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  [No.1042] 第30話「新年の抱負」 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2012/09/20(Thu) 16:39:46   82clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「あけましておめでとうございます、テンサイさん」

「ああ、おはようナズナ先生」

 1月1日、金曜日。いつも通りナズナの家に居候中。彼女は居間で座っている。今日は新しい年の始まりだが、あまり興味はない。だからいつも通りのあいさつをしたところ、ナズナは不服のようだ。

「もう、そこは『あけましておめでとうございます、ナズナさん』でしょう!」

 年の初めから怒られてしまった。しかし、気合い入ってるな。と言うのも、彼女は振り袖を着ているのだ。そいつは深紅を主体に白の線が入っている。……帯のしめ方が少し不恰好だが、言わないでおくか。

「新年早々悪いが、俺にそんな期待はしない方が良いぞ」

「つれないですねえ。あ、そういえば年賀状が来てますよ」

「な、なんだと!」

 俺は2つの点で声を上げた。まず、行方知らずのはずの俺に年賀状が来たこと。次に、年賀状が来るような時間まで寝過ごしたのかということ。だが壁時計を見ても、時間は午前7時前である。これでも十分寝坊だが、常識はずれなほどではなかった。もっとも、そんな事情を露も知らない彼女は怪訝そうな表情だ。

「テンサイさん、そんなに驚くことじゃないですよ。それとも、しばらく年賀状をもらってなかったとか?」

「よ、余計な詮索は無用だ。それより、誰から来たか見せてくれ」

「はい、どうぞ」

 俺はナズナから年賀状を受け取った。枚数は、差出人はイスムカ、ターリブン、ラディヤ、そしてナズナだ。どれもまあまあ……と思いきや、ラディヤのそれだけは次元が違った。すりかえの技によって年賀状を交換しているミミロップという構図で、実に写実的である。もしかしたら手持ちにでもいるのか?

 さて、俺が年賀状を眺めて数秒もしないうちに、ナズナは俺の左手首を握った。そしてこう言い放った。

「それじゃ、行きますか!」

「……初詣か? 昨晩遅くまで年越し番組で笑っていたってのに、元気なこった」

「私はまだ27歳ですからね。ささ、早くしないと人が多くなっちゃいますよ」

 ナズナが腕を引っ張るので、俺は抵抗をやめた。年賀状を机に置き、彼女についていくのであった。

「仕方ねえな、今年だけだぞ」










「今年も元気に過ごせますように」

「……今年も目立たず過ごせますように」

 1時間後、俺達は近場の神社にやってきた。予想通り人でごった返しだ。屋台もあちこちにあり、タンバとは思えない盛況ぶりである。まあ、大半が爺さん婆さんなのだが。

 それはともかく、俺達は今年の抱負、もとい願いを口にした。無論、賽銭など投げてない。あくまで抱負だからな、他人任せにするつもりは毛頭無い。ところが、俺の抱負を聞いたナズナは首をひねっている。

「テンサイさん、それはさすがに難しいと思いますよ。テンサイさんの行動、すごく目立ってますし」

「それは校内での話だろ? 社会的に日陰ならそれで万事良しだ」

 そもそも俺、そんなに目立ってないしな。そう思いつつも人だかりから離れた。そこで、聞き慣れた声が耳に飛び込んできた。

「あ、先生でマス! 正月からデートなんてお熱いでマスね」

「……ターリブンか、あけましておめでとう。イスムカ、ラディヤも」

「あけましておめでとうございます、先生」

「今年もよろしくお願いします」

 そこにいたのはいつもの面々だった。ラディヤ、イスムカ、ターリブンは俺と対照的にぴんぴんしてやがる。これが年の差というものなのか。い、いかん。しみったれたことを考えるほど、俺は年食ってねえぞ。俺は自らの気持ちを逸らすかのように、3人に問うた。

「いきなりだが、お前さん達の今年の抱負は何だ?」

 俺の問いに、まずはイスムカが答えた。続いてラディヤ、ターリブンも返事をする。

「僕の抱負は、部活も勉強も頑張るってところです」

「私は、どこに出ても恥ずかしくないように精進しようと思っています」

「オイラは彼女を作るでマス。あとは勉強も一番になって部活でも大会を勝ち抜いて有名人になるでマスよ」

「欲張りすぎだ」

 ターリブンの抱負に思わず突っ込んだ。なぜなら、彼の手から1円玉を見出だしたからである。さすがにそれはケチすぎるだろうよ。

 んなことを言い合っていたら、ナズナがある方向を指差した。そこには人が群がっており、周囲の木々には何かが巻かれている。

「はーい、硬い話はそこまで! みんなでおみくじしましょう!」

「くじねえ。ま、気休め程度にやるのも悪くねえか」

 俺達はくじの販売所へ向かい、1人1枚ずつ買った。さあて、俺の今年の評定はどうなんだろうな。


・次回予告

さてさて、筋力アップばかりの訓練に不満がたまってきたみたいだな。そうだな、たまには別のことでもやらせてみるか? 俺も久々に動きたいと思っていたところだし。次回、第31話「体を張れ」。俺の明日は俺が決める。


・あつあ通信vol.96

今回の話は冬ですが、書いているのは真夏です。昔の和歌ではありませんが、夏があるから冬の寒さが楽しめるということですかね。


あつあ通信vol.96、編者あつあつおでん


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