人間なんて、恩の押し売りばかりの生き物だと思ってた。
野生から切り離されたわたしを、助けてくれた思ったのに。
優しい人だと思ったら、進化したわたしに笑顔でお別れするような人だった。
大事にしてくれると思ったら、動く玩具がほしいだけの人だった。
逃げないように鎖でつないで、嫌がれば小さな火で肌を焼く。火が怖いから素直で可愛い振りをしてたら、急にわたしを人里に追い出した。
帰る先がわからないから人の中で生きることになって、食べる物も少なかったけど、多少汚いのを我慢したら食べ物は見つけられたし、なんとか生きていけた。
少しでも汚れが気にならなくなれば、もう止まらない。気づいた時には汚れ放題で、毛繕いもしなくなってた。汚れた毛を、汚れた手で整えたところでキレイになるはずなかったから。
そんなわたしを人間たちはいつも汚い物を見る目で見ていた。実際汚かったけど、誰のせいよ。
悔しくて苦しかったけど、でもこのまま死にたくなかった。脚に繋げられた鉄球の冷たさが、こんな苦しいまま死んでたまるかって、わたしを奮い立たせていた。
今、わたしの脚に鉄球は無い。
私が今お世話になっている人が、鉄球を外してくれたんだ。
今日みたいに、公園でよく見かける光景。ベンチに腰掛けたわたしたちの前で、ポケモントレーナーとかいうのの仲間になったみんなが戦いあっている。
これがどうしても好きになれない。
人間との絆を見せてやる、と得意げになってるヤツは良い。まだ良い。なんだかわからないままにとりあえず戦うヤツは哀れだ。でも苦しいと感じない分、幸せなんだろう。
悲惨なのは、痛い痛いと泣きながら戦い続けるヤツ。やりたくないのに捨てられたくないから、必死になって無理して身体を壊す。人間はそれを裏切られたと感じて、叱責する。
身に過ぎたひたむきさは勝手な期待を増長させて、後でつらくなるだけなのに。それがわたしが捨てられた時のことと重なって苦しくなる。不安になる。
わたしのこと、飽きたら捨てますか?
また、汚れた生活をすることになりますか?
あの人はそんなことしない。そう信じているけども、人間から受けた暴力と泥と埃にまみれた生活の記憶は事ある毎にわたしの安心を揺るがせる。
こんな公園、本当は来たくなかった。お留守番が寂しくなかったら、こんなところには。けどあの人は見捨てておけないから、ほら、身体を壊した子を助けるため、叱責するトレーナーを止めに入った。
傷が治ればまた戦いに駆り出される。根本的な解決になってないのにね。
それはきっとあの人も分かってるはず。でもどうしたら解決できる? 考えても、できそうもない答えしか浮かばないから、目の前の痛みを取り除くだけなんだろう。
だけど……。
そんなことよりも、わたしを暖めてください。
あなたの暖かさでわたしを安心させてください。
あなたの邪魔になりたくないから我慢してるけど、本当は思いっきり甘えたいんだよ。そう言いたいけど、声にならないし分かってももらえない。
早く戻ってきて。そう願いながら目を伏せたとき……。
「――――ッ!!??」
今しっぽ握ったの、誰!?
***
公園でひと騒動。これの前後同時期で、トレーナーがバトルしたり、獣医が文句を言いながら治療したり、バシャーモが爆発して、仕舞いにバトルとなる予定です。
多分、連載モノの板に数年ぶりに書き足すでしょう。