マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.898] 83話 奇跡 投稿者:照風めめ   投稿日:2012/03/15(Thu) 00:20:56   35clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「貴様にも全てを消し飛ばす圧倒的闇を見せつけてやる! これが、おれの究極の力! 現れろ、ミュウツーLV.X!」
 ついに出てしまった……。山本信幸の真のエースカード、ミュウツーLV.X120/120。
 近くで見るととてつもないプレッシャーだ。だが、このミュウツーLV.Xを倒さなければ俺は山本に勝つことはできない。倒れてしまった松野さんを救うことが出来ない。
「今まで戦ってきた相手の中で、貴様は一番強いと認めてやる。だからだァ! だからこそ、おれがこの戦いに勝ったとき、おれの能力(ちから)は新たな境地へ赴き、腐りきったこの世界から愚図を排除するという野望への大きな、大きな一歩となる!」
「どうしてそこまで」
「三年前、おれが十八のころ。つまり高校三年生の頃だ」
 逆算すると山本の年齢は二十一か。何があってこんな危険な思想を産み出してしまったのだろう。
「センター試験、もちろん知っているだろう?」
「ああ……」
「センター試験受験日の四日前の出来事だった。塾の帰り、おれはバイクに轢かれる事故にあった」
 ミュウツーLV.Xが右腕を前にすると、周囲の風景が変わり、急にビルとビルが立ち並ぶ夜の街中へ変わって行く。いったいぜんたいどういうことだ。俺の体、山本の体はその街を上から覗くように宙に浮いていて、落ちることはない。
 空は暗いが、街はビルが放つ光のためにやけに明るい。よく見ればこの街並み、どこか心当たりがある。南池袋辺りだろうか、何度か行ったことがある。ふと見れば街路樹のない広めの道路の脇に、血だらけで倒れている一人の男がいた。
「これはおれの過去。スクーターといった小型バイクでなく、バイクにしては大型の、つまり大型二輪に轢かれたおれだったが、轢いたヤツはもちろん逃げ、さらに運悪く人通りが悪かったため事故に遭ったおれの発見も遅れた」
 救急車のサイレンの音が鳴り、過去の山本のそばでそれが止まる。救急車の中から救助隊員が現れた。遠くで何を言っているかは聞こえないが、怒鳴り声のようなものがいくつか聞こえながら、過去の山本が救急車に搬入されそのまま運ばれていった。
 急に上方から眩しい光が目を襲い、右手で両目を覆い隠すよう光から守る。
「そののち、おれの手術が行われた。あまりにも損傷個所が酷く、一時は助からないと誰もが思ったらしい。しかし奇跡的にもおれは生きることが出来た」
 覆っていた右手をはずすと、夜の街並みから景色が急に変わり、辺りは真っ白な壁に覆われた病院の一個室へと移っていた。しかしここでも体は宙を浮き、上から個室を覗いている。
 個室のベッドにはいろんな箇所に管を通されている過去の山本の姿が。包帯やギプスなどいろいろなものが巻かれて直視するのも痛々しい。
「計二十二針を縫う大事故だった。そして、おれが目を覚ましたのは事故から五日後の夜のこと」
「五日後の夜ってまさか」
「そうだ。センター試験の二日目も終わっている」
 思わず眉をひそめて下を向いてしまう。実際にこれを味わった山本は、言葉で表せないくらい辛かっただろう。
「当然、こんな大事故にあって一週間後のセンター追試験を受けれるわけもない。おれは、深い絶望を味わった。今まで必死に必死に頑張ってきたものが、信号無視で走ってきたバイクに轢かれてパーだ。こんなことがあるか!? あってたまるかァ!」
 山本の顔を直視できない。追試験ではないだろう。私立の試験だって、受けれるかどうか。一カ月やそこらで試験を受けるほどの回復は厳しい。
「おれが事故に遭ってから約一ヶ月後のことだった」
 今まで動きのなかった病室の時が急に動き出したかのように、病室の扉が開く。五十代くらいの女性だ。その女性は過去の山本の傍で何か耳打ちをする。
『ほ、本当か! 犯人が見つかったって』
 犯人。山本をこういう目に合わせたヤツのことだろう。見つかったのであれば当然法によって処罰される。間違いなく山本にとっては良いニュースだ。
『大きな声出さないで。これは秘密なんだから』
『秘密?』
 女性は誰もいないか周囲を見渡してから、再び山本に耳打ちする。その耳打ちを聞くにつれ、山本は目の焦点が合わなくなり、呼吸のリズムも狂いだす。
『なっ、がっ、かっ、はっ、はぁ、はぁ、ぎゅああ、きゅばっ、はっ、ああああああああああああああああああああ』
 荒れる呼吸と共に、意味不明な言葉が吐かれたと思うと、急に過去の山本は狂ったように叫び出し、身辺にあったものを構わず投げ続ける。
 本、携帯電話、果物、花瓶。花瓶は割れてガラス破片が飛び交い、たまらず女性は悲鳴を上げる。
 過去の山本の暴走はどんどんエスカレートして医療器具をも叩きつけ、破壊し、投げつける。
 女性がナースコールのボタンを押し、助けてと叫ぶと、すぐに部屋にはたくさんの看護師が現れ過去の山本を抑えつけようとする。
「何が……あったんだ」
「おれが母親から言われた言葉は……」
 あの女性は山本の母親だったのか。俺たちがこうして話している間も、眼下では暴れる山本を、殴られつつも看護師が必死に抑えつけようとしている。
「事故を無かったことにする」
「無かったことにする……? どういう意味だ」
「そのままの意味だ。……おれを轢いたのは、当時の法務大臣のどら息子だった。このことが公に出れば、もちろん法務大臣の立場は危うい。そこでその親子は金で事件を」
「まさか、もみ消したってことか」
「そうだ」
 ようやく抑えられた過去の山本は、暴れ疲れてか意識を閉ざす。なんとか抑えた看護師も、生傷だらけ。個室はもはやボロボロだった。
「おれは悔しかった。悔しくてたまらなかった。おれの人生があんなゴミのせいで狂ってしまった! 悪は善が裁く? そんなものはまやかしでしかないィ!」
 何も答えることが出来ない。怒りを思い出したのか、山本は続ける。
「それだけじゃない。こんなゴミ共に、金でへーこら手のひらを返すあの愚図もだ! 許せるか? 許せるかアァァァ!?」
 病室の風景が掻き消え、元の月明かりが照らす夜の草原へと戻った。愚図とは母親のことか。
「だが、おれはその気持ちを押し殺した。怨むことは門違いだ。とにかく受験勉強に精を出そう、と。そして翌年、志望校に無事受かり、これからは新たな未来を切り拓いていこうと決意を胸にした」
「それならどうして……」
「去年の四月。おれは大学生活にも馴染み、過去の事を忘れて自分の目標に向かっていた。そんな春のある日、サークルの新入生に忘れるわけもない男が現れた」
「男って」
「そう。おれを轢いたそのどら息子だった。母親から名前は聞いていたため、忘れるわけもなかった。しかもその愚図は、現役でうちの大学に入ってきたばかり。どういうことかわかるか」
 現役で入ったということはそのどら息子とやらは十八歳……。まさか。
「免許か」
 山本は物分かりが良い、と拍手で俺を称え、話を続ける。
「そうだ。大型二輪の免許は十八歳以上からだが、おれを轢いたときの愚図の年齢は十六歳。無免許だったのだ」
 一般的な原付きなどは十六歳以上だが、山本の話によるとそのどら息子は大型二輪を運転していたらしい。そうだとすると大型二輪の免許は当然、ない。
「もちろん、おれのことなどあの愚図は微塵も覚えていない。それはそうだ。一度も見舞いにさえ来なかったのだからなァ!」
 山本の受けた屈辱とはここまで……。
「そして夏、おれはこの能力に目覚めた。最初は何が起きたか分からなかったが、この意識を消し飛ばす能力こそこのおれに本当に必要な力だ! 現にあの愚図も、簡単に手を返した親も消してやった! まだだ……。きっとおれと同じような屈辱を受けたやつはごまんといる! そのためにも、そいつらのためにもォ! おれはこの屑が蔓延る腐りきった世界を変えなくてはならないィ!」
「確かに、お前の受けた屈辱は分かった。……だがそれは違う! お前も結局そのどら息子と一緒じゃないか!」
「おれがあの愚図と一緒だと? 適当な事を抜かすなぁぁぁぁぁ!」
「いいや、同じだ! お前がやろうとしていることは、ただ悲しみの連鎖を広げるだけだ! お前だって、お前くらい賢いやつなら分かってるだろう!? こんなこと、本当は何の意味にもならないって」
「黙れェ! 黙れェッ!」
 ダメだ、俺の言うことをまるで聞いていない……。
「おれはァ! ミュウツーLV.Xのワザを使う! エネルギー吸収ゥ! トラッシュにある超エネルギー二枚をミュウツーLV.Xにつける!」
 俺のサイドは残り二枚、山本のサイドは残り三枚。
 山本のバトル場にはこれで超エネルギーが三つついたミュウツーLV.X120/120、ベンチにはユクシー70/70と道具となったアンノーンGをつけているフーディン100/100。
 俺のバトル場には炎エネルギーを二枚、達人の帯をつけたバシャーモFB LV.X70/130、ベンチに炎エネルギー一枚ついたヒードランLV.X120/120とネンドール80/80。
 場には山本が発動したスタジアムカード、月光のスタジアム。このカードで互いの超、悪ポケモンは逃げるエネルギーなしで逃げることが出来る。
 一見俺のほうが優勢に見えるが、とんでもない。最悪だ。
 山本のミュウツーLV.Xはポケボディー、サイコバリアで進化していないポケモンからのワザのダメージや効果を一切受け付けない。
 今場にあるバシャーモFB LV.XはSPポケモンなのでたねポケモンとして扱われ、ヒードランLV.Xは言うまでもない。ネンドールはワザを使うために闘エネルギーが必要、そもそも最初からネンドールを戦力として計算していないため闘エネルギーなんて入れてない。
 このデッキに入っている進化ポケモンであるバシャーモは、既に二匹気絶し一匹はロストしてしまった。デッキにもサイドにも、言わずもがな手札にもバシャーモはもうどこにもいない。
 俺じゃあミュウツーLV.Xに傷一つ与えることすらできない。
 とはいえ、山本は俺のデッキにもう進化ポケモンがいないことを知らない。それを悟られてはダメだ、弱みを見せてはいけない。そのときこそ本当の負けになる。
「くっ。行くぞ、俺のターン! ん、これは……」
 今ドローしたカードは……。



『翔、これを貸しておく。使うか使わないかはお前次第だ』
 風見がポケットから十枚程度のカードを裏向けのまま渡した。拒否出来ない雰囲気に負け、何事もないかのように受け取ってしまう。



 PCC予選が始まる前に、風見が俺に渡したカード。全てはデッキのスペース上入れにくいので、少しだけ入れたカードだった。
「なるほど、こういうときのため、って言うつもりか。俺はナックラーをベンチに出す」
「ナックラーだと?」
 ベンチにナックラー50/50が現れる。俺のデッキは基本的に炎中心だったが、このナックラーは闘タイプだ。
「月光のスタジアムをトラッシュし、手札からハードマウンテンを発動!」
 辺りが元の会場に一瞬戻ると、間髪入れずに今度は険しい山脈に舞台が切り替わる。さっきの草原と違い足元はガチガチした岩盤だ。
「ハードマウンテンがあるとき、一ターンに一度自分のポケモンの炎、闘エネルギーを一つ選んでもよい。そのときそのエネルギーを自分の炎または闘ポケモンにつけ替えることができる。俺はバシャーモFB LV.Xの炎エネルギーをナックラーにつけ替える」
「その程度ッ」
「まだまだ! サポーターカード発動だ。ハマナのリサーチ。その効果でデッキから炎エネルギーを二枚加え、ナックラーに炎エネルギーをつける。さらにネンドールのポケパワーだ」
「何度無駄と言えば分かるッ! フーディンと悪エネルギーを手札からトラッシュし、フーディンのポケパワーを発動ォ! パワーキャンセラー! 相手ターンに一度、手札のカードを二枚トラッシュすることで相手のポケパワーを無効にする!」
 そんなことは分かっている。無駄ではなく、山本の手札を削ることに意味がある。
「バシャーモFB LV.Xで攻撃。誘って焦がす。俺はユクシーを選択」
 このワザは相手のベンチポケモン一匹を選び、バトル場のポケモンと強制的に入れ替えさせて新しくバトル場に出たポケモンをやけどにさせる効果だ。これでバトル場にユクシー70/70を引きずり出しやけどにさせた。
「ターンエンドと同時にポケモンチェックだ。このとき、ヒードランLV.Xのポケボディー、ヒートメタルが効果を発揮する。これは相手がポケモンチェックのときにやけどによるコイントスをするとき、そのコイントスを全てウラとして扱う。よってユクシーはやけどのダメージを確実に受けてもらう!」
 やけどの20ダメージを受け、ユクシーのHPは50/70に。
「そんな小細工が今さら通用すると思ったかアァァ! おれのターン! ハードマウンテンをトラッシュさせ、月光のスタジアムを発動ォ!」
 再び舞台が月夜の草原へと姿が変わる。
「バトル場のユクシーを逃がし、ミュウツーLV.Xをバトル場に出す。さらにミュウツーLV.Xにポケモンの道具、達人の帯をつける!」
「何だと!?」
 ユクシーがベンチに戻ったことでやけどは回復。さらに、達人の帯がミュウツーLV.XについたことでミュウツーLV.XのHPと与えるワザの威力が20ずつ上昇する。これでミュウツーLV.XのHPは140/140。
 だが、達人の帯をつけたポケモンが気絶したとき、相手はサイドを一枚多く引くことが出来る。山本も、ミュウツーLV.Xで勝負をつけに来たということか。
「グッズカード、夜のメンテナンスを発動! トラッシュの基本エネルギー、ポケモンを合計三枚までデッキに戻しシャッフルすることができる。トラッシュの超エネルギー二枚、ミュウツーをデッキに戻すッ!」
 山本のデッキは十枚を切っていたが、これで丁度十枚に戻る。おそらく松野さんと戦った時のようにデッキを削られるのを防ぐための策だろうか。
「攻撃だ! 吹き飛べ、サイコバーン!」
 ミュウツーLV.Xが左足を前に踏み出し、体は右向きに半身の格好になる。そして間にボールでもあるかのように右手を上に、左手を下に添えるとその中間から薄紫の球体が現れた。それをミュウツーLV.Xが投げ飛ばすと、球体は螺旋を描きながらバシャーモFB LV.X70/130を襲う。
「ぐおあああっ!」
 強烈な風と爆発のエフェクトが俺の場全体を包み込む。サイコバーンの元の威力は60。それに達人の帯の効果も相まって、60+20=80ダメージ。バシャーモFB LV.Xはこれで気絶になってしまう。
「だったらヒードランLV.Xをバトル場に」
「バシャーモFB LV.Xについていた達人の帯の効果でェ! おれはサイドを二枚引く! あと一ターンだ! 次のターンで貴様に破滅が訪れる! そして新たな世界の幕が開くゥ!」
 山本のサイドはもうあと一枚だけ。次のターン、山本がギガバーンで攻撃してくれば、ヒードランLV.Xは気絶してしまう。
 ギガバーンの威力はサイコバーンの威力の二倍、120。それに達人の帯の効果で20加算され140ダメージ。しかし、この一撃に耐えれるポケモンはそうそういないし、俺のデッキにはどこにもいない。
 さらにミュウツーLV.XはヒードランLV.Xの攻撃、効果を受け付けない。ナックラーでは言わなくとも完全に力不足。
「まだだ。まだ俺は戦える! ドロー!」
 ドローカードはミズキの検索。よし、まだチャンスはある!
「ミズキの検索を発動。デッキに手札のカードを一枚戻すことで、デッキから好きなポケモンのカードをサーチする。俺はフライゴンを選択!」
「いまさらフライゴンを選択したところで、進化出来るのは一ターンに一度きり! ビブラーバまでが精いっぱいだッ!」
「そうかな? グッズカード、不思議なアメを発動する。自分の進化していないポケモンを進化させる。ナックラーを、フライゴンに進化だ!」
 ナックラーを中心に砂嵐が吹き荒れ、その姿が見えなくなる。数秒たって砂嵐が晴れ、そこからフライゴン120/120が姿を見せる。
「だァが! その程度ではおれのミュウツーLV.Xはびくともしない!」
「まずはフライゴンに炎エネルギーをつけ、ネンドールのポケパワーを発動」
「手札のミズキの検索、達人の帯を捨てパワーキャンセラー! そのポケパワーを無効にする!」
 手札の補給が出来ないため俺の手札はたった一枚。しかも炎エネルギーだ。だけど、立ち止まって諦めるつもりはない。
「フライゴンのポケボディー、レインボーフロートは、このポケモンについている基本エネルギーと同じタイプのポケモンの逃げるエネルギーが0になる。ヒードランLV.Xを逃げるエネルギーなしで逃がし、フライゴンをバトル場に出す」
 フライゴンの足元からヒードランLV.Xに向かって虹が伸びる。ヒードランLV.Xはこの虹をつたいベンチに逃げ、フライゴンがバトル場に現れる。
「ミュウツーLV.Xのサイコバリアは進化しているポケモンのワザ、効果は受けるんだよな」
「だがこのミュウツーLV.XのHPは140! 一撃で倒せるはずがない! 無駄な抵抗はやめるんだなァ! キーヒャハハハ!」
「そいつはどうかな。フライゴンで攻撃。砂の壁!」
 フライゴンが翼をはためかせると、足元から砂嵐が巻き起こる。その砂嵐は範囲を広げ、文字通りミュウツーLV.Xとフライゴンを分け隔てる壁となり、その砂嵐はミュウツーLV.XのHPも40削る。さらに、辺りの風景も月夜の草原から元の会場へと戻っている。ミュウツーLV.X100/140にダメージを与えた後もこの砂嵐は一向に止む気配がない。
「何だ、何が起こっているッ!」
「このワザは相手のスタジアムをトラッシュし、次の相手の番にフライゴンは相手のワザのダメージ、効果を受け付けなくする!」
 これで次の山本のターンにフライゴンが倒される恐れはなくなった。なんとかして打開策を拓かないと。
「くっ、小賢しい! 手間取らせよって! おれのターン! ミュウツーLV.Xに超エネルギーをつけてワザを使う。自己再生! ミュウツーLV.Xについている超エネルギーを一枚トラッシュして、このポケモンのHPを60回復する」
 ミュウツーLV.Xが淡い光に包まれ、HPバーを元に戻していく。さっき40ダメージ与えたのに対し60回復。ミュウツーLV.XのHPは元の140/140に戻る。
「フハハハハハッ! 今度こそ、今度こそ! 次のターンにおれはギガバーンで貴様のフライゴンを倒して勝利するッ!」
 山本のターンが終わると同時に砂嵐が晴れる。砂の壁の効果は無くなった。もう俺を守るものが無くなってしまった。
 今度こそ絶体絶命だ。このターンでミュウツーLV.Xを倒さなければ俺は勝てない。そのための逆転の一枚を……。
「俺のターン」
 ドローのためにデッキの一番上のカードに触れる。何故だか触れた指先が熱を帯び始めた。指をつたって徐々に体全体に熱が広まり、心臓の鼓動が早くなる。
「感じる……。このドローに、俺は全てを懸ける! 行くぞォ! ドロー!」
 俺がドローしたカードは……。フライゴンLV.X!
「こいつが、俺の絆の証しだ! 現れろ、フライゴンLV.X(140/140)!」
「たかがHP140! このおれとミュウツーLV.Xの敵ではない!」
「そいつはどうかな」
「何っ?」
 山本の眉がぴくりと動く。
「この悪夢を終わらせる力だ! フライゴンLV.Xで攻撃。エクストリームアタック!」
 フライゴンLV.Xが空高く舞い上がる。
「このワザは、相手のLV.Xポケモン一匹に150ダメージを与えるワザだ!」
「ひゃ、150だと!?」
「行けぇ! フライゴンLV.X!」
 上空から加速をつけて一気に駆け下りてくるフライゴンLV.Xの体は、白の光に包まれる。
「こんなところでおれはっ、おれはああああああああ!」
 光の束と化したフライゴンLV.Xが、正面からミュウツーLV.Xの体を貫く。それと同時に爆発が巻き起こり、山本側の場が一切見えなくなった。
「達人の帯をつけたポケモンが気絶したため、俺はサイドを二枚取る! これで俺の勝ちだ!」
 これで俺は全てのサイドを引ききった。カードから目を離して前を向くと、勝負が終わったために消えかけているフライゴンLV.Xと目が合う。
「ありがとうな」
 勝った。……良かった。一人だったら絶対に勝てなかったが、こいつのお陰で俺は勝つことが出来た。本当に、ありがとう。



翔「今回のキーカードはフライゴンLV.X!」
風見「エクストリームアタックは、ベンチのLV.Xポケモンも攻撃出来る。ポケボディーもデッキ破壊の強力効果だ」
翔「これが俺達の絆の証しだ!」

フライゴンLV.X HP140 無 (DPt2)
ポケボディー しんりょくのあらし
 このポケモンがバトル場にいるかぎり、ポケモンチェックのたび、相手の山札のカードを上から1枚トラッシュ。
無無無 エクストリームアタック
 相手の「ポケモンLV.X」1匹に、150ダメージ。
─このカードは、バトル場のフライゴンに重ねてレベルアップさせる。レベルアップ前のワザ・ポケパワーも使うことができ、ポケボディーもはたらく。─
弱点 無×2 抵抗力 雷−20 にげる 0


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