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  [No.1046] 第33話「プロとの遭遇」 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2012/10/11(Thu) 11:22:13   72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「では、この1ヶ月間頑張ってください」

 2月6日の土曜日、タンバ学園グラウンド。プロポケモンリーグのキャンプの歓
迎式が行われていた。ちょうどシジマ校長の式辞が終わったところである。天気
は快晴、浜風がなびく。鍛えるには絶好の気候と言えるだろう。

 今回やってきたのは、シンオウリーグのリングマファイターズ。コトブキシティに根を下ろし、地域密着にいち早く取り組んだ球団である。去年はシーズン中の監督解雇を決定したせいか、成績は芳しくなかったようだ。

 まあ、チームの成績なんざ問題ではない。指導を受けるからにはなんだって吸収してやるさ。

「それでは早速、生徒の指導をしてもらいましょう」

 よく見ればシジマ校長、今日は珍しく背広姿だな。……似合わねえ。それはともかく、いよいよプロとの交流が始まろうとしていた。そこに、プロ側のある選手がこう持ちかけてきた。そいつは2メートルはあろう長身で、しかし体格はそうでもない男だ。確か、荒削りながら昨シーズンの新人王になった選手だ。

「了解っ! でもその前に、一度バトルをお見せしたいのですが、よろしいでしょうかっ!」

「それは大丈夫ですよ。誰と誰が勝負しますかな?」

「それはもちろん、僕イケメンとっ! 顧問の先生ですっ!」

 おいおい、この野郎何を言ってやがる。普通生徒と選手が接待の要領でやるもんじゃないのか? 不意打ちに思わず言葉が詰まった。

「お、俺かよ……」

「その通りっ! 生徒より実力ある先生と勝負することでっ! 良いバトルになるのですっ! それが見本となるのですっ!」

 イケメンと名乗る男は声高らかに説明した。こいつ、暗に生徒のこと馬鹿にしてるな。でなけりゃ、生徒が先生に劣るなどと言わねえだろうし。こういう野郎は生かしちゃおけねえ。

「けっ、面倒な話し方しやがる。別に俺は構わねえが、選手生命が縮まっても責任取らんぞ」

「元よりその覚悟ですっ!」

「うむ、決まりですな。イケメン選手、テンサイ、しっかり頼みますぞ」

 交渉成立だ。シジマ校長が促し、俺とイケメンは距離を取った。外野はその周りを囲み、今か今かと待っている。

「準備完了っ! ところで、ここの部員はあれだけですかっ! バトル教室の応募葉書が100枚以上届いているとのことですがっ!」

「ん……ま、まあな、あれだ。ちょっと色々事情があってな」

 どうやら、部がだめになる前に応募したらしい。にしても100人以上いたのか。この学校の生徒が540人程だから、一大勢力だったのは間違いあるまい。まあ、所詮過去の栄光だ。気にせず始めるか。

「じゃあさっさと始めるが、3匹で良いか?」

「よろしいですっ! どこからでもどうぞっ!」

「ふん……どうなっても知らないぞ。フォレトス、仕事だ」

「いきますよマンムーっ!」

 プロリーグのトレーナー、イケメンとの勝負が幕を上げた。果たして、新人王の実力はどのようなものか。

 俺の先発はフォレトス、対するイケメンはマンムーだ。マンムーは地面、氷の固有タイプ構成で、攻撃面で大変秀でている。しかし耐久や素早さも平均点以上はある。最近は「あついしぼう」の特性が発見されて人気が上昇している。毛むくじゃらの体に眼鏡をかけたような目元、氷でできた弧を描く牙が特徴的だ。

「まずはじしん攻撃っ!」

「効かんな、ステルスロックだ」

 先手はマンムーだ。マンムーは後ろ足で立ち、前足で大地を叩きつけた。揺れた地面はフォレトスを襲う。一方フォレトスは、どこからか透明な岩をばら撒いた。これで相手の後続の体力を奪える。

「その程度っ! もう一度じしん攻撃っ!」

 マンムーは止まらない。再び苛烈なじしん攻撃を放つ。フォレトスは今にも倒れそうだが、なんとか凌ぐ。よし、これで俺の勝ちだ。

「残念だが、ゲームオーバーだ。だいばくはつ」

 俺の指示を受けたフォレトスは、まず懐から透き通った石、ノーマルジュエルを取り出した。そして体内から燃え上がり、爆風を巻き起こした。爆発はジュエルに反応してより広範囲に広がり、それこそ一寸先も見えなくなった。

 幾分経ち、爆発と土煙が収まり、辺りの状況がはっきりしてきた。そこにいたのは崩れ落ちたフォレトスと、いまだ立っているマンムーだった。マンムーの足元には、黒こげになった布きれが落ちている。

「なるほど、タスキか。オーソドックスな組み合わせだ」

「見ましたかっ! これで僕が明らかに有利ですっ!」

「おいおい、聞いてなかったのか? あんたは既にゲームオーバーなんだよ。その証拠に……カイリュー!」

 ふん、プロにしては察しが悪いな。俺はフォレトスを引き下げ、代わりにカイリューを繰り出した。よほどのことが無い限り、こいつで勝負が決まる。

「カイリューですとっ! これは僕の勝ち決定っ! マンムーっ! こおりのつぶてっ!」

 いきがるイケメンは指示をするが、マンムーはぴくりとも動かない。数秒後、マンムーは地響きをあげながら倒れこんだ。イケメンはこれに面食らった様子である。

「ななっ! マンムーがやられてしまいましたっ!」

「何度も同じことは言わねえ。カイリューにはしんそくがある。勝負は決まっているのさ」

「ぐぬぬっ! しかしその程度っ! 必殺のレアコイルっ!」

 イケメンはマンムーを引っ込め、レアコイルを投入した。ステルスロックが食い込みつつもお出ましだ。鉄球に一つ目があり、ネジが数本とU字形磁石を2つ備えたのがコイル。これが3匹集まってネジの本数を少し減らしたのがレアコイルである。電気タイプと思われていたが実は鋼タイプも併せ持ち、鋼タイプの複合で唯一耐性が増えている。鋼タイプには珍しい特殊アタッカーの上、特性の「がんじょう」や「じりょく」を持つポケモンの中では速い部類。それゆえ需要はある。だが……。

「大した障害ではないな。カイリュー、りゅうのまいだ」

「隙ありっ! でんじはですっ!」

 カイリューは宙に浮かび、自由気ままな軌跡を描きながら舞った。これを好機とばかりにレアコイルは微弱な電気をカイリューに流し込む。カイリューは痺れ、ゆっくり腰を下ろした。しかし、カイリューの右手にはいつの間にか木の実があった。ふふふ、仕込んだ甲斐があったぜ。カイリューは木の実を口にすると、体の強張りがあとかたもなく消え去った。

「隙ありなのはそっちの方だ。こちらがなんの考えも無しとでも思ったか?」

「ら、ラムの実……っ!」

「カイリュー、じしん攻撃」

 青ざめるイケメンをよそに、カイリューはじしん攻撃を決めた。大地に揺さ振られたレアコイルはひとたまりもなくバラバラになった。レアコイルの特性はじりょくだったか。いや、ステルスロックで頑丈が潰れた可能性もあるか。

 さて、外野共が騒がしくなってきたな。果たして、俺の強さに驚いたのか、イケメンの情けなさに呆れたのか。どちらにしろ、こちらが優勢だ。そろそろ勝負を決めたいところだな。

「さあ、最後の1匹はどいつだ?」

「……ストライクっ! 逆転しますよっ!」

 イケメンは力一杯に最後のボールを投げつけた。出てきたのはストライク、虫タイプのポケモンだ。特性の「テクニシャン」とつばめがえしの相性は良く、このポケモンのアイデンティティーである。他にもとんぼがえりやカウンター、きしかいせいにつるぎのまい等、からめ手も豊富。初心者からベテランまで扱いやすいのは間違いないな。捕まえるのはやや難しいが。とはいえ、ステルスロックが刺さって既に息切れしてるな。タイプ相性を受けるステルスロックは、最大半分もの体力を奪う。使われなくて良かった。

 さあ、これが最後の対決だ。幸いカイリューはまだ無傷、負けはない。

「でんこうせっかっ!」

 動いたのはストライクだ。残像ができる程の速さで接近し、自慢のカマを振るう。だがしかし、カイリューの特性はマルチスケイルだ。体力満タンならダメージが半減されるこの特性のおかげで、テクニシャンの補正が入った技とて痛くない。

「それで終わりか。ならこちらも終わらせよう。げきりん!」

 俺は声を張り上げた。カイリューは瞳に炎を宿し、ストライクを殴り飛ばす。これぞ必殺の一撃。ストライクは地面に打ちつけられ、それで終わった。

「あ、あがが……」

 誰の目から見ても、どのような結果かはっきりしていた。それはイケメンも同じようで、歯をガタガタさせ、呆然としながらストライクを眺めていた。ついでに、外野も全員息を止めたかのように沈黙している。

「よし、良い勝負だった。さすがプロ、一歩間違えれば危なかったぜ」

 そのような状況で、俺は世辞を言いながら一礼してカイリューをボールに回収するのであった。


・次回予告

今日は何かの行事があるらしい。これは学校とは全く無関係のものだが、大抵校内でことが運ばれる。今年はちょうど休日と重なるから縁遠いはずなのだが、キャンプの見学で校舎は賑わっている。さて、何が起こるかな。次回、第34話「サングラスは舞う」。俺の明日は俺が決める。


・あつあ通信vol.99

今日のダメージ計算は、レベル50、6V、

 フォレトス意地っ張り攻撃素早252HP4@ノーマルジュエル
 マンムー意地っ張り攻撃素早252HP4@タスキ
 カイリュー陽気攻撃素早252HP4@ラム
 レアコイル控えめHP特攻252素早4@進化の輝石
 ストライク陽気攻撃素早252HP4

まずマンムーの地震2回を、やや低い確率ながらフォレトスが耐えます。返しのジュエル大爆発は確定でマンムーのタスキを発動させます。カイリューの神速はこおりのつぶてより優先度が高いので必ず先制。竜舞からの地震でレアコイルは確定1発。そして逆鱗でストライクを確定1発。

カイリューは圧倒的ですね。パーティの中でもあまりに飛び抜けてます。


あつあ通信vol.99、編者あつあつおでん


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