレーナーは苦い顔をしていた。彼の隣で、彼のポケモンであるリオルが一生懸命に彼の手を引っ張っている。彼の拳が、白くなる見えるほどにきつく握り締められていた。彼のポケモン達も、同じ表情をしていた。けれど、すぐに彼らはずぐに身体を翻し、走って行った。 こういうとき、レンジャーはどうしなければならないか。彼はわかっている。レンジャーの鉄則。より多くを助けられる道を選べ。もし、俺が彼だったら、ああいうふうにできただろうか。ぐずぐずして、困らせそうな気がする。もし、そんな機会があったら俺もあの人のように振舞うようにしよう。――あれば、だけど。
     アブソルとリーフィアが道の先導をしている。まぶしい光を放つルカリオの波動弾が藪や木々を吹き飛ばす。
     
     地面が動きはじめる。

    「もう少しだ、フーディン!」
     フーディンが苦しそうに唸る。いくら、強い超能力を持ったポケモンだとは言え、これだけ多くの物体を一度に操るのは簡単なことではない。だが――

     まだ近い。この土砂崩れの規模は分からないが、ひどい場合には広範囲にわたる場合もある。彼らを巻き込まぬよう、少しでも時間を稼がなければ。
     俺も全身に力を入れる。超能力はないけれど、やれることをやるしかないのだ。
    「ムウマージ、フーディン!力の出し惜しみなぞするなよおぉ!もし、力が切れて土砂に飲み込まれたって必ず死ぬわけじゃないんやぞおぉ!!死ぬかもしれんが、そんなことは考えるな!!」
     体の筋肉が悲鳴を上げているような気がする。いや、サイコキネシスで支えられているはずなのだから、体に負担がかかるはずはないのだ。ムウマージの力が、弱く、なってきている。

     地面が滑る。パラパラと小さな小枝が顔に降りかかってくる。力を入れて無理やりに木の棒を折ったような、軋んだ音が耳に届く。そして、一気に、滑り落ち始めた――。


     もう、無事に逃げ終わったか――?


     泥が視界を覆い隠していく。フーディンにまわした腕に力をこめ、背中側に手をまわしてムウマージを抱き寄せる。体が浮いた。自分を支えるものは、もう一つもない。あとは、落下をしていくのみ――。

     あ――。

     一瞬ではあったが、何か輝くものが見えたのだ。それは光を纏った猫のような形をした、何か。未確認生物カーバンクルのような、額の赤が光っていた。そして、その後ろから古代の翼竜が流れ落ちる土砂をその身体に受け、勢いを止めた。そこまでしか、見えなかった。直後、体の右側に強い痛みを感じ、頭を打った。激しい頭痛が徐々に消えていくよう。そこで、意識が切れた。 


    ――――


     痛い。身体中が痛い。
    「ん……?」
     痛い?
    「痛いということは……つまり、俺は生きている!」
     腕の中のムウマージとフーディンが嬉しそうに微かに鳴く声が聞こえた。俺は二匹をぎゅっと抱きしめた。温かい。動いている。息をしている。俺達は、まだ、生きている。何だか目頭が熱くなって、頬に温かいものが零れた。嗚咽が、漏れる。死を覚悟はしているけれど、死ななくて良かった。本当に良かった。
     けれど、そう。まだ、仕事は終わっていない。喜ぶのは帰ってからにしないといけない。両手で、顔をこすり、涙を拭きとった。二、三度叩いて、気持ちを入れ替えてようやく体を起こした。体の上に降り積もった土や落ち葉が落ちる。全身、泥だらけ。腰のモンスターボールを確認する。きちんと三つある。そのうちの一つがぐらぐら揺れている。が出せない。こいつはあまりにも血の気が多すぎて、トラブルをよく起こしがち、すなわちトラブルメーカーである。だから、自分で出てこられないようなモンスターボールに入れてあった。まぁ、今でてきたいという気持ちは分からなくもないが、お前は駄目だ。
     ムウマージは抱きしめていたおかげでそこまで負傷はしなかったようだ。フーディンのほうは若干、傷が目立つが……まぁ、だいじょうぶだ。こいつなら。俺の身体も痛みはするが、骨折したり、大量出血はしていない。不幸中の幸い、か。
    「フーディン、ムウマージ。緊急事態のアレ、頼む」
     合点承知之助だい!とばかりに、フーディンがスプーンを前にかざす。あれだけ、崖を転がり落ちたと言うのに、こいつはスプーンを手放さなかったのだ。見上げた根性である。ある意味。フーディンがじこさいせいをし、それにムウマージがぴったりとくっついていたみわけをする。そうすれば、ある程度までは体力を回復できる。

     俺はぼんやりと崖へと目を向けた。まだ、頭がぼうっとして記憶が曖昧だ。一つ、一つ、何が起きたかを思い出していく。
     そうだ、輝く猫のようなポケモン。あれはエーフィだ。恐らく、がけ崩れの被害を緩和してくれたのだろう。きっと、フーディンの力だけじゃ、俺たちは今生きていなかったと思う。土砂に埋もれて、死んでいたか、もしくはあの少年のようになっていたと思う。命の恩人、いや恩ポケモン。誰の、ポケモンだったのだろうか。

     ムウマージが俺の体にぴったりと張り付く。いたみわけ。
    「ん……あと、あれ。なんだっけ。エーフィだけじゃなくて、えーっと……」

    「――休んでおけ、ロー」
     古代の翼竜――アーケオロスが赤い光となって消えた。泥まみれの俺を一瞥もせず、前をすたすた歩いていったのは赤い女性だった。その女性の顔は一瞬しか、見えなかったが、どこか、危うさを感じた。その人が凶悪とか、怖いとかそんなんじゃない。冷淡な顔に、鋭い眼光、低い声。だが、その奥に重いものを秘めているような気がした。あふれ出してしまいそうなほど、重いものを必死に秘めているような、そんな危うさ――だった。

    「大丈夫か!」
     レンジャー達が走ってくる。怪我はなさそうだ。少年も、無事なようである。
    「大丈夫です!重傷ありません!」
     何とか立ち上がる。うん。フーディンとムウマージのおかげで、大分痛みが引いた。
    「あの人は……?」
     青年のレンジャーが顔をしかめて、彼女を見る。
    「あぁ、なんか助けてくれたみたい、です」

    「あ……あなたは?」
     赤い彼女が振り向いた。風が巻き起こり、雷が近くに落ちた。木の葉が舞い上がり、彼女の赤い髪も舞う。
     そんな中、彼女は一切動かずに、ただ平然と直立していた――。





     
    【続けていいのよ】
    【むしろ、続けて欲しいのよ】


    きとかげさんの彼女さんと、海星さんのエーフィお借りしました。イメージ違ったらごめんなさい。
    救助隊は次号で!(すみません

    みんな、救助頼んだ!

    きとかげさんのアーケオロスをプテラと書いていました。化石=鳥=プテラ の考えはもう古いのかっ


      [No.890] Re: なんかトトロ思い出した 投稿者:   投稿日:2010/10/31(Sun) 01:16:37     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    パソコンの調子が悪かったせいで、返信が遅れてしまい申し訳ありませんでした(あれ? 2回目だ

    感想ありがとうございます。

    >こんなのに会えるなら、雨もいいなぁ。
    >カゲボウズとか傘に入ってこないかしら。

    雨の日って気分がブルーになる時もあるけど、どこか不思議な雰囲気もありますよね。といいながら小雨に打たれてしょっちゅう風邪をひく自分(笑
    でも確かにカゲボウズが入ってきたらいいですよね。
    本当に入ってきたら即お持ち帰りするけどね!(←

    >狐が嫁入りするときに晴れているのに雨が降るといいます。
    >案外そんな感じなのかも。
    >雨自体も狐の幻術かなにかでだまされているのかもわかりません。

    な、なるほど……! 自分で書いていたのにそういう視点に気付きませんでした(おい
    というか、そう考えなければ矛盾だらけですもんね、この話(笑

    感想、ありがとうございました!


      [No.889] Re: まとめ更新しました。 投稿者:   投稿日:2010/10/31(Sun) 00:56:37     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    パソコンの調子が悪かったせいで、返信遅れてしまいまして申し訳ございませんでした(汗

    まとめ更新ありがとうございました。
    全然問題ありませんよ! むしろ掲載していただいてもらって感激です!
    それでは、本当にありがとうございました。


      [No.888] Trick or Treat for U ★ 投稿者:巳佑   投稿日:2010/10/31(Sun) 00:00:14     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    あるときには相手の傷を癒してあげて、
    あるときには相手に傷を与える。
    ポケモンの技『プレゼント』は
    毎年10月31日だけハロウィン仕様に変わります。
    あるときにはおいしいお菓子がたんまりと、
    あるときにはイタズラを与える、
    『プレゼント』に変わります。
    ちなみに中身はランダムで、
    『プレゼント』をする本人自身も開けてみてのお楽しみなのです。

    カボチャやキャンドルなどの飾り物が
    街をハロウィン一色に染めている中で、
    一匹の鳥ポケモン――デリバードが姿を現しました。
    どうやらハロウィン衣装用の
    漆黒のマントを装備しているようです。
    そのマントに映える、デリバードの商売道具である
    『プレゼント』が詰まった白い袋が忙しそうに揺れています。


    「Trick or Treat for U ★」
    デリバードがピカチュウに『プレゼント』を渡しました。
    ロトムのマークがプリントされてあるオレンジ色の箱です。
    いきなりでビックリしながらも、
    ピカチュウはドキドキを胸に乗せて
    『プレゼント』の箱を開けます。
    「わぁ! これはモーモーミルク・クッキーだぁ!
     あっ、こっちにはモモン・キャンディがあるぞぉ!」
    どうやらピカチュウは『アタリ』を引いたようです。
    満面な笑みを浮かべるピカチュウに微笑みながら
    デリバードはその場から立ち去りました。
    「よいハロウィンを★」


    「Trick or Treat for U ★」
    デリバードが今度はニャースに『プレゼント』を渡しました。
    ジュペッタのマークがプリントされてある紫色の箱です。
    いきなりで一瞬、目をパチクリさせながらも、
    すぐにニャースはワクワクを胸に乗せて
    『プレゼント』の箱を開けます。
    すると……。
    なんとも可愛らしい殴打音が。
    同時にクエスチョンマークをたっぷり乗せたニャースの悲鳴が。
    ……ニャースはそのまま倒れてしまいました。
    地面に落ちた箱からは
    エビワラーのパンチグローブのようなモノを先端に装備したバネが
    腹を抱えて笑っているかのように揺れていました。
    ……あらら。
    どうやらニャースは『ハズレ』を引いてしまったようですね。
    強制的に夢の中に連行されてしまったニャースに
    微笑みながらデリバードは立ち去りました。
    「よいハロウィンを★」


    「Trick or Treat for U ★」
    おや?
    どうやらデリバードが
    アナタにも『プレゼント』を渡してくれるようです!!
    しかも二つの箱の内、どちらか一つを選ばせてくれるようですよ!
    一つは
    ゲンガーのマークがプリントされてある『赤い箱』
    もう一つは
    ヨノワールのマークがプリントされてある『青い箱』
    さぁ、
    どちらを選びますか?
               ・
               ・
         (ぜひ、選んでみてください!)        
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・           
    アナタはヨノワールのマークがプリントされてある『青い箱』を選びましたね?
    それでは開けてみましょう!
    …………。
    星が弾けるような音とともにピジョンが飛び出してきました!
    ピジョンの頭に思いっきり顔をぶつけてしまったアナタは……。
    …………。
    強制的に夢の中にご案内されてしまいました。
    秋の夜長の空に飛び去っていくピジョンに
    デリバードは手を振りながら、
    「ありがとぉー! 今度、バイト代、払うからねぇー!!」
    と、感謝の言葉を送っていました。
    ピジョンがソレに応えたかのように、
    ピジョンの羽が一枚、
    月に照らされながらキラキラと夜空を舞っていました。
    「よいハロウィンを★」
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
               ・
    アナタはゲンガーのマークがプリントされてある『赤い箱』を選びましたね?
    うふふ。実は私もちゃっかり『赤い箱』の『プレゼント』をいただいたのですよ。
    さっそく、開けて見ましょう!
    …………。
    こ、これは! お菓子がたくさん入っていますよ!
    サイコソーダ味のグミに……ラッキーの卵プリンなどが入っていますよ!
    おや?
    こっちには桃色のプリンが……?
    「ぷーぷりん♪ ぷーぷりん♪ ぷーーぷりん♪
     ぷーぷりんぷー♪ ぷーぷりんぷー♪」
    これはポケモンのプリンの唄付きの『アタリ』ですか!
    うーん、実に心地よい唄ですね……。
    ……。
    ……あ、あれ……?
    …………なんだか……。
    ………………眠く…………なっ……て……き……て……。
    …………スゥー……スゥー…………むにゃむにゃ…………。


    「よいハロウィンを★」
               ・
               ・ 
               ・
               ・
               ・
               ・
    『プレゼント』に乗って届く『Trick or Treat』
    デリバードがアナタにハロウィンの魔法を『プレゼント』

    「君の心にも届いたかな?」

    「よいハロウィンを★」




    [書いてみました]
    甘いお菓子やイタズラの代わりにこの物語を届けられたでしょうか?(汗)
    ちょっとした遊び心が皆様の心に届きますようにと願いながら、
    この『プレゼント』を贈ります。 
    よいハロウィンを★

    ちなみに『U』は『you』にかかっています。
    念の為、書いておきますね。

    ありがとうございました。


      [No.887] 応募2作品目、登場。 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/30(Sat) 11:22:19     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    応募2作品目来ました!
    今度は7300字程度。
    最初の相棒との出会いを描いた作品になります。

    URL:
    http://masapoke.sakura.ne.jp/pokemonstory-contest-01-002.html


      [No.886] Re: 鬼始末 投稿者:クーウィ   投稿日:2010/10/30(Sat) 04:08:16     230clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どうもです、No.17さん。  コメントありがとう御座いますです。

    ・・あれですな・・・近頃皆さんがお書きになられている様々な作品を拝見させて頂いているお陰で、この大根のミイラが詰まった頭を戴いているやつがれも、不思議なぐらい作文意欲を刺激されて、今まで止まっていた幾つかの妄想話が、少しずつ進み始めて参りました。

    ・・・これもみな、作品を投稿なされておられる皆様方のお陰です。  ありがたや・・・
     
     
    > 読んでいて、蒙古襲来がモデルになっているのかな?
    > と思っていましたがやっぱりそうでしたか。

    やっぱりそうなのです。
    ・・まぁ元々このお話は、別のお話を構築している最中に、背景を固める過去の出来事の一環として思い付いた物ですので、捻りも何もありは致しません(爆)

    ですので、先ずは元にしているテーマを出来るだけ分かり易く伝えられる事に、重点を置いています。  ・・・残念ながら、やっぱり出来栄えの程は怪しいものですが(爆)   

     
    > 二晩でよくぞここまでの量を……!
    > クーウィさんて打鍵魔でいらっしゃるのね。フフフ

    お褒めの言葉を頂きながらも、残念な事に・・・元々このお話は、5割弱ぐらいは出来てたんですよ・・(爆)
    ですので、実際に二晩かけて打ち込めた量は、たったの半分程度なんです・・・

    元々書き始めた当初から、構想は既に完全に纏まっておったのですが・・・いざ書き始めると、国語能力の貧しさと文才の乏しさ故に、すぐにドン詰まりになりがちで・・・
    それで半分近く書いた時点で、半年近くお蔵入りとなってました(爆)

    ・・・こんな感じで書き途上で放置されているのが、メモ帳の中で怨念を伴って溜まっている状態ですね(苦笑)


    > 実際の蒙古も嵐がきっかけで撤退しますが、
    > そことポケモンをうまくあわせたなぁ、と。

    どちらかと言うと、先にポケモンから入った感じですね。

    ルギアの図鑑説明に、『羽ばたくと40日間嵐が吹き荒れる』・・的なヤツがありましたので・・・
    「それじゃ仮に何処か行こうにも、空も飛べねぇじゃん」――とか思った所で、大まかなあらすじが浮かび上がりました。
     
     
    > それにしてもここの人達はカゲボウズとキュウコンと伝奇・歴史系好きですよねw

    自分もガチンコで大好きですよー!

    だからこそ、『豊縁昔語』や『野の火』なんかの作品が、頭から離れないんですから・・!

    ・・と言うか、実際昔にキュウコンが主人公でグダグダ語る形式のお話も、書いた覚えがありますし(苦笑)  ・・・だってあのポケモン、ネタにしやす過g(爆)
     
     
     
    個人的に文学的な題材としての『ポケモン』は、人と対比させるに当って非常に容易な形で、『自然』の擬人化として機能させる事が出来るものだと感じています。

    ・・故に、物語の中で『人』と言うものを浮き彫りにしようとした場合、普通は周囲の自然を描きこむ事によって、間接的に対比関係を強調せねばならないものですが・・・これがポケモン小説だと、最初から『人とは違う価値観を持った存在としての自然』が、『ポケモン』と言う明確な『個々の意思』を伴った形で描き出せるため、結果として『歴史』と言う、人の営みそれ自体を描くテーマに、生かしやすいのだと思います。

    ・・なんか、何言ってんのか分かりませんよね・・・  御免なさい。

    ・・まぁ一言で言えば、『ポケモン』と言うソース自体が、『人と自然との対比』、『人と歴史』と言うテーマを描写する能力に、非常に優れていると思うのですわ。  ・・・個人的にはですけども。


    > 【いいぞもっとやれ】

    まぁ時間がある時は、またきまぐれに頑張らせて頂きますよー

    ・・・とは言っても読み専の言う事ですから、当てにはしないでくださいね(笑)

    あくまで自分は気長にねちっこく、皆さんの作品を待ち受けて、読ませて頂く方が専門ですから。  ・・これだけは、絶対譲りませんぜっ!()


    ・・では。  ありがとう御座いました・・・!


      [No.885] おまえらときたら… 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/29(Fri) 23:42:16     66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > そ、そうだ!
    > だれか〔書いてみた〕で救出するんだ!(待

    なぁんてうっかり書いたのが10月26日。
    まさかこんなことになろうとは。

    【うまいこといった暁にはアーカイヴ掲載で、大丈夫か?】


      [No.884] 近づく危険 【勝手に応援に来たのよ】 投稿者:   《URL》   投稿日:2010/10/29(Fri) 23:08:21     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     強い雨。

     気象レーダーに映された黒い影は、ある時刻までは雲らしく動いていたが、山間のある位置まで来て急に止まった。
     まるで、そこで立ち止まらねばならない、何かがあるかのように。

     強い雨風が支配する空を、原色鮮やかな始祖鳥が飛んでいた。
     その背には、肩にバチュルを乗せ、黒い髪に赤いメッシュを入れた女性を乗せている。
     女性は目を閉じて、先程までテレビで見ていた天気図と、この辺りの地理を、まぶたの裏で重ね合わせていた。

     その目を開く。
     雨で視界は煙り、土砂崩れで地形が多少変わっていたが、目指す場所はそれと判別がついた。
    「ロー、あそこだ。降下してくれ」
     始祖鳥はケェーッと威勢よく鳴くと、彼女の指差す先へ、墜落に近い速度で、勢い良く降りていった。


     激しく岩にぶつかる音がして、始祖鳥が着地した。
     ことによれば二次災害が起こりそうな激しさだが、彼女は気にしない主義らしい。
    「ありがとう。今は戻ってくれ」
     水に弱いアーケオスのローをボールに戻し、周囲を確認する。
     テレビの言う通り、あちこちの斜面が崩れ落ち、茶色の土砂や木の根がさらけ出されていた。
     四十五度より急な山肌が、軒並み崩れたのではないかと思われる惨状。
     今立っている足場も、いつ崩れるや分からない。

     ……などど悠長に辺りを見回していたら、足場が流れ始めたではないか。
     すぐ隣に存在していた巨木が折れ、茶色い流れが彼女を押し流す方向に動き始めた。

     それでも彼女は眉一つ動かさず、
    「やれやれ、ってとこだな」
     さっきボールに戻したばかりのローを出そうとして、
    「おや」

     この雨の中、軽々と地を跳ね、駆ける、一匹のポケモンを見た。
     紫の体毛、大きな耳に、二又に分かれた尻尾。

     エーフィと呼ばれるポケモンはひらりと土砂崩れの中に身を踊らせた。
     倒れ始めた巨木を、エスパーの力で弾き飛ばす。
     そして岩石の陰の部分に飛び込むと、そこで虹色に光をばら撒く壁を展開した。

     展開されたリフレクターは、土色の脅威をその場に押しとどめた。
     元はポケモンの物理技の威力を半減させる技だが、こんな使い方もできるのか。
     女性が感心している間に、少しずつ、リフレクターが押されていく。

     やはり半減では辛いか、と呟いて、女性は手で弄んでいたボールのスイッチを押し込んだ。
    「もう一度頼む、ロー。地ならししてくれ」
     再び姿を現した原色の鳥が、雨を振り払うように大きく羽を打ち振るい、リフレクターと土砂崩れが押し合うその渦中に飛びこんだ。
     青と黄の翼を広げ、茶色の流れを押し戻すように動かし、その次の瞬間、体を大の字に広げて、流れる土砂をを地面に押し込めた。
     アーケオスの体が触れた部分とその周辺の土の動きが止まる。
     安心するのも束の間、次の土砂崩れがアーケオスに向かって流れ落ちてくる。

     猫又がローの前に飛び出した。額の紅い宝玉が光り、淡い壁を作り出す。
     ローは空に飛び上がると、壁の前に飛び出して土を左右に散らし、地ならしを繰り出す。

     何度か繰り返すうちに、流れる土砂がなくなったらしい。
     土砂崩れの勢いが削がれてきた。
     エーフィが身を翻し、岩陰へ走っていった。
     ローは安心したのか、大きく息をついた。

    「今のうちに休んでおけ、ロー」
     女性がかざしたボールに安堵の目を向けると、アーケオスは小さな光となって彼女の手元に戻った。

     水に弱い岩タイプのポケモンと言えど、雨が降るたびに死にかけるわけではない。
     とはいえ、強まる一方の異常な大雨の中で長時間活動するのは体に障る。

     この後に一戦控えているのだ。できるだけ良好なコンディションで挑みたい。
     どのようにバトルを組み立てるにしろ、その戦いではアーケオスのローの動きが鍵を握る。
     この地方に伝わる、大雨と大風、雷を呼び、作物を荒らすと言われるポケモン。
     どうしても、何としても倒したい。


     自分勝手な理由ではあった。
     相棒のゾロアの母親が、密猟者に奪われた。
     密猟者は山を越えて逃げた。
     彼らの起こした大雨で、山を越える唯一の道が崩れた。
     彼女は密猟者を逃がし、相棒の母の行方は未だ分からない。

     本当はただ、自分が愚かだったせいだ。
     警察だから、悪いやつはやっつけるというのも表向きの大義名分に過ぎない。
     それでも、自分勝手は百も承知で、彼女は風神、雷神と呼ばれる彼らに挑むつもりだった。


     ローの隣のボールがビクリと揺れて、中から紅いたてがみを持つ二足の獣人が出現した。
     獣人は自分もやると言うように、紅い爪のついた手を胸に当てた。

    「いいけど、無茶はするなよ。スー」

     相棒のゾロアークはコクリと頷き、先程ローがならした地面へと飛び降りた。
     続いて、彼女も地面へと降りる。

    「あ、……あなたは?」
     着地と同時に、後ろから声をかけられた。
     エーフィが走り回っていたから誰かいるのだろう、とは薄々感づいていた。
     ただ、いざ後ろを向いてみると、血の気のない少年を含め四人の人間がいたものだから、少しだけ驚いた。
     ポケモンも、どれが誰のポケモンかよく分からないが、多くいる。

     偶然居合わせたのか、助けに来て遭難したのか、彼女の知るところではなかったし、興味もなかった。

    「遭難したんじゃ……ないですよね?」
     そう尋ねてきた若いレンジャーに短く否定の言葉を返す。
    「日本晴れを使えるポケモンとか持って」
    「いないよ」
     もうひとりの、ウツボットを連れたレンジャーにそう答えながら、彼女はトロピウスの背に乗せられた少年をじっと見ていた。

     離れた位置からでは詳しい容態は分からないが、少年が喜ばしくない状況にあるのは分かる。
     一刻も早く、病院へ連れていかねばなるまい。
     しかし、トロピウスも、若い青年の傍に控えるチルタリスも、この雨風の中で十分な飛行能力を得られるポケモンではない。
     飛ぶのより走る方が得意な彼女のアーケオスもまた然り。


     やっぱり、倒すしか無い。
     この嵐の元凶を。


     彼女はレンジャーたちに背を向けると、ローとスー以外の三つのボールを投げた。
     それを見たレンジャーの少年が「何をする気ですか」と彼女に声をかけた。

    「野暮用だ。この雨を降らす奴らに用があってな」
    「風神と雷神か」
     寒さを堪えているのか、彼女の行動は馬鹿げていると言いたいのか、低い声で言ったのはチルタリスを従えた青年だった。
     レベルの高そうなチルタリスだ、と思う。

    「……さあな。私が遭難しても、助けに来なくていいぞ、レンジャー」
     そう言って、雨の中へ一歩進む。

     スーが雨を透かして一点を見つめている。
     危険を感じているのだろう、アブソルが吠え声を上げる。
     先のエーフィも立ち上がって、忍び寄る気配に細かな毛を震わせていた。


    「さて、と」
     彼女はポケモンを呼び寄せた。
     その場に膝をついて、比較的小さな彼女のポケモンたちに目線を合わせる。
     自分の心を落ち着けるように、ポケモンたちを順番に撫でた。

    「少し、状況が変わった。
     風神と雷神が来たら、全力で攻撃して、気を引いて。ここから引き離してくれ」
     四本の長く白い毛をもつ灰鼠が、小さく跳ねて敬礼のポーズを取った。
     つられるように、頭に花を掲げた少女のようなポケモンは胸に手を当て、薄紫のオコジョは片手を上げた。
     ありがとう、と言って立ち上がる。
     この場から引き離すことで、少しでも雨が弱まれば。
     目が合うと、相棒が大丈夫だと笑って頷いた。


     彼女は黙って、一歩進む。
     岩陰からは一歩離れ、雨はさらに冷たさを増す。

     急速に体が凍えていく。
     滝のように落ちる水で、辺りは暗く、閉ざされたように感じた。
     近くにいるはずのポケモンたちの温もりさえ、遠く感じる。
     けれど、まだだ。
     まだ、倒れるわけにはいかない。

     肩に乗せたバチュルが、フィフィフィ……と細い笛に似た音を立てた。
     危険が、もうそこまで迫っている。




    【書いちゃったのよ】
    【もっと救援に来ていいのよ】

    てこさんパートを読んで、どうしても救助に行きたくなりました。
    なのに、全然助けてくれなさそうな人でごめんなさい。
    もし風神雷神さまとあうことがあれば、彼女をこき使ってやってください。
    あと、サトチさんの救援を出せなくてごめんなさい。

    海星さんの派遣したエーフィをお借りしました。
    これで、土砂崩れは大丈夫なはず……!

    【また土砂災害起こしてもいいのよ】
    【バチュルかわいいのよ】

    (11/3追記)
    レンジャーさんたちを当然のようにお借りしてます。
    そして伸びていくスレにドキドキ……
    こっそり、彼女が美人に書かれてて嬉しいのよ、と言っておきます。


      [No.883] た て よ み w 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/29(Fri) 22:05:51     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    た、たいしたもんだ…
    てがかかったろうに。
    よくやったなぁ。
    みごとだ。
    すばらしい。
    げいじゅつだね。
    え? もっとうまく文章にしろって? うるさいな(笑)


      [No.882] Re: 鬼始末 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/29(Fri) 21:56:34     237clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    読んでいて、蒙古襲来がモデルになっているのかな?
    と思っていましたがやっぱりそうでしたか。
    二晩でよくぞここまでの量を……!
    クーウィさんて打鍵魔でいらっしゃるのね。フフフ

    実際の蒙古も嵐がきっかけで撤退しますが、
    そことポケモンをうまくあわせたなぁ、と。

    それにしてもここの人達はカゲボウズとキュウコンと伝奇・歴史系好きですよねw

    【いいぞもっとやれ】


      [No.881] Re: 秘伝和歌 返歌 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2010/10/29(Fri) 21:38:44     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    返歌ありがとうございます!

    このクオリティをわずか1日で仕上げるとは……しかも折り句までできている。表現の参考にさせてもらいますね。


    さて、「かいりき」の歌に取り掛かるかな。


      [No.880] Re: 語り部九尾 其ノ二 「鬼若」 投稿者:こはる   投稿日:2010/10/29(Fri) 20:51:40     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     わ、わわわわわっ。
     人の子、何度でも九尾様の御許に足を運びますとも!! まさか、催促が通るなどとは夢にも思わず、ちまちま書いていたりしてたのに! 歴史全般を好む私としては、いつの時代が来てもOKです。膝を揃えて、おとなしくお話をお聞きします。

     ……ちまちま書いていたの、載せてみてもよろしいですか?

    ◇◆◇◆◇◆

     語ることは生きることだとのたまう朋友がいた。ときおり、私のもとにまで足を運んでは、人間たちのことを語っていく。他の獣たちにも、語ってやるらしい。
     変わった九尾だと笑えば、八尾のほうが変わっていると笑い返された。寂しくはないかと訊いてみれば、寂しいのはおまえだろうと言い返される。
     飄々とした老狐のごときと思っても、興味心は子狐のままだ。千年も生きていそうだし、十年しか生きておらぬようにも思える。

     風はきな臭い。世は乱れはじめている。人の子が争いを始めている。
     なに、あの九尾は易々とは死なぬ。語るために生まれてきたような狐だ。此度の争いすら、後生に語り残すだろうさ。


      [No.879] 秘伝和歌 返歌 投稿者:桜桃子(サトチ)   投稿日:2010/10/29(Fri) 19:55:59     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    ―――老ストライクの一人静かに佇むを詠める

     今はただあらぶるあとぞいかめしき銀の刃は凛としづまる


      歌意:あちこちに残る古傷はかつての鬼神のごとき働きのなごりなのだろうか。
         今は静かにたたずむストライク、しかしその気魄はいまだ日本刀のような鋭さを失わず、古武士のような風格を漂わせている。



    ―――レンジャーを背に乗せ救援に飛びたたんとするチルタリスを詠める

     空荒れて雷雲厚く覆うとも疾き翼にて無事を運ばむ 


      歌意:悪天候を突き、救助のために力強く飛び立つレンジャーのチルタリス。
         その翼で主人を助け、遭難者の無事な便りを運んでほしいものだ。



    ―――滝を跳び越えんとするコイキングを詠める

     立ち向ふ厳しき滝を乗り越へし誉(ほまれ)得たれば龍と成りなむ


      歌意:急流に抗い滝を越えようとするコイキングよ、見事その試練に打ち勝ったならば、
         あの伝説の龍門の滝を越えた鯉のように龍となって天に舞うことだろう。




    ―――夕星の下家路を急ぐ幼子とプリンを詠める

     ふたりしてらくがきやめてつないだ手しぶしぶかえる夕暮れの道


      歌意:仲良く手をつないだ子どもとプリン。空に星が輝き始め、家々には明かりがともり始めたというのに、
         まだ遊び足りないのか、名残惜しそうに家へ帰っていく様子はまことに可愛らしい。








    ……ハイ? 確かにそれっぽい情景は詠まれているけど、ひでんわざの言葉自体は出てこない、ですと?
    ちゃーんと入っておりますよ、これこのとおり。



    いまはただ
    あらぶるあとぞ
    いかめしき
    ぎんのやいばは
    りんとしづまる

    そらあれて
    らいうんあつく
    おおうとも
    ときつばさにて
    ぶじをはこばむ

    たちむかふ
    きびしきたきを
    のりこへし
    ほまれえたれば
    りゅうとなりなむ

    ふたりして
    らくがきやめて
    つないだて
    しぶしぶかえる
    ゆうぐれのみち


    さあ、縦に読んでみよう!(^^)



    オリジナル度で遅れをとった分、技巧をこらしてみました(^^)。……昔は「フラッシュ」もひでんわざだったんだ〜い(^^;)
    実はあつあつおでんさんの「いあいぎり・・・」の句が縦に「い」と「あ」と「い」が入ってたのでやってみようと思いついたり。


    【いろいろやっていいのよ】


      [No.878] 語り部九尾 其ノ二 「鬼若」 投稿者:NOAH   投稿日:2010/10/29(Fri) 18:17:26     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    おや人の子、またこの九尾の話を聞きに来たのかい?
    ならば話そう、これはある豪傑の僧の話。

    その僧が生まれたのは城都はエンジュの地
    彼は赤子のはずだが、見目は数え年で2つか3つで、髪は肩を隠すほど長く、前歯と奥歯、共に既に生え揃っていたという。

    赤子の父はその姿を見た途端、「鬼子」と呼んで殺そうと思い立ったが、それは叔母に止められ、彼女が赤子に幼名を名付けた

    その赤子は「鬼若」と名付けられ、名付け親であった叔母に育てられたそうな。

    その「鬼若」だが、かなりの暴れん坊でな、エンジュの今は跡地のみとなった寺に入り僧となったが、乱暴が過ぎたために追い出され、播磨国はアサギの地へと赴いたが、そこでも問題を起こしてしまったのだ。

    アサギの地に、エンジュにある「焼け落ちた塔」に酷似した建物を見たことがあるか??それは「鬼若」によって炎上した堂塔の後でな、そこでも追い出された「鬼若」は、またエンジュの地に戻り、そこである悲願を立てた。

    その悲願とは。千本もの刀を集めるということであった。
    それから「鬼若」は、行商人から刀を奪い、帯刀の武者と決闘をし、ついには999の刀を集めた。

    そして「鬼若」は最後の一太刀を探し、ある大きな橋の上に辿りついた。

    その時の月は見事な眉月(三日月)であった。
    「鬼若」の姿を一目見ようと、我は橋の下に流るる小さな川岸から、こっそりと覗いていた。

    そして男が橋の上で人を待っておると、遠くから見事な笛の調べが聞こえてきたのだ。

    そして現れたのは見目15ほどの、女とも見てとれそうな男であった。

    そやつの腰に佩びた見事な太刀を一目見た「鬼若」は、その者と刀を巡り挑んで行った。

    しかし相手の男は笛を吹きながらひらりひらりと、まるで揚羽の如く舞い、橋の欄干を飛び交い「鬼若」翻弄しておった。

    「鬼若」もそやつの身軽さに負け、彼の千本の刀を集めるという悲願は後1つというところで叶わなかったが、それ以来「鬼若」は、その男に忠誠を尽くして、奪った刀をそのままに、共に宵闇に消えていったよ。

    うむ?その「鬼若」と相手の名を知りたいと??
    それならば教えてやろう、「鬼若」の名は武蔵坊弁慶
    そしてそやつの相手となった者は、幼名は「牛若丸」、名を源義経と言うのだ。

    あれから数十の時が経った頃、彼らの最後と思われる噂を幾つも聞いた。

    さすがの我も混乱するほどであった、豊縁の地よりもさらに西の地、もしくは深奥の地に逃げ延びたとも言われるが、我もあの橋の上の決闘以来、二人の姿は一度も見てはおらぬ、この狐をも騙す二人には、我も他の獣も関心しておったよ。


    +あとがき+

    こはるさんに催促はされましたが、私自身続きを書くつもりでいたのですらすらと書けました。

    今回は弁慶と義経の二人が出会った話を脚色しました。
    この二人は本当に有名ですからね、次は何時の時代のを書こうかしらね。

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】


      [No.877] 船鬼始末 投稿者:クーウィ   投稿日:2010/10/29(Fri) 16:17:11     262clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    注:このお話には、テーマがテーマだけに残酷な表現を用いている部分が、幾つか存在しています。

    ですので、そう言った表現に抵抗のある方は、この作品をご覧になる事は、予め御控えください――
     
     




    昔々のお話です。
     
     
     
    それは、或る年の秋頃――村々が今年の収穫を祝って執り行う祭りが無事に終わり、吹き鳴らす笛の音の余韻が、まだ里山から抜け切らぬ頃合の事でした。

    事の始まりは、秋津国は豊縁の地、ムロの島に於いて。 
    その日の朝、普段と変わらぬ夜明けを迎えようとしている島の沖合いに、突如として数をも知れぬ異形の船団が、水平線の彼方より現れました。

    見慣れぬ大船小船に乗り組んでいたのは、異国の鎧兜に身を固めた異人の兵士達と、屈強な船乗り達。  
    彼らは静々と島に近付くや、即座に獰猛な軍兵を満載した小船の群れを無数に発し、大挙してムロの島へと上陸すると、折からの変事に驚き騒ぐ住民達に、一斉に襲い掛かったのです。

    それは酷い有様でした。
    島を守ろうと戦いを挑んだ数少ない武者の一団は立ち所に全滅し、生きている者は人獣の区別もなく矢を射掛けられ、追い立てられます。
    辛うじて難を逃れようと舟に取り付いた者は、漕ぎ出した小船諸共打ち砕かれて波間に沈み、情けを乞うて膝を突き、頭を下げて捕まった者達も、一人として永らえた者はいませんでした。

    虜(とりこ)は必要な定数を除いて皆、男は刃物の試しとて撫で斬りにされ、女は慰み物にされ、老人は戯れに海に突き落とされ、幼子や獣達は遠矢や投げ槍の的に使われて、小さな島に静かに暮らしていた者達は、僅か3日にして全く絶えてしまいました。
    ・・・辛うじて逃げ延びることが出来た数少ない生き残りが、何とか海を越えてトウカの町に辿り着き、恐ろしい異国の軍勢が押し寄せて来た事を、在地の番所に告げたのみです。
     
     
    しかし、知らせを受けたトウカの町も、すぐに戦乱の巷となりました。  ・・・ムロを落とした異国船が、息もつかさずに豊縁本土に舵を切り、最も近かったトウカの町に向け、凄まじい勢いで殺到してきたからです。

    トウカの人々と土地の獣達とは、襲われたムロの有様を逃げ延びた者達から聞き知らされていた為、互いに協力し合い、必死になって戦いました。
    豊縁の他の地域に対しても救援を請い、加えて秋津国の時の支配者に対しても、助力を願う旨の急使を派遣して、何とか自分達の故郷と家族とを守ろうと、死力を尽くしたのです。

    ――この緊急事態に、幾度となく『赤』と『青』と言う二つの陣営に分かれて戦を繰り返して来たこの地の実力者達も、互いの間に長く蟠っていた確執を投げ捨て、共通の敵に対して立ち向かいました。

    ・・・しかし異国の軍勢は、守る豊縁連合軍よりも遥かに強大で、多勢でした。 
    しかも、彼らは豊縁の人々が見た事も無い様な武器や獣達を従えており、守る豊縁側の抵抗を物ともせずに、どんどん粉砕・制圧していきます。

    豊縁の人々と獣達は、見た事も無い異国の武器に散々に痛めつけられ、目にした事も無い獣達に追い立てられ、聞いたことも無い様な戦法に打ちのめされながら、なす術も無く自分達の故郷や家族達が蹂躙されて行くのを、ただ傷付いた身を隠し、息を潜めて見つめているしかありませんでした。
     
     
    ――けれどもそんな中、希望の光も見え始めていました。
    急を知った秋津国の支配者の号令により、他の地方から派遣されて来た救援の兵力が、次々とこの豊縁の地に、到着し始めていたからです――
     
     
     
     
     
    ――ここで一度、物語の舞台は豊縁を離れ、他の地方へと移ります。 
     
     
    豊縁より、ずっと東に位置する城都の地――その一角にあるタンバの町の周辺には、無数の島が点在しています。
    ――渦巻き島を始めとするそれらの島々を領していたのは、この周辺の海をまたに掛けて活躍する、警固衆―いわゆる、海賊達でした。
    彼らは古くから、船を自在に操って遠方の地に繰り出し、漁労や交易、時には略奪を繰り返しながら、諸国の海を渡り歩いて生計を立てていました。

    そんな海の専門家、警固衆達の中でも、タンバ北方地域の島々に根城を置く集団―『瀬戸衆』と呼ばれる一派の実力は、一際抜きん出たものでした。  ・・・何故なら、彼らは代々海の神―翼を持ち、渦巻き島の奥深くに棲むと言う大いなる獣を祭りつつ、その海神と心を通わせ合った術者を、集団の頭目として戴いていたからです。
    海の神の声を聞き、気持ちを通じ合わせる事によって、その助力を請う事の出来る人物―『風守(かざもり)』と呼ばれるその巫(かんなぎ)は、例えどれ程海が荒れようとも、率いている船数を一隻も損なう事無しに、嵐を乗り切って目的地へと導き通す事が可能でありました。

    この渦巻き島一帯では古より、稀に風のめぐりや潮の変わり目を生まれながらに正確に予知し、感じ取ることが出来る、『風読(かざよみ)』と呼ばれる特別な才能の持ち主が、現れる事がありました。
    ――その『風読』の中でも、特にその能力に長けた人物は、生まれながらにして獣と心を通わせる事が出来、更に長じるに従って、自然と渦巻き島に住まうと言う海の神とも、心が通じ合うようになっていきます。  

    彼らは海上で嵐にぶつかる時、予め不思議な通力によって、海の神からその存在を告げられますし、万が一逃れられなかった時にも、その助力を願えばたちどころに時化が和らぎ、船が嵐に飲み込まれる様な事は一切ありません。
    ――風の定めを曲げて、共に海で暮らす仲間達や、獣達を守る。  ・・・そしてまたその返礼として―または、代わってその意思を伝える良き友垣として―海風を司る海神を祭り、その生活の場でもある海を護る。

    これが、彼らが『風守』と呼ばれる所以でした。


     
    豊縁で厳しい戦が続いている一方、東に位置する城都の地では、時の支配者より豊縁地方に救援の遠征軍を派遣するよう号令が下り、その準備に追われている真っ最中でした。

    海から攻めて来た異国の兵団との戦いですから、当然戦いの中核となるのは、海上兵力―海の上での働きに慣れた、警固衆達です。
    そんな訳で、当代の風守に率いられていた瀬戸衆の精鋭達も、多聞に漏れず着実に戦備を整えて行き、やがて後は、出陣の命令を待つばかりとなりました。
     
     
    ・・・ところがしかし――その当時瀬戸衆の頭目として戴かれていた風守は、まだうら若い、一人の娘でありました。

    流石に急場とは申せども、当時はただでさえ武勇が尊ばれ、戦の作法が重んじられていた時代。
    よってまだ若い女性である彼女が、軍船に乗って出陣の勢に加わるというのは、如何にその存在が必要であろうとも、許される事ではありませんでした。

    けれども、娘がこれから戦いに赴こうとする者達の頭領であることも、また揺るぎの無い事実。
    故郷を離れていく軍船の群れを見守る彼女の心は、ただただ重苦しくなるばかりでした。

    出征する船には、娘とも縁の深い、沢山の人達が乗り組んでいました。  ・・・元より数こそ多かれど、小さな島々のこと。
    乗り組んでいる者達全員が、一度は娘と顔を合わせた事のある人々です。
    親戚縁者に、同じ村の人々。 幼馴染に、親しい友達。 祭りや神事の時に介添えをしてくれた人や、幼い彼女を何時も可愛がって、頭を撫でてくれた近所の小父。
    ――それに、既に将来を約束し終わっていた、掛け替えの無い思い人。

    船端に並んで手を振ってくれる彼らの姿が小さくなっていく中、残された人々と共に浜に並んで見送りつつ、娘は心から祈りました。
    ――彼らが再び無事に元気な姿で、この美しい平和な島まで、戻って来れるように、と・・・
     
     
      
    しかし――娘の願いは、それから3月も経った頃、無残にも打ち砕かれました。

    前夜、胸騒ぎが兆してろくに眠れぬままに夜明けを迎えた娘が、居ても立ってもいられずに、夜明けの海岸へと歩み出たところ――折から昇ってきた朝日に照らされ、美しく輝いている海の向こうから、一羽の小燕が息も絶え絶えに、島に向かってくるのが見えたのです。
    慌てて近くにあった小舟を丸木の梃子で海上に押し出し、艪を操り迎えに行った彼女の元に、小燕はよろめきながら飛び込んで来て、伝書を括り付けられた自らの足を突き出して、弱弱しく啼きました。

    しかし、先ずは岸につけてから、小燕を介抱してやる方が先決です。
    獣達の様子が、幼い頃より分かり過ぎるほどに分かる彼女には、小さな子燕の衰弱振りが、嫌と言うほど突き刺さっていたからです。  ・・・それに、無意識の内に文の内容を確かめることを、恐れていたのかも知れません。


    結局彼女が文を開いて見たのは、自分の住居に帰って、臨時の従者をしてくれている老婆に、伝書を運んできてくれた小燕を託した後でした。
    ――そして・・・畳まれた文を恐る恐る開き、中身を読み進めていった所――予想通り、それはまさしく凶報以外の、何物でもありませんでした。

    その余りの内容に、彼女は幾度も読み進める事を中断し、その度に涙に暮れました。
    ・・・取り乱ししゃくり上げる有様は、もし周りに他の者が居たとしても、真っ直ぐ彼女を見る事は出来なかったであろう程に、悲痛な悲しみに満ちていました。

    それは、この島から出陣していった幼馴染の一人からの走り書きで、出陣して行った軍船の、全滅を告げるものでした。

    彼らは幾度と無く戦果を上げて、敵の内陸への進行速度を大幅に抑制、以って異国の軍勢を海岸に釘付けにすると言う成果を上げておりましたが――  2日前に味方と共に夜襲を仕掛けたところ、逆に敵の罠に落ち、海に慣れぬ味方の軍船を逃がす為の殿戦を重ねる内に包囲され、尽く打ち沈められたと言うのです。
    ――その際、怨み重なる彼らに対する敵の攻撃と追及は苛烈を極め、一党はその大半が共に戦っていた獣達諸共討たれ死んで、討ち漏らされた者は二十が一にも満たない、と書かれておりました。

    ・・・もう、誰にも会えません。
    親戚の人々も、村の友達も死にました。 幼馴染達もこの世にはおらず、神事の時に周りで見守ってくれていた老人達も、言葉を交わすことは出来ません。 
    頭を優しく撫でてくれた小父さんは、生きながら捕らえられて拷問された挙句、掌に穴を空けられて船端に吊るされ、苦しみ抜いて亡くなりました。

    ――それに、ずっと従者として幼い頃から一緒に過ごし、海に出るときは艪を握って、彼女を何処まででも連れて行ってくれた大切な思い人も、もう帰っては来ないのです。

    その上、この文を小燕に託して知らせてくれた、数少ない生き残りである幼馴染とその仲間達も、既に乗るべき船を失った状態で、辛うじて泳ぎ着いた岸沿いに隠れ潜み、敵の勢力下、何とか命を永らえていると言うのです。
    豊縁では今この瞬間にも、彼女の大切な仲間達以外にも沢山の人々が怯えて逃げ惑い、山野には獣達の骸が冷たく野晒しになって、山を為していると言うのです。 
     

    暫くの間泣きはらした後、やがて娘は、静かに顔を上げました。  
    前を見つめる表情は、もう泣いてはいません。  ――代わりに浮かんでいたのは、とても固い決意の色でした。

    立ち上がった彼女は、小燕の事を老婆にくれぐれも宜しく頼む旨を言い置くと、直ちに島に残っている年寄衆を呼び集めて、この度の凶状を周知させました。
    そして更に、今後の善後策について話し合いで決めるよう命じて置いた後、彼らに猶予を与えないまま、一度評定を終わらせて、それぞれの村や周辺の島々へと、回状を回させます。

    年寄衆が息を切らせて、それぞれの村や担当の島へと急を告げに、散っていく中――娘は一人住居に取って返すと、一枚の文を書き上げました。
    書き上げたそれを評定に使っている部屋に置手紙として残すと、去り際とて、建物の庭に番犬として放されている紅犬に、お別れを言います。
    気配を察知してか離れようとしない紅犬に、しゃがみ込んで何とか言い聞かせ終えると、最後に娘は誰にも気取られぬように注意して、浜辺へと続く抜け道を下っていきました。

    海辺に着けば、もう既に昼も近い時刻でもあり、居残りの漁師達は一日の稼ぎを得るべく沖へ出て、僅かに浜で作業をしていた者達も、慌てて駆け走って来た年寄衆の言葉を聞くや、急いで村の方へと引き返した為、そこには人っ子一人居りません。


    ――置いてきた文が読まれれば、必ず村の者が止めにやってくるでしょう。
    それを知っている娘は、急いで岸辺に乗り上げていた小舟を押しやって、上手く返す波の合間に浮かべると、素早く船縁を越えて乗り込み、沖に向けて漕ぎ出していきます。

    艪を扱う手並みは、戴帯される頭とて、流石に島に生きる者。  ・・・小舟は見る見る沖に向けて滑る様に進んで行き、やがて浜からは点の如き大きさとなり果てて、それも仕舞いにはふっつりと消える。
     
     
    遂にただ独り切りとなった娘は、そんな事には構うこともなく、ただひたすらに沖に見える小島―彼ら瀬戸衆が海の神様の住まう場所として敬っている、渦巻き島へと近付いて行きます。
    ・・・やがて島を守るようにして荒れ狂っている渦潮に、小さな小舟が差し掛かった時――娘は艪を使うのを止めると、艫に歩み出でて真っ直ぐに立ち、静かに目を閉じると、何やら一心に祈り始めました。
    祈りはとても長く、漂う小舟はあちらの潮に流され、こちらの流れに捉まりますが、娘は動じる風も無く目を見開きもせず、小舟も荒れ狂う潮の流れを乗り継ぎ走り渡るばかりで、かやる気配もありません。

    そしてやがて、半刻も経った頃――不意に彼女は目を見開くと、静かに何か思うところがあるような目で島の方を見つめて、小さく何か呟きました。  ・・・しかしその呟きは、ざわめく潮の流れにかき消され、遂に言葉として誰かの耳に届くことは、ありませんでした。
    次いで、次の瞬間――娘はゆっくりと己の利き手を腰に伸ばし、そこに束んでいた短い小刀に手をかけると、スラリと流れるように引き抜いて、あっという間に自分の喉を突き通し、前にのめって船縁を越え、波間に沈んでしまいました。

    ・・・例えその時側に誰か居ようとも、彼女の行動を止めることは出来なかったでしょう。 
    それほどまでに、その一連の動きは一糸の乱れも無く、傍から手を出すことを許さないほどに、不思議な畏ろしさがありました。


    そして、娘の姿が波の下に消え、海面を僅かに染めていた血潮が、逆巻く渦潮の中に溶け去ってから、暫くの後に――
    時ならぬ悲痛な咆哮が辺りを振るわせると共に、大きな影が海原を割って天へと駆け、急速に雲気が満ち、風が渦を巻き始めつつある空を、真っ直ぐ西に向けて進み始めました。
     
     
     
     
     
    その日は、昼の間は一日中晴れており、先だって海上で大勝利を得た異国の兵士達は、勢いを駆って戦線のあちこちで大攻勢を仕掛け、集まって来ていた在地の武者や獣達を、散々に打ち破っていました。
    各地で大損害を受けた秋津国側の正面兵力は激減し、分断された戦線の合間に取り残された敗残兵は、地に伏せる事を得意とする獣達と共に山深く逃げ延びて、息を潜めるばかりでした。

    しかし、彼らは未だに諦めてはいません。  ・・・故郷を焼かれ、家族を奪われた怒りは余りにも激しく、怒りは憎しみに姿を変えて、彼らの復讐心を駆り立てていたからです。
    ――最早、敵愾心を煽る必要さえありませんでした。  友を失った者は激情に駆られ、肉親を奪われた者は夜叉となって、敗残の身も忘れ血刀を下げて、異国の兵士達を夜な夜な襲い、脅かします。

    そういった襲撃による無用の損害を避ける為、最近は異国の兵士達は、夜になると自らの船に戻って、夜明けまで守備防衛に徹するようになっていました。


    そしてそんな中、それは起こったのです。

    その日の夕刻が近付くに連れ、何処までも青く澄み渡っていた秋空は、一変して東から流れてくる分厚い雲に覆われ始め、更に闇が濃くなって行くに連れて、冷たく湿った風が、どんどんと強まっていきました。
    ・・・どんどん急を告げていく雲行きに、異国の兵士や船乗り達も流石に慌て始め、急いで互いの船の間を鎖で繋ぎ、舷側に防舷物をかませて荒天に備えましたが――しかし何分、敵地での事。
    作業はろくに捗らない上に、波風はどんどん荒々しくなって、ともすれば作業に従事している小舟共を、軽々とひっくり返そうとします。  
    陸地に上陸して難を避けようにも、ただでさえ危険な深夜の、それも極端に見通しの悪くなる嵐の夜の事ですから、とてもではありませんが、無事で居られるとも思えません。

    結局彼らは、そのまま船上で嵐をやり過ごすことにして、兵卒水夫一丸となって奮闘し、何とか迫り来る嵐を乗り切ろうと、全力を尽くします。
    ・・・その間に、一番外側に位置していた幾艘かの船がこっそりと抜錨して、何かに導かれるように沖に向けて脱出を開始したことに気が付いた者は、その付近にいた敵味方両陣営共に、一人も居ませんでした。


    そして、その日の深夜――異国の兵士達と水夫達の努力を嘲笑うかのように、凄まじい烈風と打ち付けるような豪雨が、豊縁地方を襲いました。
    あれ程力を尽くして被害を押し止めようとしたにもかかわらず、船団はまるで玩具の様に時化の海に翻弄され、互いにぶつかり合って揉みくちゃにされながら、次々と沈んで行きます。

    僚船にぶつかられた軍船の船腹は障子紙の様に破れ、船倉に大量の海水を飲み込んだ船は、縛り付けてある僚船も道連れにして、怒り狂う白い泡(あぶく)の狭間へと、飲み込まれて行きました。
    甲板を右往左往する人影や獣達は、時折気まぐれに襲ってくる突風に煽られ、木っ端の様に舞い上げられては、悲鳴さえもかき消されたまま、逆巻く波に飲まれて見えなくなって行きました。
    帆柱を吹き折られた小型船は苦も無くひっくり返され、乗り組んでいた者達は他の船の同僚達に気づいてすらもらえぬまま、ぶつかり合う大船の間に挟まれて、押し潰されて行きました。
     
     
     
     
    ――際限なく沈んで行く異国の船と、なす術も無くただ海底に引きずり込まれて行くだけの、船上の兵士達や獣達。


    彼らの末期の悲鳴と断末魔を感じ取りながら、天空に羽ばたく大きな獣は、自らの引き起こした惨禍の程を、ただ黙って見つめていました。

    ――確かに彼らは、この地に於いて大きな罪を犯してきました。  
    略奪と殺戮を欲しい侭にし、抵抗する術も無い者を嬲り殺しにし、平和な村々を焼き尽くし、獣達を狩り立てました。

    しかし彼らにもまた、故郷がありました。  ・・・親兄弟を持ち、愛する人を待たせ、主人と獣達との間には、お互いをいたわり合い思い合う、紛れも無い絆がありました。
    彼らは日々故郷を偲び、縁もゆかりも無い土地で果てていく同僚達を哀れみ、帰郷を待ち望んでいる家族への思いを募らせながら、一刻も早く戦を終えて故郷に帰ることを、何よりも強く願い続けていたのです。

    ・・・そんな彼らが発する末期の叫びは、心無きけだものの呻き声などでは、決してありません。
    みな絶望の中にも張り裂けるほどに故郷を思い、愛する人の名を叫び、共にある大切な仲間を呼び合いながら、無慈悲に荒れ狂う嵐の海へと、無力に消えて行くのです。
     
     
    大きな獣には、それが全て『聞こえ』ました。  
    彼はこれまでずっと、その生まれ以って備わっていた『通じ合う力』で他の多くの命と触れ合い、互いに心を通わせる事によって、その絶大な力故に伴う隔絶と孤独とを、慰めていました。

    この能力のお陰で、大きな獣は何時でもずっと、大切な友人達と繋がっている事が出来ました。
    幼く無邪気な頃から、優しく純粋な若草の時――  
    凛として情け深い駿馬の時代より、思慮行き届き懐深い熾き火の季節まで――
    何人もの友人達と、その成長を見守りつつ、やがて訪れる別れの時まで・・・神と呼ばれし孤独な獣は、何時だってそうやって、互いに絆を深め合う友人達と共にある事で、幸せでした。

    しかしその時ほど、彼は生まれ以って備わっていたその能力(ちから)を、悔いた事はありませんでした。
    ――耳を塞ぎ、心を閉ざす術は心得てはいましたが、自らの運んだ災厄から目を背けることは、どうしても出来なかったのです。

    けれども、自らの命を絶ってまで、彼にこの地に住まう者達を助けて欲しいと願った友の思いに心を馳せれば、この苦痛に満ちた災厄の火種も、消すことは許されませんでした。

    耳の奥底に響いてくる、哀しみの叫び。 魂を突き刺す、絶望の祈り。
    引っ切り無しに心を切り裂く眼下の悲痛な渦に、思わず彼の頭は救いを求めて大きく揺れ、最早何も見ることも叶わぬ沖合いへと、その苦悩に満ちた双眸を打ち振ります。

    ・・・その方角は西。 異国の者達の生まれ故郷がある、広大な大陸が広がっている方角でした。
       
     
     
      
    やがて、夜明けが訪れた時――

    すっかり風雨の収まった、台風一過の空の下――豊縁の人々が目にしたのは、トウカ周辺の海岸一帯を埋め尽くしている、膨大な量の船材の破片と、異国の人と獣の亡骸でした。 

    色とりどりの原色に染め分けられていた異形の船団は、僅か一晩で無残な残骸に成り果て、水面を覆う水死体は河口を埋め尽くして、数も知れません。
    ・・・そしてそこかしこには、未だに死に切れなかったり九死に一生を得た異国の兵士や獣達が、重い傷の痛みに呻吟したり、助けを求めて手を振ったりしています。

    しかし勿論、彼らに助けの手が差し伸べられるような事は、ありませんでした。

    日が昇りきり、再び戦備が整えられるや否や、今までずっと怒りと憎しみに駆られて戦って来ていた地元の人々を中心とした秋津国の軍勢は、既に抵抗の術も殆ど残っていない異国の軍勢の生き残り達を、まるで手足を縛られた家畜を殴り据えるが如く、次々と打ち殺して行きました。
    ――元より大切な家族を奪い、故郷を荒らし、共に戦っていた同胞や、罪も無い善良な隣人達を殺し続けて来た、憎(にっく)き『鬼共』です。  抵抗も出来ない彼らを狩り立てるのに、躊躇う者は殆ど居ませんでした。

    そしてやがて、それから2ヶ月も経った頃――豊縁に攻め入った、数十万にも及ぶ異国の兵隊と獣達からなっていた侵略軍は、最早ただの一人・一匹として、この秋津国の中に残ってはいませんでした。
     
     
     
     
     
    ・・・ところで一方、大きな獣が嵐を伴って豊縁へと現れる少し前、密かに抜錨して沖合いに逃れた異国船は、その後どうなったのでしょうか?
     

    大きな獣が西の沖合いに暗い目を向けた、丁度その頃――先に船団から離れた数隻の異国船からなる船団は、荒れ狂う雨風に揉まれながらも、自分達の故国に向けて必死に舵を取り、激浪を掻き分けて戦っていました。

    時折天空を走る稲光が、船上で奮闘する大勢の船乗りと兵士達の姿を浮き彫りにし、彼らの必死の形相を、互いの視界の隅に刻み付けます。
    ――浮かび上がったその顔色は幽鬼の如く青ざめており、必死に生きる為に立ち働くその姿からは、ここ数日侵略者として振舞って来た残酷さや傲慢さは、何一つ見出すことは出来ません。
    しかも良く見てみれば、あか汲みを持って必死に船倉から水を掻い出している者共の中には、どう見ても虜囚であるとしか思えない、襤褸布の様な布子を纏った者達も、幾人か混じっていました。

    しかし今、立ち働く者達の間には、恨み事も互いに対する敵意の程も、一切存在してはいません。
    ・・・今の彼らには、敵味方を演じて憎み合うよりも、差し迫った事態を乗り切る事の方が、大切だったからです。

    そんな一団の船団を、荒れ狂う時化の海は容赦なくいたぶって、ひた走る箱舟を一塊の材木に変えてしまおうと、猛威を振るい続けます。
    ――しかし、何故かそんな絶望的とも言える状態であるにもかかわらず、数隻の船は互いにバラバラに離散する事すらなく確実に前に進み続け、徐々にではあるものの、荒れ狂う暴風域の外側へと、抜け出で始めつつありました。

    やがて波飛沫が徐々に小さくなって行き、次いで風が弱まって、空を切り裂いていた稲妻の轟音が、遥か後ろに過ぎ去った時――  漸く顔色を改めた船上の者達は、やがて面上に喜色を現すと誰彼構わず抱き合って、互いの無事を喜び合い始めました。  
    ・・・兵士達は既に海に捨てていた鎧を惜しむ事も無く、水夫達は船倉から残っていた酒樽を引っ張り出して来て蓋を叩き壊し、虜囚達も漏れる事なく回された欠け茶碗でがぶ飲みして、互いに肩を叩き合い、通じぬ言葉を交し合って、命を永らえた喜びを、共に分かち合っています。


    ――そんな船上の光景を確認した後、彼らを無事にここまで導いて来た獣達は、自分達が生まれ育った故郷に向け、前方に広がる暗黒と風雨の帳も眼中に無いかのように、悠然と反転し始めました。

    それに気がついた船上の男達が船縁に並び、声を涸らして心からの感謝の気持ちを伝えるのに答えるかのように、彼らは数匹で見事な編隊を組むと、体を傾け傾け、東の空へと飛び去って行きます。
    煌々と輝く月が西の空に傾き、夜明けの到来が近い事を告げようとしている中、未だ日の昇る気配の遠い東の空に向けて消えて行く竜達の背中を、彼らは何時までも何時までも、見送り続けるのでした。
     
     
     

      
    やがて戦災による傷跡も徐々に癒え、豊縁地方には、また静かな日常が戻ってきました。

    派遣されて来ていた他の地方の援兵も随時引き上げて行き、更に半年も経った頃には、秋津国の各地方はほぼ全て落ち着き終わって、嘗ての戦乱を感じさせるようなものは、何も残ってはいませんでした。
    炊事の煙が絶えていたムロの町も、逃げ延びていた僅かな人々が小さな村を再興しましたし、多大な損害を出して悲嘆に暮れていた瀬戸衆支配下の島々でも、居残っていた者達や無事に生きて帰ってきた少人数の者達を中心として新たな舟手方を編成し、空座となっていた頭領の座を埋めることは叶わぬまでも、新造船を次々と舟入させて、再建の道を歩み出し始めていました。
     
     
     
     
    ・・・しかし、以前とは変わってしまった事も、無かった訳ではありません。


    先ず一つは、あの嵐の夜が過ぎて後――タンバ周辺に於いて稀に見られた『風守』の能力者が、一切現れなくなってしまった事です。
    ――それは、海の神様が彼ら人間達に対して、心を閉ざしてしまった事を意味していました。

    それは、今までずっと海の神様と共に歩んで来た瀬戸衆の人々にとっては、本当に衝撃的な出来事でした。
    彼らは様々に手を尽くして、再び海神との絆を取り戻そうと苦心しましたが、『風の守人』が再び現れるような事は、もうありませんでした。

    ――それでも諦め切れなかった彼らの一部は、海の神様との絆を取り戻す為の掟を定め、それからずっと幾世代にも渡って、それを守り抜いて行く事になります。
     

    もう一つの変化は、まだ中央の権威が及んではいない新奥を除く、秋津国の全ての地域に於いて、異国を意味する『ムクリ・コクリ』と言う鬼の名前が、子供達に対して囁かれるようになった事です。

    「良い子にしないと、ムクリ・コクリの鬼が来る」――大人達の口からそう言って脅される度に、子供達はピタリとむずがるのを止めて、大人しくなります。
    ――それほどに恐ろしい、『ムクリ・コクリの鬼』。  ・・・しかし、果たしてあの時波間に消えて行った者達の内どれだけの者が、本当に『鬼』と呼ばれるに相応しい蛮行を、嬉々として行っていたのでしょうか?

    けれどもそれを知る術は、最早永遠に失われたままでした。

     
    そしてもう一つ――最後の変化は、豊縁地方で起こりました。

    同じく、あの嵐の夜以来――豊縁地方の全ての池や湖、そして周辺の海域から、水竜の眷属・一族が、全く姿を消してしまったのです。
    それはあの恐ろしい夜、生来船乗り達を見守る性(さが)のある彼ら水竜の一族が情に負け、嵐が訪れる前に異国の船団の幾艘かにその到来を告げて、無事に故国へと送り返した事への、自責の念の現れでした。

    共に生きている人間達や獣達の思いを余所に、敵である筈の彼らに情けをかけて、永らえさせてしまった事への面目無さ――
    後悔こそはしていないものの、自責の念は拭えない――そんな彼らなりの責任の取り方が、豊縁からの一族総退去でした。

    ――故に今でも豊縁の地では、水竜の一族を見ることは出来ないのです。
     
     
     
     
     
     
     
    ・・・さて――では、その後心を閉ざしてしまった海の神と、彼を慕う瀬戸の船乗り達との絆は、一体どうなったのか・・・?


    それはまた、別の物語――。
     
     
     
     
     
     
     参考書籍 『蒙古の槍』
    ―――――

    我がメモ帳にのたくられし妄想、其の一


    ・・・何故か仕事中急に書き進めたくなって、帰宅後、深夜二晩かけて完走。

    しかし最後の方は完全失速気味の中、人力操舵と自転車操業で無理矢理書き切った為、最早何を書いていたのかちょっとうろ覚えと言う罠・・・(爆)

    突貫作業だった為に幾つかシーンを割愛したり、ろくすっぽ推敲作業してなかったりですので、日本語的に意味不明な部分もあるやも知れませぬが、もしそう言う所を見つけましたなら、この哀れな生物に是非一言、お叱りの言葉を頂ければ幸いです。
    ・・後、多分細かい修正がひたすら入るかも・・・(爆)


    それでは・・・。  
    末尾になりましたが、日頃から様々な作品をお書きになって、この活字中毒者を大いに喜ばせて下さる皆様に改めて御礼を申し上げて、とっととメイクマネマネに行って参ります・・(爆)


    【批評していいのよ】

    【と言うか、お好きになさって下さいまし】


      [No.876] 暗雲の予兆【・・全然進まなかったのよ(爆)】 投稿者:クーウィ   投稿日:2010/10/29(Fri) 13:18:20     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    突然降り注いでいた雨に横殴りの突風が加わって、鍋がこけた。

    幸いこけた側には誰もおらず、熱湯で火傷したりする者はいなかったにせよ、大事な携帯食料をつぎ込んだ一品が舞台に立たずして玉砕したことに、彼の口からは思わず、罵り声が飛び出しそうになる。

    「・・はぁ・・・」

    が、しかし――唐突に脳裏を過ぎった亡き祖母の教えが、喉元まで出掛かっていた悪態を寸での所で押さえ込み、代わりに口からもれ出てきたのは、『よくある事』に対する、何時も通りの溜息だけだ。

    『一人でいる時にも、軽々しく汚い言葉を使うものでは無い。  誰も聞いていなくとも、神様はちゃんと聞いていらっしゃるものだ。』――まだ彼が幼い頃、折に触れてぶー垂れる度に、当時まだ在命していた祖母は何時もどこからともなく現れて、彼にそう言い聞かせたものであった。
    当時は、周りに人はいない筈だと思ってブツブツ文句を垂れていたのにもかかわらず、いつの間にか耳の不自由な筈の祖母に聞き付けられていた事に、何時も不思議な思いを抱いたものであった。
    ・・・まぁ今から考えてみれば、単純に老人性難聴の結果、低い声でブツブツと言っていた彼の言葉が、聞き取りやすかっただけの話なのだろうが。

    しかしそれでも、今から考えればあの教えも、それなりに尊いものであった。
    ――現に悪態を吐いている様な状態と言うのは、往々にして興奮する余り、状況を冷静に判断できていないケースが圧倒的に多い。
    この様な情勢下では、それは判断力の低下を招き、決断・決定の切れ味を、大いに鈍らせるのだ――
     
      
    僅かな間にそう思い起こし、改めて気持ちを切り替えようとした彼ではあったが、しかし現実と言うヤツは、そう可愛い物では無い。
     
    新たに生じた突風と言うヤツが、これまた予想外に強く、どんどん強くなる雨足と競合して、鍋を突き転がすに飽き足らず、続いて今の状況下では必須とも言うべき焚き火の火を、吹き消してしまったのである。  ・・・どうやらこの谷間は、ここら一帯の風の通り道になっているらしい。

    低体温の患者がいる場面では、暖を取る焚き火はまさに命綱である。
    すぐに彼は、救助者の周りで押し合い圧し合いしているポケモン達の中から、再びリーフィアとビーダルとを、薪集めに走らせた。  ・・・『百代の森』で修行を積んだリーフィアのコナムなら、この状況下でも乾いた枝を見つけ出して来るのに、それほど苦労はしないだろう。


    と――そうこうしている内に、不意に技を収めて一休みさせていたルカリオのリムイが、崩れた崖の上に向けてハッと視線をめぐらせ、そのままかの方向をじっと睨み始めた。

    それを受けて彼自身も、新たに現れた存在が何者であるか確認しようと、いつでも指示が飛ばせる状態で目を凝らす。  ・・・彼のチームの連中は、揃いも揃ってトンズラのスペシャリストだが、仮に現情勢で野生ポケモンの襲撃を受けたなら、救助者の安全確保の為にも、一当てで片付けなければならなかった。

    しかし幸い、崩れた崖の上から姿を現せたのは、彼が使いにやったリオルを抱きかかえて崖を降下してくる、一人のトレーナーであった。

    まだ若く、自分とそう歳も離れてはいないだろうそのトレーナーは、姿を現すや開口一番、嬉しい内容の言葉を口にする。

    「ポケモンレンジャーです! 大丈夫ですか!」

    望外の幸運である。
    ポケモンレンジャーとはまさに、自然の中でポケモン達と共に生活し、環境の保全や一帯の安全の管理・取締りを任とする、この道の専門家である。
    一時は彼も憧れた覚えのあるその職業者であれば、下手な通行人よりは遥かに頼りになるであろう。
    相手の言葉に手を上げて応えつつ、青年は肩の荷が大いに軽くなるのを感じて、静かにほっと息を吐いた。

    地に足が着くや泥だらけのびしょ濡れで、容赦なく彼の胸に飛び込んでくるリオルを受け止めてやりながら、その功を労って、背中を軽く叩いてやる。
    ――同時に背後からは、早くも薪を集め終えた二匹の手持ちが、急ぎ足に駆けて来た。

    次いで彼は目の前の相手に向けて、救助者である若い人物の容態を、手短に伝えた。
    頷く相手はすぐさま、ボールに手も触れずにただの一声で、大きな体格の草ポケモンを、一瞬でその場に呼び出す。

    一瞬目を見張るも、レンジャー達が使用している特別仕様のモンスターボールのお陰だと聞いて、なるほどと納得する。  ・・・確かに、険しい場所に分け入る時に最も大切なことは、常に手の自由を確保しておくことだ。


    ――しかし、一時はこれで落着するかに思えたにもかかわらず、そうは問屋が卸さなかった。

    間の悪いことに、丁度救助者をトロピウスの背中に括りつけ終わったところで、更に一段と雨足が強まり、風の勢いも激しさを増し始めたのだ。
      
    トロピウスは大柄な体格で、積載重量には比較的余裕のあるポケモンだが、飛行方式自体は、多分に風任せなのである。  ・・・彼らは羽ばたいて飛翔するのではなく、草ポケモンならではの繊細な感覚を上手く用い、風に乗って空を舞うのだ。
    よってこれでは、空に飛び出した所で、まともに姿勢をコントロール出来るとはとても思えなかった。  ・・・元よりこの風雨では、ピジョットやカイリュークラスのポケモンで無いと、まともに飛べるものではなかっただろうが。

    一瞬彼は、自らの手持ちで何とか補助出来はしないかと考えたが、それもすぐに諦める。  ・・・現状況では、彼の飛行要員であるチルタリスは、ほぼ戦力外であった。
    チルタリスのフィーは、シンオウリーグでも十二分に力を発揮したツワモノであったが、何分今は綿のようなその翼に大量の雨水を吸っており、満足に飛べるような状態ではなかった。
    ・・・元より、ここに降りた時も降下飛行だったから何とかなった訳であって、こんな大雨の中飛びながら技を繰り出したり、人を乗せて高く上昇することなど、幾らレベルの高い彼女と言えども、無理な相談であった。

    ルカリオのリムイとリオルのラックルも、実は空を飛べない訳ではなかったが・・・所詮はコピー技に頼った、一時的な仮の飛行能力。  ・・・正直ネタにはなろうものの、翼も無い彼らが空に浮いた所で、実用性なぞは欠片ほどもありはしない。
    後は、電磁浮遊が使えるぐらい。
     
    仕方無しに彼らは、トロピウスを離陸させる事を諦めて、救助者を再び岩陰に戻そうと、申し訳無さそうに項垂れるトロピウスを慰めながら、その背中に向けて手を伸ばした。


    ――しかし、何故こうも急に、雨足や風の勢いが変動するのであろうか・・・?
    青年自身も、幼い頃から新奥の厳しい自然環境の中で、野生児さながらに駆け回って来た経験があったが、ここまで急激に天候が変化し続けるような事は、嘗て無かった事である。

    疑問に思う彼の脳裏に、この辺りの地方に伝わっていると言うある神々の伝承が、チラリと過ぎる。
    『雷神・風神伝説』と呼ばれるその伝承によれば、この地方には昔から、雷雨を司るポケモンと突風を意のままにするポケモンの兄弟が棲んでおり、時折両者が出会う度に、激しい雨風を伴う何とも傍迷惑な兄弟喧嘩が、勃発するのだと言う。
    ・・・そう言えば、遠くに見えていた雷雲がこちらに近付いてくるに従って、吹きすさぶ風も、どんどん強烈になって行っているような気もする。

    ・・・まぁしかし、それはあくまで伝説の範疇であった。
    少なくとも彼はそう片付けることにしたし、それが余所者である彼の思考の限界でもあった。  



    ――そう、その時点では。

    崖の上に陣取ったレンジャー氏のアブソルが、吉兆か凶兆か、上空の暗雲に向けて、力強く咆えた。
      
     
     
     
     
    ―――――


    ・・・取りあえず、第3のレンジャーさんがいらっしゃるまでの前の辺りを、こもごもに書き連ねてみた。
    全然進まなくて御免なさい・・・ それに何より、駆けつけて来てくれた方々を出せずに御免なさい・・・(爆)

    応援してくださるみなさん、新たに救いの手を差し伸べてくださったてこさん、海星さん、サトチさん、本当にありがとう御座います。

    相次ぐ救援の到着と参戦に、まさに心強い限り・・!
    最早コイツも土砂に流されて、救助される方に回っても良い気がしてきた!(笑)


    エスパー・ゴースト使いのレンジャーさんに、盲目の娘さんと相棒のエーフィ。
    それに荒天にもかかわらず険しい山道を踏破して参戦してくれつつある有志の方々に、心より感謝です・・・

    ツボちゃんとさくらちゃん来た!  何が来ようともこれで勝つる!!(笑)


    ・・では!  失礼致しました・・・

    【埋めちゃって構わないのよ】
    【どんどん救援しちゃってください】
    【お好きになさって頂いて構いませんのよ】


    PS. 【むくのは不味かったからフェザーダンスなのよ】


      [No.875] 【勝手に増援を出してみた】(微修正) 投稿者:サトチ   《URL》   投稿日:2010/10/28(Thu) 22:19:29     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     行方不明と報じられていた少年が発見されたという情報が入り、一度はほっとした空気が流れていたものの、
    救助に向かったレンジャーからの連絡が途絶えたという知らせにセンター内は騒然となった。

    「二重遭難か?!」
    「すぐ救助に向かわないと……!!」
    「ちょっと待て! 訓練されたレンジャーが巻き込まれるような状況だとしたら……!」

    「あたし行きます!」
     口火を切ったのは一人の少女だった。
    「行っても邪魔になっちゃうかもしれないけど、ここで待ってるだけじゃ絶対なにもできないもの!
    草ポケモンだったら、大雨だって平気だし、きっと『つるのムチ』も役に立つ!」
     堰を切ったようにトレーナーたちが立ち上がる。
    「俺も行くぜ! 鍛え上げたポケモンの見せ所だ!」
    「ボクも行くよ! LV低いけど、『にほんばれ』覚えたポワルン連れてきたんだ!」
    気勢の上がるトレーナーたちが、一斉に外へと駆け出し、ボールからポケモンを出す。

    「おーい、トモコちゃんや! ウチのゴーリキーも手伝わせておくれ!」
    老人が投げたモンスターボールを、ポケモンに乗った少女はしっかりと受け止める。
    「ヤマノさん、ありがとう! さくらちゃん、お借りしまーす!!
      ……さあ、行くよ、ツボちゃん!!」


     これだけのトレーナーとポケモンがいれば、きっと大丈夫。みんな無事に戻ってくるだろう。……きっと。
     後に一人残った老人は、一斉に現場に向かうトレーナーとポケモンたち、そしていまだ安否のわからない
    遭難者とレンジャーたちの無事を祈りながら、真っ暗な空を見上げたのだった。




    山のように増援出しちゃいました(^^;)どっかで見たような名前の登場人物もいますけど(笑)同一人物とはカギラナイシー(^3^)
    まあ、これだけ人数がいれば、必要なポケモン持ってるやつもいるでしょう。
    救援出す人は、必要であれば使ってやってください。ちゃんと助けになるといいがなあ〜(^^;)


    【こき使っても無視してもいいのよ】
    10.29朝 人数増やしたり等微修正〜。


      [No.874] 書いてしまった「他の歴史も読みたい」 投稿者:こはる   投稿日:2010/10/28(Thu) 21:37:46     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「キュウコンに関連する本を探してます! 普通じゃ見かけない趣向のものを!」
     入館してすぐカウンターへ直行した俺は、きっと目をぎらぎらさせていたんだと思う。なにせ、ふだんは優しいおっちゃんが、顔を引きつらせていた。
    「具体的にはどんなのをお探しですか?」
    「キュウコン教授を納得させられるような本」
    「……またですか」
    「またです」
     おっちゃんはため息をつきながらも、パソコンを操作してくれる。かたかたと規則正しい音がしばらく続いて、おっちゃんが手を止めた。
    「こんなのはどうですか?」
    「歴史関連の本? これがキュウコンに関係あるとでも」
    「この『語り部九尾』は、歴史分類ではありますけど、一応はキュウコンが標目に入ってますので」
     こちらです、とおっちゃんに案内されたのは、滅多に行かない奥まった場所だ。というか、存在していたんだな、こんなところ。
    「はじめてきた」
    「できれば、足を伸ばしてもらいたいです」
     おっちゃんはにこやかに言うが、俺にはムリだ。あまりに林立した書架のあいだを歩いてきて、すでに居場所すらわからない。
    「あ、ここですね。えっと、この本です」
     差し出されたのは、キュウコンの姿が描かれた濃緑色の本。けっこう分厚いので、重たい。うけとって、ぱらぱらとページをめくってみて、すぐにおっちゃんを見た。これは、人間が言い伝えたキュウコン伝説ではない。
    「伝承じゃなさそうだけど」
    「史実と照らし合わせて、再編成されてますからね、歴史分類です。キュウコンも伝承の世界ばかりで生きてるんじゃないんですよ」
     おっちゃんが笑いながら去っていくと、俺は書架の間にひとりで立って本をめくる。
     千年生きるというキュウコンが語り残した歴史。
     大陸へと向かった留学生の話、帝になろうとした将軍の話、国を覆った戦乱の話、三英傑の話、平和が訪れた時代の話……。
     それぞれ歴史を、史実を一頭のキュウコンが語り残していく。ポケモンの目から見たこの国の歴史は、さまざまな色味をもっている。人間が語り残した史実とは、ひと味違ったものだ。歴史を振り返るように語られ、そうして、やがてキュウコンの語りがぱたりとやむ。
     ――借りて、読もう。
     ゆっくり読んで、キュウコンの語りに耳を傾けてみよう。一頭のキュウコンが生きた証でもある語り残したものを抱え、俺は気づく。
    「――出口、どこ……?」

    ◇◆◇◆◇◆

     九尾というタイトルに惹かれて読んだら、いつの間にか書いていた。あのね、ほら、他のも読んでみたいなーと思っちゃったんです。オチは気にしないでください(オチが無かったので、つけてみただけ)。
      人間側からみたキュウコン伝承しかないのかしら、と思っていたら、こんな見方もあったのか!って感心してる間に書いちゃったんです。 ほかの史実もよんでみたいのですが……とさりげなく催促したい。というか、すでにしてますね。

     すてきな語りに耳を傾けてみました。そして書かせてもらいました。


      [No.873] ひでんわか 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2010/10/28(Thu) 21:20:24     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    いあいぎり
    あらたしき道
    開きつる
    いかがゆかむと
    そぞろなりけり

    (いあいぎりの技で、新しい道を切り開いた。今度の道はどのように行こうか、むやみやたらに感じられるなあ)



    空飛べば
    おもてにかぜが
    吹きにけり
    さくらもみじの
    季節あらじや

    (空を飛ぶの技で上空まで飛び上がると、たいそう冷たい風が顔に吹き付けた。この大空には桜や紅葉の季節はないのだろうか)



    おくやまに
    ロッククライム
    用ふれば
    つねづね思ふ
    いかで疾からむ

    (山の深くでロッククライムの技を使うと、どうしてこんなに速く登るのだろうかと常々思ってしまう)



    ながむれば
    滝のぼるめる
    をのこあり
    あなたたかいに
    たけき者かな

    (ぼんやりと外を眺めてみると、たきのぼりの技を使っている様子の男がいる。ああ、彼はあの技を普段使えるくらいバトルが上手いんだなあ)



    表現の練習として、和歌なんて書いてみました。思いの外イメージがしやすく、普段より書きやすかった気がします。さすが芸術の秋。



    【詠んでいいのよ】【書いていいのよ】


      [No.872] 応募1作品目来ました! 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/28(Thu) 20:49:03     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    応募1作品目来ました!

    ポケモンストーリーコンテスト初応募はなんと100文字ジャストで収めてくる猛者でありました。
    皆続け……! 猛者の後に続くのだ!
    とりあえず展示枠10まで作っておいたからよろしくね(笑

    URL:
    http://masapoke.sakura.ne.jp/pokemonstory-contest-01-001.html


      [No.871] 立ち聞きしたのよ 投稿者:海星   投稿日:2010/10/28(Thu) 19:15:34     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「……人間が3人……いや、4人。ひとり、小さくて消えそうな灯を持っているのね」
     長く紅い髪を潮風に揺らせて、彼女は呟いた。
     彼女が今立っているのは切立った崖の上で、海の音が良く響く場所。
     そして、切羽詰まった人間たちの声も真下で聞こえる。
    「ああ、アブソルが予知している。やはり、これから何か来るのね……」
     彼女はふっと微笑んだ。
     そして、ふわりとしゃがみ込、足元で姿勢良く座っている艶めく紫色をした体毛の獣――エーフィに囁いた。
    「私のことは考えないで。あなたの持つ能力でなら、あのアブソルを手助けできるでしょう。風が強いから、空気の流れをよむのは困難。だけど、あなたならできるはず……」
     それから、彼女は雲のように白いワンピースに風が入り込むのもかまわず、立ち上がり、エーフィを見た。
     ――彼女には何も見えていない。
     何故なら、その瞳には、もう何も映らないのだ。
     幼い時にとりつかれた病のせいで……。
     その代わり、彼女の聴力は異常な程に優れている。
     そして今も、彼女は鋭い風と波と土砂崩れの音の中、叫ぶ3人のレンジャーと苦しそうに呼吸をする1人の少年の存在を確認したのだ。
     エーフィが静かに鳴いた。
     彼女は、ゆっくりと頷いた。
    「どうか、ひとつでも多くの命の灯を救ってあげて。何もできない私の代わりに」
     病の頃から共に闘ってきた彼女とエーフィは、心を通じ合わせることができた。
     エーフィは、彼女の足にすり寄り、それから少し名残惜しそうに振り返りながら、崖を身軽に下って行った。
     それを耳で感じ遂げると、彼女はゆっくりと歩き出す。
     エーフィが嵐の予感がすると告げていた、草むらへ向かって。
     もしかしたら、そこには、昔聞いたことのある、激しい雷雨を巻き起こす伝説のポケモンがいるかもしれない……そう考えて。



    ――――


     昨晩、救助に行こうと決心し眠りについたのですが、今になってみてみるとレンジャーが3人もいたので、流石にもうレンジャーは止めとこかな、と。
     とりあえずエーフィ派遣しました。
     少年よ、もちこたえてくれ……。


      [No.870] スランプ脱出はキャンディーほど甘くない 投稿者:紀成   投稿日:2010/10/28(Thu) 18:23:30     19clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    正直,どうしてオーナーが私に店を任せてくれたのか分からない。
    この店は,彼が頑張って作った店なのに。

    『君に,この店を任せたい』

    勝手に店名まで変えちゃって,もうここは自分の店じゃないって言っているみたい。

    『戻ってきた時,美味しいコーヒーを飲ませてくれると信じてるよ』

    オーナー・・。
    今,何処にいるんですか?


    「ハロウィンが近づいてきたわね」
    ドン,という効果音が出そうなくらい胸を張ったフルメタルを見て,マグマラシはため息をついた。
    「また新商品か。お前すっかりプロデューサーだな」
    「ハロウィンといえばお菓子。キャンディとかクッキーとか,手軽につまめるお菓子がいいと思うの」
    特に女の子受けするならいいわよね!と気合を入れている。
    「まあ,別にアイデア出すのはいいんだけどよ」
    「何よ」
    「・・オーナーがな」

    マグマラシの言葉に,フルメタルはカウンターを見た。
    今日もオーナーは,きちんと制服を着て,店の中で何かがおきていないかを見ている。
    だが。

    「・・眼が,集中してないわね」
    「気付いたか。三日前からあの調子だ。おまけにアレを見てはため息をついている」
    金属製の看板。黒硝子で,『diamante』の文字。
    「この店には随分合ってないわね」
    「・・ペルトが知らないのも当然か」
    「え」
    マグマラシは一呼吸置いた後,はっきり言った。

    「この店はな,元々ユエがオーナーじゃなかったんだ」


    ユエは考えていた。いや,悩んでいたと言った方が正しいかもしれない。
    「お客さんも増えた。この店の味を認めてくれる人も増えた。
    ・・でも」


    あれは,何年前のことだったのだろう。
    ユエは高校生だった。
    入学してすぐに,ユエは中学時代の友達が骨折したというので病院へ行った。
    そこで出会ったのが,後に共に大事件に巻き込まれることになる二人の人物。
    片方は女性。もう片方が・・。

    このカフェの,元・オーナー。

    知り合ってすぐ,ユエはその二人と事件に巻き込まれた。その後に女性の方は外国へ旅立ったが,オーナーは自分でカフェを作った。
    ユエは,高校から大学にかけてそこでアルバイト兼見習いをしていたのだ。
    そして,大学を卒業した,ある日のこと・・。

    「君に,この店を任せたい」
    「え・・」

    元々,オーナーはユエにこの店を継いでもらうつもりだったらしい。
    でもいきなり『任せた』なんて。

    結局,オーナーは一通りの手続きを済ませた後,外国へ旅立って行ったのだが。
    そしてユエは・・。

    「そろそろハロウィンか」
    悩んでいても仕方無いので,ユエはユエでアイデアを練っていた。
    「小さなお菓子をケーキセットとかに付け合せるとかね。
    悪戯心をくすぐるような・・」


    数日後。
    「マグマラシー」
    久々のお呼び出しにマグマラシが転がるように走ってくる。
    その姿を可愛いと思いながらも,ユエは表情を引き締めた。
    「どう?」
    目の前に差し出した物は・・

    「ハロウィン限定キャンディー,名づけて『アーケオス・クリムガンカラー』」
    ブルーとレッドを基調にしたクリムガンカラーと,ブルー,グリーン,レッド,イエローを基調にしたアーケオスカラー。
    ハロウィンらしいビビットが目に眩しい。
    「イッシュ地方のポケモンって,お菓子のアイデアになる子が多いよね。
    ・・私も一匹欲しいなあ」


    「スランプ脱出したのかしら」
    キャンディーを舐めながら,フルメタルがマグマラシに話しかけた。
    「さあな。とりあえず,オーナーって自覚はあるらしい」
    「そうね。こんなアイデアを考え出すんだもの」

    二匹の間には,大量のキャンディーが入った籠が置いてあった。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    久々のカフェシリーズです。
    本当は他のアイデアもあったのですが,それはまたクリスマスの時期に。
    何かアイデアありましたら,お気軽にどうぞ。


      [No.869] 語り部九尾 投稿者:NOAH   投稿日:2010/10/28(Thu) 18:21:09     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    おや、人の子がくるとは珍しい。
    いつもは獣だけなのだがな。

    では、1つ昔話をしよう。
    これはまだ我が、この姿になって間もない頃の話であった。

    今から500の時の前、その頃の我は1人旅をするのが好きでな、
    その時も関東よりも北に150里ほど離れた森に、1人の人の子が泣いておった。

    そやつはまだ7つ程の小僧でな、右目に包帯を巻き、残った左目でぐずるように泣いておった。

    その小僧の身なりは良いことから、この地を治める領主の子と一目見てわかったのだが、どうやら弟が生まれてから、母親から不憫に扱われておったらしい。

    それで我はその小僧に擦り寄った。
    なに、取って喰らおうなどとは微塵も思っておらんかったわ。

    だがその隻眼が我を捕らえたとき、大きく揺れておった。
    そしてそのまま怯えたように見つめておったよ。

    我を見て、怯えたように「あやかし?」と呟いた。
    なるほどそうきたかと思ったわ、そうその時代、我らは「あやかし」と呼ばれておった。

    その時の人は、天下を掌握せんと争う戦乱の世。
    今は「ぽけもん」と呼ばれる我らも、このときは人を脅かす「あやかし」であった。

    だが我は気にせずその小僧に擦り寄った。
    小僧も安心したのか、私に身を預けてひとしきりに泣くと、そのまま寝息を立てておった。

    そのあと迎えの従者がくるまで、我はその小僧を見守っておった。
    命を狙う者がおれば炎で脅かしたあと、1つ吠えてやればそのまま逃げよった。

    だからじゃろう、そのあときた従者が感謝の言葉を述べおった。
    どうやら命を狙ってきよった者は、小僧の母が雇った忍びの者らしい。

    そして小僧は従者に連れられていきよった。
    こちらを隻眼で見てきたが、我はそれを一瞥して、その地を離れた。

    それから暫くして、その小僧が一国の主になったらしい。
    あれから実の父と母を殺めたが、それでも悔いなく生きておった。

    その地を愛し、民を愛しておったからであろう。
    幼少の頃に抱いた憎悪を愛情に変え、和平を求め、死が潜む戦場を竜の如く舞ったという。

    人の子よ、憎悪を抱いてはならぬ。
    その者のように、憎悪を愛情に変えて、生と向き合うことだ。

    人の子よ、これは史実であり、神語りではない。
    そう、一匹の語り部九尾の戯れ言よ。


    +あとがき+

    キュウコン独白の小説です。
    民俗ではなく歴史です。
    ここで出てきた”小僧”は、奥州筆頭である伊達政宗の幼少時代の史実を脚色して書きました。
    民俗学系になぜか対抗心が燃えてしまし、日本史系の小説で攻めてみました。
    それに歴史好きなんで書いてて楽しかったです♪


    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】


      [No.868] Re: 翡翠の竜神 投稿者:NOAH   投稿日:2010/10/28(Thu) 17:23:55     73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    おや人の子、この竜に何用か。

    なに?紅と藍が目を覚まし、我を忘れておると??

    なるほど・・・・・・2人の男が、自らの野望のために起こしたと・・・・・・。

    フフ・・・・・・昔を思い出す。

    昔、この地の者が青と赤に分かれて争っておった時期があった。
    その者たちの総領は、藍と紅を起こしかけた。

    そして我直々に、力を見せつけ争いを止めた。

    だが・・・・・・人はまた、過ちを犯してしまったのだな・・・・・・。
    致し方あるまい、もしまた、人が過ちを犯したのであれば、
    その者たちを正しく導いてくれと頼まれたのでな。

    人の子よ、空より出しこの翡翠の竜、藍と紅を沈め、
    また人を導き正そう。

    我が名は翡翠の竜・・・・・・レックウザ成り。



    +あとがき+
    続き書いてみました
    そしてお目汚しだなんて書いて申し訳ありませんでしたぁぁぁ!!!
    NO.17さんは憧れの方でしてぇはい・・・いずれは自分のも見ていただきたいと思ってたのでもうすごく感激です!!!!

    あ、ちなみに今回の続きはポケモンエメラルドの場面を小説にしてみました。
    勢いで書きました。NO,17さんの言葉通り勢いって本当、大切ですね。

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】


      [No.867] 【かき乱してみた】10,29話はそのままに修正  投稿者:てこ   投稿日:2010/10/28(Thu) 03:21:01     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     

     激しい雨が降り続いている。ここまで、急に天気が崩れるのは、いくら山だと言っても珍しい。この山はそれほど険しくはないが、天気によって山と言うのは豹変するものなのだ。遭難、土砂崩れ、落下――。雨は、足元を悪くし、視界を狭め、体温を奪う。
    「何か起こるな」
     そんな胸騒ぎがした。とびきり悪い、何かが起こりそうな気がした。今夜、自分は眠れるだろうか。いや、今夜自分が生きている保障などないのだ。自ら危険な場所に赴く、そんなことが仕事なのだから。

     どこかで獣の吼える声がする。遠吠えとは違うその吼え方は、レンジャーの訓練を受けたポケモンだけが発する吼え方だ。深呼吸をして、耳を澄まし、雨の音の中から吼え声だけに全神経を集中させる。
     ――増援。

     やはり。傍らに居た相棒も険しい顔をしていた。うむ、頼むぞ。
    「行こう、あの場所へ」
     相棒の左手をしっかりと握り締め、俺は目を閉じた。余計なことを考えると、普段からアレが下手な相棒の成功率がさらに下がってしまう。はやる気持ちを抑え、無心、無心と心の中で唱えた。内臓だけが浮くような気持ちの悪い心地。徐々に、意識が遠のき、ぷつんと切れた。

    「大丈夫ですかって……ぅわーっ!!」

     気づくと、俺は2メートルほど藪の中をずり落ちていた。泥だらけである。相棒はちゃっかり地面のあるところに着地したらしい。泥だらけの俺を見て、両手を合わせて申し訳なさそうにしている。テレポートミスってごめん!みたいな。

     ……。

     ――――

    「はぁはぁ……増援に参りました!――のポケモンレンジャーです!」

     「おう」と力強い言葉が返ってきた。一人は強そうなトレーナー、毛一人は同業者。そして、おそらく彼らの手持ちであろう逞しげなポケモン達がトロピウスの背中に乗せられた一人の少年を囲んでいる。少年に意識はなさそうだ。少年の身体に大量の出血や、大きな傷は見られなかったが、見えないところが余計に怖かった。小さな、ヒトカゲが彼の力なく下がった手を握り締めている。
     
    「少年とヒトカゲが土砂崩れに巻き込まれました。ポケモンは無事ですが、少年の様態が危険です」

     アブソルを従えたレンジャーが言う。短い言葉だが、無駄がなく、不足した情報もない。目の前の二人はどちらも、本当に危険な状況を何度も切り抜けてきたような人たちなのだろう。互いのやり取りも、することにも、無駄がなく速く、正確だった。

     手袋をはずし、少年の身体に触れる。ふむ。体温が低い。意識レベルも低い。確かに危険だ。生死を彷徨うという状況ではないが、すぐに、病院で手当てを受けたほうがいいだろう。ついさっきまで大丈夫そうだった状況が一気に急変することだって、ありえないわけではないのだ。
     それに、また何かが起こらないとも限らない。今すぐにでも、この場所を離れた方がいい。
     だが、降り続く雨がそれを阻んでいる――わけか。雨は先ほどよりも、強くなっている。雲も黒い。雷雲である可能性が高い。下手に飛べば、少年もトロピウスも、命を落としかねない。
    「なるほどねぇ……」
     だとすれば、少しでも時間に余裕をもたせるほかあるまい。
     俺の腰につけたモンスターボールから、一匹の小さなポケモンが飛び出した。魔女のような帽子の頭に、ひらひらとした紫の身体。ムウマージ。
     彼女は、ボールから出るやいなや俺を少しだけじっと見つめて力強く頷いた。自分のすることは、ボールに出る前から気づいていたのだろう。すまん。心の中で俺は謝った
     弱った少年の上に覆いかぶさるように俺のムウマージが擦りつく。そして、少年の身体と自分の身体を密着させるように、張り付いた。

    「な、何を……?」
     リオルを連れたトレーナーがが不信そうに俺を見る。大丈夫ですと、小さく答えて俺は少年とムウマージを見ていた。ゆらりと、不思議な力が動く気配を感じる。徐々にムウマージの身体が光をおび、やがては少年をも包み込む。数秒程たって、ムウマージは少年から離れるとふらふらと俺のもとへ戻ってきた。俺は、頭を一撫でして、モンスターボールに戻した。ありがとう、おつかれさま。ゆっくり休んでくれ。

     少年の呼吸が、先ほどに比べて穏やかになったように感じる。身体も温かくはないが、冷たくもなくなっていた。これで、少しは時間が稼げるはずだ。

    「様態が……何をされたのですか?」
    「いたみわけですよ、いたみわけ」

     いたみわけは、自分の体力と相手の体力を同じにする技。つまり、ムウマージの体力が少年に分け与えられたということである。もっとも、この技を使うレンジャーは少ない。自分のポケモンを傷つける、犠牲にするようで嫌だと言われるし、俺は何て冷たい奴なんだと思われていることだろう。けれど、俺もムウマージもポケモンレンジャーの端くれとして、一生懸命に誰かを助けたい。そんな気持ちでやっているから、まあ、しょうがない。

     遠くの空は、白い。きっと、あと少しすれば雨が弱まるはずだ。いや、弱まってくれないと困る。この、黒雲が通り過ぎる、もしくは、少しでも雨が弱まるまで、少年がもってくれれば、大丈夫だろう。
    「やっぱりポワルン……」
    「気を抜くんじゃないぞ」
    「り、了解です!」
     トレーナーもポケモンレンジャーも、今まで険しかった顔を少し緩ませ、同時にポケモンたちもほっとしたように、笑顔を見せた。何とか、最悪な状況は避けられそうだ。その場には、微かな安堵の空気が流れていた。その時だった。


     アブソルが急に立ち上がった。全身の毛を激しく逆立てて、赤い赤い目を大きく見開いて――

     ――まさか!

     アブソルは吼えた。救助を求める声ではない。それは恐ろしいほどに響く――災いを知らせる声。

    「逃げろ!!」

     誰が言葉を発したのか、はたまた自分が発したのか。大木の折れる音がする。視界が斜めに揺れる。青年のレンジャーが何か叫んでいるらしいが、何も聞こえない。藪も木も地面も、下へ下へと、動き始めた。



    ――
    何かかき乱してすみませんすみませんすみまえ(ry
    ここでこそ、いたみわけだっ!とひらめき、救助してみました。

    なんか、すみません!


    10月29日 若干修正させていただきました
    11,23 クーウィさんのトレーナーさんのこと、レンジャーさんと書いておりました。間違えちゃっててすみません……。


      [No.866] No.025の計画 投稿者:巳佑   投稿日:2010/10/28(Thu) 02:17:47     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    『なみのり』ができるようになった。
    『そらをとぶ』ができるようになった。
    『フラッシュ』はノーマルタイプだけど電気を扱うモノにしてみたら当然だし。
    それと『かいりき』も『いわくだき』だってできるし……。
    次はどんな『ひでんわざ』を体得してみようかな。

    『たきのぼり』の場合。
    ……滝に打たれるだけで、そのまま修行に直行になってしまいそうだなぁ。
    自慢の商売道具のサーフィンボードでも流れに逆らって
    垂直に上がることはできないしね。

    『きりばらい』の場合。
    ためしに特大のうちわを使って霧を飛ばそうかとやってみたけど……。
    腕が疲れるだけで霧は全然晴れてくれなかった。
    せっかくダーテングさんが作ってくれたうちわなのになぁ。

    『ダイビング』の場合。
    ……ごめん。息が続かないというのもあったけど、
    この前、ためしにやってみたら無意識に電撃を放っちゃったみたいで。
    「電気タイプが水中に潜るんじゃねぇぞ!!」って
    怒られたから却下ということで。
    ……ギャラドスさんの説教にはもうこりごりっていうのが本音だけど。

    『うずしお』の場合。
    …………おぼれそうになったので、これも無理。
    しばらくはニョロモ君の体のうずを見たくなかったぐらい、
    トラウマになっちゃったのはここだけの話だよ。

    『ロッククライム』の場合。
    ……うーん。
    木に登るのと崖を登るのとじゃ勝手が違うみたいで。
    僕、森育ちだからさ。崖には慣れてなくて……。
    それとどうしても時間がかかりすぎてしまったから、
    これもどっちかって言われたらアウトだよね。


    「……というわけで、僕は次、この『ひでんわざ』でいこうと思ったんだ」
    友達のコラッタ君に僕はようやくたどり着いた一つの答えを切り出した。
    「え〜と、ピカチュウ? 
     なんでおれっちの頭の上にマトマの実を置くんだい?」
    「いい? コラッタ君、そこから絶対に動いちゃだめだよ?」
    なんだかコラッタ君が戸惑っているようだけど、
    僕はこの『ひでんわざ』を使うために、ある技を使った。
    僕の黄色のしっぽが鋼色に上塗りされていきながら輝きだす。
    「ピカチュウ? それ、『アイアンテール』じゃあ……?」
    『アイアンテール』を水平切りのごとく思いっきり振ってからの……。
    「『いあいぎり』!!」



    「……いいかい、ピカチュウ? 
     こ・れ・は・あくまで『アイアンテール』だから『いあいぎり』って呼べないよ」
    「そうかぁ……。いい線だと思ったんだけどな。マトマの実はちゃんときれいに切れたのにな」
    「……おれっちの頭にもハゲができたしな」
    「…………」
    「…………」
    「ごめんね?」


    うーん、新しい『ひでんわざ』を手に入れるのは難しいなぁ。
    でも、もう少し考えてみたら……なにか思いつくかもしれないし。
    僕の新しい『ひでんわざ』を探す考えゴトはまだ終わりそうにもなさそうだ。



    [書いてみました]
    私はまだブラックホワイトを手に入れてないので、
    最新の『ひでんわざ』事情などは知らないのですが書いてみました。
    『○○○○(ひでんわざ)ピカチュウ』が次出るとしたら……!!
    と期待を込めながら。(笑)
    ちなみにNo.025はピカチュウの(全国の)番号です。
    念の為に書いておきますね。

    ありがとうございました。


    追伸:ちなみにハンドルネームの読み方に質問がありましたので
       ここで書かせてもらいますと、
       私の『巳佑』は『みすけ』と読みます。
       これからもよろしくお願いします。

    それでは失礼しました。


      [No.865] すげえ! 投稿者:サトチ   《URL》   投稿日:2010/10/27(Wed) 20:47:03     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    救助に行きたいなあ・・・とか思ってるうちに、ぼんぼん救助が馳せ参じてるよ!(^^;)思わずバンバン拍手しちゃいました。
    みんないい人ばっかりだなあ(笑)これなら遭難者は無事におうちに帰れそう。
    [書いてみた]の思わぬ可能性をひしひしと感じました。そして皆様の神速恐るべし!

    ・・・それは置いといて、ワタシ遭難したのはなんとなく女の子だと理由もなく思い込んでいたので、
    クーウィさんとこのシンオウトレーナー君は大胆にむいたなー(笑)と思っていたのですが、
    CoCoさんとこのレンジャー氏が到着して少年と判明してあり?と思ったら、
    確かに兎翔さんの作品にはどちらとも書いてなかった!(笑)

    ええもん見せていただきました!


      [No.864] Re: カゲボウズ、そして身代わりと人形 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/27(Wed) 19:39:10     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    クーウィさん、こんばんは!


    > ・・・自分は以前は、『カゲボウズ』や『ジュペッタ』といったポケモン達について、それほどフューチャーする事はなかったのですが・・・
    > このサイトにおいて巳佑さんや管理人さんを始め、てこさんやCoCoさんら大勢の方の作品を拝見していく内に、かのポケモンが思いもよらぬほど深くて大きな可能性と要素を含んだ存在であることを、つくづく思い知らされました。

    当時ホウエン図鑑で見た
    恨みの感情を食べるって設定に何かを感じてしまいまして。
    うっかりツキミヤ君というキャラクターを創作してしまったあたりから
    私の人生にはカゲボウズが憑きまとうことに……
    ああ、愛しいカゲボウズ。
    ジュペッタもそうだがなんでポケドール化しないのか。


    > ・・・そして遂に、『豊縁昔語』シリーズの続編が出現してくれましたですね。
    > しかも、待望の『飽咋』の続編・・!
    > 待ってたぞあの男・・!
    > あのインパクトのあるキャラクター性から、何時かは再登場してくれるんじゃないかと期待してましたが・・・ここで来たか。

    再登場はさせたいと思っていました。
    ですが、このタイミングで出てきたのは完全に巳佑さんとカゲボウズのせいですw
    うまいこと続いてくれればまた出てくるんじゃないかな?
    竜を見た上人とポケモンを育てるのがうまい赤の男とかもまた出したいです。


    > しかも、下級貴族であるだけじゃなくて呪術師でもあったのか・・・

    たしかかの有名な安倍晴明も貴族で、陰陽師だった、はず。
    「男」についてはいろいろ考えているんですが、
    昔話なのをいいことに割合やりたい放題です。
    今後進めていくにあたって変な矛盾点が出てこなきゃいいけども(笑)。


    > 『身代わり』という技は、バトルシーンを描く時には非常に便利な技ですが、いざ具体的な描写や説明を用いようとすると、とにかく手強いんですよね・・・(苦笑)
    > でもこうやって意味付けをされたものを拝見していると、まさに『人形』本来の意味や来歴にもピッタリと当てはまっていることが、改めて理解出来ました。

    普通のカゲボウズを災厄の的にするのはあんまりだよなぁ……
    などと思っていた矢先、ひらめいた(笑)。



    感想ありがとうございました〜









    ひとりごと
    再登場って言えば、現代の話である「聖地巡礼」にちょこっと上人の話が出てきてることに気がついてる人は何人いるんだろうか?w


      [No.863] Re: 豊縁昔語―母の形見〔勝手に書いてみた〕 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/27(Wed) 19:22:45     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    No.017です!
    感想ありがとうございます。


    > パソコンとネットの電源を入れ、ポケストのページへ。

    通学前に覗いてみようとは管理人冥利につきます。
    ありがとうございます。


    > ……まさか、『ひとがた』から約5時間後に、このような素敵な物語が生まれるとは思いもよりませんでした。

    いやぁもう受けた刺激がハンパじゃなかったです。
    これはよい、これはいいぞ! なんか出来ないかなぁむにゃむにゃとか思っているうちに
    本当に何かできてしまったでござる。
    これがカゲボウズパワーか。


    > 「お山に帰る」という表現は『山中他界観』に基づいていたりするのでしょうか? 
    割合何も考えないで決めたので、基づいているわけではないのですが、
    でもお山に帰るって日本人的な発想ですよねきっと。


    > 勝手に書いていただいても全然大丈夫ですよ……というより、
    > この物語とNo.017さんにありがとうの気持ちでいっぱいですよ!
    > 朝までお疲れ様です!
    > そして、ありがとうございました!

    いやいやこちらこそありがとうございました!


    > 追伸:結論『カゲボウズの魅力は計り知れない』

    ここの住人の狐好きとカゲボウズ好きは異常w
    みんなカゲボウズにはまるといいよ




    追伸
    そういえば巳佑さんってなんて読むんですか?
    (今更すいません)


      [No.862] あめが ふりつづいている 投稿者:CoCo   投稿日:2010/10/27(Wed) 19:18:17     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     

     兎翔さま、どうも好き勝手に申し訳ありません。
     とても自分好みのやわらかくせつない素敵な作品を書かれていたので、ほくほくしつつ本当はいつもどおり無言拍手で通り過ぎようとしていたのですが、通りがかりのトレーナーさんが救助に向かわれているのを見かけてしまって、するとそのあまりのクオリティにアブソルが(以下略)。
     クーウィ氏の研修中レンジャーなんか遥かに凌ぐ救助劇に水を差してしまったかと思っていたのですが……

    【もっとかき乱してもいいと思うのよ】

     クーウィさま、華麗なる救助劇をありがとうございました。あの手際はぜひうちの研修生にも見習わせます。チルタリスしぼりたい。

     そしてイケズキさま、もしやそれは……。
     レンジャーと聞いて彼しか思い浮かばなかった結果であります。
     拙作を読んでいただいて、なおかつ……と嬉しい限りでございます。本当にありがとうございました。


    【おうちに帰るまでが救助なのよ】




    (サトチさんのお言葉から追記)
     つい思い込みで少年と書いてしまいました。女の子でしたら本当に申し訳ない、すぐに本文を直しますので。


      [No.861] カゲボウズ、そして身代わりと人形 投稿者:クーウィ   投稿日:2010/10/27(Wed) 15:26:58     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    初めましてです。  ・・・しかし、今は時間がヤバイので・・いきなりで失礼ではありますが、兎にも角にも感想に・・・(汗)

    先ず『ひとがた』は、短いですがとても実感の伴う作品でした。

    ・・・自分は以前は、『カゲボウズ』や『ジュペッタ』といったポケモン達について、それほどフューチャーする事はなかったのですが・・・
    このサイトにおいて巳佑さんや管理人さんを始め、てこさんやCoCoさんら大勢の方の作品を拝見していく内に、かのポケモンが思いもよらぬほど深くて大きな可能性と要素を含んだ存在であることを、つくづく思い知らされました。

    更にまた一つ、新しいものの見方を頂けた作品。 
    どうも、ありがとう御座います。


    ・・・そして遂に、『豊縁昔語』シリーズの続編が出現してくれましたですね。

    しかも、待望の『飽咋』の続編・・!
    とにかく、先ずは目出度いと!()


    待ってたぞあの男・・!
    あのインパクトのあるキャラクター性から、何時かは再登場してくれるんじゃないかと期待してましたが・・・ここで来たか。
    しかも、下級貴族であるだけじゃなくて呪術師でもあったのか・・・

    人の身で『身代わり』を司り、生み出す術・・・

    『身代わり』という技は、バトルシーンを描く時には非常に便利な技ですが、いざ具体的な描写や説明を用いようとすると、とにかく手強いんですよね・・・(苦笑)
    でもこうやって意味付けをされたものを拝見していると、まさに『人形』本来の意味や来歴にもピッタリと当てはまっていることが、改めて理解出来ました。

    ネタや思考の土台としても、今回のお二人の作品は非常に有益で、得る所が多かったです。


    楽しませて頂き、ありがとうございましたです〜  


      [No.860] 増援だ、増援が来たぞ・・! 投稿者:クーウィ   投稿日:2010/10/27(Wed) 14:56:17     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    一日経って見てみると、なんと増援の方が到着なされておった・・! 
    CoCoさん、御助力の程、かたじけのう御座いますです。  ・・・レンジャーとは、まさに願っても得られないような人材ではないか・・! 

    『適時の救援により、現地工作隊は勇気百倍。 
    誓って当地を死守し、期を見て山積せし障害を排除、万難を排して今次作戦を完遂に導くよう、死力を尽くすものなり』

    ・・などと言うわけではありませんが・・・ 
    良かったな、野良トレーナー。  この道の専門家の方がおいでたぞ!

    アブソルどんは流石災いポケモン。  土砂崩れもきっちり守備範囲。
    これなら、多分二次災害で全員抱き合い心中とか言う事態も無いでしょう・・・(笑)


    これで何とかなる・・・筈だ、と思う。  ・・・しかし、手が増えたのを良いことに、「更にかき回してみたいかな」、と言う不純な思いも、何かしら頭をもたげて来ないでもない・・・(苦笑  爆)

    重ね重ね、ありがとう御座いますです・・・



    兎翔さんには、この度はどうもお騒がせ致しました・・・(汗)

    正直書いていて、「このお話が『フランd(中略)の犬』見たいなお話だったら、どないしように・・・?」とか思ってましたので・・・
    取りあえずは、今の所ストーリー崩壊を起こしてはいないような感触を頂いたので、ほっと胸を撫で下ろした次第です。

    慣れもしない者が勝手に場をかき回してしまって、大変失礼致しましたね・・・  
    お話自体は、ヒトカゲのけな気な思いが静かに滲み出ていて、とても好きなタイプの作品でした。


    それでは・・この辺で、失礼致しますです・・・


      [No.859] どういうことなの…… 投稿者:兎翔   投稿日:2010/10/27(Wed) 04:02:56     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    朝起きたら、自分の思いつき書きなぐり小説の主人公が救助されていた。
    びっくりしました。
    それもお二人に…!
    ありがとうございます!ありがとうございます!とりあえず助かってよかったなぁ主人公!これでヒトカゲや手持ち達を泣かせずに済むぞ!
    これをハッピーエンドに持って行くのは主人公を窮地に追いやった私の役目でしょう。
    一生懸命考えてきます!
    取り急ぎ、お礼と感動の意を表明しに。クーウィさん、CoCoさん、そして救援信号を発信してくれた鳩さん(笑)、ありがとうございました!


    【もっと救援してもいいのよ】


      [No.858] Re: 大丈夫だ、問題な(ry 投稿者:イケズキ   投稿日:2010/10/27(Wed) 02:01:53     30clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    感想ありがとうございます!

    > 全く問題ないですよ!
    > ここに構想から約一年かかってようやく完成させた人間がいますから。
    > むしろ私からしたら早いという。
    >
    制作ペースなんてやっぱり人それぞれですよね。
    最近僕なんかからしてみたら、信じられないペースで書かれる方がいらっしゃるもので、気にしすぎてしまったかもしれません。

    >
    > 細かな時間が書いてあるあたり、小説というより日記とか行動記録みたいだな、と思いました。

    その点はずっと気にかかっていました。
    元から「一日」の行動記録みたいな話にしようとは考えていたのですが、これを果たして小説として投稿してもいいものなのか、内心びくびくしています。


    > 最後に、細かくてすみませんが誤字脱字の報告です。
    >
    ご指摘ありがとうございました。
    早速訂正します。


      [No.857] 見事な連携プレー 投稿者:砂糖水@携帯   投稿日:2010/10/27(Wed) 00:37:06     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    皆さん見事過ぎる連携プレーですね!

    とりあえず、助かりそうでよかったです。
    私だと多分、……なことになっちゃいますもん。

    小説の中でも見事な連携で救助をしていてすごいです。
    私も複数のキャラをきちんと書けるようになりたい…!



    皆さんの連携プレーをにやにやしながら読んでいた人間がお送りしました。


      [No.856] 大丈夫だ、問題な(ry 投稿者:砂糖水@携帯   投稿日:2010/10/27(Wed) 00:21:27     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    全く問題ないですよ!
    ここに構想から約一年かかってようやく完成させた人間がいますから。
    むしろ私からしたら早いという。


    では感想をば。

    主人公の、多少のフィクションどころじゃない現実の改変っぷりに笑いました。
    どこか考え方が可笑しくて、なんでこーなるの!
    みたいな。

    その主人公のみぞおちに体当たりかますジャノビーが可愛いです。
    拗ねてるジャノビーも可愛いです。

    細かな時間が書いてあるあたり、小説というより日記とか行動記録みたいだな、と思いました。

    全体がコミカルな調子で進んでいってとても楽しく読めました。



    最後に、細かくてすみませんが誤字脱字の報告です。

    > ツタージャをもらってトレーナーの旅を初めた。
    →始めた。

    > 一大スペクタクル巨編の一節してしまおう。
    →一節にしてしまおう。

    > 顔を洗い歯を磨いた私は、さっそく何もするこが無くなってしまった。
    →何もすることが無くなってしまった。

    > ―ジャノビーはいつも負けた時、どうして感じていたのだろうか。
    →どう感じていたのだろうか。


    という感じだと思います。

    それでは長々と失礼しました。


    【私にも誰か早く書くコツを教えてください】


      [No.855] Re: は、早い! 投稿者:   《URL》   投稿日:2010/10/26(Tue) 23:32:25     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 楽しいお話ありがとうございました〜。

    こちらこそ、もったいないくらいのお誉めの感想ありがとうございます。
    当方うかれています。非常に浮かれています。

    > は、早い! それになんて時間!
    > チャット中に書いてたなんて恐るべしきとかげさん。

    眠すぎて記憶がなかったりします。


      [No.854] 白黒円舞曲 投稿者:紀成   投稿日:2010/10/26(Tue) 22:31:12     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ひっそりと、それは始まっていた。
    来るはずの何かが来ない。そこにあるはずの物が無くなっていく。
    空は黒に染まり、白の星はそれに包まれて光も届かない。
    気温は常に冷たく、冬のように凍り付く。

    朝も昼も夜も来ない。その忙しさの中で、人々は気付いていない。
    コンクリートジャングルからカラフルなネオンが消えた。
    光の色が消えた。赤は黒に、黄は白に、青は灰色になっていく。
    それでもまだ、人は空を見上げることはない。
    ・・モノクロの世界に気付くことはない。


    小高い丘のベンチで、ミコトとダークライはチェスをしていた。相手は白、こちらは黒。
    「君の望むような世界になった。満足かい?」
    『どういう意味だ』
    「この世はもう終わりだよ。色が無くなった。朝も、昼も、夜も分からない。常に曇天みたいな天気だ」
    ミコトが騎士を置いた。これで王の逃げ場は無い。
    「チェックメイト」
    駒はもう動かない。ミコトはチェス盤を片付けはじめた。

    「僕の目に映っている世界は本物?」
    『そうだ』
    「この世界は現実?」
    『紛れも無く』
    「この世界を生きるのは誰?」


    『・・お前だ』

    風が吹いた。木々の葉がざわざわと揺れる。
    「安心したよ。夢じゃないんだね。本当なんだね」
    『黒と白が混ざり合った世界。嘘も本当も、悪事も全てごちゃまぜだ。
    何が正しくて何が違うのかをこれからは自分で判断していかなくてはならない』
    街の方には光がある。白い光が。
    「悪いことか良いことか、判断しないといけないんだよね」
    『ああ』
    「じゃあ聞くよ。そうだなぁ・・」
    ミコトはダークライの目を覗き込んだ。


    「僕が望んだことは、正しかったのかな」


    『私に聞くのか』
    「答えてよ」
    『どちらとも言えない』


    ミコトは立ち上がった。
    『何処へ行く』
    「ここにいてもね。っていうか、頭がおかしくなりそうだよ」
    乾いた声が響く。雫が頬を伝う。
    「これは確かに僕が望んだ世界だ。モノクロの世界にしたのは君だけど、それは僕が望んだことだ」
    雨が降り出した。服に黒い点がついていく。
    「これから何処へ行こうか。モノクロになった芸術品も、きっと綺麗だよね。ああそうだ。フランスに行こう。エッフェル塔を見て、セーヌ河のほとりを散歩するんだ」
    ミコトは歩き出した。

    「・・僕にはもう何もいらない。このモノクロの世界で永遠に生き続けるんだ」

    (私は彼女に出会い、彼女は私を受け入れた。そして願いを叶えた。
    その事実は変わらない)


    『だから、私も付いて行こう』

    (彼女は幸せですか)
    (さあ)
    (彼女は不幸ですか)
    (さあ)


    (彼女は後悔していませんか)
    (・・はい)

    モノクロの世界を、一人と一匹が巡る。
    永遠に。
    電池が切れないオルゴールのように。


    そのオルゴールの上で踊る、踊り子の人形のように。

    『モノクロワルツ』


    ーーーーーー
    [描いて欲しいんだぞ]
    [幻影電話も描いて欲しいんだぞ]

    幻影電話にタグを付けるのを忘れてたので、同じような雰囲気のこれに付けます。


      [No.853] NOVEL:TYPE、な1日(後) 投稿者:イケズキ   投稿日:2010/10/26(Tue) 22:08:21     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    <14時00分>

     ジャノビーの体力はすぐに回復した。
     問題は心の傷だ。
     勝利宣言までしたあとにボコボコにやられたことで、プライドが傷ついてしまったのだ。
     今は昼食も食べず、部屋の角でふて腐れている。
     ジャノビーというのは、種族的に元来自尊心の強い所がある。そのことは、私のジャノビーにしても例外ではない。こんな状態になると、下手したら一週間拗ねたままなんてこともある。

     「ジャノビー」
     と、呼んでみても

     「・・・・・」

     完全に無視。こちらに目を向けすらしない。

     −これは、困ったな

     そろそろ特訓を始めたいのだが、こう臍を曲げられてはいつまでも始められない。
     仕方ないので、私は他のポケモン達だけでも練習を始めておこうと思った。
     
     別にこういうことは初めてじゃない。
     プライドの高いジャノビーは、バトルで負ける度に拗ねだすが、時間が経てばまた元気になる。

     「ジャノビー、先に練習始めてるから後でくるんだよ」

     ジャノビーは一瞬ピクンと体を震わせたが、振り替えろうとはしなかった。

     ―んー、やっぱりダメかぁ

     できればここでついて来て欲しかったが、そう上手くはいかない。


    <15時24分>

     私はあのバトルフィールドにまた来ていた。練習ならここが一番しやすい。
     ここに来てもうだいぶ経つが、私はまだ練習を始めていなかった。
     もう何度目になるだろうか。私はまたフィールドの入り口に目をやり、ため息をつく。

     別にこんなこと、少しも珍しいことじゃない。
     
     拗ねたジャノビーに付き合っていたら、いつまでたっても先へ進まない。だからいつもこんな時、私はジャノビーに自力で気を取り直してもらうことにしている。
     私はとにかく早く結果をださなければならない。だから、個人的な事情にかまってはいられない。
     今さらそれを間違いとも思わない。

     私は観客席から立ち上がった。
     バトルフィールドへ向かう階段を一歩一歩下っていく。
     私はまた、入り口を見た。

     ―気にしちゃダメだ。

     ポジションに着き、腰からボールを一つ取り出して開閉ボタンを押す。
     ここで私は手の中で膨らんだボールを見た。
     
     ―このボールにジャノビーはいない。

     私は再びボールのボタンを押し、腰のベルトに戻した。


    <15時46分>

     負けた理由が自分にあるとわかっているからか、ジャノビーに早く新技を覚えて欲しいからか、それともノベルタイプな自分がこの方が感動的だと思ったからか。
     
     理由はこの際どうでもいい。とにかく私は部屋に戻った。


    <15時55分>

     相変わらずジャノビーは拗ねている。

     好きな食べ物をあげてみても、無視

     気分転換に散歩しないかと誘ってみても、無視

     あんまり拗ねていたらここに置いて行ってしまうぞと脅してみても、無視

     ―まったく、どうして私がジャノビーに無視され続けなければいけないのだ。バトルに負けたくらいで、そんなに落ち込まなくてもいいのに。


    <16時07分>

    「いい加減にしろっ!」
     狭い部屋に私の怒号が響いた。

    「いつまでそんなことしているつもりなんだ?
     お前のせいでみんな迷惑しているのがわからないのか!」

    突然の怒鳴り声に驚いたジョーイさんが、ドアの外からどうしたのかと聞いてくる声がする。

    −もう、うんざりだ
    私は悪くない。なのにどうして。どうしてジャノビーは私の言うことを聞かないんだ?どうして物事は私の思うようにいかないんだ?


    <16時21分>

     私は無理矢理笑顔を取り繕いジョーイさんを帰し、再びジャノビーと向かい合った。
     いや、正確に言うと向かい合ってはいない。相変わらず、背中を向けて拗ね続けるジャノビーに、私が体を向けているだけのことだ。

     −こっち向いてくれよ…

     話かけることはもう無くなった。


    <16時35分>

     ジャノビーが泣いている。

     これも今に始まったことではない。私がこの部屋に入った時から、ジャノビーが泣いていることは知っていた。向き合おうとしなかっただけで。

     ―ジャノビーはいつも負けた時、どう感じていたのだろうか。

     突如私の中で疑問が沸き上がった。
     そりゃ悔しい思いだったには違いない。私だって悔しい。でもジャノビーにはそれ以上に何かあるような気がする。
     ジャノビーは、なぜここまで負けたことを悔しがるのだろうか。
     ジャノビーと向き合おうとしてこなかった私には、それがさっぱり分からない。


    <16時56分>

     「ジャノビー」
     それまでの沈黙を破り、私はまた声をかけた。
     しかし、ジャノビーは反応しない。ただ静かに啜り泣くだけ。

     「そのままでいいから聞いてくれ。お前がどうしてそこまでさっきのバトルを気にするのか、私はどうしても分からない。それは、私の未熟さのせいなのかもしれないし、もしかしたらそれは、気にするお前が未熟なのかもしれない。」
     これまでとうって変わって、私は静かに話しかけた。

     「でも、バトルに負けたのは間違いなく私の未熟さのせいだ。私があの時幼い意地さえ張らなければ、さっきの勝負きっと勝っていた。だからジャノビー、その事を謝らせてくれ。」

     「ジャノビー、本当にすまない」


    (17:00)

     ジャノビーがこちらを向いている。私はやっとジャノビーと向き合えた。
     
     ジャノビーは泣いていなかった。
     目に涙をいっぱいに貯めて。それでも泣いてはいなかった。 

     私は嬉しくなってジャノビーに近づいた。


    (17:03)

     「ぐはっ、ごほっ」
     本日二度目のみぞおち体当たりが決まって、私は激しくむせた。
     
     ―なんでこーなるの!
     
     と、思いつつ体を曲げかけたが、曲げられない。ジャノビーが私の腹から頭を離さないのだ。
     私はジャノビーを慌てて引き離そうとしたが、その時シャツを通してじわっと伝わるぬくもりを感じその手を止めた。

     「特訓しにいこうか、ジャノビー」
     ジャノビーを引き離そうとしたその手で、私はジャノビーを軽く抱き込めた。



    (17:44)

    ここまで感動的な一日が今だかつてあっただろうか。

     私は今出港手続きを終えて、乗船時間を待っている。ジャノビーはバトルで負けたうさを晴らさんとばかりに特訓し、つい20分程前になんとジャローダに進化した。

     『現実は小説よりも感動的なり』

     −あぁ、間違いない。現実は今日の私なんかより、遥かに強くノベルタイプを貫いている。


    (17:51)

     私が乗る船の隣の波止場に、ある小さな田舎町へと向かう小さな船が停泊している。私が乗る船と比べたら、本当に親と子程の差がありそうな、ちっぽけな船だ。
     しかし、それはいつか私が乗ってみせると心に誓った船だ。

     その船に乗れば、きっとノベルタイプにならずにいても大きな感動を得られるだろう。

     しかし、私はまだその船に乗れない。
     未熟な私はまだ乗れない。


    (17:58)

    もうすぐ船がでる。行き先はカントー、クチバシティ。
    そこには見たことのないポケモンが沢山いて、ポケモンジムもある。忙しくなりそうだ。





     −忙しいな






     −いや、ちょっと忙し過ぎないか









    世の中には過労死というものがあり、忙し過ぎると死んでしまうらしい。







    (18:00)


    「多忙」な1日をどう過ごすか
     
    私は悩み始めた。


    ----------------------------------------------------

    だいぶ長いこと製作にかかってしまいました。
    構想始めたのが9月上旬ごろでしたので、我ながら遅すぎたと反省しています。

    かなり小説らしくないので問題があれば、連絡お願いします。

    【描いてもいいのよ】

    【批評してもいいのよ】

    【誰か早く書くコツを教えてください】


      [No.852] NOVEL:TYPE、な1日(前) 投稿者:イケズキ   投稿日:2010/10/26(Tue) 22:01:44     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「感動」のない1日をどう過ごすか。


     ここはとあるポケモンセンター。
     深夜0時。私は今日も充実した一日を過ごしてとても疲れている。今にも睡魔に負けてしまいそうだ。
     三十を超え、再出発してトレーナーになったまではよかったものの、やはり若い奴らに体力では敵わない。ライバル達がバトルの戦略について議論してたり、町の情報交換をしているなか、私は情けないことにいつも9時には寝てしまっている。
     そんな私がなぜこんな深夜まで起きているのかと言えば、「明日」の問題があるからだ。
     別に特段明日に何かがある訳ではない。
     この町にポケモンジムはないし、草むらも見てみたが目新しいポケモンはいなかった。定期船の出航日を間違えて、一日早くこの町に来てしまっただけの私がここですることは何もない。

     そう、何もない。しかし、その「何もない」が問題だった。

     トレーナーになってから5年。毎日毎日、体をボロボロにしてベッドに倒れ込む日々が続いている。だけど今の私は、サラリーマン時代には決して感じることのできなかった生きがいを感じている。幼い頃から親の言いなりだった私は、母の反対を押し切ってまでトレーナーになれなかった。

    私はそのことを社会人になっても後悔し続けていた。28の時、得意先との間で起こしたトラブルをきっかけに、私は会社をやめた。ポケモントレーナーになると言った時、当然親からは猛反対を受け、再就職してくれと母親からは泣きつかれた。
     しかし、私はその反対を押し切った。
     思えばそれは、私の人生最初で最後の反抗だったのかもしれない。
     旅立ちの日。私は夜逃げするように実家を抜け出し、アララギ博士の研究所まで行くと最初のポケモン、ツタージャをもらってトレーナーの旅を始めた。
     その日から一度も実家には帰っていない。
     帰れる訳がない。黙って家を飛び出してもう5年もほったらかしにしてしまっているのだ。まして私は、今だにジムバッヂを3つしか持っていない。早い奴なら1年でポケモンリーグに挑戦しているというのに。

     とにかく私は、この5年間波瀾万丈すぎる毎日を送ってきたのだ。
     いまさら、「何もない」は耐えられない。

     人は、感動がないと死んでしまうらしい。
     昔嫌々通っていた学校でそんな話を先生から聞いた。
     先生は嫌いだったけど、その話にだけは納得できた。
     この星が終わる日、最後に生き残れるのは感動できる人間だけ。

     ―あぁ間違いない。私は明日死んでしまうだろう。

     こうなったら何がなんでも、明日を「感動」溢れる日にしないといけない。私はまだ死ぬわけにはいかないのだ。

     ここで私は、昔読んだ小説のことを思い出した。
     つまらない学生生活を送っていた私にとって、本だけが唯一の救いだった。本だけが私に、生きるための「感動」を与えてくれた。

     もしも、私が小説の主人公なら、きっと毎日が感動でいっぱいの日々なのだろう。

     「そうだ!」
     突然頭の中に妙案がひらめき、私は手を打った。

     ―自分を小説の主人公にすればいいんだ!

     つまりこういう事だ。
     私は明日起こるあらゆる出来事を、小説の1ページとして捉えるのだ。
     たとえ、どれだけありふれた事でも、どれだけくだらない事でも、私の中だけで壮大かつ感動的な一大スペクタクル巨編の一節にしてしまおう。
     「ノベルタイプ」な人間になるのだ。
     無茶苦茶な話かもしれないが、昔から本ばかり読んできた私ならきっとできる。

     私は「明日」を乗り切る方法を見つけると、そのまま吸い込まれるように眠りについた。


    [06:00]

     昨日あれだけ夜更かししたというのに、朝起きる時間はいつもと同じだった。
     私はベッドから上半身だけを起こすと、「今日」がどういう日かを思い出してげんなりした。

     ―これではいけない。私は今、ノベルタイプなんだ。

     私は重たい体を持ち上げ、気分を変えようとカーテンを開けた。空はどんよりと曇っていた。

     「違う、違う!」
     私は慌てて言った。

     『いつもと違う気のする今日に、私は期待で胸をふくらませた。颯爽とベッドを飛び出しカーテンを開けた私に、サンサンと降り注ぐ太陽の光。耳を澄ませば、マメパト達の鳴き声や風に揺れる木々の音が聞こえてくる。その光景に私はニッコリと微笑んだ。』

     ―これでいい。少しばかり現実と違う所もあるが、まぁ小説なんだから多少のフィクションはつきものだ。


    [07:05]

     顔を洗い歯を磨いた私は、さっそく何もすることが無くなってしまった。早くご飯が食べたかったが、ポケモンセンターの朝食は7時半にまでならないとでない。
     さっき開け放っておいた窓から朝練の音がする。本当は私も朝練をすべきなのだが、中年がアレをやると体を壊す。いくら何もない日だからといって、一日中ベッドで寝込むのは御免だった。
     あまりに何もすることが無いので、ボールからポケモンを出してみた。
     ジャノビーはボールから出してもまだ寝ていた。

     「ジャノビー」
     と、私が一言呼びかけると、ピクンと耳が動かしてジャノビーが目を覚ました。

     ―さすが最初のポケモン。これぞ築きあげてきた信頼。

     私は嬉しくなってジャノビーに近づいた。
     ジャノビーは私のみぞおちに体当たりした。

     「違ーう!」
     私は強烈な不意打ちを受け、体をくの字にしてむせ込んだ。

     『ボールから出てきたジャノビーはまだ眠りの中にいた。ボールから出てもまだスヤスヤ眠り続ける姿を見、私はフフッと笑ってジャノビーに声をかけた。
     彼の耳が、私の声を捉えてピクンと動くと、彼はウーと伸びをして目覚めた。私は伸びで上がった彼の体を包み込むように抱き上げ、「おはよう」と笑顔で言った。』

     ―完璧。これぞ最上の朝。これからの一日もういい予感しかしない。


    [07:28]

     寝ていた所を起こされて、すっかり不機嫌なジャノビーをやっとこ宥めすかし、私達は食堂に向かっていた。
     食堂は、朝練を終えて帰ってきたトレーナー達でごった返していた。
     正直臭い。
     朝練終わりに食事よりシャワーを優先する奴は少ない。特に男は。

     ―おっと、危ない。気を抜くといつも気にしてないことまで、目につきだす。せっかくノベルタイプでいるのに。

     今日の朝食は、トースト2枚にスクランブルエッグ、あとサラダにヨーグルト。
     昨日と全くもって変わりばえのしない、いつも通りのメニュー。ポケモンセンターの料理は、まずくはないがバリエーションに乏しすぎる。たまにはみそ汁が欲しい。せめてヨーグルトに、ゴスの実ジャムを入れてくれ。あの甘いだけじゃない、ほのかな苦さが懐かしい。

     私はポケモン達に、ポケモンフーズを配り終えると、自分の食事を始めた。
     確かに代わりばえしないメニューだが、食べればやっぱりウマイ。トーストの焼き加減は絶妙だし、スクランブルエッグはフワリと黄金に輝いている。
     サラダは・・・・・あ、これ嫌い。

     「違うって!」
     思わず口に出してしまい、あちこちから私に向かって白けた視線が集まった。

     『私は目の前に広がる豪華な朝食に目をみはった。
     焼きたてのトーストはまさに極上の一品。表面はきつねいろ、中はふんわりと仕上がっている。
    キラキラとゴールドに輝くスクランブルエッグは、私に食べてくれと手招きしているようだ。
     そして、サラダ!
     新鮮な旬の野菜がずらりと並び、いかにも・・・栄養がありそうだ。香り高いハーブの入ったドレッシングをかければ、至高の食卓を彩る究極の副菜となるだろう。』

     −さすがに苦しいか。野菜は、あの臭いが昔からどうにも苦手だ。せめて調理されていればいいのだが、生はキツイ。

     トースト、スクランブルエッグ、さらにヨーグルト、全て食べきった。
     残るはサラダだけ。
     私は皿をドレッシングの海にして、ようやっとサラダを胃に押し込んだ。


    [10:14]

     ノベルタイプな思考にも大分慣れてきた。
     今の私にとって、トイレまでの道のりはチャンピオンロードのように険しく、バッヂを磨けばその輝きはダイヤより強くその造形美はパールより美しい。
     なんだかいつもより忙しい一日を送っている気がする。

     ポケモンセンターの中にはトレーナーがまだ一人いた。
     正直トレーナーはみんな、今朝の船で出てしまっていると思っていたので少し驚いた。
     歳は10代前半、顔に漂うあどけなさからしてトレーナー初心者だろう。

     ―カモだ。

     「おじさん、僕とバトルしてよ。」

     まさしく自分が言おうと思っていたことを先に言われ、面食らってしまった。

     「も、もちろんいいよ。ルールはどうする?」
     「お互いの持つ、一番強いポケモンどうしの1対1で良い?」
     「良いけど、おじさんのポケモン強いよ。」
     「そうこなくっちゃ、つまらないよ」

     わっはっは。もう笑いが止まらない。このバトルにサクッと勝てば、今日どころかもう何日でも気分サイコー。実のところ、最近負けがこんでいて自信無くなっていたから、これは絶好のチャンス。

     私達はポケモンセンターの地下にあるバトルフィールドまで移動した。
     バトルフィールドの入り口から奥のポジションに私が着き、もう片方に少年が着くとバトルスタート。審判がいないので、始まりはそれぞれの勝手だ。

     「それじゃ、おじさんから先攻いかせてもらうよ。頼むよっ、ジャノビー!」
     先攻をとったのは、せめてものハンデだ。互いのベストパートナーを出すと決めてはいるもの、あの子にしても相性が気になるところだろう。初対面な訳だし、いざとなればあの子にしても出

    すポケモンを考え直したくもなるかもしれないし、ねぇ?

     「僕の一番の仲間はコイツだ!いけっ、フタチマル!」

     ―ほほぅ、私の先攻は、いらぬお世話ということか。

     「いいのかい?フタチマルじゃ、おじさんのジャノビーに不利だよ。」
     私はすっかり調子に乗って言った。
     すると、
     「僕達、勝つよ。」
     少年はきっぱりと言った。

     ―気にいらない

     相性からもトレーナー経験からも有利なはずの私は、思い切り余裕をかまされてムッとした。

     「そうかい。なら遠慮なくいかせてもらうよ。ジャノビー、グラスミキサー!」

     ジャノビーの尻尾から、大きな葉っぱの竜巻が起こり、まっすぐフタチマルに向かっていく。

     「伏せるんだ!」
     少年が鋭く叫ぶ。
     地面に伏せたことでフタチマルはグラスミキサーの直撃を免れた。
     私だってそれくらいの事は見越している。
     今ならフタチマルは、体勢を立て直すのに時間がかかる。今のうちに距離を詰めて、トドメをさす。
     と、思ったが止めておくことにした。

     −身の程知らずの新米トレーナーをもう少し揉んでやろう。

     「ジャノビー、フタチマルにやどりぎのたね!」
     ジャノビーからポッポッといくつかの種が飛んでいき、伏せたままのフタチマルの背中に着地した。
     着地した種から根が一気に伸びていき、ジワジワとフタチマルの体力を吸い取っていく。
     少年は悔しそうに顔をしかめ、フタチマルを見つめる。

     「どうする?今からなら降参してもいいんだよ。」
     私はジャノビーと一緒になって胸を張り、少年と、膝をついて立ち上がろうとするフタチマルに言ってやった。

     ところが、
     「アンコール」
     少年が一言言った。

     全くの予想外だった。
     アンコールを受けたジャノビーは、やどりぎのたねをまるで噴水のようにばらまき続けている。

     「フタチマル、連続で体当たり。」
     「ジャノビー!早く攻撃するんだ!」
     しかし、ジャノビーに私の声は届かない。

     結果は惨敗だった。
     圧倒的有利だったはずの私は、少年のフタチマルにまともなダメージ一つ与えられずに負けてしまった。

     「こんなの絶対ちがーう!」
     少年はフタチマルに労いの言葉をかけていた。

     『ジャノビーのグラスミキサーを辛くも防いだフタチマルは、いまだに立ち上がれないでいる。

    ここで勝負をつけてやるのは簡単だ。しかし、私はあえてそうしなかった。トレーナーの先輩として、バトルの厳しさを教えてやろうと考えたのだ。この経験が少年のためになってくれたらそれでいい。
     ところが、結果は私の負けだった。
     私は見事な機転でピンチを脱した少年を褒め讃えバトルフィールドを去っていった。』

     ―うんうん、これでいい。いっそ勝ったことにしてもよかったのだが、とりあえずこのほうがより感動的だろう。

     「おじさんあそこでもう一度グラスミキサーしてたら勝ってたかもしれないのに、どうして攻撃しなかったの?」

     私がキッと睨みつけると、少年はそれ以上何も言わなかった。


      [No.851] Re: 【好き勝手救助しようとしたのよ】 投稿者:イケズキ   投稿日:2010/10/26(Tue) 21:23:15     73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    もしやこれはあの話を引いているんですか!?
    僕はあの作品を読んでから、ポケモン小説を読みはじめたものでとても嬉しいです。

    救助に奮闘するアブソルとか、ウツボット(進化してる!)とか出てきて始終興奮しっぱなしでした。

    彼の新たなレンジャーとしての活躍が見れてよかったです。
    ありがとうございました。


      [No.850] 【好き勝手救助しようとしたのよ】 投稿者:CoCo   投稿日:2010/10/26(Tue) 20:33:42     82clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     

     上司から連絡が来る前に、既にアブソルが土砂崩れを予知していた。
     しかしそこは山中深く、谷を下ればすぐなのだがそれはあまりにも危険すぎる所業。道をひろいながら下っていたら遅くなってしまい、結果的に土砂崩れが起こる前に周辺の確認をすることはできなかった。

     アブソルは背中から飛び降りた俺を赤い瞳でみつめて悔しそうに呻いたが、とりあえず状況を確認しようとなだめてやると少し落ち着いた。こいつはまだ育ちきっていないので、足は速いが俺を乗せて長い距離を走ると消耗が激しい。とりあえず隣に控えさせて、この先は足で進むことにした。

     雨は降り続いている。
     彼は周囲にポケモン、そして万が一人間が巻き込まれている気配を注意深く確認しながら、土砂が崩れ落ちた地点へと身長に道を下っていく。

     すると突然、アブソルがぐる、と声を発し、ほぼ同時に茂みからリオルが飛び出してきた。
     この周辺にリオルが生息しているという話は聞かない。もしやトレーナーが巻き込まれているのでは……と脳裏を過ぎる不吉な予感。それを裏付けるかのように、リオルはたいへんな勢いで彼の泥まみれな足にすがり付いてきた。ちいさな腕を必死に伸ばして、どこかへ俺を連れてこようとしている。

    「わかった、わかった」
     レンジャー本部の支給品である分厚い手袋を外して、ひどく取り乱しているリオルを撫でる。冷たい。どれだけの間この風雨にさらされていたのか。耳の下を撫でてやると少し吐息を漏らして、安心した様子ではあったがまだ俺の腕を引いて向こうを指している。この震えが寒さによるものだけではない、なにか差し迫った事情があることにはすぐに感づいた。

    「大丈夫、すぐに助けに行く」
     本部に応援要請の信号を送った後、リオルを抱えて斜面を降りる。アブソルが藪を切り裂き、すぐに崩れ落ちた斜面が見えた。
     しかし雨が少しずつ強くなってきている。起伏の激しい南国の密林で生まれ育った俺ならこれぐらいの斜面は降りるに困らないが、どこにリオルをここまで心配させる原因が潜んでいるのかもわからないし、どこから再び崩落が始まらないとも限らない。

    「ウツボット」
     レンジャーのボールは特殊で、万が一の状況を考え自動でも開閉するように設計されている。もちろんポケモンもそれにあわせて訓練されるので、俺の生来の相棒・ウツボットは難なくボールから飛び出してきた。

    「ウツボット、つるのムチで俺を下まで下ろしてくれ」
     ウツボットは葉を振って答えると、ツタに俺の胴をしっかと絡めてゆっくりと降下させる。
     しばらく降りると、上からは死角になっている岩だなの影に、人とポケモンの一団が見えた。
     チルタリスと青年、しけって火の消えた薪、そしてどうやら手当てを施された後と思われる子供の影。そばに寄り添っているのはヒトカゲだろうか。向こうからリーフィアとビーダルとおぼしきポケモンが小枝を背負って駆け下りてくる。

    「ポケモンレンジャーです! 大丈夫ですか!」

     声をかけると、健康的な体格の青年が笑顔で右手を上げてきた。どうやら、彼はここであのヒトカゲのトレーナーと思われる少年を救助して、リオルに助けを呼びに行かせたようだ。
     着地するとすぐ、リオルは青年にとびついた。

    「彼が危険です」
     青年は言った。
    「応急手当はしましたが、早いとこ病院に連れて行かないと」

     俺は頷いた。少年は適切な処置を受けてなんとか無事そうだが、傍目からも衰弱が激しいのがわかる。

    「トロピウス!」
     ボールから飛び出したのは大柄なトロピウス。こいつなら問題なく遭難者を病院まで運んでくれるはずだ。
     少年の身体を鞍に固定して、俺は青年を振り向いた。あなたは、と聞くと集まってきた手持ちを差して口角を持ち上げる。チルタリスがばささ、と数度羽ばたいた。なんと頼もしい。

     しかし雨足は強まるばかり、暗雲には雷の気配も感じる。アブソルが崖の上で吼えている。
     はやく援軍が来てくれれば、それに越したことはないのだが。

     こんなことなら故郷を出てこっちへ研修へ来る前に、啖呵切って「俺にはウツボットがいるから大丈夫です!」なんて言わずちゃんと天気研究所でポワルンを受け取っておけば良かったなあと、少し思った。


     おわりんぐ



    ***

     だってアブソルが「まじ埋まってる人間救助しないとかお前人間じゃねぇ」って言うから。
     本当に申し訳ないです。


    【もっと救助してもいいのよ】


      [No.849] 行きずりの所業  【助けに行ってみたのよ】 投稿者:クーウィ   投稿日:2010/10/26(Tue) 16:06:51     73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    崩れた斜面をずっと下っていくと、張り出した岩棚に隠れて見えなかった場所に、小さな火明かりが見えた。

    「あれか?」

    声をかけた相手は、離れず従っている獣人めいた人型。  自らは直接地に足を付けながらも、中空にある彼よりずっと素早くガレ場を下り行くそれに確認を取ると、真剣な面持ちでこくりと頷く。

    そのまま一気に下まで駆け下りるルカリオの背中を追って、彼もまた、背を借りているポケモンに向け、火明かりに向けて降下するように伝える。
    背中の主人がしっかり掴まっているかどうかを確認するように首を捻じった後、急激に高度を下げ始めた彼女の綿雲のような羽からは、たっぷり吸い込まれた雨水が道しるべの様に、背後の空間に散っていく。

    チルタリスが地に着くのももどかしく、彼は水溜りを無視して地面に飛び降り、激しく水飛沫を立てながら、倒れている人影とポケモンに向けて走り寄った。
    そこでは既に、先に下り終えていたルカリオが、主人に寄り添うように倒れているヒトカゲを抱き上げ、雨のかからない岩陰に、運び込もうとしている真っ最中だった。

    「リムイ、そっちは任せる。  フィー、こっちに来てくれ!!」

    ルカリオに声をかけると、彼―もうそろそろ20に達するだろうかと言う風情の、やや色浅黒い青年トレーナーは、背後で体を激しく震わせ、濡れた羽に含まれている水分を飛ばしているチルタリスを呼ぶ。
    同時に腰のボールを一つ掴むと、その場にまた一匹仲間を増やした。

    「ラックル、この人を掘り出してくれ。  ・・・傷を負ってるかも知れないから、慎重にやってくれよ?」

    ボールから飛び出したリオルにそう告げると、相手は勢い良く頷くや、早速作業にかかる。
    『穴を掘る』と『岩砕き』で、リオルがどんどんと半身を土砂に埋めていたトレーナーを掘り出している内に、彼は素早く膝間付くと、倒れている人物の容態をざっと調べてみた。

    見た所では、まだ若いその人物は、危険なレベルの低体温状態にはあるものの、何とか致命傷と思われるような負傷の類は、免れている感じである。
    ・・・今はとにかく、下がってしまっている体温を温めなければならない。

    リオルが何とか覆いかぶさっていた土砂を取り除き終えると、彼は急いで触診によって骨折の有無を確認し、何とか短い距離を移動させるだけなら心配無い事を確認してから、件の遭難者を注意して抱き上げ、先にルカリオがヒトカゲを運び込んでいた、立ち木の隣にある岩陰まで、早足に急ぐ。
    ・・・雷が木に落ちる可能性もチラリと頭を過ぎりはしたが、知るもんか。
     
     
    無事に岩陰に着くと、彼は運んできた相手を静かに下ろして、付いて来たリオルと、指示を待っているルカリオに向け、短く早口に命じる。

    「リムイ、この人に『癒しの波導』。 ラックルは、ヒトカゲに向けて『まねっこ』だ。」

    すぐに行動に出る両者の息は、親子だけあって流石にぴったりである。
    次いで彼は、同じく付いて来た残りの一匹に向けて言葉を掛けると同時に、更に二匹の手持ちポケモンを、この場に加える。

    「フィーは、取りあえず水気を切って置いてくれ。  ・・すぐに、働いてもらうからな。  コナムとルパーは薪を集めて欲しい。 雨の中大変だが、すぐにかかってくれ。」

    指示を受け終わるのも待たずに、リーフィアとビーダルは冷たい時雨の中を駆け出して行く。
    そしてこちらは、「心得た」とばかりに立ち木の反対側に回って、盛大に水飛沫を撥ね上げているチルタリスを尻目に、青年はすぐさま目の前の遭難者の介抱にかかる。

    他国――海を越えたずっと先、『新奥』の出身者である彼には、北国で必須とも言えるこの手の応急処置は、手馴れたものであった。

     
    先ず、着ている物を手際よく脱がせ、下半身の一枚以外は全て、脇に放り出す。  
    ・・・本人は意識が戻れば恥ずかしがるかもしれないが、それも命あっての物種。 こんな時に、羞恥心なんぞに構っている余裕は無い。

    次いで水気を切ったチルタリスを呼び戻すと、半身を抱き起こしている救助者に向け、『フェザーダンス』を繰り出させた。
    あっという間に綿毛状の羽毛で包まれた目の前の冷え切った体を、今度はチルタリスにも手伝わせ、懸命に摩擦する。

    そうこうしている内に、パートナーと思われるヒトカゲの方が先に目を覚まして、技を切り上げたリオルと共に、慌てて此方によって来た。  ・・・流石にポケモンだけに、回復は早いものだ。

    しかし、人間はそうは行かない。 
    絶大な生命力を誇るポケモンだからこそ、これだけの速度で体力を取り戻すことができるわけであって、元よりポケモンに対して使う『癒しの波導』だけでは、早々救助者の容態を完治させることは叶わない。  

    しかし、折り良くリーフィアとビーダルが薪の第一陣を背負って帰ってきたので、彼らに協力して薪を積ませ、ヒトカゲに着火してもらう。
    更に、新たに生じた手空きをも総動員して、懸命に摩擦を続けた結果、何とかずっと青白かった救助対象者の頬に、微かな赤みが差して来た。  ・・・どうやら、最初の峠は越えられそうだ。
     
     
    そこで彼は、摩擦作業はその場のポケモン達に任せることにして、バックパックから小さなアルミの鍋と水筒を取り出すと、水を注いだ鍋を枝を組んだ物に引っ掛けて火にかけた。

    手早く一緒に取り出した干魚や木の実をポケットナイフで刻んで、沸騰した鍋の中に放り込むと、道中の道具交換に使う予定だった酒のボトルを引っ張り出して、中身を幾らか鍋にあける。  ・・・彼自身は飲酒癖は無いが、この手の品は出す所に出すと非常に喜ばれ、そこそこの品に化けることがあるのだ。
     
     
    そこまで終えると、彼はリオルに向けて声をかけた。

    「ラックル、悪いが今から道まで登って行って、誰か助けを呼んで来てくれ。  
    ・・・このままじゃ人手も足りないし、ここは土砂が崩れてくるかもしれないから、夜明かしするには都合が悪い。
    お前の足なら、夜が来る前に誰か見つけてこれるだろう。」
     
    頷いて飛び出していくリオルの背中を見つめながら、彼は空模様を見定め始めた。
     
     
    ・・・山の天候は気まぐれだ。  今はさっさと、ここから移動する手立てを見つけなければならない――
     
     
     
     
     
    ―――――

    ・・・またやらかした

    仕事前ギリギリまで粘ってひたすらPCに向かう馬鹿。
    『赤の救助隊』時代の思い出が立ち上ってきて、思わずやってしまった・・・  

    取りあえず、解決してなくて御免なさい(爆)
     
     
    【お好きになさってください】
    【救援大歓迎なのよ】


      [No.848] 大丈夫だ、問題ない 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/26(Tue) 12:23:54     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ヒトモシですね。わかります。



    というのは大ウソで、ヒトカゲですねわかります。
    クロコちゃんはメグロコですね。

    メグロコかわいいよメグロコ。

    主人公は体温下がってるだけで、ぶっ倒れてるだけと信じた(ry

    そ、そうだ!
    だれか〔書いてみた〕で救出するんだ!(待



    > 作品も何も投稿しないで、チャットでは大きな顔をして発言しちゃってすみません…><

    むしろ読み専の方にもどんどん参加していただきたいと思ってるので、そんなこと言わないで!><
    作品を作ってるから偉いかというと別にそんなこともないと思うんで……
    むしろ小説書いても読み手の方がいないと成立しないので、読み専の方にもどんどんでしゃばってきて欲しいのよ。
    なんかうまい方法はないですかねぇ。


    > とりあえずあんまりな内容の小説ですが大丈夫か?
    > (そもそもこれはポケモン小説と言えるのか?)

    ポケモン小説界というのはたぶんポケモン創作の中ではもっともフリーダムな分野だと私は思ってるんですけど、どうでしょう?
    登場人物ねつ造し放題、オリジナル技、擬人化、オリポケ他、残酷表現にしたってやはり直接目に見える者よりは許容される雰囲気がある。
    あんまりかっとばしすぐると読者がついていけなくなるんで、諸刃の剣ではあるんですが。

    まぁそのなんだ。
    私なんかホエルオーとって食ったあげくに、登場人物何人殺したか……
    これから連載のほうでものすごいことになる予定ですし(おい
    だからあんまり気にしなくていいのよ(


    結論: とりあえず書いてみるのが重要


      [No.847] Re: 書いてみました 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/26(Tue) 12:05:29     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ケーシィwwww お前というやつはwwww
    と、とりあえず言わせてくれww
    これはひどいwwwww

    (※褒めています)


      [No.846] 無題 投稿者:兎翔   投稿日:2010/10/26(Tue) 08:32:32     92clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ねぇ、おうちに帰ろうよ。

    おうちではお母さんがきっと温かいスープを作って待ってる。
    ルークもクロコもハヤテもアリアも、みんな帰りを待ってるよ。
    疲れてしまっただろうから、温かいスープを飲んで、熱めのお風呂に浸ってほかほかしたら、みんなでふかふかのベッドにくるまって眠ろう。
    きっとみんな一緒にお砂糖菓子のように甘くてしあわせでふわふわした夢を見るんだ。
    そして次の日はすこし朝寝坊をしちゃって、お母さんに怒られながら起きた君はすこし気まずそうな顔をしてボクらに笑うんだ。
    一晩寝たら昨日の疲れなんてすっかり吹っ飛んでしまって、すぐに元気になるよ。

    そしていつものようにボクらを連れて色んなところへ旅にいこう。
    いつか雑誌で見た、海とか砂浜とかいう、広くて青くて楽しいところ。君も行きたいって言ってただろ?

    クロコとボクは、水が苦手だから、海には入れないけれど。それでも君がいるならば、みんなと一緒なら、どんな場所でも楽しく過ごせるよ。

    ねぇ、まだまだボク達行ったことないところがたくさんあるよ。


    君とみんなで楽しい想い出作りたいよ。
    いつものようにそのあったかい手のひらで僕の頭をなでて。
    お前は小さいなぁって笑われても怒らないから。
    いつか大きく強くなって君を守ってみせるから。
    今のボクじゃ、この小さな尻尾の灯じゃ、冷えきってしまった君のことを温めきれない。

    ほら、雨が降ってきたよ。
    あたたかいおうちに帰ろうよ。
    おうちではお母さんがきっと温かいスープを作って待ってる。
    ルークもクロコもハヤテもアリアも、みんな帰りを待ってるよ。


    だから――目を、あけてよ。







    ********

    作品も何も投稿しないで、チャットでは大きな顔をして発言しちゃってすみません…><
    それでもあたたかく迎え入れてくれる鳩さん始め皆さんに感謝。
    とりあえず何か文章を書かなければ!と思って思いついたままを書き連ねたらこういうことに……
    何のポケモンだか分かるように、なるべく描写を増やしたのですが伝わりましたでしょうか?
    クロコ、ルーク、アリア、ハヤテは私のホワイトの手持ちの名前です。
    とりあえずあんまりな内容の小説ですが大丈夫か?
    (そもそもこれはポケモン小説と言えるのか?)

    【タイトルつけてもいいのよ】【批評大歓迎なのよ】【何してもいいのよ】


      [No.845] なん……だと…… 投稿者:てこ   投稿日:2010/10/26(Tue) 00:42:41     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    書いてみたがある…だと…(ざわ…ざわ…

    てこです!
    はじめて!の下にある文字を一回見て、うつむき、「いや、まさか。夢だろう、夢でないはずがない」と呟き、もう一度顔をあげ

    夢じゃなかったあぁぁぁあ!!
    リアルでウホッとか言ってしまったじゃないか!このぉ!

    海星さん、ありがとうございます!
    改めて、てこです!気持ち悪くてすみません。うれしかったのです許してくださいませ。


    ケーシィ、テレポートミスりすぎです。んでもってちゃっかりしすぎです。こいつめ!呪い死んでやる。

    そして、相変わらずのマニュアル人間の幼馴染で安心というか、よくぞ!
    どのカセットのとか、バージョン設定はしていないのですが、なんだろ……明るい中にウラがありそうでなんか、あれですね。幼馴染は

    こう、アニメ的にパウワウが「モンスターボールには入っていないけれど仲間だよ」みたいな流れになるかと思いましたが、ゲーム界はそう甘くはなかったですね
    でも、きっと別の流れで再開してジュゴンとして活躍しているかもしれません――フーディンと一緒に!

    オチ。そうきたか!
    確かにさいしょから、だと主人公の記憶もケーシィも消えてしまいますよね。だから、最初からの下に 幼馴染から という選択肢を作ったら大じょ(ry

    いやはや、ありがとうございます
    きっと、ケーシィも喜んでることでしょう。主人公をどこかに置き去りにして――。


      [No.844] Re: 業務連絡 投稿者:てこ   投稿日:2010/10/26(Tue) 00:18:57     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    Σ
    てっきり掲示板に嫌われてしまったのかと……www

    連絡 ありがとうございます。

    と――。
    なんか、イラストが駄目みたいですねぇ
    ま、いっか!


      [No.841] は、早い! 投稿者:砂糖水   投稿日:2010/10/25(Mon) 23:16:40     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    は、早い! それになんて時間!

    チャット中に書いてたなんて恐るべしきとかげさん。
    短時間でよくまとめられましたよね…、すごいです。
    話の展開が流れるようにテンポよく進んでいてスイスイ読めました。
    オチまでの持って行き方もうまいし、早いしで羨ましいです…!

    楽しいお話ありがとうございました〜。


      [No.840] 書いてみました 投稿者:海星   投稿日:2010/10/25(Mon) 22:16:09     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ふっと空気の流れを感じた瞬間には、俺は、どうやら流氷の上にいた。
    寒い。寒い以外の何でもない。凍える。死ぬ。
    「ここ何処だよ!」
     足元で微かに震えているケーシィに叫ぶ。しかし微動だにしない。
    「よぅし!仕方ない、もっかいテレポート!」
     ……反応無。
    「ケーシィ、おい聞いてんのか」
     ……おや、すぅすぅと聞こえるこの漏れている息の音は……。
    「!!寝るな!死ぬぞお前雪山で遭難したら絶対寝ちゃ駄目なんだって起きろ寝るなっ目を覚ませ!!」
     ニョロゾのおうふくビンタ並みのビンタを数発食らわすと、やっとケーシィは線のような目を少し動かした。少し安心。
    「とにかく、テレポートだ!」
     すると、ケーシィも流石にここは寒すぎると考えたのか、空気に振動を与え瞬間移動の準備をし――ぱっと消えた。
     ……?
     ぱっと、消えて、しまった。……ってちょっと待て!!主人置いて行きやがったあいつぅう!!
     頭に何も浮かばない。俺どうやって帰れば良いんだ?ちょ、ちょっと戻ってこいよケーシィ!!
     テレポートをしてもどこに飛ぶのかはわからない、ということは 置いておいて、主人いないことに気付けっ!
     うっわぁもう最悪。寒いし馬路無理死ぬ。
     手持ちはケーシィしかいなかった。ポケモンのいないトレーナーなんて、もうトレーナーとはいえないんじゃないかという不安が脳裏をよぎる。
     吐息が白く煙る。しかし、澄んだ空気に溶けて消えてしまう。
     ……どうしよう。
     俺こんなところで死にたくないよ。まだジム行ったことないよ。ていうかこんなところで死んだら行方不明になるだろ。絶対死体見つかんない。神隠し?失踪?この恨みは忘れない、ケーシィ。呪い死んでやる。
     うぁああどうしよう……。
     なにかしないと身体中の血液が結晶化していきそうだった。とりあえず足踏みをする。寒い。
     そのときだった。
     ゴゴゴ、と漫画みたいな地響きが突然縦揺れで俺を襲ってきた。
    「きゃぁぁあああ!」
     あまりの恐怖で涙が出た気がした。もしかしたら凍りかけた鼻水だったかもしれない。そして、女子みたいな悲鳴を上げてしまったのに反省。
     実は俺天災で死ぬ運命だったのか、それも嫌だ!全部ケーシィだ、奴が悪い!神様、ジャンケンで負けたときとか呪ってすみませんでした、助けてください助けてください!!
     地響きがおさまっていく……そして、俺が乗っている氷の分厚い板がメキメキと凄い音をたてて割れた。
     すぐに地響きの犯人が顔を出した。割れ目から、白い頭がひょっこりと……。
    「パウー」
     こっこいつは、パウワウ。地響きは、流氷に対してずつきをやったときの振動だったのね。ほっと胸を撫で下ろした……が、ふと気付く。俺、いま手持ちいないからすげぇ危険じゃないか。
    「パウー?」
     どうやら敵意は無いようだが、それでも安心はできない。もしかしたらひょんなことで怒りだしてれいとうビーム発射してくるかもしれないし、もしかしたらいきなり親が出てきて怒りだしてぜったいれいどとかしてくるかもしれない。
     いやぁああ!
     でっでも、パウワウは真っ黒な目をこちらに真っ直ぐ向けて、何だか遊びたそうにしている。もしかして、これは、俺の仲間になりたいのか!?
     しかも、よくよく見てみると、パウワウは若干、普通より白かった。
     色違い――!?わかりにくっ!
    「パ、パウワウ様……」
    「パウ!」
     呼んでみると、何だか嬉しそうにした。これはいけんじゃないか。まさかのGETとかいっちゃうんじゃないか。少し調子に乗る。しかも色違いみたいだぜ。激レア!奇跡的だ、俺って強運の持ち主だったりして!?
    「あ、あのぅ、パウワウ様。怒ってませんか?」
    「……パウー?」
     パウワウが不思議そうに首(?)をかしげる。それから、ヒレを氷にビチビチやって、どうやら俺に「遊ぼうぜ!」とか言ってるみたいだった。
     これは、チャンスだ。今しかない。行っちゃえ俺!!!
    「じゃあ、遊びましょうね、パウワウ様。ボール遊びですよーほれっ!!」
     ここでモンスターボールを投げてGETする作戦だった。
     俺は腰のあたりに手を当てて――気付いた。そいえば、まだ幼馴染に勝ってないからモンスターボール持ってないんだった。
     しばらくの沈黙。
     ……どうしよ。
     そのとき、俺に何かが起こった。
     ひとつの瞬きがとても長く感じられて、凍りかけたまつ毛が冷たくて、気付いたらパウワウが嬉しそうに俺にヒレを振って見せていて。
     !?
     目を開けると、目の前に、眠たそうなケーシィと幼馴染がいた。
     そして、場所は、幼馴染のいつもの立ち位置。俺が勝つまで、こいつはここにいる。そして、今、俺たちはここに。
     何があったんだ?
    「――ゲームを進行してくれないと困るよ。主人公死んだらどうするの」
    「一体何があったんだ幼馴染」
    「あれ ――くん。 ポケモン だいぶ なついて きた みたいだね
     よし わたしが バトルで ためして あげる!」
    「っじゃなくて、何があったんだよ!」
     幼馴染が面倒くさそうにする。
    「勿論、主人公が危険な目に遭ったときの究極の切り札を使用したの」
    「切り札ぁ!?」
    「うん。だから――――



        さいしょからはじめる



                                 」




    ――――――


     こんばんは、海星と申します。
     さいしょからはじめても途中経過の幼馴染の前にいるということは大目に見てくださいっorz
     本当に最初になってしまったら、ケーシィとの出会いがなくなってしまうじゃないですかー!!
     可愛らしいケーシィと主人公の愛(!?)と友情に誘われて、書いてみました。
     なんかすみませんでしたお邪魔しました書き逃げします!


      [No.838] ありがとう 投稿者:こはる   投稿日:2010/10/25(Mon) 19:35:09     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 「ありがとう」という言葉を詠ってあげよう。
    > 「キミのおかげで今の僕がココにいるんだ」と心から詠ってあげよう。
     カゲボウズにありがとうって、はじめての感情。黒い彼らはいつだって身近にいるのに、ありがとうって初めて思った。

     ありがとうって思わせてくれて、ありがとうございます。
     感想でもなんでもないうえに、短くてごめんなさい。でも、ありがとう。


      [No.835] Re: 豊縁昔語―母の形見〔勝手に書いてみた〕 投稿者:巳佑   投稿日:2010/10/25(Mon) 16:47:55     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    前置き:『民族学』ではなくて『民俗学』でした。すいません。

    私もありのまま起こったことを話させてもらいますと。

    午前2時頃に「学校の講義で習ったことをポケモンの物語に結んでみたいなぁ」と思い立って、
    『民俗学』での話を元に『ひとがた』を作成して投稿しました。

    午前7時頃、珍しく早起きをしまして、
    「今日はミクロ経済学に、経済史に、心理学っと。
    よし、準備はこれでオッケー。出かける前にポケストを覗いていこうかな」と、
    パソコンとネットの電源を入れ、ポケストのページへ。

    そこにはNo.017さんからの感想とともに『豊縁昔語』が。
    開いてみると……。

    「やばっ! このまま引っ張り込まれたら遅刻する!!」

    ということで放課後、イラストを少し進めて、
    改めて引っ張り込まれにやって来ました。(笑)

    ……すごいの一言です。
    あっという間にその世界に引き込まれまれました。
    女の母親からの手紙で涙腺が最も熱くなったり、
    最後のところでゾクゾクと来たり。
    ……まさか、『ひとがた』から約5時間後に、このような素敵な物語が生まれるとは思いもよりませんでした。
    例えて言いますと、線画で出したイラストが鮮やかに色付けされて返って来た感じです。

    余談なのですが「お山に帰る」という表現は『山中他界観』に基づいていたりするのでしょうか? 
    違ってたらごめんなさい。(汗)

    勝手に書いていただいても全然大丈夫ですよ……というより、
    この物語とNo.017さんにありがとうの気持ちでいっぱいですよ!
    朝までお疲れ様です!
    そして、ありがとうございました!

    追伸:結論『カゲボウズの魅力は計り知れない』

    (長文、失礼しました)


      [No.833] 豊縁昔語―母の形見〔勝手に書いてみた〕 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/25(Mon) 07:19:57     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ■豊縁昔語――母の形見



    「あなたの子は長生きできないでしょう」

     易者はそのように預言いたしました。
     胸に赤い石を抱いた白装束の精霊を連れたその易者の預言はよく当たるのです。
     易者は予言いたしました。
     あなたの子は七を数えないうちに、死ぬだろうと予言したのであります。

     それを聞いた母親は、血なまこで探しました。
     我が子の運命を回避する方法を懸命に探したのです。
     彼女はあらゆる易者や術者、陰陽師の類を訪ね歩きました。
     母親というものは腹を痛めて産んだ子供の為だったら何だってやるのです。

     幾月かの後、何十もの術者を訪ね歩いた後に彼女は一つの手がかりを得ることが出来ました。
     術者の一人がそういったまじないを扱える者を知っているというのです。

    「だがあの男か。あの男はやめたほうがいい」

     女が教えを請うと術者はそのように渋りました。
     けれど、我が子の運命がかかっているのですから、女は答えを求めました。
     とうとう母親の気迫に負けた術者は"男"の居場所を教えてやったのでした。


     "男"は都のはずれのほうにある古い屋敷に住んでおりました。
     女を出迎えた男は真新しくはないものの美しい衣を羽織っており、まるで陽の下に出たことがないように白い肌をしております。

    「さあ、こちらへ」

     と、白い手が女を招きます。
     男はだいたいのことを察しているようでした。

     屋敷は暗くじめじめとしています。
     男の後ろについて、ぎしぎしと音を立てながら廊下を渡ってくと、時折くすくすと子供の笑い声のようなものが聞こえました。
     振り返って声の方向を見るのですが何もいません。
     女は何かいますよとでも言いたげに男の背中を見ましたが、男はまるで気にかける様子がありませんでした。
     男のことを教えてくれた易者が言うように、たしかにやめておいたほうがよかったのかもしれないと、女は少し後悔しました。
     けれどここまで来たら引き返せません。何より我が子の為です。引き返すつもりもありませんでした。

     男は屋敷の奥に女を案内すると古びた箪笥から、何かを取り出しました。
     それは何かの形をかたどった紙でした。

    「これはヒトガタと呼ばれるものに私の師匠が独自のまじないをかけたもの。そのまじないを今は私が受け継いでいるのです」

     と、男は言いました。

    「この十枚の紙にあなたの子の血を二、三滴ずつ吸わせなさい。そうしたら、そのうちの何枚かの色が変わって浮かんできます。それがあなたの子が七になるまでに降りかかる災厄の数なのです。浮かんできたヒトガタはあなたの子の代わりに災厄を引き受けてくれます。役目を終えると元の姿に戻ります」

     女の前に紙を並べて男は続けました。
     子供というのは七つになるまでは神様の子であると言われています。
     七つになるということが真に人になるということであり、ひとつの区切りなのであります。
     七つを超えたならきっと子も健やかに育つことでありましょう。

    「十のうち浮かびあがってこなかった分は私のところに持ってくるよう。しかるべき方法で処分するようにいたしますので」

     女は丁重に礼を述べて、安堵したように十の紙を手に取りました。


     女は家に戻りますと、我が子の指の平を切って、そこから流れ出る血をヒトガタに吸わせました。
     子どもは泣きましたが致し方ありません。
     するとどうでしょう、血を吸った十のヒトガタのうち、六枚ほどの色がみるみるうちに紫色へと染まってゆきました。
     紫色に染まった紙はぐぐっと猫背になって起き上がると、ぷうっとふくれます。
     それは、頭と胴を持っていて、頭は丸く、胴は衣のようにひらひらと揺れております。
     丸い頭に二つほど切れ目が入ったかと思うと、頭上ににょきりと角が生えぱっちりと目が開きました。
     瞳の色は三色に輝いておりました。
     我が子の血を吸って生まれたそれは、それは飽咋(あきぐい)と呼ばれる者の姿をしておりました。



    「驚かれましたか」

     翌日になり、浮かび上がってこなかったヒトガタを返しにきた女に男は尋ねました。
    「少し」と、女は返します。

    「獣や精霊たちが使う技に"身代わり"と呼ばれるものがあります。自身の持つ力の一部を分け与えることによって、自らの分身を作り出す……あの飽咋たちはそういう存在です。役目を終えるまではどうかかわいがってやってください」

     男は血の染みたヒトガタを四枚受け取ると、そのように語りました。

    「ところで……ひとつつかぬことをお伺いしますが」

     女の顔をじっと見て男が言いました。

    「前に一度どこかでお会いしたことはありませんか?」

     女はきょとんとします。
     彼女が男の屋敷に訪ねるのは、ヒトガタを受け取った時がはじめてのはずでしたから。
     ですから当然「いいえ」と、女は答えました。

    「……気のせいですかね。いや、変なことをお伺いしてすみませんでした」

     女の返事を受けて、男はそのように答えました。




     幾年かが流れました。
     ヒトガタを作った女の子供はすくすくと育ちました。
     その間に六匹いた飽咋が、一匹、二匹と減っていきました。
     減った飽咋は皆、家のどこかにはらりと元のヒトガタとなって落ちていました。
     ヒトガタの中心にはうっすらと茶色い跡。
     そうして必ずどこかが、破れていました。

    「ありがとう」

     女はそのように呟いて、合掌するとヒトガタを拾い上げ、小さな木箱に納めました。
     これでこうするのは五回目です。

    「ねえ、ゴロウはどこに行っちゃったの?」

     いなくなった飽咋の事を子供が尋ねてきます。

    「ゴロウはね、お山に帰っていったんだよ」

     そのように彼女が言うと子どもはわかったような、わからないような顔をしました。

    「じゃあ、ロクロウも? そのうちお山に帰っちゃうの?」
    「そうよ。だからそれまでロクロウをかわいがってあげるのよ」
    「ロクロウもいなくなっちゃうの?」

     となりでふよふよと浮かぶ飽咋を見て子供が言います。
     ロクロウと呼ばれた飽咋は首をかしげました。

    「だめだよ。ロクロウは一緒にいるの! ロクロウは行かないよね、ずっと一緒に居てくれるよね?」

     子供が問いかけます。
     六番目のロクロウはちょっと困った顔をしました。
     たぶん、自分の運命を知っているからでしょう。


     それから間もなくのことです。
     女の子供が七つになろうとするほんの前、少し離れたところに住んでいる女の母親が亡くなったとの知らせが届きました。
     女はおおいに悲しみましたが、一方で葬儀をつつがなく執り行いました。
     仕事もありますし、子もいます。
     泣いてばかりはいられませんでした。

     葬儀が終わると、遺品の整理と形見分けが行われました。
     女は母の遺品のうちいくつかを引き取ることになりました。
     品を手に取り思い出に浸っていると、僧侶がやってきて言いました。

    「このたびは誠にご愁傷様でございました」
    「ご丁重に恐れ入ります」

     と女は答えます。
     すると僧侶が懐から何かを取り出して女の前に差し出したのです。

    「実は生前、お母様から頼まれておりまして。自分が旅立ったら、娘に渡して欲しいと言われ、ずっとお預かりしておりました」

     女は驚きます。僧侶から手渡されたのは小さな木箱でした。
     木箱の紐を解いて蓋を開くと女はさらに驚愕いたしました。

     中に入っていたのは、何かの形を象った紙が何枚か入っていたのです。
     その中心には茶色いしみ。紙はどこかが必ず破れておりました。
     それは、間違いなくヒトガタでした。
     しかも自身があの男から譲ってもらったのとまったく同じヒトガタだったのです。

     女は震えた手でヒトガタを手にとりました。
     すると木箱の底には手紙が沿えてあることに気がつきました。
     母が娘にあてたものでした。


     娘へ

     あなたがこれを読んでいるということはもう私はこの世にはいないのでしょう。
     今、手紙と一緒に添えられているものはあなたのヒトガタです。
     あなたが生まれたとき、あなたは七つまで生きられないと言われました。
     だから私は術者に頼んで、まじないをかけました。
     術者から貰ったヒトガタにあなたの血を染み込ませて、六匹の飽咋という身代わりを作ったのです。
     身代わりはあなたの目の届かないところで災厄をその身に引き受けました。
     そうして元のヒトガタに戻っていきました。
     あなたは飽咋たちをとてもかわいがっていましたから、私は飽咋たちがいなくなる度に彼らが山へ帰ったのだといって慰めたのです。
     けれども最後の六匹目の時に思わぬ事態が待っていました。
     あなたの目の前で、六匹目がヒトガタに戻ってしまったのです。
     貴方は一晩中泣きましたが、泣き止みませんでした。
     困り果てた私は、貴方を術者のところに連れて行ったのです――

     ヒトガタを作った術者には一人の弟子がおりました。
     その弟子はヒトガタと人の血から作ったのではない、本当の飽咋をたくさん飼っていたのです。
     彼はあなたの悲しい負の感情をみんな飽咋に食べさせてしまいました。
     だからあなたはこのことを全く覚えていないでしょうが……


     女はすべてを理解しました。
     すべてが一つに繋がったのがわかりました。
     気がつけば彼女はヒトガタをくれたあの男の言葉を反芻しておりました。

    『前に一度どこかでお会いしたことはありませんか?』

     だからあの男はあんなことを尋ねたのだ。
     女はやっと理解いたしました。
     手紙にある弟子こそが、あの男だったと理解したのです。



     数日の後、彼女は母の形見を男のもとに返しにいきました。
     男はすべてわかっていたかのようにそれを受け取りました。

    「そういえば、息子さんはそろそろ七つになるのではないですか。六匹目がヒトガタに戻る日も近いでしょう」

     と、男は言いました。

    「うまくやってください。そうしないと結構大変なことになりますから」

     女はわかっている、と返事を致しました。

    「尤も私はどちらでもいいですけれど。万一の時はいらっしゃい。屋敷にいる子達も待っていますから」

     男はそう言って冷たい笑みを浮かべました。
     すると男の後ろに立つじめじめとした屋敷の中からくすくす、くすくすと無数の笑い声が不気味に響いてくるのが聞こえてきたのでした。







    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
    『巳佑さんのひとがたを読んでいたら豊縁昔語を書いていた』

    な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
    おれも何をされたのかわからなかった…
    頭がどうにかなりそうだった…
    カゲボウズが感情食うだとか またお前か(飽咋の人的意味で)だとか
    そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
    もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…


    か、勝手に書いちゃったんですが大丈夫だったでしょうか(


      [No.831] みがわり 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/25(Mon) 02:18:59     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    だからどうしてあなたはこう、私の好みをピンポイントでついてくるのかと小一時間(ry

    しかし民族学の講義と聞いて納得しました(笑)
    民俗学的なものに興味持って本読み出したのはここ1、2年なんですが、昔から妖怪とか好きだったからなぁ。

    こういうのが大好きな人間&カゲボウズスキーとしては創作意欲をそそられる話です。

    ありがとうございました!


      [No.830] ひとがた 投稿者:巳佑   投稿日:2010/10/25(Mon) 02:10:57     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    昔の人達は『人形(ひとがた)』と呼ばれている
    人の形をした紙に自分の不運や災厄を乗せて
    川に流していたという。
    いわゆる『お祓いの役目』を果たしてくれたのだ。
    つまり、その人が受けるかもしれなかった悪いことを
    その人形は身代わりになってくれたのだ。

    だから

    「ありがとう」という言葉を詠ってあげよう。

    「キミのおかげで今の僕がココにいるんだ」と心から詠ってあげよう。




    カゲボウズに出逢ったら。


    〔書いてみました〕
    念の為、読み方を書いておきます。
    お祓い……おはらい

    民族学の講義で教えてもらった人形(ひとがた)の話と
    ポケモンをつなぎ合わせて考えてみました。
    カゲボウズに感謝しながら。

    ありがとうございました。


      [No.829] 業務連絡 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/25(Mon) 01:58:13     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    スパムにひっかかってたので再投稿処理したんですが、
    イラストがうまくのっからなかったようで…すいません。
    記事の編集から投稿してみてください。


      [No.819] Re: ヤリオッタワァアア・・! 投稿者:   《URL》   投稿日:2010/10/24(Sun) 22:21:06     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    > 流石に早い・・と言うか、早過ぎですって・・!  それだけ早く書ける秘訣があるんなら、本気で師事させて頂きたいのですが(本気)

    うーん、そこら辺は人によるというか。
    私は短時間でつめて集中して書くタイプなので、元々製作時間が早いんです。でもそんなの人によりけりだと思うし、締切りに追われてるわけじゃないから、毎日ちょこちょこ進めて、のんびり書いたっていいと思うのです。

    > ・・しかも、ポリゴンZ拘り眼鏡臭いし・・・(汗)
    > 大量にいた研究員が、外部から入ってきた侵入者に完全粘着してる部分が、古き良き時代の潜入ネタを髣髴とさせて好きです(笑)

    笑ってもらって嬉しいです。
    なるほど、拘りポリ乙でしたか(ぇ
    なぜかこういう所の人は、侵入者にたかってくる傾向がありますw

    > この先、どの様に対戦界で発展していくんだろう・・・?
    > 個人的には、新しく悪戯心に目覚めたリオルとヤミラミが欲しくて堪らないザマス。  ・・・遂にリオルやオニドリルが、ネタではなくて実戦に起用できる時代が来た・・!(小躍り)

    オニドリル!オニドリル!
    小説の対戦描写も、おいおい考えないといけませんね。
     
    > 最後の上司に対する主人公の心の叫びが、彼の人生の教訓として機能することを願って・・・

    主人公「ふー……(遠い目)」


      [No.817] ジェバンニが一晩で 投稿者:   《URL》   投稿日:2010/10/24(Sun) 21:32:10     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    「チャットをして寝て起きたら、チャットで出てたネタがもう小説になってたぜ」を実現してみました。

    実を言うと、チャットをしながら書いていました。多分その所為です。


      [No.816] Re: うまい 投稿者:   《URL》   投稿日:2010/10/24(Sun) 21:22:07     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 上司の手の上で転がされた部下君が不憫ですw

    彼にはこの後、潜入捜査の度に上司に嵌められる運命が待っていますw

    > そしてエルフーン可愛い…!
    > 密偵として見取り図も書けちゃう可愛くて使える子。
    > 確かに特性や図鑑説明を見るとスパイ活動には適任かもですね…盲点だった…!

    エルフーンいいですよね。どんな建物も偵察できるお役立ち。敵にまわすと恐いですが。
    エルフーンに限らず、黒白の新ポケは図鑑説明が素敵なのが多くて、話のネタになりそうです。


      [No.828] 空想の空想を 投稿者:てこ   投稿日:2010/10/24(Sun) 19:49:36     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    描いてみました

    うろ覚え&やっつけですみません


      [No.808] ヤリオッタワァアア・・! 投稿者:クーウィ   投稿日:2010/10/24(Sun) 15:32:06     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どうも、夜分にはお世話になりました。

    『さて、寝るか・・って、もう終わっとるぜよ!?』・・・とかなっちゃったのが、今朝の4時過ぎでした(汗  笑)

    流石に早い・・と言うか、早過ぎですって・・!  それだけ早く書ける秘訣があるんなら、本気で師事させて頂きたいのですが(本気)

    しかも内容についても、全然やっつけ仕事じゃないし・・・ オソロシか・・・


    内容は特に、肝心のコマンド入力時に盛大にばれた所で激しく笑いました・・!
    ・・しかも、ポリゴンZ拘り眼鏡臭いし・・・(汗)
    大量にいた研究員が、外部から入ってきた侵入者に完全粘着してる部分が、古き良き時代の潜入ネタを髣髴とさせて好きです(笑)

    エルフーンは可愛いけど凶悪です。  ・・・悪戯心は神速やフェイントで無いと凌げないもんなぁ・・・
    この先、どの様に対戦界で発展していくんだろう・・・?
    個人的には、新しく悪戯心に目覚めたリオルとヤミラミが欲しくて堪らないザマス。  ・・・遂にリオルやオニドリルが、ネタではなくて実戦に起用できる時代が来た・・!(小躍り)
     
    最後の上司に対する主人公の心の叫びが、彼の人生の教訓として機能することを願って・・・

    では。  本当に、お疲れ様です。
    ・・・いい仕事を拝ませて頂きました・・・! 


      [No.803] 10月23日好きな小説告白タイム 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/24(Sun) 12:05:38     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    告白なので名前は出しちゃってます。
    問題ありましたら連絡ください!



    ●告白タイム(※時系列はばらばらです)

    21:29:33 No.017 おい みんな この機会に アレ好きだとか告白しちゃいなよ
    21:29:45 No.017 【告白していいのよ】
    21:31:00 砂糖水 好きなものが多すぎて書ききれません
    21:31:15 きとかげ 全ての投稿作品には、このタグが付いたものとみなされます>【告白していいのよ】
    20:10:24 久方 もらった感想は全部コピペして保存してる自分
    20:10:40 サトチ クリエーターにとって感想ほど嬉しいものはないですよ
    20:11:36 イケズキ サトチさんに初めて感想つけていただいたときは、うれしすぎておかしなことになりました
    20:11:38 No.Hさんからオクレ青年の感想がリアル手紙で届いて マジ泣きそうになった

    19:57:01 No.017 ゾロアくん ゾロアくん ピジョンの羽のうちわをゲットすると 化かしマスターになれるらしいぜ おねえさんといっしょに ピジョンゲットしにいこうか
    19:57:41 イケズキ 行こーぜbyゾロア
    19:58:11 No.017 ゾロア君 だまされすぎですw
    19:59:05 イケズキ ゾロアは勢いあれば大丈夫、がポリシーだそうです

    20:11:16 サトチ 「はじめて? 」ステキっす!(≧▽≦)
    20:11:37 てこ おお ありがとうございます

    20:14:09 サトチ イケヅキさん 廂間とか感想つけそこなっっちゃったけどよかったです
    20:15:11 イケズキ そうでしたか 読んでくださりありがとうございます

    20:17:44 久方 砂時計が地味に好きだ
    20:18:25 No.017 ちょwww 処女作はずかしいいいいいいいいいい ぎゃああああああ

    21:18:19 No.017 幻影電話は大好きです
    21:18:38 No.017 コールコール キルキルキル  ←これが大好き
    21:18:45 紀成 はろーはろー こちら幻影電話
    21:19:08 No.017 ピクシブにあげてくださいよ 幻影電話
    21:19:12 サトチ 不可思議な味ですよね>幻影電話

    01:01:51 クーウィ 『砂漠の精霊』が・・・
    01:02:04 てこ ショーツ越しの……
    01:02:17 No.017 砂漠の精霊はマサポケ屈指のエロ小説です
    01:02:48 No.017 ショール越しのふにゃりとした感触がこの世代にも通じようとはwwww
    01:02:57 てこ ショールかwwww

    21:21:04 サトチ 看板息子シリーズが好きですねー

    21:28:50 砂糖水 『あなたをずっとずっとあいしてる』すごく好きです! 感想書けませんでしたが

    21:30:08 紀成 『ポケモン人形から』好きです

    21:31:49 サトチ 詠み人知らず&返歌サイコーっす
    21:32:04 No.017 返歌は感動したぜ…

    21:31:45 No.017 ツボちゃんが一番が大好きすぎる ピクシブへの投稿はまだですか
    21:32:00 サトチ うわ、ツボちゃん来た;

    21:32:12 きとかげ 乙女桜が好きですv
    21:32:20 No.017 乙女桜きたー

    21:33:04 No.017 これは爆笑したな
    http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?no=277&reno=n ..... de=msgview  21:33:23 紀成 これは確かに・・
    21:33:47 サトチ コレ笑った〜www

    21:34:18 イケズキ 風になった悪魔 あれから色々読み始めました

    21:34:36 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?no=214&reno=n ..... de=msgview これも好きだなー

    21:34:38 サトチ 「待つ人」よかった イッシュの戦う鮨屋!

    21:35:52 No.017 ケケケ by ゾロア

    21:36:45 No.017 やはりポケストを語る上で 洗濯日和 は欠かせないでしょう
    21:36:51 紀成 キター
    21:36:56 サトチ キター
    21:37:04 No.017 まさかあんなことになるとはwwww
    21:37:31 あつあつおでん 洗濯日和でカゲボウズが可愛く見えて仕方ない
    21:37:38 紀成 (親が)洗濯物たたんでるなう
    21:37:49 きとかげ カゲボウズ洗いたくて仕方ない
    21:37:54 砂糖水 洗濯日和いいですよね!
    21:37:58 海星 カゲボウズ支持率が急速に上がったと思いますw
    21:38:04 No.017 気をつけろ! 洗濯物の中にカゲボウズが混じってるぞ!
    21:38:17 サトチ カゲボウズ憑き冷やし中華食べたい
    21:38:34 砂糖水 おかげでカゲボウズが可愛くて仕方がないです。
    21:38:35 久方 それでもヨマワル派
    21:38:36 海星 変色
    21:38:41 No.017 こりゃログの告白部分だけあとで抜粋だな
    21:38:58 紀成 ヨノワさん派
    21:39:00 あつあつおでん けど対戦ではヨノワールを使ってしまう
    21:39:07 てこ ジュペッタ派!
    21:39:17 No.017 カゲボウズ派です
    21:39:27 きとかげ あ、定食屋のメニューは冷やし中華からおでんに変わったらしいですよ
    23:46:19 久方 あなたのせいでカゲボウズも悪くないと思ってしまったヨマワル派>CoCoさん

    23:33:44 クーウィ きとかげさんの作品は好きですねー・・ホタルノヒカリとか、かなり来ましたぜ・・・
    23:33:57 No.017 ホタルノヒカリきたー
    23:34:21 きとかげ わ、わ、ありがとうございます! きゃわーい!
    23:34:38 No.017 夏が来るたびにあの輝きを思い出す
    23:35:46 クーウィ ホタルノヒカリだけではなく、他のも好きですー・・なんか、自分の感性に刺さりまくります・・どうしてくれましょうに(笑)
    23:36:08 砂糖水 再告白タイム?
    23:37:17 砂糖水 あ、わたしもきとがげさんのお話好きです!

    23:37:25 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?no=738&reno=n ..... de=msgview
    これがまじめにすきすぎるんだが
    23:40:00 久方 胸がキュンキュンした>レックウザの
    23:38:45 きとかげ 巳佑さんの作品、私も好きです。連載版にある狐日和も好き。
    23:39:32 兎翔 狐日和、好きですー。 BWの豊饒の社をモデルにひとつ描きたい…
    23:42:35 クーウィ 狐日和はみたらし団子のせいで我が3時のおやつが決定してしまいました・・(笑)

    23:39:06 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?no=757&reno=7 ..... de=msgview
    これのホーホーとスバメまじめに欲しいのだが

    23:40:08 クーウィ そういや、管理人さん・・・『野の火』はいつ続きが読めるんでしょ・・!?  本気で次に期待しまくりなのですが・・・!?(爆  オイオイ・・・)
    23:40:34 No.017 うわああああ ごめんなさい ごめんなさい >野の火
    23:41:04 兎翔 野の火!今一番いいところで止まって私も非常に続きが読みたいです(
    23:41:46 砂糖水 私も読みたいです… |ω・) チラッ
    23:42:35 クーウィ いえ、せかしているわけではありません故・・・!(汗)  あの内容の濃さですので、寧ろ時間がかかるのは当たり前ですって・・・  気長に待ってますから、頑張ってくださいですー
    23:42:35 あつあつおでん 実は狙って止めていたりして>野の火
    23:43:49 CoCo 自分も野の火がきになりんぐです
    23:45:26 No.017 う、うお
    23:49:32 クーウィ 個人的に、野の火だけでなく次の豊縁昔語シリーズがどうなるかも気になってます(笑)  ・・・特に『飽昨の始まり』は、個人的に「こんなのが書きたい・・!」と言う、まさに理想系そのもので・・・マジで感動しました・・!   今晩はですー
    23:49:49 No.017 な、なんだと >あきぐいのはじまり
    23:52:10 クーウィ アレはマジで感激しましたぜ・・・!!>あきぐいのはじまり  『幻島』と並んで、自分が一度書いてみたいと思っていたお話の雰囲気そのもので・・・(感涙)  読んだ後、暫く興奮して落ち着いていられなかったんすから(笑)
    23:53:48 No.017 なんか告白されまくってるんだがどうしよう//////
    23:54:26 No.017 と、とりあえず ありがとうございます

    23:45:30 兎翔 私 ロッコさんの小説の空気感、というか話の進め方、凄い好きですー(´ω`)
    23:46:14 ロッコ ありがと

    23:46:07 きとかげ Cocoさんの小説も好きです〜。「だいすき」がだいすきで。
    23:46:15 No.017 だいすき きた
    23:46:38 No.017 だいすき はポケストに投稿しないのですか(
    23:47:06 CoCo そうですね、だいすきはポケストに上げてなかったなあ

    23:55:19 兎翔 喫茶店シリーズの続きはまだですかー?(´`)>紀成さん



    ●制作裏話

    00:15:29 クーウィ 製作者さん達の裏話が聞きたくt(爆)
    00:16:04 No.017 裏話: 野の火のネタは鎌倉の佐助稲荷で授かりました(実話
    00:16:51 きとかげ ホタルノヒカリは、同名の曲を題材にしています。
    00:17:07 CoCo 裏話 カゲボウズは執筆に三分もかかってない
    00:17:13 No.017 ええええええええええええええええええ
    00:17:40 兎翔 早い
    00:17:45 きとかげ まじっすか!アメイジングカゲボウズ!
    00:17:47 CoCo 勢いとはげにおおそろしいものよ
    00:17:52 イケズキ はやっ
    00:17:53 砂糖水 えっ
    00:18:08 No.017 穴守さんの 穴守 は 穴守稲荷 から
    00:18:15 紀成 裏話に便乗 ピクシブ見た人は知ってると思いますが、ステンドグラスの二話目の場所のモデルは小田原です
    00:18:17 クーウィ 3分とな・・!?  反則に近いぞ・・・
    00:18:32 あつあつおでん その速さが欲しい
    00:18:35 CoCo だからあんなことになるとはおもってもいなかったんだぜ
    00:19:20 No.017 カゲボウズを3分で洗濯した結果がこれだよ!


      [No.802] 10月23日チャット議事録もどき 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/24(Sun) 12:03:40     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ■チャット会参加人数

    ちゃんと数え切れていませんが途中退室を含め13,14人くらいいらっしゃったかと思います。
    船の上からケータイ参加の猛者も!
    参加してくださった皆さんありがとうございます。


    ■話した内容

    ・この小説よかった! 告白タイム
    ・小説裏話暴露タイム
    ・軽くBWネタバレ
    ・シンボラーの子を孕みたい
    ・コンテスト文字数
    ・コンテストお題



    ●この小説よかった! 告白タイム
    ●小説裏話暴露タイム

    (別記事で報告します)


    ●軽くBWネタバレ

    (割愛します)


    ●シンボラーの子を孕みたい

    (ここは変態の多いチャットですね、おや誰かきたようだ)



    ●コンテスト文字数+@

    20:24:13 字数制限は上限だけでいいんじゃないかと(真面目なことを言ってみる
    20:24:47 No.017 まぁたしかに上限だけでもいいかも あるいはポケストと同じで100文字以上にするか
    20:25:57 絵がなしだからいいんじゃないすかね?>下限
    20:26:21 下限は緩い方が書きやすいと思います。
    20:27:18 No.017 100文字以上 に するか ポケストと同じで
    20:33:48 下限はなくともいいけどむしろ上限が問題かと
    20:33:59 あまり低いと困るかも
    20:34:18 無しでも困るですけれど
    20:34:33 No.017 今の候補は1万字なんですが
    20:34:47 自分は一万字くらいでもいいと思いますがねぇ>上限
    20:34:51 読むのが大変そうだ・・・
    20:35:07 僕も1万じ賛成です
    20:35:40 今打ってるのが何も考えずに一万越えたし(蹴
    21:10:52 文字数下限はいんないと思うがなあ
    21:11:25 No.017 逆に数字としてしめしたほうが あ、これだけでいいのかって なると思うけど
    21:13:00 一応ポケストの企画?ってことで下限あってもいいかもしれない
    21:13:16 No.017 ポケストの100字だってぶっちゃけそれ狙ってるからね 100文字だったら初投稿時の人がやりやすいだろうと あと誌的なのも出来るし
    21:13:24 ふむ
    21:13:43 ポケストは一応100字以上だし
    21:16:11 No.017 文字数は100〜10000字で いいでしょうと思いますが 反対の方は?
    21:16:33 No.017 あと配布ポケモンはネタバレ禁止にしましょう
    21:16:49 OKです〜もじ
    21:17:26 久方 異議なし>文字数
    21:17:52 まる

    23:24:56 あとね、日本語で書くことが決まったくらい?
    23:25:21 No.017 そうだね 英語の小説はよめないね
    23:25:33 あえての漢文とかもありでしょうか?
    23:25:53 No.017 日本語訳つければおk

    →とりあえず 100文字〜10000字 で決定。



    ●お題決定の経緯

    さて、シンボラー孕みたいその他に押されて話題にあがっては沈んでいたお題ですが、
    チャットが脱線に脱線を重ね、深夜1時をまわってからいい加減に決めようということになって、今まで出た候補を一挙に挙げました。
    しかしごめんなさい、深夜テンションと不手際で今見たらかなり漏れちゃっています。
    漏れちゃった方にはごめんなさい……
    この時点でチャットに残っていたのが10人ほど。

    01:13:38 No.017
    「運」「運命」「移ろい」「四季」「天気」「特性」「気流」「海流」「台風」「イクメン」
    「仮面」「楼閣」「夢」「砂」「足跡」「波」「偶然」「デレツン」「幻」
    「クーデレ」「ヘタレ」「ヤンデレ」「ツンデレ」「お伽話」「↑↓↑↓←→←→LR」
    「とうざいなんぼく」「すれ違い」「行きがかり」「うえまんなかした」「鳥」
    「出会いと別れ」「朝、昼、夜」「きせつ」「昔話」「伝承」「ポケモン」
    「愛」「色」「嫁」「お話」「イッシュ地方」
    「ひでんわざ」「空を飛ぶ」「穴を掘る」「ダイビング」「線」
    この中からみなさん3つ選んで選ばれなかったのを落としていきます

    【各自3つ選ぶ】
    【ちょっとだけ新しく思いついたお題加わる】

    01:28:05 No.017
    「理不尽」「すれ違い」「仮面」「お話」「足跡」「砂」「天気」「鳥」「愛」「幻」
    「運命」「楼閣」「色」「ダイビング」「四季」「ひでんわざ」「特性」
    「↑↓↑↓←→←→LR」「陰陽」 から2つでどうなる?

    【各自2つ選ぶ】

    01:41:50 No.017 砂、ひでんわざ、すれ違い、色、足跡 2票
    01:42:06 No.017 特性、理不尽、天気、お話、四季、仮面 1票

    01:42:13 もう二票で絞ってしまえb
    01:42:41 No.017 2票で絞りますか

    01:44:05 No.017 砂、ひでんわざ、すれ違い、色、足跡 ここからどうやって絞るか
    01:45:18 一人一票 多数決
    01:45:56 No.017 おk 一人一票 多数決 で。 5分後に私が合図するから一斉に出してくれ

    【投票スタート、投票人数9人】

    『色』に一票で・・・
    「色」で!
    足跡
    すれ違い
    砂!
    ひでんわざ
    足跡!
    足跡
    すれ違い

    【お題決定】「足跡」 


      [No.800] はじめて! 投稿者:てこ   投稿日:2010/10/24(Sun) 11:53:12     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    感想ありがとうございます

    サトチさん

    > ・・・実は覚えていたテレキネシスに笑いました!

    良作。そういってもらえると嬉しいです。
    野生のケーシィはあんなにも無力ですが、たまごでつくるとこんなにもたのもしい奴だったのかとびっくりしますよww

    No.017 さん

    懐かしい空気。うむ。確かに懐かしい空気のような気もします。

    > 役割を忠実に果たす幼馴染に萌え。

    幼馴染www なんかライバルってたんたんとすすめる感じがありますよね。こっちの意見なぞ聞かん!みたいな

    こはるさん

    > あっちゃー、ワザなかったんじゃ……?と思ったんですけど、意外にも覚えてたんですね。

    覚えていたけど奴は使わなかった……!言うまで!

    > いったい、どうやってそこまで進んだのか。ケーシィかかえて逃げたのか、はたまたケーシィに抱えられて逃げたのか。

    ケーシィを抱えて逃げている間にテレポートで共々消えます。どろん。
    「あの子、またかえってきたわひそひそ」
    ジョーイさんの視線が痛い。


    > 笑える小説だいすきだわっ。というより、ケーシィかわいく思えてきた。

    無表情で、居眠り魔ですがかわいい奴です。


    ありがとうございました!


      [No.799] ちょwww はやいwwww 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/24(Sun) 09:34:22     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    私が寝てる間に一本小説出来てるってどういうことなのwww
    きとかげさん仕事早すぎwwww

    そ、そうかエルフーンの素早さのせいかっ


      [No.798] うまい 投稿者:兎翔   投稿日:2010/10/24(Sun) 08:04:06     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    さすがきとかげさん。そういう持って行き方をするとは…!
    最後のオチも秀逸でした。
    上司の手の上で転がされた部下君が不憫ですw
    そしてエルフーン可愛い…!
    密偵として見取り図も書けちゃう可愛くて使える子。
    確かに特性や図鑑説明を見るとスパイ活動には適任かもですね…盲点だった…!
    朝からほんわかした気分になりました、ありがとうございました(´`*)


      [No.797] コマンド 投稿者:   《URL》   投稿日:2010/10/24(Sun) 04:04:57     76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



     全く、僕の上司は何を考えているんだろう。
     彼女がしっちゃかめっちゃかなのは百も承知だが、そのせいで蚊が飛び交う草むらの中で半日もしゃがむことになると、
    自然と彼女への愚痴も増えてくるというものだ。

     草むらと低木をぬって向こうを見透かすと、灰色の、如何にも怪しい真四角の建物が、森の中に不自然に建っている。
     今回の任務は、あの建物で行われているという、研究の中身を盗み出すこと。
     蚊に刺されようが、足がしびれようが、僕は一応、警察の端くれ。
     今回のは、俗に言う、潜入捜査みたいなものだ。……が。


     僕はなるべく動かないようにして、携帯電話の時刻を確かめる。
     午前二時。ここに到着したのが真昼の十二時。上司が移動時間を思いっきり間違えたせいだ。
     しかし、だからと言って帰るわけにもいかず、僕が密偵を放ったのは、夜の九時。
     丸々、九時間を無駄にしたことになる。
     それとも、上司は僕が森の中で九時間も迷うと思ったのか?
     全く、何を考えているのか分からない上司だ。
     っていうか部下の能力信じろよ。

     そんなことを考えていると、密偵が帰ってきた。
     五時間。上出来だ。
    「ありがとう、ウィリデ」
     僕は丸い羊の姿を持つパートナーの小さな手から、紙とペンを受け取った。
     それから、バッグを探ってポロックケースを出した。

     敵アジトの見取り図を作る、という大役を果たして帰ってきたフワモコのパートナーにポロックをやる。
     僕もバッグからひしゃげたパンを出して口にした。
     何も食べないよりはマシだ。
     見取り図に目を通し、「よし!」と小さく気合いを入れて立ち上がる。

     目指すはウィリデが探れなかった、地下一階の最奥の部屋。

     そこだけロックがかかっていたらしい。地図にはウィリデの手で鍵のマーク。

    「行こう、ウィリデ」

     ……とその前に。

     携帯電話のカメラを向け、見取り図を電子データにして上司に送る。
     こんなことをしても、彼女が何かしてくれる可能性は皆無だろうが。

     液晶画面が送信完了の文字を映し出したのを確認してから、僕は建物に向かう。

     空気抵抗をたっぷり受けて、ふわふわと進むパートナーを抱き上げてから、僕は歩き出した。



    「ウィリデ」
     僕が小声で呟くと、パートナーは合点承知と頷いて、草笛を使った。
     宵っ張りの研究員だか何だかは、あっという間に睡魔に落ちて静かになる。

     人間、夜は寝なくちゃな。
     軽いハイタッチをかわして、僕らは軽快に建物の中を進んでいく。

     元より、こんな森の中に警察なんて来ないと踏んでいたのだろう。
     警備員もいなければ監視カメラもない、ザルよりも目の粗い警備だった。
    「楽勝、楽勝」
     このまま地下一階の部屋に進み、違法な研究――ポケモンを不当に苦しめるとか、そんな研究――をしているという証拠をカメラで撮って、とんずらだ。

     ……と、調子こいて部屋の前まで来て、大事なことに気付いた。
    「ロックがかかってるんだった……」
     目の前には、頑丈そうな扉と、ひと抱えもありそうなモニタと、標準サイズのキーボード。
     キーボードからパスワードを入れる形式だろう。問題はそのパスワードだが……
     僕はどこかに隙がないか、扉を観察した。
     ウィリデが僕の腕からおりて、たっぷりした綿毛をふるわせる。

     ウィリデの、エルフーンの能力なら、わずかでも隙間があればその部屋に入り込める。
     それすら出来ない、隙間のない部屋ということは、やっぱり重要なブツが置いてあるに違いない。

     諦めるわけにはいかない。目的のものがすぐ目の前にあるのだ。

    「とりあえず……」

     ダメもとでキーボードに触れてみる。
     途端に、モニタに光が灯り、赤青二色の姿がそこに映し出された。

     赤と青のY字の体、頭は少し離れたところに浮いている、ポケモン。
     目は奇怪な丸を描いている。
    「ポリゴンZだね」
     己が電子データになってコンピュータ中を自由に飛び回れるという、アナログな僕には縁のなさそうなポケモンだ。
     ポケモンバトルでは高い特殊攻撃力から強力なノーマル技を出してくる。
     扉を守る番人かもしれない。

    「バトルになるかもしれない。注意してね、ウィリデ」
     フワモコパートナーは「任しとけ」とばかりに自分の胸を叩いた。
     さて、とモニタとキーボードに向かい合う。
     適当にパスワードを入れたら開くかもしれない。
     そう思ってキーボードに手を伸ばすと、画面の中のポリゴンZとがっちり目が合った。

    「…………」
     攻撃してくる気配はない。
     もしかしたら、パスワードを間違えたりしない限りは、攻撃しないようになっているのかもしれない。

     やってみるしかない。

     ……けど、

    「……ヒントとか、ないかなあ?」

     キーボードには二十六個のアルファベットと十個の数字と、記号がいくつか。
     それらを組み合わせたパスワードとなると……

    「だめだ。分からない」

     映画や小説なら、それまでにヒントが出てきて扉が開くようになっている。
     けれど生憎、僕らがここに辿り着くまでにヒントは出なかった。

     うーん、とウィリデに心配されるほど唸ってから、僕はダメもとで携帯電話を開いた。
     メールが来ていた。

     僕は上司からメールが来たことに驚愕しながら、その場にしゃがんでウィリデにもメールが見えるようにした。
     といっても、ウィリデは文字を読めないけれど。

     件名はなし。本文には簡素に、用件だけが書かれていた。

    『ロック ↑↓↑↓←→←→LR』

     携帯電話の画面と、キーボードを慎重に見比べる。

     キーボードの右下には矢印、そして中程にはアルファベットのLとR。

    「パスワードっていうよりコマンドみたいだけど……やるっきゃないか」

     僕の上司は何を考えているか分からない、メチャクチャな人だ。
     けれど、今まで間違えたことはなかったし、これからもないだろう。
     僕は彼女を信じて、キーボードに歩み寄った。


     上からのポリゴンZの奇妙な視線を感じながら、僕は静かにキーボードに触れる。


    『 ↑ ↓ ↑ ↓ ← → ← → L R 』


     人差し指がエンターキーに触れ、カタンと軽い音をさせて押し込んだ。
     と同時に、カチッと音がして扉が――


     開かなかった。



     代りにモニタが開いて、ポリゴンZが飛び出してきた!

    「げっ」

     なんでだよ、と思う暇もない。
     画面から飛び出して戦闘態勢に入ったポリゴンZは、景気よく破壊光線のチャージを始めている。
     ついでにザルのような警報装置も作動したのか、ワンワンと五月蝿い音を立てて、お決まりの赤いランプがくるくる回っている。

     破壊光線が壁に着弾し、壁を崩落させて盛大に轟音をぶちまける。
     何だ何だ、とおねむのはずの研究員たちが続々と集まってくる。
     そんだけ大きな音がしたら集まるでしょうよ。
     オマケに目がばっちり覚めてしまって、さっきまでのように簡単に草笛でグッナイとはいきそうもない。

    「何だ、一体!?」
    「侵入者だ!」
    「本当に来たのか!」
     研究員たちの言葉にちょっと引っかかったが、今はそれを考えている暇はない。
     なにせ、到着した研究員が次々にポケモンを繰り出してくるのだ。

    「もう……。ウィリデ、綿胞子!」
     足元から電光石火の勢いで飛び出した子羊が、フカフカした毛から白い綿を存分に生み出した。
     特性のいたずら心をいかんなく発揮して、相手のポケモンを綿まみれにする。
     素早さが落ちたところを、手数で攻める作戦だ。

    「ウィリデ、エナジーボール! カリュブス、加勢して地ならし!」
     流石にウィリデだけでは心許ない。
     もう一匹、頭と爪を鋼の装甲で覆った土竜ポケモンを呼び出す。

    「さて、ガンガンいくよ!」
     後ろのポリゴンZが、破壊光線の反動から回復していた。
     カリュブスが一撃を加えると、まだまだと言うように破壊光線のチャージを始める。

     ……もしかして、破壊光線しかやらないのか?

     そう思っている合間に、二度目の破壊光線が発射された。
     軌道は大きく逸れ、別の壁に穴を開ける。
     反動で動けない間にカリュブスが攻撃を加える。
     ついでに、破壊光線にビビってる研究員のポケモンにも。

    「レベルは低そうだし、数が多いだけなら勝てるかな」



     なんて考えて、戦い始めてから十五分ほど経過した。

     相手のポケモンは一向に減らなかった。
     戦闘不能になる傍から次のポケモンを投入してくるので、キリがないったらありゃしない。
     補助に回っているウィリデはともかく、主砲を務めるカリュブスは疲れ気味だ。
     ちなみに、番人のポリゴンZは悪あがきで自滅した。

    「ああ、もう!」

     僕も流石に、終わりの見えない戦いに焦れてきた。
     ポケモンが増えるだけならまだしも、研究員連中まで増えている。
     そして増えた研究員が、また新たにポケモンを投入する!

    「やってられない! ウィリデ、カリュブス、引こう!」

     ウィリデは素直に賛成と手を上げたが、カリュブスは不機嫌そうだった。
     ここまで戦わせといて逃げんのかよ、と言いたいのが手に取るように分かる。

    「それは、ごめんね、カリュブス。でも、もうひとつ頼まれてくれるかい?
     ……天井にドリルライナー」

     言うが早いか、カリュブスは鋼となった爪を閉じ合わせ、体を高速回転させた。
     そのまま飛び上がって天井に突っ込み、今度は天井を崩落させた!

     ぎゃああ、と研究員たちの悲鳴が聞こえる。
    「ごめんね、でも僕、そろそろ帰りたいから」

     カリュブスをボールに納め、ウィリデを抱えて、僕は瓦礫の山を登るとさっさと灰色の建物から出て行った。




    「遅かったなあ、キラン」

     思いがけず、名前を呼ばれた。
     森の出口には、思いがけない人がいた。

     黒い髪にダルそうな目、左側に一房赤のメッシュ。
     間違いなく、僕を森に送り込んだ上司その人だ。
     しかし、なぜここに?

    「一体何して……」
    「何って、ほら」

     僕の疑問を聞いているのかいないのか、上司は小さなデータカードを見せた。

    「意味が分かりませんが」
    「違法な研究の研究資料だよ、お前が取りそこねた」
    「そう、結局研究のは取りそこねて……って、ええええええ!?」

     あ然として立ちすくむ僕に、彼女は大事はなかったかのように、淡々と説明し始めた。


    「十二時頃だったかな、お前が着いたの。
     その前にあの建物に入り込んで、お前みたいな格好の怪しい奴が来るって言い触らしておいたんだ。
     研究資料とかの大事そうなデータを、奥の部屋から出してきてパソコンに移してたっけなー。
     元の紙のデータとかも燃やしてて」

    「じゃあ、僕が見取り図送ったのとか、パスワードとかは……」

    「ああ、あれ。
     怪しい奴がいるぞー、って確固たる証拠になったよ。
     連中に見せたら信用してくれてな。
     ロックのかかった扉に誘いだして捕まえるって案に賛成してくれた。
     お前、警報装置作動させたろ?
     お陰でみんな出払っちゃって、こっちはデータ取り放題だった」


     色々な感情が体を駆け巡った。
     怒りとか、怒りとか、怒りとか。
     というか、僕を囮として利用したのか、この人は!

    「ま、いいだろ?
     無事だったし、こうして証拠も手に入ったしさ」

     脳天気そうに夜明けの空に向かって手を振る上司を見ると、こっちは何だか気勢を削がれてしまう。

     まあいっか、と上司と同じことを思いながら、僕はひとつのことを心に誓った。


     上司のコマンド(命令)には、もう易々と従うまい。







    お題 ↑↓↑↓←→←→LR


    23日土曜の夜のチャットの結果がこれだよ!


      [No.796] 【速報】お題決定「足跡」 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/24(Sun) 02:42:24     71clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    23日〜24日未明にチャット会が行われました。
    散々脱線して大丈夫か? → 早くお題をキメルノデス となり
    マサポケでやる小説コンテストのお題が決まりました。

    小説コンテストお題は

    「足跡」

    となります。

    参加資格はとくにありません。
    投稿したことのない人でも構いません。
    みなさんのご応募お待ちしております。

    詳細はまた後日。


      [No.795] ■小説コンテストスレ 投稿者:017@管理人   《URL》   投稿日:2010/10/24(Sun) 02:39:55     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    マサポケで開催予定の小説コンテストのスレ(暫定)です。


      [No.790] ケーシィ、かわいくみえてきた 投稿者:こはる   投稿日:2010/10/23(Sat) 19:38:24     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    最初のポケモンがケーシィ!? 
    あっちゃー、ワザなかったんじゃ……?と思ったんですけど、意外にも覚えてたんですね。
    いったい、どうやってそこまで進んだのか。ケーシィかかえて逃げたのか、はたまたケーシィに抱えられて逃げたのか。

    笑える小説だいすきだわっ。というより、ケーシィかわいく思えてきた。


      [No.786] なんかトトロ思い出した 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/23(Sat) 19:23:24     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    柊さん、はじめまして!
    ご挨拶が遅れてしまってすみません。
    ポケストの中の人、No.017です。

    こんなのに会えるなら、雨もいいなぁ。
    カゲボウズとか傘に入ってこないかしら。

    狐が嫁入りするときに晴れているのに雨が降るといいます。
    案外そんな感じなのかも。
    雨自体も狐の幻術かなにかでだまされているのかもわかりません。
    だとしたら炎ポケモンも説明がつくかもよ!
    なぁんて思った土曜の夜19時半。


      [No.779] Re: 翡翠の竜神 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/23(Sat) 18:04:08     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    とりあえず、読んでいいと思った人のテンションが下がるので
    お目汚しとか言っちゃいかんよ。
    (自戒の意味も込めて

    出来は悪くないと思うので、あんまりそういうこといとおねえさんかなしくなっっちゃうぜ。



    あと、勢いで書くのは結構大事だと思う!
    レックウザさん、まじレックウザ!(意味不明


      [No.775] 空想に浸る時間 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/23(Sat) 17:35:06     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    たしかポケモンにもありましたよね。
    ギリシア神話をモチーフにしてる話が。
    たしか神と巨人族が戦って、巨人が負けちゃう話。
    それがどうもレジ系みたいですけども。


    とりあえず私が言いたいことは、

    似てると思う!



    >心臓が跳ねる。手から落ちたペンが机の上を転がり、床に落ちる。時間が止まってしまったかのように、私の瞬きも呼吸も止まった。石と化した私は宙に浮かぶそれを、しばらく見つめ続けていた――。

    これは主人公が、空想に浸りすぎてというか
    ある種の確信を得て「こ、これだぁ!」みたいになってるとこを表現してると思うんですが、それでいいんですよね?
    (あるいは考えがあっちの世界にいきすぎてムウマの催眠にやられた感じ)



    【ダメじゃないのよ】
    【もっと書いていいのよ】


      [No.767] はじめてはわからないことだらけなのです 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/23(Sat) 16:12:17     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    昔、金銀で技マシン回収プレイの主人公が、言うことを聞かないリザードン(メインロムの主人公に貸し出された)と旅をしていて、
    相手の出してきたボスゴドラに驚愕する(※金銀のロムだから
    みたいなのを読んだことあるんですが、

    それに近いにおいのする作品ですなw
    ああ、懐かしいなこの空気。

    >  あれから、なんやかんやあって、とあるまちでとあるおじさんにサイコキネシスのわざマシンをもらった。

    野生ポケモンをひたすらテレポートでかわしまくり、PPが切れたらひたすら走る。
    トレーナーの目をかいくぐり、見つかったら(たぶん)走って逃げる。
    それは、ひんしオニスズメがそらとぶ出来ることを知らずに、ふたごじまでパーティ全滅しかかっている、ひめのかげまる氏(※ポケカイラストレーター)に似ているかもしれない(謎)。

    役割を忠実に果たす幼馴染に萌え。


      [No.764] ナイス! 投稿者:サトチ   投稿日:2010/10/23(Sat) 13:12:55     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    メタなギャグで笑わせながらも相棒との信頼を描ききる良作。
    ・・・実は覚えていたテレキネシスに笑いました!

    感想短くてゴメンなさいね?


      [No.763] 翡翠の竜神 投稿者:NOAH   投稿日:2010/10/22(Fri) 17:32:56     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    それは突如現れた

    それは突如訪れた


    陸を揺るがし海を揺るがし
    竜は空より現れた

    そして竜は問いた

    「なぜおぬしらは争っている。」

    「なぜおぬしらは命を奪っている。」

    人は答えた 「海を広げ、陸を狭めるため。」と
    人は答えた 「陸を広げ、海を狭めるため。」と

    その答えに、竜は嘆いた
    その答えに、竜は怒った

    そして竜はこう言った

    「陸があるから作物が実り、花が咲くのだ。」と
    「海があるから魚が獲れ、風が生まれるのだ。」と

    「それが一尺でも一寸でも狂えば、命あるもの全てが失われる。」と

    「藍も紅も、争いを望んでおらぬ」と


    「我は翡翠の空より、この豊縁の陸と海を空より見守る者。」と

    「深き眠りにつきし藍と紅は同等、そしてそれは我とて同じ
    陸も自然、海も自然、そして空もまた自然、それを壊してはならぬ
    時に身を任せよ、決して争ってはならぬ、そして起こしてはならぬ、藍と紅を起こしてはならぬ。」と

    竜は人を見た 人は竜を見た

    竜は獣を見た 獣は竜を見た

    獣は竜を恐れ、争いを辞めた
    人は竜を恐れ、争いを辞めた

    なぜなら竜は力を見せたから
    なぜなら竜は空を操ったから

    それから人は竜に誓いを立てた

    「空より出し翡翠の竜よ、我らは自分の過ちを認めます。」
    「我らは共に歩み、陸を、海を、そして空を守って行きます。」
    「そして見守り続けてください、我らを、獣を、そしてこの豊縁の地を。」
    「そして我らがまた、藍と紅を目覚めさせようと、愚かな争いを始めたときは、また我らの前にたち、正しく導いてください。」


    竜はそれを聞き届けると、空へと去っていった。
    そして人は争いを辞め、平和な地になったそうな。



    +あとがき+
    ども、NOAHと申します
    レックウザ主体で昔話書きたくてやっちゃいました
    お目汚しすみませんm(_ _)m

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】


      [No.762] 好きだ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/22(Fri) 12:35:16     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    すごく、いい……!
    伝承系とギラティナ様が両方好きな私にとってはこれヒットすぎますわ。
    ギラティナ様、ギラティナ様かっこいいよ……!


      [No.759] Re: [語られることのない伝承] 投稿者:MAX   投稿日:2010/10/21(Thu) 19:29:32     76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    大きなポケモンは災いを飲み込んだ。そのときポケモンは、大きく傷ついた。
    災いの傷跡に、傷ついた身体で残されていた。

    ある時、1人の人が傷ついたポケモンを見つけた。

    人は尋ねた。
    お前はそこで何をしているんだ。

    大きなポケモンは答えた。
    傷が癒えるのを待っている。

    人は、災いから守ってくれたのはこのポケモンなんだ、と考えた。
    大きな災いを飲み込むときに、傷ついてしまったのだと。

    お前が災いから、私たちを守ってくれたのか。
    人はそう尋ねた。

    するとポケモンは、答えずに尋ねてきた。
    みんなは無事か、と。

    お前のおかげでみんな無事だ。だけどお前が無事じゃない。

    あの大きな災いを飲み込むほどのポケモンを、人は恐ろしいと思った。
    しかし、放っておいてはこのまま死んでしまうだろう。
    人は、そのポケモンを助けることにした。

    人が近づくと、ポケモンは言った。
    俺は勝手に暴れただけだ。また暴れるかもしれないぞ。

    人は怖くなった。しかし諦めなかった。
    私はお前が怖い。もしお前が暴れたら、私は簡単に死んでしまうだろう。
    だからこれ以上近づかない。近づかないが、勝手にする。

    そう言うと、人は木の実を投げ置いて、そのまま去っていった。

    大きなポケモンの前に木の実が転がる。ポケモンがそれを食べると、少しだけ身体が元気になった気がした。


    次の日、同じ人がまた、木の実を投げ置いていった。
    その次の日も、人が木の実を投げ置いていった。
    それから何日も何日も、人がやってきては、木の実を投げ置いていった。

    大きなポケモンは、人が置いていく木の実を食べ続けた。
    食べる度に、身体が元気になっていく気がした。


    ある日、人がポケモンのいる場所に行くと、そこにポケモンはいなくなっていた。
    今日も木の実を持ってきたのに。
    人は思った。

    あいつは元気になったのか。元気になったから、ここを離れたんだ。
    あいつは勝手に守ってくれた。だから私も勝手にあいつを助けた。そしてあいつは勝手にいなくなったんだ。

    寂しいと思った。でも仕方ないと思った。
    せっかくだからと、ポケモンのいたところに木の実を残して、人は去っていった。


    それから、その人と大きなポケモンは、二度と会うことはなかった。
    なぜなら大きなポケモンは、罰を受けていたから。


    この世の裏を守りながら、大きなポケモンは悔やみ続けている。
    さようならを言えなかったと、今でも悔やみ続けている。


      [No.758] [語られることのない伝承] 投稿者:MAX   投稿日:2010/10/21(Thu) 19:28:31     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    その昔、ポケモンと人は同じだったという。
    しかし、人とポケモンはやはり違う生き物だった。

    人は知恵を持ち、ポケモンは力を持つ。
    知恵を持つ人は力を持たず、大きく奔放な力を持つポケモンを恐れていた。
    力を持つポケモンは知恵を持たず、弱いのに死なない人を理解できなかった。

    だから、ポケモンは力を弱めることで人の安心をもらい、
    人は知恵を貸すことでポケモンの信頼を得ていた。

    いつしか人はポケモンへの恐怖を忘れ、
    ポケモンは人の知恵と理解を当たり前と思うようになっていった。

    それは平和だった。



    だが、そうも行かなくなった。

    あるとき、里に大きな災いが近づいてきた。
    災いはあまりに大きく、人の知恵でもポケモンの力でも、きっと防ぎようが無い。
    誰もがそう思っていた。

    そこに、1体の大きなポケモンが現れた。
    とてもとても大きく、奔放な力を持ったポケモンが、災いに立ち向かったのだ。
    大きなポケモンは、襲い来る災いをたちまち押さえつけ、

    ガフッ!

    丸ごと一飲みにしてしまった。



    災いは防がれた。
    だが、人はポケモンの力を思い出してしまった。
    その大きさに、再び恐れるようになってしまった。
    恐れるあまり、ポケモンに武器を向けてしまった。

    ポケモンは人との理解を失い、信頼を失ってしまった。
    ついには人と共に生きることもやめ、人とは別の場所で生きるようになった。

    そして、大きなポケモンは悔やんだ。
    ただ、人と仲間を助けるためだった。それだけが別れの原因になった。

    だから、罰を受けた。



    時間は流れ、今となっては人もポケモンも、恐れあいながらも、共に生きている。
    恐れても、理解できなくても、共に生きていたことを憶えている者がいたから。
    それでも、大きなポケモンは今なお罰を受け続けている。

    人にもポケモンにも知られず、恐れられず、誰にも分からないこの世の裏を、
    大きなポケモンは、ただただ守り続けている。



     * * *


    2度目まして。MAXです。
    いろいろと気に入っているプラチナの看板、ギラティナについて
    語られない伝承を書いてみました。何番煎じでしょうね。

    テーマのことはあまり考えず、思い浮かぶままに書き連ねましたが……よかったんでしょうか?
    とりあえず、

    【批評その他何でもお願いします】
    以上、MAXでした。


      [No.755] Re: まとめ更新しました。 投稿者:兎翔   投稿日:2010/10/21(Thu) 08:21:49     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    まとめ更新お疲れさまです。
    お願いがあるのですが、「たまには天日干しでも。」のタイトルを「洗濯日和【描いてみた】」に変更していただけますか?

    よくよく文章読んだら、みんな明らかに天日干しですよね。
    「たまには」とか意味わかんないですよね…orz

    お手数おかけして申し訳ありません。

    追記:変更確認しました。ありがとうございますm(_ _)m


      [No.753] まとめ更新しました。 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/10/20(Wed) 22:56:22     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    どうもNo.017です。

    まとめ更新しました & URL変わりました。
    http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/index.html

    久方さんのと柊さんのをあらたに加えさせてもらって、
    ポケストアーカイヴという形で手動本棚のようなもの作りました。
    今後、ポケストでまとめたいと思うようなものきましたら、ここに記録していきたいと思います。

    柊さんへ、
    掲載しちゃいましたがよろしかったでしょうか…?
    問題があったら言ってくださいね。


      [No.742] 空想の空想 投稿者:てこ   投稿日:2010/10/18(Mon) 00:01:13     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    ※注意
     神話が出てきます(というより大半)が、神話に詳しくないので間違ってたらすみません。
     あくまで、自分の考えです。イメージ崩されたくないよって方は、見ないことをおすすめします……。

     断じてネタバレではありません。












     ゴーゴン三姉妹。昔々に作られた神話に生まれたこの三姉妹は、誰もが見とれてしまうような容姿を持つことで知られていた。ステンノー、エウリュアレー、そしてその三姉妹の仲でもとりわけ知られていたのは、末妹メドゥーサである。

     三姉妹の中でもメドゥーサは特に美しいと褒め称えられた。例え、千人の女達の中に彼女を無造作に放り込んだとしても、彼女を見つけることは非常に容易い事に違いない。幾ら他の女が青や赤の宝石で身を飾り、美しい色彩の布を纏ったとしても、裸の彼女の美しさに勝ることは無いだろう。もはや、容姿容貌というよりはもう彼女の持つ「気」の様なもの、それが彼女を美しく見せているとしか言い様がなかった。
     桃の皮表面の色、やわからさを連想させる頬。蝋燭のように滑らかな細い指の先には、魚の鱗の如く透き通った爪がはり付いている。そして、何より美しかったのは、彼女の髪であった。長く伸びた彼女の髪は、背中を彩る装飾品と言っても過言ではない。やわらかな髪の一本一本が太陽の光に反射し、大きな宝石を置いている様に輝いた。

     そんな美しさを持つメドゥーサであるが、あることがきっかけでゼウスの娘アテーナーの怒りをかい、醜い姿に変えられてしまう。このことに抗議した姉、ステンノー、エウリュアレーも共に醜い姿に変えられてしまうのである。
     かつての美しい姿は何処へやら。
     薄紅色の頬を隠すかのように、青銅の鱗が全身を覆いつくし、歯は剣の切先の如き鋭さを持った。何より美しかった彼女の長い髪は、森の小枝の様に短く絡み合っている。いや、それはもう髪と呼べるものではないだろう。髪の一本一本がゆらゆらと不気味に揺れ、近づくものには牙をむき真っ赤な舌を出す。三角の頭、縦に長い瞳孔。そう、彼女の、あの美しかった彼女の髪は「メドゥシアナ」と言う蛇になってしまったのである。かつて髪がしなやかに垂れていた背中も、今や黄金の翼がその場所を奪っていた。
     けれど、彼女の容貌自体は美しかった彼女のまま。黒い体についた首は美しい少女の顔をしているのである。背に生えた黄金の翼も彼女の顔も美しいはずであるのに、黒い肌や蛇の髪との不釣合いであり、より一層彼女の不気味さを醸し出していた。
     人々は彼女を怪物、魔女などと呼び恐れた。美しい姿を失い、人々からは恐れられ、心の荒んでしまった彼女は、人々を度々苦しめるようになった。

     そんな彼女を退治しようと立ち上がったのはゼウスの息子、英雄ペルセウス。姉ステンノー。エウリュアレーと違い可死であったメドゥーサだが、その彼女を倒すことは、そう簡単なことではなかった。何せ、彼女の目を見たものは一人残らず石になってしまうというのである。同じ能力を持つと言われるバジリスクやコカトリスならば、背後から忍び寄って首を斬ってしまえばそれで終わりだが、メドゥーサの場合、例えメドゥーサに気づかれずに後ろから斬りつける範囲に辿り着いたとしても、彼女の頭は蛇の群。蛇に騒がれ、メドゥーサに振り向かれればペルセウスの身体は石と化し、二度と動くことは出来ないだろう。
     考えたペルセウスは鏡の様に磨いた盾を前に、決してメドゥーサの顔を見ることなく、彼女を倒したと言う。そんな彼女の最後はどのようなものだったのだろう。ペルセウスが盾を前に翳し、反射した映った自分の目を見て石になったとも、ペルセウスに寝ている間に首を斬られたという話もある。何れの話でも、彼女は最終的にその首を斬られ、アテーナーのもとへ贈られることになった。

     ペルセウスは彼女の首を抱え、空飛ぶサンダルで海の上を飛んだ。その際、布に包まれた彼女の首から流れ出した血は布を赤く染め、海に滴り落ちた。空から海に落ちた彼女の血は、やがて赤い珊瑚になったと言う――。



     そこで私は筆を止め、一息吐いた。メドゥーサは神話の中でもよく知られた怪物である。蛇の髪を持つ、少女。だが、昔私はメドゥーサどころか、ゼウスすら知らなかった。しかし、初めてメドゥーサの話を聞いた時、私はどこか、見たことがあるような心当たりがあったのだ。

     首、黒い肌、美しい少女の顔、短い髪、珊瑚の色、魔女――。

     部屋の隅へと目をやる。部屋の暗がりに浮かぶそれは、眠たそうに欠伸をして何も居ないはずの空間をじっと見つめている。ムウマ。私は思わず、それの名を呼んだ。それが不思議そうに、赤い目で私の顔を見た。
     心臓が跳ねる。手から落ちたペンが机の上を転がり、床に落ちる。時間が止まってしまったかのように、私の瞬きも呼吸も止まった。石と化した私は宙に浮かぶそれを、しばらく見つめ続けていた――。






    【批評していいのよ】
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】

     長っ!ポケモンと関係ないとこ長っ!というより、もし、こういうの駄目でしたら、連絡ください。即効消します。
     友達がムウマは生首みたいで怖いと言っていたことから始まったものです。自分はムウマ大好きです。ムウマージ愛。


      [No.716] はじめて? 投稿者:てこ   投稿日:2010/10/11(Mon) 01:23:37     78clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    「わー!!寝坊した」
     走る。俺はベッドを飛び起き、服を着替え、飯も食わずに家を飛び出した。目指す場所は、町の、研究所。

    「博士!博士!」
     研究所に飛び込むと、一番奥で白い服を着た博士がいつも険しい顔を更に険しくし、仁王立ちで俺をにらめつけていた。うっ、やばい。マジでやばい。
     今の状況を説明すると、今日は俺のポケモントレーナーとしての旅立ちの日であり、この目の前の博士は俺にポケモンをくれるであろう人であり、俺とこの博士の仲はなかなか悪いのであり、更にその悪さに追い討ちをかけるように俺は寝坊してしまったのである。
     ……俺のポケモントレーナー人生終わったかもしれん。
    「あの……すみません」
    「……」
     目の前の博士は黙ったまま、俺を睨み続けている。何か言えよ、じじぃ!とは言えない。じ……博士は微動だにしない。眉一つ動かさず、立ったまま死んでるんじゃというまでに動かない。
     とにかく、俺は謝ることにした。めちゃくちゃ謝った。超謝った。研究所の人の視線が痛いが気にしてられる状況でもない。すみません、ごめんなさい、本当にすみません。あと少ししてたら、俺はきっと土下座をしていたに違いない。幸い、膝を地面につける前に博士は一声を発してくれたのである。
    「……言いたいことはたくさんある、が。持ってけ」
     そう言って博士は一つのモンスターボールを俺に差し出した。机に残っていた最後の一つ。きっと、残りは友達とか友達とか寝坊しなかった友達とかが持ってったに違いない。寝坊せずに選んだ方がよかったかなぁなんて思いつつ、俺は恐る恐るそれを受け取って中心のボタンを押した。
     赤い光がほとばしる。赤い光は集まって、一つの影となり、そのポケモンは姿を現した。

     ジジィィーン。

     黄色い体、糸のように細い目。長い尻尾。座ったまま動かない身体からすーすーと声が、あれ……寝息?
    「お前のポケモンじゃ」
     確か家にあった図鑑で見たことがある。一日中寝ているポケモン。敵に襲われたら寝たままテレポートして逃げるポケモン。一切の攻撃手段を持たず、テレポートしかできないポケモン。
     ケーシィ。
    「……」
    「これが、お前のはじめてのポケモンじゃ。大事にするがいいぞ」
     いつもは険しいその顔に若干優しさのようなものをにじませて、博士はゆっくりと言った。
     俺の……はじめての……ポケモン……。
     って。
    「かっこいい面してんじゃねぇじじぃ!!ケーシィだけで……どうやって戦っていけって言うんだよ!?あの、コイキングですらたいあたりくらい覚えてるぞ!」
    「うるせぇ!寝坊してくるやつがピーチクパーチク言うんじゃねぇ!もう他にポケモンがいなくなってしまったから仕方なくわしの愛弟子をお前に預けよう言うとるんじゃ!文句があるなら、生身で草むらに入って襲われでもするんじゃなぁ!」
     寝坊、そこを出されると俺はもう何も言えない。しばらくにらみあいを続け、俺はケーシィをボールに戻し、全速力で走り出した。
    「覚えてやがれじじぃ!」
    「なんとでも言え小童が!」
     ……こうして、俺の旅は始まったのである。


    「あれ ――くん。 ポケモン だいぶ なついて きた みたいだね
     よし わたしが バトルで ためして あげる!」

     うおぉぉぉぉぉ!!ケーシィで……テレポートしか持たないケーシィで、まともに戦えるポケモンを持った幼馴染にどうやって勝てって言うんだよちくしょうーー!
     と、こころの中で叫んだ瞬間には、俺の視界は真っ暗になり、いつのまにかポケモンセンターにいたのである。まぁ、いい。モンスターボールを買いに行こう。 まぁ、あれだろ。モンスターボール買って、草むらのポケモン捕まえればなんとかなるだろ。


     と思った数分後。

     幼馴染倒さなきゃ、モンスターボール販売されねぇのかよぉぉ……。

     もういい。俺は進む。がむしゃらに進めば、道は見えるさ。何とかな

    「あれ――くん。 ポケモン だいぶ なつ」
    「うるせえぇぇぇぇ!!!」

     数十秒の沈黙。
    「……もぅ。私も私の仕事をしてるんだけどー……」
    「うるせぇやい……ケーシィだけで、どうやって勝てって言うんだよばかやろおぉぉ……」
     幼馴染があごに指を当てて「うーん」と声を漏らす。俺は体育座りをし膝の間に顔をうずめ、地面にの、の、の……。
    「あ、そだてやに行ったらいいんじゃないかな。そだてやに行ったら育ててくれるよ」
    「マジでか!よし、ケーシィ行くぞ!」

     数日後。
     暗い森を超え、道を塞ぐ悪者の目を盗んで道を突き進み、そして、なんとか念願のそだてやに辿り着いた。
    「よし、強くなってこいケーシィ!」
    「ジジィィィ!!」

    「ここはそだてや おまえの ぽけもんを おまえさんの かわりに そだててあげるよ」
    「このケーシィを宜しくお願いします!」
    「……。いや、おまえさんの戦うポケモンがおらくなるじゃろ……」
    「え、だめ!?だめ!?大目に見てもだめすか!」

     ……。

    「ごめん、あたしが言い忘れてたわ」
    「お前なぁ!レベル1のケーシィとここまで来るのにどれだけ苦労したと思ってんだ!」
    「あ、じゃあバトルタワーは?BPためてふしぎなあ」
    「BPたまんねぇだろ!」
    「ポケウォーカーに入れるってのは?あが」
    「だから、一体しかいねぇんだよ!」
    「じゃ、ポケスロンでスロンポイン」
    「だから、一体しかいねぇって言ってんだろ!!」
     うーんと唸る幼馴染。しばらく唸って、手のひらを叩き、笑顔で
    「ものひろいとか!」
    「モンスターボールがねぇんだよ!!」

     あぁ、もうちくしょう。俺は全然駄目だよ。違法ルートで道を突き進んできたけれど、ジムリーダーどころかトレーナー一匹倒しちゃいない。いや、トレーナー一匹どころかポケモン一匹すら……。
     ケーシィの黄色い頭を撫でる。ごろごろとまるで猫のようにケーシィは喉を鳴らした。
     強いポケモントレーナーになることが夢だったけど、別にポケモントレーナーじゃなくてもケーシィといることは出来る。出来る、けど

    「……」
    「あー……、じゃあさ、博士にもう一度謝ってみたら?でさ、ポケモン変えてもらえばいいじゃん」

     変えてもらう。確かに時間をおいた今なら許してもらえるかもしれない。あのときもらえるはずだった、三色のポケモンがもらえるかもしれない。そしたら、おれもトレーナーになることが出来て、幼馴染を倒して、モンスターボールを買って、新たなポケモン達と旅が出来るかもしれない。でも――

     俺は立ち上がった。立ち上がり、早足で歩き始めた。え、なに?と俺を不審そうに見つめる幼馴染をおいて歩き始めた。
     俺とケーシィじゃすぐにやられてテレポートで逃げ帰ってくるに違いない。その場で二人、倒れてしまうかもしれない。だけど――ケーシィじゃなきゃ駄目なんだ。
     理由はともあれ、共に苦労してきた相棒。初めてのポケモンだから。

     あいつのおかげで目が覚めた。俺は何をぐだぐだ言ってた?あきらめて、ケーシィと他のポケモンを交換して、足を進めて何が出来るんだ。何も出来ない。ケーシィをあきらめたという挫折ではじまるトレーナー人生でいいのか。よくない。
     俺に、やれることはまだまだあるだろう。

     ケーシィがふよふよと後ろから着いてくる。首を微かに縦に振り、ジーィと微かに鳴いた。


     数年後。

    「フーディン、サイコキネシス!ドンカラスはゴッドバードっ!」
     翼を広げた黒い影が相手のキノガッサに激しくぶつかる。キノガッサはダメージをくらったようだが、ふらふら。そこにフーディンのサイコキネシスが追い討ちをかけ、ぐるぐると目を回して戦闘不能状態。
    「おっしゃ!よくやった!」
     白旗が相手の側にあげられ、審判の声がフィールドに響き渡った。フィールドの真ん中で俺のはじめての相棒――フーディンは得意げにスプーンを曲げ、髭を揺らしている。

     あれから、なんやかんやあって、とあるまちでとあるおじさんにサイコキネシスのわざマシンをもらった。サイコキネシスはエスパータイプのわざのなかでも高威力なわざ。これで、俺とケーシィの長い長い旅も次のステップに進むぜ!なんて思ったら

    「この わざは もう おぼえているよ」

     なん……だと……!!!

    「おいじじぃ!いや、オキード博士様!これはいったい……」
    「なんじゃ、お前。今更気づいたのか?そのケーシィはわしの愛弟子。リトルカップに出そうと、大事に育てておったやつじゃよ。サイコキネシスくらい、親の譲り技で覚えとるわい!」
     ポケモンが一匹しかいないからって一度もパソコンを触らなかった俺にも原因がある。あるが。
    「それをはじめに言ってくださいよ……」
    「何が、はじめに言えじゃ!戦えないようなポケモンを渡すわけがなかろうが!!」
     
     なんだか笑ってしまう。俺と、ケーシィのあの努力はなんだったのか。いや、ケーシィも使えるなら使ってくれればよかったのになぁ……。
     だが、そう。あの時のこと、今は笑える。でも、あの時は笑いも出来なかった。どうしようか毎日考えて失敗して、でも、あれはあれでどこか楽しかったような気もする。

     
     相手の最後のポケモンであるキノガッサを倒し、俺は相手のトレーナーと握手を交わした。相手トレーナーの後ろに佇む、大きな扉。次の――四天王はどんな人で、その先には何があるのか。
     どきどき、はらはらしながら扉を押すこの瞬間に、初めての相棒、お前が隣に居てくれて、よかった――。


    【批評していいのよ】
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】

    お久しぶりです。てこです。
    今回はギャグのようなギャグのような……。
    台詞おおいところは大目に見てください。すみません。

    最初のポケモンってちゃんと考えられているんだなぁ、なんて思いました。テレポートしか使えなかったらそりゃつらいよ!

    何はともあれケーシィは可愛いんだ!


      [No.685] 黒色徒然草 投稿者:   投稿日:2010/10/01(Fri) 18:06:55     74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    俺は大学生だ。大学つっても、農大携帯獣獣医学科なんだが。まぁ、それもあって俺は今日からアパート暮らしを始めることになった。しかも運良く発見したアパートは超格安。俺の新しい船出を、神様も祝福してくれてるってことか、うん!

    ――――――と、数十分前までは俺もそう呑気に思っていた。

    「ここが幸薄荘……?」
    俺はその新しい住居を見た途端一瞬で絶句した。正直に感想を言おう。クソボロい。下手すれば、ここ本当に人が住んでいい場所なんだろうか、と疑ってしまうほどだ。念の為パソコンから印刷した地図を見たが、やっぱり間違いなさそうだ。てか、アパートの門の近くに『幸薄荘、新規入居者募集中』と書かれた古い板が打ちつけられているから当たり前か。傍らの相棒・くろろ(種族名で言うならグラエナ)が、不満げな鳴き声を上げる。お前も嫌か。嫌だよな、分かるよその気持ち。だって俺も嫌だし。……だがしょうがない。
    「……行くぞ、くろろ」
    そう言った刹那。
    ビシャアア!!
    激しい水音と共に、全身を冷たい水の感触が襲った。身体を見ると全身泥水まみれ。くろろも被害を受けたらしく、全身真っ茶色。なんてこった、くろろが色違いになってしまった。呆然とする俺を尻目に、大型トラックが呑気に走って行った。……入居初日からこの大惨事。さすが幸薄荘、その陰気な名前は伊達じゃない。一瞬走って行って文句を言ってやろうかと思ったが、やめた。もやし男の俺にそんな脚力はない。仕方なく、そのままとぼとぼ歩いて大家さんに挨拶しに行く。初っ端から大家さんに驚かれた。そりゃそうか。
    とりあえず俺の部屋に直行。部屋入ったら着替えるか。くろろも洗ってやんないと。そう思いながら、俺は何気なく部屋のドアを開けた。
    …………真っ黒いテルテル坊主が部屋を埋め尽くしていた。
    ピシャッとドアを閉める。何あれ。前の住民のいやがらせか。いや、でもあのテルテル坊主見覚えが……あ、そうだ、思い出した。カゲボウズだ。なんだポケモンか、なら平気だよな、ということでドアを開ける。今度は青い無数の眼とばっちり視線が合ってしまった。本能的な恐怖で反射的に再び閉める。傍らのくろろが苛々したように吠えた。分かってるって。くそ、こうなりゃ男は度胸だ。思い切ってドアを開けた。
    「……あれ?」
    部屋は空っぽだった。少し古びた感じの埃まみれの部屋だけが視界に広がっている。ふと窓を見ると空いている。あそこから入ってきて、再び出てったんだろうか。でも何でカゲボウズが民家に? 腑に落ちないまま着替えて、くろろを連れて外に出る。
    アパート外に水場があるのを発見。運のいいことにたらいも置いてある。俺はたらいに水を張ると、再び部屋に戻って家から持ってきた『携帯獣専用ボディシャンプー・長毛タイプ用』を持ってきた。この際洗ってやれ。戻ると、くろろは既にたらいの中で待機している。こいつはシャンプーが好きなんだ。シャンプーを適量掌に取った時だった。頭にこつんと何かがぶつかった。何気なく顔を上げた俺は、次の瞬間たらいの中に尻もちをついてしまった。くろろが痛そうに悲鳴を上げる。俺達の頭上にはかなりの数のカゲボウズ達が浮遊していた。おそらくさっきのやつらだろう。興味津々の目で見下ろしてくる。唖然としていた俺の尻に、突然痛みが走った。悲鳴を上げて立ち上がると、くろろが牙をむいて唸っている。噛みつかれたらしい。ごめん、お前のこと忘れてた。
    とりあえずシャンプーを開始する。といっても、カゲボウズ達に凝視されながらのシャンプーなので、なんだか落ち着かない。くろろも同じなのか、時折周りを威嚇する。こら動くな、目に泡が入るぞ。カゲボウズ達は自分達も洗ってほしいのか、俺の頭にまとわりついてくるが、こいつらに毛は生えてないからこのシャンプーでは無理だ。だが向こうはそんなこと気にしないのか、平気で金だらいの中に飛び込んでいく。そこでくろろがとうとう堪忍袋の緒が切れたのか、突然1匹のカゲボウズに飛びかかった。寸前で抱きつき止める。唸り声を上げながら歯をむき出すくろろの首にしがみつきながら、俺は慌てて叫んだ。
    「く、くろろ待て! ウェイト!」
    俺の指示に渋々くろろは動きを止めた。やれやれ。ゴーストタイプに噛みつくは効果抜群だ。下手したら引っ越し初日から大ごとになるところだった。
    噛みつかれそうになったのが怖かったのか、カゲボウズ達は潮が引くようにくろろの周りからいなくなった。代わりにいっそう俺にまとわりついてくる。真っ黒い体のせいで手元がよく見えない。「ごめん、ちょっとどいてくれ」と声をかけながら、俺はカゲボウズを掻き分けてシャンプーを強行する。
    カゲボウズ達のせいで進行速度が格段に落ちたシャンプーは、午後5時半にようやく終了した。あぁ、しゃがみっ放しで首が痛い、腕が痛い、膝が痛い。ついでに噛みつかれた尻も痛い。ぐったりして部屋へと戻る俺達の後ろを、カゲボウズ達がついてくる。部屋の中にまで入ってきたが、追い返す気力もない。実家から持参した弁当を食べるが、その間もカゲボウズ達は俺達の周りを飛び回っている。くろろはカゲボウズが自分のポケモンフーズの皿に近づくたび、また唸り声を上げている。疲れるから騒ぐなよ。
    あぁ眠い。食器を片づけた俺は、部屋の床に大の字に寝転がった。傍らにくろろがうずくまって眠り始めた。ぼんやりと開けっぱなしの窓を見ると、外は夕焼けだった。橙色の空を背景に、空を漂うカゲボウズの影が不思議なシルエットとなっている。何故かその風景に見とれながら、俺は意識が薄らいでいくのを感じた。顔を覗きこむカゲボウズ達の顔がぼやけてくる。
    ……明日になったら、カゲボウズ達にえさでも買ってきてやろうかな。
    その思いを最後に、俺の意識はブラックアウトした。




    おわるのか

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】

    ――――――――――――――――
    カゲボウズ人気の勢いに便乗してこんな新参者が書いてしまいました。
    ちなみに携帯獣とはポケモンのことです。


      [No.621] Re: 拝見! 投稿者:   投稿日:2010/09/09(Thu) 23:15:27     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    感想ありがとうございます。

    >ほのぼのとした雰囲気が暖かい、なんともかわいらしい小品。

    そう言ってくださってとても嬉しいです。
    初めての投稿だったので、いい作品が書けるのかどうか心配だったのですが、ほっとしました。

    >新美南吉の「手袋を買いに」を思わせる少女の愛らしさがよい。

    実は「手袋を買いに」って、あらすじしか読んだことがないんです(汗
    ですが雰囲気的にはそういう作品に近づけるよう頑張ってみました。

    >それにしても、炎ポケモンが雨の中で長時間待ってるって結構デンジャラスなのでは(笑)

    そうですね。下手したら命にかかわりますから(笑

    感想、ありがとうございました!


      [No.620] 「あかいいと」 −詠んでみた− 投稿者:桜桃子(サトチ)   投稿日:2010/09/09(Thu) 19:32:40     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    十重二十重恋に狂ひて汝を縛る我が魂の緒は紅蓮に燃えつ


    魂の緒の紅蓮の縄に結ばれつ共に奈落の闇へ落ちなむ



    歌意:
    ・幾重にもあなたを縛る私の魂の緒は、恋に狂うあまり紅蓮の炎をあげて燃え盛っていることだ。
    ・たとえ奈落の闇へでも共に落ちましょう。赤い糸ならぬ燃える魂の緒という頑丈な縄で互いに繋がれたあなたとわたしですなのから。

    注「魂の緒」:肉体と霊魂、または本体と離脱した霊体などをつなぐと言われる紐のようなもの。

    ・・・とか、字数数えていろいろと解説つけたりも無粋なんで、短歌俳句はOKに戻しませんかー(^^;)>鳩さん


      [No.619] 一度中華街で肉まんでも食べたいもんです 投稿者:サトチ   投稿日:2010/09/09(Thu) 19:17:43     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 正規品を開発した企業は果たしてどのように受け取ったのだろうか?

    「改造コード等を使ってポケモンを改造した場合など、サポートを受けられないことやゲームを正常に続けられないことがございますので、ご了承ください」
    みたいなことを書かれそうな気がする(笑)

    とりあえず続きに期待!


      [No.618] 拝見! 投稿者:サトチ   投稿日:2010/09/09(Thu) 19:03:37     75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ほのぼのとした雰囲気が暖かい、なんともかわいらしい小品。
    新美南吉の「手袋を買いに」を思わせる少女の愛らしさがよい。

    それにしても、炎ポケモンが雨の中で長時間待ってるって結構デンジャラスなのでは(笑)


      [No.616] 夕時雨 投稿者:   投稿日:2010/09/09(Thu) 14:28:23     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ――――ねぇ、知ってる? 雨の時はお化けが出やすいんだって。
    は? なにそれ。
    ――――雨の時はみんな傘差してるでしょ? 傘で顔が隠れるから、お化けは雨の時に出るんだってさ。
    ……お化けって傘差すもんなの?
    ――――さぁ? 知らない。

    友達とそんな会話をしたのはいつだったっけか。

    俺は雨の降る暗い夜道を1人で歩いていた。
    右手にはコンビニの安物の透明ビニール傘。左手には漫画雑誌の入ったビニール袋。
    何で俺の家からコンビニはこんなに遠いんだろうか。納得できない。
    漫画買いに行くだけでも往復30分なんて、ありえねぇよ。何のためのコンビニなんだか。
    そうぶつくさ言いながら、俺は傘を透かして空を見上げた。
    空は鉛色の雲ですっかり覆われている。星どころか空すら見えない。これだから雨の日は嫌なんだ。
    ため息をついて視線を前方に戻した俺は、ふと立ち止まった。
    今俺の歩いている道の両端には、等間隔でボロい街灯が立ち並んでいる。
    その街灯の内の1つ、とりわけ汚い街灯の下に誰かが佇んでいるのを発見したのだ。
    よくよく眼を凝らすと、人影は少女のようだった。
    そして頭の上には……どうやらハスらしき大きな葉っぱ。
    見間違いかと思ったけど、そうではないようだった。俺はふとガキの頃に見たアニメ映画を思い出した。その中で、主人公の幼い姉妹が雨の降るバス停で親を待っていると、少女の隣にお化けがやってきて同じくバスを待ち始めるというシーンがあった。そういえばそのお化けも頭に葉っぱを乗っけていたっけ。
    俺は再度ため息をついた。雨の中で頭に葉っぱを乗っけて1人佇む少女なんて、どう考えてもおかしい。
    気にしないでさっさと通り過ぎようかと思った。
    だけどその時、しとしとと降っていた雨が急に勢いを増した。ドウッとすごい音を立てて、雨を伴った強風が吹きつけてくる。少女の肩がビクッと跳ねた。よく見ると、少女はすっかり濡れてしまっていた。寒いのか、肩が震えている。
    俺はしばし逡巡した。だけど結局俺はその少女の元へ歩み寄っていった。……言っておくが俺にロリコンの趣味はない。
    「どうしたの?」
    出来るだけ優しい声で話しかけると、少女が驚いたようにこちらを見た(ようだった)。葉の下から、明らかに戸惑いと警戒の入り混じった視線が飛んでくる。俺は慌てて言った。
    「あ、どうしてこんな所にいるのかなって思っただけだよ。お母さんは?」
    「……今待ってるの」
    ようやく口をきいてくれた。か細い声だった。俺はほっとしてさらに聞いた。
    「君、傘かなんか持ってないの?」
    「……」
    沈黙がその答えを物語っていた。すると俺は自分でも驚いたことに、右手に持っていた傘をすっと少女に差し出した。
    「あ、あの、風邪ひいちゃうといけないからさ、俺の傘貸してあげようか?」
    自分でもアホらしいくらい紳士的な行動だ。馬鹿か俺は。だけど少女はしばらく黙って傘の柄を見つめていると、おずおずと手を出した。俺はその手に傘を握らせてやった。
    傘を差すと、最初の内はおどおどしていた少女も、やがて濡れなくなったことにほっとしたのか、張りつめていた雰囲気が緩んだ。少女は小声でつぶやいた。
    「ありがとう」
    「いいよ」
    俺は笑ってその場を離れようとした。その時、小さな手が俺のパーカーを掴んだ。
    驚いて振り返ると、少女は空いた片手でワンピースのポケットを探っていた。
    小さな手がポケットから何かを取り出して、俺の手に握らせた。わけが分からぬまま俺がそれを受け取ると、少女は不意に背後を振り返って嬉しそうに叫んだ。
    「あ、お母さん!」
    目をやると、闇の向こうで何かがボウッと燃えていた。ギョッとした俺を尻目に、少女は嬉しそうに駆け出して行った。
    その時視界の端で何かが揺れた。

    少女のワンピースの裾から覗いていたのは、6本の先が丸まった赤い尾。
    そして、駆けだした拍子にずれた葉っぱの先から覗いた、髪の毛を掻き分けて突き出した赤い耳。

    それが何なのかを俺の脳が認識する前に、少女の小さな後ろ姿は闇に溶けて消えてしまった。


    茫然と突っ立っていた俺は、ようやく手に握らされたものに視線を落とした。
    しばらくそれをじっと見て、俺はちょっと笑ってから再び歩き出した。


    ――――『ねぇ、知ってる? 雨の時はお化けが出やすいんだって』


    ……まぁ、でもたまにはこういう雨の日もいいもんだ。
    俺の掌の中で、雨粒で濡れたチーゴの実が街灯の光を受けて煌めいた。
    雨はようやく小降りになってきていた。


    ―――――――
    お題:きつねポケモン

    こんな感じでよろしいのでしょうか?
    初めて投稿します、「柊」という者です。よろしくお願いします。
    アドバイスなどありましたら、下さると嬉しいです。

    【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】【批評していいのよ】


      [No.615] 新ジャンル:カゲボウズ部屋干し 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/09/09(Thu) 12:37:19     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    >  4畳半の天井にロープを張って、カゲボウズをずらっと吊るす。
    >  おぉ、すごい数だ。天井が真っ黒だ。

    カゲボウズ部屋干しとな。
    台風っておいしいシチュエーションだ。
    部屋にカゲボウズ干したらきっとよく眠れるに違いない。


      [No.614] 【カゲボウズ憑き物件】まとめ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/09/09(Thu) 08:30:33     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    カゲボウズが洗濯された結果がこれだよ!
    http://masapoke.sakura.ne.jp/pkst/index.html

    「書いてみた」等で正式タイトル(?)がついていなかったものは、ひとまずこちらで適当につけてしまいました。
    こういうタイトルにして欲しいみたいな場合は申請ください。


    Cocoさんの書いてみたを広げた功績は大きい……

    【みんなで書いてみたをまとめたのよ】



    ※独立スレだったけど、台風便乗


      [No.613] 台風上陸 投稿者:久方小風夜   《URL》   投稿日:2010/09/09(Thu) 03:10:11     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     テレビなんてないから、ラジオの気象通報のデータを用紙に落とす。うん、そんな予感はしてたんだ。
     このアパート、大丈夫かな。結構古いからなあ。屋根とか飛ばなきゃいいけど。

     台風、今季初上陸。


     カーテンを開けた。大粒の雨が降っている。まだ本格的ではないようだけど、風もなかなか強いみたいだ。
     この辺が暴風域に入るのはもうちょっと先かな、と思いながら窓の外を見ていると、ポリゴン2にまたがったヤミラミが服の袖を引っ張ってきた。
     何かと思うと、向かいのアパートの1室を指差している。
     目を凝らしてよく見てみると、ベランダの軒下で、黒いものが風にあおられてひらひらと揺れている。

     あ、カゲボウズだ。

     このアパートの周辺にはカゲボウズが多い。というか、このアパートに住み着いているらしい。宿つきカゲボウズと呼ばれているとか何とか。
     負の感情を抱えた住人の部屋の軒下にぶら下がっていることが多いみたいだ。この周辺のいろんな部屋の窓にくっついていつのを僕もよく見ている。


     それにしても、台風接近。こんなときにまでぶら下がらなくても、と僕は思う。
     ぶら下がっているカゲボウズも、何だか必死な表情だ。飛ばされないように頑張っているんだろう。それでも、強風にあおられて色々な方向に振り回されている。

     まずい、あれ、飛ばされるんじゃないだろうか。これから暴風域に入ったら、あのカゲボウズも耐えられないかもしれない。
     僕は窓を開けた。部屋に雨が降り込んできた。もう大分風が強い。


     その時、とうとう限界を超えたのか、カゲボウズが軒下からプチッと離れた。
     風に舞いあげられて飛んでいくカゲボウズ。
     あ、と思った次の瞬間、僕の横を何かが高速で横切った。

     ヤミラミを乗せたポリゴン2が、暴風雨の中、目にもとまらぬ速さで飛びだした。確か「こうそくいどう」とかいうんだっけあの技。
     背に乗ったヤミラミが、風に飛ばされたカゲボウズを捕まえた。
     泥水にまみれた今にも泣きそうな顔のカゲボウズを連れて、ヤミラミとポリゴン2が部屋に戻ってきた。
     雨風にさらされていたカゲボウズは、部屋に入るなり僕に飛びついてきた。Tシャツが泥だらけになったけど、台風接近中のなか、外で雨風にさらされていたんだから無理もない。
     僕はお疲れ様、とヤミラミとポリゴン2の頭をなでた。ヤミラミは誇らしげに胸を張った。ポリゴンは相変わらず無表情だった。

     ふと視線を感じた。部屋が暗い。
     窓の外を見ると、カゲボウズたちがわらわらと集まってこちらを見ていた。10匹、いや20匹はいるだろうか。
     みんな雨やら泥やらで濡れて汚れていた。そうか、こいつらみんな、外で雨風に打たれてたんだな。で、この台風接近中の中、窓を開ける奇特な家なんてここくらいだから、ここの宿つきのカゲボウズたちがみんな寄ってきた、と。
     僕は手まねきして、入りなよ、とカゲボウズたちに言った。カゲボウズたちはわらわらと部屋に入ってきた。
     決して広いとはいえない4畳半が、濡れた黒い布で埋め尽くされる。ヤミラミは僕の肩によじ登ってきて、ポリゴン2はパソコンに入っていった。
     とりあえず、みんな泥やらほこりやらで汚れているし、部屋の中だけどしょうがない、洗濯しよう。


     そう思って水場から金ダライを持っていこうとしたちょうどその時、どんどんとドアを叩く音がした。
     出てみると、全身濡れた男の人が立っていた。確か、ここのアパートの人で……確か、よくカゲボウズを洗濯して干している人だ。

    「す、すみません! あの、この部屋にカゲボウズたちが集まってきませんでした?」
    「あ、ええ、はい。台風にさらされててかわいそうだったんで」
    「な、何かすみません。いつも俺の部屋にいる連中なのに……」
    「いやいや、気にしないでください。遊び相手が増えてこいつも喜んでますから」

     そう言って、僕は肩の上のヤミラミを指差した。ヤミラミはそうだと言うようにけらけらと笑った。
     男の人は、僕が手に持っている金ダライに気がついた。

    「もしかして……これから洗濯ですか?」
    「あ、はい。みんな汚れちゃってるんで」
    「じゃあ、俺も手伝います! これでも俺、一応ポケモントリミングセンターで働いてるんで!」

     トリマーって。プロじゃん。すごいなぁ。そんな人がこのアパートにいたんだ。
     僕はもちろん喜んでお願いした。さすがにカゲボウズの数が多すぎて、ひとりで洗濯するのは辛そうだったし。


     どうやらこの台風の接近でお店を今日は早めに閉めたそうで、自転車通勤だったトリマーさんはその帰りに暴風雨にさらされたらしい。
     それでアパートの前に来た時、僕の部屋にカゲボウズたちが飛び込んでいくのを見たとか。なるほど、それで僕の部屋にまっすぐやってきたのか。

     とりあえず、身体を拭いてくださいとトリマーさんにタオルを渡した。
     服も濡れてたから、同じアパートだし着替えに行ってもらえばよかったんだけど、ちょうど暴風域にでも入ったのか、狙ったかのように風と雨が強くなった。
     これだとどちらにせよずぶぬれになってしまう。他の部屋に行くには外階段を通らなきゃならないし。というわけで、僕のTシャツとズボンを着てもらうことにした。

     トリマーさんが着替えている間に、僕は畳の上にブルーシートを敷いた。カゲボウズたちにはちょっと浮かんでいてもらって、ちゃぶ台をどけて、4畳半にピッチリと敷き詰める。
     着替え終わったトリマーさんが、どうしてこんなもん持ってるのか、と驚いて聞いてきた。
     僕は、大学で地学を専攻してるんです、だから屋外で使えるものなら大体持ってますよ、と言った。トリマーさんはブルーシートをつまみながら、これがあったら雨でも選択できるなぁ、と小さくつぶやいていた。

     金ダライをブルーシートの上に置き、ポリタンクにためていた水をタライに入れた。万が一断水した時のためにと思っていたんだけど、まぁ多分大丈夫だろう。
     水を張ると、すぐにカゲボウズたちが何匹かタライの中に飛び込んできた。トリマーさんは、こら待て、順番、とかカゲボウズたちに言い聞かせていた。本当にいつも洗ってるんだなぁ、と思った。
     トリマーさんは慣れた手つきでカゲボウズを洗う。気持ち良さそうに目を細めるカゲボウズ。まだかまだかと順番を待つカゲボウズたち。
     僕はお湯を沸かしたり、洗われた子をタオルで拭いたりした。トリマーさんの手つきがよすぎて、手を出すと逆に邪魔な気がすると思ったから。
     肩の上のヤミラミがぴょいと床に下りた。見違えるほどきれいになったカゲボウズたちを見て、ヤミラミはとことことトリマーさんの方へ行った。

    「お? よかったら、ヤミラミもシャンプーしようか?」
    「でもそいつ、水苦手ですよ?」
    「大丈夫大丈夫。そういうの慣れてるから」

     ううむ、さすがプロ。かっこいいなぁ。
     畜生ヤミラミの奴、大人しくシャンプーされやがって。プロすげぇ。
     そういえば君、とトリマーさんが言った。

    「この前、カゲボウズと一緒にホース持ってヤミラミ追いかけまわしてたよね?」

     見られてた……!!


     4畳半の天井にロープを張って、カゲボウズをずらっと吊るす。
     おぉ、すごい数だ。天井が真っ黒だ。
     僕はトリマーさんとコーヒーをすすりながら天井を見上げた。

    「何と言うか……威圧感がありますね」
    「これだけ集まるとすごいなぁ」

     天井を埋め尽くす大きな黒いてるてる坊主。3色の目がじっとこっちを見降ろしている。
     ヤミラミがじゃれてきた。これまでにないほどふわふわな毛並み。ヤミラミもとても機嫌がいい。プロすげぇ。
     お店の場所も教えてもらったし、今度行ってみよう。



     暴風域を抜けるまで、もう少し。
     台風が過ぎ去るまで、あと1晩。





    おわる。



    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【何してもいいのよ】

    台風が来たので書いてしまった。
    でも自分の住んでいるところは思ったほど風は強くなかったです。雨はそこそこでしたが。

    CoCoさんの毒男さん勝手にお借りしました。ありがとうございました。


      [No.607] インストール 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/09/07(Tue) 12:56:27     90clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     これはとあるポケモンが発見されて、世間的に認証されるまでの過程である。


     とあるポケモンとは進化系である。
     正確には今は進化系と認められているというのが正しいのかもしれない。
     はっきり言って当初それに対する僕の印象は最悪だったと言っていい。
     正直気持ち悪いと思ったし、腹が立った。
     たぶん周りの連中も同じだったんじゃないのかな、と僕は思っている。


     事の始まりはコールセンターに掛かってきた一本の電話だった。
     内容はわが社の新商品に関する問い合わせだったという。
     コールセンターの職員はマニュアル通りにこう答えた。

    「大変申し訳ありませんが、弊社ではそのような商品はとりあつかっておりません。開発も未定となっております」

     相手は残念そうに「そうですか」と、答えたという。
     この件はそれだけで終わると思われた。
     好評と一部の不評を買ったわが社のその製品には時折そのような質問が上がることがあるからだ。
     だが、同じような問い合わせが次の日にも数十件あったという。
     それは普段よりかなり多い数だったとコールセンター職員は語る。
     しかしながらないものはない。
     だからコールセンターは前日と同じ答えを返したのだった。
     すると次の日に、おかしなクレームの電話がかかってきた。
     それはわが社の製品をアップグレードした結果、首がとれてしまった、という仰天の内容だった。

    「まったくばかばかしい」

     と、開発責任者は怒りを顕にする。

    「開発時にどれだけテストを重ねたと思っているんだ! 首が取れるだなんて!」

     ひどい妄言だと僕も思った。
     きっとトレーナーが相当がさつに扱ったに違いない。
     それでなきゃきっとイタズラ電話だ。
     けれど「首が取れた」というクレームは次の日も、その次の日もかかってきた。むしろ件数が明らかに増えていた。
     もしかしたら本当に致命的なバグがあるのでは……。
     まさか、そんな、などと開発チームが万が一を恐れ始めた頃、そのクレームの正体は不意に明らかになった。

    「部長、これをご覧ください」

     そう言って、同僚のカワベがwebページのコピーを渡したのだ。
     コピー容姿に印字されていたのは某巨大掲示板のスレッドの一本だった。

    「カワベ君、君は勤務中に151chなんて見ているのかね」

     部長は呆れた声で言ったが、次の瞬間にスレのタイトルを見て青ざめた。
     スレタイはこうだった。

    【新種】ポリゴン2を進化させてみた【発見】



    ●インストール

     

     コピー用紙の印字を目で追いながら部長の手はワナワナと震えていた。

    「カワベ君、これはたしかな情報なんだろうね」

     メガネごしに部長はカワベを見上げる。

    「部長、私は嘘は嘘と見抜ける人物であります」

     カワベは大真面目にそう答えた。

    「そんなことは聞いておらん。とりあえず画像はないのか、画像は。なんで151ちゃんねるは画像をうpできんのだ!」
    「よく知っておいでですね」
    「う、うるさい。いいから画像を」

     部長は顔をあからめて言う。

    「そうおしゃると思ってポケ速151ちゃんねるまとめをコピーしておきました」
    「だったら、最初から出したまえ!」

     部長はカワベの持っていたコピー用紙を奪う。
     物事には順番が……というカワベの意見は部長の右耳から左耳を通り抜け、聞かれることはなかった。

    「……なんだこれは!」

     と、部長は言った。

    「ふざけているのか!? タチの悪い冗談じゃないのか! 首がとれてるじゃないか!」

     部長が声を荒げた。
     首がとれている、というキーワードに僕含め部屋にいた全員の首が部長のほうに向いた。
     僕達はわらわらと部長の机に集まった。
     カワベがコピーしたポケ速まとめの画像に皆の目が釘付けになる。
     驚きと怒りの困惑の声が上がった。
     僕の第一印象は気持ち悪い、だった。
     しばらくしてふつふつと怒りがこみ上げてきた。
     僕らが苦労して開発したアップグレード、それによって進化したポリゴン2が見るも無残な姿になっていたからだ。
     胴体からは首が離れ、宙を舞っている。
     目が寄生虫にとりつかれたカタツムリみたいにぐるぐるしていた。
     なんだこれ。なんだこれ。なんだこれ!

    「部長、大変です」

     そのうちに席に戻ったウラシマが言った。

    「今度はなんだ」
    「スマイル動画のポケモンカテゴリにその……進化の様子がアップされてます」
    「なんだと!」
    「あとぽけつべにも」

     今度はウラシマの席に皆が集まった。

    「うわぁ、まじかよ……」
    「ぶっちぎりの毎時1位じゃないか」
    「おいおい再生数が10万越えそうだぞ」
    「うらやましいな、俺の動画なんか再生数三桁なのに」

     動画左上に表示された再生数、マイリスト数を見ながらカワベがうらやましそうに言った。

    「お前動画あげてたのかよ」

     と、僕は思わず突っ込んでしまった。

    「ああ、カラナクシ飼育日記を」
    「……」
    「この前のお盆休みに海で捕まえたんだ……かわいくって。ちなみに西のほう」

     カワベは子煩悩な父親の表情を見せた。
     するとウラシマの左隣のデスクで唐突に電話が鳴った。受話器をとるとコールセンターだった。

    「開発室ですか!? もう動画はご覧になりましたか! さっきから電話がひっきりなしにかかってきて……」

     すると今度は右隣の電話が鳴る。
     カワベが取った。

    「ご無沙汰しております。ヤマブキ通信のスギモトでございます。ポリゴン2の進化系について取材を……」

     部長がバンと机を叩いた。

    「緊急記者会見の準備だ! ホームページにも説明を出せ!」



     カントー地方ヤマブキシティに本社を置くシルフカンパニー。
     モンスターボールをはじめとしたポケモントレーナー向けの各種グッズで名を知られる大企業だ。
     そうして近年特に注目を集めたのが、わが社の技術の粋を集めて作った史上初の人口ポケモン、ポリゴンだった。
     三年後にはアップグレードを開発、ポリゴンはポリゴン2へとバージョンアップ……進化を遂げた。
     もちろんさらなるアップグレードへの期待は当初からあった。
     だが開発は中断していた。
     その理由については後々語ることにするが、そんな時に突如発生したのが今回の進化系騒動だ。

     この日わが社はポリゴン2の進化系らしきポケモンのことで対応に追われることになった。
     もちろん通常業務なんてままならなかった。
     どの部署も仕事場の電話がひっきりなしに鳴って、人があちらこちらを駆け回った。
     一番とばっちりをうけたのは製品開発を請け負う我ら開発室の面々であった。
     こうして僕らの戦いの日々はこの日に幕を開けたのである――



     たぶん続けたい

    ---------------------------------------------------
    お題:自由題

    中華街の地元民ご用達のお店、大三元でフカヒレチャーハンを食ったの帰りに思いついた。
    ポリゴン2からさらなる進化に使うあの道具。
    名前からして明らかに正規品ではないだろう。
    それを正規品を開発した企業は果たしてどのように受け取ったのだろうか?
    この作品はそんな妄想から生まれました。

    ……誰かそのうち中華街で飯食おうぜ


      [No.596] それはですね… 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/09/04(Sat) 14:02:55     92clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > > ☆☆☆!
    >
    > つい、「☆十個で満点だろう」とか勘ぐってしまうきとかげです。いえ、素直に受け取ります。

    あ、きとかげさんはご存じないでしょうけど
    ☆☆☆っていうのは最高評価です。
    フフフ……

    返歌いいよね!
    すごくいいよね!
    やっぱりサトチさんもそう思うよね!


    あー、あと詠み人知らずの赤版出来たんですけど、内容がアレすぎる……これはひどい。
    こっちは詠み人知らずと一緒に個人誌の豊縁二集に載せようと思ってます。
    タイトルは「黄泉人知らず」となる予定です。


      [No.595] Re: 絶妙哉!>返歌、詠み人知らず 投稿者:きとかげ   投稿日:2010/09/04(Sat) 11:53:45     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    褒め言葉がこんなに降ってきて恐縮です!あんまり喜ぶと膨らむのでちょっと縮みます!

    > 古文の出来もいいし

    高校の古典の先生のお陰です。
    「ゆかし」は完璧に忘れてましたよ!

    > ☆☆☆!

    つい、「☆十個で満点だろう」とか勘ぐってしまうきとかげです。いえ、素直に受け取ります。


      [No.594] 返歌です 投稿者:きとかげ   投稿日:2010/09/04(Sat) 11:19:42     86clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 魚が蓮(ハスボー一族ですね!)と歌会というのがいいと思います!
    > これはよい!
    > すげえ風流……草木も歌ったのだ!

    そういえばハスボー一族は草木でしたね!(完全に失念
    多分、彼らは蓮の美しさを細やかに歌い上げたんだろうなーと考えながら書きました。蓮だけに、蓮の美しさはよく分かる、というイメージでのチョイスです。

    > こうなったらポケモン視点で読まれた歌と解説を投稿していくスレもおもしろそうですね。

    なるほど、そういうのもいいですね……
    深海や大空で歌う歌、読んでみたいです。誰か書いて!(ぇ

    > うしし、そうです。
    > 昔は人もポケモンも(以下自主規制

    そして人とアゲハントも(ry

    > 返歌、しかと受け取りましたぞ……!!!
    > うっひょい

    受け取ってもらえた……!
    うっきゃああ


      [No.583] Re: ニューラに関してなのですが 投稿者:スフィア   投稿日:2010/09/02(Thu) 21:14:48     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    有難うございます。
    早速購入してみました。
    弟の美術の課題で余った木材に巻きつけて使っています。
    とても気に入ったようで、こちらとしても嬉しいです。
    叱るときは取り上げえれば良いですしねww


      [No.580] 絶妙哉!>返歌、詠み人知らず 投稿者:桜桃子   投稿日:2010/09/02(Thu) 19:26:12     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    物語全体の雰囲気が実に良い!
    古文の出来もいいし、実に味わいがあり、ゆかしき風情がただよっている。
    ついでに言うと解説、注釈等も大変それらしくて実にナイス!(笑)

    もしポケモン世界に今昔物語があったなら、その一編に入っていそうな名品。☆☆☆!


      [No.579] Re: ニューラに関してなのですが 投稿者:久方小風夜   投稿日:2010/09/02(Thu) 08:42:20     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    うちのヤミラミもいたずら好きなので、気持ちはよくわかります。

    1と2
    暴れたりないのかもしれません。バトルをさせるか、どこかで遊んで発散させるといいと思います。
    最近はニューラ用の爪研ぎシートもあるみたいですね↓
    http://xxxxx


    うちのヤミラミも炊いた白米を勝手に食べます。昨日は炊飯器の中身全部やられました。
    これはもう戦うしかないです。頑張ってください。


      [No.578] 返歌……だと 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/09/01(Wed) 23:35:25     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    まさかの返歌……だと!
    うおおおおおおおおおおおおおお!

    弱ったなぁ、こんなの書かれちゃったら歌変えられないじゃんw
    (引き続き検討はしてみるけど、変えにくくはなった確実に)

    そういえば古語っぽくするなら
    うるわし→うるはし ですよね。
    危ない危ない、後で修正しておこう。

    魚が蓮(ハスボー一族ですね!)と歌会というのがいいと思います!
    これはよい!
    すげえ風流……草木も歌ったのだ!

    まったく和歌に需要がなかったから、和歌項目なくしたっていうのに……これは復活フラグなのか?
    こうなったらポケモン視点で読まれた歌と解説を投稿していくスレもおもしろそうですね。



    > 【書いちゃった】
    > 水芙蓉の歌に返歌を詠みたい、詠みたいと念じた末にこのような形になりました。

    うれしいこと言ってくれるじゃないの。
    もっとやっていいのよ(


    > 水芙蓉の歌は水の歌人がハスミを想って詠んだ歌だろう、と思いましたが、

    うしし、そうです。
    昔は人もポケモンも(以下自主規制


    返歌、しかと受け取りましたぞ……!!!
    うっひょい


      [No.577] 返歌、詠み人知らず 投稿者:きとかげ   投稿日:2010/09/01(Wed) 23:09:58     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     蓮の花音に聞こえし泉あり。
     虫獣鳥など日ごと集ひては歌詠み、時にとりて人もすなる歌会をせんとて、するなり。

     ある夜、蓮の花咲き乱るること、いとおもしろければ、蓮の花にて歌会せんと言ひけり。
     朔なれば、魚、蓮のみ集ひて歌詠みけり。
     蓮、魚、蓮と詠みて、蓮の歌すぐれたれば、誰か詠まんと言へども、詠まず。
     さればとて、若き鯰進み出づ。


     水芙蓉 咲き乱れるは さうざうし うるはし君を 隠す蚊帳なり


     魚、蓮ども、魚の歌すぐれたりと言へり。
     誰をか思ふは知らねども、蓮の花の盛りなれば、垣間見るべからず。
     魚、蓮に袖あらば若き鯰と共に袖ぞ絞らめ。

     水芙蓉の君、いかに、何かはと問へば、若き鯰、かたち知らず、ただ声のみ聞く。
     水の外より、水芙蓉の君、誰かは、蓮の花をかし、我も詠まんと言ふものあり。


     声までも 覆はましかば 水芙蓉 我と君とを 分かつ橋立


     またすぐれたる歌なり。
     若き鯰、かこそ君なれと言へば、蓮どもとく見よとて見んとするが、水芙蓉の君、葉を渡り、泉の彼の岸に消えぬ。
     小さき蓮、尾を見たり、柿色なりと言へども、水芙蓉あればついに見ず。


    (現代語訳と訳注)

     蓮の花で有名な泉がある。
     虫や獣や鳥などが、日ごと集まっては歌を詠み、折に触れては人もするという歌会をしようと言って、するのだ。

     ある夜、蓮の花が咲き乱れること、とても興趣深いので、蓮の花という題で歌会をしようと(誰かが)言った。
     朔の日なので、(月明かりがないため虫や獣や鳥は泉に来れず)魚と蓮だけが集まって歌を詠んだ。
     蓮、魚、蓮の順で歌を詠んで、蓮の側の歌が魚の歌より勝っているので、「(魚の側は)誰か詠まないのか」と(蓮が)言うけれども、誰も詠まない。
    「誰も詠まないなら」と言って、若い鯰が進み出た。

     水芙蓉 咲き乱れるは さうざうし うるはし君を 隠す蚊帳なり

     魚たちも蓮たちも、この魚の歌はすばらしいと言った。
    「誰を思っているかは知らないけれども、蓮の花が今盛りなので、想い人の姿を(蓮の葉の隙間から)覗き見ることができない。
     私たち魚や蓮にもし涙があれば、この若い鯰と一緒に泣くだろう」(と魚や蓮が感想を述べた)

    「水芙蓉の君とはどんな姿だ、(魚か獣か人か、)何だ」と(誰かが若い鯰に)聞くと、若い鯰は、「姿は知らない。ただ声だけ聞いている」(と答える)
     水の外から、「水芙蓉の君って誰でしょうね。蓮の花がきれいだわ。私も(蓮の花を題に)歌を詠もう」と言うものがいる。

     声までも 覆はましかば 水芙蓉 我と君とを 分かつ橋立

     またすばらしい歌だ。
     若い鯰は、「あれこそ水芙蓉の君だ」と言うので、(大きな蓮が)「蓮たち、はやく(水芙蓉の君の姿を)見ろ」と言って、
    (命じられた蓮たちは、その姿を)見ようとするが、水芙蓉の君は蓮の葉を渡ってあちらの岸に消えてしまった。
     小さい蓮は、「尾を見た、柿色だった」と言うけれども、水芙蓉が(水面を覆って)咲いていたので、とうとう水芙蓉の君の姿を見ることはなかった。


    (和歌解説)

     声までも 覆はましかば 水芙蓉 我と君とを 分かつ橋立

    (「君の姿を水芙蓉が隠してしまう」と嘆くのに対して)
     どうせなら声まで覆い隠してしまえばよかったのに、水芙蓉よ。
     この花は私と貴方を結ぶ橋ではなくて、水面のあちらとこちらに分け隔てる橋であるよ。

    (出典など)
    『池端日記』
     執筆者、執筆年共に不明の日記もの。一説には作者は木石竜子とも。
     池のほとりに庵を結んだ作者が、各地の伝承を聞き伝で蒐集しつつ、折りに触れ過去を振り返るという内容になっている。
     百人一首、特に蓮見小町とその歌にまつわる伝承が多く記されているが、その多くが作者の創作だと思われる。
     この話も、「水芙蓉の歌は詠み人知らずである」という伝承に題材をとった作話とされる。
     庵の場所といい、日記中に小町の名前が出る頻度といい、作者は単なる小町シンパじゃないか、とも。



    【書いちゃった】

    水芙蓉の歌に返歌を詠みたい、詠みたいと念じた末にこのような形になりました。
    池端日記の作者はどうも私のようです。

    水芙蓉の歌は水の歌人がハスミを想って詠んだ歌だろう、と思いましたが、
    「虫も魚もみな喋っていた頃のこと、蓮の葉が水面を覆っていて互いの姿は見えないけれど、水面のこちらと向こうで歌を詠み合い、惹かれ合う男女」
    ……という解釈で書きました。

    でも、要は、どうしても水芙蓉の題で詠みたくなった池端の人が作話したということです。

    ハスミノコマチ炊いてきます。


      [No.576] Re: 詠んでみた。 投稿者:たけあゆ   投稿日:2010/09/01(Wed) 22:02:31     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    はとちゃんとの会話抜粋。

    たけあゆ :
    はとちゃらし〜い短歌だね。古典ぽい作風にするなら
    「うるわし君」がもうちょっと比喩されてもいいかなぁ
    想い人への表現が直接的過ぎて無粋な気がしなくもないような。。。
    蓮の花よりも美しいと思えるなにかに!

    彼岸のNo.017:古語あんまり知らないので見逃してw
    うんでも検討はしとくw
    で、考えたんだけど「君」を「月」に変えるのはどうかなー。
    満ち欠けはするけれど花と違って美しさを保ったままだし、
    貴女は年老いてしまったけどその(内面的な)美しさは変わらないみたいな暗喩になるかなーとか、ならないかなーとか。
    あ、
    ミシマさんとツッキーが揃うからとか思ったわけではないよ?
    ないよ?(笑

    たけあゆ:
    月!すごくいいと思います!!ちょっと試し書き。

    【水芙蓉 咲き乱れるは さうざうし 冴えたる月を 隠す蚊帳なり】

    なんて如何なもんかしら?

    彼岸のNo.017:
    冴えたるときたかー、いいなぁ それいいなぁ。
    こうなんか歳はとったけど人間として洗練されてきた感じがいいね。

    たけあゆ:
    かぐや姫にもあるように「月」は手の届かない美しさの象徴として
    すごくいいチョイスだと思うよー

    まぁそんな訳で、通りすがりに短歌に反応してみました(・w・*


      [No.575] おおっ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/09/01(Wed) 21:55:31     57clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    おお!

    > 水芙蓉水面に咲きて乱るるは君が面影隠す帳か
    >
    > 水芙蓉あだや水面にな茂りそ陽恋うる魚の帳となるらむ

    個人的には一首目が好きですねー。
    意味もまんまだし。私が古語を知らない故にできなかった表現がうまいことまとまってる感じ。

    > 「蓮の花よ、あまり水面にはびこってくれるな。陽光を恋い慕う魚にとっては邪魔な帳となってしまうだろう」

    そうそう、この感じこの感じ。
    候補に入れささせていただきますw


    > オランガタン
    こいつはすげえ! 何この豊縁昔語にぴったりな歌詞w


    ミクシーで検討してたほうを某さんが投げてくれるというのでしばしまたれよ


      [No.574] 詠んでみた。 投稿者:桜桃子   《URL》   投稿日:2010/09/01(Wed) 21:22:47     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    鳩さんの歌をもとに、少々古語ぽくひねってみました。

    水芙蓉水面に咲きて乱るるは君が面影隠す帳か

    水芙蓉あだや水面にな茂りそ陽恋うる魚の帳となるらむ

    1つ目はほとんど意味は同じ、2つ目はより魚視点だけど男女の間の情という解釈も可能なはず。
    「蓮の花よ、あまり水面にはびこってくれるな。陽光を恋い慕う魚にとっては邪魔な帳となってしまうだろう」

    採用いただければ光栄ですし、さらに推敲するためのひねってたたき台にするもよし。

    考えてみると、水中の住人にとっては蓮の花というのはあまり美しくは見えないものかもしれません。
    水面に映る陽の光のほうがきれいに見えるのかも。

    >秘すれば花
    「余韻」については、ラストシーンだけでなく全体にかかるということで。
    鳩さんの設定もお聞きしたい気がしますね〜。

    P.S.書き忘れてたけど物語の冒頭、オランガタン(URL参照)を連想したりして(^^;)
    赤の都の男の話も見たいですー。


      [No.570] Re: 質問,質問! 投稿者:イケズキ   投稿日:2010/08/31(Tue) 22:49:40     54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    ぜひシンオウに行きましょう!
    そして森の洋館に行きましょう!!
    あそこはとても涼しくていいですよ。

    あと、ついでに森の洋館出た後、僕の代わりにナタネさんに異常無しと伝えてもらえたら・・・いや、何でもないです。避暑楽しんでください。


      [No.569] Re: 質問,質問! 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/08/31(Tue) 22:37:28     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    >  ポケモントリミングセンター広報部より

    この、商売上手め……!


      [No.568] 花の色は うつりにけりな いたづらに 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/08/31(Tue) 22:34:52     66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    読了ありがとうございまする!

    ナナクサ「コウスケ、この屋台で使ってる米はねハスミノコマチって言って、食べると和歌がうまくなるって言われてるんだ!」
    ツキミヤ「……」

     ちょっと野の火のアキタコマチの描写、ハスミノコマチに変えてくるわ。
     内輪ネタすぎるかしら?w


    > 去り行く者なのか、置き去られて行く者なのか。
    > 我が身の落魄を嘆く小野小町を思わせる歌人と、時に忘れられ一人残された水の住人。
    > 歌というよすがで出会った二者を、共に時に忘れられようとしている者として結びつけた意外性が新鮮。

     スランプに陥った歌人が人でない水の住人に歌を作ってもらう
     というあらすじを決めて書いていくうちに自然とこういう流れになりました。
     忘れ去られていく二人、その二人が生きた証を遺そうとする話でもあります。
     そのうちカゲボウズシリーズあたりに「これは蓮見小町の有名な和歌で……」とか出せたらいいな。

    > 最後にサダイエが見た大鯰は、彼女を迎えに来た水の歌人だったのか、
    > それとも水の住人へと姿を転じた蓮見だったのか。

     サダイエが見た大鯰は私の中で設定はありますけど、
     サトチさんの感想見たら黙っといたほうがいい気がしてきた。
     秘すれば花といいますしね。
     ご指摘の通り、蓮見さんは小野小町を意識しとります。
     サダイエさんはもちろん百人一首の選者のあの方ですw

     短歌はいろいろ検索してて、蓮の別名が水芙蓉だと知ったとき、
     フヨウ!? フヨウだと! これは自作するしかねぇ! と思いました(笑)。
     だが苦労の後が見えるようじゃあまだまだだねぇい。精進せねば。
    「古典ぽい作風にするなら 「うるわし君」がもうちょっと比喩されてもいい、
     想い人への表現が直接的過ぎる気がしないでもないので、蓮の花よりも美しいと思えるなにかに! 」
     と、時折和歌を作ってるお友達が批評をしてくださったので
     サイトに載せるタイミングか、昔語二集を出すときに少し変えるかもしれません。


    > 最初、「水芙蓉の歌の後、どうしても歌が詠めなくなった蓮見が水の歌人に魂を売って・・・」とかの
    > 怖い系の話になるのかと思ったのはナイショ(^^;)

     さすがサトチさん、私がやりかねないことをよくご存じですね。フフフ
     実はこの話と対になる赤の都の男の話の構想がありまして。(やるやらないは別として)
     こっちはちょいと怖い系の話にしたいな、と思っておりまする。

    でわでわ


      [No.567] Re: 質問,質問! 投稿者:CoCo   投稿日:2010/08/31(Tue) 22:10:39     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     当店は9月一杯まで冷やしシャンプーを取り扱っております。
     現在、ポケモントレーナーの方はトレーナーカードを御提示いただければ全コース10%offとなりますので、宜しければ御来店ください。

     ポケモントリミングセンター広報部より


      [No.566] ありがとうございます。+おまけ 投稿者:CoCo   投稿日:2010/08/31(Tue) 22:08:10     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     風、というテーマを聞いて頭の中に浮かんできた、洗濯ロープに揺れるカゲボウズ。
     を、久々にやってきたマサポケがリニューアルしていることに感激してとりあえず投稿した結果がこれだよ!

     みなさんありがとうございます。
     感想も、書いてみたも、描いてみたも、その感想も全て読んでいます。
     読んでいると、みなさんのポケモンワールドへの愛のせいか、なんだか本当に幸薄荘へ住めるような気がしてくるから怖い。

     フラグを立ててもらった話は全て回収したいと思います。ありがとうございます。
     そしてNo.017さん、まとめていただいたり何だり、本当にありがとうございます。

    【もっと書いてもいいのよ】
    【もっと描いてもいいのよ】
    【もっと批評していいのよ】

     揺らぐカゲボウズをみんなでひとりじめしようぜ。


    ***


     俺がすっかり綺麗になったゴースをつれてくると、客の少年はとても驚いた。

     ガス状ポケモンのゴースは、街中で暮らしていると排気ガスやスモッグなどを身体に溜め込んでしまうことが多いらしい。

    「どうやって……?」

     目をぱちくりさせている主人に、ゴースは同じくおおきな目をパチクリさせながら寄り添っている。その嬉しそうな驚きが俺の"やりがい"なのかもしれない。

    「悩んだんです。いちおう霧吹きとかでやってみたんですけどうまくいかなくて。それで、こいつらに頼んだんです」

     奥のトリミングルームから飛び出してきたのは、泡をまとったいつものカゲボウズ達。

    「カゲボウズ!?」
    「はい。こいつらに、ゴースの中に入ってもらったんです」

     飛び込んだカゲボウズ達は、けほんけほんと咳き込むような音を立て、ちょっと煤けた色になって出てくる。
     ゴースはちょっぴりくすぐったそうだったな。

    「すごい方法ですね……!」
    「いやあ、思いつきです」

     そんなに目をきらきらさせられたら、照れる。


     喜んで帰っていく客を見送ると、煤の黒に汚れたカゲボウズ達が俺の前にすーっと並んだ。

    「あいあい、わかってるよ」

     俺は店の裏の日陰へ出て、タライとホースとやわらかいタオルを準備する。

     こいつらはダメもとで頼んだ俺に、何も言わずにしたがってくれた。
     ゴースを洗ってくれなんてとんでもない頼みを聞いてくれた。
     トレーナーでもない俺にそんなことをしてくれるのは、後でちゃんと綺麗に洗ってくれると信頼されているからだろうか。

     だから俺はたとえ無償でも、こいつらの"洗濯"に手は抜かない。

     最後の一匹を拭き終える時、そういえば、バイトも途切れて職なしの俺に、こんなやりがいのある毎日をくれたのも、こいつらカゲボウズを洗ったあの日のおかげのような気がした。

     負の象徴たるカゲボウズを洗うということは、自分自身の負を洗い落とす的な……なんて、そんな抽象的な話は柄じゃねーが。

    「ありがとよ」

     ぼそりと呟くと、カゲボウズ達は調子に乗ったのかにっこにこして、俺を例の定食屋まで引っ張っていこうとしたもんだから、「奢りゃしねーぞ!?」と叫んだら自転車で通りかかったお姉さんとがっつり目が合ってものすごく恥ずかしかった。

     恨めしい目でカゲボウズをみつめると、向こうは待ってましたといわんばかりのきらきらの瞳。

     ……いいように使われている気がしないでもない。



     おわってくれよん


    ***

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】

    店長「炎タイプにも優しい素材のシャンプー、入荷しますた」


      [No.564] Re: 豊縁昔語―詠み人知らず 投稿者:サトチ   投稿日:2010/08/31(Tue) 21:25:26     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    去り行く者なのか、置き去られて行く者なのか。
    我が身の落魄を嘆く小野小町を思わせる歌人と、時に忘れられ一人残された水の住人。
    歌というよすがで出会った二者を、共に時に忘れられようとしている者として結びつけた意外性が新鮮。

    最後にサダイエが見た大鯰は、彼女を迎えに来た水の歌人だったのか、
    それとも水の住人へと姿を転じた蓮見だったのか。しっとりした余韻を残す佳品。


    短歌は苦心の跡が見えますね〜。古典から探すと言っても、そうそうはまる作品はないでしょうし。
    最初、「水芙蓉の歌の後、どうしても歌が詠めなくなった蓮見が水の歌人に魂を売って・・・」とかの
    怖い系の話になるのかと思ったのはナイショ(^^;)


      [No.563] 祝・洗濯日和三桁拍手!!! 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/08/31(Tue) 21:17:38     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ポケスト史上初の三桁クラップおめでとうございます!
    まとめはちょいちょいやっておりますです。

    取り急ぎお祝いの言葉まで!


      [No.562] ニューラに関してなのですが 投稿者:スフィア   投稿日:2010/08/31(Tue) 16:07:53     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    知恵袋に寄せられた相談:
    我が家のニューラが、悪戯ばかりして困っています。
    悪戯その一:家の柱や壁で爪とぎをしてしまう
    悪戯其の二:カーテンなどの布をビリビリに破いてしまう
    悪戯その三:ご飯を置いておくと盗み食いをする

    困っている悪戯は、主にこの三つです。
    大切な家族なので、捨てたり誰かに譲ったりなんてできません。
    しかっても言う事を聞かないし、
    誰か助けて下さい!!!!
    【回答歓迎】


      [No.560] ●豊縁昔語―詠み人知らず 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/08/31(Tue) 00:04:45     93clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ■豊縁昔語――詠み人知らず


     昔むかし、秋津国の南、豊縁と呼ばれる土地には異なる色の大きな都が二つございました。
     二つの都に住む人々はお互いに大変仲が悪うございました。
     彼らはそれぞれ自分達の色、信仰こそが正統だと考えておりました。
     今回はその二つの都のうちの一つ、青の都に住む一人の女の話をすることに致しましょう。

     その女は今の時代では貴族などと呼ばれる身分でありました。
     齢は四十と五十の間くらいでありましょうか。
     蓮見小町などと呼ばれた昔の彼女は美人だと有名でした。
     若い頃などは都の様々なものが、彼女を一目見ようと足繁く通ったものです。
     しかしやはり歳や老いに勝つことは出来ませんでした。
     今や長い髪には多くの白が混じり、肌の張りはなくなり、顔にはすっかりしわが増えてきたその女にはもはや言い寄るものは誰もおりませんでした。
     夫はおりますけれど、若い娘の宮に通うのに夢中です。
     彼女には見向きもしませんでした。

     そんな彼女の唯一の楽しみは時折開かれる歌会でございました。
     夜に集まった高貴な身分の人々は西と東にわかれ、東西一人ずつがそれぞれの五七五七七の歌を詠んでその出来栄えを競い合うのです。
     見目の美しさは歳を追うごとに色あせます。
     けれど和歌ならばどんなに歳をとっても、美しさで負けることはありません。
     歌ならば彼女はほとんど負けたことがありませんでした。
     季節の歌、恋の歌……歌会に出されるあらゆる題を彼女は詠ってまいりました。

    「ふうむ、ハスミどのの勝ちじゃ」

     このように審判が言うと彼女の胸はすっといたします。
     自分に見向きもしない男達、若くて美しい女達もこの時ばかりは悔しそうな顔をします。
     そんな者達を和歌で負かして彼女は気晴らしをしていたのでした。
     全員が歌を詠み、甲乙がつきますと、歌会の主催である位の高い男が今日出た歌の総評を述べました。
     そうして、次に催される歌の題お発表いたしました。

    「次は水面(みなも)という題でやろうと思う。十日後の今日と同じ時間に屋敷に集まるよう」

     こうして貴族達は次の題目のことを頭に浮かべながら帰路についたのでございます。

     ハスミはさっそく次の題で和歌を考え始めました。
     和歌の得意な彼女は一日、二日で題の歌を作ってしまいます。
     書き物をしながら、散策をしながら、題目のことに思いを馳せます。
     すると少しずつ何かが溜まりはじめるのです。
     彼女はその何かを水と呼んでおりました。それが溜まると和歌ができるのだといいます。
     よい和歌と云うのは、まるで庭にある添水(そうず)の竹の筒が流れ落ちる水を蓄え、ある重さに達したときのようにカラーンと澄んだ音と共に水を落とすように、彼女の中に落ちてくるのであります。
     彼女はいつものように水が溜まるのを待っておりました。
     ですが今回は何かが変でした。
     まるで何日も雨の降らない日照りの日でも続いたかのように彼女の中に水が溜まらないのです。
     どこかに穴があいているのか、それとも渇いてしまうのか、理由はよくわからないのですが、一向に和歌が降ってくる気配がございません。
     いつもなら一日二日で出来てしまうものが三日、四日経っても出来てこないのです。
     彼女は心配になって参りました。

    「ハスミどの、歌会に出す歌は出来ましたかな」

     近所に住む貴族が尋ねます。

    「ええ、もちろんですわ」

     つい強がってそのように答えましたが、彼女の中で焦燥は募るばかりです。
     困ったことに五日経っても、六日経っても歌が出来ないままでありました。

    「ああ困ったわ。歌が出来ない」

     と、彼女は嘆きました。
     貴族の中にはあまり歌が得意でない者もおりまして、秀でたものに依頼などしているものもおりましたが、ずっと自作を通してきてそのようなものを必要としなかった彼女にはそんなあてもございません。
     しかしそうこうしているうちにも日は過ぎて参ります。
     そうして、八日が過ぎようとしたころです。

    「ハスミどの、あなた様の相手が決まりましてございます」

     と、使いのものが来て言いました。
    「誰ですの」と、ハスミが尋ねますと、「レンゲどのです」と、使いのものが答えました。
     彼女は絶句いたしました。
     その名前は夫が足繁く通っている宮に住む若い女の名前だったからです。
     負けたくない!
     絶対に負けたくない!
     と、彼女は強く念じました。
     けれどまだ歌ができません。

    「わかっているわ。もう昔のように若さでも、美しさでも勝てやしない。歌を作るのよ、私にはもう歌しかないのだから……」

     と彼女は自分に言い聞かせました。
     けれどそうこうしている間に九日目になりました。
     ハスミはぶつぶつと呟きながら、お付のもの一人つけずに屋敷を出てゆきました。

    「お願いします。どうか私に歌を授けてください。あの女に負けない歌を」

     困った時の神頼みと申します。
     彼女は都外れに静かに佇む、古ぼけた小さな社に供物を捧げると願をかけました。
     都の中央には海王神宮と呼ばれる都人達が多く参拝する立派な神社がありまして、神様の力で言うなら、そちらがよかったのかもしれません。
     けれどこんな願いをかけるところを人に見られたくありませんでした。
     ですからハスミは人知れずひっそりと佇むその社に赴き、願をかけたのでした。
     石碑に刻まれた名は擦れて読むことができません。
     それでも、人も来ず寂れていようとも、社そのものが壊されていないところを見るとおそらくは中央の神宮に祀られた海王様の眷属なのでしょう。
     気がつけば空は大分暗くなっておりました。
     道を見失う前に帰らなければ、と彼女は思いました。
     しかし、日が沈むより早く暗い雨雲が空を覆い、ぽつぽつと雨が降り出します。
     あたりはすっかりと暗くなってしまいました。
     それでもなんとか道を確認しながら彼女は都への帰路を急ぎました。

    「水面、水面……水面の歌……」

     その間にも彼女はずっと歌の題を唱えておりました。
     そうして、都の門近くにある蓮の花の咲く大きな池の橋を彼女が渡っている時のことでした。
     どこからか低い声が聞こえたのでございます。

    『ハスミどの、ハスミどの』

     ハスミは驚いて振り返ります。けれど彼女の後ろには誰も見えません。
     橋の向こうは暗く、ただ橋の上に雨の落ちる音が聞こえるだけです。
     するとふたたびどこからか低い声が聞こえてまいりました。

    『水芙蓉 咲き乱れるは さうざうし うるはし君を 隠す蚊帳なり』

     ぽつぽつと雨音が響く中、低い声が呟いたのは歌でした。
     五と七と五七七の歌でありました。



     そうして十日目の夜に彼女は詠みました。
     結局それ以上の歌を作ることができなかった彼女は、あの雨の夜に聴こえた五七五七七の歌を詠んだのでございます。
     審判は即座にハスミに勝ちを言い渡しました。
     正面に見えるのは若い女の悔しそうな顔。
     ハスミはほっと胸を撫で下ろしました。

     前々から歌がうまいと言われていたハスミでしたが、これを機とし、彼女はますます歌人としての評判を高めたと伝えられています。
     水芙蓉の歌に端を発し、彼女は歌の世界は大きく広がった。
     瑞々しい女性の感性に、季節の彩(いろどり)と、あらゆる場所からの視点、懐かしさが合わさってより豊かなものになった、と。
     後の世で札遊びの歌を選んだとある歌人はそのように論じています。
     
     ハスミはより多くの歌会へ招かれて、より多くの歌を詠みました。
     幾度と無く彼女の勝ちが告げられました。
     歌会で彼女と当たったらどんな歌人も絶対に勝てない。
     都の貴族はそのように噂し、歌会で彼女と当たることを恐れたといいます。
     彼女は十年、二十年と歌を詠み続けました。




     さて、このようにして歌人としての地位を欲しいままにしてきたハスミでありましたが、やはり老いには勝てませんでした。
     ますます寄る年波はや彼女の身体を衰えさせていきました。
     すべての髪の毛がすっかり白くなってしまい、腰を悪くしたハスミは、やがて歌会にも顔を出さなくなりました。
     そのうちに彼女の夫が亡くなりました。
     彼女は都外れの粗末な庵に隠居いたしまして、時に和歌を作って欲しいという依頼を受けながら、ひっそりと余生を過ごしたのであります。
     そんなハスミのもとに時折尋ねてくる男がありました。

    「サダイエ様がお見えになりました」

     と、下女が言いますと「お通しして」とハスミが答えます。
     すると襖が開けられて、烏帽子姿の男が入ってまいりました。

    「これはサダイエどの、またいらしてくれたのですね。いつもこのような出迎えでごめんなさいね」

     下半身を布団に埋めて、半身だけ起き上がったハスミが申し訳なさそうに言います。

    「いいえ」

     と、男は答えました。
     齢はハスミの二、三十ほど下でありましょうか。
     王宮仕えの歌人として、また歌の選者としても名を知られる男でした。
     最近は御所に住む大王(おおきみ)の命で、古今の歌をまとめたばかりなのです。

    「噂はお聞きしましたわ。なんでも私の歌をまとめてくださるとか」
    「おやおや、お耳が早いですなぁ」

     新進気鋭の歌人は笑います。
     
    「ハスミどのは私の憧れです。どんな題を与えられても一級品、歌会では負けなし、もしすべての勝負事が歌で片付くのならば、今頃はあなた様が豊縁を一つにしておりましょう。私はハスミどのような歌人になりたくて研鑽を重ねて参りました」
    「まあ、お上手ですこと」

     と、ハスミも微笑み返します。

    「ご謙遜を。それに私は嬉しいのです。あなたの歌をまとめられることが」

     若き歌人は本当に嬉しそうに語りました。

    「ご存知なら話が早い。今日はそのことで相談に参りました。和歌集にはそれに相応しい表題がなければなりませんからね。どのようなものがいいかと思いまして」
    「そうねぇ……」

     ハスミは庵の外を眺めてしばし思案を致しました。
     彼女の部屋からは大きな池が見えます。
     蓮の花が点々と浮かんでおりました。
     この庵自体が池に片足を突っ込むような形で立っておりまして、彼女の部屋は池の上にあったのです。

    「こんなのはどうかしら。……"詠み人知らず"というのは」

     しばらくの思案の後に彼女はそう答えました。

    「よ、詠み人知らずでございますか?」

     若き歌人は目を丸くして聞き返しました。
     詠み人知らずというのは、作者不詳という意味です。
     記録が残っておらず、和歌の作者がわからない歌には、詠み人知らずと記されるのです。
     ですから自分の和歌集に詠み人知らずという表題をつけたいというのでは、男が不思議がるのも無理はありません。

    「サダイエどの、あなたは以前に私の歌を評してこう言ったことがありましたね。私の歌には瑞々しさがあった。その後に季節の彩、あらゆる場所からの視点、懐かしさが合わさって、より豊かなものになった、と」
    「ええ」
    「そうして、こうもおっしゃいました。私の歌の世界が広がったのは、水芙蓉の歌以降である、と。さすがはサダイエどのです。大王もが認める歌人だけのことはございます」

     仕方が無いわねぇとでも言うように彼女は微笑みました。
     そしてこのように続けました。

    「その通りですわ。だって水芙蓉の歌以降、私の名で詠われた歌の半分は別の方が作ったのですもの」
    「……なんですって」
    「別に驚くようなことではございませんでしょう。作者が別にいたなんていうことはこの世界にはよくあることです。あなたも薄々感づいていたのではなくて?」

     ぐっと男は唸りました。
     この年老いた女歌人にもう何もかも見透かされたような気がいたしました。
     彼も本当は知りたかったのかもしれません。

    「……たしかに、考えなかったことがなかったわけではありません。……しかし、それなら誰だと言うのです。私は知りません。あなた様の代わりに歌を作れるような歌人にとんと心当たりがございません」
    「ご存知ないのは無理もございません。その歌人は人ではありませんもの」

     ハスミは隠すでもなくさらりと言いました。
     彼女もうこの世に留まっていられる時間がそう長くないと知っていました。
     ですから遺言の代わりになどと考えたのかもしれません。

    「私も姿を見たことはありませんの」

     と、彼女は言いました。
     そうして打ち明け話がはじまったのでございます。


     二十年程前、あなた様もご存知の通り、歌会で水面という歌の題が出されました。
     そのときに私、歌を作ることができませんでしたの。
     はじめてでしたわ。まるで枯れてしまった泉のように、まったく水が溜まらないのです。
     けれど、相手は夫が通う宮の憎い女。
     私は絶対に負けたくなくて、都の外れにある小さな社の神様に願をかけました。
     歌が欲しい、あの女に負けない歌を授けてほしい、と。
     その帰り道のことです。北門の池をまたぐ橋にさしかかった時に誰かが歌を詠んだのです。
     それが水芙蓉の歌でした。
     その歌で私は勝つことができたのです。

     けれども私にも歌人としての誇りがございます。
     自分以外の作った歌を使うのはこれきりにしようと思って、社へは近づかないようにしておりました。
     その後の何回かは自分で歌を作りましたわ。
     もう水が溜まらないなんていうこともありませんでした。私は自力で作り続けることが出来たのです。

     でも、十の歌会を経て、十の題をこなしたときに、私はふと思ったのです。
     あのすばらしい歌を詠んだ歌人ならこの題をどう表すのだろうかと。
     私は声の聞こえた橋に行きました。
     そうして、さきほど歌会で披露したばかりの五七五七七の歌をもって姿見えぬ歌人に呼びかけたのです。
     返歌はすぐに返って参りました。
     すばらしい出来栄えでした。

    「近くにいらっしゃるのでしょう。どうか姿を見せてください」

     私はそのように呼びかけましたが、姿は見えません。
     かわりにまた声が聞こえて参りました。

    『貴女にお見せできるような容姿ではないのです』

     よくよく聞けばそれは私の足元から聞こえてくるようでした。
     私ははっとして橋の下を見ましたわ。
     けれど気がつきました。橋の下にあるのは池の濁った水ばかりだということに。
     するとまた声が聞こえました。

    『私は人にあらず。水底に棲まう者なのです』

     驚きました。
     歌人は水に棲む者だったのです。

    『ハスミどの。貴女が小さかった頃から私は貴女を知っています。二十を数えた頃の貴女はそれは美しかった』

     そう水に棲む歌人は言いました。そして語り出しました。
     私はこの土地が草原と湿地ばかりだった頃からここに住んでいる、と。

     あの頃の虫や魚や鳥、獣たちはは皆、人の言葉を操ることが出来た。
     私達は十日に一度は歌会を開き、その出来栄えを競いあった。
     だがこの地に都が建造されはじめた頃からか、だんだん何かがおかしくなっていった。
     次第に獣達は言葉を失っていった。
     はじめに話さなくなったのは虫達だった。
     それは鳥、魚へと広がっていった。
     親の世代で言の葉を操れた者達も、子は話すことが出来なかった。
     私達の子ども達も同じだった。彼らが言葉を発すことはついぞなかった。
     かろうじて言葉を繋いだ獣達も都が出来る頃にはどこか別の場所へ去っていった……。
     それはちょうど二の国が争って、各地で人による神狩りがはじまった時期と一致していた。知ったのはずいぶんと後になってからだったが。
     それでもその頃はまだよかった。
     私の社は青の下、同属のよしみで破壊を免れたし、水の中の友人達も健在だったからだ。
     私達は言葉を発し、歌を作ることが出来た。
     だが時は少しずつ奪っていった。
     言葉交わせる友人達も一人、また一人と声届かぬ場所へ旅立っていった。
     私は最後の一人。
     この土地の水に棲む者の中で人と同じ言葉を発し、歌を詠める最後の一人なのだ。

    「けれど水の歌人は人を恨んではおりませんでしたわ。これはこの世の大きな流れなのだと、彼は云ったのです。多くの神々君臨する旧い時代が終わって、新しい時代がくるだけのことなのだと。自分はその変化の時に居合わせた。ただあるがままを受け入れよう、と」

     けれど私にはわかりましたわ。
     水に棲む歌人の哀しみが。
     まだ若くて美しかった頃、多くの男たちが私のところにやってきました。
     けれど年月はすべてを奪ってゆきました。
     私は次第に省みられることがなくなって、夫にも見捨てられ一人になっていった。
     私は見たのです。
     水の歌人の境遇の中に自分の姿を見たのです。
     私達は共に去りゆく者、忘れられてゆく者なのです。

    「それからというもの、私は会の前の晩になると水の歌人と言葉を交わすようになりました。歌会の題でお互いに歌を詠い、よりよいと決めたほうを次の晩の歌会に出したのです」

     水の歌人はたくさんの歌を知っていました。
     自分が若い頃に作った歌、水に棲んでいた友人達の歌、空や野の向こうに去っていった鳥や獣がかつて詠んだという季節とりどりの歌を教えてくれたこともありました。

    「だから私の詠んだ歌は誰にも負けませんでした。私の立つ橋の下には水の歌人を含めた何人もの詠み手がいたのですもの。たかだか三十や四十を生きた人間一人には負ける道理がないのです」

     そこまで云うとハスミは身体を横たえました。
     上を見上げると若き歌人が沸いてくる言葉を整理しかねています。

    「ふふふ、ついしゃべりすぎてしまいましたね。今の話を信じるも信じないのもあなたの自由です。和歌集の表題のこと、無理に頭に入れろとは申しませんわ。けれど差支えが無いのなら、その烏帽子の中にでも入れて置いてくださいませ」

     そうして、彼女は布団をかぶり目を閉じたのでありました。



     サダイエのもとに訃報が届いたのはその数日後でした。
     世話をしていたものによれば、ハスミの死に顔はもう言い残すことがないというように穏やかなものだったといいます。

     しかし、奇怪なのはその後でした。
     ハスミの亡骸は人の墓に入ることはありませんでした。
     葬列に加わるはずだったその亡骸は、都を少しばかり揺らした小さな地震によって、庵と部屋ごと崩れて池の中へと投げ出されたのだというのです。
     やがて庵の廃材は浮かんできましたが、ハスミの亡骸が浮かんでくることはありませんでした。



    「ハスミどの、あなたは水の歌人のもとへ行かれたのだろうか……?」

     サダイエは出来上がった和歌集のうちの一冊に石をくくりつけ、かつて庵のあった池の底へと沈めました。
     歌集はほの暗い水の底へ沈んで、すぐに見えなくなりました。
     そのとき、

    「おや?」

     と、サダイエは呟きました。
     すうっと、何か大きな影が水の中を横切ったのが見えたのです。
     影には長い長い二本の髭が生えているように見えました。団扇のような形をした尾びれが揺れ、そして水底に消えました。

     ……今のは、今横切った魚は大鯰(おおなまず)であろうか。

     そのように彼の目には映りましたが、はっきりとはしませんでした。
     歌集を沈めた時の波紋が、まだわずかに揺らめいておりました。



     それは昔むかしのことです。
     まだ獣達が人と言葉交わすことが出来た頃のお話でございます。





    ----------------------------------------------------------------
    お題:詠み人知らず(自由題)



     水芙蓉 咲き乱れるは さうざうし うるはし君を 隠す蚊帳なり


    意味:水芙蓉、すなわち蓮の花がたくさん咲くというのは寂しいものだ。咲きすぎた蓮の花は、水面に映る美しい貴女の顔を覆い隠す蚊帳となってしまうのだから。

    有名な短歌から拝借してくるつもりが、合うものが見つからず自作しました。
    本来は魚の視点から見た歌だけれど、水面を見る男女のどちらかが相手を想い作った歌という解釈もできるようにした(つもり)。



    ■豊縁昔語シリーズ
    HP版:http://pijyon.schoolbus.jp/novel/index.html#houen
    pixiv版:http://www.pixiv.net/series.php?id=636

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】


      [No.556] Re: 質問,質問! 投稿者:兎翔   投稿日:2010/08/30(Mon) 08:49:12     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 毎日暑くてポケモン達がへばっています。
    > 最近では食欲も無くて・・
    > 完全に夏バテですよね。どうすればいいでしょうか。
    > エアコンはあんまり使いたくないんですが。
    >
    > よろしくお願いします。

    回答
    お手持ちのポケモンは何タイプでしょうか?
    タイプによっても色々な方法があると思います。
    水タイプならばお風呂に水を張ってプールにしてあげると喜びますよ。
    炎タイプは近づくと溶けてしまうので無効ですが、かき氷などの冷たいものを少し与えてあげるのも良いと思います。
    ただし与えすぎはおなかを壊す原因になってしまうのでほどほどに。
    岩タイプ、地面タイプのポケモンはひんやりとした洞窟の中に連れて行ってあげるといいかもしれません。
    間違っても水をかけて冷やそうとしないこと。


    なんだかありきたりな感じになってしまいました。
    炎タイプのポケモンもばてたりするのでしょうか?

    【追記】
    回答2

    そうだ、シンオウに行こう。


      [No.555] 質問,質問! 投稿者:紀成   投稿日:2010/08/29(Sun) 11:11:23     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    毎日暑くてポケモン達がへばっています。
    最近では食欲も無くて・・
    完全に夏バテですよね。どうすればいいでしょうか。
    エアコンはあんまり使いたくないんですが。

    よろしくお願いします。


      [No.549] Re: カゲボウズー! 投稿者:てこ   投稿日:2010/08/27(Fri) 23:50:38     43clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    > 「ベランダに干していたカゲボウズのとなりに」
    > ↓
    > 「ベランダに干していたジュペッタのとなりに」
    >
    > ?


    今気がつきました!なんというミスを……
    ジュペッタ で、合ってます……


      [No.547] Re: 夏休みの宿題 投稿者:海星   投稿日:2010/08/27(Fri) 23:11:18     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 息子のポケモン科の夏休みの宿題で、ポケモンに関する自由研究の宿題が出ているんですけどどんな題材がいいでしょうか?
    > 家にはすでにポケモンがいるので、できれば新しいポケモンは増やしたくないです。
    > なにかやりやすそうな研究があったら教えていただけませんか?
    > どうぞよろしくお願いします。

     回答

    そのポケモンをモンスターボールに戻す瞬間の映像を研究してみてはいかがでしょう。
    カメラだと苦労しますが、ムービーを撮ればそれなりに簡単に撮ることができます。
    面白いですよ、ポケモンが光になって小さくなるんです。

    【書いてみたのよ】
    【夏休みの宿題は登校前日にやるのよ】


      [No.546] Re: カゲボウズー! 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/08/27(Fri) 22:42:34     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    >  ベランダに干していたカゲボウズのとなりに黒い布が一枚、二枚、三枚……。
    >  俺がベランダに出るとカゲボウズが瞬きもせず、俺を見つめている。
    >  ……。
    > 「だめ。返してきなさい」
    >  ジュペッタが恨めしげに俺を見た。


    あれ?

    今気がついたんだけど

    「ベランダに干していたカゲボウズのとなりに」

    「ベランダに干していたジュペッタのとなりに」


      [No.543] Re: うちのマリルが…… 投稿者:ピッチ   《URL》   投稿日:2010/08/27(Fri) 20:46:40     68clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 知恵袋に寄せられた相談:
    > 家で飼っているマリルが、水鉄砲でお風呂に水を張ってしまいます。
    > 何度お湯を沸かしても、目を離した隙にマリルが水風呂にしてしまいます。何度叱ってもやめません。
    > 水風呂になるたびに、水を抜いてお湯を沸かしています。光熱費も水道代もばかにならなくなってきました。
    > マリルの水鉄砲は雑巾みたいな匂いがするので、それをそのまま沸かすのも嫌です。
    > 止めさせるいい方法はないでしょうか?

    回答その3:
    一度お風呂場を開放して、マリルをめいっぱい遊ばせてあげてはどうでしょう?
    満足するまで遊べば、マリルもしばらくはイタズラの手を休めてくれるかもしれません。
    その間にあなたはお近くの銭湯にでも行って、マリルとの格闘で流した汗を洗い流してくるのもいいと思います。


      [No.541] 夏休みの宿題 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/08/27(Fri) 19:18:27     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    知恵袋に寄せられた質問:
    息子のポケモン科の夏休みの宿題で、ポケモンに関する自由研究の宿題が出ているんですけどどんな題材がいいでしょうか?
    家にはすでにポケモンがいるので、できれば新しいポケモンは増やしたくないです。
    なにかやりやすそうな研究があったら教えていただけませんか?
    どうぞよろしくお願いします。


      [No.540] Re: 相談2件お願いします 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/08/27(Fri) 18:53:08     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 知恵袋に寄せられた相談:
    > ナタネさんに森の洋館見てくれと頼まれたのですが、怖くて行けません。どうしたらいいですか?

    回答その1
    そんなに心配しなくても大丈夫です!
    あの洋館に人などいないとお思いでしょうが、幼女と老人が住んでおりますので。
    運がよければ森のヨウカンが貰えるかもしれませんよ。

    回答その2
    俺も見た。台所に老人、二階に幼女がいたぜ。

    回答その3
    ざわ・・・ざわ・・・・・・



    > 知恵袋に寄せられた相談:
    > ウラニワさんちの銅像汚してしまいました。弁償しないで済む方法教えてください。


    回答その○
    ウラニワです。怒らないから出てきなさい。


      [No.539] Re: うちのマリルが…… 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/08/27(Fri) 18:35:35     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 知恵袋に寄せられた相談:
    > 家で飼っているマリルが、水鉄砲でお風呂に水を張ってしまいます。
    > 何度お湯を沸かしても、目を離した隙にマリルが水風呂にしてしまいます。何度叱ってもやめません。
    > 水風呂になるたびに、水を抜いてお湯を沸かしています。光熱費も水道代もばかにならなくなってきました。
    > マリルの水鉄砲は雑巾みたいな匂いがするので、それをそのまま沸かすのも嫌です。
    > 止めさせるいい方法はないでしょうか?

    回答その1:
    お庭やベランダがあれば、マリル専用のお風呂を与えてみてはいかがでしょうか?
    タライ程度でかまいませんので。

    こんな商品もあるみたいです

    http://address.co.jp/pool/asp/plist_user.asp?view=2&shohin_index=イージーセットプール&shohin_index2=プール本体

    http://www.amazon.co.jp/%EF%BC%B0%EF%BD%8F%EF%BD%8F%EF%BD%8C%C3%9 ..... B002DQAHP2


    回答その2:
    かまって欲しいのかもしれません。
    下手にしかると、相手にしてもらったと喜んで余計にひどくなりますので、黙って水を抜いて無視してください。
    また時間をとってゆっくりと遊んであげてください。


      [No.534] うちのマリルが…… 投稿者:きとかげ   投稿日:2010/08/27(Fri) 05:36:17     88clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    【参加しちゃうのよ】

    知恵袋に寄せられた相談:
    家で飼っているマリルが、水鉄砲でお風呂に水を張ってしまいます。
    何度お湯を沸かしても、目を離した隙にマリルが水風呂にしてしまいます。何度叱ってもやめません。
    水風呂になるたびに、水を抜いてお湯を沸かしています。光熱費も水道代もばかにならなくなってきました。
    マリルの水鉄砲は雑巾みたいな匂いがするので、それをそのまま沸かすのも嫌です。
    止めさせるいい方法はないでしょうか?


      [No.532] Re: イーブイに関する相談 投稿者:セピア   投稿日:2010/08/26(Thu) 23:36:06     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 知恵袋に寄せられた相談:
    > 父と母がイーブイの進化を何にするかを巡って対立しています。
    > どうすればいいでしょうか?

    ワーストアンサー:お父様とお母様が望む進化以外の進化をイーブイにさせてください。
          
    > 知恵袋に寄せられた相談:
    > 娘のイーブイをサンダースにするつもりだったのですが、なんだか黒いポケモンになってしまいました。
    > 娘が泣いています。どうすればいいでしょうか?

    アンサー?:防御と特防に極振りして、「のろい」と「しっぺがえし」を覚えさせてください。
          娘さんがトレーナーなら、ブラッキーの無双っぷりに喜ぶと思います。





    【珍回答するのよ】


      [No.531] Re: イーブイに関する相談 投稿者:ピッチ   《URL》   投稿日:2010/08/26(Thu) 23:32:59     80clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 知恵袋に寄せられた相談:
    > 父と母がイーブイの進化を何にするかを巡って対立しています。
    > どうすればいいでしょうか?

    回答その2:
    対立している内にあなたが望む形態に進化させてしまえばいいと思います。
    進化した後に元に戻すことはできませんから、ご両親もきっと結果を受け入れるしかなくなって対立は無事に収まるのではないでしょうか?



    > 知恵袋に寄せられた相談:
    > 娘のイーブイをサンダースにするつもりだったのですが、なんだか黒いポケモンになってしまいました。
    > 娘が泣いています。どうすればいいでしょうか?

    回答その2:
    そのポケモンはおそらくブラッキーでしょう。
    なつき進化により進化する種ですから、きっと娘さんはイーブイをとてもかわいがっていたのだと思います。
    娘さんにはまず進化のことをなぐさめてから、イーブイが娘さんを本当に好きだから進化したのだと伝えてあげてはどうでしょうか。


    【他回答歓迎】
    【ツッコんでいいのよ】


      [No.530] 相談2件お願いします 投稿者:イケズキ   投稿日:2010/08/26(Thu) 23:29:46     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    知恵袋に寄せられた相談:
    ナタネさんに森の洋館見てくれと頼まれたのですが、怖くて行けません。どうしたらいいですか?


    知恵袋に寄せられた相談:
    ウラニワさんちの銅像汚してしまいました。弁償しないで済む方法教えてください。


    −−−−−−−−−−−
    ダイパの主人公が焦ってそうだなと思うところを考えてみました。


      [No.529] イーブイに関する相談 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/08/26(Thu) 22:58:47     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    知恵袋に寄せられた相談:
    父と母がイーブイの進化を何にするかを巡って対立しています。
    どうすればいいでしょうか?

    ベストアンサー:
    お父さんお母さんに1人1匹ずつあてがってください。




    知恵袋に寄せられた相談:
    娘のイーブイをサンダースにするつもりだったのですが、なんだか黒いポケモンになってしまいました。
    娘が泣いています。どうすればいいでしょうか?

    ベストアンサー:
    放っておいてください。
    1週間もすればブラッキー最高だろうがとか言い始めます。




    【回答してもいいのよ】
    【珍回答歓迎】


      [No.528] 【参加型】ポケモン知恵袋 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/08/26(Thu) 22:55:45     62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ポケモンの世界でも様々な悩み事ありますよね?
    困ったことがあったらネット上の知恵袋に相談してみてはどうでしょう?
    それではスタート!

    【参加型なのよ】


      [No.527] アルミ鍋は45センチ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/08/26(Thu) 21:34:10     65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ミカルゲ先輩の鍋への異常なこだわり。
    アルミ製鍋といえば個人的にはキャンプのカレーかとんじるです。
    キャンプ場でカレーつくってたらカゲボウズが寄ってきた……らいいなぁ。
    こわくないからこっちおいでー


      [No.526] カゲボウズと昼寝だと! 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/08/26(Thu) 21:28:31     46clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >  寝返りを打つと、ちょうど腕でカゲボウズを一匹つぶしてしまった。
    >  ふぎゅ、と何とも言えない音がした気がして、やべぇ、これはうかつに寝返りできない。

    私もカゲボウズと寝たい。
    ふぎゅって言われたい。

    ずるい。


      [No.525] 北の国でもカゲボウズ 投稿者:No.017   《URL》   投稿日:2010/08/26(Thu) 21:23:46     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    爆笑しながら読み進めましたw
    ああこりゃあ暖かくなるまでは出て行かないなぁ……
    カゲボウズにくるまって寝るといいよ!



    カゲボウズ座談会。

    カゲボウズ1「毒男さんてばまだ彼女ができないんですって」
    カゲボウズ2「まー、気の毒ねぇ」
    カゲボウズ3「洗濯はうまいんだけどねー」
    カゲボウズ4「負の感情食いたい」
    カゲボウズ5「冷やし中華食いたい」


    【削除しないで!】


      [No.524] 凍った(黒)てるてる坊主! 投稿者:こはる   投稿日:2010/08/26(Thu) 21:16:01     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > トーホク地方は寒いものである。
     トーホクにもありましたか、幸薄荘!どこにでもあるんだろーな、きっと。

    > カゲボウズは仲間たちと、まるで会議でもするように話し込み始めたのだ。
    > まるきり人間顔負けの議会である。カゲボウズがこんなに社会的なポケモンであるとは知らなかった。
     相談するカゲボウズ。きっとカワイイ。ぜったいに見たい。

    > カゲボウズが異様に固い。しかも素手で触りたくないほど冷たい。
    > 違和感に数瞬固まっていたわたしの耳に、隣人の声がようやく届く。
    > 「起きて自転車取りに来たら、――ちゃんの部屋の外でカゲボウズがみんな凍ってて――」
     飲んでいた烏龍茶を吹きそうになりました。
     凍るカゲボウズって……。真冬にタオルを外に干してたら凍ってたという、あれですね。だから、こおりなおしは必要なのよん。

     こほん、失礼しました。あまりにかわいく、つい感想を。
     カゲボウズは洗濯するばかりじゃないんですね。凍るカゲボウズは新感覚です。


      [No.523] 幸薄荘トーホク支店 投稿者:ピッチ   《URL》   投稿日:2010/08/26(Thu) 20:40:07     80clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5



    トーホク地方は寒いものである。
    そんなことをナギサシティ出身のわたしが言おうものなら何を言っているのかと思われるのだろうが、シンオウの寒さとトーホクの寒さは質が違う。
    外に出れば寒く中にこもっていればなんとかなるのがシンオウの寒さだが、トーホクの寒さはむしろ家にいると凍みるものだ。外に出て陽光を浴びている方が暖かいなんてインドア派の代表例のようなわたしへの挑戦にも等しい。
    春に越してきた時はこの寒さに甚だ驚いたものだ。念願の南下だと思っていたらむしろ北にいるより酷かったのだから。
    ……そんなことを、周りにいるトーホクの友人に言っていたら絶縁されかけた。
    何故だろうか。わたしが「シンオウは寒すぎて人の住むようなところではない」などと言われてもそこまではしないと思うのだが。
    まあいい。今現在のわたしに必要なのは友人ではなくコートである。家の中でコートを着込むなんてシンオウではあり得ない話なのだが、トーホクでは必要になるのだ。何しろ壁がやたらに薄い。
    しかしこれで断熱材でも仕込まれていようものならわたしは7月で既に溶けて消えている。初めて経験した猛暑日というものは、できればもう二度と経験したくなかった。夏休みいっぱいを帰省に当てていたのは、単に運転免許のためだけではない。
    そんなことを思い出してもまったく室温は上がらない。ひとまず今はコートが先決である。
    八畳間備え付けの箪笥を開けば、クリーニングから受け取ってそのままのコートが――

    ……おや。
    わたしはこの箪笥に、こんなにたくさん服を詰め込んでいただろうか?
    黒が多いのは分かる。入れていたはずの、今探しているコートも、入学式以来しまいこみっぱなしのスーツも、ついでにそれっきり使っていないベルトもすべて黒だったはずだからだ。
    それにしても量がおかしい。わたしがこの箪笥に入れていたのはその三つだけのはずだ。しかし今開いてみれば、頭の方だけ白っぽいてるてる坊主が何十と……
    いや、ちょっと待て。
    そもそもてるてる坊主が何故箪笥の中に吊るしてある?
    そんなことを考えていた間に「てるてる坊主」の一つが、黄と藍と水色、三色からなる目をじろりとわたしに向けた。
    ……思いは確信に変わった。カゲボウズだ。




    それからわたしは、カゲボウズたちを箪笥の天井からむしっては投げむしっては投げ、やっとの思いでコートを引っ張り出すことになった。
    コートを着込んで一心地、と思ったが別の意味で寒気がする。床に転がされたカゲボウズたちが「うらみ」のこもった目線をこちらに何十と投げつけてきているからである。これを受けてPPだけの減少で済んでいるポケモンたちは実に強靭な精神をしているのがよく分かる。小心者のわたしはこれだけでHPまで0になりそうだ。
    こういう場合はどうしたらいいのだろう。わたしに除霊のできるような知り合いはいないし、この辺りの神社やお寺はそもそもどこにあるのかわからない。
    この下宿の大家さんなら一喝でカゲボウズなんて追い出してくれそうなものだが、それはそれで更に恨まれそうである。
    ここは除霊とかによる強制退去ではなく平和的撤退を願うのが筋であろう。しかしそのためには何をすればいいのかさっぱりわからない。カゲボウズの好きそうな呪いグッズなんて当てはないし、食べるのかわからないが木の実もうちにはない。下宿の先輩でも頼ればいいのかも知れないが、何せこの数である。足りるかどうか心配だ。
    あれこれと思案しながらカゲボウズたちを眺めているうち、彼らがみんなホコリで汚れていることに気が付いた。
    わたしはあの箪笥を数ヵ月は開いていなかったのである。いつ彼らがうちの箪笥に居座り始めたのかはわからないが、月単位であそこにいたなら汚れて当然だろう。
    目についた一匹のカゲボウズに声をかけてみた。言葉が通じることを祈って。

    「……君たち、えっと……すごく、汚れてるよね?」

    そこまで言うと、カゲボウズは頷いてくれた。わかってくれたらしい。
    その際に頭の上のホコリが舞ったのか、小さくくしゃみをする。……あ、ちょっと可愛いかもしれない。
    いかんいかん、わたしは彼らに退去してほしいのだから。

    「……じゃあちょっと、お風呂……入らない?きれいにしてあげるから、それからよそに移ってもらえたら……」

    そこまで言ったところで、カゲボウズはわたしから離れていく。やっぱりダメか、なんて思ったのも束の間だった。カゲボウズは仲間たちと、まるで会議でもするように話し込み始めたのだ。
    わたしに彼らの言葉は理解できないが、布が擦れるような微かな音は確かに彼らの言葉であるようだった。
    急に声を荒げるようにしたものに、そっと寄り添って宥めるもの。それを尻目に、全体に向けて話をするもの。反論を始めた複数のものに順番をつけて、場を取り仕切るもの。
    まるきり人間顔負けの議会である。カゲボウズがこんなに社会的なポケモンであるとは知らなかった。うちの大学に人獣比較学の教授がいないことが惜しくなってくる。研究してみたい気はするのだが。
    そうこうしているうちに意見がまとまったようで、先程と同じカゲボウズがわたしに近寄ってきて頷いた。
    時計を確認する。いつの間にか日付変更辺りになっていた。今の時間なら、誰かと行き合う可能性は少ないだろう。

    「それじゃ行こう、ついてきて」





    深夜族で有名な先輩の部屋はまだ明かりがついていたようだったが、それ以外は特に人の動いている気配はしなかった。カゲボウズたちが静かについてきてくれたのも好都合だった。ゴーストポケモンなのだし、あまり騒ぐ方ではないのかもしれない。
    脱衣場にたどり着くと、まず備え付けの洗面台に栓をする。人肌程度、なるべく本物のお風呂に近い温度のお湯を張ってみた。冷水だと何より洗うわたしが寒い。
    カゲボウズを数匹入れてみれば、狭い洗面台はすぐいっぱいになった。後から後から入りたがる他のカゲボウズを押し留めて、残りは風呂場の方に連れていく。
    何故か二つある洗面器に同じように湯を張ってカゲボウズを放り込む。
    ……足りない。カゲボウズの方が悠々余ってしまった。
    またあの恨みのこもった視線がわたしを刺す。やめてわたしのHPはもうマイナスだ。
    どうしたものかと考えつつ一旦脱衣場の方に戻ると、先程洗面台に入れておいたカゲボウズが角や体のひらひらした部分を使って、器用にお互いを洗いあっている。人間のような手足はないのに、実に手慣れたものだ。
    野生のポケモンであっても、川なんかに入って体を洗ったりするのだろうか?……やっぱり可愛いかもしれない。
    それにしても、これではわたしの手はいらないだろう。きれいになったカゲボウズとまだ洗っていないカゲボウズを入れ替えるくらいしかわたしの仕事はない。
    カゲボウズたちはお湯の中がよほど心地いいらしくなかなか出ようとしないのだ。温泉地のマンキーの如く温泉を占領するカゲボウズの姿が一瞬脳裏に浮かんだが、流石に怖いので想像するのはそこでやめた。
    上がってきたカゲボウズたちをタオルで拭いてやる。元が布っぽい体をしているので絞った方がいいのではとも考えたが、最初の一匹に手をかけた辺りで恨まれそうになったのでやめた。

    そんなこんなですべてのカゲボウズはきれいな真っ黒の体に戻った。こう言うと妙な気もするが、本当にそうなのだから仕方がない。
    部屋の窓を開けると、カゲボウズたちは一匹ずつ外に飛んでいく。濡れたからか少し動きの鈍いものもいれば、軽快にそれを追い越していくものもいる。
    ポケモンと言えどもやはり人間と同じく千差万別であることがよく分かる。
    それにしても無事に出ていってもらって良かった。時計を見ればもう深夜一時を回っている。自覚したところで急に眠くなってきたので、さっさと布団を敷いて寝ることにした。明日は一コマ目から講義だ。憂鬱。




    ……妙に外がうるさい。
    誰かが叩いている。うちを。恐らく窓。声も聞こえる。

    「――ちゃん!起きて!起きて!」

    しかもはっきり私の名前まで呼ばれている。こうなれば起きる他ない。
    枕元の目覚まし時計は午前五時過ぎを指している。いつもなら思い切り寝入っている時間なのに。
    寝ぼけ眼をこすってカーテンを開けると、窓の外で慌てた様子の隣人が必死に窓の上方を指している。寒いから窓は開けたくないなあ、などと思いながらその先に目を向けた。

    窓は開けていないのに凍り付きそうになった。
    窓の端から見える黒いひらひらは、まさしく昨日のカゲボウズたちではないか。
    これでは気の弱い隣人がわたしを叩き起こしにかかるのも当然だろう。これは少々恨みを買ってでも、きちんとここから出ていってもらわなければ。
    寝間着の上からコートを羽織って、一気に窓を開ける。今日の寒さは一段と身に凍みるような気がするが負けてはいられない、さっさとこのカゲボウズたちをうちの軒下からひっぺがさなければ――!


    カゲボウズが異様に固い。しかも素手で触りたくないほど冷たい。
    違和感に数瞬固まっていたわたしの耳に、隣人の声がようやく届く。

    「起きて自転車取りに来たら、――ちゃんの部屋の外でカゲボウズがみんな凍ってて――」




    その後わたしは、隣人と協力してカゲボウズを軒下から引き剥がしてストーブを最強モードで焚いた部屋の中に入れる作業を涙ながらに行うこととなった。一コマ目は返上で。
    それからカゲボウズたちは暖かなわたしの部屋がずいぶん気にいってしまったらしく、いっこうに出ていく様子がない。
    だから今でもタンスはおちおち開けられない。彼らの安眠を邪魔しようものなら、すぐさまあの「うらみ」のこもった視線が飛んでくるからである。
    今のわたしの希望は、春になって外の方が暖かくなったら彼らは出ていってくれるだろうか、ということだ。


    ――――
    Q:何故トーホクにしようと思ったんですか?
    A:この小説の半分以上は私の実生活でできているからです(←シンオウからトーホクに転居しました)

    カゲボウズが大好きなので便乗しようと思いましたら、何か形を間違えた気がしました。
    削除キーは入れてありますので勘弁して下さい。

    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】
    【好きにしていいのよ】
    【増やしてもいいのよ】


      [No.512] 気がついたら書いていた 投稿者:久方小風夜   《URL》   投稿日:2010/08/24(Tue) 00:36:52     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     アパートを改装するそうだ。
     学生ばかりのアパートだから、大半の学生が実家に帰る夏休み期間を狙ったんだろう。
     でも僕は夏休み早々に用事で実家に帰った。僕は大学から実家が遠いから、一度帰るともう一度というのはかなり面倒臭い。お金もかかるし。

     ということを不動産屋に言うと、改装が終わるまでの一月の間、別の物件を借りられることになった。
     もらった資料をパラパラとめくる。大学から多少遠くても、狭くても、古くても、安いところがいいだろう。どうせ夏休みだし。
     と考える僕の目に留まったのは、とあるアパートの空室情報。
     昔ながらの四畳半。見るからに年期の入った外観。それを差っ引いても異常なほど安い家賃は、その部屋で何か良からぬことでも起こったのであろうことが予想できる。
     でも、まあ、いいか。安いし。


     外装と屋根の修理だけなので、大きな家具は置きっぱなしでいいらしい。それよりそれだけで一月もかかるのが不思議だ。
     服と食器と布団とパソコンだけを持って、僕は夏の間の仮住まいへ向かった。
     『幸薄荘』という、どことなく陰気なムード漂う名前。
     ここの206号室にしばらく住むことになる。

     大家さんへ挨拶に行ったら、大きな荷物ですね、と目を丸くしていた。まあ、持ってる中で一番大きなバックパックに荷物を詰めて、その上に丸めた布団をくくりつけて、さらにその上にヤミラミが乗ってるんだから大荷物だろう。
     でもこれだけなのだから、全体的には少ない。専攻柄このくらいの荷物なら背負い慣れてるし。むしろ電車や車が使えるだけ、いつもの荷物を背負って山の中を歩き回る研究よりましだ。

     2階の一番右端の部屋。
     扉を開けると、かびとほこりの臭いが襲ってきた。どれだけ人が住んでいなかったのだろうか。ヤミラミが大きなくしゃみをした。
     こりゃ何より先に換気だな、と思って、閉じっぱなしになっていたカーテンを開けた。

     軒下にずらりと並ぶ、黒いてるてる坊主。
     3色の瞳とバッチリ目があって、僕はカーテンを閉めた。

     何だあれ。前の住人が忘れていったのか? にしても、あんなにたくさんのてるてる坊主を作るなんて、そんなに晴れてほしかったのか前の住人は? フィールドワーク主体の僕としては気持ちはわからないでもないけど、いくらなんでも多すぎるだろう。しかも大きい。
     ヤミラミが興奮したようにギャーギャーと騒ぎ立てる。ああやめて肩によじのぼらないで。Tシャツが灰色になる。
     こいつがこれだけ騒ぐってことは、あのてるてる坊主、もしかしてポケモンなんだろうか。僕はポケット図鑑を取り出した。
     お目当てのポケモンはすぐ見つかった。
     カゲボウズ。
     負の感情を食べる、とか、魂の宿った人形、とか。何かよくわかんないけど、こいつもヤミラミと同じゴーストポケモンらしい。
     何で僕の部屋の窓にぶら下がってるんだろう。新入りの偵察とかそんなものだろうか。

     まあとりあえず、今は換気だ。僕はカーテンを開けた。カゲボウズたちは相変わらず軒下に並んでこっちを見ている。
     窓を開けると、真昼の蒸し暑い外気が部屋に入ってきた。それと一緒に、カゲボウズたちまでほこりだらけの部屋に入ってきた。7匹くらいいるだろうか。
     ヤミラミが興奮していきり立っている。一時期とはいえ自分の城となる場所に、よそのポケモンが入って来るのが気に食わないのだろうか。いや、部屋の主は一応僕だけど。
     僕は気にせず掃除をすることにした。こいつのことだから、しばらくしたらおとなしくなるだろう。案の定、数分もしたらヤミラミはカゲボウズたちとじゃれあってケタケタ笑っていた。
     天井のクモの巣を掃い、上から順にほこりを落としていく。前の住人が残していったのであろう電気カバー、小さな本棚、ちゃぶ台。家具は少ないのですぐに終わる。
     あとは畳をほうきがけするだけ、と思って床を見ると、そこには白い塊がいくつも転がっていた。
     よく見ると、それは全身ほこりまみれになったカゲボウズたちとヤミラミだった。ほこりのつもったの畳の上で転がっているうちに、元々黒かった体が脱色したようにすっかり白くなってしまったらしい。
     僕は水場に放置してあった、大きな金だらいを持ってきた。これも前の住人が置いていったものだろう。昔ながらの助け合い精神というものだろうか。それとも持っていくのが面倒だったのか。
     白っぽい粉をふくほどほこりまみれになっているカゲボウズたちとヤミラミを拾いあげ、金だらいに入れた。そして畳のほこりをすっかり掃いた。
     外へ飛び出していこうとするカゲボウズとヤミラミを押さえ付けて、金だらいを抱え上げた。重い。でも持てないレベルじゃない。
     ホースとタオルも持って、僕はアパートの外に出た。


     金だらいを運びだした。さすがに重かった。
     アパート外の水道の蛇口にホースを取り付け、金だらいに水を入れる。
     途端に、ヤミラミが短い叫び声をあげて飛び出した。そういえばこいつは水が苦手だったな。シャンプーさせる時はいつも、僕とこいつの攻防で風呂場が戦場になる。
     一方、カゲボウズたちは目を閉じて、気持ち良さそうに水を浴びている。金だらいの中の水はあっという間に汚くなる。
     さて、こいつらをどうしようか。さすがに水だけじゃ汚れがきれいに落ちない。金だらいの中のカゲボウズは、ひらひらがまだ少しまだら模様だ。
     せっけんかボディーソープを使うべきか。でもさっきの図鑑に書いてあったな。『カゲボウズは人形に魂が宿ったもの』って。そういえばこのひらひらはまんま布だ。ということは、洗濯用の洗剤か。でも一応生き物だしなあ。
     まぁ、一応持ってきてた手洗い用のせっけんでいいか。僕の使ってる洗濯用洗剤、漂白剤入りだし。カゲボウズが脱色されてしまったら困るもんな。

     タオルに石けんをこすりつけて、カゲボウズたちの汚れているひらひらを軽くたたく。くすぐったいのか、笑いながら僕の手にすり寄ってくるカゲボウズたち。すべすべなようなぷにぷになような、冷たいような温かいような不思議な感触。
     しばらくカゲボウズたちと楽しく戯れていると、突然腰を衝撃と鈍痛が襲った。
     ほこりまみれのヤミラミが、ギャーギャー騒ぎながら僕の頭にしがみついてきた。さてはこいつとび蹴りしてきたな。僕がカゲボウズたちを楽しく洗濯しているのが羨ましかったのか何なのか。
     僕は右手で蹴られた腰をさすりながら、左手でヤミラミの首の後ろをつかんで金だらいの中に放り込んだ。これもほこりを落とすためだ。我慢してくれ。
     水の中にダイブしたヤミラミは、奇声をあげて金だらいから飛び出し、逃げ出した。
     カゲボウズの洗濯で何だか気分がハイになっていた僕は、ホースの先をつぶして水流の勢いをあげ、浴びせかけながらヤミラミを追いかけた。カゲボウズたちは水を滴らせながらふよふよと僕を追いかけ、けらけらと笑っていた。

     残暑厳しい昼下がり、ホースを持ってカゲボウズと共にヤミラミを追いかける大学生。
     傍から見たらきっと怪しい光景だっただろうなと思ったのは、僕もヤミラミもカゲボウズたちも、頭のてっぺんから足の先までずぶぬれになってからだった。


     びしょぬれになったTシャツとカゲボウズたちを干す。カゲボウズたちは自力でロープにぶら下がれるらしい。便利なものだ。まあ確かに、初めて顔を合わせた時も自力で軒下にぶら下がってたし。洗濯バサミで止めようとしたら全力で拒否された。まあ確かに僕も、洗濯バサミで頭から吊るされるのは痛いから嫌だ。
     ヤミラミはさすがに干せないからとりあえずタオルで全身を拭いてやったら、日のあたる場所にタオル敷いて昼寝してた。もう夕方近いから昼寝って言うのもおかしいか。

     引っ越し、掃除、洗濯。更にヤミラミとの追いかけっこ。
     僕も何だか眠くなってきた。
     今日は早く夕飯食べて、さっさと寝よう。
     食材買ってないし、どこかに食べに行くか。冷やし中華とかいいなあ。

     というわけで、夏休みが終わるまではこのアパートにお世話になります。
     とりあえず、今日は初日だし、いい夢見られるといいな。



    おわれ。





    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【好きにしていいのよ】
    【紛れてすみません】
    【こっちにも1匹ください】

    1週間ほど泊りがけのバイトに行っている間に何やらカゲボウズがお祭り状態……。
    ちくしょう! ちくしょう! と思っていると気がついたら何か出来てました。
    うちの地学マニアとヤミラミがお邪魔してすみません。すっかり書き忘れましたがポリゴン2はパソコンの中です。
    それにしてもカゲボウズかわいいなぁ……。洗濯したいです。



    おまけ。

    地学マニア「昨日、知らない紫色のポケモンがリンボーダンスしてて、僕がそれを傍らで見て大爆笑してる夢を見た。
           何だったんだろうアレ。夢で笑いすぎて目覚めが悪い」


      [No.508] Re: 収穫したい 投稿者:兎翔   投稿日:2010/08/23(Mon) 22:10:20     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > 兎翔さん、描いてみたありがとうございます。
    > お手数をおかけしてすみませんでした。
    >
    > とりあえず左端の眠そうな子は貰った!
    > ぷちっ!
    >
    >
    コメントありがとうございます!
    カゲボウズ狩り、一匹二十円!
    幸薄荘にて、随時開催中!

    …なんて言ったら、住民のみなさんに怒られそうですね(汗


      [No.491] ある麗らかな週末の話【書いてみた】 投稿者:CoCo   投稿日:2010/08/21(Sat) 21:39:39     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     

     俺はある日、ふと思った。
     ――先輩は人間なのだろうか?

     週末の昼、特にやることもなく寝っ転がってまどろんでいると、こういう突飛な疑問が沸いてくる。

     しかし何の裏付けもなくそんなことを言っているわけじゃない。

     かつてここいらで変質者が出るっていう事件があった。
     ここらへんじゃ変質者は珍しい。何故だろう、もしかすると頭が沸く前にカゲボウズに食われてしまうからかもしれない。

     それが珍しく、買出し中だった大家さんが襲われた。
     翌日に町内会主催の秋の鍋大会を控えていたのだという。

     コート一枚、下は一糸纏わぬ姿の野郎に抱きつかれそうになったところ、黒い塊が飛んできてそいつにぶち当り、間一髪助かったのだそうだ。

     あれはシャドーボールだった間違いないと、かつてポケモントレーナーをしていてリーグにも挑戦したことがあるという(噂の)大家さんは言った。

     そして街灯の暗闇の向こうから、ぬうっと背の高いミカルゲが現れたのだという。

    「不思議よねえ、御影さん」
     そういう大家さんの横顔の端整なのに、俺はなんだか溜め息をつきそうだったのを覚えている。
    「さあ、トゲピーが指でも振ったんじゃないですか」
     その柔らかい唇から語られる名詞が俺の名前でないことに……そういう期待は持たないようにしているんだもう今更。

     しかし先輩は確かに不確かな人間だ。
     丸一週間外に出てこないので、中で倒れているんじゃないだろうかと思って必死でドアを叩いたら、「瞑想していたんだ」とかしれっとした顔で言いながら現れたり。わけのわからんサークルのわけのわからん企画に気が付くと紛れ込んでいたり。実はフルートが吹けたり。

     まあ、別にどうでもいいけどな。
     しかしどうして俺にはフラグが立たないんだろう……。

     どくおとこは レベル 32に あがった!

     時刻を腕時計で確認すると午後二時。だるい。ねむい。
     すると俺の感情に寄せられたのだろうか、数匹のカゲボウズが窓から飛び込んできた。

     しかし飛び込み方になんとなく勢がない。
     ふわふわ、というより、ふらふらしている。

     しかもなんだかよくわからない液体をしたたらせている。

    「……おまえら」
     大丈夫か、と一匹を手にとると、なんか熱い。湯気が出ている。

     どうしたんだろう。鍋にでも飛び込んだんだろうか。
     とりあえずぬるま湯で洗い、冷たいタオルで拭いてやった。

     結果。
     彼らは俺がタオルから話した瞬間ころころころころころがって動かなくなった。
     どうしたのかと心配して突っつくと、なんのことはない。
     寝ていた。

     そして俺はカゲボウズ六匹と昼寝をすることになってしまった。

     仰向けになって染みだらけの木目を見上げる。電灯のかさが埃まみれだ。掃除しねえとな。

     寝返りを打つと、ちょうど腕でカゲボウズを一匹つぶしてしまった。
     ふぎゅ、と何とも言えない音がした気がして、やべぇ、これはうかつに寝返りできない。

     見ていると、カゲボウズ達はわりと寝相が悪いようで、ころころ転がっていってはタンスにぶつかっていた。
     窓の影で眠たそうにうとうと目を瞬かせているのもいる。

     俺も眠くなってきた。
     どうやって起き上がるかは、目が覚めてから考えよう。


     終わる


    ***

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】

     先輩が書かれていたのでつい書いてみてしまった


      [No.490] 書いてしまった 投稿者:海星   投稿日:2010/08/21(Sat) 21:25:48     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「うん…ここだ」
     ひとり呟くと、僕はインターネットから印刷してきたここら辺の地図を丁寧にたたんで、腰に巻くタイプの鞄の外側ポケットに差し込んだ。
     それからチャックを開けて、中から、財布やら手帳やら種無し干し梅やらの上に乗っかっているモンスターボールを取り出す。
     ちょっとどきどきしたのは、ある不安があったからだ。
     しばらくの間モンスターボールを手の平で転がせてもてあそんでいたが、心を決め、ドアにそろそろと近づいた。
     開けて、隙間から顔の半分だけを覗かせ、中を観察する。
     そんなに混んでない。うう、入るべきか入らざるべきか…。
     そのとき、若い店員が元気に声をかけてきた。
     つい、僕はどきっと驚いて3センチくらい跳びあがってしまった。
     店員も驚いた僕に驚いて目を丸くしている。
     気まずくなり、僕は口を開いた。
    「あ、あの、えっと、ポケモンをきき綺麗にしてくれるって聞いて、来てしまったんですけれど、はい…」
     焦り、テンパり、物凄く噛んでしまったのだが、彼は爽やかに笑い、店の説明をしてくれた。
     ここは「ポケモントリミングセンター」という、客の連れてきたポケモンを何が何としても綺麗にするのがモットーな店らしい。
     もしかしたら、店のモットーでは無く彼のモットーなのではないかと感じたが。
     説明しているときの彼の瞳はきらきらと輝いていた。
     一通り話し終わると、彼は僕に、コースの説明を始め、またそれも終わり、期待を込めた目で僕を見た。
     僕は恐る恐るモンスターボールを彼に見せた。
     勿論彼はきょとんとする。
     それから、真ん中の小さなボタンを押し、僕は宙にパートナーを登場させた。
     現れたのは…。
    「僕のポケモン、ゴースなんですけど大丈夫ですかね…」
     流石に、彼はゴースと店の奥と僕を順番に見てから、ううん、と考え込んでしまった。そりゃあそうだよなあ、ガスだから。



    ――――――


    うわああああ書いてしまったああああ
    すみません書いてしまいましたああ
    ポケモントリミングセンターとか毒男さん借りてしまいましたああ
    すみませんゴース連れてきちゃって!!!
    シャンプー…つけられんのかなって思っちゃったりして!

    ちなみにまとめるのは素晴らしいアイディアだと思いますですはい!!(

    海星でした!


      [No.487] Re: 【賛成なのよ】 投稿者:No.017@管理人   投稿日:2010/08/21(Sat) 10:30:01     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    うわあい!
    返信ありがとうございます。

    5人、揃った! BY父上様


      [No.485] 【賛成なのよ】 投稿者:レイニー   投稿日:2010/08/21(Sat) 10:25:37     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    返信遅くなりましたが私もまとめ賛成です!

    タイトルは「借りぐらしのカゲボウズ(幸薄荘憑き的な意味で)」……、ごめんなさい。
    CoCoさんの作品もありますし、「カゲボウズ憑き物件(ry」になるのかなと思いつつ、
    個人的には「平成洗濯合戦カゲボウズ」がツボだったと書き記しておきます(爆)


      [No.479] ■【そろそろ動くのよ】 投稿者:No.017@管理人   投稿日:2010/08/21(Sat) 07:11:57     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    No.017です

    文面から解読するに、お伺いを立てた5人中4人と途中でくわわった1人からGOが出たと解釈しております。
    とりあえず、外観から作ってみるか……


      [No.478] うらみ鍋つくってみた 投稿者:こはる   投稿日:2010/08/20(Fri) 23:17:17     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     ある日、ミカルゲ顔の先輩が現れた。
     俺の通う大学でも噂になっている先輩だ。……と思う。これだけインパクトの強い先輩はいない。
     onmyonnと書かれたTシャツを着て、ミカルゲ顔で俺の部屋のドアを叩き続けた。朝早くから。
    「鍋を貸してほしい」
     10分ほどもドアを叩き続けたとは思えないほどさわやかに、ミカルゲ顔に似合わないほどさわやかに言う。鍋を貸して欲しいと、意味不明なお願いをしてきた。
    「いま何時だと」
    「君のとこの鍋は、昔ながらの金色アルミ製シリーズを使っているだろう」
    「まぁ、使ってますけど。いま何時だと」
    「やはり煮物料理は昔ながらの金色アルミ製シリーズに限るんだ。貸してくれ」
    「この暑いのに、煮物」
    「もちろん、完成のあかつきには君にも見せてやろう。だから、昔ながらの金色ア」
    「わかりました。わかりましたから持ってってください」
     音を上げたのは、俺だった。サマヨール寝癖髪をつけたまま、俺は先輩を部屋に招き入れた。愛用のホーホー時計は、午前5時を示している。
     鍋一式は、ワンリキー引越センターの段ボール箱の中にしまったはず。探してみると、段ボールは押し入れの奥に押し込まれていた。よいせと埃をかぶった段ボール箱を引き出した俺は、無難に20cm鍋を取り出す。仁王立ちの先輩に渡そうとすると、「45cm鍋がいい」などという注文が飛んできた。45cm鍋なんて、なにに使うんだ。
    「うん、この色、艶、形。まさにイメージ通りだ。」
    「16とかじゃなくて良いんですか?」
    「45がいい。42でも39でもだめだ」
     よいせと一抱えもある両手鍋を持ってきた俺に、先輩がにこにこと笑った。きっとミカルゲが笑うと、こんな感じだろう。
    「なににつかうんです」
    「君はなぜ昔ながらの金色アル」
    「親父が無言で押しつけてきました」
    「いい親父殿だな」
     45cm鍋なんて、地元の料理会でしかお目にかかったことがない。なにに使うんだ、この先輩は。
    「闇鍋サークルが【地獄鍋】を作った。とても美味かったので、【うらみ鍋】を作ってみようと思う」
    「【地獄鍋】行ったんですか!」
     真夏に密室で火鍋を食うと地獄に行けるという訳の分からん理論を展開し、実行したあげく熱中症でばたばた倒れたため、学生会が中止を宣告したという鍋大会。
     なにげに恐ろしい先輩なのだと感じる俺のよこで、先輩はアルミ鍋をばこばこ叩いている。
    「うん。これなら良いだろう。【うらみ鍋】ができたら、君にも食わせてやろう」
     にこやかな笑顔を残して、午前5時の訪問客は去っていったのだ。45cmのアルミ製両手鍋を抱えて。


     俺が45cm両手鍋を貸してから早7日。先輩が【うらみ鍋】を作っていた。
     45cm両手鍋をたき火にかけ、ぐつぐつと青黒い液体を煮ている。オソロシイ液体の中に浮かぶ、6匹のカゲボウズたち。
    「構内をうろちょろして、うらみつらみを吸わせてきた。七日かけたから、いいダシがでるはずだ」
    「カゲボウズになにしてるんスッ!」
    「君の隣に住んでる男が洗った。あいつはプロだ」
    「あ、キレイなんスね。……じゃなくて、カゲボウズって煮て良いんですか」
    「煮洗いというのもある」
    「色落ちするでしょ」
    「色落ちしたという報告はない」
    「なんでそんなに青黒いんです」
    「オレン汁とウイ汁とシーヤ汁をつかった」
    「全部しぶいのじゃないですか」
    「辛味にはフィラ汁とマトマ汁をいれてある。きっと美味い」
     きっぱり言い切られては、もはやなにも言えない。煮られるカゲボウズたちを見ると、なぜかうっとりしている。やつらにとっては、温泉気分なのかもしれない。
     そのまま煮ることしばし。先輩が両手鍋をたき火からおろした。カゲボウズのつのを掴むと、鍋の外に取り出していく。ふやけたカゲボウズが、ふらふらとある部屋に向かうのを、俺は見た。俺の隣の部屋だ。
     鍋から浅黒い物体を引き出した先輩が、はふはふ良いながら食う。呆然と立ちつくす俺に、先輩が赤黒い物体を差し出した。
    「食うか?」
    「……いえ、遠慮してきます」
     カゲボウズのうらみ入り鍋。あまり食いたいものではない。


    ++++++
    料理番組をみてたら、いつの間にか書いていた。
    よし、削除キーはいれた。いつだって消せる。
    かわいいカゲボウズたちに、コレをぶら下げて良いのだろうか。

    【書いてもいいのよ・描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】
    【ぶらさげていいのかしらん】

    【まとめ賛成なのよ】←私が言っても良いのでしょうか?


      [No.477] 【まとめていいのよ】【と思うのよ】 投稿者:CoCo   投稿日:2010/08/20(Fri) 22:59:56     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     陽の光は平等だ。降り注ぐ日差しは日陰の人にも日向の人にも同じく暖かい。
     しかし同じ街で、その白い光に照らし出されても、どことなくほかより影の差す外観をした、築何年ともつかない古いアパートが建っている。
     そしてその階段下に、潜む三角の瞳、いくつか。

     外壁にへばりついた錆び垂れるプレートの言うことには、【幸薄荘、新規入居者募集中】。

    「住む場所を探してるって? そこ。204号室空いてるよ、俺ん家の隣だけど。何、陰気な雰囲気。君、住めば都って言葉知ってる? え、さっきそこでカゲボウズがたくさん軒下に並んでいるのを見かけたって。そうか、確かにカゲボウズは負の感情を喰らう者だ。しかしその陰湿なイメージとは裏腹に、彼らはそれを喰らうことによって悪夢を喰らう獏さながら、それを昇華しているんだと俺は信じている。一晩寝れば〜って言うだろ? あいつら、夜中にこっそり並んでいやがるからな。――ここいらじゃ、カゲボウズ憑きって有名らしいな? ここ。いや、さっき言ったとおりさ。住めば都。ここだけじゃない、住むところには人の居るかぎりどんな感情も渦巻くさ。喜怒哀楽も、憎いのも辛いのも。そういうのは誰にもある、どんな人格者だって神様だって圧迫して沈めることはできても、消し去ったりはできやしない。いつでも吐き出されるのを待ってる。そんなものが集まってるんだからそりゃあ、住人のいるかぎり、アパートは呼吸をするだろう……なんてね。なあ、ここで暮らしてるとさ、寝覚めだけは抜群だぜ。まあ206号室だけは別だがな。あそこはやめておけ。格安だが眠りづらい。だって毎晩夢の中でゲンガーがリンボーダンスするんだ」

           ――ミカルゲに似た立ち姿の男、アパートの門付近にて


    【カゲボウズ憑き格安物件、幸薄荘へようこそ】


     今日もどこかで、水もしたたるカゲボウズたちが風に揺られている。


    ***
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【住んでもいいのよ】
    【批評していいのよ】

    【まとめていいのよ】たぶん


      [No.475] 2828してみた 投稿者:きとかげ   投稿日:2010/08/20(Fri) 02:12:20     45clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    食べに来てくれた!それもふたり!
    2828がとまらないきとかげです!
    カゲボウズ3匹憑き冷やし中華大盛りは七百五十円になります。

    全部盛り頼んでくれたレイニーさん、カゲボウズ届けに来てくれたCoCoさん、ありがとうございます!
    タイトルかあ……思いつきません。
    「となりのカゲボウズ」「風の谷のカゲボウズ」「平成洗濯合戦カゲボウズ」……
    すいません、だめでした。


      [No.474] 【賛成なのよ】 投稿者:てこ   投稿日:2010/08/19(Thu) 22:26:17     42clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    おっけーですよー。
    むしろ、まとめて、見たい!
    カゲボウズじゃなくて主にジュペッタですみません!

    タイトル……タイトル……



    考えてきます!!


      [No.473] わたわた。 投稿者:てこ   投稿日:2010/08/19(Thu) 22:21:09     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     針を通し、ちょっと戻ってまたは、進み。それから、また戻って、進む――。
     ちく、ちく。


     小学校のとき作った、あのナップザックですらひどい出来だった俺。(調子に乗って返し縫しすぎた)
     中学のときの家庭科の時間での呼び名は『ミシンクラッシャー』だった俺。(下糸が繭みたいになってた)
     高校のときは家庭科の授業中に指に針をぶっさして病院行きになったこともある俺。(ぶっすり刺さった)

     家庭科の授業を卒業したらもう針なんて持つことないんだろうと思ってから数年。俺は今、針を手にしているのである。この縫い方は丈夫に縫える縫い方。なみ縫いすらしきらない俺にとっては至難の技だったが、二日くらい経ったら慣れてきた。やるじゃん俺。やればできるじゃん。
     布と布を縫い合わせていく。ミシンを使おうかとも思ったけど、やっぱりミシンは怖いんだ。あんな猛スピードで針が上下するなんて恐ろしいにもほどがある。それに、ぬいぐるみをミシンで縫えるほど俺は器用じゃない気がする。
     そんなことを考えながら俺は針を動かしていく。伸ばした膝の上で寝ているジュペッタ。時計は三時を――深夜三時を指している。


    「ふぅ」
     よし。とりあえずこれで作業は95パーセント完了だ。
     最初見た時は、グロテスクとも思えるほど悲惨な状態だったぬいぐるみだったが、今はもう――いや、悲惨な状態のままだ。
    「ヒメグマ……か?」
     うーん。言われてみればヒメグマに見えないこともないような。よく見てみればヒメグマに見えるような見えないような。もしかしたビッパにみえるかもしれない。
     まぁ、簡単に言ってしまえばつぎはぎだらけ。つぎはぎを目立たなくすることなんて、とてもじゃないけどできるものじゃない。でも、俺にこれ以上はできないだろう。これで怒られたら……って怒られるだろうけど、まぁ、なんとかしよう。うん。
     さ、残りの作業は背中を閉じるだけだ。ぱっくりと開いた背中を閉じるだけ。閉じる、だけ。


     なんだけど。


    「こんなにスリムだったかなぁ」
     いや、絶対に違う。こんなスマートなヒメグマは嫌だ。お腹はそれなりに出ているのだが、頬っぺたの辺りがげっそりしている。
     綿が足りないんだ。きっと、綿の一部はどこかに行ってしまったんだろう。そういえば、買ってきた綿はもう全てつめてしまったんだった。
    「押入れとかに残ってないかな……」
     眠い。重い体を起こして、押入れの中を探す。以前、ジュペッタが切り開いたクッションの残り。捨てちゃったか、捨ててないか忘れたけど、ここらへんにあったような気もする……。ダンボールの箱を開けては閉めて、開けては閉めて――。
     窓の外がうっすらと明るくなりつつある。眠すぎて、意識が朦朧として、もう――わた――た――。


     
    「こんちはーっ」
     ぬいぐるみを渡そうとあの人の家の前に行くと、ちょうどあの人が帰ってきたところだった。ん。なんだか幸せそう。あの人は俺を見ると、少し驚いたような顔をした。そりゃ、つぎはぎだらけのぬいぐるみを見たらびっくりするよな……。
     大きく深呼吸して、俺はあの人に駆け寄った。
    「これ、……この前のぬいぐるみです!俺、不器用だから、全然うまく出来なくて、あの」
     自分で見てもひどいできばえだって分かるし、なんか恥ずかしい。俺はうつむいたままぬいぐるみをさしだした。手の先からぬいぐるみの重さが消えた。今、どんな顔をしてるんだろう。怖くて顔を上げられなかった。俺の足元にいるジュペッタも全く同じポーズで固まっていた。
     何の反応もない。ただ、聞こえるのはセミの鳴く声だけ。なぜだか、なんかしゃべらないといけない気がして。
    「いや、でも受け取ってもらえなかった俺がそれもらいます!俺が言うのもなんだけど……きっと、ぬいぐるみって何か持ってるんです!何か、時間とか思い出とかが、染み込んでるような気がするんです。でも、それはあなたの……だからきっと、あなたがもってるのが一番いいと思うんです!」
     俺何言ってるんだろう。何、言ってるんだろう……。うつむいたまま、また、顔を上げられない。
    「……ありがとう」
     顔を上げた。女の人はつぎはぎだらけのぬいぐるみを、ぎゅーっと抱きしめて、目を閉じていた。
    「君の言うとおりだと思う……捨てるつもりだったけど、君のおかげでこのぬいぐるみも命を救われました」
     ありがとう。そう言って、あの人は笑った。
     俺は、言葉が出なかった。


     ……。
    「あの、それと……」
    「なんでしょうか?」
    「ジュペッタが中に綿入れちゃって……いや、大丈夫だとは思うんですけど……」



     朝だ。俺が押し入れの中で目を覚ます。ん。ヌケニンの背中のようにぱっくりとあいていたぬいぐるみの背中がきれいに閉じられている。表にひっくり返す。頬はこけてない。ふっくらとしたヒメグマの顔。
     ……誰が?
    「おーい……ジュペッタぁー」
     ぺたぺたと俺の前に現れたジュペッタ。


     ……口のジッパーに、綿を挟んだまま。


    「お前なぁ……」
     輸血じゃねぇぞ。輸綿か。
    「そんな、自分の身を削るようなことまでしなくても……いや」
     これがジュペッタなりに考えたジュペッタにできることなんだろう。絆創膏塗れの俺の手も、ジュペッタにしてみたら同じことなのかもしれない。自分の身を傷つけてまで、か。
     ……。
     ジュペッタが不安げに俺を見つめる。俺はいつものようにジュペッタの頭を撫でてやった。
    「……ありがとな」
     負の感情が染み込んだ綿だとか言うけど、多分大丈夫だ。いや、大丈夫。たしかに負の感情があるかもしれない。けれど、きっとそれ以上にジュペッタの気持ちがあるはず、だから。
     綿は減っても大丈夫なのかな。また、口開いて押し込めばいいのか?いや、それよりも、ジュペッタが綿を食べれば……
    「俺、あんまりよくわかんねぇからさ……今度、あの美容師さんに頼んでみよう。きっと、なんかしてくれるはずだから、な……」
     頭がまわらない。やっぱり、まだ眠い。目の前のジュペッタの頭に手を置いたまま、俺の意識は、そこで、また、切れた――。




    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】


    カゲボウズ冷やし中華が食べたいです。いつか、食べに行こう。

    カゲボウズスレのはずなのに、どちらかといったらいっつもジュペッタ書いている!すみません!
    ぬいぐるみはずたぼろになりつつお返しいたしました!ちょっとジュペッタの綿入ってるんですけど、許してください!
    美容師さんなんとかしてく(ry


      [No.469] 収穫したい 投稿者:No.017   投稿日:2010/08/19(Thu) 20:28:41     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    兎翔さん、描いてみたありがとうございます。
    お手数をおかけしてすみませんでした。

    とりあえず左端の眠そうな子は貰った!
    ぷちっ!


    > 管理人様のご意見に賛成です!
    > まとめて読める形式だとより楽しいと思います。
    > タイトルはありきたりですが「カゲボウズ日和。」とかどうでしょうか?

    さあ、みんなどんどんタイトルを投稿するんだ!
    あっ、ここは震源地のCoCoさんに決めていただくという手も……w
    どうでしょう?

    案その2:カゲボウズストーリーズ! (待て




    【もっと描いていいのよ】


      [No.467] たまには天日干しでも。【描かせていただいた】 投稿者:兎翔   投稿日:2010/08/19(Thu) 19:35:18     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    たまには天日干しでも。【描かせていただいた】 (画像サイズ: 640×480 399kB)

    みなさんの書かれたカゲボウズ達がものすごくかわいかったので、勢いにのって描かせていただきましたw
    描きいれられなくてごめんねジュペッタ!
    じめじめした暗いところを好みそうな彼らですが、たまには天日干しでもどうでしょうか。
    (昨夜投稿したのですがなぜか記事が消えてしまったので、加筆したものを再登稿させていただきました)

    管理人様のご意見に賛成です!
    まとめて読める形式だとより楽しいと思います。
    タイトルはありきたりですが「カゲボウズ日和。」とかどうでしょうか?
    ……捻りがなくてすみません…orz


      [No.464] ■【まとめてみたいのよ】 投稿者:No.017@管理人   投稿日:2010/08/19(Thu) 12:19:32     49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    こんにちは、カゲボウズ憑き冷やし中華が食べたいNo.017です。
    最近嫉妬してばりなので、3匹憑きでお願いします。
    毒男さんもお仕事が順調のようで何よりですね!

    タイトル通りなんですが、震源の「洗濯日和」から続く書いてみたをHTMLにまとめて展示してみたいです。
    最初は個々がpixivで、タグ繋ぎみたいに思っていたのですが
    ここまできたらまとめページ的なものがあったほうがみなさん見やすいかな……なぁんて思いまして。
    (本当はみんなで編集できるといいんですが、技術がないのでとりあえずHTMLで)

    発信源のCocoさんおよび、
    てこさん、こはるさん、レイニーさん、きとかげさん、いかがでしょうか。
    特に反対意見がなければ、事後承諾的な感じで外観をつくってみようと思うのですが。

    まとめタイトルはどうしましょう
    「カゲボウズ憑き物件、薄幸荘へようこそ!」とか?
    まとめの賛否も含めて、何かアイディアや意見等あればぜひお願いします!


    【まとめてみたいのよ】
    【よいタイトル募集なのよ】


      [No.463] 届けにいってみた 投稿者:CoCo   投稿日:2010/08/19(Thu) 02:29:38     81clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     ギャロップは難関だった。
     炎ポケモンは本能的に水を嫌がる。つまり、すすぎができないということだ。
     しかしブラッシングだけならわざわざトリミングに来なくても出来る。ちょっと専門書を読めば余裕だ。

     しかし職場の先輩に聞くわけにはいかない。
     これは通過儀礼なのだ。どんなポケモンでも見事に洗い上げる。機嫌を損ねることもなく、ポケモンにも飼い主にも笑顔でお帰りいただく。それがポケモントリマーの使命なのだと。
     ここで甘んじてしまえば、俺は一生下っ端トリマーのままだ……。

     ギャロップを預けられた日、俺は昼休みに飯の時間を削って本屋へ飛び込み、炎ポケモンの洗いについて調べた。
     時間が無かったのでじっくりとは読めなかったが、どうやらブラッシング以外のシャンプーなどを使う洗いは炎ポケモンにとっては危険らしく、専門のトリマーに任せるのを薦める、としか書かれていなかった。
     場合によっては瀕死になってしまうこともあるとか。

     責任重大。

     むむ、と唸りながら戻ると、センターの洗い場の窓にいつものカゲボウズ達がぶら下がっていた。マスコットでもしているつもりか。
     あ、ぷち子が落ち……なかった。最近あのぷちボウズも慣れてきたのか何なのか、落ちかけても途中でふわふわ戻ってこれるようになってきた。かなり頑張って浮遊しているようではあるが。しかし大きさだけはまるで成長しない。カゲボウズにも成長期があるんだろうか?

     前はあいつを落とさないために、他のカゲボウズ総がかりだったのになァ……と感慨深く思っていると。
     落とさない?
     落とさない。

     思いついた。
     落とさなければいいのか。

     すすげないならばすすがなければいい。

     シャンプーを固めに泡立てて、マッサージの要領でギャロップを洗ってやる。
     そして丁寧に、タオルで拭いてやるのだ。
     使う水分は最小限。しかし石鹸カスは残さない。ここの配分は、ほら、あの普段右から三番目あたりが定位置のカゲボウズ。なぜか水嫌いのあいつの時の配分の、ギャロップはだいたい何倍ぐらいかな、なんてやっていく。
     しかし布と獣皮では結構な差があるので、最後は少し立腹したギャロップに蹴られかけたが。

     なんとか持ち主にかの火の馬を返すと、持ち主は嬉しそうに「ありがとうございます、見違えるようにキレイになりました」といってくれた。

    「お前新人だっけ? ギャロップが骨折なしで洗えりゃ相当なモンだ。経験者?」
     そして受付のそばにいた一人の先輩にそう言われた。

     何だろう、この感覚……。やりがいってやつだろうか?

     自然と笑顔がこみ上げてくる気分なのに、カゲボウズ達はまだ窓のところでふよふよしている。
    「お前らサンキューな。こいよ、特別にタダで洗ってやる」
     先輩には内緒だぞ。

     指でごしごしと頬をこすってやると、カゲボウズはきゅっと目を閉じてくすぐったがる。
     頭頂のツノ部分はよく汚れるので念入りに。なぜかここを触ると、カゲボウズはぴくぴくぴくと反応する。

    「お前何洗ってんだ?」
     とかやっていたら早速先輩に見つかった。やべえ。こっそり洗剤とタライ持ち出してたのがバレる。
    「いえ、あの、そのですねー、」
     頼む。言い訳を考える時間をあと十五秒。

    「ああ、例の定食屋から頼まれてるヤツね」
     しかしそんな間もなく先輩はそう言った。

    「え?」
    「あ、知らない? ほらマップの、ここ、ここ。ここにある定食屋。カゲボウズ1ダースといえばここからぐらいしか来ないだろ。あ、ついでにこいつら、終わったら届けに行ってこいよ。そのままそこで飯食って帰っていいから。」

     洗剤は無臭の使えよー、と言い残して、先輩は呆然としている俺を置いて仕事に戻っていった。

     定食屋で、カゲボウズ。
     カゲボウズ定食?
     いやいや。それはいかん。人としていかん。そもそも多分こいつら食っても美味しくないぞ。

     尽きない疑問を抱えつつ、俺はカゲボウズをかごに入れて、"例の定食屋"へ向かった。



    「待ってましたよ。さっきの全部盛りのお客さんでちょうどカゲボウズが切れちゃいましてね」

     店主とおぼしきおじさんが、裏口を叩いた俺を迎えてくれた。

     全部盛り?

    「カゲボウズを盛るんですか?」

     ついつい聞いた俺に、おじさんはにいっ、と笑って答えた。

    「食べて行きますかい? 冷やし中華」



    「冷やし中華大盛り、カゲボウズ憑きー!」

     威勢のいい声とともに俺の目の前に出されたのは、キレイに盛り付けられた上手そうな冷やし中華、の上に盛り付けられたカゲボウズ。

    「ええええー……」

     食うのか? 食わないよな?
     あそこにもたべられませんって書いてあるしな?

     しかしそのカゲボウズはどうやら、俺がなかなか満ち足りた気分だったせいもあってかなかなか空腹だったようで、麺の中にもぐりこむとツノまで麺を巻きつけて、全身を使って俺の冷やし中華を食べ始めた。

     そして俺の箸とカゲボウズとで、冷やし中華をかけた綱引きが始まる。

     俺は箸でカゲボウズを捕まえて「食うぞ、コラ」と脅しながら、そういえばさっきのカゴに入れたままだったぷち子、あいつがここに盛り付けられたら、キノコか何かと間違って食われたりしないだろうか、と真面目に心配になった。



     おわりりーら


    ***

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】
    【俺にもフラグを立ててくれよ】

     明日早いってのに、長蛇のレスが素敵すぎてついやっちまった。
     寝坊したら昼飯は冷やし中華にしようと思います。


      [No.459] 食べに行った+さらに書いてみた 投稿者:レイニー   投稿日:2010/08/19(Thu) 01:39:29     96clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    食糧が底を尽きた。

    冷蔵庫を開け、その事実に気がついた私は愕然とした。
    そういえばここ数日はコンビニ弁当ばかり。しばらく自炊してなかった。

    でも今から食材買い出しに行って、それから作るのも面倒くさい。
    何より、調理が終わるまで私自身がもつかどうか……。せっかくの休みなのに……。

    そこから外食しに出かけるという決断に達するのは、早かった。


    とはいえ、いったいどこへ行こうか。
    また「マクドオーバ」行くのも味気ないしなぁ……。
    そういえば外食は会社の近くばかりで、あんまりこの辺で食べたことなかったかも。

    あてもなくふらふら歩く私の目にとまったのは「定食屋」と書かれたのれんだった。
    外観は普通の戸建て。いかにも個人がこじんまりとやっている感じだ。


    気がつくと私は、そののれんの文字に引き寄せられるように、店の中に入っていた。
    よほど空腹だったに違いない。というか空腹だ。

    「いらっしゃいませー」
    すぐに人の良さそうなおばさんに迎え入れられた。


    内装も、いかにも個人の家といった感じだ。
    カウンター席しかなくて、すごく狭い店内だけど、なんだか懐かしい空気が流れていて安心する。
    我ながらいい店見つけたなぁ、とちょっと嬉しくなった。


    メニューを見る。

    「…………安っ!」

    思わずその値段に声が出てしままった。
    そのあとで、この近辺が学生街だったことをぼんやりと思いだす。
    会社まで通いやすくて安いとこ……って理由であの部屋借りたけど、そっかそりゃ家賃も安いよなぁ。
    そういえば確かに家のすぐそばに、いかにも貧乏学生が住みそうな古いアパートもあるし。


    ワンコインでもお釣りがくる値段がずらりと並ぶメニューを一通り見る。

    その端に書いてある「夏季限定 冷やし中華」という文字が飛び込んでくる。
    普通の女性の例にもれず、私も「限定」という言葉に弱い。

    「すみませーん。冷やし中華一つ!」
    「プラス50円で大盛りにできるけどどうします?」
    にこやかに訊いてきたおばさんに、大丈夫ですとにこやかに応じ返す。
    お腹は減ってるけど、流石に大盛りにするほどではない。基本大食らいじゃないし。

    「トッピングはどうしますか?」
    渡されたメニューに目を通す。

    『とっぴんぐめにゅう

     紅しょうが 五円
     わかめ 五円
     ……

    や、安い。
    こちらも破格の安さだ。
    その安さに、気がついたら叫んでいた。

    「すみません!全部盛で!」
    「冷やし中華中盛、全部盛ー!」

    ……まあ、全部盛にしても、この値段なら財布も痛くないだろう。
    おばさんの声を合図に、厨房では、いかにもこだわりの料理人といった感じの瞳をしたおじさんが、冷やし中華を作り始めた。
    特にすることもないので、私は厨房で冷やし中華が作られていく様をぼんやり眺めていた。

    鍋から引き揚げられたつやつやの麺が、次の瞬間には流水と氷で冷やされていく。
    そして、水が切られた麺はガラスの器に盛りつけられる。
    さらに、その上にカニカマ、ハム、キュウリ、トマト。見事な手際で盛られていく。
    紅しょうが、わかめ、錦糸玉子、枝豆、鳥ささみ。超豪華。
    さらには目玉焼き。ん?
    不思議に思った瞬間、タレがかけられ、冷やし中華は完成した、……わけではなかった。


    次の瞬間、おじさんはそばに置いてあったカゴから、黒い布を一匹取りだし、完成した冷やし中華の上に載せた。

    「はい、お待ち遠。」
    その冷やし中華をおばさんが満面の笑みで運んでくる。

    冷やし中華の上には、カゲボウズが一匹、ちょこんと鎮座していた。

    「…………?」

    怪訝そうにカゲボウズを見る私に、おばさんが
    「あら?全部盛っていうからてっきりカゲボウズもかと思ったけどいらなかった?ごめんなさいねー。」
    と慌ててやってくる。

    「……カゲボウズですか?」
    「そう。うちの看板息子。嫌なことがあった時でもこの子がいると箸が進むって評判なんですよー。」

    そうなんですかー。あ、せっかくなんで憑けといたままにしといてください、とおばさんに言った後、いよいよ待望の冷やし中華に取り掛かる。

    …………。
    カゲボウズがじっとこちらを見つめている。
    ちょっと食べづらいなぁ。
    そう思いながらも、カゲボウズの下から麺を引っ張り出し、食べる。ううむ絶品。


    カゲボウズかー。
    麺の上に座って相変わらずじっとこちらを見る瞳を見ながら、ぼんやり思い返す。
    そういえば、思い出したくないあの夜も、何故だかうちにカゲボウズが来てたっけ。
    この辺、カゲボウズが多いのかしら。

    ぼんやりあの人のことを思い出す。
    あの日からしばらく経って、やはりあの人のデート現場を目撃したのだろう。
    友達からメールが来て、半ば強引に飲みにつれだされた。

    「アタシもあれだけアイツは辞めとけって言ったけど、まさかアンタの恋があんな形で終わるとわねー。」
    あの娘の言葉が思いだされる。
    「ま、結果的にアンタがアイツに引っ掛かんなくてよかったんじゃないの。」
    その言葉に私、悔しくってムキになって反論したっけ。余計切なくなったけど。

    「とっとと忘れな。新しい良い恋するんだよ。」
    最後の言葉がこだまする。
    私こんなにつらいのに、何もわかってくれないって、どんどん腹が立ってきたっけ。
    あの時の感情がよみがえってくる。


    カゲボウズが、目の前をひょいと横切った。
    どことなく嬉しそうな表情だ。それになんだか気持よさそう。

    その瞬間ふと、気持ちが軽く、そして落ち着いてきた気がした。

    確かに。
    あの時は苛立って一方的に出て行っちゃったけど、今冷静になって思う。
    あの子の言うことも一理ある。新しい恋した方がいいんだろうな。

    後でメールしよ。「ごめん」ってことと「ちゃんと忘れる」ってこと。


    気持ちがどんどん軽くなって、確かに冷やし中華の箸も進んだ。
    カゲボウズは相変わらず、こちらをじいっと見つめていた。

    いつの間にやら、豪華な冷やし中華は皿から姿を消していた。


    「ごちそうさまでしたー。」

    お腹は満たされ、そして心はすっきりして、私は店を出た。
    これが看板息子の力かー。確かに食事前より気持ちいい。
    また来よっかな、とどこまでもまっすぐな三色の大きな瞳を思いだしながら家路に就く。

    さっき思い出したアパートの前を通り過ぎる。
    ふと見てみると、私の記憶の中の物より、さらに年季が入っているように見える。
    洗濯ひもには、黒い布……カゲボウズが気持ち良さそうに風に揺られていた。
    やっぱりこの辺カゲボウズ多いのかしら。


    そして住みなれた我が家の前に来た時。


    「……あ。」

    そこにいたのはこの間のジュペッタと、つぎはぎだらけのヒメちゃんを手に持った、その相棒さんだった。


    おわり

    ---

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】
    【フラグ立てていいのよ】
    【一匹ほしいよ】
    【食べに行きたい】

    ---

    きとかげさんの定食屋が素敵すぎたのでカッとなって書いた。
    カゲボウズに見つめられながら冷やし中華食べたい。主人公そこ変われ(え)

    さらにてこさんの素敵なレスがついていたので、さらにフラグを立ててみた。
    むしろぬいぐるみボコらせたうえに全力土下座すみません。

    もうこのままみんなでカゲボウズに萌えてさらに伸びればいいと思うよ!


      [No.458] 書いてみたを書いてみたをかいてもいいのよもあわせてかいてみた 投稿者:てこ   投稿日:2010/08/18(Wed) 23:02:41     66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    「見にいこ、……いやどうかなぁ」
     テレビCMから流れる民族的な雰囲気を持った静かな歌。歌ってる女性の声が本当にきれいだ。きれいだなぁ。
    「いつまでやってんだろう……」
     あの有名なアニメ監督の映画『借りぐらしのアリアドス』。少し前の作品まではちゃんと映画館で見ていたが、最近はすっかりDVD派である。『崖の上のピィ』は見に行こうかと思ったけど、結局見逃しちゃったし。
     『借りぐらしのアリアドス』は都会の真ん中、ビルとビルの間に住む14才の女の子のアリアドスの話である。ニンゲンのものを少しずつ借りて、暮らしているのだ。ただ、アリアドスがそうやって暮らすには決して破ってはいけない約束があって――。
     見てみたい気はするけど、見てみたくない気もする。うーん。どうしてアリアドスなんだ。蜘蛛が苦手なんだよな、俺。いや、蜘蛛に限らず虫全般苦手だけど。てんとうむしでもパニックになるからね。うん。黒い彗星とか出た日には夜眠らんないしね。
    「……なっさけねぇ」
     自分で自分を罵倒して、寝転がった体を起こした。丁度、時刻は昼。昼。天気のいい昼……。
     外をじっと眺めて、俺は違和感に気づく。何かが違う。あるはずの、何かがない。外か?中か?――ベランダか!
    「……」
     いない。ジュペッタが、さっきまでベランダでひなたぼっこしてたはずのジュペッタが、いない。

     ――おい!




     数分後。


    「すわあぁぁぁぁあ!!!すみませんごめんなさい申し訳ないっす本当に面目ないごめんなさいごめんなさい!本気ですみません!ほら、お前も、お前も謝れよ!こいつもこう言ってるんで!本当、本気ですみません!」
     あ、ありのままに今起こったことを話すぜ!ジュペッタを探しに外に出て行ったら、数分後、二人で地面に額をつけて謝っていたんだ……。
    「ぬ、ぬいぐるみ!俺がちゃんと弁償しますんで!本当、すみません!」
     俺の目の前にはただコンクリートの地面。額に冷たいコンクリートの感触。うぅ、顔上げることなんかできないよ。あれほど、ぬいぐるみには当たるなと言っていたのにこの困ったやつが、ぬいぐるみをサンドバッグ代わりに……なぁあーっ!
    「捨てるつもりだったから、別にいいんですよ。本当に!」
     うぅ……そんなこと、そんな優しいこと言わないでください。もっと顔が上げられなくなります。
    「でも、このぬいぐるみの足、濡れてるし、フローラルないい香りするし、洗濯してたんですよね!そんな、ぬいぐるみを洗濯なんてめったにやることじゃないじゃないすか!やっぱ、大事なぬいぐるみなんですよね……」
     断言する。きっと下が土だったら俺の顔ほぼ埋まってた。地面に額つけすぎて若干、ひりひりしてきた。
    「……」
    「……あの……。わっ!」
     俺は勢いよく体を起こして、一歩前へ出た。
    「ぬいぐるみ、絶対俺弁償しますんで!いや、弁償します!本当に!」
     そこで、ふと気づいた。目の前の、困ったように笑う女の人。この人、この前カゲボウズと一緒にいた――あの雨の日の人だ。


    「そんなに凹むなよお前……」
     帰り道。あの女の人から借りたぬいぐるみの残片を持ってゆっくり歩いていた。事件の犯人というか、トラブルメーカーはなぜかがっつり凹んでいた。うつむいて、肩を落として、ぺた……ぺた……。反省なのか後悔なのか。あまりに凹みすぎてて怒る気も失せてしまった。
    「ジュペッタ」
    「……」
    「お前、おでこに砂が……、ん?」
     先ほどの土下座のせいで、おでこに砂がついているかと思ったら、どうやら違うらしい。よく、触ってみる。ざらざらとした感触に、ちょこっと擦り切れたジーパンのような感触。
    「お前もでこ押しつけてたのな……」
     俺は大きくため息をついて、でも、少し笑ってしまった。やっぱり、似たもの同士かねぇ、俺らは。
    「元気出せよ、な?ぬいぐるみは俺が何とかするからさ」
     ジュペッタは相変わらずうつむいたままだ。気づけばどこからかやってきた数匹のカゲボウズがふよふよと飛んでいた。
     ……よし。
    「いいとこ、連れてってやるよ」
     ジュペッタが顔を上げた。

     自動ドアが開くと同時に、一気に冷気が身体の熱を奪う。やっぱり、クーラーはいいよなぁ。
     目の前のカウンターにはシンプルな装飾のされた店の看板(ミニ)が置かれている。『ポケモントリミングセンター』と書かれていた。
     カウンターにスタッフはいなかった。用意されていた、小さなベルを鳴らす。ちりんちりん。
     店の奥から聞こえてくる唸り声と悲鳴。怯えたのか、ジュペッタは強く俺の脚にしがみついていた。大丈夫、大丈夫だって。と声を出さずに言うと、やっぱり恨めしげに俺を眺めた。痛っ。パンチされた。
    「すみませんー!今、ちょっとケンタロスのシャンプーをしてまして……あれ?」
    「あ」
     エプロンをつけた泡塗れの従業員さん。この人、向かい側のアパートでよくカゲボウズを洗濯している人だ。
    「ここで働いてたんですか」
    「いや、最近からですよー」
     よく見ると、窓ガラスの外側にカゲボウズが何匹かぶら下がっていた。あれはジュペッタの感情に集まった奴らじゃない。いつも、この人と一緒にいるカゲボウズ……だと思う。いや、見分けの区別なんてできないけど、一匹だけ小さいのがいたからそう思っただけである。
     カゲボウズたちはこっそりと店内を覗いていた。それは、働き始めた息子をこっそり見守る母親のような――。 
    「……愛されてますねぇ」
    「愛されてるんですよ……いやいや、洗濯順番待ってるだけだと思いますよ。お前たちはまだ!」
     カゲボウズはふっと消えた。
    「で、今日のご用件は?当店ではカットにシャンプー、リンスにコンディショナー、マニキュアから毛染めまで様々やっておりますが……」
    「あの、一番スタンダードなのって何ですか」
    「カット、シャンプー、リンスに爪や葉切りのコースですかね。お値段もお安くなっておりますし……」
     ……。
     カットはいらないな。毛、生えてないしぬいぐるみだし。シャンプーリンスって感じでもないな。毛は生えてないし。爪切りって言ってもシャドークローは厳密には爪じゃないし。
     あれ、俺何しにきたんだ?何を期待してここにきたんだっけ?
     ジュペッタを洗ってもらおうと思ってきたけれど、それってトリミングセンターじゃなくて、クリーニング屋か。だけど、大きなドラムでぐるんぐるんまわされるのもなんだか可哀そうだし、俺も嫌だ。きれいにしてもらおうと思ってきたけど、やっぱり俺に洗われるしかないのかね、ジュペッタは。
     すみません、何もできませんでした、そういえば……と笑って言ってここは帰ろうと言い出そうとしたとき、少しうつむいて考え込んでいた従業員さんがくっと顔を上げた。
    「……よくよく考えればジュペッタにカットもリンスもいらないですよね」
    「そうですよね……すみません。俺、帰りま」
    「よし!」
     従業員さんは俺の言葉を遮り、自信たっぷりな表情で俺を見た。
    「それなら俺に任せてください!こう見えても、カゲボウズを洗濯し慣れてますから!」
     そりゃ、頼もしいな。そうか、カゲボウズ、か。カゲボウズを洗濯し慣れてる人ならば、ジュペッタのこともよく分かってくれているだろう。布のポケモン。お洗濯。うん。
    「よろしくお願いします」
     よかったなぁ、ジュペッタ。
     窓の外ではいつのまにか戻ってきていたカゲボウズたちが、嬉しそうな表情で風に揺れていた。

     夏の夕暮れ。ひぐらしがときどき、鳴く。
    「よかったなぁ、お前。以前と比べ物にならないくらいきれいになったぞ」
     俺は手芸道具を片手に、ジュペッタと手をつないで歩いていた。ジュペッタもすっかり元気をとりもどしたらしく、楽しそうだ。
     あれから、俺はパソコンでぬいぐるみの情報を探したが、どうやら普通の市販品ではないらしく、もう新しいものは手に入りそうになかった。それなら、なんとかきれいに縫い直そうと思った。俺は裁縫とか正直やったことないし、うまく出来るかもわからない。ちゃんと直して行ったって「いらない」と言われてしまうかもしれない。でも、やる他ないのだ。新しい針、新しい糸、オレンジ色のふわふわした布――。いつか、ジュペッタも縫わなきゃいけなくなるのかもしれないし。こいつだって、一応布だし、綿だし。まぁ、その練習も兼ねてやってみる価値はある。
     ジュペッタの手はいつもにまして、するするしている。ふわふわしている。いいにおいもする。口元のジッパーもぴかぴか。体の色も若干落ちた気がする。あれ、それはいいことなの……か?いや、やっぱり、プロがやると違うんだなぁ。
    『また来る機会があったら、また俺洗います。いや、洗わせてください!17番って言ってくださったら、俺休みの日でも出ますんで!』
     あの人の姿を思い出して、自然と笑いがこぼれた。泡まみれで、頭までびしょぬれ。でも――
    「楽しそうだった、な」
     ジュペッタも笑って、大きく頷いた。
     
     ヤミカラスが鳴いている。
     帰ったら俺もお風呂に入ろう。自分の身体をきれいにきれいに洗濯しよう。洗濯して、ご飯を食べて、徹夜してでもぬいぐるみを直そう。一分でも一秒でも早くぬいぐるみを直して、あの人の所に持っていこう。
     最初は、あんなに重くてげっそりとした気持ちだったのに、今は何だか、清々しいような、まぁ、決して悪くはない気分。むしろ、いい気分かもしれない。


     橙に染まる夕暮れの空。がっかりしたように俺らから離れていく、カゲボウズの影が見えた。





    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】

    タイトルがややこしい

    レイニーさん、ぬいぐるみぼっこぼこにしてすみませんでしたっ!!本当にこいつめ!困ったやつめ!(返り討ち



    CoCoさんの毒男さん、レイニーさんの失恋した彼女さん、書かせていただきました。もしアレでしたら思いっきりシャドーパンチをば(がふっ

    カゲボウズだけじゃもったいないな、ということで 今回は人にテーマを当ててみました。きっと、人だってカゲボウズに負けず劣らず個性的かつ魅力あるキャラクターだと思います。こんなキャラじゃないよ!とかとらえ間違ってたらすみません。


    なんか書いてて楽しい。なにこの魔力。


    位置修正……交通整理をしました
    拍手してくださったかた、ありがとうございます!すみません!


      [No.457] ■そろそろ交通整理を。 投稿者:No.017@管理人   投稿日:2010/08/18(Wed) 22:43:14     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    いつまで伸びるんだこのスレ!?(笑

    レス途中に差し挟むのがややこしくなってきたので、
    とりあえず【書いてみた】含め、
    「小説」は親記事(http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?no=384&reno=n ..... de=msgview)返信で
    スレの一番下にくっつくようにしてくといいんじゃないかな。
    個々の感想は各小説に返信でおkかと思いますがいかが。



    【もっと伸びていいのよ】
    【もっと親記事に拍手するといいのよ】


      [No.456] 近所を開拓してみる 投稿者:きとかげ   投稿日:2010/08/18(Wed) 22:32:46     93clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    近所を開拓してみる (画像サイズ: 330×220 43kB)



     大学にも慣れてきたある日のこと。
     俺は家に帰る気になれず、開拓と称して大学の近辺を散歩していた。


     今朝のことだ。
     母親に何気なく下宿したいと言ったら、
    「アンタに下宿なんてムリ。絶対ムリ。三日で泣いて帰ってくる」
    と断言され、
    「なんで下宿する前から分かってんだよ。四日じゃなくて三日で帰ってくるっていう根拠を言えよ。非論理的。ガキ臭い。原始人」
    と言い返した。
     母親は言われたら言い返さずにいられないタチだから、言い返した。
     俺も残念ながら母親に似て言い返さずにいられないタチだから、やっぱり言い返した。
     そこからどういう喧嘩になったんだか、今朝は「いってらっしゃい」ではなく。

    「二、三日野宿でもしてきたらええわ!」

     ……罵声と共に送り出されたのだった。


     いつもの駅に向かう道とは逆を行き、少し歩くと年季の入ったアパートが見えた。
     年季の入った……というか、年代物だ。もしかしたらあれが、下宿組の間で噂になっていた幸薄荘かもしれない。実家通いの俺はあまり話を真面目に聞

    いてなかったが。
     建物の日陰になった場所で、タライとホースを持ち出して洗濯している人がいた。
     大変だなー。下宿したら自分で洗濯もしなきゃいけないもんな。せめて洗濯機くらい欲しい。
     そんなことを考えながら道を歩いていく。
     下宿で住めそうな家ないかな。さっきの幸薄荘以外で。
     いざとなったら今日はポケモンセンターに泊まろうか。
     腹へったなあ飯くいたい。下宿したら自分で飯も作んないと。

     ……あ。

    「これ、……店? かな」

     外見は一般人が住む一戸建てのようだが、ドアの所に白地に黒で定食屋と書かれたのれんが掛けてある。
     隣家との壁の間の、ドアの開閉の邪魔にならない所に、「OPEN」と書かれた黒板が狭そうに立っている。
     店、らしい。
     そういえば丁度昼メシ時だ。俺は衝動的にドアを開けていた。


    「いらっしゃいませー」

     人の良さそうな小顔のおばちゃんが笑顔をこちらに向けた。

     定食屋の店内は、民家を改造したみたいだった。
     狭い屋内は厨房とカウンター席でいっぱいになってしまっている。数えてみると、カウンター席は九席あった。
     店の奥には幅が狭くて急な階段があるが、そこには「御手洗」とのれんが掛かっている。二階席なんてものはなさそうだ。
     そののれんの向こうから、痩せ形でキツイ眼光のおじさんが現れた。
     まっさらな白色のエプロンをして、手に同じく白い布を被せた大きなカゴを抱えている。
     階段を通れるギリギリの幅のカゴだ。

     と思って見ていると、布が唐突に揺れた。

    「お客さん?」

     見かけに反して、おじさんは朗らかな声を上げた。今まで鋭かった目付きが、一瞬で笑いに変わった。

    「何にします?」

     そう聞きながら、おじさんはカゴに被せた布をそっと押さえている。なんだか布が動いている気もするが……。
     俺はおじさんの笑顔に押されて、カゴから目をそらし、壁に貼られたメニューを見た。

     カツ丼 ¥490
     親子丼 ¥470

     そんな調子で学生向けのそこそこ安いメニューが並んでいる。
     定食は味噌汁と小鉢付き、白米おかわり自由でそれも安い。
     揚げ豆腐や旬の魚の煮付け、デザートに木の実のシャーベットもある。
     俺はざっとメニューを端まで見渡すと、

    「あれ、ください」

     一番右端、チラシ裏に書かれたような冷やし中華の絵を指さした。

    「はい、冷やし中華ね。五十円で大盛りにできるけど」とおばさん。
    「いえ、いいです」
     俺は見かけの割に少食だ。友人にもよく言われる。
    「じゃあ代わりに、何かトッピング付ける?」
     別に
    いいです、と言おうと思ったが、おばさんが笑顔でカウンターに置いてあったメニューを差し出してくるので断れなかった。
     まあ、欲しいものがなければ断ればいいや、と思ってメニューに目を通す。


    『とっぴんぐめにゅう

     紅しょうが 五円
     わかめ 五円
     錦糸玉子 五円
     枝豆 五円
     鳥ささみ
     十円

     カゲボウズ 食ベラレマセン 五十円』


    「…………」
    「決まりました?」
    「カゲボウズ……?」
    「冷やし中華中盛り、カゲボウズ憑きー!」
    「えっ!?」

     俺の戸惑いをよそに、おじさんとおばさんは笑顔で冷やし中華を作り始めた。

     麺の上に、カニカマ、ハム、キュウリ、トマト、そして何故か目玉焼きが乗せられ、最後にタレがかけられる。

     それで完成と思いきや、おじさんがさっきのカゴの白い布を取り払った。
     白い布の下から、黄青青の三色に分かれた目をパチクリさせる、黒い布たち。

     おじさんはそいつらから一匹を選ぶと、ひょいと角をつまみ上げて冷やし中華の上に置いた。

    「はい、冷やし中華カゲボウズ憑きね」
     そう言いながら俺の前に皿を置くおばさん、超笑顔。厨房の奥のおじさん、満面の笑み。俺、引きつった笑み。
    「あら、カゲボウズのトッピングははじめて?」
     俺の表情で分かったのか、返答を待つ気がないのか、おばさんは勝手に喋り始める。

    「いや〜なことがあってもね、食事は取らなきゃいけないでしょ?
     そんな時ね、カゲボウズが人気なんですよ、気分が悪くても気持ち良く食事できるってね」

     そうですか、と俺は小さな声で返事をする。割り箸を割ったはいいが、箸を付けられない。
     おばさんは厨房の真ん中あたりまで行って、くるりとUターンして戻ってきた。
    「あ、ちゃんと洗ってますから、大丈夫ですよ」
     そして厨房に戻るかと思いきや、また振り返ってこっちへ来た。
    「分かってると思いますけど、その子は食べないでくださいね」
     はあ、と曖昧な返事をすると、おばさんは厨房の真ん中へ行って、洗い物を始めた。


     カゲボウズが冷やし中華の中央に鎮座している。
     箸で軽く奴を突付くと、三色の目でこっちを見た。
     じーっとこっちを見る。
     食べにくい。
     こいつの下に敷かれている冷やし中華を食べにくい。
     カゲボウズはなおも俺を見つめている。

    「嫌なことねえ」

     今朝の喧嘩のこと、とか。

     思い出すと腹が立ってきた。
     カゲボウズが目をぱちくりさせて俺を見、嬉しそうに体を震わせた。
     これがカゲボウズの「負の感情を食べる」というやつかもしれない。

     大体あれだ、俺の母親は何でも「ムリ、ムリ」っていうんだよな。
     好きになった女の子が受験が難しい有名校に行くと聞いて、半ば冗談でその学校に行きたいと言った時もそうだ。
    「アンタじゃムリ!」とにべもなく撥ね付けた。
     その前にも、ちゃんと練習するから自分のトランペットが欲しいと言った時も、ポケモントレーナーになりたいと言った時も……

     何の前触れもなく、目の前の皿からカゲボウズがひゅんと飛び出し、俺の周りをぐるぐる回りだした。
     あっけに取られてカゲボウズを見ていると、またカゲボウズは皿に戻った。
     そして、俺をじっと見つめた。

     少し、心が軽くなったような気がした。
    「もっと感情が欲しいのか?」
     箸先で突付くと、いやいやするみたいに体をねじった。それから、期待を込めた目で俺を見た。
    「もうやらん」
     そう言って軽く笑う。
     口に出して言うと、心の荷が少し降りたようだ。
     ぐちゃぐちゃした嫌なことを、食事時に考えることはない。
     箸でカゲボウズをつまんで皿の横に置く。
     俺はやっとのことで、食事に取り掛かった。

     カゲボウズを見ると、いつも目が合う。
     どうも俺を見続けているらしい。
     こうしてじっくり見てみると、三色に分かれた瞳は愛嬌に溢れている。シンプルな造形に頭の角が良いアクセントを添えて、見ていて飽きない。
     気持ち良く食事できる、ってこういうことかもしれないな。

    「ごちそうさまでした」
     俺は、食事前よりずっと晴れやかな気分で外に出た。


     店を出て、駅に向かう。
     ふと気になって、幸薄荘の日陰の、タライとホースの人がいたあたりを見てみた。

     そこには、洗濯ひもと、青空の下風に揺れるカゲボウズたち。
     時折風でひっくり返っては、冷やし中華を片手に抱えた人が出てきて元に戻している。

     下宿は大変そうだ。しばらく遠慮しとこう。母親に謝って、今度の日曜は冷やし中華にしよう。
     俺はカゲボウズに見送られながら、駅に向かった。




    【描いてもいいのよ】
    【書いてもいいのよ】
    【食べに来ていいのよ】
    【一匹欲しいよ】


    カゲボウズ祭りに参加したくなってしまったきとかげです。
    書くきっかけをくださった長ーいレスと作品群に感謝。そしてもっと長ーいレスになればいい。
    以上でした!


      [No.445] かいてみたをかいてみたをかい(ry【グロ注意?】 投稿者:レイニー   投稿日:2010/08/18(Wed) 03:45:40     92clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    気がつくと、あの大事件の日からしばらく経っていた。
    あの後、上手い具合にしばらく仕事が忙しい時期が続き、仕事仕事で休日返上したくらいだった。
    でも、その忙しさは、上手い具合に悲しい出来事を思い出す暇を与えてくれなかったのだ。
    人生って上手く出来ている。
    久々の休みで、やっと感傷という気持ちが蘇ってきて(本当は蘇ってほしくはなかったけど)、そう感じた。

    だけど今日は、感傷に浸るにはあまりにも不向きな天気。雲ひとつない晴天。
    絶好の洗濯日和。
    しばらく洗濯する余裕もなかったし、一気に干してしまおう!

    たまった洗濯物と洗剤を洗濯機に入れ、スイッチを押す。
    泡にまみれていく洗濯物を見ていると、私の中で、どんどん掃除欲がわいていた。
    よし。洗濯機が働き終えるまでまだしばらく時間あるし、部屋を片付けよう!

    掃除機をかける前に、散らかしっぱなしの書類をどうにかしよう。
    そう思って、机の周りに散乱する書類を、必要なものとそうでないものにわけた。
    必要ないものは、シュレッダーにかけてゴミ箱に。
    必要なものは、種類ごとにまとめて、ファイルに入れて、本棚へ。

    「……あ。」

    ファイルを戻そうとした私の目にとまったのは、一匹の小さなぬいぐるみだった。
    その瞬間、私の記憶がフラッシュバックする。
    美しかった記憶。

    あれはいつのことだったか。
    いつものように仲間内で遊んでいた時。
    何故だったかは思いだせないけど、その日は気がついたらゲーセンでみんなでクレーンゲーム対決してて。
    全然取れなかった私をよそに、あの人は次から次へと賞品ゲットしてて。
    悔しがる私に、「荷物になるからやるよ」って。

    ……あの瞬間。

    何でだかわかんないけど、いつも冴えなかったあの人が、急に格好よく、特別に見えたんだ。


    そう思い返すとまた涙が出てきて、気がつくとヒメグマをゴミ箱に放り投げていた。
    綺麗な半円形を描いて、ゴミ箱に収まる。


    ……さて。書類整理も終わったし。
    シュレッダーにたまった紙片を捨てようと、ゴミ箱へ向かう。
    紙片を捨てようとしたその瞬間。

    ヒメグマが哀しそうな目でこちらを見ていた。

    「…………。」

    「…………。」

    ……負けた。
    あんな瞳で見つめられてしまっては、いくら忘れたい思い出の品とはいえ、やむを得ない。
    ゴミ箱から引っ張り出す。

    心なしか汚れてしまった彼が、やはりこちらを見つめている。
    確かに彼自身に罪はない……。
    幾分か冷静さを取り戻し、とりあえず洗ってから処遇を考えようかという気になった。


    すっかり綺麗になった洗濯物と一緒に、すっかり綺麗になったヒメグマを干す。
    よし、これで一仕事終わりだ。
    いつの間にか、昼食にちょうどいい時間になっていた。
    確かにお腹も減っている。
    よしご飯だ!

    冷蔵庫の片隅に残っていた肉と野菜を適当に炒める。
    お湯を沸かし、インスタントのスープを作る。
    朝炊いたご飯の残りをよそう。
    手早く3品作り、簡単な昼ご飯を食べる。適当にしては我ながら美味しい。
    器が空になり、満腹になると、とたんに眠くなってきた。
    確かに昼寝するには極上のコンディション。うとうとうと……


    ばこーん!

    突如、ベランダからした妙な音に、私の眠りは妨げられた。
    寝ぼけていた私はしばらく、何が起きたのかわからなかった。

    見慣れぬ真っ黒いポケモンが、ベランダで何かオレンジ色の物体をボコボコにしていたのだ。
    ああ、どこかのポケモンがふらっと迷い込んで、ヒメグマにバトルをしかけてるのねー。
    ヒメちゃんに。

    ……ん?


    「あああああああああああああっ!!」

    寝ぼけていた頭が急激に現実に戻る。
    窓を開け、外に出てみると。

    ちょうど手遅れだった。
    ジュペッタがヒメちゃんにとどめのシャドークローを喰らわせていた。

    シャドークローの直撃を受けたヒメちゃんは、頭と胴体が分離し、その切れ目からは白い綿が飛び出した。
    何ともグロテスクな光景である。
    しかも、目と手は片方外れ、耳と足はもげかけ、お腹には穴まで開いている。
    きっと、私が寝ている間に嫌というほどパンチを喰らったのだろう。
    いくら一度は捨てかけた奴だったとはいえ、この姿は流石に酷い。
    とてつもない後悔と懺悔の念がいっぺんに降ってきた。
    ヒメちゃん、いくらなんでも私が悪かった。許してくれ……。

    ふと犯ポケの方を見ると、こちらはこちらで、自分のしたことの重大さに気がついたようだ。
    完全にもげてしまったヒメちゃんの足を手に、怯えている。
    自分でこんな五体不満足にしたくせに。
    あたふたするジュペッタを見て、案外可愛いなぁと思っていたその時。


    「ジュペッター!? どこいったー!?」
    外の道路から、見知らぬ男性の声がした。

    その声を聞いて、ジュペッタは彼のもとへ一目散に飛んで行った。


    そして、ジュペッタが持っていったヒメちゃんの足を見て、彼はうちのベランダで何が起きたのか理解したのだろう。
    すぐに私の元へやってきた。そしてものすごい勢いで謝られた。
    どうせ捨てるつもりだったし気にしないでください、と私はひたすら謝る彼を止めようとした。
    でも洗濯するなんて大切なぬいぐるみだったんですよね?と彼は謝るのをやめない。
    ううう。困ったなぁ。
    痛いところを突かれたうえに謝られ続けて。どうしよう……。


    こうして、絶好の洗濯日和は、私の日常に小さな事件をもたらしたのだった。


    おわり


    ---

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】

    【ボコっていいのよ】タグは……一応自重(え)

    ---

    あ…ありのまま 今起こった事を話すぜ!
    「自分が書いた小説にレスがついていただけでなく、続編まで書かれたうえ、さらに新たにカゲボウズが洗濯さ

    れていた。」
    な… 何を言ってるのかわからn(ry

    まさかこんな展開になるとは思ってもみませんでした。ありがとうございます。
    毒男さん就職おめでとう!
    エロボウズには爆笑するしかないがwww(←犯人)

    そして自分で壊した抱き枕に怖がるジュペッタがあまりに可愛かったので、カッとなって書いた。
    全国のヒメグマファンの皆さんごめんなさい。
    ヒメちゃんには申し訳ないと思っているが、後悔はしていない。
    ジュペッタも犯ポケにしてしまってごめんなさい。悪気はなかった。

    うちの娘は独り身なうえ、放っておくとひたすら仕事で寂しさ紛らわしそうなので、たまにはポケモンと接する機会を与えてあげてください。

    ちなみにカゲボウズは浴槽をタライ代わりにしただけで、一緒に入ったけではないようです。ザ・KENZEN!(何)


      [No.444] 頑張れ毒男!お前にはカゲボウズがいる! 投稿者:てこ   投稿日:2010/08/18(Wed) 00:25:49     50clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    ポケスト 夏のカゲボウズ祭り ですか!
    シール集めたら何がもらえるんですかあぁぁ!!(落ち着け

    カゲボウズがアレすぎて死にそうです。萌え死にする!カゲボウズに殺される!カゲボ(がふっ

    えぇ、ジュペッタがいるんすよ……僕には……
    でも、カゲボウズかわいいー!!


    >> >    登録No.017 『ポケモントリミングセンター』
    > >    ピカチュウからマンムーまで、どんなポケモンもピカピカに!
    > >    愛する手持ち達に、あの頃の輝きを……

     ジュペッタ洗濯してください!
     あの子、ドライクリーニング不可ってタグがつ(ry


    > > 【洗濯していいのよ】

    洗濯させていた……してねぇ!


      [No.442] 祝・毒男就職 投稿者:No.017   投稿日:2010/08/18(Wed) 00:18:58     53clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >  カゲボウズはふわ、と先輩を避けると、ぴゅーっとこっちへ飛んできて、俺のYシャツの胸ポケットに飛び込んできた。

    ばっちり懐かれてますね。
    いや、 な憑かれていますね。


    > 「仕事探しに行ったんです」
    > 「へー。見つかったの」
    > 「見てください」
    >
    >  俺は折り皺のついた求人リストのコピーを出した。
    >
    >    登録No.017 『ポケモントリミングセンター』
    >    ピカチュウからマンムーまで、どんなポケモンもピカピカに!
    >    愛する手持ち達に、あの頃の輝きを……

    爆笑した!
    深夜に声あげてワロタw

    登録ナンバーwwwww
    登 録 ナ ン バー wwwww

    祝・ 毒男lv.31 ジョブ:夢追い人 就職!




    > 「ここなら自転車で通える距離だし、割と給料もよさげで」
    > 「……洗濯が趣味なのか?」

    こいつは将来シャンプーで指名がくる……!
    毒男「カゲボウズを洗って鍛えました」


    >  まさか、他の家でも。
    >  それも何か良い香りのする家で。
    >  たとえば女の子の家で。
    >  まさかそんなことはないだろうな。
    >  そんなことはないはずだ。
    >  そんなの羨まし過ぎる。

    カゲボウズはエロボウズ。



    >  先輩は言い残すと、二階の自分の部屋へ戻っていった。
    >  去っていく背中は、大家さんが「御影さん似合うと思いますよ?」とどこからともなく持ってきた、かなめいしの柄がプリントされたTシャツ。
    >
    >  どこかでテッカニンが鳴いている。

    えっなに、御影さんと大家さんてそういう。
    毒男……お気の毒に。

    >
    > 「……今日、昼飯コンビニの幕の内弁当なんだけど、食う?」
    >  俺が胸ポケットにたずねると、中の黒いのはとくに返事をしなかった代わりに部屋まで間違いなくついてきやがった。

    この後カゲボウズがおいしくいただきました。
    (負の感情を







    > 【洗濯していいのよ】


      [No.441] あ…ありのまま 今起こった事を話すぜ!+おまけ 投稿者:CoCo   投稿日:2010/08/18(Wed) 00:02:28     76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
    「朝方読ませていただいたLandryに感想をつけようと思って出てきたら、続編があっただけでなくレスがすごいことになっていた」
     な…何を言ってるのか わからねーと思(ry


    > ちょwwww
    > 誰かさんのせいで習慣化してるじゃんかよwww
     洗濯はしているが、反省はしていない。

    > とりあえずCoCoさん偉大すぎるだろ
     しかし偉大なのは間違いなくカゲボウズです。


     みなさん本当にありがとうございます。


    > なんですかこのカゲボウズ連鎖?!(^^;)
     おいしいです。

    > ものすごくこのあたりに住んでみたくなったサトチでした。
    御影「204号室空いてるよ。俺ん家の隣だけど」


     以下沢山のありがとうございますと返信代わりにするにはあまりに蛇足すぎたおまけ



    ***


     誰かが引っ越してきたらしい。
     さっき俺の部屋に引越し蕎麦を持ってきた。冴えない感じの大学生だった。あの顔は、幸薄荘にある108のジンクスの一つ【ざまあ鍋】を知る日も遠くなさそうだ。

     とか思いながら、久しぶりにハローワークで良さそうな仕事を紹介してもらえてほくほくしていたのでカゲボウズが現れなかったのに、なぜかいつもタライを設置しているアパート裏の草むらへ出てきてしまった。

     大家さんがしばらく草刈をサボっているのか雑草ぼうぼうの裏庭を見つめて、驚いたことに御影先輩が座り込んでいるのを見つけた。

     アパートの裏の壁に寄りかかって、煙草を吹かしながら右手で一匹のカゲボウズの頭をつまんでいた。

     カゲボウズはイヤイヤとでもいうように首を振っているが、御影先輩はそんな様子をもろともせず、目の高さまでそいつを持ち上げてじっと見つめている。
     首を振っているカゲボウズがとても健気で、つい俺は先輩に声をかけてしまった。

    「御影先輩」
    「あ」

     先輩は咥え煙草のまま口の隙間から煙とともに間の抜けた声を出すと、拍子にカゲボウズをつまんでいた指を離したようだ。

     カゲボウズはふわ、と先輩を避けると、ぴゅーっとこっちへ飛んできて、俺のYシャツの胸ポケットに飛び込んできた。
     見上げる目が二、三瞬き、若干うるんでいるようにも見える。

    「先輩、あんましカゲボウズを邪険に扱わないでやって下さいよ」
    「だってそいつ俺のトゲピーいじめたんだもん」

     先輩はずるずると背中で壁を滑り、気だるい動作で地面に腰を下ろして煙を噴出す。

     いじめたって、子供かアンタ。

    「なんでYシャツなの」
     先輩が言った。確かに俺がスウェットじゃないのは珍しい。
    「仕事探しに行ったんです」
    「へー。見つかったの」
    「見てください」

     俺は折り皺のついた求人リストのコピーを出した。

       登録No.017 『ポケモントリミングセンター』
       ピカチュウからマンムーまで、どんなポケモンもピカピカに!
       愛する手持ち達に、あの頃の輝きを……

    「ここなら自転車で通える距離だし、割と給料もよさげで」
    「……洗濯が趣味なのか?」
     先輩は真面目な顔で言った。

    「んなわけないじゃないスか」
    「でも何か最近よく洗ってない? 黒いの」
    「あいつらここんとこ自分からタライに飛び込んでくるんですよ。すっかり味しめちゃったみたいで」
    「へー」

     あ、そういえば。

    「こないだまた何匹か土団子になってたんで、洗濯しようとしたんですけど、何か何匹からかすごくフローラルな香りがしたような」
    「ふーん」

     まさか、他の家でも。
     それも何か良い香りのする家で。
     たとえば女の子の家で。
     まさかそんなことはないだろうな。
     そんなことはないはずだ。
     そんなの羨まし過ぎる。

    「…………」

     先輩は微妙な視線を俺に向けると、突然ゆらりと立ち上がった。
     胸ポケットでカゲボウズがびくっとした。

    「寝るわ。」

     先輩は言い残すと、二階の自分の部屋へ戻っていった。
     去っていく背中は、大家さんが「御影さん似合うと思いますよ?」とどこからともなく持ってきた、かなめいしの柄がプリントされたTシャツ。

     どこかでテッカニンが鳴いている。

    「……今日、昼飯コンビニの幕の内弁当なんだけど、食う?」
     俺が胸ポケットにたずねると、中の黒いのはとくに返事をしなかった代わりに部屋まで間違いなくついてきやがった。



     終わっていいのよ


    ***

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】
    【洗濯していいのよ】

     ひたすら能天気ですみません。


      [No.440] かいてみたをかいてみた だと…… 投稿者:No.017   投稿日:2010/08/17(Tue) 23:51:21     75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


    > 「何度もその手をくうかっ!」
    >  迫り来るシャドーパンチを、目の前に手を構えてガード。いい加減、慣れてきた。慣れないと身が持たない。そう。それは、小さい頃大切に育てたひよこが凶暴化した鶏になっても飼い主は攻撃を喰らわないのは、愛する愛されてないの問題ではなく――単に慣れの問題だよ、と。まぁ、そういうものだ。

    これ、アチャモの時はあんなにかわいかったのに…
    みたいなネタで使えそうだ。

    >  なぜ、こんなふうに格闘技が好きなのか思い当たる節が、ないわけでも……ない。そう、それは俺の小さい頃の――。
    >
    > 『行けーやれー!上だー!下だー!それ、よけろ!そこでボディーブロー!』
    >  我ながら恥ずかしい。男の子なら誰でもするであろう人形遊びを、俺はなぜかあのぬいぐるみで、しかもかなり長い間、やっていたのである。小学生になるくらいまで。

    なるほど!
    これはすごい納得というか、うあーありそうだなぁ。
    いいなぁ! この設定いいなぁ!


    >  ――とても、きれいに見えたんだ。

    惚れたらいいと思うよ。



    もうこのシリーズどっかにまとめて掲載しちゃいたいなぁ。
    (あ


      [No.439] かいてみたをかいてみた 投稿者:てこ   投稿日:2010/08/17(Tue) 23:08:02     107clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5


     しばらくしとしとと雨が降っていた。しかも、どこか暗くて湿っぽくてそう、それは――まるで誰かが失恋したような雨。


     ジュペッタがつまらなそうに窓の外を眺めている。まいった。こいつは退屈になるとか自分の思うようにいかないとめんどくさいのである。俺にシャドーパンチをかましてきたり、枕にシャドーパンチをかましたり、とにかく不機嫌な困ったちゃんなのである。
    「晴れたら、思いっきりすればいいだろ?な?」
     特に雨が続くとなおさら不機嫌なのである。綿だからか布だからか、湿気があまり好きじゃないようだ。だからか、知らないが雨があがった次の日は大抵一日中ひなたぼっこをし続けている。自分の干し方も勝手に覚えた。二本の物干し竿の間に橋を架けるようにして、横たわる。そこまで持ち上げるのは俺の役目だけど。まあ、いいんだけど……いいんだけどなんか納得いかない。
     ジュペッタの恨めしげな目。知らん。俺は悪くない。不満そうにジュペッタが唸る。唸んな。俺も負けじと睨み返す。ジュペッタの短い足が力を溜め込んだようにわずかに曲がる。そして――
    「何度もその手をくうかっ!」
     迫り来るシャドーパンチを、目の前に手を構えてガード。いい加減、慣れてきた。慣れないと身が持たない。そう。それは、小さい頃大切に育てたひよこが凶暴化した鶏になっても飼い主は攻撃を喰らわないのは、愛する愛されてないの問題ではなく――単に慣れの問題だよ、と。まぁ、そういうものだ。
    「お前のはあっち!」
     俺はたんすに寄りかかった小さいサンドバッグを指差す。あれは本来、バルキーやアサナンなどの小さな格闘ポケモン用に作られたものだ。空手道場くらいにしか置いてないだろうそれがなぜ俺の家にあるかというと、それはジュペッタのために買ってやったものである。以前、大きな抱き枕をサンドバッグ代わりにさせていたら感極まってシャドークローでずたぼろにしてしまった。外に零れ落ちた綿を見て、本気で怖がっているジュペッタを見てお前はバカかと呟いたものだった。布につまった綿という点では自分と同じ身体のつくりをしているとは言え、自分でずたぼろにして、自分で怖がるって結構抜けて……いるな。
     だが、きっと、こいつには格闘家の素質がある。俺はそういう。きっと、空手家の人が見てもそういうと思う。
     持ち物は何の変哲もないただの赤いタオル。かの有名なプロレスラーが身に着けていたもの。ではない。知っているのか知らないのか分からないが、ジュペッタが自分で俺の部屋から発掘してきて、自分で気に入って身に着けているものだ。肩に赤いタオルをかけ、片手を大きくあげ、いーち、にー、おっとこれ以上は言えねぇ。
     ジュペッタって単ゴーストタイプだった気がするんだが、格闘タイプってついてたっけ。まぁ、まず得意技は百発必中シャドーパンチだが、最近はバリエーションが増えた。まず、基本形。シャドーボールをみぞおちに叩き込むシャドーブロー。下から一気に上へと突き上げるシャドーアッパー。そして、発展型。思い切り手を広げた状態で体当たりし、首にダメージを与えるシャドーラリアット。もちろん命名は全て俺。シャドーをつける必要があるのかないのか知らないが、まぁ、俺の趣味だ。ついてるほうがかっこいいだろ?
     苦手なのは蹴り技。足が短いからしょうがない気もするが、よく練習しているが、よく膝から地面にぶつかって自分でダメージをくらっている。やめりゃいいのに。
     なぜ、こんなふうに格闘技が好きなのか思い当たる節が、ないわけでも……ない。そう、それは俺の小さい頃の――。

    『行けーやれー!上だー!下だー!それ、よけろ!そこでボディーブロー!』
     我ながら恥ずかしい。男の子なら誰でもするであろう人形遊びを、俺はなぜかあのぬいぐるみで、しかもかなり長い間、やっていたのである。小学生になるくらいまで。
     ……そのときの記憶をジュペッタが覚えてるか覚えてないかは分からないが、きっと記憶の底にはあるのだろう。ジュペッタが使う技は、俺が小さい頃よくぬいぐるみとやっていた、技だ。

     ジュペッタと過ごす時間が増えれば増えるほど、ジュペッタは小さいとき一緒にいたときの記憶を思い出しているような気がした。ジュペッタは絵を書くときに必ず水色のクレヨンをつかって絵を描いた。俺の好きな色は青だ。でも、小さい頃、好きな色は水色で、持ち物のほとんどが水色だった。ジュペッタはあのときのことを覚えているのだろうか。オムライスを作ったとき、ジュペッタは俺の顔を見てけらけらと笑った。俺が小さい頃、オムライスが好きだったこと、覚えてるのか?
     まだ、ジュペッタと会って、一ヶ月も経っていないけど、ずっと一緒にいたような気がした。何だか不思議な感じがした。ジュペッタの記憶の俺と俺は変わっている。けれど、ジュペッタは小さいときの俺と今の俺、変わってないと思っているのだろう。見た目は変わった。けれど、中身は変わってない。そう、思ってるんだ。きっと。
     「俺、お前が思ってる以上に変わってるよ」
     ジュペッタが、顔をしかめたまま首を捻った。いいよ。いい。そんなに早く理解しろなんて言わないし、期待もしてないし。ゆっくり時間かけながらでいいから、な。
     俺はジュペッタの頭をわしわしと撫でた。ジュペッタが気持ちよさそうに目を、細めた。

     重たい腰を上げ、窓の外を眺める。まだ、雨がしとしと降っている。あぁ、そういえば。小さいときの俺は雨が降ってる日は一日中、家の中で暴れてたっけ。
     うん?
     カゲボウズが一匹、二匹、三匹……十匹。電車のようにつながって、軒下にぶら下がっている。一番下にようやくくっついてるカゲボウズは、少し小さい。子供かな、それとももともと小さいのかな。
     いや、それよりもあの家はいつもの家じゃないな。いつもの家というとなんだかアレな言いかただが、よくカゲボウズを洗濯している家がある。一回、ジュペッタがなんか勝手にお邪魔しちゃったことがあって、迎えに行った。迎えにいったらシャドーパンチされた。向かい側のアパートの二階。でも、その家じゃない。
     あの家の住人に何があったんだか。

     あ。

     窓が開いた。出てきたのは女の人。ひどい顔をしてた。目の下に隈。ぐしゃしゃの髪。きっと、泣いてたとか、そんなんだ。その人はカゲボウズをしばらくじっと見つめ、少しだけ俯いていた。カゲボウズたちがぞろぞろと部屋の中へと入っていった。また、洗濯されるか?全く、困った奴らだなぁ、本当に。俺はまた、苦笑した。
    「お……?」
     俯いていた人の顔が窓を閉める寸前に少しだけ、見えた。目の下には隈、ぐしゃぐしゃの髪。女の人からしたら、その顔は見られたくないような顔だろう。だけど――そんな状態だったけど、でもそのとき、その女の人の笑顔は




     ――とても、きれいに見えたんだ。



    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】




    一人異色ですみません。ジュペッタかいててすみません!
    カゲボウズは不幸や妬みに群がる奴だけれど、幸せも運ぶ奴なんです!きっと!
    CoCoさんとレイニーさんの書いてみたに書いてみた……。
    気に入ってもらえれば幸いです。

    もう、このシリーズ作っちゃえばいいと思うよ!
     


      [No.438] 毒男に春はくるのか 投稿者:No.017   投稿日:2010/08/17(Tue) 21:10:25     66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    ぷちボウズ。
    ぷちボウズだと。
    カゲボウズのぼりだと。


    あれだろうこれはたぶんハローワークにいったら、
    就職先がポケモントリマーの店かなんかで
    ポケモンの洗濯やらされるパターンだろ


    夢追い人に幸あれ。


      [No.436] 恐るべし! 投稿者:サトチ   投稿日:2010/08/17(Tue) 21:05:19     84clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    なんですかこのカゲボウズ連鎖?!(^^;)
    御影先輩やら幸薄荘やらかわいい管理人さんやら借りぐらしのアリアドスやらぷちボウズやら米食うゴーストタイプやら;
    どんどん連鎖してすでに作者4人が巻き込まれているとは・・・
    すでにもうシェアードワールドと言っていいのではないかしら。
    ものすごくこのあたりに住んでみたくなったサトチでした。


      [No.435] 住み着きたい 投稿者:No.017   投稿日:2010/08/17(Tue) 20:49:40     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    >  貧乏学生たちの間で噂のカゲボウズ憑きアパートだったらしい。

    不動産屋さん!
    私にその物件紹介して!

    >  たらいの水を替えようとした矢先、カゲボウズが動いた。
    > 「うぉっ、動いた」
    >  ふわりと浮かんで、俺に向かってくるカゲボウズ。俺にぶつかるかと思ったが、たらいの中に落下する。じぃっと俺を見つめたまま、動かない。ぽっちゃんと二匹目のカゲボウズがたらいにおちた。
    > 「洗えってのか……?」

    ちょwwww
    誰かさんのせいで習慣化してるじゃんかよwww

    住み着きたい
    いや
    住み憑きたい





    あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
    『【書いてみた】Landry に興奮気味に感想をつけていたら、いつのまにか新しいカゲボウズがぶら下がっていた』
    な…何を言ってるのかわからねーと思うが(ry


    とりあえずCoCoさん偉大すぎるだろ


      [No.434] ちょっと主人公そこ替われ! 投稿者:No.017   投稿日:2010/08/17(Tue) 20:44:11     75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
    『ポケストでカゲボウズが洗濯されて、さらにジュペッタまで洗濯されたのを喜んでいたら、さらにカゲボウズが洗濯されていた……』
    な…何を言ってるのかわからねーと思うがとにかく萌えたことだけは確かだ!
    カゲボウズにハートキャッチされすぎて、ドキがムネム(落ち着きなさい

    こんにちは、No.017です。
    ポケスト板を覗いていて今非常にwktkが止まらないです。



    >「借りぐらしのアリアドス」、レイトショーで見に行こうかと思って。

    借りぐらしのアリアドス w w w w


    > そして、軒下から外したそいつは、やはりじっとこちらを見つめていた。
    > 何となく心の中を見透かされているような気がする。
    > ……悲しいの?って。
    > そりゃあの人の彼女になれないのは悲しいよ。
    > 心の中でそうつぶやく。
    >
    > もう一匹外してみる。
    > やっぱりそいつも私の方をじっと見ている。
    > ……悔しいの?って感じだ。
    > そりゃあの人取られて悔しい。
    > しかもあんな壮絶別嬪さん。勝てる気がしない。
    >
    > さらにもう一匹。
    > ……辛いの?
    > そりゃ辛いよ。あの人のことずっと好きだったんだから。

    何このうらやましい展開。
    カゲボウズって癒し系だったのか。
    私のハートも癒して欲しい。


    > 「そこにいても濡れるだけだよ。おいで。」

    言ってみたい!
    カゲボウズにそんな台詞言ってみたい!!!


    > シャワーかな。……いやこれだけいるんだからまとめてお風呂に入れた方が早いかな。

    風 呂 だ と

    カゲボウズと、風呂だと!?

    あlskjhだlwjd/lwふじこ!


    > そんなことをぼんやり考えながら、私はカゲボウズたちを連れ、風呂場に向かった。

    今夜はお楽しみでしたね。






    主人公に嫉妬しつつこれにて。
    カゲボウズこないかなw


      [No.433] 住み着いてみる。 投稿者:こはる   投稿日:2010/08/17(Tue) 20:41:44     80clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     ちょうど良い下宿をみつけた。大学からも近いし、家賃も格安だ。四畳半と貧乏学生にぴったりの間取りもうれし……くはない。
     ともかく、不動産屋の張り紙をみつけた瞬間、それをひっぺがして即刻契約し、翌日引っ越しを決行したのだった。
     家具(と呼べるかは疑問)を運び込み、両隣に引越蕎麦を配った俺は、ようやく人心地つけた。前の住民が残していったカーテンをひいて、部屋の空気を入れ替えようとしたのだが。
     窓のさんにぶら下がって、俺を見つめる黒いてるてる坊主。ではなくカゲボウズ。
    「どうりで安いわけか……」
     貧乏学生たちの間で噂のカゲボウズ憑きアパートだったらしい。
     不動産屋に殴り込んでやろうかとも思ったが、よく考えてやめた。カゲボウズが憑いているだけでこの家賃だ。教科書代に回せる。人間、我慢が大事だ。よし、我慢するべし。


     快晴。気温35度超えの猛暑日のなか、俺は万年床予定の煎餅布団を干すことにした。ついでに溜め込ん洗濯もする。たらい派の俺は夏の暑さ予定も負けず冬の寒さにも負けずに洗濯をしなければいけない。洗濯機を買う余裕がないだけ、という見解もある。
     溜まった洗濯物を洗い終わっても、窓のさんにぶら下がったままのカゲボウズたちは身動きひとつしない。こいつら、生きているんだろうか。たらいの水を替えようとした矢先、カゲボウズが動いた。
    「うぉっ、動いた」
     ふわりと浮かんで、俺に向かってくるカゲボウズ。俺にぶつかるかと思ったが、たらいの中に落下する。じぃっと俺を見つめたまま、動かない。ぽっちゃんと二匹目のカゲボウズがたらいにおちた。
    「洗えってのか……?」
     こくこくと首を振るカゲボウズたち。洗剤は使っても大丈夫なんだろうか。
    「染みてもしらないからな」
     とはいえ、心配なので今回は洗剤を使わないでおこう。色落ちしたらかわいそうだ。
     それにしても、こいつらは負の感情を食うんじゃなかったのか。たらいの中で幸せそうに笑うのはやめてくれ。俺にどんな負の感情があるってんだ。
    「あ、先輩への恨み? 教授の講義のいらだちか。ひょっとして、不動産屋にたいする怒りか?」
     思いだすだけで黒い感情が湧き上がってくる。カゲボウズたちはうっとりとした表情で洗われている。洗濯と一緒にお食事が楽しめるなんて、うらやましい……。待て俺、なぜにカゲボウズに嫉妬する。ますます湧きあがる黒感情を食べて、カゲボウズたちはさらに幸せそうな表情になっていく。
     一匹のカゲボウズが満足したらしい。浮き上がって物干し竿にぶらさがる。自発的風乾燥をするらしい。次々に浮かび上がっては風乾燥にはいるカゲボウズたち。
    「……ほっといていいのか」
     スバメとかにおそわれないだろうか。見張っといてやろう。破れた団扇(駅前で配ってた)を持ち出して窓辺に座り込んだ。クーラーなんて高価なものはない。
     あぁ、またもや黒感情が……。
     洗濯したばかりのカゲボウズたちがまったりとした表情で熱風にはためいている。


    *****
    にやけて読んでたはずなのに、なぜか書いていたとは…恐るべしカゲボウズ魔力。
    ごめんなさい、ほんとうにごめんなさい。カゲボウズ憑き下宿にしてしまいました。住んでみたかったのです。こんなアパートがあるなら、速攻で引っ越したい。


      [No.430] カゲボウズは洗濯するもの 投稿者:No.017   投稿日:2010/08/17(Tue) 19:05:23     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    何この素敵な流れ。
    カゲボウズいっぱい見れて幸せだわー。

    ああ、でも幸せだとカゲボウズよってこないなー
    ううむこのジレンマ


      [No.427] Re: 【書いてみた】続Landry 投稿者:レイニー   投稿日:2010/08/17(Tue) 14:20:07     88clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    いつものように、狭いワンルームで目を覚ますと、そこには大量に干された洋服と、大量に干された黒いてるてる坊主がいた。
    あれ……どうしてこんなことになってるんだろう。
    寝ぼけた頭でぼんやり考える。
    時計をみると既に12時を回っていた。
    ヤバいと思ったが、つぎの瞬間、今日が土曜日だったことを思い出し、安堵した。

    働きだした脳みそで、そういえばと昨夜のことを徐々に思い出した。
    私昨日、何故だか家にやってきたカゲボウズたちを洗濯したんだっけ。
    それで、その前に洗ってた洗濯物と一緒に、部屋干ししたんだっけ。外雨だったから。

    そしてどんどん記憶は鮮明になり、思い出した。
    ああ、そうだ。私、失恋したんだった。

    冷静にその事実をとらえ直す。
    そういえば、昨日は冷静になる機会なんてなかった。
    ただただ勢いに任せてやけ食いししたり洗濯したり。
    その後は客人の洗濯で、慌ただしかったし。

    一晩たって初めて、私はこの事実を捉えなおしていた。
    ああ、私、失恋したんだ。

    冷静に事実を受け止めると、また感情的になってきた。
    でも昨日とは違う。
    自分の目の前の事実を受け入れられず、ただただやけになっていた昨日。
    そして、その事実を変えられないものとして受け入れた今日。

    もうあの人は、私の知っているあの人とは違うんだ。
    あの人は名前も知らない超絶別嬪さんと幸せになるんだ。
    ……そばにいられるのは、私じゃないんだ。

    その事実を驚くほど冷静に理性は受け入れていた。
    でも、感情がそれに反発して。

    気がついたら涙があふれた。


    しばらく静かに泣いていると、私は異変に気がついた。
    綺麗に干されていたはずのカゲボウズたちが、気がつくと私の周りを取り囲んで、じっとこちらを見つめている。
    カゲボウズは負の感情に引かれてくるんだっけ。

    カゲボウズたちはじっとこちらを見つめている。
    それは、私が負の感情に満たされているという事実を一層強く認識させられる気がして。
    「……別にあんたたち呼ぶために泣いてるんじゃないんだから。」
    かすれ声になってしまうのがより一層悔しくて、私は気がつくと声を上げて泣いていた。

    ひとしきり泣いて、泣いて。
    その間カゲボウズたちは、じっとこちらを見つめていた。

    悔しい?
    悲しい?
    辛い?

    彼らの目がそう語る気がして。

    それで私は、自分の気持ちを思い知らされて。
    さらに泣いた。


    泣くだけ泣いて、ちょっと治まった頃。
    カゲボウズたちはやはりこちらを見つめていた。
    相変わらずその瞳は、私の心を見透かしているようだった。

    悲しいし悔しいし辛いけど。


    一人でいるよりよかったかもしれない。
    ぐるぐるしてごちゃ混ぜになった自分の心を直に見るより、彼らの瞳を見る方が、自分の心、よくわかった気がするし。
    何より、そばに誰かいてくれるのは、心強かった。
    ……それは、ただただ負の感情に誘われた、彼らの思惑とは違ってたんだろうけど。

    「……ありがと。」

    カゲボウズたちは、言葉の意味を分かっていたのかいないのか、やはりじっとこちらを見つめていた。



    泣くだけ泣いたら、おなかが減った。
    そういえばカゲボウズたちも、昨夜から何も食べていないのは同じだろう。
    ……でも、カゲボウズって、何食べるんだろ。
    一般的にはポケモンフーズだろうけど、私は一人暮らし。
    ポケモンと一緒に生活していないから、当然そんなものが家にあるはずもない。
    ……というか、今食料、何があったっけ。

    カップラーメンが数個と、残り物の野菜。そして米。
    寂しい食料庫にため息をつきつつ。
    「……お米食べるかな?」
    そう思いながら、私は一人暮らしでは炊いたことのない量のお米を研いでいた。


    しばらくして、炊飯器の音がした。
    ちょっと冷ましてから塩をふって、手早く握る。
    しばらくすると数皿にも及ぶおにぎりができていた。

    「……食べる?」

    食べなかったら冷凍してしばらくおにぎり生活だなとぼんやり考えていたけど。
    カゲボウズたちはふわりとやってきて、おにぎりをぱくつき始めた。
    喧嘩とかおきなきゃいいなと思っていたが、カゲボウズたちは案外きちんとお互いのこと配慮しつつ食べているようだった。安心。

    おにぎりを食べるカゲボウズたちを見ていると、不思議と笑みがこぼれていた。
    そして、この一晩、やっぱり一人じゃなくてよかったと、この客人たちを愛おしく思った。
    そしてこの客人たちを横目に、私はすっかり忘れていた部屋干し洗濯物を取り込む作業にかかった。



    日が暮れたころ、カゲボウズたちを帰すことにした。
    どこから来たんだか知らないけど、きっとどこかに寝床があるんだろう。
    それに万が一飼いポケだったら大変だ。
    今頃騒ぎになっているに違いない。

    実際はどうだか知らないけど、何となく日光に弱そうな気がするし、このくらいの時間がちょうどいいだろう。
    窓を開け、ベランダに出て、カゲボウズたちを呼ぶ。

    「そろそろ帰りな。」

    カゲボウズたちは、その言葉に促されたのか、ふわふわ出て行った。

    私のことはもはやどうでもいいというような後姿を見て、ふと心に物淋しい風が吹いた。気がした。


    もう彼らに会うこともないだろう。
    いや、彼らに会うような人生はまっぴらごめんだ。
    もう恋なんてしないんだから!

    ……でも、いつかまた失恋した時にふと来てくれたら、ちょっと嬉しいかも。
    そんなことを考え、私は今までの、でも新たな日常に戻っていった。



    おわり

    ---

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】

    ---

    個人的に思い残す…というか納得いかないとこがあったようで、
    1作品書き逃げして終えるはずが、気がついたら翌日談書いてました。
    きっとポケモンだっておにぎり食べるよね!

    二度にわたりありがとうございましたー!


      [No.423] 【書いてみた】Landry 投稿者:レイニー   投稿日:2010/08/16(Mon) 23:23:45     90clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    狭い一人暮らしの部屋で、夜中にも関わらず、洗濯機が静かに動いている。
    最近ではテクノロジーが進化して、夜中に洗濯しても近所迷惑にならないよう、あまり音の出ない洗濯機が出回っている。
    私の部屋のもそのタイプだ。
    実家の古い洗濯機はあんなに大きい音立ててたのに。
    日進月歩あっという間に進化していく。テクノロジーとはそんなものなのだろう。

    「かがくのちからって すげー」 ……か。

    「かがくのちから」はさておき、私の洗濯機は深夜の静寂とともに、静かに動き続けている。


    気がついたら回していたのだ。
    あの時着ていた服から、ついでに天気が悪くてたまっていた洗濯物まで。



    あの人に彼女がいたなんて……。そんなの聞いてないよ!!

    あれだけ周りから、よりにもよって何であの人なのかとか、趣味おかしいんじゃないかとか、オッズ高そうだよねとか、いろいろ言われたあの人が!!
    ……そりゃあの人が酒癖悪いとこあるのは私も認めるけど、いいとこいっぱいある人で、私はすごく素敵な人だと思ってる。
    だけどだけど周りからあれだけ「恋愛とは一生縁がなさそう」って言われてたあの人に、私以外の恋人ができるなんて!!

    雨降ってて憂鬱だし、こんな夜は気晴らしに、話題の「借りぐらしのアリアドス」、レイトショーで見に行こうかと思って。
    まさかその映画館で、超絶美人と親しげ……というかどうみても二人の世界に入り込んでるあの人見かけるなんて!!

    ……あんな顔するあの人、初めて見た。私には一度も見せたことのない顔。

    その後のことはよく覚えていない。
    とにかく、私は映画を見るどころではなくなっていた。
    「マクドオーバ」で、普段は頼まないポテトのLサイズをただただひたすら食べていた記憶はうっすらある。
    怒りとか妬みとか悲しみとか苛立ちとか恨みとか悔しさとか絶望とか。
    そういう感情が混じりあった言葉にできない感覚。
    やけになっていたのは確かだ。


    そして、気がついたら、家で洗濯機を回していた。



    洗濯物を乾かすのにふさわしくない今の時間と今の天気を思い出したのは、洗い終わった洗濯物が入った洗濯籠を持ってベランダに出てからだった。

    そういえば昨日から降ってたっけ。今日だって傘持って出かけたじゃん。
    雨、ましてや夜中。洗濯物を干すには余りにふさわしくない状況だ。
    臭いそうだけど部屋干しするしかないなこりゃ、と思った瞬間。

    目があった。

    真っ黒の丸い顔、その頭部はとがっている。
    同じく真っ黒のひらひらの胴体。
    そして、その丸い顔には瞳が二つ。
    じっとこちらを見つめていた。

    そして闇の中のその瞳は二つだけではなかった。
    軒下にぶら下がっているそいつは、一匹ではなかったのだ。
    十匹ほどはいるだろうか。

    カゲボウズ。
    その生物の名、そして特徴を、ぼんやりと思い出す。
    確か、恨みや妬みの心を持つ人のところに寄ってくるんだっけ。
    そりゃ今のあたしのところによってくるわ。無理もない。

    何故か軒下にぶら下がっていた生物たちに、今の自分の状況を再確認させられ、思わずため息が出る。
    私だって好きで妬んでるわけじゃないわよ……



    とりあえず勝手にベランダに進入したこの不法滞在者……いや不法滞在ポケか、たちを近くでよく見てみると、そいつらは真っ黒ではなかった。
    黒いその体には、泥が跳ねていて、茶色の水玉模様ができている。
    どこから来たんだか知らないけど、きっと雨の中さまよってきたのね。そして泥が付いたと。なるほど。

    とにかくこのままじゃ、ただでさえ陰気臭い状況なのに、よけいに陰気臭くて仕方がない。
    不法滞在ポケたちには出てってもらおうと、軒下から外してみる。
    見た目以上に重たい。
    水を吸って重くなったのだろうと即座に感じた。

    そして、軒下から外したそいつは、やはりじっとこちらを見つめていた。
    何となく心の中を見透かされているような気がする。
    ……悲しいの?って。
    そりゃあの人の彼女になれないのは悲しいよ。
    心の中でそうつぶやく。

    もう一匹外してみる。
    やっぱりそいつも私の方をじっと見ている。
    ……悔しいの?って感じだ。
    そりゃあの人取られて悔しい。
    しかもあんな壮絶別嬪さん。勝てる気がしない。

    さらにもう一匹。
    ……辛いの?
    そりゃ辛いよ。あの人のことずっと好きだったんだから。


    そんな感じで心の中で彼らと勝手に会話をしながら、カゲボウズたちを外していく。

    そして最後の一匹、……一回り小さい奴だった、を外そうとした時。

    落ちた。
    そいつがひとりでに落っこちたのだ。
    危ないと思った次の瞬間。

    今まで外してきたカゲボウズたちが、縦に直列になって、小さいカゲボウズを助けたのである。
    まるでトーテムポールみたい。

    「ふふっ。」
    カゲボウズたちのそんな救出劇を見て、何故だか私はちょっと笑っていた。
    さっきまで笑顔とは対極の状況にいたというのに。

    そして私は、いつのまにか不法滞在ポケのはずの彼らに、愛着を感じていたことに気がついた。
    救出劇が余りに微笑ましく、またその姿が面白かったこともあるのだろう。
    また、泥まみれになりながらも、私の負の感情を辿ってここまで来たことにも、ある種の健気さを感じたのかもしれない。

    ……びしょ濡れの客人を世話するのも悪くない。
    それに何かしていないと、落ち着かない。
    また一人でいたら、再度やけ食いとかしかねないし。
    この子たちと何かしていた方が、気晴らしになるだろう。


    「そこにいても濡れるだけだよ。おいで。」

    客人の泥も、私の心の泥も、一緒に洗い流してしまおう。
    どうやって洗うかなー。
    シャワーかな。……いやこれだけいるんだからまとめてお風呂に入れた方が早いかな。
    中に石鹸入れて、ぐるぐる回して洗濯機みたいにしてみようか。
    ……そんなことしたら、この子たち目ぇ回しちゃうかな。

    そんなことをぼんやり考えながら、私はカゲボウズたちを連れ、風呂場に向かった。



    おわり

    ---

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】

    ---

    あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
    『おれは通りすがりのROM専で居座ろうと思っていたら、いつのまにか書いてポチっていた』
    な…何を言ってるのかわからn(ry

    お二方の愛らしい作品群を見てほのぼのしていたと思ったら、
    「洗濯」というキーワードからRie fuさんの「Landry」という、
    失恋した女の子が夜中に洗濯して、自分の痛む心も綺麗にしていくというモチーフの楽曲を思い出し、
    気がついたらこんなものができてました。
    小説なんて久々すぎて緊張しています。どうしたらいいものやら。
    ましてや、ほのぼの空間に切なめ作品投下というKYさ。
    それでも読んでくださった方に感謝感謝です。

    CoCoさん、てこさん、素敵な作品群ありがとうございました!
    カゲボウズ干したいよ!ジュペッタ洗いたいよ!……でもシャドーパンチは勘弁(え)

    そしてCoCoさん、カゲボウズたちお借りしました。ありがとうございます。そして雨で冷やしてごめんなさい。
    カゲボウズたちは、一晩部屋干しして幸薄荘にお返しいたしますー。


      [No.419] えええっ+おまけ 投稿者:CoCo   投稿日:2010/08/16(Mon) 19:42:57     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     ありがとうございます。
     大切に洗濯します。がふっ((

     という御礼だけでは少し寂しいのでおまけという名の蛇足。

    ***



     カゲボウズがなびいている。
     しかも長い。
     縦に。

     衝撃の瞬間を目撃した。
     カゲボウズの下にぶらさがるカゲボウズ、その下にぶらさがるカゲボウズ、その下にぶらさがるカゲボウズ、その下にぶらさがるカゲボウズの下にぶらさがるカゲボウズの下にぶらさがるカゲボウズ。

     数匹のカゲボウズが縦に長く連なり、あたかも見舞いの千羽鶴のような格好で風になびいている。

     しかし、彼らは何も楽しくてあんな格好をしているわけじゃないことを、一部始終を見守っていた俺は知っている。

     ――最近、幸薄荘に住み着いてるカゲボウズに、一匹新顔が加わったのだ。
     まだ子供なのか何なのか、ほかのカゲボウズより一回り小さいカゲボウズ。
     大家さんによってつけられたニックネームはぷちボウズ。

     うまく軒下にくっつくことができないのか、なぜか一匹だけぽとりと、地面に落ちてしまったりしているぷちボウズ(救出済)。
     アパートの二階へあがる手すりのところに何故だかたまに挟まっているぷちボウズ(救出済)。
     消火器の箱の上で昼寝していてヤミカラスに食われそうになっていたぷちボウズ(救出済)。

     ドジなのか迷子になりやすいのか、一匹でふらふらしていることが多い(そして気がつくと地面に落ちていることの多い)新顔のそいつ。
     他のカゲボウズと仲が良くないのかナァ、と思ってちょっと心配したりしていたのだが。

     八月某日、その日カゲボウズが並んだのは、二階の205号室。
     あそこに誰が住んでいるのか俺は知らないが、相当のことがあったらしい、普段住んでいるカゲボウズの他にも、なんとどこから現れたのか、ゴースがうろついたりもしていた。大きいカゲボウズたちとしばらく睨みあって退散したようだったが。ゴーストタイプのポケモンにも縄張りがあるらしい。

     そしてそこにあのぷちボウズも居た。
     右端のほうでそよ風に吹かれてふらっふらしていたので、落ちるんじゃないかと思って下で待機していたら、案の定、そいつの頭は軒下から離れ、ふわふわと落ちてきた。

     しょうがねえから受け止めてやろうかと思った矢先。

     まず一番右のカゲボウズが軒下を離れ、ふわふわと新入りを追いかけてきた。
     そしてぷちボウズを受け止める。

     次に右から二番目だったカゲボウズが離れ、さらに後を追いかける。
     そして受け止めたカゲボウズの頭の先を受け止める。

     三番目も四番目も……と続いて、一番左はしに居たカゲボウズはちょっとふわふわした後、205号室の物干し竿の右はじにくっついた。

     気がつくとあらふしぎ。
     カゲボウズのぼりが出来上がっていた。

     良かったなぷち子。
     お前、意外と愛されているみたいで。
     羨ましいぜこの野郎。

     俺がそんな光景を見上げていると、後ろから肩を叩かれた。
     誰だと思って振り向くと、左頬に大家さんのひとさし指が突き刺さった。

    「またカゲボウズの観察ですか?」

     長い髪と可愛いモンスターボール型のエプロンを真夏のあっつい風に揺らす、可愛い大家さん。
     フラグが立ったと思う前に、"また"のニュアンスになんともいえないものを感じて、とりあえずハローワークに通っています。


     おわりなさい

    ***

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評していいのよ】

     毒男lv.31 ジョブ:夢追い人


      [No.417] えっ 投稿者:てこ   投稿日:2010/08/16(Mon) 11:39:58     60clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    驚きのあまり、声が漏れてしまいました。
    どうぞどうぞどうぞ!こんな奴(ry でよかったらどうぞ使ってやってください。特技はシャドーパンチです。

    よかったなぁ、おまえ!がふっ!((


      [No.414] さらにありがとうございます。 投稿者:CoCo   投稿日:2010/08/15(Sun) 23:30:39     66clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     No.017さんまたもありがとうございます。
     pixivはとても良いサービスですね。折角ですのでばりばり活用したいです。
     それからマイピクもありがとうございますw あまりの喜びに口からベトベターが出るかと(ry

    > もっと見つめて欲しい。
     10%以上の負の念が必要です。

    > 喜ばれているのか……!
     遊ばれているようです。

    > ジ ュ ペ ッ タ w
     仲が良いようです。

    > もうプールですね……!w
     涼しいようです。

    > えー、けちんぼー
     仕様です。
     すみません。


     てこさんまたもありがとうございます。
     気が済んだら自分で戻ってゆくような気もしますが、てこさんの家のジュペッタとうちのアパート(?)のカゲボウズたちは仲が良いようですね。

     実はこの話を無駄にかつ蛇足的に派生させようかと思っているのですがその、宜しければジュペッタさんをぼちぼちお借りしても良いでしょうか?
     あつかましいことこのうえないお願いで申し訳ありません。

     そして「掲示板の趣旨間違ってるよ」等ありましたらすぐ消去しますので教えていただけると助かります。
     すみません。


      [No.406] カゲボウズー! 投稿者:てこ   投稿日:2010/08/15(Sun) 12:13:17     71clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    CoCoさん、No.017さん、気に入ってくださったようで何よりです。シャドーパンチは駄目です。

    おまけ

     ベランダに干していたカゲボウズのとなりに黒い布が一枚、二枚、三枚……。
     俺がベランダに出るとカゲボウズが瞬きもせず、俺を見つめている。
     ……。
    「だめ。返してきなさい」
     ジュペッタが恨めしげに俺を見た。


      [No.396] タライの中を涼しげに泳ぎまわる黒いひらひら 投稿者:No.017   投稿日:2010/08/14(Sat) 22:52:44     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    > そしてぴくしべで小説が投稿できることに今気づきました。
    > イラストコミニュケーションサービスって書いてあったから油断していた……。

    当初は私もまさかpixivがこんな機能つけてくるとは思わず驚きました。
    登録してみたら(マサポケにある本棚に比べても)操作は簡単だし、絵はつけられるしなので、
    掲示板はいずれ流れてしまいますから、ポケストの流れてしまった作品を補完する意味でも利用者のみなさんに登録を(個人的に)おすすめしています。
    pixivのほうでも感想がつくかもしれませんしねー。


    おまけのほうも存分に堪能させていただきましたwww

    > 負の優越にひたっていると、水をはったタライの中からカゲボウズがこっちをみつめていた。

    カゲボウズ様が、見てる……!

    >  いかんいかん。こいつらを洗うときは無心でなくてはいけない。心に負の念が存在するとこいつらは目を閉じない。じっ、とこっちをみつめて瞬きもしない。

    もっと見つめて欲しい。

    >  なんだか日を増すごとに水浴びにくるカゲボウズは増えているような気がするし。この間なんてジュペッタが紛れ込んでいたし。

    喜ばれているのか……!
    ジ ュ ペ ッ タ w

    >  俺はタライの中を涼しげに泳ぎまわる黒いひらひら達を見つめながら、

    もうプールですね……!w



    > 「洗濯は手伝って欲しいが、冷やし中華はやらん」

    えー、けちんぼー




    冷やし中華を惜しみながらこれにて退散しますー
    素敵な作品ごちそう様でしたー


      [No.388] ありがとうございます。+おまけ 投稿者:CoCo   投稿日:2010/08/14(Sat) 00:29:01     96clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     
     みなさんありがとうございます。
     てこさんジュペッタありがとうございます。ついシャドーパンチ喰らいたくなりました。
     No.017さんありがとうございます。ツイッターなんて恐れ多いです感謝です。カゲボウズ暦の長いツッ●ー氏が言うならばやっぱり陰干しですかね?
     拍手くださったみなさんも通りすがりのみなさんもまとめてありがとうございました。私のカゲボウズがよろこびのあまり風もないのになびいています。

     そしてぴくしべで小説が投稿できることに今気づきました。
     イラストコミニュケーションサービスって書いてあったから油断していた……。


    以下おまけという名の妄想と蛇足



     悩める貧乏青年達が集まる郊外の古い安アパートには、まれに数匹、特定のカゲボウズが暮らしていることがあるらしい。
     彼らは宿付きカゲボウズと呼ばれ、都市型に発展したポケモンの生態系の一種であると見られる。
     とくに悩みつらみ凹んでいる住民の窓のさんに取り付き、負の感情にあやかるカゲボウズ達だが、あるアパートではカゲボウズの付き具合を見ておのおの鍋の具材を持ち寄り当該住人の部屋を訪れ、【メシウマ鍋】【ざまあ鍋】や【傷舐め鍋】などを執り行う等、古来より不吉の象徴として見られがちな彼らが、緩やかながら人間の生活に溶け込んでいるという現象も報告されている。

     また最近、なぜか当研究所に「カゲボウズは陰干しなのか?」という類の投書が多く寄せられるので回答させていただくと、陰干しとは本来、木綿素材など水分が蒸発する際に収縮する性質をもつ衣類の変形や、ジーンズなどの変色などを防ぐために風通しのよい日陰で洗濯物を乾燥させることを言うが、洗濯して干したカゲボウズがガビガビになった、カゲボウズが色落ちしたなどの事例は報告されていない。
     しかしカゲボウズはゴーストタイプであり、紫外線に弱いとのレポートも存在するため、カゲボウズを干す場合は結果的に陰干しが適当だとも考えられる。

         ――国立ゴーストタイプ研究所

     追記
     色落ちはしないが、日焼けしてひりひりすることはあるらしい。【要出典】
     暑い夏のことでもあるので、日向でカゲボウズとふれあう場合には十分注意が必要だと思われる。





     以上は、あれ以来うちのアパートに住んでいるカゲボウズの洗濯係みたいになってしまった俺に対して、上の階に住んでいる御影先輩が何も言わずに寄越してきたものだ。怪しい紙である。
     まあ俺の部屋と俺自身は日陰なので干し方には心配なかろう。

     ちなみに御影先輩は相変わらず寝起きの顔がミカルゲにそっくり似ている。あの不運げな顔では今年も落第は免れまい。

     負の優越にひたっていると、水をはったタライの中からカゲボウズがこっちをみつめていた。

     いかんいかん。こいつらを洗うときは無心でなくてはいけない。心に負の念が存在するとこいつらは目を閉じない。じっ、とこっちをみつめて瞬きもしない。
     きゅっと目を閉じているときでさえ洗うのに気をつかうというに、掴んだ手の中からじいっと見上げられているのにごしごし汚れを落としたりなんかできるか?

     なんだか日を増すごとに水浴びにくるカゲボウズは増えているような気がするし。この間なんてジュペッタが紛れ込んでいたし。すぐ飼い主が向かえに来たけどシャドーパンチを喰らっていたし。なにか似たようなものを感じたし。

     俺はタライの中を涼しげに泳ぎまわる黒いひらひら達を見つめながら、昼飯までに終わるかなー、と一人でつぶやいた。



     おわってくれ

    ***

    【批評していいのよ】
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】


    毒男「洗濯は手伝って欲しいが、冷やし中華はやらん」


      [No.386] 今、私は猛烈に興奮している! 投稿者:No.017   投稿日:2010/08/13(Fri) 08:30:06     83clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    今、実家にいるからちょっとポケストの様子を覗くだけにしようと思ったのに。
    思ったのに……!



    な に こ れ か わ い い

    素晴らしい!
    なんという素晴らしい小説だ!
    読んでいる間中終始ニヤニヤしっぱなしだった。
    カゲボウズ・ジュペッタでこの発想はなかった。
    興奮した! おっきした!(しない)
    勢い余ってツイッターで布教してしまった。(ごめんなさい)
    これは日本全国のカゲボウズ・ジュペッタ好きに読まれるべき小説である。

    おい、そこの毒男!
    私にもカゲボウズを収穫させろ!!!
    ついでだから冷やし中華もよこせ!

    とりあえず、あなたたちお二人、pixivに小説投稿……いやpixivにそのカゲボウズとジュペッタ干してきなさい(笑)。
    ポケストだけでなく、これはもっと広まるべきだ……!
    布教すべきだ!
    全国のカゲボウズ・ジュペッタスキーに洗濯のすばらしさを伝えるのだ!


    うちの金髪のお兄さんも、カゲボウズ洗濯するのかなー。
    いっぱいいるから大変だろうなー。

    ツッ○ー「カゲボウズは陰干しでしょう。やっぱり」


      [No.385] 洗濯日和.2 投稿者:てこ   投稿日:2010/08/13(Fri) 02:12:57     102clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     押入れを掃除した。
     小さい頃、大事にしていたぬいぐるみがあった。埃で汚れて、白かったはずのぬいぐるみが黒くなっていた。
     久しぶりにあのときと同じように抱きしめてみた。


     ジュペッタになってた。


     ぺたぺた。ジュペッタが畳の上を歩く。あの頃、大事にしていたぬいぐるみがまさかジュペッタになるなんて予想もしてなかったけど、けど。
    「これ、うん……」
     長い間しまわれていた体は埃塗れ。ジュペッタの歩いた後に埃の道ができる。よろしくない。ジュペッタにとっちゃ、埃なんかどうでもいいものなのかもしれないが、一応は部屋の主である俺にとっちゃ、非常によろしくない。部屋が埃塗れになってしまう。それも、結構年代物、まさにヴィンテージ埃。一つ一つの塊として存在するような埃である。やっぱり、よろしくない。
    「ちょい、こっち来てみ」
     ジュペッタを手招きすると、何の警戒もせずとことこと歩いて俺の前に来た。小さい頃、大事にしていたとき、いつもこのぬいぐるみと一緒だった。その時の記憶ってまだ、あるのかな。
     ジュペッタの体を抱えて、埃をはらってみる。大きな埃はいくつもいくつも落ちたが、いかんせん、まだ手にざらざらとした感覚が残る。布自体にこびりついた小さな埃だろう。これは、はらっただけじゃとれないだろうな……。
     かと言って、この埃のついたまま放置すれば、部屋は汚れる。きっと、裸足で歩いた時に足の裏がざらつくようなことになるだろう。避けたい。しかし、ジュペッタだと気づいてしまった今、元通りに押入れに戻ってくれというのも出来ないだろうし。やることは一つしかない。
     洗濯しよう。

     風呂場。ジュペッタは俺を不思議そうに見上げていた。
     ……いや、ちょっと待てよ。大きなぬいぐるみって洗うとかびるって聞いたことがある。ジュペッタが本当にあのぬいぐるみのままなら、濡らしたらかびる。絶対、かびる。でも、かびたジュペッタなんて話聞いたことはないし、それだったらジュペッタは水タイプのポケモンとは戦えないよなぁ。とか、言ったら炎タイプのポケモンと戦ったら、全焼してるよな。大丈夫か。ポケモンだし。
     シャワーの蛇口をひねった。
    「よーし、かけぶっ」
     何が起こったのかわからなかった。気づいたら、足を滑らして腰と後頭部を打ってびしょぬれになってた。
     深呼吸をして、十秒。
     ……あぁ、なるほど。びっくりしたジュペッタにシャドーパンチをみぞおちに叩き込まれたってわけね、俺は。
    「大丈夫だよ。じっとしてろ」
     ジュペッタの指先に軽く水をかける。ジュペッタはそれが何かを理解したらしく、指先に纏った影を消した。小さな体をしているが、意外と、いや、かなり力は強い。昔、喧嘩のときにくらった一発とタメを張る威力だった。痛ぇ。
     ジュペッタの体に水をかけつつ、手で汚れを落としていく。排水溝に流れていく水は結構な黒色をしていた。どれくらい、押入れから出てなかったか。一体、いつから、ジュペッタになったんだか。
     まぁ、悪い気はしない。

     綿が水を吸ってしぼんだりしないかと思ったが、洗い終わった今、体型に対して変化はなさそうだ。体の色は黒から、灰色に変わった。やっぱり、相当汚れてたんだろう。
     プラスチックの洗濯籠にジュペッタを入れて、ベランダへ向かう。水を吸った体は重い。かなり、重い。米の袋を運んでいるみたいだ。
     
     二本の物干し竿に板を渡してその上に置いて干す。要するに、枕の乾かし方と同じである。
     ゴーストタイプだから、陽の光に当たっちゃまずいだろうかとも思ったが、ジュペッタにとっちゃそんなのは埃と同じく気にするものでもないらしい。陽に当たりながら気持ちよさそうに眠り始めてしまった。人にシャドーパンチくらわしといて、まぁ、何と言うか……気ままだな。

    「これから、どうするかなぁ」
     天気のいい昼。よく晴れた昼。強すぎず弱すぎず、吹いていると感じる程度の風。ベランダの手すりに体重を預け、ひと息ついた。今日は絶好の洗濯日和だ。
    「ん?」
     向かい側の建物の一部屋。よく見ると、黒い布のようなものがずらりとぶら下がっている。風は吹いているが、それほど揺れてはいない。きっと、洗ったばっかりなんだろう。なんの布だろう、あれは。
     布がくるりとひっくり返った。そして――ぱちくりと布は瞬きをした。
    「なるほど、ね……」
     ひっくり返った布を元の状態に戻そうと出てきた人。俺はみぞおちにシャドーパンチをくらった。あの人はきっと、一日中ああいう風にひっくり返った布を見ては、元の状態に戻すんだろう。お互い、おつかれさんだ。
    「全く、困った奴らだなぁ……」
     気持ちよさそうに寝ているぬいぐるみ。そよそよと微かに揺れる黒い布。今日は、絶好の洗濯日和。二つを見比べて、俺は苦笑してしまった。





    おわり

    【批評していいのよ】
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】


    書いてみました。すみません、ジュペッタ洗濯機で脱水しそうになってすみません!
    CoCoさんのカゲボウズ、かわいいです。欲しいです。私の家の窓のさんにもぶら下がって欲しいっ。
    かわいらしいカゲボウズ、ありがとうございます。カゲボウズ成分補給されました!

    カゲボウズは陰干しだと思います!


      [No.384] 洗濯日和 投稿者:CoCo   投稿日:2010/08/13(Fri) 00:40:51     287clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

     

     棚の上でカゲボウズが埃を被っていた。
     本来黒いはずのカゲボウズが、半分ほど白くなっていた。

     さすがに心配になってつつくと、くるっと寝返りをうって目をあけた。

    「…………」

     恨めしげな瞳がただひたすらこっちを見つめている……。
     時刻午前七時、久々の早起きの時間を三十分近くふいにして、俺は埃だらけのカゲボウズと見詰め合っていた。

     どうすればいいんだろう。

     そして俺は今が朝であることに気がついた。
     そうだ。窓を開けよう。朝日を浴びよう。そしてリフレッシュした頭でこのカゲボウズをどうするか考えよう。

     カーテンを勢いよく開け、窓を開く。
     しかし瞬間的にテンションが急降下した。
     なぜなら、軒下にずらりとカゲボウズがぶら下がっていたからだ。

    「…………」

     昨日友人から電話があった。
     俺より酒癖の悪いような奴で、一緒に毒男を貫き通すだろうと思っていたそいつがわざわざ、「彼女できたよ^^」と報告してきやがった。ひとしきり惚気てから、「はやくお前にも春がくるといいね」とほざきながら電話を切っていった。

     そして午前三時まで眠れなかったのだ。
     そうですよね、そりゃあカゲボウズだって並びたくなるよね。わかるよ。うん。わかる。

     しかもこいつら、昨日の雨風の中ずっとぶらさがっていたのか、茶色い。雨で濡れた体に風で舞い上がった砂がくっついたらしい。
     すごい。カゲボウズって天然で色違いになれちゃうんだね。ほんとすげぇ。
     一匹のすそから水が滴っていた。

     ふと振り向くと、棚の上から埃まみれのカゲボウズが落下するところだった。
     ぽとり。
     一瞬きゅっと目をつぶったカゲボウズが、今度は半身の埃をリビングに撒き散らしながら、俺の方へむかって転がってくる。
     ころころ。
     数分かけて転がってくると、足元へ転がったまま目をあけて、じーっ、とこっちをみつめている。

     窓を見上げれば。
     雲の流れる速度も異様に速い快晴の空。揺れる茶色のカゲボウズ。

     俺は気がつくとタライとホースを持って家の外へ出ていた。


     まずは窓のさんにぶらさがっているカゲボウズを収穫します。
     引っ張れば取れる。ぷち。
     こいつらと、あと埃被ってたのを水張ったタライへ入れる。
     そしてホースで一匹づつ洗う。

     カラスの濡れ羽色になったカゲボウズを、さすがに洗濯バサミで止めるのは気がひけたので、自力でロープにぶらさがってもらった。
     本日晴天、洗濯日和、風は強め。
     洗濯ひもの下になびくカゲボウズたち。目をぱちくりしている。
     たまに風でひっくりかえってしまう奴がいるので、今日はそいつらを監視しながら昼飯は冷やし中華にしようと考えた。


    おわれ


    ***

    全国のカゲボウズスキーのみなさんすみませんごめんなさい。管理人さんごめんなさい。
    もはや風になびくカゲボウズしか思いつかなかった私を笑ってやってください。

    【批評していいのよ】
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】

    ちなみにカゲボウズは陰干しだと思うのですがいかがでしょうか。


      [No.355] あとがき 投稿者:No.017   投稿日:2010/08/07(Sat) 10:01:32     47clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    あとがき (画像サイズ: 350×553 80kB)

    「雨恋」は二年くらい前に書いた作品です。
    同人誌掲載作品だった為、公開を控えておりましたが、一定期間が経過した為、本日ここに公開する所存です。

    絵画に題材をとった作品の為、
    いままで描いたイラストがネタになっていたりします。

    ちなみにMAUは実在します。
    現実世界での名前は Musashino Art University です。
    三年くらい前に同大学の文化祭で、初代ポケモン151の作品を作ろうという企画がありました。
    美大生の作品を展示するものでしたが、私もモルフォン(http://pijyon.schoolbus.jp/oekaki/morufon.html)でゲスト参加をさせていただいたのはよい思い出です。


    そういえば初日は雨が降っていたなぁ。


      [No.354] 雨恋 投稿者:No.017   投稿日:2010/08/07(Sat) 09:42:59     94clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    はれぬ雨の 曇りそめけん 雲やなに 恋よりたてし 烟なりけり ――慈円



     俺にはここのところ、ずっと見続けている夢があった。梅雨入り以降、ずっと差している青い傘、それを持って俺はまるで幽霊のように街を歩いている。そこは空も建物も白く味気のないの街だ。その世界に影はなく、鉛筆で引いた線を組み合わせたみたいな町並みが俺の目の前に映っている。これでも最近は若干黒の線が増えて少し賑やかになったくらいなのだ。だがそんな世界でも雨は降るらしく、傘にはばたばたと雨粒の落ちる音が聞こえる。ちょうど夢でないほうの世界で雨が降っている時と同じように。その時、幽霊のような俺は確かに自分がそこにいると感じることができるのだった。外も雨、夢の中も雨ならば、そのうち区別がつかなくなるような気がした。そう、似たようなものなのだ。夢でないほうの世界でも俺は今幽霊のように日々を生きているのだから。



     空が泣いていた。ほの暗く空を覆う灰とも青とも表し難い色をした雨雲から雨粒がひとつ、またひとつと落ちてきて、街を濡らしていた。青い屋根の並ぶ街、長方形の石材を線路のように並べた通りに人影は見えず、そこに並ぶ商店は戸を閉じてじっと雨に耐えていた。家々の屋根から滴り落ちる雨水が、通りに敷き詰められた石材の間を流れていく。緩やかに坂道となっているその通りを小さな川となって流れていく。流れ出していく。
     そんな青い風景画の中にも一点だけ黄色い絵の具を薄く塗ったように明かりが見える。一箇所だけ明かりのついた家屋があるのだ。通りに面しているのは入り口だけで目立たない。初めて来た者ならば、見逃して通り過ぎてしまったことだろう。だが、雨に濡れた訪問者は迷う様子もなく、廊下を水滴で濡らしながら奥へ奥へと進んでいった。やがて狭い廊下が終わり視界が開ける。その場所では一人の青年が梯子に腰掛けていた。彼は部屋いっぱいに、まるで壁のように立てた大きな平面に対し、指先を黒く汚した腕を上下左右へせわしなく動かしていた。やがて彼は訪問者に気がついて、
    「やあ、今日も来てたんだ。さすがに今日は来ないかと思っていたんだけどね。だってほら、こんな天気だろ。ただでさえ少ない客も来ないから街中朝から店終いなんだ」
     と、言った。動かす手は止めなかった。



     また夢を見ていた。俺はいつのまにか机に突っ伏して眠っていたらしい。腕枕から頭を上げると、鉛筆とラフスケッチを描いた紙が目の前にいくらか散らばっていた。描かれたアイディアの残骸たちは俺が夢で見た風景に似ていた。いわゆるスランプってやつなのだと思う。大学生活も今年度で終わり。来年の春には通いなれたキャンパスを巣立っている予定の俺はそろそろ卒業制作にかからなきゃいけないわけだが、梅雨入りの前に作品を出したのを最後にすっかり完成した作品が上がらなくなっていた。原因はよくわからない。けれど、ここのところ自分の作品はひどくマンネリのような気がしたのだ。ためしに過去の作品を一望してみたら、案の定、落ち込んだ。見るんじゃなかったと思う。現状を打破すべく、いろいろアイディアを殴り描きはしてみるものの、どれも既存の枠を超えているものはないように思えた。アイディアはどれも形にならず、殴り描きは殴り描きのままで、決して完成に至らなかった。ふう、と俺は溜め息をつく。机にひじをついて、拳を頬に埋もれさせてだらんと力の抜けた状態で窓の外を覗く。外は雨だった。しとしとと降っては校舎を包む緑を濡らす。雨水を湛えた緑の樹木の枝が時々頭を垂れて、水滴を滴り落としていた。ここのところの空はずっとこんな具合だ。たまに晴れ間が覗いても、すぐに雲に覆われて雨に戻ってしまう。梅雨入りは俺のスランプと共に始まり、そして未だ明ける様子を見せない。Minamo Art Univercity、頭文字を取ってMAUと刻まれた大学の看板を横目に眺めながら、青い傘を持って俺は大学を出た。放課後の予定は特にない。



     青年は広い画面に木炭を滑らせる。大まかな長方形を描くとそれを何分割かして、また線を引いていく。時々練りゴムで木炭を落として、形を整える。また線を引く。それを繰り返すうちに長方形は一つの形になってゆく。できるとまたとなりに長方形を描く。線を引く。部屋いっぱいのカンバスがその形で埋まるまで繰り返した。ここのところはずっとそんな作業ばかりだ。来訪者はただずっとその様子を眺めていた。雨で塗れた毛皮はすでに乾いている。時々自分の体長の三分の一ほどもある絵筆の形に似た大きな尻尾を揺らしていた。このポケモンは青年の所有ではないらしい。ただ、彼らはこの街で出会い、この場所で過ごすのが日課になっていた。青年がカンバスを前に作業を始めると決まってどこからかポケモンは現れるのだ。青年はたまには自身の食べ物を与えることがあったが、せいぜい作業の合間に一言二言話しかけるくらいで、それ以上はさほど構うこともなかった。それでもどういうわけだかいつもポケモンやってくるのだった。部屋はランプが一つ置いてあるだけで薄暗い。窓からいくらか光が差し込むが、こんな天気だからなんだか頼りなかった。作業を続ける青年と見守る訪問者の耳に雨の落ちる音だけが響いていた。



     ミナモシティ。この国の南に位置するホウエン地方最大の都市は、コンテスト会場はもちろんのこと、この地方を管轄する行政機関、教育機関、公共施設を多く有している。俺が通うこのミナモ美術大学も、一駅先のミナモ美術館もそんな中のひとつだ。ミナモ美術館はポケモンをモチーフにした作品の収集に力を入れており、彼らを木の実に入れていた時代から、ボールと呼ばれる機械球を使うようになった現代までの様々な作品を見ることができる。ポケモンをモチーフにやってきた俺は大学の帰りなんかによく入り浸っていたのだが、梅雨入り以降足を運ぶこともなくなっていた。
     大学から駅まではいささか離れていている。それでも晴れの日は歩くことが多いけれど、梅雨に入ってからはずっとバスを利用していた。バス亭にはアーチ状の屋根がついていて、その下にあるベンチに腰掛けていれば濡れることはない。しかし、変な時間帯に大学を出てきたものだから、やたらとバスの本数が少なかった。俺の視界に映る道路も車はたまにしか通らない。歩いたほうが早い気がしたのだが、腰がベンチに根を張ってしまい、立ち上がる気も起きなかった。鞄から携帯電話を取り出して開く。特に着信もなければ、メールもない。パチンと携帯を閉じて、再び視界を道路に戻した。そして、気がついた。いつのまにか道路の向こう側に見慣れないポケモンが座っていることに。
    「……シャワーズだ」
     俺はそう呟いていた。



    「やあ、今日も来てたのかい」
     足元に気配を感じて視線を降ろすと、茶色い小さなポケモンがちょこんと座っていて、青年を見上げていた。
    「君も物好きだね。僕が絵を描くとこなんて見ていてもつまらないだろう?」
     長く伸びた耳を二度、三度振って、ポケモンは首を傾げた。すると何を思ったのか、青年はひょいっとポケモンを抱き上げた。自分の視線の高さにポケモンの視線を合わせてやる。ポケモンはちょっと驚いた様子だったが、抵抗はしなかった。不思議そうに青年を見るポケモンに彼は言う。
    「ほら見て。一週間以上かけてようやくここまでできたんだ。これでやっと色を乗せられる。僕は色を塗る段階が好きでね。絵に命を吹き込むのがこの段階だと思ってるんだ」
     ポケモンは青年の高さで絵を見つめる。部屋いっぱいに広げられたカンバスにはびっしりと建物が描かれ、整然と並んでいた。それは街だった。彼らが今ここにいるこの街だった。
    「ずっと使ってみたかった色があるんだ。きっとこの街に、雨の街にあうよ」
     そこまで話すと青年はポケモンを降ろしてやった。部屋の隅まで行くと、置いてあった箱を重そうに引っ張ってきた。箱の中に詰められていたものを一つ取り出して、色を確かめる。
    「この絵は大きいから、たくさん作らないといけないな」



     透き通るような水色のしなやかな身体。海の向こうからやって来た宣教師のそれのような襟巻き。魚のヒレのような耳。長く伸びた尻尾は人魚のようで地上には似合わないように思えたけれど、雨に濡れたこの場所になら相応しく思えた。それにしても、何でこんなところに。シャワーズはとても珍しいポケモンで、ことにホウエンじゃめったにお目にかかれないはずなのに。ふと、雨に打たれているそいつと目があった。するとシャワーズは待っていたとばかりにすっくと立ち上がると、道路を横切ってこっちへ渡って来た。おいおい、マジかよ。ポケモンを描いているくせに、彼らの扱いというものに慣れていない俺はどうすればいいものかとどぎまぎする。そうしてる間にもそいつは近づいてきて道路を渡りきった。足元までやってくるとひょいっとベンチに飛び乗ってきて、俺の顔を覗き込む。そして、身体を硬直させている俺の膝に足をかけると、キュウンなんて甘えた声を出して頬に顔を擦り寄せた。俺は膝にシャワーズの体重を感じながら、緊張を募らせる。すると突然、シャワーズは首を傾けて俺の手にあったケータイをくわえると、奪った。俺は一瞬、何が起こったか理解できずにいたが、シャワーズが膝から飛び降りて、そそくさと走り出したあたりで状況を把握する。とりあえず携帯を盗られたらしい、と。
    「おい! ちょっと待てよ!」
     俺は急いで鞄と傘を手にとると、もう十何メートルか離れたシャワーズを追いかけ始めた。



     日が変わって、青年はいよいよ色を作る作業に取り掛かる。箱から色の材料を取り出した。手の平に収めるのにちょうどいいくらいの大きさのそれはびっしりと箱に詰められていた。まずは微妙な色合いの違いによっていくつかに分類する。終わったら、紙の上にそれを置きハンマーで叩いた。何片に割れると先ほどよりも小刻みに叩く。だんだんと細かく、粉状にしてゆく。納得の行くところまで粒子が細かくなったら、用意しておいた瓶の中にさらさらと落とし、蓄積した。この時だけは青年はポケモンが部屋に入ることを禁じた。
    「ごめんね。絵の具の顔料って有害なものも多いんだ。これがどうかはわからないけど、うっかり吸い込んで身体壊したら大変だからね。念のためだよ。君は僕より身体が小さいしね」
     青年は申し訳なさそうに言った。そして、また作業を繰り返す。取り出して砕く、細かくする。その繰り返しだ。徹底的に細かく砕くもの、大雑把な時点でやめるもの。ひとつの材料から、様々な粉を作った。粉の荒さによって出る色が違うのだと青年は説明する。
    「思ったより骨が折れるなぁ。こりゃ、二日や三日はかかりそうだ」
     雨の降る街、雨の音が響く部屋、その中にカーンカーンと材料を砕くハンマーの音が混じる。案の定、三日程、ポケモンが部屋に入れない日が続いた。そんなことはポケモンにしてみれば大したことではなかったけれど、黙々と仕事を続ける青年を遠目に見て、少し気になることがあった。青年が時々咳をしていることだった。顔料になる粒子が部屋に舞っているからではなさそうに見えた。



     携帯をくわえシャワーズは走る。ぱちゃぱちゃと水溜りを踏みながら駆けてゆく。俺は傘をリレーのバトンのように持って、運動不足の身体に鞭を打って泡吐ポケモンを追いかけた。傘を差す余裕はなかった。シャワーズは次第に横道、しかも坂道に入っていき、すでに上がっていた俺の息はますます上がる。坂がひと段落しようかというところで、太腿がガチガチになって走れなくなった。あーあ、もう見えないところまで行ってしまったんだろうな。俺は半ば諦めて、体勢を立て直すと、とりあえず歩いて坂を上りきった。するとそこには、遅いじゃない何やってたの、とでも言いたげな顔をしてシャワーズが待っていたのだった。俺の姿を確認すると再び尻尾をくるりと翻し、走り始める。
    「俺の携帯……返せ!」
     俺は再び追跡モードへと移行した。



     いくつかの色合い異なる青色といくつかの目の粗さ、それらが入ったしっかりと蓋のされたビンが部屋にいくつも並ぶ。青年は材料をほとんど砕ききってしまい、残ったわずかな材料は再び箱にしまった。掃除が済んだ後、ポケモンはやっと部屋に入ることを許された。青年がビンのひとつを取ると絵皿に青い粉を落とす。それをあらかじめ用意していた糊状のものとよく混ぜて、絵の具は完成する。絵の具をたっぷりと乗せた絵筆がカンバスに触れた。青色を広げてゆく。白と黒だけだった街に色が広がっていく。



     追いかけっこは続く。俺が走れなくなって止まる、けれど未練たらしく進んでみるとシャワーズが待っていて、また追いかける。その繰り返しだ。その間隔が短くなっていくうちに俺はやっとそのことに気がついた。どうやらこいつは携帯を持ち逃げすることが目的ではないらしいと。それからは走るのをやめて傘を差した。そして、予想した通りに事が進んだ。追いつくたびにシャワーズが待っていて俺を誘ったのだ。やがて、通る道の周りが人工物より緑の割合が多くなってきた頃、泡吐きポケモンはひとつの建物に行き着き、入り口へと消えていった。コンクリートの塀で周りを囲った割合大きな建物だ。看板を見て、俺は少し驚いた。看板には「ミナモ美術館 別館」と書かれていたからだ。別館があるなんて知らなかった。パンフレットにも載っていなかったと思う。とりあえず、中に入ってみることにする。受付はあったけれど人はおらず、入場料も取ってはいないようだった。俺はほの暗い館内を進むんでいく。館内には本館と同じようにポケモンの絵画やら彫刻やらが並んでいたが、とりあえずそれらは無視して進んだ。やがて広い場所に出た。真ん中に休憩のための大きなソファ、右側はガラス張りで、雨空の鈍い光が差している。外にはちょっとした庭園のようなものが見えた。左側に目をやる。すると、床に携帯が無造作に置かれているのが目に入った。俺は歩み寄って、しゃがみこむと携帯を手にとった。それを鞄に入れた時に、自分の目線のすぐ上に「作品名不明 作者不明」と書かれた説明ボードが飛び込んできて、俺は何気なしに顔を上げたのだった。
     そして俺は、目線の先に広がっていた世界に目を奪われた。
     目の前にあったのは高さだけでも俺の身長をゆうに越す一枚の大きな絵。そこには青い町並みが広がっていた。息を呑むって表現があるけれどこういうときに使うんだと思う。俺はその絵から目を離すことができなかった。しばらくの間、瞬きさえできないでいた。
     整然と並んだ街の建造群。昼とも夜ともつかない画面の中に一箇所だけ街灯が灯っていた。誰もいない青い街の一角を誰か待つかのように儚く照らしている。この絵の中でも外と同じように雨が降っていて、展示室の庭園側から響いてくる雨の音と見事にシンクロしていた。俺はしばし自分のいる世界というものを忘れてその絵に見入っていた。それほどに俺にとってそれは魅力的に映ったのだ。
     この絵にはある。この絵に俺が求めているもののヒントがある気がしてならなかった。俺は時間を忘れて絵に見入っていた。日が落ちて、庭園の光が消えたころになって、ようやく隣に座っているシャワーズに気付いたくらいだった。
    「お前、ここに俺を連れてきたかったのか?」
     シャワーズはどこか笑っているように見えた。



     雨音の耳に刻みながら、街に俺は立っている。青い傘を差して立っている。俺の見ている景色が変わったのはこの日からだった。白かった空が、その日はうっすらとではあったが青く染まっていた。次の日に見た夢では、空の色はもう少しだけ濃くなった。その次の日には濃淡が出て、グラデーションが生まれていた。



     どこからか時報が聞こえて、俺は目を覚ます。また眠ってしまっていたらしい。目の前にはイワークが通った跡みたいな線が引いてあるいくつかの白い紙と鉛筆が散乱していた。いつぞやと比べてまったく進展がない。いい時間だったので校舎を出ることにした。
     あの日を境に、一つの習慣が生まれた。大学を出るとこの別館に立ち寄るのが俺の日課となっていた。降り止まない雨、今日も傘を差し、坂を登って別館へと赴く。他の作品には目もくれずに進んで、今日も青の町並みの前に立つ。そして、気が済むまでそれを眺めている。そんなことを繰り返すうちに俺はある一つの結論に至った。
     そうか、色なのだ。そう俺は思った。俺が惹きつけられているのは、この作品の大部分を構成する青色なのだと。空の果てのようであり、深海の光のようでもあり、ほの暗いギャラリーに確かな存在感を持って浮かび上がるこの青。気がつくとずっと思案しているのだ。一体どうしたらこのように深い青が出せるのだろうと。
    「お好きですか? その絵が」
     ふと背後から声が聞こえた。
    「ここのところ毎日来ているのですね。もう一週間は通い詰めだ」
     五十代半か六十ほどだろうか。ゆったりとした声に振り返ると五メートルくらい後ろにそのくらいの年と思われる男性が立っていて、歩み寄ってきた。人気のない美術館だと思っていたけど、しっかり見られていたらしい。彼はすっと横に立ち、俺達は絵を前にして横に並ぶ。
    「あなたは?」
    「私は館長ですよ。この美術館のね。ついでに言うならばオーナーだ。館長兼オーナー。先代だった父と交代してからもう随分と経ちます」
     そう男は説明した。
    「この絵は画商だった父のお気に入りでね。私が小さかった頃どこからか手に入れてきたのです。製作年は今から五、六十年くらい前でしょうか。作者も作品名もわからない。聞いたところによると、どこかの街に立ち寄った際に古びた宿の倉庫に放置されていたものをただ同然で引き取ってきたというのです。そんなどこのギャロップの骨ともわからないシロモノだったから当然値段なんて付きませんでしたけど」
     尋ねもしないのに館長はそんな具合で語りだした。尤も値がついたところで手放しはしなかったでしょうけどね、とも付け加えた。父のお気に入りだと言ったけれど、館長も館長で相当この絵が好きなのだろうと俺は思った。
    「この近くにお住まいですか? 本館と違ってここは知っている人が少なくてね。あなたのように毎日来てくれる方がいるのは喜ばしいことです。よろしければお名前もお聞きしたいな」
    「……キヨセです。家は近くないけど学校が近くにあるのです。ミナモ美術大学」
    「おや、美大生の方でしたか。何を専攻なさっておられるんですか?」
    「一応、油絵を」
    「それは素敵だ。ではキヨセさん、今度はぜひあなたの作品も見せてくださいね」
    「お見せするほどの腕ではないですよ」
     謙遜して俺は言う。すると、
    「そんなことありませんよ。この絵を気に入ってくれたあなたの絵ならきっと素敵ですよ」
     そう館長は言った。
    「……それじゃあ、スランプから脱出できたら考えます。梅雨入り以来絶不調なもので」
     仕方ないのでそう答えておいた。再び青い街に視線を戻す。雨の降る音が響いていた。



     気がつくとまた夢の中に立っていた。少しばかり街を歩いてみる。昨日より空が青い、濃くなっている、いや深くなっている。そう俺は思った。昼とも夜ともつかない青い空。ただ雨の音は以前と変わらずばたばたと傘を叩いている。空は綺麗な青色で染まっていたけれど建築群は未だ白と線のままだった。でもじきに青色に染まる。そんな気がする。ふいにぱちゃぱちゃと水溜りの上を何かが走っていく音がして後ろを振り返る。だが、走っていたそれはすぐに建物の裏手に入ってしまった様で姿を捉えることはできなかった。何か、いる。この街には俺一人しかいないと思っていたのに。



     梅雨は未だ明ける様子を見せない。卒業制作も特に進展なし。大学に行っては一応鉛筆を握り、それでも結局は眠ってしまう。そして別館に絵を見に行く。そんなサイクルを俺は繰り返していた。最近変化があったことといえば、館長と話すようになったということくらいか。
    「キヨセさんは、やはりプロになられるんですか?」
     いつものように絵を眺めていると、隣にいた館長がそう尋ねてきた。
    「ええ、まぁ、希望としては……でも絵だけで食える人間なんてほんの一握りですから、生活の糧は他で稼ぐことになるかも知れません。でも絵を描き続けたいって希望は持ってます」
     そう答えたものの、俺にとってはプロでやっていけるか以前に卒業制作のほうが問題だった。
    「俺、これでも野望がありましてね。今確認されているポケモンを全種類描きたいんですよ」
     調子に乗ってそんなことを言ってみる。
    「そういえばこの絵、ポケモンがいませんね。通常ミナモ美術館ではポケモンがモチーフになった作品を扱うのでは?」
     俺は、今更そんなことに気がついた。絵にイチャモンをつけたい訳ではなかったが、そうなるとこの作品の待遇は異質なもののように思われたのだ。
    「さすがに美大生は目のつけどころが違いますねぇ。実はね、ここにこの絵を置いておくようにって父の遺言なんですよ」
    「遺言、ですか」
    「父のお気に入りだったって言ったでしょ。ホントは本館に置きたかったらしいんだけど、展示コンセプトがね。ここにはそういう作品がたくさんあります。たとえ、ポケモンがモチーフでもあまり評価されなかったとかね。それでも父が手放せなかった作品がここに集まっているんです。どんな有名な画家の名のある作品だって好きになれないものはなれないでしょ。でも、無名の画家で無題の絵画でも好きなものは好き、そういうもんです。父は生前よく言っていました。ここにある作品は生きているんだって。他がなんと言おうと、作者も名前もわからなくても、ここにあるのは命ある作品ばかりだと」
    「……まるで九十九神ですね」
     そんな館長が熱っぽく話を聞いていて、ふと俺は言った。
    「つくもがみ?」
    「百年を経た古い道具は妖怪になるんです。命を持つんだそうですよ。だったら絵にもそういうのあるんじゃないかと思って。そういう思い入れのある絵なら特に」
    「なるほどねえ、もっともそうだったら本館も別館も妖怪だらけですね」
    「ハハ、違いないです」
    「やっぱりアレですか、描かれているポケモンが絵の中から出てきたりするんでしょうか」
    「そうなると本館にあるポニータの群れなんかすごいことになりますね。伝説のポケモンの展示室に至っては天変地異が起こりますよ、きっと」
    「それは、とても賑やかで楽しそうですねぇ。でも、それなら……」
    「それなら?」
    「この絵はどうなんでしょうね? ポケモンのいないこの絵からは何が出てくるのでしょう」
     館長はしみじみとそう言った。うーんと俺は唸る。
    「でも、五十年前の作品なんしょう? 何か出てくるにしてもあと五十年待たないとだめなんじゃないですか」
     十秒くらい考えてそう答えた。
    「でもねえ、本館でも別館でも、もし一作品にだけ何かが宿るとしたらこの絵だと思うんですよ、私は。それは、キヨセさんも同じ意見なんじゃないですか?」
    「それは、同意します」
     俺は即答した。
    「父も同じ意見を持つと思いますよ。父はね、この絵は誰かを待つ絵だと言っていました」
    「わかるような気がします」
     俺はまた青の街を仰いだ。やはり素晴らしい色彩だ。その青の中にワンポイントだけ置かれた黄色。整然とならぶ町並みの中にひとつだけ明かりのついた街灯がある。それが俺には誰かを待っているように見えてならなかった。この絵を最初に見たときから抱いていた感想だ。
    「だから別館の、本当は本館に置いておきたかったんだけど、とにかく一番いい場所にっていのが父の希望だったんです」
    「それでこの場所なんですね」
     中庭を臨むこの絵のための展示室。庭のほうからは水の落ちる音が聞こえる。今日も雨だ。
    「雨、止みませんねえ。今年の梅雨は本当に長い」
    「ええ、本当に」
    「おかげで庭の池に住み着いているハスボー達は元気ですけど」
    「へえ、ハスボーが住んでいるんですか」
    「そうですよ。ちょっとそこをあけて庭に出てみればすぐに会えます。今度彼らの絵でもいかがですか」
    「……考えておきます」
     ポケモンか。そういえばあいつ、どうしているだろう。俺はふとそんなことを思った。一週間と少し前、この絵の前に案内されて以来、あいつとは顔を合わせていない。
    「そうだ。他に住んでいるポケモンはいないのですか? たとえば……」
    「たとえば?」
    「……シャワーズとか」
    「シャワーズですか、そんなポケモンがいたら素敵ですね。でも残念、時々アメタマが遊びにくる程度です」
     館長は残念そうに言った。あいつのことは知らないらしかった。



     ポケモンはカンバスを見つめ続けていた。つい一週間ほど前まで白い背景と黒の線しかなかったカンバスは随分と青の割合が増している。現在進行形で、青年が青の割合を少しずつ、少しずつ増やしているのだ。
    「そういえば、君はいつもどこに泊まっているんだい? 僕は三軒先の宿に泊まってるんだ」
     青年はめずらしく自分のことを語り始めた。
    「僕はね、ずっと遠くからきたんだ。馬車に飛び乗って、汽車を何度も乗り継いで……ずっと幽霊のように生きてきた。世界にただ存在するだけで何もしないのが僕だった」
     カンバスに青を重ねる。
    「ある朝目を覚ますと、両親や屋敷の人間が揃いも揃って白い仮面を被っていたんだ。口元がばっさりと裂けた不気味なやつでさ。そのうちにお前も被れと強要するようになってきて……抵抗したさ、だが結果として僕は閉じ込められた。この仮面を被るまで外には出さないと。けれど絶対にそれはできなかった。だってあれを被ったら呼吸ができなくなる。僕は僕でなくなってしまうから」
     ずっと響いていた雨音がより増して響いてくる。青を重ねる。
    「だからあそこを逃げ出してきた」
     ポケモンは長い耳を回す様に動かした。視線はカンバス向いていたけれど、ポケモンなりの聞いていますよ、というサインなのかもしれない。だが、途端に雨音にゴホッ、ゴホッっと咳き込む音が混じって、ポケモンは青年のほうを向かざるを得なかった。青年は背中でぜえぜえと息をして、苦しそうに口元を手で覆っていた。何度かそれを繰り返した後にようやく落ち着いたらしく、彼は口から手を離した。見ると、手の平に赤い絵の具を散らしたように花が咲いていた。すぐさまぎゅっと手の平を閉じる。
    「なんでもないよ」
     と、青年は言った。



     だばだばと雨が降っている。本館に用事があるのか、今日は館長の姿が見えなかった。昨日の話に興味を持った俺は、今まで素通りしていた作品たちも見て回った。きっと生きていたなら館長のお父さんとは気が合ったんじゃないかと思う。ハスボーがいるという中庭にも入ってみる。屋根に守られて辛うじて雨に濡れていないベンチに腰掛けた。眼前には池が広がっており、すぐさま水面に浮かぶ丸い葉っぱが寄ってきて、その下にある顔を覗かせた。随分人に慣れているようだ。きっと館長が餌付けでもしているのだろう。
    「キュウウン」
     突然、聞き覚えのある声が聞こえてきて、俺はばっとその方向を見た。横に長いベンチの角にいつのまにかあいつが立っていた。
    「ああ! お前、何時の間に。最近見かけないからどうしたのかと思ってた」
     そう俺が言うと、シャワーズは嬉しそうに魚の形をした尻尾を振った。
    「神出鬼没なやつだなぁ。館長さんもお前を知らないというし、どこから通ってきてるんだ?」
    「キューン」
     そう聞くと、なぜか美術館の方を見て一声鳴いた。だめだ、アバウト過ぎてわからない。
    「俺はいつも大学からだ。この近くにある大学から通ってる。家は別にある。電車に乗って四十分くらいのところだよ。スランプ脱出のきっかけを掴むまでは入り浸ろうと思ってるんだ」
     俺は聞かれてもきかれてもいないのに、なぜかそんなことを喋ったのだった。
    「俺さ、ここのところずっと幽霊みたいな感じなんだ。何を描きたいのかわからない。描いてる時の呼吸が思い出せないんだ。それにね、ずっとヘンな夢を見るんだよ。どうもあの夢を見始めたあたりからおかしくなった気がするんだ。でも、あっちは最近色が付き始めから、俺の現実より進んでるかな……まぁ、お前に言ったってしょうがないけどさ」
     だが、シャワーズは思いの外、話を真剣に聞いているように見えて、ちょっと意外に思った。するとシャワーズが俺の目の前にすたすたと歩みよってきて、ショウのモデルみたいに俺の目の前でくるっと一回転してみせた。
    「……描くものがないなら、自分を描けってか?」
     なかなかナルシストなヤツだな、と思う。
    「そういや、お前さんの仲間はいろんなのがいるんだよな。炎に雷、太陽に月、それに草と氷だっけ? その中では俺、シャワーズが一番絵になると思う。……別にお前がシャワーズだからってお世辞を言ってるわけじゃないぞ」
     するとシャワーズが期待するような顔をしたので俺は
    「ま、そのうち、な」
     と、言って牽制しておいた。でも、シャワーズか、などと珍しく前向きに考える俺がいた。泡吐ポケモンならどのような舞台で最も絵になるだろうか。



     その夜も夢を見る。いつもの夢の続きだ。空はすっかり青色に染まっていた。傘を差して、耳に雨音をくっつけながらいつものように歩き回る。すると街に立つ建物がある地点から青く染まっていることに気がついた。だんだんと世界がリアルになっていく。この耳に聞こえる音に相応しい世界へと近づいている。そう感じた。また誰かが、水たまりを踏む音を聞いた。振り返る。そして、走っていく者を目に捉えた。身体の三分の一以上もある絵筆のような大きな尾を振って、それは雨の中を走っていた。
    「イーブイだ。どうしてこんなところに」
     後を追ってみたけれど、すぐに見失ってしまった。



    「そうか、これに似ているんだ」
     絵を見ていて妙なことに気がついて、俺は声を漏らした。
    「どうしたんです、いきなり」
     横に立っていた館長がちょっと驚いた様子で聞いてくる。
    「夢ですよ。スランプに陥った頃からずっと見ている夢があるんです。そこは色を塗る前の絵画みたいなひどく味気のない街でね、でも最近だんだんと色がついてきたんです。色がついてきたと思ったらね、この街にそっくりなことに気がついたんです」
    「そりゃあ毎日見に来ているもの、キヨセさん。夢にだって出てきますよ」
     そう言って館長は笑った。そう、たしかにそうなのだ。これだけ見ているんだ。夢の中に出てきたって不思議じゃない。だが、俺が話したいのはここからだった。夢の光景に似ていると気がついたのと同時に、俺の頭の中にとある仮説が浮かんでいたのだ。
    「……ねえ館長さん、ポケモンのいないこの絵から何が出てくるのかって話覚えてます?」
     俺は続けざまに尋ねた。
    「ああ、九十九神の話ですね」
    「俺、この中から出てくるのはポケモンじゃないかと思うんです」
    「どうして?」
     不思議そうな顔をして、館長は聞き返してきた。
    「この絵はポケモンの絵なんです。街は背景。作者は背景をすっかり描いた後に、最後に主役を描き加えるつもりだった。でも何か事情があって描かれなかった。……未完成なんですよ、この絵は」
    「どうして、そう思うんです?」
    「それは……」
     それは、結局、夢の中の話だ。誰もいないと思っていたあの街にはポケモンが居た。水溜りを踏んで走っていたイーブイ。だから、この絵の中に描かれるはずだったのは、きっと――。だが、次の瞬間、俺の中で俺の感性がそれは違うと言った。あの街にはもっと相応しいポケモンがいるような気がしたのだ。
    「それは、美大生の勘ってやつですよ」
     結局、その場では結論が出ずに俺は言葉を濁してしまった。
    「なるほどねぇ、でも面白い仮説だ」
     荒唐無稽なことを口走ったにもかかわらず、館長は感心したように言った。



     カンバスの大部分を青が覆いつくしている。白い建造物郡は日を追うごとにだんだんと数を減らしていき、残りは数えるほどになった。もう少しだ、と青年は思う。だが、次の瞬間にまた咳込んだ。これで何度目になるだろう。青い部分が増えるたびに回数が多くなっているような気がした。梯子から降りて身体を休ませることにする。ポケモンが駆け寄ってきて、心配そうに彼を見つめた。青年は力なく赤く染まった手の平を開く。もう誤魔化せないな、と呟いた。
    「大丈夫だよ、僕に残された時間は少ないけれど、これを仕上げるには十分だ」
     部屋の隅によりかかってカンバスを見上げた。
    「カンバスはじきに青で埋まる、そうしたらあの中心に持ってきた黄色で、街灯の光を入れるんだ。それでやっと仕上げに入れる」
     ポケモンは首を傾げた。カンバスが青で埋まったらこれは完成するのかと思っていたから。
    「ずっと憧れてた、描きたかったポケモンがいるんだ。彼女はすごくきれいなポケモンでね。でも、すごく珍しいらしくて、本物は見たことがないんだ。小さい頃、本で見ただけ。名前だって知らない」
     雨音を聞きながら、青年は言った。
    「一目惚れだったんだ。ずっと彼女に恋していた。僕の人生は何もすることがなくて、僕はただそこにいるだけで、だから閉じ込められていた白い部屋の中でずっと考えてた。小さい頃に本で見たあのポケモンにはどんな舞台が似合うだろうって。僕なりに考えた結論がこれなんだ。今までの工程はすべてあのポケモンのため。カンバスが青で埋まって、街灯が灯った時に彼女はやってくるんだ」
     雨の音が響いている。残された時間が少ないと知ったとき、青年は決意した。あの場所を抜け出そう、そして、恋焦がれたあのポケモンに会いに行こうと。再び青年はカンバスを見上げる。ずいぶんこの雨音に相応しい出来になってきた、と思った。



     夜、閉館の時間になって館長に別れを告げると、俺は別館を出た。雨は相変わらず降り続いていて、ばたばたと傘を叩いていた。あたりはもうすっかり暗くなっていて、道路に沿ってぽつんぽつんと等間隔に立てられた街灯に照らされた道がかろうじて見えた。あれからずっと俺は考え続けていた。あの絵に最も相応しいポケモンはなんだろうと。ばかばかしいとは思う。だいたいあれだけ完成された絵にポケモンが入るだなんて俺の妄想もいいところなのに。だけれどももう少しで結論出そうな気がした。ちょうど雲がこれ以上水を持ちきれなくなって、地上に涙を落とすように、もう少しで結論が空から降ってくる気がしたのだ。そうこうしているうちにバス停を照らす明かりが見えてきて、そして俺は待ち人に気がついた。
    「ん、あいつあんなところで何やって……」
     明かりの下にあのシャワーズが立っていた。前足をぴんと伸ばし、後ろ足は折り曲げる。魚のような尻尾をくるりと手前に巻いていた。誰かを待つように、雲の上に思いをはせる様に、少しばかり顔を上に向けて、空を仰いでいる。俺はばちゃりと傘が落ちる音を聞いた。
    「そうか……そうだったんだ」
     それは雲のように立ち上る確信だった。それは俺がずっと焦がれ見つめ続けていたあの光景にぴったりと重なっていた。あいつがこちらに気がつき、振り返る。すっくと立ち上がると、ついてこいとでも言いたげに尻尾を振ると歩き出した。



     青年は青を重ねる。ついに最後の一棟に筆をつけた。丹念に青色を塗り重ねていく。時々咳き込んだが、もう休もうとはしなかった。生きている、今自分は生きている。今は息苦しさが愛おしく感じられた。ついに画面全体が青色に染まる。あらかじめ用意しておいた絵の具を取り出すと、パレットに黄色を捻り出した。溶剤を垂らし、入念に混ぜてから、筆に乗せる。彼は青い街に黄色い街灯の光を灯した。
     これで舞台装置は完成。今やこのカンバスは彼女がやってくるのを待つばかりだ――。興奮は最高潮に達する。これこそが待ち望んでいた瞬間、自分の描きたかったもの。だが、青年は背後に不吉な声を聞いた。
    「探しましたよ」



     シャワーズの後ろについて、俺は歩いていく。道は暗くてもうどこを歩いているかわからない。街灯も見えない。ただ真っ暗な道でシャワーズの青い身体があの別館に飾られた絵の青のようにぼうっと光って見えた。耳には鈍い雨音だけが響いている。不意にはるか遠くのほうで明かりが灯るのが見えた。すると、シャワーズがばっと駆け出した。
    「おい、待てよ!」
     俺はすぐさまそう叫んだけれど、シャワーズはすぐ闇に溶けて見えなくなってしまった。途端に雨の音がよりクリアに聞こえ出して、閉じていた世界が開くように、俺の前で視界が広がった。その目の前に広がった世界を見て、俺は驚愕する。それ夢で見たあの光景だった。そして今やその世界は完全に青の色に染まっていた。それは、別館で出会ったあの風景を完璧に再現していたのだ。



     青年の目の前に現れたのは二人組みの男達だった。その正体を悟った青年はとっさに身構えたが男達のほうが早かった。あっと言う間に青年は床に組み伏せられる。傍らにいたポケモンは驚いて部屋の隅に退避する。青年が叫ぶ。
    「何をするんだ! 離せ!」
    「お迎えにあがりました」
     男の一人が冷めた声でそう言った。
    「迎えにきただと! 嘘をつくな! お前達は僕を捕まえに来たんだ。あの狭い部屋に閉じ込めるために来たんだろう!」
    「めったなことを言うものではありません。あなたのお父様とお母様が心配しておいでです」
    「知らない! どこもおかしくない僕の考えをおかしいと言って閉じ込めるあの人達のことなんか!」
     雷が落ちた。いつのまにか雨脚が強まってざあざあと大きな音が部屋に響く。
    「離してくれ。僕はどこもおかしくなんかない。どこもおかしくなんか」
    「あなたがた精神病患者は皆同じことを言う」
     男は動じる様子もなく、冷淡な言葉を投げ捨てた。
    「どうして放っておいてくれないんだ。どのみち近いうちに僕は死ぬって言うのに、どうして最後くらい自由にさせてくれない!?」
    「だからこそ、です」
    「離してくれ、いやだ! あんな仮面を被らされて、あの場所で幽霊のように生きて死んでいくなんて耐えられな、」
     そこまで言いかけて青年はゴフッと咳込んだ。赤が飛び散る。口から生暖かい液体がぼたぼたと床に落ちる。頭が急激に熱くなって、気が遠くなるのがわかった。それでも意識を保とうと目を見開く、視線の先に部屋の隅で震えながらも心配そうに自分を見る茶色のポケモンが見えた。
    「これはまずい。鎮静剤を」
     男の一人がそう言うと、もう一人がバッグを開いた。注射器を取り出すと、馴れた手つきですばやく青年の腕に刺す。青年は唇を噛んだ。これを刺されたらもうだめだと知っていたから。だから、最後に、搾り出すように叫んだ。
    「戻って……くるから」
     青年はポケモンに向かって叫んだ。
    「戻ってくるから! 僕は必ずここに戻ってくる。絵を完成させに必ず戻ってくる。だから僕を忘れないで、僕を覚えていて、いつかきっとここに、」
     がくん、と急速に意識が沈み行く。もう霧がかかったようにしか見えないポケモンのシルエットが歪む。それを見て彼ははっとして、そして最後に微かに呟いた。
    「どう……してかな、彼女……少しだけ君に、」
     それが、少なくともポケモンにとっての青年の最後の言葉となった。彼が意識を失ったことを確認すると、男達は彼をかついで足早に去っていった。そして二度と戻らなかった。



     俺の立っている世界、そこはまさにあの絵の中そのものだった。昼とも夜ともつかない青ざめた空、そして街。進んでいくと、街灯が見えた。絵にあったあの街灯だ。その下に小さなドアがあった。何気なしに触れると、鍵はかかっていなかったらしく鈍い音を立てて開く。その先には狭い廊下が続いていて、俺は吸い寄せられるように中へと進む。そして、視界が開けた。中には今まで歩いていた街を描いた世界が広がっていた。そして、部屋の隅には小さな茶色いポケモンが一匹。小さなイーブイが一匹居た。
    「――ただいま」
     どうしてだろう、俺は急にそんな言葉を漏らした。薄暗い部屋に青く輝く絵を背景にして俺達は向かい合う。ただ、どうしようもない懐かしさが胸を打っていた。
    「はじめまして、俺はキヨセ」
     そこまで口にしたときに目から雨粒が溢れ出した。そこで、ふと俺は違和感を覚える。涙が頬を伝った感触がなかったのだ。おかしい。そう思って俺は自らの顔に触れた。そして、気づいた。いままで自分がずっと『仮面』をつけていたことに。
     そうか、そうだったのか。
     俺は自らの顔についていた『仮面』を引き剥がした。
    「長い間待たせてごめん…………僕だよ」
     自然に息が出来る。すうっと深呼吸をすると俺は言った。
    「君は、あのシャワーズなんだろ。僕が連れ去られたあの後に君は進化したんだね」
     すると、イーブイがぶるぶると震えた。そして、身体の異変に気がついた。ぐんぐんと自分の体長と尾が伸びている。茶色の毛皮が青ざめて、襟巻きはもはや毛皮でなくなった。筆のようだった尻尾、そして長い耳は、魚のヒレに似た形に変化していく。
    「だって僕がこの絵を描くために砕いて使ったのは水の石だから」
     あの時はそれと知らなかった。ただ彼女の色によく似たこの石を絵の具にして絵を描きたいと俺は思ったんだ。
    「だからね、僕がずっと恋していたのは、描きたかったのは君なんだよ」
     直接触れることはなかった水の石。けれど絵に描かれたそれは長い時間をかけて、少しずつ、少しずつ彼女の身体に影響して、そして。
     そして、彼女の姿は、もはや小さなイーブイでなくシャワーズへと変貌していた。
    「約束どおり僕は戻ってきた。絵を完成させに戻ってきたよ」
     俺はそう言って彼女を見る。シャワーズになった彼女は笑っているように見えた。
     部屋の隅に歩いていくと箱を開いた。そこには最後の仕上げのために残しておいた一番明るい色の水の石が入っていることを知っていたから。箱の脇に置いてあったハンマーで石を叩く。そうとも。これが、これこそが俺の求めていた色のなのだ。俺の求めていた蒼なのだ。
     石を砕き終わると糊と混ぜ合わせて、俺は何の躊躇いもなく絵筆をとった。青い街に新たな蒼を滴り落とす。この街に降る雨のように。俺は描いた。夢中になって俺は描いた。青の上に明るい蒼で。黄色い街灯の下に、ずっと誰かを待っていたあの寂しい街灯の下にシャワーズを描いた。そうこれこそが描いている時の呼吸だ。長い間忘れていた感覚だ。もう描ける。きっと何十枚でも、何百枚でも。もう俺は幽霊じゃない。幽霊なんかじゃない。襟巻きを広げ、長く優美な尾を伸ばす。最後に魚のようなヒレを左右に土から顔を出した双葉のように二又に開く。ついに、やってきた。雨の街の街灯の下に彼女はやってきた。
    「ほら見て、やっとだ。やっと君を……」
     そう言って俺は彼女のほうを振り返る。きっと喜んでくれるに違いない。笑いかけてくれるに違いない。俺は高揚した気持ちを抑えきれないとばかりに彼女のほうを振り返った。
     けれど、いなかった。もう、そこにはもう誰もいなかった。
    「なん、で」
     雨の音が聞こえた。はるか空の彼方から青い町に落ちる涙の音が――。


     意識が戻った時はアパートのベッドの中だった。今日は休日だから大学は休みだったけれど、電車に乗った。外はまばらな雨だった。傘を差して、坂を上って俺は別館へと向かう。いつもと同じようにあの絵の前に俺は立った。青い街並を一望する。そしてその中心に、俺は彼女を見つけた。街灯の光に照らされて誰かを待つように、空を仰ぐように座っているシャワーズ、泡吐きポケモンの姿を。
    「おやキヨセさん、今日は早いですねえ」
     後ろから館長の声が聞こえてきた。俺は絵を見つめたまま
    「ねえ、館長さん」
     と、切り出した。
    「この絵にシャワーズなんていましたっけ?」
     館長が怪訝な表情を浮かべたのがわかった。
    「何を今更。まさかキヨセさん、毎日見にきているのに気がついてなかったんですか?」
     館長は当たり前のように言った。とぼけている様子はなかった。
    「本当にそうですか、実は昨日まで何もいなかったとかそんなことはありませんか?」
     続けざまに確認する。
    「キヨセさん、私を誰だと思っているんです? 仮にもここの館長ですよ。置いてある作品のことくらい把握しています。だいたいここはポケモンの作品を扱った美術館でしょう?」
    「……そうですよね。じゃあ質問を変えます。このあたりにシャワーズが住んでいると思うんですが、館長さんはご存知ですか?」
     いいや、と館長は答えた。
    「私は長い間、館長をしているけれど、シャワーズみたいなめずらしいポケモンは見たことがありませんよ。庭の池にハスボーやアメタマくらいならいますけどね……」
    「そうですか。実はね、俺をここに連れてきてくれたのシャワーズなんですよ。だからてっきり近くに住んでいるのかと思っていたのですが……」
    「そうなんですか? じゃあ、そのシャワーズはどこに行ってしまったのでしょうね」
    「さあ。でも案外近くにいるのかもしれません」
    「どうしてそう思うんです?」
    「……美大生の勘、ってやつですよ」
     青の街並みに灯る街灯の下を見つめながら俺はそう答えた。そう、彼女はここにいる。その気になればいつでも会いに行ける所に彼女は居るのだ。それなのに、だったら、目が覚めたときから、感じているこの寂しさは何なんなのだろう。
     雨音に誘われて中庭に出た。池に浮かぶいくつかの葉が動いて近寄ってくると顔を覗かせる。ハスボー達は池から這い出すと、とことこと足元まで歩いてきて俺を見上げた。俺は屋根の比護のない場所まで歩み出る。雨模様の空がよく見えた。
    「絵がさ、完成したんだよ。一ヶ月…………いやもっと長らくぶりに描けたんだ。ずっと完成させたかった絵だったんだ。やっと望みが果たせたんだ」
     今ならば描いている時の呼吸が思い出せる。たぶん、もう描けないなんてこともないのだと思う。ずっとずっと描いていける。描き続けていける。それなのに。
    「それなのに、どうしてかな……今だけは、泣きたいんだ」
     空から滴り落ちた雫が頬を伝った。

     雨が降っている。空が泣いている。青く黒く暗い雲が空を覆って街中に涙を落とす。
     けれども見える。いずれ雲を割って差し込む光が、明るい青がどこまでも染み渡る晴れ渡った空が。
     夏が来る。梅雨が明けようとしていた。




    雨恋 了


      [No.282] 書いてみました 投稿者:こはる   投稿日:2010/07/15(Thu) 18:26:43     70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5

    わたしは、おまえに捕らえられた。その白く輝く命にからめとられた。
    わたしは、月光すらかすむおまえの虜だ。

    わたしはおまえを捕らえる。
    白の毛も、蒼い炎も、おまえの命も。
    おまえはわたしを捕らえる。
    金の毛も、紅い炎も、わたしの命も。
    そうやって、わたしとおまえは捕らえあう。歪んだ籠のなかに捕らえあう。

    おまえはだれにもわたさない。おまえだけはわたさない。
    だれにも、わたさない。だれにも、わたされやしない。

    -----------------------
    図々しくも書かせていただきました。
    素適な絵に文章力が途中脱落……ごめんなさい!


      [No.262] 歪(イラストのみ) 投稿者:える   投稿日:2010/07/11(Sun) 00:32:42     76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:TEST1】 【TEST2】 【TEST3】 【TEST4】 【TEST5
    歪(イラストのみ) (画像サイズ: 1920×1680 298kB)

    おまえはだれにもわたさない

    おまえだけは わたさない

    タグ:書いてもいいのよ 批評していいのよ


    | 1 |


    - 以下のフォームから自分の投稿記事を修正・削除することができます -
    処理 記事No 削除キー

    - Web Forum Antispam Version -