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  [No.699] 第55話「ギャンブルゲーム後編」 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2011/09/06(Tue) 11:58:16   79clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


「ははは、俺様の力はどうだ?」

「うんうん、確かにすごいな、『君のドククラゲ』は」

 ランターンをボールに戻したボルトは、ふてぶてしく笑った。その手には既に次のボールがスタンバイしている。いまだ雨は降り続くものの、徐々に晴れ間が覗いてきた。

「なんだとおい、明らかに俺の腕だろ。100歩譲っても7割は俺の実力だっ!」

「ふーん。……どちらにしろ、僕はかなり不利だ。けど、こんなこともあろうかと対策はばっちりさ」

「はっ、どうせハッタリに決まってらぁっ!」

「なら、実際に見てみればいい。ヌオー、出番だ!」

 ボルトの叫びと同時に、2匹目が飛び出した。くびれのない胴体にぼんやりした眼、あくびをするその姿は、まさにヌオーである。

「ヌオー? 貯水で水、タイプで毒を封じるつもりか。残念だったな、こいつにはこれもあるっ! 冷凍ビームだっ!」

 リノムの指示を受け、ドククラゲは凍えるビームを発射した。ビームはヌオーの腹部に直撃する。ヌオーは多少のけぞったが、すぐに体勢を立て直した。

「うっそ、ドククラゲの攻撃を余裕で耐えただとっ! ゲームバランスがおかしいっ!」

「おいおい、何を言ってるんだい。ヌオーの特性、天然が効いてるだけだよ」

「て、天然だと?」

「そうそう。『お互いの能力変化を無視する』だなんて、便利な特性でしょ? 元々はちいさくなるとかの技を対策するために入れてたんだけど、意外なところで役立ったよ。というわけで、地震攻撃」

 ヌオーは足をばたばたしながら地面を揺らした。するとドククラゲ目がけて、横揺れと縦揺れが順番に襲いかかった。ドククラゲはなんとか踏ん張ったものの、苦しそうなのは火を見るより明らかだ。

「ぐおお、何しやがるっ! 能力アップなんかなくても俺は勝てるっ! ハイドロポンプだっ!」

「やれやれ、元気なことだ。ヌオー、もう1発頼むよ」

 雨があがって雲が散り散りになりだした。ドククラゲは間欠泉のごとき水を叩きこみ、ヌオーは再び地震を放った。どちらもクリーンヒットし、互いにしゃがみこむ。やがてヌオーはゆっくり立ち上がったが、ドククラゲはそのまま崩れ落ちた。

「よし、その調子だヌオー!」

「や……ヤバいヤバいヤバい。ヤバいを通り越してヤバい」

「さあ、まだやるかい? 僕は一向に構わないけどさ」

「……ああ、やってやるぜ。ただしっ! 俺が勝ったら神軍師と呼んでもらうぞっ!」

「どうぞどうぞ、いくらでも呼びますとも」

「よーし。いくぜ最後の1匹、サイドンっ!」

 リノムの掛け声に合わせ、彼の切り札が場に出てきた。2本の足で立ち、鼻の上にはドリルのような角が生えている。また、手には長い爪が取り付けられている。

「なるほど、あれが彼の最後のポケモンか。またとんでもない戦法なんだろうな」

 ボルトは図鑑に目を通した。サイドンはサイホーンの進化形で、弱点こそ多いが攻防ともに優れた物理性能を持つ。中々手に入らないアイテムだが、しんかのきせきを持たせると驚異的な耐久力を得られる。

「いくぜ、神軍師の本領っ! つのドリルっ!」

 先手を取ったのはサイドンだ。ヌオーに接近してから頭を突き出し、角を差し込んだ。ヌオーは悶絶し、すぐに気絶してしまった。ボルトは苦虫をつぶすような表情で、ヌオーをボールに回収した。

「な、一撃必殺技をこうも簡単に当てるとは……」

「へっへっへっ、所詮素人にはたどりつけねえレベルさ。それより早く次を出しな、またぶちのめしてやるぜ」

「くっ、……これで終わりだ、ピカチュウ!」

 ボルトは3個目のボールを投げつけた。中から現れたのは、様々な事件やブームを巻き起こしたあのポケモン、ピカチュウである。ピカチュウの左手には、赤い帯のようなものが結んであるが、リノムはお構いなしにサイドンに命令した。

「はーっはっはっはっ、そいつが最後の1匹たあ、運が尽きたなっ! 先制つのドリルで終わりだっ!」

「な、なんだって!」

 突然、サイドンの爪が光ったかと思えば、サイドンは猛然とピカチュウに近寄った。完全に不意を突かれたピカチュウは回避のしようがない。それを見たボルトは、人々を起こしかねない怒号をあげた。

「今だ、カウンターを決めろ!」

 サイドンの角がピカチュウに突き刺さる。ピカチュウは脂汗を流しながらサイドンの耳に手を伸ばした。そのままサイドンの勢いを利用し、体を反らしながらサイドンを地面に叩きつけた。鮮やかな動きにサイドンは全く反応できず、驚くことにこの一撃で地に伏せた。ボルトの顔からは笑みがこぼれ、リノムは膝をついた。

「……うおぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお! すまねえ先生っ! 奴らを止めることはできなかったっ!」

「そう、君達の野望は今日で終わる。このバトルをきっかけにね。さ、おとなしく捕まってもらうよ」

 ボルトはピカチュウをボールに収めると、うなだれるリノムを縄で縛った。これで1人目の討伐が完了である。

「……助かったよ、ダルマ君。さてと、早いとこがらん堂の中に行かないとね。みんなも無事なら良いんだけど……」

 ボルトは他のメンバーの身を案じながら、元来た道を静かにたどっていった。雨雲はいつのまにか消え去り、綺麗な星空が夜のコガネを照らすのであった。



・次回予告

ワタルが出会ったのは、今まで2度戦ったサバカンであった。因縁の対決は、どちらに軍配が上がるのか。次回、第56話「3度目の正直前編」。ワタルの明日はどっちだっ。



・あつあ通信vol.36

天然はピクシーとビーダルがいましたが、被りを気にせずヌオーを選択しました。理由としては、1つはピクシーの天然は夢特性ですが未解禁なこと。もう1つはビーダルはジョウト地方にいないことです。意外と天然って少ないんだなあ……。

ダメージ計算は、前回同様レベル50かつ6V。ヌオーはいじっぱりHP攻撃振り、サイドンは慎重防御特防振りで先制の爪持ち。ピカチュウは臆病特攻素早振りで気合いのタスキ持ち。ヌオーは地震でドククラゲを確定2発、ドククラゲは冷凍ビームとハイドロポンプを合わせてもヌオーを倒せません。また、ピカチュウのタスキカウンターでサイドンは確実に沈みます。仮に地震を受けても結果は一緒。やはりタスキカウンターは便利だ。


あつあ通信vol.36、編者あつあつおでん


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