マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
このフォームからは投稿できません。
name
e-mail
url
subject
comment

[新規順タイトル表示] [ツリー表示] [新着順記事] [留意事項] [ワード検索] [過去ログ] [管理用]

  [No.775] 第84話「ポケモンリーグ準決勝第1試合後編」 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2011/10/15(Sat) 12:11:36   67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


「な、なんだ一体……辺りの様子がおかしいぞ」

 ダルマは辺りを見回した。ガラガラが自らの腹部を叩いた途端、雲もないのに雷があちこちに降り注ぎ、大地が唸りだしたのである。ガラガラからは蒸気があふれ、目を光らせ、体が震えている。それを見たカラシは、腹を抱えて笑った。

「ふふふ……はははははは! はらだいこが決まった。もうお前に勝ち目はないぜ、ダルマ!」

「どういうことだ!」

「まあ、そう慌てるなよ。図鑑で調べてみたらどうだ?」

 カラシに促され、ダルマは図鑑をチェックした。はらだいこは、自分の体力の最大値の半分を消費してパワー全開になる技である。例えどれだけ攻撃を下げられても、必ずパワー全開となる。一昔前は非常に強力な技であったが、今ではすっかり見向きもされない。理由としては、ポケモンの耐久力低下によって素の状態でもダメージが大きくなったことが1つ。また、リスクなしで強力な補助技が増えたのも大きい。しかし、中には先制技と組み合わせると言ったポケモンもいるので、油断はできない。

「パワー全開、か。でも体力が減ったから帰って倒しやすいな。キュウコン、大文字だ!」

「ふっ、骨ブーメラン」

 キュウコンが再び大文字を放つ。それと同時にガラガラは骨を投げるポーズを取った。だが骨は手に収まったままである。ところがその瞬間、どこかから何かがぶつかる音が2回聞こえてきた。音の1つは破裂音、もう1つは鈍い音である。周囲が騒然とする中、今度は何かが倒れる音が響いた。一同が目を向けると、そこには気絶したキュウコンがいた。審判は慌ててジャッジする。

「きゅ、キュウコン戦闘不能、ガラガラの勝ち!」

「ななな、なんということでしょう……。ガラガラ、攻撃してないように見えましたが、実は既に攻撃が終わっていた! つまり、手元にあったのは残像でしょうか。これがカラシ選手の切り札、隠し玉……ダルマ選手、激しく動揺しております」

 実況が言うまでもなく、ダルマは開いた口がふさがらない状態だった。それでもなんとか言葉を絞り出す。

「くっ。あの音、最初の1回で大文字を打ち破り、もう1回でキュウコンを攻撃したのか。たった1回なのになんてパワーだ……」

「わかったか、最強は俺だということが」

「わ、わからないね! 頼むぞキマワリ!」

 ダルマは強がりながらキマワリを投入した。今日もこだわりメガネをかけている。そして焦げている。

「素直に降参すれば良いものを。骨ブーメランだ」

 ガラガラはまたしても腕を振った。やはり骨は手元に残っているように見える。だが、またしても鈍い音が響いた。先ほどと同じく、そこには伸びているキマワリの姿があった。

「キマワリ戦闘不能、ガラガラの勝ち!」

「キマワリ! 半減しても1回で倒されちまっただと……」

 ダルマは力なくキマワリをボールに戻した。彼は何度も深呼吸をし、辛うじて冷静さを保っていた。

「ようやくわかったか、俺の力が。さて、最後はネギを背負ったカモだったな。せめてもの情けだ、一瞬でかたをつけてやる。そして、決勝に進ませてもらう」

「……カモネギ、今こそお前に全てを託す!」

 ダルマは最後のボールを全力で投げた。出てきたのはカモネギ。カモネギは出てきて早々ガラガラに襲いかかるが、その圧倒的な力で押し返された。

「ダルマ選手、最後にカモネギを送り出しましたが……なんと、二刀流です!」

 実況は思わず叫んだ。カモネギの右手にはいつもの茎がある。一方、普段手ぶらの左手には、いつもの茎より一回り長い茎があった。カモネギの闘志を確認したダルマは、カラシを指さしこう言い放った。

「カラシ、敗れたり! 終わっていない勝負で後のことを考えるなど、負けたも同然! これで終わりだ、リーフブレード!」

「笑止! つばめがえしで返り討ちだ!」

 カモネギとガラガラは全速力で接近し、互いに剣を構えた。そして、そのまますれ違いざまに斬りつけ合い、駆け抜ける。やがて2匹の足は止まり、背中を向け合った構図となった。どちらが先に倒れるか……全ての視線が2匹に集まる。

「どうだ……」

 ダルマは両手を合わせて目を閉じた。時間はこれでもかと言う程ゆっくり過ぎていく。カモネギとガラガラは石のように微動だにしない。ダルマとカラシは固唾を呑んで見守り、そして祈る。

 その時、遂にカモネギがふらついてきた。スタジアムは一気にどよめく。カモネギは2本の茎で体を支えた。歯を食いしばり、額から脂汗を噴出するその姿に、一部からすすり泣きが聞こえてくる。

「……ふん、これで俺の……な、何!」

 カラシが勝利を確信した、まさに最後の瞬間。1匹のポケモンが地に伏せた。ダルマは恐る恐る目を開き、結末を確かめた。ダルマの近くにいるポケモン、すなわちガラガラが倒れている。

「……が、ガラガラ戦闘不能、カモネギの勝ち! よって準決勝第1試合、勝者はダルマ選手!」

 審判の声が放たれると、スタジアム中から拍手喝采と叫び声が湧き上がってきた。ある者は勝者を称え、ある者は敗者にねぎらいの言葉をかける。涙で顔がくしゃくしゃになった者もいる。全ての者が揺さぶられる戦い……ダルマとカラシはそれを体現してみせたのだ。

「な、なんという最後だったのでしょうか。スタジアムは静まり返り、実況の私も思わず仕事を忘れてしまいました。これは文句なしで今大会最高のバトルです!」

「ふううううぅ、終わったかあ。勝てて良かった、本当に良かった!」

 ダルマは腰が抜けたのか、その場に座り込んでしまった。彼はカモネギをすぐさま回収し、カラシに話しかけた。

「どうだカラシ、あの時勝ったのはまぐれじゃなかったのがわかっただろ?」

「……ああ、俺の負けだ。だが、不思議と悔しさはない。おそらく、本気で戦って負けたからだろうな」

 カラシはガラガラをボールに収めながら呟いた。これを受け、ダルマは頭をかきむしる。

「へへ、そう言われると悪い気はしないな。まあ、お前と勝負して負けたからこそ、ここまで来れたと思う。ありがとう」

「……ふん。その言葉、今回はそっくりそのままもらっておこう。だが次こそは俺が勝つ! せいぜい首を洗って待ってることだ」

「望むところだ!」

 ダルマとカラシ、2人は再戦を約束した。するともう1度スタジアムからスタンディングオベーションの嵐が起こる。

「さて、そろそろ故郷に帰らせてもらうぜ。たまには家に顔を出さないとな」

 カラシはそう言い残すと、ボルテージが最高潮の中出口へと歩き出した。そんな彼に、ダルマはこの言葉を送るのであった。

「か、カラシ! まだ3位決定戦が残っているぞ!」



・次回予告

泣いても笑っても、今度こそ最後の勝負。それはすなわち、ダルマの旅の終わりをも意味する。苦しいことも楽しいこともあったこの旅に、彼は有終の美を飾れるのか。次回、第85話「ポケモンリーグ決勝戦」。ダルマの明日はどっちだっ。


・あつあ通信vol.65

ガラガラとカモネギの戦い……遂に実現しました。まるで宮本武蔵と佐々木小次郎ですね。持ち物とか技とかも意識してみました。しかし素早さ無視をしてしまい、ゲームに忠実なバトルが破綻。2連続で当たらなかったと考えれば良いのでしょうが、いささか違和感が残ってしまう。バトルの難しい点です。

ダメージ計算は、レベル50、6V、キマワリ@メガネ臆病特攻素早振り、カモネギ@長ネギ陽気攻撃素早振り。キュウコンに対して腹太鼓ガラガラの骨ブーメランが、1発目で626〜738、2発食らうと1252〜1476もの規格外のダメージ。これなんてマダンテ? キマワリは半減にもかかわらず、1発目で198〜233、2発食らうと396〜466で確定1発(キマワリのHPは150)。最後のカモネギのリーフブレードは体力半減ガラガラを中乱数で仕留めます。

さて、次はいよいよ決勝戦。ポケモンリーグの優勝者は、その後の結末は。そもそも相手は誰なんだ。私も全力を尽くしますので、どうか最後までお付き合いください。

あつあ通信vol.65、編者あつあつおでん


- 関連一覧ツリー (★ をクリックするとツリー全体を一括表示します)

- 以下のフォームから自分の投稿記事を修正・削除することができます -
処理 記事No 削除キー