マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.410] その13 フルボルテージの怒り 投稿者:マコ   投稿日:2011/05/06(Fri) 13:21:34   27clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

※この話は、その9の後で、その10の前に起こったものです。

5匹のポケモンを仲間にしたマイコが、友人であるトキとともに河川敷を歩いていたところ、明らかに傷ついている緑の体のポケモンが見つかった。
「これは……ラクライだね」
「ラクライ?電気のやつっぽいな。せやけど、何でこんなとこにおるんやろ?電気のポケモンなら、街中に居りそうなもんやろ」
「そこなんだよね、問題は。……トキ君、何か嫌な予感がするんだけど」
「どういう意味やねん」
「虐待とか、捨てたとか、そういう線が浮かんできたんだ」
「保護せなアカンのんちゃう?マイコ、ボール持ってんの?」
「そこらへんの心配はいらないよ。ほら」
そう言うと、マイコは桃色のボールをバッグから出した。
「あれ、普通のモンスターボールとちゃうやん」
「ヒールボールっていって、これで捕まえたら傷と状態異常を完全に治癒できるの」
「お前セレブなん?結構値が張るって聞いとるで」
言っておくが、このリアル世界では、モンスターボール以外の特殊な性能のボールは貴重なのだ。それを、普通の女子大生であるマイコが持っていることに、トキは首をかしげたというわけだ。
「いや、バイトの店長から貰った。1個だけね」
「それを、今使うんやな」
「まあ、トキ君も私と同じ立場だったら使うと思うけど……」
「言いたいことは分かった。人助け……ちゃうわ、ポケモン助けやろ」
「そうそう」
マイコはそう言って、ヒールボールを投げた。というより、転がした。
傷ついていた稲妻ポケモンは、そのボールに反応し、開閉ボタンを押した。光となって吸い込まれ、数回ボールが揺れた後、それは収まった。出る様子はない。
その瞬間、先程まで野良のポケモンだったラクライは、マイコの仲間になったわけだ。
「フルメンバー勢揃いってやつやな」
「とは言っても、戦って手に入れたポケモンじゃないけどね」
「お前の優しさに惚れ込んで仲間になっとるんやから、へこむ必要はないんちゃう?」
実際、マイコはポケモンを全てバトルではない方法でゲットしている。チャオブーはポカブの頃に家に送られてきた。ワシボンはヤミカラスにいじめられているところを助けた。ムンナは家に来訪した。フシギダネは老人から託された。ミズゴロウはタマゴから孵った。そして、ラクライは先程のように助けたというわけだ。
「とりあえず、ラクライは保護したから家に戻ろうかな……」
と、その時だった。若い男が2人の前に姿を現した。


「誰ですか?」
マイコが聞くと、
「うるせえ!」
としか返ってこなかった。
「お前な、こっちが丁寧に聞いとるのに、うるせえはないやろ!」
「ちょっとやめて、トキ君!ケンカは良くないって!」
顔に青筋が立っているトキをマイコは必死になだめた。ここであまり大きな揉め事は起こしたくない。しかし次の瞬間、若い男はこう言い放った。
「ちっ、ラクライはいねえのか」
「どういう事?あと、あなたは誰?」
「俺はシュウだ。ホントはこういうとこ、来たくなかったんだけどよ、俺が捨てたラクライが高個体だったようでさ、引き取りにきたんだよ」
「「捨てた!?」」
「すっげえ苦労したんだぜ?ライボルトにいっぱいタマゴを生ませて、孵った何十匹ものラクライの中からいいやつだけ選んで、残りはポイ、だ。都合がいいだろ?でもその中には泣く泣く捨てたやつもいるんだぜ。それがここに捨て……」

パシン!!!

言い終わる前に、マイコが男の頬を平手打ちした。
「マイコ!?」
驚いたのはトキだ。数十分前には怒る自分をなだめていたマイコが感情をあらわに怒っているのが信じられなかった。
「ふざっけんじゃないわよ!!!たくさん生ませてその後はポイ?あんたバカじゃないの!?生ませたのなら責任持って育てなさいよ!捨てるなんてバカな真似すんじゃねえよ!!!」
鬼気迫るマイコのキレ具合だが、男も負けてはいない。
「わかったよ!!今からお前と俺とでフルバトルをして、お前が負けたらポケモンを全部捨てろ!」
「シュウ、お前ふざけたこと言うなや!!なあマイコ、こんな勝負受けるだけ……」
「受けようじゃないの」
トキが止めても無駄だった。火のついたマイコは止められそうもない。自分から冷めるのを待つしかなかった。それでも、マイコが巨大なリスクを背負っている、負けられないバトルなのは明白だが。
(なんで答えが賛成やねん!!おかしいやん!!落ち着いて考えたら受けたらアカンバトルって分かるやろ!?)
トキは心の中で狼狽していた。マイコには勝って貰わなければならないのだ。


そして、バトルはスタートした。6VS6。フルバトル。
シュウが繰り出したのは、気性が荒く凶暴ポケモンと呼ばれるサメハダー。一方のマイコは背に種を背負う蛙のような種ポケモン、フシギダネを繰り出した。
(サメハダーは特性が厄介なポケモンだから、触れずに倒さないと……。でも、その前に、前段階だ)
「フシギダネ、日本晴れ!!」
マイコが指示を飛ばすと、途端に太陽が輝きを強めた。暖かいというより、むしろ暑いくらいだ。それに対し、シュウは……
「サメハダー、ロケット頭突き!」
頭を引っ込めた凶暴ポケモンは防御の態勢を取り、種ポケモンに向かって、一直線に突っ込んできた!しかし、マイコは驚くほどに冷静だった。
「ソーラービーム・クイックバージョン!!」
強い日差しのおかげで溜め動作がなくなった太陽光線が凶暴ポケモンを一閃し、一撃ノックアウトとなった。
「マイコ、いつの間に鍛えたん!?一撃なんて……」
「作戦勝ちってとこかもね。向こうが気付かなかったってとこも大きいかも」
「おいお前、忘れてんのか?日差しはまだ強いんだぜ!?ってことはよ、炎も強くなるんだよ!バグーダ、行け!」
次いで青年が繰り出したのは、背に火山を2つ持つ、橙色の噴火ポケモン。
「これでサメハダーの敵がとれ……」
「戻って、フシギダネ」
「ああ!?何で戻すんだよ!?」
マイコは相性の悪さを感じ、種ポケモンを引っ込めた。草も毒も、バグーダのタイプである炎や地面に効果が薄いからだ。
「じゃあ、ミズゴロウ、出番よ!」
代わりに登場したのは、小さな沼魚ポケモン。
「そんな小さいやつで、俺のバグーダにケンカ売るなんて見上げた根性だな!まあいい、バグーダ、突進!!」
「ミズゴロウ、ジャンプして避けて!」
一直線に突進してゆく様は恐怖だが、結局は当たらないと意味がない。ただでさえ小さい的がジャンプするものだから、当然の如く噴火ポケモンは沼魚を見失う。と、ここで、

ポツ、ポツ、ポツ……

雨が降り出した。
「いつの間に雲が寄ってきたんだ!?後、ミズゴロウはどこに」
「今よ、水鉄砲!!」
「背中か!!」
雨の補助を受けた水鉄砲は至近距離でヒットしたものだったためか、これまた一撃で噴火ポケモンが戦闘不能に陥った。
「ジャンプの間に雨乞いしてまうなんて、判断がいつにも増して冴えとるな、今日のマイコは」
「炎の攻撃を食らいたくなかったってのもあるけどね」
(今こいつと戦ったとして、俺は勝てるんやろうか、神がかった判断をするマイコに)
トキは傍観しながら、そんなことを思うのだった。


次いで青年から出されたのはモジャンボ。モンジャラが原始の力を得て進化した蔓状ポケモンだ。マイコは当然の如くミズゴロウを引っ込め、雛鷲ポケモンのワシボンを登場させた。ミズゴロウでも冷凍ビームという有効打を持つが、草の攻撃を食らってひとたまりもなくやられるのが目に見えたので、交代させたのだ。
「モジャンボ、日本晴れだ!」
青年の指示により、太陽が再び雲の切れ間から顔を覗かせた。晴れたり雨が降ったり、また晴れたりと空も忙しい。
と、途端に巨大な蔓状ポケモンの動きが素早くなった。
「なるほど、葉緑素の特性ね」
「勘がいいじゃねえか。でも終わりだ!パワーウィップで潰せ!」
力のこもった鞭が雛鷲を襲う。
「けっ、つまんねえやつ!そんじゃあ次のポケモンを出せ……!?」
鞭で倒されたかに思われたワシボンが、素早く的確に燕返しでモジャンボに攻撃したのだ!
「嘘だ!何でまだ攻撃できるんだよ!?」
「タカをくくっていたみたいね。簡単に倒されるほど軟じゃないから。ワシボン、恩返しの一撃をお見舞いしてあげて!」
マイコから受けた愛情を力に変えて雛鷲が放った一撃で、蔓状ポケモンは倒された。
これでシュウの手持ちは半分がノックアウトされた。マイコはまだ6匹全員戦える。
と、ここで、ワシボンの体が光に包まれ、大きく成長し、勇猛ポケモンのウォーグルとなった。
「とうとう進化したのね!ワシボン、いや、ウォーグル!」


青年の4匹目はこれまた巨大な2本牙ポケモン、マンムーだった。こちらはイノムーが原始の力を得て進化した姿である。マイコは相性の悪さと累積ダメージの量を考えて、進化したての勇猛ポケモンを引っ込め、彼女のパートナーである火豚ポケモン、チャオブーを出した。
「どっちも有効打があるからなあ、弱点の突き合いになるやろうな」
トキの言う通り、マンムーは地面技でチャオブーの弱点を突けるが、チャオブーもまた、炎や格闘の技で弱点を突ける。
しかし、シュウの指示は意外なものだった。
「霰!」
途端に雪、いや、それより大きい塊がボロボロ降ってきた。
「そして地震!」
間髪入れず大地の震動が火豚を襲った。足元がふらつく。
「耐えて、チャオブー、そして、火炎放射!」
だが、炎は空しくも当たることはなかった。そして気付く。
「なるほど、雪隠れで回避しやすくしたのね」
ちょうどその時だった。2本牙ポケモンが火豚ポケモンの真後ろに陣取った。これはマイコにとって願ってもみないチャンスだった。
「チャオブー、牙につかまって登って!」
「マズイ、振り落とせ……」
マンムーは必死にチャオブーを振り落とそうとするが、つかまる力が強く、振り落とせない。だいたい、動きがどちらかというと鈍い方に分類されるポケモンに速い動きを求める方が無茶な要求である。
「至近距離からの火炎放射!!」
雪隠れは距離があると効果が大きいが、至近距離だとほぼ意味がない。猛烈な炎に耐え切れず、マンムーもノックアウトされた。これでシュウの残り手持ちは2匹。


青年の5匹目はカイリキー。マイコも5匹目、ムンナを出した。明らかにマイコが有利な対決である。と、ここで、カイリキーの体は猛毒に蝕まれた。それにマイコは心当たりがある。
「わざと猛毒を起こすあたり、根性の特性を活かすのね」
「そういうことだよ!カイリキー、気合いをこめろ!気合いパンチだ!!」
カイリキーは4本ある腕のそれぞれに気を込め、技の発動準備を行った。しかし、それは逆に隙だらけという状況をもたらす。
「チャージビーム!!」
夢喰いポケモンの夢の煙を出す穴(?)のような部分から黄色い光が放たれ、気の注入が途絶えた。
「何でだ!?気合いパンチをやろうとしたはずなのに」
「1つ忠告しておくよ。気合いパンチはダメージが大きい分、相手からダメージを喰らったら集中が途切れて発動できないの」
「ちっ、カイリキー、瓦割り!」
「チャージビーム!」
「岩雪崩!!」
「チャージビーム!!」
次々とカイリキーから繰り出される技にチャージビームで応戦するムンナ。
(マイコのムンナならエスパー技で簡単にカイリキーを倒せるはずやねんけど……チャージビームを連射するあたり、何か策があるんやろうか?……!そうか!!)
「クロスチョップ……」
そして、それを待っていたかのように指示がマイコから放たれた。
「サイコキネシス・パワーアップバージョン!!」
夢喰いポケモンの放った強力な念の力は、カイリキーを簡単に吹き飛ばし、ノックアウトに追い込んだのだ。
「マイコ、チャージビームを連発しとったのって、もしかして……」
「相性としては普通だけど、特殊攻撃のパワーアップを狙っていったんだ。うまくいって良かったよ」
これで、シュウのポケモンはあと1匹である。ラストに出されたのは……

猛禽ポケモンのムクホークであった。


マイコは考えた末に、ラクライを繰り出すことにした。
「ラクライ、出てきて!」
出てきた雷獣は、自分を捨てた相手にいきり立っている。やる気は十分のようだ。
と、ここで、猛禽が強い鳴き声を出し、若干ながら稲妻ポケモンのパワーを削いだ。威嚇の特性である。
さらにいきなり大技が出された。羽を畳んで突撃する、ブレイブバードだ。
「ラクライ、電撃波!!」
ここは必中の電撃をお見舞いしてやろうとマイコは考えたのだ。しかし、いくつかが当たった以外は弾かれ、逆にブレイブバードの直撃を喰らった。多少なりともムクホークにもダメージは来るが、ラクライのダメージも無視できなかった。
「空を飛ぶ攻撃で、忌々しいあいつをコテンパンにしてやれ!!」
猛禽が上空へ飛んだ。だが、これがマイコにとって大チャンスになっていたのをシュウは知らない。マイコがニヤリ、とした。
「何がおかしいっ」
「そうくると思った。ラクライ、雷!!!」

ズドォンッ!!!!

上空の相手には絶対当たる、猛烈な稲光とともに、先程まで上空から獲物を狙っていたムクホークは黒焦げとなって力なく墜落した。
この瞬間、マイコの勝利が決まった。6匹全て残した圧勝だった。
「おめでとう、すごいわ、マイコ!誰も戦闘不能になってへんなんて!!」
「ありがとう!すっごく嬉しい!!」
マイコとトキが喜び合っていると、シュウがどす黒いオーラを放っていた。
「お前らなんかまとめて潰してやる!ベトベトン、行け!!」
「お前7匹目なんて卑怯や!」
「卑怯でも何でもいいんだよ!完膚なきまでに叩きのめされたのが腹立つんだよ!ヘドロ爆弾で骨まで毒に冒されながら苦しんで死ね!!!」
「「うわああああっ!!!」」
そして、2人に向けてヘドロの塊が発射された、その時だった。
「メタグロス、サイコキネシス!」
突如出現した鉄脚ポケモンの発した念の力で、ヘドロは方向が逸れ、遠くへ飛んでいった。
ヘドロの直撃を免れた2人は、自分たちの父親と同じほどの年頃の男性に助けてもらい、メタグロスの上に乗った。


「大丈夫かね、君たち」
「あ、ありがとうございます……」
「すみません、助けてくださって」
「そんなに感謝しなくてもいい。当然のことをしたまでだ。ちなみに私はダンゾウ。あのシュウの父親だ。バカ息子がとんでもないことをしたな」
「父親……」
「さてと、降りるぞ。やつに制裁をしないといけないようだな」
2人もダンゾウに促されて地上に降りた。


シュウとダンゾウが向き合って話している。マイコとトキが入る隙間はなさそうだが、何か起こるといけない。
「オヤジ、何でここが分かった」
「お前が捨てたポケモンを拾いに行くと言ったから、多分ここだろうと目星をつけていた。そしたらお前は大量にポケモンを捨てたくせに親の顔を見せて無理な条件のバトルを押し付けたあげくにストレートで負けている。さらにそれを抹消しようとして毒を放つなぞ、トレーナーというより、人としてなっていない!そこの2人が話を聞いて怒るのも納得がいく」
「もうオヤジも消えちまえばいいんだ!ベトベトン、ヘドロ爆弾!!」
ヘドロポケモンから出されたヘドロの塊をダンゾウは避けるが、頬をかすめた。やはり完全に避けきるのは無理だったようだ。
「ダンゾウさん!?」
「頬が変色してる……このままじゃ……」
マイコとトキの心配をよそに、ダンゾウは至って冷静だった。
「シュウ、お前はそれでいいんだな?」
「どういうことだ?まあ、いいけどよ」
そして、指示が飛んだ。
「メタグロス、サイコキネシスで動けなくして、コメットパンチ!!」
念の力が反撃の動作すらも封じ込め、そこに隕石を思わせる鉄脚ポケモン十八番のパンチがヘドロを襲い、ノックアウトに追い込んだ。
と同時に、バレットパンチのようにダンゾウの平手がシュウに直撃した。
「この大馬鹿息子が!!!」


結局、シュウはポケモン放棄とポケモンによる傷害容疑の現行犯で逮捕された。
そして、2人はダンゾウの頬にモモン汁を塗っていた。変色の原因が毒というのは分かり切っていたことだったから。
炎症も引き、何とか大丈夫になったところで、帰ることとなった。
「あんまり無茶するんじゃないぞ。君たちはまだ若いんだから、ああいうようにならず、真っ当に生きなさい」
「ありがとうございます。ダンゾウさんもあまり無茶せんといてくださいよ」
「私たちも気を付けますから、ダンゾウさんもお元気で!!」
面倒な事件を何とか解決できて、少しだけほっとした2人なのだった。


おしまい


マコです。ちょっと間が空きましたが元気です。
2011年年明けから参加しているので、この度のログ消失に大変驚きました。
プロットを作らない派でしたが、自作品専用USBメモリをプロット代わりに文章作成にいそしんでいます。
とにかく、マサポケが大好きだってことを伝えたいです。


このお話の後書きとして、ポケモンがリアル世界に来て、法体系とかも若干整備された感じにしてあります。もし仮に、マイコちゃんがシュウに負けたらマイコちゃんも捕まっていたでしょう。
現実にペット放棄で捕まる人がいるのと同じように。でも、こんな展開になると主人公が逮捕となっていやなので、やっぱりハッピーエンドにしました。
【書いてもいいのよ】
【描いてもいいのよ】
【ポケモンを捨てちゃダメなのよ】


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