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  [No.683] 第51話「ライバルバトル」 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2011/09/01(Thu) 11:08:51   73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


「ダルマ様、ライバルの私と勝負してくれませんか?」

「え、俺と?」

 キキョウシティのポケモンセンター前で、ダルマはストレッチをしていた。既に朝食を食べた後であるせいかわからないが、とてつもなく硬い体だ。長座体前屈をやっても、指先はすねの真ん中程度までしか届かない。

 そんな彼に、ユミが勝負を申し込みに来た。彼女は少し照れ臭そうにしているが、ダルマは特に気にせず返事をした。

「そういえば、ユミと勝負したことってまだないよなあ。じゃあちょっとやってみようか」

「ありがとうございます。では早速練習場に行きましょう」

 ユミは足取り軽く歩きだした。ところが、突然ダルマが彼女を呼び止めた。ユミはダルマの方に振り向く。

「あ、ちょっと待って。……できれば背中押してくれないかな。体が硬くてこれ以上曲がらないんだ」










「使用ポケモンは手軽な2匹でいこうか」

「はい、ではそれでお願いします」

 ダルマとユミはポケモンセンターの脇にある屋外練習場に移動していた。センターの地下にも練習場はあるが、天気の良い日は屋外の方が人気がある。溢れる日差しに流れ行くそよ風といった、自然に近い環境が好評の秘訣だ。

 ダルマとユミは1個目のボールを手にした。ダルマは至って落ち着いているが、ユミの瞳には火が灯る。2人はほぼ同時にボールを投げ込んだ。

「アリゲイツ、出番だ!」

「ベイリーフ、いきますよ!」

 ダルマの先発はアリゲイツ、ユミの1番手は初見のポケモンだ。首周りと頭に葉っぱを持ち、辺りにスパイシーな香りを振りまく。ダルマは図鑑を取り出した。ベイリーフはチコリータの進化形で、耐久力が高い。葉っぱから漂う香りは、嗅いだ者を元気にさせたり戦いたい気分にさせるという。

「ベイリーフ、まずはエナジーボールで様子見です!」

「チコリータ、進化していたのか。相性も相まって手強そうだ……よし、いきなりだがアリゲイツ戻れ! カモネギ!」

 ダルマは初っぱなからアリゲイツを戻し、2匹目のポケモンを繰り出した。出てきたのは茎を操るカモネギだ。カモネギは、ベイリーフが放った攻撃を茎で切りながら受けとめた。

「チャンスだカモネギ、つるぎのまいだ!」

「これは分が悪いですね……ベイリーフ、下がってください。ヌオー!」

 ユミはベイリーフを引っ込め、次のポケモンが飛び出してきた。なにやら丸々とした体形で、ややうとうとしている。一方でカモネギは茎を用い、戦いの舞いに耽っていた。

「ヌオーか、カモネギで大丈夫なのか?」

 ダルマは険しい表情で図鑑を覗き込む。ヌオーはウパーの進化形で、水タイプながら地面タイプのおかげで電気タイプを無効とする。また、特性の貯水で水タイプも効かない故に、電気タイプや水タイプを完封することができる。これらのタイプには強いポケモンが多いので、数値以上の活躍が期待される。

「なるほどなあ。アリゲイツが動きにくくなるのは厄介だ、一気に決めるか。カモネギ、アクロバットだ!」

 ダルマの指示の下、カモネギは茎をくわえて飛び立った。太陽と重なる位置に到達すると急降下して、軽やかな身のこなしでヌオーの頭を攻撃した。ヌオーはやや表情が苦しくなる。

「ふふ。ヌオー、カウンターですよ!」

「か、カウンターだって!」

 ところが、カモネギが一発入れた瞬間、ヌオーの目は大きく見開いた。それから右手を振り下ろし、カモネギを叩き落とした。驚くほど急な反撃にカモネギは対応できず、そのまま気絶してしまった。

「カモネギ!」

「これでまずは1匹ですわね」

「……ユミは俺の動きを読んで、敢えて動かなかったのか」

「ええ、その通りです。ダルマ様のバトルは何回も見てきましたから、ある程度の推測はできます」

「……それもそうか。どちらにせよ、こいつで勝負をつけなきゃな。アリゲイツ!」

 ダルマは力強くボールを放り込んだ。再び現れるはアリゲイツ。牙をむいてヌオーを威嚇している。

「まずはヌオーを倒そう。噛み砕く!」

「させませんわ、自己再生!」

 先に行動したのはアリゲイツだ。アリゲイツはヌオーが技を使わないうちに接近し、ヌオーの背中に全力で噛み付いた。ヌオーはたまらず全身を揺さぶりアリゲイツを引き離した。しかしカモネギの攻撃によるダメージも重なり、ヌオーはその場に倒れこんだ。

「よーし、これでイーブンだな」

「……ヌオー、戻ってください」

 ユミは力なくヌオーを回収した。ダルマは深呼吸をして最後の局面に備えている。

「さあ、あとはベイリーフだけだ。タイプは不利だけど必ず勝ってみせる」

「ふふ、勇ましいことですね。では……とっとといくぜ、ベイリーフ!」

 ユミの目がますます燃え上がったところで、ベイリーフがバトルに舞い戻ってきた。ベイリーフは闘志むき出しで、前足で地面を蹴っている。

「うわっ、そういやユミは性格変わるんだっけ。こりゃもたもたできないな。アリゲイツ、冷凍パンチだ!」

「甘い、エナジーボール!」

「は、速い!」

 なんと、先手はベイリーフである。ベイリーフは口からエネルギーの塊を発射し、アリゲイツにぶつけた。アリゲイツは直撃しながらもベイリーフに近づき、凍った右腕で殴りつけた。だがベイリーフは涼しい顔であった。

「はん、ぬるい攻撃ね。……とどめよ、マジカルリーフ!」

「まずい、避けろアリゲイツ!」

 ダルマが叫んだ直後、ベイリーフはどこからともなく葉っぱを撃ちだした。アリゲイツは辛うじてかわしたが、葉っぱはアリゲイツをつけまわしてきた。かわしてもかわしても何度も追いかけるしぶとさに、アリゲイツの体力は確実に奪われる。そして……。

「アリゲイツ!」

「フン、雑魚はすっこんでな」

 アリゲイツは遂に攻撃を受け、地に伏せた。ダルマがアリゲイツに駆け寄るのとは対照的に、ユミは静かにベイリーフをボールに収め、ダルマに歩み寄ってきた。

「すまんアリゲイツ、今回は俺のプレイングミスだ」

「ダルマ様! 今のバトルはどうでしたか?」

「え。う、うーん……なんというかその、強かったよ」

 ダルマは冷や汗を流しながら答えた。しどろもどろな上に目線をわずかに逸らしている。その反応のためか、ユミの表情が曇る。

「もしかして、また熱くなっていましたか? 私」

「い、いや。そんなことはないよ。例えそうだとしても大したほどじゃ……」

「あ、隠さないでも大丈夫ですよ。これは昔からの癖ですので。……これのせいであまりお友達ができなかったり敬遠されたりしてましたが、気にしてないですから」

 ユミはそう言ってのけたが、うつむいている。無理をしているのはさすがの彼でも容易に理解できる。ダルマは頭をかきむしりながら、なんとかフォローしようと言葉を捻りだした。

「……俺、そういうの嫌いじゃないよ」

「えっ? 今まで嫌われることはあってもそんな風に言われることはありませんでした。どうしてですか?」

「そ、そうだなあ。嫌がられていたのは単にギャップが激しいからだと思う。……勝負で熱くなれるのは、それだけ真剣な証拠。俺の場合は熱くなるというよりは慌ててるだけだし、羨ましいな。もっと自信持って、胸張ってみてよ。俺が見とくからさ」

「だ、ダルマ様……」

 ユミは思わずむせ、目から光るしずくが滴り落ちた。ダルマは彼女の肩を軽く叩くと、こう切り出すのであった。

「さ、一緒に練習しよう。あと1日だからね」

「……はい!」



・次回予告

最後の準備を終え、遂にダルマ達はコガネシティへ出発する。その道中の森で、あるポケモンと遭遇するのだが……。次回、第52話「幻の狐」。ダルマの明日はどっちだっ。



・あつあ通信vol.32

今回はベイリーフの技のなさに苦しみました。ダメージ計算はレベル50、6V前提で。攻撃全振り剣の舞カモネギの手ぶらアクロバットでHP全振りヌオー確定2発、返しのカウンターで即死。攻撃全振りアリゲイツの噛み砕くとアクロバットの合計ダメージでヌオーを倒せます(ただし乱数)。特攻無振りベイリーフのエナジーボールとマジカルリーフでHP全振りアリゲイツを高乱数で倒せ、アリゲイツの冷凍パンチをHP全振りベイリーフは余裕で耐えます。ちなみに、ベイリーフはアリゲイツより素早さが高いです。先に行動できたのはそのためです。


あつあ通信vol.32、編者あつあつおでん


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