マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ
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  [No.3418] 放火魔(仮題) 投稿者:音色   投稿日:2014/09/29(Mon) 20:01:51   58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 妙なものが見える様になった。14歳か、そこらの時だ。
 10歳で成人扱いといえど、一応親が「上の学校にいっときなさい」と言ってくれたので言葉に甘えてトレーナーズスクールの中等学校に入学して、まぁまぁ周りとも馴染んで何のことはない日々のまんなかで。
 最初は紙切れを踏んづけるよりはしっかりした感触だった。くしゃ、と音がして目を落としたら、粉々になった何かがあった。
 紙切れ、にしちゃもろい。硝子細工にしてはこんな所に転がってるなんて妙だ。何だろう、とばかりに足元に視線を落としていたら、近くに何か転がっているのが目に入った。
 葉っぱのように見えた。ただ、葉といっても植物の葉ではなかった。なにか、薄くて透明に近くて、全然別なものだった。拾い上げてみたら、何か書いてあるように見えた。
『昨日ばったり元彼に会っちゃってさ。すごいきまずかった―』 
 ・・・なんだこれ。
 会話の断片、ってやつか。いや、何でそんなものをメモした葉っぱが落ちてるんだ。
 メモした、と考えて、そりゃないかと考えなおす。こんな葉っぱにシャーペンで何か書くなんて、無理だ。大体これ、紙じゃないし。会話をいちいちメモするなんて、おっつかないだろう。
 となれば、これはなんだ。
 ふと見渡すと、あちらこちらに同じような葉っぱが落ちている。机の上、椅子の下、黒板に張り付いたり、窓に引っ掛かっている、などなど。気を回せば、いくらでも見えてくる。
 葉っぱ、と勝手に定義したが、ようするに、これは。
 言葉なわけか。
 見えているかといって、だから何だと言われたらそこまでだけど。
 握りしめると、あっさり砕け散った。随分もろかった。


 頭に何かがポン、と当たった。え、なに。考える前に、呼ばれたことを思い出した。
 その辺にころころと透明なボールが転がっている。拾うと、まん中に自分のあだ名。
 振り返ると、もう一個飛んできた。思わずキャッチする。
「ごめん」返事は最初葉っぱで、徐々にスピードがついて、向こうの胸にポンと当たってくだけた。
 どうやら遠くにいる相手に声をかけると、そこまで球となって飛んでいくらしい。自分の声も、言葉もきちんと見えるんだ、と思った。球、というより、珠かな。もろいし。いや、そうでもないか。持っているボールに目を落とす。
「なに持ってんの?」
 やっぱり他人には見えないらしい。なんでもない、と返事して、呼んだ理由を尋ねてみた。
 見せられたのはボランティア募集の紙。一緒に出ないか、と持ちかけられた。受け取ると、軽く説明があった。ふわふわと言葉が紙の上に落ちてくる。
「こんどの日曜日に、ポケモン保護施設でふれあいケアに行くんだけどさ。もしよかったら、と思って」
 集合場所と時間を告げられる。それを聞いて、特に予定もないから、良いよと言ったら、どんな格好をしていけばいいのかとかも教えてくれた。必要な言葉だけを紙の上に残して、落とさない席に戻る。
 これはこれで、便利だなと思った。


 相変わらず教室は言葉で溢れている。ふと、掃除の時間は溢れている言葉を一掃するために考え出された時間じゃないかと錯覚した。箒でしゃらしゃらはいて、ちりとりでまとめてゴミ箱へ。砕けた言葉の残骸は、生活の中のゴミよりよっぽどたくさんあった。
 自覚すれば、見える。歩くたびにしゃりしゃり音がする。消しゴムカスを払いのける動作で、ついでに言葉も払いのける。
 もちろん、意識しなけりゃいい話なんだろうけど、なんかそういうわけにもいかないというか、一度気になったら余計こと見えてしまうというか。
 こんなこと気にしてるの私だけだろうな―とか思いながら、ぼんやりと掃除が終っても埃以上に積み重なっている言葉を眺めて塾に行くためにカバンを背負った。


 バスが上手くつかまらなかったので歩く。20分の距離だ。丁度いい。
 道にも言葉が溢れているかと思えば、そうでもない。やっぱり、車の威力が高いのか。言葉を片っ端から轢いて挽いてひきまってくるから、粉々すぎて道路はいつもの風景だ。
 空からも言葉がふってくる。鳥ポケモン達の鳴き声も、言葉と言えばそうなのか。雪や雨より緩やかだ。これはこれである意味きれいだ。
 前の方を小学生の団体が歩く。言葉が花のごとく咲き乱れてそして葉っぱは歩いた後を埋めていく。その後ろを歩くとしゃりしゃり音がする。もっとも、この音が聞こえるのは私だけか。
 賑やかだなーとか思いながら眺めていると、前の方を歩いている別の小学生に追いついた。気付いた団体の一人が何やら前の小学生に声をかけた。
 言葉がボールに、ボールがナイフになった。
 軽い音がしてその子の背中に突き刺さった。
「え」
 思わず声が漏れた。団体の子達は触発されてはやし立て始めた。言葉の刃は容赦なく一人の小学生を襲う。その子は何も言い返さない。ただ黙々と歩き続ける。大量のナイフが刺さったまま。
 無反応に飽きたのか、団体はいつの間にかただの葉っぱ製造機に戻った。
 言葉の暴力、なんてものが真っ先に出てきた。あの団体は最初からナイフを投げてはいなかった。ただの言葉を投げかけた。そして、それは激しく一人の人間を傷つけた。受け取る側で言葉が言刃に変わった。
 なんか、虐め反対のポスターを読みあげているような思考になった。リアルであんなものを見ると、うへぇとなった。
 

 塾が終って家に帰ると、テレビでニュースをやっていた。政治家がどうやら、プラズマ団とこうやら報道している。
 スタジオはすでに山の様な言葉で埋め尽くされているが、かまわずさらに言葉を吐き出すアナウンサーを見てられなくて消した。見てるこっちが言葉で窒息死しそうだわ。
 すっかりこの異常現象になれつつある。家の中にも言葉は溢れていた。こまめに掃除をしようと決心した。
 カレンダーにボランティアの予定を書きこむ。今度の日曜か。
 




 180円。この180円が大いに問題なのだ。何がって塾への片道バス代180円。こいつが手元にあるかないかの話で。
 まず作るのがちょっと面倒くさい。200円あれば良いじゃないと言うことなかれ。上手く崩すのが至難の業なのである。
 コンビニによれば一番安くて21円。消費税の5%が邪魔をする。1円めぇ・・・。知ってるか、1円足りなくてもバスには乗れんのだ。
 他に崩す方法と言えばまぁ、校内の自販機か。ただし、なまじ校内と言うだけあって問題ある。
 安いのだ。
 外に出れば120円で売っているカフェオレはワンコイン。20円の差ってなんだろう。カップの自販機もあるが、70円と80円の違いも微妙。まぁ、どうでもええか。
 ただ、水筒にお茶が残っているにもかかわらず、小銭を作るためだけに飲み物を買うと言うのはなんかプライドに引っ掛かる。飲み物あるなら買わなくても良いじゃん。
 ていうか、200円しかないのに余計なもの買ってあげく足りないとか意味無し。
 バスの中で崩せば、という意見に妙な羞恥心が『他人の視線が集まりそうでそれが嫌じゃけこういうことに四苦八苦してんじゃねぇかよ』という本音をぶつけてやり返す。
 とまぁ180円についての考察を続けていると目の前の人物が振り返った。
「なんやら難しい顔をしょうるな」
「む、100円玉を80円に分割する方法を探しとるけぇ」
「・・・また不思議なこと考えとるね」
 前の席の住人はぐるんとこちらを向いて座り直した。ホームルームまではまだ時間がある。
「先生来んなぁ」
「忙しいんじゃろ。進路面談とか放火魔事件とか」
「あー、朝言っとったね」
 ゴミステーションのあっちこっちで小火騒ぎが起こっているらしい。不審者を見かけたら連絡するように、と警察から回ってきたらしいとか。
「暇潰しにごみに火を付けて面白いんかね」
「さぁねー。放火魔の思考なんざ分かるわけなかろ」
「あんがい人間じゃないかも」
「ほぉ、すーさんには犯人の目星がついとるとな!」
 いや、そういうわけじゃないけど。
「その辺歩いてるガーディがくしゃみした拍子にボッ、だとか」
 真面目腐って答えたが「ゴミ箱漁る子犬ってのもなー」と何処か不満そう。いや、夢を壊したくないだけか。
「野生のポケモンならゴミくらい漁るじゃろ」
「せめてカラスの方がしっくりくるかな」
「それもそうか」
「ヤブクロンじゃない?」
「餌を燃やすのかあいつら」
「焼いたらおいしいとか」
「ないない」
 適当な会話がぶちんと切れて、しばらく黙る。
「進路と言えばさ」
「あ?」
「なんて答えたのさ。面談。あんた、昼休憩だったじゃん」
 間延びした返事をして、担任との会話を思い出す。進路をどうするか、というか、どこの大学行くか、行って何をするのか。
「なにしたいのか、って言われて、とりあえずなんか作りたいです材料系が良いです金属が好きですって答えといた」
「アバウトな。そいで?」
「ホウエンの方の大学が良いですとか言ってみたら『物理このままだとやばいし英語と数学磨かないと理系の武器全部持ってないよ』って怒られた」
「おい」
「これからがんばるよ。塾とか」
「うちは面談まだだからなぁ。なるほど、参考になった」
「んー、そいつはよかった」
 ガラッと音がスライドして先生が入ってきた。はい、きりーつ、れーい。おねがいしまーす。前の席はすでに背中を向けていた。


 結局200円は180円にならなかった。もとより、消費されなかった。バスの時間のがした。次のバスまで30分。バス停で待つよりも、歩けば20分。つーわけ。
 ただ危ないんよね。なんか観光地とか言われとるけど車がどうにかすれ違えるような狭い道だって存在するし、自転車でぶっ飛ばす高校生がいないわけがない。
 歩きの人間に配慮しぃや。とか言っても無駄じゃけぇ、ひたすら黙々と歩く。結局180円問題は解決しなかったけん、思わず浮いたこの金をどう有効活用しょうかに問題がシフトした。
 どーせ塾に行っても2時間は時間があるわけじゃけぇ。その間に糖分と晩飯までつなぎを同時に摂取するための食べ物をチョイスしなけりゃならん。そのバランスをどうすっかだ。
 今ならホットドリンク100円セールをしとるので、150円するココアもワンコイン。これで糖分は確保するとして、だ。飯をどうしよう。やはりご飯粒が一番なんだけど、おにぎりとココアって最悪のコンボだろう。
 水筒のお茶は残っていただろうか。あ、お茶あるならココアいらないかな。いや、糖分のためだ。ここ大事。いかに少ない所持金で効率よく尚且つ味がぐちゃぐちゃにならんようにするか。大問題である。
 どうしたもんかなーと歩いとれば、妙なモン見つけた。なにかってゴミ箱漁るポケモンじゃけど。犬じゃない。なんじゃあれ。
 人型、じゃないが二足歩行。猫背。ぼてっとしている感じ。尻尾から煙上がってる。あれか、炎タイプか。火のない所に煙は立たない。
 がっしゃらがっしゃら袋を漁っている姿は目立、ってない、のか。微妙。人通り多いのかよく分からんからな、この辺。へっくしょん、とそいつがくしゃみをしたらしかった。
「あ」
 途端、そこが燃え上がった。あーもしかして。
 放火魔か、あれ。

 
 次の日、放火魔を見た、と前の席の住人に報告してみた。
「まじで」
「ゴミ箱漁ってくしゃみして着火しとったから、違うかもしれん」
 なんじゃそれ、と呆れた顔して「いや、それ確実にそいつじゃん?ていうか、通報しろ」
「ケータイは携帯しない主義じゃけん」
「おい」
「学校にケータイを持っていくのは校則違反です」
 正論を投げつけたら押し黙った。
「ま、そいつが意図して燃やしとるように見えんかったし。あれが初犯じゃったら別の奴の可能性もあるわけじゃん?」
「十中八九そいつな気ぃするけどな」
 で、それ何のポケモンなん?
 知らん。
「知らんのかい」
「あとで図書室で調べとくわ」
 横着もん、と友人はニヤッと笑って話題が終った。


 炎タイプ、の欄を適当にページをめくっているとそれっぽいの発見。
「・・・『クイタラン』、間抜けな名前だ」
 アリクイがゴミ箱をあさるとか聞いたことないんじゃけど。しかし猫背といい体格といい、尻尾が極め付けだな。こいつだ。多分。
 目つきは悪いけども、まぁ、いわゆるペット系の可愛さは備えてないから普通のペットショップとか売ってなさそうだわ。何か専門店とかその辺から逃げだしたとか。
 主に食うもの、木の実とか、アリとか。・・・ゴミ捨て場にアリがおるんか?
 ついでに蟻ポケモンも引いてみる。
 『てつありポケモン』名前が『アイアント』。まんまだ。分かりやすさが一番ってか。主食がゴミとは書いてない、が、アリならゴミにたかっとっても不思議じゃないけんなぁ。
 それを狙ってゴミ捨て場を荒らすアリクイ・・・。ヤブクロンが迷惑しそうな話だ。
 とりあえず、どうでもええか。野生のポケモンには野生の事情があるんだろう。逃げ出したか捨てられたかは定かじゃないが、知ったこっちゃないわけで。
 本を閉じた。
 
 
 本日はあっさりバスゲット、いやバスキャッチ。文法的にはこちらが正しいけど、明らかにゲットって言った方が正しくね?とか思う。
 いや、catchにはcatchの理由がある。きっと。昔、バスってのは今みたいに停留所にやってくるシステムじゃなくてタクシーみたいにあっちこっちで客を拾って後払いで目的地に運んでいったとか。
 だから自分からゲットするんじゃなくてバスが客をキャッチするからそれが今の名残となってcatchが正しい、とか。ウルトラ屁理屈こねとったらついた。結局100円玉をくずす。あー、スムーズにバスを乗り降りしたい。
 小銭入れの中は今いくら?今日は適当に自主勉してきりあげるからかるい糖分接種でえっか。バスで来ると寄れんのよね。一個80円の木の実まん。肉まんとかのまん。饅頭ではない。
 ポケモンも一緒に食べられます、という宣伝文句とか申し訳程度についてる割けど、普通に上手いんよね。塩味と醤油味。最近はバリエーション増えてるっぽいけどやっぱこの2つが好きだ。
 塩はあっさり。醤油はこってり。手のひらサイズのこの木の実まんの重要ポイントはその場で蒸したてをくれるってこと。最大のポイントは貰ってすぐ包み紙をはがさんと湯気で紙とくっついて皮がはがれる。これはもったいない。つまりタイミングと加減が重要なんじゃけどいかに手早く紙をはがして完璧な格好で食べるか、結構な技術が必須なのである。
 昨日は放火魔ポケモンのことで頭がいっぱいでうっかりおっちゃんの店を素通りしてしまってあり付けんかったが、あれはバスをキャッチしそこねた時限定のコースでしか買えんのだ。わざわざバスを一駅分早く下りてまで買うわけにもいかない。楽しみは後に取っておかなければ意味がない。
 バスの便利性は塾に早くつく。よーするに時間をお金で買う。バス逃したら時間を食うが木の実まんにありつける。どうだ、バランス取れとるじゃん。とまぁそういうわけ。
 皆意外と知らん穴場なんよね。教えても自転車の子は降りて寄るわけにもいかん、というし。そりゃそうじゃろうな、だって自転車乗りながら食ったら危ないわ。かと言って休みの日に食べ歩きするほど金ないし。誰かと一緒に歩きながら食べたいわ。
 そういやポケモン持ってないって結構珍しいらしいなぁと



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メモ帳は此処で途切れている
多分クイタラン書きたくなって書きだした話
ちゃんと落ちも決めてあるけどこれもいつごろ書きだしたっけなぁ…(目逸らし


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