マサラのポケモン図書館 カフェラウンジ2F(長めの作品用)
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  [No.542] 24話 一進一退 投稿者:照風めめ   投稿日:2011/06/22(Wed) 20:28:04   59clap [■この記事に拍手する] [Tweet]

「アーマルドに草エネルギーをつけて攻撃。ブレイククロー!」
 対戦相手の石川薫のアーマルド70/140が右手を高く振り上げ、その先にある鋭い爪でモウカザルに襲いかかる。一閃を受けてまるで弾かれたゴムボールのように吹き飛ばされるモウカザル20/80。
 たった一撃で相当なダメージを受けてしまった。しかも俺のサイドは三枚、相手のサイドは二枚。これ以上相手に有利な状況を作らせることは出来ない。
「ブレイククローの効果はこのワザを受けた相手は次のターン受けるダメージがプラス40される」
 +40……。今のモウカザルの残りHPは20。どんな些細なダメージでも一撃は避けられないということか。
「俺の番だ」
 引いたカードは不思議なアメ。残念なことに、今の手札では活用出来ない。
「まずはモウカザルをゴウカザル(50/110)に進化させ、続けてアチャモに炎エネルギーをつける」
 これで残った手札はアチャモと不思議なアメだけ。ここでなんとか活路を切り開かないといけない。
「モウカザルからゴウカザルに進化したため、ブレイククローの+40の効力はなくなるぜ」
「言われなくても分かってる」
 それにしてもこいつ姿恰好の割には偉そうだな、少年味がまるでない。俺の方が年上なのに完全に見下されてる気がする。そこがちょっと不愉快だ。
「それじゃあ遠慮なく行かせてもらうぜ。ゴウカザルの攻撃、ファイヤーラッシュ! 俺の場の炎エネルギーを好きなだけトラッシュし、トラッシュした数だけコイントス。そしてオモテの数かける80ダメージ。俺はゴウカザルについている炎エネルギー一枚をトラッシュ」
「一枚だけでいいのか?」
「ああ。ここでいっちょ運だめしって奴だ。……オモテ、よっしゃ! それじゃあ遠慮なく喰らってもらうぜ!」
 アーマルドはポケボディー、化石の鎧によって60以下のダメージを喰らわない厄介な相手だ。だがしかしゴウカザルのファイヤーラッシュは60を上回る80ダメージ。これでポケボディーの効果は受け付けない。
 右手に大きな炎を宿したゴウカザルが、アーマルドの手前で跳躍してその肩の辺りに炎の拳を強く打ち付ける。アーマルド0/140は苦しそうな声を僅かに漏らすと、ドシンと音を立てて前へ倒れ伏す。数秒のインターバルをもってアーマルドの映像は消えていった。
「よし。これでサイドを一枚引かせてもらうぜ」
 サイドを引いてから深呼吸を挟む。もしもここでウラを出してしまったらもう後が無かっただろう。オモテが出て良かったぁ。
 と一息ついていると、ドン、と何かを叩く音が響く。慌てて音源の方に向けば、握りこぶしでテーブルを殴りつけた石川が目に映った。
「俺はリリーラをバトル場に出す」
 口調こそ平静を装っているが、声音は明らかに荒々しい。いくらなんでも対戦中にこんなことをあからさまにされちゃあ不満を抱いて当然だ。俺も例外ではない。
「なあ。お前さ、カードしてて楽しいか?」
「急に何だよ」
「いやいや。カードって楽しむためのモノだろ? 確かに不利になったりして腹立たしく思ったりもするけどさ、まだ負けが決まったわけでもないのにそんなに怒るのもないだろう。対戦相手に失礼じゃないか?」
 説教をもらうとは思わなかったのか、石川は顔をうつ伏せてなかなかこちらを見ない。
「俺は……、どうしても勝たなくちゃいけないんだ」
 石川は変わらずこちらを見ずに、震えながら声を出す。ワケアリな雰囲気に、ついつい気圧されてしまう。
「お、俺だってこの対戦、いいやこの大会に勝たなくちゃいけない」
「……俺のこのデッキは事故死した地質学の研究者である父がくれたものだ」
 思わず言葉に詰まった俺を置いて、石川は続ける。
「俺はなんとしてでもこの大会で優勝して、父がやりとげれなかった化石発掘の事業をしたいんだ」
 その夢は四百万でなんとかなるものなのだろうか……。それはともかく、石川にも事情があるのは分かるし、それに同情したい気持ちもある。
「俺だってこの大会で優勝して借金を返さなくちゃならない。事情があるのはお前一人じゃないんだ。俺やお前、他の人だって自分の信念のために戦ってるんだ。お前のそれは甘えだ。肝心なことはこいつで伝えろ」
 右手でカードを一枚摘む。こちらを向いた石川は、何のことかとつい首を傾げた。
「ぶつかり合いだ! 自分の感情、過去、信念、事情。それらを全てぶつけ合ってこそのポケモンカードだ。そんな言葉で語るのは無しだろ!」
 石川の目が大きく見開かれると、やがてふっと一つ笑って目をしっかりと俺に向ける。
「確かに一理あるな」
「だろ! だったら悔しいとか負けたくないとかそういう気持ち、お前のプレイングに乗せてみろ!」
「俺はこの戦い絶対負けられないんだ! 俺のターン!」
 俺がやった訳なのだが、これで石川は吹っ切れた。あのまま感情任せのプレイングにさせれば楽に勝てたかもしれないけど、そんなもの何も楽しくない。
 さて、相手のバトル場にいるリリーラ80/80は草タイプ。炎タイプが弱点なので俺の方が相性はいいはずだ。あくまで相性は。
「リリーラをユレイドル(120/120)へ進化させ、草エネルギーをつける。そしてグッズカード、エネルギーパッチを発動。コイントスをしてオモテなら、トラッシュの基本エネルギーを自分のポケモンにつけることが出来る。コイントスだ!」
 エネルギーパッチはコイントス次第だが、自分の番に一度しかエネルギーをつけれないという制約を越えてつけることが出来る厄介なカードだ。簡単にオモテは出てほしくないのだが……。
「よし、オモテだ。トラッシュの草エネルギーをユレイドルにつけて攻撃! ドレインドレイン!」
 何かの曲名にありそうなワザ名だな。と思っているのも束の間、ユレイドルの首の辺りからピンク色の触手というべきなのか、それらしきものがゴウカザル20/110に食い込む。
 30ダメージか。ダメージ自体は痛くないが、まだ何かあるのかもしれない。油断はできない。
「俺のターン!」
 引いたカードは炎エネルギーか。悪くない。
「手札のゴウカザルに炎エネルギーをつけてファイヤーラッシュ。トラッシュするのはゴウカザルのエネルギー」
 ユレイドルの弱点は炎+30。ここでオモテを出せれば80+30=110で、ユレイドルのHPをかなり削ることが出来るが……。
「オモテだ! さあ、ダメージを喰らってもらうぜ」
 ゴウカザルが先ほどと同様に炎の拳をユレイドル10/120にぶち込む。俺のゴウカザル20/110のHPもギリギリだが、これで状況はほぼイーブン。やられても次の番にやり返せる。
「俺のターンだ。まずは闘エネルギーをユレイドルにつける。そしてサポーター、デンジの哲学を発動。手札が六枚になるように山札からカードを引く。今俺の手札は0。よって六枚引く」
 ここに来て手札補充か。手札が六枚になれば、きっといろいろ仕掛けてくるはずだ。
「ベンチのひみつのコハクをプテラに進化させる」
 ずっとベンチに残されていたコハクが大きな翼竜、プテラ80/80に進化する。
「ユレイドルの攻撃、ドレインドレイン!」
 先ほどと同じエフェクトでゴウカザルに触手が襲いかかる。HPが残り20/110のゴウカザルはこの一撃によって気絶させられてしまう。ここでゴウカザルが倒されるのは痛い。痛い、がこのユレイドルならアチャモでさえ倒すことが出来る。
「残りHPが僅かな俺のユレイドルをアチャモでも倒せると思ったか?」
「何が言いたいんだ」
「ここでドレインドレインの効果発動。このワザにより相手を気絶させた場合、自分のダメージカウンターを全て取り除く!」
「す、全て!?」
 HPが0になったゴウカザルが光の玉となってユレイドルの体に取り込まれる。あっという間に瀕死状態だったユレイドル120/120のHPが元通りに戻ってしまった。ほぼイーブン状態だった対戦だったが一気に石川の流れに傾く。
「サイドを引いてターンエンドだ」
 俺はダメージ表示がなくなったユレイドルのモニターを虚ろに眺めた。マズい、俺よりもサイドを一枚分完全に上回っている。残されたのは炎エネルギーが二枚ついたアチャモ60/60のみ。どうやってこのピンチを切りぬくものか……!



翔「今日のキーカードはユレイドル!
  ドレインドレインは30ダメージ!
  相手を気絶させると全回復だぜ!」

ユレイドルLv.49 HP120 草 (DP5)
草 ドレインドレイン  30
 このワザのダメージで、相手の残りHPがなくなったら、自分のダメージカウンターをすべてとる。のぞむなら、ダメージを与える前に、相手のベンチポケモンを1匹選び、相手のバトルポケモンと入れ替えてよい(新しく出てきたポケモンにダメージを与える)。
草無無 ようかいえき  50
 次の相手の番、このワザを受けた相手はにげるができない。
弱点 炎+30 抵抗力 ─ にげる 3


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