マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  •   [No.1074] ピカチュウさんのクリスマス 投稿者:ヴェロキア   投稿日:2012/12/21(Fri) 13:28:38     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    どうも、ヴェロキアです。
    お久しぶりです。
    この話は、ピカチュウとその仲間たちが繰り広げるドタバタコメディーです。

    でゎ、よろしくお願いします!!


      [No.1073] 第44話「金の成る木」 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2012/12/15(Sat) 18:48:29     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    「さ、これが注文したものだ」

    「これが能力上昇の木の実かあ」

     4月19日の月曜日、放課後。いつものように部室に集まっていた。ひとつ違うのは、俺が紙袋に入れた木の実を持ってきたというところだ。どれもこれも滅多に手に入らない逸品ばかり。これを見たラディヤはピンときたみたいだな。

    「チイラ、リュガ、ヤタピ、ズア、カムラ、サン、スターと勢揃いですね。図鑑でしか見たことがありませんでした」

    「スターの実とはかっこいい名前でマス。確か、ランダムで能力が大きく上がるでマスよね」

    「そうだ。ガッツ店長が『バトルサブウェイで203連勝して仕入れた物だ、収穫できたら俺様に流せよ!』と言っていた。サンの実も似たような仕入れらしい」

     ……俺も実物を目にするのはこれが初めてなんだよな。まあ、これから見飽きるほどになるわけだが。しかし、こいつらはそれ以外の点に注目してやがる。

    「先生物真似上手いですね」

    「余計なことを。それより、早速これを植えるぞ。ただし部室の中だ」

    「部室の中、ですか? この辺りは日当たりが良いですから外の方が適しているのでは?」

     ラディヤは辺りを眺めた。西日が差し込む部室の隣では、朝日もまた浴びることができる。昼間に至っては言うに及ばず。それでも、何も考えずに植えるのは自殺行為だ。

    「全くもってその通りだ、ラディヤ。だがな、あの教頭の存在を忘れちゃならねえぜ」

    「あっ、そうでしたね」

    「あの教頭は鬼畜でマス。きっと収穫直前の苗を引っこ抜いたりするはずでマスね」

    「そういうことだ。幸い、部室の窓は大きい上に南向き。万が一気付かれたなら、授業中は蛍光灯で補助して部活の時間に外で日光浴させて育てるのが良いだろう。とにかく木の実は水と光。水やりを忘れるなよ」

     俺は注意事項を説明し、鉢植えに土と肥料を入れた。これもボクジョー軒から注文したが、ホウエンやシンオウの肥沃な大地に匹敵するものだそうだ。

    「はい。それじゃ、日替わりで水をやろうか」

    「それが良いでしょうね」

    「じゃあ今日はオイラが水をやるでマス」

     こうして、鉢植えにそれぞれの木の実を1個入れ、まずターリブンがジョウロで水をまくのであった。あとは無事に育つのを期待するしかねえな。

    「頼むぜ、金の成る木」


    ・次回予告

    忘れてもらっちゃ困るが、サファリでのボランティアは順調だ。せっかくだからここでも木の実を育ててみるか。最近は農園を始めたらしいし、木の実の予備はあるからな。次回、第45話「バオバ農園」。俺の明日は俺が決める。


    ・あつあ通信vol.109

    木の実は種から育てるのでしょうか、実を植えるのでしょうか。どちらにしろ、ゲームのように数日で木になる成長の早さは異常ですね。最短クラスの桃栗3年と最長の4日でできる木の実を比べても、約274倍も早い。もし現実に存在したら、アメーバのような質感でしょうね。


    あつあ通信vol.109、編者あつあつおでん


      [No.1072] Section-20 投稿者:あゆみ   投稿日:2012/12/06(Thu) 12:08:04     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    ついに草体の根っこにたどり着いたアスカ達ポケモンレンジャー。だがそこでアスカ達が見たものは、根っこを前にしてぴくりともしない謎のポケモン達の異様な姿だった。その姿を目にしたアスカはアルファ・スタイラーを取り出してそのポケモンをキャプチャし始めたのだった。
    「お姉ちゃん。あのポケモンは何をするか分からないわ。慎重にね!」
    後ろからチヒロも心配そうに声をかける。
    「分かってるわ。だけど今はキャプチャに集中させて。」
    ポケモンレンジャーはキャプチャ・スタイラーを操ってポケモン達と心を通わせる。だが、今見ているポケモンは、全く微動だにしないとは言え、これまで人類が見たことのないポケモンである。新種発見となればポケモン界の歴史が大きく塗り変わることになるだろう。だが、一歩間違えればアスカ達の身の危険も伴うものである。ましてや地下鉄を襲ったともなれば事は重大。それだけアスカもスタイラーを操るのも緊張を伴っていたのだろう。
    やがてスタイラーは白い輪を描き始め、輪がその未知のポケモンに取り込まれていく。
    「キャプチャ完了!・・・皆さん、ほかのポケモンもキャプチャしてみてください!」
    「了解!」
    アスカの指示のもと、チヒロやほかのレンジャーも一斉にキャプチャに取りかかっていく。未知のポケモンを目の前にして隊員達も緊張の色が見受けられたものの、幸いにしてポケモン達が活動を始めることはなく、無事にキャプチャすることができた。
    「総員、キャプチャ完了!」
    チヒロの声がトンネル内に響き渡る。
    「分かったわ。残るはあの草体の根っこね。」
    アスカがスタイラーで根っこを指し示す。――根っこは幾重にも取り巻かれており、トンネルの向こうに見えるはずのテレビコトブキ駅など、とうてい見えるはずもない。だがこの根っこを破壊しないことには草体の活動は収まりそうもなかった。放っておけばコトブキシティは間違いなく焦土と化すだろう。
    「これから草体の爆破作業を行います。総員、爆弾を根っこにセットしてください!」
    アスカの声がかかり、警察隊が慎重に根っこに爆弾をセットしていく。セットする間にも根っこは不気味に小刻みな震動を繰り返しており、活動を活発化させていると言うのがいやでも見て取れた。
    セットされた爆弾は、モンスターボールほどの大きさでメタグロスやギガイアスと言った攻撃力の高いポケモンのだいばくはつにも匹敵する威力を搭載しており、計算上、草体の活発化を抑えることは十分に可能と見られていた。しかしその威力が災いしてか、暴発を防ぐためレンジャー自身が携帯することは禁じられていたのだった。
    「セット完了!」
    警察隊の声が響く。後はホームに戻って起爆スイッチを押すだけである。

    数分後、バンギラスデパート駅のホームに設置されていた起爆スイッチにアスカが手をかけた。
    「これより爆弾の爆破を行います。総員、爆破時の衝撃と轟音に備えてください!」
    声に従ってチヒロをはじめとするレンジャーや隊員達が耳栓を装着して防護体制をとる。アスカも声を発した後に耳栓をはめた。
    「3、2、1、爆破!」
    そう言ってアスカは起爆スイッチを押した。その瞬間、強烈な爆発音が響き渡り、トンネル内に繰り返しこだましていった。それとほぼ同時に強烈な爆風が風圧となって襲いかかる。
    果たして、根っこを破壊して草体の活動を抑えることはできたのだろうか。


      [No.1071] 第43話「ランダムマッチ」 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2012/12/02(Sun) 16:09:16     61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    「さて、今日はこれを使っていくぞ」

    「これがランダムマッチの施設でマスか……」

     4月18日の日曜日、ポケモンセンター。旅で訪れたトレーナーや、地域住民のたまり場として賑わっている。特に、俺達が今いる場所はな。

     ランダムマッチ、全国のトレーナーと仮想的に対戦をする施設だ。ポケモンセンターの2階で受け付けている。仕組みはポケモン転送システムの応用だ。トレーナーとポケモンをデータ化し、それをやり取りして戦う。バトルの後は始める前の状態に戻り、経験が残る。全く、俺が開発した技術がこうも発展するとは。俺は半ば感心しながら説明をした。

    「今年になってできたそうだ。気軽に参加できるフリーと成績が残るレーティングを選べるが、まずはフリーでやってみな」

    「先生はどうなさるのですか?」

    「俺はレーティングだ。少しやってみたんだが、フリーはごっこ遊びのレベルなんでな。レーティングも似たような状況だが」

    「それは先生が強すぎるからじゃあ……」

     イスムカは俺の発言にこう反応した。それにすかさずターリブンが続く。

    「間違いないでマスね。少なくともイスムカ君は一生勝てないんじゃないでマスか?」

    「それはターリブンも一緒じゃないか」

     ったく、いつも元気な野郎共だ。これから勝負の時間だってのによ。

    「おい、そろそろ始めるぞ。まずはラディヤからだ」

    「はい」

     ラディヤは、対戦用の椅子に座り、専用のヘルメットをかぶった。椅子とヘルメットはつながっており、ここからトレーナーのデータを読み取るようだ。ちなみに、椅子の右脇にモンスターボールをセットする穴がある。なお、データ化された世界、すなわち電脳世界は各階のモニターに映る。他のセンターのバトルも映されるから、昼夜を問わず対戦を見られるわけだ。

     電脳世界に、データ化されたラディヤがいる。対戦相手もじきに来るだろう。電脳世界と言っても普通の対戦用コートが舞台だ。舞台装置は選べるらしい。そして、外野の俺達も中にいる。俺達以外にも大勢いて、外より活気がある。どうやら、全国のポケモンセンターの2階にいる人間は全員データ化されるみたいだな。正確な表現は無理だが、場を盛り上げるのには良いだろう。

    「へえ、こんなかわいい娘が相手かい。嬉しいねえ。あ、オジサンはボルトって名前なんだ。よろしく」

    「ラディヤと申します。よろしくお願いします」

     いつの間にか対戦相手が到着したようだ。つなぎの男……ボルト……、あまり見たくなかった奴じゃねえか。少なくとも、向こうは俺を覚えている。まあ、電脳世界のやや崩れた姿では断定できまい。俺は、この時ばかりは性能の限界に感謝した。

    「オッケー、挨拶も済んだから始めようか。事前の申し込み通り、1匹ずつのシングルでいくよ」

    「はい。では……キノココ!」

    「さあ仕事だ、ライチュウ!」

     んなことを考えているうちに勝負が始まった。ラディヤはキノココ、ボルトはライチュウである。

    「ライチュウですね。年季が入ってます」

     ラディヤは手始めにライチュウの観察に入った。うむ、教えたことができているな。ライチュウはピカチュウの進化系で、能力はごくありふれたものである。ただし、ピカチュウによる珍しい技の使用報告が多いため、ライチュウ自身も恩恵に預かることができる。電気タイプながらくさむすびを使え、補助技や大技も揃う。最近ではひらいしんの特性を得たらしい。丸まった耳に触り心地良さそうな足、稲妻のような尻尾の先がトレードマークだ。

    「キノココかあ。こりゃ油断できないな。まずはみがわりだ」

    「タネマシンガンです!」

     勝負の歯車が回りだした。先手はライチュウ、右手に小さな人形を作った。一方キノココは口から拳ほどのタネを連射する。タネは2回当たり、みがわり人形は木っ端微塵である。

    「しまった、思わぬ火力だぞ。ならば一気に、わるだくみだ!」

    「キノココ、きあいパンチ!」

     ライチュウは悠長に戦うのを諦めたのか、いかにも悪者っぽい表情でわるだくみをした。しかし、キノココにとっては好機だ。……力を込め、形容しがたいところから一発叩きこむ。きあいパンチの威力はVジェネレートや爆発技に次ぎ、もろはのずつきやはかいこうせんに並ぶ威力だ。ライチュウとてひとたまりもあるまい。

     ところが、ライチュウはまだ倒れない。ほう、運が良いポケモンだ。ま、形勢不利なのに変わりはない。キノココはいまだ無傷だからな。めざめるパワーさえなければ余裕だろう。

    「……危ない危ない、皮1枚でつながったよ。さて、倒せるかどうかわかんないけど賭けるしかないね。必殺のかみなりだ!」

     ライチュウは一か八か、かみなりを放った。めざめるパワーは無しか。かみなりは、電気のしぶきをあげながらキノココを突き刺す。さすがに半減でも効いてるな。だが、それでも勝利には届かない。

    「いいですよキノココ! そのままタネマシンガンでフィニッシュです!」

     ラディヤは勝ちを確信した顔だ。キノココは再びタネを打ちつけた。今度はこらえきれず、ライチュウは地に伏した。その瞬間ジャッジが下った。データ化したから的確な判断を出すってわけか。何はともあれ、ラディヤの勝ちだ。

    「……かあー、やっぱり削りきれなかったか。ありがとう、良いバトルだったよ」

    「こちらこそありがとうございます。緊張感あるバトルを楽しめました」

     勝負の後は、どちらからともなく歩み寄って握手をした。ボルトはさりげなくハグをしようとするも、上手くかわされている。彼はラディヤにこう切り出した。

    「うんうん。……ところで、真後ろにいるおじさんは知り合いかい? さっきからバトルを眺めていたけど」

    「あ、先生のことですね。よろしければお呼びしましょうか?」

    「いや、大丈夫だよ……。こんなところで見かけるとはね」

    「あの、それはどういう……」

     まずいな、完全にばれている。これ以上の長居は無用だ、ずらかるとするか。

    「おいラディヤ、そろそろ交代だ。次のバトルの準備をするぞ」

    「はい、今すぐ! それではボルト様、お先に失礼しますね」

    「ああ。頑張るんだよ、君の先生は天才だからね」

     俺はラディヤを呼び、ヘルメットを外させた。そうしてそそくさと撤収するのであった。これは厄介なことになりそうだ。


    ・次回予告

    さて、ボクジョー軒に頼んだ物がやってきた。資金稼ぎはもちろん、戦力の強化にも欠かせないものだ。これで教頭の鼻をあかしてやるぜ。次回、第45話「金の成る木」。俺の明日は俺が決める。


    ・あつあ通信vol.108

    今回はレベル50、6V、ライチュウは臆病特攻素早252、キノココ陽気攻撃素早252で計算。ライチュウのみがわりをキノココのタネマシンガン2発で破壊。その後のきあいパンチも耐えます。ライチュウのわるだくみ雷は高乱数で耐えられ、キノココのタネマシンガン2発できっちりとどめ。

    ランダムマッチの仕様を考えるのは難しかったですが、某ゲームを参考にした結果こうなりました。矛盾があってもスルーしてください。


    あつあ通信vol.108、編者あつあつおでん


      [No.1070] 第42話「働かざる者食うべからず」 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2012/12/01(Sat) 21:26:32     82clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    「おい、これは一体どういうことだ」

    「あーら、随分でかい態度じゃないの。私がちょっとでも機嫌を悪くしたらどうなるか、分からないのかしら?」

    「質問に答えろ。なぜ俺達の部活の予算が出ないんだ。昨年の予算ではちゃんと出ていたと書いてあるのによ」

    「鈍いわねえあなたも。昨年のポケモンバトル部の失態への制裁なの、これは。本来なら学校の名誉毀損で訴えても大丈夫だけど、特別にこの程度で済ませてあげてるの。むしろ感謝してほしいわ、ほーっほっほっほ!」

    「……ちっ、余計なことを」

    「あ、そうそう。制裁はもう一つあって、今年度の公式試合で勝てなかったら廃部ですわよ。せいぜいあがきなさい、ほーっほっほっほ!」










    「……というわけだ。学校側からの資金援助どころか廃部の可能性にさらされることになった」

     4月16日の金曜日、夕刻。俺は今朝あったゴタゴタについて3人に話していた。全く理不尽なことだが、このくらい慣れっこだ。俺が普段通りに説明したせいか、どうにも事態の重要性を認識してないな。まあ、廃部のことを言わなかったのもあるが。

    「それは大変なことになりましたね。でも、予算って何に使うんですか? 僕達の練習ってポケモンとの取っ組み合いか筋トレくらいじゃないですか」

    「まあ、普段はな。だが遠征の費用や訓練の質を向上させるための投資が必要になる。ポケモンに持たせる物も工面しないといけない」

    「では自費でこなすというのはどうなのでしょう?」

    「それも考えたのだがな、猛反発するのがいたのでな」

     俺はその反対者の方に顔を向けた。ターリブンが熱弁をふるうのが見える。

    「オイラ、これ以上支出が増えたら生活できなくなるでマスよ!」

    「ということだ。しかし気に揉む必要は無い。金のなる木のありかは掴んでいるさ」

    「お、さすが先生でマス!」

     ターリブンの表情はスロットの出目のごとく変化するな。もう少し落ち着きを持ってほしいぜ。

    「今から早速全員で行くぞ。ついてきな」










    「ようテンサイさん。なんだいそいつらは、隠し子か? 相手はやっぱりナズナさんかい?」

    「相変わらずだな、ガッツさん」

     太陽がいよいよ沈もうとしている時分、俺達は学校近くの商店街のある店を訪れた。この商店街には色々あって、創業うん百年の薬屋から各種飯屋、メイドカフェなんてものまである。

     で、着いて早々俺は店長と冗談を言い合った。スキンヘッドに鉢巻き1つ、腕まくりをした深紅のシャツにオーバーオールが異様に目立つ。どことなく土管が似合いそうな雰囲気が出てる。

    「誰でマスか? このオクタンみたいな頭の人は」

    「おう坊主、今時度胸があるじゃねえか。だが口が悪いのは感心しかねる。よく覚えとけ、俺様は『ボクジョー軒』店長のガッツだ」

     店長のガッツは啖呵を切った。この威圧感は初対面の奴らを縮こませる。3人とて例外ではない。俺は両者の間に入ってガッツ店長の紹介をした。

    「ボクジョー軒ってのは野菜や木の実を扱う店でな、他では中々売ってない物が多数ある。ジョウト地方はなぜだか木の実の栽培が行われないから、こういうところで買うわけだ」

    「その通り! テンサイの旦那にはいつもひいきにしてもらってるぜ。特に努力値を下げる木の実を大量に買ってもらってるのさ」

    「努力値?」

    「……それについては後で説明しよう。それよりガッツ店長、今日は注文に来たのだが。これが目録だ」

     俺は懐からメモ用紙を取り出した。ガッツ店長はそれを眺めるなり、腕組みをしてしまった。

    「どれどれ。うーん、こりゃ高くつくよ。ざっと10万はかかる」

    「構わん。その代わり、増えた分を買い取ってほしい。あと、俺がここに来ていることは漏らさないでくれ」

    「ほう、なるほどね。なら、来週には仕入れておくぜ。どーんと俺様についてこい!」

     ガッツ店長は胸を叩いた。そのポーズはさながらケッキングと言ったところか。しかし、有能だから気にならないね。

    「そうしてもらえると助かる。……そうだ、ついでにこいつらの紹介をしとこう。右からイスムカ、ターリブン、ラディヤだ」

    「イスムカです、初めまして」

    「ターリブンでマス。おじさん鉢巻きが似合うでマスね」

    「ラディヤです。これからよろしくお願いします」

     3人は頭を下げた。この挨拶に気を良くしたのか、ガッツ店長は

    「おう、気持ちの良い若者じゃねえか。俺様はガッツ、覚えとけよ!」


    ・次回予告

    さて、資金稼ぎは様々な方策を取らねばならない。どれかが立ち行かなくなってもリスクを小さくするためだ。だが、そればかりやるわけにもいかない。というわけで、実戦練習もかねて全国のトレーナーと勝負することにしよう。次回、第43話「ランダムマッチ」。俺の明日は俺が決める。



    ・あつあ通信vol.107

    同じ話で何度も場面を変えるのは好きではありませんが、あまりに短いのでつなげました。最初の場面を簡潔に済ませることでなるべくスムーズかつ分かりやすくなるよう配慮しましたが、大丈夫でしたかね。


    あつあ通信vol.107、編者あつあつおでん


      [No.1069] あげ 投稿者:No.017   投稿日:2012/11/28(Wed) 00:38:48     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:業務連絡

    重要事項の為、上げます。


      [No.414] 【作品】かみたば 投稿者:teko   投稿日:2011/05/10(Tue) 02:20:57     41clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


     今までに投稿してきたものを再投稿しようと思います。
     全ての作品に【何をしてくれてもいいのよ】タグをつけまして。

     かたくるしいもの(?)はteko
     やわらかくかいてあるものにはてこ

     とつけていますが、目安です。

     どっちが読みたいかなと考えたときの参照程度にどうぞ。




     このページはちょくちょく、変わるかもしれません。


      [No.413] 【グロ注意?】つくってみた【再掲】 投稿者:   《URL》   投稿日:2011/05/08(Sun) 01:01:47     39clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    【グロ注意?】つくってみた【再掲】 (画像サイズ: 676×507 161kB)

    鮭のペーストとそぼろで作ったトリト丼。

    もっとトリトドンぽい形にしようと思って首作ってたけど、鮭ペーストが足らなくて頭のないトリトドンみたいになって グ ロ か っ た のでやめました。

    【なにしてもいいのよ】
    【食べてもいいのよ】


      [No.412] 1話 カノンとカノン 投稿者:照風めめ   投稿日:2011/05/08(Sun) 00:23:43     108clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     港で栄えるこのカイナシティの北西に、ポケモンコンテスト、ハイパーランクの会場がある。
     おれん家の隣の家に住んでいるカノンはコンテストを見るのが好きで、たまにテレビで放映されるというのによく会場まで足を運ぶ。
    「ペリッパー、吐き出す!」
     今もコンテスト会場ではたくましさを競っていて、ペリッパーは先程まで溜めたエネルギーを天井に目掛けて吐き出す。吐き出されたエネルギーは噴水のように周囲に撒き散らされ、赤、青、黄などたくさんの色で会場を彩る。
     圧倒的な力強くかつ繊細なパフォーマンスに会場の観客が皆揃って拍手する。隣のカノンもそれに違わず手を叩いている。ついでに目も輝いている。
    「見た!? すごいよねぇあのペリッパー。素敵!」
     胸の前で雪のように白い手を合わせ、子供のように、胸元くらいまである長い黒髪を揺らしつつ興奮しながら話すカノンを見るのが、数少ないおれの楽しみだ。
    「ねぇ、ユウキもそう思うでしょ?」
    「……え、うん。そうだね」
     急に名前を呼ばれて振り返り、適当に頷く。この気の無い返事で察せるように、おれはそんなにコンテストに興味がない。ただカノンが行きたいと言うから一緒に見に来ているというだけだった。
     年頃の男子なら大概はポケモンバトルが大好きで、自分がチャンピオンになると言い出して遅くても十二歳くらいには街を飛び出し旅をする。
     おれも例外じゃなくポケモンバトルがコンテストよりも好きだ。でも、生まれて十六年してもまだ、カイナから出たことすらない。
     それはカノンも同じだ。冒険のない似たような繰り返しの毎日でも、おれたちはこんな暮らしが好きだった。
     ペリッパーのアピールタイムは終わり、今度はハリテヤマのアピールタイムのようだ。一つ大きな欠伸をしているうちに、会場がまたもや拍手で割れる。



    「あー、凄かったね今日! あのハリテヤマの突っ張り、空を切る音が観客席まで聞こえてびっくりしたよ!」
     そう言ってカノンはハリテヤマの真似をして右手でなにもないところに張り手する。
     さっきのたくましさコンテストが終わればもう午後の五時。今日はこれから夕飯の材料も買わなきゃいけない用事がある。冒険をせずに家にいるおれは、家事などの一切を任されているのだ。
    「今日このあとさ、市場で買い物するけど先に帰るか?」
    「大丈夫、今日は調子いいの。それよりもアレ見てよ」
     カノンが右手人差し指でどこかをしきりに指差すので、つられて目線で追いかける。赤で装飾されたコンテスト会場のホールの隅の方に、笹の葉がひっそりと飾られていた。今日は七月六日。七夕の一日前だから、こんな粋なことをしているのか。笹の葉の傍には短冊とボールペンが置かれてて、自由に願い事をかけるようになっている。
    「一緒に願い事書かない?」
    「まあ別にいいよ」
     断る理由もないから、その願い事を聞き入れてあげることにした。
     カノンは水色の短冊を手に取って、おれに黄色の短冊を渡す。何を書こうか迷ってるうちにカノンは手早くペンを手に取ると書き始める。
     願い事、かあ。これと言って望んでることもない。さっきの通り、おれはこの暮らしに満足しているし、高望みはしていないから……。そんな風にぼーっとしている間にも、カノンはいつの間にか笹に短冊をくくりつけていた。
    「もう書けたの?」
    「うん、最初から書くこと決めてたから」
    「へぇー、何書いたの?」
    「えっ、その……」
     書けたことに対してご満悦だったようだが、その内容を尋ねるだけで急にもじもじし始めるカノン。そこからしばらく待っていたが、首を下に向けて何も言い出す気配がない。恥ずかしいことでも書いたのだろうか。
     そんな様子がじれったくて、くくられた短冊を覗き見する。
    「あっ……、ちょっと!」
     それを見て、おれは思わず言葉を失った。
    「勝手に見ないでよー」
    「ご、ごめん」
     拗ねるカノンにハリボテの笑顔を見せてなんとか誤魔化す。
    『コンテスト全制覇が出来ますように』
     カノンの短冊にはそう書かれていた。コンテスト会場はここカイナシティ以外にもシダケタウン、ハジツゲタウン、ミナモシティの計四ヶ所ある。
     さらにコンテストはかっこよさ、美しさ、賢さ、可愛さ、たくましさの五部門ある。これを全制覇するのはコンテストに挑戦する者の目標だし、それだけとても難しい。
     でも問題はそこじゃない。
     カノンは体が弱いのだ。
     スクールの体育でさえしょっちゅう休んでたのに、ここから遥か遠いハジツゲやミナモなんてとてもじゃないが行ける訳がない。
     それにこのカイナからさえ出たことがないのに。
     おれが旅に出ない理由もこれにあった。
     同年代の友人知人はほとんど全員街を発っている。おれまでいなくなったなら、カノンはこの広いカイナで一人ぼっちになってしまう。だからおれはカイナから離れずに――
    「ねぇ、まだ決まらないの?」
    「え、あー。ちょっと待って」
     カノンの声で現実に戻ってくる。眉を潜めて不満そうなカノンの顔がそこにあった。
    「しょせん願い事なんだからそんなに迷わなくても良いのに……」
     しょせん願い事。そのカノンが何気なく言ったその言葉に胸が痛む。カノンはそう短冊に書いたのに、自分でそれが叶うなんて思っていないのだ。ただそうする様式に沿っているだけで、最初からどうせ絵空事だと諦めている。
     悔しい。ちゃんとこうしてやりたいことっていう夢があるのに、夢に向かって一歩も進めることが出来ないなんて、そんなのは……。
    「おれも願い事決めたよ」
    「人の見たんだからちゃんと見せてよね」
    「はいはい」
     口ではそう軽くあしらったけど、おれの願いをカノンに見て欲しかった。
     ボールペンをすらすら動かして願い事を綴る。
    「よし、書けた!」
    「見せて見せて」
     黄色の短冊をそっとカノンに渡す。それを見るや否や、驚いたような、嬉しいような、そんなもどかしい表情を見せる。
    「それくくってさっさと行こうぜ」
    「う、うん……」
     こんな空気が気恥ずかしくて、急かすようにそう言うと、カノンが丁寧にそれを目立つ場所にくくりつける。
     小さな笹の葉のてっぺんには、カノンの願い事が叶いますように、とおれの下手くそな字で書かれた黄色い短冊がくくられてある。


     事件はその翌日の朝に起こった。
     目を覚ますと、自分の体に凄い違和感を覚えた。
     風邪を引いてて体がだるいとか、そういうのとは根本的に違う違和感。
     勢いよく上半身を起こしてみれば、背中に何かが触れた。手を後ろに回してみれば髪の毛? おれは刈り上げに近い短髪のはずだ。一晩のうちにこんなに伸びたのか?
     それだけじゃない。腕だってこんなに細くないし、白くない。これじゃあまるで……。
     慌ててベッドから飛び出し部屋に備え付けつあった小さな鏡の前に向かう。
     戸惑いながら鏡を覗けば……。
     予想通りだった。あってほしくない予想が、お見事と言わんばかりに的中していた。

     鏡の中には驚いた形相で肩を上下させているカノンがいた。

     思わず頬をつねれば、鏡の中のカノンも同じことをして痛がる。
     そんなバカな。もっとつよく頬をつねっても、やっぱり同じように鏡の中のカノンもそうする。いったい全体何が起きてるんだ。
     ふと大事なことに気付く。今こうなってるのは一大事だが、おれがこうなら『本物の』カノンはどうなっているんだ。
     一瞬血の気がひいたが、次の瞬間には寝巻き姿のまま部屋のドアを蹴飛ばすように乱暴に開けて走り出した。
     いつも通りの自分の家の廊下を駆けて、自分がよく身に付けていたサンダルをさっと履いて玄関の扉をあける。
     大きくなってしまったおれのサンダルに足を取られそうになりながらも、隣にあるカノンの家のインターホンを何度も何度も叩く。
     ドアが開いて、カノンのお母さんがカノン!? と驚いて叫ぶ間をすり抜けて、サンダルを蹴るように脱ぎ捨てて玄関傍の階段を駆け上がる。
     カノン、待ちなさい! ようやく我に返って大声を張り上げるカノンのお母さんを無視して、二階のカノンの部屋の扉をこれまた乱暴に開ける。
    「……何なの?」
     ベッドの上では状態を起こしたカノンが眠い目を擦っていた。
     ちゃんと本物のカノンがいた。そのことに、ようやく一息つく。
     いや、よくよく考えれば余計に話は複雑なことになっている。
     そうしているうちに本物のカノンの目が覚醒したらしく、目の前のおれを見つめてたまらず茫然自失した。
    「はれ……わたし!?」


     七月七日の七夕。優しい夏の風が薫る頃、神様のイタズラがおれとカノンの運命を大きく歪める。


      [No.411] wicked destiny 投稿者:照風めめ   投稿日:2011/05/08(Sun) 00:23:11     48clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    カイナシティに暮らすおれ、ユウキとその幼なじみのカノン。
    体が弱くて旅に出れず、コンテストの夢を諦めたカノンのために、神様のイタズラが奇跡を起こす。



    でりでりです。
    各種短編企画とかがないときの暇潰しのつもりで書いてます。あくまでPCSが本命なので毎週更新とかは期待しない方向でお願いします。
    略称はWD

    以下テンプレ。

    ツイッターもやってます。「weakstorm」

    私と霜月さんのサイト、「気長きままな旅紀行」
    http://www.geocities.jp/derideri1215/
    でりでりのブログ、「Over fresh」
    http://moraraeru.blog81.fc2.com/

    奥村翔botが登場!
    https://twitter.com/okumurasho_bot
    風見雄大botが登場!
    https://twitter.com/kazamiyudai_bot


      [No.410] その13 フルボルテージの怒り 投稿者:マコ   投稿日:2011/05/06(Fri) 13:21:34     27clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    ※この話は、その9の後で、その10の前に起こったものです。

    5匹のポケモンを仲間にしたマイコが、友人であるトキとともに河川敷を歩いていたところ、明らかに傷ついている緑の体のポケモンが見つかった。
    「これは……ラクライだね」
    「ラクライ?電気のやつっぽいな。せやけど、何でこんなとこにおるんやろ?電気のポケモンなら、街中に居りそうなもんやろ」
    「そこなんだよね、問題は。……トキ君、何か嫌な予感がするんだけど」
    「どういう意味やねん」
    「虐待とか、捨てたとか、そういう線が浮かんできたんだ」
    「保護せなアカンのんちゃう?マイコ、ボール持ってんの?」
    「そこらへんの心配はいらないよ。ほら」
    そう言うと、マイコは桃色のボールをバッグから出した。
    「あれ、普通のモンスターボールとちゃうやん」
    「ヒールボールっていって、これで捕まえたら傷と状態異常を完全に治癒できるの」
    「お前セレブなん?結構値が張るって聞いとるで」
    言っておくが、このリアル世界では、モンスターボール以外の特殊な性能のボールは貴重なのだ。それを、普通の女子大生であるマイコが持っていることに、トキは首をかしげたというわけだ。
    「いや、バイトの店長から貰った。1個だけね」
    「それを、今使うんやな」
    「まあ、トキ君も私と同じ立場だったら使うと思うけど……」
    「言いたいことは分かった。人助け……ちゃうわ、ポケモン助けやろ」
    「そうそう」
    マイコはそう言って、ヒールボールを投げた。というより、転がした。
    傷ついていた稲妻ポケモンは、そのボールに反応し、開閉ボタンを押した。光となって吸い込まれ、数回ボールが揺れた後、それは収まった。出る様子はない。
    その瞬間、先程まで野良のポケモンだったラクライは、マイコの仲間になったわけだ。
    「フルメンバー勢揃いってやつやな」
    「とは言っても、戦って手に入れたポケモンじゃないけどね」
    「お前の優しさに惚れ込んで仲間になっとるんやから、へこむ必要はないんちゃう?」
    実際、マイコはポケモンを全てバトルではない方法でゲットしている。チャオブーはポカブの頃に家に送られてきた。ワシボンはヤミカラスにいじめられているところを助けた。ムンナは家に来訪した。フシギダネは老人から託された。ミズゴロウはタマゴから孵った。そして、ラクライは先程のように助けたというわけだ。
    「とりあえず、ラクライは保護したから家に戻ろうかな……」
    と、その時だった。若い男が2人の前に姿を現した。


    「誰ですか?」
    マイコが聞くと、
    「うるせえ!」
    としか返ってこなかった。
    「お前な、こっちが丁寧に聞いとるのに、うるせえはないやろ!」
    「ちょっとやめて、トキ君!ケンカは良くないって!」
    顔に青筋が立っているトキをマイコは必死になだめた。ここであまり大きな揉め事は起こしたくない。しかし次の瞬間、若い男はこう言い放った。
    「ちっ、ラクライはいねえのか」
    「どういう事?あと、あなたは誰?」
    「俺はシュウだ。ホントはこういうとこ、来たくなかったんだけどよ、俺が捨てたラクライが高個体だったようでさ、引き取りにきたんだよ」
    「「捨てた!?」」
    「すっげえ苦労したんだぜ?ライボルトにいっぱいタマゴを生ませて、孵った何十匹ものラクライの中からいいやつだけ選んで、残りはポイ、だ。都合がいいだろ?でもその中には泣く泣く捨てたやつもいるんだぜ。それがここに捨て……」

    パシン!!!

    言い終わる前に、マイコが男の頬を平手打ちした。
    「マイコ!?」
    驚いたのはトキだ。数十分前には怒る自分をなだめていたマイコが感情をあらわに怒っているのが信じられなかった。
    「ふざっけんじゃないわよ!!!たくさん生ませてその後はポイ?あんたバカじゃないの!?生ませたのなら責任持って育てなさいよ!捨てるなんてバカな真似すんじゃねえよ!!!」
    鬼気迫るマイコのキレ具合だが、男も負けてはいない。
    「わかったよ!!今からお前と俺とでフルバトルをして、お前が負けたらポケモンを全部捨てろ!」
    「シュウ、お前ふざけたこと言うなや!!なあマイコ、こんな勝負受けるだけ……」
    「受けようじゃないの」
    トキが止めても無駄だった。火のついたマイコは止められそうもない。自分から冷めるのを待つしかなかった。それでも、マイコが巨大なリスクを背負っている、負けられないバトルなのは明白だが。
    (なんで答えが賛成やねん!!おかしいやん!!落ち着いて考えたら受けたらアカンバトルって分かるやろ!?)
    トキは心の中で狼狽していた。マイコには勝って貰わなければならないのだ。


    そして、バトルはスタートした。6VS6。フルバトル。
    シュウが繰り出したのは、気性が荒く凶暴ポケモンと呼ばれるサメハダー。一方のマイコは背に種を背負う蛙のような種ポケモン、フシギダネを繰り出した。
    (サメハダーは特性が厄介なポケモンだから、触れずに倒さないと……。でも、その前に、前段階だ)
    「フシギダネ、日本晴れ!!」
    マイコが指示を飛ばすと、途端に太陽が輝きを強めた。暖かいというより、むしろ暑いくらいだ。それに対し、シュウは……
    「サメハダー、ロケット頭突き!」
    頭を引っ込めた凶暴ポケモンは防御の態勢を取り、種ポケモンに向かって、一直線に突っ込んできた!しかし、マイコは驚くほどに冷静だった。
    「ソーラービーム・クイックバージョン!!」
    強い日差しのおかげで溜め動作がなくなった太陽光線が凶暴ポケモンを一閃し、一撃ノックアウトとなった。
    「マイコ、いつの間に鍛えたん!?一撃なんて……」
    「作戦勝ちってとこかもね。向こうが気付かなかったってとこも大きいかも」
    「おいお前、忘れてんのか?日差しはまだ強いんだぜ!?ってことはよ、炎も強くなるんだよ!バグーダ、行け!」
    次いで青年が繰り出したのは、背に火山を2つ持つ、橙色の噴火ポケモン。
    「これでサメハダーの敵がとれ……」
    「戻って、フシギダネ」
    「ああ!?何で戻すんだよ!?」
    マイコは相性の悪さを感じ、種ポケモンを引っ込めた。草も毒も、バグーダのタイプである炎や地面に効果が薄いからだ。
    「じゃあ、ミズゴロウ、出番よ!」
    代わりに登場したのは、小さな沼魚ポケモン。
    「そんな小さいやつで、俺のバグーダにケンカ売るなんて見上げた根性だな!まあいい、バグーダ、突進!!」
    「ミズゴロウ、ジャンプして避けて!」
    一直線に突進してゆく様は恐怖だが、結局は当たらないと意味がない。ただでさえ小さい的がジャンプするものだから、当然の如く噴火ポケモンは沼魚を見失う。と、ここで、

    ポツ、ポツ、ポツ……

    雨が降り出した。
    「いつの間に雲が寄ってきたんだ!?後、ミズゴロウはどこに」
    「今よ、水鉄砲!!」
    「背中か!!」
    雨の補助を受けた水鉄砲は至近距離でヒットしたものだったためか、これまた一撃で噴火ポケモンが戦闘不能に陥った。
    「ジャンプの間に雨乞いしてまうなんて、判断がいつにも増して冴えとるな、今日のマイコは」
    「炎の攻撃を食らいたくなかったってのもあるけどね」
    (今こいつと戦ったとして、俺は勝てるんやろうか、神がかった判断をするマイコに)
    トキは傍観しながら、そんなことを思うのだった。


    次いで青年から出されたのはモジャンボ。モンジャラが原始の力を得て進化した蔓状ポケモンだ。マイコは当然の如くミズゴロウを引っ込め、雛鷲ポケモンのワシボンを登場させた。ミズゴロウでも冷凍ビームという有効打を持つが、草の攻撃を食らってひとたまりもなくやられるのが目に見えたので、交代させたのだ。
    「モジャンボ、日本晴れだ!」
    青年の指示により、太陽が再び雲の切れ間から顔を覗かせた。晴れたり雨が降ったり、また晴れたりと空も忙しい。
    と、途端に巨大な蔓状ポケモンの動きが素早くなった。
    「なるほど、葉緑素の特性ね」
    「勘がいいじゃねえか。でも終わりだ!パワーウィップで潰せ!」
    力のこもった鞭が雛鷲を襲う。
    「けっ、つまんねえやつ!そんじゃあ次のポケモンを出せ……!?」
    鞭で倒されたかに思われたワシボンが、素早く的確に燕返しでモジャンボに攻撃したのだ!
    「嘘だ!何でまだ攻撃できるんだよ!?」
    「タカをくくっていたみたいね。簡単に倒されるほど軟じゃないから。ワシボン、恩返しの一撃をお見舞いしてあげて!」
    マイコから受けた愛情を力に変えて雛鷲が放った一撃で、蔓状ポケモンは倒された。
    これでシュウの手持ちは半分がノックアウトされた。マイコはまだ6匹全員戦える。
    と、ここで、ワシボンの体が光に包まれ、大きく成長し、勇猛ポケモンのウォーグルとなった。
    「とうとう進化したのね!ワシボン、いや、ウォーグル!」


    青年の4匹目はこれまた巨大な2本牙ポケモン、マンムーだった。こちらはイノムーが原始の力を得て進化した姿である。マイコは相性の悪さと累積ダメージの量を考えて、進化したての勇猛ポケモンを引っ込め、彼女のパートナーである火豚ポケモン、チャオブーを出した。
    「どっちも有効打があるからなあ、弱点の突き合いになるやろうな」
    トキの言う通り、マンムーは地面技でチャオブーの弱点を突けるが、チャオブーもまた、炎や格闘の技で弱点を突ける。
    しかし、シュウの指示は意外なものだった。
    「霰!」
    途端に雪、いや、それより大きい塊がボロボロ降ってきた。
    「そして地震!」
    間髪入れず大地の震動が火豚を襲った。足元がふらつく。
    「耐えて、チャオブー、そして、火炎放射!」
    だが、炎は空しくも当たることはなかった。そして気付く。
    「なるほど、雪隠れで回避しやすくしたのね」
    ちょうどその時だった。2本牙ポケモンが火豚ポケモンの真後ろに陣取った。これはマイコにとって願ってもみないチャンスだった。
    「チャオブー、牙につかまって登って!」
    「マズイ、振り落とせ……」
    マンムーは必死にチャオブーを振り落とそうとするが、つかまる力が強く、振り落とせない。だいたい、動きがどちらかというと鈍い方に分類されるポケモンに速い動きを求める方が無茶な要求である。
    「至近距離からの火炎放射!!」
    雪隠れは距離があると効果が大きいが、至近距離だとほぼ意味がない。猛烈な炎に耐え切れず、マンムーもノックアウトされた。これでシュウの残り手持ちは2匹。


    青年の5匹目はカイリキー。マイコも5匹目、ムンナを出した。明らかにマイコが有利な対決である。と、ここで、カイリキーの体は猛毒に蝕まれた。それにマイコは心当たりがある。
    「わざと猛毒を起こすあたり、根性の特性を活かすのね」
    「そういうことだよ!カイリキー、気合いをこめろ!気合いパンチだ!!」
    カイリキーは4本ある腕のそれぞれに気を込め、技の発動準備を行った。しかし、それは逆に隙だらけという状況をもたらす。
    「チャージビーム!!」
    夢喰いポケモンの夢の煙を出す穴(?)のような部分から黄色い光が放たれ、気の注入が途絶えた。
    「何でだ!?気合いパンチをやろうとしたはずなのに」
    「1つ忠告しておくよ。気合いパンチはダメージが大きい分、相手からダメージを喰らったら集中が途切れて発動できないの」
    「ちっ、カイリキー、瓦割り!」
    「チャージビーム!」
    「岩雪崩!!」
    「チャージビーム!!」
    次々とカイリキーから繰り出される技にチャージビームで応戦するムンナ。
    (マイコのムンナならエスパー技で簡単にカイリキーを倒せるはずやねんけど……チャージビームを連射するあたり、何か策があるんやろうか?……!そうか!!)
    「クロスチョップ……」
    そして、それを待っていたかのように指示がマイコから放たれた。
    「サイコキネシス・パワーアップバージョン!!」
    夢喰いポケモンの放った強力な念の力は、カイリキーを簡単に吹き飛ばし、ノックアウトに追い込んだのだ。
    「マイコ、チャージビームを連発しとったのって、もしかして……」
    「相性としては普通だけど、特殊攻撃のパワーアップを狙っていったんだ。うまくいって良かったよ」
    これで、シュウのポケモンはあと1匹である。ラストに出されたのは……

    猛禽ポケモンのムクホークであった。


    マイコは考えた末に、ラクライを繰り出すことにした。
    「ラクライ、出てきて!」
    出てきた雷獣は、自分を捨てた相手にいきり立っている。やる気は十分のようだ。
    と、ここで、猛禽が強い鳴き声を出し、若干ながら稲妻ポケモンのパワーを削いだ。威嚇の特性である。
    さらにいきなり大技が出された。羽を畳んで突撃する、ブレイブバードだ。
    「ラクライ、電撃波!!」
    ここは必中の電撃をお見舞いしてやろうとマイコは考えたのだ。しかし、いくつかが当たった以外は弾かれ、逆にブレイブバードの直撃を喰らった。多少なりともムクホークにもダメージは来るが、ラクライのダメージも無視できなかった。
    「空を飛ぶ攻撃で、忌々しいあいつをコテンパンにしてやれ!!」
    猛禽が上空へ飛んだ。だが、これがマイコにとって大チャンスになっていたのをシュウは知らない。マイコがニヤリ、とした。
    「何がおかしいっ」
    「そうくると思った。ラクライ、雷!!!」

    ズドォンッ!!!!

    上空の相手には絶対当たる、猛烈な稲光とともに、先程まで上空から獲物を狙っていたムクホークは黒焦げとなって力なく墜落した。
    この瞬間、マイコの勝利が決まった。6匹全て残した圧勝だった。
    「おめでとう、すごいわ、マイコ!誰も戦闘不能になってへんなんて!!」
    「ありがとう!すっごく嬉しい!!」
    マイコとトキが喜び合っていると、シュウがどす黒いオーラを放っていた。
    「お前らなんかまとめて潰してやる!ベトベトン、行け!!」
    「お前7匹目なんて卑怯や!」
    「卑怯でも何でもいいんだよ!完膚なきまでに叩きのめされたのが腹立つんだよ!ヘドロ爆弾で骨まで毒に冒されながら苦しんで死ね!!!」
    「「うわああああっ!!!」」
    そして、2人に向けてヘドロの塊が発射された、その時だった。
    「メタグロス、サイコキネシス!」
    突如出現した鉄脚ポケモンの発した念の力で、ヘドロは方向が逸れ、遠くへ飛んでいった。
    ヘドロの直撃を免れた2人は、自分たちの父親と同じほどの年頃の男性に助けてもらい、メタグロスの上に乗った。


    「大丈夫かね、君たち」
    「あ、ありがとうございます……」
    「すみません、助けてくださって」
    「そんなに感謝しなくてもいい。当然のことをしたまでだ。ちなみに私はダンゾウ。あのシュウの父親だ。バカ息子がとんでもないことをしたな」
    「父親……」
    「さてと、降りるぞ。やつに制裁をしないといけないようだな」
    2人もダンゾウに促されて地上に降りた。


    シュウとダンゾウが向き合って話している。マイコとトキが入る隙間はなさそうだが、何か起こるといけない。
    「オヤジ、何でここが分かった」
    「お前が捨てたポケモンを拾いに行くと言ったから、多分ここだろうと目星をつけていた。そしたらお前は大量にポケモンを捨てたくせに親の顔を見せて無理な条件のバトルを押し付けたあげくにストレートで負けている。さらにそれを抹消しようとして毒を放つなぞ、トレーナーというより、人としてなっていない!そこの2人が話を聞いて怒るのも納得がいく」
    「もうオヤジも消えちまえばいいんだ!ベトベトン、ヘドロ爆弾!!」
    ヘドロポケモンから出されたヘドロの塊をダンゾウは避けるが、頬をかすめた。やはり完全に避けきるのは無理だったようだ。
    「ダンゾウさん!?」
    「頬が変色してる……このままじゃ……」
    マイコとトキの心配をよそに、ダンゾウは至って冷静だった。
    「シュウ、お前はそれでいいんだな?」
    「どういうことだ?まあ、いいけどよ」
    そして、指示が飛んだ。
    「メタグロス、サイコキネシスで動けなくして、コメットパンチ!!」
    念の力が反撃の動作すらも封じ込め、そこに隕石を思わせる鉄脚ポケモン十八番のパンチがヘドロを襲い、ノックアウトに追い込んだ。
    と同時に、バレットパンチのようにダンゾウの平手がシュウに直撃した。
    「この大馬鹿息子が!!!」


    結局、シュウはポケモン放棄とポケモンによる傷害容疑の現行犯で逮捕された。
    そして、2人はダンゾウの頬にモモン汁を塗っていた。変色の原因が毒というのは分かり切っていたことだったから。
    炎症も引き、何とか大丈夫になったところで、帰ることとなった。
    「あんまり無茶するんじゃないぞ。君たちはまだ若いんだから、ああいうようにならず、真っ当に生きなさい」
    「ありがとうございます。ダンゾウさんもあまり無茶せんといてくださいよ」
    「私たちも気を付けますから、ダンゾウさんもお元気で!!」
    面倒な事件を何とか解決できて、少しだけほっとした2人なのだった。


    おしまい


    マコです。ちょっと間が空きましたが元気です。
    2011年年明けから参加しているので、この度のログ消失に大変驚きました。
    プロットを作らない派でしたが、自作品専用USBメモリをプロット代わりに文章作成にいそしんでいます。
    とにかく、マサポケが大好きだってことを伝えたいです。


    このお話の後書きとして、ポケモンがリアル世界に来て、法体系とかも若干整備された感じにしてあります。もし仮に、マイコちゃんがシュウに負けたらマイコちゃんも捕まっていたでしょう。
    現実にペット放棄で捕まる人がいるのと同じように。でも、こんな展開になると主人公が逮捕となっていやなので、やっぱりハッピーエンドにしました。
    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【ポケモンを捨てちゃダメなのよ】


      [No.409] クチバシなかま 投稿者:リナ   投稿日:2011/05/06(Fri) 00:29:46     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


     ポケモンたちの間でも情報化社会ですからねw
     私はツイッてないんでフォローとかなんとかとかしくみも良く分かってないんですが(>_<)


      [No.408] ほうきとタマゴ 投稿者:スズメ   投稿日:2011/05/05(Thu) 23:57:33     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     暖かい春の、昼下がり。
    ステイを捕まえた我が学校が見渡せる、景色がいい丘にある育て屋さん。
    名前も決めていない適当なそだてや夫婦の育て屋さんの庭。
    時刻はちょうど、一番暑くなる頃のはず。
    日差しは暑いくせに、風はひんやりと・・・芝生の上を通り過ぎていく。
    すぐ近くに植わったシンボルツリーは、とても大きくてさわさわと揺れる日陰を作っていた。
    シンボルツリーの近くにある小さな泉には、透明な水の中に時折影が浮かび上がる。
    ポケモンたちは植え込みの木や、草むら(わざわざ作られた)に隠れながら遠巻きにこちらの様子を伺っていた。
    怯えなくても、食べるつもりはないんだけれどな。
    手に持った箒は、一昔前にはやった魔女の乗るような竹箒。
    その箒でがしゃがしゃと地面を掃いていく。
    バイトを始めて数日。
    今のところ、ひたすら箒で芝生の上を掃き続けていたりする。




    「何をしてるんだ」

     クラスメイトの友人ことソラメ(別名アブソルオタク)の視線が痛い。
    僕ってそんなへんなことしてるかな?

     ちょっと、自分の様子をみてみた。
    頭の上には尻尾のちょん切れたポッポ。名前はパト。
    エプロン&三角巾で掃除の叔母さんと化した僕。
    掃除のための箒にじゃれ付くステイことオタチ。
    簡単に言うと、そだてやの敷地内で掃除をしているだけ。
    こら、パトも首が痛いから頭から降りろ。
    確かに帽子代わりになるけれど、パトは体温が高いせいで頭がゆでたこになってしまう。
    後で鏡を見ようものなら羽だらけの自分を見る羽目になるんだよ、パト・・・
    あ、あと背中のリュックにタマゴを二つほど入れているか。
    育て屋のおじいさんがトレーナーに渡し損ねたって、職務怠慢じゃないのかなぁ?
    タマゴの中身は不明。
    そだてるのが大変だからって押し付けられた。まあいいんだけどさ。
     
     結論的に言えば、育て屋の敷地内で掃除をしているだけ。
    そういえば、ソラメたちにはバイト始めるって伝えてなかったっけ。
    いきなり働き出したからおどろいたんだろうな、たぶん。そうだと思いたい。
    ちょん切れたパトの短い尾羽が肩に当たる。そして、耳がつつかれる。
    何気に痛い・・・いや、痛くはないくすぐったい。
    動くな、跳ねるな、甘噛みするな! 
    ちょこちょこ跳ねる度に、ちょん切れた尻尾がくすぐったい。

    「・・・。」

     なんか、ソラメの視線が冷たくなった。
    うーん、まあ真面目に掃除を始めた方がいいよね。

     相変わらず、パトの散切り尻尾が首に当たってかゆい、くすぐったい。
    どっかにおいてみようか。
    とりあえず、パトをステイの上においてみた。

     「キュ、キョ!」
     「ポッッ」

     いきなり頭が重くなったせいで、ステイが混乱して回りだした。
    グルグルグルグルグルグルグワン・・・
    あ、こけた。
    パトは・・・あ、玉のように転がっていったみたいだ。
    拾いに行くべきか、先に掃除をするか。
    んー、バイト代減らされても困る。あれだ、こいつらのえさ代のためにバイト始めたんだから。
    落ち葉と一緒に丸い玉(ボールもどき)が二つ、箒にさらわれてゴロゴロゴロ・・・
    しまった、こいつらも一緒に掃いちゃだめだろう、洗うのが大変だしなぁ。
    箒を近くの木に立てかけて、丸まった二匹を回収しに向かう。
    ステイの毛にはたくさんの葉っぱがこれでもかとばかりに付着。
    ブラシは作業室に置いてあるから・・・しかたがない、転がしておくか。

     「ヂィゥゥゥ(ごろごろごろ)」

     なんか悲痛な声が聞こえた気がするけれど気にしない。
    ムクリと起き上がったステイの尻尾は、膨らんでふぁっさふぁさ。
    怒っているんだろうな・・・さすがにかわいそうだったか。
    ヂィウヂィウー?! と講義の声を発して訴えている。
    声の高低に比例して、尻尾もばたばたもふもふ・・・ステイはわかりやすいよね。
    あとで、ステイのために甘いミックスオレを買ってこようか。
    あ、ミックスオレにつられておとなしくなった。
    ボソッとつぶやいただけなのに・・・地獄耳め。
    大丈夫、あとでブラッシングもしてやるから。
    そう言ってなでたステイの頭は、ふかふかだった。
    目を閉じて、なんだか幸せそうな顔をしている。
    ・・・転がしてごめん。


     手の中には、羽毛球。
    ステイの頭とはまた違ったふわふわ感が、暖かい。
    くちばしがこつっと、手のひらに当たる。
    ポッポの平均サイズは、30cm
    パトの現状サイズは、20cm強
    両手で包み込めるぐらいに小さい、羽毛球。
    日向ぼっこを始めたステイの尻尾より小さい。

     チラッと振り返れば、ソラメが・・・え。
    いつの間にそだてやに進入したんだ、さっきまで柵の外の道路にいただろ。

    「乗り越えた」

     ・・・柵乗り越えてきたのかよ、おいおいって。
    相変わらず、アブソルのジャンプ力ってすごいねー。
    ソラメの視線が、パトに突き刺さった。目つき鋭すぎだよ、もうちょっと温かい目でみてやってよ。
    視線は、パトの尻尾に吸い込まれて・・・はいはい、説明するから。決して携帯獣虐待なんかじゃないから。
    わしゃわしゃアブソルを片手でなでつつ、丸く羽を膨らませたパトを、手のひらに乗せた。
    相変わらず、尾羽は真ん中辺りでみんなちょん切れている。
    保険の先生いわく、車とかこの辺では今時珍しい(らしい)のに尾羽を轢かれたんじゃないかと。
    昨日パトが、道路でこけたままのところを発見。
    そのままにする気は出来ず、保護→結局手持ちに追加。
    サイズ的に、子供。
    どっかの巣から落ちたか、さらわれたか。
    どうしようもないみたいなので、とりあえず、手持ちに追加中だったりする。
    パトはちっちゃくて、ふわふわで、大人気。
    手当てをしてもらって、部屋に帰ろうとすると、すれ違った人がみんな、かわいーかわいーって。
    尾羽の説明をすれば、かわいそうの連発。
    口をそろえていうのは、頑張ってお母さんを探してあげてね。
    なんともまあ、無責任な。どうしろっていうんだよ。
    今現在、おそらくピジョットである本物の親探し(一応ね)中。
    一度人間に保護されちゃってるから親はもう受け入れてくれないだろうな。
    ついでに木の実でも探してくるかな・・・?
    以上説明終わり。パト、疲れたならタマゴと一緒にリュックに入っていなよ。

    「ヂィウ」

     ・・・ステイは無理。
    まあいいや、今日は掃除も終わりでいいかな。

    「いいのか?」

     まあ、適当に掃除しておいてといわれただけだし。
    本格的な仕事は、その辺にいるお客さん(ポケモン)が僕になれてきたらね。
    さっきと言っていることが正反対なのは気のせい、フシギダネ。

     「おつかれさーん、明日もよろしくな〜」

     そういいながら手を振っているのは、育て屋の爺さん。
    ほのぼの老人という言葉が良く似合うナイスガイ。
    そういえば、ナイスガイってどんな意味だっけ?
    ま、多分いい言葉だし、結果オーライ。
    ソラメも、パトの親探し手伝ってもらえない?
    昨日、帰るときに野生ポケモンに追っかけられたんだよね。
    ステイはやめとけ、吹っ飛ばされて終わるから。せめてトレーナー戦で勝てるようになってからな。
    ・・・だめだ、毒なんかになったら毒消しもないんだから(貧乏)モモンのみは持ち運びにむかないし。
    親の心、子知らずって、本当なのかと一瞬思ってしまったけれど、とりあえず行こうか。
    ほら、ステイはボール入っておけ。今度また問題起こされたら大変だし。



     ただいま、おやつの時間をお届けしまーす・・・ちがう。
    時間はあっているけれど、おやつは食べていない。
    むしろ食べられそうだ。
    現在、隣町に続く道(途中から森の中に突っ込んで、洞窟まで抜けないと隣町につかない)
    パトを拾った辺りに来たのはいいけれど、出てきたのはリングマさん。
    そもそもなんで昨日こんなところに来たのかは・・・知らなかったんだよ。
    隣町に行くのがこんなに大変だとは。地域で学校が併合されちゃったわけだ。

     「不意打ち」

     ソラメの合図で、アブソルの攻撃開始。
    実際に不意打ちされたのは僕らだけどね。リングマさんが、いきなりガオーって出てきたんだ。
    今バトルをしているアブソルは・・・多分ヤイバ。
    多分っていうのは、いっぱいいすぎて時々間違えるから。
    今まで確認しただけで三匹は見たよ。ソラメのポケモンはみんなアブソルなんじゃないかと。

     ガオーって擬音語が似合いそうな勢いて、リングマが腕を振った。
    その後ろから、ヤイバが登場、不意打ち命中。よっぽど威力が高かったのか、リングマさんは体制を崩した。
    さすがソラメ、最初から予想済みだったらしく、合図もなしにヤイバさんの追撃が入る。
    いつの間に命令したんだよ。
    バトルは休むまもなく続行中で、今度はリングマさんの反撃。
    みだれひっかきと思われる爪攻撃がヤイバに命中・・・しなかった。
    ソラメの合図でヤイバは跳んだ。
    高さは・・・リングマを飛び越えるぐらい(実際に飛び越えた)すごいジャンプ力だよね、まったく。
    フィニッシュとばかりにヤイバの鎌が一閃。
    かなりの傷を負ったリングマは、最初の勢いはどこに行ったのとばかりに草むらに消えた。
    ポケモンってすごいよね。あんなに傷だらけになっても、健康なら次の日にはほぼ全快しているんだし。
    ほめてほめてとばかりにヤイバがソラメに擦り寄っている。なつかれているなー。
    命の危機が去ったので、改めて回りの確認。
    こら、ステイはいつの間にボールから出たんだ。
    前来たときは、勝手にスピアーの巣にちょっかいかけてぼろぼろになっていただろ、戻ってろよ。

    「チュ、チィ、ヂュヂュゥヂュ」

     もうしないからと、身振り手振りで必死に説明をしだした。
    手が上下に動くと、尻尾も上下に。左右に動けば、左右に。
    尻尾はぐるぐる動いて、ばたばた地面に当たって跳ね上がって・・・
    もふっとちっこい頭に手を置いて、判った判ったといってみた。
    ただし面倒なことはするなよ、草むらに入るとかな。
    ステイの目が光ったのは、気のせいか。

     目当てのもの(ポッポの巣)を探して、辺りの木を見上げる。
    さわざわと葉っぱが揺れて、肩に乗っているパトが身震いをした。
    足元ではステイが自分も肩に乗せろと騒いでいる。
    出来れば空気を読めるようになって欲しいというか、ステイを乗せると僕がつぶれる。
    ちょうどパトがこけていた(倒れていた)場所の上、木の枝にはアーボの抜け殻。
    パトの兄弟はアーボに食べられちゃったとか?
    でもさ、蛇って脱皮の直前には何も食べなくなるはずだよなぁ・・・ポケモンはわからないか。

     がさがさと、揺れる草むら。
    チロリとはみ出た尻尾。
    ぴんっと、立った耳まで揺れている草むらプラス@
    ついさっき草むらに入るなっていったばかりじゃないかな、このステイやろう。
    がさがさ引っ張り出してきたのは、ノコッチ。
    ツチノコ発見!・・・じゃないって、何やってるんだよ。
    あ、へびにらみされた。ステイは大丈夫か?
    ぐるぐるぐるーと尻尾で掘った穴にノコッチは消えた。
    あのしっぽって、ドリルみたいに使うんだね。

    「ウキュ、キュ」

     なんかぴくぴく痙攣(麻痺)している。
    クラボのみってあったっけ? まったく、麻痺だけでよかったな。 
    あ、こらは罰ゲームだからさっさと食え。
    甘党のおまえにはきつかろう、さっさと食いやがれ!
    もし残したら、チーゴの実も食わせるからな。
    ・・・あ、この木ってカゴの実かな。
    近くの木の一つ、少し細くてごつごつした木を見上げる。
    やっぱりそうだ、野生のものだけあって細い中にも強さが垣間見える。特に虫食いの跡とか。
    パトって渋い木の実が好きだったっけ? あ、ふつうなのか。
    まあ、せっかくだしとって帰ろうか。その前にポケナビの新機能でアーボノ抜け殻をパチリ。
    証拠写真的なものも撮ったことだし、目的達成かな?

    「ポッポ、クー!」

     ・・・どうしたパト、そんなにばたばたしてこら、つつくなどうした!
    甘えていると勘違いしたのか、ヤイバがソラメに擦り寄っている。
    もさもさだ、尻尾でパトを牽制しているようにも見える。
    パトは・・・何慌てているんだろう。上を見上げてって、あれ、ステイがいない。
    ソラメは、なんでそんな苦虫をかみ締めたみたいな顔を?

    「・・・前回は何に追っかけられたんだ」

     もしかもしてあれか・・・と、真剣な表情で指差された先を見た。
    苦々しい顔の意味がわかった、よくないけれど。
    あー、もしかもして昨日ステイが壊した巣の方々ですかねぇ。
    あっという間に再建しちゃって、スピアーの建築能力ってすごいと思ったんだ、思うよね。

    「のんきなことを言っている場合か」

     そういい終わるのが早いか、ステイが落ちてきたのが早かったか。
    逃げるしかないんだろうなーとつぶやきつつ、ステイをキャッチ。
    あれ、ステイちょっと重くなった? パトはリュックの中に入ってなよ、走っているときに落ちたら困るし。
    リュックのチャックも閉めて、ステイも引きずって・・・ヤイバ(ソラメのアブソル)がくわえてくれた。
    背中の皮が伸びてる伸びてる・・・結局尻尾は引きずられてるし。
    車も通れるように舗装された道路だから(洞窟の前まで)走るのには問題なし。
    頭上と背後からは、無数の羽音、身震いしたくなるそよ風。
    ってステイ、何持ってるんだ、コクーンなんてつかむな捨てろ!!
    違う齧るなそれは食べれないだろ。
    むっとした顔をしたステイは、持っているもの(コクーン)を投げ捨てた。
    振りかぶって、ポーイ。
    捨て方にも、もっと別の方法が・・・全力疾走中だから仕方がないか。
    投げられたコクーンはこーんと岩に衝突、スーパーボールのように跳ね返ってはまたポーン。
    あ、枝に引っかかった(みたいだ)後ろなんて振り返れないからわからないけれど・・・。
    多分無事にスピアーに保護されたんだろう、追い手のスピードが落ちたからね。

     やっとついた森の出口、育て屋の近く。
    背中のリュックをおろせば、器用にチャックを開けてはパトが出現。
    ステイは・・・背中の皮が伸びたのか、自業自得だろうそれ。
    わしゃわしゃ毛づくろいをする姿は本物のウサギみたいだ、サイズ以外。
    走っている最中も終始無言だったソラメは、ヤイバのブラッシング中。
    スピアーに対しての感想もなし・・・お叱りもなし。良かったねステイ。

     ぽっぽ、とパトが呼んでいるので、リュックのチャックを全開にしてみた。
    中からはタマゴがごろごろ×2
    ・・・走ったのがまずかったかな、ひびが入っている。
    ボンドで塞いではだめかな? 中身は出ていないし。
    よく見れば微妙に動くタマゴ。
    生きてるみたいだから大丈夫かな?
    タマゴの割れ目からは光がちろちろと見える。
    もう一つの卵が、ボスンボスンと大暴れ。

    「歩くと早く生まれてくるとは言うが」

     いつの間に近くに来たんだよ、ソラメ。
    足音消すな。え、消してないのか。
    大暴れしているタマゴと、割れ目が焦げているタマゴ・・・。
    ステイとパトの弟か妹達だね。
    こんなに早く生まれるとは思わなかったけれどさ。
    うれしそうにふられる尻尾はぼさぼさ。引きずられていたもんね。
    パトもクッククックとうれしそうにさえずっている。
    ヤイバは・・・割るのは手伝わないでいいから、見ていてあげてよ。

    タマゴが割れた、出てきたのはどんな子?

    【批評していいのよ】【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】


      [No.407] 木の実泥棒と虫除けスプレー 投稿者:スズメ   投稿日:2011/05/05(Thu) 23:56:51     51clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    木の実泥棒と虫除けスプレー




       そいつは、学校の花壇にいた。

       体長、約0,6m  この種族にしては小振り。
      体色はこげ茶を薄くしたような茶色。 
      狸のような尻尾には縞模様がある。
      そして、長い耳。 警戒心強いはずのそいつは、人が多くいる学校の
      敷地内の花壇に植えてある木の実を食べていた。 
      木になっているものは、木に登ってとったらしく、枝が折れている。
      地面に埋まっていたものも穿り出されたみたいだ。
      こいつは、たぶん、最近うわさになっているポケモンだ。
      
      通称、木の実泥棒。


       発見したのは、ついさっき。
      もうそろそろモモンの実がとりごろかと思って、見に来た際に見つけた。
      収穫しようとしていたモモンの実は、無残にも食い荒らされて残骸が転がっている。
      この種を植えたら、もう一度はえてくるのかな?
      踏み荒らされた花壇は足跡が目立つ。 
      今この瞬間も、みはりポケモンの足に踏まれた土たちが圧縮されている。
      あんなに踏み荒らしたら、また耕すのが大変そうだ。
      
       それにしても、真後ろで観察されているにもかかわらず、この食いっぷり。
      他の人や、友人が植えた木の実達にも被害が拡大中。
      どうも、甘いものが好きらしい。
      甘い木の実だけを狙ってムシャムシャ・・・
      甘いものが好きな性格ってどの性格だったかな?
      ようき? むじゃき? ・・・まあいっか。
      
       と、考え事なんかをしている間に花壇はボロボロ。
      甘い木の実だけじゃなくて、他の味の木の実まで姿を消し、苦い木の実だけが生き残っている。

       これは、とめるべきなのかな?
      ・・・とめるべきか。
      でも、どうやって?

       かばんのなかをあさってみる。
      僕、ポケモンを連れていないからなあ。
      なにか役に立ちそうなものは・・・けむり玉は?
      だめだ。 けむり玉なんか入っていないよ。
      あ、虫除けスプレーを発見!! 
      虫に効くぐらいならポケモンにも効くだろうし、使えるよね?


       そーっと、そーっと、茶色のポケモンに近づいていく。
      食べるのに夢中なのか、近づいても反応はなし。
      こいつ・・・本当に、野生のポケモン?
      誰かの手持ちじゃないのかな。
      もぞもぞ動くたびに揺れる尻尾を避けて、そーっと、そーっと・・・あ。

      「ヂュヂュゥ?!」

      「あ、ごめん。 よけきれなかったよ。」

       次からは気をつけるからって・・・聞いていないみたいだ。
      尻尾を踏まれたせいで怒ったのか、尻尾で立ち上がって威嚇をしてきた。
      いいや、そのままかけちゃえば良いんだ。
      
      あ! 野生の オタチが とびかかってきた!

       スプレー発射!!

      効果はばつぐんだ! オタチは 目を回して ぶっ倒れた!!

       「・・・どうしよう。」

       目のまえには、泡を吹いて倒れているオタチが一匹。
      倒すつもりではあったものの、泡を吹いて倒れるとは思わなかった。
      ・・・って、なんか痙攣している。
      そういえば・・・虫除けスプレーって、ポケモン自身にかけてよかったっけ?
      まずいかもしれない。

       とにかく、先生に診てもらおう。
      オタチを抱えて保健室に「う、重い・・」

       体重、およそ六キロ。 
      僕は三キロのダンベルは両手を使わないと持てない。

       どうする、引きずっていくわけにも行かないし、相手は野生のポケモン。
      いきなり起きたら、起きたら・・・どうなるんだろう?
      とにかく、えーっと。
      台車を借りるには場所が分からないし、野生のポケモンだから、ボールにも入れれないし・・・
      野生? そうだ、こいつって野生だよね?

       再びかばんの中をあさってみる。 
      かばんの中身は、相変わらずごちゃごちゃと、いろんなものが詰め込まれていた。
      分類用のポケットもあるにはあるんだけれど、整理するのが面倒なので一緒くたに入っている。
      整理はしなきゃと思うけれど、めんどくさいから、また明日。
      ようやく発見。 モンスターボール×1
      かばんと、中身一式を支給されたときに貰ったやつ。 売らなくて良かった。


       目を回しているオタチに、ポイっとな。

       ポンっと、光と共にオタチが吸い込まれた。
      まったく、モンスターボールはどういう仕組みになっているのかが気になるよ。
      一応、初ゲット!・・・じゃない。
      早く職員室に行かないと。



     


      「あーつかれた。」
      
       ポケモンに虫除けスプレーを吹きかけるなんて?! と、すごい剣幕で怒られた。
      どうも、虫除けスプレーの中には、あまり良くない成分が詰まっているみたいだ。
      だから、ポケモンがよってこないのか。 なっとく。

       シャクシャクと音がする・・・。

       振り向いた先には、オタチ。
      こいつ、いつの間にか僕のポケモンに決定されちゃったんだよな。
      いったん捕獲したなら、責任を持って世話をしろって。
      先生によれば、こいつも元々人に飼われていたやつが逃がされて、野生化したポケモンだろうって。
      だから警戒心が薄くて、学校に忍び込んでいたのかもしれないけれど。

       シャクシャクシャク・・・って
    ここは、僕の部屋・・・学校の寮に住んでいる、というか住まわせてもらっている。
      そして、僕はおやつ代わりに甘い木の実を育てている。 ここ大事。
      プランターを見てみるまでもない。


      「こら、プランターの木の実まで食べるな!! ご飯やるから、ステイ!」

       オタチが、ぴくっと動きを止めてこちらを向いた。
      ステイって、犬と同じ言い方で分かるのかな?
      いや、犬でも訓練しないと分からないはず。

       なに?といいたげに、こちらを見つめるオタチ。

      「・・・ステイ」

       ピヨンっと、長い耳が反応した。 そして、こちらに寄ってきた。
      茶色の毛皮は、意外とふわふわで、ウサギみたいだ。
      
      「ステイ」

       今度は、なに? と繰り返すように顔を近づけてきた。

       定着してしまった。
      「まて」 という意味ではなく、名前として。

      「あー、もういいやステイ、ご飯やるから少しまってろ。」

       本日、木の実泥棒改め、ステイを捕まえました。

       というか、僕はポケモンを育てたことなんてないんだ。
      いや、あったらあったで問題なんだけれど。
      理由? いろいろあったんだってば、それよりも。

       だれか、ポケモンの育て方を教えてください・・・


    【批評していいのよ】【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】


      [No.406] メリープさんのメリーさん 投稿者:スズメ   投稿日:2011/05/05(Thu) 23:55:17     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    「メーリさんのメイリープ、メイリープー メイリープー メーリさんの・・・・・・むぎゃ」

     適当に作った歌を歌っていたら、メイちゃんから落ちそうになった。

    「メイちゃん落とさないで、走らないでゆれないでええ」
     黄色い塊となって動くメリープの群れ、その中でもひときわ大きい、どのくらいかというと、子供を乗せられるぐらい大きい
    そのメリープに、半ば埋まるようにして乗っていた少女が叫んでいた。
    叫んでも、大半がふかふかの毛と群れの足音に消されて聞こえない。
     何事かと止まったメイちゃんこと特大メリープ。助かった思ったのもつかの間、後ろからぶつかってくるメリープの
    衝撃に驚いて「進んで!」と叫んだ私を振り向いたその顔は、ふかふかの毛が邪魔して見えない。もしかもして

    「メイちゃん・・・・・・また太った?」

     後ろで伸びているメリープも気にならないほど、少女にとってその問題は大切だった。
    群れの先頭を歩いているはずの兄が群れの進行を止めさせてまで見に来ても、
    後ろで伸びているメリープたちのことで怒られたって耳に入らない。メイちゃんが太った、また大きくなった? 
    今でさえ標準の二倍以上なのに、また大きくなった。お医者さんに怒られる。

    「こら、キロお前なにしたんだ。」

     メイちゃんの後ろには、倒れて積み重なるメリープたち。積み重なるというほどでもないが、
    困ったようにメリー、メーと助けを呼ぶ声が絶え間なく聞こえてくる。少女には聞こえてなかったけど。
     相棒のヒツジ(デンリュウ)とメリープを助け起こしているキロの兄はそんな様子を見て、ため息をついた。

    「まーた自分の世界に入りやがった。」

     頭を困ったようにかきながら走っていった兄の背中を見おくったあと、少女は気づいた。いまさらだと。
    すでに体長は2メートルを越え(二倍どころじゃなかった、3倍以上)父からはあきれられ、兄はうらやましがり、
    メイちゃん本人はいつの間にか群れのリーダーになっていて、本当のリーダーである兄のヒツジちゃんことデンリュウと
    たいまんで勝負してたし・・・・・・しかものしかかりでノックアウトしていなかったっけ? 
    おかげで私はヒツジちゃんに睨まれる羽目に。そういえば、ヒツジちゃんとのリーダー争いでは、
    間一髪仲裁に間に合わなかったお父さんとアラタにメイちゃんが吹っ飛ばされて勝敗はうやむやになったんだ。
    相変わらず強いよね、お父さんのアラタ。結構ご高齢になってきたのに、毛並みが白くなっちゃってもメイちゃんを
    ふっ飛ばしちゃえるんだもん。あ、

     あ、という言葉もかき消されながら、少女の体は軽く宙に浮いた。メイちゃんが再び歩き出しただけだったりするが、
    上に乗っている少女にとっては大問題。黄色いもふもふで、暖かくなってきたこの時期には暑すぎるその毛をひっつかんで、
    バランスをとろうとした、バランスは取れた、バランスは。
     ぶち、という音と共にその手に残る黄色のもふもふ。意外にごわごわのその塊は、さっきまでメイちゃんに、
    ぶるぶると頭を振って、思考をまとめる。どっちにしろ、これから冬毛を刈りに行くんだから問題なし。
    手につかんだままの黄色い塊は、メイちゃんの背中に押し込んでおいた。
    後ろを見てみると、アラタが走っていた。早く早くと群れをせかしている。
     アラタの、その後ろを見れば赤い夕日。ぺラップが奇怪な声を上げながら飛んでいった、「あほーあほー」と。
    メイちゃんはキッとそのぺラップを睨みつけてた。小刻みに体が揺れていたからきっと怒ってる。
    ちらりと見えた角が突き上げるようにぴょこぴょこ動いているのと、地面を打ちつける足の音が・・・・・・怖いからやめて。
     相変わらず揺れはひどいけど、怒っているんだから仕方ない。さっさと家に帰り着くためにも怒りを静めてもらわなきゃ。
    周りのメリープがおびえていてなかなか進まないし、舌を噛まないように注意して歌ってみようかな、メリーさんのメリープ。
    なぜかメイちゃんが好きな有名歌。舌を噛まないようにするのは無駄な気もするけどね。さーて、ちゃんと聞いてよね。

    【批評していいのよ】【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】


      [No.405] あたらしく 投稿者:スズメ   投稿日:2011/05/05(Thu) 23:51:50     55clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    君はまだ若いから、大丈夫。 きっと次が見つかるよ」

      目のまえに突きつけられた辞職届。
      目に焼きついたのは、上司の嫌味満載笑顔。
      つまりは、そういうこと・・・だ。


      

       あてもなしに街を歩く。
      スーパーの裏を通れば、生臭いにおいが鼻を刺す。
      においの元らしき液体が道路を伝って、排水溝にぽたぽたと落ちる。
      うっとおしいにおいを払いたくなって、表通りに戻ってみれば、学生らしき人たちがコンビニの前でたむろ。
      こちらとら仕事もないって言うのに、いい身分なもんだ。
     
       電気屋の前を通れば、テレビの中でパリッとした服を着たおっさんが仲間割れ。
      なにやってるんだよ、仕事しろといったのは誰か。
      どこからか「話しているだけの奴らの方が金を持っている世の中なんて」という声が。
      振り返ってみても、人ごみに流されて声の主はわからない。

      街でティッシュを配っている人にティッシュを貰った。
      それをポッケに突っ込みながら、人の流れを押しのけて裏道に戻った。
      なんだか、人に流されているみたいで気に障ったからだ。

      裏道に入ったとたんに生臭いにおいが戻ってきた。
      衛生環境は大丈夫なのかよ、これ。
      薄汚れた道に散乱したゴミ袋。
      ところどころ引き裂かれた後がある・・・ポケモンか?
      黒い汚れが所々にこびりついた裏道に、ギャンという子犬の声が響いた。

       人が集まってきている。
      水の少ない用水路・・・うわ、油が浮いている。
      その横にある道に、一匹の赤い犬・・・ガーディが数匹のワニノコに囲まれていた。
      周りの野次馬からは「野良ポケモン」だの、「捨てられたのか?」という声がぼそぼそ聞こえた。

      改めて、目の前のポケモンたちを見てみた。
      どちらも、標準より小さい・・・いや、ガーディの方は割りとしっかりとした体格を持っている。
      体中傷だらけでぼろぼろだが、おそらく人間に飼われていたのだろう。
      ワニノコのほうは、標準よりも確実に小さい。
      水色のはずの体が少し色あせて見えるのも・・・気のせいだと思いたいが。
      そもそも、彼らが住まうには街は狭すぎるし、人が多すぎる。
      そして、水も少ない。 ・・・本来彼らがいられる場ではないのだ。
      何故? おそらく、誰かが・・・「バキッ」
      とたんに、押し殺した悲鳴が広がる。

       それは人から人へと伝染して、震源地には折れた傘。
      みかねただれかか、ガーディを助けようとワニノコとガーディの間に傘を広げたらしい。
      今ではもうただのごみ。
      ワニノコたちはガーディから、間に入ろうとした人に対象を変えたのか、若い誰かを水流が襲った。
      隣の人が電話をかけている。 警察か?
      ほこりっぽい空気が一気にじっとりと、水気を帯びた。
      でて来たのは、アリゲイツ。
      この環境で進化するとは・・・見上げた根性だ。
      しかし、その皮膚には黒ずんだしみが見られる。
      こいつも長生きは出来まい。
     
       野次馬の中にトレーナーがいたのか、突然の閃光を合図に戦闘が始まった。
      現れたのはパチリス。
      ぱちぱちという音と閃光を発して、空中でターン、着地。
      どうやらコンテストに出場しているようなポケモンだ。
      バチバチと閃光が地を走るスパーク。
      対するアリゲイツは・・・うわ、穴を掘りやがった。
      アスファルトがゴリゴリとめくれていく。
      「ガゥ・・・」
      小さな声が聞こえた。 はっと振り向くと・・・白い尻尾。
      白い尻尾の半分は毛がむしりとられてしまっている。
      赤い毛皮の持ち主はガーディ。 ワニノコに囲まれていたあのガーディだ。
      何故かほおって置けない気がして、バトルを見るだけの人ごみを押しのけ、追いかけた。



       運動不足がたたった。 
      いや、そもそもポケモンに追いつこうとしたのが間違いだったんだ。
      ゼーハーゼーハー息を切らしながら叫んだ。
      公園に逃げ込まれたら見失ってしまうに違いないだろう。
      
     「まてっ!」

      走っていた子犬ポケモンが急ブレーキでとまった。
      次の瞬間、体制が伏せに変わる。
      やっとおいついた、その時。
      目が合ったんだ。 
      だが・・・トレーナーでもない、人の感情を読み取ることすらままならない俺にこいつの
      目の奥に隠れた心は読み取れなかった。

      逃げようとする子犬にもう一度「まて」と言う。
      びくっと見て取れるくらいに動きを止めて、子犬はまたふせをした。
      ・・・確実に何らかの訓練を受けている。
      なんで、捨てられたのか?
      子犬の前にしゃがみこんで気づいた。
      子犬のおなかからは、腹の虫のコンサートが聞こえていたんだ。

      
      その後は大変だった。
      昼食のあまりのパンを与えようとしたら、子犬が口にする直前にポッポにかっさらわれた。
      パンを見た瞬間の目のきらめき方と、目のまえで消えたパンを空なめしている瞳の色の変わりようがすごかった。
      だから空気をなめることしか出来なかった子犬に、俺はミックスオレを自動販売機で買ってきた。
      適当な容器にいれて目のまえに差し出すと、ものすごい勢いでなめ始めた。
      上下左右に動く頭と、振り切れんばかりに動く尻尾。
      頭をなでようとしたら、手がべとべとになった。
      俺はポケモントレーナーじゃないが、ポケモンを飼うのもいいかもしれないな。
      いつの間にか、無邪気な子供みたいなしぐさに心を奪われてしまった。
      家に帰ったら、まずシャンプーか。
      ボールも買わなきゃな・・・と、洗った手を拭こうとして気づいた。
      ハンカチがない。
      さっき貰ったティッシュがあるから、それで拭こうとしてその広告に気が付いた。
     
      「メリープの放牧をしてみませんか?」

      その下には、村の名前と住所。 仕事の内容と、村の様子。
      ミックスジュースに尻尾を振っている子犬を見る。
      そして、空を見上げたんだ。
      雲の多いここの空にしては珍しく、雲ひとつない高い空。
      風のにおいは、鉄にまぎれてごちゃごちゃと、きれいなものと良くないものと好きになれないものが。
      もう一度、空を見た。
      世界は、ここだけじゃない。
      仕事もない。 こいつもいつまで養えるか分からない。
      だが、別に仕事をここでしなきゃならん理由はない。
      大変だろうが、食ってはいけるに違いない。
      なにより・・・その村は風のにおいも澄んでいるんだろう。
      たくさんありすぎてわけの分からなくなった匂いよりも、きれいなにおいが。

       のみ終わって一息ついている赤い子犬。
      こいつは、俺が新しくなるきっかけだ。
      まさかこんなことになるとは思っていなかったけどな、俺は一度決めたらやりきるタイプだ。
      ずっと、このきっかけを、決意を忘れないために・・・お前と頑張るためにな。

     「お前は、今日からアラタだ。よろしくな」

      そういって、アラタの頭に手を乗せた。
      そうと決まったら、とりあえずシャンプーをしようか。
      
      
       【批評していいのよ】【書いてもいいのよ】【描いてもいいのよ】


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