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出来たので出掛け先から投稿させて頂きます。長い&一応腐向けなので注意してください。
金色の体毛はパチュルとも違った味わいの美しい色をしてあり、雷をあしらったようなしっぽからボルトロスと関係性のある神と呼ばれる。つぶらな黒目は黒真珠のように美しいもので、その目で微笑まれれば誰もが骨抜きにされ大犯罪者さえも精神が浄化されるという。
かの地イッシュにおいて、ピカチュウという生き物は冒頭で語った通りの伝承が伝えられ、それはそれは大事に崇められていたという。もとより生息地が極端に少ない種族ゆえ大事にされていたものが、より希少価値のあるイッシュでは強い神秘性を持ち、神として崇められていたのだ。
そのような経緯から、この寝る場所も召使いも食事も広すぎて多すぎる巨大な城の中に、ピカチュウはピカ姫様と(オスなのに)呼ばれ軟禁状態で寵愛されていた。もちろん服装も特注の姫様ドレスである。フリッフリピンクである。
そんな豪華な城の中でどれくらい寵愛されていたのかというと、かわいい右前足をあげれば芳醇な香りの甘い果物が召使いによって届けられ、左前足をあげればミルタンクの搾りたて新鮮な乳が届けられるといった具合で、くしゃみでもした日には大騒ぎである。たちまち王専属の医者が天変地異でも起きたかのような形相でピカチュウの元へと走り、万が一苦みや渋みなどにピカ姫様がお気を悪くしてはいけないと、あらゆる木の実をすりつぶして調合したものにはミツハニーのあまいみつがくわえられ、ようやくピカ姫様のかわいいお口に入るのである。
このようにして籠の中の鳥ならぬネズミ(なんだかネズミ取りにつかまったネズミのような響きである)として寵愛されつづけたピカ姫様は、ちょっぴりおデブであった。具体的に言うと赤・緑時代とかアニメ無印時代初期みたいな感じで。いいえこっちの話です。
ついでに言うと、甘やかされまくっていたものだから性格もちょいいい感じに仕上がっていた。こんなもん食えるかー、とばかりに召使いの持ってきた食べ物を後ろ足でシッシとやって下げさせたり。気に入らないことがあるとすぐに電撃を発したり。まさに手のつけられないワガママ姫状態であった。
だがあのプリティーなお顔が「チュウ?」と鳴きながら傾げられ、笑顔の形に緩むと、ワガママに手を焼いていた召使いも王様も、誰も彼もが「ハアアアン!!!」と悶絶し、その場にバッタバッタと倒れるのであった。ピカ姫様はそんな愚民どもに見向きもせず、茶色いしましまの背中とかみなりしっぽを向けて(フリフリドレスはうっとおしいから脱いだようだ)、さっさと天蓋つきの、ふかふかプリンセスベッドに入ってしまった。
ピカ姫様の在住するプリンセスルームにも、もちろん窓はある。窓の外の空は、チルットの体のような青い全身に、ふわふわの羽のような雲もおくっつけていて、空全体が大きなチルットのようだ。おじさんのような神様の下半身が空一面にギッシリ詰まっているような灰色の雲はどこにも見あたらない。絶好のお散歩日和といえる。ピカ姫様はおてんば姫だから、お散歩に行きたくて長いきれいなお耳とピカピカかみなりしっぽがピクピクしていた。だけどピカ姫様はピカ姫様だから、おさんぽになんて行けないのだ。外には危険なものがいっぱいで危ない、外に出てはいけない、とお城の人間はノメルのみでもかじったのかお前らは、って感じに口を酸っぱくして言うのだ。
もちろんピカ姫様はその過保護にうんざりしている。ピカ姫様とて立派な男の子、外で冒険の九つや八つくらいはしてみたいのだ。フリフリのドレスをうっとおしく思いながら、ピカ姫様は広いお部屋を見回してみた。
うるさい召使いも今は部屋にいない。部屋のドアを押してそっとのぞいてみれば、見張りの兵士もうららかな昼間の日差しに、廊下に座り込んで大爆睡中である。しめた、と思ったピカ姫様は、どっから出したんでしょうねえ、自分の等身大四十センチぬいぐるみを取り出し、天蓋つきのプリンセスベッドの中に寝かせておきました。
等身大と言ったって、今時のピカチュウぬいぐるみじゃありませんよ。CMでお姉さんが「ピカチュウ四十センチ! 大きくなったわねえ」とかちょい棒読みで言ってたあの初期ピカチュウぬいぐるみです。なにしろピカ姫様は溺愛されてちょいぽっちゃりしてますからねえ。あの時代のピカチュウぬいぐるみじゃないとバレてしまうのですよ。
とにかくこれで、パッと見ではピカ姫様が部屋を抜け出したことに誰も気がつかないはず。ピカ姫様、気合いを入れて脱走! おお、まるでゲージから逃げたハムスターのようです。ネズミですしね。チュウチュウ。
その四つ足で走る動きやでんこうせっか! 今にもボルテッカーを編み出しそうな動きです。
フリフリのお姫様ドレスを揺らしながら走る動きは優雅の一言! こいつは今年のポケモン映画(2014年現在)の姫様も顔負けです。何しろピカ姫様ですから。語り手が映画館でディアンシーの甘いとろけた声と仕草にメロメロにされまくっていようと、ポケモンとして新人であるメレシー族のお姫様はまだまだ遠く及ばないのです。
数々の兵士の包囲網(ほとんどが船漕いでる、大丈夫かこの城)をくぐり抜け、ピカ姫様は久しぶりにお城の外に飛び出しました。きれいな青空をピカ姫様が見上げると、大きなチルットのようなお空もこんにちは、ピカ姫様、と微笑んだように見えます。
ピカ姫様は気分を良くして、四つ足で駆けていきました。ピカ姫様が四つ足で走っていると、動物らしさが強く現れていてかわいらしいですね。かわいいドレスが汚れるのも構わず、ピカ姫様が四つ足で走っていった先には、きれいな草原がありました。おいしそうなラズベリーやいちごやきのこ、かわいいヒマワリやテッポウユリなんかがたくさんあります。ひときわ大きな草は、ナゾノクサでしょうか。
ラズベリーやいちごも捨てがたいですが、まず最初にピカ姫様はナゾノクサに話しかけました。
「ピーカー」
「ナゾ、ナゾナーゾー」
ピカ姫様のうるわしゅうあいさつに、ナゾノクサは地面からボコッと飛び出して返事をしました。こんにちは、いい天気だね。そんな感じのことを言ってるみたいです。ピカ姫様があいさつをすると、ナゾノクサの体が光って、一回りほど大きくなりました。流石はピカ姫様、あいさつ一つで下々のナゾノクサをせいちょうさせることも可能らしいです。
気分の良くなったピカ姫様は、さっそく草原にいっぱい生えているラズベリーやいちごをムッシャムッシャと食べ始めました。それにしてもここの草原のイチゴは大きいですね。ピカ姫様のお顔くらいはありそうです。ですがピカ姫様は「ガウウウルルッシャール」とか字にしづらい鳴き声をあげてムッシャムッシャ食べてます。「ピカ〜♪」なんてご満悦な声まであげてやがります。かわいいです! 語り手を64のコントローラー片手に悶絶・EDで号泣させたあのかわいい画面が、今ここに再現されているのです!
かわいいお姫様ドレスが汚れるのもなんのそのでイチゴとかラズベリーを食べていたピカ様に、忍び寄る不吉な影が三つ。ポケモン一匹に人間二人。ポケモン一匹と人間の片割れは男のようです。
男二人に女一人のコンビと言えば・・・・・・。ドロ●ジョ様一味ですね!
「ちがうわよ!」
「失礼なやつだニャー」
「まあ元ネタはそうらしいけどな」
さりげなくフォローを入れてくれる青年は、三人の中でも特に人がよさそうです。こいつら転職すればいいのに。
語り手の感想はともかく、この三人はロケット団!(アニメの方の)
狙いは麗しのピカ姫様のようです! なのにピカ姫様ったら、イチゴやラズベリー果汁のついたかわいいおててを舐めてきれいにするのにいそがしい! ああかわいい! すっかりキャラクターとしてカスタマイズされてもまだまだ動物っぽさが伺えますね!
「なんでこんなとこにいるのかはしんないけれど」
「イッシュのピカ姫様とくれば」
「サカキ様も大喜びだニャー」
この後サカキ様がよろこぶ様子を三人仲良く想像しているようですが以下省略。とにかくうららかな草原のピカ姫様の憩いは、悪者三人の手によって終わりを告げました。延びてきたアーム(古いロボットのおててみたいなやつ)によって体を掴まれ、マメパトが入っていそうな持ち運び式の小さな檻の中に放り込まれてしまいました。
当然おてんばピカ姫様のこと、電撃で檻をぶち破ろうとしましたが、不思議なことに檻はびくともしません。
「ニャッハッハッハッハ、この檻の対電気用対策は万全なのニャ」
「くやしかったらなんとか言ってみろー」
「んじゃとっととずらかるとするわよ」
ああピカ姫様絶体絶命! このまま誘拐されて、ここには書けないようなあんなことやこんなこと(どんなことでしょうね、多分なつかしのスーファミでもサカキ様とやらされるのでしょう、)をされてしまうのか!
「まてー!」
魔王あるところに勇者あり、悪栄えんとするとこに正義あり。
「お前ら、そのピカチュウをどうする気だ!」
黄色いネズミいるところに少年あり。サートシくん(どっかのライバル風)です! ピカ姫様を助けんと、華麗にやって来たのでございます!
・・・・・・実際は草原のナゾノクサと遊ぶためにやってきたところを、見たことない変な奴がいたから走ってきたようですが、とにかく我らがサートシくんがやってまいりました!
「どうするって・・・・・・」
「サカキ様に献上して幹部昇進支部長就任いい感じー、なのニャ」
「そのためにもこのピカチュウが必要なのだ」
「そいつは嫌がってるじゃないか! ・・・・・・みんな、力を貸してくれ!」
我らがサートシくん、曲がったことは許せない。それはいつどこにいても変わりはしないようでした。草原におおきなカブよろしく埋まっているナゾノクサさん達がボコリと顔を出し、つぶらなおめめを三角にしてロケット団達をにらみつけております。
サトシと遊ぶのを邪魔されたことも、自分たちの縄張りでいかがわしいことをしているのも許せない・・・・・・そんな空気が漂っております。
「ナゾー!」
「ナゾナゾ!」
「ナーゾー!!!」
ロケット団の周囲を囲ったナゾノクサたちが、いっせいに体からこなを飛ばしました。それぞれ別の方向から飛んできた粉は全て、しびれ、どく、ねむり、全く違う種類の有毒を含んでおります。これがゲームなら「意味ねーじゃん、二ターン無駄にしてやんのwww」と笑い飛ばされて終了ですが、現実はそうそう甘くはありません。どくを食らっても眠くなるし痺れも来るのです。
「しびれる〜」
「毒でやられるニャー」
「しかも、眠く・・・・・・」
ふらふら状態になったロケット団が、手に持っていたピカ姫様の檻を手放しました。哀れピカ姫様入りの檻は勢いづいて、坂道を転がっていく五ローンのように、段差の多い草原を転がっていきました。
「ピイカアアアアッ!!」
こりゃ大変、たまったものではありません! グルングルンと体と一緒に視界もまわって、ピカ姫様は果てのない奈落へと落ちていきます。絶体絶命かと思いきや、その後を転げるように走ってくる人影がありました。
「ピカチュウウウウウ!!!」
サトシです。服が草と土まみれになるのも構わず、時々見事にずっこけるのもかまわず、ぶつけた拍子に鼻血さえ出しながら、少年はピカ姫様の元に走っていきます。だいぶ追いついたところで、彼はまるでギャロップが飛び跳ねるかのように見事に跳躍し、転がり続ける檻に飛びついて、見事ピカ姫様入りの檻の自立走行を止めました。
「大丈夫だったか、ピカチュウ?」
「ピカチュ・・・・・・」
大丈夫? と言いたいのはこっちの方です。髪も服も顔も擦り傷と土でボロボロ。鼻の下は鼻血で酷いことになっています。なのにサトシは、顔も拭わずその辺にあった石を手に持って、檻にピカ姫様を閉じこめている丈夫そうな錠前を殴りつけ始めました。
最初はすぐ近くで響く大きな音に、ピカ姫様もびっくりしていましたが、錠前を壊そうとするサトシの顔があまりに真剣なので、何かを言うこともできませんでした。
「まってろよ、ピカチュウ。すぐに出してやるからな・・・・・・」
ガアン、ガアン。
石と鉄のぶつかり合う大きな音の合間に、少年の声が聞こえます。
彼のピカ姫様への呼び方は、ポケモンを大きくカテゴライズするための、ただの種族名です。
そう、ただの。彼にとっては、ピカ姫様とて一介の、ただのポケモン一匹に過ぎないのです。なのに彼は、必死になってただのポケモン一匹を助けてくれる。その事実が、たった一匹のピカチュウの胸の奥に落ちていって、歓喜の気持ちと驚嘆の気持ちとーー何故か悲嘆の気持ちまで広げていって、複雑な気持ちにさせました。
一際大きな音がして、錠前が砕け散ります。ピカ姫様はサトシの力強くも優しい手によって、救出されました。その優しい少年の手! ピカ姫様は、王子様というよりは波動の勇者って感じの少年に何もかもをゆだねてしまいたくなりました。
「・・・・・・ピカッ!」
ですがそこはピカ姫様、照れちゃったというのもあるのか、すぐにサトシの手から逃れ、飛びずさってしまわれました。サトシ君はサトシ君で、ポリポリN線ほっぺを人差し指で掻きながら、「まあ無事ならいいけどさ」なんて心広すぎだろお前みたいなことを言ってます。
「ヂュー・・・・・・」
ピカ姫様唸ります、唸ります。何こいつ冷たくしたのにヘラヘラしちゃってんだてめーバーロー(どっかの名探偵みたいッスね)とか思ってるみたいです。・・・・・・そんでもって、必死で自分を助けようとするところは、ちょっとカッコよかったな、だなんて思ったりなんかしちゃったりして。
姫様は心の中でも素直じゃないようです。
「キェー!!! クエー!!!」
そーんなベタベタラブコメディやらかしてるところに、KYなきとうし的鳴き声を上げながら、何かキレてるオニスズメの群れが突っ込んで来ました。なんでオニスズメがキレてこっち来てるんですかねえ。何せポケモンアニメの記念すべき第一話が放送されたのは十年以上前。語り手当時まだ子ども。麗しき思ひ出記憶の彼方。二人の絆が芽生えた瞬間に涙した記憶はあれど、どうしてオニスズメが怒ったのかなんて細部までは覚えちゃあいません。文句は無印アニメを一向にDVD化する気配のない公式に言ってください。みんながみんなアニ●ックスとか見れるわけじゃないんですよ!!
とにかくオニスズメです。サトシとピカチュウって来たらタケシとか歴代ヒロインの前にオニスズメなんです。そのオニスズメがピカ姫様とサトシに迫ります。鋭いくちばしをきらめかせ、彼らを傷つけようと襲って来ます。
「チャー!!!」
「っ、ピカチュウ! イテ、いててててて!!」
酷いです、酷いですオニスズメ! ピカ姫様のお姫様ドレスも、ふかふかの黄色い毛並みも、何もかもがその獰猛なくちばしに傷ついて行きます。サトシもこれにはたまったものではありません。
「お前ら、やめろ! あだ、あだだだだだっ!!」
サトシくん、何とかその辺にあった棒で応戦しようとしますが、焼けイシツブテにみずでっぽう。コラッタ二〇一五匹にニャース一匹の、多勢に無勢。ならばせめて、と同じようにつつかれてボロボロの、ピカ姫様に覆い被さりました。
「チュウ!?」
「大丈夫だ、ピカチュウ。お前だけは、絶対に守ってやる・・・・・・」
サトシにとって、ピカ姫様がただのピカチュウで、たくさんいるポケモン達のうちの一匹であろうとも、適当に扱っていいという答えには結びつかないのです。たくさんいる友達の中の、かけがえのない、換えのきかない存在。そんな気持ちが、この捨て身の行動に繋がっていました。
「ピッ・・・・・・」
どうしてそこまで。そのピカ姫様の問いかけに、答えなんてありません。それはサトシがサトシだから、という他に言いようのないことです。しかし──だからこそ。その行動は、ワガママ姫様の心に届きました。
「ピカチュウ・・・・・・?」
「ピー・・・・・・ガアアァ!!!」
守ってくれていた少年の体の下から抜け出たピカ姫様の体から、閃光のような雷撃が飛び出しました。その勢いで二人をつっついていたオニスズメの何匹かが戦闘不能に陥ります。
効果は、抜群。
元々ボロボロだったドレスは、ピカ姫様の発した雷撃によって更にズタボロになりました。もはやボロ布。しかしそんなことはどうだっていいのです。誰かを守りたいと思ったポケモンに、きらびやかなドレスも、かわいいリボンも必要ありません。
心に闘志があればいい。フリルのついた服よりも、血と泥にまみれた毛皮が似合えばいい。安全な、角の研がれた積み木のオモチャはいらない。相手を傷つける牙と爪があればいい。
でんこうせっかの黄色い弾丸と化したピカ姫様の体から、ボロ布と化したドレスが消失。一匹の弾丸はやがて怒りの電気玉と変化し、最終兵器ボルテッカーを、親玉らしい偉そうなオニスズメにお見舞いした。
途端に無力化して慌てふためきだしたオニスズメたちに、片っ端から電撃電撃電撃電撃電撃電撃電撃電撃電撃電撃。ええい、まだるっこしい──!!! 百万ボルト、ほうでん級の十万ボルトが辺りに散らばった。
黄色い電気に舐められた緑の草原が燃え上がり、赤い炎を誕生させる。この時点で全てのオニスズメは地に伏すか、空に逃げるかのニ択に追いつめられていた。
「ピ・・・・・・」
突っ伏して倒れていたサトシの頬を、ピカチュウがいたわるように舐めた。閉じられていた少年の目が開いて、同じくらいボロボロのピカチュウの背中をそっと撫でた。
「なんだ、お前強いじゃないか。オレが守らなくても大丈夫だったな」
「ピー・・・・・・」
「オレの方が助けられちゃったな・・・・・・オレ、サトシ。お前は・・・・・・知ってる。この辺じゃすげー珍しいけど、『ピカチュウ』だよな」
様も姫もない、ただの種族名。それは不思議な、特別な響きを持っていました。だからピカチュウは、気取った仕草も気高いプライドもなく、
「ピ・・・・・・」
ただ、頷いて、
「ピカ、ピカチュウ!」
ボク、ピカチュウ──そうサトシの言葉を肯定したのでした。
「そっか、やっぱりピカチュウで合ってたか。勝手に呼んでたけど、間違ってなくてよかった」
ポツ、ポツポツ。イッシュの神様が通りかかったのでしょうか。怒れるピカチュウの生み出した炎を宥めるように、晴れ空だったはずの空が曇り始め、雨が降り始めました。だけれども、サトシの笑顔は、まるで雲の後ろに隠れてしまった太陽がピカチュウの前に姿を現したかのようです。
そのお日様みたいな彼の腕に抱き上げられたい──。そう、ピカチュウが素直に、心から思った時。
「いたぞ! ピカ姫様だ! 直ちに保護しろ!」
タイムリミットの鐘が鳴り響きました。ぼんくらな名も無き家来達は、当人の気持ちも言葉も聞かず、その小さな体を抱き上げて、あれよあれよという間に馬車に乗せてしまいます。
「ピカピ!」
「ピカチュウ!」
言葉は虚しく、伸ばす手は届かず。
二人はこうして、互いを抱きしめあうことも叶わないまま──引き裂かれてしまいました。
「ピー・・・・・・」
あれからというものの。ピカ姫様は、すっかりわがままを言わなくなり、食欲すらも衰えて、すっかりやせ細ってしまいました。具体的に言うと現行アニメシリーズ(2015年現在・XY編)くらいに。
「ピカピ・・・・・・」
クッションに顔を埋めて、考えるのはあの少年のこと。高級素材のクッションは柔らかく気持ちのいいものでしたが、あの時抱きしめられたいと思った少年の腕に勝るものではないのでしょう。だいぶ不機嫌フェイスです。
「ピー」
会いたい。会いたい。逢いたい。しかし傷だらけで発見されたあの日から監視が非常に厳しくなってしまい、流石のピカ姫様でも到底抜け出せるような警備態勢ではなくなってしまいました。
どこかの王女と新聞記者みたいに、短い間の思い出として、悲しくても割り切れればよかったのでしょうが、たった一つだけ残ったワガママ心は、思い出を思い出にしてしまうことを拒んでいました。
これには家来もてんてこまい。宥めすかして元気を出してもらおうと思っても、なんのワガママも言いやしないので、余計に困ってしまう始末。これなら前のワガママ放題の方がマシだと嘆く者も出る始末。
どんな薬もお医者さんも、お菓子もオモチャも絵本も劇も、少年に会いたいという気持ち──ある種の病気に、効き目などありませんでした。
なのでピカ姫様は今日もふて寝。やせ細った体で、ベッドに潜りこんで、誰の声にも長ーいお耳を貸しはしません。
ユサユサユサ。
揺すられたってふて寝。
ユサユサユサユサユサ。
うーん、うっとおしい。
ユッサユサユサ。
しつこい!!
電撃でもお見舞いしてやろうと布団から顔を出した瞬間──。
姫様はもう一度布団の中に潜り込む羽目になりました。
「なんだよ、せっかく会いに来たのにさ・・・・・・具合でも悪いのか? 何か前見たときより小さくなってる気がするし」
「ピー・・・・・・」
ずっと会いたい逢いたいと思っていた少年、サトシその人がいたからです。変な話で、いざ本人を目にすると顔が見られないのです。
「ひょっとして怒ってるのか? ゴメンな、お前ここのお姫様なんだって? だから、なかなかオレみたいな庶民だと会いに来れなくてさ・・・・・・草原にいたナゾノクサ達、覚えてるか? あいつらがオレがピカチュウ助けたんだって、身振り手振りで掛け合ってくれて、それでようやく会いにこれたんだ」
「ピカチュー・・・・・・」
事情はよくわかりました。別に怒ってもいません。ただ顔が見られないだけのことなのです。
「なあ、機嫌直してくれよ」
なのにこの朴念仁の鈍ちんと来たら、姫様がご機嫌ナナメと勘違い。怒ってなかったのに、だんだんピカ姫様もおかんむりになってきました。ムカムカムカ。
「ピー・・・・・・ッ! ピカチューッ!!」
なのででんこうせっかの勢いでもって、サトシの胸にたいあたり。サトシは床にしりもちをつきながらも、あの時ピカ姫様が願った通り、腕の中に、一匹の電気ねずみを受け入れました。
その腕の、なんと居心地のよいことでしょう! ああ、あの時素直になって、彼の胸に体を預けてさえいれば、こんなにも、こんなにも──切なくて、悲しくて、悲嘆に暮れることもなかったでしょうに。
「なんだよ、お前結構甘えん坊なんだな」
「チュー・・・・・・」
いいのです、いいのです。甘えん坊さんでも何でも。もう一生離れたくはない──ピカ姫様は心底思いました。
果たして。ピカ姫様の願いは叶いました。この恩人であるらしい少年とピカ姫様を離すと、イッシュの国宝である姫様のご機嫌が悪くなり、体調にも影響するということで、家来の者達がそれゆけやれいけもっといけ、と、婚礼の儀の準備を始めてしまったのです。
これにはさすがの鈍ちんサトシくんも驚いたものの、「ピカチュウならまあいいか」と納得してしまいました。
そして今日、民衆の環視の中、二人の結婚式が執り行われます。ピカ姫様はめかしこみ、サトシくんも身の丈にぴったりのタキシードなんか着ちゃってます。
まだまだ子どものサトシくんの格好は、当人達の結婚式というよりは、結婚式に参加する子どものようでありましたが。身の丈四十センチの一匹のピカチュウにとって、十歳の少年は大きな大きな巨人のよう。
「ピーッ、カー!!!」
そんな新郎の肩に乗り、ピカ姫様が吼えました。
──ボクは今、幸せです!!
おしまい
一応の言い訳↓
※ネタにしたキャラその他作品をバカにする意図は一切ありません。本人は真剣に書きましたが、その点で不快になったら本当に申し訳ありません。
鳥居の向こう、記事部門作者の皆様へ
No.017です。
この度は鳥居の向こう記事部門に応募いただきありがとうございます。
先日のオンリーやウェブで知り合いの絵師さん達に声を掛けましたところ、
現在7人の方から、参加の意思表示および描きたい記事の提示をいただいております。
日曜日のチャットにて発表させていただきますのでお楽しみに!
尚、ここで絵師第一希望に選ばれた記事は原則、フォルクローレに採用とさせていただきます。
(校正等はしていただきますが)
さて、本題です。
「鳥居の向こう」記事部門に関しましては、主催がステマをした事もあり(笑)、
23の応募をいただく事ができましたが、
テーマが難しいのか、宣伝が足りないのか
小説部門が応募数的に苦戦を強いられている状況です。
今の数ではコンテストにも選考にもなりません。
そこで、効果はあるかどうかはやってみないとわからないのですが、
記事部門で取り上げた題材を使って、小説を書いていただいたら
おもしろいんじゃないかな、という風に思い始めました。
関連する話が「鳥居」「フォルクローレ」の両方に載っていたら、
編集的にもおいしいんじゃないかな…と。
(両方載るかどうかは選考次第ですが)
いわゆるカフェラウンジでいう【書いてみた】というやつです。
そこで記事部門の応募の皆様には
「小説への設定使用OKだよ!」という意思表示をお願いできればと思ってメールしました。
OKの返事があった場合は、記事にOKの印を出します。
また、OKで無い場合やすでに自分で使う予定がある場合等は返信いただかなくて結構です。
皆様にはお手数をおかけしますが、ぜひご検討いただければ幸いです。
すいません、肝心の企画ページのURLを入れてませんでした、というわけでいろいろやったんですが直接飛ぶのは難しいみたいなんで
下記の記事にあるURLから飛んでください
http://rutarutamaro.blog.fc2.com/blog-entry-2.html
お手数をおかけしてすいません
「すみません。バトルタワーにエントリーしたいんですが……」
「ああ、新規の方ですね。本日はまことにご利用いただきありがとうございます。ご不明な点がございましたら、お気軽にお尋ねください」
「はい……実は僕のポケモン、50レベルを過ぎてしまっているんですが……」
どうにも落ち着かないのか、まだ若いトレーナーは腰につけてあるモンスターボールを左手でいじっていた。
「大丈夫ですよ。バトルタワーではポケモンのレベルを調整できるように整備されていますので」
トレーナーの緊張を和らげるためなのか、営業スマイルなのかは分からないが、社員が作る笑顔を見て、彼は安心したように息をついた。
「そうなんですか。レベルを調整できるだなんて、驚きです」
「正確にはレベルを調整するわけではなく、能力値を調整するんですよ」
彼のふとした疑問にも、社員は笑顔を崩すことなく答える。
「それはどのように?」
「例えば、タウリンやインドメタシンなど、ポケモンの能力値を上げる薬品がありますよね? そのベクトルを逆に応用し変化させ、体内のたんぱく質を分解し筋肉量や技のキレ具合を下げるんです」
「それはすごいですね。どうしてそのような薬品が、一般店で販売されていないんでしょう?」
初めから変わらぬ笑顔で、社員はにこやかに答えた。
「ポケモンのホルモンや新陳代謝を乱す有害な薬品が多量に含まれているので、一般販売はされておりません」
トレーナーはバトルタワーを後にした。
こちらこそ初めまして、くろまめです。
ギャグはほとんど勢いで書いてるんですけどね(笑)
案外考えない方が良いアイディアが浮かんだりしますよ。
最近の悩みは、会話文と地の文の比率が悪いことです。
いっそのこと地の文だけにしたいくらいです(笑)
ご感想ありがとうございました。
タイトルのまんまですが、自分主導でコンテストをやることになったのでその宣伝です
とりあえず、このサイトに概要は置いてあるのですが主催者が編集をミスって見れなくなることがよくあるので、ここにも書いておきます
お題「あい」(自由に変換可能)を使って、ポケモン二次創作小説コンテストをやります
締め切りは6月いっぱい 下限文字数は100文字で上限文字数はなし
それでお題として、キャッチコピーも使おうと思います
キャッチコピーというのは本の帯なんかに
「期待の新鋭、現る」とか
「まさか、こんな遅くにやってくるやつがいるとはな」とか
「あの勝負だけが心残りなのよ」
と言ったような中身が気になるような販促用のフレーズです
お題のキャッチコピーが似合うような小説を創作してください
「あい」を主題とするなら、このキャッチコピーは副題といったところでしょうか
それでこのキャッチコピーなんですが、複数あるうちの一つを採用してくださいというべきところなんでしょうが主催者の頭ではかっこいいフレーズが思い浮かばないので、公募しようかと思います
数は七つ前後 二桁はいかないように数の調整をいたします
【分からないことがあったら遠慮せずに聞いてください】
『講評
タカヤ様
技の完成度・ポケモンの手入れは、よくできています。ですが、技のオリジナリティーが欠けているために、今回の予選通過はなりませんでした。
次回からはその点に気をつけてみてください。
ポケモンコンテスト運営委員会トキワ支部部長 ミヤ』
「――だってさ、キレイハナ」
トキワシティコンテスト会場前公園、そのベンチに腰掛けて今回の講評を読み上げてみる。
横では共にステージに上がったキレイハナが、しょんぼり落ち込んでいた。
だいぶ練習し自信をつけて参加したのに、予選すら突破できなかったとなれば当然かもしれない。俺も顔には出してないが内心けっこう凹んでいる。
「ただ、技を磨くだけじゃダメなんだな」
美しく魅せるためには、オリジナリティーが必要だとは考えたことがなかった。確かに言われてみれば、グランドチャンピオンを決める大会に出場するようなポケモンたちは、他のひととは一味違う――それでいて綺麗な技を多く使っていた気がする。
けれど、自分のこととなるといい案が思いつかない。他の人がしないような技、か。
「でもなー、どうすりゃいいんだろ」
ごろん、と寝転がって空を見上げる。キレイハナに当たらないように腕を組んで枕にする。
視界に入るのは、真青な空――と満開の桜の木。花びらが風に煽られてひらひらと空を舞っていた。
「ん……?」
一瞬何かが頭をよぎった。
「花びら……桜……舞う…………。これはいけるか?」
たった今思いついたことを、隣でいまだに落ち込んでいるキレイハナに提案してみる。
「なあ、桜の花びらを使って「はなびらのまい」ってできるか?」
俺の提案にキレイハナはしばらく黙って考え、そして――首をかしげた。
「まあ、やってみなきゃわかんないか。とりあえず、ほら元気出せよ」
キレイハナの背中をぽんと叩いて、ベンチから下りるように促す。
しぶしぶといった感じでキレイハナは地面に下り立ち、「どうすればいいの?」と視線を向けてきた。
「んー……」
そういえばキレイハナの「はなびらのまい」は、自身から出すものと周りにあるものを操って技とする――と聞いたことがある。
ならばとキレイハナを桜の花びらが多く落ちている木の下へ連れて行き、とりあえず試してみる。
「よし、キレイハナ。はなびらのまい!」
俺の指示に応えてキレイハナが踊りだす。
小さい手足を器用に使って舞う。段々と桜の花びらが宙に浮かび始め、キレイハナを中心として回りだす。
「おお……!」
いつもの赤い花びらも悪くはないけれど、これは格別だ。
キレイハナの緑、黄、赤の三色に花の桜色が映え、よりいっそう美しく見える。
先ほどのコンテストで使ったものと同じ技なのに、全く別もののようだ。
「春限定ってのもなかなかいいよな」
桜吹雪の中で舞うキレイハナを見ながらそんなことを思った。
「よくやったぞ。これなら本番でも使えそうだよな」
技が終わると、すぐに駆け寄ってキレイハナを抱きかかえた。
キレイハナもさっきまでとは打って変わって上機嫌だ。
この調子なら次の大会はいいところまで行けるはず!
「さてと、あとは桜をどうやって会場まで持ってくかだな。そのまま持ってくってのも芸がないし」
残るはこの問題だ。俺が桜の花びらを大量に抱えてステージに上がるのは、なんだかつまらない。上手く持ち込む方法はないだろうか。
と考えていると、キレイハナが広場の方を指した。
そこでは母親と姉妹が芝生に座り込んで何かをしていた。
「ねーねー、次は私の!」
「はいはいユキは何を作ってほしいの?」
「ミキと同じ髪飾り!」
「それじゃ、今度自分でも作れるようによく見ててね」
「はーい!」
どうやら、落ちている桜を使ってアクセサリーを色々作っているようだった。
「お前もあれが欲しいのか?」
うーんと少し考えて、キレイハナはあの家族の方を指してから、次に自分の頭を指した。そして、さっき見せた「はなびらのまい」の動きをして見せる。
えっと……要するに、
「花びらを衣装の一部にして、技の時にそれをバラして使う――ってことか?」
当たりというようにキレイハナが一言鳴くと、足元にあった花びらの山から一すくい持ってきた。
「そうと決まったらさっそくろう――って言いたいところだが。髪飾りの作り方、俺わかんないんだよな。向こうで一緒に聞いてこようぜ」
キレイハナを誘って俺は親子の方へ走り出した。
その後、桜のはなびらのまいを使うキレイハナとタカヤは徐々に注目を浴びて行き、何度か優勝することもできた。
ただ、キレイハナが技のたびに分解する髪飾りは、毎回タカヤが直しているとか。
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こちらでは初めて投稿しました、穂風です
ポケモンのお話を書くのはポケコン以来なので――半年ぶりでした
ポケモンだからできるようなほのぼのしたものを、のんびり書いていこうと思います
【描いてもいいのよ】
【好きにしていいのよ】
初めまして、akuroと言う者です。
くろまめさんギャグ上手いですねー! 私もギャグ物を書いてるんですが、到底及ばない……尊敬する域に達してます!
後編も楽しみにしてますね!
この小説は、きとらさんより寄せられた「586さんの描く『ダイゴさん』像を見てみたい」というリクエストを受けての、586なりのレスポンスです。
拙い点ばかりですが、少しでもお気に召していただければ幸いです。
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第一印象は、彼はなぜこんなものを集めているのか、という至極単純な疑問だった。
「これは……石、ですよね?」
「そう。石だよ。どこにでも落ちていそうな、"路傍の石"さ」
ありきたりな石ころですよね、と私が二の句を継ごうとしたところに、先手を打って言われてしまった。過去に何度も同じことをされているとはいえ、この鋭さにはいつもヒヤリとする。
硝子戸を引いて、石を一つ取り出す。ケースから出てみれば印象が変わるかと一瞬期待したが、胸元まで寄せられた石は紛れも無く、これといった特徴の無いただの石だった。
「その、何か変わったところがあるとか……ですか?」
「この石がかい? いや、変わったところなんて一つも無いよ」
「一つも、ですか」
「ああ。硬さも形も色も重さも、どれを取っても特徴の無い、普通の石だね」
本人曰く「特徴の無い、普通の石」を、手袋を嵌めた手でもって繁々と眺め回す。その表情がまた童心に返った子供のように楽しげなものだから、首を傾げる回数ばかりが増えてしまう。私を軽くからかっているのか、と思ったが、彼の面持ちを見る限り、私のことは意識の埒外にあるようだった。
ひとしきり石を眺めて、満足感ある表情のまま一端目を離す。すっ、と流れる水のように、彼の視線が私に向けられた。
「そうだね。君が今何を考えているか、当ててあげようか?」
「……」
「どうして僕がこんな石を持っているんだい、そんなところじゃないかな?」
「……そうですね。概ね、それで合ってます」
こくり、こくり。二度に渡って深く頷く。右手に石を載せたまま、彼は話を続ける。
「僕がこの石を拾った理由、僕がこの石を残した理由、僕がこの石を飾った理由。それは……」
「それは……?」
一歩前に出て、彼の言葉に耳を傾けた。
「この石が、十枚の絵を生み出したからだよ」
十枚の絵を生み出したから、彼はこの石を今も大切に保管している。投げ掛けられた言葉の順序を整理すると、以上のような形になる。確実に言えるのは、何のことだか訳が分からないということだけだ。
私が困惑するのを見事に見透かして、彼はようやく本題に入った。
「いつだったか、少し遠出をしたときに、絵を描いている女の子がいたんだ」
「スケッチブックを抱えて、ですか?」
「うーん、そうとも言えるし、そうとも言い切れないね」
「それって、どういうことなんです?」
「持っていたのが、スケッチブック……が映し出された、タブレットだったんだ」
「ああ、今流行の……」
「そうだね。タブレットにペンをカツカツ走らせて、外で絵を描いてた。あれは、今風でいいと思ったよ」
彼が出会ったのは、スケッチブック・アプリをインストールしたタブレットを持って外で絵を描いていたという少女、だと言う。紙のスケッチブックを持ち歩く時代はもう終わったのかなどと、要らないことに思考を巡らす。
「絵を描いていたのは分かりましたが、どうして石が関係するんです?」
「気になるだろう? 僕も気になったんだ」
「そ、それは、どういう意味で……?」
「タブレットに描かれていたのが、今ここにある石だったからね」
再び、私の前に石が差し出される。彼のエピソードを踏まえて、もう一度石を眺める。何かのきっかけがつかめれば、何か目に留まるものがあれば、そんな期待を込めて送る視線。
そして二十秒ほど石を眼に映し出して、込めた期待は見事に空振りに終わったことを気付かされた。眼前の石はやはり何も変わらない、ただの石でしかなかった。
「この石を、タブレットに描いていたんですか」
「そう。一心不乱にね。すごく楽しそうだったよ」
「楽しそうに、ですか……」
「それはそれは、ね。繰り返しペンを走らせて、タブレットの中のキャンバスを作り変えていったんだ」
彼が遭遇した少女は、この何の変哲も無い石を題材に、楽しそうに絵を描いていたという。俄かには信じられないというか、流れの読めない話だ。一体何が、タブレットの少女をそこまで惹きつけたのか。
「気になったから、僕は思い切って声を掛けてみたんだ。『どうして石を描いているんだい』ってね」
「声を掛けたんですか」
他人にいきなり声を掛けるというのが、いかにも彼らしいと思った。以前にもトレーナーに声を掛けて、その後も何度か合っている内に親しい仲になったとか、そういう話を聞いている。
「そう。一度気になったら、調べずにはいられない性質だしね」
「そのことは、私もよく知ってます」
「ラボを空ける一番の理由は、間違いなくそれだからね」
石ころを掌の上でコロコロと転がしながら、彼は穏やかに答える。少女に声を掛けたときの情景を思い返しながら、その様を適切に形容できる言葉を探している。過去の出来事を話すときの彼の姿勢は、いつも同じだ。
「彼女はあなたに、どう答えたんですか?」
話すべき内容を取りまとめたのか、彼がおもむろに口を開いた。
「『どうしてって、石を描きたいから』」
「それが、答えだったんですか?」
「ああ、はっきり言われたよ。それ以外に理由なんか無い、って顔でね」
石をタブレットに描いていた少女が、何故石を題材に採ったのか。答えは、石を描きたいから。石を描きたいから、タブレットの上で繰り返しスタイラスペンを走らせている。
これ以上無い、最大の理由。描きたいから描くという、もっとも容易く理解できる理由だった。
「楽しそうだったよ。ペンをしきりに走らせて、どんどん石を描いていってさ」
「そんなに熱中していたんですか」
「僕も驚くくらいね。一向に止まらないんだよ。ディスプレイの中に、じわじわ石が浮かび上がっていくようだったね」
彼はそんな少女に興味を持って、もっといろいろな事を知りたくなったんだ、と言った。
最初の疑問である「何故石を描くのか」は分かった。けれどそれだけでは満足せず、「何故石を描きたくなったのか」、それも聞き出したくなったらしい。
「石を描きたい理由、それを知りたくなって、僕は続けて質問したんだ」
「どうして石を描きたくなったのか……そういう質問ですね」
「うん。そうしたら、彼女は詳しいことを教えてくれたんだ」
タブレットを操作する真似をして見せながら、彼は少女が教えてくれたという内容を復唱し始めた。
「彼女はインターネットのイラストコミュニティに、よく絵を投稿しているらしいんだ」
「ああ、あの……」
「たぶん、君の考えているところだろうね。そこは絵を投稿できるだけじゃなくて、絵にコメントを付けたりもできるんだ。すごい時代になったね」
「コミュニケーションの手段として絵がある、ということですね」
「その通り。彼女はそこで、好きなように絵を描いていた……けれど」
ふう、と小さく息を吐いて、彼が声のトーンをわずかばかり落とす。
「世の中には狭量な人がいる。それは、君もよく感じているだろう?」
「……そうですね。残念ですが、頷かざるを得ません」
「ああ。彼女もそこで、面倒な人に絡まれたんだ。コメント欄で、一体何を言われたと思う?」
彼は手にした石を掲げながら、ぽつりと一言呟いた。
「『あなたのような"路傍の石"が、知った風に絵を描かないでください』」
ぽつりと、一言呟いた。
「コメントを寄せたのは、彼女もよく知らない人だった」
「見ず知らずの人、ですか」
「そう。調べてみたら、少し前に同じコンテストに絵を投稿していた人だって分かったらしい」
そのコンテストで、少女は審査員特別賞を貰い、コメントした人は選外に終わったという。その構図が明らかになった時点で、彼女はコメントした人の意図が分かったようだった。
「有り体に言えば、彼女に嫉妬したらしいんだ」
「やはり、そうだったんですね」
「ああ。自分の絵が評価されなくて、彼女の絵が特別な評価をもらったことに、嫉妬したみたいなんだ」
評価されなかったのは、自らの努力不足に尽きる──すぐにそう帰結できる人間は、それほど多くはない。大抵はそれを認められなくて、外的要因を探してしまう。
コメント者にとっての外的要因は、少女だった。つまりは、そういうことだ。
「それで、あんなコメントを寄せた」
「……」
「あれっきり一度も顔を見せないから、邪推や推測が山ほど混じってるけどねって、彼女は付け加えたけどね」
そう話す彼の表情は、なぜかまた、楽しげなものに戻っていた。
「けど、ここからが面白くてね。彼女はそのコメントを見て、ふっとイマジネーションが浮かんだらしいんだ」
「イマジネーション?」
「そう。"路傍の石"という部分に、何か来るものを感じたって言ってたね」
「よりにもよって、その部分に刺激を受けたんですか」
「そうだね。いてもたってもいられなくなって、タブレットを持って外へ出た──そうして、僕に出会った」
掌の石を握り締めて、彼が再び話し始める。
「僕に出会うまでに、彼女は九枚も絵を描き上げたって言うんだ」
「まさか、全部石をモチーフにしてですか?」
「その通り。落ちている石を見つけて、何枚も何枚も、絵を描きつづけたんだって。石にばかり目が行って、"周りが見えなくなる"くらい、熱中してね」
「……」
「僕の前で十枚目を描き終えたあと、彼女は、自分が感じたことを僕に教えてくれたんだ」
「同じ形の石は存在しない」
「同じ色の石は存在しない」
「同じ大きさの石は存在しない」
「同じ重さの石は存在しない」
「すべての石は違っていて、"ありきたり"な石なんて存在しない」
「"路傍の石"は、すべてがあふれる個性の塊だ……ってね」
「絵を描いているうちに、彼女は同じ石が一つとして存在しないことに気づいた」
「同じ石は、存在しない……」
「似ているように見えて、手に取ってみるとまったく違う。それが面白くて、どんどん絵にしていった」
「そうして導き出されたのが、さっきの言葉なんですね」
「ああ。晴れ晴れとした表情だったよ。新しいものを見た、って感じのね」
口元に笑みを浮かべて、彼が私に目を向ける。
「そういえば」
「どうしました?」
「君は、僕が石を集める理由を知ってたっけ?」
不意に話を振られて、思わず答えに窮する。石を集めているということは知っていても、「なぜ」石を集めているのかということは、どうも聞いた記憶が無い。
詰まったまま時間が流れるに任せていると、割と早々に彼が助け船を出した。
「僕が石を集める理由は、石が好きだから。けれど、それだけじゃない」
「それだけではない、と……」
「そう。もう一つ、理由があるんだ」
一呼吸置いて、彼が私に"理由"を教えてくれた。
「石に関わる人、それが好きだからさ」
「人との関係、ですか」
「そう。石があって、人がいて、石を軸にして人が関わりあう。それが好きなんだ」
石を掲げて、彼が言う。
「人と石は、よく似ている」
「まったく同じ石が存在しないように、まったく同じ人も存在しない」
「在る場所で、丸くもなるし鋭利にもなる」
「他者とのぶつかり合いで、いかようにも形を変えていく」
「本当に、よく似ていると思うんだ」
人と石の類似性。生まれ持った個性、環境に左右される姿、他者との接触で変貌していく形。なるほど、言われてみれば似ている気がしてきた。
彼が何を言いたいのか。その輪郭が、朧げではあるが見えてくる。
「僕は、珍しい石も好きだ。すごく好きだよ」
「珍しい石"も"?」
「そう。珍しい石"も"だよ。だから──」
「珍しくない石も、また?」
「その通り。外を歩けば道端に転がっているような"路傍の石"、それも大好きなんだ」
さっきも言ったけれど、と前置きした上で。
「この石は、道端に落ちていた石だ」
「タブレットの少女が絵のモチーフに採った、ですよね?」
「その通り。彼女が絵に描いた、"路傍の石"だ」
掌に載せられた小さな石。
「道端に落ちていたところで、誰も気づくことのないような、ありふれた石」
「けれどその石は、一人の女の子に、人としての生き方にさえつながるような、大きな示唆を与えた」
何度見たところで、石がただの石であることに変わりはない。何の変哲もない、ただの路傍の石。
石がただの石に過ぎなかったからこそ、大きな影響をもたらすことができたのかも知れない。
「人は皆、路傍の石だ」
「気付かれなければ意識されることもなく、そして誰かに影響をもたらすこともない」
「僕も君も、あの少女も同じ。すべては、路傍の石に過ぎない」
すべての人は、道端に転がる石に過ぎない。
「それは、実に素晴らしいことだと思うんだ」
「二つと無い存在が邂逅して、融和して、衝突し合う。そうして、また新しい存在になる」
「石も人も、ぶつかりあって変わっていく。それが、すごく面白いんだ」
気にも留めなかったはずの存在が、進む道を変えるほどの存在になり得る。彼は、そこに面白さを見出していた。
「この石を手元に置いておこうと思ったのは、それを思い返すためさ」
「人は皆路傍の石、そして、路傍の石は代わりのいない存在。この石は、それを思い出させてくれる」
「ありふれたものほど、かけがえの無い存在だということをね」
ようやく、彼が何を言いたいのかがはっきりした。そして、あの石ころを手元に置いていた理由も。
「その石には、思い出というか、印象的な光景が詰まっているんですね」
「ああ。あの少女が見出した新しい世界、それがここに詰まっているんだ」
「分かりました。単なる路傍の石に過ぎないそれを、あなたが大切に持っている理由を」
タブレットの少女と彼は、ありふれた路傍の石から、実に多くのものを感じ取ったようだった。
ひとしきり話して満足したのか、彼は石を戸棚に片付けると、椅子からすっと立ち上がった。
「さて、僕はちょっと出かけてくるよ。明日までには帰るつもりだからね」
「明日まで出掛けるつもりですか?」
「何、いつものことじゃないか。面白い石を見つけたら、また土産話を聞かせてあげるよ」
そう言い残して、彼は颯爽と部屋から立ち去って行った。
彼はいつもそうだ。石が好きだというのに、去るときは風のように去って行ってしまう。
「やれやれ……」
ため息混じりに、時間を確認しようとポケナビに目を向ける。
すると……
「……すれ違い?」
ポケナビの機能の一つである「すれちがい通信」。ポケモンのキャラクター商品に関わるすべての権利を持つ大手ゲーム会社が発売した携帯ゲーム機に搭載され、その後後を追うようにポケナビにも実装された。所有者同士ですれ違うだけで、簡単な自己紹介を送り合うことができる通信機能だ。
通信に成功すると、右上部に取り付けられた小さなランプが緑色に光る。この部屋に来るまでは消灯していたから、新しいメッセージが届いたようだ。
「これは……」
して、そのメッセージの送り主と内容は──
「けっきょく ぼくが いちばん つよくて すごいんだよね」
送り主の名前は……今更、言うまでもない。
すべては路傍の石。悟ったように口にしながらも、心の奥底では、燃え上がる炎のような闘志を滾らせている。
「星の数ほどある石の中でも、一番でなきゃ気が済まない、か」
石集めに熱中する子供のようで、その実石から人世訓を見出す大人で、しかし底の底は無垢で幼い子供。
それがたぶん、"ツワブキダイゴ"という人物の姿なのだろう。
「……本当に、風変わりな人だ」
苦笑いとともに、そんな言葉が思わず漏れた。
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※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。
※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。
Thanks for reading.
Written by 586
タンバシティのとある海辺で、セツカは空を仰いでいた。傍らには一匹のアブソル。
「この天気なら、無事うずまき島に行けそうだね〜」
「まさか晴れるとは……やっぱり、やめといた方がいいんじゃないか?」
「何言ってんの。ご飯は熱いうちに頂かないと!」
「命がけの旅が、お前にとっては飯と同じなのか?」
「まさに、朝飯前ってことだね」
一人はしゃぐ主人を尻目に、シルクは項垂れた。確かにこの天気ならば、うずまき島を取り巻く渦も小さくなっているだろう。絶好の機会と言えなくもない。一年のほとんどが曇天に見舞われるうずまき島の周りには、その名の通り、タンバの漁船をも飲み込んでしまう大きく激しい渦が点々と混在し、うまい具合に島の入り口を閉じてしまっているのだ。
本来ならば島に入ることすら出来ないはずだったのだが、運が良いのか悪いのか、その一行を晴天が向かえていた。暖かな光を止めどなく届ける太陽が、シルクには冷ややかに映る。シルクの三日月を描く漆黒の鎌が、黒く光っている。
──今回の目的はうずまき島に行き、海の神にあることを伝えることだった。
不満をおしみなく口にするシルクと地図を広げるセツカを乗せて、一匹のラプラスが海を泳いでいた。
「へぇ。ポジティブって泳げたんだな」
まるで初めて知ったかのように、わざとらしく感心した様子を見せるシルク。
「泳ぐため以外に、このヒレを何に使うんだい?」
「フカヒレとか?」
「それはサメだろ」
「馬鹿か。フカマルだろ」
「そうだった」
「メタ発言はほどほどにな」
「その発言がメタなんだよ」
「てか、ポジティブって名前、由来は何なんだよ?」
不意にセツカに問いかけたシルク。うん? と、地図から顔をあげてセツカは聞き直す。
「だから、ポジティブの名前の由来だって」
「え〜分かんないの? 少しは自分で考えないと、脳細胞増えないよ?」
「やる気の起きない理由だな」
「ふふふ。降参かね? それでは正解はっぴょー」
仰々しく両手を広げたかと思うと、強くパァンと合掌するように打ちならした。
「まず、ラプラスをラとプラスの二つに分解します」
「ふむ?」
「ここで着目するべきは『プラス』です。お二人方もお気づきになりましたか? そう! なんと私はこの『プラス』をプラス思考というキーワードへと発展させ、なおかつ! それを応用し、ポジティブへと変換させたのです! イッツミラクル!」
あきれ果てて首を振る気も起きず、シルクもポジティブも、ため息をついた。
「下らねえ……。『ラ』も仲間に入れてやれよ」
ん〜、と頭を傾げるセツカ。
「ポジティ・ラブ?」
「なんでポジティが好きってことを主張すんだよ。意味分かんねえよ」
「名前は五文字までだったっけ」
「そんなことは言ってない」
「空が青い!」
「論点をずらすな」
突っ込むのにも疲れたと、ポジティブの甲羅の棘のようなものにシルクは寄りかかる。あたしの頭はボケてないと、セツカ。
「そういえば」
「なんだ? また下らない話か?」
「上がる話だよ。空の話」
「へえ。そういえばセツカは風景を見るのが好きなんだっけ?」
「うん。どこで知ったかは忘れたけどね。こういう空の色のことを、天藍っていうんだって」
青く透き通った、けれどどこか黒ずんだ色もしているような空を、シルクとポジティブが見上げる。
「確かに、それっぽい感じはするな」
「漢字的にもね」
「それは誤字なのか!? どうなんだ!?」
シルクの声が、海に響きわたった。
題名に騙された。題名詐欺とでも名付けようか。
シリアスな感じかと思ってたらこれだよ!
そうかーイケメンにしか興味ないのかー 中身もきちんと見た方がいいぞー
イケメンで性格いいなんて男はリアルにはそうそういないからな!多分!
レックウザさんいいよね 私も欲しい ミミズくらいの大きさでいいから欲しい
「おはようこざいます! サクラさんですね? お届け物が届いております! こちらをどうぞ!」
朝早く、ライモンシティのポケモンセンターにやってきた私を出迎えたのは、1人の配達員だった。 配達員は私に1つのボールを手渡すと、どこかへ行ってしまった。
「なにかしら、これ……」
ボールの中を見ると、ただならぬ雰囲気を放つ黒い竜がいた。 図鑑で見てみると、「レックウザ」というポケモンらしい。
「なにはともあれ、図鑑が埋まったからいいけど……こんな珍しいポケモン、いったい誰が……」
私は全国図鑑を完成させるという、大きな目標を持っている。 今日もポケモンを登録しようと、人が多いライモンシティへ来たのだ。
私はレックウザの親を知ろうと、図鑑を操作してポケモン情報のページを開いた。
と、その時ポケモンセンターのドアが開いたかと思うと、聞き慣れた声が飛び込んできた。
「サクラ! 聞いて聞いて聞いて聞いてー!」
「モモカ!?」
飛び込んで来たのは私の双子の妹、モモカ。 双子なのに似てないってよく言われる。
「さっきそこで、超絶スーパースペシャルテライケメンに道を聞かれちゃったー!」
……こんなミーハーな妹に似たくないんだけどなあ……
私はモモカを無視して、ポケモン情報のページに目を通した。 その間もモモカはべらべら喋っている。
「マジでイケメンだったなあ……青い長髪を黒いゴムでまとめてて、超イケメンボイスで「素敵なお嬢さん、迷いの森への道を教えてください」なんて! 別れ際に手の甲にキスまで……キャーキャーキャーキャー!!」
暴走しまくってるな……フレンドリィショップのお兄さんやジョーイさんが睨んでるよ……気付かないのがモモカなんだけどさ。
「モモカ……少ないとはいえ人いるんだから、もうちょっと落ち着いてよ」
「これが落ち着いていられますかお姉さま!」
「誰がお姉さまよ……ところでモモカ、「ノブナガ」って人、知ってる?」
私はレックウザの情報が記してあるページをモモカに見せた。
「ノブナガ!? ランセ地方の!?」
「ランセ地方?」
「こことは文化が違うくらい遠い地方で、イケメンがいっぱいいるんだって!」
「モモカ……モモカの頭にはイケメンのことしか無いの?」
「無い!!」
……断言されても、困るんだけど。
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オチなし。 新キャラが暴走しまくった。
[好きにしていいのよ]
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