マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ
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  •   [No.3925] コマンド・リタイプ 投稿者:きとかげ   《URL》   投稿日:2016/07/13(Wed) 22:03:28     80clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:コマンド

    (前書)
     二人が出会ってそんなに経ってない頃の話です。

    +++

    『パスワードは↑↓↑↓←→←→LR』

    「またかよ!」
     とキランは入力装置を殴る。赤ランプが回って警報が鳴り響く。下っ端戦闘員がどやどやと集まってきて、各々モンスターボールを開放する。
     キランはドリュウズを出して応戦する。その間に、犯罪の決定的な証拠資料やら悪の組織の首領やらを上司のレンリが確保する。そして、下っ端に追い回されるキランを回収する。

     いつも通りと言えば、いつも通りだった。だが。
    「もうちょっと、警察らしいというか、そういう仕事をやりたいんですよ」
     後始末を終えて戻ってきた警察署で、キランは愚痴った。彼の机の上には、ねじねじ帽子とキラキラマントが、休憩、とばかりに重ねて置かれている。

     愚痴られた方は、柳眉を寄せた。
    「らしい、とは?」
     聞き返される。キランはへばっていた机から身を起こし、上司であるレンリへ顔を向けた。
    「つまり……」
     血気盛んな若人の暴走族グループに毛が生えたような悪の組織じゃなくて、もっと高レベルな奴を相手したい。コソコソするんじゃなくて、真っ向から勝負したい。ねじねじ帽子だのキラキラマントだの、そういう悪の組織コスプレをして忍びこむのをやめたい。
     おおよそ、今やってる仕事と真逆である。

     ところで、キランの上司であるところのレンリという女性は、控えめに言って美人だ。
     キランの好みは自分より背が低くて笑顔がキマワリのように素敵な子だったはずだし、上司がせっかくの綺麗な黒髪を紅色のメッシュで染めているのも気に入らなかったはずだ。
     なのに上司から繰り出されるコスプレの指示を、キランはホイホイ聞いている。これが惚れた弱みというやつだ。

    「今の仕事とは逆、ね」
     レンリの紅い目が半ば伏せられた。この場面を切り取って、『憂い』とかなんとか適当な題を付ければ一枚いくらで売りさばけそうだ。実際やってる奴もいるらしい。
    「二人だからな。あまり危ない橋は渡りたくないのだけれど」
    『憂い』のまま黒髪を揺らしたレンリに、キランは慌てて前言撤回した。
    「いや、ちょっと気の迷いというか、若気の至りというか、まあ、忘れてください」
     そして、「そういえば」と言って話題を転換させた。
    「レンリさんが“ゾロア使い”って呼ばれてるの、本当ですか? 僕、あまりゾロアを見たことがないんですけど」
     あんまりな急転換である。それを誤魔化すように、キョロキョロ見回すジェスチャーも付けた。これでさっきの愚痴も忘れてもらえるといい。
     視界に入るねじねじ帽子がうっとうしい。上から押さえた。
    「ゾロアか。最近は連れてきてないな」
     いつも通り淡々と、レンリは答えた。その後で「そうだ」と顔を上げる。目が輝いている。若干、嬉しそうだ。
    「なんなら、何匹か連れて来ようか?」
     言うが早いか、キランの返事も待たず、どこかへ電話を掛ける。
     電話が繋がると同時に、彼女はキランに背を向けた。電話をする人の習性の不思議だ。キランの方も習性で、なんとなく息を潜めた。

    「もしもし、レンリだ。サクラを頼む。……ああ、サクラ、私だ。急ですまないが、ゾロアを何匹か警察署に連れて来てもらえないか? ……いいや、警察犬じゃないよ。あ、そうだ」
     レンリがちらりとキランを見る。また背を向けた。
    「どうせだから、百匹くらい連れて来てくれ」
     百? 聞き間違いか、と耳を澄ませた。
    「二百匹でも構わないよ」
     増えた。
    「多いなら何匹でも」
     上限が撤廃された。
    「じゃあ、スケジュールは後で相談しよう」
     ピ、と電話の切れる音がした。ふう、と潜めていた息を吐いて、キランが背を起こす。こちらを振り返ったレンリと目が合う。彼女はふっと笑った。
    「あの、レンリさん」
    「サクラは、普段ゾロアの世話を見てくれてるやつ」
    「そう、ですか」
     そんなことより、ゾロアを何匹連れて来るのか、そっちの方が気になるのだけど。
     キランのそんな気は露ほども知らず、「大仕事になるぞ」とレンリは上機嫌だった。



     一日経ち、二日経ち、三日経ち。
     ゾロアを連れて来る約束は忘れたのかな? とキランは思い、そもそも約束というほどの確約をしていないことに気付き。
     四日経つと、都合がつかないんだろうと思い始め。
     五日経つと、その他の雑事に追われてゾロアのことは忘れていた。
     そして、二日休日を挟み、休み明け。
    「いい仕事ができるぞ」
     とレンリは言った。
    「いい仕事、ですか?」
    「そう」
     オウム返しに尋ねたキランに、レンリは上機嫌に答えを返す。
    「キランの希望の仕事だ」

     ――迷いの森の奥に廃墟があるんだけど、そこに住み着いたグループがあるらしくてね。手っ取り早く、正面切って追っ払ってほしいんだ。

     コスプレも、パスワード付きの扉もない。まさしくキランが望んでいた案件だった。
     近所だから行きはよいよい、建物の見取り図もレンリが手配してくれたから、密偵エルフーンを放つ手間もない。

     地図通りに着いた森の奥には、廃墟というには立派な建物が鎮座していた。廃墟ではない、というだけで、建物らしからぬ四角四面だ。扉のある豆腐と言っても差し支えないだろう。
     その豆腐の大扉を開くと、玄関ホールにたむろしていた黒装束たちが腰を浮かせた。気分的には「たのもー!」って感じだ。言わないけど。
     代わりにこう言った。
    「君たちのリーダーはどこ?」
     答えるわけがない。黒装束の一人が、たどたどしい手付きでモンスターボールを投げた。残りは逃げた。
     一人目のボールから出てきたのはゾロアだ。キランはエルフーンのボールを投げる。
    「ウィリデ、エナジーボール」
     うにゃん、と鳴き声を上げて黒い仔狐が倒れる。突破して奥に進んだ先で、二人目のボールが開いた。コジョフーだ。
    「もう一度、エナジーボール」
     わざを食らったコジョフーの輪郭が溶けた。黒い仔狐の姿に戻ったそれは、うにゃん、と鳴き声を上げて倒れる。
     ……ん?
    「いけ、チラーミィ」
    「ウィリデ、もう一回エナジーボール」
     緑の光球を受けたチラーミィが、うにゃん、と鳴き声を上げて倒れた。ボールに戻る直前に見えたのは、黒い仔狐の姿。
     ……んん?
     向かってきたアーケンにエナジーボールをぶつけてみた。
    「うにゃん」
     ゾロアだ。やっぱりゾロアだ!
     黒装束たちが通路を塞ぎ、各々ボールを投げる。そこから出てきたのはゾロアゾロアゾロアゾロアゾロア……
    「うわああああ、ウィリデ、暴風!」
     動揺しながら指示した暴風は、動揺しながら伝わって、ポケモンだけでなくトレーナーも吹き飛ばした。その輪郭も黒く小さく溶けていく。トレーナーとそのポケモン、合計十匹の
    「うにゃんうにゃん! うにゃんうにゃん!」
     ――悪夢だ。
     これは悪夢に違いない。
     キランはドリュウズのボールを投げると、普段は選ばない高火力・広範囲わざを指示した。
    「地震」

     建物の四角四面が、ぐよんぐよんと豆腐のように曲がる。すわ倒壊するより先に、四角四面が溶けて消えた。
     ――幻影のアジトが消え去った後に残ったのは、黒山のゾロア集り。
     放心するキラン。「あーあ」と肩をすくめるレンリ。
    「ダメだったか」
     ダメですね、と言う気力もなかった。そこに行き着くまでの言葉を組み立てる気力すらなかった。

     そんなキランを尻目に、レンリは反省会を始めている。キランが喋れる状態ではない今、誰と反省会をしているのか。ゾロアだ。
    「パンはボールの投げ方がいけないな。人間のフリをするならもっと手慣れた風にしないと」
    「ターは建物をよく観察して。あんな豆腐みたいな建物はないぞ」
    「ピーはまず化けようか」
    「パン、コジョフーに化けるなら腕の動きに気を使って」
     キランは思わず発語能力を取り戻した。
    「パンって二回言いましたよ」
    「何言ってるんだ? こんだけいるんだから名前ぐらい被るだろう」
     間違いでなくて被りで正解らしい。レンリに抱き上げられたゾロアは、被った名前を呼ばれてしっぽを振っている。その他、数匹が足元に寄ってきてしっぽを振っている。何匹いるんですかね、パン。
     推定二百匹のピーターパン以下ゾロア連中はレンリを囲い、揃ってしっぽを揺らしている。レンリもそれに応えて、笑顔を返していた。この場面を切り取ればプレミア価格が付きそうな、そんな笑顔だった。

     なるほど、ゾロア使いだとキランは思った。そしてゾロアでないキランは、その輪を外から眺めていることしかできなかった。


      [No.3665] ポケモン2種 抗議受け揺れる和名表記(27面) 投稿者:Ryo   投稿日:2015/03/30(Mon) 20:50:53     77clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    カントー新聞 20XX年8月25日版より

    ポケモン2種 揺れる和名表記 「女性差別」との抗議受け
    日本ポケモン学会は24日、「日常における女性差別を考える会」ら3団体から、「ポケモン全国図鑑」に登録されているポケモンのうち「ハハコモリ」「ママンボウ」の2種について標準和名の変更を求められた件について「今のところ変更の予定はない」と回答した。
    3団体は23日に「子供の世話をしたり、怪我や病気の介抱をするのは母親の役目である、という古いジェンダー観を植え付けるような印象を与える和名はよくないのではないか」「ハハコモリもママンボウも雌雄で子育てや介抱行動における役割の区別があるのかどうかはわかっておらず、メスのみが子育てや介抱行動を行うものと誤解させる名前は教育上混乱を与える」として日本ポケモン学会に抗議。名称の変更を求めていた。
    日本ポケモン学会(サクラ ヨウイチ会長)はこれを受けて「一度名付けられ、定着してしまった名前を再度変更することは難しい」とし、「ハハコモリもママンボウもその行動と雌雄の関係についてはまだわかっていない点が多く、現時点で安易に和名を変更する事はかえって混乱を与える」と変更の意がないことを強調した。一方で学会は全国のポケモン研究所や博物館等に和名変更についてのアンケートを取る案を発表し、今後の生態調査とアンケートの結果によっては和名の変更も検討に入れる、との見解を示した。
    3団体から提案された変更案はそれぞれ「ハコモリ(葉に子守りの意)」と「アロモーラ(イッシュ地方での呼称を取り入れたもの)」。

    一口メモ ポケモンの標準和名について
    ポケモンの標準和名は図鑑、公的文書等で使われるそのポケモンの公式の和名である。一種につき一つに定められており、また、日本語表記で6文字以内(2014年の規定変更より前は5文字以内)となるよう定められている。他の命名上の規定については「あからさまな身体的または歴史的差別用語を含む命名の禁止」等のルールがあるが、今回のケースがルールに抵触するかどうかは議論の余地がある。
    これまで表記ゆれの訂正を除いて和名が変更されたケースは一度もないが、分類名についてはポリゴンの「シージーポケモン」が「バーチャルポケモン」に変更された例がある。
    ---
    調べても日本ポケモン学会の会長名が分からなかったので適当に名づけました。もし公式に発表されていたらすみません…


      [No.3664] ポケモンちゃんねる 投稿者:NOAH   投稿日:2015/03/27(Fri) 21:08:17     180clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:一粒万倍】 【企画】 【某大型掲示板方式】 【フライゴン】 【書きかけ


    ※某有名大型掲示板方式の小説です。注意してね。



    相棒自慢専用スレッド 18匹目

    1.ななしのポケモントレーナー

    ここは俺たちの相棒であるポケモンたちへの愛をただひたすらに書き連ねるスレッドである


    あくまで自分の相棒への愛なので
    「このタイプだから好き。」という類のタイプへの拘りありきの偏愛は各タイプ専用板へ書き込んでください

    荒らし・批判・中傷ダメ絶対。
    ご新規さんはひとまずROMってからコテハン付けてね

    他の人が語ってる最中にコテハン付けて勝手に喋り出した場合荒らしと判断して運営に報告しますのでご注意。


    <過去スレ>
    全ての始まり→相棒自慢専用スレッド 1匹目
    前スレ→相棒自慢専用スレッド 17匹目


    次スレは >>900 が立ててください
    単発・コテハン・荒らし等だった場合は>>950
    それもダメだったら引き続き >>1 こと俺がまた建てます

    みんなでにこにこコレ絶対!!


    2.ななしのポケモントレーナー

    >>1 乙

    2getだぜ!


    3.ななしのポケモントレーナー

    >>1 乙ー


    4.ななしのポケモントレーナー

    >>1 乙カレー


    5.ななしのポケモントレーナー

    さて、コレもなんだかんだで18匹目に突入だな。
    しかしどいつもこいつも相棒への愛が濃いこと濃いこと。


    6.ななしのポケモントレーナー

    俺は9スレ目に出てきたドラミドロ一家が未だに忘れられない


    7.ななしのポケモントレーナー

    >>6 あー、そいつの話しどくタイプ最愛スレの連中が見てたらしくて未だに話題になってるよ


    8.ななしのポケモントレーナー

    どくタイプと言えば俺は11スレ目に出てきたオスのクロバットの話しが忘れられない。

    右目潰されてもトレーナーのためにと奮迅する姿はもう男前すぎてパソコンの前で大泣きした


    9.ななしのポケモントレーナー

    どくタイプつながりなら俺は6スレ目にでてきた色違いのメスのハブネークを推すぜ!

    にこにこ笑いながらかわいいアピールしてる色違いハブネークたんマジかわいかった。


    10.ななしのポケモントレーナー

    かわいいと言えば俺は7スレ目のあざとメリープ♂を推す


    11.ななしのポケモントレーナー

    >>10 前スレのミミロップ女史を忘れないでいただこう


    12.ななしのポケモントレーナー

    >>11 お前その話しで一早く
    ミミロップ厨になった前スレ386だろ


    13.ななしのミミロップ厨

    >>12 な ぜ わ か っ た


    14.ななしのポケモントレーナー

    >>13 わからいでか


    15.ななしのポケモントレーナー

    あー……相棒自慢スレはここで合ってるか……?


    16.ななしのポケモントレーナー

    >>15 お、ご新規さん?いらっしゃーい。そうだよー。
    とりあえず >>13-14 は無視しちゃっていいからコテハンとスペックと相棒であるポケモンの名前を書いてくれ


    17.竜騎士

    んじゃ、コテはこれで


    「竜騎士(=俺)
    20代/男/ポケモンレンジャー/髪と目の色は緑/前髪一部事故で白髪/父がカロス出身で母がホウエン出身」


    相棒=フライゴン♂
    ニックネームは「ハイペリオン」

    コテハンは俺の通り名。
    アルミアに住んでる奴は知ってんじゃないかな?

    まあわかっても特定は×で


    18.ななしのポケモントレーナー

    >>竜騎士 その通り名どっかで聞いたことある気がするが特定禁止なのは承知した

    フライゴンかぁ……すらっとしててかっこいいよなぁ。


    19.竜騎士

    >>18 だろ?これで話題のメガ進化とかあったらとか思うが調査結果は期待せずに待つ

    あと特定の件、了承してくれてありがとう。助かった。


    さて、スペックに書いた通り、俺はポケモンレンジャーをやってる。

    アルミアの本部内の寮で暮らしているが、今から話すのはその前、ホウエンにいた頃の話しだ。

    この中で、5年前にあったホウエンの北西沖で起きた地震のことを知ってるやつはいるか?


    20.ななしのポケモントレーナー


    地元民だ


    21.ななしのポケモントレーナー


    カナズミのポケモンセンターに泊まってた


    22.ななしのポケモントレーナー


    家族旅行で来てた


    23.ななしのポケモントレーナー


    仕事でカナズミシティに来てた


    24.ななしのポケモントレーナー


    当時新人でカナズミジムに挑戦中だった。

    負けたけど。


    25.竜騎士
    けっこういるみたいだな。
    まあわりと大きな地震だったし
    それなりに被害もあったから知ってるか。

    今からする話しはその地震が起こってすぐくらいのことだ。

    当時俺は非番で、カナズミシティの旧ショッピング街の方を歩いてたんだ。

    目的はわかるやつにはわかるだろうが、そこにしかなきのみ専門店な。
    んで、地震が起きて、俺のスタイラーに出動要請のメールが届いたんだ。

    メールの中身は職業状秘密な。
    まあ地震のせいで怪我をしたポケモンが出たってのがわかってくれればいいよ


    下開けてくれ


    26.竜騎士

    Mercie.


    メールに出動要請が届いて、俺はすぐに来た道を引き返した。

    もちろん全力疾走で。

    人を助ける仕事は一分でも一秒でも遅れるのはタブー。だからとにかく全力だよ。

    それにショッピング街は新旧共にアーケード街。
    当たり前だけど空を飛んでは行けないから、とりあえず抜けるまではとにかく走った。


    ショッピング街を抜けて右に曲がり、大きな道路に出ると、俺はそこでようやく相棒のハイペリオンを出したんだ。

    そいつに目的地を告げて一気に空から現場に向かったんだ


    そして、現場に着いた頃に「事件」が起こったんだ

    ……


    ここで力尽きた……orz
    この「竜騎士」は我が家のオリキャラのポケモンレンジャーです。
    名前詳細共に決まってるけど伏せときます


    あとこういう某大型掲示板方式の小説をピクシブの方でよく読むので便乗した感があります。

    相棒の自慢スレとかぜったいありそう

    あとジムリーダーや四天王たちのファンスレッドもしくはアンチスレッドとか

    タイプごとに愛を語るスレとか

    旅の途中でよくお世話になった道具をあげて語るスレとか

    旅のさなかで起こった珍事件を語るスレとか

    あとは大きなバトル大会やコンテストの実況スレとか

    「○○(場所)で○○(ポケモン)の色違いを見た」っていう報告スレとか


    そんなことを考えながら書いてるから続かないんですね。ごめんなさい。

    この形式で書いていいものかどうか
    正直悩んだけど書いてみた。お試しで。
    .


      [No.3396] 蜘蛛の糸(仮タイトル) 投稿者:きとら   投稿日:2014/09/17(Wed) 20:13:59     96clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:かきかけ】 【いきおい】 【ホムハル

     あそこで失敗しなければ。元より関わらなければこんなことにならなかった。わかっていても、時間は戻せず、記憶も消せない。
     マグマ団との勝負に負け、拘束されてアジトまで運ばれた。目撃者などいない。最初からハルカがいなかったかのように、持ち物やポケモンも全てマグマ団の連中に奪われた。
     何をされるかわからない恐怖に、ハルカは何度も謝りの言葉を述べた。しかしそんなことで満足するわけがなく、連中は楽しそうにハルカを見ていた。幹部の許可が降りたら楽しい時間になるよ、と嫌な笑いを浮かべて。
     縛られて鎖でつながれたハルカを、体格のいい男たちが囲んでいる。見下ろされ、身動きが出来ずにハルカは震えるだけだった。
    「ウヒョヒョ。やーっと捕まえたか」
     すぐさま幹部がやってきた。何度かハルカも会ったことがある。ホムラと名乗る細めの男は楽しそうだった。ここにいる男たちはやっと復讐できると楽しそうな顔をしていた。
    「おい、どうだ? 散々コケにしてきたマグマ団に囲まれる気分は?」
     ハルカの前髪をかきあげ、ホムラは顔を覗き込む。恐怖でホムラの顔を見ることができない。するとホムラはハルカの前髪を引っ張る。ハルカから小さな悲鳴が上がった。ホムラは立ち上がる。手から茶色の髪が2、3本落ちた。
    「ふーん、最初からそうだったらこんな目に会わなくて済んだのにな」
    「……ごめんなさい」
     ハルカは必死だった。この男が何を考えているかは分からないが、マグマ団で誰よりも危険だということを本能で察知していた。そんな危険な男が率いる集団で、命の保証はない。
    「今更謝っても遅えんだけどな。その心意気に免じて俺様のペットにしてやるよ。それともみんなに楽しませてもらうか? 選ばせてやるなんて俺様優しいだろ? ウヒョヒョ」
     ハルカに選択の余地はなかった。

     仮眠室のような狭い部屋に押し込められる。後から入ってきたホムラが扉の鍵を閉めた。これから何をされるのか分からない。ホムラから遠ざかるようにハルカは部屋の隅の方へ隠れるように身を置いた。
     ホムラは何やらロッカーの中を漁っている。一度ハルカを難しそうな顔をして見たが、すぐにロッカーに視線を戻した。
     殺されてしまうのかもしれない。もう逃げ場はなく、ホムラに背を向けてただ祈っていた。家族や友達に二度と会えない。そんなの嫌だ。でもハルカにはどうにもできない。ホムラの機嫌次第では……。
     いきなりハルカの頭に布が被さる衝撃が来た。必死で払いのけた。
    「何やってんだ。それ着ろ」
     ハルカが払いのけたのは、マグマ団がみんな着ている服だった。上下揃ったセット。何を言ってるのか分からない。
    「だから今きてる服の上からでいいから、それ着ろ」
     反抗することは許されない。恐る恐る服を取る。一番小さなサイズを選んだようだが、ハルカには大きくてダボダボ。
    「あんま似合わねえなウヒョヒョ」
     ホムラが扉を開けた。引っ張られるようにハルカは立ち上がる。引きずられるようにマグマ団のアジトの中を歩いた。他の団員たちとすれ違うも、ハルカを新入りと勘違いしているのか誰も疑問を抱かないようだった。
    「で、俺のペットならお前の荷物は俺のもの。俺が引き取っても問題ないな」
     倉庫らしきところに、ハルカの持っていた荷物とポケモンが乱雑に放置されていた。ホムラはそれらを手にすると、ハルカに押し付ける。
    「ペットなら荷物くらい持て」
     そういって強引に押し付ける。
    「それでなぁ、そこの扉あけると外に出ちまうわけだ。」
     するとホムラはハルカの両肩を掴み、鋭い眼光で目を見た。
    「今回は見逃してやるが、次に俺たちの邪魔をしたら容赦しねえウヒョヒョ」
     ホムラの威圧感に首を縦に振る。
    「最近のガキにしちゃ聞き分けいいじゃねーか。さっさと帰って夕飯にしろ」
     ハルカの頭を撫でた。そして扉を開ける。外の光が入ってきた。行け、とホムラに背中を押されてハルカは扉をくぐった。背後でバタン、と閉まる音がした。今後二度と振り返ることなくハルカは走り出した。
    「隊長、今度うちらにも楽しませてくださいよ」
     団員が話しかけてくる。ホムラは軽く頭を叩いた。
    「俺はあんなガキに興味ねーよ。お前あんの? ちょっとお前の神経疑うなぁウヒョヒョ」
     ホムラはハルカを抹殺しろなんて命令はしていない。俺が説教してやるから連れてこいと言ったのだ。それが団員任せだと暴走気味だ。よくない傾向だと同じく幹部のカガリも頭を悩ませていた。


     マグマ団の栄光はそれからしばらくして陰りを見せ、そのまま解散してしまった。窃盗や社会に不安を与えたとして幹部ら数名が責任を取ることとなった。
     そして本日、ホムラはその期間を終えて再び社会へと戻る。持ち物はその間の対価であるわずかな金と数日の着替えのみ。
     昔の仲間に連絡を取ろうにも、みな行くあてもないようなやつらばかりだった。そんなやつらの唯一の場所としてもマグマ団は存在していた。それがない今、マグマ団みたいな組織を作って、前のように居心地のいいものを作ろうか。あの時のことが昨日のことのように思い出される。
     持っていたポケモンは引き離され、再び育てる気力もない。トレーナー資格を再び取得しても、また離されてしまうのでは取っても無駄だ。
     これからどうやって生きていこうか。まだ30にもならないのに、先は全く見えない。
     人通りの多い場所に出る。なんとなくポケモンセンターに入った。トレーナー関連の仕事にありつけるのではないかと思った。しかしそんな都合よく出ているわけはないし、あってもホムラより腕の立つ人間などたくさんいる。
     設置されているテレビでは、注目のバトルを放送していた。何となく見ていると、なんだが知ってる名前がそこにある。顔が映った時、ホムラは驚いた。
    「あいつ、チャンピオンになりやがったのか」
     団員に負けて大泣きしてた子供は、いつの間にか成長していた。確実に年月は流れていた。
    「人間って変わるんだな……」
     顔こそ変わってないようだが、雰囲気は王者そのものだった。あの時のハルカがこうなるとは誰が予想できたのか。
     何なら、チャンピオンの過去をバラしてその筋で金を貰うか。しかしそれをバラしたところで色恋沙汰ではないから大したダメージは無いだろうし、社会的信用も向こうのが高い。やるだけ無駄だとテレビから目を逸らした。
     
     ポケモンセンターから出て、再び人混みの中に混じる。何もかももうない。行く場所もない。
     終わったか。陸地を増やすという夢が散って、残ったのは生きる場所もないという現実。今日も明日も生き残らねばならない。なのに生き残る術は奪われた。せめてポケモンたちさえいれば、頑張ろうという気になったのに。
     はっはっはっという息遣いが近くに聞こえる。強そうなグラエナがホムラの顔を覗き込んでいた。人懐っこく、ホムラの顔を舐めた。撫でるともっと、と言うように顔を舐めてきた。
     強そうな外見とは裏腹に、仕草がとてもかわいい。前に持っていたグラエナも同じような仕草をした。もしかしたら、という期待で同じ名前を呼んでみる。グラエナはさらに嬉しそうにホムラに寄ってきた。
    「運命の再会、だったら嬉しいんだけどな」
     もしそうだとしても今のグラエナには持ち主がいるはすだ。よく見るとグラエナの毛皮の中に首輪があった。連絡先があり、ホムラは公園の端の公衆電話からかける。数回のコールの後、息が絶え絶えの女性の声がした。向こうも必死で探しているようだった。それだけ大切にされているようだ。
    「グラエナ、いたんですか? すみません、ありがとう、ございます」
    「公園にいるんで、引き取りに来てください……体当たりするなウヒョヒョ」
     電話の間も、グラエナはホムラにじゃれまくる。仕方なくグラエナの頭をなでてやっても、構いたりなさそう。
    「……ホムラ?」
     電話の向こうの声色が変わった。知り合いの番号にかけた記憶はない。
    「そこ動かないで! 動かないでね!」
     電話が切れた。カガリの声ではなさそうだし、彼女もポケモンと離されている。他に知り合いと言ったら絶縁された両親くらいだ。
     公園のベンチに座った。グラエナも従う。よく手入れされた黒い毛皮が眩しい。
    「ホムラいた!」
     その声を聞いてグラエナがそっちに走り出した。今の主人のようだ。まだ若い女性だ。何も知らないで引き取ったのか、知ってても目の前にいる人間が、前の主人と知らないのか分からない。
    「……ところでさっきから名前呼ばれてるけど、俺たち知り合いだっけ?」
    「マグマ団幹部のホムラでしょ。知ってるよ。昔ホムラのペットになって荷物持たされた」
    「……まさかと思うがじゃあなんでチャンピオン様がこんなところにいて俺のグラエナ持ってるのか説明してもらおうか」
    「私じゃ不満? とにかく探してた。こっち来て」
     グラエナが行こうよ、とホムラを呼んでいるみたいだった。行くところもないホムラはとりあえずついて行った。

     大きなカフェに誘われ、そこでホムラがいなかった数年間の話をされた。マグマ団の処遇が決まり、ポケモンの新しい飼い主を探していたことを知って名乗り出たこと。マグマ団の一部ではあるが連絡先を知っていること。
    「世間の皆様の説得が一番大変だったの」
    「そりゃそうだ。それで俺が聞きたいのはそこじゃねえ。どうしてマグマ団に肩入れしてんだよお前が。チャンピオンがそんなことしてお前がマグマ団だと疑われんぞ」
    「あーもうそりゃあ真っ先に疑われた! あの制服記念に取っておけばよかったなぁー」
    「違うそうじゃねえ」
     話が微妙にかみ合わないし、ホムラの記憶の中には、大泣きしてるハルカしかないのでこんなに明るく語られても調子が狂ってしまう。
    「はぁ……もういい……付き合いきれん……」
    「えー。そういえばホムラ今後どうすんの? トレーナーやるの? だとしたらグラエナ欲しいよね?」
    「しばらくトレーナーやらん」
    「じゃあグラエナはもうしばらく預かるね」
     終始ハルカのペースで会話は終わる。とても嬉しそうなハルカと、ひたすら聞いてるホムラ。しかも日常のことを聞かされても、ポケモンリーグがどうのと聞かされてもピンと来ない。
    「ホムラこれからどうするの? 家帰るの?」
    「家探すの。これから」
    「……あのさ、うち来て」
    「うちってお前の家? お前何言ってるかわかってる? 普通、未婚の、しかも未成年が、前科者を家にあげねーよウヒョヒョ」
    「ホムラは大丈夫だよ。それにホムラは俺様のペットにしてやるって言ったんだから、主人とペットが一緒に住んでてておかしくないよ」
    「その話は忘れておけ。その方が幸せになる」
    「いいからうち来て! 引っ張っても連れてくから!」
    「あーわかったよ。お前、信用ガタ落ちすんぞ……」
     一度だけ、どんな暮らしをしてるのか見るのも悪くない。チャンピオンという、雲の上の存在が知り合いにいるのだから。

     夕方にハルカの住んでるというマンションに来た。チャンピオンになってから親元を離れたという。かなり上の階で、夜景がよく映りそうなところだった。一人で住むには広い部屋で、中にはポケモンを鍛えるための道具が置いてあった。
    「いい暮らししてんな」
    「でしょ? ホムラ座ってて」
     リビングのようなところには小さなテーブルとふんわりとしたクッションがあった。本当に全く違う世界に住む人間になったようだ。
     なんだか座りが悪い。ハルカが何か企んでいてこんなことをしてるようにしか思えない。ホムラが侵入してきて脅してきたと訴えれば、世間はハルカの味方だ。再びホムラが社会からつまみ出されれば今度こそ戻るところはない。
    「ホムラ今日は泊まってくれるんだよね?」
    「は? なぁお前自滅の道進んでるぞ……」
    「帰るとこ、ないんでしょ?」
     そこをつかれると反論できない。笑顔でハルカは答えた。
    「一人は寂しいから」
     部屋の明かりは眩しい。ハルカは隣に来て話し始めた。自宅で落ち着いてるのか、カフェとは違って少し暗い。その方がホムラも話しやすかった。
    「ハルカひとつ聞くが、俺がここでお前を傷つけて金持って逃げることは考えなかったのか?」
    「ホムラがお金ないこと知ってるし、ないなら渡す」
     話にならなかった。なぜこんなにハルカが絶対に信用しているのか分からないし、それは何か企んでいるものの裏返しかもしれない。

     さすがに寝床を共にするのはホムラも抵抗があった。夜景の見えるリビングに毛布一枚借りて、ここで寝ると言い張る。
     慣れない寝床に眠気が来ない。カーテンを引いても夜景は騒がしく、ホムラの眠気を邪魔していた。そしてもうひとつ眠りを邪魔するものが来た。
    「なんだよ。お前は寝室で寝ろよウヒョヒョ」
     毛布にそっと入って、ホムラの手を握っていた。成長したと思ったのは外見だけで、中身は親がいないと不安で寂しい子供のままのようだ。
    「……やだ。ホムラと寝る」
    「もうひとつ聞く。俺がお前に手を出す可能性を考えなかったか?」
    「ホムラそんなことしないでしょ? あったかい」
    「男を知らないで育つとこうなるのか……お前天然記念物だよ」
     全く警戒心がないのに、よくチャンピオンやってられるよな、と心のなかで感心する。言い寄ってくる男なんてたくさんいるだろうし、そいつらをみんなこんな風に接してたら無事じゃ済まないはずだ。


     ハルカのツテで住居も仕事も見つかった。マグマ団とはいえ、人を率いてた立場にいたのだから、組織の動き方はすぐにわかる。それでもマグマ団と知って、罵られることが多く、立場は下の下だった。もらえる額も多くなく、やっと生活していけるかどうかというところだ。
     そして週末になるとハルカがやってくる。そのまま泊まる。最初こそ拒否していたが、ホムラは何も言わなくなった。狭い部屋で、嬉しそうにホムラと話していく。友達いないのかと聞いてみた。
    「チャンピオンになったら、みんな離れて行っちゃった。なんか住むところ違うよねーって」
     ハルカはホムラのベッドに転がりながら明るく答えた。占領されてはホムラも居場所がなく、追い出されるように床に座っていた。
     するとハルカは起き上がり、ホムラの顔をじっと見た。
    「……ホムラ」
    「なんだ」
    「好き」
     やっぱり、という思いと何もわかってねえ!という思いが混ざる。一日二日の付き合いではない。そんなこととっくに気づいていた。だからこそ突き放すべきだったのだ。勇気出して言葉にしたようで、ハルカは真剣だ。
    「半年いてね、やっぱり私はホムラが好き。ホムラが前科者でも、ホムラは私を助けてくれた!」
    「ウヒョヒョ、バカか」
     それだけ返すと、ハルカの手を掴み、そのまま押し倒した。あれだけ強気だったのにいざ行動に出されたら怖いのか目を閉じている。あの時と一緒だ。
    「俺はこういうことしてもおかしくありませんって言われてんだよ。それなのに警戒心なく近寄ってくるお前は本当にバカだ。もう帰れ」
     ゆっくりと目を開けて、そしてホムラを真っ直ぐ見て。今にも泣きそうな顔で訴えていた。
    「やだ。ホムラはそんなことしないの知ってる。ホムラがあの時助けたくれなかったら、私は……」
     団員から言われた言葉を思い出した。確実にハルカを食う気だった。あの時は子供だから、まさかそんなことを本当にするとは思わなかった。でも今となれば、あってもおかしくない話だと認識できる。
    「今でもあの時思い出して怖い。ホムラは何考えてるか分からないけど、ずっと会いたかった」
    「ウヒョヒョ意味わかんね。恩返しのつもりなら、俺は十分助かった。自分自身差し出す必要ねえよ。お前はチャンピオンなんだ、わざわざ前科ついてる人間と関わろうとするな」
     それでもハルカは首を縦に振らなかった。嫌だ、離れたくないと言うばかり。
     言葉では説得できなそうだ。ホムラが手を離し、体を起こした。すると突然ハルカはホムラの体に抱きつき、そのままベッドに倒れこむ。誘うかのようにホムラの唇はふさがれた。強引だったためか、すぐにホムラは離した。
    「なにすんだ! お前わかってんのか?」
    「うん。……ホムラ、して」
     愛を囁くようにハルカは言った。まさか子供だと思っていた人物から、甘く、性を喚起させるような言い方をされるとは思わず、ホムラはじっとハルカを見つめた。
    「したら気が済むか?」
    「もっと欲しくなっちゃう」
    「じゃあダメだ。それで俺を離せ」
     そう言ってもハルカはホムラにしがみついたまま。離してくれそうにない。少しためらい、ホムラはハルカの唇に触れた。何年も触れてない感覚は優しい。苦しそうにハルカが体を動かし、服の上からでも伝わる体温がまたホムラを夢中にした。
     より体が絡んでいた。息が荒く、とろけた目。ハルカの頭をホムラは撫でた。
    「これで満足か?」
     自身もかなり息が荒くなっていた。こんな状況でも頭が冷静な判断をしてくれるのはありがたい。これ以上はダメだ、と警報が鳴っている。
    「この先も……してほしい」
    「また今度な」
     ハルカの額に口付けする。そう言わないと解放してくれないだろう。今度も何もないのに。でもこの欲望は際限がないことを知っている。
     二人はその後も無言が続いた。少し離れたところに座るホムラにハルカが黙って近寄る。そして猫のように膝に乗って、ホムラの胸に顔をうずめた。
    「ホムラ、好き」
    「さっき聞いた」
     頭を撫でた。目を細めて嬉しそうにハルカはホムラにしがみつく。
     ホムラにはなぜここまでハルカが自分に固執するのかわからなかった。
     





    この後のメモがないため半年くらい止まってる


      [No.3132] ある夏休みの一日 投稿者:白色野菜   投稿日:2013/11/28(Thu) 22:01:11     99clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:季節が来い】 【シャワーズ】 【とける】 【煮ても焼いてもいいのよ

    僕のおじいちゃんは、金魚鉢が好きだ。

    おじいちゃんちに遊びに行くと、おじいちゃんは縁側で空っぽの金魚鉢とよく日向ごっこしている。
    金魚鉢は、見るたび違くて大体がポケモンの形をしている。
    それは、大体水に住んでるポケモンだけどたまにエネコとかその辺にいるのの形の時もある。

    「ねぇ、おじいちゃん。なんで、金魚鉢に金魚いれないの?」
    僕はそう、おじいちゃんに聞いたことがある。
    おじいちゃんは、ゆっくりと笑いながら答えてくれた。

    「それはねぇ、おばあちゃんが嫉妬するからだよ。」
    おばあちゃんは、僕がおっきくなる前に死んじゃった。
    おじいちゃんが、おばあちゃんの話をするとき懐かしそうに目を細めるんだ。

    おじいちゃんは、僕に棒アイスを食べさせながら話してくれた。

    おじいちゃんが、金魚鉢が大好きなこと。
    おばあちゃんと結婚した後も、金魚鉢ばっかり見てたこと。
    怒ったおばあちゃんが、金魚鉢に水を入れるのを禁止したこと。
    慌てたおじいちゃんが、たっっくさん謝っておばあちゃんと二人でゆっくりする時にだけ金魚鉢に水と金魚を入れるようになったこと。

    だから、おじいちゃんは約束を守って金魚鉢に金魚を入れないんだって。
    天国に行ったときの楽しみにしてるんだって。

    その話を聞き終わる時にはとっくに、アイスを食べ終わってて木の棒をがじがじかじりながら話を聞いてたんだ。

    「もし、約束を破ったらどうなるの?」
    僕がお母さんとの約束を破ったら、げんこつがとんでくる。
    おじいちゃんは、どうなんだろう?

    「さーて………破るつもりがないからなあ。」
    おじいちゃんは、暑いのに熱いお茶を飲みながらのんびり言った。

    僕は、ちょっと気になりながらアイスの棒を捨てに家の中に入ったんだ。




    その日、おじいちゃんは家にいなかった。
    何時もの縁側にはハスボーの形をした金魚鉢だけがポツンっていた。

    僕はランドセルを玄関から、ちょっと広い部屋に持ってきながら家の中を見たけど誰もいなかった。

    僕はわくわくしながら、台所に走っていった。
    ちょうど良いお鍋を持って、今度は縁側から庭に飛び出す。

    靴下越しに土のざらざらとした感じがする。
    庭の隅っこにある池を見下ろしたら金魚が一杯元気に泳いでた。
    ちょっと、よどんで緑色になってる水にお鍋を沈めてから頑張って持ち上げたら逃げ損ねたのが二匹捕まった。

    白いお鍋の中をヒラヒラ泳ぐ赤い金魚を少しみてから、お鍋を金魚鉢へ持っていく。
    ざばっと、中身をいれたけど水の量が足りなくてウパーが半分だけ緑になった。

    駆け足で、台所にいってお鍋に水をくむ。
    慌てすぎてちょっぴり水を廊下にこぼしながら縁側に戻ったら。

    一匹のシャワーズがハスボーの金魚鉢を覗き込んでいた。
    僕は結構たくさんこのおじいちゃんちに来てるけど、シャワーズを見るのははじめてだった。

    シャワーズはハスボーに向けていた視線をこっちに向けた。
    真っ黒な目と僕の目があう。
    それから、僕の持っている鍋を見て、最後に僕の靴下を見て、ため息を吐くみたいに頭を下げた。

    僕は持ちっぱなしで重くなってきた鍋を足元に置いて、鍋を蹴っ飛ばさないように注意しながらシャワーズにじわじわっと近づいた。

    野生のポケモンに近づくみたいにゆっくりと、ちょっとづつ。

    シャワーズは、そんな僕をちょっと見ると何も鳴かずにひょいっと金魚鉢の中に飛び込んだ。

    それからは、あっというまの出来事で。


    金魚鉢へ飛び込んだシャワーズは、まるで水みたいに入ってた水となじんで半分しか入ってなかったハスボーの金魚鉢が水で一杯になって。

    それもすぐに、シャワーズなんでもないみたいに水から飛び出してきたんだ。
    水がシャワーズの体になって、金魚鉢の中身は空っぽになったんだ。
    そう、からっぽ。

    金魚は、シャワーズの体の中をひらひら泳いでたんだ。
    まるで金魚鉢の中にいるみたいに、池の中をおよいでるみたいに普通に。

    シャワーズは、僕をちらっと見たあとすごい勢いで外にいっちゃった。

    頑張って追いかけたんだけど、最後に池に飛び込んだ音がして、そっから浮かんでこなかったからどうなったのか僕は知らない。

    みんな寝たあとに、こっそり水から戻って出ていったのかな?

    僕?廊下を水びだしにして靴下も汚したから買い物から帰ってきたお母さんにたっっぷり怒られたよ。

    でも、おじいちゃんにこの話したらなんだかとっても嬉しそうだったからいーんだ!








    ……文字数と纏まらない文章と格闘してたらいつの間にか出来てました。
    いつか、チャットで話していたお話。


      [No.2871] ともだちは、 投稿者:WK   投稿日:2013/01/30(Wed) 11:16:38     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    部屋を掃除していたら、とんでもない代物が出てきた。
    と言っても、俗世間様には全く価値が無い物だけど。

    「……」

    時は十年以上前。私が小学二年生だった時のこと。ポケモンはジョウト編の最後の年。映画はラティアスとラティオス。唯一私が見損ねた映画でもある。
    国語の授業で、『のはらうた』をやった。動物や虫の気持ちになって詩を詠むのだ。小二にしてはハードルの高い課題だったと言えよう。
    当時私は工藤直子さんの小説『ともだちはみどりのにおい』を読んだばかりだった。馬鹿正直に私はそれを読んだことを詩に書いた。
    へったくそな絵まで付けて。

    「懐かしいな」

    だがそれが先生の目に留まることとなる。しばらく後、私は後ろに貼られているはずの詩が数枚抜けていることに気づく。そしてその中には、私の詩も入っていた。
    少し考え、まさかと思い私は教室を飛び出した。向かった場所は一年生が毎回帰る時に集合する場所。校門前。
    うちの学校は独特の構造をしていて、入口が三つあった。一つは業者用。あと二つはそれぞれの道から登校してくる生徒用。
    私は坂を登った先にある、校舎直通の門から入っていた。
    そこには一年から六年までの掲示板があった。

    「!」

    二年の掲示板に、五枚の詩が展示されていた。
    その中に、私の詩があった。

    今思えば、それが私の一番始めの創作だった。
    幼稚園の頃から何かを書くのは好きだったけど、ここで一区切りがついていた。
    その後も時々書いた文章が学年通信に載ったりした。


    『ともだちはみどりのにおい

    わたしは図書館で かりた本をよんだ
    さいしょにライオンがいて、
    つぎにかたつむりがいて、
    さいごにロバとともだちになる』

    その時は、まだ自分がこんな所にその内容を書くなんて思ってもいなかった。
    そもそも未来を夢見ることもあまりしなかった。

    でも、

    大人になれば、何でも出来ると――
    それは、思っていた。


      [No.2870] NOAHから、マサポケノベラー様へ 投稿者:NOAH   投稿日:2013/01/30(Wed) 10:28:14     59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


    こんにちは。NOAHです。
    まずは、この小説をここまで読んでいただき
    本当にありがとうございます

    長編未経験ながら、どこまで書けるか不安ながら
    衝動だけで書き始めたこの小説ですが
    少しずつ書き足していってるのが現状です。

    これを書く前にも書き足したのですが
    このような形で更新して大丈夫だろうか?
    と、疑問に思いました。

    と同時に、このまま書き足すことも、勝手に消してしまうことも
    マサポケ管理者のNo.017様を始めとした
    たくさんのマサポケノベラー様に、ご迷惑になるのでは?
    とも思っています。

    そこで皆さんに、お聞きしたいことがあります。
    それは、この「アリゲーター・ロンド〜受け継がれる名前〜」を
    消した方がいいか、書き終えた方がいいかということです。

    私個人では、どうしても決めきれません。
    皆さんのご意見を、ぜひお聞かせください。

    NOAHより.


      [No.2869] ヘルガーは来ない 投稿者:クロトカゲ   投稿日:2013/01/30(Wed) 00:33:49     102clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    『ヘルガーが来たぞ!』

     その声を聞いて集落は恐怖に包まれる。

    『ヘルガーが来たぞ!』

     見張りの少年の声を真似て、ペラップは何度も鳴きながら飛び回る。
     その集落はメリープを育てる遊牧民のコロニーだ。そんな場所にヘルガーはやってくる。ヘルガーはその牙や爪、炎を使って人々やメリープを襲う。
     大事な物を纏めて、もしくは何一つ運ぶこともできず、メリープと人々はその場から一目散に逃げる。
     一人残らずに逃げ切ったところ、前々から決まっていた避難場所で皆が冷静になったところ、最後の一人が現れる。危機を知らせたペラップを肩に乗せ、皆のことを見回しながら少年は満面の笑みを浮かべた。その時だけ少年は笑う。


     ヘルガーは来なかった。


     少年の両親はヘルガーに食べられてもうこの世にいない。天涯孤独になってしまった少年をある親子が引き取って育てた。同じく妻をヘルガーによって失っていた男も、同い年の少女も、少年を新たな家族として迎え入れて精一杯の愛情を与えたつもりだった。
     少年は男の言いつけを守り良く働いた。しかし少年は笑わなかった。幼くして両親を亡くしたのだ。無理もないと思いながら親子は特に変わらずに少年に接した。しかし、集落はそんな少年に最初こそ同情したものの段々と気味悪がるようになった。少年が熱心に働けば働くほど集落の心は離れていくようだった。
     ある日、少年の働きが一人前と認められた時、集落はある決定をして少年に仕事を与えた。
     見張りだ。
     集落の端で放牧を行い、異変が起きればそれを皆に知らせる。重要な役割だ。そしてそれは危険な役割だった。
     少年の父親代わりの男は異を唱えた。そんな危険な役を押し付けるのか、一人前に認められたとはいえまだ子どもではないかと。しかし少年は極めて平静に言った。僕がやります、と。


     ある日、ペラップが集落を飛んで回った。少年の声で「ヘルガーが来たぞ!」と何度も鳴いて飛び回った。皆は少年がペラップを使って危険を伝えたのだと思い、メリープを連れて一人残らず逃げた。しばらくして少年が姿を現した。幸い、誰一人ヘルガーの餌食にならなかった。
     それからしばらくして同じようなことが起きた。また犠牲者は出なかった。しかし集落に戻ったところで誰かがおかしい、と言い出した。ヘルガーを誰一人見ていないというのだ。そしてヘルガーが来た形跡すらないと言ったのだった。ヘルガーはほのおポケモンだ。少年の親が犠牲になった時も、それ以外の時も、集落で火事や焼け焦げた跡があった。しかしこの前も今回もそれが無い。その時はおかしいと思わなかった者達も、再びペラップが『ヘルガーが来たぞ!』と飛び回り、何も起きなかったことに不信を抱いた。そして誰かが少年に聞いた。

     「どこも燃えてないのか。ヘルガーはここまで来なかったのか?」

     少年は笑った。誰もが始めてみる満面の笑みを浮かべるだけで、何も言わなかった。


     平穏が続き、忘れた頃にそれは繰り返された。そんなことが何度か続いた時、誰かが言い出した。

    「アイツは我々にヘルガーが来たと嘘をついてからかっているんだ! 嘘をついて逃げ回っている俺達を見て笑っているんだ!」
    「アイツは集落の者を恨んでいるんだ! 自分の両親が食われたのは我々の所為だと思っているんだ!」

     人々は段々少年に不信感を募らせていった。



    「寒くない?」
    「うん」

     夜風に当たる少年の元に少女がやってきた。頬を押さえる少年を見て彼女は溜息をつく。濡らしたハンカチを手渡して彼女は言う。

    「またお父さんに殴られたの」
    「うん」
    「どうせ『だって』とか言ったんでしょ?」
    「『言い訳するんじゃねぇ!』ってさ」
    「あなたはペラップとは違って物真似の才能はないわね」

     少女が薄暗いながらも彼の腕や脚に痣があるのを見つけた。父の仕業だろうか? いや、きっとそうではないのだろうと思った。少年を良く思っていない連中の仕業で、そのことが原因で口論になったのだろうと推測した。

    「ねぇ、ペラップに『ヘルガーが来た』って鳴かせるのは止めなよ」
    「どうして?」
    「もし、ヘルガーが来なかったらどんな目に遭わされるか――」
    「君はヘルガーが来た方がいいって言うのかい?」
    「そんなことあるわけないでしょ!」
    「じゃあ、僕は止めないよ」

     そう言って、彼は家に戻っていった。
     少女は、本当は見張りなんて辞めればいいと言いたかった。
    でも言えなかった。
     少年が見張りを辞めたら誰が見張りをやるのか。辞めろと言ったら「じゃあお前がやれ」と言われるのが怖かったのだ。それは彼女だけではない集落の皆が思っていることだった。だから少年はずっと見張りをさせられている。
     我が身の可愛さに何もいえない自分が情けなくて、悲しくて、少女の目から涙が溢れた。
     それでも家族である自分だけは少年を信じなければならないのに、人々が逃げ回った後だけ見せる彼の笑顔を見ると、彼女は何にもわからなくなってしまうのだった。


     そして、またペラップが集落を飛び回る日が来た。

    『ヘルガーが来たぞー!』

     ペラップが飛び回りながら叫ぶ。何ども叫ぶ。
    だが集落の者は誰一人として慌てる者はいなかった。

    「またか」
    「全くしょうがないやつだなアイツは」

     誰一人として逃げる者はいなかった。皆は少年にどんな言葉をかけてやろうか考える。今度は騙されなかったぞ、と笑いものにしてやろうという者もいれば、今度こそ足腰立たなくなるまでぶん殴ってやると息巻く者もいた。
     ヘルガーは現れなかった。そして少年も現れなかった。
     夜になっても朝日が昇っても、次の日も、そのまた次の日になっても帰ってくることはなかった。
     それから数日して少年が放牧していた場所の近くで、焼け焦げ食い散らかされた少年らしき亡骸が見つかった。近くにペラップが飛んでいて間違いないとされた。集落の皆は新たな見張り役が選ばれることを恐れ、その見張りは同じような目に遭うのだと思い、憂鬱になった。因果応報だと少年の死に悲しまなかった。親子を除いては。


    「お父さん、飲み過ぎよ」
    「うるさい」

     枯れた声で娘が制止しても男は酒を飲むのを止めなかった。男はその日、朝からずっと酒を飲み続けている。

    「もう、その辺にしておいてよ。私、水を汲んでくるわね」

     娘が出て行くと、男は空になったコップに酒を注ぎながら、テーブルの上で豆をつまむペラップを見た。

    「お前の主人は馬鹿なヤツだったよ」

     呂律の怪しい男の声を聞き、ペラップは男をじっと見た。それが妙に癪に障り、男は紅い顔をさらに真っ赤に染めてテーブルを叩いた。

    「テメェの主人は大馬鹿野郎だっ!」

     大きな音と声に驚きペラップは飛び上がった。そして男の頭上を羽ばたいてぐるぐる回ると大きな声で鳴いた。

    『ヘルガーが来たぞ!』

     少年の声でペラップは何度も言う。

    『ヘルガーが来たぞ! ヘルガーが来たぞ!』
    「止めろ」
    『ヘルガーが来たぞ! ヘルガーが来たぞ!』
    「止めろって言ってるだろう!」

     男は中身がまだ入っているコップを投げつけました。直撃し、落ちてきた所をさらに男は殴り、ペラップは壁に叩きつけられました。

    『ヘルガー……ヘルガー……』
    「まだ言うかこの――」

     男が再び怒鳴り声を上げようとした時、ペラップは少年の声で言った。

    『ペラップ、早く行くんだ』

     男は動きを止めた。それは初めて聞く言葉だった。

    『早く行って みんなに知らせるんだ』

     羽を広げたまま息も絶え絶えにペラップは言う。

    『ここは通さない ヘルガーめ 僕の大切な人達に近づけさせるものか』
    「おい、何を言ってるんだ――?」
    『あっちへいけ 絶対に通すものか おいペラップ何やってる 早くみんなに知らせるんだ早く』

     男は知っている。ペラップは聞いたことしか物真似ができないことを。少年が会話しようとどれだけ喋っても、聞いたことをオウム返しに喋ることしかできなかったことを。

    『ペラップ 帰ってきたのか でも下手を打ったかな いつもみたいにいかなかった いや いつもが運が良かったのかな? 大丈夫 先に行けよ もう 不思議と痛くないんだ もう少し休んだら行くよ』

     それが何なのか想像することはたやすいことだった。
     そう、これはペラップが聞いた少年の言葉。

    「そんな馬鹿な――」
    「どうしたのお父さん? そんなところに突っ立って」

     顔を向けると入り口に少女が立っていた。彼女は部屋を見回すと驚き、水の入った桶を乱暴に置くと壁際に伸びているペラップに駆け寄った。

    「ちょっとお父さん! ペラップは何も悪くないでしょ! 急いで手当てしないと!」

     治療道具を急いで取ってくると娘はペラップの手当て始めた。

    「そうだ悪くない」
    「え?」

     少女は父の呟きが聞こえて思わずその顔を見る。まるで生気の無い表情でどこか遠くを見ていた。

    「ペラップも、あいつも悪くないんだ……」

     男は気が抜けたように座り、そのままテーブルに突っ伏した。そして両手を握ると、何度も何度もテーブルに打ち付けた。

    「ヘルガーが来なかった時俺達がするべきは怒ることじゃなかったんだ! そんなことじゃなかったんだっ!」

     肩を震わせ叫ぶ彼に娘は何も言うことはできなかった。ただ、彼女の側でペラップが『馬鹿野郎』と男の声で小さく鳴いた。


     その集落でペラップが『ヘルガーが来たぞ』と少年の声で鳴いて飛び回ることは二度と無かったという。


      [No.2866] アリゲーター・ロンド〜受け継がれる名前〜 投稿者:NOAH   投稿日:2013/01/28(Mon) 13:46:24     122clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:ワルビアル】 【ポケモンBW】 【描いてもいいのよ

    一匹のワルビアルが、突っ立っていた。

    砂嵐のひどい、この4番道路のど真ん中で
    傷だらけの体に何も手当てをせず、誰かをずっと待っていた。
    その傍らには、1つのポケモンのタマゴがあった。
    孵るとしたら、おそらく、メグロコ……。
    このワルビアルの子が生まれるのだろうと、大体の検討がつく。

    「……まだ待つつもりか?」

    「がう。」

    「お前のトレーナーは……ヤツはもう死んだんだぜ?
    お前はもう野生だろう。ヤツの言葉に従うことはねぇだろうが。」

    そう。コイツのトレーナーは、相棒であったあの男は死んだ。
    コイツの目の前で、幼い少女と、傍らのタマゴを守ろうとして、死んだ。

    ヤツが死んだことで、唯一の手持ちであったコイツは野生となった。
    だがコイツは、今でも死んだヤツの、最後の言葉を聞いて、今まさに、それが果たされようとしている。

    ザッ、ザッ、と、砂を踏む小さな足音が聞こえた。
    吹き上げる砂煙の向こう側から現れたのは、12、3才くらいの少年だった。
    砂嵐から身を守るための防護用コートで身を包んでいるため確認できなかったが
    確実に、わかったことがある。

    あの少年は、死んだヤツの子どもだ。

    ワルビアルはタマゴを持ち上げると、無言で少年に近寄る。
    少年は、ワルビアルとタマゴを交互に見やり、こちらも無言で受け取った。

    「……父さんのこと、悔しかったろ。」

    「…………。」

    「ありがとう、父さんの傍にずっといてくれて。
    ……本当に、ありがとう。幸せだったと思うよ、きっと。」

    少年は、自分より背の高いワルビアルに、臆せず話しかける。
    普通のガキなら、そのいかつい見た目を怖がるっつーのに
    ヤツの子である少年からは、微塵もその様子はなかった。

    「よう、少年。」

    「……だれ。」

    「てめえの親父を撃った……って、言ったら?」

    少年は眉を顰めて、ポケモンが入ったボールを
    無言で突き出すように構えた。
    ギロリ、と睨みつける目は、ヤツにそっくりだった。

    「冗談だ。……俺はヤツの同僚だよ。」

    「…………。」

    「くくっ……親父そっくりだ……お前、名前は?」

    「……『仁科シュロ』。」

    「シュロ、な……お前、刑事になる気は無いか?」

    その言葉で、シュロと名乗った少年は驚いた表情をする。
    隣では、ヤツのワルビアルが、事の成り行きを見守っていた。

    「素質はあるぜ、充分にな。」

    「……試したの。」

    「あたり。……お前なら、コイツと、ヤツの意志を継げるってな。刑事のヤマ勘信じろ。」

    「へぇ……子どもに賭け事させるわけ?」

    「刑事とその辺のペテン師を一緒にすんなよ。」

    この生意気な口調も、親父譲りのようだ。
    警戒心はもう解いたのか、ボールは既にしまっており
    タマゴを改めて抱え直していた。

    「刑事になれ、ね……考えとく。」

    「おー、来るの、楽しみにしてるぜ。」

    「……それじゃあ。」

    シュロはコートをはためかせて、来た道をまた戻っていった。
    砂煙の中に消えたシュロを見届けて、隣にいたワルビアルが
    ついに事切れたように倒れ込んだ。

    「なんだ……てめえも死期が近ぇのかよ。」

    「ぐぅ……。」

    「は、笑えってか?……そうだな、盛大に嘲笑って見送ってやる。」

    にやり、と笑って、倒れ込んだワルビアルを見る。
    コイツもにやり、と笑い返した。

    「じゃあな、『ヴィッグ』。『仁科レン』の、良き相棒。」

    最後まで笑みを浮かべたまま、コイツはその生涯を終えた。



    -11年後-

    「あ"ー!もう!雑務押し付けてどこ行きやがった、あの飲んだ暮れーーッ!!」

    人の行き交うヒウンシティに、俺の主の声が響いた。
    その横で、穏和な顔付きの、主の先輩にあたる緑の髪の男が笑う。

    「あはははは、本当だよねぇ。班長ってば、俺たちほったらかして
    昼間っから飲み明かすもんねぇ。……この前なんか、100万もするロマネコンティ飲んでたし。」

    「ヒースさん、他人事のように笑わないでください!
    俺は、事件のときだけマジメに取り組む
    あのおっさんの鼻を明かさないと気が済まないんですッ!!」

    「ねぇ『シュロ』君。新作スイーツ販売の度に
    班長と同じようなことを仕出かすキミが言えた義理かい?」

    「……………。」

    主にとっては思いもよらない反撃だったらしく
    つい押し黙った主を見て、隣の男がにへら、と
    力の無い笑みを浮かべる。

    「キミも大変だねぇ、『ヴィッグ』。似た者同士の義理の親子に付き合わされて。」

    「ヒースさん、冗談でもそれ以上言わないでください。
    有り得ないですから。マジで本当に、無いですから。」

    「あーじゃあ…あれだ。キミの亡くなったお父さんと班長が似た者同士で
    キミがお父さんの血を濃く引きすぎたから、親子に見えるんだ。」

    「ヒースさん……言ってることが半分くらい無茶苦茶ですよ……。」

    「そう?的を得てると思うけど。」

    適当すぎる推理に突っ込みを入れている主を横目に
    ずっと抱きかかえている、俺の子どもがいるタマゴを見つめる。

    時々動く程度で、まだ生まれる気配は無い。
    ……やはり、信頼できるトレーナーに任せた方がいいだろうか。

    「あー……何であの人の誘いに乗っちゃったかなぁ……。」

    「誘われたんだっけ、子どもの時に。」

    「そうですよ、『お前なら、親父と、親父の相棒の意志を継げる。刑事のヤマ勘信じろ。』……と。」

    「へぇ、刑事のヤマ勘ねぇ……。」

    「あの人のギャンブル運、半端無いっすからね。」

    「そうだよねー、それはまあ、あの人のお子さんにも言えることだけど。」

    「『あいつら』とあのおっさん、血ぃ繋がってないっすよ?」

    「え、そうなの?」

    主の言うあいつらとは、2人の上司にあたり、今現在をもって
    行方を眩ませている人の元に、養子に入った双子の姉弟のことで
    このヒウンシティで、『Jack Pot』という捕獲屋を営んでいる友人だ。

    今俺が抱えているこのタマゴも、普段はそこに預けているが
    ここ最近は平和なため、俺が親として責任持って抱えている。

    「しかし、どこ行ったんだあの飲んだ暮れ……!!」

    「何時も行くカフェにも、カジノバーにも居なかったもんね……。」

    本格的に頭を悩ませる2人だったが、プライムピアの方が
    やけに騒がしいことに気付いた。

    何か事件でも起きたのだろうか。
    よくよく見るとなんとこの街のジムリーダーがいた。

    慌てて彼の近くに寄ると、ベレー帽の女の子がわんわん泣きながら、ポニーテールの女の子と
    浅黒い肌の、元気そうな女の子に慰められていた。

    「どうした、アーティ。」

    「んうん……心強い刑事さんのご登場だ。
    シュロ、ヒースさん、ちょっと力を貸してよ。」

    「何かあったの?」

    「聞いてよ!このお姉ちゃん、プラズマ団にポケモンを奪われたんだって!!」

    「「……!!」」

    プラズマ団、この状況で一番聞きたくなかった名前だ。
    主の表情が、一気に険しいものに変わる。

    「ちっ……またヤツらか……。」

    「まずは、詳しく話を聞こうかな。キミたち、名前は?」

    「私はトウコ。カノコタウンから来ました。この子は幼馴染のベル。」

    「私はアイリス!」

    聞くと、このベルという少女のムンナが、1人のプラズマ団によって奪われたらしい。
    追いかけたが、この辺りで見失い、途方に暮れて泣き喚いていたそうだ。

    ふと、こちらを見張るような視線に気付いた。
    振り向いた先には、奇天烈な服を着た男。
    間違いない。プラズマ団……!!

    「ぎゃうっ!!」

    「げ、バレた……!!」

    「!待てッ!!」

    脱兎の如く逃げ出したプラズマ団を、主とジムリーダー
    そしてトウコと名乗った少女が追いかけて行った。
    向かった先は、ジムの方向のようだった。

    「ヴィッグ、タマゴは僕が預かるよ。
    キミはシュロ君の相棒でしょ?
    彼が無茶しないようにしなきゃ。ね?」

    何かがあっては困ると、ココに残ることにしたらしい
    ヒースさんにタマゴを預けて、俺は主の後を追いかけた。



    カノコタウンを旅立った時から、度々目立つ集団がいた。
    プラズマ団。ポケモン解放を訴える、奇妙な服装の謎の集団。

    けど、実際はポケモンを道具としか見てないヤツらばかりだった。
    このヒウンシティに来る数日前も、ジムと共同で動いている
    シッポウシティの博物館の、展示品の盗難事件に携わったばかりだ。

    あのときは追い詰めた先で、丁寧にも盗んだものを返してくれたが
    今回は、物じゃなくてポケモンだ。しかも、幼馴染の、ベルのポケモン。

    「絶対に、取り返してやる……!」

    「ぎゃう!」

    「!」

    気付いたら、刑事さんのワルビアルが追い付いていて
    私を諭すような目で見ていた。

    危ないから下がっていなさい。そう言わんばかりの痛い視線だった。
    しかし、その目線に何故だか懐かしさを感じた。
    なぜだろう。私はあの刑事さんにも、ワルビアルに会うのも初めてなのに。

    「……私、引き下がる気はないから。
    このまま指を加えて見てるって云うのは嫌なの。
    ましてや被害者は、私の幼馴染だから、余計に。」

    「……がう。」

    「どうしてもって言ってる?……もちろんよ。」

    挑発的な目線を送れば、諦めてくれたのか
    これ以上、咎めることはしてこなかった。

    「……ありがとう。行こう!」

    私の掛け声に彼が応えてくれた。
    それが嬉しかったけど、ジムのすぐ近くのビルの前で
    プラズマ団とバトルを繰り広げている刑事さんとアーティさんを見つけた。

    「全員、携帯獣愛護法違反、強盗、窃盗!
    その他諸々の罪で現行犯逮捕だ!!」

    「ぎゃうん!!」

    「!!」

    「!トウコちゃん!!」

    「私も戦います。ベルを泣かせた上に
    彼女の大切なポケモンを奪ったんです。
    絶対許さない……!!行くよ、ジャノビー!!」



    あれから少しして、ビルの中に入ることが出来た私たちの前に
    カラクサタウンで演説をしていた、壮年の男の人がいた。
    ゲーチスと名乗った男の話の前に、目を泣きはらしたベルが
    アイリスちゃんと、もう1人の刑事さんに隠れながらもやってきた。

    彼は何を思ったのか、ベルにムンナを返すように指示し
    そのまま煙玉を使い、結局は逃げられてしまった。

    ワルビアルのトレーナーである黒髪の刑事さんは
    悔しそうな顔で外に出ると、ぐしゃぐしゃに頭を掻き始めた。
    それをもう1人の刑事さんが宥めている。

    「くそ……また逃げられた……!」

    「まぁまぁ。根気良く行こうよ。」

    「……そうっすね。」

    ハァ……と、ため息を吐く黒髪の刑事さんを見ていると
    何だかずっと昔に会ったことがあるような気がした。
    黒髪に……ワルビアルを連れたトレーナー……。

    「……ぁ。」

    「トウコ?どうしたの?」

    「ベル……11年前、私が遭遇した事件のこと……覚えてる?」

    「え……っと、確か、トウコを守ろうとして
    亡くなった人がいるって言ってた、あの?」

    「うん……あの黒髪の刑事さん……
    たぶんその亡くなった人の、子どもさんだと思う。」

    「ぇ……?」

    「おー、じゃあキミがあの時の女の子か。」

    ぽん、と頭に、男の人の手が置かれた。
    ……あれ?この人、どこかであったような……。

    「あ。ギリア班長ー、どこ行ってたんですか?」

    「……墓参りだ。あぁ、そうだ……アーティさんよぉ。」

    「んうん?何でしょ?」

    「どっか一室、貸してくれねえかなァ。
    ……11年前のこと、きちんと話してやろうと思ってさ。」

    アーティさんは、突然の申し出ながらも
    笑顔で承諾してくれた。

    「…あの!…私も、お邪魔していいですか?」

    「ベル……?」

    「トウコを助けた人の話だもん……幼馴染として聞かなきゃ。」

    「……ありがとう、ベル。」

    「気にしないで!……あ、チェレンも呼ぶ?」

    「……うん。」

    「わかった。ちょっと待ってて!」

    ベルが、ライブキャスターでチェレンを呼んでくれた。
    今からジムに挑戦しようと思っていたらしく
    すぐに駆け付けてきてくれた。

    「んじゃ、話すか。……1999年、6月13日。
    20世紀最後の、凶悪事件が発生した日のことを。」



    -1999年6月13日・イッシュ地方ヒウンシティ-

    「いやー、やっぱ向こうと違って、こっちは晴れの日が多いね!」

    窓から外を眺める、長身の、黒髪の東洋人の男。
    見た目だけなら、まだ人種差別も残っていた当時のイッシュ地方では
    ソイツは異質な存在だった。

    「そうかー?普通だと思うけど。」

    当たり前のように返していたが、俺はこの男―…。
    仁科レンが、少し苦手だった。

    「ギリアは知らねえだろうけど、俺の故郷の
    ホウエン地方はこの季節、どっこも雨ばっか何だよ。
    晴れの日なんてホント稀!!」

    「へェ……興味ねぇや……つーか声、うるさい。」

    「おま……また二日酔いか?いい加減控えろよ……。」

    「お前が甘いもん控えたら止めるかもな。」

    「………。」

    皮肉を込めて返したら押し黙った。ざまぁみろ。
    ペットボトルの中の水を飲んで、息をつく。……やっぱ昨日、飲みすぎた……。

    「……あ、お前、今日なんかあるんじゃなかったっけ?」

    「あ"ぁー!!」

    「だからうるさい……。」

    「あ、すまん……。」

    うるさくなったり静かになったり……。テンションの幅が本当にうざったい……。
    このホウエン人の気質である、能天気なとこが苦手だ。

    「少し出てくる。」

    「おー…そのまま帰れ。」

    「ひどっ。」

    そしてげらげらと笑うレン。ギロリと睨みつけると
    おどけた表情の笑みを浮かべて出て行った。

    これが、事件発生1時間前の
    俺とヤツの、最後のやり取りだった。



    始めてこの地方に来たとき、目にする物全てが新鮮だった。
    ホウエンの大自然の中で育った身としては、空を貫くような高いビルも
    モノクロのタイルのようなレンガ道も、食べる物も、住んでいるポケモンも
    何もかも、全てが違う場所。

    生まれ故郷のホウエンを離れたのが18才のとき。
    ……あれから17年が経った。
    今は守るべき家族がいて、良き友人がいて、ライバルがいる。

    片手間に、途中で買ってきたミックスオレを持ち
    ポケモンセンターへと入って行った。

    「仁科さん。」

    入ってすぐに、ここを取り仕切るジョーイさんが
    タブンネと共に話しかけて来た。

    「やぁ、ジョーイさん。……アイツは?」

    「今日はお元気ですよ。相棒さん。」

    「そうか、良かった……会えるかな?」

    「わかりました。少しお待ち下さい。」


      [No.2610] うふふふふ 投稿者:moss   投稿日:2012/09/07(Fri) 21:51:15     58clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    > 怖い!怖すぎる!下手なホラーよりずっと怖いぞ!
    > でも多分この怖さが分かるのはポケモン好きだけなんだろうな……

    ありがとうございます。怖いの不気味なの書こうと思ってたんですよw
    ポケモン好きのみわかる恐怖……なんかいい響きですよね

    > そうだよね。よくよく考えたらタウリンとかブロムへキシンとか薬なんだよね。
    > 使いすぎたらヤバイよね。ジャンキーだよね。
    > 当たり前なんだけどゲームの中にサラリと出てくるものだから気付かない。変な盲点。

    さらっと出てくるからこそわからない。ましてやゲームの中ですからね、薬なんて意識ないですもんねw
    みなさんも使いすぎには注意しましょう。


    感想ありがとうございました!

    テンションがすごく上がりました。最近リアルが忙しくてなかなか長時間ネットできる日がないのですが、
    一応小説のところだけは毎日チェックしてるというね。

    本当に読んでくださってありがとうございます。


      [No.2609] うわあああああ 投稿者:神風紀成   投稿日:2012/09/07(Fri) 17:31:05     72clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    怖い!怖すぎる!下手なホラーよりずっと怖いぞ!
    でも多分この怖さが分かるのはポケモン好きだけなんだろうな……

    そうだよね。よくよく考えたらタウリンとかブロムへキシンとか薬なんだよね。
    使いすぎたらヤバイよね。ジャンキーだよね。
    当たり前なんだけどゲームの中にサラリと出てくるものだから気付かない。変な盲点。


    >  ごめんね私の手持ち達。お願いだから死なないで。

    しぼうフラグが たった! ▽


      [No.2608] 【ポケライフ】鳴神様へ 投稿者:NOAH   《URL》   投稿日:2012/09/07(Fri) 17:00:00     91clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


    その昔、おばあちゃんに聞いたことがある。
    木の実や野菜、お米等を収穫している途中で
    遠くで雷が落ちたところを見たあとに、お酒や花と一緒に
    収穫したものを鳴神様にお供えすると
    そのものの願いを叶えてくれるのだと言う。



    「おばあちゃん。」
    「びぃ!」
    「いらっしゃい、チナツ。可愛いあなたもね。」

    大きな昔ながらの家。その裏に、小さなビニールハウスがある
    そのハウスの中から、おばあちゃんは収穫したたくさんの野菜を持って
    私とエレキッドを出迎えてくれた。

    「可愛いでしょ!エレキッドって言うんだ!
    この前お父さんがくれた卵が孵ったの!!」
    「そう、良かったわね。大事に育てなさい。」
    「うん!!」

    おばあちゃんはニコニコ笑いながらエレキッドの頭を撫でた。
    私も!と、おねだりして撫でてもらったとき、遠くで雷が鳴った。

    「……あら?鳴神様かしら?」
    「なるかみさま?」
    「ちょっと呼んでみましょうか。」
    「!あの歌だね!!」
    「びぃ?」
    「エレキッドにも聞かせてあげる!」



    空に黒雲渦巻いて

    雨降り風吹き雷(かんだち) 落ちる

    嵐の過ぎた焼け野原

    鍬立て種撒き命成る

    鳴神様に捧げよう

    黄金に染まった我が宝




    目の前に、小さな祠が現れた。
    そこには、古びた和紙に、『鳴神様ノ祠』と書かれていた
    おばあちゃんの手には、なんだか高そうなお酒が握られている

    「さあ、チナツ。野菜をお供えして上げて?」
    「うん。」

    私は、色とりどりの木の実や夏野菜が入った籠を、小さな祠の前に置いた。
    その横では、おばあちゃんがお酒をお猪口に注いでいるのが見えた
    アルコールの匂いが鼻につくが、神様の前なので我慢した。

    エレキッドは、花瓶に花と水を入れて、そっと野菜達の横にそれを置いた。
    おばあちゃんも、注いだお酒を供えると、蝋燭に火をつけて、手を合わせた。

    「チナツとエレキッドが、何時までも仲良しでいられますように。」
    「……!!」
    「ふふ。チナツとエレキッドも、お願い事をしてみなさいな。」
    「じゃあ……おばあちゃんが元気でいられますように!!」
    「ありがとう、チナツ。さあ、帰ってお昼にしましょうか。」
    「うん!!行こう、エレキッド!!」

    おばあちゃんは蝋燭の火を仰いで消すとお酒を持ち、私の手を取った。
    私もおばあちゃんの手を取ると、反対側の手で、エレキッドの小さな手を握った。
    そのエレキッドの反対側の手には、いつの間にか拾ってきたであろう木の枝が握られていた

    「チナツ。何がいい?おばあちゃん。今日は何でも作るわよ。」
    「カレー!カレーがいい!!」
    「じゃあ、決まりね。」

    家路をのんびり歩きながら、色んな話をした。
    鳴神様が、私達を優しく見守っている気がした。


    *あとがき*
    雷を題材に、ほのぼのしたのを1つ。
    この小説における鳴神様はなんなのか
    皆様のご想像にお任せします。

    【好きにしていいのよ】


      [No.2607] Re: 【ポケライフ】捕獲屋Jack Pot の日常 *夕立* 投稿者:NOAH   《URL》   投稿日:2012/09/07(Fri) 00:23:21     90clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    ※暴力表現注意。苦手な方は閲覧を控えて下さい

    スリムストリート。
    ヒウンのセントラルエリアへと続く狭く暗い道

    その道の一角に、うずくまるたくさんの人影。
    その中心には、男の胸ぐらを掴んで威圧する紫の少年がいて
    近くに、オレンジの髪に赤渕メガネだった物を持っている青年がいた

    「あーあ、どうしてくれちゃったのよ。……弁償してくれる?ねえ。」
    「あ、あく、ま、が……!」
    「はあ?そっちから喧嘩吹っかけといてそりゃないでしょう……弁償しろよッ!!」
    「ぐっ……ぅ、……。」
    「……ウィル。」
    「チッ……。」

    オレンジの髪の青年は、そのままタバコを取り出した。
    あとは少年に任せるらしい。

    「……おい、てめえがリーダーか?あ゛ぁ?」
    「っ、ちげーよ……俺ァ、あんたを潰せって頼まれただけだ……。」
    「そうかよ……なら、そいつにこう言っとけ。
    『いつかぶった切ってやる』ってよお!!」
    「ぐぅっ!?」

    鳩尾に思いっきり拳を叩き込むと、相手はそのまま気絶した
    それからまるでタイミングを計らったかのように、雨が降り出して来た。

    「……あ、結構ひどくね?そういや、さっき雷が鳴ったような……。」
    「……どうだっていいさ。戻るぞ、ウィル。」
    「はいはい……結局、尻尾は掴めずか……いい加減ムカついてきた……。」
    「それは俺もだが、まあなんとかなる。」
    「そのうち痺れ切らしてヤバイ連中けしかけてきたりして。」

    冗談にしては、かなり怖い事をさらりといいのけたウィルだが
    ヴィンデは寧ろ、笑って賛同していた。

    捕獲屋Jack Pot。たった6人の最強の捕獲屋。
    だからこそ、裏の人間に恐れられると同時に
    今回みたいに因縁吹っかけられて狙われる。

    「夕立。ひどくなったね。」
    「ああ……メガネ。どうすんの。」
    「同じタイプのを買うよ……金掛かるけど。」

    本格的に強くなった雨に打たれ、鳴り響く轟音にぜめぎられながら
    2人は帰るべき自分たちの居場所へと、ゆっくりと戻って行った。

    *あとがき*
    誰も書いてくれないって正直寂しいですね……。

    今回は喧嘩組の話し。案外短く終わった……。
    ヤバいよ。ネタが尽きそう……!!

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】


      [No.2606] ドーピング 投稿者:moss   投稿日:2012/09/06(Thu) 23:27:20     110clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


     学校が怖い。最後に彼から連絡があったのは一ヶ月前のことだった。


     彼は頭がよかった。小学校を卒業して私はすぐに旅に出たのだが、彼は中高一貫の名門校へと入学した。なんでもバトルなどの実技、学力がほぼトップクラスでないと入れないところらしい。彼は合格したときすごく喜んでいて、二人で祝ったりもした。
     彼の学校が始まると同時に私は旅に出た。暫くの間は手持ちのポケモン達をゆるゆると育てつつ、時にはトレーナーにバトルを挑まれつつ金欠と戦う日々であった。そんなある日の夜に、珍しく彼からメールが届いた。あの学校は携帯の使用が禁止らしく、特に中等部では入学と一緒に回収されるらしい。これは彼が入学前に言っていたことだがあいつ回収をばっくれたのか。半ば呆れつつ中身を開く。
    【この学校はおかしい。】
     ほんの一行。これだけで鳥肌がたったのは初めてかもしれない。それに頭のいい彼の言うことだ。あの学校は全面的に、そしていろんな意味で閉鎖されている。情報も月に一度あるかないかの行事を知らせるものだけらしい。彼の母親が少し心配そうにそう言っていた気がする。
     でも、と思った。いくら彼の言うことでもすぐには信用できない。あの学校からは色々なジムリーダーなどが出ているのだ。学歴重視のその手の職業は変な学校出身の奴にはやらせてはもらえないだろう。信じるべきか否か。複雑になった頭でとりあえず彼に何を見たのかと返信をする。どうせすぐに返信はこない。くるとしても一週間は後になるだろう。隙を見てメールを打つ彼の姿が想像できなくて笑ってしまう。
     そのまま疲れきった体でベッドに倒れこみ携帯を無造作にバッグの中へ投げ入れる。今朝拾ったタウリンを片手に眺めながら、明日はどこへ行こうかと思考を馳せた。


     またしばらくして私も順調に旅を続け、以前よりも特に金欠に困ることもなく、手持ちも強くなってきた。ジムバッヂも頑張った甲斐ありようやく三つになった。
     あの日から返事はまだこないが、あの学校は相も変わらず外から見る分にはいろんな意味で閉鎖されたまま何も変わりはしなかった。そう、外からは何も。
     一体内側では何が起こっているのか。もしかしたら彼は携帯を所持しているのがバレて取り上げられてしまったかもしれない。まぁそれでも元気にやっていればいいのだが。
     ジムバッヂ八このエリートトレーナーに勝負を挑まれすっかり撃沈していたとき、不意に携帯が振動した。こんなときに、と不満ながらも発信源を見て首を捻る。非通知だ。
    「……どなたですか?」
    『○○か!?』
     懐かしい声で名前を呼ばれ驚いた。裏返って相当パニクっているようだったが紛れもなく彼の声だった。一体どうしたのか?
    「どうしたの?」
    『見ちまったんだ!!』
     間髪入れずにまるで長距離走でもやった後のような荒々しい声色。声自体の音量はさほど大きくないのが逆に緊迫感を煽らせ手が震えた。
    「……何を?」
     恐る恐る尋ねると、彼は一層声を小さくして、幼い頃した内緒話のように
    『今日こっそり学校の、立ち入り禁止になってる地下室に友達と行ったんだそしたらっ』
     彼は長く息を吐いた。
    『ポケモンが……数えきれないほどのポケモンが薬付けにされて檻の中に入ってた』
     ……。
    『目があり得ないほどぎらっぎらしてて、暗くてよくわかんなかったけどらりってたと思う。しきりに檻を壊そうと攻撃してた。その音が上の教室越しに授業の時聞こえてて気になって降りたんだ……』
     ……。
    『もう駄目だっ。ここの奴等のポケモンが馬鹿見てぇに強いのはこういうことだったんだよ! 嫌だ俺はこうはなりたくないこんなことを平気でするような奴にはなりたくない自分のポケモンをあんな風にさせたくないっ』
     電話越しに嗚咽が聞こえた。
    『……でももうオワリだ。おしまいだ。俺も平気でポケモン薬付けにしてひたすらに勝利ばかりもとめる腐った男になっていくしかないんだっ……ないんだよっ』
     泣き叫ぶように訴える彼を数年ぶりに聞いた気がした。
    『……学校が恐い。学校の人間が恐ろしい。あそこにある全てがもう怖くて怖くて仕方がない』
     彼はそれ以上はもう何も言わずにただ小さく泣いていた。私は慰めることもできずに、呆然と電話越しの彼の嗚咽が止むのをただ待った。


     あれ以来彼からの連絡は途絶えてしまった。私は後味の悪さと、どうして何も言ってあげられなかったのかと若干の後悔を噛み締め頭の外へ追い出すようにひたすらポケモンを鍛え、ジムへ行き、バッヂを手にして時には負けて、そしたらもう一度その日のうちにリベンジして……目まぐるしい一日一日を送った。
     私のジムバッヂがとうとう八こになったのは私が旅に出て六周年を迎えたときであった。六年もかけてようやくかと父には笑われ母には調子に乗るなと小突かれた。もっと誉めてくれてもいいんじゃないかと思ったが口には出さなかった。二人ともジムバッヂ八こよりもその先に期待してるのが丸分かりだったからだ。
     両親には全力を尽くせと背中を叩かれ、小学校からの幼馴染みには優勝したら奢れと頭をはたかれ、旅先で知り合った友人トレーナーには先越されたぜ畜生っと背中をどつかれた。何てバイオレンスな優しさをもつ人達だろうと苦笑した。


    「……やあ、奇遇だね」
     私が参加しているポケモンリーグ第二ブロック。ついに三回戦までのぼりつめ、ここで勝てば各ブロックごとの代表者と戦い最後には決勝が待ってる。これまでの対戦は心底ヒヤッとするものもなく、運がよかったのかもしれなかった。
    でもそれもここまでのようだった。
    「……久しぶり。無事に卒業出来たんだね、おめでとう」
     前に見たときより遥かに身長が伸びて体つきも男らしくなって。それでも面影は残っていた。
    「無事?」
     彼は笑う。
    「ははっ。そんなわけないだろ! ここまでくるのに俺がどれだけのものを犠牲にして捨ててきたか知らないだけだろっ」
     その通りだった。私はあの電話以降の彼の状況を全くもって知らない。だから彼の苦労も知らないし、彼の今の状態も知らないのだ。
    「そうだね」
     話さなかった期間が長すぎて、最早他人同然の繋がりにまで成り果てた今、特に彼と話すこともないので私は最初に繰り出す予定のボールを握った。

     勝敗など見えている。それでも彼と戦うことによってあのときから消えない後味の悪さと後悔を消そうとしていると同時に彼のことをもっと知りたいと望んでいる。
    「ここで会えて光栄だよ○○。悪いけど俺にはもうバトルしかないから」
     彼が傷ついたボールを放る。
     スタジアムを震わせる化け物の雄叫びと砂嵐。その中心に威圧するぎらついた目のバンギラスがこちらを睨む。
     彼は口元を歪ませ目線は早くポケモンを出せと訴えていた。
     ごめんね私の手持ち達。お願いだから死なないで。
     私は祈るようにボールを投げた。


      [No.2605] Re: Calvados 投稿者:きとら   投稿日:2012/09/06(Thu) 18:23:41     88clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


    > 「男性同士の性行為を暗示する表現があります。
    >  15歳未満の方の閲覧はご遠慮ください」


    そう言われればそうですね!修正します!
    指摘ありがとうございました


      [No.2604] Re: Calvados 投稿者:イサリ   投稿日:2012/09/06(Thu) 13:06:01     94clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     こんにちは。イサリです。

     冒頭の注意書きが曖昧でわかりにくいです。
     マサポケは中高生も見ているサイトなので、

    「男性同士の性行為を暗示する表現があります。
     15歳未満の方の閲覧はご遠慮ください」

     くらいは書いた方が良いと思います。恥ずかしいのかもしれませんが。


     BL小説の評価についてはよくわからないため、感想は割愛させていただきます。
     失礼いたしました。


      [No.2603] Re: 【ポケライフ】捕獲屋Jack Pot の日常 *依頼* 投稿者:NOAH   《URL》   投稿日:2012/09/06(Thu) 09:29:20     116clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    まだまだ暑いヒウンシティに、少しずつ秋が近づいてきた
    どこか遠くで雷が鳴る音がするため、そのうち雨が降るかもしれない

    僕の名前は、その雷から名づけられたらしい。
    雷の綱と書いてイズナ。それが僕の名前だ。

    ルルーメイさんが帰ってすぐに、無理を頼んでお願いした
    特訓を終えて、お気に入りのフロストヨーグルトアイスを口に入れた

    ―Pi Pi Pi ♪

    「……はい。お電話ありがとうございます。
    捕獲屋Jack Pot です。……依頼ですか?」

    リラさんが受話器を取った。メモを取りながら、今出れそうな人を
    思案しつつ、相手からの情報を詳しく聞き取って行く

    「……迷子のポケモンの保護ですか……メノクラゲ?
    ……一回り小さく、うち一匹が色違いと……。」

    「……アズキ兄さん、メノクラゲって?」

    「アジア圏のクラゲポケモンだよ。水タイプと毒タイプね。
    この間の、ホウエンを直撃した台風の影響かもしれんな。」

    「荒波で仲間とはぐれたってこと?」

    「正確には、親のドククラゲとだな……色違いか
    早めに行った方がいいな……リラ!今回は俺が行くよ。」

    「……………。
    わかりました。すぐに向かわせます。怪我は
    ジョーイさんの指示に従って手当をして下さい。」

    電話で指示を出す一方で、アズキ兄さんは
    クルマユのぼたんをボールに戻して、ケンホロウ(♀)のひなぎくを出した。
    彼女を窓から外に出すと、応対を終えたリラさんが
    兄さんにメモを渡した。

    「急な仕事だからね。気をつけなよ。」

    「わかってるよ。じゃあ。」

    それだけ言って、兄さんはそのまま、窓から外に出ると
    セイガイハシティへと、ひなぎくと共に向かって行った。

    またどこか遠くで、雷が鳴った。

    *あとがき*
    お仕事受注編です。秋が近づいて来ましたね。
    最近は雷がひどかったり突然強い雨が降って来たりなため
    洗濯物がなかなか乾かないのがイラつきます。

    雷と聞いて、一番最初に思い浮かぶポケモンは
    やっぱりサンダーです。今度サンダーがメインの
    小説でも書こうかな……。

    【書いてもいいのよ】
    【描いてもいいのよ】
    【批評してもいいのよ】


      [No.2602] Calvados 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/09/05(Wed) 21:22:14     74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    前書き:BLです   ミクダイです。
        BLには入れないでください。
        男性同士の性行為を暗示する描写が含まれます。そういうシーンがあるので、嫌いな人や、嫌な予感したら早く読むのをやめましょう。


     振られたとミクリが聞いたのは、変な時間の電話だった。
     ダイゴに飲みに来ないかと誘われて、ミクリは休みの合間にトクサネシティに向かう。
     チャイムを鳴らしても誘った本人は出て来ない。声だけが「開いてるよ」と返ってきた。
     いくら付き合いの長い友達とはいえ、こんなことがあっただろうか。今回の失恋が相当こたえたのか。ミクリは玄関を開ける。
     酒臭い。ミクリが感じたのはそれだった。もとより酒は強く、ウイスキーのダブルを平気で飲み干すダイゴだった。だがここまで匂いをさせているのは彼らしくない。
    「やぁミクリ、飲もうよ!」
     テーブルは散乱している。ダイゴのまわりには口の開いたビンが転がっていた。そして本人はワイシャツの胸元をだらしなくあけ、ジャケットはその辺に脱ぎ散らかしていた。
    「飲もうよ、じゃあないでしょ。まず片付けるからね」
    「いいじゃない、片付けなんてどーだっていいんだよ、どーだって!」
     酔っ払いながらもグラスを引き出す。その間にミクリはビンを端に寄せた。足の踏み場もそろそろなくなりそうだ。
    「カルバドスだよ!凱旋門が見えないけどね、失恋にはぴったりだ!」
    「そんなに振られたのがこたえたの?」
     ダイゴは酔いながらも、いきなり態度が変わる。
    「当たり前じゃない!この僕が振られるって有り得ない!僕はあの人しかいないって言ったし結婚しようって約束もした!なのに僕の金しか見てなかった!僕はあの人が欲しいもの何でも買ってあげたのに!」
     水を飲むようにグラスの酒を飲み干す。
    「お酒に逃げても体を壊すだけだよ」
    「ミクリに何が解るのさ!」
    「私だって失恋の一つや二つはあるよ」
    「君はいいよね!イケメンイケメン騒がれて、トレーナーとしても成功して、ファンもたくさんでさ!毎日毎日君のことが好きな女の子に囲まれてれば楽しいよね!」
    「いい加減にしなさい。私に恨み言聞かせるために呼んだなら帰る」
     ミクリは立ち上がる。が、ズボンの裾をダイゴがしっかりと掴んでいた。
    「なに?」
    「ごめん、帰らないで」
     仕方なくミクリは再び腰を下ろす。注がれたカルバドスを一口つけた。
    「ミクリまでいなくなんないで」
     振ったことは数え切れなくても、振られたのは初めてだ。ミクリの知るかぎりは。だからか耐性が全くないのだろう。
    「もう女なんてやだ。僕なんか見てないんだ。僕のお金しか見てない」
    「正体隠して付き合ってみたら?」
    「今回だって結婚の話するまで言わなかったのに」
    「玉の輿狙いが自爆してくれて良かったじゃない。それこそ、結婚後だったら悲惨だよ、浮気なんて」
     ダイゴは黙った。空のグラスを握って、声を押し殺して泣いている。
    「ダイゴほどの男だったらまた次があるから」
    「もう次なんていい。僕だって誰かに抱かれたい」
     タコのようにダイゴが絡んでくる。酔っ払いだから仕方ない。ミクリは抱きついてくるダイゴのひたいを軽く叩いた。
    「いいじゃない。ミクリって自分でも綺麗だって思ってるでしょ。それ女の子だけが独り占めなんてあり得ないんだよね」
    「何をおっしゃい。女に振られたからって男に逃げないでよ」
    「それに興味あるんだよね。女の子とやるよりいいなら、もう女なんて要らない」
    「私がそっちの趣味だとしても、振られて腐ってる男なんて抱きたくないね」
     ミクリがはっきり断ってもダイゴはますますミクリにくっついて来る。
    「女々しいという言葉は、今のダイゴの為の言葉だね、全く」
     酒臭い息がミクリの首筋にかかる。酔っているだけなのか、本気なのか、ダイゴはミクリの開いた胸元に抱きつく。
     そこから見たダイゴの体は、クッキリとラインが見えた。男の均整の取れた姿は、同性から見ても憧れるくらいだ。
     ミクリから見たダイゴは、最高のステータスを兼ね備えた完璧な存在だ。もしミクリが女だったら、こんな男をわざわざ手放すわけがない。
     もしダイゴが女だったら…今の彼と同じように出来ることをやり尽くしても引き留めるだろう。そしてそれが叶わない時、こうして酒に逃げるしかない。
    「悪ふざけもそこまでにしよう。ダイゴが興味本位で私とやったことが、未来永劫響くんだよ。家業にも影響するだろうし」
    「んー、それってミクリは僕とやるのは、やぶさかではないってことだよね?」
    「どうしてそういう言葉のあやを見つけるの。そもそも誘うならその酒臭いのはどうなんだ」
    「だからさ」
     ダイゴは後ろのテーブルにある酒ビンを掴んだ。
    「飲もうって言ったんだよ。お酒はいいよ!何だってその気にさせてくれる。誰も見てやしない」
     これだけ酩酊してれば、普段とは違うのは当たり前。ダイゴはカルバドスを口に含む。そして口移しするかのようにミクリの唇に触れた。
     強い酒がミクリの口腔に流れ込んだ。蒸留酒の香りが鼻から抜けていく。
     けどそれより衝撃なのは、ダイゴと舌まで絡ませあっていることだった。今にも泣きそうな息づかいと共にミクリを求めて来る。
    「ミクリ、僕を抱いてよ、誰でもいいわけじゃないんだ。一番の親友に抱かれたいんだよ」
     子供のようにしがみつくダイゴは、今まで見たことがなかった。ミクリはダイゴの頭を軽くなでる。
    「酔いがさめたら後悔しますよ。今のことは忘れますから」
    「いやだ!ミクリまで僕を要らない人間にするの!?」
    「誰も要らないなんていってないでしょう。ダイゴは私の大切な友人だと思ってる。だからこそ酒によって間違いをおかすなど見てられない」
     黙ってダイゴはミクリを見る。納得いかない顔をして。今度はミクリの上にかぶさるように唇を求める。勢いよくミクリは後ろに倒れ込む。
     親友だと思っていた男……抱きつかれた時に、ほんの少し感じた色気。いつにないものがダイゴから漂っている。それはベッドに入る前の女のようだった。
     唇を離したダイゴは遊んで欲しい子供だ。困惑しているミクリを楽しそうに見てる。
    「ダイゴは本当にそれでいいんですか」
    「なんで?僕はミクリがいいよ。女なんかもういやだ」
    「私たちはそういう目で見られるんだよ。これからずっと」
    「ミクリは僕より誰も知らない他人の評価の方が気になるの?そんなのありえなくない?ねえ、あり得ないよね、ねえ!そんなに僕に魅力ないの?じゃあミクリは僕よりその辺の女の子のがいいっていうの!?」
    「とにかく落ち着いて。人肌恋しいのは解ったから。でも私にも選択権があること忘れないで」
     酔っぱらいはとにかく面倒だ。なるべく優しく言っても、ダイゴも感情の起伏がおかしく、泣いたと思えば怒りながらミクリを叩く。
    「ミクリまで僕を振るんだ」
    「こんなになよなよしてるダイゴは嫌い。それに君だけ気持ちよくなろうなんて図々しい」
     軽くダイゴの額に唇をつける。
    「今日だけだ」
     ミクリの返事にダイゴは物凄い嬉しそうだった。やっと受け止めてくれる人を見つけたような、そんな顔。

     酒の力もあった。
     ダイゴの着ているものをはぎ取る。ソファに横たわる彼は、温泉などでよく見るダイゴの体とは違った。錯覚のようにも感じる。これから抱く男の筋肉。
     この体に毎晩抱かれておきながら、他の男も求めたのか。随分と贅沢な女だったんだな。こんなに強く、男らしい体なのに。この上ない男だというのに。
     そんなに合わなかったのだろうか。ミクリはダイゴの体を抱きとめながら考えた。今の彼は確かに頼りないが、それがいつものダイゴではないはずだ。
    「ミクリぃ、どうしたの?」
     やたら色っぽい声と共にダイゴはミクリを見つめる。
    「なんでもない」
     ミクリ自身も服を脱いだ。ダイゴを力強く抱きしめる。そしていつもするようにダイゴの唇をそっと塞いだ。

     ミクリに抱かれた。初めてであるのに、ダイゴは少しずつ心が軽くなっていくのが解る。ミクリが自分を求めてくれている。そして肌に感じるミクリの暖かさ。
     もっと早く知っていればよかった。こんなに親友の肌が優しいなんて。その暖かさがダイゴの傷を癒していくようだった。
     ダイゴの中にミクリが入って来ても気持ち悪いとか不快だとか思わなかった。どんどんミクリが入ってくればいい。そして自分を埋め尽くすくらいになってしまえばいい。
     そこから感じる快感が、いつもより強いのは酒のせいではないだろう。
    「ミクリ……」
     ダイゴの体が絶頂を知らせる。ミクリに抱かれながら。それがとても幸せなことに感じた。


     その夜もダイゴはミクリに抱いてくれるように願った。仕方ないね、とやや困ったようにダイゴの唇に触れる。そして半分固くなったダイゴのものをそっと握った。ダイゴも応えるようにミクリの舌を絡ませた。


     朝になってミクリは目を覚ます。あんだけ強い酒をあおった後の行為を思い出すと物凄い罪悪感がある。その隣ではまだダイゴが寝ていた。全裸で何も知らないように寝ている。
    「ダイゴ、朝だよ」
    「ん……」
     それだけ言うとダイゴは寝返りをうって反対を向く。さては飲み過ぎか。酒に強いとはいっても、あんだけ飲んで抱いてと言う。相当苦しかったのだろう。それだけ相手の女が好きだった。それはミクリにも解る。
     もうこの先、二度と親友とこんなことをすることはないだろう。ならば最後にもう一度だけ……。ミクリはダイゴの頬に軽くキスをした。まだ起きて来なそうな親友をおいて、ミクリは昨日脱いだ服を羽織った。



    ーーーーーーーーー
    ダイゴさんください。
    ダイゴさんならもうなんでもいいよ。
    ダイゴさんくれよ。
    ダイゴさんください。
    ダイゴさんよこせ。


    【好きにしてください】


      [No.2601] 冷蔵庫に保管=ナマモノ 投稿者:ラクダ   投稿日:2012/09/04(Tue) 01:07:58     96clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     博士がケースの中身を弔う(処分する)場に謎の人物が襲撃、それを奪取し博士を口封じ。
     一年後、とある地方の片隅で不気味な噂が囁かれ始める。
     闇に蠢く謎のポケモン。それを作り出した者の意図とは――――。

     初めまして、ラクダと申します。
     どうしても、某ゾンビ映画のウイルス奪取、あるいは某恐竜映画の胚強奪の場面が浮かんでしまいこんなことに。
     例えば、ポケルスの悪性変異株(ただし博士が持ち出した物は不完全で無害)、または遺伝子操作した既存のポケモンの胚(これも未完成のまま)の情報を、部下の研究員の一人が襲撃者とその背後に流して奪わせ、自分はちゃっかり新部署に勤めつつ頓挫した計画の再構築を目論む、とか。
     襲撃者側はテロ目的か兵器用のポケモンを手に入れるため狙っていた、とか。
     要は狂暴化して手の付けられなくなったポケモンの話です。
     主人公はトレーナーか、はたまた危険に巻き込まれた一般住民か……。

     意味深な切り方に、ああでもないこうでもないと想像するのが面白かったです。
     続編を楽しみにお待ちしております。


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