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  [No.1664] 第7話・赤い石 投稿者:都立会   投稿日:2019/09/23(Mon) 20:31:50   5clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

ナミは木のほら穴の中で眠っていた。

外は日が燦々と差し込む昼間だが、

まるで死んだように眠り込んでいたのであった。

トレーナーでとの戦い、

そして、エナナとの闘いとその別れで

すっかり疲れてしまったのだ。

外の原っぱは氷もすっかり溶け、

また風が草をやさしくなでている。


サクッ!

原っぱに1匹のポケモンが来た。

『!』

その気配にナミは目を覚ます。

このにおい、

ナミが密かに待っていたポケモンである。

気配が自分がいる木の側で止まっている。

『キタッ!』

気配を意識しながらナミは少し笑うと、

ほら穴から少しだけ頭を出してみた。

その途端、

バッ!

波の真横から茶色い影が飛びかかってきた。

『!!っ』

ナミはそれを軽くよけてかわすと、

影に向かって

“みずでっぽう”を

お見舞いしてやった。

水しぶきがおさまると、

そこにはずぶぬれになったイーブイが居た。

『よお』

ナミは前にイーブイが言ったように彼に声をかけた。

『もうあなたの攻撃なんてお見通しよ。

 私バトルできるようになったんだから』

笑顔を見せながらナミは言うと、

イーブイは気まずそうな顔をしている。

『分かってる。

 オレ、

 ずっと見てたから』

『ずっと見てたって?

 乙女同士の勝負を?

 なによ、
 
 このスケベポケモン』

イーブイに向かってそうは言い放ったナミだったが、

だがイーブイが自分の心配をして見にきてくれた事も

同時に判っていた。

『それで、

 イーブイさん。

 炎の石は見つかったの?』

意地悪そうにナミは尋ねると、

『この姿を見りゃ、

 分かるだろ。

 まだだよ』

そんなナミにイーブイがぶっきらぼうに言い捨てる。

『そう、それは大変ね。

 やっぱり自然にはみつからないものね』

そんなイーブイを身ながらナミは妙に気の強い言い方をするが、

心の中では何も知らずにシャワーズにしようとした事や、

ひどい事を言ったのを謝らなければと思っているのだが、

なぜかこんな言い方になってしまう。

『ほっとけ。

 絶対オレはブースターになってやる。
 
 そのために何としても自分で炎の石を見つけてやる』

強がっているのか語気を強めながらイーブイが言うものの、

石探しにはかなり苦労しているようだった。

『まっ、

 セイゼイ頑張ってね。

 私も、応援してあげるから』

『なんだよその言い方。

 別にオレは助けを期待してはいないんだからな』

ナミの言い方にイーブイは腹を立てたようだ。

これ以上意地悪したらケンカになってしまう、

この辺が潮時かな…とナミは思うと、

『あら、

 “てだすけ”は覚えてるから

 できるかもしれないわよ。

 そう例えば…、

 もう炎の石を持ってるとか』
 
とカマを掛けてみた。

すると、

『じっ冗談はよせよ。

 あんたがそんな簡単に

 見つけることが出来るわけ無いだろ』

とイーブイは鼻で笑って言ったが、

『あら、

 忘れたのかしら。
 
 私が何でシャワーズになったのか。
 
 もう、ヒドイ人ね』
 
とナミが言うと、

その途端、イーブイの顔色が変わった。

『まさか…、

 本当にあるのか?』

真剣な表情をしながらイーブイが尋ねると、

『本当にあったら、

 どうするの?』

とナミは聞き返す。

イーブイはまだ半信半疑の様子で、

『もし…、

 そうなら…、

 それは…、

 その…、

 …ほしい』

と視線を地面に落としながらイーブイは呟く。

すると、

『♪』

そのイーブイの言葉を聞いてナミは、

ウエストポーチの中から木箱をくわえて出し、

イーブイの目の前で木箱をあけると、

キラッ

そこには赤く光る”炎の石”が入っていた。

『うそっ!!

 ほっ本当に、

 あったのか、
 
 本当に炎の石を持っていたのか』
 
声を震わせながらイーブイは木箱に近づき、

そして、その前でワナワナと全身を震え上がらせていた。

『つっ使ってもいいのか

 おっ俺が使っても良いのか?』

目が輝かせながらイーブイが聞くと、

『もちろんよ。

 そのために取り寄せたんだから、

 あ、いらないのなら返して』

意地悪そうにナミが手を出すと、

ブンブン!

イーブイはちぎれてしまう位に首を大きく横に振った。

『じゃぁ、どうぞ』

そう言いながらナミが少し離れると、

コトッ

イーブイは恐る恐る木箱に口を入れると、

”炎の石”をくわえて出した。

カッ!

その瞬間、

炎の石が輝きだし、

パァァァ!!!!

石から真っ赤な光の帯が吹き出すと、

瞬く間にイーブイの身体を包んでしまい

彼の体も赤く輝き始める。

カァァァァァ!!!

さらにその光が強くなったとき、

ズンッ!!!

イーブイの体が大きくなりはじめた。


ナミはイーブイが進化するのを見ていて、

自分がシャワーズになった時のことを

思い出さずにはいられなかった。

あの時は本当にショックだった。

自分が人間からポケモンになってしまい、

これからどうやって暮らしていけばいいのか本当に分からなかった。

完全に自分の未来をあきらめてしまっていた。

そんな自分を救ってくれたのがエナナだったし、

このイーブイだった。

エナナが居なかったら自分は生きてはいられなかったし、

イーブイが居なかったら自分で強くなろうとはしなかった。

そう思う彼女の目の前でイーブイが進化を終えた。

そこにはナミと同じくらいの大きさで、

赤い毛皮に首としっぽに白い毛をもっさりと蓄えた、

ほのおポケモン・ブースターがいた。

ブースターのその姿にナミは胸に今までに感じたことの無い

感情が芽生えたのを感じた。

『本当に、

 オレ、
 
 ブースターになれたのか?』

そのポケモンは聞いてきた。

まだ心の整理がついていないのか

進化した状態から微動だにできずにいる。

ナミは急いでポーチの中から手鏡を見つけると、

口にくわえて持っていった。

そしてそのままブースターの前に立って、

手鏡を彼に向けて見せた。

『ほんとだ、

 オレ、
 
 ブースターだ。
 
 ホントに、
 
 ブースターになれた』

そう言うブースターの目からは大粒の涙があふれていた。

ブースターのその喜びに満ちた涙に、

ナミも思わずもらい泣きしていた。


薄暗い森の中、

黒い毛並みのポケモンが歩いていた。

約束した場所までもう少しである。

彼のにおいがするのでよく分かる。

そこには森の中でもひときわ大きな、

1本の木があった。

『やぁ、

見張りご苦労だったねぇ』

その木の後ろで、

腕を組んで待っていた赤いポケモンに

彼女は声をかけた。

『もういいのか』

そのポケモンがその太い声で尋ねた。

『あぁ、

 もう彼女は立派な野生のポケモンだよ』

黒いポケモンが答えた。

『でも、

 本当に大丈夫か?
 
 まだ1週間だぞ。
 
 まだ教えてないことも
 
 あったんだろう?』

赤いポケモンがまた尋ねる。

よほど彼女のことが心配とみえる。

『あぁ、

 けどこれからあの子は自分で学んでいくよ。

 バトルなんてすごいんだから。

 自分で全部できたんだよ、
 
 あの子は。

 それに何せ、

 このあたしにも勝ったんだからね』

『それはウソだろ、

 エナナ。
 
 ぜったい手加減しただろ』

『手加減なんかしてないよ。

 本当にあの子は強くなったんだ。
 
 何なら一度闘ってみたらどうだい?』

赤いポケモンに言われ、

グラエナはそう言った。

『いやいや、

 おれ炎タイプだから水タイプにはかなわないさ。
 
 それに自分のトレーナーに負けたらみっともないだろ』

『あんた、

 闘ってもないのに
 
 もう負けると思ってるのかい。
 
 ご主人様に似て甘ったれだねぇ』

エナナは笑った。

『それにしてもチャモ、

 あれは名演技だったな。
 
 あの冷たい言い方。
 
 すごく良かったよ』

『いや、

 ナミさんがシャワーズになった時は
 
 みんなびっくりしていて、
 
 おれもどうしたらいいか分からなかった。
 
 きっと、
 
 あのままボールから出されていたら、
 
 自分も何とかしなければいけないって
 
 慌ててるだけだっただろうな。
 
 けど、
 
 ボールの中からエナナが声をかけてくれて、
 
 皆で話し合ったからやれたんだ。
 
 これから自分の力で生きていくようになる為に、
 
 今は冷たくされた方がいい。
 
 それがナミさんを本当に助ける事だって。
 
 そのために最初に出されたヤツが
 
 ナミさんの助けを断って、
 
 エナナだけ残して行ってしまうように。
 
 後は自分に任せておけって
 
 エナナがそう言ってくれたからこそ、
 
 おれはああすることが出来たんだ』

1週間前のことを思い出しながらバシャーモは言う。

『あぁ、あの場で優しくされたらあの子、
 
 絶対あたし達に頼っちまって、
 
 自分の力で生きてけるようにならなかっただろうからな。
 
 一度全部に見放されて、
 
 それからあたしが教えるからこそ

 あの子は1人前に成長できたんだよ。
 
 それにしても、
 
 あんたがナミさんを食べようとしたあの脅し方、
 
 あれだけはいただけないよ。
 
 あの子、
 
 絶対あたしにも食べられると思ったろうからね』

グラエナに言われてバシャーモは苦笑した。

『いや、あれは、
 
 野生の厳しさを教えるためであって……』

『いいや、

 あれは絶対楽しんでやってただろ』

『そういうエナナだって、

 ナミさんを川に投げ込んだんだろ。
 
 いくら水ポケモンでも、
 
 もし泳げなかったらどうするつもりだったんだ?』

『あたしを甘く見ないでほしいね。

 朝のうちにちゃんと
 
 ハスブレロに頼んでおいたのさ。
 
 もし泳げなかったら助けてあげてくれってね。
 
 まぁ、実際はその必要もなかったがね』

『さすがエナナだね。

 ナミさんのこと、

 エナナに任せておいて本当に良かったよ』

『当然だ』

2匹のポケモンは楽しそうに話していた。

自分達がやり遂げたことに大きな喜びを感じていた。

『しかし、

 すまなかったなチャモ。
 
 さみしがりやのあんたに、
 
 あんな憎まれ役をやってもらって。
 
 あんたあの後、
 
 一人で泣いてないかどうか
 
 あたしゃ心配だったよ』

とエナナが心配げに言うと、

『え?、いや、
 
 おれが泣いたりなんか

するわけないだろ…』

チャモが慌てて否定した。

エナナがその様子を見逃すはずはなく、

『ふぅん…』

鼻で笑うように言った。

『何だよ、

 そんな目で見るなよ』

バシャーモの赤い顔がますます赤くなった。

『でもバトルはともかく、

 ナミさんのこと、

 やっぱりおれは心配だな。
 
 人間とポケモンとでは全然違うし。
 
 これからもちゃんとがんばれるだろうか』

チャモは半分話題を変えようとして言うと、

『大丈夫。

 強くなったのはバトルだけじゃない。
 
 ちゃんとあの子はあの子の生き方を見つけられるさ。
 
 それにちゃんといい相手も残しておいたことだし、
 
 今ならあたしより対等に付き合えるあいつの方が
 
 よっぽどいいだろう
 
 それにあたしにはあの子の為にまだやることが…』

そこまで言ったエナナは急に思い出したように

『それより

 あんたの方はどうなんだい。
 
 あんたも野生は初めてなんだろ?』

と尋ねた。

初心者用ポケモンであったチャモは、

タマゴの時から専用の飼育施設で育てられたからだった。

『実はそれなんだが、

 ちょっと、
 
 な…』
 
赤いポケモンが急に口ごもった。
 
『あれ?

 あんたのことは
 
 ヤルキモノに頼んでおいたはずだが…』
 
『いや、
 
 確かにヤルキモノは
 
 とても熱心に教えてくれるから
 
 助かっているんだが、
 
 そうじゃなくて
 
 これからは、
 
 えっと…』

チャモは言葉を濁している。

何か言いたそうだが、

なかなか言い出せないように見える。

そんな彼に

『なんだい、

 ナミみたいだぞ。

 はっきり言いな』

とエナナが一喝した。

チャモはゆっくりとそのくちばしを開くと

『これからは、

 あんたに教えてもらいたいんだ』

と言った。

『はぁ?

 何言ってるんだ。
 
 グラエナとバシャーモ。
 
 あたしとあんたとでは
 
 体型からして全然違うだろう』

呆れたようにエナナは言うと、

『それでもおれは、

 あなたに色々教えてもらいたいんだ。
 
 その…、
 
 これからもずっと…』

チャモが言葉を搾り出すように言う。

『ふぅん……』

エナナはじっと横向き加減のチャモの顔を見た。

やっぱりまた赤くなっている。

エナナはフフフッと笑うと言った。

『そうだねぇ。

 岩にあいた居心地のいい穴と、
 
 うまいチーゴの実がなる場所を教えてくれるのなら
 
 考えてやってもいいぞ』

エナナそう言うと、

『!!っ』

チャモの顔が輝いた。

『それなら大丈夫だ。

 この先にちょうどいい所がある。
 
 近くにチーゴもなってる』

嬉しそうにチャモは言う。

『なら、

 早速そこに案内してもらおうじゃないか。
 
 言っとくがあたしの指導は厳しいよ。
 
 泣くんじゃないよ』

『だから泣いてないって。

 はい、
 
 いくらでもしごいてください』

赤と黒の2匹のポケモンは

並んで森の奥へと消えていった。


道の脇を、

頭にみどりのバンダナを巻いて

ウエストポーチを背負った

水色のポケモンが歩いていた。

人間の気配を感じると茂みに入った。

前から若い2人のトレーナーが歩いてきた。

「とにかくおめでとう、

 ヒトシ。
 
 あなたのポケモン
 
 すっごく強かったわよ」

女のトレーナーが褒め称えると、

「あぁ。

 ラグラージたちが頑張ってくれたおかげさ。
 
 そしてなんといってもこのキノガッサだな。
 
 決勝戦はコイツのマッハパンチ無しでは
 
 勝てなかったからな」

男のトレーナーが言う。

「そのポケモン、

 他のトレーナーのだったんでしょ。
 
 交換して正解だったわね」

「あぁ、

 ちょうど次の町で交換したんだ。
 
 正にキミと同じで、
 
 運命の出会いってやつかな」

男のトレーナーがキザに言うと、

「その人、

 こんなイイポケモンを交換したりして、
 
 今ごろくやしがってるかもね」

女のトレーナーが尋ねた。

「ソイツの親によれば、

 何かまた旅をしているらしい。
 
 まぁ、
 
 根はしっかりしているヤツだし、
 
 ちゃんとメールも送ってきているらしいから、
 
 そんなに心配もしていないみたいだ。」

男のトレーナーが言う。

「ねぇ、

 あなたの故郷ってもうすぐでしょ。」

「あぁ、

 あと2つ町を越えればミシロタウンさ。」

「早くあなたの故郷を見てみたいわ。」
 
そんな話をしながら2人は去っていく、

そして、2人が見えなくなった頃、

水色のポケモンは道を歩き、

いつもの場所から森に入った。

獣道をとおり原っぱに出ると、

ブースターが迎えてくれた。

『今日もちゃんと

 売れたのか?』

『えぇ。

 もうあのフレンドリィショップでは顔なじみだから。
 
 毎日トレーナーが作った木の実を持ってくる、
 
 おつかいポケモンってね』
 
『ホントよくやるよ。

 で、
 
 また何か買うのか』

ほら穴の中でポーチを外しているポケモンにブースターが聞いた。

『もちろんよ。

 何かあったら大変じゃない。
 
 ねぇ、
 
 あなた炎ポケモンなんだから
 
 いいかげん炎タイプの技を覚えたら?
 
 ほら、この“だいもんじ”って技なんてどうよ』

水色のポケモンはほら穴の奥にある

パソコンの画面を見ながら言った。

『いらないって

 言ってるだろ。
 
 オレは自分で技を覚えるんだ』

『もう、

 あいかわらずいじっぱりやさんね』

そう優しく笑って言うと、

そのポケモンは原っぱの片隅に立っている実のなる木に、

“みずでっぽう”で水をやった。

今朝植えた木の実がもう芽をだしている。

明日もまたいくつか木の実ができそうであった。

水やりをしているとブースターが話し掛けてきた。

『なぁ、

 おまえがシャワーズになって
 
 もうずいぶん経つな』
 
『そうね、

 もう半年ってとこかしらね』
 
『今だから聞くけど、

 まだ怒ってるのか?
 
 その、
 
 自分がポケモンになる原因のオレのことを』

ブースターは珍しく真剣に聞いてきた。

シャワーズは笑った。

『いいえ。

 怒ってなんかいないわよ。
 
 そりゃ、
 
 最初は大変だったし、
 
 私の生活や人生どうしてくれるのよ!
 
 …なんて思ったけど、
 
 今は違うわ。
 
 今はこの生活が好き。
 
 自由だし、
 
 毎日自分の力で生きてるって感じがするから。
 
 ステキなパートナーもいることだしね』

ブースターの顔を見ながらシャワーズがそう言うと

彼が照れて横を向いた。

『だから、

 今では感謝もしてるのよ。

 こんなステキな生活をくれた、
 
 あの事にもね。
 
 ありがとう、
 
 イーブイちゃん』
 
『よせよ。

 それにオレはもう
 
 ブースターだって。
 
 でも、
 
 こっちこそありがとな。
 
 おまえがいたからブースターになれたし、
 
 こんな暮らしができる。
 
 ホントありがとな』

2匹はお互いの体を寄せ合いながら、

ほら穴の方に歩いていった。

もう夕方である。

西の空が少しずつ赤く染まっていく。

2匹はそれぞれ採っておいたラブタとロメの実を食べた。

『おまえ、

 それ好きだな』

『だって

 私がポケモンになって
 
 初めて食べた木の実なんだもの。
 
 あなたこそ、
 
 最近ロメばっかりじゃない。
 
 からい実が好きなんじゃなかったの?』

『いや、

 採ってから少し置いといたロメを食べると、
 
 何だか力がつきやすくなるような気がするんだ』

そんな会話をしながら、

彼女はほら穴の前で真っ赤に燃える

夕焼けを見ながら木の実を食べた。


シャワーズになり彼女の生活は一変した。

人間としての生活は失ったが、

ポケモンとしての新しい生活が始まっていた。

美しい夕日、

青々と茂る木々、

そして頼れる仲間。

人間の時は気づかなかった宝物がそこにはあった。

想像も出来なかったすばらしい毎日、

それがあった。

隣でロメの実を食べるブースターの顔を見ながら

彼女は心の中でそっとその全てに感謝した。


2匹はほら穴に入った。

ブースターに先に寝てるように言うと、

彼女はパソコンでメールを打った。

そしてそれが終わると

体を丸めているブースターの側で横になり、

寄り添うようにして眠りについた。


“お父さん、お母さんへ
 
 私は今、少し遠い所にいます。
 
 ここで毎日元気に木の実を作っています。
 
 ステキなパ−トナーに恵まれて、
 
 毎日がとても楽しくてなりません。
 
 当分は帰れそうにありませんが、
 
 こんな感じなので心配いりません。
 
 2人とも体には十分気をつけて下さい。
  
 
 2人の自慢の娘

       ナミ。”


おわり


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