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  [No.1666] 第2章 第2話・夜の光 投稿者:都立会   投稿日:2019/09/23(Mon) 20:34:17   9clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

次の日の昼を過ぎた頃、3匹はようやく原っぱに着いた。

ナミは急いで実のなる木に水をやると、

出来ていた木の実を収穫した。

3日も放置していたので、いくつかは地面に落ちたり

他のポケモンに食べられたりしていたが、

それでもたくさん取れた。

翌朝、その日また出来た木の実も含めて、

町のフレンドリィショップに売りに出かけた。

今日は初めてブースターが手伝ってくれた。

ナミは娘に木の中でおとなしく待てるように言うと、

木の実が入ったウエストポーチをつけ、

首から手さげ袋を下げたブースターと一緒に原っぱを出発した。

2匹は森の獣道から道路に出た。

さっき初めて家族3匹で歩いた道である。

2匹は道の脇を話しながら歩いた。

『今日もいい天気ね』

『あぁ、雲がきれいだな』

いつものように話そうとするが、

まだどうもぎこちない。


町に着くといつものように町の裏へと足を向ける。

家やポケモンジムの後ろを通り、

時々泳いでいく池を回りこむと、

フレンドリィショップの裏手に出る。

ナミはブースターから手さげ袋をもらうと、

店の中に入った。

「お、やっと来たか。

 3日も来なかったから心配してたんだぞ。

 おぉ今日は大漁だな、

 ご苦労さん」

そう言って頭を撫でてくれたいつもの店員に、

木の実とポケモン図鑑を渡し代金を振込んでもらった。

図鑑をポーチに入れてもらうと、

ナミは店を出た。

『身軽になったわね。

 帰ろっか』

とブースターに言い、

一緒に町を後にした。


森の獣道を歩き、原っぱの近くまで来たとき、

娘の叫ぶような声が聞こえた。

ナミたちは慌てて原っぱに走っていったが、

どうやら娘は遊んでいるようであり、

声はとても楽しげであった。

原っぱに入ると、

娘はほら穴の近くで見知らぬポケモンと遊んでいた。

灰色の毛皮に覆われた子犬のようなポケモン、

顔は黒く小さなキバをもっている。

かみつきポケモンのポチエナであった。

娘よりは大きいが、

見たところまだ子供であった。

『あ、パパ!ママ!

 お帰りなさい!』

娘が駆け寄ってきた。

『ただいま、なっちゃん。

 何してるの?

 あの子どこから来たの?』

ナミが尋ねると

『ママ、すごいのよ。

 レナ君逃げるの、すごく上手なんだから!』

と娘は言う。

彼女がレナ君と呼んだポケモンは、

ナミたちに気づくと原っぱの真中に走っていく。

『これは…。

 ナミ、珍しい客だぞ』

それを見ていたブースターが鼻を動かしながら、

ニヤリとして言った。

原っぱの真中で、

ポチエナの子が草の中に向かって何か言っている。

ナミはその方向から懐かしいに匂いがするのが分かった。

ポチエナの子が少しそこから下がったかと思うと、

草の中から匂いの主がのっそりと起き上がった。

『やぁ、ナミさん。

 久しぶりだね』

真っ黒な毛並みのポケモンが、

きれいな女の声で挨拶した。

『エナナ!エナナじゃない!

 久しぶり!』

ナミはエナナに向かって走っていった。

そしてたいあたりをするように飛びつくと、

2匹は草の上に転がった。

『オイオイ、子供じゃないんだから。

 ハハハ、元気そうで何よりだね。

 そっちのあんたも、すっかり大きくなって。

 立派なイイ男になったじゃないか』

草の上に寝そべったまま、

エナナはブースターにも声をかけた。

ナミは草の上に倒れているエナナに、

しっかりと抱きついている。エナナのにおいが、

ナミには本当に懐かしかった。

自分がポケモンになってしまった時、

助けてくれたのがエナナだった。

『エナナ、来てくれたんだ。

 また会えて嬉しいよ』

エナナの黒い毛皮の上で、

ナミがつぶやいた。

ナミはポケモンになってから

エナナといた数日間を思い出していた。

エナナはナミを厳しく、

時に優しく1人前に育ててくれた。

自分のポケモンの母親と言えるエナナにまた会えて、

ナミは本当に嬉しかった。

『あぁ、あたしも会えて嬉しいよ。

 でも、そろそろどいてくれないか。

 あんたのそのしっぽが重たいんだよ』

エナナが笑って言った。

『もうちょっとだけ…』

ナミはもう少しの間、

エナナに甘えていたかった。


『ごめんねエナナ。

 あの時は、こんなことも出来なかったから』

ナミはエナナから謝りながら離れた。

『あぁ、あの時は大変だったからね』

エナナも立ち上がりながら懐かしそうに言った。

そしてナミの体をじっくりと見た。

『立派になったねぇナミ。

 それにあいつとも、

 仲良くやってるみたいじゃないか』

近くに寄ってきていたナミの娘のイーブイを見て、

エナナは言った。

『えぇ、おかげで今は全然平気。

 エナナには本当に感謝してるんだから』

ナミが話していると、

エナナにポチエナの子が寄ってきた。

『おかあさん、

 これがナミって人?』

ポチエナの子がエナナに尋ねた。

『あぁそうだよ。

 今はシャワーズっていうポケモンだけどね』

エナナが優しそうに言う。

『この子って、エナナの子なの?

 レナ君っていうそうだけど』

ナミが尋ねた。

『あぁそうさ。

 あたしの息子のレナだ。

 ほらレナ、挨拶しなさい』

エナナは自分の子をナミの前に押し出した。

『ナミさん、イーブイさん。

 こんにちは。

 レナです』

ポチエナの子は可愛く挨拶した。

よほどエナナは厳しくしつけているようだ。

『いい子ね。

 私はナミ。
 
 こっちはイーブイじゃなくて、

 夫のブースターよ』

ポチエナの子にイーブイと言われて、

少しむくれているブースターの分まで、

ナミは自己紹介した。

しかし、ポチエナの子はあんまり聞いていた様子もなく、

『なっちゃん、また遊ぼう』

と言うと草の上を走り出した。

娘のイーブイも、

それを追いかけるように走り出した。

『フフフ、元気な男の子ね』

ナミはその様子を見ながら言った。

『本当にどうしようもないわんぱく坊主でね…。

 まったく本物の子供は

 あんたの時みたいにはいかないよ』

エナナも一緒にいた頃を思い出しながら、

笑って言った。


2匹のポケモンの子供が、

日の差す原っぱで戯れているのを、

ナミたちはほら穴の前で見守りながら、

あの時の事を3匹は懐かしそうに話した。

『ところでエナナ、

 急にどうしたの?

 あれ以来、全然姿を見せなかったのに。』

話がひとしきり終わったところでナミが尋ねた。

『あぁ、ちょっと気になる話を聞いたんでね…。

 まずあの後の、

 あんたのことについて聞かせてもらえないか』

ナミはまた一昨日の時のように話し始めた。

あの後すぐに彼をブースターに進化させたことから、

今の生活、

子供たちの事までをエナナに話して聞かせた。

ナミが話し終えるとエナナは笑って、

『なんだ安心したよ。

 さすがだよナミさん。

 ちゃんと自分の生き方を見つけたんだね。

 今の自分に問題ないのだったらいい。

 あたしの話も必要なかったみたいだ。』

と言った。

しかしそれを聞いたナミは

『それが、ちょっと…、ね…』

と急に口ごもった。

『ん?どうした、何かあるのか?』

ナミの様子が急に変わったので、エナナが聞いてきた。

ナミはなかなか言い出せずにいたが、

『昨日までちょっとあってな。実は……』

隣にいたブースターが、

そんなナミの代わりに話してくれた。

エナナはそれを黙って聞いていた。


『なるほど。そうか…』

ブースターの話を聞いたエナナが低くうなった。

『人間の親子ってのは、

 いつまでも繋がっているものなんだな』

ポケモンであるのエナナは、

ナミの両親のことを聞いてそう言った。

『で、ナミさん。

 あんたはいったいどうしたいんだい?』

エナナがナミに尋ねた。

『どうしたいもないわ。

 そりゃ、できれば会いたいけど、

 シャワーズの姿では気づいてももらえなかったわ』

ナミは言った。

『なら人間の姿なら、

 気づいてもらえるわけだな』

エナナが確認するように聞いた。

そんなエナナをナミは妙なことを聞くなと思った。

『もちろんよ。

 でも、こうなってしまったから、

 もうムリな話だけれどね』

『いや、戻れる』

エナナは突然言った。

『何?…戻れるってどういう事?』

ナミは驚いて聞いた。

『いや悪い、

 正確には戻れるかもしれない…という程度だがね。

 もちろんナミさん、

 あんたが人間だった時の姿にだよ』

エナナは真剣な目つきでそう言った。

エナナは続けた。

この森近くの海の向こう側、

鳥ポケモンの速さで数時間の所に人も住んでいる大きな島がある。

その島には大きな洞窟があり、

その奥に1匹のエスパーポケモンが住んでいる。

そのポケモンは人間の何倍もの知能を持ち、

世界の出来事を全て記憶しているのだというのである。

その話を半年前に旅の鳥ポケモンから聞いたという。

『それで、あたしはその鳥ポケモンに
 
 聞いてきてもらうように頼んだんだ。

 “ポケモンになった人間がいる。戻れる方法はないのか”って。

 その鳥ポケモンが昨日戻ってきたんだ。

 彼女はちゃんと覚えていてくれて、

 そのポケモンにあんたのことを聞いてきてくれた。

 そのポケモンはこう言ったそうだ。
 
 “もしかしたら戻れるかもしれないが、

 しかしそれは本人に会ってみないと分からない”

 …とかなり曖昧な答えだったが、ナミさん、

 あんたは元に戻る事ができるかもしれないんだよ。』

エナナは柄にもなく熱っぽく話した。

しかし、当のナミは当惑していた。

もう何年もポケモンとして過ごしてきた。

正直なところそれはシャワーズになってしまって、

元に戻れないと思っていたからであった。

ある意味、自分で諦めていたからだった。

もちろん自分でも一生懸命調べてはみた。

しかしいくらパソコンで調べても出てくるのは

子供の頃に聞いたおとぎ話ぐらい。

ポケモンになった人間が元に戻る方法なんか

あるはずも無かった。

そして必死に頑張った。

エナナたちのおかげもあり、

すぐにシャワーズの体には慣れることができた。

そして今の生活が始まった。

ブースターと一緒に暮らし、子供も出来た。

人間のままでは出来なかった、

すばらしい暮らしがそこにはあった。

これが自分の生き方なんだと思って、

今日まで生きてきた。

そしていつの間にか戻る方法を探すことはなくなっていた。

それが今、

その自分が人間に戻れる可能性が出てきたという。

シャワーズになってすぐにその事を聞けば、

ナミは迷わず人間に戻ると言っただろう。

一昨日のこともあって、

自分は人間に戻りたいという気持ちがあることも分かった。

しかし今の彼女には、

ポケモンとしての生活があり家族がある。

人間に戻れると聞いて、

簡単に返事ができるわけがなかった。

『…まぁ、そんな話があるという事だけ、

 伝えておきたかっただけだ』

そんなナミの様子を感じ取ったエナナはそう言った。

『エナナ、ありがとう。

 でも私、どうしたらいいのか…』

ナミはまだ決められない様子で言った。

『別にすぐに返事をしてくれってわけじゃない。

 それに必ず戻れるというわけでもないからね。

 ただ、もしやってみたいと思うのなら、

 いつでもあたしに相談しにきなさい。

 詳しいことを教えるから』

エナナはそう言ってくれた。


話をしているうちに夕方になったので、

ナミは木の実を取りに行った。

遅くなったのでナミはエナナたちには

今日はココに泊まるように言い、

夕食にその木の実を彼女らに振舞った。

『あんたが作った木の実、懐かしいね。

 それに前より美味くなったんじゃないか?』

ラブタの実を食べながらエナナが言う。

『えぇ、みずでっぽうで毎日水をあげてるから』

ナミも嬉しそうに言った。

2匹の間では1つの大きなカイスの実、

両側から子供たちが夢中で食べている。

『へぇ。

 それは水ポケモンだからこその役得ってやつだね』

エナナも笑って言う。

さっき話したことは、

もうどうでもいいという感じだった。

『えぇ、シャワーズになって、

 本当によかったわ』

ナミも言う。

そんな彼女たちを、

ブースターはとったばかりのマトマの実を食べながら、

黙って見ていた。


日はすぐに暮れた。

子供たちはお腹がいっぱいになると、

ほら穴の中ですぐに眠ってしまった。

エナナとブースターはほら穴の前で丸くなり、

目をつむって寝ているようであった。

ナミもその隣で横になって寝ようとしていたが、

なかなか眠れない。

やはり、昼間エナナから聞いた話が気になっていた。

人間にもどれるのか、

今の生活をどうするか、

家族はどうなるのか。

そんな事が頭の中を駆け巡っていた。

どうしても眠ることができないので、

ナミは原っぱの真中に歩いていった。

原っぱの上は、満点の星空であった。

ナミは草の上に座って、

夜空に輝く星々を眺めていた。

この星空もポケモンになったから、

見る事ができたものの1つである。

人間の時には見過ごしてしまっていた、自然の美しさ。

それをナミはかみ締めた。

ナミは思い切って、大きく4つの足を伸ばし、

大の字に寝転んでみた。

仰向けになると夜空だけが見えた。

広い宇宙の中に、

自分も星となって浮いているように思えた。

こうしている間は、

全ての事を忘れることができた。

自分もこの世界の中で、

確かに生きているということを感じていた。

しばらく星を眺めていると、

急に誰かの気配を感じたので、

ナミは起き上がった。

ブースターがナミの側まで歩いてきていた。

『眠れないのか?』

ブースターが聞いてきた。

『え、えぇ…、なんだか…ね』

自分のあられもない姿を見られたかと思い、

ナミは恥ずかしげに答えた。

『そうか。今日も星が見えるな』

ブースターはそんなことは気にせず、

ナミの隣に座った。

『そうね。

 こんな夜空が綺麗なんて、

 昔は気づかなかったわ。

 あなたたちは昔から見てきたのでしょうけど…』

ナミはブースターに語りかけるように言った。

『さぁ…

 オレは星の美しさは、

 あんたが教えてくれたものだと思ってるんだけどな』

ブースターは夜空を見上げながら言った。

ナミは初めて彼と一緒に星を眺めた事を思い出した。

あれは彼をブースターに進化させた日の夜、

原っぱのほら穴で一緒に暮らそうと決めて、

木の実を食べた後だった。

夕日が沈み、

空には今日の様にいっぱいに星が広がっていた。

その美しさに感動するナミだったが、

彼には何がそんなにいいのか分からなかった。

そんなブースターにナミは星の事や

星座の言われについて色々と話したのだ。

『夜は寝るものとしか思ってなかったオレに、

 あんたは気づかせてくれたんだ。

 この夜空の事を、星の美しさをな…』

ブースターは空を眺めながら言った。

ナミはブースターにそっと寄りかかった。

彼の柔らかな毛皮が自分を包んでくれるようであった。

『なぁ、さっきの話、

 いったいどうするんだ?』

ブースターは聞いてきた。

『それは…、断る事にするわ。

 今の生活は悪くはないし、

 なっちゃんの事もあるから』

ナミはブースターのあたたかい体温を感じながら言った。

『オレは…、

 あんたは人間に戻った方がいいと思う』

突然のブースターの言葉に、

ナミはハッとして彼の顔を見た。

『何言っているの?

 私はこのままでいいのよ』

ブースターの横顔を見上げてナミは言った。

『オレはこの前のおまえを見て思ったんだ。
 
 人間の親に会えない事を悲しむおまえを見て、

 このままではおまえが壊れてしまうって。

 あの時から思っていたんだ。

 おまえが人間に戻れる方法は無いものかって。

 いやそのずっと前、
  
 おまえがシャワーズになった時からそう思ってはいたんだ。

 ただ、一緒に暮らすようになってからは、

 あまり考えなくなっていたんだと思う。

 おまえとの生活がとても楽しかったから…』

ブースターは先日のナミのように、

自分の本音を探しながら話していた。

『でも、このままではいつまでたっても

 おまえは人間の親に会う事は出来ない。

 それがこれからもずっと、

 おまえを苦しめてしまうんだと思う。

 だから、オレは可能性があるのなら

 おまえに元に戻って欲しい』

ブースターの優しい言葉を聞いていて、

ナミの目からはまた涙が出てきた。

『ありがとう、あなた。

 そう言ってもらえて、とても嬉しい。

 でも私、あなたを残して元に戻るなんて考えられない。

 ずっと一緒に暮らしていきたいの』

ナミはブースターに体にすがりつくようにして言った。

『何を言っているのさ、ナミ。

 あんたはポケモントレーナーなんだろ?

 だったら昔の関係に戻るだけじゃないか。

 トレーナーとポケモンの関係に。

 ずっと一緒じゃないか』

そう言うとブースターはナミの顔を舐め、

彼女の涙を拭ったが、

『それでも私、

 あなたを置いて人間になるなんて言えない。

 私は今のままで十分なの』

そういってナミはブースターにすがり付いてくる。

『どうして分かってくれないんだよ…』

そんなナミの姿にブースターはそう小さく漏らしたが、

その時ある考えが浮かんだ。

『それならナミ、こういう事にしよう。

 とりあえずはエナナの言う、
 
 島のポケモンに会いに行ってみよう。

 聞いてくるだけでもいいじゃないか。

 そこで戻れないって言われたら、

 それはもうどうしようもない。

 おまえはずっとシャワーズのまま、
 
 これからも一緒にこの生活を続けよう。

 でももし、

 もし人間に戻れるというだったらそのときは…

 …これでどうだ?』

ブースターはナミを真っ直ぐ見つめてそう提案した。

ナミはしばらく考えていたが、

『そうね…

 それならいいわ。
 
 絶対に戻れるっていうわけでもないしね。

 それにそのポケモンに戻れないって言われたら、

 私も完全に諦めがつくしね』

と言った。

そうだ悩んでいても、仕方なかった。

今できる事をやってみる。

ポケモンになって以来、

そうやって生きてきたんだとナミは思いかえした。

『よし、決まった。

 今日はもう遅いから明日になったら、

 エナナに詳しい行き方を聞こうじゃないか』

『えぇ、島っていうからきっと遠いわね。

 しばらく留守にするけど、

 その間なっちゃんのこと頼むわね』

『…分かった。

 俺はナツと待っている。

 ただ、どんな事になってもちゃんと帰ってきてくれよ。

 あんたを待ってる夫と娘が、

 ここにいるんだからな』

少し言葉に詰まったブースターが確認するように言ってくる。

ナミは優しい笑みで答えた。

『よし、じゃぁ戻って寝ようか』

2匹は寄り添いながらほら穴の前にもどった。

木の横で体を丸めたブースターの隣で、

ナミは地面の上に横になった。

程なくして迷いの無くなったナミの心は、

彼女を心地よい眠りへと導いていった。


つづく…


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