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  [No.3423] 蜘蛛の糸 投稿者:あつあつおでん   投稿日:2014/09/29(Mon) 21:53:08   92clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 生き物は死ぬと、生前の行い次第では涅槃の地に行けるらしい。涅槃には仏がいて、それは穏やかな世界が広がっているそうだ。ポケモンも人も奪い合うことも縛り合うこともなく、かのプラズマ団やフレア団が求めた世界に近いかもしれない。
 そんなある日のこと、仏が散歩をしていると、池を見つけた。すぐそばに木が生えており、枝は池の上にまで伸びている、やけにがさがさ枝が揺れているも、仏は気にせず水面を見つめた。そこからは地獄が見えた。かつては苦しみしか生み出さなかった地獄も、近代化を遂げていた。涅槃に行けなかった者たちは地獄で労働に従事し、涅槃の者の生活を支えているのだ。
 その中に、仏は一人の男を見出した。地獄の工場を掃除している男は、Twitterやゲームで遊び呆けて執筆を怠るという大罪を犯して涅槃に行けなかったのだが、生前一匹のイトマルを助けていた。そのことを思い出した仏は糸を垂らそうとしたのだが、その手を止めた。すでに木から糸が下りていたからである。

 さて、こちらは地獄。涅槃は雲より高い所にある。仕事の合間にそれを眺めていた男の元に、細い糸がやってきた。自堕落な生活を送っていたとはいえ、男も物書きの端くれである。すぐに勘付いて一言
「これは、もしやあの有名な蜘蛛の糸か? あの話通りなら、救いの手が来たんだな。物語の男は失敗していたが、私はすでに死んだ身、どうして失敗することを恐れようか」
と糸を手繰り寄せ、地面をけり上げ上りはじめた。
 そこからは速かった。男も常人ならざる力で易々と上るが、手足の動きに不釣り合いなほどの勢いである。まるで天に吸い込まれているかのようだ。男はこれに驚きつつも、運が良いと休まず手を動かした。
 ところが、その勢いが急に落ちてきた。まさかと思って下を見ると、男の視界にたくさんの人の姿が見えた。糸を手繰る人の髪をさらに人が掴み、さながら大樹のような様子である。言うまいと思っていても、いざ遭遇すると落ち着きを失うようである。男は「あの言葉」を言ってしまった。
「おい、降りろ。これは俺の糸だ…あっ」
 自らの失言に男は天を仰ぎ、観念したのか目をつぶった。糸が切れる音が聞こえてくる。大勢の悲鳴がこだました。しかし、男は黙ったままだ。恐る恐るまぶたを開けると、男の足元より下の糸がなくなっていた。
「助かったのか。どうやら、全て物語通りというわけではなさそうだ」
 男は安堵し、再び上りはじめた。最大の難関を突破した男は、やはり何かに引き寄せられるように上を目指す。一時間ほど過ぎるころには、遂に水面を眺める仏が見えるところまでたどり着いた。男は最後の力を振り絞り、遂に涅槃に到着したのだ。
「よし、あとは着陸…あれ?」
 ふと、男は異変に気付いた。手を止めたはずなのに体が上へ上がるではないか。糸の出どころは茂みに覆われた木の枝。仏ではない。もしやと思った男は逃げ出そうとするが、蜘蛛の糸が手足に絡まり思うように動けない。下手に動けば地獄にまっさかさまと言うこともあり、激しく暴れられないのも災いした。
 そうこうするうちに、男は茂みの中に入っていた。そこにいたのはアリアドス。大きく口を開けていた。
「あの言葉の報い、ここで受けるのか…」
 今度こそ万事休す。アリアドスは男の首を噛み千切ると、そのまま胴体、足、腕の肉を食べてしまった。茂みから残った骨や内臓がぼとぼとと池の中に落ちていった。
 食事を終えたアリアドスは、今いる枝から幹を伝って木から降りようとした。ちょうどその時、枝が根元からぼきりと折れた。アリアドスは為す術なく池から地獄に入っていった。

 この一部始終を見ていた仏は、少し悲しそうな表情をしたが、すぐに落ち着きを取り戻し、散歩を再開するのであった。







 思い立ったが吉日だと思ってるので、これを読んでる方は一粒万倍日でなくても書いてみましょう。


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