マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.281] その11後編 ある2人の男の悲劇〜トライ・バリア・キャノン〜※注意 投稿者:マコ   投稿日:2011/04/15(Fri) 13:53:21   49clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

※死ネタというか、人間消失ネタなので、ご覧になる方は注意してご覧ください。




4人を追いつけなくしたところで、モリシマとカザマは落ち合った。
「モリシマ君、オオバヤシとトキはどう?」
「無事に縛ってきた。だいぶ2人とも喚いていたがな。離せー、離せー、って。カザマ、お前の方はどうだ」
「マイコちゃんも、ハマイエも眠らせてきた。眠ったら反抗しないでしょう?」
「そういうアイデアもあったが、いかんせん俺は眠りに持っていく手持ちがなかったんだ」
2人だけでアジト方向に行った。そこに、大きな罠があると知らずに。


「フッフッフッフ。誰か来たようだ」
一方、同刻、アジト内部。1人の上級団員がモニターを見ている。
その画像には……モリシマとカザマが映っていた。
他の4人は、カメラの画像範囲外なのか、映っていなかった。
「本当は……毎度してやられる、あの女含めたメンバーを始末したいところだが……あの男2人でいいや。この際、どうせ1回しか使えないこの力……トライ・バリア・キャノンを炸裂させてやってもいいかな」
ここで団員が言った「毎度してやられる、あの女含めたメンバー」というのはマイコ達である。
そして、そのターゲットとなってしまったモリシマとカザマが射程範囲内に入ったところで、アジト内モニタールームにおいてスイッチが押された。
すると、2人が来た道に生えていた木が倒され、逃げ道が塞がれた。もう出られない。
「「!?」」
さらに、おかしな重低音が聞こえ始めたのだ。

ヴヴヴヴヴ……

「何か、変な音が聞こえないか?」
「確かにね。ヴヴヴ、って感じの」
と、ここで、範囲内に設置されたメガホンから声がした。ちなみに、このメガホンの音声は、トライ・バリア・キャノンの射程範囲内でしか聞こえないようになっている。つまり、範囲外にいるマイコ達には聞こえないのだ。
『ようこそ、哀れな子羊2匹!』
「おい、どういうことだ!!」
2人の腰についたボールから、ミノムッチ、ミノマダム、ガーメイル、ブイゼル、パラス、キノココ、タマゲタケという、彼らのフルメンバーが出された。
『君達は選ばれたんだ、僕の実験の材料として』
「わけが分からないし、気味が悪いね」
カザマはそう言うが、もう既に後戻りの効かないところまで来てしまっていた。
『実は、実験というのは、《ヒトは新世界で生きられるか》ってやつなんだ。だから君達は、この世界で生きるのはもう終わり』
それは嘘であり、本当のところは、《範囲内に入った人間、つまり反抗分子を処分する》という、残虐極まりないことだった。その恐ろしい声に恐怖感を覚えたモリシマとカザマは、手持ち達に指示を飛ばした。ポケモン達から、風や砂、草や水が飛ぶも、どれも一様にかき消されてしまった。
「何で攻撃が効かないっ」
「これはおかしい、何か変なことが……」
『もう逃がさない、って意味。ポケモンの攻撃は通らないって頑丈さが売りだから。……あ、もう、トライ・バリア・キャノンの発射カウントダウンが始まったみたいだね。』
2人が射程範囲内に来てからカウントダウンはとっくに始まっていたのだ。もう、発射まであとわずかである。
『5、』
「やめろ!!」
『4、』
「いやだ!!」
『3、』
「怖い、死ぬのはいやだ!!」
『2、1、』
「「やめてくれえっ!!!」」

『0!!!』


ピカッッッ!!!


「「ギャアアアアッ!!!」」
3つの発射口から出た光線がモリシマとカザマを包む。それに悲鳴をあげる2人。
『このトライ・バリア・キャノンの発射は1回しかできないけど、発射するとあら不思議!人間もポケモンも、この世界やポケモン世界とは違う異界に、未来永劫幽閉できるんだ!アーッハッハッハ!!!』
狂気に満ちた笑い声をあげて、モニターとメガホンの電源は切られた。
トライ・バリア・キャノンで侵入者を消滅させるというミッションは終わったのだ。


「くそ、何で離れへんねん……よっぽど頑丈にしよったな……」
「モリシマさん、どこ行ってもうたんでしょうねえ……」
草結びが未だにほどけないオオバヤシとトキ。とここで、彼らの腰についたボールから、モウカザルとランプラーが自分から出てきた。
2匹は微弱な炎で、自らの主人を縛る草を焼き切ったのだ。
「ありがとうな、ランプラー!」
「助かったで、モウカザル!」
2人はようやく駆け出した。しかし、その時、既に、トライ・バリア・キャノンは発動を終えてしまっていた後だったのだ……。


罠の発動場所に着いた2人。確かにモリシマとカザマの姿は見える。が……。
「何やこれ、あの2人歪んで見えんねんけど……」
「俺らの目がおかしいわけちゃいますね……」
「というか、この先に行かれへん。別に触ってもなんともないねんな……」
もう既に、モリシマとカザマは電波のような状態になっていた。体が物質ではなく、細かな粒子のようになっていたというわけだ。さらに、オオバヤシとトキの前に大きな壁が1つ。頑丈そうだ。
「これを割ればええってことやんな!デンチュラ、シザークロス!!」
ボールから出た電気蜘蛛は爪を交差させつつ近づき、壁を切り裂いた。しかし、壁はなんともなかった。
「物理攻撃がアカンかったら、特殊攻撃なら……!ランプラー、オーバーヒート!!」
ランプポケモンからはフルパワーの強い熱の塊が吐き出された。しかし、これも壁には効果がなかった。
もっとも、2人に不意打ちを仕掛けようとした下っ端どもには絶大な効果があったようで、バタバタと音を立てて倒れた。ただ、2人とも見向きもしなかった。それより救出すべき人がいるからだ。
しかし、その人達からは意外な返事が出された。

「もう、いいんだ……。やってくれるだけで十分……」

返事をしたのはカザマだった。
「カザマさん!大丈夫やったんですね!」
オオバヤシが言うも、カザマの返事は後ろ向きなものだった。
「もう、僕らはダメみたいだ……、死んでしまうんだ」
「諦めんといて下さいよ!!死ぬとか……そんなこと……!」
トキは思わず叫んでいた。しかし、諦めていたのはカザマだけじゃなかったのだ。
「もう俺らは出れねえ。ただただ終わりを待つしかない」
モリシマも言った。自分の運命を悟ったようだ。
「さっきは……あんなことしてすまなかった……。オオバヤシ、トキ……」
「もう、謝ったって……遅いです……。許す許さないは……抜きでも……」
「いなくなるってことが、……、ただ、嫌なだけ、です……」
もう2人とも言葉が続かなかった。
「ハマイエとマイコちゃんによろしく言っといてよ。多分まだ知らないだろうし、このこと」
いよいよモリシマもカザマも体が大きく歪んできた。どうやら時間切れらしい。
「モリシマさん!カザマさん!!」
「ごめん……、僕はもう、リタイアしなきゃいけないようだ……」
「最後に、突き放すことなんか……するんじゃなかったな……。でもお前らが助かるなら……それで……」
「消えるんじゃない!!そんなこと、言わんといてください……!」
そして強い光が出された。2人が目を思わず閉じ、次に開いたときには……、

カシャーン……

眼鏡と、デジカメが残されているだけだった……!

「う、うああ、あああ……、何か、体の震えが、止まらへん……!」
言いようのない恐怖感に苛まれて、トキは体中が震えだした。一方のオオバヤシは止まったままだった。
「オオバヤシさん、どうしたんです?動いて下さい、あれは、何なんですか……!?」
オオバヤシは無言のまま、トライ・バリア・キャノンの発射口の1つを壊した。
「オオバヤシさん!?」
「トキ、……俺やって、悔しいねん……!あそこで止められへんかったから……!」
お互い、もう、何も言えなかった。そこに、ようやく、マイコとハマイエが来た。
「ばーやん、トキ君!どうしたの、大丈夫!?」
「オオバヤシさんもトキもどないしてん?」
オオバヤシとトキは、残っていた眼鏡とデジカメを2人に見せた。
「え、まさか……!?」
「うわああああん!!!」
2人とも事情を全て悟った。消えた2人はおそらく、生存してはいないだろう。
4人は引き揚げた。幸いにも、追ってくるロケット団はいなかった。
帰ってから、みんなでひとしきり泣いた。
心の整理はつかないが、前を向いていかなければいけない。
死者を弔う、という意味でも、ロケット団を倒す、と深く心に決めるのだった。


おしまい


マコです。
このお話は全編暗い話になってしまいました。
実力者でもどうにもならなかったあの罠。
せめて、モリシマさんとカザマさんが救われることを祈って……!
【書いてもいいのよ】
【暗すぎてごめんなさいなのよ】


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