マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  •   [No.1604] #148530 「忘れられていた世界」 投稿者:   《URL》   投稿日:2017/08/13(Sun) 19:46:42     29clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    Subject ID:
    #148530

    Subject Name:
    忘れられていた世界

    Registration Date:
    2017-01-25

    Precaution Level:
    Level 5


    Handling Instructions:
    オブジェクト#148530-1が存在するポイント#148530は非異常性の鍵により三重に施錠し、外部の人間並びに携帯獣を決して侵入させないよう厳重に警備してください。事前に書式F-148530-1に沿って作成・申請された計画に基づくものを除いて、オブジェクト#148530を使用した実験は一切認可されません。実験計画は事前に承認者のレビューを受ける必要があり、承認者が却下した場合実験は認可されません。実験から得られた知見は書式F-148530-4に基づくレポートに取りまとめ、案件別サーバに暗号化の上保管します。

    ポイント#148530全域及び周辺500mまでの地点について、携帯獣の「クレッフィ」の存在を検知するための低密度スキャン波が常時展開されています。低密度スキャン波がクレッフィの存在を検知した場合、現地に常駐する保安要員が直ちに検出地点まで向かうことになっています。クレッフィが野生だった場合は捕獲の上ポイント#148530から少なくとも直線距離で10km以上離れた地点へ移送され、トレーナーが帯同させていた場合は当該トレーナーを確保の上事情聴取を行います。トレーナーがクレッフィを意図的にポイント#148530内へ帯同させたことが判明した場合、詳細についてヒアリングを行ってください。

    エリア#148530内の探査により作成された探査記録#148530は、案件担当者およびレベル6以上のセキュリティクリアランス保持者のみが閲覧を許可されています。案件担当者が本案件のアサインを解除された場合、またはレベル6以上のセキュリティクリアランス保持者がその権限を剥奪された場合、プロトコルUXに基づく記憶処理を受けることが義務付けられています。探査記録#148530は当局の情報公開ポリシーの適用除外を受け、本案件が無力化されない限り一切の情報公開がなされず、また文書そのものの存在についても無期限に秘匿されます。


    Subject Details:
    案件#148530は、ある地域に存在する廃屋(ポイント#148530)に据え付けられた扉(オブジェクト#148530-1)とオブジェクト#148530-1に対応する鍵(オブジェクト#148530-2)、並びにオブジェクト#148530-1を通じて侵入することが可能な領域(エリア#148530)、及びそれらに係る一連の案件です。

    ポイント#148530が発見されたのは2017年1月25日、オブジェクト#148530-1の存在が確認されたのは2月上旬頃となります。ポイント#148530の近隣は土地所有者である近隣の住人によって立ち入りが禁止されていましたが、当該住人が一か月ほど前から行方が分からなくなっていることを受け、警察当局が捜査を行っていました。捜査の過程でポイント#148530付近で失踪した可能性が示唆され、またそれに関連して異常な事象が関与している虞有りとの見方が示されたことから、ポイント#148530について案件管理局が接収、管理下に収めました。

    オブジェクト#148530-1は、所々が錆びついた鉄製の扉です。ステンレス製のドアノブが取り付けられており、ドアノブには鍵穴が存在します。鍵穴に外見上特異な点は見られませんが、未知の原理によりオブジェクト#148530-2以外の挿入を物理的に受け付けない性質を持っています。これは鍵穴に対して非異常性の鍵や針金を差し込むことができず、オブジェクト#148530-2のみが開錠/施錠に対応していることを意味します。

    オブジェクト#148530-2は、オブジェクト#148530-1に対応する異常な鍵です。携帯獣の一種である「クレッフィ」が一度でも保持した鍵は、例外なくすべてオブジェクト#148530-2となり、オブジェクト#148530-1の開錠/施錠に使用することが可能になります。オブジェクト#148530-2に変化しても本来の鍵としての性質は保持されたままです。一度オブジェクト#148530-2となった鍵は永続的にその性質を保持し、非異常性の鍵へ戻す方法は発見されていません。オブジェクト#148530-1をオブジェクト#148530-2を使用して開錠することにより、エリア#148530へ侵入することが可能になります。

    エリア#148530は、オブジェクト#148530-1をオブジェクト#148530-2を使用して開錠することにより進入することができる異常な領域です。エリア#148530は現状オブジェクト#148530-1からのみアクセス可能であり、他にアクセスするための方法は確認されていません。また、オブジェクト#148530-1を通過する以外の方法でポイント#148530へ戻る方法も見つかっていません。

    エリア#148530は地球とほぼ同一の環境(大気/重力/光量等)であり、人類や携帯獣は支障なく活動することができますが、土壌や大気のサンプルから得られた構成成分は地球のそれと僅かな差異を見せています。空は灰色で覆われていますが雲は見えず、観測した局員からは「雲一つない青空を灰色に塗りつぶしたかのよう」との証言が得られました。エリア#148530にて証跡として撮影された写真が、局員の証言を裏付けています。

    エリア#148530内には何らかの生物が生息していると思しき痕跡が多数確認されましたが、生物との接触は果たせていません。また、高度な技術が用いられた人工物も多数発見されていますが、これらはいずれも起源不明であり、いかなる経緯で制作されたのは明らかになっていません。

    エリア#148530の探査記録の抜粋は以下の通りです:


    探査記録#148530-1:
    2017-02-04記録。探査に当たった局員は4名。探査に要した時間は02:21。使用したのはポイント#148530に残置されていた鍵(オブジェクト#148530-2-1に指定)。エリア#148530の性質を把握するための初期調査として、周辺の土壌や大気のサンプルを収集。サンプルを分析して得られた情報から、エリア#148530は地球とほぼ同一の環境であると判断。探査は問題なく完了。

    探査記録#148530-2:
    2017-02-07記録。探査に当たった局員は3名。探査に要した時間は00:12。使用したのはオブジェクト#148530-2-1。同一のオブジェクト#148530-2を使用して進入した場合に、エリア#148530にどのような変化が生じるかを確認する目的で実施。結果、前回の探査時と同一地点に出現した。状況についても前回の調査時から変化が見られず。このことから、同一のオブジェクト#148530-2を使用した場合、オブジェクト#148530-1を経由して同じ地点へ移動できるとの仮説が提唱された。探査は問題なく完了。

    探査記録#148530-3:
    2017-02-07記録。探査に当たった局員は3名。探査に要した時間は00:38。使用したのは局員が帯同させているクレッフィから同意を得て入手した鍵(オブジェクト#148530-2-2に指定)。オブジェクト#148530-2の種類を変更することによる変化を観測する目的で実施。結果、探査記録#148530-1及び-2で観測された場所とは異なる地点に接続されたことを確認。探査記録#148530-1及び-2の接続地点はポイント#148530に酷似した廃屋の屋内だったのに対し、この探査では放棄されたと見られる学校の教室に残置された用具入れへ接続された。以後、オブジェクト#148530-2ごとにどの地点へ接続されるかを記録することが義務付けられる。探査は問題なく完了。

    探査記録#148530-4:
    2017-02-12記録。探査に当たった局員は5名。探査に要した時間は03:11。使用したのは当局で生成した鍵(オブジェクト#148530-2-3に指定)。接続地点は内部が荒廃したポケモンセンターと見られる建物。内部からいくつかの資料及び物品が持ち帰られ、解析を担当するチームへ回された。ポケモンセンターより外へ出ておよそ2km圏内の探索も行われたが、周囲にその他の建築物は見当たらず。北方は山岳地帯となっていた。探査は問題なく完了。

    探査記録#148530-5:
    2017-02-24記録。探査に当たった局員は4名。探査に要した時間は02:53。使用したのは当局で生成した鍵(オブジェクト#148530-2-4に指定)。接続地点は競技用バトルフィールドと見られる施設の整理口。中央のバトルフィールドにて、携帯獣の「サイドン」に酷似した骨格を持つ生物の白骨化した遺体が発見された。遺体の一部が持ち帰られ、解析を担当するチームへ回された。施設内にて残置されていたカレンダーが発見され、暦について地球と同じものが使用されているとの仮説が有力視される。カレンダーは「1996年」のものであった。探査は問題なく完了。

    探査記録#148530-6:
    [アクセス拒否]

    探査記録#148530-7:
    [アクセス拒否]

    探査記録#148530-8:
    [アクセス拒否]


    [2017-06-29 Update]
    エリア#148530の探査について、裁定委員会はこれ以上の実施を許可しない方針で一致しました。オブジェクト#148530-1及び-2は無期限の管理下に置かれ、探査記録#148530-6から-8をレベル6セキュリティクリアランス保持者以外すべてのアクセスを遮断する設定を追加します。案件担当者はオブジェクト#148530-1及び-2の保全のみを行い、それ以上の対応は行ってはなりません。

    探査記録#148530-6から-8に関して、当局の定める手順に基づくデータ抹消を行うことが提案されています。この提案は現在保留されています。


    Supplementary Items:
    本案件に付帯するアイテムはありません。


      [No.1603] #131216 「不安定な群れ」 投稿者:   《URL》   投稿日:2017/08/05(Sat) 20:50:45     19clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    Subject ID:
    #131216

    Subject Name:
    不安定な群れ

    Registration Date:
    2011-08-01

    Precaution Level:
    Level 2


    Handling Instructions:
    群体#131216はその性質上継続的な収容が困難であり、確保及び保護の手順は制定されていません。案件担当者は市民から寄せられた群体#131216の発見報告、並びにフィールドワーク中に遭遇した都度、可能な限り群体#131216の生態を観察並びに記録してください。過去に収集された群体#131216の生態に関する記録は、案件別サーバの高セキュリティディレクトリに格納されています。案件担当者は当該ディレクトリへのアクセス権を持ち、必要に応じて関係する局員に情報を展開することができます。

    過去に群体#131216が出現した個所をプロットしたマップを文書D-131216-1として作成・管理します。文書D-131216-1は群体#131216の発見の都度更新し、群体#131216の観測地点に関する法則性の解明に使用されます。文書D-131216-1より何らかの知見が得られた場合、案件担当者は速やかに上長への報告を行ってください。文書D-131216-1の更新は本案件の管理終了まで継続されます。

    群体#131216における個体#131216への接触は原則として行わないでください。個体#131216について特異な点は観測されておらず危険度は低いものとの推定が成されていますが、当局の接触した個体#131216は例外なく群体#131216としての性質を失うことが確認されています。接触の結果特性を失った個体#131216については、特段の収容措置を執る必要はありません。必要に応じて捕獲することも可能ですが、過去に捕獲された個体#131216に関してはいずれも異常な性質を持たず、短期間で解放される結果に終わっています。


    Subject Details:
    案件#131216は、ある特定の携帯獣(個体#131216)の集団(群体#131216)が見せる特異な性質と、それに掛かる一連の案件です。

    群体#131216の存在を当局が認識したのは、2011年6月上旬のことです。カントー地方トキワシティ第七支局の局員が提出した業務日報に、「異様な動きをするコラッタの群れ」に関する証言を複数の市民から得たとの記載が成されました。局員が証言した市民らにヒアリングを行ったところ、いずれも同一の事象を指している可能性が高いとの見解が示され、案件の立ち上げが提起されました。案件立ち上げは承認され、当該局員が案件担当者にアサインされました。

    群体#131216は、携帯獣の「コラッタ」が形成する群れです(以下コラッタを「個体#131216」と記載)。概ね10体から20体の個体#131216によって形成され、具体的な数は群体#131216の観測の都度変動します。過去の事例では最少で5体の、最多で36体の個体#131216による群体#131216が観測されています。群体#131216を形成する個体#131216の数による群体#131216の性質の変化は確認されていません。

    群体#131216の顕著な特異性は、一般的なコラッタ個体とはかけ離れた動きをする点にあります。通常のコラッタ個体は、時折ランダムな動きが混ざることはあれど、概ね直進を主体とした規則的な動きをします。しかしながら群体#131216を形成する個体#131216は、ほとんどの場合直線的な移動を行わず、極めて不安定な経路を辿って移動します。特筆すべき点として、群体#131216を形成する個体#131216は例外なく同じ動き方をします。これは群体#131216を形成する複数の個体#131216間の距離が常に一定に保たれていることを意味します。結果として、移動するパスは不安定にもかかわらず、群れとしては極端に統制の取られた動きが観測されます。

    群体#131216の移動パスに関する詳細は未だ解明されていませんが、群体#131216は「風にあおられる」ような動き方をしているとの証言が数名の市民から得られています。ある程度の強さの風が吹いた場合、風の方角に向かって群体#131216が歩いていくという光景が複数回確認されています。局員の一部は、群体#131216の移動パスを確定する要素として風が関係しているとの見方を示しています。

    もう一つの特異な性質として、群体#131216は突如として消失することが挙げられます。ただし過去の観測事例において、群体#131216が直接消失する瞬間を確認できたケースは存在しません。いずれも群体#131216の観測が何らかの理由で中断された(群体#131216から視線を外した、群体#131216の観測中に瞬きをした等)後、再度の観測を試みたものの該当する群体#131216を発見できなかったという形で顕在化します。案件副担当者より、群体#131216を観測する者が居なくなったことをトリガーとして、群体#131216が瞬時に消失しているとの仮説が示されました。これは逆説的に、群体#131216は自身を観測する外部存在を認識している可能性を示唆しています。

    過去に行われた群体#131216に対する調査の過程で、群体#131216を形成する個体#131216を群体#131216から引き離すというテストが行われています。しかしながらこのテストの結果は、個体#131216が特異性を失い、一般的なコラッタ個体と比較して何ら差異の見られない振る舞いのみをするようになるという結果に終わっています。過去に確認された群体#131216は例外なく個体#131216のみによって形成されていますが、個体#131216そのものには何ら特異な点が見当たらないことから、群体#131216の異常な性質がいかなる理由によってもたらされているものかを調査することが困難になっています。現在は個体#131216ではなく群体#131216にフォーカスを当て、異常性の解明に向けたアプローチが続けられています。


    Supplementary Items:
    本案件に付帯するアイテムはありません。


      [No.1602] #122342 「電話ボックスの利用者」 投稿者:   《URL》   投稿日:2017/05/22(Mon) 20:57:31     24clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    Subject ID:
    #122342

    Subject Name:
    電話ボックスの利用者

    Registration Date:
    2008-10-08

    Precaution Level:
    Level 3


    Handling Instructions:
    事象#122342が発生している電話ボックス#122342を確認した場合、局員は事象#122342が終了するまで近隣をレベル1封鎖の状態に置き、事象#122342が外部から妨害されないよう対応してください。レベル1封鎖に際しては本案件のレベル3セキュリティクリアランスが使用できます。事象#122342が終了し次第、レベル1封鎖は解除してください。事象#122342が発生した電話ボックス#122342の管理番号を記録し、各リストへ反映させた上で電話局へログの提出を命じてください。

    事象#122342が確認された電話ボックス#122342の一覧は、リストL-122342-2を参照してください。過去に事象#122342が確認された電話ボックス#122342は、その後も事象#122342が断続的に発生する傾向が見られます。電話ボックス#122342には近隣の支局に駐在する局員を巡回担当者に割り当て、週次で事象#122342が発生していないかを検査します。過去に発生した事象#122342の一覧は、リストL-122342-1を参照してください。

    本案件では、管理用に下記のリストを作成・管理します。

    リストL-122342-1: 確認された事象#122342のリスト
    リストL-122342-2: 事象#122342が発生した記録が存在する電話ボックス#122342のリスト
    リストL-122342-3: 事象#122342に関与した記録が存在する携帯獣#122342のリスト
    リストL-122342-4: 電話局から入手した事象#122342に関連するアーカイブファイルのリスト


    Subject Details:
    案件#122342は、種族不定の携帯獣(携帯獣#122342)が電話ボックス(電話ボックス#122342)を使用して未知の連絡先へ通話を試みる事象(事象#122342)と、それに掛かる一連の案件です。

    事象#122342が観測された最古の時期は、当局が把握しているもので2006年7月頃となります。市民の一人から「携帯獣が電話ボックスに入って誰かと話をしている」との通報が寄せられた記録があり、その際は単発の事案として対応に当たった局員が日報へ記録することに留めていました。しかしながらその後複数回に渡って同様の事案が確認されたため、局員から情報が収集された上で単独案件として立ち上げることが決定されました。

    事象#122342は、電話ボックスへ入った携帯獣#122342が未知の連絡先へ通話をするという事象です。通話時間は事象の都度大きく異なり、最短で27秒、最長で36分14秒に及んだ記録が存在します。通話時間の長短を決定する要因は不明です。過去の事象#122342においては同一種の携帯獣#122342が複数回の事象#122342に関与していたものも存在しますが、通話時間には顕著な差異が見られます。少なくとも、携帯獣#122342の種族が事象#122342の長短に関連している可能性は低いと推測されます。

    事象#122342が発生した電話ボックスは電話ボックス#122342に指定されます。電話ボックス#122342は事象#122342が発生している間のみ、外部からの干渉を受け付けなくなるという特性を示します。外部から扉を開く事ができなくなるだけでなく、器具や各種の重機を使用しても損壊する事ができません。この特性は事象#122342の終了と共に消滅し、以後電話ボックス#122342は事象#122342が再び発生するまであらゆる異常特性を失います。

    携帯獣#122342は、電話ボックス#122342にて事象#122342を発生させていると見られる携帯獣です。これまでの観測において、物理的に受話器を掴む方法が無い携帯獣、例えばディグダやテッポウオなどの種族による事象#122342は確認されていません。しかしながら、触手を用いるモンジャラや超能力を用いるケーシィなどの事例は複数確認されていることから、事象#122342に関与する携帯獣は何らかの方法で受話器を掴む事が可能な種族に限定されるものと見られています。

    事象#122342によって具体的に何が起きているのかは不明です。連絡先は常に電話ボックス#122342に設置された電話番号自身を示すため、携帯獣#122342がどのような存在と通話しているのかは調査不可能な状態が続いています。電話局から入手した通話記録は、電話ボックス#122342に設置された電話機が事象#122342の発生中に通話中であった事を示していますが、すべての事例において一貫して音声信号はまったく記録されていません。通常予想される外部からの雑音なども記録されません。多くの記録について通話時間は事象#122342の観測時間とほぼ一致しますが、一部の記録に関しては事象#122342の終了後も通話が続いていたとされるものも存在しています。

    現在の案件対応方針は、事象#122342のサンプルを収集する事と携帯獣#122342の連絡先並びに連絡内容を把握する事に加え、事象#122342の発生要因となる電話ボックス#122342の撤去を進める事が推奨されています。電話局と連携し、事象#122342が発生した電話ボックス#122342を優先的に撤去する対応が進められています。


    Supplementary Items:
    本案件に付帯するアイテムはありません。


      [No.1601] #147398 「『転載元不明』」 投稿者:   《URL》   投稿日:2017/05/13(Sat) 20:38:46     26clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    Subject ID:
    #147398

    Subject Name:
    『転載元不明』

    Registration Date:
    2016-09-16

    Precaution Level:
    Level 3


    Handling Instructions:
    過去に取得されたオブジェクト#147398のデジタルコピーは、案件別サーバに1024bit以上の鍵を使用して暗号化した上で保管してください。閲覧に際しては、適切なセキュリティクリアランスを持つ案件担当者及び案件副担当者に対して、当局の定めるレベル3認識保護装置を搭載したデバイスでのみ閲覧が許可されます。

    オブジェクト#147398と非異常性のイラストを識別する自動化手順は確立されていません。案件副担当者はレベル3認識保護装置を装備した端末を使用し、ソーシャルネットワーク上で話題を集めているイラストが無いかを監視してください。オブジェクト#147398と推定されるイラストを発見した場合、手順M-147398-1に基づき本来の製作者を割り出す作業を行い、手順M-147398-1がすべて完了しても製作者が特定できなかったイラストをオブジェクト#147398に指定してください。オブジェクト#147398に指定されたイラストはデジタルコピーを取得した後、標準プロトコル「権利者削除」を実施してください。


    Subject Details:
    案件#147398は、ある特定の経路でのみ出現する製作者不明のイラスト(オブジェクト#147398)と、それに係る一連の案件です。

    少なくとも2015年中頃から、明らかに人間または携帯獣の手によって描かれたにも関わらず、製作者が実在しない、または不明とされるイラストが、ソーシャルネットワークサービス内で広く共有されるという事例が確認されていました。対象となるイラストは、その大部分について他者が権利を持つイラストを無断転載する自動化されたアカウント(bot)によってネットワーク上に拡散されていました。複数の事例を取りまとめた上で、当局は案件化を決定しました。

    オブジェクト#147398の特徴は、いかなる方法においても製作者を突き止めることができないという点にあります。イラストには製作者の名前やアカウントIDが記されているケースがしばしば見られますが、それらの情報はいずれも無効であり、該当する製作者は見つけることができません。アカウントについてはそのすべてが存在せず、サービス提供元の調査においても過去にアカウントが利用された記録は見つかりません。

    オブジェクト#147398は、無断転載を行う自動化アカウントによってネットワークサービスへアップロードされる形で出現し、その後他のアカウントに伝播しながら自身の拡散を続けます。拡散の過程で非自動化アカウント(一般的な利用者が存在するアカウント)によって転載が行われるケースも確認されていますが、非自動化アカウントが発端となってオブジェクト#147398の拡散が開始されたというケースは確認されていません。

    自動化アカウントの管理者にヒアリングを実施したところ、ほとんどの場合において「別のアカウントがアップロードしたファイルをコピーしてアップロードした」という回答が得られます。コピー元を辿る試みは成功しておらず、複数のアカウント間で矛盾した経緯となるか(相互に相手が最初のアップロード者であると証言する)、管理者不明のアカウントに辿り着くかのいずれかの結果に終わっています。これまでのところ、最初のアップロード者を突き止めることができたオブジェクト#147398は存在しません。

    過去に確認されたオブジェクト#147398は一切の例外なく、視認した人間に対してオブジェクト#147398を拡散させようと働きかけるレベル3認識災害の特性を持っています。この特性はオブジェクト#147398に描かれている内容によって作用する仕組みが異なり、個人や社会に対する問題提起を目的としたイラストはある種の使命感や義務感を、愛嬌のあるキャラクターや携帯獣が描かれたイラストは単に「広く共有したい」という感情を、通常想定されるレベルを超えて強く惹起させます。いずれにせよ、オブジェクト#147398が自身を拡散させようとすることに違いはありません。

    オブジェクト#147398の製作者は不明です。すべてのオブジェクト#147398が同一人物の手によって製作されているのか、異なる複数の人物によって製作されているのかも判断が分かれています。一部の局員からは、非異常性のイラストがオブジェクト#147398に変質したとの仮説が提起されています。この仮説については、現在副担当者二名が実証を進めています。


    Supplementary Items:
    本案件に付帯するアイテムはありません。


      [No.1600] #105860 「星祭り」 投稿者:   《URL》   投稿日:2017/05/06(Sat) 20:54:18     31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    Subject ID:
    #105860

    Subject Name:
    星祭り

    Registration Date:
    2003-07-19

    Precaution Level:
    Level 3


    Handling Instructions:
    案件担当者はエリア#105860外に在籍する局員のみがアサインされ、イベント#105860の発生前後のみエリア#105860内で活動する事が許可されます。案件担当者はエリア#105860内における年間滞在時間が336時間を超える事が無いよう注意を払ってください。年間滞在時間が上限に達した場合、当該案件担当者は解任され、別の局員が割り当てられます。

    エリア#105860においてイベント#105860を抑止することは現実的ではなく極めて困難であるため、案件担当者はイベント#105860がどのようなプロセスを経て開催されるか、イベント#105860においてどのような事象が発生するかを記録することに従事してください。イベント#105860発生の兆候がエリア#105860以外で観測された場合、イベント#105860を企画した人物を例外なく拘束し、イベント#105860について尋問してください。ただし本稿執筆時点までに、このプロトコルが実行された記録はありません。

    これまでの観測結果から、イベント#105860そのものは市民に対して顕著な悪影響を及ぼさない事象のみで構成されているとの意見が大勢を占めています。この観測結果は、エリア#105860の住民がイベント#105860に対して違和感を覚えないこととも矛盾せず一致します。ただし、イベント#105860については開催を重ねるごとに観測される事象が変化または増加しているとの指摘があり、継続して観測する必要があります。

    イベント#105860の起源を探る試みが続けられています。案件担当者は、エリア#105860においてのみイベント#105860が観測される理由、そしてイベント#105860が発生し始めた正確な時期について調査を行ってください。何らかの知見が得られた場合、とりまとめを行った上で本稿をアップデートしてください。


    Subject Details:
    案件#105860は、ある特異なイベント(イベント#105860)とイベント#105860で確認される種々の事象(事象#105860)、事象#105860を経て生成される種々のオブジェクト(オブジェクト#105860)、イベント#105860が発生すると指定された所定のエリア(エリア#105860)、及びそれらにかかる一連の案件です。

    イベント#105860が発生することが確認された最古の時期は、2000年頃になります。イベント#105860が異常な現象であるとの指定が遅れた理由は、エリア#105860内に在籍する局員がイベント#105860がもたらす情報災害を被っていたことによるものと推定されています。2000年以前にイベント#105860が発生していた記録はありませんが、当局が観測できない形でイベント#105860そのものは起こっていた可能性が指摘されています。

    イベント#105860は、エリア#105860において発生する特異な事象です。イベント#105860は例外なく7月1日に開始され、7月7日に終了します。これ以外の時期に発生した記録は存在しません。また、エリア#105860以外のあらゆる場所において発生したという事実は確認されていません。収集された情報から、イベント#105860はエリア#105860において、7月1日から7月7日にかけて発生するものと推定されています。

    エリア#105860において、イベント#105860は「星祭り」と呼称されています。2000年以前に開催された記録が一切存在しないにも関わらず、エリア#105860内においてイベント#105860は歴史ある祭事として認識されています。この事から、イベント#105860に関する情報、或いはイベント#105860そのものが、エリア#105860内に在住する市民に対して認知異常を引き起こしている可能性が示唆されています。2000年以前の開催について市民にヒアリングした場合、ある程度の類似性を持った、しかしながら細部において現在のイベント#105860とは異なる祭事に関する証言が得られます。この情報に何らかの意味があるのかは分かっていません。

    これまでに確認されている、イベント#105860において発生する、または過去に発生した事が確認されている事象は下記の通りです:


    事象#105860-1:
    概ね9歳程度までの子供を対象に、紙片(オブジェクト#105860-1に指定。エリア#105860内では「短冊(たんざく)」と呼称されています)に自身の願い事を書かせるという催しが各地で開かれます。願い事の書かれた短冊は樹齢25年以上の樹木の枝に吊るされ、7月7日まで飾られたままにされます。特筆すべき点として、7月8日を迎えた時点ですべての短冊が一斉に消失します。

    事象#105860-2:
    あらゆる年代の人間が、自身にとって得意な方法(例:紙粘土を捏ねる、木を彫る、プラスチック製のブロックを組み上げる等)を用いて、伝承上の携帯獣である「ジラーチ」の像(オブジェクト#105860-2に指定)を作り上げます。「ジラーチ」の容姿は一般的に認知されているものと一致します。製作された像は近隣の催事会場に集められ、人々は幸運を祈願して像に祈りを捧げます。事象#105860-1における紙片同様、7月8日を迎えた時点ですべての像が一斉に消失します。

    事象#105860-3:
    2001年以降に見られるようになった事象です。事象#105860-1及び-2に関連する催事に加えて、特技の一種である「日本晴れ」が行使できる携帯獣が集められ、一斉に「日本晴れ」を繰り出すという催しが行われます。当局が目的を伏せたヒアリングを実施した結果、この行為は「空を晴れさせて星をよく見えるようにするため」という理由に基づくものとの回答が得られました。

    事象#105860-4:
    2001年以降に見られるようになった事象です。あらゆる年代の女性が集まり、「エリア#105860に古くから伝わる」とされる木製の糸紡ぎ機(オブジェクト#105860-4に指定)を使用して組紐を製作します。組紐は製作者にとって親しい人に親愛の情を示すために手渡され、それ以外の用途で使われる事はありません。糸紡ぎ機がエリア#105860において古くから伝わるということを証明する資料は発見されておらず、事象#105860-4が初めて観測される以前に用いられていた記録も存在しません。

    事象#105860-2A:
    2003年以降に見られるようになった、事象#105860-2に代わる事象です。市民が各々の手段でジラーチの像を製作することに変わりはありませんが、ジラーチの像における顔に相当する部位に「目」が存在しなくなり、代替として腹部に開いた状態の単眼が作り込まれます。事象#105860-2からこのような変化を遂げた理由は不明です。


    エリア#105860は、イベント#105860の発生が確認されている唯一の地域です。ホウエン地方ムロタウンの全域が指定されています。案件管理の過程でイベント#105860の発生がエリア#105860以外でも確認された場合、ホウエン地方ムロタウンはエリア#105860-1に再分類される予定です。


    Supplementary Items:
    本案件に付帯するアイテムはありません。


      [No.1599] 第四話後編 激突、アサヒVSビドー 投稿者:空色代吉   投稿日:2017/03/29(Wed) 21:00:33     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    第四話後編 激突、アサヒVSビドー (画像サイズ: 480×600 197kB)

    俺ことビドーは、ヨアケ・アサヒに、ヤミナベ・ユウヅキを捜す為にタッグを組もうと提案した。率直に言うと、相棒になってほしいと頼んだ。
    ヤミナベという男は数年前にこのヒンメル地方を襲った大規模な神隠し、通称“闇隠し事件”の容疑者だ。そして、ヨアケの幼馴染でもある。
    “闇隠し”で行方不明になった手持ちのラルトスの消息を掴むためにも、俺は事件に深く関わっていると思われるヤミナベに接触をしたかった。
    そしてヤミナベと再会したいと願う彼女に手を貸したいとも思い、手を組もうと誘った。
    俺としては利害が一致しているように見えたが、そう簡単に話は進まなかった。
    ヨアケは俺の誘いにこう返事をした。俺の目を見てこう言った。

    「ビー君たちの実力を見せてほしい。相棒になるかどうかは、それから考えさせて」

    それは、ポケモントレーナー同士の間で行われる合図、ポケモンバトルの申し込みだった。
    その申し出を俺は迷わず受ける。するとヨアケは、さっきまでの暗い面持ちを吹き飛ばす勢いで、どこか楽しそうにポケモンバトルの準備を進め始める。その様子に、面喰う俺だったが、その状態に陥ってしまったのはどうやら俺だけではなかった。
    その場にいたヨアケの旧友、アキラ君は俺とヨアケのバトルに納得いかない様子であった。
    そんな彼に気づいているのかいないのか、ヨアケは俺に聞いてくる。

    「そういやビー君は、手持ちのポケモン何体持っているの?」
    「5体だ」
    「私は6体だよ。じゃあシングルバトルの3対3でいい?」
    「それで構わない」
    「あとは場所か……アキラ君、バトルフィールドってこの研究所にある? できるのなら借りたいんだけど……」

    話を振られたアキラ君は、咳払いを一つしてヨアケに質問をした。

    「一応訓練用のフィールドがある。貸し出しも出来るはず。だけどアサヒ……本当に彼とバトルをするのか?」
    「うん」

    迷いなく答えるヨアケ。アキラ君は一瞬黙った後、言葉を選びなおして再びぶつける。

    「……言い方を変える。アサヒ、君はユウヅキを追いかけるのにビドーを巻き込むのか」

    俺は決して巻き込まれに行くわけではないのだが、と発言しようにも口を挟めない雰囲気だった。アキラ君の問いかけにヨアケは少し考えるそぶりを見せた後、こう言った。

    「まだそうと決めたわけじゃないよ。でも、そうなるかもしれない」
    「どうしても、ユウヅキを諦める気はないのか」
    「うん、まだ諦めたくない」
    「……その結果、君が国際警察に捕まることになっても?」

    ヨアケ・アサヒが国際警察に捕まる可能性。
    今はまだ何とも言えないがヤミナベの幼馴染のヨアケが“闇隠し事件”の重要参考人として連行される可能性がないわけではないという現実を、アキラ君は恐れて反対しているのかもしれない。
    ましてヨアケは事件前後の記憶がない。つい先ほどその事実を知ったならば、不安になってもおかしくはない。
    更にアキラ君の上司であるレインはヨアケを国際警察に引き渡すのも手だと考えているとなれば、これ以上ヨアケが下手に動いて、彼女の不利になる状況になるのを望んでいないのだろう。
    要するに、アキラ君はヨアケのことが心配なのだろう。
    だが、レインがヨアケに問うた通り、これはヨアケがこれからどうしたいかが重要だ。
    ユウヅキを追いかけるにしろ、諦めるにしろ彼女がどう動くかによって、恐らく現状は変化するのだろう。もっとも、当の本人は腹をくくっているようだが。
    彼女は覚悟の言葉を告げる。

    「いいよ。もし私が憶えてない罪があるのなら、償うつもり。できれば……ううん、絶対ユウヅキと一緒に」
    「……そっか。じゃあ、答えは出ているようだね」
    「答えって?」

    アキラ君は寂しそうな笑みを作る。それからからかい交じりに答えとは何かを言う。

    「レイン所長の質問の答え。君がユウヅキと再会した後どうしたいのか」
    「あ」
    「もしかして、忘れていたの?」
    「あ、あー、うん。そうだった、ちゃんとレインさんに言わなきゃ……!」
    「慌てない。もう少し考える時間はあるさ。それこそ彼とのポケモンバトルの後でも」

    穏やかにヨアケをなだめるアキラ君。これは俺の勘だが、アキラ君はヨアケには優しいのではないだろうか。ヨアケとアキラ君、そして一応ヤミナベは古くからの友人らしい。だからこそ気を許しあっているのかもしれない。その距離感が少しだけ羨ましくも思えた。
    兎にも角にもようやく話が俺の方に戻ってきた。俺は話をそらした彼に文句を言う。

    「俺の事をついでみたいに言うなよ、アキラ君」
    「ついで以外の何ものでもないだろう。そしてなんで、僕は君にアキラ君と呼ばれなければいけないのかい?」
    「ばっさり言うな。知り合いにアキラさんって女性がいて、彼女が今この研究所にいるからだ」
    「ややこしいな」
    「ややこしいだろ。だから君付けで我慢してくれアキラ君?」
    「君にそう呼ばれると少しむかつくんだけど」
    「おっ? ビー君もアキラ君も打ち解けて来たみたいだねぇ」

    言い合いを茶化すヨアケに、俺たちはため息と共に首を横に振った。


    **************************


    休憩から戻ってきたレイン所長に、俺はポケモンバトルをしたいから研究所のバトルフィールドを借りたいと頼んだ。するとレインは「ぜひ使ってください。私もお二人の勝負には興味あります」と、快く貸してくれる。彼らに案内され俺とヨアケは訓練用のバトルフィールドへ移動した。
    フィールドは屋内にあった。それまでの研究所に使われている無機質な壁や床から浮くようにフィールドの部分は土作りにされていた。一階部分に客席などはなく、その代わりに二階部分に観戦できるモニタールームが配備されている。レインはモニタールームへ、アキラ君は審判を引き受けてフィールドのラインの傍にある審判台へと立つ。俺とヨアケはまずフィールドの中央へ向かう。

    「まずは、両者の手持ちポケモンの見せ合いを」

    アキラ君の指示で、俺とヨアケはまずそれぞれの手持ちを出していく。
    俺の側の手持ちはカイリキー、エネコロロ、アーマルド、オンバーン、そしてリオル。
    彼女の側の手持ちはデリバード、パラセクト、グレイシア、ドーブル、ラプラス、それからギャラドスだった。
    ヨアケのポケモン達を見て俺は一言突っ込みを入れる。

    「草タイプの使い手の師匠がいるのに、その弱点ばかり狙うチームだなおい」
    「ふふ、ソテツ師匠は確かに草タイプをよく使うけど、私が教わったのはなにも草タイプの使い方ばかりじゃないよっ」

    ヨアケは意味ありげににやりと笑う。俺はソテツのバトルスタイルをまだちゃんと見てはいないので、彼女がどういった戦い方をするのかは読めなかった。
    一旦手持ちをボールに戻し、それから二人はフィールドの端に立つ。

    「ルールは3対3のシングルバトル。交代はありで手持ちが全員戦闘不能になった方の負けとする! それでは両者、一体目のポケモンを!」

    アキラ君の指示に従い、互いにボールを手に取り、勢いよく振り放つ。

    「頼む、エネコロロ!」
    「お願い、リバくん!」

    それぞれのポケモンがボールの中から姿を現す。
    俺が一番手に選んだのは“おすましポケモン”ことエネコロロ。紫色の耳をピンと立たせ、クリーム色の細い四肢で地に立ち、澄ました顔をしている。
    ヨアケ側の初手はリバというニックネームの“はこびやポケモン”デリバード。白い袋を担いだ赤い鳥ポケモンだ。運び屋というシンパシーは置いておく。俺が彼女と初めて出会った時に連れていたポケモンである。
    辺りに緊迫した空気が漂う。彼女はそれを察したのか真剣な眼差しのまま口元に笑みを作る。それにつられて俺もにやりと口元を歪めてしまった。

    「色々言ったけれど、私はビー君とのバトルを楽しみたいと思っているよ」
    「楽しむのもいいけど、油断すんなよ」
    「わかっているよ」

    彼女なりのアイスブレイクなのだろうけど、少々なめられているようにも感じた。
    その余裕の態度、改めさせてやる。そう思うと、何故だか俺は気持ちが昂っていた。
    彼の合図で試合が始まる。俺とヨアケの戦いが、始まる。

    「――――それでは、始め!」


    **************************


    「先手はもらうよ! リバくん『こおりのつぶて』!」

    開始早々、ヨアケのデリバードの周囲に冷気が集まり始める。氷の礫による先制攻撃を狙うデリバード。もちろん俺もエネコロロもその攻撃を黙ってくらうつもりはない。

    「させるか! エネコロロ『ねこだまし』!」

    弾けるバネのようにしなやかに直進し、デリバードの動作よりも素早いスピードで間合いをつめるエネコロロ。乾いた音がエネコロロの手から鳴り、デリバードを怯ませ『こおりのつぶて』を中断させる。

    「その冷気、使わせてもらうぜ! 『こごえるかぜ』!」

    デリバードの生み出していた冷気を、エネコロロは凍てつく風撃として利用する。『こごえるかぜ』によりデリバードの動きが少しだけ鈍る。

    「エネコロロ、追撃で『ひみつのちから』だ!」
    「飛んで!」

    エネコロロは地形を利用する『ひみつのちから』でフィールドの土を変形させる。地面から麻痺効果のもつ土の槍がデリバードに向け突き上げるが、デリバードのいる空中まではぎりぎり届かなった。

    「リバくん、ジグザグに『れいとうビーム』!」
    「『ひみつのちから』で防げ!」

    上空からデリバードの『れいとうビーム』がジグザクにフィールドを横切りながらエネコロロへ迫る。
    エネコロロは『ひみつのちから』で土の壁を作り防ぐものの、フィールドはほぼ氷漬けに。
    このままでは壁の外に出た瞬間氷の床に足を取られてしまう。しかし、『ひみつのちから』で防ぐにも限度がある。
    今のエネコロロの打てる手で、飛行しているデリバードをどうするか。考えた末にある技を試させてみる。

    「『うたう』で眠らせるぞ、エネコロロ」

    デリバードの特性が『やるき』か『ふみん』の場合、デリバードは眠らないのは知っていた。だが特性が『はりきり』だったのなら、エネコロロの『うたう』の歌で眠らせることが出来る。効くかどうか微妙だが、やるしかない……!
    エネコロロの歌が、上空のデリバードの耳に届く。
    デリバードが眠気でふらつくのが、見えた!

    「よしっ!」
    「当たりだよビー君。だけど、通させない! リバくん速達で『プレゼント』!」

    デリバードは眠りに落ちる前に、担いでいた白い袋から光り輝くプレゼンドボックスを大量にばらまく。
    直後、轟音が周囲に鳴り響いた。その爆裂音は宙に放り出されたプレゼントボックスが一斉に起爆した音だった。あんにゃろう『プレゼント』の箱をすぐに爆発させるように速達なんて指示を……!
    エネコロロの『うたう』も、デリバードの眠気も爆音で一気に吹き飛ばされてしまう。
    もうもうとした煙が晴れ始めたころ、ヨアケとデリバードが畳みかけてきた。

    「続けて『プレゼント』」

    『プレゼント』による爆撃で、エネコロロが壁の後ろから引きずり出される。エネコロロはなんとか氷上で立つことはできても、それで精一杯だった。

    「いくよリバくん『そらをとぶ』!」

    デリバードが少しだけ上昇し、一気にこちらに向けて急降下し突撃してくる。
    このままではエネコロロはデリバードの攻撃をまともにくらってしまう。ヨアケはエネコロロの特性を、接触した相手を魅了する『メロメロボディ』である可能性を考慮していない。ということは、恐らくこの一撃で決めにかかっているのだろう。
    命中が下がる代わりに物理の威力を上げるデリバードの特性『はりきり』がこの動きにくい
    氷のフィールドと相乗効果を生み出していやがる。
    だが、フィールドを利用するのならば、エネコロロの十八番でもある……!

    「『ひみつのちから』で真上へジャンプ!」
    「えっ」

    『ひみつのちから』でエネコロロの真下の土と岩が、氷を突き破ってエネコロロの足場になる。そのままエネコロロは真上に飛び跳ねデリバードの攻撃を回避する。飛び出した岩の上に着地し、今度はエネコロロがデリバードの上をとる。着氷したデリバードは、最初に当てた『こごえるかぜ』が堪えているのか、やや動きが鈍い。
    その隙を逃すまいとエネコロロに指示を出す。

    「エネコロロ、フルパワーで『ひみつのちから』!」
    「阻止してリバくんっ! 『こおりのつぶて』!」

    技の撃ち合いはデリバードの方が早かった。放たれた『こおりのつぶて』がエネコロロにダメージを与える――――だが、エネコロロはその場に踏みとどまる。

    「今だ!!」

    溜めの時間を終えたエネコロロが、か細い体の腹の底から力強く荒げた鳴き声を上げる。その声に地面が呼応し無数の大地の槍がフィールドの氷を砕く。その強烈な攻撃がデリバードに命中する。
    フィールドの端まで吹き飛んだデリバードは、仰向けに地面に打ち付けられ、目を回していた。

    「デリバード、戦闘不能!」

    アキラ君のジャッジにより、ヨアケのデリバードが戦闘継続不可能とみなされる。まずは一勝することができた。
    ヨアケがデリバードをボールに戻し、小さい声で「ありがとう、リバくん」と労いの言葉をかける。それから俺の方にも話しかけてくる。

    「まさか、氷の足場を突き破ってくるとは思わなかったよ、ビー君」
    「まあ、コイツなら、エネコロロならできると思ってな」
    「そっか……次は、勝たせてもらうよ」

    彼女は冷静に宣言をした後、次のポケモンを出した。


    *************************


    モニタールームにて観戦をしていたレインのもとに、髪の毛に寝ぐせを立てた来客が、フライゴンを連れて来ていた。

    「あー、レインだー」
    「おや、アキラさんではありませんか、調べものは済みましたか?」
    「おかげさまでー。んー、アサヒとビドー、バトルしてるの?」
    「ええ、なんでもビドーさんがアサヒさんの相棒になれるか見定める為に戦うとか言っていましたね」
    「ビドー思いきったなー。形式は?」
    「3対3のシングルバトルですね。先程初戦がビドーさんの勝利で終わったところです」
    「おおー」

    アキラさんと彼女の手持ちのフライゴンがフィールドをのぞき込む。すると、彼女たちはほぼ同時に目を細めた。

    「ああー、これはー……」
    「アキラさんも感じ取りましたか」
    「まー、んんー、これはー……」
    「まあ、ですよね」

    レインは目下の彼らを見据えて、もどかしさを抑えきれずにいた。

    「ビドーさん、早く気づいてあげてください……」


    *************************


    ヨアケの二体目は、大きな赤いキノコを背負った虫ポケモン、パラセクト。
    セツというニックネームのパラセクトは、先日『キノコのほうし』による薬を調合するといった離れ業を見せたポケモンだった。
    パラセクトの『キノコのほうし』は厄介だ。なるべく近づかれたくねーな……。

    「セツちゃん、頼んだよーっ!」
    「このままいくぞ、エネコロロ」

    エネコロロに連戦させることを決め、次の戦いが始まる。
    さっきのエネコロロの『ひみつのちから』によりフィールドはところどころに岩の槍が突き出ている。障害物で動きにくさはあるが、それはパラセクトも同じはずだ。

    「エネコロロ、近づかれる前に仕掛けるぞ! 『こごえるかぜ』!」
    「『あなをほる』で隠れるよセツちゃん!」

    地面に潜り、凍てつく風をかわすパラセクト。まずい、このフィールドだとエネコロロは地中からの攻撃を避けにくい。

    「ジャンプで岩の上に飛び乗れ!」

    正面にあった岩の上に登るエネコロロ。俺はエネコロロに相手の出方を待つように指示する。しかし、なかなかパラセクトは姿を見せない。その代わりにヨアケが何かを小さく呟いている。

    「……方向はそのまま……まだ……まだ……まだ……」

    いくらなんでも遅すぎる。警戒するようにエネコロロに言おうとしたその時。
    エネコロロが硬直して岩上から動けなくなる。その隙を彼女らは見逃さない。

    「今! 『タネばくだん』!!」

    『あなをほる』で潜ったはずの穴から姿を現したパラセクト。パラセクトは地中から近づいて行う奇襲をせずに、最初の場所で潜伏していたのか?!
    驚いている暇はない、エネコロロに向かって『タネばくだん』は勢いよく発射されている。俺は祈るようにエネコロロに指示を出す。

    「かわせっ」
    「無理だよ」

    彼女の宣告通り、エネコロロは攻撃をまともにくらってしまい、そのまま岩の上から落下してしまう。
    地面に叩きつけられたエネコロロは、戦闘不能のジャッジを下された。

    「エネコロロ戦闘不能!」


    *************************


    俺の中で疑問が渦巻く。今の攻撃、消耗していたとはいえ、エネコロロなら避けられたはずだ。パラセクトに何かされたのか? それなら何をされたんだ?
    考え込む俺に、ヨアケが指摘する。

    「ビー君、今の勝負は自分のポケモンのコンディションをチェックできてないのが、敗因だね」

    そう言われ、倒されたエネコロロ見て、ようやく俺は気付いた。それから一気に情けなさが渦巻く。
    エネコロロは、エネコロロは――――麻痺していたのだ。
    いつから体が痺れていたか、なんて、言うまでもない。パラセクトと戦う前から、あそこしかない。

    「自分の足場に『ひみつのちから』を使った時か……!」
    「『ひみつのちから』の技の効果、使われたフィールドごとに状態異常などを付与するのが、エネコロロ自身にきちゃったんだね。あの時は氷のフィールドっぽい感じもしたけど、基本が土のフィールドだった。だから体が麻痺して痺れていたのかも」
    「お前らが潜伏して待っていたのは、エネコロロが痺れて動けなくなる瞬間だったのか」
    「そう」

    エネコロロをボールに戻した。ボールの中でエネコロロが意識を取り戻す。弱弱しくこちらを見上げてくるエネコロロに「ごめんな。ありがとう」と言うと、エネコロロは一瞬目を見開いた。それから笑いまじりに怒っていた。本当にすまん。
    エネコロロのボールをしまうと、ヨアケが顎に右手を当てていた。

    「ビー君のバトルは、相手を観察している割合が多いのかもね」

    ずばっと言われ少々落ち込む。でも事実でもあるので、言い返せない。
    次のポケモンをどうするべきか悩んでいたら、声をかけられる。

    「ビドー、次のポケモンを」

    アキラ君に催促され、気持ちを切り替えるためにも、次のポケモンを出す。


    *************************


    俺の次のポケモンは、鍛え上げられた筋肉と、四本の腕が特徴のポケモン、カイリキー。

    「頼むぞカイリキー」
    「続けてお願いね、セツちゃん」

    カイリキー対パラセクト。お互い二体目のポケモン。数の上では引き分けているからこそ、ここは勝利しておきたいところだ。

    「いくよセツちゃん『あなをほる』!」
    「カイリキー! 『がんせきふうじ』で穴を塞げ!」

    入り口に使った穴を岩石で塞ぐ。もう、先程のフェイントは使わせねー……!

    「カイリキー今のうちだ! 『ビルドアップ』!」

    カイリキーがポーズを決め、その筋肉を震わせていく。これでまず攻撃力と防御力を上げる。

    「距離を取ってセツちゃん! 連続で『タネばくだん』!」
    「『パレットパンチ』で柱岩を撃ち出し応戦だ!」

    岩石の向こう、フィールド端に姿を現したパラセクトは、タネばくだんを続けざまにばらまいてくる。それに対してカイリキーにフィールドの柱をバレットパンチで砕き、パラセクトへ飛ばすことで弾幕と遠距離攻撃を狙う。反時計回りに回りながら、ほぼほぼ柱を壊し終え、パラセクトが疲れ始めたあたりで、俺はカイリキーに仕掛けさせる。

    「一発食らわせてやれ! 岩石に向かって『バレットパンチ』!!」

    それまでカイリキーとパラセクトの間にあった『がんせきふうじ』の岩を、岩石の弾丸としてパラセクトにぶつけようとする。これは『タネばくだん』では防げないはずだ、どうする?

    「セツちゃん踏ん張って! 『いとをはく』で岩を掴んで、右にステップ!」
    「そうくるのかよっ……!」

    ヨアケの対応は早かった。パラセクトは『いとをはく』の糸で弾丸をキャッチし、それから大きく右に避けることでその隣を岩石が通過。パラセクトは踏ん張りをきかせて岩石を繋ぎとめ、遠心力を用いて岩石のハンマーをカイリキーに叩きつけてきた!

    「当ったれえええ!」
    「くそっ、防げ!」

    咄嗟にカイリキーにガードさせるものの、ダメージはそれなりにある。
    ヨアケは畳みかけるようにパラセクトに追い打ちを指示した。

    「もうちょっとだけ頑張ってセツちゃん! 『タネばくだん』!」

    放物線を描く『タネばくだん』が手負いのカイリキーに迫る。お互い満身創痍になってきたが、まだ対処できると信じるぜ……!

    「カイリキー! 後ろへ飛んで『バレットパンチ』!」

    指示通りカイリキーがバックステップを取ってくれる。目の前に落ちてきた『タネばくだん』に拳の弾丸を放ち、パラセクトに爆弾を跳ね返してダメージを与える。

    「セツちゃん!」
    「よくやったカイリキー!」
    「やるね……『タネばくだん』の対処をされて、いつまでも距離を取っているわけにはいかない、か。いいよ、近接戦勝負! セツちゃん『あなをほる』!」

    パラセクトが三度地中に潜る。ヨアケの言葉はハッタリかもしれない。
    だがあえて乗らせてもらうぞ、その勝負!

    「カイリキー、いつでも攻撃できるように準備だ」

    暫しの時が立った後。とうとうパラセクトがカイリキーの真下から現れた。
    爪の一撃をカイリキーに食らわせるパラセクト。だが、カイリキーは堪え切った。
    今が反撃の好機だ。いけ、カイリキー、

    「『インファイト』!!」

    カイリキーの四本の腕を使った怒涛のラッシュがパラセクトを襲う。
    パラセクトは背負ったキノコから胞子を放ちつつ、倒れる。
    間近で胞子を吸ったカイリキーは、毒を浴びていた。それは、ただでは終わらせないというパラセクトの執念だったのかもしれない。


    *********************


    「パラセクト、戦闘不能!」

    そう僕はジャッジを下す。すると、視界の上端に何か動くものが見えた。それは、モニタールームの方向、ガラスに張り付いて食いつくようにバトルに見入っている女性とフライゴンだった。見慣れない女性だが、あれが僕と同じ名前のアキラさんだろうか。レイン所長もそのふたりから少し離れた位置でアサヒ達を観察していた。
    現状の二人の残りの手持ちは、ビドーが二体、アサヒが一体。数の上ではアサヒが不利だけど、パラセクトのセツの胞子が僅かながらでもカイリキーのダメージにはなるはずだ。
    そう、まだ勝負はこれから。

    戦闘不能になったパラセクトをボールにしまったアサヒは、ふと天井を見上げた。
    その様子にビドーは不思議に思ったのだろう。彼は彼女に「どうしたんだ」と声をかける。
    ビドーの呼びかけにアサヒは反応し、その顔を彼へと向ける。それから彼女は、

    「ふふ」

    笑みを、こぼした。
    アサヒは笑っていた。
    目じりを下げた愛想笑いではなく、
    意外と負けず嫌いなところがある、子供の頃の面影を残した笑顔。
    それは久しく僕が見ていなかった表情だった。

    「ヨ、ヨアケ?」
    「ふふふゴメン、なんだか楽しくなってきちゃって。ビー君結構やるね!」
    「お、おう」

    ビドーのうろたえる声に、吹き出すアサヒ。彼女はひとしきり笑った後、目元を拭い最後のボールを構えた。
    その腕を突き出した構えは、野球でホームランを宣言するバッターのようにも見えた。

    「いくよビー君。最後まで気を抜かないでね?」

    そして彼女は笑顔のまま、思い切りボールを振りかぶる。
    ……僕は審判としてここに立っているわけだけど。今の彼女とだったら、また昔のようにポケモンバトルをしたいと思った。
    だけど、今の僕のままでは彼女をあんな風に笑わせることはできないかもしれない。
    それも相まって、今彼女の相手をしているアイツが少しうらやましくもあった。
    そんなことを思いつつ、僕はバトルの行く末を見守ることに意識を戻した。


    *************************


    ヨアケの最後の手持ち……ボールの中の光と共に唸り声を上げて現れたのは、とても凶悪な面をしたポケモン、ギャラドスだった。
    ギャラドスの痺れるほどの威嚇の咆哮が、俺とカイリキーを怯ませる。
    カイリキーの握る拳に力が入らなくなるのを俺は見た。ギャラドスの特性『いかく』による攻撃力の低下と、蓄積したダメージによるものだろう。

    「踏ん張れ、カイリキー……!」

    そうビビりながらも絞り出したかすれ声で励ます。カイリキーはこちらを見ず、その代わり左上腕の拳の親指を立てた。

    「! 任せたぜカイリキー!」
    「ドッスー全力でいくよ!!」

    ヨアケが大きく息を吐く。
    それから彼女は紋様の入った宝玉が装飾された、胸元のボタンを握りしめた。

    「私の声に応えなさい、キーストーン!!」

    彼女の呼びかけに反応し宝玉、キーストーンが光る。
    それに呼応するように、ギャラドスの首輪についた宝玉、メガストーンが輝く。
    ギャラドスとヨアケの間に光の帯が無数に揺らめきながら繋がっていく。
    激流でつくられた繭がギャラドスを隠した。


    「今! 結ばれし絆が、進化の門を登る――――飛翔しろ! メガシンカ!!」


    高らかに言い切った口上に合わせ、飛沫を上げて繭が破裂する。
    その中から現れたのは一回り太くなった胴体と刺々しいヒレ、そして更に凶悪になった面構えを持つポケモン――――劇的な進化、メガシンカを終えたギャラドス、否メガギャラドスだった。

    カイリキーが冷や汗を垂らしているのが見なくても感じ取れた。
    先程までとは別人のような気迫を纏った彼女達は、呼吸を整える暇さえ与えてくれはしない。

    「ドッスー! まずは邪魔な障害物を『じしん』で蹴散らして!!」
    「来るぞカイリキー! 今は堪えてくれ!」

    荒れ狂う地鳴りを上げて、研究所全体の地面をメガギャラドスの放つ衝撃が揺さぶる。
    地面が裂け、柱岩も岩石もひび割れたフィールドに呑み込まれていく。
    間一髪裂けた大地に落ちこそはしなかったが、衝撃波によるカイリキーのダメージは相当なものだった。
    毒とさっきの戦闘ダメージも相まって、体力的にもってあと一発という所か。攻撃力は下げられているが、今のメガギャラドスは水と悪タイプになってカイリキーの格闘タイプの技は効果抜群だ。一矢、報いさせてやる!

    「一発だけでも喰らわす、カイリキー!! 『バレットパンチ』!!」
    「当てさせない……ドッスー『こおりのキバ』で拳に噛みついて!!」

    カイリキーの弾丸のような拳を、すんでのところでメガギャラドスに噛みつかれ受け止められてしまう。それだけではとどまらずカイリキーの腕からどんどん凍り付いていく!

    「くそっ!『インファイト』だ……!」

    残りの三本の腕を動かそうとするも、カイリキーは動かせなかった。体力の、限界だった。
    そしてカイリキーは地に足を付き、そのまま倒れこんだ。


    *************************


    「カイリキー戦闘不能!」
    「カイリキー……!」

    宣告されるまでもなく、戦闘不能になっているのは明らかだった。俺は思わずカイリキーのもとに駆け寄った。裂けた地面に足を取られつつも辿り着くと、カイリキーは意識を取り戻していた。それから情けなさそうな表情を浮かべるカイリキーを見て、俺はカイリキーを否定した。

    「カイリキー、そんな顔するな。お前はよく戦ってくれた。ありがとう……!」

    カイリキーは一本の手で、項垂れる俺の頭を軽く叩いた。全く、これじゃあどっちが励ましているのかわかんねーよ。
    ボールの中にカイリキーを入れ、フィールドの端へと戻る。
    正真正銘正念場、お互いの残りは一体ずつ。次の勝負で決着はつく。
    俺は既に最後のポケモンを決めていた。コイツだけは、初めから出すことを決めていたポケモンでもあった。
    投げたボールが開閉し、そのポケモンが姿を現す。
    俺はありったけの気合を込めてそいつの名を叫ぶ。

    「待たせたなリオル!!」

    俺の最後の手持ち、リオルは小さい体から気迫に満ちた声を上げる。
    その声のおかげで緊張が適度なものへと変わっていく。
    気持ちの昂りを感じながら、俺とリオルはヨアケとメガギャラドスとの最終戦に挑む。

    「行くぜヨアケ!」
    「来なさい、ビー君!」

    そう言い合った両者の口元は獰猛に歪んでいた。
    そんな穏やかじゃない笑みに包まれながら、最後の戦いの火ぶたは切って落とされた。


    *************************


    「先手必勝だリオル、そのでかい図体に『きあいだま』を当ててやれ!」

    リオルは両手をかざし、その手の間に『きあいだま』のエネルギーを溜める。
    するとメガギャラドスは体を屈め、構えをとった。

    「大きいからって動きが遅いと思うのは早計だよ! ドッスー全速前進!」

    メガギャラドスの体の脇についている多数の噴射口すべてから水が噴出。
    とてつもない速さでリオルへ突撃をかましてきた!

    「! リオル放て!」
    「噛み砕け!」

    急いでリオルに『きあいだま』を放たせるが、メガギャラドスはそれをキバで粉砕。だがその衝撃で一瞬の隙が生まれたところで、リオルは転がって相手の突撃を回避。間一髪で避けることに成功する。
    体当たりに失敗したギャラドスは砂ぼこりを上げながらも、尻尾を反転させ再び噴射口から水を発射し、ブレーキをかける。

    「次はどうかわすのかな! ドッスー続けて『じしん』!」
    「リオル! 『はっけい』を真下に放って猛ジャンプ!」

    より激しい衝撃波がフィールドに、リオルに襲いかかる。リオルは波導の力を下に放ち、空中へ離脱して『じしん』をかわす。
    なんとか避けられたが、攻撃するチャンスが、なかなか来ない……!
    一旦立て直したい。そう願うも、彼女たちはその時間さえ与えてくれはしなかった。

    「ドッスー『たきのぼり』!!」

    落下するリオルに向かい、激流をその身に纏い上昇するメガギャラドス。とうとう回避し続けていた攻撃も、命中してしまう。

    「リオル!!」

    今のは強烈過ぎるダメージだ。吹き飛ばされ、今度こそ落下するリオル。だけどリオルは手を使い、地面との激突を防ぎ綺麗に着地してくれる。きついはずなのに、よくやってくれた。

    「『でんこうせっか』で懐に飛び込めリオル!!」

    落下した直後ならチャンスが生まれるはず。そこを狙って逆転の可能性を賭けた一撃を叩きこめ!

    「そんだけ重けりゃ痛手になるだろ! いけリオル! そのまま『けたぐり』!!」
    「読めてたよ――――ドッスー『たきのぼり』からの『りゅうのまい』!」

    無慈悲にも、着地する前にメガギャラドスは『たきのぼり』をして水流と共に空中へ上昇。上空を泳ぐように『りゅうのまい』を舞うメガギャラドス。まずい、メガギャラドスのパワーとスピードが上がってしまい、このままでは手の付けられないことになる。
    メガギャラドスがこちらへ向けて落下してくる。
    次に来る攻撃、それを避けても『じしん』が飛んでくるだろう。
    仮に、その『じしん』を『はっけい』ジャンプしてかわしても『たきのぼり』の追撃が逃れられない。
    何より長期戦はリオルの体力的にも絶望的だ。
    つまりはこの攻防で活路を見出すしかない。
    僅かな時の中で考え抜いた可能性に賭けて、俺はリオルに指示を出す。

    「小さくてもいい、速攻で『きあいだま』!」
    「くっ、もう一回噛み砕いて!」

    リオルの放った一回り小さい『きあいだま』を、メガキャラドスは再び噛み砕いた。
    よし、けん制の『きあいだま』でもくらえば痛いはず。だから噛み砕いてくれると思っていたぞ。その状態だと牙の攻撃は出せないはず。
    そしてリオルの放った『きあいだま』は小さめのもの。威力が少ない分、技の早さも短い。
    つまり、次の技につなげやすいということ。
    恐らくこれが最後の攻防になるだろう。
    一歩先んじて、迎え撃たせてもらう!

    「リオル『はっけい』!!」
    「ドッスー『じしん』!!」

    勢いよく攻撃が正面衝突し、瞬時のせり合いの後、お互いその攻撃の反動で大きく吹き飛ばされる。
    地面に転がるリオルとメガギャラドス。
    激闘の後、先に起き上がったのは――――メガギャラドスだった。
    リオルも立ち上がろうと体に力を入れる。しかし、起き上がることは叶わなかった。
    それを見届けた後、アキラ君は審判を下す。
    勝利を勝ち取った者の名前を、彼は言った。

    「リオル戦闘不能! よって勝者、ヨアケ・アサヒ!」


    *********************


    光に包まれ、ドッスーはメガギャラドスの姿からいつもの姿に戻る。

    「ドッスーお疲れ様、ありがとうね」

    お礼を言いながら頭をなでてやる。それなりに疲労しているのがドッスーの鳴き声から伝わってくる。結構間一髪だったもんね。本当にお疲れ様。

    「リオルっ」

    一方リオルのもとに走るビー君。リオルは天井を見上げ、悔しそうに顔を両手で塞いでいた。
    ビー君は始めの内はリオルに戸惑っていたけど、彼なりに、リオルを励ます言葉を紡ぐ。

    「リオル……ありがとな。負けちまったのは悔しいし残念だ。けど、お前と一緒にヨアケ達とバトルできて、その……楽しかった。だからあんまり気にするな、お疲れ様」

    悔しさからなのか、ビー君の言葉が与えた影響かは分からないけど、リオルは泣いてしまう。
    うろたえるビー君。困った表情で私の方を見ている。
    こういうのに、慣れていないのがひしひしと感じられる。
    仕方ない、助け舟を出してあげるとしますか。

    「リオル! ビー君!」
    「ヨアケ……」
    「まずは楽しいバトルをありがとう! こっちだけメガシンカ使っちゃってごめんね」
    「いや、それは気にすんな。むしろ全力で来てくれて嬉しかった」
    「それならよかった……で、後付けで悪いんだけど、勝ったご褒美に一つだけ、お願いしたいことがあるんだけど、いい?」
    「まあ、今回のバトルは俺の一方的な頼みだけ言っていたしいいぞ。なんだ?」

    リオルを抱き上げ、なだめるビー君。そんな彼らだからこそ、頼みたいことがあった。
    私は、ヨアケ・アサヒはビドー君にお願いする。

    「ビー君。私と一緒にユウヅキを探して、捕まえるのに協力してほしい」
    「え……?」
    「送り届けてほしいってのもあるよもちろん。でも、一緒にとっちめてほしいんだ。あのお馬鹿さんを。ダメかな?」
    「いや願ったりかなったりだけどよ……いいのか俺で? 俺達で?」
    「むしろキミたちがいいって私は言っているんだよ?」

    リオルとビー君は二人して目を丸くする。それからビー君がリオルを宙へ放り投げた。

    「よっしゃあ!! やったぞリオル!!」

    落ちて来た苦笑いのリオルをキャッチし、しばらく高い高いしてはしゃぐビー君。ほほえましいなあ。
    そんなことを思っていたら、後ろから左肩に手を置かれる。
    その手の持ち主はアキラ君だった。

    「アキラ君」
    「君、最初からなるつもりだったろ、相棒」
    「バレてた?」
    「君は基本的に嘘をつけないのは知ってる。黙っていることはできてもね」
    「あははっ、参ったなー」

    そう笑いながらぼやくと、アキラ君は少し驚いた顔を見せる。

    「どうしたの、アキラ君?」
    「いや、君の笑っているところ、久々に見たなって」
    「そう?」
    「なんだ、昔みたいに笑えるじゃないか」
    「ビー君のおかげ、なのかな」
    「今はそういうことにしておいてやるさ」
    「妬いてる?」
    「まあね」

    予想外に素直な返事に、嬉しさを隠しつつ、私はアキラ君に伝えきれてなかったことを言う。

    「アキラ君、例えどんなに時間がかかっても、例えどんなに挫けそうになっても……私、諦めないから。だから、見ていてね」
    「仕方ないな。見届けるよ」

    そう応援してくれた彼の表情も、しばらくぶりに見る穏やかなものだった。

    「おーいビドー、アサヒー……ってどうしたのビドー? 凄い嬉しそうー」

    対戦場に入ってくるアキラさんとフライゴンのリュウガ君。はしゃぐビー君達に驚いている彼女達にも声をかける。

    「アキラさん! ……いやアキラちゃん! にリュウガ君!」
    「お? なあにアサヒー?」
    「アキラちゃん。あのね、貴方のことをアキラちゃんって呼んでもいいかな?」
    「いいよー」
    「ありがとー!!」

    思わずアキラちゃんにハグしてしまう。アキラ君に「テンション高いね」と言われたけど気にしない。
    ただし、レイン所長が陰からこちらを微笑みながら見ていたのに気が付いたときは、咳払いをしてハグを解いた。

    「おや続けてくださってよかったのに」
    「いや、そんな風に笑顔で見守られると冷静になりますというか……」
    「そうですか? ともかく、バトルお疲れ様です。なかなか面白かったですよ」
    「ありがとうございます。あの、レインさん。お話ししたいことがあります」

    いい加減はしゃぎ終えてバテてるビー君の首根っこを掴み、立たせる。それから彼の頭に手を置き、レイン所長に私の決めた道を告げた。

    「レイン所長、私決めました。私が、私達がヤミナベ・ユウヅキを捕まえます。それが、私がユウヅキに会って、話して、したいことです。ね、ビー君?」
    「おう。やるからには国際警察より早く捕まえてやるぞヨアケ」
    「もちろん」

    意気込む私たちをレインさんはニコニコ笑いながら、受け入れてくれた。

    「わかりました。では、国際警察の方にはそう伝えておきますね。それと、そんなお二人に依頼です。捜索のついでで構わないので、赤い鎖のレプリカの材料となる隕石を探してはいただけませんか?」
    「もう一本作るのですか?」
    「ええ。本来赤い鎖は二つで一つ。当初の計画でも二本揃える予定でしたので。まあ、隕石を集めるリスクはありますが、ヤミナベ・ユウヅキ氏も隕石はぜひ二本目の鎖のために欲することでしょう。私から提示できる手がかりはこれだけですね」
    「いいえそんな、協力ありがとうございます……!」
    「いえいえ――――“破れた世界”の謎を解くことは、前所長のムラクモ・スバル氏の悲願でもありますからね。私達<スバルポケモン研究センター>の職員としても赤い鎖のレプリカが戻ってくることは、何よりも望むところです。だからこそお願いしますね、アサヒさん、ビドーさん」

    そしてレインさん達の想いも託され、私はビー君とユウヅキを捕まえる旅に出ることになった。

    この先どんなことが待っているかは分からない。
    でも、一人で捜していた頃の不安は薄らいでいた。
    たとえ考えは違うけど、同じ目的を持つ仲間がいる。
    それだけでもとても心強く、なにより嬉しかったんだ。


    こうして、私とビー君の短くて長い旅は始まりを迎える。


    *************************


    アキラさん。いや、アキラちゃんはまた【トバリ山】の方へと旅立っていった。しばらくはヒンメル地方にいるかもとのことらしい。今度であった時までには、あの珍しいきのみをおすそ分けできるほどに栽培しておくと言っていた。思えば、終始マイペースな人だった。また会えた時には俺も何かしらきのみを育てられていたら、ポロックを作れたらいいなと、小さな目標も立てておいた。
    それと、出立する折、ヨアケのいないところで俺は見送りに来ていたアキラ君にそれとなく忠告される。

    「ビドー。言っておくけど、僕がアサヒの隣に立つことを認めているのは、ユウヅキだけだから。そこのところ、ゆめゆめ忘れるなよ」
    「……わーってるよ」
    「そう、ならいいんだけど」
    「本当に心配なんだな。ヨアケのこと」
    「ああ。何だかんだ付き合い長い友達だから」
    「友達、か。どっちかっていうと親父みたいにも見えるぞ」
    「幸せになってほしいから、仕方がないね」
    「否定はしないのな」
    「うん。まあ、ビドー。アサヒが突っ走らないように繋ぎとめておいてほしい。僕から言えるのは、そんなところ」
    「……善処はする」

    戻ってきたヨアケに「おや? 男同士の約束でも交わした二人とも?」と茶化され、二人してため息をついた。

    「じゃあ、行ってくるねアキラ君」
    「またな」
    「二人とも気を付けて」
    「うんっ」
    「ああ」

    言葉を交わした後、二人を乗せたサイドカー付きバイクは走り出す。
    目指すは王都【ソウキュウシティ】だ。






                         つづく



    *********************


    私の中の、大切な記憶。


    憶えている限りで最後に見た彼の顔は、とても苦しそうな笑顔だった。
    今にも泣きそうな、でも私に心配をかけまいと、安心させようとしている、そんなやさしい笑顔。
    私はそんな彼の顔を仰向けに横たわって、ぼうっと見上げていた。
    私の右手を彼の少し大きい手のひらが包んでくれている。それがとても温かい。
    彼の手に力が入る。まるで、絶対に放さないようにしてくれている、力強さ。
    その様子に私は察してしまう。
    彼がその手を放してしまうことを。
    彼と離れ離れになってしまうことを。

    「どこかに行っちゃうんだね……ユウヅキ」

    目元から滴が、口からは言葉が一斉にこぼれる。
    彼の背後にある空は、薄明りが染め上げていって明るくなっていき、彼の顔の輪郭をはっきりとしたものにしていく。

    「すまない。だが必ず……必ずお前の元に帰ってくる。だから、待っていてくれアサヒ」

    どうしてそんな悲しそうに笑うの?
    そんな風に頼まれたら、断りにくいじゃない。
    決して納得なんか出来ないよ。一緒に居たいよ。離れたくないよ。
    なんて、駄々をこねたら困らせてしまうのは解っていた。
    だから、私は彼と約束をする。
    薄く輝く月を見上げながら、私は宣言した。

    「しょうがないなあ。でも、あんまり遅いと追いかけちゃうからね。お月さんみたいに地平線の向こうに姿を暗ましたって、ぜったい、ぜったいに見つけてやるんだから」
    「ああ、ああ……ありがとう、そして――――」

    そして、の先の言葉を私はいまだに思い出せないでいる。


    *********************


      [No.1598] #128435 「ポリゴンの島」 投稿者:   《URL》   投稿日:2017/02/20(Mon) 20:59:28     23clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    Subject ID:
    #128435

    Subject Name:
    ポリゴンの島

    Registration Date:
    2010-09-13

    Precaution Level:
    Level 2


    Handling Instructions:
    エリア#128435は、危険度は低いと判断されるものの明確な異常性のある携帯獣#128435が生息していること、不定期に消失したのち観測地点が変更されること、異常2点を鑑み、警戒レベルを「2」と設定します。エリア#128435には計2台のGPS発信器を常に配置し、出現が観測された際は速やかに上陸の上調査を行います。調査の結果新たな知見が得られた場合、速やかに案件担当者へ報告してください。

    エリア#128435での探索活動は、観測後から最長でも十六時間以内にすべて完了させることが義務付けられます。探索計画が達成できない見込みの場合、調査を中断して離脱することを優先します。十六時間以上の滞在は、探索者に予期せぬ事態を引き起こす可能性が示唆されています。エリア#128435からは飛行能力を持つ携帯獣に搭乗することで問題なく離脱することが可能であるため、探索に当たる局員はホウエン地方の定めるレベル6トレーナー免許の保持者のみで構成されます。

    携帯獣#128435は探索初期に6個体が捕獲されました。これまでのところ、当局の収容に対して協力的な姿勢を見せています。携帯獣#128435と同族の局員を通じ、携帯獣#128435の起源を探る試みを続けてください。これまでに得られた知見に付いては、案件別サーバのレベル2セキュリティクリアランス保持者が参照可能なフォルダに格納されています。


    Subject Details:
    案件#128435は、ホウエン地方の海域において不定期に出現と消失を繰り返す島(エリア#128435)と、エリア#128435で発見される軽度の異常性を持った携帯獣(携帯獣#128435)、及びそれらに掛かる一連の案件です。

    エリア#128435が発見されたのは、2010-09-07になります。ホウエン地方キナギタウン所属の局員が、ペリッパーの局員5名にに近隣を哨戒させていた際、1名がそれまで確認されていなかった島を発見したことを報告しました。局員は速やかに局員を編成して島へ上陸し、三時間程度の初期調査を実施しました。局員はエリア#128435が突如出現したことを鑑み、不明なタイミングで消失すると予測、探査に当たった他の局員とも議論し、GPS発信器を2台設置しました。この判断はエリア#128435の効果的な収容に貢献し、初期調査を担当した全局員に特別褒賞が与えられました。

    エリア#128435は、不定期なタイミングでホウエン地方の海域に出現し、その後最長でも24時間後には消失する小島です。出現と消失を繰り返すこと、後述する携帯獣#128435が生息していることを除けば、特異な性質は確認されていません。エリア#128435が初めて確認されたのは2010-09-07ですが、それ以前から存在していたことを示唆する複数の証跡が発見されています。

    エリア#128435における初期調査の過程で携帯獣の「ポリゴン」が3体捕獲され、当局の収容下に置かれました。捕獲されたポリゴンはキナギタウン第一支局の情報管理部門へ移され、情報化による完全な監査が行われました。その過程で複数の異常性が確認されたため、ポリゴン個体はそれぞれ携帯獣#128435-1から-3へ分類されました。

    携帯獣#128435は、エリア#128435に生息している野生のポリゴン個体です。ポリゴンはシルフカンパニー社が開発した人工の携帯獣であり、その製造はすべて同社が保有する研究開発施設において行われています。情報流出を防ぐため、すべてのポリゴン個体には固有の製造番号が付与されています。トレーナーがポリゴンの所有権を放棄した場合、ポリゴンは自動的にシルフカンパニーのサーバへ伝送される仕組みが組み込まれています。

    しかしながら、携帯獣#128435はこれに合致しません。ポリゴンの製造番号が記録されているべきデータエリアはすべて「0」で埋められており、製造番号の特定に失敗しました。また、所有者情報が存在しないにも関わらず、ポリゴン個体がシルフカンパニーのサーバへ伝送されることもありません。シルフカンパニーによるブラックボックステスト(局員が携帯獣#128435の素性を伏せた状態でチェックを依頼)では、携帯獣#128435について一部のロジックが変更されている可能性が示唆されましたが、シルフカンパニーが保有するコードベースとの比較結果は99%の一致との結果が示されました。

    ポリゴンは、メタモンと同一の区画へ収容された場合に、ポリゴンのタマゴが発見されるケースが確認されています。当初はこの事例に該当するとの見方が示されましたが、後に行われた検証により、タマゴから孵化したポリゴンについては親に相当するポリゴン個体と同様の製造番号と所有者情報が設定されることが分かりました。この動作はシルフカンパニーの予期していなかったものですが、現在流通している最新バージョンのポリゴンでも同じ事象が発生することが確認されています。

    携帯獣#128435の由来は不明です。エリア#128435内で自然発生したのか、何者かが意図的にエリア#128435へ携帯獣#128435を投棄したのか、或いはその他の理由により出現したのか、明確な原因は定かではありません。


    [2010-09-18 Update]
    2010-09-15時点で、エリア#128435において携帯獣の「ブニャット」の生息が確認されました。エリア#128435における携帯獣#128435以外に生息が確認された初の携帯獣となります。捕獲された個体は既知の異常性の無いブニャットと有意な差異が確認されなかったため、エリア#128435に生息するブニャットに付いては本案件の管理対象外とする方針が検討されています。しかしながら、16人の局員を動員したエリア#128435全域の徹底的な探索にも関わらず、ブニャットの進化前の形態である「ニャルマー」個体を発見することはできませんでした。この件に関する評価は現在保留されています。


    Supplementary Items:
    本案件に付帯するアイテムはありません。


      [No.1597] #113064 「クリムゾン・ガーデン」 投稿者:   《URL》   投稿日:2017/02/13(Mon) 19:53:39     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    Subject ID:
    #113064

    Subject Name:
    クリムゾン・ガーデン

    Registration Date:
    2005-10-30

    Precaution Level:
    Level 3


    Handling Instructions:
    エリア#113064の周囲1kmは立ち入り禁止区域として封鎖し、人間及び携帯獣が進入できないよう常時警戒を維持します。エリア#113064への進入を試みた人間は例外なく拘束し、進入した理由についてヒアリングした後、必要に応じてプロトコルUXによる記憶処理を実施の上解放してください。

    エリア#113064内に出現したオブジェクト(オブジェクト#113064)及び携帯獣に近似した生体(生体#113064)については、都度回収すべきかを判断の上、必要に応じて回収を行ってください。回収したオブジェクト#113064並びに生体#113064はエリア#113064から少なくとも20km以上離れた支局にて保管し、異常特性の有無について確認します。異常特性が確認された場合、エリア#113064における事象と関連性があるかを確認してください。

    エリア#113064の起源を探る試みを続けてください。エリア#113064はかつて異常特性を保持していないことが確認された時期があり、ある特定のタイミングで現在の状態へ遷移したものと考えられています。エリア#113064が異常特性を発現させた時期及びその原因について調査し、レポートへ取りまとめてください。


    Subject Details:
    案件#113064は、さまざまな異常現象(事象#113064)が頻繁に発生する廃棄された公園(エリア#113064)、エリア#113064で確認されるオブジェクト(オブジェクト#113064)並びに各種の携帯獣に近似した生体(生体#113064)、及びそれらに掛かる一連の案件です。

    エリア#113064はカロス地方ハクダンシティ南部にある公園で、都市計画の一環として1990年代後半に閉鎖された経緯があります。ハクダンシティの行政担当者に対するヒアリングから、閉鎖された時点ではエリア#113064には何ら異常な点は見られなかったことが明らかになっています。一方現在エリア#113064にて発生する各種の事象#113064については、当局の調査で少なくとも2002年頃から市民の間で目撃されていたことが分かりました。

    エリア#113064にはかつて公園として利用されていた際に設置された遊具及び公共施設(休憩所及びトイレ)が残置されており、それらは公園が閉鎖された年代から見て一致するレベルで風化/老朽化の兆候を見せています。すべての遊具及び公共施設には、携帯獣の「フシギダネ」「モンジャラ」「マダツボミ」系統の身体器官と近似した構造を持つ蔓状の生体が絡み付いています。当局による複数回の除去にも関わらず、除去されて十二時間以内に蔓状の生体は完全に再生します。生体は切断すると人間の血液に類似した赤色の液体を流出させますが、成分分析の結果は著しく異なっていました。

    事象#113064は、エリア#113064で発生する特異な事象です。事象#113064の発生は完全に不定期で、確認された限り37分から46日の様々な間隔を空けて発生しています。事象#113064には特異なオブジェクトであるオブジェクト#113064、外見上携帯獣に酷似した生体である生体#113064の出現と消失が伴うケースが存在します。

    オブジェクト#113064及び生体#113064については、いずれか一方が出現するケース、両方が出現するケース、いずれも出現が確認できなかったケースのすべてが確認されています。また、出現後に一切の痕跡を残さずすべて消失するケース、一部を残して消失するケース、すべてのオブジェクト#113064及び生体#113064が残置されるケースのいずれもが確認済です。これらの出現物の由来は不明です。

    以下はこれまでに当局が確認した、エリア#113064における事象#113064の記録の抜粋です:


    [事象#113064-1]
    確認日時: 2005-10-20 23:09
    事象詳細: エリア#113064に進入した市民が撮影した動画で確認された事象#113064。当局が記録している中で最古の事象#113064。敷地内に赤色のバケッチャが64体(生体#113064-1-1から-1-64に分類)出現し、腹部から赤色の光を放っている。撮影時に市民は生体#113064-1について視認しておらず、撮影した動画を後日確認した際に映り込んでいたと証言。後に実施した当局による調査では、生体#113064-1については例外なく消失していたが、バケッチャ由来の南瓜の種子(オブジェクト#113064-1-1から-1-28に分類)が残されていた。オブジェクト#113064-1について異常性は確認されず。

    [事象#113064-2]
    確認日時: 2005-10-24 16:28
    事象詳細: 当局がエリア#113064に監視カメラを複数台配備してから初めて確認された事象#113064。葉に相当する部分が赤色化した6体のナゾノクサ(生体#113064-2-1から-6に分類)が、廃棄された遊具の一つである滑り台を降りている光景が映像に記録されていた。記録された時間帯は監視を担当する局員が交代のため持ち場を離れており、生体#113064-2を直接視認することには失敗した。

    [事象#113064-3]
    確認日時: 2005-10-25 05:44
    事象詳細: 赤色の花を持った13体のフラベベ(生体#113064-3-1から-13に分類)が突如としてエリア#113064に出現し、その後ほぼ同時に一斉に生命活動を停止した。生体#113064-3はすべて回収された。後に実施された情報化試験による生体#113064-3の分類は、全個体が「シェルダー」と判定されるという結果に終わっている。

    [事象#113064-4]
    確認日時: 2005-11-02 08:09
    事象詳細: 監視に当たっていた全局員が「一般的な個体の七倍近い大きさの巨大な赤いフシギバナ(生体#113064-4-1に分類)」を目撃したと証言。映像記録には何ら異常は見られず、後に実施された調査では生体#113064-4-1の実在を示す痕跡は何一つとして発見されなかった。映像記録は途中で乱れており、データを確認したところ、08:34以降のデータがすべて「003」のパターンの繰り返しで埋められていたことが判明した。機材の入れ替えを実施。

    [事象#113064-5]
    確認日時: 2005-11-02 22:56
    事象詳細: エリア#113064の奥にある手洗いのすべてのトイレから、蔦状の生体を切断した際に流出するものと一致する赤い液体が溢れるという事象が発生。液体は40分近く流れつづけた後、土壌に浸透する形で消失。直後に行われた調査で、手洗い周辺の土は乾燥していたことが判明。トイレに赤い液体の痕跡は残されていなかった。

    [事象#113064-6]
    確認日時: 2005-11-07 13:27
    事象詳細: 遊具や施設に絡み付いている蔦状の生体で編まれた136個のリース(オブジェクト#113064-6-1から-136に分類)がエリア#113064の広範囲に渡って降り注ぐという事象が発生。オブジェクト#113064-6はすべて回収されたが、16時間後に保管していた倉庫からすべて消失していたことが発覚。倉庫に備え付けていた監視カメラの映像を確認したところ、オブジェクト#113064-6が自然集合して赤いモンジャラ(生体#113064-6に分類)を構成し、その後突如として消失したことが分かった。生体#113064-6の行方は不明。

    [事象#113064-7]
    確認日時: 2005-11-10 17:22
    事象詳細: 監視に当たっていた局員のうち数名について、衣服のポケットに赤い未知の種子(オブジェクト#113064-7-1から-19に分類)が不明なタイミングで入れられていた。全局員を召集の上オブジェクト#113064-7を回収、一部をサンプルとして保管し、残ったものは焼却処分した。

    [事象#113064-8]
    確認日時: 2005-11-12 07:01
    事象詳細: 局員が持ち込んでいたラップトップ端末の内蔵ハードディスクに、エリア#113064内で赤いスボミーに如雨露で水を与えている8歳前後の少女を撮影した画像ファイルが278枚追加されていた。画像ファイルは外見上全ファイルが完全に一致するにも関わらず、ファイル比較ソフトウェアを使用した検証はすべてが著しく異なるファイルであるとの結果を示した。画像ファイルをすべてCD-Rへ書き込んだ後、オリジナルのファイルは消去した。

    [事象#113064-9]
    確認日時: 2005-11-30 21:18
    事象詳細: エリア#113064の中央付近の地中から赤いヒマナッツ(生体#113064-9-1から-6に分類)の群れが姿を表し、携帯獣の「タマタマ」のような動きをしながら21分間に渡ってエリア#113064内を徘徊する事象が発生。その後生体#113064-9は沈黙し、生命活動を停止したことが確認された。情報化試験による判定結果は、対象は一貫して「携帯獣ではない」というものになっている。


    事象#113064の内容は発生する都度著しく異なりますが、そのほぼすべてに関して、赤い色をした携帯獣と思しき生体またはオブジェクトが関与していることは特筆すべきことです。案件担当者からは、事象#113064と何らかの関係があるとの仮説が提起されています。

    Supplementary Items:
    本案件に付帯するアイテムはありません。


      [No.1596] #113452 「発掘する者」 投稿者:   《URL》   投稿日:2017/02/04(Sat) 19:47:08     37clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    Subject ID:
    #113452

    Subject Name:
    発掘する者

    Registration Date:
    2005-12-14

    Precaution Level:
    Level 4


    Handling Instructions:
    非異常のウリムーと携帯獣#113452を外見で判別することは不可能であり、未収容の携帯獣#113452が多数存在していると推定されています。案件担当者並びに収容チームに割り当てられた局員は、野生のウリムーを確認した場合速やかに手順ガランサス-Dを実行し、対象のウリムーが非異常か否かを確認してください。ウリムーが行動#113452によってオブジェクト#113452を地中から発掘した場合、対象を携帯獣#113452として直ちに捕獲、収容してください。捕獲後はジョウト地方フスベシティ第六支局まで移送してください。

    収容された携帯獣#113452はモンスターボールへ格納の上、定期的な健康診断を除いては外部へ解放しない措置を取ります。外部へ解放する場合、携帯獣#113452が地面を掘ることができない室内またはコンクリート等で舗装された床のある場所で実施してください。決して地面を掘ることが可能な場所で解放してはいけません。

    携帯獣#113452が発掘したオブジェクト#113452は、ジョウト地方フスベシティ第六支局に併設された中異常性物品保管庫のブロックC-12に、それぞれタグ付けを行った上で保管してください。オブジェクト#113452を使用した実験を行う場合、事前に案件担当者及び拠点監督者の承認を得た上で、複数名の立会いの元で実施してください。携帯獣#113452に新たなオブジェクト#113452を発掘させる試みは、予期しない事案を引き起こす可能性があるため承認されません。


    Subject Details:
    案件#113452は、地中から非異常性あるいは異常特性を持つアイテム(オブジェクト#113452)を発掘する動作(行動#113452)を行うウリムーの異常個体(携帯獣#113452)と、それらに掛かる一連の案件です。

    2005年11月下旬頃、ジョウト地方を中心に携帯獣の保護を行っている非政府組織から、当局に対して「その場にあるはずがないものを掘り起こすウリムーを保護した」との通報が寄せられました。当局は当該非政府組織よりウリムーを引き取った上で収容し、初期調査により通報された通りの異常特性が確認されたため、この携帯獣と異常物品を収容するための案件立ち上げが行われました。

    携帯獣#113452は、外見上一般的な個体と一切の相違が見られないウリムーです。生態や習性、食性などについても一般的なウリムー個体と顕著な違いは見受けられず、後述する行動#113452を行うことを除いては非異常性の個体と差異は無いと考えられています。

    行動#113452は、携帯獣#113452が取る動作の一つです。携帯獣#113452が不意に地面を掘り始め、その後三十分以内にオブジェクト#113452を発掘するというものです。行動#113452の開始後は、外部から行動#113452を妨害(モンスターボールへ格納する、物理的に携帯獣#113452を移動させる等)しない限り、必ずオブジェクト#113452が発見されます。これまでに観測された事例において、オブジェクト#113452が発掘されなかったパターンは確認されていません。

    行動#113452の発生には3つのパターンが存在しますが、発生後に携帯獣#113452が取る行動と、最終的な行動#113452の結果に相違は見られません。第一のパターンは、所有物を紛失/遺失した経験のある人間が携帯獣#113452の3メートル以内に接近することです。第二のパターンは、何らかの物品を欲しいと考えている人間が携帯獣#113452の3メートル以内に接近することです。第三のパターンは、第一及び第二のパターンの条件を満たさないにもかかわらず携帯獣#113452が不意に行動#113452を開始するというものであり、開始のための正確な条件は分かっていません。いずれかのパターンに基づく条件が満たされ、かつ携帯獣#113452が「地面を掘削できる」と判断した場合、行動#113452が開始されます。

    オブジェクト#113452は、携帯獣#113452の行動#113452によって掘り起こされるアイテムであり、異常特性を持つケースと非異常性のケースが混在しています。これまでに確認されたオブジェクト#113452のリストは下記の通りです:


    [オブジェクト#113452-1]
    袋詰めにされたヒメグマドール。状態は新品と同様で、異常特性は確認されず。これまでに発見された中で最古のオブジェクト#113452である。発見した非政府組織の職員の証言によると、携帯獣#113452の発見時にオブジェクト#113452-1が既に掘り起こされた状態だったとのこと。近隣を通りがかった市民に反応して動作#113452が行われたと推測されている。

    [オブジェクト#113452-2]
    ステンレス製の水筒。中には冷たい紅茶が詰められており、いくら消費しても量が減らない異常特性を持つ。紅茶について異常は見られず。携帯獣#113452による動作#113452によって発見されたのち非政府組織の職員が個人的に保有しており、その後本人の申し出により当局が収容対象とした。当該職員からヒアリングを実施したところ、職員は「紅茶が飲みたいと思っていた」と語ったため、この職員がトリガーとなって動作#113452が行われたと結論づけられている。

    [オブジェクト#113452-3]
    プラスチックケースに収められたCD-R。ディスクにはAdobe社のソフトウェア製品である「Adobe Acrobat」の最新版が収録されていたが、本来製品に施されているプロテクトがすべて解除された上で、非異常性の製品には存在しない機能が複数追加されていた。オブジェクト#113452-2と同様、職員が同ソフトウェアを求めていたことが理由と判断。

    [オブジェクト#113452-4]
    キーホルダー付きの鍵。発見した非政府組織の職員が在住するマンションに対応した鍵。鍵は意図した通りマンションの共用玄関と自宅の扉を解錠できるが、それに加えてマンションの敷地内に存在するあらゆる扉を解錠できる異常特性を持つ。職員の子供が数日前に鍵を紛失しており、携帯獣#113452がそれを読み取って掘り起こしたものと推測。

    [オブジェクト#113452-5]
    アルミ性の箱に詰められた、毒属性を持つ携帯獣に対しても意図した効果を発揮する致死性の猛毒が封入された注射器10本。非政府組織の職員が不在の際に掘り起こされたオブジェクト#113452であり、このオブジェクト#113452の発見により非政府組織から当局へ通報がなされた。

    [オブジェクト#113452-6]
    糸電話の形状をした未知の通信機器。糸は地面につなげられており、具体的な全長は不明。耳に当てると一般的な電話の発信音が聞こえる。当局と非政府組織による収容手続きが行われている最中、携帯獣#113452が掘り起こしたもの。携帯獣#113452が収容違反を起こそうとした可能性があると見られ、即座に糸を切断して収容。破壊されたにもかかわらず、現在も電話の発信音が聞こえる状態である。

    [オブジェクト#113452-7]
    日焼けした状態の書籍「シンオウぶらりひとり旅」。著者は「守田 博彦」、出版社は「明星出版」、出版年は1978年となっている。該当する書籍は発行されたことが確認できず、内容には実際のシンオウ地方における地理から大きく乖離した記述や写真が多く見られる。携帯獣#113452の収容が行われる二週間前に退職した非政府組織メンバーの自宅から発見された。当該メンバーは現在行方不明となっている。


    オブジェクト#113452は携帯獣#113452による行動#113452でのみ取得できるようで、携帯獣#113452が行動#113452を開始した直後に携帯獣#113452をモンスターボールへ収容し、当局の手で同じ場所を採掘した場合は、すべてのケースにおいて一切の物品を見つけることができないという結果に終わっています。このことから、携帯獣#113452がオブジェクト#113452を生成している可能性が強く示唆されています。


    Supplementary Items:
    本案件に付帯するアイテムはありません。


      [No.1595] #119302 「キリンリキの夢」 投稿者:   《URL》   投稿日:2017/01/29(Sun) 19:29:37     32clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    Subject ID:
    #119302

    Subject Name:
    キリンリキの夢

    Registration Date:
    2007-10-22

    Precaution Level:
    Level 2


    Handling Instructions:
    インターネット上のSNSや掲示板等で事象#119302に関する言及が確認された場合、案件担当者は発信者にコンタクトを取り、事象#119302についてヒアリングを行ってください。ヒアリングの結果は標準書式のレポートへ記録紙、案件別サーバへ保管してください。レポートには個人情報が含まれるため、案件別サーバへのアクセス権は案件担当者及び案件担当者が承認した案件副担当者のみに付与されます。個人情報を削除した版については、当局の定める情報管理手続きに基づく外部出力及び持ち出しが可能です。

    事象#119302と携帯獣#119302との関連性について調査してください。携帯獣#119302は超能力を行使することが広く知られていますが、事象#119302のような現象を引き起こすとの研究結果は未だ確認されていません。携帯獣#119302については、最適な環境に整備された保護区のあるキキョウシティ第三支局に12個体が保護されています。これらは当局の定める倫理規定に基づいた上で、研究目的に使役することができます。


    Subject Details:
    案件#119302は、不特定の人間(対象#119302)が睡眠中に見る夢の中に自身を携帯獣の「キリンリキ」であると知覚させる未知の存在(オブジェクト#119302)が現れる事象(事象#119302)と、それに掛かる一連の案件です。

    事象#119302の存在が確認されたのは、2007年9月上旬頃のことです。局員が記録した日報を事務担当者が整理していた際に、複数の「キリンリキが出てくる夢を見た」という記録が見つかりました。記録した各担当者を招集してヒアリングを実施したところ、事象としての一貫性が確認されたため、担当者が割り当てられた上で案件立ち上げが決定しました。初期調査の過程で、事象#119302と特徴が一致する夢を見たと証言する市民が複数確認(いずれも対象#119302に指定)され、それぞれからヒアリングを実施しました。

    事象#119302の特徴は、対象#119302が睡眠中に見る夢において、自身を携帯獣の「キリンリキ」であると知覚させる未知の存在であるオブジェクト#119302が出現することです。オブジェクト#119302の特筆すべき点として、オブジェクト#119302自体はキリンリキの姿を伴って現れるわけではなく、異なる姿で夢の中に登場するということが挙げられます。

    端的に言うと、オブジェクト#119302はキリンリキの姿をしているわけではありませんが、夢を見ている人間に自身を「キリンリキである」と知覚させる性質があるということです。事象#119302の発生以前に対象#119302がキリンリキに関する知識を得ていなかった場合、対象#119302がオブジェクト#119302をどう認識するのかは不明です。

    対象#119302へのヒアリングの結果、事象#119302は一般的な夢と比較して覚醒後も記憶を保持しやすいとの傾向が現れています。確認された事象#119302におけるオブジェクト#119302の姿形、及び特徴についての抜粋は以下の通りです。


    [事象#119302-1]
    オブジェクト#119302の容姿:
    対象#119302の居住地近隣の公園にある折れ曲がった枝を持つ大樹。
    オブジェクト#119302の特徴:
    対象#119302はオブジェクト#119302を目にして「言いようのない悲しみに包まれた気がした」と証言しましたが、覚醒後は特に感情の変化はなく、オブジェクト#119302が対象#119302に対してどのような作用をもたらしたのかは分かっていません。

    [事象#119302-2]
    オブジェクト#119302の容姿:
    対象#119302の祖母。故人。
    オブジェクト#119302の特徴:
    対象#119302は、オブジェクト#119302は自分を遠くから見ていて、声を掛けることはできなかったと証言しています。

    [事象#119302-6]
    オブジェクト#119302の容姿:
    対象#119302がかつて在籍していた幼稚園を来訪した移動動物園にて交流した、一般的な個体よりやや小柄な♀のコリンク。
    オブジェクト#119302の特徴:
    オブジェクト#119302はこちらをゆっくりと追跡し、壁や段差を「無視するように」して覚醒するまで追跡を続けてきたとのことです。

    [事象#119302-11]
    オブジェクト#119302の容姿:
    対戦格闘アクションゲーム「ストリートファイターII」に登場するキャラクターの一人「ザンギエフ」。
    オブジェクト#119302の特徴:
    対象#119302に対し「ジルベック錠剤」なる未知の医薬品を繰り返し服用するよう薦めた、という証言を得ています。「ジルベック錠剤」がオブジェクト#119302と何らかの関係を持つのかは定かではありません。

    [事象#119302-17]
    オブジェクト#119302の容姿:
    数年前まで使用していた折りたたみ式の携帯電話。
    オブジェクト#119302の特徴:
    対象#119302はオブジェクト#119302を「キリンリキである」と同時に「鏡である」と認識していたとのことです。夢の中で見た自分の顔はまったくの別人でしたが、違和感を抱くことはなかったとも証言しています。


    いずれの事象#119302においても、事象#119302を経験した市民はオブジェクト#119302を「キリンリキである」と認識していました。覚醒後はオブジェクト#119302の容姿について述べることができ、それが本来のキリンリキの姿と乖離していることも認識できますが、夢の中ではオブジェクト#119302を明確に「キリンリキである」と認識していた点で一致しています。

    事象#119302の発生原因は不明です。事象#119302を経験した市民には共通点が見られず、事象#119302に関連すると推測されるような経験/出来事についても確認されていません。市民の中にはキリンリキとの遭遇経験を持つ者も含まれていましたが、経験のない市民も多数事象#119302を報告しており、本来のキリンリキとの関連性については未だ明確になっていません。

    オブジェクト#119302が自身をキリンリキであると他者に知覚させることの原理や、その理由についても分かっていません。オブジェクト#119302が単一の存在なのか、同種であるが個々に異なる存在なのか、或いは相互に何ら関係がないのかも明らかではありません。ただしいくつかの証言は、オブジェクト#119302が一貫した単一の存在である可能性を示唆しています。

    スリーパーやムシャーナといった人間の夢に干渉できる能力を持つ携帯獣の局員を案件担当者に割り当て、オブジェクト#119302に対して対話を試みるという計画が提案されています。この計画は現在検証フェーズに入っています。


    Supplementary Items:
    本案件に付帯するアイテムはありません。


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