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  [No.3456] 負の味 投稿者:WK   投稿日:2014/10/17(Fri) 15:52:46   59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 以前、あまりにもカゲボウズ達が大食いなので、健康に悪いと思い少しの間食事の量を減らしたことがあった。彼らが食べる物は、普通のポケモンフーズではなかった。あんな粉っぽい物食べてらんねー、と五匹の中の一匹が叫んだのを覚えている。
 私の周りのゴーストタイプは皆美食家だった。不味い物はどんなに安くても、またそれしか食べる物が無くても決して口に入れようとはしなかった。そして、大衆が群がるような店よりも、自分で見つけた美味しい店の料理を好んで食べることが多かった。私も幾度か連れて行ってもらったが、非常に美味だった。
 彼らは食事だけではなく、甘味も大好きだ。カゲボウズは負の感情を食べるポケモンとして知られているが、実際に美味しいのかと聞くと、甘いのだという。特に長年降り積もった感情は少し嗅いだだけで全身が融けるのではないか、というくらい甘い香りがするとか。少し気になったが、人が嗅いでも不快な気持ちになるだけだから、と言われたのでやめておいた。
 彼らは言う。人は毎日のように負の感情を抱く機会に恵まれるけど、何処かで必ず発散しているのだという。それは人によって様々で、無自覚に発散している場合もあれば、さあ、今から発散するぞと気合を入れる場合もあるらしい。
 そんな人間の感情は、たとえ負でもあまり甘くないらしい。短い時間の合間に大量に発散するからだそうだ。
 反対に狙い目なのは、真面目な人や自分の思ったことを上手く口に出せない人間。そういう人間は普段は大人しくても、ある時不意に爆発するのだという。それはまさに、ポップコーンの飴玉版みたいだという。弾けるのはコーンではなく、飴玉。それを我先にと口でキャッチして食べるらしい。それもまた、娯楽のようで楽しくて良いという。
 そんな話を聞いた数ヵ月後、突然カゲボウズ五匹だけが私の群れから姿を消した。私はいつものことだろうと思い、そのまま日常を過ごしていた。彼らは何か大きな餌を見つけると、それを他のカゲボウズに取られないようになるべくその本人の近くに潜伏する。そして帰ってくる時は、あの角付きの頭がこれでもか、というくらいに膨れ上がっている。下のひらひら部分はそのままなのに!
 太る部分が違うのだろうか。しかしこれは……。
 
 それからたっぷり一ヶ月経って、彼らは帰って来た。意外と顔の形は変わっていなくて、私は意外に思った。どうした、と聞くと凄い物を見た、と帰って来た。
 その女性はとにかく人の悪口を言うのが大好きだったらしい。テレビを見ても芸能人の悪口を言うし、陰口はもちろんのこと、トイレに立った同僚の悪口を一緒にいた同僚に吐くのだという。
 コンプレックスが強い人間は、他人を落とすことで自分を上げようとするという。彼女もその一人だったのかもしれないが、赤の他人である私はどうでもよかった。
 彼女には誰もがうんざりしていたようで、その念も相まって職場は凄まじく甘い匂いに包まれていたという。各地からカゲボウズ達が集まってきており、どれだけ甘くなった時に齧り付けるかの駆け引きの場になっていたという。
 しかし、その女性の感情の熟すスピードはあまりにも速かった。
 そろそろか、と先に齧りついた数匹が、吐き出した。不味い。とても食べられた物じゃない。
 見れば、彼女の体は腐りかけていた。人の目には、普通に人間の姿に見える。しかし彼らには、熟しすぎて腐り落ちて行く姿が見えたという。
 負の感情を抱きすぎて、自らがその塊へと変貌し、とても食べられた物ではない腐りかけ――『悪』になってしまったのだと彼らは言った。だから、職場の感情だけ食べてきたという。
 そちらは普通に美味だったらしい。
 
 青すぎるのも不味いが、熟しすぎても不味い。
 彼らはその丁度良い境目を見極めるために、今日も程よい人間を探している。


――――――――――――――
 一応レディ・ファントム視点のつもり。
 そして彼女を生み出してから既に四年近くが経過していて驚く。


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