タグ: | 【ひとつぶまんばいび】 【ネタ元:鶴の恩返し】 【※まだポケモン出てない】 |
昔むかしのおはなしです。
とある山里に、やいちという若い男がいました。数年前に父母を亡くし、今はひとりで暮らしていました。
ある夜のこと。外では吹雪がごうごうと唸りをあげていました。そこにどんどんと、誰かが扉を叩く音が聞こえてきました。
やいちが戸を開けると、外にはとても長く美しい髪を持った女が立っていました。
「突然すみません。もしよろしかったら、ひと晩泊めていただけないでしょうか」
吹雪の外はあまりにも寒く、やいちは快く女を招き入れました。
囲炉裏の炎にあたって話を聞くと、女の名は「ゆう」と言い、両親を亡くし、遠い親戚を尋ねていく途中で吹雪に遭い、道に迷ったということでした。同じく天涯孤独の身であるやいちは、ゆうの境遇に深い共感を覚えました。
「吹雪はもうしばらく続くでしょう。好きなだけこの家にいるといいですよ」
やいちがそう言うと、ゆうはありがとうございますと言って頭を下げ、嬉しそうに笑いました。
吹雪は何日も止みませんでした。
ゆうはやいちの家に留まりつづけていました。毎日顔を合わせ、囲炉裏の火を囲んで話をしているうちに、やいちとゆうはすっかり仲良くなりました。
10日ほども経って、ようやく吹雪も弱まってきました。
穏やかになった空の様子を見ながら、やいちは言いました。
「もう行くのですか」
「はい。雪も止みそうですし、これ以上ご迷惑おかけするわけにもいきませんから」
「……これから、顔も知らない親戚のところへ行くんですよね」
「……はい」
ゆうはそう言い、少しだけ寂しそうに微笑みました。
「わたしも、父と母が亡くなってからしばらく経ちます。寂しい思いをしてきました」
「……?」
「もしよかったら、ここにいてもらえませんか? ……この先、ずっと」
突然のやいちの申し込みに、ゆうは目を真ん丸にしました。
そして、真っ白な頬をぽっと染め、お願いします、と言いました。
翌日、ゆうはやいちに、機織り機はあるか、と聞いてきました。
やいちの家には亡くなった母が昔使っていた古い機織り機がそのままになっていました。
「わたしは何も持っていません。嫁入り道具も仕度金もありません。代わりといってはなんですが、機を織らせていただきます」
ゆうは機織り機の動作を確認すると、機織り部屋の襖から少しだけ顔を覗かせて言いました。
「わたしが出てくるまで、決してこの部屋を覗かないでください」
それからしばらく、ゆうは一切姿を見せなくなりました。やいちの呼び掛けにも、一切答えることはありません。
その代わり、部屋からは機織り機の軽快な音が絶えず聞こえていました。
とんとん、からり。とん、からり。
とんとん、からり。とん、からり。
2日ほど経った夜、機織りの音が止まりました。
がらりと襖の開く音がし、少しばかりやつれた様子のゆうが、1巻の反物を抱えて出てきました。
「これをどうぞ。町で売れば、それなりの値段になるはずです」
そういってゆうは、やいちに反物を差し出しました。
その反物は落ち着いた柴色で、光のあたるところは紫色にも見えました。
翌日、やいちは町へ野菜を売りに行き、反物も一緒に持って行きました。
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個人で細々やってた納涼短編で書こうと思ってたんだけどすっかり涼しくなってしまったよ!!!
そして今気付いたけど全然ポケモン出てなかったよ!!!