マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ
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  •   [No.3958] 花神の宿  ※R-18作品 投稿者:クーウィ   投稿日:2016/08/28(Sun) 22:25:38     122clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:企画作品】 【R-18注意

    ※官能描写を伴います。苦手な方は御注意下さい……。




    花神の宿


     旭光が静かに踏み込むにつれ、淡い朝靄が動き始めた。夜の冷気を宿す晩春の空気が、色づき始めた草露を残し、森の奥へと引き退いていく。徐々に強まる白い光は輝きを増し、夜半の雨に打ち叩かれた下草を、力付けるように優しく包む。イッシュはシッポウの西に広がるヤグルマの森に、何時もと変わらぬ夜明けが訪れていた。
     シッポウの街並が漸く目覚めようとしているこの時間、既にこの地の住人達は朝餉の支度を終えており、てんでに箸を取る為稼業を切り上げ、住居の中へと舞い戻っていた。森際に点在する家屋は何れも一風変わった造りであり、その殆どが広い庭を構え、更によく整備され細かい砂を敷き詰めた一区画を、その真ん中に設けている。砂敷きの広場には木製の杭が立っており、散々に打ちすえられたらしいそれらはまだ比較的新しく、中には早朝の鍛錬の結果へし折られた物も混じっている。ヤグルマの森近辺は格闘家の修練場として知られており、南方の試し岩を基点として、幾つかの個人道場が散在していた。
     無人となったばかりの稽古場が小鳥達の囀りに満たされる中、不意に何処か遠い場所から、微かな矢声が聞こえてくる。砂浴びを楽しんでいたムックル達は小首を傾げ、次いで何かに納得したように頷き合うと、小さな翼をはためかせ、てんでに声のした方へと飛び去ってゆく。雲一つない朝空にゴマを撒いたような黒点が散らばると、まるでそれを引き寄せるが如く、再び鋭い気合いが風に乗って、ヤグルマの里に響き渡った。

     一定だった風向きが、変化の兆しを見せた時。じっと相手の隙を窺っていたコジョンドのスイは、その雪白の痩身を宙空に閃かせ、踏みにじっていた下草を朝風に散らして、眼前の敵に躍り掛かった。風を切り裂く武術ポケモンは征矢となり、自分の一挙手一動を完全に把握しているであろう相手に向けて、一直線に突き刺さっていく。
     果たして相手方のポケモンは、彼女の動きに対し的確な反応を示した。既に波導を通し、コジョンドの攻撃を予測していたのだろう。相手の体が宙に浮いた瞬間には早くも地を蹴り、最早軌道を変える事の出来ない武術ポケモンの死角に位置すべく旋転する。くるりと半身を廻したルカリオは、必要最小限の動きでコジョンドの攻撃範囲から逃れると、そのまま着地際の間隙に乗ずべく、尻尾を揺るがし身構える。
     が、しかし――波導ポケモンが狙い撃とうとしたその隙は、コジョンドが着地寸前に見せた揺らぎによってあっさり消え去り、失われる。完全に掴んでいた筈の相手の波導が予想外の乱れを見せた時、彼女は既に攻撃の態勢に入っており、踏み込んだ脚は全体重を乗せて、次の一撃に向けた最終アプローチを終えてしまっていた。「しまった」と臍を噛むのも束の間、ルカリオのリンは目元を鞭の様なもので強打され、出鼻を潰された瓦割りは空を切って、痩身はよろけたたらを踏む。曝け出された無防備な脇下にはっけいを打ち込まれた事により、早朝の一本勝負は呆気ない幕切れを迎えた。
    『フェイント、か。引っ掛かった』
     息を詰まらせつつ膝を突いたルカリオが渋い表情で零すと、コジョンドのスイは稽古相手に手を差し伸べ、苦笑いしつつ応じて見せる。
    『見切りにはそうするしかないだろ? お互い様さ』
     ワザとに強く引く彼女に対し、リンの方も慌てる事無く付いて来て、揺らぎもせずに立ち上がる。『昼には返す』と宣言する幼馴染にやってみなと応じつつ、スイは身軽に踵を返すと、母屋に向けて歩き始めた。

     その客人が訪れたのは、正午過ぎの事である。丁度昼の稽古に戻ろうかと言う時間帯、休憩を終えた彼女達を送り出そうとしていた女主人が、小道を此方にやって来る、見慣れぬ人影に気が付いた。
     バックパックを背負い、頭にバンダナを巻いたその姿は、旅の途中のようであった。既に寒気も緩まった時期であるのに、少しくすんだ白のスカーフを襟首に巻いた青年は、じっと見守る道場主に気が付いて、小さく会釈を送って来る。尚も近付いて来る青年に対し、うら若い道場主は何処か落ち着かない雰囲気で、その姿を見守っている。
     普通旅人は、此方の方には回ってこない。シッポウシティからヤグルマの森を抜けるルートは此処より北に延びており、ヒウンへと続くその道を外れる者は、余程の物好きでなければ滅多にいない。敢えて此方にやって来る物好きとは、無論他流試合を申し込んで来るトレーナーである。
    「済みません。失礼ながら、お願いしたい事があるのですが……」
     果たしてその青年の腰には、幾つかのボールがセットされていた。無意識の内に身構える主従の内、主人である道場主が、堅い口調で要件を聞く。
    「他流試合の御申し込みでしょうか? それでしたら――」
     だが予想に反し、青年はチラリと苦笑してそれを否定すると、彼女達が思いもよらぬ要望を告げる。
    「いや、そう言う訳じゃないんです。……実は、ちょっと宿に困ってまして。今日明日辺りから降りそうなので、何処か雨宿り出来る場所を貸して貰えはしないかと」
    「雨宿り、ですか……」
     主が首を捻るのも無理はない。昨晩からの雨雲が去り、未だ湿気の飛んで間もない空はからりと晴れ渡っており、青年が口にした様な雨の気配は、全く見えぬと言って良かった。ずっと此処で暮らして来たスイとリンも、そう言った変化の兆しは感じられず、目の前で低頭する旅人を、腑に落ちぬ表情で見守るばかりである。
    「それなら、シッポウシティも近いですしそちらに回られては如何でしょう? あの街にはポケモンセンターもありますし、使わなくなった倉庫を利用した宿泊施設も多いですよ」
    「確かに、街で宿を求めるのが穏当なのは分かっているのですが……。ちょっと個人的に、街にはあまり近付きたくないんです。別に不都合がある訳でもないんですけれど」
     やや煮え切らぬ態度で言葉を濁した青年は、次いで別に軒下で構わないので、雨が止むまで滞在させて貰えると有り難いと、重ねて希望を述べる。特にしつこさは感じられず、控え目な態度からも断れば問題無く去っていく様な雰囲気はあるものの、流石に特に理由も無しに追い返すのは気が引けたのだろう。主の娘は用心深げな視線で一通り相手を見定めた後、小さく頷いて返答する。
    「でしたら、使って無い部屋もありますしどうぞ。特にお構いも出来ませんが、それで宜しければ……」
    「助かります。部屋まで用意して頂いても反って恐縮なので、取りあえずその辺に寝場所を設えさせて下さい」
     丁寧に頭を下げた青年は、玄関に導こうとする女主人に断りを入れると、そのまま母屋と道場の間を覆う庇の方へと歩き始めた。

     見慣れぬ異邦人を訝る思いは、日暮れ時には驚きに変わった。
     彼の予見した通り、気持ち良く晴れていた空は徐々に雲の層に覆われ、何時からともなしに降り始めた細雨は、夜の帳が下りる頃には若葉を打ち叩く激しい雨音に取って代わる。雨垂れの音に包まれた道場の軒下に小さな一人用テントを張っていた青年は、既に客人として半ば強引に空き部屋の方に移動させていた。
    「済みません……態々ここまでして貰って」
     道場主の弟も加え、都合三人と二匹になった夕食の席上、恐縮の極みと言った表情で低頭する彼に向け、食事の準備を手伝って貰った娘は、もっと気を楽にして欲しいと要望する。部屋に上げるにも苦労させられた客人は、今度はならばと持ち合わせの食料をつぎ込んで、質素なその日の食卓に更に二品、新たな品目を加えて見せた。干魚のスープに木の実の白和えと言う素朴なものだったが、材料も味付けもよく吟味が加えられており、豊富な経験や腕前の確かさを感じられるものだった。
    「此方こそ、大事な食料を使わせてしまって申し訳ない」と返答した道場主は、特に困る事も無いので、雨が止むまでは自由に滞在して貰って構わないと言葉を続ける。重ねて礼を言った相手と簡易な自己紹介をかわした後、彼女と二匹のポケモン達は、その日はそれ以上何をするでもなく床に就いた。


     翌日、まだ暗い内から目を覚ました本来の住人達は、まだ早起きの習慣が付いていない年若の少年一人を除き、何時もの日課をこなす為、思い思いに道場に向け集まった。
     コジョンドのスイもルカリオのリンも、主人である娘と同じく体内時計がすっかり固定されており、寸分遅れず道場内に顔を揃える。これから朝食の支度が整うまで、此処で朝稽古するのである。
     本来なら雨など気にせず外でやる所だが、実践の場である試合の期日が近付いていた。質実剛健を気取って雨に打たれつつこなした結果、余計な怪我でも背負い込んだら事である。今は大人しく屋根付きの、此処で稽古をした方が賢明と言うものだった。
     何時も通り組み手を始め、幾分時間が経った頃。不意に集った三者が、同時に入口に目を向けた。
    「済みません。……邪魔する心算は無かったんですが」
     全員の視線を一身に浴び、ふらりと顔を覗かせていた青年が、慌てて詫びの言葉を述べる。けれどもその半面、やはりトレーナーだけに稽古風景に興味があるらしく、尚も立ち去ろうとはせずに、「良ければ見取り稽古をさせて貰えないだろうか」と頼み込んで来た。
    「良いですよ。では、そこにどうぞ」
     青年に二つ返事で許可を与える主人の言葉を聞きながら、スイはリンに向け、再開しようと合図を送る。再び動き始めた両者に対し、無言のままで視線を送る青年の表情は、普段見せていた物腰とは打って変わり、真剣そのものだった。

     やがて朝食の時間が訪れた際。漸く起き出して来た弟も交えたその席での話題は、自然とトレーナーとしての青年に関する事となる。姉である道場主の質問に対し、彼は自分が海の向こうのシンオウ地方の出身であり、その地を一通り巡り終えて此方に渡って来たと言う経緯を、言葉少なに説明する。
    「バッジは幾つ持ってるの?」
     そう尋ねた少年の言葉に、彼は苦笑気味に首を振ると、「此方ではまだ一つも取っていない」と応じて見せる。では向こうではどうだったのかと継がれると、多少は成果が上がったと答え、上着の裏地に留めてある、幾つかのジムバッジを見せてくれた。
     万事控え目で、何処か居心地悪そうな客人の様子に、年若い道場主は何処か釈然としないものを感じたものの、取りあえず空気を変えるべく、手持ちについても質問してみる。
    「どんなポケモンを連れてるんです?」
     主人のその質問に、傍らに控えるコジョンドとルカリオも、興味深げな視線を送る。既に道場での態度から、トレーナーとしての非凡さを感じさせられた青年は、此処でもやや曖昧に、自らのパートナー達について触れて見せた。
    「大方は向こうから連れて来たメンバーです。新顔と交代した者も居ますけどね」
     言いつつ卓の上に出したボールは、全部で五つ。何れもシンプルなモンスターボールだが、一つだけ見慣れぬデザインのものが混じっていた。上半分の塗装が薄く、鏡の様に煌めく光を反射しているそのボールを指差して、「これは?」と聞いた年端もいかぬ少年に対し、持ち主である彼は、微笑と共に応じて見せる。
    「うちのエースが入ってるんだけど、訳あって特注なんだ。……マッジクミラーって知ってるかい?」
     首を傾げる少年に向け、青年は丁寧な口調で、「簡単に言うと、中から外が見える様にする仕掛けだよ」と言い添える。
    「こいつは卵の状態で譲って貰ったポケモンなんだけど、元の親から広い世界を見せてやって欲しいと頼まれてね。それで、こんな細工をしてるんだよ」
    「へぇ……どんなポケモンなんだろ? 見てみたいなぁ」
     興味深々と言った具合の少年に対し、彼はチラリと苦笑して見せ、「多分君が見慣れたポケモンだよ」と答えて見せた。その言葉の意味を周囲が理解する前に、青年は視線を家主に戻すと、「所で話は変わりますが」と新たな話題を持ち出して来る。
    「先程道場で、星の欠片が並んでいるのを見かけたのですが……この辺でよく見掛けるものなんでしょうか?」 
    「いえ、そう言う訳じゃ……。一応手に入れる事が出来る場所もありますが、あれは別に拾ったものじゃないんです」
     主の答えに、青年は穏やかな表情で続きを促す。確かに星の欠片は装飾品として人気が高く、付随する価値もそれなりで、旅のトレーナーが興味を持つのは別段珍しくないのかも知れない。――しかし一方、傍からそのやり取りを見守るスイには、彼の本心は別の所にあるのではないかと思えてならなかった。
    「あれは前の……先代の道場主だった私の父が、年に一度行われる腕比べで優勝した時手に入れたものです。此処から少し南に行った所に試しの岩と言うものがあるのですが、この辺りの格闘道場は春の終わりに其処で修業の成果を競い、勝者はその証としてその岩の欠片を持ち帰る事が出来るんですよ」
    「なるほど。つまりはトロフィーと言う訳ですね。だから師範席の後ろに並べられてたのか」
     果たしてその青年は、彼女の説明に納得したと言う風に頷くも、次いで道場主に向け、更なる要望を切り出して来た。
    「実は、今のメンバーにもう少し修業を付けてやりたいのが居るんです。……宜しければ、そいつにも見取り稽古を許して頂けると助かるのですが」
    「構いませんよ。それを言えば私達も、試合の時期が迫ってますしどんな経験でも身に付くのであれば貴重です。もし良ければ、そちらのポケモン達とも手合わせさせて頂けませんか?」
    「無論です。……どうせこの雨じゃ二、三日は動けませんし、此方としてもスパーリングのお手伝いが出来るのであればそれに越した事はありません」
     とんとん拍子に決まった午後の予定に対し、当事者となるスイとリンは、未だ実力の程がはっきり分からぬ目の前の異邦人を、ただ唖然とした表情で見守るばかりだった。

     一同が再び道場に戻った時、最初に青年がやったのは、手持ちの仲間達を一通りボールから開放し、見たいとせがむ少年に見せてやる事だった。
     ポンポンと手際良く交代する度、幼い少年の歓声が響く。最初はリーフィア、次いでチルタリス、ビーダルと、一見攻撃的な印象に乏しいポケモン達が続く中、それでも道場の主体となる主従三者は、その何れもが多くの経験を重ねたベテランであると正確に見抜いた。
     四匹目に登場したのは、一風変わったポケモンだった。紫色のふにゃふにゃとしたその生き物は、少年の好奇に満ちた視線を受け止めた後も戻されず、青年の隣で稽古の様子を見て置くように告げられる。
    「メタモンですか……」
    「ええ。……こいつが新顔なんですが、まだチームに加わってから日が浅くて、戦い方や味方との連携のコツを十分に教え切れてないんです。なので是非、此方で見取り稽古をさせて貰いたいなと」
     主の言葉に反応する一方、青年は直ぐに自分の仕事に戻ると、最後の一つ――あの特殊な加工が施されたモンスターボールを手にとって、開閉スイッチを操作するや、手前に向けて無造作に放った。中から現れたそのポケモンを目にした途端、スイは先程青年が口にした言葉の意味を、はっきりと認識させられる。
     ボールの中から出現したポケモンに、傍らのルカリオが小さく声を上げる。青年の前に立ち、真っ直ぐ此方を見据えているのは、隣に立っている彼女と全く同じ種族であった。
    「うわぁ、ルカリオだ……!」
    「リンと同じだ」とはしゃぐ少年に対し、彼は柔らかく微笑んで頷いてやると、次いで無意識の内に身構えている彼女達に向け、「御相手はこいつで構いませんか?」と聞いて来る。
    「え、ええ……。宜しくお願いします」
     慌てて返答する主に対し、青年は場慣れしている者特有の落ち着きをもって、「此方こそ」と丁寧に頭を下げる。勝負の場に出るリンの背中を見送りながら、スイは自身もゆっくりと相対すべき位置に歩み出している、相手の波導ポケモンに視線を移す。特に気負うでもなく淡々と進むその目からは、傍から見る限り何の気組みも読み取れなかった。
     一方リンの方は、明らかに動揺していた。生真面目で正義感は強い半面、上がり症でプレッシャーにあまり耐性が無い上に、思いがけぬ同族の出現に完全に気を呑まれている。それでも何とか開始の合図と共に身構えて、何時もの見慣れた姿勢でじっと相手の隙を窺い始めた。
     相手方のルカリオは、当初全く動かなかった。相対している同族の戦い方を見極めようとしている風情で、真剣な表情で守りを固めるリンに対し、性急な攻撃は仕掛けて来ない。
     しかし、どうやら相手が後の先を取る心算であろうと理解したと見るや、即座に様子見を止めて動き始めた。既に鋭く研ぎ澄まされていた眼光を更に強め、音も無く身を沈めた波導ポケモンは、そのまま何とか動揺を静め終え、万全の態勢で待ち受ける同族へと、真っ直ぐ突き進んでいく。フェイントを掛ける風でも無く、一直線に突っ込んで来た対戦者に対し、『待ち』を得意とする相方が完璧なタイミングで迎撃に動いたのを、彼女は固唾を呑んで見守っていた。
     が、それに対する相手方の反応は、彼女達道場側の面々が想定出来る範囲を超えていた。無造作に間合いの内に踏み込んでいったルカリオは、打ち込んで来たリンの突きを脇に開いて苦も無く外すと、そのまま流れるような動きで彼女の腕に手を添えて、自分の片脚を軸に軽々と宙に投げ飛ばす。見事に一回転したリンが砂を跳ね上げて墜落した時には、止めのはっけいがピタリと頭上で制止しており、勝負の行方は疑う余地も無く明らかだった。
    「そ、それまで!」
     道場主の上ずった声での宣告を受け、まるで手妻遣いのように試合を決めたルカリオは、直ぐに突き出した片腕から力を抜くと、息を呑んで固まっているリンに対し、それをそっと差し伸べる。呪縛が解けたように身動ぎし、戸惑いながらもその手を取って立ち上がる相方の様子を上の空で眺めつつ、スイはこれまでになく真剣な面持ちで、自分の取るべき戦術を思案していた。
     相手が何をしたのかが分からない。……より正確に言えば、理屈としては分かるのだが、具体的にどうすればあのような対応が可能になるのか、またどう動けばあれを破る事が出来るのかが、如何に頭を捻っても出て来ないのだ。
     リンの事は当然ながら知っている。手の内も実力の程も、幼い頃から姉妹同然に親しみつつ切磋琢磨して来ただけあって、当の本人よりも互いの事を理解し合っていると言っても過言ではない。彼女の実力は自分のそれと遜色はなく、現に昨日も宣言通り、昼の試合は取り返されている。その相方が自分の思い通りの試合運びで一蹴されたと言う事は、相手の実力はそれすら問題にならぬ程に隔絶していると言って良かった。
     だが無論、それで彼女が憶する事は断じて無い。元々負けん気が強く、平素も滅多に峻厳な姿勢を崩さない彼女にとって、余所者がこの場で余裕を示していると言う事それ自体が、我慢のならない事であった。主人の呼び掛けに応じ、何処か上の空な表情で戻って来るリンに鋭い一瞥をくれながら、彼女は厳しい面持ちで試合の場へと進み出る。
    「スイ、落ち着いて掛かりなさい」
     早くも雲行きを察したのだろう。主の注意する声が飛んでくるも、彼女は等閑に頷き返すのみで、敵意に満ちた視線を緩めようとはしない。主人を軽んじる心算は毛頭なかったが、こればかりは自身としても譲る事は出来なかった。
     対する相手の側はと言うと、彼女の攻撃的な態度にも、無表情で応じるのみ。ただ軽視されている訳ではないらしく、相手から感じ取れる雰囲気は、強固な壁を思わせる威圧感共々微塵の緩みも存在しない。鋭い目付きで此方を注視する相手に向け、スイは些かも覇気を緩めないまま、開始の合図と共に地面を蹴る。
     砂を跳ね上げ風切り音と共に仕掛けたのは、先制技である猫騙し。ルカリオ族に仕掛けるのはそれなりにリスキーな選択だったが、普段相手をしているリンには実際有効な手段であった。彼女がこの選択肢を有しているが為、受けの名手である相方ですら、初動は慎重にならざるを得ないのである。
     果たして相手は、この試みに彼女が望んだ通りの反応を示した。初動を抑え、彼女の初撃をかわす為、守りを固める事を選択したのである。鞭のように目元を狙った腕の毛が相手の守るに阻まれたのを見て取ったスイは、間髪を入れず次手を差し込み畳み掛けていく。――常に先手先手と攻めかかり、相手に反撃の糸口を与えぬ一方的な攻勢こそが、彼女の最も得意とするバトルスタイルであった。
     だが、彼女の思い通りに事が運んだのは、この瞬間までだった。猫騙しから息をつかさずはっけいに変化した彼女の腕は、まるで読んでいたとしか思えぬ動きを見せた対戦相手の利き腕にしっかと掴まれ、そのまま反応も出来ないままに捻られる。仕掛けた勢いを利用され、前にのめった形となったスイは、そのまま脇に身を開いた相手に足を払われ、為す術も無く一回転して叩き付けられた。
     試合終了の宣告と共に飛び込んで来たのは、上から覗き込む相手の双眸。険を収め、静かな光と共に手を差し伸べるその瞳に、彼女は不意に身の置き所も無いような居心地の悪さを覚え、顔を背けて視線を切った。次いで腕を払って身を起こすと、相手の顔を鋭く睨む。少し呆気に取られたような表情の波導ポケモンは、彼女の意思を察すると直ぐに身を引き、立ち上がれるよう後ろに下がる。
     取り返せるかは分からない。――けれども、このまま相手の実力に呑み込まれてしまうのは、何としても嫌であった。

     雨が止んだ。青年の言う通り三日後に消えた雨雲の名残は、徐々に夏らしさを加えていく潤んだ風と、やや水量を増している森の小川ぐらいのものであろう。
     青年の一行はまだ此処にいる。別に愚図ついている訳ではなく、試合の結果を重く見た道場主に、暫く滞在して修行の手伝いをして欲しいと頼まれたからだ。青年は承知し、パートナーのルカリオとメタモンを毎日道場に預ける傍ら、自分は他の仲間達と共に少年の相手をしたり、ヤグルマの森を散策したりして過ごしている。野外生活が長いと見え、毎晩の食卓には彼が拾ってきた木の実と、釣って来た魚が並ぶのが定番となった。青年の魚スープはシンプルながら完成度が高く、賑やかになった食事の席は何処か華やいでいて、日々の暮らしは嘗て見られなかったほど明るいものとなっている。
     一方修行の方も、成果が表れるのは早かった。雨が上がるまでの二日間で、スイもリンも動きの中から無駄や悪癖を早くも指摘されており、それを是正するのに余念がない。素直に従うリンは勿論、抵抗感を捨てきれないスイの方も、リムイと名乗ったそのルカリオが、有能な教師である事を認めない訳にはいかなかった。風格よりも遥かに若く、未だ同年輩だと知った時こそその指導力を疑ったものの、実際に稽古を付けて貰うと、そんな疑念は直ぐに消えた。主に人間の業を習って来たと言う彼は、「コグソクタチマワリ」と称されるらしいそれを彼女達には敢えて教えず、今まで彼女達が磨いてきたポケモン本来の戦い方を更に研ぎ澄ます方を選択する。短期日の内に新しい型式を取り入れると、一時的に実力が低下する場合があるのを憚った為だ。
     本番となる交流試合まで、後一週間もない。事故に巻き込まれた先代がパートナーと共に急逝し、長らく沈滞を余儀なくされていたこの道場も、近年漸く浮上の糸口を掴むべく、毎年これに向けて厳しい修行を重ねて来ている。此処二年ほどは周囲の壁の厚さに跳ね返されて来たが、戦う彼女達自身の強い決意もあり、最近では他道場との訪問試合でも、早々後れは取らぬようになっていた。
     そんな折、まるで彼女達主従の信念が呼び寄せたかのように、彼らが現れたのである。何としてでもこの機に乗じ、宿願である優勝を勝ち取りたいと願ったのは、主の娘だけではなかった。
    『次はもっと踏み込むタイミングを図ってみて欲しい』
     一当て終えたばかりのルカリオが、言葉少なに注文を付ける。無言で頷き返したスイは、再び砂地の上で構えを作ると、一本取られたばかりの相手に向けて身を躍らせ、渾身の力を込めて技を繰り出す。全霊込めた飛び膝蹴りを真っ向から受け止めつつ、それでも尚余裕を残す波導ポケモンは、今度は堪えたダメージに納得したらしく、素早く飛び下がった彼女に向けて誇らしげな笑みで頷いて見せた。
     やっと引き出せた相手の満足げな表情に、覚えず心が揺れた。未だ躊躇いを残して接しながらも、篤い信頼の情を隠そうとせぬ相方と違い、最初から攻撃的な態度を取り続けていた彼女にとり、この目の前の遣い手は親しむよりも打ち倒すべき対象としか見ていない。……少なくとも、意識の上ではそうであった。
     だが、自分でも思いがけず頭を擡げたその感情は、そんな彼女のスタンスが――自らの意思にも反し――上辺だけのものであった事を疑わさせられるものであった。若干の混乱と共に襲って来たのは、激しい狼狽と羞恥心。それは程なく、湯気の立つような熱気と脈絡もない怒りに変換されて、目の前の相手に注がれる。
     息づく理性は理不尽であると訴えたが、湧き起こる衝動は止まらない。よりにもよって稽古の最中に意識を奪われた事を受け、スイは直後込み上げて来た憤怒のままに、相手に向けて襲い掛かった。
     だが、当然そんな拙攻が通用する相手ではない。闇雲に打ち掛かった彼女の瓦割りは呆気無く空を切り、逆に正確に胸元に突き刺さったはっけいが、あっさりと彼女の継戦能力を奪った。
    『ッかは……』
     一瞬息が詰まると共に、身体の力が一時に抜ける。運動神経を麻痺させられ、一時的な戦闘不能に陥った彼女の身体を支えながら、理も無いやつあたりの対象となった相手はゆっくりと稽古場の端まで歩いて行って、返り討ちにした武術ポケモンをそっと地面に横たえた。
     代わりに呼ばれたリンが稽古の場に出ていく中、スイは消化し切れぬ感情の波に苛まれつつ、己の不甲斐無さを呪いながら、麻痺の回復を早めるべくきつく目を閉じた。

     午後には訪問者があった。
    「頼もォ!」と言う掛け声と共に現れたのは、近所に道場を構えている顔見知り。数年ぶりの外部からの挑戦者に、若い道場主は相手を迎える仕来たりも忘れ、あたふたしつつ挨拶を交わす。
     一方二人の門下生を引き連れ、悠然と歩む五十絡みの先達は、そんな彼女の狼狽ぶりにも大らかな態度を崩さず、「突然御邪魔して申し訳ない」と断りを入れると、次いで気さくな口調で近況を尋ねる。狭いこの界隈の事だけあり、既に旅の青年と彼が連れているポケモンの噂は辺り一帯に知れ渡っているらしく、今回訪ねて来たのもどちらかと言うと出稽古と言うより、未知の相手への興味本位でやって来たと言う塩梅である。
     早速道場に招き入れられた彼らは、当然の如く臨時の師範役を務めるリムイに対し、他流試合の矛先を向けた。ルカリオの方も主人が不在であるにもかかわらず、予めこう言った場合の対応は仕込まれていたのであろう。困惑した様子の道場主を慮るように、自ら試合の場に立った。結果は無論言うまでも無く、相対した全ての相手が、彼に一撃も入れられる事なく一蹴された。
     試合の内容に驚きを隠せなかった主人達が、道場主の申し出を受けて母屋で一服している間、ポケモン達は道場に残ったまま、思い思いに自主稽古に励んでいた。元々この周辺の道場では、ポケモンも手持ちと言うより「門下生」として扱われており、直接的な指示が無くとも対応に苦慮する事はない。実際最大の舞台である春の交流試合も、主の指示を仰がず行う、完全なポケモン同士の真剣勝負だった。
     一方ルカリオのリムイの方も、自主性と言う点では彼女らと同じような鍛錬を重ねているらしい。言葉少なに彼が語る所よれば、彼らの主人である青年は手持ちである彼らを対等な一個人と見做しており、独自の意思で行動する事を、寧ろ奨励しているのだと言う。『彼はあくまでリーダーである事を崩さない』と語るその目には、主人としての信頼は勿論の事、一個の人物に対する強い尊敬の念が窺えた。
     リムイの熱の籠った目を見ている内に、スイは自然と自分達の身の上を思い返す。――相方と共に歩み始める切っ掛けとなったそれは、決して快くも誇らしくもなく、彼女をして一心不乱にこの道にのめり込ませる、根源とも呼べるものであった。
     当て所なく回想の海に漂いかけていた彼女の意識は、不意に耳に飛び込んで来た質問によって引き戻される。視線の先では、外部からの挑戦者であるゴーリキーが、師範役のルカリオに向けて自信に満ちた口調で問題提起していた。
    『確かにあんたは強いが、一度捕まえてしまえば俺には絶対押し切れる自信があるぜ』
     先の試合の内容が、やはり納得いかないのだろう。並みの同族より二回りは大柄な彼は、この里でも指折りの怪力で知られている。その矜持を剥き出しにして語る瞳の内には、目の前の相手の実力に対し、何らかの形で報いてやりたいと言う精一杯の反骨心が見て取れた。
     それに対するリムイの反応は、実に単純明快であった。『ならば捕まえてみると良い』と応じた彼は、呆気に取られるゴーリキーに背中を向けると、好きなように押さえてくれと誘いかける。一転して緊張した面持ちに変わった剛力ポケモンが、背後からがっちりと相手に組み付いたのを確認すると、彼は落ち着いた表情で『良いか?』と問い掛けてみせる。
     道場内は何時の間にか静寂に包まれ、全員の視線はただ一点に注がれる。周囲が固唾を呑んで見守る中、応諾したゴーリキーに対し、無造作に開始の合図が送られた。
     直後、ゴーリキーの全身が膨れ上がる。全力で締め上げにかかる彼に対し、ルカリオの痩身は圧倒的な筋肉の壁に押し潰されるような形で、到底振り解けるような状況ではない。事実彼の表情は明確に歪み、すさまじい圧力に何とか耐えようとしているのが見て取れた。
     放っておけば、あっと言う間に身体の骨を圧し折られるだろう。思わず声を上げようと周りのポケモンが口を開き掛けたその時、波導ポケモンの利き腕が動いた。完全に制圧されている彼が取ったのは、自分を締め上げている相手の肘の辺りに手を添えただけ。――だが次の瞬間、満身の力を込めて責めていたゴーリキーは驚いたような苦痛の叫びと共に身を離し、巻いていた腕を抱え込んで蹲った。
     予想だにしてなかった事態に他のポケモン達が息をするのも忘れて立ちすくむ中、リムイは身体を一つ捻って息を吐くと、稽古を再開するよう周囲に合図してからゴーリキーに歩み寄る。
    『参ったよ。大した怪力だな』
     怖気付いたように身をすくめる彼に対し、波導ポケモンはポンと肩を叩くと、やや苦笑気味に微笑んで見せた。

     スイが新たな技を習得したのは、その日から三日後の事だった。
     あの後、当然の如く何が起きたのか説明を求めた彼女達に対し、リムイは相手の急所を突いて難を逃れた事と、それまでは波導を用いて耐えていた事を簡単に説明する。
    『人間は「タンデン」や「キ」といった言葉で説明する』と言うその内容は、やや難解で理解するには時間がかかったが、理屈が分かれば後は自然と呑み込めるものだった。同族であるリンは勿論、この力を扱えはしてもやや疎い種族であるスイに理解させる為、臨時の師範役は様々な例えによって彼女の意識にアプローチする。彼は同じ重さの人形とポケモンを比較して、何の力も加わっていないが重量は同じ人形を突き倒すケースと、同じようにポケモンを突き倒すケース、そして修練によってレベルの上がった全く同種のポケモンを突き倒すケースで、完全に内容が異なってしまうのは何故なのかと質問し、そこに変化を生じさせている存在こそが、自分達が鍛え上げるべきものであると説く。リムイはこれによって、人間は勿論自分達ポケモンにも本来共通して宿っている力――気、若しくは波導と言われるものを操る重要性と、それを意識して行う術を、彼女に改めて認識させてくれたのである。
     自分の体内に宿る波導を練る方法は、そこまでいけば教わらずとも自然に悟れた。今までずっと相方のみが自由に出来ていたその力を、やっと彼女も目に見える形で行使出来るようになったのである。初めて放った波導弾は射程も威力もまだまだだったが、得られた達成感は言葉に出来るものではなかった。
    「ほんとに見違えるようになった」と喜ぶ主の言葉通り、彼女達の実力はどんどん伸びていく。まだまだ当の師範役には全く及ばなかったが、嘗ての姿が霞むほどに成長出来たのは間違いない。その事実は、無意識の内に彼女達の内側から、鬱屈した影と躊躇いを拭い去り始めていた。
     自身は兎も角、相方の変化はスイにも分かる。ずっと傍にいただけに、何時も何処か内向的で弱気に感じられた物腰がどんどん明るく前向きに転じていくのが、手に取るように分かるのだ。必要とされぬ余剰物――自分と同じく、より優秀な者を生み出す際の「孵化余り」として生を受けたと言うその劣等感が薄れるにつれ、何処か眩しく感じられるようになった義兄妹の姿は、喜びと共に微かな羨望をも感じさせるものだった。
     それを齎してくれた相手に対する意識も、徐々にではあるが変わってきた。未だ雪辱を期する思い――降って湧いて来た余所者に向かう反骨心は根強いが、リンの質問に答えてポツリポツリと語る生い立ちを傍で聞く内に、反感は水に薄れるように色褪せていった。平凡な何の変哲もない卵から孵った彼は、彼女らと同じく実の親の顔も知らずに、ずっと旅空の下で暮らして来たのだと言う。変わり者として知られた主人について、異種族である人の武術を仕込まれつつ、シンオウの大地を東奔西走する漂泊と戦いの旅は、未だ歳若い波導ポケモンの相貌を、不相応に厳しい形に彫り上げていた。寡黙な出で立ちと鋭い眼光に塗り潰された細やかな情は、時間を掛ければ掛けるほど肌で感じられるものだった。
     何時の間にかすっかり親密になっている二匹のルカリオを眺めつつ、スイはふと自分の内側に、今まで感じた事のない奇妙な感情が息づいているのに気が付いた。何が不足と言う訳でなく、ただ理由も無しに鬱屈している自分自身に戸惑いながらも、彼女はそれを振り払うように視線を逸らし、小鳥達が高みに散った、遠い蒼空に目をやった。

     そのまま駆け下るように、試合の当日が訪れた。
     二対二で行われる試合形式に則り、最後の調整として青年と他の手持ち達も加わった総掛かりでの実戦稽古も無事に修めた彼女らにとり、これ以上の準備は望んでも得られるものではない。目指すは唯一つ――未だ手に入れた事のない、あのちっぽけな赤い宝石の欠片である。
     最初の相手は一蹴出来た。緊張気味に場に上がって来たニョロボンとドテッコツを、彼女らは開始直後の同時攻撃で呆気なく下す。二戦目は前回三位に付けた強豪だったが、自信満々のサワムラーとエビワラーに対し、彼女達は相手の動きの裏をかいて、そのまま一気に勝負を決めた。カウンターを狙うパンチポケモンにはフェイントで応じ、相方に飛び蹴りを見切られたキックポケモンに集中砲火を浴びせて叩きのめすと、当てが外れて立ち竦む残り一体を挟み込み、反撃を許さぬままに打ち倒す。形式にこだわらぬ臨機応変の進退は、千変万化の野良バトルを生活の場として歩んで来た、異邦人達の賜物だった。
     準決勝となる三戦目は、過去に敗れた対戦カード。特性よる圧倒的な瞬発火力を誇るキノガッサとカポエラーに対し、相方のリンは教え込まれたファストガードで対抗する。護りに全力を投じたパートナーが二発のマッハパンチを受け止める中、スイは伸ばした腕を引っ込めようとするきのこポケモンに、強烈な飛び蹴りを叩き込む。慌ててトリプルキックに切り替えたカポエラーの反撃はそれでも十分鋭かったが、雪白の武術ポケモンは打ち付けられる両足を身を低くしてやり過ごし、尻尾による三撃目が旋回して来るその前に、相手の脇腹に突き刺さるようなはっけいを決めた。
     決勝に駒を進めて来たのは、去年も優勝を勝ち取ったチーム。二戦以上勝ち上がった事のない彼女達に対し、上位グループの常連であるダゲキとナゲキは、初顔合わせとなる目の前の相手にも、全く気負う所は無さそうであった。
     開始前に視線を感じて振り向くと、主の祈るような表情が目に入る。何時もは見せぬ思い詰めたような瞳の色に、スイは思わず身体を廻し、まだ若い道場主へと向き直った。彼女の動きにつられ、傍らのリンもそれに倣う。野生のポケモンに追い立てられ、行き場も無くシッポウの町を彷徨っていた彼女達を拾って以来、自らも家族を失っていた娘がどんな思いで普段の毅然とした態度を維持していたのか、深く考えた事はなかった。
     主人である事と、一人の人間である事は別である。ずっと主として通して来たその「親」は、彼女達の反応に自らの揺らぎを覚ったらしく、微かに恥じるような苦笑いを浮かべた後で、大きく一つ頷いて見せる。時も選ばずじわりと滲む惰弱な感傷を振り払うべく、此方も小さく頷き返して応じて見せると、同じ柵(しがらみ)に掛かったらしい、隣の波導ポケモンに合図を送る。パートナーと呼吸を合わせ、勝負の場に踏み込んだ時には、心の中には如何なる澱も蟠ってはいなかった。

     開始と同時に動いたのは、彼女達の方だった。此方を見据えどっしりと構えるナゲキに向け、スイは鞭の一振りのように己が痩身を閃かせると、相手の胸板に飛び蹴りを見舞う。インパクトの瞬間に敢えて全霊を込めず、ヒットした蹴り足をバネに跳ね返るように距離を取ると、間髪入れず掴み掛かって来ようとする、相手の追及を振り払う。圧倒的なパワーを誇る対戦相手の間合いから、とんぼ返りで身軽に引いたコジョンドは、続いて稼いだ距離を即座に詰め直し、両腕に伸びた長い体毛を打ち振って、息もつかさぬ連続攻撃を繰り出した。
     畳み掛けるように攻め込んでいくスイが動を担っているのなら、対となるリンは静を体現していた。少なくとも普段はそうだったし、彼女自身動きの中で勝機を見出すよりは、相手の攻め手に対応して戦う方が得意だった。
     だが、今回は少しばかり事情が違った。確かに自ら仕掛ける事はなかったが、本来じっと相手の構えを伺うばかりのルカリオは、遅れじと地面を蹴って迫って来た空手ポケモンに抗するように、軽快に移動しながら相対する。常に瞬発力を持続させつつ待ち受けている彼女に対し、相手のダゲキは攻め込まれる一方のパートナーに加勢しようと焦りながらも、目の前の敵を捨て置く事が出来ないでいた。
     やがて業を煮やしたように、空手ポケモンが仕掛けて来る。足元を踏み違えたように見せかけた直後、勢い良く襲い掛かって来た相手に対し、既に波導の乱れによって攻撃を予知していたリンは、此方も思いっきり踏み込みつつ、飛び違えるように技を繰り出す。打ち込んだバレットパンチは狙い過たずダゲキの肩に突き刺さり、出始めを潰されたインファイトは不発のまま、擦れ違う彼女を捉えられない。完全に後の先を取られた対戦相手が構えを直し、厳しい表情で睨め付けて来るのを見守りながら、リンは相方が試合の盤面を動かすのを、辛抱強く待っていた。
     一方的に打ち込んでいたスイの攻め手が止まった時、拙速な攻勢に出る事を戒めていた柔道ポケモンは、漸く訪れた反撃の機会を掴もうと、堅固に構えた守りの姿勢を改めた。既に下準備は整っており、攻めに転じる用意は出来ている。相手の攻撃は手数こそ多かったものの、小手先の軽いものに終始しており、蓄積されたダメージは取るに足らないものだった。
     しかし、万全の態勢で身構える彼が見たものは、先程意固地なまでに攻めの姿勢を崩さなかったその相手があっさり此方に背を向けて、ルカリオによって釘付けにされた相方の背後を急襲すべく、一直線に馳せ向かっていく光景だった。謀られたと覚ったナゲキが警告の叫びを上げた時には、俊敏な武術ポケモンは既に攻撃態勢に入っており、標的とされたその相手には、向き直る余地すら無くなっていた。
     俄かに挟撃を仕掛けられたダゲキは、それでも簡単には崩れなかった。彼は正面から来るリンの瓦割りを捌きつつ、まるで背中に目が付いているかのようなタイミングで半身を廻し、コジョンドの襲撃を受け止める。体毛での鋭い一撃を腕で受け、次いで更に攻め立てようとする武術ポケモンに向け、身体をぶち当てるような勢いで踏み込むと、思わぬ反攻に出鼻を押さえられ、動きの止まったその足に、痛烈なローキックを見舞う。捨て身の一撃は功を奏し、脛に痛打を浴びたコジョンドが堪らず膝を折ったのを確認した直後、彼は背後から打ち込まれたはっけいに、自らも天を仰いでのけ反った。全身を貫く衝撃に肺の空気を残らず吐き出した空手ポケモンは、それでも自らの働きに満足しつつ、そのまま平衡を失い引っ繰り返る。
     何とか相手を仕留め終え、唐突に開けた視界の先で、結局カバーの間に合わなかったナゲキが断固とした表情でパートナーに向けて襲い掛かるのを目の当たりにしたリンは、未だ立ち直れていない彼女を救うべく、急いで地を蹴って飛び出した。
     不覚だった。一気に畳み掛けようとした相手の思いもよらぬ反撃に、スイは強かに急所を打たれ、立ち直れぬまま膝を突いた。捨て身の攻勢に出たダゲキ自身はパートナーが打ち取ったものの、駆け付けて来た柔道ポケモンを迎え撃つには、余りに時間が足りなさ過ぎる。歯を喰い縛って立ち上がりつつも、スイは次に来る衝撃に備え、無意識の内に身を強張らせた。
     けれども、止めの一撃は訪れなかった。身近で響いた矢声にハッと顔を上げると、駆け付けたリンが掴み掛かるナゲキの腕を掻い潜り、懐に飛び込む様子が映り込んで来る。相手の注意を自分に逸らす、この指止まれ。一髪の差で幼馴染を救った彼女は、そのまま一気に勝敗を決すべく、分厚い相手の胸板に、力の限りインファイトを叩き付けた。
     だが驚くべき事に、相手はそれを受け切った。全霊を込めた大技を耐えられ、信じられぬように目を見張ったルカリオを、大柄な柔道ポケモンは太い腕で掴まえると、まるで紙細工でも持ち上げるように担ぎ上げ、地面に向けて叩き付ける。受け身も許さぬ強烈な当身投げに苦痛の声を上げる対戦者に対し、彼は一切手心を加えぬまま、力任せに相手の身体を引き寄せると、止めとばかりに技を掛けて投げ飛ばした。小柄な波導ポケモンの痩身が、容赦無いやまあらしによって土煙と共に薙ぎ倒されると、試合の様子を見守っていた周囲から、感嘆の声が木霊する。互いに痛手を受け、今や単騎同士となった勝負の行方は、固唾を呑んで見守る練達の格闘家達にも分からなかった。
     パートナーのルカリオが暴風のような相手の猛威に沈んだ後、何とか痛みを堪えて立ち上がったコジョンドのスイは、自らも肩で息をしている対戦相手と、改めて向かい合った。機動力を殺がれた彼女に対し、相方のインファイトをまともに受けた柔道ポケモンも、隙無く構えているとは言え、上がった息を抑えられていない。演技からは程遠いその様子に励まされ、スイは此処で一気に片を付けるべく、腫れ上がった脛の痛みを押し切って、渾身の力で地面を蹴った。必殺の気概も顕わに繰り出したのは、最大火力である飛び膝蹴り。格闘ポケモン屈指の破壊力を誇るその大技は、既に避ける余力も無いナゲキの身体に、狙い過たず突き刺さる。
     しかし信じられない事に、相手はまだ倒れなかった。岩のような筋骨に覆われた壁の如き柔道ポケモンは、最初に彼女の攻めをしのぐ最中に挟み込んでいたビルドアップでその頑健な体躯を更に強化し、先のインファイトに続くこの強烈な一撃を、真正面から受け止める事に成功する。驚愕の余り息を呑む武術ポケモンに凄絶な笑みを浮かべると、彼は機敏な動作を封じられている相手の身体に腕を巻き、そのまま全身の力を込めて締め付ける。
    『う、く……ぁ……!』
     余りに強烈な締め上げに、スイは掠れた苦鳴と共に身を捩り、為す術も無いまま虚空を仰ぐ。何とか逃れようともがいたものの、蹴ろうが爪を立てようが、丸太のような相手の腕はビクともしない。此処を先途と残った力を振り絞る相手の気迫に、元々剛力とは言い難い彼女の肢体は、完全に圧倒されていた。
     華奢な痩身が反り返り、背骨が軋む音を立てると、ぼやけ始めた視界の内が、限界を越えて赤く色付く。呼吸も出来ぬその状態で、何とか意志力だけで意識を保つスイの脳裏に、不意に何かの啓示のように、嘗ての光景が電光のように閃いた。あるか無いかの最後の力を振り絞り、辛うじて利き腕を動かした彼女は、ほぼ無意識の内に脳裏に焼き付けたあの場所に、自分の指先を這わせていく。何とか運んだその位置に夢中で掌を重ねると、振り翳される絶対的な力の差に抗うように、歯を食い縛って力を込める。
    『ぬぁッ!?』と言う叫びと共に、強固な圧力が一時に緩んだ。肘の急所を力任せに握り締められ、痺れた腕を抱いてたたらを踏む対戦相手に対し、地面に崩折れたスイは直ぐに身を起こし立ち上がると、まるで何かに導かれるかのように、己が利き腕に精神を集中させる。説き聞かされた理が、満身創痍の彼女に対し、本能のままに故郷に向かう鳥のように、為すべき事を囁き掛ける。――波導とは即ち生命の力。己が追い詰められれば追い詰められるほど、生きる力は輝きを増し、鍛えた意志に呼応し従う。
     片腕に込めた意識の刃は何時しか青白い球となり、直ぐに眩いばかりの輝きをもって、彼女の掌に具現化する。練り上げた波導弾を散らす事無く保持したスイは、そのまま何とか立ち直ったばかりのナゲキに向けて地を蹴ると、一切減衰の伴わない至近距離から、力の結晶を解き放った。

     青年の一行は、それから三日の間滞在した。道場主に引き留められたのもあったが、主な理由は徹底的に痛め付けられた、スイ自身の治療の為である。シッポウのポケモンセンターは出来るだけの事をしてくれたが、機械による手当だけでは、傷んだ身体はなかなか元に戻らない。リムイの師でもある青年は整体の知識もあり、彼女の痛みがなるだけ早く取れるよう、物心両面で手を尽してくれた。
     強烈な圧力で歪み掛かった骨格を元に戻すと、後の直接的な治療は、ルカリオのリムイに一任された。指示に従い大人しく療養している間、野外採集に長けた客人が集めて来てくれるオボンやヒメリを口にしつつ、元の師範役に癒しの波導を当てて貰うのが、試合後の彼女の日課となる。嘗ての自分なら直ぐに反発して座を蹴ってしまうような日々だったが、あの頃のような性急な衝動は、もう生まれなくなっていた。
     スイが身を休めている間、リンは活発に道場稽古を続けていた。まだ試合が終わって間がないにもかかわらず、激戦を制して復活を遂げたこの場所は俄かに強豪として返り咲き、出稽古を希望する者が次々と来訪するようになったのである。時々見舞いに来る相方の表情を見れば、充実した毎日を過ごしているのがよく分かった。
     傍らのルカリオは、相も変わらず寡黙だった。話し掛けねば口を開かず、かと言って彼女も口が回ると言うには程遠い性分だったので、勢い場の空気は静かなものとなる。それでも有り余る時間の中、偶に彼女が話題を振ると、黙然と座に着いている彼は別段迷惑がっている様子も無く、穏やかな口調で答えて見せる。遥かな故郷を語るリムイの目は柔らかで、包み込むようなその雰囲気には、何とも言えぬ温かみがあった。突き動かされるように走り続けた長い旅路の末、遠い北の地で勝ち取った栄光を投げ打ち、人目を避けて海を渡った孤独な主人の顛末を、彼は幾分の感傷も交えて語った後、静かな調子で締めくくる。
    『結局、誰にでも時間が必要なんだと思う。自分を取り戻す為に、立ち止まる時間が。鳥はみんな巣に戻るし、どんな船でも湊に入る。進んでばかりの自分達には、それが足りなかったんだろうな』
     珍しく感情を滲ませ語った彼は、最後に今まで見せた事の無い表情で、穏やかに苦笑して見せた。

     出発を控えた最後の夜、寝床の中から彼が消えた。
     前の日もその前日も、深夜に一時場を離れ、何処かへ出かけたのは知っていた。眠っていても何処かで醒めていたスイは、リムイが密かに出て行く度に、夢の中から舞い戻っていた。
     行く先も、知っている。影のように戻って来るルカリオは用心深く、床に入り直す際も夜気一つ揺らさなかったが、微かに漂う残り香だけは、誤魔化す事が出来なかった。昔から嗅ぎ慣れたそのにおいに触れる度、スイは元の寝部屋にいる筈の、相方の姿を思い浮かべる。あまり気が強い訳ではなく、寧ろ臆する場面を見る事の方が多かったにもかかわらず、自らの思いを遂げる為一途に進み続けた幼馴染に、彼女は讃嘆とも羨望とも取れる、複雑な思いを抱いている。此処数日で――特にリムイが、時間について語った日の夜――漸くそれが、「嫉妬」である事に気が付いた。
     何時も先を歩いていた自分。常に前に出て引っ張る側で、試合の内容も幾分かは、彼女の方に分があった。一度も後れを取った事は無いと思っていたのに、今回ばかりは足元にも及ばぬほどに、水を空けられてしまっている。……己の抱いた感情に素直に向き合ったリンに対し、共に歩んで来ていた筈の彼女の方は、それを上手く受け入れる事が出来なかった。
     そしてそのまま、今に至っている。どんな時でもぶつかる事を恐れなかった自分。何者をも打ち負かし、捩じ伏せようと言う気概だけは絶やさなかったその自分が、心に浮かんだ波紋を消せず、寝返りばかり繰り返している。野外に満ちる虫達の鳴き声だけが、虚ろな闇に同じ時間を共有する、唯一つの存在だった。
     ルカリオが戻って来たのは、それから直ぐの事だった。タイミングは何時もより早く、その為彼女は気付くのが遅れ、相手が足を踏み入れた時には、未だ波導の調整は愚か、寝息すら作り終えてはいなかった。案の定、相手は直ぐに気付いたらしく、『起こしてしまったか』と呟くと、小声で彼女に向けて謝罪する。対するスイは、思わぬ不手際に内心激しく動揺しつつも、声音だけは極力平静を装って、『気にしなくても良い』と答えた。
    『偶々目が覚めただけさ。……御蔭でもう身体も痛む事は無い。感謝してる』
     下手な嘘だと思った。詰まらぬおもねり方だと思った。この程度の誤魔化しで、優秀な波導ポケモンである相手をはぐらかそうなど、愚かを通り越して滑稽とすら言えるものだった。
     だがそれでも、彼は何も言わなかった。『そうか』とだけ反応すると、次いで自分の寝床に戻りつつ、暫し無言で寝支度をする。やがてスイが自分の拙さを気に病んで、再び懊悩し始めた時。出し抜けに今度は自分から、別の話題を振って来た。
    『最後の試合、素晴らしかった。一度見ただけであれが出来たポケモンは、自分も含めて知る限りじゃ一匹もいない。……もうこの場所に戻って来る事はないと思うが、此処で教えられた事は本当に誇りに思う』
    『あまりよい師範役ではなかったが、ついて来てくれてありがとう』。そう結んだ相手の声音が未だ余韻を残す中、スイは無言で身を起こすと、音も無く敷き藁を払いのけ、相手の方へとにじり寄った。少し遅れて何事かと顔を向ける波導ポケモンに対し、彼女は開きかけた口元に顔を寄せつつ、そのまま相手に身体を重ねる。疑問の言葉を堰き止められたその口中に舌を絡ませ、相手の足に自らのそれを交差させる内、ルカリオの手は背中に沿って緩やかに滑り、蒼い痩身は彼女を上に乗せたまま、ゆっくりと腰を動かし始めた。

     最初静かに始まったそれは、直ぐに激しく勢いを増し、やがてそこまで間を置かず、闇を揺るがすほどに熱気を帯びる。先に仕掛けたコジョンドが真っ先に為したのは、捉えた相手の身体に残る、友の残り香を消す事だった。兆した本能の赴くままに息を弾ませ、暗闇の底に身をうねらせる今、他者の存在を認識させる全てのものが、彼女にとって敵である。舌を這わせ吐息を浴びせ、己が体液で相手の槍先を洗いながら、彼女は目の前の相手を捻じ伏せ貪り尽くすべく、引き締まった四肢を躍動させる。両眼に炎を点じた武術ポケモンの凶暴なまでの昂りに、感応させられたルカリオが自らも一匹の獣として受けて立つまで、そう長くは掛からなかった。
     重ねた口腔で蠢く舌は互いの急所を弄り合い、毛皮を乱す四本の腕は、攻めの起点と相手のそれへの対抗を兼ねて、しばしば筋張るほどに力が籠る。導き入れられた波導ポケモンは当初こそ胸部の刺を意識したものの、断固とした姿勢でイニシアチブを握ろうとする彼女の側にそんな躊躇いが全く無いのを悟った後は、早々に要らぬ気配りを捨て去った。生涯の大半を修練に捧げたその闘志は凄まじく、鍛え上げられたしなやかな身体は傷付けば傷付くほど、まるで猛り狂うように勢いを増して攻め立てて来る。強烈な締め付けに襲われる度、彼は相手の細腰を折れるほどに抱き締めながら、己が半身に力を込めて耐えしのんだ。
     無論ルカリオの側も、決して守りに終始する事はない。相手の圧力が緩む毎に猛威を振るう反攻は、時が移るにつれ激しくなる一方だった。彼の身体に爪を立て、時に喰らい付いてでも声を上げまいとする相手の意志力を試すかのように、彼は察知出来た限りのつぼに刺激を与え、微かな呻きと共に仰け反りかける彼女を屈服させようと、情け容赦無い攻撃を加える。時として両者の攻めは拮抗し、締め上げるコジョンドの痩身が僅かとは言え持ち上げられる事すらあり、一戦終えた後とは言えまだ若い雄である彼の方も、勝負を収める気配は微塵も無い。互いに譲らぬせめぎ合いの中、両者はそれぞれ言い合わせたように顔を離すと、歯を食い縛って相手の力が緩むのを待つ。結局どちらかが息を切らし、相手の優勢を一時的にではあれ受け入れると、その時だけは双方息を弾ませつつ、互いの身体を微かな喘ぎと共に愛撫しながら、穏やかに求め合うのだった。

     幾度も体位が入れ替わり、衰える事無く続いた消耗戦に決着が付いたのは、果たして何時頃の事だったのか。彼女が遂に攻勢を断念し、堪えを破り声を放って喘いだ時、組み合っていたルカリオも最後の攻撃を終わらせると、力尽きるように精を放った。荒い息遣いと共に視線を合わせた両者は、暫し溢れ出る体液を払いもせず、ケダモノのような応酬を繰り返し合った、相手の目の内を覗き込む。
     ややもして、コジョンドの側が俯いた。相手の胸に顔を埋める彼女の肩が小刻みに震え出すと、迎え入れたルカリオの方は、静かな手付きでその背をさする。滂沱の涙が相手の毛皮を濡らす中、スイは男の身体を掻き抱きながらしゃくり上げ、顔を擦り付け嗚咽した。
     ずっと肩肘を張って生きて来た。顧みられぬ故となった弱さを憎み、妥協を排して走り続けた道程は、例え何者だろうと干渉させぬ、固い決意に満ちていた。傍らの友も恩人の主も踏み込めなかったその領域は自身の存在意義であり、それを忽せにさせない事が、彼女の拠りであり誇りであった。世界は常に壁であり、行く手を塞ぐそれをひたすら打破する事が、心のくびきから解放される、唯一無二の手段であった。
     だがそれは、同時に諸刃の剣でもあった。己の型に寸分違わず嵌った結果、彼女はその代償として、二度と留まる事が出来なくなった。角立て進む長い旅路は、何時しかスイの心を荒々しく干し固め、細かな罅で覆い尽くす。戻れない道をひたすら進む彼女にとり、それは当然受け入れるべき代償だったが、我武者羅に強さだけを追い求める生き方は、結果的に自身の目から、答えを覆い隠していた。身を置いていたその世界に微かな揺らぎが生じた時、彼女は上手く対応出来ず、錆びたレールにしがみ付いたまま、身を強張らせているしかなかった。変わろうとする幼馴染に続けぬままに、その背を見詰めて懊悩し、変化を恐れて嫉妬しながら、見送る事しか出来なかった。――臆していたのは他でもない、自分自身の方だったのだ。
     けれども彼は――リムイは全てを受け入れてくれた。己が惰弱に苛立つままに牙を剥き、衝動的で拙い進退を続ける彼女を、目の前のルカリオは自分に従順な同族共々、同じ目線で扱ってくれた。自分の全てを受け止められる実力と、他者受け入れる揺るがぬ信念に接して初めて、スイは自分が如何に孤独であったかを、自覚する事が出来た。臆病な自分の重なる愚行を咎めもせず、静かに包み込むように覆ってくれるその姿勢は、乾ききっていたスイの心に、震えるような慈雨となり染みた。意を決して進み、一方的に挑んだ闘いにも全霊を以て応じてくれたその胸で、彼女は生まれて初めて他人に縋り、声を放って泣き続けた。
     やがて閊えた鼻先を上げ、湿りきった胸元から顔を持ち上げた彼女の頬を、リムイは己の指先でそっと払うと、額から耳の後ろにかけて優しく撫でた。平素は決して己が頭に手を触れさせようとしないコジョンドは、そんな相手の思いやりに満ちた瞳に応えるように、濡れた目元を綻ばせ、微かにはにかんだような笑みを浮かべる。次いで僅かに口元を開いたスイは、そのまま一言も発する事無く、再び擡げた顔を傾けて、相手の口吻を強く吸った。
     如何に愛おしく感じようとも、時の流れは止められない。潜り込んだ舌先に応じ、再び力を取り戻したルカリオの腰が上下しだすと、彼女は組み合わせた鼻先をずらし、自ら付けた相手の肩の噛み傷に、ゆっくりと舌をなぞらせていく。乱れ始めた吐息に交じり、今度は抑える事無く漏れた喘ぎに、相手は残された時間を惜しむが如く、雪白の彼女の痩身を、力強一杯掻き寄せた。

     差し込む朝の光のように、季節の移ろいはスピードを増す。遠い記憶は次第に過去のものとなり、鮮やかな個々の瞬間を焼き付けながら、思い出へと変貌を遂げた。積み上がる事象に埋もれつつも、決して色褪せぬその体験は、しばしば一個人に留まらず、周囲の者達にも影響を及ぼす。
     道場の佇まいは変わらなかったが、そこにある者達はその限りではない。十指に余る歳月は、多くの実績と名声を、この小さな修練場に齎していた。名実共にこの近辺の筆頭として認知されているこの場所を尋ねる者は、旅のトレーナーから現役の四天王まで、多岐に渡っている。試しの岩は今でも健在であり、この地を訪れる格闘家の多くがこれに願を掛けると共に、付近に点在する道場群に他流試合を申し込むのだが、そんな彼らがほぼ例外無く跳ね返されるのが、見た目は何の変哲も無い、このちっぽけな建物であった。
     師範席の後ろには勝ち取った証が列を成して並び、過ぎた年月に比例して増えていくそれを阻止する事が、周囲のライバル達の最大の課題となっている。――先代の物は今や残っておらず、それを託された旅人の記憶は、ホンの数名の心の中に名残を留めているに過ぎない。
     そして今年も、それを左右する時期がやって来ていた。当然のように代表を決める席が持たれた中で、一匹の若いコジョンドが、朗々と響く声音で訴えていた。
    『母上。今年こそは、私が出場させて頂きます』
     精悍な表情で睨め付けている武術ポケモンの視線の先では、雪白の美しい毛並みに厳しい光を宿した目を持つ同族が、同輩らしい波導ポケモンと共に、道場主である夫婦の傍らに控えている。未だ及んだ事の無い若武者のその口上に、師範役である雌コジョンドは、主の判断を仰ぐ事無く言い返す。
    『なら実力で示してみろ、サイ。道場の代表に相応しいかどうかは、口ではなく己が腕で決めるものだ』
    『望むところです。……今日こそは一本取らせて頂きますよ、母上!』
     闘志満々で勝負の場に出る息子の姿に片腹痛いものを感じながらも、その瞳に宿る強い光が懐かしく。スイは胸に兆した思いのままに、峻厳な面持ちを微かに緩め、ホンの一瞬陽炎のように、淡い笑みの影を揺らめかす。相方と共に隙も無く鍛え教え込み、それでいて可能な限り情を注いだ若者は、強い意欲と精神力を持ちつつも、明るく深い思いやりを示せる、探究心に満ちたポケモンに育った。あの夜授かった二つの卵の内、一方は旅の青年が譲り受け、残る一方は道場の側で引き取って、今日のこの日を迎えている。残った卵から生まれたサイを、彼女は勿論相方のリンも、実の息子同然に親しみを込めて世話してくれた。
     海の向こうには、「花神」と言う言葉があるらしい。春の訪れと共にやって来ると伝えられるその神は、草木に彩りを添える事を業とし、己に課せられた役割を終えると、咲き誇る花々をその地に残し、ただ去って行くのだと言う。吹き過ぎる風のように現れ、必要とされる期間が終わると人知れず消えていくと言うその伝承を耳にした時、スイの脳裏に真っ先に浮かび上がったのは、ふらりと現れた旅の青年と、あのルカリオの事だった。固く強張った己の心を解きほぐし、日陰に寄り添うくすんだ蕾でしかなかった彼女達を誇らかに花開かせた恩人は、掛け替えのない贈り物を残し置き、自身の前から姿を消した。――例えあの夜が現(うつつ)の夢に過ぎなかったとしても、自分はもう二度と、行く道に迷う事は無いだろう。
     二匹の母親から学び取れるものは全て受け継ぎ、漸く誇れるだけの気骨を見せ始めた若武者は、嘗て魅かれたその相手を思わせる強い意志の輝きを、何気ない所作に覗かせる事が増えている。後は経験さえ積み上げれば、何時かは彼女を飛び越えていくに違いない。
     だが、無論それは今ではない。あの遠い記憶に繋がる日々、ただ圧倒されるばかりであった父親の実力に達するには、この目の前の息子は未だ全く、足元にも及ばぬと言って良い。
    『その言葉がどれだけ身の程知らずであるか、今からしっかりと教えてやる。覚悟しろ』
     冷たい声音の裏側で、湧き上がって来る誇らしさを噛み殺しつつ。道場の師範役を務めるスイは、記憶の中で光芒を放つ相手の姿に為り変わるべく、挑戦者として歩み出した息子の前に立ちはだかる為、ゆっくりと闘いの場に進み出た。



    ・後書き
     ポケモン小説wikiさんの第八回仮面小説大会にエントリーさせて頂いた作品。
     ツイッターで『官能小説書くと描写力上がる』的なやり取りを見て、「それぐらいなら俺にでも出来る……(アミバボイス)」と身の程も知らず突っ込んだ問題作。結果、本職の方々の官能描写のレベルの高さに完全に圧倒されて見事「うわらばァ……(爆砕四散)」するオチに。思い上がってました済みません土下座すると同時に、やっぱり自分は得意分野以外じゃまともな描写は出来ないなぁと猛省しました。
     幸い企画作品としては御評価頂けたものの、もうこの手のジャンルは書くまいと固く心に誓った次第。餅は餅屋に任せておけば良いのだ……。

     なお作品背景に触れると、昔書いた『酔って候』の過去編に当たります。後登場してる青年は『雪の降る夜』なんかに出てきたあいつ。また、序文を一粒万倍日に出したので覚えてる方もおられるやも知れません。


      [No.3734] 僕はアレリア 投稿者:αkuro   投稿日:2015/04/29(Wed) 18:34:52     40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:○°。(・◇・) 。°○

    僕はアレリア
     
     僕はアレリア。ランクルスの♂で、みんなと一緒に戦ってる。でも、僕の出番はなかなかこない。
     僕の役目は摩訶不思議な空間でも仲間が動けるようにサポートすること。黒い鉄珠は重いけど、仲間のためならへっちゃらさ。
     
     僕はアレリア。名前はとても高級な果物からつけたんだって。小さい頃の僕にとっても似ていて、甘くてみずみずしいんだって。いつか食べてみたいな。
     
     僕はアレリア。僕の体を覆う緑のぷにぷには、なんでも防いじゃう。砂嵐の中だって、霰の中だって戦える。でも、僕より早いキノコたちが撒いてくるほうしは防げない。いつも眠っちゃうんだ。眠ってる僕もかわいいって、ご主人様は言うけれど。
     
     僕はアレリア。緑のぷにぷには、僕を守ってくれる。ぷにぷにが無いと、僕はすぐひんしになっちゃう。僕の思い通りに動かせるぷにぷには、まるでロボットみたいだ。


      [No.3503] 命の選別 投稿者:art_mr   投稿日:2014/11/15(Sat) 11:57:46     118clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    命の選別


     六年生の夏休み、おじいちゃんが入院することになった。お父さんが運転するワゴンに乗って、家族で病院に向かった。普段通らない道を通って、見慣れないビルや家をみて、少しずつ全く知らない景色になっていく。青い空に白く雲が浮かんでいて、その下はしばらくすると、道以外どこまでもどこまでも緑の田んぼになった。お父さんとお母さんはおじいちゃんと難しい話をしていた。大人の話は私にはよくわからなかったけれど、まるで分かっているようなふりをした。そうすればなぜかおじいちゃんが元気になれるような、そんな気がしたからだ。いつの間にか車の中で眠っていたみたいで、気がついたらどこかの駐車場にいた。お母さんにせっつかれ、目を擦りながらドアを開けると、目の前に大きな病院があった。グレーの大きな建物二つが真ん中の通路で一つにつながっていた。建物の入口をくぐると、うっすら消毒液のにおいがした。少し黄味がかかった壁と、薄暗い照明のせいで、自分の色がいつもよりぼんやりしてみえた。

    お父さん達が受付で話している間、私は壁に貼ってあるポスターを見ていた。
    「予防しよう ○○症 おかしいとおもったらまずは病院へ!」
    「ーーは頭痛・肩こりの原因になります! まずは病院へ!」
    大きな待合室を奥へ奥へと進みながら、私はまずは病院へ! と勧めるポスターをたくさん眺めていた。その中で、一際目を引くポスターがあった。それはただ大きな画用紙にマジックで、しかも、あんまり上手じゃない字で、
    「ポケモンの対戦相手求む!! 僕は伝説は使いません。 六◯二号室 大野元基」
    とあった。それをみて、思わずつぶやいていた。
    「ポケモン…?」
    もう一度読んでそれ以上の意味を読み取ろうとしたけれど、
    「あらっ」
    「まただわ」
    振り返ると、私のすぐ後ろに看護師さんが二人いて、あっさりとポスターをはがしてしまった。急いで読んだ内容を心にしまう。
    「……六○二号室。ポケモン。 ……大野 …君」

     暫くすると看護師さんに案内されて、みんなでおじいちゃんが入る病室に向かった。三○四号室から入ってすぐ右が、おじいちゃんの部屋になると説明された。上からぶら下がっているカーテンで部屋を六つに分けているみたいだ。六人部屋なのかも。カーテンの向こうに人がたくさん居る気配がして、耳をすますといろんな声が聞こえてきた。すぐにお医者さんが来て、お父さん達と難しい話をしていた。私も大人しく聞いているふりをしようとしたけれど、
    「メイ、ねぇ部屋をちょっと出ていない?」
    「えっ?」
    「これからお母さん達は大事な話をするの、ちょっと、冒険してらっしゃい」
    強制的かつ不自然に部屋を追い出された私の、向かう先はもちろん決まっていた。さっきみた六○二号室、大野君の部屋だ。暫くうろうろするとすぐに階段が見つかって、六階まで上った。六○二号室の前で、入り口の横についていたプレートを確認する。
    「あった!」
    声が思っていた以上に廊下に響いて、慌てて口を押さえたけれど看護師さんに気づかれてしまった。焦って逃げようとしたけど、足が全然動かない。看護師さんの優しそうな笑顔に、私はぎこちなく頬の端を持ち上げた。あはは。
    「こんにちは。お友達のお見舞い?」
    「え……はい」
    もういっそ、そういうことにしてしまおうと思った。
    「相手は? 大野君?」
    「……はい」
    「クラスメイト? すぐ、案内するね。左手奥に居るからね」
    そういうと、さっさと入っていってしまった。私は全身に冷や汗をかいていて、心臓がどうにかなってしまいそうだった。そもそもどうして、こんな事になってしまったのか。あのポスターか。いや、私のせいでしょう。
    看護師さんが、
    「大野君、お見舞いよ」
    とカーテンを開けるのを、私は絶望的な気持ちでみていた。思わずギュッと目を閉じる。
    「お見舞い?」
    少し低い、かすれた声。恐る恐る目を開けると、流れ星の描かれた黒いバンダナを巻いた同い年位の男の子が、上半身を起こして座っていた。切長で鋭い一重瞼に見据えられて、誰? と言われているような気がしてしまう。この場からいなくなってしまいたい。でも、男の子の両手に小さな最新小型ゲーム機が握られているのをみて、ポスターの人だやっぱり、とひそかに確信した。
    「ポスターみたの」
    私が早口でそう言った瞬間、大野君の表情が、警戒から驚きへ変わっていくのが分かった。看護師さんは私たちを交互にみると微笑んで、ごゆっくり、とかなんとか言って出て行ってしまった。

    「……誰だか、わかんないけど。ポケモンやってんのか? 俺と戦おうぜ」
    当たり前だけどそう切り出された。私は更に冷や汗をかきながら、
    「私……ポケモン持ってないの」
    「え」
    「ポスターをみて、つい。どんな人なんだろう、と思っちゃって」
    「えー」
    「ごめんなさい」
    謝ると大野君は、
    「べ……別にいいよ。しょーがねーもん。ポケモンやってないならさ」
    と拗ねたように言った後、名前は? と聞いてきた。
    「私、メイコ」
    「メイコか、オレはモトキ。大野元基さ。見ての通り入院してる」
    「うん」
    「オレ昔からポケモンやってるんだ。病気が見つかる前から、ずっと」
    「へえぇ」
    「メイコは今、何年生?」
    「メイで良いよ。そう呼ばれてるし。私、六年生」
    「ってことは、十二歳か」
    「うん」
    「じゃ、オレと一緒だ」
    「大野君も?」
    「モトキでいい」
    そう言って、モトキは私の方をみた。
    「色、黒いんだな」
    肌の事を言っているみたいだった。
    「夏だから。色々遊んでいたら、いつの間にか黒くなってたんだ、プールとか行ってたし。後はサッカーの練習したりとか、鉄棒とか」
    そこまで言って、モトキの透き通るように白い肌が目に入った。慌てて口をつぐむ。
    「ご、ごめん」
    「なんで謝ってんの」
    「え」
    「オレには夏休みとかなくて、そういう風にみんなで遊べないからかわいそうとか思ってんの?」
    「そんな……」
    モトキ、みんなって言った? でもみんな……みんなって誰の事? 反論したくて、でも出来なくて目を逸らしたけれど、モトキの目はさっき初めて会った時と同じように、まっすぐに私を捉えて離さない。
    「そもそも何でポケモン出来ないのに、オレのとこ来たの? なんなの? メイ、あんたオレの事哀れみたいの?」
    違う、と言いたかった。でも口に出さなくても読み取られたみたいで、
    「違うの? じゃあ何? なんでここ来たの?」
    「あのポスターを貼っているのはどんな人なんだろうと思って……。ポスターをみて、ポケモンは分からないけれど気になったから来たの、それだけなの!」
    殆ど叫ぶようにして、そう答えた時だ。
    「そこまでだ、モトキ」
    私の後ろから低い声がした。モトキがパッと顔を上の方に向けた。切れ長の一重瞼で睨みつけ、明らかに納得していない表情をしていた。
    「だって!」
    「男子たる者、言い訳をするな。大体せっかくお前の所に遊びに来てくれたのに、なのに何だお前、そんなかわいい女の子に突っかかって」
    「頼んでない」
    私も声の主の方を振り向いた。相手は黒いニット帽を被った、優しそうな瞳をしたお兄さんだった。年上の人の年齢は私にはよく分からなかったけれど、高校生くらいかなと思った。
    「ごめんね」
    お兄さんが大きな手を私の頭にのせて、撫でてくれた。モトキは口を尖らせたままお兄さんを睨んでいる。
    「モトキの所へ遊びに来てくれてありがとう」
    「いいえ」
    「あいつの作ったポスター見て、来てくれたんだってね。こいつすぐ部屋抜け出して、対戦相手募集のポスター貼って来ちゃうの。ポケモンやってる子は少なくはないんだけど、ここは病院だから常に遊べる訳じゃないしね。一緒に遊んでくれる相手が欲しいんだよ、こいつ」
    「……」
    「さっき、モトキがつっかかって行ったでしょう? こいつね、凄い負けず嫌いなんだ。だからきっと感じたんだろうね。メイちゃんは外で思いっきり遊べるのに、自分は病院の中に居るから君と同じようには遊べない。メイちゃんが悪いと思って黙ったのを、こいつは同情だと思って怒ったんだ。そうだろう?モトキ」
    モトキは押し黙ったまま、私を睨んでいる。私は深呼吸した。
    「私は、モトキと友達になりたいって思ったんだ。最初からいやな事言っちゃったかなと思ったから、黙ったの。嫌われたくなかったんだよ。だって、そうしたら友達になれないじゃん……」
    さっきとは違って、するりと言葉が出てきた。
    「……」
    「モトキ、こういう時はなんていうのかもう知ってるよな」
    「……」
    「モトキ」
    「友達になってやっても……いいぜ」
    「モトキ、違うだろう」
    お兄さんが呆れたように呟いた。でも次の瞬間、モトキはごめん、と下を向いて目を伏せた。
    「ありがとう」
    私も同じ言葉を返すと、モトキはそっぽを向いた。でもお兄さんがモトキの頭を撫でると、なんと、モトキの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。お兄さんが微笑む。
    「よしよし」
    「オレ……オレも、本当は友達になりたかった」
    私は笑った。
    「大丈夫、もう、なってるよ」
    「本当?」
    「うん。あっ、もういかなきゃ。今おじいちゃんが入院しててね。二十分くらいしたら戻りなさいって、お母さんに言われたんだ」
    「そっか……また来る?」
    「絶対、また行く。おじいちゃんのお見舞いじゃなくっても、絶対絶対また、モトキの所に遊びにいくよ」
    「ほんと? じゃあオレ、待ってるから」
    モトキはそう言って笑った。初めて見る笑顔だった。
    「今度はポケモン見せて」
    「まかしとき」
    「じゃあね」
    そう言って、病室を後にした。その後の帰りの車で私は、外の道を真剣に見つめていた。あの角を曲がる、あのお店の脇をずっとまっすぐにいくとか、そんな風に。自転車も練習しておこう、そうすれば一人でも来れるに違いない。
    その晩はベッドの中で、いつまでもいつまでもモトキとポケモンと、あのお兄さんの事を考えていた。


     乾いた風が、優しく少年の頬を撫でていった。少年が歩きながら空を見上げると、突き抜けるような真っ青な空が、紅葉でいっぱいの並木道の上に広がっていた。秋だった。赤。オレンジ。燃え立つような緋色。落ち着いた深紅。それから黄色。綺麗に色づいた葉が風に巻き上げられて重なり合い、地面に新しいグラデーションを描いていく。その葉をゆるく踏みながら、少年は歩いていた。その彼の横を紫色のポケモンが軽快な足取りで追い抜いていった。少し先で立ち止まると、少年の方へ振り返る。
    「キュィーッ」
    一声鳴いて、二股の尾をゆったりと振る。
    「待てよ、エーフィ」
    少年が微笑むと、エーフィは額に抱く珠をルビーのように光らせて応答した。はやくしないと、おいてっちゃうよ……まるで、そういっているかのように。
    やがて少年とエーフィは、大きな塔にたどり着いた。錫の大きな鳥ポケモンの像が出迎える入り口を通り、穴や壁に阻まれながら、時折どこからともなく現れる坊主のトレーナーに驚かされながら、塔の一番上までたどり着いた。薄暗い塔の屋上で軋んだ扉を開け放ち、外へ飛び出す。荒れ狂うような風に煽られ、体ごと吹き飛ばされそうになる。グッと足に力を入れ、少年は片手で視界を庇いながら、前を見据えた。見なくても、エーフィが隣で刃物のような緊張感をまとっているのが分かる。強い風に押されながらじりじりと進むと、刹那、白い爆発的な閃光に一瞬で視界を塞がれた。思わず少年は両手で顔を覆った。その瞬間に吹き飛ばされたのかは分からなかった。奇妙な、上下が分からない無重力の世界に投げ出されたように、少年の体は急に軽くなった。目を閉じ手で覆っているはずの暗い視界の向こうから、白い光が網膜を破ってくる。暫くすると、一面真っ白い視界の端からうっすらと、ゆるゆると、何かの色が見えた。夕暮れのような薄い紫、早朝の澄んだ空のような薄い青、萌黄のような緑……その変化に、少年の心がカチリと反応した。虹だ、虹の色と同じだ。程なく橙と赤が混じってきた、眩いその色彩の中に大きなシルエットが見えた。虹色の鳥だ、と気づいた瞬間、世界が暗転した。

    「モトキ! モトキ!! モトキってばッ」
    甲高い声と共にゆさゆさと体を揺さぶられて、我に返った。
    「……」
    「もう十時だよ! まだ寝てたの?」
    「夢……」
    夢を見ていた。凄く綺麗な夢を。オレ、エーフィと一緒だった? 一緒に居た場所は、あの鳥のポケモンは、何だっけ……
    「夢見てた?」
    まだ心臓がドキドキしていた。興奮冷めやらぬあの夢の内容を思い出そうとするのを遮って、ベッドの脇からちょっかいを出してくるのは、アキラだ。同い年でポケモンをやっている、一番の親友。いや、戦友というべきか。
    「ああ」
    「どんな夢?」
    「いや……あんま思い出せない。忘れちゃった」
    自分だけの中にしまっておきたかった。
    「なぁんだ。ね、じゃあバトルしよ、戦おうよ」
    くりくりとした目でこっちを見てくる。目覚めた後の体のだるさで気がついた。自分の体調が、今日はあまりよくないと言う事に。でも、バトルはしたい。バトルをすれば、体調も良くなるかもしれないし……なんて。
    「なぁ、オレ横になったままでも良い? ルールはどうする」
    軽く言ったつもりだったが、アキラの表情が氷のように固まったのが分かった。早口で言う。
    「モトキ体調よくないでしょ」
    「体調良かったら十時まで寝てないって……それに売られたバトルは……買うしかないだろ」
    「……」
    「特に……アキラなんかに、売られた日には……」
    そう言ってアキラを見たら、泣きそうな顔をしていたのでぎょっとした。
    「おい」
    「……」
    「アキラってば」
    「……売らない」
    「……は?」
    「バトルは売らない。だからまた今度にしよ」
    「……なんだそりゃ」
    一瞬よくわからなくて、アキラの方へ捻っていた自分の体を戻して天井を見上げた。十秒くらいたって気がついた。それは、多分優しさなんだろうと思った。
    「ごめん」
    「ううん。でも今度、モトキが僕の方に売りに来てね、バトル」
    「ああ」

    暫くぼぉっとしていて、また眠りかけていた頃だ。
    「ねぇ」
    急にアキラがこちらに身を乗り出して来た。まだ居たのか。眠気が吹き飛ぶ。
    「なに」
    「あの女の子、またモトキの所来てくれたね」
    目配せしながらにこにこ笑っている。オレは一瞬で血の気が引いた。
    「……どっから見てた」
    「隣のベッドから」
    「隣、人いるぞ」
    「モトキが知らない間に仲良くなったんだ」
    しれっと言う。
    「なんでだよ」
    ツッコミ所が多すぎてどこから対処したらいいのか分からない。オレが睨んでも、アキラは我関せず、といった体だ。それどころか、変化球をぶん投げて来た。
    「モトキ、あの子のこと好きなんでしょ?」
    「は?」
    「見れば分かるって。モトキ、凄いうれしそうだった」
    なんか、関節が痛くなってきた。

    昨日の午後の事だ。いつものようにポケモンをしていたオレの元に、来客が有った。
    「やっ」
    ベッドを間仕切るカーテンを断りもなくあけると、浅黒い肌にタンクトップを着た、短髪の女の子が顔を覗かせた。オレは不意打ちすぎてそのままの姿勢で固まってしまった。
    「な……」
    そいつは呻いたオレに手を振って、
    「約束通り、遊びに来ました」
    律儀にそう言って、オレのベッドの脇の椅子に腰掛けた。
    「え」
    「あれ、私の事忘れちゃった? 私今日すっごい楽しみにしてたんだから、モトキに会いにいくの。病室抜けるのちょっと大変だったんだよ、怪しまれて。楽しみに……してたのに……」
    覚えてないなんて、としょんぼりとうなだれたその姿を見て、さすがに慌てた。
    「んな、んなわけねーだろ!!覚えてる、覚えてる。メイコ。メイ、って呼ばれてるんだろ。先月の今頃おじいちゃんが入院して病院に来て、オレの作ったポスター見て遊びに来てくれて、また会おうねって言ったんだ」
    「覚えてるじゃん」
    「あのな、忘れたなんて言ってない」
    オレがちょっと睨みつけると、メイは舌を出して、おかしそうに笑った。ちょっと、あれ、って思った。
    「メイって……こんな風に笑うんだな。それに結構喋るのな。前会った時は、すげーおとなしいやつだって思ったのに」
    「だってはじめてだったし」
    「なにが? オレやお兄さんに初めて会ったからってこと?」
    「いや…そうじゃなくて、入院してる人に会ったのが初めてだったから。私が知らないってことで、なんか、失礼なこととか言っちゃったら嫌だし」
    それはちょっと、違うんじゃないの。
    「別にメイが何言っても、重要なのって、言われたオレやお兄さんが失礼って感じるかどうかなんじゃねえの? 別になんでも良いじゃん。もう、友達なんだから」
    「はー……そっか。モトキ頭良いね」
    「メイはもっと頭使え」
    「ねぇ、ポケモン見せて!」
    「話聞いてる?」
    そう言いながら、ちょうど遊んでいたポケモンの画面を見せる。
    「ここ、どこ?」
    なだらかな丘の上を、自転車に乗った主人公が行く。場所は町と町の間、どこかの道路だ。メイに問われて、自分があんまり道や町の名前を覚えていない事に気がついた。ポケモンの種類、技、特性。そう言う事にしか興味がなかったんだ。
    「分からない。……あ、いい事思いついた。ちょっと待って」
    画面を操作して、初めてポケモンを貰った町へ飛んだ。家が三つしかないね、とメイが言う。
    「ここでゲームが始まって、博士からポケモンを貰うんだ。……この施設でね。オレだけじゃなくて、他の幼なじみ二人が居て、そいつらと一緒に選ぶんだ。タイプは三種類から選べた。草・炎・水タイプ」
    「どれにしたの?」
    「オレは水。草は水に、炎は草に、水は炎に強いってタイプの説明が有って、オレの家でバトルして、そっからめくるめく旅のスタートだ。図鑑を貰って、色んな町に居るジムリーダーを倒して、最終的に四天王とチャンピオンを倒してエンディングだな」
    「モトキは今、どの辺?」
    「オレはもうクリアしちゃった」
    「えっ、クリアしちゃったら終わりじゃないの?」
    「クリア後に行ける所とか、イベントもあるんだぜ。終わった後は、四天王やチャンピオンのレベルが上がるから更にレベルアップを目指せるよ」
    「ふーん」
    オレは最寄りのポケモンセンターに行って手持ちを入れ替えると、バトル用のポケモンを見せた。サザンドラ、ダイケンキ、シャンデラ、エーフィ、ウォーグル、エルフーン。
    「この…エルフーン、すっごく可愛いね!!あとエーフィも。シャンデラも可愛い!!」
    メイがはしゃいだ声をあげる。女の子はこういうのが好きなんだろうか。
    「メイ、ピカチュウ位は知ってる? どっちが可愛い?」
    「エルフーン!」
    そんなに気に入ったのか。確かに可愛い顔してるけど。
    「ポケモンって、六匹しかいないの?」
    「いやいや。ポケモンはもっともっとたくさん居るよ。何種類か忘れちゃったけど…その中から、手でもって歩けるのは六匹。他の捕まえたポケモンはパソコンに預けとける」
    「ほぉー」
    「やってみる?」
    「やれるの?!」
    「やれる。ちょっと待っとき」
    机の中の引き出しからソフトをもう一つ取り出して、さっき自分が遊んでいたソフトと交換した。
    「オレ、ポケモン二つ持ってるから。片方、メイにやるよ」
    「本当?! モトキってお金持ちなんだね」
    「いやいや。オレがずーっとポケモンにしか興味がなくて、そればっかりやってるから。親がソフトの発売日に両方買って来てくれたんだけど、オレは片方しかやらないし」
    「そうなんだ。ありがとう」
    メイはオレを見て笑った。かわいいと思ってしまった。
    「DSはためてたお小遣いで買えるから大丈夫。楽しみっ!! 早くやりたいなぁ」
    「楽しみだな」
    新しいポケモンゲームを始める時のワクワクは、オレにも良く分かった。

    「で? メイちゃんの事、好きなんでしょ?」
    「なんで」
    「嫌い?」
    「嫌いな訳……」
    突如、一気に体中に悪寒が走った。このままだとまずい。
    「アキラ、帰れ」
    「あ……怒った? ごめん、だから……」
    「オレ今日、熱ある。うつったらやばい……やばい……はやく……」
    「わかった。ごめん」
    アキラは短く言うと、さっとオレの病室を離れた。ぼーっとして来た頭でそれだけ確認すると、安心した。アキラの言う「好き」の意味を、自分の心はどうしたいのか考えているうちに、段々、段々、意識が漂うように遠のいていくのが分かった。


     モトキに貰ったゲームソフトを進めるうちに、私と周りの世界が少しずつ変わっていった。
    のめりこむようにポケモンをやって、朝起きてから寝るまで、学校でも休みの時でもずっとポケモンのことを考えていた。暫くすると親からクレームがきた。いい加減にしなさい。勉強しなさい。しかたがないから、勉強については休み時間に、図書館で全部終わらせるようにした。帰ってゲームをしたい一心で、ものすごくはかどった。帰ってからはずっとポケモンが出来た。成績はそんなに悪くはないと自分でも思う。それさえちゃんと維持しておけば、親だって何も言わないだろうと思った。
    でも遅くまでゲームをやっていたから、朝は凄く眠かった。お昼になっても眠かった。授業中は寝ないように、ノートの脇に捕まえたポケモンを描いた。ミジュマル、シママ、シキジカ……。描いていなければ起きていられなかった。うっかり寝て授業中に目立つのは怖かった。寝たが最後、誰の口から先生に告げ口されるか分からないし、物を隠されたり、ノートが無くなってしまうかも知れない。常に気が抜けなかった。六年生が始まってすぐの五月、女子のリーダーに、彼女が目をつけた男の子と私が仲良くしているのを見られて以来、私はクラス中の人に無視されている。今のところ、蹴られたり叩かれたりした事はない。そういうんじゃなくて、無視されたり、わざと「メイコは居ない」っていう風に扱われている。そのくせ、私と隣の席になると机を露骨に離したりする。見えていないのかいるのかよくわからなかった。クラスの休み時間、皆が思い思いに友達と騒いでいる間、一人で座っているのはそんなに苦痛じゃない。だけど、体育の時間のように、グループを組んで何かをやらなければいけない時は辛かった。いつも一人だけ余った。嫌々入れてくれた班はいつも不機嫌な顔をしていた。私も、自分なんかと組まなければいけなくて、ほんとうにすみませんと思っていた。本当は、心がえぐられるようにいつもキリキリ痛んでいたのに。でもそのうち、何も感じないようになった。何も考えないようにすれば何も感じないでいられるって、気づいたんだ。自分で自分を消せる魔法を使えたら、どんなにいいだろうと思っていた。

    モトキに初めてその事を打ち明けたのは、もう夏も終わる頃だった。その頃になると、私は宿題のない日は良く自転車を走らせて病院に通うようになっていた。
    「イジメ?」
    くりくりした目を見開いて、椅子に座ったアキラがまっすぐに私の瞳を見つめた。場所はモトキの居るベッドの脇。三人それぞれゲームを進めていた。
    「しょうがないよ。私一人で何が出来る訳でもなし。もう少しすれば卒業するし」
    「オレには分かんないな」
    モトキも視線を上げて、まっすぐに私を見つめてきた。
    「なんで、皆で寄ってたかってメイに意地悪するんだ。オレ、全然わからない」
    「だから、私がリーダーの女の子の気に触れちゃったからだって」
    「私が好きな人だから、仲良くならないでって。邪魔しないでって。その子も、直接そう言えば良いんだよね」
    アキラがニコッと笑顔を見せた。仲良くならないで、なんておかしいけど、そう言われてみればそうかもしれない。
    「そいつ、何様なんだ? 個人的な嫉妬にメイを巻き込むなんて。好きなら自分で直接アタックすりゃあ良いじゃないか。人を使って相手に嫌がらせするなんて、馬鹿だろ」
    「……」
    「友達とは仲良くするのが普通だろ。ケンカしたって、絶対後で仲直りして、また仲良くなるのが普通だろ! そりゃあ気の合わない人だって出てくるかも知んないけど。だからって、嫌いだからって! 嫌がらせするなんて馬鹿みたいだろ、放っときゃあ良いじゃん。意見、違うんだからさ。メイに意地悪したり、無視したり……そいつらの事、オレは許さない。絶対許さない」
    モトキの素朴な疑問は、フタをしていた私の心の奥底の感情と強く共鳴した。
    「なんで……」
    なんで、二人ともこんな風に言ってくれるんだろう。二人とも病気で、私なんかよりずっとずっと、本当に大変な思いをしているはずなのに。でも私は仕方がない、自分のせいだ、って全部諦めていた。何も感じないようにすれば良いって、嘘で自分を守っていた。こんなに力強い言葉で、全力で私の味方をしてくれる人なんて、今まで誰もいなかった。自分でさえも自分の味方じゃなかったのに、そんな風に肯定されてしまったら、どうしたら良いのか分からない。多分、泣きそうな顔になっていたんだと思う。
    「クラスで……誰も、メイちゃんの味方が居ないなら。僕達がなるよ。なっ、モトキ?」
    「オレ一号な」
    「えーっ、ずるい!! 僕一号が良いーっ」
    じゃれあう二人をみて、おかしくて、久しぶりに友達と話せた事も相まって、楽しくて、二人の言葉がうれしくて、体の芯が熱くなった。気づいたら、笑いながら私は泣いていた。

    「はじめの一歩はみんなで踏み出そうって」
    「せーの!!」
    モトキに借りたゲームソフトの中で、幼馴染み三人ではじめの一歩を踏み出すシーンが有った。
    友達がゲームの最初からいるんだ。ポケモンも友達。しかも、一緒に旅に出られるなんて。世界が友達で溢れているなんて、すごく羨ましい。私はモトキとアキラの事を思い出した。現実はゲームみたいに三人一緒に旅立てる訳じゃない。二人ともとっくにゲームはクリアしてしまっているし、バトルでは到底勝てそうもない大先輩だ。でも、同じ現実では三人とも同じ「六年生」で、友達だった。

    「僕さぁ、抗がん剤入れられて、暫くうわーって具合悪くなって、ちょっとずつ元気になって、またしばらくすると抗がん剤入れられるのね。僕らの胸に入ってるカテーテルから入れられるのね。片方から抗がん剤入れて、もう片方からは必要な時に採血するの。サイクルは1ヶ月くらいでね。治療ってそういうもんなんだけど」
    ある日、私が二人にああだこうだ言われながら三人目のジムリーダーを倒して、一息ついた所で、アキラがざっくりと自分の治療の説明をしてくれた。
    「強い抗がん剤入れられるとね、もう本当に全然駄目になっちゃって、動けなくなっちゃう。高熱が出たり、吐いたりしてさ。時間が過ぎてくのが遅くって。そう言う時はね、思い出すんだ」
    アキラが窓の外を見た。綺麗に手入れされた病院の中庭が見える。
    「僕のポケモンが技を喰らった時の事を。強い技を受けて、もうHPがほんのちょっとしか残ってない時の事を。どくどくとか、でんじは受けちゃった時の事を。そうやって、僕だけじゃない、僕の育てたポケモンも一緒に僕と乗り越えてるんだって、そう思い出すんだ」
    そういって、物思いに耽るように目を閉じた。隣でモトキがそっと笑みを浮かべていた。多分、同じ事を考えてるんだろうなって思った。だけど、
    「そうそう、サザンドラに流星群喰らって、殆ど瀕死になってたりとかさ」
    「そうそう……ってそれモトキのサザンドラの事でしょ! 僕のポケモン、そんなに弱くありません」
    「そうですか」
    「そうです。全く、油断も隙も無い」
    口を尖らせたアキラをみて、モトキも私も笑ってしまった。
    「はは……でも何となく分かるぜ、その気持ち」
    モトキがいたずらっ子のように瞳を輝かせて、アキラに同調した。
    「だろ?」
    「新しい抗がん剤を試したとき、オレもきつかった。口はやけどで、体は麻痺状態の上に瀕死。食いもんも何も食べられないし、のどから血は出るわで。普通は状態異常って1つしかなんないけど、参ったよ」
    「そうそう」
    笑っているけれど、そんな状態になったらいったいどういう気持ちになるのか想像もできなかった。辛くて苦しいんだろうなってことしか分からなかった。でも、そんな事をもう笑って話している二人は、とってもかっこいいとも思った。
    「まぁ、メイは体は大丈夫なんだからさ。辛かったらオレ達みたいに、ポケモンの事思い出せよ。同じポケモントレーナーなんだからさ」
    「でもモトキ、フツーの学校でそんな、まひとかやけど状態になるの? なんないんじゃないの? メイちゃん、どう?」
    「うーん……なんないかも」
    そりゃあ、可能性としては叩かれたりする事はあるかもしれないけど、瀕死になったりする訳じゃないなぁ、と思った。
    「あっ、でも氷状態にはなる……かもしんない」
    私は学校の教室を思い出した。挨拶する相手は誰もいない。一緒に何か話す相手も誰もいない。仲良くなりたくても、存在を認めてもらえなければ、そもそものスタート地点にも立てない。多分、凍っている。感覚も常識も、色々全部。
    「メイちゃん、大丈夫?」
    何でもないように見せていたつもりだけど、アキラに顔を覗き込まれてしまった。
    「大丈夫。……ごめん」
    「負けんなよ、メイ」
    いつの間にかモトキが切れ長の目をしっかりとこちらに向けていて、そう言った。
    「負けんな。メイ、もっと強くなれ。オレ達は体力勝負だもん。お前はオレ達より体力有るだろ、心の勝負なんだろ。オレ達はいつも応援してるよ、がんばれ、がんばれって思ってるよ。友達だもん。強くなって、勝ってこいよ!」
    そうモトキに言われるその時まで、私は自分の事で頭がいっぱいだった。でも初めて、病気と戦っている二人に比べて、たかが三十五人に存在を無視されている私なんて、なんてお気楽で、ちっぽけなんだろうって思えた。目の前が一気に開けた気がした。
    アキラが一足先に病室に戻って、モトキと二人にきりになった時、そっと耳打ちされた。
    「辛いかもしんないけどさ、辛い事があれば笑うといいぜ。ニュースで見たんだ。辛くても笑ってれば、脳がそんなに辛いって思わないんだって。アキラだってあんな事言ってたけど、無菌室から出て来た時はやせてがりがりになってて、しばらく口もきけないくらいだったんだ」
    「そう、なんだ……」
    「喋る体力も残ってなかったんだって。生きるのでいっぱいいっぱいだった。でも、麻痺だのやけどだって今は、笑うだろ」
    「そうだね」
    「だからメイも大丈夫、きっと、そうやって笑える日が来る」
    「ありがとう」
    「約束な、約束だ。オレ達は病気と。お前はクラスのやつらと。お互いに勝って、笑おうぜ。絶対、負けるんじゃねぇぞ。でもポケモンはもっと早く強くなって、早くオレ達と戦えるようになれよ」
    「うん」
    そう頷いた時、何か柔らかい物が頬に触れた。えっ、と思った瞬間、キスをした相手が一重瞼を細めて、照れたようなうれしそうな顔をしているのが見えた。

     キラキラと雪が舞っていた。穏やかな太陽があたりを照らし、積雪の反射で眩しい道を、一人の少年が進んでいた。周りの細々とした木々には殆ど葉もなく、雪の重みだろうか、随所で枝が折れていた。片腕で日差しを遮りながら、少年は雪を踏みしめ、歩を進めた。足下でキュッキュッと音が鳴る。少年の視線のやや先に、紫のシルエットがあった。四肢に二股の尾を持つポケモンが、ゆらゆらと尾を振り合図する。こっちだよ、とでもいうように。
    「エーフィ、待って」
    少年がそのポケモンの名を呼ぶと、白い息が漏れた。エーフィは立ち止まったまま、少年が追いついてくるのを待った。その時だ。
    「寒くても大丈夫ッ!!」
    突如、左前方の雪中から男がずぼ、と飛び出して叫んだ。不意うちすぎて、少年は声も出なかった。
    「熱い心を持ってるからね!!」
    ずいずいっ、と目前まで迫られ、
    「……えーっと」
    少年は思わず目線をそらす。なんかだか少し、暑苦しい。
    「……」
    「えっ、なに?バトル?」
    うんうん、と男は腕組みしながら激しく頷いた。大人のくせに変な人、と少年は思う。

    「エレブー、雷パンチ!!」
    ぼってりとした腹の目立つ、黄色い虎模様のポケモンが長い腕にエネルギーを溜め、バチバチと火花を散らす。
    「エーフィ、いいね。いつものあれでいく」
    少年のエーフィが耳をピクピクと動かし返答する。エレブーがその身体に似合わぬスピードで突っ込んで来た。まだ準備の出来ていないうちに、強烈な一撃を見舞われた。エーフィの顔が苦痛に歪んだのを見て、少年の心臓の鼓動が、寒さのせいでなく加速する。その一方で少年は分かっていた。大丈夫、あいつはこんな一撃で倒れるようなやつじゃない、と。予想通りエーフィは身体を二、三度ふるわせ、すぐに立ち上がった。
    「瞑想」
    少年の呟きに、エーフィは瞳を閉じた。精神を一つに集中させ、体の外側の力を抜く。足に使っている意識を抜いて、攻撃用の力に昇華する。エレブーはややエーフィから距離を保っていた。様子見と行った所だろうか。いや違う、蓄電だ、と少年は読んだ。身体に蓄えられた青い電気エネルギーが、体の至る所から溢れ出ている。見る間に、両手にその青い電気を寄せ集めていく。もうすぐ来る。
    「何をぼやぼやしてんの、少年!」
    雪男が叫んだ。
    電撃波、命中率100%、と少年の知識が告げていた。ならば、こっちも応戦だ。人差し指を立て、
    「ぶつけろ、エーフィ!!」
    電気の球に向かって、まっすぐ指を差す。その声に合わせ、紫色のエネルギーが捻り上げられていく。
    「サイコキネシス!!!」
    練られた膨大なエネルギーごと、エレブーにぶつかる。ガァンとぶつかり合う重い音。

    「やるね、あんた」
    男が、倒れたエレブーをボールに戻しながら呟いた。
    「まぁね」
    相応の時間をポケモンに賭けて来ている。謙遜などしていられない。男は面白そうに笑うと、質問を投げかけて来た。
    「良いね、少年。名前は?」
    「オレの名前は……」

    「モトキッ!モトキってばッ!!」
    甲高い声と一緒にゆさゆさと体を揺さぶられて、オレは目を覚ました。前にもこんな事があったような気がする。
    「あ? なんだよアキラ……」
    部屋の中はまだ薄暗い。最近日が短くなって来たとはいえ、すぐにまだ、早朝だって事に気がついた。
    「お兄さんが……お兄さんが!!」
    泣きそうな、いや、実際アキラは泣いていた。大きな瞳からぼろぼろと涙をこぼしながら、お兄さんがお兄さんが、とうわ言のように繰り返す。嫌な予感に、全身が鳥肌たった。

    お兄さんは二十歳で、遠い所へと旅立った。病院の前で、たくさんのお医者さんと看護師さんがお兄さんを見送った。オレはお兄さんをただ見送る事しか出来なかった。十二のオレ達と、八つ離れたお兄さんの二十という数字が、果てしなく遠いもののように思えた。二十になったらお酒が飲めるんだよ、と嬉しそうにしていたお兄さん。優しかった。お兄さんは本当に優しかった。オレが初めて入院したときに、優しく声をかけてくれた。アキラとお兄さんと三人で折り紙を折った。副作用で殆ど寝たきりになっていた時、お見舞いに来てくれた。メイと初めて会った時、頭を撫でてくれた。オレはお兄さんに、なにができたんだろうか。してもらうばかりで、なにも出来なかったんじゃないだろうか。けれども、そんな感傷に耽る間もなく、アキラも病院を去ることになった……といっても、退院だけど。メイになら、また来いよって何にも考えずに言える。だけどアキラに対しては、また来いよとは言えない。本当はそう思っていたとしても、言っちゃいけないんだ。

    病院の前の並木道から、イチョウの黄色い扇がくるくると舞い落ちてきた。薄暗い、クリーム色の病院の待合室の玄関で、洋服に身を包んだアキラは手を振った。
    「モトキ、僕、家に帰っていいよって先生に言われたんだ」
    そんな事は知っている。遊んでいる時はもちろん、対戦している時にまで、今日まで何回も何回も、自分でそう言っていたじゃないか。オレが黙っていると、アキラは右の方に視線を向けた。先生とアキラの父さんと母さんとが何やら話し込んでいて、こっちには気づいてないみたいだった。ふいにアキラはオレのパジャマの袖を掴んで引き寄せ、オレに耳打ちした。
    「僕、がん、治ってないと思う。なんで帰れるのか分からないんだ」
    「えっ……」
    それ、どういう意味だ。問う間もなく、アキラはパッとオレから手を離し、眩しそうに目を細めて笑った。いや、笑ってない。オレに、じゃあね、と振っている右手が、小刻みに震えていた。意外にアキラの手が大きい事に、初めて気がついた。アキラ……。
    イチョウの葉が落ちて、アキラが居なくなっても、オレはポケモンを続けた。アキラと会う前から、ポケモンはずっと日常の一部だったし。同時に、以前から試していた事を、一人で続けてみようと思った。ポケモンのストーリーをクリアして、お互いとのバトルを繰り返したオレ達は、ある準備を始めていたんだ。その方法は、ずっと前に貼紙をした時に対戦した人が教えてくれた。お兄さんより年上だったその人は、ポケモンに関して、オレやアキラとはちょっと違う知識を持っていた。オレ達はどのポケモンを手持ちに入れるか、覚えさせる技や、持たせる道具は何にするか……それだけを考えていた。バトルにおいて大事な事はそれしかないと思っていた。その人は違った。
    「シュゾクチ。セイカクのイッチ。フリ。これが重要なの」
    「?」
    「??」
    首を傾げるオレ達に、そのお姉さん……そう、お姉さんだった……は、その内容を丁寧に説明してくれた。育てたいポケモンとメタモンを一緒に預け、卵を孵す。何回も、何度でも、育てたいポケモンにあう性格の子が生まれるまで。そこから能力の高いポケモンを選んで、育てて強くする。ポケモンを「選ぶ」事でバトルに勝つ方法を知っていたんだ。それは、いわゆる「厳選」と呼ばれているものだ。
    ちなみに、オレ達ではそのお姉さんには手も足も出なかった。というか、一匹も倒せなかった。そんな事も手伝って、次の日からオレとアキラは、お互いと戦わない時間を使って、卵をたくさん作り始めた。一日に何度も何度も、飽きずに道路を往復して卵を孵した。ひたすら卵を孵した。オレのエルフーンとシャンデラは、この厳選で作った。手塩をかけて作っただけに、強いし、凄く愛着がある。メイがポケモンを初めて手にした頃にすっかり手持ちを入れ替えてしまったせいで、暫くこの「厳選」をやっていなかった事に、アキラが居なくなってから気がついた。よし、サザンドラでまた厳選を始めてみよう、メイにも勧めてみよう、とこの時のオレは思ったんだ。


     何かがおかしかった。言葉では説明しにくくて、私の語彙では足りなかった。夏休みが終わってから学校の行事が増えて忙しくなって、一ヶ月と少しの間病院に来られなかった。しかも、おじいちゃんが退院しちゃった。退院しちゃったって言い方は良くないか。中々前みたいにお見舞いに行った後に、モトキ達と遊ぶってことが出来なくなってしまった。お菓子を買って、やっと懐かしい六◯二号室に顔を出したときのことだった。いつもみたいにモトキのカーテンを開けた。久しぶりだからきっと、モトキは喜んでくれると思った。今まで何してたんだって怒られるかも知れない。怒られたかったっていうのは変だけど、やっぱり、モトキに会いたかった。もちろん、アキラにも。カーテンを開けたら、モトキはやっぱりいつもと同じように、ゲームをしていた。
    「モトキ」
    「メイ」
    画面から目線を上げて、モトキは薄く微笑んだ。元々あんまりモトキは、アキラみたいに感情表現が豊かじゃない。だけど、何かが違った。何かがおかしかった。まるで何かを諦めてしまったような、何かを我慢しているような、そんな表情をしていた。視線は私に向けられているけれど、どこか私を突き抜けてその先を見据えるように虚ろだった。何が有ったのかすぐにでも聞いてみたかったけど、とりあえずいつも通りで居ようと思った。
    「久しぶり。ごめんね、なかなか来れなくて」
    「……」
    モトキは少し間を置くと、
    「……いや」
    と言ったきり、黙ってしまった。
    「何かあったの?」
    「……」
    「なんか、今日のモトキ……今日しか最近、知らないけどさ……おかしいよ。ねぇ、何が有ったの」
    「退院した」
    「……」
    「退院した。……アキラが」
    「え」
    不意打ちを喰らった。もう、アキラはいないんだ。でも病気が治って退院したんだ、そう思った。だから、
    「そっか……寂しいな……でも良かったね、治ったんでしょ?」
    「……」
    モトキは唇を噛んだ。その時とっさに、”オレはまだ退院できない”って思ってしまったかと思って、ごめん、って謝った。モトキはかぶりを振った。
    「治ってない。……アキラは、あいつは治ってないって言った。言ったんだ……なんで帰れるのか分からない、僕は治ってないと思うって、そう言ったんだ……」
    私は言葉が出なかった。その意味している事が良くわからなくて。モトキは俯いて、言葉を絞り出すように紡いだ。
    「治ってないのに帰れるっておかしくないか。なんで……まさか、あいつもしかして……って、思うんだ……でもそれ以外の理由が考えられないんだ……ずっとその事ばっかり考えるんだ。ポケモンをやってるとき以外は、その事しか考えられなくてさ……」
    「……ねぇ、モトキ」
    モトキが私の方を見た。
    「でもモトキがそうやって、落ち込んでもさ、色々考えてもさ……」
    「言われなくても分かってるよ。意味ないんだろ」
    「いや、そうじゃなくってさ、なんでそれを反動に出来ないの……いつもみたいに」
    「反動?」
    私はモトキとアキラから、強さを学んだと思っていた。
    「”そう言う時はね、思い出すんだ”って……アキラはそう言ってたよ、そうでしょう? ”辛い時は僕だけじゃない、僕の育てたポケモンも一緒に僕と乗り越えてるんだ”って……」
    「アキラは別に、今具合悪くないだろ。それと何の関係があるんだよ?」
    何だか話が噛み合ない。
    「人だって同じでしょ、ポケモンだけじゃないよ。アキラがモトキの側に居たみたいに、モトキだってアキラの側に居るんだよ。私だって……。苦しくても、辛くても、離れてても側に居るって分かってるから、頑張ろうって思えるんでしょ」
    「アキラはオレの事なんか、今忘れてるさ……メイには分からん」
    「なんで」
    「家に帰れるってことがどんなに嬉しい事か、分からないだろ? いつも自分の親が近くにいて、好きな食べ物でいっぱいの食事が出て、好きに兄弟と遊べる。思い出す訳ないだろ、病院の事なんて」
    「……そうかなぁ」
    「それにオレ、今厳選ばっかやっててバトルしてないし」
    「厳選?」
    「そう」
    そういって、モトキは持っていたゲーム機の画面を見せてくれた。元々の手持ちのポケモンは、”シャンデラ”しか居ない。残りは全部、”タマゴ”ってなってた。
    「他のポケモンは? エーフィとか、エルフーンは?」
    「今はボックスに預けてある。このタマゴの中身は、全部モノズだ」
    見た事も聞いた事もないポケモンだった。思わず首を傾げると、モトキはああ、と頷くと、
    「モノズはジムリーダーを全員倒して、チャンピオンロードに行かないと捕まえられない。オレのサザンドラは、もともとこいつから二回進化してる」
    「へえぇ……」
    「いっぱいいるから、やるよ。どれが良い?」
    そう言ってモトキは、ポケモンセンターのパソコンを開けた。
    「どうしていっぱい、モノズがいるの? モトキにはもうサザンドラがいるじゃん」
    「厳選をやると沢山タマゴを孵さなきゃいけないんだ」
    「さっきから言ってるその厳選って……何?」
    「厳選ってのは、生まれつき強いポケモンを探すこと。その後は上手く育てて強くするんだ。ポケモンにはみんな個体値があるから、この値が良いポケモンを探して、そいつを親にしてタマゴを孵すんだ。良い親からは良い子が生まれる確率が高いから」
    「……」
    良くわからない。
    「良い値と同じ位大事なのが、そのポケモンの性格だ。それなら分かるだろ」
    「うん、私のフタチマルは”おだやか”だし、メブキジカは”むじゃき”だよ」
    「性格で能力の上がりやすさも決まるんだ。ポケモンの強さを見る画面で攻撃力とか、防御力が出てる所、あるだろ。上がりやすい能力は赤く、上がりにくい能力は青くなってるだろ。分かる? 例えばフタチマルなら、特防が赤く、攻撃が青くなってるはずだ」
    私は慌てて自分のソフトをつけて確認した。モトキの言う通りだった。全然気づかなかった。
    「サザンドラで欲しい性格は”ひかえめ”なんだ。特攻が上がりやすくて、攻撃が上がりにくい。メイのフタチマルとちょうど逆でさ。特攻の技しか入れないから、攻撃の能力は必要ない」
    「ふーん」
    サザンドラはいつも強くて、流星群を何度も打ってアキラのポケモンをなぎ倒してた。そんなに強いポケモンなのに、やんちゃでもなければゆうかんでもない、”ひかえめ”なポケモンが良いって言うのがなかなかイメージできなかった。変なの。

    私にポケモンの知識はそんなになくて、知識がないから余計にそう見えたのかも知れないんだけれど、モトキのボックスは異様だった。一面が同じポケモンで埋まっていた。モノズって言っていたっけ。ボックス一個じゃない。三個も四個もモノズでいっぱいだった。
    「うわ……」
    「どれが良い?」
    「どれって……」
    「好きなので良いよ。オレここのポケモン逃がしちゃうし、いずれ」
    「え」
    「そこに入ってるポケモンは、性格も個体値も欲しいやつじゃなかった」
    「ねぇ、モトキ……さっきからずっと思ってたんだけど、こういうの……おかしくない?」
    モトキが顔をしかめる。
    「おかしい? 何が?」
    「だって、せっかく生まれたのに……生まれたばっかりなのに。みんなまだレベル1なのに。育ててあげれば良いじゃん、せっかく生まれた命なんだから」
    「強くならないやつを育てても、意味ないだろ」
    悪気はなかったんだろうと思う。モトキは自分のポケモンを育てる事について言っただけだったと思う。でも、私は感じてしまった。自分と、自分のポケモンまでまとめて弱いって、ストーリーを進めて来た事も、レベルを上げて強くなって来た事も、まとめて意味ないって言われた気になってしまったんだ。気づいたら声を荒げていた。
    「意味がないなんて、そんなわけないじゃん!」
    「最初から強いやつを選ばないと強くなれないの! オレはもっと強くなりたいんだ!!」 
    「おかしいよ! 命を選ぶなんて絶対おかしいよ! 生まれつき強くなかったら捨てちゃうなんて、そんなのおかしいよ!」
    モトキのパジャマの肩をつかんで、揺さぶりながら私は叫んでいた。でも次の瞬間、自分が何を叫んだのか気づいて、全身の血の気が引いた。
    「あ……」
    手をパジャマから離した。でもごめんとは言えなかった。自分が間違ってないって思ったから。モトキだって自分が間違ってないと思ってると思った。やっぱり何も言わなかった。そんな事に無性に腹が立った。
    「帰るね」
    「ああ」
    手を振るわけもなく、振り返る事もなく、私は病院を後にした。その帰り道、鮮やかな秋の夕日を見ながら思った、どうしてこんな事になったんだろうと。でも、私は自分を曲げるつもりはなかった。モトキに私の気持ちに気づいてほしいとも思わなかった。私に知識がないだけで、ポケモンを強くする為には一般的な方法なんだろうと思ったから。強さが命を選ばなければ手に入らない物なんだとしたら、私は強さなんていらない。その変わり、知りたいと思った。どうして、モトキがあんなに強さを求めるのかを。

     持てるだけのタマゴを持って、道路を往復する。何も考えずに十字キーを操作すると、画面が主人公に合わせてスクロールする。その時のオレはぼーっとしてて、何も考えてない。考えてないってことにさえ、最近まで全く気がつかなかったくらい。自転車でひたすら道を往復しながら、我慢して、粘って、時々待ちきれなくなって、タマゴがもうすぐ産まれそうか確認する。実際にタマゴが孵る瞬間はこの上なく最高だ。やっと産まれた、ありがとうっていう嬉しさ。ステータスを見るまでのドキドキ感。でもステータスを見ると大抵、自分の望んでない性格のポケモンだった。そんな時は思わず、見なきゃ良かったって思ってしまう。それでも十回に一回位は望んだポケモンが産まれるから、そいつをポケモンの個体値を見てくれるジャッジの所へ連れて行く。
    でも大体あっさりと、
    「平均以上の能力を持ってますね」
    終了だ。”平均以上”。つまり、普通ってことだ。オレが欲しいのは”素晴らしい能力”のポケモンだった。それが難しければ、せめて次点の”相当優秀な能力”のポケモンが欲しかった。どうしても生まれつき能力の高いポケモンが欲しかったんだ。モノズはタマゴが孵化するのに必要な歩数が多いから、何日も、何日も、勉強もしないで、朝から夜までずーっとタマゴを孵していた。タマゴを孵しながらも、時々、メイの言った事が頭に引っかかっていた。”命を選ぶなんておかしい”って、そう言っていた。現実世界では確かに、倫理上良くない事は知っている。でもこれはゲームの話で、現実の話じゃない。ゲームなんだから、強くなる為には何をしたって良いはずだ。良いはずだと思うんだ。一方でメイの言う事も正しいような気もしている。そいつは認める。例えばゲームのストーリーを進めてると、ポケモンを奪う”敵”が出てくる……主人公がそいつを倒そうとする理由は、当たり前すぎて説明もされないんだけど、人のポケモンを奪うのは間違っているから。単純に比較してみると、じゃあ、ポケモンを選ぶのは間違ってないのか? いらないポケモンを”逃がす”って曖昧な表現しかされてないけど、それってつまり、”捨てる”ってことじゃないのか? それは主人公が間違っているんじゃないか? そうなってくる。メイの方が正しい気がする一方で、自分のしていることも間違っていない気がしていた。現に強さを求めて、タマゴからポケモンを選んで厳選している人なんて、たくさんいるじゃないか。バトルで強くなる為には、強いポケモンが居る事が大前提なんだ。メイはあの時ケンカして以来、病院に来ていない。オレがずっと病院に居るからこっちから仲直りしに行けないし、そもそもオレ自身が悪いと思ってないから謝れないし、結局仲直りは無理なのかもしれなかった。メイはポケモンを始めたばっかりだけど、厳選でケンカになるとは思わなかった。アキラもいなくて本当に、厳選しかやることがみつからなかった。
    そんな日が暫く続いた。前に試したステロイド剤と抗がん剤じゃダメだったみたいで、父さん母さんと、先生が相談して新しいのを試す事になった。治療は大っ嫌いなんだけど、やらないと病気は絶対治らない。オレの病気は風邪みたいに、自然に治る病気じゃないから。それにそろそろ、同じ病室の皆が頑張っているのに自分だけ毎日ずっと厳選しているのに、飽きていた。あっと言う間に手術の日になって、手術室であっさり気を失い、病院で意識を取り戻した時には、もう起き上がれなくなっていた。それが熱によるものなのか、腫瘍を抑える薬が効いているのか、それともオレはもう駄目になったのか、全然分からなかった。前に試した薬の時も、口に凄い口内炎が出来たり、高熱が出たのは覚えているけど、ねぇこんなにきついもんでしたっけ、副作用って。怖くて聞けなかったし、そもそも聞く力はどこにも残っていなかった。ふと、薬漬けにされたポケモンって、こんな感じになるのかなと思った。強くなる為に、薬をいっぱいからだに入れられて……そして……。ただ、その先を考える力が今のオレには残っていなかった。そのポケモンは辛いだろうなと思った。酸素マスクの中で息をして、吐いて……吐くたびに、体力の炎がどんどん、弱まっていく気がした。ただ生きている。それだけしか、今のオレには出来なかった。閉じた瞼の向こうに人がいる気配がする。父さんと母さんと、先生かな。でも、目を開ける力は今はない。

    意識が少しずつ、遠のいていく。

     クラスで突然席替えが有った。方法は先生による完全なるくじ引き。皆がぶつぶつ文句を言ったけど、私はほっとしていた。先生が決めるなら、「メイコと同じ班なんて嫌だ!!」って面と向かって言われなくてすむと思ったから。幸運な事に誰にも何も言われなかったし、一番後ろの左端席を引き当てた。この一番端っこの席なら、クラスで目立たなくてすむ。まぁ元々クラスでは、”メイコなんて居ない”って言う事になっているんだけども。波を立てないように、誰にも気づかれないように、なるべくひっそりと過ごしたかった。昼休みは相変わらず図書館で全部宿題をやるようにしていたけれど、授業の合間の短い休み時間は、クラスで本を読む事にした。端っこの席は思った以上に居心地が良くって、一人で本を読んでいても、全く寂しいと思わなかった。ちなみに他の女の子達はカラフルな手帳や文具やらを持って、テレビの話題で騒いでいた。全然気にならなかった。他の事を考えていたから。
    私が借りたのは子どもの病気についての本、がんの本だ。モトキやアキラと話している時、二人がよく口にする言葉が気になっていた。例えばコウガンザイとか、カテーテルとか。それが何を意味するのか良く分からなかった。あまりにも自然に二人が話しているから、聞き返せなかった。しかも私は、そもそも根本的な所で、二人が何で入院しているのか知らなかった。分かったフリをしていれば病気が良くなるって信じていたおじいちゃんの時と違って、自分でちゃんと調べないといけない、調べないと分からないと思った。病院にいるから、子どもの病気なんだろうという見当はついていた。図書館で二、三冊当たってみて、二人ががんだっていうこと、コウガンザイは、がんに抗う薬、抗「がん」剤だっていう事が分かった。次の日には、小児がんの四割が白血病だってこと、白血病はがんの一種って事が分かった。次の次の日には、多分、二人共確実に白血病なんだろうってことが分かった。治る確率は八割だとか。八割で二人とも元気になって、中学生になるのかな。
    でも二割の確率で、治っても再発するとあった。二割の確率で二人は死んじゃうかも知れない。もう会えなくなるのかも知れない。

    ――「アキラは、自分は治ってないと思う、なんで帰れるのか分からないって、そう言ったんだ……」
    あの時、モトキは見た事も無いくらい動揺していた。誰かに助けを求めるように、でも誰とも触れ合いたくないように、視線をあちこちにさまよわせて。決して私と目を合わせようとしなかった。私はどうしてモトキが、アキラの事であんな風にうろたえるのか全然分からなかった。また具合悪くなったら、入院すれば良いじゃないって軽く考えてた。モトキを励ましていたつもりで、私は理想ばっかり語っていた。反動だどうのって語っていた。自分が恥ずかしくて消えてしまいたくなった。あの時モトキは怖かったんだ、アキラが死んじゃうかも知れないって思って。だって、二割の確率で死んじゃうんだから。そう唐突に理解した時、ぎゅっと心臓を鷲掴みにされたように胸が痛くなった。あんなに一生懸命病気と闘っていても、治らないで死んじゃうかも知れないんだ。今まで、二人が死ぬかも知れない可能性を私は考えた事がなかった。二度と会えなくなっちゃうかも知れないんだ。アキラが居なくなったらどうしよう。足が震えた。急に周囲の時間がぼんやり霞んで、音が遠のいたように思った。

    「――さん、――芽衣子さん」
    ふと気がつくと、目の前で先生が私の名前を読んでいた。クラスの人達が全員振り返って、私の方を見ていた。どうやら、五時間目の授業が始まっていたらしい。
    「――さん、教科書も出さないで、ぼんやりして……どうしたんですか? 具合でも悪いんですか?」
    具合悪いのは私じゃない。そう叫びたかったけど、黙っていた。先生はかがみ込んで私と目を合わせると、
    「具合悪くなければ、教科書を出して」
    「出しません」
    思った以上に大きな声が出た。クラスで数ヶ月ぶりに発言したせいで、音量調節が上手く行かなかったのかも知れない。同じ教室に居る人間が、一斉に息をのんだ気配がした。
    「私は具合悪くありません。でも、教科書も出しません。もう授業にも出ません。だって私は、このクラスに”居ない”っていうことになってるんですから」
    アキラが居なくなってしまうことに比べたら、クラスなんてちっぽけなものだ。算数の授業だって。もう、何もかも、どうでもいいんだ。どうにでもなっちゃえば良いんだ。酷く投げやりな気持ちになりながら、それでも、冷静に周りを見ている自分が居た。先生が驚いた隙に机の中の教科書をかき集めて胸に抱え、するっと通路の脇をくぐり、自分のランドセルを掴んでそのまま走って教室を飛び出した。
    「――さん!!」
    追いつかれてたまるか。追いつかれやしない。私は不思議な高揚感に包まれていた。全てがどこか霞がかった、遠い夢の出来事のようだった。

    「モトキ、ねぇ、モトキってば」
    ゆさゆさと体を揺らされる感触。耳になじんだ懐かしい声。まさか、と思う気持ちが胸いっぱいにこみ上げて、いやいやあいつは退院したはずだ、と理性がそれを押しとどめる。
    「ちょっと、モトキ聞いてるの? どうせ寝たふりなんでしょ?」
    やっぱりそうだった。声で確信して、無視して反対側に寝返りを打つ。
    「ちょっと!! やっぱり起きてるじゃない、モトキ、起きてー! 起きてー!!」
    耳元で叫ばれて仕方なく目を開けると、想像に違わず、そこにはアキラが立っていた。心なしか、少し日焼けした気がする。照れているような恥ずかしがっているような笑みを浮かべながら、
    「えへへ……やっぱり、帰って来ちゃった」
    「……そうか」
    「聞いて聞いて。こんどね、モトキの隣のベッドになったの」
    「え」
    「いつでも遊んだり対戦したり、話したりできるよ、また」
    「そうだな」
    また会えた事が、素直に嬉しい。だけど一方で、アキラの直感が正しかったんだと思うと、胸が締め付けられるように痛んだ。
    「……」
    「モトキ、大丈夫だよ」
    「え」
    「僕はもう一回頑張るつもりだから、大丈夫。負けないよ」
    迷いの無い笑顔に、オレはつられて笑った。こいつは同い年の割に子どもっぽいようでいて、本当は強い芯のある、したたかなやつなんだ。本当のポケモントレーナーなら、挨拶代わりに対戦しようってなるはずだ。だけどオレ達は、どちらからとも無く、とりあえず近況を話し合う事にした。アキラは坊主頭に短く毛が生えてきていて、まるでスポーツ刈りにしたみたいだった。くりくりした目の上には長い睫毛が生えていた。ちょっと羨ましい。
    「学校に行ったんだ。院内学級じゃない、普通の人が通う学校は初めてだったんだ、僕……」
    アキラは目を細めて語った。
    「人がすっごくいっぱい居て。びっくりしたよ。先生が僕の病気について、ちゃんと皆に説明してくれた。授業も受けた。図工が面白かった。先生のリンゴの塗り方が本物そっくりでびっくりしたんだ。ただ赤く塗るだけじゃなくてね。陰とか考えて、ちょっとしか塗らない。でも、本物みたいなの! 分かる?」
    全然分からないけど、とりあえず頷く。
    「ポケモン対戦もしたんだよ。クラスで出来た友達と」
    あ、これなら分かるな。
    「どうだった?」
    「勝ったに決まってるじゃん」
    「へぇー」
    「みんなね、伝説のポケモンばっかり使うんだよ。でも僕はモトキと同じで、伝説は使わないでしょ。使わなくても僕が勝つから、みんな、うっそーって顔してた」
    「へえぇ」
    「楽しかったよ……短かったけどね」
    「……」
    「お待たせ」
    「え?」
    「モトキの番」
    「オレ? オレはもう一回新しい治療を始めたよ。二週間たってやっと、食事もとれるようになって来たところ。それだけさ」
    「メイちゃんは?」
    なんでこいつは、触れられたくない所をストレートについてくるんだ。
    「別になんもねぇよ」
    「そんなことないでしょ? 何か有ったからそんな風に言うんでしょ?」
    「最近メイは来てないから。学校も始まったし、忙しくなったんだろ。全然会ってない」
    「もう好きじゃないの?」
    アキラは視線を外さずに、まっすぐに質問してくる。
    「モトキはメイちゃんの事嫌いなの? それとも、メイちゃんがモトキの事嫌いになったの? あんなに仲良しだったのに。僕の居ない所で、何かあったんでしょ。メイちゃんが学校始まったからって、急にモトキの所に来なくなる訳ないじゃない。だって、初めて有ったときは夏休み前なんだから」
    アキラは変わった気がする。年の割に子どもっぽい見た目と喋り方は相変わらずだけど、根っこは一回り逞しくなって帰って来たように思う。なんて言うか、鋭くなった。こいつ。
    「ケンカした」
    アキラが驚いて、瞬きする。
    「ケンカ? なんで?」
    「厳選で」
    「厳選」
    アキラがオレの言葉をなぞる。まるで今その言葉を思い出したかのように。
    「厳選で……」
    考え込む時、宙に視線を彷徨わせるのはアキラの癖だ。今のこいつになら、厳選でケンカになった理由までしっかり見透かされそうで、なんか嫌だ。
    「いいじゃん、なんでも。ポケモンやろうぜ」
    「メイちゃんは、嫌だったんじゃないかな。僕たちと違って、厳選そのものが」
    だからその話題はもう良いってば、そう割り込んだけれど、アキラは無視して話を続けた。
    「メイちゃんは草むらで捕まえたポケモンを、大事に育ててたよね。でも僕たちは大量に卵を孵化させて、命を選んで、逃がして、最終的に一匹しか育てないじゃない。それが嫌だったんだよ、自分のやっている事が、意味ないって、弱いって言われたような気になっちゃったんだよ。きっと」
    「……」
    そうなんだろうか。メイの気持ちも、分からなくはない。だけど、だけど……
    「オレは強くなりたいんだ。誰にも負けたくない。バトルでもっと強くなりたい。その為に出来る事だったら、卵を孵すのがどんなに単純で、苦痛で、辛くてもやる。自分の力でそのポケモンを育てて、もっと強くなりたい……強くなりたいんだ。だから厳選するし、厳選をしたいんだ……まだ途中だけど」
    一皮むけたアキラに比べて、オレは同じ言葉を繰り返しているだけのような気がした。だけど心の奥底からわき上がってくる思いを止められなかった。
    「倫理的には命を選ぶ事は間違ってるんだろ。そんなこと分かってる。だけどポケモンはオレの生活の中で唯一、自分で何をするか選べるんだ……選べるんだよ。使うポケモン、どの四技を入れるか、性格、持ち物……厳選はその中の一部なんだ。草むらを自転車で駆け回ったり、色んな人と対戦したり、ポケモンを捕まえたりするのもそうだけど、オレ、ゲームの中では自由で居たいんだ……ゲームの中でしか、自由で居られないんだ」
    喉の奥から言葉を絞り出しながら、同時にオレは驚いていた。そんな事を自分が思っていたなんて、今まで全然気がつかなかった。喋りながら奥から奥から涙が溢れてきて、かっこわるいと思いながらも止められなかった。滲んだ視界の向こう側で、アキラは共感と悲しさの入り交じった複雑な表情をしていた。そして言った。
    「モトキ、バトルしよう」

    バトルでのアキラは変わらなかった。手持ちは不動の六匹、オノノクス、メタグロス、ドダイトス、ウルガモス、ラプラス、バンギラス。本人曰く一番最後に「ス」がつくポケモンは、強いらしい。否定はしないけど、肯定も出来ない。その方程式じゃ、オレの手持ちで強いのは一匹もいないことになる。
    アキラの一匹目はドダイトス、オレはダイケンキだった。冷凍ビームの一撃で沈める。二匹目はラプラス。水VS水氷だと、重要なのは技の相性になる。ラプラスは耐久性も覚えられる技も、総合的なステータスもダイケンキより上だ。手強い。ただ、素早さだけはこっちの方が強いから、先手は打てるはずだった。一撃で倒せなければ多分やられるだろう、そう思った。技はおそらく、雷か。一撃で倒す可能性に賭けて、草結びを選んだ。草結びはその名の通り草タイプの技で、相手の体重が重い程効果がある特殊な技だ。二百二十キロあるラプラスには結構な威力で、かつ、相性で二倍のダメージを与えられる。急所に当たれば倒せるかと思ったが、残念ながら耐えられた。アキラの番だ。技は予想通り、雷。三割の確率で外れるので命中率こそ若干難がある技だが、それに十分見合う程の威力がある。命中。くそっ。ダイケンキが一撃で倒れた。次のポケモンは少し迷った末、ウォーグルを選んだ。空を飛ぶ要員であるこいつはそんなに強くないけれど、攻撃力も高いし、素早さはラプラスより速い。シャドークローでラプラスを倒したが、ウォーグルはその次のターンで出て来たオノノクスに倒された。龍を倒せるのは手持ちの龍しかいない。オレはサザンドラを選んだ。素早さならばオノノクスに負けない自信があった。流星群を放ち、オノノクスが一撃で倒れる。四対三。アキラがちらとゲームから視線を上げて、こちらを見た。繰り出して来たのはメタグロス。サザンドラの方が先に攻撃できるけど、メタグロスは防御が高いので、流星群で二段階特攻が下がったサザンドラですぐに倒せるかは微妙だ。大文字を繰り出す。でも、アキラが防御を相当高めて育てたメタグロスは破れなかった、どころか、
    「オッカの実!」
    思わず口をついて出た。オッカの実は、自身に効果が抜群である炎の技の威力を半減するアイテムだ。アキラが笑って、
    「へっへ。何度もサザンドラにはやられないよ!」
    メタグロスの体力を十分に削りきれないまま、冷凍パンチをくらってサザンドラは倒された。安定して強いアキラの残りのポケモンに対して、サザンドラが倒されたオレの残りの手持ちでは少し厳しい。ゲーム機を持つ手に力が入る。残りはシャンデラ、エーフィ、エルフーン。厳選したシャンデラが倒されたらそれこそ後がないような気がして、無茶を承知でエーフィを繰り出した。アキラが、おや、と意外そうな顔をした。だが先制はこっちだ。
    「めざめるパワー!」
    「!」
    めざめるパワーは、個体によって技のタイプが変わる不思議な技だ。オレのエーフィは厳選をしていないから、そこまで強い訳じゃない。でもこの間、ゲームの中のフキヨセシティにいるおじさんに聞いたら、「地面」タイプの技が使えると言われた。いつか使える時が来ると思って、技の中に組み込んだ。メタグロスが倒れた。アキラはポケモンを交代しながら、何タイプ? と聞いて来た。地面、と返す。アキラの残りはウルガモスとバンギラスのどちらかだ。いくら「地面」のめざめるパワーを持っているとは言え、エーフィでは両方とも相性が厳しい。アキラはウルガモスを選んだ。エーフィに先制できるからだ。ちょうのまいでステータスを上げてくる。オレの残りの手持ちでは一撃で倒せないのを見込んでいるんだろう。バトンタッチを使ってエーフィを交代させても良いと思ったが、アキラの残り一体がバンギラスではエーフィはいずれ、一撃で沈められてしまうだろう。ここはウルガモスの体力を少しでも削るために攻撃させる事にした。どくどくを選んで当てた。その次のターンで、むしのさざめきを繰り出されて一発でやられてしまったけれど。シャンデラに交代する。
    ウルガモスとシャンデラでは、炎・虫対炎・霊だから相性的にはまあまあだ。ウルガモスの方がステータスは強い。でもシャンデラの方が相性はいいし、色々な技を使えるのが強みだ。お互いに特殊攻撃を繰り出し合う。シャドーボール。暴風。シャドーボール。暴風。ウルガモスはちょうのまいでステータス全体を上げていたが、エーフィが残したどくどくが意外に大きな効果をあげて、最終的に僅差でシャンデラが勝った。アキラがバンギラスを繰り出す。シャンデラは鬼火を放った直後に、地震で即刻倒された。オレのラストはエルフーンだ。オレの手持ちはアタッカーが多いが、こいつだけは特殊だった。いたずらごころという特性を持ち、変化技を素早さに関係なく相手より先に出す事ができる。身代わりを出して待った。バンギラスが地震を繰り出す。身代わりは倒されなかった。アキラがしまった、という顔をした。
    「鬼火の効果!」
    そうだ、と言ってニヤッと笑った。鬼火は相手をやけど状態にする。八分の一ずつ体力を削っていくが、相手の物理攻撃を半分にするという効果もある。やどりぎの種を出す。更にバンギラスから体力を削って、エルフーンの体力を僅かながら回復させる。加えて、持たせた食べ残しで更なる回復を計った。身代わりを出しながらコットンガードで更に身代わりを倒されにくくし、最終的にエナジーボールでバンギラスを倒した。オレの勝ちだった。

    「モトキ……僕、学校に行って思ったのね。友達いっぱいできるし、皆で給食食べて、デザートを誰が貰うかで競ったり、いっぱい話して、日本の事とか色々勉強してさ。そういうのが自由なのかなって思ったよ。でもメイちゃんは友達に無視されるって言ってたじゃない。それって、どんな気持ちなんだろうって……」
    アキラが天井を見上げて、目を閉じながら言う。
    「どんな気持ちになるのかな。僕は考えたよ。悲しくって、辛くって、寂しいと思う。我慢して、頑張って、毎日過ごすのって、大変だと思う。僕が自由だって感じた事も、メイちゃんにとってはただ、辛い事なのかも知れないって、そう思ったよ。ねぇ、僕たちもさ、薬を変えた時は辛いけど、体調が良くなってくると、自由を感じるじゃない。ポケモンだけじゃないよ、モトキ。僕はモトキと話してる時も、自由だって思ってるよ……」
    「そっか」
    「……」
    「アキラ?」
    耳を澄ますと、隣のアキラのベッドからは規則正しい寝息が聞こえて来た。
    「寝たんかい」
    まだ話の途中だったのに。
    たわいもない、こういう話をすることを、自由と言えるんだろうか? 体は不自由でも、話すことは自由だとか、不自由でなければわからない自由があるとか、アキラはそういうことを言いたかったんだろうか?
    難しく考えるうちに、段々オレも眠くなってきた。

     秋も終わりの頃になって、私は久しぶりに病院に顔を出した。モトキのベッドのカーテンを開ける前、ちょっとためらっていたら、
    「メイちゃん?」
    びっくりして、心臓が一瞬止まりそうになった。
    「アキラ?」
    「うん、僕だよ」
    隣のベッドから、確かにアキラの声がした。屈託の無いその声に心が安心する。
    「僕、病院に戻って来てて今、モトキの隣のベッドにいるんだ。モトキは今、ちょっと検査に行ってるよ。僕のとこで待ってたら」
    「うん」
    アキラの居るベッドのカーテンを気軽に開けたら、びっくりして、もう一度私の心臓が止まるんじゃないかと思った。ベッドに横たわるアキラは点滴につながれて、少し疲れたような表情を浮かべていた。手と足が少し黒い。その手を振って、久しぶり、とアキラは笑顔を作る。
    「アキラ……」
    「びっくりした?」
    アキラが微笑む。
    「うん」
    思わず、本当の事を言ってしまった。しまったと思ったけど、それもアキラには伝わってたみたいで、
    「三週間前位かな、新しくまた薬を始めたんだ。これでも大分良くなって来たんだよ。メイちゃんはいつも、割と僕たちが体調悪くない時に来てくれるよね。運命かな」
    冗談っぽく笑うアキラの姿を見ながら、何気なく、左手に持っているゲーム機に目がいった。やっぱり続けているんだ。ポケモン。
    「メイちゃんは、モトキとケンカしたんだって?」
    不意打ちだった。唐突なその切り出しに、反論する事も出来ない。
    「え」
    「厳選が理由だって、モトキは言ってた。メイちゃんは、僕たちが卵をいっぱい孵して、逃がして、良い個体値のポケモン一匹だけを選んで、薬漬けにしたりするのが嫌なんだよね。メイちゃんは草むらで出会ったり、人から貰ったりしたポケモンを大事に育ててたもんね」
    「……」
    「モトキはまっすぐに、強さを求めてる人だから。僕なんかよりずっと……。モトキ、言ってたよ。ゲームの中は唯一自分が自由で居られる場所なんだって。その為に出来る事だったら、きっとモトキは信じられないくらいの努力をするよ。本来、負けず嫌いだから」
    こいつね、凄い負けず嫌いだから。モトキと初めて会った時の、お兄さんの言葉が浮かんだ。アキラまでモトキの味方をするのかって思ったけど、腹は立たなかった。アキラと話していると、不思議に穏やかな気持ちになる。
    「わかる」
    私は言った。
    「あの時のモトキ、悪気はなかったと思うの。でも私ね、自分とポケモンまでまとめて弱いって、ストーリーを進めて来た事も、レベルを上げて強くなって来た事も、まとめて意味ないって言われた気になっちゃったんだ」

    ――「意味がないなんて、そんなわけないじゃん!」
    「最初から強いやつを選ばないと強くなれないの! オレはもっと強くなりたいんだ!!」 
    「おかしいよ! 命を選ぶなんて絶対おかしいよ! 生まれつき強くなかったら捨てちゃうなんて、そんなのおかしいよ!」
    あの時モトキのパジャマの肩をつかんで、揺さぶって、私はそう叫んでいた。

    「メイちゃんの言う事も、分かるよ。だって僕も思うもん。僕は体強くないじゃない、だから僕のゲームの中では絶対、捨てられてたと思うんだ」
    「……」
    「だからメイちゃんがそうやって、草むらで出会ったり、人と交換したり、貰ったポケモンを大切にしてくれると、僕は凄くほっとするんだよ。僕も冒険に出たり、強くなれるチャンスがあるんだろうなって気になれるからね。でもモトキの気持ちも分かる。強くなりたいって気持ちは、お互い同じ。でも、モトキの方がずっとずっと、強くなりたいって気持ちは強いんだ。僕なんか比べ物にならないほどにね。言わなくても分かるよ……だって、友達だから」
    胸がざわつく。こんなにかっこいい言葉で語れる程お互いの事が分かってるんだって、羨ましくて。戦っても居ないのに負けた気がした。いや、戦っても負けるけどね。絶対。
    暫くアキラとたわいもない事を話していた。アキラの学校の事も聞いた。リンゴの話は何となくしか分からなかったけれど、ポケモンの話は良くわかった。クラスで対戦ができるなんて、ちょっと羨ましかった。
    ふと急にカーテンが開いて、
    「おい」
    「わっ」
    「あ、モトキ」
    アキラが画面から視線だけ上げて、モトキを歓迎する。つられて私も視線を上げた。点滴台を右側に持ちながら現れたモトキは、前にケンカした時とあまり変わってない。少なくとも、見た目にはそう見えた。
    「アキラの意味分かんない話、聞かされてたのか」
    「え?」
    「そんなことないよ、ねぇ?」
    アキラが口を尖らせて不満を口にする。モトキは申し開きもせず謝りもせず、私も何も言わなかった。まるで何もなかったみたいに。何もなかったみたいに元通りになった。モトキはごく自然にアキラと私の会話に入ってきて、三人でいつまでも話を続けた。

    アキラが死んだ。
    年が明けてすぐの事だった。

    予兆はあった。気のせいでなければ。クリスマスプレゼントを貰った頃のアキラははしゃいでいたけど、オレの目には、気を使って無理してるようにみえた。バトル中は何回も集中力が切れて、致命的なミスを犯すことが多くなったし、年末にはついに、バトルをやれるだけの体力がなくなった。対戦の途中で頭を切替えたり、指示を決められるだけの体力がもう、なかったんだ。
    もうすぐ二度と会えなくなるんじゃないかって思って、毎日毎日心の中で、どうしようって思っていた。ずっと思っていただけで、何も出来なかった。夜はいつも、明日もアキラに会えますようにって思いながら寝ていた。怖くて実際には殆ど眠れなかったけど。夜中の三時くらいにいつも目が覚めて、遠くの部屋にいる看護師さんの足音を聞きながら、アキラの呼吸に耳をそばだてた。六時くらいになると、真っ暗だった窓の外の空が仄かに薄暗くなって、少しずつ少しずつ、白い光が下から薄暗い空を押し上げていく。白い光の中から太陽が顔を出す頃には、灰色だった空は一面、スカイブルーになってる。部屋で一番右奥のベッドを割当てられていたオレは、毎日ベッドから日の出をみた。日の出は凄い。何度みても毎回新鮮で、綺麗だった。日の出をみると、今日もアキラに会えるんだなって思ってうれしかった。このまま何事もなく、バトルが出来なくても構わない、構わないからアキラが元気になってくれればいいって思った。初日の出もそうやって見た。お正月の頃のアキラは、ずっと寝ていた気がする。先生や看護師さんが夜、アキラのお父さんとお母さんと一緒に、急に部屋からアキラを連れて行ったのがそれから一週間後だった。アキラは帰ってこなかった。
    その日は一睡もできなかった。日の出を見た後、父さんと母さんがオレのベッドにやってきた。オレは両親が何を切り出そうとしているのか分かっていた。言わないで。聞きたくない。信じたくない。だって、オレ、準備できてない。どうしていいのか全然分からない。
    「モトキ。もう、分かってるかもしれないけど……」
    切り出したのは父さんだった。声を震わせながら。オレは寝返りを打った。耳を両手で塞ごうとした。
    「アキラ君はね……今朝早くに亡くなったよ」
    抗えない何かに力任せに叩き付けられたような衝撃が、全身を貫いた。
    父さんがオレの肩に手を掛けた。それを振り払う。体の震えが止まらない。ついに来た。恐れてたのに。何でだよ。何でいっちゃうんだよ。濁流のような怒りと悲しみと涙が、体の奥底から迫り上がってくる。慟哭。ああ、ああ、ああ。アキラはあんなにがんばってたのに。
    「モトキ」
    母さんも泣いていた。父さんも。二人でぎゅっと抱きしめてくれたけど、その輪の中でオレは、力の限り、まるで赤ん坊の頃に戻ったときのように泣き叫んでいた。心の芯を粉々に砕かれたように胸が痛んだ。辛い。苦しい。おいてかないで。寂しいよ。怒りの後に色んな思いがあふれてきて、悲しくなった。
    「何でッ」
    オレは何回も何回も、叫んでた。叫ばずにはいられなくて。
    「何でアキラなんだよ、何でアキラを連れてっちゃうんだよ!」
    「アキラッ、アキラッ、アキラアアアアアアァァァァッッ!!!!」
    もう二度と、ポケモンもできないんだ。一緒に病気と戦って、一緒にポケモンで戦って。勉強も一緒にしてた。あんまり勉強してなかったかもしれない。ケンカして。笑って。笑って。色んなこと、話し合って。語って。何もかも、もう、二度と出来ないんだ。だってアキラは、死んじゃったんだから。

     アクアブルーに澄んだ海が、遠く地平線まで広がる。柔らかな白い砂浜は太陽の熱で温もり、波が覆う度に本来の温度を取り戻す。少年は裸足だ。少年より少し前を、二又の尾を持つ紫色のポケモンが軽やかに歩く。ポケモンはあちこちにある砂浜の漂流物を、時折歩を止めては熱心に調べている。
    「エーフィ、行くよ」
    そう少年が呼びかけると、ポケモンは残念そうに顔を上げた。少年とエーフィは砂浜の道をどこまでも進んでいく。気がつくと、少年は海を遡り、川へ辿り着いていた。茜と菫色に染まる空を、東の端から黒い闇が押し出していく。その中で、透き通ったその川だけが奇妙に光っている。少年は屈み、水面を覗き込んだ。透明なはずなのに、なぜかぼんやりとしか顔が見えない。隣のエーフィを見ると、ただならぬ形相でしきりにあたりを警戒していた。全身の体毛が細かく震えている。
    「エーフィ?」
    問いかけたその一言が不自然にこだまして、少年も思わず視線をあたりに巡らす。遠くに船が一艘浮かんでいた。目を凝らして、少年はそれが手漕ぎボートだと確認する。船は殆ど音もなく波間を滑り、やがて少年とポケモンのすぐ側までたどり着いた。焦茶色のよれた服を纏い、フードを目深に被ったその漕ぎ手は、殆ど聞こえないくらいの声で呟いた。
    「坊主、この船に乗るかい」

    フードの漕ぎ手が不自然に歪んでしまい、私は消しゴムを手に取った。国語の時間だ。今朝見た夢を、ノートの隅っこに描いている。夢の中で私は、エーフィを連れて旅をしている事になっていた。この続きは、目覚まし時計にジャマされて見られなかったんだけれども。男になっていたし、不穏な感じだったけれど、ポケモンと一緒に旅をするってこんな感じなんだな、いいなって思った。夢で見た雰囲気を忘れたくなくて、いつでも思い出せるように描いている。
    「それ」
    ふいに隣からぼそっと声がして、心臓が飛び上がるくらい驚いた。集中していなかった、絵と、先生にばれないことと、授業のノートを取ることにしか。声の主は隣に座っている男子だった。名前は……覚えてない。
    「なに?」
    私が睨むと、男子はちょっと怯んだみたいだ。
    「いや、それ。……エーフィだろ」
    「!」
    「……そう思っただけ」
    それだけ言うと、何事も無かったかのように授業モードに戻ってしまった。
    「……」
    今、会話したんだ、人と。……ん? 私はしゃべってないか。話しかけられたんだ。最後にこのクラスで誰かと話したのはいつだっけ? 五月だっけ? 自分の身を守る事ばっかり考えてたせいで、クラスの人の事が殆ど分からなかった。あと一ヶ月で卒業するっていう今更になって気がついた。でも、同時に別のことにも気づいた。このクラスの中にだって、モトキやアキラのように、ポケモンをやっている人がいるんじゃないか。隣の男子もやっているのかも。そう思うと、今まで霞んでよく見えなかった世界が急に、手に取るように近くに感じられるようになった気がした。一月の終わり頃の話だ。それ以上、暫く何も起こらなかった。でも私は時々、他の人の会話の端々に、ポケモンの単語がある事に気がつくようになった。単語の切れ端を繋ぎ合わせて組み立てたら、何人かは放課後に集まって、バトルする時もあったみたい。その中には隣の席の男子もいた。ポケモンやってる友達がいっぱいいて、いいなぁ。私も仲良くなりたい。仲良くなって、一緒に戦いたい。心が前向きに動いていた。久しぶりに、自分の望む物がはっきりと分かって、なんかすっきりした気分だった。

    そのすっきりした気分を大事に温めながら、私はある日、病院を訪ねた。クラスでポケモンをやっている人が居ること。仲良くなって、戦いたいって思ってること。それを二人に話すつもりだった。六◯二号室の前に来た時に、看護師さんに呼び止められた。最初にこの部屋に入ろうとした時に、「ごゆっくり」って言ってくれた看護師さんだった。
    「モトキ君に会いに来たの?」
    「はい、モトキ君と、アキラ君に。三人で、ポケモンやっているんです。私のクラスの人にもやっている人が居るって分かったよーって、そう言おうと……」
    そこまで言って看護師さんの顔を見上げた。看護師さんはとても悲しそうな目をしていた。なんだろう。直感的に、二人に何かあったんじゃないかと思って、怖かった。でも、口を開いても何も声が出なかった。
    「お嬢ちゃん。お名前を聞いても良いかな」
    「メイコ。メイでいいよ……」
    「メイちゃん」
    看護師さんは屈んで私の両肩を持ち、まっすぐ私を見て言った。
    「アキラ君はね……亡くなったの。お正月が終わってすぐに……」
    体のどこかが自然に停止した気がした。何も考えられないのに、目から自然に涙があふれてくる。
    「アキラ君は亡くなる間近は、ずっと寝ていたのよ。苦しがったりしなかった。穏やかに亡くなったの。でもアキラ君が亡くなった頃、モトキ君は凄く動揺していて……毎日泣いていたわ。親友だったからね」
    なぜか頭の中に、窓際のベッドに体育座りをして、膝を抱えるモトキの姿が浮かんだ。
    「……」
    泣きながら、私は頷いた。色々なアキラを思い出していた。対戦している時の真剣な目つき。三人で話している時の柔らかな笑顔。退院して戻って来てからの、鋭い表情。後から後から涙が溢れて来て、止まらなかった。看護師さんが私が落ち着くまで抱きしめてくれた。暫くすると看護師さんは私の肩を抱いて、一緒に病室に入った。
    「アキラ君が亡くなってから、モトキ君、殆ど喋らなくなっちゃったのね。形見にゲームソフトを貰ったみたいで、遊んでいる姿も見た事はあるんだけど……そのうち具合悪くなっちゃって、今、ずっと薬で眠ってるのよ」
    「いつから?」
    「ここ一週間くらいかな」
    看護師さんがそっと、モトキのベッドのカーテンを開ける。モトキはただ、眠っているみたいに見える。
    「……モトキ……」
    口に出すのは怖かったけれど、どうしても、どうしても確かめておきたかった。
    「モトキ、死んじゃうの?」
    看護師さんはそっと言った。
    「分からない。分からないけど、病気よりも、アキラ君が亡くなったショックで、具合悪くなったみたいなのよ。だから、今はモトキ君を信じてあげて。応援してあげて、メイちゃん」
    「はい」

    暫くすると看護師さんは仕事に戻ったから、わたしはモトキのベッドの側にあった椅子に一人座って、考えた。信じるって何だろう? 応援って、何をすればいいんだろう? 今、私がここで何かモトキに話しかけたら、それはモトキに伝わるんだろうか。たとえ、寝ていても? 寝ていても返事をする事はあるけど、それはやっぱり、意識のどこかが起きているからでしょう? 薬で寝ていて、伝わるものなのかなぁ。止めどなく考えながら、ふと顔を上げた。モトキの枕元の棚が見えた。今までに無くきちんと整頓されている。モトキは特に綺麗好きって訳じゃないから、お父さんお母さんが整えてくれたのかも知れない。こっそり、モトキがいつも持っていたゲーム機に手をのばした。スイッチを入れる。良く知っているようで、全く知らないモトキだけのゲーム画面が現れる。うわっ。なに、この220時間って。こんなにやってたんだ。手持ちのポケモンを見てみた。サザンドラ、ダイケンキ、シャンデラ、エーフィ、ウォーグル、エルフーン。私が初めてモトキに見せてもらったのと同じポケモンだ。意外だった。モトキが一番最後にゲームをした瞬間は、厳選するためじゃなく戦う為だったって事が。モトキは一番強いメンバーを連れて、一体どこへ行くつもりだったんだろう。

     コルクのような弾力のある、黒い土の上をまっすぐに歩いていた。空も、これから進む先も、霞がかった濃灰色に覆われていている。どうしてこの道を進んでいるのか分からない。でも、進まなければいけないということを、なぜか心で理解している。周りには誰もいない。誰もいないばかりでなく、何の植物も生えていなければ、動物も居なかった。更に付け加えれば、自分が歩いている音もしなかった。呼吸の音もしない、完全に無音の世界だった。ただ、歩いても、歩いても、体は疲れなかった。時間感覚はとっくに麻痺している。どれくらい歩いたのか。昼なのか、夜なのか、朝なのか。どこまで歩けば良いのかも含めて、全く、全く、何も分からなかった。どれくらいの時間が経ったのか分からない。気のせいかと思うほどかすかに、どこかで、波の打ち寄せる音が聞こえたような気がした。立ち止まると音はやんだ。歩き出すと、波の音がまた聞こえた。歩けば歩くほど音に近づけるような気がした。心が急いた。気づいたら、走り出していた。爽快だった。走っても走っても、息は全く切れなかった。スピードだけがぐんぐん上がっていって、まるで自分が別の生き物になったようだった。ひたすらまっすぐに進む。波の音ははっきりと聞こえるくらいにまで大きくなっていた。その内に、前方に微かな光が見えた。あれが目指す最終地点だという事を、自分の心が告げていた。光に近づくつれ、少しずつ周囲の濃灰色が薄くなってくる。駆けるうちに自分の手が見えてきた。思いのほかゴツゴツしている。足も見えてきた。そうやって自分の姿が分かるようになると、周りの景色もだんだん見えて来た。黒いコルク土の上に一本の白線がずっと続いていて、自分はその上を走って来たのだと知った。そして、ついに終着点に辿り着いた。光の正体は一本の川だった。川の水が発光しているから、遠くからでも光って見えたんだと気づいた。川のすぐ側に立って水をすくってみた。水は透明なのに、なぜかぼんやりとしか顔が映らない。
    誰かいないだろうか。人を探してみようと思った。来た道を振り返っても誰もいなかった。でも川の先へ目を凝らした時、遠くの方にボートが浮かんでいるのに気がついた。漕ぎ手はフードを目深に被った人で、岸にはもう一人、杖を持った高校生くらいの青年が立っていた。随分遠くに居るように見えたのに不思議と、二人の会話を聞き取る事が出来る。
    「坊主、この船に乗るかい」
    フードを被った方が低い声で言った。結構おじいさんなのかもしれない。
    「……これは、”あっち”行きの船なのかな」
    「勘がいいね。君が駄賃を持っている事も分かってる。準備は良いね」
    「駄賃? ああ、これのこと?」
    青年が頭につけていたバンダナを外すと、中から紐に通した五十円玉が六枚現れた。
    「そうさ。さ、船に乗りな、坊主」
    「船に乗る前に、ちょっとだけ時間をくれないか」
    「時間?」
    そう時間、と青年が返す。
    「大事なものを忘れてしまって。ちょっと、時間が必要なんだ」
    「良いだろう。先は長い。準備の時間も必要だろうな」
    「どうも」
    青年はボートに背を向けた。あれは誰だろう。ここはどこなんだろう。あの人なら何かを知っているかもしれない。自然と、その青年の方に自分の足が向かう。青年は、どっちの方向に歩き出そうか少し迷っているように見えた。
    「すみません!」
    自分が声を上げると、その青年が振り向いた。
    「あなたの大事なものを探す時間を削ってしまって、すみません。ここはどこなのか、教えてもらえませんか。自分がどこから来たのか分からないんです」
    「!!」
    青年は驚いた表情のまま固まっている。いったいどうしたんだろう。
    「モトキ」
    「え?」
    「モトキでしょう」
    「は?」
    「思い出せないの?」
    「はい?」
    いったいこの人は、何の話をしているんだろう。
    「君の名前だよ、モトキ」
    「はぁ……名前、ですか。なんでまた……自分には、名前なんて分かりません。何のことですか」
    「忘れちゃったのか」
    良く話が飲み込めないのに、青年に露骨にがっかりした顔をされてしまった。
    「じゃあ、僕の名前も分からない?」
    「お兄さんの名前?」
    青年と目があう。すらりと背の高い、目のくりっとした優しそうなお兄さんに見える。こんな知り合いいただろうか。知らないなぁ。
    「……」
    「覚えて、ないんだ」
    そっか、でもそうかもね、とお兄さんは寂しそうに笑った。
    「大人にしてもらったんだ。お兄さんと同じ二十歳に。向こうでお酒を飲むんだよ。僕はこれからすぐ、”あっち”に行かなきゃいけないんだ。でも大事なものを忘れて……。取りに行ったら出発する。モトキはまだ行かなくて良いはずだよね。どうしてここにいるのか分からないけど……」
    「”あっち”って、何ですか?」
    「”あっち”が何だか、モトキにも分かる日が来るよ。もっとずっとずっと先にね。ところで、早く帰った方が良いよ。みんな心配しているんじゃないかな」
    「みんなって、誰ですか?」
    「それも覚えてないの?」
    お兄さんは悲しそうな顔をした。また良く分からないうちにお兄さんを傷つけた事を知って、質問するのは止めにしようかと思いはじめた。
    「お兄さんは……自分の、友達なんですね。どこかでの」
    「そうだね」
    お兄さんは眩しそうに目を細めて笑った。
    「モトキ、君の進む道はあっちだよ」
    川沿いの遠くの方で一点だけ、光が射してくる場所があった。「そこ」を指差しながらお兄さんは言った。
    「僕は忘れ物を見つけたら出発するから。こっちに来ちゃダメだからね。いいね」
    「はい」
    「じゃあね」
    光の射す方向へ駆け出した。途中で振り返ると、お兄さんが手を振っていた。いつまでもいつまでも振っていた。
    川の水だけが光る薄暗い周囲の中で、不自然に「そこ」は光っていた。まるでそこだけ世界が破れて、光が溢れ出て来てしまったかのようだった。お兄さんが指差した時はほんの僅かな隙間に見えたのに、近づくにつれ意外にそれが大きな穴であることが分かった。人が一人通れそうな位だった。走る速度を緩めないまま、その穴に飛び込んだ。刹那、襲って来た爆発的な閃光に思わず目を覆った。網膜の裏からでも感じられるような強い白光だった。上下左右の感覚が飛んだ。異空間に放り出された感触があった。自分が回っているのか世界が回っているのか、うねるような低い音がずっと、耳の奥に響いていた。
    どの位の時間が経っただろう、うねるような音の合間に、カツッ、カツッという固い音が混じるようになってきた。その音が大きくなるにつれ、視界を覆っていた網膜を焼くような眩しさが弱まっていくのが分かった。もう大丈夫だと思った頃に目を開けた。少し離れた所に、大きな角を生やした立派な牡鹿が立っていた。角に綺麗な桃色の花をいくつか咲かせていた。振り返ったそのシカと目が合った。ああ、メブキジカだと思った瞬間、いつの間にか知らない場所に立っていた。
    大きな空間だった。人一人が立てる音が複雑に混ざり合わさってがやがやとした雑音を生んでいた。同い年位の子どもの声が聞こえた。アナウンスの声がレジの応援を頼んでいた。遠くで小さな子どもが泣く声もした。親が叱る声も聞こえた。ジグソーパズルが並ぶ棚、プリンターのインクが並ぶ棚、文房具が並ぶ棚、おもちゃが並ぶ棚がある。おもちゃの棚の奥には、ゲームが並ぶコーナーがあった。一つを手に取る。ポケットモンスターと書かれたその箱に心のどこかが反応し、酷く懐かしい気持ちで胸がいっぱいになった。ふと目線を上げると、空いたスペースでゲーム機を持って集まっている子どもが何人か目に入った。年は、自分と同じくらいだろうか。四人。三人は男の子で、一人は女の子だった。女の子は短髪に浅黒い肌にタンクトップを着ていた。まるで男の子みたいだった。少し離れた所から様子を伺った。男の子三人は、結構仲が良い友達同士のようだった。女の子は最近友達になったばかりみたいで、色々教わっているようだと、そんな風にみえた。
    「――って俺達とやる前は、どこかでポケモンやってたの?」
    ポケモン、と言う単語に心が躍った。なぜだろう。
    「やってたよ。ソフトをくれた友達が居て、その友達ともう一人と三人でポケモンやってたの」
    力強く凛々しいその声に、心がもっと踊った。聞いた事のある声だと思った。
    「へぇ、うちのクラスの奴?」
    「ううん。全然別の友達」
    女の子はにかんだように笑って、言葉を続けた。
    「病院で出来た友達なんだ。モトキと、アキラっていうの」
    モトキ、モトキ。お兄さんも自分の事をそう呼んでいた。オレはモトキというのだ、どこかでモトキと呼ばれていたのだ、そう理解した。違う誰かのことだろうか、それとも僕の事を言っているんだろうか。女の子の後ろに回って、ゲーム機を覗き込んだ。画面の右上で何かが動いていた。黄色い貝を被り、顎に立派なひげを生やした紺碧のアザラシのような生き物だった。名前は思い出せなかったけれど知っている、そう思った。女の子に背を向けるような形でもう一体、生き物が動いていた。大きな角を生やした逞しい牡鹿。さっきまでは覚えていたのに。あれは……。
    「メブキジカ、ウッドホーン!」
    女の子が指示を出す。男の子が叫ぶ。
    「ダイケンキ!」
    どちらも知っている、と思った。メブキジカもダイケンキも。なぜ知っているんだ。あの女の子のことも、ポケモンという単語も、画面の中の生き物のことも。その全てに胸が苦しくなった。懐かしさでいっぱいになるような、何かが溢れ出しそうなような、色々な気持ちでぐちゃぐちゃになりそうだった。どうしてこんな気持ちになるのだろう。そういえば、君の進む道はあっちだよ、とあのお兄さんも言っていた。どうして僕の進む方向を知っているのだろう。そういえば、”お兄さんと一緒にしてもらったんだ、向こうでお酒を飲むんだよ”と言っていた。別のお兄さんもいたのだろうか。一緒にしてもらったって、何を一緒にしてもらったんだ。訳の分からないことばかりだった。

    バトルを終えた女の子に、別の男の子が話しかけた。
    「つえーんだな、――って」
    「教わった先生が強かったからね」
    「俺も教わろうかなー。どこにいるんだ? その、モトキと……」
    「モトキとアキラ?」
    「そうそう」
    「××病院。自転車で四十分くらいかな。でも……」
    「でも?」
    女の子は言いよどんだ。聞いていた男の子のうち一人がさりげなく席を立った。残った他の二人は、
    「でも?」
    「なんだよ――、もったいぶんなよ」
    「モトキは具合悪くて、ずっと眠ってる」
    男の子二人は面食らったような顔をした。思わず、自分の手を広げて見つめた。天井の蛍光灯に透かすと、心なしか透けて見えるような気がした。オレは夢を見ているのか、魂だけの存在なのかと、そう思った。なぜだかは分からないけれど、ずっと眠っているというそのモトキが、オレだという確信があった。
    さっき席を立った男の子が帰ってきて、女の子に問いかけた。
    「じゃあ……アキラは?」
    「アキラは……」
    女の子は俯いた。何となく嫌な予感がして、でも、その直感が正しい事も知っていた。さっきから気持ちばかり理解が先行して、頭が追いついていないような、そんな感覚がする。
    「アキラは……死んじゃった。一ヶ月前に」
    その言葉に、周りの喧噪が一気に遠のいて、静寂に包まれたような気がした。でも、その静けさを破ったのも同じ声だった。
    「その時、強くなりたいと思ったんだ。アキラみたいに明るくて優しくなれるように、自分が強くなろうと思ったんだ」
    女の子の瞳は潤んでいたが、泣いてはいなかった。まっすぐに男の子三人を見据えて、覚悟を宿した瞳をしていた。視線を外さないその姿が、記憶の中のだれかと結びついた。くりくりとした大きな瞳。明るく良く笑って、言動は子どもっぽい。だけど話すとすごく大人びていて、まっすぐ視線を話さないでこちらを鋭くついてくる。最高の好敵手。どうして今まで思い出せなかったんだろう。手で顔を覆い目を閉じた。深呼吸。
    ――「モトキ。ねぇ、モトキってば」
    ゆさゆさと、手で体を揺さぶられる感触が確かにした。懐かしい声。細いけれど大きな手。
    待ってて。探し物をオレが、持っていくから。
    もう一度ゆっくりと目を開けると、さっきの薄暗い川辺に戻って来ていた。川だけが仄かに光る中で、少し離れた所にさっきの船が泊まっているのが見えた。船上の影は二人。さっき、お兄さんに戻ってきてはいけないと言われた事を思い出しながら、耳を澄ました。
    「……なんだい坊主、もういいのかい」
    「ええ」
    「探し物はみつかったのか」
    「……いいえ。でも、良いんです。もう吹っ切れましたから。僕は向こうでお酒を飲むんです」
    オレは走り出した。船頭がオールで岸を押し、川へ漕ぎ出す。流れに乗り、加速し始めた船を走って追う。頭の中をフル回転させながら念じた。ポケットに手を突っ込みながら強く思った。来い。来い。ふと、ポケットを弄る手が薄い小さなプラスチックを掴んだ。そのプラスチックの破片を握りしめて、オレは懸命に走った。船の横に並走しながら、名前を叫んだ。
    「アキラ!!!」
    船に乗った青年が、びっくりした顔でこっちを見たのが分かった。
    「モトキ!! 来るなって言っただろ!!」
    青年……アキラの険しい声に、そうだった、と今更その事を思い出しながら、構わず続けた。
    「これ、探し物!!」
    小さなプラスチックが宙を舞う。アキラが船から立ち上がり、両手で包み込むように受け止めた。
    「……!」
    「探し物、それだろ!!」
    アキラがギュッと掌を組みあわせ、祈るように胸に抱いた。薄暗くて表情は見えなかったけれど、その姿だけで、何も言わなくても正解だと分かった。アキラの名前と、形見で貰ったゲームソフト。
    「アキラ、向こうで、お兄さんといっぱい対戦してこい!! お酒飲みながら!!」
    そういうとアキラは、
    「モトキ! 僕がいなくても、メイちゃんと仲良くするんだよ!」
    うるさい、余計なお世話だ。そう返すと、笑い声が返ってきた。アキラは大きく手を振った。その動作に呼応するかのように、オレの視界の周囲がだんだんぼんやりし始めた。帰るんだ、という強い確信があった。元居た場所に帰るんだ、と。

     外から反射する日差しが教室の中にまで差し込んでくる。さほど大きくない教室に三十五人も詰め込まれているせいで、よけいに暑苦しい。夏服を着ていることがせめてもの救いだ。冷暖房設備がないから授業中も額を汗が流れる。言われている事を書き写すだけで精一杯で、理解できる段階へ意識を持っていけない。やっと授業を終えてため息をつくと、隣の席に座っている友達がやってきて、
    「メイ、麦茶飲む?」
    「神様ッ!」
    水筒の中身を分けてくれた。冷たい麦茶が喉を通って胃の中に染み渡る。
    「ありがとうございます、ありがとうございます」
    思わず拝むと友達は、
    「メイちゃんって本当、おいしそうに麦茶飲むよね。大人になったらきっと、麦茶じゃなくてビールをそうやって飲んでるんじゃない?」
    「ビール?」
    「ビールって麦の酒って書くんだよ、知ってた?」
    「マジ?」
    そんな会話をしていたら、
    「おい、――。転校生が来るらしいぞ」
    小学校卒業直前に一緒にポケモン対戦をしていた仲の男子の一人が、後ろの席に駆け込みながら言った。急に担任の先生が慌ただしく教室に入ってきて、クラスメイトは全員、猛スピードで自分の席についた。
    「知ってるよ」
    「え?」
    後ろの男子が疑問符を浮かべる。先生が一人の男の子を連れてきた。小柄で細く色白で、短髪に切れ長の一重瞼。緊張した面持ちで前を見据えていたけれど、私と目が合うと驚いたのか、一瞬で間が抜けた顔になった。先生が色々と説明している合間に、後ろの男子が問いかけてくる。
    「何で知ってるの、あいつのこと」
    私の答えに、男子は納得の表情を浮かべて転校生を見た。
    「私の、”先生”だから」

    ーーー
    あとがき
    こんにちは、art_mrと申します。
    アイデアをとにかく最後まで形にしようとしたら、気づけば41000字くらいになってしまいました。
    長文すみません。最後までお付き合いいただきありがとうございます。


      [No.3502] 化生電気店にようこそ! 投稿者:ラクダ   投稿日:2014/11/14(Fri) 23:27:41     113clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:こたつ】 【コタツ】 【炬燵】 【うちにもこたつはあるけど】 【布団が無い

     はいはい、いらっしゃいませ。化生電気店にようこそ!
     え、店の名前が読めないって? こりゃ失礼、「けしょう」って読むんですわ。うちの苗字をそのまんま使ったんだけど、これがまた読みにくいって不評でねえ。いっそ平仮名にでもしようかなーなんて思ってたところで。やっぱり変えるべきかね、こりゃあ。
     ただね、口の悪い知人に言わせると『けしょう、なんて優しい字面になった日にゃあ、どんな化粧映えのする美人がいるんだろうなんて期待しちまう。そんで店に入ってヒヒダルマみてえなツラのオッサン見ちゃ、一気に買う気も失せるだろうよ』ってことで。そりゃあ一理あるかもしれんが、しかし全く失礼な奴だねホント。向こうだって、大層なツラじゃないのにねえ。
     おっと、関係無い話は置いといて。うちにいらしたって事は、何か家電製品をお探しですかね。小さな店ですが、色々と取り揃えておりますよ、はい。
     ほほう、ご自宅のこたつを買い換えたい、と。なるほどなるほど。お客様はどんなタイプがお好みで? 昔ながらの和風か、今風のモダンか、あるいはダイニングこたつもございますよ。
     ふむ、和風がお好きと。そうですなあ、それならこちらなんていかがでしょう。天然木使用のウレタン塗装、綺麗な木目に程よい艶出し加工が美しい自慢の一品です。この足のがっちりした安定感、天板の色艶、いいでしょう? 
     おお、お気に召された? いやー嬉しいなあ。この子は実にいい性格で……あ、いや性格ってのは木目のね、この並びがいいっていう意味ですよ、ええ。
     さてさて、どうなさいます? こちら展示品で最後の一台だからね、買ってもらえるならお値段を勉強させてもらいますよ。えーと電卓電卓っと……そう今がこれ位でですね、思い切って差し引いてこのぐらいでどうです? そんでもって、即決してくれたら配送料もタダにしちゃいますよ。
     ……よし、成立ですな! いやーめでたい、実に喜ばしい。気に入ってもらえて、このこ……たつも喜んでるでしょう、ええ。ちょっとお待ちくださいね、今配送係を呼びますから。
     おーいゴーちゃん、仕事だよー! こちらのお客さんのお宅まで、こたつを一台運んでおくれー!
     来た来た。うちの力仕事担当、ゴーリキーのゴーちゃんです。なかなかの美人さんでしょ? 気は優しくて力持ち、仕事熱心で真面目ないい子ですよ。さくさく仕事してくれるから、見てるこっちも気持ちいいやねえ。
     おっとと、喋ってないでお手続きといきましょうかね。こちらの書類に記入をお願いしますよ……はい、確かにいただきました。保証書はこれね。丈夫な造りだから壊れることはないだろうけど、念の為にね。
     しっかり持ったかいゴーちゃん。なんならお客さんも乗っけて……いいって? そんなに遠慮しなくていいのに。自分で歩く? ふむ、そうですか。
     ではこれにて完了ですな。どうぞそのこたつを可愛がってやってください。時々磨いたり布団変えてやったり、大事に扱うといいことありますよ、きっと。もし使わずに放置したり手入れをおろそかにすると……まあ、そんなことはなさらんでしょうから大丈夫でしょうな。いえいえ、独り言ですからお気になさらず。
     はいどうも、お買い上げありがとうございました! 今後とも化生電気店をご贔屓に!



     はいいらっしゃい。おっと、いつぞやのお客さんじゃないですか。毎度どうも、今日は何をお探しで……え? 以前のこたつの件で話がある? はてさて、何でしょう。
     ……はあ、こたつがおかしい、と。作動点検ならすぐにでも……作動じゃなくって動作がおかしいって? そりゃまたどういう意味ですかな?
     ほう。うたた寝しているといつの間にか場所がずれている、足を突っ込んだら冷たい風が吹いてきた、風も無いのに布団が捲れる、時々振動して物を落とす、その他色々と。まことに失礼ですが、お客さんがうっかり蹴っ飛ばしてたとかコード抜いちゃったとか、そういう事なんじゃないですかねえ。割と良くあるんですよ。
     おや、にやにやしてらっしゃる。決定的な事がある、って? ……何、飼っているスカタンクが潜り込もうとした瞬間に、こたつが後退りして震えた? あー、まあ気持ちは分かるというか……いえいえ、独り言ですよ。
     ん、そのボールは……あっ!
     あーらら。バレちゃいましたか。いやいや、騙すつもりはなかったんですがね、まあ黙っとくつもりはあったんですが。今となっちゃあ、もう駄目ですな。
     はい、全ての不具合はこのロトム、コタツちゃんによるものです。いかにもロトムらしいイタズラ好きな子でね。しょっちゅうあれやこれやを仕掛けては、使う人間が不思議がるのを見て楽しんでるんですわ。ちっとばかしやりすぎて店に返されること数回、今回はどうなるかと思ってたんだが……いやー、やっぱり駄目だったかあ。まあ仕方がない、代金は全額返金の上でその子を引き取ります…………えっ?
     ええっ、コタツちゃんを手元に置いておきたいって! 何をそんなに驚いてって、そりゃ驚きますよ。今まで正体に気付いた方々は、例外なく怒って突っ返しに来たんですからね。てっきりお客さんもそうかと……はあ、この子にはバトルの才がある、今はまだまだだが磨けばかなりのモノになる、と。そりゃさっぱり知りませんでした、恥ずかしながらバトル関連には疎いもので。ひょっとしてお客さん、エリートトレーナーさんか何か……ああ、やっぱりね。いや納得しましたよ。今までのお客さん方は、みなさん一般人でしたからね。
     将来は育てたこの子を主力メンバーの一員にしたいと? 嬉しい事言ってくれるねぇお客さん! うんうん、いつかこたつフォルムで世を沸かせて……って、こたつフォルム? そんなのあるんですかね? 無いから相談しに来たと、そういうことですか。
     うーん、まあその辺りはバトル関連の、ポケモンリーグ協会でしたっけ? そこらで聞いてもらった方がいいでしょうな。出来れば、うちの店で手に入れたってのは内密に、ね。やー、正規では認められてないフォルム形態の“商品”を扱ってることが知られたら、こっちも少々マズいことがあるもんで…………いやいやいや、怪しい意味じゃないよ? ほら、うちは裏路地でひっそりやってる小さな店だから、人が大挙して押しかけてくると混み合って大変だからね、そういう意味でね。
     まあ、そこさえ気を付けてもらえたら、後はお客さんの自由にしてください。こちらとしてはその子を可愛がってもらえたならそれで良し、細かいこたぁ口出ししませんよ。
     
     もうお帰りになる? はい、お気を付けて。良かったらまたいらしてください、ぜひコタツちゃんとの武勇伝を聞かせてくださいよ。待っておりますからな!
     それではまた、いつか。ご来店ありがとうございました!



    ――――――――――――――――――――――――――

     ガチ書きに疲れて息抜きがてら。
     随分前、マサポケに「お題」があった時の事。チャットだったかなんだったか、「こたつフォルムのロトム」という話題がありまして、よしこれで一つ、と思い立って放置すること幾年月。短いながらようやく完成。
     どうせ電気店と銘打ってしまったなら、いっそ他の家電も合わせたいなあと思いつつ、例によって予定は未定なのでした。
     読了いただき、ありがとうございました!


      [No.3267] Re: 俺はシビルドンに恋をした 2 投稿者:   《URL》   投稿日:2014/05/15(Thu) 02:37:24     52clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    シビルドンの姿をググって知ったときにはもうどうしようかと思ったんですが、とてもよかったです
    いっそ好きっていってほしかったなって気持ちと
    でもそういった擬人的な感情移入はどこまでありなんだろうって部分と
    なかなか複雑なものがありますね
    ふたりに幸あれ


      [No.3266] Re: これはひどいwwwww 投稿者:   《URL》   投稿日:2014/05/15(Thu) 02:34:33     86clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    「近代闘獣とは純粋な興行であり、観客を喜ばせる余興であり、そして観客が何より見たいのは、動物が生死に挑む本物の冒険なのだ」(386のさよなら異文、調教譚)
    ポケモンバトルで派手なキメ技はとても大事なのです

    …というプロトレーナー論なんていかがでしょう


      [No.3265] ご主人の視線を取り戻せ 投稿者:リング   投稿日:2014/05/13(Tue) 21:24:55     103clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ポケパルレ】 【マフォクシー】 【メレシー】 【ガノメデス】 【ギルガルド

    ※大丈夫、新しい手持ちが入ってあまりご主人が構ってくれなくなったポケモンが、おしゃれしようと頑張るだけのお話だよ!





     ご主人のアイカさんは、最近私達の事を構ってくれない。
     旅の途中でいただいたヌメラの女の子が卵から孵化してからというもの、最近は毎日ヌメラへのポケパルレに夢中なのだ。抱き着いてぬめったり、なでなでしてぬめったり。生まれたばかりの新しい子に構いたくなる気持ちは分かるけれど、もう少し私の事も大事にして欲しいの。
     そんなこんなで、最近はバトルの時と食事の時くらいしかまともに声をかけてもらっていない。他の子達も似たような状況なので、あまり不満ばかり愚痴るのも大人げないし。だからと言って、このまま引き下がるのも嫌である。私への視線を取り戻させて見せるんだから!

    「そんなわけで、私はご主人を振り向かせるために綺麗になりたい! 皆だって、最近構ってもらえなくって寂しいでしょ? ここらで、ご主人に構ってもらえるようにモーションかけましょう! ご主人の視線を取り戻すの!」
     食事の最中、仲間にそう持ち掛けてみる。ヌメラ(♀)は現在おねむの最中で、主人はそれに構っている。ヌメラは、とても弱い上に好奇心が旺盛なポケモンだから目が離せないらしいけれど、でも……それなら私達に世話を任せたっていいと思うの。だから、私達にも構って欲しい。
    「そうだね。私は誰かから女性を奪うのは好きだけれど、女性を奪われるのは好きじゃない……ヌメラもご主人も、私のものになるべきだ。私が美しすぎるから」
     少し(かなり)ナルシストなウィッチ(男ならウィザードじゃ……?)お兄さん。彼はご主人と最も長い付き合いの男の子だ。少し(かなり)ウザったいところを除けば、メロメロのうまい美青年で、決して印象は悪くない。
    「一部の意見には同意ね。私もご主人を奪われるのは好きじゃないわ」
    「ふふ、もちろん君も一緒に盗んであげるから安心してよ。そうだね……主人に振り向いてもらいたいなら美しくならないと。月桂樹やヒイラギのような優雅な木の枝を盾の鞘に刺そうじゃないか。あ、カエデなんかもいいんじゃないか……そういえば私も最近ストックの木の枝が尽きてきたな。食事が終わったら少し選んでおくか」
    「いや、盾は私の大事な場所を守るものなんだけれど……あ、でも枝を切るなら私に任せてね。庭師も真っ青な剣裁きで切ってあげるから」
     マフォクシーのウィッチお兄さんは、私をテールナーにでもするつもりだというのか。さすがにそれは御免こうむるわ。
    「やっぱりあれぞい! 女なんてキスで攻めてやれば落ちるぞい! おいどんなら7か所同時にキスできるもんな!」
    「あんたに聞いた私が馬鹿だったわ!」
     ガメノデスのシチフクジンさんは四肢および肩についた4本目の腕にまで脳がついているが、リーダーである頭の脳は少々筋肉ばかり詰まっていて発想がヤバイ。というかその7倍キッスは恐怖でしかないと思うわ。
    「ご主人は雌だからなぁ……やっぱり、翼を広げて体の大きさをアピールするのが一番だろ?」
     ウォーグルのアレク。あんたもウォーグルの基準でものを語らないで……。
    「私に翼なんてないってば。飾り布くらいしかないでしょ! 広げたって魅力的じゃないわよ……」
     ため息をつきつつ、私はアレクに反論する。
    「美しくなるなら、磨かなきゃだよねー。僕も原石は見れたものじゃないけれど、きちんと磨いてもらったら、とってもキレーでメレシーウレシーだったよー」
     メレシーのアメジストは、間延びした声でそう告げる。なるほど、磨くのか……。
    「そうだねぇ。私も、ご主人が振るう包丁の冷たい輝きは大好きだよ。パパが旅に合わせて美しいものを選んで送ってくれたらしいけれど、あの濡れたような美しい刃がねぇ……私はその輝きも嫌いじゃない。いつか盗んじゃおうかな……うふふ。潤んだ女性の瞳というのは素敵だしね……」
     ウィッチお兄さんは、妖しく微笑みながら、ご主人がさっきまで使っていたウェットティッシュで手入れされた包丁を見る。こいつ、マジシャンの特性のせいか、やけに手癖が悪いんだよなぁ。
    「うーむ……そうか、あの輝きか。血液の滴る私の剣も格好いいと思うけれどなぁ……でも、研いで綺麗になるのも必要か……」
     私は特殊型として育てられているから、ニダンギル時代と違ってあまり、剣の手入れは必要ない。そうか、だからご主人があんまり構ってくれなくなっちゃったんだなぁ。特殊技が弱かったころは、ガンガン切り裂いていたから、すぐ切れ味も落ちちゃったものね。そしてそのたびに研いでもらっていたけれど、今は私が大きすぎて研ぐのも難しいというわけだ。
    「そうだ、俺の羽飾りを頭につけてみろよー。ご主人は雌だし、きっと惚れるぜ」
    「却下」
     アレクは、同種の雌(いない)とでも仲良くやっててください。
    「でもさー。サヤカちゃん、ご主人より身長大きいよねー。そんな体をどんな石で自分を磨くのー?」
    「そ、それは……」
     アメジストの言葉に、私はドキッとする。そうとも、私の身長は180センチメートルほど。同族の中でもかなり大きい部類に入る。ご主人の持ち物を思い浮かべる。確か進化の石がいくつかあったけれど、あれは使えないし。かといって、硬い石や変わらずの石など他の石も小さすぎる。そうなると、手近にあって大きな石と言えば……?
    「ねぇ、アメジスト。私と一緒に美しさを磨かない?」
    「え、そんなのよりおいどん達と研がないか?」
     私の研ぎのパートナーにふさわしそうなのはアメジストしかいない。シチフクジンさんは……岩タイプだけれどちょっと遠慮しておこう。
    「んー……最近垢がたまってきたから、それを削ってくれるなら、メレシーウレシーだよー」
    「なんだ、どうやら話もまとまったみたいだね。ふふ、美しくなった君の刃で、私が使う木の枝を綺麗に細工してくれることを願うよ」
    「は、はい。ウィッチさん。喜んで!」
    「それとも、木の枝の代わりに君を抱いて寝るのもいいかな?」
     これでも、宮殿の庭師の真似をして遊んでいたくらいだから、私は枝を切るとかそういうのが好きなんだ。
    「あ、抱かれるのは謹んで遠慮いたします……」
     けれど抱かれるのはそこまで好きではない、一応。こう、包容力のある人ならいいけれど……。
    「それじゃ、そういう訳でアメジストちゃん。夜、主人が寝静まったら……私と一緒にお互いを磨き合いましょう。朝起きたらご主人を驚かせてやるんだから!」
    「いいよー。でも、僕は砥石にされるなんて初めてだから優しくしてねー」
    「それはもう当然。生まれたての赤子をなぜるように、慎重にやらせてもらいますとも」
    「ふふ、綺麗になれるといいね……とはいえ、私も最近ご主人に甘えていないなぁ。耳でも舐めれば喜んでくれるかな?」
     ウィッチさんは妖艶に微笑み、ご主人の方を見る。
    「おいどんもご主人に7倍キッスしてあげて構ってもらおうかな? きっと一発でメロメロぞい」
    「いや、それはご主人が嫌がるんじゃないかと……」
    「大丈夫大丈夫。それより、刃を研ぐなら水が必要ぞい。おいどんも協力しようか? それに、刃を研ぐなら目の粗い石と細かい石があったほうがいいぞい? ロックカットするよりもきれいになりそうだし、おいどんもたまにはおしゃれしたいぞい」
    「あ……そうね」
     忘れてた……水の事。それに、目の細かさの事も……そうよね、やっぱり荒い砥石を使ったほうが最初はよさそうね。あんまり気が進まないけれど、シチフクジンさんを参加させてあげましょうか。
    「それじゃあ、私は、さっそく今日の夜からご主人にポケパルレをさせるよ。僕が美しいから、ご主人には拒否権なんてないしね」
     あるでしょ、ウィッチ。
    「じゃあ、主人を寝かしつけておいてくれるかしら? 私はその隙に体を綺麗にしちゃうわ」
    「了解、サヤカ」


     とにもかくにも夜は更ける。ウィッチも早速ご主人とポケパルレをしまくった挙句、そのまま寝落ちして添い寝の真っ最中。いつか食べてしまうんじゃないかというような表情でご主人を抱いている彼の目が妖しくも艶やかだ。ご主人が今はぐっすり眠っているから、『君達は早く済ませてきなよ』とばかりに、彼はご主人の首筋に鼻を押し付けながら手を動かしていた。
     ともかく、私とアメジストとシチフクジンとで、ボールの中から勝手に飛び出し、揃ってテントの外へ出る。
    「ふー……深夜って言っても、まだまだたくさんのポケモンが起きているぞい。気配がそこかしこにあるぞい」
    「そりゃあ、夜行性のポケモンだって多いし……私だって、元は夜行性よ?」
    「僕は暗い所に住んでたから。夜のほうが落ち着くなー」
     すっかり夜も深まってみると、かわされるのはこんな会話。そういえば私も、夜にこうやって外に出たのは久しぶりの事だ。野生時代は夜行性だったのよねー。
    「ともかく、一緒にキレーになろーよー。サヤカ姉さんの体を味わいたいよー」
    「いいわよ。でも、まずは荒く研いでからね。そういう訳だから……シチフクジンさん、お願いできます?」
    「おうよ、当然。もうぶっかけちゃっていいのか?」
    「僕の準備は万端だよー」
    「了解ぞい! ならば、水を出してと……」
     シチフクジンが、体中から水を発して自身の体表を濡らす。
     濡れた岩を凝視しながら、私は鞘であり盾でもある体の一部をそっとはだけさせる。錆びているがため、シャッという小気味の良い音は発生せず、ジャリッという錆びた音。あぁ、こんなことならもっとこう、錆びが止まりそうなものでも塗りたい気分……となるとヌメ……いや、あれは油ではないか。
     ともかく、私の大切な部分を曝け出してみると、手入れ不足が響いたのか、案の定錆びだらけ。いくら、特殊技主体でほとんど刃を使わないからって、こんなにだらしない体を見せつけるのはやっぱり恥ずかしい……
     ギルガルドに進化してから、全く研いでいなかったんだ、切れ味も悪くなるはずである。私も、今現在は、物理技と言えば聖なる剣くらいしか使っていないし、それを使う相手はほとんど鋼や岩、氷など堅そうなやつばっかりで、斬るというよりは叩き斬る感じで使うからあんまり切れ味は必要ないのだ。全身から水を出したシチフクジンの体表には豊かな水が滴り、僅かな月明かりに照らされて鈍く光を照り返している。人間にとっては一般的には暗いと言える明るさだから、ご主人にはこのかすかな光は見えないだろう。
     その濡れている姿を見て、シチフクジンが相手だというのに私は湧き上がるギルガルドの本能を抑えきれなくなった。本来なら雨の日とかに、適当な岩で自身の体を研いでいたのだ。そうすることで年々擦り減っていく岩は、私達ヒトツキ族の繁栄の証。誇らしい気分にすらなってくるものであった。

    「さ、横になってシチフクジン」
    「うむ、どうぞ。研ぎ過ぎて痛くしないで欲しいぞい」
     ごろんと横たわった彼の上半身をよく見てみると、以外にも老廃物がたまって劣化したような色の岩がたまっている。へぇ、岩タイプの子もこんな風になるんだぁ。
     彼の濡れた体に私はそっと体を重ね合わせて、私の下半身もじっとりと濡らす。血に染まって薄汚れた私の肌が冷たい彼の肌に触れて、そういえばこんな風に誰かと優しく触れ合うのも久々だと思う。ご主人は触れてくれたとしても、盾やグリップ、飾り布だけなんだもの。切っ先を触れてくれないのは物足りないわ。ニダンギルの頃までの経験を思い出しながら、15度ほどの角度をつけてそっと彼の体とこすり合わせる。心地よい金属音が耳に響いて、甘美な欲求が呼び起された。
     こんなに大きくなってしまった体でも、小さかったあのころのように体を研げるのかと少しだけ心配もしたけれど、大丈夫そうどころか、十分すぎるくらいだ。濡れた体同士が擦りあわされるたびに、シチフクジンの体からこそげ取られた垢が、研糞となって滴る水を濁らせる。この水の濁りが、美しい刃を作り出すための決め手となるのだ。
     研糞を十分出したら、まずは先端のギザギザの刃。相手に治りにくい傷を与えるため構造を持った切っ先からゆっくりと研ぎだす。表面の垢が剥がれ、まだ固くきめ細かい部分に刃を這わせる。先端ゆえ、体ごと向かってゆくように突きだす攻撃にはなかなか使える。かたき討ちの時なんかは、これで思いっきり相手を突き刺すものだ……けれどまぁ、当然今の私は使わないけれど。
     引いて押して引いて押して。マグロのように横たわったシチフクジンの体を太刀で圧迫しながらそうしていれば、少しずつ鈍くなった切っ先が削れていることが実感できる。最初は感じなかった感触も、研がれ、体内の神経と近くなっていくことによって、痺れるように私の中を駆け抜けていく振動。体の奥の方、神経が通い、そして丈夫な芯の存在する骨髄まで響くような感触。よし、ここら辺はもうそろそろ大丈夫。徐々に根元の方へとゆっくりと近づいてゆこう。
     そうして、ひたすら続く往復運動。人間に飼われようとも、獣として生まれたさだめである本能に突き動かされるまま、妖しい水音とともに私は少しずつ美しくなってゆくのを感じる。そう、ご主人にゲットされたり、庭師の真似をしたりと、野生を失いかけてきた私だけれど、こういった野生の欲求はどれほど澄ました顔をしていても消えるものではない。いや、人間の手持ちになってすました顔をするよりも、研ぎすました白刃、切っ先、刀身の方がよっぽど気持ちよくって自然体だ。
     砥石が乾燥しないようにと、シチフクジンは適宜水を追加して、全身をしとどに濡らしている。うーん……シチフクジンの事はあんまり好きじゃなかったけれど、彼がいてくれてよかった。少々ごつごつがあった彼の体も、私の体にとがれ削られ、徐々になめらかな岩の形をしてきている。いま、それを知るのは研いでその感触を感じている私しかいないけれど、濁った研ぎ汁を洗い流せばきっと、垢の部分が削られ、磨かれた美しい岩が覘くはずだろう。
     さて、あんまり胸の前方の部分ばっかりやっていてもバランスが悪いので、その無駄な垢が削れた彼の体を一度見てみよう。
    「次は貴方の背中で研ぎたいわ」
     研糞がついたままの刃を見せながら、シチフクジンに告げる。
    「おう、随分ゴリゴリやっていたけれど、まだ半分も終わっていないんだな……どれどれ」
     と、シチフクジンは胸の濁った水を洗い流した。
    「おぉ、随分と滑らかになったぞい」
     シチフクジンの言葉通り、彼の胸は予想以上に滑らかに慣らされている。研ぎまくったものねぇ。
    「でしょう? どんな岩でも磨けばいい感じになるのね」
    「うらやましー。僕も早くやって欲しいなー」
    「だとよ、サヤカ。それじゃあ、早いとこ終わらせるぞい。次は背中を頼むぞい」
    「えぇ、ご主人が戦闘中に見るのは背中だものね。きっちり美しく磨いてあげなくっちゃ」
     背中を頼むと言ってうつぶせに横たわったシチフクジンに同じように刃を添える。こびりついていた研糞とともに、研磨を再開する。右側の根元まで研ぎ終えれば、今度は左側の先端から根元を目指す。すっきりした爽快感が左右対称ではないせいで、余計に不快感が募っていた左半身。
     先ほど、右半身を研いできたときは、まるでまとわりついていた虫を振り払えたかのような気分だったけれど。その感触を、いよいよ左半身にも与えられるという事だ。その感触を想像するだけで、うっとりとしてヨダレが出てしまいそうだ。
     癖になるこする摩擦音。荒々しい彼の体表に揉まれ、研がれ、洗練されてゆく。質量で見れば、1パーセントにも満たないような小さなダイエットなのに、研ぐことで得られる爽快感は、ボディパージで鞘や盾を投げ捨てた時よりも体が。そして心が軽くなる気分だ。
     そうして、次は彼の下半身。ヒトツキ時代から、異性の下半身に触れる事なんて、仲間で一緒に狩りをした時くらいだったけれど、こんな形で下半身に触れることになるとは思いもよらなかった。ご主人だって、抱いたりしているときに触れるのは上半身のみだから、何だか新鮮な気分だ。
     そんな初体験をシチフクジンで達成するのはいささか不本意だけれど、まぁいいわね。そうして左右の研ぎをどちらも終えたら、次は体の背面。研ぐことで付いた『返り』を削る作業だ。研ぐことで裏側に出っ張ってしまった返りを取り去れば、私の切れ味も、そして美しさも完璧なものになる。
     裏返り、仰向けのまま美しくきらめく星を見て軽く刀身を研いでゆく。あぁ、思えばシチフクジンと一緒に同じ星を見て居ることになる。このシチュエーション、もっとこう……立派な鍵をもったクレッフィとか、同じく立派な剣を持ったギルガルドや、美しい結晶の生えたギガイアスと味わいたいシチュエーションであるのが残念だ。でも、異性と一緒に、こうして星を見る……ニダンギル時代に仲間たちと一緒に星を眺めた時も、言い知れない満足感があったけれど、シチフクジンが相手なのに不覚にもそれに近い感動を感じてしまうのが情けない。
     涼しい夜風に刀身を冷たく冷やされながら返りを研い行く。最近の手入れ不足のせいで、長丁場になってしまって、さすがに疲れてきたのだけれど、こすりあげるたびに私の体の奥底から『もっと研げ』という欲求があふれ出し、私の体は止まることがない。ようやくすべて研ぎ終えた頃には、心地よい疲労感に包まれて、気持ちの良いため息が自然と漏れ出した。
     でも、まだ終わっていない。私がさらに美しくなるのはこれから。そう、これからなんだ。

    「お待たせ、アメジスト」
    「むー、遅いぞー」
    「ごめんね。でも、シチフクジンと同じく、貴方の体も一緒に綺麗にしてあげる」
     両肩の飾り布で彼の顔をなぜる。撫でられるのが嬉しいらしく、アメジストはこちら側に顔を寄せて甘えてきた。堅い体同士がふれあって、小気味の良い音がした。数秒ほど抱擁してそっと体を離すと、自分の体を研ぎに使われるのが初めてなので、若干緊張しているような面持ちだ。怯えたように濡れた瞳がちょっとかわいいかもしれない。
    「大丈夫よ、安心して。さっきシチフクジンにやったように、痛くはしないから」
    「う、うん……お願い」
     ごろんと、アメジストが横たわる。
    「それじゃ、水をかけるぞい」
     そこに、振りかけられるシチフクジンの水。
    「ねぇ、シチフクジン。私の研ぎ汁も落としてくれないかしら? きっちり流し切るつもりでお願いするわ」
    「あいよ、ちょっと威力強めで行くぞい」
     あぁ、私の体が洗い流されてゆく。刀身の腹の方まできっちり錆を落とした私の刃は、美しい黄金色を呈している。けれど、私はさらに美しくなって見せる。彼が悪いわけではないけれど、シチフクジンの岩は粗い。そのため、グッと目を近づけないとよくわからないほどではあるが、切っ先には細かな傷やあらが残り、剣の切っ先は、切れ味も輝きも研ぐ前よりはましといった程度か。
     そう、野生の頃皆の憧れだったレベルの高いニダンギルのお兄さんは、沢山の雌の鞘にその刀身を納めるべく、宮殿内部にある大理石の非常に細やかな目を利用して研いでいたものだ。そうやってきめ細かな石で研がれたあの方の刀身の美しい事。濡れてもいないのに、光の加減で濡れているように光を照り返すその様は、雌として鞘がうずいたものだった。
     その時の美しさ……メレシーの宝石よりも輝いて見えた記憶がある。さて、粗い研糞を落としたら、次はいよいよきめ細かな彼の体で私の刀身を研ぐのだ。やはり最初はアメジストの表面に垢のように古く風化した岩がこびりついているが、往復しているうちに、それらは禿げて、中にある堅くてきめ細かな岩肌が覘く。
     守りを固めた姿の私に匹敵する丈夫さを誇る岩のボディは、息がふれるほど近づいてみれば、かすかにキラキラと輝いている。濁った研ぎ汁すらかすかに煌めいて美しくなりそうなその体を、今から擦りあわせようとするのだと思うとなんだか少し緊張する。ごくりと生唾を飲みこんで、私は再びそっと彼と体を重ね合わせる。
     シャリンシャリンと立てる音は、今までで一番なめらかで耳の奥まで透き通るような金属音だ。そして、きめ細やかな分だけ非常に緩やかな振動が私の体の中に伝わってくる。そう、それは例えるならばじっとり濡れたウィッチの舌が私の刀身を這うような、そんな感覚。往復運動の回を追うごとに吸い付くように、そして吸い込まれるように一体感が味わえる。きっと、私の体にあった小さな傷が、この目の細かな砥石に撫ぜられて消えて行っているのだろう。
     とろけそうなほどに優美な感触は一度味わうと癖になる。時間が許す限り、この甘く爽やかな感触を味わっていたい。虚ろな目をして、私は初めての体験にひたすら身をやつしていた。
     やがてその心地よさにも終止符を打つ時が来た。右も左も裏も表も、すべての部分を研ぎ終えたのだ。
     全身からあふれるような満足のため息をついてから、潤んだ目でシチフクジンの方を見る。
    「ねぇ、私の体を洗い流してくれないかしら?」
     美しくなった私は、こうして水をかぶることで産声を上げるのだ。
    「おう、おいどんに任せるぞい」
     シチフクジンは研糞を洗い流すために水鉄砲を放つ。そうすると、研ぐ前とは見違える自分の姿があった。ご主人からちょろまかした手鏡には、自身の体も鏡と見まがうばかりに磨かれた姿が、手鏡との合わせ鏡として映っている。
    「おー、綺麗になったなー。仲間が綺麗になってメレシーウレシーぞー」
    「美しい……あぁ、研がれたお前ががこんなに美しいとは思わなかったぞい」
     私の仲間達も、こんなに褒めてくれる。良し、この姿でご主人にアタックかけて、久しぶりに振り向かせて見せるんだから。とにもかくにも、私は布巾で体をふき取ってみる。あまりに切れ味が良かったのか、軽く刃に触れただけなのに少しだけ切れてしまったのが主人に申し訳ない。
     そうして体をふき取ってもなお、鏡面のように研磨された私の体は、美しく濡れたような刀身を保ったまま。濡れた女性の瞳は美しいと言っていたウィッチにも惚れてもらえそうなくらいに美しいと自負できる。
     テントの中に戻ってみれば、ウィッチもさすがに主人と添い寝をしたまま眠っていたが、気配を感じて目を覚ましてしまったようだ。
    「おや、君は……人違いかな、サヤカちゃんによく似ているが、とても美しい」
     ブレードフォルムにして露出度を上げ、体のラインを強調する私に、ウィッチさんは立ち上がって褒める。
    「ふふん、もちろん私はサヤカよ。それは『私が見違えるほど綺麗になった』という褒め言葉として受け取っておくわ、ウィッチさん」
    「おや、君だったのか。はぁ、なんて美しい刀身だ……本当に、見違えたよ。思わず、ご主人から奪ってしまいたいほどに、綺麗じゃないか」
     そう言って、ウィッチさんは私の肩にそっと指を添え、私の目の下、胸にじっとりと濡れた舌を這わせる。
    「うん、触り心地も滑らかだ。ふふ、やっぱり……君の事もご主人から奪ってしまおうか……皆私に奪われてしまえば、みんな幸せだろ?」
    「ダメよウィッチ……寝言は寝て言わなきゃ」
    「おやおや、口の悪いお嬢さんだ。太刀なのにタチが悪い」
     そう言って、モフモフの体で私を抱きしめる。褒めてくれるのは嬉しいけれど、ご主人に抱きしめられた方が嬉しいのよ。
    「わーおー、ウィッチが大胆だなー」
     と、その光景を見てアメジストは無邪気な感想を漏らしていた。茶化されると恥ずかしいわ。
    「でも明日は、私はご主人のものだし、私さっきまで貴方がいた位置にいるんだから、覚悟してよね!」
     緩く啖呵を切ると、ウィッチは妖しく微笑んだ。
    「うん、どうぞご自由に。雌を奪って僕のものにするのは楽しいけれど、ご主人は1人しかいないから分け合わなきゃね。明日は君の自由にするといいよ」
     と言って、ウィッチは抱いていた私を開放して、ご主人との添い寝に戻る。よし、明日は私がその添い寝のポジションを狙ってやる! 明日、主人にポケパルレをねだるのがが楽しみで寝られないかと思ったけれど、披露していた私は予想以上にぐっすりと夢の世界へと旅立っていった。夢の中でも、ご主人とポケパルレ出来たらいいなぁ。


      [No.3034] 批評チャットログ 小説01-03 投稿者:No.017   投稿日:2013/08/14(Wed) 19:04:07     73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    22:56:05 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/novel01.html  01 第四の霊獣、ソルトロス
    22:56:29 No.017 いてらー
    22:56:48 No.017 禁止事項を逆手にとってきやがったな
    22:56:58 砂糖水 たしかに
    22:57:20 No.017 でも タイトルがタイトルだから ぎょっとするよね?w
    22:57:35 砂糖水 うまいこと伝承って感じがする
    22:57:38 たわし 確かに・・・。
    22:57:45 砂糖水 ちょっと日本語おかしいか
    22:57:46 ラクダ いってらっしゃいです。
    22:57:48 リング でも、世界中にUMAはいますからねぇ。ポケモン世界にもいるのでショウなぁ
    22:57:49 No.017 しょっぱなからオリポケか!? 禁止じゃねーの!? って
    22:57:55 クーウィ 行ってらっしゃいですー
    22:57:55 音色 悪くないんだけども、うぅん?みたいなのが残る(個人的に
    22:58:19 No.017 うん、ちょっとわかるうまく説明できないけど
    22:58:36 No.017 えーとね たぶんね 小説的じゃないんだよな 記事的なんだよ
    22:59:09 リング ふむふむほうほう
    22:59:13 砂糖水 ああそうか
    22:59:21 No.017 講義であって小説と少し違う
    22:59:21 音色 最後のまとめ方がお話というよりはライターみたいな視点だからかなぁ
    22:59:39 クーウィ 大学のレポートと言う感じすかね 発想やら内容は大好きなのですが、小説と言うよりは論文っぽいと言うか……
    22:59:50 No.017 それがこう悪く無いけど 物足りない感じに繋がってるのかな
    23:00:00 ラクダ 文章がうまくてさらさら読める、上手いとも思う、だけど……。
    23:00:13 リング かといって、戦いのシーンを書くと、動きの描写が苦手って人もいますし……そういう問題でもないのかな
    23:00:35 No.017 あのね 登場人物の心の葛藤がないのよね
    23:00:40 音色 講義を受けている先生と生徒がでてきて、最後に生徒たちがぞろぞろ教室から出ていくときの会話とか入ってたらもうちょっとなんとか、ならないか。
    23:00:57 ラクダ 二つ目は全体の流れが上手い、の意ね
    23:01:30 No.017 記事ならば 記事的な感じに徹して 最後のほうはもっとあっさり締めていいかも こう中途半端なんだよな
    23:01:43 リング 記事にするには長すぎる。小説としては記事的……帯びに短しタスキに長しってことか
    23:01:51 流月 昔話チックな語り口だなぁと
    23:02:10 流月 桃太郎とかこんな感じだった記憶がある
    23:02:42 No.017 まあこれは人の感情は入りようが無いから 記事的な感じにより徹する のがいいのかな
    23:03:30 No.017 あとはソルトロスというタイトルをどうするかw
    23:03:43 No.017 これは編集的な意見なんだけど
    23:03:47 ラクダ 面白いんだけど、拭えないモヤッと感。どう表現すればいいんだろう……。
    23:04:28 No.017 ソルトロスって単語を 目次で見たときに なんだよオリポケかよって感じで 除外してしまいそうな人がいそうな
    23:04:36 No.017 内容的には問題無いのだが
    23:04:42 リング タイトルを削るしかないかも
    23:05:00 No.017 なので たとえば タイトルを塩の涙とかに変えるとかね
    23:05:12 No.017 まあそれも一案
    23:05:24 No.017 他に意見なければ次いきます


    23:06:06 No.017 02 こうもり  http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/novel02.html
    23:06:24 No.017 感想:これぞ小説ですね。
    23:06:41 リング この物語を見た感想としては、世界が狭いという風に感じました。
    生身のポケモンが少ないということはともかくとしても、ハーフやクォーターの苦悩や歴史的な扱い、世間的な扱いがあまり描かれておらず、また世界観に広がりを感じにくいのが原因といいますか。
    例えば、『ポケモンと結婚することはとっても良いことだって言う神様がいた』として、そしてユミちゃんの祖父がポケモンだとして、『だから何?』という印象が強くなってしまいました。
    中途半端でどっちつかずな『こうもり』というのも、社会的な立場を象徴するものとユミちゃんやシュウ遺伝子が実際にそうなっているものとで関連性が薄く、そもそもシュウ君やユミちゃんがポケモンとのクォーターという設定が必要だったのかと……。
    普通に二重国籍や片親など、の設定でもいけたような気がして、無理してポケモンとのハーフという設定を持ってきたような、別の物語を無理矢理くっつけたような、中途半端な作品になってしまったという印象です。
    23:06:57 No.017 小さくて読めないw
    23:06:58 砂糖水 細かくて見えねえwww
    23:07:01 クーウィ ですね!>これぞ 一番読んでて楽しめました
    23:07:16 No.017 昔話との絡め方もうまいし 起承転結が出来てる
    23:07:41 音色 ただ、なんか、お題とは微妙に違うラインを言っているような、そうでないような…気はしました
    23:07:58 No.017 また人とポケモンのあいのこ(この場合クォーターだけど)がシンオウぽくていいなぁち
    23:08:00 流月 評価分かれてるなぁ
    23:08:01 No.017 と
    23:08:08 流月 これは好みかな
    23:08:15 砂糖水 布袋思い出した
    23:08:15 クーウィ リングさんの指摘も鋭いな……
    23:08:30 音色 あと、先が読めちゃう展開だなぁと思ってしまった。蝙蝠の例えは悪くないしうまいんだけども、そのおかげでどうなるかわかっちゃった
    23:08:44 No.017 異種族が絡むことで一種の「鳥居の向こう」が表現できてるかなぁと思った
    23:09:10 音色 嫌いじゃないけどなんか、うん、微妙かなぁ
    23:09:22 リング なんというのか、もっと主人公がハーフやクォーターに積極的に絡める位置にいながら、絡めない。そういうジレンマを前面に押し出していけば変わったかもしれない
    23:09:26 クーウィ 個人的には小説としては面白かったです でも、テーマとしてみるとソルトロスの方がずっと惹かれた
    23:09:31 No.017 3作の中だと一番採用したいと思ったね
    23:10:03 No.017 あとね これは女の子のほうが共感出来ると思うよ
    23:10:10 音色 それはある
    23:10:14 No.017 女の子の狭い世界
    23:10:23 たわし うむ
    23:10:39 音色 狭い怖いキツイ辛い
    23:10:40 砂糖水 あまり縁のなかった人
    23:10:49 No.017 一人の女の子だもん世界狭いのは当たり前じゃん だからクォーターの歴史みたいなところは私は気にならなかった
    23:11:49 No.017 背景の説明は必要だけど やりすぎると主題を置いていくから、この作品においてはこれくらいでいい
    23:12:35 イサリ 確かに個人の視点が強い、というのは感じました。それゆえに、のめり込むように読んでしまいます
    23:12:46 No.017 まあ あえて言うならクォーターからさらに八分の一でもよかったかなって気はする
    23:12:55 砂糖水 視野の狭さが良くも悪くも、みたいな?
    23:13:12 音色 それでもなんか俺はこの作品の空気はあれなんだよなぁ。うぅん
    23:13:35 砂糖水 なんかそう考えると、いいかもなあと思う
    23:14:13 No.017 ただ、リーフィアの特徴を受け継いでる事に関しては 人間と交わるとイーブイじゃなくて進化系の特徴が出ちゃうみたいな説明は欲しかった
    23:14:40 リング 体が悪いから田舎に住んでいたのかもしれない
    23:15:09 クーウィ 取りあえずは更なる投稿を待ちたい作品かなぁと 敢えて言っちゃうと、本格的に小説してる作品って今のとここれしかないですし(苦笑)
    23:15:21 No.017 そうなんだよねー
    23:15:24 No.017 じゃ最後ね


    23:15:47 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/novel03.html 03 雨守神の嫁入り
    23:15:57 No.017 まあガチアイヌ神話ですね
    23:15:57 クーウィ 今のとこは小説としては蝙蝠が最上だけど、もっと良いのが来るかもしれないと言う感じ
    23:16:02 砂糖水 これ、すごいと思うんだ でも、でもさっていう
    23:16:21 No.017 描写はかなりポケモンにあわせて工夫してるね
    23:16:44 砂糖水 途中で一人称になってるのがなあ 一応空行で変わりますよーてのはあるんだけど
    23:16:50 音色 テーマガチ勢と言わざるをえない
    23:16:53 リング 全体的な感想としては、やや格式ばった語り口調といいますか。文章が非常に硬い印象があり、物語がすんなりと頭に入ってこないで読み進めざるを得ない感じでした。
    キャラについては、白龍の娘がほとんど喋ることなく、そのためにキャラの印象が非常に薄く感じられてしまいます。その反面、兄が思いっきり喋りまくっているので、もう兄さんと結婚しちゃえよと。娘の印象が薄いため、恋のために奮闘した主人公の頑張りに感情移入が難しくなってしまいます。
    23:16:58 No.017 悪くは無いけど 他の投稿を見てから決めたい感じ
    23:17:03 リング この企画のテーマとの兼ね合いに関してですが、アイヌ文化にポケモンを上手く落とし込み、民俗文化の物語を上手く描写できていたと思います。
    ただし、民俗文化の価値観は、現代の私たちに理解しがたいものが満載です。そういった理解しがたい事を書く事は悪いことではなく、むしろそういうのもありなのかと思わせる腕の見せ所だと思いますが、それを理解させたり納得させたりするだけの説得力のある描写がほしかったところ。
    23:17:05 砂糖水 リングさんw
    23:17:15 音色 リングさん批評モード
    23:17:19 リング 感情表現を多めに取り入れる。語り口調をもう少し分かりやすくする、などの工夫は、小説の持ち味や雰囲気を損なう諸刃の刃かもしれません。良いくも悪くも、分かりやすさを犠牲に雰囲気を重視した分相応の印象を受けました。
    23:17:48 No.017 アイヌの昔話の本読むとほんとにこんな感じなのよね
    23:17:59 リング あと、 腹から→同胞
    23:18:00 クーウィ 昔話以外の何物でもない 小説、ではないなぁ(苦笑)
    23:18:17 No.017 むしろこれはマネしてるから良いのであって 現代的な小説表現をするとつまらなくなってしまうかなって思った
    23:18:19 ラクダ 壮大なガチアイヌ神話。登場する神々にわくわくした。物語に引き込まれたし、硬い語り口も気にならなかった……が、ちょっと、その、ボリュームが……w
    23:18:31 砂糖水 ユーカラはたしかに一人称なんだけどさ であるなら、私はどこそこのここういう男です、みたいにはじめてほしかったような
    23:18:42 音色 印刷して読みたい。パソコンでこれ読むとすごい目が痛い
    23:18:44 No.017 そうだね コピーにしてはボリュームがあるね
    23:19:02 音色 ボリュームと言えば溢れる師匠疑惑(((
    23:19:18 リング 取りあえずリオルを焼くか
    23:19:23 No.017 作者さんへ なんか改訂版きてたけど これ以上増やすなw
    23:19:26 クーウィ 擬人化は専門外です
    23:19:26 ラクダ それはありますね>一人称 いきなりの変化に、ん?ってなって何度か前後を読み直しました……。
    23:19:35 砂糖水 最後に者になり代わって というなら 途中でそういう一言いれてほしかったの
    23:19:51 音色 いや、知ってますw
    23:19:59 No.017 じゃあ 言いきったら
    23:20:00 砂糖水 勇者になり代わって 勇抜けた
    23:20:10 音色 増えてたのか>改訂版


      [No.3033] 批評チャットログ 記事21-23 投稿者:No.017   投稿日:2013/08/14(Wed) 19:02:57     92clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    22:27:06 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/kiji21.html  21 嘆きの湖の伝説
    22:27:36 No.017 ギャラドスに一言言わせてくれ
    22:27:41 砂糖水 はい
    22:27:46 No.017 このロリコンめ!
    22:27:52 砂糖水 そこかwwwwwwwwww
    22:27:57 たわし 言うと思った
    22:28:04 No.017 すまん 言ってみたかった
    22:28:39 砂糖水 わりとオーソドックスな話な気はするけど、だからこそふつうに面白い
    22:28:47 No.017 これは小説にしてもおもしろそうだよなー
    22:28:47 こま 火の七日間か・・・
    22:29:01 砂糖水 おおほんとだ
    22:29:52 ラクダ ロリコンにしか見えなくなってきたwww  なんというか、文章のぶつ切り感が気になります。あと書きたいことを詰めようとして必死になってるような……?文字数足りなかったのかなあ。
    22:30:12 No.017 オーソドックスなのであまり突っ込み所はない あと この伝説にかけた 行事の記事とかでもよかったかもね
    22:30:52 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/lesson2/wforum.cgi?no=2956&reno= ..... de=msgview チョウジタウンなら私も書いてるぜ!!!
    22:30:58 No.017 と無駄に宣伝
    22:31:07 リング しかし、人間界ではケモナーが変態と呼ばれるが、このギャラドスは……
    22:31:09 砂糖水 ww
    22:32:16 No.017 さて 次


    22:32:33 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/kiji22.html
    22:32:45 砂糖水 ブイズ
    22:32:46 No.017 何度も言うが 空行が(ry
    22:32:59 砂糖水 そこは直せばいいですやん
    22:33:35 穂風湊 ちょっと席空けてました こんばんはです
    22:33:35 音色 悪くないんだけど、なんか足りない気もする
    22:34:01 流月 たぶん、小説のつもりで書いてた人が多いからなんじゃないかなと>空行 てか、それ文句言ってたら始まらない
    22:34:25 No.017 私は編集だから空行と戦う立場なんです!
    22:34:28 たわし こんばんはー。
    22:34:47 No.017 なので 執念深く指摘します
    22:34:49 砂糖水 空行vs鳩大明神
    22:35:21 No.017 まあ、何が言いたいかというと行詰めてね★
    22:35:39 リング ニンフィア用の神社が早急に望まれるな
    22:36:31 ラクダ トレーナーが行く先(進化含む)を決めるのではなく、ポケモンに選ばせるというところが良いと思いました。
    22:36:31 砂糖水 wwww
    22:36:40 No.017 完全に好みなんだけど こう イーブイが出来すぎ というか 狙いすぎな感。ただこれは完全に好みの問題。
    22:36:59 砂糖水 みんなブイズ好きだなあ
    22:36:59 お知らせ ラクダ(Win/IE9)さんは行方不明になりました。
    22:37:59 No.017 あと今はブイズの繁殖容易そうだけど昔は難しかった漢字があるから 昔ながらの行事というよりは昔は身分の高い人がやっていて 最近になってからみんなもできるようになったとか そういう考察が欲しかった
    22:38:49 音色 そもそも貴重な進化の石等のアイテムをそうぽんぽんと手に入れられるのかと思った
    22:38:57 砂糖水 ああそうか…イーブイは珍しいポケモンですもんね
    22:39:29 穂風湊 そうですね。進化の石も高価でしょうし
    22:40:27 音色 てかどんだけ流通してるんだ。シンオウのアイテムなんかどうやって取り寄せてんねん、ともつっこむ
    22:40:42 ラクダ 狩りに市場で手に入るとして、個人でやるなら相当な出費だよなあとは思った。資金無い子はどうしたんだろうかと。ある意味、それを含めれば小説用のネタになるかもですが。
    22:41:04 ラクダ 狩りじゃない、仮に
    22:41:13 こま 剥ぎ取りですか
    22:41:37 音色 リアル泥棒
    22:41:38 穂風湊 貿易都市で商品が多く集まるなら、安く買えたかもしれません
    22:42:02 No.017 あとはこれも完全な好みだが イーブイには旅の途中で何かの縁やきっかけがあって進化して欲しい 個人的な好み
    22:42:15 音色 とてもわかる
    22:42:16 ラクダ 追剥ぎ型トレーナーの旅立ち!これは新しい!(いいえ
    22:42:44 流月 えっ、トレーナーって元々金奪う盗賊の同義語なんじゃ・・・
    22:42:50 砂糖水 んー進化の石のかけらとか使って方角だけ決めるとか・・・
    22:44:54 No.017 うん なので私的な結論としては 王侯貴族の行事としてならありかな! と
    22:45:20 音色 しかし太陽のリボンと月光のリボンがある時点で「え?」とはなった。
    22:45:32 No.017 あるいは その土地牛耳ってる名家の行事
    22:45:45 リング ポケダンの道具ですからねぇ。どちらにせよ懐いていないといけませんし
    22:46:01 No.017 一般でやるには少し「ん?」っとなっちゃう
    22:46:29 ラクダ 流月さん、しーっ……!(
    22:46:42 No.017 あと無理して 全部出す必要も無いかなー それこそ 3種とかでもありじゃないかな
    22:47:07 イサリ あるいは、お祭りなどで代表として一人だけがやって、その年の恵方を占うとかですかね
    22:47:15 No.017 あーなるほどね
    22:47:26 No.017 町の代表で
    22:47:29 穂風湊 それいいですね >恵方を占う
    22:47:34 No.017 それも悪く無いね
    22:47:38 砂糖水 おおー
    22:48:04 No.017 その町の旅立ちの子全員だと無理が出てくるんだな
    22:49:12 No.017 さてあとは作者さんに委ねるとして 次
    22:49:19 No.017 最後です (記事の


    22:49:37 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/kiji23.html 23 山姥と糸車
    22:49:37 砂糖水 まだ小説3つもあるのか…
    22:49:56 リング 銀の弾って日本でも魔よけの効果ありましたっけ?
    22:50:26 砂糖水 貴金属だからなにかしらありそうな気も
    22:50:50 No.017 これって元ネタは狸の糸車だよね
    22:50:59 流月 というか日本だと金属が魔除けの発想自体がない気がする
    22:51:19 音色 確かにねぇ
    22:51:33 No.017 銃の弾使い尽くして 枝削って刺したとかでも十分かもなぁ
    22:52:21 砂糖水 つ http://www.geocities.jp/shonanwalk2010/K-mukashibanashi-20.html
    22:52:25 こま 銃弾を60発も持ち歩くとか、戦争でもするつもりなのか
    22:52:37 ラクダ 魔よけの文字を刻んだ弾を一つ持ち歩く、という話なら聞いた事が。銀の聖性は日本にはちょっと……?
    22:52:45 No.017 あ、狸の糸車は別の話か しかし昔読んだ事あるような気がする
    22:53:11 リング あぁ、日本でも魔よけの効果が合ったんだ……
    22:53:46 流月 魔除けの意味があったのか…日本の場合、桃とかの食べ物の方が魔除けのイメージがある
    22:53:58 ラクダ あるんだ!?というか、元ネタがあったんですね……。素直に驚いた。
    22:54:09 砂糖水 どうせなら猟犬が役立たずで〜みたいにしてもよかったかも?
    22:54:23 No.017 ヨルノズクってところがいいと思ったw
    22:55:22 No.017 ういでは
    22:55:26 ラクダ ヨルノズク=シンオウの神のイメージが強かったから、確かにここは新鮮でした。
    22:55:38 No.017 小説
    22:55:40 リング ヨルノズクはシンオウが一番に合う
    22:55:40 No.017 いきますか
    22:55:53 砂糖水 ここからが本番の気もw


      [No.3032] 批評チャットログ 記事19-20 投稿者:No.017   投稿日:2013/08/14(Wed) 19:01:35     64clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    22:09:16 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/kiji19.html 19 干支ポケ大論争
    22:09:32 リング 作者は病気
    22:09:36 音色 これはまぁ、ありったけを詰め込んだ感じに見える
    22:09:36 砂糖水 www
    22:10:16 音色 とにかく干支に関するポケモン拾っていってまとめてぶち込んであるかな。嫌いじゃないけど、ちょいとごちゃっとしてる気がする
    22:10:33 No.017 http://www.nicovideo.jp/watch/sm1417786 元ネタのひとつがこれであることは確定的にあきらか
    22:10:38 砂糖水 コミカルな感じで面白い
    22:10:48 砂糖水 鳩さんwww
    22:10:52 No.017 明らかに他とテンションが異なる
    22:11:22 たわし 一番笑った記事はこれですねw凄く同調して読めるというか。
    22:11:24 イサリ これは少し長すぎるかな、と。一つか二つに絞って掘り下げた方がいいかと思いました。
    22:11:31 No.017 つまり 犯人はこまさん(いいえ
    22:11:39 こま ?!
    22:11:43 こま !?
    22:11:50 No.017 白状しろ
    22:11:57 砂糖水 こまさん驚くの巻
    22:11:59 ラクダ ポケモンの選択とその理由に共感、面白く読めたけどちょっと長かったかな〜……?という感じでした。最後の方はなにがなんだか。
    22:12:15 音色 詰め込みすぎ感は否めない
    22:12:39 No.017 まあ 見開き2ページコースですね
    22:12:53 ラクダ 好きですが記事としては……ううむ。
    22:13:03 No.017 ・文字数は(1)1000〜1400程度 (2)4200程度 どちらかを選択。 の(2)枠を狙ってる
    22:14:00 流月 とはいえ、削るとしたらどれ削るか悩みどころ
    22:14:00 音色 多い方なのは分かってるけど、なんか無理やり水増ししてないだろうな
    22:14:15 No.017 作者 お前これがやりたかったんだろ とミミロップの部分を読んで思いました
    22:14:31 ラクダ (1)の記事に慣れていたせいで、よけい違和感を感じたのかも。これがマサポケのカフェ掲載なら、それほど気にならなかった、かな?
    22:14:52 流月 これはこれでありだと思うけれど、絵にするならどれか絞ったほうがいいんだろうな
    22:14:55 No.017 ミミロップに絞るか 今のまま全干支制覇か かなー
    22:15:28 No.017 いや全部描いて貰えばいいと思う こういうの出来そうな絵師さんの心当たりならあるよん
    22:16:29 流月 なら、全干支制覇でいいんじゃないですかね
    22:16:55 No.017 あと問題の年賀状柄を描く絵師と メインイラストの絵師 それぞれ違う人が良いだろうね
    22:17:19 リング 豪華すぎるww
    22:17:24 こま ちなみに自分がお話書いたら人間出てこないはず、よって自分じゃない!
    22:17:30 No.017 まあ 通れば です
    22:17:36 No.017 では次
    22:17:45 リング うかんさんなら問題の奴はかけそうだが……


    22:18:00 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/kiji20.html 20絆の温度
    22:18:26 No.017 これはタイトルがいいね なんか紀行文ぽい
    22:18:29 リング シンオウのギャロップは番場馬になってそうで、すばやさがひくそう
    22:18:38 ラクダ 内容はものすごく好みなのに、あまり入り込めなかった作品でした。文章が淡々と流れるせい?
    22:18:57 リング 番場馬の競馬は見ていて面白いんだけれどね……
    22:19:13 たわし 逆にその淡々とした感じが好きです。
    22:19:19 No.017 ばんえい競馬型ギャロップ
    22:19:33 イサリ 自然の描写の美しさがトップレベルだと思いました
    22:19:42 ラクダ ガチムチギャロップか……(
    22:20:47 No.017 こう空気感で勝負してる感じだよね ただ具体性には欠ける 悪く言えば想像だけで書いてる感じ 馬を使った開拓についてネットの範囲で良いから調べた方が良い
    22:20:57 茉莉 ガチムチギャロップ…そう考えると土地ごとに多少ポケモンの体格も違ってるんでしょうね
    22:21:30 リング ちなみにこんなん http://shunpei-inakaseikatu.blogzine.jp/photos/uncategorized/dsc00369_1.jpg
    22:21:48 No.017 すごく…ばんえいです
    22:22:10 リング ばんえい競馬で検索したら育て屋の写真が
    22:22:28 たわし すごく・・・ガチムチです
    22:22:41 こま http://blog.hobbystock.jp/report/images/tp0188/021.jpg
    22:22:45 流月 サラブレットと別物だなぁ
    22:23:35 リング 素早さ種族値60くらいのギャロップになりそう
    22:23:49 No.017 まあ このギャロップの場合 炎つかえるのも大きいので 実際の開拓がどうかに加えて、そこを記事に生かせるとなぁ
    22:24:30 流月 攻撃種族地は高そうだな いや防御かな
    22:24:46 No.017 小説に取り入れるなら 経営危機の牧場と子馬の誕生かな ただし馬はタマゴから生まれる
    22:25:22 No.017 だから足引っ張るとかの描写が描けないんだよな…
    22:25:38 砂糖水 ※ただし馬はタマゴから生まれる
    22:25:52 砂糖水 ツボったwww
    22:26:08 No.017 借金のカタにタマゴはいただいてくぜえ  牧場の馬がみんな追いかけてきてひーってなる とか
    22:26:37 こま 自転車ならぬ、乗馬で殻割かぁ
    22:26:47 No.017 次いきましょう


      [No.3031] 批評チャットログ 記事13-18 投稿者:No.017   投稿日:2013/08/14(Wed) 18:54:39     94clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    21:18:53 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/kiji13.html  13 盗まれた才能
    21:19:15 No.017 イマイチホラーになりきれなかった感
    21:19:48 音色 怖い…と感じるのが不発した感じ
    21:20:20 ラクダ これ滅茶苦茶好きでした。確かに怖さは微妙ですが、その分じわっと来るものがあって。
    21:20:22 No.017 まあ 都市伝説の一つとしてはありな感じだけど
    21:20:38 茉莉 グローバルリンクを彷徨うポケモンにまつわる話…っていうのが面白くて好きです。他のポケモンでもできそう
    21:20:43 穂風湊 内容とは全然関係ないですが、VOCALOIDの名前は「跳音ミミ」の方が良かったかなと
    21:20:52 No.017 怖いに重きをおくかどうかで評価変わるかなぁ
    21:21:08 リング 私の小説には緑音サナとエルが出てくるなぁ
    21:21:17 穂風湊 VOCALOIDの名前に「音」の字が入ってるので
    21:21:33 No.017 いやわりと最近は崩れてきてるよ
    21:21:39 No.017 猫村いろは とか
    21:23:55 イサリ 盗んだ才能が怖くなって……というのがもう少し強調されるといいかなーと思いました。


    21:39:22 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/kiji14.html 14 ニドランの結納
    21:39:54 No.017 みんな絵に見とれてるのか返事が無いwwwwww
    21:40:20 リング 閉経の早いポケモン
    21:40:38 音色 いいよね、縁結び
    21:40:45 音色 するっとかわいい
    21:40:50 ラクダ 正にそれでしたw>絵に見とれて返事ない
    21:41:12 音色 ラブカスでやったらどうなっていたかな
    21:41:30 No.017 実は茉莉さんの素晴らしさを広める会だった
    21:41:42 リング な、なんだってー
    21:41:49 No.017 なんちゃって
    21:42:05 ラクダ これは和風ほのぼのな絵になりそう。投稿作の中で五指に入るお話。
    21:42:21 No.017 たしかにラブカスもありですよねー
    21:43:00 No.017 なければ次
    21:43:16 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/kiji15.html 15縁切りの鎌
    21:43:51 No.017 おーい 絵から戻ってこいwww
    21:43:58 音色 二ドランに続いてこれってことはまぁ、うん、狙ったのか
    21:44:08 No.017 狙ってますね
    21:44:15 音色 デスヨネー
    21:44:20 たわし ニドランと対になってるのが面白いなって。
    21:44:37 穂風湊 縁切りは面白いなーと
    21:44:38 音色 それも作者様の狙いですね。はい。
    21:45:05 No.017 縁切り神社はまじにあるしね
    21:45:20 音色 ほほう
    21:45:54 No.017 http://park2.wakwak.com/~kabura/imifu/nazo/engiri/engiri.htm
    21:46:42 No.017 http://www.google.co.jp/search?q=%E7%B8%81%E5%88%87%E3%82%8A%E7%A ..... &hl=ja ほれ こんなにヒットするぞ
    21:47:08 ラクダ 縁切りにストライクを選択する、そこにおおっ、てなった。あの大鎌で断ち切るっていうイメージがすごく良かったです。
    21:47:28 流月 とりあえず、家に帰る途中のどこかのはず
    21:47:31 ラクダ おかえりなさいです。そしてこんばんはです。
    21:47:33 砂糖水 縁切りと縁結びは表裏一体
    21:47:42 No.017 実際に鎌を描いた 絵馬というのが存在する
    21:47:51 流月 うぃ、こんばんはー
    21:47:52 音色 ストライクもそうだけどカブトプスもでてきたわ
    21:48:05 砂糖水 かげうす( …ごめん>るたまろ
    21:48:41 たわし こんばんはー。
    21:49:00 ラクダ あっ、あるんですね!>鎌絵馬 それが元ネタかなあ。なるほど。
    21:49:11 No.017 さて次
    21:49:12 流月 ええんや、ここ最近ネットにinしてなかったから>さっちゃん
    21:49:16 イサリ 検索結果の一番上がコワカッタ


    21:49:29 No.017 16 狐払  http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/kiji16.html
    21:50:02 No.017 さっきも同じ事言ったけど 改行と空行が多いかな。もっと詰めて良い
    21:50:09 砂糖水 すまぬ>るたまろ
    21:51:03 No.017 あと イマイチ 祭りの規模がわからなかったな。元ネタのトマト祭りってもっと大々的な感じがするから
    21:51:04 砂糖水 いつだったか話題に出たマトマ投げがようやっと登場か、と思った
    21:51:18 砂糖水 あれ間違った(
    21:51:32 No.017 こうマトマだらけになって真っ赤になった道の様子とか書かれてるといいんじゃマイカ
    21:51:50 No.017 最後のオチはいいなw
    21:51:53 穂風湊 確かにトマト祭りっていうのもありましたね
    21:51:54 砂糖水 肌がヒリヒリしそう
    21:51:57 流月 これ割と好き
    21:52:34 穂風湊 今写真見てきたのですが、予想以上に真っ赤でびっくりしました http://www.google.co.jp/search?hl=ja&rlz=1T4SNJB_ja___JP468&a ..... kgXVl4C4Ag
    21:52:48 砂糖水 これはwww
    21:52:50 流月 規模とか書かれてないの絵描きさんのインスピレーションを縛らない方がいいと思ったからかも知れない
    21:52:52 No.017 あと 絵師の一人は「父親は目元を赤く縁取っているのが特徴的な男性」は別にいらなくない? と言ってたので一応書いておく
    21:53:11 No.017 やばい
    21:53:17 音色 どしました
    21:53:18 No.017 赤すぎるwwww
    21:53:23 No.017 狂気を感じる
    21:53:33 ラクダ ネタや内容は面白いです。けど、どことなく物足りない感。ゾロアーク親子のくだりは「裏の話」……?
    21:54:02 リング もはやホラー映画
    21:54:05 ラクダ 写真がエグいwww怖すぎるwww
    21:54:13 No.017 実際のトマトに比べると小規模な雰囲気やね それはそれでおk だけどまだ付け足せそうな感じはあるね
    21:54:26 穂風湊 これをそのまま絵にすると、ホラー以上になりそうですね
    21:54:31 音色 お話は嫌いじゃないけどなんかうーん
    21:55:41 No.017 本家トマト祭りをストレートに記事にしたやつも読みたいな。で、いいほうを記事にしたらいい
    21:56:45 No.017 奥さんがぶつけてるのは好きw
    21:56:46 音色 マト祭り合戦
    21:57:05 No.017 ニドランもそうだがあえて対抗馬をぶつけにいくのもいいんでないか
    21:57:14 砂糖水 奥さんはっちゃけてそうw
    21:57:20 イサリ 奥さんのキャラクターいいですよね
    21:57:23 No.017 奥さんはっちゃけてるよなww
    21:57:36 ラクダ オチにニヤリとしたw
    21:57:59 No.017 うむ オチはよい
    21:58:09 No.017 では次


    21:58:31 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/kiji17.html  17 渡し守の歌
    21:59:02 No.017 これなー 消えた文化ということで題材の取り方はすごくいいんだけど もうちょっとこう欲しいな
    21:59:24 たわし 私はこれ好きですねー。BW2でイッシュにラプラスが現れたのもあって、そのへんゲームとリンクしてる感じで面白かったです。
    21:59:29 砂糖水 ラプラス!ラプラス!ラプラス!
    21:59:41 茉莉 ビレッジブリッジでのラプラス出現率低いですよね〜
    21:59:41 穂風湊 音楽親父いいですよね。BGM聴きによくいってました
    22:00:26 No.017 しかし、今でも時々、橋の下から澄んだ歌声が聞こえる事があるという。 ここ膨らませられない? 音楽を演奏してるとどこからか聞こえてくるとか 昔祭りをやっていた日になると聞こえてくるとか
    22:00:57 No.017 ある曲を演奏してると聞こえてくることがあるとかさ
    22:01:08 音色 ほむほむ
    22:01:24 リング ふーむ……なるほど
    22:01:36 No.017 あるいは特定の楽器を演奏するとか というのは昔ラプラスを呼ぶときにその楽器を使っていたから とか
    22:01:53 ラクダ なんというか、ポケモン世界に実際にありそうでいいなあと。しっくりくる。元ネタはBW2なのか、やってみようかな……。
    22:02:14 No.017 題材はいいけど練り込み足りない感
    22:02:20 音色 BW時代も親父たちはいるしラプラスでるよー
    22:02:34 音色 なるほど
    22:02:42 音色 なんか馬頭琴おもいだしたわ
    22:02:46 たわし えっそうなの・・・>ラプラス
    22:02:55 音色 粘れば出る>ラプラス
    22:03:08 No.017 クリア後に 渦巻いてるとこに出るんだっけか
    22:03:32 No.017 他になければつぎいきますー
    22:03:40 たわし そうなんですか・・・知らなかった。やり込みしてないからな・・・。
    22:03:40 音色 うぃす
    22:03:42 ラクダ ←記憶が飛んでいるので二週目ライモンに滞在中 親父もラプラスもいるんだ……!がんばって進めよう


    22:04:00 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/kiji18.html 18 岩神様、数十年ぶりに表へ。
    22:04:11 No.017 作者は確定的にあきらか
    22:04:31 砂糖水 wwwwww
    22:04:34 No.017 岩ポケモンご神体というのはいいよねえ
    22:04:45 No.017 他の岩ポケモンでも使えそうだわ
    22:04:52 音色 確かにw
    22:05:30 リング レジロックとか可愛いですよね
    22:05:44 たわし 心に残ったというか、和みましたね。いかにも小記事という感じでまとまりもよくて好きです。
    22:05:45 No.017 ただ「そのお陰なのか否か、我が国は、世界トップクラスの長寿国としても有名である。平均寿命は、男女共に最高水準を維持している。」は飛躍しすぎだと思ったw
    22:06:22 No.017 新聞記事っぽいのはいいね こう あえて新聞ぽくまとめて スクラップみたいな感じで貼ったらおもしろいかも
    22:06:37 音色 そもそも無機物系のポケモンに寿命はあるのか・・・?
    22:06:51 音色 デザイン面でもいい感じな気がする、スクラップ
    22:08:13 イサリ ガントルの寿命を考えると、八代目って相当長い伝統ですね。


      [No.3030] 批評チャットログ 記事08-12 投稿者:No.017   投稿日:2013/08/14(Wed) 18:52:18     91clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    20:57:33 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/kiji08.html クサビラ様
    20:58:16 音色 パラセクトでやったら不気味度は倍増したと思うよ
    20:58:32 砂糖水 それはwww
    20:58:32 No.017 これも元ネタがあります
    20:58:36 No.017 http://reason1.jugem.jp/?eid=674
    20:58:37 たわし その発想はなかった・・・>パラセクト
    20:58:46 リング キノコってカロリー少ないけれど大丈夫なのか
    20:58:54 穂風湊 パラセクトの大群が押し寄せて来たら怖いですね……
    20:59:14 No.017 http://www.iw.vrtc.net/~masa/kusabira.html
    20:59:34 音色 パラセクトの本体はキノコだし、キノコの意志でこれをやったと考えたら、ねぇ
    21:00:17 音色 まぁ俺がパラセクト好きなだけなんだけどね!
    21:00:21 たわし 個人的に凄く好きな話でしたね。元ネタを知ってたらまた違ったのかもしれないですが。
    21:01:19 ラクダ それはちょっと思った……<キノコってカロリー ただ、満腹感を与えてくれるので飢えて動けなくなることは避けられた、という感じなのかなと。
    21:01:30 No.017 http://www.nicovideo.jp/watch/sm20788972 ところで茉莉さんの動画が2525再生したようですね
    21:01:40 砂糖水 oo
    21:01:54 砂糖水 半角のままだった…
    21:02:15 イサリ うーん、ホウエンが舞台なので、キノガッサの方が自然でしょうか。
    21:02:51 音色 いや、そこは分かってるんだけどね
    21:02:58 No.017 作者がホウエンにしたかったんでしょう(
    21:03:08 音色 ですよね作者様
    21:03:17 砂糖水 ソウデスネー
    21:03:21 No.017 では次
    21:03:33 イサリ 察しました


    21:03:49 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/kiji09.html  09 鮫の子孫たち
    21:03:59 No.017 これね もう作者バレしすぎてね
    21:04:03 音色 先手を打たれて悶えた
    21:04:08 砂糖水 www
    21:04:13 ラクダ この方の作品は大抵わかるけど、これはもう名乗っているも同然で吹いたww
    21:04:32 音色 やりたかったことをポケモンまで被って『アウト―――!』っていう
    21:05:06 No.017 まあ隠す気ないよね この人
    21:05:15 砂糖水 ソウデスネー
    21:05:25 No.017 まだ 結構あるから巻きます
    21:05:28 No.017 次
    21:05:31 リング ダレダローサクシャハー
    21:05:40 砂糖水 ww


    21:05:47 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/kiji10.html 10ひとりあそび
    21:06:04 No.017 大 好 き で す
    21:06:12 砂糖水 こわい
    21:06:19 リング ジュペッタ好きのマサポケ民
    21:06:36 音色 ぽんと都市伝説を持ってきたパターン
    21:06:47 No.017 ただ粉々に砕けた よりは メリメリと扉を引きはがしたとかのほうがよかった
    21:06:59 音色 珍しいホラー型なので楽しい
    21:07:14 No.017 それだけかな
    21:07:29 No.017 あと気付いてると思うけど元ネタは ひとりかくれんぼです
    21:08:06 リング 自分自身を呪う術になっているとか
    21:08:09 ラクダ ぞわぞわした。これを持ってくるか!という驚きと喜びを感じた作品。ただ、「なんとなく空のボールを持っていて捕獲成功」というくだりが物足りなかったなーと。あっさり
    21:08:39 No.017 でもこう そこがうわさ話っぽいかなーとか>なんとなく空のボール持ってた
    21:09:26 リング クイックボールかダークボールだったのかな
    21:09:48 No.017 あとこれは 鳥居の向こうのほうに ちょろっと入れて置いてもいいなぁとか思った
    21:10:11 No.017 こう真ん中当たりに息抜き というか ジャブパンチで


    21:12:15 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/kiji11.html 11 探検の舞台は
    21:12:26 No.017 これはうまいよな!!!
    21:12:45 穂風湊 読んでいて楽しかったです。なるほど、と
    21:12:45 リング フカヒレ美味しいです
    21:12:48 音色 本当にうまい
    21:12:51 No.017 シンオウ地下通路はこうして出来ました
    21:12:55 ラクダ いってらっしゃいです。
    21:12:58 音色 この発想はなかった
    21:13:24 No.017 あまり言う事は無いです
    21:13:33 No.017 ボリューム的にも詰まってるし
    21:13:35 ラクダ これは素直に面白かった。丁寧かつ優しいお話。
    21:14:20 No.017 あんまり異論も出なさそうなので 次


    21:14:31 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/kiji12.html 12 天井渡り
    21:14:42 リング ゴキブロス
    21:14:44 No.017 ゴ キ ブ ロ ス
    21:14:54 No.017 皆考える事は一緒かwww
    21:14:58 音色 色々な意味で、うん、これは
    21:15:13 こま ゴ☆キ☆ブ☆ロ☆ス
    21:15:39 No.017 まさか記事部門で コンドーム って単語目にするとは思わなかった
    21:16:08 穂風湊 wwwww
    21:16:10 音色 鳩さんそればっかやもんなぁw
    21:16:12 No.017 というか入れる必要会ったのかwwww コンドームはwwwww
    21:16:22 音色 狙ったのか、天然なのか、
    21:16:31 音色 鳩さんを釣るためのエサかもしれない
    21:17:11 ラクダ 天井をはい回る=天の高みの太陽のイメージになるほど納得。日食の件もなるほど……しかしこの方、性的なネタが好きだなあと(
    21:17:20 No.017 つうか なかなか命がけの願掛けだよな トレーナーの皆さんモテないのか?
    21:17:42 No.017 昔の人の世界観的なのはいいね
    21:17:54 リング あの世界の人たち身体能力高いので
    21:18:08 No.017 そうだねwwww
    21:18:36 No.017 特に意見なければ次ー


      [No.3029] 批評チャットログ 記事01-07 投稿者:No.017   投稿日:2013/08/14(Wed) 18:47:54     106clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:鳥居の向こう】 【フォルクローレ

    ■6/2 感想・批評チャットログ抜粋
    スレッドがばらばらなのでこちらに再掲します


    19:45:55 No.017 No.017さんがアップをはじめました
    20:05:52 No.017 エントリーは23作品
    20:07:37 No.017 じゃあ 01アサギの市から
    20:07:57 No.017 感想だけでなく ここがわからなかった とか こうするといいって意見もどうぞー

    20:08:28 音色 一番手さんなんで「あー、こんな風に書くんだ」と勝手に基準点にした
    20:08:35 砂糖水 わたしもー
    20:08:48 リング ゲンガーのやつか……。
    20:08:54 砂糖水 ものすごーく参考にしました
    20:09:14 No.017 これってたぶん何か元ネタがあるんだよね 知ってる人いる?
    20:09:23 砂糖水 あとなんか元ネタありそうなんだけど全く分からないので、その辺わかったらもっと面白いんだろうなと
    20:09:34 砂糖水 私も聞きたーい
    20:09:51 No.017 絵師さんがついた場合は元ネタとかをなるべく提示したほうがよさそうですね
    20:09:55 穂風湊 うーん、わかんないですね……
    20:10:04 リング なんだか、求めている羽織はかぐや姫の要求っぽいものですねぇ
    20:10:11 音色 勝手に創作だと思ってる
    20:10:11 No.017 元ネタといえば 02のミルホッグデーだけどね
    20:10:29 リング 夢特性のヒノアラシの特性が貰い火だけれど
    20:10:32 No.017 ああ、たしかにかぐや姫は入ってるっぽいよね
    20:10:38 砂糖水 ああなるほど
    20:11:03 たわし なるほど、言われてみればかぐや姫っぽいかも
    20:11:21 音色 日本の怪談で似たようなのはあるけど空気が違うからアレンジなのかな、とちらっと思った
    20:11:54 砂糖水 なんかこう、言い回しが素敵すぎるから元ネタあるのかなーと思ってたんだけど…
    20:11:57 No.017 こう呪いに対して、何らかの返しをするって昔話は結構あるけど、元ネタ知ってたほうが楽しそうだね。知らないととっつきにくい印象を持った
    20:11:58 音色 アイテムが完全に火鼠の皮衣やん、とも思った
    20:12:06 砂糖水 自分で考えたならセンスやばい
    20:13:35 砂糖水 言い回しがきれいすぎてうらやま(
    20:13:42 たわし 比較的、今回集まった記事の中では絵にしにくい方かなと思った>アサギの市
    20:14:01 No.017 あー
    20:14:03 No.017 わかる
    20:14:16 たわし 私は物書きじゃないので、絵描き視点じゃないと意見言えないのでアレですが・・・。
    20:14:27 音色 するっと読めて「うん、そうだね。それで、えーと、うん」みたいにちょっとのこらなかったかな
    20:14:34 No.017 アサギの市の途中というより アサギの市の中の話だとだいぶ描きやすかった
    20:14:55 茉莉 私は絵にしやすいかも、と感じました。童話のお話の挿絵みたいな
    20:15:14 No.017 しかしゲンガーという配役は見事
    20:15:19 No.017 すげえ民俗っぽい
    20:15:33 茉莉 確かに、場面で描くのは難しいかもしれないです
    20:15:54 お知らせ ラクダ(Win/IE9)さんが入室しました。
    20:16:06 No.017 場面というよりは物語全体で構成しないとむずかしいですよね>絵
    20:16:15 たわし そのへんは描き手に寄るかもしれないです>描きやすい・描きにくい
    20:16:17 お知らせ ラクダ(Win/IE9)さんは行方不明になりました。
    20:16:25 音色 ちょいと思ったのは
    20:16:39 音色 なんでこの時点で男がゲンガーだってわかったんだろうと
    20:16:39 No.017 あるいは カット何枚か描いて、見開き内で散らすか だな
    20:17:07 リング 影がゲンガーだとか
    20:17:10 砂糖水 ラクダさんどんまい
    20:17:13 たわし 茉莉さんが言われたように、童話の挿絵みたいな感じでしたら描きやすいかもしれないですね。
    20:17:30 リング それならそれで、文章できちんと描かなきゃ意味が無いですが
    20:17:34 穂風湊 昔話系の話だと、相手の正体を見抜いていたってのはよくあるけれど
    20:17:36 音色 だって、仮に同じことを頼まれて犠牲者が出ていたならその犠牲者しか真実しか知らないのに何時気付いたのかなと
    20:17:50 たわし ふむふむ・・・
    20:18:12 音色 影で知ったならその描写を描いてほしかった。俺的に『なぜそこでその結論になる』って感じで
    20:18:18 No.017 これさー ゲンガーと女に何か因縁がありそうだから 小説部門で誰か書いたら楽しいんじゃない?
    20:18:31 砂糖水 たぶん若者が何らかの力を持っていたんだろうけど、そこのへん書いてないからなーという
    20:18:56 No.017 呪いの成立過程っていうの?
    20:18:58 砂糖水 おお、いいですね」それ>小説部門で
    20:19:25 No.017 で 鳥居とフォルクローレ両方読むと腑に落ちるの
    20:19:31 砂糖水 おお
    20:19:33 No.017 むしろ作者がやれwwwwww
    20:19:41 たわし wwwww
    20:19:50 砂糖水 よし、作者さん見てたらぜひ
    20:19:53 リング 作者でてこーい
    20:19:59 穂風湊 作者さん頼みました
    20:20:08 No.017 よし 次いきましょう
    20:20:14 砂糖水 このなかにいたらうける

    01の元ネタ
    イギリスの民謡「スカボロー・フェア」
    tp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%9C%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%A2



    20:20:28 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/kiji02.html 02 ミルホッグ・デー
    20:20:47 No.017 これは元ネタがはっきりしてるので描きやすい題材ですね
    20:21:12 リング グラウンドホッグデーが元ネタですねー。バンビ2では印象的だった
    20:21:19 No.017 元ネタ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%B3 ..... 7%E3%83%BC
    20:21:53 砂糖水 なんかこう、こういうのもいいんだって思いましたね、これ こういう形式でもいいんだっていう
    20:22:15 砂糖水 まあ私が難しく考えすぎなんでしょうけども
    20:22:23 キタバ 一番クスッとくる楽しい話でした
    20:22:30 No.017 ぐぐれば資料も豊富に出てくるし やりやすいですね
    20:22:37 リング しかし、ミルホッグと似ていない
    20:22:47 No.017 ミネズミのほうが似てるなw
    20:22:57 砂糖水 そこ突っ込んじゃダメwww
    20:23:06 No.017 しかしあえてミルホッグ それがいい
    20:23:12 音色 「これってなぁに?」でやりたかったと思われるw
    20:23:16 砂糖水 ミルホッくんがいい
    20:23:37 たわし ミルホッグ可愛いくりくり
    20:23:56 穂風湊 ミルホッくんだからよりかわいさが増す感じですね
    20:24:02 No.017 http://pijyon.schoolbus.jp/irakon/sp2/014.html これのせいで完全に印象がwwww
    20:24:13 砂糖水 wwwww
    20:24:34 リング フィル君なんていなかったんや
    20:24:41 音色 そうなんだよー!それのおかげで破壊力が高いんだよー!ww
    20:25:04 たわし www
    20:26:22 No.017 やっぱ絵師さんには元ネタお伝えしといたほうがいいねー
    20:26:38 No.017 他にご意見は?
    20:27:37 No.017 うい では次


    20:28:01 No.017 03 冬の神  http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/kiji03.html
    20:28:24 No.017 えーと なんかマサポケ民フリーザー好きですよね って思いました
    20:28:38 No.017 いや過去にも結構フリーザーの短編が多くてね
    20:29:16 砂糖水 肝心の部分が短いのがなー 解説多いのはどうよ、みたいな
    20:29:31 音色 出だしは面白かった
    20:29:43 音色 すごく好きだね
    20:29:46 リング 弓矢の矢羽をフリーザーの羽で作れば必中とかそういうのを考えたことはあった
    20:29:49 砂糖水 ラクダさんおかえりなさい
    20:29:59 No.017 まあ記事だからそれでもいい気がする>解説多い
    20:30:11 No.017 もう少し水増しするのもありかな
    20:30:22 音色 ちょっと短すぎる気もするのは確か
    20:30:42 No.017 ページ的にはまだ余裕がありますね PDF参照
    20:30:46 ラクダ 面白かった……が、最後の朝廷からキッサキを守り云々、からいきなりスキー場に行っちゃったのがなんとも。惜しい気がしました。
    20:31:09 ラクダ ただいまです。やれやれ <砂糖水さん
    20:31:12 No.017 キッサキの神殿の事をもっと書くとか
    20:31:12 音色 でも個人的な見解で『書きたいネタ詰め込んだら意外と短かった』みたいなパターンじゃないかなと
    20:31:28 No.017 蝦夷地の侵攻のことをもっと描くとか
    20:31:31 No.017 そのへんかなー
    20:31:46 たわし 面白かったです。マサポケ民ってフリーザー好きなんですね・・・(今知った)
    20:31:51 砂糖水 なるほどー
    20:32:18 No.017 個人的にはまだ足せると思う
    20:32:24 音色 いきなり朝廷の下りは確かに「は?」とはなったけど
    20:32:33 穂風湊 足すとしたらどのあたりになるんでしょう
    20:32:43 No.017 じゃあもうちょっとそこをくわしく書くとかだな
    20:33:27 No.017 個人的に そのへんは日本の歴史とかさなるのであまり私は違和感が無かった( 自分の小説でも似たようなの書いてるからかもしんないけど
    20:34:24 音色 歴史的には問題ないけども、なんかね、うん。
    20:34:26 ラクダ 個人的には「朝廷の進行にどう対応したのか」を具体的に読みたかったかな、と <穂風湊さん あっ途中で切れちゃったもったいない!と思ってしまったので。
    20:35:28 穂風湊 そうですね。ちょっと短い気はしたかもしれません。
    20:35:28 No.017 他なければ次行きましょう



    20:35:49 No.017 04 大文字 http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/kiji04.html
    20:36:25 穂風湊 キュウコンさんのお話!
    20:36:32 音色 誰かやると思った
    20:36:37 No.017 これはむっちゃ絵にしやすいだろう! というのが第一印象  ミルホッグデーもそうだけどこういう行事系にもっときてほしい 編集者としては
    20:37:00 砂糖水 みんな大好きキュウコン
    20:37:22 No.017 ただ 改行(空行)が多すぎるでしょう。全部詰めちゃっていいよ。その分描写増やしましょうよ
    20:37:49 たわし キュウコンやっぱり人気なんだなーと思いました。ストーリーとしても読みやすかったです。
    20:38:05 リング 流石のキュウコン贔屓。
    20:38:09 茉莉 ポケモン目線が新鮮で好きです
    20:38:24 リング 悲しげに鳴く声とか絵になりますよね
    20:38:24 穂風湊 今確認しようとしたら、PDFのリンク先がアサギの市になってました
    20:38:29 No.017 とりあえずオンリーでキュウコン好き絵師に売り込んでおいた まだ返事はないけど
    20:40:10 No.017 内容、題材としてはいいんじゃないですかね 王道で
    20:40:34 穂風湊 見れました。確かに空行が目立つような気がします
    20:40:46 No.017 実際の大文字をどうやってるかネットだけでもいいから調べられる範囲で調べたらいいんじゃないかな
    20:41:13 No.017 というかこれは取材すれば小説一本書けちゃうな
    20:41:55 No.017 私が絵をつけるなら ご主人と大文字見てるところを絵にするなー
    20:43:46 No.017 他にご意見は
    20:44:05 No.017 なければつぎいきますー


    20:44:19 No.017 05 海蛇の話(一)  http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/kiji05.html
    20:44:39 砂糖水 一と二のセットでずるいw
    20:45:16 リング 八尾比丘尼でしたっけ、元ネタ
    20:45:22 穂風湊 元ネタが出てきそうで出てこない。なんだったかな
    20:45:41 No.017 やおびくには(二)のほうね
    20:45:49 砂糖水 一は鶴の恩返し的な
    20:45:54 ラクダ ミロカロス=海蛇or人魚な構想は私も持っていたので、見た瞬間にニヤリ。なんだかうれしかった。内容は面白くかつ王道昔話だった……が、故に目新しさはなかったかなと。
    20:45:58 音色 人魚の肉を食うと不死になるってのと鶴の恩返し
    20:45:58 No.017 これは日本神話だかで奥さんが鮫だったのが元ネタ
    20:46:11 リング ミロカロスはサタンというイメージがあるなぁ
    20:47:38 リング 鳩さんサメ好きですねぇ
    20:48:01 たわし 元ネタがデジャヴってニヤってした
    20:48:36 No.017 http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/kiji06.html ついでなので(二)のほうも
    20:49:14 No.017 これはお姫様のほうを主人公か主要登場人物にして小説化 でもおもしおいね。現代まで生きてる事にしてさ
    20:49:51 砂糖水 イサリさんこんばんはですー
    20:49:57 リング ぬーべーでは現代まで生きていた八尾比丘尼がアグレッシブなお姉さんになっていたなぁ


    20:51:22 No.017 07 屏風の大唐犬  http://masapoke.sakura.ne.jp/stocon/kiji07.html
    20:52:07 砂糖水 一休さn(
    20:52:21 砂糖水 冗談です…
    20:52:39 No.017 まあ 一休さんも入ってるよな
    20:52:44 音色 タイトル見て一休さんかと思ったらそうでもなかった
    20:52:52 音色 この発想は面白い
    20:53:08 ラクダ これは絵向きだと思いました。あと個人的にウインディ好きなのでほくほく。
    20:53:26 No.017 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8B%A9%E9%87%8E%E6%B4%BE 個人的にはこういうイメージなんだがw
    20:54:15 イサリ この話好きですね。すっきりまとまっていて、読みやすいです。
    20:55:28 お知らせ 穂風湊(Win/IE9)さんは行方不明になりました。
    20:55:30 たわし 私も一休さんが過ぎりましたが、内容はほっこりする感じで好きでした。絵にもしやすいと思います。
    20:55:36 キタバ イメージしやすくて読みやすかったです
    20:55:37 No.017 http://www.ne.jp/asahi/hiro/papa/syourinji.htm あるいはこのページの下のとか
    20:55:53 砂糖水 おお
    20:56:06 茉莉 私は雪舟を想像しました
    20:56:31 No.017 雪舟かー
    20:56:53 No.017 他にご意見は
    20:57:16 No.017 なければ次いきますー


      [No.2801] Re: ポケモンニュース、12/24 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2012/12/24(Mon) 19:23:23     34clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


    のぞきおじいさんは名物なので警察が黙認するようになりました。密かにタマムシジムの盗撮写真を賄賂に……とか考えるとまたネタが生まれますね。

    しかし、プレゼントという技は良質のネタ技でした。


      [No.2800] Re: ポケモンニュース、12/24 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/12/24(Mon) 15:55:44     38clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    きたーっ! 季節のイベント恒例のニュースのお時間だーっ!
    ひそかに期待しておりました!


    しかし今回の人は名前からして、心の中では祝福しているのでしょうなw
    回復ばかり出たのも実は狙い通りだったりして。

    リア充末永く爆発しろ。


    それより警察は通報してきたじいさんをどうにかする気はないんですかwww


      [No.2799] ポケモンニュース、12/24 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2012/12/24(Mon) 15:14:34     56clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


     こんばんは、ニュースの時間です。

     さて、今日の午後3時頃、タマムシシティで通行人を襲っていた男が暴行未遂の現行犯逮捕されました。男は住所不定無職の末永博鉢(すえながばくはつ)容疑者で、容疑を概ね認めている模様です。

     末永容疑者は今日の午後2時頃からタマムシシティの繁華街でカップルのみを狙って犯行を開始。デリバードの技「プレゼント」で攻撃を試みたところ、回復の効果ばかりが出たとのことです。当日はクリスマスイブで容疑者を怪しむ人はほとんどいませんでした。しかし、不審に思ったタマムシジム名物のぞきおじいさんに通報され、駆け付けた警官の任意同行に従ったそうです。

     この事件の被害者となったカップルは「ちっ、見る目がねえな。俺達は別にそんな関係じゃねえよ」「またまたそんなこと言って。他の先生方の噂になっちゃいますよ」と熱々の様子。一方のぞきおじいさんは「街の風紀を乱すなんぞ言語道断。これからも街のために通報するぞい」とコメントしています。

     それでは、ここで天気予報です。


    執筆時間は5分。勢いがあればいけるものですね。


      [No.2798] スレ立て乙です 投稿者:017inしんおー   投稿日:2012/12/24(Mon) 10:30:33     135clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ドM募集】 【急募:生贄】 【求む生贄】 【きとかげさんの文才に嫉妬】 【批評会

    どうも、他力本願017です。
    スレ立て乙であります。
    ぴっちぴちの生贄がくるといいですねぇ。
    楽しみです。


      [No.2573] Re: 【ポケライフ】大図書館の司書 投稿者:keckle   投稿日:2012/08/14(Tue) 19:23:32     115clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    Re: 【ポケライフ】大図書館の司書 (画像サイズ: 600×525 395kB)

    はじめまして、keckleと申します。
    ポケライフ絵のネタを探しているときにこのお話に出会い、読ませていただきました。
    エーフィの特性と性格がすごく話にあっていて、ぜひともこのワンシーンを描いてみたいと思い、まことに勝手ながら描かせていただきました。描きたいシーンがたくさんありすぎて、そのすべてのシーンをひとつにまとめるのが大変でしたが、完成しましたので報告をさせていただきます。もしよろしければ、このまま鳩急行のイラコンへ投稿させていただきます。
    それでは失礼します。


      [No.2572] コミケハイライト 投稿者:No.017   投稿日:2012/08/13(Mon) 18:00:47     101clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    コミケハイライト (画像サイズ: 500×735 229kB)

    カンツァーさんのレポートです。
    実話です。


      [No.2571] ありがとうございました 投稿者:No.017   投稿日:2012/08/13(Mon) 00:19:15     81clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    お越し頂いた皆様、ありがとうございましたー

    次回は9/17のポケモンオンリー「チャレンジャー」にて出展予定でございます。
    どうぞよしなに。


      [No.2570] このお話、いただき! 投稿者:風間深織   投稿日:2012/08/12(Sun) 20:28:47     100clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    このお話、いただき! (画像サイズ: 480×640 63kB)

     はじめまして、マサポケでたまーに絵を描いたりお話書いたりしている影の薄ーい風間といいます。
     鳩急行のイラコンに、どうしてもここの【ポケライフ】のついたお話を使いたいなぁと思っていたところ、とってもかわいいお話が投稿されていたので、このお話で絵を描かせていただきたいと思います。
     あと、どうしてもグレイシアと主人公を並ばせたかったがために主人公が床に寝そべっていますが、なんだか本当にすいません……

     ちなみに個人的に気に入ってるのはオオタチの顔とグレイシアの肉球です。一応今できている下書きから写真で撮って載せてみました。
     頑張って貼らせていただきますのでよろしくお願いします!


      [No.2569] かげろうの坂、星のしるべ 投稿者:孤狐   投稿日:2012/08/11(Sat) 22:47:24     108clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


    暑い、暑すぎる
    現在時刻は9時30分ちょっと前。確かに早起きだと胸を張るには遅すぎるが、まだ朝のはずなのに。
    びしょ濡れのシーツをケムッソのように這い出て鳴り続けるゴニョニョ時計の頭を叩く。
    ホウエンの夏の朝は遅くて暑い。



    ※オリジナル設定、登場人物有り
    ※ごくごく少量の流血有り



    日に照らされて焦げ付きそうなサドルに跨り、夏の道を緩やかに下ってゆく。トレーナー修行の旅ではなく、家から一番「近い」学校に進級したのだが流石はホウエンの離島。来るかも分からないバスを除けば文字通り野を越え山を超えて行くしかない。
    ぼうぼうに茂った草むらの脇を抜け道に砂利が混じり始めるとほぼ無意識にギアを変える。入学当初は戸惑ったが今ではこの坂道も何ともない。タイヤが砂を踏みしめるジャリジャリとした振動を物ともせずぐいぐいと漕いでゆく。
    こんなに必死で登っても目的地は壊れかけの扇風機位しかないボロ校舎だ。暑さで鈍った頭にふとそんな事がよぎり益々憂鬱になる。視界が開け崖の向こうに海が広がると、見慣れぬものが現れた。
    ―――あ、かげろう
    突然の事に思考が明晰になるより先にゆらり、と宙に舞った虫のようなものは姿を消していた。さっきから頭痛がするような気がする。
    暑さにやられたかな。早いところ着いたら何か飲もう。生ぬるい水道水しか無いけれど。
    何となくしかめっ面をしてみながら慣れすぎた道を急いだ。



    「遅いぞユウコ。」
    仏頂面の先生は校門前の木陰で南京錠をくるくると回しながらあぐらをかいていた。チョークの粉が染み付き茶色く煤けて所々穴の開いた白衣に、かかとを潰したスニーカー。数人居た同級生たちと共に過ごした日々と先生の制服姿は一切変わらない。変わったことと言えば、ポケモンに限らない一般教養の勉学と部活動に精を出す学年になるまでには、ユウコを残して全ての生徒が旅へ出てしまったくらいだ。
    先生のあとに着いて校舎脇の小道へはいる。伸び放題の草むらを掻き分けて、ポトポトと木から落ちてくるタネボーたちを刺激しないように奥を目指す。突き当たりで右を向けばボロ校舎に擬態したような倉庫が置いてある。
    「言っとくけどなぁ、本当に使い物になるか分からないからな。」
    酷暑の中ベッドに未練を残してはるばる来たのに今更それはないだろう、とユウコはいくらかむっとしながらブラウスのボタンを二つ開けてパタパタしていると錆びた鍵が回った。
    ひんやりとした倉庫の中は天然もののタイムカプセルのようにあらゆる物が無造作に積まれていた。郷土資料館にでも提供したら良さそうな古びた農作業具に、一チームすら作れないのに真新しいバスケットボールの得点板まである。何に使われていたかも分からない劣化したプラスチックのかけらをぼんやりと拾っていると、先生がダンボールの山から手だけを出してこっちだと招いた。
    「随分と早く見つかりましたね。」
    先生の喜々とした顔に少し面食らう。
    「そりゃそうだ。これは私のだからな。ささ、暑くなりきる前に校庭に持って行くぞ。」
    「私物って、先生の趣味には思えないのですが。」
    「人を見た目で判断するのは良くないぞ。」
    「それじゃあ余程ひどい目にでもあって人格が変わってしまったとか。」
    「人には触れられたくない過去があるものさ。」
    「都合の良いときだけ善良な教育者になるのは止めて下さいよ。」
    「いいじゃない、教師だもの。」
    いつの間にか仏頂面に戻った先生は眉一つ動かさず台詞だけでおちゃらけてみせた。それ以上言い返す気力も失せ、擦り切れた細長いダンボールを担ぎ倉庫を後にした。



    校庭、もとい元校庭があった場所を眺めユウコは唖然とした。砂が風を纏いとぐろを描いて荒れ狂う、例えるならば今まさに、地を離れ空へと飛び立たんとする蟻地獄。そんな物が校庭を占拠していたからだ。
    「なにこれ……。」
    そう呟いた瞬間、風が変化した。砂と共に明らかな敵意が向けられる。
    コンッカチッ
    軽金属の衝突音と共にあらわれた無数の星屑が猛進する砂の渦を迎え撃つ。一つの渦が掻き消された先には、既にいくつもの渦が形成され始めていた。
    「ぐままもう一度、スピードスター。」
    くおっと短く応えたマッスグマは吹き付ける砂をするするとかいくぐると星型の閃光を吐き出した。幾つかは砕け、あるものは突き抜け、真っ直ぐに標的を仕留める。しかし切り裂かれたそばから砂は無尽蔵に湧く。中心は一向に見えない。
    「あーあ……うわっ!」
    外股を掠めていった衝撃波にユウコは飛び退く。スカートを見ると裾がバッサリと裂けていた。
    「ボサッとすんなって。そこら辺にでも隠れてな。しっかし埒が開かないねぇ。かぎわけるだよ!」
    ぐままは迎撃を止め目を閉じ耳を倒して全神経を鼻腔に集中させる。祈りを捧げるように悠々と天を仰ぎ、渦が迫る一歩手前で身体を翻す。してやったり、とでも言いたげに青い瞳がギラギラと輝く。先生の口がにやりと歪んだ。
    「はかいこうせん!」
    「えっ、ちょっとっ!」
    着地と同時に放たれた熱光線は砂嵐を破り、グラウンドをも抉り。地獄の主を撃ち抜いた。
    「面倒なやつは嫌いだよ。」
    校庭に一直線の焼き焦げを付けておきながら実に良い笑顔である。これがカナズミの学校だったなら間違いなくクビがとぶだろう。最も採用すらされない気もするが。
    すなじごくが晴れ、横たわるポケモンにユウコは見覚えがあった。
    「驚いたね、ビブラーバじゃないか。」
    流石のユウコにも聞き覚えがある。暑さと乾燥の厳しい砂地に生息する蟻地獄ポケモンの成長した姿。呆気にとられているうちにビブラーバは慌てて起きあがるとふわふわと頼りなく飛び去ってしまった。
    「わざわざ余所のトレーナーが島に来るとは思えないし、こんな所でここまで成長できるのですか?」
    「こんな湿っぽい所へ来ておきながらホームシックとは、随分な物好きもいたもんだ。ま、とにかく校庭も取り返せたし始めるぞ。」
    ユウコの質問に面倒くさそうに答えると、先生は反動でへたり込むマッスグマを抱えた。太陽がギラギラと照りつけた校庭は確かに砂漠にも見える気がした。



    ダンボール箱をあけるとユウコが生まれるよりずっと前の日付の新聞の塊が入っていた。ひときわ大きな塊を解くと中からは細長いアルミの三脚に傷だらけの黒い筒が一本。先生はぽってりとした凸レンズを慎重に拾いながら唐突に切り出した。
    「ところでお前、ポケモン関連の仕事には興味無かったんだっけ。」
    またか。ユウコは密かにため息を付くと新聞紙の隙間から茶色くすすけたメモを見つけ、引っ張り出した。折り畳まれた紙の表には「天体望遠きょう組立図」とたどたどしい字で書いてある。
    「まあ、ここに残ったくらいですから。」
    メモの内容に目を走らせると何かから書き写したのであろう望遠鏡の原理や作り方、そして行間には改良点やアイディアがびっしりと埋められていた。その横にはやせ細ったバンギラスのような、恐らく望遠鏡の絵が添えられている。
    ひらがなと誤字のやや多い幼い子供の字。鉛筆を握りしめ夢中に文字を刻み込むあどけない少年の姿が浮かび、先生をそっと盗み見る。
    「こいつを買ったころはな、宇宙飛行士になりたかったんだ。でもやめた。」
    「はあ、どうしてですか。」
    どうでもいい、とは素直に答え無かった。話題が自身から逸れることを願いながら聞き返した。
    「歯磨き粉みたいなメシを毎日食わされると知ったからさ。」
    むすっとした顔は何の感情も帯びていない。
    三脚のネジがひとつ足りない。箱へ手を伸ばすと目の前にネジと鼻先が差し出された。得意げに尻尾を振り回すぐままの顎を掻いてやる。先生が二つ目のレンズをはめ込みネジを締めた。
    「ほれ、見てみな。」
    望遠鏡と呼ぶにはやや質素な黒い筒を覗いてみた。拡大された校舎が逆さ吊りになり、空は地平にへばりついている。二枚の凸レンズに絶妙なバランスによって観察対象は倒像となり、拡大されて瞳へ届く。頭では理解していてもむず痒い違和感がある。
    「本当に逆さまですね。」
    「良いよな宇宙は。逆さまに見えたって誰も怒りゃしない。」
    「先生だって誰にも怒られないんでしょう。」
    「居るんだよ。それなりにちゃんとしないと五月蠅いのが。」
    ぐままは素知らぬ顔で背中を毛繕っていた。先生はユウコの手から望遠鏡を奪うと三脚に取り付け、満足そうに頷き、ニマニマと笑った。
    「せっかくここまでして二人だけで観察するのも勿体ないな。」
    呆れたようにユウコが答える。
    「それじゃあ下の学年でも呼びますか。」
    「分かってるじゃないか。チビ達を招待しての野外天体ショー、天文部と参加者は今夜校庭に再集合だ。」
    そう言った先生の顔は降り注ぐ太陽の光によく似ていた。
    この人も少年みたいに笑うことあるんだ。そうだ、私が最後にあんな気持ち良さそうに笑ったのは何時だったかな。
    ユウコは真夏の空に望遠鏡を高々と向けた。明日も明後日も永遠に来なくてもいいから、ずっと吸い込まれていたい。そう思わせる青くて深い空だった。



    「サイユウシティでは西北西の風、風力3、晴れ、22ヘクトパスカル、気温は31度…」
    地図の下の端、サイユウに記された丸印の左斜め上に羽を書き入れ、丸の中に晴れを表す縦線を伸ばす。さざ波のようなラジオの雑音をBGMに、天気を読み上げるアナウンサーの声がユウコの部屋に流れる。
    心地よい秩序を持った音声の海に乗り、北へ北へ。海を越え天気図が埋められる。未だ訪れた事のない、これからも訪れるか分からない、遥か遠くの風が吹く。
    海を飛び立ち空を滑る。いつの間にか薄緑の羽根を羽ばたかせ、波に揺られるようにふわり、ふわり。キッサキの分厚い雪雲を抜けると更に遠くイッシュの地へ。静かな恍惚の中で天気図は埋まってゆく。
    夢から醒めるように自分の部屋へと着陸すると、放送終了にぴったり合わせてラジオを止めた。新聞の切り抜きから月齢を写しパンチで穴を開けバインダーに閉じる。
    そういえば。あのポケモンはどうしてこの島へ来てしまったのだろう。住み慣れた砂漠を離れてふわふわと海を渡って。
    馬鹿な奴、とユウコは思った。透けるような緑の羽根は、海を渡るにはかなり、頼りない。ふわりとカーテンが風に膨らむ。かげろうが離れない自分の思考に苛立つ。
    再び開いたバインダーに目を落とす。天候は良好、月の光量も控え目で、絶好の鑑賞日和となりそうだ。
    サイコソーダに浮かべた氷が溶けてからりと音をたてる。橙が染み始めた部屋でナップザックを拾い上げた。
    こんな日には。
    星でも見るに限る。



    湿っぽい海風と下がりきらない気温に汗がにじむ。巣に帰れと言うかのように鳴き交わすキャモメの声が響いている。
    砂利道にさしかかり、ギアを変える。ほの赤く暮れかかる海が崖越しに見えてくる。坂を登りきりユウコがギアを戻して速度を緩めた、その時だった。
    視界の外れから、薄緑の塊がはらりと降ってきた。あの、ビブラーバだ。慌ててブレーキをかけ、自転車を降り捨てるとそろそろと忍び寄る。こちらに気付く様子もなく倒れ込んでいる。
    「死にかけかしら。」
    呼吸にあわせて微かに動いてはいるものの確かな反応はない。過度な湿気に当てられたためか素人目にも緑の皮膚が赤くかぶれているのが分かる。
    胸の辺り、羽の付け根まで照らした時ユウコは息を飲んだ。羽の付け根辺りに、自分の背まで疼くような亀裂が走り血が滲んでいる。恐らくは他のポケモンに裂かれたばかりの傷だろう。それも、空を飛べるビブラーバを更に高くから狙える凶暴な何かから逃げ際に付けられた。
    全身を隈無く照らすと赤黒いものが点々とこびりついている。ポケモンバトルなどという生易しい物ではない。激しい闘争を物語る不規則な赤い斑点。
    どうしようか。野生のポケモンに無闇に干渉する必要などない。放っておけば自然の中で処理されるだけの話だ。
    ユウコには手持ちも居なければポケモンの知識も浅い。島のポケモンは見知っているとは言え、丸腰で自分の身を危険に晒すことになりかねない。
    でも―――
    暴れるなよ、と念じながら恐る恐る手を伸ばす。しかしどこを掴んで良いのやら。逡巡し、意を決して尾に触れた。
    その途端、羽根が激しく振動し、ユウコは弾き飛ばされた。ビブラーバは威嚇するように羽根を震わせると、ユウコではなく空中を睨み付けた。
    ユウコはようやく気付いた。頭上でキャモメの声が、五月蝿い。
    先程までまばらに飛んでいたキャモメが次々と集まり円を描いていた。中心は、此処。
    「逃げるよ!」
    未だに臨戦態勢をとるビブラーバに声を掛けた。この状況は嫌な予感がする。このままこの場所に留まるのは危険だ。
    頑として動こうとしないビブラーバを抱き上げようとするが、羽根を震わせ触ることすら出来ない。何度目か手を伸ばしてようやく尻尾を掴むと、バダバタと羽ばたき出し、ユウコは数メートル引き摺られて投げ出された。敵意に満ちた目でユウコを一瞥すると、ゆらりと飛び立った。
    バランスを大きく崩しながら飛ぶビブラーバと後を追うキャモメ。ユウコは駆け出していた。



    「崖に住んでいるキャモメには手出ししてはならないよ。」
    島に住む者ならば人もポケモンも誰もが教わる事だった。
    「彼等一羽一羽はかよわいものさ。でもね、もしもその一羽に手を出そうものならば……」
    上空を飛び回るキャモメは少なくみても数十は集まっているようだ。彼等が追う先には今にも堕ちそうな一匹のポケモン。
    不安定に飛ぶビブラーバより上空を保ち、キャモメの群れは風の強い海沿いへと追い込むように飛び回る。ビブラーバも時折衝撃波や砂の渦でささやかな抵抗を見せるが、そのたびに高度を上げるキャモメにはさっぱり当たらない。
    十分に追い付いたことを確認したのか、鋭い鳴き声と共に風の刃が降り注ぐ。小さな体から放たれる狙いの甘い高威力の絨毯爆撃は、敢えて射撃方向をずらして散らす事で命中率をカバーしている。
    呆れるほどに練られた連携に、圧倒的な数の暴力。これではもはや闘いではない。狩りだ。
    遂に一発のエアスラッシュがビブラーバを撃墜した。待ちわびて居たかのように一斉にキャモメたちが飛びかかる。
    「うわあああああああぁぁぁっっ!!!」
    ユウコは叫んだ。ありったけの声で叫びながらナップザックを振り回し、群がるキャモメに突進していった。
    突然の人間の登場に豆鉄砲を喰ったかのようなキャモメ達を振り払い、ビブラーバを抱え上げる。なるべく、陸へ。ナップザックをもう一周振り回すと、近くのサトウキビ畑へと飛び込んだ。



    ユウコの背丈を優に越す高い茎の間を慎重に進んで行く。しゅるりと細長い葉の陰に切れ切れに見える空は夕日で赤く染まり、しつこくキャモメが飛び回っている。もう直ぐ日も沈むだろうに実に執念深い。
    ビブラーバが弱々しく訴えるように羽根を震わせていることに気付きそっと降ろした。
    「ねぇ、……」
    ダメで元々、話し掛けたユウコにビブラーバはさも煩そうに首を傾ける。
    「あなた、キャモメ、襲ったの…?」
    しゃがんで問い掛けるユウコについと顔を背けるとぶぶっと羽根を鳴らす。
    「えーっと、…どの位?」
    先程とは反対へ首を回すとぶぶぶっと鳴らした。何を言いたいのかはさっぱり分からない。しかしキャモメの様子を見ればある程度の想像はつく。
    「それで、思いもかけずにこっぴどくやられたのね。」
    ユウコを見据えると二本の短い触覚をツンと立てて羽根をはたはたと振った。今度のは拒否のつもりらしいと分かった。一方的に反撃されているようにしか見えないのだが。
    葉の隙間からちらちらと白い鳥が見え隠れしている。おおよその見当は付いているのだろう、かなりの数が集中してきていた。
    足元からぶぶぶぶぶっと音がする。ユウコを通り越し天高く向けられた眼はキャモメを鋭く捉えていた。
    「どうしても諦めないのね。」
    ユウコの事など気にも留めない様子で羽根も触覚もピンと立て構えている。
    「あのさ、私このあたりは詳しいの。だからその…協力、しようか?」
    ビブラーバは今度こそユウコを真っ直ぐ見つめると、目を瞬かせて首をぐいぐいと回した。



    ユウコにとってこのあたりは道も畑も我が家のような物だった。極力茎を揺らさぬように、こごみながらジグザグに進んでキャモメをまいてゆく。ビブラーバは大人しく腕の中に収まってくれている。
    ついにサトウキビの林から出ると、地面に開いた洞窟のなかへ身を滑り込ませた。島のそこかしこに開いている、石灰質が雨水に溶かされた窪地。地理の時間に先生がそう説明していた、気がする。
    洞窟の中程で降ろしたビブラーバに目配せをすると、四枚の羽を二枚の尾を扇子のように広げて応じる。ユウコは親指をぐっと立てると洞窟から出て、ナップザックから懐中電灯を取り出した。暮れなずんだ空の元、自分へ向けてスイッチを滑らせた。
    小さなスポットライトに照らされたユウコに気付きみゃあみゃあと敵の発見を伝えるキャモメに向かって、下瞼を引っ張り舌をペロリと出す。色めき立つキャモメを確認すると、更に挑発するように石を群れに投げ込み洞窟に逃げ込む。怒りに我を忘れたキャモメたちは一斉に洞窟へとなだれ込んできた。ユウコはビブラーバから距離を取り後ろに控えた。
    「今だよ!」
    掛け声と共に地表が蠢く。異常を察したキャモメ達は、引き返そうとするが後から後から流れ込む仲間に押し戻される。
    遂にとぐろを巻いた砂が宙へ飛び立った。避けようと飛び上がり壁にぶつかり堕ちるもの。仲間と衝突しいがみ合うもの。焦りの余り自ら呑み込まれにゆくもの。空中の蟻地獄は錯乱状態のキャモメを次々と引きずり込む。
    キャモメの声が徐々に収まり、ビブラーバはすなじごくを収めた。砂煙ごしに息を荒げたビブラーバと気絶して転がるキャモメが現れる。
    ついさっきまでの怒号と悲鳴の喧騒など初めから無かったかのように風の音だけ微かにが聞こえる。白い羽毛の混じった砂を踏み、洞窟の外を目指した。



    甘かった。どうりで静かな訳だった。洞窟の入り口には、キャモメの大群が音もなく待ち伏せていたのだ。
    みゃーあ!!
    キャモメの一声で猛攻が開始された。天から降り注ぐエラスラッシュ。体の大きい数羽は螺旋を描きつばめがえしを繰り出す。ビブラーバはとっさに砂を張り防御態勢を取った。
    「ひゃあっ!」
    ユウコは左腕を押さえて転げた。鋭い痛みが二の腕を刺す。恐る恐る手を離すと真っ白なブラウスが裂けじわりと赤い染みが広がっている。
    戦闘へ顔を上げるとビブラーバが凄まじい殺気でユウコを見ている。
    「大丈夫だよ!大丈夫だから!」
    きゅーーーううぅぅぅ!!!
    ビブラーバは憤怒していた。ユウコは訳も分からず身を竦ませた。
    来るんじゃなかった。やっぱりこんな事するんじゃなかった。
     馬鹿なのは私だったんだ。こんなことをして、何かが変わるなんて勘違いして。
    後悔しているユウコをよそにビブラーバはゆったりと向き直った。キャモメの群れも気圧されて静まり返った。
    羽根が大きく、大きく振られている。次第に速く、激しく、小刻みに、速く速く速く速く!
    耳をつんざくような羽音が次第に、次第に、柔らかなメロディーを奏で始める。
    まるで歌っているみたい。女声の、暖かくって物悲しい声。ユウコは場違いにもそう思わずにいられなかった。
    歌声がフォルティシモに達すると、ビブラーバは地を蹴った。四枚の羽根の一対が大きく伸び、昆虫のような体躯は骨が張り出し肉が盛り上がる。
    竜と呼ぶには繊細過ぎるが、精霊と呼ぶにも逞し過ぎる。変貌を遂げたビブラーバ、いや、フライゴンはキャモメの群れを突き破り天高く抜けていった。
    高く、高く。上り詰めたフライゴンは翼を翻して地上を見下ろし、腹にエネルギーを溜め始める。呆気にとられていたキャモメ達も陣を組み迎撃態勢を取り出している。
    最後の力を振り絞り、熱く激しく濃縮された、ドラゴンのエネルギー砲がついに放たれた。
    幾筋にも分かれたエネルギーの塊は空を駆ける。慌てて放たれたキャモメ達の射撃も打ち砕き、煌めき、尾を引く。キャモメ達は雪のように堕とされ、散り散りに逃げて行く。
      一つの銀河が丸ごと現れたかのような星の雨。あまりに神々しく、厳かな星々の怒りの進軍。
     夏の宵空に地に近すぎる流星群が、ちっぽけな島を覆った。



     ユウコはふらふらと舞い戻ってきたフライゴンが地に足を着けるや否や抱き着いた。
    「やったっ!やったぁ……!」
    キャモメの大群は一羽残らず撤退していた。今頃はがっかりしながらねぐらの崖を目指しているだろう。
    フライゴンの少し照れくさそうな困ったような顔に気づきユウコは腕を解いた。
    穏やかな風に吹かれて空を見る。夜の闇がさらさらと夕暮れの赤をすすぎ、気の早い星がうっすらと見え始めていた。
    「私、もういかなくっちゃ。」
    フライゴンはくぅー?と鳴いて首を傾げる。その様子がビブラーバの時のサトウキビ畑での傾げ方にそっくり過ぎて可笑しくなる。
    「あなたが昼間暴れてたとこ。学校っていうとこでね、星を見るの。だからもういかなくっちゃ。」
    ユウコがそっと肩を撫でると、フライゴンは数歩下がり腰を低くすると首を深々と下げた。
    「えっ?」
    戸惑うユウコにフライゴンは悪戯っぽく笑った。



    滑らかなひんやりとした鱗が覆う長い首を跨いで、腕を回す。喉に触れた手には呼吸が伝わってくる。翼を大きく振り上げると、地面をそっと蹴った。
    くるりくるりと旋回しながら高度を上げ、地面が遠くなってゆく。空気がひんやりと冷めてゆく。ユウコの生きてきた全てが詰まった島が遠くなってゆく。
    空から見下ろす島はびっくりするくらいに小さかった。まばらに漏れる民間や灯台の灯りは、まるでミニチュアのおもちゃを見ているよう。自分の家も、学校も、じっちゃんの畑も町の役場も、今なら全部一歩で行けてしまいそうだった。
    フライゴンに促され海を見渡す。水平線の向こうに、光が広がっていた。遥かに遠いのに、島よりも鮮烈な光。ユウコの知らない沢山の命が発している光。
    緩やかに緩やかに地面が近付いてくる。風が熱を帯びる。人生の大半通い詰めた学校が近付いてくる。
    ユウコを校舎の裏で降ろしたフライゴンは、海の方を向いた。
    「もう出るの?」
    フライゴンはユウコの問い掛けにゆっくりと頷いた。
    「もう無茶したら駄目だからね?」
    フライゴンはむくれるように離陸態勢を取る。
    「じゃあね。旅、楽しんでね!」
    既に小さくなったフライゴンは、一回転宙返りを決めると海の彼方へと消えていった。
    波の音だけが残されたユウコを包んでいた。視界の外れで星が一つ流れた気がした。



    「あーゆっこばばあがちこくしたぁ!」
    「ヒロトくん!ばばあとかゆったらいけないんだー!せんせーにゆっちゃうよ!」
    「うっせ!やーい、おばあさん!」
    校庭は集まったちびっこたちのせいでてんやわんやの大騒ぎになっていた。
    ヒロトくんはユウコがぽかりと殴る格好だけすると、大はしゃぎで逃げていった。
    「ユウコ遅いぞ」
    仏頂面の先生は何も変わらずにむすりと言った。
    「色々と忙しかったんですよ。」
    ユウコは先生の寝転がっているブルーシートの隣に横になった。
    「望遠鏡とられちゃったよ。」
    先生は少し悲しそうな声を作った。昼間組み立てた望遠鏡はちびっこたちが奪い合いながら覗いている。
    「実はあれがなくても流星群の観察自体は出来るんだけどねぇ。」
    自分を慰めるように呟く先生の声を聞きながら、空を見ていた。痩せた月のまだ登らない空につい、つい、と星が走る。
    「先生。」
    「ん、どした?」
    「本当のところ、どうして宇宙飛行士を目指さなかったんですか?」
    「そうだねぇ……」
    子供たちのはしゃぎ声、風にざわめく木々。沢山の流れ星。時が止まったかのような熱帯夜。
    「こっちのが、気楽だろ?」
    「そんなことだろうと思いました。」
    先生は先生だから良いな、と付け加えるのは何だか恥ずかしいから止めにした。
    もしやりたいことが有るとするならば。とりあえず、次にあいつに会った時にはお礼くらい言いたいな。
    ユウコは目を閉じると流れ星の洪水みんなにいっぺんに願ってみた。




    終わり






    小説を、それも大好きなポケモンで書き上げてみたい。
    そんな願いを抱き幾星霜。
    何作か途中で放り投げ、やっと完結まで書き切れたので恥を晒しに来ました。
    はじめまして、孤狐です。
    物語を書くのがこんなにも大変で、楽しいとは。
    結構疲れたので、もうしばらく書けそうにありませんが;
    そうそう、今日明日はペルセウス流星群が見られるそうで。
    今日は曇ってしまいましたが明日は晴れますように!

    日にちを間に合わせるため特に最後のほうは急ピッチで仕上げたので、誤字脱字等かなりありそうなので見つけ次第どしどし報告してください。
    いつ直せるか定かではありませんが;


      [No.2568] いつも一緒  【第1話】 投稿者:ヴェロキア   投稿日:2012/08/11(Sat) 11:43:25     88clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


    【第1話】

    ズダダダダダ!!!!ズダダダダダ!!

    街中に銃声が響き渡る。戦争だ。レインが住むマルス地方は、まだ発展途上で、銃や戦車や爆弾などは無い。住居も木の中に作り、狩をして暮らしている。戦争ではポケモンと弓と槍で戦う。なので、相当不利だ。

    ドガガガーーーーン!!

    爆弾が落ちた。

    人々「キャーーー!!助けてーー!!」

    ??「フライゴン、ハクリュー、人々を避難させろ。プテラ、いけーー!!」

    ある人はプテラに乗り、弓を構え、堂々と敵に突っ込んでいった。

    ??「いけープテラ!ヤーー!!」

    ある人は矢を射った。その矢は、敵に命中した。

    ??「プテラ、破壊光線だ!!」

    プテラの破壊光線により、敵のガンシップは次々と破壊されていった。

    敵大佐「何だあいつは?撃破しろ!!」

    ズダダダダ!!ズダダダダダ!!

    敵のガンシップから銃声が聞こえた。

    ??「うわっ!!」

    ある人は銃に撃たれ、死んでいった。

    その人の死から、マルス軍は次々と死に、残ったのは僅かだった。


    ・・・・・・・あの悲惨な出来事から15年。


    レイン「で、そのある人ってのは?」

    レイン母「あなたの、お父さんよ。」

    レイン「え・・・・・」

    レインが住む村の入り口には、レインのお父さんの石碑が建っている。村の勇者だ。

    レイン母「レイン。私たちの一族は、代々続くドラゴン使いなのよ。あなたももう10歳。だから、ドラゴンを授けます。」

    レインはモンスターボールをもらった。

    レイン「なんだろ・・・えっ、レックウザ?何で伝説のポケモンが?」

    レイン母「あなたのお父さんにレックウザが心を開いたのよ。天空の城で。」

    レイン「えーすごい。」

    レイン母「10歳になるともう1人で自立です。家を作り、これからもレックウザと共に過ごしなさい。ずっと一緒に。」


    第2話へ続く


      [No.2567] いつも一緒 投稿者:ヴェロキア   投稿日:2012/08/11(Sat) 11:09:44     89clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    どうも、ヴェロキアです。
    お題の『ポケモンのいる生活』を書きたいと思います。
    よろしくお願いしまーす。


    では次の回からスターートッ!!


      [No.2566] DON☆引きですね 投稿者:MAX   投稿日:2012/08/10(Fri) 03:39:32     101clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    コメントいただけた! ホントどうもありがとうございます。

    しかし、案の定と言いましょうか、みなさまドン引き。
    こんな虫ネタ、死体ネタ、さらに汚物ネタと、出してから言っても遅いですが人を選びますよね。AとCの話に実際に遭遇したら自分なら絶望してます。
    「背筋が寒くなるもの」「身の毛もよだつもの」には、おぞましいと感じたり目を背けたくなるものも含まれると思います。
    そういう点では、今回は正解を得られたような気が。自分の評価の株が底値を割った気もしますが。

    >もしかしたら寄ってきたよくないものを消してくれるのだろうか?
    飛んで火にいる夏の虫。このあと腐臭につられて寄ってきたよからぬ虫をランプラーが退治してくれることでしょう。その命でランプラーも少しは満たされるはず……。

    >「男3人(学生)集まると、必ずバカなこと引き起こすよな」
    自分にはそんな友人はいませんでしたがやはりお約束ですよね。ちょっとCの悪ノリが過ぎたおかげであの始末ですが、それが男子の日常、と。
    ナマ物が腐りやすい夏、死肉はともかくとして食べ物にはご注意ください。

    >炊飯器
    あの手のモノで一番恐ろしいのは中途半端に水気が残っていてドロドロになっているものでしょう。
    今回のアレは、駅雑炊のようになっていた、というのが自分の予想です。
    あくまで予想です。実際に試したこともやらかしたこともありませんからね。スパゲティの茹で汁を「再利用できるかも」と鍋に入れたまま数日放置し、液面にカビを生えさせたことはありますけども。あの時のやっちまった感は悲しかったなぁ。

    笑いが取れたのならもはやそれでオッケー。読み手が混乱するようなノンジャンルの作品を、ご一読いただきありがとうございました。
    以上、MAXでした。

    余談ながら、「猫は祟る」でグーグル検索したら先頭に猫の幽霊に関するお話(コピペ?)が出てきました。不思議なお話で結構面白かったです。


      [No.2565] 星空を見上げる海の上 投稿者:ことら   《URL》   投稿日:2012/08/09(Thu) 22:12:04     92clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     風も穏やかですね。空も晴れてますし、ホエルオーの上だと物凄く星が一つずつくっきりと見えますね。
     あー、そうですね、ダイゴさん寝てますから別に返事しなくていいですよ。
     
     こんな明るい星空を満天って言うんでしょうか。私は初めて見ましたよ。隣にダイゴさんがいるからですかね。いつもより綺麗に見えます。学校で習った星座も解りません。ダイゴさんなら解りますかねえ。起きてたら教えてくれたかもしれませんが、今は出来ませんね。
     相当疲れてたんですね。ホエルオーが大きいからいいですけど、落ちないでくださいね。

     やっと会えたんです。とても探したんです。嬉しく無いわけないですよ。私の好きな人。これが恋することだと教えてくれたのはダイゴさんです。そしてこれが愛だと気付かせてくれたのはダイゴさんです。
     あんな手紙一つでいなくなって……心配したんですよ。本当に心配して、いてもたってもいられなかったんです。

     でもこうして、この手で触れられる距離にいる。ダイゴさんの髪がさらさらしてて気持ちいいです。よく見えませんが、きっと寝顔も美しいですよ。だってあんなに笑顔が素敵で、優しい人が美しくないわけないです。
     頬を撫でたら、少し苦しそうな寝息が聞こえました。起こしてしまったかと思いましたが、そうでもないみたいですね。いいんですよダイゴさんそのまま寝てて。ホエルオーもゆっくりと泳いでますから。
     
     ダイゴさんに貰ったダンバルも、今では立派なメタグロスです。今は連れてきてませんよ、安心してくださいね。
     そうですよ。今いるのはホエルオーだけです。二人きりなんですから、ポケモンたちは置いて来ました。ポケモンたちも好きですけれど、私はダイゴさんと過ごす時間がもっと大切なんです。
     
     やっぱりダイゴさんに触れていたいと思います。抱きしめたダイゴさんはいい匂いがします。
     好き。大好きダイゴさん。
     もう絶対どこにも行かないでください。私と一緒にいてください。
     そんなこと言ったら、ダイゴさんはとても困った顔をしましたね。

     大好き。誰よりも大好き。そんなダイゴさんを独り占めしたいと思うのは間違ってませんよね。みんな言ってましたもの、それが恋することだって。
     でも、ダイゴさんが困るなら仕方ないと思います。

     ダメなんですよね、私だと。
     ダイゴさんの気持ちは私に向いてないんです。
     だからこうして最初で最後のデートにワガママいって来てもらいました。ほら、遠くに小さな明かりが見えるのが、ルネシティですよ。こんなところにまで来たんですよ。


     もう二度と離しません。
     もう二度と何処へも行かせません。
     これが最初で最後だとしても、ダイゴさんがどうしても欲しい。ダイゴさんの気持ちを捕まえることの出来るボールを持っていない私には、この方法しかないのです。
     私とダイゴさんを縛って。もっと離れないように私の手とダイゴさんの手を縛って。

     さあホエルオー、私たちが海面についたら好きなところへ行って。いままでありがとう。
     ここはカイオーガが眠ってた場所。紅色の珠で目覚めて、藍色の珠で眠っていった場所。
     私たちもここに眠るの。
     深い深い海底に。
     誰も起こしに来ることのない、暗い海底に。
     苦しく無いよう、眠ってもらってますから。

     さあ、行きましょう

    ーーーーーーーー
    背筋凍る話で盛上がってる中、空気読まずにカップリングだぜ!ダイハルだぜ!
    hahahahahahaha!
    【好きにしていいのよ】


      [No.2564] 明日本番です〜 投稿者:No.017   投稿日:2012/08/09(Thu) 21:44:37     75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    明日は少しメンバーが替わりまして

    No.017
    カンツァーさん
    小樽ミオさん

    での店番となりますー
    皆さんよろしゅう〜


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