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  [No.28] 第5話「力の差」 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2010/08/18(Wed) 22:13:19   70clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「それじゃ、俺が審判やるけど……あんた誰だっけ?」

審判を買って出たゴロウは、まず少年に名前を尋ねた。

「俺はカラシだ。よろしく頼むぜ、審判さんよ」

少年カラシは、一言こう告げると、ダルマを鼻で笑った。

「ふ、ふん。そ、そんなんじゃ俺はび、びくともしないぞ」

ダルマは何とかこう漏らしたが、体が規則的に震えている。手に持っているモンスターボールが今にも滑り落ちそうだ。

 このような張り詰めた空気の中、審判ゴロウの声が響いた。

「えー、今からダルマとカラシのバトルを始めます!両者1匹のルールで大丈夫ですね?」

ゴロウの問いかけに、2人とも黙って頷いた。モンスターボールを片手に、準備万端といった様子だ。

「では、バトル始めぇ!」

ゴロウの怒号で勝負の幕が上がった。

「いけ、ワニノコ!」

「出番だ、カラカラ!」

2個の紅白のボールが宙を舞い、それぞれからポケモンが出てきた。ダルマのワニノコと、カラシのカラカラである。

「カラカラ、ホネこんぼうだ!」

先手を取ったのはカラカラだ。その手にあるホネを振り上げ、ワニノコ目がけて突っ込んできた。

「引き付けて避けろ!」

これに対しワニノコは、ただひたすら避けるばかりである。だが、しばらくするとカラカラの背中に隙ができた。

「今だ、ひっかく攻撃!」
ワニノコはカラカラの背中に、自慢の爪を食い込ませた。カラカラには見事なひっかき傷ができた。

「よし、良いぞワニノコ!」

ダルマは思わずガッツポーズを取った。ワニノコもおおはしゃぎだ。

「ふっ、そう来なくてはな。カラカラ、ホネこんぼうだ!」

騒ぐダルマを尻目に、カラシは不敵な笑みを浮かべた。それからカラカラにさっきと同じ指示を出した。カラカラが走ってワニノコとの距離を詰める。

「何度来ても同じだ!ワニノコ、もう一度ひっかく攻撃!」

ワニノコはカラカラの攻撃を右に避けて、腕を高らかと振り上げた。その瞬間、ワニノコの左頬にホネが飛んできた。その衝撃で、ワニノコはフィールドの端まで打ち上げられた。

「ああ、ワニノコ!」

ダルマの悲鳴にも似た呼び掛けで、何とか起き上がったワニノコだが、顔の左半分は大きく腫れあがり、息も絶え絶えだ。

「おっと、カラカラの一撃を耐えられるやつなんて久しぶりだな。ま、次は無理そうだが」

「な、何が起こったんだ……?」

あまりに急な展開に、ゴロウは思わず口を開いた。

「おやおや、審判さんには見えなかったのか?仕方ねえ、説明してやるよ」

カラシ小さくため息を吐いて、喋りだした。

「ワニノコが攻撃を避けるのは計画通りだ」

「な、なんだって!」

「ワニノコが右に避ける!カラカラが走り去る!そのすれ違いざまに一発お見舞いしただけのことだ」

「で、でもよ、いくらなんでも強すぎないか?」

「確かに……普通ならな。だが、俺のカラカラは違う。審判さんもよく見てみな」

 問い続けるゴロウに、カラシはカラカラに指差した。よく見ると、右手のホネは普通のものより明らかに太い。

「なんだこれ、やけに太いな。これがどうかしたのか?」

「それこそがカラカラの力の源、太いホネだ。こいつがあれば、カラカラの力は普通の倍になる。これなら説明つくだろ?さて、そろそろ終わりにするぜ」

カラシがワニノコをジロリと見ると、それに呼応してカラカラがうなりあげる。

「く……くそっ!ワニノコ、水鉄砲だ!」

ダルマは顔を紅潮させながら叫んだ。ワニノコの口から、激流の如き水の弾丸が放たれた。

「無駄無駄!打ち払え!」
カラカラは水鉄砲にホネを一振りした。すると、あれほど勢いのあった弾丸をアストラブルーの霞にしてしまった。

「食らいな、ホネこんぼう!」

カラカラはいよいよと言わんばかりにワニノコ目がけて駆ける。もはや一刻の猶予も無い。

「こうなったら、ワニノコ逃げろ!」

「な!ダルマ、正気かよ……」

あろうことか、ダルマはワニノコに逃走の指示を出した。動揺の色を隠せないワニノコだったが、主人の命令は絶対である。やむなくフィールド中を逃げ回り始めた。

「……話にならねえ。必殺の技をお見舞いしてやれ」

カラカラは命令を聞くと、ホネの持ち方をわずかに変えた。そして、ワニノコに投げつけた。

「何だと!ワニノコ避けろ!」

ダルマの叫びも虚しく、ホネはワニノコの背に直撃した。その勢いで、ワニノコは白目を剥いて倒れた。飛んできたホネはというと、長い楕円を描いてカラカラの手に収まった。

「そこまで!このバトル、カラシとカラカラの勝ち!」

勝負あった。結果はカラシとカラカラの圧勝だ。

「こ、ここまで歯が立たないなんて……」

ダルマはしばし呆然とし、膝をついた。そこに地下を出る準備を終えたカラシが近づき、こう言い捨てるのであった。

「やっぱり腰抜けだったな」


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