マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ
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  •   [No.3355] ゲームノマカプ詰め 投稿者:焼き肉   《URL》   投稿日:2014/08/26(Tue) 23:13:56     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ノマカプ】 【短編

     ゲームやりながらカタカタしてたものが溜まって来たのでこの場をお借りさせて頂きます。上からチェレン×ベル、ヒュウ×メイ、カルム×セレナです。


      [No.2535] 無邪気に願おう 投稿者:   投稿日:2012/07/29(Sun) 09:57:49     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]



     この世界には、ジラーチというポケモンがいる。
     ジラーチというポケモンは、本来ならば千年の内、七日しか活動できないという。とはいっても、個体数自体はそれほど少なくはないため、一年に一度はどこかでジラーチが活動しているというのだが、発見された際はポケモンレンジャーなどにより丁重に保護され、公募で願いを決めるため、運に恵まれない一般人がお目に掛れる機会は少ない。
     だが、そんな俺達でも願いにあやかれるチャンスもなくはないようだ。何でも常に活動し続けるジラーチが、とある場所にいるのだという。
     その場所というのは、ごく普通の観光地の付近。観光地としてのそこは、美しい滝と美味しい空気が味わえる竹藪や、その付近にある戦死者供養のための寺院とそこから見下ろせる俯瞰ふかんが美しい、風光明媚*1な場所である。腕が六本と顔が三つあるゴウカザルの像がここの一つの目玉だが、お目当てはもう一つの目玉。戦死者供養のため、戦死者の魂が宿るというヒトガタが大量に展示された寺の構内は壮観である。
     粘土で作られた物や、兵士たちの防具で作られた物。古くなった鍋や食器で作られた物。木の破片で作られたものもあるし、布で作られたものもある。素材も大きさも無秩序に作られたそれらが、朽ち果てながら戦争が終わった国の行く末を見守っているのだ。

     記録の上では、ここは数百年前にジラーチが目覚めた場所らしく、その当時この地域は豊作に沸き立ったらしい。
     そして、そのジラーチはこの寺院の僧に見守られながら、静かに眠りについたとされているのだが。出所の知れない都市伝説のような噂によれば、ここ。正確にはここの付近にはまだ別のジラーチの個体がいるのだと言われている。
     それが、件の常に活動し続けるジラーチだそうだ。寺院のある山を越え、霧の深い山奥、俯瞰から臨む立ち込めた雲海。ここから先に行くと、リオルの足で一日ほどの距離、人の住む場所はない自然の要塞が立ちはだかっている、広大な土地がある。
     噂の域を出ないこの場所は前々から気になっていたのだが、先日夢の中で『僕はここだよ、誰か僕を迎えに来てよ』と呼ばれた気がしたことが決心したきっかけだ。退屈を打ち壊すには丁度いい。
     ジラーチの願いの力を求めて踏み入る者がいるこの場所は毎年遭難者も出ているという噂で、観光がてらの冒険をするには、素人には少々危険かもしれない。一応、それなりに旅の経験を積んでいる自分なら大丈夫だろう、なんて考えで私は歩みを進めていた。


     ここらへんは地磁気が乱れて方角が分からなくなるとかそんなこともないし、天気が変わりやすい山の中とは言え、嵐や洪水などの天候の変化は起こる季節ではない。食料は予定の滞在日数の倍以上持ってきたし、いざという時のために空を移動できるポケモンだって連れてきている。
     準備を万端にして、自分はジラーチを探し求めた。眉唾物の噂だけれど、こんなところだからこそ冒険心をくすぐられる。リングマ避けの鈴を鳴らしながら、履きなれたブーツで腐葉土を踏みしめ、道なき道を行く。降ってくる蛭ヒルや、蚊との格闘を経て、傷のついた幹のあるマニューラ達の縄張りを迂回しながら、私はあてもなく目的の場所を探す。

     連れてきたエアームドにも協力してもらい、上空から探してもらったりもしたが、生憎それらしき場所は無し。昼や霧が出ていない時は発煙筒、夜は多少空けた場所で指示灯*2を使い、私の元に帰って来る時には、相棒のエアームドは毎回申し訳なさそうな顔をしていた。
    「そんなにしょげるな。私もそう簡単に見つかるとは思っていないさ」
     霧を浴びてしとどに濡れた鋼鉄の体を指で拭い、私はエアームドを労う。目を覆う透明な膜があるから、目にゴミが入ることの無いエアームドだが、流石に膜に水滴がつくとうっとおしいらしい。顔を撫でて水滴を拭ってやると。光沢のある体から伝っていく水滴が腐葉土の地面に落ちて、目を覆う膜も視界がクリアになる。
     視界がクリアになったエアームドは、私に労ってもらえて嬉しいのか、甘い声で鳴いては頬ずりをしてくる。尖った場所で私を傷付けたりなんてしないように、滑らかな曲線を描く部分で優しく、花を愛でるように。
     水で滑る冷たい金属の感触を味わいながら太陽の位置を見る。曇っていて定かではないが、時計を見る限りではもう夜は近い。そろそろ野営の準備を始める時間帯だ。
     なあに、予定の時間はまだまだあるさ。たとえジラーチが見つからなくとも、こうしてポケモンと一緒に過ごす時間が楽しいのだ。旅と冒険の面白さってものは、これだからやめられない。


     そうして、あと二日して何も見つからなければ帰ろうと思っていた日であった。どこかで捕まえたコラッタを咥えて戻ってきたエアームドが、またどこかへ飛んで行ったかと思えば、またすぐに戻ってくる。何事かと思って問いかけてみても、エアームドは喋られるわけがないから答えないが、答える代わりに彼女は私へ背中に乗れと促してきた。背中に乗せるとバランスが崩れやすいので、いつもは嫌うはずなのだが、短距離ならば私としては乗ったほうが楽……つまり、エアームド曰く、近くに何かあるということらしい。
     何を見つけたというのだろうか。まさかと思って、そのまさかであった。
     小さな洞窟。十数メートルも奥に行けば行き止まりにたどり着いてしまった場所ではあるが、不思議と明るいその洞窟の奥には、黄色い衣に包まれた赤子のようなポケモンがふわふわと中空に浮いている。黄金色、星型の頭部から垂れ下がる、青緑色の短冊。雪のようなに真っ白な肌に映える涙模様。ちんちくりんな手足を生やした胴は、今は衣ころもに包まれて見えない。
     それは紛れもなくジラーチであった。そのかわいらしさだけでも見に来た価値はある……けれど、やっぱりこの子を見たからには、願い事をしないと損じゃないかと私は思う。

     私は淡く光るその子(恐らく自分よりもはるかに年上だが)の元に近寄ってみる。洞窟の砂利を踏み締める音、霧によって発生した水滴が滴る音、心臓の音が痛いほどに聞こえてくる。ジラーチに触れてみると、鋼タイプだという事が信じられないほどに柔らかな頬。赤ん坊と同じ、まるで大福をつついているような指ざわりで、餅肌という言葉の意味がよくわかるというものだ。
     その指をたどって金色の頭部に触れてみると、そこは流石に柔らかくないらしい。きちんと金属質であることを感じさせる硬さと質量。ちょっと指で強く抓ってみたが、簡単には変形しそうにない硬さであった。
    「うーん……」
     そんなことをしていたせいなのか、流石にねぼすけのジラーチも起きてしまったようだ。黄色い衣に包まれていた体は露わになり、小さな手足が顔を出す。纏っていた衣はマフラーのように垂れ下がり、そうして腹にある真実の目と呼ばれる第三の目も確認できた。
    「だれ?」
     寝ぼけた口調、寝ぼけまなこでジラーチが問いかける。
    「マルク。私の名前はマルクって言うんだ。よろしくな」
    「マルク……ふぅん、よろしくね。僕の名前は、シャル・ノーテ。シャルって呼んでね」
    「あぁ、よろしく、シャル……驚いた、昔話の通りの名前じゃないか」
     シャルは浮き上がったままこちらに向き直り、まだ眠そうに目を擦って私の存在を認める。名前も覚えてもらったところで、さてどうしよう。

    「ところで君、何の用?」
     そんなことを思っている間に、シャルは私に質問してきた。
    「な、何の用……かぁ。なんというか、ここにずっと活動し続けるジラーチがいると風の噂で聞いたから……ダメ元で探しに来てみたんだけれど……意外といるものだね。幻のポケモン」
    「あぁ、まぁ……僕も、ここにいることはみんなに秘密にしてもらっているからねー。だから、噂が噂の域を出ていないってことは、みんな僕との約束をきちんと守っているっていう証拠なのかなぁ……」
    「そんな約束を?」
    「うん、誰かに喋ってしまえば、願いは叶わなくなるってね……それに、願い事を独占しようとしちゃダメ。僕をゲットしたりしようものなら酷い目に合うよ」
     最後に言い終えると、シャルは目を擦り終え、大きくあくびをして空中で伸びをする。
    「その代わり、誰にも喋らなければ、願いは叶うって。そういう風に約束したんだ」
     あくびを終えたジラーチは、口調もはっきりとして、可愛らしく微笑んだ。
    「だから、君も同じ……」
     そう言って、シャルは空中で宙返り。
    「君には願い事はあるかい? 僕が何でも叶えてあげる」

     そして、シャルは甘えるかのように私に抱き付いてきて、上目遣いをする。幼児性愛の趣向はないが、これは純粋にかわいいと思わざるを得ない、天使のような愛らしい表情だ。こんな目で見ていると、相棒のエアームドが嫉妬しないといいんだけれど。
    「なんでも、いいのか?」
     なんでも、と言われると困る。やりたいことは色々だ……恋人が欲しいとか、長生きしたいとか……あー、でも、やっぱり私はこうやって冒険をするのが性に合っている。そうなると、冒険をするには先立つものが必要なわけで、今の会社の安月給では有給休暇の都合もあるし、あまり回数を期待できないのだ。
     そうなると、そうだな。お金が欲しい……お金が目的になってしまうのはいけないが、お金はあくまで手段である。そうだ、大金を手に入れた暁には、エアームド以外の他のポケモンとも一緒に冒険したいものだ。仕事なんてやめて、自由気ままに諸国を回る……うん、これは夢のような生活だ。
    「そうそう、僕の願い事で出来ないことはね、願いの数を増やすこと。まぁ、これは基本だよねー」
    「確かに、それは基本だよな。大丈夫、私もそんなことを頼むほど強欲じゃないから」
     ベタな話だが、よくある話だと私は笑う。
    「そして、規模が大きすぎる者は無理なんだよね」
    「例えば?」
    「地震を起こせとか、隕石を落とせとか。その現象を起こすのに、多大な力がいる願いも、僕は出来ないんだ……でも、風が吹けば桶屋が儲かるようなことを利用すれば出来ないこともないと思うけれどね。
     でも君が願えば、ポケモンしかいない異世界に旅立つことだって、ポケモンに変身することだって出来る。どんな突拍子もない願いでも言ってみなよ、言うだけならタダだから」
     風が吹けば桶屋が儲かる。他にも、アゲハントが飛ぶと地球の裏側では竜巻が起こるというようなことわざもあるが……ふむ。きっかけを与えれば、大きなことが出来るというような方法ならば不可能ではないのだろうか。よくわからないが、そういう事なのだろう。
    「じゃあ、私が抱えきれないほどの大金を手にしたいって言う願い事を頼む場合は?」
     それだけあれば、体が動くうちは旅道楽にも事欠かないはずだ。ポケモンとずっと一緒に居られるのも楽しみだ。

    「あぁ、その程度の願いなら簡単。でも、その程度でいいの? もっともっと億万長者にだってなれるよ? 自分がポケモンなるとか、そんな夢だってかなえられるさ」
     シャルは私に抱かれながら。上目づかいで問いかける。傍らで佇むエアームドも私の方をじっと見ており、人生を決めるかもしれないこの選択に私は息をのむ。
     億万長者というのは確かに夢のようだ。そういった夢が叶うのならば、その選択肢の方が良い願いなのかもしれないけれど……やっぱり、私はポケモンと一緒に道楽に浸っていたい。
     あんまり多くを望みすぎると罰が当たるし……うん。抱えきれないとかはちょっと贅沢かもしれないな……まぁ、一生冒険するのに困らない程度のお金が手に入ればいいさ。
    「構わないよ。やってくれ。一生冒険するのに困らないくらいでいいから」
    「うん、分かった」
     シャルはそろりと私の胸から離れ、真実の目を開く。その小さな体には不釣り合いなほど大きな目が開かれると、少々グロテスクな容姿に見える。マフラーのような部分や、頭から垂れ下がる短冊は縮れて先端が震えていた。
     シャルが構えた両手の間にある空間にはほのかに光が灯っている。その光は最初こそぼんやりとしたものでしかなかったが、徐々に洞窟を照らすほどの煌めきを得たかと思うと、その光は洞窟の天井をも無視して天空に打ち上げられて消えてしまった。
    「うん、これで大丈夫」
     嫌にあっさりと終ってしまったような気がするが……これで、大丈夫なのだろうか?
    「それじゃあ、僕は寝るよ……」
    「え、ちょ……」
     まだ話したいことがあったのだが、そんなこと知るかとばかりにシャルはそう言って眠ってしまった。私が発見した時と同じように、黄色い衣に包まれた赤ん坊のような姿で眠りこけて……起こそうと思えば起きたのかもしれないが、それは止めた。
    「誰かにこの場所を教えると、願いは叶わなくなるのだっけか……」
     そんなことを呟きながら、私は後ろ髪をひかれる思いで街へ向かって歩き出した。


     数週間たって、私は宝くじを購入して夢を見ながら、日常生活に戻っていた。いまだジラーチにした願い事が叶う気配はなく、日々は穏やかに過ぎてゆく。
    「しかし、なにも起こらないなー……アレは夢だったのだろうか」
     会社の昼休みの最中。弁当箱をごみ箱に捨てながら私は呟く。そんな時、私の元に突然ニュースが流れ込んできた。
     この国が核を含むミサイルの標的となったこと。そして、そのミサイルの行方を見守っていると、対応しきれないほど多くのミサイルによる飽和攻撃で撃墜に失敗して、この国が炎に包まれたと。

     意味が分からなかった。だが、全てのテレビ局がそのニュースを報じ、実質的な被害を受けたと思われるテレビ局のみが砂嵐となって黙している。被害にあった地域の惨状は想像だにしたくない。
     ミサイルを放った国は、当然のように国際社会から厳しく糾弾されたうえ、自国内で大規模なクーデターが発生するなどして、その国は権力のトップに立つものが悉く処刑される。瞬く間に、周りの状況が一変していった。
     結局、相手国の国際的な責任問題や賠償などの問題もうやむやになって(というよりも、払えるわけがなかった)私の住む国と共に、仲良く経済が崩壊してしまうのにも、そう時間はかからなかった。なんせ、こちらは主要都市や港、空港が壊滅し、汚染され、復興は不可能と断ぜられたのだ。あらゆる経済が死に絶えたことで、街は失業者が溢れ、通貨は紙切れになっていた。
     そう、核ミサイルを放つというのは大事おおごとかもしれないが、国のトップの人間の思考をちょちょいと操作するだけでも簡単に出来るのだ。催眠術の才能は必要なのかもしれないが、ジラーチにはそういうことは難しい事ではないのかもしれない。
     数年のうちに、私たちの国は先進国の枠組みから外れ、治安も悪くなった。かつてはポケモンが出現するから危険だと言われた草むらなんて可愛いもので、今や街こそポケモン無しに歩けば、食料か、金品か、貞操か、命か、何かを奪われる危険な時代だ。そして、たびたび起こる過剰なインフレの影響で通貨の信用がなくなった我が国では、電子マネーも機能せず。
     手渡しの給料は、とても抱えきれるものではなかった。


     私はあまりに浅墓だった自分を呪いながら、こんな危険なジラーチを駆除してしまわなければと、私は再びあの場所へ向かう。
     近所の人やポケモンレンジャーに話してみたが、誰も信じてくれなかった。こうなりゃ私達だけでやるしかない。
     だがおかしい、同じ季節のはずなのに、霧が前よりも極端に深いし、一瞬たりと晴れてくれない。
     ここらへんは核の影響を受けていないはずなのに、こうまで気候が変わるはずがない。
     それだけじゃない、コンパスが狂っている。前はそんなことなかったのに。もちろん携帯電話も通じない。
     エアームドが帰ってこない。位置を知らせるための発煙筒も使い果たした。
     食料が半分ほどになった頃には時計が二周しても夜が明けなくなった。
     食料が残り少なくなった頃には、星と月が消えた。
     懐中電灯の明かりで気分だけでも明るくしたが、指示灯の電池を流用しても、電池が尽きた。
     自分の手さえ見えない、目を閉じているのか開けているのかすらわからない無間の闇の中で、私は毎年遭難者が出る意味がわかった気がする。
    「君のお願い通り、一生冒険をするのに困らなかったみたいだね。満足したかい?」
    「誰か……食べ物……」
     そして私が最後に願ったのは、食料が欲しいという願いであった。
    「はい。骨も体表も鋼鉄だから、硬くて鉄臭くて食べ難いかもしれないけれどね」





     ジラーチは、願いをかなえる時に、大量の呪いを必要とする。恨み、嫉妬、嘆き、悲しみ、それらが生み出す呪いの力がジラーチの原動力。それを知った人間は、呪いを集めるまでもなく、最初から持ったポケモンをジラーチに変身させてと、そう願った。
     戦死者の魂を供養するための憑代として、集められたヒトガタに宿った僕を、ジラーチに変身させてと願ってしまった。でも、呪いというのは、大半はジラーチの力だけでも浄化して願いの力に変えることが出来るが、ジラーチだけでは決して浄化できない呪いもある。そういった呪いは、ジラーチが千年眠っている間に魂だけを宇宙に飛ばして強烈な太陽の光に当てて浄化する。そういうものだったんだ。
     僕は、元がジュペッタだったおかげで眠ることも出来ずに、微睡むことしか出来ず、そのおかげでいつでも人の願いを叶え続けることが出来た。
     そして、願いを叶えるごとに体内の綿に染みこんだ憎しみや恨みによって生じる呪いも減らし続け、やがてジュペッタを作ることも出来ないくらいに呪いは枯渇した。しかし、ジュペッタから生まれた僕は、ヒトガタに込められた呪いを受け取ればまた願いを叶えられるようになる。
     そこまでならば、良かった。少なくとも人間にとっては、そこまでは完ぺきだったのだと思う。

     今では、寺院に届けられるヒトガタを盗み、それから呪いを受け取ることでいつでも願いを叶えられる。それと引き換えに、僕の中にある浄化されることの無い大量の穢れが悪さをするのだ。千年待つとか、厳しい試練だとか、そんなものも無しに願いがかなうなんて甘い話は元から無いのだ。
     綿に染みこんだ呪いが全て消えた時、自分は姿を消してしまったほうがいいのかとも思った。けれど、眠ることが出来ず、魂を宇宙に送ることも出来ない僕は、浄化できない穢れを抱えて地上に留まるしかない。自殺するのも怖くて出来なかった。そうこうしているうちに、僕はパラセクトのように、自分以外の何かに突き動かされるようになった。
     僕の中で混沌と渦巻いている呪いという名の穢れは、日の当たらない霧の中で、いつまでたっても宇宙に流せず、太陽の光で浄化出来ず、僕を突き動かすのだ。

     『敵国の人間はみんな死んでしまえ』とか、『私達を地獄に落とした奴らを許しちゃいけない』とか、『どうせ死ぬならお前らも道連れだ』とか。人間も、戦争に巻き込まれた人間以外の者たちも願ったそれは、永遠に消えることなく今も僕の内にある。
     自分でやっておいて言うのもなんだけれど、だんだんと願い後に訪れる災害も悪化している。


     これでまた、どこかで人間に対する憎しみが生まれる。ヒトガタが送り込まれる。そのヒトガタから得た呪いは、浄化出来るものも浄化出来ないものも僕の内に溜まるだろう。もう、人を根絶やしにしなければ収まらないくらいの呪いが、急速に加速し、僕の中で牙を研いでいるのだ。
     その穢れに、呪いに、僕が突き動かされる事を邪魔する者がいるならば、僕を危険視したアブソルだろうと、僕を疎んだ人間だろうと、神だろうと、あらゆる手段を用いて殺してやる。
     脅威が去った後は、また人間をここに誘ってやればいいさ。
    『僕はここにいるよ。だれか、僕を迎えに来てよ』
     誰かの夢に向かって、そうささやきながら。






    ----
    あとがき


    もともとは、例のwikiで『甘い話なんてない』というテーマで書いた作品なのですが、なんと言うか、そのお話の前日談も浮かんできてしまったために、同時期に行われていたオタマロコンテストにも応募してみたという感じです。
    どちらもひとつの物語として成立するように作っているため、『無邪気に願おう』では『霧の中のジラーチ』の内容を復習するような感じになってます。
    主催者様を始めとして、ハッピーエンドだと思った人たちに衝撃を与えることが出来て、私はとても満足です。猿の手、消えたアブソル、眠らないと魂飛ばせないのに眠れないジラーチと、伏線をちりばめておいたけれど、バッドエンドにならないのが不思議に思った人はあんまりいなかったですねw

    参考にした作品は、もちろん猿の手。腕がいっぱいあるゴウカザルの像とか、ジラーチの名前で、オマージュさせてもらいました。


    【何をしてもいいのよ】


      [No.2534] 霧の中のジラーチ 投稿者:   投稿日:2012/07/29(Sun) 09:51:19     73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     霧の深い山奥にあるここは、空気がとても美味しかった。
     少々高いところにあるために空気は薄いが、深呼吸するだけで肺の中が洗われるような気分だ。崖を見下ろす線路に揺られ、ところどころ塗装の剥げたプラットホームに降り立つ。蚊との死闘を経ながら舗装されていない道を踏み締める。腐葉土の香りが鼻をくすぐった。
     途中、遠くに見える橋をショートカットするべく谷を相棒のエアームドに乗って飛び越え、臓物が縮こまりそうな谷底の深さに息をのむ。
     歩いて行ける場所にある、滝のしぶきがもろに降り注ぐ場所で水の香りを楽しんだ。そこで見た目も眩むような絶景は、滝が水の塊でなく飛沫を通り越し霧雨になるほどの高さである。
     そこからさらに歩いて登ったところにある竹藪。そこには最後の休憩所があり、ロープウェイを使わずに来た物好きな観光客の疲れを癒すための甘いお菓子とお茶が購入できる。そこで得られる甘味に舌鼓を打って、眼前の石階段を眺める。歩く気力を削がれるような石階段の先に、目的の場所はあった。

     表面に苔、石の隙間から雑草が生え放題の石畳の階段は、大抵霧が立ち込め表面も湿っている。登って行くうちに、霧の水滴なのか汗なのかわからなくなるほど体が熱くなり、頂上にたどり着くころには服がびしょ濡れだ。
     重い荷物を背に乗せた私は、息も切れ切れ。思わず、ベンチでもない苔むした岩に座り込んでしまった。美しい緑色の苔を指で撫で、イーブイがリーフィアにでも進化できそうだなと考えながら、火照った体から熱を逃がす。汗は乾いてくれそうにないが、空気が冷たいので休んでいれば熱は逃げる。
     呼吸も整い、熱も冷めてきた私は、時計についた水滴を拭って、時間を見たところで立ち上がる。
     徐々に首の角度を上げながら歩き、出てくる客と正面衝突しないように見上げながら朱色に塗られた城壁のような分厚い門をくぐった。いや、ここは実際に城壁だったというべきか。分厚く高い壁、そして極端な角度の坂。空を飛べるポケモンでもなければ、正面の石段からしか攻められないここは、戦乱に巻き込まれた民間人たちが避難に来るような場所であった。
     寺には、チャーレムやサーナイトと共に瞑想を続け、修験に励む修験僧たちが多数在籍しており、地形の助けもあって軍隊とてそうやすやすとは攻め入れない。今でこそ、景色の美しさと建物の荘厳さを仰ぎ見るための観光名所だが、かつてはここが生命線となった者も多いとか。

     拝観料を払って門をくぐったその先には、今でもチャーレムがいる。と、いっても観光客の訪れる公衆の面前で瞑想や断食をしているようなこともなく、ポケモンには不釣り合いな大きさである人間用の竹ぼうきを、サイコパワーで操りながら落ち葉の掃除をしているだけである。
     その子に会釈をして、石畳の上を歩く。漆喰の塗られた壁の高さと瓦の連なりを見ながら、内部へ。寺院の真ん中にある、腕が六本と顔が三つあるゴウカザルの像を拝顔し、かつて僧たちが断食の苦楽を共にしたという一室や、外部のならず者を探すための見張り台などを見て回る。

     そうして一通り回ってみて、最後に残したのがここの目玉となる場所である。屋根のある石畳を土足で突き進むと、下り階段が顔を覗かせた。
     天井は固めた粘土がむき出しで、そこから電気のランプが灯る。電線を引っ張って灯された橙色の頼りない光に照らされた、足元が闇にまぎれる手すり付きの階段を下り終えると、土臭く湿っぽく、僅かにかび臭い空気の中に、不気味に浮き上がるヒトガタ達。粘土で作られた物や、兵士たちの防具で作られた物。鍋や食器で作られた物。
     木の破片で作られたものもあるし、布で作られたものもある。素材も大きさも無秩序に、そして無造作に置かれたこれらは、戦死者供養のためのヒトガタである。ここにたどり着く前に死んでしまった家族や友人を供養したいと申し出た者たちが思い思いの素材で作ったものだ。
     それが行われた当時に作られたものは、一部の素材の物を除いて朽ち果てているが、今でも持ち込まれたヒトガタを、随時受け入れこうして安置しているのだ。

     この国ではデモ行進や暴動が度々起き、その度に死者が出る。そういった機会に、当事者の家族がわざわざ来ることもあれば(デモを起こすのは大抵が貧民なので、わざわざこんなところに訪れる暇や路銀の関係で、当事者の来客は残念ながら非常に少ないが)それらの事件で心を痛めた人が勝手に供養を申し出ることがある。
     戦場カメラマンなどがここを訪れることもあり、ここには新しいヒトガタが絶えることはない。風景の美しさも相まって、戦死者供養寺としても観光名所としてもそれなりに賑わっている場所だ。
     私は、時計を見る。この寺院の開放日は、定期的にここのお話を聞かせてくれるイベントがあり、もうそろそろその時間である。
     寺院の職員がベルを鳴らす。袈裟を着た坊主頭の僧が、揺れるロウソクを燭台に乗せて、しずしずと現れた。
    「今日は、我らが寺院にお越しいただき、ありがとうございます。ただいま十二時を回りましたので、こちらに飾られたヒトガタと、それに関する逸話の紹介を行いたいと思います。お越しいただいた皆様は、携帯電話の電源を切り、また録音器具や撮影器具なども電源を入れることなく、御清聴をお願いします」
     当然、この場所は撮影禁止で録音も禁止だ。メモや絵を残すことまでは禁じていないが、当然の決まりである。建前としては、『戦死者たちの霊がそういうのを嫌うので』だが、大部分の理由は商売への影響が出るという事もあるのだろう。
    「さて、皆さん。準備はよろしいでしょうか? それでは、始めましょう」
     ある程度は聞き及んでいるこの場所に伝わるお話。地下室に響く生の語り部の声に、私は改めて耳を傾ける。



     時は、まだポケモンが超獣と呼ばれていた戦乱の世。農民たちは、若い者が戦に駆り出され、税として収穫を横取りされ、時には飢饉などが襲ってきて、その度に飢えに苦しんできた。戦争に巻き込まれると、田畑を踏み荒らされたりはまだいい方。酷い時には、冬の季節に敵に補給や休息を取らせないための焦土作戦で、家や田畑、森の木などを丸ごと焼き払われたこともある。
     そうして、何もかも失って農民たちは多くが死に至る時代。この寺院が注目されたのも、そんな時代だった。
     この寺院は当時、攻めにくい地形のこの場所で農作物を育て、自給自足の生活をしながら日々研鑽を積んでいた。俗世から離れた場所にあったここは、存在こそ知られていても訪れる者はほとんどなく。住処を失い故郷を離れた者たちでここにたどり着いたのは僅かであった。
     このご時世だ。あまり多くは無理だが、寺の者は部外者を受け入れるのは慣れている。断食の経験も少なくないため、突然の来客で食事が少なくなろうとも、何ら不満は漏らさずに温かい食事を提供した。だが、それにも流石に限界があって、受け入れたはいいものの食事がなくなって結局、避難民が飢えの果てに死んだり、僧が真っ先に死ぬまで断食を敢行した事もある。
     そうしたことは一度や二度ではなく、ある時死んでいった子供を供養するために親がミミロルのぬいぐるみを作った事がきっかけで、戦死者供養が始まった。避難しに来た者や、それに関連する死人が出た際、放っておけば死んでしまうような怪我人や病人、子供や老人を故郷か道端かに置いて来た際には、誰ともなくヒトガタを作って供養するようになっていった。
     ヒトガタと言いつつも、前述のとおりミミロルの様な可愛らしいぬいぐるみが置かれたこともあるが、供養するという目的に変わりはない。せめて、戦乱に巻き込まれ、無念のうちに死んでいった者たちが安らかに天道へ導かれるように。それを願って、どんどんとヒトガタは増えてゆくようになったのである。

     だが、戦死者の供養というものはそこに魂がなければ意味がなく、そのためなのか、このヒトガタにも魂が吸い寄せられる。それらはもちろんこのヒトガタ達の目的である戦死者やそれに準ずる者たちのそればかりで、魂は皆一様に穢れていた。
     戦争が終わって欲しい、平和な世の中が欲しいと前向きな思いを残して死んだ者はまだいい。そういった者は、悲しみを癒してやれば、穢れも浄化してやがて風に溶けてゆく。だが、誰かを殺してやりたいとか、復讐してやりたい。そして、生き残った同胞に嫉妬し、道連れにしたいと思って死んだ魂は、程度によっては性質が悪くなる。
     憎悪の念を抱えて死ぬことで穢れた魂は、簡単なもので病を呼んだり、事故を呼び込んだりといった疫病神に成り下がる。それですら怒りが治まらなかったり、似たような境遇、想いを抱えた魂と集合した場合は、非常に強い怨念となってヒトガタに宿ることがある。非常に凶暴なジュペッタとなって、この世に出るのだ。

     本来は、大切にされたぬいぐるみに宿った魂が、捨てられたことで悲しみや憎しみを抱き、それが憎しみの感情に惹かれたカゲボウズと触れ合うことでジュペッタとなるものだ。そのジュペッタはぬいぐるみの思い出と憎しみを受け取って本能的に元の持ち主を探し回るが、そういった本来のジュペッタが憑依するぬいぐるみには根底に愛がある。
     愛を受けたからこそ、それを捨てられた憎しみや悲しみが生まれるのだ。
     けれど、ここで生まれたジュペッタたちには、憑代となったヒトガタに愛なんてものは欠片も存在せず、あるのは憎しみに塗れた魂のみ。死ぬときに誰かを強烈に呪った魂は、その想いだけに偏重し、生前人間だったころに受けた愛も、友情も絆も全て忘れてしまっている。
     結果、新しいヒトガタを安置しに来た僧を無残に殺してしまい、寺院に在籍していた僧兵やチャーレムなどで鎮圧するだけでも、手酷い怪我を負ってしまったものだ。鎮圧するだけしたはいいが、殺してしまっても、結局呪いはここに燻ってしまう。それどころか、他のヒトガタに乗り移ってしまえばさらに呪いが凝縮されて厄介なことになりかねない。
     結局、そのジュペッタはポケモンたちの力で急造で掘り進めた地下室の中へ厳重に封印された。丈夫な縄に経文を刻み、呪符を用いて幾重にも結界を張り封じ込めた厳重な警戒の元で、ジュペッタは動くことも出来ずに縛り付けられる。その状態では憎しみは癒えるどころか増すばかり。根本的な解決にはならなかった。


     その騒動で傷を負った僧たちも怪我が癒えた、ある日のことである。この地に凶星(まがつぼし)が落ちた。この地域では、流れ星は凶兆とされており、それがこの地に落ちたという事で、住人達は大きな不幸の到来を予想していたのだが。不思議と、邪気のようなものを感じることはなく、超獣たちは怯えるどころか、むしろ星が落ちた場所へと興味深げに視線を向ける始末である。
     この辺にも生息しているはずのアブソルは、ジュペッタの時こそ寺院の周りにワラワラと集まって激しく威嚇してきたが、凶星が落ちても騒ぎ立てることがないという事は、凶兆というのはもしかしたら全くの杞憂なのかもしれない。
     何があったのかといぶかしげな寺院の者たちは、超獣を二匹と人間を二人派遣して、問題の場所を探ることとなった。寺院の入り口となる巨大な階段の反対側には、リオルの足で一日かかる距離、向こうに何もない山脈が広がっている。

     その広大な山脈の樹海を踏み入った先に見たのは、黄金色に光る星型の頭部を持った超獣であった。
     首から下が布に包まれているような見た目で、星型の頭部には青い短冊のような器官。目の下にある涙模様や、陶器のように白い肌が特徴的な見た目のその超獣。子供に化けた妖魔のたぐいだと疑わなかったわけではないが、どうにも連れてきたチャーレム達の様子を見る限りでは、全く敵意もないようだ。普段は警戒して他の超獣に接するはずのチャーレムが、ほとんど無警戒に近寄ってゆくさまは、僧たちも困惑した。
     二匹のチャーレムは、すやすやと眠るその超獣に近寄り、つんと頬を触る。何の抵抗もなく沈み込んだ指を離すと、頬がぷるんと揺れて元の形に戻る。無警戒に眠っている超獣は不快そうに顔をゆがめ、うんうんと唸る。僧たちも警戒する必要がないと感じて近寄ってみると、その超獣はゆっくりと目を開き、布に包まれた首から下を外気にさらす。
     四肢は申し訳程度についているだけのような短いもので、腹には一本の横筋。人間の赤子よりも赤子らしい頭でっかちの姿があらわになり、体を包んでいたぬ布のようなものは、襟巻きに近い形状になって首から背中に垂れ下がる。
     目を擦った後にぱっちりと開いた目は、真ん丸な瞳が、霧の中で光を照り返して見える、それは綺麗な瞳であった。
    「こんにちは」
     霧のようにふわふわとした、頼りない声が頭の中に鳴り響く。どうやら、念話のようだ。
    「こ、こんにちは」
     僧の一人が、戸惑いがちに答える。
    「おや、元気がないね。君も寝起き?」
    「いや、そういうわけではないが……」
     挨拶を返した僧が、返答する。
    「すまぬ、こんにちは」
     もう一人の僧が、頭を下げる。
    「うん、こんにちは。君達はだあれ? 僕はジラーチ。昔はそう呼ばれていたんだ」
     目の前の超獣は、ジラーチを自称する。きりもみ回転をしながらふわりと上に舞い上がったかと思うと、今度は滑空して二人の頭上に。
    「私は、ツァグン……後ろの山を登ったところにある寺院に住んでいる」
     後に挨拶した僧が、頭上を回るジラーチを眺めながら自己紹介する。
    「俺はタークです、同じ場所に住んでおります……よろしくお願いします……」
     続けて、先に挨拶したほうが自己紹介をする。
    「ふぅん、二人とも……よろしく」
     言いながら、ジラーチはツァグンと名乗った僧の胸元に飛び込み、数ヶ月は洗濯していないのであろう汗臭い袈裟に顔を埋めてから上目づかいでツァグンを見つめる。
    「僕はジラーチ。望みを叶える者……君達二人は、何か望むことはあるかい?」
     ツァグンが自分を抱きしめるのを感じながら、ジラーチが問う。
    「望む、事……と、言われても、なぁ?」
    「私に振られましても……」
     上目づかいをしたまま唐突なジラーチの質問に、タークがツァグンに話を振るが、ツァグンも唐突なこの質問には答えを用意していない。
    「ふぅん……」
     がっかりしたような含みを持たせて、ジラーチはツァグンの腕からすり抜けた。
    「望めば、どんな願いだってかなえられる。それとも、君達は欲がないのかな?」
    「欲……は、無くなるようには努力しているが……」
     タークは口にしてみたはいいものの、様々な願いがここで浮かんでくる。断食がしんどいのでたくさん食べたいとか、避難してきた女性に触れてみたいだとか、実に生物的な欲求が。しかし、そんな願いよりも、大事なのは平和やら、飢えをしのぐための豊作祈願といった、民のための願いではなかろうか。
     願わくば自分たちの飢えもなんとかしたいものだが、仏道に属する身としては、私利私欲のために願いを使うわけにはいかないし、何でもと言うほど凄いのであれば、なおさら相談なしに、勝手な願いを叶えることは出来ない。
    「皆に、相談したほうがよろしいでしょうかね?」
    「そうだな、俺達が勝手にどうにかできる話題でもなさそうだ」
     ツァグンの提案に、タークが賛成する。
    「すみません、ジラーチさん。ちょっと、私たちの住処まで来てもらってよろしいでしょうか?」
    「うん、いいよ。よろしくね、お二人さん」
     結局、その場で願いを叶えることはせず、ジラーチは寺院の中まで連れてゆかれることになる。正体不明の超獣を連れてきたことで、凶星の言い伝えを信じる者たちは気味悪がって近寄るのを恐れたが、一番最初の願いで、その恐れも羨望のまなざしに代わる。
     と、いうのも。避難してきた農民の女性が一人、肺の病を患っていたのだが、ためしにと願いを投げかけたところ、咳がぴたりと止まってしまったのだ。死んでしまったのではないかと思うほどの早業に、最初は誰もがいぶかしげであったが、咳が再発するような様子もない。
     ジラーチの愛らしい見た目の良さも相まって、夜になるころには皆がちやほやするようになってしまった。だが、同時に問題も出てきた。

    「あんな願いを、何個もかなえられるのか?」
     さっきまで病人だった女性の夫が尋ねる。
    「んーん」
     ジラーチは首を横に振った。
    「僕がかなえられる願いは三つだけ……僕の頭についている短冊の数と同じ。だから、叶える願いは慎重に決めようねー」
    「そ、そうなのか……」
    「僕らジラーチは、皆の恨みや憎しみ、悲しみや恐怖といった、嫌な気持ちを幸福に変えるんだ……でも、そういう気持ちを、僕の中に取り込むにはとても時間がかかるの……だから、そのための制限。あんまり大きなことを願いすぎると、僕の中の憎しみの力が足りなくなって、思い通りに願いをかなえられないからね。
     それに、どうしても浄化しきれない嫌な気持ちもあるんだ……そういうものは、願いをかなえ終えた後に眠って、魂を空に飛ばして宇宙に流すんだ……太陽の光ならば、どんな嫌な気分も浄化する力があるからね。だから、僕たちは願いを叶えた後に千年も眠るの」
    「憎しみの力……か」
     話を聞いていた者たちが、意気消沈したように声を挙げた。
    「そんな物、彼らは無尽蔵に取り込んでゆくというのに……なんというか、世の中適材適所とはいかないものだな」
     僧である彼が思い浮かべるのは、地下室に隔離、封印したジュペッタ達。ジュペッタになりかけのヒトガタも一緒に、軒並みあちらに封印しているので、もはや地下室は魔窟と化している。迂闊に入り込めば拘束されていても、張りつめた殺気で死んでしまいそうなほど、異様な雰囲気に包まれているのだ。
    「まてよ……」
     と、傍で聞いていた僧はひらめく。残る二つの願いは、一つは豊作を祈願するとして、もう一つの願いをどうするかを決めかねていたのだ。戦乱の世を終わらせるというのも考えたし、それが最も良い願いだと思っていたが。
     大量の憎しみを抱いたジュペッタ達の憎しみを抱えている。もしもその憎しみを願いの力に変えることが出来るのであれば、それはとてもすごい事なのではなかろうか?
    「出来るよ」
     尋ねてみると、ジラーチは可能だと答える。
    「その気になれば異世界や未来に誰かを送ることも出来るし、人間をゲンガーみたいな超獣に変えることだって出来る。だから、僕の力でそのジュペッタをジラーチに変えることだって不可能じゃないよ」
     何とも魅力的な事をジラーチは教えてくれた。そのことをこの寺にいる者たちに話すと、ジュペッタの封印に従事していた者たちは、ようやく結界の様子に神経を張り巡らす生活から解放されるかもしれないと、非常に喜ばしい表情を浮かべている。
     結局、残る二つの願いは豊作祈願と、ジュペッタをジラーチに変えることで、憎しみの力を消費するというものであった。皆の見ている前で豊作の願いをしてみたが、特に様子は変わらず。もちろん、いきなり草木や作物がニョキニョキと生えてきたら気味が悪いわけだが、目立った変化はすぐには訪れなかった。

     そして、最後の願い。ジュペッタをジラーチにするという願いだ。封印されたジュペッタ達は、原種とは比べ物にならないほど凶暴なため、腕に自信がある僧と超獣のみを連れて、封印された地下室の前へ。
     ジラーチに願いを告げてからその中に入ると、中ではジュペッタ達が山吹色の淡い光に包まれながら、次々と元のヒトガタへと戻ってゆくではないか。そして、淡い光は一ヶ所。ひときわ強力な封印が掛けられたジュペッタの元へと集まり、まばゆい光となって収束する。
     地下室の中に太陽が出来たと見まがうほど強力な光が収まると、そこにはジラーチとは似ても似つかない、長さの違う直方体の結晶を束ねたような紫色の宝石がふわりふわりと浮かんでいた。これを見届ける役にも参加していたツァグンとタークは首を傾げていた。
    「君の願いは叶えたよ……さて、僕はもう三つの願いを叶えたことだし……もう、眠るね」
    「ちょっと待ってくれ……ジュペッタのあの姿は?」
    「繭のようなものだよ」
    「繭?」
     ジラーチの返答にオウム返しに僧が尋ねる。
    「うん、僕も、今でこそこんな姿だけれど、ずっと眠っている普段はずっとこの姿なんだ。大丈夫、あの子はもうすぐ目覚めて、僕と似た姿になると思うから。それと、僕ももうすぐあの姿になる……お休み」
    「お、あぁ……もう眠るのか? ずいぶんと急ぎ足だな……」
    「うん、ごめんね。また千年後……」
     ジラーチがゆっくりと目を閉じる。彼を包んでいた淡い光は徐々に激しい光となって、紫色の結晶に代わってゆく姿を覆い隠した。そして、紫色の結晶に代わった体は、抱いていた手を煙のようにすり抜け、天井も同様に水面に飛び込むかのようにすり抜け、天へと昇って行った。元となったジラーチが天球へと還って行くのを見守り、この場に集まった僧たちは、まだ繭の状態のジラーチに注目する。孵化の時を待つ卵を見守るような面持ちであった。

     やがて、繭の状態のジラーチは、白い光を放ってジラーチとなる。体を黄色い襟巻きで包むことなく、最初から覚醒した状態でのお披露目である。
     顔も体型も色も、先程天へと還って行ったジラーチとほとんど相違なく、言われなければ違いには気付かないだろう。
    「……僕を憎しみから救ってくれたんだね」
     第一声がそれであった。
    「ずっと、辛かったけれど……君たちのおかげで救われたよ。ありがとう……」
     そのジラーチには、人間を見かけたら問答無用で襲い掛かり、そして犠牲者の一人を原型が分からなくなるほどに切り刻んだような、恐ろしいジュペッタの面影はまるでない。穏やかな、本当に穏やかな、赤子のような笑みをたたえるジラーチであった。
    「今度は、僕が君たちの願いを叶える番だ……さぁ、願いを言ってよ」
    「願いか……」



    「そうして、僧たちが願ったのは、戦乱の世を終わらせること。ここのヒトガタ達が、もうジュペッタにならないようにすること。そして、ここに避難してきた人たちの下山の無事……その三つでした。
     その三つの願いを叶え終えたジラーチですが、元がジュペッタなおかげなのか、そのジラーチは眠ることはなく、願いを叶えた見返りにと自分に名前を付けてもらうことを望みました。僧たちよりシャル=ノーテと名付けられたジラーチは、名前を付けて貰えたことにお礼を述べた後、山奥のどこかへと消えてしまったそうです」
     長い話を一区切りつけて、語り部はため息をつく。
    「このジラーチのおかげで、今でもこの寺院にジュペッタが発生することもなく、戦死者供養に相応しい聖域を保っております。憎しみのような、後ろ向きで暗い感情から生まれた呪いを、ジラーチは前向きな想いを叶える願いに変える……まさしく、慈愛に満ちたポケモンと言えましょう。
     この寺院には、常に戦死者たちの怨念が渦巻いておりますが、それらを救えるのは神の愛以外にありえません。我らも欲を捨て、見返りを求めずに人に親切できるようにと頑張っておりますが、ジラーチはそれを生まれながらにして出来る、素晴らしいポケモンです。
     我らも、生まれながらになどという贅沢なことは言えませんが、出来る事ならば、争いが起こらない世を作るべく、こんな寺院が必要なくなるような世界にするべく、愛を心に持って生きてゆきたいものですね。これで、私の話は終わりです」
     最後に深くこうべを垂れ、語り部が話を終える。
    「なにか、質問はございますか?」
     私は手を挙げ、真っ先に指名される。
    「そのジラーチ、今もまだどこかに生きているという噂ですが……どう思いますか?」
     私が尋ねると、語り部はつばを飲み込んで質問に答える。
    「今でも、この寺院ではヒトガタが突然行方不明になることがあります。それはきっと、どこかへと消えた元ジラーチの仕業じゃないかと考えられています。たまに、そのジラーチを求めて冒険者がここに訪れますが……貴方のその大荷物は……」
    「あぁ、退屈を打ち壊しに来たんだ。いや、夢の中でジラーチに誘われちゃいましてね。旅行する場所も特に決まっていなかったので、ここにしたんです」
     階段を上る時は捨てていきたかったくらいの大荷物。これは、山の中に踏み入るためのもの。
    「そうですか……たまに遭難者も出ているので、お気を付けてください」
     語り部が私を気遣って言う。大丈夫、私は旅慣れているつもりだから。
    「ありがとうございます」
     そうして、質問タイムは続く。私はそれを聞き流すように右から左へ受け流し、これからの旅路を想う。ジラーチが本当にいるのかどうかはわからないが、私の相棒であるエアームドと旅が出来るなら、結果なんておまけのようなものだ。


     語り部との質問タイムも終わり、私は寺院を後にしてこれから踏み入る山脈を見下ろす。
    「神の愛、か……」
     見返りを求めない愛。憎しみを、喜びに変える力を持つというのはなんと素晴らしい事であろうか。
    「でも、私はお前を愛するだけで精いっぱいだがなぁ……それが本当なら、すごいポケモンだよ」
     なんて、隣を歩くエアームドの首に右手を回し、顎を撫でながら言う。彼女は気分がよさそうに首を傾け、私の顔に頬擦りをした。霧が出初めているせいか、すでに濡れている彼女の体は頬を湿らせる。
    「でも、こういう風に平和に暮らせるのがそのジラーチってポケモンのおかげならば、良いもんだよな」
     そのジラーチのおかげなのかは知らないが、この土地は自然災害も減り、それに応じてアブソルも姿を消したそうである。
     この平和がジラーチのおかげならば、それを壊さないような無邪気な願いでも願ってみるとするかな。
    「さ、いくぞー」
     まずは山を下なければならない。空気の薄いこの場所で上りを飛ばせるのは負担がすさまじいのでやらないが、滑空するくらいならば彼女への負担も少ないので、湿った風を切りながら彼女の温もりを感じよう。
     足爪で獲物を掴むフリーフォールの要領でトレーナーを運べる縄梯子のバーをエアームドに握らせ、私は珍しく霧の晴れている山肌を翔け抜けた。


      [No.2533] シャル・ノーテ物語 投稿者:   投稿日:2012/07/29(Sun) 09:49:56     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    とあるオタコンと、とある小説wiki第二回短編小説大会に出馬したお話。
    オタコンには前編だけ投稿。短編小説大会には後編だけ投稿していました。


      [No.2532] Re: これはひどい(※褒め言葉です) 投稿者:フミん   投稿日:2012/07/27(Fri) 21:57:33     77clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    砂糖水さん


    これはひどいお話になりました。
    褒めて頂きありがとうございます。フミん節って…w 

    実は、最初は役割という短編と全く関係ない独立した話だったのですが、マスターボールのことを書いてからオチが思いつかず放置していました。ふと思いついて続編モノにした結果がこれである。
    何故社長がわざわざあの男を探し出したのか、という部分を補う機会があって良かったです。


    こちらこそ、いつも読んで頂いてありがとうございます。機会があったらまたお願いします。


    フミん


      [No.2531] ふたりごと 投稿者:久方小風夜   投稿日:2012/07/27(Fri) 17:03:43     200clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:2012夏・納涼短編集】 【シオンタウン】 【「あはは、そうよね!】 【あなたの右肩に】 【白い手が】 【置かれてるなんて】 【……あたしの】 【見間違いよね」

    「お腹空いたな」
    「もう昼飯時だもんなあ」
    「ハンバーガーでも食べようかな」
    「えー、もうちょっといいもん食おうぜー」
    「……確かクーポンがあったはずだし」
    「あーそっかー、それじゃあしょうがないなー」

     相棒は、鞄から畳んだ地図を取り出した。

    「次の町はシオンタウンか」
    「イワヤマ抜けなきゃいけないんだな」
    「ちょっと遠いなあ」
    「大丈夫だって。お前のポケモン強いんだからさ。ま、あんまり無理させるのはよくないけどな」
    「薬を多めに買っていくか」
    「それがいいな。一応、あなぬけのヒモも買っておいたほうがいいんじゃないか?」
    「わざマシンあるから……」
    「ああ、そういえばこの間もらってたな」
    「資金も十分だ」
    「準備万端だな」
    「とりあえず、ショップで売ったり買ったりしてくるか」
    「おう」



     相棒と俺の出会いは数年前。
     場所は俺たちが生まれた町の小さな公園。ベンチと砂場とブランコしかない。
     俺はいつもそこにいたんだけど、その日こいつがひとりでやってきた。半べそかいたような情けない顔ぶら下げて。

     辺りを見回して、そいつはつぶやくように言った。

    「誰もいないのかな?」
    「ここにいるぞ」

     俺はそいつを呼んだ。そいつは俺の近くにあったベンチに座った。俺も隣に座った。

    「お前、いつも他の奴と一緒だよな? 髪の毛立ててる奴。今日はひとりか?」
    「…………」

     そうしたら、そいつが涙をぼろぼろこぼし始めた。

    「ああぁぁごめん、悪かったって。泣くなよ。……ケンカでもしたのか?」

     こいつとその友人の仲の良さは、何回か見かけたことがあるからよく知ってる。
     まあ、言っても子供同士だ。ケンカくらいするだろう。

    「やっぱり、僕は意気地無しなのかな?」
    「そんなこと言われたのか?」
    「でも、町の外に出るなんてやっぱり怖いよ」
    「オイオイ、そりゃ危ないだろ」
    「この辺りにはポッポとかコラッタとか弱いのしかいないから大丈夫って言ってたけど」
    「あのなあ、ポケモンってのはどんなに小さくて弱そうに見えても、危ないもんなんだよ。お前、コラッタの集団にあの前歯で一斉に襲いかかられるの、想像してみ?」
    「……やっぱり危ないよ」
    「そうだよ。な? だからさ、どうしても出たいんならあの博士だか何だかに頼んでみろ」
    「もう少し大きくなったら、博士にポケモンをもらえるんだ」
    「おぉ! 最高じゃないか!」
    「だからそれまで待とう、って言おう」
    「そうそう。お前はいい子だな」

     少し明るい表情になったそいつを見て、俺はため息をついた。

    「あぁ、俺もやっぱり、ポケモン持つべきだったんだよなぁ……」
    「あいつ、やっぱり旅に出るかな?」
    「そりゃ出るだろ絶対」
    「僕が行かなくても、やっぱり行くんだろうなあ……」
    「俺も、友達みんな旅に出ちまったよ。ポケモン持って」
    「それじゃあ、独りぼっちだ」
    「ああ。あれからずっとな」
    「……寂しい」
    「わかってくれるか」
    「独りぼっちは嫌だな」
    「本当にな。でも、俺の方こそ意気地無しだったんだ。『ポケモンをください』っていう、たったそれだけが言えなかった」

     深いため息をつく。そいつもため息をつく。
     しばらく何か考えている様子を見せて、そいつはつぶやいた。

    「……やっぱり、僕も町を出る」
    「……そうか。お前も行っちゃうのか」

     そうしたら、そいつが言った。

    「一緒に旅に出よう」
    「……えっ?」
    「いいよ、って言ってくれるかな?」
    「当たり前だろ!」

     ずっと独りぼっちだった俺は、そいつの言葉が本当に嬉しかった。
     その日から、俺と相棒はずっと一緒だ。




    「それにしても高いタワーだなあ」
    「これが全部お墓なんだよな」
    「町の人は幽霊が出るって言ってたけど……」
    「やっぱりあのカラカラのお母さんだろうな」
    「ねえねえ、あなた」

     青白い顔をした女の子が、声をかけてきた。

    「あなた、幽霊はいると思う?」
    「そりゃーいるに決まってるだろ! な?」

     俺は相棒の右肩に手を置いた。
     すると、相棒は笑って言った。

    「いないよ」
    「えっ」
    「いるわけないじゃんそんなの」

     青白い顔の女の子は、苦笑いを浮かべた。


    「あはは、そうよね! あなたの右肩に白い手が置かれてるなんて……あたしの見間違いよね」


     当たり前だろ、と相棒は笑った。
     俺はそっと、相棒の右肩から手をどけた。





     少年がタワーの中へ入ると、幼馴染がとある墓石の前に座っていた。

    「おう、久しぶりだな」
    「やあ。……それって、もしかして」
    「……ああ。旅に出て最初に捕まえた相棒」
    「そっか……じゃあ僕からも」

     少年はリュックの中からミックスオレの缶を取り出し、墓前に置き、手を合わせた。

    「呆気ないもんなんだな。命が終わるのなんて。もう少し早くポケセンについてりゃ……」
    「ポケモンはずっと、僕らの代わりに戦ってるんだもん。気をつけないといけないね……本当に」
    「気を抜きすぎてたな。強くなったから、多少は平気だろうって……」
    「ポケモンは本当に見かけによらないからね」

     幼馴染は深いため息をついた。

    「……悪かったな。小さい頃、嫌がるお前を無理やり町の外に連れていこうとしたことがあっただろ」
    「ああ、懐かしいなあ。そんなこともあったね」
    「ポケモンの強さとか、危なさとか、理解してりゃあんなことしなかったのによ。しかも断ったお前に散々悪口言ってさ……」
    「いいよもう。昔のことだ」
    「あのあとじいちゃんに、昔ポケモンを持たずに町を出て、死んだ奴がいたって聞いてさ……俺、本当に……」
    「いいってばもう。おかげさまで僕は元気だよ。一番の親友のおかげで、楽しい旅に出る決心もついたし」
    「……そうかい」

     幼馴染と少年は、顔を見合わせて笑った。





       「……やっぱり、僕も町を出る」
                                             (……そうか。お前も行っちゃうのか)
       「一緒に旅に出よう」
                                             (……えっ?)
       「いいよ、って言ってくれるかな?」
                                             (当たり前だろ!)





    「でもさ、お前、昔っから言ってるけどさ、ひとりごとを延々とぶつぶつ言う癖は直した方がいいと思うぞ。気持ち悪いし」

    「いやー僕も直そうとは思ってるんだけどねぇ。なかなか直らないんだよなぁこれが」





       「きっと大丈夫だよ。あいつは僕の、一番の親友なんだから」


                                             (これからはずっと一緒だな、相棒!)







    (2012.7.27)


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