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  [No.3795] カイリューが釣れました 4 投稿者:マームル   投稿日:2015/08/02(Sun) 17:54:53   76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 町のベンチで横になる事一時間。
 それだけの時間が、俺には必要だった。ウインディにゲロを吐かなかった事だけは、少し後悔している。
 吐いちまえば良かった。ただ俺の隣で、今はのんびり欠伸をしているこいつを見ると、心底そう思う。
 走っている時でさえ、俺がどれだけ止めようとも走り続けやがったし。
 カイリューも、それを追って更に速度を上げるし。今は人の方を興味津々で眺めているだけで、こいつも俺の事を心配しねぇ。
 畜生。俺の休日が。
 はぁ。吐き気は収まったものの、気分が悪いのには変わらない。車で来れば良かったか?
 いや、ボンネットが更に凹まされるのもな。面倒だな。
 困った。
 立ち上がって「行くぞ」と二匹に声を掛ける。
 ウインディはやはり、何も罪悪感が無い顔で、俺を眺めた。何も出ねぇぞ。

 隣にウインディ、後ろにカイリュー。
 そんな大型二匹を連れて町を歩く俺は、流石に少し浮いている。帽子型にカットされたトリミアン。ピチュー、ピカチュー、ライチュウを連れたトレーナーはわざとそうしているのではないかと不安に思う。ぼげーっとしたコダックを抱きかかえて歩いているトレーナーは、重たそうなビニール袋を両腕に更に引っ提げて、けれど満足した顔で歩いている。
 俺も、浮いているとは言えその程度に見られていると良いのだが。ただ、カイリューが野生だとまでは、誰も分からないだろう。
 今日は何をするの? と言うような目つきでウインディが俺の方を見て来る。
「さぁな」
 と俺ははぐらかした。俺も、どこに行けば良いのか、良く分かってない。警察? 市役所? それとも?
 お堅い場所じゃ、返って面倒な事になりそうだし。
「保険、かぁ」
 呟いて、頭に浮かぶものは、強力なボール。勿論手には入らないが、マスターボールを投げれば……、掴んで返されそうだな。
 次に浮かんだのは、荒っぽい手口。麻酔銃……、んなもん同じく手に入らないわ。
 それに刺さっても、効くかぁ?
 効くとしても、あの巨体じゃあかなり時間掛かりそうだし。
 はぁ。
 そもそも、万が一、何て事考える必要があるかと思う。その万が一が起こった時、被害が悲惨を越える程になるが。
 ボールに入ってくれない。入らせる事も出来ない。
 参った、なぁ。

 道中、コイキング焼きが売られていたので、二匹にも買って、俺も食う。
 ウインディの上に座って、ぼうっと考える。どうすれば、良いかな。目の前で、バクフーンが怒りの形相で走り去って行くのが見えた。
 車より速かった。それでいて通行人の間を見事にすり抜けたりして、どこかへ向っていた。
「お前も怒ったら、あんな風になるのか?」
 カイリューは口に付いたあんこを小さな指で拭って舐めとりながら、首を傾げるだけだった。
 言葉さえも通じないし。放ってその万が一が起こらないようにするしかないのかもしれない。
 ぶらぶらと歩き、どこにも寄る事も無く、気付いたら町の外れに出ていた。
 でかいポケモン二匹を連れた俺を見て、小さな野生ポケモン達が逃げて行く。
 そんな中、ばりぼり、と何かを食う音が聞こえた。
 うん? 何が残っているんだろう。そう思って、その音の方へ近付いてみる。
 ココドラだった。打ち捨てられた配管を夢中で食べていて、近付いても俺の方に気付いてなかった。
 ……頑丈、がむしゃら。
 そしてウインディの神速。
 これで良いか。ウインディ以外のポケモンを今まで持ってなかった俺だが、それは単に俺がポケモントレーナーではなかったからだ。集める趣味も無いし、そんなに愛情を沢山ばらまけるような人間でも無い。
「でもまあ、三匹位までなら、な」
 大した事は無い。
 ウインディは俺がココドラを捕まえるのに驚いたように見た。
「こいつがいりゃ、カイリューが万が一暴れた時、役に立つんだよ」
 その為だけにこいつをゲットするのは、少し憚れるが、まあ、特別好きなポケモンではないが、嫌いじゃない。
 今更、ん? と振り返ったココドラに、モンスターボールを投げると簡単に入った。
 さて、がむしゃらの技マシン、この町で手に入るか。
 それだけが問題だな。ボールから出して、持ち上げようとして、その小さな体の割りにとんでもなく重い事に気付く。
「んん、んぐぅ」
 ぎりぎり、持ち上がる。普通の成人男性位の重さはありそうだ。暴れられて、すぐに落としてしまった。
 ふん、と鼻息を鳴らしてまた配管を食べ始める。
 カイリューが配管ごと持ち上げて、少し重そうにしながらも、抱き抱えた。
 ココドラは抱き抱えられても全く恐れていなかった。
「お前とは大違いだな」
 そう言うと、ウインディはちょっとふて腐れた。
「さて、昼飯でも食うか」
 ポケモンも入れる場所。そう言う場所だとちょっと値段が高くなったりするが、その程度の金なら十二分にあった。
 そして、それから技マシンを買おう。
 安くて一万円、高くても二万円で、大体終わるだろう。
 町中へ戻る事にした。
 ウインディは、飯と聞いて、すぐに態度を変えて俺を急かしてきた。
 本当に、現金というか何というか。
 まあ、そこがこいつの良い所でもある。
 体調もそこそこ治って来ていた。


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