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  [No.1674] 第2章 最終話・光の中 投稿者:都立会   投稿日:2019/09/23(Mon) 20:44:33   18clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

『ごめんねブースター。

 私、戻ることにしたから』

原っぱに戻ると、

ナミはまずブースターにそう謝った。

『どうとでも…、勝手にしろよ』

ナミの言葉に関わらずブースターはそう言うと、

寝床の木のほら穴に入ってふて寝し始めた。

『ちょっとパパも!

 ママにごめんなさいは?』

イーブイがそう言って、

そんな父親の背中を前足で揺さぶっているが

『ふふっ、もういいのよ』

母親はそれを笑って止めさせた。

『よく決断したねぇ、ナミさん。

 うん、いい顔してるよ』

娘を連れて皆の所に戻ったナミにエナナが声をかけに来ると、

『さて、人間に戻るって事に決まったわけだがナミさん、

 シャワーズとして何かやり残した事とかないかね?』

と、グラエナはそう聞いてきた。

『やり残した事って言っても、もう…』

エナナの言葉にナミはそう言ったが、

“『私がシャワーズになるのはもう決まってるんだよ』”

足元でぴったり寄り添っているポケモンの言葉を思い出すと、

一つだけやっておきたい事が浮かんだ。

ナミは顔を上げると、

『ユンゲラーさん、あの、

 申し訳ないですけどあと2日、

 いえ明日まで待ってもらえませんか?』

遠い島から来たポケモンにそう尋ねた。

するとそのユンゲラーは、

ヤレヤレと大げさに顔を横に振ると

『やっぱ分かってなかったのかよ。

 まぁいい、あんたを戻すのは明後日の朝だ。

 それまで好きにしてな』

そう言ってサイコパワーを使って浮かび上がると、

ポカンとしているナミを置いて暗い木々の間へと消えていった。


翌朝、

ナミはいつも通り木の洞穴の中で目覚めた。

そしていつもの通りに木の実を集めると、

いつもの通り家族らに食べさせた後、

取れた木の実をいつものショップへと売りに行った。

いつもの道を戻って帰ってくると、

そこにはブースターとイーブイという、

いつもの2匹。

エナナ達はやる事があると言うので、

今日は別行動である。

『さぁなっちゃん、

 ブースターも、行きましょう』

ナミは支度を済ますとそう言って、

2匹を連れて森へと入っていった。

暗い森の中、

ナミは2匹の先を歩く。

自分はよく知っている道だが、

娘イーブイには初めての道。

ずっと連れてこられないと思っていたが、

その後ろではブースターが軽く炎を焚いて照らしてくれている為か、

全く怖がるどころか楽しそうに辺りをキョロキョロ見ながら付いてきている。

しばらくして先に明るくなり、

木々が開けた場所に出ると

『わぁ!すごい!

 大っきな水たまり!!』

イーブイはそう叫ぶと、

日の光が降り注ぐ湖畔へと走って行った。

『ここは湖って言うのよ。

 ここでママは初めて泳いだのよ』

ナミはすぐに追いかけると、

『きゃぁ、冷たい!!』

いきなり水に飛び込んでしまった娘をすぐに咥えて持ち上げた。

『あ〜びっくりした。

 本当に足が付かないんだね』

ビショビショになりながらも

なお笑って言うイーブイに

『そう、だから入るのはシャワーズに進化してからね』

ナミも笑って娘を草の上に乗せた。

そして体を震わせるイーブイをブースターに預けた後、

『じゃぁ、最後のひと泳ぎ。

 行ってきます!』

そう言ってナミは、

勢いよく水の中に飛び込んだ。

シャワーズになってから熱い夏には毎日のように泳いでに来たこの湖。

それも今日が最後だと思うと、

ナミは1日中力いっぱい泳ぎたくなったのだ。

水の中をしっぽの力でぐんぐん加速すると、

バシャーン!!

水面を何度も飛び上がって見せた。

湖畔ではブースターに体を乾かしてもらっていた娘が、

その姿を見て何度も歓声を上げている。

これからシャワーズを受け継ぐ娘に対して、

自分の泳ぐ姿を見せる事。

それがナミのやり残していた事であった。

ナミ自身にしても水ポケモンとして泳ぐ最後の機会。

何度も跳ねたり、

端から端へと、

水面から水底へ、

岩に上がっては飛び込んだりと、

日が暮れるまで存分に森の湖を泳いだのであった。


そして翌日…

目覚めたナミは住み家の洞穴を出ると、

『どうだ姉ちゃん、

 ポケモン最後の1日は堪能したか?』

島から来たユンゲラーが原っぱに立っていた。

『はい。スミマセン、

 無理言ってしまって…』

ナミは待たせた事を目の前のポケモンに詫びたが

『こっちだって準備ってもんがあるんだよ。
 
 ホラこれだ』

そう言ってユンゲラーが

スプーンを持ってない方の手を差し出すと、

『これは、“みずのいし”!』

そこに光る青い石に思わずナミは声を上げた。

それは懐かしい進化アイテム。

イーブイをシャワーズに進化させる、

そしてナミをポケモンに変えてしまったあの“みずのいし”であった。

ただ、それで娘をシャワーズにするのかと思ったが、

『それじゃ、あんたの娘が進化しちまうだけじゃねぇか』

ユンゲラーによるとどうやらそうじゃないらしい。

『おはようさん。

 準備はできてるようだね』

そうしている間に、

グラエナが石に青い目をやりながら森から出てきた。

『なっちゃんおはよう!』

その後ろからは息子のポチエナ

…だけではなく

『やっとかよ。ずっとずっとでもう待てなくてよ!』

『やっと戻れるのね。この森はジメジメしすぎててもう嫌っ!』

『そんな、いつもスパークで乾かしてやってただろうに…』

と、あの時連れていたポケモン達が森の中から次々と出てきた。

『ケロちゃん!サンちゃん!ライボちゃん!』

ナミは目を潤ませながら、

一匹一匹彼らの名前を呼んで出迎えた。

全てエナナが昨日の内に呼び集めていてくれたのだった。

『じゃぁ、全員一緒に来てくれるのね』

それが分かってナミが堪えきれない様子でそうエナナに言ったが、

『いや、あたしだけは行けないね』

『え?』

突然のグラエナの言葉に顔が固まったナミだったが

『だってウチの子を一人前のポチエナにしないとね』

『あ、確かにその通りね』

エナナが自分の息子に寄り添って言うとホッとした。

『それと娘さんを入れると、もう手持ちがいっぱいだろ?』

と、エナナは周りのポケモン達を見渡して言った。

トレーナーが持てるポケモンは6匹までである。

このままでは、娘を連れて行けなくなってしまう。

『なぁに、行きたいのはあたしも同じだ。

 だから熱くなる前に迎えに来ておくれよ』

グラエナは息子のポチエナと一緒にナミが住んでいた洞穴の前に座った。

『分かったわ。絶対に迎えに来るから!』

ナミは自分のエナナとそう約束をしていると

今度は両手いっぱいの袋を抱えたバシャーモが。

ナミ何を持っているのか不思議そうに聞くと

『ナミさんもすっかりポケモンですね』

ドサドサドサ…

とバシャーモが袋をひっくり返すと、

中からは見覚えのある服などが。

どうやら自分の家に行って、

部屋から持ってきたんようだ。

が、どうやって家の二階の部屋に入ったのだろうか。

靴を忘れた所を見るとやはり玄関から入ったようでは無さそうだ。

幸い、シャワーズになった時に

無事だったスニーカーが洞穴の中にあった。

シャワーズとしては必要のない靴を、

今日の為に残しておいたのか、

それとも服が破れた中で唯一無事に残ったから置いていたのか…

とりあえず今靴があったのは助かった。

『よし、準備は整ったようだな。

 じゃぁ早速始めるとするか』

全てのポケモンが集まった所で、

ブースターと何やら話していたユンゲラーが立ち上がって言うと

『あの、どうやって私を人間に戻すんですか?』

ナミは改めてそのポケモンに尋ねた。

『メチャクチャ簡単に説明するぞ。

 体の中のシャワーズへの進化のエネルギーで

 あんたはシャワーズになってる所までは聞いてたな』

というユンゲラーの問いにナミはコクっと頷いた。

確かにそこまでは覚えているが、

そのあとは頭の中がごちゃごちゃになっていたのだった。

『要はそれを体から綺麗に出しちまえばいい。

 それには全く同じエネルギーをぶつけてしまえばいい。

 人間の世界にもそんな装置があるんだろ?』

ユンゲラーが言っているのは

多分振り子の実験装置の事だろう。

金属の玉に同じ大きさの玉をぶつけると、

それと同じ数だけ弾き出されるというアレだ。

『ただ綺麗にってのが問題でな。

 強くても弱くても

 体の中に進化エネルギーが残っちまう。

 それが危ない事なのは何となく分かるな?』

と笑いながら怖い事を言うユンゲラーに、

ナミは固い表情で頷いた。

『脅してんじゃないよ!

 ソレを調整するのがあんたの役目だろ?

 大丈夫だよナミさん、

 そのエネルギーとやらはコヤツがぴったり合わせてくれる。

 後は…、おい!入ってきな!』

それに対してエナナが突然割り込んでくると、

森の中の誰かに吠えるように呼び掛けた。

『おー、やっぱあんたかぁ。

 進化させてくれるってのは本当なんだな?』

そう言うの声と共にベチャベチャという足音が聞こえると、

暗闇の中から頭に葉っぱのお皿が乗ったポケモンが現れた。

『コイツは旧知のハスブレロだ。

 ナミさんにしたら初めましてだろうね』

エナナはそう紹介した。

向こうが知っているのは、

初めて湖で泳いだ時に万が一溺れた時に助けてくれるように

このハスブレロに頼んでいたからだそうだ。

『そういう事で、

 あんたから出したエネルギーはコイツが譲り受ける。

 同じ“みずのいし”で進化するポケモンだ。

 問題なく自分が進化するエネルギーに変換されるはずだ』

ユンゲラーの説明に、

『わかりました。

 なっちゃんに進化してもらって、

 その時のエネルギーで私の中のをハスブレロさんに…』

ナミも何となくではあるがようやく理解できた。

『そういう事で、早速始めるぞ。

 一発勝負だからな、

 みんなちゃんと教えた通りにやれよ』

ユンゲラーが号令をかけると、

ハスブレロがその長い手でナミを抱えた。

『ひゃっ!』

丸いヌルヌルのお腹にベチャっと背中が引っ付くと、

思わずナミは声を出してしまった。

『いいかナツ、

 絶対に進化したくないって思うんだ。

 後でちゃんと進化するけど今はそう思うんだぞ』

『うんパパ、

 難しそうけどやってみる。

 私はシャワーズになりたくないなりたくない…』

その目の先ではブースターが娘に技術指導を、

イーブイも必死で自分に思い聞かせている。

そして

『いつでも準備はオーケーだな。

 じゃぁ、始めるぞ』

ユンゲラーがそう言うと、

持っていた水色の石をイーブイに近づけた。

その瞬間、

手の中の石と、

イーブイの体が青く光り出した。

あの時と同じ青色の光、

そして

『ううっ、なりたくない、なりたくない…』

その光の中で目を閉じて進化の力に耐えるイーブイ。

自分がシャワーズになった時とまったく同じ光景が

目の前に広がっていた。

『いいぞ、がんばれがんばれ…』

違うのはイーブイの横には

娘を励ます父親のブースターが

『よし、そのままそのまま…』

向こう側に目を閉じて

何かを感じ取っているユンゲラー。

そしてその周りには固唾を呑んで

見守っているポケモン達の姿が。

皆自分の為に、

自分を戻す為に、

そして戻ると信じて集まって来てくれたんだ。

ナミがそう思った時。

『今だ!サイコキネシス!』

ユンゲラーが目を開けると、

青い光の中のイーブイに技をくり出した。

『うっ!』

ユンゲラーの技でイーブイが矢のように飛んできた、

そして

ドンッ!!

ナミの胸に飛び込んだと思った瞬間、

とてつもない衝撃を感じた。

その力でイーブイはブースターの方に、

後ろのハスブレロは反対側に、

そしてナミは両側から挟まれたようにその場に崩れ落ちた。

体が重い。

さっきまでとは違う。

体の中にあった何かが抜けて、

今まで周りで動いていたものが

自分の中に集まって固まっていく。

ナミはそう感じた。

体から出ていた細かい物が、

融けるように無くなっていく。

お尻から出ていた力強い尻尾が、

体の中に染み込んでくる。

体が、

足が、

手の先が、

どんどん大きく、

長く伸びていく…

『はぁ…、はぁ…』

口を大きく広げて息をする。

ただその口がいつもより小さい。

いつもみたいに縦に大きく広がらない。

暫くして唇が横に広がる事に気づいて、

思わず手で触ってみた。

するとそこには細い指が、

肌色の指が。

5本の指が、

手が、腕が、肩が胸が足が…

人間の体がそこにはあった。

「ルンパルンパ!ルンパッパ〜!!」

何かを思う前に背後からの大きな声にハッと起き上がった。

後ろでハスブレロから進化したばかりの

ルンパッパが手を叩きながら踊っている。

そして前を向くと、

「ウ〜、ガウガウガウ!!」

すぐ近くに寄っていたグラエナが。

「バシャー!シャーモッ!!」

両手と口から炎を出しているバシャーモが。

「う〜、わうわうわう!」

興奮して走り回っているポチエナ、

それをなだめている他のポケモン達。

そして

「ブー、ブース!」

目の前に寄ってきた、赤いポケモン。

そのポケモンをぎゅっと抱きしめると。

「ブースター!

私、戻れたんだね」

暖かく柔らかい襟巻の中で、

少女がそう呟いた。

「ブースタッ!」

周りのポケモン達が色んな声で鳴いている。

さっきまで普通に喋っていたのに、

もう鳴き声でしか聞こえないポケモンの声。

音として鳴き声だけの、

言葉としてはもう伝わって来ない声。

それには自分が人間に戻れた証明であると共に、

もうポケモンではないという寂しさが。

そう思いながら目を上げると、

すこし離れた所に居る青いポケモンが。

一瞬大きな鏡でも置いたように思えた、

水色のポケモンがそこに居る風景。

そのシャワーズが一声鳴いた。

『ママなの?』

今度は確実に分かった、いや聞こえた。

「そうよ、なっちゃん!」

目の前で臆病そうにおどおどしているシャワーズに、

ナミは笑顔で両手を大きく広げると。

『ママ!ママなんだね!』

シャワーズの顔が輝いたと思うと、

その腕の中に飛び込んできた。

『んっ!なっちゃん!

 こんなに大きくなって!!』

たいあたりでも何でも無い、

ただ大きくなった娘の体を受け止めた。

『あ〜、ママだ!

 人間になってもママはママだ!』

さっきまで自分がそうだった、

スベスベの肌を持つ娘がそうすり付いてきている。

「そうよ、これが本当のママ。

 人間になってもなっちゃんのママよ」

ナミも腕の中でシャワーズにそう語り掛けると、

周りにポケモン達が集まってきた。

彼らの声はやっぱり鳴き声にしか聞こえないが、

それでも何を言っているかは分かる気がしてきた。

『本当に人間に戻っちまったな。

 まぁなんだ、これからもよろしくだな』

そういうブースターの首をナミは微笑みながら撫でてあげる。

『うん、ちゃんと戻ってるよ。

 だから早く服着ないと、風邪ひくよ?』

と言っているグラエナ。

そう言えばポケモンの時はずっと着てなかった。

人間でそれはまずいだろう。

『それよりもナミさん。

 頭の方は大丈夫なので?』

バシャーモが自分のトサカを触りながら聞いてきたので、

つられてナミも自分の頭を触ると

「え、ウソ…」

あれだけ長かった髪の毛が

ザラザラと感じるまでに短くなっている。

そういえばシャワーズになった時に

全て抜け落ちていたのだった

「やだ、髪型はシャワーズのまま?

 う〜ん、どこかのお寺で修業してたって事にしようかな」

ナミがそうやって笑うと周りのポケモン達も笑って、

また代わる代わる自分のトレーナーにすり寄ってくるのであった。

「じゃぁ、みんな、そろそろ行こうかしら」

周りを囲むように居るそんなポケモン達に声をかけると、

皆そわそわしながらも大人しくその場に座った。

「このボールは、チャモちゃん!」

ウエストポーチの端のボールを手に取ると、

ナミはそのポケモンの名前を呼ぶびスイッチを押すと、

ボシュッ

バシャーモが赤い光となってその中へと吸い込まれた。

「次はあなた!」

島への旅でも付けていたボールを差し出すと、

今度はブースターがその中へ。

「ケロちゃん!サンちゃん!ライちゃん!」

集まって来てくれたポケモン達の名前を呼びながら、

5つ目のボールをウエストポーチのベルトに付けると、

中から新しいモンスターボールを取り出した。

「さぁ、なっちゃんもこの中に…」

そう言って、ナミは6つ目のボールをシャワーズに向けた。

そのボールに向かってシャワーズは一瞬近づこうとしたが、

ハッと何かに気づいた顔をしたと思うと、

ダッっとナミから距離を取り、

構えるような低い姿勢でこちらに向き直った。

「えっ、なっちゃん?」

娘の突然の行動にナミは一瞬戸惑ったが、

手に持ったボールを見ると、

「あ、分かったわなっちゃん。

 ちょっと待っててね」

すぐに立ち上がり、

バシャーモが持ってきた衣服を手に取った。

服に袖を通し、

ウエストポーチを腰につけ、

汚れた靴を素足で履き、

ポケモンの時も使い続けていたバンダナを頭に巻くと

「さぁ、なっちゃん!勝負よ!!」

ポケモントレーナーとしてナミは手をいっぱいに伸ばして、

シャワーズに向かってボールを突き出した。




盛り上がる歓声に、

こだまする拍手

前の試合で勝利を収めた選手が意気揚々と、

シャワーズを連れたトレーナーの横を通り過ぎて行った。

長い通路の奥から吹き込む風に長い髪をなびかせながら、

彼女は手に持っていたラブタの実を齧ると

「うっ、苦い…、

 さぁ、なっちゃん、

 次はいよいよ私達の番よ」

と、足元のポケモンに話しかけた。

「大丈夫、パパも居るし、

 エナナのおばちゃんもチャモちゃんも。

 エナ君だってママのパパとママと一緒に

 スタンドで応援してくれてるんだから」

轟くような声援に戸惑っているシャワーズに、

若干緊張の面持ちのトレーナーがそう声をかけた。

『本当にありがとうママ。

 エナ君もエナナおばちゃんも連れてきてくれて。

 一緒に頑張るから』

シャワーズからの答えにトレーナーの顔が緩んだ。

「“次の試合!ナミ選手はミシロタウン出身。

 そう!あの元チャンピオン、

 ヒトシ選手の出身地!

 幼馴染に遅れる事幾星霜、

 今回がポケモンリーグ初出場ですが、

 何とわずか数週間で出場資格のバッジ8つを

 集めきったという超実力者!

 正に大器晩成!初志貫徹!”」

スタジアムの方から自分を紹介する声が聞こえてきた。

長い通路の先に、スタジアムの光が見える。

「“予選トーナメントのダブルバトルでも

 シャワーズとブースターの2匹だけで3戦完封!

 今大会のベストカップル賞と言えるでしょう!”」

と言う声に対し

「カップルじゃなくて本当は親子なんだけどね」

と笑うトレーナーに

『パパの本当のカップル、ママの分までがんばるから!』

と笑い返すポケモン。

少女とシャワーズの2つの影は、

眩い光の中へと歩み出して行った。


おわり


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