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どうもです。twitterに引き続きこちらでも感想ありがとうございます!
自分の小説は、このポケモンを使って普通だったらどう書くか、をまず考えて、そこからずらす、という書き方をしている場合が多いので、今回の話もそのような感じで考えました。斬新と評していただき大変うれしく思います。
白ごはんは蒸らしてから食べた方が、おいしいですよね(笑)めんどいですけど。
改めて感想ありがとうございました。
それでは失礼致します。
> こんにちは。こちらではご無沙汰しておりました。
>
> 人間が「ポリゴンは生物と見なせるか否か」を論じる小説はよく見かけますが、人間以外の場合はめずらしいですよね。しかも今回はその人物(人?)たちが家電。斬新でした。冷蔵庫くんにちゃんとオチがついてたのもクスッとしてしまいました。
> ポリゴン自身は話や回想以外に出てこないところも却って想像の余地があるなあと感じます。
> あと炊き立て白ごはんが食べたくなりました。自分は時間まで炊き上げた後かき混ぜて蒸らす派です(きいてない
こんにちは。こちらではご無沙汰しておりました。
人間が「ポリゴンは生物と見なせるか否か」を論じる小説はよく見かけますが、人間以外の場合はめずらしいですよね。しかも今回はその人物(人?)たちが家電。斬新でした。冷蔵庫くんにちゃんとオチがついてたのもクスッとしてしまいました。
ポリゴン自身は話や回想以外に出てこないところも却って想像の余地があるなあと感じます。
あと炊き立て白ごはんが食べたくなりました。自分は時間まで炊き上げた後かき混ぜて蒸らす派です(きいてない
いやっほう! 感想ありがとうございます。
ポリゴンがポケモンなら、家電達もこういう考えをもつのではないのかと思い書きました。
こういう話はなかなか書いたことなかったので、どういう反応がくるんだろうと思っていましたが楽しんでいただけたようで幸いです。
言われてみればキャベツとにんじんは元々生き物ですね。
すいませんミスりましたw(どんなミスだよ)
改めて感想ありがとうございます!
> シュールすぎます。何って全てが。炊飯器と冷蔵庫が意思持ってやがるww喋ってやがるwwとその時点で笑えます。
> でもそうですよね、ポリゴンがポケモン扱いなら家電製品だって生物でいいじゃんって納得しました。
> 冷蔵庫さんのウザ可愛さがツボです。
> 個人的に家具よりは食品たちのが生物扱いに疑問はわきませんかね。だって元は植物か動物ですし。
> キャベツとニンジンは両方生き物でいいんじゃないですかね。
> すごい楽しかったです。終始フフッてなれる話でした。
シュールすぎます。何って全てが。炊飯器と冷蔵庫が意思持ってやがるww喋ってやがるwwとその時点で笑えます。
でもそうですよね、ポリゴンがポケモン扱いなら家電製品だって生物でいいじゃんって納得しました。
冷蔵庫さんのウザ可愛さがツボです。
個人的に家具よりは食品たちのが生物扱いに疑問はわきませんかね。だって元は植物か動物ですし。
キャベツとニンジンは両方生き物でいいんじゃないですかね。
すごい楽しかったです。終始フフッてなれる話でした。
個人的な好みなんですが、単純に好きかどうかで言わせていただくと、ものすごく好きなタイプの作品です。
老婆の教えてくれる呪文の意味が全部名ゼリフって感じです。
ポケモンは基本的に存在が示唆されている程度なのに、最後の終わり方でしっかりポケモンしてるという。
何か汚れた心がザバザバ洗われたような気がしました。
シェイミ映画好きなのもあって、物語の仕掛けそのものもヤバイくらいツボです。
タイトルに騙されました、すごいいい意味で。
昔々、シンオウ地方の片隅に位置していた一つの村の話である。
その村は、毎年冬には厳しい寒波と豪雪に襲われ夏には激しい冷害に見舞われた。そのため作物は育ちにくく暮らすにも向かず、しかし当時は色濃く残っていた身分差別を受けていた人々が他に行く当ても無く住んでいたのだ。
僅かに採れるきのみの種は乏しく、何とか実った野菜や養蚕によって村の暮らしは支えられていた。が、そのような過酷な状況で生きる人やポケモン達の心は荒み、村には土地柄に依るものだけではない、冷えきった空気がいつだって充満していた。そこには笑顔が無く、交わされる感情は悪意だけ、聞こえる言葉は必要最低限の事務的なものばかり。たまにやってくる商人や役人は、言い知れぬ居心地の悪さと嫌悪感を覚えたと口を揃えて言った。
自分が生きるのに精一杯で、他人を憎み、嫌って過ごす者達の住まうその村。周囲の地域に住まう人々は差別意識も手伝って、『あそこは呪われた村なのだ』とまことしやかに語っていた。
さて、その村から続く道を一人の青年が歩いている。
森へと伸びる道には雑多に草が伸び、好き放題に繁る木の枝が彼の行く先を塞いでいた。薄ら寒い灰色の空は雲に覆われ太陽の光もまともに見えず、どこからともなく聞こえてくるヤミカラスの鳴き声や、むしポケモンの足音などがひたすらに不気味であった。
だが、青年はそれに尻込みする気配も見せず、目の前を遮る枝を淡々と退けながら進み続ける。時折苛立ったような舌打ちを木々の間に響かせる彼が身に纏った服は、冷えた昼下がりに着るにしては随分と薄く、所々がほつれて汚れていた。ポケモンは連れておらず、武器代わりなのか片手に握った農具の刃物の他には碌に荷物も持っていない。進むごとに暗さが増していく道はもはや森に差し掛かっていたが、草や果実を採りに来たという風体にも見えなかった。
青年の顔は険しく、暗い。進み先を睨みつけるような目元は翳っていて、この世の全てを厭っているようにさえ感じられる。青白く痩せた頬に伝う汗を拭い、口許を歪めながら歩く彼は足下の雑草をわざと踏み潰すように森へと入っていった。
「……本当にいるんだろうな」
薄暗い、道無き道をしばらく進んでいた彼が忌々しげに声を漏らす。目を凝らした視界はさらに暗さを深くして、来た道など既にわからなくなっていた。しかしそれでも、青年は引き返す素振りも見せずに舌打ち混じりに歩いていく。
その時だった。
「…………っ!!」
影になって見えない枝の間から突如飛び出してきた、数匹のゴーストに青年が顔を引きつらせる。咄嗟に振りかざした鎌はゴーストの身体を確かに捉えたが、ガス状のそれは傷一つつかず、青年を嘲笑うように揺らぐだけであった。
ケタケタと笑う鬼面に四方を取り囲まれた青年が、血色の悪い顔に冷たい汗を流す。立ち往生する彼を愉しげに見やったゴースト達があげる薄気味悪い声と、冷たい風とが頬を撫でていった。紫色の靄に浮かぶ大きな口が青年に向かって開かれ、次に来るであろう何らかの衝撃を予想した彼は思わず目を閉じる。
「何しとるんだね、こんな辺鄙な所で」
が、彼の身に痛みや異変が走ることはなかった。いつまで構えても起きない衝撃と、聞こえた声に目を開けた彼が見たのは森の奥へと慌てて逃げていくゴーストの姿と、地面に散乱する葉っぱや蔓であった。それはどれも青々と綺麗な緑色をしており、どちらかというと枯れかけたものの多い、薄く気の抜けた茶に染まった森の植物の中で違和感を醸し出していた。
「そんな棒きれ一つで森に入るだなんて、今時街の輩でもやらないよ。ポケモンもいないのかい? 随分と度胸があることだ」
呆れたような、溜息混じりの声。しわがれているようにも聞こえるようなそれはしかし、木々のざわめきにもポケモンの鳴き声にも負けないで、不思議と森の空気によく通っていた。背後からしたその声に青年が振り返ると、いつの間にそこにいたのか、声の主は「怖いもの知らずなのは褒めてやりたいがね」と肩を竦めた。
皺だらけの顔と、不敵に光る硝子玉のような瞳。腰まではありそうな長い髪は、暗い森と同化しそうな蔦色だ。それらをまとめて覆い隠している黒く分厚いマントは森の中だからこそ溶け込んでいるように見えるけれど、人里であれば酷く浮くに違いない。フードと前髪によって影を落とした目元を細めて、その老婆はふん、とひしゃげた鼻を鳴らした。
全身から不気味さを漂わせる彼女に見据えられ、目を見開いていた青年は一瞬だけ躊躇するように息を止める。が、すぐに表情を剣呑なそれに戻し、鋭い視線で以て老婆のことを睨み返した。
「お前だな。間違いない」
口を開いた青年の不躾な言葉に老婆は眉を顰める。何がだい、と尋ねた彼女に青年は苛立ったらしい、「惚けるんじゃねえ」と乱暴な足取りで老婆との距離を詰めた。
「西の森に住む魔女は、村に呪いをかけたって話だ。お前のことなんだろう、この『魔女』ってのは」
早口でまくしたてる青年は、件の村の者であった。恵まれない土壌と村人達の尋常ならぬ険悪さによって、呪われた地と揶揄される村ではその不幸は魔女のせいであると噂されていたのである。誰が言い出したのかはもうわからないが、日頃から他人を恨んでいる村人達はより一層強い憎悪を、諸悪の根源である『魔女』に向けていた。
それはある種、辛い環境下で生きなくてはならない村人達に与えられた、数少ない救済でもあったのかもしれない。村の者は皆、厳しい状況を凌ぐために『魔女』を初めとする他者への悪意を動力としていた。その一人である、青年もまた然りだ。
「お前が村に、呪いをかけたんだろ」
無遠慮に詰め寄る青年が勢いに任せて老婆の襟首を掴もうとする。しかし彼女は怯む様子も無く、呆れたような顔で何かを呟いた。と、先程ゴースト達が逃げていった際に地面に散らばっていたような、若々しい草葉が旋風を纏って青年の眼前に飛来したのである。
まるで牽制するかのような草葉の動きは、老婆によって操られたのであることは火を見るよりも明らかであった。彼女が只者では無いことを示すその事実に、だけど青年は脅える素振りも見せない。それどころか、彼女が『魔女』である裏付けが取れたとばかりに、表情に刻む確信の色を強くする。
「やっぱりお前じゃないか。こんなことが出来るなら、呪いだって使えてもおかしくない」
痩せた顔に浮かぶ、血走った目で自分を睨みつける青年に、老婆は二度目の溜息をついた。やっぱり度胸はあるね、とある種の感嘆を含んだ声でひとりごちた彼女は、「それにしたってさ」といくらか声色を明るくして言う。
「私が魔女だったとして、あんたはどうするつもりなんだい? 私を探しにここまで来たんだろ、あの『呪われた村』からさ」
憎たらしい魔女を、故郷のために倒そうとでも言うつもりかい。どこか楽しげにそう尋ねた老婆だったが、青年の返事は「いや、」と否定の意を示していた。
口元を歪めた、暗い笑みを青年は浮かべて老婆と向き合う。意外であった返答に眉を僅かに動かした老婆は、じゃあ何か、と聞き返した。ロクな武器も無く、ポケモンもいないのにこんな所まで来るならそれなりの理由があるんだろ。村を呪う代わりに救って欲しいとか、そういう類かい? そう続ける老婆の言葉を青年は鼻で笑い飛ばし、「そんなお目出度いことじゃ無い」と吐き捨てる。
「俺は呪いの力を手に入れたいんだ。今のままじゃ気が済まねぇ、あんな馬鹿げた村、まるごとぶっ潰されるくらいの呪いをかけられたって構わないからな」
だから呪いを知ってる魔女に使い方を教わりに来たんだ、と青年は話す。その台詞を老婆は黙って聞いていたが、やがて「ふん」と鼻を鳴らして青年を見上げた。雲と枝の隙間から僅かに漏れる太陽の輝きを反射して、丸い瞳が不敵に光る。
「面白い奴だね」
口の端から笑い声を漏らし、老婆は青年をまじまじと見つめた。得体の知れないその眼光を受けても尚、彼の様子は変わることなく濁った目をしてそこに立ったままである。揺らぐ気配を見せない青年から不意にくるりと背を向けて、老婆は「いいだろう」と彼に言った。
「ついてきな。教えてあげるよ、その『呪い』を」
不思議と通る声と、地に落ちた枝切れや枯葉を老婆が踏む音が混ざり合う。森のさらに奥へと歩き始めた老婆の後に続いて、青年もまた進み出した。二人分の足音はしばらく続いていたけれど、やがて冷たい風に掻き消されて聞こえなくなった。
「…………何の真似だ」
不機嫌を隠そうともせず、青年が棘に満ちた声で言う。目の前ある、湯気を立てているきのみのスープはとても美味しそうで、もう長いこと満足な食事をしていない青年の腹を刺激してはいたけれど、まだ苛立ちの方が勝っていた。
「まあ、そう怒るもんじゃないよ。ここまで遠かったろうし、腹も減ってるんだろう? いいから食べな」
スープを出した張本人である老婆は、やはり青年の剣呑な雰囲気に怯むことなく言いのける。彼女について青年が森を進んだ先にあったのは、偶然かそれとも人為的なものなのか、木が生えていない場所に建てられた小さな家だった。老婆の住居だというその場所はかなりの年季を感じさせるものだったが、青年や、青年の村の者達が暮らすそれよりも上等であると彼は思った。
着いた時には既に夜になっていて、老婆と出会った所よりもよく見える空には月が浮かんでいた。森のポケモン達も眠っているようで、優しい明かりの灯った部屋は穏やかな空気に包まれている。が、それを一気に打ち破るような勢いで、青年が木製のテーブルを強く叩いた。
「そんなことしてられるかよ!? 俺は一刻も早く、あんな腐った村を潰したくて仕方ねぇんだ。いいからさっさと呪いを教えやがれ!!」
怒鳴り声にスープが波打つ。しかし老婆には驚いた様子も無い、ただ静かな声で「そんな焦っても仕方ないさ」と言っただけだった。
「あんたは習得すんのに時間がね。かかりそうだからね。とりあえず今日はもう休みな」
「そんなこと言ったって−−すぐ出来んじゃないのか? 呪文を言ったらもう使えるもんじゃ、」
「『ありがとう』」
唐突に言われたそれに、青年は「は」と呆けたように口を開ける。そんな彼に構うことなく、涼しい顔で老婆は「だから『ありがとう』さ」と何事も無い風に続けた。
「これが『呪文』だよ。あんたが知りたがってる『呪い』のね」
そう言った老婆に、青年はせせら笑う。何言ってんだよ、と馬鹿にしたような声色は微かな怒りを含んで部屋の空気を揺らした。嘲笑であった笑いはすぐに消え失せて、苛立ったそれへと変わっていく。
「俺のことからかってんのか? それは呪文なんかじゃねえだろ、そんなの知ってるよ。誰だってわかる、常識最低限の言葉じゃねえか」
「でも、あんたは使えないじゃないか」
青年の声を、老婆の言葉が遮った。は、と眉を寄せた青年に老婆は畳み掛けるように言う。
「そうだ。あんたの言う通り、確かにこの『呪文』はみんなが知ってるようなものだ。これだけじゃない、私が教える全部がそう。誰でも知ってる『呪文』、誰でも使える『呪い』。私も、あんたも、あんたの村の奴らも誰だって出来るんだよ」
だけどね、と老婆は青年の眼をじっと見据えた。
「あんたはそれを忘れちゃってんだ。『呪文』ってのは知識だけがあっても仕方ない、自分の中にしっかり存在していないと意味が無いものなんだけどね。あんたや、あんたの村にいる奴らはそれを無くしてる。心から唱えるべきものなのに、心の中にはもう無いんだよ」
だから咄嗟に唱えられないのさ、と老婆が鼻を鳴らして言う。青年から一度視線を外した彼女が見ている窓の向こうに広がる森は、先程ゴースト達から守られた青年が、礼の一つも言わなかった場所に繋がっているだろう。黙りこくったままの青年に、老婆はさらに話を続けた。
「『呪文』は、ただ唱えればいいものじゃない。どういう力があるのかを理解して、それをふまえて心から言わないと何の役にも立たないのさ」
尚も黙ったままの青年へ、老婆が目線を戻して向き直る。それでも、という言葉を紡いだ老婆の声は湯気と溶け合うみたいに柔らかかった。
「あんたは出来るんだよ。本当は、あんたにだって使えるんだよ。今は忘れちゃってても、本当はね」
「…………俺がもし、それを使えるような奴だったら、今あんたとこんな話してるわけねぇだろ」
老婆に向けた、というよりは独り言のように青年が絞り出すように言った。それに対して老婆は何か言葉を返すこと無く、代わりに「いいから食べな」と先程の台詞を繰り返す。しばらくテーブルの上で拳を握り締めていた青年も、やがて観念したようにスプーンを手に取って食べ始めた。
よほど腹が減っていたのだろう、一口すするなり小休止も挟まず、スープを貪り食う青年の様子を老婆は黙って見ていた。食べる前に唱える『呪文』は知らないのかい、と口を挟むタイミングは、果たして逃してしまったようである。
ま、ゆっくりやっていこうじゃないか。老婆のそんな言葉を、食べるのに夢中な青年はどうやら聞いていないようだった。
「おや、おはよう」
与えられた一室、自宅のものよりも大分上等に感じられるそこで目を覚ました青年は、昨日のことは全て夢だったのではないかと寝起きの頭で考えた。しかしいつもと比べて随分と柔らかなベッドも、窓から見える森の木々も、普段ならば聞こえてくるはずの家族による耳障りな言い争いが全く無いことも、それが違うということを伝えていた。
なるほど夢では無かったようだ、と結論づけた青年は古びた階段を降りて外へと出る。家の周りに植えられた野菜や花の手入れをしていたらしい老婆を見つけた彼が、彼女から最初にかけられた言葉はそんなものであった。
「早いね、もっと寝ててもいいんだよ」
「生憎、俺にはそんな暇が無いんだ」
さっさと呪いを教えろ、と付け加えたいところではあったけれど、昨夜老婆に言われたことを思い出すとそうは言えなかった。自分にはまだ使えない、と告げられたそれを教わろうとしたところで意味が無いのは明白である、文句を言ったってどうしようもない。どこかから聞こえてくるムックルの囀り声が、青年の耳にはうるさいものとして捉えられた。
他の、例えば自分やゴーストに使われたような別の呪いを教えろと言ってみようか。そんな思いが青年の頭の中に過る。しかし彼が何か言うよりも前に、老婆が「ほら」と採ったばかりの薬草を片手に振りながら促すように口を開いた。
「そんなんじゃなくて。何か、もっと先に言うべきことがあるだろうに」
「……昨日は、ただ言うだけじゃ駄目だって話してたじゃないか」
老婆が何を言わせようとしているのかを察した青年が、胡乱な目を相手へ向ける。しかし老婆は臆することも無く、わかってないねぇ、と大袈裟に肩を竦めてみせた。
「初めは意味なんてわからなくても、呪文ってのは唱えてみないと身につかないんだよ。それにさ、この『呪文』は対になるべきものなんだ。私があんたに投げかけたんだから、あんたがそれを返してこそ、呪いはより強い効果になる」
やってみな、と老婆は青年に言う。彼は相変わらず眉を顰めた、不機嫌そうな表情を崩すこと無く保ってはいたけれども、観念したように老婆に向かって口を開けた。
「おはようございます」
「うん、おはよう」
平坦に言いながら軽く頭を下げた青年に、にっこり笑った老婆がもう一度『呪文』を唱える。顔を上げた先に見た笑顔も、今言ったばかりのその言葉も、どちらもひどく久方ぶりのものに思った青年は数秒、ぼんやりと扉の前に立ち竦んだままだった。少しの間を置いてはっと我に返った彼が、微かに緩んだ空気に「なあ」と問いかける。
「この『呪文』には、どんな効果があるってんだ?」
呪文は一つ一つ、それぞれ違う効果があるという老婆の話を青年は思い出す。ならば今口にした『呪文』は、一体どのような力を持っているというのだろうか。冗談半分ではあったけれど、疑問に思ったのもまた確かである青年のその問いに、老婆はにっと笑ってこう答えた。
「今日の世界が明るくなってしまう。今日を笑って過ごせるようになってしまう」
高く聳える木々の隙間に、木漏れ日となった日光がきらめく。昇っていく太陽の輝きは、一日の始まりを告げるものだ。その光に目を細めながら、老婆は穏やかな声で青年へと言う。
「今日一日が素敵なものになると思えて仕方なくなってしまう。そんな呪いを、相手にかけるための『呪文』なのさ」
「いただきます」
今摘み取ってきたばかりの野菜で作ったサラダと、焼き立てのパンに向かって手を合わせる老婆が『呪文』を唱える。それを真似するように合掌の形を作り、同じことを口にした青年を見やってから、フォークを手に持った老婆は言った。
「次の生命へ巡ってしまう。幸せな転生を遂げてしまう。美味しく、最後まで味わわれてしまう。そんな『呪い』さ」
「おかえり」
暖炉へくべるための枝を集めて帰ってきた青年に老婆が『呪文』を唱える。仏頂面で頷く青年から枝を受け取り、家の中に迎え入れながら老婆は言った。
「自分の暮らす場所が楽園にも思えてしまう。明日もここに帰りたい、と感じてしまう。外での疲れが吹き飛んでしまう。そんな『呪い』さ」
「ごめんよ」
梯子から足を踏み外して怪我をした青年の手当てをしながら、老婆が『呪文』を唱える。木が腐っていたのに気がつかなかったせいで、と頭を下げた彼女に、落ちたのは自分の不注意だと言おうとする青年をそっと制して老婆は言った。
「痛みも悲しみも苦しみも、寂しさだって半分になってしまう。辛いことがゆっくり溶けていってしまう。暗くなった世界が少しだけ明るくなってしまう。そんな『呪い』さ」
「ただいま」
森にきのみを取りに行っていた老婆は、夕方家に帰ってきて『呪文』を唱える。扉を開けて待っていた、沈みかけた太陽の光を浴びて赤く染まった青年にきのみの詰まったバスケットを渡しつつ、老婆は言った。
「家の中が温かくなってしまう。おいしいご飯を用意したくなってしまう。すぐにでも一緒に机を囲みたくなってしまう。そんな『呪い』さ」
「ごちそうさま」
老婆に教わりながら青年が作ったきのみのスープを、それは美味しそうに食べきった老婆が手を合わせて『呪文』を唱える。同じように両手を重ねていた青年が照れ臭そうに目を伏せたのをじっと見つめて、スプーンを置いた老婆は言った。
「次に生まれ変わる行先が、素敵なものになってしまう。料理を作ってくれた人を、思わず笑顔にしてしまう。ご飯を食べれるその幸せが、どれだけのものなのかわかってしまう。そんな『呪い』さ」
「おやすみなさい」
ある夜、暖炉の前で本を読んでいた老婆に青年が声をかけた。聞こえた『呪文』に老婆は一瞬だけ目を丸くしたものの、すぐに笑顔になって「おやすみ」と返す。会釈をして階段を上っていく青年の背中を眺めながら、半ば独り言のような声で老婆は楽しそうに言った。
「明日も素敵な一日になってしまう。明日が楽しみになってしょうがない。きっといい夢が見れるはず。そんな『呪い』さ」
「あんたはもう、完璧に『呪い』を使えるようになったね」
何度も太陽が昇り、何度も月が沈んだある日。老婆は青年にそう言った。数少ない荷物をまとめ、村に帰る支度を済ませた彼は「でも」と不安気に言葉を濁す。
「本当に出来るのかわからない。あの村に、『呪い』なんて通用しないんじゃないか? だって、誰も言ってるの見たこと無いんだよな……」
「大丈夫さ」
声色を暗くした青年に、老婆は明るく言い切った。硝子玉のような目が不敵に、同時に頼りがいのありようを存分に示すように光る。
「本当は、みんな使えるんだ。誰でも『呪い』の力を持ってるんだよ。それを、今は忘れてしまってるだけ。あんたは思い出させてやるだけなんだ」
だから、大丈夫。にっと笑った老婆に、青年も笑い返して「そうだよな」と言った。
「ありがとう。俺に『呪い』をおしえてくれて…………いや、」
「思い出させてくれて、ありがとう」
「あんたと過ごすのは楽しかったよ。私の方こそ、ありがとうね」
そう言い合った二人はしばし笑い合う。冷たい風が吹いているはずのそこは、揺らぐことの無い温かさに満ちていた。
名残惜しそうにしつつも、片手を上げて去っていく青年の背中が遠くなっていく。それがすっかり見えなくなってしまうまで扉の前に立っていた老婆は、綺麗な青に澄んだ空を見上げ、これが一番強い『呪い』さ、と歌うように呟いた。
「唱えられた者をどうしようもなく笑顔にしてしまう。逃げられない幸せで包んでしまう……」
蔦色をした老婆の髪が、風に煽られて外れたマントから覗いて揺れる。
「今ここにいる喜びをひたすらに感じてしまう」
そんな『呪い』さ、と頷いた老婆は、満足気に笑いながら空を見上げていた。
そして青年は村に帰った。急に姿を眩ました自分が現れたら、村人達はどんな顔をするだろうかと彼は考えていたのだが、それは無為なものであった。驚くべきことに、老婆の家でしばらく暮らしていたにも関わらず、村に戻ってみれば時間はたった半日ほどしか経っていなかったのである。
不思議なこともあるものだ、と思いながら青年は自宅の扉を開けた。出てきた時と寸分変わらない、不和な喧騒が響くそこから顔を覗かせた青年の母親は、彼が覚えている限りではいつでもそうだったように不機嫌極まりない表情で以て、青年を睨みつけていた。
「どこほっつき歩いてたんだい、あんたがサボったせいで今日の夕飯は豆だけだよ。本当、とんだ馬鹿息子だ。私の子なのか疑うね」
吐き捨てられたそんな台詞に、以前の青年であったら同じだけか、或いはそれ以上の悪意を向け返していただろう。
しかし、今は違う。
『呪い』を知った彼は、笑顔で『呪文』を唱えてみせた。
「ただいま、母さん」
息子が口にした、言うはずも無いと予想すらしていなかったその一言に母親が、いや、後ろで口論を続けていた父親や青年の兄までもが驚いて目を見開いた。その言葉は長らく誰からも聞いていないものだったし、自分もまた言っていないものだった。
忌々しいものだと、無駄なものだと思って忘れていたその『呪文』と、『呪い』。本当ならば自分にだって使えるのに、使う必要が無いと思い込んで、いつしか捨てていたものであった。
「急に出かけたりして、ごめんね」
それを取り戻した、使えるようになった青年は、『呪文』を唱え続ける。誰でも使える、誰にでもすぐに効く、誰もが知ってる、その『呪文』を。
「晩飯、作ってくれてありがとう」
青年はにっこり笑ってみせた。『呪い』を知る、『呪い』を使えるものが出来る笑顔だった。
しばらく面食らっていた青年の家族だが、どうにか母親が「……おかえりなさい」と小さな声で返した。おかえり、と父親と兄も続く。そう口にした瞬間、彼らは自分達の家の中がほっと明るくなったかのような感覚に襲われた。消えかけたランプも、薄汚れた壁や床も、ひび割れた食器や僅かな食事も変わらない。しかし、何かが確実に変わっていた。何かが、自分達を、温かく包んでいた。
青年は笑う。それにつられて、青年の家族もわけもわからずに笑ってしまう。まるで誰かに操られたように……呪いでも、かけられたかのように。
「うん、ただいま」
『呪文』が、村に響き出した。
そして、青年の家族を発端として、村には徐々に『呪い』が蔓延していった。初めのうちは『呪文』を唱えられるだけで嫌悪感を剥き出しにする者も多かったのだけど、少しずつ、少しずつ広まっていったのだ。青年から、青年の家族から、その近隣の家の村人から、やがては村中に。『呪い』は確かに、村を包んでいったのである。
それと同時に、村は段々明るくなっていった。不思議なことに、『呪い』によって変わったのは村人達の間に漂う空気だけでは無かったのだ。笑顔が村に増えていけばいくほど、作物はよく実ったし、ポケモン達は育つようになったし、厳しい寒さも以前に比べて和らいでいるようにさえ思えてきた。活気と笑みを絶やさなくなってきたその村は、周辺地域や他の街でも噂となって評判となり、訪れる商人や旅人も増えていった。
村は、随分と幸福に満ちていた。
その変わりようたるや、まるで魔法か魔術か手品か、そうでなければ……。
そんなことを、以前の村を知っている者達は楽しそうに語り合っていた。
さて、青年はあの後に、村のことを伝えるために老婆を訪ねようと思い至った。自分の家で採れた、採れるようになったきのみや野菜、特産品であるシルクのショールなどを持って、あの森の奥へと出発したのである。
しかし、そこには老婆の家など、さらには深い森すら存在していなかった。
生い茂る木々を抜けた先にあるのは、見渡す限りの花畑だったのだ。色とりどりに咲く花は、今まで青年が見たことも無いほど綺麗なもので、彼は目を奪われてしばし立ち竦んでしまった。
そんな青年の足元で、何かが揺れる気配と微かな物音がした。はっと視線を落とした青年の視界の隅に、柔らかな若草色の毛並みが揺れたように思えた。
咄嗟に追いかけようと走り出そうとして、しかし、青年は踏み出しかけた足を止める。その代わりに彼がとったのは、今ではすっかり口に馴染んだ『呪文』の詠唱だった。
「ありがとう」
そう言った青年の耳に、同じ言葉が聞こえた気がした。言い知れないほどの、幸福感と、温かさ。それを感じた彼が、先程見た若草色が老婆の髪のそれにどこか似ていることに思い至ったのは、村へと戻った後であった。
一面の花畑の中の一輪、いっとう美しいものとして彼の目に映った、紅色に咲き誇る大きな花を、青年はそっと持って帰った。村へと渡ったその花は種を残し、その種からまた花を咲かせ、やがて村いっぱいにその花びらを揺らすようになった。
今、シンオウ地方の片隅に位置するその村は観光地として有名だ。笑顔の絶えない住民と、厳寒地域特有の食べ物と、冬に出来るようになる雪遊びと。もう一つ、美しい紅の花が世界中から人気を集めている。
その花は、学術的には「グラデシア」と分類されているのだけれども、この村では少し変わった名前をつけられている。いつか昔に、村がまだ貧しかった頃にいたという村人の一人が言ったのがきっかけで、その花はこう呼ばれている。
呪われた村に咲く、『呪いの花』。
唱えられた者をどうしようもなく笑顔にしてしまう、逃げられない幸せで包んでしまう、今ここにいる喜びをひたすらに感じてしまう。
そんな、『ありがとう』の呪いを司る花は、今でもシンオウ地方の風に吹かれて優しく揺れているのだ。
最近、隣にいる冷蔵庫があーだこーだうるさい。しかも言っている内容が意味不明だ。
冷蔵庫は、自分は生物なんだと言い張っていた。
この家には、ポリゴンがいた。ポリゴンは、この家の家族に飼われていた。父親が、ゲームコーナーの景品で取ってきたとか言っていた気がする。
ポリゴンというポケモンは、人工的に作られたポケモンだ。すなわち、自然に発生したポケモンではないということだ。だからポリゴンは本来生き物でないという方が正しい。けれども、この家の人たちは皆、ポリゴンを生き物として扱った。ポリゴンはちゃんと生きているような振る舞いをする。だから生き物なのだと言っていた。
このポリゴンが家に来てから、冷蔵庫が変なことを言い始めた。
「ポリゴンさんが生物であるなら、この俺も生物だろ」
僕にはさっぱり意味が分からない。
僕は炊飯器だ。一般家庭用の、五合まで炊ける普通の炊飯器だ。
炊飯器は、米を炊き上げるまでに少々時間がかかる。しかしこの家には食べ盛りの子供がいて、その子たちが「ごはんまだ炊けないの」としきりに聞いてくるものだから、母親は、炊き上がるまで後五分なのに蓋を開けてしまう。一年前は、後一分で開けていた。それからちょっとずつ、開けるタイミングが早くなっていった。
だんだん許容範囲が、広くなっていったのだろう。炊き上げるまで後一分だけどもういいや、と一回思ってしまって、そこからずるずると許容範囲が広がって、後五分でもいいやと今ではなってしまった。
許すか許さないかの境界線。それは、必ず太いものでなくてはいけない。後一分までなら構わないというあまりにも細い境界線では、境界線の意味をもはやなさない。炊き上がるまで、という太い境界線をなくすと破綻してしまうのだ。
このように、勝手に許容範囲を広げる人がいる。そして、この冷蔵庫もまた、
「なんでお前は俺を生物と認めないんだ」
自分で勝手に、生物だと定義できる許容範囲を広げていた。
「だからお前は違うじゃん。電化製品じゃんただの」
「ポリゴンさんだって電化製品みたいなものだろ」
「全然違うだろ。あんなに動きまわる電化製品見たことあるか」
「電化製品じゃないにしても、人工的に作られたものじゃん。俺と一緒じゃん。だから俺も生物」
「その理屈はおかしい」
「なんでだよ」
「ポリゴンさんは、お前にできないことできるからね。生物じゃないとできない様々なことが、ポリゴンさんはできる」
「俺ができないことって例えばなんだよ。具体例を言えよ具体例を。お前の話は具体的じゃないんだよ」
「例えば、この間父親が昔を思い出したいって言ったとき、ポリゴンさんは父親のアルバムを押し入れから取り出してきた。父親はそのアルバムを見て『懐かしい』って喜んでいた。ポリゴンさんはこうやって、人の気持ちを読んだ行動ができる」
「俺だって、俺の体の奥の方に腐ったものを眠らしておいたんだ。母親がそれを取り出したとき、『懐かしい』って笑ってたぞ」
「お前は何もしていないじゃないか。それは使い手のうっかりが転じた結果だろ」
「他には?」
「他には、母親と子が喧嘩して気不味い雰囲気になったとき、その雰囲気を察して母親の背中をとんとん叩いて和ませたり」
「俺だって気不味くなった雰囲気を察して、『ブブブ』って音鳴らして場を盛り上げられるぞ」
「それは気不味くなったときだけじゃないだろ。しかもあのむしろ気不味くなるし」
「もういいよ具体例は。例えばの話をしてもしょうがない」
「お前が具体例だせって言ったんだろう」
「とにかく、俺はポリゴンと一緒で生物なの」
「うわついに呼び捨てになった」
「同じ地位だからね」
もう自分は面倒臭くなった。
「分かったよ。認めればいいんだろ認めれば。人間達がどう思うかはともかくとして、俺個人としては、お前のこと生物だと思っているよ」
「『個人としては』とかそういうの止めてくれない。そうやって反論を未然に防ごうとするのは卑怯だよ」
「えーじゃあ。俺はお前のこと生物だと思う」
「『思う』とか言うのも好きじゃないなあ。ちゃんと言い切らないと。自分の意見を言うときに逃げ場を作るのはダメ。ちゃんと言い切って、反論も受け止めて。じゃないと成長しないから」
本当に面倒臭いなこいつは。こいつが頼んできたのに、なんでこんなに偉そうなんだ。
「お前は生物だ。これでいいか」
「うーん。いいでっ、しょ」
「……」
翌日。
「聞いてくれよ。昨日の夜中大変だったんだ」
冷蔵庫が、疲れた声で話しかけてきた。
「何があったし」
「俺の中にいる食品たちに、俺は生物なんだって自慢したの。そしたら、食品たちが口々に、じゃあ自分も生物なんだって騒ぎ始めたの。しまいには、野菜室のキャベツとにんじんが喧嘩して。『俺は生物だけど、お前は違う』なんてことを言い合ってて。最後にはお互いの特徴を罵倒し合ってた。うるさくて眠れやしなかった」
「それは、お前の自業自得だよ」
僕は、呆れて溜息を付きたかった。溜息の変わりに蒸気を出した。もうすぐ米は炊き上がる。
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最初のポケモンは、ポケモンを増やすことにした。
既に自分達の分身には下準備はさせてある。地球という星の一部には、沢山の自分の子供達が生活をしている。しかし、沢山の子供と言ってもせいぜい数十匹。ポケモン以外の人間という生き物が増え続けている中、もっとポケモンが少ないと寂しいという不満が出始めている。
子供達の珍しい我が侭だ、聞いてやらなければいけない。既に下準備は整っているので、跡は行動に移すだけだった。
「せっかくだから、形が違う仲間を沢山増やそう」
最初のポケモンは、地形や環境に合わせて様々なポケモンを考え出した。空を飛べるポケモン、地を這うポケモン、泳ぐポケモン、小さなポケモン、大きなポケモン、安全なポケモン、危険なポケモン、とにかく色んなポケモンを考えた。同じ姿形をした人間よりも多種多様なポケモン達を産み出した。
「できた。これだけ作れば充分だろう」
最初のポケモンは知恵を絞って、全部で一五一匹のポケモンを産み出した。地球に放たれた多くのポケモン達は時間をかけて増える中で、自分の姿に合った場所で暮らすようになった。そのうちに人間と共存するポケモンも現れ、人間の方もポケモンを捕まえる道具を発明した。人間がポケモンを捕まえることに関して最初のポケモンは何も思わなかった。というのも、殆どのポケモンは幸せに暮らしているからだ。それに多少不幸なポケモンがいたとしてもいちいち助けていられない。一度手を出せば全部を助けなければならない。そうしたら自分の仕事が増える。それだけは避けたいことだった。
世の中の流れが変わって、自分の分身達も喜んでくれた。最初のポケモンは子供達の笑顔が見られればそれだけで満足だった。
ある日、分身の一匹が最初のポケモンを訪ねてきた。
「どうしたユクシー」
それは、記憶を操作できる力を与えたユクシーだった。
「お父さん、お願いがあってきました。急なことで申し訳ないのですが、ポケモンを増やして欲しいのです」
「ポケモンを増やす? 結構な数を産み出したつもりだったが、足りなかったのか?」
「そうなのです。お父さんがポケモンを放った地方はカントー地方というところなのですが、他の地方はまだまだポケモンが少ないのです。と言って、今までのポケモンが増えるのには時間がかかりすぎます。他の地方ではポケモンが極端に少ないので、人間の間でポケモンが高額で取引されるという事態も発生しているようです」
「そんなことになっているのか。それはさすがに放っておけないな。教えてくれてありがとう、お父さんに任せなさい」
最初のポケモンは自分の分身の報告を受けて、またポケモンを増やすことにした。と言っても、いきなり増やせる訳がないので、時間をかけて知恵をしぼった。
今までのポケモンと姿が同じではいけない。多少似ていても違うものにしなければ。それは、最初のポケモンのこだわりだった。
こうして最初のポケモンはまた仕事を始めた。一から新しいポケモンを作ったり、以前作ったポケモンを退化させたものを生み出すことで、多少強引に数を増やした。
そうして、また新たに百匹のポケモンが産まれた。特別な力を持つ自分の分身も少し混ぜておいた。ユクシーが言っていた、カントー地方の近くを中心にそれらを放った。それらのポケモンも時間をかけて増えていき、ユクシーの言っていた危機は一部で免れたようだった。
これで少しは休めるだろう。さすがに二百五十一も創造したのだ。暫くは様子を見よう。
しかし数年後、今度は違う分身が最初のポケモンを訪ねてきた。
意思の神として産み出したアグノムである。
「お父さん、少し良いでしょうか?」
「あ、ああ、大丈夫だ」
少々疲れが残っていたが、可愛い子供のためにと体に鞭を打つ。
「お疲れのところ申し訳ないのですが、またポケモンを増やすことはできないでしょうか?」
「結構増やしたつもりだったが、まだ問題があるのか?」
「実は最近になって、ホウエン地方という地域を発見したのです。ここは以前ユクシーが見つけたような事件は起こっていませんでしたが、やはりポケモンの個体数が少ないのです。ユクシーやエムリットと相談したのですが、どうやら今いるポケモンを無理に連れていくと生態系のバランスが崩れてしまうようなのです」
生態系が崩れる。それは、自分の努力が水の泡になるということだった。流石に、最初のポケモンも眉を寄せた。
「なかなか生き物を作るのは難しいものだな」
「私も手伝います。ですので、また新しいポケモンを増やしましょう」
最初のポケモンは、アグノムの言うことを信じて、また新しいポケモンを生み出すことにした。今度は自分の分身が手を貸してくれたので、作業はスムーズに進んでいく。以前形にしたポケモンと類似したものから、全く新しいものまで、様々な仲間が創造されていく。自分以外の意見を取り入れることで、更にポケモンのレパートリーは増加していった。
こうして最初のポケモンは、また百三十五匹のポケモンを考え出した。アグノムが言っていたホウエン地方へそれらを放つ。以前百匹増やした時とは違い、アグノムの言う生態系が崩れかけたが、昔作ったポケモンを少々混ぜることによって、なんとかバランスは保たれた。
「お父さん、お疲れ様でした」
「なに、これくらいのこと構わないさ」
「では、私は見回りに戻ります」
アグノムがいなくなると、最初のポケモンは横になった。まさか、三度もポケモンを考えることになるとは思わなかった。いくら自分が最初のポケモンだからって、こんなに頭を働かせたら疲れるに決まっている。有能で万能だとしても疲労は蓄積するのだ。今度こそ、ゆっくりと休むことにしよう。
最初のポケモンは、誰にも邪魔されることなく眠り始めた。
しかし数年後、またもや起こされてしまった。
感情を司るポケモンのエムリットである。
「お父様、起きて下さい」
ここまで同じことをされたら、さすがに何を言われるのか察してしまう。
「エムリットか。まだポケモンが足りないのかい?」
「よく分かりましたね」
「もうだいぶ考えたぞ。あの数だけでは足りないのか?」
「問題はシンオウ地方という地域なのです。お父様が考えたポケモンを流用してみたのですが、一部のポケモンを除いてなかなか繁殖が上手くいかないのです。昔から寒い地方なので、そのせいなのでしょうか」
「どれ、私が試してみよう」
最初のポケモンはわざわざシンオウ地方へ赴き、自らポケモンを増やそうとした。だが、いくら試行錯誤しようが、その土地でポケモン達はなかなか繁殖しなかった。
いくら調べても原因は分からない。自分は最初のポケモンなので、ないモノを新しく生む行為に関しては相談する相手もいない。手詰まり状態だった。と言って、このシンオウ地方を放置するのも気が引ける。
最初のポケモンは、自らに鞭を打って再び仕事を始めた。この地方に合うようなポケモンを作り出す。
これまでに多くの仲間を考え出してきたのだ。これまでと同様、シンオウ地方に合うポケモンも結構いた。今回も、今まで進化しなかったポケモンを進化するように改良した。いくつかは成功し、ポケモンの種類はどんどんと増殖していく。
やがて、シンオウ地方もポケモンでいっぱいになった。
「どうだ、これで満足だろう」
「お父様大変です。アグノムからお父様の姿が人間に見られたという報告が入ってきました」
「姿を見られた。そうか、私がシンオウ地方へ降り立った時に見られてしまったか」
「どうしましょうか。記憶を消しましょうか?」
「いや―そうだ。いっそ、我々もシンオウのポケモンということにしてしまおう。ユクシーとアグノム、それにお前の家を作っておこう。お前達と一緒に作り出したディアルガとパルキアも、人間の前へ一度顔を見せておくようにと伝えておいてくれ。何かしらの儀式をしている集落に姿を現せば、それだけで後世にまで記録が残るだろう」
「すると、対策はしなくて宜しいのですか?」
「ああ、何ら問題はない」
そうして、最初のポケモン達とその分身達を含めた百七匹のポケモンがシンオウに広まっていった。
不思議なことに、新しいポケモンを用意すると瞬く間にその土地で数を増やしていった。そして、直ぐにポケモンと人は共存して生きていくのだ。まるで、ずっと昔からポケモン達がそこで暮らしていたかのように。
更に月日が経った頃、最初のポケモンは生気のない表情で毎日を過ごしていた。なぜ廃人に近い状態なのか、原因は明白だった。
何事にも限界はある。頭痛は治まらないし、大して動いてもないのに節々が痛い。人間でいう風邪に近い症状。計四百九十三匹のポケモンを産み出したのだから無理もないことだった。
「大丈夫ですかお父さん」
側にいるユクシーが口を開く。
「ありがとうユクシー。だいぶ気分が良くなってきたよ」
「我が侭を言ってすいませんでした。簡単にポケモンを増やせだなんて、お父さんの苦労も知らずに言うべきではありませんでした」
「気にすることはないよ、ユクシー。自分達の仲間が多くなるのは嬉しいことだからね」
そう、今までの働きは無駄な努力ではないのだ。辛い作業ではあったが、確実に成果は出始めている。各地方では、充分過ぎるほど多くのポケモンが日々生活している。地上を仕切っている人間の殆どはポケモンを悪いようには扱っていない。上手く共存している、最高の状態だった。ここまで来れば、子供達の不満は解消されたに違いない。
大事な分身のお陰で体力も元通りになりつつある。これで、堂々と休むことができる筈だった。
最初のポケモンに、エムリットが近づいてくる。
「お父様、報告したいことがあります」
最初のポケモンはもしやと思ったが、悪い予感は当たってしまった。
「最近、人間がイッシュ地方と呼ぶ大きな土地を見つけました―」
次に言われる言葉が予想できた最初のポケモンは、首を激しく横に振った。その姿を見て、エムリットとユクシーは、やはり何も言えなくなってしまった。
一体、私はいつまでポケモンを作り続ければ良いのだろう。最初は暇つぶしも兼ねていた筈だ。それが、いつの間にか義務に変わってしまった。
いっそのこと、そのイッシュ地方には一種類のポケモンしか生み出さないようにしようか。
だが、最初のポケモンは、それでは上手くいかないことを何となく察していた。
これは呪いなのだ。最初のポケモンは、いつしかそう思うことにした。
――――――――――
イベントが近いせいか、いつもより頓珍漢なネタが思い浮かびます。
フミん
ヤグルマの森では、実はクルミル系統が好きな私です。
確かに、ヤグルマの森のポケモンは人気があるのに、あまり絡みがないのですよね。良くも悪くも外見が異質なことと、ダゲキナゲキの二人だけで絡みが完結してしまっていることに原因があるのだと思います。
応援ありがとうございます、これからもがんばりますね!
ダゲキとナゲキの胴着ってどこで手に入れているんですかね? と今まで思ってたんです。立体ポケモン図鑑によれば、ダゲキとナゲキの足の裏はつまさきより後ろが白いそうですが、もしかしたら体色なのかもとも考えました。こういう関係があっても面白そうですね。
ねえ、きみはどこにいるの?
じめじめした空気。狭くて暗い空間。足元は水と何か細くて糸のような物が纏わり付き、歩くことも難しい。
そんないるのも嫌になるこの場所を、一匹のペンドラーがゆっくりゆっくり這い上がっていた。
彼には、時間の経過という物があまり感じられない。
いつからここにいるのか、どうやってここに来たのか、それすらも覚えていない。
それでも、ただ一つだけ理解していることがあった。というよりそのためにここにいるのだということを忘れてはいなかった。
(こっちから匂いがする)
毒タイプ独特の匂い、と人間は言うだろう。特に湿っているこの空間では、それは普段以上に効力を増す。
そのペンドラーは、相棒を探していた。生まれた時から一緒で、いつも隣にいた。フシデ、ホイーガと進化して最終進化のペンドラーになっても、常に一緒にいた。
性別うんぬんではなく、相手と一緒にいれば幸せだったのだ。
だが、数日前――既に彼は記憶していないが――彼の相棒は、珍しく一匹で散歩に出ていた。いつもは森しか散歩しない彼だったが好奇心に負け、森から出てしまった。
そしてそのまま行方不明となり、何処へ行ったのかも分からないまま数日が過ぎた。だがある日――雨が降った日だった――湿り気のおかげで相手の匂いを突き止めることができ、残された彼は相棒である彼を探しに出たのだ。
だんだん薄暗くなってきた。自分の目線数センチ先まで見えるようになった。ふと上を見ると、光がいくつか隙間から差し込んでいるのが見えた。
――もうすこしだ。きっとあの隙間を通り抜ければ、彼に会える。
ペンドラーは糸のような物がついた足を振り払うと、そこへと向かう。
やがて、視界が開けた。と同時に、ガチャという音がした。
空気が、凍りついた。
「おかーさん、またペンドラーが風呂場にいるんだけどー」
「やっぱり?」
若い娘がうんざりした声を出した。高校生くらいだろうか。悲鳴も上げなければ、恐がりもしない。慣れているのだろう。
風呂掃除をしようとそっとドアを開けた瞬間、めざわりな姿が目に入る。流石に一人では対処できないため、母親を呼ぶ。
ほどなくして彼女は来た。ティッシュを大量に持って。
「やっぱり、ってことは前に出たの?」
「うん。一週間前くらいにね。ほら、ペンドラーってつがいで行動するから、近いうちにもう一匹出るんじゃないかなって踏んでたのよ」
「ふーん」
しばらくして、トイレの方から水音が聞こえてきた。
「ところで母さん、ご飯まだ?」
「今作るからもう少し待ってなさい。それよりも、志望理由書今週の金曜締め切りよー」
「うわっやばっ」
娘の方がそそくさと階段を上がっていった。その頭には、無残に死んだペンドラーの影などこれっぽっちも無い。
――――――――
久々に書いた物がこれか!ちなみにこういうことがよく家で起きています。
でかいペンドラーやマダツボミがいるなら、ちまっこいペンドラーがいてもいい気がしたのですよ。
【何をしてもいいのよ】
と思ったらやって下さっていた神がいた・・・・!
作品読ませていただきました。まさに「その発想はなかった」でした。
おもえばダゲキナゲキさんって、オタマロとかエルフーンとかドレディアとか(なんだかんだで)人気のあるポケモンと同居してるのに・・・・どうしてそこをネタにする人が少ないんでしょうね。
私もBWではヤグルマ周辺の人々(ポケポケ)が好きなので、面白かったです。私もこうすっきりとまとめた短編をかけるようになりたいものです。
これからも創作がんばってください^^
P.S 私はダゲキ派です
あまり知られていないが、ダゲキナゲキとエルフーンは共生関係にある。と、いうのもエルフーンのモコモコしたあの綿は、上質なセルロースで出来ており、人間には理解できないが、メブキジカやバッフロンにとっては甘いらしいのだ(一応、ビリジオンなど三獣士達にとっても甘いらしい)。
何言っているのかよくわからねーと思うが、ありのままに説明するとそれらのポケモンにとってはエルフーンのモコモコはおやつ代わり。綿あめのようなものなのだという。
けれど、エルフーンにとってあのモコモコはファッションだとかクッションだとかそんなチャチなものでは断じてない。外敵が襲ってきたら、それを後ろに向けて身を守るという、有用な使い方があるのだ。
実際、モコモコに噛みつかせて、相手が絡まった綿を取ろうともがいている最中に、綿を千切って逃げたりする姿もよく確認されている。すり抜けの特性も、そうして生き残った個体が積み上げてきた遺伝子の賜物なのである。
戦っても敵わない相手にはそうしてやり過ごし、痺れ粉などをばらまいてエルフーンだが、草食の特性を持つバッフロンやメブキジカにはヤドリギの種も痺れ粉も効かない。だから、普通に考えればエルフーンはモコモコを根こそぎ喰われるしかないのである。
そこで登場するのがダゲキとナゲキだ。彼らは、真っ白な胴着を見に纏い、草で作った帯を締めて気を引き締めることで知られるポケモンだ。彼らは格闘タイプのノーマルタイプに対する優位性を活かしてエルフーンを草食の特性のポケモンから守る代わりに、体毛の薄い身体を傷から守るために綿の衣服を纏うのだ。
そんなエルフーンのセナがやってきて、もう4か月。夏の頃には薄かった背中のモコモコも、だんだんボリュームを増してきているようだ。
その薄かったモコモコというのは、ムーランドやチョロネコのように自然に抜けていくことで薄くなるだけではなく、原因はうちで飼っているポケモンのもう一人、ダゲキのタイショウのおかげだ。
もともとは、お祝いのためにセナをゲットしたのだが、捕まえ方が原因だったのか、最初は俺に心を開いてくれなかった。そんな時でも、本能的に味方だと認識できるのか対象に対してだけは落ち着いて接しており、タイショウの服の修理のために綿を分け与えていた
タイショウは綿を少量つまんで、それをより合わせて糸にする。その糸を、ほつれた胴着と同化させ、繕って穴を塞ぐ。セナを家に迎えるまでは、わざわざ専用の綿を購入していたが、いつでも新鮮な綿が手に入る今の状況を、タイショウは気に入ってくれたようである。
日中の鍛錬を終えると、その過程で傷ついた部分を、夜な夜な修繕する。セナと暮らすうちにそんな習慣が出来てゆき、それが高じた今となっては、暇な時間に他のポケモンの胴着も作ってしまう始末。ダゲキやナゲキは、上手く胴着を作られない子供に対して胴着を作ってあげる習性があるが、その習性の賜物なのだろう。
今日は、数日前に進化したコジョンドのアサヒに対して、一週間かけての進化祝いのお披露目だ。人間と暮らしているうちに、記念やお祝いという概念も覚えたポケモンたちは、アサヒを中心にお祝いのムードを楽しんでいる。
着せてもらった胴着を、鬱陶しいと思いながらもまんざらではないのか、開いた胸元を気にしながらアサヒは照れた顔をしていた。それを作るために体を張ったセナと、腕を振るったタイショウは満足げに微笑んでいる。
「ほら、アサヒ。これが今のお前の姿だぞ?」
みんなが幸せそうな表情になる中、鏡を持ってきてアサヒ自身にもわかりやすく披露目を。人間の俺にとってみれば妙に似合っているその立ち姿。それがポケモンにはどう映るのかわからないけれど、タイショウのためにも喜んでくれるといいな。
――――
ダゲキナゲキとエルフーンの関係は、私の脳内ではすでに鉄板になっている……ドレディアよりも好きなんです。
野生の本能や習性と人間の文化の融合。そんなものがポケモンにあるのならば、こんな光景もあるんじゃないかと思います。
マコさんはじめまして、返事が送れて申し訳ありません。感想ありがとうございます。
このお話はポケモンと人間が対等な存在という前提で書き上げました。
現実でも、夢があっても体格や障害で諦めざる終えないこともあると思います。
例えばルカリオ等は、今回の話の中では雇える対象になるでしょう。けれど、そのポケモンがコンビニで働きたいと思うかは分かりませんよね。
コンビニで働いていらっしゃるのですね。どんな仕事も最初は慣れないと怒られてばかりですよね。
最後の電話の部分は、自分で書いていてイラっとしてしまいました。もっとイライラするように書けば良かったなとも思います(苦笑)
今回の感想は励みになりました。今後も創作を楽しんでいこうと思います。
古い桜がありました。老いた天狗がおりました。
天狗がまだころころと木の実のように転げ回っていた頃から、桜は変わらずあり続けました。天狗が妻をめとった春の盛りには、桜はうんと美しく咲きました。天狗に初めての子が生まれた春も、桜はうんと美しく咲き誇りました。天狗のそばにはいつも、家族と古い桜がありました。
数え切れないほどの春が去りました。数え切れないほどの春がきました。若かった天狗も老い、妻も子も天狗のそばからいなくなりました。しかし、古い桜だけは老いた天狗のそばに有り続けました。
ある冬の晩のことです。月を隠すように雪雲は広がり、白い雪がちらほら降っていました。桜のようだと天狗は雪色の空を見上げて思いました。細く枯れたようにもみえる古桜の枝にも雪は降り積もり、さながら花のようです。天狗にも雪は積もっていきます。天狗は身震いをして雪を振り落とすと、すこし考えて桜のもとに向かいました。雪の上の細い足跡だけが、老いた天狗を追ってきます。雪を踏みしめ、足跡だけを引き連れて天狗は古い桜のもとまでやってきました。
「まるで、春の盛りのようですな」
老いた天狗の言葉に、古い桜は身を震わせたようでした。天狗が伸ばした手が桜の枯れかけた幹とつながりました。
「いつも貴方がいてくれましたな」
妻をめとって泣いた春も、子が生まれて泣いた春も、妻を喪って泣いた春も、巣立つ子を見送って泣いた春も、いつも天狗のそばには古い桜が有り続けました。天狗のいろいろな春を、古い桜はいつだって受け止めてくれました。
「せめて一度だけ、この老いた天狗の願いを聞いていただけますか」
老いた天狗の手は、年月を経ていつしか枯れた枝のようになってしまいました。いま手をつく桜の幹とそっくりです。古い桜の幹や枝もまた、年月を経てすっかり枯れたようになっていました。幹に置かれた天狗の手をそっくりです。
「貴方の花盛りをもう一度、見たいのです。私の一緒はいつも貴方の花がありました」
天狗の手と桜の幹はもはやひとつの色に変わっていきます。天狗は目を閉じ、息を吸うと言いました。
「私の小さな命をさしあげます。どうか、今一度貴方の花を見てみたい」
天狗の指先から、天狗の熱が古い桜へと移っていきます。老いた天狗の熱は古い桜の幹を登り、枝の隅々まで行き渡りました。天狗は目を開き、祈るように桜を仰ぎ見ました。
天狗の見つめる先で、古い桜の枝に小さなつぼみがつきました。濃紅色のつぼみは、老いた天狗の見上げるさきでゆるゆると膨らんでいきます。濃く小さなつぼみはゆるゆる膨らみ、降りしきる雪の色を吸うように色を薄くしていきました。終いには、あたりの雪と同じ色になりました。雪とよく似ている、しかし雪とはやはり違う白が天狗の目の前に広がりました。
「最期に貴方の花を見られて、よかった。」
老いた天狗は、その目に雪のような桜を抱いて旅立ちました。熱の抜けた天狗の体に、あとからあとから雪が積もっていきます。
桜は散りました。老いた天狗の死を悼むように散りました。天狗の体に雪などつもらせまいと、薄雪色の花を降らせました。古い桜の木からすべての花が散ってしまうと、けっして再び、古い桜は花を付けなくなりました。
☆★☆★☆★
いくつかまえのお題、桜でとんでも遅刻でお邪魔します。
せいちょう使ったら枯れかけの桜にも花咲かせられるのかとか、細胞分裂を無理矢理進めるんだから体に悪いだろうとか、桜に死って物を書いてる人間にとっちゃあこがれだよねとか。
書いてるうちに半分以上文字数減るのが不思議でなりません。
お好きにどうぞ。
フミんさん、初めまして。マコです。
ポケモンにも働ける場所があるなんて、いいことじゃないですか。
でも、体の大きさとか種族としての特徴で働けるかが制限されるということは、何だかやりきれない思いでいっぱいになります。
雌のカイリューであるアイコさんや、雄のヌオーであるリキさんみたいに、やる気は十分なのに、障害となる部分が大きいゆえに結局は排除されるということが、いくらしょうがないといっても悲しくなります。
まあ、コンビニで仕事が遅い人に対して、「これで時給が同じなの!?」とかぼやいてしまう気持ちは分からなくもないです。
自分が今、大手コンビニチェーン店のアルバイトとして働いているので、話の内容に親近感が持てました。
自分も入ったころは仕事が遅くて文句もさんざん言われましたが、もう既に2年続けています。今では文句も言われることはない、と思います。
もし自分がポケモンを雇うなら、と考えると、やっぱり人の形に近いポケモンになるのかな、なんて思います。あまり小さすぎても、レジに届かない可能性がありますから。最低1メートルの身長は欲しいところです。(浮遊できるポケモンなら問題はないでしょうけど)
それにしても最後に出てきた女の人(及びその息子)は……、どうしようもないですね。働きたい人が電話をかけるのが普通ですよね。何で親使うんですか。
かくいう私も店に直接行き、飛び込みでこの仕事を掴んだ身なので大声で文句は言えませんが。
らい!? らいらい!? ら〜〜〜〜い! 可愛い絵が貼られてるぅ! らいら〜い!
ありがとうございます! ありがとうございます! こんな可愛い絵を貼って下さりありがとうございます! らいらーい!
コッペパンが無い様なので代わりにライチュウのおてて貰います。ライチュウの手はむはむしたいです。コッペパンチをくらってでも。むしろくらいたいです。ライチュウらぶです。らーい。
最後にもう一度、貼って下さりありがとうございました! らいらーい!
【保存させて頂きました】
【ライチュウかわいいよライチュウ】
今日も一日が始まる。元気を出していこうと、中年の男性は意気込んだ。
彼の名前はマナブと言った。マナブは、駅から少し遠い住宅地に紛れたコンビニエンスストアの店長だった。雇われ店長ではない、彼は業界でトップクラスのコンビニチェーン店から看板を借りて、自分で店を切り盛りする有能な男だった。妻と子どもが一人ずついて、仕事は順調、肉体労働としては大変だが人並みより少し多く給料を稼ぎ、アルバイトの若者からも信頼されていて人望もある。いつも明るく客に接し、時々現れる泥棒には持ち合わせの正義感と体力で、正面から立ち向かうような熱い気持ちを持ち合わせている(と言っても、刃物や銃を持つ犯人に突っ込んでいくような、無鉄砲さはない)。平凡といえばそれまでだが、当たり前の生活を営むことができる、幸せな男だった。
そんな彼は、いつもと違いあまり落ち着かない。そわそわしながら商品を棚に並べ、店の周りの掃除をする時も周辺に視線を走らせている。その姿は、悪いことをして犯罪から逃れている指名手配犯と言われても仕方がない程だった。
どうしてそんな様子なのか。何故なら、今日はアルバイトの面接に来るポケモンがいるからだ。
彼の店では、半分以上の従業員をアルバイトに任せている。その従業員達は学生だったり、仕事をリストラされたマナブと同じくらいの歳の中年だったり、子育てが一段落した主婦だったり、様々な人がいる。しかし、彼の店ではポケモンを雇ったことはなかった。
ポケモンは、人間と同じ理性を持ち、感情を言葉で伝えることができる生き物である。容姿は人間と違いポケモンによって大きく異なるが、中身は全く人間と変わりがない。一時期人とポケモンを公平に扱うべきかと審議されることもあったが、それは昔の話だった。今では、人もポケモンも手を取り合って生きている。
こうなると、綺麗事だけでは世の中は進んでいかない。人が働いて当たり前ならば、ポケモンも同じである。
近年、ポケモンが働くというのは不思議ではなくなった。昔からポケモンが人の補助をするのはよくあったことだが、人間と同等の待遇で働けるようになったのは、最近になってからだった。働けば給料を支払われ、怪我をすれば保険も下りる。有給休暇も利用できるし、休日も確保されている。この体制が安定してきたのも、ここ数年の出来事だった。今では不当な理由でポケモンを雇わないと、その職場は厳重に注意されてしまうまで法律が整備されている。
もちろんマナブは、ポケモンを雇うことを避けてきた訳ではなかった。場所も都心部からは少し離れているせいか、働きたいと言ってくる人があまり多くないだけだった。
しかし、今日は初めてポケモンの求職者が来る。マナブは、そのポケモン達を待っているのだ。
偶然にも、同じ時期に働きたいと申し出たポケモンは二人いた。どちらも電話で申込んできて、容姿は分からない。一体どんなポケモンが来るのだろう。マナブは自分が指定した時間まで、不安定な気持ちのまま仕事をすることになった。
しかし、仕事で手は抜けない。ここは自分の店であり、売上が落ちれば生活に直結する。彼は客が押し寄せる時間帯になると今日来るポケモン達のことはすっかり忘れてしまい、自分のすべきことに打ち込んだ。この店は周辺の住民だけでなく近くに高速道路があり、そこから来る客が立ち寄ることも多い。だからこそ、駅から離れた場所でも店が赤字にならずに済んでいるのだった。
やがて客足も緩まり、マナブが指定した時間五分前になった。そろそろ来る筈だなと彼が思っていると、店の入り口に大きなポケモンが現れた。
黄色に近い肌に目立つ大きな腹部、そのポケモンが歩くごとに地面が揺れ、店の中にいた客は誰もが視線を当てた。本人は慣れているのかあまり気にしていないようだった。
見た目とは裏腹の可愛らしい顔。店の中に入り、マナブを見下ろして言う。
「すいません、先日アルバイトの件で電話をした者ですが」
マナブは、悠々と立つこのポケモンが今日の訪問者だと理解するのに数秒を費やした。よく見ればそのポケモン――――カイリューの手には、今日面接に来る際に準備しておいてと指定した履歴書らしき紙を握り締めている。側にいた学生のアルバイトも口を開けてカイリューを見上げている。
「あ、はい、お待ちしていました。早速面接を行いたいのですが―――申し訳ありませんが、一度外に出て待っていて下さい。直ぐに向かいます」
「分かりました」
穏やかな表情でカイリューは返し、また大きな足跡を立てて店を出て行った。
マナブはまだ口をあんぐりと開けているアルバイトに、暫く店を頼むと言い外へ出た。マナブの存在に気づいたカイリューが頭を下げる。その素振りから、礼儀正しくてモラルがあるのは明白だった。
店の裏に行こうと話しかけ、カイリューは彼に従った。その際に履歴書を預かり、マナブは軽く目を通す。名前はアイコと言い、雌であることが分かった。必要事項に記入漏れはないし、志望動機も隙間なく埋めてある。字も読みやすく、写真も真っ直ぐに貼ってある。内容はともかく、完璧な履歴書だった。
マナブは椅子が用意出来ないことをカイリューにお詫びして、本題に入る。
「今日は、わざわざ来てくれてありがとうございます」
「こちらこそ、驚かせてしまい申し訳ありません」
「気にしていませんよ。だから、あなたも気にしないでください」
再びカイリューは頭を下げてくる。履歴書を更に詳しく読んでみる。住居はここからそう離れてはいない、学歴はないが(ポケモンが学校に通い学ぶことは、まだまだ珍しい)犯罪歴もない。おかしな部分は見当たらない。第一条件は良し。
「家からここまで、どれくらいかかりますか?」
「は、はい。飛んで20分くらいです」
緊張しているのがこちらにも伝わってくる。何かあれば、代理で仕事を頼める距離ではある。
「失礼ですが、あなたの身長はいくつでしょうか」
「はい、2メートル50センチです、私他のカイリューより少し大きくて」
声が小さくなり彼女の自身が萎んでいくのが分かる。確か、コンビニは床から天井まで大体3メートルあるかないかの高さだった筈だ。
「もし店で働くことになった場合、何曜日なら入れますか?」
「夜は不可能ですが、朝から夕方ならいつでも働きます」
雇う側としては都合が良い。少し会話を重ねた感じ、性格も温厚そうだ。仕事を一から教えていけば優秀な店員になるだろう。長年様々な人を雇い直接見てきたマナブは、彼女が自分の店で働いても問題ないと判断することができた。根拠は、店を運営してきた勘だった。経験者の勘は恐ろしい程よく当たる。
しかし、彼は残念な結果を伝えなくてはならなかった。
「申し訳ありませんが、あなたを雇うことはできません」
当然、アイコさんは悲しがっていた。昔マナブもアルバイトの面接で落ちたことがあるので、彼女の苦しみは自分のことのようによく分かる。
「雇いたい気持ちは山々なのですが、何せうちの店はそんなに広くないんです。アイコさんがしっかりしたポケモンなのは履歴書と態度で理解できます。しかし店で働くとなると、狭い店内を動き回らないといけないし、細かい作業も多い。間違って商品にぶつかってしまうと大変だし、働く人が休む休憩所にも入れないと思います。ですので、今回は―――」
「分かり、ました。わざわざ、時間を割いて頂いてありがとうございます」
「こちらこそ、求人を見て足を運んでくれてありがとうございました。履歴書はお返しします」
寂しそうに去っていく後ろ姿は、悲壮感に満ち溢れている。ナマブは彼女の姿が見えなくなるまで見送ったが、途中であんなに丁寧に書いた履歴書をくしゃくしゃに握り潰しているのを、彼は見逃すことはなかった。
こちらとしても彼女を雇いたかった。しかしあんなに大きな体では仕事が限られてくる。それで一番苦しむのは本人だろう。今回は仕方なかったとしか言えない。マナブは彼女が仕事を見つけられるように、ささやかに祈っていた。
今度から、電話越しにポケモンの種族を聞くのも検討しようと考えながら仕事を再開する。次に来るポケモンがどんなポケモンなのか心配になってくる。
店に戻りいつも通りに動いていると、再びポケモンが入ってくる。この店はポケモンも利用するので何も不思議なことではないのだが、先程のカイリューの様に履歴書らしき紙を持ち、紙とマナブへ交互に視線を当てているので、何となくあのポケモンかなと思ったら、向こうの方から話しかけてきた。
「あの、今日面接を頼んでいたポケモンですけど」
マナブは、そのポケモンの声に聞き覚えがあった。電話で聞いた声、今日来る予定の二人目のポケモンで間違いないようだった。
水色の肌、短い手足に小さな目と大きな口を持ち、頬を上げ笑う顔はどこか穏やかだ。種族はヌオー。身長はマナブより小さく小学生を思わせる。
もちろん彼は冷静に対応する。少なくとも、先程のカイリューみたいな体格の問題は少ないだろう。少し安心する。
「では奥に行きましょうか」
「はい」
ヌオーから履歴書を受け取り店の奥へと案内する。リキというらしい。名前からして、雄のポケモンということが分かる。
マナブはリキを椅子へ座るように案内する。リキは指定された場所へゆっくりと座る。
「今日は面接に来て頂いてありがとうございます」
「いえ、こちらこそお手数かけます」
頭を下げる仕草も丁寧だ。腰が低そうだ。
先程のカイリューにした質問と同じ内容を尋ねていく。住んでいる場所は本当に近い、ここから歩いて5分もかからない場所に住んでいるらしい。働ける時間帯はカイリューと同じ、夜だけは勘弁して欲しいとのこと。夜には既に他の従業員が働いてくれることになっているので問題ない。適度に世間話を持ちかけてみる。多少会話に間があるものの、ちゃんと目を見て会話をしてくるし、人間とは違う笑顔も印象が良い。マナブは、このポケモンを雇うことにした。彼の店で、初めてのポケモンの従業員になる。
その旨を伝えるとリキは喜んでいた。マナブも先程みたいに、心苦しいまま断ることをしないで済んだので安心していた。
マナブは彼にどのくらいの頻度で働くのか、働く上でのルールや最低限のマナー等、雇う上で必要なことをその場で説明していく。リキは真剣に話を聞いてくれるし、はっきりと返事を返してくれる。良い従業員になりそうだと、ナマブは彼に期待していた。
しかし、その期待は空回りをしてしまった。
彼は確かによく働き、物覚えが良くて仕事の内容も直ぐに覚えてくれる。同じ従業員仲間とも打ち解けていて、客に対しても粗末な態度を取らない。いわゆる当たりだった。
しかし彼には弱点があった。何においても動作が遅いのだ。
元々ヌオーというのは、川底等で口を開け、餌が来るのをただひらすら待つというポケモンで、活発的に動くことはない。そのためか、リキは何の作業をしても遅い。レジで会計を済ませている時も、ゆっくりとお釣りを返すので慌てている客に怒られることも珍しくはなかった。商品を棚に並べる行為も、他の人間の従業員よりも終えるのが遅い。正確に仕事をこなしてくれるのは有難いのだが、人間の従業員よりも仕事量が圧倒的に少ない。最初は寛大にリキを迎え入れていたマナブも、人間よりも遥かに効率が悪い彼に、次第に不信感を積もらせていった。他の従業員も同じだったようで、何故彼と同じ給料なのかとぼやく者まで現れてしまった。
リキがいくらのんびりしているからと言っても、職場の険悪な雰囲気に気づかない程鈍感ではなかった。次第に彼は周囲から孤立していき、笑顔を見せることは減っていった。そして一ヶ月もしないうちに、マナブへ働くことを辞めたいと告げてきた。頭でヌオーという種族のハンデだと分かっていても、仕事量の少なさを許容することは、マナブにはできなかった。
リキが辞めた翌日、マナブは休憩所でため息をついていた。普段活発な彼が考えていることは、ポケモンを雇うというのはとても難しいということだった。
せっかくやる気や素質があっても体格のせいで働かせることができない。種族柄のハンデで、こちらが求めている能力を引き出して貰えない。人間以外を雇うのに、こんな問題があるなんて最初は思いもしなかった。ポケモンが働くのが一般化しつつある今、まだまだ人間を優先して雇う理由が、マナブには何となく分かる気がした。人間だって、それぞれに合った職種を選ぶ。ポケモンは働きたいという願望があっても、体や種族が職種に合わなければそれだけで門前払いだ。なんて大変な種族なのだろう。
コンビニで働けるポケモンだって多い。それなのに、明らかに無理なポケモンばかり集まってしまうのが歯痒い。
そんなことを考えていると、近くにおいてある受話器が鳴る。マナブは気持ちを切り替えて電話に出る。
「もしもし、○○コンビニエンスストアです」
「お忙しい中すいません。そちらで、アルバイトを募集していると聞いて電話をしたのですが」
女の声。声に張りがあり、耳を受話器から離しても透明感があるその声はよく響く。狙っているのか意識しているのか、無駄に大きな声量からして、中年の女ではないかとナマブは思った。
「はい、募集しております」
「私の息子なのですが、今雇うことはできますか? 平日は大体入れるのですが」
息子?
「平日は、早朝から夕方の間で募集しております。大体と言いましたが、何曜日なら入れますか?」
「そちらの都合に合わせます。何曜日に入れば宜しいですか?」
「――――少々お待ちください」
細かいことは置いておいて、シフト表を確認する。今確実に必要なのは火曜日から金曜日。そう伝えると、電話越しの中年の女は言う。
「もう少しシフトを多くできませんか?」
「そう言われましても、現時点では火曜日から金曜日に入って欲しいんですよ。その後仕事量を増やせるかどうかは、他の従業員もいるので、これから先にならないと正確には分かりませんね」
「お願いします。どうしても、もっと働きたいそうなんです。後一日でも増やせませんか?」
マナブは電話の相手に聞こえないように小さくため息をついた。働きたい本人が電話で話さないだけでもおかしいのに(恐らく電話の相手はその息子の母親だろう)、こちらが雇う前提で話を進めていることが図々しいとは思わないのだろうか。それとも向こうは、これが当たり前だと思っているのだろうか。
「申し訳ありませんが、平日は火曜日から金曜日の朝から夕方、それ以外は募集していません。店の入り口にもそのように書いてあるので」
「じゃあ良いです」
女性ははっきり言い残すと、電話が音を立てて切れてしまった。半ば呆れつつも、受話器を戻して体をほぐす。こう言った意味不明な要求には頭を悩まされたものだが、慣れてしまえばどうってことはない。
全く、うちの店で人間は働きやすいのに、中身がどうしようもないと雇いようがない。いっそ、止む終えない理由で雇えなかったポケモン達と中身を取り替えてしまえば良いのに。
――――――――――
お久しぶりです。企画を開催していると知ったのでお話を置かせて貰います。
ポケモンも人間と同じで、働く場所を探すのには苦労しているんじゃないかなあと悶々と考えていました。
因みに有給云々の話を作中で書きましたが、アルバイトでも法律上有給休暇は取れるんですよ。知っていましたか?
フミん
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