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  [No.3447] ディアマイフォロワー 投稿者:ピッチ   投稿日:2014/10/15(Wed) 00:37:27   122clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
タグ:ポケッター】 【WKさんすみません】 【遅刻】 【グレンタウン

『間もなく船の前方にグレン島が見えて参ります、どうぞ窓から火山島の勇姿をご覧くださいませ……』

sasaRaiRai ささら@旅
島みえたらしい
現在

 タマムシやヤマブキを走るバスの車内放送と何ら変わらない声色の合成音声。俺はそれを聞くとともにいじっていたスマホをポケットに突っ込んで席から立ち上がり、そのまま前方へと向かう。漁船に毛が生えたんじゃないかと思えるような小さな船なのにも関わらず据え付けられた席は空きだらけだ。そこにまばらに座っている奴も、ほとんどは背もたれに身体を預けて寝こけている。他に立ち上がったのは一人もおらず、せいぜい音に身じろぎしたのがいたくらいだ。
 グレン島へ向かう人間はだいたい二種類しかいないとマサラの小さな船着き場のおっさんが言っていた。曰く、自分の水ポケモンで島へ行くジム目当てのトレーナーと、船で行く研究者。特に地元がマサラだから行くのもこちらに来るのも研究者だと言っていたおっさんは、今この船の舵を取っている。
 要するによそ者は俺くらいしかいないのだ。島をわざわざ珍しがるような奴は。
 見てみれば確かに、グレン島らしき島。その半分以上を占めているんじゃないかと思えるほどの火山から雨雲と見間違いそうな濃い煙が出ているのが見えた。ポケットのスマホを取り出してカメラを起動する。風景撮影モード、パチリ。
「お、なかなかよく撮れたんじゃないの」
 思わずそう自画自賛する程度にはいい出来。そのままカメラを終了、親指でチルットマークのアプリをタッチ。数秒の読み込み時間の後に表示されるタイムライン。その中に色の違う呟きがいくつか。左へフリックしてそれだけを確認。

pikaaaach ピカチュウは俺の嫁
@sasaRaiRai うp
3分前

masa_tan 永遠のたんパンこぞう
@sasaRaiRai おつかー
3分前

osososos おす
@sasaRaiRai おつおつ
2分前

mokutanfire もくたん@炎愛
@sasaRaiRai 凄いらしいね噴煙 気になる
1分前

 全部への返信代わり。さっき撮ったのを添付して送信。

sasaRaiRai ささら@旅
火山すげえな pic.poketter.com/wd2pkoz
現在

 画面から顔を上げれば、ゆっくりと島が近づいてきている。カントー地方巡り、最後の一カ所。
 トレーナーの才能なんててんで無くて、修行のために始めた旅はただの観光旅行と化した。だから俺はこれを旅でも何でもなく「地方巡り」と呼んでいる。他のトレーナーが言う「旅」の重みは俺の旅には何一つ無い。野生のポケモンと出会わないよう草むらや山道を避けて歩く。結果的にそこを通る他のトレーナーとも関わらずに済む。街の中では徹底的に「僕はトレーナーじゃありません」って感じのオーラを出しながら歩く。ポケモンたちはモンスターボールに入れて荷物の中。ボールの中にさえいればデータのまま更新されることのないこいつらは、そうすることで懐かなくなることもなければ、ボールの外で俺が何をしているか知ることもない。こんな生活を送っていることは、リアルじゃ誰にも話せない。知られたくない。同じ年に旅立った奴らにも、親にも。でも、そんな負け犬そのものの旅をやめない理由もはっきりあって。
 がくん、と船が大きく揺れた。山はもう、窓の中になんて到底収まりきらないほどに近くなっていた。
『グレン港到着です。お降りの際は足元に十分お気をつけてお降り下さいませ』

 船を下りた後、ひとまず手近な倉庫の陰に入ってスマホを取り出す。さっきスリープさせたままの状態で、開きっぱなしの更新されていないポケッターの画面を下へスワイプ。更新が始まる。数秒してから表示され直した画面に、待ち望んだ文字列。

Fuka_kazahana 風花
お疲れ様です。そろそろ到着の頃でしょうか。こんなに早いと思わなかったので準備が間に合っていなくてすみません。今から家出ます。
1分前

sasaRaiRai ささら@旅
@Fuka_kazahana 今船降りたけどそっちのペースでいいよ 気をつけて! じゃあポケセン前で
現在

 旅を支えたのは、行く先々に住んでいる俺のポケッターのフォロワーたちだった。リアルじゃ言えないこの地方巡りの実態もポケッターでだけは赤裸々に話していたから、何も気負わずに会うことが出来た。そもそもそんな話をする段階で本気のリーグ出場を目指す意識の高いトレーナーはほとんど離れていったから、残るのはみんな似たような挫折経験を持つトレーナーかそもそも旅をしたことがないという人たちだった。そんな皆にはトレーナーらしいことを何もしていなくてもカントーのほぼすべての街に行ったことがあるというのが珍しいようで、会って話をしてみてもトレーナーとしての在り方をさほど責められることもなく、本気でリーグに出られると思っているうちが華なんだよ、などと笑い合った後に、今まで旅してきたところの話をするのが常だった。
 写真をアップするのもそうした旅をなんとか続けていることが珍しがられるということもあって、何かと好評なせいだ。そして今リプライを返した彼女は、おそらくそうした写真を一番楽しみにしてくれている人だった。
 いつもどこかの写真を載せて呟く度に、必ず何かしらの反応をくれる。


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