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  [No.316] その12 勝利を呼ぶビクティニ 投稿者:マコ   投稿日:2011/04/27(Wed) 13:41:22   40clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

ある日、マイコが新聞を見ているとこんな記事があった。

○月×日 カンサイ新聞 朝刊 社会面

万馬券次々と出る!

昨日オオサカで行われた○○競馬第2レースにて、35歳の男性が100円の券から150万円もの配当を手にした。
彼は記者のインタビューに次のように答えた。
「競馬場に行く途中に、オレンジの耳をして、天使の羽のついた黄色い生物を見たんです。きっとそのおかげです!!」
ここ2週間で5件、同様の事象が起こっており、「幸せの黄色い生き物が起こす奇跡」として広まっている。

「これは……ビクティニのことかなあ?でも、こっちの世界に伝説っていうポケモン、来るの?」
マイコは、奇跡よりも、ビクティニの事例のほうが気になってしょうがなかった。


「っていうことがあったの。どう思う?」
マイコはその記事の内容と自分の考えをカワニシに言った。
「同じことがたくさん起きとるんやろ?ほんならそれはホンマのことやん」
「でも、ビクティニみたいな珍しいポケモンがこの地域内にいるんだよ?不思議だよね」
「まあなあ。マイコちゃんはその、ビクティニとかいうポケモンを捕まえたいん?」
「そうは思わないよ」
「何で?結構珍しいこと言うもんやね」
「なんかさ、そういう奇跡を自分で独り占めする気分って良くないと思うんだ。なんか罰当たりな感じ」
「悟りでも開けそうやね……」
変な感心が起こる中で、事件は突然起こった。

「ひったくりーーー!!!」

見ると、女性が黒ずくめの男にバッグを取られていた。しかも男は逃げている!案の定というべきか、犯人の男はロケット団だった。小話に登場したあの男だが、今度はポケモンを使わず、自分からいった。
「ドンカラス!あの男を追って、バッグを泥棒で奪還してくれ!バオップも乗って、犯人が見えたら弾ける炎で足止めを頼む!」
カワニシが出した黒い大ガラスは翼を強くはためかせ、犯人を追った。背には赤い子猿。
そして、犯人を見つけるとすぐに口から散弾の性質のある炎を吐き出した。
たまらず足を止める犯人。
そこで大ボスポケモンは大きい体に似合わず、素早い動きで男に近づき、隙をついてバッグを取った。
「あー、おいおい、待てー!」
明らかに悪いのに奪い返そうとする根性の悪さに、マイコもさすがに頭にきたようで……
「フシギソウ、葉っぱカッター!」
犯人に向かって無数の葉っぱが宙を舞った。
しかし、表面上は何も起こっていないように見えた。
「ケッ、こけおどしか!見かけ倒しにも程があるぜ!」
そう言ったロケット団の男だったが、
「私がこけおどしとか使う人に思える?」
そう言ってマイコは指をパチン、と鳴らした。

バババババッ!!!

その瞬間、犯人の服は粉々になり、スッポンポンの状態となった。
「服だけに葉っぱカッターを当てたんだ。肌は傷ついてないから安心してよ」
周りの野次馬の視線が痛くなり、犯人は怖くなって、
「ヒイイィィィッ!!!」
走って逃げた。
マイコとカワニシは、取り返したバッグを無事に持ち主の女性に返却し、礼を言われて照れていた。


そして、また歩き始めたその時だった。
「「あっ!!」」
オレンジ色の耳、青い瞳、黄色い体に天使の羽みたいな尻尾。
そう、ビクティニが目の前を通って行ったのだ!
「本物、だ……」
「あんな至近距離で見れるもんなんか?」
2人とも驚いていた。


「ビクティニからは、勝利を導くエネルギーが出ており、自分がエネルギーを与えていいと思った者には必ずや勝利を与える……か」
「凄いポケモンなんやな、ビクティニとかいう奴は」
マイコの携帯電話アプリ「ポケモン図鑑アプリ」の「ビクティニ」のページに書いてある「説明」を2人で見ていた。ここ2週間起こっている奇跡はこのビクティニのおかげだろう、というのが結論だった。


一方、別所。先程のひったくり団員は大儲けな表情をしていた。
「ハッハッハ!ビクティニを捕まえたぞ!これであいつらに復讐できる!」
仲間の団員を数人呼び、「ビクティニを利用した殲滅作戦」を説明した。
「いいか、あいつらは今、街中にいる。そこを狙え!幸い、こっちには勝利ポケモン・ビクティニがいるから攻撃は当たり放題だ。容赦なくやれ!」
「「「はっ!」」」


2人が図鑑説明を見終わり、歩き出そうとしたところ、ユンゲラーが2人を襲おうとしていた。臨戦態勢である。
「エスパーには、悪の攻撃がよく効くから、……、ドンカラス、辻斬り!!」
再び登場した大ボスのカラスは刃と化した翼で相手を切りつけた。普通なら、効果が大きいところ、だったのだが……
ユンゲラーは多少の傷を負ったものの、平然としていた。
「えっ、あんまり効いてへん!?」
「しまった、ハメられたんだ!イリュージョンか!」
「罠やったんか!!!」
そう、これはロケット団が施した罠だった。ユンゲラーに化けたゾロアークが相手をしていたのだ。ポケモン図鑑アプリで正体を暴こうにも、そのデータすら偽れるので、2人とも気づかなかったのだ。
悪狐はここで怒鳴るような声で攻撃した。バークアウトだ。
「「うわあっ!!」」
ポケモンどころか人間にも効果があったようで、若干ふらついた。
「これは何回も受けるような技じゃないね……。だったら、連撃で早めにケリをつけるよ!チャオブー、突っ張り!!」
場に登場したマイコのパートナーは、余裕を見せる悪狐に何発も張り手を食らわした。1発の威力はそうないが、相性の良さと連撃によってあっさりと倒すことができた。
「敵はこれだけなのかな?やけにあっさりしてたけど……」
マイコがこう言っていたら、
「危ない!!」
カワニシがマイコをかばうようにして、横っ飛びにジャンプした。

ジュウウウ……

先程までいた場所は、真っ黒焦げになっていた。
「避けてへんかったらヤバかったで。煉獄の直撃を食らってやられとったな」
2人が向けた視線の先には、

たくさんのコイルとデルビルの集団と、ロケット団員に押さえつけられて身動きの取れないビクティニがいた。
「あんた達、何してんのよ!」
マイコが叫ぶと、ロケット団はこう言った。
「お前達がこいつの力を乱用するから俺達が保護してやってんだ。優しいだろ?」
「言うとることとやっとることが全く違うやんか!保護ちゃう、虐待や!」
ごもっともなことをカワニシが言うと、ロケット団は激高した。
「お前ら口が過ぎるんだよ!コイルども、電磁砲で大人しくさせろ!」
そのまま電撃の大技が放たれた……
「ハッハッハッハ!これで殲滅完了……ん?」
しかし、青年の目の前に緑の雷獣がいた。特性の避雷針によって、電磁砲を全て受け切ったのだ。特にマヒしている様子も見受けられない。
「危なかった……ありがとう、ラクライ。マイコちゃんが助けたんやろ?」
「我ながらナイスタイミング。あんなの食らったら一生マヒが残りそうだから」
そして、団員とそのポケモンにだけ反撃を食らわした。
「ラクライ、ビクティニに当たらないように、電撃波・パワーアップバージョン!」
電撃で痺れを与えている間に、何故相手の攻撃が的確に狙ってきているのか考えた。
そして、その答えは案外簡単に出た。ビクティニの特性が原因なのだ。


ビクティニの特性は「勝利の星」。自分自身及び仲間の技の命中率を上げるのだ。そのために、煉獄や電磁砲といった命中率の低い技ですら、必中とまではいかないながら、狙いが合いやすくなるのだ。
マイコ達がビクティニを奪い返すことができればいいが、腕っぷしだと人数的にも不利。
しかし、マイコがある案を思いつく。
「カワニシさん、」
「マイコちゃん、どないした?」
「ドレディアがいるでしょう?ビクティニに対して、特性を強制的に変える技を放ってほしいんだ」
「分かった。上手くいくかは分からへんけど、やってみるわ」


電撃が止んだところで、作戦は実行された。
「ドレディア、ビクティニに仲間作り!」
カワニシのパートナーである花飾りポケモンは、勝利ポケモンの傍に寄り、かわいらしいダンスを踊り始めた。ビクティニもつられて、団員の手を離れ、一緒に踊った。


「お遊びみたいな技繰り出しやがって!コイルども、デルビルども!電磁砲と煉獄で跡形もなくやっちまえ!」
仲間作りをお遊びと捉えた時点で何も分かっていないことが明らかであるが、とりあえず、炎と雷が飛んだ。
しかし……、両方とも見当違いの方向に空しく飛んでいく結果となった。何度も放射したが、当たらない。
「何で当たんねえんだ!?」
「じゃあ聞くけど、あんたは仲間作りを何だと思ったの?」
マイコが的確に核心を突く質問を投げかけた。
「ただのお遊び」
「立派な技よ!!なめきってるわね!」
「仲間作りって、踊ったポケモンと技を受けたポケモンの特性を一緒にすんねん。やから、今、ビクティニの特性はドレディアと同じ《マイペース》やねん。命中率のアップ効果がなくなってもうてるから、当たらへんねん、攻撃が!」
「く、くそおおおっ!!」
勘違いを起こしていた悪党どもはポケモンを増やすという行動に出た。先より多いコイルとデルビル。
「バオップ、受け取ってくれ!」
青年は赤い子猿に橙色の石を投げた。炎の石だ。受け取ったバオップは光の中で進化し、バオッキーとなった。
「バオッキー、火炎放射!!」
赤い猿が放った火は、容赦なく敵陣を焼き、磁石達をノックアウトさせた。
「ヌマクロー、熱湯!」
広範囲に沼魚が撒いた湯は黒い犬をノックアウトさせるのに十分すぎた。
残ったのは団員だけ。
「こうなったらとんず……追ってくるなああっ!!」
勝利ポケモンは力を悪用した悪い奴らにカンカンだった。ニトロチャージで早くなった動きのまま、最強クラスの炎技を放った。

体を炎で包み込んだまま突進するフレアドライブだった。

「「「「ぎゃあああっ!!!」」」」

悪党は遠くへ飛ばされた。


「ビクティニ、最後は君に助けられたね」
「救出するはずが逆やったなあ。でも、勝利を届けるのはホンマやったみたいやね」
マイコとカワニシはそう言った。しかし、仲間作りをしてビクティニを取り返したのは2人の功績だ。
そんな2人をビクティニはニコニコ笑って見て、そして2人から去っていった。
ビクティニが行ってしまった後に落ちていたのは、
「天使の、羽、だ……」
「勝利の羽やね。餞別かもなあ」
心が少し温かくなった2人であった。


おしまい


マコです。ビクティニ登場の話。
正義を持った人間にしか勝利の喜びは来ない、っていうことを言いたかったんです。
無理やり協力させてはいけません。
人類全体が他人に優しくなれればいいですね。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】


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