マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ
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  •   [No.3688] ポチエナ共食い ホウエンの生態系に何が-ポケモンジャーナル 投稿者:Ryo   投稿日:2015/04/07(Tue) 01:05:22     67clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    ホウエンジャーナル 20XX年9月20日号

     群れで狩りをし、仲間意識が強いことで知られるポチエナが共食いを行う姿がポケモン研究家によって撮影された。先日撮影されたプラスルとマイナンの狩りに続き、ホウエンに生息するポケモンの生態系に大きな異変が起こっていることを伝えるニュースに、ポケモン生物学者らは大きな関心を寄せている。
     写真が撮影されたのは101番道路。オダマキ博士のフィールドワークを手伝っていた研究助手のツバキ・ユウヤ氏によって撮影された。
     一連の行動を観察、記録していたツバキ氏によると、共食いを行ったポチエナは一頭で現れ、他のポチエナの群れを執拗に攻撃し、逃げ遅れた一頭を捕らえて共食いを行ったという。ツバキ氏は「このポチエナは、この辺りに生息する通常のポチエナに比べて非常に俊敏で力も強いため、通常のポチエナとは大きく異なる生態を持っている可能性がある」とし、「自分が充分強いことを知っているため、群れを作る必要がないのではないか」との見解を示している。一方でこのポチエナが通常の野生個体には見られない「じゃれつく」を使う行動が見られたことから、一般トレーナーが逃がした個体が群れに入れずに単独で行動しているのではないか、という意見もあり、真相はわかっていない。
     しかし、近年、通常の野生ポケモンが本来覚えるはずのない技を使っていた、という報告が相次いでおり、もしこのポチエナが野生個体であることが判明すれば、そうした「異常個体」がホウエンに生息するポケモンの生態系を大きく変える可能性がある。
     日本ポケモン学会ホウエン支部長サトウ・ミキヤ氏は「このような本来の食性から外れた行動を見せるポケモンが増えれば、思わぬポケモンや植物が絶滅の危機に瀕する可能性があり、今後一層ポケモン達の行動を注視する必要がある」とコメントした。


      [No.3687] 「狩り」するプラスル、学者困惑-Pokezine 投稿者:Ryo   投稿日:2015/04/07(Tue) 01:02:38     69clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    Pokezine 20XX年9月13日 19時45分32秒

     おとなしく可愛らしいイメージの電気ポケモン、プラスルがマイナンと協力して群れを作り、ペリッパーを捕食するシーンが撮影され、日本ポケモン学会に衝撃が走っています。
     
     プラスルは最大体長0.4メートルの小型草食ポケモンで、数匹で群れを作り、木の実や草を食べて生活するおとなしく平和的な性格のポケモンです。近似種のマイナンも交えた群れを作ることもありますが、お互い喧嘩をすることもなく、家族のように一緒に仲良く暮らすほどです。今回撮影された写真では、そのプラスルとマイナンがポチエナの群れのように協力して大型ポケモンの「狩り」を行っており、本来の生態からも大きく逸脱した行動にポケモン生物学者達は動揺を見せています。

     写真を撮影したのはカイナシティに住むポケモン写真家のカミヤ・コウイチロウ氏。「101番道路でロゼリアの写真を撮っていたら、近くの草むらで騒がしい鳴き声と火花の弾けるような音がしたので近づいてみたら、プラスルとマイナンがペリッパーを襲っていたんです。本当に驚きました」とのこと。彼が撮影した写真には、数匹のマイナンが電気の網を張ってペリッパーを道路の隅に追い込み、体に電気を纏ったプラスルがペリッパーの頭部にたいあたりを食らわせる、非常に息の合った狩りの様子がありありと写しだされています。

     プラスルやマイナンは小型の虫ポケモンやタマゴなどから動物性タンパク質を摂取することもありますが、積極的に狩りをし、肉食を行うことはこれまで報告されていませんでした。写真を見たポケモン生物学者のハコベ・ケンゾウ氏は「写真を見る限り、プラスルとマイナンの肉食行動は非常に新しい習性のように見えます。例えばルクシオのように普段から肉食を行うポケモンであれば、獲物を追い詰めた際にはまずとどめを刺すために喉元に食らいつきます。それから腹などの柔らかい部位から食べ始めるわけです。ところが写真を見る限りプラスル達は、電気で痺れさせた獲物がまだ飛び立とうとするうちから捕食行動に入っていますし、自分たちが飛びついた部位から闇雲に食べ始めています。狩りのルールが確立されていないのです」と話しています。
    穏やかなはずの彼らを狩りに駆り立てたトリガーは何だったのか。今後地元のポケモン生物学者によって詳しい調査が行われる予定です。


      [No.3685] ギフトパス(終) 投稿者:メルボウヤ   投稿日:2015/04/06(Mon) 21:25:36     118clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:BW】 【サンヨウ】 【送/贈】 【捏造】 【俺設定】 【批評はご勘弁を…

     お騒がせトリオとの共同生活、三日目。
     
     ふと目覚まし時計を見ると、設定時刻を一時間も過ぎていた。うっひゃあ寝坊だーーっ!
     慌てて飛び起きたら布団の上に乗っかっていたらしい小猿たちが「ぷきゃ!」と悲鳴を上げて床へ転がった。我に返る。
    「ああ…お店行かなくていいんだった…」
     私に振り落とされてぷりぷり、もとい、おぷおぷ怒っているバオップ。しくしく、もとい、やぷやぷ泣いているヒヤップ。それから一匹転落を免れたらしいヤナップを順繰りに見渡して、息を吐く。
     目覚まし時計にもお騒がせ三重奏にも気がつかないほど熟睡していたらしい。昨日なかなか寝付けなかった所為かな。なんとなく頭がぼーっとする。
     三匹(正しくはバオップとヒヤップ)を宥めすかしながらリビングへ向かう。ちょうど両親が出勤の支度をしている所だった。キッチンテーブルに私の分の朝食が用意されており、お昼ご飯は冷蔵庫にあるから、と母が言った。
    「行ってらっしゃーい」
     二人が仲良く家を出るのを見送る。それから朝食を済ませ服を着替え、私たちも我が家を後にした。

     アパートの階段を下りて北へ、通い慣れた道筋を辿る足。交差点の横断歩道を渡れば、三日前まで毎朝通っていた三ツ星は目と鼻の先だ。
     あそこへ行かなくなってからたったの三日。なのに、もう何週間も行っていないような感覚だ。ずうっと続いていた習慣を突然断絶すると、こんなにも心がそわそわして落ち着かなくなるのね。
     渡ろうとしていた横断歩道の信号が赤に変わったので、立ち止まる。待つ間、ぼんやりと慣れ親しんだお店を眺めた。
     窓にはカーテンが引かれ、中の様子は判然としない。開店まではまだ時間があるし、スタッフも集まり切っていないんだろう。正面玄関も堅く閉ざされている。
    「……行こうかな」
     三ツ星に。
    「追い出されることはまず無いだろうし」
     アパートを出るやいなや無意識にあそこを目指していた体に対して、そんな風に言い聞かせる。気になるなら行っちゃいなよ私。うん。
    「みんな、お店では静かにしててね!」
     そう言って振り返れば、そこには「分かった!」とでも言うように私を見上げて来る三匹の小猿が……
    「いなーーい!!」
     いなかった。
    「アレッ、どこ行ったの? ヤナップ? バオップ? ヒヤップーー?」
     朝っぱらから大通りで大音声を張り上げる私に通行人が驚愕の表情を向けてきたが、構っていられない。
     一気に冴えた頭をぶんぶん振り振り辺りを見回す。西へ続く別の横断歩道の向こう側に、緑赤青のカラフルな影が走って行くのを発見した。待ってェーーー!
    「やぷっ!」
    「おぷー!」
    「なぷぅ!」
     加速するお騒がせトリオ、追跡する私。必然的に三ツ星からはどんどんどんどん遠ざかる……。

     行き先を鑑みて、公園でまた遊びたいのかと思いきや、どうも違うようで。三匹は公園内の通路を次は北へと突っ切る。木香薔薇が絡まった木製のアーチをくぐると、隣町シッポウシティへと繋がる三番道路に出た。
     丘に建つ幼稚園と育て屋の前を通り過ぎ、前方と左方とに分かれた道をかくんと左折。木立を抜けるとやがて池が見えて来た。向こう岸との間に架けられた小さな橋に差し掛かった所で、三匹の暴走はようやく終止符を打つ。
    「やっ、やっと、止まった…!」
     ぜーぜーと肩で息をする私の真ん前で平然と、どころかすごく嬉しそうに跳ねているヤナップバオップヒヤップ。もう怒る気力が湧かないわ……。
     ひとまず切れ切れになった息を整えようと、深呼吸していると。
    「我々への挨拶も無しに旅に出るつもりですか? メイ」
     聞き慣れた涼しい声が背中に投げかけられ、私は勢いづいて振り向いた。
    「コーンさん! 違いますよ…旅になんか出ません。この子たちを追いかけて来ただけです」
     背後には予測通りコーンさんの姿。腰掛けた自転車を左足で支え、立っていた。少々困り顔で。
    「一緒に行こうと、あなたを誘っているのでしょう」
    「そんな。私にはお店のお手伝いがあるし……」
     そのように返しつつ三匹の様子を窺うと、期待に満ちたキラッキラの眼差しに迎えられた。……そんな顔されましてもねえ。
    「コーンさんはどうしてここに?」
     訊けばシッポウシティに用事がある、とのこと。
     それとこれとは関係無いけど、自転車での外出だと言うのにコーンさんも前日の二人と同様のウエーター姿だ。むしろこれが彼らの普段着と言っても差し支えない着用率。まぁ、私もいつもならエプロンと三角布を着けたままその辺を歩き回るから、人のことを言えない(今は休みだから私服だ)。
    「はあ。店の手伝い、ね…」
     先の私の返答に首を傾げたコーンさんは、自転車を降りて傍らに停めると、私の目を真っ直ぐに見、口を開く。
    「それは本当に、メイが心から追い求めた願望なんですか?」
    「え…」
    「彼らを見ている内に気づいたんじゃありませんか? あなたの願いや望みが、あの場所には無いことに」
     不意の問い掛けでとっさに返す言葉を見つけられず、私は茫然としてしまう。
     あの場所って三ツ星のこと…よね。
    「まだ余裕があります。一つ、為になる話をして差し上げましょうか」
     左の袖口を捲り腕時計を確認したコーンさんは、私のぼんやりした態度に構わず話を進める。
    「メイ。あなたはコーンたち三人が、この先もずっと共に、あの場所にいるものだと思っていますか?」
     またしても唐突な質問。とりあえず頷いてみると、コーンさんは少しだけ悲しそうに頭を振り、足下の小猿たちへと目線を落とす。
    「我々は決して運命共同体ではありません。デントはイッシュ各地の色、味、香りを追究し味わうため、自由気ままな一人旅がしたいと願っていますし、ポッドは一般トレーナーと同じようにジムバッジを集め、いつかはイッシュリーグへ挑戦することを望んでいるんですよ」
     コーンさんは三匹の前に膝をつき、彼らの頭を撫でながら、続ける。
    「このコーンも、いずれは修行の旅に出向こうと考えています。もちろん一人でね。ポケモンもそうですが、コーン自身のレベルも上げることが出来るでしょう。それが、コーンの夢なんです」
    「…………」
    「デントもポッドもコーンも目指す夢は違い、向かう道は異なります。三つ子だからと言って、いつまでも三人、一つ所には留まっていませんよ」
     お騒がせトリオが私たちの周りを跳ね回っている。とても楽しそうなその姿に、コーンさんはふっと口角を上げた。

    「夢……」

     アイドル。美容師。教師。イラストレーター。パティシエール。
     友達はみんな確かな未来像を持っている。将来はどうしたいと問われれば、彼女たちは迷わず即答するだろう。それは、彼女たちが自分にとって最も素晴らしいと考える毎日を形作る、土台となるものだから。
     私の両親も子供の頃に料理人になりたいと願い、望み――今は、ずっと夢見ていた毎日を送っている。
     そしてコーンさんたちも。今は一緒に仕事をしているけれど、いつかはそれぞれに思い描く素敵な日々を送るために、三ツ星から…サンヨウから、旅立つんだ。

     コーンさんはそこですっくと立ち上がり、私を見た。
    「あなたのご両親もコーンらも。あなたの才能がより強く美しく開花し、それを存分に奮うことの叶う未来を求めるならば、それがどんな旅になるとしても、全力であなたを応援する心積もりですよ」
    「……でも」
     戸惑い。躊躇い。迷い。恐れ。心の中に入り乱れ、靄のように蟠るそれらの感情に抗えず、目を伏せる。
     ひゅうと吹いた強い風が、私とコーンさんの髪や服を揺らし、木々の葉をざわめかせ、水面を波立たせる。けれど私の胸にかかった靄までは、払い除けてくれそうもない。
    「ポッドがあなたを夢の跡地へ行かせる、と言い出した時には驚きましたが……しかしメイならもしかしたらと、このコーンも思ったんです。そしてあなたは我々の期待を裏切らず、見事チョロネコと打ち解けてみせた」
     コーンさんは再度足下にいる小猿たちに視線を転じ、左手全体で三匹を指し示す。
    「彼らが何故あなたの採取した果物を盗ったのか、解りますよね? 林の奥にはそれこそ、至る所に果物が生っているにも関わらず。何故、あなたの持っている物を奪ったのか」
     それは、チョロネコたちが自分では果物を採らず、私が譲る物を手にするのと同じ。あの子たちは私が選んだ果物が必ず美味しいことを、知っていた。この子たちにもそれが判ったんだ。
    「生まれ持った才能を、成り行き任せに組み立てられた退屈な暮らしの中に埋没させるなんて、勿体ない。さして好ましくもない行為に、限りある体力を心血を、未来を費やすなんて、これほど味気ないことは無いとは思いませんか?」

     ポッドさんに、私は言った。
     私はトレーナーに興味が無い。そう好きでもないことをやるなんて、おかしくはないか、と。

    「退屈だなんて私…」
     三ツ星での仕事が好きじゃない、合っていない、とは感じない。探してみても一つも不満は無い。
     だけど……ただ一つ、あの場所に何か足りない物があるとしたら、それはたぶん、
     充実感。

    「…………」
     私は前から漠然とそれを感じていた。明確な言葉にする機会が無かっただけで。真っ向から自分の気持ちを見つめようとしなかっただけで。
     だって、“平凡だけれど安定した生活”から脱するには、新しい一歩を踏み出すには、勇気が要る。覚悟を強いられるから……。
    「惰性であの場所に居続けるのは、コーンはあまりお勧めしませんね」

     デントさんは、私に言った。
     自分のことは自分が一番よく解っていると、殆どの人間は考えているけど、周りの人間の方がその人を理解している時もある、と。

     みんな、そう思うんだ。
     私は外へ出た方がいいんだ、って。

    「ま。周りがどうこう言っても結論はメイ、あなたが出すんです。あなたがこの先どういう日々を送りたいのか、それはあなたにしか解らないし、あなたにしか決められないことなんですよ」
     直立不動で黙りこくる私を、小猿たちが静かに静かに見つめていた。



    「いけない。そろそろ行かなければ」
     私が発言するのを待っていたんだろうか。
     声も無くそっぽを向いていたコーンさんが、ふと時計に目をやるや呟いた。スタンドを蹴って解除しサドルに腰を降ろすと、視線を私へ移す。
    「それではまた。はしゃいで池に落ちないよう、気をつけて帰るんですよ」
     この辺りには凶暴なバスラオが沢山棲息していますからね。
     そう言い残し、一路シッポウシティへ向けて、コーンさんは自転車を走らせて行った。

    「………………。」
     いくらはしゃいだって、十五にもなって池ポチャする訳が無いのに…あの青鬼…子供扱いして…!
     しかし、可能性が全く無いとも言い切れない(私はともかくお騒がせトリオは何を為出来すか判らない)。余計なことを始められる前に、ここから離れなきゃ。





    「なぷぷぷっ!」
     バニラビーンズを煮出し終え、色とりどりの果物をカットする作業に移る。
    「おぷおぷー!」
     片手鍋に注いだ水が沸騰したら、そこへミントを入れて。
    「やっぷぅ〜!」
     隣で火にかけられている大きめの鍋では、ミネストローネがふつふつと煮立ち始めた。
    「ぁいたっ。向こうで遊んでよ、もう」
     キッチンテーブルの周りを追いかけっこしている三匹に、時折ぶつかられ小言を溢しながら、私は調理を続ける。

     今日は両親が早く帰って来る日なので、私が夕食を用意することになっていた。メインはたっぷりの野菜とハーブを効かせた特製ミネストローネ。煮込み終わるまでの間、小猿たちの食後のおやつとしてフルーツゼリーを作ることにした。
     バニラとミントで香り付けしたお湯に、グラニュー糖とゼラチンを加え泡立て器で撹拌。火を止めたらオレンジリキュールを少々。粗熱を取ったら平らなカップに流し入れて、とろみがついたら細かく切っておいた果物を沈める。あとはラップをかけて冷蔵庫に入れ、固まるのを待つだけ、っと。
    「ハイハイ、もう少しあっちで遊んでてね」
     作業が一段落したのを感知し、まとわりついて来る三匹をリビングへ追い払う。
     次はサラダを作ろう。
     胡瓜とプチトマト、サニーレタスを洗って水を切る。プチトマトはへたを取って、胡瓜は薄く斜め切り。レタスは手で一口サイズに千切っていく。
    「…………」
     そんな単純作業の傍ら。
     私はコーンさんの言葉を思い出していた。

     才能を存分に奮うことが出来る未来を求めるなら、それがどんな旅になるとしても――。

    「旅…か…」

     仮に私が旅に出るとして。
     私は旅から何を得ようとする?
     何を得るために、私は旅に出ればいい?


     キッチンの椅子に座り、リビングに敷かれたラグの上でポケモンフーズを食べるヤナップたちを眺める。その間にも思考は巡っていた。

     あの子たちはサンヨウへ来るまでの間、色々な人やポケモンを見て来ただろう。
     その人たち、ポケモンたちは、みんな生まれた場所も育った環境も違っていて、そして物の考え方や味の好みも違うんだろう。

     私はイッシュ生まれのイッシュ育ち。
     だけど私が知っている範囲は、イッシュのほんの一部分に過ぎない。

     サンヨウの外には、一体どんな人やポケモンが住んでいるんだろう。
     そこに住む人たちは、ポケモンたちは、どんな料理が好きなんだろう?


     そこまで考えた所で、はたと気づく。


     私はそれを知りたい。
     見てみたい。探してみたいのだと。


    「………………そっか。」

     答えは思いの外呆気なく導き出され、私の胸にすとんと落ちた。



     洗い物をしていると、冷蔵庫に付属したタイマーが鳴った。と、小猿たちが食後とは思えない素早さを以て駆け寄って来る。
    「そこどいてー!」
     占拠される足下に用心しつつ冷蔵庫からカップを取り出し、ラップを外す。それぞれの小皿にひっくり返し、ローテーブルに置く。
    「はい、どうぞ!」
     瞬間、待ってましたとばかりにゼリーに食らいつく三匹。
    「…………。」
     うーん…もうちょっと落ち着いて食べられないものか。メンタルハーブでも盛りつければ良かったかな。

     しかし、つくづくこの子たちは凄い。
     ああいや、食べっぷりのことじゃなくて。

     その幼さで、ここまで三匹きりで旅をしてきたという、事実が。

    「勇気あるよね。あなたたち」
     感嘆の声に反応し、三匹が皿から顔を上げる。直向きで無邪気な三対の瞳が、私の姿を捕らえる。
    「私も、覚悟を決めなきゃいけないけど……」
     ここから旅立とうとしているのは私だけじゃない。デントさんたちも同じ。それには確かに勇気づけられる。
     でも。
    「やっぱり不安になる。ちゃんとやっていけるかって考えると……どうしても、怯んじゃうわ」
     三匹はゼリーの残りを平らげると、こちらへ歩み寄って来た。そして私をじい、と見つめると。
    「なぷぷっ!」
    「おぷおぷ!」
    「やぷぷぅ!」

     そう言って、ニコッと笑った。

    「……………………」

     勇気は、ほんのちょっとでいいんだ。
     覚悟は、何度だって決められるんだ。
     要はやるか、やらないか、なんだよ。

     彼らの目はまるで、そう言っているようだった。



    「……………………うん。」

     少しの沈黙の後、一つ頷いて。
     つられて、私もにっこり頬笑んだ。

    「そうね…………ありがと!」

     背中を押してくれて。




     ガチャ、と扉が開く音がして、ただいま、と二人分の声が聞こえた。
     私は勢いに身を任せ、玄関へと直走る。そしておかえりを言う代わりに、力強い宣言で二人を出迎えた。

    「お父さん、お母さん! 私、決めた。旅に出るっ!!」

     突然過ぎる宣誓に二人はしばらくぽかんとしていたけれど――やがて揃って破顔し、大きく頷いた。





     次の日の昼下がり。
     三人に会いにお店へ顔を出すと、私が声をかけるよりも先にカラフルヘアートリオがやって来た。大体予想はしてたけど、両親は出勤早々、いの一番に彼らに報告したらしい。そんなに嬉しかったんですかお父様お母様……。
     私は三人(と言うかポッドさんとコーンさん)にせびられ、事の顛末を簡潔に伝えた。ヤナップたちのお陰で決心がついた、と。
    「彼らがメイちゃんに、将来について考えるきっかけと勇気をくれたんだね」
     デントさんの台詞に頷きながらも、私は心の中でううん、と頭を振る。
     この子たちだけじゃない。デントさんとポッドさんとコーンさんが、平凡な場所に逃げ込もうとした私を引き留めてくれたんです。
     ……なあんて、照れ臭くて本人たち(と言うかデントさん以外)には言えないけどね。

     その後、私たちは夢の跡地へと向かった。
     この子たちに、ある話をするために。





     夕暮れ時、鮮やかな橙色に全身を包まれてアパートへ戻ると、我が家の扉の前に人影が佇んでいた。
     燃え盛る炎のような形状の髪型。間違えようも無い。赤鬼だ。
    「ポッドさん?」
     呼びかけると少しの間、そして怒声が返って来た。
    「おまえおっせーぞ! 何分待たせんだよッ」
    「は、はい?」
     聞くところによると、三十分ほど前から私たちが帰って来るのをずうーっとここで待っていたんだとか。ポッドさんの割には気の長いことで。
    「用件はなんですか?」
     事務的に問うと、あーだのうーだのと言いながら視線を彷徨わせ始めた。
     挙動不審だ。怪訝に凝視する私とお騒がせトリオ。
     一分くらいそんなことを続け、ポッドさんは苦々しい顔つきでようやく開口する。
    「チョロネコの件……わ、悪かったな」
     刹那、数日前この人が見せた腹立たしい言動の数々がフラッシュバックした。
    「ほんとですよっ!!」
     勢いで憤慨してみせたら予想外に大声が出た。柄にもなくビクッと肩を震わせたポッドさんがちょっぴり可哀想になり(ついでにヤナップたちも驚いて飛び跳ねた)、「でも良い経験になったので今は感謝してます」と続けると、怖じ気づいたまま「お、おう…」と返事をした。
    「あと、コレ」
     小脇に抱えていたクラフト紙の封書から何やら取り出し、こちらに差し出す。どうやら本のようだ。薄い…………本?

     ピュアでイノセントな心の空が脳裏をよぎった。

    「なっ、なんでそんな本を私に寄越すんですかっ!!」
    「はー!? おまえが旅に出るって言うからわざわざ持って来てやったんだろ! ポケモン取扱免許持たずに旅するつもりかよッ!?」
    「え。ポケモン取扱免許?」
     ポッドさんの台詞に違和感を覚え、よくよく本を見てみれば。
     あれよりも大分小さくて、表紙に『ポケモン取扱免許取得の手引き』と書かれていた。
    「な、なぁ〜んだ……すみません。電波な例のあの本かと思って。ありがとうございます」
     非礼を詫び、お礼を言って本を受け取る。
    「ああ、アレ…。アレはデントの私物に昇格したから安心しろ」
     果たしてそれは安心していいものなのやら。
     ポッドさんの声を聞きながら、早速頁を捲る。
    「特別勝負がしたくなくっても、旅するってんならポケモンと一緒の方が断然ラクだし、楽しいかんな。前にも言ったけど、おまえかなり素質あると思う。いっそトレーナーとして旅に出ちゃえよ」
     手引き書を一通り流し読みすると、サンヨウシティに在住している人の場合、トレーナーズスクールに申し込めば、いつでも希望者の好きな時に講習を受けられることが解った。
    「こいつら、おまえと旅したがってんだろ? こいつらのことだったら、オレらが色々教えてやれっしさ」
    「あ…えっと、ポッドさん」
     三匹の前にしゃがみこんで、両手使いで彼らの頭をわしわし撫でまくっているポッドさん。上機嫌な様子で、私は少し申し訳なく思いながら話しかける。
    「そのこと、なんですけど。実は、私……」
     遠慮がちに切り出す私に、ポッドさんは案の定、訝しむように眉根を寄せた。


     ――昨日、三ツ星へ顔を出した後のこと。
     夢の跡地をのんびり歩きながら、私は三匹に、自分の心からの願望を話して聞かせた。
    「旅をするには、トレーナーになるのが一番いいみたい。無料でポケモンセンターに宿泊出来たり、色々と特典があるらしくて」
     香草園へ続く轍の道に差し掛かってすぐ、木陰からチョロネコやムンナが現われて、私を取り巻いた。会わない日が続いていたから気にしてくれていたのかもしれない。
    「でも私、勝負には疎いから、ポケモンのことを一からしっかり勉強したいの。勉強不足でポケモンを傷つけることにならないように、ね」
     チョロネコたちにちょっかいを出したり出されたりしつつも、三匹はしっかり私の声に耳を傾けてくれている。
     草むらに点々と姿を見せ始めるハーブ。その香りを楽しみながら進んで行くと、頭上からマメパトの鳴き声が降って来て、目の前を数匹のミネズミが横切った。
    「その間、あなたたちを待たせたくない。あなたたちと行けたら最高なんだけどね、早く旅を再開したいでしょ? だから、私が責任を持って、あなたたちと色々な場所へ行ってくれる人を探すわ」
     香草園の入口に辿り着いて私は、後ろを歩いていた三匹に振り返った。
    「私の目利きよ? 素敵なトレーナーを見つけるから、期待して!」
     私の言葉が、意図した通りに彼らに伝わったかは、判らない。 
    「…なぷっ」
    「おぷー!」
    「やぷぅ〜」
     でも、三匹がこくんと頷いて、にこにこと笑ったから。
    「良かった。解ってくれて。」
     ありがとう、と言って、笑顔で飛びついてきた三匹を力いっぱい抱きしめた。





     三匹とのお別れ。そして彼らの、新たな旅立ちの日。
     朝の陽射しを受けるサンヨウの街並み。その間を歩いて行く私の後ろには、小猿は一匹だけ。他の二匹は、さっき出会った二人のポケモントレーナーの元へ、送り出して来たところだ。

     最初に見つけたのは、眼鏡をかけた、真面目そうな黒髪の男の子。ミジュマルを連れていたから、そのミジュマルが苦手な草タイプに対抗出来る、バオップを託した。彼なら、怒りっぽいバオップ相手でも冷静に対応出来るだろう。

     次に見つけたのは、ツタージャと追いかけっこをしていた、緑の帽子の、眼差しが優しい女の子。草タイプのツタージャの弱点、炎タイプに有利なヒヤップを託した。彼女なら、ヒヤップの一挙一動に、一喜一憂してくれるだろう。

     三匹離れ離れになるのは嫌がるかなと思っていたけど、そんなことは全く無かった。むしろ、誰が一番楽しい旅が出来るか勝負、という感じのノリで、別れ際、バチバチ火花を散らしていたように私には見えた。

    「おぷおぷー!」

    「やっぷぷぅ!」

     バオップもヒヤップも、私が見込んだトレーナーを気に入ったみたいで、とっても嬉しそうな顔で歩いて行って。
     残るヤナップは心なしか、だんだんとそわそわし始めた。

    「大丈夫。あなたにも、きっといいトレーナーを見つけてみせるから!」
    「なぷー」

     そんな会話をしながら、私とヤナップは再び夢の跡地を訪れた。ここならトレーナーが修行に来ることも多いから、ヤナップを託すのに見合うトレーナーとも出会える気がして。
     そうしたら、やっぱり居た。ヤナップと同じように、好奇心に満ちた面差しをした女の子が。それも狙ったかのように、炎タイプのポケモンと一緒だ。

     この子だ。この子しかいない。
     運命のようにも感じる出会いに胸を高鳴らせつつ、女の子に声をかけた。

    「ねえねえ、あなた。このヤナップが欲しい?」
     私の台詞に、えっ、と言って振り返ったその子。服装もそうだけど、目ぱっちり歯真っ白で、とても健康的だ。何故かきょっとーんとした顔してるけども。
     ……あ、私の所為か。
    「ごめん、唐突過ぎたよね」
     仕切り直し。女の子に謝り、順を追って説明する。
    「あなたポケモントレーナーでしょ? 私はサンヨウのカフェレストで働いているんだけど……このヤナップをね、あなたの旅に連れて行ってもらえないかな、と思って声をかけたの」
    「なぷー!」
     後ろに控えていたヤナップが、待ち切れないとばかりに女の子の前に進み出る。すると女の子よりも先に、彼女の足下にいたポカブがぱっとヤナップに近づいて来て、挨拶するみたいに一声鳴いた。
    「私は事情があってポケモンを持てないの。あなたが良ければ、このヤナップを仲間にしてあげてほしいんだけど……どうかしら?」
     いいんですか、と女の子が驚き半分喜び半分といった体で私に訊ねる。
    「うん! この子、あなたを気に入ったみたいよ。それにポカブも、かな?」
     私の発言にふと視線を落とし、ポカブとヤナップがすっかり打ち解けてじゃれ合っているのを見た女の子は、ははは、と男の子みたいに白い歯を覗かせて笑った。私もつられてくすくす笑う。
    「この子は草タイプだから、あなたのポカブが苦手な水タイプに相性がいいわよ」
     エプロンのポケットに一つ残った紅白色の球体、モンスターボールを、「はい、どうぞ!」と差し出す。私の意図を汲み取り、女の子は私の手からボールを取ると、よろしくね、と言って、ヤナップの頭上にそれをかざした。
    「なぷ!!」
     光に包まれた緑色の小猿は、彼女が持つボールの中に瞬く間に吸い込まれる。
     これで、ヤナップの親トレーナーの登録は完了だ。
     直後、女の子はボールからヤナップを解放したかと思うと、うーんと頭を垂れて考え込んで……しばらくして、ぱぁっと表情を明るくさせた。どうやら、彼に付ける名前を閃いたらしい。
     満開の笑顔でヤナップを抱き上げ、彼女は思いついたばかりの真新しいニックネームで、何度も彼を呼んでいた。



    「…あっ! 大切なこと忘れてたわ!」
     私に礼をして背を向けた女の子に、一番重要なことを話し忘れていたのを思い出して、慌てて呼び止める。
     女の子は私のその言葉に神妙な表情で振り返り――そして。
    「あのね、その子ものすっごく食いしん坊だから、ご飯の時は他の子の分を取らないように、しっかり見張ってね!!」
     大口を開け、笑った。


     焦茶色のポニータテールを楽しげに振って、女の子が去って行く。彼女の足下をポカブ、そしてヤナップが歩いて行く。
     意気揚々と歩き出したヤナップに、彼と同じように旅立ったバオップとヒヤップの面影を重ね、その前途が希望に満ちたものであるように願う。

     空っぽな日々を送っていた私に、歩みたい道を見出すきっかけを贈ってくれた、あなたたちへ。
     今度は私が、あなたたちに最高の旅をプレゼントしてくれるトレーナーたちとの出会いを、贈る。
     次に会う時には、あなたたちが心から願い、望んだ日々を送ることが出来ていますように。

    「私も、そんな日々の中にいますように。」


     私はまだ『やりたいこと』を見つけただけで、目標と言えるほど明確な形をした物は手に入れていないけれど。
     旅をしていく内に、この漠然とした願望の中から「これが私の夢だ」と即答出来る物を、必ず見つけられると、そのことだけは確信していた。


    「いつかどこかで、また会おうね」

     あの、小さくも勇ましい三匹の小猿の背中を、私は祈りを込めて、見送った。












     ――それから、数日後。

     カフェレスト『三ツ星』兼『サンヨウシティポケモンジム』にて、新人トレーナートリオ&お騒がせトリオに早々に再会することになるのは……

     また別の、おはなし!















    ――――――――――――――――――――――

    二度目の投稿がまさかの三年後…だと…?
    ……気を取り直してもう一度。
    初めまして! メルボウヤと申します。

    冒頭にある通り、超個人的な理由でBW2はまだプレイしていません。と言うかBW以降、ポケモン関連に全く手を出していません(サイトは畳み、アニメもBW2からは見なくなり…あまり関わるとゲームをやりたくなってしまうので´`)。
    今後何本かBWの話を投稿するのが当面の目標です。求ム…プレッシャー…!

    この話は13年3月21日に、(三)の小猿トリオが旅に出た理由を話すシーン(〜〜勿論三匹は、同時にコクン! と頷いた。)までを故サイトに載せていました。切りが悪過ぎる。
    実はポケスコ第三回のお題が発表された直後に書き始めた代物だったりします(始めから応募しない方向で。何故って絶対一万字内に収まり切らないんですTT)。完成するのが遅過ぎる。
    絵もこれまた年代物ですが(11年10月30日作)折角なので一緒に。ええいもう、チミは何もかもが遅過ぎるんじゃっ(一人芝居)。

    とにもかくにも…ここまで読んで下さり、ありがとうございました!*´∀`*



    おまけ
    ・メイの名前は三つ子に倣い、イギリス英語でトウモロコシの『メイズ』から。私は三つ子ではコーンが一番好きです(何
    ・三猿がギフトパスを覚えられないなんて口惜しや…
    ・チェレンとベルが連れているお猿はヒウンジム突破後に初登場することから、それぞれ野生をヤグルマの森で捕まえた設定なのでしょうが、私の中ではあの通りです。これくらいの俺設定ですとまだまだ序の口レベルです←
    ・それよりデントがプラーズマーされてることに対する謝罪は無いのか(無いです)。



    追記
    この記事を間違えて(三)に返信してしまいました…以後気をつけます…!


      [No.3175] へんしん 投稿者:GPS   投稿日:2013/12/13(Fri) 21:49:24     99clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     あるところに、「へんしん」の技に大変優れたメタモンがいました。
     木、花、石、珊瑚、人間……。そのメタモンは、どんなものにもとても上手く変わりました。
     中でも、ポケモンに変身するのが得意でした。

     しかし、そのメタモンはとある大嵐に巻き込まれ、元いた住処から飛ばされてしまいました。
     他のメタモンたちと離れ離れになり、行き着いた先では同じ種族を見つけることが出来ずに知らない土地で途方に暮れていました。
     一匹だけで毎日を過ごし、寂しさを抱いて、自分と同じ姿をした者を探して辺りを彷徨っていたメタモンは、やがて森に辿り付きました。
     
    その森にはピカチュウがたくさん住んでいました。ピカチュウたちの様子を影から伺っていたメタモンは、姿を変えれば一人ぼっちにならなくてすむだろうか、と、試しに一匹のオスのピカチュウへと変身してみました。
     突然現れた同族に、他のピカチュウたちは最初こそ警戒していたもののメタモンの変身は完璧だったのですぐに群れへと迎え入れてくれました。
     木の実を食べ、池で遊び、ポッポを追いかけ、ゴローンから逃げ回り、メタモンは毎日を楽しく過ごしていました。
     そのうち、ピカチュウの姿をしたメタモンの隣にはいつも、一匹の可愛らしいピカチュウが寄り添うようになりました。
     花が咲いて、緑が茂って、そして葉が色づく頃には多くのピチューが二匹を取り囲んでいました。
     メタモンは、今や伴侶となったピカチュウと、子どものピチューたちと、群れの仲間たちがいて幸せでした。
     しかし、時は流れ、愛していたメスのピカチュウは静かに息を引き取りました。
     メタモンは悲しみ、来る日も来る日も涙を流しました。
     それだけではありません。さらに季節が巡り、メタモンが最初に出会ったピカチュウたちは皆この世を去り、そればかりかメタモンの子どもたちも少しずつ命を落としました。
     いつまで経っても、群れにやってきた時の姿を保っているメタモンは、徐々に気味悪がられるようになっていきました。
     とある静かな夜、メタモンは他のピカチュウたちが寝静まった頃にそっと森を立ち去りました。

     行くあても無く進み続けたメタモンは、野原に着きました。
     そこに住んでいるのは、夏の翠葉をその身に宿らせた、シキジカとメブキジカでした。
     メタモンは寂しい気持ちを抑えきれず、一匹のメブキジカへと変身しました。
     群れの者たちに負けず、メタモンが変わった姿も立派な深緑を持っていました。
     より素晴らしい角と葉を持つ者が評価される群れの中で、メタモンはあっという間にトップになりました。
     暑い日差しの下、群れを率いるメタモンの周りにはたくさんのシキジカとメブキジカが存在し、いなくなることはありませんでした。
     いつも誰かと共にいることが出来て、メタモンの寂しさはなくなりました。
     しかし、夏が終わって、秋になって鹿たちはその姿を変えていきました。
     「なつ」のメブキジカに変身したメタモンは、緑の葉を彩ることは出来ません。
     赤、黄、茶の中で取り残された緑の鹿はすぐにリーダーの座を奪われ、異物扱いされ、誰も近寄ることはありませんでした。
     シキジカとメブキジカの身体が雪に染まる前に、メタモンはその姿を眩ませました。

     次にメタモンが辿り着いたのは、荒れた大地でした。
     岩が立ち並び、雑草が繁ったその土地ではザングースとハブネークが長年争いを続けていました。
     メタモンは少し迷いましたが、結局ザングースのメスに変身することにしました。
     ハブネークとの戦いに備え、少しでも多くの同種族を求めていたザングースの群れは喜んでメタモンを迎え入れました。
     その中でも、群れのルールやメンバーを教えてくれた若いオスのザングースとメタモンの仲はどんどん深くなりました。
     しかし、そのオスは、メタモンが生まれたてのタマゴを暖めている間に起こった全面戦闘によって命を落としました。
     彼だけではありません、群れのザングースのほとんどが、そして、敵対していたハブネークたちの多くも相討ちで地に伏しました。
     メタモンが大事にしていたタマゴさえもが、戦火に飲まれて新たな命を生み出す前に壊されました。
     幸か不幸か、傷を負ってもまた元の姿に変身し直すことによってダメージを回復していたメタモンは生き残りました。
     静かになった大地を一度だけ振り返り、メタモンは一人歩き出しました。

     メタモンは、旅をし続けました。
     メタモンは、変身を繰り返しました。

     ある時、メタモンは一匹のコイキングでした。
     濁った川の中で、鳥ポケモンたちの来襲をかわしながら、他のコイキングと共に滝壺に向かって泳ぎ続けました。
     やがてコイキングの群れは、文字通り登竜門である大きな滝に辿り付きました。
     一匹、また一匹と、コイキングは滝を登り、紅の鱗を輝かせて威厳に満ち溢れた龍へとその姿を変えていきました。
     メタモンも負けじと滝を登りました。
     そして、とうとう滝を登り終えた時、そこに残ったのは上流を泳ぐ一匹のコイキングでした。
     メタモンが変身したのは、あくまでもコイキング。
     ギャラドスへと進化を遂げることは出来ませんでした。
     その事実を悟ったメタモンは、流れに逆らってがむしゃらに泳ぎながら川上へと姿を消しました。

     ある時、メタモンは一匹のネイティオでした。
     過去と未来を見せるネイティオは、他のポケモンと交流することはありません。
     全ての時間を見ることが出来るので、コミュニケーションを必要としないのです。
     ずっと変わるものを見続けられたら寂しい気持ちにはならないだろう、そう思ったメタモンはネイティオに変身したのです。
     しかし、あくまでも姿を変えただけに過ぎないメタモンは、その能力までも真似ることは叶いませんでした。
     物言わぬ仲間たちに一度だけトゥートゥー、と鳴いてから、メタモンはネイティオの姿をやめました。

     ある時、メタモンは一匹のイーブイでした。
     立派な毛並みを持ったイーブイへと変身したメタモンは、ポケモンブリーダーの手に渡りました。
     メスのイーブイの姿のメタモンと、イーブイの進化系であるオスのそれぞれとでタマゴをたくさん作るためです。
     サンダース、シャワーズ、ブースター、エーフィ、ブラッキー、リーフィア、グレイシア、そしてニンフィア。
     色とりどりのオスたちはいずれも器量が良く、また強さも兼ね備えた粒ぞろいでした。
     暖かい寝床と栄養のとれた食事も確保されていて、メタモンはやっと居場所を見つけられたと喜びました。
     しかし、ここでの生活は大変味気ないものでした。
     言われたままにタマゴを作り、後は狭い檻の中。
     オスの進化系たちがそうであったように、メタモンの表情も徐々に冷え切ったものに変わっていきました。
     とある晩に、メタモンはクレッフィに変身し、全ての鍵を開けてオスたちと共に逃げ出しました。
     久しぶりの外に、オスは皆、メタモンを一度も見ることなく方々へと散っていきました。
     メタモンはその様子を見届けたあと、ブリーダーの施設を後にしました。

     メタモンは、色々な場所へと行きました。
     メタモンは、その姿を変え続けました。

     ある時、メタモンは一匹のマンタインでした。
     海に沈んだメタモンは、常にテッポウオを引き連れて深海を泳ぐマンタインを見て、いつも一緒テッポウオがいるならば寂しくないだろうと思いました。
     メタモンは、マンタインの姿を完全に再現しました。
     しかし、テッポウオも含めて変身してしまいました。
     他のマンタインとは違い、メタモンに寄り添うテッポウオはメタモン自身の一部であり、共にいる存在とは言えませんでした。
     形だけのテッポウオはもの言うことなく、ひれにくっついているだけでした。
     暗い海の底で、メタモンはテッポウオの偶像を隣にして一人泣きました。

     ある時、メタモンは一匹のアンノーンでした。
     遺跡に刻まれた文字であるアンノーンたちは、様々な形をしていました。
     その中の一種類に姿を変え、メタモンは古代の城跡に住みました。
     ある時、もの好きな人間が遺跡にやってきました。
     人間は好奇心で訪れただけでアンノーンを攻撃するつもりは無かったのですが、警戒したアンノーンたちは人間から隠れるために文字へと戻りました。
     もともと文字では無いメタモンだけが取り残されました。
     完成された文章には、メタモンが入る隙などありませんでした。
     一匹だけで浮いているアンノーンを見て人間は不思議に思い、もっと調べるために近づきました。
     捕まる、と思ったメタモンは、その姿をゴローニャに変えて人間を追い払いました。
     メタモンの放った岩雪崩は、それはそれは強力でした。
     人間が去り、文字から元に戻ったアンノーンたちは、自分たちの住まいである遺跡を壊したメタモンを攻撃しました。
     全てのタイプの目覚めるパワーに襲われ、メタモンは遺跡から逃げ出しました。

     ある時、メタモンは一匹のヒトモシでした。
     ヒトモシは、人の魂をその身に吸い込むことで炎を作ります。
     たくさんの魂を得れば得るほど、炎は美しい青白に変わるのです。
     メタモンが出会った他のヒトモシたちは、次々に人の命を取り入れ、そして炎を輝かせていきました。
     メタモンの姿は、どれだけ魂を吸い込んでも変わることはありません。
     初めのうちは同じだけの輝きだった青白い炎は、周りのヒトモシのそれがどんどん美しくなっていくのに比べ、メタモンは未だみすぼらしい、今にも消えそうな燃え方でした。
     そんなメタモンが惨めに見えたのでしょう、そのうちにヒトモシたちはメタモンを遠ざけるようになりました。
     炎が本当に消えてしまう前に、メタモンはヒトモシでいることをやめました。

     メタモンは、世界中を渡りました。
     メタモンは、世界中のポケモンに変身しました。

     ある時、メタモンは一匹のバルキーでした。
     険しい山では、たくさんのバルキーが修行を積んでいました。
     より強靭に、より俊敏に、より正確に、より機敏に。
     ある者は腕力を鍛え、ある者は脚力を鍛え、またある者は反射力を鍛えました。
     バルキーたちは、攻撃に特化した者、防御に特化した者、素早さに特化した者にわかれました。
     そして、それぞれはその能力に応じて姿を変えました。
     メタモンは、バルキーのままでした。
     それでも諦めず、様々な修行を続けました。
     やがて、メタモンはバルキーにして、山のどんな者よりも強い存在になりました。
     皆が毎日、メタモンに稽古を求め、勝負を挑んできました。
     自分の元に絶えず誰かが訪れる日々を、メタモンは嬉しく思いました。
     しかし、最強と崇められ、敬われるということは裏を返せば、敬遠と、畏敬と、恐怖されるということになり得ました。
     誰も隣にはいてくれないと気がついたメタモンは、鍛え抜いた足を使って、一晩で山を下りました。

     ある時、メタモンは一匹のフラージェスでした。
     とても美しい花畑で、メタモンは他のフラージェスやフラべべ、フラエッタと優雅な暮らしをしていました。
     花畑に咲き乱れる花々に負けず、その力を受けたフラージェスたちも美しい姿をしていました。
     しかし、花畑を急な日照りが襲いました。
     強い日光は、花々をみるみるうちに枯らしていきました。
     フラージェス、フラべべ、フラエッタも、身体の花をしおれさせてしまいました。
     ただ一人、メタモンだけが変身した時のままの美しさを保っていました。
     唯一綺麗なままのメタモンを、他の花は妬み、嫉み、恨みました。
     渾身の花吹雪を受け、メタモンは傷つき、花畑にいることが出来なくなってしまいました。
     
     どこへ行っても、メタモンは独りになりました。
     どれだけ愛しても、メタモンと添い遂げる者はありませんでした。
     どんなに愛されても、メタモンが共に眠ることは叶いませんでした。

     独りぼっちのメタモンは、幸せを求めるたびにその姿を変え、悲しくなるたびにその姿を変えました。
     どんな姿でもいい、自分が寂しくなくなるなら、全ての存在に変身してみせる。
     メタモンはそう思いましたが、何度変身しても、寂しさが消えることはありませんでした。
     それに気がついていたのか、それともいないのか。メタモンは、もはや悪あがきのように変身を続けました。
     沼魚になり、蝶になり、鳩になり、狐になり、鯨になり、ゴミ袋になり、南瓜になり。
     
     メタモンは、あらゆるポケモンの姿になり、何度も涙を流しました。
     メタモンは、自分の本当の姿を忘れていました。

     ある日、エアームドに変身して空を飛んでいたメタモンは、地面に紫色の点を見つけました。
     何だろうと思って近づいてみると、それは一匹のメタモンでした。
     ふよふよとした定まらない形と、落書きのような表情。
     その姿にどこか懐かしいものを感じたメタモンは、すぐにそのポケモンへと変身しました。
     
     そのメタモンは、何も言いませんでした。何もしませんでした。
     何もすること無く、ずっと空を見上げていました。
     メタモンは、そのメタモンの隣に陣取り、一緒に空を見ることにしました。
     雲が横切り、鳥が飛び、花びらが舞いました。雷が光り、雨が滴り、風神が暴れました。星が瞬き、雪が降り、龍が流れました。
     
     空は毎日、その姿を変えました。今までのメタモンのようでした。
     それに対し、隣にいるメタモンは、全く姿を変えませんでした。へんしんポケモンのはずなのに、変身することなく、黙って空を眺め続けていました。
     不思議と、そんなメタモンと一緒にいると、寂しさを覚えることはありませんでした。
     変わりゆく空を共に見て、メタモンは今まで感じることが無かったような気持ちで心が満たされていくのがわかりました。
     
     何度も季節が巡った後、メタモンは、流星群の夜が終わり、明るくなった空を見ることなく眠りにつきました。
     隣のメタモンに寄りかかり、幸せなまま、永遠に目を閉じました。

     そんなメタモンを見て、隣にいたメタモンが小さく動きました。
     同じ姿をした、長く生きたへんしんポケモンを、そっと撫でました。
     何かを告げるように口許が動き、そしてその動きが止まった後、そのメタモンの姿はもうありませんでした。
     
     動かなくなったメタモンの上空を、桃色の猫のような一匹のポケモンが軽やかに飛んで行きました。

     
     あるところに、「へんしん」の技に大変優れたメタモンがいました。
     そのメタモンは、たくさんのポケモンに変身しました。
     たくさんのポケモンを愛し、たくさんのポケモンに愛されました。

     今は、もういません。
     ずっと欲しかった、おやすみの言葉をもらえたそのメタモンは、もう二度と、目を覚ますことはありませんでした。


      [No.3174] Re: ボツネタの墓場(鳥居バージョン) 投稿者:ラクダ   投稿日:2013/12/11(Wed) 22:12:13     90clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     記事用

    ・熱砂の国の蛇神譚
    【蛇といえば、世間一般には「細長くてくねくね動く気持ちの悪い生き物」「猛毒を持っていて危険」「ロケット団などのアングラ組織が手持ちに入れている」等、あまり良くないイメージを持たれているのではないだろうか。確かに、四肢を持たず滑るように地を這い、獲物に食らいついて丸呑みしてしまうその姿は異様である。また表情を表さない顔や、際限なく開く(少なくともそのように見える)顎、長くて鋭い牙は畏怖と嫌悪の対象にされやすい。世界中に広がる某宗教間では、人の始祖が楽園から追放される原因を作った生き物として忌み嫌われている。神の罰を受けてあのような気味の悪い姿になってしまったのだ、という説がある程に。
     身近で親しみやすい獣型や獣人型、人型など人々の支持を集めやすいポケモンと違い、彼らは大抵日陰の身扱いである。
     しかし、そんな彼らも一部地域では神の使いとして、あるいは神そのものとして崇められていることをご存じだろうか。】
     ここまでで挫折。世界の蛇話と蛇ポケモンとを絡めつつ、メインはイッシュの砂漠の城(都市)を古代エジプトに見立てて、アーボックが墓守の女神だったと紹介する予定でした。結局、予定は未定でした!

    ・ヨツクニ地方の狸譚
     四国のタヌキ伝説をかき集めて方言バリバリダーで書き、それを記者が標準訳したという二段構えで……と考えつつ、うやむやのままに保留。
     山奥に住む爺さんが語る伝聞、という形にしたかったんですけどね。

     小説用

    ・嘆きの湖の伝説
     第一次の記事の元ネタ。いまだ仕上がらず。

    ・タイトル未定
     熱砂の記事の小説版。古代エジプトの神々をポケモンに当てはめて、どうこうするつもりでした。煮詰まりきらず断念。
    【熱砂の国には、古い古い信仰があった。今はもう人々の記憶から抜け落ちてしまった神々が、遠い昔に生きていた。】こんな感じ。

     以上、鳥居ボツネタでした。いつかまたどこかで、形にできたらいいなあ。


      [No.3173] Re: 【鳥居 結果発表チャット】開始時間に関するアンケート 投稿者:たかひな けい   投稿日:2013/12/11(Wed) 21:56:45     74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    1番の18時からを希望します。
    21時から別件が入っておりまして・・・
    チャットなら問題ないかもしれませんが、確実に時間作れるタイミングをば。


      [No.3172] Re: 【鳥居 結果発表チャット】開始時間に関するアンケート 投稿者:奏多   投稿日:2013/12/11(Wed) 21:45:45     90clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    1の18時からを希望します。
    早いほうが、次の日に響かない…と思いまして。


      [No.3171] Re: 【鳥居 結果発表チャット】開始時間に関するアンケート 投稿者:ピッチ   投稿日:2013/12/11(Wed) 21:45:43     86clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    おそらくどの時間帯でも21時前後に離席するかと思いますが、20:00だと比較的都合がいいです。


      [No.3170] Re: 【鳥居 結果発表チャット】開始時間に関するアンケート 投稿者:キトラ   投稿日:2013/12/11(Wed) 21:18:54     77clap [■この記事に拍手する] [Tweet]




    18時開始希望します
    早く終わると寝れる!


      [No.3169] 【鳥居 結果発表チャット】開始時間に関するアンケート 投稿者:No.017   投稿日:2013/12/11(Wed) 21:16:34     84clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    ツイッターで開始時間を早めにして欲しいとの要望をいただいたのでアンケートをとります。
    以下、三択から選んで下さい。

    1.18:00〜
    2.19:00〜
    3.20:00〜

    回答期限:今週木曜日いっぱいまで


      [No.3168] Re: ボツネタの墓場(鳥居バージョン) 投稿者:キトラ   投稿日:2013/12/11(Wed) 20:08:10     101clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    ボツネタの宝庫だよ!

    ・竜を呼んだ師匠
    旅芸人の師匠と付き人の話。
    明治より昔らへんを意識
    現在のフスベシティらへんを通った時、興味持った新しい領主にやれと言われて、削ったばかりの横笛で師匠が演じる
    が、弟子はその笛はやたら高く、竜の声(雲を呼ぶ風の音)に似ていてあまり好きではなかった
    フスベシティでは笛を吹いてはならぬと言われていたが、新しい領主はそんなの迷信とばかり。
    しかし師匠が奏で始めるとだんだと雲行きが怪しくなり、大量の雨が振り、雷が鳴る
    師匠の身の回りの世話と、台無しになってしまった笛のために、フスベの山へいい木を探しにいく弟子。
    猟犬(デルビル、ヘルガー)を連れた地元住民に、ここは昔、シロガネ山に住む竜(カイリュー)が仲間を失って探しに来たはいいが、結局みつからずに終わってしまったこと、それ以降、笛の音を聞くと仲間だと思って大雨を連れてやってくることを聞く
    元々表を歩けない身、黙々と笛を作り、二人は旅立つ。


    ・主任の炭坑
    シンオウは石炭や金銀などが取れるため、たくさんの炭坑があった。
    ポケモンを使い、どんどん掘り進めシンオウ地方から取れる資源は人々の生活を豊かにした。
    炭坑で働くものは取れれば取れるほど自分にまわってくる利潤が多くなるため、どんどん掘り進んだ。
    事故も多かった。しかし会社は遺族にたくさんの金をおけるほどだった。
    そんな時、作業員が何人か戻らないことがあった。確かに一緒に作業し、直前まで話していたはずなのに
    探したが崩落などはなく、また明日探そうと解散。
    次の日も探すが永遠に戻ることはなかった。
    そのかわり、炭坑でイワークの変種が見つかる。金属の体にシャベルのような顎を持っていた。
    作業員が見てるまえで壁を堀り、金属を見つけるような動作をした。そいつは作業員を見つけると勢いよくやってきた。驚いた作業員は逃走するが、途中で何人かいなくなる。
    そして作業員が何人かいなくなった。ついに主任者が現場に入るが戻ってこなかった。それに比例してイワークの変種の目撃談が多くなる。
    噂では山に取り憑かれた炭坑夫の成れの果てだとされ、炭坑は閉じられた。
    今では調査のため、開かれているが、決してハガネールだけには攻撃していけないと言われている。
    それがもしかしたらあの時の作業員かもしれないのだから
    (モンハン、ウラガンキンネタより)

    ・妖狐はいかにしてシンオウから姿を消したのか
    今ではシンオウでロコンは見られない。
    元はたくさんいたのだが、人に退治された。
    シンオウの開拓や炭坑で働く人はケガも多く、この男も全身に火傷を負って看護されていた。
    だいぶ治ってきたころ、家に人が来た。妻が対応すると会社のものだという。しかし男も女も子供まで混じっていた。
    おかしいなと思いつつも、仕事のことを相談したいから少し部屋を閉じてくれと頼まれてその通りにした。
    何時間たっても出て来ないので様子を伺うと、男は既に息絶えていて、そのまわりをキュウコンとロコンが争うように男の肉片を食べていた。
    火傷の治りかけの皮膚はロコンキュウコンのたぐいの好物である。炎でやいた相手を生きたまま放置し、治ってきたころに食べることもする。
    妻が叫ぶと、一目散に逃げていった。
    同じようなことが相次ぎ、狐をこの世から抹殺すべきだと残された開拓民は炎に強い猟犬ヘルガーと共に山に入り、一匹残らず仕留めた。
    最後のキュウコンが絶滅したのはその事件から7年後だったとされている
    今でもシンオウでロコンは見かけない。むしろ見ない方がいいのかもしれない
    (北海道の炭坑記録から)

    どれも、文章にするとだるくなっていく


      [No.3167] 小説21 道祖神の詩 投稿者:道祖神   投稿日:2013/12/11(Wed) 18:44:33     111clap [■この記事に拍手する] [Tweet]
    タグ:鳥居】 【道祖神】 【若さってなんだ】 【振り向かないことさ

    道祖神の詩(うた)です。
    道祖神とはミクリの言う通りに正しい道に導いてくれる神様と言われていますが、旅の神様でもあるんですね。
    また、境界線を示す神様でもあり、神様の住む世界と人間の住む世界をわけていると言います。鳥居と性質は似ています。
    大人のトレーナーにしか思えないこと、それが本当に今の人生でよかったのか、今までの事はよかったのか、今は正しいのかという反省です。
    彼らにも突っ走ってポケモンに夢中だった時があったはず。でもその結果は本当によかったのか。正しかったのか。
    本当に正しいならなぜ今の位置にしたのか。

    ポケモンで最も神秘的な街だと思ってるルネシティ。音楽もホウエン地方の他の街と比べてジャズワルツになっています。グラードンカイオーガが目覚める祠もありますし、ルネの住民が全ての生命はおくりび山で終わり、目覚めの祠から出て行くというセリフ、そして飛ぶか潜るかしないと行けない地形などから、ルネシティは独自の自然信仰がありそうだなと思い、このような形にしました

    そしてなぜミクダイなのか。
    手にしたミクダイにとても感動し、こういう形で彼らが生活している基盤をかけないかとかきだしていたら自然とまとまりました。

    最後に。
    詳しい方はすぐ解ると思いますが、道祖神は男女の性交も司ってるんですよね。だけどダイゴはそうじゃない。だからどうしてこの道(ミクリが好きだという現状)に行かせたのかと恨みを抱き、どうにもならない心を必死で隠そうとします。


    (ミクリの対戦相手がカチヌキ一家の長男。彼もまたここまで後悔も振り返りもせず突っ走って来たんだろうなあ)


      [No.2667] 王者のプライド 投稿者:イケズキ   投稿日:2012/10/06(Sat) 22:29:43     88clap [■この記事に拍手する] [Tweet]



     イッシュ地方。この地に来るのは何年ぶりになるだろう。男は飛行艇の窓から、久しぶりの光景を見渡した。ヒウンシティは多くの人で相変わらずの賑わいだ。
     やがて飛行艇が港に着陸すると、男は船を降りた。すると背後から彼の後を追ってくる足音。男はいい加減うんざりしていた。
    「誰も付いてくる必要はないと言っただろう」振り向きざまに、思い切り顔をしかめて言った。
    「しかし……この頃のイッシュ地方はプラズマ団とかいう危険な輩が横行しているとの話もありますし、大切な御身に大事があっては……」この真夏でもピッチリとした黒のスーツに身を包み、まるで定規を当てたかのようなみごとな七三ヘアーのこの男は、彼のボディガードをしている。
     ――何がボディガードだ。
     男は彼が、父親の差し金により、自分の見張り役として寄越されていることを知っている。
     父上の会社から離れてホウエン地方のチャンピオンリーグマスターになると決めた日、確かにきっぱりと会社を継ぐ意思はないと話したはずだが、未だに僕を放っておいてはくれない。そのせいで、どこへ行くにも、この僕を追いかけて離さないようにプログラムされた“人間ロボット”が付いて回る。
    「君は僕を誰だと思っているんだい? 僕は先のホウエン地方チャンピオンリーグマスター、ダイゴだよ。はっきり言って君がいるとむしろ邪魔だ。君を庇ってチンピラ相手に勝負なんて面倒、僕は御免だからね」
     男――ダイゴはそう言うと、ボディガードの言葉を待たずにヒウンの雑踏へ駈け出して行った。
     彼はすぐに父上から激しい叱責をくらうだろう。もしかしたらこの件が原因でツワブキコーポレーションをクビになるかもしれない。
     しかし、ダイゴにとってそんなこと頭の片隅にも残らないほど、どうでもいいことであった。


     やっとボディガードを撒いてくると、ダイゴはポケモンセンターに向かうことにした。……が、目の前まで歩いてきてやはりやめた。もし、さっきの男が私を探したら真っ先にやってくるのはこの町のポケモンセンターだと思ったからだ。
     仕方なくそこからさらに少し歩くと徐々に人通りは減っていった。ダイゴは「この先モードストリート」と書かれた看板の前でいったん立ち止まると、タウンマップを開いた。
     ――えーっと……。
     目的の施設はすぐに見つかった。ホドモエシティのすぐ南、周りを大きく海に囲まれた半島の中に新しくできた施設PWT(正式名称をポケモンワールドトーナメントという)が、今回僕がこのイッシュ地方に呼ばれた理由だ。
     このPWTは全国各地から強力なポケモントレーナーを集めて競い合う、ついこの間までは夢のような、まさしくドリームマッチが繰り広げられる施設だ。
     今回このPWTのゲストトレーナーとして今のホウエン地方チャンピオンのミクリと並んで、すでに引退した僕にまで声がかかるのは、少し照れくさいような、よけい期待が大きいような気がして緊張するような、妙な気分だ。
     PWTの開催は明後日だ。二日前に来たのは手持ちのポケモンたちをイッシュの空気に慣れさせるため……でもあるが、一番の理由はイッシュ一の鉱山でPWT主催者ヤーコンさんの所有する、ネジ山を見せてもらうためだ。実をいうと、ダイゴにとってネジ山の見学をすることは、密かにPWTに参加することよりも大切な目的であった。
     イッシュだけに生息するポケモン、ホウエン地方にもいるポケモンも生息していると聞いている。一ポケモントレーナーとして、ポケモンの生態はとても興味深い。だが、なにより楽しみなのが、ネジ山の鉱物だ。石だ。
     ダイゴはまだ見ぬネジ山に眠る石たちを思い浮かべて笑みを浮かべた(はたから見たら、何もないところでニヤついている変な人だ)
     この石好きのせいで、ダイゴは一部の人間から変人呼ばわりまでされている。凄腕のトレーナーでありながら、石が好きで年がら年中各地を渡り歩き、彼がホウエン地方のチャンピオンであった時ですらその石さがしの旅は変わらなかった。
     ダイゴは目的地を確認すると、タウンマップをバックにしまった。本当はこのヒウンシティから迎えの車に乗ってホドモエシティのホテルまで行くはずだったが、抜け出してきたので、タクシーでも探さないといけないが、その前にこの町をぶらぶら歩いてみることにした。時間はまだまだある。
     とりあえず、目の前のモードストリートに入ってみた。さすがはイッシュ一の大都会。大勢の人たちがまるで拳銃の乱れ撃ちのように、行き来している。
    「おっと、すみません」
     のんびりした町の多いホウエンでは滅多に見られない光景に圧倒されてぼーっとしてたら、サラリーマン風の男にぶつかってしまった。しかし、男はダイゴの謝罪を聞くでもなし、振り向いた時にはすでに雑踏の中へ消えかけていた。
     ――なんだよ、アレ。
     少しばかりむっとして、先へ進むと今度は長い行列ができているのが見えた。アイス屋さんらしい。行列の中にちらりと見覚えのあるブロンドのロングヘアーを見た。
     アイスなんて全く欲しくない。行列まであるとなればなおさらだ。それにあの女……。
     構わず先へ進もうとすると、
    「あら! ダイゴ?」
     足早に、逃げるように行列の横を通り過ぎようとしたが見つかってしまった。
     ダイゴは気づかないふりをして先へ進もうとしたが、あの女にがっちり腕を掴まれてしまった。
    「無視することないじゃない? ちょっと待ちなさいよ」
     目一杯腕を伸ばし、行列から半身を乗り出しながらも女は片足だけで器用に順番を保っていた。通行人は道を塞がれてあからさまに嫌な顔をしているし、その不格好な体勢を笑う声も聞こえる。テレビや雑誌で最強の美女と謳われた、シンオウチャンピオンリーグマスターとしての風格は、ここでは微塵も感じられない。
    「シロナ、君はもうちょっと周りの目を気にしたらどうだ?」
     ダイゴが呆れて言う。
    「あら……みなさーん! お気になさらずにー」
     気にするも何も通行の邪魔なのは事実だ。ダイゴは一度はぁとため息をつき、シロナの元へ寄って行った。


     モードストリートを進んだ先にセントラルエリアと呼ばれる公園がある。噴水の先にあるベンチに二人はやや距離を空けて……、というかダイゴがシロナを避けて座った。
    「あなたがここにいるってことは、あなたもPWTに招待されたのね」
     そういってアイスを一口、シロナ。
     結局ダイゴはアイスを買い終えるまでシロナの元を離してはもらえず、約30分ほど買う気のないアイスの為に待たされた。
    「まったく、ミクリだけで十分だろうに……」
     そういってアイスを一口、ダイゴ。……待たされたのだからついでだ。ついで!
    「ふふふ……美味しいでしょ? ヒウンアイス。この町の名物ですって」
     アイスを舐めるダイゴにシロナがにやにや。
    「ま、まぁ……」
     まるで子供扱いされているような気分で恥ずかしい。……うまい。
    「って、今そんな話じゃなかっただろ!」
    「あら、ごめんなさい」
     悪びれるでもなくシロナは言う。
    「私は、あなたも招待されて当然だと思っていたわ。ミクリだけじゃ不十分ってわけじゃないけど、あなたもホウエンを代表する素晴らしいトレーナーだから」
     さらりと言って、またアイスを一口。
    「あ、ありがとう」
     ダイゴもまた一口アイスを舐めて、顔をあげられずにさらにもう一口舐めた。
    「ふふふ、ホントあなたって素直じゃないわねぇ……」
    「うるさい!」
     ダイゴは残りのアイスを一気に食べて、コーンの部分までばりばりたいらげると、席を立ち逃げるように去って行った。
    「あなたとの勝負楽しみしてるわよー!」
     後ろの方から大きな声がした。


     その後は街の北の通りでタクシーを捕まえてまっすぐホドモエシティに向かった。PWTがゲストトレーナーのために用意しているという宿泊施設に泊まる予定だったが、そっちまで行けば確実にあの人間ロボットに見つかるだろうし、あそこにはシロナも泊まるはずだ。シロナと同じ場所で一泊だなんて、例え一日でも嫌だった。そこで、適当な安ホテルに泊まっておこうと思ったのだが……。
     ――何だ、これ!?
     ホドモエシティについたダイゴは、一瞬行き先を言い間違えたのかと思った。それほどまでにホドモエシティの様子は変わっていた。
     ダイゴの記憶にあるホドモエシティは地元民とホドモエのマーケットにやってくるまばらな客しかいないものという、イメージがあった。
     それが今やあちこちにホテルが立ち並び、人の数もずっと増えて、あのヒウンにも負けない活気のある都市になっている。
     安ホテルは無かった。しかもどのホテルも満杯で、ダイゴは唯一空いていたホドモエでも最高級ホテルのスイートを一人で借りることにした。ちょっと痛い出費ではあるが、それでもあいつらに見つかるよりよっぽどましだ。
    「よぉ、お前がダイゴか?」
     今、目の前で立っている、カウボーイハットを被った一見強面な中年男性がこの街をこれだけ大きくした立役者で、今回このPWTを開催した主催者でもある。
    「ヤーコンさんですね。初めまして」
     ダイゴが挨拶する。
    「あぁ」
     ダイゴはホテルにチェックインするとすぐにこの町のポケモンジムにやってきた。もちろん挑戦に来たわけではない。ヤーコンはこの町のジムリーダでもあるのだ。
     ダイゴは初対面のこの男にあまりいい印象を持たなかった。町の名士で会社の社長もしているという男だからてっきり、父上のような上品さの漂う紳士かと思いきや、無愛想なうえ妙に土臭いオッサンじゃないか。
    「お前なぁ、ウチの宿泊施設に泊まらないなら、先に連絡入れてくれねぇと困るんだよ」
     ヤーコンがやれやれという風に言う。
    「はい?」
     ダイゴはいきなりの苦言と、なぜ自分がPWTの宿泊施設に泊まる気がないことがこの男に知れているのかという疑問で混乱していた。
    「ツワブキ家の坊ちゃまには、ウチの宿なんかとても泊まれるもんじゃなかったのかもしれねぇけどよ、他あたる気なら先に連絡入れておいてくれねぇと、向こうのスタッフたちが動けなるだろ」
    「は、はぁ……すみません」何か腑に落ちずあいまいな謝罪をしてしまった。
    「まったく、金持ちのボンボンはこれだから……人の迷惑ってのをちぃとでも考えたことあんのかねぇ」そういって、これでもかとばかりにため息を吐く。仮にもゲストとして招かれたはずの相手への態度とはとても思えないほどだ。
     あんまりの態度にダイゴもむっとした。
    「僕はここまでPWTのゲストトレーナーとして着ました。僕の家のことはここでは関係ないでしょう。それに僕がまだ会場に挨拶へ言ってないなんてどうして言えるんです? イライラするのは結構ですけど、憶測でそこまでよくも言えるもんですね。……田舎モンが小金稼いだくらいでエラそうしてんじゃねぇよ」
     この世界規模の大会を開いたヤーコンが稼いだ金は決して「小金」程度ではないだろうがもう口が止まらなかった。
     ――沈黙。
     ヤーコンは先ほどまでと打って変わって黙っている。表情からも何も読み取れない。ダイゴは少し後悔していた。本当はこっちが悪いのについついキレてしまった。気まずい。
    「ちょっとついてきな」
     沈黙を破りヤーコンが言った。表情は相変わらず読めない。
    「……はい」
     そう言うほかなかった。

     ヤーコンに従ってついて行った先は洞窟だった。
    「ここは俺の会社が作ったトンネルでネジ山まで続いている。お前の探し物は、ネジ山でもこのトンネルの中でもそこいらじゅうに転がってるだろう。さっきも言った通り、このトンネルもあとネジ山も俺の会社のもんだ。気に入ったのがあったら好きなだけもってけ。遠慮はいらん」
     ヤーコンはそれだけ言うと踵を返し、ダイゴを置いて出ていこうとした。
    「ま、待ってくださいヤーコンさん! どうして急に……?」
     ダイゴにはヤーコンがどういうつもりでいるのか全く分からなかった。彼のスタッフには迷惑をかけ、彼に向かって暴言まで吐いてしまって、それがなぜこんな親切になって返ってくるんだ?
    「嫌なら構わん。さっさとホテルにでも帰りな」
     嫌なわけがない。願ったり叶ったりだ。
    「いえ……決してそういう訳ではないのです。僕は生来の石好きで――」
    「知ってる」とヤーコン。
    「えっ?」
    「お前なんか勘違いしてるんじゃないのか。えっ? ダイゴさんよ。お前は俺にとってもお客様だ。お前を含め、ゲストトレーナーを歓迎するためずっと俺もスタッフも準備してきた。何を用意すれば喜ばれるか下調べもしてる。だから、お前にはこのもてなしが最適だと思って案内した。さっきはつまらねぇこと言ってすまんかった。だがな、俺はダイゴ、お前を歓迎してるんだよ。さっきのは……まぁあれだ、俺はポケモンと自分に正直をモットーにしててな、イライラしてたのをついついクセで言い過ぎちまった。すまんかった」
     ずっと無表情だったヤーコンがぎこちない笑みを浮かべていた。照れくささと、慣れなさの混じった、初めて見るオッサンの笑顔だった。
     ダイゴは困惑していた。ころころと変わる状況とヤーコンの態度にどう対応したらいいのか分からなかった。
    「あ……ありがとうございます」とりあえず感謝を伝えた。それ以外なんと言うべきか思い浮かばなかった。この男は不器用なだけだっただけということなのか。
    「ま、楽しんでってくれや」最後にそういうと再びヤーコンはダイゴを置いて出ていこうとした。
    「あっそうそう」本日二度目、出ていかないパターン。
    「はい?」
    「お前さっき、なんで俺が、お前がうちの施設に泊まってないってこと分かったか気になってたろ?」
    「えぇ……」気になってはいた。今となってはどうでもいいことだが。
    「あれはな、お前の様子をみて分かったんだ。もともとゲストトレーナーが来たら施設からすぐに連絡がくるように指示してあったんだがな、ダイゴがきたという連絡はなかった。なのにお前は手ぶらで荷物を持ってる風ではない。表に車が停まってるのも見えねぇし、それで分かったわけよ。あぁ、こいつはどっか別のホテルに荷物おいてきて、そっから歩いてきたんだなってな。どうだ? 俺の推理? なかなかなもんだろ?」ヤーコンは満面のしたり顔で言った。
     言われてみれば当然の流れだ。一つ一つの状況を追って考えてみればすぐにたどり着く結論だ。だが――
    「さすがです……」ぼそり言った。我ながらそっけない相槌だった。
     だが、この当然の流れを当然にこなせる人間は少ない。人間はそもそも何でもない時に周りの状況にいちいち頓着しない。何でもない時、それら状況は馬耳東風といった具合に頭の中を素通りしていく。
     ダイゴはなんだか打ちのめされたような気分だった。ヤーコンは企業の社長でジムリーダもしている男だ。それくらいの観察眼、状況判断能力があるのも不思議なことではない。
     ――じゃあ、俺は?
     俺だって元チャンピオンだ。刻一刻と戦況の変化するポケモンバトルを、ギリギリの試合を何度も勝ち抜いてきた。ヤーコンにも負けない……いやそれ以上の「眼」を、俺は持っているはずだ。
     ――あなたもホウエンを代表する素晴らしいトレーナーだから。
     あの女――シロナならヤーコンのように察することができたろうか? 俺の立場だったら彼の本当の感情や意図に気付くことができただろうか。
     ――あなたとの勝負楽しみしてるわよ。
    「くそっ」

     ヤーコンは明日ゲストトレーナー同士の顔合わせをするから朝のうちに会場まで来るように言いこのトンネルから出て行った。ホテルに泊まることは何も問題ではないらしい。
     石探しにはピッケルだとかブーツだとかいろいろ準備が必要になる。だからこのトンネルを探索する前にホテルに戻らないといけない。
     しかしダイゴは戻らずトンネルの奥へと進んでいった。進んでいくと野生のポケモン(後で調べたらガントルというらしい)が出てきたのでこちらはメタグロスを出して倒した。さらに進んでいくとノズパスやコドラといった別のポケモンも出てきたがすべて倒して進んだ。トンネルの中にはトレーナーもいた。そのトレーナーたちも見かけ次第全員に勝負を挑み倒した。だんだんメタグロスを戻すのがめんどくさくなって、ボールに戻すのをやめた。何匹何人倒してもこちらは無傷だった。もっと進んでいったらトンネルを抜け出た。野生のポケモンもトレーナーも見当たらない。それでもダイゴはまだまだ勝負したりなかった。
     これほど悔しい思いをしたのは久しぶりだ。ホウエンリーグであの子供に負けた時以来の悔しさだ。
     でも何がそんなに悔しいのかよく分からない。ただ、負けた気がする。誰に? ヤーコン? シロナ? いや、両方かもしれない。ただ、俺は負けた。そんな気がしてものすっごく悔しい。
     ――ゴツンッ!
    「痛っ!!」突然背中のあたりをハンマーのようなもので殴られてふっとんで地面に倒れた。あまりの痛さにうずくまったまま一瞬動けなくなった。
    「お前! 急に何すんだよ!」
     やっとこその場に座ると、目の前のメタグロスに言った。コイツの思念の頭突きは身構えてても危険な代物というのに、不意打ちでくらって無傷だったのは奇跡だった。
    「いてて……」
     立ち上がるとさらに腰のあたりに痛みが走った。メタグロスは俺を吹っ飛ばした位置から動かずこっちをじっと見ている。じゃれてたのかどうか知らないが、反省している風では無い。
     ――コイツ!
     一瞬痛みも忘れて俺は怒りのままメタグロスに近寄った。アイツは動かない。俺は頭に血が上って、メタグロスをまっすぐ見据えそのままの勢いで右足を大きく後ろに引き――。
     やめた。
    「帰ろっか」ポケットからボールを取り出し、メタグロスを戻した。
     コイツとの付き合いはもう何年になるだろう。コイツはいつだって俺の最高のパートナーで、そばにいてくれた。だからコイツの考えてることは目を見ればなんとなくわかる。こっちの思い込みかもしれないが、でも、分かるんだ。
    「悪かったな、メタグロス」右手のボールにつぶやいた。
     別に俺がコイツに何をしたわけでもないが、俺は謝らずにいられなかった。
     すーっと深呼吸してみた。イッシュは今秋も終わりかけの季節。山の空気はとても冷たく澄んでいる。ダイゴは頭の中が冷やされていくのを感じていた。
     深呼吸を終えると今度は服についた土を払った。さっき地面に転がった分もあるのだが、改めて自分の姿を見てみると酷い有様だった。がむしゃらにトンネルを抜けているあいだに靴は泥だらけズボンや上着にも土が付き転んで擦れた部分は布地が痛んで毛羽立ってしまっている。これじゃあモードストリートで俺を捕まえていたシロナをとてもどうこう言えない。強者の威厳がかけらもない。
     ホテルに戻ろう。帰ったらすぐに服を脱いでシャワーを浴びたら、着替えてメタグロスや他のポケモン達とご飯を食べよう。それから……。
     ダイゴは右手のボールをポケットに大切にしまった。
     ――コイツにはあとでまたちゃんと謝っておかないとな。
     あんな、悲しい目をさせてしまった、その謝罪をしておかないとな。
     怒りのままメタグロスに詰め寄った時、あいつの悲しい目に気付いた。どうしてそんな目をしているのかも、すぐにわかった。
    『プライドを忘れるな、自信を取り戻せ。かつての敗北に飲まれるな、次の勝利を目指していけ。王者のプライドを思い出せ!』
     メタグロスが思い出させてくれた。王者のプライド。
     ――俺は強い!

    「うわぁ……」
     ゲートを抜けた先でダイゴは思わず声が漏れた。話には聞いていたがPWTの会場はそうとうな規模だった。半島が丸ごと施設になっている。
     翌日の朝、ダイゴは初めて会場に来ていた。ヤーコンの言っていたゲストトレーナー同士の顔合わせの為だ。
     半島の中央に巨大でな建造物がPWTの本会場になる。この建造物は巨大なだけでなく、デザインも凝っていて正面入り口の真上にあるでっかい電光掲示板や左右に設置されたライトがチカチカと光って目が痛いほどだ。
     中に入ると、そこもまた巨大な空間だった。二つの大きなモニュメントや観葉植物、ただよう空気まで、何もかもが新品という感じがする。天井まで4,5mはあるだろう。しかし開催前の施設の中には、当たり前だが中にはほとんど人がおらずぽっかり空いた洞穴を思わせた。
    「ダイゴ! こっちだこっち!」
     左の方から声がした。そっちを向くとヤーコンが手を振って呼んでいた。
     ヤーコンの前には六つほど椅子が並び、そこには見知った顔が並んでいた。ダイゴはそれらの左からゆっくり向かていった。
     ダイゴから見て一番手前の右の椅子には、ドラゴン使いのカントーチャンピンとして名高いワタルが座っている。真っ黒なマントに身を包み、何か思案にふけっているかのように目をつむっている。いや、眠たいだけだなアレ。
     ワタルの正面にはダイゴとも交流の深いホウエンチャンピオンが座っていた。ミクリは横を通るとこっちに向かって軽く笑みを浮かべ、とまたすぐに正面に顔を戻した。
     ワタルの右にはあの女が座っていた。シロナは長いブロンドを床ぎりぎりまで垂らし、いつものロングコートに身を包んでいた。歩いていくダイゴをじっと見つめる姿からは嫌でも強者の余裕を感じさせる。
     シロナの向かいにはぼさぼさの真っ赤な髪をしてポンチョを着た壮年男性が座っていた。アデクと直接の対面をするのはこれで初めてになる。だがここイッシュにおける彼の強さは他地方まで噂が広まっている。
     シロナの右隣りには最年少と思しき少年が座っていた。アデクと同じくグリーンもここで初対面になる。今でこそカントーのジムリーダをしていると聞くが、かつては史上最年初のチャンピオンでもあった天才だ。
    「ダイゴ、お前はそこに座りな」グリーンの前の空いた席を指さしヤーコンが言った。
     そこに座るとヤーコンが挨拶を始めた。
    「あー……その、ここに集まってもらった方々には改めて、はるばる来ていただいて感謝する。こっちでのもてなしもあるから存分に楽しんで行ってもらいたい。それから、これが今日の本題になるが、皆さんの中でも今日これが初対面という人がいることだろう。そりゃ、どの方も有名なトレーナーばかりだから名前くらいは聞いていると思うが、ここは一つこれから先のライバル同士として挨拶していってもらいたい」ヤーコンはそれだけ言うと後ろに控えていたスタッフとともに去って行った。
     ヤーコンが去って行って、ダイゴは他の人たちの動きを見ていた。ワタルはさっきから目をつむったまま微動だにしない。……絶対寝てるだろアレ。その前のミクリはどうしたものかと困った様子でもじもじしている。対してシロナはさっそく向かいのアデクと話し始めているし、ダイゴも何か話さないといけない気がして目の前のグリーンに声をかけた。
    「君がグリーン君だね。君の話はホウエンでもいろいろ聞いているよ。僕の名前は――」
    「ダイゴだろ。知ってるぜ」言い切らないうちにグリーンが答えた。
    「ほぉ、それは嬉しいな」
    「石好きの変人だろ?」
    「……」
     初対面の相手に変人呼ばわりされたショックで言葉に詰まってしまった。
    「ははっ! 冗談だって、冗談。鋼のチャンピオンダイゴの実力はカントーでも有名だぜ。あんた、相当腕が立つらしいな。ま、お手柔らかに頼むぜ」
     このグリーンの態度を幼さと決めつけるのは危険だと、ダイゴは感じた。飄々としてみせてはいるが、この男の実力は間違いない。今、これだけの大物に囲まれても一切物怖じしない態度は、その実力を裏づける証拠と捉えるべきだろう。
    「こちらこそ、天才グリーンの胸を借りるつもりでお相手願うよ」
     そういうとグリーンは何も言わずにんまりと笑った。
     こちらも軽く笑みで返した。しかしその手には汗。
     互いに余裕を見せていても、平気なふりをしているだけって分かっている。それでも決して弱みは見せない。これは実力の拮抗した、強者たちの戦いなのだから。

     面識のなかった者たちとの挨拶は一通り終わった。といっても、グリーンを除けばアデクだけなのだが。アデクは終始おおらかといか、がさつな男だった。細かいことは気にしない、言い換えればちょっとやそっとのことでは動じない男のように思われた。
     一時間ほどして再びヤーコンが戻ってきた。今日はもうこれで解散らしい。ヤーコンに言わせてみれば、「小学生じゃないんですから、あーだこーだ引っ張られるの退屈でしょう?」ということらしい。間違いない。


     顔合わせが終わり、宿泊施設へと戻る者、どこか出かけていく者と別れていく中で、ダイゴは座ったままでいた。
     彼らは皆強い。ポケモントレーナーとして最高の人たちだ。
     だから俺はここで勝たなければならない。誰にも負けない。最強は、俺だ。

    「シロナ!」
     部屋に戻る途中のシロナがさっとこちらを振り向いた。
     ダイゴは足を組んで、両手は肘掛に乗せて深く椅子に座っていた。さながら王様のようだ。虚勢と思われても構わない、虚勢ではないのだから。
    「けっきょく僕が一番強くてすごいってこと、君に教えてあげるよ!」
     王者の中の王者を決める戦いが始まる。



    -------------------------------------------------

    ひっさしぶりの投稿。
    いつも見ているアニメ番組にちらっと過去キャラが出た時のような、そんなアレが書きたかった。
    出来てないかもしれないけど
    (

    〈書いてもいいのよ〉 〈描いてもいいのよ〉 〈批評してもいいのよ〉 〈ダイゴさんかっこよく書きたかった……〉


      [No.2666] Re: 胸が締め付けられるような 投稿者:逆行   投稿日:2012/10/06(Sat) 16:37:17     63clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    イサリさん


    感想ありがとうございます。
    ポケスト板で感想貰ったの初めてなんですごいドキドキしています。嬉しいですありがとうございます。

    誰でも「これだけは許せない」っていうものがあると思うんですよね。
    ただこのドーブルの場合、主人が死んだということで、その感情は極端なものになってしまったという。←作中で書けなかったことを、ここで書いて誤魔化そうとしている人


    改めて感想ありがとうございました。


    では、拙文失礼しました。


      [No.2665] 胸が締め付けられるような 投稿者:イサリ   投稿日:2012/10/06(Sat) 00:35:36     73clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     こんばんは、逆行さん!
     小説読ませていただきました。


     表現を趣味とするものとして、非常に身につまされる寓話でした。
     絵と文章、表現形態は違っても、自分の好きなものを信じるあまり、盲目的に他者を排除しようとしてしまう心理は痛いほどよくわかります。
     自分とは異なるものがもてはやされているところを見ると、自分の創作まで否定されたようで、どうしようもない嫉妬に駆られてしまうものですよね……。

     ふと我に帰った瞬間の、ドーブルの言葉にできない後悔と苦々しさが伝わってくるようでした。


     それでは、ありがとうございました。


      [No.2664] 愛しい我がグラエナ 投稿者:きとら   《URL》   投稿日:2012/10/05(Fri) 23:20:56     118clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     俺のかわいい3匹のグラエナ。俺のことが大好きで、いつも俺の言うことを聞く。今日も俺が仕事から帰って来たらしっぽが千切れるくらい振って俺のところに来て。寂しかっただろ。こんな男には女なんかこねーから世話してくれるやつがいなくて困るよなあ。
     一番古い付き合いのグラエナがクロコで、2番目の素直なやつがハイイロで、最近の勇敢な新入りがチョコだ。特に意味はねえ。でもどれも俺の自慢のグラエナだ。強さだってその辺のひよっこなんかに負けん。
     餌箱に入れてから待てと待機させてクロコにお手、と命令した。待ちきれない様子で、しっぽを振ってるから尻が浮いてる。それに前足を何回も俺の手に乗せてくるからお手というより俺の手にタッチしている。ハイイロは俺の目をじっとみて早く許可をくれないかと言っていた。チョコはおすわりを命令したのにしゃがんでる。
     みんなのふわふわの黒い毛皮をなでてやると、俺はよしと言った。早いが我れ先に餌箱に鼻を突っ込む。対して上手くもないポケモンフードだが俺の安月給だから我慢してくれよ。
     飯おわったら夜の散歩行こうなー。おかげで俺は運動不足にもならねーし。もう真っ暗だからお前ら保護色だけどな。


     ポケモンの足にはやっぱり舗装してない道路がいいみたいだな。グラエナたちが土の上をはしゃぎながら歩く。歩くというより、飛び跳ねてる。散歩のときくらい落ち着いて前歩けよ。俺が歩けないじゃねえか。
     俺の足に体おしつけて歩いてるのはチョコ。俺の足の間に顔を出すのはクロコ。歩けと言えば歩くけどそのうちチョコと反対の足にじゃれついてくるハイイロ。街灯が暗いんだが仕方ない。少し離れるとグラエナだと見えなくなるからな。リードつけてるからどっかいっちまうようなことはないが。
     3匹のリードは同じ手で持ってたんだが急に引っ張ってそれぞれ走り出した。俺はその反動で転んだ。いきなり何があったんだ。俺のグラエナが家出の仕方をするとは思えない。
    「クロコ! ハイイロ! チョコ!」
     遠くでグラエナの息づかいが聞こえる。3匹で何をしてるだ。追いかけないとあいつら野生で生きていけるかもしれねーけど!
     道を少し外れると真っ暗で何も見えなかった。名前を呼んでも何の反応もなかった。
     なんでいきなりあいつらが俺から離れていったのか解らない。俺は真っ黒な森をぼーっと見ていた。あんなにかわいがっていたのに見捨てやがって。あっさり見捨てやがって。餌も毎日やってたのに裏切りやがって。
     個人的なことだけど一週間前に振られたばかりでそれでもお前らの世話してやったじゃねえか。餌餌餌、散歩散歩散歩って毎日いってやったのにこのザマかよ。
     ああもう人間もポケモンも信じねえ。どーせお前ら自分のやりたいようにやるんだろうよ。帰って寝てやる。もう明日から何の世話なんかしなくていいんだー。

     俺の家の玄関の前に、黒い毛皮が座っていた。
     なんだよ、なんでお前ら帰って来てんだよ。しかも一匹増えてるじゃねえか。遅かったじゃないかと言いたげな顔してんじゃねえよ。じゃれつくなよ。しかもハイイロのリード切れてんじゃねえかよ。いくらすると思ってるんだよ。これでも節約してお前らに投資してんだぞ。
     しかもチョコ、増えたやつを見てみてと差し出すなよ。ポチエナだし。大きさからいって生まれたばかりか?
    「……またか」
     だからこいつら走って行ったんだな。お前らもそうだったもんな。


     ホウエンでは子供でも小さい時からポケモンに触れさせる教育をしている。個人的に持つ場合もあって、力のあまり強くないジグザグマとかポチエナとかエネコが人気だ。
     けれどな、力のあまり強くないということは、強くなったらイラナイんだよ。不要になる。だからクロコはゴミ捨て場に一匹でひたすら主人を待っていた。ハイイロは餌を取ろうとして川で溺れてた。チョコは主人に会って自分より強いポケモンにコテンパンにされていた。
     俺にボランティア精神はないが、クロコが俺の弁当の匂いにつられて会社まで追いかけてきたことが発端だ。仕方ないから飼ってやったら次々に捨てグラエナを拾ってきやがる。
     俺の経済力を知ってろよ。全部のグラエナは助けられねえよ。あー、そんなこといってもこいつらには解りませんですね。俺がバカだった。生まれたばかりのポチエナとかどうしろって言うんだよ。
     頭かかえてしゃがみ込むと、クロコが覗き込んで来る。疲れたのか、元気だせと言ってるのか知らんが、元はといえばお前らのせいだ。
    「随分たくさんのグラエナを飼ってるんだな」
     知らないおっさんの声がかかる。好きで飼ってるわけじゃねえよおっさん。こいつらみんな俺をよりどころにしてる捨てグラエナだっつーの。なんならこのポチエナおっさんが飼ってやれよ。
    「その力をトレーナーとして使わないか」
    「はぁ?」
    「そんなたくさんのグラエナをそのレベルまで育てるのは、トレーナーとして……」
    「これは俺のグラエナじゃねえよ。弱くなって要らなくなったグラエナを引き取っただけで、育てたトレーナーは今頃どっかでエリートトレーナーじゃねえの」
     それより俺はもう寝たい。ポチエナのボール買いに行きたい。誰だよこのおっさん。話が止まりそうにないというか、ますますこのおっさんの恐ろしい系のオーラが増えてる気がする。上司に怒られる前の空気と似ていて俺の居心地もよくない。
    「それを制御しているのだから、やはりトレーナーの才はある。どうだ? 悪い話ではあるまい。私は才能のあるトレーナーを探している。あるポケモンを探しているのだが、それにはトレーナーの協力が必要なのだ」
    「へえ。何の為にポケモン探してるんだ? こいつらの寝床を広くしてくれるのか?」
    「……まあそんなところだ。条件はこちらから出そう」
     人をほめて引き抜くなんてよくやるじゃねえかこのおっさん。今より貰える金が増えるなら協力してやろうじゃねえの。そうしたらこいつらにもっといいもの食わせてやれる。
    「これだ。この計画は秘密にして欲しい。先を越されたくない」
    「企業秘密ってやつか。なるほどな」
     妖しい匂いはする。しかしこのおっさんの話になぜか興味がある。玄関先でグラエナに囲まれてる男に声をかかけるやつなんていないだろ。何を期待しているんだ。
    「この話に乗るなら、君の名前をそこに書いてくれ」
     俺は敢えて違う名前を書いた。よく知らないおっさんに全てを吐き出す勇気はないんでね。
    「……この話、乗ってやるよウヒョヒョ!」


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    グラエナに囲まれたホムラというツイートがホムラ大好きな人からまわってきました。
    グラエナ多頭飼いしてるんだろうなあ。いいよなあ。ワンコに囲まれて幸せそうなホムラ。
    わんわんお

    【好きにしてください】


      [No.2663] 有害な正しさ 投稿者:逆行   投稿日:2012/10/05(Fri) 00:37:15     114clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     ドーブルという種族は、好きなように絵を描く権利があった。野生に生きる者はもちろん、たとえ人間に捕まっても、たまに自分の身体に傷をつけて戦い、ちゃんと言うことを聞いていれば、そんなに悪いトレーナーじゃない限り、自由に絵を書くことができる。それは私達ドーブルが、絵を描くために生まれた存在だからであって、そうじゃなかったら認められない。
     
     私のトレーナーは、とても良い人だった。私のことを無理させず、適度に回復してくれた。私が火傷を負った時は、すぐに薬を塗ってくれた。私に対して、とても優しく接してくれた。だから私は、あの人に良く懐いた。

     私は主人を喜ばせたかった。私の描いた絵を見せて、主人を心から喜ばせたかった。それがドーブルとしての、せめてもの恩返しだと思った。
     そのために私は、主人の嗜好を徹底的に調べた。明るいものが好きなのか。暗いものが好きなのか。シンプルなものが好きなのか。複雑なものが好きなのか。何を正しいと思っているのか。何を悪だと思っているのか。
     長い間の努力の成果もあり、主人の嗜好がだいたい分かった。主人の嗜好に従い、私はたくさんの絵を描いた。主人は必ず喜んでくれた。心が安らぐと言ってくれた。心が安らいで、幸せな気持ちになれると言ってくれた。だから私も嬉しくなって、もっと頑張って描いた。主人が嫌いな思想に対する風刺も、訳が分からないながらも、盛んに取り入れてみた。主人はくすっと笑いながら、良くやったと誉めてくれた。
     何時の間にか、主人が喜んでくれる絵が、一番描いてて楽しいものになった。それ以外を描くことに、もはや喜びを見出せなくなっていた。
     楽しい日々は、あっという間に過ぎていった。私が絵を描く。主人が喜ぶ。そんな単純な日々が、ずっと続けばいいと思った。
     しかし、運命というのは残酷だった。
     ある日突然、主人は交通事故で死んだ。
    外から大きな音がした。ボールから出てみると、主人が血だらけで横たわっていた。隣には、トラックが止まっていた。私はその光景をただ眺めていた。

     何が起こったのか分からず、しばらくの間、主人の親の家でぼーっとしていた。しばらくして、その事実をじわじわと理解して、私は暴れまわった。主人の親が必死で私を止めた。
     それから私は、いろいろあって野生に帰った。主人に捕まる前の、草むらへと戻った。戻ってきた私を見て、昔の仲間は喜んでいたが、私の心が晴れることはなかった。

     野生に帰った後も、絵は描き続けていた。それは、ドーブルとしてのアイディンティを保つための行為であり、やらなくてはならないものだった。
     そして、どのような絵を描いていたかというと、主人が好きな絵を描いていた。前と変わらない絵を描いていた。何時の間にか、主人が好きな絵が、「これが普通」という形に変っていた。絵とはこうゆうものである。これが正しい絵の姿だ。そう思うようになっていた。
     仲間達とは、仲良く暮らせていた。主人のことは辛かったけど、仲間がいたから、私は前向きに生きてこれた。

     ある時、自分より年下のドーブルが、絵を描いているところを見つけた。私は自分の絵に没頭していたので、他のドーブルの絵をしっかり見ることがなかった。年下のドーブルは、私が見ていることに気づかず、ただひたすら絵を描き続けていた。
     描いてる本人には、興味がなかった。ただ、その絵が少し気になっていた。その絵を見ていると、何か、自分の中に、黒い感情が、沸いたような気がした。
     
     その絵は、主人の好きなものとは、全然違うものだった。むしろ、正反対だった。背景の色や絵が複雑な所が。もちろん、正反対じゃない部分もあった。けれど、一部が正反対なせいで、全てが真逆のように見えた。この頃私は、主人が好きな絵が、正しい絵の姿だと思っていた。だからその絵に、違和感を感じた。違和感はすぐに、怒りへと変わっていった。そして怒りはついに、極端な思考を産み出した。

     こんなのは絵じゃない。
     
     私は文句を言った。こんな絵は、おかしいと。冗談じゃないと。もっと真面目に描けと。こんなものは全然、心に響かないと。時折暴言を織り交ぜて、私は散々に言いたいことを言った。相手の反論を怒鳴り声で遮って、ひたすら何度も「正しいこと」を伝えた。
     言われている方は、とうとう我慢できなくて、ついに私に攻撃してきた。私は非常に呆れ返った眼で相手を見つめた。相手は攻撃を止めなかった。こいつは手を出さないと分からないのか。その思った私は、戦闘態勢に入った。

     相手はオスとはいえ年下。簡単に勝てるだろうと思っていた。
     しかし、私は甘かった。
     相手の力量を知らずに、戦いを挑むのは愚かだった。
     自分より遥かに強い技を、相手はたくさん持っていた。「スケッチ」を使って火炎放射やハイドロポンプを覚えていた彼は、あっと言う間に私のHPを0にした。絵を描くことに努力値を振っていた私に、最初から勝ち目などなかったのだ。
     相手は去っていた。意識が朦朧としていた私は、彼に何も言うことは出来なかった。
     しかし、これで終わりではなかった。痛い思いをして、これで終了とはいかなかった。
     
     彼は、私の仲間に、一連のことを伝えた。あいつが急に偏見を押し付けてきた。挙句の果てには攻撃してきた。恐らく誇張して、話を簡潔にするために嘘も混ぜて、ここらへんにいるドーブル達に話した。そのせいで、私はすぐに、嫌われ者となってしまった。仲良くしていた友達も、次第に離れていった。
     そしていつしか、私の味方はいなくなった。私は独りになった。
     私が絵を描いていると、みんなが笑ってきた。平気で馬鹿にしてきた。私は構わず無視をしたけど、心の中では悔しくて泣いていた。私の絵を否定されると、主人のことを否定されようが気がして、それが一番辛かった。それが一番悔しかった。誰にも責任はない。ただ、私が自我を失って変なことをしたせいだ。
     
     私は言い聞かせた。主人は良い人だった。良い人が私の絵を誉めてくれた。ということはその絵は、正しい。間違ってなんかいない。
     それに、ドーブルという種族は、「自由」に絵を描く権利があるのだから。何を言われたって無視すればいい。
     
     それは、とても立派で、とても愚かな考えだった。


      [No.2662] お褒め頂き光栄です 投稿者:フミん   投稿日:2012/10/04(Thu) 23:28:18     75clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    その一言を待っておりました。

    こういう話って、現実世界でも具体例はありますよね、きっと。


      [No.2661] あるポケモンは 投稿者:   投稿日:2012/10/04(Thu) 19:24:42     108clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    暇です、暇です、暇、暇、暇、暇、暇、暇、暇、暇、暇!ねー、遊んで、遊んで、遊んで、遊んで!今すぐ遊ばないと、サイコキネシス…【以下略】




    誰かこの状況から助けて下さい、1万払ってもいいから。誰にだ、誰でもいいから。コイツ止めてください…
    ほら、英雄!出番、出番!チャンピョン、ジュンサーさん、ジムリーダー!1万でいいなら雇いますから。
    ー悲鳴じみたことを考えつつも、無粋に思考に割り込んでくるそれ。情け容赦なく飛んでくる念波。
     先ほどから、頭がガンガンしている。
    エーフィに進化する前から似たようなことしてさ、飽きないの?

    遊んで、遊んで、遊べよ!どうせまたくっだらない男に、玉砕しに行くんでしょ。自分の容姿も考えろって!そこらへんのフツメンで妥協しなさいよ。未来見せてあげようか?


    やめてください。そんな殺気出しながら、睨まないでください。後、サイコキネシス飛ばすのもダメだから!
    下の人から苦情来たら、出ていかなきゃならないんだよ。
    イジケルな。
    瞳、ウルウルさせても無理!

    「せっかくのデートよ、留守番くらい頼んだっていいでしょ?」
    ようやくゲットした彼氏の方が、優先度は大きくなるに決まってる。小うるさいエーフィよりは、マシだし。
    さみしがり屋でもない癖に、何でいつもデート前になると、こうな訳?邪魔ばっかする。
    クールな癖に……。


    あーあ、あたしも甘いな。うう、頭痛、ひどいな。
    こんなことされても、やっぱね。

    「大人しくしてたら、遊んであげるから、ね?」
     
    コクンと頷いたエーフィの瞳に、妖しい光が宿った。そう簡単にいくと思わないことね、ユキ。甘いわよ?

    数時間後。
    ライモンシティの遊園地に、カゲボウズとジュぺッタ、イーブイの3種が大量発生したのだった。

    「エル!出てきなさい、今日という、今日は!許さないから、お風呂入れるわよ!おやつなしよ、ブラッシング1週間なしよ。いいわねー」
    こうして、旅のトレーナーは追いかけっこする二人を見るのだった。


      [No.2660] 【告知】ストーリーコンテストを開催します 投稿者:小樽ミオ   《URL》   投稿日:2012/10/03(Wed) 20:09:00     331clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

     こんにちは、お世話になっている小樽ミオです。m(_ _)m

     唐突かつ勝手ながら、ストーリーコンテストを開催する運びとなりました(企画ページ:http://yonakitei.yukishigure.com/stcon2012/index.html)。
     マサポケでは休止中のストコンに準拠し、できるだけ「ストコンのつづき」といった雰囲気でご参加いただけるように計画しているものです。

     以下、
    (1) コンテスト概略、準備チャット会開催のお知らせ
    (2) コンテストのトップを飾るイラストおよびバナーイラストの募集
    (3) 審査員の募集(10月3日21時追加)
     の3点についてお話を進めさせていただきます。





    【1. コンテスト概略、準備チャット会開催のお知らせ】

     開催期間は「年内に完結する」ことを基準に、
     2012年10月15日〜12月23日(募集:10月15日〜12月1日、投票:12月3日〜12月22日)
     として仮決定しています。

     ただ、もっとも重要な「お題」が未決定です。みなさまのご参加を想定する以上、お題はこれまでのストコン同様多数決で決定したいと考えております。また、上述の開催期間も当方が勝手に仮決定したものですので、修正が必要になるかもしれません。
     つきましてはチャット会を開催したうえで、お題や開催期間を筆頭に、今回のストコンに関してみなさまのご意見を賜りたく存じます。

     チャット会は本年10月7日(日)20時より、マサポケチャットにて行わせていただく予定です。
     かなり急な提案ですが、ご参加いただければ嬉しく思います。

    ●とりわけご意見をお伺いしたい点
     ・ お題
     ・ コンテストのタイトル(決まってないんです 苦笑)
     ・ 開催期間は適切な長さか
     ・ 募集は「小説」だけに限定するか
     ・ その他みなさまがお気づきの点

     募集期間につきましてはすでに「駆け足気味」というご意見をいただいておりますので、「年内で完結させる必要はあるの?」「年を跨いだっていいじゃん!」というご意見が多ければ、募集期間を中心にもう少し余裕のある開催期間としたいと思っております。

     また、「チャットでは聞きづらい/チャットに入りづらい/チャット前に伝えておきたい」という方がいらっしゃりましたら、当方のツイッターアカウントやメールアドレスに直接ご連絡をいただいても構いません。アカウントやアドレスはこちらに掲載しませんので、お手数ですがコンテスト用のウェブページからご確認ください。m(_ _)m





    【2. コンテストのトップを飾るイラストおよびバナーイラストの募集】
     コンテスト開催にあたりまして、トップ絵およびバナーとなるイラストを募集させていただこうと思っております。チャット会後に本格的に始動したいと思っておりますので、「描いてもいいよー!」という方がいらっしゃいましたらお心づもりをしておいていただけると幸いです。





    【3. 審査員の募集】(10月3日21時追加)
     当コンテストでも、可能であれば審査員というシステムを継承したいと思っています。
     審査員の募集要項は、(1) 全作品を熟読し、 (2) かつ熟考した上で全作品に評価およびコメントを行う ことが可能な方とさせていただきます。
     審査員であることに対するお礼はできませんが、ソルロックも裸足どころか全裸で逃げ出すほどにまばゆい笑顔で感謝の気持ちを表させていただきたいと思います(やめい)

     ※審査員とは
     (これまで同様)全作品を読み、全作品にコメントすることを使命とする役職です。
     これまでのストコンでは、どの作品に対しても審査員の方々から必ずコメントがつくことが応募特典として挙げられていました。




     以上でございます。
     では、ご参加を考えてくださっている方がいらっしゃりましたら、チャット会で改めてお会いいたしましょう(*・ω・*)ノ


      [No.2659] うーわー… 投稿者:No.017   投稿日:2012/10/03(Wed) 02:04:13     76clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

    後味わりい。
    でもなんだろう、ポケモンの世界ではよくあることなんだろうな…現実はシビアだ


      [No.2658] 解放 投稿者:フミん   投稿日:2012/10/03(Wed) 00:23:44     125clap [■この記事に拍手する] [Tweet]


    通りすがりの青年の前で、少年が草むらの中に入って行った。


    「こら。君は、ポケモンを持っているのかい?」

    「持っているよ。ほら」
     
    少年の腕には、ミネズミが抱かれている。

    「そうか。なら草むらに入っても大丈夫だな」

    「うん。これからミネズミ逃がすの」

    「逃がしちゃうのか。見たところ随分懐いているようだが、何か事情があるのかな?」

    「うん。ポケモンは人間と暮らしちゃいけないんだって。だから逃がすの」

    「ポケモンは大事な家族じゃないか。誰がそんなことを言ったんだ」

    「お母さん。テレビで見たんだって。ポケモンは大事な友達だけど、やたらむやみに捕まえたらいけないって。僕の家にはもうチョロネコがいるから、どっちか逃がしなさいって言われたの」

    「そうなのか。家で面倒が見られないならしょうがないな」

    「うん。チョロネコもミネズミもタマゴから育ててきたけど、家で二匹もポケモンを飼えないんだって。家計が苦しいんだって」


    「困ったな。お兄さんも手持ちがいっぱいなんだ。ミネズミを欲しがるトレーナーも少ないだろうし、ポケモンセンターや施設に預けても、こいつが幸せになるとは限らないからな」

    「うん。お母さんも、きっと野生で立派に生きていくから大丈夫だって。きっとたくましいミルホッグになって、群れのリーダーになるって」

    「そうだな。よく見ればこのミネズミは良い顔をしている。お母さんの言っていることも正しいかもね」

    「うん。じゃあさよなら、ミネズミ」
     
    少年はミネズミを地面に置いた。ミネズミは、最初はおろおろとしていたが、やがて森の中に走り去って行く。


    「ミネズミー 元気でねー」

    「達者に暮らせよー」
     
    少年と青年が見守る中、ひたすらミネズミは走っていく。
    そして数十メートル走り続けた頃、一匹のケンホロウが、ミネズミめがけて一直線に飛んでいく。ミネズミが危機に気づいたときにはもう遅かった。

    獲物を捕らえ悠然と飛び去る鳥ポケモンを、青年と少年は何もできず、ただ呆然と見つめていた。




    ――――――――――


    一発ネタです。これ以上の意味はありませぬ。

    フミん


    【批評していいのよ】
    【描いてもいいのよ】


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