注・ここで説明されるルールは旧ルールのポケモンカードDPです。現在のルールとは異なるので、公式サイト等で確認してください。なお、PCC編までは以下のルールで行います。
「雄大。これで最後だ。マッスグマでガブリアスに攻撃、駆け抜ける! ガブリアスは無色タイプが弱点。これで僕の勝ちだ!」
過去の忌々しい記憶。
「これがカードを信頼する力だ!」
かつて俺が負けた記憶。
アイツのセリフを最後に悪夢は覚める。そうだ、昨日俺は奥村翔に負けたんだ。もうあのデッキに用など何もない。
案の定というかなんというか、風見は昨日の激戦以来姿を見せない。もちろん学校にも来ていない。いやはやメンタル弱すぎだろう……。折角デッキを持ってきてやったのに。
高慢なやつに限ってこういうのはもはや定番なのかもしれないな。
風見が俺の言った「俺の熱き想いをこめた魂のデッキさ! 負けることなんてありえない!」という言葉に過剰に反応していたのが気になる。かつて何かあったのだろうか。
しかし他人の詮索なんて趣味が良いとは言えないし、うーむ。どうすればいいか。まあ今は別にいいかな。
「おっす翔!」
恭介がポケモンカードの束を持って俺の机にやってくる。
「俺もポケモンカードやろうと思って、デッキ作ってみたんだ。三十枚だよな?」
「おう。見せてくれよ」
「ハナからそのつもりだぜ」
ポケモンカードは三十枚を超えたり少なかったりしてはいけない。とはいえ、本来は六十枚で戦うルール。三十枚でも戦えるよ、というルールがあり、前日風見とやったのはその三十枚の方のルール。
さて、恭介がもってきたデッキを見させてもらおうか。
「……。なんだこれ」
「どうかしたか?」
レアコイル、グラエナ、ウィンディ、ユレイドル、カイリキー……。全然統一性がない。更にエネルギーがたった一枚しかない。これぞまさしくカードの束。デッキに非ず。
「ルール……。知ってる?」
「全然」
「そりゃこうなるわな……。ルールを説明するぞ」
「おっ、頼んだぜ」
「とりあえず放課後な」
昼休みの刻が終わりを告げるまでわずか一分。そんな時間でポケカのルールを説明するなんて無謀にもほどがある。
そこから数時間。昼休み後の眠たい授業を乗り越え、巡って来た放課後。掃除をぱっぱと終わらせて恭介を呼ぶ。
「じゃあルールを説明するぞ」
「おう」
「まずカードの説明をするぞ」
俺は自分のデッキなどから、ナエトル、ハヤシガメ、きずぐすり、炎エネルギーを机の上に広げる。
「左から順に、『たねポケモン』、『進化ポケモン』、『トレーナーカード』、『エネルギー』だ」
「なるほどね」
その四枚からナエトルを恭介の手前に広げる。
「まずたねポケモンの説明からな」
「たねポケモンとね」
カード左上のナエトルと書かれた部分に指をさす。
「これがポケモンの名前」
「それはわかる」
そしてカード右上のHPを指差す。
「これが体力だ。この体力以上のダメージを受けると『きぜつ』しちゃうんだ。ゲームでいう『ひんし』みたいなの」
「なるほどね」
HPの隣のマークに指を移す。
「これがポケモンのタイプ。ナエトルは草タイプだ」
「常識だ」
続いてナエトルの絵の下の技の欄を指す。
「ここには使うのに必要なエネルギー、ワザの名前、与えるダメージが書いてるんだ」
「エネルギーとかよくわからないんだけど」
「後で順を追って説明する。とりあえずカードの見方から」
「はーい」
カード左下の弱点に指を指した。
「これがナエトルの弱点だ。このタイプのポケモンから受けるダメージは、数字ぶん多くなっちゃうんだ。なにもかかれてないときは弱点がないんだぜ」
「なるほどね。炎タイプの攻撃を受けると+10の超過ダメージがあるってことか」
「そうそう」
中央下の抵抗力に指をスライドさせる。
「これが抵抗力。弱点の反対だ」
「このタイプのポケモンから受けるダメージはこの抵抗力に書かれてるぶんだけ少なくなるんだな?」
「つまり、水タイプのダメージは−20だ」
「弱点に比べて比率大きいな」
「いいことじゃないか。次行くぞ」
最後に右下のにげるを指す。
「これがこのポケモンがバトル場からベンチににげるために必要なエネルギーだ。エネルギーを2つトラッシュしたらベンチに戻れる。
「ベンチ?」
「後で言うから待ちな」
そして俺はナエトルのカードを最初の位置に戻し、ハヤシガメのカードを新たに出す。
「これが進化ポケモン。進化ポケモンはすでに場に出ているポケモンを進化させるカードだ」
ハヤシガメという名前の下にあるテキストを見るように促す。
「ここに書いてる、ナエトルのカードの上にこのカードを置くと進化するんだ」
「なるほどね」
「たね、一進化、二進化という順番で進化できるんだ。まだハヤシガメの上にドダイトスのカードが置ける」
「そうやって強くしていくんだな」
「おう。あとはさっきと一緒。続いてタイプ」
「タイプね」
ナエトル、ハヤシガメ、きずぐすりを片づけて机の上に水、草、雷、闘、超、悪、鋼、無色エネルギーを置く。
「カードはゲームと違ってタイプが九種類しかないんだ」
「九!? それだとカードになってないやつとかいるのか?」
「落ち着け落ち着け。無色タイプはノーマル、飛行、ドラゴン。炎は炎、水は水と氷、雷は電気、草は草と虫、闘は格闘と地面と岩、超はエスパーとゴーストと毒、悪は悪、鋼は鋼」
「あ、混ざってるのか」
「そう。まあこれが嫌だって人もいるんだけどな。で、次はトレーナーカード」
エネルギーカードを退けてきずぐすりを机の上に出す。
「トレーナーカードはポケモンの手助けをするカードなんだ。右上がカードの名前。そして中央に説明文」
「なるほどね」
きずぐすりを戻してナナカマドはかせを出す。
「これもトレーナーカードの種類だけど、その中で『サポーターカード』っていうやつだ」
「サポーターかぁ」
「サポーターは効果が強いけど、一ターンに一度しか使えないのが難点なんだ」
「ふむふむ」
「ドローやサーチ系の能力が多めのカードだぜ」
ナナカマドはかせを戻しておまもりこばん、マルチワザマシン01、夜明けのスタジアムを出す。
「トレーナーカードは他に、左から順番に『ポケモンのどうぐ』、『ワザマシン』、『スタジアム』とあるんだ」
「いろいろあるな」
「とりあえずそれぞれの説明は後回し。こういうもんがあると思っててくれ。最後にエネルギー」
三枚を戻して炎エネルギーを再び見せる。
「エネルギーは、ポケモンがワザを使ったりベンチに逃げるために必要なカードだ。場に出ているポケモンにつけて使うのさ。基本エネルギーは八種類。無色エネルギーを抜いた各種類だ」
「さっきの無色エネルギーは?」
「具体的に言うと、あれはマルチエネルギー。特殊エネルギーの一つだ。それぞれ効果が違うからちゃんと読むんだぞ」
「なるほどね」
「じゃあ今度は対戦の仕方について教えるぞ!」
翔「今日のキーカードはナエトルだ。
進化するとドダイトスになるぞ!
数少ないパワフルな草タイプなんだ」
ナエトルLv.10 HP60 草 (DP1)
─ たいあたり 10
草 はっぱカッター 20
弱点 炎+10 抵抗力 水−20 にげる 2