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  [No.652] 第42話「新たな仲間は色違い」 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2011/08/22(Mon) 15:12:00   91clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


「ああ、久々にゆっくりできるぞ」

「そうですね。5日も山を歩き続けて皆さんお疲れみたいですし、丁度良いですわ」

 フスベシティのポケモンセンター。その一角でダルマとユミはソファーに座って一息ついていた。外は山ならではの澄み切った夜空で、星がウインクする様まで丸見えだ。

「けど、籠城してると思ったのに誰もセンターにいなかったのは妙だよな」

「それは私も考えていました。カラシ様が来られたとはいえ、私達は全滅に等しい状況でした。みすみすチャンスを潰すのはおかしいですよね」

「なんだ、俺がどうかしたか?」

 と、2人の話にカラシが入ってきた。彼はソファーにどっかり腰を下ろすと、テーブルに置いてあるのど飴をさりげなくポケットに入れた。

「そういえば……カラシ、何故セキエイ陣営に加入しようと思ったんだ? 最後に会った時はロケット団の用心棒をやってたじゃないか」

「なんだ、そんなことか。ロケット団が壊滅し、俺の仕事がなくなった。だからここに仕官しただけのことだ」

「あら、私達と同い年くらいに見えますが……お仕事をなさるのですか?」

 ユミの問いかけに、カラシは窓の外を眺めながら答えた。

「……俺の家は『赤貧洗うが如し』という言葉を体現したかのようなところでな。食べ盛りの子供は家族に負担をかけちまう。だから、旅をしながら稼ぐことにしたんだよ。なのに……」

「なのに、どうしたんだ?」

「……俺がちゃんと旅ができるようにって、ない金はたいて準備してくれたんだよ。馬鹿らしいだろ? まあ、俺はそれに報いるためにこうして仕事を探していたわけだ。バトルが上手いのも、それを仕事にするためさ」

 カラシはソファーにもたれかかり、腕組みをしながら目を閉じた。ダルマとユミは互いに見合わせ小声で話す。

「……カラシ様、とても大変そうですね。私達に何かできないでしょうか?」

「どうかなあ。俺達もなんだかんだで金があるわけじゃないし……」

「ふん、余計なお世話だ」

 不意にカラシが発言をしたせいで、ダルマとユミは飛び上がり冷や汗を流した。カラシは機嫌良く続ける。

「ところで、がらん堂の技術はもう聞いたか?」

「技術ですか? もしかして、人が突然消えたりするあの?」

「察しが良いな。あれはポケモン交換システムを人に使えるように改良したらしい。人をポケモンと同じように処理すれば移動も楽なんだろう。サトウキビという男が各地のポケモンセンターの機器を不正に改造していたそうだ」

「な、なんだって……。サトウキビさん、初めて会った時はポケモンセンターの修理って言っていたけど、このためだったのか。それでも、そんな技術聞いたことないぞ」

「そりゃそうだろ。こんな技術、失敗したら命の保証なんてない。表立ってやれる方がよっぽどおかしい」

「……言われてみればそうだな」

 ダルマは納得したのか、何度もうなずいた。しかしカラシの説明は止まらない。

「そうそう、何故人々が抵抗しないか。怪電波でコントロールしているってよ」

「か、怪電波、ですか?」

 博識のユミも首をかしげた。ダルマに至っては言うまでもない。

「そうさ。元々コガネシティは旅人や住人にバッジや記念品をばらまいていた。それが実は中継機になっていて、ラジオ塔の怪電波を受信して持ち主の家で猛威をふるうという寸法だ。」

「……そういやサトウキビさんが言ってたな、『連帯感や一体感を高めるために配っている』って。俺達危なかったんだな……ん、ちょっと待てよ。どうしてカラシはそんなに詳しいんだ? 専門のジョバンニさんとボルトさんでもわからなかったのに」

 ダルマはカラシに疑いの目を向けた。ユミも不安げな表情をとる。しかし、カラシの次の一言が彼らの注目を完全に彼から逸らした。

「……それはさておきだ。かばんが光ってるぜ、あねさん」

「え? あ、これはもしかして……」

 ユミは大急ぎでかばんからあるものを取り出した。それは、今にも割れんと輝く2つのタマゴである。3人の目の前で殻が勢い良く飛び散り、そして……。

「これは、イーブイに……なんだこのポケモンは」

 ダルマは図鑑を引っ張り出して調べた。1匹はイーブイ。有名なポケモンだが、特筆すべきはそこではない。この個体、特性がきけんよちなのである。

「あれ、イーブイの特性にきけんよちなんてないぞ。もしかして、新種かな?」

 ダルマは感嘆のため息をついた。ユミがイーブイを静かになでると、イーブイは健気に鳴き声をあげた。

「で、こっちはえーん、フカマル? タイプはドラゴンと地面……え、ドラゴン?」

 ダルマは図鑑を穴が開くほど見つめた。フカマルはシンオウ地方のとある洞窟に生息するポケモンで、進化形のガブリアスは非常に高い能力を持つ。対策必須と言っても過言ではない。だが、ダルマが驚いたのはそれだけではない。

「おい、色が明らかに違うぞ」

 ダルマはフカマルを指差した。本来のフカマルは青い体に赤の腹だが、この個体は藍色の体に黄色の腹部を持つ。

「なるほど、こいつは色違いだな。しかもジョウトでは見かけないポケモン……ついてるな、あねさん」

「そ、そんなことないです。ですが、やっと会えましたね。イーブイにフカマル、これからよろしくお願いしますね!」

 ユミの呼びかけに応じ、イーブイとフカマルは元気に前足と手を持ち上げるのであった。ユミに新しい仲間が加わった瞬間である。

・次回予告

さらなる激戦が予想される中、ワタルの案内で一同はある場所に訪れる。そこでは強力なトレーナーが待ち構えていた。次回、第43話「フスベジム前編、ドラゴンへの道」。ダルマの明日はどっちだっ。



・あつあ通信vol.23

実はこの連載、金銀世代までの251匹をメインに使ってるんですよ。ユミのフカマルなんかは例外ですが、野生やトレーナーが使うポケモンは原則ジョウトまでのポケモンのみ。他の地方に行ったことがあるトレーナーやタマゴから生まれたポケモンには他の地方のポケモンも採用すると。これだときっと最後はネタ切れ必至ですが、のらりくらりとやってみますよ。


あつあ通信vol.23、編者あつあつおでん


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