マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ
このフォームからは投稿できません。
name
e-mail
url
subject
comment

[新規順タイトル表示] [ツリー表示] [新着順記事] [留意事項] [ワード検索] [過去ログ] [管理用]

  [No.3435] タイトル未定(ピッピ人形の話) 投稿者:クーウィ   投稿日:2014/10/04(Sat) 15:59:01   128clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:一粒万倍日


 夢すら覚えぬ眠りの底から、不意に現実に引き戻された。塗り込めた様な闇の中、誰かの視線を感じる。……
あいつだ。またあいつだ。
 現在の時刻は午前三時。黎明にはまだ遠いこの時刻、私の周囲に存在しているのは、枕元にある目覚まし時計
と、並んで置かれた携帯電話の充電ランプに照らし出された、狭くオレンジがかった空間だけ。あらゆるものに
彫りが刻まれ、何処か超然として見えるその世界には、何も怪しい物は無い。
 覚醒し終えた私の視線は、自然一点に向けて凝固する。闇に馴れた私の目にも、捉えられないその先に。

 あいつが来たからこうなった。あいつが来てから、全てが狂い始めたのだ。


 ほんの一か月ほど前、私はこの地に越してきた。
 家財を売り、職を手放し。漸く買い取ったアパートの権利も、職場の同僚達の引き留めも振り払い、まさに今
までの人生をリセットする思いでこの人里離れた一軒家に落ち着いたのには、無論訳がある。
 転居を決めるその前の月、私は妻を失った。大学時代に意気投合し、互いに見染め合って伴侶となったその相
手を亡くしたのは、私の人生に於ける最悪の痛恨事となった。
 死因は、肺気腫から来る急性肺炎。数年前から体調を崩してはいたものの、まさかここまで一気に病状が悪化
するとは思わなかった。葬儀の場で聞いたところ、肺患は妻の家系の宿痾であって、彼女の祖父も曾祖父も、同
じ病状で亡くなったらしい。
 更に追い打ちをかけるが如く、失意に暮れる暇すら無しに、私は気付いた。慣れない事務作業に疲れ果て、く
たくたになって帰宅した夜。食事を取る気にすらなれず、そのまま寝所へと直行した時、ただ一人残された家族
である娘の背中が、小刻みに揺れていたのである。連続して聞こえて来る小さな咳は、ここ数日の内に起こった
出来事を、弥が上にも連想させるものであった。
 居ても立ってもいられぬまま、夜が明けて直ぐ訪れた小児科に於いて医者が下した診断は、『軽い小児喘息』
。「それほど心配する事もないでしょう」と言うのが担当医師の見解だったが、その時の私にはにこやかに語る
老医師の言葉も、その傍らに付き添っているピンク色のポケモンも、余りにお気楽に過ぎていた。タブンネと呼
ばれているそのポケモンが娘を連れて去った後、半ば食い下がる様にして転地療養と言う選択肢を引き出した私
は、妻の弔いの後始末が終わり次第、この街を離れようと心に決めた。



間に合わなかった企画作品その3。取りあえずそろそろ殴られそうなので以下略。


- 関連一覧ツリー (★ をクリックするとツリー全体を一括表示します)

- 返信フォーム (この記事に返信する場合は下記フォームから投稿して下さい)
おなまえ※必須
Eメール
subject 入力禁止
Title 入力禁止
Theme 入力禁止
タイトル sage
URL 入力禁止
URL
メッセージ   手動改行 強制改行 図表モード
添付ファイル  (500kBまで)
タグ(任意)        
       
削除キー ※必須 (英数字で8文字以内)
プレビュー   

- 以下のフォームから自分の投稿記事を修正・削除することができます -
処理 記事No 削除キー