マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
このフォームからは投稿できません。
name
e-mail
url
subject
comment

[新規順タイトル表示] [ツリー表示] [新着順記事] [留意事項] [ワード検索] [過去ログ] [管理用]

  [No.919] 怪しいパッチ:3 投稿者:リング   投稿日:2012/03/21(Wed) 23:27:30   65clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

-3-

 おや、13時か。確か職員からいろいろ質問をされてベッドで横になったのが23時だから、かれこれ14時間も寝ていたという事か。ふむ、寝不足の私にはちょうどいいかもしれない。
 はは、スタリよ。くすぐったいぞ……起きたとたんに私の顔を舐めるな。とはいえ、私は朝起きても顔を洗わないから、お前がいてくれないと顔を洗う切っ掛けすらもつかめないから一応感謝はしているのだがな。
 洗うと言えば、そういえば……昨日は久しぶりに風呂に入ったかな。かれこれ一週間近くか、汗は掻かなくとも呼吸と鼓動が意思とは関係なしに続いていく限り、新陳代謝は起こるから垢はたまる。
 昨日の風呂で流れおちた垢はすさまじいものだったなぁ、うむ。心なしか体が軽くなった気分すらするぞぉ。

 さて、昨日拾ったあの子はスタリ程ではないがなかなかにかわいらしい見た目をしていた。心の三妖精とも三海月クラゲとも呼ばれる存在で、一部ではマニアもいると聞いた。
 そういえば、昨日運びこんだ時は結構な重症だったが、生きているのだろうか? 一応、社交辞令程度に安否を気遣って、もし死んでいたら線香の一つでもあげてやろう。もし死んでいた場合、このポケモンセンターに線香が売っているとよいのだがな。
 とにもかくにも、カツラをつけてコートを羽織り、さっさとチェックアウトをしようではないか……。

「よう、ジョーイさんよ。昨日野性のユクシーを拾ったものだ。その後、ユクシーの容体はどうなったのだ?」
「あ、えっとですね……峠は越えたようですので、後は容体を見ながら少しずつ検査を続けていく方針のようです」
「なるほど、線香を買わないで済んだか。ポケモンセンターに御線香が売っているかどうかを心配するのは杞憂であったな」
 なんだ、ジョーイさんは私の言葉に呆気に取られている。こんな言葉、私が本気で言っているか否かにかかわらず軽く笑って聞き流せばよい物を。全くどいつもこいつも……医療の現場ではイレギュラーがつきものだと言うのに、イレギュラーな現象である私に対する耐性の低いことだ。
 こんなんで、このポケモンセンターは大丈夫なのだろうか? 早急に新人の教育が必要だと思うがな。
「せ、線香……あはは、気が早いですよ。あ、え〜……それと、もう一つなのですがね……あのユクシー喋るのです」
「ふむ……まぁ、驚きはしないよ。テレパシーでしゃべるポケモンなど、珍しいが何処にでもいる。そうか、喋るのか……しかし、それがどうしたのだ?」
「貴方の……助けてくれた人物の名前を……尋ねておりまして……」
「ふむ……確かに名乗っていなかったな。どれ、読めるかどうかわからんがこいつを渡してやれ」
 バッグの中に、あれは常備している。

「チクナミ大学、システム情報工学研究科ドクターライセンス。『前田愛美奈エミナ』だ。あぁ、覚える必要はないぞ……ただ、三年程前カントーに赴いた時、大学の学園祭でプログラムバグ慰霊祭*2に参加して以降、久しく自分の名前を名乗った事が無かったから、たまには言ってみないと忘れそうなのでな。だから言ってみただけだ」
「は、はぁ……ではユクシーに渡しておきます。というか、渡しても何か意味があるのかな……」
 知るか。
「ふむ、それでは達者でな」
 さて、今日は私と同じくエサが尽きかけていたスタリの食料も一緒に購入してさっさと家に帰ろう。私の食料も合わせて12kg近くある重量は運動不足の私には堪えるが……まぁ、良いか。

         ◇

「ただいま、自宅警備員達よ」
 言うなり、私のもとに群がってきたのはポリゴン2。角ばった情報生命体のポリゴンにアップグレード用のプログラムを打ち込んで、なめらかなボディを獲得した可愛らしい奴だ。
 バトルには興味が無いとはいえ、5匹も家に飼っていればそれなりに警備効果が気になるところだ。なんでも、特殊面に優れたポケモンだとかで、ノーマルタイプゆえに攻撃範囲も広くいろんなポケモンに対して潰しがきく、万能型のポケモンなのだと言う。
 さて、このポケモン。訪問者を見て見知らぬ人物であれば近寄らないように警告して、それでも近付くようならば威嚇射撃。それでさえひるまなければ一斉攻撃を行うように調教されている。
 もちろん、来訪者がインターホンを押すくらいならばそのような行動を起こす事はないが、以前庭の地面が一部えぐれていたことがあったから、少なくとも威嚇射撃を行うべき事態があった事だけは間違いないのだろう。
 近所の子供が『ボールが入っちゃったんで取らせて下さい』と言いに来るような場所ではあるはずもないので、威嚇射撃を行った対象が泥棒だと言う事になるのならば頼もしい奴らである。

「さて……トゥプに変化はないのだな。ふむ、再アップグレーダーは失敗作か……ならば、今からまた新しいプログラムを作成しようぞ、自宅警備員たち。トゥプは後で元の状態にダウングレードだ」


*2 情報科学類において、自ら生み出しそれを滅したということに対する免罪の意味から、実地されるイベント。プログラムバグ慰霊祭(通称「バグ祭」)


- 関連一覧ツリー (★ をクリックするとツリー全体を一括表示します)

- 以下のフォームから自分の投稿記事を修正・削除することができます -
処理 記事No 削除キー