マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.925] 怪しいパッチ:5 投稿者:リング   投稿日:2012/03/23(Fri) 23:11:13   56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

**-5-

「よう、メロンパンよ。ウチになんの用だ?」
 おや、硬直している。ふむ、流石にいきなりメロンパン呼ばわりは馴れ馴れしすぎたかな? まぁ、いいか。ユクシーもお喋りで混乱させるのは何もペラップだけではないという事がわかって、また一つ賢くなれたことだろう。
「あ、え〜……なんと言うか、その……すみません。メロンパンって何のことでしょう?」
 ほう、テレパシーによってとはいえ流暢に喋るではないか。だが、自分が人間にどのように呼ばれているのかをよく知っていないようだな。これはいけない。
「メロンパンと言うのは、レモン色の表皮にメロン風の香料と砂糖をまぶしたパンのことで、丁度君の頭と似たような形をしているもののことだな。君らユクシーは人間からそのようなあだ名で呼ばれているのだよ。なぁに、心配するな。
 ライチュウというポケモンもコッペパンと呼ばれているし、成長に応じて覚える技にコッペパンチ*3という名称を付けられるほどなのだぞ。ユクシーもいつか、パンチ技を覚えてメロンパンチという技名を付けてもらえるといいな」
「は、はぁ……そうですか」
 おや、暫く黙って咳払いか。相当メロンパンと呼ばれたことが堪えたらしいな。

「あ、あの……ここに来た目的はですね。命を助けてもらった恩があるので……その……恩返しでもと思いましてね」
「ほう、予想通りか。ならば話が早い。毎日私のために味噌汁を作ってくれ」
 ふむ、これでは一昔前……いや、三昔くらい前のプロポーズだな。まぁいいか。
「え? えぇ? あの……それって、炊事を私に行えと?」
「ふむ、役不足かな? では洗濯と掃除も任せようか」
「いや、あの……その……」
「なんだ、知識ポケモンと言うだけあって研究に付き合えるとでも言うのか? それならば、そっちを頼んでみるのも悪くない……が、先に上げた三つは物臭な私には少々必要な仕事でな……優先順位は高めの仕事だよ。まぁ、ダメならダメで別のこき使い方を考えるまでだ」
 ふむ、なんだ。何も言い返せないでは無いか。やはり、湖に引きこもりをしていたから私と同じように社交的とは対極における性格になるのだろうな。

「あ、いや……それでいいです。というか、自宅で研究していたのですね」
「確かに私は自前の研究所を持っているとは言っていなかったな。まぁ……いいか。とりあえず、了承してくれたならばとても喜ばしい。最初は料理がまずくっても掃除が不十分でも怒りはしない。なぜなら、私自身がそうなのだからな。だからこそ、時間の削減が出来るだけでも儲け物だ」
「あ〜……もっと優しそうな人を想像していましたが……」
 ふむ、おかしなことを言うメロンパンだ。
「なに、優しくなくてもユクシーが倒れていたら拾ってあげることがあってもいいと思うがな。散弾銃か何かで撃たれていたが、密猟者にでもやられたか?」
「は、はい……ちょっと外出していた時に、鉢合わせして。密猟者は目が合ったものの記憶を消してしまう能力を持つ私の目を見ないように、カメラ越しで私を見るバイザーを通していましたね。連れているポケモンも目をつむったまま攻撃できるルカリオで……」
 ほう、なるほど。ユクシーは目を合わせた者の記憶を奪い取ると聞くが、きちんと密猟者はその対策をきちんとしているのだなぁ。

「で、そいつらはどうしたのだ? あぁ、殺したと言っても驚かんよ。お前は知識の神であって不殺生の仏様ではないのだからな」
「逃げ回って……最終的には主人共々氷河に投げ込みました……」
「ほう、すると死因は溺死かな? 顔に似合わずむごいこともできるようでなによりだ」
「あ、あの……はい、どうも。ポケモンもろとも……今頃コイキングのエサです……はい。しかし、その際あの傷……散弾銃のを負ってしまって……血の匂いを嗅ぎつけたのか、湖への帰り途中でニューラに襲われて……貴方に拾われました」

「ふむ、殺したのは賢明な判断だ。もし仮に、私の元に密猟者が追ってきて散弾銃を構えて詰め寄ってきたのならば迷わずお前を引き渡してしまうところだったぞ。そう言えばお前は優しい者をご所望か……優しい者だったらお前を庇って散弾銃に撃たれて死ぬのかな?」
「い、いえ……確かにそうですね。別に優しくなくっても、普通ならいいです。はい、贅沢は言いません」
 なんだ、控えめで可愛い奴だな。そんな事を言われると必要以上にこき使う事に良心の呵責が生まれるではないか。
「まぁ、確かに私は優しくはないが……ふむ、お前が死んでも私は困らないが、エイチ湖へ続く山道に店や宿を構える者たちが観光資源不足で困るであろう。運がよければユクシーが飛び回る場面がみられるエイチ湖と言えば、雪に閉ざされない夏の季節は、受験生が祈願に訪れる観光名所では無いか。
 そこに、ユクシーがいなくなってみろ? 観光客が失われ、経済効果も連鎖的に失われて、財政のやりくりが大変になる。
 ほら、なんといったかな? シンオウにあるタバリメロンと言うオレンジ色のメロンが名物の街……確かユウバリシティと言ったかな? あそこが昔一度財政破綻をしたではないか。私は、街の経済とは無縁の暮らしをしているから困らんがな。この街がそういう事の槍玉に挙げられるのを指をくわえてみているというのは忍びない。
 そのように……一応私も人並み以下ではあるが人情のようなものも持っている。だから、私が優しくないと言っても安心してくれたまえ。人道的に見て外道と言われるような事は恐らくしないだろうからな。
 知識ポケモンと呼ばれるようなポケモンならば賢いと察するが、ここまでのお話は理解できたかな?」
「あ、はい。理解出来ました……その、まぁ……頑張ります」
 ふむ……良い答えだ。しかし、こいつは口が疲れる奴だ。しばらく人間と話していないせいで私の口のスタミナが落ちているのもあるのだろうが、それでもこれはひどい。まぁ、話の長い私に最たる原因があることは否定しないがな。

「よし、ならば早速掃除をしてもらおうか。なぁに、何処に何をおいたか分からなくなるから、物を片付ける必要はないぞぉ。埃を取ってくれるだけで十分だから、頑張ってやれよな」
「えぇ、誠心誠意……やらせていただきます」
 ほう、頼もしい答えだな。しかし、どうしようかコイツ、何を食べるのか分からないが、変なものを食うのだとしたらいちいち取り寄せるのは面倒だぞ。いや、スタリのように勝手に外に行かせて勝手に食ってきてもらえばいいのか。
 それだけじゃない、よく考えればこいつに買い物の荷物持ちを手伝ってもらうと言う手段があるではないか。なんだ、"こき使ってください願望"の持ち主が現れただけで人生の展望が広がった気がするぞぉ。ようし、今日から素敵な『伝説の無駄遣いライフ』の始まりだ
 なんだ、メロンパンよ? 私をちらりと見て、もの欲しそうな表情をするな。何か言いたい事があれば言えば良いというのに……ふむ、少し私もダーテングになって喋りすぎたかな?
 よし、ここは場を和ませる話でもしようか。

「ところでだ、メロンパンよ」



*3:ポケモンカードにおいて30のダメージを与える技


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