マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.697] 39話 風見の用事 投稿者:照風めめ   《URL》   投稿日:2011/09/04(Sun) 09:38:50   74clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

 二月下旬、非常に寒い季節は続く。私立高ゆえに土曜日も授業があり、今日がその土曜日。昼までだからと言えど喜ばしくない。とんでもなく喜ばしくない。
 そんな朝の教室で、俺と風見はいつものように談笑をしていた。
「相変わらず寒いな」
「寒すぎて黒い塊が出そうだ」
「なんだそれ」
「まるで鼻からよだれが出る」
「……どういう状況か分からん。大丈夫か?」
 渾身のボケがことごとくかわされ、風見は笑うどころか苦笑いを浮かべている。
「もしかして翔、お前熱でもあるんじゃないか」
「失礼な! いや、中学時代の友達の真似事をしたんだ」
「と言うと?」
「大阪出身の友達がいてさ、こんな感じで面白い事言ってたんだけども俺には面白いこと言えないなぁ」
「しかしどうして急に?」
「久々にメールがあったんだ」
 と言って制服ズボンの左ポケットから携帯を取り出し、受信ボックスを開く。
 受信ボックスの一番上にから宇田 由香里(うだ ゆかり)と書かれたメールが数通ある。その中の一つを表示して風見に見せた。
「『ポケモンチャレンジカップに出るん?』、か。こいつもポケモンカードをしているのか?」
「ああ、中々強いぜ」
「一度手合わせしたいもんだな。大会でぶつかれたらいいな」
 ポケモンチャレンジカップ、略してPCCはまず全都道府県で地区予選を行い、その後は地方予選、全国大会となる。
 由香里は大阪出身の友人だが父親の仕事の関係で中学時代の一部、二年間だけ東京で過ごし、今は大阪に戻ってそっちの高校に通っている。つまり会うとしたら全国大会だ。
「ああ、そのためにはまず東京での激戦勝ち抜かなきゃなー」
「そうだな」
 その刹那、教室の扉が開く。担任かと思い振り返ると担任ではなく拓哉がやってきた。すかさず風見が声をかける。
「藤原か。悪いが今日の放課後暇か?」
「え? 僕? うーん、大丈夫と思うよ。急にどうしたの?」
「翔とお前とでちょっと着いてきてもらいたいところがあるんだ」
 あれ? 何その話。ちょっと何かおかしいぞ!
「俺が行くのはもう確定済みなの!? 今初めて聞いたんだけど」
「よし、これできまりだな。放課後よろしくな」
「いや、初耳なんだけど……」



 放課後、タクシーに三人乗り。予想は出来たけど風見は助手席、俺ら二人は後部座席。
「タクシーとは偉い身分だよな」
「そうか、翔はそんなに歩いていきたいか」
「ごめんなさい。普段からタクシー使ってるのか?」
「いや、そうでもない。地下鉄とか私鉄とかJRとかも何でも使うぞ。今日は急ぎだからこうしてる」
「へえ。さすが風見君。都心慣れしてるよね」
 いきなり拓哉が身を乗り出して会話に割り込んできて、びっくりした。手で制して座らせる。
「都心慣れと言ってもようやく慣れたくらいだけどな。東京はいろいろややこしい」
「何その言い方、県外の人みたいだ」
「いや、実際俺が東京に来たのは高一の春からだぞ」
「えー!」
「なんだってー!」
「バカ、二人とも声のボリューム。言ってなかったけか。俺は元々北海道で住んでたんだ」
「トンネルを越えると」
「それは新潟」
「あれ新潟だったんだ」
「北海道の屋敷で母親と、後はまあその辺いろいろと住んでたんだが嫌気がさしてな。東京から屋敷にたまたま来ていた父親に頼んで、俺を北海道から東京に連れて行ってもらった」
「ふーん。じゃあ今はお父さんと二人暮らしか」
「いいや、一人暮らしだ」
「えー!」
「なんだってー!」
 さすがに調子に乗って騒ぎ過ぎたか、ミラーに映る運転手さんの顔がひどく歪んだ。申し訳ない、もうしません。
「さっきからそれ流行ってるのか?」
「いや、別に。……そういえば風見が手製の弁当持って来てるとこみたことないのは一人暮らしだったからなんだな。お世辞にも料理する風見が俺には見えねえ」
「うん。いつも食堂かお弁当だったよね。僕も料理する風見君はちょっと……」
「……まあそういうことだ」
「というより風見はお母さんのこと嫌いなのか?」
「ああ。面倒にも程がある、今は一人で暮らせて快適だ」
「いろいろあるんだなぁ」
「まあ戸籍的には俺はまだ北海道に住んでることになってるしな」
「えらく長い旅行ですね」
「その言い方は腹が立つな」
「そういえば僕と翔くんはどこに向かってるの?」
 話が一段落して、拓哉が忘れられていた本題を口にする。何をするかも聞いてないよね。
「もうすぐ着く。着いてからの楽しみだ」
「というより俺と拓哉っていう組み合わせがイマイチ謎だな。恭介とかはいいのか?」
「ああ。用事があるのは翔と藤原の二人だ。それ以外は関係ない。具体的に言うと、翔とこないだの大会で翔と戦った方の藤原だ」
 と風見が言ったが同時、拓哉の態度や雰囲気がコロッと変わる。
「俺様に何の用なんだ?」
「着いてから話そう。もう着く」
 今の拓哉、そうだな。仮称・拓哉(裏)の扱いはまだよく分からないからこんな車内で引っ張り出してほしくなかったんだけどな。
 会話の止まった俺たちを乗せたタクシーは、夕方の都会を走り続ける。



「着いたぞ」
「おー、ようやくかあ。って、公園?」
「ああ。公園だ。さ、出よう」
「いや、その前に金払えよ」
 グダグダしてる風見を置いてタクシーから降りて、公園に入る。昼間とは違う静けさがちょっとドキドキする。が、誰もいない。カップルさえいないじゃないか、話が違うぞ恭介。いや、そうは言ってもまだ晩だしこんなもんだろうか。
「ったく。呼んでおいて誰もいねえじゃねえか」
「落ちつけよ」
 声を荒げる拓哉を制する。こいつはあまりにも短気すぎる。まあ成り立ちが成り立ちだけに仕方ないかもしれないがいくらなんでも難アリだ。
「そんなとこでぼさっとしてないで行くぞ」
 唐突に背後から現れた風見が俺たちの間を通り抜けて公園の奥に進んでいく。勝手に公園の入り口で待ってたと思ってただけだけど、どこか裏切られたような気がして拓哉と二人、少しバツの悪い顔を浮かべて風見の後に着いていく。
 が、その顔が余計バツの悪いそれになるのには時間がかからなかった。公園の奥まで連れて行かれた奥で小さな人影が。目を凝らして見れば、暗がり一人レディーススーツを着た小学生程度の背の小さな女の子がまるで俺たちを待っていたかのように立っていた。
「え、この人?」
「そうだ」
「ほんとに?」
「そうよ。初めまして、奥村翔君、藤原拓哉君」
 その女の子は背丈とは合わぬやけに大人びた笑みを浮かべていた。



翔「今日のキーカードはハマナのリサーチ!
  たねポケモンと基本エネルギーがサーチできる!
  試合展開をこれで早めよう!」

ハマナのリサーチ サポーター
 自分の山札から、「たねポケモン」または「基本エネルギー」を合計2枚まで選び、相手プレイヤーに見せてから、手札に加える。その後、山札を切る。

 サポーターは、自分の番に1回だけ使える。使ったら、自分のバトル場の横におき、自分の番の終わりにトラッシュ。


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