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  [No.3431] 原石磨き 投稿者:WK   投稿日:2014/10/04(Sat) 14:44:03   69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「――あれは、もう十年近く前になります」
 マイクを向けられた女性は、そう言って語りだした。

 私、ホウエン地方出身なんです。トウカシティっていう街で、家を出る十六歳まで住んでました。
 ホウエンは他地方とは違った温暖な気候で、そこの土地にしか生息していないポケモンが多いんです。特に草
や水タイプは豊富で、私もよく捕まえに行ってました。
 小学生の時、近くの港に住んでいるお爺ちゃんが、船に乗せてくれたんです。ホウエンは海に囲まれた土地で
したから、泳げる子も多かったんですよね。でも、離島なんかはとても泳いで行ける距離じゃなくて……。
 それで、私はお爺ちゃんの用事で、ムロタウンっていう島に行ったんです。そこの集会所で用事があったらし
くて。
 本当に、ジムとポケモンセンターとフレンドリィショップしか目ぼしい物がありませんでした。バッジを集め
ているトレーナーはよく来るらしいんですけど、それをしない人間は、滅多に来ることが無いって、島の人も言
ってました。
 で、退屈になった私は、島を一周してみることにしたんです。今思えばかなり無謀なことだったな、って思う
んですけど。
 そして、島の外れに広がる巨大な洞窟――地元の人は、『石の洞窟』って呼んでましたけど。
 そこに入ってみたんです。

 
 本当に、ちょっとした探検気分だったんです。岩と石と砂しかなくて。上は空洞になってる部分もあるから、
比較的明るいんですけど。光が差さない場所は、本当に真っ暗で。
 時々マクノシタとか、ココドラとかがいましたけど。
 私はあんまりバトルしない子だったんで、なるべく見つからないように避けて通ってました。そして、そろそ
ろ戻ろうかな……って思った時でした。
 向こうの方から、何かが転がって来たんです。ええ、それはもう驚きました。
 私の拳くらいでしょうか。結構大きな石の塊でした。でも、キラキラ光ってすごく綺麗で……。
 そうしたら、何かの足音が聞こえて来たんです。慌てたような感じで。私は人だと思って、多分この石を落と
したんだろうな、って思って差し出したんです。
 でも、いつまで経ってもやって来なくて。足音も止まっちゃって。
 ここにありますよ、って声を掛けても、全くやって来ない。
 そうしてるうちに痺れを切らして、私、暗闇の中に入ったんですよね。懐中電灯なんて持ってないのに。何と
かして返そうと思って……。それだけで頭がいっぱいでした。
 数分ほど歩いた時に、いきなり三つの明りが目の前に現れたんです。私、びっくりして。
 白い光が二つに、少し下に明るい色の灯りが一つ。
 尻もちをついた私の前に、一匹のヤミラミが現れたんです。そう。二つの光は、彼の目の宝石だったんですよ
。そして明るい方は、彼の持ってたカンテラ。
 向こうもびっくりしたみたいですけど、私が石を返しに来た相手だと分かって、手を貸してくれました。石を
返したら、『ちょっと来い』みたいな感じで奥深くまで連れて行ってくれたんです。
 ポケモンってすごいですね。カンテラ持ってるとはいえ、何処に何があるか、暗闇の中でもはっきり分かるん
ですから。
 そうして連れて来られたのは、岩場でした。固い岩石の壁の前で、沢山のヤミラミが仕事してるんです。
 ポケモンが仕事……っていうと、何かアレですけど、まあ言葉の綾ということで。
 岩を掘り出してたり、屑石を運んで別の場所に重ねていたり、何やら話し込んでいたり……。
 目の前に行われている不思議な光景に、私しばらく開いた口が閉じませんでした。我に帰ったのは、連れて来
てくれたヤミラミが、別のヤミラミから何か預かって、私に持たせてくれた時です。
 ……それが、これなんですけどね。

 記者は彼女の胸元からかかるペンダントを見た。
 ごつごつの石だ。でも、所々透明で光っている。

 ヤミラミって、宝石の原石を食べるポケモンなんですよね。あの時どうして、私に貴重な一つをくれたのかは
分からないんですけど……。
 そうそう、これ元々はもう少し大きかったんですよ。でも友人のお父さんに見せたら、ぜひ少しで良いから譲
って欲しいって言われて。あ、その人宝石商なんですけど。
 ええ。結構良い値段で引き取ってくれました。かなり貴重な鉱石だったみたいですね。
 それで、今回受賞した小説を書く時に、資料を集めてたんですけど、面白い話を聞いたんです。
 
 夢を持って、それに向かって努力している子供の所に現れる、ヤミラミ達の話を。
 彼らに原石をもらった子供は、どんなことがあっても、必ず夢を叶えると。

「……でも、当時小説家になるなんて、私、全く考えてなかったんですよね。
 彼らにはそれすらもお見通しだったんでしょうか。それが、唯一の謎ですよね」


―――――――――――
 文化祭に出す宝石風ピアスを作ってた時に思いついた物。
 『耳をすませば』で主人公が店主さんに原石をもらうシーンが好きです。


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