オダマキ博士の息子だと言うユウトに連れられ、なんとか日暮れ前にミシロタウンにたどり着いた。
「ここが父さんの研究所だ」
「へー、結構小さいのね」
「……ここ、この町で一番大きい建物だぜ?」
「そうなの?」
家の使用人室と同じくらいの大きさだけど、と言う私の言葉は突然開いた扉によって封じられた。
「ユウト、おかえり。君がエレンちゃんだね」
顔を出したのは、すこしぽっちゃりした中年の男性だった。
「父さん! ただいま!」
「父さんってことは……あなたがオダマキ博士ですか?」
「そうだよ。いやあ大きくなったなあ! さあ入って入って」
◆◆◆
「予定よりずいぶん遅くなっちゃったけど、何かあったのかい?」
「道にまよってましたー」
「俺がここまで連れてきたんだぜ」
「そうかそうか、ユウト、ありがとう」
それから私はポケモン図鑑をもらい、キモリというポケモンまでもらってしまった。
「もう真っ暗だから、今日は泊まっていくといい」
「え、そこまでしていただかなくても……」
「遠慮はしなくていいよ。会わせたい人がいるんだ」
「会わせたい人?」
丁度その時、研究所の扉が開いた。
「ただいまー……なんだなんだ、何事だ?」
「オダマキ博士、お久しぶりです……あれ、なんでエレンがここにいるの?」
入ってきたのはふたりの男女。
「兄さん!」
「お姉ちゃん!?」
その片方、緑のバンダナを結んだ女性は、私の姉、エンジュだった。
◆◆◆
「なるほどねー、エレンが旅……大丈夫なのあんた?」
「大丈夫だもんー」
「初日から道に迷う人間が言うセリフじゃないわね」
「ぐむう……」
お姉ちゃんは昔、この地方ですごいことを成し遂げ、英雄とまで呼ばれたらしい。当時まだ5歳だった私には、詳しいことは分からないけど。
「ユウトが居なかったらどうなっていたことやら」
「むー」
ユウトの兄だというユウキさんにまで言われて、私はぷくっと頬を膨らませた。
ユウキさんはオダマキ博士の研究を手伝いながら、フィールドワークと称してホウエン中を飛び回っているらしい。
◆◆◆
夜。なんとなく目が覚めた。
トイレに行った後ふと外を見るとユウトが外に出ていた。
「ユウト、なにしてんの?」
「ああ……エレンか」
隣に立って空を見上げると、すんだ空気の中、たくさんの星が瞬いていた。
「やっと旅に出られるって思ったらさ、なんか、眠れなくて」
「そう……気持ちが高ぶってるんだね」
「ああ……5年も待ったんだからな」
トレーナーとして旅立つことを許される年齢が10歳から15歳に引き上げられたのは、6年前。国によると、トレーナーに捨てられたポケモンが野生化し、まだ若いトレーナーが命を落とす事件が増えたから、らしい。既に旅に出ていた者が呼び戻されることは無かったけれど。
当時10歳だった子供達は、地元のトレーナーズスクールに通い、ポケモンの危険性などを学んだらしい。私はコトキの実家でのんびり過ごして居たけど。
「あの時はショックで1週間寝込んだぜ……やっと兄さんに追い付けると思ったのにって」
「ユウト……」
「でも、これでやっと兄さんを追いかけられる。エレン、お互い頑張ろうな!」
「うん!」
星空の下、ユウトとふたりで笑いあった。
(ω・ミэ )Э(ω・ミэ )Э(ω・ミэ )Э
エレンの由来は、キュアビートです。
ユウキとエンジュも別にフラグは立ってません。