マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.65] 0巡目―2:物事は突然に。  投稿者:巳佑   投稿日:2010/10/19(Tue) 03:31:40   62clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「ええか? 今までのことを整理すると……こうや」
「お、おう」
「ウチは確かにここのアパート『楓荘(かえでそう)』のこの一室に契約したはずなんや。さっき契約書をお互い見せたから、実証済みや。……ということはコレは二重契約してもうていたことになるで?」
一人の人間が正座で説教を受けているかのように。
かたや一匹のポケモンは先生のように。
この情景が滑稽かどうかは想像にお任せすることにする。
「ちなみに、俺はココから出ていく気はないからな」
「んなこと。お互い様やろ」
「……ポケモンなんだから、外でも大丈夫なハズじゃ」
「ウ・チ・は、これから三年間、野良生活は禁止されとるんや!!」
治斗は今、ポケモンと会話をしている。
ポケモンのロコンと会話をしている。
別に治斗に特別な能力があるというわけではない。
ロコンが人間の言葉を操れるから会話が成り立っていた。
ただ、それだけのことである。
ロコンの『ボケモンが人間の言葉を話せて、悪いか!?』という怒りの一言のおかげだろうか、
治斗はこの状況に見事に順応していた。
しかし、一難去ってまた一難。問題はそれだけでは済まなかった。
ロコンは治斗がお菓子用に買っていたみたらし団子をもらっていた。最後の一本を食べ終わってから口を開いた。
「アンタ、なんでココに住もうと思った?」
「いきなりだな……」 
「悪いんか? まず、お互い理由を言おうや、り・ゆ・うを!」
本物の火炎放射が飛んで来ても嫌だったので、治斗は正直に答えることにした。

「俺は今年からタマムシ高校に入ることになったんだ。それで一人暮らしを始めたというわけだ」
「両親は?」
「絶賛海外旅行中。それも、理由の一つかな」
治斗が次はお前の番だと言うようにロコンを見やる。
「ウチは、まぁ見ての通りロコンなんやけど……。キュウコンになる為に上からの試練が来てな、それに合格する為にココに来たんや」
「キュウコンって、炎の石で進化できるんじゃなかったけ?」
「……人間はウチらのことをあんまりよく知らんみたいやな。確かにウチらロコンは炎の石で進化できるで? だけど、それはあくまで一つの方法に過ぎんのやよ」
「じゃあ、もう一つの方法があるってこと?」
「そうや。まぁ、方法というより、一つの道なんやけど。炎の石で進化するロコンの他に歳を重ねることで進化するロコンもおるんや」
「歳を重ねるってどれくらい?」
「ざっと千年やな」
「!!??」
「千年経ってようやくキュウコンになれる、それがウチなんや。ちなみに歳は997歳やで、どうや? すごいやろ?」
「………………」
妙な治斗の沈黙がロコンの神経を逆なでした

「なんや!? まさか、ウチが可愛いからそんな威厳がないとか! そんなこと思ってるんやろ!?」
ポケモンはソレを『じばく』と読む。

「いや、その銀色のかんざしだけ年代物って感じはしたが」
人間はソレを『墓穴を掘る』と読む。

「おんどれはウチのことを馬鹿にしてるんかぁ!?」
ほぼ防衛反応的に今後のお菓子用に買い溜めしておいた茶菓子を治斗はロコンに出した。
それを条件反応の如く受け取ったロコンは雑に包紙を破ると一個のまんじゅうを口に入れた。
みたらし団子ではなくフエン産の温泉まんじゅうだったが、なんとかソレで火炎放射を止めることができた治斗だった。
「……ったく、ええか? もう単刀直入に言うで?」
緑茶を一口加えてからロコンは続けた。
「これから三年間、ウチは人間としてタマムシ高校に入って無事に卒業しなきゃあかんねん」
「えっ人間って、おま、ポケモンだろ?」
言葉の意味が理解できず治斗は訝しげ満点にロコンを見つめる。
ロコンはそんな治斗を鼻で笑いながら自慢げに語るふりをしながら、いきなり一回転した。
煙が上がったと思うと、もう消えていて。
そこに立っていたのは一人の少女だった。
背は150後半で、赤茶の髪の毛を腰まで垂らしていた。
そして三本のクセッ毛が先端を丸めながら頭から立っていて、その近くには例の白銀色のかんざしがあった。
そして服はしっかりとタマムシ高校の制服(紺色のセーラー服)であった。
「どうや? なかなか可愛ええやろ?」
驚いた治斗の顔はまさしく狐につつまれた顔であった。


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