ある日のことだった。
何処かは分からないけど、俺は昼寝をしていた。
散々、遊び回った後かもしれない。
そして、燃料が尽きて倒れてしまっていたのかもしれない。
うつらうつらになっている俺の頭の下に何か温かいモノが置かれたような気がした。
はっきりとは分からなかった。
だけど、懐かしい温もりだったことだけは覚えている。
「おーい。ニイチャン、到着したぞー」
トラックに揺られながら眠りこけていた青年が目を覚ました。辺りを見てみると、そこには一人のおじさんが立っていた。白い鉢巻きを頭に巻いている。
「えっ!? もう到着したの、おっちゃん」
「おうよ、もうタマムシシティに到着してるぞ、早くニイチャンも降りな」
威勢のいいおじさんに言われるがままに青年がトラックから降りると、そこにはこれから自分が住むアパートと荷物を運んでくれている一匹のゴーリキーが青年の目に入った。
これから新しい生活が始まることに期待を膨らましていくと、青年の目はカンペキに覚めた。
青年の名は日暮山治斗(ひぐれやま なおと)
今年からタマムシ高校に通う新一年生だった。
一方、その頃、とある稲荷神社の門。
誰もいないその場所に一匹のロコンが現れた。赤茶色の毛並みが綺麗に映える。六本の尻尾も綺麗に毛づくろいされている模様でしっかりと整えられていた。
「ウチ、しっかり、やってくるで! ……だから心配せんへんでも大丈夫やから、な?」
空を見上げながら一匹のロコンは呟いた。
頭の巻き毛に挿してある白銀色のかんざしがその想いに応えるかのように静かに揺れた。
ロコンの名は灯夢(ひむ)
今年から三年間、ワケありの試練を受けるポケモンだった。
これから始まるのは世にも不思議な? 三年間の物語。