マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.64] 0巡目―1:邂逅は突然に。  投稿者:巳佑   投稿日:2010/10/15(Fri) 14:38:23   54clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


「じゃあ、後のことはニイチャンに任していいかな?」
「はい! 大丈夫っす。お世話になりました!」
「いいってことよ!」
日暮山治斗に最高の笑顔を向けるおじさんの歯は真っ白に燃えていた。ゴーリキーも白い歯を見せていた。その後、おじさんはゴーリキーをモンスターボールに戻すと再びトラックに乗った。
「少年よ! 大志を抱けよぉぉぉぉ!!」
トラックを発進させながらのおじさんの叫び声を受け止めた治斗はガッツポーズで気合いを一発、自分に注入すると、今日から自分が借りるアパートの一室へと向かって行った。
恐らく築数十年であろう屋根が朱色の二階建て木造アパート。
一階に大家さんのを含んで二室、二階も同じく二室あった。
治斗が住むのは二階の一室、南寄りの部屋である。
日当たり良好、タマムシシティの街外れの為か緑が多くて落ち着く。少々、すきま風が悩みの種だが、悪くない部屋であった。おまけに家賃も安めで言うことなしだ。
生まれて初めての一人暮らしにテンションを上げながら、今日から住む部屋に入って行った。
「キッチンに、トイレに、小さいけどお風呂に……と。これで家賃があの値段は安いよな!」
意気揚々と部屋の中を探索しながら治斗はダンボールの中から色々引っ張り出す。勉強机などの重たいものはゴーリキーが運んでくれたので、後は小物系と――。
「ふわぁ……。誰や? ウチの住みかに手ェ出しとる奴は?」
不意に声が部屋の中に響いた。
可愛げのある声音が関西弁と共に。
押し入れから出て来たのは一匹の赤茶色のポケモン、ロコンだった。その頭の巻き毛には白銀色のかんざしが刺さってある。
「誰かは知らんけど……ウチが怒る前にさっさと出て行かんと罰当たるで?」
「え〜と……」
ロコンは更に睨みをきかせる。
「小皿系は一応、あっちに置いとくか……。それとラジカセはここに……と」
治斗は片づけに夢中だった。
そしてロコンがこけたのは言うまでもなかった。
しかも、そのこけた間抜けた音で標的の人間がやっと自分の存在に気がついたものだから余計にタチが悪い。
「えっ、ポケモン?」
ロコンの中にある何かが切れた音がした。
「いまさら、気付くんかいな! おんどれは!! ウチがどれだけスベッタか、分からんかったやろ!? 罰としてみたらし団子を食わせろやぁぁ!!」
思わず、逆上したロコンから矢継ぎ早に放たれていく人間の言葉に治斗はすかさず息を飲んだ。
「ぽ、ポケモンがしゃべってるっ!?」
「なんや、ポケモンが人間の言葉話せて悪いんかぁぁぁ!?」
一方は口から比喩ではない本当の火炎放射が出かねないポケモン。
かたや、もう一方は瞳孔を丸くさせている人間。
このように物語は騒々しく始まったのであった。 


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