マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
このフォームからは投稿できません。
name
e-mail
url
subject
comment

[新規順タイトル表示] [ツリー表示] [新着順記事] [留意事項] [ワード検索] [過去ログ] [管理用]

  [No.971] 93話 大阪からの刺客!?Y 投稿者:照風めめ   《URL》   投稿日:2012/05/03(Thu) 19:52:30   31clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

『もう行っちゃうんだな』
『うん……。ほんとにいろいろありがとね』
『急に改まるなんて由香里らしくない』
『らっ、らしくないってなんやねん!』
『そうそう。やっぱり由香里はそうじゃなくちゃな』
『ったく、翔は……』
『ほら、才知も何か言いなよ』
『ま、また会えるよね』
『きっと会えるから、そんな今にも泣きそうな顔しーひんの。じゃあ、またね』



 四月も終わりかけの二十四日の日曜日。今日はどうしても外せない用があるのだ。今月はしょっちゅう用事があって充実しているなあ。
 久しぶりに会う友人との再会に、俺の胸は昨晩寝る前から踊りっぱなし。まるで遠足の前日のようだった。その友人は宇田由香里、中学時代の俺の親友だ。
 父親の仕事のせいで中学入学と同時に大阪から東京に越してきて、そして中学三年になるときに大阪に帰って行った。
 僅か二年間、と思われるかもしれないが、俺の中学生活を振り返るためには彼女抜きでは語れない。
 俺と、由香里と、もう一人冴木才知の三人はよく遊んでいた。だが、中学三年になって由香里が大阪に戻り、俺と才知が違うクラスになってからは三人が集まることはなかった。
 今日も才知とは連絡が取れず、俺と由香里の二人だけで会うことになった。連絡が取れないものは仕方ないのだが、本当に才知とは中学を卒業してから連絡がほとんど取れない。
 ところで今回由香里は東京にいる親戚のおばさんとおじさんのところに用があって、二泊くらいしていくようだ。なので折角だから遊ぼう、と誘われた始末。
 集合場所である東京駅で待ち続けて約三十分、未だに由香里は姿を見せない。約束していた十五分前には来ていたのだが、流石に不安になってきた。そんなとき、背後から急に肩を叩かれた。
「うわっ、由香里ぃ!」
「久しぶりやね。だいたい二年ぶりかな」
「どこから来たのさ。改札向こう側だぞ」
「めんどいし行きながら話すわ。とりあえず駅出よ」
 久しぶりに聞くこのイントネーション、懐かしい。見た目はやや大人っぽくなったが、中身は良い意味であの頃とは変わっていなかった。
 腕を掴まれてバランスを崩しそうになる。そしてそのまま由香里の為すがままに引っ張られていった。
「ほんとはさ、予定より一本早い新幹線乗って来ててん」
「え?」
「良く考えてみーや。重たいトランク振り回したまま遊んでられへんやろ? 先に荷物をおばさんに渡して来ててん」
 確かに、由香里の手元には重そうな荷物はまるでなく、上品なハンドバッグ一つだけだ。
「ま、別に翔が荷物持ってくれるんやったら一考の余地はあったかもしれへんけどねー」
 これ以上ない笑顔でこちらを見る。全く、その調子は相変わらずだ。
「そんなことより最近どうなん。翔にも彼女出来た?」
「うーん、なんていうか微妙なんだよな」
 由香里の表情が一変して口半開きの怪訝な顔になる。バラエティ豊富だ。
「はぁ? どういうことよ」
「いや、俺も説明しにくいんだけど、まあ後輩なんだけどもなんていうか両想いっぽいけど告白とかしてない感じ?」
「ふーん。少女漫画くさいな」
「由香里が少女漫画って」
 思わず笑いを隠せず、由香里に肘で小突かれる。
「なんやそれ。あたしのような純情な乙女にはバイブルバイブル」
「エイブルかなんかの間違いじゃないのか」
「おもんない。0点」
 ぐっ、相変わらず言いたい放題しやがって。久しぶりに聞くとなかなか堪える。
「そういうそっちはどうなのさ」
「どう思う?」
「質問を質問で返すな。じゃあ出来てる?」
「当たり!」
「どうせそんな質問してくるからそうだと思ったよ」
 携帯電話をいじる由香里は、プリクラを急に見せてくる。
「ほら、このあたしの隣におるのがそれ。森啓史ってやつ」
「ふーん」
 お世辞にも見た感じあんまりパッとしない感じの男だ。でも、二人とも楽しそうに笑っているのは確か。
「良かったじゃん」
「で、東京におる間は会えへんから翔が代理彼氏やってな」
「は? なんだそれ」
「あんたは別に気にせんでええで。あたしについてくればええだけやから」



 そこからは由香里に引っ張られるようにショッピングに付き合わされて、荷物を持たされ、そして小洒落たレストランでスパゲッティも食べた。
 もうやめて! 既に俺の財布ポイントは0に近い。昼飯ケチって溜めたお金が跡形もなくなりそうだ。スパゲッティ美味しかったけど高いんです。
「で、次は何を」
「うーん。まあ粗方ショッピングも満足したし適当にふらつこっか」
「ふらつくって……。あ、そうだ。俺この前引っ越したんだ」
「え、何処に?」
「前のボロアパートから良い感じのアパートに引っ越した。距離的には電車で二駅程度だけど」
「じゃあ新しい翔の家行こか」
「ああ」
 そこから一番近い駅から電車に乗って、うちの新しい自宅の最寄り駅に着く。その駅の切符売り場で偶然、薫の後ろ姿を見かける。
「どないしたん?」
 薫に目線が行ってた俺を、由香里の声が引き戻した。
「えっ、いや。友達が」
「相変わらず嘘ヘタクソやなあ。さっき言ってた気になる子って今の子やろ?」
「う、正解」
「分かりやすっ」
 突如由香里が急に俺の空いている右手を、いわゆる恋人繋ぎしてきた。今の流れからのそれはまるで意味がわからんぞ。
「今日は代理彼氏やし、これくらいしないと」
「はぁ……」
 やっぱり意図がさっぱり読めない。何をしたいんだろう。断るとまた面倒そうなので仕方なくそのままでいる。
 駅から徒歩三分くらいでたどり着く新しいアパート。まだ住み慣れないが、居心地は良い。
「このアパート」
「へえ。なかなか良いんじゃない?」
 突如由香里の言葉のイントネーションが変わる。由香里の特技の一つの猫かぶりだ。そう言うと本人はぐちぐち言うが、まあ平たく言うと関東や近畿地方の方言を使い分けることが出来るという特技を使って演技するのが好きらしい。今の言葉のイントネーションは明らかにこちら(標準語)のものだ。
「いきなりどうした」
「ね、そこの貴女もそう思うでしょ?」
 くるりと回るように後ろに振り返る由香里につられて俺も首を捻って後ろを見ると、六歩程離れたところに見慣れた薫の顔があった。
「薫!」
 首だけでなく体ごとひねって完全に薫の方に向く。この薫のなんとも言えない表情に、俺もまたなんとも言えなくなる。その中で由香里だけがご機嫌なようだ。
「どうやら駅から着いてきたみたいよ?」
「そうなの?」
 薫は何も言わずに首をかすかに縦に振る。
「人が楽しんでるところを着けてくるなんて非常識な子ねえ」
 確実に喧嘩を吹っ掛けいる。元から性格が良いとは断定していいにくい由香里であるが、こんなに意地が悪いとは。険悪なムードが由香里と薫の中に漂い始めたので俺が何か言おうとしたら、口を由香里の右手に塞がれた。
「別に人が何しようと勝手でしょう、あたしはここを通りたかっただけなのに」
 薫も薫でヤケになっているぞ。落ちつけ。
「さっき着いてきたかどうかって翔が聞いた時に首を縦に振ったのにそんなこと言うの?」
「っ……」
 ああ……。由香里はこの状況を楽しんでる。人を煽って遊んでいる。こういうどろどろした感じの流れは俺は好みじゃないのに。ならいっそ逃げよう。そう思って一歩後ずさりしようと思ったところ、左腕を由香里に掴まれる。もう逃げられないし腕痛い握力強い。
「翔のせいでこうなってるんだから逃げないの」
「は!? いやいやいや由香里のせいだろ!」
「ちょっ、もういいからとりあえず黙ってて」
 頭を小突かれた。何が何かもうさっぱり分からん。どうにでもなれ。再び由香里が何か口撃して薫を煽り、薫も何か反論しているがもう聞かないもう聞かない。二ヶ月後の修学旅行のことでも考えていよう。とても楽しみなのだ。行先はオーストラリア。外国に行ったことのない俺としてはもう未知なる体験で、ワクワクが止まらない。修学旅行委員会に参加したのは下調べとかもしたいためで、もう興奮の渦がとにかく収まらないからだ。
 あぁ、オーストラリア。おぉ、オーストラリア。未知の土地に思いを馳せる。写真で見たあの美しい海、山、街! 早く行きたいな。そのためには中間考査という困難を乗り越えねばならない。いや、目の前の困難もなんとかしなきゃいけないな。
 そう思った時だった、由香里が芝居くさく右手人差し指で薫を指差したのは。
「それじゃあこれでどっちが翔にふさわしいか白黒つけましょう。生憎と貴女もバトルベルト持ってるみたいだし」
 そんなとき、由香里が唐突に薫にこう言って、ハンドバッグからバトルベルトを取りだした。
「えっ!?」
 なんでそれで白黒決めるの?
「望むところ!」
「ええっ!?」
 薫もそれでいいのかよ! というよりなんでこんな話になったのかがまるで分からんぞ!



 ちょっと歩いて公園に着く。休日なので遊具で遊ぶ子どもたちを傍目に、由香里と薫は火花を散らしながらバトルベルトを起動していた。周囲との温度差はとても大きいが、本人たちは熱中しているため特に何も思ってないだろう。
『対戦可能なバトルテーブルをサーチ。パーミッション。ハーフデッキ、フリーマッチ』
「さあ、かかってきなさい!」
「望むところ!」
 いまいちなんでこうなったかがよく分かってないけども、とにかく久しぶりに由香里のプレイングを見れるのはいい勉強になる。
 薫……、由香里は強いぞ。



由香里「今回の、というよりも次回で活躍するカードよ。
    世界大会優勝者も愛用したこのワタッコ。
    エネルギー一つでやりたい放題なんだから」

ワタッコ HP90 草 (L1)
草 みんなでアタック  10×
 おたがいの場のポケモンの数×10ダメージ。
草 リーフガード  30
 次の相手の番、このポケモンが受けるワザのダメージは「−30」される。
弱点 炎×2 抵抗力 闘−20 にげる 0

───
ポケモンカードスーパーレクチャー第九回「みんなでアタック」
http://www.geocities.jp/derideri1215/library/lecture/93.html

佐藤春菜の使用デッキ
「ツヴァイカノン」
http://moraraeru.blog81.fc2.com/blog-entry-881.html


- 関連一覧ツリー (★ をクリックするとツリー全体を一括表示します)

- 以下のフォームから自分の投稿記事を修正・削除することができます -
処理 記事No 削除キー