マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  •   [No.1594] Re: あらためまして感想 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2017/01/28(Sat) 00:56:58     33clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    返す刀で感想ありがとうございます。
    >
    >
    > ▽銭湯
    > 銭湯を含めてお風呂は基本的にはリラックスするところでもあるので、ケイとレアードが比較的ゆるーく出会いを迎えて、このシーンの外でもちょっと語らいながら風呂から上がってきたんだろうなーと想像が捗ります。

    出てから必殺の瓶牛乳orコーヒー牛乳の流れにしようと思いましたが、話題がなかったのでカットしました。1話だけ食事シーンないんですよね。

    >
    >
    > ▽1話終盤
    > >「……要するに、小銭を稼ぐ無職なんでしょ」
    >
    > 辛辣すぎる(すき)。

    読者の感想で妄想が広がる作者の鑑なのでこれでひらめきました。ケイって旅もしてないし働いてもないから金を稼ぐって大変なことなのがわかってないのを表せていいと思いました(便乗)

    >
    >
    > ▽インタビュー
    > 緊迫感って、何もポケモンバトルだとか命のやりとりだとかに限らない。プロ(プロ?)の聞き手と、プロのジムリーダー。どこまで掘り下げて聞けるか、どこまでで矛を収めるか。ミカンの機嫌を損ねたのが読者にも分かる場面があって、その駆け引きにいい意味で表情がこわばりましたね。

    レアードも色んな所に足を運んでいるので、そのへんの引き際はわきまえていると思っています。町に残ればいくらでも見聞きできますしね。

    >
    >
    > ▽食事(そば)
    > 刺激を求めて読みに来る読者にとって、三大欲求のひとつに訴えかけてくるこれはキツい(賛辞)。いっぺんに風味や食感を書き立てるんじゃなく、レアードがそばを啜る動作に合わせて描写が進んでいく。私も立ち食い蕎麦を食べるのが好きなのですが、食べているときに感じるそばへの感想がまさにこういう具合に段階的。だからリアリティがあってなおさら美味しそうに感じます。今後もぜひ『バースに集え!!!』では飯テロを推進していただけたらなあと(?

    ???「おばあちゃんが言っていた…食という字は人が良くなると書く、と」
    同じ釜の飯を食うという古臭いですが案外手っ取り早いコミュニケーションのツール。最終話までどこかしらに食べ物をねじ込むので、おすすめの料理とかあったら教えて下さい。ネタ切れなんです(切実)

    >
    >
    > ▽2話ラスト
    > > レアード、いつになく熱弁をふるう。ケイ、それを適当に聞き流しながら、自分のご飯を食べ続けるのであった。
    >
    > さっくり流されてて涙が止まらない。

    ケイは地元民ですし、アサギという外国の風が入ってきて洗練された街であれば、どうしても食の意識が高くなるのもあります。ですのでレアードが感動しても「これくらい普通だろ?」と言っちゃったりしてもおかしくないのがケイ。

    >
    >
    > ▽ポケモンセンター
    > そろそろ本題へと進んでいきそうな予感がしてきましたね。
    >

    このお話を考えつくに至った原点ですね。出番は少ないですが、後半では色々出てくると思います。

    >
    > ▽ルナちゃん
    > 由来を知ったときの衝撃。確かにそうだった。
    > 恐らく生活には苦労することのないであろう彼女に、有料化されたポケモンセンターや、その他この世界のトレーナー制度はどう映るのかなーというところに関心があります。恐らくごくふつうのケイやレアードとは違った視点を持っているんじゃないかと思いました。
    >

    ルナとブラッドが抱き合ってる画像が脳裏をよぎったからね、しかたないね。
    ルナは今回みたいに親とケンカしたりすることもあるけど、色々あってとても尊敬しているわけで、これがいい方向につながると信じてるフシはあります。大事なところでスペるところはどうしようかなあ…。

    >
    >  ◇
    >
    >
    >  そろそろ長編の流れが見えてくるころかな? と思います。
    >  次回も楽しみにしていますね!ヽ(≧∀≦)ノ

    春には5話を出せるようにしたいと思います。
    お会いした際にアドバイスでもいただければ幸いです。


      [No.1593] あらためまして感想 投稿者:小樽   投稿日:2017/01/27(Fri) 22:58:03     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     こんばんは、ふらりと小樽です。
     4話まで進んだところでまた1話から戻ってきたのでざっくり感想を残しますね。


    ▽銭湯
    銭湯を含めてお風呂は基本的にはリラックスするところでもあるので、ケイとレアードが比較的ゆるーく出会いを迎えて、このシーンの外でもちょっと語らいながら風呂から上がってきたんだろうなーと想像が捗ります。


    ▽1話終盤
    >「……要するに、小銭を稼ぐ無職なんでしょ」

    辛辣すぎる(すき)。


    ▽インタビュー
    緊迫感って、何もポケモンバトルだとか命のやりとりだとかに限らない。プロ(プロ?)の聞き手と、プロのジムリーダー。どこまで掘り下げて聞けるか、どこまでで矛を収めるか。ミカンの機嫌を損ねたのが読者にも分かる場面があって、その駆け引きにいい意味で表情がこわばりましたね。


    ▽食事(そば)
    刺激を求めて読みに来る読者にとって、三大欲求のひとつに訴えかけてくるこれはキツい(賛辞)。いっぺんに風味や食感を書き立てるんじゃなく、レアードがそばを啜る動作に合わせて描写が進んでいく。私も立ち食い蕎麦を食べるのが好きなのですが、食べているときに感じるそばへの感想がまさにこういう具合に段階的。だからリアリティがあってなおさら美味しそうに感じます。今後もぜひ『バースに集え!!!』では飯テロを推進していただけたらなあと(?


    ▽2話ラスト
    > レアード、いつになく熱弁をふるう。ケイ、それを適当に聞き流しながら、自分のご飯を食べ続けるのであった。

    さっくり流されてて涙が止まらない。


    ▽ポケモンセンター
    そろそろ本題へと進んでいきそうな予感がしてきましたね。


    ▽ルナちゃん
    由来を知ったときの衝撃。確かにそうだった。
    恐らく生活には苦労することのないであろう彼女に、有料化されたポケモンセンターや、その他この世界のトレーナー制度はどう映るのかなーというところに関心があります。恐らくごくふつうのケイやレアードとは違った視点を持っているんじゃないかと思いました。


     ◇


     そろそろ長編の流れが見えてくるころかな? と思います。
     次回も楽しみにしていますね!ヽ(≧∀≦)ノ


      [No.1592] 四話「どこで愛情を注ぐのか」 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2016/12/31(Sat) 16:55:05     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    「旦那様、そろそろお嬢様のお迎えに参ります」
    「ああ、任せたぞストロム。戻り次第、お前は件の準備を進めてくれ」
     朝。陽光差し込む書斎に、2人の男がいる。1人は椅子に座っており、羽織姿に精悍な顔つきが似合う初老の男。もう1人はワイシャツにネクタイ、そしてベストの出で立ちで、直立して話をしている。その態度や言葉遣いから、座る男が上の立場であることが伺える。
    「承知いたしました。しかし、珍しいですな。旦那様がお嬢様のことについて、他の者にお任せになるとは。しかも外泊の許可など……」
     座る男、「旦那様」に「ストロム」と呼ばれた男は、尋ねるように言葉を発した。部屋の中では木々のなびく音やポッポの鳴き声くらいしか聞こえない。その分、「旦那様」の言葉は単なる重さ以上の響きがある。
    「……どのように声をかけるべきか、こちらも考える必要があるからな。お前も子を育てた経験があるから分かるだろう。電話も全てやってもらったしな。それに……」
    「なんでございましょう?」
    「ルナも来年には高校を卒業する。私が今の境地に辿り着いたのも、そのくらいの歳だった。ならば彼女とて、自ら考え、選択をすると言う当たり前のことができねばならん。そのために1人で考える時間も、また必要だと考えている」
    「ほほう……さすがは旦那様、あの短時間でそこまでお考えでしたか。この爺であれば、せいぜいどちらかにしか至らなかったでしょうな。しかし、ルナお嬢様はそこまで辿り着けるでしょうか?」
     ここまでストロムが話したところで、「旦那様」はデスクのコーヒーを口に含む。
    「ふん、その時はその時。だが、私の目利きは間違いない、心配するな。では頼むぞストロム、道中遅くなるなら連絡してくれ」
    「かしこまりました、仰せのままに」

    「さて、そろそろ時間だな」
     所変わって、アサギシティは船着き場。潮風と白煙の匂いが広がる港の入口に、ケイとレアードとルナはいた。ケイの手元にあるポケギアは、午前9時58分を示している。3人共落ち着いているように見えるが、ルナだけは周囲を見回し目線がせわしなく動く。
    「おや? ルナ嬢、やけにそわそわしてるじゃないか。さては俺っちとの別れが名残惜しくなった?」
    「ち、違います。そうではなくて、その……」
     ルナ、中々言い出せない。もじもじすると、浜風にあおられ、彼女の腰まではある銀髪がさらさらとなびく。
    「お嬢様!」
     ルナの言葉を待たず、別の何者かが3人の方向へ叫んだ。ルナはその声に即座に反応する。
    「ストロム! 早かったではありませんか、多少の遅れは気にしないといつも言っていますのに」
    「何をおっしゃいますか! 私めがどれほど心配したことか、もっとお考えくださいませ。旦那様も会いたがっておられます、さあどうぞこちらへ……」
    「あ、あのう。どちら様ですか?」
     ここでケイ、2人の話に割って入った。ルナを「お嬢様」と呼ぶその男は、ワイシャツの上に赤い蝶ネクタイと黒のベストで決め、これまた黒のスラックスを穿いている。年季の入った革靴も、年齢を感じさせない毛髪も、黒。特に髪型はオールバックでセットしてあり、彫刻のように彫りの深い顔とあいまって中々の威圧感を醸していた。だが、それが世話好きの好々爺になるのだから人は見かけによらない。
    「おや、これは失礼いたしました。お嬢様のこととなると、ついつい周りへの気配りを怠ってしまいますな。貴殿らが、連絡を下さったレアード様御一行ですね? 私めはストロム、お嬢様のお世話を中心に、屋敷での執務を取り仕切っております。以後、お見知りおきを」
    「お、お嬢様? お屋敷? ルナ、君は一体……」
     ケイ、割り込んだは良いものの話についていけず面食らった。これもまた、若さゆえの飲み込みの悪さが災いしたか。そこにレアードがフォローに入る。
    「ケイ、どうやらルナちゃんは、良いとこのお家の令嬢……らしい。俺っちも鵜呑みにはできないが、それで合ってるか、ストロムの旦那?」
    「ほっほ、旦那は良かったですな。いかにも、ルナ様はあのエルドレッド様の、たった1人のご子息。将来のジョウトにとって欠けてはならぬお方なのです」
     ストロム、語る言葉に熱を帯びさせてきた。確かに、ルナのこととなると一味違うようだ。
    「それ故、一刻も早くお迎えに参上する必要があったのですが、まあ、こちらにも色々事情がありましてな。こうして、一晩おいてから到着した次第であります」
    「大人の事情、と言ったところですか。ジャーナリストとしては気になるところですが、聞きますまい。では名残惜しいですが、ここでお別れ……」
     レアードの言葉が、別れの時を告げようとしていた。しかし、今しばし待ったの声がかかる。ルナ本人だ。
    「あ、あの! ストロム、少しよろしいですか」
    「なんでございましょう」
    「その、もう少し帰るのは待ってもらえませんか?」
    「ルナ……?」
     思わぬ提案に、一同虚を突かれた。彼女はケイとレアードの方を向き、ストロムに言って聞かせた。
    「彼らは私を助けてくださったのですよ。何かお礼をしたいわ。それも、上に立つ者の務めではなくて?」
    「……はっ! 確かにそうですな。このストロム、気が回りませんでした。不甲斐ない限りでございます」
     ルナの提案にストロム、頭を掻いてケイ達に頭を下げた。
    「レアード様、ケイ様。この度はまことにありがとうございました。このような形で申し上げることとはなりますが、是非ともお礼をさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか。これでも私めは、執務の合間を縫って食べ歩きの旅をしていましてな、きっとご満足いただけるやと思います」
    「……だってさ。どうするレアード?」
    「まあ、良いんじゃないかい。もらえる物はもらっておこうよ」

    「うわ、このたこ焼きほんと美味いな! ほら、ルナももっと食べなよ」
     主人に言われて出された礼に、ケイとレアードは少し覚めた様子だったが、一時間もしないうちにそれを吹き飛ばされた。それだけ、ストロムの紹介する食の数々に唸らされたわけである。
     彼らは現在、船着き場に近い待合所の食堂街にいる。各所から船が出入りする都合、異国情緒漂う香りがそこかしこからやって来る。形式も、座席が用意されている店や急ぎの旅人向けのテイクアウト等、それこそ多種多様だ。その中で現在食べているのは、たこ焼き。黄金色の、だし香る生地の中に迷い込んだ、たこの足。みずみずしいネギもふんだんに混ぜられており、しかも焼き加減は絶妙。陳腐な表現であるが、外はパリパリで中はトロトロ。三種類の食材と二種類の食感で、1舟で何度も美味しい。しかもあつあつだから、すぐに食べることはできず、その間に会話も弾む優れものである。
    「ふふふ、私めのチョイスはいかがですかな? お嬢様に、限られた予算で最高のお食事を供するため、全国を回りながら食材探しに奔走する傍ら、調理法の勉強も兼ねて食べ続けてきたのですよ。もう十年以上は続いているでしょうか。これらはお嬢様の好き嫌いを克服するのにも大変役立ちました」
    「へぇ、ルナちゃんもそう言うところあったんだ。出る品みんな平らげちゃうのに」
    「ええ、それもこれもストロムのおかげです。いつも私達のために色々手を尽くしてくれるんです」
     ルナの「お褒めの言葉」に、ストロムは思わず感涙。
    「お、お嬢様にそのように言っていただけるとは……!」
    「ただ、中々外出をさせてもらえないのはなんとかしてもらいたいですわ。おかげで、学校でも友人があまりできないのですよ」
    「え、そんなことしてるの? 今時そんな話聞いたことありませんよ、ストロムさん」
     ケイが驚くのも無理はない。彼はある種、ルナと真逆の生活をしているのだ。ストロムはたこ焼きを一個口に入れ、飲み込んでからこう切り出した。
    「……旦那様、お嬢様の父君のお達しなのです。『将来のジョウトを、そして世界を担う存在は、その交友にも気をつけるのは当然だ』と。私めには子がおらぬ故、どのような育て方が良いのか検討はつきませぬ。しかし、その中で最も良いと思われる形で、お嬢様に接することはできます。こうして日々の食事に神経を尽くすのも、そうした心の表れだと、思っていただきたいのです」
    「ストロム……」
     ストロムの言葉には、確かに愛情が詰まっていた。例え実子でなくても、力の限り育てれば、応えてくれる。ルナを見ながら、ケイ達独り者はそのような事を考えるのであった。
    「あ、あっつ!」
     ただし、だからと言って焼きたてのたこ焼きを丸ごと口に入れてはいけない。


      [No.1591] Re: #137629 「異常な食品スーパー」 投稿者:ASPEAR   投稿日:2016/12/27(Tue) 06:20:01     36clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    おお、久しぶりな気がする新作乙です!
    私はサンムーンは未プレイなのですが、これはプレイ後に読むと楽しみが増しそうな創作です……!

    作中において土着の守り神が起こしたとされる出来事が、実際は未知の生物が起こしたものだったという視点は面白いです。
    「プレイヤーの得られる情報がすべて事実とは限らない」という視点は、このレポートやサンムーンに限らず、創作物全般で重要になると思います。
    後々矛盾点が出る可能性があるという危険をはらんでいますが、むしろ作品間の矛盾を解消するテクニックとして使われることもあり……
    (私が案件コンペに出たのも元々はそんな動機でしたし……)

    腹に口がある太ったサザンドラのような生物、今でこそ「アクジキング」という名がついてますが、
    管理局では「生体#137629」と呼ばれていたり、エーテル財団では"UB05 GLUTTONY"と呼ばれていたり、
    団体によって別々の呼び方をされているのはまさに未知の存在という気がして楽しいです。

    作中においてポケモンの正式名称がつけられる過程は不明(私が知らないだけかも)ですが、
    例えばポケモン学会のようなお偉いさんたちが真面目に話し合って「マッシブーン」みたいな名前を考えているのかと想像すると笑えてきます。

    あと、インシデント#137629にて、しれっとポケモンがポケモンを殺している記述が入っているのが気になりました。
    健全なイメージのあるポケモンバトルでも、事故やら故意の結果などでそういったことが起こり得るというのは不思議な気分です。


      [No.1590] #137629 「異常な食品スーパー」 投稿者:   《URL》   投稿日:2016/12/25(Sun) 20:18:59     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    Subject ID:
    #137629

    Subject Name:
    異常な食品スーパー

    Registration Date:
    2013-08-12

    Precaution Level:
    Level 3(2013-08-12時点)→Level 0(2015-12-17時点)→Level 2(2016-02-05時点)


    Handling Instructions:
    エリア#137629は要注意団体の一つである「アムリタ・ファウンデーション」のフロント会社によって運営・管理されており、当局による査察並びに監査の請求を拒絶しつづけています。社団法人ポケモンセンター管理協会と連携し、エリア#137629に隣接する区域にポケモンセンターが設立されました。ポケモンセンターの事務職員として当局の局員を複数名配置し、エリア#137629及びアムリタ・ファウンデーションの動向を監視します。

    [2013-10-11 Update]
    要注意団体の一つである「エーテル財団」が近隣に活動拠点を設け、エリア#137629の監視を開始したとの情報が寄せられました。拠点は当局が運営に携わっているポケモンセンター並びにエリア#137629の双方を監視可能な地点に存在しており、アムリタ・ファウンデーション及び当局に対する示威行為の一環と考えられます。ポケモンセンターに局員を追加配備し、エーテル財団側の行動を監視する体制を構築しました。

    [2015-07-03 Update]
    2015-07-01にエリア#137629にて重大な異常現象が発生(インシデント#137629)し、当局の判断によりエリア#137629へ機動部隊ゼータ-ダイヤモンドが送り込まれました。機動部隊ゼータ-ダイヤモンドによりインシデント#137629は鎮圧され、エリア#137629全域の制圧に成功しました。制圧に際しては、「守り神であるカプ・ブルルの怒りに触れた」というカバーストーリーが適用されます。カバーストーリーの展開のため、観光客に扮した局員が数名追加配備されました。

    [2015-07-06 Update]
    インシデント#137629を受けて、エリア#137629全域が当局の管理下に置かれました。エリア#137629に残された食品#137629やアムリタ・ファウンデーションに関連する資料はすべて押収済です。現地に保安担当の局員を配置し、エリア#137629の保全を行う予定です。


    Subject Details:
    案件#137629は、異常な食品を大量に販売する食料品店と関連施設(エリア#137629)とそこで販売されていた食品(食品#137629)、エリア#137629で発生した大規模なインシデント(インシデント#137629)、及びそれらに掛かる一連の案件です。

    2013年7月下旬頃、アローラ地方ウラウラ島南部に位置する地方都市において、近隣で活動中の局員が「奇妙な食品を販売している店がある」との情報を地元住民から入手しました。局員が初期調査を行い、情報に一致する食料品店の存在を確認しました。案件の立ち上げが提起され、裁定委員会はこれを承認しました。継続的な監視活動のため、当局は社団法人ポケモンセンター管理協会と連携し、食料品店の近隣に共同でポケモンセンターを設立しました。食料品店及びその関連施設は、エリア#137629と定義されました。

    エリア#137629は、アローラ地方ウラウラ島南部に存在する「スーパー・メガやす」という名称の大型食料品店です。表向きは地元企業が運営しているとされますが、当局の調査により、設立・経営には要注意団体の一つである「アムリタ・ファウンデーション」が深く関与していることが明らかになりました。アムリタ・ファウンデーションは以前からアローラ地方全域に組織を展開し、他の地方と同様に(往々にして異常性のある)携帯獣を食品として加工し、配布・販売しています。

    実地調査により確認された、エリア#137629において販売されていた食品(食品#137629と指定)の抜粋は以下の通りです:


    [食品#137629-1]
    「ヤドンのしっぽ揚げ」と銘打たれた冷凍の唐揚げ。ヤドンの尻尾は食用として用いることが可能な部位であるが、当局によるこの食品に対する成分調査は明らかに通常のヤドンの尻尾とは異なる結果を示している。具体的に何を加工して作られたものなのかは明らかになっていない。

    [食品#137629-5]
    「バニリッチ風ソフトクリーム」として販売されている冷菓。外見上は一般的なソフトクリームのようだが、成分の調査結果からはバニプッチの生体パターンと一致するデータが検出されている。バニプッチを加工して食品として用いている可能性が示唆されている。

    [食品#137629-12]
    「アマカジ100%ジュース」なる名称で販売されている清涼飲料水。成分の調査結果は、アマカジ由来の成分が約63%、由来不明の成分が約12%、水分が約25%となった。12%に相当する成分の詳細は明らかになっておらず、製品個体ごとに少なくない差異が見られる。

    [食品#137629-14]
    「アチャモバーガー」と名付けられた菓子パン。パンの間に平たく加工したハンバーグが挟まれている。パンについて特に異常な点は見られなかったが、一般的なものと比較して香料が多く使用されている。ハンバーグに付いては、アチャモの他確認されただけで35種類の携帯獣のデータパターンが検出された。データの破損が激しく、種族の特定に至っていないデータも一部含まれている。


    当局による監視では、エリア#137629にて外部から食品の入荷が行われている様子は確認されていません。このことから、食品#137629はエリア#137629内部で生産/製造されているとの見方が示されています。食品#137629の由来を明らかにするためにエリア#137629の監査を実施する必要があり、現在も申し入れを続けています。エリア#137629の運営会社はこれを拒否し続けていますが、地域住民の一部からもエリア#137629が取り扱う食品の安全性について疑義が呈されており、当局はこれと連動して活動を展開しています。

    [2015-07-01 Update]
    2015-07-01 12:46頃、エリア#137629近隣の住民から「見たこともない生き物がスーパーで暴れている」との通報が他数寄せられ、地元の警察機関が出動する事態が発生しました。ポケモンセンターにおいて救護に当たっていた局員が異常事案の発生の虞ありと報告、最寄りの拠点から機動部隊ゼータ-ダイヤモンドが出動しました。以後、エリア#137629にて発生した事象はインシデント#137629として記録されています。

    以下はインシデント#137629の事件記録です:

    12:46 - 第一報が当局の管理するポケモンセンターへ寄せられる
    12:55 - エリア#137629において重傷を負ったヌメイルが搬送され、治療を受ける
    12:57 - ヌメイルのトレーナーの証言から、エリア#137629において異常事案が発生した可能性が示される
    13:04 - 負傷した携帯獣及びトレーナーが多数ポケモンセンターへ収容され、異常事案の発生が確定的となる
    13:13 - 統括本部より、機動部隊のエリア#137629への緊急出動が臨時承認される
    13:22 - 機動部隊ゼータ-ダイヤモンドがエリア#137629に到着
    13:24 - エリア#137629内で未知の生物(生体#137629と分類)と接触、応戦開始。生体#137629は「サザンドラを肥大化させたような」と形容されるフォルムを持ち、腹部に口腔のような器官があると報告
    13:26 - 生体#137629はエリア#137629内に存在する食品を手当たり次第に消費していると報告
    13:32 - 生体#137629との交戦中、アムリタ・ファウンデーションの警備部隊がエリア#137629へ到着、機動部隊ゼータ-ダイヤモンド及び生体#137629と交戦開始
    13:38 - 生体#137629がアムリタ・ファウンデーションの警備部隊を襲撃。これにより5名の警備員並びに戦闘に当たった携帯獣が死亡、2名の警備員が重傷を負い、警備部隊は撤退。機動部隊ゼータ-ダイヤモンドは被害軽微のため交戦を継続
    13:47 - 機動部隊ゼータ-ダイヤモンドの構成員の一人が生体#137629から携帯獣に酷似した反応があると報告
    13:59 - 生体#137629について携帯獣のタイプ分類が判明。サザンドラと同様のパターンを検出
    14:17 - 構成員の一人が使役していたミミッキュが生体#137629に致命打を与える。生体#137629の生命反応が停止
    14:21 - 生体#137629の死体が消失
    14:38 - エリア#137629における異常現象が沈静化したことを確認
    14:53 - 機動部隊ゼータ-ダイヤモンドにより、エリア#137629全域の制圧完了が報告される
    16:34 - 当局によるエリア#137629の確保及び隔離が完了

    インシデント#137629は、エリア#137629にて突如出現した生体#137629が引き起こしたものと考えられています。生体#137629がどのような経路でエリア#137629に現れたのかは分かっておらず、生体#137629の詳細についても不明です。しかしながら機動部隊ゼータ-ダイヤモンドによる交戦中の記録から、生体#137629は未確認/未知の携帯獣との見方が大勢を占めています。

    エリア#137629は当局の管理下に置かれ、アムリタ・ファウンデーションがエリア#137629にて展開していた活動について調査が行われる予定です。インシデント#137629については、アムリタ・ファウンデーションの行為が近隣で信仰されている土着神である「カプ・ブルル」の怒りに触れたものであるというカバーストーリーが適用されます。カバーストーリーの適用は成功し、現在のエリア#137629の保全安定化に寄与しています。


    [2015-11-29 Update]
    エリア#137629の異常特性は完全に消滅したと考えられ、保全体制の縮小ならびに警戒レベルの引き下げが案件担当者より提起されました。裁定委員会はこれを承認し、警戒レベルの引き下げを承認しました。引き続き監視体制は保持しますが、一部の局員については別案件への配置転換が実施されます。

    [2016-02-07 Update]
    2016-02-05早朝、アローラ地方の司法当局の介入により、当局のエリア#137629の所有権が剥奪されました。司法当局にて活動を行っている現地局員の情報から、司法当局の介入はエーテル財団が関与していると見られています。案件担当者の対応方針は、エリア#137629におけるエーテル財団の活動を監視することに重点を置きます。

    [2016-04-11 Update]
    エーテル財団から派遣されたと見られる職員とその関係者によりエリア#137629の一部が改築され、アローラ地方における風習の一つ「島巡り」で用いる施設として再利用されるとの情報が現地局員より寄せられました。当局ではこれを、エーテル財団によるエリア#137629の実効支配を強めるための活動と見ています。エリア#137629の監視は継続されます。



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      [No.1587] 第四話前編 アサヒの誘い、ビドーの決意 投稿者:空色代吉   投稿日:2016/10/06(Thu) 00:07:18     30clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    第四話前編 アサヒの誘い、ビドーの決意 (画像サイズ: 480×600 178kB)




    ――約3ヶ月前、<スバルポケモン研究センター>にて。


    「くそっ――!」

    赤いライトが照らす施設内の通路を、青髪の青年が白衣を翻しながら駆けていた。
    青年は悪態をつきたくて仕方がなかった。
    その対象は息切れを起こしかけている自分でも、彼自身が鳴らした耳障りな警報でもない。
    目の前を駆けて逃げていく侵入者に対して、だった。

    “闇隠し事件”の謎を解明するため、他地方から調査団の一員としてこの<スバル>に来ていた青い髪が特徴の銀縁メガネの男――――ヨアケ・アサヒとヤミナベ・ユウヅキの旧友でもある、もう一人のアキラという名の青年。彼は、襲撃者を捕まえるべく奔走していた。
    襲撃者はたった一人。研究員から奪った白衣を着て、顔を黒のフェイスメットで覆っている男性である。
    事の発端はその男の手持ちであろう、ヨノワールが研究所の外壁を攻撃したのが始まりだった。

    所長の指示により研究物を守る側とヨノワールの撃退に別れた研究員。アキラは研究物を守る側について行動をしていた。
    守備陣営でもさらに二手に分かれ、所長と一部の研究員が研究室の内部を見に行き、アキラと残された研究員は、二人で研究室の入口の見張りについた。

    侵入者の第一発見者はアキラだった。
    少し経って、中から、一人の研究員が出て来る。外の方へ増援に向かうように指示された、と言って走り出そうとする彼の白衣をアキラは掴む。アキラは彼の影に何かが潜んでいることに気付き、警告しようとしたのである。
    アキラがモンスターボールを構えようとする前に、影からポケモンが飛び出しアキラ達を突き飛ばす。
    視線を彼の方へ向けるとそこにはフェイスメットの人物が、影のように黒い身体と歪んだ口元が特徴のポケモン、ゲンガーを従えていた。
    一緒に見張りをしていた仲間の研究員は伸びてしまったので、アキラは単独で駆け出す襲撃者を追いかける。

    「待て!!」

    待てと言われて待つ泥棒がいるわけもないのは、彼も重々承知の上である。ある意味これは一つの警告だ。
    大人しく投降するならば、まだ手遅れにはならない、という警告。どのみち国際警察に突き出す気は満々であることは置いておく。
    フェイスメットは特殊な光学迷彩でも使用しているのか、襲撃者は初め、<スバル>の研究員の顔をしていた。つまり、今逃したら変装されて脱出される可能性が大きい。取り逃がすことは出来ない。
    幸い『テレポート』などの転移系の技の対策設備は整っているので、この施設から出さなければ、追いつめて捕らえられる。

    「頼む、メシィ!」

    駆けながらアキラは相棒の一匹である、魔女を連想させる姿をしたゴーストポケモン、ムウマージをボールから出す。
    『くろいまなざし』の一つでも覚えさせておけば、と後悔しながらもアキラは現状で選べる中から最善手を打つ。
    フェイスメットの男の影からゲンガーが顔を出し、こちらをけん制すべく『シャドーボール』を放とうと溜める。その隙をアキラは見逃さなかった。

    「今だ『なきごえ』!」

    呪文のように流れるムウマージの声が通路内を反響し男達に襲い掛かる。ゲンガーの『シャドーボール』を暴発させ、その余波がフェイスメットの男をよろめかせる。

    「!」

    体勢を崩しかけたが踏みとどまった彼は、直感的に横に飛びのく。すると、先程までフェイスメットの男の居た虚空を爪が切り裂いた。
    男に追撃をかけたのは、他でもない彼の手持ちのゲンガーだった。

    「――っ!」

    ムウマージの特徴の一つに、鳴き声によって呪文を唱え、相手を幻術に陥れるというものがある。つまり今のゲンガーは術中にはまり、トレーナーである男を敵と認識しているのであった。
    すぐさまボールにゲンガーを戻す彼。次のポケモンを出そうとする男の動作をアキラは許さない。

    「メシィ!」

    アキラの指示に従いムウマージは『シャドーボール』を襲撃者の眼前に湛えた。

    「動かないでよね」

    念を押して投降を呼びかけるが油断は出来ない。万が一に備え、他のポケモンを出しておくことをアキラは選択した。
    しかし、それは叶わなかった。何故なら、フェイスメットが変形してムウマージを包み込んだからだ。

    「な……!」

    男の顔の姿形が変わっていた、という時点でその正体に気付けなかったことを悔やむアキラ。否、彼はその可能性も考慮していたが、昨今の技術で変装が代用可能なだけに、確信までに至らなかったのだ。知っているが故に単純に考えられなかった、それが彼の敗因である。
    つまり、被っていたフェイスメットの正体は光学迷彩などではなく、メタモンの変身能力だったのだ。
    だが、メタモンに対する驚きと比べられないモノを、次の瞬間アキラは目の当たりにする。

    まず、所々尖った長めの黒髪が見えた。
    それから顔に目をやると、前髪の合間からはアキラの見知った形の眼がそこにはあった。
    赤い光に照らされて見えにくいが、その真昼の月のような白銀の瞳の持ち主は間違いなくアキラの知る者であった。
    アキラは困惑気味にその男の名前を呼ぶ。

    「まさ、か……ユウ、ヅキ……?!」

    そう、アキラが思わぬ形で再会したのは、長年失踪して行方不明だった旧友――――ヤミナベ・ユウヅキだったのだ。

    どうしてここに、とか、何やってんだ、とかアキラには言いたいことはいくらでもあった。
    だけど彼は真っ先にこう詰問していた。

    「どうしてアサヒを置いていった」

    アキラは知っていた。彼女が、アサヒがユウヅキの隣に居る時に見せる、輝いた笑顔を。彼の隣に居たいと強く想う彼女の願いを。
    アキラは思い出す。“闇隠し事件”で見知らぬ土地に一人置き去りにされた彼女が、何年も経ってようやく自分と連絡が取れた時に見せた、泣き顔を。

    「答えろ」

    冷静に勤めようとしても明らかに怒気がこもる彼の問いかけに、ユウヅキはあくまで沈黙の姿勢を見せた。

    「答えろって言ってんだろ……ユウヅキ!!」

    ユウヅキの胸ぐらをわしづかみにしようとするアキラ。その前に立ちふさがる影があった。
    そのポケモンは、白いドレスを纏ったようなエスパーポケモン、サーナイト。
    咄嗟にアキラがムウマージに『シャドーボール』を撃つことを指示するが、その前にサーナイトのドレスの下から黒い影の先制技『かげうち』が襲う。

    「メシィっ!!」

    影はムウマージを一撃で気絶へと追いやった。そして、
    トレーナーのアキラをも、逃さず攻撃した。

    ――予想外の攻撃にアキラは倒れ込む。地に伏し、思うように動けないなか辛うじて目で彼らの姿を追うアキラ。
    通路の壁がサーナイトの『サイコショック』で破壊され、外へと通ずる。
    薄れゆく意識の中、最後に彼が見たのは、こちらを一瞥するユウヅキだった。

    (……待……て…………)

    アキラの念は届かず、彼はアキラに背を見せる。
    そして<スバルポケモン研究センター>を襲撃した、ヤミナベ・ユウヅキは『テレポート』でその姿をくらました――


    *********************


    ――――現在、【トバリタウン】

    ビー君とアキラさんが宿屋から夜の散歩に出かけたのが気になった私は、入り口で二人の帰りを待つことにした。
    二人だけ仲良くなるのは抜け駆けだぞ、なんて気持ちがなかったかと言えば嘘になる。でも、一人になる時間が欲しかったのもまた事実なので、これはこれでよかったのかもしれない。
    何故一人になりたかったかというと、単純に、ちょっと考え事をしたかったから。

    「ドジったなぁ……」

    具体的に言うと、昼間の喫茶店での出来事について猛反省中だった。まさかミケさんが私を調べていたなんて。
    ミケさんの職業が探偵だということを、探偵ならば誰かの依頼で動いていることを失念していた。完全に、完全に私のミスである。
    今回は乙女の秘密ということで見逃してもらえたけど、一歩間違っていたら危うく全部白状するところだった。危ない。
    彼らとの約束もあり、私の記憶がユウヅキに消されているかもしれないことはなるべく秘密にしなければいけない。なのにやってしまった。
    ミケさんのバックに誰がいるのかが分からないのが怖い。ミケさんなら悪いようにはしてくれると思うけれど。事が事、だし。覚悟はしておいた方がいいのかもしれない。
    ああ……アキラ君にだって、記憶の事言ってないのに……。

    そんなこんなうだうだ言っていたらライブキャスターの着信音が鳴った。こんな遅い時間帯に誰だろう、と見てみるとアキラ君の名前が表示されていた。
    彼とは定期的な連絡を取っているものの、タイミングがやや早い気がした。急用かもしれない、と慌てて出る。
    画面に映った青髪の青年、アキラ君は苦々しい顔をしていた。

    「どうしたのアキラ君、なんか珍しく取り乱しているけど」
    『アサヒ、落ち着いて聞いてほしい。ユウヅキが……』
    「ユウヅキが、どうしたの」

    アキラ君は言い澱んだ後、手に入れた情報を教えてくれる。
    それは、本来なら関係者以外に洩らしてはいけない情報だったのだと思う。
    それでも彼は真っ先に私に伝えてくれた。
    そしてそのことを聞いた私は――

    『ユウヅキが“闇隠し事件”での誘拐の容疑をかけられた』

    ――とうとうこの時が来てしまったことを、悟った。


    *********************


    ヨアケと会話していた男は、俺とリオルとアキラさんの気配に気づいたのか、短く『とにかく、詳しいことはまた明日【スバルポケモン研究センター】で会って話したい』とだけ彼女に伝えて通話を切った。
    それからヨアケ・アサヒは長い金髪を弄りながら、ばつの悪い、といった表情でこちらを向き直りこう言った。

    「えーっと、ビー君にアキラさん……おかえり」
    「お、おう」
    「ただいまーアサヒー。なんか電話邪魔しちゃってごめんねー」
    「ううん、気にしないで……っていうのも無理、かな? 特にビー君は」
    「まーな」

    アキラさんはこの地方のトレーナーでもなければ“闇隠し事件”に関わりはないはずだ。とすると、被害者の俺の反応が気になるのも無理はない。つーか気になって当然だろう。
    しかし、ヨアケの捜していた奴がこの国をほぼ壊滅まで追いやった神隠し、“闇隠し事件”の容疑者になるとは……実感はまだないが、とんでもないことになっているのだけは分かった。そして、動機になるには十分過ぎるほどだった。
    ヨアケが俺に申し訳なさそうに謝る。

    「という訳で急用が出来ちゃった。一緒に王都まで行こうって話だったのにゴメンねビー君」
    「気にすんな。そういやヨアケ、【スバル】って確かこの【トバリ山】を越えてその麓沿いにあったよな? 今からじゃ流石に遅いから明朝出発するのか?」
    「場所はその辺だったと思う。行けるのなら今からでも出発したいなとは思っていたけど……」
    「いくら道路あるって言ってもー、流石に危ないってー」
    「俺もアキラさんに同意見だ」
    「そう、だね。うん、そうしておくよ」

    二人がかりで念を押して、ヨアケはようやく引き下がった。こいつ、強行する気満々だっただろ。
    アキラさんが眠たげな様子で欠伸する。

    「じゃあ、明日早いなら、そろそろ寝よっかー。お先におやすみー」

    そう言いながら、宿とは別の方向へ歩き出すアキラさん。俺とヨアケは慌てて彼女を呼び止める。

    「って、どこ行くんだ、宿はこっちだろ?」
    「あー、いつも外で寝る方が好きだから、野宿してる癖でー、つい?」
    「ついついって、宿に荷物忘れてるよっ」
    「あ、そうだった。危ない危ない、ありがとー。それじゃあ改めてお先ー」
    「うん、おやすみ」
    「おう、おやすみ」
    「二人も早く寝るんだよー」

    そして彼女は宿に入る手前でちらっと俺を見て、目配せした。
    その意図はなんとなくしか汲み取れなかったが、ヨアケに何か言え、と言いたかったのだろう。
    アキラさんが見えなくなった後、続こうとしたヨアケを呼び止める。

    「ヨアケ」
    「なあに、ビー君?」

    ヨアケは振り返ると俺の顔真っ直ぐ見て、不自然なぐらい穏やかに聞いてくる。
    彼女のそういう所が苦手で、俺はとっさに視線を反らしてしまう。その視線の先でリオルと目があった。
    リオルからさっさと言え、と促され俺はヨアケに向き合った。
    じっと見られて僅かに緊張する。何をどう伝えればいいのか分からなかった。
    なんとか辛うじて言葉を絞り出す。

    「その、見送りぐらいはしたいからさ、ポケモン屋敷の時みたくさっさと行かないで、今度は声かけてくれよな」

    ヨアケがきょとんとした顔をした。ああ……言ってしまった後に恥ずかしさが込み上げてきた。目が泳ぐ。
    その俺の様子が可笑しかったのか、ヨアケがくすりと笑って、それからはにかんだ。

    「うんっ、わかった」

    その笑顔を見て、夜風がすっと胸の奥を吹き抜けた気がした。


    *********************

    翌朝。私はビー君に頼まれた通り一声挨拶してから出発しようとした。しかし部屋に彼らの姿はなく、ロビーに行くとアキラさんと彼女の手持ちの火焔ポケモン、ゴウカザル居た。名前はライというらしい。よくポケモンを外に出すんだな、と昨日今日の彼女を見ていて思った。私も見習わないとな。

    「アキラさん、ライくんおはよー。おユキちゃんの具合はどう?」
    「おはよーアサヒ。んー、もう大丈夫ー」
    「そっか良かった。そう言えばビー君知らない?」
    「ビドーなら、町の入り口で待っているって言ってたよー」
    「一声かけてくれ、って言ってたから声かけようと捜したのにっ。もう」
    「まーまー」

    膨れた私をアキラさんは宥める。彼女も私と同様に旅立つ支度を終えていたようなので、一緒に歩いて。町の入り口まで向かった。
    町の出入り口にはもうぱっと見でも何となく彼だと分かる、ちょっと長い群青色の髪の頭を持つ小柄な背姿があった。
    彼の隣にはリオルの後ろ姿もあり、彼らは何故か仁王立ちしていた。その傍にはサイドカー付バイクもあった。
    足音に気が付いたのか、彼らがこちらを向く。
    目と目があった。一瞬バトルが始まるかと思ったほどの気迫を彼らから感じた。
    開口一番ビー君はこう言った。

    「乗っていけ」
    「えっ」
    「サイドカーに乗っていけ」
    「えっと、どうして?」

    わざわざ言い直してくれたビー君に、思わず疑問を口にしてしまう。少し経って、ようやく言葉の意味を理解した。彼の厚意を無碍にしようとしたのだと気づき、気まずくなる。
    気まずい空気の中助け舟を出してくれたのはアキラさんだった。

    「あーつまりあれだねー。送っていくって言いたいんじゃないかなービドーは」
    「そう、なの?」

    確認を取ると、何故か彼に文句を言われる。

    「むしろ、この流れで置いていかれるのも結構あれだぞ」

    あれって……ビー君には悪いけど、素直じゃないなー、と思ってしまった。更に、アキラさんがすっと手を挙げる。

    「ちなみにアタシも行くよー。研究所なら珍しいきのみの本とかある気がするしー」
    「ええっ、ついてくる気満々?」
    「アタシはリュウガに乗っていくから席の心配はご無用だー」

    挙げていた手の親指を立てて前にグッと突き出すアキラさん。
    ビー君とリオルはこっちをじっと見ているし、だんだん断れない流れになってきたっ。

    「か、勘違いするなよ。俺もそのヤミナベの話を詳しく聞きたいと思っただけだ」

    いや、まあそれは分かるけど、その通りなの分かるけど、なんでそういう言い回しするかなこの子は。
    悩んだ末、断り切れず私は二人に同行してもらうことにした。

    「分かった。旅は道連れデリバード、一緒に行こう、【スバル】へ!」
    「旅は道連れユキメノコー、おー」
    「今は手持ちにいないが旅は道連れラルトス」
    「何この道連れ率」

    そう言えばユウヅキの手持ちやアキラ君のメシィちゃんも『みちづれ』覚えた気がする。道連れ率高すぎ。
    今の内に……気乗りはしないけどアキラ君に怒られる準備しておこう。


    *********************


    アサヒ達が【スバル】へ向かい始めたその頃、ソテツは『ひみつのちから』で作られた秘密基地の中で、ホロキャスターという立体映像を映し出す通信端末で通話していた。その相手は男女二人ずつの計4人。ソテツを含め、5人が円になって向かい合って近況報告をしていた。
    彼らは“五属性”。自警団<エレメンツ>をまとめる五人組である。
    軽い挨拶の後、ソテツが先日の報告を始めた。

    「――アサヒちゃんの記憶は、以前変わりなし。一応オイラ達との約束を守ってくれようとしているけれども、いつボロが出てもおかしくはないってとこかな。あと、ガーちゃんも見かけてくれたんだけど、例のアサヒちゃんを探していたミケという探偵とやらに、アサヒちゃんが接触してしまったみたいだ。オイラと別れる時気まずそうな顔していたから、たぶんドジってるよあの子」

    ドジっている、という言葉にソテツから見て右隣の背の低い少女が反応。頭を抱え、叫ぶ。

    『だーっ、何やってんの! あのおバカ!』
    『素直そうで隠し事多い、あの子らしいね』

    もう一人の、ソテツの左隣にいるポニーテールの女は少女を窘めるでもなく頷く。
    少女の右隣に居た、体格のいい、目隠しをした男がソテツに訊ねた。

    『……それから、アサヒの素性を探っていた探偵の足取りは?』
    「ゴメン。そこまでは分からなかった。ただ、痕跡をなるべく残さない辺り、かなり逃げ慣れている。たぶん爪を隠している類のやり手だよ、あの男」
    『ほう……』
    『こら、関心しているんじゃないのっ、これだからバトルマニアは』
    『まあまあ』

    探偵に感心する目隠し男を、少女が叱る。それを今度こそポニーテールの女が窘めた。

    「あともう一個だけ言いたいことあるけど、いいかい?」

    ソテツがいつになく真剣な表情を作るので、それまで静観していた二番目に身長が高い、リーダー格らしき男はソテツに聞き返す。

    『何だソテツ、改まって』

    ソテツは一息吸ってから、己の抱いた不安を吐き出す。

    「あの探偵、オイラとキャラ被ってないかい?」
    『どうでもいい……!』
    「えー、だって気になるさ」

    リーダーにばっさり切り捨てられ口を尖らすソテツ。そんな彼に少女はフォローになってないフォローを入れた。

    『だいじょーぶじゃない? ソテツは若さがあるじゃん。見た目の』
    「合法ロリにだけは言われたくないぜ!」
    『なにおー!!」
    『二人とも、じゃれ合わないの!』
    『そーだぞ、そんなたかが身長の事で』

    少女(?)とソテツの諍いを仲裁するポニーテールの女を眺めながらリーダーは呆れながら言った。すると、二人の矛先が移る。

    「たかがとかいうな木偶」
    『ソテツ、怒ったら負けじゃんよ。アイツは身長に栄養持っていき過ぎているだけなんだから』
    『なっ、リーダーに向かってその口はなんだ!』

    むっとするリーダーをポニーテールの女は抑えにかかる。

    『こらこら、そこで貴方が怒らない。リーダー』
    『ちっ』
    『こらこら、そこで舌打ちしないの。ね?』
    『……はい』

    彼女は笑いながらリーダーに注意する。しかしその笑顔にはどこか凄みが入っていた。その様子を見て、目隠し男は同情するように呟いた。

    『……尻に、敷かれているな……』
    『うるせー、お前も避けられない道だからな……!』

    呟いた彼を恨めし気に睨むリーダーをよそに、ソテツは気を取り直して報告を続けた。


    *********************


    「そう言えば、正体が謎に包まれている<ダスク>についても話そうか……<ダスク>による密猟がこれで6件目だね。その前の密猟者からは何か情報引き出せた?」
    『それが……今の所<ダスク>って言うのは“サク”という人物を中心に成り立っているらしい……? という事が判明しているぐらいだ』

    リーダーの曖昧な表現に、ソテツは眉をひそめる。

    「らしい、とは」
    『恐らくだが、本人達もよく自覚していないようなんだ』
    「へっ?」

    思わず素っ頓狂な声を出してしまい、咳払いするソテツに目隠し男がリーダーの言葉を引き継ぐ。

    『自分達が<ダスク>という組織に所属しているのは把握しているのだが、詳しい組織形態までは理解できてないらしい。つまり、もっと<ダスク>の全体像を知るためには、存在するのか怪しいが幹部らしき人物の手がかりが必要だ。そのためには、なるべく動く<ダスク>のメンバーは、捕まえていきたいのだが……』
    「そうか……昨日は取り逃がしちゃった。ゴメン」

    謝るソテツにポニーテールの女がこぼす。

    『ソテツにしては珍しいわね。その<ダスク>メンバーの素性とかは判明しているの?』
    「彼の名はハジメ。ハジメ君はおそらくこのヒンメルの国民だと思う」
    『ハジメ、ね。ちょっとデータベースで検索してみる』

    少女がノートパソコンを用いて調査し始めると、キーボードを打つ音だけがしばらく響いた。
    ふと、思い出したようにソテツは呟く。

    「“俺達はただ救いたいだけだ。この国の民全部を、だ。怯えながら待ち続ける仲間も、連れていかれた仲間も、全部。全部取り返したい。ただ、それだけだ”……か」

    その呟きに他四人が視線をソテツへ向ける。四人を代表してリーダー格の男が尋ねる。

    『それは?』
    「ハジメ君の言った、<ダスク>の目的だ」
    『見えてきたじゃない、<ダスク>は何かしらの形で救国願望をこの国の民に与えて利用しているってことじゃん?』

    ソテツの証言に、少女が指さしして見解を述べる。ポニーテールの女は少女の言葉に引きずられた。

    『扇動している何かがいるってこと? だとしたら、そのハジメ君は騙されているの?』
    「単に<エレメンツ>はあてにできない、って言いたいんじゃないかな」

    ぼやくソテツに目隠し男がぽつりとこぼす。

    『……いや、もしハジメ達<ダスク>が“あのこと”を知っていたとしたら……どうだ。アサヒが……』
    「ストップ。それ以上はいけない」
    『そうね、私もソテツに賛成。少なくともこの場では、ね』
    『……すまない』

    ポニーテールの女とソテツの制止に、謝る目隠し男。そしてハジメの話題は、持ち越しとなった。
    それから他の報告へと移っていく。
    この地方に新たに移り住んだ人々が国民と衝突するトラブル。ポケモン屋敷からポケモンが義賊団<シザークロス>によって盗まれたなど、挙げればまだまだ、問題はつきなかった。

    『――それじゃあ、続きは本部に帰還してからだ――解散』

    通信を終えた後しばらく、低い位置にある天井を仰ぎ見ながら、ソテツは思う。
    もし、目隠し男の彼の言おうとしたことが当たっていたとしたらアサヒが標的にされていたかもしれない。
    だが、自分はその流れを止めた。そう、止めたのだ。
    はたから見ると師匠が弟子を庇っただけの行為に見えるが、彼は矛盾した感情を抱えていた。

    (オイラとしては別に庇うつもりは無かったんだけどね。なんでだろ)

    仮にも師匠の立場からくる、情というものなのだろう。そうソテツは割り切って、次の任務へと向かった。


    ********************


    「――かくして、ユウヅキは<スバルポケモン研究センター>を襲撃した強盗として追われることになった……というのが、3ヶ月前その現場に居合わせた私の友達、アキラ君から聞いた一連の流れだよ。ビー君、アキラさん」

    私は移動中に、二人にユウヅキがどうして指名手配されたかの経緯をざっくりと話した。
    私の説明をビー君とアキラさんは相槌を打ちながら聞いてくれた。
    その事件を知った当時の私は、ただただ驚いた。行方をくらましていたユウヅキが無事だったことへの嬉しさは勿論あるけれど、アキラ君を攻撃した、というのが正直信じられないような、いやでも彼ならやりかねないような気もして……とにかく、強盗とかも含めてなにをやっているの、ユウヅキ? って、気持ちが私の中で渦巻いていた。
    ユウヅキなりの理由があるにしても、とっちめないと、という使命感を抱く私だったけれども、そんなちっちゃな意固地は大きな波の前では、通用しなかった。

    「でもアサヒー、それって今までの話だよね?」
    「そうだね。昨夜聞いた通り、どういうことかユウヅキは“闇隠し事件”の容疑者になった。だから事の真相を調べるためにも今からまずその容疑をかけられた理由を聞きに行くってとこだよ」
    「そーいや、そこまでして何を奪ったんだろうな、ヤミナベは」
    「私も知らないや。でも、よっぽどのものなんじゃないかな。何だろう?」

    三人とも唸りながら考え込む。しかし答えなど出るはずもなく、そのうちフライゴンのリュウガ君に乗ったアキラさんが口を開く。

    「それも気になるけどー、アタシとしてはそのアキラ君って人の方が気になるなー」
    「同じ名前だよな」
    「それに関しては私びっくりしちゃったよ。本当にアキラ君がいるのかと思っちゃった」
    「向こうについたら呼び方とかどうするんだよ。ややこしいぞ。アキラさんで慣れちゃってるし」
    「むむ、私も昔からアキラ君って呼んでるから今更変えられないよ」
    「んーじゃあ、皆でアキラ君と呼べばいいと思うー」
    「その中には俺も含まれているのか?」
    「頑張れービドー」
    「頑張ってビー君」

    そしてなんかごめん、アキラ君。


    *********************


    【トバリ山】の麓の湖畔にある【スバルポケモン研究センター】は、ヒンメル地方のポケモンとそれにまつわる事柄全般を調べている研究所である。
    もともとは天気研究所として設立されたのもあり、レーダーなどの技術に特化されているとか。
    だがその持ち前のレーダーシステムを用いても、行方不明者の発見には至らなかったのだが。
    “闇隠し事件”をポケモンによる事件ではないかと考え、調査しているのも彼ら<スバル>の研究員だ。
    “闇隠し”の被害で研究員が不足していたが、近年他の地方からの研究員を招いて、調査団を組んで持ち直してきているというらしい。

    研究所の受付で出会ったのは、深緑の髪を三つ編みにしたメガネの男性だった。麗人、という言葉が似合いそうなその白衣を着た彼は、俺達をみるなり柔和な笑みを作りながら近づいてきた。

    「お待ちしておりました、アサヒさんとそのお連れの方々。私はこの【スバルポケモン研究センター】の、所長のレインと申します。以後お見知りおきを」
    「ええっと、ヨアケ・アサヒです。よろしくお願いします。こっちの背の低いほうがビドー君。こちらはアキラさんで、そのフライゴンは彼女の手持ちのリュウガくんです。皆さん成り行きで一緒になった方達です」

    おい、もう少しましな紹介の仕方あるだろ。と俺はヨアケに視線を送ったが気づかれなかった。

    「ビドーさんにアキラさん、リュウガくんもよろしくお願いしますね」
    「どうも、よろしくお願いします」
    「どうもー」
    「所長さん自らわざわざ出迎えてもらってすみません」
    「気になさらなくて結構なのですよ、もとはと言えばこちらが呼び立ててしまったようなものですし」

    こちらへどうぞ、と案内を買って出たレインに、ヨアケは流れを断ち切って疑問を投げかける。

    「その、私を呼び出したアキラという名前のシンオウ地方ハクタイシティ出身の彼は、どちらに?」

    そうだ。もともとヨアケを呼び出したのはそのアキラ君とやらのはず。何故所長自ら彼女を出迎える?
    俺も訝しんでいるのを察したのか、レインはあくまで笑みを崩さず、ヨアケの疑問に答えた。

    「ご安心ください、彼は奥の部屋でとある準備してもらっています」
    「準備?」
    「アサヒさん、貴方に私達の研究内容と、“闇隠し事件”の見解をお伝えするための、準備です」
    「いいのですか? そんな重要なこと私に教えても」
    「別に、かまいませんよ。アレがヤミナベ・ユウヅキ氏に盗まれた時点で、公開しようと思っていましたので。もろもろの事情があり公にするまで時間がかかりましたが。まず貴方に先に伝えるべきかと判断しました。アサヒさんには聞く権利がありますし」
    「重要参考人として?」

    ヨアケの皮肉に、レインはメガネを直しながら、皮肉を倍返しで返した。

    「貴方がヤミナベ・ユウヅキ氏のご友人だからですよ」


    *********************


    友人、という言葉にどうしてかヨアケが黙り込む。ヨアケにとって、ヤミナベ・ユウヅキは幼馴染だそうで、友人と称すのは間違ってはいない。何か不服でもあるのだろうか。
    そのことも引っ掛かったが、俺は俺の事情を優先させレインとヨアケの間に割って入る。

    「その話、俺も聞いていいですか?」
    「どうぞご一緒に。アキラさん、貴女はどうされます?」
    「んーアタシはいいかなー。それよりこのきのみを調べられる本とかあるー?」
    「それでしたら資料室にきのみの図鑑の最新版が入っていたはずです、誰かに案内させましょうか?」
    「いいっていいってー、皆忙しいんだし、自力で探すよー」

    事情を知らないヨアケから見たら気を回してくれているようにも見えそうだが、アキラさんは昨日手に入れたきのみを一刻も早く調べたいのだろう。案内図を見る目が子供っぽく爛々としている。
    逆に邪魔してはいけないような気がした。

    「んじゃ、また後で会えたら会おうアキラさん」
    「またね、アキラさん、リュウガくん」
    「ん、またねー」

    案内図に夢中になっているトレーナーの隣で、フライゴンのリュウガは翅をパタパタさせて俺達を見送ってくれた。


    *********************


    少しだけ広めの第2会議室と書かれた部屋に通されると、そこには屈みながら投影機を準備している、スーツを着た青いセミショートヘアを持つ若い男性がいた。

    「ヨアケ・アサヒさんを連れてまいりましたよ、アキラ氏」

    レインに「アキラ」と呼ばれたその男は、ゆっくりと立ち上がり、振り向く。
    整った顔立ちをした男は、銀縁メガネの奥の黒い瞳をわずかに細める。
    一瞬俺と視線があったが、彼は俺のことを気にも留めず、ヨアケの方へと顔を向ける。
    穏やかな、でもどこか疲れた声で、彼はヨアケに声をかけた。

    「やあ、アサヒ。久しぶりだね」
    「久しぶり、アキラ君。なんか疲れてそうだけど、大丈夫?」
    「僕は大丈夫さ。気持ちはありがたいけど今は君自身の心配をしなよ」
    「そういうわけにもいかないよ」
    「……僕が心配だからそうしてほしいんだ」
    「大丈夫なのに」

    強情なヨアケに重いため息を一つつくアキラ君。少しだけこの二人の関係がわかった気がする。
    要するにヨアケにかなわないところがあるんだな、コイツ。ヨアケ、頑固なところは頑固だもんな。
    心の中で納得していたらヨアケはアキラ君に俺のことを聞かれていた。

    「それより、そちらの少年は誰だい?」
    「少年じゃねーよ」

    俺は反射的にそう答えてしまう。ヨアケが場の空気を和らげるために俺の紹介をアキラ君にする。

    「彼はビー君、じゃなかったビドー君。私をここまで送ってきてくれたんだ、サイドカー付きバイクで!」
    「そう」

    ヨアケの言葉は明らかに彼に何か注いでしまったように見えた。受け答えする声のトーンが低い。心底俺に興味なさそうだ。
    それから口元を歪ませた彼は、俺にガンを飛ばしながら、つまりは(身長差的に)見下しながらこう言った。

    「君でも免許取れるものなんだね」

    おい、「でも」とはなんだ「でも」とは。コイツ気に食わねえ……!
    ヨアケはヨアケで「あちゃー……」と言いながら苦笑い浮かべている。まるで、奴の毒舌がよくあることみたいに。
    奥歯を噛みしめアキラ君を睨み返そうとすると、手を叩く音がそれを止めさせる。
    音の出どころはレイン。レインが、朗らかに笑いながらヒートアップしていた俺らに水を差していた。

    「はい三人とも、積もる話もおしゃべりも後に回していただけますでしょうか? あとアキラ氏はビドーさんを挑発しないでください」
    「レイン所長……失礼しました。ビドーも」

    素直に謝るアキラ君。なんだかさっきからこの男、どこか余裕がなさそうだ。切羽詰まっているというか。
    そういやアキラ君はヨアケにいち早く何かを知らせたがっていた。もしかしたらそれは、タイムリミットか何かがあったのか?
    少なくとも、こういう形でヨアケと再会することを彼は望んでいないのかもしれない。
    レインが用意したこの場、何かあるのか?
    そんなことを考えていると、すねていると勘違いされたのかヨアケからも謝られた。

    「私からもゴメンね、ビー君」
    「いや、悪いぼうっとしていた。別に気にしちゃいない」
    「そっか、良かった」

    本当は気にしているけれども彼女を安心させるために、振る舞う。
    実際細かいこと気にしていられる場合でもなさそうだしな。
    ヨアケが軽くレインに頭を下げる。

    「それでは、所長さん、お願いします」
    「はい、始めましょうか」


    *********************


    灯りを消し、窓のカーテンを調節して、会議室は薄暗くなる。投影機が、ノートパソコンの画面を白い幕へ映し出していく。
    レインが“闇隠し事件に対する<スバル>の見解”というノートパソコン内のフォルダを開く。いくつかの画像ファイルと動画ファイルがフォルダ内には入っていた。

    「まず、“闇隠し事件”についておさらいしましょう」

    ファイルの列から、一つの動画ファイルを選択され、再生される。
    幕へと映し出されるのは、遠くから見た王都【ソウキュウシティ】の姿。画面の右端には【トバリ山】も見える。

    「これは、ヒンメル地方から西方に位置する国、【エアデ】の国境付近にお住まいの方が撮影した“闇隠し事件”の様子です」

    しばらく風景だけが映し出されていた。だが、次の瞬間黒いドーム状の半球体が発生し、画面の大半を埋めた。

    「全国ネットにも上げられたこの映像はニュースなどで見たことがおありだと思います。そう、我々の王都【ソウキュウシティ】を中心として地方をドーム状の黒い球体が覆っているのです。その範囲は【トバリ山】をも巻き込むほどであり、覆われたのはほぼ地方全域と言ってもいいでしょう」

    改めてみるとやはりシュールな超常現象としか言いようのない闇のドーム。もし地図があるとしたら真っ黒なインクを零したように、ヒンメル地方を蝕むその闇。俺達ヒンメルの民は確かにそこに、闇の中にいた。
    客観的に見て5分ほどだっただろうか。短いようで長く、重々しい時を経て、闇がシャボンのように弾けて霧散する。
    それからまた先程と同じ風景が映し出される、正確に言えば違うのだが、建造物や山には異常は見られなかった。

    「次に、これは“闇隠し事件”の渦中、闇のドームの中にいた人々の証言です」

    動画ファイルが閉じられ、次に文書が映し出される。文書には、名は伏せられているが老若男女さまざまな人の体験が、綴られていた。

    「少々長いのでまとめると、視界が闇に覆われて、いや光の一切ない闇の中に放り出され自身の体も平衡感覚もわからなくなったとあります」
    「これは、俺も体験しました」

    思わず俺は口をはさんでしまったが、レインはむしろ歓迎といった様子で続ける。

    「音は、聞こえたのですよね。そして神隠しにあった方々の声も」
    「ああ、それから天上から泡がはじけるように光が入ってきた」
    「そして、多くの人やポケモンは姿をくらませた」

    あの日の見えない右手とラルトスの声、そして暴力的に降り注ぐ光を思い出し、冷や汗が垂れそうになる。
    隣でヨアケが息をのむ音が聞こえた。レインはヨアケを横目に見て、それから本題に戻る。

    「しかし疑問なのが建造物に関しては一切破壊された痕跡はなく、人々やポケモン達だけがいなくなっている点なのですよね」

    先程の映像にもある通り、建物などには異常が見られなかった。だからこそ、生き物だけいなくなった神隠しと恐れられ、“闇隠し”という異名をつけられたのだ。
    けれどもレインは一度、その神隠しという言葉を否定した。

    「この集団失踪について、我々<スバル>はまず神隠しという先入観を捨て、『テレポート』という技を使った集団誘拐の線を探しました」
    「『テレポート』っつーと、あの戦闘離脱や一度行ったことのある場所とかにワープ出来るっていう、あの技か……」
    「はい……ですが、この説には問題が。待てども一向に身代金などの要求が来ないのです。仮定の話ですが、もしヒンメルの土地を狙うことで有名な【エアデ】が犯人だとしたら、他の連合諸国がヒンメルを保護下に置く前に揺さぶりをかけてもおかしくありません。あと、【エアデ】に限った話ではないのですが、あれだけの人とポケモンを収容できる施設と食糧費などの余裕はないと思います」
    「た、確かに」
    「それに、『テレポート』では規模が大きすぎます。普通なら王族などをピンポイントで狙えばいいでしょう? 確かに女王陛下含めた重要人物は神隠しにあっています。ですが、他にも巻き込まれた人々の数が、多すぎる」

    それまで黙していたヨアケが口を開く。

    「いくら建国記念日のお祭りが開かれていたと言っても、いやむしろ建国記念日だからこそ他国の人間達が大量にいたら目立つってことですね」
    「その通り」
    「じゃあ、さらわれたっていう可能性が少ないならいったいどこに消えちまったっていうんだよ……」

    レインの肯定に意気消沈する俺の発言を、アキラ君は訂正する。

    「誰もさらわれた可能性は捨ててはないさ」
    「アキラ氏の言う通りですビドーさん。『テレポート』以外にも誘拐する方法はあります。例えば光輪の超魔人という異名を持つフーパというポケモンによる召喚、異空間転送の線なんかも探っていました」
    「そうか、何もワープさせる方法は『テレポート』だけじゃないのか……」
    「しかし、フーパは手持ちの六つの輪を通してでしか召喚できませんし周囲の物も巻き込んでしまいます。一度に召喚できる範囲と数が限られていますので『テレポート』と同じくフーパでは“闇隠し”規模の事件を起こせないでしょう」

    唸る俺にレインは「ここからが本題です、お待たせしました」と言った。結構長かったな。と思ったのがバレていたのか、レインに「前置きはクッションですよ」と微笑まれた。

    「引っ掛かってくるのは、携帯端末のGPSも消失している点なのですよね。GPSなら、別大陸に居ても探すことが可能です。よほど電波が通ってないところにいるか、もしくは何か不幸な目に合っていなければ、の話ですが……つまり、現状私達<スバル>はこの世界ではないどこかに隠された、と考えています」
    「この世界以外って何処だ? パラレルワールドとか言い出すんじゃないよな?」
    「ある意味では並行世界なのでしょうか、この世界には、裏側となる世界が存在するのですよ――――それは、“破れた世界”」
    「“破れた世界”……?」

    新しく開かれた文書ファイルが、“破れた世界”という言葉が垂れ幕に映し出される。見慣れない単語に俺が戸惑っている隣で、ヨアケは何かを考え込んでいた。
    レインがヨアケにどうしたのか尋ねようとしたら、彼女は短く謝った後レインに続きを促した。レインは一つ咳払いをすると、“破れた世界”解説を始める。
    画面を下へスライドさせると、そこには黄金の兜らしきものを被った、大きな怪獣のようなポケモンの姿が二対映し出されていた。片方は足があり、もう片方は足がなかった。

    「こちらはギラティナという伝説のポケモンです。足がある方が私達の世界にいるときのアナザーフォルム、そして足のない方が破れた世界に棲むオリジンフォルムのギラティナ。破れた世界というのはオリジンフォルムのギラティナが住処とした様々な法則を無視した世界で、いわゆるこの世界の裏側ともいえる場所。そこにヒンメルの民は引きずり込まれたのではないか、と我々は考えました」
    「まてまて、破れた世界ってものがあったにしても、そう簡単に引きずり込まれるものなのか? そもそも人が行ける場所なのか?」

    突っ込む俺にレインは若干喜びながら(?)対応した。

    「いい質問ですねビドーさん。シンオウ地方などでは破れた世界へと生身で足を踏み入れ、しばらくの間行方不明になった人物は過去にいます」
    「まじかよ」
    「シンオウ地方にある泉の一つで【おくりの泉】という場所にある【もどりの洞窟】の最奥部などに破れた世界の入り口が出現したところをシンオウ地方の研究者は調査し続けたそうです。データによると、破れた世界にいるギラティナがこちらの世界に近づくと空間にひずみができ、破れた世界への扉が開かれるそうですよ」
    「でも、それってシンオウ地方の話だろ? ヒンメルじゃ……あ……そういや、この地方の伝説って」
    「そうです。ヒンメル地方とシンオウ地方は、ところどころ共通点が見られます。代表的なのは【トバリ山】の存在ですが、その他にも時空と破れた世界を司る三神と呼ばれるポケモンから、新月、三日月、蒼海の王子などのポケモンがいたという伝説も残っております。余談ですが波導使いなどは現在も存在します。あの、エレメンツの目隠しをした彼……」
    「トウギリさん」
    「ありがとうございますアサヒさん。彼なんかも現役波導使いとしてバリバリ働いていますよね。話を戻しましょう。シンオウ地方に縁のある研究者にも来てもらい、あるアイテムを作ろうとしていたのです」
    「アイテム、とは?」

    ヨアケの質問に対し、レインは少々言いづらそうにその道具の名を述べた。

    「……人工的に作り出した“赤い鎖のレプリカ”です」

    いまいちピンと来ない俺は、レインにたびたび質問を重ねる。レインは笑みを消し、先ほどまでと比べて真面目な口調で答える。

    「“赤い鎖のレプリカ”……? それは何に使うんだ?」
    「ディアルガとパルキアという時間と空間を司るポケモンを呼び出すために使うのです」
    「呼び出すのは、ギラティナじゃないのか」
    「ええ。ギラティナそのものを直接呼び出す方法は現状ではディアルガとパルキアを呼び出すしかおびき出す方法を見つけられていません」

    レインの言葉をアキラ君が補足する。

    「そもそもシンオウ地方のように破れた世界に行く方法自体が、このヒンメルでは確立されていないんだ。ヒンメル地方でも破れた世界への扉を探そうと、【もどりの洞窟】のようなギラティナの住まうとされている遺跡で調査を繰り返したが、ダメだった。そこで、シンオウで実際に過去に使用された“赤い鎖”を用いたディアルガ、パルキアによるギラティナを呼び出す方法。それを<スバル>はプロジェクトとして研究を続けているという所さ。それで、“赤い鎖”を生み出すこと自体には成功したけど……」

    プロジェクト自体は順調に進んでいた。だが、言いよどむということは、でもそれを遮る出来事があったのだろう。
    それを察してしまって、どうしようもなく嫌な予感が俺の頭の奥で膨れ上がる。
    彼女の吐くため息の音が、聞こえた。
    彼女も<スバル>の研究を途絶えさせた正体に気づいたのだろう。
    いや。気づくも何も、今ここでしているのは最初からそういう話でしかなかったんだ。
    彼女は、ヨアケ・アサヒはアキラ君に確認を取った。

    「そこで、話はユウヅキに繋がるんだね、アキラ君」
    「そうだ。ユウヅキが“赤い鎖のレプリカ”を盗んだんだ」

    “<スバルポケモン研究センター>襲撃事件”
    この事件で<スバル>は研究物をヤミナベ・ユウヅキに奪われた。
    そのせいで“闇隠し事件”の手がかりを掴むための研究を中断せざるを得なかったと。
    複雑な感情がこみ上げてくるが、それよりも俺にはまだ、何故ヤミナベ・ユウヅキが“闇隠し事件”の容疑者、しかも誘拐の容疑をかけられたのかが分からないし気になっていた。
    まだ知らない情報がありそうだ。

    「……所長さん。“赤い鎖のレプリカ”を盗んだだけでは、どうにもユウヅキが“闇隠し事件”の容疑者になるには色々と足りない気がするのですが」

    ヨアケも同じところが引っ掛かっていたのか、レインに問いかける。
    その言葉にレインは目を細め、「おかしいですね」と呟いた。それから、レインは優しく、穏やかに衝撃の事実を述べた。

    「ヤミナベ・ユウヅキ氏は過去にギラティナを祭る遺跡に訪れています。アサヒさん、貴方と一緒に。建国記念日の前に少年と少女の旅のトレーナーに遺跡について調べているのでその場所を知りたい、と尋ねられたと証言された方がいました」
    「え……?」

    明らかに動揺するヨアケ。俺は自分が驚く前に、その彼女の驚いた表情から目を離せないでいた。
    畳みかけるようにレインは言葉を重ねる。

    「貴方はその遺跡について調べる為に、この地方に来たのではありませんか?」
    「いや、それは」

    顔を伏せ、言いよどむ彼女に、レインは優しい口調で、こう付け足した。

    「慌てて思い出そうとしなくても大丈夫ですよ、アサヒさん」

    その言葉に反応し、ヨアケはレインの顔を凝視する。それから彼女は俺のあずかり知らぬ内容を口にする。アキラ君が彼女の発したその名に反応した。

    「……まさか所長さん、貴方がミケさんの依頼主……ですか?」
    「! アサヒ、あの男に何かされたのか?」
    「えっと、色々質問されただけだよ」
    「色々って、はぐらかすなよ」

    アキラ君に問い詰められ、苦い表情を浮かべるヨアケ。話についていけない俺は、割り込む形でヨアケに質問する。

    「おい待ってくれ、そもそもミケって誰なんだ?」
    「あ、ゴメンビー君は知らなかったよね。ミケさんはね、私とアキラ君の知り合いの探偵さんなんだ。ミケさんは、誰かの依頼で私を調査していたみたい。その依頼主が、もしかしたら所長さんなのかなって思ったの……それで、どうなのでしょうかレインさん」
    「私は依頼主ではありません。その依頼主からアサヒさんの情報を伝えられているただの研究所の所長、と言ったところでしょうか。まあ、ばらしてしまうとその探偵の依頼主は、ヤミナベ・ユウヅキ氏を指名手配にできる方々ですね」

    ミケという探偵をヨアケに差し向けたのは、ヤミナベを指名手配にできる人々。ということはどこかの組織の可能性も挙げられる。しかし、ヒンメルに存在する組織に、この地方の外の人間を雇ってまで調査をする余力があるようには思えない。そうなると、残されているのは地方の外の組織で、国をまたいでも平気な奴ら。ということになる。ということは――

    「……<国際警察>ですか」
    「はい。直々の協力要請が国籍経歴問わずにされているようです。アサヒさんとユウヅキさんに最も近しい探偵、ということで彼が選ばれたとも聞いています。ですが、あまり彼を責めないであげてくださいね」

    辿り着いた答えを口にするヨアケ。レインがミケをフォローしつつ、その答え合わせを言った。
    その答えを聞いて、アキラ君は苦々しい表情を浮かべる。ヨアケも俯いて、言葉に詰まっている。そんな二人に追い打ちとばかりに、レインはヤミナベがかけられている疑いをまとめた。

    「建国記念日のお祭りの日に首都ではなく、離れのギラティナの遺跡にわざわざ訪れる方は限られています。まあ、遺跡の警備員の方も神隠しにあってしまっているので確かな証拠ではないのですが……ヤミナベ・ユウヅキ氏はおそらく事件の起こる前後にギラティナの近くにいたと思われます。そして、今回ヤミナベ・ユウヅキ氏によってギラティナを呼び出すための“赤い鎖のレプリカ”が盗まれた……偶然で片づけるには、少々怪しくないですか?」

    “闇隠し事件”がギラティナと繋がっている可能性がある以上、それは少々ではないことを、おそらく二人は感じていたのだろう。


    *********************


    「だから彼は、ユウヅキは“闇隠し事件”の容疑者となったのですね」
    「はい。そしてアサヒさん、貴方はさっきあなた自身がおっしゃっていた通り重要参考人ですね」

    しばらく黙り込んでいたヨアケが、口を開く。それにレインは皮肉交じりに事実を彼女に突きつけた。
    レインの追い詰めはそれだけでは終わらない。

    「アサヒさん、おそらくこのままでは“国際警察”を呼んで貴方の記憶を調べさせていただくことになります」
    「レイン所長、それはあくまで最後の手段と……!」
    「いいですよ」
    「アサヒ!」

    アキラ君が、俺が今まで聞いた中で一番声を荒げた。その態度で、それまでの言動と合わせコイツが心配していたのは、ヨアケが疑われ捕らえられることだと、俺は察した。
    そんな彼の思いとは逆に、ヨアケは白状していく。

    「実は、以前調べてもらったことがあるんです。だけど、私の記憶の中に、私さえ思いさせない記憶が封じられているみたいで。彼らは無理にこじ開けることを、私の頭に負荷がかかりすぎると言って中断してくれたのですが……私の記憶が戻るなら、どうぞ調べてください」
    「どなたに記憶を封じられたのでしょうか?」
    「わかりません。ですが、ユウヅキがオーベムを手持ちに持っていたのは、覚えています。状況的には彼が怪しいです。でも……」
    「そんなことしない、と信じたいのですね」
    「はい」
    「……記憶の無い期間はおおよそどのくらいですか?」
    「だいたい一ヶ月ほど。彼と別れた時のことは覚えているのですがその前後が。この地方に来た理由もわかりません。それとしばらく意識が朦朧としていた期間があったみたいで正気を保てるようになったときには“闇隠し事件”は起きた後で、この国の人々に、“闇隠し”を免れた方々に保護されていました」

    『“闇隠し”で失ったものって、戻ってくると思う?』
    初めて会った日の夜、彼女は俺にそう問いかけた。
    彼女が失ったもの、それはヤミナベ・ユウヅキのこともだが、記憶のことも指し示していたのだろうか。
    ヨアケが“闇隠し”に加担しているかもしれない。確かにその現実も気がかりではあった。だがそれよりも俺は、彼女の置かれている現状が気になっていた。
    気が付いたら、俺は彼女の名を呟いていた。

    「ヨアケ……」
    「アキラ君、ビー君ごめん、本当のこと言わないで」
    「いや……」

    「気にするな」とまでは、言えなかった。俺は別に、謝罪の言葉が聞きたいわけじゃない。
    話題に沿って、気になっていたことを彼女に確認をとる。
    ヨアケを保護していた彼らが、彼女の記憶のことを把握していないはずがない。だから彼らはそのことを知っているはずだ。

    「<エレメンツ>なんだろ、お前を保護して、記憶のこと隠せって言ったのは」
    「うん。でも、記憶を調べられそうになったりした時は正直に話していい、とも言われていたから。あくまで情報を伏せさせていたのは」
    「混乱を防ぐため、と君を守るため、か。前者の方が強そうだけど」

    ヨアケの言葉をアキラ君が引き継ぐ。ぱっと思い付きそうな理由はそのくらいだよなと彼の言葉に賛同しようとしたら、レインがその流れを断ち切った。

    「はてさて、アサヒさんの言うことが本当という証拠もないのですよね。嘘だという証拠もありませんが。私としては<国際警察>に相談するところを勧めたいですが、アサヒさん自身はどうされたいのでしょうか」

    話の論点を、疑われているこの現状で、ヨアケがどう行動したいかにシフトするレイン。
    レインの立場なら、いつでもヨアケを<国際警察>に差し出せるだろうに、何故彼女の意思を問うのか、その意図は俺には読めなかった。
    途切れ途切れになりながらも、ヨアケは言葉を紡いでいく。

    「私は……彼を、見つけたいです。国際警察の方より、先に」
    「見つけて、どうされたいのです」
    「ちゃんと、話をしたいです」
    「話をして、それから」
    「それから……それから……」

    言葉が紡げなくなるヨアケ。彼女の様子を見て、レインは一言謝りそれから俺ら全員に提案をした。

    「すみません、急には答えを出せないですよね。話も長引いて疲れていませんか? 少し、休憩としましょう」

    その提案を断る者は一人もいなかった。

    *********************


    俺は、自動販売機の位置をレインに教えてもらい、受付まで一人戻ってきていた。
    自販機にお金を入れ、冷たいブラックコーヒーを入手する。缶のタブを開け、それを一気に飲み干した。
    少々の頭の痛みと苦さと引き換えに、視界がはっきりする。
    鈍っていた思考回路が戻っていく。これなら現状を整理できそうだ。

    彼女の置かれている現状。それは、<国際警察>にとっての重要参考人。
    彼女の幼馴染のヤミナベ・ユウヅキが“赤い鎖のレプリカ”をこの研究所から盗んだことで“闇隠し事件”の容疑者になり、彼女もマークされている。
    “赤い鎖のレプリカ”はディアルガとパルキアを呼び出し、ギラティナを呼び出すために必要な道具。レイン達は“闇隠し事件”の大規模失踪をギラティナの仕業ではないかと考えている。
    過去に、彼女はヤミナベ・ユウヅキと共にギラティナの遺跡に訪れている可能性が濃厚。しかし、彼女の記憶は一部抜け落ちている。可能性として挙げられているのは、ヤミナベ・ユウヅキがオーベムを使って記憶を奪ったということ。

    そして、彼女は<国際警察>よりも先に、ヤミナベ・ユウヅキに会いたいと願っている。

    モンスターボールが勝手に開き、リオルが出てくる。ここ二日のことだが割と勝手に出てくるようになったな。

    「サイコソーダ、飲むか?」

    そう聞くと、リオルは自販機のボタンを押す。どうやらミックスオレの方が好みらしい。
    再びお金を入れ、出てきたミックスオレの缶のタブを開けてリオルに手渡す。ゆっくりと尻尾を揺らし、ちびちびとリオルはミックスオレを飲み始めた。
    そんなリオルを眺めていたら、俺は、リオルに語り掛けていた。

    「なあリオル。俺、やりたいことができた」

    リオルは俺を一瞥する。嫌そうな表情はしていないが、俺は恐る恐る話を続ける。

    「俺は、やっぱりラルトスのことは諦めきれない」

    ミックスオレを飲むのを中断するリオル。赤い瞳がこちらを見上げた。

    「ラルトスを見つけられる可能性があるのなら、それを手放したくない」

    目を細めるリオル。

    「今までお前らのこと蔑ろにしておいて言う台詞じゃないのは、わかっている。だけど力を貸してほしい」

    リオルが缶を置き、俺の目の前に立った。それから、俺のモンスターボールを全て強奪した。

    「?!」

    一瞬のことに困惑する俺を差し置いて四つのモンスターボールをリオルは次々と開いていく。
    俺の手持ちは五体しかいない。よって、俺のすべての手持ちポケモンが並んだ。
    右からカイリキー、エネコロロ、アーマルド、オンバーン、そしてリオル。
    リオルがもう一回ちゃんと言え、と一声鳴く。

    「そうだよな……ちゃんと、言わなきゃだよな」

    そうだ、とリオルは頷く。カイリキーは腕を組み、エネコロロはすました顔をして、アーマルドは爪をとぎ、オンバーンは目を輝かせた。

    「カイリキー、エネコロロ、アーマルド、オンバーン、リオル。お前たちに頼みたいことがある」

    そして俺は、自分の手持ちたちに伝える。
    少しだけ恥ずかしさも、後ろめたさもあった。
    ミラーシェードすら外せない俺だけれども、彼らは俺の目を見てくれる。
    俺の言葉を、聞こうとしてくれている。
    そんな彼らに感謝の念を持ちつつ。
    俺は、自分の手持ちたちに気持ちを伝える。

    「俺にちょっとだけ、勇気を分けてくれ」


    *********************


    ビー君が飲み物を買いに行き、レイン所長が席を外したので、自然と私はアキラ君と二人になっていた。
    アキラ君が、深い溜息をついた。それから、私をじっと見てこう言った。

    「まさかアサヒが僕に隠し事しているなんてね」
    「う……ごめんなさい……」

    視線を合わせるのが怖い。でも、彼に、古くからの友人に隠し事をしていた事実は変わりようもないので、ただ、謝るしかなかった。
    彼がもう一度ため息を吐く。もっと責められるかと思ったら、そうでもなかった。

    「まあ、僕も君のことは言えないか」
    「?」
    「僕も、君に言えてなかったことがあるってこと。それで半々ってことにしてほしい」
    「それは、私は構わないけど……言えてなかったことって?」
    「僕が、ユウヅキの共犯者だって疑われていることさ」
    「アキラ君が?」
    「そう。一応僕もユウヅキの旧友だからね。ユウヅキの犯行と証言したのも僕だけど、彼と知り合いなのもこの<スバル>の中では僕だけだから」
    「じゃあ、この3ヶ月間大変だったんじゃ」
    「まあね。少なくとも他の研究員との関係は冷え切った」
    「ひええごめん」
    「なんでそこでアサヒが謝るのさ。悪いのはユウヅキだろ?」
    「私が監督不行き届きだったばっかりに、ユウヅキがアキラ君に迷惑かけたから」
    「監督不行き届きって……君にとってユウヅキは何なんだ……」
    「何なのだろうね、ほんと」

    アキラ君が肩をがっくりと下ろした。私はこれでも真面目に話しているつもりなんだけどな。
    メガネをかけなおしたアキラ君は、三度目のため息をついた後……いつになく真剣な口調で私を諭し始めた。

    「それで、君はいつまでユウヅキを追いかけるんだ」
    「見つけるまでいつまでも、だよ? なんで、そんなこと聞くの?」

    即答する私に対し、彼は一歩も引きさがらない。

    「それは……君自身が彼を見つけて、会って話をするだけで、それでどうにかなると思っていないからだ」
    「う……」
    「君だってわかっているんじゃないか。あてもなく探して会える可能性の低さを、もし会えたとしても、簡単に連れ戻せないことを」
    「……急にどうしたの? 今まで応援してくれていたじゃない。なんか今日のアキラ君意地悪だなあ」

    アキラ君は今まで私がユウヅキを捜すのをずっと応援してくれていた。だからこそ余計に、今の彼はとても意地悪に見えた。
    彼はふっと笑って、意地が悪いのを認める。

    「知らなかったのかい? 僕は意地が悪いんだ……だから、大切な友達が理想ばかりに固執していつまでも現実を見ようとしないのを、僕は見過ごせる人間じゃない」

    その口元の歪みがとても冷たく感じて、慄いてしまう。
    苦し紛れに、今度は逆に私が意地の悪いことを言ってしまう。

    「私からユウヅキを追いかけることを取り上げたら、何が残るっていうの?」
    「残るよ。いっぱい。君の良いところは、僕がたくさん知っている」

    即答されてしまった。アキラ君の言葉は、嬉しかった。だからこそ突き刺さるものがあった。

    「わかっているよ、今私がとても中途半端だって、ユウヅキを追いかけている自分がいるのが安心だから現状に甘んじているのは」
    「だったら、無理しないでほしい」
    「無理、か……」
    「この際はっきり言わせてもらうけど、アサヒ、君は無理をしている。それも、ずっと前から。僕とこのヒンメルで再会してから、いや、きっと再会する前から君は無理をしていると思うよ」
    「根拠は?」
    「君が、昔みたいに笑わなくなった」

    おそらく、この時の私は、眉尻を下げて、笑ってごまかそうとしたのだろう。
    しかし、言葉は一言も出せず、表情が固まる。
    そういえば、ソテツ師匠が笑顔体操を考案したのって、いつ頃だったっけ。ふとそんなことを考えてしまった。

    「笑えるわけないじゃない、こんな状況で」
    「それは、いつまでもユウヅキに拘っているからじゃないか。彼が本当に君を思っているなら……っごめん」

    言いかけた言葉を引っ込めるアキラ君。アキラ君の言いたいこともよくわかった。痛いくらいわかっていた。
    私に残っているのは、彼と交わした約束の記憶だけ。その約束だって彼は覚えていないかもしれない。とっくの昔に忘れているのかもしれない。そう考えて私もきれいさっぱり忘れて生きたっていいはずだ。そんな未来だって、あるかもしれない。
    だけど。


    「ゴメンねアキラ君。やっぱり無理してでも、会いたいよ。会って話がしたいよ、たとえ彼がそれを望まなくても、彼の隣に立つことを。諦めたくないよ……!」

    みっともなくても、それが私の願いだった。
    その願いに、なんて言ったらいいのかな……呼応するようなタイミングで、彼は私の前に現れる。

    「――――だったら、諦めんな!!」
    「ビー……君?」

    ビー君、ビドー君はリオルを引き連れ会議室の出入り口に立っていた。
    彼はずかずかと踏み込んでくる。

    「いつまでも過去を引きずってもいいじゃないか。往生際悪くたって、いいじゃないか。現実直視だ? んなもんクソくらえ、一緒にとっちめてやればいいじゃないか!」

    割り込んできた彼は、語彙力が足りていない感じで、それでも必死に私を励ます言葉を叫んだ。
    私たちの目の前に来たビー君は、こちらを見据えて言い放つ。

    「おいヨアケ! 一昨日の夜のこと覚えてるか?」

    一昨日の夜、私がビー君と初めて出逢った夜。
    私は彼に頼んで、一度断られた願い。

    『私を、ヤミナベ・ユウヅキの元へ届けてほしい』

    その言葉を思い出したのを見計らって、ビー君は私に言った。

    「届けてやるよ、お前をヤミナベ・ユウヅキのもとに」

    気が付いたら、はらはらと涙がこぼれていた。ビー君は慌てて「もちろんただじゃねーぞ」と付け加える。それからビー君は私に提案する。

    「その、送り届ける代わり、俺の――――俺の相棒になってくれないか?」
    「……ビー君ちょろすぎ。そして、なんで唐突に相棒なの」
    「ちょろいのぐらい自分が一番わかってる。相棒ってのは言い過ぎかもしれねーが、俺としちゃアンタにリオルの借りもある。返せるものは送り届けるくらいしかない。あと、俺だってヤミナベの奴をとっちめたい。ラルトスを取り戻すためにも」

    感情論だけでないことに少しだけほっとする。なるほど利害は一致しているようだ。
    でも、一度断られた内容だからこそ、はい、そうですねって言えない自分もいた。
    涙をぬぐって、私は彼に皮肉を言う。

    「まったく欲張りなんだね」
    「強欲と言ってくれ」

    得意げに言う彼に思わず吹き出しそうになってしまった。

    「アサヒ……?」

    アキラ君が心配そうにこちらを見ている。彼にとっては突然の話であるし、見ず知らずの子がいきなり相棒とか言い出して裏があると疑わしくもあるのだろう。
    アキラ君だったら、絶対ビー君の提案を却下するだろう。
    だから私は、私と彼を納得させるためのクッションを用意した。

    「わかった。じゃあこうしようビー君――――私とポケモンバトルをしましょう! キミとキミのポケモンの力を見せてほしい。それから考えさせて!」
    「その勝負、受けて立つ!」

    私の誘いに、ビー君はにやりと笑って、乗った。


      [No.1585] 三話「閑古鳥が鳴くのはどこか」 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2016/08/29(Mon) 23:55:34     35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    「なあ、ケイ」
     ふと、レアードがケイに問いかける。ミカンへのインタビューから数日経った夕方のことである。二人は、「バース」のカウンターで話をしていた。
    「何、レアード」
    「この町に、ポケモンセンターはないのか?」
    「へ?」
     ケイ、返答に困る。言葉の代わりに、「何言ってんの?」と言う表情を返した。
    「いやさ、俺っちは船でこの町に、ジョウト地方に来たわけなんだが、探せど探せど見つからなかったんだよ。だからこのネットカフェにいるんだけど、座敷席とは言え腰に来るんだ。できれば宿泊先を変えたいんだよね。もしあるなら、案内してくれないか?」
    「ああ、そう言うこと? まあ無理もないか、分かりにくいもんね。それじゃ、今から行く? 近くにあるのはあるけど……。あ、でも荷物はまだ持って行かない方が良いよ」
    「そうだなあ、晩飯の時間までまだ時間もあるし……。1日中こんな密室にいるのも、胸が詰まるしね」
     そう言うと、二人は腰を上げ、一時店外に出て行った。「バース」はいわゆるインターネットカフェ、ネカフェである。この手の店は長期滞在の利用者もいることから、一時外出が認められることがある。食事に行くも良し、風に当たりに行くもまた良し。レアードも言っていたが、換気や採光が十分に行われないことが多いため、長くいればいるほど重要になってくる。
     ここで話を戻す。二人が町に出た時、西の山際に太陽の下弦が舞い降りそうな状況であった。それから、しばし大通りを歩く。時間帯の割には人混みもまばら、仕事帰りの買い物客が何人かいる程度である。ケイは特に気にしていないが、流石にレアードは思うところがあるようだ。歩きながら器用にメモを取っている。例のブログのネタにするのだろうか。
    「……さあ、着いたよ。ここがアサギのポケモンセンター」
    「へ〜これが……え?」
     足を止めたケイが指で示し、それを目で追ったレアードの口が固まった。町の南部、高速船の船着場に近い海岸沿いにある建物。潮風と経年劣化による外装、中から漏れる切れかけた蛍光灯の明かりにより、およそ何かが行われているようには見えない。その姿、冬の海の家を思わせる。
    「ここ、俺っちが船を降りてから最初に立ち寄った所だぜ? まさかポケモンセンターだとは思わないでしょ、ここ。夜で暗かったし、ただのボロビルだと勘違いしてた……」
    「そうだよねえ。一度そうだと判断したら、中々気付かないよねえ。こんなに古ぼけてるのに、バースより何もかも高いんだもん。そりゃ寂れるさ」
     そう言いながらケイ、「ポケモンセンターらしきもの」の入口に近付く。扉には種々の料金が書かれていた。レアード、目を丸くした
    「バースは2時間からで300円、その間は
    風呂もパソコンも使えるし、ポケモンの回復もしてもらえる。でもここは、回復で300円。トレーナーってさ、金が全然ないからさ。やっぱり同じ額払うなら、色々できるバースの方を選ぶんだよ。だからこんな感じになってるわけ」
    「ちょ、ちょっと待ったケイ。それよりも……」
    「何?」
    「なぜ、ポケモンセンターに金がいるんだ? タダで当然だろう?」
     レアード、至極当然の指摘をする。ケイは思わず考えこむ。考えたこともなかった、今まで……! よくよく考えれば不自然だ、なぜ誰もが使うセンターで金を取るのか。
    「レアード、ポケモンセンターがタダで当然って本当なのか? 俺が小さかった頃にはすでにこんなだったぞ。一体どうしてこんなことに……」
     ケイの疑問に答えたのは、レアードでも自身でもなく、更に別の人物であった。
    「あらあら、そこのお二方。あなたがたはニュースを見ないのですか?」
    「はあ、誰だあんた?」
     振り返ると、そこには少女が1人いた。一目見て、ケイは度肝を抜かされる。フリルの付いた白のプリーツスカートはひざ上15センチはあろうか。一方でスーツでもないのにまとうワイシャツの色はは深紅。そして細身のベルトは、ヤミカラスの濡羽のごとき漆黒であり、遠くからならモンスターボールと見紛いそうな配色だ。彼女は二人の元に迫り、こう名乗った。
    「人に聞く時はまず自分から……そう言うものではありませんか? まあ良いでしょう、手本を示すのも私の務め。私はルナ、以後お見知り置きを」
    「……レアード、この娘は一体何を言ってるんだ?」
    「……さあ? でも俺っちのカンが働かない辺り、大人の女性ではないようだな」
     レアード、仮にも初対面の女の子に向けて失礼な物言い。ミカンの時とは明らかな違いである。
    「それで? 下々の者にどのような御用でしょうか、お嬢ちゃん」
    「ちょっと、勝手に子供扱いしないでくださらない? まあそれは置いておくとして……あなた達、一つ聞きたいことがあるのですが」
    「な、何を?」
     と、ケイが聞き返したところで、ルナと名乗る少女はやや顔を赤らめる。よくよく耳を澄ませば、彼女の方向から腹の虫が鳴る音が聞こえる。
    「その……安く泊まれる場所を知りませんか? そこのポケモンセンターよりもね」



    「ほうほう、それじゃあルナちゃんは家を飛び出してきたというわけか」
     数十分後、2人はルナを連れてバースに戻っていた。3人はやはり食堂に座っているが、先程と異なるのは皿が置かれていることである。本来の役目を果たすテーブルは、どこか活き活きとしている。メニューは3品。まず、衣がまだ少しサクサクしているカツ丼。カツとご飯を分けろと言う声もあると思うが、その理由である衣のサクサク感の喪失を防いだ名品である。その脇を固めるのは、箸休めにちょうど良いきゅうりの塩漬け。手揉みの塩漬けは、箸休めと言いながら休ませてくれない美味。また、ごぼうや人参等具沢山の豚汁も、心身をほっとさせてくれる。そして、締めの緑茶。ルナは喋るのも程々に、胃袋の空白を埋めるがごとく食べ続ける。箸を進める。ひとしきり手を付けてから、ようやく一息入れて話し始めた。
    「ええ、その通りです。私、言葉の節々にトゲがあるでしょう?
    それでよく家族とケンカしてしまうのです。今日はその勢いで屋敷を飛び出してしまい、あてもなく歩いていたところで、ケイ殿とレアード殿に巡りあったと言う訳なのです。本当に、先刻は失礼しました」
     どうやらこのようなことらしい。ケイとレアードは態度の変わりように呆気に取られる。
    「あ、ああ。そう言うこともあるよな。な、レアード?」
    「まあね。イライラもそうだが、お腹減ってたんだろ? 戦うべきは血糖値だったわけだ。もう大丈夫だろう。ところで……」
     ここでレアード、左手で顎を押さえる。表情も少し真剣になった。
    「さっきの話の続き。ポケモンセンターが有料化したのは理由があるんだよね? 聞かせてくれないかな。地元人のケイはともかく、俺っちはここに来たばかりで事情が良く分からないんだけど」
    「……地元人の俺も分からないぞ」
     首をひねるケイに、ルナはゆっくりと説明を始めた。
    「ええ、それも無理はありません。何しろ私が七歳の時に始まったことですから。ケイ様は私と同い年ということですから、記憶が曖昧なのでしょう。……この有料化が始まったのは、使うトレーナーのためなのです」
    「トレーナーのため?」
    「はい。トレーナーとして各地を回り、実力を高めていく旅。昔から行われてきましたが、近年の科学や産業の発達により、引退後の仕事や教育で不利になると言うことが問題になっています。これはご存知でしょう?」
    「ああ、それな分かるよ。俺っちの故郷のフェナスシティも、旅立ったは良いけど帰ってきてからの食い扶持がないってのが多いんだ」
    「ふーん、そんなもんなのか。それで、そのことがポケセンにどう関係してくるんだ?」
     ルナ、ケイの素っ気ない疑問に元気よく返す。先程より少しテンションが上ったようだ。
    「そう、それこそが本題です。帰郷したトレーナーが直面する教育格差、それに伴う職不足、そして不安定な生活……。トレーナー達をこのような立場に置くことを防ぐために、ポケモンセンター有料化で得られた利益を使って社会復帰プログラムを立ち上げたのです。この動きを主導したのが、私のお父様なのです。」
    「お父様……それは一体誰なんだい?」
    「そうでした、私としたことが。私のお父様は……」
     と、ルナが言いかけたその時。彼女のポケットから電子音が鳴り響いた。彼女が取り出したポケギアが音源である。電話だ。ルナ、すぐに応答する。
    「もしもし、じいや? どうしたのこんな時間に。……どこにいるか、ですって? それは、あんっ」
     答えかけたルナの言葉、遮られる。ポケギアを奪いとったレアードが、受話器越しの相手と話をし始めた。
    「もしもし、突然すみません。私はルナさんを保護しているレアードと申します。……ええ、現在アサギの繁華街で、はい。……ほうほう、明日の午前中に。ずいぶん暗いですし、それが良いと思います。……分かりました、それでは明日の10時に、お待ちしております。はい、失礼します」
     結局、レアードは最後まで受話器を離すことなく電話を切った。ポケギアをルナに返し、通話の内容を説明した。
    「悪いね、普通に会話したら長くなりそうだったから。心配させないように俺っちの方で全部話しをつけといたよ。とりあえず今晩はもう暗いから、明日の午前10時に迎えに来るって。場所はアサギ港、あのボロっちいポケセンの近くだ」
    「ちょ、ちょっと勝手に決めないでください!」
     ルナ、ご立腹。喧嘩して家を出てきた手前、あっさり帰るのはバツが悪い。そんな具合だったので、レアードが諭す。
    「あのな〜ルナちゃん。俺っちだって、君が旅のトレーナーか何かならね、一晩中一緒にいるのも、その後もありだと思うよ。でもね、君には家族がいて、帰るべき場所があってだ、そこで心配している人がいるんだ。そういう人達は大事にしないといけない。俺っちみたいに、心配してくれる人がいない奴だっているんだから……」
    「レアード?」
    「おっと、おしゃべりが過ぎたようだ。ともかく、今夜は俺っちの部屋で寝なさい、掃除はしとくから。俺っちは一晩中カラオケ部屋でも行くとしよう……それじゃ、早いけどお休み」
     こう話を締めると、レアードはそそくさと自分の部屋に戻っていった。ケイとルナは互いに顔を見合わせ、おもむろに食器類の片付けに取り掛かるのであった。


      [No.1583] 素敵です! 投稿者:きとかげ   投稿日:2016/08/14(Sun) 23:49:35     29clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     浮線綾さん、はじめまして。きとかげと申します。
     草上で食前酒 -Le Aperitif sur l'herbe 読みました。面白かったです。

     オリュザの黒スーツ、ケラススの白衣、手持ち同士の対比が記号的で覚えやすく、自分でもこんな書き方をしてみたいと思いました。『四つ子とポケモン』の時も思いましたが、浮線綾さんのシンボリックな登場人物の表し方は覚えやすくて惚れ惚れします。
     黒と白、青と赤の対比が、物語が進み、記憶が戻るにつれ、0と∞、相容れない考えの対立になる流れ。0を望んだリズが永遠の命を得て、∞を望んだセラが短命となる。この結果は皮肉だと思いながら……最後の穏やかな雰囲気にちょっと救われました。
     あと、リズが炭になった時は「えっ死んだ? どういうこと??」となりながら先へ先へと読み進めました。

     カロスのお祭りの描写が細かいなと思ったら、参考文献しっかり調べてらっしゃって、すごいなと思いました。『四つ子とポケモン』も書き直し中とのことで、楽しみにしております。


      [No.1576] #146915 「小さな窓」 投稿者:   投稿日:2016/07/22(Fri) 20:07:00     44clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    Subject ID:
    #146915

    Subject Name:
    小さな窓

    Registration Date:
    2016-07-22

    Precaution Level:
    Level 5


    Handling Instructions:
    この案件の警戒レベルは「5:極めて危険」に設定されていますが、例外的にあらゆる局員に文書及び付随する情報が公開されます。すべての局員に対し、本案件に関する情報への「読み取り」のアクセス権が付与されます。当局に籍を置くすべての局員は案件資料を熟読し、本案件の性質を理解することが求められます。本案件を除くその他のレベル5案件については、従前のセキュリティポリシーが継続して適用されます。

    事象#146915の発生ポイント/発生日時、及び事象#146915のターゲットとなった携帯獣の種族を記録してください。現時点で事象#146915に対して取り得る対抗措置は確認されていません。事象#146915がすべての携帯獣に対して発生し得るのかは見解が分かれていますが、今後事象#146915の対象が拡大する虞は排除できません。本案件の対応方針は、事象#146915が世界のどの地域で発生し得るか、事象#146915の対象となる条件は何かを突き止めることにあります。


    Subject Details:
    案件#146915は、「小さな窓」と形容される未知のオブジェクト(オブジェクト#146915)の出現とそれに付随して発生する携帯獣の消失事象(事象#146915)、及びそれに掛かる一連の案件です。

    少なくとも当局が把握している限りにおいて、事象#146915の最古の発生事例は2016年07月14日になります。イッシュ地方及びカロス地方に展開する多数の支局に対し、様々な形で「携帯獣が突然消失した」との通報及び報告が寄せられました。通報が始まってからわずか30分で総数が1,000件を越え、当局のレベル6局員は非常事態宣言を出すことを全会一致で可決しました。すべての支局に対し緊急通達が交付され、最低限の保安活動を除きすべての管理局局員に本件の対応に当たることが指示されました。

    市民からの通報/各地のポケモンセンターに提出されたトレーナーのレポート/フィールドワーク担当の局員による実地調査などの情報により、2016年07月15日時点で事象#146915の大まかな性質が明らかになりました。その後も情報収集が続けられ、事象#146915に関する情報は精度が高められています。

    事象#146915は、現時点では[更新に伴い削除][更新に伴い削除][更新に伴い削除][更新に伴い削除][更新に伴い削除]124種の携帯獣に対して発生し得ることが確認されている、原因不明の消失事象です。そのデータ分布から、携帯獣の全国図鑑番号No.1〜No.151と定義された携帯獣が対象であるとの仮説が提唱されていますが、複数の携帯獣について実際の消失事象が確認できていません。事象#146915が発生した記録の存在する携帯獣の一覧は、リストL-146915-13を参照してください。

    事象#146915の前兆現象として、ターゲットになった携帯獣の前方中空にオブジェクト#146915が出現することが確認されています。オブジェクト#146915に直接接触する方法は確立されておらず、直接接触することによる人体並びに携帯獣への影響も未確認です。オブジェクト#146915は概ね8cm〜12cm×13cm〜17cm程度のサイズですが、時折16cm〜20cm×24cm〜28cm程度の大きなものが出現するケースも確認されています。オブジェクト#146915の出現から通常5分程度の間に、ターゲットとなった携帯獣が突然消失します。消失の詳しいメカニズムや、ターゲットとなった携帯獣の転移先などは不明なままです。

    オブジェクト#146915が出現した場合、対象の携帯獣を物理的に遠ざける、屋内へ移動させる、あるいはモンスターボールやボックスへ格納するなどの隔離措置を取ったとしても、事象#146915の発生を防ぐことはできません。携帯獣は移動先で消失し、ボックスへ格納されていた場合は一切の記録を残さずデータが削除されます。これは野生の携帯獣に限らず、所有者情報が書き込まれた、つまり捕獲済みの携帯獣であっても例外ではありません。これまでのところ、事象#146915を中断できたケースは確認されていません。事象#146915が発生する前に携帯獣を終了した場合の結果について検証が進められています。

    本案件で懸念すべきは、事象#146915が発生する対象が拡大することです。現状においても携帯獣の消失により生態系に有意な影響が生じていると見られる報告が複数寄せられています。対象となる携帯獣の種族が増加した場合、この傾向はより一層顕著なものとなることが予測されます。最悪のシナリオは、確認されているすべての携帯獣が事象#146915の対象となり、世界から大量の携帯獣が消失することによる大規模な生態系の崩壊です。これは人類に対し、種の存続をも内包する重大な影響を齎す虞があります。事象#146915を妨害するための方策があらゆる角度から検討されています。


    [2016/08/12 Update]
    事象#146915と類似した携帯獣の消失事象が、カントー地方及びジョウト地方の一部で2016年3月から同年4月にかけて数件発生していた可能性が指摘されました。フィールドワーク担当の局員が提出していた日報に記載が見られます。当時は単発の事案と考えられていたため、収集された情報は限定的です。事象#146915との関連性について調査が行われる予定です。

    [2[データ破損]/02/27]
    事象#146915が人間に対して発生したと見られる事案を複数検知しました。消失した市民の行方は分かっていません。現在の案件対応方針は未定です。


    Supplementary Items:
    本案件に付帯するアイテムはありません。


      [No.1575] 跋文 +参考資料 投稿者:浮線綾   投稿日:2016/07/15(Fri) 21:13:33     30clap [■この記事に拍手する] [Tweet]



    草上で食前酒 -Le Aperitif sur l’herbe



    ●跋文


    ※補足:カロス地方では16歳から飲酒可能です。あと飛び級制度があります。

     お久しぶりです。浮線綾と申します。

     途中放置させていただいている中編作品『四つ子とポケモン』の方は現在、全体的にリメイク中で、1/3くらいは書き換えました。フランスの自然や芸術や料理や人柄や社会問題を詰め込み直しています。

     そちらで入り切りそうになかったテーマである「フレア団」や「伝説のポケモン」についての考えと、フランスの各季節の各地のイベントを本作品に詰めました。
     「ポケモン食」や「賞金制度」、「移民問題」についても本作で少し触れましたが、これらについてはまだ勉強が不十分と感じます。

     あとサン・ムーンの発売前にXYの話を一つ完結させてみたかったのが主な動機です。

     キャラクターはまず絵を描いてピンと来たものに設定をつけて作ってます。
     本文の執筆期間は二週間でした。キャラクター制作にはある意味数年かかってますが。

     『四つ子』の方ものんびり書き直していきたいと思います。
     下の参考資料からわかる通り、そちらは「移民問題」が主要テーマになりそうです。

     ではでは、リズとセラの話に付き合って頂き、ありがとうございました。アローラ地方に2人でバカンスに行けばジガルデさんにお目にかかれるかもしれませんね。映画とサン・ムーン楽しみです。






    ●参考資料

    ○ポケモン関連
    『ポケットモンスターX・Y 公式ガイドブック 完全ストーリー攻略ガイド』
    『ポケットモンスターX・Y 公式ガイドブック 完全カロス図鑑完成ガイド』
    『ポケットモンスターX・Y 設定資料〔情景編〕』(スーパーミュージックコレクションのブックレット)

    ○フランス関連
    『現代フランス社会を知るための62章』 三浦信孝、西山教行
    『パリ・フランスを知るための44章』 梅本洋一、大里俊晴
    『12年目のパリ暮らし パリジャン&パリジェンヌたちとの愉快で楽しい試練の日々』 中村江里子
    『さおり&トニーの冒険紀行 フランスで大の字』 小栗左多里、トニー・ラズロ
    『写真と学ぶフランス語フレーズ』 佐々木じゅんこ
    『パリっ娘たちは今日もおしゃれに輝いている―パリジェンヌの美的生活の方法』 斉藤智子
    『ガイドブックにないフランスぶらぶら案内』 稲葉宏爾
    『極上ホテルからの招待状 フランスを旅する10の物語』 ダイヤモンド社出版
    『花でめぐるフランス―フラワーデザイナーが案内する一味違った旅』 落合邦子
    『図説パリ名建築でめぐる旅』 中島智章
    『図説西洋建築の歴史』 佐藤達生
    『西洋アンティークの事典』 成美堂出版
    『エスカルゴの国から』 http://otium.blog96.fc2.com/
    『ブルゴーニュだより』 http://www.bourgognissimo.com/
    『フランスの天気と気候』 http://jams-parisfrance.com/info/category/weather/
    『フランスワインとその産地のすべて「フランスワイン事典」』 http://www.french-wine-jiten.com/
    『フランス観光開発機構 公式フランス旅行情報』 http://jp.france.fr/
    『イーコムフランス語ネット』>『Ecomフランス通信』 http://ja.myecom.net/french/blog/
    『フランス文学と詩の世界』 http://poesie.hix05.com/
    『フランス音楽の扉』 http://homepage1.nifty.com/qinium/musiquef.htm
    ほか

    ○その他
    『イスラームの日常世界』 片倉もとこ
    『イスラームを知る32章』 ルカイヤ・ワリス・マクスウド
    『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』 ロレッタ・ナポリオーニ
    『美しきアルジェリア』 大塚雅貴
    『モロッコを知るための65章』 私市正年、佐藤健太郎
    『現代アラブを知るための56章』 松本弘
    『法哲学』 亀本洋
    『格差原理』 亀本洋
    『法哲学』 平野仁彦、亀本洋、服部高宏
    『刑法総論』 山口厚
    『入門民法』 潮見佳男
    『入門社会経済学』 宇仁宏幸ほか
    『経済学の歴史』 根井雅弘
    ほか


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