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  [No.691] 第53話「運命の夜」 投稿者:あつあつおでん   《URL》   投稿日:2011/09/03(Sat) 14:37:59   61clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


「よ、ようやく着いた……。コガネシティ、決戦の地だ」

 深い深い森を抜けた先には、見覚えのある光景が広がっていた。なだらかな平地に穏やかな川の流れ。2本の川の間にはいつか訪れた広大な屋敷が鎮座している。これこそ、半月以上前にダルマ達が宿泊したがらん堂である。6人は遂にコガネシティに到着したのだ。日はとっぷり暮れていたが、ダルマの目は達成感に満ちていた。

「まだ油断はできないよ、がらん堂を退治するまではね」

「わかってますよ、ワタルさん」

 ダルマはタオルで額の汗を拭った。セキエイからフスベに行く時もしたが、やはり山越えは普通の旅人には厳しいものであったようだ。

「よし、じゃあまずは手近ながらん堂から攻撃しましょうか。もう目と鼻の位置にあるからね」

「だ、大丈夫なのですかワタル様? がらん堂は相手の本拠地、守りも強固なのでは?」

「ああ、それなら心配いらない。向こうは僕達がキキョウにいると思っている。僕達の討伐に人出を割いているなら、残っている人数はそう多くないはずだ」

 ワタルは自信を持って断言した。その視線は、がらん堂を捉えている。ダルマ達はワタルの指示を待った。

「……では、これより全速力でがらん堂に突撃します。遅れないでついてきてください」

 ワタルの言葉を受け、各々は静かに頷いた。ワタルはそれを確認すると、まず1歩踏み込んだ。

「行くぞ、出発!」

 ワタルの叫びと同時に、6人はスタートを切った。月明かりだけが辺りを照らす夜に、くたくたながらも疾走する集団。洗脳電波に影響されたコガネ市民とて、これに気付くことすらかなわない。一方ダルマ達は、ボルトお手製の妨害電波発信バッジのおかげで快適に進む。

 そうして数分が過ぎ、いよいよがらん堂の入り口が視界に飛び込んできた、まさにその時。物陰から3人の若者が現れ、道をふさいだ。ワタルが怒号をあげる。

「お前達は何者だ、そこをどくんだ!」

「……おやおや、チャンピオンともあろう方がそこまで焦るとは」

「なんだと?」

 3人のうち、真ん中の1人が前に出た。そしてこう名乗り出た。後ろの2人もそれに続く。

「お前達は何者だ! と聞かれたら」

「答えてやるのが世の情け」

「愛と真実と正義を貫く」

「ラブリーチャーミーな救世主っ!」

「パウル!」

「サバカン」

「リノムッ!」

「銀河を駆けるがらん堂の3人には」

「ホワイトホール、白い明日が待ってるぜっ!」

 名乗り口上が終わった。ダルマ達はさりげなく別の道からやり過ごそうとしていた。3人はそれに突っ込みを入れる。

「こら、待ちやがれっ! この神軍師から逃げられると思うなっ!」

「……やれやれ、またあなたですかリノムさん。マダツボミの塔以来ですね」

「サバカンか、久しぶりだな。発電所では遅れをとったけど、今回はそうはいかない」

「ぱ、パウル様……やはり戦わねばならないのですか?」

 ダルマ、ワタル、ユミはそれぞれ、思うところを述べた。リノム、サバカン、パウルも返答する。

「あ、お前はキキョウで会った奴だなっ! お前も他の奴らもぎたぎたにしてやるぞっ!」

「……またしても某の邪魔をするか、チャンピオンよ。貴殿とは決着をつける時分のようだな」

「……久方ぶりだね、ユミちゃん。君が考えている通り、俺達がらん堂と君達は戦わねばならない。残念ながら、ね。君のような才能ある少女に手をかけるのは俺の、がらん堂の信条に反するけど、俺達のやり方に反対するなら致し方ない」

 3人のうちの中央に立つパウルは軽く頭を下げた。背後で様子を見ていたリノムとサバカンは、じりじりとダルマ達との距離を詰める。

「ここで総力戦というのも悪くない。けど6対3は2対1とは違う。……皆さん、作戦を変更します。各員分散してください」

 ここで、ワタルから作戦変更の号令が出た。これに慌てたダルマは、その意図を尋ねた。

「ワタルさん! これはどういう……」

「大丈夫だ。僕達はセキエイを発った頃の自分じゃない。必ず勝てる。さあ、早く散るんだ!」

 ワタルの鬼気迫る表情に、ダルマは思わず腰が引けた。しかしすぐに脇道へ目を向け、一目散に闇夜へ消えていった。これを受け、他の4人も蜘蛛の子を散らしたように分散した。最後にワタルもカイリューを繰り出し、夜空へと逃げていった。

「くっ、まどろっこしい。サバカンとリノムは奴らを追跡してくれ。俺もすぐに加わる」

「合点」

「任せときなっ!」

 パウルの言葉に従い、サバカンとリノムも路地裏へ足を踏み入れていった。それを見届けたパウルは懐からポケギアを取り出し、電話をするのであった。

「……先生、奴らを発見しました。人数は6人ですが、中々手強そうな布陣です。ですから、彼に援軍として来るよう伝えてください。……はい、了解しました、では後ほど」



・次回予告

家屋に隠れながら西へ進路をとるボルトであったが、がらん堂幹部の1人に見つかってしまう。彼は見事撃退することができるのか。次回、第54話「ギャンブルゲーム前編」。ボルトの明日はどっちだっ。



・あつあ通信vol.34

遂に! 最後の戦いが始まりました。構想開始から実に4年近くかかりましたが、ようやくここまでたどり着きました。まあ、話の半分はここ1ヶ月で書いたのですが。

このがらん堂との激突で、残された謎が全て明かされます。また、バトル方面もよりハイレベルな戦術や立ち回りを繰り広げます。是非ともご期待ください。 


あつあ通信vol.34、編者あつあつおでん


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